エレン「目隠し鬼ごっこ?」(82)
―――男子寮・就寝前―――
エレン「この年になって鬼ごっこかよ……」
ジャン「んだと? そんなこと言うんならお前は話に入ってくんな!」
アルミン「まあまあ、2人とも落ち着いて……」
ジャン「ちっ ……いいか? 俺が言ったのは鬼ごっこじゃねえ、目隠し鬼ごっこだ」
エレン「目隠し? 目隠ししながら鬼ごっこなんてできないだろ」
ジャン「へっ、本当にお子様だな、エレン君は」
エレン「なんだと!?」
アルミン「だから2人とも、こんなことで喧嘩腰にならないでよ」
エレン「でも、アルミン、目隠ししながらじゃ追えないし逃げれないだろ」
ジャン「バーカ、目隠し鬼ごっこで目を隠すのは鬼だけだ、それに鬼じゃない奴は基本的に逃げないんだよ」
エレン「なんだそれ?」
ジャン「いいか、鬼になってないやつは手を叩いて鬼をうまく誘導させるんだよ」
エレン「でも、それじゃあ外で遊ぶ意味がないだろ」
ジャン「目隠し鬼ごっこは室内でする遊びなんだよ」
エレン「そんな遊び本当にあるのか?」
ジャン「あるぜ、少なくとも俺はやったことがある、ライナーは?」
ライナー「……そういえば、俺も昔ベルトルトとアニと一緒に似たような遊びをしたことがあるな」
ベルトルト「ああ、あったねえ、そんなことも」
ジャン「ほらな、コニーも知ってるだろ?」
コニー「近所のガキ共とやったことあるぜ」
ジャン「これでわかったか? エレン、お前が知らなかっただけだ」
エレン「く……アルミン、お前は知ってるか? ないだろう、そんな遊び?」
アルミン「……うーんと、まあ、遊んだことはないけど、そういうのがあるってことは知ってたかな」
エレン「なに!? 本当に俺だけ知らなかったのか……」
アルミン(本当は大人がやる遊びなんだけど……多分、ジャンはわかってていってるよね……)
エレン「で、でもそんな遊び面白くないだろ!」
ジャン「なんだ、やったこともないくせによく面白くないなんて言えるな」
エレン「……くそ」
ライナー「……それで、その目隠し鬼ごっこがどうしたんだ? あることは認めるが俺も今さら鬼ごっこというのはちょっとな」
ベルトルト「まあ、鬼ごっこ自体なら運動にはなるかもしれないけど、目隠し鬼ごっこじゃね」
ジャン「へへ、みんな想像力が足りないな、確かに俺たちだけでやるんじゃあ、つまらないよな?」
アルミン(ああ、やっぱりそうか……)
コニー「それじゃあ、どうするんだよ、教官も入れて本当の鬼ごっこにすんのか?」
ジャン「ちげーよ! そんなことしたら命がいくつあっても足りねえだろうが……いいか、俺たちだけじゃなくて、女子も巻き込むんだよ」
ライナー・ベルトルト・コニー「「「じょ、女子!?」」」
ジャン「そうだ、俺たちは鬼役になればいいんだよ、目隠し鬼ごっこの鬼役は目が見えない……」
ジャン「……だからついつい女子のいろんなところを触っちまうかもしれない」
ジャン「でも、仕方ないよな? これはそういう『遊び』なんだからよ」
コニー「そ、そ、それってつまり女の子にべたべた触れるってことか!?」
ジャン「へへへ、もしかしたら抱きついちまえるかもな」
ベルトルト「ま、まあそうなったら確かにうれしいけど」
ライナー「……だが、問題があるな、はたして女子はこの遊びにのってきてくれるのか?」
ジャン「そこだ、俺もそこをどうすればいいか考えていた、普通に遊びに誘う事は出来ても内容を話して拒否される可能性がある」
コニー「なんだよ! じゃあ無理じゃんか!」
ジャン「だから俺1人じゃ思いつからないから、お前らに話してるんだろうが! 何かいい方法はないか?」
ライナー「……」
ベルトルト「……」
コニー「……」
アルミン(心なしかみんな僕の方を見ている気がする)
ジャン「……アルミン、何かないか?」
コニー「そうだぜ、お前座学トップなんだろ? こういう時にそれを活かせよ!」
アルミン(……やっぱりね、というか女子を目隠し鬼ごっこに誘う方法なんて座学じゃあ習わないよ)
アルミン「そんなこと言われても……無理やりつきあわせるわけにもいかないしねえ」
ライナー「がんばれアルミン、もしかしたらクリスタと触れあえるかもしれないんだぞ」
ベルトルト「そうだよ、アルミン」
アルミン(それが狙いか……いや、出来ることなら僕もそうしたいけどさ)
アルミン「そうだね……何かもっともらしい理由があればいいんじゃないか? それと後は雰囲気作りとか」
ジャン「もっともらしい理由に……」
コニー「雰囲気づくりってなんだ?」
アルミン「やっぱりこの遊び内容を言ったら女子たちは警戒すると思うんだよ、だから女子がやってもいいかなっていう空気を作るのさ」
ライナー「例えば?」
アルミン「うーん……例えばテンションが高い時とかってハグとかしやすくなると思うんだ、だから明るい空気でやるとか」
ジャン「みんなで盛り上げながらやれってことか」
アルミン「そうだね、でも目隠し鬼ごっこを強要できる空気なんだから結構盛り上げないといけないよ」
ライナー「やはりハードルが高いな、コニーならばともかく、俺やベルトルトはそういうキャラじゃない」
コニー「おい、俺ならばともかくってなんだよ!」
ベルトルト「もっともらしい理由の方も考えなきゃいけないしね」
アルミン(そうなんだよなあ、結局これで頭打ちに……あれ、そういえばエレンは?)
エレン「……くー……くー……」
アルミン(寝ちゃってるや、相変わらずこういうのには興味がないみたいだね……)
アルミン(……最悪エレンが誘えばミカサくらいは引っ張れると思うけど、喜ぶのはジャンだけだろうし……)
アルミン(……待てよ、確か、今月って……)
ジャン「くっそー、やっぱり無理か」
ベルトルト「残念だけど、諦めるしか……」
アルミン「……待って」
ライナー「うん? どうした?」
アルミン「できるかも、目隠し鬼ごっこ」
コニー「マジで!?」
ジャン「本当か? さすがアルミンだ!」
ライナー「2人とも落ち着け……それでどんな方法だ?」
アルミン「……実はね……」
―――翌朝―――
エレン「誕生日パーティー? 俺の?」
アルミン「そうなんだ、それをみんなで祝おうと思ってさ、エレンの誕生日ってもうすぐでしょ?」
エレン「そういえば今月誕生日だったな、自分でもすっかり忘れてた」
アルミン「それでね、とりあえぜ休日申請の日を合わせようと思うんだけど、いいかな?」
エレン「そっか……ありがとうな、アルミン、それにみんなも……」
ジャン「いいってことよ、お前とはいろいろあったが仲良くしていきたいしな」
コニー「そうだぜ、俺たち仲間だろ?」
エレン「……いろんな人に誕生日を祝ってもらうなんて数年ぶりだ……みんな、本当にありがとう……」グスッ
ライナー「エ、エレン……もしかして泣いてるのか?」
エレン「な、泣いてなんかねえよ! お、俺はもう行くからな!」ゴシゴシ
ベルトルト「う、うん……僕たちも後で行くから……」
一同「……」
アルミン「……行ったみたいだね」
コニー「やべえ、なんか俺すげー心痛くなってきた」
ライナー「……同感だ」
ジャン「な、何言ってやがんだ! 昨日の夜はお前らだってノリノリだったじゃねえかよ!」
ベルトルト「でもまさか泣くとは思わなかったよ」
アルミン「エレンって結構泣き虫だからね……」
ジャン「……だー! もう俺だって心が痛いのは同じだ! でもここまできちまったんだから仕方ねえだろ! 腹くくれ!」
ライナー「……まあ誕生日を祝うって気持ちは本当だから、そのあたりはちゃんとしておこう」
ジャン「そ、そうだ! 当日は俺達が全力でエレンを祝ってやるんだ! 目隠し鬼ごっこはそのついでだと思え!」
アルミン「そうだね、一先ず、これで女子たちにも声をかけやすくなったよ」
ベルトルト「上手くいくといいね、『誕生日の余興作戦』」
アルミン(僕が昨日みんなに提案したのは、誕生日パーティーの余興の遊びとしてやってしまおう、という作戦だ)
アルミン(厳しい訓練の日々でみんな鬱憤が溜まっているのは知っている、何かきっかけがあれば一気にそれは爆発する)
アルミン(そこでたまたま思い出した、今月、エレンの誕生日があることを)
アルミン(誕生日パーティーというわかりやすい起爆剤でみんなのテンションを一気に上げる、その余興の合間にやってしまえばいい)
アルミン(自分で提案しておきながら、親友を出しに使うこの作戦が酷いものだとは理解している、エレン、本当にゴメン!)
ミカサ「必ず行く、何か用意しておくものは?」
アルミン「えーと、エレンの誕生日をお祝いする気持ち、かな」
ミカサ「そんなこと言われるまでもない」
アルミン「……ははは、だよね……」
サシャ「パーティー? パーティーですか? 食べ物たくさんですか?」
コニー「いや、まあ一応、金出しあって何か買うつもりだけど」
サシャ「行きます、すぐ行きます!」
コニー「今からじゃねえよ、バカ!」
ミーナ「誕生日? エレンの? そうだったんだ、知らなかった」
ベルトルト「どうかな、最近エレンと仲良いみたいだし、僕達と一緒にお祝いしない?」
ミーナ「……うん、いいよ、休日申請してくればいいんだよね?」
ベルトルト「うん、きっとエレンも喜ぶよ」
ユミル「はあ? なんで私達がエレンの誕生日を祝わなきゃいけないんだよ」
ジャン「てめえは呼んでねえよ、クリスタ来れねえか?」
クリスタ「うん、そういうことだった行ってお祝いしてあげないと、ユミルも来るよね?」
ユミル「はあ……まあクリスタが行くってんなら、行くけどさ」
アニ「……何企んでるの?」
ライナー「いきなりなんだ? 別になにも企んじゃいないさ」
ライナー「ちなみに強制じゃないから来る来ないは自由だぞ、まあ誰に声を掛けたかはエレンに伝えておくつもりだがな」
アニ「……」
アルミン「えーと、女の子は全部で6人? アニは来るの?」
ライナー「来るさ、あいつはそういう奴だ」
アルミン「よし、ともかくこれで準備万端だ、後は本番での流れを確認しよう」
ジャン「頼むぜ、アルミン、俺たちの目隠し鬼ごっこのために!」
アルミン(ジャンの言うとおり僕も腹をくくったからね……なんとしても女神に触れ合ってみせる)
―――誕生日パーティー当日―――
アルミン「えー、それではエレンの誕生日パーティーを開きたいと思います」
ジャン「オー」
コニー「ヒューヒュー」
ライナー「おめでとう、エレン」
ベルトルト「おめでとう」
クリスタ「おめでとう、エレン……ほら、ユミルも!」
ユミル「はいはい、おめでとう、おめでとう」
ミーナ「おめでとう、エレン……終わったことだけど、もっと早めに教えてほしかったな」
サシャ「おめでとうございます、それと沢山の食べ物ありがとうございます!」
エレン「あ、ありがとう、俺、本当にうれしいよ……」
ミカサ「エレン……」ギュッ
エレン「わ! ミ、ミカサ、放してくれ!」
ミカサ「いつも私1人で祝ってあげてたのに今はみんなに祝われてる……私も自分のことのように嬉しい」
エレン「わかった、わかったから! 放せ!」
ジャン「く、くそ、エレンのやつ、うらやましいことを」
アルミン「ジャン、ここは抑えて……」
ジャン「わかってるよ!」
アルミン(まるでお母さんだよね……まあ、エレンも喜んでいるみたいだし別に……)
アニ「……」ムスッ
アルミン(……よくないね、うん、僕たちの目的のためには楽しい空気を維持しなくちゃいけないわけだし)
アルミン「ミカサ、その辺にしてあげて、エレンも困っているみたいだし」
ミカサ「……」パッ
エレン「……ふう、苦しかった……」
アニ「……」
エレン「……うん? あ……アニも来てくれたのか!」
アニ「……暇だったからね」
エレン「嬉しいぜ、ありがとう!」
アニ「……うん」
クリスタ(アニが照れてる……可愛い)
アルミン(エレンは裏表なく全力で感情表現するからな……この反応だと多分アニも……)
―――パーティーが始まって数分後―――
ジャン「……おいアルミン、そろそろ……」
アルミン「うん、そうだね……それじゃあ、みんな、せっかく集まったんだし、何かゲームでもしない?」
ミーナ「ゲーム? ……いいわよ、せっかくだし、みんなで盛り上がらないとね」
アルミン「うん、と言っても室内だからできることは限られるけどさ」
アルミン(よし、それじゃあ後は手筈通りに……)
ライナー(俺たちが適当に何個か提案してその中から採用する流れにもっていく)
ベルトルト(怪しまれないように慎重にことを運ばなくちゃ)
コニー(よし、まずは俺からだな……)
コニー「それなら……」
エレン「……ああ、それなら目隠し鬼ごっことかどうだ?」
男(エレン除く)一同「!!!」
ミカサ「目隠し鬼ごっこ?」
エレン「ああ、室内でできて面白い遊びらしいぞ」
ジャン「……おい、アルミン……」
アルミン「……僕は何も言ってないよ、多分エレンが本当に思い付いただけだと思う……」
ライナー「……これは、どうすればいいんだ……」
コニー「……お、俺、何か言った方がいいのか……」
アルミン「……大丈夫、これは嬉しい誤算だ、もう僕らが何かをする必要はない……」
アニ「……なにコソコソ喋ってんの?」
アルミン「な、なんでもないよ……あははは……」
アニ「……」
エレンさん流石
サシャ「めはふひほにほっほ? はんでふか?」
ユミル「何言ってるかわからねえよ、口の中のモノ飲み込んでから喋れ」
クリスタ「目隠し鬼ごっこってなに? 目隠ししたら鬼ごっこはできないよ?」
エレン「えーと……確か鬼が目隠しして周りにいるやつらが手を叩いて誘導するゲームだったかな」
クリスタ「なにそれ? 面白いの?」
エレン「クリスタは知らないのか、俺も知らなかったけど面白いらしいぞ」
クリスタ「へえー、よくわからないけど、私やってみたい!」
ミーナがいるのは珍しい
ライナー「……なに、いきなり本命だと……」
ベルトルト「……面白いように事が進んで行く……」
アルミン「……やっぱりエレンの力だね、エレンは下心がまったくないし……」
コニー「……アイツ何も考えてなさそうだしな……」
ジャン「……エレンもそのセリフだけはお前に言われたくないだろうよ……」
マルコ…
クリスタ「目隠しってタオルでいいのかな?」
エレン「目さえ隠れればいいんじゃないか」
クリスタ「……わあ、真っ暗……どうしよう、これすっごく怖い!」
ユミル「顔は笑ってるじゃない」
クリスタ「うふふ……えーと、ユミルはこっちにいるのね」
ユミル(ヨタヨタ歩きながらこっち向かってくる……ちょっとイタズラしてみるか……ちょっと移動してっと……)
クリスタ「……あれ? ユミル? ……ここにいないの?」
ユミル(誰もいない空間に向かって必死に何かを掴もうとしている……これは可愛い!)
ライナー(天使は小動物だったのか、でも可愛い)
ベルトルト(小動物系のクリスタはやはり可愛い)
アルミン(クリスタマジ小動物)
クリスタ「ユミル~? どこにいるの? ……もしかして、どこか行っちゃったの?」
ユミル(不安になりながら私を探す姿も可愛い……なるほどエレンにしてはいい提案をしたじゃないか)
クリスタ「……ユミル? ……本当にいないの? それになんでさっきから静かなの?」
ユミル(クリスタの震え声……これはたまらん)
コニー(パネエ! これパネエよ!)
アルミン(腹くくって正解でした)
クリスタ「……みんな……もしかして……私をおいてどこかに……」
ミカサ「……クリスタ、怖いのなら目隠しを取ればいい」
クリスタ「え、ミカサ! そ、そうね! ……もう、みんないるじゃない! なんで静かになっちゃってたの!」
ユミル(涙目になりながらプンスカ怒るクリスタも可愛い)
アルミン(……でもこれ、ちょっとまずいかも、みんな静かになると誰も声をかける雰囲気じゃなくなる)
アルミン(多分、ミカサが声をかけなかったら本当にクリスタが泣きだしちゃってたかもしれないし……)
エレン「クリスタ、どうだった?」
クリスタ「すごく怖かった! ……でもちょっとだけ面白かったかも」
エレン「本当か? ……それじゃあ、次は誰がやろうか?」
コニー「あ、はいはい! 俺! 俺がやる!」
ジャン「な、バカ野郎! 順番は俺からだろうが!」
アニ「……順番?」
アルミン「あー、待って2人とも、目隠し鬼ごっこをやる前に決めなきゃいけないことがあったんだ」
ミーナ「決めなきゃいけないこと?」
アルミン「うん、このゲームってさ、一応手を叩いて鬼を誘導させるゲームなんだ、だから手を叩く人を決めないと」
クリスタ「あ、そっか、だから私すごく怖かったんだ」
アルミン「うん、目隠し鬼ごっこは鬼が手を叩いている人を誰か当てるゲームだから鬼になる人には内緒で手を叩く人を決めよう」
エレン「じゃあ、鬼決めはどうする?」
アルミン「そうだね……くじ引きにしようか」
エレン「わかったじゃあ適当にくじを作るか」
ジャン「……おい、アルミン、話が違うぞ、一番目は俺のはずだろう……」
アルミン「……そうだったけど仕方ないよ、もう筋書き通りにはならなくなっているんだ……」
ジャン「……だけどよ……」
アルミン「……それにね、これ以上下手な事をすると怪しまれ……」
アニ「アルミン」
アルミン「わ!? ……な、なに? アニ?」
アニ「また男どもで内緒話?」
アルミン「あ、いや……そういうわけじゃないけど……」
アニ「……それと、アンタ、よく目隠し鬼ごっこのルール知ってたね」
アルミン「え? それはエレンが最初に言ってたから……」
アニ「エレンはこのゲームのやり方だけ説明して目的までは言ってないよ、クリスタの遊び方は違うんだろ?」
アルミン「あ、うん……えーと、たまたま知ってたんだよ、たまたま……ははは」
アニ「……」
――それから目隠し鬼ごっこは滞りなく進み、そこそこ盛り上がった――
ジャン「……えーと、このチビ具合に、この坊主頭は……誰だ?」
コニー「何でそこまで言ってわかんねえんだよ!!」
クリスタ「ふふふ」
エレン「ははは」
ジャン(クソ、盛り上がってはいるが、結局男が鬼になったら手を叩くやつも男になってるじゃねえか、これじゃあ意味ねえ!)
ライナー(女子が鬼になっても女が手を叩く役になっているし、しかも多分そろそろ女子達に飽きが回ってくる)
ベルトルト(この閉塞感を突破するには誰かが先陣を切らないと……でももうこの空気は僕らじゃ変えられそうにないし)
コニー(もうダメってことか……くそー、女神に触りたかったー!)
アルミン(いや、まだ諦めるのは早い、クリスタやエレンは純粋にゲームだと思い込んでいるけど、他の人たちはこのゲームの意味に気づいている)
アルミン(ということは……)
エレン「それじゃあ、次の鬼な、次の鬼は……」
ミカサ「……私」
エレン「お、ミカサか」
ミカサ「タオルかして……結んだ、これで見えてない」
エレン「よし、それじゃあ手を叩くやつを決めるか、ミカサは耳を塞いどけよ」
ミカサ「必要ない」
エレン「え?」
ミカサ「私は音なんかなくても問題ない」
アルミン(来たか……待っていたよ、この時を)
アルミン「本当かい、ミカサ、じゃあ音なしでやってみようか」
エレン「え?」
アニ「……!」
ベルトルト「……なるほど、確かにこれなら」
エレン「何言ってんだよ、ミカサ、いくらなんでも音がなくちゃお前だって……」
ライナー「……まあまあ、待てエレン、本人がいらないって言ってるんだ、好きにさせてやろうぜ」
エレン「お、おう、そうか……え? でもそれじゃあゲームにならない……」
ジャン「だあ、もういいから黙っとけお前は! ミカサ、始めてくれ」
ジャン(ミカサの勘違いワンチャンスに賭けるしかないってことか……上等だぜ!)
ミカサ「……」
エレン(ミカサのやつ音がなくてどうするんだ? 適当に歩くのかな?)
エレン(あれ、こっちに向かって歩いてくる、しかも全然よどみないぞ)
エレン(俺の目の前に止まった……な、何!?)
ミカサ「この抱き心地は……エレン」ギュッ
アルミン(さすがミカサ、一切迷いなくエレンの元まで歩いて行ったね、そしてジャン、ご愁傷様)
ミカサ「この匂いも……エレン」クンクン
エレン「か、嗅ぐな、正解だ、正解だから放せ!」
ミカサ「……」
エレン「なんで黙るんだよ、放せってば!」
ミカサ「……」
エレン「せめてなんか喋れ!」
アニ「その辺にしておきな」
ミカサ「……何? 急にタオルを取らないでほしいんだけど」
アニ「何時まで抱きついているつもり?」
ミカサ「……」
エレン(やっと放してくれた……まったくこいつ力強すぎだろ、身動き一つ取れなかった)
ミーナ「でもすごいわね、ミカサ、本当にエレンがどこにいるかわかるの?」
ミカサ「わかる、目が見えなくても耳が聞こえなくても、私はエレンの元にたどり着ける」
エレン「マジかよ……」
ミカサ「本当、疑うのならもう一度試してみる?」
エレン「……いいか? みんな?」
アルミン「うん、いいんじゃないかな(ミカサの好きにさせれば)」
ライナー「面白そうだしな(アニが的な意味で)」
ジャン「是非やってみるべきだ(これでもうワンチャンス!)」
エレン「それじゃあ、お前がもう一回鬼な」
ミカサ「一回と言わず、何回でもできるけど…………タオルを結んだ」
エレン「…………よし、それじゃあ、10秒数えてから動いてくれ」
ベルトルト(エレン、移動するつもり……じゃないな、まさか、エレンにしては珍しい頭脳プレー?)
ユミル(ま、無駄だと思うけどねえ)
ミカサ「……8、9、10、エレンいくよ」
エレン(ふん、10秒数えさせてその間に俺が移動したと思い込んでいるはず)
エレン(だが、数えさせる前から俺は移動していない……)
エレン(これでミカサは俺の事を捜し歩くはず…………あれ? ミカサがこっちに来る? いやいや、そんなはずは……)
エレン(いや、やっぱり来てる……くそ、捕まってたまるか!)
クリスタ(あ、エレンが大きく一歩ずれた)
ミーナ(そしてミカサもまるで見ているかのように軌道修正した……)
エレン(え、え、なんでわかるんだ? 俺、音をたててないよな? まさか見えてるのか!?)
エレン(ダ、ダメだ、俺は絶対に捕まらないぞ!)
コニー(なんかもうエレンのやつ動き回ってるな、でもミカサも正確に後を追ってるし)
ライナー(エレンも無駄なのにな……まあ、これはこれで面白いか)
エレン(ヤバい、このままじゃ捕まる……えーい、こうなれば…………ジャンガード!)
ジャン(な、なんだエレン、俺の背中に隠れて……は! ミカサが真っ直ぐこちらに来る、これはまさかワンチャンあ……)
ミカサ「……邪魔」ポイッ
ジャン「グハッ」ガクッ
エレン(な、ジャンが投げ飛ばされた!? )
アルミン(ジャン、最後の最後まで希望を信じた君の勇姿を僕らは忘れない
ミカサ「エレン、捕まえた」
エレン「……ちくしょう、なんでわかるんだ? 本当は見えてるんじゃないか……?」
ミカサ「見えてなどいない、その証拠に今度はエレンが目隠しするといい」
エレン「お、俺が? ……ていうか放せ! いちいち抱きついてくるな!」
アニ「……」ギリッ
ライナー「……」ニヤニヤ
アニ「……」ドゴッ
ライナー「ガハッ」ガクッ
エレン「……? なんで無言でライナーを蹴り飛ばしたんだ、アニ?」
アニ「何でもないよ、それよりも次はアンタの番なんだろ? さっさと目隠しをしなよ」
エレン「お、おう……わかった」
アルミン(もう、くじ引きとかじゃなくなってるね……言い出す空気じゃないけど)
エレン「よし! 目隠したぞ」
アルミン「あ、待って、今から手を叩く人を……」
アニ「決める必要はないよ」
アルミン「え?」
アニ「エレン、アンタの幼馴染は音がなくてもアンタの場所までこれた、だったらアンタもそれができるんじゃないの?」
エレン「な、そんなことできるわけないだろ!」
アニ「……だってさ、ミカサ」
ミカサ「……そんなことはない、私はエレンを信じてる、必ずエレンは私の元に来る!」
アニ「それじゃあエレン、アンタも音なしだ、それでミカサの元までいけばいい」
エレン「だ、だから、俺は……」
ミカサ「……エレン!」
エレン「な、なんだよ……」
ミカサ「私はあなたを信じてる……」
エレン「う、わ、わかったよ! やればいいんだろう、やれば!」
アルミン(これはもしかしてミカサは出しにつかわれた?)
ユミル(へえ、あの強面女も中々やるじゃん)
クリスタ(エレン……頑張って! ミカサは今、乙女の顔……とはちょっと言えない顔をしているけど、あなたの事を待っているわ!)
コニー(ミカサの顔やべえな……自分以外のところにいったらそのまま呪い殺してきそうな雰囲気だ)
エレン「えーと……こっちか?」
ベルトルト(いきなりミカサと真反対の方向に歩き出した……ああ、もうミカサの顔が見るに堪えない……)
エレン「な、なんだよ、これ、本当になにも見えないんだな……」
ミーナ(エレンのヨタヨタ歩き、ちょっと可愛いかも……あれ? なんか私の方に来てない?)
エレン「そこに誰かいるか? ミカサ?」
ミーナ(そんなこと言われても返事できないわよ……とりあえず、声を出さないように両手で口を塞いどきましょう)
エレン「お、おい、誰もいないなんてことはないよな?」
ミーナ(だから私がいるんだってば! ……ああ、もう目の前まで来ちゃった、エレンの手が肩に……)
エレン「……良かった、誰かいた……えーと、ミカサか?」
コニー(すげー馴れ馴れしく肩さすってる……あ、腕まで触りだした)
エレン「ミカサ? ミカサじゃない? くそ、わかんねえ」
ミーナ(いやいや、体格とかで見当つくじゃない、明らかに私ミカサより小さいでしょ……あ、そこダメ……くすぐったい……)
エレン「サラサラだな、髪かな……」
ミーナ(髪撫でられちゃってる……なんだかとっても恥ずかしい……でもエレンの手つきやさしい……)
エレン「……えーと……」
ミーナ(……!? ちょっと待って! 髪をつたって手を下すのはダメ! それ以上下に行くと……)
エレン「……なんか柔らかいな」
ミーナ(……! ……!! ……!!!)
ユミル(やべー、やりやがったコイツ)
クリスタ(ちょ、ちょっとエレン、どこ触ってるの!?)
アルミン(ミーナ、いくらなんでもそこは抵抗しなよ……)
ミカサ「エレン!!!!!!」
エレン「!」ビクッ
エレン「な、なんだ、後ろにいたのか……ていうかデカい声出すなよ」
ベルトルト(鼓膜が破けるかと思った……心臓に悪いよ、まったく)
コニー(耳がジンジンする……あれ、でも音出しちゃいけないんじゃなかったけ)
エレン「えっとこっちだよな」
アルミン(よかった、今度はちゃんとミカサの方に向かってる……もうミカサの顔はまともに見れないけど)
クリスタ(もう、エレンったら、ミカサが怒るのも当たり前なんだから!)
ユミル(ミカサもヤバいけど、隣の強面女もかなりやばいな、このゲーム、無事に終わるのか?)
ミーナ(エレンに触られたエレンに触られたエレンに触られたエレンに触られたエレンに触られたエレンに触られたエレンに触られた)
エレン「ミカサ……こっちか?」
コニー(そっちじゃねえー、なんで微妙に隣の方に行くんだよ)
ベルトルト(そっちはアニがいるよエレン……もしかしてエレンも本当は見えているんじゃないのかい?)
エレン「人の気配がする……ミカサ?」
アニ「……」
アルミン(だから返事は出来ないんだってば)
ユミル(アイツ、あんなに手を広げて……そんなに広げたまま近づくと抱きついちまうぞ)
クリスタ(惜しい、エレン、もうちょっと左にずれて!)
ミーナ(はっ、今まで私は何を……あれ、いつの間にかエレンがアニの前に?)
エレン「……今度こそミカサだろ……」
アニ「……」
ベルトルト(ミカサという言葉出てくるたびにアニの眉間のしわが増えていく気がする)
エレン「……おっと……」
アニ「……!」
コニー(うわ、今度は抱き着きやがった)
アルミン(もうやりたい放題だね、エレン……)
エレン「……細いな」
アニ「……」
クリスタ(細いな、じゃないでしょ! それはミカサじゃないのよ、エレン!)
ミーナ(……ちょっと、さっきまで人のこと色々触っておいてなんなのよ、それは!)
エレン「なんかいい匂いがするな……」
アニ「……」
コニー(何言ってんだコイツ……)
ユミル(あの強面が……女の顔になっている、だと……)
ミーナ(エーレーン! 絶対責任とってもらうからね!)
エレン「あれ、もしかしてミカサじゃない?」
アニ「……」
アルミン(いや、抱きしめた時に気づきなよ、明らかに体格が違うでしょ)
ベルトルト(今のうちに耳塞いどこ)
エレン「……じゃあ、どこにいるんだ?」
アニ「……降参?」
エレン「うわ、え? も、もしかしてアニか?」
アニ「そうよ……それで降参する?」
エレン「え、えーと……」
ドオオオン!!
エレン「な、なんだ!? 建物が揺れた……まさか巨人が来たのか!?」
アニ「……違うから安心しなよ」
ミカサ「……」
アルミン(ミ、ミカサの足元に大きな穴が……)
ユミル(立ったまま床を踏み抜くってどういう脚力してんのよ……)
ベルトルト(大きな声じゃなくて、直接的な方法をとったんだね、それは予想してなかったな)
アニ「……それでどうするの? 降参?」
エレン「あ……いや、まだ続ける」
アニ「……そう」
エレン「……こっちかな」
クリスタ(そうそう! そっちよ! 一歩ずれるだけでいいの!)
エレン「…………あ」
エレン(この匂いは……)
アルミン(やっとミカサの前まできた……あれ? エレン、何しているの?)
コニー(エレンがミカサの頬を撫でてやがる……)
ベルトルト(心なしかミカサがまとっていた殺意のオーラが消えていくような……)
エレン「やっとわかった、お前がミカサだろ」
ミカサ「エレン!」
エレン「うわ! だから抱きつくなよ!」
ミカサ「やっぱりエレンは私のことがわかった、私はエレンを信じていた」
アニ「……2回間違えたけどね」
ミカサ「……」
見てるぞ
アルミン「い、いやでも、8人いる中で2回間違えただけで済んだんだよ? これはすごいことだと思うよ!」
ミカサ「……! そう、これはとてもすごいこと」
ベルトルト(大声出したことは触れないほうがいいよね)
ベルトルト「うん、僕もそう思うよ」
ユミル「でも床ぶっ壊して……モガッ」
クリスタ「そうよ、これって2人の愛の力じゃないかしら」
ミカサ「愛の力……」
アニ・ミーナ「「……それは違うんじゃない?」」
アニ・ミーナ「「……え?」」
アルミン(なんかまた変にこじれた気がするんだけど、僕は気にしない! 僕は気にしないんだ!)
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アルミン「……ちなみにまだ続ける? 目隠し鬼ごっこ……」
ベルトルト「……もう潮時じゃないか、さすがにグダりそうだよ……」
アルミン「……コニーは、どうする……」
コニー「……俺ももういいや、なんかエレンの目隠し鬼ごっこ見てたらどうでもよくなってきた……」
ベルトルト「……その気持ちわかるよ、結局僕ら見せつけられただけだったし……」
アニ「アンタ達……」
アルミン「え? あ、な、なんだいアニ?」
アニ「アンタ達だろ、色々とエレンに吹きこんだりしたの?」
アニ「……それに今回の誕生日パーティーもどうせあのセクハライベントがしたかっただけだろ?」
ベルトルト「……あ、あーと……」
コニー「……ど、どうする?」
アルミン「……うん、実はそうなんだ」
ベルトルト・コニー「「!!」」
アニ「へえ、素直だね」
アルミン「今さら隠す意味もないしね……エレンの誕生日を出しに使ったのは我ながら酷い発想だと思ったよ」
アニ「……」
アルミン「でも、僕達がエレンの誕生日をお祝いしようと思った気持ちは本当さ、信じてもらえないかもだけど」
アニ「……まあ、あんた等だけで金出しあって豪勢な食事を用意したのは認めてやるよ」
アルミン「ははは、ありがとう」
アニ「まあ、それももうないけどね」
アルミン「……え?」
エレン「あ、あれ? テーブルに置いてあった飯は?」
サシャ「あ、ごちそうさまです、エレン」
ミーナ「サシャ!? ……そういえば居たわね、すっかり忘れてたわ」
クリスタ「……もしかして私たちがゲームしている間ずっと食べてたの?」
サシャ「はい、皆さんがお忙しそうなので代わりに食べておきました」
ユミル「……何が食べておきました、だ……このバカ!」
ベルトルト「……はは、これは……笑うしかないね」
コニー「マジかよ!? 俺だってまだ一口も口付けていないんだぞ!」
アルミン「結局こうなるんだね……さ、ライナーとジャンを起こして誕生日パーティーを再開しようか」
エレン「今日は本当にありがとうなみんな、最高の誕生日だった!」
アルミン「うん、エレンにそう言ってもらえてよかったよ」
エレン「ああ、だから、次に誰かの誕生日になったらそいつを全力で祝うからな」
ミカサ「……! 次に一番近い誕生日は私!」
エレン「え、そうだったっけ?」
アニ「アンタの誕生日がいつかは知らないけど、それがウソだってことはわかるわね」
ミーナ「あ、待って……もしかしたら私かも……」
ミカサ「……え?」
アニ「……は?」
ミーナ「ごめんなさい、ウソです……」
ライナー「……俺達が気絶している間に何があったんだ」
ジャン「わからん、しかも奮発して買った食事もきれいさっぱり無くなってるし……」
エレン「そうだ、次の誕生日パーティーも目隠し鬼ごっこをしてみるか、結構盛り上がったし」
ミカサ「それは名案、是非そうすべき」
アニ「……アンタも懲りないね……別にいいけどさ」
ミーナ「また私セクハラされちゃうの? ……できれば今度は誰も見てないところでやってほしいんだけど……」
エレン「……? なに言ってるんだミーナ? まあいいや、どうだ、アルミン達も」
アルミン「うん、まあ(どうでも)いいんじゃない」
ライナー「ああ、良いと思うぞ(どうせ八つ当たりにされて終わるだろうし)」
ベルトルト「ははは、楽しくなりそうだね(今度は耳栓を用意しとかなきゃ)」
ジャン「……よ、よし、今度こそかならずミカサと!」
コニー「お前も懲りないんだな」
おわり
乙
コニーやミーナもいるのがいいな
コニーって正直原作見てても二次特有のキャラ崩壊させずとも
かなり美味しいし動かしやすい良いキャラだと思うけどあんまssで人気ないのが不思議
乙!
面白かった!
乙
>>74
ssだとエレンとサシャがアホコンビにされる事が多いから……
乙
読みやすいし面白かった
乙
乙
エレンはアホよりもド天然だろうな
コニーとサシャがアホだわ
シチューの話がしたいようなので貼っておきますね
「彼氏の実家に行ったらご飯にシチューをかけて食べてた。正直、将来うまくやっていけるかどうか不安になった。
一瞬、結婚できないとも思った」と語るのは、都内の商社勤務のol智子さん(26歳)。
彼女は当編集部の記者の知人女性で、同僚の男性と今年のクリスマスに挙式の予定。
・ご飯にシチューをかけて食べはじめた
そんな彼女が先日、彼氏の実家に3度目の訪問をしたという。今回は、はじめて彼氏の実家に宿泊。
夕食を彼氏の母親が作ったらしいのだが、そこでとんでもない出来事があったとのこと。
彼氏、その父親と母親、そして彼氏の弟全員が、ご飯にシチューをかけて食べはじめたというのだ。
乙!まれに見る良作
乙
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