叢雲「私たち、何のために・・・」 提督「・・・それが俺たちさ」 (166)

途中で艦これや他のゲームやってちまちま時間のあるときに書きながら三連休で完結か、一区切りできればいいな。と思っとります。

前作は摩耶「…くそがっ!」提督「…恨んでくれても構わんよ」
話しの続きとかでは無いのと、SS素人なので期待はしないで下さい。


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「は?広報任務?」

「そうだ、上からの命令でな、戦力が十分補充できるまで俺たちは広報任務を主軸とする事になった」

普段の彼女らしく無い素っ頓狂な声をあげた叢雲に出来るだけ落ち着いて答える。正直俺だって変な声をあげたいのだ。
深海凄艦の出現・艦娘の出現からしばらく経った。
当初、この謎の生物とも兵器とも取れない相手は太平洋上に出現。新種の生物と考え、捕まえようと思った学者に発砲。ここから人類と深海凄艦の戦いが始まった。
序盤、交戦したアメリカ軍は優位に戦闘を勧めていたが、後に空母ヲ級、戦艦ル級と呼ばれる深海凄艦が現れてからは大きく変わった。
他の深海凄艦とは異なり、ハープーンなどの対艦ミサイルでも一発では致命傷とならず、数隻のヲ級が放つ100を夕に超える人より小さい航空機はイージスシステムでも防ぎきれず、
ル級の砲撃は一発で巡洋艦すら轟沈させてしまうのだ。
これにより、当初優勢に戦闘を勧めていたアメリカ海軍は後退。現在は火力と耐久力で唯一ル級に対抗できるハワイのミズーリの復帰を大真面目に検討していると言う。

そんな中、深海凄艦を研究した日本で艦娘の開発に成功。
人間とほぼ同サイズで、かつての戦艦に匹敵する戦闘力を持つ深海凄艦。それにサイズ・戦闘力双方で互角に戦える艦娘は対深海凄艦の主力として大量建造を行う方針となった。

が、ここで問題が生まれた。日本には深海凄艦よりも先に対応しなければならない敵がいたのである。
艦娘はそれぞれ第二次大戦当時の軍艦を模した装備がつけられ、名前も同じ物がつけられた。
艦娘もなぜかそれぞれ、当時の軍艦としての記憶も持っている。艦娘の一人が元船員の遺族と面談したなんてニュースも有ったくらいだ。
しかしそれゆえ国内外の反発も大きかった。
日本に帝国主義が蔓延している証明だと批判する国も多かったし、深海凄艦はまだ太平洋の一部にしか勢力を広げて居ない。勢力を拡大しようとしている深海凄艦の多数は駆逐艦と呼ばれるサイズで、それらは現有の駆逐艦・巡洋艦で対処可能だったため、殲滅より対話を試みるべきだと言う意見も少なくなかったのだ。
深海凄艦の存在が国民生活に大きな影響を与えることもなく、多くの国民は無関心。少数の人間は艦娘に否定的。それが今の日本周辺の状況だった。
それは日本の領土である沖ノ鳥島が深海凄艦に制圧されても大きく変わる事は無かった。

「それゆえに政府は艦娘の周知や広報を重視する事に決めたんだ、俺たちには向いている任務だろ?」

「まぁ、それはそうだけど・・・」

瑞鳳が顔をしかめる。この鎮守府、三人しか居ないが…その中でも、一番温厚そうに見えて一番根は熱かったりする。多分広報と聞いて一番不満を感じるのは彼女だ。

初期に艦娘の大量配備を見越して創設されたはずの部隊。しかし建造は進まず、建造された艦娘も主力である横須賀に送られてしまい、碌な任務も戦闘もなく、ただただ日々をすごすだけの南の島。
会議で話題に上がることも少なく、会議で他の鎮守府からは「忘れられた鎮守府」等と笑われる。
それがここ、那覇鎮守府の現状だった。
提督・軽空母一隻・重巡一隻・駆逐艦一隻。そして百人に満たない妖精。これがここの全てだ。

「それで?広報っつったってアタシらは何をするんだ?どこぞのアイドルの真似なんてアタシは嫌だからな?」

「オレだって君らにそんな事をさせようとは思わん、でかいイベントだと…今度の海自の観艦式に艦娘も特別参加する事が予定されているな。」

「観艦式か、そりゃあいいな!」

「まあ、俺らが参加してもきっと会場警備とかだけどな」

「糞が!」

摩耶はいつ話しても面白い。

「広報任務の第一回が決まったぞ。有る意味我々の始めての実戦任務とも言える。皆、気合を入れて望むように!」

「広報任務ねぇ…何をやるの?自衛隊みたいに訓練展示とか?」

「まさか、そんなもの数日で準備できるわけ無いだろう?近所の公園のゴミ拾いだ。」

「…くそがっ!」

摩耶はここ最近くそが、しか言ってくれない。
ゴミ拾いとはいえ、住民の方々に我々の事を知ってもらうにはいい機会だ。
と、しぶる摩耶をなだめて公園に向かう。
平日だから人は居ない。と思いきや、老人の方が結構居た。

「じゃあ、皆手分けしてゴミを拾ってビニール袋に入れてくれ」

「ねぇ、何であんたは作業着なのに私たちは普段の制服なのよ、汚れちゃうじゃない。」

「あくまで俺たち那覇鎮守府の艦娘がやってるって事をアピールする必要があるんだよ。それと今日は近所のボランティア団体の方々と共同で作業をするから、失礼の内容にな」

「りょーかいです、提督」

瑞鳳は楽しそうだ。根が熱いと入ったが、料理好きなだけでなく、こう言う家事的な作業も嫌いじゃ無いらしい。
そんな話をしていると70代ぐらいのおっさんが声を掛けてきた。

「あぁ、那覇鎮守府の皆さんですか?」

「はい、那覇鎮守府の提督をさせてもらっています。こちらの三人が所属する艦娘です。よろしくお願いします。」

挨拶をしていると団体の皆が集まってくる。平日にゴミ拾いをする団体だからか60代以降の高翌齢者ばっかりだ

「あぁ、あんたが戦艦の女の子って奴かい?驚いたねぇ、人間となんもかわりゃせん」

「いや、アタシは戦艦じゃなくて巡洋艦・・・」

「うちの孫もあんたらぐらいの年でさ、お嬢ちゃん、飴でも食べるかい?」

「…いただきます」

今日もここは平和だ。

広報任務を始めてから一月ほどたった。
その間やった事と言えばゴミ拾い等のボランティア活動や、近隣の自衛隊基地のイベントへの参加等。
むしろ仕事で海に居るより陸で仕事をしている頻度の方が高いぐらいだ。
艦娘の知名度も上がってきたのか、オフで商店街に言った瑞鳳が握手を求めれて困った。何て話しもちらほら出てきた。
「ていとくぅ~助けてよぉ・・・」と電話が来て慌てて叢雲と向かったら商店街の皆に持ちきれない程のおまけを渡されて動けなかった。
なんて笑えるのか笑えないのかわからない話もある。

「次の任務は?何、提督?」

「近所の中学校で特別講師だ、避難訓練に消防署の人が来るようなアレだよ、艦娘について詳しい情報はなかなか報道されないしな」

「あぁ、最近週刊誌で取り上げられてたってアレだろ?深海凄艦も日本が作ってマッチポンプしてる…ってやつ、嫌になるぜ」

艦娘については謎が多い。と言うより、理解するのが難し過ぎるのだ。
艦娘とは何か、オレも講義を受けたが、はっきり言って理解しきれたとは言いにくい、それを他人に説明するには量子力学を5分で説明するより難しい。と断言できる。
ゴシップ誌や専門家の中には深海凄艦は日本が開発し、日本が艦娘を使って勝利する事で世界征服をたくらんでいる・・・なんて話題が昇ったり、国会で議員が艦娘の動力に原子炉が使われていて非核三原則に反している。等と批判するなんて事も有った。
積極的に艦娘について周知してもらう。という方針の元、説明会みたいなのが各地で開かれ始めた。

「お前ら静かにしろよー、今まで社会科では現在の社会について授業してきたが、今回は最近話題になっている深海凄艦と艦娘についての授業を実際の艦娘とそれを指揮する提督の方に行ってもらう。試験にはでないが今社会で活躍している人の話を直接聞く機会だ、しっかり聞けよー」

「今紹介された那覇鎮守府の提督だ。よろしく頼む」

教師に紹介されて教壇に上がる。俺を見つめる30人の顔。
俺も学生の時、掃除だなんだで教壇に登った事はあるが、沢山の人の前で昇った事は無かった。あんとき先生はこんな光景を見てたんだなぁ・・・
などと、変な感傷に浸ってしまう
「制服かっけぇな」「でも顔はカッコよくないよね」
いわんでくれ、傷つく。

「艦娘って人間じゃ無いんだ・・・」「じゃあロボット?」「昔の船の意思を継ぐ…幽霊?」
生徒達の反応は様々だ。無理も無い。ニュース南下を積極的に見る奴なんて少ないだろう年代の人間に艦娘の話をいきなりしたって、理解できるとは考えにくい。

「やっぱり混乱してるな、私も始めて指揮を取るよう命じられたときはそうだった。こんな理解できない連中の指揮をとり纏め上げる事なんて出来るのか?ってな。だから実際に見てもらった方が速いと考え、艦娘をここに呼んでいる。入ってきてくれ」

教室がざわめく。まぁ、そうなるな。
教室のドアを開き、摩耶を戦闘に鎮守府の艦娘が入ってくるとそのざわめきは更に大きくなった。
「やべぇ、可愛い…」「軍艦の女の子って言うから雌ゴリラみたいなのが来るかと…」「俺あの娘好みなんだけど…」「踏んで欲しい・・・」
とくに男子生徒の反応は貧著だ、中学生と言えば多分、性欲が極端に強くなるころだ、そこに女の子が来ればこうもなるだろう。
実際提督としての身内贔屓もあるだろうが、実際内の鎮守府の艦娘は可愛い。他の鎮守府の艦娘よりもだ。
だが、明らかに若くしてやばい性癖を発現している奴が居ないか?

「やだあの子…小さくて可愛い…」「あぁいう妹が欲しいわ…」
この学校はレベルが高い。

「重巡洋艦、摩耶だ」「軽空母、瑞鳳です」「駆逐艦、叢雲よ」

「この三人が那覇鎮守府に所属している艦娘だ、本鎮守府は対深海凄艦の最前線とは言えないため、この三人しかいないが、皆精鋭だ。」

生徒の一人が手を上げる

「戦艦・・・とは違うんですか?」

「言い質問だ、戦艦、というのは重装甲と高火力を持った船の事でな、詳しく言うと長くなるから簡潔に説明するが…重巡は火力と機動力をバランスよく持った船、空母は航空機運用、駆逐艦は小型と快速…みたいに考えてくれ。まあ、自衛隊にでも入るんでなければそこらの知識は不要だけどな」

「バランス…スタイルいいなぁ…」「母って言うけどおっぱい小さい」

「ちょっと、アンタどこ見て言ってるのよ!」「そう言うのは本人の居ないところで言って欲しいな…」「お前ら、ぶっ殺されてぇか?」

瑞鳳以外は偽装を持って来てなくてよかった。

「駆逐って言うから、エレン見たいなの想像したんだけど」

「俺はエレンと言うとプリキュアしか想像できない」

「!?」

「アンタ、日曜以外も早起きしなさいよね」


「行くわよ、航空隊、発艦!」

学校のグラウンドで瑞鳳の放った弓矢が飛行機に変化し、編隊を組み始める。
訓練展示として実弾を使わなくても実行可能な瑞鳳の航空隊のアクロバット飛行を行うことにしたのだ。

「さあ、訓練の成果を見せてあげて!」

三機の零戦が編隊を組み進入。スモークを出しながら連続で宙返りを行う。
空自のブルーインパルスなんかにゃ迫力で劣るが、人より小さい飛行機が軽やかな音を出しながら瑞鳳の周りを飛ぶ姿はなんか幻想的なものを感じさせた。

「天使や、天使がおる…」

この中学生とは将来言い酒が飲めるだろう。

「現在、世界を取り巻く深海凄艦の脅威は諸君ら国民の生活に直接、大きな影響を与えていると言うわけでは無い。しかし、そこまで影響を与えないように活動している我々各鎮守府や、艦娘について、少しでも理解していただけたなら幸いだと思う」

授業時間が終わり、閉めの挨拶に入った。
そう言えば学校での発表以来、こうやって多数に話すことなんてなかった。艦娘は三人だし、俺以外の人間は業者の方たちで直接話すのは数人しか居ない。
艦娘も精神年齢の近い人間と触れ合う機会、というのはなかなか無い。こちらにとってもいい経験になったと思う。

「なお、来月予定されている海上自衛隊沖縄基地隊のイベントにおいて、沖縄基地隊と共同での訓練展示に那覇鎮守府の皆さんも参加されるとの事だ、時間があったらお前たちも見に言ったらどうだ?では、今日の授業はここまで」

「起立!礼!」「「ありがとうございました」」
「摩耶様!罵ってください!」「糞が!」
「瑞鳳ちゃん家にこない?」「あの…えんりょするね?」
「叢雲ちゃんは笑顔の方が可愛い!」「なっ…何言ってんのよ!!…まぁ、ありがと…」

悪い経験、にはなって無いよな?

「はい、えぇ、了解しました。」
『いや、提督さん、申し訳無い…私としては生徒達に社会情勢を知っていただくいい機会だと思ったのですが…』
「いえ、気持ちはこちらも同じです。ですが今は仕方ないでしょう。それでは失礼します」

溜め息をつきながら受話器を置く。基本的な問い合わせ先は海自沖縄基地隊としていてよかった。その基地隊はいま地獄かも知れ無いが・・・
その時、執務室のドアを誰かが叩いた。顔に力を入れなおし「入れ」と言う。

「ていとくぅ~!来週の小学校への授業のためにわかりやすいイラストとか書いて見たの!どう?」

瑞鳳がニコニコしながら入ってきた。
前の中学校で猫かわいがりされたのが照れながらも気に言ったのか、色々次の準備をしているらしい。
それでも通暁業務がおろそかにならない辺り流石と言ったところだろうか?
「じゃーん!」と言いながら大きな画用紙を広げる。なかなか可愛い絵柄で海自と鎮守府、俺と艦娘、深海凄艦の艦系がわかりやすく書いてあった。
正直、小六の子供に対してはすこしこどもっぽすぎる気もするが…

「瑞鳳…気合が入っているところ悪いのだが、学校への特別講師は無期限延期となった」

「ふぇ?」

瑞鳳の持つ画用紙が手から落ちた

食堂に瑞鳳を連れて行くと皆が食い入るようにテレビを見ていた。

『先日、沖縄県の中学校で海上自衛隊所属の士官と艦娘を講師とした授業が行われ、大きな反響を呼んでいます。』

ニュース番組のレポーターが俺達が授業を行った中学校の前でマイクを持って話していた。

『この授業は現在の社会について知ってもらおう。という方針の元始められ、先日の授業の前は商工会議所や市役所職員が現在の経済状況や社会情勢の講義を行っていました。』
『艦娘による授業は現在日本が交戦している勢力である深海凄艦との戦いについて講義を行ったほか、小規模な訓練展示、艦娘と生徒との歓談などを行ったとの事です。』
『しかし、仮にも自衛隊員が学校で教鞭をとるという行為は平和教育上正しいものなのか?という議論が起こっています』

「なに、これ…?」

「アタシ達がやった事、問題になったようね。生徒や先生たちには喜んでもらえたと思うんだけど」

叢雲がむすっとした顔でテレビを見ながら答えた。あまり笑顔を見せない彼女だが、今日はいっそう顔が険しく見えた。

「面倒な話しだよな、平和学習ってなんだよ?そりゃアタシ達は殆ど深海凄艦と戦って無いけどさ、艦娘が深海凄艦の勢力拡大を食い止めている事は事実だろ?」

摩耶もいつもより顔が険しい。自分のやった事が否定されているわけだからな、当然だろう。もっとも、俺たちに不備がなかった。とは言い切れないが。

『昨日PTA会長や市民団体の団長が校長と対談し「日本も批准しているジュネーブ条約では15歳未満の徴兵は禁じられている。自衛隊のアピールは条約違反では無いか」』
『「艦娘と言う兵器を子供と触れ合わせる事に違和感を感じないのか」「もし艦娘が学校で発砲したらどうなるのか配慮が足りなかったのでは無いか」という質問がされました』
『校長は、校長は「入隊を勧める内容はなかったと報告を受けているし、授業前に私も艦娘と直接話し、兵器である以前に人としての意思を持つ存在だと判断した。武装についても事前に弾薬を抜くなどの措置を講じており、授業内容に問題はなかったと考えている。」と回答しました』
『しかし「反論が多い事は承知しており、今後の教育計画をよりよい物にしていくための参考にする。」と話しております。』

元々日本では軍事力と言うものに対する批判が強い。我々の行動を理解してもらおう。としても、理解できるだけの土壌がそもそも育っていないのだ。
そんな状況で積極的に艦娘を周知しようとした政府のミスといえるし、そんな状況で艦娘を参加させてしまった俺のミスとも言えるだろう。

「提督、さっき言ってた中止って、これ?」

「そうだ、批判が大きい状況で続けても悪影響でな。今も沖縄基地隊には苦情の電話が入っているらしい。」

『日本の平和教育上やってはいけないことですよ、これは。兵器と子供を話し合わせるなんて、とんでもない。』
『これは今の政権が軍拡をしようとする第一歩ですよ。そもそも艦娘って女の子の形をした兵器なんでしょ?女で子供をつって自衛隊に入れようとしているのとおんなじですよ!風俗と同じです!そもそも意思を持つ兵器なんて汚らわしい・・・』
『あの、これ生放送なんで過激な発言は…』
『とにかく、人殺しの兵器を教育現場に投入するなんて許せませんよ』

テレビでコメントを求められた評論家がヒートアップしていた。
反面、食堂は真冬のように冷たくなっていた。

「今日は午後から海自第46掃海隊と共同で訓練を行う…」

俺はそれだけしか言えなかった。

「卵は買ったし、他の食材も…うん、こんなもんでいいかな?」

テレビで報道されてから数日。これまで頻繁に行っていた広報任務は中断され、訓練や哨戒をひたすら行う日々の任務に戻った。
私瑞鳳は今日は久々のオフ、自分で料理を作ろうと商店街に買い物に来た。
鎮守府は海上自衛隊沖縄基地隊の隷下で、提督や私たち艦娘。他の職員や妖精さんの食事は海自から出向している主計科の皆さんが作ってくれるけど、たまには自分で料理を作りたくて、誰かに食べてもらうところも見たくて、たまにこうして買い物をするのだ。

「あれ?づほちゃんじゃん、おーい!」

レジで会計を終えてお店から出たところで声を掛けられて呼び止められる。振り向くと前に中学校でであった女の子のグループが手を振りながら近寄ってきた

「づほちゃんおつかい?えらいですねー」
「なになに~、晩御飯のお買い物?」

すぐに囲まれて話しかけられる。私これでも軽空母だし、艦暦も合わせるとこの子たちより精神的には年上なんだけど…
叢雲ちゃんより背も低いし、胸も小さいからか鎮守府の外の人たちは小学生かのように接してくる。正直言って少し迷惑。

「これは自分で作るんです!」
「づほちゃん自分で料理もするんだ!えらいえらい!」
「はぁ、家の妹もづほちゃんみたいにいいこだったらな~家の妹と交換しない?」

「もう、からかわないでよぅ…これでもみんなより年上なの!」

「「それが可愛い!」」

少し迷惑、だけど。あまり悪い気はしなかった。
鎮守府ではみんな同僚として接してくる。瑞鶴は私より年下だったけど、その時には年下、年上と言う感じで接する事なんて出来なかった。

「私、時間までに鎮守府に戻らないといけないから…」

話しているうちに嫌な視線を感じる。この子達を巻き込みたくなくて、私はすぐその場を離れようとした。

「そなの?じゃーね、づほちゃん!」
「今度は私の妹に…」
「ホラ行くよ!づほちゃん、こいつは無視していいから」

手を振って帰っていく背中を見つめる。そして、煩い声が聞こえなくなると同時に別の声が聞こえ始めた。

「ほら、あれよ、例の艦娘って…」「あんなのが兵器なんて、怖いわね…」「私の息子、すっかり艦娘のファンになっちゃってるのよ、心配だわ」
「人の皮を被った化け物でしょ?気持ち悪いわ…」「あんなのが普通に街を歩いてるなんて、ねぇ?」「さっさと処分すればいいのに・・・」

そうだ、私は艦娘。人間とは違う。私は軍艦だ。
でも、私はこの街に住むみんなが平穏に暮らせるように努力して生きてきた。軽空母瑞鳳も。軽空母艦娘瑞鳳も。
なのに、何で陰口を叩かれ続けなければいけないんだろう?

「おや、瑞鳳ちゃんじゃないかい、買い物かい?えらいねぇ」

すぐその場から逃げようとしたら、老婆が声を掛けてきた。
広報任務としてゴミ拾いをした時に一緒だったボランティアの人。
いつも笑顔で、私達にお小遣いを上げようとした人だ。
彼女が懐から財布を取り出し、お札を数枚とりだし―

「そうだ、瑞鳳ちゃん、提督さんには止められたんだけど…これで艦娘のみんなにお菓子でも買ってあげ…」

「あのばぁさん、何考えてんだ…」「ああやって人の振りして私達を騙してるのよ?」「税金だけじゃ足りないっていうの?」

そんな声が聞こえてしまって、私の頭は真っ白になった。
きっと彼女には聞こえていない。艦娘は人間より耳もいいから。

「っ!結構です!」

彼女にそう怒鳴ってしまい、買い物袋を持って走り出した。

「おや、瑞鳳ちゃん?お~い?」

間延びした彼女の声。それに混じって別の声も聞こえる。
「やっぱ艦娘ってひどい奴なんだな」「せっかくおばあさんがくれるっていうのに、受け取りなさいよ…」

私たちは、何をやっても責められる。




「おっ、今日の夜は瑞鳳が作ったのか?」

食堂に行くと、いつもは厨房で働いている海自主計科の皆が席についていた。
たまに瑞鳳が料理をする時があるが、そういう時は普段我々とは別に食事する彼らも一緒に食事をする。そんな習慣が出来ていた。

「はい、今日はすこし気合入れちゃった♪」

「はやく頂くわよ、アンタが遅いから冷めちゃうわ」

「そうだな、じゃあ、頂くとするか。」

瑞鳳の食事はうまい。勿論、主計科の皆が作る食事も美味しいが、瑞鳳の料理はまた別のベクトルでうまいのだ。どう表現すればいいんだろうな。

「いやぁ、俺、瑞鳳さんの料理食べるためにこの仕事してる気がするよ」
「おい飯炊きだろ俺ら」
「いやいや、俺らは大量にうまい飯作るって事に特化してるから、なんか違うんだよ…瑞鳳さんはいいお嫁さんになるよ、うん」

バカめ、貴様らがいくらあがいたって瑞鳳とケッコンするのは提督である俺だ。

「もぅ、やだなぁ、褒めても九九艦爆しかでませんよぉ♪」

「ほら、俺を待ってたら冷めるんだろ?速く食べようか。頂きます。」

『頂きます!』

このときだけ、職場の食堂から家族の台所に変わっている気がする。

「ん…」

瑞鳳自慢の玉子焼きを一口口に入れて動きが止まる
しょっぱい。瑞鳳のはかなり甘いはずだが…出汁を変えたという味でも無い。
見るとみんな動きが止まっている。俺だけでは無いらしい。

「あー、瑞鳳…」

摩耶が口を開いた

「アタシが料理に失敗した時と同じ味がするんだが…」
「えっ嘘!?」

瑞鳳が自分の作った玉子焼きを口に入れて固まる。

「ホントだ…まさか砂糖と塩、間違えて…」

青ざめてフルフル震えだす。

「まぁ、たまにはいいんじゃ無いですか、こう言うのも。娘の作った料理を思い出しますね」
「そうだな、どっち道妻の料理よりうまい」

主計科員が箸を勧めだし、摩耶・叢雲・俺もそれに続く。

「あっ、あの、失敗したから無理して食べなくても…」

「せっかく作ったんだから食べなきゃもったいないでしょ?食べれない味じゃ無いんだし、でも喉が渇くから水を持ってきてくれる?」

叢雲は、やさしい。

「瑞鳳、今日はどうしたんだ?」

食後、瑞鳳を執務室に呼び出した。
料理で失敗するのは珍しい。とくに得意の玉子焼きではなおさらだ。

「ただ失敗したってだけならいいんだが…瑞鳳が失敗するというのは珍しいなと思ってな。何かあったのか?」

うつむいて黙っていた瑞鳳が静かに呟く
「提督…私たちって、なに?」

「え…?」

「私たちって、兵器だよね…、兵器って、人と一緒に居たらいけないの…?」

「…」

「今日、すこし考えたくなる事があって…」

「瑞鳳、君は兵器だ。でもな、君たちには我々人間と同じ、意思があるし知能も有る。ならば普段暮らすのにおいて人間との間に違いは無い。私はそう思うよ。」

瑞鳳に何て言葉を掛けるのが正解だったのかはわからない。
自分にはこんな、当たり障りの無い回答しか出来なかった。

「誰が太ってるって?愛宕なんかと一緒にするんじゃねぇ!」

失礼な事を口走った奴にヘッドロックをかます。鎮守府内にはこうやって弄れる奴はいないから、せいぜい玩具になってもらおう。

「ちがっ…ギブ!ギブ!!立派な肉まんが俺の顔に、かおにぃぃぃぃ!?!?」
「貴様ーっ!俺に変われー!!」

なんだかあたしがおもちゃにされている気がする。気のせい、なのか?



それから、しばらく歩き続ける。
その間の話しはアタシには良く判らない。ゲームの話し、アニメの話し、芸能人の話し。ずっと鎮守府にいるあたしには良く判らない事ばかりで、適当に相槌を打つだけだ。
そういや提督がプリキュアというアニメだけは欠かさず見てたな。今度あたしも見せてもらおうか?

そんな事を考えていると遠くから怒鳴り声が耳に入った。

「何するんですか!やめてください!」「離しなさいよ!泥棒!」

「あれ…何やってるんだ?あの二人…」

こいつらも会話内容までは聞こえなくても、異様な雰囲気に気づいたらしい、アレは…男が女のカバンをひったくろうとして、もみ合いになっているのだ。

「いくら勘違いとは言え暴行をした事には違いない。相手が被害届を出したら暴行罪で逮捕、となります。」

冷静に話し始める刑事になぜか怒りがわきあがってしまう。摩耶は苦しんだというのに、なんでこいつは他人事のように話すんだ?
摩耶が隣にいなければ俺は刑事に詰め寄ったかもしれない。提督と言われようと、俺はまだ三十年も生きていない青二才。相手が悪く無い事は判りきっているのに、それでも目の前の刑事に怒りをぶつけたかった。

「・・・悪いのはアタシだから…刑務所に入れられてもいい…」

「一応ですが、相手の男性は摩耶さんが治療費を払ってくれれば示談にしてもいいと言っています。国の金ではなく、摩耶さん自身のお金だそうです。」

「貯金ならある…」

「なら、ここは示談として丸く治める。というのが良いかと思います。特にそちらは社会的な立場も有るんでしょう?」

それが一番の正解だ。と刑事は最後に付け加えた。

「そうだ…最初にカバンを奪おうとした女性は?その人はどこにいるんですか?一番悪いのはその人じゃ無いですか!」

そうだ、悪いのはその女じゃないか、示談とは言え、なんで摩耶が金を出すんだ?一番悪いのはその女だろう。

「無論、警察でもその女性を捜しています。ですがあまりにも証言が少な過ぎる。我々としては男性の荷物を奪おうとしたら予想外の抵抗にあったところで摩耶さんが介入。混乱した事をいい事に逃げ出した。と見ています」
「しかし話しは簡単じゃありません。はっきりした証言は被害にあった男性の物だけ、聞きこみもしましたが、出てくる証言の殆どは摩耶さんの暴行の証言だけです。これは私の経験則ですが、まあ十中八九、見つからないでしょう」

「ふざけるなよ!あんたら警察だろう!?」

俺の中で何かが切れて立ち上がって怒鳴ってしまった。そのまま刑事に掴みかかろうとしたが、摩耶が俺の服を掴んで止めた。


「いいんだ提督、あたしが悪かったんだ。もう少し冷静だったらよかった、私が悪いんだ」

「っ…クソッ・・・」

「お二人の気持ちは良く判りますし、警察も全力を上げて女性の行方を追うつもりです。でもね、提督さん、摩耶さん。貴方たちは重大な物を背負っているんです。軽率な行動お慎むことも覚えてください」

そうだ、俺は自衛官で提督。摩耶は艦娘だ。
二人とも国民のために戦う義務があるし、その責任はとても重い。責任が重いから、一挙一動が大変な事態になる事もある。政治家と同じだ。
わかってる。わかってはいるつもりだが、どうしても納得し切れなかった。

その後、俺たちは怪我をした男性に謝罪し、帰路に着いた。
男性は元々出来た人だったのか、落ち着いた彼は紳士的で、謝る俺たちに騒ぎを大きくしない事を約束してくれた。

「提督…本当に、ごめんなさい…」

「…俺は摩耶が間違った事をしたとは思って無いよ」

帰りの車の中で、何度か呟く摩耶に、俺も同じように呟くしかなかった。


摩耶は一週間、自室での謹慎を命じた。
摩耶に責任が無い事は判りきっている。しかし摩耶が何よりも自分に責任を感じている事と、勘違いとは言え民間人に暴行を行った事から、
摩耶を休ませることと、対外的にも摩耶を処分したと言う実績が必要だ、と判断した。

この日以来、艦娘三人は外出禁止の処置を取った。




『艦娘の本性?市民に暴力を振るう殺人兵器!!』
『「早く魚雷を撃ちたいわ・・・」戦争を望む平和の敵?』
『「艦娘の存在が深海凄艦を引き寄せる。艦娘は即刻処分すべき」深海凄艦研究家を直接取材!』

最近広告に載る週刊誌の見出しはこんなことばかりだ。朝食時に見るニュースも艦娘を敵対するような内容が多い。
『「てゆーかさ?あたし等の居た中学校で艦娘の授業とかやってたんだよね」「マジでやばいって感じだよね、あそこで殴られたりし無かっただけみんな幸せだよ」』
朝のテレビ番組で取材を受けてた高校生がこんな事を言ってた。
摩耶さんは何も悪く無いはずだ。確か警察の発表も不幸な事故扱いだったし、摩耶さんが悪くなかったことは俺達が一番知っている。

なのに、連日テレビに映るのは自衛隊の偉い人と提督さんが「市民に暴行を加えるという不祥事を起こしてしまい申し訳ありませんでした。」と記者会見で頭を下げるシーンだった。
その記者会見だって、最初は「勘違いとはいえ~」「艦娘自体に責任があるとは考えて居ないが、軽率な行動は慎むよう~」と言った言葉が最初についていた記憶がある。
でも、今朝のテレビではそういった部分は流れてなかった。これじゃあ直接居合わせた俺たち以外は誤解してしまうんじゃ無いか?

そしてインターネットだ。あの現場を写真に取った人がいたらしい。
「艦娘が暴行なう!」と名づけられた画像は瞬く間に広がって行った。

その画像を見た人達の中には
「でもあれ、別の女がひったくろうとしたのを勘違いしただけらしいよ?」
「なら仕方ない、のかな?」
「やっぱり女って糞だな」

と、摩耶さんを擁護する意見もあったが、大半は

「じゃあ何でその女の事が報道されないんだよ」
「本人乙」
「そもそも艦娘が民間人に暴力振るうとか武器使用基準はどうなの?」

という意見。
更には

「いっそ艦娘は全部解体して泡風呂に沈めちまえ」
「最高の経済政策だな」
「こんどはお前らが慰安婦になる番ってか?」

等と言う、ひどい意見で埋め尽くされた。

実を言えば俺も、艦娘にたいしてそういうエッチな感情を抱いた事はある。
それだけ艦娘は可愛かったし、男子同士の話題が艦娘の下ネタ絡みになったこともある。
「瑞鳳に甘えて、叢雲に甘えられて、嫌がる摩耶を縛っておっぱい揉みたい」なんてクラスメイトが言った日には何度も夜中に妄想をしてた。
俺達が品行方正な学生だ等と思っているのは両親と教師ぐらいだろう。

今思えば俺たちもずいぶん艦娘を傷つけてる。でも、直接話した事も無い、日本の何処かにいる人の意見には苛立ちを隠せなかった。

「なぁ、今度摩耶さんに会えないかな?ほらここ、該当する艦娘は謹慎処分を受けているって」

友達の一人が提案してきた。

「謹慎処分…って要は部屋から出るな、って事だろ?会わせてくれるのか?」
「鎮守府にはいるんだから会えないって事は無いだろ?ダメだったら提督さんにでも手紙を渡して貰う様に頼むとかさ」
「じゃあ今日の放課後…」
「バカだな、いきなり行って提督さんすら居なかったらどうするんだよ、こう言うのは事前に電話でアポを取るもんだ」

友達に一人、妙に落ち着いた奴が居る。こいつが知りあいにいて本当によかった。

夕方、一人が代表として自衛隊に電話を掛ける。
何度も電話が転送されて、やっと鎮守府の人に伝わった。

『…今度の土曜日、時間を作れるよう調整したいと思う。ただ、今の所立込んでいて確実に時間が取れるか保証は無い。当日朝にこちらから連絡する』

それが提督さんの回答だった。

艦娘のみんなは自衛隊や米軍の人と一緒に沖縄を守ってくれている。
前の授業から色々調べた結果、単に沖縄に負担を掛けたいから居座っている。何て事は無いんだ。
俺たちはただの子供だから守られることしか出来ない。でも、感謝している事と俺たちは味方だって事は摩耶さんに伝えたかった。
冗談とは言えあのときに摩耶様に一生ついていくって行った手前もあるしね。

「母さん、今度の土曜日、友達と出掛けるから」

寝る前に母親に報告する。母はテレビの討論番組を見ながら、こちらを見向きもせずに
「いいけど暗くなる前に帰ってきなさいよ」
とだけ言った。

「鎮守府には近づいちゃダメよ、最近物騒だからね」

…ごめん母さん、今日からしばらくは嘘つきでいさせて。




金曜日―夕方―人通りの多い駅前

Q.沖縄に艦娘が配備されることをどう思いましたか?
A.そりゃ最初は怖かったわよ、人の形をしていると言っても兵器で軍艦だから。でもね、何度かあってあの子たちも普通の女の子だってわかったのよ。自衛隊さんや米軍の方も、普通の人間なのよ。

Q.艦娘について今はどう思われますか?
A.私はね、あの子達を応援しているわ。摩耶ちゃんだって、活発な女の子なの。元気だっただけよ。艦娘も武器を持たずに平和に暮らせるといいって思うわ、私はあの子たちの味方のつもりよ?

ごめんなさい。>>65>>66の間に抜けがある事に気づきました。
以下が抜けた部分です。

そんなこんなで中学生と話しあいながら鎮守府へと向かう。
いつもは一人で黙々と何かを食べながら歩くが、こう言うのもいいものだ。こいつらはストレートに感情をぶつけてくるから話していても楽しい。

「その…もんはん?っていうのか?ゲームって物は聞いた事あるが…面白いのか?」

「人による。って感じっすかね?好きな人はとことん好きですけど、嫌いな人はなかなか合わないかも…」

「金は有るからな…アタシもなんかゲーム、してみっかな…」

「いいっすね!俺が摩耶様のナイトになって最強の装備を献上しましょう!」

ゲームは良く知らないが、もんはんと言うゲームは化け物と戦うゲームらしい。
つまりこいつらはアタシを護衛してやろう。と言っているのだ。

「…いや、お前らに守ってもらうのは無しだ、市民を守る、それが艦娘の勤めだから、な?」

「一生ついて行きます!姐御!!」

かっこつけた事言わなけりゃよかった、やっちまったな、あたし。

金曜日―夕食後ー鎮守府

「摩耶の様子はどうなの?」

瑞鳳がお盆に載った料理を持って戻ってきた。
お盆の上には美味しそうな料理。しかし、完全に冷えてしまっているし、ご飯を数口しか食べていないように見える。それがかえって悲しかった。

「んーん、ぜんぜん食べてくれなかった…もうずっと、殆ど食べてくれないの、このままじゃ身体を壊しちゃうかも…」

「まぁ、食べたく無いって言うなら無理に食べさせるわけにも行かないしね…」

ふぅ、と溜め息をつく。
摩耶は律儀に謹慎処分を守っていた。あくまで外部に処分したと公表するためだけの物だから、鎮守府内では摩耶が何をしようととがめるものはいないのにだ。

「それだけショックだったのよ、人々を守るべき私達が人を傷つけてしまったんだから…」

摩耶の気持ちは痛いほど判る。もしあそこにいたのが私だったら?瑞鳳だったら?または自衛官だったら?非番の警官だったら?
きっとみんな、摩耶と大差無い行動を取ったはずだ。誰もがそうするであろう行動を取り、責められる。それはどんなに辛いことだろうか。

「でも、明日もこのまま、とはいか無いわ。ちょっと摩耶と話してくる」

今の摩耶をあいつらに会わせる訳にはいかない。かといって摩耶を慕うあいつらを摩耶に会わせないという選択肢もなかった。
摩耶には元気になってもらわないと。

駆逐艦に心配される重巡洋艦とか・・・くだらない話しだと思わない?

「摩耶、入るわよ」

返事を待たずに部屋に入る。
この鎮守府の艦娘同士の仲は良好だ。でも、姉妹のようにべったりと言うわけでは無い。摩耶の部屋に入るのは久しぶりだった。

「叢雲…なんのようだ…?」

電気もついていない服や本が散らばった部屋の真ん中で、薄汚れた女がぽつんと座っていた。


「あんた、いつまでそうしているつもり?」

「…」

「あんたの気持ちは判っているつもりだけど…そろそろ部屋から出てくれないと困るのよ、掃除も出来ないじゃない」

「ほっといてくれ」

…これは重症だった。
見ると着替えも風呂にも入っていない様子だった。髪はボサボサ、制服は皺くちゃ、目は真っ赤。
近寄るとツンとしたすっぱい匂いが鼻をついた。

「アイツも言ってるでしょ?あんたは間違って無いって。間違って無いんだから正々堂々としていればいいのよ。あんた、唯でさえ忙しい提督を更に心労で過労死させるつもり?」

「叢雲…あたし、どうすればいいかわからないんだ…みんなを守るためにここに来て、なのにみんなからは嫌われて、おまけに人を傷つけちまった」

「…」

「あたしらは、テレビで言われているみたいに、居るだけで人を不幸にしてしまうのかって、ずっとそんな事を考えちまうんだ…」

「そんな事、考えるだけ無駄よ」

私がここに来たのは失敗だった。いつもの摩耶ならちょっと皮肉を言えばすぐに「ふざけるなよ!」とか、言ってくれると思っていた。
でも、私の知って居る摩耶はここには居なかった。

もしかしたらこれが本当の摩耶なのかもしれない。
摩耶はいつも表情がコロコロ変わる。すぐふてくされるし、すぐ怒る。そしてすぐに笑ってくれる。
良く言えば裏表の無い、悪く言えば心に受けたダメージがすぐに響いてしまう。それが摩耶の魅力であり、弱点なのかもしれない。

「考えるのが辛いなら考えなくても良いのよ?私たちは兵器…提督の命令が絶対なんだから」

ごめん、提督。辛い事全部押し付けちゃって。

「とりあえず、せめてお風呂には入って、身だしなみはしっかりしなさい。明日は来客があるんだから。摩耶がそんなボロボロだったらあいつらも悲しむでしょ?」

「そう、だな…」

摩耶の口元が少し笑ったように見えた。
私がやれるのはきっとここまで。後は摩耶と、あいつら次第だろう。



「叢雲…こんなアタシを心配してくれて、ありがとな…」

叢雲が部屋から出た後、ぼそりと摩耶が呟いた。



「叢雲、摩耶はどうだった?」

食堂に戻ると瑞鳳が話しかけてきた。

「…なんとも言え無いわ。でも、風呂には入ってくれると思うから後は明日次第。ね」

その時、テレビの画面が変わった。さっきまでやってたアニメが終わってニュース番組が始まる。

『艦娘の存在が日本各地で問題になる中、艦娘による暴行事件を起こした街で、市民の声を聞きました』


ニュース番組のキャスターが無表情で話す。
瑞鳳が急いでテレビのチャンネルを変えようとした。最近のニュースは艦娘の話題ばかり。そしてどれもこれも、私達が見るには辛い内容ばかりだった。
でも、瑞鳳はチャンネルを変えなかった。テレビの画面に映るインタビューを受ける高翌齢の女性。それは私も瑞鳳も良く知る人だった。
一緒にゴミを拾った。飴をくれた。私にお小遣いを上げようとして提督に止められた。
優しそうな顔をしたおばあさんだった。
瑞鳳はリモコンを持ったまま。固まっている。私も、変なポーズのまま固まって、食い入るようにテレビを見つめた。

Q.沖縄に艦娘が配備されることをどう思いましたか?
『怖かったわよ、人の形をしていると言っても兵器で軍艦だから。』

Q.艦娘について今はどう思われますか?
『(艦娘なんて)武器を持たずに平和に暮らせるといいって思うわ』

Q.最近各地で艦娘排除を訴える声が上がって居ますがどう思いますか?
『あの子たちの味方のつもりよ? 』

がちゃん!と言う音がしてリモコンが床に落ちる。
「うぅっ…ぐすっ…ううう…」
すこし間をおいて瑞鳳の嗚咽が食堂に響く。
さっきは考えるだけ無駄と摩耶の意見を一蹴したが…もしかしたら摩耶は正しかったのかもしれない。
艦娘はみんなを、そして艦娘自身も不幸にしてしまうかも知れない。

いや、そんな事考えちゃダメだ。
摩耶が泣いて、瑞鳳が泣いて。私も泣いたらどうなる?そのままこの部隊は崩壊してしまう。
だから、私だけは、泣いちゃいけない。何があっても。

でも―
もし今初雪に頼る事が出来たら、私はどんなに安心できたんだろう?

提督さんから連絡があった。と友人から連絡が来た。
しかし友人が言うには「提督さん自身は仕事で会えないので他の人が相手をする。また、裏口から来るように」という妙な指示があったみたいだ。

いつもの待ち合わせ場所で友人たちと集合する。なぜか全員集合時間より30分早く集まった。

「そうだ、前奢ってもらったからこっちからも何か持ってった方がいいかな?」

「うーん…いいのかなぁ・・・摩耶さん、立場的には公務員だろ?公務員ってそう言うの、色々厳しいんじゃなかったっけ?」

「いいんだよ。向こうが受け取れ無いって言うなら、こっちもそのまま渡さず持って帰ればいいんだから」

鎮守府は海のそばにある。当然街の隅っこだ。
だからいつもは鎮守府前の道は大抵空いているはずなんだけど、今日はかなり混雑していた。

「今日、なんかイベントやってたっけ?」

「まさか、鎮守府でやるなら俺達が知ってるよ。アイドルがコンサートでもやってるとか?」

「それはありえない、有ったら兄貴が知ってるはずだし、そもそもこっち方面にそんな事やる施設は無いはずだし…」

しかし鎮守府に近づけばち近づくほど人や車の数は増え、騒々しくなっていった。

「兵器はー沖縄から出て行けー!」
「「兵器はー沖縄から出ていけー!!」」

「暴力艦娘を解体しろー!」
「「暴力艦娘を解体しろー!!」」

一人の男がメガホンで叫ぶと後ろに並んだ数十人が同じ事を繰り返して喋っていた。
その後ろにも数十人の人がのぼりや旗を持って口々なにやら騒いでいた。
のぼりには「平和を守る会」「人権委員会」「教育委員会」等の団体名の他に「平和の敵艦娘を追い出そう!」等と艦娘への嫌がらせのような言葉が書かれていた。

お前達が何を知って居るんだ!そう怒鳴りたかった。しかし、一人の男性に声を掛けられて声を出す機会を失ってしまう。

「探しましたよ、来てくれてありがとうございます。提督から話しは聞いています。」

彼は鎮守府のスタッフとして働いている海上自衛官だと名乗った。
でも、ジャージ姿の彼はそこらに居る普通のおっさんにしか見えなかった。

おっさんに連れられて鎮守府の裏口へと回る。裏口はとても目立ちにくくて、正門前で叫んでいる人たちは気づいて居ないようだった。

「瑞鳳さん、皆さんをお連れしましたよ」

裏口から入るとすぐ目の前に瑞鳳さんが居た。俺達を待って居てくれたらしい。

「では、私は任務に戻ります」

「ごめんなさい、こんな事お願いして・・・」

「いやいや、皆さんが迎えに行くよりはいいでしょう…」

瑞鳳さんに敬礼をしておっさんはまた裏口から出て行った。

「わざわざ来てくれたのに、ろくにもてなしも出来なくてごめんね?」

瑞鳳さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
心なしか、前にあったより少し元気がなさそうに見えた。あんな事があったなら当然か…


「良く来たわね、礼は言っとくわ」

「そうだな、わざわざありがとな?」

食堂のような部屋に行くと摩耶さんと叢雲さんが待っていた。

「摩耶さん…世間が何を言っても、俺たちは摩耶さんが間違って無いって、知ってますから」

「だからまた学校にも来てください。」

「そして踏んでください!」

気の効いた事は言えなくてそれぞれ思い思いに摩耶さんを元気付けようとする。

「あんたらねぇ…もう少し考えて発言しなさいよ!」

「いや、摩耶さんに踏まれたいってのは俺たちの一番正直な気持ちなんで…」

「糞が!踏むついでにぶっ殺してやろうか!?」

(いつもの摩耶に戻ったみたいね、よかったわ)

叢雲が私に向かって小さな声で呟いた。

(そうね、本当によかったわ、昨日は見てられなかったから…)

(で、瑞鳳。アンタは大丈夫?)

叢雲の言葉に胸がズキンと痛む

『怖かったわよ、人の形をしていると言っても兵器で軍艦だから。』

ショックを受けた一言だったし、今もそのショックが癒えたとは言いにくい。でも

(私は大丈夫、摩耶や叢雲が頑張っているのに、私だけ寝ているわけにも行かないもの。ね?)

昨日までは頭が動いているのか、居ないのかわからない状態だったが、風呂に入ってさっぱりしたのか、昨日までは嘘のように元気がわいてきた。
こういう時は海に出て訓練でもしたいのだが…

「無理よ、アレじゃあ、ね」

叢雲が忌々しいと呟きながら窓の方を見る。海上にも何隻か漁船が停泊しながらスピーカーで何かを怒鳴っていた。

「ひどい話ですよ、摩耶さん達があの人たちに何をしたって言うんですか?」

「何もしてない、わよ。でも、人ってのは気に食わない相手になら攻撃的になれるものなのよ」

叢雲がわざとらしくやれやれと言うような身振りをする。
こう言う分析が出来る叢雲は、きっとアタシなんかより大人なのだろう。

「でもあの人たち、いつまであそこに居るの?お仕事とかもあると思うんだけど…これじゃあ普段の哨戒任務も出れないじゃない…」

瑞鳳が溜め息をつく。それを聞いてあいつらが慌て始めた。

「哨戒って…パトロールじゃ無いですか?それってまずいんじゃ無いですか?」

「そうね…今日は変わりに海自のP-1が哨戒してくれているけど…」

「P-1は速度と航続距離で彩雲より遥かに優れているけど、深海凄艦を見つけるのに適して居るとは言いにくいわ、不安が無いと言ったら嘘になるわね」

「まあ、今そんな事を気にしても始まらないだろ?いつもの哨戒でも敵が見つかる事なんて無いし…そんな事よりよ、お前ら何か持ってきてくれたか!?」

自分でいうのもなんだが、無責任な発言かもしれない。
不安が無いと言えば嘘になる。アタシや叢雲はともかく、瑞鳳の妖精たちはここ数日、訓練飛行すら出来ていない。瑞鳳は心配でたまらないはずだ。
でもせっかく来てくれたこいつらを落ち込ませたくなかったし、何より今出来る事は殆ど無い。


なら、精一杯今を楽しもう。そう思った。



「じゃあ、俺たちはこれで…」
「瑞鳳さん、ご飯、ご馳走様でした!」
「俺の妻になってください!」

「う~ん、貴方が大人になったら、ね?」

「ッシャオラァ!!」

「その前にちゃんと良い学校でなさいよ?瑞鳳の旦那がニートとか、私は認めないわよ?」

あれから、あたし達はいろんな事をして遊んだ。
こいつらが持ってきたゲームや漫画はどれも楽しいものばかりだった、アタシが艦だったときも漫画はあったが、漫画一つだけとってもこんなにバリエーションが増えているなんて思わなかった。
いつも子ども扱いされる瑞鳳は料理で大人として振舞えて楽しかったみたいだし、最初はゲームや漫画を子供の遊びね、と馬鹿にしていた叢雲は人類が巨人と戦う漫画を食い入るように読んでいた。
アタシがどんな漫画を気にいったか?それは秘密だ。

「じゃあハンカチ、大事にしてくださいね」

「嫌だね!すぐにぼろぼろになるまで使い込んでやるからそんときゃもっと良い物買って来い!」

そして、嬉しいプレゼントも貰った。
安物だけど、ハンカチを買ってくれたのだ。
「俺らも皆さんと合わせて花柄のハンカチ買ったんですから!大事にしてください!」
なんて良く判らない照れ方をしながら渡してくるのが可愛いやらおかしいやら、ここ数日はこれだけで笑って生きていけるな。

「昨日までは何のためにここに居るんだろう、って思ったけど、判った気がするわ、いくら罵られようと、あぁいう笑顔を守るために私たちはよみがえったのね。」

叢雲が珍しく笑顔で言い放った。


「わざわざ送ってくれてすまないな」

「いえいえ、職務ですから」

階級が下で、年齢が10歳も上の人の運転する車で鎮守府に戻る。

今日は沖縄基地隊で会議があった。これからの対応と、他の鎮守府の状況をテレビ会議で話しあってきたのだ。

沖縄だけがひどいのか、と思ったが、他の鎮守府も程度の差はあれど大変らしい。
横須賀では艦娘も参加するカレーフェスティバルが予定されているが、脅迫めいた手紙が多数届き、艦娘の出場を取りやめるか否かで協議がまだ続いていると言う。

『私のcurry、食べに来てくださいネー!!』
『ふふ、私のカレーは、侮れませんよ?ふふふふ…』
『自衛官をを舐めるな!男のカレーって奴を見せてやるぜ!!』

海自隊員と艦娘が競演するCM、俺も見た事があるだけに、この反応は残念だ。

すっかり会議も長引いてしまい、もう深夜だ。鎮守府に戻っても夜勤のスタッフ以外は皆寝て居るだろう。
俺もあの学生達に会いたかったが、彼らが艦娘達を元気付けてくれることを祈るばかりだ。

俺は鎮守府に戻った後、すぐ宿舎に帰ってそのまま寝た。
この程度艦娘に比べれば…と思っていたが、俺も疲れていたみたいだ。

布団の中でぐっすり寝ているところに無粋な音で起こされる。
枕元においている黒電話が耳障りなベルの音を鳴らしていた。

「…ふぁい、こちら那覇鎮守府…」

電話の声は夜勤のスタッフだった

「提督!寝ぼけている場合ではありません!那覇鎮守府に出動命令が出ました!!」

「…なんだと!」

周意が明るくなり始め、人の動きも活発になり始める時間。ここ那覇鎮守府も活発にならざるを得なかった。

枕元に脱ぎ捨ててあった制服を引っ掴んで素早く着替え、部屋を飛び出す。
この時期はもう既に明るく、遠くで拡声器の音が聞こえた。しかしその音に構っている余裕はなかった。

「すまん!遅れた!!状況!」

「お待ちしておりました、提督。」

いつもの執務室ではなく司令室に飛び込む。既にスタッフや妖精さんが準備を終えていた。

0630
哨戒中の自衛隊P-3Cが北大東島北東約50kmの時点で重巡リ級を中心とする5隻の深海凄艦を発見。
深海凄艦は沖ノ鳥島周辺に展開しており、沖ノ鳥島は横須賀鎮守府、海上自衛隊、米第7艦隊の監視下に入っており、この規模の敵艦隊がこの場所に現れた理由は不明。
過去の戦闘の生き残りが居たか、警戒網に穴があったか…P-3Cは敵の攻撃を受け、いったん退避、再度接触を図る

0640
一度退避したP-3Cが再度接触。進路・速度を報告。
同時に、付近を航行する客船が存在し、客船ならびに北大東村が攻撃される可能性ありとして退避勧告。

0645
那覇鎮守府、呉鎮守府、第四護衛隊郡に出撃命令

0655
那覇鎮守府、命令を受け出撃準備開始

「艦娘と呉と第四護衛隊郡の状況は?」

「艦娘は現在出撃準備中、数分で出撃が可能になります!呉鎮守府では先ほど艦隊が出撃しましたが、到着までに時間が掛かります!第四護衛隊郡はちょうかい、たかなみ、おおなみが与論島付近を航行中だったため、現在現地に急行中です」

「築地の第六飛行隊は?」

「作戦行動半径の外と言う事で出動命令は出されて居ません、ですが現在出撃待機中との事です!」

次々と報告が飛んでくる。深海凄艦が積極的に陸地を攻撃したと言う話は聞かないが、付近に居る客船が気になる。
このまま行けば第四護衛隊郡が最初に敵艦隊に接触する事になるだろう。しかし敵には重巡クラスが居る。いくらイージス艦と言っても厳しい相手だ。
呉鎮守府はいくら急いでも到着は半日後か、我々がなんとかしないといけないわけだ。



ニュース速報―内閣が那覇鎮守府に防衛出動命令、那覇鎮守府への防衛出動命令は半年ぶり



「ちょうかいから通信です、『本隊は周辺民間船および北大東村の防衛に全力を尽くす、貴隊は深海凄艦の撃滅を行われたし』です」

「了解した、と伝えてくれ」

「通信です、工廠から、摩耶さんです!」




「準備、急いげ!」

「言われんでもやって居ます!酸素魚雷、安全装置解除!取り付けますよ!」

「おう!」

「しゅほう、ぎょらい、きじゅう…おーけーです!」

「きかんにひをいれます!」

「ずいほうこうくうたい、とうちゃくしました!」

「すぐに乗って、お願い!」

「提督と繋がりましたよ!摩耶さん!」

工廠は今までで一番慌しかった。
妖精とスタッフが走り回り、私たちに次々と擬装を取り付けて行く。
訓練どうりに進んでいる、誰もミスなんかしていない。でも実戦と言うだけでみんながサボって居るような、準備が全く進んで居ないような、そんなもやもやした物を感じていた




「提督!状況はどうなっているんだ!?」

『先ほど説明した時と変わらん、』

「こっちはアタシの準備が遅れている、叢雲は現在機関始動中だ、準備できた奴から先に出していいな?」

『大丈夫だ、時間が無い、出港後は各自最大戦速で現地に向かえ』

「わかった!」


スタッフと妖精が私の身体を調べながらチェック項目を読み上げて行く。
半年前の出撃は敵駆逐艦は二隻、それも横須賀との戦いで損傷していたからあっさりと終わった。
でも今度は敵に重巡もいる。駆逐艦の私がどこまで役に立てるか…

「武装ちぇっく、OKです!」
「きかんちぇっく、かんりょうしました!」

「!…出撃するわ!」

擬装を背負って歩き始める。
もっと大規模な鎮守府なら工廠が海岸に隣接していたり、水路をひいたりしてすぐ全速力で行けるけど、この貧乏鎮守府じゃそうも行かない。
工廠から出て歩いて、海に飛び込む。擬装込みでは艦娘はあまり早く走れない。この時間がとてももどかしかった

「まったく、後でアイツに文句言ってやる!!」



「航空母艦、瑞鳳。推して参ります!」

瑞鳳がチェックを終え、工廠の外へ出て行く。
アタシが一番最後なのがもどかしい。
早く行かなきゃ、ちょうかいが、鳥海があたしを待ってる。
あたし達は海自の船とは別の存在だし、艦娘となってからは軍民とわず、船との意思疎通は出来ない。
でも、鳥海と同じ名を持つちょうかいはなぜか他人の気がしなかった。

「お待たせしました、摩耶さん!OKです!」

スタッフがあたしの肩をポンと叩く

「おう、行くぜ!抜錨だ!」


擬装を背負って外に出る。出来れば走りたいところだが、重い擬装を背負って無理して走ると怪我や事故の元になる。
艦娘にとって完全武装した状態で陸上というのはかなり危険だ。
海岸が見えた。叢雲と瑞鳳も居る。あとは海に飛び込むだけ…なにかへんだ

「お前ら、何ぼさっとしてるんだ!出撃だぞ!」

叢雲と瑞鳳がぼけーっとした様子で海に浮かんでいた。
今日は訓練じゃない、実戦だ、それも一刻を争う状況だというのに。
叢雲を一発どついてやろうとしたところで、叢雲が何を見たのか、あたしも気づいた。




『平和な島に武器はイラナイ!』
『戦うより手を取り合おう!』
『平和な島の軍港化を許すな!』

そんな様々なのぼりを立てた民間船が十数隻あたしたちの行く手をさえぎっていた。

『こちらは海上保安庁です!君たちは艦娘の進路を妨害して居ます!直ちに移動しなさい!』

『これは言論の弾圧だ!平和を愛する市民の邪魔をするな!』

その民間船に向かって、海上保安庁の巡視船が警告を繰り返しているが、それでも退く気配を見せない。

「提督、民間船が数席、あたしたちの進路妨害をしている!」

「なんとか湾から出ないと…」

『突破出来そうか?』

「困難ですがやってみます!」

艦娘は軍艦と言っても、所詮一人の少女でしか無い。もし衝突でもしようものなら大惨事だ
アタシ、叢雲、瑞鳳が散会して漁船の間を通り抜けようとしたが、進路を妨害してきてなかなか抜ける事が出来ない。
下手に衝突したらこっちが沈む、仮にも民間人に武器を向ける事も出来ない。一体どうすればいいんだ?
鳥海が待っているというのに!

「うわっ!?なんだ?」

何かが飛んできてとっさに主砲で庇う。
ぐちゃっと言う音と共に砲に生卵がこびりついていた。

「くそっ!なんでだよ!なんであたし等の邪魔をするんだ!」

「平和な島に軍隊はいらない!」

話が通じない。
軍隊なんて無い方が良い。その理論はわかる。
戦争なんてしない方が良い。その理論もわかる。むしろ、あたし達は誰よりもそれを知って居るつもりだ。
だって、あたし達は戦争で姉妹を、自分を失った記憶が残っているんだから。


『直ちに退避しなさい!さもなければ君達を公務執行妨害で拘束する!』

『警察が無実の市民を逮捕するのか!』

戦わないで済めばそれに越した事は無い。
深海凄艦の中には人の言葉を話す者も居るという。もし可能なら対話だって出来るだろうし、共存も可能なはずだ。
でも、平和のためなら自分や仲間が今、攻撃されていても、手を上げてはいけないのか?



おそらく、最初の速報だけを聞いてここまで来たのだろう。私達が出なければ客船が危険な事を彼らは知らないのだ。

「ちょうかいに連絡を」



「艦長!那覇鎮守府から連絡来ました!」

「なんと?」

「那覇鎮守府の艦娘は…出撃を市民に妨害されて出撃が遅れるそうです」

艦橋内に落胆のため息が溢れる。

「やむをえん、我々だけで深海凄艦を撃滅する。艦娘でなくても戦える事を見せてやるのだ」

深海凄艦と現代艦艇は相性が悪い。
小型の深海凄艦はレーダーに写りにくく、移ったときには現代艦艇が戦うには距離が近い。
そして近距離で戦うには装甲も火力も不足しているのだ。

「CIC、艦橋!レーダーで民間船を確認!その後方約20kmに微弱な反応があります、深海凄艦に追撃されているものと思われます!」

「砲雷長、ハープーンは使用できるかね?」

「…困難です、現状ハープーンを使用すると終末誘導段階で民間船を目標と誤認する恐れがあります」

「では、砲撃戦に移ろう、たかなみ、おおなみに打電、これより砲撃戦に移る!航海長、深海凄艦と民間船の間に割って入るぞ」

「了解!」

国民の生活と笑顔を守る。それが自衛隊だ。そのためなら、何があっても戦える。そう思っていた。
しかし私は、今日ほどその国民を忌々しく思った事はなかった。


「航空隊をだします!97艦攻なら片道攻撃は出来るはずだから…」

このままじゃあ外に出れない。でも、何もしないわけには行かない。
矢筒の中に視線を向ける。飛行隊長の妖精さんが頷いた。
矢筒から矢を取り出し、弓に添える。

「民間人に武器を向けるのか!?」
「悪魔め!」

ダメだ、発艦すら出来ない。
四方を囲まれ、どこに向けても射線に民間船が入ってしまう。
真上に撃つ?そんな事をしたら失速して墜落するのは明白だった。

「っ!!…ああああっ!?!?」

その時摩耶の右後方を走っていた叢雲が頭を抑え、その場にうずくまった。

「叢雲!?おい、しっかりしろ!どうした!?」

摩耶が叢雲に近づき顔を覗きこむ。
叢雲は左目を押さえて呻いていた。服にガラスの破片がついている。何かの液体が入ったビンを投げつけられたらしい。

『障害の現行犯だ!確保!!』

「くそっ…お前ら!!」

摩耶が叫んで主砲を向けようとしたが、叢雲がその手を掴んだ

「私は…大丈夫、それよりも摩耶がそんな事したら…今度こそ処分されちゃうじゃない…」

「私が、やります」

二人の前に出て弓を構える。

「おい、あの艦娘、こっちに武器を向けているぞ」
「まさか、本当に撃つわけ…」

漁船の上に居る男と目が逢った。でも、退こうと言う様子は見えない。
良いの?今目の前に武器を持った相手が武器を向けているんだよ?
私は限界まで矢を引き絞り、指を離した。

「ヒイィッ!?」

私の放った矢が男の顔を霞めて飛んでいくと男は間抜けな声をあげてその場にしりもちをついた。

「まだ…第二次攻撃隊、行きます」

次の矢を放つ。放たれた矢は途中で何機もの九七艦攻に分裂して上昇しながら東に向かって飛んでいく。
最後の一機が羽を左右に振っていた。

「ごめんなさい…」

口からふと、謝罪の言葉が漏れた。
方道で出撃させなければいけない、空の母でありながら、子供の航空機を迎えにいけない。
そんな自分が悔しくてたまらなかった。


瑞鳳の航空隊を攻撃と勘違いしたのか、民間船は蜘蛛の子を散らすように逃げ出しそれを追い掛けて海保の船も行ってしまい、私たちの行く手をさえぎるものは無くなった。
しかし、
現場に到着した艦娘達が見た物は、真っ二つになって沈んでいく護衛艦、上部構造物を穴だらけにされた護衛艦、そして大きく傾きながら座礁した豪華客船の姿だった。

「ちょうかい…くそっ、あたし達は…」
「私たち…何のために…っ」

それが俺達だ。それでも戦わなければならないのが俺たちなんだ。
でも、俺にはそんな言葉を今の艦娘達に言う事は出来なかった。



「とにかく、二隻の乗員を救助しないと…行くわよ、叢雲、摩耶」


『こちら、護衛艦ちょうかい…』

「っ・・・発光信号?」

『偉大な姉妹艦、摩耶の救援に最大限の感謝の意を述べる。ありがとう』

「くそがっ…」

私は、ダメな姉だ。
鳥海より先に沈んで、もう一人の姉妹艦のピンチにも間に合わなかったのだから。




この戦いは勝利したものの、結果的に敗北と言える内容になった。

守るべき民間船というハンデを背負った第四護衛隊郡は対深海凄艦戦のセオリーである遠距離からの対艦ミサイル使用が殆ど出来ず、最初の一射以降はミサイルの最短射程内での砲撃戦を強いられてしまった。



敵への損害
駆逐イ級―SSM-1により撃沈
駆逐イ級―ハープーンにより撃沈
駆逐イ級―127mm速射砲により撃沈
軽巡ホ級―127mm速射砲で大破、後に瑞鳳航空隊が撃沈
重巡リ級―ちょうかい及び瑞鳳航空隊により中破、撤退を図るも後に呉鎮守府の軽巡矢矧が撃沈

味方への損害
ちょうかい―重巡リ級の砲撃により大破
たかなみ―敵魚雷により轟沈
おおなみ―駆逐イ級の砲撃により小破
民間船「ふじ丸」―軽巡ホ級の攻撃により大破、北大東島に座礁
瑞鳳航空隊
97艦攻出撃12機のうち10機を損失
敵対空放火による撃墜2機、燃料切れによる墜落5機、おおなみに着艦する際損傷、修理不能3機
叢雲―左目を負傷





「大丈夫?捕まって、ボートまで運ぶわ」

「自分は大丈夫です、それよりこいつを…足をやられてるんです!」

戦うために出撃した私達が最初に行った事は轟沈したたかなみと、座礁したふじ丸の乗員の救助だった。
私達が付近の生存者を拾い集め、おおなみの下ろしたボートまで運ぶ。

「この人たちをお願い、この人は怪我してるわ、治療して上げて」

「おい、しっかりしろ!もう大丈夫だ!」

「貴女も目を怪我しているじゃないですか!医官を呼びますから、貴方も乗って!」

私もボートに乗せようとする自衛官を制する。まだ海でおぼれている人は大勢居るのだ。

「私は大丈夫、いいから行って!」




「大丈夫か!すぐボートまで運んでやる!」

海面に浮かぶ人影を見つけ、急いで掛けよる。
もう大丈夫だ。そう声を掛けながら抱き上げるが、破片か何かが腹に食い込んだのか、その人はもう息をしていなかった。

「くそっ…畜生…」

もうすこし早ければ、この人も、ちょうかいも、無事だったかもしれないのに。
ぐったりした男の屍を抱き締めながらアタシは泣く事しか出来なかった。

「おーい!大丈夫か!?救助に来たぞー!!」

「どなたか、いたら返事をしてください!!」

数名の自衛官と共に座礁した船内に入る。船内は電源が落ちてしまい、真っ暗で、探照燈と懐中電灯の明かりを頼りに船内を捜索、生存者を北大東島まで運ぶ。

「どうしてもっと早く来てくれなかったんだ!あんたらがもっと早く来てくれればこんな事にならなかったのに!!」

いままで散々私たちの邪魔をして…いや、あの人たちとこの人たちは別人だ。
そのとき、たかなみから通信が入った。

『瑞鳳さん、燃料切れで墜落した艦攻隊パイロットですが、3名を除き収容しました』

「…収容?」

『…着水した艦攻隊の内、10名は既に…残り三名は捜索中です…』

「…っ!ううっ…」

私だって空母だ。搭乗員が帰ってこない覚悟は出来ている。どうしても必要なら片道攻撃だって、体当たりだってやって来いと、あの子たちに良い切れる。
でも、今回そうせざるを得ない原因を作ったのは誰?


この日の夕方、海自と海保の部隊が合流。私たちはこの日は北大東島で休養を取る事となった。

「医者をやって70年、人間以外も色々診てきた。犬、猿、鯨なんかも見たっけなぁ…それがワシが生き取る内に艦娘なんか見る事になるとは、思わなかったよ…」

80歳は超えていると思う老人が私の目を見ながら呟いた。

「硝酸か何かをかけられた様だね、でも濃度が低かったのか…あまりひどい事にはなってないよ、出血もガラスの破片によるものだし、少し炎症を起こしているが跡も残らないだろう。全く、女の子にひどい事をする輩もいたものだ…」

私に背を向け、カルテに何かを書きこんだ後、若い看護士に何やら薬品の名前を告げる。

「一応消毒するよ、ヒリヒリすると思うが、泣くんじゃないぞ?」

かっかっかと笑いながら面棒に液体をしみ込ませて私の目の回りに塗り付けていく。触れるたびにヒリヒリと痛んだ。

「大丈夫よ、どこぞのレディじゃあるまいし…」

「そんな可愛らしいレディがおるのか、ワシも医者やめて提督目指そうかの?」

「やめてください先生、先生が辞められたら島が困ってしまいます」

医者の冗談に看護師が笑って答える。

ふと、疑問に思った事が自然と口から漏れた。

「あなたは…私たちは怖くないの?嫌じゃ、ないの?」

「んー?なんでこんな可愛らしいお嬢さんを怖がる必要があるんじゃ?まさかこんなジジイを色仕掛けで詐欺にかける訳でもなかろう?」

「真面目に答えてよ、アナタなら前の戦争の時も生きてたんでしょ?その時代の軍艦の生まれ変わりとか、怖くないの…?」

「う~ん、なんも怖くないなぁ…そりゃ前の戦争じゃワシらは酷い目にあったさ、でもそれはお嬢ちゃんたちがいたからじゃない、当時の政府のミスと、世界の状況のせいだろ?」
「それにワシらも当時はその状況を歓迎しておった、ワシは横浜に住んどったが、珍しい軍艦が来たと聞いたら親に金をせびって横須賀まで見に行ったもんだ」
「それに武器が泣くとも争いは起こる、ワシだって小さいときには喧嘩もした、病院にいたときは院内の派閥争いに何度も巻き込まれた。でもその時はみんな武器なんぞもっとらんかった」

「…」

「この答えじゃ不満か?そうだな、アレはワシが15…いや、16だったっけな…」

この後、三時間ほどこの老医者の話を聞かされる破目になった。







『艦娘が民間人に武器を向けたと聞いていますし、画像もあります、少なくともこの該当する艦娘は解体処分するべきではないですか?』

『えー、それについては、武器の仕様ではなく、通常の航空機の発艦作業であり、問題は無いと報告を受けております』

『しかし民間人を危険にさらした事は確かです!それに艦娘部隊は間に合わなかったじゃないですか、艦娘は役に立たないことの証明じゃないですか?』

『そーだ!良く言った!』

『艦娘については他作戦については一定の戦果を上げております。むしろ艦娘の到着は十分間に合う予定でしたし、反対運動が無ければ十分間に合い、民間船への被害は出なかったという防衛省のシミュレーション結果もあります。』

『市民に罪と失敗の責任を擦り付けるつもりですか!?第一そのシミュレーションが正しいものとは限らないじゃないですか!捏造の疑いだってある!』

テレビでは国会中系が流れていた。
艦娘には法的な人権は無い。叢雲にビンを投げつけた人は一時確保されたらしいが、艦娘に対しての暴行などを罰する法律が無いと言う理由で不起訴処分とされたらしい。
与党はこの事件と先の戦闘の失敗の反省として、艦娘関連の法律の整備を検討し、野党は今回の戦闘で活躍したのは自衛隊であり、そもそも艦娘は不要という立場で反対を表明していた。

世論も大きく割れ始めた。
今まで深海凄艦による民間船への被害は少なく無かったとは言え、今回のような友人島付近での戦闘は民間にも大きなショックを与えたらしい。
民間船に武器を向ける艦娘の画像が公開され、結局間に合わなかったことに対する批判が大きくなった。
だが、それと同時に民間人の妨害が出動の大きな遅れになった事と、過激な反対運動で艦娘が負傷した事が知られると艦娘賛成派の意見も出てきた。
数日前までは反対派少数・賛成派皆無の状況が、反対派多数・賛成派多数という状況にあると言う。

海自では各地に乱立した小規模鎮守府の再編を検討している。那覇鎮守府は呉鎮守府に吸収されるか、唯一の沖縄の艦娘部隊として逆に増強するか、近いうちに俺も出張する事になるだろう。

今日は艦娘達が帰ってくる日だ、沖縄基地隊と合同でパーティーを開く予定を立てて、鎮守府はいつもの数倍の人員で溢れている。
今日の鎮守府はいつもの数倍騒がしい。そして今日の海はここ数日で久しぶりに静かだ。

窓から外を見ると。十人ちょっとの団体が海岸に旗を立てているのが見えた。
『おかえりなさい』

「俺も飾り付けを手伝うとするか、じゃないと一佐にどやされるしな…」

それを見て俺は食堂に向かった。

世界基準では、投石等は軍事活動なので、「海賊」からの攻撃に対して、大火力での反撃は許容される

でも、自衛隊ならテロリストの攻撃を隠蔽すると思うけどね

さて、三連休で終わらせると思ったら一週間経ってしまいました。
本当はもう少し続きのネタやストーリー構成とかは考えているのですが、今日の夜から出張や夜勤が重なるため、これで一旦区切りとしたいと思います。
もし今後続きを書く事があればその時に読んでもらえれば幸いです。

では、HTML化依頼出してきます。

>>155
日本の「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」では海賊行為(の中でも暴行に当たる項目)を

1.暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為
2.暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶内にある財物を強取し、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させる行為

と定義しています。
作中内では艦娘は法律上の「人」と定義されていないため、海賊行為の定義とも当てはまらなかった。ので、国内法での処罰は不可能だった。という考えです。
(法律の専門家と言うわけではないので多少のミスには目をつぶってくださるとありがたいです。)



でも公務執行妨害、器物破損には十分値するような

>>159
>>133で、公務執行妨害で逮捕すると警告を出しています。が、公務執行妨害は公務員にしか適用されない(>>102で、立場的に公務員。という台詞がありますが、国の機関に属している。という意味なので…)ため、そこを裁判等で弁護士に突かれた。と想像していただければ…
器物損壊罪には確かにあたるかもしれません。(ここら変、知識があいまいです)
ただ、器物損壊罪は親告罪なので、鎮守府や沖縄守備隊、海上自衛隊が告訴しなかった。という可能性で考えてください。
現実でも動物愛護法が出来るまでは動物への被害も器物損壊になり、親告罪でした。動物愛護法が出来てからは動物への被害のみ非親告罪となりましたが、適用は愛玩動物のみなので、艦娘への被害に器物損壊罪で告訴する事は艦娘をペットとして扱っている…という批判を恐れて出来なかった。とか、色々今更考えています。

乙乙

「人を抵抗不能の状態」にはしてないけど、「航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為 」に近い行為はやってたように見えるけどね。
物を投げて『船舶』を傷付け、航路にわざと陣取り運行を制限(支配)したと解釈すれば平和団体(の名を借りたヤクザかチンピラ)のアホどものやったことも法的に罰せられないもんかなぁ…。かなりこじつけなのはわかってるけど。

>>161
そう言う解釈がギリギリ可能なら、反対の解釈も可能なわけで、そこは弁護士とか検察官の腕の見せ所。と言う事で一つ。
「航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為 」をしたから法的に罰せられる。と解釈出来るなら
「人を抵抗不能の状態」にはしてないから法的に罰せられない。という解釈も同じように成り立つので。

なお、今更ですがこのSSで起きた事件、戦闘行為意外は実際に起きた事件を元にしています。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月11日 (火) 00:16:11   ID: YKojbP1P

とりあえず作者は沖縄県民に謝ろうな?

2 :  SS好きの774さん   2015年03月04日 (水) 23:16:44   ID: RE1xWMXa

>>1
ホントの事書かれたからって怒るなよw

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