ノンナ「カチューシャは今日もおでかけです」 (63)

――9月 第一日曜日 プラウダ高校学園艦、茨城に寄港中


カチューシャ「ただいまー」

ノンナ「お帰りなさいカチューシャ。大洗は楽しかったですか」

カチューシャ「ええ。ミホーシャたちも元気だったし。はいこれお土産ね。同志たちにも分けてあげるといいわ」

ノンナ「ありがとうございます。後でいただきますね」

カチューシャ「そうそう、今日はポルシェティーガーに試乗してやったのよ」

ノンナ「レオポンさんチームのポルシェティーガーですね。いかがでしたか?」

カチューシャ「なんかすごいのよ! ジマーシャたちったら改造しまくって色んな仕掛けが追加されてて――」

ノンナ(ジマーシャ……ナカジマさんのことですね)

カチューシャ「まあそれでもプラウダの車輌が一番すごいんだけどね」エッヘン

ノンナ「はい。おっしゃるとおりです」ニッコリ

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カチューシャ「それはそうと練習試合の申請書類は書き上がったかしら?」

ノンナ「ええ。指示どおりに提出して参りました」

カチューシャ「ご苦労だったわね。せっかくの日曜日だったのに…」

ノンナ「いいえ。カチューシャが休日を楽しんでいただけたのならそれで良いのです」

カチューシャ「そう。じゃあ私、お風呂入ってくるわね」

カチューシャ「♪~」


ノンナ(大学選抜との試合以来、カチューシャには他校のお友達が増えました)

ノンナ(特に一緒に小隊を組んで戦ったみなさんとは仲良くしているようです)

ノンナ(みなさんに会える休日を待ちわびるカチューシャの姿は、忙しい毎日の中私の心を癒してくれています)

ノンナ(ですから不満に感じることなど一切ありません…)

――翌日


ガチャ

ノンナ「失礼します。カチューシャ、宿題は終わりましたか。何なら私がお手伝いを――」

カチューシャ「そんなのとっくに終わらせたわ」カタカタ ブーン

ノンナ「おや、PCで戦車ゲームとは珍しいですね」

カチューシャ「ネコーシャたちに誘われたのよ。操作方法もメールとかで教えてもらってばっちりよ」

ノンナ(ネコーシャ……大洗のねこにゃーさんですね)

カチューシャ「――ほらごらんなさい。私にかかればこんなゲーム楽勝よ!」ドカーン!

ノンナ「夜更かしすぎると大きくなれませんよ」

カチューシャ「わかってるわよ。今いいところなんだから邪魔しないで」ブォーン ドカーン!

ノンナ「……」

――さらに翌日


カチューシャ「さて同志諸君、早速だけど聖グロリアーナとの練習試合が決まったわ。試合日は来週の金曜日よ」

ノンナ「来年度の全国大会を見据えた編成での戦いになります。一年生、二年生諸君にはより一層の奮闘を期待します」

カチューシャ「というわけで今日からは、当日を見据えた訓練を行うわ。覚悟しなさい!」


ニーナ「隊長たづ気合入ってるなぁ」

アリーナ「この間の大学との試合から、カヂューシャ隊長絶好調だべ」

ニーナ「あの試合の隊長の活躍かっこ良がったもんなぁ。おらたづもがんばらなきゃ!」

アリーナ「んだ。聖グロの一年生にも負けてらんねぇもんな!」


……

カチューシャ「今日も充実した訓練になったわね、ノンナ」

ノンナ「ええ。下級生たちからも今後のプラウダを引っ張る自覚が芽生えてきたようで何よりです」

カチューシャ「それにしても全国大会が終わったっていうのに、忙しい日が続くわね」

ノンナ「ええ。今月のカチューシャのご予定ですが、今週末に九州にて黒森峰の隊長副隊長と会合」

ノンナ「その翌週は兵庫県内の渓谷にて練習試合聖グロリアーナ戦」

ノンナ「そして練習試合翌日の日曜日から二日間、強豪四校の隊長と共に大学選抜チームの訓練に研修参加となっています」

カチューシャ「うぅ……戦車道漬けなのは嬉しいけど、シルバーウィークがまるごと潰れちゃうのね」

ノンナ「とはいえこれもカチューシャの実力を皆が認めている証ですよ」

カチューシャ「ふふん。まあ偉大なるカチューシャに課された宿命と思ってありがたく受け取っておくわ」

ノンナ「そのとおり。堂々と向き合っていけばいいのです」

ノンナ(そう。これも宿命……)

プルルル… ガチャ

ノンナ「はい、こちらプラウダ高校戦車道チーム隊長室です……はい、この度はお世話になります。少々お待ちください」

ノンナ「ダージリンさんからお電話です」

カチューシャ「早速来たわね。――もしもし、一週間ぶりねダージリン。おかげさまで私もノンナも元気いっぱいよ」

カチューシャ「そうそう。先週の大学との試合で私と一緒にいた、あの気の強そうなマチルダ車長と話したいんだけど…」

カチューシャ「そう、ルクリリのことよ。え? なんでって…このカチューシャが直々にアドバイスしてやろうと思っただけよ」

カチューシャ「え、今そこにいるの? ならすぐに代わってよ、早く早く!」ピョンピョン

カチューシャ「――こんにちはルクリリ。偉大なるカチューシャ様と電話でお話できることを感謝なさい」

ノンナ(一緒にいたのはほんの一瞬だけだったはずですが……本当に楽しそうにお話されるんですね)

――9月 第二土曜日 プラウダ高校学園艦、鹿児島に寄港


ノンナ「今日も訓練お疲れ様でした。来週の試合の戦術構築も随分進んできましたね」

カチューシャ「二年生が一年生を引っ張ってくれてるおかげね。それよりお腹すいたわ。早くお昼にしましょう」

ノンナ「ええ。――おや、噂をすれば一年生たちが来ましたね。みなさん、何かご用ですか?」

ニーナ「隊長、副隊長、わだすたづに居残り訓練をしていただげませんか?」

アリーナ「今度の試合、どうしても勝ちたいんです。どうかよろしぐお願いします!」

一年生一同「「よろしぐお願いします!!」」

ノンナ「熱心なのは大変良いことです。しかしカチューシャ、いかがなさいますか?」

カチューシャ「ふむ。自ら居残りを志願するとは良い心がけね。だけど休むのも練習の内よ」

カチューシャ「そもそも今日はとても居残りなんてできないくらいには可愛がってあげたつもりなんだけど?」

ニーナ「う……」ゾワッ

カチューシャ「まあそれはそれとして、私たちこれから用事があって黒森峰に行かなきゃならないの。残念だけど無理ね」

ニーナ「そうですか……」ショボン

カチューシャ「――と言いたいところだけど、せっかくやる気満々になってる同志たちを受け流すのも忍びないわ」

アリーナ「ということは……!」

カチューシャ「ノンナ、悪いけどこの子たちの面倒見てあげてくれる?」

ノンナ「もちろんです。カチューシャのご用命とあれば…」

一年生一同「「ありがどうございます!!」」

カチューシャ「その代わり、今日頑張った分明日は一日しっかり休息をとること。守らなかったら粛清よ」

カチューシャ「ここで無理したせいで試合に出られなくなったりしたら承知しないんだから。いいわね?」

一年生一同「「Ураааааааа!!」」

カチューシャ「そういうわけでノンナ、黒森峰には私が一人で行ってくるから」

ノンナ「わかりました。それでは昼食に参りましょう」

ノンナ「……」

――その日の夜


カチューシャ「ねえ聞いて聞いて! エリーシャったらあんなに生意気な癖してハンバーグが大好物なのよ。子供よね~!」

カチューシャ「あとマホーシャはカレーが好きなんだって! これ知ったら全国のカレー屋さんが尻尾巻いて逃げちゃうわね!」

ノンナ「今日も楽しい時間を過ごされたようで何よりです」

カチューシャ「どうしたのノンナ、元気ないみたいだけど。ひょっとして一年生の居残りに付き合って疲れちゃった?」

ノンナ「いいえ、そんなことはありません。それに明日は休日ですし――」

カチューシャ「そうだ。ねえノンナ、明日私に料理を教えて欲しいの。せっかくの休みだし、きっと気分転換になるわ」

ノンナ「私はもちろん大歓迎です。何をお作りになりたいのですか?」

カチューシャ「もちろんハンバーグよ! 私がエリーシャに大人のハンバーグとは何たるかを思い知らせてやるんだから!」

ノンナ「そうですか。それは楽しみですね」

ノンナ(エリカさんに食べさせる料理を私が指導するのですか。しかしカチューシャのためなら……)

――翌日の夜、黒森峰女学園


エリカ「隊長、研修に必要な資料が揃いました。こちらになります」

まほ「ありがとうエリカ。せっかくの休日だったのに、こんな時間に呼び出してすまなかったな」

エリカ「いえ、お役に立てたのなら光栄です。そうだ、隊長もよろしければこれ召し上がりますか?」パカッ

まほ「ハンバーグか。どれもやけに小ぶりだが、良い匂いじゃないか」

エリカ「今日プラウダの隊長にもらったんです。一つ一つは小さいんですが、これだけの量さすがに一人では食べきれなくて」

まほ「そうか。大きさから察するに、きっとカチューシャの手作りだろう。エリカはすっかりカチューシャに気に入られたんだな」

エリカ「なっ……そんなことないですよ。向こうが気まぐれで勝手に送りつけてきただけです」

まほ「だがちゃんと食べたんだろう? ぜひ感想を聞きたいな」

エリカ「ええ。その……思っていたほど悪くはありませんでした」

まほ「そうか。じゃあ私も早速いただくとしよう」

エリカ「はい。すぐに温めてきますね。ライ麦パンもご用意します」

――練習試合当日 兵庫県某所の渓谷


カチューシャ「さあ、いよいよ試合開始よ。同志諸君はプラウダのために全身全霊で臨みなさい」

一同「「「Ураааааааа!!」」」

カチューシャ「それじゃあ各自の配置と役割を改めて説明するから、よく聞いておくのよ。ノンナ、お願い」

ノンナ「……」

カチューシャ「ちょっとノンナ、ノンナってば!」

ノンナ「失礼しました。部隊の配置確認ですね」

カチューシャ「もう、しっかりしなさいよね!」

……

ニーナ「ノンナ副隊長、ここ最近がへね(元気ない)気がすら」

アリーナ「んだ。隊長の指示ば聞き逃したごどなんて、一度もながったのに」

クラーラ「これはさすがによろしくないですね。試合に響かなければいいのですが」

――試合開始。KV-2は切り札として自陣の丘の上で待機中


アリーナ「第二小隊は作戦どおり川沿いを順調に北上中だべ」

ニーナ「第二小隊ってノンナ副隊長の隊だな。副隊長車以外はみんな一年生で構成されてら」

アリーナ「小隊の目的は、敵の裏をかきつつエースのノンナ副隊長を敵陣に送り届けること……みんなヘマだけはするなよ」

ニーナ「でも、あれだけうって練習したんだ。それに副隊長が一緒ならきっと大丈夫だべ」

アリーナ「ん? 敵の小隊と川を挟んで鉢合わせたべ。さすがダージリンさん。こっちの動きを読んでただか」



ルクリリ「10時方向、対岸に敵5輌。あのIS-2は副隊長車だ。小隊各車、微速後退しつつ応戦!」

マチルダⅡ車長A「了解ですわ! ――なっ!?」

ドォン! シュパッ

ルクリリ(くっ、行進間射撃でいきなり1輌撃破とは……さすがブリザードのノンナね)

ノンナ(敵小隊、残り5輌――撃破された車輌を盾に後退し、傍の橋を渡ってこちらの進路をふさぐつもりか)

カチューシャ『ノンナ、敵フラッグ車を見つけたわ。予定どおりフィールド北側で挟み撃ちにするわよ』

ノンナ「了解。小隊各車、敵は我々をここで食い止めるつもりです。こちらも攻撃を続け、削られてでもここを突破しましょう」

ノンナ「橋の手前まで進んだらC車、D車の2輌が先行。敵を引きつけてください。A車、B車は私と共に突破を優先」

一年小隊車長A・B・C・D「「了解!」」


マチルダⅡ車長B「ルクリリ様、どうなさいますか?」

ルクリリ「敵は犠牲を払ってでもIS-2を北に向かわせるはず……できるだけT-34の数を減らし、突破される前に優位に立つのよ」

ルクリリ小隊一同「「了解!」」

ダァン! ダァン! シュパッ シュパッ

一年T-34/76車長C「ひゃあっ」

一年T-34/76車長D「すみませぇん。引きつける間もなく撃破されました…」

ノンナ(3対5。こちらが橋に着く前にケリをつけるつもりか。しかし小隊長車を倒せば混乱が見込める。小隊長はおそらく彼女…)

ルクリリ「3輌なら釘づけにできる。小隊各車、前進!」

ノンナ「A車、B車、敵の狙いはあなたたちです。撃破車輌の陰から砲撃し、橋の上の敵を牽制してください」

ノンナ「我々IS-2は、その隙を突いて敵前列左側の小隊長車を叩きます。一気に橋の前へ出たら、発砲後欄干の陰へ」

IS-2操縦手「Да」ギュイイイン キッ

ルクリリ(しまった。砲身がこちらに――ここまでか)

ドォン! ……

ノンナ「っ――」

IS-2操縦手(ウソ……外した?)

ルクリリ「――チャンスだ! 砲撃!」

ダァン! シュパッ

一年T-34/85車長A「副隊長ーーっ!」


マチルダⅡ車長B「ルクリリ様たちがプラウダ副隊長車を撃破されたわ! 大戦果ですわよ!」

マチルダⅡ車長C「素晴らしいですわさすがはルクリリ様! わたくし感激いたしましたわ!」

カチューシャ「ノンナどうしたの! 応答しなさい!」

ノンナ『……申し訳ございません。IS-2、撃破されました』

カチューシャ「なっ!? それで、小隊はどうなったの?」

一年T-34/85車長B『現在敵に追われながら南下中。残りはわだすたづ2輌だけです…』

カチューシャ「ぐっ……作戦変更よ。第一中隊、フラッグ車を守りながら一旦西へ――」

ニーナ『待ってけろ!!』

カチューシャ「ニーナ!?」

ニーナ『隊長、作戦変更の必要はありません。わだすに考えがあります』

カチューシャ「どういうこと?」

ニーナ『第二小隊には、現在地から500m南の橋を渡っでもらいます。そして向こう岸から北に進むんです』

カチューシャ「なるほど。小隊の2輌が渡り次第、敵が来る前にあなたたちが橋を落とすわけね。できる?」

ニーナ『……責任はわだすが取ります』

カチューシャ「わかった。同志ニーナ、あなたの意見を採用するわ。――全車、ここまでの作戦を継続!」

アリーナ「本当に良がたのか? んな啖呵ば切ってまで」

ニーナ「大丈夫だべ。それにおらたづがミスしたときいつも副隊長に助けでもらってるから、今日はおらたづの番だっきゃ」

アリーナ「ニーナ……んだな。たまにはおらたづも恩返ししねぇと」

KV-2砲手「んだべな。先週副隊長に特訓つけでもらった成果、ここで見せるべ」

KV-2操縦手「んだ。いぐべ!」

ニーナ「かーべー全速前進だべ!」


カチューシャ『第二小隊、聞いたわよね。今あなたたちを追って来てるのは何輌?』

一年T-34/85車長B「んだ。マヂルダが3輌です。あと2両は北さ向かいました」

カチューシャ『2輌が北へ……フラッグ車の護衛に合流したのかしら。だとしたらやけに消極的ね。対岸に敵車輌は見える?』

一年T-34/85車長A「んね。敵影なしです」

カチューシャ『了解。橋を壊したら、かーべーたんをそっちに合流させるわ。3輌で北上しなさい』

KV-2操縦手「位置についたべ」

アリーナ「砲撃準備完了。小隊2輌が橋に入った。渡りきったら合図するべ」

KV-2砲手「んだ。副隊長のアドバイスどおりに……」

ニーナ「……砲撃!」


ドッカァァァァン!! ガラガラガラバキバキバキグッシャァァァァァン


マチルダⅡ車長B「まあ大変っ、橋が崩落しましたわ!」

マチルダⅡ車長C「なんてこと! 各車、全速でさっきの橋まで戻りますわよ!」


一年T-34/85車長A「あんら~相変わらずまなぐちゃぐちゃな威力だっきゃ」

一年T-34/85車長B「かーべー! おめらどさ狙っただか!? あどわんつかでおらたづ当たるとこだったべ!」

ニーナ「えへへ。ほんにわりぃ」

東北弁とお嬢様口調が飛び交う好試合はその後も白熱し、

的を外したKV-2がフィールド脇を走る線路を盛大に爆破して鉄道会社の社長がガッツポーズしたり

フラッグ車チャーチルに狙いを定めたクラーラ車の元に空からローズヒップ車が降ってきたり

どや顔でチャーチルの護衛に入ったルクリリ車が、隠れていたプラウダ一年に後ろから撃たれたりと

なんやかんやの末プラウダの勝利となった。


カチューシャ「よくやったわね同志ニーナ。あなたの機転のおかげで試合を終始優位に進められたわ」

ニーナ「いやあ。ありがどうございます」

カチューシャ「といっても橋二つを壊した以外は特に良いところはなかったみたいだけど…」

ニーナ「ぎくっ」

カチューシャ「それよりも……ノンナ、聞いたわよ。砲撃を外した隙を突かれて撃破されたそうじゃない」

ノンナ「申し訳ございません。私のミスです」

カチューシャ「やっぱり今日のあなた変よ。いつものノンナはどうしちゃったの?」

ノンナ「……」

カチューシャ「さて――これから大阪のホテルに入って今日の反省会を行うわけだけど、私は席を外させてもらうわ」

カチューシャ「明日の研修のことでダージリンから連絡があるみたいなの」

ノンナ「私は同行しなくて構いませんか?」

カチューシャ「……いいわ。あなたは少し頭を冷やしておいて。反省会の議長はクラーラに任せるわ」

ノンナ・クラーラ「Да……」


‐ここからロシア語‐

クラーラ「同志ノンナ。少しよろしいですか」

ノンナ「クラーラ。すみません……みっともない姿を見せてしまいましたね」

クラーラ「ええ。あなたがそんな調子だと、我が隊の命運に関わります。同志たちも心配していますよ」

ノンナ「情けない限りです。本来なら後輩たちを引っ張らなければならない立場なのに、逆に助けられてしまって」

クラーラ「あなたが調子を崩している理由は明白です」

クラーラ「カチューシャ様の他校へのおでかけが増えて以降、あなたは目に見えて活力を失っています」

クラーラ「寂しい気持ちは私も理解できますが、カチューシャ様を心配させる事態を招いては元も子もありません」

クラーラ「何よりいつもの元気なあなたを必要としているのは、他ならぬカチューシャ様ですよ」

ノンナ「そうですね。カチューシャは心優しく立派な方です。だからこそ、多くの人に愛される…」

ノンナ「たとえ私の手から離れようとも、必ずや多大な栄光を手にすることでしょう」

ノンナ「むしろこのまま私が傍で色々と干渉していては、殻を破ろうとするカチューシャの妨げになるかもしれません」

クラーラ「何を言っているのです。カチューシャ様の傍にはいつも、最大の理解者であるあなたがいたから――」

ノンナ「いいえ。いつか別れるべきなのだと覚悟していたつもりです。その日はもう、そう遠くないのかもしれませんね」

クラーラ「同志ノンナ、私にはあなたがカチューシャ様と別々の道を歩むことを心から望んでいるとは思えません」

ノンナ「己の感情などどうでも良いのです。私が望むものは、カチューシャの成功と幸福……それ以外ありませんから」

ノンナ「――では同志クラーラ、指示のとおり反省会の進行をお願いします。私に与える罰については、どうぞ遠慮なく」

クラーラ「ちょっと、ノンナ……!」

クラーラ(思っていた以上に重症ね。こうなったら……)

‐ここまでロシア語‐

クラーラ「というわけで反省会を開始します。まずは同志諸君、今日はよく頑張りました」

クラーラ「特に一年生のみなさんの活躍は目を見張るものがありました。居残りの成果が出ましたね」

クラーラ「ただKV-2はまた敵車輌に一発も当たらなかったようですが…」

ニーナ「はいぃ、反省してます」

クラーラ「まあいいでしょう。では試合の反省についてはこの辺りにしましょうか」

アリーナ「え、もう終わりですか?」

クラーラ「いいえ。ここからが本題です。今日の勝利を祝し、議長の私から同志諸君に提案があります」

クラーラ「せっかく関西に来たことですし、明日から二日間、みんなでじっくり各地を観光しませんか?」

ニーナ「いいですけど、なしてまた突然」

クラーラ「私が観光したいからです。京都や大阪で写真を撮りまくって家族や地元の友人に自慢します」

ニーナ・アリーナ(職権乱用だべー!)

ノンナ「クラーラ、いきなり何を言い出すのですか」

クラーラ「同志ノンナ、あなたにも我々と一緒に旅を満喫していただきます。それが今回の罰です。よろしいですね?」

ニーナ・アリーナ(なるほど!)

――翌日、新大阪駅


オレンジペコ「では行ってらっしゃいませ、ダージリン様」

ダージリン「あらペコったら冷静なのね。私はあなたに二日も会えなくなるのが寂しくて仕方ないというのに」

オレンジペコ(むしろ早く羽を伸ばしたくてウズウズしているくらいなのですが…)

ダージリン「あなたはもっとノンナさんを見習うべきよ。ご覧なさい、この世の終わりのような顔をしているわ」

ノンナ「……カチューシャ、行ってらっしゃいませ」

カチューシャ「ふわぁ……じゃあ後はよろしくね、ノンナ」ウトウト

ダージリン「カチューシャ、ホームでうとうとしてちゃ危ないわよ」

ノンナ「何かとお世話をおかけするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします」

ダージリン「構わないわよ。ひょっとしたら私とおでかけできるのが楽しみで昨夜ろくに眠れなかったのかもしれないし」

ノンナ「ええ。そうかもしれませんね……」ゴゴゴゴゴ

一般客「なんや!? えらい急にホームが寒ゥなったで!」

オレンジペコ(ダージリン様! 空気読んでください!!)

――大阪駅前


クラーラ「では一年生のみなさん、今日明日と二日間、どうぞよろしくお願いしますね」

アリーナ「んだ。でもおらたづと一緒の旅行、副隊長は楽しんでくれますかね」

ニーナ「んだなぁ。おらたづじゃあカヂューシャ隊長の代わりにはなれそうにねぇですよ」

クラーラ「構いませんよ。ノンナに早く元気になって欲しい気持ちは、みなさんだって同じでしょう?」

アリーナ「んだ」

ニーナ「もちろんだべ」

クラーラ「ならば今回の交流を通じて、その気持ちを素直に伝えていきましょう」

クラーラ「それにノンナは何かとお世話を焼きたがるところがあります。みなさんで彼女の母性をくすぐるのは効果ありと思いますよ」

アリーナ「よし! おめら、副隊長のためにおらたづが一肌脱ぐべ!」

一年生一同「「Ураааааааа!!」」

ニーナ「あんれ? 向こうから歩いでぐるのはもしかして――」

ローズヒップ「あら、プラウダのみなさんですわ! おはようございますわ~!」

アッサム「おはようございます。昨日はお疲れ様でした」

クラーラ「こちらこそお疲れ様でした。今日はお二人も大阪観光ですか?」

アッサム「ええ。隊長を見送りに行ったオレンジペコと、ここで待ち合わせていますの」

ニーナ「奇遇だなぁ。わだすたづもノンナ副隊長とこごで待ち合わせしちゃんですよ」

ローズヒップ「フフフ。わたくし、これからアッサム様たちを大阪にあるという最高の喫茶店にお連れしますのよ」

アリーナ「最高の喫茶店、ですか?」

ローズヒップ「ええ。その名もずばり天下のお茶屋! きっと美しく華やかで格式高い場所に違いありませんわ!」

アッサム「……ローズヒップ。まさかとは思いますが、それは天下茶屋のことではないですか?」

クラーラ「お茶屋さんではなく、私鉄と地下鉄の駅がある地区の名前ですね。ガイドブックにも書いてあります」

ローズヒップ「なっ……オホン。わ、わたくしだってたまにはこういうこともございますわ」

ニーナ「あははは、ローズヒップさんっておもしぇ人だな」

アッサム「おや、噂をすればノンナさんが来られましたわ。ペコも一緒です」

クラーラ「あら本当ですね――って」


ノンナ「」ビュウウウウウ…

オレンジペコ「おはようございます。みなさんお揃いで…」ブルブル

アッサム「ペコ、こんなに凍えて……一体何があったの?」

オレンジペコ「ダージリン様のせいです」

アッサム「でしょうね。具体的には何をやらかしたの?」

オレンジペコ「ノンナさんの目の前でおねむのカチューシャさんをおんぶして、そのまま新幹線に乗り込みました」

アッサム(ああああああああああ!!)

アッサム「申し訳ありません。うちの隊長がまた余計なことをしたみたいで…」

クラーラ「いえ、こちらも迂闊でした。私が同行していればこのような事態には…」

アッサム「しかしいくら目の前でカチューシャさんをおんぶされたとはいえ、あのノンナさんがここまで気落ちされるなんて」

クラーラ「実は今の状態に至るまで色々ありまして――」

アッサム「――なるほど。昨日ルクリリに撃破されてしまったのもそれが原因ですか」

クラーラ「ええ。なので今日は小柄な一年生たちとひたすら交流させて気を紛らわせてもらう計画だったのですが…」


一年生A「副隊長、今日はおらたづとすっぱど思い出ば作りましょうね(上目使い)」

一年生B「副隊長、あっちにめごいカフェがあるべ。おらあそこさ行ぎたいです(手を繋ぎながら)」

ノンナ「可愛いカフェですか。カチューシャもどなたかに誘われてそんな場所を訪れるかもしれませんね」ビュウウウウウ…

アッサム「どうやら全く歯が立たないようですわね」

クラーラ「嫉妬で我を忘れるのではなく、気落ちする方向にシフトしたことは不幸中の幸いといえます」

アッサム「もし前者だったなら、うちの隊長は今頃永久凍土に埋もれていたかもしれませんね」

アリーナ「どうすればいいですかね。カフェでお茶したり、めごい洋服ば選んでもらったりする作戦だったんですけど…」

アッサム「クラーラさん、ここはどうか我々に責任を取らせていただけませんか」

クラーラ「アッサムさん、何か策がおありなのですね」

アッサム「ええ。ノンナさんの凍った心に眠る闘争本能を刺激します」ピッピッ プルルル…

アッサム「もしもしアッサムです。今すぐ大阪駅まで来られますか。ちょっとした緊急事態で――了解です。待っていますわ」

ニーナ「どなたか呼ぶんですか?」

アッサム「ええ。作戦に欠かせない人物です。それではみなさん、耳を貸してください」

……

ノンナ「」ビュウウウウウ…

オレンジペコ「ねえみなさん、せっかくですし全員でこの近くにある巨大遊園地に行きませんか?」

ローズヒップ「まあ素敵! アッサム様、わたくし後ろ向きジェットコースターに乗りたいですわ!」

アッサム「確かあそこにはバーチャルシューティングゲームもありましたね。あなたも私と一緒にいかがですか?」

KV-2砲手「えっ、わだすがアッサムさんと戦うんですか? そんなの無理だびょん…」

アッサム「なんでしたらノンナさんとチームを組んで2対2で戦うのはいかがでしょう。ねえノンナさん?」

ノンナ「」ビュウウウ…

アッサム「ええと……こちらも腕に覚えのある人間をもう一人用意しましたので、どうかノンナさんもぜひ…」

ルクリリ「ご、ごきげんよう……」

ノンナ「ほぅ、あなたは……!」クワッ

ルクリリ「ひぃっ」ビクッ

ルクリリ「アッサム様、これは何の罰ゲームでしょうか(小声)」

アッサム「耐えてください。人助けは淑女の流儀。すなわち聖グロリアーナの戦車道です(小声)」

ノンナ「……いいでしょう。その勝負、私も参戦させていただきます」

アリーナ(うぉっ、しゃっこい眼差しの奥に、ほのかに燃える闘志ば感じら)

クラーラ「さあ同志、今です(小声)」

KV-2砲手「ふぇぇノンナ副隊長、おら自信ねぇです…」ウルウル

ノンナ「大丈夫です。ゲームですからリラックスして挑みましょう。それでいて勝利への執念は絶やさぬように」

ニーナ(おおっ、意外と良い感じだべ!)

一年生A・B(いいなぁ、おらもあんな風に優しぐされてみてぇの)

アッサム「ではみなさん、早速遊園地に向かいましょう」

――遊園地


アッサム「ルールは簡単。四人で横一列に並び、画面に次々と現れるゾンビをこの銃でひたすら倒していきます」

KV-2砲手「こんなの初めてだべ。おらにもできるかの…」

ノンナ「コツがあるんですよ。まずは安定して撃てる姿勢を保ちましょう。ほら、こうやって構えて――」スッ

KV-2砲手(はわわ…こらほど近ぐで手取り足取り教えてもらえるなんて)ドキドキ

シューティングゲーム『Ready――GO!!』

ドンドンッ ドンッ ドンッ

クラーラ「アッサムさんの作戦が当たりましたね。経過は順調です」

アリーナ「楽しそうでいいなぁ。おらも身長低ぐて胸もちっちゃかったら可愛がってもらえそうなんだけどな」

ニーナ・オレンジペコ「……」イラッ

ニーナ「なあベコちゃん、待っでる間暇だしおらとあっちのパンチングゲームで勝負すんべ」

オレンジペコ「記録を出すと景品がもらえるんですね。面白そう。あと私はベコじゃなくてペコです」

アッサム(ちょっ、ベコちゃんって……ダメだわ。ツボに入って集中できない)スカッ スカッ

ノンナ「やはり筋がいいですね。あなたを砲手に選んだカチューシャの目に狂いはなかったわけです」

KV-2砲手「んだ! 副隊長と一緒だと、おらとっても楽しいです!」


アリーナ「あの、クラーラさん」

クラーラ「なんですか?」

アリーナ「前から思っでたんですけど、隊長と副隊長って、なしてあんなに仲が良いんですか?」

クラーラ「私も詳しくは知らないのですが、何かきっかけとなる出来事があって以来、ずっとあんな感じだそうです」

アリーナ「そっか。いつも一緒が当たり前だったのが急に他の人のとこさ行ぐようになったら、確かに寂しく感じるかも」

クラーラ「同志アリーナ、あなたはノンナのこと好きですか?」

アリーナ「好きだべ。練習は厳しいし、叱られるのは怖いけど……でも、尊敬しでます。憧れの先輩だんず」

アリーナ「でも憧れてる気持ちはニーナの方がもっと強いと思います。あいつはドジだし、いつも怒られてるけど…」

クラーラ「それも彼女が期待されている証拠ですよね」

アリーナ「んだばってニーナ、隊長になる頃にはノンナさんみたいなかっごええ女子になるんだって言っでますけど…」

クラーラ「ニーナったらカチューシャ様みたいなことを言うのね。案外二人はどこか似た部分があるのかもしれませんね」

オレンジペコ「それにしても、お互い先輩には何かと苦労させられますね」

ニーナ「んだの。でもペコちゃんは優秀だから、きっと上手いことあしらうんだびょん? おらとは違うべ」

オレンジペコ「そんな優秀だなんて……私だってまだまだなのに」

ニーナ「でもペコちゃんはダージリンさんの期待にちゃんと応えてるべ?」

オレンジペコ「ううん。実は昨日の試合、我が隊の指揮のほとんどはダージリン様ではなく私が担当していたんです」

ニーナ「えっ」

オレンジペコ「ノンナさんの車輌を撃破した後に小隊を二手に分け、ルクリリ様ともう一輌を北に向かわせたのは私…」

オレンジペコ「最も警戒していた車輌を撃破できたことで、かえって消極的になってしまったんですよね」

オレンジペコ「そこをまんまとカチューシャさんに突かれました。もちろん、あなたのKV-2にも…」

オレンジペコ「だからちょっと自信なくしちゃって。落ち込んでたってダージリン様からは容赦なく苦言が飛んでくるし」

ニーナ「ペコちゃんでもそんなに弱気になることあるんだべな」

オレンジペコ「ええ。だから今回の連休を利用して、しっかり気持ちを切り替えようと思ったんです」

オレンジペコ「このまま落ち込んでばかりもいられません。だって私、戦車道好きですから」

オレンジペコ「最近思うんです。ダージリン様から直接指導を受けられるのも、あと半年ほどなんだなって」

オレンジペコ「色々とおかしな人だし振り回されることも多いけど、それでも一緒にいられる時間は大事にしたい…」

オレンジペコ「もちろんアッサム様や他の方々とも……。そうして様々なものを吸収した先にあるのが私の戦車道だと思うんです」

ニーナ「そんな風に考えられるペコちゃんは、やっぱり良い隊長になれるべ。もしかしたらダージリンさん以上かも」

オレンジペコ「ニーナさんだって素敵な隊長になれますよ。だってあのカチューシャさんやノンナさんが期待を寄せてるんですから」

ニーナ「んね。おらがあのお二人の満足する隊長になるには、まだまだ足りねぇことだらけだべ」

ニーナ「だからペコちゃんの言うとおり、おらも先輩たづと一緒にいられる時間ば大事にしたいけな」

オレンジペコ「いつか隊長として対戦できる日を楽しみにしてますよ」

ニーナ「んだ。おらもペコちゃんに負けねくらい頑張るべ」

オレンジペコ「そのためにも、今日は思いっきり遊んで日頃の鬱憤を晴らしましょうね」


スタッフ「パンチングゲームにようこそ! キッズコースにお二人でのご参加ですね?」

ニーナ・オレンジペコ「「は? 無差別コースのマスターランクでお願いします」」

――数十分後


一年生A「副隊長~次はおらと魔法学校さ行ぐべ」

一年生B「え~っ、おらと立体機動でサメ退治するのが先だべ!」

ノンナ「二人とも、喧嘩はダメですよ。時間もたっぷりありますし、じっくり回りましょう」


クラーラ「表情も随分柔らかくなりましたね。やはり気分転換には娯楽が一番です」

アリーナ「んだ。これでみんなで一日遊園地ば満喫したら一件落着ですね――ってニーナたち、その荷物はなんだべ?」

ニーナ「新記録更新の景品だべ。あんのスタッフ、おらたづのごどわらしだ思って舐めてたがら一泡吹かせてやったべ」

オレンジペコ「おかげでスッキリしました」

アッサム「さすがねペコ。これは私からのお土産よ」

オレンジペコ「牛のキャラクターのぬいぐるみですか? って、つまりこれ……」

アッサム「ベコちゃん……ブフフッ」

オレンジペコ「私もう一回パンチングゲームしてきます」

――その夜、研修を終えたカチューシャたちは


ケイ「ここが私たちが泊まる部屋ね」ガチャ

カチューシャ「何よこれ、狭っ!」

ダージリン「二段ベッド二つに机と椅子が四つ……余計なものが一切ない簡素なお部屋ね」

カチューシャ「だけどこの手の研修って去年まではこんな安宿じゃなく、そこそこの二人部屋が用意されてたそうじゃない」

まほ「変更の理由は、大洗女子の存続が決まった影響で研修に割かれる予算が削られたためだそうだ」

ダージリン「まあ研修生として招かれたのが大洗に助太刀した私たちとあれば、文科省の対応も自ずとこうなるわよね」

カチューシャ「器の小さい奴らね」イライラ

ケイ「物事はポジティヴに捉えましょ。この四人で同じ部屋に泊まれる機会なんてなかなかないわけだし」

カチューシャ「あなたたち、カチューシャの安眠を妨害したらどうなるかわかってるわよね!」

ケイ「怖い夢を見たらいつでも声をかけてね。ノンナに代わって添い寝して子守唄を歌ってあげるわ」ナデナデ

カチューシャ「ぐぬぬぬ……」

ケイ「さて消灯時間が過ぎたわけだけど……やっぱりこういうときの定番はガールズトークよね」

まほ「だが今日は多忙だったし、明日も朝は早い。しっかり休息を取るべきではないか」

ダージリン「そうね。それにうるさくしすぎると誰かさんに粛清されちゃうわよ」

ケイ「Umm…つれないなぁ。まあ確かに明日起きてからいくらでも話せるものね。じゃあみんな、Good night♪」

まほ「おやすみ」

ダージリン「おやすみなさい」

……

カチューシャ(眠れない…)ゴソゴソ

カチューシャ「ダージリン、起きてよ」

ダージリン「スヤスヤ…」

カチューシャ「ダメだ熟睡してる……ねえ、ケイ――」

ケイ「スヤァ…」

カチューシャ(もうっ、二人とも昼間はあんなに喧しかったのに…)

まほ「どうしたカチューシャ。眠れないのか?」

カチューシャ「げっ、マホーシャ起きてたのね」

まほ「今日の研修で気になったことをノートに書き留めていたんだ。今まとめておけば明日の講義で質問できるだろう」

カチューシャ「何よそれ。私たちには早く寝ろって言ってたくせに」

まほ「すまない。あまり賑やかだと集中できないんでな。それに集中して早く済ませれば睡眠時間も確保できる」

カチューシャ「だからってわざわざ机のスタンドライトをベッドまで持ち込んで……ほんとあなたって戦車道バカね」

まほ「ああ。こればかりは反論のしようがないな。そうだ、眠れないなら一緒にどうだろうか。君の意見もぜひ参考にしたい」

カチューシャ「そう。このカチューシャの見解が聞きたいなんて、あなたも話のわかる人間になってきたじゃない」


カチューシャ「よいしょっと。それで、何が気になってるの?」

まほ「選抜チーム同士の紅白戦の序盤、紅組の中隊が森で半壊した場面だ」

カチューシャ「確かにあの場面、紅組はもっと臨機応変な対応ができればここまでやられずに済んだでしょうね」

まほ「いや、私はここで白組が敵中隊を全滅に追いこめたと思うんだ」

カチューシャ「ああ、そっち…」

まほ「――とまあこのように攻めていれば、白組は序盤で敵中隊一つを完全に制圧することができたはずだ」

まほ「だがリスクをかける場面ではなかったという君の意見も尤もだ。結果として勝ったのは白組なわけだからな」

カチューシャ「うん……そうね…」ウトウト

まほ「それから、次の場面についてだが――ん?」

カチューシャ「zzz…」

まほ「なんだ。眠ってしまったのか」

カチューシャ「ムニャムニャ……ノンナ…」ギュッ

まほ「しょうがないな。今夜はこの辺りで切り上げるか」

まほ「おかげで良いノートが仕上がったよ。ありがとう、カチューシャ」

――翌朝


ケイ「ダージリン、起きて。ダージリンってば」ユサユサ

ダージリン「むにゃ……何ですの、朝から騒々しい」

ケイ「いいからちょっと来て。ほら」

ダージリン「……まあっ!」


カチューシャ・まほ「スヤスヤ…」


ダージリン「あのまほさんとカチューシャが二人仲良く眠ってるわ。しかもまほさんのベッドで!」

ケイ「ね、すごいでしょ。それにしてもカチューシャったら相変わらず天使のような寝顔ね」

ダージリン「こんな出来事二度とお目にかかれないかもしれないわ。早速写真に残さなくっちゃ。カメラお借りするわよ」カシャッ

ケイ「カチューシャの寝顔、ノンナにも見せてあげたらきっと喜ぶわよ」

ダージリン「そうね。彼女なんだか元気がないご様子だったから、私たちが力になってあげましょう」

ケイ「OK、そうと決まれば早速画像をメールでノンナに送るわね」

――プラウダ高校(舞鶴に寄港中)


アリーナ「ノンナ副隊長おはようございます。今日の京都観光楽しみですね――って、うおおっ!?」

ノンナ「」ヒュオオオオオ…

ニーナ「な、副隊長がまた凍ってら!?」

クラーラ「大変なことになりました」

アリーナ「クラーラさん、何があっただか? 副隊長、昨日はあんなに元気そうだったのに」

クラーラ「原因はおそらくこれです。ノンナが呆然と取り落としたスマホに、この写メが表示されていました」

ニーナ「か、カヂューシャ隊長が、黒森峰の西住隊長に抱きついて気持ちよさそうに寝てら…」

クラーラ「文面から察するにケイさんたちに悪気はなかったのでしょう。しかしこれで昨日の私たちの努力は水の泡になりました」

アリーナ「そ、そんな……」

クラーラ「仕方ありません。とにもかくにもノンナを京都市内まで連れて行き、また気分転換させるしか…」

アリーナ「でも、カヂューシャ隊長が他の隊長たづと仲良ぐしてる画像がまた送られでもしたら…」

ニーナ「おらに任せてけろ」

クラーラ「ニーナ?」

ニーナ「クラーラさん言ったべな。ノンナさんに元気になって欲しいなら、その気持ちば素直に伝えようって」

ニーナ「だったらおらは、作戦とか関係なく、自分の気持ちばしっかり伝えようと思います」スタスタスタ

ニーナ「ノンナ副隊長!」

ノンナ「同志ニーナ、何の用です」ヒュオオオオオ…

ニーナ「副隊長には今からわだすとデートしてもらいます」

ノンナ「デートですか。それは素敵ですね。カチューシャも今頃きっと楽しんでいることでしょう」ヒュオオオオオ…

ニーナ「…もうっいづまでいじけてるつもりだべか! いいがら来てけろ!」ヒョイッ

ノンナ「えっ」

アリーナ「ニーナが恐れ多くもノンナ副隊長をお姫様抱っこした!」

ニーナ「それじゃあアリーナ、クラーラさん、おらちょっと行っでくるべ」ダッ

クラーラ「ニーナ、どこへ行くつもりですか!? минуточку!」

ノンナ「同意もなく連れ去るとは強引な手に出ましたね。普段なら叛逆行為として粛清の対象となるところですよ」

ニーナ「だってあのまま放っておいたってらちが明がねと思ったんです」

ノンナ「まったく……私事ですが、こんな風に誰かに持ち上げられて移動するのは幼少期以来です」

ノンナ「すれ違う同志たちが驚かないのは、これをあなたに対する何らかの罰と捉えているからでしょうか」

ニーナ「カヂューシャ隊長にこんなことされてみたいですか?」

ノンナ「さあ、それはどうでしょう。頑張って私を持ち上げようとするカチューシャの姿を見てみたい気はしますが」

ニーナ「お二人は本当に仲良しなんだべな」

ノンナ「カチューシャは私にとって光です。どんな雪をも解かす太陽であり、夜闇を安らぎの明かりで照らす月でもある」

ノンナ「かつて彼女は、氷に覆われていた私を光ある世界へと導いてくれました」

ノンナ「だから私は彼女のために己の全てを捧げようと心に決めたのです」

ノンナ「そんなカチューシャの傍には自然と多くの人が集まり、彼女に手を差し伸べ、共に歩もうとしてくれます」

ノンナ「素晴らしいことです。たくさんの人との触れ合いが、カチューシャをより高い頂へ導いてくれるのですから…」

ニーナ「ノンナさんは、カヂューシャ隊長の幸せを心から願ってるんだべな…」

ノンナ「ええ。それを実現するためなら、私はどんな苦悩や孤独さえ受け入れるつもりで――」

ポタ ポタ…

ノンナ「――ニーナ…?」

ニーナ「……なしてそんな悲しいこと言うんですか」

ニーナ「おらに言わせれば、副隊長だって光みたいな人です。いくら目指しても届かね、お天道さんみたいな存在です」

ニーナ「全国大会でおらが情報を漏らしたせいで負けちまったのがわがって、罰としてシベリア送りにされたとき――」

ニーナ「悔しそうなみんなの顔や、泣いてた先輩たづの姿がずっと頭に浮かんで…」

ニーナ「おら本当に取り返しのつかねことしちまったんだって、ずっと一人で泣いてばかりいました」

ニーナ「それでもカヂューシャ隊長とノンナさんは、こんなおらを指揮官としての素質があるんだって期待し続けてくれて…」

ニーナ「おらは多分、カヂューシャ隊長に着いていぐって決めた頃のノンナさんと同じ気持ちでいると思います」

ニーナ「お二人はおらに、進める道があることを教えてくれました。ここまで登って来いって、おらの道を照らしてくれました」

ニーナ「だからおらはプラウダの名に恥じない立派な隊長さなるって決めたんです。そう思えたのも、ノンナさんのおかげなのに…」

ノンナ「……」

ニーナ「ノンナさんは、おらの……おらたづみんなの憧れの副隊長です」

ニーナ「みんなから愛されてるのはカヂューシャ隊長だけでねぇです。おらたづみんな、ノンナさんのこと大好きなんです」

ニーナ「だからノンナさんが寂しくてがへねんだったら、おらたづだって力になりたいんです」

ニーナ「なのに、そんなこと言われたら、おらもみんなも悲しくなるべ……」

ノンナ「ニーナ……そうですね。私は本当に愚かなことをしました」

スッ

ノンナ「私を大切に思ってくれている同志を、こんなに悲しい気持ちにさせてしまったのですから」フキフキ

ニーナ「副隊長…」グスン

ノンナ「ごめんなさいニーナ。さあ、もう泣かないで。そんなことでは良い隊長にはなれませんよ」

ニーナ「グスッ……んだ!」

ノンナ「ではそろそろ下ろしてもらえませんか。さすがにいつまでもこの体勢なのは恥ずかしいです」

ニーナ「あ、そういえばそうでしたね」ヒョイ

ノンナ「さて、ずっと私を持ち上げていて疲れたでしょう」

ニーナ「んね。こんくらいかーべーの装填に比べたら朝飯前ですよ」

ノンナ「いいえ、あなたには明日からの訓練もより一層励んでもらわなければ困ります」

ノンナ「その小さな豪腕で、プラウダに新たな勝利と栄光をもたらせるように」

ニーナ「えっ――」

ヒョイッ

ノンナ「それでは、同志たちのところに戻りましょう。これから京都に行くんでしょう?」

ニーナ「ちょっ副隊長、肩車は隊長の特権では……」

ノンナ「カチューシャは不在です。堂々としていればいいじゃないですか」


クラーラ「おや、なかなか様になっていますよ。ニーナ」

アリーナ「よっ、未来のちびっ子隊長」

ニーナ「なっアリーナ! それにクラーラさんまで」

ノンナ「あなたたち、いつからそこに」

クラーラ「わりと序盤からでしょうか」

アリーナ「そったら目立つ二人組、目撃証言ば辿るのは簡単だったべ。それよりも、みんな待ちくたびれてますよ」

クラーラ「ええ。それにあなたを案じている人は、我々プラウダの同志だけではありませんよ」スッ

ノンナ(電話……?)

アッサム『もしもし、おはようございますノンナさん。お加減はいかがですか』

ノンナ「アッサムさん、おはようございます。おかげさまで気分は良好です」

アッサム『この度はうちの隊長が幾度となくご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございません……』

ノンナ「いえ。それはもういいのです」

アッサム『お詫びも兼ねて、私たちにみなさんのガイド役を務めさせてください。今日の京都観光、ご一緒させていただけませんか』

ノンナ「そうですか――ではぜひお願いします。同志たちもきっと喜びます」

アッサム『ありがとうございます。ならせっかくご一緒できることですし、我々も少しイタズラしてみません?』

ノンナ「イタズラ、ですか?」

――夕方、新幹線の車内


ケイ「二日間楽しかったわ。やっぱりこのメンバーで一緒にいると刺激になっていいわよね」

まほ「確かに研修は実りあるものだった。まさか勝手に寝顔を撮られるとは思わなかったが…」

ケイ「Sorry マホ。やっぱり怒ってる?」

まほ「いや、これも旅行の醍醐味だと受け取ることにする。君が言ったように、滅多にない機会でもあるしな」

カチューシャ「私は許してないからね」ムスッ

ダージリン「だからお詫びにあなたのお土産選びに付き合ってあげたでしょう?」

ケイ「お詫びが物足りなかったなら今度うちのパーティーに招待するわ。ノンナと一緒にぜひ遊びに来てね」

カチューシャ「し、仕方ないわね。あなたがどうしてもっていうのなら行ってあげなくもないけど…」

ケイ「おっ、噂をすればノンナからメールよ。今日プラウダと聖グロの子みんなで京都に遊びに行ったみたいよ」

ダージリン「まあっ、いくら休日とはいえ私とカチューシャ抜きで観光地を満喫だなんてひどい話ね」

カチューシャ「ほんとよ。こっちは研修で忙しかった上に狭い部屋にすし詰めだったっていうのに」

ケイ(そのわりには随分気持ちよさそうに寝てたけど…?)

まほ「観光に行ったのなら、写真も送ってきているんじゃないか」

ケイ「もちろんちゃんと添付されてるわ。順番に見ていくわね」ピッ

カチューシャ「何これ! ノンナったらお寺や神社を巡る間ずっとオレンジペコを肩車してるじゃない!」

ダージリン「これは……ど、どういうことですの? ペコったらまんざらでもなさそうだし」ワナワナ

カチューシャ「さらにはお茶屋さんでアッサムと和やかにお団子食べてる!」

ケイ「Oh…これは私、やらかしちゃったかもしれないわね」

ダージリン「次の写真ではきな粉だらけになったローズヒップの口元を拭ってるわ。一体どういう意図でこんな写真ばかりを…」

ケイ「ほら、今朝私たちが送った写真の仕返しよ。今頃これを見るカチューシャの顔でも想像して楽しんでるんじゃない?」

カチューシャ「うぅ、マコーシャがプラウダに遊びに来たときのことを思い出すわ」(ドラマCD3参照)

アナウンス『まもなく京都、京都です』

カチューシャ「釈然としないけど、とにかくノンナをじっくり問いただすことにするわ」

ケイ「お疲れ様。パーティー絶対来てよね。約束よ」

まほ「カチューシャ、二日間ありがとう。近いうちにまた会おう。先日のハンバーグのお礼もしたいしな」

カチューシャ「うん……私もまあ、楽しかったわ。その……ありがと、みんな」

ダージリン「わ、私もここで降りるわ。ノンナさんには色々と尋ねなきゃいけないこともあるし」

ケイ「Wait ダージリン、あなたの学園艦は今和歌山にいるはずでしょ。新大阪で降りなきゃオレンジペコたちには会えないわよ」

ダージリン「む……なんだか謀られている気がするわ」

カチューシャ「いいこと? 今回の研修を糧にカチューシャがあなたたちをまたこてんぱんにしてやるから震えて待ってなさい」

まほ「ああ。もちろん我々も全力をもって相手しよう」

ケイ「私も楽しみにしてるわ。Bye~♪」

ダージリン「ごきげんよう(震え声)」

――京都駅


ノンナ「お帰りなさいカチューシャ。お疲れ様でした」

カチューシャ「むぅ~……ただいま」

ノンナ「二日間の研修、いかがでしたか?」

カチューシャ「まあ楽しかったしいい経験になったわ。だけど……ノンナの方こそ、楽しそうだったじゃない」

ノンナ「ええ。同志たちや、聖グロリアーナの方々のおかげです」

ノンナ「みなさんとの距離も以前より縮まった気がします。素敵な二日間でした」

カチューシャ「もう……元気ないんじゃないかと心配して損したわ」ボソ…

ノンナ「おや、どうかされました?」ニコニコ

カチューシャ「なんでもないわよ! そんなことよりお土産があるから、受け取りなさい!」サッ

ノンナ「ありがとうございます。――まあ、可愛らしいアクセサリーですね」

カチューシャ「東京七宝っていうのよ。今日の研修の後、アクセサリー作りを体験できる施設に行って、私が作ったの」

ノンナ「カチューシャの手作り……そうですか」

カチューシャ「正直、職人さんが作ったものの方が色も模様もきれいだし、そっちを買うべきだと思ったんだけど」

カチューシャ「ダージリンやケイが、手作りの方が絶対ノンナが喜ぶって言うから…」

ノンナ「ふふっ」

カチューシャ「…とにかく! 私があなたに似合うようにとわざわざ作ってあげたんだから、ちゃんと持ってなさいよね」

ノンナ「はい。ずっと大事にします。カチューシャの気持ちがこもっていますからね」

カチューシャ「今度誰かと出かける機会があったら、これを身につけていっぱい自慢してやるのよ」

ノンナ「はい。いついかなる場合にも必ず携帯します。それでは舞鶴に向かう特急に乗り換えましょう。同志たちも待っていますよ」

ヒョイッ

カチューシャ「ふふん。やっぱり私の乗せ心地が一番でしょ?」

ノンナ「ええ。こうしていると、とても落ち着きます。でも、たまにはお休みをいただくのもいいものですね」

カチューシャ「そんなこと言って、他の子を乗せてたくせに」

ノンナ「お互い様ですよ」

ニーナ「あっ、カヂューシャ隊長ー! こっちだべー!」

アリーナ「お帰りなさい隊長」

クラーラ「お帰りなさいませ」

カチューシャ「みんな揃ってるみたいね。それにしてもあなたたち、やけに荷物が多いわね」

アリーナ「そりゃあ隊長のためにみんなでいっぱいお土産買いましたんでね」

ニーナ「写真見てくれましただか? こんれ、例のお茶屋さんで買った和菓子です。隊長と一緒に食べようと思って」

クラーラ「駅弁も全員分用意しましたよ。舞鶴に着くまで長いですし、電車の中で夕食にしましょう」

カチューシャ「あなたたち……そうね。たまにはこういう食事も悪くないんじゃないかしら」


アナウンス『まもなく、特急東舞鶴行がまいります――』

ノンナ「それではカチューシャ、乗車しますので一旦下りましょう」ヒョイ

ニーナ「ん? ノンナ副隊長、そのヘンテコなアクセサリーどしたんですか。なんか幼稚園児の工作みたいだべ」

ノンナ「これですか? カチューシャからのお土産ですよ」

ニーナ「え……そんじゃまさか、隊長の手作り――」

カチューシャ「ニーナぁぁぁ! カチューシャを侮辱したわね!」

ニーナ「ひえええええ許してけろおおおおおお」ダッ

カチューシャ「待ちなさい! 今日という今日は絶対粛清してやるわよ!」ダッ

アリーナ「あーもう、二人ともこったらとこで走ったら危ねぇべ!」


ノンナ「ふふっ、相変わらずの光景ですね」

クラーラ「どうやらほんの少し成長されたようで何よりです。今回の件を薬に、良い意味で親離れができればいいのですが」

ノンナ「ええ。カチューシャならきっと良い結果をもたらしてくれるでしょう。それにニーナも」

クラーラ「あら同志ノンナ。何か勘違いされているようですが、今のはあなたのことを指しての発言ですよ」

ノンナ「……善処します。あと今回の件の報復については本当にこれで最後にしますから」ピッピッ

クラーラ(まったく、どっちが子供なんだか)

――数時間後、熊本


小梅「西住隊長、お帰りなさい。研修お疲れ様でした」

まほ「ただいま。充実した二日間だったよ。…おや、いつもならエリカが迎えに来るはずだが、何か用事だろうか」

小梅「いえ、それが……」

……

エリカ「隊長、どうして……やっぱりあのハンバーグが原因ですか。確かにとってもおいしかったですけど…」メソメソ

直下「副隊長しゃきっとしてください! 送り主はプラウダの副隊長なんでしょ。合成写真はあちらのお家芸じゃないですか」

エリカ「合成……そうよ! よく言ったわ直下。こんなふざけた写真、ねつ造に決まってる――」

エリカ「いやでも隊長の好みが可愛い系なのは明白。小さな手で一生懸命こねた手作りハンバーグとか正直私もキュンときたし」

エリカ「…知ってた。私みたいなのが副官じゃ隊長の心を癒せない。結局隊長の相棒は可愛くて有能な人が相応しいのよ」メソメソ

直下(ダメだこりゃ)


おわり

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