照「…あれ?尭深は帰省しないの?」 (63)

尭深「は、はい!今年は」

照「…そう」

尭深「宮永先輩は…?」

照「私は、毎年、寮に残る」

尭深「そうなんですか…」

照「うん」

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「し、静かですね…」

照「…みんな、帰省してるから」

尭深「いつも、そうなんですか?」

照「この季節はいつもそう」

尭深「へぇ…」

照「……」

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「えっ…と、なんだか別世界みたいですね?」

照「…そう?」

尭深「だって、みんながいるときは、もっと騒がしくて」

照「あぁ」

尭深「こんなに静寂が続くなんて、嘘みたいです…」

照「たしかに」

尭深「いつもは、淡ちゃんがイタズラしたり」

照「あー…」

尭深「誠子が巻き込まれたり…」

照「…菫が叱ったり?」

尭深「そうですそうです」

照「尭深は、だいたい黙って見てるだけだけど」

尭深「あはは、そうなんですけど…」

照「…けど?」

尭深「私、その雰囲気が結構好きで」

照「…へぇ」

尭深「その…白糸台の麻雀部ってもっと厳しいところかなって思ってて」

照「強豪だからね」

尭深「しかも、寮生活だなんて、不安だったんです」

照「あぁ。そういうものなんだ?」

尭深「はい、私は。でも、虎姫はすごくアットホームで」

照「…そうだね」

尭深「なんだか、家族みたいじゃないですか?」

照「…家族?」

尭深「弘世先輩がしっかりもののお母さんで…」

照「あぁ…そんな感じ」

尭深「誠子がお父さんで」

照「娘に舐められそう…」

尭深「ふふ、淡ちゃんが可愛くて生意気な末っ子です」

照「やっぱり…」

尭深「宮永先輩は…そうだなぁ…」

照「私は…」

尭深「寡黙な姉って感じですね!」

照「姉…」

尭深「あんまり喋らないけど、優秀で、みんなに尊敬される…」

照「…そんなに大したものじゃないよ」

尭深「えっ?」

照「……」

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「えぇっと…いい天気ですねー」

照「…そう?」

尭深「……」

照「……」

尭深「あ、このお茶美味しいです」

照「…私は、お茶の味とか分からない」

尭深「……」

照「……」

尭深「……」

照「……」ペラッ

尭深「あ、あのっ!」

照「!!」

尭深「え、えっと」

照「…どうしたの?」

尭深「…先輩はどうして帰省されないんですか?」

照「……」

尭深「……」

照「……」

尭深「あ、もしかして言いにくいこと…」

照「…尭深は?」

尭深「えっ」

照「尭深はどうして帰省しないの?」

尭深「あ、うちはその、いつもは普通に帰るんですけど」

照「……」

尭深「今年は、母の出産がもうすぐなんです」

照「…出産?」

尭深「はい。この年になって急に」

照「へぇ…」

尭深「母も父も、そのことで頭がいっぱいですし。今年は控えようかなぁ、と」

照「そうなんだ…」

尭深「この年で、急にお姉ちゃんになるって言われてもびっくりですよね」

照「…そうかもね」

尭深「でも、やっぱり楽しみです。家族が増えるなんて」

照「…私が」

尭深「?」

照「私が帰省しないのは、家族がバラバラだから」

尭深「えっ…」

照「私には本当は妹が一人いて、4人家族だった」

尭深「は…初めて聞きました…」

照「でも、すれ違いや、偶然が重なって、仲が悪くなってしまった」

尭深「先輩…」

照「私は、家に居るのが嫌で、寮のあるこの学校に入った」

尭深「そうだったんですか…」

照「麻雀の強豪校だったから、みんな納得したけど、私はただ逃げたかっただけ」

尭深「そんな…」

照「母や、父や、妹の気持ちなんて考えなかった」

尭深「……」

照「だから、みんなから尊敬される姉なんて…」

尭深「あっ…」

照「私には相応しくないよ」

尭深「……」

照「……」

尭深「…え…っと…」

照「…ごめんね。急にこんな話」

尭深「あ!い、いえ!」

照「みんなには言わないで。気持ちのいい話じゃないし」

尭深「は、はい…」

照「じゃあ、するなって思うかもしれないけど…」

尭深「やっ、そんなことは…」

照「…お腹空かない?」

尭深「……え?」

照「私は空いた」

尭深「えぇっ…と…夕飯の時間はもうすぐですけど…」

照「え?」

尭深「…え?」

照「この期間は食堂もお休みだよ?」

尭深「えっ…そうなんですか?」

照「うん」

尭深「知りませんでした…」

照「夕飯の用意とかは…」

尭深「全く…」

照「…そう。じゃあなにか作るよ。軽いものでよかったら」

尭深「えっ」

照「一人分も二人分も変わらないし」

尭深「そ、そんな…」

照「気にしないで」

尭深「じゃ、じゃあ私も手伝います!」

照「…分かった」

尭深「えぇっと、なにを作るんですか?」

照「サンドイッチ」

尭深「本当に軽いものですね…」

照「りょ、量の調節が簡単だから…」

尭深「そ、そうですね!」

照「私は、たまごサラダを作るから、尭深は適当にパンとか具材とか切ってくれればいいよ」

尭深「分かりました」

照「……」カチッ

尭深「……」トントン

照「……」

尭深「……」トントン

照「……」

尭深「…どうしてそんな話を私に?」

照「えっ」グツグツ

尭深「あ、沸騰してますよ」

照「あぁ、うん」

尭深「どうして、内緒にしている家族の話をしてくれたんですか?」

照「あー…」

尭深「……」

照「尭深に、その、妹ができるって話を聞いて…」

尭深「えっ」

照「私みたいにならないように、その、家族を大切にしろっていうか…」

尭深「……」

照「私が偉そうに言えたことじゃないんだけど…」

尭深「…くすっ」

照「わ、笑わないで…」

尭深「あはははっ先輩!」

照「ちょ…そんなに…」

尭深「…ふ…ふふっ…私…妹なんて一言も言ってませんよ?」

照「えっ…」

尭深「今度、生まれるのは男の子です。弟ですよ」

照「っ…!」

尭深「妹さんのこと、気になってるんじゃないですか?」

照「!!」カァアアアア

尭深「…会いにいけばいいのに」

照「……」

尭深「…どうしたんですか?」

照「…それは無理だよ」

尭深「どうしてですか?」

照「妹は一度、私に会いに来た」

尭深「え!よかったじゃないですか?」

照「でも、私は一言も口を聞かなかった」

尭深「え…」

照「口を開けば、言い訳しかでてこないと思ったから」

尭深「そんな…」

照「そうしたら、きっと、妹は軽蔑すると思ったから」

尭深「……」

照「だから、なにも言わなかった」

尭深「……」

照「妹は、私が怒ってると思ったみたい」

尭深「……」

照「それで、今さらどうするの?」

尭深「……」

照「……」

尭深「…茹であがってますよ」

照「えっ、あぁ、うん」カチッ

尭深「…妹さんってどんな人なんですか?」

照「えっ…」

尭深「教えてください」

照「えぇっと…おとなしくて…」

尭深「はい」

照「優しくて…」

尭深「見た目の特徴でお願いします」

照「えっ…と、髪は…短くなってた」

尭深「…私くらい?」

照「より短い」

尭深「そうですか…」

照「身長は…あ」

尭深「?」

照「尭深と同じくらいかな」

尭深「…そうですか」

照「うん」

尭深「じゃあ、私を妹だと思ってください」

照「えっ…っとうわっ!」ガチャン

尭深「…大丈夫ですか!?」

照「尭深、今なんて…?」

尭深「私を妹だと思ってください」

照「えっ…無理だよ…」

尭深「どうしてですか?」

照「だって、咲…妹は眼鏡かけてないし」

尭深「今はかけてるかもしれません」

照「…たしかに」

尭深「ほら、妹ですよ」

照「…そんなに胸、大きくないし…」

尭深「今は大きくなってるかもしれません」

照「えー…それは…」

尭深「……」

照「ないと思う…」

尭深「…お姉ちゃん!!」

照「!?」ビビクン

尭深「お姉ちゃんは…私のなにを知ってるんですか…?」

照「ちょ…尭深…」

尭深「なにも…言ってくれなかったくせに…」

照「うっ…」

尭深「言い訳でもなんでも、私はお姉ちゃんの言葉が聞きたかったです…」

照「……」

尭深「悪いと思ってるなら…行動で示してください…」

照「でも…」

尭深「お姉ちゃん!」ギュッ

照「!?」

尭深「会いたいです…お姉ちゃん…」

照「……」

尭深「……」

照「…尭深」

尭深「…尭深じゃありません」

照「…妹は、私に敬語は使わないよ?」

尭深「あっ…」バッ

照「……」

尭深「ごめんなさい…」

照「どうして謝るの?」

尭深「勝手なことを言って…」

照「ううん」

尭深「…?」

照「…ありがとう」

尭深「!!」

照「…たまごサラダはできたけど」

尭深「えっ、あっ、こっちも切れてます」

照「じゃあ、適当に挟んで食べようか」

尭深「は、はい」

照「…いただきます」

尭深「い、いただきます!」

照「……」ムグムグ

尭深「あ、甘いですね…このたまごサラダ…」ムグムグ

照「…そう?」ムグムグ

尭深「はい」ムグムグ

照「……」ムグムグ

尭深「……」ムグムグ

照「…うちは、いつもこんな味だったけど」

尭深「そうなんですか…」

照「……」ムグムグ

尭深「……」ムグムグ

照「…また、家族で食べれる日がくるかな?」

尭深「!!」

照「……」

尭深「きますよ!だって…」

照「だって…?」

尭深「先輩は、白糸台の理想のお姉ちゃんですから!」



カン!

白糸台が寮と聞いて、つい書いてしまいました
照は帰省とかしないんだろうなぁ
では、支援してくださった方がたありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom