SS板らしく、超短編書いてく (53)
「僕の自転車のサドル」
僕の自転車のサドルは、皆より少し低い
僕の脚が短いから、それに合わせてサドルも低くしてあるからだ
一時はそれが恥ずかしくて、嫌で
無理やりサドルを高くした事もあった
ペダルは下まで届かなくて、足はつま先立てても着かなくて
何度もこけて、何度も泣きそうになった
どうして脚が短いんだろう
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1433724304
どうして僕が不幸な目にあわなきゃいけないんだろう
何回も、何十回も何百回も
沢山考えていたら、元の高さに戻っていた
久しぶりに高くしようかと思ったけど
錆びていて、動かなくて。まるで今のままがいい。って言ってるようで
僕はその場を後にして、玄関へ戻った
そしたら、キッチンの方から嫁が呼ぶ声がする
きっと夕飯の手伝いをして欲しいんだろう
昨日はササミとご飯だったから…今日は、もやし炒めかな?
「逃した終電」
改札口に定期を入れたら聞こえてきたアナウンス
間も無くドアが閉まります。ご注意ください
どうやら、終電が行ってしまったみたいだ
息を切らして走ってきたのに…
諦めて改札から出る
幸いな事に、駅のロータリーにタクシー乗り場がある。それに乗って帰ろう、今日は疲れた
手を挙げると、すぐにタクシーは来た。この時間帯は稼ぎ時だしな
「おや、終電逃しちゃったんですか?」
運転手は、ドアを開けてそう言った
「そうなんですよ…◯◯までお願いできますか?」
「全然大丈夫ですよ」
エンジンの音がブルンと鳴る。
重たそうに車が動き出した
「こんな夜遅くまでお勤めですか?」
「いや、今日は部長との付き合いで…」
「それも立派なお勤めですよ」
運転手が、ふふっと笑う
「私もね、リーマン時代は上司との付き合いで毎日くたびれてましたよ」
「へぇ、そうだったんですか」
「そですよ。まあ、クビになってしまって今じゃ個人タクシーですけどね」
そう言った運転手さんの顔は笑顔だった
「クビ、ですか」
少しだけ、クビになったのを想像した。それが嫌にリアルで少し顔が歪んだ
「そのおかげで、こうしてお客さんと話せてるんですけどね」
また、ふふっと笑った
その笑いは少しだけ愉快で、心の底から楽しさが溢れ出てるようだった
「あ、そろそろ」
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「あ、そろそろ着きますね」
気がつけば、自宅の近くについていた
駅と家は車で30分はかかるはずなのに。あっという間に時間は過ぎていた
楽しそうな運転手さんとの会話は、とても楽しいものだった
「お客さん、また使ってくださいね」
運転手は、ふふっと笑う
「そですね、また乗り遅れた時は使わせてもらいますよ」
俺も、ふふっと笑う
「お客さん、いい笑顔ですよ」
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アナウンスが駅の方から聞こえてくる
終電が行ってしまったのだろう
乗り遅れた人達が、ロータリーのタクシー乗り場へと向かって行く
ドアが開いた。俺は口を開く。
「おや、終電逃しちゃったんですか?」
「そうなんですよ。△△までお願いします」
「逃した終電」終
「消しゴム」
僕には愛用している消しゴムがある。真っ黒でよく消える消しゴム
大学入試の時に買ってもらった、その消しゴムはいつも僕の筆箱の中に入っていた
日に日に小さくなっていく消しゴムに、ある種の達成感を覚えていた
消しカスの量が、自分の努力みたいで。
そして、消しゴムは、もう掴めないくらいに小さくなった
それが、少しだけ誇らしかった
こんなに小さくなるまで、頑張った。
小さくなった消しゴムを、指でつつく
ガタガタな消しゴムはぎこちなく転がった
ありがとう、消しゴム。今まで頑張ってくれて
僕は消しゴムを捨てた
次の日、僕は白い消しゴムを買った
全然消えない真っ白な消しゴム
この消しゴムも、また使い切らずに捨てるだろう
どんなものでも、最後の姿は見たくないから
「消しゴム」終
SS板らしく、超短編書いてく
SS板らしく、超短編書いてく - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433736594/)
なんか勝手に複製されてるんですけど大丈夫ですかね…?HTMLとか出したほうがいいんですかね
「ピエロの話」
ピエロはいつも泣いています
ピエロが泣くのは悲しいから?くやしいから?辛いから?
ピエロが泣くのは、泣けない人のため。代わりに、泣いてあげている
ピエロは悲しくても泣けないよ
だって、誰かの涙を流してるから。自分の涙は流せないよ
>>17
荒しが勝手に立てたんだろうから、依頼を出せばいいかと思われます
ともあれ乙です。ひっそり見てます
ある所に子供がいた。彼の誕生日、母親は仕事が忙しくて家に帰れないと言い出した
彼は悲しくても、お母さん困らせないために泣かなかった
笑って、頑張ってね。とだけ受話器越しに伝えた
ピエロは子供のために泣いてあげた。悲しくて、辛い涙を流した
子供は言う「ありがとう、ピエロさん」
ピエロは、泣きながら真っ白な顔で笑った
「ねえ、ピエロさんは自分のためには泣かないの?」
ピエロは何も言わずに、首を縦に振った
「それなら、これをあげるよ」
彼は、小さな手に握っていた赤い糸の片方の端を渡した
ピエロは、どうすればいいかわからず。困っていると「えいっ」と元気な声を出して男の子は遠くに毛玉を投げてしまった
「これは僕のおまじない。どうしたらいいか分からない時は、毛玉の転がった方に歩くんだよ」
棒倒しみたいなものか、と理解したピエロは男の子に手を振りながら、糸をたどっていった
すると、数メートル先に、毛玉を拾ったような影が見えた
ピエロは、その人の元へと駆け寄る。
すると毛玉を拾ってくれていたのは、もう一人のピエロだった
ピエロは、彼を見た瞬間に涙を流した。彼もまた、ピエロを見て涙を流していた。
ピエロは彼のために泣き、彼はピエロのために泣いた。何年も泣けずにいた、お互いのために泣きあっていた
その後、彼らは街を周り自分達の話をした
男の子にもらった赤い糸の話、そこで出会えた最高の友達の話。
人々は、これを聞き「運命の赤い糸」という言葉を作ったそうな
「ピエロの話」終
>>19
了解です、わざわざコメントありがとうございます
「捨て犬」
俺は、今朝。捨てられた
別に嫌われたわけじゃない。多分。人の話す事はわからないが、移住とかそんなのが理由みたいだ
俺が捨てられる直前に部屋がダンボールだらけになっていたからな
幸い、丈夫そうな屋根の下、ダンボールの中に捨てられた
しばらくは雨風が凌げそうだ
しかし、餌もなければ水もない。このまま拾われなかったら死ぬのは目に見えてわかる
小型犬じゃ野生として生きていけるかは不安ではあるが、この際仕方のない事だ。
さあ、行くか
ダンボールを横に倒し、そこから出る
目の前には木々や畑が広がっている
散歩の時に通る道とは違い、設備の整っていない荒い道。そんな場所にあるバス停にどうやら捨てられたようだ
これから、どうしようか。どうしようもない問題が山程ある
とりあえず、道を進んだ。元いた家の近くまで行けば誰かが拾って飼い主に連絡してくれるだろう
足を進める、ここからどのくらい離れているのかわからないが進めば何とかなるだろう。
1日が経った。
走るのは好きだが、一日中歩くのは疲れるので暫し休憩
山の麓に大分と近づけた。
時々通る車に怯えながらも、安全に歩けている。いい感じだ
2日が経った
生えていたきのこを食べた。少し腹が痛い。
もしかすると毒があったのかもしれない。今日はあまり歩けずに終わってしまいそうだ
3日が経った
山の麓の住宅まで来た。ちらほら人に見られはするが、近づいては来ない
当然ながら、餌ももらえない
4日が経った
どうやら、元いた場所はここではないみたいだ。山を越えなければいけない。
多分
腹が空きすぎたので畑に生えてた草を食べた
それが見つかり石を投げつけられる。左足がうまく動かない
5日が経った
雨が降り始めた。体が寒い
一番最初にいたバス停に帰る。家とはかなりの距離があるみたいだ
どうやら、かえるのは厳しいらしい
6日が経った
最初のダンボールへと戻る。
足の感覚が傷と雨のせいで感覚がほとんどない。
こんな状態じゃ食べ物も取りに行けない
もう無理なのかもしれない
7日が経った
空は晴れた。相変わらず道に人の通る気配はない。
体を起こす元気もない、多分、このまま死ぬんだろう。
楽しかった時間が、フラッシュバックで蘇る
あのエサ、あの部屋、あの手の温もり。もう一度味わいたかった
道にダンボールが落ちているのを見つけた
中には、弱りきった小型の犬が横たわっていた。
抱きかかえてみたが、反応がない。身体も冷え切っている
この近くに獣医が居る場所……そんなもの、ないよな
かと言って俺には治療してあげる腕もなければ、養ってあげれる場所もない
「ごめんな、ワンコ……」
そっと、頭を撫でてダンボールに戻した
意識が朦朧とする中、夢を見た
飼い主が俺の事を抱きしめて、温かい手で撫でてくれて。布団に寝かせてくれた
体温が暖かくて、気持ちよくて。凄く嬉しかった
後はご飯があれば最高なんだが…まあ、文句は言わねえ
いつもしてくれてた事が、こんなに暖かいって思えるんなら捨て猫になってみるのも、悪くないな
「捨て猫」終
多分もう今日は来ないんでよろしくです
「空の色」
好きな色は何色って聞かれた。僕は空色、って答えた
友達は言う「水色が好きなんだ」僕は言う「水色じゃないよ、空色だよ」
友達は困った顔をした。「空色って、何色なんだい?」「空を、見てごらんよ」
綺麗な夕焼けが広がっていた。
「橙色が好きなのかい?」「ちがうよ、空色だよ」
「空色は、水色でも橙色でもないのかい?」「ううん、水色も橙色も正解だよ」
キョトンとした顔でこっちを見つめてくる友達。僕は小さくクスクスと、笑ってしまった
「空色は、空の色。それ以外の言葉で表せられないさ」
「じゃあ、君は真っ白な空があれば、白も好きなのかい?」「そうだよ」
「黄色も緑も、茶色もかい?」「そうだよ」
「なんだ、君は、ずっこい奴だな」友達がクスクスと笑う
「そうだね、きっとそうだよ」僕もクスクスと笑う
「じゃあ、君の好きな色は何色?」
「そうだね…僕も空色さ」
二人で見てた空は、赤くて綺麗で、素敵な色だった
「空の色」終
「友達」
友達って、どこからが友達なんだろう
そんな事を友人に話した
「どうしたんだよ、俺が友達じゃないって言ってるみたいじゃないか」
友人は、あははと笑った。
「んー……そうだな……一緒にご飯食べて、一緒に遊んで、一緒に帰って。そしたら友達なんじゃないか?」
「そっか」
僕は思う。こんな下らない話でもちゃんと考えてくれる君は、最高の友達だよ
「友達」終
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