少女がまた、むせび泣いていた。
俺は、ただ目を逸らすことしか出来なかった。
近くに住んでいる彼女は、虐待されている。隣人だから涙声が、よく通った。
俺は、安いアパートに住んだことを後悔してた。でも今は違う。
離婚した両親が兄弟を離別する。その時、見やるだけで産まれる後悔は味わいたくない。
寒い日に喉を通した熱い味噌汁。のように心で輪が拡がった。
胸に引っ付くやるせなさを拭うように、俺は扉を開けた。
弟と重ね合わせて、偽善を焚いた俺は、罪でしょうか。
青年「ーーーすいません。すいません、開けてください!」
反響して、今まで聞こえた騒音は失せる。徐ろに、向かう足跡が聴こえる。俺の胸を、鼓動させる。
誰かが尋ねて来た。と思った。
脳裏に浮上する人物たちは、優しい”だけ”の有象無象。
私の瞳は黒いまま、世界がモノクロだった。
青年「... ...夜分遅くに、御迷惑おかけします。あの、先程から少女の鳴き声が」
私の父親は、面倒臭そうに頭を掻き毟る。幾度となく、繰り広げられる光景に、飽いていた。
父が嫌な行為は、私も好きではない。
今、我慢してれば楽になる。いつもの癖で復唱させた。
「ーーーあのね、家庭の教育なの。他人に口出しされる覚えはない」
男の人は口を紡いでた。口答えしたいのだろう。しかし、語彙力は存在しなかった。
私の父親が扉を閉める。
哀愁漂わせた瞳が一瞬合った。じっと目を合わせると、遮断された。
扉から漏れた風は、温くて涼しげだった。
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