【艦これ】叢雲「バレンタイン!?」 (44)



・短編です
・ちょっとだけ地の文

何番煎じかわかりませんが……よろしくお願いします



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期待

期待



叢雲「バレンタイン?!」

甲高い声が部屋に響く。話しかけていた吹雪は驚いた様子で叢雲の顔を見つめる

吹雪「う、うん、司令官にあげないのかなって」

叢雲「私が?あげるわけないでしょ」

吹雪「そっかぁ。あげるなら一緒に作ろうと思ったんだけど……しょうがないよね。一人で作るよ」

自分の予想が外れ消沈する吹雪。叢雲はその様子を見ながら

叢雲(言えない。実ははすでに準備万端でラッピングまで完璧に仕上げてるなんて言える筈ない)

と、実は図星だった事を隠しつつ、うなだれ部屋からでていく吹雪を見送った

叢雲(去年も結局渡せなかったし……素直に吹雪のノリについていけばよかったかも)

後悔後先に立たず。素直になれない彼女は、吹雪へ再度声をかける勇気などない

叢雲(っとこんな事してる場合じゃないわね。あいつの所にいかなきゃ)











─執務室─


提督「どうしたんだ?今日は落ち着きがないように見えるが」

秘書艦である叢雲の様子がいつもと違うように感じた提督は、心配そうに声をかけた

叢雲「う、うるさいわね。気にしなくていいからさっさと作業終わらせなさいよ」

提督「ふむ。今日は機嫌が悪いようだな。仰せのままに作業を進めるとしよう」

普段の彼女らしい一と言ったら十で返り殴ってくるような口調を聞いて、とりあえず体調が悪い訳ではないと確認し安心する提督

叢雲のギロリと睨んでくる様な目線を感じつつも、そしらぬ顔で作業を進める


叢雲(あーーもうっ。なんでこう……ツンツンしちゃうんだろう)

彼が心配して声をかけてくれたのになぜ自分はこうなのか、彼女は意にそぐわぬ反応をしてしまった事に後悔を感じた

叢雲「……あんたさ」

提督「ん?」

叢雲「二月十四日って何の日か分かる?」

提督「急にどうした?何かの謎かけか?」

叢雲「質問に質問で返すんじゃないわよ。何の日か知ってるかって聞いてるの」

提督「十四日か……うーん」

提督は作業を止め、手を額にあてる。その姿はさながら「考える人」のようなポーズだ


提督「思い出した。バレンタインだな」

叢雲「よく分かったじゃない。あんたみたいのには関係ないイベントでしょうに」

フフンと鼻で笑う叢雲

提督「そんな事はないぞ。これでも毎年、結構な数を貰う」

叢雲はその言葉に驚きと嫉妬を感じつつ、「嘘つきなさいよ」と提督に強い口調で言うと

提督「……といっても艦娘達からの義理チョコだがな。社交辞令というやつだ」

叢雲「そ、そういう事ね。そりゃあんたみたいのに本命あげるモノ好きなんている筈ないもの」

提督「はは、でもまぁ……一度でいいから貰ってみたいな、本命チョコとやらを」

叢雲「叶わない夢程儚い事ったらないわ」

提督「厳しいなぁまったく」

提督は苦笑しつつ、休めていた手にペンを取り作業を始めた

叢雲(そんなモノ好きが近くにいる事……気づきなさいよ、バカ)

素直になれない自分が悪い、そんな事は分かっている

叢雲(何かきっかけがあれば……私だって……)









二月、海沿いの鎮守府は強く吹き荒れる冷たい風にさらされていた

提督(寒い寒い。部屋の暖房の利きが悪すぎる。明石あたりにいえばよくなるかな)

提督は備え付けの暖房機器を自身の部下に修理させようと目見つつ、いつものように机に座り執務をすすめる

提督(しかしこの前の叢雲……なんだったのだろう)

急にバレンタインがいつかという質問をしてきた事

いくらが基本的に俗世から離れ軍に従事し、戦場以外へは鎮守府からほとんどでない生活をしているとはいえ
そのような公然たる行事を知らない筈がない

しかも自分は男だ。回りにいる部下達が艦娘とはいえ元は人間であり、性別は女子
いやがおうにも意識してしまうであろう

提督(もしかして……)

提督(俺にチョコを?)

悶々と考え始めるとその妄想は止まらなくなる

提督(叢雲が俺にチョコをくれたら……飛び上がる程嬉しい)

期待がどんどん膨らむ。というのもこの男、態度にはでないが叢雲に好意を抱いていたのである

提督(今思えばあいつに出会ったのは一昨年か。最初はなんて我の強い奴かと思ったが)

キツイ性格、提督の叢雲に対しての簡単な第一印象だった

何がキツイかというととにかく、物腰がキツイ

何をやれだの、何をやるなだの指図するだけでも上から目線でかつ高圧的

正直、付き合いが浅い内は叢雲の事をあまりよく思っていなかった


提督(けど、本当は誰よりも責任感が強くて仲間思いだ)

少し前の事である。自身の組んだ艦隊が劣勢になりピンチであった時、真っ先に支援に向かった艦娘

それが叢雲だった

彼女は前回の戦いで損傷しているにも関わらず、弾薬も持たず槍一本で戦場へとかけつけたのである

叢雲「もう大丈夫よ。私が来たからには安心なさい」

深海棲艦の攻撃が激しい中、彼女が一人でやってきて艦娘達にかけた第一声がそれだった

その言葉は嘘では無く、只一人で深海棲艦の群に立ち向かい一隻、又一隻と次々に槍で敵の体を貫いていき
敗戦の色濃かった艦隊に勇気を与え、そして勝利に導いたのである

それ以来叢雲は他の艦娘にも慕われる様になり、キツイ口調も彼女なりの照れ隠しだとわかると
逆にそれを茶化す者まで現れるようになった


提督(いつしかあいつの事を気にかけるようになって……今ではずっと秘書艦にしているが)

無謀な事をまたしでかさないかと心配になった提督は、叢雲を自身の秘書艦へと任命する

最初は気乗りしていなかった彼女だが、提督が親身に接っしたおかげか
今では率先して作業を手伝っている

提督(好きだから秘書艦か、我ながらあさましい)

自身の欲望を満たす為にだけ、重要な役職を与える事に対して罪悪感を感じつつも
隣で真剣にペンを動かしている彼女をみて満足する日々

提督(恋情というのは、人を駄目にする節があるというがその通りだ)

一旦、作業を止めコーヒーを一口飲む。ほろ苦い味が口いっぱいに広がる

提督(まぁ……待つとするか。十四日まで)

提督はふっと顔を上げ、壁に掛けたカレンダーを見つめながらため息をつく

その日まであと少し、期待感と悲壮感を同時に感じつつもその日がくることを彼は淡々と待ち望むのだった









  ─叢雲の部屋─


叢雲「はぁ」

叢雲はベッドに横たわり天井を見つめながらため息を吐いた

叢雲「去年みたく自分で食べる事になるかな……」

去年も提督にチョコを渡すつもりで意気揚々と用意したものの、いざ提督の前にいくと恥ずかしくなり
結局悪態をついて叫び散らすしかしなかった

叢雲「なにやってるんだろ」

世話になっている上官に礼の一つもいえない自分

いや、ただ上官だからというだけじゃない。本当はそれ以上の気持ちがある

叢雲(何よ……あたし何かの為に……涙なんて流して)

提督の第一印象はよくも悪くも軍人らしいというもので、叢雲自身は好きでも嫌いでもない

特段、意識する必要もない人間として捉えていた

しかし、叢雲が仲間を助けに向かった際、危うく轟沈という程大けがを負った時の反応

叢雲はそっと目を閉じてあの時の事を思いだす



──
───
────
─────



     ─回想─




ある時の任。占領海域に遊弋する深海棲艦を討伐に向かった水雷戦隊が、想定していた数より多い敵と遭遇する

数でおしてくる相手に歯が立たず、負傷し陣形もバラバラ、士気も下りいよいよ全滅かと諦めかけていたその刹那

単身で仲間たちの元へとかけつけ槍一本で相手の陣地に切り込んでいく一人の少女がそこにいた

叢雲「もう大丈夫よ。私が来たからには安心なさい」

深海棲艦達は思わぬ形で陣形に入り込まれとまどったのか動きが鈍くなる

それを見逃さない叢雲の槍は次々と獲物を仕留めていった


しかし、それでも数の暴力は覆される事は無かった

一旦体制を整えた深海棲艦達は冷静に叢雲へその矛先を向けたのである

叢雲「キャァッ!」

避けても避けても次々と砲撃を繰りだされる。無論、全てを避けきれる筈もなく

ドカァン

叢雲「こ、こんなの……痛く……ないわよ」

強がりを吐きつつ被弾しながらも深海棲艦へと特攻をかけるが
動きが鈍くなった彼女へ容赦ない砲撃が浴びせられる

叢雲(ハァッ…ハァッ……いよいよ足も動かなくなってきたわね)

そして、彼女は口にこもる血をペッと吐き出しながら言う

叢雲(戦いの中で死ぬなら本望だわ……)


死を覚悟したその時である

遠方から大きな砲撃音が鳴り響く

ドォォン

目の前の深海棲艦達が次々と爆発していく

叢雲(……良かった、間に合ったのね)

叢雲の読み通りだった。正規の増援による砲撃。あの距離から深海棲艦を一撃で沈めるといえば恐らく戦艦なのだろう、と彼女は悟る

叢雲「遅いのよ……まったく……」

彼女は元々、増援がくるまでの時間を稼ぐ為だけに戦っていたのだった

そして

叢雲「…………っ」

バシャン

彼女は心地よい砲撃音に包まれながら気を失い倒れこんだ











    ~入渠室~


入渠室、艦娘達が戦場で負った傷を癒す場所

そこで横たわり治療している叢雲に一人の男が近づき、彼女の手をとって呟く

提督「……叢雲」

叢雲「ん……何よ……」

呼吸するだけでも痛い全身の傷
彼女は痛みに耐えながらかすれた声で返答した


提督「良かった、良かった……生きてて……」

それを知ってから知らずか彼女の手を強く握りしめ、提督は涙を流す

叢雲「ちょ、離しなさいよ……って」

叢雲「あんた……泣いてるの?」

提督「……」グスッ

叢雲「大の男が……泣くんじゃないわよ。司令官がそんなんじゃ示しがつかないわ」

叢雲は初めて見る異性の泣き顔にとまどいつつ吐き捨てるように言った

提督「示しなんてどうでもいい。俺の部下が無事で……それだけ分かればそれで」

叢雲(……自分の部下だから、たったそれだけの理由で?)


叢雲「なによそれ……」

今まで何人も司令官を見てきたがこんな奴いなかった

自分の為に涙を流す、そんな司令官は

提督「頼むからもう自分を犠牲にする様な事はやめてくれ」

提督「もしするんだったら俺にいえ。その時は俺も一緒に行く」

叢雲「一緒に行くっていったって……あんたは艦に載ってるだけでしょ」

提督「そんな事はない。囮くらいにならなるかもしれんぞ」

叢雲「バカね……そんな無謀な事しなくていいわよ」

提督「お互い様だろ」

提督は目に貯めた涙を拭き苦笑しながら言った

叢雲「……ふふ」

叢雲「どうしようもない司令官だわ……」

そうして彼女は、提督の暖かい手のぬくもりを感じながら、目を閉じ眠りについた


   
   ─回想終─




──────
─────
────
───
──




叢雲(あの時から、あいつと距離が縮まったというか)

叢雲(やけにあいつが絡んでくる様になって)

叢雲(あたしもそれが嬉しくて……)

叢雲(いつのまにか好きになってたのよね)

叢雲「……はぁ」

大きなため息を吐く。部屋の中がまだ寒いのか、少し白みが掛かっている



叢雲(今度こそ渡そう。いつもの調子で話しかけて……うん)











   ─執務室─



二月十四日、今日も変わらず鎮守府を寒波が取りまいている

しかし、今日ばかりはその寒さも気にならない……とまで言わないが

室温に気を削がれる事が無くなるような行事が提督の部屋で行われていた

電「司令官さん、どうぞなのです」

響「味に保証はしないけど受け取って欲しい」

提督「二人共ありがとう。すごくうれしいよ」

提督は言いながら二人の幼い艦娘の頭をなでる

電「喜んでもらえてよかったのです」

響「……ハラショー」


 コンコン  ガチャ


吹雪「失礼します!司令官、チョコレートをお渡しに参りました」

金剛「へーい提督ゥ!たっぷり愛を込めて作ったデスヨ!」

次々と鎮守府に所属している艦娘から提督へチョコレートが手渡される

提督は艦娘達一人一人へ丁寧にお礼を言う

提督「そうか。わざざわすまないな」

照れた様子で言う提督の横で、秘書艦の叢雲は執務を進めていた

そして行事の様子を横目で見ながら

叢雲(なによデレデレしちゃって)

ヤキモチを焼いていた

提督「みんなありがとう。おかげで今後もがんばれるよ」

積まれたチョコレートの束が今にも倒れそうなのを手で支えながら、提督は大きな声で言った











午後、女子から男子へお菓子が渡される儀式も終わった様で
提督と叢雲は粛々と書類作業を行っていた

提督「さて今日の分の作業は大分済んだし、叢雲は部屋に戻っていいぞ」

叢雲「……そう」

明るい声の提督とは裏腹に、叢雲は覇気のない返事をする

提督「どうした?体調でも悪いのか?」

叢雲「そんなんじゃ……無いわよ」

提督「ふむ?」


叢雲「随分、もらったわね。それ」

叢雲は塔の様に積まれたチョコレートを見ながら言った

提督「まぁな。去年よりも多いんじゃないかな。艦娘も増えたから当たり前かもしれんが」

活き活きと語る提督

叢雲「よ、良かったじゃない」

提督「ああ、司令官冥利に尽きる……なぁんて言い方は変かな」

提督は少しはにかみながら、本当に嬉しそうな様子でチョコレートの塔を見る


叢雲(はぁ……やっぱり無理。直接渡すなんて私には)

ヤキモチをやいたせいで完全に渡すタイミングを逃してしまった彼女は、どんよりとしながら机の中に入れてある物体を見つめた

提督「でも、本当の意味で貰いたかった子からはまだ貰えてないな」

叢雲「え?」

提督の意味深な言葉に反応した叢雲は

叢雲「どういう意味よそれ……誰なのよ!」

ガタタ

勢いよく椅子から立つと、その体に当たった机から、何かが落ちる


ポロッ


提督「え、叢雲、それって……」

提督がその落ちた物を見て、何かを察したかのように声をかけようとすると

叢雲「あっ……こ、これは……違うの!!!」

叢雲はピンクと黄色のリボンで可愛くラッピングされた何かを拾い、一目散に部屋からでていく

提督「あ、おい!どこいくんだ!」

叢雲「……っ!」

あいつに気づかれた、恥ずかしい

叢雲はその気持ちでいっぱいになり、鎮守府内を全力で走り駆けた


ごはんどす

食べたら投下します

食べといたからはよ

おじいちゃんご飯はさっき食べたでしょ

燃料と弾薬の補給は大切なんだから待ってやれよww


戻りました

コメントありがとうございます

投下します

よろしくどうぞ








   ─海岸─
   


叢雲が提督から逃げる様にして走り着いた先は鎮守府のすぐ外にある海岸だった

大きな建物が何もないひらけた道通りに、一定間隔にポツンポツンとベンチが置いてある

彼女はその内の一つに座り、海を眺めていた

叢雲(はぁ…どんな顔して会えばいいんだろ)

見られてしまった。用意していたチョコレート。恥ずかしいからやっぱり渡さないと決めていたのに

あそこで逃げてしまったせいで逆に変に思われたかもしれない。逃げずにそのまま渡せば……

いや、適当に私がもらったのよとか言って弁明すれば良かったのかも

彼女の脳内で様々な思考が躍る


叢雲(そうだ。知らないフリしよう。適当に落ちてたとか言って無理やりしらばっくれてやるのよ)

叢雲(機嫌が悪いフリをして怒鳴り散らしてやればいいんだわ。そしたらいつもの様にあいつも黙るわよね)

叢雲はよしっと呟きベンチを立つ。これで今回はしのげる。そう思って後ろを振り返ると



ジャリッ



提督「こんなところにいたのか」


小石を踏み歩く音と共に、提督がそこに現れた


叢雲「へ?」

提督「急に飛び出していったから心配したぞ」

叢雲「あ、え、あ、えっと……なんでここが」

戸惑い焦る叢雲を見ながら、提督は優しく語りかける

提督「空母組に教えてもらったよ。艦載機で探してくれたようでな」

良く耳を澄ますとたしかに艦載機のエンジン音がする

叢雲「そ、そういう事ね……」

提督「で、どうしたんだ?何があったんだ?」

叢雲「うるさいわね!人がどこへ行こうが勝手でしょ!あんたには関係ない!」


提督「関係ある!」

提督は怒った表情で言う

叢雲「……っ」ビクッ

提督「関係あるさ。絶対に」

叢雲「どういう、ことよ」

提督「……さっき部屋で隠してたのさ、もしかしてそれ俺にくれる予定だったんじゃないか?」

叢雲「ち、違うわよ……こ、これは私のじゃなくて」



叢雲「これっ、部屋の外に落ちてたのよっ!あ"っ、私が買ってきたもんじゃないからっ!あんたのじゃないのっ? …はやく、持って行ってよ!」


叢雲は言いながら先程持ち去ったチョコレートを乱暴に提督へと差し出す


提督「……そっか」


提督はゆっくりとした動作でそれを受取った。そして可愛くラッピングされたそれを愛おしそうに見つめる


提督「良かった。本当に貰いたい子から貰えたよ。まぁ本人は自分のじゃないって言ってるけど」

提督「俺はそれでも……嬉しいよ」

提督は口ごもりつつ言う

叢雲「は?じゃあ、貰いたかった相手って……あ、あたし?」

提督が口まわりを人差し指で浅くぽりぽりと掻いて叢雲をじっと見つめると、彼女は手をバタバタさせて慌てた

提督「ありがとな、叢雲」

叢雲「~~~っ!」

叢雲は口を金魚の様にパクパクさせて顔を真っ赤にする


叢雲「なんなのよ、ほんっと、あんた……なんなの!」

叢雲「一人で恥ずかしがって全力で空回って……バカみたい」

叢雲「こんな事なら最初から素直に渡せばよかったわよ!」

提督「すまなかった。口でちゃんと伝えるべきだったな。俺はお前が好きで……だ、だからチョコをもら」

叢雲「すとーーーっぷ!駄目!それ以上は!」

提督「なんなんだ。人が折角正直に言おうとしてるのに」

叢雲「は、恥ずかしくてジッと聞いてらんないのよ!このバカ!」

提督「むぅ……ならどうしろというんだ」


叢雲「あーちょっと待ってなさい私も心の準備が……ふぅ……うん。よし」

叢雲は何かを決心した様に息を吐くと、提督の方へスタスタと歩いて近づく

少しでも動いたらぶつかり合う様な距離。叢雲は身体を少しちぢこませて、俯きながらじっとする

提督「叢雲?」

叢雲「ほら、好きにしなさいよ」

提督「えっと、じゃあ」

提督がそっと手を叢雲の頭に載せて、優しく撫でると

叢雲「あんた……バカにしてるの?撫でてどうするのよ!」

提督「す、すまん。どう対応したらいいか分からなくてな。何分女性と付き合った事がないもので」

叢雲「ほんっと駄目ねあんたは!ったく……」


叢雲「抱きしめなさい」


提督「え?」


叢雲「抱きしめなさいっていってんのよ!」


提督「あ、ああ」

提督は繊細なガラスを触るかのように、腕をそっと彼女の背中に回した


叢雲「…………悪くないわ」

提督「そ、そうか、なら良かった」

叢雲「あんたの心臓、すごいバックンバックンしてるわよ」

提督「緊張してるんだ。しょうがないだろう」

叢雲「……可愛い所あるじゃない」

叢雲はいいながら、提督を抱きかえす

外に座っていたせいで冷え切った身体がどんどん暖かくなっていくのがわかる

彼女はそのぬくもりを与えてくれる相手を見据える為、顔を上にあげると

叢雲「あ……雪」

ふわっと降りてくる白い塊が提督の肩に落ちてくるのを見て呟く

提督「ほんとだ。最近降らなかったのに」

少しずつ雪のふる量が増えてくる。このままいけばそれなりに積もる様な降り方である

提督「寒いだろう。中に入るか?」

叢雲「……いい。もう少しこのまま」


彼女はそう言うと、彼の唇に顔を近づけて



そして──────




おわり




以上です

バレンタイン叢雲の絵と台詞が良かったので稚拙ながら書かせていただきました
現在、旗艦にて育成中です(Lv1だったので)

お読みいただきありがとうございました

乙です

叢雲かわいいよな

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