【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」 (169)


前スレはこちら

提督「墓場島鎮守府?」
提督「墓場島鎮守府?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476202236/)

時系列的にはここがこのスレ。

【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467129172/)
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515056068/)

上記スレッドの番外編です。

・舞台になっている鎮守府、通称『墓場島鎮守府』の過去の話になります。
 提督の着任から、各艦娘がこの島へ着任するに至った経緯を書いていきます。

・艦娘の殆どが不幸な目に遭っておりますので、そういう話が嫌な方は閉じてください。

・影牢のキャラは出てきません。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1529758293


舞台の「墓場島」について
 作中の表記は「××国××島」、通称「墓場島」。太平洋上にあるとある無人島、パラオ泊地が一番近いと思われる。
 島の北側には海底火山があり、潮流が強く流れが特殊なため、普通の船舶は近寄れない。
 そのためか深海棲艦も寄り付かず、轟沈した艦娘の亡骸がよく島の北東に流れ着いている。
 島の北部は火山活動によってできた岩場。西側は手つかずの林に包まれ、小さいながら切り立った崖がある。
 島の南から北東にかけては、なだらかな丘陵と砂浜が続いており、島の東側に鎮守府が建てられている。



艦娘以外の主要な登場人物

・提督
 階級は准尉。一般人には見ることすら出来ない妖精と話が出来たせいで
 親からも変人扱いされたため、人間嫌いをこじらせる。結構な不幸体質持ち。

・中佐(前スレ初登場時は少佐)
 戦争は金儲けの道具と考え、中将の威光を傘に暗躍。後に大佐にまで昇進する。
 妖精と会話できる提督の存在に危機感を覚え、離島の鎮守府に封じ込めた。

・中将
 中佐の父親。有能だったらしいが息子が絡むと駄目になるらしい。
 足を悪くしており、本営の自室でデスクワークが日常。



登場艦娘一覧


如月:試作の新兵器の実験台にされていたところを脱走し大破、島に漂着
不知火:もと少佐の部下。解体前提で如月捜索に駆り出されるが、提督の計らいで中将麾下に
朧、吹雪:捨て艦で轟沈後、島に流れ着く(二人とも別の鎮守府出身)
由良、電:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く(同じ鎮守府出身)
神通:慕っていた司令官を謀殺され、その復讐の途中で左遷させられる
大淀:日々の解体任務に疑問を覚えて仕事が手につかなくなり異動してきた
敷波:由良と電の捜索を命じられそのままMIA
明石:提督に帳簿の不正を強いられ、そのまま首犯扱いで雷撃処分
朝潮、霞:提督の不正の内部告発を計画するも逆に犯人扱いされ雷撃処分
暁:信頼していた提督の変貌に錯乱して敵陣特攻し記憶喪失に
初春:捨て艦で轟沈後、暁に助けられ島に漂着
潮、長門:変態の上官に迫られ耐え切れなくなり家出、長門はその護衛
比叡:料理上手なのに認めてもらえずご飯を投げ捨てられて鬱に
古鷹:お人よし過ぎて自分の練度が上がらず観艦式において行かれる
朝雲:観艦式に向かう途中で艦隊を離脱して古鷹を追いかけてきた
利根:司令官の猟奇趣味に巻き込まれ死にかける
ル級:オリョールで毎日毎日潜水艦に小突かれる日々に嫌気がさし脱走
伊8:オリョールに行ったら逃げたル級の代わりの軽巡に轟沈させられる
大和:妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造したら作られた
初雪:艦娘管理ツール使いの提督に昼夜問わずこき使われ失神後漂着

注:ル級は島の北の離れ小島近辺に住んでいます。この鎮守府所属ではありません。


自分の覚え書きもかねてのテンプレ投下完了。

それでは、本編の続きです。


 * 鎮守府 艦娘寮 廊下 *

提督「……」

伊8「……」キョロキョロ

初雪「……」サッサッ(←『来てもOK』のハンドサイン)

提督「……」タタタッ

伊8「……」コソコソッ

初雪「ねえ、なんでこんなにコソコソするの」

提督「なんか、どいつもこいつも俺を探してたっぽいからな」

提督「捕まったら絶対ろくでもねえ目に遭って吹雪に謝るタイミングを逃しちまう」

提督「俺が今しなきゃいけねえのは、吹雪に頭を下げることだ。それ以外のことは後回しだ、後回し」

初雪「……そう」

提督「誰かに見つかる前に初雪を見つけられたのは幸運だ。助かったぜ」

初雪「ん……別にいいけど」サッサッ

提督「……」タタタッ


初雪「ここ。この部屋」ユビサシ

提督「……」

 コンコン

提督「……吹雪」

 シーン…

伊8「いないのかな……」

初雪「ううん、さっきまで部屋にいたし」

提督「ドアは開いてるな……吹雪。入るぞ?」

 シーン…

提督「……入るぞ」チャッ

(提督たちに背を向けて、部屋のベッドに横になっている吹雪)

提督「……」

吹雪「……」チラッ

提督「吹雪」

吹雪「……何をしに来たんですか」ジロリ

提督「謝りに来た。お前の話を聞こうとしなかった、その非礼を詫びたい」ペコリ


吹雪「……わかりません」ムクッ

吹雪「私には、司令官の考えが理解できません……!」

吹雪「あんなことを言えば、司令官は私たちがどう思うかわかってたんじゃないんですか!?」

吹雪「どうして、司令官は私たちを捨てて、ここを出て行こうとするんですか!」

提督「吹雪、それは違うぞ。俺が捨てたかったのはお前たちじゃない。俺自身だ」ヒザマズキ

吹雪初雪伊8「「!?」」

提督「俺はな。お前みたいに未来のことなんか、最初から考えてなかったんだよ」

吹雪「え……?」

提督「俺は、俺の身の回りの身勝手な人間に、ほとほと愛想が尽きてた」

提督「中佐みたいなくそ野郎の言われるがまま社会から追い出された時も、俺は奴を憎んだし……」

提督「大勢の艦娘が砂浜に流れ着いていたのを見た時や、島に如月が流れ着いてその境遇を知った時なんかは、俺はただただ悔しかった」

提督「艦娘が命を懸けて守ろうとしたのが、あのくそみたいな連中だと思うと……」

提督「俺がそいつらと同じ、人間だってことを思うと、腹立たしいやら嘆かわしいやら、気が狂いそうだった」

吹雪「……」


提督「俺はそいつらとは違うと思いたかった。そういう事実が恥ずかしくて、逃げたくてたまらなかった」

提督「だから、如月と不知火を助ける時も、最初は捨て身で刺し違えてもいいと思ってた」

提督「平気で誰かを陥れたりするような連中と、俺は違うってことを証明して、そのまま綺麗に終わらせたかったんだ」

吹雪「……それって、死にたかったってことですか」

提督「ああそうだ。殺されたかった、と言うべきか」

提督「身勝手な人間に振り回され、利用されるだけだったお前たちを助けたかったのは確かだ」

提督「俺がまさしくそうだったからな。だからこそ、俺の自己満足のためにお前たちを助けているような気がしてならなかった」

提督「これじゃあ俺が忌み嫌った連中と一緒だろ? 尚更、お前たちと一緒にいられねえ……そう、思わねえか」

吹雪「……如月ちゃんたちにあんなことを言ったのも、そういう考えがあったからですか」

提督「それもあるし、それよりも俺が自分の遺伝子を残したくないって思いもある。俺の親もくそムカつく存在だったからな……」

吹雪「……」

提督「以上が俺の本音だ。間違っても、俺はお前たちのことが嫌いなわけじゃない」

吹雪「……」

提督「とにかく、俺の言い草が吹雪を傷付けていたことに変わりはない。吹雪の望む通りの……」

吹雪「やっぱりバカですよ。司令官は大バカです」

提督「……!」


吹雪「この期に及んでなお自分を悪く言うんだから、本当に救いようがないです」スクッ

 ペシッ

吹雪「誰かを助けて、良かったと思うのが自己満足だったら、私たちはどうなるんですか」

吹雪「司令官と一緒に、海の平穏を取り戻すために戦ってる私たちの行いは、愚かだって言うんですか」

 ポコッ

吹雪「そんなの誰だって同じじゃないですか。誰だって幸せになりたいんです」ポコッ

提督「……」ポコッ

吹雪「私だって、自分の頑張りを認めて欲しいし、褒めてもらいたいし、可愛がってもらいたい!」

吹雪「みんなと一緒に、喜んで、笑いあいたいんです!」ポコポコ

吹雪「確かに、海に平和を取り戻すのが、私たちの本懐です。でも、そこはゴールじゃないんです!!」

吹雪「私は、平和になったあとの幸せな未来も、みんなと一緒に見たいんです!」

提督「……」

吹雪「誰かのために戦って、報われないことなんかたくさんあります。でも、そんなの、悲しいです。嫌じゃないですか!」グスッ

吹雪「誰かを幸せにしたいって思ってる人が、幸せになれない世界なんて、おかしいです!」

提督「……」


吹雪「勝手に、どこかへ行くだなんて言わないでください……!」

吹雪「艦娘のために……私たちのために手を尽くしてくれておいて、お礼も言う前に消えようだなんてしないでくださいよ!」

吹雪「もしそんなことをしたら、私、深海棲艦になって、司令官を捕まえに行きますからね!」ガシッ

提督「……そりゃあ、困ったな」

吹雪「そうですよ。悪い子になって、司令官をたくさん困らせちゃうんですから!」

吹雪「それが嫌だったら、もう二度とそういうことを言わないでください……! 約束です!!」

提督「そういう約束、守らないのが俺だってわかってんだろ」

吹雪「わかってます! わかってても、私は司令官に言いたいんです!!」

提督「……」ウツムキ

吹雪「……司令官?」

提督「参ったな。お前の顔がまともに見られねえ」

提督「まっすぐすぎて、俺には眩しすぎる」

吹雪「んなっ!?」カオマッカ


吹雪「こ、こ、こんな時にいったい何を言い出すんですか司令官!!」ポカポカポカポカ

提督「いや、しょうがねえよ。俺みたいなひねた人間と比べたら素直すぎてなあ。恥ずかしくて直視できねえや」

吹雪「しーーれーーーえーーーかーーーーん!?」ポカポカポカポカ

提督「悪かった。悪かったよ吹雪。心配してくれて、ありがとうな」ダキヨセ

吹雪「ううううう……」プルプルプル

初雪「……」

伊8「……一応、解決したの?」

初雪「……したみたい」

由良「そう。それなら良かったわ」

初雪&伊8「!?」クルッ

長門「話は全部、聞かせてもらったぞ!」

 ズラッ!

吹雪「ゆ、由良さんに長門さん!?」ギョッ

提督「お前ら……!」

古鷹「提督、そこまでご自身を責めていたなんて……!」

初春「馬鹿者じゃと思っておったが、よもやここまでとはのう……」ハァ


吹雪「え、ええええ!? な、なんでみんなここに!?」

提督「……おい待て長門。全部聞かせてもらったって、どういう意味だ」

由良「明石謹製の小型マイクを吹雪の部屋のドアに取り付けておいたのよ!」

長門「そしてそのレシーバーは私の手元と執務室に置いてある!」ドヤッ

吹雪「ちょっとおおおおお!?」

提督「盗聴かよ……最低だな」ドンビキ

朧「最低って、なにがですか」ズイ

提督「!?」アタマツカマレ

 ゴチン!!

吹雪「頭突き!?」

提督「~~~っ!!?」クラクラ

朧「っつ……て、提督の石頭……っ!」

提督「……ってえな、くそ……! なにしやがる、おぼ」

朧「提督。朧、言いましたよね? そういう冗談、キライだって」ジロッ

提督「冗談? 俺は」

朧「言いましたよね?」ズイッ

提督「俺はじょ」

朧「言いましたよね!?」ズズイッ

提督「……」


由良「はいはい、いつまで女の子の部屋に入ってるつもりなの?」ホッペグニッ

提督「んぎっ!?」グイーッ

由良「失礼なことをしてるんだから、早く部屋から出て。反省してください?」グイー

提督「……!」ギリギリギリ

吹雪「あ、し、しれいか……」

由良「後は任せて。失礼するわね!」ヒラヒラ

 バタン

吹雪「うう、あの会話、全部聞かれちゃったんだ……恥ずかしい」カオマッカ

伊8「……」

初雪「……ご愁傷様」

吹雪「引きこもりたい……」ベッドニモソモソ

伊8「吹雪ちゃん!?」

初雪「私みたいになってる……」


 * 一方 部屋の外 *

提督「……」ヒリヒリ

古鷹「もう! 提督はおひとりで背負い込みすぎなんです!」プンスカ

初春「何が滑稽かと言えばこの男、つい先日N中佐に『艦娘に腹の中を正直にぶちまけろ』とのたまったんじゃぞ?」

初春「わらわは最早呆れすぎて物も言えぬ。ほれ、潮も何か言うてやると良いぞ」

潮「え!?」

朧「うん。なにか、ガツンと言ってやってよ」

潮「えええ!? え、ええっと……こ、こ、この、クソ提督……っ!」

提督「……潮が言うと地味にショックだな」

神通(本当にそう思ってるんでしょうか)

提督「クソとか汚え言葉使うのは俺だけでたくさんなんだが」チラッ

神通(!?)

比叡「いやもう本当に勘弁してくださいよ、こういうの!」

電「暁ちゃんが本気で怒ってて怖いのです!!」

暁「……怒ってないわよ?」ゴゴゴゴゴゴ

電「怒気の炎がだだ漏れなのです!!」

比叡「こんな暁ちゃん初めてなんですよ!? やめてください本当に!」ブルブル

利根(この鎮守府のパワーバランスはいろいろとおかしいのう)


敷波「とにかく司令官さあ、私たちも司令官の本音を聞いて、思うところがいろいろあるんだよね」スッ

朝雲「そういうわけだから」スッ

 バゴゴッ

提督「いってえ!?」

敷波「痛くないようにお尻を蹴ったんじゃん。このくらい我慢してよ! ふん!」

朝雲「古鷹さんも大概だと思うけど、司令官も負けず劣らず自虐的よね。ほんとにもう!」

提督「だからって二人がかりで蹴るかよ……!」

長門「じゃあ、一人ならいいんだな?」

提督「!」

長門「フンッ!」ヒダリストレート

 バキッ!

提督「っ!」ドシャッ

長門「手加減はしたぞ。私はこれで手討ちにしよう」

提督「く……あ、ああ、そうかい、ありがとよ」


暁「……みんな、終わり?」

長門「あ、ああ。そうだな?」

暁「そう。なら、最後に暁ね」

長門「え」

比叡「あ」

暁「司令官。動かないでね」ハイライトオフ

提督「!!」

 ブンッ!!(暁の艤装にかかっていた錨を提督めがけて振り下ろし)

全員「「!?」」

 ビタッ!(提督の額の寸前で寸止め)

提督「……」

暁「暁も、これで手討ちにしてあげる」ハイライトオン

全員「「……」」

提督「……そうか」

暁「いーい、司令官? あんまりみんなに酷いことを言っちゃ駄目よ?」

提督「……ああ。善処する」


電(暁ちゃんがすっごい怖かったのです……!)ガタガタ

由良(この中で一番怖いんじゃないかしら……)アオザメ

利根(駆逐艦の迫力とは思えんな……)ヒキッ

長門(フフ、怖いな……)ナミダメ

暁「あ、そうだ。ねえねえ比叡さん、確か執務室に人を待たせてたんじゃ?」

比叡「そ、そうです! 司令、急いで執務室まで来てください!」グイッ

提督「つぅ……なにがあったんだ?」

長門「新しい戦艦の仲間だそうだ」

提督「戦艦?」




提督「……で、お前ら全員ついてくんのかよ」

長門「心配だからな。いろんな意味で」

由良「明石と、朝潮ちゃんと霞ちゃん以外はみんな集まるんじゃない?」

提督「その3人、なにかあったのか?」

電「霞ちゃんは、司令官を蹴り落としたことを気に病んでいるのです」

暁「明石さんたちが付き添って、見ててあげてるのよ」

提督「ああ……そういうことなら後で顔を見に行くか」

今回はここまで。

こちらも2スレ目になりました。
どうぞよろしくお願いいたします。


本編である程度説明あり:
  雲龍、龍驤、隼鷹、榛名、霧島、陸奥、伊勢、日向、扶桑、山城
  摩耶、那智、筑摩、最上、三隈、青葉、那珂、五十鈴、五月雨
説明らしい説明なし:
  金剛、武蔵、加古、鳥海、山雲、黒潮、白露、島風
実は前スレに登場してる:
  川内、若葉、千歳、足柄

登場していない艦娘はこんな感じですかねえ。

では続きです。


 * 執務室 *

優雅に紅茶を飲む金剛「……」

如月「……」

大和「……」

金剛「Uh-huh, 今日の紅茶は美味しく淹れられマシタ。お二人もいかがデスカー?」

大和「いえ、結構です……」

如月「如月も、遠慮させていただくわ……」

金剛「Oh, それは残念デス」

大淀「……」

不知火「……」

大淀「提督、早く来てくださらないでしょうか……」ソワソワ

不知火「マイクからの会話から察するに、もうすぐこちらに来そうな気配ではありますが」

大淀「待ってると長いですよね……」


不知火「……来ますね」

大淀「えっ」

如月「!」カッ

大和「!」カッ

 扉<コンコン

提督「入るぞ」チャッ

如月「司令官!」ガタッ

大和「提督!」ガタッ

大淀(本当に来ちゃった……みなさんなんでわかるんですか)

提督「あー……ここにいるってことは、お前らも聞いてたんだな? あの小っ恥ずかしい会話」

如月「聞いてたわ。どうしてそこまで思い悩んでることを話してくれなかったんですか!?」

大和「そうです! 大事なお話ではありませんか!」

提督「ああ……悪いな。話をしようがしまいが付き合い方が変わるわけじゃあねえし、意味ねえと思ってたんでな」


大和「悩みを共有することで得られる解決策だってあります! おひとりで決めつけないでください!」

如月「そうよ! 私たちは司令官の力になりたいんだから!」

提督「ああ、わかったよ。悪かった」

如月「本当にそう思ってます!?」ミギウデガシッ

提督「いやもう勘弁してくれよ。俺の私情で余計な心配させたかねえ」

大和「やっぱりわかってませんね!? 私たちは心配したいんです! すぐにお怪我の手当てを!」ヒダリウデガシッ

長門(相変わらず押しが強いなこの二人は)

提督「お前ら落ち着け。客の前だろうが」

比叡「そうですよ! いつまでお姉様を放っておく気ですか!」

提督「姉だと? 比叡の?」

金剛「Yes, I am !」ザッ

提督「!」


金剛「私は英国で生まれた帰国子女の金剛デース! I'm glad to see you !」

金剛「本日付でこちらの鎮守府に配属されマシタ! よろしくお願いしマース!」

提督「お、おう。よろしく……」

金剛「ところでテートク? 失礼ですが私も吹雪やみなさんとの会話、聞かせてもらいマシタ」

金剛「テートクのお考えは納得できないところもありマスし、みなさんのテートクに対する不満もわかりマスが……」

金剛「それでもこの仕打ちはあんまりデス! 右目の周りは蒼くなってるし、おでことほっぺも赤く腫れてマス!」

提督「まあ、自業自得だ」

金剛「Hm... All right, I understood. テートク? あなたには Love が足りていまセン」

提督「らぶ……?」

金剛「Yes. テートクには、自分の気持ちをちゃんと人に伝えようとする優しい heart が必要デス……!」スッ

提督「!?」カオヒキヨセラレ



 ズギュゥゥゥウゥン


不知火「」

大淀「!?」

比叡「!?」

如月「」

大和「」

提督「!?!?!?」




全員 ( ゚д゚)




全員 ( ゚д゚ )





金剛「Huh...」スッ

如月「」アゼン

大和「」ボーゼン

提督「んなっ……な……っ!?」セキメン

比叡「ちょっ、お、お、おね……っ!?」パニック

金剛「今の Kiss は挨拶デス。でも、ドキドキしたデショウ?」

提督「お、おま……」

金剛「Hm... その反応、テートクは女性との Communication が不足しているようデスネー」

金剛「私、決めマシタ! 私が、これからテートクに Love のなんたるかを lecture してあげマース!」

金剛「だからテートクゥ!? 私から目を逸らしちゃあ No!! なんだからネ!」

全員「「「」」」

提督「……おい比叡」

比叡「は、はひっ!?」

提督「金剛の説教、お前が俺の代わりに受けててくれ。俺は逃げる」スルリ

比叡「ええええ!?」

金剛「テートク!? Why did you run away !? Come back ! And stay here !!」

提督「俺は英語はわからん!!」ダッシュ!

比叡「司令、足はっや!?」

金剛「テーーートクーーーゥ!? Please come baaaaack !!」


長門「……」ポカーーン

朝雲「な、長門さん?」

長門「……はっ!? す、すまん、なんというか、驚きすぎて……」

古鷹「……そ、そうですね……」カオマッカ

由良「な、なんていうか、すごい人が来ちゃったわね、ね」ポ

初春「うむ……」ポ

敷波「すっごい自然にキスして……う、うわああ」セキメン

暁「あ、挨拶って言ってたけど……」セキメン

電「オトナの人の所作だったのです……」セキメン

如月「」マッシロ

大和「」マッシロ

朧「如月がまた白くなってる!」

潮「ふ、二人ともしっかりしてください!」

 ワーワーキャーキャー

神通「……」フイッ

利根「!」


 * その後 工廠 *

提督「ったく、なんなんだよいったい……くそ」

明石「……あ、噂をすればなんとやら」

朝潮「お疲れ様です、司令官!」ビシッ

提督「噂ってなんだよ」

明石「いいえ? 吹雪ちゃんを泣かせるなんて悪い人ね~って」

提督「言ってろ。ったく、悪趣味なもん作りやがって」

朝潮「それより司令官、そのお怪我の手当てを!」

提督「そいつは後でいい。それより霞だ、あいつ大丈夫なのか?」

朝潮「いえ、それが」チラッ

部屋の隅で体育座りしている霞「……」ズーン

朝潮「もうずっとこんな状態でして……」

提督「霞も真面目が過ぎんだよ。いつも俺にきつくあたるのも、そこから来てんだろうし……」

提督「その分、手前がミスすると必要以上に引きずるんだよなあ。俺みたいに適当に、ちゃらんぽらんにしてりゃいいのによ」

明石「うっわあ、今言っても説得力皆無ですね!」

提督「うるせえ」


朝潮「霞! 司令官が来てくださいましたよ!」

霞「……!」ビクッ

提督「……重症だな、こりゃ」

明石「ちゃーんと責任取ってくださいよ?」

提督「言われなくてもわかってるよ、んなことは」

明石(あ、これわかってないわ)

提督「なんだその顔は。まあいいや、おい、霞」

霞「……し、しれ……!」

提督「幽霊じゃねえんだから怯えんな。ちゃんと足ついてんだろ? 怒ってもいねえから安心しろ」ナデ

霞「しれ、かん……っ!!」ダキツキ

霞「良かっ……良かった……ああああ! ごめんにゃしゃい! ごめんなさいぃぃ……!!」ウワーン

提督「……ったく、自分に厳しすぎるのも考え物だよなあ。朝潮もそうだから心配になるぜ」ナデナデ

朝潮「そ、そうでしょうか!?」

提督「まあ、お前の場合は、何かあったらすぐ俺や明石に相談持ちかけるだろうから、霞ほど心配はないと思いたいがな」

明石「そうですね~、抱え込まれると心配よね」

提督「そういうこった。なんかあったらすぐ言えよ?」


朝潮「そ、それでは僭越ながら! 司令官の顔のお怪我の治療をさせていただきたいのですが!」

霞「顔……?」ミアゲ

霞「あ、あ……あんた、その顔いったいどうしたのよ!?」

提督「おお、戻った」

明石「良かったあ」

朝潮「これで安心ですね!」

霞「安心じゃないわよ!! なんなのよその怪我!!」ガーッ

提督「俺が不甲斐ないからって、お前が俺を蹴ったのと一緒だよ。朧に頭突き貰って、由良に頬をつねられて、長門にも一発貰って……」

霞「ちょっと何それ!? やりすぎじゃないの!?」

提督「別に構やしねえよ。明石にだってこの前一発貰ったしな」

朝潮「霞こそ、司令官を足蹴にしたではありませんか!」

霞「そ、それはそうだけど……」

提督「霞の場合は、怪我させる目的で蹴ったんじゃなくて、海に突き落として頭を冷やせしゃきっとしろー、ってやりたかったんだろ」

明石「あー、そういう……」

提督「俺が泳げねえこと知らなきゃあ、霞がやりそうなこった」


朝潮「とにかく、霞は司令官にちゃんと謝りなさい」

霞「そ、そのつもりよ……その、ごめんなさい」

提督「いや、俺に原因があったんだから気にするな。俺のほうこそ悪かったな」

霞「そ、それはもういいわよ……それより、その怪我!」

朝潮「ええ、早く治療しましょう! さあ、こちらへ!」グイッ

提督「痛って!」ビクッ

朝潮「!? も、申し訳ありません司令官!!」

霞「な、何!? どこが痛いの!?」

提督「尻だよ、しり。朝雲と敷波に思い切り蹴られたからな……くっそ、湿布でも貼っとくか」

朝潮「明石さん! 湿布は確かこちらにありましたよね!」ガサゴソ

明石「あるけど、人間用じゃなくて艦娘用よ? 提督が使ってるのは先週なくなったばかりだから、注文待ちなの」

霞「それでもなにもしないよりはましでしょ。ほら、あんたは早くお尻を出しなさい」

提督「……は!?」

霞「なにボケッとしてるのよ。脱がないと湿布が貼れないでしょ? 貼ってあげるからお尻を」

提督「そうじゃねえよ! なんでお前がやるんだよ!? 自分でできるぞそれくらい!?」


霞「はぁ!? 貼りづらいだろうから私がしてあげるって言ってるの! そのくらいさせなさいよ!」

提督「そうじゃなくて、恥ずかしいっつってんだろが! 朝潮、霞を何とかしろ!」

朝潮「朝潮は、司令官の湿布貼りをお手伝いすることをこれっぽっちも恥ずかしいとは思いません!」

提督「そういう意味じゃねえええ!」

朝潮「僭越ながら不肖朝潮、司令官の怪我の治療のお手伝いを希望させていただきます!」ビシッ

霞「ああもうじれったいわね! 早く脱ぎなさいよ!」ガシッ

提督「ちょっ、やめろ! ベルト外すんじゃねえ!!」

朝潮「司令官、遠慮なさらずに朝潮型にお任せください!」ガシッ

提督「明石! 二人を止めろ!!」

明石「えー、どうしよっかな~」

 扉<バーン!

吹雪「明石さん!!」

明石「吹雪ちゃん!?」


吹雪「明石さん、どうしてあんな隠しマイクを私の部屋のドアなんかに取り付けたんですか!」

明石「あー、あれはねえ……」チラッ

吹雪「そのせいで私はあんな恥ずか……?」チラッ


霞「とっとと脱ぎなさい!」グイグイ

提督「放せ! ずり落とすんじゃねえええ!」

朝潮「霞! 私が協力して下着を脱がせます!」

提督「やめろっつってんだろーーーがーーーー!」


吹雪「な、なにやってんのおおおおおお!?」キャーーー!?

明石(そう言いながら指と指の間からガッツリ見てるあたり、吹雪ちゃんもむっつりの気があるわね~)ニヤニヤ

初雪「……明石さんが悪い顔してる」タラリ

伊8「なにこのカオス」

 * 一方その頃 丘の上 *

神通「……」

利根「のう、神通よ。なにかあったのか」

神通「利根さん……」

利根「なにやら思い詰めた顔をしていた。吾輩で良ければ力になるぞ」

神通「……」

利根「この鎮守府の者たちにはいつも世話になっている。吾輩のことも迎え入れてくれたし……」

神通「……私は……」

利根「!」

神通「私には……好きな人がいました」

利根「……」

神通「その人は、もうこの世にはいません……」

利根「……!」

神通「わかっては、いるんです。この感情は、ただの嫉妬だってことを」

神通「私の事情は、本当なら、この鎮守府にいるみんなには、関係ないってことを」ポタッ

神通「……でも、どうしても、羨ましいと……思ってしまうんです」ポタッ


神通「私も、あのとき……あの人と、一緒に過ごしていた時に……」

神通「もっと、あの人に、この気持ちを、伝えていたら……!」ポロポロ…

利根「……」

神通「もっと、あの人に、好きですと、言うことができていたのなら……!」

神通「……こんなに、後悔……することも、なかったと、思うと……私……」

利根「……」

神通「誰かを好きになることを、やめてだなんて、私には、言えません……」

神通「でも、私は……う、うう……」

利根「そうか……気付いてやれず、すまんな、神通」

利根「誰かに気持ちをぶつけることもできず、つらかったろうに。吾輩で良ければ胸を貸そう」ギュ

神通「……うううっ……う、ああああ……!」グスッ

利根(いや、違うな。気付く気付かぬではなく、吾輩はそもそも本気で誰かを好きになるという経験自体しておらぬ)

利根(そんな吾輩がそのようなことを言うのは、間違っておるのだろうな……)

利根(すまん、神通……吾輩は、お前のそばにいてやることしか出来ぬ)


 * それからしばらくして 食堂 *

初春「む、遅かったのう? また包帯巻きの姿に戻ったか」

提督「まーな。おとなしくしてとっとと治すさ」

如月「司令官!? どこに行ってらしたんですか!?」

大和「お待ちしてたんですよ!?」

提督「蹴られた尻が痛くて座れねえから、湿布貼ってきたんだよ」

暁「利根さん、できたわよー」

利根「おお、かたじけない!」

提督「……? 利根、どうしたんだ? なんでおにぎりなんか持ってくんだ」

利根「うむ、少々やることがあってのう。外で夕餉を取りたくて、おにぎりを作ってもらったんじゃ」

提督「やること?」

利根「余計な詮索は無用! 神通も一緒である、危ないことはせんから安心せよ!」ニコッ

提督「あ、ああ、別に構わねえが……」

利根「うむ! ではの!」


提督「……おにぎりか。それなら立ったまま食べられそうだし、俺も作ってもらおうかねえ……」

如月大和「「任せてください!」」キラーン

提督「……いいけど、米粒潰すなよ」

初春「力いっぱい握って歯が立たぬほどの硬さになったら面白いがの?」ニヤリ

提督「そういう意味で言ったんだがな。あいつら、加減を忘れるときがあるし。ところで金剛はどこに行った」

初春「ああ、あやつなら厨房に……」

比叡「こ、金剛お姉様!? 油を入れるんですか!?」

金剛「Yes ! ここで追い Olive oil を足すのが cooking の新常識ネー!」

比叡「それは酢の物です金剛お姉様ーー!」ヒエエエエ!!

初春「……」

提督「……比叡に任せっか」

初春「なんじゃ、わらわも握り飯をこさえて外で食べたくなってきたのう……」トオイメ


提督「……おにぎりか。それなら立ったまま食べられそうだし、俺も作ってもらおうかねえ……」

如月大和「「任せてください!」」キラーン

提督「……いいけど、米粒潰すなよ」

初春「力いっぱい握って歯が立たぬほどの硬さになったら面白いがの?」ニヤリ

提督「そういう意味で言ったんだがな。あいつら、加減を忘れるときがあるし。ところで金剛はどこに行った」

初春「ああ、あやつなら厨房に……」

比叡「こ、金剛お姉様!? 油を入れるんですか!?」

金剛「Yes ! ここで追い Olive oil を足すのが cooking の新常識ネー!」

比叡「それは酢の物です金剛お姉様ーー!」ヒエエエエ!!

初春「……」

提督「……比叡に任せっか」

初春「なんじゃ、わらわも握り飯をこさえて外で食べたくなってきたのう……」トオイメ


大淀「あの、提督すみません」

提督「どうした?」

大淀「実は、本日付で着任する艦娘が、金剛さんのほかにももう一人いたんです」

大淀「手違いというか、問題があって連れてこられなかったと言う話がありまして……」

提督「問題?」

大淀「はい。手ひどく暴れたと」

提督「……反抗的なのか」

大淀「話を聞く限りはそのようです。それでなんですが、この鎮守府の建物の一番奥にある牢屋、使ったことありますか?」

提督「使えってか? 何したんだそいつは」

大淀「……それが……」

 * * *

 * *

 *

今回はここまで。
新たに金剛着任ですが、彼女が来た理由は後ほど。


>39 と >40 が二重書き込みになってしまったので、
一方は無視してください。

次からシリアス色が濃くなります、ご容赦ください。

それでは続きです。


 * 翌朝 鎮守府埠頭 *

神通「……あの、利根さん。昨晩はありがとうございました」

利根「おお、神通! もう大丈夫か?」

神通「はい、おかげさまで」

利根「うむ、それならば何よりじゃ。むしろ吾輩のほうこそ無知ゆえの浅慮であった。申し訳ない」ペコリ

神通「そ、そんなことは! 私こそ、私のために夕餉まで持ってきていただいて……」

利根「否、神通を泣かせたのは吾輩だぞ。当然のことをしたまで、礼を言われても困る」

神通「利根さん……」

利根「おぬしのように気遣いできる者ほど、自分の中に悩みを閉じ込める傾向があることは、あの男を見ててよくわかった」

利根「気軽に胸中を打ち明けられる姉妹がおらんのも、また不幸である」

利根「そこでじゃ。乗りかかった船というわけではないが、また何かあったら吾輩を頼って欲しい」

神通「……!」

利根「まあ、おぬしほど艦娘としての人生経験もなければ、倫理観……というのか? 吾輩のそれも怪しいのかもしれんが……」

利根「おぬしの抱えているものが、誰彼かまわず話せるようなものではないことくらいは理解しておる」

利根「一人で思いを溜め込まず発散する相手がいても良かろう。あれじゃ、『王様の耳はカバの耳』というやつじゃな」

神通「利根さん、カバじゃないです。ロバです、ロバ」クスッ

利根「む、むうう……と、とにかく、おぬしにも言いたいことはたくさんあろう!」


利根「そういうわけじゃから、今後は遠慮せず吾輩を訪ねよ。これでも吾輩は『お姉さん』なのだからな!」

神通「……ありがとう、ございます」ニコ…

利根「うむ!」ニッ

利根「しかし……練度に限って言えば神通が図抜けておる。みなが訓練についてこられない旨の愚痴ばかりは如何ともし難いな」

神通「はい。ただ、特訓するにしても、やはり資材不足が深刻ですので」

利根「ゆえに無理も禁物と。ふーむ、都合よく資材が流れてはこないものか……ん?」

神通「どうしました?」

利根「あれを見よ。あの船、こちらに向かってきてはおらんか?」

神通「はい。海軍の船のようですね」

利根「……今日は定期便が来る予定はなかったな?」

神通「……はい」

利根「……」

神通「……!」

提督「よう」

神通「おはようございます、提督」


利根「おお、提督か、丁度良い。あれが見えるか? こちらに海軍の船が近づいてきておるようなのだ」

神通「提督は、あの船について心当たりはありませんか」

提督「あー……ありゃあ、昨日金剛と一緒に来る予定だった奴が乗せられてんだな」

利根「……」

神通「……」

提督「憲兵の制止を振り切って、この島への定期便から脱走を企てたんだとよ」

提督「10人がかりで取り押さえて、やっとこさ捕まえてきたらしいぜ。こりゃあ骨が折れる」

神通「……」

利根「……そやつは何をしたんじゃ」

提督「仲間を撃って沈めたんだと。真偽のほどはわかったもんじゃねえが」

神通&利根「!」

提督「そういう奴なんで、できれば神通の手を借りたかったんだが、頼めるか?」

神通「……わかりました」

利根「吾輩も付き合おう。手伝えることがあればの話だが」

提督「ああ、助かる。悪いな」


 * 十数分後 *

 ギャーギャー

憲兵A「きりきり歩け! こっちにこい!」

憲兵B「くっ……この、抵抗するな!!」

 バキッ

 ドサッ

利根「お、おい! やりすぎではないのか!」

憲兵C「やりすぎなものか! こいつは俺たちに砲撃したんだぞ!」

利根「そ、そうは言ってもだな! 提督よ、おぬしも何とか言わぬか!」

提督「無理だな。仲間殺しが事実であろうとなかろうと、今、俺がこいつを庇う義理も理由もねえ」

利根「そ、そうかもしれんが……!」

提督「だから話を聞かせてもらう。こいつの口枷、外してもらおうか」

憲兵?「それはできん。牢屋が先だ」ヌッ

提督「!」


憲兵?→隊長「申し遅れた、私は憲兵隊隊長。貴様が提督か」ケイレイ

提督「提督准尉。この島の鎮守府の責任者だ」ケイレイ

隊長「辞令が出ている。この艦娘の身柄は、本日より××島鎮守府へ配属となった」

隊長「この艦娘の口を塞いだのは自衛のため。野良犬のように我々に噛み付いてくるためだ。ご理解願いたい」

神通「噛み付く……彼女が?」

利根「馬鹿な!?」

隊長「事実だ。安全のため、檻に入れて運ぶことも考えたほどだ」

提督「……何者なんだ、こいつは」

隊長「白露型駆逐艦、五月雨。P少将鎮守府の最古参、P少将の初期艦だ」

神通&利根「……!」

提督「……利根。お前は明石を呼んでこい。神通は俺たちと一緒に牢へ行く」

殴打され気絶している五月雨「……」


 * 鎮守府内 牢屋 *

大淀「提督、こちらへ」

提督「……綺麗にしてくれたんだな。ありがとよ」

大淀「はい」

提督「使う必要はねえと思ってたんだが、わかんねえもんだな」

隊長「ここか。よし、こちらに運べ」

憲兵たち「はっ!」

 (気を失った五月雨が、憲兵たちによって牢屋の中に運び込まれる)

隊長「提督、貴様にこれを渡しておく」

提督「これは?」

隊長「手錠の鍵だ。それ以外の拘束は取り外す。口枷も外そう」

隊長「その最後の手錠は、貴様の判断によって外してもらいたい」

提督「責任を取れってことか」

隊長「いかにも」


 牢屋の扉<ガシャン

憲兵A「拘束、解除しました!」ビシッ

憲兵B「扉の施錠、問題ありません!」ビシッ

隊長「よし。駆逐艦五月雨の移送完了を確認。我々の任務は提督准尉への説明を以て完了とする、各員帰投準備」

憲兵たち「はっ!」

神通「……提督、五月雨さんは……」

明石「提督!」

利根「提督、連れてきたぞ!」

提督「おう、ご苦労さん」

明石「! 五月雨ちゃん……! ちょっと、憲兵だからってここまでしていいと思ってるの!?」

大淀「あ、明石!」

隊長「ここまでせざるを得なかった。その怪我は彼女自身に起因する」

明石「あんた……!」

提督「よせ明石。それより、五月雨をうちに連れてきた経緯を聞きたい。それも任務のうちだろ?」

隊長「いかにも」


 * *

隊長「2週間前、P少将の艦隊が**諸島の海域を突破した。これは海軍でもまだ数名しか達成されていない快挙だ」

隊長「しかしその帰路に、未確認の深海棲艦と遭遇。P少将の艦隊は壊滅した」

大淀「壊滅……!」

隊長「海軍はこの個体と、過去数回出現していた謎の個体を照合。これを戦艦レ級と認定した」

隊長「そのレ級の個体情報を持ち帰ったのが、そこにいる五月雨だ」

明石「そ、それじゃ、彼女が咎められる理由はないじゃないですか!」

隊長「……P少将から報告を受けた。『五月雨は、レ級から逃げるために随伴艦を砲撃し逃亡した』と」

艦娘たち「「!!」」

提督「なるほど。誤射かどうかは別として、味方に被害を与えて逃げた、と」

隊長「P少将は五月雨を艦隊から解任し、鎮守府から追放。この島の噂を聞いていたP少将は、この鎮守府への異動を命じた」

隊長「以上が、私がP少将から受けた報告である」

利根「……」

明石「……」

 「……そ、です」

提督「!」


五月雨「そんなの、うそです!!」ヨロッ

隊長「私もP少将とは決して短くはない付き合いだ。だが、この報告を受けた時の鬼の形相は見たことがない」

五月雨「私はそんなこと、してません! 私はみんなを撃ってなんかいません!!」ガシャン

五月雨「お願いです! ここから出して! 私は、みんなの敵を討ちにいかなきゃいけないんです!!」ガシャガシャッ

五月雨「こんなところに閉じ込められてる場合じゃないんです!」ガンガンッ

隊長「辞令は発令された。異議申し立てがあるならば、提督准尉を通じて申告せよ」

五月雨「そんなの……そんなのってないです!」ポロッ

五月雨「どうして!? どうして誰も信じてくれないんですか……!」ポロポロポロ

五月雨「おかしいと思わないんですか!? 隊長さん!!」ガン! ガンッ!

五月雨「どうして……!」ヘタッ

隊長「……」

提督「……」

隊長「提督准尉。煙草が吸いたい」

提督「あ?」

隊長「喫煙所まで案内を願いたい」

提督「ねえよそんなもん。外に行け」

隊長「そうか。ではご一緒願おう」

提督「……あ?」

隊長「私は付き合えと言っている」ジロリ

提督「……面倒くせえ……」

短いですが今回はここまで。

白露型には猛犬がたくさんいますので、その片鱗を見せたのかと。

では続きです。


 * 丘の上に通じる非常口 *

 シュボッ

隊長「……」フー…

提督「……で? ただ煙草吸いに来たわけじゃねえんだろ」

隊長「そうだ。提督准尉、まずはこれに目を通してもらいたい」スッ

提督「……これは?」ガサッ

隊長「轟沈したP少将の艦隊の詳細。こちらは戦艦レ級に関する資料と、その交戦記録だ」

提督「……」ペラッ

隊長「……」ハイザラトリダシ

提督「へえ……すげえな。うちの艦隊とは大違いだ。こいつらが沈んだってか」

隊長「……」

提督「なるほど。ふざけた性能してやがんな、このレ級ってのは」ペラッ

隊長「貴様の艦隊で相手取ることはできるか」

提督「無理だな。逃げる一択だ」

隊長「……よし。目を通したならば、今度はこれを読んでもらいたい」ゴソ

提督「ん?」

隊長「P少将から君宛の手紙だ」スッ


提督「……おい、封が開いてんぞ」

隊長「私が先に目を通させてもらった。これも仕事なのでな」

提督「ち……」ガサガサ ペラリ

提督「……」

隊長「……」スパ…

提督「……」

隊長「……」フー…

提督「……おい」

隊長「……」

提督「あんたがこれを読んだのは、いつだ?」

提督「少なくとも、さっき五月雨の前で話をした時より前だよな?」

隊長「この島への航路上で読ませてもらった」

提督「あんたのさっきの報告と書いてる内容が全然違うんだが、どういうことだ?」

提督「五月雨は仲間を撃っちゃいない。それどころか、その仲間は五月雨を庇って沈んだと書いてある」

提督「レ級の情報を鎮守府に持ち帰らせるため、中破してはいるものの、それでも最も速力のある五月雨を戻らせたと」

隊長「私は、P少将からの報告をそのまま話しただけだ。そこに脚色や私意はない」


提督「……P少将の建前をそのまま話したってか?」

隊長「いかにも」

提督「五月雨を預かれっつうんなら最初からそう言えって話だろが。くそ回りくどい真似しやがって」

隊長「……」

提督「それで手前は航空機に爆弾積んで特攻するってか。こんなもん成功すんのかよ」

隊長「……失敗したよ」ハイザラシマイ

提督「! そこまで知ってたのか……!?」

隊長「4日前、P少将は、その航空機に乗り込もうとしたところを特別警察隊に射殺された」

提督「しゃ……!?」

隊長「軍上層部はクーデターを警戒していた。地位ある人間が、航空機と爆薬を秘密裏に集めていたとなれば、不信を買うのも道理」

隊長「それに、ある鎮守府で、艦娘を洗脳して人間を襲わせる計画もあったと聞く。それ以来、軍はこういう動きに過敏になっている」

隊長「P少将の特攻が、海軍に向けてのものだと判断したのだろう。特警の行為は、正当な粛清と見なされた」

提督「……ちっ!」

隊長「それから、P少将の死は、五月雨にはまだ知らせていない」

提督「……」

隊長「五月雨は、鎮守府に戻った後、頻りに出撃したいと言い出していた。おそらくは仲間の敵を取りたいのだろう」

隊長「P少将と私は、短い付き合いではない。彼は私の家族……妻と娘の顔もよく知っている」


隊長「彼も結婚こそしていなかったが、五月雨をはじめとした艦娘たちに向ける眼差しは、実の娘を見る目と同じ優しいものだった」

隊長「その彼が、最も信頼していた第一艦隊の、五月雨を除く5人を一度に失ったのだ」

隊長「そこへ更に五月雨が突撃したがっている。勝てる見込みもないのにだ」

隊長「P少将はそれを何度となく制止したが、五月雨はそれに納得せず抗議し続けた」

隊長「聞き分けのない五月雨に、彼はこれ以上なく激昂したと聞く」

提督「……おとなしくお留守番しとけ、ってことか」

隊長「この手紙を彼から受け取ったとき、彼の呟きが聞こえた。これ以上、娘を先に死なせるわけにはいかんのだ、と」

隊長「そしてその内容を読んで、すべてが腑に落ちた。彼は自分から遠ざけるため、五月雨をここへ閉じ込めるつもりだったのだ」

提督「……」

隊長「私は、彼の特攻を見過ごすつもりはなかった」

隊長「しかし、それをこんな形で……彼を殺す形で阻止することも、私は望んでいなかった」

隊長「提督准尉。機を見て、五月雨に彼の遺志を伝えて欲しい。少将もまた、五月雨と同じ思いを抱いていたことを」

提督「……だから、奴の嘘の報告をそのまま伝えたのか」

隊長「いかにも。それが、彼の……父親の願いだろう」

提督「……」

隊長「少将も、いくら父娘だからと言って、そんなところまで似て欲しいとは思ってもいなかったろうにな……」

提督「……」


 * 牢屋前 *

明石「五月雨ちゃん、大丈夫?」

五月雨「ぐすっ……は、はい。少しは、落ち着きました」

明石「鉄格子越しで悪いけど、とりあえず応急処置はできたわ。しばらく安静にしてて」

五月雨「ありがとうございます……」

提督「……落ち着いたみたいだな」

大淀「提督! 憲兵のみなさんはどうなさったんですか」

提督「帰った」

明石「帰った!?」

五月雨「そんな!!」

提督「まあ、それでだ。五月雨、お前、これからどうしたい」

五月雨「!」

提督「俺は自殺の手伝い以外なら、できる限りのことを……」

五月雨「准尉さん! 私を艦隊に加えてください!! 私、すぐにレ級を討伐しに行きます!!」バッ

五月雨「私は、あのレ級に沈められたみんなの敵を取りたいんです! お願いします!!」ガバッ

提督「……」


明石「提督、手伝ってもらえませんか? このままじゃ、彼女が可哀想です」

明石「P少将がどんな方なのかはわかりませんが、無実の罪を着せられて、ずっと檻の中というのはあまりにも……!」

提督「……」

神通「……」

利根「……」

提督「そうか」ハァ…

大淀「!」

明石「そ、それじゃあ!」

提督「俺の答えはこれだ」ポイッ

 チャリンッ

明石「これは! 手錠の鍵です……ね……!?」

 手錠の鍵<グニャァ

明石「……」

五月雨「……え」

神通「……」


利根「……これは貴様がやったのか」

提督「ああ」

明石「どういうことですか!」

提督「どうもこうもねえよ。付き合ってられっか」

五月雨「!?」

提督「さっき、憲兵の隊長にP少将の艦隊とレ級の資料を見せて貰った」

提督「P少将の艦隊の練度はかなり高い。いくら疲弊していたとはいえ、そう易々と全滅するような連中じゃねえ」

提督「その中でも五月雨は、残念だが一番練度が低い。仮に単騎でぶつかったとして、勝てる見込みはあんのかよ」

五月雨「それは!」

提督「根拠もねえのに根性論で『勝ちます』なんて言うんじゃねえぞ」

五月雨「っ!」

提督「『一矢報いたい』ってのもなしだ。最低でも沈めろ。沈めなきゃ仇討ちとは言わねえぞ」

五月雨「で、でも!」

提督「言ったよなぁ? 俺は自殺の手伝いはしねえ、って」

提督「うちの艦隊に入ってレ級退治だ? お前はこの鎮守府の何を知ってる!」

提督「この鎮守府の戦力ってものを、理解して喋ってるか!? わかりもしねえのに手前勝手な夢見てんじゃねえぞ、くそが!」ガンッ


五月雨「……そ、そんな言い方って!」

提督「関係ねえよ。大淀、仕事に戻るぞ、時間の無駄だ」

大淀「え!? は、はい!」

五月雨「ま、待ってください!」

提督「俺は結論を出した。この結論は何があっても覆す気はねえ」

提督「お前より練度が高い艦娘なんか、この鎮守府には指折り数えて片手で済む程度しかいねえんだ」

提督「どうしてもってんなら、うちの鎮守府の連中集めて説得しな。倒せそうな人数を集められたんなら、全員まとめて見捨ててやる……!」

五月雨「そんな! 准尉さん!!」

明石「……」ギリッ

神通「明石さん」

明石「わかってる。わかってます」

神通「提督の仰ることはごもっともです。五月雨さんの練度からして、並の練度では彼女の本懐は達せられないでしょう」

明石「それでも、何もしないわけには、いかないでしょ……!」

利根「ならば悪いが、吾輩は力になれぬな。皆と比較すれば、目に見えて力が劣っているのは自覚しておる」

明石「利根さんは……仕方ないですよ」


利根「大和もそうであろう。資材不足で演習もままならぬ。実力不足が随伴しては、足を引っ張ってしまうからの」

神通「……はい」コク

五月雨「や、大和さんがいるんですか!?」

利根「うむ。少々、性格に多少問題があるがの……」

五月雨「そ、そうなんですか?」

明石「ほかに練度が高い人たちとなると……」




 * 廊下 *

提督「ったく……身の程知らずが」

大淀「提督、今更ですが、もう少し言い方を考えてはどうかと」

提督「あそこまで強情な奴をへこますには、ああいう言い方しかねえだろ。本当に今更だ」

提督「それより、長門と不知火を呼んでくれるか」

大淀「は、はい」

提督「お前もこれに目を通しておけ。五月雨を襲ったレ級ってのがどんなやつか、知らねえことには話にならねえ」

提督「はっきり言ってタチが悪ぃぞ。五月雨がこれを見てもやり返したいとか言うんなら、こっちも考える必要がある」

今回はここまで。


しばらくはこんな感じのシリアス展開になります。

間が開きましたが続きです。


 * しばらくのち、牢屋前 *

五月雨「……」

利根「……」

明石「……まあ、意外だと思うかもしれないけど、単純に練度が高いのはこの人たちね」

神通「……」

初雪「……初雪、です」

伊8「……ハチです」

五月雨「ほ、本当ですか?」

利根「神通はわかるが、正直、意外な面子じゃな」

明石「少なくても、五月雨ちゃんよりは練度は上よ」

五月雨「……」

初雪「……」

伊8「……」

神通「伊8さんがいたとしても、このままだと水雷戦隊ですね」

初雪「? なに? このみんなで、艦隊組むの?」

明石「ここに長門さんと不知火ちゃんも入るわ」

伊8「よくわからない編成ですね」


利根「して、その二人はどうしたんじゃ」

明石「提督に呼ばれたらしいですけど、もうすぐきますよ」

不知火「お待たせしました」

長門「なるほど、彼女が五月雨か。私は戦艦長門だ」

不知火「不知火です」ビシッ

五月雨「あ、はいっ! 五月雨っていいます!」ペコッ

長門「おおよその話は提督から聞いている。私たちの力を借りて、敵戦艦を撃破したいと言う話だったな」

五月雨「はいっ!」

長門「結論から言わせてもらう。残念だが、お前の思いには応えられない」

五月雨「ええっ!?」

明石「な、長門さん!? 何を言ってるんですか!!」

長門「これを見てくれ。提督がもらったレ級に関する資料のコピーだ」

不知火「司令から、全員が目を通しておくよう指示がありました」

明石「……なんですか、この冗談みたいなスペック……」ペラ

神通「対潜攻撃まで備えてるんですか……」

五月雨「……」ペラッ


長門「実際に戦った五月雨はわかると思うが、いざ数字にしてみると、良く助かったと言うべきだ」

長門「今の我々では、レ級に対してあまりに無力。仮に不意を突いたとしても、まともにダメージが通るかどうかすら怪しい」

明石「……」

長門「それから、この鎮守府には航空母艦がいないのも致命的だ」

五月雨「え、ええ!?」

神通「……確かに、そうですね」

長門「このレ級が出没する海域には、夜間でも爆撃機を飛ばしてくるヲ級改がいる」

長門「ヲ級改の艦載機に発見されれば、レ級を探し出すより先にこちらと交戦せざるを得なくなるだろう」

利根「となるとやはり空母と戦闘機の出番じゃな。比叡に三式弾を、でなくば防空艦……せめて高雄型がおればな」

長門「そして一番厄介なのはレ級の性格だ。この海域のレ級の目撃情報は大まかに3か所で、性格もその場所によって異なる」

長門「こちらに興味を持ってちょっかいを出し、いたぶって反応を楽しむ『遊びたい』奴」

長門「自らの被害は一切顧みず、ひたすら戦闘行為を楽しもうとする『戦いたい』奴」

長門「そして、ただただ艦娘が轟沈するところを見たい『沈めたい』奴。五月雨が遭遇したのは、おそらく最後のやつだ」

明石「最悪ですね……!」

長門「ああ。しかもそいつは、決まって帰投中や撤退中の艦娘を狙っては不意打ちを仕掛けるらしい」

長門「こちらから探りを入れれば逃げていき、こちらが弱って退くときに迫ってくる、典型的な卑怯者だそうだ」


五月雨「そんな……そんな相手に、みんなは……!」グスッ

五月雨「私、やっぱりじっとしていられません。そんな敵を放っておいたら、被害が増える一方です!」

長門「五月雨!」

五月雨「やらなきゃ、また誰かがやられるんですよ!? また、私たちみたいになるんですよ!」

利根「それはそうだが……」

五月雨「それに、P少将に信じてもらえないままは嫌なんです! 今までたくさん、お世話になったのに……」

五月雨「一緒に戦ったみんなだって、たくさん、思い出があるんです……なのに……!」

神通「……」

五月雨「なんとか……なんとかできませんか!?」

長門「いや、なんとかしたくてもだな……」

五月雨「明石さん!!」

明石「……ごめんね」

明石「五月雨ちゃんの気持ちにはどうにか応えたいけれど……」

明石「こうやって具体的な数字を示されたからには、それを無視するわけにはいかないの」

五月雨「そんな……っ!」


五月雨「……だ、誰か、いないんですか……!」

初雪「えっと……」

五月雨「初雪ちゃん!」

初雪「……私、行きたくない」

全員「「!!」」

五月雨「それは、なんで……」

初雪「五月雨は、前の鎮守府で、たくさん可愛がってもらって、たくさん思い出がある……よね?」

初雪「でも、私……思い出、ないから」

五月雨「え……!?」

初雪「ここに来る前の鎮守府で、そこの司令官だったN提督と話したのは、数回だけ」

初雪「誰のものでもない声の言うことを聞いて、ただただ遠征して……笑った記憶も、泣いた記憶もないの」

利根「初雪……」

初雪「でも、ここへ来て……ここに流れ着いて、全部変わった」

初雪「私、まだ、思い出を作ってる途中、だから」

初雪「私は、もう少し、ここに引き籠ってたい」

五月雨「ひ、引き籠って、って……」


伊8「……はっちゃん、その気持ち、わかります」

五月雨「!」

伊8「資材を探してオリョールに行って、少しでも休むとものすごく怒られて……はっちゃん、おかしくなってました」

明石「……」

伊8「……はっちゃんも、つらい思い出しかありません」

伊8「少し、考えさせてください」ペコリ

五月雨「あ……」

 (牢屋前から初雪と伊8が去っていく)

不知火「……」

長門「……思い出、か」

 ガタン!

神通「と、利根さん!?」

利根「……」ブルブル

明石「ど、どうしたんですか! 顔色が真っ青ですよ!」

利根「……吾輩、は……ここは、どこだ……!?」ガチガチ

明石「利根さん!?」


利根「……あ、あ……あああ……やめて、くれ……やめ……ぇ……」ガタガタガタ

神通「利根さん! しっかりしてください! 利根さん!!」

長門「おい……もしかして、利根も昔のことを思い出したんじゃないのか!?」

明石「早く落ち着かせないと!」

神通「すみません、私は利根さんをドックに連れて行きます!」グッ

長門「明石、お前も一緒に行ってやってくれ!」

明石「は、はい!」

利根「……ひっ! か……ぁ……ぎゃあああ!!」ガクガク

神通「利根さん! もう、もう大丈夫ですから! 利根さんっ!!」

 (利根が神通と明石に抱えられて出て行く)

不知火「……大丈夫でしょうか」

五月雨「……」

長門「……五月雨を助けるどころの話ではなくなってしまったな」

五月雨「……なにが、あったんですか」

長門「利根は、前の鎮守府で殺されかけた」

五月雨「!?」


長門「建造されて間もなく地下牢のような場所に閉じ込められて、何週間も拷問にかけられたと聞いている」

不知火「……あの様子から察するに、フラッシュバック、というものでしょうか」

長門「ここも牢屋だからか……まだ、全部忘れてしまえるほど日も経っていない。迂闊だった」

五月雨「……」

長門「なあ、五月雨。お前は仲間の敵を取るために出撃するのだな?」

五月雨「は、はい……!」

長門「どうやって相手をおびき出す? どうやって叩きのめす?」

五月雨「え? え、ええと……」

長門「私もな、絶対に始末したほうが良いと思っている奴から、身の危険を感じて逃げてきたんだ」

五月雨「……え?」

長門「それは私がかつて所属していた鎮守府にいる司令官だ」

長門「司令官が相手では、下手をしたらこちらが問答無用で解体されてしまうだろう」

長門「私には、打てる手がなかった。だから逃げて、最初に心の平穏を求めた」

長門「五月雨がはやる気持ちもわからなくない。だが、どうやったら確実に仕留められるか、落ち着いて考えるべきだと思うんだ」

長門「でなければ、きっと後悔する」

五月雨「……」


長門「それに、もし、お前と私が出て行って敵を討てずに沈んでしまったら、P少将と同じ思いを提督にさせてしまうだろう?」

五月雨「そ、そうかもしれませんが! あ、あんな乱暴な言い方する人が……」

長門「いいや、ところがそうでもない」

不知火「不知火も、司令に助けられた一人です」

五月雨「……」

不知火「その司令からの言伝です」

不知火「この鎮守府にいる艦娘と一通り話をしろ。その上で、お前がどうしたいかを決めろ、とのことです」

長門「……相変わらずだな」フッ

不知火「不知火は、これから鎮守府内を回って、皆さんに五月雨と話をするように伝えます」ビシッ

不知火「では」クルッ スタスタ…


長門「五月雨、教えてくれ」

長門「私は、お前が仲間を撃ったと聞いているが、どうにも信じられない」

長門「お前があの海で何をしていたのか、戻ってきてから何があったのか。ゆっくり、話を聞かせてくれないか」

五月雨「長門さん……!」ウルッ


 * それから *

朝潮「……これは、強敵ですね」

霞「っていうか、今のあたしたちにこんな奴の相手は無理よ。あいつが怒るのも無理ないわ」

朝潮「すみません、練度を上げるための時間が必要です」

朝潮「霞、司令官へ演習の機会を増やせないか相談してみませんか?」

霞「あいつもそうだけど、資材とも相談しないと駄目よ」

五月雨「……」

 * *

電「……ちょっと、遠慮したいのです」

敷波「あたしも。これ、なんとかすれば勝てるって感じの相手じゃないもんね」

由良「そうね……どうやってダメージを与えたらいいのかしら」

敷波「あいつだったら、これ見ても、行けって言ってたのかなー」ポツリ

電「……」

由良「……あまり、考えたくはないわね」

五月雨「……」


 * *

初春「ふむ。わらわたちにこやつを始末せよと。ならば体に魚雷を巻きつけて、突撃するほかあるまいな」

吹雪「は!?」

朧「それって、どうなのかな」

吹雪「だよね!?」

朧「確かにダメージは与えられるかもしれないけど、確実じゃないんじゃない?」

吹雪「って、そうじゃなくて!! なんでそこを真面目に返してるの!?」

初春「まあ、もしやるときは、の話じゃぞ。やりたくなくばやらんで良かろう」

朧「そうそう。吹雪は無理だよね。前の鎮守府の司令官を見返すって目標があるし」

吹雪「……朧ちゃんだって、鳳翔さんを悲しませるわけにはいかないでしょ」

朧「……まあ、そうだけど」

初春「ふむ。となると、できるのはわらわだけじゃな」

朧「……初春だけ余裕ぶってるみたいでなんだかムカつく」

吹雪「長門さんにだっこされてデレデレしてた上に降りたくないって駄々こねてたくせにー」

初春「お、おぬしどこでそれを!?」カオマッカ

五月雨「……」


 * *

暁「力を貸してあげたいのはやまやまだけど……勝てるかしら」

大和「この海域の攻略は難しそうですね……」

五月雨「そうですか……」

朝雲「……ねえ、これこそ余所の立派な鎮守府にお願いしてみたらいいんじゃない?」

古鷹「提督にお願いしてみましょうか!」

 * 執務室 *

提督「俺たちが何か言うまでもなく、現場の奴らも上の連中も、もうレ級対策を検討してるけどな」

古鷹「そうでしたか……それもそうですよね」

提督「ただ、情報はあっても、それを有効活用できる艦隊がそうそういねえらしい」

提督「P少将の艦隊だって、うちとは比べ物にならないくらい鍛えられてる。それで負けてるんだから、どうしようもねえ」

暁「その、攻撃対象だけおびき出す、ってことはできないの?」

提督「それなんだが、そのレ級がなかなか出てこねえんだ。レ級に勝ち目がなさそうだとおとなしくしてるらしい」

朝雲「それじゃ、狙い撃ちすら難しいってこと?」

提督「だな。その海域を制圧してる敵空母のヲ級の撃ち漏らし……っつうかおこぼれか、それを狙うハイエナみたいなもんだからな」

提督「気に入らねえだろうが、今、俺たちが向かってもヲ級にすら会えねえだろうな」

大和「海域へ挑む以前の問題ですか……」

提督「今の俺たちにできることっつったら、必死こいて訓練するしかねえんだが、資材にも余裕がねえし……どうしたもんかね」


 * 牢屋前 *

牢屋の毛布の上で横たわる五月雨「……はぁ……」

潮「あ、あの、五月雨ちゃん? 大丈夫……?」

五月雨「っ……は、はい!」ムクッ

如月「だいぶ疲れてるみたいね」

潮「その……ごめんね、ここから出してあげられなくて」

五月雨「いえ……」

如月「ね、五月雨ちゃん、腕を出して。手錠を外してあげるから」

五月雨「……え!? は、はい!」

 カシャン カシャン

如月「これでいいわ」

五月雨「あ、あの、鍵は准尉さんがこの前曲げてしまったんじゃ……」

如月「ああ、あれはスペアキーよ」

五月雨「」

如月「ごめんなさい、司令官ってちょっぴり意地悪なの」

潮(ちょっぴり……ちょっぴりなんだ)


如月「それより、お腹へってない?」

比叡「軽食持ってきました! さあ、冷めないうちにどうぞ!」

 っ「おにぎり&味噌汁&たくあん」

五月雨「え? え……っ?」

潮「手錠したままじゃ食べづらいだろうから、って……提督が」

如月「まだここから出すわけにはいかない、って言ってたから、もう少しだけ待っててね」

五月雨「いえ、あの……」

 グゥ

五月雨「……///」

潮「……」ニコ

如月「……」ニコー

五月雨「い、いただきます……」カァァ

比叡「はいっ、どうぞ!」ニコニコー


 * *

五月雨「ご、御馳走様でした……!」キラキラキラ

比叡「お粗末さまでした!」ニコニコー

潮(五月雨ちゃん、すっごいきらきらしてる……)

五月雨「とってもおいしかったです……この島の鳳翔さんってすごいんですね」

如月「あら。この島には鳳翔さんはいないわ?」

五月雨「え?」

潮「このごはんを作ったの、比叡さんですよ」

五月雨「……え??」

比叡「あはは、まあそういう反応されちゃうよね!」タハハー

五月雨「い、いえ! た、大変失礼しました!!」ドゲザッ

比叡「まあ、しょうがないのかなあ……みんなの反応を見る限り、どこの私もお料理はからっきしみたいだし」

潮「そ、そうですね……ここの比叡さんは特別だと思います。も、もちろん、いい意味でとっても特別です!」

五月雨「……あ、あの」

比叡「?」

五月雨「あの、比叡さんも、余所の鎮守府から来たんですか? なんか、みんなから話を聞いてると、そういう艦娘ばっかりで……」

比叡「ん……まあ、言いづらいけど、そうよ?」

五月雨「……」

比叡「でも、今はそこまで不幸じゃないかな。こうやってお料理作って、おいしいって食べてくれる人がたくさんいるし!」ニコッ

五月雨「……」

というわけで今回はここまで。

割と多いですよね、風評被害。
個人的に一番ひどいのは鹿島あたりじゃないかと。

では、続きです。


 * *

五月雨「……」ションボリ

提督「邪魔すんぜ」

金剛「Hey, 五月雨! How are you !」

五月雨「!」

提督「……五月雨、少しは落ち着いたか?」

五月雨「は、はい……」

提督「そうか。じゃ、誰を道連れにするかも決めたのか?」

五月雨「……そ、それは……」

提督「何人かからは昔話も聞いたんだろ?」

五月雨「……はい。あの、准尉さんは……わかってて、話をさせたんですね?」

提督「ふん。そこまで気付いたんなら俺の意図はわかってんだな?」

五月雨「……」コク

提督「俺が言うよりかは、あいつらから直接行けない理由を聞いたほうが説得力あるしな」

提督「そういうわけなんで、死にたいって連中以外は連れて行くな」


五月雨「……私が行くのは引き留めないんですか?」

提督「そいつも最終的にはお前が決めることだしな。生きてても希望が見いだせないなら、それも道の一つだろ」

五月雨「……」

提督「ま、神通にもな、同じように我慢してもらってんだ」

提督「あいつも敵討ちがしたいんだ。それをやっちまうと、この鎮守府の存続が危ういことになる」

提督「だから、我慢してもらってる。申し訳ねえとは思ってるんだがな」

五月雨「……倒せる相手なんですか?」

提督「ああ。ただ、その相手ってのが海軍中将の息子なんだ。どうする? やれたとしても、その後をどうするよ?」

五月雨「……」

提督「悩むだろ。倒したい相手が強いだけなら練度を上げてひっくり返せるとは思うが、地位的なもんが絡むと途端に面倒くさくなる」

提督「そんなこんなで欲をかくと、助けてやりたくても助けられないことが出てきてなあ……」スクッ

提督「ま、お前が一人で行っても歯が立たねえ。かといって、この鎮守府の連中を当てにしてもらうのは、こっちも困る」カチャカチャ

五月雨「? じ、准尉さん?」

 牢屋の鍵<カチャン

提督「とにかく、今はお前を助けてやることはできねえ。悪いな」ギィッ


五月雨「……」

金剛「五月雨どうしまシタ? 鍵は開いてマスヨ?」

五月雨「は、はい……でも、いいんですか?」

提督「お前、まだレ級退治に行くつもりか?」

五月雨「……それは……」

提督「ちゃんと考えることができるようになったんだろ? 誰かに噛み付いたりもしねえよな?」

提督「だったら、ここに閉じ込めておく理由はねえ」

五月雨「……」

金剛「テートク? 私をここへ連れてきた理由はなんデスカ?」

提督「ん? ああ、五月雨もいろいろ話を聞いたことだし、お前にも語ってもらおうかと思ってな」

提督「つうか、そもそも俺も聞いてねえ。金剛、お前はなんでこの島に送られてきた?」

提督「言いづらいんなら、執務室で訊くがどうする?」

金剛「No probrem. ここで問題 nothing デス」


 * *

金剛「端的に言ってしまうと、前の提督……Q中将の夫婦喧嘩に首を突っ込みすぎたのが原因デース」

五月雨「Q中将ですか!?」

提督「知ってんのか」

五月雨「演習で一度だけお会いした覚えがあります。たしか、ものすごく厳しい方だったと……」

金剛「Yes. とーっても厳格な、まさしく軍人! って感じの方デース」

提督「……で、夫婦喧嘩ってのはなんなんだ?」

金剛「Q中将と奥様の間に息子さんが一人いらっしゃったんデスが……」

金剛「5年ほど前、彼が海外留学中に亡くなったことで、Q中将が奥様と向き合わなくなってしまったんデス」

金剛「そのために仕事の鬼となったQ中将は、自分の体を顧みず、日々深海棲艦の撃滅の指揮を執り続け……」

金剛「つい先日倒れて、検査したら……癌やら何やらで、全身ぼろぼろだったそうデス」ウツムキ

五月雨「ど、どうして奥さんとの仲が悪くなったんですか?」

金剛「息子さんはQ中将に憧れて海軍へ入ることを熱望していたので、二人とも海外留学に諸手を挙げて賛成したわけデスが……」

金剛「それが原因で亡くなったこともあって、Q中将は息子さんが事件に遭ったことを自分のせいだと考えていたようデス」

金剛「おそらく、Q中将は悲しい出来事を忘れようとして、仕事だけに向き合っていたんだと思いマス」

五月雨「そんな……それじゃ奥さんが可哀想ですよ!」


提督「……Q中将の息子はなんで死んだんだ」

金剛「……喧嘩に巻き込まれて、刺されたと聞いていマス」

五月雨「……っ!!」

提督「……」

金剛「犯人は警察によって捕まったそうデスが、Q中将にかける声なんてどこにもありまセン。慰めるなんてこともできませんでシタ」

金剛「こんなことがあって、4年前に私がQ中将の艦隊に着任した時には、みなさん冷や汗が止まらなかったそうデース」

提督「……くそが。笑えねえな」

金剛「Yes, of course. But, そのまま人生から笑顔を絶やすことが幸せだとは思いまセン」

金剛「笑うことを忘れては人生は死んでしまいマス! いくら悲しくても、逃げずに一度は向き合わなければいけないと思いマス」

金剛「私もこの話を聞いたとき、Q中将はそのことから目を逸らしているだけに見えマシタ……!」

提督「だから首を突っ込んだと?」

金剛「Yes. はっきり言って、見ていられませんデシタ」

金剛「それから、それとは別に、私が鎮守府に着任した時期、こちらも4年ほど前に、鎮守府の中を探ろうとする不審者が現れまシタ」

金剛「それがQ中将の奥様でシタ。奥様が言うには、Q中将はその事件以降、奥様のいる邸宅に殆ど近寄らなくなったそうデス」

金剛「全然帰ってこないものだから、心配で様子を見に来たけれど、いざ入ろうと思ってもQ中将に追い帰されそうで怖い、と仰ってマシタ」


五月雨「そ、それでどうなったんですか……!?」

金剛「Q中将に内緒で、鎮守府の食堂で働いてもらうことにしまシタ!」

提督「……いいのかよ」

金剛「私が着任する前から、Q中将の心配をしていた艦娘は大勢いまシタ」

金剛「奥様も、陰から気付かれないように見守りたいと言う、たっての希望デスから、問題 nothing デース!」

提督「見守ってるだけでいいってか。俺にはよくわかんねえな」

金剛「世の中にはそういう奥ゆかしい女性もいるということデス」

金剛「私も見かねて、執務室に連れて行こうと画策してまシタが、奥様は頑なに拒否していマシタ」

金剛「私が彼の前に姿を現すことで、平静を保っている彼を動揺させてしまうのではないか、と、仰っていましたネー」

提督「……変わってんな」

五月雨「強い女性なんですね……」

金剛「そういう生活が続きまシテ、いい加減、奥様のことをQ中将にお話ししようかと話し込んでいたのがつい先日デスガ……」

金剛「Q中将の後輩である、P少将の訃報が届いたんデス」


五月雨「…………え?」

提督「なに?」


金剛「それを聞いたQ中将は倒れて緊急入院しマシタ。私は、奥様を連れて病院へ行ったんデスが……」

金剛「勝手なことをするなと怒られて、こちらの鎮守府に異動させられた、というのが顛末デス」

提督「……」

五月雨「……」ボーゼン

金剛「? 提督? 五月雨? どうしまシタ?」

五月雨「……あの、いま、P少将が……なんて、言ったんですか?」

金剛「え? P少将の訃報が……」

五月雨「……ふほう……死んだん、ですか……?」

金剛「五月雨? アナタ、まさか……」

提督「そうだよ。五月雨は、P少将の初期艦だ……!」

金剛「しょ……!?」

五月雨「准尉さん……P少将のこと、知ってたんですか? 死んだこと……黙ってたんですか!?」

提督「ああ。こんなタイミングで話す気はなかったがな……!」

五月雨「どうして……!? どうしてみんな、私に黙ってどこかへ行くんですか!?」

五月雨「そんなに私を仲間外れにしたいんですか!? そんなに私が嫌いなんですか!!」

五月雨「みんな……なんで、私を置いて……」

金剛「五月雨……」

提督「……」


五月雨「……准尉さん。私、やっぱり敵討ちに行きます! たとえ死んでも……」

提督「ああ、好きにしろ。だがな、P少将の敵討ちなら、海軍が相手だぞ」

五月雨「……え?」

金剛「テートク!? どういう意味デスカ!?」

提督「P少将は、海軍の特別警察隊に射殺されたんだ」

金剛「Why !?」

提督「P少将はな、大量の爆薬を詰め込んだ航空機で敵に突っ込もうとしてたんだ。それを海軍は軍部への謀反と判断したらしい」

金剛「……カミカゼ attack 、デスカ」

提督「ああ。どっちにしろ死ぬつもりだったってことだ」

五月雨「な、なんで……なんで、そんなこと……」

提督「お前を連れてきた憲兵の隊長が言ってたぜ。お前はP少将と似てるってな」

提督「要はそういうことだ。P少将も、仲間の敵を取りたかったんだよ」

五月雨「ですから、それは私が……!」

提督「だから、それに加えて……いや、それよりも、五月雨を死なせたくなかったんだよ」

五月雨「っ!」


提督「憲兵連中の腕に噛み付いてまで、敵討ちに行きたがってたのは誰だ?」

提督「今のまんまじゃ勝てないことも理解っておきながら、レ級を探しに行こうとしてたのはどこのどいつだ?」

提督「お前を放っておいたら、せっかく仲間たちに助けてもらった命を捨てに行ってしまいかねない」

提督「P少将は、それを何よりも恐れて、お前をこの島に送りつけたんだ」

五月雨「……」

提督「お前もP少将も、海域を制圧した気になって油断したせいで仲間たちを沈めた、って、自分を責めてたんだろ」

提督「思うに、二人とも懺悔する場所が欲しかったんだ。だから特攻しようとした……命を絶とうとした」

提督「これは俺の勝手な予想でしかねえが、お前もそうなんじゃねえのか?」

五月雨「……私は……」

提督「俺は、お前をここに送ったP少将の行動には少し共感できる」

提督「本当に大事な相手は、自分がどうなってもいい、嫌われてもいい、とにかく助けてやりたい……生きていて欲しい。そう、思うもんだ」

五月雨「……そんなこと、言わないでください」

提督「言うなと言われても、そうとしか思えねえ。P少将の手紙もここに預かってる」

五月雨「どうして……そんなんじゃ、私……戦えなく、なっちゃいます……!」

提督「いいんだよそれで。多分、P少将はお前に戦うなって言いたかったんだろうさ」

五月雨「そんなぁ……それじゃ、私、どうしたら……」


提督「今のお前に必要なのは懺悔じゃあねえな。練度だ」

提督「お前は、仲間を見捨てたかったわけじゃねえだろ。お前の仲間は、お前に後を託したんだろ?」

五月雨「……」ポロ

提督「P少将も、同じだったんだろうさ。じゃなきゃ、こんな手紙、俺に寄越すはずがねえ」ガサ

提督「五月雨、こいつはお前が持っとけ。下向いて読むなよ、涙でインクが滲んだら読めなくなっちまう」スッ

五月雨「……はい……」

金剛「五月雨」

五月雨「金剛さん……?」

金剛「アナタは、みんなから愛されてたんデスネ」ギュ

金剛「艦隊のみんなもP少将もきっと、あなたが大事だったんデス……」ナデ

五月雨「……」グスッ

金剛「死ぬのは簡単デスガ、あなたの仲間も、P少将も、そんなことは望んでいないでショウ」

金剛「あなたの命が明日までしか持たないと言うのなら話は別デスが、そうでないのなら、焦る必要はありまセン」

金剛「みんなの敵を打倒できる確信を得られるその時まで、耐え忍んで修練に励むのも、艦隊に所属する私たちの重要な務めデス」

五月雨「……金剛さん……!」


金剛「やるからには万難を排して、完膚なきまでに叩き潰して、良い報告をしまショウ! それが敵討ちというものデス!」

金剛「それまで、死ぬわけにはいきませんヨー!」ニカッ

五月雨「……はい……っ!」グシグシ

金剛「But ! つらい時には、泣いていいんデスヨ? いくらでも胸を貸してあげマース!」ギュゥ

五月雨「わぷ……!?」ムギュウ

提督「元気出せっつったり泣けっつったり、どっちなんだよ。五月雨で遊んでんじゃねえぞ」

金剛「Oh, テートクこそ行くなと言ったり好きにしろと言ったり、五月雨を惑わせてマスヨー?」

提督「……そんなん俺のせいじゃねえよ」プイ

金剛「ンー、テートクもいい加減デスネー」ナデナデ

提督「とにかく、俺は言いたいこと言ったから、後の判断は五月雨に任せる」

提督「悩んでるなら保留で構わねえし、漠然とでもやりたいことが言葉にできるようなら俺に報告しろ」

提督「俺がサポートできる範囲なら手を貸すぜ」

五月雨「……」

金剛「……五月雨?」

五月雨「……」スー

提督「……寝てんのか?」

金剛「失神したみたいに眠ってしまいマシタ。ずっと気を張り詰めていたのかもしれまセンネー」ナデナデ

提督「そうか……焦らせやがる」


金剛「テートク。私はあなたに謝らなければいけまセン」

金剛「あなたには Love が不足していると言いまシタガ、あなたにはちゃんと、他人を思い遣る心がありまシタ」

提督「そんなことはねえよ。たまたまだ」

金剛「謙遜しなくても大丈夫デース!」

提督「謙遜なんかじゃねえよ。そもそも、お前んとこのQ中将の奥さんの話だって、心情が理解できねえ」

金剛「Hm, いまどきの男性には理解しづらいのかもしれませんネ。昭和の男性にとっては、理想的な女性だと思いマスヨ?」

提督「そこまで男についていくことがか? その夫婦ん中でQ中将はそんなに偉いもんなのかよ……」

金剛「それはわかりまセン。Q中将を私個人の感想で言うなら、家庭のことは一切持ち出さない、良くも悪くも頑固なお方でしたネー」

金剛「ただ、私たち艦娘には、Q中将からの Policy の押し付けは一切ありませんでシタ」

金剛「前線に立つ者の不満は極力取り除き、良い気分で戦えるようにするのが上に立つ者の役目、と仰ってまシタし……」

金剛「ご自身のご病気を誰にも悟らせないほどの精神力をお持ちでしたカラ、 Stress がどれほどのものだったのかは判断できかねマス」

金剛「むしろご家族のことを心配すると『下世話だ』『自分の心配をしろ』と怒鳴られるくらいなので、誰も触れられませんでしたネー」

提督「……」


金剛「……テートク? What's a matter ?」

提督「なんでもねえよ……」

金剛「……!」

提督「?」

金剛「テートク? you could understand English !」

提督「……」

金剛「Okey, そうでシタカ。テートクはQ中将の心境も理解できてるみたいデスネー」

提督「知らん」プイッ

金剛「ヘーイ、テートク! こっち向いてくだサーイ!」

提督「うるせえ。五月雨が目を覚ますぞ」

金剛「Oh, Sorry ! I'll be quiet !」

提督「五月雨をこっちに寄越せ。部屋に連れてって寝かせてくる」

金剛「……いきなり部屋に連れて行っても、鎮守府を案内してないんですカラ、そのあと迷子になったりしまセンカ?」

提督「……じゃあ、執務室のソファーか」

金剛「私も一緒に行きマース。五月雨も抱っこして連れて行くネー」

提督「……わかった、起こすのも悪いし、悪いが任せるぜ」

というわけで今回はここまで。


金剛:愛情から目を背ける提督を説得し続け、煙たがられて左遷 ←New!
五月雨:玉砕覚悟の敵討ちを望むも、仲間を沈めた濡れ衣を着せられて追い出される ←New!

今のお話が一区切りついたら、番外編に入る予定です。

続きです。


 * 執務室 *

暁「そうだったの……つらいわよね、仲間や司令官を一度に失って……」

提督「まあ、緊張の糸が切れたんだろうな」

五月雨「……」スヤァ

比叡「それで、金剛お姉様の膝枕で、五月雨ちゃんが寝てるわけなんですね」

提督「ああ」

比叡「……ちょっと羨ましい」ボソッ

金剛「Oh, 仕方ありまセンネ、比叡にも後でしてあげマース!」

比叡「本当ですか!?」キラキラキラッ

暁「……」

提督「……ん? 暁もやって欲しいのか?」

暁「べ、別にそういうつもりじゃないわ!」


提督「甘えたかったら甘えてもいいだろ。ずっと気を張り続けてるのもしんどいぜ?」

暁「で、でも、司令官こそ誰かに甘えたりしてないじゃない」

提督「俺はいつも気を抜いてるからな。誰かに甘やかされたいと思うようなことはねえ」

暁「なんだか釈然としないわ……」

提督「俺はずるい大人だからな。真面目じゃねえから、これでいいんだ」

暁「……どこが真面目じゃないんだか」フンッ

提督「いや、本当に不真面目だろ? 暁にまでそう評されるとは思ってもみなかったんだが」

暁「いくら暁だって、司令官が不真面目できなくて、無理してそうなときがあることくらい見てわかるわ。失礼ね、ぷんぷん!」

提督「……例えばいつだよ」

暁「え? えっと……砂浜に行ったときとか。いつも泣きそうなの我慢してるように見えるわ」

提督「……よく見てやがんな」ハァ

比叡「結構よく見てくれてるんですよ? 暁ちゃんは」

提督「ふーん。小さくても姉は姉ってことか」

暁「そうよ!」フフーン

提督「……なあ比叡?」

比叡「はい?」


提督「お前、暁に膝枕してもらったらいいんじゃねえの?」

比叡「どうしてそうなるんですか!?」

暁「……ど、どうしよう、かしら」ニラニラ

比叡「暁ちゃんも、満更でもないような顔しないで!?」

暁「えっ!? い、いいのよ!? もっと甘えても!?」

比叡「何言ってんの!?」

提督「……」ニタニタ

比叡「司令も変な顔で笑いをこらえてないで止めてくださいー!」プンスカ!

 ヤイノヤイノ

五月雨「……う、ん……」パチ

金剛「五月雨! 目が覚めましたカ?」

五月雨「……ここは……」

提督「執務室だ。お前が眠っちまったんで、そのまま連れてきた」

提督「気絶させられて牢屋に入れられたんじゃ、この鎮守府の間取りも全然わかんねえだろ。金剛がそうしようって言ってくれたんだ」

五月雨「……」メヲゴシゴシ

提督「金剛には感謝しとけよ。眠ったお前をここまで運んでくれた上に、寝かしつけてくれてたんだからな」

五月雨「……?」

提督「まだ寝ぼけてるっぽいな」


金剛「Hey, 五月雨。体は大丈夫デスカ?」

五月雨「私は……牢屋に入れられたんじゃ?」

提督「ああそうだ。夢じゃねえぞ」

五月雨「……」キョロ

提督「……」

五月雨「……夢じゃ……ないんですね」

五月雨「P提督も、みんなも……」ポロッ

金剛「五月雨……」

五月雨「だい、じょうぶ、です……」ポロポロ

五月雨「私は……わたしはぁ……」グスッ

金剛「五月雨、我慢しなくていいデス」ナデ

五月雨「わたし……わたしぃ……! う、うわあああああ……!!」ギュウ

金剛「……」ナデナデ

比叡「……」ウツムキ

暁「……」ウルッ

提督「……」


 * *

五月雨「ぐすっ、ひっく……」

金剛「落ち着きまシタカ?」

五月雨「すんっ……は、はい。ありがとう、ございました……!」ペコリ

提督「……今なら聞いても良さそうだな」

比叡「? なにをです?」

提督「五月雨。お前、生きたいか、死にたいか。どっちだ」

五月雨「……!」

提督「生きたいんなら、できる範囲でサポートしてやる。無理難題吹っかける気ならそれ相応のリスクを覚悟しな」

提督「死にたいんならどこへでも行け。俺は止めねえし、これ以上関わる気はねえ」

提督「どうする、五月雨?」

五月雨「……私……」

金剛「……」

暁「……」

比叡「……」

五月雨「……まだ、死ねません」


五月雨「私、やっぱり、みんなの敵を取りたいです」

五月雨「でも、今のままじゃ、駄目だって、気付きました……」

五月雨「みんな、それぞれに大切な人がいたり、大事なものがあったりするから……それを、無視しちゃ駄目だって」

提督「……」

五月雨「私、もっと強くなります」

五月雨「みんなと一緒に強くなって、協力してもらえるよう、頑張ります……!」

提督「……そうか。いいんじゃねえの」

提督「お前が時間に迫られてない限りは、焦ったっていいことなんかねえからな。ま、ゆっくりやりな」

五月雨「はいっ!」

提督「ああ、それとだ。金剛、お前にも礼を言っとくぜ。気を遣わせて悪かったな」

金剛「Oh, it's so easy operation デース!」stund up!

比叡「さすが金剛お姉様!」

金剛「私も頑張りマーシタ! と、いうわけでぇ……テートク、ご褒美が欲しいデース!」ジリジリッ

提督「」

暁「」

五月雨「?」クビカシゲ

比叡「ちょっ、金剛お姉様ー!?」ガビーン


五月雨「私、やっぱり、みんなの敵を取りたいです」

五月雨「でも、今のままじゃ、駄目だって、気付きました……」

五月雨「みんな、それぞれに大切な人がいたり、大事なものがあったりするから……それを、無視しちゃ駄目だって」

提督「……」

五月雨「私、もっと強くなります」

五月雨「みんなと一緒に強くなって、協力してもらえるよう、頑張ります……!」

提督「……そうか。いいんじゃねえの」

提督「お前が時間に迫られてない限りは、焦ったっていいことなんかねえからな。ま、ゆっくりやりな」

五月雨「はいっ!」

提督「ああ、それとだ。金剛、お前にも礼を言っとくぜ。気を遣わせて悪かったな」

金剛「Oh, it's so easy operation デース!」stund up!

比叡「さすが金剛お姉様!」

金剛「私も頑張りマーシタ! と、いうわけでぇ……テートク、ご褒美が欲しいデース!」ジリジリッ

提督「」

暁「」

五月雨「?」クビカシゲ

比叡「ちょっ、金剛お姉様ー!?」ガビーン


 扉<ガチャバーン!

大和「提督の御身に危険が!」

如月「司令官、大丈夫!?」

暁「なんでこのタイミングで現れるの!?」

比叡「どこに潜んでたんですか!?」

金剛「Shit ! 邪魔が入る前に、テートクの heart を掴むのは、この私デース!」バッ!

大和「抜け駆けするなんて!」ダッ

如月「許さないんだから!」ダッ

金剛「Burrrrrrrrrning !! Looooooooo」ガシッ

暁「あ」

提督「落 ち 着 け」アイアンクロー

金剛「Yaaaaaaaaaaaaa !?」メキメキメキメキ

大和「今だわ! 提督、今こそこの大和の愛」ガシッ

提督「お 前 も だ」ヒダリテアイアンクロー

大和「ひぎいいいいいいいい!?」メキメキメキメキ


如月「はっ! 両手の塞がってる今がチャンスだわ! しれいかーー」ガシッ

金剛「Oh, 助かりマシタ」ミギテハナシテ

提督「いい加減にしろ」ミギテアイアンクロー

如月「いやああああああああ!?」メキメキメキメキ

金剛「Okey ! やっぱり私の」ガシ

大和「あ、外れたわ……提督、やっぱり私が」ガシッ

如月「あっ、やっぱり私を」ガシ

提督「お前らしつけえぞくそがああ!!」ガシ パッ ガシ パッ

暁「なにやってるのよ……」アタマカカエ

比叡「……金剛お姉様……」アタマカカエ

五月雨「……あ、あの、何が起こってるんですか?」アセアセ

 バヂン! バヂン! バヂン!

提督「落ち着けって言ってんだろが……!」ピキピキピキ

大和(仰向け倒れ)「はい……」シュウウウ…

如月(仰向け倒れ)「ごめんなさい……」シュウウウ…

金剛(仰向け倒れ)「こんなに痛いデコピンは初めてデース……」シュウウウ…


暁「……大和さんはもっとレディだと思ってたのに」ズーン

比叡「金剛お姉様……」ズーン

五月雨「な、なんですか!? 何が起こったんですか!?」オロオロワタワタ

不知火「みなさん司令が好きすぎて、襲い掛かったら返り討ちに合っただけです」ヌイッ

五月雨「!?」ギョッ

暁「不知火も出てくるタイミングが良すぎよ……」

不知火「いえ、単純にこの二人を追いかけただけですので」ペタペタ

五月雨「な、何をしてるんですか?」

不知火「デコピンされた3人の額に、冷やした熱冷ましシートを貼り付けているんです」ペタペタ

暁「それこそ準備良すぎよ!?」

比叡「あ、金剛お姉様には私が貼ります! 一枚ください!」

不知火「どうぞ」スッ

比叡「あれ? 何か書いてある。『煩悩退散』?」ペタペタ

金剛「Noo ! これはボンノーなんかじゃないデース!!」

不知火「ではこちらにしますか」っ『自主規制』

金剛「なんでそんな四字熟語を用意してるデース!?」


如月「ねえ不知火ちゃん? 恋愛成就はないのかしら?」←『安全第一』と書いてある

不知火「いえ、それは用意しておりませんでした」

大和「そうですか……残念です」←『商売繁盛』と書いてある

暁(……書いてある四字熟語のチョイスが微妙だわ)

比叡「ちなみにこれ、すっごい達筆でダイナミックなんだけど誰が書いたの? 長門さん?」

不知火「潮です」

比叡「マジで!?」

提督「潮か……不知火、無病息災か堅忍不抜あたり、ねえか?」

不知火「はい、どちらもあります。こちらに」

暁(あるんだ……)

提督「おう、ありがとな。五月雨、お前はこいつ貼っとけ」

五月雨「え……? わ、私ですか?」

提督「そうだ。今日のところは、お前は飯食ってこれ貼って寝ろ」

提督「自覚がねえと思うが、お前、相当疲れてんぞ。さっきだっていきなり眠っちまったこと、ちゃんと覚えてるか?」

五月雨「……い、いえ」


提督「恨んだり怒ったり、憎んだりし続けるってのは、意外と体力も精神力も使うもんだ」

提督「おまけにハイになるから、自分自身が疲弊してるのに気付けねえ。相談相手も失ったお前なら尚更だ」

提督「やりたいことは決まったんだから、いっぺん背負ったものを降ろせ。今だけ忘れろ。何も考えんな」

提督「本気を出すのは明日からにしておけ」

五月雨「准尉さん……」ウルッ

暁「……」

提督「? どうした暁」

暁「……その調子なら、司令官も心配ないみたいね」クスッ

提督「おかげさまでな」

五月雨「……私、そこまでおかしかったんでしょうか」

提督「ま、冷静じゃあなかったな。疲弊してたんだろうが、金剛に抱きしめられてすぐ寝ちまったのは俺も驚いた」

五月雨「あの、おぼろげながら思い出してきたんですけど」

提督「?」

五月雨「私、金剛さんにぎゅってされたとき、多分安心しちゃったんです」


五月雨「その、抱きしめられたのに、ふわーっとした感じで、とっても優しくて、とろーんってしちゃったんです」

五月雨「なんて言ったらわかりませんけど、こういう感じって、お母さんみたい、って言うんでしょうか……」

暁「お母さんかあ……」

提督「言われてみれば、俺に愛を教えるだの、世話焼きなところがあるな。お節介なかあちゃんってとこか」

金剛「Noooooooooooo !!」

五月雨「うひゃあ!?」

暁「きゃ!?」

提督「うお、びっくりした。どうした金剛」

金剛「私、かあちゃんじゃありまセン! そんな年齢じゃないデース!」プンスカ!

暁「そこなの!?」ガビーン

金剛「五月雨は駆逐艦デスから甘やかしマスけど、提督には甘えたいデース!」

提督「……いや、お前比叡の姉だろ?」

金剛「だったら今日から比叡の妹になりマース!!」

比叡「金剛お姉様!?」


金剛「Noooo !! 比叡、今日から私のことは金剛ちゃんと呼ぶデース!!」

比叡「ええええ!? ……ど、どうしよう、かなっ」ニラニラ

暁「比叡さん、満更でもないような顔してる!?」

比叡「し、しょうがないなあ! 甘えてくれてもいいんですよ?」

暁「比叡さんキャラが変わってるわ!?」

金剛「比叡も納得したことだし、これでテートクに甘えられマース!」ダキツキー

提督「うぼあ!?」ドボォ

如月「ちょっと金剛さん!?」ムクッ

大和「なにしてるんですか!」ムクッ

比叡「こっちに甘えてくれるんじゃなかったんですか金剛お姉様ー!?」

金剛「No ! 私は妹様デース!」

暁「妹様ってなに!?」

五月雨「っていうか、さっきちゃん付けで呼んでいいって言ってたんじゃ……」

金剛「Yes ! テートクに是非とも呼んで貰いたいデース!」

比叡「」シロメ

暁「ひ、比叡さんがたったまま失神してるわ!?」

不知火「これをどうぞ」っ「『絶対安静』と書かれた熱冷ましシート」

暁「……もうちょっとほかの四字熟語がなかったのかしら」ガックリ


如月「っていうか、どうしてそこまで司令官にくっつこうとするの!?」

金剛「素敵な殿方なら当然の反応デス! そうは思いまセンカ!?」

如月「そんなの否定する方がおかしいわ!?」

大和「事実ですけど、いくらなんでもがっつきすぎです!」

提督(お前が言うな)

金剛「そうは言いマスガ、私だって我慢の限界デス! 私だって Burning Love したいデース!!」

金剛「前の鎮守府でもQ中将にイチャイチャしたかったのに、既婚者だったから遠慮してたんデスヨー!?」

暁(……貞操観念が高いのか低いのかわかんないわ)タラリ

金剛「でもここのテートクは、反応を見る限りそんなことはありまセン! Is'nt it !?」

不知火「まあ、その通りと言えばその通りですが」

金剛「デスヨネ!?」

如月「ちょっと不知火ちゃん!?」

金剛「そういうことだからテートク! 私の Burning Love !」ダキツキッ

金剛「受け取ってくだサーイ!」カオチカヅケ

提督「……」ハァ

金剛「ン?」ガシ

提督「悪いが断る」

金剛「テ、テートク!? どうしてデスカ!?」ヒキハガサレ


提督「お前に返してやれる愛情がねえからな。つうか、愛とか俺はどんなもんか知らねえしピンと来ねえ」

金剛「ですから私がそれを教えてあげマース!」

提督「いらん」

金剛「Why !?」

提督「俺が何かさせられるのは御免だ。そんなことより、俺は艦娘がやりたいことをやらせてる」

提督「ちゃん付けで呼べというくらいなら、やらないこともないが?」

金剛「hmm ... じゃあ、 Hug して欲しいデス」

提督「ハグ?」

金剛「Yes , さっき私が五月雨にやったみたいに、優しく抱きしめて欲しいデス……」ポ

提督「……まあ、そのくらいならいいか」ギュ

金剛「!!」

如月「ああっ……!!」

大和「なんて羨ましい……!!」

比叡「……はっ、私はなにを!?」

暁「あっ! 比叡さん、気がついた!? 大丈夫!?」

 (比叡の目の前で提督と金剛が抱き合っているのを目撃)

比叡「」チーーン

暁「比叡さん!? 比叡さんっ!!」

不知火「また気を失いましたか」

五月雨「!?!?」(←状況に追いつけていない)


金剛「テートク……私は……こういう situation に憧れてマシタ」

金剛「また、こうやって hug して欲しいデス……!」

提督「……ま、週に一回くらいなら付き合ってやっても……」

金剛「Really !? Thank you テートク! I'm so glad !!」カオチカヅケ

大和「そこまでです」ガシッ

如月「私たちも我慢の限界よ?」ガシッ

金剛「Oh ...」

大和「提督? 私たちも同じ条件で同じことをお願いしたいのですが」ニコー

如月「いいわよね? 司令官」ニコー

提督「……しょうがねえな」

如月「やったわ!」ハイタッチ

大和「やりました!」ハイタッチ

金剛「ふ、二人ともそろそろ放して欲しいデース」

大和「そうですね、提督から離れて戴きましょうか」ニコー

如月「そうよね、司令官に抱きついたりキスしたり、好き放題したものね」ニコー

大和「そういうわけですから、私たちとゆっくりお話ししませんか?」グイッ

如月「そうね、それがいいわ」グイッ

金剛「Oh ...」ナミダメ


提督「んじゃ、金剛のことは任せる。俺は気を失ってる比叡を部屋に連れて行くからよ」ヒエイダキカカエ

金剛「比叡!? お姫様だっこされるなんて羨ましいデース!」

大和「金剛さんはこっちですよー」グイグイ

如月「余所見しちゃだめよ?」グイグイ

金剛「Noooooooooooo !!」ズルズルー

暁「……」ズツウ

提督「なんだろうな、ありゃ。暁、とりあえず比叡の部屋まで付き合ってくれ」

暁「え、ええ、わかったわ……」

不知火「五月雨、私たちも一緒に行きましょう。あなたの部屋に案内します」

五月雨「あ、は、はい!」ハッ

提督「……それにしても。比叡のやつ、重たくなったな」

暁「もう、司令官! レディにそういうこと言うの、失礼よ?」

提督「馬鹿、最初来たときのこと考えろ。あん時の軽さは異常だろ?」

暁「……あのときと比べるのが失礼よ。でりかしーがないわ?」

提督「そうか。ま、ここまで回復できてなによりだ」

五月雨「……」

不知火「どうしました」

五月雨「私、すごいところに来ちゃったんですね」

不知火「はい。慣れるまで時間がかかるかもしれません」

五月雨「……大丈夫です。私、頑張っちゃいますから」

五月雨「P少将や、みんなに、いい報告ができるように……!」

不知火「……はい」コク


というわけで、五月雨と金剛編はここまで。

>>117>>118で重複書き込みしてしまったのはご容赦ください。


次回は予告通り番外編です。

それでは番外編、
舞台はN中佐のいた鎮守府になります。


 * N提督鎮守府 卯月たちの部屋 *

卯月「ただいまだっぴょーん!」ドアバーン

望月「んお、おかえりー」ネッコロガリ

弥生「……おかえり。遠征、お疲れ様」

卯月「おお!? みんな読書中だっぴょん?」

望月「卯月がいないと静かでさー。すっげー過ごしやすい。快適すぎ」

卯月「辛辣ぴょん!?」

弥生「……否定、できない。とても落ち着く」

卯月「こっちも辛辣ぴょん!?」

望月「実際卯月がいたら、こんなにごろごろできないしー? ふあぁ……」

卯月「うーちゃん放っておいてどんな本を読んでるぴょん?」

弥生「……これ。封神演義」スッ

卯月「弥生はまた小難しい本を読んでるぴょん……ついていけないぴょん」

卯月「で、望月はまたエロマンガ読んでるぴょん?」チラッ

望月「あ? よく見ろよー」

 っ『食べ歩き観光スポット120選』

卯月「!?」ズガーン!


卯月「で、出不精の望月が……食べ歩きだとぉ……っ!?」ヨロッ

望月「……語尾が取れるくらい驚くとか、さすがにムカつくんだけど?」

卯月「望月、熱はない? なにか変なもの拾い食いした? 鳳翔さんのおっぱい揉む?」キリッ

望月「殴んぞ」イラッ

卯月「冗談はさておいて、どういう風の吹き回しぴょん?」

望月「あー、墓場島で食べた料理さ、めっちゃおいしかったじゃん?」

卯月「あー……確かにそうだったぴょん」ジュルリ

望月「鳳翔さんもあっちの比叡さんからいろいろ教えてもらったみたいだし」

望月「次は何を作ってもらおうか選んでたんだー」

卯月「出歩く気ゼロぴょん!?」

弥生「……もっちらしい」

望月「別にいいじゃん? 鳳翔さんの料理は確実においしいんだから、そういう意味でも絶対外れをひかないし」

卯月「はぁ……安心するくらい全然ブレてないぴょん。心配して損したぴょん」

望月「心配してたようには見えなかったんだけど?」


弥生「……それはそうと、卯月が帰ってきたんなら、次は私の番」スクッ

望月「ん? そっか、もうこんな時間かー」ムク

卯月「うん? 二人ともどこに行くぴょん?」

弥生「私は遠征」

望月「あたしは鳳翔さんに頼まれごとがあってさー」

卯月「せっかくうーちゃん帰ってきたのに、一人ぼっちぴょん!?」

望月「しょうがないよ、みんなの負荷を考えて回り番にしてるんだしさ」

弥生「ごめんね、卯月。すぐ戻るから、おとなしくお留守番してて」

望月「あたしもどーせ大したことない用事だと思うからさ。昼寝でもしてなよ」

 パタン

卯月「……退屈だっぴょん」

卯月「弥生も、なんでこんな難しい本を読むのかわかんないぴょん……」ペラペラ

卯月「文字ばっかりで眠くなるぴょん……」

卯月「遠征で疲れたし、ちょっとだけ寝るぴょーん」ゴロン

卯月「……」

卯月「スヤァ……」

 * * *

 * *

 *


 ドタドタドタ

 扉<バンッ!

弥生「卯月!」

卯月「……ぴょん? どうしたぴょん」ムニャムニャ

望月「良かった、無事だったんだ」

卯月「???」

望月「早く逃げるよ!」

卯月「な、なにがあったぴょん!?」

弥生「! 隠れて。静かにして」


憲兵?「おとなしくしろ!」

「は、放して!」

「私たちが何をしたっていうの!?」

憲兵?「連行しろ!」


卯月「……何が起こってるぴょん?」

弥生「わからない。でも、この鎮守府の艦娘を全員どこかに連れて行こうとしてるみたい」


卯月「でも、あれ、本当に憲兵ぴょん? 特警でもないぴょん?」

望月「だよねえ、全員顔隠してるし……どっかの特殊部隊みたい」


憲兵?「これで全員か?」

憲兵?「いや、まだだ! なんとしても探し出せ!」


弥生「こっちに来た!?」

望月「と、とりあえず逃げとかない!?」

卯月「それならこっちぴょん!」



 * 鎮守府内のどこか *

卯月「みんなここに隠れるぴょん」

弥生「……ここは」

卯月「うーちゃんしか知らない、秘密の隠し通路ぴょん」

望月「なんでこんなとこ知ってるのさ……」

卯月「いたずらした後の逃亡用っぴょん」

弥生「……」

望月「……いや、いいけどさあ」


卯月「それよりこれからどうするぴょん?」

望月「いやもうマジどうしよーか? 展開がまるっきりパニック映画じゃんか」

卯月「まさかゾンビが出てきたりするぴょん?」

望月「あー、まあこの展開だと有り得そうかなー。いや、ないとは思うけどさあ」

卯月「出たとしても、どうしたらいいぴょん」

弥生「……待ってるしか、ないと思う」

望月「嵐が過ぎ去るまで、かあ」


 * *


卯月「……まだ騒がしいぴょん」

望月「いつになったら帰るんだよぉ……いい加減ヒマすぎぃ……」フワァ

弥生「……」ソワソワ

卯月「弥生?」

望月「もしかして……」

弥生「……おトイレ、行きたい」モジモジ

卯月「い、今、外に出たら危ないぴょん!」

弥生「で、でも……」


望月「んなら、あたしも一緒に行く。卯月はここで待ってて」

卯月「だ、大丈夫ぴょん!?」

望月「スネークならよくやってるし」

卯月「ゲームの話ぴょん!」

弥生「……」プルプル

望月「弥生も我慢の限界だし、ちょっと行ってくるわー」タッ

弥生「ごめん」タッ

卯月「気を付けるぴょん!!」

卯月「……」

卯月「……」

卯月「無事に戻ってきてくれるといいぴょん……」

 * * *

 * *

 *



卯月「……」ウツラウツラ

卯月「……はっ!」

卯月「い、今何時だぴょん!?」キョロキョロ

卯月「……」

卯月「結局、弥生も望月も戻ってこなかったぴょん」

卯月「うーちゃんもおとなしく捕まったほうが良かったぴょん……?」オソルオソル

卯月「……」

 ギィ

卯月「……」

卯月「……めっちゃ静かだぴょん」

卯月「……」テクテク

卯月(人の気配がしないぴょん)

卯月「……」テクテク


 * *

卯月「本当に誰もいないぴょん……」

卯月「執務室にも、食堂にも工廠にも……大淀さんも間宮さんも明石さんも、妖精さんもだーれもいないぴょん」

卯月「おまけに、みんなのお部屋の中も、何もなくなってるぴょん……」

卯月「書庫の本棚も、厨房の冷蔵庫もからっぽ……執務室には段ボールだけ」

卯月「うーちゃんの部屋の家具も、全部なくなってるって、どういうことだぴょん?」

卯月「……ここ、本当に鎮守府……? ここはいったいどこなんだぴょん……!?」


 * 夜 *

卯月「……わけわかんないぴょん」

卯月「……あいてる部屋を全部見てみたけど、何もかもなくなってたぴょん」

卯月「うーちゃんは、何をすればいいぴょん?」ソラヲミアゲ

お月様「」

卯月「……うーちゃん、どこに行けばいいぴょん」グスッ

卯月「みんな、どこに……どこ行ったぴょん……!!」ポロポロポロ


 * 翌朝 ロビーのソファ *

卯月「……」パチ

卯月「……」キョロキョロ

卯月「やっぱり誰もいないぴょん……夢じゃ、なかったぴょん」ガクッ

卯月「……」

卯月「弥生……」

卯月「望月ー……」

卯月「鳳翔さーーん……妙高さーーーーん!」

卯月「誰か……誰かいないぴょん……!?」

卯月「……誰かぁ……!」グスグス

卯月「うああああああん!」ボロボロボロ


 * 鎮守府正面玄関 *

卯月「……」フラフラッ

卯月「そうだぴょん。外に出れば、誰かに会えるぴょん……」

卯月「外に出れば……」

「卯月?」

卯月「ぴょん!?」ビクッ

望月「卯月? なにしてんのさ!?」

弥生「なんか……泣いてるみたいだけど、どうしたの」

卯月「……やよい? もちづき……?」

望月「んあ? ああ、あたしは望月だけど……」

卯月「……ど、ど……どこに行ってたぴょぉおおおん!!」ウワーン

弥生「え!?」

望月「ちょっ、いきなり泣き出すとかなんなのさ!?」


鳳翔「どうしました?」

望月「あっ、鳳翔さん、なんか卯月が……」

卯月「うわああああん、鳳翔さぁぁぁん!!」

卯月「う、うーちゃん、もう、みんなに会えないかと思ったぴょおおおん!!」ビエーーン

鳳翔「もう、大袈裟ですね」ナデナデ

弥生「大丈夫。もう、大丈夫」

卯月「ぐすっ、ううう、良かった……良かったぴょん」エグエグ

望月「はぁ~、初対面からこれじゃあ、先が思いやられるなあ……」





卯月「……え?」



鳳翔「そうですね。でも、これからはみんな一緒ですから」

弥生「うん。卯月、よろしくね」

卯月「…………」

望月「ん? どした?」

卯月「……いま、なんて」

卯月「なんて、言ったぴょん?」

鳳翔「どうか、しましたか?」

弥生「? さあ……」

卯月「……みんな、誰ぴょん?」ジリッ

弥生「え!?」

望月「だ、誰って、あたしは望月に決まってんじゃん? こっちは鳳翔さんで……」

卯月「……嘘ぴょん」ジリッ

卯月「だったらどうして、みんな、うーちゃんのことを覚えてないぴょん!?」

鳳翔「そ、そんなことを言われましても……」

望月「だからさっきから何言ってんだよぉ!?」


卯月「N中佐のことは!? N中佐について行った妙高さんのことは!? 墓場島の提督准尉のことは!?」

弥生「え……急に、そんなこと言われても」オロオロ

卯月「覚えて……ない、の?」

望月「っつーか、誰さ?」

卯月「あり得ない……全部忘れちゃうなんて、絶対……っ!!」プルプルプル

鳳翔「う、卯月さ……」

卯月「来ないでっ!!」バシッ

鳳翔「つ……っ!?」

弥生「卯月……!?」

望月「お、おい! いくらなんでも鳳翔さんに失礼じゃんか!?」

卯月「……みんな、うーちゃんのこと、覚えてないのは、失礼じゃないの?」

弥生「え? えっと……」

望月「お、覚えてるもなにも……」

鳳翔「初めまして、ですよね……?」

卯月「……」


卯月「わかったぴょん」

卯月「……うーちゃん、知らない鎮守府に来ちゃったみたいだぴょん」クルッ

卯月「……」トボトボ

弥生「う、卯月……どこへ行くの……!」

卯月「……っ」ダッ

望月「おい!?」

弥生「卯月!!」

鳳翔「卯月さん!?」


 * 太平洋上 *

卯月「……」

 ザザァ…

卯月「どこへ行くって……どこに行ったらいいぴょん」

卯月「妙高さんは、N中佐と一緒に、どっかの鎮守府に行ったって聞いたけど……」

卯月「行先、わかんないぴょん」

卯月「あとは……提督准尉のところくらいしか、行くところがないぴょん」

卯月「……提督准尉は、うーちゃんのこと、忘れてないよね……?」ウルッ

卯月「うーちゃんは……」

卯月「准尉にまで忘れられたら、どこに行ったらいいぴょん……」

 ヒュウウウ

卯月「!?」

 ドガァァン

卯月(中破)「あう!?」ヨロッ


ツ級「……」シュゥゥ…

卯月「……あ……」

リ級「……」ジャコッ ドォン

 ドカドカァン

卯月(大破)「ぐ……ぅ……!」

卯月「回避……回避する、ぴょ……」

タ級「……」ガシャッ

卯月「!!」

 ドガァァァァン

卯月「ぎゃ……!!」ズガァァン

卯月「……あ……」フラッ

卯月「……じゅ……い……」

 ドポンッ

 ザァァ…


 ザザァ…




今回は、これまで。


N中佐は「チートやツールを使った提督」として描いていたので、
その鎮守府のその後、というイメージで描いております。

続きです。


 * ??? *

 ザッ…ザッ…

卯月(……何の音ぴょん?)

 ザクッ…ザクッ…

卯月(ここはどこだぴょん? 体が動かないぴょん)

無言で穴を掘っている提督「……」ザクッザクッ

卯月(……提督、准尉……?)

卯月(もしかして……)

提督「……」チラッ

卯月(うーちゃん、沈んで島に流されてきたぴょん?)

卯月(……やっぱり、声が出ないぴょん……)

提督「……」

卯月(抱えられてるけど、全然感覚がないぴょん……うーちゃんはこのまま……)

提督「……」ザッ

卯月(やっぱり、うーちゃん埋められるぴょん……)


卯月(……)

卯月(だんだん、真っ暗になってく……)

――……!

卯月(みんな、お別れだぴょん……!)

――き……!

――づき……!

卯月(なんだか、懐かしい声が聞こえるぴょん……)

――うづき!

卯月(弥生……うーちゃんは、弥生のこと、忘れないぴょん……!)



弥生「卯月!!」


 * N鎮守府 卯月たちの部屋 *

卯月「……ぴょん?」パチリ

弥生「な、なにがあったの!?」

卯月「」パチクリ

弥生「泣きながら寝てたから、なにがあったのかって……びっくりした」

卯月「夢ぴょん?」

弥生「夢?」

卯月「……」

弥生「……」

 扉<ガチャバーン

望月「弥生! 鳳翔さん呼んできた!」

鳳翔「卯月さん大丈夫ですか!?」

卯月「……」

鳳翔「こんなに目元を腫らせて……怖い夢を見たんですね!」ガッシ

卯月「おうっ!?」ギュウ


鳳翔「可哀想に……怖かったでしょう!」ナデナデギュウウ

卯月「もごー!?」ジタバタ

望月「鳳翔さん、卯月めっちゃ苦しんでんだけど」

鳳翔「はっ!? ご、ごめんなさい!」パッ

卯月「び、びっくりしたぴょん……!」ゼーゼー

弥生「……それで、いったいなにがあったの」

卯月「ぴょん……」

 * *

望月「うへえ……なんて夢みてんだよぉ、ぞっとしねえし」

弥生「でも、確かに、今一番頼れる人って准尉さんになるかも」

卯月「今、艦隊に来てる人は本営からのつなぎの人ぴょん。ちゃんとした司令官はいつ来るぴょん?」

鳳翔「それでしたら、先程その本営から連絡がありましたよ。艦隊の指揮を引き継いでくれる方が決まったそうです」

卯月「本当!?」

鳳翔「はい。この鎮守府の体制もそのままで良いそうです、大淀さんから聞きました」

望月「マジで!? やったじゃん!」


弥生「……どんなひとなの?」

鳳翔「さすがにそこまでは。噂では、自殺を図ったこともあるそうですが」

弥生「ええ……?」

望月「それはそれで超不安なんだけど」

鳳翔「それから、先日この鎮守府に監査に来た方の先輩だそうですので、それなりに実績がある方のようですよ」

望月「監査に来たってーと……あー、あの准尉と話してた士官の人?」

鳳翔「O少尉ですね」

望月「えー、准尉より階級上なんだ……」

鳳翔「准尉はどういうことか冷遇され続けていますね……」

弥生「L大尉が言ってたけど……やっぱり、中佐のせいじゃないかな」

望月「まー、そうなんだろうけどさあ……」

卯月「とにかく、どのくらい信用できるか、時間がたたないとわかんないぴょん」


 * それから一週間後 *

 * N提督鎮守府 執務室へ向かう廊下 *

鳳翔「申し訳ありません、まさかカレーが苦手だとはつゆ知らず」

新提督「気にしないでくれ、これは私の我儘だ。海軍にいてカレーを嫌ってしまった私が悪い」

鳳翔「しかし、半ばトラウマなのでしょう?」

新提督「……私の未熟ゆえだ。それに、食べられないわけじゃない」

鳳翔「あの挨拶もみな一様に驚いています。あそこまで頭を低くされなくても……」

新提督「私はかつて、その部下の心を蔑ろにしたために轟沈させてしまっている」

新提督「勤め先が変わったからと言って、その愚行を忘れて繰り返す馬鹿者にはなりたくないんだ」

鳳翔「……然様でございますか」

新提督「むしろ、初日から気を遣わせてしまってすまないな。わざわざ執務室に夕餉を運んでくれるとは」

鳳翔「個室なら不快になる者もいないと思いまして。苦手なのでしたら、残してくださって構いません」

 扉<チャッ

鳳翔「こちらへどうぞ」

新提督「……」スン


新提督「……鳳翔?」

鳳翔「はい?」

新提督「このにおい……」

鳳翔「あの、どうかなさいましたか」

新提督「この、カレーは」

鳳翔「お、お気に召しませんでしたか」

新提督「いや、とんでもない。この食欲をそそられるこの香り……」

鳳翔「……」

新提督「鳳翔。このカレーは、あなたが作ったのか?」

鳳翔「え、ええ、そうですが」

新提督「……すまない、言い方が悪かった。このカレーのレシピは、あなたのオリジナルか?」

鳳翔「そういう意味でしたら……違います」

新提督「……誰に習ったかを聞いても?」

鳳翔「も、申し上げてよろしいのでしょうか……」

新提督「ああ、頼む」


鳳翔「とある鎮守府の……比叡さんに教わりました」

新提督「! ……それは……いつ教わった?」

鳳翔「いつ……!? ほ、ほんの一か月前くらいです」

新提督「……そうか」

鳳翔「提督? 大丈夫ですか? お体が震えてるようですが」

新提督「ああ、大丈夫だ。すまないが、席を外してもらえるか? 食べ終わったら電話で呼ばせてもらいたい」

鳳翔「……承知致しました。失礼致します」ペコリ

 パタン

新提督「……」

新提督「……」カチャ

新提督「……」モグ

新提督「……」

新提督「……」モグ

新提督「……」

新提督「……あの味だ」ポロ

新提督「懐かしい……あの味だ」

新提督「もう二度と、口にすることはないと思っていたのに」ポロポロ

新提督⇒V提督「生きて、いたんだな、比叡……!!」

V提督「良かった……! 本当に、良かった……!」


 * 太平洋上 海軍護衛艦艦内 *

O少尉「このたびは無茶なお願いを聞いていただいて、ありがとうございます」

O少尉「……ええ、無事に着任したと。はい……はい」

O少尉「とんでもありません、私こそ若輩の身で差し出がましいことを……」

O少尉「いえ、艦娘のみんなは、我々や国民のために身を粉にして戦っているんです」

O少尉「私がしなければならないのは、彼女たちを労い、一緒に笑える雰囲気を作ってやることです」

O少尉「今も、傷付いた彼女たちをどうにか癒してあげなければと、暗中模索しているところですから」チラッ

瞳に光の宿っていない伊168「……」

瞳に光の宿っていないU511「……」

O少尉「……はい。ありがとうございます。ご武運を」

 ピッ

O少尉「……」

木曾(O少尉秘書艦)「O少尉。そろそろ港に着くぞ」

O少尉「そうか。木曾君、報告ありがとう」

木曾「……今、通信で話していたのは、W提督か?」

O少尉「ああ、そうだよ」

木曾「聞く限り、W提督ってのは、いろいろやり手らしいな?」

O少尉「戦況の見極めが上手、というべきかな? 本営にも一目置かれてるみたいだね」


木曾「大将の甥っ子と同期ってだけで、ちやほやされてるわけじゃないんだな」

O少尉「だからこそ目を付けられてるところもあるけどね。それに、君の長姉ともよくやっているみたいだよ」

木曾「なるほど……球磨姉と仲がいいなら、悪い奴じゃあなさそうだな」

木曾「で? これから会うX提督ってのも信用できんのか? そいつこそ親の七光ってわけじゃあないだろうな?」

O少尉「この前の……艦娘八つ裂き事件で本営に集められた時に、X提督は潜水艦のゴーヤとイクを連れて行ったそうだ」

木曾「……変態じゃねえの?」

O少尉「ちゃんとセーラー服とスカートを着せて行ったそうだよ?」

木曾「変態だ!」

O少尉「なんでだよ!?」

木曾「そこまで気遣いできるなんて、絶対変態だ。間違いねえ」

O少尉「もしかして褒めてんのかい? よくわかんないね、木曾君も」

O少尉「まあ、そういうわけだから、君たちにも決して悪いようにはならないよ」

伊168「……」

U511「……」

O少尉「伊8君が沈んでしまったことは、本当に無念と言うほかなかった」

O少尉「だからと言って、君たちまで同じ目に合わせるわけにはいかない」

O少尉「どうか、君たちの未来のためにも、私たちに力を貸してほしい」

木曾「……フッ、どこまで甘ちゃんなんだか」

というわけで今回はここまで。



かつて比叡の司令官で、ピストル自殺を図ったV提督がN中佐の後釜に。
そして、中佐の部下だったO少尉は、伊8がいたブラックな某鎮守府を
指揮することになりました。


当初、夢オチにせずに島に卯月が埋まってる設定にしようとも考えましたが、
他のキャラやいろんな救済を考えた結果、こんな形に収まりました。
近いうちに余所の鎮守府や関係者がどうなったかも
書いてみたいと思います。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年07月06日 (金) 00:19:47   ID: T9H9YDlo

続き楽しみにしてます

2 :  SS好きの774さん   2018年07月12日 (木) 17:43:16   ID: 5fgsbSrE

続きだーーー

3 :  SS好きの774さん   2018年07月15日 (日) 02:18:37   ID: _9VHlG5W

イェーイ

4 :  SS好きの774さん   2018年08月01日 (水) 21:08:33   ID: e-4cOHCN

墓場の艦むすと話して五月雨の気持ちはどんな風に変わるんだろうか
続き楽しみにしてます

5 :  SS好きの774さん   2018年08月21日 (火) 15:36:14   ID: tkD6AJV3

卯月ーーーどうなっちゃうんだーーー

6 :  SS好きの774さん   2018年08月29日 (水) 22:59:50   ID: JS7INS0K

夢落ちでヨカッターー
今後どんな風に話が続か楽しみにしてます

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