P「ほら、『はい、あーんして』とかさ」
凛「うん」
P「いま、ふと何であれで通じるんだろうな、って思った」
凛「……。言われてみればそうかも」
P「だろ?」
凛「『あーん』が口を開けることだって、どこで知るんだろうね」
P「な。物心ついた頃には知ってた気がするし、不思議」
凛「でも、ほら『いーっ』してとか言うよね」
P「確かに」
凛「だから特別なことじゃないのかも」
P「『あー』で口を開けて、『ん』で閉じるし、わかりやすいもんな」
凛「そうそう」
P「といったところで」
凛「? うん」
P「あーん、の時間です」
凛「前置き長くないかな」
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○
凛「ん。おいしい」
P「そりゃよかった」
凛「……で。そのいっぱい入ってるドーナツポップはどうしたの?」
P「千川さんにもらった。買ってきましたよ~、って」
凛「そんなにたくさん?」
P「うん。凛ちゃんとおやつにどうぞ、って」
凛「あ、だから私のこと呼んだんだ」
P「そういうこと」
凛「でも、もうちょっとちゃんと趣旨を伝えて欲しいんだけど」
P「なんで」
凛「なんで、って。お仕事終わったタイミングで『至急事務所へ』ってメッセージは焦るでしょ」
P「そうしたらすぐ来るかな、って」
凛「……それはそうだけど」
P「全然話変わるけどさ」
凛「うん」
P「さっき凛、これのことドーナツポップって言ったじゃん」
凛「うん」
P「それ聞いて、そういえば名前変わったんだよなー、って思い出してさ」
凛「あ、そっか。ちょっと前までDポップって言ってたよね」
P「そうそう。だから俺なんか未だにDポップって呼んじゃうんだよな」
凛「そういえば四角い箱も、もうないんだよね」
P「なー。かなしい」
凛「はい。どれがいい?」
P「エンゼルクリーム」
凛「はい」
P「これオールドファッションって言うんだけど凛知ってた?」
○
凛「オールドファッションおいしいでしょ?」
P「エンゼルクリームではないよな」
凛「うん」
P「うん、じゃないだろ」
凛「私も次エンゼルクリームにしようかな」
P「俺エンゼルクリーム食べてないけどな」
凛「まだいっぱいあるんだからいいでしょ? けちなこと言わないでよ」
P「なんで俺が駄々こねてるみたいな感じになってんの?」
凛「甘くておいしいよね。エンゼルクリーム」
P「そうですね」
凛「もう、そんな怒んないでってば。はい、次は好きなの食べていいから」
P「じゃあココナッツチョコレート」
凛「はい」
P「これもオールドファッションって言うんだけど」
○
凛「プロデューサーがオールドファッションばっかり食べるからもうあと2個しかないよ」
P「無類のオールドファッション好きみたいに言うのやめて」
凛「でも別に嫌いじゃないでしょ?」
P「まぁ、うん」
凛「なら別にいいんじゃないかな」
P「でもさ」
凛「うん」
P「レストランでハンバーグ頼んだのにピザが来たら、え? ってなるだろ」
凛「うん」
P「ハンバーグじゃないじゃん、って」
凛「うん」
P「頼んだもん違うじゃん、って」
凛「そうだね」
P「これはそういうことなんだよ」
凛「私、次その苺のやつ」
P「はい」
○
凛「おいしい」
P「ポンデリングの苺のやつおいしいよな」
凛「うん」
P「そういえばさ」
凛「うん」
P「苺ってバラ科らしいよ」
凛「バラ科、いっぱいあるよね」
P「な。びっくりするくらいバラ科だらけ」
凛「桜もバラ科だし、林檎もバラ科だし」
P「梅も桃もバラ科だっけ」
凛「うん。すごいよね」
P「バラ科おいしい?」
凛「バラ科おいしい」
○
P「Dポップについてるこのちっちゃいフォークっぽいやつ、かわいいよな」
凛「うん」
P「いましれっとゴールデンチョコレート食べたけど」
凛「さっきココナッツチョコレートも食べたよ」
P「俺2回飛ばされてない?」
凛「そんな決まりあったっけ」
P「ないけど」
凛「じゃあ問題ないでしょ?」
P「……まぁ、うん」
凛「もらいものなんだから、けちなこと言わないで、ってば」
P「俺が悪いの?」
凛「プロデューサーは私が悪い、って言いたいんだ」
P「そうは言ってない」
凛「はい。プロデューサーの好きなやつ」
P「…………」
凛「もう何も言わずに食べるよね」
P「無意味と悟ったからな」
○
凛「そんなにオールドファッションばっかり食べて喉乾かない?」
P「乾く」
凛「飲み物、欲しくなるでしょ」
P「なる」
凛「取って来たら?」
P「てっきり用意してくれる流れだと思ったんだけど」
凛「お仕事から戻って疲れてる担当アイドルにプロデューサーはそんなことさせるんだ」
P「………………」
凛「……」
P「コーヒーでいいか」
凛「うん。ミルクとお砂糖も」
P「ブラックで飲め、ブラックで」
凛「どうせ、なんだかんだ言って入れてくれるんでしょ」
P「……」
凛「取りに行く前に一個食べていっていいよ」
P「ん」
凛「これ、私一個も食べてない上に最後だから、よく味わって食べなよ」
P「そりゃ6種類24個入りだからな」
凛「はい、いってらっしゃい」
P「……。ん」
○
P「ただいま」
凛「おかえり」
P「お待たせしました」
凛「うん」
P「砂糖、そんなもんでよかったか」
凛「うん。大丈夫」
P「そういえば今更だけど」
凛「うん」
P「お仕事終わりに予定とか、大丈夫だった?」
凛「あんな呼び方しといて?」
P「……ごめんなさい」
凛「まぁ、うん。大丈夫だよ。こっちのが楽しかったと思うし」
P「ってことはなんかあったのか」
凛「ううん。ちょっとお買い物でもしようかな、って思っただけだし」
P「まじでごめん」
凛「いいよ、もう。過ぎたことだし。買いたいものが決まってたわけでもないからね」
P「エンゼルクリームあげます」
凛「ん」
○
P「わかった」
凛「何が?」
P「最初に話してたアレなんだけど」
凛「『あーん』のやつ?」
P「うん」
凛「はい」
P「そう。これ」
凛「これがどうかしたの」
P「二割増しくらいでおいしくなる気がする」
凛「そっか。なら、はい」
P「ん」
凛「二割増しくらいでおいしい?」
P「二割増しくらいでおいしい」
おわり
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