コポポポ…
幼馴染「クックック……」
幼馴染「アーーーッハッハッハッハ!!」
幼馴染「ついに……ついについについにッ!」
バッ
幼馴染「完成したわ!コブラになれる薬、その名も『コブラニナール』!!」
幼馴染「ムァッドサイエンティストを目指して幾年月……」
幼馴染「来る日も来る日も男にバカにされネタにされる毎日……」
幼馴染「最近じゃバカにするどころか憐憫の眼差しで『なんだ、その、頑張れよ……』とか言ってくる始末……」
幼馴染「長かった屈辱の日々ともこれでさよならよ……フフフ、男、待ってなさいよ……」
幼馴染「あたしの研究をコケにした罰を、その身に受けてもらうわよ……」
幼馴染「開発したばかりのこの薬、コブラニナールで……」
幼馴染「男の身も心も、超絶ウルトラカッコ良い宇宙海賊、コブラに変身させてあげるんだから……」
幼馴染「フフフ……ハハッ……アーッハッハッハッハ!!」
コンコン
ガチャッ
男「ノックしたから開けるぞ……ってうわ臭っ何このえも言われぬ香り!?」
幼馴染「まだ開けていいって言ってないのに入らないでって何度言えば分かるのよあんたは!」
男「いやーすまんすまん。……なぁ換気しようぜ。何ていうか……臭い」
幼馴染「女子の部屋に入るなり臭い臭い連呼するな!……まぁ確かに臭いんだけど」
男「自覚あるなら言われる前に……まぁいいや。あ、おばさんから伝言」
幼馴染「……母さんも男をメッセンジャー代わりに使うのをいい加減……臭いからか。何?」
男「高笑いがうるさい。今度やったらお小遣いを1/2にカットする、だそうです。俺もうるさいと思う」
幼馴染「はっ、半分!?ただでさえ研究費用カツカツなのに半分て!?あんたはどうでもいい!」
男「……なぁ、こんな部屋に閉じこもってわけのわからん研究?とかするよりさ……」
幼馴染「ふんっ。凡人には理解できなくて当然よ。あんたもいずれ……いえ――」
幼馴染「今日こそ私の偉大さを理解するわ」
男「……このやり取りも何回目なんだか。で、今回はどんな失敗作ができたんだ?」
幼馴染「ぐぬぬ……鼻からバカにしてかかってるわね……」
男「まぁな。一回も成功した試しがないから」
幼馴染「今回あたしが開発した薬はその名も……」
幼馴染「…………」
男「……その名も?」
ペコポン!
幼馴染「……フッフッフ、その名も『惚れられ薬』よッ!」
男「はいはいすご……あんだとぉぉぉぉぉッ!?」ガタッ
幼馴染「あれれー?バカにしてた割には随分食いつきがいいじゃないの」
男「うっさい!てかそれはマジか!すごい!本当にすごい!今までの失敗全部帳消しにできるレベルだ!」
幼馴染「……単純」ボソッ
男「何?」
幼馴染「何でも。それより飲むの飲まないの?」
男「え。俺が飲んでいいのか?」
幼馴染「他に誰が飲むのよ」
男「幼馴染が自分の非モテライフ解消するのが先じゃ……」
幼馴染「……飲ませてあげようと思ったけど、やっぱやーめたっと」
男「わっ、待ってくれ!飲ませてくれるなら頼む!この通り!」
幼馴染「はいどーぞ」
コポポ…
男「……急に冷静になったが、コレ、大丈夫だよな」
幼馴染「いらないなら、他の人に――」
男「ええい!ままよ!」グイッ
幼馴染「……飲んだ?」
男「飲んだぞ。これで俺はモテライフを――」
ドクン
男「……ぐっ」
幼馴染「……残念だったわね」
男「……残念……?どういう……」
幼馴染「あんたが飲んだのは惚れられ薬なんかじゃないの」
男「何っ!?」
幼馴染「呪うなら薬でモテようなんて浅はかな考えを持った自分を呪うことね!」
ドクンッ
男「くっ、なっ、何を飲ませた幼馴染!」
幼馴染「あんたが飲んだのはあたしが開発した新薬!その名もコブラニナール!」
男「コブラになる!?まさかそのコブラって……」
幼馴染「そう、私の永遠のマイヒーロー……宇宙海賊コブラよ!」
幼馴染「あんたにはあたしを散々バカにした代償として……しばらくコブラになってもらうわ!」
男「浅はかなのはどっちだよ……!それにどうせまた失敗に……」
幼馴染「いえ、今度こそ究極至高最強の発明よ。あたしの思いの丈を尽くして開発したんだからね!」
ドクンッ
男「ぐぅっ……!体が……熱い……!」
キラキラ…
幼馴染「すごい……!みるみる髪が天然パーマの金色に……!」
男「ぐああっ……!」
ムキムキ…
幼馴染「おお……!無駄のない引き絞られた筋肉がモリモリと……!」
男「だゃあ”あ”あ”あ”~あ”~あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!」
シュゥゥゥ…
幼馴染「成功……!大成功よ!」
男「…………」
幼馴染「流石に顔立ちは男のままか……まだ改良の余地あり、と」カキカキ
男「…………」
幼馴染「……!」
幼馴染「……そうね、折角だし確認も兼ねて言ってみましょう」ドキドキ
幼馴染「……コホン」
幼馴染「お前は……コブラッ!?」
―ガカァッ!
男「……へへッ」
男「そう大声で呼ばれると照れるねぇ」
幼馴染「……わお///」
幼馴染「ん”んっ!テストは続行よ!」
幼馴染「あなたの名前は?」
男「俺はフリーの宇宙高校生、コブラ」
幼馴染「……よく分からないが記憶の整合性が取れてる、と」カキカキ
幼馴染「それじゃぁコブラ、あたしの名前は?」
男「あんたの名前はレディ、本名は幼馴染で、俺の自慢の相棒さ」
幼馴染「レディ……!ムフ、ムフフフ!いい、実にいい気分だわ!」
男「何の検査か分からんがレディ、さっさと終わらせてくれよ。退屈なのは苦手なんでね」
幼馴染「分かっているわコブラ。必要な検査だからもう少し時間を頂戴」
男「はいはい分かりましたよと」
幼馴染「……くぅーーータマランッ!!」
男「んんーっ?」
幼馴染「いえ、何でもないわ。次は――」
コンコン
ガチャッ
幼馴染母「ねぇ、良かったら男くんも晩御飯食べてく?」
幼馴染「だからノックをしてあたしが返事をしたら開けてって何度言ったら分かるの母さん!」
幼母「……あらあら」
幼馴染「聞いてるの母さん……って……ん?」
幼馴染(し、しまったー!男を今見られちゃマズいじゃない!)
幼馴染(男は一度母さんと会ってるんだから……こんな急変した姿を見られたら……!)
幼母「あなたは……コブラッ!?」
―ガカァッ!
男「どーも、娘さんの部屋にちょいとお邪魔してますよ」
幼母「ほんの少し見ない間に男くん随分と男前になったわねぇ」
男「いやぁ奥方の美しさに比べれば足元にも及ばないですなぁ」
幼母「まぁ、男くんたらお上手ねぇ」フフフ
幼馴染「……なんか……問題なさそうね」
――――
男「よぅレディ。ばかに浮かない顔してるじゃないか」
幼馴染「……朝は弱いの。知ってるでしょコブラ」
男「どうせまた夜遅くまで研究に没頭してたんだろう?そう根を詰めちゃぁ肝心な頭にも良くないぜ」
幼馴染「……いつものやり取りと同じ内容なのに嬉しい。不思議///」
幼馴染「――あ。そうそうコブラ。昨日家帰ってその……大丈夫だった?」
男「んゥー?どういう意味だそりゃ?」
幼馴染「いや、何というかその……家族の?コブラに対する反応?みたいな……」
男「いンやぁ?特別変わったこともなかったがなぁ」
幼馴染「なかったの!?あたしが言うのもアレだけどおかしくないそれ!?」
男「いつも通りの食事に、程々の家族の団欒、思春期の息子に対する距離感はバッチリってヤツさ」
幼馴染「普通、息子が金髪になって帰ってきたら問い詰められそうなものだけど……」ブツブツ
男「あとは俺の親父さんとお袋さんが『お前は……コブラッ!?』ってのを会う度やってた位かねェ」
幼馴染「……それでいいんだ……。まぁそれでいいなら私は別にいいんだけどね……」
男「!」
幼馴染「あ、それと放課後なんだけど――」クルッ
シーン…
幼馴染「コブラ?あれ?今さっきまで隣に――」
男「いやぁ~相も変わらず美しいですなぁ委員長!」
委員長「は、はいッ!?」
男「凛々しい瞳にノンフレームの眼鏡が似合うこと似合うこと。それにスタイルも実にイイ!」
委員長「そっ、そんな……それは褒めすぎですよ……///」
幼馴染「コッ、……コブッ……ラッ!」ゼェゼェ
男「ん?どうしたレディ、そんなに息を切らせて」
幼馴染「あなたがッ……は、早すぎるからッ……でしょッ……!」ゼェゼェ
男「自慢じゃぁないが――」
幼馴染「し、知ってる……!5秒、フラット……!」ゼェゼェ
委員長「ね、ねぇ、幼馴染さん。この方とお知り合いなの?」
幼馴染「知り合いも、何も……男、だよ……」ゼェゼェ
委員長「……誰が?」
幼馴染「だから、アレが、男」
委員長「……あの金髪の男の方が、男くんだって言ってるの?」
幼馴染「そう、だよ」
委員長「そんなバカな。だって男くんはもっとこう――」
幼馴染「顔。顔を見なよ。視線上げて、ね……」フー…
委員長「…………」ジー
男「フフフフフーン♪」
委員長「! 嘘でしょ!?顔は間違いなく男くんだわ!」
幼馴染「これには深い理由があってね――」
――全略――
幼馴染「と言うワケなのよ」
委員長「つまりあなたの作ったコブラニナールを男くんが飲んでしまい――」
委員長「どういう訳か成功して男くんがコブラになってしまった、と」
幼馴染「そゆこと♪」
スッパァァァン!
幼馴染「痛っ!」
委員長「バカじゃないの!そんなヤバげな薬をいきなり人に使うとか……!失敗したら大変な事になってたかもしれないのよ!」
幼馴染「大丈夫!今の所は記憶の整合性も取れてるみたいだし!それに時間制限あるから!多分!」
委員長「多分ッ!?そう、この前もそうだったわね。あなたの意味不明の同好会で作った怪しげな――」
男「あァ~っと、2人ともそこまでにしよう。なぁ?」
委員長「……でも幼馴染さんが――」
男「駄目だよキミみたいなとびっきりの美人が凄んじゃぁ……似合わないぜ」
委員長「び、美人だなんて……///」
男「レディも反省するべき点はあったんだろう?」
幼馴染「……う”ー……たくさんあるよそりゃ……」
男「だったら喧嘩せずにお互い、冷静に――」
キーンコーンカーン―
男「……失敬、オレぁちーとばかし用事を思い出したので……お先に!」ビュンッ
幼馴染(自分だけ遅刻を免れようなんて……!)
委員長(誰のせいでこんな時間に……!)
幼馴染・委員長「おのれ……コブラ!!」
――――
委員長「……ねぇ」
幼馴染「……何、委員長」
委員長「あなたこうなる事分かってて男くんをコブラにしたのよね?」
幼馴染「…………」
委員長「昨日まで平凡だった生徒が、突然金髪にしてきたらどうなるか分かってて……コブラにしたのよね?」
幼馴染「……えーっとですね」ヘロリ
委員長「そしてその対策がちゃんとあって、男くんにコブラニナールを飲ませたのよ、ね?」ゴゴゴゴ…
幼馴染「……あはははは」ヘロリ
委員長「…………」
幼馴染「……ごめんなさい!何も考えてなかったです!」
委員長「何考えてるの!?何も考えてないって何考えてるのあなた!?」クワッ
幼馴染「な、何も考えてないですッ!ごめんなさいッ!」
委員長「うちは身だしなみ、服装に関しての校則厳しいの知ってるでしょ!」
幼馴染「はい知ってますッ!白衣で来たら速攻没収されて半泣きになりましたッ!」
委員長「茶とかでギリギリ許容できるラインを攻めるならまだ分かるけどッ!」
委員長「金!よりによって金髪よ!!直球で不良よ!!……下手したら停学なんて事も……」カジカジ
幼馴染「てっ、停学!?そりゃマズいよ委員長!」
委員長「最初からそう言ってるでしょ!内申書に停学なんて書かれたら将来設計図に大きなヒビが……」
幼馴染「あわわわわ。どうしよう、男に養ってもらう計画が――」
委員長「いい大学入って共働きで幸せな家庭を築く計画が――」
幼馴染「ん?」
委員長「ん?」
男「それは~まぎれもなく~♪」
幼馴染「歌ってる場合じゃないのよコブラ!」グイグイ
委員長「生徒指導室に呼ばれている自覚あるの!男……コブラ!」グイグイ
男「だぁっとっと。よせよぉ、ズボンが脱げたらどうするんだよ」
委員長「厳重注意だけで済めばいいけど、停学とかだったら――」
男「だぁいじょぅぶそんなに心配しないしない。何とかなるさ」ニッ
幼馴染「そうね。確かにこの程度、あなたならピンチの内にも入らないわ」キリッ
委員長「幼馴染さん感化されないで!」
幼馴染「……つい///」
ガララッ
教師「おう男、来たか――って何でこんなにいるんだ?お前たちを呼んだ覚えはないが……」
委員長「私は委員長としてクラス内の風紀を守る役割があります。男くんの金髪についての件ならば、私も同伴するべきだと判断しました」
教師「お、おう?ま、まぁご苦労さんなこったな。……で、幼馴染は何故ここにいるんだ?特に委員会とか入ってないよな?」
幼馴染「え、えっと……幼馴染だから来ました!」
教師「……はい?」
幼馴染「幼馴染として、その、今回の男くんに関係あったりなかったりするので!一緒に叱られに来ました!」
教師「お、おう?よく分からないが、ご苦労さんなこったな。男はそれでいいのか?」
男「なぁに、別に構わないさ」
教師「……まぁそれでいいなら、話を進めるぞ」ギィッ
教師「結論から言うと停学1週間、それと反省文を原稿用紙400枚詰めで10枚提出する、ってところだ」
幼馴染「ッ!!」
委員長「……先生、男くんが停学を免れる事は出来ませんか?」
教師「うーん、無理だなー。俺も上からそうしろって言われた事をしてるだけで、特に俺がどうこうする権利とかは持ってないんだよ」
教師「だからこれを守ってもらうしかないというか……残念ながらね」トントン
委員長(どうしよう、どうすれば停学を……奉仕活動とかで免除とかを――)
幼馴染(どうしよう~。あたしのせいで男が停学とか罪悪感がハンパないよ。ええっと突破口を何とか――)
男「……先生」
教師「んー?今日は授業出ていいけど、明日からは――」
男「いやね?この学校の偉~い方達はどうやら勘違いをしているようでして」
教師「……勘違い?」
男「確かに俺は『真っ黒』に染めてましたよ?……昨日までは、ね」
教師「ま、真っ黒?」
幼馴染(おと……コブラ?)
委員長(どういうつもり……?)
男「へへっ、つまり簡単に言うとこの髪、地毛なんですよ地毛」クルクル
教師「じ、地毛!?この髪がか!?」サワサワ
男「父方の祖父が外人でしてね、隔世遺伝……だったかな?それで天パのかかった金髪ってワケで」
教師「……そ、そんな話を信じられる――」
プツッ
男「信じるも信じないも、この髪の毛見れば一目瞭然でしょーに」ヒョイッ
教師「毛根部分から金色……つまり――」
男「そう! 俺は本来の髪の毛の色に戻しただけなんですよ先生!」
教師「……では何故今まで黒に染めていたんだ?」
男「いやァ、何しろ気が小さい性分なもので。金髪だといじめられやしないかと、もぅ心配で心配で」
男「だから誤解、誤解なんですよ先生」
教師「…………」
教師「自分を守る為に、黒く染めていたのか……」
教師「うむ、それなら無罪放免だな」
幼馴染・委員長「「ほ、ほんとですか!」」
教師「あぁ。私から各教員にも連絡しておく」
――――
テクテク
幼馴染「いやー危なかった。詰んだと思ったよ」
委員長「薬が髪まで効いてなかったら危なかったわね……」
男「髪を触られた時は、流石に俺も肝を冷やしたがねぇ」
委員長「……何故?根本から金髪だったんだから心配する必要なんてないじゃない」
男「委員長、俺の髪をよォ~く見てみな」
委員長「……?」
ジーッ
委員長「あ!」
幼馴染「えっ、何々?見えないんだけど!」ピョンピョン
男「どうやら気付いたようだな委員長」
委員長「コレは……カツラッ!?」
―ガカァッ!
幼馴染「カ、カツラぁ?」
男「ご名答!最近はウィッグだなんてオシャレな言い方をするらしいがね」
委員長「いつの間にそんな物を……」
男「演劇部の部長さんにちょっとお願いしたらね、セットまでしてくれたのさ」
幼馴染「ホントだ!マジでカツラだコレ!」
男「いやァ、鏡見て驚いたのなんの。この通り生え際までバッチリさ。ハゲの未来は明るいねぇ」バサッ
――――
コポコポ…
幼馴染「うぅむ……根本から金髪に変異してなかったとは……まだまだ研究不足ねぇ」
幼馴染「……あれ?この薬品切らしてたっけ」
幼馴染「ねぇコブラ。あなた手が空いてるなら化学準備室に――」
シーン
幼馴染「あーそっか。委員長と一緒に風紀委員のところへ行くって言ってたっけ……」
幼馴染「…………」
幼馴染「面倒臭いけどあたしが取りに行くしかないかぁ」ポリポリ
――――
チャリッ
幼馴染「勝手にお借りした鍵を使いまして~っと」
カキッ
幼馴染「……あら?」
幼馴染「……鍵、開いてる?」
幼馴染「んー、先生不用心だね。誰かに勝手に入られても知りませんよー、っと」
幼馴染「誰もいないだろうけどおじゃましまーす!」
ガララッ
鼻ピアス「…………」
グラサン「…………」
刺青デブ「…………」
幼馴染「…………」
チラリ
幼馴染「……タ、タバコに……お酒?」
幼馴染「…………」
幼馴染「……えーと、その、あはは……」ジリッ
幼馴染「お、お邪魔しましたー!」ダッ
鼻ピアス「クソッ!おいお前らそのアマ押さえろ!」
ガシッ
幼馴染「ひぃっ!?は、早すぎ!あたし捕まるの早すぎ!こんな事なら日頃から運動を――もがーっ!」
ガララッ ピシャッ
――――
鼻ピアス「……チッ、参ったな。こんなところに人が来るとは思わなかったぜ」
グラサン「どうするよ、コレ。バッチリ見られちゃったよ、コレ」
刺青デブ「フヒッ、停学明けてまた停学とか……流石に進級危ういッス」
幼馴染「あのあのっ、あたし誰にも言わないから逃がしてくれないかなー、なんて……」
鼻ピアス「逃げようとし奴に言われて、俺たちが納得すると思うか?」
幼馴染「じゃ、じゃぁ!大声で叫ぶよ!もしくは大音量で歌うから!」
鼻ピアス「あァ?放課後の技術棟に人いるワケねーだろ。バカかテメー」
グラサン「……念の為、喉潰しとく、コレ?」
幼馴染「ふぇっ!?」
鼻ピアス「見えるところに傷残すのはマズいだろ」
刺青デブ「フヒッ、なら俺に名案があるッス」スチャッ
鼻ピアス「……スマホ?……ああ、なるほどな」ニヤニヤ
グラサン「うん、確かに手っ取り早いな、ソレ」ニヤニヤ
幼馴染「……え、え?なんだかとっても嫌な感じ……」ジリッ
鼻ピアス「よく見りゃ結構上玉だしな」
グラサン「すっぴんじゃね?ちょっと野暮ったい感じするけど」ツツー
幼馴染「い、嫌!髪触んないでよ!」バッ
刺青デブ「フヒッ、ねぇねぇ、君、経験ある?」フシュー
幼馴染「け、経験て……?あ、こっち来ないでよ!」
刺青デブ「あ、ない?その反応ないね!フヒヒッ!」
鼻ピアス「まぁた始まったよ……。見りゃ分かるだろ。おぼこちゃんだよおぼこちゃん」
幼馴染「……おぼ、こって……嘘、まさか……」サー
グラサン「……あ、結構俺ヤル気出てきたかも。今の表情結構キタわ」
刺青デブ「あっ、でも俺最初でお願いしまスよ。回数少なくてもいいッスから」
鼻ピアス「初物好きだねお前も……」
グラサン「てか言い出しっぺが撮らないとかないわー、ソレ」
鼻ピアス「まぁいいや処女面倒クセェし……オイ、譲ってやれよ」
グラサン「……ッチ」
刺青デブ「ホッヒ!あざース!」
鼻ピアス「まぁ、もうナニされるか分かってるだろうけどさ」
幼馴染「ひっ……!嫌!こっち来ないで」ブンッ
パシッ
幼馴染「あっ……痛ッ」
鼻ピアス「今からお前のこと犯すから」
刺青デブ「フヒヒッ!直球過ぎるッスよ先輩」
幼馴染「……ッ!ぜ、絶対に言わないから!約束するからやめてっ!は、離してよー!」
鼻ピアス「あぁ、タバコとかな。正直もうどうでもいいんだわ。ホラ、あいつらヤル気になっちゃってるしさ」
グラサン「…………」ニヤニヤ
刺青デブ「……処女、ホヒッ、処女処女っ」フシュー
鼻ピアス「月並みだけどさ。今からヤル事全部動画におさえとくから」
鼻ピアス「まぁ、さっきの事も含めて……もしバラしたらネットに垂れ流すってことで、ね?」
幼馴染「……い、嫌よ……こんなの……!」グスッ
鼻ピアス「あーあー、泣くと益々ヒドい事になるぜ?そこの2人はゲスい趣味してるからさー」
鼻ピアス「まぁ、俺は後で優しく相手してあげるよ。あいつらと違ってちゃんとイカせてやるから、安心しなよ」グッ
鼻ピアス「ブレザー脱がして、袖縛っちまおう」
男「着たままのが趣あると思うけどねェ」
鼻ピアス「着エロか。確かに一理あるが、暴れられるのを防ぐほうが……」
男「…………」
鼻ピアス「…………」
刺青デブ「フヒッ!?」
グラサン「……!」バッ
鼻ピアス「だっ、誰だテメェ!」
幼馴染「ハァ、ま、待ちくたびれたわよ……コブラッ!!」
―ガカァッ!
男「そう言うなよレディ。これでも結構急いだんだぜ?まぁ、赤いタイツと葉巻を調達するのに多少手こずっちまったが」ニカッ
鼻ピアス「……そうだ!鍵はどうした鍵は!」
男「どーも建て付けが悪かったみたいよ。ちょっと力を込めればほらこの通り。スイスーイと、ねっ?」ガララッ ガララッ
刺青デブ「ホヒッ!?こいつ鍵をぶっ壊しやがったッスよ先輩!」
鼻ピアス「ど、どんなバカ力だったらそんな事出来るんだ……!」
男「ノックをしないで勝手に入った事はこの通りっ!謝る!なっ?」
男「俺はそこの女の子に用があるだけなの。用が終わったらさっさと出てくからさー、頼むよォ」
鼻ピアス「用って……そのアマお前の連れか?」
男「んー、違うな。少なくともそんな浮いた浮かないなんて間柄じゃぁないねぇ」シュボッ
グラサン「……連れでもねぇならさっさと出てけよ、お前」パキポキッ
男「そう構えないで、なぁ?事情は分かってるよ。要はあんた達が停学にならなければいい、そうだろ?」
鼻ピアス「…………」
男「つまり俺とレディが喋らなければあんた達は安泰ってワケだ。なぁに俺は勿論レディだって口は固い心配は――」
鼻ピアス「失せろ」
男「……口は固いんだがねェ。話し合いで何とかならない?」
鼻ピアス「ならねぇ。女は犯して俺たちのカキタレにする。パツキンのテメェは今すぐ目の前から消え失せなきゃ、ボコす」
グラサン「…………」ヒュッ パシッ ヒュッ パシッ―
刺青デブ「ブヒッ、ふひひっ」バチッ バチン―
男「ハハッ、おっかない顔で睨まない睨まない。分かるでしょ?神経がデリケートでね、人に睨まれたりなんかしちゃったらトラウマになっちまぅ」
男「……んじゃ交渉決裂と。……へへっ、へっへっへっへっへ」ニヤニヤ
鼻ピアス「……何笑ってるんだテメェ」
男「へっへへ……いやぁ、話し合いをしておけば、誰も痛い目見なくて済んだと思うと、つい、ね」
幼馴染(完全に来てる!コブラの流れ来てるよコレ!さぁ!十二分に強化された筋肉であの超DQN共をボコボコにするのだ!)
鼻ピアス「……それ、まさかとは思うけどよ、俺たちの事じゃぁねぇよな?あ?」ビキ
男「察しがいいな鼻ピアスくんっ。正解だからハワイ旅行へご招待だ」パチパチ
幼馴染(あ、煽るぅ!無駄に煽るコブラッ!当然超DQNは――)
鼻ピアス「」プッツ~ン
鼻ピアス「野郎ォ!ぶっ殺してやぁ――」
男「――そこまでだ」スッ
幼馴染(……嘘……まさか……やめて……そっちは……そっちは……!)
男「お前たちもだ。それ以上動くなら――この左腕のサイコガンが火を噴くぜ」ビッ
鼻ピアス「…………」
グラサン「…………」
刺青デブ「……ぶひゅっ!」
『ぶはっ、アーッハッハッハッハッハッハッハ!、クッ、クヒッ、フッ、クフッ、アハッ、アッハッハッハッハッハ!』ゲラゲラ
男「…………」
鼻ピアス「ひ、火を噴くって……ククッ、そっ、その指鉄砲がか?」
グラサン「クヒッ、こ、こいつ頭がおかしいぜ」
幼馴染(うぅ……コブラニナールはあくまで人体を改造する薬だから……細胞を変異させるだけだから……)
幼馴染(だから左腕にサイコガンはないんだよ……うぅ……男勘違いしてるし、これヤバイかも……)
刺青デブ「ブヒッ。こいつビビッて引っ込みつかなくなったみたいッスね」
鼻ピアス「ククッ……だろうなぁ、指鉄砲はねぇよなぁ」
グラサン「クッ……クヒッ…だせぇわコイツ……」ヒククッ
鼻ピアス「さんざ笑かしてもらったし、惨めだしなお前。見逃してやるよ」
幼馴染「……男」
鼻ピアス「その情けない姿は黙っててやるから、さっさと出て――」
男「動くな。言ったはずだぜ。――動けば撃つ」ビッ
鼻ピアス「――ッ」ビキッ
鼻ピアス「……殺す」
ブオッ―
幼馴染「だっ……駄目ぇぇぇぇぇぇ!!」
__________∧,、____
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥッッ!!
___∧,、____________
 ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥッッ!!
________∧,、______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥ――
___________∧,、__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄
鼻ピアス「ガハッ――」
―ゥゥゥゥ…
幼馴染「……え?」
男「――へへっ……今度穴を開けるなら耳の方にしとくんだな」
―ッドシャァッ
男「少しは聞こえが良くなるはずだぜ」
刺青デブ「ひっ、な、なッ、なァ……」ヘタリ
グラサン「……れ、レーザー?ゆ、指からレーザーって……ハァ!?」
鼻ピアス「」
男「……俺は今非常に気が短くなってるんだ」スッ
刺青デブ「ブヒィッ!?」ビクンッ
男「サイコガンは精神力に応じて威力が増す――その気になりゃぁ惑星だって撃ち砕ける」
グラサン「……ッ」ゴクリ
男「……今の一発はうまく加減出来たが……今度ぁ風穴開いても苦情は受け付けないぜ」ビッ
刺青デブ「ブヒッ!?まま、待ってくれ俺はもうあんたとやる気はない!」
男「だったらノビてる鼻輪を連れてさっさと出て行きな」
刺青デブ「あ、あぁ!分かっ――」
男「のんびりしてると何をしでかすかわからないぞ」
刺青デブ「!? は、早く、そっちを持てよ!」
グラサン「クソッタレ!覚えてやがれ!」
―ズルズル ガララッ
男「生憎と俺は物忘れが激しいんだ。覚えてもらいたかったら美女にでも生まれ変わるんだな」ヘヘッ
幼馴染「コ……コブラ……」
男「風紀委員てのが中々俺を離してくれなくてね。いやァ、モテる男はつら――」
―ポスッ
幼馴染「来るのが……遅いわよ……バカ……」
男「……遅れてすまなかったなレディ」スッ
幼馴染「――違う!そうじゃないのよコブラ!」ガバッ
男「だァっとぉ!急に動くもんじゃないぜレディ。危うく顎にいい一発を貰うところだ」
幼馴染「そう、サイコガン!サイコガンよコブラ!」
男「……サイコガン?調子ならバッチリだが――」
幼馴染「だ、だっておかしいもの。コブラが……コブラが……サイコガンを撃てるなんて……」
男「……レディ、少し休んだ方がいい。あんな目に遭った後じゃ混乱するのも無理はないさ」
幼馴染「別に混乱なんかしてないわよ!」
男「はいはい分かりましたよ。それで保健室までおんぶとお姫様抱っこ、どっちがいい?」
幼馴染「全然分かってないじゃ……お姫……おん……くっ、肩貸しなさいコブラッ!」
男「ははー、仰せのままにお嬢様」スッ
再開
――――
幼馴染(……分からない。全ッ然分からないわ)
幼馴染(あたしが作ったコブラニナールの効果は、コブラの見た目、声、そして人並み外れた運動神経と筋肉を与える)
幼馴染(――だけのはずなのに……)
幼馴染(何故コブラはサイコガンを撃つ事ができたの?)
幼馴染(……あの瞬間、あたしは見たわ。男の指先から光線が放たれるのを)
幼馴染(実際にあの不良は撃ち抜かれて気絶した訳だから……気のせいって訳でもないし……)
幼馴染(大体本当は義手の下にサイコガンが収まってるんだから、本人が違和感を感じてないのもおかしいし……)
幼馴染(何か配合を間違えて偶然……?それとも超自然現象が局地的に男の前に……いやいやそれは流石に――)
ガララッ
委員長「失礼します。幼馴染さんいるかしら?」
幼馴染「委員長?あたしならここにいるよ」
委員長「……思ったより元気そうね」
幼馴染「まぁケガはしてないし。……スンゴイ怖かったけど」
委員長「……それで、あなた達を襲った不良の件なんだけれど」
委員長「普段から相当素行が悪い生徒達で、停学も1度や2度の話じゃないみたい」
委員長「何度かこういう事件もあったらしいんだけど……肝心の被害を受けた人が何も喋ってくれなくて、それで……」
幼馴染「……きっと弱みを握られて喋れなかったんだね。あいつら、そういうの手慣れてそうだったもの」
委員長「……本当に大丈夫?その……」
幼馴染「あたし?大丈夫だよ。確かに怖かったけど、絶対に男が――コブラが助けに来てくれるって信じてたもの」
委員長「……そう。信用してるのね、男くんの事」
幼馴染「そうだよ。普段はちゃらんぽらんだけどいざって時に男は――ち、違う違う!コブラだからよ!コブラだから!///」
委員長「……私もいざって時は助けてくれるのかしら」ボソッ
幼馴染「? 何か言った?」
委員長「う、ううん!別に何も!……あ!そ、そうそう!それで、大事なお話って何かしら?///」
幼馴染「へ?何が?」
委員長「何がって……話があるから私をここに呼んだんでしょ?」
幼馴染「えー……あたし別に委員長呼んでないよ。コブラが帰ってくるのを待ってただけで……」
委員長「……おかしいわね。さっき後輩の子からそう言われたのだけれど」
幼馴染「……!」
幼馴染「委員長ここ出よう!今すぐ!」グイッ
委員長「え、きゅ、急にどうしたの?男くんを待ってたんじゃ――」
幼馴染「今は男もへったくれもないんだよ!すっごく嫌な予感がするから急いでここを離れなくちゃ!」グイグイ
委員長「嫌な予感って一体――」
幼馴染「分かった事があるの!ピンチになったら男は――コブラは必ず助けに来てくれる!けど……」
委員長「……けど?」
幼馴染「同時にコブラに関わったら必ずトラブルに巻き込まれるの!」
委員長「え、ええ……?それとこれとどういう――」
幼馴染「いいから!あたしに黙ってついてきて!」
ガララッ
鼻ピアス「……あ、どぉもォ。こんにちわァ」
幼馴染「……あ、あはは……」
ガラッ―
ガッ!
鼻ピアス「……さっきは随分とふざけた真似してくれたじゃねェか。なァ、オイ」ヒククッ
――――
男「おまっとさァん!いやね頼まれたクレープ買えるには買えたんだがちっと予算オーバーで……っておんやぁ?」
シーン
男「…………」
男「……参ったねぇ……先生どころか、幼馴染の影も形もない、と」
男「ふーむ……こりゃしびれ切らして帰っちまったかな」ポリポリ
…キラリ
男「…………」スッ
男「……これは……委員長の髪飾り……?」
男「…………」
男「…………」スクッ
カッ コッ カッ コッ …
ガララッ
コッ コッ コッ コッ―
――――
鼻ピアス「――うス。あ、二人ッスよ。かなりいい線イッてるんじゃないかと。とりま写メ送っときますんで、うス」
幼馴染「くっ、このっ……!はずしなさいよコレ!」
鼻ピアス「あ?はずす訳ねーだろクソ女」
委員長「私たちをこんな所に閉じ込めて、一体何をする気なんですか!」
鼻ピアス「んー……まぁお互いに気持ちいい事かな?そっちは最初痛ぇかもしんねぇけどさぁ?」
委員長「え……?」
鼻ピアス「あれ?アレアレ?分かっちゃったの委員長?ショックだなぁ俺。委員長はソウイウのに疎い清楚なイメージあったんだけどなぁ」
―グイッ
委員長「痛ッ」
鼻ピアス「……ああそうだよ。お前ら二人共これから俺たちに犯されるんだよ」
鼻ピアス「今先輩にカメラ手配してもらってるからさ――記念に撮ってやるよ。余すところなく全部な」
幼馴染「そ、そんな事したらあんた達退学どころじゃ済まないわよ?」
鼻ピアス「……あぁ、それな」
鼻ピアス「とっくに今日付けで退学なんだよ。お前の男の――コブラとか言う奴のせいでな」
鼻ピアス「だからさ、自由になった記念っつーか?裏の道に入る為の最初のイベントっつーか?」
鼻ピアス「――ぶっちゃけ頭に来たからさ、お前ら犯すの。金もいるしさ」
委員長「……お金って……嘘、そんな……」ズリッ
鼻ピアス「うん、そうそう。だってさ、現役女子校生のレイプだろ?需要あるある」
鼻ピアス「しかも処女だし一度に二人。どう考えても売れるっしょ?」
幼馴染「……最っ低」ギリッ
鼻ピアス「……お前は今からその最低野郎にヤラれるんだよ。楽しみだぜぇ、どんな顔でヨガってくれるのかさ」ヘラヘラ
鼻ピアス「でも正直さー、その程度じゃ俺の怒りは収まらないっつーかさぁ、このまんまじゃちょっと物足りない訳よ」
幼馴染「……?」
鼻ピアス「だからさ、ゲスト呼ぶ事にしたの。こうなった元凶の彼をさ」ニヤァ
委員長「まさか、男くんを……」
鼻ピアス「そそ。だってそこのクソ女助けに来ちゃうような正義の味方気取りのバカじゃん」
鼻ピアス「だったらお前ら人質に取ったら何も出来ないじゃん?」
鼻ピアス「その上でさ、ボコボコにして、何も出来ない状態で、連れが犯されるのをただ眺めるしか出来ないってさぁ……」
―フルルッ
鼻ピアス「最ッ高ーにスカっとするじゃん」
幼馴染「でも男が、コブラが来たらあんたなんかやっつけて――」
鼻ピアス「無理無理。すげぇ気功?だかなんだか使うのか知らねぇけどさ、数には勝てないって。分かる?」
鼻ピアス「お前と委員長とヤれるって条件で町中のクズ共集めてるからさぁ」
鼻ピアス「一体何十人相手しなきゃならねぇんだろうな?まぁ終わる頃にはグズグズだろうなぁ」ククッ
委員長「お、お願いです!男くんを巻き込むのはやめてください!」
鼻ピアス「…………」
鼻ピアス「へー、あー、ふーん、そうなの。委員長もなのかよ」
鼻ピアス「……気に食わねぇな。益々もって気に食わねぇわ」
鼻ピアス「コブラって野郎が来たら……お前らを薬使ってでも喘がせてやるよ」
委員長「そんな!?お願いです、どうか――」
鼻ピアス「あぁ、悔しいだろうな。自分に好意を持った女が目の前でヤラれるのはよぉ」
鼻ピアス「あのスカした野郎の顔が歪むかと思うと、胸がスカッと爽やかになるぜぇ……なぁ!」
委員長「うぅっ……グスッ……」―ポタッ
鼻ピアス「ままそう暗くなるなって委員長。今泣かれても動画に残せないでしょ?」
鼻ピアス「もしくは皆の前で泣かないと優しくシて貰えないかもよ?逆効果かもしんないけどさぁ!」ハハッ
ガチャッ
「……お!激マブじゃーん!写メ通りってかそれ以上!」
「うはぁ上玉。本当にやっちゃってイイのコレ?」
鼻ピアス「あ?まだ早ぇよ。ヤんのは機材揃ってからだってのに」
「待ちきれねっスよ!先っぽ――いや触るだけでもいいっスから!」
鼻ピアス「んー……」
「前もって弱いとこ探しとくとさ、段取り良くいかね?どうよ?」
鼻ピアス「……あー、脱がすなよ。破ったり皺つけんのも無しな」
『あざーッス!!』
鼻ピアス「で、触っていいのはそっちだけな」クイッ
委員長「ぁ、あ……」
鼻ピアス「こっちは個人的にオハナシしたい事色々あるからよ」グイッ
幼馴染「だ、駄目よ!委員長はそもそも関係ないでしょ!放しなさいよ!」
鼻ピアス「お前がおとなしく犯されてりゃ巻き込まれなかったんだ……よっと」
幼馴染「何その理屈!本当にっ、痛っ!引っ張るなこの――」
―バダンッ
「……さぁて、と」
委員長「お、お願いですっ。私、こんなの、い、嫌です!やめてください!」
「だろうなー。好きでもない男に弄られるんだもん」
「でもその頼みは聞けないっていうかぁ?委員長……ちゃん?だっけ?」
「お兄さん達嫌がられると燃えるタイプなの。ごめんねー」ゲラゲラ
委員長「ぅ……そんな、嫌……誰か…」ズリッ
「うは。もしかして誘ってる?パンツ見えちゃうよ~、ってか今から拝んじゃうけどさぁ」ワキワキ
委員長「だっ、誰かっ。誰か、助けてーっ!」
「あはは!こんな廃ビルじゃぁ誰も来ないっての!」
『 ――いるさっ。 ここにひとりな!! 』
「――へ?」
―ガッ シャァァン!
ゴロゴロ
―ストッ
「ふぃー、手ぇ間かけさせてくれちゃってぇ。おかげで一張羅が台無しだぜ」パンパン
「お、お前は!?――」
「そうか、こいつが――」
委員長「来てくれた……本当に……。私の、ヒーロー……」
『――コブラッ!!』
男「ひぇー!大の男二人が口揃えて俺の名前呼ぶなんてのはどーも、怖気が走るねぇ」
委員長「コブラ……私、何てお礼を――」
男「いや、礼を言うのはまだ早いみたいだぜ委員長」
―バタァン! ドタドタドタッ!
「だから犯す時は縄できっちり括っとけってあれだけ……あァ!?誰だテメェ!?」
「ビルの壁をスルスルと赤いタイツの男が――あぁ!こいつだ!こいつが登ってたんだ!」
男「へへっ、おいでなすったぁ!」
男「ケンカを買いに来た俺にゃぁ、ウォーミングアップはなしだぜ。さぁどっからでもかかってきな!」ザッ―
男「――カマァーン!!」クイッ
――――
ギシッ… ミシッ…
鼻ピアス「……ッチ。釘刺したばっかだってのによ」
幼馴染「――ッ。委員長!」ダッ―
―グイッ
鼻ピアス「あー駄目駄目。お前はこっち。おとなしく階段昇れや」
幼馴染「だ、だってあんたまだ手は出さないって言ったじゃない!」
鼻ピアス「……あー、言ったよ?撮り始める前にヤッても金にならねぇしな」
幼馴染「……だったら!」
鼻ピアス「でもさー思春期で盛ってる男共がさー、あんなカワイイ娘目の前にしてさー……我慢なんて出来る訳ないじゃん?」
鼻ピアス「ま、大方、委員長が逃げようとでもしたんだろ。で、押さえこんでよーいドン、と」ハハッ
―ピタッ
幼馴染「……る……から……」
鼻ピアス「ん?」
幼馴染「あたしが、やるから……委員長は関係ないでしょ。だから……」
鼻ピアス「何?身代わりになるから委員長見逃してって、そう言ってるワケ?」
幼馴染「……ええ」
鼻ピアス「へー。委員長いなくなる分、スッゴイハードになるけどいいの?」
幼馴染「……ッ」ギュッ
幼馴染「あたしが何でもやるから……委員長を離してあげて……」
鼻ピアス「ふーん。でもさぁ、人にモノ頼むならさぁ――それなりの態度ってモンがあるよなぁ?」
幼馴染「……う、く……」
幼馴染「お願い、です。あたしが何でもしますから、委員長だけは、助けて、ください……」
鼻ピアス「っへー!やればできんじゃん。最初からそうしてればなァんにも問題なかったのによ」
幼馴染「……じゃぁ――」
鼻ピアス「――駄目に決まってんだろが」
幼馴染「……え?」
鼻ピアス「え?何その反応?アレ?自分を犠牲にすればうまくいくとでも思ってたワケ?」ゲラゲラ
鼻ピアス「お前とあの天パ野郎を台無しにしてやりたいからこォんな周りくどい事してるのォ」
鼻ピアス「だったらさぁ……お前の言う事なんか聞くワケないじゃん」アハハッ
幼馴染「……う、く……」ギュ
ガチャッ
鼻ピアス「ほい到着と。オラ、さっさと入れや」ドンッ
幼馴染「きゃ!」ドサッ
鼻ピアス「で、ポチポチと」
幼馴染「あっ!それあたしのケータイじゃない!」
鼻ピアス「ロックも無いとか不用心極まりないわぁ。しかも今時ガラケーとか」プルルルッ―
幼馴染「自分のケータイ使えば――」ハッ
鼻ピアス「トップに短縮とか分り易すぎてもうねー。当てられちゃうわー」ニヤニヤ
幼馴染「駄目っ!返してよっ!」ズイッ
鼻ピアス「はいはいおとなしく座ってましょうねー、と」ゲシッ
幼馴染「痛っ」ズシャッ
―プッ
『――もしもしレディ!無事か!』
鼻ピアス「お、こんちゃー」
『……どちらさんかな』―ッ ―ドターン
鼻ピアス「俺が誰だかはどーでもいいだろ。問題なのはさ、彼女のケータイに知らない男が出たってとこだろ?」
『……レディは――いや、幼馴染は無事なのか?』―ボグッ ―ガシャーンッ
鼻ピアス「飲み込みが早くて助かるねー。ま、今のところは無事なんじゃない?一応声聞かせとくわ」
幼馴染「――ッコブラッ!」
『どわっ! とぉ……幼馴染、無事なんだな?』―ガンッ ―グァァァッ
幼馴染「ギ、ギリギリ無事だけど、委員長も一緒に捕まっちゃって……あ!そうじゃなくて!コブラ来ちゃ駄目っ!これは罠――」
鼻ピアス「はい終わりー。勝手に人の楽しみ奪わないでくれる幼馴染ちゃーん?」
鼻ピアス「まぁ大体分かったと思うけど……お前の大切な女二人共預かってるんだわ」
鼻ピアス「このままだとさー、二人共二度と外を出歩けない位にひどい目に合っちゃうかもよー?」ハハッ
鼻ピアス「……それが嫌だったら今から言う場所に一人で来いや。誰かに連絡とかしてみろ――」
『駅前の繁華街のはずれ――周辺住民の反対で開発が頓挫している地域』
鼻ピアス「……何?」
『その区画内に……随分と昔から廃屋になってる雑居ビルがある。ま、不良の溜まり場だなんだとイイ噂は聞かないらしいがねェ』
鼻ピアス「……!」
『待ち合わせ場所はそこで合ってるかな鼻輪くん?』
鼻ピアス「テメェ……!どこでそれを聞きやがった!」
『いやァ、お喋りが大好きな君の友人を指でつついたらペラペラとね。おかげで遅刻しなくて済みそうだ』
『……さぁてと、これで綺麗に片付いたかなっと……委員長、もう大丈夫だ。今解いて……あーあー、固く結びやがってまぁ』
鼻ピアス「……あァ!?今何つった!?」
『おんやぁ?急に耳でも遠くなっちゃった?』
鼻ピアス「今『委員長』っつったろうが!」
幼馴染「……え?」
『よせよォ。お前さんの補聴器だとかレコーダーじゃぁないんだ。あんたの老化の世話をするのは御免こうむるよ、っと』
鼻ピアス「ハ、ハッタリだ……!ここにテメェが来ているはずはねぇ……!」
『へへっ、俺がくるのがちょいとはやすぎたかぃ?』
カッ コッ カッ コッ ―
鼻ピアス「……!」
カッ コッ カッ コッ … ガチャッ―
男「――自慢じゃぁないが俺ァ100メートルを5秒フラットで走れるんだ」
幼馴染「コブラッ!」
男「やれやれ、何とか間に合ったみたいだな」
鼻ピアス「クソッ!テメェがここにいるって事は……下の階の連中も、ビルの周りの奴らも……!」ギリッ
男「やぁっぱりあんたの友達だったかい。なかなか結構な歓迎の仕方だったぜ……勿論揃って退場願って貰ったがね」
鼻ピアス「ば、化け物め……!」
男「さぁもう手の内は終いか?」
スッ
男「今夜は幼馴染とディナーの予定なんだ。あんたも知らないワケじゃないだろぅ、女の子のおめかしってのは驚く程時間を取るもんなんだぜ」
鼻ピアス「――う、動くなッ!それ以上こっちへ来るんじゃねぇッ!来たらこの女の顔をズタズタにしてやるッ!」スチャッ―チャキッ
―ギラリ
幼馴染「う、ぐっ……!」
鼻ピアス「クソが……。クソ野郎が……!確かにテメェは俺の手に負えない程の化け物だったらしいな。……だが!」―グッ
幼馴染「嫌っ――」
鼻ピアス「こっちには人質がいるんだぜェ!前回とは何もかもが違ェ!俺を撃てるもんなら撃ってみやがれッ!」
鼻ピアス「俺を撃てばテメェの大事な女にも当たっちまうんだからなッ!ハッハーッ!」
―スッ
鼻ピアス「――ハァ……!? な、何だとッ!?テメェ正気かよ!女ごと俺を撃ち抜くつもりかッ!?」
男「……そういうのはリンゴの皮を剥くとき以外はポケットにしまっておくんだな」
―ピタッ
男「いらんケガする事になる――ぜっ!」
___∧,、____________
 ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥッッ!!
________∧,、______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
鼻ピアス(クソがッ!マジで撃ちやがった!女を無視して――)
―クンッ
鼻ピアス(何ッ!?曲がっ――)
―バチィッ!
鼻ピアス「ぐあぁッ!」
カランカランッ…
鼻ピアス「俺のナイフだけを……狙って……だと……?」ビリビリ
タタッ
委員長「幼馴染さん!こっちへ!」
鼻ピアス「グッ……!クソが……クソがァッ!」
―カッ コッ
鼻ピアス「~~ッ!」ズルッ
―カッ コッ
男「へへっ、どうしたぃ鼻輪さんよぉ……」
鼻ピアス「クソッ……グ、グラサンッ!刺青デブッ!返事をしろお前ら!誰かいねェのかよォッ!」ズリッ
―シーン…
男「呼べど帰らず、さ。――哀しいねェ、最後に頼るのが己の力ではなく他人の力ってのは」スッ―
鼻ピアス「な、さ、最後だと!?」ビクンッ
―バッ
鼻ピアス「コッ、コブラ……待て!――」
男「 ――そりゃないよ! 」グォォッ―
__________∧,、____
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥッッ!!
___∧,、____________
 ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥッッ!!
________∧,、______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バシュゥゥゥゥ――
___________∧,、__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ̄ ̄
鼻ピアス「――グアアァァァァァァァァァァァァッッッ!!」
―ッドシャァッ
男「…………」―カチッ シュッ―ボッ
男「……あんたに待って欲しいと頼んだ少女がどれ程いた事か」
男「今の一撃は、そのいずれの涙にも叶えなかった報いだ」
男「地獄の沙汰まで待つには忍びないんでね……勝手に俺の『指鉄砲』で決着つけさせて貰ったぜ」
――――
幼馴染「コブラッ!コブラッ!本当にもう、あたし本当に……うぅ……」ギュッ
男「ああ、よく頑張ったな幼馴染。本当に、よく耐えた」ナデリ
委員長「ね、ねぇコブラ。まさか、あの鼻ピアスさんを……」オドオド
男「んぅ~?大~丈夫安心しなって。殺しちゃいないさ。……ただまぁ二度とオイタが出来ないように、ちょっとねぃ」
鼻ピアス「」チーン
幼馴染「たまには余裕を持って助けなさいよ……この、バカ男……」グスッ
男「こォれでも急いだ方なんだぜ?違法なビデオの元締めトッチメて、場所を吐かせて、証拠も洗いざらい掻っ攫って……体が幾つあっても足りやしない」
委員長「あ、あの短時間でそこまで!?」
男「まぁ、そのせいで二人を危険な目に合わせちまったのは確かだ。埋め合わせはするぜ」
幼馴染「埋め合わせ?」
男「へへっ、言わなかったっけか?今夜はディナーだって」
幼馴染「あ、あれ本気だったの!?」
男「そうさァ。こんなにヒドい目に遭ったんだ、少しはイイ思いしなくっちゃ吊り合いが取れないだろう?」
委員長「……あ、あの――」
男「勿論、委員長もご招待だ。この街の最高級のレストランに3人分の予約を入れてある。酒以外だったら何でも頼むといい」
幼馴染「最高級って……コブラお金は大丈夫なの?」
男「なァに、しこたま臨時収入が入ったもんでね。多少贅沢したって問題ない問題ない」
幼馴染「……臨時収入?」
男「さァ!こんなカビ臭くて埃っぽいところさっさと出よう。おたくら二人共その格好じゃ――」スクッ―
―グラリ
男「――っとォ?」ガクンッ
幼馴染・委員長『――コブラッ!』
委員長「やっぱりさっきの戦いでどこか体を……!」
男「……へへっ、どうやら年貢の納め時らしいな」
幼馴染「コ、コブラ……?」
男「つまり時間切れって事さレディ――いや、幼馴染」
幼馴染「……嘘よ」
幼馴染「そんな、だって、いつからあなたその事に気付いて……!」
男「研究資料をほっぽり出したまま、居眠りされちゃぁ俺でなくたって誰でも見れるさ」
委員長「……で、では、知っているのですか?あなたが一体何者なのかを……」
男「ああ。知ってるとも」
男「そう、俺が新薬――『コブラニナール』によって生み出された存在だって事をね」
幼馴染「コブラ……」ギュッ
男「そして薬ってのは効いている時間が決まっている。まァ、俺の予測だとディナーの時間まではバッチリ保つはずだったんだが……」
男「どうやらとんだ見込み違いだったらしい。宇宙海賊の目利きも随分と衰えたもんだぜ」ヘヘッ
幼馴染「……コブラ、ごめんなさい」
男「ん?」
幼馴染「あたし、あなたに……ヒドい事を……」
男「…………」
幼馴染「あなたと言う『個』には意識があるのに……!あなたを時限付きでこの世に生み出してしまった……!あたし何て残酷な――」ポツッ―
―スッ
男「あんたが残酷なものかよ」
幼馴染「……え?」
男「俺の為を思って涙を流す人間が、残酷なものか。他人の為を思って泣ける……幼馴染、あんたはむしろ優しい人間なのさ」
幼馴染「コブラ……」
男「短かったが悪くない生涯だったぜ。最後は美人二人に看取って貰えるんだから、これで贅沢を言ったらそれこそ天罰が下る」ヘヘッ
幼馴染「コ、ブラ……」ツー
男「そう、何しろ本人がそう言ってるんだ。幼馴染が気に病む必要なんてない。それにな――」ニッ
男「――あんたに泣き顔は似合わない」
幼馴染「……!」
男「折角の美人が台無しだぜ。だから笑って送り出してくれ――二人共」ヘヘッ
幼馴染「う”んっ!……う”んっ!」グスッ
委員長「……ええ」グスッ
男「なァに、これで今生のお別れってワケじゃないんだ。何しろおたくはマッドサイエンティスト――天才なんだからな」
幼馴染「そうよ。見てなさい。すぐに呼び出して、このやりとりを茶番にしてあげるんだからっ!」グスッ
男「……その意気だ、レディ」
男「――ッと、そろそろか。そうそう、くれぐれも『男』によろしく頼むぜ」
委員長「……はい。あなたの事、忘れません」グスッ
男「……そうだ。俺はコブラ。不死身のコブラさ」ヨロッ
委員長「かっ、髪の毛の色が元に……!」
幼馴染「……ッ!」ウルッ
男「だから、へへっ、そうだな――」
男「――次回、また会おうぜ」ニッ
フッ―
幼馴染「……コ、ブ……ラ?」スッ
男「…………」
幼馴染「……コブラ!」ユサユサ
男「…………」
委員長「コブラ、さん……」
―ギュッ
幼馴染「――ッコブラァァァァァァァァァァァッ!!!」
男「……へへっ。そう耳元で叫ばれちゃぁ、おちおち寝てもいられないねぇ」
幼馴染「――え?」
委員長「そんなっ、まさか……!」
―ムクッ
男「へっへっへへへぇ……どうしたいお二人さん。まるで真っ昼間に幽霊にでも会ったような顔つきだぜ」
幼馴染「お前は――」
委員長「あなたは――」
『……コブラッ!?』
男「その通り!」
男「――と言いたいところだが、残念ながら俺ァコブラじゃぁないのさ。期待に添えなくて悪いね、どーも」
幼馴染「コブラじゃ……ない……?」
男「勿論ジョー・ギリアンでもジェームズ・ボンドでもない。正真正銘、俺はただの一般人さ。……今はな」
委員長「ってことは……」
幼馴染「お、男……?男なのっ!?」
男「ご明察!君らにとっては久しぶりのご対面って事になるのかねぇ」ヘヘッ
委員長「……私達に、とっては?」
幼馴染「……待って、おかしいよ。変だよ。だって男の意識は今の今までなかったはずでしょ?何故コブラの口調のままで……」
委員長「ま、まさか、コブラさんと男くんの記憶が融合してしまった、とか……!?」
幼馴染「う、嘘ッ……!」サーッ
男「だぁーそう悪い方向に考えない考えない。二人が考えてるような事故や悲劇はど~こにもないの」
幼馴染「でも、じゃぁあなたは一体……」
男「ん~、どこから話し始めるのが適当かねぇ。まぁ俺と二人には大きな見解の相違って奴があるのさ」
委員長「……見解の相違?」
男「そうさ。まったく前提が違う。……最初の最初、『薬でコブラに変化した』ってところからな」
幼馴染「……え?」
委員長「そ、それってつまり、薬はそもそも効いてなかったって……そう言ってるの?」
幼馴染「それはないよ委員長!筋肉だって、特徴のある金髪の癖っ毛だって……そう、男は『サイコガン』まで出せてたじゃない!」
男「まぁそう結論を急ぐな幼馴染。ちゃぁんと薬は効いていたさ」
幼馴染「じゃ、じゃぁやっぱり……」
男「ただし、効果はまるで違ってた」
幼馴染「効果が……違う……?」
―ポンッ
男「幼馴染は天才には変わりなかったんだ。薬は完成していた。ありふれた薬品や100円ショップの商品の寄せ集めにも関わらず、だ」
男「……だがあんたお得意のドジがここで顔を出してしまった」
男「そう、あんたが心血注いで完成させた薬は『コブラニナール』ではなく、ジャンプ系列でも作品違いの――」
男「――『サイヤジンニナール』だったのさ」ニッ
―ガカァッ!
委員長「サイヤ人に――」
幼馴染「なーる……」
男「そう、そして一定以上の戦闘能力と穏やかで純粋な心さえあれば『超サイヤ人』になれる」
委員長「! ……金髪で、並外れた戦闘能力……」
幼馴染「! じゃぁ、じゃぁあの『サイコガン』は……左腕から出ていた光線は……!」
男「あながち不良共が言っていた『指鉄砲』は間違いじゃぁなかったんだな」
男「――即ち、エネルギー弾。名前があるとするなら魔貫光殺砲ってところだ」
委員長「光線を曲げて的確にナイフを持つ手だけを撃ち抜いたのは……」
男「繰気弾。まぁどれも見様見真似で、本家とは程遠いものだがね」
委員長「でも、どうして薬がコブラでなくサイヤ人の効果に?」
男「それはそこのマッドサイエンティストさんに聞くのが一番早いんだが……」チラッ
幼馴染「」
男「……幼馴染はこのコブラニナールを完成させるのに、何日も徹夜を繰り返していたんだ」
男「そして事故は起こっちまった」
男「夢と現の間を行き来しながら薬を作っている途中、参考資料のコブラのコミックスに――ドラゴンボールのコミックスが混ざっちまったのさ」
男「意識が朦朧としている幼馴染は……いつしかそれを元に、薬の製造を進めていたのさ」
委員長「……幼馴染さんが気付いていなかった事実がよく分かったわね」
男「……何故分かったか……そうさねぇ」
男「ま、一つは長い付き合いだからって事」
男「一つは小母さんに部屋の片付けをしょっちゅう頼まれていたから机の上が自由に見れたって事」
男「そして最後の一つは……幼馴染に借りたコミックスを返したのは俺だからってとこかねぇ」
委員長「えぇ!?じゃぁほとんど男くんが原因じゃない!」
男「まぁそう固い事言いなさんなって。こちとら人体実験されているんだからお相子でしょう?」
委員長「……男くんの人格はそのままで……コブラの人格なんて最初からなかった……そういう事なのね……」
幼馴染「……ねぇ、何故男はずっとコブラの振りを――コブラの演技をしていたの?」
男「コブラに憧れているのは幼馴染だけじゃなかったって事さ。なれるならな、男子ってのはすべからくコブラになりたいものなんだ」
男「そして今回俺はそのチャンスを手に入れた。自己満足でしかなかった声帯模写も、バッチシ役に立ったってワケだ!」
委員長「…………」
幼馴染「…………」
男「敢えて言うなら遅れてきた高校デビューみたいなもんかねぇ。この際本当に金髪にしてみるってのもアリかな」ヘヘッ
委員長「……そう」
幼馴染「……コブラは、最初からいなかったんだね……」
男「そうそう、不幸なコブラも、不幸な男も最初からいなかった!これで一件落――んぁ?どうしたんだい二人共」
―ゴソゴソ
委員長「……別に、どうもしてないですよ」ウフフ
幼馴染「そうそう、ただ単に武器を吟味しているだけだよ」アハハ
―ツーッ
男「……穏やかじゃないねぇ。何故武器を吟味する必要があるのかお兄さんに教えて欲しいかなー、なんてぇ」ジリッ
幼馴染「……いもしなかったコブラに対して、流した涙を取り返したいだけだよ」アハハ
委員長「……私、コブラさんに対してお別れをしたから、やっぱりきちんとお別れしないといけないと想いまして」ウフフ
男「ま、待った!それならそもそもあんな薬を作らにゃ良かったって話で――」
幼馴染「あんただって悪乗りしたでしょ!もっと早く言ってくれれば……あんな……あんなにあたしは……!」プルプル
男「そりゃ流石に自分の事を棚に上げすぎ――」
幼馴染「うるさぁぁぁぁいッ!乙女の純情を踏みにじった罪はッ!何よりも重いんだからッ!」
委員長「……助けて貰った事は感謝しています。恩を返しても返しきれないと思っています」
男「じゃぁそれで――」
委員長「でも、『それ』は『それ』『これ』は『これ』です。……真剣にコブラさんと向き合っていましたから、尚更です」
幼馴染「ねぇ、男がコブラだったら、何も問題はないのよ?」ジリジリ…
男「……俺がコブラ、だったら?……幼馴染、さっきと言ってる事がチグハグ――」
幼馴染「これで殴られても不死身だったら、コブラって事になるよね……。だから確かめさせてよ……」ジリジリ…
男「じょ、冗談キツいぜ……!そんなもんで殴られたらたんこぶが出来るどころかミンチになっちまう!」
委員長「『また会う』には一度別れないといけませんから……」ジリジリ…
男「……仕方がねぇ。こうなったら俺の必殺技を見せてやるか。とっておきのヤツをだ」
幼馴染「……必殺技?」
委員長「……とっておき?」
男「驚くんじゃないよ……見ろ!――」
―ダッ
男「――この逃げ足の素早さをー!!」ズバァァァ
幼馴染「あぁっ!コラーーッ!待てーッ!」
男「待てと言われて待つのは躾のきいた犬くらいだぜ!こちとらコブラで蛇なんだ、お生憎様――どわぁぁぁぁっ!」
―ビュンッ ブンッ ガシャァァンッ
委員長「待ちなさーい!止まらないとヒドい目に合いますよー!」
男「のわぁぁ――どぅええっ――ひゃぁっ――あ”あっ!」サッ サッ
男「さっきの不良共よりよっぽど気合の入った攻撃してきやがるっ!」
男「怒り狂った女ってのは本当におっかねぇや」
(美人に背を向けるなんざ、野暮のすることさ。愛の形は人様々、一つここは受けてみるのも手だぜ『男』)
男「よく言うぜ『コブラ』。この体を走らせてるのはあんただろうに」
(へへっ。……ま、それはそうと、彼女達に真実を告げなくて良かったのかい?)
男「……言ったところでどうなる?幼馴染は自責の念に駆られるだろうし、責任感の強い委員長にも余計なもん背負わせちまう」
男「……それに、もしあんただったらどうした?」
(…………)
男「告げないだろう。二人の女の子を不幸にする位なら、あんたはきっとニヒルに笑って、優しい嘘をつくはずだ」
(……オタクの買い被りが過ぎるようだ。それにこれは君の『話』であって、俺の『話』じゃぁない)
男「……同じさ。俺はあんたのようになりたい。そう思って行動したんだ。誰よりも俺が納得して、そうしたんだ……それに――」
(……それに?)
男「――この体も、心も、そう悪くない」ヘヘッ
(……あんたバカだ。それも筋金入りのな。……だがその心意気は買ったぜ。お前の最後は、俺が見届けてやる)
男「……幼馴染の配合が正確ならば――体の変異も最終段階を迎え、じきに意識が混ざり合い混濁し、一つになる」
(タイムリミットか。どちらが本当の自分なのか、いよいよもって分からなくなるって、ワケだ)
男「俺があんたになっても、あんたが俺になっても……困らないようにお膳立てはしてある」
(聞いてたさ。だが忘れるなよ。『また会おう』って約束したのはあんたって事をな)
男「……約束したのは『コブラ』さ」
(……そりゃないよ。俺はあんたで、あんたは俺、なんだろう)
男「……そうだな」
(……さぁ、最後に一仕事といきますかねぇ)
男「幼馴染の研究の資料の細工と奪取。……何とか二人を撒いて、作業にかかるとしよう」
(へいへい。ほいじゃまぁ)
(――よろしくどーぞ)
男「――よろしくどーぞ」
――――
――
―
――――
幼母「あら、どうしたの二人共息切らしちゃって」
幼馴染「か、母さん……こ、ここに……お、男……うぅんコブラが……来なかった……?」
幼母「来たわよ。何か忘れ物を取りに来たって、さっきあなたの部屋に――」
幼馴染「ぜぇっ、ぜぇっ、い、行くわよ委員長!」ダダッ
委員長「はぁはぁ、分かったわ……」ダダッ
―ドタドタドタッ
幼母「――相変わらず綺麗な金髪と惚れ惚れするような筋肉――あら?」
―ガチャッ バァァンッ!
「よう、遅かったじゃないか」
幼馴染「あんたがコブラの格好で街中駆けずり回ってたから……目撃談が多すぎてこんなにかかったのよ!」
委員長「さぁ観念してください男くんッ!」
幼馴染「それともこう呼ばれたいのかしら――コブラッ!」
―ガカァッ!
「……そう大声で呼ばれると照れるねぇ」
―おわり
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