絵里「生徒会室に穂乃果がひとり」 (74)
絵里「穂乃果?」
穂乃果「あ、絵里ちゃーん。どうしたの?」
絵里「それはこっちのセリフよ。穂乃果こそどうしたの、もうすぐ夕方よ? 海未とことりは?」
穂乃果「海未ちゃんは弓道部に顔出してそのまま帰るって、ことりちゃんは家の用事」
穂乃果「今日は練習もないし、他の皆も帰っちゃったから」
絵里「それで生徒会室で書類の仕事? 急ぎの案件かしら」
穂乃果「んーん、まだ先のだけど……なんとなく、やっちゃおうかなーって」
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絵里「そう」
穂乃果「うん」
絵里「ふーん……」
絵里「よいしょっと」ガタッ
穂乃果「え、なんで座るの? 帰らないの?」
絵里「帰ろうと思ったけど、なんだか寂しそうだなーって」
穂乃果「えー、別に寂しくなんかないよー。私だって一人でちゃんとできるんだからね!」
絵里「あらそう。じゃあ穂乃果の働きっぷりを見学していくことにするわ。さ、頑張って」
穂乃果「むー」
絵里「なんだか新鮮ねぇ。別の席から生徒会長の席を見るなんて」
穂乃果「ちょっと前までは絵里ちゃんの特等席だったもんね、ここ」
絵里「そうよー、私の特等席。その席に座って、こう、眉間にぐぐーって皺を寄せて、書類を睨みつけるの」
絵里「そうしたら希が言うのよ。『えりちー、顔怖いよー』って」
穂乃果「あはは!」
絵里「それで、少し休憩しようと机の上から二段目の引き出しを開けるの。密かに隠しておいたチョコレートの箱があるのよ」
絵里「でもいざ箱を開けてチョコを取り出してみたら、溶けて形が崩れちゃってるの。気分転換のつもりが、ますます機嫌が悪くなったわ」
穂乃果「あははは! ちょ、ちょっと絵里ちゃん! 面白いからやめて! 集中できないじゃん!」
絵里「いいのよ、邪魔してるんだから」
穂乃果「んな! ちょっと絵里ちゃん!」
絵里「ふふ」
穂乃果「もう! 人が珍しく頑張ってるっていうのに!」
絵里「自分でそれ言っちゃうの」
穂乃果「そうだよ!」
絵里「いいじゃない、サボっちゃいましょうよ」
穂乃果「サボぉ!?」
絵里「さぼお」
穂乃果「うわああ、絵里ちゃんが私みたいになってる!」
絵里「うふふ」
期待!
穂乃果「え、絵里ちゃん、なんか変なものでも食べた? なんかおかしくない?」
絵里「そうねー、食べたかもしれないわねー。昼休みに希が変なキノコをくれたから、それが原因かも」
穂乃果「毒キノコだよ!!」
絵里「ウソよ」
穂乃果「絵里ちゃん!!」
穂乃果「もう! まったく絵里ちゃんは! もう!」
絵里「そんな怒らないでよー。ただのロシアンジョークじゃない」
穂乃果「ロシア要素どこにあったの!?」
穂乃果「うあーんこれじゃ作業進まないよー! 絵里ちゃん! 今すぐお帰りください!」
絵里「いーや」
穂乃果「お・か・え・り・く・だ・さ・い!」
絵里「やーだー」バンバン
穂乃果「もーう!!」
穂乃果「……じゃあ帰らなくていいから、少しお静かにしてください」
絵里「えー」
穂乃果「えー、じゃないの!」
絵里「はーい」
・・・・・・
穂乃果「……」カリカリ
絵里「……」
穂乃果「……」カリカリ
絵里「んー」
穂乃果「……」ペラッ カリカリ
絵里「ぅー」
穂乃果「……んー、っふぅ」ノビー
絵里「……肩凝るでしょう?」
穂乃果「凝るねえ……」アハハ
絵里「今じゃすっかり慣れたもんだけど、私も始めた頃はすぐ肩や首が痛くなってねえ」
穂乃果「勉強とはまた違った疲れがあるねー……」
絵里「そうね。……勉強はしなかったら困るのは自分だけど、この仕事はやらないと学校全体に迷惑がかかるから、なかなか気が抜けないし」
穂乃果「さっきサボろうなんて言ってた人の言葉とは思えませんねー」
絵里「あー、穂乃果がいじめるー」
穂乃果「絵里ちゃんが悪いんだよーだ」
絵里「なによー」
穂乃果「なにさー」
絵里「……」
穂乃果「……」
絵里「……ふふ」
穂乃果「あはは!」
絵里「……なんかいいな、こういうの」
穂乃果「そうだねー! ちょっと新鮮な気分だよ」
絵里「そうなの? 穂乃果はこういう会話よくしてそうだけど」
穂乃果「うーん、まあ、ことりちゃんとかとはよくね。ほら、絵里ちゃんがさ」
絵里「私?」
穂乃果「絵里ちゃんって、えっと、こういうのもなんだけど、ちょっとお堅いイメージがあったから」
絵里「う……そ、それは、まあそうだったかもしれないけど……今はそうでもないはず……よ?」
穂乃果「うん。今はμ'sの皆で毎日、すっごく楽しいよ! 絵里ちゃんとお話するのも、すっごく楽しい!」
絵里「そ、そう? ……なんか面と向かって言われると照れるわね」
穂乃果「それでもさ、やっぱり絵里ちゃんって、真面目でしっかりしてて、頼りになるってイメージが強いから」
絵里「……そう」
穂乃果「うん! だからね、さっきみたいに『サボろう』とか『やーだー』とか! 駄々こねてる絵里ちゃんがすっごい新鮮」
絵里「あー……うん……なんだか恥ずかしくなってきた」
穂乃果「かわいいよ?」
絵里「忘れてよー」
穂乃果「えー、いいじゃん。かっこいい絵里ちゃんもかわいい絵里ちゃんも好きだよ」
絵里「もう! 好きとかそういうこと軽々しく言っちゃいけません!」
穂乃果「いいの! 好きなものは好きなんだから!」
絵里「ふーん、じゃあ私も穂乃果のこと好きだもーん」
穂乃果「私だって絵里ちゃんのこと好きだもん!」
絵里「私のほうが好きよ!」
穂乃果「私のほうが好きだよ!」
絵里「私!」
穂乃果「私!!」
絵里「絵里!!」
穂乃果「穂乃果ー!!」
・・・・・・
絵里「……」ハァ ハァ
穂乃果「……」ハァ ハァ
絵里「……じゃあ、おんなじくらい好きってことで……」
穂乃果「うん……」
穂乃果「ってうわああ! 書類あんまり進んでない!!」
絵里「あらあら、しっかりしてよ生徒会長さん」
穂乃果「誰のせいだとー!」
絵里「私と穂乃果じゃない?」
穂乃果「おっしゃるとおりです」
絵里「まだ頑張るの?」
穂乃果「うん、もう少し」
絵里「そう。じゃあ私も残る」
穂乃果「うん」
絵里「あら、お帰りください、とは言わないのね」
穂乃果「ん? うん、やっぱり一人っきりよりは誰かいてくれた方がいいから」
絵里「ふふ、やっぱり寂しいんじゃない」
穂乃果「そうですよーだ。穂乃果は寂しがり屋なのです」
絵里「そういうことなら仕方が無い、一緒にいてあげましょう」
穂乃果「ははー、ありがたきしあわせ」
絵里「うむ、くるしゅうない」
絵里「ふふふ」
穂乃果「あはは!」
・・・・・・
絵里「……日が暮れてきたわねぇ」
穂乃果「そうだねえ」カリカリ
絵里「夕焼け空がとっても綺麗。ほら、穂乃果も見てみてよ」
穂乃果「んー? ちょっと待ってねー」カリカリ ペラッ
絵里「綺麗だなー……」
絵里「……」
絵里「ねえ」
穂乃果「なーに?」カリカリ
絵里「夕焼けって、穂乃果みたいよね」
穂乃果「んー………んん?」
絵里「とっても綺麗で、魅了される……目に焼きついて離れなくて、なんだかとっても優しい気持ちになれるの」
穂乃果「……」
絵里「いいなあ、夕焼け。見られる時間は一日の中でもほんの少しだけなのに、こんなに魅力的で」
絵里「あ~ぁ……」
絵里「いいなあ……穂乃果色……」
穂乃果「……あの」
絵里「ほんのり~穂乃果色~」
穂乃果「あの、絵里さん」
絵里「? どうしたの穂乃果、顔赤くない?」
穂乃果「いやあ……ちょっと、そういうこと言われるのは、けっこう恥ずかしいといいますか……」テヘヘ
絵里「……?」
絵里「……あー……あー、あー。えっと」
穂乃果「……」
絵里「……」
絵里「……ゴ、ゴメンナサイ……」
穂乃果「イエ……」
絵里「……」
穂乃果「……」カリカリ
絵里「……別に、お世辞とか、冗談とかではないのよ?」
穂乃果「うん」
穂乃果「照れちゃうけど、そう言ってくれるのは嬉しいよ」
絵里「うん」
絵里「……そういえば、さっきの話だけど」
穂乃果「なにー?」カリカリ
絵里「私って、そんなに真面目で頼りになるってイメージなのかしら」
穂乃果「うん? うーん、少なくとも私や海未ちゃんことりちゃん、1年生の皆もそうじゃないかなあ」
穂乃果「クラスの人たちもね、絢瀬さんて凄いよねーとか、尊敬しちゃうなーとか」
絵里「そう……」
穂乃果「うん」
イイネ
絵里「……その、ね。別にそんなつもりじゃないのよ。頼ってもらおうとか、尊敬されようとか」
絵里「周りの誰から見ても優秀な人物であり続けようとか、そういうつもりはないの」
穂乃果「……うん」
絵里「ただ、私は中途半端が嫌だから。やるからには、ちゃんとやろう。少しでも最高の結果に近づけようって」
絵里「そうすれば、誰も困らないじゃない? 誰かが怒って、争いになることもない。私に飛び火することもない」
絵里「自分が頑張れば丸く収まるなら、それでいいやって。結局は保身なの。自分可愛さ」
穂乃果「うん」
絵里「だから私、皆に、穂乃果にそんな褒められるような人間じゃないのよ。誰かのことを想って頑張ったことなんて……きっと無いわ」
穂乃果「……そっか」
絵里「……」
穂乃果「……」
絵里「……あはは、ごめんなさい、急に変な事……お仕事邪魔した挙句こんな……ホント、駄目ね、私」
絵里「……ごめんね、今日はもう、帰るわね」
穂乃果「待って」
絵里「いいの! ほら、穂乃果も集中したいでしょ? だから──」
穂乃果「よくないよ。私はもっと絵里ちゃんと一緒にいたいな」
絵里「……」
穂乃果「もっとお話聞かせて? 私でよかったら、なんでも聞くよ」
絵里「でも……」
穂乃果「いーの! 私が聞きたいんだから」
絵里「……きっとつまらないわ」
穂乃果「絵里ちゃんのことでつまらないことなんてないよ」
絵里「……っ」
穂乃果「はい、隣座って!」ガタッ
穂乃果「今日のお仕事は、悩める一般生徒の相談教室だよ! この生徒会長にドーンとお任せ!」
絵里「……ふふ」
穂乃果「うん!」
絵里「はは、あはははは!」
穂乃果「そうそう! 笑顔が一番だよ! 絵里ちゃんは笑顔がいっちばんかわいいんだから!」
絵里「はぁ~……まったく、穂乃果には敵わないわね……」
穂乃果「ふふん!」
絵里「……じゃあ、お願いしようかしら、生徒会長さん?」
穂乃果「お任せあれ!」
・・・・・・
絵里「……うわ、もう外完全に日が沈んでるじゃない」
穂乃果「おー、暗くなってきたねー」
絵里「ご、ごめんなさい……つい夢中になっちゃって……」
穂乃果「もう! あやまらなくていーの! さっきからあやまってばかりだよ、絵里ちゃん」
絵里「う、ごめんなさ……じゃなくて、 えっと、ありがとね」
穂乃果「うん!」
good
絵里「はー、こんなに愚痴吐き出したの初めてかも」
穂乃果「そうなの?」
絵里「多分ね。なんだか凄くスッキリした気分!」
穂乃果「よかった。お役に立てたのなら私も嬉しいよ」
絵里「うん。ありがとう」
絵里「……ねぇ、穂乃果」
穂乃果「んー。なーに?」
絵里「その、ね。も、もう一つ、甘えちゃっても、いいかな」
穂乃果「んふふー。いーよ! なにかな?」
絵里「え、えっとね。その、か、肩! 貸してくれないかなー……なんて」
穂乃果「おおう……積極的だね、絵里ちゃん」
絵里「もう! からかわないでよ!」
穂乃果「ごめんごめん。いいよ、肩くらい、いつだって貸してあげる」
絵里「……うん」コテン
穂乃果「ふふ、今日の絵里ちゃんは甘えん坊さんだねー」ナデナデ
絵里「……今日だけだもん」
穂乃果「えー、毎日でもいいのに。皆と一緒のときでも」
絵里「いーや。皆の前じゃ恥ずかしいの」
穂乃果「私は恥ずかしくないんだ」
絵里「……うん」
穂乃果「そっか」ナデナデ
穂乃果「……」
穂乃果「えい」ギュッ
絵里「ひゃっ」
絵里「な、なに?」
穂乃果「んー? 絵里ちゃんがかわいいから、抱き寄せたくなりました」
絵里「もうっ……」
絵里「……あったかい」
穂乃果「んふふー。よしよし」ナデナデ
絵里「子供みたいね、私」
穂乃果「えー、子供じゃーん」
絵里「そういうことじゃないのっ」
穂乃果「冗談冗談、わかってるって」
穂乃果「……」
絵里「……」
穂乃果「静かだねえ」
絵里「もう部活動もほとんど終わってるだろうし、先生くらいしか残ってないんじゃないかしら」
穂乃果「生徒は私たちだけかな」
絵里「そうかもね」
穂乃果「夜になっちゃうね」
絵里「そうね」
穂乃果「その内先生たちも全員帰っちゃって」
絵里「ええ」
穂乃果「残ってるのは私と絵里ちゃんだけ」
絵里「二人っきりね」
穂乃果「だね」
穂乃果「このまま学校に泊まっちゃおうか」
絵里「明日も学校よ?」
穂乃果「遅刻しなくて済むよ」
絵里「そういう問題ー?」クスクス
穂乃果「真っ暗な学校に私たち二人だけで」
絵里「警備員さんにもばれないようにコッソリと」
穂乃果「朝までギュってくっついて」
絵里「そのまま寝ちゃって」
穂乃果「朝に誰かに見つかって」
絵里「こってり叱られて」
穂乃果「一緒に反省文かな」
絵里「一枚で済むかしら」
穂乃果「二枚かも」
絵里「えー」
穂乃果「絵里ちゃん、反省文書いたことある?」
絵里「三年間一度も」
穂乃果「あ、やっぱり。実は私もないんだー」
絵里「あらそうなの? 意外ね」
穂乃果「む! 意外とは聞き捨てならないよ!」
絵里「授業中しょっちゅう居眠りしてる子が何を言いますか」
穂乃果「うぐ……それを言われると……でも書かされてないからセーフだよ!」
絵里「でも海未には怒られるでしょう?」
穂乃果「ひどいときは正座だよ……」
絵里「あはは!」
穂乃果「もう、笑わないでよー。けっこう辛いんだよ、アレ」
・・・・・・
穂乃果「……」
絵里「……」ウトウト
穂乃果「絵里ちゃん、もしかして眠い?」
絵里「……ぅ、危ない危ない……」
穂乃果「大丈夫?」
絵里「ええ……あったかくて、つい」ギュッ
穂乃果「ふふ」ナデナデ
穂乃果「じゃあ、眠気を覚ますためにひとつ」
絵里「ん?」
穂乃果「絵里ちゃん」
絵里「なに?」
穂乃果「えーりちゃん」
絵里「んん?」
穂乃果「えーりーちゃーん」
絵里「なーあーにー?」
絵里「……」
絵里「……穂乃果」
穂乃果「! 絵里ちゃん」
絵里「ほーのか」
穂乃果「えーりちゃん」
絵里「ほーのーかー」
穂乃果「えーりーちゃん」
絵里「……ぷっ」クスクス
穂乃果「んふふー」
イイ…
絵里「なーに、これ」
穂乃果「んー? なんかさ、名前を呼び合うと目が覚めてこない?」
絵里「んー……言われてみれば……?」
穂乃果「でしょー? よくことりちゃんともやるんだー」
穂乃果「というわけで、絵里ちゃんの目が覚めるまで名前を呼びます」
絵里「えー……」
穂乃果「えりちゃーん」
絵里「ほのかぁ」
絵里(余計眠くなりそう……)
・・・・・・
ブーッ ブーッ
穂乃果「あれ、メールかな」
絵里「あら、私にも」
穂乃果「うわぁ……雪穂からお怒りメールだよ。『遅い! ご飯できちゃうよ!』だって」
絵里「こっちも亜里沙からだったわ。心配してるみたいね……」
穂乃果「……」
絵里「……」
穂乃果「帰ろっか」
絵里「……うん」
穂乃果「は~、ずっと絵里ちゃんギュッてしてたからあったかいや」
絵里「……そうね」
穂乃果「んー? なんだか寂しそうな顔してるよー?」
絵里「……そんなこと」
穂乃果「あー、もしかして、まだギュってしててほしかったり?」ニヤニヤ
絵里「ぅ……うん」
穂乃果「もーう、ホントに今日は甘えん坊さんだね!」ナデナデ
絵里「うー……」
穂乃果「でもほら、そろそろ帰らないと、家族が心配しちゃうから、ね?」
絵里「うん、わかってる」
穂乃果「だから、はい」スッ
絵里「?」
穂乃果「手、繋いで帰ろ? 絵里ちゃんの家まで送ってくよ」
絵里「……いいの?」
穂乃果「もちろん!」
絵里「……うん」ギュッ
穂乃果「えへへ。じゃ、いこっか!」
なにこの癒しスレ
・・・・・・
穂乃果「うわぁ~、今日は星がよく見えるね~」
絵里「凄いわね……こんなに綺麗に見えるの久しぶりかも」
穂乃果「真姫ちゃんも見てるかなあ。星見るの好きなんだって」
絵里「希もけっこう好きみたいよ? あと凛も最近よく見てるって言ってたわ」
穂乃果「へぇー。あ、じゃあさ! 今度皆で天体観測とかしてみたいね!」
絵里「あ、いいかも。学校の屋上ならよく見えそうよね」
穂乃果「うん! よーし、それなら今度学校の許可もらって──理事長に頼めばいいのかな。ことりちゃんに聞いてみてもらおっか」
絵里「ええ」
穂乃果「ふふ、楽しみー」
穂乃果「……」
絵里「……」
穂乃果「寒くない?」
絵里「うん、大丈夫」
穂乃果「そっか」
穂乃果「手を繋ぐとね、繋いでる手だけじゃなくて……その人の温もりが、ほわーって、体にも心にも伝わってくるの」
穂乃果「だから私、こうやって誰かと手を繋ぐの、大好きなんだー」
絵里「ふふ、穂乃果らしいわ」
穂乃果「えへへ。絵里ちゃんはどう? 手を繋ぐのって、好き?」
絵里「そうねぇ……好きか嫌いかって言われると、好きだと思うけど」
絵里「……あ、よく考えたら私、こうやって手を繋いで歩くのって、初めてかも」
穂乃果「ええ! ホントに?」
絵里「うーん……少なくとも、家族以外とは」
穂乃果「そっかあ」
穂乃果「希ちゃんとは? 一年生の頃から仲良かったんでしょ?」
絵里「希は手を繋ぐってタイプじゃないわねぇ。どっちかっていうと、面白がって腕組んできて胸を押し付けてきそう」
穂乃果「あははは! それはあるかもねー!」
絵里「ふふ、本人がいないところでこんな話したら怒られるかしら」
穂乃果「二人だけの秘密だね!」
絵里「ええ、秘密ね」
・・・・・・
絵里「……」
穂乃果「とうちゃーく」
絵里「あーぁ……着いちゃった」
穂乃果「……だねぇ」
絵里「……」
穂乃果「……」
絵里「……」ギュッ
穂乃果「……まだ、お別れしたくない?」
絵里「……うん」
穂乃果「そっか」
穂乃果「明日」
絵里「うん?」
穂乃果「明日また会えるよ。こうやって一緒にいられるの、今日だけじゃないよ」
絵里「……うん」
穂乃果「だから、ね?」
穂乃果「またあした」
絵里「……ごめんね」パッ
穂乃果「そんな、あやまることないよっ。私も絵里ちゃんと一緒にいれて、楽しかったもん」
穂乃果「絵里ちゃんの色んな一面も見れたしねー」ニヤニヤ
絵里「もうっ! ……穂乃果にしか見せないんだからね」
穂乃果「うふふ、独り占めだねっ」
絵里「穂乃果」
穂乃果「ん?」
絵里「今日はありがとう」
穂乃果「うんっ!」
絵里「何かお礼でもできればいいんだけど……」
穂乃果「えー、いいよー、お礼なんて」
絵里「うーん……」
絵里「……あ」
絵里「穂乃果。ちょっと」
穂乃果「ん、なになに?」
絵里「ちょっと、目を瞑っててもらえる?」
穂乃果「目瞑るの? うん、いいよー」キュ
絵里「……」
チュッ
穂乃果「ほわっ」
絵里「……そ、それじゃっ、おやすみなさいっ」タッタッタッ
穂乃果「……」
穂乃果「……あっ、うんっ、おやすみー……」
穂乃果「……ほっぺ」
穂乃果「……ふふ。さっ、私もかーえろっと」
・・・・・・
絵里「ただいまー……」
亜里沙「お姉ちゃん! 遅かったね? 心配したよー」
絵里「ごめんね、ちょっと用事があったものだから」
亜里沙「生徒会のお仕事?」
絵里「今の生徒会長は私じゃなくて穂乃果よー?」
亜里沙「あっ、そうだった!」
絵里「ふふ」ナデナデ
絵里「着替えてくるわね」
亜里沙「あ、お風呂の用意しとく? 私もさっき入ったから、すぐ入れるよ?」
絵里「うん、ありがとう。お願い」
亜里沙「はーい」
・・・・・・
-絵里の部屋-
絵里「……」ゴロン
絵里「……」ボー
絵里(ああああああああああああああああああああああああ)ジタバタ
絵里(なにあれなにあれなにあれなにあれ!! なにやったの私!)
絵里(ほっぺだけど! ほっぺだけどおおおおお!!)
絵里(うああああああああ)ジタバタ
絵里(あああ……)
絵里(穂乃果……)
絵里(あったかかったなー……)
絵里(いっぱい甘えちゃった)
絵里(何がしたかったのかしら、私)
絵里(ただ誰かに甘えたかっただけ?)
絵里(本当にそうかしら)
絵里(生徒会室に穂乃果がひとりでいて)
絵里(穂乃果が……)
絵里(……)
絵里(わからない)
絵里(モヤモヤする)
絵里「なんだろ」
オネエチャーン オフロイイヨー
絵里「はーい」
絵里「……」
絵里「……まぁ、いいか」
絵里「お風呂入って、今日はもう寝よう……」
翌日
-アイドル研究部 部室前-
ギャーギャー ワーワー
絵里(部室がすごくうるさい)
絵里「この声は穂乃果と海未かしら? 何か海未が怒ってるような……」
ガチャ
絵里「どうしたのー? 廊下まで声聞こえてるわよ?」
穂乃果「あ、絵里ちゃん……」アハハ
凛「さすが海未ちゃんのお説教にゃ! 廊下歩いてる人びっくりするね!」
花陽「えぇー……」
真姫「説教クラブかなんかと間違われたらどうすんのよ……」
海未「絵里! 聞いてください、穂乃果ったら!」
絵里「何かあったの?」
海未「昨日、練習がなかったでしょう? そうしたら穂乃果が珍しく、『生徒会の仕事やってくよ!』って張り切って」
ことり「私は家の用事があって、海未ちゃんは弓道部に行ってたからー……穂乃果ちゃん、一人でやるって言ってたんだけど……」アハハ
海未「先ほど確認をしてみたらほとんど進んでいないじゃないですか!」
海未「手伝えなかった私とことりにも非はありますが、自らやると言っておきながら何も行動を起こさないなど! 有言不実行とはまさにこのことです!」
にこ「有言不実行なんて言葉あったけ?」
希「造語としてあるみたいよー? にこっちも有言不実行やね」
にこ「何を失礼なー! 私はいつだって有言超実行よ!」
希「勉強は?」
にこ「すみません」
真姫「なに漫才してんのよ……」
海未「そもそも生徒会長とは、周りから言われる前に自ら率先して物事に取り組むべき立場のはずです!」
海未「廃校を回避したからと言って、怠けていてもらっては困ります! 先代の絵里をもっと見習ってほしいものです!」
絵里「あー……」
海未「絵里からも何か言ってください。せっかく絵里から推薦を受けたというのに……」
絵里「あ、あのね、海未? その、昨日のことなんだけど」
穂乃果「! え、絵里ちゃん!」
絵里「いーの」
海未「どうしたのですか?」
絵里「あのね、穂乃果が仕事を進められてないのは、私が邪魔したからなの」
海未「……はい?」
穂乃果「あちゃー……」
絵里「だから、私が邪魔したの。思いっきり」
絵里「昨日の放課後、穂乃果が一人で生徒会室にいてね。すっごく真面目に取り組んでいたのよ? そこに私が乗り込んでー……」
絵里「ごめんね?」テヘ
花陽「え、絵里ちゃんが……」
凛「穂乃果ちゃんの邪魔をおおお!?」
真姫「普通逆よね」
穂乃果「真姫ちゃんそれどういう」
希「しかも生徒会の仕事の邪魔なんて……」
にこ「珍しいこともあったもんねー」
ことり「あー……まずいよお」
海未「……絵里」ゴゴゴゴゴゴ
絵里「は、ひゃい!」
海未「穂乃果」ゴゴゴゴゴゴ
穂乃果「ぅへいっ!」
海未「……どうやら私が甘かったようです」
海未「きっと絵里の影響を受けて、穂乃果も真面目に取り組もうという姿勢になったのだと思っていたのですが……まさか絵里の方が穂乃果に毒されていたとは」
穂乃果「毒されって……ちょっと酷くない!?」
絵里「そ、そうよ! それに今回に至っては悪いのは私だけで」
海未「お黙りなさい!!」
ほのえり「「は、はいぃ!!」」
海未「絵里が悪いなら悪いで、それを嗜めることも出来たはずです。一緒になってふざけてしまっては、意味がないでしょう!」
ほのえり「「はい……」」
海未「……仕方ありません、皆には申し訳ありませんが、今日も練習はお休みにします」
海未「さぁ、穂乃果、絵里。そこに正座なさい!!」
穂乃果「えぇ~……」
海未「えー、じゃありません!」
絵里「……穂乃果」
穂乃果「ん?」
絵里「こうなったら」ギュッ
穂乃果「え? えっ?」
絵里「逃げるが勝ちよー!!」ダッ
穂乃果「えー!? ちょ、ちょっと絵里ちゃーん! 引っ張らないでええええ!」ダッ
海未「んな!? 待ちなさい二人ともー!!」ダッ
ニゲロー!
マチナサーイ!!
ことり「ありゃー……」
凛「行っちゃったニャ」
花陽「ど、どうしよっか、練習」
にこ「せっかくの練習日和なのに、しないわけにはいかないでしょー? あの三人はほっといて、屋上行くわよー」
真姫「絵里が怒られる側なんて新鮮よね」
希「まぁ、たまにはええんやない? さー、今日も元気に頑張ろっか」
「おー!」
海未「待ちなさい二人ともー!!」
絵里「あははっ! 逃げろ逃げろー!」
穂乃果「絵里ちゃーん! どこまで行くのおお!?」
絵里「どこまでもー! 海未から逃げ切るまでー!!」
穂乃果「えぇー!!」
海未「こらー!!」
絵里「あははははっ!!」
穂乃果「……ぷっ」
穂乃果「あはははっ!! 逃げろー!」
絵里「逃げろー! あははは!」
海未「もうっ! なんですか二人して! 絶対に捕まえてお説教ですからね!」
絵里「穂乃果っ!!」
穂乃果「なーにっ!!」
絵里「大好きっ!」
穂乃果「うんっ!」
おしまい
以上です
ほのえり好きなんだけど甘えるエリチないかなーと思って
読んでくれた方、どうもありがとう
おつ
良かった
乙
甘えるえりち可愛かった
また書いてくれると嬉しい
お疲れ様でした
とてもいいほのえりでした
乙
二期ですっかりほのえりにハマってしまった
乙でした
見てると優しい気持ちになれる
乙乙
とても良かった
サンキューほのえり。
フォーエバーほのえり。
乙!とても良かった!
乙
凄く良い
なにこの桃源郷
丸くなったエリチカ好き
乙です
すごく良かった
癒されるssだわ 久しぶりに可愛い絵里も見れたし 乙
甘酸っぱいなぁ
すっかり忘れていたこの気持ち
ありがとう 乙でした
最高だよ
あんた最高だよホント
もっともっとほのえり見たいです
おおう、こんなにもレスが
ありがとうございます
HTML化依頼してきます
またいつかよろしく
乙
なにこれめっちゃよかった
俺「…」シコシコ
素晴らしい、ただその一言に尽きる
このSSまとめへのコメント
最高の甘酸っぱさ。
ほっこりと癒されながら最後にはじんわりと涙腺に響く最高のほのえり。
超良かった。