【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】 (1000)


・初投下

・キャラ崩壊注意

・提督も艦娘は殆どが不幸属性持ち

・ブラゲ影牢サービス休止にむしゃくしゃして書いたらくっそ長くなった


よろしくおねがいします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467129172

 * 太平洋上某所 小型輸送艇内 *

提督「どういうことだ龍驤?」

通信『そのまんまの意味や。鎮守府本館に入った艦娘が次々と怪我をして出てきよってん』

通信『艦載機飛ばして中を探ってみても、いきなり視界が真っ暗になったりしてて様子もわからんし』

通信『聞けば鎮守府の中が罠だらけで、執務室とか入れへんのや。棟続きの食堂あたりも怪しいで』

通信『渡り廊下でちょっち離れてる工廠は幸いにも無事やけど、時間の問題ちゃうかな』

提督「鎮守府乗っ取りかよ……最悪の事態じゃねえか」

提督「本営のカスどもがくだらない用事で俺を呼び出したりしなきゃこんなことにはならなかったのに……くそが」

通信『あー、一概にそうとも言えへんで?』

提督「あ? 俺じゃ頼りにならねえってのか」

通信『せやな。多分、今回はきみの手にも負えん相手ちゃうかな』

通信『きみ、ぽるたーがいすと、って知ってるん?』

提督「ポルターガイスト? 勝手にものが飛んだり、何もないところから破裂音がしたりっていう、怪談話のあれか?」

通信『せや。最初はそれが鎮守府を乗っ取った犯人やーて話やってん』

提督「……冗談だろ」

通信『まあともかく、すでに被害者も出てるんや。会うて話を聞いたほうがええよ』

提督「誰だよその被害者ってのは」

通信『いっちゃん酷いんは金剛姉妹やな、あと長門とか陸奥とか……みんな入渠待ちや』

提督「はぁあ!? 金剛姉妹が!?」

提督「……わかった。修復材使え、事後報告でいい。俺も0925あたりに着くから、入渠ドック前に対策本部設置して待機、いいな?」


不知火「司令官、今の電話は」

提督「鎮守府に侵入者だ。かなりやばいらしい」

不知火「……到着を急がせます」

提督「頼む」


提督(わけがわからねえ)

提督(俺の鎮守府は周囲を海に囲まれた孤島にある)

提督(確かに警備は手薄だが、それは俺の鎮守府がさほど重要な拠点ではないからでもあるし)

提督(島の周囲の潮流も特殊で、この島に近づくのもそれなりに苦労するはず)

提督(そのせいで施設も資材も物足りない貧乏鎮守府を占拠する理由はなんだ?)

 * 鎮守府 埠頭 *

龍驤「提督、着いたんやな!」

提督「けがをした連中はどうした!」

龍驤「全員入渠したったで! それよりこっちや、本館に迂闊に近づけへんから迂回せんとな」

提督「ああ……くそ、いったいどうなってやがる」

龍驤「最初はほんまにただの幽霊騒ぎやったんやけどな」


 * 0900 鎮守府 1F *

五月雨「ほ、ほんとうです! 本当に見たんです!」グッショリ

朝潮「見間違いではないのですね?」

五月雨「は、はい! 本当に、火の玉が飛んで行ったんです!」

霞「火の玉を見たから水をかぶったって、言い訳にしてもどうなのよ」

五月雨「いえ、火の玉に向かって水をかけたんです!」

朝雲「よほど動転してたのね……着替えを持ってこないと」

五月雨「本当なんですってば……あ、あ、あれ! 見てください!」

敷波「こ、こっちくんなよぉぉ!」

火の玉「」コオオオオ

五月雨「し、敷波さんよけて! バケツの水です! えーいっ!」ザバーッ

敷波「うわっと!?」

火の玉「」ジュッ

霞「ほ、本当に火の玉だったわね……信じたくないけど」

朝潮「敷波さんもご無事でなによりです!」

敷波「うん、あたしにバケツが飛んでこなきゃ、もっと良かったんだけどね」バケツカブリビッショリ

五月雨「あわわ、ご、ごめんなさい!」

山雲「みんな~、無事~?」

潮「ここは危ないから、早く建物から出ましょう!」

朝雲「え? そっちでも何かあっ」

 ヒュッ

霞「危ない!?」バッ

朝雲「きゃっ!?」

壁]←矢< ザクッ

全員「……」

敷波「ちょっと、火の玉どころの騒ぎじゃないじゃん……!」

山雲「朝雲姉、大丈夫~?」

朝雲「え、ええ……」

山雲「霞ちゃん、ありがとうね~」

霞「あ、うん……」

五月雨(山雲ちゃんの安心感すごい)

 グラッ グラグラグラ

五月雨「こ、今度はなにー!?」

朝雲「ゆ、揺れてる!?」

朝潮「みなさん落ち着いて! 頭を艤装で保護して、出口へ早く!」

潮「そ、そ、そうですっ! おおお落ち着いて! あわわわわ」ブルブルブル

山雲「慌てちゃ~駄目よ~?」

五月雨(山雲ちゃんの説得力すごい)

霞(揺れるところがないと落ち着いていられるのかしら……)

山雲「」クルッ

霞(こっち見た!?)

山雲「」ニコー

霞「」

 * * *

龍驤「てな感じで、怪我人こそ出んかったものの全員建物から追い出されてなぁ」

龍驤「外へ出てから点呼も取ったんや、そしたら全員おる。やのに、建物に入ろうとするとなにかしら罠が発動する」

龍驤「あきらかに部外者がおるっちゅーことやんな?」

提督「妖精たちはどうしてる」

龍驤「そっちも点呼とってるけど全員無事、怪我もなしや」

龍驤「せやけど、敵さんがいきなり現れた、いうて怯えてるなぁ」

提督「……くそが」

 * 入渠ドック前 *

武蔵「戻って来たか!」

提督「武蔵! 状況は!」

武蔵「戦艦中心で捜索を行ったせいで、戦艦の被害が大きいな。金剛、榛名、長門、陸奥、日向が大破、比叡が中破、大和と私、扶桑、伊勢が小破だ」

武蔵「巡洋艦は利根、由良、大淀が中破、最上、神通が損傷軽微。駆逐艦は白露と島風が中破。五月雨も出撃しているが、報告にとんぼ返りで無傷だな」

武蔵「それより、敵方の意図も気になる。姿は見せない要求も出さない、何のためにこの建物を占拠したのかが依然不明だ」

武蔵「コンタクトを取ろうにもなしのつぶてではな……」

大和「提督! お戻りになられましたか!」

金剛「テートク! テートクゥゥゥ!」ダキツキッ

提督「おわっ! ったく、お前は相変わらずだな。比叡たちは?」

比叡「はいっ、無事です! 痛かったですけど」

霧島「し、司令……その、申し訳ありません」

榛名「ご迷惑をおかけしてしまいました……」シュン

提督「俺の不在の隙をついてきたんだ、そういうセリフはなしだ。とりあえず資材倉庫と入渠ドックは無事なんだな?」

比叡「はい、今のところは」

提督「で、鎮守府の中枢……執務室やら会議室やらがある本館に侵入者ありと思われる、か」

霧島「はい。司令がお戻りになる前に何者なのか手がかりだけでも、と思ったんですが」

提督「そこで返り討ちにあったと」

金剛「Sorry、私たちも慢心していたネ」スリスリ

提督「それを言うなら俺もこんなことが起こると思わなかったからな。監督不行き届きってやつだ」ナデナデ

提督「本館内に深海棲艦の反応は?」

榛名「それがどこにもないんです」

比叡「たまに鎮守府近海に紛れ込んでくるイ級とかはちゃんと感知できるんですよ」

提督「深海棲艦じゃない? とりあえず、何があったか説明してくれ」

大和「はい。0920、大和、武蔵、金剛、比叡、榛名、霧島の6名が、鎮守府本館正面より奪還を試みました……」

 * 回想 鎮守府 正面ホール *

金剛「……hm、誰もいない鎮守府というのは、なんとも不気味ですネ」

比叡「この建物も古いですから、余計にそう感じますね」

武蔵「しかし、本当に人の気配を感じないな。電探にも反応なしだ」

大和「複縦陣で進みましょう、先頭は私と武蔵、中衛は金剛さんと霧島さん、後衛は榛名さんと比叡さんでお願いします」

霧島「わかりました」

榛名「後ろはお任せください!」


大和「……こちらも異常なし、ですね」

武蔵「だな。このまま二階へ……ん?」

 ゴゴゴゴ

霧島「な、何の音ですか?」

 ゴロゴロゴロゴロ

金剛「! Look it!」

榛名「正面の階段から……!」

メガロック <ゴロゴロゴロゴロッ

比叡「なんですかあのでっかい岩!?」

大和「こちらに向かって転がってくる!?」

霧島「このままでは全員押し潰されます!」

武蔵「……全員下がれ! 私が受け止める!」

大和「正気ですか!?」

武蔵「わかりやすい罠だ! 下がったところを待ち伏せている奴がいるかもしれん!」

武蔵「退路確保! 後方警戒しつつ緩やかに後退! ここは任せろ!」

比叡「む、無茶ですよ!?」

武蔵「フ、やってみせるさ!」

メガロック <ゴロゴロゴロゴロ……!

武蔵「来たな……ふんっ!!」ガシィィィッ!

メガロック <ズゥゥゥンン……!

榛名「止めた!? けど、勢いが止まらない……!」

大和「手伝うわ!」ガシッ

武蔵「この……武蔵を、なめるなぁぁぁ!!」グオォォッ

メガロック <ズズズズ……!

霧島「わ、私も加勢します!」ググッ

メガロック <ズズ……!

比叡「と、止まった……!」

??? <ギラリ

榛名「!? ひ、比叡お姉さまっ! 後ろっ!」ダンッ

比叡「!?」

ギルティランス <ザシャアッ!!

榛名「きゃああああ!」ドスドスドスッ

比叡「くうっ!?」ザスザスッ

金剛「ひ、比叡!? 榛名ーっ!!」

??? <ジャラッ

比叡「榛名!? 私をかばって……!」中破

榛名「だ、大丈夫……榛名は、大丈夫、です……!」大破

榛名「そ、それより……上……!」

霧島「! 金剛お姉さま! 逃げてください!!」

ギロチン <ガコンッ

金剛「……What !?」

ギロチン <ジャララララッ

霧島「距離、角度よし! 撃てぇぇっ!」 ドンドンドンッ!

ギロチン <ガギン! バキン! ガコォン!

ギロチン <ガラン! ガランガラン……

金剛「……あ、危なかったネ……」ゾッ

霧島「刃の向きが私の射線に対して垂直だったのが幸いしました……」

??? <ジャラッ

榛名「ま、まだ……まだです……!」

比叡「今度は……霧島の上!?」

フォールニードル <ガコンッ

大和「させません! はあっ!」ガッ!

フォールニードル <ビタッ

比叡「ひ、ひえええ……傘一本だけで、とげ付きつり天井を止めてる……!」

大和「霧島さん、今のうちに避難を!」

金剛「!」ピクッ

金剛「Stop! 動かないでくだサイ!」

全員「!?」

金剛「まだ……! まだ、Enemyがいまス! ……おそらく……」

金剛「比叡! 榛名! そこです! 逃げなサイ!!」ダッ

比叡「えええ!? 私はとにかく、榛名は無理です!」

金剛「いいから早く!」ガシッ

金剛「テェェェイ!」ブンッ

榛名「ぐっ……!?」ドサッ

比叡「お、お姉さまなにを……っ!?」ドサッ

ニードルフロア <ズッ

全員「!!!」

金剛(私の回避は、間に合いませンカ……!)

ニードルフロア <ズシャアアッ

金剛「グ……ッ!!」ドスドスドスッ

比叡「お、お姉さまーーーー!!!」

武蔵「くっ! 緊急事態だ! 引き上げるぞ!!」

大和「武蔵は榛名さんを、霧島さんは比叡さんをお願い!」

 * * *

金剛「いくら修復材を使ったとはいえ、痛かったヨー」スリスリ

提督「なんでまた金剛は罠の位置がわかったんだ?」ナデナデ

金剛「今思うと、どうして気づけたのかわからないデス。第六感、でしょうカ」ホワァァァ

比叡「でも、金剛お姉さまのおかげで私も榛名も助かりました!」

大和「それにしても、どうしてあんな大がかりな罠をどうやって短時間に仕掛けられたんでしょう……」

提督「だな。ここまで仕込むには相当時間がいるはずだ。あまり考えたくないが……内通者か? ありえねえとは思うが……」

金剛「Yes、それはありえないネ」フンス

提督「ま、俺の部下の艦娘にはいねえだろな。お前ら以外だと気に入らない奴ぁ掃いて捨てるほどいるが」

霧島「ですが、その部外者すらこの鎮守府には数えるほどしか入って来ませんし……」

武蔵「轟沈した艦娘がしょっちゅう漂着するせいで『墓場島』なんて呼ばれてる島を狙う者がいること自体、ナンセンスな気もするが……」

提督「怨恨の線か、ワケアリで貧乏な鎮守府だから狙われたのか、それとも場所的な条件でここに目を付けてたのか……」

提督「まあいい、犯人像の考察はあとにする。ほかに探索を試みたのは?」

武蔵「海側の非常口と、その反対側の非常口、裏口からの侵入も試みた。だが……」

 * 回想 海側非常口 *

利根「……誰もおらんようじゃの」

島風「私たちが最初に犯人を捕まえちゃうもんね!」

白露「一番乗り目指して頑張るぞー!」

利根「……功を逸る気持ちもわかるが、油断するでないぞ?」

筑摩「偵察機を飛ばしていますが、とくに反応なし、ですね」

由良「電探にも反応なし。これで隠れていられる相手って、どんな相手なのかな?」

五月雨「しかもこれでどうやって攻撃してくるんでしょう? こちらも見えないはずなんですが」

利根「うむ。では先に進んでみるのじゃ、先頭は吾輩が……」

白露「はいはーい! 白露がいっちばーん!」ダッ

島風「おっそーい!」ダッ

由良「こ、こらっ、突出しないの!」タッ

五月雨「あっ、待っ……あたっ」コケッ

筑摩「五月雨ちゃん、あなたは慌てないで」

利根「吾輩が行こう、まったくあやつらはお子様じゃ」タッ

 ガコン

利根「な?」

スプリングフロア <ズドーン!

由良「きゃああ!?」ピューン

利根「なんじゃああ!?」ピューン

白露「えええ!? 空を飛んで追い越してくるなんてずるーい!」ダッ

筑摩「あの子たち、もう目的がずれてるわ! 利根姉さん大丈夫ですか!?」

五月雨「ち、筑摩さん待って! まだ何かあるかも」

スマッシュフロア <ズバーン!

由良「いやああ!?」ピュイーン

利根「またじゃとぉぉ!?」ピュイーン

白露「わ、私までー!?」ピュイーン

島風「えええ!? 飛んできた!? はっやーい!?」

五月雨「しれない、って言ってるそばから!?」

筑摩「利根姉さん! 早くそこから逃げて!」

利根「う、うむ……む!?」

バキュームフロア <キュィィィィィンン

白露「な、なに!? 体が吸い寄せられてる!?」

島風「おぉぉおおおおぉぉおお!?」

由良「まるで渦潮だわ……!」

利根「い、いかん、全員退避じゃ! 嫌な予感が」

 ガゴン

利根「す」

カタパルト <ズガバーン!

利根「るのじゃぁぁぁぁ!?」ドヒューン

白露「利根さん遅いいいい!!」ドヒューン

由良「っていうか飛んでるぅぅ!?」ドヒューン

島風「はっや゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛い゛!?」ドヒューン

五月雨「ふぇえ!? 四人とも窓を突き破って海に吹っ飛ばされちゃいましたよ!?」

筑摩「私が追います! 五月雨さんは戻って報告を急いで!」

 * * *

提督「なるほど。由良と利根は災難だったな」

利根「いや、吾輩の指揮が未熟じゃった」

由良「私も彼女たちから目を離しましたし……」

筑摩「五月雨さんが転んでなかったら、私も巻き添えだったかもしれませんね」

提督「怪我の功名ってやつか。それはともかく、いまいち言うこと聞かないからなこの能天気組は」

白露「私たち、お空をね! びゅーんと飛んでったの!」

島風「速かった! すっごい速かったよ!!」

提督「お前ら少しは反省しろ」

白露「あうっ」ゲンコツ

島風「おうっ」ゲンコツ

金剛「二人とも、まじめに探索しないといけませんヨー」スリスリ

提督「……なにしてんだお前も」ナデナデ

金剛「気にしないでくだサーイ」ウットリ

最上「提督、僕たちも報告させてもらっていいかい?」

提督「ん、ああ、頼む」

とりあえず今回はここまでです。

次回出撃予定
長門、陸奥、伊勢、日向、最上、三隈

野暮なこというだろうがいっそのこと爆撃なり砲撃なりぶち込んで完全に更地にしてしまえばいいんじゃなかろうか?(彼は狂っていた)

>>1です。
一応、トリを付けさせていただきます。

続きです。

 * 回想 反対側非常口 *

長門「よし、我々も行くか」

陸奥「伊勢と日向は着任したばかりだし、練度も低いから慎重にね」

伊勢「はい!」

日向「承知した」

最上「気を付けていこうね!」

三隈「ええ!」


最上「ほんとに人の気配がないや……」

伊勢「……ねえ、この鎮守府って、こんなに薄暗かったっけ?」

日向「灯りが落ちているせいか?」

陸奥「もともとこっちの部屋は日の光が入りづらいこともあるけど……」

長門「ここまでではなかった……な……?」

?? <ズォォォォ

三隈「な、長門さん! 上っ!!」

クイーンハイヒール <ズシィィィン!

長門「ぬ、ぬおおお!!」ガシィッ

陸奥「長門!?」

日向「な、なんだ!? 巨大な……足!?」

長門「ぐ……こ、この、ビッグセブンを足蹴にしようなど……片腹痛いな!」ギリギリギリ

最上「援護するよ!」ジャキッ

伊勢「ま、まって! 床が……みんな離れて!」

スリップフロア <パキィィィンン!

日向「なっ!?」ツルッ

陸奥「きゃあ!」ツルッ

最上「うわっ!」ヨロッ

伊勢「おっと、危ない!」ガシッ

三隈「長門さんすごい……あの氷の床の上でまだあの足を支えてる……!」

長門「……ふ、こ、この程度でこの長門、揺らいだりはしない!」ギリギリギリ

 シュウウウウウ

最上「うん? 氷が解け始めてる……?」

三隈「解けてるというより、すごいスピードで解かされてるような……?」

長門「……ま、まさか! 陸奥、逃げろっ!」

ホットプレート <ゴォォォォッ!!

長門「ぐおお!?」ジュッ

陸奥「熱っ!?」ボッ

日向「くぅっ!?」ボッ

陸奥「ああっ、だ、第三砲塔が……!」カァァァ

長門「最上! 三隈! 伊勢たちを連れて逃げろ!」ジュウウ

伊勢「長門さんも早く!」

長門「いいから行け! 陸奥が暴発する前に!」

伊勢「駄目です! 日向もなんですよ!!」

日向「くう、だ、第五砲塔が……!」カァァァ

長門「おい! このオチどこかで見たぞ!」

伊勢「誰も公式4コマなんて言ってませんよ!?」

最上「みんな何を言ってるの!? 早く逃げないと!」

三隈「くまりんこー!」

 ボギャーーーーーー

 * * *

最上「一番被害の大きかった長門さんは、念のため明石さんに診察してもらってるよ」

提督「……まあ、良かったんじゃねえか、耐えられる程度の爆発オチで」

三隈「ええ、最後はそうでしたけど……」

最上「ともかく、女の人の足が襲ってきたのはびっくりしたよ」

提督「話だけを聞くとツッコミどころが多すぎて嘘としか思えなんだが、お前らが冗談言うとは思えねえしな……」

霧島「し、信じるんですか」

提督「だってなあ、うちの三隈が困ったときにくまりんこって叫ぶ癖がなおってねえとことかリアルじゃねえか」

三隈「す、すみません……///」

提督「ああ、責めるようなネタじゃねえし、かまやしねえよ。茶化して『ごめりんこ』とか言わなけりゃ誰も不愉快にはならねえし」

龍驤「そう来おったら次はパチパチパンチやね!」バッ

黒潮「ポコポコヘッドでもええな!」バッ

提督「お前らは朧にカニばさみ食らって来い」

黒潮「よっしゃ、今日はこのくらいにしといたる!」シャッ

龍驤「ほなな!」シャッ

提督「……何やってんだあいつらは」

山城「あなたもノリノリじゃないの」

扶桑「提督、私たちも報告よろしいかしら?」

提督「あ、ああ、頼む」

 * 回想 鎮守府裏口 *

大淀「まだ昼間なのに真っ暗ですね。川内さん、敵の気配は感じられますか?」

川内「……うーん、何の気配もないね」

神通「罠を仕掛けているから、逆に出てこないのかもしれませんね」

那珂「でも、カメラは仕掛けられてないみたいだね。どうやって罠を動かしてるんだろ?」

山城「! 扶桑お姉様……!」

扶桑「どうしたの山城?」

山城「今一瞬、食堂へ向かう通路に明かりが……!」

川内「……誰かがいるなら、そっちに行ってみようか?」

大淀「そうですね。なにか手がかりがあるかもしれません」

扶桑「……山城? 浮かない顔をしてるけど、なにかあったの?」

山城「嫌な予感がするんです……だってその明かり、カボチャのランプみたいに見えましたから」

那珂「あのハロウィンに作るジャック・オー・ランタンみたいなの?」

山城「たぶんそうね。人の顔が彫られていたし……」

神通「お化けを装ってる? それとも本当に……?」

大淀「『幽霊の正体見たり枯れ尾花』と言います、ここは調べに行きましょう」スッ

 ギュム

大淀「え?」

テツクマデ <バチコーン!

大淀「!?!?」クラクラ

扶桑「な、なんでこんなところにレーキが……?」

川内「柄が思いっきり顔にあたったよね……」

那珂「痛そう……」

?? <ヒュ~

神通「……上?」

カビン <カポッ

大淀「ふぇ!? 何!? 今度はなんですか!?」ヨタヨタ

扶桑「どうして空から花瓶が……」

那珂「ちょっと、大淀ちゃんどこ行くの!?」

バナナノカワ <ギュム ツルーン!

大淀「ひょわあああ!?」ドテーンガシャーン

扶桑「どうしてバナナの皮が……!?」

山城「私たち以外で踏んで滑る人は初めて見たわ」

神通「ねえ那珂、本当にどこにもカメラは仕掛けられてないの?」

那珂「う、うん、どこにもないよ!?」

タライ <ヒュ~

大淀「ふぎゃっ?」パカーン

扶桑「どうしてこんなものまで仕掛けられてるの……!?」

川内「……なんか、緊張感に欠けた罠ばっかりだね」

那珂(これ、絶対ドッキリなんじゃ……もしや大淀ちゃんがアイドル扱いされてる!?)ハッ

神通「……那珂、それは違うと思うわ」

那珂(神通ちゃん心を読んでる!?)ビクッ

ハリセン <ニョキッ ブンッ

大淀「へぶっ」スパーン

扶桑「なにこの……なに?」

川内「ねえ、テレビってここまでやるの?」

那珂「いくらなんでもやりすぎだと思うよ?」

神通「見ててだんだん気の毒になってきました……」

トリックホール <パカッ

大淀「」スポーン

扶桑「ああ……」

川内「……」

那珂「……」

神通「……」

山城「……不幸だわ」

 シーン

扶桑「も、もう何も起きない、わよ、ね?」オロオロ

川内「たぶん、ね。でも、どうしてバナナの皮とかレーキとかに気付かなかったんだろ」

那珂「ここまでしつこくやると可哀想だよ~」

扶桑「と、とにかく、大淀を助けてあげましょ? 結構深いわよこの穴」

大淀「……くそがあああ!!」ドカーン

大淀「ざっけんじゃねえぞおらああああ!!」ドカーン

山城「ああ、大淀が提督みたいになってるわ。手伝います扶桑お姉様」

川内神通那珂「」ピクッ

那珂「大淀ちゃん伏せて!」

川内「神通!」

神通「はい!」

?? <ヒュゥゥゥウウ……

扶桑「きゃっ!?」ガシッ

川内「いいから飛んで!」バッ

山城「な、なに!?」ガシッ

神通「逃げますよ!」バッ

トゥームストーン <ドズゥゥゥウウン!!

扶桑「……」ゾッ

山城「間一髪……」ブルッ

川内「間抜けな罠で油断させて、本命はこっち、ってやつかあ」

神通「落とし穴の隣に落ちたということは、そうなんでしょうね」

那珂「大淀ちゃーん、大丈夫~?」

 * * *

扶桑「ランタンの謎はそのままですが、大淀を落ち着かせるため一度帰還しました」

山城「扶桑お姉様も足をひねったんですから! 一大事です!」

扶桑「山城、あなたを運んだ神通もそうよ?」

提督「ま、大怪我してないだけよし、だな。夜戦慣れした川内たちが感知できない相手となると面倒だが」

武蔵「なあ榛名、余所に比べて我々のところだけやけに物騒な罠が集まってないか?」ヒソッ

榛名「ええ、榛名もそう思います……ですが、どこに何があるかわからない状況ですし……」ヒソッ

霧島「正面玄関から入ったんです、主力に備えて大がかりな罠をそこに集中させていたと推測できますね」

比叡「私たちは頑丈ですから! ほかの人が大怪我をしなくて良かったと思えば!」

武蔵「……フ、そうだな。我々が当たりくじを引いたと思えば、良しとするか」

提督「ところで……大淀に俺の口調が伝染ったってマジか」

山城「そっくりでしたよ」

提督「あの大淀がか……」

扶桑「ふふっ、私たちもそうなるのかしら?」

提督「おいやめろ、そういうのは摩耶だけで十分だ」

山城「そう思うのなら、少しは言葉遣いを改善してくださいません?」

金剛「Heyテートク? 私の口調が伝染ってもいいんですヨ?」スリスリ

提督「断る」ナデナデ

金剛「Oh...」ウットリ

利根「いつまで抱き着いておるんじゃこの戦艦は」

最上「拘束戦艦だね」ボソッ

榛名(榛名も提督に拘束されたいです……)カァァァ

神通「榛名さん、遠慮しなくていいと思いますよ」スッ

榛名「!?」

提督「しかし……まあ、なんだ。罠に当たり外れがあるっつうか、罠の種類が多すぎて対策が立てられねえな……」

提督「しかもあちこちに仕掛けられてて、同じ罠がねえっつうのもわからねえ……」

如月「提督? 私たちも館内を探ってみたいと思ってるんだけど」

提督「お前たちがか?」

初春「わらわたちとて、この鎮守府に属する軍艦じゃ」

吹雪「この鎮守府の一助になりたいと思う気持ちは一緒です!」

暁「暁たちの鎮守府だもの! 暁たちが守ってみせるわ!」

朝潮「及ばずながら尽力致します!」

提督「わかったわかった、くれぐれも無茶はすんなよ」

隼鷹「あのさ、あたしたちも行っていい?」

千歳「駆逐艦がやる気なのに、私たちがのんびりとはしていられないわ」

提督「大丈夫なのか? 龍驤に聞いた話だと艦載機使えないんだろ?」

龍驤「せやけど、虎穴に入らずんば虎子を得ず、や」

雲龍「対空砲のゼロ距離射撃ならまかせて」

提督「お前なあ……やばくなったらすぐ戻れよ? それと重巡も連れてけ。那智、足柄!」

足柄「来ると思ってたわ!」

那智「ああ、任せておけ!」

提督「……よし、俺も探ってみるか」

金剛「No! 駄目デス! So dangerousデース!」ヒシッ

大和「そうです! 提督は入ってはいけません!」

提督「危ねえのはわかってる。が、虎穴に入らずんば虎子を得ずって言ってたろ龍驤が」

金剛「ヘーイ龍驤、You are good 根性デース」ギラリ

龍驤「ちょっ、待ちいや! なんやそのとばっちり!?」

提督「まあそれにだ、俺が直々に出向けば、連中の動きも変わるんじゃねえか?」

如月「それじゃ、私が一緒に行ってもいいかしら?」

暁「あ、暁も行くわ!」

電「電もなのです!」

提督「しゃあねえ……古鷹、五十鈴、随伴頼むわ」

金剛「No! 駄目デス! 私も一緒に行きマース!」ヒシッ

提督「……何度も戦艦修理できるほど資材が残っていたっけか」ナデナデ

金剛「Ohch...」トローン

大和「提督が行くのでしたら、私も行きたかったのですが……」シュン

武蔵「まあ、言ってもきかん男だ。ここは任せてみようじゃないか」

提督「ん……そうだ、敷波」

敷波「はーい、なーにー?」

提督「『あいつ』にも連絡取って来てくれるか? 敵が近海を通って来てるなら、何か知ってるはずだ」

敷波「あー、なるほどね、了解! 行ってくるね!」タタッ

提督「作戦開始はヒトサンサンマル、一斉に突入するぞ」

今回はここまで。

ちなみにこの墓場島鎮守府には、>>25みたいなことをして前の鎮守府を馘になった艦娘がいます。

次回次々回出撃予定
青葉、加古、初春、若葉、朝雲、山雲
吹雪、初雪、朝潮、霞、不知火、黒潮

では上げずに続けてみます。

続きです。

 * 渡り廊下 *

青葉「では青葉たちも行きますよ!」

加古「相手が見えないってのは嫌だなあ」

朝雲「潜水艦みたいな相手じゃなければいいんだけど」

山雲「床下に潜んでいるのかしら~」

若葉「……待て」

初春「若葉? なんぞ気になることでも?」

若葉「山雲の足元だ」

朝雲「!? 山雲!」ドンッ

ベアトラップ <ガキッ!

山雲「……あららら~」タラリ

朝雲「危なかった……」ヒヤリ

加古「い、いま、いきなり出てきたっていうか、全然気付かなかったよな!?」

青葉「わ、若葉さん、よく気づきましたね!」

若葉「なんとなく……本当になんとなくだが……」

 ガラガラガラ…

初春「ぬ!? 総員避難! 後ろじゃ!」

メガバズソー <ガラガラガラガラ……!!

加古「うわあ!?」バッ

青葉「なんですかあの巨大な車輪!?」

朝雲「……もし山雲があのトラップに捕まってたら……」ゾッ

山雲「あれに轢かれてたのね~」

初春(山雲は、傍から見るといまひとつ緊張感がないのう……)タラリ

加古「しっかし若葉すげえなあ、次の罠もどこにあるかわかったりする?」

若葉「……ああ、おそらく」

初春「若葉よ、無理はいかんぞ?」

若葉「問題ない……ここだ」カチッ

マンリキスピン <ガシーン!

若葉「予想通りだ」ガシーン

朝雲「えっ」

山雲「えっ」

加古「えっ」

青葉「えっ」

初春「おい」

マンリキスピン <ギュォォオオオオオ!

若葉「ふ、ふおおおおお!?」ギュィィィィン

山雲「わー、すっごい回転~」

加古「いや、これ罠にかかってるよねえ?」

青葉「ですよねえ」パシャッパシャッ

朝雲「なんで冷静に写真撮ってんのよ……」

初春(これは駄目な若葉じゃな)

マンリキスピン <ッパ

若葉「ふ、ふふふ……気持ち悪い……だが、悪くない」ヨロヨロフラフラ

朝雲「めちゃくちゃふらふらしてるじゃないの……」

加古「戻ったほうが良くない?」

若葉「まあ待て……まだ次の罠がある」

青葉「ほうほう、それは?」

初春「青葉、おぬし楽しんでおらんか」

若葉「ああ……ここだ」スッ

ウォッシュトイレ <ガッション!

朝雲「えっ」

山雲「えっ」

加古「えっ」

青葉「えっ」

若葉「えっ」スポーン

初春「えっじゃないわ」

若葉「さ、さすがにこれは予想外だ……」

朝雲「これ、ひたすら恥ずかしいだけの罠なんじゃ……」

ウォッシュトイレ <ピピッ ジャバーーーー!!

若葉「」ピュイイーン

朝雲「」

山雲「」

加古「」

青葉「」

初春(なんじゃこれは……)アタマカカエ

加古「なんだあの水流!?」

青葉「はっ! 青葉としたことが呆気にとられてシャッターきり忘れてました!」

青葉「若葉さん! もう一回! もう一回お願いします!!」

初春「青葉、おぬし自分で何を言うておるかわかっとるか!?」

若葉「い、いや、もう遅い……」スタッ

ヴォルテックチェア <ガッション!

若葉「おうっ」チャクセキッ

青葉「あ」

ヴォルテックチェア <バリバリバリバリ

若葉「あばばばばばばばば!」バリバリバリバリ

加古「わ、若葉ぁぁぁ!?」

青葉「なんでこんなものが仕掛けられてるんでしょうねえ」パシャッパシャッ

初春「若葉も青葉も何をしておるんじゃ……」

朝雲「どうして自分から罠にかかりに行くのよ……」

山雲「むしろ~、連続して罠が発動するようにできてない~?」

朝雲「そ、そういえばそうね……ってことは!」

若葉「ふふふ、まだまだ……! お次は……」

青葉「おお、やる気ですね若葉さん! できればもう一回あのトイレの罠に!」

加古「煽ってないで助けてやれよ青葉!」セナカドンッ

青葉「へっ?」

デルタホース <ガッション!

青葉「いぎゃああああああ!?」ビクビクーン

加古「あ」

朝雲「あ」

山雲「あ~~~」


若葉「ああ……なんて、なんてことを!」

加古「え~っと、その、ご、ごめん青葉」

若葉「私にも謝ってくれ!」

初春「若葉は少し黙っててくれんかのう」

加古「お詫びに青葉の木馬姿、写真に撮っておくからさ」パシャパシャッ

初春「何故撮るんじゃあああ!!」ウガーッ

青葉「ぴやあああああああああああ!? 撮らないでえええええ!?」ナミダジョバーッ

デルタホース <ッス

青葉「あっ、青葉のっ、青葉のいろいろ大事なものがっ、大破しましたあああ……」ビクンビクン

加古「とりあえずこのくらい撮っときゃあいいかな?」パシャパシャッ

若葉「なんて……なんてむごい」グスッ

朝雲「……心なしか、羨ましいって言ってるように聞こえるの、気のせいかな」

山雲「考えすぎよ~、朝雲姉~」

初春「はぁ……いくら罠を見破れても、こんな若葉に付き合ってはおれぬ。帰るのじゃ」

加古「そ、そだね、戻ろっか」

山雲「その写真のデータ、あとでもらえるかしら~」

朝雲「もらってどうするのよ……」

初春「わらわはもうツッコまぬぞ……」グッタリ

 * 鎮守府 正面ホール *

アローシューター <シュパッ

吹雪「うわっと!」バッ

ファイアーボール <ゴォォォ

朝潮「同じ手は食らいません!」タッ

霞「芸がないわね!」ヒョイ

コールドアロー <パシュッ

不知火「それにしても面倒ですね」スッ

黒潮「せやね、これなかなか中に入り込めそうにないわ」バッ

サンダージャベリン <バリバリバリバリ

初雪「中に……入らないほうがいいと思う」シャッ

吹雪「初雪ちゃんどうしたの?」

初雪「ホールの真ん中……あそこ、ちょっと危ない」

霞「なにそれ!? あんた罠を感知できるの!?」

初雪「そこしか、わからないけど」

黒潮「ほな、うちが行ってみよか!」タタンッ

不知火「黒潮!?」

初雪「……くる!」

??? <ニュッ

黒潮「!」


スパークロッド <バリバリバリバリ!

黒潮「ほいっと!」バッ

初雪「おお……バック転……!」

黒潮「確かにちいっと危ないなあ!」スタッ

アローシューター <ヒュパッ

コールドアロー <カシュッ

吹雪「危ない!」ガガガガガガ

朝潮「援護します、機銃斉射!」ガガガガガガ

アローシューター <バキィン

コールドアロー <パキィン

黒潮「援護おおきに! ……って、もう一発おるやんか!」バッ

ローリングボム <コロコロコローッ

霞「ば、爆弾!?」バッ

不知火「総員回避を!!」バッ

ローリングボム <ドゥン!!

吹雪「速度の違う飛び道具と、転がってくる爆弾の時間差攻撃、か……」

不知火「迂闊に中央に飛び込めば、電撃の罠が待っていると」

霞「避けられなくはないけど、いい加減うっとうしいわね!」


黒潮「ま、うちらに当てたいんやったら、もっとでかいもん持ってきてもらわんとな!」

??? <ヒュウウウ

初雪「?」

スノーボール <ドッスゥゥゥン

朝潮「」

霞「」

黒潮「」

不知火「でかいのが行きましたね、黒潮のほうに」

スノーボール <ゴロゴロッ

朝潮「こ、こっちに転がってきました! 逃げましょう!」ダッ

霞「アンタが余計なこと言うからよ!?」ダッ

黒潮「そ、そんなん言うても、うち知らんねんで!?」ダバダバー

スノーボール <ゴロゴロゴロゴロ…

初雪「……行っちゃった」

不知火「吹雪さんどうします、一度撤退しますか」

吹雪「……ううん、もう少し粘ってみよう」

吹雪「向こうも弾薬切れになるかもしれないし、それに……」

吹雪「もう少し、時間を稼がないと。司令官がきっと何かしてくれます」

初雪「……ん」コク

不知火「では、もう少し探ってみましょうか、相手の出方を」

今回はここまで。

次回出撃予定
摩耶、鳥海、朧、潮、明石、伊8


 * 鎮守府 食堂 厨房勝手口 *

摩耶「よっし、アタシたちも派手に行くぜ!」

鳥海「ええ……派手に行くかどうかはとにかく、慎重に行かないと」

潮「で、でも、提督が侵入するから、私たちが気を引かないといけないんですよね……?」

朧「そうだね。潮はそういうの苦手そうだけど」

潮「うん……でも、が、頑張る」

摩耶「よーしよし、その意気だぜ! ……それよりも、なんでさっきからお前ら静かなんだ?」

伊8「………」ジー

明石「………」ウーム

摩耶「ったく、何もねえのに考えこんでたって仕方ねえだろー?」

鳥海「でも、なんだか甘い匂いもするし、明らかに誰かがいて、ここで何かをしていたように思えるのよね」スンスン

朧「伊8さんはともかく、明石さんは索敵とかが得意な人ではないと思うんですが、それでも思うところがあるとなると……」

摩耶「食堂なんだから食い物の匂いくらい当たり前だろ? 飯でも食ってたんじゃねえの?」

潮「あの、この匂いは、どちらかというと洋菓子の匂いだと思います」

摩耶「洋菓子? へーえ、じゃあ犯人を捕まえればそういうのが食えるってことかぁ」

鳥海(バルジが気になるから、ちょっと控えたいんだけど……)


伊8「! 待って」グイ

摩耶「うわっと!? な、なにすんだよ!?」

伊8「やっぱり、誰かいる」

摩耶「え?」

明石「あー、はっちゃんもそう思ってましたか」

鳥海「明石さんも?」

明石「ええ、食堂に出るドアのところ。あと、そのドアの2歩くらい手前……かな?」

伊8「? 私はそのドアの奥から感じたんだけど……」

明石「え? こちら側ではなくて?」

伊8「ヤー」コクリ

鳥海「意見は割れているけど、誰かいる、と感じているわけね……」

朧「ってことはさ、ドアの手前までは踏み込んでいけるってことだよね」タッ

潮「え? そ、それはそうかも……い、行くの?」

朧「うん、行ってみる。みんな援護を……?」

摩耶「? どした?」

朧「体が、動かない……!?」

全員「!?」

 * 同時刻 本館南側 階段そばの窓 *

提督「さて、他が囮になってくれている間に、俺たちは執務室を目指すか」

五十鈴「囮かあ……そう言われると私たちの責任は重大ね」

提督「言い方は悪いが、あいつらには人手と時間を稼いでもらうのが目的だからな」

提督「余所に人を回している間に、手薄になった館内の執務室へ突入する」

提督「近隣の鎮守府への救援信号打つだけでも状況は変わるだろ、それができたら全員退避だ」

暁「司令官、救難信号を打てばどうなるの?」

提督「まず打った記録が残る。鎮守府の非常事態宣言だからな、海軍そのものや余所の鎮守府が援護に来なければ、連中は俺たちを見捨てたことになる」

提督「そうなればこの鎮守府が壊滅しても、俺たちの責任をそれ以上追及できなくなる。だから保険でしかないがな」

古鷹「問題は執務室にも敵がいないかどうか、ですね」

提督「発砲は許可する。悪いが任せるぞ」


提督「さてと、侵入したはいいが……薄暗いな」

古鷹「そうですね……明かり、つけますか?」

提督「いや、いい。他は大丈夫だろうな」

如月「今のところは大きな音もないわね」

暁「司令官、今は階段に敵影なしよ!」

提督「よし、踏み込むぞ」

??? <ヒュッ ペタン

五十鈴「ん? 何の音?」


古鷹「! 電……その矢は?」

電「は、はい?」ペターン

ペッタンアロー <グイーン

電「ぱうううう!?」ピューン

暁「い、電!? どこ行くの!?」ダッ

提督「……五十鈴! お前は暁を追ってくれ! 如月と古鷹はこっちだ!」

如月「はいっ!」

五十鈴「わかったわ!」ダッ

古鷹「今行きま……!!」

キラーバズソー <ガシュウウウウウン!!

古鷹「きゃあっ!?」ガギギギン!

如月「古鷹さん!」

提督「くそっ、ここも見張られてたってか!」

古鷹「提督、先に行っててください! 艤装にちょっと傷がついた程度です!」

古鷹「2階へ行く方法、すぐに探しますから!」

如月「……司令官!」

提督「古鷹、無理すんなよ!」

古鷹「」コクリ

提督「よし、行くぞ如月」

如月「はいっ!」

 * 鎮守府 2階廊下 *

提督「くそ、予定が大幅に狂ったな」

提督「俺の机の上の電話の裏に近隣の鎮守府への緊急用救援信号の発信機能がついてる。そいつさえ押せれば当初の目的達成だ」

提督「ついでに、俺の机の引き出しに銃が入ってる。そいつが持ち出せればいいんだが」

如月「……司令官、無理はしないで。私がいるわ」

提督「悪いな。頼らせてもらう」

提督「それにしてもだ……相変わらず人の気配がねえのが不気味だな」ジリッ

如月「……」ジリッ

???「」スッ

如月「……司令官!」ヒソッ

提督「ああ、誰かいるな!」ヒソッ

???「」コツ コツ コツ…

提督「……」ジリッ

如月「……」ジリッ


???「……」ピタッ

提督(止まった……)ジリッ

如月(……まさか、罠!?)ハッ

スパイダーネット <ヒュパッ

提督「しまっ……!」

如月「きゃ……!」

提督「くそ、なんだこの蜘蛛の巣は!」

如月「やだ、べとべと……し、司令官、危ないっ!」ダンッ

提督「うお!?」ドシンッ

スイングハンマー <グオオオオンッ

提督「如月!?」

如月「っ……!」ゴシャァッ

如月「あ……」ヒュウウ

捕獲牢 <ガシャン

如月「……」ガラガラガラガラ…

提督「如月っ!」ダダッ

???「……」スッ (刃物を提督の首筋にあてる)

提督「……!」

提督(こんな簡単に、手詰まり、かよ……くそっ)ギリッ

???「……動かないで」

提督(!? ……女、だと!?)


 * 一方 鎮守府 1階階段そばの通路*

古鷹「…とは言ったものの、他に行くルートも遠回り……」キョロキョロ

< キャァアアアア!!

古鷹「あの声……!」タタッ

暁「電!?」

五十鈴「な、なんなのこいつ!?」

クラーケン <ズリュリュリュリュ…

古鷹「!?」

電「き、気持ち悪いよう……!」ヴジュルルルル…

五十鈴「こ、こんな化け物、いつ鎮守府の中に入り込んでたっていうのよ!」ジャキッ

暁「ま、待って! このままじゃ電にあたっちゃうわ!」

五十鈴「っ! ど、どうしたら……!」

電「意外と、力が強いので……ひっ! ふ、服の中に入ってきたのです!?」シュルル…

電「ぬ、ぬるぬるするのです! へんなとこ触っ……いやあああ!?」ニュルニュルニュル…

暁「せ、せめて、なにか、なにか切るものとか……!」

 ギュウウウウ

古鷹「何の音……? 二人の足元に……光が、吸い寄せられてる!?」

古鷹「ふ、二人とも逃げて!!」


 ズッ

五十鈴「え?」ズッ

暁「な、なに?」ズズッ

ブラックホール <ズォォォォォォォ

暁「ええっ? う、うそ!?」ズズズッ

五十鈴「床が消えて……吸い込まれてくっ!?」ズズズズッ

電「あ、暁ちゃん!? 五十鈴さんっ!?」

古鷹(二人を助けて電を救う方法……いや、この場を離れないと私も……!)ジリッ

ペッタンアロー <パシュッ ペタッ

古鷹「しまっ……!」グイイッ

古鷹「ブラックホールのほうに引っ張られる……!」

電「古鷹さんっ!」

古鷹「こんなことになるなんて……!」

五十鈴「そんな、嘘でしょ……!?」

暁「電……電ぁぁ!」ギュウウウンン

ブラックホール <シュォォォ…

ブラックホール <フッ…

電「……え?」

電「ふる、たか……さん?」

電「いすずさん……あかつ、き、ちゃん……?」ポロッ

電「消え、ちゃ……うそ……うそ……!」ポロポロポロ

クラーケン <グリュリュリュリュ…

電「……ひ……っ!」ビクッ

電「……い、いや……いやあああああああ!!」

今回はここまで。

次回、黒幕登場の予定。

投下します。

 * 再び 鎮守府 厨房 *

摩耶「どういうことだ!? 体が動かないって……!」

朧「ま、まるで金縛りにあったみたいに……」

ブラッディシザー <ジャキン! ギギギギ…

朧「う、うわ!?」

摩耶「な、なんだあのバカでけえ爪!?」

潮「朧ちゃん!」

鳥海「朧さん!」

摩耶「くそが、やらせるか! 朧ぉぉぉ!!」ダッ

ブラッディシザー <…ピタッ

朧「……と、止まった……?」

ブラッディシザー <シュンッ

鳥海「……消えたわ……」

朧「うわっ」ガクッ

摩耶「おい、無事か!」ガシッ

朧「は、はい……あはは、今頃怖くなってきた」ゾワッ

明石「いったいなんだったんでしょう?」

 シャッ

???「貴様ら……いったい何者だ!」

伊8「! 忍者……!?」

忍者?「我らの仲間の居場所を探り当て、それがしの名前まで……!」

忍者?「言え! なぜそこまで知っている!」

摩耶「あ?」

伊8「……名前?」

明石「誰か知ってます?」

忍者?「……え?」

潮「……もしかして、朧、ちゃん?」

忍者?「ちゃん付けで呼ぶな!」

鳥海「あー」

摩耶「あー」

伊8「あー」

明石「あー」

朧「朧も、朧って名前……なんだけど」

忍者?「……え」

???「ちょっとオボロさぁぁぁん!? なにやってるんですかぁぁぁ!」ポンッ

潮「ひゃっ!? コックさんが!?」ビクッ

朧「いきなり現れた!?」ギョッ

???「あ、コックじゃなくてパティシエです!」

摩耶「いや、それは今ツッコむところかよ!」

???「マ、マーガレット! あなたも姿現しちゃだめでしょおお!?」シュンッ

伊8「那珂ちゃん!?」

明石「なんで那珂ちゃんが浴衣着て潜んでるんですか!?」

アカネ「ナカって誰よぉ!? 私はアカネだよ!!」ウニュー!

オボロ「お、おいアカネ! 敵に向かって名乗る奴がいるか!」

マーガレット「さ、最初に勘違いしたのはオボロさんじゃないですかぁ!」

鳥海「そこまでです!!」

 ドォン!!

鳥海「空砲よ。次は撃つわ!」ジャキッ

摩耶「ははっ、たまたま朧と同じ名前の奴がいて、勘違いしてくれたってことか! アタシたちは運がいいな!」ジャキッ

オボロ「……!」ジリッ

アカネ「うう……!」

マーガレット「あわわわ……!」

伊8「ドアの奥の気配が移動してる……!? みんな、一歩下がって!」

シャークブレード <キシャァァァァァンッ!!

鳥海「きゃ!?」バッ

朧「うわっ!」バッ

摩耶「おっと!」バッ

マーガレット「し、シルヴィアさぁん!!」

シルヴィア「まったくもう、しょうがないわね~」シュンッ

伊8「……!」

シルヴィア「ねえあなた、どうしてあたしの居場所が分かったの?」

伊8「……わからない。……けど」

シルヴィア「ああ、あなたからは海中の匂いがするわね……シンパシー、ってやつかしら?」

シルヴィア「そっちのあなたも……あら、クレーン積んでるの?」

明石「……!」

シルヴィア「なるほどね、そういうことかぁ」フフッ

鳥海「おしゃべりはそこまでです。観念しなさい!」

潮「ね、ねえ鳥海さん! あの、3人が……」

朧「! 消えてる!?」

摩耶「しまった!」ジャキッ

鳥海「いつの間に……!」

シルヴィア「ごめんなさいね? ここは引き揚げさせてもらうわ」タッ

鳥海「逃がしません!!」ドォン!

シルヴィア「お生憎様♪」ヒュンッ

 ドォン!!

明石「避けた!?」

シルヴィア「あたしに飛び道具は通用しないわよ?」

シルヴィア「だからといって近づくようなら、このヒレでスパッと行っちゃうんだから」

摩耶「ち……!」

シルヴィア「そういうわけだから、諦めてね♪」シャッ

摩耶「待ちやがれ!! ……くそがっ」

明石「私が感じた気配は消えてますね」

伊8「うん。さっきの人も逃げたみたい」

潮「ね、ねえ、今の人たちが、罠を仕掛けていたのかな?」

朧「そうじゃないかな。あのかぎ状の爪とか、腕のヒレとかが罠そのものっぽかったし」

明石「那珂ちゃん……じゃなくて、アカネって子は花火の球を持ってましたね。爆薬でしょうか」

摩耶「そんじゃあ、あのコックはどうなるんだよ」

潮「あの人は……なんでしょう? パティシエって言ってましたけど」

伊8「……洋菓子……シュトーレン……じゃない、パイ投げ?」

鳥海「い、いくらなんでもそんな悪ふざけは……」

明石「それが、大淀の報告によると、金ダライやらバナナの皮やらも仕掛けられていたそうですから」

鳥海「……あり得るわけですね」ムー

摩耶「なあ、あの罠って、1人ひとつだと思うか?」

潮「え? は、はい、多分そうだと思います」

摩耶「実際に姿を現したのが4人、明石が感じた気配が2つだとしたら、6人はここにいたことになるよな」

摩耶「で、罠の種類によって受け持ってるやつが別々だとしたら、今まで報告があった罠の数だけ侵入者がいるってことだよな」

摩耶「あいつらどうやってそんな大人数で忍び込んだんだ?」

全員「……」

潮「そ、そういえば、どうやってそれだけの人数が、こんな辺鄙なところにある、それも鎮守府なんてところに!?」

朧「侵入経路がわからないよね……」

摩耶「明石、お前は敷地内の抜け道とか知らないか?」

明石「工廠の中ならある程度の勝手もわかりますが、本館は把握してないですね」

摩耶「はっちゃんはどうだ? 海底トンネルとか見つけたりしてないか」

伊8「んー……鎮守府付近には見たことない」

摩耶「アタシたちもそこから入って挟み撃ちにできねえかな、って考えたんだけど、難しいかぁ」

摩耶「……んじゃ、明石は戻って本部に報告、アタシたちは追撃だ」

摩耶「運がいいとはいえ一度撤退させてるからな、あいつらもこっちに意識が向くはずだ」

鳥海「明石さん、五月雨を呼んできてください。進むなら当初の通り6人で進みましょ」

摩耶「おし、五月雨の合流を待って進軍だ!」


摩耶「五月雨でいいのか?」

鳥海「彼女、出撃したけど本館の中に入ってなくて、何もしてないってしょんぼりしてたから……」

摩耶「くそっ、しょうがねえな」

 * 鎮守府 2階 *

提督(如月が捕らえられて1分……ってとこか? 何を企んでやがる)

提督(だが、おかげで薄暗さに眼も慣れた……)

提督(この女の得物は馬鹿でかい鎖鎌……細い腕の割にこんな武器じゃ、腕力はかなわねえか?)

 コツ コツ コツ

女の子の声「……やっと、おとなしくなってくれたのかな」

提督(また別の女……こっちは随分と若い……こいつが黒幕か?)

女の子「……」

提督(ロリータファッションってやつか。ひらひらした衣装に……あの本はなんだ?)

提督(こちらは丸腰……せめて執務室にある拳銃がありゃあな……)

提督「……お前らの目的はなんだ」

女の子「……うーん」

女性「……まだ、お目覚めになっていないようですね」

女の子「そうみたいだね」

提督(なんだ? 何を言っている?)

女の子「……それを説明するには、まずぼくの話を聞いてもらう必要があるんだ」

女の子「さっき捕まえた女の子は無事だよ。安心して」

提督「……信用できないな」

女の子「彼女も君の仲間と知らずに怪我をさせてしまったからね。今は治療させてもらってる」

女の子「もっとも、捕まえないと確かめられなかったから、こうせざるを得なかったんだ」

女の子「これからは、ぼくの仲間たちがこれ以上君たちに手を出さないようにするよ」

女の子「捕えた彼女がいる場所で話をしようか。ついてきて」

提督(罠か? だが、如月が捕らえられている以上は迂闊な真似はできねえが)

< イヤァァァァ!!

提督「!? 今の声……暁か電、か?」

女の子「……あの辺にいるのはクラーケンだね。止めさせようか?」

提督「……とめて……くれるのか?」

女の子「うん」

提督「……わかった。一緒に行く、だから助けてやってくれ」

女の子「うん、もちろんだよ。他の子も解放してあげないとね」

女の子「それにしても良かった、信じてくれて」

女の子「自己紹介、しておくね。ぼくの名前はニコ。ニコ=エレメンタル」

ニコ「そして、彼女はニーナ」

ニーナ「ニーナです。よろしくお願いいたします」

ニコ「さ、行こう。歓迎するよ、ぼくの魔神様」

提督「……は……!?」

 * 執務室 *

提督(まさか執務室に案内されるとはな)

提督(このガキ、俺をマジンさまとか呼んだが、いったい何を考えてる)

ニコ「キサラギ……だったかな。彼女の治療はもうすぐ終わると思うよ」

提督「なんだ? こんなドア、執務室になかったよな」

ニコ「君が目覚めたからこのドアができたはずなんだけど、まだわからない?」ギィィィ

ニコ「ほら、どうぞ。ここがぼくたちの住み家だよ」

提督「な……なんだここは!?」

ニコ「ぼくたちの本来の住まい。魔神様の封印神殿の一室だよ」

提督(建物の間取りからすれば、ここは資料室のはずだ! なぜこんなスペースが存在する!?)

提督(古い石造りの部屋に骨董品のような調度品……あれは祭壇か? 装飾がすごいな、片手間で作ったような代物じゃない)

提督(こんなもの、俺は知らねえぞ。初めて見るものばかりだ、なのになんで……見覚えがある感じがする?)

ニコ「まだ思い出せないの? ねぼすけだなあ、きみは」

提督(……こんなもの、見たことはない。こんな場所、見たことがないはずだ。どこで、俺は見たっていうんだ!?)

ニコ「思い出して。ぼくたちがすべきことを」

ニコ「思い出して。ぼくたちが人間に受けた仕打ちを」

提督「ぐ……!?」ズキッ

ニコ「ぼくたちを封印した人間の跋扈を、許してなんかおけないんだ」

提督(なんだ……こいつ、なにをした)

提督(頭が、痛い……!?)グラッ

ニコ「さあ、目を覚まして、魔神様」

ニコ「『人間狩り』の時間だよ」

提督「……っ!?」フラッ

ニコ「おっと」ガシッ

ニコ「気を失ったのかな? 世話が焼けるなあ」

 *

 * *

 * * *


提督(………)


提督母「提督、なに独り言を言ってるの?」

提督(幼少)「えっ? ここにいる妖精さんとお話ししてたの!」

提督母「そ、そう……?」

提督(幼少)「?」


少年A「妖精なんてどこにいるんだよ!」

提督(少年)「いるよ! さっきだって話してたんだ!」

少年B「嘘つき! もう遊んでやらないからな!」

提督(少年)「……」


提督(少年)「俺は嘘なんか言ってない!」

提督母「いい加減にしなさい! すみません先生、うちの子が迷惑を……」

先生「いえいえ……良ければほかの学校か、病院を紹介しますよ」

提督(少年)「……なんで」

提督(ああ、これは夢か。妖精が見えるのを、誰も信じてくれなかったころの……)


学生A「よお、お前小さいころ『妖精が見える』とか言ってたんだって? ウケる!」

提督(学生)「……」

学生A「『妖精くん』って呼んでいい? ギャハハ」

提督(学生)「……」ギロッ

 バキッ ガッ

学生B「お、おい、なにやってんだよ提督! おい、止めろ!」


先生「提督、お前また喧嘩したのか」

提督(学生)「……俺からは手を出してない」

先生「いくらテストの点数が良くてもなあ、暴力的な上に頭がおかしいなんて噂が立つんじゃ、ろくな人間になんねえぞ?」

提督「……くそが」ギリッ


先生「すみませんが、これ以上は私の手に負えません」

提督父「そうですか……出来の悪い息子で申し訳ありません。ほら! お前も頭を下げるんだ!」グイッ

提督(学生)「……」


提督父「提督! どこへ行く気だ!」

提督(学生)「出ていく。もうここにいたくない」

提督父「貴様は弟と違っていつもくだらん事ばかり言いおって! 勘当だ! 出ていけ!」

店長「おい、お前そんなに無愛想なんだ? ちっとは笑えよ」

提督(バイト)「……生まれつきです」

店長「そんなわけあるかよ! ったく、使えねえ奴だな!」

提督(バイト)(なんで俺は、ここまで言われて耐えようとしてんだ……?)


提督(ああ、そうだ。そんな時だ……肩に妖精を乗せたやつが来たんだ)


士官「……なあ、君。もしかして、妖精が見えるのか?」

提督「……!」

士官「だとしたら、一度海軍に来てみないか。君に『提督』の素質があるかもしれないんだ」


中将「特定の、素質ある人間以外には妖精の姿が見えんのだ。君もおそらくはそれでつらい思いをしただろう」

中将「そして、妖精を見える人間の中でも、妖精の声を聴くことのできる者はさらに少ない」

中将「妖精と意思疎通できる人間は貴重だ。君さえよければ、我々とともに来てほしい」


中将「では、提督君には○○鎮守府にいる少佐の配下に入ってもらう」

中将「少佐は私の息子だ。何かあれば少佐を頼ってくれ」

提督「はい、ありがとうございます」

中将「頼むぞ、提督『准尉』。君の働きに期待しているぞ」


提督(こうして俺は海軍に、特別に准尉として受け入れられた……俺という人間の存在を認めてもらえたことが嬉しかった)

提督(だからこそ、あの少佐の存在が忌々しかった)

少佐「早速だが君には××国××島鎮守府に行ってもらう」

提督(××島? 辺境じゃないか!)

少佐「そうそう、君のご両親に挨拶してきたよ。弟さんは優秀なんだってね」

少佐「君の着任にあたって、少しばかり包んでいったら大喜びでね」

少佐「君のことをよろしくと言われてきたよ。だから心配しないで行ってきてほしい」ニタリ


提督(奴にしてみりゃあ厄介払いだったんだろう)

提督(奴の素行を知る妖精が俺に何か吹き込む前に、実家にも根回しして僻地に飛ばして飼い殺し)

提督(そこに拠点としての重要性もなければ、艦娘も寄越さず、食料も資材供給もたまにしか来ない)

提督(初期艦の存在も知らされてなければ、入渠ドックも建造ドックも壊れてて使い物にならない)

提督(奴は暗に、ここでくたばれと言っていたわけだ)

提督(我ながらよく腐らなかったな……いや、もう腐ってたか)

提督(少佐……今は昇進して大佐だったな。奴にただ一矢報いたい一心で生き延びようとしてたんだよな)

提督(妖精たちがいなかったら、俺はもっと荒んでいただろう)

提督(人間なんかやめちまいたい、って、何度思ったことか)


提督(だが、俺はまだ……)

 * * *

 * *

 *

 * 封印神殿の一室 *

提督「……ん」

ニコ「……目が覚めた?」

提督「……何をしている」

ニコ「ひざまくら」ニコ

ニコ「たぶん今、君はいろんなことを思い出してるから、多分混乱してると思うんだ。だから、今はお姉ちゃんに甘えていいんだよ」

提督「お姉ちゃん……?」

ニコ「そう。ぼくのことは、お姉ちゃんって呼んでね」ナデナデ

提督「お、おお……」トローン

提督(こいつの手つき、やばいくらい気持ちいいな……金剛になった気分だ)

提督「って、ちょっと待て!」ガバッ

提督「お姉ちゃん、だと!? お前、そのなりで俺より年上だってのか」

ニコ「うん、そうだよ」ニコニコ

提督(挑発するつもりで馬鹿にしたんだが……マジかよ)

ニコ「だから、遠慮しないでもっと甘えてくれてもいいんだよ」

提督「……おままごとには付き合いきれねえ。そんなこと言う奴は金剛だけで十分だ」

ニコ「素直じゃないなあ」

提督(……こいつが俺に敵意がないことはわかった。むしろ俺個人に対しては好意を抱いてるようにも思えるな)

提督(苦手だぜ)

ニコ「そういえば、近々、君が憎々しく思っている人間たちが、この屋敷に来るんだよね」

提督「……なぜそれを?」

ニコ「この書類に書いてあったからね。ぼくたちなら君の望むとおりに歓迎できる」ピラッ

ニコ「喜んで手伝うよ、魔神様」

提督(このファックス……大佐の所の秘書艦の赤城が送ってきてくれたのか……)

提督(あの糞大佐を……あいつを罠にかける……か)

提督(できるんだったら気持ちがいいだろうな。だが……俺の独断でそんな真似をすれば、あいつらを守れねえ)

提督(それに……)

提督「俺の部下を傷つけたお前らを家族扱いしろだと? 馬鹿も休み休み言え」

ニコ「それはぼくたちが悪かったと思ってるよ。ごめんね」

ニコ「ただ、ぼくたちを呼んだのが君で、君がぼくたちの主だっていうことは理解して欲しい」

ニコ「ぼくたちはさっきまでここの事情を知らなかったし……これはお互いの思惑のすれ違いだよ」

ニコ「お互いの理解ができれば、ぼくたちと彼女たち、結構いい友達になれるんじゃないかな」

提督「家族を名乗りたいがための懐柔策か?」

ニコ「それは違うよ。ぼくたちは似た者同士だもの」ニコ

提督「似た者同士……?」

ニコ「もう一度言うよ。君は、ぼくたちの力を欲したから、必要とされたから、ぼくたちがここにいるんだ」

提督(……まさかな)

提督「……艦娘たちと話がしたい。返事はそれからでも?」

ニコ「うん、いいよ。キサラギも連れて行ってあげて、そろそろ治療が終わったはずだし」

今回はここまで。

サービス終了の決まったゲームのキャラを題材にするのもどうかと思いますが、どうしても書きたかったので、ご容赦いただければ。

次回、如月と愉快なメディウムたち。


シリアスなところ申し訳ないがクラーケンの触手に弄ばれている電ちゃんの描写が足りないのではないか

>>77
あまり過剰にすると別の板向けになりそうなのですが加筆しました。

続きです。

 * 別の封印神殿の一室 *

 ピチョン

如月(……水音?)

如月(……私、どうなっちゃったのかしら)

如月(司令官をかばった後、あのハンマーに突き飛ばされて……)

如月(多分、捕まっちゃった、のよね)

如月(体があったかいし、ふわふわするし……もしかして天国に来ちゃった?)

如月(こ、怖いけど、目を開けてみないと……)オソルオソル

 パチリ

如月(…………こ、ここどこ!?)キョロキョロ

如月(石垣……じゃないわよね、これって、石壁……?)

如月(それで私は……)チラッ

如月(……裸っっ!?)ドキーーン

如月(なにこれ? 私ったらいつの間にお風呂に入れられてるの!?)チャプ

如月(ど、どうしよ、どうしよう! こんな姿、ほかの人に見られたら……)

ニーナ「あら? 目を覚まされました?」

如月(えええ? 誰? 誰なのこの綺麗な人!?)ドキッ

ニーナ「失礼と存じますが、お召し物はこちらでお洗濯しました。ここに置いておきますね」

如月「えっ? ええ……あ、ありがとうございます……?」

ニーナ「そのお風呂は魔力槽と言って、私たちが傷を癒す時に使う特別なお風呂です」

ニーナ「もう痛みとかはないはずですが、どうですか?」

如月「……え、ええ、そういえば、もう大丈夫みたい、です」

如月(消えないって言われてた古い傷もすっかり消えてるわ……入渠ドックと原理が違うのかしら)

ニーナ「良かった、魔力槽があなたがたにも使えたみたいで」ニコ

ニーナ「申し遅れました、私はニーナ。ペンデュラムのメディウム、ニーナと申します」

如月「あっ、わ、私は、如月、です。睦月型駆逐艦の2番艦よ」

ニーナ「クチクカン……? 船のメディウム……ではないのでしょうか?」

如月「あ、あの、ごめんなさい? まず、あなたのお名前はニーナさん、よね?

如月「そこまではいいんだけど、メディウムとか、ペンデュラムとか、って……どういう意味なの?」

ニーナ「え? それは……」

???「やあやあニーナ君、彼女、やっと目を覚ましたみたいだねえ!」

ニーナ「ルミナ!?」

ルミナ「いやあ待ちくたびれたよ! ようやく『艦娘』と対話できそうだと聞いたから、居ても立ってもいられなくてね!」

ルミナ「ふむ、キサラギ君と言ったね? 私はルミナ・ヘルレーザー。早速ですまないが、君のことを調べさせて欲しいんだ」ズイッ

如月「きゃああ!?」

ニーナ「ルミナ! そうやって人をなめまわすように見るのはやめてくださいと言ってるでしょう!?」グイッ

ルミナ「や、やめたまえニーナ君! 私の知的好奇心の邪魔をしないでくれ!」ズルズル

ルミナ「それになめまわすとかいかにも卑猥なことをしているような誤解を生む表現は気に入らないね!」キリッ

ニーナ「だったら見られる方の気持ちにもなってください! どうしてあなたの視線から逃げるのか考えて!」

ニーナ「いつもいつも穴が開くほど人を観察して、みんな安心できないって言ってるんですよ!」

ルミナ「いやいやいや、私は間違っても仲間にレーザー照射したりしないぞ!?」

ニーナ「そういう意味じゃありません! もう、あなたは書庫から出てこないで!」グイグイグイ

ルミナ「そ、そんな殺生な! 私は彼女が目を覚ますまで待ったんだぞ!? ひどいじゃないかこの仕打ちは!」ズルズルズル

如月「……な、なんだったのかしら」

???「ごめんねー、ルミナってば研究大好きだから、やたらと張り切っちゃってて~」

如月「きゃ!? あ、あなたは……?」

ナンシー「あたし? あたしはナンシー! 髪の毛をセットしたりするのが得意な、フォールニードルのメディウムで~っす!」

ナンシー「如月ちゃんだっけ? 驚かせちゃってごめんね~? マスターが話があるっていうから、着替えて一緒に来てくれる?」

如月「は、はい……」

ナンシー「タオルはこれね、自由に使って! それじゃ、終わったら呼んでね~!」

ナンシー「あ、髪の毛セットしたいときは言ってね! あなた、あたしと似たカンジのウェーブヘアだし、ビシーッと仕上げてあげるよー!」

如月「え、あの、ありがとうございます……」

如月(いったい、何がどうなってるのかしら???)

 * * *

ナンシー「ニコちゃーん! 如月ちゃん連れてきたよー!」

ニコ「来たみたいだね」

如月「し、司令官……? 司令官!」ダッ

提督「如月……! 無事だったか……! 変なことはされてないな?」

如月「……え、えぇと……」

ニコ「変なことはしてないつもりだよ。お風呂に入れてあげたくらいかな」

提督「風呂?」

如月「あの、ここの人たちの治療施設みたいなんです。入渠ドックのようなものかしら」

如月「それに入れてもらってたら、古い傷まで綺麗に消えてて……///」ピラッ

提督「こんなところで見せるな。まあいい、お前が回復してるってことは、嘘じゃないようだな」

ニコ「さてと、みんなと話してくるんだったね? それならぼくも一緒に行って話がしたいな」

ニコ「ナンシー、みんなを呼んできて。ぼくたちも挨拶しに行こう」

 * 鎮守府 1階階段そばの通路*

クラーケン <ヴジュルルルル…

電「ぐ、うぐ……」ミシミシミシ

電(体が、ばらばらに引き千切られそうなのです……!)

電(さっきから、締め上げられたりゆるんだり……電の体力を消耗させる気でしょうか?)

電(でも、電は、暁ちゃんたちが消えるのを見てることしかできなかった)

電(電が……みんなの足を引っ張ってしまったのです……だから、もう抵抗なんかしないで……)

電(電は、全部壊されてしまったほうが良いのです)スッ

電(どうせなら、みんなと同じ場所に……いきたかった、けど)グスッ

クラーケン <ジュルルル…

電(……拘束が弱まったのです?)

クラーケン <ニ゙ュル

電「はわわわわ!?」ビクッ

電「ど、どこを触ってるのですか!?」ヨジリヨジリ

クラーケン <ヴニュヴュニュヴニュニュニュ…

電「ひうっ!? せ、背中を……く、くすぐらないで欲しいのです!?」ビクッ

電「な、なにが……いきなり触り方が、変に……ぱうううう!?」ゾクゾクッ

クラーケン <ヌチヌチヌチヌチ

電「いやあああ!? そ、そこは汚いのです!?」アシトジッ

電「ひゃあ!? ひ、ひっくり返しちゃ駄目なのです!! ううう、は、恥ずかしいよぅ……」マッカ

クラーケン <ウジュル ヂュルヂュルヂュル…

電「ひっ!? そ、そんなにたくさん……や、やめ、やめて……電を、どうする気なのです……!?」マッサオ

クラーケン <ジュグワアアアア!

ニーナ「そこまでよ!!」

電「!?」

クラーケン <ピタッ

ニーナ「マリッサ! ベリアナ! キュプレ! 侵入者を解放して。集合よ!」

クラーケン <シュルルルル…

電(……え?)

電(拘束が緩んで……)ストン

電「た……助かった、の、ですか?」

ニーナ「ひどいことをしてごめんなさい」

ニーナ「みんなもうすぐ戻ってくるから、一度お屋敷の外に出て待ってていただけますか?」

電「戻って……くる?」

ブラックホール <グォォォォ…!

電「!?」

ブラックホール <ギュワァァァァ…!

ブラックホール <ポイッ

古鷹「きゃあっ!?」ガシャッ

五十鈴「いったぁ!?」ドシンッ

暁「ふぎゃっ!?」ベシャッ

電「!?」

ブラックホール <シュウウウ…

五十鈴「くぅ……な、なんだったの!?」

暁「あ、あいたたた……あれ? 電? どうして電がここに?」

電「もどって、きたのです……みんな、元の場所に戻ってきたのです!!」ダキツキッ

古鷹「きゃっ!? 電!?」

電「良かっ……よ……ふぇぇぇん」グスグス

暁「もう、電ったら! 怖かったのね、よしよし!」

古鷹「……私たちは夢を見てたんでしょうか」

五十鈴「夢じゃないみたいよ? 電の体にあの化け物の吸盤のあとがついてるもの」

電「はっ、そうなのです! 知らないお姉さんが建物から出て待っててって言ってたのです!」

暁「不知火お姉さん? い、電……あなたいつの間に陽炎型に改装されたのー!?」ガーン

電「あ、不知火ちゃんじゃないのです。青くて、長い髪の毛の……」

古鷹「お姉さん、ですか?」

電「はいなのです……あれ? いなくなってしまったのです……」

暁「どうしよう……黒潮さんから制服譲ってもらった方がいいのかしら」

五十鈴「違うって言ってるでしょ」

今回はここまで。

次回、 パンツ! パンツです!

続きです。

 * 鎮守府 正面ホール *

吹雪「はぁ、はぁ……キリがないなあ」

初雪「……もう帰りたい……」

不知火「若干ですが、攻撃の間隔があいてきた気がします」

朝潮「あちらもだいぶ疲弊している、と見ていいのでしょうか」

黒潮「せやな~、そろそろ弾切れ起こしてて欲しいなあ」

霞「そう見せかけて最後に一発残しておくのは常套手段でしょ!」

不知火「……静かに。奥から足音が聞こえます」

初雪「!!」

霞「しびれを切らして出てきたってところね!」

朝潮「首謀者の登場ですか……!」ジャキッ

吹雪「新手って可能性もあるよ、油断しないで!」

黒潮「よっしゃ、気張るで!」

不知火「来ます。接敵まで3、2、……」

吹雪「……」ゴクリ


ナンシー「は~いみんなぁ~、戦闘中止~♪」キャピーン






吹雪「ズコー!?」バターン

初雪(吹雪ちゃん沈黙に耐え切れなかった!?)

朝潮(吹雪さん!? パンツがまる見えです!)

霞「な、なんなのよあれ……ちゅ、中止?」

不知火「……黒潮。なんですかあれは」ギロッ

黒潮「なんでうちに聞くん!?」

不知火「吹雪さんにあんなベタなリアクションを仕込むのはあなた以外に考えられません」ズイッ

黒潮「そっちなん!?」ガビーン

朝潮(吹雪さん! さっきからずーっとパンツがまる見えです!!)

初雪(朝潮はなんでパンツをガン見してるの……)

霞「ちょっと、むこうでも揉めてるみたいよ!」

リンダ「なんでやナンシー! リンダちゃん頑張っとったやん! ここまでやって棄権とか聞いてへんで!」

ナンシー「そうじゃなくって~、仲良くなれそうだから戦うのやめよ、って話みたいよ~?」

リンダ「いやいやいや、止める言うても、もうちょっと他に止め方とかあるやんか!」

黒潮「ほんまや! なんやあの停戦宣言! 緊張感ぶち壊しやんか!」ズカズカズカ

リンダ「おお~、なんや姉さん、さっきまで敵やったんに言うてくれるなあ! もっと言ったってや!」

黒潮「おかげでうちの子ずっこけてパンツまる見えやで!」

リンダ「んなわけあるかい!」ビシーッ


霞「なにあの茶番」ピキピキ

不知火「頭にきました」ピキピキ

初雪(加賀さん!?)

黒潮「いやいや姉さんほんまやで、あれ見てみいや」

リンダ「まさか~、いくらなんでもそんなベタなリアクションとる子がおるわけ……」チラッ

吹雪のパンツ「やあ」チラッ

リンダ「ほんまや! 白いで! めっちゃ白い!」ガビーン

黒潮「そこ驚くとこちゃうねん!!」ビシーッ

ナンシー「なんか、すっごい呼吸ぴったりだけど、知り合い?」

黒潮&リンダ「「うんにゃ、まったくの初対面やー」」

ナンシー「えー……?」

不知火「……黒潮」ゴゴゴゴゴゴ

黒潮「はっ!」

不知火「あなたはどうして敵と馴れ合っているのです」アタマガシッ

黒潮「いたたた! 不知火堪忍! 堪忍や!!」ギリギリギリ

リンダ「ちょっ、ね、姉さんこの子責めんといたって!」

???「リンダ。あなたも調子に乗りすぎです」

リンダ「はっ! デ、デニやん……」

ディニエイル「ディニエイルです。勝手に略さないように。あなたも頭を冷やしたほうが良いですよ」エリクビガシッ

リンダ「ああアカン、アカンねん! うち寒いんはほんまようアカンねん! デニやん手ぇ冷たいん!」

黒潮「なんや、もしかして氷の矢のお姉さんなん?」

リンダ「せやで、凍るど・あろーのメディウムや」

ディニエイル「コールドアローです」ピキピキピキ

リンダ「寒い! 寒いて! 冷気当てるのやめーや!」

黒潮「いやー、ぶっちゃけその洒落もなかなか寒いで」

不知火「ツッコミ入れてる場合ですか」メキメキメキ

黒潮「痛い! 痛い痛い! 不知火痛い!!」

不知火「……」ジッ

ディニエイル「……」ジッ

黒潮&リンダ((あかん、これ一触即発ムードや!))ビクッ

不知火「…………」

ディニエイル「…………」

黒潮&リンダ((ヤバいヤバいヤバいヤバい))ドキドキ

不知火「私の身内が失礼いたしました」フカブカ

ディニエイル「こちらこそ、ご無礼を」フカブカ

黒潮&リンダ((……ほっ))

不知火「行きますよ黒潮」

黒潮「い、痛い痛い! 行くから手ぇ放してえな!」

ディニエイル「私たちも行きますよ」

リンダ「服引っ張らんといて! 伸びる! 伸びる~!」


朝潮「吹雪さん、吹雪さん!! いつまでパンツ見せてるんですか!!」

初雪(朝潮、明らかにパンツに話しかけてる……)

朝潮「吹雪さん! ……も、もしかして」

初雪「……うん、ずっこけた時に頭を打って気絶してるみたい」

霞「なにやってんのよもう!!」

 * 鎮守府 食堂 *

五月雨「こちらも異常なしです!」

鳥海「食堂の中までは安全を確保できたみたいね」

摩耶「だな、あとはここからどっちに進むか……」

潮「! だ、誰か来ます!」

伊8「! この気配……!」

シルヴィア「はぁい♪」

オボロ「……」

摩耶「お前ら……!」ジャキッ

朧「まさか正面から堂々とくるなんて!」ジャキッ

シルヴィア「はいはいちょっと待って、その物騒なものは仕舞ってくれる?」

シルヴィア「こうやって最初から出てきたんだもの、敵意がないことくらい察してくれないかしら?」

鳥海「どういうことです?」

シルヴィア「魔神さん……じゃなかった、提督さん、だったっけ? 彼が、私たちのまとめ役とお話してるの」

シルヴィア「それでね、本来なら私たちとあなたたちは、戦うような間柄じゃない、って話なのよ」

摩耶「はぁ?」

シルヴィア「これからその子が外に出て、あなたたちにそのことを話したいから、外に集まってほしいってお願いに来たわけ」

シルヴィア「まあ、いわゆる降参、ってやつかな?」

潮「い、いきなりそんなことを言われても……」

鳥海「信用できかねますね」

シルヴィア「んー、やっぱりそうなるわよね~」フゥ

シルヴィア「それじゃ、私も一緒に外に行くから。どう?」

摩耶「あぁ!?」

オボロ「シルヴィア!?」

シルヴィア「大丈夫よ、早かれ遅かれみんな外に出て挨拶するんでしょ?」

???「ねえ、それならあたしたちも一緒に行っていいかな?」

シルヴィア「アーニャ? まだ遊びに行くわけじゃないわよ?」

アーニャ「うん、だけど危なくしなきゃいいんでしょ? だからミーシャも一緒に! いいよね!」

シルヴィア「ああ、ちょっと待ちなさい、あっちにも都合があるでしょ」

シルヴィア「まあそういうわけでさ、あなたたちに危害を加える気はないから、私たち3人、同行していいかしら?」

摩耶「………」ポカン

鳥海「摩耶、どう思う?」

摩耶「あ、ああ……なんか毒気抜かれちまったなあ」

五月雨「さっき聞いた話よりも、ずっとフレンドリーな人たちですね?」

摩耶「アタシだって聞いてねえよ、あんな釣竿持ったちっこい奴らもいるとか全っ然だし……」

朧「でも、このまま戻れって言われても……」

摩耶「あー……連れて行くしかねーよな、やっぱり」

潮「だ、大丈夫なんですか!?」

摩耶「あのシルヴィアってやつはともかく、後ろのチビ2人は害がなさそうなんだよな……」

伊8「……でも、罠なんだよね」

摩耶「ああもう! わかったよ、連れてくよ! その代わり、変な素振り見せたら撃つからな!」

アーニャ「やったぁ! あたしアーニャ! こっちは妹のミーシャだよ!」

ミーシャ「よ、よろしくおねがいします」ペコリ

シルヴィア「私はシルヴィア。よろしくね」ヒラヒラ

摩耶「……あ、ああ、よろしくな」

オボロ「シルヴィア、それがしはこの件、ニコ殿に報告して参る」

オボロ「……朧殿、先刻は申し訳ない。縁あって同じ名前のよしみ故、貴殿に3人をよろしくお願い申し上げる」

朧「え? あ、はい!」

オボロ「では、御免!」シャッ

潮「……なんか、気に入られちゃったのかな」クスッ

朧「うーん……まあ、悪い気はしないけどね」

今回はここまで。

次回、 召喚。

みんなが辿りついたら 提督が誰かしらとイチャイチャしてた という定番ネタを見たいなこれはw

>>98
正直、ここの鎮守府の提督が、誰かとイチャイチャしているイメージがわかないんです……。
誰かがベタベタしようとして阻止される絵ならイメージ出来るのですが。

では、続きです。

 * 鎮守府 入渠ドック前 *

大和「それで、みんな戻ってきたんですね」

古鷹「提督と如月は心配だけど、完全に向こうのペースでしたから」

五十鈴「ブラックホールに飲み込まれるとか、もう経験したくないし」

電「電ももうこりごりなのです」

霞「私もよ。一体何しに行ったんだか」

吹雪「で、でも、大きな被害が出なかったからよかったよね!」

加古「うちらはそうでもなかったけどなあ。主に青葉が」

若葉「ああ、残念だった」

初春(残念なのは若葉のほうじゃ。今後が心配じゃのう……)

明石「摩耶さんたちも遅いですね……」

最上「酒保に行った空母組も戻ってないんだけど……」

利根「……いまひとつ不安じゃの」

筑摩「艦載機、飛ばしておきますね」

朝潮「来ました! 摩耶さんたち戻ってきました!」

利根「む、では艦載機は酒保だけで良さそうじゃ……な?」

陸奥「あれは……誰かしら?」


アーニャ「すごいね! 海ってでっかいんだ!」キラキラキラ

ミーシャ「うん、どんな魚がいるんだろう!」キラキラキラ

シルヴィア「ほらほら二人とも、先に挨拶しに行くわよ。あとでいくらでも海に行けるんだから」

アーニャ&ミーシャ「「はーい!」」


扶桑「ねえ鳥海? あの子たちは一体?」

鳥海「説明が難しいのですが……あの子たちが今回鎮守府を乗っ取った『罠』なんだそうです」

山城「は? あの釣竿持った子供たちが?」

摩耶「話を聞くとそうらしいんだよ。っつうか、実際そうなんだけど」

鳥海「でも、海に囲まれた島にあるこの鎮守府にいながら『海を見たことがない』って言ってましたし……」

摩耶「あいつらがここにいること自体、場違い感がすげえんだよな」

陸奥「どういうことなのかしら……」


由良「提督が出てきたわ!」

金剛「テートク!!」

長門「無事か!」

提督「……おう。ちょっと狐につままれた気分だけどな」

電「如月ちゃんも無事なのです!」

加古「で、後ろの女の子は誰だぁ?」

摩耶「今回の事件の犯人か?」

 ザワザワ

提督「よし、お前らちょっと静かにしろ。簡単に言うと、こいつらが俺の部下になりたいらしい」

 エー? ドウイウイコトー?

ニコ「改めて自己紹介するね。ぼくはニコ・エレメンタル」

ニコ「そして、ぼくたちはメディウム。魔神様の忠実なるしもべ」

ニコ「君たちにわかりやすく言うと、罠の化身、と呼んだほうがいいかな? 君たち艦娘が艦の化身であるように、ぼくたちは侵入者を脅かす罠の化身なんだ」

ニコ「君たちとぼくたちは、仕える主の立場こそ違うけれど、本来なら親戚のようなもの。仲良くできるんじゃないかな」

 ナンノコト? ドウイウコトダ?

ニコ「手っ取り早く、証拠を見せようか。ペンデュラム」

ペンデュラム <ヴオンッ

暁「な、なにあれ!」

三隈「刃物が空中に!?」

ペンデュラム <ヴオンッ ヴオンッ

提督「でかい振り子、だからペンデュラムか……」

最上「あんなの直撃したらただじゃすまないよ」

潮「で、でも、どこにぶらさがっているんでしょう……!?」

長門「上に何もないのに……手品にしては物騒が過ぎるな」

ニコ「彼女に指示を出すのがぼくの仕事で、このペンデュラム自体はぼくの能力じゃないよ。さ、ニーナ、もういいよ」

 シュンッ

ニーナ「これで、よろしいでしょうか?」クルッ ストン

電「あっ!! あのときのお姉さんなのです!?」

ニコ「あのペンデュラムが彼女だよ」

提督「てえことは、罠の種類の数だけ、化けられる奴がいるってことか」

ニコ「そう。今回はみんな各々の判断に任せたけど、本当はぼくが罠の発動タイミングを指示してるんだ」

武蔵「なるほど……摩耶の予想の通りだな」

摩耶「なあ、一つ質問いいか?」

ニコ「なにかな?」

摩耶「あんたたちは……いったいどこから来たんだ?」

ニコ「正直、こんなことは初めてなんだけど……」

ニコ「ぼくたちは魔神様が封印されている、山奥の神殿に住んでいるんだ」

ニコ「それがある日、神殿内に扉が一つ増えていて、それがこの場所、この建物の執務室につながっていた」

ニコ「その部屋からは魔神様の気配が強く感じられたから、ぼくたちは魔神様が復活したと考えて、活動を始めたんだ」

摩耶「はあ!? 最初っから執務室に出入りできてたのかよ!」

ニコ「でも、ぼくたちを召喚したはずの建物の中に魔神様がいない。そう思って探しているところに君たちがいて……」

武蔵「慌てて追い出そうとしたのか?」

ニコ「魔神様を討伐しに来たのかと思ったんだ。ぼくたちの世界では魔神様の敵ばかりだったから」

ニコ「ぼくたちにとっての侵入者を追い出していく中で、異質だけど懐かしい雰囲気が一つ……それが執務室の主、提督だったんだ」

摩耶「提督が来た時点で出てくれば良かったじゃんか」

ニコ「実際に会うまで確証を得られなかったからね」

ニコ「それに、君たち……『カンムス』に関する文献の解読に手間取っちゃった」

ニコ「とにかく、提督に会うことでぼくたちは確信したんだ。彼こそが、ぼくたちが仕える魔神様だって」

金剛「Hey, wait a moment!」

金剛「ドコのシューキョーだかわかりまセンが、マジンサマに用があるならマジンサマを探してくだサーイ!」

金剛「どうしてテートクをマジンサマにするんデスカ? テートクには関係のない話デース!」

ニコ「関係ないだなんてとんでもない、ぼくたちが召喚されたこと自体が彼が魔神様である一番の証左だよ」

提督「どういう意味だよ」

ニコ「人間が魔神様になる事例には、いくつかの本人の素質が関係するんだけど」

ニコ「ひとつ、ほかの人間にはない能力を持っている」

如月(妖精さんと意思疎通できる力かしら……)

ニコ「ふたつ、たくさんの命の生死を目にしている」

最上(確かに『墓場島』なんて呼ばれる島に住んでるくらいだし……)

ニコ「みっつ、人間に、強い憎悪を抱いている」

艦娘全員「!!」

ニコ「その様子だと、思い当たる節があるんじゃないかな?」

金剛「テートク!? こんな訳のわからない相手に耳を貸す必要 Nothing デース!」

金剛「テートクは他人の苦しみがわかる人デス……そんな人じゃありまセン」

提督「……いいや、そんな人だよ、お前の提督は」

提督「俺だけじゃない、お前も含めてここに流れてきた奴は、少なからず人間にひどい目にあわされて、恨み言吐いたことのある連中ばっかだろ」

提督「ま、吐かせたのは俺だがな」

金剛「...But、それではテートクが悪者になってしまいマス」

提督「ああ、悪者だと思うぞ。戦争は勝ったやつが正しいことになるんだよ。自分が正しいことを思い知らせるために暴力をふるう」

提督「逆に、いくら正論を吐いても負けりゃ賊軍。力がなきゃ正義は語れねえ、今の俺は負け犬の悪者だってんだよ」

金剛「……テートク」

提督「それに、お前ら兵器だろ。何を今更いい子ちゃんぶってやがる」

金剛「テートク、もう、やめてくだサイ」

提督「俺たちが罪を犯していないと主張しても、一度濡れ衣を着せられれば、誰も信じやしないのが現実だ」

提督「別に本物の悪党になるつもりはねえ。ただ、俺が考えてる正しいことのためになら悪党でも人でなしでも構やしねえってだけだ」

金剛「Shut up!」ガシッ

金剛「そうやってわざと誰かを助けるために悪者になって、汚名を一手に背負いこむテートクを、私たちは見過ごせまセン!」

如月「そうよね……司令官は、いつもわざと悪者になりたがるのよね。私たちの代わりに手を汚そうとして」

神通「そのせいもあって、私たちに素直になってくれないんですよね」

黒潮「めっちゃ心配性なくせにな!」

山城「この人は、他人を好きになったり好きになってもらったりすることが不安なのよ、臆病だから」

暁「だ、だから嫌われようとしてるのよね! 山城さんそんなことまでわかるなんて、さすがだわ!」

電「や、山城さんどうして落ち込んでいるのです? 元気出してほしいのです!」

鳥海(そういう理屈を理解したくなかったんでしょうね……自分が同じ境遇だったりしたら、なおさら)

不知火「……まあ、そのせいで第一印象に最悪のシチュエーションを選んできますから救えないのですが」

川内「あー、わかるわかる! ツンデレってやつ? 可愛いよねー!」

大淀「どうせ今回の彼女たちも、なんだかんだ言って同じように受け入れてしまうんでしょうね」

扶桑「考えてみればこんな島、人が訪ねて来ることのほうが珍しいんじゃなくて?」

最上「流れ着いてくるのが艦娘の残骸ばかりで、その子たちを埋葬するのが提督の日常だもんね」

日向「逐一埋葬している提督が悪者というのなら、誰が正しいことになるのやら」

陸奥「朧や吹雪みたいに助かってる子もいるし、決して悪い島なわけじゃないんだけどねぇ?」

吹雪「とにかく! 司令官の身に何があろうと、私は司令官についていきますから!」

摩耶「おいおい、何かあってからじゃ遅えだろ? ここは、あ、あたしが……その、なんだ」

榛名「はい、榛名が提督をお守りします!」

霧島「お姉様、抜け駆けは許しませんよ」

加古「おーい摩耶ー、真っ赤になってないで続き続きー」

 ギャーギャーヤイノヤイノ

ニコ「慕われているね、魔神様は」

提督「うるせえ」

金剛「Hey, Nico ?」

ニコ「? なにかな?」

金剛「私たちは、提督を悪者にしたくありまセン」

ニコ「ぼくたちは、ぼくたちの平和が欲しいだけだよ。まあ、邪魔者は容赦しないけど」

金剛「……お手柔らかにお願いしますヨ?」

ニコ「それもこれからは魔神様次第かな」

ニコ「君たちとぼくたちの違いは、兵器か、凶器か。ぼくはそれだけだと思ってる」

ニコ「そういう意味では、使い方は一緒だからね」

提督「使い方、ね……」ムスッ

ニコ「!」

金剛「……」ニマー

提督「なんだよ」

ニコ「ふふふ、これからよろしくね」ニコッ

ニコ「さて、挨拶も済ませたし、自己紹介は後で各々、で、いいかな」

提督「ああ……そういえばお前ら、何人いるんだ?」

ニコ「ええっと……60人はいたかな?」

提督「ろくじゅ……!?」

ニコ「まだ目覚めていない子もいるから、もう少し増えるかも。徐々にでいいから、覚えていってあげてね、魔神様」

提督「……面倒くせえ」

ニコ「君に逢いたがっている子はたくさんいるからね。ちゃんと会ってあげないとだめだよ?」

提督「……マジ面倒くせえ」

ニコ「ねえ、金剛……? この子はいつもこんな調子なの?」

金剛「Yes, he is everytime コンナ調子 ネ」


霧島「なんというか、意外と理解のある侵入者ですね。提督が不在でなければ、もっとすんなり和解できたのかも……」

金剛「霧島、のんきには構えていられないデース!」

金剛「あのニコというお子様からもわかるとおり、彼女たちも提督のハートを狙ってマース! 油断なりまセーン!」

ニコ(金剛、ちょっと声が大きくないかな?///)

神通「事実のようですし、何か問題でも?」スッ

ニコ(突然誰この人!?)ビクッ

???「オーウ! そのイントネーション! アナタ、私と同じデスカ!?」

金剛「!?」

キャロライン「ハーイ! 私、キャロライン! ハジメマシテ ネ!」

金剛「Oh, pritty girl ! 私は金剛デース! あなたは……留学生デスカ?」

霧島「だとしたら帰国子女の金剛お姉様とは逆ですね。私は金剛型戦艦の4番艦、霧島です。そのお着物は?」

キャロライン「私、一人前のレディーを目指して、淑やかさを勉強してるのヨ!」

暁「レディーですって!? 聞き捨てならないわ!」バッ

金剛「暁、あなたにrivalが出来ましたネー」

暁「毎日牛乳を飲んでる暁の圧倒的勝利に決まってるわ!」フンス

キャロライン「私、舞踊とか、お花のお稽古とか頑張ってるヨ!」

暁「」

霧島「暁ちゃんには予想以上に手強い相手でしたね……どうしました金剛お姉様」

金剛「Ah, Charrolline ? あなたの雰囲気、どこかで感じまシタ……どこデショウ?」

キャロライン「忘れちゃっタノ!? アナタ、私にブッ刺されたノニ!」

霧島「……まさか」

金剛「Oh...」

キャロライン「イエース! 私、ニードルフロアのメディウム、キャロライン ヨ! よろしくネ!」

榛名「あのとげ床が……この子だったんですか!?」

金剛「そうみたいデス……」

比叡「もしかして、お姉様と雰囲気が似てるから気付けたんでしょうか?」

金剛「そんなに似てますカ……」

キャロライン「オーゥ、私も忘れてたケド、魔神様にも挨拶しないとネ! ハーイ、ダーリン!!」

金剛「!?」クワッ

榛名「!?」クワッ

提督「ん、俺のことか?」

キャロライン「そうヨ? 私、キャロライン・ニードルフロア ヨ! よろしくネ、ダーリン!」

提督「ん……おう」

金剛「Stoooooop!! Stop it!!」

榛名「お待ちなさい!!」

金剛「Hey, Charrolline ! Stop call him "Darling" ! I never permit that !」

榛名「て、提督を、だ、『ダーリン』なんて呼ぶような勝手は、榛名が許しません!!」

提督(なんだこの同時通訳)

キャロライン「? どうして許さないノ?」キョトン

金剛「えっ」

榛名「えっ」

比叡(これは手強いです金剛お姉様!)

キャロライン「アナタたちもそう呼べばいいんじゃないノ?」クビカシゲ

金剛「そ、そういう発言は、時間と場所を弁えてデスネー……」ポッ

榛名「は、榛名はまだ、提督とそういう関係では……」ドギマギ

提督(ここへきて照れるのか)

如月「それじゃあ、私はそう呼ばせてもらっちゃおうかしら。ね、ダーリン?」

金剛「」

榛名「」

霧島(何の躊躇いもなく!? 如月……恐ろしい子!)

キャロライン「そういえば、コンゴーたちと戦ってから、休憩してなかったネ」

キャロライン「これからお風呂に行くから、ダーリンも一緒に入らナイ?」ニパー

金剛「No! Nooo!! Stop, Stop just now !!」

榛名「お、お、お待ちなさい!!」

如月(さっきも見たわこのシーン)

キャロライン「どうしたノ?」キョトン

金剛「一緒にお風呂なんてうらやま……いえ、風紀が乱れマース!」

榛名「ああああなたに恥じらいはないんですか!」

キャロライン「私は構わないヨ?」クビカシゲ

金剛「ぐぬぬ」

榛名「ぐぬぬ」

霧島(完全に手玉に取られてますね)

提督「仕事が残ってるからそのうちな」

キャロライン「サーンキューゥ! そのうちでもオッケーネ! ダーリン大好キー!」

金剛「」

榛名「」

如月(こんなにあっさりOKが出るのなら、私もお願いしてみようかしら)

ニコ「待ってキャロライン、魔力槽って一人用だから、二人で入ると狭いと思うよ」

キャロライン「その時はダーリンにだっこして入れてもらうヨ?」

金剛「Shiiiiit !! What a envy situation !!」ジダンダジダンダ

榛名「」ハナヂブパッ

ニコ(それ、ぼくも羨ましいなあ)ハイライトオフ

比叡「榛名!? 立ったまま気絶しないで!」

榛名「は、はい!? 榛名は大丈夫です!?」

比叡「疑問形になってるよ榛名!?」

???「あらあら、この程度で落ち着きのない……随分初心な子がいるのね」

ニコ「あ、やあヴェロニカ、魔力の回復は終わったの?」ハイライトオン

ヴェロニカ「ええ、魔力槽空いたわよ」

ニコ「それじゃキャロライン、君も回復してきなよ」

キャロライン「オッケーね! またね! ダーリン!!」トテテテッ

金剛(……やっと安心できそうデス)

ヴェロニカ「ふふ、あなたが魔神様ね?」チラッ

提督「……提督だ」

ヴェロニカ「私はヴェロニカ、スパイダーネットのメディウムよ。よろしくね、坊や」スッ

榛名(坊や!? しかもいきなり近い!?)

如月「あ、もしかして、あなたがあの蜘蛛の巣の!?」

ヴェロニカ「あら、あなた……元気そうね、良かったわ」スルリ

榛名(さりげなく提督の腕に絡み付いてる!?)

金剛「Stop! Stop!! Stoooooop !!」

金剛「そこのあなた! テートクにくっつきすぎデス! 今すぐ離れなサーイ!!」プンスカ

提督(何度目だ金剛のストップは)

ヴェロニカ「嫌よ」サワサワ

金剛「嫌……!? って、あーーもーーー! テートクのどこを触ってるんデスカ! セクハラデス!」フガー

ヴェロニカ「あら、この程度のスキンシップで燃え上がるなんて……お子様ね」スリスリ

ヴェロニカ「それだけ騒げばもうおねむでしょう? 早くおねんねしたほうがいいわよ、お嬢ちゃん」

金剛「Goddamned !! P-----、P------!!」

比叡「こ、金剛お姉様! 下品ですから中指立てないで!」

如月「金剛さんを子ども扱い……この人も手強いですね」

霧島「といいますか、立て続けに司令を脅かす存在が出てきてるせいで、金剛お姉様は冷静さを削られてますね」

陸奥「……ちょっと待ちなさい」

如月「陸奥さん!?」

陸奥「ヴェロニカ、だったわね。あなた、出会ってすぐに彼を誘惑するなんて、随分お目が高いじゃない」スッ

陸奥「だけど、私たちのほうが彼との付き合いは長いのよ? 簡単にことが進むなんて、思わないことね」ギュ

ヴェロニカ「あら……あなたにできるとでも?」ニヤリ

陸奥「あらあら……見くびられたものね」ニヤリ

榛名(陸奥さんも提督の腕をつかんで睨み合ってる……!)

如月(修羅場だわ……!)

比叡(ひええ、火花が散って見えます……!)

霧島(この状況で面倒くさそうにしてる提督も図太いというか……)

提督(実際、超面倒くせえ)

ヴェロニカ「ふふっ、いいわ、面白そう」スッ

ヴェロニカ「簡単に手に入ったら面白くないものね。ゆっくり、じっくり……楽しんで、いただくことにするわ」

ヴェロニカ「坊や、また後でね」

ヴェロニカ「……ムツ、あなたもね。ふふ」ニヤリ

陸奥「……」キッ

如月「……陸奥さん!」

榛名「す、すごいです! あの人と対抗してみせるなんて!」

陸奥「……」プシュゥゥゥゥ

比叡「あれ?」

陸奥「わ、私、どうしてあんなこと口走っちゃったんだろう……」カオマッカ

霧島「えっ」

陸奥「腕まで掴んじゃって、やだ、ちょっと恥ずかしいっ」ワタワタ

如月「えっ」

陸奥「その、あの、提督ごめんなさい!」ダッ

比叡「あっ」

霧島「……咄嗟の対抗心、みたいなものでしょうか」

如月「陸奥さん、結構無理してたんですね……」

比叡「っていうか、陸奥さんってそういう人だったんですか……?」

金剛「……暁、Ladyへの道は果てしなく遠いデース……」イジイジ

暁「だ、大丈夫よ金剛さん! 金剛さんは私よりずっと大人じゃない!」オロオロ

今回はここまで。

次回、 クラーケンおおあばれ。

では続きです。

五十鈴「提督ー!」

提督「ん?」

五十鈴「提督、電を助けてあげて!」

電「あ、暁ちゃん! 助けてほしいのです!!」ダキツキッ

暁「きゃ!? ど、どうしたの!?」

電「あ、あの人です……あの人が私を捕まえようとするのです!」ガタガタ

マリッサ「……んー……」キョロキョロ

暁「だ、誰!? って、目隠ししてるっ!?!?」

比叡「口枷までしてる……!? 見るからに危ない人ですよ!」

霧島「……な、なんて姿……破廉恥な!」

武蔵「おまけに革製拘束具に軍帽、鞭まで持ってるとなると、これはあれだな、『女王様』というやつだな」

暁「えっ」

電「えっ」

金剛「えっ」

榛名「えっ」

大和「えっ」

五十鈴「えっ」

比叡「?」

提督「わかってない奴が多いな」

武蔵「うん、わからなくていい。お前たちは純真なままでいい」

比叡「で、とりあえずそんなアブナイ人がどうして電ちゃんを?」

マリッサ「……」クルッ

電「ひっ!?」ビクッ

暁「こっち見た!? 目隠ししてるのに!!」ビクッ

マリッサ「……あはぁ♪」ツカツカツカ カチャン ←ボールギャグ外し

暁電「「はわわわわ」」ガタガタガタ

マリッサ「フフッ、つーかまーえたっ♪」ヒョイッ

電「ぱうううう!?」ジタバタ

提督(目隠ししてるのに電だけピンポイントに引っ張り上げやがった。なんだこいつ)

暁「ちょっ、い、電を放しなさいよ!」ガタガタ

マリッサ「ふぅん、この子、イナヅマちゃんっていうのぉ?」パチン ←目隠し外し

マリッサ「フフッ、思った通りのかわいいお顔♪」ギュースリスリ

マリッサ「私の名前はマリッサよん、よろしくねぇ電ちゃん♪」ジュルリ

電「は、は、はい、なのです、はわわわわ」ガタガタ

武蔵「……なあ、彼女からはすごく嫌な気配というか、不吉な感じがするんだが」

比叡「あ、それ私もです。胸騒ぎがするっていうか……」

五十鈴「私もよ。なんていうか、異様な恐怖感ていうか相容れない感覚っていうか……」

ニコ「それはもしかして、彼女がクラーケンのメディウムだからかな?」

霧島「ク、クラーケンですって!?」

武蔵「知っているのか霧島!」

霧島「クラーケン……それはヨーロッパの船乗りの間に伝わる、船も飲み込むほど巨大な海の魔物のことです!」

比叡「な、なんだってー!?」

霧島「巨大な海洋生物として描かれますが、一般的には巨大なイカやタコの姿で描かれます」

五十鈴「じゃああれが、電に絡み付いてたイカの足の化け物の正体!?」

武蔵「つまり、私たちが漠然と感じていた不安の正体は、マリッサが原因なのか」

提督「海難そのものを具現化した悪魔、とも言われてるな」

ニコ「相性は悪いかもしれないね。伝承では船体をへし折るほどの力を持ってるから」

武蔵「……縁起でもないな」

五十鈴「そうやって不安を煽ってないで電を助けてよ!」

電「」ガタガタガタ

マリッサ「もう、あんまり怖がらないで? ひどいことはしないから」

電「ほ、本当ですか?」ビクビク

マリッサ「本当よぉ、だって私、あなたが気に入っちゃったんだもの♪」

電「き、気に入った、ですか?」

マリッサ「ええ、小さな体にきれいなお肌、愛らしい声とその姿……なのに思ったよりも力が強くて驚いたわ」

マリッサ「そして、助けに来た仲間がブラックホールに吸われて消えて行った時のあの声……!」

マリッサ「目の前で仲間が消えた時の無力感と悲痛な叫び声……素敵すぎて、あなたを絞め殺したくなったほどよぉ♪」キラキラキラッ

電「」

五十鈴「」

如月「」

暁「うわあああん」ナミダジョバー

マリッサ「でも、それは間違いだってすぐに気付いたわ」

マリッサ「それよりも、手足を一本ずつ引き千切ったほうが、素敵な悲鳴をもっともぉっと聞けるんじゃないか、って♪」ウットリ

武蔵「」

霧島「」

大和「うーん」クラッ

比叡「ヒエッ」ガシッ

暁「い、いなづまをはなしなさいよぉぉぉ」ナミダジョバー

マリッサ「そこで待ったがかかっちゃってねえ……しばらく嬲ってあげるだけにしてたのよねぇ」

提督「ああ、この辺が俺が止めてくれって言ったのか……」

マリッサ「電ちゃんが絶望して抵抗をやめた時は感動すら覚えたわ……そんなときも、ちょうどいいところで邪魔が入るから」チラッ

ニコ「それはぼくのせいでもニーナのせいでもないよ」

提督「むしろ止めてもらわないとマジでやばかったわけだが」ヒキッ

暁「そ、そ、それで、今度は電をいったいどうする気なのよ!?」プルプルガタガタ

マリッサ「それはもちろん……可愛がってあげようと思ってるわ。性的な意味で」ニタァ

武蔵(笑みが邪悪すぎる)

暁「ど、どうして電なのよ! か、か、解放しなさいよ!!」ガクガクブルブル

比叡(及び腰なのに立ち向かう暁ちゃんが健気すぎる)ホロリ

マリッサ「そうはいかないわ、電ちゃんは私の運命の相手だって言う子がいるんだもの」

五十鈴「ちょ、ちょっと、それどういうことよ!」

キュプレ「それは私の矢が当たったからよ!」フワッ

武蔵「今度は誰だ」

比叡「あ、あれ! もしかして……天使!?」

キュプレ「私の名前はキュプレ! ペッタンアローのメディウムよ!」

五十鈴「ぺ、ぺったん……!?」

武蔵「ぺったん……いや、どこもぺったんじゃないな、むちむちだ」

比叡「うん、むちむちだね」

霧島「むちむちですね」

キュプレ「ちっがーう! どこ見てんのよもう!!」プンプン

キュプレ「私は恋のキューピッド! この吸盤がついた矢で運命の人をくっつけ合わせるのが私のお仕事よ!」

五十鈴「それじゃ、あんたが電と古鷹さんをその矢で引っ張ったのね……!?」

キュプレ「私の矢に導かれ、邂逅する運命の二人……! そこから始まる素敵な恋の物語! あれを見なさい!」

古鷹「提督! 助けてください!」

ベリアナ「ああん、待ってよぉ~!」

比叡「こ、今度は悪魔みたいな人が!」

ベリアナ「悪魔だなんて失礼ね、私はブラックホールのメディウム、ベリアナよ」

暁「ぶ、ブラックホール!?」ヒシッ

五十鈴「この子が!?」ギュッ

武蔵「や、その姿は十分悪魔っぽいと思うが」

ベリアナ「んもう、細かいことは気にしないの。それより古鷹ったらぁ、どうして逃げちゃうの~?」

古鷹「わ、私に友達以上の好意を寄せられても困ります!」

ベリアナ「そんなぁ、私はあなたの視線を……その輝く綺麗な瞳を独り占めしたいだけなの……!」カオヒキヨセッ

ベリアナ「だ・か・ら、私と契りを結びましょ? フフフフッ」

古鷹「わ、私はそういう、その、女性とそういう関係になる趣味はありませんから!」アトズサリ

古鷹「申し訳ありませんが、ほ、他の男性にあたってくださいっ!」

ベリアナ「申し訳ないって思うならぁ、責任、とってよね?」

ベリアナ「一度はぁ、私のナカに、入ってきたク・セ・に」

古鷹「と、とにかく! 私はそういう関係にはなりませんっ!」ビュンッ

ベリアナ「あん、連れないんだからぁ、逃げないでえっ!」

キュプレ「どう? 私の愛の矢の力で、続々とカップルが結ばれてるわ!」フンス

武蔵「いや、古鷹は明らかに迷惑そうだったし、ベリアナは絶対からかってるだろ」

電「そ、それより……は、はやく、たすけて、ほし、のです……ぅ」ガタガタガタ

マリッサ「ああん、もう可愛くて仕方がないわ! 食べちゃいたいくらい……!」ペロリ

長門「そこまでだ! 電インターセプトォ!」バッ

マリッサ「あンっ」ッバ

長門「電、大丈夫か」

電「な、ながとさん……!」ウルウル

長門「よし、ここはこの長門に任せろ! 暁は電を連れて下がっているんだ!」

暁「あ、ありがとう長門さん! 行くわよ、電!」ガシ

電「あああ暁ちゃん待ってください! 脚が動かないのです!!」カタカタ

暁「あ、暁もよ!?」ガクガク

加古「よしよし、んじゃーまとめて連れて行こうかねー」ヒョイヒョイッ

暁電「「か、か、加古さぁぁぁん!!」」ヒシッ

長門「行ったようだな……貴様、いたいけな駆逐艦を誑かすなど言語道断! この長門が懲らしめてくれる!」

マリッサ「…………」ジー

長門「…………」

マリッサ「…………」ジー

長門「……な、なんだ。何が言いたい」

マリッサ「…………うふぅ♪」ニタァ

長門「!?」ビクッ

マリッサ「いいわ、あなたもとっても素敵……! 苦痛でも快楽でも、その顔がどんなふうに歪むのか、見てみたいわぁ♪」

長門「」

マリッサ「ふふっ、どうしたの? 私を懲らしめてくれるんでしょう? 私、どんな辱めを受けるのかしら……楽しみぃ♪」クネクネ

武蔵(駄目だこいつなんとかしな……いや、関わらないのが一番だな)

???「待て。其奴は私の相手だ」ゲシッ

マリッサ「あぁん! もう、ヴァージニアったらぁ、そんな靴で蹴られたらア○ルがふたつに増えちゃうわぁ」

ヴァージニア「ふん、品のない冗談には付き合えん。それより貴様……ナガト、といったな?」

ヴァージニア「覚えておろう? 私はヴァージニア、クイーンハイヒールのメディウムだ」

長門「ハイヒール……貴様があの足の正体か!」

ヴァージニア「いかにも。この私の歩みを受け止め、耐え切った。この私が褒めてやろうというのだ、光栄に思うがいい」フンゾリ

ヒサメ「うむうむ。まっこと同感じゃ。このヒサメもお主の力は見事というほかないと思うておるぞ?」

ヴァージニア「ヒサメ……貴様、まだ私が話している最中だ。何を横から勝手にべらべらと……」

ヒサメ「ヴァージニアはまどろっこしくていかんのじゃ。おぬしがどうじゃろうと、わらわもナガトが気に入ったでのう?」スススッ

ヒサメ「うむ、おぬしのかんばせ、実に凛々しきものぞ。そなたがおのこであったならばさぞ見目良い色男であったろうに、残念でならぬ」ペタペタ

長門「ま、待て、お前からひんやりした空気が来るんだが……お前は雪女か?」

ヒサメ「わらわは床を凍らせるスリップフロアのメディウムじゃ。お主がおのこだったなら、氷漬けにして愛でていたところじゃぞ?」クスクス

ヒサメ「……うむ、のう長門や、ここは暑くてかなわぬゆえな、涼しいところにてわらわに付き合うがよいぞ?」

ヴァージニア「待て、今ナガトと話をしているのはこの私だ」

マリッサ「んもう、私だってお話してたのよぉ?」

武蔵「さすがビッグセブン、モテモテだな」

長門「……あまり嬉しくないな。どうせなら……」

長門「そうだな、こういう可愛い子に慕われたいものだが」

ソニア「え? お姉さん、ソニアに何か用?」

長門「ああ、君は可愛らしいなと思ってな」

ソニア「えへへ、ありがとう!」

マリッサ(あら、そういう趣味?)

ヴァージニア(ロ、ロリコンだと!?)

ヒサメ(なんじゃ童女趣味じゃったか……)

長門「何か言いたそうだなお前たち」

ソニア「お姉さん、背が高くて、髪も長くて、上のお姉ちゃんに似てるかも?」

長門「ほう、お姉さんがいるのか」

ソニア「うん、お姉ちゃんが二人いるんだ! でね、それでね、教えてほしいんだけど」

ソニア「上のユリアお姉ちゃんが『シュホ』ってところに友達を迎えに行ったっきり戻ってこないの。『シュホ』ってどういうところなの?」

利根「なんじゃ、丁度良く酒保の話題になったか」

長門「利根? なにかあったのか?」

利根「うむ。まあ、ソニアとやらに説明してからでも遅くはなかろう」

利根「まず、酒保というのは駐屯地や軍艦の中にある売店のようなものじゃ。日用品や食べ物が売ってあるんじゃが……」

???「お取込み中すみません、その酒保に案内していただきたいのですが」

利根「ぬ? お主料理人か?」

セレスティア「はい、私はホットプレートのメディウム、セレスティアと申します」

セレスティア「親睦を深めようと思い料理をふるまうつもりなのですが、食材をどこから調達するのか、という話になりまして」

セレスティア「それで酒保にあるのでしたら、そこの食材を使わせていただく許可を頂きたいのです」

長門「ふむ……提督! 酒保にある食料の管理者は?」

提督「それは俺と明石だが……食堂の分じゃ足りないのか?」

長門「いや、そちらはそちらで在庫はあったはずだな。よし、私が彼女と見に行こう、悪いが明石も一緒に来てくれ!」

明石「はーい!」

比叡「あ、私も行ってもいいですか?」

長門「ああ、厨房は比叡のほうが勝手を知っているな。助かる」

セレスティア「ありがとうございます。それと……先程は爆発を誘発させてしまい、大変失礼致しました」ペコリ

長門「え? ……あっ、お、お前か……」タラリ

比叡「?」

明石「?」

利根「それより提督、その酒保のことなんじゃが」

提督「なんだ?」

利根「隼鷹たちが『めでぃうむ』たちと酒盛りを始めておる」

提督「」

ニコ「」

利根(提督と同じ苦労をしとる顔じゃな)

ソニア「もしかして、あたしのお姉ちゃんも?」

利根「おそらくそうじゃな……長門のように背の高い、ピンクの帽子と服を着た長髪の女性じゃろう?」

ソニア「うん。もう、しょうがないなあ……」プクー

提督「利根、龍驤も同行してたはずだがどうしてる」

利根「無理矢理飲まされたらしく酔って寝ておる。あやつは下戸じゃろう? 雲龍が介抱しておる状態じゃ」

提督「ほかのメンバーは」

利根「隼鷹、千歳、那智、足柄じゃ。めでぃうむらしき3人と飲んでおるのう……残り二人は海賊と修道女のような姿をしておる」

ニコ「ということは、ヴィクトリカとエレノア、それにユリアだね」

提督「ったく、酒飲みが増えるとろくなことはねえな。そもそも那智は飲酒を控えてた筈だが」

ニコ「しょうがないなぁ……ソニア、ミュゼとルイゼットを連れてあの3人を迎えに行ってくれる?」

提督「利根、お前も筑摩と霧島と、大淀も連れてけ」

如月(怒ると怖い人たちばかりね……)

武蔵「相棒、私も」

提督「武蔵は絶対に行くな」

武蔵「」

大和(絶対、酒宴に混ざると思われてますね……)

利根「ふむ、では行こうかの。吾輩は利根じゃ、よろしくの」

ソニア「あたしソニア! スプリングフロアのメディウムだよ! さっきは吹っ飛ばしてごめんね?」

利根「……吹っ飛……? も、もしやあの3段跳びの床は、おぬしたちじゃったのか!?」

ソニア「うん、一番最初に飛ばしたのが私で、そのあとの二つがお姉ちゃんたちだよ」

筑摩「……そう……あなたが利根姉さんを吹っ飛ばしたのね?」ゴゴゴゴ

利根「ち、筑摩! 落ち着け! このソニアは一番最初じゃったが、威力はほどほどじゃったぞ!」

ソニア「えっ? あなたがお姉さんなの!? この人があなたの妹!?」

利根「ふむ、ソニア貴様どういう意味じゃ」ゴゴゴゴ

ソニア「だってあたしと髪型似てるしー」

ミュゼ「ですよね、妹さんは綺麗な感じですが、お姉さんは髪型もあってかとっても可愛らしい感じがしますよ?」ヒョコッ

筑摩「ええ、利根姉さんは可愛いんです! わかる方がいらっしゃるようで嬉しいですね」グッ!

利根「筑摩、誤魔化されるでないぞ」

ルイゼット「皆様のお怒りはごもっともです……しかしそれらは誤解あってのこと。何卒ご容赦願えれば幸いです」

利根「いや、今はその話ではないのじゃが……」

ミュゼ「まあまあ、こっちのルイゼットは逆にあなたがたにぼこぼこにされたんですから、おあいこですよー」

大淀「まあ、諸々の怒りは酒飲みにぶつけるとしましょう」

霧島「もしや空母組はこれが狙いで最初から酒保に行こうとしてたわけじゃないでしょうね……」

利根「だいたいは隼鷹や千歳が原因じゃろうが……」

ルイゼット「!! あなた様は……!!」

霧島「? 私がどうかしましたか?」

筑摩「霧島さん、ご存知の方ですか?」

霧島「いえ、初めてお会いしますけど」

ルイゼット「わたくしはルイゼット……あなた様に撃ち落とされた、ギロチンのメディウムにございます!」ヒザマズキッ

霧島「え!?」

ルイゼット「我が断罪の刃は、これまで多くの罪を清めてきました……しかし、今日の私の行いは明らかな冤罪!」

ルイゼット「これより同胞となるあなた様の姉君の首をはねようとした私の凶行を、あなた様が止めてくださったのです……!」ウルウル

ルイゼット「わたくしの過ちと間違いを未然に正してくださったあなた様には、感謝と畏敬の念を禁じえません……!!」ソットテヲトリ

霧島「えっ、あの」

 ナンダナンダ
 キリシマサンサッソクヒトリシャテイニシテルヨ
 サスガキリシマサンマジパネェワー

霧島「ちょっ、いいから顔を上げてください! 畏まらなくていいから!」

ルイゼット「霧島様と仰いましたね……このルイゼット、我が主と伴に征かんとする霧島様のお役に立てれば!!」

霧島「わ、わかりました! そんなふうに跪かなくていいので、立ち上がってください」

ルイゼット「ああ、なんと慈悲深い……! なんて有難いお言葉……!!」オイノリー

霧島(どうしようこの人)

利根「霧島も難儀な相手に好かれたものじゃの……」

ミュゼ「そうですねえ……こうなると私も謝りづらくなります」

利根「お主はどういう罠なのじゃ?」

ミュゼ「私はテツクマデのメディウム、ミュゼと申します。ですので、そちらの眼鏡のお嬢さんに」

大淀「お嬢さんっ!?」

大淀「あ、いえ、コホン。ま、まあ、あまり怒るのも大人げありませんから」

ミュゼ「ええ、その節はごめんなさいっ」

大淀「い、いえ、気にしていません、大丈夫です」

大淀(眼鏡をかけて落ち着き払うだけで、なにかと不当に年上扱いされ続けていた私が……)ジーン

利根(……このミュゼという娘、割と策士じゃな……)

筑摩「もしかして、ミュゼさん結構年上なのかしら」

ミュゼ「んなっ!? べ、別にそれほどじゃないですよ!? 本当ですってば!!」アセアセ

筑摩(図星ね)

利根(図星じゃな)

霧島(だいぶ上そうね……お幾つなのかしら)

大淀(うん、まだ達観するには早すぎるわ! 大淀、ファイト!)グッ

ソニア「ねーー、早くシュホに行こうよぉ」プクー

 * 鎮守府内 トイレ *

加古「ほーい、到着ー」

暁「い、電、こ、ここまでくれば、大丈夫よ!」

電「こ、こ、怖かったのです!!」

電「で、でも、どうして逃げた場所がトイレなのですか?」

暁「……わ、私も怖くて……」カァァ

電「……わ、わかるのです……」カァァ

加古(漏れそうだったと、うんうん)

暁「そ、そういうわけだから! お花を摘みにきたのよ!」

電「こ、ここへきてそういう言い方はしなくていいと思うのです!」

暁「いいの! レディーなんだから、言葉には気を付けないと!」ガチャリ

花子さん?「……あら~?」

暁「」

電「」

加古「!?」

暁「」パタム

加古(閉めた!?)

暁「」パクパク

電「」ガタガタ

加古「」ポカーン

暁「」オソルオソル

暁「」ガチャリ

花子さん?「どうしました~?」

暁「……で」

電「……で」

花子さん?「で?」

暁「出たぁぁぁぁぁ!!?」ダキッ

電「出たのですぅぅぅぅ!!?」ヒシッ

加古「なんだなんだぁ? トイレの花子さんがなんでここに!?」ハッ

ハナコ「確かにわたくしはハナコですけど……あら、あなたは~」

加古「……あ、あんたもしかして」

ハナコ「わたくし、ウォッシュトイレのメディウム、ハナコと申します~」

加古「いや、鍵かけといてよ」


暁「……ちょっと漏らしちゃった……」グスン

電「なのです……」グスン

今回はここまで。

次回、 副題が思いつきません。

お漏らし大人気ですか。他にお漏らしの似合う艦娘って誰だろう……いや、何を考えているんだ。それ以上はいけない

続きです。

 * 鎮守府 入渠ドック前 *

ナンシー「やっほー、如月ちゃーん!」

如月「あ、ナンシーさん!」

ナンシー「これであたしたちも無事にゆっくりできそうだねー! 良かった良かったぁ」

榛名「? 如月さんのお知り合いですか?」

大和「如月さん、この方は……」

ナンシー「あ! あなた、あたしを傘で受け止めてた人でしょ!? すっごいねー!」

大和「え!? あなたがあの……」

ナンシー「そう! そうだよー! さーあ、あたしの名前を言ってみろー!」

大和「とげ天井の!」

ナンシー「」ガクッ

大和「な、なにか変なこと言いました?」

ナンシー「んもー、違うんだなあ! あたしはぁ、フォールニードル! の、ナンシーでーっす! ぶいっ!」

大和「……」ボーゼン

榛名「……」ポカーン

如月(まあ、無理もないかしら)クスッ

武蔵「……軽いな」

ナンシー「もーう、あなた女の子に重いとか軽いとか禁句よ?」

武蔵「む、それはすまない。しかし、こうなるとほかの娘たちもどんな人柄なのか気になるな」

ナンシー「そう来ると思って呼んでるわよー! じゃーん!」

ミルファ「メガロックのミルファです! よろしくお願いしまーす!」

武蔵「……お、おう」

大和「……も、もしや、その恰好は、ちやりーだー、ですか?」

ミルファ「はい! 応援が得意です!」ピョンピョン ボヨンボヨン

如月(すっごい揺れてる……)

榛名(すっごい揺れてる……)カァァ

大和(そんなに足を上げたら下着が見えるんじゃ……)カァァ

武蔵(これは大和にやらせたい)

提督(また武蔵がろくでもねえこと考えてる顔してやがる)

ミルファ「それ以外は、このポンポンを落っことすくらいしかできませんけど!」

武蔵「物騒すぎるポンポンだがな」

カトリーナ「おいおいナンシー、あたしも紹介してくれって言ったろー?」

ナンシー「あ、ごめんねー。如月ちゃん、こっちはスイングハンマーのカトリーナよ」

如月「あ、あの私を吹っ飛ばした人ですか?」

カトリーナ「おう! さっきはすまなかったなあ、大丈夫だったか?」

大和「なんだか、私たちが出会った罠は、みなさん結構残酷な罠なのに明るい人が多いですね……」

ナンシー「あー、そうかもね~。えっと、あたしと、ミルファと、キャロラインとぉ……あ、ルイゼットはまじめ系?」

ミルファ「コーネリアさんは明るいっていうキャラじゃないですけどね」

榛名「こーねりあさん、ですか?」

コーネリア「そう……このあたし、ギルティランスのメディウムさ」ズイッ

榛名「ひ!?」

如月大和(なんか怖い人きた!?)

コーネリア「ハルナ、と言ったな? 姉妹をかばって私の前に立つとは、なかなかいい度胸じゃないか、気に入ったよ」ガシッ

榛名「は、はひ!?」

コーネリア「まあ、私の槍は一人も二人も関係ない。まとめて串刺しにして始末してやるんだが……」

コーネリア「貴様らが頑丈だったおかげで、姉の方は手ごたえが浅かった。あたしの槍を鈍らせるなんて面白いねえ、あたしはあんたたちに興味がわいたよ」

榛名「そ、そそそ、そうですかっ!?」

コーネリア「どうだい榛名、もう一度あたしとやりあう気はないかい?」

榛名「そ、そ、それは……」

武蔵「まあ待て、その役はこの武蔵が受けようじゃないか。その勇ましい出で立ち、腕に覚えがあると見たが?」ニッ

コーネリア「……へえ、面白いね。あのメガロックを止めたやつか、相手にとって不足はないね」

カトリーナ「あ、コーネリア! その次でいいからあたしもそのムサシとは腕試ししたいな! いいだろー?」

大和「武蔵も結構モテモテね」

武蔵「まあ、悪い気はしないな」フッ

コーネリア「よぉし、じゃあ早速……」

???「待ちな!」

武蔵(……またこのパターンか)

コーネリア「ちっ、オリヴィア、アンタあたしの邪魔をするのかい」

オリヴィア「そこの武蔵はアタイが目を付けてたんだ。いいレスラーになれると思ってね!」ノッシノッシ

如月榛名大和(こ、個性的な体形の人がきた!!)

武蔵「……れすらー?」

オリヴィア「そうさ、四角いリングの上で、己の体をぶつけ合い、熱いファイトを繰り広げるバトルエンターテイメントさ!」

武蔵「ほほう……!」

コーネリア「ったく、オリヴィア、あたしの邪魔をするんじゃないよ!」

武蔵「ところで、オリヴィア? お前は素手のようだが、何の罠なんだ?」

オリヴィア「フッ……それを訊くのかい? アタイは、大地揺るがすクエイクボムのメディウムさ!」

コーネリア「早い話が局地地震を起こすんだよ」

オリヴィア「おいおい、色気のない言い方をするねえ」

コーネリア「生憎と一戦交えようって相手を横からかすめ取られたんじゃ、あたしだって腹が立つさ」

武蔵「ふむ……個人的にはオリヴィアとやらの勝負に興味があるが……それ以上にお前は皆の視線を集めていてな?」ユビサシ

オリヴィア「ん?」クルッ

五月雨「」ジーッ

朝雲「」ジーッ

朝潮「」ジーッ

吹雪「」ジーッ

若葉「」ジーッ

青葉「」ジーッ

コーネリア「一人でかいのが混ざってるな」

武蔵「あいつは好奇心の塊だからな」

大和「武闘派が集まったと思いきや、駆逐艦たちが集まってきましたね」

如月「目立ちますよね、やっぱり」

ナンシー「あっちはあの二人に任せてさ、あたしたちは一緒にお茶にしようよ! 大和さんだっけ? 髪の毛さらさらつやつやでかっこいいじゃん!」

榛名(その人を押し潰そうとしてたのは誰だったんですか……)タラリ


オリヴィア「おやおやあんたたち、なんだい? このアタイに何か用かい?」

五月雨「あ、いえ! その……」

霞「無駄にでかいわねって感心してたのよ!」

吹雪「か、霞ちゃん!?」

オリヴィア「おやおや、口のきき方がなってないねえ! そういう子は、こうだっ!」ヒョイッ

霞「ちょっ、何すん……きゃあああ!?」グルグルグルー

朝雲「うわっ、霞を軽々と持ち上げた!?」

朝潮「まるでヘリコプターのプロペラみたいに!」

オリヴィア「無駄に肉を付けてるわけじゃないんだよ! これはアタイのパワーの源さ!」

霞「わ、わかったから、わかったから止めなさいよぉぉぉ!!」グルグルグルー

オリヴィア「よしよし、そろそろおろしてやろうかね」ストン

霞「はらひれほろはれ……」クラクラ

若葉「よし、次は私に代わってくれ」キラキラッ

???「あなたはこちらですわ」ガシッ

武蔵「おい、今度は誰だ。バレリーナなんて初めて見たぞ」

コーネリア「オディールだな。マンリキスピンのメディウムだ」

朝雲「ああ、あの猛スピードで回転するあの機械ね」

オディール「あなた、わたくしの回転に自分から飛び込んでくるなんて、見所がありますわ!」ガシッ

若葉「お、おお?」

オディール「わたくしと一緒に、プリマドンナを目指してみませんこと?」クルクルーリ

若葉「い、いや、そうじゃなくてだな……」

青葉「艦娘出身のバレリーナですか! これは記事になりますねえ!」

???「いえ、若葉様はそのようなことをお望みではないはずです」

青葉「おや? みなさん若葉さんがお目当てですか?」

メリンダ「はい、私はベアトラップのメディウム、メリンダと申します」

サム「ヴォルテックチェアのメディウム。サムとお呼びください」

ジェニー「私はジェニー! デルタホースのメディウムよ!」

青葉「へっ!? デルタ……!?」サーッ

若葉「……な、なんてことだ……!」キラキラキラッ

初春「そこで目を輝かせるな若葉よ」

メリンダ「若葉様……このたびは罠にかけてしまい申し訳ありませんでした」

若葉「いや、いい。気にすることはない」

メリンダ「いえ、それでは私の気がすみません……わたくしめに、罰を与えてくださいませんでしょうか」

若葉「!?」

メリンダ「何でも致します……! どうか、私に罰を!」ドゲザッ

若葉「い、いや、そういうのはだな……」

メリンダ「どんな辱めにも、痛みにも、耐えて見せます……ですから、どうか……!」アシニシガミツキ

若葉「か、考えておこう……」

サム「メリンダも無理な注文を仰いますね……お疲れでしょう、さ、こちらの椅子におかけください」

若葉「あ、ああ、すまない……」

サム「では、スイッチオン」ポチッ

若葉「あばばばばば」ガクガクガクガク

メリンダ「ひょわわわわわ」ガクガクガクガク

霞「ちょっ、な、なにやってるのよ!?」

サム「電気マッサージですよ」ニコ

朝雲「明らかに過剰電力じゃないの!?」

サム「んん? 間違いましたか?」シレッ

武蔵「あのサムとかいう奴、Sだろ」

コーネリア「ああ。そしてメリンダは面倒くさいMだ」

ジェニー「ちょっとお、遊ぶのは後にして、私の相棒も紹介させてよー」

朝潮「相棒って、それは三角木馬では……!」

霞(三角……って、なんで名前を知ってるのよ朝潮!?)

ジェニー「シルバーエッジよ! 暴れ馬だから、迂闊に乗ると痛い目見るわよー!」

青葉「」プルプルガタガタ

山雲「朝雲姉~、青葉さんが~、木馬を見て青くなってるわ~?」

若葉「わわ若葉ばばばも韻を踏めるるるぞぞぞ」ビリビリビリビリ

メリンダ「ふぶふ踏んでくだだだだささるるのででしょおおかあああ」ビリビリビリビリ

朝雲「ちょっとサムさん、いい加減電流止めてあげてよ!」

サム「かしこまりました」ニコー

初春「楽しそうじゃのう、おぬしらは……」

山雲「初春さ~ん、顔色悪いわよ~? 大丈夫~?」

初春「う、うむ……ちと頭が重くてのう……」

リンメイ「そゆときは、リンメイの回転ゴマの曲芸見て、気を紛らすよろしよ!」

朝雲「あのコマの形、どこかで見たような……」

初春「もしやおぬしは、あの巨大なホイールの……」

リンメイ「わたし、メガバスソーのリンメイ言うね! この回転ゴマ、私の得意技よ!!」ギュインギュイン

リンメイ「ハイハイみなさんご注目よ! 私の回転ゴマ華麗に飛ん……」スポーン

 ガラガラガラ… キャー ウワー イテー

リンメイ「あいやー……手元が狂たよ。たまにすぽ抜けて、どか飛んでいく。気を付けるね」テヘペロー

初春「……頭痛の種がまたひとつ……」パタリ

朝雲「初春さーーん!?」

武蔵「……コーネリア」

コーネリア「なんだ」

武蔵「興がそがれた」

コーネリア「闘争の空気ではないな」

コーネリア「帰って眠る」

カトリーナ「寝るのかよ……」

今回はここまで。

次回、 厨房ですよ!

ご注意、この鎮守府の比叡は料理上手です。

では、続きです。

 * 鎮守府 厨房への通路 *

セレスティア「こちらの厨房はヒエイさんが取り仕切っているんですか」

長門「ああ。余所の鎮守府にも同じ比叡はいるが、なぜか殆どの者が料理下手でな」

比叡「余所で比叡カレーって言うと、劇毒か度胸試しか罰ゲームの代名詞にされちゃってますからねー」タハハー

明石「何を仰るんですか、あなたが来てからこの鎮守府の食生活は良い意味で一変したんです。余所は余所ですよ」

比叡「いやあ、でも事実ですよ? 私が逆にちょっと特殊なだけで、余所の私の同型艦はひどいらしいですから」

長門「まあ、実際そうなんだ。私が前にいた鎮守府の比叡のカレーは青かったからな」

セレスティア「そうですか、青い……」

セレスティア「……あお?」

明石(二度見しましたね)

比叡「何を入れてるんですか、そこの私は」

長門「わからん。料理は見た目ではない、と己を奮い立たせて口にした瞬間、目が破裂して意識を失った」

長門「あの日のことは思い出そうとしても思い出せない。味覚と嗅覚と触覚が、視覚と聴覚と翔鶴と記憶を吹き飛ばした……そんな感じだ」トオイメ

セレスティア「ショウカク……そんな五感あったかしら」

明石(『五航戦の被害担当艦』を略して五艦と呼ぶならありですね)

比叡「本当に何をしたんですか、そこの私は……」シロメ

長門「しかしそれをどうひっくり返したのか、この比叡の料理は、この長門も後塵を拝し、大和さえも三つ指ついて師事するくらいの腕前だ」

セレスティア「なるほど……個人差があるんですね」

明石「この鎮守府には、料理上手と言われる鳳翔さんも間宮さんもいませんから、比叡さんと大和さん、長門さんがいてくださって助かってます」

セレスティア「それは楽しみです。どんな料理か、ぜひ拝見させてください」

比叡「いえいえ、料理そのものは普通ですから。みんなが好きそうな味付けにしようとしてるだけで」

長門「いや、それが大事なのだ。味見をして、組み合わせの成功や失敗を自分で確かめるだけでも上達するはずなんだが……」ウーム

明石「とにかく、これだけ大人数になったんですから、材料が間に合うか確認しないと……」

厨房へのドア< ガチャリ

マーガレット「あ」ケーキドッサリ

明石「あ! あなたは!」

長門「誰だ」

比叡「誰ですか?」

セレスティア「……マーガレット。何をしてるの」

マーガレット「はい、見ての通りケーキを作ってました! 材料は持参しましたから大丈夫ですよ!!」

セレスティア「そうじゃなくて、断りもなく勝手に厨房を使っちゃダメじゃない」

長門「……なんというか、すごいケーキの数だな」

比叡「ええ。びっくりです」

明石「あの時の甘い匂いの正体は、やっぱり彼女だったんですね」

セレスティア「紹介しますね。彼女はフライングケーキのメディウム、マーガレットです」

マーガレット「よろしくお願いします! あ、おひとつどうですか!?」

長門「あ、ああ。しかし、これだけあったら駆逐艦たちを呼んで即席のお茶会でもやったほうが良さそうだな」

比叡「献立を考えるのはそのあとでも良さそうですねー」

セレスティア「すみません、うちのマーガレットが勝手に厨房を占拠してしまって……」

マーガレット「すっごい綺麗な厨房だったから、最初に入った時もついついケーキ作っちゃったんですよ!」

セレスティア「だから何をしてるのよあなたは……」

長門「うむ、とりあえずケーキは食堂へ運ぼう。ケーキナイフはどこだったかな」

比叡「それじゃ、私は紅茶の準備をしますね!」

明石「比叡さん、茶葉が残り少ないって言ってましたよね? 酒保から持ってきますよ」

比叡「ありがとうございます、助かります!」

セレスティア「マーガレット、あなたはみんなを呼んできて。あなたがケーキを運ぶと、必ず転んで何個か台無しにするから」

マーガレット「ひ、ひどいですよセレスティアさん! 私そんなにしょっちゅう転んでません!」

比叡「五月雨ちゃんみたいですね」

長門「五月雨はそれに加えて、よくコーヒー用の砂糖と塩を間違えるんだよな……」

マーガレット「わ、私はお砂糖とお塩は間違えませんよ!?」

明石「あ、この前は七味を入れてましたよ?」

比叡「ヒエェ……」

 ドドドドドド

長門「ん? あの足音は」

島風「いい匂いがする!」バーン!

白露「甘い匂いがする!」バーン!

セレスティア「あら、さっそくお客様?」

マーガレット「はーいいらっしゃいませー! 好きなのを選んでいいですよ~!」

島風「わーい! 私これがいい!」

白露「えっ!? それは私のよ!」

島風「私のほうが選ぶの早かった!!」

白露「これが私の一番いいケーキなの!」

明石「相変わらず、仲がいいんだか悪いんだか……」クスッ

比叡「じゃあ、おなじみのかけっこで決めたらいいじゃないですか?」

島風「負けない!!」ダッ

白露「私がいっちばーん!!」ダッ

長門「おい比叡、どうせならあの二人にほかの駆逐艦を呼んでもらえば良かったんじゃないか?」

比叡「……あっ!」

マーガレット「あはは、やっぱり私が行ってきますね! ……あうっ」コケッ

長門(五月雨だ)ホワ

明石(五月雨ちゃんだ)ホワワ

比叡(五月雨ちゃんみたい)ホワワー

セレスティア(あの子また太ったのかしら)

 * 鎮守府 入渠ドック前 *

五月雨「へっくちっ! だ、誰ですか私の体重の話をしてるの!?」

霞「なにそれ」

 * 鎮守府内 酒保 *

ヴィクトリカ「海はいいなあ……ロマンを感じるぜ。きっと、あの海の向こうでお宝があたしたちを待ってるんだ」

足柄「あなた、話が分かるわね! そうよ、あの海の向こうに勝利という至宝があるのよ!」

ヴィクトリカ「ははは、あんた面白いな。いやあ、海に縁の深い奴らと酒を交わす日がくるなんて、あたしも果報者だ」

那智「ああ、まったく同感だ。貴様のように話が分かる者がいたとは、私たちにとっても幸運だ」

エレノア「まあ、私は別に、おいしいお酒が飲めれば戦争も財宝もどうでもいいわ」

隼鷹「ひゃっはっは、身も蓋もないねえ!」

ヴィクトリカ「エレノアがこうだから、あたしが海を語ろうとしても話が続かなくて駄目なんだよなあ」

ヴィクトリカ「シルヴィアは飲まないしアーニャとミーシャはまだ子供だしチェルシーは下戸だしマリッサはぶっ飛んでるし……」

ヴィクトリカ「そう考えると、こんなに話が合う連中と酌み交わせるなんて思わなかったぜ……!」

ユリア「ヴィクトリカ、あなた今日はすごい愚痴っぽいわね」

ヴィクトリカ「嬉しいんだよ、単純に」

千歳「まあまあ、ささもう一杯」

ヴィクトリカ「おっ、ありがとなお姉さん! チトセさんだったな、いやあ、うまいなこのニホンシュってのは!」

ユリア「まあ、ヴィクトリカが饒舌になる理由もわかるけどね」

足柄「へー、いろいろ溜め込んじゃってるわけね?」

エレノア「そうそう、だからいいんじゃない? たまには仕事を忘れて余所のメディウムと飲んでても」

ルイゼット「いいわけがないでしょう……!?」ユラリ

ヴィクトリカ「うげっ!? ル、ルイゼット!?」

エレノア「もう、誰かと思えば……面倒くさい子が来たわね」

ルイゼット「面倒くさいとはどういう意味ですか!」

隼鷹「し、知り合いかい? 随分物騒な得物持ってんだけど」

エレノア「彼女はギロチンのメディウムだからね~。考え方が古いっていうか、石頭なのよー」

ルイゼット「エレノア! あなたは私と同じく神に仕える身にありながら酒に溺れる怠惰な日々を送り、信仰にもほど遠い振る舞い!」

ルイゼット「異国の地でも改まることなく醜態を晒すなど言語道断です!!」オノフリマワシ

ヴィクトリカ「うわっ、ま、待て! 話せばわかるって!! な!?」

エレノア「あーもー、ほんっと面倒くさいわねー。ちょっとくらいいいじゃない、魔神様は飲酒くらい目を瞑って下さるわよ~」タテガード

ユリア「ほらほら、静かにしなさいよ、艦娘のみんなに迷惑でしょ?」

ソニア「そういうユリアお姉ちゃんもなにしてるのよー」プクー

ミュゼ「そうですよ、可愛い妹さんがあなたを探しに来たっていうのに」

ユリア「ミュゼッ!? あ、あなたが来たの!?」

ミュゼ「あなたたちはいつもお酒が絡むと目の色変えてそちらに集中しますからね。この前も……」

ユリア「うう、ミュゼのお説教、長いから嫌なのよ……ソニア、助けてぇ」

ソニア「知らないっ」プイ

隼鷹「おやおや、そちらのお仲間さんはお冠だねえ? これじゃ一緒に飲もうって気配じゃあないかね」

千歳「残念ですね……せっかくもう少しご一緒できると思ったのに」

大淀「残念なのはあなたたちもですよ」

千歳「あ」

筑摩「戻ってこないと思ったら、勝手に酒保のお酒を開けて」

霧島「素性の知らない相手と酒宴を設けるとは、なかなか肝が据わってますね」

那智「あ、ああ、それはだな」

利根「まあ、一部始終は偵察機で見せてもらったし、やむを得ぬ事情があるにしても、そこにいる雲龍に訊けばよいからのう」

ヴィクトリカ「ま、まあまあ、話せばわかるよ、な? な?」

大淀「そうですね、弁解は不要ですよ」ニコッ

隼鷹「」

ヴィクトリカ(怖え)


龍驤「うう、気持ち悪い……雲龍、だっこ」

雲龍「はい」ナデナデ

明石「ちょっと、みなさん酒保で何をしてるんですかー!?」

 * 鎮守府 入渠ドック前 *

武蔵「それにしても……こうして眺めてみると、およそ罠らしくない面々ばかりなんだがな……」

朝雲「ほんとね……テニスやボーリングの選手にメイドさんに……シスターや海賊の人やゴルファーも出てきたわ」

吹雪「こ、こっちはエルフみたいな人たちがいっぱいいます!」

ディニエイル「おや、あなたがたは」

不知火「あなたは先程の」

ディニエイル「申し遅れました、ディニエイル・コールドアローです。先程はお見苦しいところをお見せしました」

ディニエイル「こちらは私の姉妹、ミリーエル、ノイルース、グローディスです」

不知火「これはご丁寧に……不知火と申します。こちらは……」

吹雪「あ、あの、この人たちは?」

霞「あー、こけて気絶してたわねあんた……」

不知火「玄関ホールの罠の正体が、この人たちだったということのようです」

朝潮「こうして並んでもらいますと、みなさんどんな罠なのかわかりやすいですね」

初雪「……みんな、でかい……!」

山雲「……」ジーッ

ノイルース「……あの、この子の視線が熱いのですが」

朝雲「あ、すみません、うちの山雲が」

グローディス「なあ、たまにニコ様からもああいう視線が……」ヒソヒソ

ミリーエル「ちょっ、それは言っちゃだめよ!」ヒソヒソ

山雲「へーえ、そうなんですか~。それって~、どういう視線なんでしょうね~」ニコッ

グローディス「」キカレテタ

ミリーエル「」キコエテタ

ノイルース「……なんだか彼女、闇を抱えておいでですね」

朝雲「そんな子じゃなかったと思うんだけど……ごめんなさい」

ノイルース「いえ。せっかくですし、闇を払う方法があれば良いのですが」

朝雲「あー、それだったら……龍驤さんに訊いた方がいいかも」


霞「そういえば雪玉とか電撃の罠とかもあったけど、その人たちもいるの?」

ディニエイル「ええ。雪玉はメアリーアンですね」

メアリーアン「おらはスノーボールのメディウムだぁ。よろすくなあ」

吹雪「すっごいなまってる!?」

メアリーアン「おめぇさん、吹雪って名前がぁ? いいなあ、おらぁ仲良くなれそうだあ」ニコニコー

吹雪「すっごいいい笑顔……」

朝潮「こういう人がメディウムだと言うこと自体に違和感がありますね」

ディニエイル「あとは……」

初雪「……」キョロキョロ

朝潮「初雪さんどうしました?」

初雪「……いた」ダッ

???「……!」ビクッ

初雪「見つけた」

???「……あ……」ビクビク

初雪「駆逐艦、初雪……です」

イサラ「あ……スパークロッドの、イサラ、っす……」

イサラ「よろ……」

初雪「ん……よろ」コク

イサラ「……」

初雪「……」

不知火「彼女はもしや、電気の罠の?」

ディニエイル「ええ、スパークロッドのイサラです。なんというか……こう言っては失礼ですが……」

不知火「……類は友を呼ぶのでしょうか」

イサラ「……」グッ!

初雪「……」グッ!

霞「なにをわかり合えてるのよ……」

リンダ「お! 姉さんようやっと見つけたで!」

黒潮「良かったなあ、無事やったん? えーと……どちらさんやったっけ?」

リンダ「ずこー! ちょっ、忘れてしもうたん!? うちと明かしたあの朝を忘れてもうたん!?」

黒潮「あかんて! まだうちらそこまで行ってへんで! ちゃうねん、まーだお互い名乗ってへんやん?」

リンダ「……おおー! せやな、忘れてたわ! うっかりしてたわー、うっかりぽんやー」

黒潮「古いでしかし! うちは黒潮や! よろしゅうな!」

リンダ「うちはローリングボムのリンダちゃんやで! 詳しくはへるぷを読んでな!」

???「へるぷってなんやねん!」スパーン

リンダ「あいたー!? あ、相変わらず激しいツッコミやなあ、ジュリア?」

黒潮「なんやお姉さん、もしかしてハリセン使いなん?」

ジュリア「私はジュリアでしてよ! 見ての通り、ハリセンのメディウムですわ!」

リンダ「黒やん、迂闊にボケるとこの子のツッコミ飛んでくるから気ぃ付けなあかんで?」

黒潮「望むところや! ばっちこぉい!」

ジュリア「望むんですの!?」ガビーン

黒潮「あかんでー、そこですかさずくらえ大リーグボール一号! とかゆうてツッコミ入れたらんと」

ジュリア「ハリセンは投げませんわ!」スパーン!

龍驤「なんや楽しそうやなあ……」フラフラ

雲龍「無理しないで」

龍驤「せやな……本調子なったらうちもビシバシツッコミいれたるわー」

不知火「……こちらも」フゥ

ディニエイル「そのようですね……」ハァ

ノイルース「あなたたちも十分似た者同士ですよ?」

 * 幕間 龍驤と陸奥と雲龍 *

朝雲「あ、いたいた龍驤さん」

ノイルース「? 彼女がリュウジョウですか?」

龍驤「んー? うちに何の用や?」

朝雲「すっごい聞きづらいんだけど……龍驤さん、胸のコンプレックスってどうやって克服したの?」ヒソヒソ

龍驤「あー、それなあ……話すと長くなるけど、あれや。うちの胸が小さくても、雲龍がいっつも傍におるからええかなーて」

ノイルース「? どういうことです」

龍驤「昔、だーれも通らんような海域で、雲龍が骸骨みたいになって漂っとってな? うちが見つけて、ここに連れ帰ってご飯食べさしたんよ」

雲龍「あのときは本当に助かったわ」

龍驤「見つけた時の雲龍はガリッガリで、胸がなかったんやで! けどまあ、食べさせてるうちにおっきくなってきてなあ……やっぱり、ちぃとショックやん?」

龍驤「で、うちが胸小さいの気にしてたら雲龍、何しようとしたと思う? せっかく元に戻った自分のこの胸、切り取ろうとしたんや」

龍驤「ないもんはないでええねん。わざわざ持ってるものを捨てるんは阿呆や、大事にしいって言うたら、じゃあせめてうちの好きにせえ、て」

ノイルース「好きに、ですか」

雲龍「ええ。私は彼女のものなの」ニコ

龍驤「……ちゅうて聞かんのや」ハァ

龍驤「ま、うちに立派なもんついてへんでも、雲龍が好きにせえ言うならまあええかなー、て、この胸に顔うずめてたらそう思うようになってなー」

朝雲「……うずめたんだ」

龍驤「それに、背ぇの高い雲龍だからええんや。こんな重たいもんがちんちくりんのうちについてたら、逆に気持ち悪いんちゃうか?」

朝雲「ああ……胸ばっかり見られたりするかもしれないわ」

ノイルース「悪目立ちする場所があると、顔を見て話してもらえないことも多いですね」

龍驤「あー、せやせや。目が一か所に留まって鼻の下伸ばす男多いやんなー。そういう男どもには艦載機飛ばしたくなるわ」

ノイルース「ええ、私も燃やしたくなります」メラッ

朝雲「というか、ノイルースさん普通に男の人と話すの? メディウムはみんな女性みたいだけど」

ノイルース「魔神様を討ちに来る男どもに、そういう粗忽者が多いのです」ハァ

ノイルース「もともと、人間の敵である私たちですから、倒せば好きにできると思い込む人間が多いのは、ある意味仕方ないのですが……」

ノイルース「あなたがたは人間の味方。なのにそのような辱めを受けているというのは理不尽だと思いますね」

龍驤「相手が上司っちゅうのもあるし、近くて親しいからこそ遠慮しない奴も多いんや。馴れ馴れしいを通り越して踏み込んでくる馬鹿がな」ハァ

龍驤「うちらの前の上官なんやけど、陸奥もそいつにめっちゃセクハラ受けててな、男性不信ちゅうか男性恐怖症になっとったもん」

朝雲(ちょっと、今さらっと衝撃の事実暴露してない!? 陸奥さん男が苦手なの!?)

雲龍「……確か、前の鎮守府の提督があまりにセクハラが過ぎるのと龍驤への侮辱がひどいから、その鎮守府を火の海にしたんだったわね」

朝雲「火の海って……鎮守府まるっと潰しちゃったの!?」

龍驤「せや」

ノイルース「……よく処断されませんでしたね」

雲龍「その上官に被害を受けていた艦娘全員が、龍驤の解体の取りやめを嘆願してくれたそうよ」

龍驤「で、左遷先がここ、と。いやー、ほんま左遷させられて良かったでー! こっちの提督、あんなことしたうちのこと全肯定してくれたし!」

雲龍「ええ。あなたがここに来なければ私もどうなっていたかわからなかったわ」

龍驤「おまけに、あっちの提督はどさくさ紛れて陸奥に抱き着いたせいで砲塔の爆発もろに受けてミイラ男になってんで! ほんまうけるわー!」

ノイルース「なるほど……因果応報、愚か者に罰が当たったのは良いことです」

朝雲「いい話でまとまってるところ悪いんだけど、山雲のコンプレックスはどうやって解決したらいいのよ……」

ノイルース「……時が来るのを待ちましょう。今の話を聞く限り、この鎮守府には運気を良い方に変える力が宿っているのかもしれません」

朝雲「……魔術師さんがそう言うと説得力あるわね」

山雲「それよりも~、陸奥さんが~、男性恐怖症って本当~? 全然、そんな素振りなかったわ~?」

ノイルース「!?」

朝雲「いつの間に!?」

今回はここまで。

この鎮守府の艦娘はこんな目に遭ってる人たちばかりです。
機を見て作中で明かしていくか、別スレに書こうか思案中です。

次回、 海。

では、続きです。

 * 鎮守府 屋外 食堂裏口とドックの通路 *

川内「ねえ那珂ー、神通はどこ行ったか知らない?」

アカネ「?」

川内「……あれ? 那珂? いつの間に浴衣に着替えた……んん?」

マーガレット「アカネさーん」

那珂「?」

マーガレット「アカネさん? あれ? その艦娘みたいな服はどうしたんですか!?」

川内「あれ?」

マーガレット「はい?」

那珂&アカネ「「え?」」

  「「「「……」」」」

那珂&アカネ「「あーーー!?」」

那珂「待って待って! もしかして那珂ちゃんをこの人と間違えてる?」

アカネ「どういうことー! アカネに似てる人がいるんだけど!?」

川内「うわー、髪型だけ見ると紛らわしいなあ……」

マーガレット「あ、そっか、この人がみんなが言っていたナカさんなんですね!」

那珂「えっ!? 那珂ちゃんの名前がもうみんなに覚えられてるの!?」キラキラッ

マーガレット「はい! 初めて会ったときに、みなさんアカネさんをナカちゃんって呼んでました!」

アカネ「そうだよー! いきなり別人の名前で呼ばれてびっくりしたんだからー!」ウニュー!

那珂「あうう、そういうことか~……メディウムにもアイドルとして名前が伝わってるのかと思ったのに~」

シャルロッテ「そうはいかないわ! アイドルといったら私、シャルロッテだよ!」

川内「えっ!? そっちにもアイドルがいるの!?」

那珂「おおっと、ライバル登場だね! 那珂ちゃん、負けないんだから!」

シャルロッテ「で、あなたが艦娘のアイドル……アカネちゃんじゃないのね? ナカちゃん?」

那珂「そうだよ~! 那珂ちゃんのこと早速覚えてくれたんだ! シャルロッテちゃんとはいいライバルになれそう!」

アカネ「ところでマーガレット、私に何か用なの?」

マーガレット「いえ、アカネさんだけってわけじゃないんですが……かくかくしかじかー」

川内「へーえ、ケーキパーティーかあ。それでみんなを集めてほしいってわけね」

マーガレット「はい!」

那珂「よーっし、そういうことなら那珂ちゃんゲリラライブ開いちゃうぞー!」

シャルロッテ「あっ、ずるーい! 私だって歌っちゃうんだから!」

マーガレット「とにかく、みなさんに集まってほしいので、みんなに声をかけてきてください!」

アカネ「おっけー! 任せて!」

川内「そうだ、神通どこ行ったか知らない?」

那珂「神通ちゃんなら、また丘の上に行ってるはずだよー?」

 * 鎮守府内 埠頭 *

 ザザーン

伊8「鎮守府の敷地内で、一番海が近いのはここね」

アーニャ「うわーー! 広ーーい!」キラキラキラキラ

ミーシャ「すごい……! あれが水平線なんだ……!」キラキラキラキラ

扶桑「ふふふ、すごく嬉しそうね」ニコニコ

鳥海「扶桑さんたちもこちらに?」

扶桑「ええ、あの子たちが初めて海を見てはしゃいでる姿が微笑ましくて」

山城「あんなふうに瞳を輝かせて海へ出ていく、そんな時期が私たちにもあったわ……懐かしいですね扶桑お姉様」

シルヴィア「ああ、海はいいなあ……よーっし、泳ぐぞーー!!」キラキラキラキラ

摩耶「結局あんたも海がお目当てだったのかよ」

シルヴィア「しょうがないじゃない、私たちの住んでた山奥じゃあ、せいぜい沼みたいな湖しかないんだもの」

シルヴィア「泳ぐのが趣味なのに泥臭い水場しかないんじゃあ、興奮するなってほうが無理よ」

シルヴィア「大半のメディウムは海を見たことがないんじゃないかしら? この潮の香りも……はぁあ、気持ちいいなあ」

鳥海「でも、こんなに海が好きなら、ここに来ることができて良かったですよね」

シルヴィア「うんうん! もう一人、海が好きな子がいるんだけど、彼女まだ目覚めてないのよね。後で連れてこないと」

アーニャ「ね、ね、釣り針垂らしてもいいかな!?」

伊8「釣りをするなら、もう少し沖合に行ったほうが魚がいると思う」

摩耶「だな。ここはアタシたちが海へ出撃するときの玄関みたいなもんだし、でかい魚はいないんじゃないか?」

シルヴィア「出撃? 海へ?」

摩耶「アタシたちは軍艦だからな。見てろよー?」チャプ

ミーシャ「え!? 水の上に浮いてる!?」

摩耶「よっ、と!」シュパアアア

アーニャ「うわーー! すごーい! 海の上を走れるんだ!!」

ミーシャ「も、もしかしてみなさんあんな風に走れるんですか?」

扶桑「そうよ。私たちは、摩耶や鳥海ほど速くは走れないけれど」

シルヴィア「へぇ、泳ぐんじゃないんだ」

扶桑「この鎮守府で泳ぐのは、はっちゃんだけね」

伊8「潜水艦は、海へ潜るの。でも、今この鎮守府に着任してる潜水艦ははっちゃんだけ」

鳥海「私たちが泳ぐと、両手や背中の艤装の砲台が使えなくなりますからね」

アーニャ「ねえねえ、それって海に敵がいるってこと?」

摩耶「ああ。深海棲艦って言って、目的はわかんねえけど、人間を襲う海の化け物がいるんだ」

鳥海「深海棲艦を撃滅し、海の平和を取り戻すのが、海軍とその配下にある私たち、艦娘の使命なんです」

山城「あまり活躍できてないけれどね」

ミーシャ「それじゃ、海は危険なんですか……?」

鳥海「危なくないとは言えないですね。でも、ここは比較的安全です」

伊8「この島のすぐ北の海域に、海底火山があるの。そのせいで潮流が不規則で、海難事故も多い」

伊8「その代わり、そのおかげでこの鎮守府が深海棲艦に攻め込まれにくいって利点もある」

伊8「だから、泳ぐときや船を出すとき、この島から離れるときは、はっちゃんが安全なポイントを教えてあげる」

シルヴィア「はい、それじゃ遠出するときはこのお姉さんに声をかけるように!」

アーニャ&ミーシャ「「はーい!」」

山城「……本当に罠なのかしらこの子たち」

シルヴィア「そうよ? まあ私もなんだけど」

扶桑「そうは見えないくらいお利口さんね」ニコニコ

摩耶「まあ、実際に罠になってたのを見たのはこっちのシルヴィアともう一人だけだからなあ」

シルヴィア「あ、こっちの二人には名乗ってなかったわよね? 私はシャークブレードのシルヴィア。よろしくね」

扶桑「私は扶桑型戦艦1番艦、姉の扶桑よ。この子は妹の2番艦、山城」

アーニャ「私はアーニャ! クレーンのメディウムだよ!」

ミーシャ「い、妹の、ハンギングチェーンのミーシャです」

摩耶「クレーン!? だから明石が反応してたのか?」

シルヴィア「ああ、あのピンク色の髪の子? あの子もクレーン積んでたわよね」

扶桑「あなたたち、どういう罠なのかしら?」

アーニャ「えへへ、見せてあげよっか!」スッ

山城「……消えた!?」

シルヴィア「ああ、動かないで。迂闊に歩くと引っかかるわよ」

鳥海「……あら? 何か聞こえませんか?」

シルヴィア「え? まだ発動して……?」

 ドドドドドド

扶桑「あら、あれは……」

山城「スピード狂の島風と白露じゃない!」

摩耶「お、おい、下がるぞシルヴィア!」

シルヴィア「え? でも、このままいくとあの二人……」

白露「いっちばーーー

島風「はっやーーーー

クレーン <ガシャンッ!

ハンギングチェーン <ガシャンッ!

白露「め、目が回るーー!?」チュウヅリグルグルー

島風「あ、頭に血がぁぁ!?」サカサヅリー

鳥海「なるほど……こうなるんですね」

扶桑「ふたりとも吊り上げるのがうまいのねえ」

山城「うるさかったし丁度いいわ、あんたたちしばらくそうしてなさい」

白露「だ、ダメだよ、ケーキが待ってるのよー!」

島風「早く戻らないとなくなっちゃうよー!」

鳥海「け、ケーキ?」ビクッ

伊8「シュトーレンはあるの?」

敷波「ただいまー、ってどうしたのその二人!? あとその人誰!?」

摩耶「大丈夫だよ、罠にかかってるだけだから」

敷波「それ大丈夫じゃないじゃん!?」

鳥海「こちらはシルヴィアさん。罠の人よ」

敷波「どういう意味!?」

扶桑「……大淀もこんなふうに、この子たちに囲まれてたのかしら」

山城「不幸ですね」

敷波「何の話!?」

シルヴィア「事情を知らなきゃそうなるわよね~」ケラケラ

 * 鎮守府 埠頭付近 *

オボロ「………」

朧「……どうしてみんなに近づかないの?」

オボロ「それがし、目立つのが苦手ゆえ。仲間が楽しそうにしているのは良いこと……こうやって遠目から眺めているだけで、それがしは良いのだ」

朧「そんなこと言わずに、こっそり後ろに行って、さりげなく混ざっててもいいんじゃないかな」

オボロ「むぅ……も、もしや朧殿! お主、それがしを一人にすまいとここに留まっておられたのか?」

朧「それもあるけど……朧はちょっと考え事をしてたんだ」

朧「あの子、ニコさん? が言ってたよね、メディウムのみんなは、人間に憎悪を持ってる人がいるから来たって」

オボロ「……」コク

朧「提督が留守の間に、執務室に繋がったってことは、提督が出かけた先で何かあったんじゃないか、って」

朧「また、向こうで……本営で嫌なことがあったのかな、って考えてたんだ」

オボロ「……御屋形様はそれほどに苦悩を抱えておいでか」

朧「朧は、この鎮守府では長くいる方だからわかるんだけど、この鎮守府にまともな手続きを踏んで配属された艦娘はすごく少なくて」

朧「余所で暴力を受けてきたり、理不尽な扱いを受けてたり……配属っていうより、文字通り流れ着いた人も多くて」

朧「提督も、初めて会ったときは今よりずっと愛想が悪いっていうか、笑い方なんか今より嫌な感じだったし。良くなってきたんだよ、最近は」

朧「それがまた向こうで人間に絶望するような思いをしてきて……その、魔神とかいうのになって……」

朧「提督が今みたいに笑わなくなったりしたら嫌だなあ、って」

オボロ「……」

オボロ「我らメディウムは、魔力によって活動できる。魔力がなければ我らは罠として活動することも、傷を癒すこともできぬ」

オボロ「そしてその魔力は我らが主、魔神様が生み出す。その源は、人間の悲憤、無念、懊悩、哀傷、怨嗟……人間の、負の感情。……それが我らの糧だ」

オボロ「我らがこの地に召喚されたのは、御屋形様だけでなく、お主らが人間へ抱いた感情も一因やもしれぬ」

朧「……私たち、が?」

オボロ「今の話を聞いての推測にすぎぬ。我らは、本来ならば相対するもの。艦娘は人間を外敵から守り、我らは人間を敵として排斥するが常」

オボロ「にもかかわらず、その我らが主を同じくする……それがどういう意味なのか、少しばかり考えたそれがしなりの結論だ」

朧「……」

オボロ「人間は、必ずしもお主たちが守護するに値する者ばかりではない」

オボロ「傲慢で、貪欲で、利己のために他人を欺くことも厭わぬ輩もいる。御屋形様はそれに嫌気がさしたのではないか」

朧「提督は、そういう人間に失望して人を信じられなくなった人だから、同じ人間になりたくない、って気持ちは強いと思う」

朧「極端だけど、普段から『人間は死滅して、艦娘と妖精たちだけの世界になれば平和になるんじゃないか』って言ってたくらいだし」

朧「そろそろ、堪忍袋の緒が切れてもおかしくない、のかな……」

オボロ「……人を捨てても討たねばならぬ人間が現れた……と」

朧「そういう何かがあっても、朧たちにはなかなか教えてくれないけど」

オボロ「ふむ……いかにも、御屋形様は一人で背負いこみそうな性質の男ではあるな」

朧「うん、そういう意味では、自分が受けた嫌なことは私たちに味わわせたくない、過保護な人だからね」

オボロ「奥ゆかしいお方だ」

朧「ふふ、そういう言い方もできるんだ」

オボロ「長所は同時に短所になりうる。逆もまた然り……何事も表裏一体というものよ」

潮「朧ちゃーん」

オボロ「む? それがしに何用か」

朧「ん? どうしたの潮」

オボロ「おお、相すまぬ、こちらの朧殿であったか」

潮「あ、ごめんなさい、なんか紛らわしいね」クスッ

潮「せっかくだし、そちらのオボロさんも一緒に、鎮守府を案内しようかと思って」

朧「そっちの人は?」

ゼシール「ゼシール。サーキュラーソーのメディウムだ」

ゼシール「目覚めたばかりだが……一度に人数が増えていて、少々戸惑っている。静かなところを探しているのだが」

朧「静かなところかあ。丘の上が静かかな? いつも神通さんがいるけれど」

ゼシール「そうか。先客がいるなら邪魔にならないようにしよう」

オボロ「……ゼシール、聊か落ち着きがないな。お主らしくもない」

ゼシール「海も、潮風も初めてだ。見たことのない鳥もいる。そしてここには『仕事相手』もいないことがわかった」

ゼシール「新天地に殺気立つことはあっても、羽を伸ばすようなことはなかったからな」

オボロ「うむ、争いから遠ざけられたこの島には平和がある……我らが来たこと、新たな戦の火種にならねば良いが」

ゼシール「ああ。……ところで、気付いているか?」

オボロ「む……あやつらは」


???「……」チラッ

???「……」キョロキョロ

???「……」チラッチラッ


ゼシール「こちらに来たいんだろうな。仕方のない奴らだ」

オボロ「ならば迎えに行くか。旅は道連れ、というものだ」

今回はここまで。

次回……のサブタイトルも未定。ネタがないというか……。

メディウムとか何のこっちゃと思ったが
DMMゲームスでの影牢の登場キャラなのね


とりあえず漏らそう

話がどんどんシリアス方向に行きます。

>>176
悲しいことに今月でサービス終了なので、かなり高速回転で書き込んでます。

>>177
また漏らすんですか! 余所のスレといい、密かにお漏らし好きな人多くないですかここ。

では続きです。

 * 島の中央よりやや南西、丘の上 *

神通「……ここも、騒がしくなりそうですね……」ソヨソヨ

???「んしょ、んしょ……」

???「ふう、なかなかいい景色だじょ! 花畑も見えるし、ここはいいところだじょ!」

神通「……? 潜水艦? それとも……木乃伊?」

???「ん、おぉ!? ひ、人がいたのかの!? うるさくしてごめんなさいだじょ」ペコリ

神通「あなたは……」

マルヤッタ「トゥームストーンのメディウム、マルヤッタだじょ!」

マルヤッタ「お姉さんたちを危うく押し潰すところだったから、もう一回、ごめんなさいだじょ」ペコリ

神通「あ、ああ……あなたがあの墓石の」

マルヤッタ「お姉さんの身のこなし、忍者みたいだったじょ。オボロやゼシールの知り合いかの?」

神通「私は神通、川内型軽巡洋艦の2番艦です。別に忍者というわけじゃありませんよ」

マルヤッタ「そうかの? こんなところで目を閉じて佇んでいるから、精神統一の邪魔をしたのかと思ったじょ」

マルヤッタ「それに、ここで騒がしくするのはマルヤッタにとっても本当はよくなかったじょ」

神通「……あなたは、ここが何なのかわかって……」

マルヤッタ「マルヤッタは墓守だじょ。ここが墓地だということくらい、すーぐにわかるじょー」

マルヤッタ「大砲もアンテナも規則的に置いてあるし、さび止めもしてあるじょ?」

マルヤッタ「綺麗に道ができてて、お香の匂いと、お酒の匂いもするじょ」

マルヤッタ「だから、マルヤッタも最初にここへ来て、ここのみんなに挨拶しに来たんだじょ」

神通「そうでしたか」

マルヤッタ「……ここは、いいところだじょ」

マルヤッタ「無理矢理にだけど、いろんな思いから遠ざけられた場所だから、眠るにはとてもいいところだじょ……おろ?」

神通「あら?」

マルヤッタ「およ? 誰か来たみたいだじょ」


ゼシール「メディウムきっての小心者トリオと言えばいいのか……」

潮「私より引っ込み思案な人、初めてです……」

朧「そうだね……ほら、もうすぐその丘だよ」

オボロ「! ここは墓地か……!」

川内「おーい、神通ー! って、あれ?」

アカネ「マルヤッタも先に来てたんだー」

那珂「珍しいね~、丘にこんなに人が来るなんて」

神通「そちらの方々もメディウムの方々ですか?」

ゼシール「サーキュラーソーのゼシールだ」

オボロ「それがしはオボロ、ブラッディシザーのメディウムにござる」

シャルロッテ「私はシャルロッテ! バナナノカワのメディウムだよ!」

アカネ「ブラストボムのアカネだよ! ナカちゃんじゃないからね?」

神通「ふふ、大丈夫です、ちゃんと見分けがつきますよ」ニコ

朧「で、こっちが……」

フウリ「は、はぎゅ、はじゅめましてっ!? た、タライのメディウムの、フ、フウリ、れすっ!」アセアセ

カサンドラ「わた、私はカサンドラ! あああアゴニーマスクのメディウムですっ!」ワタワタ

シエラ「で、デスサイス、ですぅ……あっ、しぇ、シエラ、ですっ」アワアワ

朧(噛みまくりだ……)

潮(なんだろうこの親近感)ホワ

神通「潮さん、似たような方々が来て安心してます?」ニコー

潮「いいいいえそんなことはっ!」ビクッ

ゼシール「……神通と言ったか。この娘、只者ではないな」

オボロ「うむ。聞けば身のこなしも軽いらしいな……この川内型と呼ばれる姉妹、侮れぬ」

那珂「そんなに警戒しなくてもいいよ~! 那珂ちゃんとはもっと気軽に、フレンドリーでいいんだからね?」ペカー

カサンドラ「う、ううう、笑顔がまぶしい……!」

 * 鎮守府 入渠ドック前 *

提督「食堂へ集まれ?」

由良「なんでも、ケーキを作ったからティータイムにしましょうって」

ナンシー「やったぁ、みんな早く行こうよー!」

金剛「オーゥ、満身創痍の私に癒しの時間が来ましたヨー」

提督「……丁度いいな。昨日の本営の話、全員に伝えておかねえとな」

大和「何かあったんですか?」

提督「まあな。明日……いや、今晩から忙しくなるぞ」

ニーナ「それは……休む間もないタイミングで申し訳ありません」

提督「ま、なんとかなるだろ」

提督「……むしろ、助かったのかもしれないからな」ポツリ

 * 食堂 *

 ワイワイ ガヤガヤ

提督「この短い間に人数が倍か……食堂が狭く感じるぜ」

ニコ「ぼくたちにとってもほぼ倍になったからね。まあ、賑やかなのは悪いことじゃないと思うよ」

ニコ「それに、こっちにはまだ目覚めていないメディウムもいるしね」

提督「まだ増えるのか……」

ニコ「うん……ちょっと、困った子もいるし」

提督「大丈夫だろ、ここにいる奴はほぼ全員トラブルに巻き込まれた経験ありだしな」

ニコ「まあ、君がそういうのなら大丈夫だと思うけど……」

ニコ「君の身に危険が及べば、黙っていられない子ばかりだから、気を付けてね」

提督「……なんだそりゃ」


長門「よし、並んでくれ! 順番だからな!」

マーガレット「はーい、こちらをどうぞー!」

比叡「紅茶はこちらですよー」

セレスティア「リサーナ、アマナ、これを向こうのテーブルにお願い」

アマナ「はーい!」

リサーナ「まかせてー!」


提督「一斉に食堂に集まると壮観だな」

如月「仕出しもすごいわね、どこかのホテルみたい」

由良「人が多いからだけど、メディウムっていろんな職業の人がいるのね……」

古鷹「誰でしょう、メイドさんにバニーさんまでいますよ?」

リサーナ「あら、バニーって私のこと? 私はキラーバズソーのメディウム、リサーナです♪ ほら、このお盆、見覚えない?」

古鷹「……あ! あなたは、階段のところの丸鋸の!?」

リサーナ「うふふっ、覚えててくれてありがと♪ あとでサービスしてあげるね♪」

古鷹「は、はあ……」

由良「古鷹さんはさっきからセクシーな女性にばかり縁がありますね」

古鷹「そ、そういえばそうですね。な、なんでなんでしょう……」カァァ

アマナ「あら、そういうあなたは……私、見たことありますね」

由良「えっ!? ゆ、由良のこと!?」

アマナ「私はバキュームフロアのアマナです。本当はお掃除のほうが得意なんですよ」

由良「……ほ、本当に罠の人なんだ……」

古鷹「な、なんか戸惑っちゃいますね……」

五十鈴「それにしても、すごい賑わいね……なんだか、逆に不安になってきたわ」

如月「五十鈴さんもメディウムに戸惑ってるの?」

由良「んー、どっちかというと、五十鈴と筑摩さんは前にいた鎮守府が借金苦で大変だったのよね、ね」

五十鈴「ええ、なんだか今の食堂、活気があってきらきらして見えて……鎮守府がぼろぼろになる直前見てるみたいで」

筑摩「うえぇぇんん、ぐす、ぐすぐす、ふぁぁぁん」

利根「ち、ちくま!? 何があったのじゃー!?」

五十鈴「筑摩さん大丈夫かしら、って言おうとした矢先にこれだもん」

大淀「……こんなに大盤振る舞いして、食堂の食料の在庫は大丈夫なんでしょうか」ドヨーン

ニコ「その辺は大丈夫みたいだよ。代わりに、ぼくたちの食料の在庫を随分削ったみたいだけど」ドヨーン

大淀「ご苦労おかけします……」

ニコ「いいよ、仲良くできそうだもの。一緒に頑張ろう?」

山城「扶桑お姉様! 那珂ちゃんがステージの準備をしてますよ! こちらに座りましょう!」

扶桑「ふふふ、山城ったらもう座ってるのね。そんなにはしゃぐと紅茶がこぼれるわ」ニコニコ

山城「大丈夫です扶桑お姉様! ケーキも紅茶も無事に……あら? なにかしらこのカボチャ」

???「だーれだっ!」メカクシー

山城「ふえっ!? ちょっ、何するの!? 誰っ!?」

扶桑「あら、可愛らしい魔女さんね。イタズラは良くないわ」

山城「も、もしかしてあのカボチャ、あのときのランタンじゃ!?」

ロゼッタ「当ったり~! あたしは魔女メディウム、パンプキンマスクのロゼッタちゃんでーす!」

タチアナ「ロゼッタ、他の人の邪魔はいけませんよ。私はタチアナ・トリックホールです。どうぞお見知りおきを」

山城「トリックホール……というと、あの落とし穴の」

タチアナ「ええ。先程、大淀さんにお詫びとご挨拶に行ってきまして」

ロゼッタ「席を取っておいてって言われたんだけど、ずーっと待たされて退屈だったんだよ!?」

扶桑「それで、たまたま見つけた山城に構ってほしくてイタズラしてたのね」

ロゼッタ「ぴーんぽーーん! その通りー!」

タチアナ「彼女には渋々でしたが囮役をやってもらいました。見つけたのがあなただったということで、縁を感じますね」

ロゼッタ「ほんとは、この『じゃこたん』を頭にかぶせてあげるのが、あたしの役割だったんだけどねー」

扶桑「あなたは別の役になったのね」

タチアナ「今回はツバキさんがその役でしたね。ほら、あそこにいるカビンのメディウムが彼女です」


ツバキ「親分さんも! 姉さんも! よろしゅうお頼ん申します!」ズイッ

提督「」

霧島「」


山城「……」

扶桑「本当にメディウムにはいろんな人がいるのね。楽しくなるわ」ニコニコ

山城「それですまそうとする扶桑お姉様いろいろと流石過ぎます」タラリ

扶桑「……あら? 二人はコーヒー派なの?」

ロゼッタ「うん、あたしコーヒー大好きなの!」

タチアナ「私もですね。どちらかと言えばコーヒーのほうが好きです」

山城「さっき見た時はコーヒーなかったわよね」

ロゼッタ「もしかして、遅くなったのってコーヒー作ってもらってたから?」

タチアナ「いえ、大淀さんと眼鏡の話で盛り上がってしまいまして……」

山城「そのうち武蔵さんや霧島や鳥海を巻き込むこと間違いなしですね」


那珂「ステージ設営完了ー! あとはマイクを……」

提督「霧島、ちょっとマイク貸せ」

霧島「は、はい! なにかありましたか?」


提督『このタイミングで悪いが、全員耳をこっちに向けてくれ』

提督『昨日、本営から出撃の命令が出た。作戦内容を簡単に説明する』

 ザワッ…

ニコ「ねえ……ケーキ食べながらでいいの?」

提督『かまわねえよ。食いながらでも話は聞けるだろ』

ニーナ「割とフランクなんですね……」

ニコ「ぼくたちも一部はそうだけどね……」

提督『先日、本営の大佐率いる提督たちの艦隊から、泊地棲姫への攻撃が行われた。残念ながら戦果はお粗末、連中にやる気なし』

提督『連中は自分たちの被害が微少なことから追撃をかけることにしたんだが、その攻撃地点がこの鎮守府の近くだ』

提督『そのため、大佐の連合艦隊がこの鎮守府を前線拠点として利用することになった』

 エエー!? ブーブー

ニコ「すごいブーイングだね」

如月「無理もないわ……大佐は嫌われてるもの、ここの艦娘には特に」

提督『残念ながら作戦開始まで間もない。2、3日の間に各自調整を行い、臨戦態勢を整えておくように』

長門「提督、作戦は?」

提督『俺たちは専守防衛、邀撃は連中に任せることになるが、はっきり言って総力戦だ。作戦と編成はこれから考える。以上だ』

提督「悪いな那珂、邪魔をした。ほれマイク」

那珂「もー、そんな話があるんなら先に言ってよ~! せっかくミニステージ準備したのに、そんな空気じゃなくなっちゃったじゃない!」

提督「んじゃあまた次の機会だな。大丈夫だろ、お前ステージ準備するのも出撃準備も半端なく速えし」

那珂「もっちろん! 早着替えはアイドルの嗜みだよ!」

提督「おう、そういうわけだから次の出番のときは頼むぜ」ナデナデ

那珂「あっ……えへへー」ニヘラ

シャルロッテ「あっ、ずるーい!」

那珂「これもトップアイドルの特権だよね~」ニヘラ

 パシャ

青葉「ステージ上でにやける那珂ちゃんの無防備な笑顔ゲットしましたぁぁ!」ダッ

 シャッ

那珂「も~、青葉さんったら、アイドルのプライベートはいつだってトップシークレットだよ~?」ガシッ

青葉(えっ、いつの間に正面に……ていうか、カメラ掴まれてる!? なんですかこのすごい力!)

那珂「だ・か・ら、今のデータ、消してくれるよね?」

青葉(な、なんですかこのプレッシャー! こんなにさりげないのに怖い那珂ちゃん見たことないですよ!?)ゾワワワッ

青葉「は、はい! 了解ですっ!」ポチポチ

那珂「あとシャルロッテちゃんも、私に協力してくれたのは嬉しいけど、青葉さんは怪我させちゃ駄目だよー」

青葉「へっ」

那珂「ほら、足元~」

バナナノカワ「」チョコーン

青葉「」

シャルロッテ「那珂ちゃんって優しいんだね~」ポンッ

那珂「そうかな~? それよりも、油断してたとはいえ、咄嗟のカメラに反応できなかったのは那珂ちゃん的にショックかな~」

青葉(青葉の方がいろいろショックです……)シロメ


山城「那珂ちゃんのライブが……不幸だわ」ズーン

タチアナ「……なにやら年季の入った落ち込み方をしてますね」

扶桑「心配いらないわ。ね、山城?」ナデナデ

今回はここまで。

次回、 引き続き食堂で講義の時間。

続きです。

小難しい話になりますが、辻褄の合わないところはご容赦いただければ。

如月「提督が本営に呼ばれてた理由がそれだったのね。唐突な話じゃない?」

提督「連中が勝手に戦争やらかして、それをこっちに飛び火させたようなもんだからな。唐突でもなんでもねえよ」

ナンシー「ねえねえ、シンカイセイカン? そいつらって敵なの?」

大和「敵……ですね。突如海に現れた彼らは、かつて沈んだ艦の怨霊とも言われている存在で、今や世界中のシーレーンを脅かす脅威となっています」

ニコ「で、それに対抗しうる力を持ってるのが、君たち『艦娘』ってわけだね」

ナンシー「やっぱり放っておくわけにはいかないんだ?」

武蔵「深海棲艦の出現で海路と空路は寸断されてる状態だ。物流が切れてるから現代人は一昔前の生活を強いられている」

霧島「海運や漁業もそうですが、海上の制空権を抑えられているので空輸にも大打撃ですからね」

ナンシー「それで物資不足、ってわけねー」

提督「物が来ねえのは、俺が上に嫌われてるっつうのもあるがな」

ルミナ「対抗、ねえ。艦娘も深海棲艦も似たものなんだし、いっそ交流を持ちかけるのはどうなのかな?」

武蔵「海軍の中にも深海棲艦との対話を考えてる者たちはいるが……そんなに似てるか? 悪いが、良い気はしないぞ?」

ルミナ「ああ、多分武蔵君の言う意味じゃなくてね。深海棲艦と艦娘の発生の経緯や、関連性を調べてみるとなかなか面白いんだよ」ズズズ

ルミナ「例えば建造。艦娘は工廠で建造されるほかに、海上で見つかるときもある。そういう艦娘はドロップ艦とも呼ばれてるそうね?」

ルミナ「ドロップ艦は海上で自然発生しているのか? この辺は艦娘自身の記憶も曖昧で未解明。では、深海棲艦はどうなのか?」

ルミナ「深海棲艦も海上、いや、海中かな? そこで自然発生してるって考えが多い。つまり、艦娘も深海棲艦も海で生まれてる」

ルミナ「そしてどちらも海に残った遺志、プラスかマイナスかの差はあるけど、それを引き継いでいる……という点で、共通項も多いわけ」

ルミナ「もしこれらの仮説が成り立つなら、深海棲艦もここの工廠で建造できるんじゃないか、って推測できるのよ」

鳥海「深海棲艦にも建造設備があるかもしれないとはよく言われていますね」

摩耶「ただ、いい話は聞かねえな。やれ艦娘を素材に使うだの、やれ艦娘が悪に傾いてできるだの……」

ルミナ「あら、そうなの? それも十分にあり得るわね」

鳥海「少しは否定してくださった方が気楽だったんですが、やはり肯定するんですね」

ルミナ「研究者に偏見は禁物よ? それがたとえ私たちの希望の芽を摘む最悪の事態だったとしてもね」

ルミナ「それに、その仮説が真なら、深海棲艦が艦娘に生まれ変わる可能性もあり得るじゃない?」

摩耶「ああ……ま、そう考えりゃ悪い話ばかりじゃねえかな」

ルミナ「他にも、深海棲艦には人間が作った兵器が一切通用しないのに、艦娘の持つ兵器だとダメージが通る」

ルミナ「逆に、艦娘にも人間が作った兵器の殆どが通用しないけど、深海棲艦の攻撃にはダメージが入る」

ルミナ「これがどういうことかって言うと、深海棲艦と艦娘は、人間と別次元の存在であると言えるのではないか? って言えるのよ」

武蔵「……ほう。仕切りがある、と言いたいわけか」

ルミナ「次元という言葉で表現するのが適切かどうかはわからないわ。『波長』って言うのもちょっと違うし、まずは『次元』で通させてもらって……」

ルミナ「建造や解体は妖精の力を借りて行っていることから、妖精もまた艦娘と同じ、もしくは近い次元の存在だと言えそうね」

ルミナ「そして魔神君。きみは妖精と意思疎通ができるらしいわね? だとしたら君も、彼女たちに近い次元にあると言えそうなの」

提督「……俺が人間じゃねえ、ってか?」

ルミナ「人間離れしている、と言う方が適切かしら? 私たちにも近い、とも言えそうなのよ」

ルミナ「艦娘である彼女たちに私たちの攻撃が通用している。またその逆に、霧島君の攻撃は罠状態のルイゼット君に通用した」

ルミナ「とすれば、艦娘と私たちメディウムの存在の次元は非常に近い、と言えるわね」

大和「なかなか興味深いですね」

ルミナ「解体の理屈についてもそう。艦娘は解体することで人間になることができる、という部分も非常に興味深くてね」パクッ

提督「そんなことできるのか」

武蔵「したことなかったのか?」

提督「解体されたいって言う奴がいなかったから、やったことねえな。自殺したいなら勝手にすりゃいいだろうから放置するしな」

ルミナ「その解体なんだけど、解体すると人間になるということは、その艦娘の次元を変化させている、と見て取れるんだ」モグモグゴクン

ルミナ「さらっと言っているが、これはすごいことだよ? 妖精が次元を超越させられる存在だとしたら、本来は脅威となる」

ルミナ「それがそうなっていないのは、妖精たちが人間に協力的であり、彼女たちがか弱い存在であるため、と私は見ているけど……」

大和「提督は妖精たちに好かれてますから、大丈夫ですよ」

提督「人間には嫌われてるけどな」ンベー

霧島(……司令はもとから人間に好かれたいと思ってないでしょうに)

ルミナ「魔神君のその辺の言動は、やはり人間よりも妖精に近い性質によるものなのかな?」

ルミナ「とにかく、逆に人間が艦娘になることも研究としてはあるようだけど、それもおそらく存在の次元を変化させようとしているんだろうね」

ルミナ「艦娘は年の取り方が非常に緩やかだけど、解体して普通の人間になると老い方も普通になるというレポートもあるようだし?」

鳥海「一説には、終戦後もそのままでは可哀想だから、という救済措置みたいなものと聞いていますね」

ルミナ「へーぇ! この辺はいろんな捉え方があって面白いわねぇ」

ルミナ「そもそも、人間は肉体と霊体と幽体……これらはそれぞれエーテル体とアストラル体とも呼ばれ……」

提督「俺は寝るぞ」

ルミナ「あああ、待ってくれ魔神君! つまりだね、艦娘や私たちメディウムは、肉体の代わりに艤装や罠そのものが結びついてると言いたいのよ!」

ルミナ「……私なりの推論だけどね。でないと艦娘の言う『近代化改修』の説明ができないのよ!」

提督「……近代化改修?」

ルミナ「……もしや」

如月「やったことありませんね、そういえば」

ルミナ「……」ガクーッ

霧島「ま、まあまあ。とにかく、近代化改修はどういう理屈で?」

ルミナ「ええ、まとめるとね、解体は人間への回帰、艤装を分解し肉体を得て魂魄の移し替えを行う。魂魄はさっき言った霊体と幽体のカタマリと思ってちょうだい」

ルミナ「一方、近代化改修は艤装を他の艦娘の強化に使い、魂魄の解放を行うことで、外面の強化を行っている」

ルミナ「艦娘のときは次元の優位性を得ているのは魂魄……つまり、霊体+幽体。一方、人間が次元の優位性を得ているのは肉体」

ルミナ「だから人間と艦娘は次元が違って、科学兵器では艦娘や深海棲艦にダメージを与えられない、という推論に行き着くの」

提督「なるほど、さっぱりわからん」

ルミナ「いやいや魔神君、君自身に関わることなんだから、もうちょっと耳を傾けて欲しいんだけど」

榛名「提督自身が、ですか?」

ルミナ「そう。さっき、魔神君と妖精の次元が近いって言ったでしょ? どのくらい近いかって話になるのよ」

ルミナ「もうひとつ同じ理屈で、もし艦娘にきわめて次元の近い男性がいるのなら、繁殖行為もできると考えられるって話になるわ」モギュモギュ

「「「!?」」」

ルミナ「元来、次元の違う生物同士だと繁殖は難しいんだけど、もとから妖精と次元が近い魔神君なら、艦娘と子をなすことも不可能ではないかもよ?」

如月「そ、それ本当ですか!?」ガシ

大和「提督と赤ちゃん作れるんですか!?」ガシ

提督(両脇から力いっぱい掴むんじゃねえよ……)タラリ

ルミナ「ああ、それはやってみないとわからないよ。もしかしたらメディウムともできるかもしれない。これはあくまで推論だからね?」ズズッ

如月「善は急げですよ提督!」キランッ

提督「おいやめろ」

大和「ヤってみるといいんですよね!!」キランッ

武蔵「おいやめろ」

金剛「ヘーイテイトクゥー! 金剛は大丈夫デース!」Thumbs up !

榛名「金剛お姉様!?」

扶桑「扶桑も大丈夫ですよ?」ニコッ

山城「扶桑お姉様!?」

摩耶「ま、まやっ、摩耶様もだいピョうぶだぜ!?」プルプルプル

鳥海「摩耶!? 声が裏がってる!」

暁「何の話かよくわからないけど暁も大丈夫なんだから!」バーン!

電「何の話かよくわかんないなら暁ちゃんやめるのです!」ガシッ

アーニャ「お姉ちゃんは参加するの? じゃああたしも!」バーン!

ミーシャ「え、ええ!? ちょ、ちょっと待ってぇぇ!!」ガシッ

朝雲「これは私たちも参加しなければいけないのかしら、ねえ山雲?」

山雲「私は~、朝雲姉と一緒なら構わないわ~」

朝潮「え? ま、まさか、3Pですか……!?」

霞「ちょっと待って……なんであんた3Pなんて言葉知ってんのよ」クラッ

青葉(朝潮さんは純粋そうに見えて耳年増のムッツリ、と……)メモメモ

リサーナ「ねえねえ、古鷹は手を上げないのぉ?」

ベリアナ「イくんなら、私も協力しちゃうゾ?」

古鷹「ふぇっ!? わ、私は……そのぉ……」モジモジ

加古(なんだか無理矢理なし崩し的に手を挙げさせられそうだねえ)

ヴェロニカ「あら……いいコト聞いちゃったわね。陸奥はどうするの?」ニヤリ

陸奥「あらあら、そんな野暮なこと、わざわざ訊く必要があるの?」ニヤリ

長門(……陸奥、無理して余裕ぶらなくてもいいんだぞ?)タラリ

キュプレ「すごいわ! 今なら誰に矢を当ててもカップル成立じゃない!?」キラキラキラッ

黒潮「あかんなあ……」キリッ

リンダ「うん、これはアカン」キリッ

黒潮「ここでうちらが『うちもや!』って手を挙げても……」

リンダ「せやな……『どうぞどうぞ』は期待できひんな」

ジュリア「」スパパーン

龍驤(ええツッコミや)モグモグ

ニコ「……ルミナ? きみは今何を言ったか理解してるかい?」ジロリ

ルミナ「? 私、なんかおかしなこと言ったかな?」ズズ

ニコ「きみのせいで、みんな魔神様をすごい目で見始めてるんだよ……」

ルミナ「ふぅん……まあ、いいんじゃないかな? 私も今の理論を確かめられるし」

ニコ「……あのねえ」

ルミナ「それともなにかい? 私が実験してみてもいいのかい?」

ニコ「ルミナ?」

ルミナ「ははは、冗談だよ。あぁ、紅茶もたまには美味しいね。私は専らコーヒー派なんだけど……あ、おかわりあるかな?」

ニコ「……」ハァ

ルミナ「そんなふうに落ち込んでいないで、興味があるならニコ君も立候補したらいいじゃない」

ニコ「ルミナっ!?」カオマッカ

ルミナ「照れることはないだろう? 君もずっと魔神君が現れるのを待ってたんだから」

ニコ「まったくもう……」ハァ

ルミナ「あ、もっと簡単に魔神君が艦娘に近い存在かを確かめる方法があるわ」

ニコ「……なんだい?」

ルミナ「魔神君が艦娘を物理的に傷付けられるなら、彼の次元が近いことが証明できるわね。ひっかいたり、殴ったり、ね」

ルミナ「もっとも、その方法を実験することは決してできないでしょうけど?」クスッ

ニコ「そうみたいだね」


ルミナ(と、気になる点はもうひとつ。魔神君、年齢の割に見た目が若いんだよねえ……これも艦娘の老化緩和理論に当てはまりそうじゃないかな?)

ルミナ(あくまで仮説だけど……艦娘の解体理論と逆に、ただの人間だった彼を、妖精が自分に近しい存在に書き換えたとしたら?)

ルミナ(もし魔神君の素質が先天的なものでないとしたら? ……妖精が『提督の資質』を人間に与えていることになる……なんてね?)

ルミナ(そもそも、妖精がこの世界に求めているものはなんなのか……面白いわ)キラン

 * 幕間 追放と轟沈と脱走と *

伊勢「す、すごい騒ぎになってるわね……」

日向「ここの提督はここまで好かれているのか」

若葉「突樫貪に見えるが、艦娘の意志を尊重し好きにさせてくれている。良い提督だ」

初春「まあ、ただでさえここにおる者の殆どが、前の鎮守府でひどい目に遭っておるからのう。ある意味で放任主義の提督は歓迎されよう」

川内「そだねー。あたしと若葉が前にいた鎮守府なんか、提督がケチですっごい臆病だったせいで夜戦禁止だったもんねぇ。ストレスで気が狂いそうだったもん」

若葉「重巡や戦艦ならまだしも、輸送ワ級を追撃して夜戦で完全勝利をおさめたら飛ばされた。あの提督は勝利が欲しくないのかと憤ったものだ」

川内「あの鎮守府、普段から戦果がよろしくなかったからね。戦果に色気を出したらそれより先に命令違反でこうだから」クビスパッ

初春「気の毒じゃが、まあ『悪法も法のうち』じゃ。わらわたちは軍艦ゆえ、法は守らねばならぬ」

川内「その変な法を決めちゃったせいで、その提督自身が今は閑職に回されてたんだから世話もないよね」アハハ

若葉「まあ……この鎮守府はこの鎮守府で、別の理由で深海棲艦との戦闘に消極的だからな。同じことにならないかは心配だ」

伊勢「ん? 初春は二人と別の鎮守府の出身なの? 初春は前の鎮守府でどうだったのさ?」

初春「わらわは捨て艦じゃ。前の鎮守府なぞ最早興味もない」

日向「……轟沈したのか」

初春「うむ。大破して意識も八割がた沈んでおったわらわを、たまたま暁が見つけて必死に曳航してくれてのう」

初春「その暁も、前にいた鎮守府からは脱走しておる。わらわを見つけたのはそのついでじゃ」

初春「おぼろげながらに覚えておるが、わらわを助けようとしていたときの暁は、ひどく取り乱していておってなあ」

初春「どうにかわらわと一緒に岸に流れ着いたあとは気を失ったようでの。次に目を覚ました時は、前の鎮守府の記憶をなくしてしまっておった」

伊勢「なんていうか、ひどいね……」

初春「まあ、轟沈しかけた者は多いのう。朧と吹雪がわらわと同じ捨て艦で、電と由良、鳥海、加古が大破進軍、那珂と榛名が過労じゃったか」

初春「前の鎮守府で心を病んだ者もおる。先述の暁しかり、比叡、利根、神通、大淀、潮もその口じゃな。原因は皆ばらばらじゃが」

初春「ほかにも理由あって大破して流れ着いたのが如月、扶桑、山城、朝潮に霞、明石……長門は、潮を守って一緒に流れてきたのじゃ」

初春「おめでたいのは迷子になっていたところを保護された島風と白露くらいかのう」

日向「……私たちは、何と戦っているんだろうな」

川内「伊勢さんと日向さんはどうなの?」

伊勢「日向が提督に深海棲艦に関する突っ込んだ質問をしまくってたらここに異動になったのよ。私はその道連れ」

川内「ああ……」


青葉「あの、神通さん? 今の川内さんたちの話なんですが……」

神通「本当ですよ。那珂と榛名さんは、補給はあっても沈むまで文字通り休みなしに戦い続けていましたから、二人とも相当の手練れなんです」

神通「ええと、私の知る限りでは、ここで建造されたのは大和さんと武蔵さんだけですね。あとはみんな流れ着いてきたような感じです」

青葉「だとすると」

神通「そうですね、この鎮守府の艦娘はみんな過去に傷を抱えてるようなものですから、スクープには事欠かないかもしれません」

神通「ですが、何がきっかけで抱えていた闇が爆発するかは予測できませんから、私もあまり深入りしないほうが賢明だと思います」

青葉「あ、あの」

神通「青葉さん、この鎮守府では伊勢さん日向さんと並んで一番新顔ですからね。大変な鎮守府に来ちゃいましたって思ってるでしょう?」

神通「でも、普通にしていれば私もみんなも怖くありませんから、大丈夫ですよ」ニコッ

青葉(いや怖いですよ! どうして青葉の考えていることを次々と言い当ててるんですかこの神通さんは!?)ダラダラダラダラ

神通「あ、私はそれが原因でここに来たわけではないので……まあ、あまり思い出したくないですから、探られても困りますけれど」トオイメ

青葉「」ダラダラダラダラ

今回はここまで。

次回は、 不幸なのは艦娘だけじゃない。

続きです。

 * 夕方 島の北部 *

敷波「足元に気を付けてね」

ニコ「こんなところに洞窟があるんだ」

三隈「ほかの洞窟には温泉もわき出ていますよ」

長門「しかし、この人選はどうなんだ? 私と潮、敷波……戦艦1、駆逐艦2に航巡2と重巡1?」

最上「それもそうだね。僕たちの力が必要なの?」

提督「俺に色めき立つ発言をしない、かつそれを茶化さないメンバー、って基準だな」

那智「ああ、道理で足柄や隼鷹を呼ばなかったわけだ」

潮「あはは……」

提督「悪乗りが過ぎると利根や神通が不憫だからな」

敷波「あー……そっか。そだね」

ルミナ「なあ、ニコ君? エミル君やゼシール君もそういう基準で連れてきたのかい?」ゼェゼェ

ニコ「ぼくは単純にボディガードに適任なメディウムを誘ったつもりだよ? ルミナは島を調べたいからついてきたってだけで」

エミル「それともなーに? ルミナ、ぼくじゃ頼りないっていうの!?」

長門「ん? いいや? こんな大きなハンマーを持ってるんだ、頼りがいがありそうだな?」ニコッ

エミル「そ、そう? 悪い気はしないねっ」テレッ

提督(ちょろい)

ニコ(ちょろい)

三隈「ええ、とっても可愛らしい騎士様でいらっしゃいますわ」

エミル「あ、こらっ! 可愛いなんて馬鹿にすると容赦しないぞー!」

最上「べ、別に三隈は馬鹿にしてるわけじゃないよ、落ち着いて」

三隈「ええ、勿論です。ね、モガミン」

エミル「モガミン? へーえ、可愛い名前だね!」ニコー

最上「モガミンはやめてよ……僕は最上だってば」カオマッカ

三隈「で、あなたはトイハンマーのエミルさん……エミルンですわね」ニコー

最上&エミル「「ちょっと!?」」

ゼシール「……賑やかだな」

那智「ひとえに提督のおかげだ。我々もここに来なければこうして笑いあえることもなかったろう」

提督「酒くせえセリフだな……」

那智「おっと、生憎だが私は酒保で飲んでいないぞ。まだ禁酒は継続中だ」

提督「……そうかい」

那智「フ、そう照れるな。少なくとも私は貴様に会えたことを感謝している。利根や神通もきっとそうだろう」

最上「ぼくも、前の鎮守府がひどかったから、なおさらね。今の提督はぼくは好きだよ」

三隈「わたくしもですわ」

提督「……ったく、酒が入ってると言うことが違うな」プイ

エミル「へぇ、信頼されてるんだね……みんな何をしてもらったの?」

那智「私は……自暴自棄になっていたところを、彼に助けてもらった」

三隈「私はちょっとした不祥事を起こしまして……モガミンと一緒に拾ってもらいましたの」

敷波「私もそーかなー。嫌な奴から逃げてきたんだ」

長門「私と潮は、彼に悪い奴から匿ってもらった。ここの艦娘は、何かしら提督に恩があるな」

エミル「ふーん。だから人間が嫌いなんだね?」

提督「……まーな」

那智(? 今の話の流れから、どうして提督が人間嫌いだとわかるんだ?)

提督「さて、そろそろ目的地だな……」

 ザァァァ

ゼシール「? 海の方から何者かが……来ている!?」

ル級「フフ、丁度良カッタヨウネ」

ニコ「!?」

エミル「だ、だれ、こいつ!?」

ル級「ン、見ナイ顔ネ? コイツ、ダナンテゴ挨拶ダコト」ジロリ

ゼシール「おい……!?」

ルミナ「これはもしや! きみ、深海棲艦じゃないか!?」キラーン

長門「ああ、彼女は深海棲艦の戦艦ル級。この島の北の海域で暮らす深海棲艦だ」

ゼシール「……平然と言うが、お前たちの言う敵じゃないのか」

提督「敵じゃねえよ、だから安心しろ」

提督「悪いなル級、この新顔たちは深海棲艦とは初対面なんだ」

ル級「ソウ? ……ナンダカ妙ナ親近感ヲ覚エルンダケド」

提督「こいつらもちょいと訳ありでな。説明はさせてもらう」

ゼシール「お前たちは、抵抗はないのか?」

那智「最初は驚いたさ。だが、彼女も私たちと同じく提督に世話になった。同じ境遇ということだ。敵対しないのならそれに越したことはない」

ル級「マァ、愚痴ヲ聞イテモラッタトイウカ、ネ」

ルミナ「愚痴で味方を裏切れるようなもんなの?」

ル級「私タチハソコマデ組織的ジャナイカラネ。割ト自由ナノ」

長門「彼女はかつて東部オリョール海に住んでいたんだが、その海域には潜水艦を運用する者が大半でな」

長門「戦艦は潜水艦に攻撃できない。一方的に潜水艦から攻撃を受けるだけの戦闘が1日に数十回で百隻以上、それが毎日続いていたそうだ」

エミル「一方的にいじめられてたの!? 可哀想じゃんか!」

ル級「ソレデ嫌ニナッテ修復セズニ海域ヲ出テ、流レ着イタノガ、コノ島ノ海岸ダッタノ」

ゼシール「……確かに、相手の弱点を突くのは戦闘の基本だが……」

エミル「やられるほうはたまんないね!」プンプン

提督「ま、そのあと長門と意気投合してな。ときどき演習相手になってもらってる」

潮「ル級さん、これケーキです、良かったらどうぞ」

敷波「この水筒は紅茶だよ」

ル級「エ? マジ? 嬉シー、アリガトー!」キャーー

三隈「それで、提督にお知らせしたいことがあるそうですけど、何かあったんですか?」

ル級「コレ食ベナガラデモイイ? 水中ニハ持ッテイケナイシ」ルンルン

最上「うん、いいよー」

ゼシール「……結構軽いノリなんだな」

ニコ「うん……」


提督「こっちに艦隊が向かってる?」

ル級「エエ。泊地棲姫ノ艦隊ガ、コノ鎮守府ヲ目指シテルワ」

ル級「ナンデモ、彼女ノ塒ニ突撃シテキタ艦娘ヲ鹵獲シタラ、コノ鎮守府ノ出身ダト白状シタラシイノ」

エミル「なんだよ、結局深海棲艦に喧嘩売ってたの?」

最上「まさか!? 第一、そっちには誰も出撃してないよ!?」

ル級「マア、ソウデショウネ」

ル級「ソレデココノ近クニ棲ム私ニ話ガ来タンダケレド、コノ提督ガ、ワザワザ泊地棲姫ノ塒マデ出張ッテ攻撃スルトハ思エナイシ?」

ル級「ソレニ、ソノ直後ニ敷波カラ侵入者ノ話ガキタカラ、ソノ理屈ハオカシイ、トイウコトハ伝エタワ」

提督「……大佐だな」

三隈「どういうことですの?」

提督「さっき、大佐たちがこの鎮守府に寄港して泊地棲姫に戦いを挑むと言ったが、連中の狙いはそっちじゃない」

提督「あいつらはな、泊地棲姫をこの鎮守府に誘導して攻撃させ、その最中に俺と中将を暗殺するつもりだ」

長門「なんだと!?」

エミル「魔神様、暗殺されちゃうの!?」

那智「き、貴様、なぜそういう大事なことを早く言わないんだ!」

最上「提督を守らないと!」

ニコ「魔神様、どういうこと?」

提督「ほれ、那智や最上ですらこうも動揺するんだぜ? 全員いる前で言えば、パニックで勝手にヒートアップして冷静に指示できねえだろ」

提督「だから、段階を踏んで徐々に小グループ毎に知らせて、各個に指示を出そうって話だ」

ゼシール「なるほど、確かにこの方が話も通しやすいな」

長門「……ル級、泊地棲姫の様子は」

ル級「言ウマデモナク荒レテルワヨ? ワザワザ塒ノ深イ場所デ砲弾バラ撒カレテ、オ気ニ入リノ寝床ヲ滅茶苦茶ニサレテ怒リ心頭」

ル級「シカモソレガ練度ノ低イ艦ノ仕業ダトイウノナラ、頭ニ来ナイワケガナイワ」

長門「艦娘を鹵獲したと言っていたが」

ル級「嬲ルダケ嬲ッテ、モウ沈メテルンジャナイカシラ?」

ニコ「どうしてこんなに回りくどいことをするのかな。人間はよくわからないよ」

提督「大佐は、自分の地位を傷付けることなく俺たちを排除したいのさ。そのための隠れ蓑として深海棲艦を利用しようとしている」

提督「中将はそれなりに実績がある人だ、謀殺するより戦死してもらうのが一番恰好がつくし怪しまれない。しかも責任は全部俺に押し付けられる」

提督「俺も中将も鎮守府も全部灰にしてしまえば証拠など残らん。あとは奴らが口裏合わせて責任逃れだ」

ゼシール「なるほどな。都合の悪いものを全部まとめて掃除する気か」

提督「どうにかして鎮守府を守るか、全員で逃げる手段を考えていたんだが、下手を打てば敵前逃亡で銃殺刑。正直八方塞がりだった」

提督「そしてそこへ鎮守府乗っ取りの知らせが来た。最悪だと思ったぜ……だが」

ニコ「……」ニッ

提督「来たのが助っ人だったとなれば話は別だ。俺も腹を括る気になった、猫を被るのはもうやめだ……!」

提督「連中には、痛い目を見てもらおうじゃねえか」ニヤリ

三隈「それじゃ、提督が一番最初に執務室を目指して救難信号を押そうとしたのは……」

提督「余所の鎮守府に大々的に異常事態を知らせるためさ。この状況下で泊地棲姫を相手取るなんて無理だろ?」

ニコ「ヘルレーザー、サーキュラーソー、トイハンマー。みんなにも伝えて、ぼくたちの出番だよ」

ルミナ「ふむ、どうやらバカンスはひとまずお預けみたいだね」

ゼシール「仕事か。仕方がないな」

エミル「よーし、やってやろうじゃんか!!」

ル級「……」

長門「どうしたル級」

ル級「イイエ、人間モ大変ネ、ト思ッテ」

提督「ああ大変だ。何度もやめたいと思ったぜ。お前らのほうが余程付き合いやすそうだ」

ル級「ソレナラ、アナタモ深海ニ来テミル?」

提督「そうだな。前向きに考えとく……ん?」

潮「……」グイ

敷波「……」グイ

ル級「フフ、マダ先ニナリソウネ?」

提督「……みたいだな」

 * 執務室 *

提督「実はもう一つ、大佐が俺に執着している理由がある」

ニコ「? なにかな?」

提督「大和の存在だ」

提督「この鎮守府は、艦娘の建造を2回しかしたことがない。その2回の建造でできたのが大和と武蔵だ」

ニコ「……ふーん?」

提督「実は建造は運任せだ。このくらいの資材を突っ込めば、こんな艦ができるだろうくらいの予測しか立てられない」

提督「この大和と武蔵は建造できる確率がすごく低い。連れているだけで羨ましがられるとか言う話だ」

ニコ「ああ、そういうこと……ってことは、大佐が魔神様の大和を見つけて、寄越せって言ってきてるわけだね?」

提督「あれは見栄っ張りだからな、大和をてめえのステータスの一つくらいにしか思ってねえはずだ。んな野郎に渡すかっつうの」

提督「俺はあれが嫌いだ。で、大和もそうらしい。艦娘の異動にはその指揮官の承認がいる。だから俺はハンコは押さない」

提督「あれはそれが気に入らなくて地味な嫌がらせをしてくるが、俺もあれの弱みのネタをいくらか握ってるから全部突っぱねてる」

提督「おそらく、今回の襲撃に合わせて大和の指揮権を俺から奪う気だ」

ニコ「そこまでして手に入れたい子なんだ。よく手に入ったね」

提督「っつうか、そもそもその2回の建造は俺の意志じゃねえんだ。この鎮守府の妖精たちが俺のためにやったとか言うんだよ……」

ニコ「……は?」

提督「俺はな、建造はやらねえことにしてる。艦娘増やして積極的に深海棲艦と戦おうなんて頭がどこにもねえからだ」

提督「第一、戦うこと前提で人っつうか人の姿をした艦娘を生み出すってのが気に入らねえ。安易にそういうことをしたくねえんだよ」

ニコ「人間嫌いのくせに、そういうところは人間っぽいね」

提督「獣だって考えがありゃあそういうところに行きつくんじゃねえのか? 艦娘やメディウムにもそれが当てはまるかはわかんねえが」

提督「それとだ、ここの生活を守るために最低限の戦果をあげて鎮守府を維持してるが、それ自体ここの艦娘が自発的にやってることで、俺自身は戦力の増強なんて考えちゃいない」

ニコ「……それじゃあ、きみはここでは仕事をしてないの?」

提督「そうだな。艦隊を率いる提督としては無能ってやつだ。顔も知らねえ人間のために働くのも馬鹿馬鹿しいしよ」

提督「俺は艦娘が作った出撃のスケジュールに一通り目を通してハンコを押すだけだ。資材の使用許可とか本営への申請とかは俺の承認がいるからな」

提督「あとは砂浜の掃除だ。鉄屑と一緒にしょっちゅう艦娘が流れてくるから、手当てするなり埋葬するなり……それでだいたい一日が終わる」

ニコ「なんていうか……雑用係?」

提督「いいんだよ、ここに来たやつの殆どが不幸な身の上の連中だからな。そいつらのやりたいことを手助けしているだけだよ、俺は」

提督「そういうわけなんで、艦娘に好きにやらせるのがここの運営方針だ。俺が海軍でまともに戦術とか勉強してねえんだし、餅は餅屋に任せた方がいい」

不知火「司令がこう仰いますので、妖精さんたちが事後報告で勝手に建造をしてしまったというわけです」

提督「うお!? いつ来た不知火!?」ビクッ

不知火「大和さんを大佐が狙っている、というあたりから聞いておりました」

提督「ほぼ最初からじゃねえか!」

不知火「話が途切れるタイミングを見計らっていたのですが、なかなか終わりそうになかったので」

ニコ「ねえ不知火? 大和って子は、魔神様の許可なしに作られたってことでいいのかな?」

不知火「はい。とかく妖精さんたちが張り切っていましたので、良い艦娘を建造しようという願いが大和さんと武蔵さんになったのだと考えています」

不知火「しかも、先に建造された大和さんは、妖精さんたちの思考を色濃く引き継いだためか、提督大好き艦娘になってしまいました」

提督「お前なあ……大好きとか言うか普通? こっ恥ずかしい……」アタマガリガリ

不知火「事実です。でなければ大和さんがあんなに司令べったりになったりしません」

ニコ「ふーん……そういうことなんだ」ジトー

不知火「ちなみに、一番着任が早かった如月も同じく提督が大好きです」

ニコ「うん。見ててわかったよ。あの二人が食堂で一番早く魔神様の両隣を陣取ってたからね」

不知火「大和さんが建造できたのを聞きつけて、一度だけこの鎮守府に大佐が来たことがありました」

不知火「大佐は建造ほやほやの大和さんを見るなり俺の鎮守府に来いと命令していたのですが、大和さんは大佐に対して猛烈な嫌悪感を露わにしまして……」

提督「……ああ、あんときか……」

不知火「あの大佐は妖精さんにも嫌われていますので、その影響もあってか大和さんが過剰に拒絶反応を起こして大佐を精神的に蜂の巣にしたんです」

ニコ「うわぁ、見てみたかったなあ、それ」パァァ

提督(……こいつも罠娘の親玉だけあるな)

不知火「大佐は艦娘相手にそこまで打ちのめされたことがなかったらしく、余程悔しかったのか大和さんを屈服させるために部下にしたいと考えているようです」

ニコ「そうなったら完膚ないくらい返り討ちに遭うパターンだよね。よくわかるよ」ニコニコ

不知火「大佐はプライドが高いので、大和さんをどうするかわかりません。下手をすれば解体するかもしれませんので、大佐に指揮権を渡すという選択肢は全くありえません」

不知火「不知火ももともとは大佐の鎮守府にいたのですが、あそこは……良い場所ではありません」

ニコ「ちなみに不知火は、魔神様のことはどう思ってるの?」

不知火「不知火は、司令に多大なる恩義があります。感情で言うのならば、敬慕と表現するのが最も適切かと」

不知火「かつては不知火も不幸でしたが、如月をはじめとした轟沈経験のある艦娘たちがいることを考えれば、不知火は恵まれています」

不知火「いつまでも変わらず部下として司令を補佐できるのであれば、不知火がそれより上を望むつもりはありません」

ニコ「魔神様、こんな真面目な子にまで好かれてるんだ?」ジトー

提督「ま、不知火は如月と並んでこの鎮守府の最古参だからな。付き合いは長えし、多少の情はあるさ」ガリガリ

不知火「ちなみに司令は、照れたときや恥ずかしいときに後頭部を乱暴に掻く癖があります」

ニコ「……へー」ニヤニヤ

提督「おい不知火!」

不知火「これは失礼しました。司令、赤城さんからのお届け物です」スッ

提督「……あ?」

不知火「最初からこちらを司令にお渡しすれば良かったのですが、話が盛り上がってしまいました。申し訳ありません」ペコリ

提督「ったく……まあいい。ご苦労だったな」ガサガサ パラリ

提督「……」ペラリペラリ

提督「……ふん、案の定、くそばっかりだな」

ニコ「不知火、あの書類は何かな」

不知火「あれは……司令、内容についてニコさんに申し上げても?」

提督「こいつはこれからこの島にやってくる『敵』の略歴さ」

ニコ「ああ、深海棲艦の」

提督「いや、大佐とその部下どもの資料だ。これだけのくそどもが集まると、何のためらいもなくなる」ニヤリ

提督「ニコ、メディウムを集めてくれ、改めて話がしたい」

ニコ「仰せのままに」ニコッ

 * 幕間 大和の不幸 *

ニコ「大和が大佐に口説かれてたとき、魔神様は何をしてたの?」

不知火「大佐の精神がぼろ雑巾になるのを嬉しそうに眺めてましたよ。少々不用意な発言もありましたが」

ニコ「聞いてもいいかな?」

不知火「確か……『そんなに俺のお古の大和が欲しいのか』と。実際に大佐には効果覿面で、怒りで顔をゆがませてはいましたが……」

ニコ「ああ……確かに不用意だね。それで大和に嫌われたの?」

不知火「いえ。逆に『早く私をあなたのお古にしてほしい』と、その日から司令に夜這いをかけ始めるほどになりまして……」トオイメ

ニコ「」

不知火「そこへ如月も負けまいと参加して、他にも数人野次馬が……えっちなのはいけないと思います」ハァ

ニコ「ということは……」ハイライトオフ

不知火「残念ながら司令は、誰ともいたしておりません」ポッ

ニコ「ちょっ、どういうこと!?」パァァ

不知火「一つ目に、司令は自分の遺伝子を残したくないと放言しています」

不知火「人間が嫌いで親も嫌い、嫌いな親の遺伝子を受け継ぐ人間の自分が子供を残すのは愚の骨頂と言い張って聞きません」

ニコ「それは難問だね……」

不知火「はい。氏より育ち、という言葉もあるのですが、司令は血は水よりも濃いと考えているのかと……」

不知火「二つ目に……司令は、あの……ED、です」

ニコ「え?」

不知火「あ、あの、いわゆる、その、ぼ、ぼっ……勃起不全という……」カァァ

ニコ「」

不知火「誰が夜這いをかけても失敗した原因がそれです。司令は全く反応しないそうで……」カオマッカ

ニコ「……まあ、そうなるね」

不知火「極度の人間不信が原因と思われていますが、それを司令は好都合と解釈して平然としています」

不知火「これで悲しんだのは如月と大和さんです。特に大和さんは一方的とはいえ大佐に好かれてしまったので、貞操的な意味でも危機感を募らせていまして……」

ニコ「うん、みんなの気持ち、すごくわかるよ」ズーン

ニコ「……わかった、安心して、不知火。僕が魔神様をなんとしても治してみせるから!」ギラギラッ

不知火(……話す相手を間違えた気がします。これは不知火の落ち度でしょうか)タラリ

今回はここまで。
徐々にシリアスなシーンが多くなります。

次回、 大佐の思惑。



そしてホームアローンかシティーハンターよろしくトラップコンボのギャグシーンかな

>>213
できるだけコミカルに、かつ爽快に表現できればいいなと思ってます。

では、続きです。

 * 回想 時はさかのぼって、昨日の大佐鎮守府 *

大佐の鎮守府の妖精たち(以下「妖精」)「あ、提督だ! 久しぶりだね!」

妖精「相変わらず怖い顔してるね、あの大佐だから仕方ないけど」

妖精「そうそう、また大佐が大和にちょっかい出したがってるよ」

提督「またなんか企んでんのか」

妖精「それが今回はとくに危険なんだ……」

   大佐『提督と中将には名誉の戦死を遂げてもらおう』

   大佐『場所は提督の鎮守府』

   大佐『もともと廃棄する予定だった鎮守府だ、跡形もなく潰す』

提督「……ついに一線を越えてくる気か」

妖精「大佐も昇進していよいよ自分の地位を盤石にしようとしてる」

妖精「中将の威光も、そろそろ邪魔になってきたって感じだね」

妖精「提督の鎮守府、まるごと壊滅させようと考えてるみたい」

妖精「そうすれば大和も行き場所がなくなるし、引き取る気でいるんだね」

妖精「どんな手を使ってくるかわかんないから気を付けてね!」

提督「ああ。……さて、本営へ向かうか」

赤城(大佐の秘書艦)「提督! 遅いです!」

提督「赤城さん? 召集の1時間前に来たんだが……」

赤城「大佐は10分前に本営に向かってます!」

提督「……ははぁ、あの野郎、また俺に嘘の時間を教えやがったか……?」

 * 本営 中将執務室 *

中将「やあ大佐。息災であったかね」

大佐「はっ!! 中将閣下もご健勝でなによりであります!」

中将「楽にしたまい。思えば儂の鎮守府を引き継いでから早7年……」

中将「短い間に大佐にまで昇進するとは、貴様も大したものだ」

大佐「いえ、まだまだ私は未熟者であります」

中将「謙遜するな。貴様の部下も良い働きをしている。一致団結し物事にあたる姿勢がその結果を生んだのだ」

大佐の部下A(以下、部下A)「はっ、お褒めの言葉を頂戴し、身の引き締まる思いであります」

部下B「我ら、これからも大佐と共に、この国のため尽力する所存です」

部下C「そのためには、我ら命も惜しみません!」

中将「その意気や結構。この儂も老いたが、未来ある貴様たちの露払いくらいはできよう」

中将「して、揃って今日は一体何の話をしに来たのだ?」

士官「失礼します、提督准尉がお見えになりました!」ガチャ

大佐(……ちっ、思ったより早かったな)

大佐「ふん、来たか。通せ」

提督「失礼します」

中将「おお、久しいな提督准尉! しばらく見ぬ間に精悍な顔つきになったな」

提督「は」ペコリ

提督「して、お話とは」

大佐「遅いぞ提督准尉。中将をお待たせした身分で貴様が話を切り出すとは身の程知らずが! まあ良い、時間が惜しい、手短に話そう」

提督(よく言う。毎度やることがガキ臭い)フンッ

大佐「昨今、深海棲艦の撃滅は進んでいるように見えて、実のところ奴らの活動は一向に収まる気配がない」

大佐「海軍もまた相応の戦果は挙げているが、沈静化しない深海棲艦の動きに、苛立ちを覚えている」

大佐「そこで我々は連合艦隊を率いて深海棲艦、泊地棲姫がいるという泊地を攻撃し、大打撃を与えた」

大佐「我々はとどめを刺すべく、提督准尉の鎮守府を足掛かりに艦隊を展開し殲滅戦を行うこととした」

中将「ふむ……提督を呼んだのは、その協力要請というわけだな?」

大佐「その通りです。我らの本懐のため、提督も喜んで協力してくれることでしょう」

提督「……まあ、別にかまいませんが」

部下D「なんだその口のきき方は!」

提督「中将、意見具申」スッ

中将「うむ、なんだ」

提督「我が鎮守府は当該海域に近く、足掛かりとしては悪くない。進軍のための中継点としてお役にたてましょう」

提督「しかし、問題も多く抱えております。その問題についてどのようにお考えかを各人に確認したい」

提督「問題その1、我が鎮守府は規模が小さく、修理ドックも少ない。仮に大破した艦が出た場合は修理に時間がかかります」

部下A「修理は想定しておらん。大軍を率いて瞬時に圧殺する」

提督(作戦中じゃなくて作戦終了時に大破した艦娘の修理は考えてないのかよ……)

提督「問題その2、鎮守府北の海域は海底火山の影響で海流が不安定」

提督「我が鎮守府の艦娘ですら10割の力を出せるか疑問であるのに、この海を経験したことのない艦娘が戦闘できるかどう」

部下B「貴様は我々が何年海に出ていると思っている! 侮辱するか!」

提督(そういうのを慢心っつうんだろが……)

提督「問題その3、作戦について知らされたのはつい先ほど。我々の準備期間が短す」

部下C「貴様らは出撃しなくていい」

提督「……問題その4、我が艦隊は残念ながら彼らと初対面。連携の確認を」

部下D「おい、聞いてたか? すべて我々がやる、必要ない」

提督「……十分にとらねば、勝利を得られますまい」

部下E「くどいぞ、貴様の艦隊の出番などない。ゆえに貴様らとの艦隊と連携を取る必要はない」

提督「……何を言っているのか、理解できかねますな」ハァ

大佐「貴様の艦隊は引っ込めておけと言っている。我々の艦隊の足手まといにならないようにな」

大佐「大和などという過剰戦力も必要ない。貴様はドックで大和の艤装でも磨いていればいい」

提督「……もう一つ」

提督「こうも人の話を最後まで聞かない者たちでは……この戦い、話にならんでしょう」

部下B「口が過ぎるぞ提督准尉!!」

提督「たびたび人の発言を遮っておいて、よく言う」

提督「中将、これにお目通しを」スッ

中将「これは?」ペラリ

提督「大佐にもお渡ししておきます、我が鎮守府が融通できる資材の合計です。不足分については各々負担していただきたい」スッ

部下C「艦隊は出さなくてよいと言っているのだ、解体でも何でもして資材くらい準備できんのか。情けない」

提督(……ん? こいつ、確か……)

提督「……わかりました、解体しろというのなら大和と武蔵を最初に」

大佐「駄目だ。大和は残せ」

提督「一番資材に還元できるのは大和型です。そもそも大佐はたった今、大和を過剰戦力と仰ったばかりではありませんか」

大佐「……」チッ

提督「それにそういうことであれば、部下C殿も今回の作戦は無理をせず出撃を控えるべきでしょう」

部下C「なんだと?」

提督「設備や資材が不十分な離島の貧乏鎮守府にたかる気でいる。さては今回の作戦に参加したくて無理をなさっておいでなのでしょう?」ハァ

提督「そもそもこの戦いが終わった後のことを微塵も考えていない。部下に安易な玉砕を命じる御仁だけある」

部下C「貴様っ!! 何を根拠に」

中将「慎みたまえ」

部下C「く……!」

提督「最後に」

部下E「慎めと言われたろう!!」

提督「私の話はまだ終わっていない。そんなに私が中将と話をするのが不都合なのか?」フン

部下E「無礼な口が過ぎるというのだ!」

提督「……とにかく、我が鎮守府が融通する資材はその書類の3割とさせていただく。あとは我が鎮守府の艦隊が出撃するための資材として確保する」

提督「また、我が艦隊が出張るのは、あくまで大佐率いる艦隊が戦闘できない状況に陥った場合のみとさせていただく」

部下D「我々を信用できないというか!」

提督「ええ。できませんな」

部下E「貴様ぁぁ!!」

提督「先程からぎゃあぎゃあとやかましい」

提督「自分のような若輩者をわめいて黙らせるのが上官のやることか? 少しは説得力のある台詞を吐けないのか」

提督「言わせてもらうが、我が鎮守府に寄港するのは良いが、貴殿らは鎮守府そのものが攻撃されることを想定しておいでか?」

提督「貴殿らが無事出港するための戦力を確保するのだ。出撃前に拠点を潰され全滅したとあっては、殲滅どころの話ではない。違うか?」

提督「そしてあの島の鎮守府の今の責任者は私だ。鎮守府に来るという貴殿らを、鎮守府で働く部下とともに守るのが私の勤めだ」

提督「我らは最悪の事態を想定して動く。その邪魔をしようというのなら、わざわざ戦場を連れてくる『貴様ら』なぞ知らん、と言うのだ」ジロリ

提督「自分が気に入らないのなら、今回の作戦から切り捨てて、余所の鎮守府に応援を頼めば済むことでしょう? そうしたらいい」

提督「それともなにか? 貴殿らは、我が鎮守府を火の海にしたいとでも?」ニヤリ

部下たち「……!」ググッ

提督「それにだ。もし鎮守府に万が一のことがあれば、私に鎮守府を任せた大佐殿も責任を問われる。貴殿らは、大佐の顔に泥を塗りたいのか?」

部下A「貴様……屁理屈を!」

提督「屁理屈……屁理屈ね」ハン

部下E「そ、そもそも、鎮守府を滅ぼそうとする軍人がいるわけがなかろう!」

提督「ええ、当然です。そんな連中、軍人ではありませんね」シレッ

中将「ふむ。貴様たちの意気込みは買おう。しかし、提督の言う通り、準備を他人任せにするのは愚の骨頂」

中将「準備はし過ぎて悪いと言うことはない。資材については提督に頼ることなく、各々想定している量の1.5倍以上を準備せよ」

大佐「……はっ」

提督「もうひとつ。大佐、あなたに質問がある」

大佐「……」

提督「貴君の後輩であるX提督中佐は、今回の作戦海域に最も近い鎮守府におられる」

提督「我が鎮守府と比較しても戦力、設備、ともに充実している。なぜ彼に協力を要請しないのです?」

大佐「貴様にも仕事を与えて、我らの勝利に貢献させる機会を与えようというのだ。光栄に思え」

提督「それはそれは……」

提督「……勝てる気でいるのか、おめでたい」ヒソッ

大佐「……っ」ビキビキッ

提督「……」フンッ

提督「自分は本作戦の準備のため、すぐに鎮守府に帰投します。作戦開始についての日程を本日中にいただきたい」

提督「それができない場合、本作戦への協力は一切できませんのでそのつもりで」クルッ

大佐「待て。詳細な作戦日程の確定は明日だ。明日、貴様にも文書を送る」

提督「……然様ですか。了解しました、お待ちしております」ピッ

提督「では、私はこれで」クルリ

中将「さて、儂も質問させてもらおう。部下Aよ、貴様は本作戦の戦闘終了後、大破した艦娘はどうする気か」

部下A「は……それは……」

扉< パタム


提督(無駄に狡いな、あの連中は)

提督(子煩悩の中将に穴の開いた策を出せば、不安を覚えた中将を現地に誘い出せる、ってか……それに乗りそうな中将も単純だな)チッ

提督(来る前に赤城が準備してくれていた戦闘記録は嘘じゃない。連中が深海棲艦に喧嘩を売ったのは確かだ)

提督(しかも、俺の鎮守府を火の海にしたいか、と挑発されて押し黙るってことは、ありゃあ図星つかれて言葉に詰まったか)

提督(となると、深海棲艦を俺の鎮守府に誘導して壊滅させる……艦隊司令官6人がかりでなら、できなくもないかもしれねえな)

提督(息子である大佐を信じきっている中将では、そこまで馬鹿なことを考えているとも思うまい。その隙をどう埋める……?)

提督(それにしてもだ。確かあの部下Cは、霧島と摩耶のかつての上官だったはずだな。摩耶にぶん殴られて鼻が曲がったっていう……)

提督(……それだけじゃねえ、あいつら全員どっかで見たな。それも碌でもない記憶が……確認してみるか)

 * * *

 * *

 *

 * 夜、提督鎮守府 執務室内 封印神殿の一室 *

提督「結論から言えば、連中の狙いは俺と中将の命だ」

提督「連中は海軍を牛耳る算段を企てていて、そのために目障りになった中将と、ついでに俺の命を取る気らしい」

提督「不知火と赤城の手を借りて連中のことを軽く調べてみれば、まあつまらん悪事が出るわ出るわ」

提督「結託しての政治家への献金集め、鎮守府同士での金と資産のロンダリング」

提督「別派閥の鎮守府には、特攻しなけりゃ突破できないような海域への出撃を強要して圧力をかけ……」

提督「不正取引の強要、有能な艦娘の引き抜き、あるいは轟沈に見せかけた誘拐や拉致……なんでもありだな」

提督「海軍の中にも、不正を暴露しようとして消された者もいれば、自分の艦娘を守って死んだ者、刺し違えた者もいる」

提督「あいつらは、そういう奴らの死体を踏んできた連中だ。碌な死に方をしない連中だ」

提督「俺は願った」

提督「連中に、無様で、惨たらしい、くそみたいな死に方をさせたい、と」

提督「それが、お前たちを呼び寄せたんだろうな」

ニコ「……」

提督「……頼む。俺たちに力を貸してくれ」ペコリ

ニコ「勿論だよ。ぼくたちは、魔神様の力になるために存在しているんだ。みんな、この時を待っていたんだよ」

メディウムたち「」コクリ

提督「……そうか。礼を言う」

ニコ「それを言うのは、そいつらをきちんと全滅させてから、だよ」ニコッ

グローディス「魔神様もその気になって下さった。さあ、出番だ!」

ニーナ「私たちはやはり人間相手に戦うことになるんでしょうか」

ニコ「そうなるだろうね」

ソニア「ニコちゃん浮かない顔してるね? 大変な相手なの?」

ニコ「……そうだね。ただ、それは人間じゃなくて、深海棲艦のほうかな」

ゼシール「昼間に見たル級のような連中か」

ニコ「ぼくたちは海で戦うことなんてなかったからね」

ミュゼ「そもそも私は海の上ではお役に立てないですよ~」

シャルロッテ「私も無理かな~。踏んでもらえないし」

セレスティア「私も……肝心のプレートが錆びてしまいます」

ナンシー「あたしも地面がないと威力半減かな~」

コーネリア「足場がないと本領を発揮できない奴が多いからね。海で戦える奴は限定していいだろうさ」

シルヴィア「ただでさえ海を見たことのない子ばっかりだからね~。私はいいとしても、どうやって戦うの?」

ニーナ「そこですね。どうやって海に留まるか、も考えないと……」

イサラ「泳ぎたくない……」

カサンドラ「私、カナヅチなんです……」

ノイルース「私も濡れるのはちょっと……」

ルミナ「それなんだけどね? さっき如月君の治療をしていた時に気付いたんだけど……」

ニコ「?」

 * 深夜、鎮守府 執務室 *

提督「……」

如月「提督、まだ起きてらしたんですか」

提督「そろそろかと思ってな……」

如月「?」

FAX <ピピピピー ジジジジッ

提督「今日中に連絡を寄越す、と言ったが……この時間に寄越してくるとは、本当に馬鹿野郎だな」ペラリ

書面『○月7日、1000に大規模作戦決行のため、中将、大佐、及びその部下5名の司令官と補佐官2名、大佐配下の艦娘6名が先行して提督鎮守府に入る』

  『翌8日、0600に大隊艦隊到着、0800より作戦を決行する  以上』

如月「今日が5日……いえ、もう6日だから、明日1日しか準備期間がないじゃない!!」

提督「さすがは屑野郎、俺たちに準備の時間は与えないってか」

ニコ「提督、ぼくたちも力を貸すよ。できることはあるかい?」

提督「!」

如月「で、でも、今回の敵は海の上よ!? 罠を仕掛けられるような場所なんてないわ!」

ナンシー「それなんだけどさ~、あなたの艤装、触らせてくれる?」

如月「? 何をするの?」

 *

 *

 *

ニコ「どう? これなら役に立てるよ」

提督「……そうだな……よし、出撃する部隊を編成する」

 * 翌朝 執務室 *

長門「扶桑、山城、霧島、摩耶、由良、敷波、電、潮、朝潮、霞、明石……それに私か」

長門「よし。提督、お前の指示した艦娘12名を集めてきたぞ」

敷波「なんか、あんまりいい予感がしないんだけど?」

提督「明日、殲滅作戦に参加する司令官どもがこの島に入る」

提督「中将と大佐についてはお前らも知っての通りだが……問題はその部下5名。全員艦娘を配下に持つ提督だ」

提督「滞在は明日から明後日までの予定だが、まあこいつらの顔が不愉快でな。これを見てくれ」パラッ

敷波「へー……って、ちょっとこいつ……!」

山城「……お姉様!」

潮「ひ……!?」ガタッ

長門「潮、どうし……この男は!」

霞「この写真、いったいどういうこと!?」ギリッ

提督「類は友を呼ぶと言うがな、よくもまあここまで小汚い顔ぶれが揃ったもんだ、感心するぜ」

提督「お前ら全員、こいつらのうちの一人に見覚えがあるだろう?」

摩耶「ああ、しかしまあ、よく気付いたっつうか、覚えてたよな……」

霧島「今更ながら、私も引っ叩いておけばよかったと後悔していましたが……こんな形で再会する羽目になるなんて」

明石「まだ……艦隊の指揮官だったんですね、この男……!」

由良「写真とはいえ、思い出したくなかったかな」

朝潮「はい。忘れたと思っていた怒りが、こんなに鮮明に思い出せるなんて……!」

提督「俺はあいつらを歓迎する気はない。が、奴らのことだ、好き勝手に敷地内を出歩くだろう」

提督「それでお前らと鉢合わせはさせたくない。悪いが、裏方に回ってもらう」

扶桑「ふふふ、そうね……出会ってしまえば不幸な事故が起こるとも限らないものね……ふふふっ」

提督「だろう? さて、ここまでが建前だ」

提督「連中は、俺たちの引いたラインを必ず越えてくる……連中の狙いが俺と中将の命だからだ」

霞「敷波と潮から聞いたわ。まさかこいつが一枚噛んでるなんて、どういう巡り合せかしら」

摩耶「アタシも那智たちから聞いたぜ。提督……こいつら、やるんだろ?」

提督「ああ。一切の容赦はしねえ。扶桑の言う『不幸な事故』に遭ってもらおうじゃねえか。いいよな?」ニタァ

全員(怖っ!?)

扶桑「……ふふふ、ええ、勿論です提督。遠慮なくどうぞ……!」ニヤァ

山城「扶桑お姉様、提督みたいな悪い笑顔を真似しないでください!! あ、復讐は賛成ですからどうぞ遠慮なくお願いします」ギラッ

明石「山城さん、あなたの目つきもお姉さんのことを言えませんよ?」

由良「んー、でも私も二人に同感。痛い目見ちゃえばいいのよ、ね」

潮「……わ、私も、そう思います……!」

長門「潮……!」

潮「この人、いなくなっちゃえばいい、って、思ったの……本当、ですから……」

霞「潮でさえこうなんだから、このクズどもは提督の好きにしなさいよ。ここを任されたのはあんたでしょ?」

霧島「司令。私たちは、司令の判断に従います。みなさん、それでよろしいですね」

艦娘「」コクン

提督「そうか」

霧島「その代わり、司令の身に危険が及ぶようなことは控えてください。それも、よろしいですね?」

提督「わかった。善処する」

摩耶「……なあ、こうなるってことは、あいつらの手を借りるんだろ?」

提督「まあな」

摩耶「そっか……まあ、怪我だけは気をつけろよ。あいつらも、提督も。死なば諸共、なんてのはごめんだぜ?」

提督「わかってる」


由良「? どうしたの?」

電「あ、いえ、なんでもないのです」

電(さっき……悪い笑顔の時の司令官さんの左目が、青く光った気がしたのです)

電(嫌な予感がするのです。本当に、大丈夫なのでしょうか)ブルッ

今回はここまで。

次回、 島の外の出来事と、敵の上陸。

では、続きです。

 * 夜 島の南側沿岸 *

(大型のゴムボートを曳航する蒼龍)

蒼龍「……はーぁ……」

蒼龍「明日、この島に深海棲艦が攻めてくるんだよね……」

   大佐「この島は戦場になる。俺たちが非常時に脱出するための大型ボートを、島の南に着けておけ」

蒼龍「ここを決戦の舞台にする、かぁ……大佐の考えること、私にはわかんないや」

蒼龍「……作戦の趣旨も理解しないで……私、何やってるんだろ」

蒼龍「……座標はここでいいのよね。よし、ここに結び付けておいて……」

蒼龍「ん? なんだろう、あの明かり。松明かしら……」

???「!」

???「!?」

蒼龍「? 誰かいる……! もしかして、原住民!?」

蒼龍「ね、ねえ、あなたたち!?」

???「え? ぼ、ぼく?」

???「誰だ!?」

蒼龍「良かった、言葉は通じるのね。あなたたち、この島に住んでるの?」

???「ああ」

???「お姉ちゃん、もしかして艦娘?」

蒼龍「えっ、艦娘って知ってるの?」

???「うん、知ってるよ?」

蒼龍「そ、そうなんだ……って、それもそっか、この島にも鎮守府があるわけだし」

蒼龍(っていうか、原住民がいる話も聞いてないわよー!? あの大佐はそういうこと考慮してないだろうし……!)

蒼龍(この島に深海棲艦が攻めてくるっていうのに、この子たちはどうやって避難させるの!?)

蒼龍(私が艦娘だってことはわかってるみたいだし、彼女たちを見つけておいて見捨てるのは第一機動艦隊の名折れだわ!)

蒼龍「えーっとね……落ち着いて聞いて。明日、この島に悪い奴が攻めてくるの。だから、あなたたちもこのボートに乗って逃げてほしいの」

蒼龍「ここで待っていればこのボートを操縦できる人がくるから……あ、艦娘以外でこの島に住んでるのはあなたたち2人だけ?」

???「いや、いっぱいいる。60人くらい」

蒼龍「60!? こんなボートじゃ全然足りないじゃない! 明日までにもっと大きな船を準備しなきゃ!!」

蒼龍「ごめん、悪いけど、私は行くね! また明日来るから!」

蒼龍「あ、そうだ、二人とも名前は? 私は蒼龍!」

イーファ「ぼくの名前は、イーファだよ」

ウーナ「ウーナだ! ソウリュウだな! ウーナ覚えた!」

蒼龍「イーファちゃんにウーナちゃんね! また明日この場所で、待ってて!」ザァァァ

蒼龍(大佐が……あの子たちを見殺しにするつもりなら……私はもう……!)

蒼龍「急がないと……!」キッ

 * 翌日の夕方 太平洋上 某所 *

 ザザーン

名取(大破)「……」

弥生(中破、名取を曳航中)「……」

名取「やよいちゃん」

名取「もう、いいよ? 私、おもたいでしょ……?」

弥生「……」フルフル

名取「……」

弥生「……」

弥生(どうして、こうも私たちは、馬鹿正直に……命令に従っているんだろう)


 * 弥生の回想 2日前 泊地棲姫の塒 *

 ドカァァン

泊地棲姫「マタ、ワタシノ棲家ヲ、荒ラシニ来タノカ……忌々シイ艦娘ドモ!」

弥生「くっ……見つからなければ、なんとかなったはずなのに……」

初霜「やっぱり、無茶だったんですよ! 3隻で……練度の低い私たちだけで潜入工作なんて!」

名取「ほ、本当なら、6人で行こうって言っていたのに……な、なんで、あの3人は先行して……」

泊地棲姫「? ソウイエバ少シ前ニキタ連中ガ言ッテイタナ……ココヘ来ナケレバ、仲間ガ解体サレル、ト」

名取「え!?」

泊地棲姫「興味本位デ訊イテミタラ……オ前タチ3隻デ作戦ヲ成功サセロ、サモナクバ仲間ハドウナルカ、トナ……」

泊地棲姫「奴ラノ司令官トヤラニ命令サレタソウダナ……マルデ脅サレタヨウニナ?」ニヤリ

初霜「ど、どういうことですか!」

弥生「……まさか、司令官は最初から……この作戦を失敗させるつもりだった……!?」

泊地棲姫「……オ前タチノ司令官ノ考エテイルコトハ、良クワカラナイワ」

泊地棲姫「ダケド、ソンナコトハドウデモイイノ」

泊地棲姫「オマエタチモ、シズメテヤロウ……コイツノヨウニ!」ポイッ

 ドチャッ

(引き千切られた艦娘の左脚)

初霜「……っ!?」

弥生「な……」

名取「二人とも逃げて!!」

泊地棲姫「遅イ!!」

 ドンドンッ

名取(中破)「きゃあああ!!」ドガァンッ

泊地棲姫「マズハ、オ前ダ……!」グオッ

初霜「名取さんっ!」バッ

泊地棲姫「自ラ沈ミニキタカ……!」ガシッ

初霜「ぐうう……っ!」ギリギリギリ

弥生「初霜さん!!」

初霜「は、はやく逃げて! は、墓場島鎮守府に、応援を!!」

泊地棲姫「ハカバジマ……?」

弥生「でも……!」

初霜「いいからはやく!!!」

弥生「……!」

弥生「名取さん、捕まって……撤退します」クルッ

名取「う、うん、ごめん……」グッ

泊地棲姫「ホウ……逃ゲルノカ?」ジャキ

 ドンッ

弥生「!?」

名取「……!」

初霜「」ドシャッ

弥生「初霜さんっ!!」

泊地棲姫「ホォラ……今ナラ助ケラレルカモシレナイワヨ?」ジャキ

弥生「……っ!!」

名取「弥生ちゃん、つらいだろうけど……あなたは逃げて」

弥生「……いいえ、名取さんも連れて行きます」

弥生「……そして、ここには必ず、初霜さんを取り返しに戻ってきます……!」ザァァァッ

泊地棲姫「アラ、逃ゲルノネ……追エ」

 * * *

弥生(……そうして、かろうじて生き延びて……)

弥生(いえ、もしかしたら……生かされているのかも……)

名取「追手、来てる、みたい……ね」

弥生「! 名取さん!」

リ級「」ザァァァァ

チ級「」ザァァァァ

名取「大丈夫、私はいいから……あなたは、逃げて、生きて」

弥生「嫌……です。そんなことしたら……初霜さんに合わせる顔が……ありません」

名取「でも、後ろから……迫って、きてる。私が、盾になるから……」

チ級「……」バシューッ

名取「だから、ね……」パッ

弥生「名取さん……!!」

 ドォオオーーーン

弥生「……!?」

名取「魚雷が……手前で爆発した……?」


満潮「魚雷に魚雷をぶち当てるとか、何考えてるのよ!!」

霰「……でも、さすが」

北上「この北上様ならこの程度の芸当、トーゼンっしょ」

弥生「援軍……ですか!?」

満潮「ったく、気付かれちゃったじゃない! さっさと行くわよ霰! 私は左!」ドンドンッ

霰「右……!」ドンドンッ

リ級「!?」ズガガガァン

北上「残り、やっちゃいましょーかぁ」バシュバシューッ

チ級「!!」ズドドォン

弥生「……助かった、の……?」

名取「……みたい、だね」

満潮「ああもう、とんでもない拾い物だわ! なんでこんなとこで戦闘に巻き込まれるのよ!」

弥生「あ、あの……ごめんなさい。ありがとう……」

霰「……怒ってる?」

弥生「……ううん、怒ってない」

満潮「たった2隻にここまでさせるなんて、いったいどこの鎮守府よ! 頭来るわ!」

霰「……あなたたちの所属は?」

弥生「あ……部下B提督鎮守府……」

北上「」ピク

満潮「もしかして」

霰「……北上さん」

北上「……あー、で、どこ行くの。これから」イライラ

弥生「……は、墓場島鎮守府……」

北上「」ピクピク

満潮「ちょっと。もしかして『当たり』なの?」

北上「……あーあーあー。これ、マジで面倒なことになってきたんじゃなーいー?」イライライライラ

霰「本当みたいね、あの噂」

北上「あの提督ども、馬鹿だとは思ってたけどー。まっさか、そこまで馬鹿だったとはねえ」ハァァァ

満潮「どうしてこう馬鹿ばっかりなのよ! うっざいったらないわ!!」

弥生「……?」

霰「あなた、どんな任務を受けてきたの……?」

弥生「……」

名取「……私たちは、泊地への攻撃を命じられたんです」

弥生「名取さん……!」

名取「命令は、泊地への破壊工作。本隊は墓場島に移動し、私たちはそこで合流……」

満潮「なんでそんな危険な任務を任せられたのよ……!」

弥生「……他の駆逐艦の子を、泊地へ特攻させる、って……」

北上「……あー、随分ブラックだねー……」ギリッ

霰「……気付いてるかもしれないけど、あなたたち、囮にされたの」

霰「泊地棲姫を、墓場島鎮守府へおびき寄せるために」

弥生「……やっぱり……」

弥生(そんなことのために、みんなは……! 初霜さんは……!!)

名取「あなたたちは……?」

満潮「部下A提督配下、満潮よ! こっちは霰、そして旗艦の北上さん」

霰「私たちも、墓場島鎮守府を目指してる」

北上「うちの馬鹿が何してんのか、この目で確かめたくてねー……」ゲンナリ

霰「……北上さん」

北上「えーえー、わかってますってば……はー、もー……」ピキピキ

弥生(こんなにイライラを周囲に隠さずにまき散らしてる北上さんは見たことないかも……)

霰「私たちの合流が敵に気付かれたかもしれないし、急いだ方がいい……」

満潮「そうね、また追手が来るかもね。弥生! 名取さんはあたしと霰が曳航するわ!」

霰「北上さんは弥生をお願い」

北上「えー? ……しょーがないなあ……ほら、肩~」

弥生「……あ、その……ありがとうございます」

名取「私は、ここで雷撃処理されても、良かったんだけど……」ボソッ

満潮「それは言っちゃだめよ」ヒソッ

霰「うん。北上さんの前で、それは禁句」ヒソッ

名取「……?」

 * 翌朝 鎮守府 埠頭 *

不知火「中将閣下の船が到着しました。中将閣下、大佐とその部下5名、大佐配下の艦娘6名がおいでです」

提督「総員、敬礼」ピッ

武蔵「」ビシッ

最上「」ビシッ

利根「」ビシッ

那智「」ビシッ

中将「うむ、ご苦労」

提督「中将閣下、足の具合は」

中将「芳しくはないがね」

提督「武蔵。お手を」

武蔵「承知した。中将殿、どうぞ」スッ

大佐「大和はどうした」

提督「近海を警邏中の駆逐艦数隻と出撃中です」

大佐「燃料の無駄だ、すぐに引き上げて連れてこい」

提督「……。では後程」

部下A「今すぐやらんか、のろまめ」

提督「……貴殿らの艦隊が到着していれば、すぐ戻るどころか出撃すらしない予定だったのですが」

部下A「貴様が資材の提供をケチったからだ」

部下B「資材を準備するのも曳航するのも時間がかかる。貴様が十分に準備できていれば話は違っていた」

提督「貴殿らの管理がなっていないだけでしょう。早速の責任転嫁ですか」

部下B「相変わらず口の減らん奴だな!」

提督「今日日コンビニのバイトの店員だって、どんな時にどんな商品が入用か、少し働けば理解できる」

提督「我々の客は、対応を間違えればただでは済まない連中だということを忘れておいでか?」

提督「今この瞬間も、我らに牙をむいて襲い掛からんと、こちらへ向かっていることを、もうお忘れか?」

提督「うちのように物資が行き届かない鎮守府の資材をあてにすること自体、愚策だとお気付きにもなれないか?」

部下B「言わせておけば……!」

提督「貴殿らが何を言おうと、大佐は当然のように1艦隊準備しておいでだ。それがどういうことか理解できないと仰るか?」

部下A「く……」

大佐「まあいい。まずは島を案内しろ」

提督(部下が無能だと大佐を持ち上げるのも楽だ。調子に乗せれば大和大和と喚く回数も減るだろ)

 * 鎮守府内 指令室 *

大佐「これは……シェルターか」

提督「万が一の時のためのものです。こちらは中将を優先致します」

提督「作戦時は、大佐と部下の方々にはこの下の階の応接室と、その隣の客室に待機していただき……」

提督「有事の際には、脱出の手筈をこの鎮守府の臨時職員から説明いたします」

提督「こちらはこの鎮守府とその周囲の見取り図。こちらが島の全体の地図……」

提督「泊地棲姫の泊地は、この島の北東から北北東にかかる方角に位置しており、島の北部から北東の砂浜が上陸の拠点になります」

中将「ふむ……ではこの海域が主戦場になると……」

提督「はい。そして……」

 * * *

 * *

 *

提督「防衛戦に関する情報は以上になります」

中将「うむ。これに大佐以下の艦隊が合流すると。良いのではないかね」

提督「は」ペコリ

中将「大佐、念のため、貴様の艦隊も防衛戦には備えさせたまえ。良いな」

大佐「はっ」

 * 夜中、鎮守府内 応接室 *

部下E「……」

部下D「どうした?」

部下E「いや、夕餉に出されたカレーだが……どうも腑に落ちん」

部下C「あれがこの鎮守府の比叡カレーだと? 俺は認めんぞ」

大佐「……飯がうまくても、所詮は型落ちの金剛型だ。最新型にはかなうまい」

部下E「連中め、いい飯を食ってやがる……もし比叡が生き残るようなら、うちに……」

部下D「お、おい! 抜け駆けはずるいぞ!?」

大佐「良い。作戦が成功したなら、大和以外の残りの艦は適当に回収しろ」

部下B「まずは成功させんと話にならん。作戦を確認するぞ」

部下A「今頃は俺の部下が泊地棲姫に攻撃を仕掛け、こちらに誘導するように仕向けている」

部下A「予想では明日の0400に到着予定だ。日の出とともにこの島に攻撃が始まる」

部下B「できるのか?」

部下A「ああ、仲の良い姉妹艦を人質にすれば簡単なことだ。面倒見の良い奴もいいように使える」

大佐「よし。では倉庫襲撃を翌朝0320開始とする。爆破を合図に我々も作戦に入るぞ」

部下たち「「はっ!」」

今回はここまで。

次回、いよいよ戦闘開始。


向こうの作戦がいくら何でも雑すぎてここまで追ってくるのか謎w

>>242
その辺はうまく誤魔化したいと思いますw

では続きです。

 * 翌日 0320 倉庫付近 *

部下C「潜入工作なんて久しぶりだな。あの見取り図だと、確かこちらに……!」

山城「いよいよですね、扶桑お姉様!」

扶桑「そうね……補給も終わったし、頑張りましょうね」

部下C(あの二人の歩いてきた方向……間違いないな、向こうが資材倉庫だ)

 タタッ

部下C(……拍子抜けするほどあっさり来たな。敵が迫ってきているのだから当然か)

部下C(よし、いまのうちに倉庫に爆弾を仕掛けて……)

 ギュム

部下C「!?」

バナナノカワ< ツルーーーン!

部下C「うおわ!?」スッテーン

マンリキスピン< ガシッ

部下C「な、なんだ!?」ガシッ

マンリキスピン< ギュォオオオオオオ!!

部下C「な、なあああああ!?」

 ギュイーン

部下C「何が起こっ……!?」

 ギュイギュイーン

部下C「……!?」

 ギュギュギュイーン

部下C「……止ま……止……っ!?」

 ズギャァァァァーン

マンリキスピン< パッ

部下C「……お、おええ、きぼちわ」ヨロヨロ

カビン< ヒューン

部下C「るっ!?」カポーン!

部下C「な、なんじゃこりゃああ!? 暗い!? 暗いぃぃ!?」ヨタヨタ

ヴォルテックチェア< ガッシャン!

部下C「うわっ!? な、なんだ!? 何かに捕まった!?」ガシャンガシャンガシャンッ

サム「ふむ。呆気ない……聊かに物足りませんね」

シャルロッテ「オディールちゃん張り切り過ぎじゃない?」

オディール「いつもより多めに回してあげましたわ!」ムフー

ツバキ「にしてもこの阿呆、ええ度胸しとんなあ……?」ギロリ

提督「捕まえたか」

サム「これはこれは、ご主人様。丁度、準備が整いました」

提督「ご苦労さん。こんなに簡単に済むと楽なんだがな」

ツバキ「うちらメディウムはこれが生業、親分さんの手ぇ煩わせるわけにゃあいかんせん」

霧島「それにしても、花瓶をかぶって電気椅子に拘束、ですか。かつての上官とはいえ、情けない姿ですね」

摩耶「へ、いいザマだ。こんな爆薬、倉庫で爆発させたらどうなるか、わかってんのかこの馬鹿は」

提督「まあ、よくやってくれたぜ、この現行犯はどんな言い訳してくれるかね。さてツバキ、ご開帳といくか、花瓶取ってやれ」

ツバキ「わかりんした」

部下C「ぷはっ!?」スポン

部下C「き、貴様は提督!? お、お前、俺にこんなことをしてただで済むと思っているのか!」

提督「それはこっちのセリフだ。てめえこそ、鎮守府の倉庫に爆薬持って何しに来やがった?」

部下C「いいからほどけ! こんなところにこんなもん仕掛けておくなんて聞いてないぞ!」

提督「うるせえな……サム」

サム「はい」

ヴォルテックチェア< バリバリバリバリ!

部下C「ぎゃあああ!?」バリバリバリバリ

提督「サム、ここはお前に任せる。ツバキと協力してこいつからありったけの情報を吐かせろ」

サム「畏まりました」

ツバキ「任しとき」

部下C「ま、待ってくれ!? 喋る! 喋るから、助けてくれ!!」

シャルロッテ「えー? なにこいつー? 簡単に折れすぎ~」

オディール「美しくありませんわねぇ」

提督「喋るって、なにをだ?」

部下C「あ、あいつらはお前を殺しに来ているんだ! お前だけじゃない、中将もだ!」

提督「それで?」

部下C「あ、あいつは俺に特攻を命じたんだ! 俺は殺されるところだったんだよ!」

部下C「だから、爆弾を取ってくれたのは俺にとってありがたかったんだ! 本当だ!」

提督「霧島、摩耶、どう思う」

摩耶「この期に及んで言い訳かよ、ムカつくぜ」

霧島「ええ、最低ですね」

部下C「お、おい、何を言っているんだ」

提督「お前ら、昨晩話してたろ? お前が倉庫の発破役、深海棲艦の出現直前に発破して、混乱に乗じてDとEが中将を、Bと大佐が俺を殺りに行く」

提督「Aは島の南のゴムボートを確保して、お前らを連れて逃げる手筈になってる、だよなぁ?」

部下C「……な、なぜそれを」

提督「馬鹿だろお前ら。ここは俺の縄張りだぞ? いくら古い施設だからって、お前らの会話くらい拾っておかないと思うか?」

提督「お前ら何もかも甘く見てるだろ? 俺たちのことも、艦娘も深海棲艦のことも。なあ?」

提督「それで? まだ話したいことはないのか?」

部下C「……」

提督「そもそもな、お前は昔、摩耶と霧島に特攻命じたろ? なんでお前は今になって腰が引けてんだ? あ?」

提督「しかもこいつらの判断でうまく切り抜けて無事に帰ってきた全員を、命令違反だと引っ叩く馬鹿がどこにいる?」

提督「上官としての面子潰されたからか? 小っせえっつうんだよ、くそが。だから摩耶に鼻を潰されてんだよ」

部下C「……な、なぜお前がそれを知っている」

提督「霧島、お前もこいつ一発引っ叩いとくか?」

霧島「いえ、やめておきます。最早叩く価値もありません」

部下C「……ま、まさかお前ら! おい、お前ら元部下だろ! 元上官の危機だぞ! 早く助けろ!」

摩耶「ああ? 寝言言ってんのかてめえ?」ギロリ

霧島「お望みなら、好きなだけ眠らせてあげますよ」ギロリ

提督「お前な。部下に特攻命じるくらいなんだから、てめえが言い渡された時くらい腹ぁくくれや? な?」

部下C「ひっ……ま、待って、助けてくれ! 助けて……」

サム「やれやれ、こんな主に仕える艦娘は不幸と言うほかありませんね」フッ

ツバキ「根性が足りんせんなァ。鉄砲玉にもならんき」ジロッ

ルイゼット「魔神様。この者の裁き、わたくしめにお任せをいただけませんでしょうか」スッ

提督「気持ちはわかるがお前の出番はまだ早えよ。摩耶と霧島も持ち場に戻ってくれ、ここはこいつらに任せようぜ」

霧島「この爆弾はどうなさいます?」

提督「どっか被害の及ばない場所で処分だな。明石に細工してもらうか」

摩耶「んじゃ、アタシたちは戻るぜ。提督も遅くなんなよ?」

提督「おう」

部下C「ま、待ってくれ! 俺はどうなるんだ!?」ガチャガチャ

提督「どうなるって? 決まってんだろうが、わかりきったことを訊くなよ」ケッ

提督「さてと、俺もお返しに一応訊いとくか。お前ら、どうやって泊地棲姫を誘き寄せた?」

部下C「……!」

提督「知らねえか」クルッ

部下C「ま、待て! 教えてやってもいい……だが」

提督「素直に喋る気がねえなら黙れよ。どうせお前は死ぬんだからな」

部下C「っ……!!」

提督「お? なんで意外そうな顔してんだ? 俺がいつ、お前を助けるっつった? 何年何月何日、何時何分何秒~ぉ?」

部下C「てっ……てめえええ!!」

提督「なんで俺を殺しに来た奴を助けなきゃいけねえんだよ。馬鹿か? くそが」

提督「ま、多分あいつをどうにかして激怒させたんだろうな。でなきゃこんな鎮守府に攻めてくるわけがねえ」

提督「やれやれ、時間の無駄だったな、行くとすっか。サム、あとはよろしくな」ヒラヒラ

サム「畏まりました、行ってらっしゃいませ」ペコリ

部下C「お、おい! 待ってくれ!! 待てと言っているんだ!! この俺の逆鱗に触れたらどうなるか……わかってるんだろうなあああ!!」

シャルロッテ「あぁ……これって、負け犬の遠吠えってやつ?」

ツバキ「せやな。さぁて……どういてこましたろか?」

サム「当初の予定通り……で、よろしいでしょう。彼女もスタンバイできているようですし」

部下C「……おい、お前らいったい何者なんだ!? 執事はまだいい、任侠にバレリーナにコスプレ娘……お前ら、なんなんだ!?」

オディール「なんともまあ……ちょっと気付くのが遅すぎますわ?」

部下C「貴様ぁ! 俺がどういう立場の人間かわかっているのか!? 俺を殺せばどうなるか、わかっているのか!!」

サム「どういう立場の……? フ、所詮は人間でしょう? だというのに面白いことを仰いますね?」

シャルロッテ「あんたみたいなのと同じ人間なんて、いっぱいいるじゃーん?」

部下C「海軍だぞ! 軍隊だぞ!! 俺が死ねば、この島に大勢の兵士が来るんだぞ! 皆殺しだ!」

オディール「ああ、そうですの? 贄になりたいのでしたら、歓迎いたしますわ?」

ツバキ「群れようが何しようが、おつむの足りひん奴が粋がったところで、ちいとも恐ないわ」

部下C(……なんだこいつらは。なぜ俺たちを恐れない!?)

???「いくら吠えたってその声は届かない……あんたの言葉は、魂に全然響かない」

シャルロッテ「相変わらず詩人ね、シェリルは」

サム「さて、部下C様、特別ライブのアリーナ席をご用意しました……お代は、あなたの魂です」ニヤリ

シェリル「舞台は整った……ご希望は、ララバイ? それともレクイエム?」

部下C「……イカレてる。お前らイカレてるぞ! なんだお前らは! なんなんだあぁぁぁぁ!!」

シェリル「無意味な言葉。無価値な声。お前こそなんなんだ? ま、それでもいいさ、最期に響かせてやるよ……」

 ゴゴゴゴゴゴ

シェリル「とびっきりのデスシャウトを……魂に刻めっ!」


ヘルジャッジメント< ズドォォォォォンン…!


サム「上々の結果ですね」

ツバキ「……終わったのぉ」

(激しい稲光、残ったのは黒く焼け焦げた地面)

シェリル「アンコールは……要らないね」

今回はここまで。

次回、出撃予定
陸奥、雲龍、隼鷹、摩耶、利根、筑摩

続きを投下します。

 * 同日 0420 鎮守府 司令室 *

サイレン< ウーーー ウーーー

大淀「泊地棲姫の艦隊の接近を確認! その数およそ……き、90!?」

提督「連合艦隊どころの騒ぎじゃねえな。やっこさん、泊地の艦をまるっと寄越してきやがった」

提督「指示通りいくぞ。大淀は各艦隊への状況報告、数が数だ、鳥海と龍驤は大淀のバックアップ頼む」

提督「艦隊は7つに分けて迎撃! 主力の戦艦は泊地棲姫に向けて進軍。潜水艦も多数だ、駆逐艦と軽巡は駆けずり回って戦艦を援護しろ」

提督「いいか、これは防衛戦だ、深入りはするな。追い返したならそれでいい!」

提督(そして一番の敵は身内にいる……頼んだぜ、メディウム!)

中将「提督准尉、通常は第四艦隊までしか編成できないはずだが……」

提督「そんな悠長なことを言っている場合でもないでしょう。掟破りで罰せられるのなら甘んじて受けますが、そんなものはこの場を生き延びてからです」

提督「中将閣下はこの指令室で待機を。万一に備えてのシェルターもあります、出来ればそちらに居て戴きたい」

中将「部下が体を張っているのだ、儂が何故そのような逃げ腰で……」

提督「中将閣下。あなたにはまだやってほしいことがあります」

提督「この場は私の領分。ここを守り切ってからの、大佐の反撃を、その仕事を見届けるのがあなたのお役目です」

提督「ここを凌げば、大佐たちの艦隊が来て、反撃できます。だからこそ、今矢面に立つのはこの私です」

中将「提督……」

提督「ご心配なく、自分は死ぬ気はありません。大淀、中将を頼む」

大淀「承知しました」

提督(……善人ぶったほうが中将も言うことを聞く。性善説を頭から信じ込んでいる、わかりやすい御仁だな)フン

提督(まあ、余計なことをしないだけ良い。おとなしく見ていてくれればそれでいい……)

提督(奴らを始末しやすくなる)

 * 数分ほど時間をさかのぼって 鎮守府内 応接室 *

大佐「遅い……部下Cは何をしている」

部下A「奴め、得意分野だと言っておきながら一人で逃げたりしていないだろうな」

部下B「もう一人連れて行くべきだったか?」

大佐「いや、奴の爆弾にセットしたGPS発信器はまだ反応がある。一旦倉庫を離れてまた戻ったようだな」

部下A「だとすると、艦娘に見つかって遠回りしたか……だとしても何をもたもたしているんだ!」ガンッ

サイレン< ウーーー ウーーー

部下E「け、警報!?」

放送『敵艦隊、鎮守府に接近中! 艦娘は防衛のため戦闘配備!』

部下B「くそ、部下Cめ、しくじったのか!?」

 ドォォォ…ン

大佐「! 爆破したか!」

部下A「あの音の方角は……倉庫か?」

大佐「敵艦隊が近いとはいえ砲撃を食らうにもまだ距離があるはずだ。GPSの反応も消えた、爆破はできたと見ていいな」

大佐「よし、この隙に作戦を遂行する! 機を逃すな」

部下B「大佐殿、あれを! 提督が艦隊を展開しています!」

大佐「なに? ……くそ、提督め。大和は出撃させるなと言っただろうが……!」ボウエンキョウ

部下E「大佐はまだ大和にご執心でありますか」

大佐「あれは俺の大和だ。提督ごときが手にしていい艦ではない。もはや奴の中古だろうと構わん。これから調教していけば良いだけだ、じっくり時間をかけてな」

大佐(俺の艦隊を呼んだのも、大和を確保するためだ。なんとしても沈ませるものか!)

大佐「部下D、部下E! 行く先には提督の艦娘がいるはずだ、爆弾と対艦娘用の銃を使って鎮圧しろ。急げ!」

部下D「はっ! では、お先に!」ダダッ

部下E「行ってまいります!」ダダッ

大佐「では俺たちも……」

???「し、失礼します!!」バンッ

大佐「!? 誰だ!」

チェルシー「わ、私はチェルシー! キャプ……じゃない、提督の部下です!」

部下A「艦娘以外の奴の部下だと? 聞いてないぞ」

チェルシー「あ、その、わ、私も遭難者なんです! それでここの提督にお世話になりまして……」

大佐「何の用だ!」

チェルシー「は、はい! すみません! 鎮守府の倉庫で爆発がありました! 同時に深海棲艦の侵攻も確認、最悪の状況です!」

チェルシー「そのため、大佐殿一行の安全確保、及び退路を案内せよと仰せつかってきました!!」

部下B「……随分気を使ってくれるな?」

チェルシー「ところで、今入れ違いでお二人が……」

大佐「あいつらは別行動だ。それより、退路と言ったな? 案内しろ」

大佐「部下A、部下B。緊急避難ルートを抑えたら、人気のない場所で始末するぞ」ヒソッ

部下AB「はっ!」ヒソッ

チェルシー「了解しました、では、こちらです!」タタッ

部下A「!? 待て、階段を上るのか!?」

チェルシー「はい、非常ルートですから!」

部下B「なるほど……考えているな」

チェルシー「はい! いろいろと考えてますよ!」

 ヒュゥゥゥウウウ…

チェルシー「どうやったら、あんたたちを始末できるか、ってね」ヒソッ

メアリーアン「こったにうまぐ行ぐとはなあ♪」

スノーボール< ドッスゥゥゥン!

大佐「な」

部下A「え」

部下B「わ」

スノーボール< ゴロゴロゴロゴロッ!

大佐「う、うわ」ズボッ

部下A「な、なんじゃこり」ズボッ

部下B「ひぃぃ」ズボッ

3人を巻き込んだスノーボール< ゴロゴロゴロゴロ

クレア「お待ちかね! スマッシュフロアのクレアの腕の見せ所ね!」

クレア「さーあ、行くわよ! スマーッシュ!」

スマッシュフロア< バシーン!

3人を巻き込んだスノーボール< ウワァァァァァァゴロゴロゴロゴロ

クレア「狙いばっちり! 外に転がって行ったわ!」

チェルシー「それじゃあ、あたしは先回りして、キャプテンのところに行くわね!」

クレア「あれ? 私の出番これで終わり!? ま、待ってよぉおお!」

 * 戦闘海域 第二艦隊*

龍驤(指令室)『敵艦隊接近中! 敵艦載機の発艦を確認や! 雲龍、迎撃頼むで!』

雲龍「了解」

陸奥「それじゃ、手筈通りにお願いね」

雲龍「ええ。行って、烈風」

烈風×6「」ブルーン!

ヲ級fl「……ナンダ? 六角形ノ編隊ヲ組ンダママ飛行シテキテイル?」

ヲ級fl「曲芸ノツモリカ?」

雲龍「敵機接近……今よ」

ベリアナ「ええ、法陣展開っ♪」

烈風の描く六角形の中心に発生するブラックホール< ギュワァァァァアア…!

ヲ級fl「!?」

敵艦載機「!?」ギュワァァァン

敵艦載機「!?」ギュルルルル…

敵艦載機「!?」シュウウン

ブラックホール< フッ

雲龍「敵機……全反応喪失。制空権確保よ」

ベリアナ「向こうの艦載機は、全部亜空間に閉じ込めちゃったわ♪」

ヲ級fl「ド、ドウイウコトダ……!?」

 ブルーン!

ヲ級fl「!?」

流星「ヒャッハー!」ガガガガガッ

ヲ級fl「グゥゥ!?」ガガガガガッ

ヲ級fl「機銃……!? イヤ、コレハ……矢!? ナンダコレハ……ッ!?」シュウウウ

ヲ級fl「装甲ニヒビガ……ギャアァァアア!?」バキバキーン!

流星「ヒャッハー!」

ブリジットin流星「自分はガトリングアローのメディウム、ブリジットであります!」

ブリジット「このたびは隼鷹殿の艦載機、流星に載せていただいたこと、感謝の極みでありますっ!!」

ブリジット「自分のガトリングアローは、複数回命中すれば敵の装甲を打ち砕く特別仕様であります!」

ブリジット「これにより敵空母に大打撃! 継続して敵の殲滅にあたるであります!」

隼鷹「いいねいいねえ! このままパーッと行っちゃおうぜぇ!」

隼鷹&ブリジット「ヒャッハー!」ガガガガガッ

ヲ級1「キャアァァ!?」バキーン!

ヲ級2「イッタイナニガ!?」バキバキーン!

ヲ級3「ナンナノコレハッ!?」バキャーン!

 * 司令部北東の海岸 *

ニコ「第一艦隊から第六艦隊までの艦娘には、一隻につき一人ずつメディウムを載せたんだ」

ニコ「艦娘のみんなは兵器だから、そこに設置というか、搭乗させてあげたって感じかな?」

ニコ「相性もあるかもしれないけど、きっと彼女たちの力になるはずだよ」

提督「攻撃の選択肢が増えたってわけだな。そっちは各々の判断に任せるか……戦場じゃあ俺の指示なんか役に立たねえしな」

提督「あいつらはどうしてる」

ニコ「誘導は大丈夫。スイングアンカーが向かってるよ」

提督「チェルシーだったか? あんなきわどい恰好の奴が本当に大丈夫なのか?」

ニコ「ぼくたちは罠だよ?」

提督「……ま、危なくないようにやってくれよ」ナデ

ニコ「あっ……うん」ポワァァァァ


ニコ「……あ、こら! ぼくを子供扱いして! ぼくはお姉ちゃんなんだからね!!」プンスカ

提督「へいへい」

 * 戦闘海域 第二艦隊*

摩耶「おー、すげえすげえ。敵のヲ級の装甲がバリバリ剥がれてんぜ」

陸奥「ヲ級のあのスイムスーツみたいな服、結構固いのよね。それをあんなにあっさりと砕いちゃうなんて」

摩耶「『アーマーブレイク』だっけか。面白い技術使ってんなあ」

摩耶「で、アタシの艤装に乗っかったのは、クリスティーナ、だな?」

クリスティーナ「ええ、ライジングフロアのメディウムよ。あなた、対空攻撃が得意なんでしょう?」

クリスティーナ「私があいつらを天高く飛ばしてあげるから、期待してて」

摩耶「へへっ、楽しみだなあ」

筑摩「私と姉さんはバキュームフロアとカタパルトですね」

アマナ「はい、筑摩さんよろしくお願いします」

ユリア「利根ちゃんは一度体験してるから、要領はわかってると思うけど……」

利根「ちゃん付けするでない! まあ、不謹慎ではあるが、罠は仕掛ける方に回るとわくわくしてくるのう」

筑摩「ええ、しかも姉さんと連携を組めるなんて……」ウットリ

アマナ「ブリジットが敵を丸裸にしてますから、私たちも罠にはめやすくなりますね」

ユリア「待たなきゃいけないのが欠点だけど、防衛戦だしいいわよね~」

雲龍「……おかしいわ、敵が接近してこない」

陸奥「……そうね、なにかしら?」

ヲ級1「ア、アンナ奴イルナンテ聞イテマセンヨ!?」スッポンポーン

ヲ級2「艦載機ガ消エルノハマダシモ、服ヲ破カレルナンテ、アリエナイデス!」カァァァ

ヲ級fl「シ、シカシ……恥ズカシイガ、ヤルシカナイダロウ!」カァァァ

ヲ級3「服モ武装モナシデハ戦エマセン!! 撤退シマス!」ピューン

ヲ級fl「ア、ヲイ!!」

ヲ級1「ワタシモ!」ピューン

ヲ級2「モウヲ嫁ニ行ケナーイ!」ウワーン

ヲ級fl「ヲ、ヲイテイクナアァ!!」ピューン


雲龍「敵空母部隊、撤退を開始したわ……いいのかしら」

摩耶「ちょっ、なんだよそれ!」

クリスティーナ「私の出番は!?」

筑摩「隼鷹さんやりすぎです!」

隼鷹「えっ、まじめにやったのになんで怒られてんのあたし」

ブリジット「理不尽であります!」

利根「追撃じゃ! 追うぞ陸奥!」

陸奥「ちょっと! 持ち場を離れないで! 提督の指示を忘れたの!?」

ニーナin陸奥の艤装(旗艦って大変なんですね……)

 * 司令部 *

龍驤「……空母ヲ級にも羞恥心ちゅうもんがあったんやな……」

鳥海「?」

龍驤「……しかも1隻はパッド仕込んでおったし……友達になれるかもしれへんなあ」ブツブツ

大淀「???」

今回はここまで。

次回出撃予定、
足柄、加古、最上、三隈、黒潮、朝雲

妙高型と利根型でバレーボールチーム作ったら似合いそう。

では続きです。

 * 戦闘海域 第五艦隊 *

足柄「さぁ、行くわよ! 勝利のために!」

カオリ「ええ、ビシバシ行くわ! みんなのために!」

足柄&カオリ「いっけぇぇーーー!」

砲撃&ボールスパイカー< ズドンズドンズドンズドンズドンズドン

イ級「!?」ドカァン

ハ級「!?」バチーン

チ級「チ、散レ! 狙イヲツケサセルナ!」

最上「どこへ行くんだい?」ドンドンドン

黒潮「行かせへんで!」ドンドンドン

チ級el「クッ、突ッ切レ!」

最上「ところがそうは」バッ トイハンマートリダシ

黒潮「行かさへんで!」バッ ハリセントリダシ

最上&エミル「ぶっとべぇ!」パキョーン!

黒潮&ジュリア「いてまえー!」スパーン!!

へ級「!?」バシャーン

ホ級「!?」バシャーン

朝雲「まとまったところで、あたしたちの出番よ!」

ヴェロニカ「……どうして私が、あなたみたいな子と組むことになったのかしら」フゥ

朝雲「縁起がいいからよ。朝グモは殺すなっていうじゃない!」ドンドンドンッ

ヴェロニカ「……私、そんなの初めて聞いたわ」ユビパチーン

砲弾→スパイダーネット< シュバババッ!!

チ級el「ナ、ナンダコノ粘ツク網ハ!」ネバネバ

ロ級「!!」ジタバタ

スズカ「お次はうちの出番じゃき! 綺麗にまとめちゃるけんね!」

三隈「はーい、それではみなさんご一緒に~!」

スズカ「せーの!!」

三隈&スズカ「「くるりんこ~!」」

フライガエシ< ポイーン!

イロハヘホ級チ級el「アレェェェェ!?」スポーーーーン!

デスサイスを持った加古「……」ユラリ

シエラ「う、うう、緊張する、デス」

加古「だーいじょうぶだって。ほーら深呼吸深呼吸ぅ、明鏡止水の心で、動かざること山の如し……」

シエラ「……スー、ハー、スー、ハー」

加古「……ぐー……」

シエラ「寝てるのデス!?」ガビーン

 ヒューーーーーン

イロハヘホ級チ級el「ホエェェェェ!?」ヒューーーーーン

シエラ「ちょっ、敵が飛んできたのデス! 早く起きるのデスゥゥ!!」アタフタ

加古「……ぐー……」

加古「……」カッ!

 ズバッ!!

イロハヘホ級チ級el「/   スパーン   /」

 ドボンドボンドボボボボン

シエラ「……や、ヤったのデス……!?」

加古「……んじゃ、こんな調子で次も行ってみよー……Zzz」

シエラ「だ、だから寝ちゃだめなのデスゥゥ!」ピェェェ!

 * 鎮守府内 指令室へ続く廊下 *

部下E「よし、艦娘は全員出払ってるようだ。司令部には艦娘が3人だったな?」

部下D「ああ。ただ、戦闘が激しくなれば中将はシェルターに避難する……」

部下E「そうなる前に、爆弾で艦娘を吹き飛ばし、その隙に中将をやるぞ。いいな」タッ

長門「ほう。穏やかではないな?」

扶桑「ふふふ……まだ、見つかってないと思ってるのかしら?」

山城「こんな奴らが私たちの上官だったなんて……不幸だわ」

部下E「! いたのか……しかも戦艦3隻とはな」

部下D「くそ、こんなところで不幸姉妹と遭遇かよ……ついてねえ」

山城「……」イラッ

長門「さて、質問させてもらおうか。貴様らはなぜここにいる?」

部下E「……話す必要はない」

部下D「……」

山城「だんまりなのね」

長門「……フ、良かろう」ジャキ

長門「もとより聞くつもりもない」ギラッ

部下E「……!」

部下D「こ、ここで撃つ気か!」

長門「……」ニヤリ

タライ< ヒューン

部下E「へぶぁ!?」パカーン

部下D「ぶっ……! ぷーっくっくっくっ」プルプルプル

部下E「笑ってんじゃねえぞ……こんなもの、ふざけやがってぇぇぇ!!」

クエイクボム< グラッ グラグラグラッ

部下D「うおっ!? じ、地震だと!?」

部下E「お、おい馬鹿! 爆弾は落とすなよ、俺たちが死ぬぞ!」

パンプキンマスク< ヒューン

アゴニーマスク< ヒューン

部下D「うぼっ!?」ガポッ

部下E「ぶあ!?」ガポッ

部下D「な、なんだいきなり!? 前が見えん!」ヨロヨロッ

部下E「ぎゃああああ!?」ビリビリビリビリーッ

部下D「E! ど、どうした!?」

部下E「痛え! 痛えぇぇえええ!!」

長門「部下Eがかぶったのは拷問用の鉄仮面だ。電流が流れるようにできている」

部下E「な、なんで俺だけこんな目に合わなきゃならねえんだあああ!!」

長門「やれやれ、やかましいな……よし、いいだろう。黙らせてくれ、ヴァージニア」

クイーンハイヒール< ズォッ

部下D「ぎゅぎゃっ!?」グシャッ

部下E「げぁぁ!」グシャッ

山城「あらら、無様な悲鳴だこと」クスクス

部下E「ぐ、ぐぞぉ……っ! おいD、爆弾だ……! 爆弾でこいつら吹き飛ばせ……!!」

部下D「……あ、ああ!? ど、どこだ!? 爆弾、どこに行った!?」

潮「……カボチャをかぶった隙に私がこっそり持って行ったの、気付かなかったんですね」

扶桑「ふふふ、潮ちゃんが無事でよかったわ」

長門「……さて。おしおきはまだ終わっていないぞ。部下E、お前は一体何人の駆逐艦に手を出した?」

部下E「……! な、何を言うかと思えば……何のことだ」

長門「しらを切るか。ならば……潮」

潮「は、はい」スッ

部下E「……! お、お前は、もしや……いや、お前らは!」

部下E「探していたんだぞ……潮! 俺は、お前を探していたんだぞおお!!」ニタァァ

潮「ひ……」ビクッ

部下E「なぜだ! なぜお前は俺から逃げるんだ! 俺は、お前が欲しいんだ! 全部、全部俺のものにしたかったんだ!」

部下E「服も! 艤装も! その目も、顔も、髪の毛も、体も! 心も!! 全部!! ああ、なのにお前が、笑わないから……俺に笑わないのが悪いんだ!!」

部下E「寂しさのあまりほかの奴も味わったが……全員違った! お前じゃないと駄目だった……お前以外駄目なんだ! お前以外はゴミだ!」

長門「……やはりか……!!」ギリッ

扶桑「……下衆ね」ポツリ

山城「……気持ち悪い」ボソッ

部下E「黙れぇっ!!」

山城「っ!」ビクッ

部下E「jこの俺がどれほどこいつのことを考えているか、お前にはわかるか!? わからんだろう! 余計な口を挟むんじゃない!」

部下E「さあ潮、帰ろう? お前は俺と共にあるべきなんだ……風呂に入れて綺麗にしてやろう、飯もうまいものを食わせてやる!」

部下E「何が欲しい? なんでも与えてやるぞ? お前は俺のものだからな! 望むならここの提督の命だって考えてやろうじゃないか!」

部下D「な……!? おい、お前……!」

部下E「お前は、俺のものだ……俺の、所有物だ……!! お前は俺の奴隷なんだああああ!!!」グワッ

長門「……愚か者が!」

デルタホース< ガシャッ!!

部下E「っっっ!?」グシャ

部下E「……っ!!!???」シロメグルンッ

部下D「ひ……」ダッ

山城「あらら、逃げるのね……いるのよ、そっちにも」

ホットプレート< ゴォッ!!

部下D「あ、熱っじゃあああああ!?」メラメラメラッ ピョイーン

ウォッシュトイレ< ガシャッ!!

部下D「うおっ!?」ズボッ

部下D「……う、くそ……なんだ、抜けねえぞ!?」

山城「ふん、ざまあないわね。お似合いだわ」

部下D「くそ、どうしてお前らがこんなところに……ついてねえ! 来るな! 扶桑型は近寄んじゃねえ!」

扶桑「……提督?」ニコリ

扶桑「覚えてらっしゃいますか? あなたの鎮守府が、初めて、扶桑を迎え入れた時のこと」ニコリ

部下D「あ、ああ? 知るか、覚えちゃいねえよそんなこと」

扶桑「そうですか。私は覚えていますよ?」

扶桑「確か『最初の戦艦が不幸型かよ、ついてねえ』でしたね」ニコニコ

部下D「……」

扶桑「お前が来てから作戦は失敗ばかりだ、辛気臭い顔しやがって」

扶桑「来るな、不幸が伝染る。へらへら笑ってんじゃねえ」

扶桑「お前はもう笑うな。お前が笑うから不幸が寄ってくるんだ」

部下D「……」

山城「……扶桑お姉様。その話、私は初耳です」

山城「まさか、向こうの鎮守府で扶桑お姉様がまったく笑わなかったのは、この男が原因だったというんですか……!?」ワナワナ

扶桑「山城が来た時も、疫病神が増えた、と仰っていましたね」

扶桑「よぉく、覚えていますよ……?」ニコリ

部下D「……」

扶桑「……提督。不幸艦と呼ばれる私たちを沈めて、幸せになれましたか?」

扶桑「武勲艦や幸運艦と呼ばれる艦娘ばかり集めて、己の幸せを満たそうとしたあなたは、本当に幸せでしたか?」

扶桑「そちらにいた時雨に聞きましたよ。私たちと、随伴していた時雨たちに、別々の指示を出して、はぐれるように仕向けたこと」

扶桑「時雨は、私たちを探して、傷ついて、この島に流れてきました。あなたから離れられて、良かったと……あの男こそ、不幸そのものだと」

扶桑「そして、最期に私たちと会えて、幸せだったと……そう、言ってくれました」ニコ…

部下D「……」

扶桑「提督。いえ……部下D」ハイライトオフ

扶桑「もう、私たちを捨てた、あなたと話すことはありません」

部下D「い、いや待て……! そうじゃないんだ、待ってくれ!」

扶桑「私の提督を殺そうとした、あなたの命令を聞くこともありません」

部下D「お、おい、話を聞いてくれ! 何をする気だ!?」

扶桑「そして時雨を不幸にした、あなたを許すこともありません」

メイデンハッグ< ガララララ… ガシャンッ!

部下D「ひっ!?」

メイデンハッグ< ギギギギ…

扶桑「その中で、自分の血の雨を浴びるといいわ」

部下D「ひいいいい!? や、やめ……」

メイデンハッグ< ガシュンッ!

部下D「ぎゃあああ! ああ……あ……!」

メイデンハッグ< グシュグシュグシュゥ!!

扶桑「……」

扶桑「……時雨……」ポロ

山城「扶桑お姉様……」

扶桑「……」ポロポロポロ

扶桑「山城。私は、復讐を果たしたわ……でも、この空しさはなぜ? ……涙が、止まらないの」

扶桑「胸に、ぽっかりと大きな穴が開いてしまったみたいで……どうしてなの? 私は、間違っていたの……?」ヘタッ

山城「扶桑お姉様……」スッ

山城「悲しい話ですが……そのくらい、扶桑お姉様の心の大部分を、あの男への復讐心が占めていたんだと、思います……」

山城「扶桑お姉様がこの鎮守府に来てからずっと笑みを絶やさなかったのも、おそらくはあの男の……呪いのようなものです」

山城「それがやっと今、あの男の呪縛から解放されて……扶桑お姉様の心を縛っていた大部分が消えて……」

山城「それで、何もなくなってしまった……そういう風に感じているんだと思います」

扶桑「……山城。私は、これからどうしたら……」

山城「扶桑お姉様。これからは、この鎮守府の思い出で、その胸に空いた穴を埋めていきましょう? 時雨もきっと、それを望んでいます……」

山城「この山城……扶桑お姉様が心から笑える日が来るまで……いえ、楽しいときもつらいときも、ずっと一緒にいますから……!」グスッ

扶桑「やま、し、ろ……ぉ!!」ギュウ

山城「扶桑、お姉様……!!」

 * *

デルタホース< スッ

部下E「う、げぇぇえ……」ビクビク

オリヴィア「こいつは一体なんなんだい? 潮を見たら人が変わったみたいになっちまってさ」スッ

長門「この男は、潮のストーカーだ。私は、濃霧の日に潮を連れて鎮守府を逃げ出して……この島に流れ着いた」

ヴァージニア「ほう? 貴様が鎮守府から逃げては大騒ぎだろう? 良かったのか?」

長門「……あの時はそうするほかなかった。この男の……部下Eの自業自得だ。さ、潮……もう大丈夫だ」

潮「……」ガタガタ

長門「潮……」

潮「……こ、怖い……」ウルウル

長門「……こんなになるまで、お前は傷ついていたんだな……」ギリッ

フウリ「あ、あの……!」オドオド

潮「!? フ、フウリちゃん……?」

フウリ「こ、これ! 使って、ください……!」タライサシダシ

潮「……え……?」

ヴァージニア「潮よ。この男は、貴様が拒絶しないと駄目なのだ」

潮「……そ、それって……」

ヴァージニア「貴様が明確に拒絶せぬ限り、この男が貴様にかけた呪いは解けぬ」

オリヴィア「そうだねえ。嬢ちゃん、あんた自身がけじめをつけたほうがいいよ?」

カサンドラ「お、応援、してますから!」コクコク

ジェニー「遠慮はいらないわ。どうせタライだもん、そんなに痛くないんだから力いっぱいぶつけてやりなよ!」

フウリ「じ、ジェニーさんひどいです!」

潮「……」タライウケトリ

ヴァージニア「案ずるな、何かあっても我らがいる。胸を張れ、長門のようにな」

潮「……」コクン

潮「……」キッ

部下E「ふ、ふへへ……うう、う潮ぉ」ニタア

部下E「俺の、元へ、来い……! 早く、戻って……俺と、暮らすんだァ……!」

潮「……い、嫌、です」

部下E「ふひ……!? な、何を言う……お前は、俺の言うことを何でも聞く、いい子だったじゃあないか……!」

潮「……あなた、なんか……上官でも、なんでもありません!」

部下E「うし、お……?」

潮「私の……敵です!!」ブンッ

 パカーーン

部下E「……」

 クワンクワンクワン…

部下E「き……きさっ、きしゃまぁぁあああっぁあああ!」ダッ

潮「ひ……!!」

 ドガガガッ

部下E「グェ……」ドタッ

ヴァージニア「ふん、愚物が」ミドルキック

オリヴィア「ジェニーまで仕掛けるとは思わなかったねえ」バックナックル
          lariat
ジェニー「ふふん、投げ縄は得意なの」ラリアート

カサンドラ「う、潮さん! 見てましたよ! やりましたね……!」

潮「うん……あ、ありがとう……!」

フウリ「よ、良かったです……いい音出てました!」ウルウル

長門「ああ、本当によくやった……!」

ヴァージニア「勝利の余韻に浸るのもいいが……後始末はしっかりとせねばな。レイラ、クロエ」

レイラ「は~い」ヒュンッ

部下E「!?」ポワンッ

長門「なんだ!? 部下Eがシャボン玉に入ったぞ?」

レイラ「私はマジックバブルのメディウム。この泡は、人間を閉じ込めてしまうことができますの」

レイラ「このまま外へ追い出してしまいましょうね」ツンッ

部下E「!?!?」スイーッ

長門「泡に包まれたまま滑っていくぞ……なんか、楽しそうだな」

フウリ「た、楽しいなんてとんでもないです! あの中は息が詰まるし狭くて大変なんですよ!?」プルプル

長門「そ、そうなのか……」

潮「……入ったことあるの?」

フウリ「……」カァァ

クロエ「はいはいっ皆様どうぞご注目を! ここでわたくし、クロエ・ワンダーバルーンの出番ですね!」ポンッ

クロエ「いらっしゃいましたお客様には、こちらの風船をプレゼント!」ペタペタペタッ

部下E「!?!?!?」フワーッ

長門「お、おい!? 泡ごと飛んで行ってしまって……い、いいのか!?」

クロエ「ええ、よろしいと思いますね! むしろ大変よろしいかと!」

潮「え、えええ……?」

レイラ「もうすっかり小さくなってしまいましたね」

クロエ「随分高いところまで飛びましたねえ!」

潮「な、長門さん……」

長門「……あそこまで高く飛んだら、たとえ下が海でも助かるすべはあるまい。もうあの男の影に怯えることもないだろう」ニコ

潮「長門さん……!」ギュ グスッ

長門「皆、礼を言う。皆のおかげで、私たちは平穏を得ることができた。そんな時に申し訳ないが……人払いを願えるか?」

オリヴィア「ん? ああ、しょうがないねえ」

ヴァージニア「では、我らの勝利を報告しに行くとしようか」

 ゾロゾロ

長門「……」

潮「ぐすっ、うう……」

長門「潮」シャガミ

潮「……?」

長門「私はお前に詫びなければならない」

長門「実は私は……」

長門「お前をだしに使ったのだ」

潮「え……?」

長門「私も、あの男が怖かったのだ……恐ろしかったのだ」

長門「あの男の、お前に対する執着ぶりは異常だった。常軌を逸していた」

長門「本来なら、私がお前たちの盾になって、あの男の所業から救っていれば良かった……殴ってでもあの男を矯正できていれば良かったんだ……」

長門「なのに、私はそれをしなかった……。あの男の標的になるのが、どうしようもなく恐ろしかったからだ……!!」

長門「潮は、本当によく耐えていた。ひたすらあの男に刃向わず、逃げるだけ逃げて、被害を抑えて、よく立ち回っていた」

長門「私はそんなお前に甘えてしまったんだ……! お前がいれば、あの男が私に向かってくることはない、と……」

長門「お前がいよいよ耐えられなくなって、私は巻き込まれたくない一心で、お前を連れて鎮守府から逃げる決心をした……」

長門「お前と私が鎮守府から逃げれば、他の者があいつの犠牲になるだろう……それをわかっていて、私は逃げたんだ!」

長門「何がビッグセブンだ! 何が誇り高き戦艦だ……! 私は……敵前逃亡を企てた、ただの臆病者だ! 私こそが、一番の大馬鹿者だ……!」

潮「長門さん……」

長門「潮……すまない。私が、もっとしっかりしていれば……立ち向かえていれば、お前をこんなに苦しませることはなかったんだ……」ドゲザ

長門「本当に……すまない……」

潮「……長門さん」

潮「長門さんは、私を見ていただけだったんですか?」

長門「……! そうだ……」

潮「長門さんは、私がいたずらされていても、庇ってくれなかったんですか?」

長門「そうだ……!」

潮「嘘つき」

長門「!?」

潮「顔を、あげてください」

潮「長門さん、私があの人に何かされそうになったとき、私を他愛のない用事に呼び出してくれたじゃないですか」

潮「私があの人に二人きりになったとき、わざと提督に作戦の話をして気をそらしてくれたじゃないですか」

潮「ずっと眉間にしわを寄せて、怒っているような顔をしてたのも、私がそういうことをされてるのを知ってたからですよね?」

長門「……」

潮「ずっと、みててくれたんですよね……?」

長門「……」ブワッ

潮「私、長門さんがいなかったら、もっと早く壊れていました……!」ダキツキッ

潮「……だから、そんなこと、言わないでください……!」ギュウ

長門「う、潮……お前、こんな私を、許すつもりか!? 私は卑怯な……!」

潮「そんなことを言ったら、私も同じ卑怯者です……」

潮「私は、あの鎮守府から逃げようと言ってくれた長門さんに感謝してるんです。私は恨んだりなんかできません……!」

潮「私も、長門さんも、あの人に苦しめられていたんです……だから、一緒に逃げたんです」

長門「いい、のか……!? 私は……」

潮「ここで、この鎮守府で、やっと終わらせられたんです。みんなに手伝ってもらってだけど、終わりにできたんです」

潮「私たちはもう、あの人の影に怯えなくていいって、長門さん、そう言ってくれたじゃないですか……!」

長門「そう、だな……! そうだな!!」ギュ

長門「良かった……良かっ……あ、あああ、うわああぁぁぁぁ……」ボロボロボロ

潮「ううっ、うええぇぇぇ……」グスッ


ヴァージニア「ふん、興醒めだ。長門はもう少し骨のある者だと思っていたが……買いかぶりすぎだったか」グスッ

セレスティア「……まあ、そういうことにしておきましょうか」フゥ

オリヴィア「ヴァージニアも素直じゃないねえ」

フウリ「でも、ぼんど、良がっだでず……」グズグズ

カサンドラ「ええ、良がったれふ」ズビー

ジェニー「やっぱりこういうのはハッピーエンドじゃないとねえ!」

エレノア「さて、余所はどうなってるかしらね……早く祝杯をあげたい気分だわ」

ロゼッタ「もー、エレノアはそーゆーとこ相変わらずなんだから~」

ハナコ「あのう、ところで……あの人たちの持ってきた爆弾、どうしましょう?」

レイラ「魔神様に指示を仰いだらどうかしら?」

クロエ「ではでは私が持っていきましょう!」

今回はここまで。

次回出撃予定
神通、川内、那珂、白露、島風、朧

イケメン提督だして 潮と扶桑二人何とかしてくれよぉ~ かわいそうだよ

>>279
そんな都合の良いイケメンが何人居ても足りない鎮守府です。

続きを投下します。

 * 戦闘海域 第四艦隊 *

神通「砲雷撃戦、用意!! 撃てーっ!」ドンドンドン

那珂「それそれそれーい!」ドンドンドン

川内「ほらほらほらーっ!」ドンドンドン

ル級el「敵影……単横陣ダト?」

ヘ級el「……イエ、アレハ輪形陣デハ?」

リ級el「陣形ヲコロコロ変エテキテイル……ナンダアノ動キハ」

ワ級el「アレデハ動キガ不規則スギテ、捉エラレナイゾ!?」

リ級el「ソレハ艦娘モ同ジコト! 衝突シテ自滅スルノガ関ノ山ダ!」

那珂「朧ちゃーん! 大丈夫ー!?」

朧「はい、大丈夫です!」

川内「私たちの動きに良くついてきてるねえ」

神通「朧さんは頑張り屋さんですから」

那珂「あの二人もしっかり連携できてるね~感心感心♪」

白露「島風と何回も競争したからね! コンビネーションの経験値はいっちばんだよ!」

島風「速さでは負けないからね!」

神通「さあ、第二陣行きますよ! 魚雷装填! 一斉射!」

ヘ級el「敵艦隊、全艦ノ魚雷発射ヲ確認!!」

リ級el「コ、コノ至近距離デ!?」

ル級el「突破ルート確認、全艦回避運動! 単縦陣デ被害ヲ最小限ニ留メロ!」

川内「敵艦隊が縦一直線になったよ! 今だ!」

朧「了解! 行きます!」ジャキン

シルヴィア「さあ、飛び跳ねなさい!」

シャークブレード< キシャァァァァァン!

ル級el「ナ、ナンダアレハ!?」

ワ級el「コッチニ真ッ直グ向カッテ……ギャァァア!?」ズバーッ

リ級el「後ロニマデ……ウワァァァ!?」ズバーッ

ヘ級el「バカナァァ!?」ズバーッ

島風「続けて行くよ!」

リサーナ「それじゃあ、行ってみようかな? せぇのっ♪」

島風&リサーナ「「バニー!!」」

キラーバズソー< キシャァァァァァン!

ル級el「ワ級! シッカリシロ……ギャァァア!?」ズバーッ

ヘ級el「ヘゴッ!?」ドカァ

リ級el「ル級ガ吹キ飛バサレタ!? ウワァァァ!?」ドカァ

ワ級el「巻キ添エェェェ!?」ドカァ

アローシューター< パシュン! パシュン! パシュン!!

リ級el「サ、サッキカラナンダコノ矢ハ!?」ガキンッ

ワ級el「ア、アイツダ……! ナンダアノ連射……ギャアア!」ドスッ

ミリーエル「特徴のない私ですが、姉妹の中で手数は一番ですよ!」

白露「反撃なんかできないくらい、ばんばん撃っちゃおう!」

川内「白露が連射して目を引いてる隙に、行くよ神通!」ドンドンドン

神通「はいっ! 第四戦速、接触まであと10!」ドンドンドン

ヘ級el「敵軽巡2隻、真ッ直グコチラニ突ッ込ンデキマス!!」

ワ級el「!?」

オボロ「我らの力……!」

ゼシール「お前たちに託すぞ!」

川内「下!」ブラッディシザーカマエ

神通「上!」サーキュラーソーカマエ

 ズバズバズバズバズバズバーーーッ

リ級el「ア、ガ……!?」

ル級el「バカ、ナ……ァ」

神通「近接戦闘圏離脱です!」

那珂「おっけー! 後はまかせて!」ドンッ

砲弾→ブラストボム <ドシューーーッ

 ズドーーーーン

アカネ「たーまやーーー!!」

川内「多摩や?」

神通「猫じゃない艦娘さんですか?」

アカネ「えっ」

島風「多摩ちゃんこの鎮守府にはいないよ?」

朧「じゃあ『なーかやー』って言うんでしょうか?」

ミリーエル「あの、そうじゃなくて、っていうかそれどころじゃ……」

白露「そもそも那珂ちゃん花火屋さんじゃないんじゃない?」

那珂「那珂ちゃん、もっとアイドルっぽい合いの手が欲しいなあ」

オボロ「おい」

ゼシール「戦闘中だぞ」

シルヴィア「ああ、ほら左に」

川内「」ドン

神通「」ドン

那珂「」ドン

敵艦 <ボギャー

川内「でさあ、ここはやっぱり」

神通「確かに紛らわしいですが」

那珂「決めポーズはこうかなー」

オボロ「いやいやいや」シロメ

ゼシール「ちょっと待て」シロメ

シルヴィア「見ないで沈めたわね」シロメ

リサーナ「この人たち強いのねえ」

島風「うん!」

白露「怒ったらいっちばん怖い人たちだよ!」

那珂「もー、白露ちゃんったらひっどーい! 那珂ちゃん怖くないったらー!」

ミリーエル「上には上がいるんですね」タラリ

朧「朧も頑張らないと」フンス

 * 戦闘海域 第六・第七艦隊 *

五十鈴「千歳さん、あれ!」

千歳「わかってるわ! 那智、所属不明の艦娘5隻が、深海棲艦の攻撃を受け交戦中!」

千歳「敵構成は軽空母2、重巡2、駆逐4! その後ろに雷巡2、軽巡5! 私たちの正面へ向かっているわ!」

那智「了解! 那智戦隊、出撃するぞ! 私と青葉は艦娘と深海棲艦の間に割り込む! 他の者は援護を!」ザァッ!


北上(小破)「……いい加減、うざいわー」

満潮(小破)「泊地の敵艦が全部襲ってくるとか、なにやらされたのよ!」ドンッ

弥生(大破)「……ごめんなさい」

霰(中破)「気にしないで……最初にここに行こうって言い出したのは北上さんだから」ゼェゼェ

名取(大破、弥生に担がれ中)「……」

霰「島が見えてきた……あと少し」

満潮「ちょっと、名取さん限界なんじゃないの?」ハァハァ

北上「あー、そうかもねー。そんなことより満潮は自分の心配しなよ……っと!」バシューッ

ロ級(撃沈)「」ドゴーン

北上「あーあ、魚雷も品切れかあ。ほら、とっとと逃げるよー」

満潮「ちょっ! ったくもう、ほら霰! 撤退よ!」

弥生「名取さん、もう少しだから……頑張って」

名取「……いけない……!」ピクッ


弥生に向かっていく魚雷< ゴォォッ


弥生「あ……!」

満潮「弥生っ!?」

五十鈴「そうはいかないわ……キュプレ!!」

キュプレ「まかせて! くっつけちゃう!」

ペッタンアロー< パシュ ペタン

弥生「え?」グイーン

名取「ふえぇ!?」グイーン

五十鈴「よっし、キャッチ成功! 名取、大丈夫?」ガシッ

名取「……あ……いす、ず?」

五十鈴「あなたも頑張ったわね! 安心なさい!」

弥生「……は、はい」

キュプレ「愛だわ! 姉妹愛ね! 感動だわ!」

千歳「さ、撤退急いで! はっちゃん、五月雨、山雲は足止めをお願い!」

那智「よし、我々も行くぞ! 出撃だ!」

青葉「ぅおおおお待たせしましたあああああ!」ザザザザ

那智「あ、おい青葉待て!」

霰「……テンション高い」

満潮「なにあれ」

弥生「なんだろう……」

北上(うるさい)

青葉「砲撃も雷撃も索敵もおおおお!」ドゴンドゴンドゴン

青葉「青葉にいいいい!」ズドンズドンズドン

青葉「おっまかせええええええええ!」ドカンドカンドカン

軽巡×5「!?」ドゴゴゴゴーン

日向「えっ?」

伊勢「なにあれ怖い」

チ級1「ナニガ起コッタ!?」

チ級2「イ、イヤ……」

若葉「遅いな」

チ級2「!?」

チ級1「ナ、何者」

若葉「若葉だ」ズドドン

チ級×2「」ドガガーン

初雪「……出遅れた」

日向「いや、そういう問題では……」

那智「青葉! 待てと言ったろう! ああ、私の出番が……」

青葉「敵はまだこちらに気付いてないよー?」ビシッ

日向「……」

伊勢「……えっと、初雪? あの青葉、何者なの?」

初雪「青葉さん、戦場に出ると我を忘れてオオカミになっちゃうんだって……」

日向「それで鎮守府を追い出されたのか?」

初雪「ううん、全然関係ない。前いた鎮守府の提督が写真撮られるのが大嫌いだから左遷させられたの」

伊勢「ええ……」

青葉「若葉さんやりますねえ」ハイタッチ

若葉「夜戦に持ち込まず殲滅できる力を求めて、川内さんと特訓した成果だ」

リ級el「クソ、後衛ガヤラレタカ……ム!?」ガキン

リ級el「ナンダコレハ」

伊8「釣れた?」

ミーシャ「はい、海の中から海面に向かって仕掛けたのは初めてですけど……」

海中の伊8の本の中から伸びたハンギングチェーン < ジャララララッ

リ級「ウオ!? 私ガ海中ニ引キズリコマレルダト!?」ゴボボンッ

リ級「ダガ、深海棲艦ニ水中戦ヲ挑ムトハ……馬鹿ナ奴ダ!」ゴボッ

伊8「狙いは違うよ?」

リ級el「!?」

ニ級1「!」

ニ級2「センスイカンハッケン」

ニ級3「バクライトウカ」

ニ級4「トウカ」

 ポイポイポイポイー

リ級el「バ、馬鹿! 私ガイルンダゾ! コンナ鎖……」

ハンギングチェーン< ガッチリ

リ級el「ハ、離シテ……ギャアアアア!?」ドカドカドカドカーン

山雲「さあ~、続くわね~」ドドドンッ

 砲弾<メラッ ゴォッ!

ヌ級el「!?」ドゴンッ メラメラメラッ

山雲「艦載機も一緒に燃えてるみたいね~」

ノイルース「いかがでしょうか、燃える砲弾は」

山雲「そうね~、なるべくなら当てていきたいわ~」ルンルン

ノイルース「では、次々と参りましょう」ニコ

五月雨「ふたりともすごい……! 私も行きます! って、誰が乗ってたんだっけ……」

マーガレット「五月雨さん! お手を拝借です!」

フライングケーキ< ポンッ

五月雨「えっ」

マーガレット「さあ、それを投げつけてください!」

五月雨「えっ」

ニ級1「!」

ニ級2「テキカンハッケン」

ニ級3「ツギノモクヒョウ」

五月雨「き、きゃああ!?」ポーイ

ニ級4「!」ベチャ

ニ級1「イイニオイ」

ニ級2「ペロペロ」

ニ級3「コレアマイ」

ニ級4「(゚д゚)ウマー」

五月雨「う、うまくいってる!?」

マーガレット「足止めとしてはOKですよね……?」

ニ級1「アイツガウッタ」キョロ

ニ級2「モットヨコセ」キラリ

ニ級3「モットヨコセ」キラリ

ニ級4「(゚д゚)ウマー」

五月雨「あ……」

マーガレット「ターゲットがこっちに……?」

五月雨「に、逃げましょう!」ザザザザ

艦載機から落下するチュウシャキ< ヒュウウウウ

ニ級1「ウヘア!?」ドスッ

ニ級2「シビビビ!?」ドスッ

ニ級3「ンギモッッヂイイイィ!?」ドスッ

ニ級4「(゚д゚)ウマー」ドスッ

フローラ「はーい、お注射の時間ですよー!」

千歳「援護するから、砲雷撃でとどめを!」

五月雨「は、はい! すみません!」

那智「その役目!」

伊勢「私たちが!」

日向「もらった……!」

初雪「……!」

ニ級×4「」ドドドドーン

那智「良かった……私にも出番があって……!」

初雪「那智さんは前の鎮守府でずっと出撃をお預けにされたんだっけ?」

那智「そうだ、私だってこうやって戦場で勝利を勝ち得たかったんだ……!」ウルウル

那智「それをあの男は、退役するまで酒飲み相手としか扱わなくて……勝利の美酒というものを教えてくれなかったんだ……!」グスッ

日向「この鎮守府の艦娘は業が深すぎるな……」

伊勢「ほんと……」

五月雨「うう、私ったらまたドジを……」グスッ

五十鈴「相性良すぎるのも困りものね」

マーガレット「ううう、ご、ごめんなさい」

霰「……とりあえず、助かったのかな」

満潮「ちょっと、ふざけてるみたいだけど、大丈夫なの!?」

千歳「ええ、現時点では、負けてはいないみたいね」

満潮「なによその返事! 勝つ気あるの!?」

霰「満潮」

満潮「……わかってるわよ、ここの戦力で勝つのは困難……引き分けを狙ってるってことでしょ」ムスッ

那智「千歳、我々はこのまま援護しつつ後退する。彼女たちは任せられるか?」

千歳「ええ、鎮守府内は狙われる危険があるから、念のため明石のところへ連れて行くわ」

那智「わかった! さあ、私たちはここを抑えるぞ! 初雪と若葉は潜水艦に警戒を頼む!」

北上「……」

霰「……」

満潮「……」

弥生「……どうしたの、みんな黙って」

満潮「なんでもないわ」

弥生「……怒ってる?」

霰「……ううん、怒ってない」

名取「みんな、明石さんの名前をきいてから様子が変ね……怖い顔してる」

弥生「……なにかあったんでしょうか」

今回はここまで。

次回出撃予定、
古高、如月、初春、吹雪、不知火、暁

救われるかどうかは明言しませんが、
ある程度納得のいく結末には導きたいものです。

では、続きです。

 * 戦闘海域 第三艦隊 *

ヲ級el「敵影確認……我々ニ背ヲ向ケテ敗走中ダ。逃ガスナ」

リ級「了解。艦娘ドモメ、逃ゲラレルト思ウカ!」

ト級「スグニ追イツイテ砲撃ヲ浴ビセテヤル」

吹雪「わざと逃げてみたら、追ってきたね」

初春「案の定、敵は単縦陣で一直線に鎮守府を目指しておる。わかりやすいのう」

ヒサメ「なればわらわの術にて一網打尽じゃ」パキパキパキッ

スリップフロア <パキーーン!

ヲ級「ヲッ!?」ツルーン ステーン

ト級「ンナッ!?」ツルーン ステーン

リ級「ナンダ、コンナ氷ノ板、割リ進ンデクレル!」ガッ

ヒサメ「残念じゃが、板ではなく氷の柱じゃ。海底までまるっと氷漬けじゃぞ?」クスクス

リ級「ワ、割レナ……ギャブン!?」ズドシャー

ヨ級el「」カチーン

カ級el「」コチーン

ホ級「!? 海中ノヨ級トカ級ガ氷漬ケニナッテル!?」ツルツルッ

グローディス「よおし、今だぜマイ・レディ! 私の雷槍、扱えるか!?」

暁「見てなさい! 暁は、響と雷と電のお姉ちゃんなんだから!」ヤリナゲカマエ

不知火「こちらもまいりましょうか」ジャキッ

ディニエイル「準備万端、いつでもどうぞ」

暁「っっやぁぁぁ!」ブンッ

不知火「砲撃開始……!」ドンッ

サンダージャベリン <バリバリバリバリ

砲弾→コールドアロー <ヒュイイイイ

リ級「ギャアアア!」バリバリバリ

ト級「グワアアア!」バリバリバリ

ホ級「」カチーン

ヲ級el「クッ、マダ私ノ艦載機ガ……!」

イブキ「精神集中! 腹に力を入れて、ゆっくり息を吸って、ためらわずに叫ぶ! これがあたし、イブキの必殺技だ! さあ行くぜ!」

吹雪「お、おす! すうぅ……」

深海艦載機「」グォォォオ…

イブキ「よし、今だ!」

吹雪「っ、はあああああああああ!!」

ヒートブレス <ゴォォォォォォォ!

深海艦載機「」ボワッ

深海艦載機「」メラメラメラ

深海艦載機「」ドーン

イブキ「よし! 上出来だ!」

吹雪「……///」ゴハァァァァ

不知火「吹雪さんが口から火を噴いてますね」

暁「ワイルドだわ!」キラキラッ

吹雪「……せ、せめてあのくらい格好よくできなかったかな……///」チラッ

古鷹「艦載機撃墜しました!」ビーム ビーム ビーム

ルミナ「うむ、いいね! 次、2時の方角、斜角35度!」

古鷹「了解です!」ビームッ

不知火「モノクルをかけた古鷹さんの探照灯ビームですか」

暁「えっ、探照灯ってああいう使い方できるの!?」

吹雪「あれは古鷹さんじゃないと無理かも……」

ヲ級el「バカナ、アンナ装備、見タコトガナイゾ!?」ツルーン

如月「でしょう? だからこの辺で引きあげてもらえると嬉しいんだけど……」

ト級「フザケルナ!」ジャキ ステーン

如月「そうよね……じゃあごめんなさい」バッ

ナンシー「痛かったら逝ってね~!」

フォールニードル < ズガシャァァァァン!

ヲ級el「ガ……ハッ!?」

ト級「ナン……ダ……ト!?」

ナンシー「うん、やっぱり床があると威力が違うわねー♪」

ヒサメ「この調子で迎撃していこうかのう♪」

初春「いきいきしておるのう」

如月「これが本職だものね」

吹雪「ね、ねえ、不知火ちゃん私とイブキちゃん交換しない? ほら、火と雪で、名前的に逆でしょ?」

不知火「いえ、不知火はディニエイルさんと相性が良いようなので」

ディニエイル「お名前も似ていることですし、そのままで良いかと」

イブキ「えっ、吹雪、アタシの何が不服なんだ!?」

吹雪「えっ!? ……えっと、その……下着見せてるところとか」マッカ

イブキ「えっ」

如月「えっ」

ナンシー「えっ」

不知火「えっ」

ディニエイル「えっ」

吹雪「えっ」

初春「おぬしが言うか」

ヒサメ「自覚がないとは、怖いのう」

暁(……探照灯から火炎放射……いえ、やっぱりビーム!? どっちが『暁』っぽいかしら!?)

暁(でも、今のサンダージャベリンも電のお姉ちゃんっぽくていいわ!)

暁(特にサンダージャベ『リン』ってところが可愛いし!!)グッ

グローディス(その発想はなかったぞマイ・リトルレディ)ホワー

 * 島の東部の海岸 *

スノーボール <ゴロゴロゴロゴロ…

スノーボール☆海岸の岩 <バコーーン!

大佐「ぬわああ!」

部下A「ぎゃあっ!」

部下B「ぐえっ!」

大佐「……く、くうう」

部下A「な、なにがあったんだ……!?」

部下B「わからん……」

大佐「ここはどこだ……」

部下B「……砲撃音が北だとすると、ここは島の東側のようです」

大佐「の、ようだな……」コンパスカチャリ

部下A「東!? だ、だとするとあのゴムボートは!?」

部下B「あれは、脱出用のボートか?」

大佐「蒼龍め、間違えたか……いや、しかしこれはこれで好都合」

大佐「部下A、これで俺とBを北東の海岸へ運べ。提督を始末するぞ」

???「おお~? 人間のくせに魔神様を始末するって? 生意気言うなあ」

部下B「誰だ……き、きぐるみ……!?」

部下A「なんだ貴様は!」

ティリエ「まったく、上から目線で失礼な奴だな。私はティリエ・ゴウモンシャリンだぞ?」

大佐「……おい、貴様」チャキッ

部下A「た、大佐!? こんなガキ相手に銃は……」

大佐「異常事態だ。あの雪玉はなんだ? この南の島に、なぜあんなものがあった」

部下B「そ、それは……!」

大佐「あの女といいこの小娘といい、艦娘以外の人間がいる時点で疑うべきだった」

大佐「お前は何者だ」

ティリエ「ティリエはティリエだぞー? ちゃんと名乗ってるのにわかんないなんて、頭が可哀想な奴だな」

大佐「……!」チャキッ

 パンッ

ティリエ「おっと!?」ヒョイ

部下A「!?」

部下B「!?」

大佐「……何?」

ティリエ「いきなり何するんだ? 危ない奴ー」

部下B「銃弾を避けただと……!?」

大佐「取り押さえろ!」

部下A「は、はっ!!」ダッ

ティリエ「……んふふ」

トリックホール <パカッ

部下A「うお!?」ズボッ

ベアトラップ <ガキンッ!

部下B「痛えっ!!」ガキッ

ティリエ「おお、引っかかった引っかかった。みんなー、出てきていいぞ~?」

 ガサッ

明石「……いよいよね」

朝潮「今こそ年貢の納め時です」

霞「覚悟なさい……!」

 ザザァッ

電「逃げられるとは思わないでください」

敷波「はーあ、会いたくなかったなー」

由良「……そう、ね」

大佐「……!」

部下A「く、先回りされていたのか!」

部下B「お前ら、そこをどけ!」

朝潮「いいえ、どきません」

大佐「提督の指示か」

朝潮「見届けに来ました」

大佐「見届け?」

朝潮「はい。あなたがたには正義の鉄槌が下ります。だから見届けるんです、あなたがたの最期を」

大佐「貴様……!!」チャキッ

 パンパンパンッ

朝潮「きゃっ!?」グイッ

霞「朝潮!?」

リンダ「あっぶないとこやったなあ、セーフセーフ!」

朝潮「リ、リンダさん!?」

リンダ「うち、球筋読むんは得意なんやで?」ニカッ

朝潮「だ、大丈夫ですよ、あんな銃弾、艦娘には通用しません!」

リンダ「せやったらあいつも最初っから発砲せえへんちゃう? ただのタマやないで、あれは」

朝潮「あ……!」

リンダ「や~な予感がするでぇ……!」

今回はここまで。

次回、 FF。

ちょっとだけネタバレすると、五月雨と北上のキーワードになります。

影牢TGサービス終了まであと十数時間。切ねえ……。
こちらはもうしばらく(?)書かせて戴きます。

それでは続きです。

大佐「……っ! さっきからお前らは何なんだ!」ギリッ

大佐「俺の計画を邪魔する貴様らは、何者だ!!」

???「そこまでだ悪党どもぉ!!」

リンダ「お、その声はヨーコやな」

朝潮「ヨーコ?」

リンダ「うん、メガヨーヨーのメディウムや」

ヨーコ「正義のヒーロー、メディウム戦隊メディピンク! ここに参っ上ぉう!!」ビシィィ

ヨーコ「私利私欲のために悪事を働き! 司令を亡き者にしようとする悪党どもめ!」バッ

ヨーコ「あたしの必殺メガヨーヨーがまとめてぶっ飛ばぁす!!」ズバァァァン!!

朝潮「恰好いい……!」

電「恰好いいのです!」

霞(あの二人は好きそうね、ああいうの)

ヨーコ「くらえ! 必殺メガヨーヨー!!」バッ ビュビュンッ

大佐「うお!?」バッ

ヨーコ「今だティリエッ!」

ティリエ「ごぉろごろごろごろぉ!」

ゴウモンシャリン <ゴロゴロゴロゴロ…

大佐「ぎゃあっ!?」グシャッ

大佐を巻き込んだゴウモンシャリン <ゴロゴロゴロゴロ… ウワァァァァ…

部下A「大佐殿!?」

部下B「き、貴様らああ!」

クレーン <ガキンッ

部下A「うわあああ!?」チュウヅリー

部下B「Aっ! おい明石っ! それはお前のクレーンだろう! とっとと離せ!」

霞「はぁ? よく見なさいよ、別物でしょ?」

部下A「か、艦娘が、俺たちにこんな真似をして、いいと思ってるのか!」ジタバタ

リンダ「こんな真似いうてもなあ。この子らはなーんもしてへんで?」

タチアナ「その通り。あなた方を罰しているのは魔神様の下僕である私たち、メディウムです」スッ

部下B「はああ!? いきなり出てきて何を言ってんだ貴様は!」

部下A「だとしてもだ! 艦娘が俺たちを助けないとはどういうことだ!!」

明石「助ける?」

部下B「そうだ! 艦娘の存在意義は人間のために戦うことだ! それを、得体のしれない連中に味方するか!」

由良「よく言うわ。私たちの提督を殺そうとしてるくせに」

部下A「な、なんのことだ!!」

朝潮「しらを切っても構いません。ただ、私たちにはあなたがたを許さない理由があります」

部下B「どういうことだ……!?」

ザァァァ…

千歳「みんな! 無事!?」

五十鈴「明石! 急患よ! 診てもらえる!?」

弥生「すみません……私はあとでいいので、名取さんを」

部下B「! お、お前ら、戻ってきたのか……っ!」

電「……どういう意味ですか?」ジロリ

霰「この二人は、泊地棲姫をこの島におびき出す、囮にされたの」

弥生「……司令官。あれは、どういうことなんですか」

敷波「え、ちょっと、こっちの二人、こいつの部下なの!?」ジロリ

五十鈴「へえ……よくも名取を、こんな目にあわせてくれたわね」ジロリ

由良「……ますます、許せない」ジロリ

霰「……怒ってる?」

弥生「……うん、すごく怒ってる」

五月雨「ねえ電ちゃん、もしかして……部下Bを知ってるの?」

電「はい、知っているのです」

部下B「!?」

電「電は、この人の初期艦だったのです」

部下B「!!??」

弥生「そ、それっていったい……!」

五十鈴「そ、そういえば由良、あなた、大破進軍してこの島に流れ着いたって言ってたわよね」

由良「ええ、この電ちゃんと一緒に、ね……」

名取「……!」

敷波「で、あたしはそれを追えって叩き出されたんだよね。ま、覚えてないだろうけど!」フンッ

部下B「い、い、生きて、いたのか……」

電「……なのです」ハイライトオフ

部下B「……」

部下B「……」

電「あなたは、まだ大破した艦娘を進軍させてるのですか? あれほど電がお願いしても、聞いてくれなかったのはなぜなのです?」

敷波「……電はずっとあんたを諌めてきてたのに」ハイライトオフ

由良「あなた、これまでいったい何隻沈めて来たの?」ハイライトオフ

部下B「……お、俺は、悪くないぞ! 悪いのは、こんな任務を与えてくる、上の連中だ……!」

部下B「そうだ! 悪いのは全部海軍だ! 今回の作戦だって、大佐の発案なんだからな!」

敷波「あんただって海軍じゃんか」

由良「そのセリフ、大佐の前で言ってみなさいよ」

名取「こんな奴のために、みんな……!」グスッ

弥生「初霜さん……!」ギッ

電「……残念、なのです」

メガヨーヨー <ギュィィィィイイイン

部下B「ぎゃあああ!?」ゴシカァン ドボーン

由良「さ、みんなこっちに避難して」

名取「……?」

敷波「……待たせて、ごめんね」

マリッサ「ええ、待ってたわぁぁぁ!!」

クラーケン <ザバアアア! ギュルギュオォォオオ!!

部下B「ひ、ひいいい!? な、なんだこいガボッ、ゴボゴロ……ッ!!」ギュチッ ギュルルルルッ

部下B「ひ、ひいいい!? な、なんだこいガボッ、ゴボゴロ……ッ!!」ギュチッ ギュルルルル

名取「な、な、なにあれ……!?」ガタガタ

五十鈴「大丈夫よ、こっちにはこないわ」ギュ

弥生「……怖い」カタカタ

由良「ほら、こっちにおいで、ね?」ギュ ポンポン

 タ、タスケゴボゴボッ ボキッ ギャアアガボガボ ゴキッ ボキッ ウアアアア… グシャ

五月雨「うわ……」メソラシ

山雲「エグイわね~」

伊8「……水中の出来事も見てたら、夢に見そう」プイス

千歳「電ちゃん、よくあれに耐えたわね……」ブルリ

部下A「……」マッサオ

明石「……」ザッ

部下A「ひ……っ!」ビクッ

霞「さてと、こっちのクズはどうしようか」

朝潮「司令官の指示通り、朝潮たちは何もしなくても良いと思います」

部下A「お、おい! 北上!! お前ら、俺を助けろ!! こいつらを撃て!!」ジタバタ

北上「……あー?」ギロリ

満潮「……北上……さん?」ゾクッ

北上「……なに? まーた、あたしに艦娘撃たせる気なの?」

五月雨「……え?」

盛大にかぶった……。

>>313>>316 に差し替えでお願いします。

電「あなたは、まだ大破した艦娘を進軍させてるのですか? あれほど電がお願いしても、聞いてくれなかったのはなぜなのです?」

敷波「……電はずっとあんたを諌めてきてたのに」ハイライトオフ

由良「あなた、これまでいったい何隻沈めて来たの?」ハイライトオフ

部下B「……お、俺は、悪くないぞ! 悪いのは、こんな任務を与えてくる、上の連中だ……!」

部下B「そうだ! 悪いのは全部海軍だ! 今回の作戦だって、大佐の発案なんだからな!」

敷波「あんただって海軍じゃんか」

由良「そのセリフ、大佐の前で言ってみなさいよ」

名取「こんな奴のために、みんな……!」グスッ

弥生「初霜さん……!」ギッ

電「……残念、なのです」

メガヨーヨー <ギュィィィィイイイン

部下B「ぎゃあああ!?」ゴシカァン ドボーン

由良「さ、みんなこっちに避難して」

名取「……?」

敷波「……待たせて、ごめんね」

マリッサ「ええ、待ってたわぁぁぁ!!」

クラーケン <ザバアアア! ギュルギュオォォオオ!!

北上「……覚えてんでしょー? あんたの指示でさあ……覚えてないとか言わないよねえ?」

部下A「北上!! 今はそんなことはどうでもいい! 早くしろ!!」

北上「いいから答えろよ」グワッ

部下A「……っ!」

満潮「うわ……」ビクビク

霰「北上さん……完全にキレてる」ビクビク

北上「あたしはさあ。友達に、あーゆーことしたくなかったんだよねえ。今だから言うけど、原因はてめーだったんじゃん?」

満潮「き、北上さ……っ!? て、てめーって……!」オロオロ

北上「ああ、もう取り繕うの嫌になってさー。今、すごい顔してるっしょ、あたし」ギラッ

北上「ほーら提督、覚えてんでしょー? てめーが甲板から投げ捨てたんだよ? 朝潮と、霞と、明石をさあ……!」

北上「よりにもよって、あんときと同じ面子じゃん。また、撃てって? てめーのために? ざけてんの? あぁ?」

部下A「……し、知るかっ! いいから早くこの反乱分子どもを始末しろ!」

五月雨「ふざけないで!!」

部下A「!?」

五月雨「私たちの力は、そんなことのために使うものじゃありません!! 私たちの力は、誰かを守るためにあるんです!!」

部下A「……余所者の駆逐艦風情が、黙ってろ!」チッ

五月雨「黙りません! 仲間を撃つってことがどういうことか、わかっていないあなたは絶対間違ってます!」

千歳「やめなさい五月雨。こいつらは提督を殺そうとしてるのよ。人でなしに人の道を説いたって無駄よ」

北上「……」ギリッ

明石「それに、大丈夫ですよ五月雨さん。北上さんは、友達を沈めたりしてませんから」

五月雨「え?」

明石「ね、北上さん」ニコ

北上「……へ?」

明石「試製四連装魚雷、明北丁型(めいほくていがた)」

北上「……」

明石「魚雷の開発、一緒にしましたよね。威力や爆風範囲、発射速度とか研究して、いいもの作ろうって」

明石「甲、乙、丙と失敗して、その中でたまたまできた試作品。爆風はすごいけど、威力がさっぱりの失敗作」

北上「……」

明石「あのとき使ったの、その魚雷ですよね、北上さん」

霞「まさか、あのときの……」

朝潮「北上さん!?」

北上「……」

北上「……あー……なんてーの? 目にゴミが入って大変なんですけど?」プルプル

北上「なん、だよう……生きてたら生きてたって連絡くらい寄越してもいいじゃんよう」グシグシ

部下A「……お、おまえら、俺を謀ってたのか!」

朝潮「謀る? よくもあなたがそんなことを言えますね!」キッ

霞「あの2年前の横領事件! 忘れたとは言わせないわ!」

満潮「……ちょっと、その事件って、明石さんが犯人で共犯に駆逐艦が二人ってやつじゃないでしょうね」

霞「そのまさかよ。その艦娘が私たち。多分、姉さんたちは私たちと入れ替わりで入ってきたってとこかしら?」

朝潮「明石さんは私たちを司令官よりもよく面倒を見てくださいました。その明石さんに、司令官は私たちを解体すると脅迫していたんです」

明石「私が不正の片棒を担がされたのは事実です。この男の不正を証言するつもりでいましたが……」

霞「それを公表する前に、こいつがやっていた悪事を全部あたしたちにおっかぶせたのよ! ありもしない罪まででっち上げて!」

朝潮「告発する直前に罪をでっち上げられ、手足を拘束され、猿轡までされて海へ捨てられたときの、あの無力感……!!」

霞「おまけに、明石さんと仲が良かった北上さんに魚雷を撃たせるなんて思いもしなかったわ!」

五月雨「……許せません!」キッ

朝潮「はい! 断じて、許せません!!」

部下A「ふざけるな! お前らが人間を許すも許さねえもねえ!!」

部下A「だいたい、あれは横領じゃない! すべて必要なことだったんだ!」

部下A「戦争を終わらせるためには、金と力がいる! これから俺たちが海軍を仕切るための、必要悪ってやつだ!」

北上「……あのさ。じゃあなんで、てめーはこの鎮守府の提督と、中将を殺害する計画を立ててんだよ」ピラッ

部下A「そ、それは! 処分したはずだぞ!」

北上「あたしはさ。これの真偽を確かめたくて、ここへ来たんだよね……」

満潮「そうしたら、泊地棲姫のところに突撃させられた弥生や名取さんがいた」

霰「それに横領事件のことを知ってる明石さんたちもいて……千歳さんも『そう』言ってた」

北上「ここの提督はどんな奴か知んないけどさ、明石匿っててもらってたし? で、てめーも中将にはお世話になったよねえ?」

五月雨「ここにいる人たちを、そうやってみんな……口封じしようとしたんですね?」フルフル

北上「これが必要悪? やってられっか、ってーの」ジャキ

部下A「……!」

明石「北上さん、その必要はありませんよ」ニコ

アーニャ「うん! あたしたちがやっちゃうよーー!」

クレーン <ギュワァァァァァァ

部下A「!?」

明石「すぐに、終わりますから」

部下A「うわあああああああ!?」ギュイイイイイン

クレーン <ポイッ

部下A「ぐえっ」ボヨンッ

部下A「な、なんだ、ゴムボートの上に……?」

リンダ「お仕置きの時間やで♪」

ローリングボム <コロン

部下A「ひ!?」

ローリングボム <ボカーーン

部下A「ぎゃああああ!!」

イーファ「やっとぼくたちの……」

ウーナ「出番だな!」

スパイクボール <ヴンッ ヒュウウウウ

部下A「が」グシャ

ヘルファイアー <メラメラメラ…ゴォォォォ!

部下A「」ボワァッッ

霰「……なに、これ」ボーゼン

満潮「爆弾が転がって、棘付き鉄球が降ってきて、ゴムボートが大炎上……?」アングリ

弥生「……この仕掛け、明石さんが作ったの……?」

明石「え……私、そういうキャラでしたっけ?」

伊8「鎮守府によってはそう思われてる」

千歳「そうね……そういう明石、余所に結構いるものね。信じてもらえないかも」

明石「ちょっと、ひどいですよそれー! 風評被害です!」プンスカ

北上「は、ははは……そうだね、信じられないことばっかりで、頭が追い付かないよ」

リンダ「信じられへんかったら、うちらが証明すればええやん?」シャッ

タチアナ「ええ、私からご説明させていただきます」

 * 説明後 *

霰「……つまり、この人たちはここの提督の直属の部下」

ヨーコ「司令だね!」

イーファ「ご主人様だよ」

メリンダ「はい、わたくしのご主人様です……///」ポッ

五十鈴「なんで顔を赤くするのよ……」

マリッサ「私は電ちゃんがご主人様でもいいけどぉ~」スリスリペロリ

電「はわわわわ」ゾワゾワッ

満潮「た、タイヘンなのに好かれちゃったわね……」

マリッサ「あらあ、誰がヘンタイですってぇ?」ニタァ

満潮「ヤメテ」シロメ

弥生「そして……艤装にも乗れる、罠の、化身」

山雲「そうよ~」

ノイルース「お邪魔しております」シュッ

満潮(山雲の艤装から似つかわしくないバストサイズのお姉さんが!?)

山雲「満潮姉どうかした~?」ハイライトオフ

満潮「ナンデモナイワヨ」シロメ

敷波「ま、あたしたちも最初はびっくりしたけどさー」

タチアナ「仕えるべき主が一緒なのですから、共闘するのは当然のことです」

アーニャ「海に案内してくれたしさー、いい人たちばっかりだよ!」

千歳「とにかく、あなたたちは休んでて。さあ、第六艦隊は引き続き迎撃よ!」

五月雨「わ、わかりました!」

五十鈴「明石、名取をお願いね!」

伊8「」フリフリ


北上「はーあ、安心したら力が抜けてきたよ~」ダラーン

満潮「で? ここの提督は、そのメディウムに大佐たちの相手をさせているってこと?」

霞「そういうこと。艦娘が人間に危害を与えるのはまずいって判断みたいよ」

満潮「甘いわね……提督が普通そういうところに気を回す? 恩を売る気かしら、うっざいわ」

霞「そうよ、そもそも司令官が捕まったら私たちだってどうなるかわからないのに! 優先順位がわかってないのよあのクズは!」

満潮「余計なお世話もいいとこね、文句言ってやらないと気が済まないわ!」

霞「この作戦が終わったらみっちり説教してやるんだから!」

弥生(一応、ここの司令官を心配してるのかな……)

朝潮「ところで、大佐はどうしたんですか?」

タチアナ「ゴウモンシャリンが魔神様のもとへ運んでいるはずです」

赤城「大佐が、どうと仰いました?」スッ

由良「あ、赤城さん!? どこに行ってたんですか!?」

赤城「島の南端に行っていました。大佐の部下は島の南から脱出する手筈でしたので……ですが」チラリ

大型ゴムボート <シュウウウウ…

赤城「提督准尉は、やはり一矢報いる気になったのですね……」

蒼龍「ね、ねえ、イーファちゃんやウーナちゃんは無事なの!? 誰か知らない?」

加賀「蒼龍、落ち着きなさい」

瑞鶴「でも加賀さん、そういう情報を黙ってる大佐にも問題があると思わないの!?」

加賀「五航戦は黙ってなさい」

瑞鶴「むっかあ! 何よその言い方!」

大鳳「みなさん落ち着いてください、それよりもあれを!」

蒼龍「あ、あのゴムボート! なんでこんなところに!?」

速吸「怪我してる方もたくさんいます!」

満潮「赤城さんたちは、この鎮守府の所属じゃないの?」

敷波「こっちは大佐の鎮守府所属の艦娘だよ。赤城さんは秘書艦だっけ?」

北上「え、じゃあ……あなたがあの『鉄の赤城』?」

大鳳「えっ、なんですかその変な通り名」

北上「あー……残念だけど、悪い意味で有名だよ。何があってもどんな指示でも顔色一つ変えない鉄仮面の女、ってさ」

加賀「……赤城さんがどんな思いで艦隊をまとめているか、知らないくせに……!」ギリッ

赤城「加賀さん、控えてください」

加賀「……っ」

北上(ほんっとに顔色一つ変えないねえ……逆にクールな加賀さんがたじろいでる)

赤城「ところで、蒼龍さんから聞いたのですが、この島には原住民がいるそうですね」

由良「原住民……?」

霰「……そうなの?」

ウーナ「あ! ソウリュウ!」

蒼龍「ああ! ふたりとも、無事だったんだ!」

イーファ「? どうかしたの?」

蒼龍「どうかじゃないよ! 島の南側に行ったらボートがなくなってて、こっちで火柱が上がるし!」

蒼龍「大佐からも連絡がないし、二人が戦いに巻き込まれてないか心配したんだから!」ナミダメ

ウーナ「ウ……スマン」シュン

タチアナ(作戦とはいえ、ゴムボートを勝手に持って行ってしまいましたからね……余計な心配をさせてしまいましたか)

速吸「それより、こちらのお三方がひどい怪我です! 早くドックに入れないと」

赤城「……では速吸さんと蒼龍さんは、怪我人を連れてこの鎮守府のドックへ」

明石「ドックへ!? 危険ではないですか!?」

赤城「ここで放置するより応急処置を行うべきです。その鎮守府の防衛のため、加賀さんは瑞鶴さん、大鳳さんと一緒にこの近辺の深海棲艦の邀撃をお願いします」

赤城「提督准尉の航空部隊では多勢に無勢、物量に押し負けぬよう協力して任務にあたってください」

大鳳「了解しました!」

加賀「……赤城さんはどうする気ですか?」

赤城「……」

赤城「……私は、ここでお別れです」

加賀「赤城さん!?」

赤城「私は、大佐を討ちにいきます。大佐が身内を手にかけようとする増上慢を止められなかったのは、秘書艦である私の責です」

瑞鶴「駄目だよ! 赤城さん、私たちに汚れ仕事が回ってこないように、加賀さんにも冷たくしてきたんでしょ!?」

蒼龍「そうですよ! 今まで誰も大佐を止められなかったのを、赤城さんが自らを犠牲にして、鎮守府をまとめてきたのはみんな知ってます!」

赤城「これは、私のけじめです。誰かがやらなければ……ならば、私がやるべきです」

電「……司令官さんの言う通りだったのです」スッ

由良「電ちゃん!?」

電「電は、司令官さんから赤城さんを説得するように指示されてきたのです」

電「司令官さんは、赤城さんが責任を感じて自分がなんとかしようとするのではないかと、心配していたのです」

電「赤城さんが大佐を殺せば、艦娘そのものの立場が大変なことになります。そうでなくても、赤城さんが幸せになれないのです」

電「だから、思い止まってほしいのです。司令官さんからのお願いなのです」

大鳳「そうですよ赤城さん……! 今からでも遅くないんですから!」

加賀「赤城さん……私たちは、あなたの力になりたいんです。今まで私たちを守ってくれていたあなたを、今度は私たちが助けたい……」

赤城「千載一遇の好機なんです。ここで大佐を討たなければ、艦娘にも、海軍にも、犠牲は増え続けます。私が終止符を打たなければいけません」

加賀「こっちを見てください赤城さん! あなたがいなくなったら、私たちは……いいえ、私は、私を、許せないわ……だから!」ポロポロ

赤城「……加賀さん。あなたがいれば、あの鎮守府を立て直すことは可能だと、私は信じています」ニコ

加賀「やめて……そんなふうに笑わないで!!」ポロポロ

赤城「電さん、どいてください。今の私は、あなたを押しのけてでも進むことに躊躇はしません……!」

加賀「赤城、さん……」

電「……そうですか。仕方がないのです……!」ダキツキッ

赤城「電さん……?」

霞「! ねえ、電の艤装にくっついてるあれって……電気の罠じゃない!?」

朝潮「……ま、まさか!」

電「電の本気を、見るのです!」


電の艤装に組み込まれたスパークロッド <バリバリバリバリバリバリ

赤城「あぎゃぎゃぎゃぎゃ!?」バリバリバリバリ

大鳳「えええ!? 電ちゃんが放電した!?」

速吸「えっ? 何!? なんですかあれ!?」

瑞鶴「電ちゃんマジいなづま!?」

蒼龍「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」

加賀「あ、赤城さぁぁぁぁぁん!?」

スパークロッド <ピタッ

赤城「」コゲッ

電「……はわわわ!? く、黒コゲなのです!? 赤城さん!? 赤城さんっ!」ユサユサ

赤城「」ケホァ

イサラ「あわわわ、す、すんません、ちょい、やりすぎちったッス……」アワアワ

電「い、いや、これは事故というか、ふ、不可抗力なのです! しょうがないのです!?」オロオロ

明石「ととと、とにかくやっちゃったものは仕方ないです! 赤城さんも入渠させましょう! バケツならありますから!」

加賀「わ、私が赤城さんを運びます! 瑞鶴は私の代わりに指揮をお願い! 蒼龍と一緒に後から合流するから!」アタフタ

瑞鶴「え、ええ!? 私!? わ、わかったわ!」

 ギャーギャー

北上「なんだかなー……んあ、霰、肩貸すよー」

霰「……はい……ありがとうございます」

北上「こんなときに、のんきなこと言うけどさあ」

霰「……?」

北上「放電してた電って、ぴか○ゅーみたいだったねえ」ニヘラ

霰(……私が着任したころの……昔の北上さんに、戻った……!)ウルッ


北上「ところでさー、さっきのイカの化け物? なにあれ」

電「クラーケンさんなのです」ハイライトオフ

霰「……え゛」

満潮「ちょっと、それヤバいんじゃないの?」

電「大丈夫なのです。電は昨日からクラーケンさんと遊んでもらっているのです」ピラッ

弥生(ひっ!? 全身に吸盤の跡が!?)

名取「あう……」ガクッ

敷波「ちょっ、名取さん気絶したよ!?」

満潮「やめてやめてやめてそんなもの存在しないわありえないわないないないない」ガタガタガタ

由良「満潮!? しっかりして!?」

霰(2人ほどSAN値チェック失敗してる感……)

北上「へー。焼いたらおいしいかなー」

電「そういうこと言うと喜ぶので、言わないほうがいいのです」

霰(喜ぶんだ……)

加賀「あの……そういう話は後にしてもらえないかしら」ガタガタガタガタ

蒼龍「くらーけんってあれだよね……船の天敵だよね」ブルブルブルブル

霰(加賀さんたちも怖いんだ……)

速吸「しょ、触手ですよね……うわぁ……///」ソワソワモジモジ

霰(!?)

 * 幕間 ドック内 *

北上「ふいー、やっと落ち着けるよー……」チャプーン

明石「本当にすみませんでした、今までなんの連絡もなしに……」

北上「いいっていいってー。それよりさー、ここの五月雨って何かあったの? あたしが明石たちを雷撃したこと、すっごい怒ってたし」

明石「……五月雨さんは、仲間殺しの疑いをかけられてここへ流されたんです」

明石「ある作戦で彼女を含む主力艦隊が全滅して、彼女だけがかろうじて救助部隊に助けられたんですが」

明石「その時にそこの司令官が激高した挙句、彼女が味方を撃ったんだろうとなじられたそうで……」

北上「なにそれ」

明石「彼女、その鎮守府の初期艦だったんです。艦隊が強くなっていったことは司令官と一緒に喜んでいました」

明石「それが、司令官にそんな暴言を浴びせられて、あらぬ罪を着せられて……失望して、ここへ飛ばされてきたんです」

北上「……馬鹿だね、その司令官」

明石「ところがその後、提督の調べで五月雨さんの司令官が、遺書を残して彼女に詫びていたことがわかりまして」

北上「遺書って……なにやってんだよ、もう」

明石「それには、娘同然の部下たちを一度に失ったことは相当にショックだったらしく、その司令官に特攻を決意させたそうです」

明石「五月雨さんを鎮守府の主戦場から遠いここへ強制送還し、その胸の内を悟られないために心無い罵声を浴びせた、と」

北上「……で、特攻かけたってオチかあ」

明石「それならまだ良かったんですが、爆薬を飛行機に積んでいるときに憲兵に捕縛され、激しく抵抗したために射殺されたんですよ」

北上「……」

明石「……」

北上「それさ、五月雨は知ってんの?」

明石「ええ、提督から話を」

北上「……」

明石「……」

北上「……あー、なんつーの?」

明石「無理にフォローしなくていいんですよ」

北上「……そだね。なんも言えないわ」チャプ

今回はここまで。

Friendly Fireというわけです。
そして速吸ちゃんどうしてこうなった。



次回出撃予定

大和、武蔵、金剛、比叡、榛名、霧島。

F(ふたりで)F(ふしだらな)展開だと信じてたのに…

キャラ出しすぎて関係性が全然つかめないぜ

ニコちゃあああん



再開します。

 * 戦闘海域 第一艦隊 *

霧島「敵艦発見! 右舷、1時の方向!」

大和「戦艦大和、推して参ります! 比叡さんは援護をお願いします!」

比叡「はいっ! 気合い、入れて! 援護します!」ドォン

カ級el1「敵戦艦ノ接近ヲ確認」

カ級el2「迎撃用意……バカナ、真上ヲ通ルツモリカ!」

大和「ええ、真上じゃないといけませんもの」
パメラ「ね~」

スローターファン <プカァ

カ級el1「? ナンダアレハ」

スローターファン <ギュオオオオオオオオ

カ級el2「ナ!? 引キ寄セラレル!?」

カ級el1「アノママ近ヅイタラ、刃物ガ……ギャアアア!?」ザクザクザクー

パメラ「どーぉ? 私のスローターファンは? 見とれてると、痛い目見ちゃうわよ?」

比叡「そして! 援護がそろそろ到着です!」

砲弾→メガロック <ヒュウウウウウウ…

 ズドバシャーーーーーーーー

カ級el1「」メシャッ

カ級el2「」グシャッ

パメラ「ちょっとぉ~、高く打ち上げすぎじゃな~い? 波がすごいんだけど」

ミルファ「でも、高ければ高いほどダメージ入るじゃないですか!」

比叡「気合い、入れ過ぎちゃいましたか?」

榛名「いいえ比叡お姉様! 良い波です!」ザァッ

ル級el1「!? クッ、舐メルナ、近ヅキスギダッ!」

コーネリア「馬鹿が……それが狙いだよ!」ガキンガキンガキン

ル級el2「艤装ガ変形シタ……!?」

コーネリア「ほらそこぉぉ!!」

ギルティランス< ジャキィィィィン!!

ル級el×2「グギャァァア!?」ドスドスドス

榛名「その槍の威力は身を以て確認済みです! そして、これがとどめ!」ドンドンドンッ

ル級el1「グアアアアッ!」

ル級el2「零距離砲撃ダト……ッ!」

武蔵「よし、あとはこの武蔵と、カトリーナに任せてもらおう!」ハンマートリダシ

カトリーナ「ぶっとばしてやるぜ! うりゃああ!!」

武蔵「むんっ!」ブォォォン!

ル級el1「」グシャッ

ル級el2「」ゴシャッ

リ級el1「オノレェッ!」ゴォッ

リ級el2「私タチガ沈メテヤルッ!」ゴォッ

金剛「Oh、近づきすぎると危ないデスヨー?」スイー

リ級el1「舐メルナアッ!」ジャキッ

金剛「舐めてなんかいまセーン」ニッ

キャロライン「イエース! 飾ってあげるヨ!」

ニードルフロア <ジャキィィイン

リ級el2「ギャアアア!?」ドスドスドスッ

リ級el1「ナゼ、海ニコンナモノガァァ!?」ザスザスザスッ

霧島「そう……侵入速度、角度、すべて計算通りです」

ルイゼット「せめて苦しまぬよう……神の裁きを!!」

ギロチン <ガラララララッ!

 ドザシュッ

泊地棲姫「……」

武蔵「……さて、そろそろ幕引きと行こうじゃないか、泊地棲姫!」

泊地棲姫「……オ前タチハ、ナニモノダ?」

泊地棲姫「……ソノ『チカラ』……イッタイ何ダトイウノダ」

大和「これは、提督の……仲間の力よ」

泊地棲姫「……仲間? 仲間ダト?」

泊地棲姫「……ダトシタラ、オマエタチハ本当ニ艦娘カ?」

比叡「どういう意味ですか!」

泊地棲姫「オマエタチノ『チカラ』ガ……ナゼ私タチニ似テイルノダ!?」

泊地棲姫「ナゼ、オマエタチガ『悪意』ヤ『苦悩』ヲ感ジ取ルコトガデキルカ、ト訊イテイル」

榛名「……?」

泊地棲姫「マア、イイ……私ガ望ムノハ、コノ鎮守府ノ提督ノ首ダ! ソイツノ艦娘ダトイウノナラ沈メ! ソシテ提督ヲ渡セ!」ジャキッ

ル級「待チナサイ」

泊地棲姫「! 現レタナ裏切リ者……!」

ル級「裏切ルモナニモ、最初カラ私タチハ繋ガリガ薄イデショウ? コンナトキダケ偉イ顔シナイデクレル?」

ル級「ソレニ、私、言ッタワヨネ? ココノ鎮守府ノ提督ハ、アナタノトコロニ出撃シテナイッテ」

霧島「彼女の言う通りです。あなたの塒を襲ったのは、別の鎮守府の艦娘です」

金剛「そして、そいつのお目当てが私の提督の命デース! つまり、あなたは利用されているのデスヨー!」

泊地棲姫「ソウカ……」

泊地棲姫「ダガ、ソノ首謀者モ……アノ島ニイルノダロウ?」ギラッ

金剛「!」

泊地棲姫「ドケ……イイヤ、全員、島ゴト沈ンデモラウゾ……」ゴゴゴゴ

武蔵「フ、交渉は決裂か!」

榛名「ここから先の、勝手は榛名が許しません!」

大和「提督……間に合いませんでしたか……!?」

霧島「もともと無理のあるプランです。ここは力ずくでおかえり願いましょう!!」

 * 北東の砂浜 *

チェルシー「キャプテーーン!」タタタタッ

提督「チェルシーか」

ニコ「どうだった?」

チェルシー「はぁ、はぁ……手筈通り、あいつらを東の浜に転がしてきました!」

チェルシー「もうすぐ大佐だけ、こっちに誘導されてくるはずです!」

提督「……もしかして、あれか?」

ゴウモンシャリン <ガラガラガラガラ…ガシャーーン

大佐「ぐあっ!」ドシャッ

チェルシー「うわっと!? もう来た!?」

大佐「げほ……ぺっ、ぺっ! くそ、なんてざまだ……!」

提督「ニコ、チェルシー、俺の後ろにいろ」

ニコ「うん」

チェルシー「は、はい!」

提督(しくじったな。大佐の場所と次の罠の場所が離れてる……どうやって誘導する?)

ニコ(ここからだと動かせないね。もう数歩、踏み込んでくれれば……!)

大佐「提督。そいつらはなんだ」

提督「……なんだ、とは?」

大佐「しらばっくれるな! そいつと! 浜にいた変な格好の女どもだ!」チャキッ

提督「拳銃……!」

大佐「そいつに案内されて雪玉に巻き込まれた!」

大佐「部下たちが落とし穴にはまったときも、ぬいぐるみみたいなふざけた女がいた!」

大佐「そいつらは何者だ! 答えろ!」

提督(あと、数歩……まだ遠い)

提督「……」ジリ

大佐「動くなあっ!」

 パンパンパンッ

提督「危ねえ!」ドンッ

ニコ「わっ!?」ドサッ

チェルシー「きゃっ!?」ドタッ


 * 指令室 *

龍驤「ええで、海の上はうちらが押してる。なんとか持ち堪えられそうや」

大淀「島の内部はどうですか!?」

鳥海「……司令部の背後でメディウムが大佐の部下2名との戦闘を終了……1名の死亡を確認」

大淀「もう1人は?」

鳥海「……泡に包まれて空に飛ばされました。現在高度七百メートル、なおも上昇中。そのまま風に煽られて島の海域を離脱します」

鳥海「たとえ海の上であろうと、あの高度から落ちれば即死するでしょう。かといって上昇し続けても行きつくところは同じです……」

龍驤「鳥海はお優しいやっちゃな、うちらを殺そうとした相手にも憐れみを覚えとん?」

鳥海「……ええ。敵なんです……同じ海軍なのに、なんでこんな馬鹿なことを」ハァ

大淀「本来なら共闘する相手です。自衛のためとはいえ、躊躇しないと言えば嘘になるでしょう」

大淀「ですが、これもこの鎮守府を守るためです。さ、鳥海さん、残りの敵影の捕捉をお願いします」

鳥海「は、はい! ええと……島の東部海岸線に大佐の部下2名の死亡を確認……」

鳥海「……」

鳥海「……え……」アオザメ

龍驤「鳥海? どないしたん?」

鳥海「北東部の海岸で……大佐が銃を……」

鳥海「司令官さんが……大佐に……」

鳥海「撃たれ、ました……!」

龍驤「……!」

大淀「な!?」

龍驤「あん……のアホ! 鳥海、座標寄越しや! 明石応答せえ!」

鳥海「ポイント483・227! 最寄りの艦娘は……千歳です!」

龍驤「千歳! ポイント483・227、北東の海岸や! 最大戦速!! 明石も行きや!! 速い艦は明石の航行後押しせえ!!」

大淀「私も急行します! ここからなら遠くありません!!」

龍驤「せやったら担架や! その鞄も持って行き!! 薬入っとる!」

大淀「はいっ! 大淀、出撃します!!」

鳥海「……司令官さん……!」ギュッ

龍驤「こうなったら、もううちらには祈ることしかできひん。頼むで……!」

 * 北東の砂浜 *

 ブシュゥッ

提督「ぐ、ぉ……!!」ドシャアッ

ニコ「魔神……様っ!?」ダッ

チェルシー「キャプテン! 嘘でしょ、しっかりして!!」ユサユサ

提督「……ごふ……!」ビチャビチャッ

チェルシー「ひ……!!」

ニコ「そん、な」

大佐「ふ、ふは、ははははは! 今、貴様に撃ったタマは、深海棲艦の死骸から作った銃弾だ!」

大佐「光栄に思え! 貴様が、この俺たちの研究成果に殺される、記念すべき第一号だ! ははははははは!!」

大佐「これを使えば、非力な人間でも、深海棲艦や艦娘に対して十分な殺傷力を期待できる!」

大佐「得体のしれない化け物どもに対抗できる! 俺たちに刃向う奴らを、何者であっても撃ち殺せるのだ!」

大佐「それを、よくも」チャキッ

ニコ「!」

チェルシー「ひっ!」

 カキン

大佐「……よくも……!!」カキンカキン

チェルシー(弾切れ……!)

大佐「よくも貴様なんぞに! 無駄弾を使わせてくれたなああ!!」クワッ

大佐「はー、はー……」

大佐「思い起こせば、貴様が如月を見つけて俺の鎮守府に連れてきたときからだ……あのころから、貴様は俺の邪魔ばかりしてくれたなあ!」

大佐「最初から……最初からこうしていれば良かったのだ。貴様のようにしぶとい奴は、とっとと始末しておけば……!」ザッ

ニコ「……くっ」

大佐「……小娘ども、そいつを置いていけ」ザッ

チェルシー「……こ、来ないで」ジリッ

大佐「そいつは絶対に許さん。殺しても殺し足りん! 頭を踏み砕いて、五体ばらばらにして、海にばら撒いてやる」ザッザッ

チェルシー「き、キャプテンに近寄らないで!」ガタガタ

大佐「ごちゃごちゃ言うな! そいつを渡せぇぇぇ!!」ダッ

 ギュム

チェルシー「だから来るなって言ったのよっ!!」

テツクマデ<バキィィン!!

大佐「あがっ……!?」メキッ

ミュゼ(よくもよくもご主人様を! 思いっきり引っ叩いてやりましたよ! こんなもんじゃ到底足りませんけど!)

大佐「な、なんでこんなところに、こんなもんが……!」バターン

チェルシー「ナイス、ミュゼ! ニコちゃんはキャプテンを頼むよ! 次はあたしだっ! 投錨っ!!」

大佐「く……ふ、ふざけやがっ……」ムクッ

スイングアンカー<ブォォォン!!

大佐「ぎゃあああああ!?」ガシッ

チェルシー(ちっ、刺さんなかったか! なんて運のいい奴! だけど……)

スイングアンカー< ポーイ

大佐「!?」ヒューン

大佐「ぐあっ!?」ドサッ

???「よくも」

大佐「……!?」ゾクッ

???「よくも、よくも」

大佐「だ、誰だ!」

???「よくも私の旦那様を!」

大佐「!?」

???「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも!!」

チェルシー「次に控えてるのはチャペルなんだよね」ストンッ

ミュゼ「そいつへのお仕置きはケイティーに任せます。それよりもご主人様っ!」ダッ

クロエ「こ、これはどういうことですか!? ダンチョー、しっかり!!」

提督「……」

ケイティー「よくもぉぉぉ!!!」

チャペル <ズドォォオオオン!!

大佐「……っぎゃあああ……!?」

大佐「脚が! 俺の脚が……鐘の、下敷きにぃぃぃ!!」

ミュゼ「あーらら、左脚がちぎれて飛んできましたよ。これでもう逃げられないですね~」ザマァ

チェルシー「どうせならもっと派手に悲鳴をあげればいいのに。やっぱり中で反響してるからなあ」ザマァ

ケイティー「ふふふふふ……どうして、そんな醜くて無様な悲鳴をあげられるの?」

ケイティー「あなたが旦那様にした仕打ちに比べれば、些細なこと……いいえ」

ケイティー「私の旦那様を傷付けた罪、殺そうとした罪! 私は許さない! 私はあなたの所業を! 存在を! なにもかもを!」

ケイティー「絶対に、絶対に!」

ケイティー「絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に!」

ケイティー「絶っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ対に!」

ケイティー「 ゆ る さ な い わ 」

大佐「ち、くしょう……出せ、出せぇぇ……! こんなもの、邪魔だぁあ……!」

ケイティー「さ、リンメイさん、どうぞ?」

リンメイ「ワタシが直々に跳ね飛ばしたかったけど……仕方ないね! いくよケイティー!」

メガバズソー< ガランガランガランガラン……

チャペル☆メガバズソー< ガイィィィンンンン!!

大佐「~~~~~~~~!!!」キィーーーーン

大佐「あ、頭がぁ! 耳がぁぁぁ!!」ブシャッ

ケイティー「ふふふふ、うふふふふふふ! まだよ! もっともっと苦しみなさい!」

ケイティー「脚一本がなによ! 鼓膜が破けた程度でなによ!! 心臓と頭以外、全部破裂してしまえば良いのよ……!!」

ケイティー「ただの脳みそと心臓だけの存在になって、死ぬより長く苦しみ続けてしまえばいいわ
!!」

ニコ「チャペル、そこまでだよ。そいつを始末するのは君じゃない」

ケイティー「……あら、ニコ様。あなたはこの男をこの程度で許すんですか?」ヒュンッ

ニコ「許さない。だからこそ、この場では殺さない。魔神様の指示通りに始末する。いいね?」

ニコ「スプリングフロア」

スプリングフロア< バインッ!

大佐「ぎゃああ!!」ビョイーン!

ニコ「さ、生きて地獄に行ってもらう時間だよ。泊地棲姫のところまで、案内してあげよう。ヒューマンキャノン」

ヒューマンキャノン< ズオッ

大佐「ひ!? な、なんだこいつは!!」スッポリ

ヴィクトリカ「何って、大砲じゃないか。弾はお前だけどな?」

大佐「や、やめろ! 俺は怪我をしてるんだぞ!? 病院、いや、医者を呼べ! 医者を……!」

ケイティー「あらあら、重症ですわ。こんな状況で医者ですって。後は棺桶に入るだけなのに」

ニコ「優しいねケイティーは。棺桶なんて上等なもの、こいつには相応しくないよ」

クロエ「それでは、お薬代わりにこちらをどうぞ!」ポイッ

大佐「!? な、なんだこいつは」ガシッ

クロエ「あなたの部下が持ってきた爆弾ですよ? 冥途の土産にお持ち帰り下さい!」

ヴィクトリカ「さあ、この島から出て逝きな!!」

大佐「ひ、やめ」

ニコ「愚かな人間に、恐怖と、苦痛と、絶望を」

ヴィクトリカ「発っ射ぁあ!」

ヒューマンキャノン< ドゴォォォォンン!!

大佐「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!」ギューーーーン

 ドォォォ……ン

ニコ「これで、ぼくたちの仕事は終わり……だけど」

ニコ「魔神様……!」

提督「ニ、コ……やっ、たか……?」ドクドク…

ニコ「うん……やったよ、魔神様の、望みどおりに……!」

提督「……そ、うか……ざま、あ、みやがれ、ってん……だ……くそが……!」

ニコ「ミュゼ、魔神様の様子は!?」

ミュゼ「鉄のような弾で撃たれてます……弾は3発。額を掠めたのが一発、お腹を貫通していったのが一発……」

ミュゼ「もう一発は、右の胸に……!」

ニコ「そんな」

提督「……、……」ゼヒュー ゼヒュー

ケイティー「嘘でしょ……ミュゼ、何かの間違いでしょう?」

ミュゼ「……」グスッ

ケイティー「早くフローラを呼ぶのよ……ああ、嘘、嘘よ……はぁ、はぁ、嘘よ嘘よ……あぁぁ」クラッ ドサッ

ヴィクトリカ「うお!? ケイティーしっかりしろ!」

リンメイ「ここから魔力槽まで運ぶにしても、遠すぎよ……なんとかならないの!!」

ヴィクトリカ「くそ、やっぱり反対すりゃ良かったんだ! キャプテン自ら囮になるなんていう作戦!!」

ニコ「それは駄目だよ。魔神様が、そうしないといけないって言ったんだから」

ヴィクトリカ「わかってる! ……わかってる、けどよぉ」

ニコ「魔神様……まだ、出会って数日しか経ってないじゃないか」

ニコ「ぼくたちは、君と共に過ごせる日を、何十年も待っていたんだよ」

ニコ「それなのに、またぼくたちに復活の時まで待てと言うの? そんなの、ないよ……! 魔神様……!」

提督「……」ゲフッ

チェルシー「なんで……せっかく海のある場所で魔神様と一緒に過ごせると思ったのに!」

チェルシー「艦娘とも、知り合えたばかりでお別れじゃ……」ポロポロ

ニコ「そうだよ。みんな、君を待っているんだよ……」

提督「……」ゼェ ゼェ

提督「」ス…ゥ

ニコ「魔神様……?」

ミュゼ「う、うそでしょ……?」

ニコ「魔神様ーーーーーーーーーー!!」

今回はここまで。

>>329
書きたいシチュエーションが多すぎてキャラが増えて
ぐだぐだになってしまったのは、我ながらまずかったなあ、と。
でも書かせて戴きました。




次回、 怨嗟。

続きです。

 * 戦闘海域 第一艦隊 *

 ヒュゥゥゥゥウウウウウウ…

金剛「?」

 バシャアァァアアアン!

泊地棲姫「ナンダ!?」

武蔵「島からなにか飛んできたぞ!?」

 ドカァァァァァン!

榛名「こ、今度はなんですか!?」

霧島「爆弾でも撃ったんでしょうか……」

ル級「アレハ……」ザァッ

比叡「えっ、ちょっと、どこ行くんですか!?」

霧島「! あの水しぶき……!」キッ

大和「まさか」

ル級「面白イモン、見ツケタヨ」グイ

大佐「ひ、ひぃい!?」ザバァ

ル級「オイ、オ前ハドウシテココニイル? 言エ」

大佐「お、おい! 大和! 早く助けてくれ!」

ル級「無視カ、イイ度胸ダ」ジャキ

大佐「ひっ、お、俺は、ば、爆弾を持たされてここまで飛ばされたんだ! 爆弾が手からすっぽ抜けて助かったんだ! 被害者だぞ!」

ル級「被害者? 面白イコトヲ言ウワネ」

泊地棲姫「寄越セ」グイ

大佐「ひぃいぃいい!?」

泊地棲姫「貴様カ? 私ノ塒ヲ攻撃シタノハ」

大佐「違う! 違う違う、ここここいつらだ! こいつらの提督だ!!」

泊地棲姫「本当カ?」ジロ

大和武蔵金剛比叡榛名霧島「……」ゴゴゴゴゴゴ

泊地棲姫「!?」ビク

大佐「!?」ビクッ

ル級「チョッ、チョットドウシタノ、アナタタチ!?」

武蔵「たった今、最悪の報せが入った」

武蔵「我らの提督が殺された」

ル級「ナンデスッテ……!?」

武蔵「その男に、な」ギロッ

大佐「ひ、ひぃいいいいい!」ビクビクッ

泊地棲姫「!?」ゾクッ

泊地棲姫(ナ、ナンダコノ悪寒ハ! コノ私ガ、恐怖シテイルダト!?)


 * 北東の砂浜 *

千歳「提督!」

フローラ「魔神様!」シュッ

大淀「提督!!」

ニコ「……」

ソニア「うわぁぁん、千歳お姉ちゃあああん!」ダキツキッ

千歳「ちょ、ちょっと!? ふ、フローラ、大淀、急いで!」

大淀「はいっ!」ダッ

フローラ「魔神様……」

大淀「……」

フローラ「……」フルフル

大淀「……」

千歳「……」

フローラ「……」グスッ

大淀「……」ポロ

千歳「……ちょっと、どうして泣いてるのよ二人とも」

大淀「脈が、とれないと……」ポロ

千歳「……」

大淀「……」ポロポロポロ

ヴィクトリカ「ああ、千歳さんか。丁度いいや、酒、持ってないか?」

千歳「……持ってきてるわけないじゃない、何言ってるのよこんなときに」

ヴィクトリカ「……呑まねえとやってられねえんだ。頼むよ」

千歳「どうせ呑んでもおいしくなんかないでしょ。そういうお酒、私はすすめたくないの」

千歳「それに、まだ敵が残っているのよ。ヤケ酒煽って戦える相手じゃないでしょう」

ヴィクトリカ「……まだ、やる気なのかい?」

千歳「私はこの人の部下の艦娘よ。これ以上あいつらに、提督と一緒に過ごしたこの島を、好きにさせるのは我慢できないわ」

ヴィクトリカ「……ハハ、あんたは強えなあ……しゃあねえ、もうひと暴れしてやるか」

千歳「……?」

千歳「……ねえ、フローラ?」

フローラ「は、はい!?」

千歳「それ、なにかしら……ほら、提督の胸で光ってるそれ」

フローラ「? これは……」

大淀「……?」グス

ミュゼ「丁度ご主人様が撃たれたところでは……?」

チェルシー「もしかして、弾が光ってる!?」

ニコ「どういうこと……?」

 ゾワ

ニコ「魔力の……奔流!?」

 メキッ

ニコ「魔神様の体から……魔力が!? 何かが、魔神様を包んでる……!?」

ヴィクトリカ「なんだこれ……鎧みたいだぞ?」

大淀「これは……深海棲艦の外装!?」

 メキメキ…パキメキパキパキパキッ

リンメイ「これ、どゆことよ! 師父、生き返るか!?」

ミュゼ「生き返るって感じじゃないですよ!? むしろ深海棲艦に……!?」

ソニア「そんな、魔神様は深海棲艦になっちゃうの!?」

千歳「……いったい、どうなってしまうの」ヘタッ

提督?「……」ムクリ

提督?「…………」キョロ キョロ…

提督?「……」ギロリ

 * 戦闘海域 第一艦隊 *

古鷹「第三艦隊、ただいま合流しました!」

五十鈴「千歳さんは島に帰還してるけど、第六艦隊4隻も合流。他の艦隊もじきにここへ集まるわ……!」

那智「第七艦隊も合流だ……!」


泊地棲姫「ナンダ……! コノ不穏ナ空気ハナンダ……!」ピリピリッ

泊地棲姫「艦娘ドモカラ……マルデ姫級ヤ、ソレ以上ノ気配ヲ感ジルノハ、ナゼダ……!」


 ザザザザァァァァ……!

泊地棲姫「コ、今度ハナンダ!? ナンノ音ダ!?」

 チリチリチリッ

泊地棲姫「! リ級カラノ通信……!?」

リ級fl『姫様! 多数ノ深海棲艦ガ、艦娘ニ怯エテ逃ゲ出シテイマス!』

泊地棲姫「!?」

リ級fl『艦娘ガ只事デハナイ殺気ヲハナッテイテ……皆浮キ足立ッテイマス!』

リ級fl『……統制ガ取ズ、戦線ヲ保テマセン! 私タチモ撤退シマス! 姫様モ早ク!!』

泊地棲姫「!?!?」

泊地棲姫(トイウコトハ、サッキノ音ハ撤退スル深海棲艦ノ波ノ音、トイウコトカ!?)

泊地棲姫「……撤、退」キョロ

 ジーッ(泊地棲姫と大佐の周りを取り囲み、黒いオーラを放つ艦娘たち40隻)

大佐「」ガタガタガタガタ

泊地棲姫「ヒィィィィ!!?」ビクーーーッ

武蔵「……なあ、泊地棲姫よ」ニコヤカー

泊地棲姫「ナ、ナンダ!?」ビクッ

大佐「」ビクビクビク

武蔵「実はな? 我々は、その男を貴様の好きにさせるつもりだったのだ」

霧島「その人があなたがたに喧嘩を吹っ掛けた張本人です。なので、彼自身に落とし前をつけてもらうつもりでした」

大和「ですが、私たちも気が変わりました。『それ』を、こちらへお渡しください」

大佐「そ、そうだ大和、お前は提督の下にいるより俺の部下に」


大和「黙れや、くそが」ギロッ


大佐「」チビリ

泊地棲姫「」

摩耶(うは、おっかねえ)

武蔵(大和は相変わらず提督のまねが上手だなあ)

不知火(この艦隊はブチ切れると司令そっくりになる人が多すぎます)

大和「私は提督の艦娘です。その提督を殺した輩を、私が許すわけがないでしょう?」

大和&パメラ「だから、私たちが、八つ裂きにして差し上げます」

摩耶&クリスティーナ「その前にぶっ飛ばしてやるよ」

最上&エミル「僕もぶっとばしてあげたいね」

金剛&キャロライン「私もブッ刺してあげマース」

如月&ナンシー「サンドイッチにしましょうよ金剛さん」

朝雲&ヴェロニカ「その前に磔刑よ」

伊8&ミーシャ「逆さづりにして」

川内&オボロ「引き裂いて」

榛名&コーネリア「串刺しにして」

隼鷹&ブリジット「蜂の巣にして」

吹雪&イブキ「火あぶりにして」

島風&リサーナ「真っ二つにして」

霧島&ルイゼット「最後は首を切り落としてあげましょう」

不知火&ディニエイル「それとも氷漬けにして粉々に砕いてあげましょうか」

那珂&アカネ「それとも木端微塵にしてあげようか?」

比叡&ミルファ「それともすり潰してミンチにしましょうか」

朧&シルヴィア「そのまま鮫の餌にしてあげてもいいですよ?」

那智「いいなあ、メディウムを載せてもらったメンバーは……」

五月雨「私たちにも、敵をとらせてください……!」

陸奥「当然よ……全員で、やりましょ?」ニコー

大佐「」ガタガタガタ

泊地棲姫「」シロメ

泊地棲姫「オ、オ、オイ、ル級、ナントカ……ッ!?」

ル級→ル級elite「……」

泊地棲姫(ナンカパワーアップシテルー!?)ビクーッ

泊地棲姫「オ、オイ、ル級、オマエ、アノ提督ヲ、ソンナニ気ニ入ッテイタノカ!?」

ル級el「……ソウ、ネ。アノ提督ハ、敵デアル人間ナノニ、私ノ苦悩ヲ理解シヨウト話ヲ聞イテクレタ」

ル級el「単純ニ、ウレシカッタワ、彼ノ存在ガ」

ル級el「ソウイウ、私ガ信ジヨウトシテイタ人間ヲ、別ノ人間ノツマラナイ理由デ殺サレテ……」ハイライトオフ

ル級el「マア、怒ラナイワケガ、ナイワヨネ?」ゴゴゴゴゴゴ

泊地棲姫「」シロメ

泊地棲姫(ナンナノコノ鎮守府……モウ帰リタイ)グスン

泊地棲姫(私ノ宝物ヲ壊サレタノハ癪ダケド……場ヲ離脱スルシカナイワ)

???「おい、お前ら何やってんだ」

艦娘たち「「「えっ?」」」クルリ

泊地棲姫「ダ、誰ダ!?」

白露「え!? 深海棲艦じゃないの!?」

深海棲艦?「ったく、揃いも揃って死んだ魚みたいな目をしやがって……」

川内「あれ? ……なんだろこの懐かしい感じ」

暁「暁もよく知ってる気が……ね、ねえ、ル級さん知ってる人?」

ル級el「知ラナイワ……確カニ同族ッポイケド、微妙ニ違ウワヨ。ツノノカタチトカ」

金剛「もしや、その声は……テートク……?」

古鷹「……ま、まさか……で、でも、水上に立ってますし」

深海棲艦?「まあ、見た目がだいぶ変わっちまってるからなあ……魔物だよこれじゃあ」

如月「や、やっぱりその声、提督よ!?」

ナンシー「あ~! もしかして~!」

メディウムたち「「「魔神様!?」」」

深海棲艦?→魔神提督「あ? ああ、これがマジンってのか。ツノやらキバやらついてて変な感じなんだが」

キャロライン「ダーリン、人間から魔神に転職しタノ!?」キャー!

比叡「それ、転職って言いませんよ!? っていうか、人間やめちゃったんですか提督!?」パニック

イブキ「ってえか、これ、深海棲艦も混ざってないか!?」

ニコをおんぶした長門「お前たち、無事か!」ザァァァァァ

ニコ「魔神様! 動いて大丈夫なの!?」

加古「なあなあ、こいつはいったいどういうことなんだ?」

長門「私が聞きたい! 提督が撃たれたと聞いて急いで駆け付けたら、こんな姿になって海の上を滑走して行ったんだぞ!?」

ニコ「とにかく、魔神様は確かに撃たれて一度死んだんだ。でも、それでなぜか魔神様として生き返ったんだよ」

陸奥「魔神って海の上に立っていられるものなの?」

ニーナ「いえ、そういう話は聞いたことがありません……」

ニコ「それがどうも、伝承に伝わる魔神様の姿に深海棲艦の要素も混ざってるみたいなんだ」

ディニエイル「そうですね……羊の角や鋭い犬歯は伝承にあるとおりです」

摩耶「そこに深海棲艦のガワが張り付いたって感じか?」

ル級el「言ワレテミレバ、チ級カヘ級ミタイナ外殻ネ」

魔神提督「多分、これの影響だな」ウワギヌギヌギ

那珂「きゃっ!」メカクシ

陸奥「ちょっと!?」メカクシ

榛名「きゃあ……っ!」メカクシ チラッ

金剛「Oh……ハッ、キャー!」メカクシ チラッ

島風「金剛さん恥ずかしがるのおっそーい!」

ニコ「ちょっと長門、早く魔神様の正面に回ってよ」

長門「えっ、ち、ちょっと待ってくれ」カオマッカ

ヴェロニカ「朝雲、あなたもよ。早くなさい」

オボロ「せ、川内殿、実はそれがしも少し興味が……」

摩耶「よーしよし、お前らちょっと下がってろ。ここはアタシが前に出るから」ドキドキ

パメラ「こらこら、あなたたちお触り禁止よー?」

ルイゼット「むしろみなさんあとでお説教ですからね」ギロリ

武蔵「ったく、相棒、脱ぐときは脱ぐと言ってくれ、恥ずかしいぞ」カァ

ミルファ「えっ」

カトリーナ「マジで?」

武蔵「なんだその反応は」ムス

リサーナ(もしかしてお子様しかいないのこの鎮守府!?)

暁「お、お子様ゆーな!」

神通(暁ちゃんが心を読んでる!?)

ゼシール(お前も読むなよ……)

泊地棲姫(ナニコノ疎外感)

大佐「俺がこんななのに、何をいちゃついてんだよこいつら……」ヒソッ

全員「「あぁ!?」」ギロリ

大佐「」

泊地棲姫(雉モ鳴カズバ撃タレマイニ……)

ノイルース「それより魔神様、その右胸のそれ……!」

吹雪「銃弾じゃないですか!? 胸にめり込んでますよ!?」

魔神提督「おう、こいつで撃たれて一遍死んだんだ」

ディニエイル「さらっと言うなよ死んだとか……」

魔神提督「まあこうやって外に押し出されてるし、すぐ取れるだろうから心配すんな」

ル級el「! ソノ銃弾、モシカシテ……!」

魔神提督「そこにいる大佐が、深海棲艦の遺骸から作ったらしい」

泊地棲姫「ナンダト……?」ギリッ

ル級elite→ル級flagship「ヘエ……!」ギロリ

大佐「」

利根「またル級がパワーアップしておる……」

那珂「こういう理由でパワーアップしちゃうの、那珂ちゃんは感心しないなー」

魔神提督「まったくだ。深海棲艦の勢力が衰えないのは、大佐みたいな人間が原因じゃねーかと思っちまうわ」

魔神提督「まあとにかく、この弾丸のおかげで深海棲艦の力も借りられたみたいで、海上を航行できた。いい経験だ」

魔神提督「で、泊地棲姫に攻撃を仕掛けたのは俺を殺すためだが、ついでにこの弾丸が艦娘やお前らに通用するか試す気だったんだろうな」

泊地棲姫「貴様ァ……ソンナコトノタメニ、私タチヲ……!」ギリギリギリ

大佐「グェェェェ!」タップタップ

魔神提督「おお、待て待て、気持ちはわかるがそいつにはまだ利用価値がある」スッ

泊地棲姫「!」ビク

魔神提督「泊地棲姫……だったな? 悪いな、こんなくだらねえ茶番に巻き込んじまって」

魔神提督「お前の軍勢はすべて撤退した。俺たちとしちゃあ、これ以上戦う理由はない。こいつは好きにしていいから、お前も引き揚げて欲しい」

魔神提督「成り行き上、お前んとこの艦も結構沈めちまったけど、そっちも艦娘沈めてるし、これはお互い様ってことでお手打ちにしようぜ」

泊地棲姫「」コクコク

魔神提督「そうか、ありがたい。応じてもらえると助かる」ニッ

泊地棲姫「」

魔神提督「さて、大佐? 殺した相手が化け物になって戻ってきたが、気分はどうだい?」ニタァ

大佐「」ビクッ

魔神提督「見な。さっきちぎれたお前の左足だ。こいつをな……神通!」

神通「はい」

魔神提督「号令かけろ」

神通「! ……了解しました。全艦隊整列! 全砲門、撃ち方用意!」

艦娘「」ザザザザッ ジャキジャキジャキッ

魔神提督「よし」ポーイ

神通「……撃て!!」


 ズドドドドドガドガドガドンドンドンバリバリバリバリドカーーン!!


ル級fl(……オーバーキル、ダワ)アゼン

魔神提督「神通、ご苦労」

神通「……はっ」ケイレイ

魔神提督「さて大佐。本来ならお前があの足になってたわけだが……まあ、俺たちの分はあれで勘弁してやるぜ」

大佐「」ガタガタガタ

魔神提督「で、今度は深海棲艦の分。ほれ、口開けろ」グイ

大佐「!?」ガパ

魔神提督「こいつを、飲み込め」ズプ ポイッ

大佐「!?」ゴクン

雲龍「あなたの体に埋まってた深海棲艦の弾丸を飲み込ませて、どうするの?」

魔神提督「さっきの銃弾、まだ生きてるみたいなんだよ。正確には、俺と一緒に蘇った、っつうかな。俺もこいつも無念だったしさ、共鳴したせい……じゃねえかな?」

魔神提督「ただ、弱った俺の体じゃ完全には復活できねえ。そういうわけで、大佐の体を餌にして育ってもらおうって話だ」

魔神提督「そいつは体を内側からちょっとずつ食って成長する。何日、何か月かかるかわからねえが、それまで死んだり発狂したりせずに、きちんと面倒みろよ?」ニタァ

大佐「」チーン

ル級fl「ネエ、ソンナコトシタラ、泊地棲姫ハコイツヲ殺セナインジャナイノ?」

魔神提督「死んだら死んだで死骸を食って再生するだろ、死なせてもいいさ。どうせならいたぶってから殺してほしいもんだが」ニッ

ル級fl「ソレモソウネエ」ニッ

初春「そ、それより提督、弾を抜いた後の傷口から出血が止まっておらぬぞ!?」

魔神提督「ん? ああ……そういえば、さっきまでそいつと命を分け合ってる状態だったんだな」シュウウ ボロボロボロッ

榛名「提督!? 外殻やツノが崩れて粉々になってますよ!?」

魔神提督→提督「時間切れか……まずいな、そのあとのことを、考え、て、なか……」グラッ

大和「危ない!」ガシッ

コーネリア「まずいぞ! 魔神様が人間に戻っちまった!!」

霧島「大和さんは救護室へ急いで! 私は本部に連絡します!」

大和「はいっ!!」ゴォォォォ!!

長門「大和! 浜に明石と大淀がいる! 応急処置の医療鞄もある! まずはそこへ連れていけ!」

ニコ「魔神様、しっかりして!」

三隈「私たちも行きましょう……あら、モガミン?」

最上「……ねえ、ル級?」

ル級fl「アラ、ナァニ?」

最上「僕たちのこと、心配してくれてたんだね。ありがとう」

ル級fl「私ハ……提督ガ気ニナッタダケヨ」プイ

最上「それで十分だよ」ニコ

三隈「また、一緒にお茶にしましょうね」ニコリ

最上「よし、それじゃ鎮守府に急ごう」ザァッ

三隈「提督、大事ないと良いのですけれど」ザァッ

ル級fl「……フゥ」

ル級fl「……姫?」

泊地棲姫「」ポケー

ル級fl「……オーイ、姫~?」フリフリ

泊地棲姫「」ポケー

ル級fl「……泊地棲姫サ~ン?」ペタペタ

泊地棲姫「」ポケー

ル級fl「……ヨッポド怖カッタノカシラ」タラリ

大佐「グギグゲオゴゲゴゲ」ビキビキビキ

ル級fl「……オマエ、ウルサイ」ゲシッ

今回はここまで。


次回、 帰還。

書きためていた分がなくなったので、
スローペースになります。

では、続きです。

 * 島の北東、砂浜の沖合 *

大淀「提督! 大和さん! はやくこっちへ!」

大和「大淀さん!? 山城さんに千歳さんも!?」

千歳「はやく、提督をこちらの船に!」

蒼龍(船の上)「こっち! こっちだよー!」

長門「こ、この船は!?」

大淀「医療船です。最寄りの鎮守府のX中佐が蒼龍さんの要請で派遣してくださったんですよ」

千歳「私も提督についていくわ、あと二人ほど応援が欲しいんだけど」

如月「それなら私が!」

大和「私も行きます!」

山城「駄目よ。不知火、初春! あなたたちが行きなさい!」

如月「ど、どうして!?」

山城「あなたたちが行っても、ただ心配してやきもきするだけでしょ。辛抱強い不知火や初春の方が適任だわ」

大和「そう、ですね……私も、むこうでお役にたてるかと言えば、そんなことはありません、か」シュン

山城「それに、如月。この島の睦月型はあなただけよ。弥生のそばにいてあげて」

如月「! は、はいっ!」

武蔵「よし、決まりだ。不知火と初春に任せよう。いいな?」

不知火「承知しました」

初春「うむ、任せよ!」

千歳「さあ、提督を担架に!」

大淀「加賀さんたちはどうなさいますか?」

加賀「私は残るわ。赤城さんが心配だから……」

瑞鶴「私も。加賀さんも心配だもん」

速吸「わ、私も残ってお手伝いします!」

大鳳「では、私は蒼龍さんと一緒に行ってきます」

ヒサメ「ふむ、それならば……」ポンッ

ディニエイル「この島を出るのでしたら、私たちは降りたほうが良さそうですね」シュンッ

加賀瑞鶴速吸大鳳「!?!?」

大鳳「ぎ、艤装から人が!?」

ヒサメ「では初春よ、しばしの別れじゃ」ポーン

ディニエイル「魔神様をお願いしますよ、ミス不知火」バッ

瑞鶴「わわっ、こっちに跳んできた!?」

ディニエイル「失礼ですが、陸の上まで載せていただきたく」

ヒサメ「ちいと邪魔させてもらおうぞ?」

瑞鶴「キャッ!?」シュインッ

加賀「え……!?」ポフン

瑞鶴「な、なに!? いまのエルフみたいな人、私の艤装にはいっちゃったの!?」

 ピキッパキパキパキッ

速吸「ず、瑞鶴さん! 弓が!」

瑞鶴「弓が氷に覆われてく……なにこれ、綺麗な装飾……!」

ニコ「驚いたな……能力そのものの相性がいいみたい」

ディニエイル「得物が同じ弓ですから、能力の具現がしやすいようですね」シュンッ

瑞鶴「なにこれ、あなたの能力!?」

ディニエイル「はい。一緒に戦う機会を逃したのは残念です」

加賀「……ということは、私も……?」

ヒサメ「……つい」

加賀「?」

ヒサメ(着物が溶けてほぼ全裸)「あああ、あついのじゃああああ!!」ズボザバーーー

速吸「甲板からびしょ濡れの裸の女性が!?」カァァ

加賀「」コオリノトケタミズザバーーー

ヒサメ「熱うて耐えられぬ、溶けてしまいそうじゃあ! 誰ぞ! ほかの船に移らせてたも!!」ピョーン

山城「わ、私!?」ポフンッ

加賀「……」ビッショリ

速吸「か、加賀さん……」

加賀「瑞鶴。これは一体どういうことかしら」ギロリ

瑞鶴「ちょっ、これは私のせいじゃないでしょ!?」

武蔵「加賀は排熱が悪くて体温高めだからな」

ノイルース「私が乗れば良かったんでしょうか」

イブキ「それかあたしか、ウーナかな」

山城「さ、寒っ!? ぎ、艤装に霜が!? ううう、不幸だわ……!」ガタガタガタ

朧「初春は寒いの平気なんだよね」

吹雪「私、イブキちゃんで良かったかも……」

短いですが、今回はここまで。

次回、 提督代理。

続きです。

 * 数日後、墓場島鎮守府 執務室 *

長門「第二艦隊、旗艦長門、ただ今演習より帰投した。こちらが報告書だ」

赤城「はい、お疲れ様でした。では駆逐艦の子から順に入渠と補給を受けてください」


霞「第三艦隊、遠征から帰還よ!」

潮「資材やバケツはドックに保管してきました」

赤城「はい、ありがとうございます。第二艦隊が戻ってきたばかりですので、一緒に補給を受けてください」ニコ


霧島「赤城さん、明石から今月の資材と食料の使用予測を出してもらいました」

大淀「資材は使いすぎないレベルでの数値にしましたが、何分大所帯になりましたので、食料に関してはご都合いただけると幸いです」

赤城「ええ、ではそちらを考慮して、本営に申請書を提出しておきますね」


タチアナ「失礼いたします。島の地質調査の結果をまとめてまいりました」

ミュゼ「まだまだ未開の地がありますが、極力手を付けない方向で進めてみました!」

マルヤッタ「墓地と農地と花壇の割合も見て欲しいじょ!」

赤城「ありがとうございます。区画整理は明日の打ち合わせで検討しましょう」

チェルシー「副キャップテーン!」

アーニャ「見て見てー! 大っきい魚釣れたよー!」

赤城「マグロですか! 上々ね!」キラキラキラッ

ミーシャ「食堂に置いてきます」ニコー

赤城「お昼ご飯、楽しみにしてますね」ニコニコ


ニコ「お邪魔するよ、赤城」

赤城「あら、ニコさんどうしました?」

ニコ「そろそろ魔神様が戻ってくる時間だから、ここで待たせてもらおうと思ったんだ」

赤城「魔神様……提督のことですね。ええ、1030、もうすぐ到着予定です」

ニコ「この部屋の主だっていうのに、他人にまかせてお休みしてるんだもの、お姉ちゃんが叱ってあげないと」

赤城「ええ、たっぷり説教してあげてください」ニコニコ


初雪「失礼しまーす」ガチャリ

武蔵「赤城提督代理、疲れていないか?」

赤城「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですよ」

吹雪「お茶とお団子持ってきました! ニコさんもどうぞ!」

ニコ「ぼくにも? ありがとう、吹雪」

赤城「ありがとうございます! 加賀さん、お茶だそうですよ」

加賀「やりました」ギュウ

吹雪「……加賀さん、いつまで赤城さんの腰にしがみついてるんですか」

加賀「ここは譲れません」スリスリ

吹雪「まるで提督と金剛さんみたいですね」

初雪「どちらかというと多摩さん……」

武蔵「よっぽど赤城に甘えたかったんだな」

ニコ「魔神様もこのくらいぼくに甘えてくれると嬉しいんだけど」ズズ

吹雪「とても想像できませんね」クスッ

初雪「加賀さん次は『さすがに気分が高揚します』って言うと思う」

加賀「さすがに気分が高揚します……ハッ!?」

初雪「」ドドドドドド

加賀「」ゴゴゴゴゴゴ

赤城「はい、加賀さん、ジョジョごっこはその辺にして。お団子ですよ、はい、あーん」

加賀「あーん」パク

赤城「よくできました」ナデナデ

加賀「///」モグモグ

初雪「軽くあしらわれた……」ズーン

吹雪「……っていうか、加賀さんってこういう方でしたっけ?」

ニコ(ぼくはああいう風にならないようにしよう)

不知火「なんというか、見てはいけないものを見てしまった気がします」シロメ

武蔵「不知火!? 戻ってきたのか!」

不知火「はっ、戻ってきました。私の意識が!」

赤城「あら、不知火さんおかえりなさい。ということは、少尉も戻ってきたのですね?」

不知火「はい、戻ってきましたが……それよりも加賀さんのそのお姿のほうが不知火には衝撃です」

武蔵「待て、赤城。今、少尉と言ったか?」

赤城「はい。提督はこのたび昇進したはずですよ」

扉 <ガチャバーン!

朝潮「司令官が昇進したと聞きました!」

ブリジット「叙勲でありますか!?」

ヴィクトリカ「野郎ども! ファンファーレをならせぇぇ!」

隼鷹「ヒャッハーーー! 祝い酒だぁぁぁぁ!!」

エレノア「祝杯でもいただけるのかしら!」

赤城「お祭り騒ぎもかまいませんが、提督は忙しくなりますよ?」ニコー

吹雪(赤城さん全然動じない……!)

武蔵(頼もしい限りだ)

ニコ(今までの苦労がしのばれるね)

赤城「ところで不知火さん、提督少尉はあなたと一緒ではなかったのですか?」

不知火「いえ、一緒だったのですが先程捕まりまして……」

赤城「は? 捕まった?」

提督「悪い、待たせた」ガチャリ

如月「」ミギウデシガミツキー

大和「」ヒダリウデシガミツキー

金剛「」セナカダキツキー

キャロライン「」カタグルマー

提督「ちょっと身動きがとりづらくてな」ズリズリ

赤城「ああ、そういう意味でしたか。てっきり憲兵さんが来たのかと」

提督「確かにこの格好じゃあ呼ばれても仕方ねえな」

朝潮「これも司令官の人徳の賜物です! 私も抱き着いてよろしいでしょうか! ありがとうございます!」ガシーッ

ブリジット「朝潮殿! まだ司令官の許可を得てないであります!?」

提督「ますます動けねえ」ガッチリ

ニコ「ぼくのポジションがない……」

武蔵「お前たち……」

初雪「六神合体フルアーマー提督……」ボソ

金剛朝潮如月大和「合体!?///」

提督「そこに反応すんな」

キャロライン「ダーリン? 合体がどうかしたノ?」キョトン

提督「なんでもねえ」

エレノア「ああ、それはねえ、男と女が」

提督「説明すんな!」

吹雪「フル装備の司令官を見ちゃうと、加賀さんがまだかわいく見えますね」

加賀「そんなに褒めないでください」ポ

不知火「褒めていません」シロメ

???「まったく、すごいね提督の歓迎ぶりは」

赤城「X中佐!?」

X中佐(以下中佐)「や。赤城、火傷はもう大丈夫そうだね」

赤城「中佐、先日は蒼龍がご迷惑をおかけしました」ペコリ

中佐「いやいや、結果的に提督を助けられて良かったよ。万一のことを考えて医療船で来たのも僕にしちゃあナイスアイデアだったしね」

中佐「さて不知火、護衛ご苦労様。初春もそうだけど、みんなからの電話は大変だったろう?」

不知火「いえ。お心遣い感謝いたします」

武蔵「今思えば適任だったな。不知火はよく中将の本営に行っていたし、初春は提督の出張時の補佐をよくしていた」

吹雪「山城さんも意外と人をよく見てますからね」

赤城「ところで、初春さんはどうしたんです?」

不知火「それが……」

 * 回想、提督入院中の鎮守府 *

 RRRR... RRRR...

通信(初春)『もしもし……』

白露「初春ちゃん!? 司令官の具合は!? 治った!? 目を覚ました!?」

通信『のう……白露よ。誰かしら一時間おきに電話をかけてくるのは、なんとかならんかのう。おぬしからも言うてもらえんか』

白露「でもみんな心配してるんだよ!」

通信『じゃから、提督が目覚めたら連絡すると最初から言うておろうが……』

白露「このままだと金剛さんが倒れちゃうよ! さびしいからって誰彼かまわず抱き着いてるんだよ!」

白露「この前は赤城さんに抱き着いて加賀さんが嫉妬していじけちゃうし!」

白露「その前は霧島さんに抱き着いて比叡さんが嫉妬していじけちゃうし!」

白露「その前は龍驤さんに抱き着いて雲龍さんが嫉妬していじけちゃうし!」

通信『面倒くさい連中ばっかりじゃのう!』

白露「あと、サムさんに抱き着いて若葉ちゃんが嫉妬していじけちゃってた!」

通信『若葉ああああ!』

白露「利根さんに抱き着こうとしたらバキュームフロアからライジングフロア、とどめのスマッシュフロアでふっとばされてたし」

通信『そういうことにメディウムを巻き込むのはどうかと思うのじゃが?』

白露「潮ちゃんに抱き着こうとしたらタライが降ってきてアゴニーマスクが降ってきて最後に長門さんが降ってきたの」

通信『長門は何をしておるんじゃ!?』

白露「ほかにもイーファちゃんとかイサラさんとかエレノアさんとか、抱き着いたらただじゃすまない人にばっかり抱き着くんだよ!?」

通信『……そのまま入渠ドックに放り込んで蓋をしておいてもらえんかのう』

白露「昨日は砂浜でオリヴィアさんに抱き着いちゃったから、オリヴィアさんが勝負と勘違いしちゃって」

白露「カーフブランディングから送り襟締め、続けてアルゼンチンバックブリーカーからのバックフリップにおまけでフロントスープレックスとまでもらっちゃったんだよ!?」

通信『白露、おぬし詳しすぎやせんか』

白露「おかしいよね!? ヒールなのに毒霧とか噛み付き攻撃とか、栓抜きとかの凶器攻撃がないとか!」

通信『そこか!?』

白露「とにかくすごかったんだから! あれを提督に見せてあげられないのは可哀想だよ!」

通信『……あとで再現してやれば良かろうに。なんでそこまで知っておるんじゃ』

白露「青葉さんと一緒に金剛さんを密着取材してたから」

通信『青葉ああああ!』

白露「あと、武蔵さんがプロレスに夢中になっててコーネリアさんが嫉妬していじけちゃってた!」

通信『どいつもこいつも!』

白露「ひどいのは金剛さんだけじゃないの! 大和さんも夜泣きがひどいし!」

通信『赤子か!』

白露「如月ちゃんは司令官のベッドで寝てたし! 司令官の使ってた枕とか毛布とか、みんな取り合いになっちゃってて残ってないの!」

通信『最悪じゃな』

白露「古鷹さんからはベッドにベリアナさんが入ってきていかがわしいことしてくるって苦情も来てるの!」

通信『それはニコ殿に通報せい』

白露「今は今でマリッサさんが奇声を上げながら何かしてるし! 川内さんからうるさいって苦情が来てるよ!」

通信『ふん縛っておけ!』

白露「とにかく、司令官がいないと滅茶苦茶だよ……ねえ、司令官とお話しできない?」

通信『のう、白露や。今、何時かのう』

白露「えーと、0320」

通信『少しは電話する時間を考えんか!!』ウガーッ


 * *

不知火「昼夜問わずの電話番でしたので、先程自室のベッドに轟沈しました」

赤城「……それはご愁傷様です」

中佐「ところで、見慣れない人たちがいるな。彼女たちは何者だい?」

提督「ああ、助っ人です。この島に流れ着いたもんで、しばらく厄介にと」

中佐「ふむ……」

ニコ「……?」

キャロライン「♪」

エレノア「……」ネイルオテイレー

ブリジット「!」ケイレイ

ヴィクトリカ(やっべえ、しょっ引かれねえよなあたし)ドキドキ

中佐「コスプレ会場かな?」

提督「まあ、そうなるな」

今回はここまで。

次回、 各々の思惑。



昇進して少尉って事は昇進前は准尉あたり・・・?

>>384-386
提督の昇進前の階級は准尉です。

彼の経緯を簡単にまとめると、

 提督「誰も妖精の存在を信じねえ! 許さんぞ人間どもー!」 →
 海軍士官「妖精さんと話せる人は珍しい! 海軍に来て!」 →
 中将「准尉になって、息子の大佐のところで提督見習いになってよ!」 →
 大佐「妖精から俺の悪事聞いて告げ口される前に廃墟に島流しwwwおkwww」 →
 提督「初期艦も大淀も明石もいねえ! 大佐ぶっ潰してやる!」

こんな感じです。経緯については>>72>>322にもこっそり階級を書いてます。


ついでに独自解釈ですが、『提督』の素質がある人とない人の切り分けの一要素として、
妖精が見えるか見えないかを線引きのひとつとしています。

そして『提督』の中でも、妖精の姿がおぼろげに見える人からはっきり見える人、
声がしっかり聞きとれる人から全然聞こえない人、さわれる人とさわれない人と、
個人差があり、自由に話が出来る提督は珍しい存在、という解釈です。

では、続きです。

 * 応接室 *

サム「お茶をお持ちしました。ごゆっくりどうぞ」

中佐「ああ、すまないね。……少尉、よく彼女たちを雇えたね、どうやってスカウトするに至ったんだい?」

提督「なんでも、海賊に襲われたそうですよ。俺を慕ってくれているので、世話になっております」

中佐「……そうか。一応言っとくけど、民間人をみだりに鎮守府に入れちゃいけないよ。ここしかまともな建物がないのは仕方ないにしてもね」


中佐「まずは少尉、先の大佐の暴走の件、よく防げたね」

提督「……ええ」

中佐「内部の不祥事だ、残念ながら表立って君を褒めることはできないけど、問題行動の多かった大佐一味を処分できたことを大本営は陰で歓迎しているようだ」

中佐「……頭にくる部分も多いが」

提督「そうですか?」

中佐「ああ、今まで大佐の働きを称賛しておきながら、今回の件で不始末が露見した途端、あっさり手のひらを返す者ばかりでね……」

提督「それはそんなものでしょう。海軍だって身内の汚点は揉み消したいところかと」

中佐「その通りだが……あれだけ大佐を褒めてた上官が『あの男は最初から信用してなかった』とのたまうのを見れば、幻滅の一つもするよ」ハァ

中佐「……愚痴が過ぎた、すまない。君が入院していたときのことを報告しよう。まず、君の昇進について」

中佐「これは大佐たちのクーデターを未然に防ぎ、泊地棲姫の侵攻を防ぎ切ったことが評価された」

中佐「ここが陥落すれば、他の鎮守府にも泊地棲姫が深海棲艦を引き連れて押し寄せてきていただろう」

中佐「なにより、鎮守府を攻められたという事実が一番の脅威だ。それに抗戦して屈しなかった、この影響は大きいと思う」

中佐「君がこの辺境の鎮守府を守護し続け、かつ艦娘の救済を行ってきたことも併せて評価され、君は10日付けで少尉に昇進した」

中佐「これまでの実績からして、僕はもうひとつふたつ上がってもおかしくないと思うがね?」

提督「……」

中佐「興味なし、か。出世には興味がないと聞いていたけど……」

提督「やることも、下っ端であることも、変わりはありませんので」

中佐「なら、これ以上は無駄話か。……じゃあ、次に中将だけど、退役することになった」

提督「……そうですか」

中佐「大佐の謀反の計画書を赤城があちこちからかき集めてきて、それを本営に戻った中将に、大将立会いの下、提出」

中佐「僕も当事者として立ち会ったんだが、赤城は土下座してたよ。両方の意味で大佐を助けられなかったことを、申し訳ないと」

中佐「大佐とその部下が全員戦死……まあ、戦死かな? それで憔悴していたところにあの計画書だ」

中佐「中将は暗殺対象が自分だったことに相当ショックを受けていたよ……」

中佐「重傷を負った君のところにも一度顔を出していたんだが、その時は術後の麻酔がよく効いていたから覚えてないだろう?」

提督「……」

中佐「たぶん、大佐に対する積年の恨みも積もっているだろうけど、今回の件で水に流してもらえるとありがたい」

提督「……ええ。正直なところ、少しはすっきりしました」

中佐「ああ。それと、大佐の秘書官だった赤城の処遇は知っての通りだ」

中佐「君が復帰するまでこの鎮守府の提督代理を務めてもらい、その後の処分は追って沙汰する……と」

中佐「そういう話だったけど、すぐにでも大佐のいた鎮守府に戻ってもらうことになりそうだ」

中佐「あの鎮守府は、赤城が築いた信頼で成り立っている。今後の鎮守府運営を考えても、現状維持が望ましいと進言しておいた」

提督「打算的ですね」

中佐「残念ながら、こういう風に言わないと上は首を縦に振ってくれないからね」

中佐「それに、どんな理屈をこねようと、あの鎮守府の艦娘にとってはそれが一番望ましいだろう」

中佐「彼女たちが働きやすい職場を作れるのなら、それに越したことはないと僕は思っている」

提督「……」

中佐「まあ、僕らが何を言おうと、赤城は頼れる。この鎮守府を君に代わって切り盛りしているが、評判はなかなかいいようだぞ?」

中佐「さて。最後に、君の今後についてだが……」

中佐「提督少尉。君には引き続きこの鎮守府の指揮をお願いしたい」

提督「……!」

中佐「意外そうな顔をしているね?」

中佐「今回の事件で6人もの指揮官を失った。君も違う鎮守府に栄転し、更なる戦果を挙げてほしいという話もされただろうが……」

中佐「それでも、君にしかこの鎮守府を任せられない理由がある。それはこの島が、いわくつきの呪われた島だからだ」

提督「それはまた……今更ですね」

中佐「すまない、僕もこの島の過去を調べたのが半年前でね。この島に3年もの間、滞在し続けられたのは君が初めてなんだ」

中佐「大破した艦娘が無数に流れ着くこの島で、殆どの人間は何故か正気を保っていられなかった」

中佐「なのに君は、幾多の艦娘を立ち直らせ、鎮守府としての機能を回復させた。それだけでもすごいことだ」

中佐「きっと、この鎮守府を任せられるのは君だけだろう。……頼む、改めてお願いできないだろうか」ペコリ

提督「……」

中佐「……」

提督「わかりました。まさか頭を下げられるとは思いもしませんでしたよ」

中佐「……引き受けて、くれるのか」

提督「はい。……まあ、そんな気がしていたんですよ。俺は人間社会では生きられない社会不適合者ですから、ここにいたほうが良いでしょう」

中佐「そんなふうに言わないでくれ。僕は厄介払いのつもりでお願いする気はないんだ」

中佐「……だが、君がここにいたほうが良い要素も、ないわけじゃない」

提督「……?」

中佐「ここだけの話にしてほしい。君には、ある期待がかけられている」

提督「期待……?」

中佐「深海棲艦との和睦。君ならその交渉役ができるんじゃないか……そう考えている人物がいる」

提督「……」ピク

中佐「言いだしたのは僕でも、中将でもない……海軍大将。……僕の、伯父だ」

提督「……」

中佐「ここにいる艦娘の殆どが、大破轟沈を経験したり、むごい仕打ちを受けたりした者たちばかりらしいね」

中佐「ネガティブな感情を持った艦娘は深海棲艦にきわめて近くなると言われている。そんな彼女たちをまとめられる能力に、伯父さんは目を付けたんだろう……」

中佐「もともと君は妖精と意思疎通もできる稀有な人材だ。もしそうなれば、君を利用したがる者が出てくるはずだ。最悪……」

提督「俺を担ぎ上げて騒ぎを起こす者も現れかねない、と」

中佐「そうだ」

提督「俺自身が起こす可能性は」

中佐「僕はないと思っている。艦娘に無理をさせない過保護な人物と艦娘に評される人物が、武力による蜂起を促すとは思えない」

中佐「ただ、君にそういう野心がないとしても、君の力を利用しようとする輩が現れないと思えない」

中佐「大将も君がその気にならないか期待している節がある。となれば、強引に君を持ち上げようとするやつも出てくるはずだ」

中佐「逆に、今の戦争を利用して私腹を肥やす連中にとっては、戦争を終わらせられる君の存在が邪魔になる」

中佐「というわけで、君の身の安全も考えると、ここにいたほうが良さそうなんだよね……ほら、さっきも言ったとおり、この島には近寄りがたい話もあるし」

中佐「ったく、同じ海軍でありながら命を狙い合う……今回の事件といい、馬鹿げてるよなぁ」ハァ

提督「中佐は、大将殿の考えをどう思います」

中佐「和睦には賛成だ。だが、交渉できるあてが君だけではね。もう少し、いろいろな手を用意したい」

中佐「それに、仮に君が失敗したとして、途端に手のひらを反して君に責任を押し付ける無責任な連中の勝手を許したくない」

中佐「最低限、個人的にでも仲良くできる伝手があればいいんだけどね。少尉にはあるかい?」

提督「ありませんね」

中佐「だろう? 和睦って話も、それじゃ絵に描いた餅なんだよね」ハハハ

提督「……」

中佐「さて、僕の言いたいことは言わせてもらった。君と話したがっている艦娘も多そうだし、この辺で失礼しよう」

中佐「この鎮守府の艦娘に会いたいっていう部下がいるから、今度連れてくるよ」スクッ

提督「……中佐」

中佐「ん?」

提督「老婆心ながら、具申させていただきたい」

提督「この島はやはり人間が立ち入って良い場所ではないようです。誰かがこの島へ来たいと仰るのなら、やめたほうが良いとお伝えください」

提督「今もこの島には、人間は、私とあなたの二人だけだ……いや、とうの俺とて、もはや人間かどうか疑わしい」

中佐「……提督少尉? それはどういう意味……」

中佐「いや、やめておこう。それよりもいいのか? 僕にそんなことを教えて」

提督「良いことを教えてもらったお礼です。あなたも俺を好意的に見ているようですが、それでもこの島には近づくべきじゃない」

提督「さもなければ、きっと『人ではない何か』になってしまうことでしょう」

提督「信じてもらえないかもしれませんが、俺は一度死にました。『人ではない何か』に近づきつつあるのでは、と思っています」

中佐「……」

提督「……」

中佐「それが本当なら、この島と、この島に住む者が、君を必要としているんだろう」

中佐「こう言っては失礼かもしれないが、艦娘も妖精も『人間ではない何か』だ」

中佐「君は、その彼女たちを立ち直らせ、そして慕われてきた。僕は、彼女たちとともに君がこの海の守護を担ってくれると、信じているよ」ガチャ

提督「……」

扉 <パタム

提督「……」

オボロ「始末しなくて、よろしかったんですか?」ズッ

提督「仮にも中佐は俺を助けてくれたんだ。義理は通しておかないとな」

提督「これで島に近づかなくなってくれればいいんだが、今の話からすると俺に会いたがる奴は増えそうだ」

ヴェロニカ「それにしても、変わった人ね」シュッ

提督「あの思想で潰されないのは大将の血縁だからかね。まあ、艦隊の司令官としても有能らしい。主力は海外艦と潜水艦だそうだ」

提督「出来れば、敵に回したくはない。が、俺は中佐を『仲間』にする気もない」

ニーナ「そうですね。あの方が『こちら側』に来るのは違和感があります」スタッ

提督「面倒だが……いろいろと手を打たねえといけねえか」

今回はここまで。


次回、 初霜の行方。

間が開いてしまいましたが、続きを投下します。

ニーナ「さて、中佐もお帰りになられましたし、私たちも戻りましょう」

ヴェロニカ「そうね。出番かと思ったんだけど……今の話だと、違う機会で出番ができそうね?」

提督「はぁ、次から次と面倒くせえな。とりあえず執務室に戻るか……」

シルヴィア「あ、いたいた。魔神君ちょっといいかしら?」

伊8「提督にお客様だよ」

提督「客? 中佐じゃなくてか?」

シルヴィア「その中佐と鉢合わせしたらまずいと思ってね。ほら、ル級って子が北の洞窟に来てるわよ」

提督「ん、向こうから話があるたあ珍しいな」

伊8「それと……」

名取「あの、少尉さん、私たちも……ご一緒させてくださいませんか?」

提督「お前たちは?」

名取「部下Bの配下の艦娘の、名取です」

弥生「同じく、弥生です」

提督「ああ、お前らか……話は聞いてる、泊地棲姫の塒に行かされた連中だな。なんだ、かたき討ちでもしたいのか?」

名取「そういう気持ちもありますけど……」

弥生「泊地棲姫のところで別れた、初霜さんのことを聞きたいんです」

名取「初霜ちゃんは、私たちをかばって被弾したんです。助けに行きたいんですが、せめて、今どこなのか、どうなったか聞くことができればと……」

提督「ふぅん。好きにしろ、覚悟はしておけよ。あと、絶対に手を出すな」

名取「は、はいっ!」

ニコ「ふふ、相変わらず優しいんだ」

提督「なんだ、ニコも来るのか」

ニコ「勿論だよ。本当なら、さっきの中佐のときも一緒にいたかったんだからね?」

ヴェロニカ「私も暇だし、ついていこうかしら」

伊8「大和と如月も来るって。提督と離れてた時間を取り戻すんだーって言ってた」

提督「……ま、いいけどよ。お前は?」

伊8「はっちゃんが連絡受けたの。案内するよ」

提督「ん、そうだったか。じゃあ頼む」



 * 島の北部 洞窟内 *

ル級「ハーイ、元気シテル?」

提督「おう、死にかけたが一応な」

ル級「ンー、元ニ戻ッチャッタワネ、残念。モウ海ノ上ハ走レナイノ?」

提督「生憎とな。ル級は怪我とかしてねえな?」

ル級「傍観者ダッタカラネ。アノ後、イロイロ事後処理ヲ手伝ワサレタケド」

提督「事後処理?」

ル級「エエ、泊地棲姫ノトコロデネ」

提督「なんだ、お前結局あいつのお世話になったのか?」

ル級「逆ヨ? 私ガアイツノオ世話シチャッテタノ」

提督「どういうことだ」

ル級「ダッテアイツ、アノアトズーット呆ケテテ、泊地ニ戻ッタ後モ上ノ空デサ」

提督「そんなにショックだったのか?」

ル級「エエ、魔神化シタ提督ニ相当ショックヲ受ケテタミタイヨ?」

提督「まじか」

ル級「デネ、チョット頼ミゴトガアルンダケド……」

提督「?」

ル級「実ハ、提督ニ会イタイッテ、ココニ来テルノヨ、泊地棲姫」ユビサシ

提督「は?」

泊地棲姫「……」ヌッ

弥生「!?」

名取「!?」

大和「ちょっ!?」

如月「どうしてここへ!?」

伊8「……」ジャキッ

ヴェロニカ「あらあら……ついてきて正解だったかしら」ジリッ

ニコ「ヴェロニカ、気を付けて」

泊地棲姫「マ、待テ! 今回ハ、私ハ戦イニ来タツモリハナイワ!」

提督「……だそうだ。で、ル級、泊地棲姫は俺に用があるって?」

ル級「ソウミタイナンダケド……ホラ、姫様早ク用件言イナサイヨ」

泊地棲姫「ア、アア……ソウダナ。ソノ、ナンダ」


泊地棲姫「深海ニ、来ナイカ?」


提督「あ?」

如月「あっ」ハイライトオフ

大和「あっ」ハイライトオフ

伊8「あー」

ニコ「ヘー」ピキッ

ル級「ホボ全員ガ察シタワネ」

ヴェロニカ「坊やったらモテモテね」ハァ

泊地棲姫「モ、勿論、タダデトハ言ワナイワ! オ詫ビノシルシモアル……!」ザバザバッ

提督「お詫び?」

如月「何を取りに行ったんでしょう?」

泊地棲姫「コ、コレダ!」バッ

フリフリヒラヒラのピンクリボンで目隠し+猿轡+後高手菱縄胡座縛りで拘束された初霜(全裸で失神中)「」

名取「初霜ちゃああああん!?」ガビーン

弥生「信じて送り出した初霜さんが……」クラッ ドターン

如月「や、弥生!? 弥生、しっかりして!」

提督「……これは俺にどうしろと?」

ヴェロニカ「ちょっと縛り方が甘いわね。縛り直してあげたら?」

伊8「提督が縛るの上手だったりしたら、ちょっと引くかも……」

ヴェロニカ「そう? あの子とか自分が縛られるの想像してるみたいなんだけど?」ヤマトユビサシ

大和「ふぇっ!? そそそそんなことありませんっ!!」カァァ

泊地棲姫「ル級……喜バレテナイミタイヨ?」ジトー

ル級「ン? 人間ノ男ッテノハ、コウイウノガ好キナンジャナイノ?」クビカシゲ

マリッサ「私は大好物よぉぉぉお!!」ザバー

名取「クラーケンコワイクラーケンコワイ……」アワブクブク バターン

伊8「名取さん泡吹いて倒れた!?」

朧「泡を吹いたって!?」バッ

提督「どこに潜んでた朧」

朧「気配を感じて今来ました!」

提督「まじか」

ニコ「マリッサもこんなところで何をしてたの……?」

マリッサ「速吸ちゃんと遊んでたのよ~?」

ボールギャグ+亀甲縛りにされた速吸「あふぅ」

伊8「マジなにやってんの」シロメ

 ザザザザザザ

マリッサ「はっ! この音は!?」

電「浮気は許さないのですぅぅぅぅ!!!」スイングハンマーフリオロシ

マリッサ「イヤーン!?」バコーン

速吸「はぴぃ!?」マキゾエ

カトリーナ「あ、あたしのハンマー返してくれーー!!」

提督(帰りてえ)ハァァ

電「あ、司令官さんお邪魔したのです」ペコリ

電「カトリーナさん、この二人を運ぶのを手伝ってほしいのです」

カトリーナ「お、おう……それよか早くハンマー返してくれよ」

ル級「コノ鎮守府ッテ、コンナニ騒ガシカッタッケ?」クビカシゲ

ニコ「一部はぼくたちのせいだね」アタマカカエ

提督「あー……それはいいからさっさと初霜の拘束解くぞ。おい、大丈夫か、しっかりしろ」シュルシュル

初霜「……ぷはっ、こ、ここは……あ」スッポンポン

提督「マッパはまずいから俺の上着着せるか」ウワギヌギヌギ

初霜「キャアアアアアアア!?」カオマッカ

提督「うるせえ、静かにしろ……洞窟ん中だと反響するんだ」ミミフサギ

初霜「こ、こんな薄暗いところで服を脱いで、私をどうする気ですか!?」アタフタ

初霜「っていうか私、泊地棲姫に撃たれて……まさか助けた私を手籠めに!?」オロオロ

初霜「そんな、いけません! 私のような駆逐艦に手を出すなんて! 鬼! 悪魔! 夜戦重巡カットイン!!」カァァ

提督「……ヴェロニカ、こいつ黙らせられるか?」メンドクセエ

ヴェロニカ「フローラに鎮静剤うってもらった方が良いんじゃないかしら」メンドクサイワ

初霜「こ、こんなえっちな人と一緒になんかいられません! 私はお部屋に戻らせていただきます!」クルリ

泊地棲姫「……」

ル級「……」

初霜「ピャアアアアアアア!?」カオマッサオ

ル級(酒匂カナ?)ミミフサギ

初霜「ナンデ!? 泊地棲姫ナンデェェェ!?」プルプルプルガタガタガタ

泊地棲姫「……アノ子、深海化シテルノ?」ミミフサギ

ル級「……サア?」クビカシゲ

提督「とにかく、そんな恰好でうろつくな。ほれ、俺の上着羽織ってろ」

初霜「! す、すみません、取り乱してしまって……ありがとうござい……弥生ちゃん!? 名取さん!?」ビクッ

初霜「ふ、ふたりに何をしたんですか!? 白目をむいて倒れるなんて只事じゃありません!」

如月(あなたを見て倒れたんだけどね弥生は……)

初霜「はっ、そうやって油断させておいて、やっぱり私にもひどいことをするんですね! 秋雲ちゃん謹製の薄い本みたいに! 薄い本みたいに!!」ビクビクビクッ

提督「なぜ2回言う」

 ゴンッ

初霜「きゅう……」バターン

伊8「当て身」

ニコ「魚雷で殴るのを当て身とは言わないと思うんだ」

提督「……まあ、助かった。収拾がつかなかったからな」ハァ

朧「とりあえず初霜さんには絆創膏貼っておきますね」ペタペタ

大和(えええ!? 朧さん、そんなところに絆創膏を貼るの!?)ドキーン

ヴェロニカ(乳首とあそこね。いい趣味してるわ)

伊8(なにこの卑猥な絵)

提督「丁度いいや、朧、応援呼んで初霜と弥生と名取をドックに運んで休ませろ」

朧「はいっ!」シャッ

提督「……おい、今、忍者みたいに消えたぞ。朧に何があった」タラリ

ニコ(……オボロ、彼女に何を教えたんだろう)

泊地棲姫「……ス、スマナイ、マサカコンナ騒ギニナルナンテ」

提督「ああ、どっと疲れたな……まあ、仕方ねえ」

泊地棲姫「ア、アノ……実ハ、モウ一人会ワセタイ者ガイルノ……」

提督「ん? もう一人?」

ル級「ホラ、オイデ、軽巡棲姫」

軽巡棲姫(幼)「……」ヒョコッ

大和「えっ!? なんですかあの小っちゃい子! 可愛い……!」

如月「あんな小さい軽巡棲姫、初めて見ますね」

ル級「アノ子、アノ弾丸ダッタ子ヨ」

大和「ええっ!? もうあんなに大きくなったんですか!?」

ル級「ホラ、来テ挨拶ナサイ」

幼女軽巡棲姫「……パパー」ヨチヨチ

大和「!?」

如月「!?」

ル級「!?」

ヴェロニカ「あら、坊やったらいつの間に坊やじゃなくなってたの?」

提督「つまんねー冗談だ」

幼女軽巡棲姫「パパー、ニンチシテー」ヨチヨチ

大和「!?」シロメ

如月「!?」シロメ

ル級「!?」シロメ

ヴェロニカ「この冗談は笑えないわね」ピキ

伊8「うん」ピキ

提督「……おい、そのセリフ誰に教えてもらった?」

幼女軽巡棲姫「ン!」泊地棲姫指さし

提督「おいコラ手前ガキになんてセリフ言わせてやがんだテメェこそ責任取れやオラ」ガッシ メキメキメキッ

泊地棲姫「痛イ痛イ痛イゴメンナサイゴメンナサイイイイ!!!」ギリギリギリギリ

ル級「泊地棲姫ガ人間ニアイアンクロー食ラッテ悶絶スルトカ前代未聞ダワ」

提督「ったく、おいちび、俺はお前の父親なんかじゃねえよ」

幼女軽巡棲姫「……パパ、ジャナイ……?」ションボリ

提督「ま、敢えて言うなら兄妹だな。一緒に生き返ったわけだし。そもそも俺は父親なんて柄じゃねえ」

幼女軽巡棲姫「……オニイチャン……!?」パァァ

提督「おう。っつうか、おじさんで構わねえよ。ま、その辺が妥当じゃねえか?」

ニコ「魔神様のお姉ちゃんはぼくだよ!!」バーン!

ニコ「お姉ちゃんはぼくだよ!!!」ババーン!

提督「だからなぜ2回言う」

伊8「必死すぎ」

今回はここまで。


次回も引き続き泊地棲姫と面談。

なんでかんで見てくださる方がいると嬉しくなります。

では、引き続き、北の洞窟から。

投下します。

 * 朧と神通と川内によって弥生と名取と初霜が曳航されました *

提督「……まあ、泊地棲姫も災難だったよな。大佐に目をつけられなきゃあ、自分の寝床を壊されずに済んだわけだし」

泊地棲姫「……マア、ソウネ……」

ル級「ア、ソレナンダケド、実ハ寝床ヲ壊サレタノガ頭ニ来タワケジャナイワヨ」

提督「? じゃあ何が理由で追っかけてきたんだよ」

泊地棲姫「ヨ、ヨセ、ル級!」

ル級「ナンデモ、オ気ニ入リノ北方棲姫ノヌイグルミヲ壊サレタカラ頭ニ来タッテ言ッウボアー!?」ガインッ

泊地棲姫「ナンデ! ナンデバラシタ、ル級! ウワァァァン!!」ナミダジョバー

如月「今、魚雷で殴ったわね」

大和「爆発したらどうする気だったんでしょうね」

伊8「……」

ヴェロニカ「爆発しないように魚雷に当て身したんじゃないの?」

ニコ「じゃあさっきの初霜には容赦なかったってこと?」

伊8「もうやめて」プルプル

提督「ぬいぐるみ、そんなに大事なもんだったのか」

泊地棲姫「ソ、ソウダ! 寝ルノキハズット一緒ダッタンダゾ! 超ノ付ク程オ気ニ入リダッタンダ!」

伊8(長門さんと気が合いそう)

ヴェロニカ(敵も味方もお子様が多くない?)

提督「んー……もしもだ。俺たちがそいつを弁償するとしたら、どうする?」

泊地棲姫「!?」

如月「司令官!?」

提督「大佐の仕業とはいえ、壊した元凶は艦娘が所属している海軍で、指示出してんのは人間だからな。他人の宝物壊してとんずらとか最低だろ」

ル級「相変ワラズ、イイ男ネェ」

提督「で、悪いが俺は北方棲姫ってどんな奴か知らねえんだ。誰か、写真とかあるか?」

泊地棲姫「私ガ持ッテル」スッ


(泊地棲姫と北方棲姫のツーショット写真)


提督「へえ……可愛い顔してんな」ニヤリ

如月(司令官が褒めた!?)グワッ

大和(滅多に人の外見を褒めない提督が褒めた!?)グワッ

ル級(アア、男ハ所詮ロリコン、カ……)ガクーッ

ヴェロニカ(……私もこんなことで嫉妬するなんて思わなかったわ)ムスッ

ニコ(強烈な魔力の高まりを感じる!?)ビクンッ

伊8(みんなわかりやすい……)

提督「無邪気な子供が一緒だと可愛い顔すんだなあ、泊地棲姫も」ニヤニヤ

泊地棲姫(私ダッタ!?)ドキーッ

如月(こんな短時間に評価されて羨ましい!)ゴォッ

大和(幼子をだしにするなんて卑怯です!)ゴォッ

ル級(ロリコンジャナカッタ!?)パァァ

伊8(駄目だこのジゴロ、なんとかしないと)

ニコ(すごい!? 邪な感情の魔力がしゅごいのおぉ!?)ビクンビクン

ヴェロニカ(ニコがすごい顔になってるわ……)タラリ

提督「まあとにかくだ。せめてもの弁償ってことでな、その北方棲姫のぬいぐるみを作って……」

泊地棲姫「ソ、ソノ必要ハナイワ!」

提督「!」

泊地棲姫「失ッタモノハ戻ッテハコナイ。イクラ代ワリノ物ヲ貰ッテモ、失ッタトイウ事実ハ覆セナイワ」

泊地棲姫「……ダカラ、オ前ノ気持チダケモラッテオク」

提督「いいのか?」

泊地棲姫「代ワリトイウワケデハナイガ、コノ子モイルシ、ネ」ナデナデ

幼女軽巡棲姫(泊地棲姫の膝の上)「Zzz...」

泊地棲姫「ソレデモ、トイウナラ、改メテオ前ニオ願イシタイコトガアル……」

泊地棲姫「……私タチモコノ島デ暮ラシテモイイダロウカ」

大和「!?」

如月「!?」

ル級「!?」

提督「ああ、いいぞ」

大和「!?」シロメ

如月「!?」シロメ

ル級「!?」シロメ

伊8「あれ? デジャヴ?」

ヴェロニカ「大丈夫よ、私も見たことあるわ」

ニコ「まったくもう、甘いんだから……」

大和「いけません提督! 仮にも数日前まで敵だった相手ですよ!?」

如月「そうです! お休みの間を襲われたらたまったものでは……!」

提督「そういうお前らは何回俺の布団に潜り込んで安眠妨害したか覚えてんのか」

ニコ「みんななにやってるの」ゴゴゴゴ

大和「ごめんなさい」

如月「すみませんでした」

伊8(はっちゃんも忍び込んだけど黙っていようっと)

提督「まあ、暮らす分には構わねえさ。その代わり、俺の部下に手を出すようならわかってるな?」

提督「それに、俺が良いと言ってもここは海軍の鎮守府だ。事情を知らない俺たち以外の海軍からは、攻撃目標になることを忘れんなよ」

提督「そして、お前ら以外の深海棲艦がむやみに近づくようなら、俺たちも交戦体制をとる。お前らを敵としないってだけだからな?」

提督「そういうところを踏まえてル級は島から離れて暮らしてんだ。うちの艦娘を面倒事に巻き込むようなら容赦しねえぞ」

泊地棲姫「ワカッタ、ソレデイイ」

泊地棲姫「ソウイウワケダカラ、ル級ハ早ク新シイ塒ニ案内シナサイ」フンス

ル級→ル級fl「イキナリ偉ソウナ態度取ルノ、ヤメテクレル?」ゴゴゴゴゴゴ

提督「ル級も面白い特技を身に着けたな」

如月「こういうのは特技って言わないわ」

大和「そういえば、大佐はどうなったんです?」

ル級「巣ニナッテルワヨ。駆逐艦用ノ」

ニコ「へぇ……」

大和「……」

ル級「イッソ死ンダホウガ良イッテ状態ダケド、詳シク知リタイ?」

大和「いいえ、それだけ教えて戴ければ大丈夫です」

ニコ「……そう?」

大和「これ以上聞きませんからね。想像したくありませんから」ヒヤアセ

ヴェロニカ「残念ね」

伊8「興味津々って顔してたね……」

如月「とにかく、もう戻ってこないなら安心ね……」

ル級「マア、戻ロウニモ戻レナイオツムニナッテルカラ、安心ナサイ」

提督「さて、じゃあ戻るか。お前らも気を付けて帰れよ」

ル級「アア……少シ、待ッテクレル?」

提督「ん? なんだ?」

ル級「チョット手ヲ貸シテモラッテモイイカシラ」スッ

提督「……握手か?」

ル級「エエ」

提督「これでいいのか?」スッ ギュ

ル級「……」ギュ

提督(俺の手を見てる……のか?)

ル級「……」

ル級「……アリガトウ」スッ

提督「……?」

ル級「マタ、オ世話ニナルワ。今後トモ、ヨロシクネ」ニコ

提督「? あ、ああ。じゃあな」



ル級(……)

ル級(前代未聞、ネ)

ル級(深海棲艦ニ触レラレテ、発狂シナイ人間ダナンテ)

ル級(私ノ手ヲ握リ続ケテモ平然トシツツ、手ニモ腐食ノ跡ガ残ラナカッタ……)

ル級(並ノ人間ナラ、泊地棲姫ノ顔ヲ掴ンダ時点デ倒レテモオカシクナイノニ)

ル級(軽巡棲姫ノ弾丸デ生キ返ッタトモ聞イテイルシ……)

ル級(彼ハ、人間ナノカシラ……?)

今回はここまで。

次回、 不幸な幸福。

続きです。

 * 鎮守府内 廊下 *

提督「やれやれ、問題は山積みのまま明日へ持越し、か」

山城「あら、提督。戻られてたんですか」

提督「おう……何があった山城。やつれてないか?」

山城「はい、それが……」

扶桑「やーまーしーろー?」

山城「ひっ!?」ビクッ

扶桑「うふふ、見つけたわー、山城ぉ~♪」ダキツキー

山城「扶桑お姉様っ!? て、て、提督の前ですよっ!?」

扶桑「……♪」ホオズリホオズリ

山城「……」

提督「……」

山城「……提督、あの、説明、よろしいでしょうか」カオマッカ

提督「ああ」

 * 説明後 *

提督「なるほど。復讐終わって燃え尽きたってか」

山城「たぶん、虚無感を埋めるために誰彼かまわず甘えるようになったんじゃないかと……不幸だわ、扶桑お姉様が」

扶桑「提督~、提督もぎゅー……♪」スリスリギュウウ

提督「で、主にお前が扶桑の抱き枕になっていると。こりゃ重症だ」ナデナデ

扶桑「はふ~♪」ポワワ

山城「はい。私は一応幸せなんですが身が持たなくて……どうしてこうなったのかしら」トオイメ

提督「扶桑が誰かに甘えるとか抱き着くとか想像もしなかったからな。ちょっと幼児退行も入ってるんじゃねえかこれ」

アーニャ「魔神様ー……ってうわぁ!?」

最上「提督も、もう被害にあってたんだ……」

提督「てえことは、お前らも抱き着かれたわけか」

ミーシャ「はい。扶桑お姉さん、すっかり甘えん坊に……」

山城「というか被害とか言わないでください」

三隈「んー、山城さんがちょっぴり羨ましいですわ」

最上「え」

ミーシャ「三隈さんも最上さんに抱き着かれたいんですか?」

三隈「ええ♪」

アーニャ「……ミーシャは羨ましくないのかな?」

ミーシャ「私は……以前、姉さんとは離ればなれだったから、一緒にいられるだけで嬉しいけど……」モジモジ

アーニャ「ミーシャあああ!」ダキツキッ

ミーシャ「きゃっ!? ね、姉さん!?」

アーニャ「そうだね! そうだったよね! あたしもミーシャと一緒で嬉しいからね!」ギュー

ミーシャ「あう……う、うん」カァァ

三隈「あらあら、こちらも羨ましいですわ。モガミン、私にもお願いしますわ、さあ」リョウテヒロゲ

最上「さあ、じゃないよ三隈……」ポ

三隈「行かないのでしたら私から行きますわ。んちゅー」ダキツキチュー

最上「ちょっ!? き、キスは余計だよ!?」カァァ

アーニャ「うわ……」カァァ

ミーシャ「わぁ……」カァァ

山城「……仲がいいわね」カァァ

扶桑「山城? お顔が赤いわよ? お熱でもあるのかしら」オデコピトッ

山城「……鼻血が出そうだわ」カオマッカ

アーニャ「ねえねえ魔神様! モガミンさんとクマリンコさんって、結構くっつき過ぎだと思うんだけど」

ミーシャ「なにかあったんですか?」

提督「三隈はもともと最上が好きだからな。扶桑がこんな風になって、あてられたんだろ」

山城「最上も結構不幸よね。前の鎮守府でセクハラされてたって言うし」

ミーシャ「せくはら?」

アーニャ「って、なーに?」

提督「そっからかよ……」

山城「本当に無邪気ね……」

三隈「ねえ二人とも? 男の人にいきなり胸を揉まれたり、お股を触られたりしたらどう思います?」

アーニャ「あ、そういうこと!? ひどいね、そんなことされてたんだ!」プンスカ

提督「最上は自分のことを僕って呼ぶし、アーニャに似て少し男の子っぽいところがあるだろ?」

提督「それでそこの司令官が『男同士だからいいだろ~』みたいなノリで最上に手を出してたらしい」

アーニャ「さいってー!」

ミーシャ「こんなに可愛い人を男の人扱いするんですか!?」

最上「か、かわっ……」カァァ

三隈「モガミンの魅力がわかってもらえて嬉しいですわ~♪」ホッペチューー

ミーシャ「きゃああ!?」カァァ

提督「まあ、この通り三隈は最上が気に入ってる。その最上は、そこの司令官にベタベタ触られてて困ってたんだ」

提督「そいつは最上と二人っきりになると決まってセクハラしてくるから、そうならないように三隈が見張ってたんだが」

最上「そうそう。僕と元司令官が二人になるたびにくまりんこーくまりんこーって警告音みたいに言ってたから、口癖になっちゃったんだよね」

三隈「おかげで今も、困ったときにくまりんこって言ってしまうことがあるんです」

アーニャ「こまりんこになっちゃったんだ」

提督「その後もそこの司令官は最上へのセクハラをやめなくてな。頭に来た三隈が主砲でそいつを男にじゃなくしちまったんだよ」

アーニャ「?」クビカシゲ

ミーシャ「?」クビカシゲ

提督「あー……お前ら、男の股間になにがついてるかはわかるか?」

アーニャ「……あ!」カァァ

ミーシャ「は、はい!」カァァ

提督「早い話が、三隈はブチ切れてそいつのソレを撃ったんだよ」

アーニャ「ほんと!? すごーい!」

ミーシャ「三隈さんかっこいいです!」

三隈「え、ええ……あ、ありがとう」

最上「引かれるかと思ったのに、予想外の反応が来たね……」

提督「お前ら、こいつらが罠だってこと忘れてるだろ。人間の命なんて糞とも思ってねえぞ?」

三隈「じ、じゃあ、この子たちの善悪の基準って……」

アーニャ「んー、人間は別にどうでもいいかなーって感じかなー?」

ミーシャ「魔神様と、メディウムのみんなと、あと、ここの艦娘さんたちは友達ですから、大事にしたいって思ってますけど」

アーニャ「うん! もし、みんなをいじめにくる人間が来たら、あたしたちが守ってあげるからね!」

最上「……僕たちはすごい子たちを味方につけたんだね……」タラリ


山城「私は提督の鋼の意志の方が驚きですけどね。扶桑お姉様に抱き着かれて平然としてるところとか」

提督「恥ずかしいっちゃあ恥ずかしいんだがな」アタマガリガリ

扶桑「……♪」ホオズリホオズリ

ミーシャ「なんていうか、猫みたいですね……」

山城「扶桑お姉様に抱き着かれるとドキドキして耐えられないけど、他の人に抱き着いてるとイライラして耐えられない自分が嫌になってくるわ……」ズーン

提督「しかしまあ、ずっとこのままってのもアレだな。山城、体が持たねえだろ? 明日から適当に演習に出るか」

山城「ええ、扶桑お姉様も、少しでも昔の感覚が取り戻せればいいかもしれませんね……」

今回はここまで。

なかなか鎮守府の日常を書けない……。
メディウムにももう少しスポットを当てたいところです。

乙乙。
あの薄着のおっぱいでじゃれつかれるとか男にとっては拷問じゃないですかやだー

>>428
扶桑お姉様可愛い。


投下します。

 * 幕間 ハグ *

エレノア「で、抱きつかれたまま執務室まで来たってこと?」

扶桑「~~♪」ギュウウ

提督「まあな」

エレノア「まったく、そういうことならわたしに任せればいいのに」ニヤニヤ

山城「駄目です! せめてその腕と胸元のとげを外してからにしてください!!」

エレノア「あら、それでいいの?」カチャカチャ

山城「」

エレノア「ほら、いらっしゃい♪」

扶桑「……」ジッ

エレノア「ん? どうしたの?」

扶桑「……ああ、かたきを取ってくれたメイデンハッグさん、やっと見つけたわ……!」ニコー

山城「あ、そういえばそうだったわ……」

扶桑「うふふふー」ダキツキー

エレノア「えっ、ちょっと、そんな躊躇いなく抱きつかれるとわたしも戸惑うんだけどっ」アセッ

提督「今の扶桑はもう怖いものなしだな」

山城「ちょっとエレノアさん! 扶桑お姉様の玉の肌に傷を付けたらただじゃ済ましませんよ!」

エレノア「わ、わかってるわよ! もう、よしよし……」ギュ

扶桑「うふふふ……」スリスリ

山城「大丈夫なんでしょうか扶桑お姉様……仮にもアイアンメイデンなんて中世の拷問器具だというのに」

提督「まあ、さすがに俺の部下に怪我させるような真似はしねえだろ、ニコの言い分からして」

エレノア「まあ、たまにはいいわよね。もう、ほんと子供みたいになっちゃって」ナデナデ

扶桑「……すんすん」

エレノア「ん?」

扶桑「……いいにおいがします……すんすん」

エレノア「え? あ、ああ、普段お酒ばっかりだしね、酒臭いって言われるし……ちょっとノイルースに頼んで香木を炊いてもらったのよ」

扶桑「落ち着きます……すんすん、くんくん」

エレノア「そ、それにだねえ、私アイアンメイデンだし、血のにおいもするから、ちゃんと洗わな……って、ちょっと扶桑?」

扶桑「すんすん」ムネニスリスリ

エレノア「ちょっ、におい嗅ぎすぎだって! そんな犬みたいに鼻を鳴らして」

扶桑「くんくんっ」クビスジスリスリ

エレノア「もう、や、やめなさいってば!」ヒキハガシッ

扶桑「あ」

山城「え」

扶桑「あの、もう少し……」ヒキヨセー

エレノア「だめ! もうだめ! おしまい! 今日は看板よ!」ダダッ

山城「え、逃げた!?」

扶桑「ああっ、待って!」ダッ

山城「扶桑お姉様!? ちょっと待ってください!!」ダッ

提督「……なんだってんだ一体」

 * 翌朝 執務室 *

ニコ「あ、寝坊助がやっと起きてきた」

赤城「あら、提督少尉、おはようございます」

提督「ふあ……ああ、おはようさん。枕が変わったせいであまりよく眠れねえな。なんで俺の布団やら何やらが全部新品になってんだ?」

如月「ま、まあまあ、今日も一日、頑張りましょ?」

提督「……? まあ、いいけどよ」

赤城「では、本日の予定ですが……」

大淀「私の役目が……」ポツリ

赤城「あっ! ご、ごめんなさい、いつもの癖で!」

ニコ「つくづく向こうの鎮守府の苦労が伺えるね」

如月「本当ね……」


ニコ「ところで、報告があるんだけど」

提督「ん?」

ニコ「昨晩、島の外から人間がこの鎮守府を監視してるみたいなんだ」

川内「巡視船1に駆逐艦艦娘2、ってとこかな」シャッ

提督「川内も忍者じみてきたな……で、そいつらは物見遊山に来ただけか?」

川内「そうだね、わざわざ北の海域通ってふらふらして行ったし、島の周りの様子見って感じだったね」

ニコ「ただし、奴らは確実にこの鎮守府を見ていたよ、あからさまな警戒態勢を取ってね」

提督「うぜえな……放っておいてくれねえもんかね」

ニコ「深海棲艦を追い払ったからね、良くも悪くも有名になったからかな」

川内「それなんだけどさあ、その敵だった昨日泊地棲姫とお話ししてたじゃない? 提督は深海棲艦と友好的に行くつもりなの?」

提督「泊地棲姫が仲良くしたいっつうから仲良くする話ではある。が、深海棲艦全体と仲良くする気はねえぞ?」

提督「深海棲艦なんて一括りにしてるけど、ル級みたいなやつがいる以上は、あいつらだって一枚岩じゃねえだろ」

提督「どうあっても人間が嫌いな奴もいるし、戦わずに放っておいて欲しい連中もいるはずだ」

ニコ「後者は魔神様だね?」

提督「おうよ。そういう意味じゃ人間どもも同じじゃねえの?」

提督「ただ、人間の場合はそこに金やら名誉やらが絡んでくるからな、平気で誇りを質に入れてる連中が多くて困る」

川内「じゃあ、戦争終結のための深海棲艦との和睦とかは考えてないんだ?」

提督「ねえな。つうかどこから出てきたそんな話」

川内「神通からよ。以前神通がいた鎮守府の提督が、深海棲艦とのコンタクトを取る方法を模索してたっていうからねー」

提督「そんな話ができるようになったのか」

川内「提督のおかげだよ?」ニカッ

ニコ「?」

川内「あ、わけわかんないって顔してるね」

提督「神通も大佐に因縁があったってことだよ」

ニコ「……ふぅん。とりあえず、その和睦って言うのは、君たち艦娘も望んでることなの?」

川内「全員か、って言われるとそこはわかんないね。私個人で言うなら、それもありかなって」

川内「でも、肝心の提督はあんまり乗り気じゃないみたいだし、今の気楽なスタンス崩したくないんじゃない?」

提督「ああ。俺は俺の手の届く範囲のことしかしねえ。俺の手に余るようなお役目は御免だ」

川内「だーから昇進できないんだよー。する気もないだろうけどさ」ケラケラ

川内「で、そういうニコちゃんはどうなの?」

ニコ「ぼくたちメディウムは、何があろうと魔神様の意に従うつもりだよ。人間もどうなろうと構わないしね」

川内「提督と一蓮托生ってわけね」

提督「……とはいえなあ……」

ニコ「どうしたの魔神様?」

提督「ぶっちゃけやる気が失せた」グデー

川内「は?」

提督「あれだな。扶桑と同じで燃え尽き症候群だ」

ニコ「魔神様!?」

提督「だってなあ、目障りな大佐は潰したろ? メディウムでも深海棲艦でもこの島じゃそこそこ穏やかに暮らせそうだろ?」

提督「この島の艦娘の悩みもだいぶ解決できてるしよぉ。利己的な人間と関わらねえ生活も、今じゃ清々しいくらい快適すぎて幸せでなあ……」

提督「俺としちゃあ今の時点で人生の目的8割がた達成しそうなんだよな。今死んだら間違いなく成仏する自信がある」グデー

川内「提督が溶けてる!?」

ニコ「こら、寝ぼけてる場合じゃないよ? さっきも言ったけど、この島に敵が近づいてきてるんだよ?」

提督「……はぁ、どいつもこいつもなんだって俺みたいなやつにご執心なんだか。俺はもうこのままくたばりたいんだがな」

川内&ニコ「「それはだめ」」

提督「へいへい」


ニコ「……川内、嬉しそうだね?」

川内「えー、そりゃあね? あのいつもつっけんどんな提督が、私たちと一緒にいて幸せって言ってくれたんだもん」ニシシ

川内「ちょっと共依存入ってるなーとは思うけどさ。ほら、私たちも提督も、人に捨てられてここに来たわけだからね」

ニコ「それを……捨てたはずの魔神様を利用しに、人間がまた拾いに来た、ってことだよね。頭にくるなあ……」

川内「それだけならまだいいんだけどね。神通は心配してたよ、提督が狙われたりしないかって」

ニコ「ヴェロニカから聞いた中佐の話に近いね……彼女はどのくらい知ってるの?」

川内「えーっとねえ……」

 * 一方その頃 本営 大将の執務室 *

大将「どうだったかね甥っ子君。提督少尉の様子は」

中佐「まるで何事もなかったというくらいに落ち着いていましたよ。彼の艦娘は狂喜乱舞と言った風でしたが」

大将「そうか。鎮守府の士気が上がるのなら、それに越したことはない。ますます働きが期待できるということだ」

大将「それで、少尉はどんな奴だった? 深海棲艦と関係は持っていそうかね?」

中佐「彼の人柄については、昔、大佐に聞いた通りです。愛想は悪く傍若無人、好青年とは言い難い。自分から人を遠ざけようとしている嫌いもありますね」

中佐「ただ、個人的には、嫌味でいけ好かない奴という評価は取り下げて良いと思います。あれは大佐を嫌悪していたせいでしょう」

中佐「また、彼が深海棲艦との接触を図っているような態度は見受けられませんでした。興味すらなさそうな、他人事とも思える態度でしたね」

大将「そうか。やはり噂は噂でしかない、か……」

中佐「あの鎮守府のある島に、近海の深海棲艦が出入りしている、という噂話ですか?」

大将「ああ。それが本当なら、私は彼に期待できると思っていたのだが」

中佐「深海棲艦との和睦の件ですか。僕は聊か急ぎ過ぎではないかと……」

大将「いや、打てる手は打つべきだ。このまま指を咥えて見ているようでは手遅れになってしまうだろう」

大将「それにな、彼が接触を否定したとすれば、今度は逆の場合……深海棲艦に通じている可能性も考えなければならんのだ」

中佐「伯父さん!?」

大将「中佐。大将と呼びたまえ」

中佐「……っ、た、大将殿、それは不自然でしょう? 裏切っていたのなら、なぜあの鎮守府が深海棲艦から攻撃を受けるのです?」

大将「今回の襲撃で理解できない点はたくさんあるが……中でも俺が不思議に思うのは、大佐とその部下の遺体が見つかっていないことだ」

大将「二日がかりの大捜索。爆撃の跡や、焼けた脱出用ゴムボートは見つかったが、彼らの痕跡は髪の毛一本残っていない」

大将「大佐は深海棲艦に連れ去られたと言うし、その部下たちも全員死んだことになっているが、誰一人としてどう死んだか証言できないときた」

大将「かといって赤城が持ってきた計画書も疑ってみても、あれはあれで信憑性が高いし、その部下の艦娘の証言も一貫している」

大将「発砲済みの大佐の拳銃も見つかっているし、提督少尉もその拳銃で撃たれたと思われる銃創があった」

大将「……ただ、弾丸が残っていないのと、即死するような場所を撃たれて助かった点はやはり疑問が残る」

大将「私の都合の良いように考えれば、提督が何らかの形で深海棲艦側に協力をこぎつけ、大佐たちを引き渡した、とも思えたんだが」

大将「君の言う通り、深海棲艦との接触を否定するのなら、本当に知らないうちに深海棲艦に助けられたか、後ろめたい何かがあるか……」

中佐「……」

大将「しかもだ。直接関係はないだろうが、捜索中に提督少尉と艦娘以外の人間がいて、そいつらが幽霊のように鎮守府内に現れたり消えたりしているという話まで出てきた」

中佐「ゆ、幽霊ですか?」

大将「下らん冗談かと思いきや、複数の部下が同じようなことを言う」

大将「海賊の姿をしていたり、軍人、スーツ姿と様々だ。中には西部劇のカウガールだのゴルファーだの、世迷言を言う馬鹿もおったが」

大将「そのおかげで、彼らはあの島の幽霊に食われたんじゃないか、という噂で持ち切りだ」

中佐「……食われた……幽霊にですか」

大将「甥っ子君? 顔色が悪いようだが」

中佐「……大将殿、今の私は中佐です」

大将「まじめだな甥っ子君は」

中佐「それより……私もひとつ、仮説を立てたのですが」

大将「話してみたまえ」

中佐「まず、中将の暗殺を阻止したのは誰でもない提督少尉です。僕には、大佐こそ深海棲艦に繋がっているように見えます」

大将「ほう?」

中佐「大佐が深海棲艦に島へ攻め込むように内通し、大佐は中将と提督少尉を始末する」

中佐「鎮守府を攻め込ませて証拠を消して、その後自分たちの艦隊を使って、深海棲艦を撃破して口封じと共に、戦果を挙げて昇進を狙う」

大将「……ふむ。一度仲良くして裏切るか。そんなことをしては深海棲艦もただではおかんだろう、大佐がそこまでのリスクを背負うだろうか?」

中佐「もし戦争を続けるのが目的なら、逆にそれは十分なリターンになるのではないかと」

中佐「彼らはかつて、人間の力で艦娘や深海棲艦に対抗できる力を模索するために、艦娘や深海棲艦を使った実験を行っていたでしょう?」

中佐「その技術が確立できたのなら、それを見せつけ、様々な面であらゆる勢力に優位に立ち、戦争を続けようとするでしょう」

大将「一度、その技術の開発中断を命じていてもか?」

中佐「大将殿もよく仰っているではありませんか、『ああいう連中は諦めが悪い』と」

大将「……大佐が深海棲艦を煽った、というのは事実のようだ。艦隊を泊地棲姫の拠点に向かわせ、打撃を与えているのは確かだ」

大将「いや、待てよ? 仮に彼が深海棲艦と繋がっていたとしたら、死んだと見せかけて深海棲艦のもとへ身を寄せている可能性もあるのか!?」

大将「だとしたら最悪だ! やはり、どうやって提督少尉は深海棲艦を追い返したのか、問いただす必要がある!」

中佐「……」

大将「……甥っ子君。やはり顔色が悪いぞ? 何があった」

中佐「いえ……提督少尉からの忠告です。人間は……特に僕は、あの島には近づくな、と言われてきました」

大将「どういう意味だ?」

中佐「……詳しくはわかりません。ただ……」

大将「ただ?」

中佐「……人間が、人間ではなくなる、と」

大将「……」

中佐「……」

 RRRR... RRRR...

大将「ん、私か……なにかね?」チャッ

大将「……ふむ……そうか」

大将「……わかった。いや、まずは部下全員に招集をかけてくれ、可及的速やかにだ」ピッ

中佐「……」

大将「悪いニュースが2つだ。ひとつは、追い返したはずの泊地棲姫が、件の鎮守府近海に潜んでいるらしい」

中佐「な!?」

大将「そしてもう一方は、同じくその鎮守府に所属不明の不審な船が接近しているということだ」

大将「その船の周囲には艦娘の姿もあるらしい。我々と同じく……いや、目的はわからんが、海軍内で彼に接触したい者がいるようだ」

中佐「……味方、でしょうか」

大将「私は命じていない。勇み足を踏む馬鹿者か、それとも戦争を続けたい馬鹿者か。どちらにしろ面倒だな」

中佐「て、提督少尉に連絡を取ります!」

大将「待て。彼の出方を見る」

中佐「大将殿!?」

大将「残念だが私は提督少尉を完全には信用していない。彼の本心を見極めるいいチャンスだと思っている」

大将「中佐。君はここで待機だ。いいな、これは命令だ……ゆっくり休んでいたまえ」

中佐「……はっ」

中佐(……海軍は、どうしてこんなにもバラバラなんだ……こんな戦争を終わらせるのが、海軍じゃないのか……?)

中佐(提督少尉……君はどうするつもりだ? 下手をすれば海軍も敵に回すことになるぞ)

今回はここまで。

すみません、大変お待たせしました。

続きです。

 * 執務室 *

提督「転属願い、ねえ……」

赤城「部下A鎮守府の北上、霰、満潮、B鎮守府の名取、弥生、初霜は、当人の希望によりこちらの鎮守府へ異動させていただくよう申請しました」

提督「……名取とか初霜は大丈夫なのか? 初霜は特にいろんな意味で」

赤城「名取さんと弥生さんがフォローしていますし、初霜さんは姉妹艦の初春さんや若葉さんがいますので、安定はするのではないかと」

提督「だといいがな。初春はともかく、若葉はなあ……こりゃまた初春に苦労を掛けるな」

赤城「それと、提督少尉。私は今週中に元の鎮守府に戻ろうと思います」ペコリ

提督「そうか」

扉 <バンッ!

比叡「やっぱりそうなんですか!?」

セレスティア「そんな、赤城さん帰るんですか!?」タタタッ

スズカ「うちまだ少ししかご馳走しとらんよ!?」タタタッ

赤城「あら、あとでご挨拶に伺おうと思ってたんですが」

セレスティア「それにしたって急ではありませんか」

提督「この鎮守府で働くこと自体が、一時的な措置だからな。大佐のいた鎮守府にいる艦娘たちのことも考えてやれ」

比叡「……そ、そうですね。加賀さんは特に淋しがってるかも」

赤城「ええ。それに、あまり長居してしまうと、この鎮守府に胃袋を置いていく羽目になりそうですから」ニコー

スズカ「うちらは構わんのに……」

セレスティア「残念です……」シュン

提督「お前らいつの間にそんな仲になったんだ」

比叡「食堂で食べ終わった後、毎回110度頭を下げて御膳を返しに来る方は赤城さんだけですから!」

セレスティア「料理人冥利に尽きるというものです」

提督「だがまあ、そーだな……お前らの飯を食べ慣れたら、余所では苦労しそうだよな」

赤城「はい。正直、後ろ髪引かれる思いですが、私にも仕事がありますし加賀さんや蒼龍さんも心配してくれています。それに……」

スズカ「それに?」

扉 <バーンッ!

カトリーナ「お、おい! 速吸どこ行ったか知らないか!?」

提督「いや、見てねえぞ。どうした?」

電「マリッサさんがまたどこかに消えたのです!」

比叡「」

セレスティア「」

スズカ「」

提督「あー、ニコに訊け、ニコに」

電「わかったのです! カトリーナさん、ニコさんを探すのです!」ヒョイッ

カトリーナ「え、ちょっ、ヒョイッて、なんであたしをお姫様だっこすんだよ!?」

電「電の! 本気を! 見るのです!!」

カトリーナ「お、おろしてくれーーー!」ドドドド…

比叡「……」

セレスティア「……」

赤城「早く戻らないと、速吸さんが手遅れになりそうな気がして……」トオイメ

スズカ「もう手遅れなんじゃ……」

提督「言ってやるな」

提督「そういや、今日は蒼龍も来てるんだっけか?」

赤城「はい、来るといつもスパイクボールさんやヘルファイアーさんと一緒に遊んでますね」

ソニア「赤城さん?」ヌッ

赤城「!?」ビクッ

ソニア「駄目だよ~、みんなのことは罠の名前じゃなくて、ちゃんと名前で呼んであげてねー?」

赤城「そ、そうですね、すみません」ドキドキ

ソニア「うん、よろしくねー」タタッ

赤城「……ほっ」

提督「ソニアはどこから現れたんだ」

ニコ「魔神様? さっきソニアが部屋から出てったみたいだけど……あれ? 赤城? ……ってことはもしかして」

赤城「あら、ニコさん。ええ、不覚でした」

提督「なにがあったんだ?」

ニコ「ソニアから、お仕事の時はいいにしても、プライベートの時はちゃんと名前で呼んでほしいって言われてるんだ」

赤城「ですが、どうしても私は想像しやすい罠の方の名前で呼んでしまうもので、しょっちゅう注意を受けてるんです」

提督「注意ねえ」

赤城「ツバキさんやオボロさんは日本語の名前で覚えやすいのですが、えーと、サンダージャベリンさん? あたりになると……」

ソニア「 <○><○> 」

提督「」

赤城「ひっ!?」ガシッ

ニコ「ひっ!?」ガシッ

ソニア「ちょっとお、二人ともどうして魔神様に抱き着いてるのー? ずるーい」

提督「お前の現れ方が心臓に悪いだけだ」ナデナデ

ニコ「あっ」テレッ

赤城「て、提督少尉!? どうして私もなでるんですか!?」カオマッカ

提督「ん……悪い。つい手拍子で」

ソニア「 <○><○> 」

赤城「ひいっ!?」ギュウ

ニコ「ひいっ!?」ギュウ

提督「ああ、ソニアもなでてやるからこっちこい」ハァ

ソニア「そ、そういうつもりじゃないってば」カァァ

提督(でも素直に近寄ってくるんだな)ナデナデ

ソニア「え、えへへー」ニヘラ



提督「ところで赤城。お前そんなにソニアが怖いか?」

赤城「……なんとなくなんですが、メディウムの皆さんは、どこかしら深海棲艦と似たような雰囲気がありまして」

赤城「戦闘時ともなれば気を張って敵の雰囲気にのまれないようにと心構えができますが、平時はそうではありませんから」

提督「……深海棲艦と似てる、ねえ」

今回はここまで。

それでは続きです。

 * 鎮守府内 埠頭付近 *

ディニエイル「……というわけで、ミス赤城からはなかなか名前で呼んでもらえないのですが……」

グローディス「私たちの名前って、そんなに覚えづらいか?」

不知火「残念ながら、発音も語感も日本人には少々馴染みが薄いですので、無理もないかと」

暁「暁はちゃんと覚えたわ!」フンス

グローディス(たまに噛むけどな!)ニコー

朝雲「暁ちゃんたちにはロシア系の姉妹艦がいるからね」

ミリーエル「? ……もしかして、暁さんの姉妹はこの島に全員揃ってないんですか?」

暁「ええ、来てないわ。暁と電の間には、響と雷っていう妹たちがいるんだけど」

朝雲「四人姉妹で全員揃ってるのは金剛型だけよね?」

不知火「川内さんたちは三姉妹ですが、こちらも揃ってはいますね」

ディニエイル「そこへいくと我々は、姉妹を持つ者自体が少ないと……」

ノイルース「私たち以外では、ユリア、クレア、ソニアの三姉妹と、アーニャ、ミーシャの二人だけですか」

不知火「艦娘の殆どは姉妹がいますから、姉妹がいないと言うのは少し寂しく感じますね」

グローディス「私たちは姉妹がいる方が珍しいからな。まあ、仲間もいるし、みなそこまで寂しくは感じてないと思うが……」

ディニエイル「むしろ姉妹が離れ離れで傍にいないことの方がつらいと思います」

暁「でも、暁たちは軍艦だから、妹たちを残して沈むこともあるわけだし……つらくないと言えば嘘になるけど、そういうことは考えないようにしてるわ!」

朝雲「あと、できればこの島に来て欲しくないって気持ちもあるのよね……」

ノイルース「……不幸な艦娘を呼び寄せる島ですからね。そういう意味では来てほしくないと」

ミリーエル「そう考えると複雑ね……」

暁「ところで、質問してもいい?」

ミリーエル「なんでしょう?」

暁「4人のなかで誰が一番お姉さんなの?」

ノイルース「それは……おや?」

 ドドドドドドドド

グローディス「な、なんだ!?」

暁「こ、この足音!」

白露「呼んだー!?」キキーッ

不知火「いえ、呼んでいません」

白露「嘘だあ、いっちばーんお姉さんなのは私だよ!」フンス

ディニエイル「あれが聞こえてたんですか」タラリ

暁「あ、暁だってお姉さんなんだから!」フンス

グローディス「……なあ、あたしたちの話じゃなかったのか?」ヒソッ

朝雲「こうなると二人とも止まらなくなるから」ヒソッ

雲龍「……あら、賑やかね」

暁「あっ、雲龍さん!」

白露「ちょうどいいわ、あたしと暁ちゃんと、どっちがお姉さんだと思う!?」

雲龍「それは……難しいわね。二人ともお姉さんしてると思うわ」ムー

白露「そういうのじゃなくて、どっちがって話!」

朝雲「あのさ、雲龍さんも妹さんが二人いたわよね」

雲龍「ええ、天城と葛城ね」

朝雲「雲龍さんと妹さんたちとで、差がついてるところってある?」

雲龍「……そうね……」ウーン

ノイルース「……なるほど、差になるところを聞いて判断しようと」ヒソッ

朝雲「第三者の意見なら公正でしょ?」ヒソッ

雲龍「髪の長さと」

白露「!」

暁「!」

雲龍「胸の大きさかしら」タプン

白露「」イヌガミケ

暁「」キリモミフットビ

ミリーエル「し、白露さん!? 今の一瞬でどうやって埋まったんですか! 白露さん!?」

グローディス「暁!? し、しっかりしろ!?」

暁「あ、あかつきは、せいちょうき、なんだ、から……」ガクッ

グローディス「暁ぃぃぃぃ!」

不知火「……ダブルKO、ですか」

雲龍「この中だと……僅差で朝雲ちゃんが一番お姉さんかしら」ジーッ

不知火「!?」

朝雲「ふえっ!? ちょ、ちょっとやめてよ雲龍さん!」カァァ

雲龍「……あなたたちだと……みんな互角ね」ジーッ

ディニエイル「!?」バッ ←胸隠し

グローディス「お、おい!? どこ見てるんだ!」バッ

ミリーエル「は、恥ずかしいです!」バッ

ノイルース「うう、顔が火照って……」バッ

雲龍「……4つ子かしら」

不知火(相変わらず掴み所のない方です)


不知火「ちなみにその基準でいくと駆逐艦で一番お姉さんなのは誰ですか」

雲龍「……潮ちゃんかしら」

ディニエイル「何を聞いているんですミス不知火」

不知火「ではメディウムの中では」

雲龍「……タライの子かしら」

ディニエイル(フウリ……恐ろしい子!)シロメ

島風「ねえねえ、どうして白露は埋まってるの?」

ミリーエル「ええと、とりあえずタチアナを呼んで掘り起こしましょう」


 * 執務室 *

赤城「……浜風? 知らない子ですね」キュピーン

筑摩「赤城さんはいきなり何を仰ってるんでしょう」

利根「よくわからんのう……」

今回はここまで。

続きを投下します。

 * 入渠施設の隣、大浴場 *

 カポーン

潮「はふう……」チャプーン

フウリ「はふう……」チャプーン

長門「……」

潮「……ど、どうしたんですか長門さん」

フウリ「わ、私の顔に何かついてます!?」ワタワタ

長門「いや、ふたりは似ているなと思ってな」

フウリ「え、そ、そうですか……?」テレッ

潮「……最初にあった時から、なんとなくそんな雰囲気はあったよ?」ニコ

長門「なあ、そう思わないか、名取?」

名取「えっ? あ、そ、そうですね、似てるんじゃないかと……」アセアセ

長門「カサンドラもそう思わないか」

カサンドラ「ひゃっ!? ひゃいっ!」ワタワタ

長門「……」

フウリ(この二人も似てるかも……)

名取「そ、それじゃ私はこれで……」ソソクサ

カサンドラ「わ、私も……」ソソクサ

長門「待て待て待て! お前たちさっき入ってきたばかりだろう! カラスの行水にも程がある!」

カサンドラ「だ、だ、だって人前で素顔になるなんて恥ずかしいですよぉぉ!!?」ビクビクビクーッ

潮(裸の方が恥ずかしくないのかな……?)

名取「わ、私も、そんなに、得意じゃない、かなあ……」オドオド

フウリ「で、でも、せっかくのお風呂ですから、もっと、入ってたほうが……」

潮「フウリちゃん、お風呂好きなんだ」

フウリ「はい……大きくて、あしを伸ばせるお風呂っていいですよね」ポワー

名取「わ、私は、誰もいないときに、一人で入りますから……」

カサンドラ「わ、私も……」

長門「一人で? この風呂に一人で入るのは勧めないぞ?」

名取「ど、どうしてですか?」

長門「……ここには出るらしいんだ。コレが」ウラメシヤー

名取「!?」

カサンドラ「!?」

フウリ「あわわわ……」

潮「川内さんが何度か気配を感じたって言ってた話ですか?」

長門「2、3度会ってるらしいな。この前は背中を流してもらったとか言っていたが……」

名取「そ、そんなお風呂だったらなおさら入っていられないんじゃ!?」ビクビクビクーッ

カサンドラ「フ、フウリちゃん、タライ貸して!? タライにお湯入れて行水するから!」

長門(ほう、タライに入って行水?)

潮「だ、大丈夫ですよ、二人以上で入れば出てこないって言われてますから!」

長門(二人で?)

名取「ほ、本当?」

カサンドラ「ううう、どっちみち誰かに顔を見せないと駄目なんですか……」

潮「そういえばメディウムのみんなが傷を癒す時もお風呂に入るの?」

フウリ「は、はい。けがを治す時や、魔力を回復するときに、魔力槽に……」

長門「……」

潮「? 長門さん?」

長門「……」


長門(二人でタライの中に入る……潮とフウリが……)モヤモヤーン

長門(当然あの小さなタライでは小柄とはいえ二人ではいるのが精いっぱい……)

長門(狭いタライの中で抱き合うように入れば、お互いの胸を密着しあう形に……)

長門(行水なのだから、当然のように上からシャワーをかけて……)

長門(ああ、楽しそうだ……混ざりたいが……)


長門「……」

潮「な、長門さん?」

フウリ「ど、どうしたんですか?」

長門「駄目だ、もっと大きなタライを準備しないと……!!」

フウリ「!?」

長門「いや、せめてこの私が駆逐艦だったなら……!!」

潮「!?」

カサンドラ「あ、あの、長門さん?」

長門「……いや、少々のぼせてしまったようだ。あがろうか」ザバー

4人「「「「????」」」」


長門「ところで……あの武蔵にも似た風貌の……あれは誰だ?」

???「ふぅ。……ん? アタイがどうかしたかい?」ホッソリ

フウリ「オリヴィアさんですよ?」

長門「!?」

潮「!?」

名取「?」

フウリ「オリヴィアさんは痩せやすくて羨ましいです……」

オリヴィア「そうかねえ? アタイはまた体作りし直さないといけないんだ、たまったもんじゃないよ」

長門「痩せやすいってレベルじゃないぞ……」

潮(お腹まわりのお肉が全然なくなってる……羨ましいなぁ)

名取「すごい綺麗な人ですね……」

長門「ああ、名取はもともとの姿を知らんのか……」

潮「元に戻ったら驚くでしょうね……どっちが元なのかわかりませんけど」

名取「?」

今回はここまで。

少しだけ続きを投下します。

 * 練習場 *

那珂「……」

シェリル「ビートが足りないね。もっと心を揺さぶるような激しさが欲しいね」

レイラ「そうかしら? もっと緩やかで穏やかな曲調の方がよろしいかと」

シェリル「あたしは魂揺さぶるメタルがやりたいんだけどな」

レイラ「ゴスペルの方が聞く方の心に響くと思います」

シャルロッテ「やっぱりこうなっちゃったかー」

クロエ「まあ、仕方ありませんねえ!」

那珂「あうー、新曲作りたいって言ったら全然方向性が逆なんだもん」

那珂「那珂ちゃんが歌いたいのはリズムに合わせてダンスできるような明るい曲なんだけどなあ……」

シェリル「それならロック調のがいいだろ?」

レイラ「オペラミュージカルの方がいいでしょう?」

オディール「ダンスでしたらおまかせでしてよ! 目指すはプリマドンナですわ!」

那珂「えっ!? な、なんでそんなことになってるの!?」

クリスティーナ「もっと高くジャンプするの! 更なる高みを目指すのよ!」

那珂「うえ~ん、那珂ちゃんはセンターを目指してるのに~! なんでこうなるの~!?」

シャルロッテ「あー、駄目ねこの布陣。我が強い人多すぎるわ」

クロエ「船頭多くして船山に上る……これが本当の山頂布陣!」

那珂「それじゃ馬謖さんじゃなーい!」ビシッ

クロエ「おや、意外と博識ですねえ」

那珂「だって提督が頭の弱いアイドルは大嫌いって言うから、勉強したんだよー! でも、これじゃバラエティには呼んでもらえないかもだけど」

シャルロッテ「えー、その方がいいでしょ? バラエティなんて何されるかわかんないじゃん?」

クロエ「バラエティ……ということは娯楽ですか! 娯楽でしたら私クロエがジャグリングでも玉乗りでもご指南いたしましょう!」

那珂「もー! アイドルはそんなことしないんだってばー!」



足柄「意外とそういうことやらさられたりするのよね。深夜番組枠で」

千歳「ありましたね、お笑い芸人とどう違うのかわからない扱いされて。そういうくだらない番組、前の鎮守府で見てましたね」

足柄「そうね……今は何してんのかしら、あの前提督。私たちをこの島へ追い出してから、愚痴こぼす相手がいなくなって鬱で退役したんでしょ?」

千歳「ええ。それからリハビリして一般企業に勤めて、半年で寿退社したそうですよ」

足柄「えっ!? なにそれ、どこ情報!?」

千歳「初春ちゃん情報です」

足柄「ああ、それじゃ確実ね……そっか。やっと奥様になれたのね」

千歳「懐かしいですね。碌な男がいないって毎晩毎晩酔い潰れて……足柄さんがいい加減にしなさいって喝を入れたらわんわん泣き出して」

足柄「それでお互いブチ切れて出てけー、だもんねー。そうそう、私は千歳がお酒をやめるよう進言したときが一番びっくりしたわ」

千歳「ドクターストップがかかってましたから。結婚願望がある人を潰すようなことはしたくありませんでしたし」

足柄「結局は、誰かに甘えたくって、誰かに必要とされたかったのよね、あの人。私たちのへ八つ当たりもそうでしょ?」

千歳「いろいろありましたけど……ともあれ良かったじゃないですか。寄り添える誰かに出会えたんですから」

足柄「長続きするといいわねえ」

千歳「大丈夫ですよ。あの人、素面だと世話焼きだったじゃないですか」

足柄「それもそうね。ふふふ」



クリスティーナ「で、そもそもアイドルってどういうことをするのかしら」

レイラ「私も疑問に思っていました……どういうご職業なんでしょう?」

那珂「わかんないでいたの!?」

リンダ「うーん、さっきからええツッコミやな、うちと一緒にコンビ組まへん?」

那珂「もー、なんでそうなるの~~!?」

今回はここまで。

提督「墓場島鎮守府?」
提督「墓場島鎮守府?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476202236/)

上記に別スレを立てさせて戴きました。
こちらに、この島に住む艦娘たちの鎮守府着任の経緯を書いていきますので、
こちらもよろしくお願い致します。

続きです。

 * 執務室へ向かう通路 *

朝潮「司令官! 資材搬入にお立合いいただき、ありがとうございました!」

提督「いいさ、俺がじかに確認しておきたかっただけだからな。報告書頼むぞ、朝潮」

朝潮「はい、お任せください!」ビシッ

ニコ「そういえば魔神様? 如月から、利根に魔力槽を使わせて欲しいって話が来てたから、ジェニーと一緒に案内してあげたよ」

提督「利根? ……そうか、如月に気を使わせちまったな」

ニコ「一応、魔力槽の管理はぼくがしているから立ち会わせてもらったけど、あの怪我の様子じゃ気を使って当然だと思うよ」

朝潮「ニコさんも利根さんのお怪我を拝見されたのですか?」

ニコ「うん。だから、ぼくたちの使っている特別なお風呂で治療できないか、試してみたんだ。そろそろ治療が終わってるはずだよ」

提督「なら、執務室で待ってる筈だな?」

執務室の扉「」トントン

提督「入るぞ」ガチャ

利根「提督よーーー!!!」ダキツキーーーッ

提督「ぐほあ!?」ドガッシャー

ニコ「魔神様!?」

朝潮「司令官!?」

赤城「ちょっと利根さん!?」

ジェニー「うっわ、リーダー大丈夫なの!?」

筑摩「も、申し訳ありません提督! 抑えるようにと利根姉さんにも言ったのですが……」

利根「むうう!? す、すまぬ提督! 吾輩としたことが喜びのあまり加減を失念しておった!」マウント

提督「……お前な」ボロッ

ニコ(とりあえず魔神様の上から退けるのが先じゃないのかな、利根は)

ジェニー「いいなあ、私もリーダーでロデオしたいなあ」

赤城「!?」カオマッカ

ニコ「ジェニー、声に出てるよ」

朝潮「ろでお? どういう意味でしょうか」

赤城「朝潮さんにはわからなくていいことですよ?」マッカ

朝潮「そうですか?」クビカシゲ

提督「……で? 喜びのあまりとか、なにがあった」

ニコ(乗っかられたまま聞くんだ)ハイライトオフ

利根「よくぞ聞いてくれた提督よ!! 吾輩がかつての鎮守府でどんな仕打ちを受けたか、提督は知っておるな?」

提督「あ、ああ」

利根「吾輩の……その、腹やら胸やら、ひどい有様じゃったのは、知っておるな? どんなふうだったか、覚えておるな?」

提督「まあ、な。ひでえ火傷の痕があったんだよな」

利根「一生癒えぬと言われた傷じゃ。それがの! めでぃうむたちのマリョクソウ? とかいう風呂のおかげで消えたんじゃ!」パァァッ

提督「! 本当か!」

利根「うむ! 見よ!!」バッサーッ

赤城「キャアアアアア!?」マッカ

筑摩「あっ」ハナヂブバーッ

ジェニー「ちょっ、筑摩!?」

ニコ「なんで大量出血してるの!?」

筑摩「だ、だって、今まで利根姉さんは私に裸を見せてくれなかったんですよ」ダラダラ

筑摩「それを、こんな形で見ることができて……こんな綺麗なボディに思わず興奮してしまって、つい!」

ジェニー「ついじゃないわよ! ほら、詰め物して!」

提督「利根もとりあえず隠せ」スッ

利根「いやいや、もっとしっかり見てほしいのじゃ、綺麗になったじゃろう?」バサッ

赤城「ちょ、ちょっと、利根さんっ!?」オロオロ

筑摩「ふひいいい」ハナヂブババーッ

ジェニー「筑摩!? 筑摩しっかりして! 誰か! 誰か目隠しを持ってきてー!」

提督「わかったから隠せって」スッ

ニコ「っていうか、なんでパンツはいてないの!?」マッカ

利根「そんなもの、はなから履いておらんぞ?」

朝潮「ええ!? そ、それはどういうことですか!?」

利根「このほうが楽での。腹を圧迫され続けるのも好きでないし、はかないと陰毛も綺麗に伸びるでな」

提督「つか生えてねえだろお前」

利根「んー、まあそういえばそうじゃのう」スカートマクリ

筑摩「うほあああああ」ハナヂドバーッ

ジェニー「誰か筑摩をドックに連れてってー。隔離よ隔離ー」

提督「だから隠せって、筑摩が死ぬ。綺麗になったのはわかったから」スッ

朝潮「なるほど、健康を鑑みてですか! 私も見習いたいと思います!」ヌギヌギッ

赤城「キャアアアアア!?」マッカ

提督「朝潮、お前は履いてろ。あと誰か霞呼べ」

霞「来たわよ! 何の用!?」バーン!

ジェニー「早っ!?」

提督「霞、朝潮がノーパンで過ごそうとしてるようだ、止めてやれ」

霞「ちょっ、何考えてんの! 止めなさいよこのクズ!?」

提督「俺は止めたし発案者は利根だぞ、利根」

霞「ああ、利根さんかあ」

利根「待て霞、その反応はどういう意味じゃ」

赤城「というか、みなさん提督の前で無防備が過ぎます! 恥じらいはないんですか!」マッカ

利根「だって提督じゃしなあ」

霞「このクズの辞書に性欲の文字なんてあるわけないわよ!」フンッ

ジェニー「なん……ですって……」シロメ

ニコ(ジェニーもショック受けてるってことは、さりげなく狙ってたんだ……)

提督「お前ら俺をなんだと思ってるんだ」

利根「提督こそ吾輩をなんだと思っておるんじゃ」

提督「露出趣味」

利根「言うか朴念仁」ズイッ

提督「お子ちゃま」ズイッ

利根「枯れすすき」ズイッ

提督「なんちゃってババァ」ズイッ

利根「似非ニヒリス……ト……」ズ…

提督「……なんだ。どうかしたか」

利根「……か、顔が近いのじゃ」ポ

提督「おう、そりゃ悪かったな。とりあえず俺の上から退けてくれ」

利根「それはできぬ……!」ガシ

提督「!?」

今回はここまで。

それでは続きです。

利根「……この島に流れ着いてからというもの、おぬしにはいろいろ良くしてもらったからの……」ポ

提督「利根……」

利根「この場を借りてお礼をさせてもらえんかの……」ズイッ

ニコ「はい、そこまでだよ。クレーン」

クレーン <ガシーン!

利根「!?」ガシーン!

ニコ「良くしてもらってるのはみんな一緒だよ。抜け駆けは感心できないなあ」

利根「ちょっ、ちょっと待つのじゃ!」ツリアゲラレー

ニコ「待たないよ。今だってどさくさに紛れてキスしようとしてたじゃないか」

ジェニー「ふーん、ニコったらキスくらいで嫉妬してたの?」

赤城(き、キスくらい、ですか……あちらの人は大胆なんですね)ポ

ニコ「べ、別にキスしたいとかそういうのじゃないよ! ほら、魔神様大丈夫?」

ジェニー「もう、そのくらいのこともしてないから卑屈になるのよ。ほーら、さくっとやっちゃいなさい」


 ドンッ


ニコ「え?」ヨロッ

 ドサッ

ニコ「」ヴチュー

提督「……」ヴチュー

全員「……」

全員「………」

全員「…………」

朝潮「……おお……!」

利根「あああ……」

赤城「!?!?////」カァァァァ

霞「ちょっ、アンタ公衆の面前でなにさせてんのよ!?」

ジェニー「……よ、予想以上にがっつり行っちゃったみたいね」

利根「羨ましい! なんと羨ましいのじゃー! アーニャ! 早く下ろすのじゃあああ!」ジタバタ

朝潮「接吻が始まってからすでに20秒ほど経過していますが、これはもう舌も入っていると見て良いでしょうか赤城さんッ!」

赤城「しっ、ししし舌ああああ!?////」プシュウウウウ

霞「赤城さん取り乱し過ぎよ。頭から湯気が出てるわ」

ジェニー「あ、あんたたちこそ冷静すぎよ! ほ、ほら、ニコちゃんもそろそろ離れたら?」グイッ

 チュポンッ

ニコ「////」ポヘー

ジェニー「ちょっとニコちゃん!? ニコちゃんってば! おいニコ!!」ズビシッ

ニコ「痛っ!? ……はぇ!? こ、ここはどこ!? ぼくはニコ!?」ジュル

ジェニー「いいからよだれ拭いて!」

朝潮「あの唾液はニコさんのものなのか司令官のものなのか、気になります!」

霞「そんなのどう考えても混合液でしょ。何を言わせるのよ」

赤城(さささ最近の駆逐艦の子たちは進み過ぎててついていけません!////)ポシュウウウウウウウウ

利根「提督も提督じゃ! 少しは抵抗せんか!!」ムキー

提督「原因はお前の突撃だろうが。痛くて体を動かせねえんだよ、艦娘の力で思いっ切り飛び込んでくるんじゃねえ馬鹿たれ」ヨダレベチャー

ジェニー「で、どうだったの? 30秒間も魔神様とキスしてた感想は?」

ニコ「や、やめてよ! 事故だよ! 事故! と、途中意識が飛びそうだったし、どきどきしてそれどころじゃ……え、えへへ////」テレテレ

如月「ふぅ~ん……どうやらじっくり堪能してたみたいね?」ユラリ

大和「ニコさん? そのお話、詳しく聞かせていただけます?」ヌラリ

金剛「Make love の時間と場所は弁えるべきだと思いマースヨー?」ゾワリ

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ニコ「……」クルリ

如月大和金剛「」ニッコリ

ニコ「」ニッコリ




ニコ「」ダッシュ!

如月「逃げた!?」ダッ

大和「逃がしませんよ!」ダッ

金剛「私は食らいついたら離さないワ!」ダッ

 ドタドタドタドタ…

ジェニー「行っちゃった……」

霞「ったく、何やってんのよあんたたちは!」

朝潮「司令官! 先程からずっと起き上がらないのですが、大丈夫ですか!」ダキオコシ

提督「大丈夫じゃねえよ……真面目にくっそ痛え……」ヨロッ

利根「す、すまぬ提督……」

執務室の扉 <ガチャ

キャロライン「ンー、騒がしいヨ! みんなどうしたノ……ダーリン!? どうしてボロボロになってるノー!?」

提督「ったく……説明すんのも面倒くさくなってきたな」

赤城「と、とにかく提督を医務室に運びましょう! 担架を準備して!」

キャロライン「ダーリン、怪我したノ? それなら、ダーリンも魔力槽に入るといいヨ!」

霞「魔力……って、メディウムの入渠施設に入れるってこと?」

赤城「利根さん、効果は期待できますか?」

利根「む、むう、効能は吾輩も体験済みじゃが……提督にも効き目があるのかの?」

キャロライン「善は急げ、って言うヨ! フローラとルミナにも手伝ってもらうネ!」

赤城「わかりました、その魔力槽へ提督をお連れします」ヒョイ

提督(……お姫様だっこは少し恥ずかしいんだが)

キャロライン「セーンキュー! こっちネー!」タタッ

利根「……のう、ときにジェニーよ。吾輩はいつまでこのままなんじゃ」

ジェニー「あなた、リーダーを怪我させたんだもの、当分このままよ? でもまあ、アーニャも疲れたみたいだし?」

クレーン <ッパ

利根「あたっ!」ドシン

ジェニー「選手交代ね。ミーシャ!」

利根「なぬ?」

ハンギングチェーン <ガキンッ キュラキュラキュラ…

利根「んなっ!? ま、待て! 逆さ吊りは……!」スカートバサーッ

筑摩「あっ」ハナヂドパーーー

朝潮「あっ」

霞「あっ」

ジェニー「あちゃあ……」

筑摩「ああ……尊い……」ガクッ

ジェニー「……忘れてたわ、筑摩のこと」

朝潮「私たちは筑摩さんをドックへ運びましょう! ジェニーさんもご助力お願いします!」

霞「まったくもう! 世話が焼けるんだから!」

利根「ま、待て! もしや吾輩はこのままか!?」ブラーン

ジェニー「魔神様に怪我をさせたおしおきよ。おしおき役があたしやユリアじゃないだけ良かったと思ってね?」

利根「ぐぬぬ……身から出た錆とはいえ、とほほじゃの……」

 * 幕間 それからどうなった *

霧島「利根さん……なにをしているんですか」ピキピキ

利根「あー……頭に血が上るのじゃー……」ブラーン

鳥海「はわわわわ!」カァァ

古鷹「ぴゃあああ!」カァァ

黒潮「キャラ違うねんでお二人さん」

朧「鎮守府の秩序(モラル)は……朧が、守ります!」スッ っ[絆創膏]

黒潮「朧もそういうのやめときやー」ポン

朧「」フッ

黒潮「!?」

朧「残像です」

黒潮「なん……やて……!?」

古鷹「見て! 利根さんのあそこに絆創膏が貼られてます!」

利根「い、いつの間に!?」

鳥海「馬鹿な……っ! 熟練見張り員を擁するこの私の目の前で、すでに利根さんに絆創膏を貼り終えている、だと……っ!」

古鷹「朧さん……恐ろしい子!」


霰「……なにこれ」ジトメ

霧島「……なんなんでしょうね、この茶番は」アタマカカエ

霰「! 何か落ちてる」

 *霰は『「オシサア」と書かれたぱんつ』を手に入れた

霰「……」ゴゴゴゴゴゴ

霧島(怖っ!?)ビクゥ!

今回はここまで。

いくらだ!? いくら払えばいい!?

>>487
・霞からの百烈キック
・満潮からのまっはふみふみ
・霰からの汚物でも見るような眼差し
・朝潮からの無垢ゆえに残酷極まりない発言
以上を耐えきった場合、低確率で手に入るかもしれません。


では続きです。

 * 執務室 → 封印神殿の一室 *

赤城「……」

キャロライン「どうしたノ?」

赤城「い、いえ、改めてこんな場所に繋がっていることに驚いてまして……」

提督「まあな……どうしてこんなことになったんだか」

キャロライン「アカギー! こっちネ!」

赤城「は、はい! ……こ、これは……!」

洋風のバスルーム <ジャーン

赤城「なんてハイカラな西洋風の陶器のお風呂……素敵! これはさすがに気分が高揚します!」キラキラッ

赤城「これは頭にタオルを巻いて、泡風呂の泡を両手ですくって、ふーって飛ばしたりできるお風呂ですよね! 憧れます!!」ワクワクッ

キャロライン「今日はアカギが入るんじゃないヨ?」キョトン

赤城「……はい、そうですね……」ションボリ

提督「まあ、そのうち入れてもらえ」

赤城「はい……提督少尉、ごゆっくりどうぞ」トボトボ

キャロライン「それじゃ、ダーリン! 私も準備するネ! ハイ! コレ持って!」

提督「これ……って、これはお前の帯じゃないのか」

キャロライン「イエース! 思いっ切り引っ張るネー!」

提督「……まさかな」グイッ

キャロライン「アーーーレーーーーーー!」グルグルグルーー

提督「……」アタマカカエ

キャロライン「ダーリン? 『ヨイデハナイカー』って言わないノ?」クビカシゲ

提督「言わねえよ……どこで仕入れたそんな知識」

キャロライン「ヒサメが『これが和装の様式美じゃ』って言ってたヨ?」

提督「嘘っぱち教えられてんじゃねえよ。んなことするから着物が肌蹴て脱げそうじゃねえか」プイ

キャロライン「? 私も一緒に入るから当然ネ! 約束したでショ? 一緒にお風呂に入りたいっテ!」ニパー

提督「……ああ、そういや……」

キャロライン「だからダーリンも脱いで一緒に入るネ!」スルッ

 * * *

提督「いてて……腰をやったみたいだな。悪いなキャロライン、介護させてるみたいで」

キャロライン「ンー、魔力槽に入れば怪我も治るから、全然かまわないヨ!」ニカッ

キャロライン「それに、こうやって裸でハグできるのも、嬉しいヨ……?」ポ

提督(すっげえ恥ずかしいけどな)

キャロライン「ダーリン、足あげて……支えてあげるからゆっくり入るネ!」

 チャプ

提督(……普通の風呂だな……)チャプン

キャロライン「湯加減どうですカ?」

提督「ああ、丁度……?」

 チリッ

提督「つ……?」ピリッ

キャロライン「? ダーリンどうしたノ?」

提督「な、なんか電気でも走ったみたいに……!?」ビリッ

キャロライン「エー? ダ、ダーリン!?」

提督「ぐ、がああああ!?」ビリビリビリビリーッ

キャロライン「ナニ!? ど、どうなってルノ!?」

提督「ぎ、ぎゃああああガボッ、ゴボゴボゴボッ!」ザバザバザバッ

キャロライン「ダーリン!? どうして沈んでいくノ!? ダーリン!!」

提督(なんだ!? 感電したようなこの痛みは!)

提督(浅い湯船のはずなのに、体が沈んでいく!)ゴボッ

提督(やばい、意識が……!)


 ゴボゴボッ


 コポッ


 シーン…


キャロライン「……ダーリン?」

キャロライン「……ノゥ……ノーゥ!」フルフルフル

キャロライン「ダーリン……魔力槽に、消えちゃった……!」ヘタッ

キャロライン「ゥ、ウ、ウワーーー!!」ビエーーーン

キャロライン「どうしよ……どーしよォーーー!!」ギャーーーン

 ポコッ


 ゴポゴポゴポッ


キャロライン「ふえ?」グズグズ


 ボコボコボコッ!


提督「ぶはぁあ!?」ザッバー

キャロライン「ダーリン!?」

提督「な、なんだ!? いったい何が起こったんだ!?」ゼーゼー

キャロライン「ダーリーーーン!」ダキツキドポーン

提督「おわ!? お、落ち着け! また溺れるぞ!?」

キャロライン「ウゥ、良かった……ダーリン、どこかに行っちゃったと……」グスングスン

提督「あー、俺も何が何だかわかんねえけどな。まあ、勝手にいなくなるつもりはねえから安心しろ」ナデナデ

提督「それより、今の騒ぎで風呂の湯を溢れさせたもんで、周りをびしょ濡れにしちまったぞ」

キャロライン「大丈夫ネ! それより、二人で入るのに丁度良いお湯の量になったネ!」ギュウ スリスリー

提督「……仕方ねえな。そういう約束もしてたし、まあいいか」ハァ

キャロライン「それはソウと、ダーリン、背中の具合は大丈夫?」

提督「あ、ああ、もうなんともねえ。痛みどころか、すり傷も消えてる……し……」ピク

キャロライン「!」ビクッ

提督「……」

キャロライン「///」

提督「……動くなよキャロライン」

キャロライン「ア、アノ」モジモジ

提督「……いいから動くな」

キャロライン「だ、ダーリン?」モジモジ

提督「……」

キャロライン「ダーリンのゾーさんが、お尻に当たって///」

提督「言うな」

キャロライン「元気イッパイで、く、苦しそうなんだケド///」モジモジ

提督「言うなっつってんだろ!」

キャロライン「……あ、当ててんのよネ?///」

提督「当ててねえ!!///」

キャロライン「ワ、ワタシは、あ、当ててんのヨ?///」

提督「やめろ、そーゆーの」プイッ

キャロライン「……が、我慢しなくてもいいノニ///」

提督「約束の範囲外だ。つうか俺の人生の想定外だこんなの。今までこんなことなかったんだぞ」カァァ

キャロライン「オゥ……つ、つまり私がダーリンの初めて……///」ポ

提督「意図的に誤解を招こうとする発言は控えろ///」

キャロライン「///」

提督「……///」

キャロライン「ね、ねえ、ダーリン……///」

提督「……なんだ」

キャロライン「そ、そろそろ、ノボセそう、ネ……///」グッタリ

提督「それは早く言え!!」ザバーッ

 * * *

キャロライン「///」キュー…

提督「つまり何か? 魔力槽の効果で、怪我を治すついでに持病も治ったってか」パタパタ

ルミナ「そう考えるのが適当だねえ。魔神君のソレは、人間不信が原因の後天的なものでしょ?」

フローラ「人間と接触を絶った生活を続けたことで、ストレスが解消された結果だと思いますよ~」

提督「……確かにまあ、今の環境は願ったりかなったりだが、そこまで影響するもんか」

ルミナ「十分に考えられるね。いいじゃないか、彼女たちは望んで君の胸に飛び込んできてるんだよ?」

フローラ「いままでの揺り返しが来たと思って享受なさるべきですよ~」

提督「簡単に言うなよ。ったく、俺みたいな甲斐性なしに何を求めてやがんだ」

ルミナ「理解していないねえ魔神君? 君は君が思っているほど無価値な存在ではないんだよ」

提督「そうかい。霞は容赦なくクズと呼んでくれてるんだが」

ルミナ「彼女は典型的な素直になれない娘じゃないか。この島の艦娘が、この島を離れずに君を慕う理由を考えれば、当然だと私は思うけどね?」

ルミナ「それに……私たちだって例外じゃあないんだよ? キャロラインが良い例じゃないか」ニィ

提督「……会って間もないのにいきなり好きだとか言われてもな」

ルミナ「誰かが誰かを好きになるきっかけなど些細なものさ。でなければ『一目惚れ』なんて言葉も生まれないよ」

提督「……」

フローラ「魔神様? なにか、落ち込んでいらっしゃいます?」

提督「なんでもねえ」

提督「とりあえず怪我は治ったし、俺は執務に戻る。悪いが、キャロラインは湯冷めしないようにみてやってくれ」

フローラ「かしこまりました~」



提督(勃たねえおかげで、女に興味がないふりを続けられてきたが、その化けの皮も剥がされたか)

提督(決めなきゃな。これから先、俺はどうしたらいいか、何になるべきか)

今回はここまで。

追いついてしまった、まさかまだまだ続いていたとは
お風呂に沈んで消えた後に出てきたって事は改めて人じゃない何かに身体を作り替えられたって事なのかしら

影牢2?はやった事あるけどソシャゲのは全然知らないからキャラを調べながら読んでて時間かかった
奈緒メディウム達の名前と容姿が全く覚えられない模様
続き楽しみにしてます

提督のEDが治ったと言うことは
提督「ここから先はR指定だ」
ってなるのでは!
さらに魔翌力槽に浸かりながらなら無限に出来るのでは...!

なんでかんで折り返し地点まで来てしまいました。
もう少し(?)続きますので、引き続きお付き合い戴ければ幸いです。

>>500
R-18指定にはどうあがいても持って行きません。
……R-18Gならかなり考えますが。



とりあえず少しだけ続きです。

 * 執務室 *

赤城「あら、提督少尉、おかえりなさい。あのお風呂はいかがでしたか?」

提督「溺れかけた。しばらくは控える」

赤城「おぼ……!? そんなに深いのですか?」

提督「得体のしれない連中のものだからな、原理がよくわからねえんだ。それより、今日の分の作業はほぼ終わりだろ? 休んでていいぞ」

赤城「はい。それにしても……この鎮守府の仕事量はあまりに少なすぎますね」

提督「拠点としての重要性がねえし、仕事するように仕向けてもねえからな。あとは、秘書艦が優秀ってのもあるか」

提督「最初からいた如月、不知火が必死にやってくれてたし、吹雪や電も初期艦だからって張り切ってくれたしな。朧や初春も頑張ってくれた」

提督「あいつらがいたおかげで俺の書類仕事も随分捗るようになった……ああ、あんたのおかげも少しあるな」ニッ

赤城「……私こそ、あなたに会うまで笑うことを忘れていましたからね。こうやってあなたに借りを返せるのは私にとっても幸いです」

提督「そうか」

赤城「……? 提督少尉? 少し、雰囲気が変わりましたね。心持ち、穏やかと言うか、壁が取り払われたと言うか」

提督「ああ、ちょっと思うところがあってな」

提督「卑屈になってたんだ。人間が嫌いだから自分が嫌いだった。だから艦娘に好かれないように拒絶してた。それがいいと思っていたんだ」

提督「けど、あいつらは俺がそうでもグイグイくるんだよな。全っ然、懲りやしねえ」

提督「今回の件で死にかけたときもそうだし、深海棲艦やメディウム連中からもアタックがくるようになったしな。わけがわかんねえ」ハハハ

赤城「良いではありませんか。あなたが正当に評価された結果です。あなたもそれに応えてあげればいいんですよ」

提督「……簡単に言うなよ。覚悟が決められなくて戸惑ってんだ。もともと、生涯独身のつもりだったしなあ」

提督「妖精の存在を信じてもらえなくて、誰も信じられなかったガキの頃は、誰かと結婚するとか考えるのが本当に苦痛だったんだぜ?」

提督「社会から孤立してた時期が長かったから一人が楽だってのもある。人間嫌いをこじらせちまったんだな」

提督「だから、存在すら認めてもらえない妖精や、人間と変わらない外見なのに扱いが悪い艦娘に、俺の姿を投影して、助けたくなった……」

提督「結局は自分自身を助けたかったんだ。そんな俺がお前らを幸せにできるか? 不安だと思わねえか?」

赤城「……その悩みを共有し、お互いを支えあうのが夫婦の理想の姿だと、私は思いますよ」

提督「さすがは赤城だ。言うことが違う」

赤城「……またおばあちゃん扱いですか?」

提督「フ、ハハハ、懐かしいな、そのやりとりも」

赤城「ふふっ。珍しいですね、提督少尉からこんな話が聞けるなんて」

提督「あんたじゃなきゃこんな話もできねえしな。助かったよ、少し気が楽になった」

赤城「重畳ね。どういたしまして」

提督「海岸に行ってくる。留守を頼む」

赤城「ええ、行ってらっしゃい」

 ゾワッ

赤城「……!?」

赤城「何かしら、今の妙な感じ……」


 * 幕間 さらにそのあとどうなった *

霰「……」ゴゴゴゴゴゴ(←汚物でも見るような顔)

提督「……さっきから霰が俺をすげえ顔で睨んでんだが、何があった?」

満潮「知らないわよっ」フンッ

 *この後、朝潮と霞から誤解を解いてもらいました

今回はこれだけですがこれまで。

続きです。

 * 数日後 *

青葉「ここ最近の司令官、変わったと思いませんか?」

古鷹「ええ、なんだか少し柔和になったっていうか、笑ってくださるようになりましたね」

那智「……そうなんだが、どこか違和感もないか? こう、うまく言えないんだが……」

鳥海「そうでしょうか? 変わったと言えば確かに、以前より私たちに近づいてきてくれている感じはしますけど」


川内「なんだろーね? 胸騒ぎがするっていうか」

由良「胸騒ぎ?」

五十鈴「わかるわ。なんかこう、ぞわぞわするっていうか、ささくれ立つ感じっていうか……落ち着かない感じ?」

那珂「そんなに変な感じしなかったけどなあ……?」


若葉「……不安だ」

吹雪「うーん、何がそこまで不安なのか、わからないんだけど……」

潮「うまく説明できないから、余計に不安なんですよ」

五月雨「司令官、大丈夫でしょうか……」


大和「提督は不快に感じられるとは思いますが、そういう報告が増えていまして……」

提督「大和、お前はどう思う?」

大和「わ、私は、そのようなことは……」

提督「あるんだな?」

大和「……」コク

提督「渋い顔すんな、お前がそう感じるならしょうがねえだろ。それに個人差があるみたいだな?」

大和「はい。同じ金剛型でも、金剛さんと霧島さんは不安を訴えていますが、比叡さんと榛名さんは特になにも……」

提督「それなんだが……ついさっき、金剛に泣かれた」

大和「泣かれた?」

提督「あいつ、しょっちゅう抱きついてくるだろ。そん時にな……」


 金剛『テートク? ここ最近のテートクは妙な感じがしマース』

 金剛『決してテートクがおかしくなったとか、そういう意味ではありまセン。でも、どこか遠くに行ってしまいそうな……』ギュ

 金剛『こうやってハグしていても、消えてしまいそうな気がしマース……!』グスン


提督「あいつ、この手の嘘は言わねえからな。だが、金剛の抱いている不安を俺が感じ取ることができない以上、解決のしようがない」

大和「メディウムの皆さんはどうなんでしょう?」

ニコ「ぼくたち? 特に何も感じないけど……むしろ近しい感じがしてるよ。魔神様が態度を改めようとしてくれているからかな?」

大和「そうですか……」

提督「……どうしたらいいもんかな」

< ちょっ、待ちいや!

提督「? 龍驤か?」

 コンコン

雲龍「入るわね。提督、いる?」

提督「雲龍? どうした、いつになく怖い顔をして」

雲龍「……」ジー

大和「どうなさったんです?」

龍驤「堪忍な提督! 雲龍どないしてん!?」タタタッ

雲龍「……提督。あなた、気付いてないの?」

提督「なにがだ?」

雲龍「あなた、人じゃなくなりつつあるわ」

大和「!?」

龍驤「なんやて!?」

ニコ「それは、どういうこと?」

雲龍「とぼけないで」キッ

ニコ「!」

提督「どういうことだ、ニコ」

ニコ「待って、ぼくは何も……」

封印神殿と繋がる扉< ガチャリ

ルミナ「あー、その辺り、私が説明しようか?」

ニコ「ルミナ……?」

 * * *

ルミナ「まずは仮説だってことを断っておくよ」

雲龍「逃げ道ね」

ルミナ「……まあ、そうなんだけどねー。今回ばかりは自信がないのよ」ハァ

ルミナ「で、単刀直入に言うと、原因は魔力槽だと思う」

大和「魔力槽というと……如月さんや利根さんの体の傷を治したメディウムの入渠施設ですか?」

ルミナ「厳密には、君たちの言う入渠施設の修復材にあたる液体……魔力を満たしたあの液体が原因よ」

ルミナ「いや、原因と断ずるのも早いんだけど……実は、魔神君が入るまで、あの液体に人間を入れたことがないのよ」

龍驤「へ?」

ルミナ「どういうことかわかるよね? 前例がない、イコール、何が起こるかわからない」

大和「そ、そんなのに提督が入ったんですか!?」

ルミナ「そう。そこで検証のために、私たちの世界の人間を一人捕縛して、試しに魔力槽に突っ込んでみたの」

雲龍「無茶するわね」

ルミナ「その結果なんだけど……」

ルミナ「その人間は骨も残らず溶けてなくなったわ」

ルミナ「喩えるなら、紅茶に角砂糖を入れてかき混ぜた時みたいにね」

龍驤「……」

大和「……」

雲龍「……」

提督「……」

ニコ「……」

雲龍「……待って。どうしてあなたが絶句してるの」

ニコ「ぼ、ぼくだって今の話初めて聞いたんだよ!?」

龍驤「ちょい待ち。提督、きみ、魔力槽には入ったんやろ?」

提督「……ああ」

雲龍「無事だったの?」

提督「見ての通りだが……無事じゃなかったら、今ここにいる俺はなんなんだ?」クビカシゲ

ルミナ「ねえ魔神君、あの時キャロラインが大声でわめいてたと思うんだけど、なんかあったのかい?」

提督「……ああ、あったな。俺が風呂で溺れかけたんだ」

ニコ「溺れかけた!?」

提督「ああ、風呂に入ってからすぐ電流でも流れたみたいに皮膚が痛くなって、風呂の中に体が沈んでいった記憶がある」

提督「で、そのあと気を失って、すぐ目が覚めて慌てて風呂から顔を出したんだ」

大和「だ、大丈夫だったんですか!?」

提督「結果的にはな。腰の痛みも擦り傷も綺麗に消えたし、だるさも消えて前より元気になっちまった」

ルミナ「EDも治ったしね」

大和「それは本当ですかっっっ!!??」ズイッ!

提督「……余計なこと言うんじゃねえよルミナ」

天井< ガタンッ!

如月「その話、本当ですか!」バッ!

提督「どこから出てきた!」

ナンシー「ちょっと如月ちゃん、髪が埃だらけよ!」ヒョコッ

提督「お前の仕業か!」

床板< バタンッ!

金剛「話は聞かせてもらったネー!」ニョキッ!

キャロライン「イエース! ミートゥー!」ニョキッ!

提督「お前らもか!」

金剛「大和に抜け駆けはさせまセーン! 私だって提督と夜戦したいヨー!」

窓< バーンッ!

川内「なに? 夜戦!?」シュタ!

朧「提督は……朧が守ります!」シュタ!

提督「ドアから入ってこい! あと夜戦じゃねえ!」

大和「そ、そうですよね、夜になってから……あ、あの、提督、今夜早速お部屋に……」ポ

提督「だからヤらねえっつってんだろうが! 俺は俺の遺伝子残したくねーんだよ」

ルミナ「……遺伝子。遺伝子ね……」

龍驤「なんやその歯ぁに物挟まったよーな口振りは」

ルミナ「いや、魔神君の遺伝子って、今どうなってんだろうなーってさ」

ニコ「どういう意味?」

ルミナ「んー、誤解のないようにはっきり言うとねえ」

ルミナ「魔神君。きみはもう、人間じゃないよ」

龍驤「……」

大和「……」

雲龍「……」

ニコ「……」

如月「……」

ナンシー「……」

金剛「……」

キャロライン「……」

川内「……」

朧「……」

提督「……」

全員「「「は?」」」

龍驤「ああもう、ちょっち待って! どういうこっちゃ、提督が人間やないて!?」

ルミナ「如月君。きみは魔力槽に入ったことがあるね? 深かったかい?」

如月「え? い、いいえ、そんなことはなかったわ」

ルミナ「では魔神君が溺れたのはなぜか? 多分、魔力槽で肉体が全部溶けて消失したからだと思う」

全員「「「!?」」」

ルミナ「このとき、キャロライン君が魔力槽に何もなくなったことを確認している」

ルミナ「ところがそのあと、魔神君はその魔力槽の中から出てきた……」

ルミナ「ということは、だ。魔力槽が魔神君の肉体を一度溶解分解して、再構築した……としか考えられないんだよね」

全員「「「!!??」」」

ルミナ「魔力槽に満ちた魔力に耐えられるのはもはや人間じゃない。メディウムや艦娘に近い存在に生まれ変わった、としか考えられないのよ」

金剛「Oh, jesus...」マッサオ

キャロライン「ワ、ワタシのセイ……?」オロオロ

ルミナ「結果としてはそうだけど、魔神君が起き上がれないほどの怪我をさせた艦娘の誰かさんにも責はあると思うよ?」

ルミナ「とりあえず魔神君が並の人間みたいに溶けなくて良かったって思うんだけど……?」

雲龍「外が騒がしいわね?」

 ウソデショー!?

 チョット、オスナッテ!

 ナンテイッタノイマ!

提督「ん?」

 マジンサマー!

 イタイッテバー!

 ヨクキコエナイノデス!

ニコ「あれ?」

執務室の扉< ガチャバーン!

封印神殿への扉< ガチャバーン!

艦娘「「「きゃあああ!?」」」ゴロゴロドターン

メディウム「「「きゃあああ!?」」」バタバタバターン

全員「「「……」」」

大和「だ、大丈夫なの?」

榛名「は、はい! 榛名は大丈夫です!」

ミルファ「ミルファもオッケーです!」

提督「お前ら……」

吹雪「え、えへへ……し、司令官すみません、聞いちゃいました」

ミュゼ「ご、ご主人様、人間じゃなくなったんですね」

不知火「不知火は、司令が何者であろうとついていきます」

クレア「私たちもそのつもりだからね!」

提督「……ま、いいけどよ」


提督「しかし、なんでまた雲龍は一足早く気付いたんだ?」

龍驤「多分やけど、うちら艦載機をたくさん操るやん? その艦載機が感じ取る気配の機微を、雲龍は把握するのがうまいんちゃうかな」

龍驤「雲龍はこの鎮守府唯一の正規空母やし、召喚方法も精神力がものを言う陰陽師型や。気付いて当然やんか」

提督「よく見てやがるな」

龍驤「きみはもう少し見られてる自覚持ったほうがええで?」

今回はここまで。

>>499
君のような勘のいい(ry

続きです。

 * 墓場島鎮守府 執務室の外、連絡通路 *

雲龍「浮かない顔してるわね」

ルミナ「……君がいうのかい」

雲龍「……」

ルミナ「……魔神君が何故復活できたのかの説明ができない」

ルミナ「可能性としてはみっつ」

ルミナ「ひとつめは、元々そういう素質があった。妖精と話の出来る能力が、それらに起因していた」

雲龍「ふたつめは深海棲艦の弾丸ね」

ルミナ「……鋭いね。あの弾丸で一度魔神君は深海棲艦と化した。その要素が本人に残った」

雲龍「みっつめは?」

ルミナ「……んー。ニコ君とキスしたことかな」

雲龍「……ふぅん」

ルミナ「多分、彼女の持つ魔力が口腔、および唾液を通して魔神君の中に浸透したのかも」

雲龍「……たらし、ね」

ルミナ「ニコ君からは不可抗力だって聞いたよ?」

ルミナ「いずれも可能性のひとつ。そして根拠を示せない以上は仮説と呼ぶしかない」

雲龍「……」

ルミナ「そして、今の魔神君はいったい何者なのか? 説明できないのが歯痒くてね」

雲龍「……」

ルミナ「……」

雲龍「雲行きが怪しくなってきたわね」

ルミナ「それは天候かい? それとも、君たちと僕達の関係かい?」

雲龍「いいえ……島の外……外洋も含めて全部よ」


 * 墓場島鎮守府 西の岬 *

隼鷹「雲龍の言う通りだね……まずいんじゃない? これ」

ヴィクトリカ「なんだ? まずいって……酒がなくなったのか!?」

隼鷹「あはは、そうじゃないって。そっちじゃあなくてねえ……ほら」

ヴィクトリカ「……上?」

(上空から戻ってくる隼鷹の偵察機)

隼鷹「ちょっと飛ばしてみたんだけど、海軍っぽい船とそうでない船がひっきりなしにこの島の周りを回遊してんのさ。艦娘を引き連れて、ね」

ヴィクトリカ「……どういうことだ?」

隼鷹「のんびりしていられなくなった、ってことになんのかね~。あたしは結構気に入ってたんだけどね、この島の生活」

那智「まあ、無理もない。曲がりなりにも泊地棲姫の侵攻を食い止めたものの、追い返し方に謎が多すぎる」

那智「派兵された大佐以下6名が全員死体も残らない不審死だ。我々が加害者だと疑われても仕方がない」

ヴィクトリカ「そういうもんなのか?」

那智「ああ、残念ながらそういうものだ。この島にはある特例があるからな」

隼鷹「あー……確かにねえ。根も葉もないけど疑われそうだねえ、深海側の内通者がいるとか」

ヴィクトリカ「ル級のことか?」

那智「それもある。が、この島には『轟沈を経験した艦娘』がいる。それがまずいと踏んでいる」

ヴィクトリカ「なんでだよ? 生き残ったのに問題があんのか?」

那智「それは過去にとある鎮守府で起こった『艦娘深海棲艦化事件』に起因する」

那智「轟沈した艦娘が戻ってきて、何気なく生活していたある日、深海棲艦となって鎮守府を壊滅させた」

那智「それゆえ大本営から、一度轟沈した艦娘はそのまま運用してはならない、と言う判断が下されたんだ」

隼鷹「で、ここにはたくさん、そういう艦娘がいるんだよねぇ……本営は、そういった艦娘が深海棲艦と裏で繋がってる、とか考えてるんじゃない?」

ヴィクトリカ「だ、だとしたら、そのまとめ役のキャプテンも疑われてるかもしれないってことだよな!?」

隼鷹「あー……」

那智「そうかもな……!」

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

通信『提督少尉、このままでは君の立場が危うくなる一方だ。一度大将に直接話をした方がいい』

提督「こんな連絡を寄越してくるあんたこそ立場がまずいんじゃないのか? 俺のことを心配してる場合じゃねえだろ、今の中佐は」

通信『そうかもしれないが、君の鎮守府が危ないんだ。黙って見ているのは僕の性に合わない』

提督「……あんた、本当に海軍か?」

通信『少尉、君は海軍をなんだと思っている。海軍を犯罪者の温床のように言うのは心外だ』

提督「別に海軍に限ってそう言ってるつもりはない。人間自体、中佐みたいなお人好しのほうが、よっぽどレアだろ?」

通信『君は人間を毛嫌いしすぎだ……』ハァ

通信『それよりも、あの報告は本当かい? 海軍の船舶が国籍不明を装って、島の周囲を見て回っているというのは』

提督「ああ、ご丁寧に民間の船か、難民を装った海賊風のボロ船に偽装してな」

通信『……そしてその船に艦娘が乗っていた、と』

提督「艦娘引き連れてた時点でクロだろ? 日本の海軍以外の連中で艦娘をつれていける連中なんていんのか」

提督「ドイツやイタリアならまだしも、アメリカやイギリス、ロシアだって艦娘の運用に関しちゃまだまだ尻の青い素人」

提督「シーレーンの7割は日本海軍の庇護下。海軍じゃない連中が艦娘を極秘運用できるわけがない」

通信『じゃあ、いったい誰が……』

提督「だから海軍だっつってんだろ。十中八九、大佐とつるんでた連中だ。匂いでわかる」

通信『……君は犬か』

 * 墓場島鎮守府 北の洞窟 *

提督「ったく、犬みてえだな」

軽巡棲姫「~♪」スリスリ

大和「すっかりなつかれてしまいましたね」

ル級「親子ミタイネ」

吹雪「……ちょっとうらやましいです」

朧「ところで、最近この洞窟にいる時間のほうが長くありませんか?」

ル級「仕方ナイワヨ。ホラ、ココノトコロ、島外ノ艦娘ガ巡回シテルデショ」

泊地棲姫「ル級ノ塒モ狭クナッタシ、連中ガ見回ッテルセイデ迂闊ニ航行デキナイカラ、ダッタラ最初カラココニイタホウガ安全ダト思ッテ」

由良「……まあ、そうなんだろうけど」

加古「ちょっと増えすぎじゃない?」

ル級「……マア、ソウネ……」

 ヨ級カ級達<ワイワイ

 リ級ネ級達<ガヤガヤ

 イ級ロ級達<イーロー

 タ級ヲ級達<ヲッヲッ

タ級1「断ッテオクガ私タチハ『ヲーヲー』言ッテナイゾ」クルリ

タ級2「誰ニ言ッテンノ」

提督「さすが泊地棲姫の軍勢、大所帯だな」

由良「いくらなんでも密集しすぎよね、ね」

大和「非公式とはいえ海軍が故意に見逃している安全地帯ですからね……」

朧「洞窟が完全に深海棲艦の住み家に……」

提督「……深海難民だな。俺たちと戦いたくねえ連中が集まったってことだろ」

吹雪「そう言われると複雑ですね」

加古「けどさあ、これ、電探で見つかったら一網打尽にされちゃわない?」

泊地棲姫「艤装ヲ動カサナケレバ、電探ニ反応ハシナイワ」

提督「そういうもんなのか?」

泊地棲姫「完全ニ消エルワケジャナイケド、反応ハ極メテ微弱ニナルワネ」

ル級「視認デキルクライ近ヅカナイト反応シナインジャナイカシラ」

大和「そこまで抑えられるんですか……」

ル級「キット、ソノヘンノ魚ト同ジクライニハ認識不能ニナルワ」

泊地棲姫「深海棲艦ノ行動原理ハ、人間ニ対スル負ノ感情ガ大部分ヲ占メテイル」

泊地棲姫「ソノ感情ヲ変換シテ艤装ニ伝ワッテ、チカラト為ス……ヒトヘノ憎悪ガ強ケレバ強イホド、チカラハ強クナル」

ル級「逆ニ、ココロノ風ガ穏ヤカナラ、波ガ立タナイ……ッテ、コト」

提督「……詩人だな」

大和「こうして話をしていると、彼女たちが深海棲艦だってことを忘れそうになりますね」

吹雪「司令官……私、彼女たちとはあんまり戦いたくなくなってきました」

加古「けどさあ、やっぱりこの提督だから、このくらい親しく話ができるってことっしょ?」

朧「ですね。大佐みたいな人間もいますし、全体で仲良くするのは難しいですよね」

由良「そうね……ただでさえ、私たち艦娘と深海棲艦と問答無用で戦ってるし、理解を得るのは大変よね」


提督(俺たちと仲良くしようとする深海棲艦の異端者たち、人間に疎まれた艦娘たち)

提督(本当に似たような連中ばかり集まってくるな、この島には)


提督「まあ、海軍に見つからないようにちゃんと隠れておけよ。さすがに俺もお前ら匿うのは骨が折れるからな」

深海棲艦たち「「ハーイ」」


ル級「……チョット、イイノ? アンタノ部下ガ素直ニアイツノ指示ニ従ッテルコトニ疑問ハナイノ? 仮ニモ姫様デショ?」

泊地棲姫「別ニイイワヨ。アノ男ヲ私ノ伴侶ニスレバイイダケノ話ダカラ」ウインクー

ル級「……」イラッ






 * * *

ニコ「魔神様たちは行ったみたいだね」

泊地棲姫「オ前ハ……アイツト一緒ニイタ、人外ノ娘カ」

ニコ「君たちにお願いがあるんだ」

メディウムたち「……」ズラッ

泊地棲姫「ホウ……雁首揃エテ、何ノ用ダ?」





ニコ「この島から、出て行ってほしい」



今回はここまで。

たまにはほのぼのパートも書きたいんだ……おそらくもう殆どないけれど。

続きです。

 * 二日後 本営、中佐の部屋 11:00 *

ヴェールヌイ「司令官。墓場島鎮守府に行ってきたというのは本当かい?」

中佐「響!? 待ってくれ、今はその話は駄目だよ、あくまでお忍びなんだから」

ヴェールヌイ「……」

中佐「確かに君も連れて行くと話をしたが、上層部に目を付けられている今はまずいんだ」

ヴェールヌイ「……了解。この分だと当分先になりそうだね」

中佐「すまないね……ん?」

 扉< ゴンゴン

大将「甥っ子君はいるかね。急だが出撃準備をしたまえ。本日1800に艦隊を出すぞ」ガチャ

中佐「おじ……大将殿!? いきなりどうしたんです?」

大将「提督少尉の鎮守府に出撃することになった」

中佐「は!?」

ヴェールヌイ「……退室します」

大将「いや、いい、聞いててくれて構わん。それで別の大将からの報告だ。彼の鎮守府で深海棲艦を匿っていると情報が入った」

中佐「ほ、本当ですか!」

大将「うむ、彼が深海棲艦と友好を結ぶ気でいるのか、それとも人間に反旗を翻す気でいるのか、早急に見極めなければならん時期が来たようだ」

中佐「……前者であってほしいですね」

大将「ただ、別大将からは最悪の状況を想定しておいてくれ、ということだ。なので、君には艦隊と、この前の医療船を出して欲しい」

中佐「負傷者の対応に回れということですね」

大将「ああ。あの鎮守府に一番近いのが君の鎮守府だからな。そうでなくても君の所有する医療船は良い船だ」

中佐「わかりました、すぐに手配します」

大将「さて、提督少尉の艦隊だが、戦艦と重巡が主力で、軽巡と駆逐艦も粒揃い。急接近して至近距離での砲雷撃戦が得意という報告がある」

大将「数少ない空母たちは烈風などの制空戦闘機を数多く載せていて空対空に強い反面、対艦攻撃に秀でた艦載機はあまりないことも一因だ」

大将「もしやりあうとしたら、対空砲を強化し、かつ接近される前に超長距離から砲撃戦を展開するのが有効と見ている」

中佐「……」

大将「提督少尉の艦隊にも大和と武蔵がいるが、こちらは46cm三連装砲を多数用意してある。射程が同じなら数で勝るこちらが有利だ」

大将「この作戦に参加するのは、別大将とその配下の少将と、大佐が2名。大佐のうちの1名はお前の友人、W大佐だ」

中佐「……そう、ですか」

大将「我々からは私と君が参加する。部下たちは大規模作戦の準備中でな、残念ながらこれ以上人員を割くことができなかった」

大将「別大将もあの鎮守府の状況を重く見ているらしい。あの鎮守府の周辺海域を探っていたのは別大将の部下だと明かしてくれたよ」

中佐「そうだったんですか……」

大将「君も戦艦を主体にした艦隊を編成し、出撃準備を行いたまえ」ガチャ

中佐「はっ!」

 扉< バタン!

ヴェールヌイ「司令官……!」

中佐「……ついに、こうなったか」

中佐「何が『見極める』だ。提督少尉が敵であることを前提で話を進めているじゃないか」

中佐「しかもあの別大将、深海勢力の撲滅推進派の急先鋒……伯父さんの理想とは真逆の人だ」

中佐「あの人は最初から提督少尉を粛正するつもりで艦隊を出すに違いない。だとしたら伯父さんを呼んだのはなぜだ?」

 コンコン

祥鳳(中佐の秘書艦)「失礼します。提督……提督?」

中佐「ん? あ、ああ、ごめん祥鳳。緊急で出撃することになった、編成を考えないと……」

祥鳳「はい、先程大将殿に廊下で簡単に伺いました……ですがその前に、お客様がお見えになっています」

中佐「……僕に?」

祥鳳「大変申し訳ありませんが、こちらまで御足労お願いできますでしょうか?」

中佐「……?」



 * 墓場島鎮守府 執務室 *

提督「中佐、だからそういうおせっかいはほどほどにしろと……!」

通信『何故怒るんだ! 思い当るところがあるのか!?』

提督「別にねえよ! それよりこんな連絡寄越すほうがどうかしてるぞ! つまんねー正義感に酔っ払ってんのか!?」

通信『僕は正気だ! そんなことより、僕は忠告したからな! くれぐれも、変な気を起こすんじゃないぞ!』

提督「起こす気ねえっつってんだろ、くそが!」

 ギャアギャア

山城「……どうして私が秘書艦のときに、こう喧嘩腰の連絡がくるのかしら……」

山城「しかも相手がよりによって温厚で知られる中佐だなんて……不幸だわ」

 チン

提督「あー、ったくよー! 面倒臭えったらねえぞくそがぁぁ!」

山城「提督、聞いてましたけど……抜き打ちでの島の調査を行うって話ですか」

提督「ああ。本営がこの島を調査したいと言い出した」

山城「中佐もこんな連絡をしていたら出世に響くでしょうに……不器用な人ですこと」

提督「それは別に構わねえが、調査班とやらがすぐに来るらしいとよ!」

山城「……なんですって」

提督「大将2人に少将1人、大佐2人に中佐も来るとよ。錚々たる顔ぶれだな」

山城「……あああ、なんてこと……」

提督「なんだ?」

山城「なんだもなにも、嫌な予感しかしないじゃない……!」

提督「具体的には?」

山城「この前始末した部下Dやその上司……大佐だったかしら? そいつらの再捜索とかで、きっと無関係の私たちの私室とか漁られたりするのよ!?」

提督「ほう。そりゃ屈辱的だな」

山城「そうじゃなければ、深海棲艦を匿っていないか、それこそ虱潰しに島を荒らしに来る可能性もあるわ」

提督「だろうなあ」

山城「それに、この島には憲兵がいないでしょう? 大勢憲兵が乗り込んであらを探しに来るかも」

提督「ふーん、他には?」

山城「む……メディウムの存在の確認かしら。考えてみれば不思議に思われるわよね」

提督「ほーほー、なるほど」

山城「それか……大佐の敵討ち……かしら? 敵討ちしてもらえるような人望はなさそうだけど」

提督「……ククッ、なるほどな」

山城「あとは、泊地棲姫を追い返した有能な艦娘の引き抜きも考えられるわ……はっ、もしや扶桑お姉様が狙われたりして……!」

山城「扶桑お姉様が誰かに見初められて、私と離れ離れになったりしたら……! ああ、不幸だわあああ!!」

提督「わざわざ引き抜きにくるのに、抜き打ちで夜中に、ってのはなさそうだがな?」

山城「提督! いくらあなたが朴念仁とはいえ扶桑お姉様の美貌を理解していないとは言わせませんよ!」

山城「そう、扶桑お姉様を我がものにしようと、不逞の輩が月夜の晩に部屋に押し入り、扶桑お姉様を無理矢理……ああ、なんてことをおお!」

提督「そんなに心配ならしっかり見張っとけ。昨日の朝なんか、いつの間にか扶桑が俺の布団に入り込んで隣で寝てたからな」

山城「このクソ提督ぅぅぅ!!」

 コンコン

那珂「しっつれいしま~す! お仕事終了しましたぁ!」ガチャ

潮「曙ちゃんが来たのかと思ったんだけど……」

満潮「ったく、何やってんのよ!」

朝雲「司令官、遠征から戻ったわ!」

提督「ん、ご苦労さん。どうだ、見張りは多かったか」

山雲「それはもう~、た~くさん、目が光ってたわ~」

朧「見つけるたびに那珂さ……那珂ちゃんがポーズ決めてたから……」

那珂「遭遇すること14回! 望遠カメラも2台くらいあったね!」

満潮(どうやってカメラの位置とか把握してるのかしら)

山城「満潮。那珂ちゃんはね、前の鎮守府じゃ本当に艦隊のエースで、本当にセンターポジションだったのよ」

満潮「!」

山城「ただ、そこの鎮守府がすごーくブラックで、休みなしどころか休養すらなしぶっ通しで戦ってたって話なのよね……」

那珂「そうそう! 3日超えたあたりからハイになっちゃって、メンバーが1人2人と脱落していって、残ったのが那珂ちゃんと榛名さんで……」

那珂「それで最後は失神して、ここに流れてきたんだよね~♪」

満潮「……ええ……」

那珂「あのときは旗艦(センター)だったし、頑張ろーって思って、どこから見てるかすっごい気を張り詰めてたからねー」

那珂「緊張の糸が切れるっていうか、ヒューズが飛ぶっていうか、そんな感じ?」

山城「旗艦任されたくらいなんだから、すごいのよ那珂ちゃんは。ライブのときはギャラリー一人一人にしっかり視線合わせてウインクするんだもの」

那珂「この鎮守府の人数が少ないから、そのくらいは出来て当然っ!」エヘーン

満潮「えぇ……」

山城「おかげでカメラへの反応も超一流なのよ。……満潮? 不思議そうな顔してるけど、どうかしたの?」

満潮「……な、なんでもないわ!」

山雲「それじゃあ、満潮姉と朝雲姉と一緒に資材を置いてくるわね~」

朝雲「そうね、行こっか?」

満潮「わ、わかったわよ!」

潮「あ、わ、私も行きます」

那珂「あー、潮ちゃんは朧ちゃんと一緒に残ってくれる~?」

潮「え? は、はい……」

朧「なにがあったのかな……」

那珂「満潮ちゃん、不思議がってたところを山城ちゃんに気遣われて嬉しかったんじゃないかな~」コソッ

 * 廊下 *

満潮「……」

朝雲「満潮姉さん、嬉しそうにしてるわね」ヒソヒソ

山雲「ねー」ヒソヒソ

朝雲「さすがは山城さん、よく見てるわよね」ヒソヒソ

山雲「ねー」ヒソヒソ

満潮「……なによ」

朝雲「なんでもないわよー」

山雲「なんでもないのよー」

朝雲山雲「「ねー♪」」

満潮「……うっざい」

朝雲「まあまあそう言わないで」

山雲「満潮姉もご一緒にー」

満潮「い、一緒にって」

山雲「いいからいいからー」

朝雲「はい、せーの」

満潮朝雲山雲「「「ねー♪」」」

満潮「……はっ! つい乗っちゃった!?」カァァ

霞「……なにやってんの」

朝潮「楽しそうでなによりです!」

霰「……うん」ニコー

満潮「ちょっ、見るな! 見るんじゃないのー!!」グワーー

今回はここまで。

その国の組織体系にもよるんじゃね?
銀英伝だと「大量の元帥が生まれた」時期ってのもあるし
そうでなくとも「地位こそ高級士官だがやってることはデスクワークのみ」とかの可能性もある

ランキングに元帥がずらっと並んでることもあって、感覚が麻痺してますね……。
ゲームスタート時が少佐だから、艦娘を率いている人間はそれなりの地位がないと
いけない希少な存在なのか……と思いきや、提督が大量生産されてるし。

艦娘や妖精とコミュニケーションを取りことができる人材をスカウトしまくった結果、海軍の総人数が肥大化。
下部組織の人数も増え、それを統率する人数も増えた。
そのため、トップになる元帥は1人として、大将以下は複数人いる、という解釈で進めたいと思います。

それと、いまさらですが同じ艦娘は複数いる設定です。

 * 執務室 *

提督「つうわけで、だ。連中はおそらくこの島の全部を調べる気だ。各々、貴重品は持ち歩いておくか、まとめて持ち出せるようにしておけ」

山城「ええ、そのように伝えます」

提督「那珂は巡洋艦、山城は戦艦、朧と潮は駆逐艦と空母の連中に連絡を頼む」

那珂「はーい!」

提督「それと、もうすぐ来る定期便に中佐が紛れ込んでる可能性もあるから注意しろよ」

山城「はぁ?」

提督「2、3日前、俺と話がしたいとか言って来たんだよ。さっきの連絡といい、やたら俺に構ってきやがる。あいつホ○か?」

山城「……そ、そんなことは」メソラシ

潮「……ないと……思います」カァァ

朧「…………多分」ウツムキ

提督「まともに否定してやれよお前ら……」

那珂(……まあ、中学生か酒匂ちゃんか、ってくらいの童顔だもんねえ、中佐って)

 * *

中佐「へっくち!」

祥鳳「!? お、お風邪ですかX提督! 私の上着をどうぞ!」ヌギッ

中佐「祥鳳さんこれ以上脱いじゃだめだって!」ワタワタ

 * *

提督「……ところで、昨日からニコやメディウム連中を見てないんだが、どこ行った?」

潮「それが、どこにも……」

朧「あの、それだけじゃなくて、北の洞窟にいた深海棲艦も姿が見えないんですよ」

提督「なに?」

潮「で、でも、海軍本営が来るなら、いないほうが好都合なんじゃ……」

提督「連絡できねえ方が問題だ。大将どもが来たときにあいつらが帰ってきて鉢合わせしたらまずいだろ」

提督「……龍驤と五十鈴、それとはっちゃんに頼むか。島の周囲をぐるっと回って見てもらおう」

 * * *

提督「で、どこにも誰もいない、ってか。連中、どこ行きやがった」

伊8「……新しい塒を探しに行ったのかな」

提督「それならそれで、しばらく戻ってこないといいんだがな……これじゃ迂闊に信号も打てねえ」

五十鈴「そっちはそれで説明がつくけど、メディウムたちもいないのは妙よね?」

提督「そうなんだよな。そこにある神殿の扉にもいつのまにやら鍵がかかってるしよ」

伊8「えー? 本当だ……」ガチャガチャ

龍驤「……あ、ええこと思いついたで」

提督「ん?」

龍驤「きみきみ、今日からうちのことお姉ちゃんて呼んでええよ!」ムネポーン

提督「は?」

五十鈴「は?」

伊8「は?」ハイライトオフ

龍驤「えーと、あとなあ、ベ……ブラックホールの子が……えーと……」キョロキョロ

提督「……」

五十鈴「……」

伊8「……」ハイライトオフ

龍驤「……」キョロキョロ

提督「ベリアナがどうかしたか」

龍驤「あー、あかんあかん。やっぱりおらへんようやな」

五十鈴「どういうこと?」

龍驤「ほら、ニコちゃんは提督のお姉ちゃんやーて常々言うとったやんか」

龍驤「うちがそういうこと言って、もしどこかで聞いとったら対抗してくるはずやろ?」

提督「……つうと、ベリアナをブラックホールと言ったのもソニアをおびき寄せるため、か?」

龍驤「あの地獄耳な子からツッコミ入らへんところ見ると、ほんまに居らんのやろなあ……」

五十鈴「……どこ行っちゃったのかしら」

伊8「うん……」ハイライトオン

龍驤(……メディウムの子は釣られへんかったけど、違う子が釣れたわ……あかん、マジあかんで)ヒヤアセ

短いですが今回はここまで。
しばらくメディウムたちの出番はお休みです。

スレ一覧で一番下にいたのが地味に嬉しかった。

続きです。

 * 深夜 太平洋上、某所 *

 * 海軍所有の高速護衛艦内 *

別大将(以下H大将)「悪いな。今回の件はお前にも付き合ってもらいたかった」

大将「かまわん。提督少尉が何を考えているか、一度話し合いたかったからな」

大将「むしろ、お前の方から話を聞きに行く、などと言われて少なからず驚いていたところだ」

H大将「断っておくが、俺は提督少尉を信用していない。轟沈した艦娘を手下に置いている時点で、十分に怪しいと思っている」

大将「逆だろう? 轟沈した艦娘と行動を共にできて、かつ艦娘たちが深海化しない。彼には素養があるのだ、望みはある!」

H大将「お辞めになるという中将殿が言っておられたのだ。仮に彼らと……深海棲艦と意思疎通ができたとしても共存することは不可能だ、と」

大将「中将が?」

H大将「ああ。深海棲艦と俺たちは相容れることはできん。それを証明したくてお前に出撃を要請したんだ」

大将「貴様は俺の理想が夢物語だと言いたいのか!」

H大将「それをこれから確かめに行く。お前は、奴らが俺たちと共存できる証明をすればいい。証明できたなら、俺も考えを改めるつもりだ」

大将「……お前には、共存できない証明ができると?」

H大将「そう思ってくれて構わん、それゆえ最悪の事態を想定している。提督少尉の艦隊との戦闘を、な」

大将「……そうはなりたくないものだな。いや、あってはならん事態だ」

H大将「お前にとって提督少尉はそれほどの男か」

大将「ああ。彼こそがこの戦争を終わらせられる鍵だと思っている」

大将「だからなんとしても彼を俺の下に引き入れる。どんなことをしても、だ」

H大将「お前の甥……X中佐のところで入院していた時に、あの男にアプローチをかけたらしいな? 断られたそうだが……」

大将「……そうだ。頑なに拒否された」

H大将「俺が知りたいのはそこだ。もし深海側に肩入れしているのなら、海軍では理解者になるであろうお前の誘いを蹴ったのはなぜか?」

H大将「大将よ。提督少尉の考え如何では、あの鎮守府自体をどうにかする必要が出てくるぞ」

 * 一方 X中佐所有 医療船内 *

中佐「……敵影は?」

祥鳳「いまのところありません。静かなものです……」

中佐「この航路は比較的安全な航路として確立はしているけど、警戒を怠らないようにね」

祥鳳「はい、承知しております」

中佐「……」フゥ

祥鳳「……」

中佐「……なぜ、こんなことに」

祥鳳「X提督。あなたは2日前に直接墓場島に乗り込んでいったそうですね?」

中佐「うん。この島への定期便の発着時間を赤城に聞いてね。特別に乗せてもらったんだ」

中佐「彼がどうやって泊地棲姫を追い返したのか、そして、彼が将来のことをどう考えているのか、知りたくてね」

祥鳳「将来?」

中佐「一つ目の質問に関しては何も聞けなかった。報告書に書いた通りだって答えしか返ってこなかったんだ」

中佐「でもね、二つ目に関しては面白い話が聞けたよ。彼は、艦娘の国を作りたい、と考えているらしい」

祥鳳「く、国……ですか!?」

中佐「小さくていいから国家を作る。法整備や条約を定め、君たち艦娘の人格を世界に認めてもらう、とね」

中佐「君たちは現状、海軍では兵器として扱われている。一部の者は無意識にそう望んでいるきらいもある」

中佐「深海棲艦に対する結末が和睦にしろ殲滅にしろ、平和になった時の君たちの居場所を、彼は作りたいらしい」

祥鳳「それは……すごい話ですね」

中佐「彼は今の生活が気に入っているようでね。その延長の場所を確保しようとしたら、こんな結論になったそうだよ」ハハハ

中佐「……だが、その一方で、この戦争が決して終わらないだろうと悲観視していることも聞いた」

中佐「深海何千メートルの世界に深海棲艦の巣があるという噂、聞いたことがあるかい?」

中佐「それが事実なら深海棲艦を滅ぼすのは不可能だろうと彼は言う。それが事実なら、確かにそうだろうな」

中佐「逆に和平を結ぼうとしても、人間と同じように、すべての深海棲艦がそれに納得はしないだろう、とも言っていた」

中佐「人間にもそれを煽り、食い物にする連中がいる。人間自体、いつまでたっても戦争をやめない愚かな生き物だと、痛いことを言われたよ」

祥鳳「ですが、深海棲艦との戦争を終わらせるために、私たち艦娘がいるんです。それを……」

中佐「君たちは、やっぱり戦うことがすべてなのか?」

祥鳳「……っ」

中佐「そう思うと、流石に心苦しくてね。君たちがいるだけで安心しきっていた自分に嫌気がさしたよ」

中佐「とどめに、彼にはこうも言われた……」


  提督『一度生み出された凶器は、たとえ時の権力者の手によって消し去られそうになっても、滅ぶことはありえねえ』

  提督『必ず、誰かが、最悪のタイミングで持ち出す。絶対にな。そしてその抑止力として、やはり同じかそれ以上の暴力を求められる』

  提督『平和ボケした連中は、戦争がなくなれば艦娘をなくせというだろう。矢面に立つ者、立っていた者の心情も考えずにな』


中佐「戦争が終われば、艦娘は不要だと声高く叫ぶ連中が現れるのは目に見えている。僕だってそんなのは御免だ」

中佐「僕も、君たちと平和に暮らしたいと思っている。彼の夢をかなえてあげたいと思っている。だから僕は、彼を助けたい」

祥鳳「X提督……」

中佐「最後に彼は……口を滑らせたんだと思うけど、『深海にも争いを望まない連中がいる』と言っていたんだ」

祥鳳「え……!?」

中佐「どういうことかはわからないが、彼が深海棲艦の事情を知っていなければ、こんなことは言わないはずだ」

中佐「……もう一度、提督少尉に会う。会って、問い質さなければ。どうやって、泊地棲姫と戦ったのか……どうやって追い返したのか」

中佐「そして……彼がなぜ、深海棲艦にも手を差し伸べようとしたのか。あのときははぐらかされたが、それを、聞かなければならないんだ」

ヴェールヌイ「司令官」

中佐「! ヴェールヌイか。すまないね、せっかく君の姉妹に会える機会だと思ったのに」

ヴェールヌイ「……司令官は、いつも力を尽くしてくれている。だから、姉妹と……仲間との戦闘は発生しない。私はそう信じているよ」

中佐「……!」

ビスマルク「その子の言う通りよ!」

プリンツ「私たちの力をお見せできるかと思ったんですが……」

ローマ「この分だと無駄足になりそうね。残念だわ」

リベッチオ「ローマ、その方がいいって言ってたじゃない!」

ローマ「……覚えてなさいよ」プイ

中佐「みんな……」

祥鳳「提督。私たちはあなたを信じています」

中佐「……ありがとう。みんな」コク


 * 墓場島鎮守府 執務室 *

提督「おいでになったようだな。見ろよ、大艦隊だ」

不知火「本営で見た高速護衛艦ですね。それと中佐の医療船と、あれは巡視船でしょうか」

提督「武装は積んでないのか?」

不知火「あっても対空機銃レベルかと。今、現役の艦船は速度を求められていますから」

如月「戦うより逃げることを優先した船の方が有用なのね」

不知火「はい。今は戦闘は艦娘の役割ですから」

大和「戦艦タイプの艦娘も大勢いますね……武蔵もいるわ」

提督「中佐の言う通り、完全に俺たちを相手取る想定での編成じゃねえか……くそが」

 RRRR... RRRR...

提督「はい、こちら……」チャッ

通信『こちら海軍高速護衛艦、大将だ。提督少尉は在席か』

提督「……(ちっ、せっかちな奴だな)……私です」


通信『うむ、君か。こんな時間に起きているとは、なにかあったのかね』

提督「先程部下にたたき起こされまして。何事かと思えばこの騒ぎです」

通信『ならば話は早い。急な話で申し訳ないが、先日行った鎮守府の捜索について不備があった』

通信『再調査を行うべく、君の艦隊に協力を要請する』

提督「不備? ……わかりました。こちらは何を?」

通信『まずは君の部下の艦娘たちは全員洋上へ出したまえ。君も鎮守府埠頭での待機を命ずる』

提督「……了解しました。ところで、一つご質問させていただいても?」

通信『なにかね?』

提督「このような時間に島の調査には不似合いな大艦隊でおいでになったのは、どういうことかと。この後に大規模作戦を控えておいでですか?」

通信『今は話せん。機を見て説明しよう』

提督「……は、失礼致しました。では早急に艦娘たちを出港させます」


提督「結局、深海の連中もメディウムたちも時間切れか。適当にやり過ごすしかねえな……」

というわけで、今回はここまで。

今年もよろしくお願い致します。


続きです。


 * 墓場島鎮守府 東側の沖合 *

大将鎮守府の武蔵(以下T武蔵)「……あちらにも私がいるのだな」

T霧島「大和さんもいますね。辺境の鎮守府だと言うのに、ほぼすべての戦艦が揃っているのは驚きです」

 ザァァァ

T武蔵「……来たか」

H長門「お前たちが今回の作戦の僚艦か。私はH大将艦隊旗艦の長門だ。陸奥、金剛、比叡、高雄、愛宕が随伴する」

T武蔵「大将艦隊旗艦、武蔵だ。この霧島と、妙高、羽黒、清霜、初風が随伴艦だ、よろしく頼む」

T霧島「戦艦を4隻とはさすがですね……お姉様たちが参加されるのも心強いです」

W榛名「W大佐艦隊旗艦、榛名です。球磨、多摩、鈴谷、熊野、日向がご一緒致します」

T武蔵「ん? 航空艦が多いな? 今回想定している戦闘では航空戦は行わないはずだが」

T霧島「W大佐の主力は航空火力艦です、やむを得ないかと。とすると、こちらは?」

J秋月「はいっ! J少将の艦隊旗艦を務めさせていただきます、秋月! ここに推参致しました!」

T武蔵「ああ、お前たちが噂の防空駆逐艦か」

J秋月「はいっ! 妹の照月、初月と、矢矧さん、酒匂さん、衣笠さんで、みなさんをお守りします!」

T霧島「……ところで、K大佐の艦娘が見えませんが」

J秋月「はいっ! K大佐は、島の内部を捜索するため、阿武隈さんを旗艦とする水雷戦隊を編成したと、J少将より伺っております!」

T武蔵「水雷……駆逐艦を上陸させるのか? 少々不安なんだが……」

H長門「私もそう進言したが、策があるらしい。いざとなれば我々も乗り込まねばなるまい」


H長門「では、X中佐の旗艦、祥鳳には別途話を通してあるので、ここで作戦を説明させてもらう」

H長門「全体の位置取りとしては複縦陣だ。まず、大将2名の連合艦隊が島の東側、鎮守府正面に陣取る」

H長門「その背後をW大佐とJ少将の艦隊が、更にその後ろに護衛艦とJ少将の巡視船が陣取る」

H長門「X中佐の医療船は別働隊として我々の陣の南側、風下にて待機。X中佐の部隊は救助活動と遊撃にあたってもらう、という算段だ」

T武蔵「ふむ……しかしどうやら、この作戦自体、必要なさそうだな」チラッ

H長門「ああ、墓場島のすべての艦娘が素直に投降している。わざわざ我々が出張るほどのことではなかったのかもしれん」

T霧島「提督少尉も、私たちに対抗できるような特殊能力を所持しているなどの情報もありません」

T霧島「むしろ先の泊地棲姫との戦闘で負傷し、復帰したばかりです」

T武蔵「深海棲艦の首魁たる泊地棲姫を追い払いながら、仲間である我々に疑われる、か。傍から見れば滑稽なことだ」

W榛名「……」

T霧島「榛名お姉様?」

W榛名「いえ……榛名は大丈夫です。それより、島の艦娘全員が退去し終わったようですね」

H長門「これで島に残るは提督少尉一人か。深海棲艦の反応は?」

J秋月「現時点では反応ありません!」

W榛名「……」

T霧島「榛名お姉様? 本当に大丈夫ですか?」

W榛名「……はい」


 * 少将所有 巡視船 甲板上 *

W大佐「……」

伊勢(W大佐の秘書艦)「W提督、いつになく表情が暗いよ?」

W大佐「……伊勢。お前は今の状況で私に笑えと言うのか?」

伊勢「そうじゃありませんってば。普段から神妙な顔をしてるのはわかってますけど、今日は輪をかけて重々しい、って意味ですよ」

W大佐「……」

伊勢「そりゃあ、同じ海軍の鎮守府に厳戒態勢で臨まなきゃいけないってところが気に入らないのはわかりますけど……」

W大佐「……」

伊勢「もー、W提督は最近すーぐ黙りこくっちゃって! 昔の日向に似てきたよ? これってどうなのさ日向ー?」

J少将「ふふ、そうだな。伊勢の言う通り少し楽にしたまえよ、W大佐」

W大佐「!」

伊勢「はっ! し、失礼しました!」ケイレイ

J少将「ん。W大佐もこのたびの昇格直後にH大将から抜擢されたのだ、緊張しているのではないかな?」

W大佐「……は。そういえば少将殿も、近く中将に昇格するお話があったそうで」

J少将「ふふ、こんなところでその話はやめたまえ。先の中将がお辞めになるそうで、その繰上りで私が声をかけられたに過ぎないんだからな」

W大佐「……それはむしろ、私のことかと」

J少将「ん、中将の息子さんか。彼に関しては残念な話だった。だがもう終わったことだ、我々がその穴を埋めれば良い」ニッ

W大佐「……は」


J少将「ときにW大佐、中に入ってはどうかな? まだ夜明け前だ、コーヒーでも淹れようじゃないか」

W大佐「は、お心遣い感謝いたします。ですが、私はここが良いのです」

W大佐「上官である少将殿の船に乗せていただいて上げ膳据え膳では、私も立つ瀬がありません」

J少将「それで、君はここで海を見ているのか。仕事熱心なのは感心だが、自分の手に余る仕事を引き受けても良いことはないぞ?」

W大佐「は」

J少将「佐官以上で島に乗り込むのは大将殿2名と私の部下のK大佐。私と君は私の船で待機し、X中佐には医療船で待機してもらう」

J少将「島の様子は私の部下にも見張らせているし、何かあれば通信が届く。君がここにいようがいまいが、できる仕事は限られるぞ?」

W大佐「……上官殿の戦い方を見る良い機会です。勉強させて戴きます」

J少将「ふふ、そうかね。では、ここで君の望むように戦いたまえ。私は中で待機しているよ」クルリ

W大佐「は」ケイレイ

 ザザーン

伊勢「……W提督、本当に大丈夫?」

W大佐「……俺が一番気に入らないのは、この艦隊の船と人員の殆どを少将が手配したことだ」

W大佐「Xに頼んだ医療船以外は、全部少将の手筈通り……俺が思った通りに動けないことに、少し窮屈さを覚えただけだ」

伊勢「W提督は完全に人任せって嫌いだものね。X中佐とは同期なんだっけ? いまからでも中佐の船に乗せてもらおうか?」

W大佐「……」

伊勢「……ちょっと、本当に大丈夫?」

W大佐「……ああ……」ピッピッピッ

W大佐「……もしもし、Wだ」


 * 島の北西の沖合 X中佐所有の医療船付近 *

ビスマルク「あら? 提督! 墓場島の子たち、全員こっちに向かってきてるわよー?」

中佐「え? ……本当だ」

 ザザァァァァ

不知火「お久しぶりです」ビシッ

初春「息災であったかの?」

中佐「やあ、君たちか。突然で悪いね、しばらくここで待機していてくれ」

島風「しばらくってどのくらい?」

中佐「んー……島の調査だからね。最低でも午前中いっぱいは覚悟した方がいいかな」

白露「そ、それじゃ、全然『しばらく』じゃないよ!」

ヴェールヌイ「そうかな? 一番お姉さんな子なら、率先して立派にできると思うんだけど。どうだろう初春」スッ

初春「うむ、そうじゃのう。容易いことではないかの、のう暁よ」

暁「と、当然よ! 暁だって待機できるわ!」ビシッ

白露「……! 負けないよ! 白露が一番だもん!」ビシッ

那智「わかりやすいな」クスッ

大淀「ですね」クスッ


ヴェールヌイ「それはそうと」

暁「!」

電「!」

ヴェールヌイ「暁と電だね。私はX中佐鎮守府所属の艦娘、ヴェールヌイだよ」

暁「ええ、知ってるわ、響の改装した姿よね。初めまして、ね!」ニコッ

電「響ちゃん、よろしくなのです!」ニコー

ヴェールヌイ「……うん」ニコ

川内「……」

今回はここまで。



一応、簡単に補足を。

大将:深海棲艦と和睦を結びたい人。声がでかくて威勢のいいおやじさん。
X中佐:大将は伯父。深海棲艦とは和睦したい派。見た目も性格も軍人には向かないとよく言われる。酒匂似。

H別大将:深海棲艦を殲滅したい人たちの筆頭的存在。中将とは縁があるらしい。お堅いおっさん。
J少将:殲滅には賛成の姿勢を示す、H大将の部下。良くも悪くも目立たない、裏方仕事の好きな細身のおっさん。
K大佐:別大将の部下。H大将よりはJ少将との付き合いが長い。命令には忠実だが、要領が悪く総合的な評価はいまいちとか。

W大佐:X中佐の同期。どちらかといえば深海棲艦を殲滅したい派。秘書艦の伊勢に「日向に似てきた」と言われる。

大佐:提督の直属の上司。戦争は金儲けの手段。現在進行形で死ぬよりひどい目に遭っている。
中将:大佐の父親。有能だったが親バカでもあった。息子の不始末もあって辞職願を出した爺様。

続きです。


 * 墓場島鎮守府 埠頭 *

提督「……」ケイレイ

大将「いよお、提督少尉! 怪我の具合はどうだ!」バシバシ

提督「は……(痛えよ)」

H大将「お前が提督少尉か。俺はH大将、こっちは部下のK大佐だ」

K大佐「……」コク

提督「……」ペコリ

K大佐「……」ジッ

提督「……?」

大将「おいおい、K大佐とは無口仲間かあ?」バシバシ

提督「……初対面ですが」

H大将「大将、遊びに来たわけではないぞ。少尉を口説きに来たわけでもない」

大将「わかっている。俺の将来の部下だぞ、妙な真似はするなよ!」

H大将「やれやれ……さて、少尉。お前に聞きたいことがあって来た。島の再調査はどちらかと言えばついでだ」

提督「……わかりました。立ち話では済まないのでしょう? 中へどうぞ」


H大将「……わかった。では大将も同席してくれ。K大佐は島の調査を頼む」

K大佐「……は……!」ビシッ

K大佐「」クルッ バッ

(K大佐の合図とともに、大勢の兵が島に上陸していく)

提督「……」

H大将「どうかしたか」

提督「私が着任して以来、仮にも『墓場島』などと呼ばれる縁起の悪いこの島に、これほど多くの人間が足を踏み入れたのは初めてです」

H大将「そうか。何か問題でも?」

提督「……今朝も北東の砂浜に、艦娘が流れ着いているかもしれません」

提督「それを見たあなたの部下が心無い台詞を口にしたりしないか、それだけが気掛かりです」

提督「人間にとって、艦娘は所詮、『ひと』ではありませんから」クルリ

H大将「……」

提督「……」


 * 執務室 *

大将「ここが執務室かね」ガチャー

提督「……」

H大将「大将、お前はもう少し静かにドアを開けられないのか」

大将「ん、すまんな! しかし殺風景な部屋だな」

提督「……!」

H大将「必要な資料も最低限か。綺麗に片付けられているな……少尉?」

提督「! はい」

H大将「なにかあったのか? 壁をじっと見てぼんやりしていたようだが」

提督「……少々、考え事を」

大将「壁なんぞ眺めて何を考える必要があるんだ」



提督(神殿への扉が消えている? ……ニコの身になにかあったのか?)


 * 島の北西の沖合 *

朧「……」ソワソワ

如月「……どうしたの?」ヒソッ

朧「……いえ、なんだか嫌な予感が」ヒソッ

吹雪「気のせいだよ……って言いたいけど、朧ちゃんがそういう時ってそういう時が多いもんね」ヒソッ

電「どうしたのです?」

吹雪「朧ちゃんが嫌な予感がするって」ヒソッ

電「……」

初春「……ふむ、聞いたぞ? さてはおぬしら、島に行くつもりじゃな?」

電「て、偵察任務なのです!」

霧島「……任務? そんな任務は聞いてませんね?」ズイ

如月「き、霧島さんっ!?」

朧「……み、見逃してもらえない、かな」

霧島「……」ウデグミ

吹雪「お、お願いします!」

初春「あやつが心配なのじゃ。後生ゆえ、頼む」

霧島「……」

電「き、霧島さん……?」


霧島「皆さん手荷物を持って行くつもりですか?」

如月「!」

霧島「預かっててあげましょう。必ず戻ってくるんですよ?」

摩耶「……おう、やばくなったらすぐ連絡しな。すっ飛んでってやるからよ」ニッ

電「あ、ありがとうなのです!」

初春「すぐに戻るでの!」

朧「すみません! 行ってきます!」

吹雪「これ、お願いします!」カバンサシダシ

摩耶「任せな!」ウケトリ

霧島「……はぁ。良かったのかしら」

摩耶「いいんじゃねえか? あたしたちだって命令違反でこの島に流されたんだし、あいつらを咎める資格はねえっすよ」

霧島「無事だといいんですが……」

暁「あら? 電は?」

潮「朧ちゃんもどこかに行ってます?」

摩耶「ん? ああ……お花を摘みに言ったんだよ」

暁「!」

潮「そ、そうだったんですか……じゃあ、向こうで待ってます」

霧島「……そういう知識もあったんですね」ヒソ

摩耶「ま、付け焼き刃っすけど」ニシシ


 * 執務室 *

H大将「さて、少尉。どうやって泊地棲姫を追い払ったのか、再度説明してもらいたい」

提督「……報告書の通りですが」

H大将「本当にか」

提督「本当です。それを私の口から説明しろと仰るのであれば、同じことの復唱になります。それで良ければそのように致しますが」

H大将「……」

提督「……H大将殿は、どのような疑問をお持ちで?」

H大将「何故、お前は死ななかった?」

大将「おい! お前は提督少尉に死ねというのか!」

提督「大将殿、それはそういう意味ではありません」

大将「そ、そうなのか?」

提督「私が銃で撃たれて何故死ななかったのか。それは私にもわかりかねます」

提督「私は確かに大佐に撃たれました。それからおかしな夢を見たような気もしますが、覚えていない、と答えるしかありません」


H大将「……では別の質問だ。大佐は泊地棲姫に連れ去られた。間違いないのだな?」

提督「はい」

H大将「お前に手を出さなかったのはなぜだ?」

提督「わかりません」

H大将「……推測で構わん。なぜだと思う?」

提督「生きている人間に興味があり、死にかけていた私には用がなかった」

提督「または、最初から攻撃を仕掛けてきた大佐を狙っていて、その大佐と敵対していた私に用がなかった」

H大将「……」

提督「……」

H大将「……わからんな」

提督「……私もです」

大将「……」

大将「……俺にはお前ら二人の遣り取りの方がわからんぞ」

H大将「……」

提督「……」

大将(……俺はどうしたらいいんだ?)タラリ

とりあえずここまで。

次くらいに事態が動き出せるといいなあ……。

時系列と辻褄合わせに時間がかかってしまいました。

続きです。


 * 島の南端 *

吹雪「上陸したのは良いけど、鎮守府のある島の東側は見張りがすごく多いね……」

電「みんなこの島の調査のために来たのです。迂闊に動けないのです」

如月「遠回りだけど、島の西側の林を通って行ったほうが良さそうね」

初春「……どうせなら、朧だけ先行しても良いのではないかの?」

朧「い、いいの?」

電「その方がいいのです。司令官の身に危険が迫っているのなら、一刻も早く助けてあげるのです」

如月「悔しいけれど、私たちの足じゃたかが知れてるものね」

朧「……わかった、先に執務室へ向かうね。朧、行きます!」シャッ

初春「頼むぞ、朧よ……」

吹雪「……ねえ、朧ちゃんが忍者っぽくなってるの、おかしいと思うのは私だけ?」

如月「格好いいからいいんじゃない?」ニコー

初春「あるがままを受け入れよ」サトリキッタマナザシ

電「そんなことは今更なのです」ハイライトオフ

吹雪「ええ……」


初春「それにしてもじゃ。朧がこうなる一因を作ったメディウムたちが不在というのは、いったいどういうことかの」

如月「そうね、どこへ行っちゃったのかしら、ナンシーさん」

電「戻ってきたらお仕置きなのです」ニタリ

吹雪(……電ちゃん毒されてる……誰か助けて)シロメ


 * 墓場島鎮守府 執務室 *

H大将「……まだ白を切るか」

提督「……」

大将「H大将? いったい何を言っているんだ」

H大将「では少尉。この島の北にある洞窟に、深海棲艦が出入りしている情報があった。これはどういうことだ」

提督「好きにさせています」

H大将「何故だ!」

提督「即座に殲滅する必要がなく、そして殲滅が難しいからです」

提督「一度追い返した連中が、こちらに襲い掛かってくることもなく、島に近づいたのはなぜか?」

大将「……」

H大将「……」

提督「即答できないでしょう。興味がわいた、と言えば納得していただけますか」

H大将「……あれだけ大勢の艦娘がいながら、奴らの跋扈を見逃すと言うのか」

提督「迎撃したくとも資材がありません」

提督「大和や武蔵のような大戦力も、潤沢な資源がなければ効果的な運用は不可能です」

提督「大佐によって生かさず殺さず飼われてきた我々には、日々の最低限の活動を行いながら資材を蓄え有事に備えるのみ」

提督「その有事が起きた直後が今です。無理を押して進むことは長期的に見ても愚策かと」

H大将「……ほう」


提督「ましてや、この鎮守府の艦娘がどんな経緯でここに居着いたか御存知でしょう?」

提督「資源のために解体でもしようものなら、今まで築いてきた様々なものが音を立てて崩れ落ちるのは目に見えています」

提督「やれというのならやりましょうが、そのあとのことまで私が責任を負う自信はありません」

H大将「好き放題言ってくれるな。立場を弁えているか?」

提督「鎮守府と、ここ以外に帰る場所のない我々の命運がかかっています。この場に及んでの隠し事は、早死にしたい者がすることです」

提督「命を懸けろと言うのでしたらその通りにしますが、その場合、私が責任を負いきれないとわかっているからここで明言したのです」

提督「おそらくH大将殿も危惧しておいででしょう? この鎮守府の艦娘が深海棲艦化したら……その際の後始末、あなた方にお任せしてもよろしいのですね?」

大将「い、いや、それはいかん! 提督少尉にはこれから私のもとで働いてもらわねばならんのだ!」

提督「……」

H大将「……」

提督「H大将殿。この島は航路としても拠点としても、重要性はありません。捨て置いても構わないかと」

H大将「……」

提督「……」

H大将「……貴様の、どこまでが本音かわからん」

H大将「平たく言えば、貴様はこの鎮守府と、深海棲艦を放っておけと言っているように思える」

提督「……」


H大将「……はっきり言う。貴様は、深海棲艦を束ねる『深海提督』ではないのか」

提督「違います」

H大将「……」

提督「……」

大将「は、ははは! 面白い冗談だな、H大将! 提督少尉は紛れもない海軍士官の一人だぞ!」

大将「仮にそうだとしても……いや、そうだとすれば、深海棲艦との和解の日もそう遠くないということになる!」

提督「……」フゥ

H大将「果たしてどうかね……彼にその気があるかどうか、俺には疑わしく思えるが?」

大将「いやいや、そんなことはないだろう。なあ?」

 ズカズカズカ

K大佐「失礼致します」ケイレイ

大将「む、どうした?」

K大佐「島の丘の上にある艤装について提督少尉に確認をお願いしたく、同行願えないかと」

H大将「……良かろう。少尉、みちすがらいろいろ話をさせてもらうぞ」


K大佐「大将殿、H大将殿。少々お待ちくださいますか」ヒソッ

H大将「ん?」

K大佐「お二人にご報告したいことがございます」ヒソッ

大将「……執務室に残れと?」

K大佐「はっ」

大将「……わかった。では、提督少尉を先に行かせたまえ」

K大佐「はっ」

K大佐「提督少尉。君はこの士官の後をついて行き、丘の上に行け」

マスクを付けた士官「……」ケイレイ

提督「……わかりました。では、失礼します」

 コツ コツ コツ

大将「行ってしまったか」

H大将「……それでK大佐? 話とはなんだ?」

K大佐「その窓から外をご覧ください」

大将「なんだ?」

H大将「何かあったのか……?」

 バヂッ

大将「ぐおっ!?」ドタッ

 バヂッ

H大将「がっ……?」バタッ


部下1&2「……」スタンガンカマエ

K大佐「御苦労。通信機を取り上げろ」

部下1&2「はっ」ゴソゴソ

H大将「K大佐……っ、貴様、一体なにを……」

大将「くっ、貴様ら、よさんか……!」

部下1&2「発見しました」スッ

K大佐「よし、そこに置け。二人は拘束しろ」サイレンサートリツケ

 パキュン パキュン

通信機×2< バキャバキャン

大将「K大佐、これはどういうつもりだ……!」

K大佐「これから死ぬ人間に話す必要はない」

H大将「……!」

K大佐「では、お二方とも、ごきげんよう」コトッ

 時限爆弾< ピー カチッカチッカチッ

大将「お、おい、動き出したぞ!」

H大将「……」

大将「まさか、貴様の飼い犬に手を噛まれるとはな!」

H大将「……なぜだ。なぜK大佐が裏切った」

大将「おい! そんなこと考えてる場合じゃないぞ! 早く何とかしろ!」


H大将「……」

大将「聞いてるのか! おい!!」

 窓< バーン!

朧「司令官!」シュタ!

大将「!?」

H大将「!?」

朧「……あれ?」

H大将「お、お前は……!?」

大将「こ、この際誰でもいい! 助けてくれ!」

朧「えっ!? これ、どういうことですか!?」

H大将「この部屋から今すぐ脱出したい! 助けてくれ!」

大将「早くしろ時間がないぞおおお! あああ爆弾がああ!」

朧「爆弾!?」

大将「そうだ! だから早く俺たちを逃がすんだ!!」

朧「そ、それなら……うう……っ!」グッ

大将「うお!?」グイッ

H大将「我々を抱えて……まさか!」グイッ

朧「うああああーーーっ!」ダダダッ

 バッ

大将「やっぱり窓から飛び降りるのかあぁぁぁ!」


 木の枝< バキッバキバキバキーッ

 茂み< バザバザバザーッ


朧「……く、くぅぅ……!」

H大将「お、おい、きみ、大丈夫か!」

大将「くそ、ひどい目にあった!」

朧「だ、大丈夫ですか……?」

 ズドォォォオン!

朧「!? し、執務室が……!?」ビクッ

H大将「危なかったな……!」

大将「とにかく早く縄を解け! K大佐を何とかしなければならん!!」

H大将「せかすな! きみ、すまないが、私の上着の中にナイフがある。それで縄を切ってもらえるか」

朧「は、はい! ……これですね!」ゴソゴソ

H大将「よし、先に大将を頼む」

 ゴソゴソ ブチッ

朧「切れました!」

大将「よぉし! よくやった!」バラッ

H大将「静かにしろ! 誰が敵か味方かわからんのだぞ!」


大将「そんなものはわかっている! とにかくK大佐を探さねば……俺は先に行くぞ!」ダッ

H大将「おい!? あいつ、猪突猛進なところは変わってないのか!」

朧「す、すみません、遅くなって! 今、切れました!」バラッ

H大将「いや、助かった、ありがとう。きみは?」

朧「は、はい! 墓場島鎮守府所属、提督少尉配下の駆逐艦、朧です!」ケイレイ

H大将「提督少尉の? 島から全員退去せよとの指示ではなかったか?」

朧「す、すみません……朧の独断で、様子を見に戻ってきたんです」シュン

H大将「……結果的にそれで助かったわけだからな。この場は不問にしよう」

H大将「それよりもだ、島の外の様子はどうなってる?」

朧「? いえ、特に何も動きはありませんが」

H大将「……提督少尉からの指示は?」

朧「アタシたちは島の外で待機しろという指示しか受けてないです。みんな中佐の船の前で待機してます」

H大将「本当か?」

朧「はい。でも妙な胸騒ぎがして……朧だけ先に執務室に向かうことになって。それで飛び込んだら、こんな状況で……」


H大将「ということは、きみ以外にも島に乗り込んだ者がいるんだな?」

朧「あ、いえ、それは」

H大将「まずはそこへ合流するか。きみたちには礼と説教がしたいからな」

朧「す、すみませ……痛っ!」ヨロッ

H大将「! 朧君、足を見せてみろ」ビッ

朧「あ……っ」

H大将「艦娘とはいえ、大人二人を背負って2階の窓から飛び降りたんだ。やはり無傷ではすまんか」シュル ゴソゴソ ギュ

H大将「よし……応急処置完了だ、急いで明石に見せねばな」ヒョイ

朧「た、大将さんっ!?」

H大将「おとなしく私に背負われていたまえ。きみくらいならさして重くもない」

朧「す、すみません」

H大将「さっきから『すみません』ばかりだな。それはもう言わなくていい」

H大将「今は二人でお互いが協力せねば打開できん状況だ。朧君、案内と援護を頼めるか?」

朧「! わ、わかりました!」

今回はここまで。

続きです。


 * 墓場島 南東の丘の上 *

 ザッザッ

士官「……」

提督(執務室を出てから、こいつ一言も喋らねえな……執務に忠実なのはいいことだが)

提督(こいつがずっと俺に向けているこの殺気は、少しも隠そうとしてねえのが気になるな)

提督「それで、丘の上にまで来たが……どこを調べるって話なんだ?」

士官「……」

提督「……」

 ズドォォォオン!

提督「!?」

士官「!」

提督「なんだ!? 何が起こった! ……鎮守府のほうだぞ……!」ダッ

士官「……動くな」チャキ

提督「! ……やっと喋ったと思ったら、何の真似だ」

士官「動くな」

提督「……」


「しれいかーーーん!!」

 タタタタッ

提督「!? お、お前ら!?」

吹雪「だ、大丈夫ですか司令官!」

電「今の爆発音はなんですか!? 鎮守府の方から聞こえたのです!」

如月「それに、司令官は執務室にいたんじゃなかったの!?」

提督「……こいつがここを調べたいとよ」

士官「……そうだ。すぐに来い」ツウシンキトリダシ

初春「……なんじゃ? 誰と話しておる……?」

 タタタタッ

提督「!」

士官「来たか」

阿武隈「K大佐鎮守府、第一水雷戦隊! 旗艦の阿武隈、到着です!」

提督「! ……こいつら……」

雷「あなたね! 私たちの姉妹艦を捕まえたっていう提督は!」

電「え!?」

子日「今日は子日……じゃなくて、年貢の納め時だよぉ!」

初春「なんじゃと?」


白雪「悪いことはいいません。すぐにあなたが捕えたすべての艦娘を解放しなさい」

吹雪「な、何を言ってるの白雪ちゃん!」

睦月「さあさあ、如月ちゃん! こんな島からはさっさと逃げて睦月と一緒に行きましょー!」

如月「睦月ちゃん……!」

曙「……ちょっと、朧と潮はどこに連れて行ったのよ、このクソ提督!」

提督「……こいつらもしかして、お前らの姉妹艦か」

如月「え、ええ、そうよ」

提督「で……お前ら、中佐の船の前で待ってろって指示はどうした」

吹雪「す、すみません、司令官が心配で!」

電「電たちだけ抜け出してきたのです!」

曙「ちょっと、無視してんじゃないわよ、クソ提督!」

提督「あぁ? 黙ってろクソガキ」ギロリ

曙「……っ、なによ!」ビクッ

提督「黙れ。……で、朧と潮も来たのか?」

初春「潮は留守番じゃ。朧は途中まで一緒じゃったが、先に執務室へ向かっておる」

提督「……まさか、今の爆発音」

曙「ちょっ……朧が爆発に巻き込まれたとか言うんじゃないでしょうね!」

提督「……おい、鎮守府に戻るぞ」


士官「動くな」

提督「……あぁ? てめえ、こんな状況でもそんなこと言えんのか?」

士官「これを聞け」


士官が印籠のように掲げた通信機『K大佐より全艦隊に通達!』

通信機『墓場島鎮守府、執務室にて爆発! 大将、及びH大将が爆発に巻き込まれ死亡を確認!』

通信機『提督少尉の仕掛けた爆弾が原因の模様! ただちに提督少尉を捕縛し、身柄を拘束されたし!』

通信機『提督少尉および配下の艦娘が抵抗する場合は、射殺もやむなしとする!』

通信機『繰り返す! K大佐より全艦隊に……!』


吹雪「ど、どういうことですか、それ!」

初春「よくもまあ……確たる証拠があってのことなのじゃろうな!」

電「どうせでたらめなのです!!」

如月「そうよ、司令官がそんなことするわけないわ!」

提督「……おい、お前。お前だ、俺をクソ呼ばわりした朧と潮の同型艦」

曙「……はぁ!? あたし!?」

提督「そうだ、お前だ。今の通信、本物か?」

曙「ほ、本物に決まってるわよ! さっさとお縄につきなさいよ、このクソ提督!」

提督「そりゃ無理だ。犯人は俺じゃねえし、そんなもん俺には関係ねえ」スッ


曙「ちょっと、どこへ行くつもりよ!」

提督「朧を助けに行く。ちょっとどいてろ」

曙「!」

 パァンッ

士官「動くな、提督少尉。次は当てるぞ」

提督「……ちっ、それどころじゃねえんだよ」

提督「それともなにか? お前、Kとかいう大佐とつるんで大将暗殺に一役買ってるのか?」

士官「……」

提督「ったく、なんでお前らはこの島を使って邪魔者を消したがる? この島はゴミ捨て場か?」

士官「阿武隈」

阿武隈「は、はいっ!」

士官「提督を撃て」

阿武隈「……え、えええ!?」

士官「聞こえなかったのか。撃て」

阿武隈「で、ですが……!」

雷「司令官!? 私たちが呼ばれたのは電たちを説得するためじゃなかったの!?」

白雪「そうです! 姉妹艦である私たちの訴えが必要だからと、編成されたのでは!?」

士官「撃てと言っている! こんなふうに!」チャッ

如月「!」

初春「い、いかん!」バッ


 ドンッ

提督「……!」

初春「……」

提督「……初春!?」

初春「……」ハラッ グラリ

(束ねた髪がほどけて、提督の方へ倒れこむ初春)

提督「初春! 初春っ!!」ガシッ

提督「しっかりしろ! おい! 目を覚ませ!!」ユサユサ

初春「」

提督「おいっ!! 初春っ!?」

吹雪「え……!?」

白雪「……艦娘を、拳銃で……!?」

子日「……」ボーゼン

阿武隈「ね、子日ちゃん!? しっかりして!!」

士官「ふ、ふふ、ふはははは……」

如月「っ!!」ビクッ

士官「はははは……はははははは!!」

如月「あ、あああ……!!」ガタガタガタ

睦月「き、如月ちゃん!? なにがあったの!?」


提督「……お前……まさか!!」

士官「ふ、ふはははは……愉快だ。実に愉快だ」マスクヌギステ

士官「お前のせいで、俺の人生はぶち壊しだ。それが、こうやって、復讐できるんだからなあ……最高だ!」

如月「いや……いやあああ……!! いやああああああ!!!」ガタガタガタガタ

睦月「如月ちゃん!?」

吹雪「落ち着いて! 如月ちゃん!!」

士官「……こうやって話をするのは初めてだなぁ、提督少尉? ……あんときはお前は准尉だったか?」

電「……し、司令官さん、知り合いなのですか!?」

提督「……いいや、初めて見る顔さ。だが、心当たりはある。よく覚えてるぜ……」

提督「おそらくこいつは、Z提督は……深海棲艦の遺骸から武器を作り、如月をその威力の実験台にしていた奴だ……!」

睦月「じっ……!?」

士官→士官Z「お前のせいで降格処分どころか、大事な研究所も憲兵と特警に潰されてなあ。1年も不自由する羽目になった」

士官Z「少佐の馬鹿が俺を差し置いて大佐になってたのも忌々しかったぜ……おっ死んでくれたときゃあ、手を叩いて喜んだもんさ」

提督「お前がここにいるってことは、初春を撃った弾丸は……!」ギリッ

士官Z「その通り。俺の発明品、深海棲艦から作った特製の弾丸さ」

提督「……てめえ……!」

士官Z「おい、阿武隈」

阿武隈「……っ」


士官Z「命令だ、提督とその部下を撃て」

阿武隈「……い、嫌です!」

 ドンッ

阿武隈「あうっ!!」バスッ

雷「阿武隈さんの脚を……!」

士官Z「お前、馬鹿か? この弾丸は駆逐艦の頭をブチ抜いたんだぞ? お前にも同じことができるんだ」ドンッ

阿武隈「ぎぃっ!?」ビシッ

士官Z「おいおい、両脚撃ち抜かれて豚みてえな声あげてんじゃねえよ。興奮するじゃねえか、ひひっ」

阿武隈「ひ、ひぃぃ!!」ジリッ

白雪「……待ってください!」

士官Z「ああ?」

白雪「提督少尉を撃て、というのが、ご命令でしたね」

士官Z「んん? ああ、そういやそうだったな。物分かりのいい奴は好きだぞ? さっさとやりな」

士官Z「ただし、わざと外したりでもしたら、こいつの頭を吹き飛ばすからな?」

阿武隈「~~っ!」グリッ

白雪「……っ!」

士官Z「少尉、お前らも逃げるなよ? 一歩でも動けば、こいつは殺すぞ」

提督「……」ギリ


阿武隈(どうして……どうして提督少尉は逃げないの?)

阿武隈(J少将からは、弱った駆逐艦を捕まえて幽閉するような卑劣漢だって聞いたのに……)


士官Z「構えぇ!」

雷白雪子日「「「……っ」」」

 ガシャガシャガシャッ

士官Z「よぉし……撃てええ!」

曙睦月「「……っ」」ギリ

 ズドドドドーーン


士官Z「んん、直撃したなあ……どうだ、一匹くらいやったか?」

提督「……お前ら」

如月(大破)「し、司令官……」ボロッ

吹雪(大破)「だいじょうぶ、ですか……?」ボロッ

電(大破)「なんとか、無事みたいなのです」ボロッ

提督「……いいから、逃げろ……!」


阿武隈(あんな風に、駆逐艦たちに身を挺して庇われるような人が……なぜ?)

今回はここまで。

間が開きましたが続きです。


 * 墓場島 東の沖合 *

秋月「い、いったい何が起きているんですかJ少将!?」

通信『今K大佐から連絡があった通りだ……! 俺も詳しくはわからん!』

初月「僕たちにできることは……」

通信『提督少尉が何を企んでいるかわからん、ひとまず砲撃の準備をしろ。その必要がないことを祈るしかあるまい!』

衣笠「……」

 ジジジッ

衣笠(個人回線……!)ビクッ

通信『衣笠。三式弾を装填しろ。照準は提督少尉だ』

衣笠「え……でも、三式弾なんか撃ったら、K大佐の部隊も」

通信『構わん。織り込み済みだ』

衣笠「そんな……」

通信『お前には躊躇するなと再三言い聞かせてきたつもりなんだがな……残念だ』

衣笠「ま、待ってください!!」

通信『もう遅い。貴様の姉妹艦に沈んでもらうとしようか』

衣笠「え、え!?」


 * 墓場島 南東の沖合 *

長門「さっきの爆音はなんなんだ、X中佐!」

中佐「……わからない。K大佐からは、提督少尉が大将たちを爆弾で殺したと言っている……」

金剛「そ、そんなのあり得まセーン!」

中佐「わかってる。そんなことはあり得ないんだ……そんなことをしても彼には何の得にもならないことくらい!」

霧島「だったら何故……」

青葉「……」ススッ

ビスマルク「……ちょっと、あなた。どこへ行こうとしてるの?」

青葉「あ、見つかっちゃいましたか! いえ、向こうの艦隊に見知った顔がいるようなので、ご挨拶にと!」

ローマ「馬鹿なこと言ってないで戻りなさい」

青葉「いえいえ、御手間は取らせませんので! あちらの衣笠に少々確認を……」

ローマ「顔はへらへらしてるけど、その目が笑ってないわ。何を企んでいるのかしら」

青葉「企むなんてとんでもない! 青葉は」

 シュゴオオオオオオオ

那珂「青葉ちゃん危なーーーい!!」ドゴォ

青葉「ヮオヴァア!?」ドボォ

 チュィンッ

ビスマルク「きゃっ!?」

ローマ「っ!」


那珂「あっちね……行って!」ガシャン

 零式水上偵察機 < ブルーン!

青葉「」シロメ

ビスマルク「な、なんだったのよ、いったい。なんで島から狙撃されなくちゃいけないのよ!」

ローマ「狙撃銃?」

ビスマルク「そうよ? ピストルじゃ島からここまで飛ぶわけがないわ」

ローマ「……射線は島の方からだった。狙撃手は島にいる」

ローマ「狙われたのは墓場島鎮守府の艦娘。でも、狙撃銃の弾なんかで艦娘は殺せるの?」

ビスマルク「矛盾してるわね。でも、今のは狙撃銃で艦娘を殺そうとしたんでしょ? 今の銃弾はそうだった」

那珂「誰かが、青葉ちゃんを狙ってた。それだけは確実!! みんな!」

山城「那珂ちゃんが偵察機を飛ばした方角に向けて、砲戦、用意して!!」

 ブゥン

ビスマルク「後ろから飛んできたあれは……ズイウン!? あの偵察機に並行して飛んで行ってるわ……!」

ローマ「同じ疑問を持った人が、他にもいるようね」

ビスマルク「J少佐の船の方からね。ヒュウガかしら?」

 * 墓場島 東の沖合 *

通信『ほう、運がいいな。仕留め損ねたようだ』

衣笠「……っ」

通信『次はないぞ』

衣笠「わかり、ました……!」ガシャン


 * J少将所有 巡視船 司令室内 *

W大佐「……少将殿」ガチャ

J少将「! ノックくらいしたまえ。どうしたいきなり」

W大佐「失礼。伊勢が島に不審者を発見しました」

J少将「不審者?」

W大佐「何を考えてか、島から提督少尉の艦娘を狙撃したようです」

J少将「……むう」

W大佐「事後報告ですが、伊勢が偵察機を飛ばしています。私は甲板上で引き続きそちらの対応にあたります」

J少将「……そうかね。では、何かあれば私の通信機に連絡を入れたまえ」

W大佐「先ほどは通話中だったようですので、直参しました。次からはそのように致します」

J少将「ん。頼むぞ」

W大佐「はっ。失礼致します」クルッ

 コツコツ

W大佐「……」ピタッ

J少将「どうした?」

W大佐「いえ。なんでもありません、失礼致します」ペコリ

 扉< パタム

J少将「……」


 * 廊下 *

W大佐「……」

W大佐(部屋に入ったときのJ少将の顔……あの笑みの意味はなんだ?)

W大佐(問い質したかったが、やめておいて正解なんだろうな。立ち止まったときの殺気が尋常じゃなかった)

W大佐(……本格的に、Xの船に移動する方法を考えなければならんかもしれん)


 * 司令室内 *

J少将「……やれやれ、気付かれてはおらんだろうな」

J少将「……」

J少将「青葉の始末はつけられなかったか。まあ、いい」ニタリ

J少将「この顔を写真に納められては、ひとたまりもないからな……ふふ」スッ


 * 墓場島 丘の上 *

提督「馬鹿、下がってろ。特に如月、お前……」

如月「……嫌です。確かに、怖いけど……私は、司令官を失うことの方が怖いわ」ヨロッ

提督「下がれっつってんだよ。俺なんざ構ってねえで逃げ」

吹雪「そういう命令、聞けませんから!」

提督「……じゃあ馘だ馘! とっとと俺の目の前から」

電「そういう誰かを見捨てるような命令はお断りするのです」ニコー

提督「……痛えとこ突きやがる」

士官Z「次弾装填終わったか? 全員構え!」

阿武隈「駄目よ!」

士官Z「ああ?」

阿武隈「少尉を……その人たちを撃っては駄目! 撃つべきは、この男よ!!」

士官Z「なんだとぉ? 寝ぼけんな兵器如きがあ!!」ドガッ

阿武隈「げうっ!!」ドスッ

士官Z「生意気な! 口を! きいてんじゃあ、ねえよっ!!」ゲシッ ガスッ

阿武隈「ぐっ! あうっ!!」ガッ ドスッ

雷「阿武隈さん!」

子日「許せない……こんなの、許せない!」ワナワナ

士官Z「そんなにお望みなら沈めてやるよ……お前『以外』からな!!」チャキッ


曙「!!」

睦月「に、逃げてええ!!」

朧「やらせは……しません!!」

 ドドォン!!

士官Z「ぐおっ!? な、なんだ!」

白雪「夾叉弾!? どこから!?」

士官Z「だ、誰だ!」

H大将「私だ」パァン

士官Z「ぐあっ!?」バシュッ

士官Z「う、腕が……くそっ!」ダッ

子日「逃がさないっ!!」ジャキッ

H大将「よせ! 艦娘が人間を撃ってはいかん!!」

子日「……!」

雷「……だとしたら、どうして……どうして逆はいいの!?」

H大将「よくはない! よくなんかない……!」

朧「……初春……」

提督「……」ギュ


 ドォン

阿武隈「え……!?」

朧「海上から……」

H大将「あれはなんだ……!?」

提督「……!?」

 三式弾< ヒュゴォォォ…!

H大将「馬鹿な……三式弾っ!?」

朧「司令官!! 逃げて!!」

阿武隈「みんなも早く逃げて!!」

雷「電ぁぁ!!」

白雪「吹雪さん!!」

睦月「如月ちゃあああん!!」

曙「阿武隈さんも!」

子日「ま、間に合わないよぉ!! みんな防御! 防御を!!」

 三式弾< ゴォォォ…!

 ドパァァァァァン…!!

「「「きゃああああああああ!!!」」」

今回はここまで。

続きです。


 * 墓場島 東の沖合 J少将艦隊 *

通信『どういうことだ! なぜ砲撃した!』

通信『旗艦秋月! 応答せよ! 秋月!』

秋月「き、衣笠さん! 今の砲撃は!?」オロオロ

矢矧「衣笠さん! いったい何があったの……っ!?」ビクッ

衣笠「……誰かしら、犠牲になるのなら……」ハイライトオフ

衣笠「……いっそ、私が……」ブツブツ

酒匂「き、衣笠さん……!?」

 ゾワッ

秋月「この気配……!!」

酒匂「……な、なにこれ……!!」

初月「じょ、冗談じゃないぞ……!?」

照月「あ、足下に……無数の反応!!」

矢矧「足下だけじゃないわ……この海域を囲うように敵艦の反応!!」

無数のヨ級&カ級「……」ゴボボボッ

 魚雷<ボシュボシュボシュボシューッ

秋月「ぜ、全艦隊!! 直ちに回避を!! 至近距離広範囲に敵潜水艦! 魚雷です!!」


 * 墓場島 丘の上 *

H大将「……お、朧君!」

朧(中破)「H大将さん……ご無事でしたか?」

H大将「また、君に助けられたのか……提督少尉たちは!?」ムクッ

睦月(中破)「……け、けほっ」

阿武隈(大破)「……」

曙(大破)「……阿武隈さんは」

子日(大破)「気を失ってるけど、直撃は避けてるみたい……」

白雪(中破)「まさか、私たちまで攻撃されるなんて……」

雷(中破)「うう……い、電たちは……っ!?」

(提督に覆いかぶさるように倒れている如月と電と吹雪)

雷「あ……あああ……!」

白雪「……吹雪、さん……!」

提督「ぐ……」ムクッ

朧「し、司令官!」

提督「……おい……」

提督「如月。電。吹雪……」

提督「……起きろ……寝てる場合じゃねえぞ……!」


提督「なあ、如月。おい……!」

電「……司令官、さん」ヨロッ

提督「電……!」

電「司令官さん……電は、少し、おやすみ、したいのです」ニコ

提督「……」

電「……お胸を、貸してもらって、いいですか……?」

提督「……ああ」

吹雪「……あ、いいなあ……」

提督「吹雪もか」

吹雪「……えへへ……いい、ですか?」

提督「ああ。助けてもらったからな」ギュ

電「……甘えさせてもらうのは……初めてなのです……」スリ

吹雪「……私も……ふふ」

提督「……」ナデ

電「しあわせ……なの、で……」

吹雪「……しれい、かん……わたし、がんばりまし……」

提督「……ああ」


電「……」

吹雪「……」

提督「……なあ、H大将」

提督「……これは。どういうことなんだ、これは……!!」ギリッ

H大将「……」

朧「……」

朧「……!」ザワッ

朧「司令官危ないっっ!!」バッ

 ドンッ

朧「!」ビシィッ

 ドサッ

提督「……朧?」

朧「」

提督「朧……おい」

士官Z「やれやれ、見殺しにすれば良かったのになあ?」ガサガサッ

雷「に、逃げたんじゃなかったの……!?」

士官Z「銃なんてな、左でも撃てるもんなんだよ。それに、やられたらやり返さねえとなあ」

曙「なんて、奴……!」


提督「……」ギリギリッ

士官Z「なんだその目は? 俺はお前のせいで人生滅茶苦茶にされたんだぞ?」

士官Z「このくらいのことをされても、文句は言えないだろうが!」チャキッ

 カチン

士官Z「ん~? 弾切れ」

 バキャア!

士官Z「が……っ!」ドシャッ

H大将「……この、外道が……!!」グイッゴキッ

士官Z「ぐえっ!? いぎいっ!?」ミシッグギッ

H大将「貴様のような奴が……同じ、海軍にいようとは!!」グギッ

士官Z「ぎゃああああ!?」ゴギゴギッ


 * 東の沖合 *

矢矧「衣笠さん、回避を!」

衣笠「……」

矢矧「衣笠さんっ!!」

 ドォォン

衣笠(大破)「……」ブスブス…フラッ

酒匂「衣笠さん、どうして……!」ガシッ

衣笠「……私、は……」

矢矧「! いけない!」バッ

 ドゴォン

矢矧(小破)「ぐっ……!」

軽巡棲姫「……邪魔ヲスルナ」

酒匂「姫級……な、なんでぇぇ!?」

軽巡棲姫「ソイツハ、提督ヲ撃ッタ……許シテハ、オケナイ!!」グワッ

 シュゴォォォォォ

 ガキィン!

軽巡棲姫「ナゼ邪魔ヲスル……神通!!」ギリギリギリッ

神通「……」ギリギリッ

矢矧「じ、神通さん!?」


神通「……彼女を撃つのは、少しだけ待ってください」

青葉「ども、青葉ですぅ! 衣笠はこちらで保護します!」

衣笠「……あお……ば……?」

軽巡棲姫「待テ! ナゼダ!!」

衣笠「あお、ば……青葉、生きてたぁ……!」グスグス

青葉「もー、衣笠ったら大袈裟なんだからぁ」ヨシヨシ

矢矧「あなた、もしかして……」

青葉「はいっ、もとJ鎮守府の問題児、青葉ですよぉ!」ニカッ

矢矧「どうしてあなたがここにいるのよ……あなたのせいで、能代はっ!」ギリッ

青葉「お話はあとです、ほらほら、青葉を睨んでる場合じゃないよ?」

軽巡棲姫「……!」ギリギリギリッ

神通「……」ギリギリッ

軽巡棲姫「貴様モ所詮ハ、海軍ノ犬カ……!」

神通「……あなたも、提督が攻撃を受けたことに怒っているんでしょう?」

軽巡棲姫「当然ダ……!」

神通「私はこれから提督の指示に背いて、島へ乗り込みます。……あなたは?」

軽巡棲姫「……! 提督ノ下ヘ行ク!」

神通「……」コク

 クルッ

 シャアァァァ

今回はここまで。

ひゃっはああああ!! やっとここまで来た!


続きです。


 * 島の南東、丘の上*

士官Z「お、おげぇぇ……」ピクピク

H大将「両肩と左股関節を脱臼させた。そのまま這いつくばって苦しんでいろ、貴様の処罰はその後だ」

提督「……」

H大将「……提督少尉。こんな連中を連れ込む気はなかった。すまない」

提督「……H大将。とりあえず、そこのゴミは持ち帰ってくれ。この場所には、艦娘たちが眠っているんだ……」

白雪「眠ってる……?」

雷「それじゃ、この丘に備えられた装備品は……」

提督「備えじゃねえよ。墓標さ」

子日「……こんなに、たくさんの艦娘が……!」

提督「こいつらも、ゆっくり眠らせてやらないとな……」

妖精「待って」ヒョコッ

提督「妖精!? お前、あいつらと一緒に島を出てなかったのか!?」

妖精「わたしが、力になるよ」

提督「お前、なにを……」

妖精「提督とは一番長い付き合いだからね。わたしも、みんながいなくなるのは悲しいのがわかるんだ」ニコ


妖精「だから、わたしが力になる」

提督「何を言ってる……?」

白雪「まさか、あなた……」

 キラキラキラキラ

妖精→応急修理女神「わたしが……みんなを、助ける……!」

 パァァァァ…!

H大将「女神妖精……!」

曙「傷が……!」

睦月「如月ちゃんたちの傷も消えていってるにゃあ!」

阿武隈「……う……」

子日「阿武隈さんも気が付きそうだよ!」

H大将「し、しかし、そんなことをすれば君は消えてしまうぞ!」

応急修理女神「……みんなを助けられる。それが嬉しいから、それでいいんだ……!」ニコッ

提督「……お前……」

 パァン

提督「!?」

H大佐「!?」

艦娘全員「!?」


応急修理女神「……あ」パシュウ

K大佐「……ほう。妖精も撃てるのか、この弾丸は」

H大将「な……に……!?」

提督「妖精!!」

応急修理女神「……ごめ、んね……」キラッキラッ

応急修理女神「てい、と……」シュゥ…

 フッ

提督「……よ……」

提督「……う、せ……ぃ……っっ!!」

雷「消えちゃっ……た……!!」

K大佐「これで貴様らの望みは絶たれた」グイ

大将「ぐあっ!」ドサッ

H大将「大将!? お前……!」

大将「す、すまん、また捕まってしまった……」

K大佐「K大佐より司令室へ。提督少尉は大将とH大将の影武者を用意していた模様」

睦月「!?」

K大佐「その証拠に彼らは通信機を所持していない。確認されたし」

K大佐「我々は大将の偽物は捕縛済み、これからH大将の偽物を拘束する。以上」ピッ

子日「なんてことを……!」

白雪「……これでは、どちらが悪者かわかりませんね……!」


K大佐「やれやれ。大将、貴様がいい加減なことを言うせいで随分遠回りをしてしまったな……」ゲシッ

大将「べ、別に誤魔化すつもりは……」

K大佐「黙れ。わざと我々に別の行き先を教えて時間稼ぎをしたつもりだろうが、小賢しいというのだ」

大将(本気で知らなかったんだが……)

K大佐「まあいい。さて、H大将。志半ばで無念でしょうが、成仏して戴けますかね」チャッ

 ズゥン

大将「な、なんだ? この地響きは」

提督「……ぜだ」

H大将「提督少尉……?」

提督「なぜ、こいつらがこんな目に遭わなければならないんだ……!?」ゴゴゴゴ

 メキッ メキメキメキ

K大佐「……何をしている、提督少尉」

提督(魔神化)「……こいつらが、何をしたって言うんだ……!!」ジロッ

子日「いっ!? て、提督少尉の額に、ツノが!?」

大将「て、て、提督少尉は、化け物だったのかああ!?」

 ズズゥン

雷「きゃああ!?」ヨロッ

子日「じ、地震!? 大きいよ!?」

睦月「……! み、みんな、あれ……海を見て!!」

白雪「え? ……ええ? こ、こんなときに!?」

曙「最悪のタイミングね……」


 * 墓場島 東の沖合 *

ヲ級fl「潜水艦ニヨル奇襲、成功シマシタ」

泊地棲姫「……ソノヨウネ」

泊地棲姫「ソレニシテモ、ル級ノ憂鬱ヲ、私ガ理解スルコトニナルナンテ、ネ……」フフッ


J少将部下「J少将、大変です!! 姫級が2体出現!! うち軽巡棲姫は艦隊と交戦後、島へ接近中!!」

J少将部下「泊地棲姫は外海に出現! 近海にも深海棲艦、多数出現! 潜水艦と空母による大艦隊です!!」

J少将「なんだと!? なぜ察知できなかった!」

J少将部下「レーダーに反応ありませんでした! たった今、急に反応が……!」

J少将「ぐうっ、離脱急げ! まずは泊地棲姫の射程から離れろ!」


泊地棲姫「ドウシテ人間ハ、同ジ人間ヲ殺ソウトスルノカ……」

泊地棲姫「ソンナニ殺シ合イガオ望ミナラバ……私モ戦ッテ沈メテヤラネバナ……!!」ジャキン

 魚雷< ドドドドドバシューッ


J少将部下「左舷、10時の方向! は、泊地棲姫より大量の魚雷群の発射を確認!」

J少将部下「回頭! 右に進路を取れ! 魚雷群と並走してやり過ごせ! 被弾面積を最小限にしろ!」

 ギュイイイ

W大佐「うお!?」グラッ

伊勢「危ない!」

W大佐「す、すまん! ……だが、これは良くないぞ……?」

W大佐「この進路のままでは、艦娘の陣のなかに突っ込む! スピードを落とさないと衝突するぞ!」


J少将部下「J少将! 進路に艦娘がいます!」

J少将「かまうな! 突っ込め!」


伊勢「スピードが……上がった!?」

W大佐「馬鹿な……何をしている!!」


泊地棲姫「己ノ命惜シサニ、味方デアルハズノ艦娘ヲ見捨テルカ……!」

??「なんと愚かな……!」

泊地棲姫「……貴様ノ力、使エルカ?」

??「ええ、いつでも行けます! 罪深き人間どもに……裁きを!!」

 ゴォン

W大佐「なんだ?」

伊勢「!? 提督、あれ!」

W大佐「……空中に、馬鹿でかい……鎌か!?」


J少将部下「J少将! 右前方に謎の鉄塊が!!」

J少将「!?」

J少将部下「み、右舷から、迫ってきます! 回避できません!!」


泊地棲姫の肩に乗ったシーナ「ペンデュラムよ……切り裂け!!」

 巨大ペンデュラム< ゴォォォオ!!

W大佐「船が……!!」

伊勢「提督危ない!」ガシッ

 メ゙ギャアア!!

「「うわああああああ!」」

 メ゙ギメ゙ギメ゙ギメ゙ギ

W大佐「船首部分が……!」

 バギャアアアアア!!

J少将部下「い、今の一撃で、船首部分が切断されました!!」

J少将部下「甲板上のW大佐が海に投げ出され落下!!」

J少将「だっ……脱出だ! ボートを出せ!!」

J少将部下「左からまた来ます!」

J少将「なに……っ!?」

 巨大ペンデュラム< グォォォオ!!

J少将部下「指令室に直撃するぞ!」

J少将部下「逃げろ! 逃げろぉぉ!!」

 ズガシャアアアア!!

「「うわあああーーーっっ!!」」

 バキバキバキバキバキーーーッ!


 * 東の沖合 W大佐の艦隊 *

鈴谷「うっわ、少将の船が散々じゃん……」

熊野「真っ二つが、三つになりましたわね……」

 ガッシャァァァン

多摩「今、四つになったにゃ……」

球磨「それよりW提督はどうなったんだクマ!!」

W榛名「それに、島でも何が起こっているのか……!」

 ピピピッ

W日向「! 日向だ」

通信『伊勢よ! W提督は無事! 日向と鈴谷、熊野は瑞雲を展開して!』

熊野「すでに展開済みですわ!」

通信『球磨と多摩は潜水艦の警戒と迎撃をお願い!』

球磨「了解だクマ!」

通信『榛名は泊地棲姫の砲撃を警戒! ただし、砲撃はまだよ! 潜水艦が片付くまでは、回避に専念して!』

W榛名「わ、わかりました!」

今回はここまで。

やっとメディウムが出せた!
次回から反撃開始です。

如月たちの安否確認はだいぶ後になりそうです。

それでは続きです。


 * 島の南東 丘の上 *

K大佐部下「た、大変です大佐! し、深海棲艦の大艦隊が、我らの艦隊を取り囲んでいます!」

K大佐部下「J少将の船と通信不能……! あ、あれは一体……船が!!」

K大佐「……提督少尉。貴様の仕業か」

提督「……あれは……」

雷「なに、あれ……」

白雪「少将の巡視船が、振り子のような刃物で引き裂かれてるように見えるんですけど……」

睦月「む、睦月にもそう見えるにゃああ……」

ニコ「あれは、ペンデュラム」

睦月「えっ!? だ、誰ですか誰ですかっ!?」

白雪「ペ、ペンデュラムって……」

ニコ「あの船を、ロールケーキみたいに切り裂いたメディウムの名前だよ」

曙「メ、メディウム……?」

提督「そうか。お前らはあいつらと一緒だったのか……」

ニコ「……」コク


K大佐部下「た、大佐! あの女は!?」

K大佐「狼狽えるな。我々のやることは変わらない」

K大佐「元凶をさっさと始末すればいいだけのこと」チャキ

雷「少尉!!」

 ドンッ

初春「」バチィンッ

子日「!?」

白雪「初春さんが……!?」

曙「手で、銃弾を叩き落とした……!?」

K大佐「……」イラッ

 ドンドンッ ドンッ

初春「!」バチバチバチィンッ

睦月「ぜ、全部、手で叩き落としてる……!」ゾワワ

子日「……で、でも、そのせいで右手が……!!」

初春「……」グシャー

初春「……」

初春「……」メキメキッ

白雪「手が自己修復してく……!」

子日「で、でも、どんどんおっきくなってない!?」


初春「……」メキメキメキメキッ

K大佐「……どういうことだ」

提督「戦艦ル級」

K大佐「……なに?」

提督「お前らが……Zの奴が初春に撃ち込んだ弾丸だよ」

初春→ハツハル(右手だけル級の艤装)「……」ジャコンッ

K大佐「馬鹿な」

 16inch三連装砲 < ドドドンッ

K大佐の部下「「う、うわあああ!!」」ドゴーン

K大佐「……何をしている! 深海棲艦だぞ! 我々の敵だ! 総員、構え!」

K大佐の部下「「は、はっ!」」ジャキジャキッ

K大佐「撃て!」

 深海艦載機 <バババババッ

K大佐の部下「「う、うわあああ!?」」ダダダダダッ

H大将「艦載機!? いったいどこから……!」

朧→ヲボロ(ヲ級帽子と杖装備)「……」ザッ

曙「……朧っ!?」

白雪「朧さんまで深海棲艦に……」


K大佐「……どういうことだ。今までにこんな事例はない……!」ジリッ

ニコ「深海棲艦の無念と、この島に充満した『魔力』が、二人を甦らせたんだ」

H大将「……おい、提督。まさか、貴様も……!?」

提督「どうせ言っても信じねえだろ」

H大将「……!」

ニコ「……」ザッザッ

ニコ「ごめんね、如月、電、吹雪。引っ越ししてたら、遅くなっちゃった」シャガミ

提督「引っ越し?」

ニコ「執務室に来たんでしょう? 人間が大勢この島に来ることはわかっていたからね、深海棲艦にも協力してもらって準備していたんだ」

提督「ああ。それでか……」

ニコ「ただ、予想より人間たちの動きが早かったからね……それが、こんなことになるなんて」シュン

提督「……」

ニコ「魔神様、ご命令を。ぼくたちに、敵を討たせて欲しい」

提督「……やれるのか」

ニコ「うん。魔神様にたてついた人間は、ぼくたちが全員始末するよ」

艦娘たち「……」

雷「ま、マジンサマとか、なんのことなの?」

H大将「状況はわからんが……少なくとも彼女は提督少尉の味方ではあるようだ」


K大佐「提督少尉……貴様、深海棲艦か」

ニコ「違うよ、魔神様は魔神様。さっきからそう言ってるじゃないか」

K大佐「屁理屈を……!」チャキッ

ニコ「魔神様の存在を受け入れようともしない浅慮な人間のくせに。屁理屈なんて言葉で真実を誤魔化そうとするさまは愚かしいよ」

ツバキ「ほんま、救いようがあらしまへんな……!」

 アブラカビン < ヒューー

K大佐「がぼっ!?」ガポンッ

ツバキ「すんません親分さん、資材置き場の重油、ちいとばかし拝借いたしました」シュッ

提督「いい、良くやった」

睦月「ま、また知らないお姉さんがいきなり現れましたよぉぉ!?」

K大佐「がぼ、ごぼぼぼ!?」ヨタヨタ

曙「……ちょっとあんた。あの花瓶、取らないと中の油で窒息するんじゃないの?」

ツバキ「そうなりますやろなあ。けど、別に構わんとちゃいますのん?」

曙「ふらふら歩いてたら、その辺が油まみれになるわよ? 危ないじゃない」

セレスティア「ええ、せっかく油をひいたのですから」ポンッ

曙「え?」

セレスティア「強火で一気に焼きましょう!」

 ホットプレート < ゴォッ!!

K大佐「ぎ」ゴォォォ!!


提督「おお、すげえな。悲鳴もあげられねえか」

艦娘たち「……」アッケ

ニコ「そうだ魔神様、手を貸して」

提督「ん?」スッ

ニコ「イメージして。あの男を、その拳で、思いっきり打ち上げるイメージを」

提督「……ん……」

 ギュワァァァァ

白雪「なに? あそこだけ空間が歪んでる……!」

ニコ「今だよ魔神様、念じて!」

提督「!」

 イビルアッパー < ドバキャアア!

K大佐「」ゴシャーー

艦娘たち「……」アングリ

提督「おお、これもすげえな」

ニコ「キックもできるよ」

提督「そりゃあいい」


K大佐「」ヒューー…ドシャッ

ハツハル「……」ドガンドガンドガン

ヲボロ「……」ピシュンピシュンピシュン

 ドガガガガァァン

K大佐部下「た、大佐!?」

白雪「しょ、少々、弾幕が厚い気がします……」

K大佐「……ぐ、くそ……」

提督「朧、初春、ほどほどにな。奴らを始末するのは俺たちじゃねえ」

ヲボロ「……」コクン

ハツハル「……」コク

曙「……なにがどうなってるのよ……」

子日「わ、わかんないよぉ……」

提督「とりあえずピンチはしのいだな? もう一押ししておくか」

イーファ「うん、毛づくろいできたよ!」

 スパイクボール < ヒューン

K大佐「な」

 グシャァ

とりあえず今回はここまで。

少しだけ続きです。


K大佐部下「た、大佐!?」

K大佐「」ピクピク

提督「なんだ、まだ息があるのか? しぶてえな」

大将「て、提督少尉……おま、お前の仕業なのか!? まるっきり化け物じゃないか!」

提督「……」

K大佐部下「お、おい、まずいぞ!」

K大佐部下「に、逃げろぉお!!」

大将「あわわわ……ま、待ってくれ! 俺を置いていかないでくれえええ!」

クレア「逃がすもんですか! 必殺スマッシュ、いっけぇえ!」

 スマッシュフロア < ズバーン!

K大佐部下「鉄球が飛んできた!?」

大将「ひぃぃ!?」チッ

(大将の頭の上すれすれを飛び越していくスパイクボール)

 スパイクボール < ズシーン! ゴロゴロゴロゴロ…!

K大佐部下「うわああああ!!」

K大佐部下「こっちにきたああ!!」

 ゴロゴロゴロゴロ…ウワアアア

大将「あばばばば……」バターン!

雷「大変! 気絶しちゃったわ!」


クレア「やったあ、サービスエース! ねえ見た? 見てくれた?」

白雪「なんだか悪い夢でも見てるみたいです……」

クレア「えっ」

白雪「えっ」

曙「えっじゃないわよ! 本っ当に悪い夢よ!」

曙「そもそも誰なのよこの人たち! テニスウェアとかエプロンとか獣っぽいのとか、場違いよ!」

クレア「え? お、おかしいかな?」

曙「おかしいわよ。仮装パーティじゃないんだから!」

ツバキ「うちはええんやろか」ボソ

曙「……あなたに似た格好の人、私知ってるから」ムスッ

 * 

祥鳳「へっくち!」

ビスマルク「あら、風邪? 戦闘中よ? 大丈夫?」

ローマ「こんな仕事さっさと終わらせて、X提督に温めてもらったらいいわ」

祥鳳「えっ? あ、いえ、その、私たちはまだそういう関係では……」カァァ

ビスマルク「ちょっとローマ、戦闘中よ」

ローマ「……悪かったわよ」

 *


曙「ともかく! 朧も朧よ! 一緒になってふざけてんじゃないわよ!」

ヲボロ「……」

曙「……ちょっと聞いてんの!? こっち向きなさいよ!」

提督「朧。返事してやれ」

ヲボロ「!」クリッ!

曙「」

ヲボロ「……」ジー

睦月(お目々が深海棲艦みたいに青く光ってて怖いにゃあ……)

曙「お、朧……! 冗談はその辺にしておきなさいよ……!」

ヲボロ「……」

ヲボロ「……ヲ?」クビカシゲ

曙「」


睦月「あ、あはははー、朧ちゃん、役になりきっててすごいにゃあ……」

曙「……もういいわ」

睦月「はぇ?」

曙「いいって言ったのよ。朧は、こんな冗談……」

提督「ああ。言わねえな」

曙「……」グスッ

ヲボロ「……」ジー

曙「な、なによ」

ヲボロ「……」ナデナデ

曙「! な、なによ! なに、すんの……よ……!」グス

子日「……曙ちゃん」

ハツハル「……」ジー

子日「ふぇっ?! い、いつ真後ろに!?」

ハツハル「……」ニコ

子日「……!!」

白雪「……ふたりとも、どこかで覚えてるんでしょうね……」

とりあえずここまで。


この後しばらくメディウムの出番になりますが、
どうしても今までのシリアスさを保てなくなるのはご容赦ください。
タライとかハリセンでシリアスとか無理よ……。

デルタホースの出番は今しばらくお待ちください。
ていうかなんでそんなにデルタホースさん人気なのよ……いやわかりますけど。

今回は飯テロのお話です。


 * 東の沖合 J少将の艦隊 *

矢矧「……船が」

酒匂「バラバラぴゃあ……」

秋月「いったい、なにが……」

青葉「とりあえずですが、みなさん引き揚げましょう。深海棲艦の狙いは、私たちじゃありませんから!」

矢矧「え? どういうことよ、それ」

青葉「まあまあ、とにかく急ぎましょう? 衣笠を中佐の医療船まで連れて行かないと」ヨイショット

矢矧「あ、青葉! あなた、J少将を見捨てる気!?」

青葉「おや、先に青葉たちを見捨てたのは他ならぬJ少将ですよ?」

酒匂「え?」

青葉「そんな相手に義理立てする気は青葉にはありませんから!」

矢矧「どういうことよ! あの穏やかなJ少将の何が気に入らなくて、そんなことを言うの!?」

青葉「みなさんそう仰るんですよねえ。この写真をどうぞ?」ピラッ

矢矧「なによこれ……」


青葉「後にも先にも奇跡的に撮れたその一枚だけなんですけどね。題して、J少将の素顔! ってとこでしょうか」

酒匂「……これがJ少将?」ゾワリ

青葉「憶測ですが、能代さんはこの写真を撮った青葉を消せと命令されたんですよ」

青葉「この写真を撮ってから、能代さんとは何度か一緒に出撃したんですが、青葉をじっと見てたことが多々ありましてねえ?」

青葉「思いつめた顔をしてましたねえ……生真面目な能代さんは、青葉を撃てなくて自分を撃ったと考えてます」

矢矧「ど、どうしてそんなことをしなくちゃいけないのよ!!」

青葉「その事件の少し前に、阿賀野さんが工廠で死にかけた事件、覚えてますか? いきなり鉄骨の下敷きになった、あの事件」

青葉「あれはきっと能代さんに対する脅しですよ。お前がやらなければお前以外の誰かが傷つくぞ、という」

秋月「……そんなまさか」

青葉「青葉、気付いちゃったんです。J少将と懇意だった人の中にB提督って人がいましたよね?」

青葉「その人がやった手口に似てるんですよ。艦娘に無理を通させるために、関係ない他人の命を人質にとって脅かすってところが」

青葉「それにこのJ少将の船。破壊されずにあのまま直進していたら、みなさんどうなっていたと思います?」

矢矧「……だ、だとしても! この場から逃げ出すわけにはいかないわ!」

青葉「強情ですねえ……とりあえず、衣笠は中佐の船に連れて行きます。まあ、早めに撤退を検討したほうがいいですよ?」

青葉「青葉もとーーーっても恥ずかしい思いをしましたからね! 早く引き上げたほうがいいですよー!!」ザァァァ


矢矧「……恥ずかしい思いって、いったい何をされたのよ」

 ヒューー

矢矧「え?」

 タライ < パコァァァン

矢矧「はうっ!?」

照月「矢矧さん!?」

初月「待て、この金盥はどこから降ってきた」

 トイハンマー < ブンッ

矢矧「いったぁ!?」ピコーン!

酒匂「何もないところからハンマーが!?」

秋月「しかもおもちゃのハンマーじゃないですか!」

矢矧「な、なんなのよ、もう!!」プンスカ

 パンプキンマスク < ヒューン

矢矧「ふえっ!?」カポーン!

初月「……僕らは深海棲艦と戦っていたのではなかったのか?」

秋月「なんでしょう、この緊張感に欠ける、悪ふざけの数々は……」

 フライガエシ < グインッ!

矢矧「あれぇぇぇぇ!?」ポイーーーン!


酒匂「矢矧ちゃん!?」

照月(な、なにが起こってるのか理解がついていかないよぉ……)

 ウォッシュトイレ < ガッシャン!

矢矧「あうっ!?」ズボンッ!

酒匂秋月照月初月「「!?!?!?」」

矢矧「あたた……い、いったい何があったのよ……な、なにこれ。おしりがはまって、抜けない……っ!」

秋月「や、矢矧さん、それ……」

初月「どうして洋式トイレがこんなところに……」

矢矧「えっ!? そ、それほんと!? や、やだぁ!!」カァァ

矢矧「くぅぅっ! ぜ、全然抜けないし!? く……っ、このっ……!」

照月「さっきすごい音しましたから……完全にはまっちゃったんじゃ……」

矢矧「み、見ないでよー! ううう、穴があったら入りたい……!」

 ウォッシュトイレ < ピピッ!

矢矧「え?」

 ウォッシュトイレ < シャワーーー

矢矧「!?」ピュイーーーーーン!

秋月「」

照月「」

初月「」

酒匂「と、とんでるーーーー!?」


 ヒューマンキャノン < ガッシャン!

矢矧「きゃっ!?」ズポンッ

矢矧「ううう、おしりがぐちょぐちょ……酷い目にあったぁ……って、ここどこ?」

初月「……おい、これもしかして」

 ヒューマンキャノン < ゴゴゴゴ…ガコン

秋月「もしかしなくても」

照月「大砲じゃないですか!?」

酒匂「矢矧ちゃん逃げてえええええ!!」

矢矧「えっ、ちょ、待っ」

 ヒューマンキャノン < ズドォォォン!!

矢矧「いやあああああああああああああああああああ!!!???」ピュイイーーーーーーン

酒匂「矢矧ちゃん!? 矢矧ちゃんどこ行くぴゃああああああああ!!」ダッ

照月「何がどうなってるの……」アッケ

秋月「っ!? この気配は!?」

ワ級「……」スッ

照月「ええええ!? ゆ、輸送ワ級!?」

秋月「いつ出現したんですか!?」

初月「くっ、こんな近くまで接近を許すなんて……!」


ワ級「……」ジッ

秋月「……まさか、あのワ級があんな真似を……!?」

照月「お、おかしいわ! この距離で武装展開しないなんて!」

初月「油断するな! 近づいてきたぞ!」

ワ級「……」スッ っ[ホールケーキ]

秋月「!?」ゴクリ

照月「!?」ジュルリ

初月「!?」ダラッ

ワ級「……」スイー

照月「ケ、ケーキを持ったまま、攻撃してこない……!?」ジッ

初月「なぜケーキを持ってるんだ……!」ジッ

照月「……い、いちごがたくさん載ってる……!」

初月「くっ、甘い匂いがここまで……!」

秋月「二人とも、気を確かに! 敵ですよ!」

ワ級「……」スッ

照月「えっ」

ワ級「……」フリカブリ

初月「な、何をする!?」


ワ級「……」ブンッ!

秋月「えええ!? な、投げた!?」

 ピューン

初月「!?」ベチャ

秋月照月「「初月ーーーっ!?」」

秋月「ケ、ケーキを顔に投げつけるなんて! な、なんてことを!」

照月「初月、大丈夫!?」

初月「……」

初月「……」モギュモギュ

初月「……おいひい」

秋月照月「「!?」」

初月「もしや、これがうわさに聞いた生クリーム……なんてなめらかな食感……!」

初月「ケーキの上に乗ったいちごの酸味が、クリームの品の良い甘さをより引き立てている……!」

初月「ああ、クリームがふわふわなら、かすてらの部分もふわふわだ……!」

初月「しかもご丁寧に、2段に分けたかすてらとかすてらの間にもいちご味のクリームがはさんである……!」

初月「なんてことだ……こんな、こんなごちそうを、僕の顔にぶつけてくるなんて……なんてもったいない……」ヨロッ

秋月照月「「初月!」」

初月「ね、姉さんたちと、一緒に、食べたか……った……!」バターン

秋月照月「「初月いぃぃぃーーっ!」」


秋月「初月! しっかりしてください初月!!」ユサユサモグモグ

照月「目を覚まして! 初月!!」ユサユサペロペロ

秋月「く……っ! なんて……なんてひどいことを!」ハナニクリーム

照月「初月と食べ物のかたき!!」ホッペニクリーム

ワ級「……」スッ っ[ホールケーキ(チョコレート)]

秋月照月「「!?」」

秋月「そんな……っ! も、もう一個、用意してあるだなんて……!」ゾクッ

照月「嘘……ま、まだ心の準備が……!!」ゾクッ

ワ級「……」フリカブリ

初月「まさかそれも……!?」

照月「だ、だめよ! やめて! やめてぇぇぇ!」

ワ級「……!」ビュシィ!

照月「!?」ベチャ

秋月「て、照月ぃぃぃ!!」

照月「……」ペロ

照月「……」モギュモギュ

照月「これはもしや……ちょこれえと……!?」

ワ級「……」コク

秋月「ちょこれーと、ですって……!?」


照月「なめらかな舌触りは同じなのに、ただ甘いだけじゃなく、ほのかな苦味までふわっと香ってきて……」

照月「ああ……中のかすてらからも、ちょこれえとの味がするわ……!」

照月「かすてらは3段重ね……間に挟まったクリームもたっぷりで……」

照月「かすてらが水分を吸ってるせいか、しっとりしてて全部クリームみたいになってる……!」

照月「ああ、姉さん、ごめんなさい……わたし、この幸せには……勝て……な……」グラッ

 バターン

秋月「照月!? 照月ぃぃ!!」

秋月「……ゆ、許せません……! よくも、よくもこの秋月の妹たちを!!」キッ

ワ級「……」スッ っ[ホールケーキ(マロンクリーム)]

秋月「みっつめええええええ!?」ビクビクビクーッ

ワ級「……」ジリッ

秋月「そ、そんな……あんな短時間に3個目のケーキを準備できるなんて……」

ワ級「……」ジリジリッ

秋月「ひっ……や、やめてください! そんな、勿体ないことをしては……!」

ワ級「……」

ワ級「……」スッ

秋月「! わ、わかってもらえましたか!?」


ワ級「……」ト、ミセカケテ

秋月「あ」

ワ級「……」ヒュパッ!

秋月「ああああ!?」ベチャー

秋月「……」

秋月「……ああ、これは……!」モギュモギュ

秋月「クリームの滑らかさはほぼ損なわないのに、さっきのケーキとはうってかわってしっとりしていて……」

秋月「それでいてずっしりと重たいこの存在感……! そしてこの味は……栗!」

秋月「しかもこのクリームに練りこまれた、ぱりぱりとした食感……栗の渋皮を素揚げしたもの……!」

秋月「かすてらの中にも粗く刻んだ栗が入っていて、まるで栗ごはんのよう……なんて……繊細で、贅沢な……」フラッ

秋月「こんな、スイートトラップ……秋月たちには、抗え、ま、せ……」

 バターン

ワ級「……」ガッツポ

長10cm砲ちゃんs「」オロオロ

マーガレット「4個目できましたよーって、あれ?」ヒョコッ

長10cm砲ちゃんs「!」

マーガレット「あ、よかったらどうぞ!」

長10cm砲ちゃんs「!」キャッキャッ モグモグ

秋月「」プカァ

照月「」プカァ

初月「」プカァ

酒匂「……なにがあったっぴゃあ」←矢矧を救助して戻ってきた

長10cm砲ちゃんs「」モキュ?

青葉「とりあえず3人とも曳航していきましょうかね?」

今回はここまで。

祝、ワ級3人抜き達成。

秋月三姉妹にはお腹いっぱい食べさせたい衝動に駆られます。

では続きです。


 * 東の沖合 H大将の艦隊 * 

長門「くっ、被害は!」

陸奥「無傷の艦はいないけど、みんな損傷軽微よ!」

長門「泊地棲姫め、潜水艦を潜ませておくとは味な真似を! だから私は駆逐艦を随伴させろとあれほど!」

陸奥(進言するときにあんなに目を血走らせてたら、通るものも通らないわよ)

比叡「とにかく、これからどうするんですか!?」

金剛「まずは潜水艦の潜むこの海域からは離脱をお勧めするネー!」

高雄「ええ、私もその案に賛成です」

愛宕「足元を固めないことには、安心して戦えないものね!」

長門「よし、決まりだ! 全速で泊地棲姫に接近、迫撃を仕掛ける! H提督の敵討ちだ!」

全員「りょうか……」

浮遊砲台1「」ザバァ!

全員「!!」

浮遊砲台2~5「」ザバババァ!

高雄「……これは……泊地棲姫の防衛砲台!?」

比叡「いつの間に包囲されたんですか!?」

長門「ここまで用意周到だったとはな……!」


???「それはもう。私たちは『罠』ですからね」

陸奥「誰!?」

金剛「! 浮遊砲台の上に誰か乗ってマース!」

???→アマラ「ごきげんよう、私はアマラ・バキュームフロアと申します」ペコリ

愛宕「え? メイドさん……?」

高雄「油断しないで。仮にも深海棲艦に乗ってるような相手よ」

アマラ「実は皆様にお願いがありまして……」

比叡「お願いですか?」

アマラ「はい。どうかここから引き揚げていただきたいのです」

長門「……ここから出て行けと?」

アマラ「はい、お掃除の邪魔ですので」

長門「掃除だと!? ふざけるな!!」

長門「我らの提督であるH大将を差し置いて、おめおめと逃げ帰れと言うか!」

金剛「イエース! 深海棲艦の好きにはさせないヨー!!」ジャコン

アマラ「うーん……困りましたね」

パメラ「なになに? 交渉決裂?」ヒョコッ

アマラ「はい……残念ながら」


愛宕「なに? 今度は……何の職業かしら、あれ。ビーチパラソルにしては物騒な形ね?」

パメラ「じゃあ、仕方ないかぁ。しばらく、お相手してあげましょ?」

長門「来るか!」

陸奥「待って……ねえ、これ何の音?」

 バキュームフロア < ヒュォォオオオオオ

 スローターファン < ギュィィイイイイイ

比叡「海の中で変な機械が渦を作ってる!?」

 大渦 < ギュオオオオオオオ!!

アマラ「すみませんが、みなさんがいるとお掃除できないんです」

パメラ「こっちに注目しててもらうと嬉しいかな~?」

長門「く、この程度の渦……!」ヨロッ

陸奥「この程度……って、局地的とはいえこの渦の深さは異常よ!?」

金剛「早く渦から脱出するデース!」

パメラ「ところがそうはいかないのよねー。ヒサメ!」

ヒサメ「おお、程よくすり鉢状になったのう。これは面白そうじゃ」ヒョコッ

 スリップフロア < パキパキパキーーン

長門「うお!?」ステーン!

ヒサメ「ほほ、氷でできたアリジゴクと言ったところかのう?」

金剛「What's happen !?」ツルーン!

比叡「ひええええ!?」ツルーン!


愛宕「い、いきなり凍っちゃうとか、そんなのありなの!?」ツルツルツルツル

陸奥「ば、バランスが……きゃあ!」ステーン!

比叡「そ、そうだ! この氷を撃って破壊できれば……」

陸奥「無理よ! まともに立てないくらい滑るのに、砲撃なんかしたら反動で滑ってどこに飛ぶかわからないわ!」

高雄「……この程度で諦めるわけにはいきませんわ! この氷の器を、外側から破壊できれば……!」ジャッジャッジャッ

ヒサメ「ほう、スピードスケートのように氷の坂を駆け上っていくとはのう」

キュプレ「いい考えだけど、運命の赤い糸からは逃げられないのよ♪」

サム「その運命に逆らえばどうなるか……思い知っていただきましょうか」

 ペッタンアロー < パシュ!

高雄「きゃ? おしりになにかが……」ペタッ

 ペッタンアロー < グイーーン

高雄「きゃあああ!?」

 ヴォルテックチェア < ガッシャン!

高雄「ひっ!?」ストンッ カシャンカシャンッ

 ヴォルテックチェア < バリバリバリバリ!!

高雄「いやああああああああああ!!」バリバリバリバリ!!

金剛「ひぃぃ!? で、電気椅子デスカー!?」

陸奥「た、高雄!?」


高雄(中破)「」コゲッ

愛宕「っ……これ以上、好きにはさせないわよっ!!」ジャジャッ

アマラ「あらら。まだ脱出する気ですよ?」

ジェニー「それなら私の相棒にまかせて!」ヒョコッ

アマラ「じゃあ、私が吸い込みますから、あとをお任せしますね?」

 バキュームフロア < ヒュォォオオオオオ

愛宕「えっ!? や、やだ、引き寄せられてる!?」

長門「ま、また何か仕掛けが発動したぞ……!」

金剛(……嫌な予感がするデース)

 デルタホースロデオ < ガッシャン!

愛宕「ふやああああああ!?」ビクビクーッ

金剛「Oh...」シロメ

陸奥「うわあ……」トリハダ

パメラ「あら? いつものシルバーエッジと違うわね?」

ジェニー「ええ、いつもと同じじゃ芸がないでしょ?」

 デルタホースロデオ < ガックンガックンガックン!

愛宕「いやああああああ!? う、動かないでえええええ!?」ユッサユッサユッサ

比叡「……痛そうなんだけど、なんかすごく卑猥な絵面ですよ金剛お姉様」

金剛「比叡は何を言ってるデスカーーー!?」ガビーン

陸奥(……私もそう思っちゃった……)メソラシ


 デルタホースロデオ < バユンバユン…バウンッ!!

愛宕「きゃああ!?」スポーン

キュプレ「それじゃあ、お姉ちゃんと交代ね?」

 ペッタンアロー < パシュ!

高雄「」ペタッ

 ペッタンアロー < グイーーン

愛宕「えええ!? ちょっ、まさか!?」ストン

サム「ええ、次は貴女の番ですよ」ニコッ

 ヴォルテックチェア < バリバリバリバリ!!

愛宕「あああああああああ!?」バリバリバリバリ!!

高雄「あ、愛宕……」

ジェニー「で、あなたにはこっち!」

 デルタホース < ガッシャンッ!

高雄「ひぃい!?」ビクビクーッ

ジェニー「うん、暴れ馬もいいけど、いつもの相棒もやっぱりいいわね!」

高雄「くぅっ……こ、こんなものに屈するような、私ではありませんわ……!」

金剛(高雄、それはフラグデース……)


ジュリア「それなら屈するまで叩き続けて差し上げましてよ!」

 ハリセン < ニュッ スパーン

高雄「ひうっ!?」ペシーン

 ハリセン < スパーン スパーン スパーン

高雄「やああっ!(ペシーン) おしりばっかり(ペシーン)叩かないでえっ!(ペシーン)」ビクビクッ

比叡「……やっぱりすごく卑猥ですよ金剛お姉様」

金剛「だから比叡は何を言ってるデーーース!?」ガビーン

陸奥(……仕方ないわよね……)メソラシ

長門「ええい埒が明かん! やはりこの氷を撃ち壊すぞ!」ガシッ

クリスティーナ「やらせないわよ! 飛びなさい!!」ヒョコッ

 ライジングフロア < ズバーン!

比叡「ヒエーーー!?」ズバーン!

金剛「ノォーーー!?」ズバーン!

陸奥「あらぁーーー!?」ズバーン!

長門「うおぉーーー!?」ズバーン!


メアリーアン「そのまま落ぢっと危ねぇがらなあ。これ、くっしょんにすっただぁ」

 スノーボール < ヒュウウウウ

比叡「」ズボァ

金剛「」ズボァ

陸奥「」ズボァ

長門「」ズボァ

 4人を巻き込んだスノーボール < ヒュウウウウ ドスーン

金剛「」シロメ

比叡「お、お姉様、寝たら、死にますよ……」ガチガチ

長門「む、陸奥……第三、砲塔……」ガタガタ

陸奥「無理よ……」カチーン

クリスティーナ「そういえばずっと氷の上にいたわね」

メアリーアン「どうすべえ? さみがったら、後でイブキさぁ呼ばっぺが?」

というわけでここまで。

大将やH大将の配下の艦娘には
「T武蔵」とか「H長門」とか表記していましたが、
今回は各艦隊ごとのお話なので取っ払っています。
ややこしいですが、合流したらまたくっつけます。

続きを投下します。


 * 東の沖合 大将の艦隊 *

武蔵「泊地棲姫だと!? どこに潜んでいた!」

清霜「電探の反応も全然なかったのに……もしかして壊れてる!?」バシバシ

妙高「いえ、この場にいる誰もが反応できていませんでしたから、電探のせいではないのでしょう……!」

羽黒「J少将の船をあんなふうにしたのも、泊地棲姫の仕業なんですか……!?」

霧島「泊地棲姫の武装にあの兵器のデータはありません」

霧島「おそらくは私たちの知らない、新種の深海棲艦が潜んでいるはず!」

初風「もしかして、J少将の艦隊はこれを見越して島へ先制攻撃をしたのかしら……」

武蔵「他の部隊も混乱している。霧島、我々は泊地棲姫に打って出ようと思うが、どうだ」

霧島「長距離砲の私と武蔵さんが泊地棲姫の目を引き付け、重巡の二人が迫撃をかけます」

霧島「駆逐艦二人は重巡の露払いを。皆さん、お願いできますか」

清霜「そういうことなら任せて!」

初風「初風、先行するわ!」

武蔵「よし、展開しろ!」

霧島「さあ、砲雷撃戦、開始するわよ!」


矢矧「きゃあああああああああ!!」ピューーーン


武蔵霧島妙高羽黒初風清霜「!?」


武蔵「……なんだ今のは」

妙高「……矢矧さんですよね?」

武蔵「だよな? 大和じゃないよな?」

霧島「矢矧さんですよね……」

武蔵「だよな……」

 ガキーン

霧島「……って、あら?」

武蔵「どうした?」

 マンリキスピン < ガキーン

霧島「これ、何かし……きゃあ!?」グルンッ

武蔵「うおっ!? 危な!」

霧島「と、止まらな……きゃあああああああ!?」グルグルグルーッ

 マンリキスピン < ギュイイイイーン!

武蔵「き、霧島ぁ!?」

 マンリキスピン < ピタ!

霧島「はうあ!?」ガクーン!

武蔵「き、霧島! 大丈夫か!?」


霧島「……め」オメメグルグルー

武蔵「め?」

霧島「メガネ、メガネ……うーん」ヨタヨタ ドシャッ

武蔵「外れてないぞ!? かけてるぞ!! 霧島、しっかりしろ!」

妙高(あの高速回転で外れない眼鏡っていったい……)

清霜「武蔵さん大変だよ! さっきまでたくさんいた潜水艦の気配がまた消えてる!」

武蔵「この場を早く離れたほうが良さそうだな……霧島は私が曳航する、離脱して立て直すぞ!」

羽黒「はいっ、わかりま……」

 ガキン

羽黒「きゃああ!?」バタッ

清霜「羽黒さん!?」

武蔵「どうした!?」

羽黒「何かが足に……」

 ハンギングチェーン < キュルキュルキュル…

羽黒「えっ!? い、いやあああ!? み、見ないでぇぇ!」ブラーン


初風「羽黒さんが逆さ吊りに!?」

清霜「あ、あの鎖、どこに繋がってんの!?」

初風「そんなことより、早く下ろしてあげないと!」

妙高「ええ! 対空砲、用意……!」ザッ

 ベアトラップ < ガキン

妙高「きゃあっ!?」バタッ

清霜「妙高さん!?」

妙高「つっ……これは、羽黒と同じ……?」

初風「今はずします!」

武蔵「気をつけろよ!」

初風「……な、なんなのよこのトラバサミ、滅茶苦茶固くてびくとも……妙高姉さんの足が抜けないわ!」ググググ

武蔵「なんでこんなものが……」

 ギャイイィィン

武蔵「何の音だ?」ミアゲ

 逆さ吊りにされた羽黒の上から迫ってくるサーキュラーソー < ギャイイィィン!

羽黒「……っ!?」


清霜「なにあの丸ノコ!? なんで空に浮いてるの!?」

武蔵「く……っ、どけ清霜! 砲撃で吹き飛ばす!」

清霜「それじゃ羽黒さんにも当たっちゃうよ!」

武蔵「わかっている! だ、だが……!」

羽黒「ひ、た、助け……」ガタガタガタ

 サーキュラーソー < ギュアァァァァァァアッ!!

羽黒「いやああああああああああああああ!!!」ギャリギャリギャリーッ

清霜「あ、あああ……」ガタガタ

妙高「はぐ、ろ……!?」

 ユラッ

武蔵「おい、今度はなんだ……!?」

 ギロチン < ギラッ

妙高「ひ……っ!?」

 ギロチン < ジャララララララッ!

 ジャガンッ!


妙高「……」

妙高「……」

妙高「……?」

初風「みょう、こ……ねえ、さん……?」

(初風の背中の艤装をギロチンが深々と切り裂いている)

武蔵「初風!!」

妙高「初風さん!?」

初風「ね、え……私の、くびは……まだ、つながっている、かしら……」

妙高「ええ、大丈夫……大丈夫よ! 初風さん!」ダキッ

初風「そう……良か……っ」ガク

清霜「初風!!」

妙高「大丈夫、気を失っただけ……」ハッ

妙高「武蔵さん! 上!!」

 フォールニードル < ガシャッ

清霜「こ、このお! あんなの、私がぶっ壊せば……」ジャキ

武蔵「よせ清霜! 手を出すな!」ガシ

武蔵(この武蔵の艤装なら、あの天井に耐えられるはず……!)

 フォールニードル < ガラララララッ

清霜「武蔵さぁん!!」


 フォールニードル < ガキンッ

武蔵「ぐぅっ……!」

 フォールニードル < ピタッ

清霜「……え?」

妙高「止まった……」

武蔵「う、うう……あ、あれ?」

 フォールニードル < スゥ

清霜「む、武蔵さん! さっきの吊り天井、消えたよ!?」

武蔵「……ど、どういうことだ? ちょっと艤装に乗っただけだぞ?」

 ザァァァ

那智「まったくだ。これは一体どういうことなんだ?」

武蔵「お前たちは……この島の艦娘か?」

足柄「そうよ。妙高姉さん、大丈夫? 明石にも来てもらったわ」

妙高「え、ええ、私よりも、初風ちゃんと羽黒が……」グス

ハ級「こやつは羽黒と言うのか。彼女は心配ない」

武蔵「!? いつの間にハ級が!?」

清霜「っていうか、喋った!?」

ハ級の上に立つゼシール「この者ではない。私だ」クルッ スタッ

那智「ゼシール、貴様か」


ゼシール「引き裂いたのは羽黒の衣服だけだ。私は彼女の肌に傷をつけてはいない」

ミーシャ(ヨ級に騎乗)「も、もしかしたら、私の釣竿の方が痛かったかもしれないです」

羽黒「」キゼツ

足柄「恐怖のあまり引き付け起こして気を失ってるわ。私が医療船に連れて行くから、下ろしてくれる?」

ミーシャ「は、はい。私も一緒に行きます」カチャン

妙高「羽黒が無事なのなら、早く初風ちゃんを診てあげて!」

明石「わかりました! ……って、これはひどい……」

那智「なんとかならなかったのか?」

ルイゼット(ロ級に騎乗)「咄嗟に飛び込まれまして、止められませんでした。申し訳ありません」パッ

清霜「女の人がいきなり出てきた!?」

武蔵「待て、寸止めするつもりだったと?」

ナンシー「そうだよー? もともと、あなたたちを大怪我させる予定はなかったんだから」クルン ストンッ

武蔵「私の背中にも!?」

妙高「那智、この人たちは一体何者なの?」

那智「先日、深海棲艦が攻めてきたときに撃退を手伝ってもらった、罠の化身。メディウムと呼ばれる存在です」

妙高「罠……?」


那智「詳しい話はあとです。明石、早く初風を連れていこう」

明石「はいっ! 武蔵さん、初風さんをお願いできますか!?」

武蔵「あ、ああ、わかった。そうなると清霜に霧島を頼むことになるが……」

清霜「任せてよ武蔵さん! んぎぎぎぎ……」キリシマセオイ

那智「では、私も彼女を手伝おう」グッ

清霜「あ、ありがとうございます!」

那智「すまない姉さん、ゆっくりでいいから中佐のところへ合流してほしい」ザァァ

妙高「ええ、わかりました」

妙高「……」

オディール(ヘ級に相乗り)「その足、おつらそうですわね?」ポンッ

メリンダ(チ級に相乗り)「私のせいで申し訳ありません。よろしければ、お手をお貸しできますが、いかがでしょうか」ヒュンッ

妙高「! ……それは、深海棲艦の彼女も、それで良いと仰るのですか?」

チ級「」コクコク

メリンダ「はい」

妙高「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます」ニコ

チ級「」ニッ

妙高「……不思議ですね。深海棲艦に……あなた方にこうして肩を貸していただけるなんて」


妙高「私たちの提督、大将は、こうして人間や艦娘と、深海棲艦が共に歩める世界を望んでいました」

妙高「あなた方の力があれば、そんな未来を夢見ることも許される気がします」

ゼシール「残念だが、それは夢物語のままで終わるだろう」

妙高「!? それは……どうしてですか?」

ルイゼット「我らメディウムと、我らが主たる魔神様がこれまで人間に受けてきた仕打ちの数々を考えれば当然のこと……」

妙高「魔神様……?」

ルイゼット「あなた方の言う提督少尉。人間の身にありながら魔神の力に目覚め、私たちをこの地に召喚してくださったお方です」

オディール「私たちは罠の化身。船の化身たる艦娘や深海棲艦と仲良くなること自体はやぶさかではありませんわ」

メリンダ「ですが、人間とも仲良く、というあなたの考えには、賛同できかねます」

妙高「……」

チ級「……」

ゼシール「我らにとっては、人間は敵だ。そこに容赦など存在しない」

オディール「友人の友人が必ずしも仲良くなれるとは限らないのと一緒ですわ」

妙高「……つかず離れずが望ましいと……」

ゼシール「そうなれば良かろうが、期待はできないな。欲深く傲慢な人間どもは、我らの存在を認めようともしないのだから」

妙高「……」

妙高「……ところで、さっき、大怪我をさせるつもりはなかったと仰いましたが、その意図は?」

ゼシール「我らは艦娘をこの海域から避難させるつもりだった」

妙高「避難?」

ゼシール「ああ。人間を皆殺しにするのに、お前たちがいては邪魔だからだ」

妙高「!!」

というところで、今回はここまで。

前回、書こうか書くまいか悩んで消した一文

> 足柄(……なんか、アンモニア臭がするわね……まさか)スンスン


続きです。


 * 東の沖合 W大佐の艦隊 * 

球磨「多摩! 対潜哨戒まじめにやってるクマ!?」

多摩「やってるにゃ! この辺の潜水艦の反応がおかしいだけにゃ!」

日向「ああ、潜水艦が多すぎる上に反応が出鱈目だ……迂闊に動けないぞ」

鈴谷「いやいや、それはなんとかこっちで相手するしかないっしょ!」

熊野「戦艦のお二人には大物を狙って戴かないといけませんわ」

榛名「! 日向さん、あれを!」

日向「ヲ級とタ級!? くそ、こんなときに厄介な」

榛名「私が敵を牽制します! 引き付けている間に狙ってください!」ガシャッ

日向「……わかった、無理はするな!」ジャキッ

榛名「さあ、こっちです!」ドドン


タ級「……!」ザザァッ

???「あれは榛名か……残念だが、お前の相手をする気はないんだよ!」

タ級「!」ギュアッ


榛名「加速して回避した!?」

日向「タ級め、まっすぐこちらへ向かってくるか!」


タ級「……」ニヤリ

日向「! なんだあの槍は」

タ級の艤装に乗ったコーネリア「ぼけっとしてんじゃないよ! ほら、そこぉ!」

 ギルティランス < ジャキィィィン

日向「うおっ!?」ガガガッ

榛名「日向さん!」

 深海艦載機 < ババババッ

榛名「っ! 私は先にこちらを相手しないと……」

フローラ(イ級に騎乗)「ごめんなさい、そちらは囮なんですよ~?」

榛名「え?」

 チュウシャキ < プスッ

榛名「な、なんで榛名のおしりに注射器が……?」ガクン

フローラ「少なくとも1時間は安静にしてないと駄目ですよ~?」

榛名「体が重い……足に力が入らない……っ!?」フラッ

球磨「イ級が突然現れたクマ!?」

鈴谷「嘘でしょ!? 全然反応なかったんだけど!?」

多摩「なんでナースが乗ってるにゃあ!?」

熊野「それよりも二人を援護しませんと!!」

 ズォォォォ

鈴谷「あれ? 急に空が暗く……?」


熊野「上から何か……?」

 クイーンハイヒール<ズゴォォォォ!

鈴谷「い゛っ!?」

熊野「なななな!?」

 クイーンハイヒール<グシャアアアア!

鈴谷「ちょっ、なにこゴボッ!?」ザブーン

熊野「なんなんですガボッ!?」ドブーン

ヴァージニア「ふん……やはり海の上では物足りんな。床がなくては踏みつけ甲斐がない」

 クイーンハイヒール<スッ

鈴谷「ぶはっ!? なに今の!?」ザバッ

熊野「……あ、あなたの仕業ですの!?」ザバッ

鈴谷「ツ級の上に座ってる……深海棲艦の仲間!?」

ヴァージニア「我らはメディウム。深海棲艦に近い存在ではあるが、深海棲艦ではない」

熊野「メディ……?」

ヴァージニア「ふむ、理解できぬようなら、私自ら下々に名乗ってやろうではないか」

ヴァージニア「私の名はヴァージニア。クイーンハイヒールのメディウムだ。下賤なる者どもよ、私の前に跪くがいい」

鈴谷「……はぁ?」


熊野「随分と時代がかった方がおいでになられましたわね……! これはもしや……!」

鈴谷「っ! 熊野、心当たりあるの!?」

熊野「ええ、ありますわ! これはまさしく!!」

熊野「この!! 熊野の美貌に対する挑戦なのぉ!?」バーン

鈴谷「……チガウトオモウンダケドナー」

熊野「たかが濡れた程度で! 水も滴るいい女を自負する熊野の美しさを脅かせるとお思いかしら!」ババーン

ヴァージニア「……ヒトノハナシヲキイテイタノカ」

多摩「なにやってるにゃ……」

球磨「それより潜水艦が浮上してきてるクマ!」

ヨ級「」ユラッ

多摩「! 飛ぶにゃ!」バッ

 ヨ級の背中から飛び出たデスサイス < シャキィィン!

球磨「危ないクマ!?」バッ

多摩「こいつら、さっきから多摩たちが予想してない武器を装備してるにゃ!」バッ

カ級「」プカッ ジャキ

球磨「もう一隻来たクマ!?」

多摩「今度は何にゃ!?」

 シャークブレード < キシャァァァァン!!

鈴谷「うえっ!? なにあの刃物!?」


球磨「刃物? 魚雷じゃないなら怖くないクマ!」グッ

球磨「舐めるなクマァァァ!!」

 ガキィィン!

シルヴィア「ええっ!? し、白刃取り!?」

球磨「多摩! 背中支えるクマ!」

多摩「了解にゃ!」ガシッ

球磨「生意気なお魚は……」ググッ

多摩「多摩たちが釣り上げてやるにゃああ!!」グイーッ

 ザバァァァン!

シルヴィア「うそぉ!? つ、釣られてるぅぅ!?」スポーン

多摩「だ、誰にゃ、あの女の人!?」

ヴァージニア「シルヴィアめ……醜態を晒したな」

シルヴィア「」ザパァァン

シエラ(ヨ級に騎乗)「た、大変デス! シルヴィアさんを助けに行くのデス!」ザザァ

多摩「やらせないにゃあ!」ジャキ

球磨「このまま追撃するクマ!」ジャキ

シエラ「ピエエェェエエ!? 狙われてるデスゥゥ!?」


レイラ(別のヨ級に騎乗)「まあまあ、少しこの中に入って落ち着いてみませんか?」

 マジックバブル < プクーー

多摩「にゃあ!?」ポコン

球磨「クマー!?」ポコン

多摩「な、なんにゃ、この泡の球にゃあ!?」ジタバタ

球磨「多摩、少しおとなしくするクマ!? 狭いクマ!」ジタバタ

レイラ「内側からはなかなか破れませんよ?」ニコー

球磨「多摩、おまえ熱いからひっつくなクマー!」

多摩「姉ちゃんこそ体温高いから離れるにゃあ!」

球磨「離れないと……クマぁ……」

多摩「うにゃあ……」

球磨「ぐー……」

多摩「すぴー……」

シエラ「寝たデスゥゥ!?」ガビーン

レイラ「クマさんは冬眠して、ネコさんは炬燵で丸くなる、ですか?」

球磨「球磨は熊じゃないクマー……」ムニャ

多摩「猫じゃないにゃ……」ムニャ

シルヴィア「ちょっと、寝言で反論してるわよ……」ボロッ

シエラ「加古さんといい、戦場で寝る人がいる問題多すぎデス……」


レイラ「とりあえずこれでこの二人の動きは封じましたね」

鈴谷「そうはいかないよ! 外から触って割ってやればいいじゃーん!」ダッ

レイラ「あっ」

 ポヨン

鈴谷「あれ? 割れない?」

レイラ「言ってませんでしたけど、外から押すとそのままそちらに動いてしまいますよ」

鈴谷「ちょっ!? それ早く言ってよ!」

 マジックバブル < スイー

鈴谷「あぁぁもぉぉーーー!! 早く起きてってばぁーーー!!」ダッ

シエラ「そのうち割れるから放っておいてもいいんデスが……」

レイラ「言わないでおきましょうか。さて、あと残りは……」



タ級「ソラッ!」ブンブンッシュバッ!

日向「くっ……! まさか槍でのインファイトを仕掛けられるとはな!」ガッ

コーネリア「どうした、もう終わりか! このまま貴様の主砲を全部潰してやろうか!」ブンッ

日向「このままでは……っ!」バッ

コーネリア「逃げるのか? 骨のありそうなやつだと思ったが、見込み違いだったか?」


日向「……いや、わかった。貴様の望むようにお相手しよう」スッ

コーネリア「なんだ? どうして盾をしまう?」

日向「飛行甲板は盾ではない。それに刀は両手で扱うものだ」スランッ

日向「伊勢型2番艦、航空戦艦、日向。参る」

タ級「!」

コーネリア「ほう……!」

タ級「戦艦タ級、ソシテ……」

コーネリア「あたしはコーネリア・ギルティランスだ! 行くぞヒュウガぁ!!」ゴォッ!

日向「……すぅ……はぁ……」

コーネリア「串刺しにしてやるよッ!!」グワッ

日向「っ!」カッ

 ガガガガギンッ

日向「……」チンッ

タ級「……!」

コーネリア「……馬鹿な!」

 バラバラバラッ

コーネリア「今の一撃であたしの槍だけを全部叩っ切っただと!?」

日向「この刀は御神刀だ。他者を殺めるためのものではないかわり、不吉なもの、不浄なものは容赦なく斬り祓う」

コーネリア「く……!」

日向「砲塔を全部潰されたお返しだ、これで貴様の武器は封じた。今度はこちらの番だ……!」グッ

コーネリア(右足を後ろに振り上げた……何をする気だ!)


日向「必殺……!!」

タ級「!」

コーネリア「!」

日向「 雷 獣 シ ュ ー ト !!」

 バリバリバリバリバリーーーーーッッッ!!

タ級(大破)「ウワァァアーーーッ!?」ドガァッ

コーネリア「ちく、しょう……っ!?」

 バシャァン

日向「見様見真似だが……まさかW提督の趣味の『さっかあ』が役に立つとはな」


熊野「ぐぬぬ」

ヴァージニア「ぐぬぬ」

シエラ「いつまでやってるデスか……早く引き上げるデス」

榛名「は、榛名はいつまでこのままなんでしょうか」シビレ

フローラ「もう一本イっておきましょうか~?」ズブッ

榛名「あっはああぁぁぁぁ!? ま、またおしりにぃぃぃ!?」ビクビクビクーーッ


W大佐(伊勢に抱えられ)「……何だこの窮状」

伊勢「さ、さあ……? とにかくどうすんの?」

W大佐「一度退く。反撃はXの船に乗せてもらってからだ」

今回はここまで。

では続きです。


提督「向こうでも始まったか」

ニコ「さ、君たちはもう逃げたほうがいいよ。ここは危ないからね」

雷「ええっ、何言ってるの!? あなたみたいな子こそ、こんな危険なところにいちゃだめよ! すぐに避難して!」

ニコ「……優しいね、艦娘のみんなは」

提督「いいからお前らは下がってろ。そんなざまだ、とっとと中佐の船で治療させてもらえ」

阿武隈「その前に、いくつか教えてもらえませんか」

子日「阿武隈さん!? 起きてて大丈夫なの!?」

阿武隈「うん。それより……提督さん、あなたはこの鎮守府で、吹雪さんたちに何をしたの?」

提督「その前に一つ確認だが……お前、由良の姉妹艦だな?」

阿武隈「え、はい……そうですけど」

提督「この鎮守府の艦娘のだいたい半分。この5人と由良も該当するが、こいつらは轟沈してこの島の砂浜に打ち上げられていた艦娘だ」

白雪「それ……本当ですか」

H大将「それは本当だ。提督少尉が彼女たちを保護したんだが……その話はお前たちは聞いてないのか?」

睦月「聞いてた話と全然違うにゃしい……」

雷「憲兵がいないことをいいことにいかがわしいことをしてる、って聞いてたけど……」

子日「洗脳されてるから、お前たち姉妹艦の力が必要だ、とも言われたよー?」

白雪「急な命令だったから、大雑把な話しか聞けませんでした」

提督「……Zの行動は連中の想定外だったってことか? 嘘をつき通すならもう少し慎重に行動するはずだが」

提督「それかハナから捨て駒のつもりだったか」


H大将「お前たちは提督少尉の話を誰から聞いた?」

阿武隈「J少将です」

H大将「……そうか。だとすれば、奴もそういうことか……」

提督「それとお前ら、全員練度はそれほどでもないな? 今日のために編成された部隊か?」

阿武隈「はい……」

提督「ならあれだ。立てこもりの犯人を説得するのに母親呼んだりするあの手口だな」

雷「えっ、母親?」キラッ

ニコ(なんで目を輝かせてるんだろう)

提督「本当に悪い奴らは他人の良心を利用するもんだ。轟沈艦は何をするかわからねえが、姉妹艦なら少しは躊躇うだろう、とかな」

提督「そして、お前らにすぐばれる程度の嘘をついたってことは、お前らの扱いもその程度ってことか」

曙「そういうこと言うの、やめなさいよ……!」

提督「へっ、この程度のことで動揺してんじゃねえよ。こんなのよくある話じゃねえか」

白雪「こんなの滅多にありませんよ……」

提督「そうかい。こっちじゃついこの前もそうだったんだがな」

H大将「中将の件か」

提督「ああ。ったく、どいつもこいつも、なんでこの島でやる必要があんだよ。くそが」

H大将「……この鎮守府はな、貴様が着任する前からいわく付きなのだ」

提督「ああ……そういや中佐からそんな話聞いたな」


H大将「この島の鎮守府に着任し、精神を病んだ者、自害した者、不幸な事故にあった者、指折り数えれば両手でも足りん」

H大将「そんな過去があるせいか、この島での不審死は仕方ないとまで言われてきたほどだ」

提督「最悪じゃねえか」

H大将「だが貴様が来てからは違った。だからこそ大佐の不審死に改めて疑問を持ったし、今回の調査にも賛成したんだ」

H大将「なぜそうなったのか、心当たりはないのか?」

提督「そんなの殆ど大佐のせいだろ。初期艦も憲兵も寄越さずに俺一人を鎮守府に放り投げる奴の仕業じゃなきゃ、誰の仕業だってんだ」

H大将「……メディウムという、この連中は」

提督「ここで二年暮らしててこの前初めて遭遇した。俺以外との関わりは薄そうだが?」

ニコ「そうだね、魔神様がいないことにはぼくたちがこの島に来る意味はないよ。ぼくたちに責任転嫁しようとでも?」

H大将「……」

ニコ「ぼくたちを疑ってるみたいだけど、もとをただせば、この島にそういう土壌を作ったのは、紛れもなくお前たち人間だよ」

白雪(た、大将をお前呼ばわりって……)

阿武隈「じ、じゃあ、どうしてあなたたちはこの島に来たの?」

提督「それはおそらく、俺が望んだからだ」

雷「少尉が!?」

提督「きっかけは、大佐が俺と中将の暗殺を企んでる、と知った時だな。こいつらはそのタイミングで俺の執務室に召喚されたんだったか」

ニコ「大勢の人間の無念が残る島で、大勢の艦娘の鬱屈を背負い込んだ人間が、この世界で魔神様として覚醒した、というべきかな」

ニコ「でもね、たとえ魔神様が覚醒しようがしていまいが、この状況を作ったのは人間しかありえないんだ」


ニコ「確かに、この島がこんなことになった原因に、お前は直接は関係していないかもしれない」

ニコ「だけど今なおこの島に悪意を持ち込み、犠牲を生み出したのは紛れもなく人間だ。違うのかい?」

H大将「……お前たちの望みはなんだ」

ニコ「魔神様の覚醒と、ぼくたちメディウムが平穏に暮らせる世界。そんなに大層なものは望んではいないよ」

H大将「……」

ニコ「さあ、そろそろ本気で逃げたほうがいいよ。ぼくたちも、この島に近づいた人間を始末しなきゃいけないからね」

ニコ「本当なら、お前もその中に含まれるんだけど……」キッ

ヲボロ「……」スッ

H大将「朧君……!」

ニコ「わかってる。だから自分の足で、早く僕達の目の前から消えて欲しいんだ」

阿武隈「……」

ニコ「君たちは身構えなくていいよ。ぼくたちメディウムは艦娘とは親戚のようなものだからね」

神通「提督!」タタタッ

軽巡棲姫「提督!」タタタッ

提督「なんだ、来たのかお前ら」

H大将「姫級深海棲艦……!?」

軽巡棲姫「テ、提督!! ソ、ソノ姿ハ……!」

提督「ああ、お前は直接あのときの俺の姿を見てなかったな」

軽巡棲姫「イヤ、ワカル……アノトキ私ヲ包ンダ命ノ雰囲気ニ似テイル……!」


H大将「提督少尉、もしやこの深海棲艦が……」

軽巡棲姫「オノレ人間……貴様等ノセイデ提督ハ……! 憎ラシヤ、口惜シヤァァ……!!」ジャキ

ヲボロ「!」ジリッ

提督「よせ。ここにいる連中は敵じゃない、ひとまずこらえろ」ギュ

軽巡棲姫「!! ア、アア……提督……!!」ギュウ

提督「神通も、すまないな」グイ ギュ

神通「あっ……い、いえ……」カァ

提督「さて、あまりゆっくりもしていられねえ。もうすぐここは火の海だ」

阿武隈「え? 火……?」

提督「来てもらってすぐで悪いが、神通はこいつらの面倒を見てやってくれ。南の海岸から脱出を頼む」

神通「南、ですか?」

提督「ああ、そこが一番安全だ」

提督「軽巡棲姫は……どうせ言っても聞かねえな。ついてこい」

神通「あ、あの、私も……」

提督「神通」

神通「は、はい!」

提督「悪かったな、あのときのお前の気持ちを理解できなくて。お前がどんな思いだったか、今なら少しだけはわかる気がする」

神通「……!」


提督「これ以上、大事な奴を失うのは御免だ。せめてここで生き残っている連中だけでも、何とかしてやってくれ」

神通「……はい」コク

H大将「よし、気絶している大将は俺が連れて行く。神通君は阿武隈君を頼む」

神通「承知しました」

提督「……あんた、そのまま戻って大丈夫なのか?」

H大将「それなら大丈夫だ。この島に着く前から俺のホルスターのICレコーダーがすべて録音している」

提督「なに? ……そりゃ面倒だな」

H大将「貴様は心配しなくていい、貴様とこの島の者たちは私が弁護する。それと……」ポイッ

提督「?」パシ

H大将「その通信機を持っているといい。さっきの士官Zの持ち物だ、中佐の船に戻り次第それに連絡を入れる」

提督「ああ……わかった」

H大将「提督少尉……死ぬなよ」ケイレイ

提督「……善処します」ケイレイ

H大将(大将担ぎ上げ)「よし……行こうか」

士官Z「ま、待って……助げて、くだせえええ」ズリッズリッ

曙「……なんだ、生きてたの? このクソ士官」

雷「あなたのせいでみんなが……!」


H大将「ふむ……」スタスタスタ

 ギュム

士官Z「ぐぎゃっ!?」

艦娘たち「「!?」」

H大将「ん? 何か踏んだかな?」グリグリッ

士官Z「……H大将、ア、アンタ……!?」

H大将「なにもないな。よし、皆私に続くといい」ニヤ

雷「……あ! そういうことね!」

艦娘たち「?」

雷「わかったわ司令官、後に続くわね!!」タタタッ ギュムッ

士官Z「んげっ!?」

艦娘たち「!!」

子日「よぉし、子日も続きまぁす!」ゲシッ

白雪「白雪、ご一緒します!」ガスッ

睦月「睦月も、参りま、しょおっ!」ピョン ドゴォ

曙「何か出てきたら私が蹴散らしてやるわ!」ゴシャッ

士官Z「ぐへえっ!?」

神通(阿武隈背負って氷の眼差し)「……」ジトォ

阿武隈(背負われて氷の眼差し)「……」ジトォ

士官Z「ヒィイッ!?」


H大将「神通君、どうかしたかね」

神通「……いえ、すぐ参ります」ガッ グリグリグリッ

阿武隈「あっ、連装砲落としちゃった」ポイッ ガインッ

士官Z「ーーーーっ!?」

神通「フフフ、気を付けてくださいね」ニコー

阿武隈「ありがとうございます神通さん」ニコー

H大将「フ……よし、急ぐぞ、脱出だ」

艦娘たち「「はいっ!!」」



ニコ「行ったね」

提督「ああ」

軽巡棲姫「提督……」

提督「わかってる。これでけりをつけるさ」

提督「ニコ、お前は海でメディウムの指揮を執ってくれ」

ニコ「……せっかく合流できたのに?」ムスッ

提督「そう言わずに頼むよ、『姉さん』」

ニコ「……っ!! しょ、しょうがないなあ。今回だけだからね!!」タッ

軽巡棲姫「……提督ハ悪イ男ネ」

提督「今更さ。初春、朧……ル級とヲ級もか。悪いがもう少しだけ付き合ってくれよ」

ハツハル「」コクン

ヲボロ「」コクン

提督「こっから先、出会う人間は皆殺しだ。行くぞ」

今回はここまで。

それでは続きです。


 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

祥鳳「……」

ビスマルク「……どういうこと?」

ローマ「知らないわ、少なくとも私はこんなこと未経験よ」

ヴェールヌイ「まあ、誰もこんな状況に遭遇したことなんてないだろうね」

ローマ「……まさか、深海棲艦が白旗を掲げてくるなんて」

プリンツ「ビスマルクお姉様……!」

ビスマルク「私とローマ、祥鳳が前に出るわ。プリンツとリベッチオ、ヴェールヌイは下がってて」

リベッチオ「みんな、気を付けてね……?」

ローマ「さあ、来るわよ……!」

 ザァァァ (ル級×1、タ級×2、ヲ級×1、ツ級×2)

ル級「ドウヤラ、コチラノ意図ハ通ジタミタイネ?」

ビスマルク「ええ。私たちとしてもここは、初めまして、と言うべきかしら」

ル級「フフ、挨拶シテクレルノ? 嬉シイワ」

ローマ「……」

ル級「意外ソウナ顔ヲシテルワネ? 私タチカラ『嬉シイ』ナンテ言葉ヲ聞イテ、驚イテルッテトコ?」

ローマ「否定はしないわ。でも、嫌な気分ではないことはわかって頂戴」

ル級「フフフ……」


祥鳳「……白旗を掲げてきた、あなた方のその意図を聞いても?」

ル級「簡単ナ話ヨ。泊地棲姫ノ邪魔ヲシナイデ欲シイノ」

ビスマルク「……この海域の戦闘に関わるな、ってこと?」

ル級「ソウネ。負傷シタ艦娘ノ救助ニ入ルノハ構ワナイ。タダシ、交戦ハ認メナイ」

ローマ「……意味がわからないわね。この場は深海棲艦の好きにさせろと言うの?」

ル級「ソウ。アナタタチニ手出シハシナイ。特別ニ、コノ船モ、攻撃対象カラハ除外シテアゲル」

長門「すまない、ちょっと通してくれ……ああ、やはりお前は、あのル級じゃないか?」

ル級「アラ、長門ジャナイ。先刻ノ話、聞イテイタノ?」

長門「ああ。どういうことだ」

ル級「コノ話ハ、ニコ、ト言ウ人外ノ娘カラ共闘ヲ持チカケラレタカラヨ」

長門「ニコ!? メディウムたちか!?」

ル級「エエ。彼女タチガ言ウニハ、コノ島ヘ人間ガ攻メテクル。追イ払ウノニ協力シテクレ、ト言ワレタノ」

ル級「ソシテ事実、ソノ通リニナッタワ。コレハドウイウコト?」

ル級「何故、人間ドモハ提督ヲ殺ソウトスルノ? 返答次第デハ、私タチモ行動ヲ保証シカネルワ」

ビスマルク「白旗を掲げておいて、事を荒立てる気? ルール違反じゃない」

ル級「アラ、今ノアナタタチガソレヲ言ウ?」フフン

ビスマルク「……」チッ


ローマ「それよりもナガト? あなた、さも見知った風に彼女と話を進めてるけど、知り合いなの?」

長門「ああ」

ル級「一応ネ」

ローマ「……どうしてそういうことを早く私たちに言わないのよ」

長門「提督の判断だ。それに、このル級は人間と関わりたいわけじゃない」

ル級「ソウイウコト。私ハ、ココノ提督ト個人的ニオ友達ニナリタイダケヨ?」

ローマ「そんな勝手なことを……?」

 大型のゴムボート < ザァァァ

長門「あれは……」

祥鳳「中佐!? どうしてこちらに!?」

中佐「向こうの船の上で眺めてるだけじゃ、君たちが何を話しているのかわからなくてね」

祥鳳「危険です! すぐに船へ戻ってください!」

ヴェールヌイ「そうだよ。下がってて」

中佐「それを言ったら、君たちだって危険じゃないか」

中佐「多分大丈夫だよ、以前に提督少尉が話していた争いを望まない深海棲艦……それは君だね?」

ル級「貴様ハ……」

長門「構えるなル級。彼は提督を助けた男だ、敵ではない」

ル級「……艦娘ジャナカッタノ。ナライイワ」

中佐「」シロメ


長門(また酒匂に見間違えられたのか……)

祥鳳「ち、中佐! しっかりしてください!」ユサユサ

中佐「はっ……あ、ああ。とにかく、僕たちも話に参加させてもらうよ」

??「なるほど、これは驚いた。彼女らと話せるとは、長生きはしてみるものだ」

長門「あ……あなたは中将!? どうして中将もこちらに!?」

中将「中佐に頼んで船に乗せてもらったのだよ。辞表は出したが、生憎とまだ受理されておらんからな」

長門「足の具合は大丈夫なのですか」

中将「儂のことはいい。今は大事な客人と話をしているのだろう? そちらを優先したまい」

長門「……はっ」

ローマ「話を戻すわ。あなたは、この島の提督とは仲良くしたいけど、私たちとは仲良くしたくない。そういうこと?」

ル級「概ネ、ソノ通リヨ。私ニ理解ヲ示シテクレタ提督ダケハ別ノ存在。彼ト彼ノ部下ノ艦娘以外ト馴レ合ウツモリハ私ニハナイ」

ル級「今、泊地棲姫ニ手ヲ貸シテイルノモ、オ前タチガ提督ヲ殺ソウトシテイルカラ」

中佐「……提督少尉の敵と認識したわけだね」

ル級「エエ。人間ハナゼ彼ヲ狙ウノ? 長門モ理由ヲ知リタイト思ワナイ?」

長門「む……提督は致命的に口が悪いからな。大佐にも反抗的だったし、正直どこで敵を作っているのかわからないところはある」

ル級「アア、ソレハ確カニネ……」ムムム

リベッチオ「ねえねえ、深海の人があんな顔するの、初めて見たんだけど」ヒソヒソ

プリンツ「私も……いつも見るあの冷たい雰囲気が嘘みたい」ヒソヒソ


ル級「ソレデドウナノ? アナタタチハ提督ヲ悪者ニシテルミタイダケド」

中佐「まあ、言ってしまえばその通りだ。僕たちは提督少尉が隠し事をしている時点で、彼を怪しんでいる」

中佐「僕たちがこの島に来た目的はふたつ。ひとつは、大佐たちの不審死の原因の再調査」

中佐「もうひとつは、少尉が深海棲艦を束ねる深海提督かどうか。島に入っていったH大将はそう考えていた」

中佐「でも、君の口振りからして後者は違うと見ていいね?」

ル級「ソウネ。私ハ彼ノ部下ニナッタ覚エハナイ」

中佐「H大将は、提督少尉が君たちを指揮して大佐を亡き者にした、と考え危険視していた」

中佐「泊地棲姫を追い帰して中将を救ったという実績も、そのついでで都合の良い隠れ蓑にできるしね」

ル級「フゥン……デモソレハ間違イ。アノトキ泊地棲姫ハ本気デ島ヲ滅ボスツモリダッタカラ」

長門「ああ。あの時は、大佐が我々と泊地棲姫を戦わせて共倒れを狙っていた、というのが真相だった筈だが」

中佐「ル級は提督の協力者ではなかったのか?」

長門「泊地棲姫がこの島のことをル級に聞いてきたことは聞いた。だがそれだけで、あのときはル級は戦闘に参加していない」

中佐「が、その時点でル級との交流はあったわけだ……どうして彼はそのことを教えてくれなかったんだ」

長門「それはル級を人間から守るためだ」

中佐「え?」

長門「彼女の存在が明るみに出れば、彼女を利用しようとする輩が必ず現れる。提督はそれを良しとしなかったんだ」

長門「そもそも提督は人間を信用していない。彼自身が経験してきたこと、この島に流れ着いた艦娘の経緯を知れば当然とも言える」

長門「深海棲艦であるル級も提督にしてみれば同じなんだ。艦娘と同じように傷ついた彼女を保護したに過ぎない」


中将「……彼は我々を謀っていたと?」

長門「結果的には報告の不行き届きでしょうが、先程彼女自身が言った通り、ル級は提督以外と仲良くする気はないと言っています」

長門「そういう意味では、提督は彼女の意思を尊重したにすぎません」

中将「彼女がスパイではないという証明はあるのかね」

ル級「ドウヤッテ証明スルノヨ、ソンナコト。ダイタイ証明シヨウトシタトコロデ信ジル気ナイデショ」

中将「む……」

長門「証明自体が難しいでしょうね。それに、仮に証明のためル級を海軍に招いていたらどうなっていたか……」

ル級「絶対行キタクナイワネ。ドウセ捕マッテ研究材料ニサレルノガ関ノ山デショ?」

長門「ビスマルク、お前はどう思う」

ビスマルク「楽観的な見方をすれば、多分、少尉が英雄扱いされるわね。メディアは大騒ぎするんじゃない?」

ローマ「でも、彼女が外交官をやる気がないなら、連れて行ったところでなんになるのよ」

ヴェールヌイ「勝手に期待しておいて、やる気がないとわかれば期待外れだと、勝手なことを言い出しそうだね」

長門「そんな大層な役回りを彼女に押し付ける気は提督にはない。自分も矢面に立つことになるからな」

ル級「ソウナッタラ、アノ男ハコウ言ウデショウネ……」

ル級&長門「「面倒くさい」」

ル級「ッテ……ネ?」

長門「だな。フフ……」

中佐「……少尉、やる気ないんだな……」

中将「……むう」


ル級「ソレデ……ソコノ人間。ソウ言ウオ前ハ、私ト仲良クナリタイノ?」

中佐「……そうだ。僕は、和睦が理想だと思っている」

ル級「嘘デショウ? 今マデ自分タチガ占有シテイタ海ニ、イキナリ現レタ厄介者ナンカト? 邪魔デ邪魔デ、仕方ナインジャナイノ?」フフッ

タ級「私タチノヨウナ見タ目ナラマダシモ、イ級ヤ、ツ級ミタイナ子タチト和睦ヲ考エテル? 話ガ通ジルト、本気デ思ッテル?」

中佐「……それは、人間全体の意識が変わらなければ駄目だろうね。大々的に宣伝しなければならないだろう」

ヲ級「全体カ。ナラバ人間ニ恨ミヲ持ツ我々ノ仲間ハドウスル。我々ヲ恨ム人間ドモハドウスル。懐柔スルノカ、始末スルノカ」

ローマ「最初からマイナス要素だけで話をしないでよ。あんたたちこそどうして少尉にそこまで肩入れしてるのよ?」

ル級「彼ガ私タチト同ジダカラヨ」

中佐「同じ……?」

ル級「エエ、長門モ言ッテイタデショウ? 彼ハ人間ガ嫌イナノ」

ル級「彼ハ私タチニ近ヅキツツアル。ソノ証拠ニ、彼ガ私ト握手ヲシテモ、軽巡棲姫ニ抱キ着カレテモ、平然トシテイタモノ」

ル級「オ前モ、私タチト友好ヲ結ビタインデショウ? ホラ、握手クライ、ドウッテコトナイデショウ?」スッ

中佐「!」

祥鳳「中佐! 待ってください!」

中将「そうだ、待ちたまえ中佐。ここに来る前に、深海棲艦との共存に大きな問題があると言ったことを忘れたか」

中佐「し、しかし」

ヴェールヌイ「私からもお願いだ、司令官。思いとどまって欲しい」スッ


祥鳳「提督。あなたに万が一のことがあっては……!」

中佐「……」

ヴェールヌイ「司令官。お願いだ……!」

中佐「響……」

長門「中将、問題というのは?」

中将「一般人が深海棲艦に触れて精神を病んだ、という事例が多いことがわかった。でなくば儂の右足のように壊死する可能性もある」

ル級「アラ。ソッチノ人間ハ駄目ダッタノ?」

中将「うむ。数年前に潜水艦に足をつかまれただけでこの有様だ……情けないことにな」

中将「最初は深海のような『圧力』で足を駄目にされたと思っておったが、長く通院していることで新たな事実が分かった」

中将「……君たちの前でこんなことを言うのは失礼だろうが、深海棲艦は我々人間に何らかの遺恨や怨念を持って現れたものだと推察している」

中将「科学的に解明できないが、深海棲艦の放つ瘴気が、人間の精神や肉体に悪影響を及ぼすと考えられるようになったのだ」

長門「どういうことです!? それでは和睦など最初から不可能な話ではありませんか!」

中佐「それでも! 話し合いが出来るとすれば、そこから戦いは少しずつ小さくは出来るはずだ! ……そうあって欲しいんだ」

長門「……」

中将「うむ。当初は和睦を真剣に考えていた。今では隔離と呼んだほうが正しかろうな」

ル級「臭イモノニハ蓋ヲスル。オ前タチハソンナ結論シカ出セナイデショウネ」

中将「その話を聞いて、殲滅するしかないと、徹底抗戦に舵を切ったのがH大将なのだ」

中将「大将にはまだ話せていなかったが、彼は有志を集めて人間を集めて話し合いの場を設けようとしていた」


中将「そんな志ある者二人を一度に失うとは……痛恨の極みだ」

中佐「待ってください、そうすると少尉は……」

 ゴォォン

中佐「!」

ローマ「……さっきからなんなの? この地震は」

長門「……提督は、無事なんだろうか」

ル級「メディウムタチニ任セルシカナイワネ」

長門「……ああ」

リベッチオ「ねえねえ、さっきから聞きたかったんだけど、メディウムってだーれ?」

ル級&長門「「……」」

初雪「もう、隠す必要ないと思う……」スッ

長門「!」

初雪「ほら、あれ」

妙高「これはいったい……」

チ級「……!」

メリンダ「皆様、どうなさいました?」

ル級「アラアラ、艦娘トチ級トメディウムガ、オテテ繋イデ来ルナンテ」

長門「……提督はメディウムたちのことを誤魔化せと言っていたが……もはやすべて話すしかなさそうだな」

今回はここまで。

落としどころは2種類考えてます。どちらにしようか……。

では続きです。


 * J少将の船の残骸近辺 *

J少将「ぶはっ!」ザバァ

J少将「おのれ深海棲艦どもめ……邪魔をしおって!」

部下1「J少将! ご無事でしたか!?」ザザァ

部下2「早くこちらのボートに!」

J少将「お、おお、すまない、助かった! ……状況はどうなっとる?」ヒキアゲラレ

部下2「見る限りですが、深海棲艦勢力に我らの艦隊は翻弄されており、全艦隊が戦闘継続不能に陥っています」

部下3「墓場島の艦娘の協力により、殆どの艦娘はX中佐の医療船へ曳航されております」

部下1「ただ、妙なことに、墓場島の艦娘は深海棲艦の攻撃目標になっていないのです」

部下2「泊地棲姫も、最初に魚雷を放ってからは静観の構えを見せています」

J少将「何を企んでいるのだ、奴らは……?」

部下「ひとまず鎮守府埠頭に接岸している、K大佐が乗っていた高速護衛艦に乗り込み、すぐにこの海域からの離脱を図るのが良いかと」

J少将「う、うむ、そうだな。命あっての物種、この海域のすべての海軍に撤退の意志を伝えろ」

部下たち「「はっ!」」

J少将(執務室で大将二人を始末できなかったのは、まだ想定の範囲内だが……)

J少将(まさか泊地棲姫がこのタイミングで攻め込んでくるとは……!)

J少将(何日もかけて島の周辺海域を調査して、奴らの潜伏海域を調査したというのに……どこに潜んでいた!)


部下1「ときにJ少将……提督少尉はどうなさるおつもりですか」

J少将「む……ひとまず捨て置くしかあるまい。大将を爆殺した容疑こそあれ、この場で奴を捕まえようとするのは自殺行為だ」

J少将「だが、これで奴が深海棲艦と繋がっている疑いも強まった。追い詰められて、正体を現しつつあるということだ」

部下2「……ではやはり!」

J少将「H大将の見立ての通り、奴は深海提督と見ていいだろう」

J少将「奴の配下の艦娘が深海棲艦から攻撃を受けていないのも、それで合点がいく」

J少将「最悪の事態を考えねばな。奴の配下の艦娘も、正体は深海棲艦かもしれん……!」

部下3「救助を急がせます!」

J少将「む。頼ん……」

 ガギンッ

J少将&部下「「うわああ!?」」ゴロゴロドターッ

部下1「なんだ!? ボートが急停止した!?」

 ブラッディシザー< ミシミシミシッ

部下2「い、いや見ろ! ボートが爪のようなものに持ち上げられているんだ!」

部下3「深海棲艦の仕業か!?」


J少将「待て、なにか接近してきている! 警戒しろ!」

 ザザザザァァァァ

イ級「」ザバァ!

部下1「! やはりか!」

イ級の背に降り立つノイルース「なにがやはりか、ですか」スタッ

部下1「な、何者だ!?」

ノイルース「教えたところで時間の無駄です」ボワッ

部下2「火の玉!? ま、魔術師か!?」

ノイルース「……なるほど、首謀者は後ろのあなたですね?」ジロリ

J少将「……!」

部下3「お逃げください、J少将!」

ノイルース「逃がすとお思いですか。ディニエイル」

ハ級「」ザバァ ドォン!

 砲弾→コールドアロー< ゴォォォ!

部下1「しまっ……!」

 コールドアロー< バキバキィィン

部下2「な!?」

ハ級の背に降り立つディニエイル「私の魔力を宿した砲弾です。それで頭を冷やすと良いでしょう」スタッ


部下1「」カチーン

部下2「」カチーン

部下3「う、うわあああ!? ふ、二人が凍り漬けに!?」ガタッ

ロ級「」ザバァ!

ト級「」ザバァ!

ロ級の背に降り立つミリーエル「まだまだ、いきますよ! よぉく狙ってぇ……」ギリッ

ト級の背に現れるブリジット「てー! であります!」ジャコッ

 アローシューター< シュバッ!

 ガトリングアロー< ガガガガガッ!

部下3「ぎゃああああ!」ドスドスドスッ

ニ級「」ザバァ!

ニ級の背に降り立つグローディス「よぉっし! ダメ押しいくよ! 貫けぇえ!」ブンッ

J少将「い、いかん、ここから脱出せねば!」

 ブラッディシザー< ミシミシミシバキーーーーッ!

J少将「ボートが!? うおああ!?」ズルッ ドボーン

 サンダージャベリン<バリバリバリーッ

部下たち「うぎゃああああああ!!」バリバリバリーッ

 ドボボボーン


ノイルース「おやおや。さすがに海の中では私の炎も届きませんね」

ノイルース「私の代わりにとどめを、お願いできますか?」ニコッ

イ級「!」ジャコン

ロハニト級「」ジャコンジャコン

 魚雷 < バシュバシュバシューッ!

J少将「ひ、ひいいい!!」バシャバシャ

部下たち「う、うわあああああ!!」ドゴォォォン!

J少将「ぎゃあああ!」ザブーン!

ディニエイル「……さすがですね」

ミリーエル「やはり海のことは海に住まう方々に任せるのが安心ですね」ニコッ

ロ級「♪」

グローディス「……よし、予定通り敵の親玉は岸に泳いで行ったな」

ブリジット「ところでオボロ殿はどうしたでありますか?」

イ級後期型の背で佇むオボロ「……」


ノイルース「どうなさいました」

オボロ「今、岸へ泳いで逃げた男が首魁と聞く」

オボロ「正直に言えば、それがしが仕留めたかった……!」

グローディス「? 任務に忠実なオボロらしくないな、何があった?」

オボロ「……朧殿が……彼奴らの手にかかったのだ」

メディウムたち「「!」」

オボロ「朧殿だけではない。朧殿を含め5人もの艦娘が犠牲になったのだ。御屋形様が怒髪天を衝くのも当然のこと……!」

オボロ「各々方、急ぎ島から離れよ。人間どもの行いが島を治める御屋形様の逆鱗に触れ、島諸共灼き尽くされんとしている……!」

ディニエイル「……魔神様はどうなさるおつもりです」

オボロ「わからぬ。だが、ニコ殿にも避難を促しておられる。何かすることが残っているのであろうが……」

グローディス「とりあえず、そういうことならあたしたちも引き上げよう。魔神様の邪魔はしちゃいけないだろう」

ノイルース「……少し気にかかりますが、その方が良さそうですね」


 * 島の南部 *

神通「もう少しで海岸です」

H大佐「急げ、追手が来るかもしれん」

 ズゥゥゥン

白雪「また地震……!」

睦月「うう、嫌な予感しかしませんよぉ……!」

 ドゴォォン!

阿武隈「ひゃあ!?」ビクッ

子日「い、今の爆発はなにー!?」

 ガシャーン バリバリー

??「ぎゃああ!」

H大将「誰だ!?」

 ガサガサッ

??「ひ、ひいいい!」ヨタヨタ

雷「誰か茂みから出てきたわ!」

曙「……な、なんか物々しいお面かぶってるんだけど」

??「た、助け……」ヨロヨロ バチバチッ

神通「あれは……アゴニーマスク? カサンドラさんが近くにいる……?」


 トリックホール< パカッ

??「うわああ!?」スポーン

H大将「今度は落とし穴か……提督少尉の部下は多彩だな」

神通「ということは……タチアナさんですね!? 神通です、どこにいらっしゃいますか!?」

タチアナ「? 神通さんではありませんか」ポンッ

マルヤッタ「およ? どうして神通がここにいるんだじょ?」ポンッ

睦月「およ?」

マルヤッタ「およ?」

睦月「……」

マルヤッタ「……」

睦月「およ?」クビカシゲ

マルヤッタ「およ?」クビカシゲ

タチアナ「なんですかその挨拶は……」

白雪「意思疎通できてるのかしら……」

リンダ「なんやなんや、見いひん顔ばっかりで敵さんか思たら、違ったんやな!」ガサガサ

神通「リンダさん! それじゃさっきの爆発は」

リンダ「うちのローリングボムの音やで。で、吹っ飛ばしてカサンドラにバトンタッチや」


カサンドラ「そ、そこの人たちは、敵じゃないんですね?」オドオド

オリヴィア「そっちの人間は誰だい?」ヌッ

H大将「む……俺は本営のH大将だ」

オリヴィア「へーえ、じゃああんた、あの人間の親分かい?」

H大将「……まあ、そうだな、そういうことになる。おい、貴様、ここで何をしていた」

リンダ「なんや、部下のことわかっとらんのかいな。おっちゃん、これ見てもらったほうが早いで」ジャキッ

H大将「これは……スナイパーライフルか」

リンダ「これでこの島の艦娘を狙っとったんや。これ、あんたの差し金なん?」

H大将「いいや。だが察しはつく」カチャカチャ

H大将「神通君。これを見てくれ……このライフル弾も、深海棲艦から作られたものだな?」

神通「……そのようですね」

H大将「これでわかった。俺と大将が奴らに狙われたのは、この弾丸の製作に反対したからだ」

H大将「そしてこいつがこれを持っていたということは、J少将が製作推進派だということだな」

狙撃手「! く……!」ジタバタ

オリヴィア「おっと、逃げようってのかい? そうはいかないよ!」グワッ


オリヴィア「くらいな! クエイクボーム!」ズシィン!

 グラグラグラ!

狙撃手「うわっ!」ズデン

雷「きゃあ!? じ、地震!?」フラッ

白雪「た、立っていられない……!」スワリコミ

マルヤッタ「逃げられないように、押し潰すじょ! すとーん!」

 ヒュウウウウウ

狙撃手「ひ! や、やめ……」

 トゥームストーン< ズシィィィィン!!

白雪「……」アオザメ

阿武隈「……う、わ……」アオザメ

曙「よ、容赦ない、わね……っ」

睦月「可愛い掛け声でも誤魔化しきれませんよぉ……」

マルヤッタ「そんなに褒められると、照れるじょ」テレテレ

全員「褒めてない褒めてない」


H大将「むう……証人として連れ帰りたかったが……仕方ないな」

マルヤッタ「良かったら掘り起こすじょ?」

H大将「いや、いい……奴の頭は穴の外だろう?」

白雪「絶対潰れてますよね……見たくありません」ブルッ

タチアナ「それに、マルヤッタ? 私に掘り起こさせるつもりでしょう?」

マルヤッタ「……ばれたじょ」テヘペロー

タチアナ「墓穴を掘るのは私も御免被ります」

子日「それにしても、すごいね……地震まで起こせちゃうんだ」

雷「さっきから起きてる地震もあなたが起こしてるの?」

オリヴィア「ん? それは違うよ。島自体の地震もさっきから数回起きてるんだがねぇ」

タチアナ「私たちもニコさんからこの島からの退去を命じられたのですが……何があったのですか?」

神通「……実は」

 ズズゥン

神通「!」

オリヴィア「おやおや……またかい。嫌な感じだねえ」

雷「この地震についても何か聞いてないの?」

リンダ「あー、生憎時間がない言われてなぁ……」

H大将「ならば島の南端へ急ごう、話は歩きながらだ」

神通「提督……」

今回はここまで。

続きです。


 * 島の東部 鎮守府埠頭 *

海兵「J少将を発見! こちらへ泳いできています!」ソウガンキョウカマエ

「ボートを出せ! 回収急げ!」

「どいてくれ! 大佐の治療も早く!」

担架に乗せられたK大佐「」ボロボロッ

「大佐の収容も急げ! 医務室までのドアを開けろ!」

 ワーワー ギャーギャー


 * 島の東 泊地棲姫の艦隊 *

泊地棲姫「愚カナ人間ドモネ。今、自分タチガドンナ状況ニ置カレテイルカ、理解デキテイナイヨウダナ」

ニーナ「わかっていないんでしょうね……彼らが誰に矛を向けたのか」

??「ふふふ……そうよ、旦那様を傷付け悲しませた罪は、死を以て償ってもらわないといけないのに……!」


 * 島の東部 鎮守府埠頭、高速護衛艦 *

「早くK大佐を船内へ!」

 フッ

「ん? なんだ? 急に薄暗く……」

K大佐「ひ……!」ビクッ

「どうしました!」

「お、おい。上……!」

「上?」


 巨大チャペル< カラーン!

「なんだあの鐘は!? で、でかいぞ!?」

「だんだん迫って……」

「落ちてきてるぞ!!」

「逃げろおお!!」

 護衛艦☆巨大チャペル < ズガシャーーーーン!!

「「「ぎゃあああああ!!」」」


ケイティー「うふ、うふふふ、ふふふふふふふ……!!」ウットリ

ケイティー「見て! あの無駄に立派な船が無様に押し潰されて……旦那様に楯突いた人間が泣き叫んでいるわ……!」

ケイティー「ああ……旦那様! 旦那様の邪魔をする者は、この私がすべて、散らしてみせます……!!」ウットリ

泊地棲姫「……」ヒキッ

ニーナ「こんな性格ですから、ニコさんも有事の時以外は眠らせておいてるんですよ」ヒソヒソ

泊地棲姫「ソレハ仕方ナイワネ……」ヒソヒソ

ケイティー「さあ、泊地棲姫様! あなたのその主砲の出番ですわ!」ニコォ

泊地棲姫「……ソウシヨウ……沈メ!」ドゴォォン!


「は、泊地棲姫の砲撃を確認!!」

「逃げろ! 逃げろぉぉ!!」


 砲弾<ヒュゥゥゥウウウウ…

 巨大チャペル☆砲弾 < ゴワシャーーーーン!!

「鐘にあたって音波が……衝撃波がぁぁ!!」

「「「うわあああああ!!」」」ビリビリビリーーッ!

J少将「ぐわ!? い、今ので高波が……ぎゃああガボボッ」ザブーン


 * 島の南端 *

H大将「おい! なんだこの鐘の音は!」

曙「なんかすっごい不安を煽られるんだけど!?」

オリヴィア「あー……あいつだね。ほら、もたもたしてないで早く海に逃げるよ」

H大将「……失礼だが、君たちは泳げるのか?」

オリヴィア「ん? ああ……そういえばアタイは泳いだこと自体なかったねえ」

カサンドラ「わ、私は無理です! 絶対無理!」

睦月「マルヤちゃんも無理そうだにゃあ……背負った墓石が重たそう」

マルヤッタ「それよりも包帯がほどけちゃうじょ!」

白雪「そっち!?」


阿武隈「……ねえ、あれ見て」

 ザザザザァァァ

摩耶「おっ、誰かいるぜ! メディウムの連中だ!」

川内「……それに艦娘が……神通!? なんでここにいるの!?」

神通「姉さん!」

若葉「……神通さん以外、全員、墓場島鎮守府にはいない顔だな。子日姉さんもいるのか」

霧島「こんなにボロボロになるなんて、どうしたんですか?」

神通「それが……」グスッ

H大将「すまない、この島から至急脱出したい。手を貸してくれないか」

霧島「え、ええ、それは構いませんが……その階級章」

摩耶「……てめえ、大将だと?」ギロリ

H大将「ああ。俺はH大将、背負ってるのは大将、中佐の伯父だな」

霧島「生きていらしたんですか。死んだと連絡が入っていましたが」

摩耶「こっちの駆逐艦たちは?」

H大将「俺の部下だ」

霧島「この島の駆逐艦が数名上陸している筈ですが、どこにいるか御存知ありませんか」

H大将「それは……朧君たちのことか」

摩耶「知ってんのか! 今どこにいんだよ、助けに行くぞ!」

H大将「……いや、無理だ。5人とも、提督少尉を庇って倒れた」

摩耶「……あ?」

霧島「なんですって……!」

川内「……冗談でしょ?」


若葉「……神通さん、本当なのか」

神通「……はい」

H大将「5人のうち、朧君と初春君が深海棲艦化し、少尉に同行している。あとの3人は、残念だが……」

霧島「……そんな」ヨロッ

摩耶「うお、霧島さんしっかりしろっ!! ……てめえ、提督がそんな状況なのに、よくものうのうと逃げてきやがったな……!!」

H大将「俺は、朧君に二度も命を助けてもらった。その命を粗末にするわけにはいかん」

H大将「それに今回の件、提督少尉に非がないことを証言しなければ。俺の部下の不始末だ、俺が提督少尉の汚名を雪(そそ)がねばならん」

若葉「……川内さん。とりあえずH大将たちは保護しよう」

川内「あ、ああ、そだね。それで、これからどうするの?」

神通「提督から、島の南から脱出しろと指示を受けました」

オリヴィア「アタイたちもさ。島から離れろ、って言われたんだよ」

川内「私たちが来ることを予測できてたのかな?」

若葉「いや。北は海流が不安定、西は岩場と崖、東は艦隊が深海棲艦と交戦中だ」

若葉「怪我人がこれだけいたら、南から逃げろと言うのは妥当な指示だろう。上陸するにもここが一番適切だ」

川内「そ、それもそっか……」


若葉「ふむ……」チラ

若葉「よし。ここにいるみんなを連れて、一度中佐の船に戻ろう」

若葉「摩耶さん。あなたは霧島さんを支えててくれ」

摩耶「お、おう……!?」

若葉「川内さんと神通さんは大将たちを運んでくれ」

川内「え? あ、ああ、うん」

若葉「阿武隈さんは足をやられてるんだな? ……睦月と白雪、阿武隈さんに肩を貸してくれ」

若葉「雷は曙と子日姉さんを曳航してほしい。無理を言うが、頼めるか」

雷「! え、ええ! 任せて!」キラッ

子日「ねえねえ神通さん? 若葉ってこんなに格好良かったの?」

神通「え、ええ……悪い癖が出なければ、駆逐艦の中でも一番冷静ですよ」

子日「悪い癖?」

オリヴィア「で、アタイたちはどうするんだい?」

若葉「若葉が全員乗せていく」

全員「「え!?」」

若葉「やってやれないことはない。さ、時間がないんだろう、早く乗ってくれ」

オリヴィア「あ、ああ。邪魔するよ」シュッ

若葉「……これなら大したことはない。さ、急いでくれ」


リンダ「せやね。ほな、いくで!」シュンッ

タチアナ「失礼します」ポンッ

曙「艤装に吸い込まれるように消えてくわ……本当に罠なのね」

カサンドラ「お、お邪魔しますっ!」ヒュンッ

若葉「君で最後だな」

マルヤッタ「乗せてもらうじょ!」ポンッ

 ズッシィ

若葉「!!」

マルヤッタ『だ、大丈夫かの!?』

若葉「あ、ああ、悪くない」ニヤリ

若葉「むしろ物足りないくらいだ。もっと載せてもいい」ウットリ

川内「……始まった」

神通「……始まりましたね」

H大将「な、なあ……若葉君は大丈夫なのか?」

神通「ええ……悪い癖の平常運転です」

川内「特訓ジャンキーなのよ、若葉。過負荷が大好きっていうか……ちょっとMなところもあるし」

若葉「フフ……ありだな。こういうのが欲しかったんだよ……ああ! いいぞ!」キュピーン

子日「」シロメ

睦月(眼帯の軽巡さんが混ざってるにゃしい……)


 * 島の東 泊地棲姫の一団 *

泊地棲姫「……ナルホド。砲弾デ鐘ヲ鳴ラセルトハ、面白イ趣向ダナ」

ケイティー「はぁぁぁ……なんて素敵な音色……! 私と旦那様の未来を祝福しているようだわ……!」ウットリ

泊地棲姫「……」ドンビキ

ニーナ「気にしたらダメですよ」ヒソッ

泊地棲姫「……ソウネ」ヒソッ

マリッサ「それじゃあ、いよいよ私の出番ねぇ! 逃がさないわよぉおお!!」


 ゴゴゴゴゴ

海に投げ出された海兵「なんだ、海がうねってるぞ……」

 巨大クラーケン< ザババババーーーッ!!

「な、なんだあれは!?」

「ば、化け物だああ!」

「にげ、にげろっ……ひいい!?」シュル グイッ

「た、助けてくれええ!!」グイッ

マリッサ「あはぁ……! 人間がこんなにちっちゃくなっちゃって……とっても可愛いわぁぁ♪」

マリッサ「どんなふうに弄ってあげちゃおうか・し・ら♪」グリッ

「っ」ゴギッ

マリッサ「あらぁ?」

「」プラーン

マリッサ「あらあらぁ、力が強すぎるのも考え物ねえ……今のうちに力加減を覚えておかないと……」

 グリッ ゴギッ メシャッ グシャグシャグシャッ

マリッサ「……ね?」ニタァ

「「ひいいいい!?」」ガタガタガタ


 * 島の東部 *

海兵「海は駄目だ! 陸だ! 陸地の奥へ避難しろ!」

「おい、あれ……!」

ヲボロ「……」

ハツハル「……」

軽巡棲姫「……テイトク」

提督「……ああ」

「提督少尉……軽巡棲姫まで!?」

「なんだあのツノは……戦艦棲姫と似ていないか?」

「どちらにしろ敵だ! 深海の手先め!!」チャキ

提督「何言ってんだ? ……まあ、どうでもいいか。いまさらお前らが何をしても、もう遅いんだ」

提督「よぉく聞け。お前らの末路は海の藻屑か焼き鳥だ。同胞(はらから)のよしみだ、好きな方を選べ」

「世迷言を……!」

「お前なんかと、同胞になったつもりはない!」

提督「同胞だろうが。俺もお前らもおんなじ『人でなし』だ」

「深海棲艦を率いて人間を滅ぼそうとする人類の敵が、何を言う!」

「おとなしく手を挙げて投降しろ!」チャキッ

「脱出方法があるだろう! 言え!」チャキ


提督「脱出? ねえよ、そんなの。俺も疲れてんだ、お前らの相手なんかしたくねえっつうの」

「手を挙げろ! 死にたいのか!」

提督「……はぁ……もういい。面倒だ」スッ

 ニードルフロア<ガッシャアアアン!

「「ぎゃあああ!?」」ドスドスドスッ

提督「おとなしく選んどきゃあいいものを」

「く、撃て、撃てええ!」チャキ

 メガロック<ドスゥゥウン

 ドンドンドンッ ビシビシビシッ

「落岩が盾になっただと!?」

 スプリングフロア< バインッ!

 メガロック< ゴロゴロゴロッ!

「こ、こっちに来たああ!」

 テツクマデ< ガインッ!
 バナナノカワ< ツルーン!
 スパイダーネット< ヒュパッ

「う、うわあああ!」

「なんだこれはああ!」

 メガバズソー< ガランガランガラン!
 ボールスパイカー< バシンバシンバシン!

「ひいいい!!」
「痛い! 痛いいいい!!」

 ヘルジャッジメント< ズガッシャァァァン!
 ヘルファイアー< ボガァァァァン!
 ブラストボム< ドガーーーーン!

「ぎゃあああああああ!!」


提督「……だから、人の話を聞かない奴は嫌いなんだ」

「あぁ……」ドシャッ

「た、たすけ……」バタッ

「死にたく、ない……」ガクッ

残った海兵たち「「「……」」」ゾッ

提督「で? 次はどいつだ」ギロリ

「に、に、逃げろおおおおお!!!」

提督「……朧。付近にいるヲ級とヌ級に救援要請」

提督「メディウムたちを艦載機に乗せて脱出させて、そいつらに着艦させろ」

ヲボロ「……」コクン

提督「艦載機が足りないときは融通してもらえ。急げ」

 ゴゴゴゴゴゴ…

提督「もうすぐ、全部終わりだ……」

軽巡棲姫(……!)

軽巡棲姫(提督……ドウシテ今、ソンナ寂シゲナ……安心シタヨウナ、笑ミヲ浮カベタノ……?)

今回はここまで。

乙です

あー、もうすぐ火の海ってそういうことか…

>>761
お気づきになりましたか(諸葛亮感)

続きです。


 * 島の東 H大将の艦隊 *

ヒサメ「おお、おお。マリッサめ、随分と調子に乗っておるのう」

キュプレ「あんなにたくさん人間を独り占めなんて、欲張りね!」

愛宕(大破)「……あ、あう……」グッタリ

高雄(大破)「……くふうう……」グッタリ

ジュリア「こちらのふたりはどうしますの?」

ジェニー「そーね、そろそろ開放してあげよっか?」

サム「どうやらその頃合いですね」

マリッサ「あらぁ、それなら開放する前にその玩具、私に弄らせて頂戴?」

 巨大クラーケン< シュル

高雄「……え……!?」ゾッ

 巨大クラーケン< ギュワッ!

高雄「い、いやああああ!?」

 ザシュ!

クラーケンに爪を突き刺すオボロ「……」

高雄(失神)「……」カクン

オボロ「……戯れが過ぎるぞ、マリッサ殿」

マリッサ「……ふふ、ふふふ。真面目ねえ、オボロちゃんは」


オボロ「ジェニー殿、サム殿。すぐにも両人を開放せよ。時間がない」

ジェニー「……なによ、いつになく殺気立ってるわね」

 デルタホース< フッ

 ヴォルテックチェア< フッ

愛宕「あ……」パタン ツルー

高雄「」コテン ツルー

サム「これでよろしいので?」

オボロ「ユリア殿。その6人、まとめて船に送り届けられるか?」

ユリア「え? いいけど……」

 カタパルト< ズドバーーーン!!

高雄愛宕「!?」ピューン

金剛比叡「ヒエエエーーー!?」ピューン

長門陸奥「」ピューン

ユリア「そんなに焦らなくてもさ、もうちょっと遊んでて良かったんじゃないの?」

ヒサメ「そうじゃ。当初の計画なら、人間どもを島に閉じ込めて、我らがゆっくりじっくりいたぶりながら始末する算段じゃろう?」


オボロ「……艦娘に犠牲が出た。ゆえに御屋形様はお怒りだ……もはやこの島に留まることも叶わぬ」

クリスティーナ「なんですって!? だ、誰がやられたの!?」

オボロ「如月殿、朧殿、吹雪殿、初春殿、電殿だ……」

ヒサメ「初春じゃと!?」

マリッサ「……いなづまちゃん、ですって?」

オボロ「……」コク

キュプレ「そんな……そんなのって、ひどい……!!」

マリッサ「ふ、ふふふふふ……そう。それじゃあ、ここの人間は、一人残さず、皆殺しにしてあげないとねえ……!」

ヒサメ「マリッサよ。わらわにも少し残しておくが良い……ただただ、すんなりと殺してやるわけにはいかぬ」

マリッサ「大丈夫よぉ、心配しなくても……恐怖と絶望を存分に味わわせてから、殺してあげるわああああ!!!」

 巨大クラーケン< グワアアアアアアアッ


 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

中佐「……なんだこの尋常じゃない地響きは」

長門「中佐、危険だ! 早く船に避難しろ!」

ル級「モシカシテ……提督ハ!? マサカ、マダ島ニイルンジャナイデショウネ!?」

大和「提督を助けに行かなくては!」

ニコ「待って! 行っちゃだめだよ!」

金剛「Nico !? アナタ、ドコに行ってたんデスカ!?」


 * 島の南岸 *

H大佐「何が起こっているんだ!」

オリヴィア『まずいよこれは……早く島から離れな!』

川内「急ぐよ!!」


 * 島の東部 鎮守府埠頭 *

海兵「し、島が震えてるぞ!」

「この場にいたらまずいんじゃないか!?」

「逃げるんだ! 早く!」

「逃げろって、どこへ!?」

 ドドドドドドドド…


 * 島の北部 洞窟内 *

「洞窟が崩れるぞ! 早く逃げろ!」

「この熱気、もしかして……!」

 バキ! バキバキバキ!

 ガラガラガラ…!

 ドーーーーン!!

「マグマだ! マグマが噴き出してきたぞ!」




 海底火山< ドゴーーーーーーーーーンンン!!

「「「うわあああああああああああああ!!!」」」


 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

 ズドーーーーーン

中佐「あの火柱は……まさか溶岩か!?」

ル級「火山活動ガ始マッタトイウノ!?」

 ザザァ…

W大佐(伊勢に背負われ)「よし、ここまでくれば……!?」

伊勢「え、えええ!? ちょっと! どうして中佐が深海棲艦と一緒なの!?」ザザザァァ

W大佐「おい、X! どういうことだ!」

中佐「W!? 無事だったのか!」

 ザザザァァ…

神通「長門さん!」

長門「神通!? 背中の男は誰だ!?」

中佐「H大将!? 伯父さんも!?」

H大将「中佐! ここにいて大丈夫なのか!」

中将「二人とも、生きていたのか……!」

H大将「ち、中将殿!?」

長門「な、なにがどうなっているんだ!?」


摩耶「鳥海! 霧島さんを頼む!!」

鳥海「な、なにがあったの!?」

摩耶「話はあとだ! 提督とちびたちを迎えに行く!」

霧島「……駄目よ」ガシッ

摩耶「霧島さん!?」

霧島「……摩耶。あなたまで失ってしまったら、私は……私は……!!」ギュゥ

摩耶「だ、大丈夫だって! あたしは必ず帰ってくるから、離してくれ霧島さん! 行かせてくれっ!!」

 PPPP...

長門「無線!? ……はっちゃんか!」

通信『北の洞窟と、さらにその北側の海底から溶岩がすごい勢いで噴き出してるよ!』

通信『このままだと鎮守府も危ないから、絶対に近づかないで!』

長門「……わかった、はっちゃんも急ぎ離脱してくれ。摩耶、お前も待機だ。提督の帰還を待て」

摩耶「長門さん!?」

長門「金剛! 大和! 何人たりとも島に行かせるな!」

金剛「I see !」

大和「了解です!」

摩耶「金剛さん!? あ、あんたそれでいいのかよ!!」


金剛「当然デス。今から摩耶が島へ乗り込んだとして、あの広い島内をどうやって提督を探すつもりデスカ?」

金剛「それに行ってから脱出できるかもわかりまセン。考えなしに突っ込むのは、自殺行為も同然デス」

摩耶「く……そりゃ、そうかもしれないけど……でもな!」

大和「仲間をむざむざ死にに行かせるわけにはいきません! 提督のお考えに背きます!」

長門「そうだ、やめろ摩耶! 提督はそんなことを望んでないはずだ! わかっているだろう!」

摩耶「わかってる……わかってんだよそんなこと! そのくせ手前は死にたがりのダブスタ野郎だってことも、お前らわかってんだろ!?」

摩耶「だからあいつを迎えに行かなきゃ駄目なんだよ! 頼むよ! 行かせてくれ!」

 ヒュゥゥゥゥウウウウウ

摩耶「!?」

 バシャバシャバシャーーーン!

摩耶「うわああ!? な、なんだあああ!?」

 ゴポゴポゴポ…

H大将艦隊の金剛「……ぷっは!? こ、こ、ココはドコデース!?」キョロキョロ

H陸奥「……」カチーン

H長門「……」コチーン

H比叡「……ひえええ!? 金剛お姉様、長門さんたちが凍ってますよ!? ひえっひえです!」


H金剛「Oh, 比叡!? あなたも二人いマース!?」

比叡「え、私ですか!?」

H比叡「ほんとだ! これがほんとの比叡比叡ですね金剛お姉様!」

H金剛&H比叡「「HAHAHAHA!」」

金剛&比叡「「言ってる場合デスかあああ!」」ドゲシッ

H金剛&H比叡「「ギャース!?」」

榛名「」シロメ

大和(シリアスな空気がぶち壊しだわ……)アタマカカエ

H大将(……うちの金剛と比叡は艦隊のにぎやかし枠だったな、そういえば)アタマカカエ

鳥海「それより摩耶! 姉さんたちが!」

H高雄(失神中)「」プカー

摩耶「げえ!? お、おい、高雄姉! しっかりしろ!」ホッペペチペチ

H愛宕「……ま、や? ちょうかい……!?」ボロッ

鳥海「愛宕姉さん!? そんなにボロボロになるなんて、なにがあったんですか!?」

H愛宕「鳥海……ちょうかーーーーい……!」ダキツキッ

H愛宕「こわかった……こわかったのーーー!!」ウワーン!

鳥海「ちょっ、お、落ち着いて!?」

H愛宕「高雄を、でっかい、触手が……触手がぁー!!」ビエーン

摩耶「ああもう、くそが! メディウムの連中は、姉貴たちになにしてくれやがったんだ!?」


 ズドーーーーーン

摩耶「!」

ル級「マタ噴火!? 泊地棲姫ハ何ヲシテイルノ!?」

長門「まずいぞ……島に火の手が上がっている!」

潮「長門さん! 曙ちゃんたちを救護船に乗せて……って、あ、あの赤い光はどうしたんです!?」

龍驤「艦載機飛ばしてみたんやけど、あかんよ! 林に火が燃え移っとる……このままじゃ鎮守府も燃えてしまうで!」

敷波「ちょっと! ニコちゃんなんとかなんないの!?」

ニコ「なんとかもなにも、これは魔神様がやったことだよ!?」

利根「何を言うか! 提督にそんな真似ができるわけがなかろう!」

ニコ「嘘じゃないよ! 駆逐艦のみんなが殺されて、その怒りで魔神様が力を発動させたんだから!」

長門「なんだと!? おい、今なんと言った!!」

朝潮「殺された……って、誰がですか!?」

潮「……まさか……朧ちゃん?」マッサオ

利根「島には誰もいないはずではないのか!?」

摩耶「……あたしが、行かせたんだよ」

鳥海「摩耶!?」

摩耶「嫌な予感がする、って朧が言っててな……危なくなったらすぐ戻れって言ったのによ……!!」


潮「……そ、それじゃ、朧ちゃんは……」

H大将「朧君は、深海棲艦になった」

潮「!?」

中佐「ど、どういうことです!?」

H大将「俺がこの目で見てきたんだ。深海棲艦から作った弾丸で撃たれた朧君と初春君が、深海棲艦になったのを見た」

中佐「深海棲艦から作った弾丸!?」

中将「……まだ、そんなものを作る馬鹿者が残っていたのか……!!」ギリッ

潮「……朧ちゃんが……」

長門「初春も、だと……!?」

H大将「これが証拠の弾丸だ。……ル級君、あらためてくれるか」スッ

ル級「……アラタメルマデモナイワ。見テイルダケデ、ソノ弾丸カラ無念ガ伝ワッテクルモノ……!」

雲龍「なんとかして、二人を助けられないの?」

H大将「助けたいが、何をしたらいいか見当がつかん……」

利根「の、のう、朧や初春以外は……どうなったんじゃ」

H大将「……提督少尉を庇って倒れた。全滅だ」

利根「……!」

大和「提督は、どうなったんですか」

H大将「……彼の額に角が生えて、魔法のような力を使うようになった。まだ島にいるはずだ」

金剛「……生きて、いるんデスネ?」

H大将「ああ」

中佐「……どうする気なんだ、提督少尉は……」

今回はここまで。



このSSきっかけでVITA版影牢買った
もっと濃いゲームかと思ってたけど予想外に面白い
>>1さん、ありがとね

>>775
自分の書き物が他の方のゲームプレイに影響するとは……。
大変恐縮です。

では続きです。


 * 島の東部 鎮守府埠頭 *

J少将「……ぜぇ、ぜぇ……おのれ、何故この私が、こんなに泳ぐ羽目に合うんだ……」

ヨーコ「それはあんたが悪だからだよ! 因果応報、この世に悪が栄えた例なし!」

J少将「!? 何者だ!」

ヨーコ「正義のヒーロー、メディウム戦隊メディピンク!」

ヨーコ「お前を、地獄にぶっとばす者だあああ!」

 メガヨーヨー< ガッシャァァァン!

J少将「ぎゃああ!?」ブットビ

 クレーン< ガッシィン!

J少将「ぐえっ!?」クビツカマレ

アーニャ「よおっし、ナイスキャッチ!」

ティリエ「はやくこっちに投げちゃえ! ご主人様のところへ送ってやるぞ!」

アーニャ「オッケー! そっちにリリースするね!」

 クレーン< ポイッ

 ゴウモンシャリン< ガラガラガラッ!

J少将「ぐぎゃっ!?」ガシャーン

 ゴウモンシャリン< ゴロゴロゴロゴロ… ウワアァァァ!

提督「……来やがったか。よし、クロエ」

クロエ「了解しましたっ! お任せください団長っ!」

 ワンダーバルーン< ペタンッ

J少将「ぬおっ!?」フワァ


J少将「な、なんだこの風船はっ!」ジタバタ

提督「……よう、ざまあねえな。あんたがJ少将か」

J少将「お、お前は、提督少尉か……!? 俺に一体なにをした!?」

提督「……そりゃこっちの台詞だよ。お前こそこの島に何しに来たんだ?」

J少将「……っ」

提督「まあ、素直には答えられねえだろうなあ。深海と繋がってる俺を処罰しに来たんだからなあ?」

提督「今、俺を咎めれば、殺されると思ってんだろ? こんな時だけお利口にならなくていいんだ、正直に喋ってくれよ」ニタニタ

J少将「軽口を……!」ギリ

提督「で、俺のついでに大将二人まで始末しようとする魂胆はなんだ? 聞いてやるから喋ってみな」

J少将「ぐ……」

軽巡棲姫「喋ロウトモシナイノ……ソレトモ、デキナイノ……?」

提督「できねえだろうなあ。Zの奴がいたからな……あの弾丸の話をしたら、十中八九お前に殺されるって思ってんだろうさ?」

J少将「……ッッ!」

提督「ほれ、顔色が変わったぜ? 心当たりがあるんじゃねえか?」ニヤリ

J少将「し、知らん! 俺は知らん……ッ!」

軽巡棲姫「……オノレ……オ前ラガ……オ前ラガ私タチヲォォ……!」

提督「まあ、落ち着け。で、どうすんだ? 白状するのかしないのか」

J少将「知らんものは知らん……ッ!」


提督「そうか。じゃあ、もう用は済んだな」

J少将「お、おい!?」ビクッ

提督「軽巡棲姫、初春、朧。やっ」

J少将「待て! 待ってくれ!! 言う! 言うから……」

提督「あ? 言わせてやらねえよ。さあ、やっちまえ」

J少将「な!?」

ハツハル「……!」ドガァン

オボロ「……!」ピシュピシュン

J少将「ぎゃああ!?」ゴガガァン

 ワンダーバルーン< パァンッ

J少将「ぐえ!?」ベチャッ

J少将「ぐうう……お、俺の、俺の脚が……脚がああ!!」ゴロゴロッ

軽巡棲姫「……ネェ」ガシッ

J少将「ひぃ!?」アタマツカマレ

軽巡棲姫「……ドウシテ? ドウシテ、コノ島ニ来ルノ? ネェ、ドウシテナノ?」

軽巡棲姫「ドウシテ、オ前タチハ、提督ヲ、危険ナ目ニ合ワセルノ?」ミシッ

J少将「ぐうう……な、なんでだあ……俺は、大将を殺す理由を、言おうとしたのに……」

提督「おいおい、今は軽巡棲姫が質問してるんだぞ? 答えてやれよ」

軽巡棲姫「……」ミシミシッ

J少将「ひぎぃぃ! 言う、言うから……」

軽巡棲姫「……ヤッパリ聞キタクナイワ。ドウセ不愉快ナ答エシカ、得ラレナイデショウカラ」ミシミシミシッ

J少将「ぐああああ!?」


J少将「……も、もうやめてくれ……俺は、まだ死にたくないんだ……助けて……」

軽巡棲姫「……ダッタラ……」パッ

J少将「!」ストン

軽巡棲姫「ナンデ、ココヘ来ルノヨォォ……ッ!!」サッカーボールキック

J少将「ぐへぇえ!」バッキャァアア ズダンッ ゴロッ ベシャッ

軽巡棲姫「アア……口惜シヤ……憎ラシヤァァァ!」ギリギリギリ

提督「ほれ、命乞いしろ。助けてくださいと、額を地面にこすりつけて、泣いて詫びを入れてみろ」

提督「早くしないと、お前にとどめを刺しちまうぞ?」

J少将「は、ひ、ひいいい……た、助け、助けて」ガタガタガタ

提督「よし……イブキ」

イブキ「押忍っ!!」

提督「とどめ刺してやれ」

J少将「ま、待っ……約束が違う!」


イブキ「吹雪のカタキ、取らせてもらうッス!! うぉおらぁぁああ!!」

 ヒートブレス< ゴワァァァァ!!

J少将「ぐわあああああ!!」ボワァァァ!

J少将「何故だ! 何故だ提督少尉ぃぃぃ!」

提督「何故もなにも、俺はお前を助けるなんて約束なんかしてねえだろ?」

提督「お前が素直になろうがなるまいが、俺たちはお前をぶちのめしたいんだ。わかれよそのくらい」ニヤァ

J少将(気絶)「!! ……き、さ……」ガクッ

提督「……よし。イブキも島から避難しろ。朧、艦載機は残ってるな?」

ヲボロ「……」コクン

イブキ「押忍! ……あの、団長、良かったんスか? まだこいつ、生きてるッスよね?」

提督「ああ。もう一回くらい、無様に泣き喚いてもらおうと思ってな」

提督「人を騙して罠にかけて陥れようとしたんだぜ? 報いは受けてもらうべきだろ?」ニヤリ

イブキ「それもそうッスね!」

軽巡棲姫「……提督。アナタガソレヲ言ウノ……?」ジト

提督「いいじゃねえか。そんなことより、最後の後始末をするか。朧、初春……軽巡棲姫も、手伝ってくれるか」

軽巡棲姫「?」


 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

 ゴォォォ…

陸奥「もう、島が真っ赤……なんてことなの」

龍驤「溶岩で覆われて……煙と水蒸気で見通しも悪いし、艦載機も飛ばせられへんな、これは……」

陸奥「もっと離れた方がいいわ。噴火が続いているし、火山岩が飛んでくるかもしれないわ」

暁「……」

暁「あ……」

雲龍「……暁?」

 ……よくも司令官を……!

暁「あ……!」

 ……I提督の鎮守府が……燃えてる……!!

暁「あああ……!!」ビクッ

雲龍「暁? どうしたの、頭を抑えて……」

龍驤「どないしたん?」

暁「あ、あああ……!!」フルフル

暁「や……やめて、やめ……」ズキズキズキッ

陸奥「暁ちゃん!? どうしたの!?」

暁「いやああああ!!」

暁「あ……」ガクッ

陸奥「ちょっと、暁ちゃん!?」ガシッ


龍驤「な、なんや!? なにがどうなってん!」

長門「……今のはもしや、昔の鎮守府の記憶のフラッシュバックか? ……陸奥、すぐに暁を船に乗せてくれ」

陸奥「え、ええ……長門は?」

長門「今、中佐が提督に通信を試みている」

中佐「…………」

中佐「くそっ! 駄目だ! 何回コールしても提督が出てくれない!」

ル級「オ前、本当ニ提督ニ通信機ヲ渡シタンデショウネ?」

H大将「渡したとも! ちゃんとあいつも受け取った!」

金剛「使い方、教えまシタカ?」

H大将「なぬ? い、いや、使い方までは教えて来なかったんだが……!」

大和「それはまずいですよ!? 提督はスマートフォン使ったことがないんですから!」

H大将「い、今時の若い奴にそんな奴がいるわけが……」

金剛「イマドキとは懸け離れた場所に長期間滞在していたんデス! わかるわけないでショー!?」

H大将「ぐ……すまん」

タ級の艤装から現れるカトリーナ「だあああ! ニコちゃんよ! あたしたちは一体いつまで待ちぼうけ食らってりゃあいいんだよぉおお!」ガーッ

ニコ「しょうがないよ! だいいち、カトリーナの足の速さで島を探しに行って見つかると思う!?」

ツ級の艤装から現れるリサーナ「それは無理ね~」ヒョコッ

長門「お、お前たちもメディウムを載せてたのか」


ル級「マア、ネ……私モ、チェルシーヲ乗セテルワ」

チェルシー「こう言っちゃ悪いんだけど、あたしたちと深海棲艦って相性がいいみたいなんだ」ヒョコッ

長門「? どういうことだ」

タ級の艤装から現れるエレノア「私たち、罠になると誰にも気付かれなくなる能力があるでしょう?」スッ

エレノア「あなたたち艦娘に乗ったときはそれが発動しなくて、深海棲艦の子たちに乗ったときはその力が働くみたいなの」

ヲ級の艤装から現れるルミナ「まあ、理屈は今のところわかってないがね。奇襲に便利だから、使わせてもらったよ」

W大佐「……なにもないところから深海棲艦が現れたのは、お前たちの力ということか?」

ルミナ「ええ、そういうことになるわねえ」

初雪「……正直、イサラの雰囲気だけはわかった」

ツ級の艤装から現れるイサラ「!? ど、どういうことッスか!?」ビクッ

初雪「あたしだって、本気を出せばわかるし」フンス

筑摩「相性って大事なのね……」

ル級「ソンナコトヨリモ、提督トハマダ連絡ガデキナイノカ?」

中佐「ああ、まだなんだ……早く……早く気付いてくれ、提督少尉……!」

通信機『……これで使えるのか? いまいちわかんねえな』

中佐「提督少尉!?」

全員「!!」


通信『……なにやら騒がしいな。全員一カ所にいるのか? 話が早いからいいけどよ』

大和「提督! ご無事だったんですね!」

金剛「提督、早く戻って来てくだサーイ!!」

ル級「ソウヨ! アナタガ戻ッテコナクチャ、泊地棲姫ニ手ヲ貸シタ意味ガナイワ!!」

ニコ「深海のみんなに手を貸してもらったのに、戻ってくるのが遅すぎるよ!」

チェルシー「そうだよ! 船長、いったい何してんのさ!!」

通信『ごちゃごちゃうるせえな。一人ずつ喋れよ、一人ずつ』

中佐「……提督。今きみはどこにいる」

通信『中佐か? 今は……丘の上だな。全員連れて、丘の一番上にいる』

中佐「全員?」

通信『ああ、軽巡棲姫、朧に初春、それと如月と電と吹雪だな』

中佐「みんな生きているのか!?」


 * 墓場島の南東部 丘の上 *

提督「……いいや。吹雪と電、如月の3人はもう寝ちまった」

通信『……そうか』

ハツハル「……」カクン…カクン…

ヲボロ「……」フラ…フラ…

提督「もう二人も眠たそうにしてる。寝かしつけてやらなきゃならねえな」

通信『提督! すまねえ! あたしのせいだ!』

提督「……摩耶か?」

通信『ああ。あたしが悪いんだ。あたしが、ちびたちを島に行かせたんだ!』

提督「……」

通信『提督、違います。この霧島が、5人が島に行くことを見逃したんです。私が行かせたんです。摩耶は、何も悪くありません』

通信『何言ってんだよ、霧島さんは黙って……』

提督「はは、お前ららしいな。おい、摩耶、霧島、お前らの責じゃねえよ、安心しろ」

提督「こいつらがここに来てくれなかったら、俺もそっちにいる大将たちも、全員くたばってたかもしれねえんだ」

提督「それに俺がもしそこにいたら、同じことやってたんじゃねえかな。だからお前らのやったことを俺は咎めねえよ」

提督「こいつらがここに来たいって駄々をこねたんだろ? こんなことになるとは予想もできずにな。だったら仕方ねえ」

通信『提督……ですが!』

提督「仕方ねえっつってんだろ。それを言うなら、守るべき部下を守れなかった俺の責だ。これが結論だ、文句あっか」


通信『提督! それよりも早く島から出てきてください! 島全域を溶岩が覆い尽くさんばかりの状況です!』

提督「大和か? それなら知ってる。もう遅え」

通信『でしたら何故、早急に脱出をしなかったんですか!』

提督「だってなあ、この噴火は俺の仕業だぞ」

提督「ニコもわかってると思うが、こいつら5人と妖精がやられたとき、俺はこれ以上なくぶち切れてなあ……」

提督「思っちまったんだよ。全部、ぶっ壊したい、ぶっ潰したい、ってな」

提督「それがこの結果だ。自分の庭も、家も、なにもかも燃えてなくなる。俺の八つ当たりの結末がこれなんだ」

通信『そんなのを八つ当たりとは言いまセーン! 提督の怒りは至極尤もデス!!』

提督「そういうもんか?」

通信『提督、今からそちらに向かう。生きているのなら、何をしてでも貴様を助けに行く』

提督「……やめとけ長門。島に近づくのももう無理だろ?」

提督「海岸にも溶岩が流れてきてる。水蒸気で丘の上なんか見えねえだろ」

通信『だが!』

提督「来るな。これは命令だ」

通信『……』

提督「もし来るようなら馘だ。絶対に来んな」

通信『魔神様。それはぼくたちにも言っているつもり?』

提督「ニコは俺の部下になった記憶があるのか?」

通信『ないよ。でも、ぼくはきみのお姉ちゃんなんだ。お姉ちゃんがきみを心配するのは当然だよ』

提督「……」


通信『ダーリン! ワタシは、ダーリンと一緒にいたいヨ! プリーズカムバック!』

通信『そうよ坊や。あなたが戻って来ないで、誰が私たちをまとめると思うの』

通信『そうですよ! ご主人様のために働くことを、みんな待ち望んでたんですよ!』

通信『メディウムの皆さんたちだけではありません! 私たち艦娘も、司令官と苦楽をともにすることこそが喜びです!!』

通信『提督よ。おぬしがおらねば吾輩たちは生きる意味を失っていた。おぬしは我々にとって単なる司令官ではないのじゃぞ!』

通信『提督! 戻ってきてください!』

通信『ご主人様!!』

通信『司令!』

通信『マスター!!』

通信『司令官!』

通信『魔神様!』

通信『提督!』

提督「……」

通信『私カラモ、オ願イスルワ』

提督「……ル級か」

通信『アナタトハ、モウ一度、顔ヲ見テ話ガシタイノ』


提督「……俺もなあ……お前ら一人一人に声をかけたいところだが、もう時間がないからな」

 ハツハルの右手の艤装<ボロッ…ボロボロボロッ

 ヲボロのヲ級帽子<パキッ…パキパキパキッ

ヲボロ「」フラッ

ハツハル「」クラッ

提督「……」ガシッ

ヲボロ→朧「……」

ハツハル→初春「……」

軽巡棲姫「フ、二人トモ、ドウシタノ!?」

提督「ル級とヲ級の力がなくなったのさ。敵も討てて恨みを晴らせた……成仏した、っていうのが半分。あとは純粋に魔力切れだ」

提督「そもそも朧も初春も駆逐艦だ。空母や戦艦の力を使うには、体が追いつかなかったんだろうよ……無理しやがって」

初春「……ていとく……そこに、おるのかのう」

提督「!」

初春「……おぬしのうでのなかは、あたたかい……よく、眠れそうじゃ……のう、朧よ」

朧「……そう、ね……冷たい、北の海とは……ぜんぜん、ちがう……」

朧「ここ……いいなあ……朧、きらい、じゃない、です……」

初春「……」

朧「……」

提督「……疲れたろ。ゆっくり休んでな」ナデ

軽巡棲姫「……!」

通信『提督! 何があったんだ!?』

提督「静かにしろよ。今、朧と初春が寝付いたんだ……騒がしくすんな」

通信『……』


 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

通信『さてと、名残惜しいが、そろそろお別れだ』

足柄「な、何言ってんのよ! あなた、そんな簡単に死ぬ男じゃないでしょ!?」

エレノア「そうよ、どうせ脱出の方法とか残してるんでしょ!?」

黒潮「あるんやったら、はよ脱出せな!」

チェルシー「そうよキャプテン! どんな手を使ってもいいから、早く!!」

通信『……』

千歳「なんで黙ってるんですか!」

オリヴィア「アミーゴ! 諦めるのは早いよ!」

通信『……もういいんだ。お前らがそう言ってくれるだけで、俺には充分だ』

五十鈴「何を弱気なこと言ってんのよ!」

古鷹「提督らしくありません!!」

通信『そうは言うが、しょうがねえだろ。俺はこの島の鎮守府以外のどこに行けると思ってる?』

通信『余所へ行きゃあ、どうせ余計な真似をしないか監視されて、またそのうちありもしねえ疑いをかけられて騒ぎになるのが目に見えてる』

五月雨「そう言って、司令官も、私を置いていくんですか」

通信『……五月雨か』

五月雨「前の鎮守府の仲間たちも、前の司令官も、私を残して死んでしまったこと……提督は御存知ですよね!」ポロッ

五月雨「提督も、私を……私を置いてどこかに行くんですか!」ポロポロポロ

通信『……悪いな。俺は、俺に好意を寄せてくれた奴を、死なせたいと思わない』

五月雨「……司令官……勝手です! そんなの、あなたの勝手すぎます!!」

五月雨「だったら、私も一緒に死にに行きます! 私もあなたと……」

通信『そういうのは許さねえ、っつったろ。しょうがねえ奴だな』

通信『俺は人間だ。人間は愚かだ。だから、俺は死んでもいい存在なんだ。前からそう言ってるだろうが』


 * 墓場島の南東部 溶岩に囲まれた丘の上 *

通信『司令官!』

提督「なあ五月雨よ。こっちにもお前みたいな奴がいるんだ。困ったことになあ」

軽巡棲姫「ソウヨ……モウ、私タチノ帰リ道ハ、ナイノ……私ハ、提督ト運命ヲトモニスルノヨ……!」ギュウ

提督「……どうせ言っても聞かない奴だ。だったら仕方ないと思ってな……」ナデ

軽巡棲姫「アア……提督……!」

 トンッ

軽巡棲姫「!?」

 イビルシュート< ゴォッ!

軽巡棲姫「ッ!?」ドガッ!!

提督「無理矢理にでも、帰ってもらうことにした」

軽巡棲姫「テイ……ーーーーッ!?」ピューーーーン


 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

那珂「無理矢理って、提督!? それってどういう意味……」

 ヒュウウウ…ドボーーーーン!

黒潮「!? な、なんや、なんか飛んできたで!?」

軽巡棲姫「プハッ!?」ザバァ

筑摩「け、軽巡棲姫……!?」

軽巡棲姫「……テイ、トク……?」

軽巡棲姫「ドウシテ? ドウシテ、私ヲ……」

軽巡棲姫「ドウシテナノォォォオオオオ!!!!」

ル級「チョッ……落チ着イテ!」

通信『軽巡棲姫はそっちに着いたか?』

加古「ついたかじゃないよ! 軽巡棲姫ってばめっちゃ怒り狂ってるじゃんか!!」

武蔵「ここまで女心を理解していないとは……見損なったぞ!!」

軽巡棲姫「提督! テェトクウウウウウ!!! ドウシテナノォォォ!!」

通信『……軽巡棲姫、お前は駄目なんだ。どうもお前は娘みたいに思えてな……幼い姿を見た所為だろうな。お前を道連れにしてはいけない』

通信『それにお前には、お前を受け入れられる奴らがいる。泊地棲姫たちがいる』

通信『お前を任せて安心できる奴がいる。お前は、俺の分まで生きるべきなんだ』


軽巡棲姫「何ヲ……提督コソ、コンナニ大勢ニ求メラレテイルノニ、何故、死ニ急グノヨ……!!」グスッ

軽巡棲姫「アナタコソ、生キルベキ者ナノニ、何故、自ラ命ヲ捨テヨウトスルノヨォォ!!」

通信『俺が面倒ごとを呼んでるからだ。他の人間どもが、俺や俺の周りを利用して争いを仕掛け、結果、俺の身内が傷付くことになる』

通信『それでも俺が生きるべき者だと言えるのか』

軽巡棲姫「言ウ! 私ハ、生キルベキダト、言ウ!!」

大和「……提督。今、軽巡棲姫を、どんな方法を使ったか知りませんが、こちらまで吹き飛ばしましたよね?」

大和「同じことをすれば、提督も助かるのではないのですか!?」

通信『……そりゃあ無理だな。もう魔力も、歩く体力も気力も残ってねえ』

霞「はあ? なによその言い訳! 甘ったれてんじゃないわよ! 這ってでも出てきなさいよこのクズ!!」

大淀「提督。私たちは、あなたの次の指示を待っているんです……はやく、私たちの前で指揮を執ってください!」

通信『はは……無茶を言ってくれるな……』

長門「どうすれば……どうすればあいつを助けられるんだ!?」

潮「め、メディウムのみんなは……」

カトリーナ「こ、ここに居る連中じゃあ……きついよな」

ニコ「仮に魔神様の所へ飛んだとしても、戻って来られないよ……」

ル級「陸ノ上デハ勝手モ違ウシ……」ムムム…


比叡「ど、どうしましょう……どうしましょう金剛お姉様!!」

金剛「……ぐぅぅ……」ギリッ

通信『だから諦めろっつってんだよ。丘に埋めてた墓標代わりの艤装が、もう半分以上溶岩に飲み込まれた。ここもそのうち焼失する』

扶桑「そんな……それじゃ、時雨の艤装も……!」クラッ

山城「ふ、扶桑お姉様!? しっかりしてください!!」

通信『そろそろ熱さで俺の頭もぼんやりしてきた。酸素も足りねえな……そろそろ、休ませてもらうか』

由良「提督さん!?」

中佐「……ふざけるなよ提督少尉! いや、提督!!」

古鷹「ちゅ、中佐さん!?」

中佐「貴様の部下は皆、貴様の無事を望んでいるんだぞ! 深海の友人にも! メディウムたちにも!」

中佐「これほど慕われていることをわかっているにも関わらず、その望みを自ら切るなんて不義理もいいところだ!!」

中佐「貴様が人間かどうかは関係ない! 人でなしだろうと外道だろうとこの際知ったことか!!」

中佐「戻って来い! 提督!! 僕は、君の友人として、戻って来いと言っているんだ!!」

神通「……中佐……」


通信『……あんたみたいな奴ばかりなら、俺もまともな学生生活を過ごせてたのかもな』

通信『悪いが、本当にもう手はないんだ。俺は死ぬ。ただ、その前に言わせてくれ』

通信『俺に付き合ってくれて、ありがとう。楽しかった』

朝潮「……司令官! どうして……どうして!!」ボロボロボロ

金剛「そんな台詞、聞きたくありまセン!」

通信『聞き分けがねえなあ……ははは』

不知火「……司令」

通信『……なんだ?』

不知火「……不知火は、いつか必ず、司令をお迎えに上がります」

通信『……はは……お前らはどいつもこいつも……』

通信『ゴトンッ』

中佐「提督少尉!? なんだ今の音は!!」

金剛「テートクッ!?」

大和「提督!!」

ニコ「魔神様!」


 * 墓場島の南東部 溶岩に囲まれた丘の上 *

地面に落ちた通信機『提督!』

通信機『魔神様ー!』

通信機『司令官!』

提督「……」フラ

提督「なんで、こんなことになっちまったのかねえ」

提督「妖精が見えるってだけで仲間はずれにしやがって……」

提督「俺はただ、普通の人間の生活を送りたかっただけなんだ」

提督「この島で、やっとそれができそうだったのにな……やっぱり人間なんて碌なもんじゃねえや、くそっ」

提督「……お前らも、そう思うだろ?」

朧「」

電「」

初春「」

吹雪「」

如月「」

提督「……ああ、良く寝てるな……はは、この分なら怖い思いをさせずに済むな」


提督「悪かったな、守ってやれなくて……」ゼンインヒキヨセ

「……しれいかん……」

提督「!?」

如月「司令官……?」

提督「き、如月!? お前、生きてたのか!?」

如月「ええ……でも、体が思うように動かないの。ここはどこ? とっても、熱くて……」

提督「島の丘の上さ。海底火山が噴火した。もうすぐここは溶岩で覆われる」

如月「……司令官も、死ぬ気なの……?」

提督「ああ。メディウムたちに指示して、たくさん人間を殺したからな。俺ももう人間社会じゃあ生きられねえ」

提督「お前らも守ってやれなかった。何もかも嫌になっちまった。悪いな、甲斐性なしで」

如月「いいえ……ねえ、司令官。この島も、消えるのね」

提督「ああ。全部、消える」

如月「……私たちも……」

提督「……そうだな」


 メラメラメラメラ…

如月「……ねえ、司令官? ……最後のお願い、聞いて貰えないかしら……」

提督「……? ……ああ。わかった……」スッ

 ゴォォォォ…

如月「……ふふ。司令官のくちびる、暑さで乾いてるわ……」

提督「悪い、な……」

如月「……でも、嬉しい。あなたから求めてくれたのは、初めてだから……」

提督「……」

如月「……司令官?」

提督「……」

如月「……脱水症状で気を失ったのね……」

如月「ふふ、こんな時に仕方のない人……」

如月「私も疲れちゃった……司令官。如月は、最後まで、ご一緒しますね……」

如月「……おやすみ、なさい……」



 ゴォォォォ…

 メラメラメラメラ…

通信機『提督! 提督少尉! 応答しろ! 提督!』

溶岩「」ドドドドドド…

通信機『提督! 提』ジュボワッ

 メラメラメラメラ…

 ゴワァァァ…

 メラメラメラメラ…




 * * *

 * *

 *

今回はここまで。

続きです。


 * 数日後の夜 *

 * X中佐鎮守府 整備ドック *

古鷹「……」ウツムキ

明石「……加古さん、古鷹さんはどうしたんですか?」

加古「あー、昔の上司から朝雲と一緒に戻ってこないか、って打診があったんだよ」

明石「昔の……ああ、あの人ですか。いいとこ見せたくて慢心して古鷹さんを島において行っちゃった人」

加古「えぇ!? そんな奴んとこなら戻らなくていいでしょ。何を悩んでんのかねえ」

陸奥「それがそうでもないみたいよ。今は中佐にまで昇進してるみたいだし、戦術も堅実、人柄も謙虚で評判いいみたい」

加古「えぇえ!? それほんとなの?」

明石「あり得ると思います。一度失敗を味わってますし、秘書艦が香取さんでしたから」

加古「あー……練習しちゃったんだねえ」

龍驤「うちらも一緒にどうや、って誘われたんやけど……陸奥、どう思う?」

陸奥「まあ、話自体は悪くないんじゃない? まあ、あの島より居心地がいいかって言われたら疑問だけど?」

利根「吾輩たちはともかく、古鷹は古巣があるのなら戻っても良いと思うがのう?」

加古「……あ、そういうことか」

利根「なんじゃ?」

加古「あたしたちに気を使ってるんだよ。ほら、あたしたち昔の鎮守府みたいな戻れるような場所がないからさ」

利根「むう、確かに吾輩も……筑摩も五十鈴もそうじゃな。雲龍のように墓場島しか知らない者もおろうし」

龍驤「うちは昔の鎮守府、火の海にしたしなあ……千歳んとこの提督は退役してて、金剛んとこは病死やったかな」

陸奥「長門のところや扶桑のところも、今はどうなってるのかしら?」

大淀「みなさんこちらにおられましたか。話し声を少し抑えてくださいね」

明石「どうしたの?」

大淀「中佐が本営からお戻りになりました」


 * 執務室 *

 コンコン

中佐「ただいま」ガチャ

祥鳳「ただいま戻りました」

ビスマルク「おかえりなさい、中佐、祥鳳秘書艦」

中佐「ビスマルクも提督代行を引き受けてくれてありがとう。なにかあったかい?」

ビスマルク「そうね……墓場島の子たちが少しだけ静かになったくらいかしら。報告、大変だったでしょ?」

中佐「あの島へ行った護衛艦と巡視船、その乗員と調査員全員……船2隻と数百人の被害」

中佐「そして、あの島の鎮守府そのものと提督少尉、その配下の5名の駆逐艦も犠牲になった」

中佐「生き残ったのが、僕と僕の船の乗員。それとW、伯父さんとH大将、そして艦娘たち……あ、あと非公式だけど中将もか」

中佐「クーデターに天災が混ざったようなものだからね。離島の鎮守府で良かったなんて失言も飛んだくらいだ」ムカムカ

ビスマルク「ひどい話ね、完全に他人事じゃない」

中佐「J少将は、中将の息子さん……大佐たちの深海棲艦製の武器開発を支援していた。本営はそれをさらに推進させる気だ」

中佐「今回の事件の原因はJ少将なのに、開発の成果自体は元帥やほかの大将、中将にも支持され始めているのも腹立たしい」

ビスマルク「反対派はいないの?」

中佐「その反対派の中核が伯父さんとH大将、そしてお辞めになった中将だったんだけどね……」


祥鳳「中佐の伯父様……大将は辞職することになりました」

ビスマルク「は? 辞めるの? あの男が? H大将じゃなくて?」

祥鳳「ええ。H大将と大将は、今回の件で降格処分を受けることになったんです」

ビスマルク「あの二人の方が被害者じゃないの? ……まあ、数百人死んでるんだから、処分は仕方ないのかもしれないけど」

祥鳳「H大将は中将への降格処分を受け入れたんですが、大将は納得できないから辞めると言い出したんです」

中佐「本営は本営で、今回の不始末に対する体のいい処分対象ができたと喜んでいるし……がっかりするよ」

中佐「伯父さんの思想に共感してついてきてくれた人たちにも、なんて言えばいいやら。はぁ」

祥鳳「それで、H中将は本営からラバウルに異動だそうです」

中佐「強硬派の一派は、深海棲艦を素材にした武器の製造に注力する気だ。それに苦言を呈するH中将は邪魔なんだろう」

中佐「深海棲艦が人間に恨みを持つからこそ存在しているのなら、そんなものを作るのは逆効果だ」

中佐「ただ、それを諌めようにも対案がない。提督少尉が死んだことで、あの島のル級たちとの交流も望めない」

中佐「仮に提督少尉が生きていれば、深海棲艦を武器の素材にする考え自体、忌避されるものだったろうに……」

中佐「ル級にも、軽巡棲姫にも。そしてあのメディウムって子たちにも、僕たちは嫌われてしまうだろうな……」


祥鳳「話は変わりますけど、提督少尉や大将の鎮守府にいた艦娘はあちこちに異動になるそうです」

祥鳳「大将配下の武蔵、霧島、妙高、羽黒、初風、清霜、墓場島の那智、足柄、最上、三隈、千歳、名取、初霜、弥生……」

祥鳳「それから島に上陸していたK大佐配下の水雷戦隊6名もW大佐鎮守府に異動になります」

祥鳳「J少将配下の衣笠、秋月型、阿賀野型、墓場島の青葉、不知火、黒潮、白露、島風はH中将の鎮守府へ異動になりました」

祥鳳「残りの墓場島の艦娘たちは、X中佐配下……私たちの仲間になります。一時的な措置ということですけど」

ビスマルク「……大丈夫なの? ナーバスになってる艦娘ばかりでしょ」

中佐「カウンセラーを呼んで、丁寧に対応するしかないだろうね」

祥鳳「あの……差し出がましいのですが、中佐もお休みになられたほうが良いと思います」

ビスマルク「そうね、私たちが一番心配なのはあなたよ。少し休んだら?」

中佐「……そう、か。わかった。少し休むよ」

 バタバタバタ

リベッチオ「たいへん! 大変なの!」

祥鳳「どうしたの!?」

プリンツ「墓場島のはっちゃんと由良さんがいなくなりました! おそらく墓場島へ向かったのではないかと!」

リベッチオ「しおいちゃんたちが捜索に出て行ってるけど、まだ見つかってないの!」

中佐「祥鳳、捜索隊を編成してくれ。高速の駆逐艦中心の水雷戦隊を……ローマにも、連絡……!」ヨロッ

ビスマルク「提督!? あなた、顔色が……すごい熱よ!?」

祥鳳「ビスマルクは中佐を医務室へ! プリンツも同行して、中佐を医務室へ連れて行くのを手伝って!」

祥鳳「リベッチオは潜水艦隊に調査範囲の報告をするよう連絡を!」


 * 中佐鎮守府 ロビー *

那珂「なんか慌ただしいけど、なにかあったの?」

山城「由良とはっちゃんが島へ向かったらしいわ。それと、中佐が倒れたんですって」

那珂「え!?」

山城「無理もないわ、これだけ大きな問題に巻き込まれて振り回されれば、誰だって身が持たないわよ」

那珂「そう……そうだよね……」

山城「……ああ……不幸だわ」

那珂「……うん」

山城「……普段なら、そんなことないよって笑ってくれるあなたが肯定するのね?」

那珂「……」

山城「なにかあったんでしょう? 私でよければ、聞くわ」

那珂「……」コクン


 * 少し前 *

那珂「解体願!?」

川内「だってもう3回目だよ、3回目。3回も提督を見捨てることになるなんて、普通じゃないもの!」

川内「1回目は……しょうがない。深海の連中と戦って、補給が切れて提督がおかしくなって……敗走したんだからどうしようもない」

川内「2回目は夜戦もできない腰抜けだったから見限った。若葉も呆れてて一緒に出奔することにしたんだから自己責任」

川内「でもね、今回はよりにもよって本営の人間だよ!? 国を守護するはずの! 本営の軍人が、提督を殺してるんだよ!?」

川内「いったいこれから、誰を信じればいいのよ……」

那珂「……」


神通「……私も、2回目なんです。愛しいと思った人を失ったのは」

那珂「神通ちゃん……!」

神通「提督は……F提督の仇である大佐を、私に討たせてくれました。でも、今回は……」ジワ

川内「討ちたい相手ももういないんだもんね……」ガンッ

神通「ただただ……無念、です……!」

那珂「……」

川内「ねえ。那珂はどうなの?」

那珂「え……?」

川内「那珂だって前の鎮守府で無理させられて一度沈んだんでしょ?」

川内「こんな仕打ちを受けたってのに! これだけ裏切られて、まだ、人のために戦えるの!?」

那珂「……っ」タジッ

神通「姉さん」

川内「ごめん。こんなの、私の感情の押し付けでしかないよね」アタマガリガリ

那珂「……」

川内「頭、冷やしてくるよ。心配しないで、適当に散歩するだけだから」

那珂「……」

神通「私も、出かけてきます」

那珂「神通ちゃん……!」

神通「大丈夫。自分で命を絶つようなことはしませんから……」ニコ

那珂「……」


 *

那珂「……って、ことがあって」

山城「……」

那珂「ほら。やっぱりアイドルだったら、そこでみんなを元気付けられるような一言とか……って、思ったんだけど……」

山城「……そうね。那珂ちゃんの気持ちはわかるわ」

那珂「山城ちゃん……」ウルッ

山城「でも、状況が状況だもの。今は、みんな笑うことができない事態だから……あなたのせいじゃないわ」

那珂「……でも……」

扶桑「あら、山城? ここにいたの?」

山城「! 扶桑お姉様……」

扶桑「那珂ちゃんも一緒なのね……仲が良くていいことだわ……」ニコッ

那珂「う、うん……」

扶桑「うふふ……ていとくも、そう思います?」

那珂「……!」

扶桑「まあ……ていとくったら。しぐれも冷やかさないで、うふふ……それじゃ、山城? 私は、少し外に出ているわね?」

山城「はい……お気を付けて」

扶桑「ほら、しぐれ? あまりはしゃぐと転ぶわよ? ねえ、ていとく? うふふ……」

那珂「……」


山城「……」

那珂「……や、山城ちゃん」

山城「扶桑お姉様が誰彼構わず甘えるようになった経緯は、那珂ちゃんも知ってるわよね」

山城「あの騒動で時雨のかたきを取って、扶桑お姉様は憎しみから解放されたわ……なのに」

山城「拠り所にしていた提督も、島にあった時雨の形見の艤装も燃えてしまって……」

山城「とうとう扶桑お姉様は、提督と時雨を自分の中に作ってしまったの……」

那珂「……」

山城「……私も、どうしたら、いいか、わからない、の、よ……」

那珂「……っ!」ダキッ

山城「那珂、ちゃん……?」

那珂「泣いても……いいんだからね!?」

山城「那珂ちゃん……」

那珂「那珂ちゃんが胸を貸してあげるから……山城ちゃんは泣いてもいいんだからね!?」グスッ

山城「……」

山城「那珂ちゃん……ありがとう」ニコ

那珂「……っ!」ポロポロ…


 * 中庭 *

川内「……! 金剛さん……」

金剛「Oh, 川内、珍しく穏やかな顔をしてマスネー? このところ、ずーっと口をへの字にしてて、テートクみたいだったデース」

川内「……金剛さんこそ、昨日よりはだいぶマシな顔してるね」

金剛「Sure ! 金剛姉妹の長姉として、ずーっと悲劇のヒロインを演じるわけにはいきまセーン!」

金剛「笑う門には福来る、カラ元気も元気のうちと言うネ!」

川内「……そっか。そだね。金剛さんはすごいね、私も長女なのに、那珂に八つ当たりしちゃってさー……」

金剛「那珂チャンは立派デス。励ましてくれる妹がいることに感謝しないといけまセンネー」

川内「……うん」

摩耶「よく言うぜ……金剛さんこそ、励まされないときついんじゃねえの?」

金剛「Oh, 摩耶! 余計な心配は No thank you デスヨ?」

摩耶「ほんっと、よく言うぜ……」

川内「比叡さんたち、まだ立ち直れてないの?」

摩耶「ああ。比叡さんは吹雪たちの遺品抱いて閉じ籠もってる。無理もねえよな、鞄から自分が教えた料理のレシピノートが出てきたんじゃ」

摩耶「それに負い目を感じて霧島さんも塞ぎ込んじまってるし……それを言ったらあたしだって、あいつらが島へ行くのを後押ししたんだぜ?」

摩耶「提督は、最後、ああ言ってくれたけどさ。当の本人が救われた感じしねえしよ……」

金剛「榛名は私とおんなじネ。あの子は、悲しみが後から来てる……だから、今度は私が榛名を助けなきゃいけまセン」

北上「そーだね。大人は、自力で立ち直ってもらわないとねー」

摩耶「北上!」


北上「はー……もう空気が重苦しくて、だるいわー」

川内「ごめんね、駆逐艦の相手させちゃって」

北上「しょーがないよ、乗りかかった船ってやつ?」

金剛「駆逐艦たちの様子は変わりまセンカ?」

北上「うん。あれから朝潮は自暴自棄だし、霞は一言も喋んない。朝雲も山雲も、霰も満潮も弥生も、本営への不信感でギスギスしてるしさぁ」

北上「潮と敷波は、全然目を覚まさない暁を心配して眠れてないし。まともに話が出来るの、初雪と若葉くらいだよ」

若葉「……全然平気と言うわけでもない。初雪もだいぶ無理をしている」

北上「んあー? 若葉? あんた、どこ行ってたの」

若葉「初霜と話をしてきた。初霜はW大佐の鎮守府へ行くことになったからな」

金剛「若葉は向こうへは行かないんデスカ?」

若葉「辞退させてもらった。できれば、あの島に近いこの鎮守府で……いつか、あの島への上陸を試みたい」

若葉「五月雨にも同じ話をした。やっと彼女も、前を向いてくれそうだ」

摩耶「そっか。そん時ゃ、あたしも同行させてもらいたいもんだな」

若葉「ああ。行こう。だから私たちは、ここへ戻ってきたんだ。焦ることはない」

川内「いいこと言うね、若葉も」

北上「参ったねえ……一番大人なのは若葉じゃないの? これ」

金剛「いつもの悪い癖が出なければ、若葉はとっても頼りになりマース!」

若葉「……そんなに悪い癖だろうか」ムウ…


 * 鎮守府埠頭 *

那智「ここにいたのか」

隼鷹「よ、お疲れさん。あれ!? 那智、あんたそれ……」

那智「今夜は特別だ。隼鷹、提督のために、一杯付き合え」

隼鷹「……由良たちが行方をくらましてんだよ。そんな悠長でいいのかい?」

那智「どうせ私たちにお呼びはかからんさ。中佐のことだ、一緒に逃げだしたり故意に見逃したりしないかと考えているだろう」

隼鷹「ありえるねえ……志願しても出してもらえなさそうだわ。仕方ない、付き合うかあ」

那智「しょっちゅう飲んでいる貴様が、言うに事欠いて仕方ないだと? 言ってくれるな」

隼鷹「あはは、そんなこと言われてもここ2、3日は仕方ないよ。あたしだって飲む気になれない日はあるんだから」

那智「そうか……すまないな。千歳にも断られて、危うく一人酒になるところだった」

隼鷹「あー、千歳は悪いことがあった日は飲まないからね。酒がまずくなるって言うから」

那智「……寂しいものだな。飲みたいときにこそ飲む相手がいないとは」キュポンッ

隼鷹「足柄はどうしたのさ」

那智「妙高姉さんと羽黒の所に行っている。私は留守番だ」トクトクトク

隼鷹「ふーん……」


那智「お前たちと酒を酌み交わすのは今日くらいしかないと思っていたんだが」スッ

隼鷹「ああ、妙高型はみんなW大佐んところに行くんだっけか」ス

那智「そうだ。W大佐の鎮守府は鹿屋にあるから、なかなかこちらには来ることができん」

隼鷹「ふーん……悪いけど、あたしもショートランドに行かなきゃならないんでね。次に来ても一緒に飲めるかどうかわかんないよ」

那智「ショートランド……何故だ?」

隼鷹「婚約者が待ってるんだよ、ショートランドにさ」

那智「なんだと……!?」

隼鷹「ケッコンカッコカリの婚約者だけどね。ワケあってぶん殴っちゃったところをお偉いさんに見られてねぇ……」

隼鷹「頭冷やせって話になって、あの島の鎮守府に一時的に異動してたんだよ。で、もうすぐ戻る約束なんだ」

那智「……そうか。おめでたい話じゃないか」

隼鷹「まあね……ただ、今はそんな気分になれないねえ。どうせなら笑って出ていきたかったし」

那智「……そう、だな」

隼鷹「……提督、なんでかんで面倒見良かったよねえ」

那智「ああ」

隼鷹「あれで酒が飲めりゃあ、もっといい男になってたろうにさ」

那智「ああ……そうかもしれんな」


隼鷹「……」

那智「……」

隼鷹「飲もっか」

那智「……ああ。そうだな」

那智「……献杯」クッ

隼鷹「献杯」クイッ







ラジオ『……』ザー ザザーー

ラジオ『気温も氷点下にまで下がる異常気象に見舞われています……』

ラジオ『また、この海域において観測史上初めて降雪が確認され……』

ラジオ『同時に濃霧警報、雷警報が発令され……』

ラジオ『航海には適さない……』

ラジオ『……』ザー ザー…



今回はここまで。

このスレの中で終わらせられるかな……。

続きです。


 * 1か月後 X中佐鎮守府 *

不知火「失礼いたします」チャッ

中佐「ようこそ不知火、久しぶりだね。変わりないようで安心したよ」

不知火「はっ。H中将殿に変わらずよくしていただいております」ビシッ

H中将「おう、邪魔するぞ」

大井(H中将秘書艦)「失礼します」

中佐「H中将! H中将もお変わりないようで何よりです。ラバウルでの生活は慣れましたか」

H中将「いや、まだまだだな。勝手が違って、なかなかうまくいかん」

大井「周囲の提督が非協力的なのが悪いんです!」

大井「だいたい、H提督も降格処分だの本営から左遷されただの好き勝手言われてても反論しないのが良くないんですよ!?」

H中将「言うな大井。その辺もひっくるめて俺の求心力のなさが悪い」

大井「H提督……」

中佐「と、ところで、ついに墓場島の調査ができるんですね?」

H中将「ああ。大井、説明してくれ」

大井「はい。島の火山活動も沈静化し、上陸も可能であるという判断から、島の調査を実施することになりました」

大井「島の調査には本営の調査チームが入ります。H中将とX中佐はその護衛を担当致します」

大井「墓場島近海の衛星写真で、深海棲艦の姿を多数確認しています。かつての親少尉派の深海棲艦も島を調べたいのかもしれません」

大井「私たちの任務は、調査チームの護衛、及び島近辺の深海棲艦の邀撃になります」


H中将「ただ、調べると言っても、な。島の衛星写真を見てくれ」ペラリ

中佐「……なにも、なくなってしまったんですね」

H中将「ああ。島の大きさは約3倍になったが、もともとあった島の草木も建物も、全部溶岩に飲み込まれて焼けてしまった」

H中将「提督少尉の最後にいた場所……丘の上は多分この辺だと思うが、ここも溶岩で覆われている」

H中将「せめて骨を拾ってやりたかったが……これでは難しいだろうな」

中佐「そう……ですね」

大井「調査は3日後に開始、約1か月を予定しています」

大井「それまで、H中将とその配下の艦娘10名、中佐の鎮守府でお世話になりますので、よろしくお願い致します」ペコリ

中佐「ええ、その話は聞きました。あとで部屋を祥鳳に案内させます」

H中将「……それと、ここへ来る途中、嫌な知らせが入った」

中佐「……なにがあったんです?」

H中将「提督少尉配下の艦娘、行方不明だった由良と伊8が見つかった。半ば深海棲艦化した姿でな」

中佐「!」

H中将「その2人はいま本営の研究所に輸送されている途中だ」

H中将「到着し次第、深海化した原因の調査するとともに、解体処分することも決まった。おそらく、明日か明後日にはそうなる」

中佐「……治療は考えないのですか」

H中将「ああ。それでだ、もと墓場島の艦娘を6人、解体後の検分役として、すぐに本営へ向かわせろとの言ってきた」

中佐「解体した仲間の姿を見せるというのですか……!?」

H中将「そうだ。最古参でもある不知火にも行ってもらう。あと5人、できるだけ理性的な……冷静な奴を選んでくれ」

中佐「……私たちは立ち会えないのですか?」

H中将「俺たちは島に専念しろ、とのことだ……!」

中佐「……」


 * 会議室 *

山城「それで呼び出されたのが私たちってこと?」

祥鳳「はい。艦種を分けるように指示されたため、空母、戦艦、重巡、軽巡、駆逐2で、リストアップさせていただきました」

山城「どうして私が……長門の方が適任じゃないの?」

中佐「長門からの推薦だよ。長門や五十鈴には、島の護衛をお願いすることになったんでね」

中佐「扶桑のフォローは金剛やビスマルクにしてもらう。心配だろうが、任されてほしい」

那珂「山城ちゃんが一緒なら那珂ちゃんもオッケーだよ!」

鳥海「重巡枠が私ですか……」

中佐「摩耶は本営に不満があると言って辞退したんだ。筑摩も不安から利根から離れようとしなくてね」

中佐「そうでなくとも、この鎮守府の重巡で適任なのは鳥海だろう」

祥鳳「駆逐艦は不知火さんと、朝潮さんからの立候補がありましたので、その二人に決定です」

朝潮「よろしくお願いします!」ビシッ

不知火「空母は雲龍さんになるのですか?」

中佐「赤城にお願いしようと思っている。提督少尉の鎮守府とは長い付き合いだ。最近は暇を持て余しているようでね……」

鳥海「暇、ですか」

中佐「……彼女も朝潮と同じだよ。提督少尉のことが原因で仕事が手につかないんだ」

中佐「提督少尉のことを人並み以上に慕っていた由良と伊8のことを気にかけていたからね」

中佐「できれば、生きている彼女たちと話をしたかったけど……」

朝潮「今からでも解体の中止をお願いできないんでしょうか」

祥鳳「……あと1時間で研究施設に到着予定です。すぐにでも解体を始められる準備が整っていると、連絡がありました」

朝潮「そう、ですか……!」

中佐「悲しんでいる暇はない。何故彼女たちがそうなったのか、君たちにはその目で確かめてきてほしい」

不知火「承知しました」ビシッ


 * 数時間後 本営 研究施設 *

(病院の手術室のような部屋)

(衰弱しきった状態で手術台の上に寝かされる、半ば深海棲艦化した由良の周囲を、白衣の技術者と研究者たちが取り囲む)

(その部屋を上から一望できる部屋から、軍の上役と関係者たちが興味深そうに眺めている)

「……深海化した艦娘とは、珍しいものを入手できたな」

「今までは鹵獲した深海棲艦から兵器を製作していたが、いかんせん非効率的だった」

「もし艦娘が深海化するメカニズムが判明すれば、艦娘を深海棲艦化させて兵器を量産できるというわけか」

「深海棲艦がどこから来ているのかの謎も解き明かせるだろう。このサンプルは貴重だぞ」

「おい、この艦娘はどこの鎮守府のだ?」

「少し前に火山活動で壊滅した島があったろう。墓場島とか呼ばれていた、あの島だ」

「深海と繋がりがあった男の鎮守府か」

「あの一件以来、あの島近海の深海棲艦どもは敵愾心をむき出しにしてきている。面倒でかなわん」

「上司の不始末だ。部下に責任を取ってもらわなければな?」

「……始まるようだぞ」

『お待たせしました。準備できましたので、これから解体を始めま』


 電気<バツン!!


「「「!?」」」ガタガタッ


「何があった!」

「停電だと!? 発電機があるだろう! すぐに切り替えろ、なにをしているか!」

「おい、だれか明かりを」

 ガシャァァァン!!

「何の音だ!」

 ズシンッ

 ドガァン

 ガラガラガラ ガシャンッ

「おい! 誰か明かりは」

 ズガシャーン!

「ぎゃあああ!?」

「お、おい! なんだ今の悲鳴は!」

 ガインッ

 ゴロゴロゴロ…

 グシャグシャグシャッ

「ぎゃっ」

「ぐわああああ!」

「なんだ!? なにがおこ……ぐえっ」

 ギュィィィィィ

「た、たすけ……あぎゃあああ!!」

 ガララララ…グシャッ


 * 2日後、X中将鎮守府 *

H中将「本営の研究施設が乗っ取られた!?」

大井「はい。しかも元帥が人質に取られたとの情報が、機密情報として入っています」

中佐「研究施設というと、この前、由良と伊8が運び込まれたという、不知火たちが向かっている施設かい?」

大井「そうです。その二人を収容した翌日、その施設から深海棲艦に関する重要な情報を得られたと元帥に連絡が入ったそうです」

大井「その後、元帥との連絡が途絶えました。元帥の個人の通信機は発信機にもなっていて、その発信源が件の施設です」

H中将「由良と伊8が、なにかしたというのか?」

大井「二人に関する情報はありませんが……何とも言えないですね。そもそも運び込まれた時点で瀕死の状態だったと記録されています」

中佐「……新しく着任した本営の大将たちはどうしたんだ」

大井「拠点を京都に移して対策会議を開くそうです」

H中将「京都だと!? 施設は横浜だろう!? 何をしているんだ奴らは!!」

 RRRR... RRRR...

H中将「む、俺か? ……なんだこの番号は……もしもし?」

H中将「……! ええ、私がH中将です。はい……」

H中将「なんと……いえ、願ってもないことです」

中佐「?」

大井「?」


 * 太平洋上 日本近海 *

不知火「陸軍が元帥救出の協力を申し出てきた、ですか?」

赤城「ええ。私たちが施設へ向かっていることを本営に聞いて、H中将へ陸軍中将から直接連絡があったそうです」

赤城「H中将は激怒しておられましたよ。陸軍に後れを取る本営の臆病さに」

朝潮「私たちの任務は『陸軍の特殊部隊の人たちと合流し、研究施設に潜入して元帥を救出する』に変更されたということですね」

山城「……はぁ。たまたまとはいえ、なんで私たちがこんなことを。海軍の恥さらしじゃないの……不幸だわ」

那珂「いったい何があったんだろうねー……」

山城「由良とはっちゃんを解体しようとした罰が当たったんじゃないの?」

不知火「……今の話からすると、由良さんたちが生きている可能性もあるわけですね?」

朝潮「できれば、どうして今までどうしていたのか、詳しく話を聞いてみたいですね……!」

赤城「最悪の事態も考えられます。皆さん、気を引き締めてください」

鳥海「あの……」

赤城「? どうしました?」

鳥海「なんだか天気がおかしいと思いませんか? この季節にしては気温が低すぎます」

山城「……やっぱりそう思う? 春だというのに、いくらなんでも寒すぎよね」

鳥海「それに、この海域でここまで深い霧は滅多に発生しません」

山城「これじゃ、特殊部隊との合流も一苦労じゃない……ああ、不幸だわ」


 * 数分後 *

 ビュゴォォォォオオ

山城「なんなのよこの天気は。この季節に雪とか、不幸ってレベルじゃないわ……」ガチガチ

鳥海「こ、この時期、関東地方に降雪があった記録は……」プルプル

那珂「ないよね!? ぜっっっったい、ないよね!?」ガタガタ

不知火「! あの光は雷でしょうか」

赤城「……この天候では艦載機も飛ばせませんね」

朝潮「港までもうすぐです! 急ぎましょう!」

  ザザァァ…


今回はここまで。

続きです。


 * X中佐鎮守府 *

中佐「どうしてまた陸軍から依頼が来たんですか?」

H中将「今、東京湾沿岸が異常気象に見舞われている。昨日から濃霧や雷がやまなくなって、今朝には雪まで降ってきたそうだ」

中佐「雪!? 6月にですか!?」

H中将「ああ。その異常気象が発生している地域で、住人が行方不明になる事件が多発しているらしい」

中佐「もしかして……横浜にある研究施設の近辺ですか?」

H中将「そういうことだ。元帥にも連絡が取れない、地域の住人も消えている。これは明らかにおかしい……」

H中将「陸軍もこの状況は見過ごせないと、海軍に協力を要請してきた。平たく言えば、海軍も関係あるから何とかしろ、とな」

H中将「誰が責任を取るかの話はあとでいい。とにかく今は国民の命のほうが大事だ、この件は陸も海も関係ない」

H中将「だが本営はここでも陸軍の言いなりにはなりたくなかったらしい。俺に『丁重に断れ』とキラーパスを出してきやがった」

中佐「断れ!? 何を馬鹿なことを……!」

H中将「陸軍にとっては海軍への貸しにもなるし、事態によっては糾弾できるネタにもなる。それで上は陸軍の介入を嫌がった」

H中将「今の俺の拠点はラバウルだし、主力はこちらに連れてきている。兵を動かせないと思って俺に無茶振りしたんだろうな」

H中将「だが、陸軍に後れを取ることのほうが、海軍にとって不名誉であることを奴らは理解していない」

H中将「だから俺は、今まさに研究施設へ向かっている不知火たちに、陸軍への協力を指示したんだ」

H中将「ここで俺が結果を出せば、せっかく追い出した俺を本営に戻さねばならん。今頃、連中は焦って出撃準備をしているはずだ」

中佐「……なんて無様な……」


H中将「こうでもしないと、立派な椅子が大事な連中は動かんのだよ。いまや綺麗ごとだけで働ける人間は皆無だからな」

中佐「……H中将はそんなことはないと思いますが」

H中将「いいや、俺もそんな器じゃないさ。気に入らん奴を蹴落としたり、保身のために嘘をつくことくらいはしてきている」

H中将「X中佐は納得できないかもしれんが、それならば提督少尉も君にすべてを正直に話していたか? 彼には彼の思惑があったはずだ」

H中将「君は聊か正直が過ぎて危なっかしい。少しは嘘をつくことを覚えたほうがいい、でなくば他人の嘘を見抜けないだろう」

H中将「嫌な話ではあるが、朱に交わって欲しくないと思う反面、連中の面の皮の厚さも半分くらいは欲しいとも思っている」

中佐「……」

H中将「なんにせよ、俺も今の海軍上層部とは水が合わん。この一件が終われば、距離を置かせてもらうさ」

大井「H提督、本営の調査隊が到着しました」

H中将「よし、この話は終わりだ。中佐、今は島の調査に力を注ぐぞ」

中佐「……わかり、ました」



 * 施設から1km離れた特殊部隊のキャンプ *

特殊部隊「こちらが建物の見取り図です」バサッ

朝潮「意外と海に近いんですね。山奥にあるイメージがありましたが」

山城「どうせろくでもない建物よ。陸軍にまで迷惑かけて、ほんとにもう……さっさと元帥を見つけて任務を終わらせましょ」

特殊部隊「少し前まで雪と濃霧で視界が最悪でしたが、小康状態の今が突入の好機です」

特殊部隊「我々は、非常口などから侵入し、元帥の救出を優先します。あなた方の行動も作戦成功の鍵になります」

赤城「いいですか、私たちは囮です。真正面から堂々と、できるだけ敵の目を引き付ける動きを心がけましょう」

那珂「うん、まかせてー!!」

特殊部隊「どなたか、このボールペン型の集音マイクを身に着けてください。我々にはあなた方の会話も重要な情報になりますので」

鳥海「それなら、不知火さんが胸ポケットに差しておくのが一番自然でしょう」

不知火「……はい」コク

特殊部隊「では、作戦を開始します。ご武運を」


 * 施設 正面入り口 *

鳥海「……何の問題もなく、着いてしまいましたね……」

那珂「電探に反応なーし! 人の気配も(特殊部隊の人たち以外)全然感じないねー」

赤城「この辺だけ雪が降っていないんですね。局地的な大雪にしてはやはり不自然です」

山城「お喋りはそのくらいにしましょ。ゲートも開いてるわね……あの監視カメラ、動いているのかしら」

不知火「建物の入り口は……あそこですね」

朝潮「私が開けます!」ダッ

 扉< ギィッ

朝潮「扉がひとりでに開いた……!?」ジャキッ

??「」スッ

赤城「全員構えて!」ザッ

 ギィィッ


エプロンドレスの女性「お疲れ様です! みなさん!」ニコー


全員「「……」」

山城「……はぁ?」

那珂「……め、メイドさん?」パチクリ


鳥海「あ、あの……」

エプロンドレスの女性「お待ちしてたんですよ! 山城さん、鳥海さん、那珂ちゃん!」

エプロンドレスの女性「朝潮ちゃん、不知火ちゃん、赤城さん! さあ、中へどうぞ!」ニコニコー

朝潮「え? 私たちの名前をどうして……」

山城「……あ、あなた……もしかして」

??「……」スッ

不知火「!?」ビクッ

 バキッ!

赤城「!!」

ブラックスーツ+スラックスの女性「……」パラパラ…ッ

不知火(気配も感じさせずに、胸ポケットの集音マイクを……)

赤城(不知火さんから奪って、破壊した……!?)

スーツの女性「後ろからすみません。これ、物騒だったんで壊しました」ニコッ

不知火「……!!」


エプロンドレスの女性「さ、早く! 寒くなりますから、入ってください!」ニコー

朝潮「……」

鳥海「……」

那珂「……」

山城「……」

赤城「……そうですね。お招きにあずかりましょう」

不知火「……はい」

不知火(……あの二人の女性。見覚えがあります……みなさんの反応を見る限り、不知火と同じ感想を持っているのでは)

不知火(メイド服の女性の純朴そうな顔立ちと言い、スーツの女性の頬の絆創膏といい……)

不知火(ですが……どう見ても鳥海さんくらいの年齢……そもそも、あの島からどうやって……?)


(6人を建物に招き入れた後、しばらく外を見つめていたスーツの女性がドアを閉める)

スーツの女性「……」ス

エプロンドレスの女性「!」

スーツの女性「……」コク

エプロンドレスの女性「……」ニヤッ


 * 外で待機中の特殊部隊 *

「……1班、艦娘の侵入を確認しました」

『本部了解。1班、2班、3班は90秒後に突入開始、4班は引き続き監視を継続せよ。どうぞ』

「了解」

「……」

『本部より緊急連絡。艦娘に預けた集音マイクは侵入前に破壊された模様。警戒されたし、どうぞ』

「……了解」

「早いですね」

「艦娘が敵と通じているか、艦娘が相手にならない相手か」

「どちらにしても厄介だな」

「突入まで60秒」

 ビュゴォォォォ

「……!」

(急に気温が……!?)

(なんだこの天気は……!)

 ビュゴォォォォォォォォォォ

(1m先も見えないとは……!)

(くそ、手がかじかむ……)

(我慢しろ。あと30秒、突入準備!)サッ

「「!」」ザッ


 * 特殊部隊キャンプ *

「……艦娘に預けたマイクが壊されました」

「艦娘は無事なのか?」

「わかりません」

「……」

 ザー

『こちら1班、突入します、どうぞ』

『同じく2班、突入開始、どうぞ』

『3班も突入開始。どうぞ』

「本部了解」

『……』

「……4班、応答願う、どうぞ」

 ザザー

『4班……雪で視界1m。建物の監視が困難です、望遠カメラも使用不能』

『赤外線カメラも……使用……ザザ……ガシャ』

「4班。応答せよ、4班!」

 ザー…

『……』

「……4班と通信不能」

「外に待機させている5班に応援を頼む。状況確認し、4班を援護せよ」

「了解しました」


「……これは!? そ、外を見てください……!」

「なんだ? 急に霧が濃くなってきたな」

「周囲の警戒に当たります」

 ドガァン

「!?」

「何事だ!!」

「て、敵襲! 敵襲!!」

 ドガァン ドガァン

「撤退を!! はや」

 ドガァァン

 メラメラメラメラ…

 ゴォォォォ…

 ジャリッ

「作戦成功、ネ……フフフ……!」


 * 施設の外 *

 ビュォォォオオオオ…

遠くを眺める人影1「……あれは……ミス不知火でしたか」

 ドガァン

人影1「! こちらも来ましたか」

人影2「お迎えさ、行ぐがあ」

人影1「ええ」

凍死した特殊部隊員たち「」

 ビュォォォオオオオ…

今回はここまで。

ごめん、漣は出てないんだ……。

続きです。


 * 施設内 広間 *

エプロンドレスの女性「さ、こちらへどうぞ!」チャッ

赤城「作戦会議室、でしょうか?」

朝潮「……正面にどなたかいらっしゃいます!」

山城「あれは、元帥!?」

車いすに乗せられた元帥「……」

不知火「ご無事だったんですか……!?」

??「無事といえば、無事……かな?」

艦娘たち「「!!」」

鳥海「そ、その声は……ニコさん!!」

ニコ「やあ。久しぶりだね、みんな。あの島以来かな」ニコリ

那珂「うわーい、ひっさしぶりーーー!!」ピョンピョン

ニコ「君は……ナカちゃん、だったかな、元気そうだね。また会えて嬉しいよ」

那珂「それはいいんだけど……ニコちゃんはどうしてこんなところに!?」

山城「……目的はなに? どうして元帥がここにいて、あなたもここにいるの?」

ニコ「目的? 目的は変わってないよ。僕たちが望むのは、魔神様の復活と、僕たちの平穏だよ」

不知火「え……??」

ニコ「さ、奥の部屋に行こう。みんなが会いたいだろう人に、会わせてあげる」

朝潮「まさか……!?」


 * 廊下 *

那珂「ね、ねえ、ところでさ。元帥さん、全然こっちに見向きもしなかったんだけど、何したの? こ、殺し……ちゃったの?」

ニコ「殺してはいないよ? ただ、魂を奪ったから、抜け殻みたいなものかな? まあ、いざという時のために取っておいてる感じだね」

鳥海「魂を……!?」ゾッ

山城「……あなた以外のメディウムの姿が見えないんだけど」

ニコ「みんなお出迎えで忙しいんだ。わかるでしょ?」ニッ

赤城「これは……観念したほうが良さそうですね」

ニコ「はは、物騒な物言いだね。警戒しないで、ぼくたちは今も君たちと一緒に平穏に過ごしたいと思ってるよ?」


ニコ「吹雪も朧も、そうでしょ?」


全員「「!!」」

エプロンドレスの女性「はいっ!」ニコー

スーツの女性「ふふ……」ニコッ

不知火「……やはり……そうでしたか……!」

山城「道理で面影があると思ったわ……!」

朝潮「生きて、いたんですね……!!」ジワッ


着物姿の女性「こぉれ、ニコ殿? わらわたちを差し置いて種明かしとは、感心せんのう?」

エプロンドレスの女性2「みんな揃ってから紹介するって言ったのです!」

スーツ+タイトスカートの女性「うふふ、嬉しくて我慢できなかったのよね?」

鳥海「……あなたたちも……!」

朝潮「……あ、ああああ……!!」ポロポロッ

赤城「もしや、初春さん、電さん、如月さん……ですか!?」

着物姿の女性→初春「うむ。わらわが初春じゃ!」

エプロンドレスの女性2→電「電なのです!」

スーツ+タイトスカートの女性→如月「如月よ。ふふっ」

スーツ+スラックスの女性→朧「アタシが朧」

エプロンドレスの女性→吹雪「吹雪です!」ケイレイビシッ

朝潮「……う、うわああああ! みんな、生きて……生きてたんですね!!」ブワッ

山城「ほ、本物なの!? あれから半年も経ってないのに、成長しすぎよ!?」

那珂「うん……みんな鳥海ちゃんくらい背丈も高いし……おっぱいも大きいし?」ジトー

鳥海「な、那珂ちゃんどこ見てるんですか!?」カァァッ


山城「初春や如月はとにかく、吹雪や電までこんなに成長してるなんて思いもしなかったわ……特に胸が」

吹雪「これで潮ちゃんにも負けませんよ!」ピョンピョン ポヨンポヨン

電「毎日牛乳を飲んで頑張ってたからなのです!」フンス ポヨン

不知火「……」ペタペタ

赤城(不知火さん目が怖い!?)ビクッ

那珂「朧ちゃんもサラシ巻いてるでしょ。ダメだよ、ちゃんとブラジャーつけないと、形が崩れちゃうよ!」

朧「あ、あはは……よくわかりますね」

如月「もう、だから私が選んであげるって言ってるじゃない」

初春「おぬしのチョイスはいささか破廉恥なデザインが多すぎてのう……」

山城「胸が大きいと可愛いデザインの下着が少ないのは確かね。肩もこるし、ろくなことないわ」

ニコ「そろそろ黙ろうか」ハイライトオフ

全員「「「アッハイ」」」

不知火「……ニコさん。この5人が生きていたということは、司令は……」

朝潮「そうです! 司令官は!!」

5人「……」

ニコ「うん。この先だよ。多分、驚くと思う」




 タタタッ

特殊部隊「……」

特殊部隊「……」サッ

特殊部隊「こちら1班、ターゲットを発見。追跡を開始する、どうぞ」

通信『こちら2班、海軍元帥の身柄を確保』ザザッ

通信『眠らされているようで意識ははっきりしていないが、命の別状はない模様。どうぞ』ザザッ

特殊部隊「1班了解」

特殊部隊「……」

通信『3班応答せよ』ザザッ

特殊部隊「……」

通信『3班!』ザザッ

特殊部隊「……」

通信『2班、これより3班にかわって退路の確保に向かう、どうぞ』ザザッ

特殊部隊「1班了解。これよりターゲットの身柄確保に向かう。どうぞ」

通信『2班了解』ザザッ

特殊部隊「……」

特殊部隊「……」サッ

特殊部隊「……」

 タタタッ…


 * 研究施設、最奥部の部屋の扉の前 *

 ゴゥンゴゥンゴゥン…

不知火「物々しい扉ですね」

ニコ「……ここだよ」

朝潮「ここに、司令官がいるんですね……!」

ニコ「うん」

初春「……皆の者、心の準備をしておくが良いぞ。ショックを受けるかもしれん」

那珂「え?」

如月「あの姿はショックを受けないわけがないと思うわ?」

朧「みんな、覚悟しておいてね」

鳥海「そ……そんなに、ひどい状態なんですか?」

朝潮「どんな姿であろうと、司令官にお会いできるのでしたら朝潮は大丈夫です!」

山城「そうよ、化け物なんて今まで散々見てきたじゃない。怖気づくことなんてないわ、入りましょ」

ニコ「じゃあ、開けるよ」ピッ

 扉<ゴゴゴゴ…

艦娘全員「……」

鳥海「これは……」


(扉の正面、部屋の一番奥に鎮座する、ひときわ大きな円柱型のカプセルに緑色の液体が満たされている)

(その両隣には、同じ形の、中央のものより一回り小さな円柱型のカプセルがずらりと並んでいる)

ニコ「この建物にある設備を利用して改装した魔力槽だよ」

ニコ「人間はこの設備を利用して、艦娘や深海棲艦の研究、実験をしていたんだ」

赤城「マリョクソウ? ……以前見せていただいたときは、西洋風のお風呂のかたちではありませんでしたか?」

如月「全身すっぽり入るこのタイプは、大怪我をした時に使うのよ。ほら、あの左端の2本を見て」

朝潮「あれは由良さん!?」

那珂「はっちゃんも!」

由良in魔力槽「」コポッ

伊8in魔力槽「」コポポッ

山城「意識がないみたいだけど……あの緑色の液体、溺れたりしないの?」

ニコ「大丈夫だよ。だいぶ無理をさせてしまったからね、今は眠ってるだけ。もうすぐ目を覚ますと思うけど……」

ニコ「由良とはっちゃんはぼくたちを追ってきてくれてね。向こうの世界にまで一緒に来てくれたんだ、死なせたりしないよ」

朝潮「それで二人とも見つからなかったんですか……」

不知火「半ば深海棲艦化していると聞きましたが」

電「艤装の形が少し変わってしまいましたが、記憶は変わってないのです。安心してください」ニコ


赤城「真ん中の大きなものにも緑色の液体が満たされていますが……」

ニコ「うん。あの中に、魔神様が入ってるんだ」

不知火「あの中に……!?」

鳥海「え? ……あ、あれが……ですか!?」

赤城「そんな……!」

朝潮「し、司令官……司令官っ……なんてことですか……!!」

那珂「……そんな、そんなのってないよ!!」

山城「……い……」ガタガタガタ

赤城「山城さん……!?」

山城「いや……いやああああ!!」ヘタッ


(肘から先と下半身を失った姿の提督が、目を閉じたまま魔力槽の液体の中に浮かんでいる)


那珂「や、山城ちゃん!? どうしたの、しっかりして!」

山城「あ、ああああ……ああああああああ!」ガクガクガク

鳥海「山城さんがこんなに取り乱すなんて、何があったんですか!?」

山城「し……時雨……しぐれと……おなじ……!!」ブルブルブル

鳥海「時雨さん……?」

不知火「……これはおそらく、二人を追いかけて島に流れ着いた時雨さんのことを思い出したのではないかと」

不知火「あのとき、時雨さんは……下半身を失っていましたから」

鳥海「トラウマを掘り返されたわけですか……」


朝潮「ニコさん! 司令官はこんな姿でも生きておられるのですか!?」

ニコ「うん。生きてるよ。少しずつだけど、体は再生してる」

那珂「山城ちゃん! 提督、生きてるって! だから安心して!」ギュ

山城「ほん……とう? 本当なの……?」カタカタカタ

不知火「……ニコさん、司令の身に何があったんですか。どうやってあの島から助かったんですか」

ニコ「……魔神様とこの5人が溶岩に飲み込まれる寸前、ベリアナがブラックホールの空間を捻じ曲げて、島の外と丘の上を繋げたんだ」

ニコ「ただ、ベリアナは吸い込んだ相手を近くに吐き出すことはできるけど、出口を遠くにするのは難しくて……」

ニコ「しかも魔力も枯渇状態。その結果……無理矢理捻じ曲げた亜空間を通っているうちに魔神様とみんなの体が融合してしまったんだ」

赤城「融合……!?」

ニコ「如月の腕が魔神様のおなかを貫通していたり、朧の背中に魔神様の右腕が埋まっていたり……魔神様の体に5人がくっついてたんだよ」

ニコ「なんでこんなことが起きたかもわからないし、どうしたらいいかもわからなくて。あのときは本当に途方に暮れたよ」

ニコ「とにかく急いで一番大きい魔力槽にひとかたまりになった6人を入れて、どうにかならないか話し合おうとしたとき……」

ニコ「魔神様の目が開いて、魔力槽の液体がごぼごぼ泡を立てて、急に濁りだして……」

ニコ「泡が晴れて出てきたのが、こうして成長した5人と、頭と胸だけになった魔神様だったんだ」

如月「声が聞こえたの。司令官がね、私たちを助けたい、って。助かるのはお前たちだけでいい、って」

ニコ「多分、自分の生命力と肉体を分け与えて、彼女たちを救ったんだろうね」

ニコ「それから5人を魔力槽から引き上げて、個別に魔力槽に入れてあげて。それでみんな目を覚ましたんだ」

初春「この男はいつもそうじゃ。自分を犠牲にしたがる男じゃった……」

ニコ「魔神様は……それからずっと魔力槽に入ったまま、死んだように眠り続けてる」


鳥海「音や光に対して、なにか反応を返したりはしないんですか……?」

ニコ「僕は見たことないね。みんなはどう?」

朧「アタシも、目を開けたところは見たことがない、かな」

吹雪「じっと見てると、たまに瞼がぴくぴく動いてるときはあったけど……」

如月「みんな、そのくらいよね」

朝潮「……司令官……」ウルッ

ニコ「でも大丈夫だよ。魔神様は少しずつ、その肉体を復活させてきてるんだ。いつか必ず目を覚ましてくれるよ」

ニコ「そこで、みんなにお願いがあるんだ」


ニコ「ぼくたちと一緒に、人間狩りをしてほしい」


「「……!」」

ニコ「ぼくたちが力を発揮するにも、生活するにも、すべてにおいて必要なのが魔力。その魔力を生み出すのが人間の魂」

ニコ「それも、ぼくたちが苦痛や屈辱を与えて死んでいった人間の魂が、一番魔力を作り出せるんだ」

ニコ「そうして、たくさんの人間の魂を魔力に変えて魔神様に捧げ続けた結果、やっとここまで回復できたんだ」

ニコ「ただね。ぼくたちは自分たちの世界……向こうの世界で人間狩りをしていたんだけど、ちょっと乱獲しすぎちゃってね」

赤城「……乱獲……」


ニコ「で、こっちの世界の人間を狩ろうと思ったんだ。けど、こっちはこっちで拠点がなくてね……」

鳥海「それでこの施設を乗っ取ったんですか……!?」

ニコ「うん。由良とはっちゃんの艤装にぼくたちが乗り込んで、敵の真ん中に入り込んだところを不意を衝いて襲撃する」

ニコ「どうせなら殺しても心が痛まない人間を狙おう。そうだ、深海棲艦で実験しているところがいいな……」

ニコ「こういう感じで泊地棲姫にも相談したら彼女たちも協力してくれてね」

ニコ「由良たちに深海棲艦っぽさを出してもらって、目を付けられやすいようにしてくれたんだ。これが見事に成功したってわけ」

鳥海「……ぽさ、ですか」

ニコ「案の定、ぼくたちの邪魔になりそうな人間ばかりだったし、深海棲艦も連れ去りの心配が減ったし、結果的にも万々歳だよ」

不知火「まるでトロイの木馬ですね。なんともメディウムらしい戦術ではありますが」

ニコ「とりあえず、いい場所ができたし、近隣の無防備な人間を片っ端から狩ることにしたんだ」

ニコ「魔神様も、もとはこっちの世界の人間だったからね。糧にするにもこっちの人間のほうが相性がいいかもしれないし」

ニコ「それに、もと艦娘のみんなも人間たちにひどい目に合わされてる。ちょっとした意趣返しさ」

ニコ「だから……」



 バッ ダダダダダッ


特殊部隊「動くな!」ジャキジャキッ


全員「「!!」」

今回はここまで。

続きです。

コンボはもう少し後かな?


特殊部隊「全員その場を動くな!」

特殊部隊「そこの女! 両手を挙げろ!」

那珂「ニコちゃん!!」

ニコ「……この、僕の服の上の赤い点はなにかな」

鳥海「レーザーサイトです! 銃の照準をあなたに合わせているってことですよ!?」

ニコ「ふぅん、そうなんだ。これは脅しのつもりなんだね?」

 ヘルレーザー< ズバシューーー!

特殊部隊「「ぐああっ!?」」バシュバシュバシュッ

 メガバズソー< ガッシャンッ ガラガラガラ

特殊部隊「「うわあああ!?」」グシャグシャグシャッ

 サンダージャベリン< バシュッ

特殊部隊「「ぎぃい!?」」バリバリバリバリー

赤城「!!」

特殊部隊「なぜ、だ……!? なぜ、こんな罠が……」ガクッ

朧「綺麗に単横陣を敷くからですよ。横一線ならまとめて始末するのは簡単です」

ニコ「それに、残念だけど君たちの行動はお見通し、着いてきていたのも知ってる。無駄なあがきだよ」


特殊部隊「く、くそ……」チャキ

不知火「狙いを司令に……!?」

那珂「それはダメェェェェ!!」

 ジャコンッ

特殊部隊「!?」

山城「……なにを、しているの。誰に、銃口を向けているの」ジロリ

朝潮「司令官に何をしようというんですか」ギロリ

赤城「ふ、ふたりとも!? いけません!!」

ニコ「大丈夫だよ、落ち着いて」

 ヒュッ

朧「……」スッ

特殊部隊「後ろ……!?」

 ゴギッ

首が変な方向に曲がった特殊部隊「」ドシャッ

特殊部隊「「!?」」

電「おいたが過ぎるのです」ビュンビュンッ(←鞭)

初春「無礼者めが」ブンッ(←扇子で衝撃波)

特殊部隊「「ぐわあああ!?」」ドガドガドガッ

如月「お仕置きしてあげる」ブンッ(←平手打ち)

吹雪「やっつけちゃいます!」ゴッ(←正拳突き)

特殊部隊「「!?」」ゴシャッ


那珂「み、みんな、むちゃくちゃ……」ビクビク

鳥海「強く、なってますね……」アゼン

ニコ「魔神様の肉体を分け与えられた、元艦娘のメディウム。強くて当然だよ」

那珂「……初春ちゃんの扇子はいいけど、電ちゃんの鞭はどこから出てきたの……?」

電「マリッサさんを躾けるのに必要なのです」ビシッ

不知火「……」

特殊部隊「くっ……2班! 応答せよ、2班……!」

??「2班?」

 ポイッ ドシャッ

特殊部隊「!?」

泊地棲姫「モシカシテ、コイツラノコトカシラ?」

特殊部隊「な……なんだ、こいつは……!?」

ニコ「やあ、泊地棲姫。来てくれたんだね、ありがとう」

泊地棲姫「エエ、来テアゲタワ。私ノ仲間タチモ一緒ニネ」

(泊地棲姫の後ろにずらりと居並ぶ深海棲艦たち)

ニコ「ディニエイルたちもお疲れ様」

ディニエイル「いえ、簡単な仕事でしたので」

メアリーアン「なんてことねえだよぉ」


泊地棲姫「ナルホド、コレガ人間ノ研究施設カ……胸糞悪イナ」

ニコ「今度はぼくたちがこれを使って、人間を駆除する番だよ」

泊地棲姫「ソレデ、コノ艦娘ドモハ?」

ニコ「魔神様の元部下だった、あの島の艦娘だよ。仲間にならないか誘っているところなんだ」

泊地棲姫「ヘェ……」

特殊部隊「お、お前たち、裏切るのか……!?」

山城「裏切る? 何を言っているの? 私は最初からこの人の部下よ?」

朝潮「ええ……司令官……私は、司令官の配下の艦娘です……!」

那珂「や、山城ちゃん! 本気で言ってるの!?」

山城「ええ、本気よ?」ニヤリ

不知火(山城さんたちの目から青白い光か……!?)

鳥海「み、皆さん目を覚ましてください! ここで私たちがメディウムに味方をしたら……」

由良「なニか、問題、あるノ……?」ヒタッ

鳥海「由良さん……!?」

伊8「……あなタは、見たんデしょ? 提督ガ、大佐に撃たレルとコろ……」ガシッ

鳥海「そ、それは……!!」

ニコ「大佐にも、少将にも、魔神様は殺されて……今もこうして殺されかけた。きみは、そのままでいいと思うのかい?」

鳥海「う、うう……!!」フルフル


泊地棲姫「オマエカラモ……私タチト同ジニオイガスルワネ?」

那珂「え……!?」

泊地棲姫「海ノ底ヲ、知ッテイルニオイガスルワ……違ウノ?」

那珂「……っ!」ジリッ

赤城「いけません! 鳥海さん、那珂さん! 彼女たちの口車に乗っては……」

山城「部外者は黙っていなさいよ!!」

赤城「っ!!」ビクッ

山城「ねえ……ニコちゃん。私は、こっちにつくわ……!」

那珂「山城ちゃんっ!?」

朝潮「私も……司令官と……ともに行きます!」

ニコ「そう? それなら歓迎するよ」ニコッ

ニコ「それはそれとして。とりあえず、そこの人間を始末してしまおうか」

山城「ええ……!」ニヤリ

朝潮「わかりました!」キッ

特殊部隊「!!」

 ドゴォン…!

那珂「やま、しろ……ちゃん」

赤城「朝潮さんまで……なんてことを……」ガクッ


不知火「……司令」

不知火「……司令は、こんな未来を……このような未来を、望んでいたんでしょうか」ウルッ

不知火「どうなんですか、司令……司令!!」ポロポロッ

提督の入った魔力槽「」ゴボッ

全員「!!」

ニコ「魔神様!」

朧「提督が……」

吹雪「目を、あけた……!!」

不知火「司令!!」ダッ

電「不知火さん!?」

ニコ「待って。彼女の好きにさせよう」

如月「ニコちゃん!?」

ニコ「彼女の感情が魔神様の目覚めに必要なのなら、このまま見ていてもいいと思う」

初春「……手出ししたときだけ対処せい、ということじゃな?」

ニコ「うん」


不知火「司令! 聞こえますか! 不知火です!」

不知火「お約束通り、お迎えに上がりました! 司令!!」

提督「……」ゴポポッ

不知火「……」

提督「……」

不知火「……!」

不知火「司令……そう、ですか……わかりました」

赤城「不知火さん……?」

不知火「ニコさん……不知火は、一度帰ります」

吹雪「え!?」

ニコ「それはどういうこと?」

不知火「仲間にこのことを伝えなければなりません……ここに山城さんたち以外にも来たがる者がいるでしょうから」

ニコ「なるほどね。そういうことなら帰ってもいいよ。他の子たちはどうする?」

由良「鳥海さんは……残ってモらっていいカな?」

伊8「そウだね……モう少し、お話ししタいな」

鳥海「……う、ううゥう……」ガクガク

山城「那珂ちゃんも、いいわよね?」ニヤリ

泊地棲姫「私タチト、ユックリ……語ライマショウ?」ニヤリ

那珂「あ、あああ……」ガタガタガタ

泊地棲姫「コッチヘ、イラッシャァイ……?」


ニコ「さてと、こっちも後始末をしなくちゃね」スッ

 (ニコが手を掲げると、特殊部隊の隊員たちの死体がキラキラと光の粉に分解されていき)

 (衣服や武器、床や壁に飛び散った血痕さえも、跡形もなく消えてしまう)

ニコ「こうやって殺した人間は、ちゃんと魔力にしないとね」

泊地棲姫「コノ光ガ提督ノ肉体ノモトニナルノネ?」

ニコ「そういうこと。だから、できるだけこの建物におびき寄せて人間を始末してくれると嬉しいな」

泊地棲姫「フフ、ワカッタワ」

不知火「……」

赤城「……電さん」

電「はい?」

赤城「以前あなたは仰いました。私が大佐を殺せば、艦娘そのものの立場が危うくなると」

赤城「提督少尉は、艦娘の社会的地位も案じておられました」

赤城「あなたたちも今、人間に弓を引こうとしています……それでいいのですか」

電「言いたいことはわかりますが、もう遅いのです」

電「ずっと前から、人間たちは司令官さんに殺意を向けてきていたのです。やられる前に、やるしかないのです」

電「それに……私たちは、もう艦娘じゃないですから」ニコ

赤城「……そう、ですか……」


不知火「……如月。不知火も、ひとつ思い出しました」

如月「なぁに?」

不知火「あなたがかつて、もしあなたが深海棲艦になったら不知火に沈めてもらう、と言っていたことを」

如月「ええ。それで司令官に迷惑がかかるなら、そのほうがいいって思ってたわ」

如月「でも、司令官は文字通り身を削って私たちを助けようとしてくれた……もう簡単に『死んでもいい』なんて言うわけにはいかないの」

不知火「……」

如月「だから、私は司令官を助けるためなら、なんでもするわ。あなたが私の立場なら、同じことをするはずよね?」

不知火「……そうかも……しれませんね」

赤城「不知火さん……」

不知火「……赤城さん。今日のところは出直しましょう」

赤城「……ええ」

ニコ「戻るんだね、それじゃディニエイル、案内してあげて」

ディニエイル「わかりました。こちらです、ミス不知火、ミス赤城」

赤城「はい……」

不知火「……では、失礼いたします」ケイレイビシッ



ニコ「…………」

ニコ「ねえ、魔神様?」

ニコ「どうしてきみは、不知火に『逃げろ』なんて伝えたの?」



 * * *

 * *

 *

今回はここまで。


ちなみに誰が轟沈しかけたかは>>197参照です。

続きです。


 * 2日後 X中佐の鎮守府 *

不知火「その後、泊地棲姫配下の深海棲艦に誘導されて、日本の海域を出ることになりました」

赤城「報告は以上になります」

H中将「なるほど。4人は敵の手に落ちたと……うち2人は確実に離反したわけだな」

赤城「私がいながら、申し訳ありませんでした……」

中佐「いや、仕方ない。墓場島の艦娘たちが抱えていた心の闇が、僕たちの考えていた以上に深かったんだ。責められるのは君じゃない」

中佐「それに、問題なのはこれからどうするかだ。駆逐艦だった彼女たちは、自身のことを元艦娘のメディウム、と言ったんだね?」

不知火「はい」

中佐「……そうか……メディウムか」

H中将「そんなにまずいことなのか?」

中佐「ええ、想像でしかないのですが、その通りだとしたら状況は極めて悪いと言わざるを得ません」

大井「中佐! 米国のICBMによる施設攻撃は失敗です!」

H中将「なんだと!?」

中佐「……大井さん。それ、もしかして雷か暴風が原因かな?」

大井「は、はい! 急に発生した雷雲に入り、高度四千メートルで避雷、爆散したと報告がありました」

H中将「中佐、今の推理の根拠はなんだ?」

中佐「今、関東で起こっている局地的な異常気象。僕はそこから彼女たちの名前を連想してしまうんですよ」

H中将「彼女たち……?」


中佐「濃霧は朧。暴風雪は吹雪。雷は電。そして、寒さは1月から2月にかけての気温。初春と如月になるんでしょうね」

H中将「あいつらが意図的に作り出していると言うのか!?」

中佐「メディウムは罠の化身。それになったからには、罠を敷く能力が備わったと見ています」

中佐「天候まで操ることができるのかは疑問ですが、思いつく変化点がそこしかありません」

H中将「……不知火はどう思う」

不知火「落雷や局地地震を発生させるメディウムは存在します。司令……魔神の力を分けてもらったと考えると、否定はできません」

H中将「だとしたら最悪だぞ……降雪と暴風のおかげで首都圏は交通が麻痺している。道路、鉄道、空の便もなにもかもだ」

H中将「物流が止まれば物資不足は加速し、深海棲艦との戦いもままならん。あれが人為的に続くとなると戦闘継続が困難になる」

H中将「それだけじゃない、あの寒さが続けば農業にも漁業にも打撃を与えるし、生態系にも影響する」

H中将「生活圏なら暖房のために電力消費も跳ね上がるし、除雪作業が必要になればそれでまた人手も燃料もいる」

H中将「電力不足で大停電が起こればこれもまたパニックになる……」

大井「あの……意外と、謎の天候不順は長続きしないのではないでしょうか」

H中将「なに?」

大井「彼らが人を殺すことを目的としているのであれば、人の多い地域を狙うことになります」

大井「わざわざ人の住みにくい地域を作り出してしまったら、人を殺して魔神復活の糧にすることが難しくなるのでは?」

中佐「そうだね……メディウムの力の源は魔力だ。天候不順を作り出すのに魔力が必要なら、ずっと冬にしておくことは難しいだろう」


中佐「だからと言って放置できないのが深海棲艦の存在だ。奴らの陸上での跳梁を許しておくわけにはいかない」

祥鳳「大変です!」バンッ

祥鳳「先ほどICBMを発射した基地の最寄りの海岸に、深海棲艦が出現しました!」

H中将「……!!」

中佐「報復か……そうくるよな。これで迂闊なことはできなくなった」

H中将「なあ、もしもだぞ。もしも、高波や大潮、荒潮のような名前の奴がメディウムになっていたら……」

中佐「夕立、嵐、野分、神風でも恐ろしいことになりますね。飛龍のような幻獣でもどうなっていたことやら」

H中将「……」

赤城「……世界は、どうなってしまうんでしょうか」ヨロッ

不知火「赤城さん、しっかりしてください」ガシッ

赤城「不知火さん……提督少尉は、あの時あなたに『逃げろ』と言ったのですね?」

不知火「はい……司令の口が、そう動いていました」

不知火「おそらく、司令は私たちを案じていたのだと思います。今の如月は、たとえ相手が不知火でも、容赦しなかったでしょうから」

赤城「だからと言って、どこへ逃げろと言うのです……あの人は、逃げてどうしろと言うのです!」ヘタッ

赤城「あの人は……」

不知火「……また、自分でどうにかしようと、考えているのでしょうか……」


 * 医務室 *

暁(昏睡状態)「……」

比叡「……暁ちゃん、私たちと一緒に司令のもとへ行きましょう……電ちゃんや吹雪ちゃんもいるから……!」ダキカカエ

敷波「ちょっ、比叡さん!? 暁をどこへ連れて行くのさ!?」

金剛「比叡、ちょっと待つネ! 榛名も、どうしたんデスカ!?」

榛名「これから皆さんで司令のところへ行くんです!」

金剛「What...!? そんなことをしたら……」

 ブンッ

金剛「ぐ!?」ゴッ

霧島「……申し訳ありません、金剛お姉様」

金剛「な、何を、するんデス、カ……」ヨロッ

敷波「金剛さん!? し、しっかりして!!」

霧島「むこうには魔力槽があります。いつまでも目を覚まさない暁さんも、魔力槽に入れてあげれば助かるかもしれません」

扶桑「それに、みんな提督のところにいるんでしょう?」

敷波「扶桑さんまで……」

比叡「ねえ、早く行こうよ霧島。みんなの手荷物、早く届けてあげないと……」ハイライトオフ

榛名「提督にも会えるんですよね!?」ハイライトオフ

扶桑「山城も向こうにいるのよね?」ハイライトオフ

霧島「……」コクン


金剛「No... 行っては、いけマ、セン……」

霧島「……敷波さん。金剛お姉様を、よろしくお願い致します」ペコリ

敷波「そ、そんな、霧島さん!? 駄目だよ!」

川内「……」スッ

敷波「川内さん!? 霧島さんたちを止めてよ!」

川内「ごめん、敷波。あたしたちも、ちょっと行ってくるよ」

神通「那珂ちゃんが待ってると思いますから……」

敷波「神通さんまで……そんな!?」

神通「留守を、よろしくお願いしますね」ニコ…

敷波「な……なんで!? なんでみんな行っちゃうの!? どうして、そんなつらそうな顔して行こうとするの!?」

敷波「どうして!!!」

金剛「ウ……いけま……セ……」ガクッ

敷波「! 金剛さん! 金剛さん!? 誰か! 誰か来てよぉお!!」


 * 執務室 *

中佐「予想はできてた。由良たちが姿をくらましたときと同じだな……」

祥鳳「……」

 ドタドタドタ

摩耶「中佐!」バンッ

中佐「……なにかな?」

摩耶「頼む、あたしを例の施設に行かせてくれ!」

中佐「いいよ」

摩耶「お願いだ! どうしても……へ?」

祥鳳「中佐!? よろしいんですか!?」

中佐「よくないさ。でも、今の僕たちにはどうもできないからね」ハァ

中佐「できれば、平和的な解決ができないかを探ってきてほしいな。それができれば、霧島や鳥海が戻ってくる可能性も出てくる」

摩耶「……な、なんか、いつになくテキトーっつーか、やけくそ気味じゃねえか? 中佐らしくもねえ……なにがあったんだよ」

祥鳳「実は本営から連絡がありまして、私たちの艦隊から件の施設への出撃を禁じられました」

摩耶「あぁ!? んだよそれ!?」

中佐「勝手なことはするな、ってことさ。H中将も先程大井を連れて舞鶴に向かった。今回の件の説明を求められたらしい」

中佐「僕としても、どうにかしてメディウムたちを止められないか考えてるんだけど……摩耶、なにか良いアイデアはないかな?」

摩耶「……あ、いや……悪ぃ、あたし、あんまりそういうこと考えてなかったんだ。霧島さんや鳥海が心配ってだけで……」

中佐「そっか。心配なのは僕も同意見だ」


中佐「ただ、正直に言えば、僕は君たちを行かせたくない。何の対策もなしに闇雲に突っ込めば、全滅するのが目に見えてる」

摩耶「……」

中佐「それに、僕が摩耶の出撃をサポートすれば本営も黙っていないだろう。僕もなんらかの処分を受けるだろうね」

摩耶「あたしが勝手に出て行ったとしてもか?」

中佐「今の責任者は僕だからね。ここ最近の本営の迷走ぶりからして、どんなお達しが来るかわからない」

中佐「最悪、君たちの処分を言い渡してくるかもしれない。明らかな命令違反だからね」

中佐「それに今出撃すれば、さっき離反した霧島たちを撃てなんて命令が飛んでくるかもしれないし……」

中佐「やれやれ……提督少尉だったら、どうしていたんだろうな……」

摩耶「……」

中佐「……」

摩耶「……悪ぃ、行くの中止しとく。出直しだ」ガチャ

 バタン

中佐「……」

中佐「……ふう、助かった。うまく言いくるめられてくれたみたいだな」

祥鳳「……中佐、本当にこれで良かったんでしょうか。本営の決定を無視してでも、艦隊を出したほうが……」

中佐「やめとこう。本営の連中が手柄を挙げたがっているし、陸軍にも借りを作りたくない気持ちは僕もわからなくもない」

中佐「そんな今、ここで僕たちが出たら何を言われるかわからない。だからここは本営にまかせよう。H中将もそう仰ってたじゃないか」

祥鳳「ですが、このまま何もしないなんて……」

中佐「祥鳳。悪いけど僕は卑怯者になるよ。彼らが僕たちを頼らざるを得ないときまで、僕たちは挙兵しない」

中佐「今のままでは僕たちも背中から打たれる可能性がある。最悪のタイミングで誤射をもらいたくはない」

中佐「彼らの戦闘記録をかき集め、メディウムに勝つ方法を、なんとかして考える。でなければ僕らに未来はない」


 * 廊下 *

霞「……どうしてやめたのよ。中佐が渋ってたのはわかるけど、それをはねのけるつもりだったんでしょ」

摩耶「思い出したんだよ。霧島さんと一緒に命令違反したときだって、仲間を守るために必死に考えてから行動したんだぜ?」

摩耶「ただ暴れてすっきりしたいだけじゃあ、誰も助けられないだろ。中佐に後始末押し付けんのも格好悪ぃしさ……」

霞「いいじゃない、それでも……」

摩耶「それに、それでしくじると泣き出す奴がいるんだよな。五月雨とか……」

霞「……」

摩耶「……」

霞「……なによ」

摩耶「なんでもねえよ……ん?」

霞「……あ、長門さん……おかえりなさい」

長門「ああ、ただいま」

摩耶「調査団の護衛、終わったんですか」

長門「ああ。浮かない顔のようだが……やはり金剛たちの件か?」

摩耶「んー、まあ、そんなとこっすね。ところで……そのガラクタは?」

長門「島の護衛をしていた時にル級に預けられてな。これがなんなのか、妖精たちに解析をお願いするところなんだ」

霞「……ごみじゃないの?」

長門「メディウムに関わる貴重なものらしい。異世界で拾ってきたと言っていたな」

摩耶「異世界? メディウムがもともといた世界のことか?」

長門「おそらくな。もし、メディウムたちと事を構えるのなら、これを調べて使えと言ってきたんだ」

霞「こんなので、何ができるっていうのよ……」

長門「妖精たちにも聞いてみよう。これが一体何なのか……」

今回はここまで。

最後へのつなぎがうまく書けない……!

とりあえず書けたところまで、続きを投下します。


 * それから10日後 太平洋洋上 関東近海 *

ル級「随分、準備ニ時間ガカカッタワネ?」

長門「本営の上層部が、H中将に出し抜かれたことに腹を立ててな。我々に出撃禁止を命じていたんだ」

ル級「……ハァ?」

敷波「まー、そういう反応になるよね」ハァ

武蔵「民間人への被害も馬鹿に出来ない状況下でそんな判断を下せる本営には、我々も呆れるばかりだ」

利根「とはいえ、吾輩たちもメディウムにどう対抗するか悩んでおった。本営の判断のおかげで考える時間ができたのも皮肉じゃな」

長門「その時間と、ル級のおかげで打開策も見出せた。これ以上奴らの好き勝手にはさせん」

潮「……ところで、ル級さんに聞きたかったんですけど、いいでしょうか?」

ル級「ナァニ?」

潮「ど、どうしてあなたは私たちに協力してくれたんですか?」

霞「そうよ、向こうには泊地棲姫がいるんでしょ。あなたたちもメディウムたちに受け入れられてるんじゃないの?」

ル級「……私ハ、ナントナク距離ヲ置キタクナッタノヨ。軽巡棲姫ガ妙ナコトヲ言ウシネ」

軽巡棲姫「……」

敷波「妙なこと?」

ル級「コノ子、向コウノ世界デ提督ニズット付キッ切リダッタンダケド、思ウトコロガアルミタイデネ」

軽巡棲姫「……提督ハ、死ニタガッテル」

摩耶「……!」


軽巡棲姫「アノ人ハ、生キ延ビテ、ナニカヲシヨウトハシテイナイ……」

軽巡棲姫「ムシロ、自分ノ意志ニ関係ナク、生カサレテイルコトヲ嫌ガッテル……」

長門「……どう思う、不知火」

不知火「有り得ます。先日、大佐を撃退した時に『もうやることがないから死んでもいい』という趣旨のことを話していました」

不知火「また、人間と関わっても碌なことがないから距離を置く、というのが提督の基本スタンスでした」

利根「そうじゃな。嫌いな人間を滅ぼそうとすれば、否応なしに人間に関わらざるを得ん。それは奴の望むところではあるまい」

摩耶「魔神にさせられて性格が変わっちまった、って可能性もあるけど、どうなんだ?」

軽巡棲姫「ソレハナイト思ウ……オソラク、ダケド」

摩耶「そっか。なんだかんだで提督も頑固だからな。その辺、変わってないと嬉しいけど」

武蔵「ただ、提督が望む望まないにかかわらず、今の提督が人類の敵に認定されているのは、どうにもならないのがな」

利根「陸軍と海軍の兵士が百五十に艦娘が二百。民間人には千人規模で行方不明者が出ておる」

長門「人間に手を出せば、その刃が自らに向くことはわかっているだろうに……」

大和「きっとメディウムのみなさんは、そこまでしてでも提督を復活させたいんですよ」

武蔵「大和……」

大和「むしろ、彼女たちは人間の命をどうとも思っていないはず。提督を……魔神を復活させるための餌としか考えていないでしょう」

大和「中でもニコさんは、数百年単位で魔神の復活を待っていました。今更どんな犠牲も厭わないはずです」

長門「そう考えれば、人間との全面戦争は望むところか。深海棲艦が手を貸すのも頷ける」

摩耶「それによ、あんだけ人間を殺してりゃあ、魔力の蓄えも十分なんだろ? かなり手強いと思うぜ」


ル級「ソレデ、ココニイル艦娘ダケデ戦ウ気ナノ?」

長門「それだが……」

 彩雲<ブルーン!

長門「! 来たか」

ル級「今ノハ、アナタタチノ応援?」

長門「ああ。今回の作戦は、第一、第二艦隊と、その支援艦隊を含めた連合艦隊で進軍する」

長門「第一艦隊、旗艦は長門。随伴は大和、金剛、摩耶、利根、ル級」

長門「第二艦隊の旗艦は不知火。随伴は霞、若葉、潮、敷波、軽巡棲姫」

長門「支援艦隊は旗艦が龍驤。雲龍、武蔵、陸奥、加古、五月雨が随伴だ」

ル級「私タチモ、アナタタチノ連合艦隊ニ参加スルノ? 前代未聞ヨ? フフフ」

長門「今回の作戦にお前たちの協力は欠かせない。今回の私たちの目的は深海棲艦の邀撃ではないのだからな」

ル級「ソウ……軽巡棲姫ハ、ソレデイイノ?」

軽巡棲姫「提督ヲ、救エルノナラ……協力スル」

長門「ありがとう……感謝する」ペコリ





不知火(……提督を、救う……その言葉だけなら、ここにいる殆どが同意するとは思いますが……)

不知火(軽巡棲姫の言う『救う』とは、おそらく殺すことと同義でしょう……)

不知火(そうなれば、躊躇したり反発したりする人が現れるはず。もし、そうなったら不知火は……)

不知火(……不知火は……)

利根「心配なのは大和じゃな」ヒソッ

不知火「!」

利根「まあ、成り行きを見守ろうではないか。それよりもこれからが問題じゃからな」

不知火「……はい」



長門「よし、全員揃ったな。進軍する!」

 ザザザァァァ…


 * * *

 * *

 *


 * 研究施設内の一室 *

ニコ「交渉?」

泊地棲姫「エエ。アノ島ノ艦娘タチガ、アナタタチト話ガシタイッテ」

ニコ「ふぅん……」

泊地棲姫「ナニヲ話スツモリナノカシラ」

ニコ「なんだろうね? ぼくたちと一緒に来たいなら、わざわざ艦隊を組んでくることもないだろうし」

泊地棲姫「襲撃……騙シ討チニ来タカ?」

ニコ「どうだろう。単純に、ぼくたちの腹を探りに来たのかもね。あとは魔神様の様子が気になったか、じゃないかな」

泊地棲姫「……提督ハ、イツ復活スル」

ニコ「間もなくだと思うよ。体はほぼ復元できたし、あとは目覚めを待つだけ……」

ニコ「そうなれば、あとは人間を本格的に殲滅するつもり。メディウムや深海棲艦が平和に暮らせる世界を作るんだ」

ニコ「そう考えると、もう少し味方が欲しい気はするね……うん、交渉に応じよう。泊地棲姫も一緒に来ない?」

泊地棲姫「……ソウサセテモラウワネ」


 * 一方その頃 地下研究棟 *

(提督の入った魔力槽を見つめる榛名)

榛名「……提督……」

神通「榛名さん、ここにいたんですか」

榛名「はい。この魔力槽はすごいんですね。上半身しかなかった提督の体を、とうとう全部復元してしまうなんて」

神通「……」

榛名「……ただ、そのために、多くの人間や艦娘が犠牲に……」ウツムキ

神通「……」

榛名「榛名は、提督に生きていてほしいと思っていました。そして助ける術があることも聞いて、歓喜しました」

榛名「ですが、そのためには何の罪もない一般人や、私たちと志を同じくした艦娘を殺さなければいけない……魂を奪わなければならない」

榛名「殺した者たちの魂の力で、提督は確かに元通りになりました」

榛名「でも、犠牲になった人たちにも、同じように大事な人や大事に思ってくれている人がいるはずなんです」

榛名「私たちだけが、望みをかなえることはよくないのではないか、と……思ってしまうんです」

神通「……」

榛名「榛名は、これからどうすればいいんでしょうか……」

神通「……それは……」

扶桑「提督の考えを聞いてみたほうがいいんじゃないかしら?」スッ

榛名「扶桑さん……!」

扶桑「犠牲になった人たちには悪いけれど……今からその失われた命を元通りにするなんて、どうやってもできないもの」

扶桑「その無数の命を背負って甦らされる提督は、どんなお考えをお持ちなのか……私は聞いてみたいわ」

扶桑「もしかしたら、覆水を盆に返すことができるかもしれない……そう考えるのは、あまりに都合が良すぎるかも、だけど」

榛名「……」


 * 別室 *

比叡「……」

霧島「……」

比叡「……ねえ、霧島」

霧島「なんでしょうか、比叡お姉様」

比叡「……暁ちゃんはどうして目を覚まさないんだろうね」

霧島「……」

比叡「魔力槽に入れてもらって数日経つけど、ぴくりとも動かないし……どのくらい待てばいいんだろう」

霧島「……比叡お姉様」

電「待つしかないと思うのです」スッ

比叡「電ちゃん……」

電「昔、比叡さんが暁ちゃんに看病してもらった時も、まともになるまで2週間はかかったのです」

比叡「……」

電「焦らないで、ゆっくり待っててほしいのです」

霧島「……そう、ですね」

比叡「ねえ、電ちゃん」

電「はい?」

比叡「あなたはまだ、沈んだ敵を救いたいと思ってる?」

電「……」

比叡「……」

電「……今なら……成長した今なら、沈んだ敵もきっと救えると思うのです」ニコ

比叡「……そう……」

霧島「……」

とりあえず今回はここまで。

お待たせしました、続きです。


 * 研究施設内 会議室 *

泊地棲姫「軽巡棲姫!? アナタ、ドコニ行ッテタノ!?」

軽巡棲姫「……」

ル級「外海ヲ見ニ行ッテイタノヨ」

泊地棲姫「ル級……オマエガ唆シタノ!?」ギロリ

ル級「コノ子ノ意志ヨ。ナンデモカンデモ私ノ所為ニシナイデモライタイワネ」

泊地棲姫「何ヲ!」

ニコ「泊地棲姫、落ち着いて。さて、不知火以外はここに来るのは初めてかな?」

不知火「はい。霧島さんたちもこちらへ来ているはずですが」

ニコ「ああ、みんなは別室にいるよ。呼んだほうがいいのかな?」

不知火「いえ。ご無事でしたのなら、それで結構です」

ニコ「……そう。まあいいけど……それで、今回の要件はなにかな?」

長門「まずは通告だ。本営はおまえたちメディウムを『敵』と認定した」

ニコ「ふうん」

長門「……のんきに構えてはいるが、状況はわかっているのだろうな?」

ニコ「ぼくたちはこれまでずっと人間と戦ってきたんだ。今更な話だよ」

ニコ「君たちは、わざわざそれを伝えるためだけにここに来たのかな?」

長門「これは我々からの提案だ。この研究所から引き上げて欲しい」

ニコ「!」

泊地棲姫「引キ上ゲロ、ダト?」


長門「この周辺は、かつて我々が軍艦だったころ、我々に乗った人たちが命を賭して守ろうとした国の中枢に当たる」

長門「お前たちが人間を殺せば、それを我々が鎮圧しなければならない。お前たちが引き上げなければ、延々とこの戦いを繰り返すことになる」

ニコ「……」

長門「たとえ提督が魔神として復活したとしても、お前たちは常に危険にさらされることになるだろう」

長門「虫のいい話ではあるが、そうなる前に停戦協定を結び、どこか別の島で暮らしてもらえないか、というのが我々の案だ」

ニコ「それは無理だよ。人間の言うことなんて信じられないもの」

長門「……!」

ニコ「その島へ移り住んだとして、その安全は誰が保証してくれるのかな?」

長門「それは我々が本営へ……」

ニコ「無理を言わないほうがいいよ。君たちの言うことをその本営とやらはどれくらい聞いてくれると思う?」

ニコ「今のぼくたちは泊地棲姫たちと手を取り合ってる。その時点で、ぼくたちが人間の攻撃対象になってることくらい理解してるよ」

長門「しかし……」

ニコ「いくら慎ましやかに生活していたとしても、人間どもはいつも土足で上がりこんできて、ぼくたちの平穏を脅かす」

ニコ「ぼくたちが元いた世界でも、魔神様の力を恐れるもの、利用しようとするもの……」

ニコ「思惑は人それぞれだけど、下らない理由で数多の人間が魔神様に剣を向けていたんだ」

ニコ「長門だってそう思わない? 君たちのいた島に災いを運んできた元凶は人間ばかりだ」

ニコ「そんな奴らに、これ以上寛容になれと言うのは無理な話だよ」

長門「……」

ニコ「むしろ、魔神様が人間だったころから忌み嫌ってきた人間を、これ以上のさばらせておくほうが、ぼくは無益だと思うよ?」

ニコ「この世界の人間は増えすぎてる。間引きするという意味でも、人間は駆除されるべきだよ」


金剛「Hey, Nico ! それはあまりに極端デス! 世の中には悪い人ばかりではありまセーン!」

ニコ「その理屈はそっくりそのまま返すよ。ぼくたちのことを理解して、慮ってくれた偉い人間はいるのかい?」

ニコ「仮にいたとして、その人間がぼくたちを直接守ろうとした記録はあった? 何らかの成果はあったのかな?」

金剛「Mmm...」

ニコ「そんなことよりさ。みんな、ぼくたちと一緒に人間を滅ぼそうよ」

全員「……!」

ニコ「きみたちこそ、人間に一度は酷い目にあわされた被害者だ。魔神様と同じく、人間を拒む理由こそあるはずだよ」

ニコ「なのにどうしてきみたちは、人間を守ろうとするの?」

全員「……」

??「それは我らが艦娘だからじゃろうな」

不知火「!」

初春「いや……わらわは、艦娘『だった』と言うべきじゃな」

武蔵「お前は……初春か!」

敷波「本当に背が伸びてる……」

陸奥「いろいろ成長してるわね……」

龍驤「ったく、最近の駆逐艦は随分発育がええな!」イラッ

初春「わらわが言った通りじゃろう、ニコ殿? その問いに、この者たちが素直にはいと答えるとは思えぬと」

初春「艦娘とは、長門の言うとおり軍艦や艦艇の化身。母国のために命を賭した者たちを乗せて沈んだ、誇り高き魂の分霊たちじゃ」

初春「それを裏切れと言うのは、自らのあいでんてーてーを否定することにもなろう」

初春「その証拠に、この場で誰一人即答できなかったではないか」


若葉「そうだな。少なくとも、若葉は人の道から外れたことをするつもりはない」

初春「ほう……人の道、のう?」

泊地棲姫「綺麗事ヲ……!」

武蔵「フフ、なかなか格好良いじゃないか。その通りだ、若葉だけではなく我々もそうだ。そして提督も、それは同じだろう?」

利根「一番気になっていたのはそこじゃ。関係のない民間人にまで被害が及んでいるが、それはあの男の意思なのか?」

初春「提督は、人間に殺されたのじゃ。ならばその報いは人間が受けるべきであろう」

若葉「海軍を襲うのはまだわかる。だが関係のない他人に受けさせるのか? それは理不尽だ」

朝潮「……若葉さんは、それが理不尽だと仰いますか」スッ

霞「朝潮……っ!」

朝潮「それならば、司令官への仕打ちこそ理不尽だと思いませんか」

朝潮「これまで私たちを助けてくれた司令官が、同じ海軍の人間に狙われ、殺されようとしたんです」

朝潮「司令官は、助けられるべきだと思いませんか!」

若葉「だからと言って他人を巻き込んでいいと思うのか」

朝潮「司令官に犠牲になれというのですか!」

若葉「提督にも軍人としての覚悟があるだろう」

朝潮「謀殺されたんですよ!? 内輪揉めに覚悟もなにもありません!」

ニコ「みんなはどうなのかな。ねえ、大和、金剛?」

大和「……わ、私は……」

大和「私は……私は提督を助けたい……! でも、そのために、犠牲を生むことは……」

金剛「私も許されないと思うネ。それに、メディウムの善悪はとにかく、これだけは言えマス……!」


金剛「独りよがりの愛は、相手だけでなく、すべての人を不幸にしマス!」

金剛「初春も朝潮も目先の目的にとらわれてて、提督が復活した後のことを何も考えていまセン!」

金剛「人類を敵に回して提督を復活させれば、また提督が人類に狙われることになって、結局なにも変わらないデス!」

龍驤「そうなる前に、うちらとしては、あんたたちに止まって欲しいんやけどな」

長門「我々としては、これ以上血を流したくない。どうか、思いとどまってはくれないだろうか」

朝潮「……何故ですか」ポロッ

朝潮「どうして皆さんは、司令官に対するこの仕打ちに、納得できるんですか!!」ポロポロポロ

雲龍「納得はしてないわ。でも、その悲しみを誰かに八つ当たりするのは間違っていると思う」

朝潮「そう仰るなら……正しいことはなんなのですか!? 泣き寝入りするのが正解だと仰いますか!?」

ニコ「……交渉は決裂だね」

朝潮「ぐすっ……うう……!!」

ニコ「ぼくたちには、人間にそこまで肩入れする理由がない」

ニコ「魔神様を守るのに……人間に弓引くのにそこまで躊躇するようなら『交渉』じゃなく『説得』するしかないよね」

初春「ニコ殿、泊地棲姫、ここはわらわと朝潮に任せるがよいぞ」

初春「理屈で納得してもらうには、少々骨が折れるでのぅ……!」ギラリ

ニコ「……わかった。頼んだよ。泊地棲姫、行こう」スッ

泊地棲姫「……朝潮ニ任セルワ。ル級……アトデ覚エテナサイ」スッ

ル級「……」

長門「ま、待て!」


若葉「長門さん、行ってくれ」

長門「若葉……!?」

若葉「提督に会いに行くのだろう? ここは若葉に任せて欲しい」

朝潮「行かせません!」ジャキッ

霞「朝潮……あんた!」

 ドォン

武蔵「ちっ!!」バッ

 ドカァン

霞「く……!? む、武蔵さん!? 私を庇って……!」

武蔵「フフ、心配するな。いい一撃だったが、この武蔵には通用しない」

利根「吾輩も加勢しよう! 長門、おぬしたちは行くのじゃ!」

長門「……わ、わかった!」ダッ

軽巡棲姫「ル級……」

ル級「イイワ、行キナサイ」

軽巡棲姫「……!」コクン

朝潮「行かせません……!」

霞「朝潮……!」

朝潮「行かセませン……行カセなイ……!!」メキメキメキッ

武蔵「……!!」


朝潮(半深海化)「司令官ハ……私が守リマす……!!」ジャキッ

利根「これは……貴様ら! 朝潮に何をした!?」

ル級「……泊地棲姫ノ仕業ネ」

初春「なに、恐れることはない。おぬしたちも、わらわたちの仲間になればそれで済むこと……!」

初春「ときに若葉よ。おぬしがここに残ってくれたことは、わらわたちにとって幸運じゃ」

若葉「……」

初春「おぬしはなぜか、メディウムたちの気配を感じ取ることができるからのう……」バッ

若葉「……」ジャキ

初春「ゆくぞ!」ブオン!

武蔵「うお!? 衝撃波だと!?」

利根「おのれ、ここは吾輩が……」

若葉「駄目だ利根さん!」ダンッ!

利根「うお!? 何をする若葉!」ズデンッ

 カビン <ヒューン

若葉「おぉっ!?」ズボッ

利根「わ、若葉っ!?」

若葉「む、むう!? ま、真っ暗だぞ!?」ヨタヨタ

初春「ほほほ、自分から罠にかかりに来たか!」

武蔵「いかん、若葉を助けなければ……!」

霞「駄目よ!」ガシッ

 ヴォルテックチェア <ガシャンッ!

 ニードルフロア <ギシャンッ!

武蔵「うおっと!?」


霞「この辺にもいるんでしょ、メディウムが!」

武蔵「くっ、そういうことか……霞!」グイッ

 ブオン!

霞「きゃ!?」

ハナコ「あら~、残念」

霞「……あ、あんた、トイレで殴るとか何考えてんのよ!!」

武蔵「霞、違うぞ。トイレじゃなくて洋式便器だ」

ハナコ「ウォシュレット付きですよ~」

霞「どっちでもいいわよ!」

利根「それより若葉が……!!」

若葉「来るな! なにかいる!」ヨタヨタ

初春「覚悟はできておるか、ならばよい……貴様から始末してくれるわ!」バッ

 デルタホース<ガッシャン!!

若葉「ふぐあああああああああ!!??」ビクビクーッ

利根「若葉あああ!!!」

 ガラガラガラン!

利根「な、なんじゃ!?」

ル級「ウシロヨ!」

 メガバズソー <ガランガランガラン!

利根「なんじゃあれは!? 若葉に向かっていくぞ!!」

武蔵「若葉あああ!」

というわけでようやく最終戦まで漕ぎ着けました。

初戦は武蔵、霞、利根、若葉、ル級対初春、朝潮、メディウムになります。

今回はここまで。

初代刻命館はトラップの発動時に立ち位置を間違えると自分が引っ掛かったりしたけど
DMM影牢はその辺どうなんだろう

続きです。


 ガッシャァァァン!!

初春「ふ、まずは一人……む?」

(若葉の艤装から、金色のガントレットを装備した腕が伸びて、転がってきたメガバズソーを止めて掴んでいる)

若葉「……無粋だな。デルタホースの痛みの余韻も感じさせる気がないとは」

リンメイ「な、なんでワタシのコマ止められる!? アナタ何者ヨ!?」

若葉「この花瓶も邪魔だ……ふん!」ガシャン

ツバキ「木馬に頭突きして、うちの花瓶をわったやて!?」

ジェニー「ちょっと! あたしの愛馬になにするの!」

若葉「……何をするとはご挨拶だな」

初春「な、何故じゃ! その甲冑は……ま、まさか!」

若葉「ちょうどいい、こちらも挨拶しておこうか。利根さん!」

利根「うむ、まかせよ!」バッ

 スプリングフロア <ズバーーン!

ツバキ「な、なんやてぇ!?」バカーン

リンメイ「あいやあぁ!?」ズガーン

初春「な!? なぜ罠がメディウムたちを襲うのじゃ!?」

キャロライン「待って、ソニアはここにいないはずヨ!」

初春「だとしたらあれは一体……!?」


武蔵「驚いたか? それならもっと驚かせてやろう……!」ググッ

武蔵「行くぞ! クエイクボム!!」ダンッ!

 グラグラグラグラ!!

初春「なんじゃとぉ!?」ヨロッ

サム「ゆっ、揺れてるううう!?」ガタガタガタ

利根「そして吾輩の援護射撃である!」ドンドンドンッ

メディウムたち「「「きゃああああああ!?」」」

朝潮(中破)「う、うああっ!」

若葉「これも……返すぞ!」ブンッ

 メガバズソー <ガラガラガラガラ!

リンメイ「わ、ワタシのコマがこち来たね!?」オロオロ

ジェニー「投げ返されるとか聞いてないわよ……きゃああ!?」ガシャーン

若葉「これでとどめだ……」ジャキッ

 若葉の艤装→ガトリングアロー <ガガガガガッ!

リンメイ「い、イヤアアア! こんなの聞いてないネー!!」ドスドスッ

ツバキ「ゆ、許さへんでええ!」バスバスバスッ

キャロライン「な、なんで、ブリジットと同じ武器を持ってるノ!?」


初春「く……若葉、貴様らさては……フォージド兵を!!」

若葉「その通りだ」

(若葉の艤装から、金色の西洋の甲冑をまとった兵士が現れる)

若葉「若葉のフォージド兵はガトリングアローのフォージド兵……ブリジットと同じ性能を持つ、メディウムの模倣体だ」

武蔵「向こうの世界のことをル級に教えてもらったよ。お前たちが魔神討伐を旗印にした複数の勢力と戦っていたことを」

武蔵「そいつらが、魔神への対抗策として作った人造の兵士……それがフォージド兵だな?」

キャロライン「……」グッ

武蔵「お前がそんな怖い顔をするとは……嫌われたものだ」

利根「それだけこのフォージド兵が脅威であったということだな。残るはおぬしたちだけじゃ、観念せい」

キャロライン「……初春、どうするノ?」ジリッ

初春「……まだじゃ。まだ……」ジリッ

若葉「霞! 後ろだ!」

霞「!」

朝潮「うガあああッ!!」グワッ!

ハナコ「ええ~い!」ブオン!


霞「やらせないったら!!」バッ

 デルタホース<ガッシャンッ!!

朝潮「ひああああああああ!?」ビクビクッ

ハナコ「いやああああん!?」ビクーンッ

武蔵「おお、うまいこと二人乗りになったな」

霞「もう少しまともな罠だったら良かったんだけど!」ポ

初春「……おのれ、おのれぇええ!」ギリギリギリッ

若葉「もういいだろう。提督は死んだ。初春姉さんもそうだ」

若葉「死んだ者はよみがえらない。静かに、眠っててくれ」

初春「……眠れじゃと? わらわたちは……死んではおらぬ! 提督もそうじゃ!」ブゥン!

 ガキッ!

若葉「そうか……それは悪かった」ググッ

若葉「だが、だからと言って、死にかけた者が今生きている者を殺すことは看過できない」グンッ

初春「ぐうっ!?」ドテッ

キャロライン「ハツハル、大丈夫!?」タタッ

若葉「それがたとえ姉妹艦だとしてもだ。第二十一駆逐隊、旗艦としての務め、果たさせてもらう」ジャキ

初春「……!」

キャロライン「……ノー……!」ギュ


ル級「ソノクライニ、シテアゲタラ?」スッ

 マンリキスピン<ガキガキン

キャロライン「ワッツ!?」ガッシリ

初春「なんじゃあ!?」ガッシリ

 マンリキスピン<ギュギュィィィイイイイン!

初春&キャロライン「「アーーーーーーーれーーーーーーーー!?」」ギュオワァァァァ!

利根「ル級もフォージド兵を載せておったのか」

ル級「一応ネ」

 マンリキスピン<ピタッ

キャロライン「ハラヒレホロハレ……」パターン

初春「な、なんの、これしき……」フラフラ

 ゴンッ

初春「きゅう……」バターン

武蔵「当て身」

霞「砲身で殴るのを当て身とは言わないと思うんだけど」

ル級(見覚エガアルワネ、コノヤリトリ)

若葉「よし、これ以上悪さをされないうちに縛っておこう。利根さん、悪いが手伝ってくれ」ドサドサドサッ

武蔵(どこから出したんだあのロープ)

今回はここまでです。


ここまできたので、簡単にですが補足を。

>フォージド兵とは
魔神に対抗しうる力として研究されていたのが、メディウムの偽物、フォージド兵士。
実際のゲームでは、単純にフィールドを駆け回ってプレイヤーキャラを追い回すだけなので
彼女たちが罠を使うことはありません。
また、通常の敵は、一度アーマーを壊せば防御力が激減しますが、
フォージド兵は、二回アーマーを壊す必要がある、という程度の差です。
今回の作中では、メディウムの模倣コピー=罠も使える→じゃあ艦娘に載せて、
任意のタイミングで罠を使わせる、という設定にしました。

>>905
DMM影牢は、自分が罠に巻き込まれることはありません。
なので、結構難易度は低めです。初心者を呼び込みやすく、という配慮があったのかと予想できます。
残念ながら1年でサービス終了してしまいましたが、出来ればもう一度復活して欲しいものです。


とりあえずの現状。

広間で戦闘中
 若葉・霞・利根・武蔵・ル級

現在進軍中
 不知火・五月雨・敷波・潮
 摩耶・加古・軽巡棲姫
 大和・長門・陸奥・金剛
 雲龍・龍驤

では、続きです。


 * 研究所内 地下 *

 タッタッタッタッ

不知火「こちらです」

長門「……若葉たちは大丈夫だろうか」

陸奥「信じてあげるしかないわ」

陸奥「それに、私たちだっていつ足元をすくわれるかわかんないのよ?」

長門「そうだな……っ!」

 ズパァン!

長門「噂をすれば、か……!」

不知火「この鞭は……!」

電「そこまでなのです」

敷波「……もしかして、電!?」

電「敷波ちゃん、お久しぶりなのです」ニコ

敷波「な、なんだよ、メイドさんみたいな恰好しちゃってさ。艤装はどうしたの!?」

電「……電には、もう不要になったのです。艦娘ではなくなりましたから」

敷波「な……何言ってんだよ……」

長門「敷波、下がっていろ。彼女はもはや我々の知る電ではない」


敷波「……いや、でもだって……」

 ヒュッ

摩耶「危ねえ!」

 ガキン!

長門「!?」

摩耶「……へっ、いい度胸じゃねえか、朧!」ギギギギッ

朧「……」ギギギギッ

 バッ

朧「……」スタッ

陸奥「……あの黒服が朧なの……!?」

摩耶「そんじゃあ、ここはあたしが持ってやるよ。みんな、先に行ってな」

長門「そうだな。不知火、みんなを連れて先に行け」

摩耶「……あ?」

長門「私もここに残ろう。2対1……いや、3対1では不利が過ぎる」

摩耶「……3人って、誰が……っ!」ゾクッ

??「……う……」

敷波「……あれは……」

鳥海(半深海化)「……うう……うウうぅ……!」ブルブルブル

摩耶「鳥……海……っ!!」


鳥海「うううあああアアアァアァァアアッ!!」ドンドンドンッ

摩耶「鳥海っ!!」

加古「ほら、避けなって!」ガシッ

摩耶「うあ!?」ガッ

 ドカァン

加古「ぼけっとしてんじゃないよ、あたしじゃないんだからさあ」ニヒヒ

摩耶「か、加古? 悪ぃ……けど!」

加古「んー……どう見ても正気を失っちゃってるねえ。なら、ここはあたしが引き受けちゃおうかな」

摩耶「で、できんのか!?」

加古「まあ、どーだかね~。そうでなくても、あたしは昔、鳥海に助けられたからね……今度はあたしが鳥海を助ける番だよ」

潮「私も残ります……朧ちゃんは、私が……!」

敷波「じゃああたしは電ね。目を覚まさせてやるんだから」

長門「……不知火、行け!」

不知火「……わかりました。ご武運を」タッ

朧「……5対3、ですか」

長門「フ、周囲にメディウムを潜ませておいて、よく言う……」

朧「……」

長門「……」


朧「電」

電「はいなのです!」ヒュッ

 ズパァン!

敷波「うわっと!?」バッ

潮「きゃあ!?」バッ

 ズパパパパァン!

加古「あたっ! か、かすったぁ!」ヒリヒリ

摩耶「くそっ、駆逐艦娘が振るう鞭の攻撃じゃねえぞ!?」

潮「……! だ、だめ! 下がっちゃだめです! みんな、前へ走ってください!!」

長門「なに!? くっ!」バッ

 スローターファン<ガシャッ ギュィィイイイン!

敷波「うわあああ!? な、なんだあれ!?」

摩耶「引き寄せられるぞ! 走れぇぇえ!!」ダッ

長門「! いかん!!」

 スイングアンカー<ブォォォンン!

摩耶「!!」

長門「摩耶!!」ドンッ

 スイングアンカー<ガシャアアアン!!


長門「が……ふっ」ゲボッ

摩耶「な……」

潮「長門さあああああん!!」

敷波「長門さんが碇に引っかけられて部屋の奥に!!」

長門「ぐあ……っ!」ドシャッ

 ブラッディシザー<ジャキンッ!

長門「!!」

加古「今度はなにさ!?」

潮「あれは……オボロさん!?」

摩耶「ちくしょう、やらせるか!!」ダッ

 スパークロッド<バチバチバチッ

摩耶「うわっと!?」

電「近づかないほうがいいのです。鳥海さん、援護をお願いします」

鳥海「う、うぐガァあああ!!」ズドドンッ

敷波「うわああ!? ちょ、邪魔しないでよ!?」

加古「ったくもう! 鳥海はちょっとおとなしくしてなよ!」ダッ

潮「加古さん止まって!! 罠です!!」

 トゥームストーン < ヒュウウウウウウ…!

加古「やばっ……!?」


摩耶「やらせねえ!」

 10cm連装高角砲(砲架) < シャッ

 25mm三連装機銃 集中配備 < シャッ

 14号対空電探 < シャッ

摩耶「くっそがぁぁぁぁ!!」

 ドガガガガガン!

朧「……!」

 トゥームストーン < バラバラバラ…

摩耶「へっ、この摩耶様の上を取ろうなんて10年早いんだよ!!」

電「マ、マルヤッタさんの墓石を対空砲火で壊したのですか!?」

マルヤッタ「な、なんてことするじょーー!?」ポンッ

長門「今だ、この隙に……!」ダンッ

オボロ「しまった!?」

朧「! 逃がさない……!」

長門「逃がさない? それはこちらの台詞だ!!」バッ


 ニードルフロア<ズガッシャン!!

オボロ「うわああ!? し、下から!?」ドスドスッ

朧「な……!!?」ザスッ

電「きゃあああ!」ズドドッ

チェルシー「いったあああ!?」ザシュッ

長門「どうだ、一網打尽だ……!」ゲフッ

パメラ「ちょっと! 私たちが罠にかけられるってどういうことよ!?」パッ

イサラ「わ、わけがわかんないっす!」シュンッ

敷波「それは、こういうことだよ! それっ!」バッ

 スマッシュフロア< ズバーン!

パメラ「きゃああ!?」ビョーン

イサラ「も、もう引き籠もりたい……!」ビョーン

加古「よっし、いまのうちに鳥海を取り押さえて……」

??「そうはいきません」

加古「!」

鳥海の艤装から現れてスコップを振り上げるタチアナ「あなたがたは、ここで脱落してもらいます」ブンッ

加古「ああ、ごめんねえ」ニヤッ


 プスッ

タチアナ「!?」ガクン

鳥海「あ……」ヨロッ

加古「ちゃあんと予測済みなんだ」

タチアナ「鳥海さん!? 一体何が……」

鳥海「体が……痺れ……」

 鳥海のお尻に刺さったチュウシャキ< ブラーン

タチアナ「それは……あなたの仕業ですか!!」

加古「ほい、あんたもこっち来てー」ガシッ

マルヤッタ「じょ!?」グイッ

タチアナ「えっ!? あ、あなた何を……!」

加古「仲良く気絶しててもらえっかなー!?」グイッ

マルヤッタ「じょおおおお!?」

 ゴチーン!(タチアナとマルヤッタを頭突きさせあった音)

マルヤッタ「痛いじょ……」グラッ

タチアナ「なんてことを……!」グラッ

加古「で、ここに落とし穴があることもなんとなくわかるわけだ!」トンッ

マルヤッタ「ででで、出られないじょおお……!」ズボッ

タチアナ「この私が、墓穴を掘るなんてぇ……」ズボッ


加古「よーし、鳥海確保したかんな!!」

敷波「やった! じゃあ残りは……」

マリッサ「やらせないわよぉおおおお!!!」

 クラーケン<ギュオオォォオオオオ!!

敷波「うわあああ!?」

マリッサ「うふふふ、まずはあなたからねええええ!!!」グワッ

摩耶「どいてろ敷波! 摩耶様がやってやらあああ!!」グワッ

 ザシュザシュザシュ!!

マリッサ「……え?」

 クラーケン<バラッ バラバラバラッ

マリッサ「な、なによそれえええ!?」

 摩耶の艤装→ブラッディシザー

摩耶「ふっふーん、どぉだ、参ったか? こいつでお前のタコ脚を微塵切りにしてやったぜ!」ニヤリ

朧「……そこまでです」グイッ

朧に羽交い締めにされる潮「お、朧ちゃん……!」

長門「! いつの間に……!」

朧「潮。悪いけど、あたしたちは負けられない。ここから立ち去って」


摩耶「朧、手前……姉妹艦を人質に取るのかよ!」

朧「……立ち去ってください、摩耶さん」グッ

潮「お、朧ちゃん……やめて、苦し、い……!!」ギチギチッ

朧「早くしないと、潮の首を折ります」ギチッ

潮「……かっ……お、おぼ……っ……!!」ギリギリギリッ

摩耶「やめとけ! お前ら、ただじゃ済まないぞ!」

朧「何がただじゃ……え?」

 ズルッ

電「こ、この感触は……」

 ズリュズリュズリュ…

パメラ「いたたた……な、なにこれ」

チェルシー「何かが脚に……ひ、ひええええ!?」

 潮の衣服の隙間から伸びてきたクラーケン<ズリュリュリュリュリュ…

朧「ひ、ひぃい!?」シュルシュルシュルッ

電「や、やだ! 離れてください!!」ガシッ

イサラ「か、勘弁してくださいッス!」グイッ

マリッサ「ああん、私までええ!?」シュルルルッ

摩耶「やべえ! 長門さん回収急げ!!」ダッ

敷波「う、うん!」


加古「鳥海も一緒に避難しようかね~、よいしょっと」ズルズル

鳥海「うう……あ、あれは……」

加古「わかりやすく言うとさ、あたしたちもメディウムの偽物載せてんのよ」

加古「長門さんがニードルフロアで、摩耶がブラッディシザー、あたしはチュウシャキで……」

加古「敷波がスマッシュフロア、そんで潮がクラーケンなのよ」

鳥海「……それで……」

加古「うん。潮の服の隙間から、クラーケンの触腕がたくさん出てきてて、向こう側のみんなの体を這いずり回ってんのよ……」

鳥海「……うわあ」

加古「うん、ありゃー目に毒だわ」

 イヤアアアア! フクノナカニハイッテキタノデス!!
 コ、コンナノキイテナイワーー!
 キャアア! ハ、ハイッテコナイデエエ!!
 ソンナトコ、イジッチャイヤアアア!!

摩耶「……うわあああ」マッカ

長門「敷波には見せられないぞ」メカクシ

敷波「そうなの? その前に、既に聞こえてくる声がすっごいんだけど」ポ

長門「なあ、その……クラーケン、止められないのか?」

摩耶「潮が気を失ってるからなあ。こりゃ潮が目を覚ますまで退避しといたほうがいいな」


 * 一方その頃 若葉のお仕置きタイム *

初春「……で」

(初春とキャロラインが背中合わせでロープで拘束されている)

初春「どうして亀甲縛りで転がされておるんじゃ、わらわたちは!」

キャロライン「ハツハル、動かないデー! ロープがこすれて痛イヨー!」ウワーン

ジェニー「屈辱だわ……!」(←簀巻き)

サム「よもやこのような辱めを受けようとは……!」(←椅子に拘束)

リンメイ「なんでこんな縛り方するかー!」(←大開脚)

若葉「趣味だ」

ツバキ「随分およろしい趣味どすなあ」(←吊され)

若葉「そう思うか!」キラキラッ

ジェニー「皮肉に決まってるでしょ! きらきらしてんじゃないわよ!」ガーッ

サム「……それにしても」チラッ

(お互いを抱きつかせるように向かい合わせに縛られてデルタホースに乗せられているハナコと朝潮)

サム「犯罪的な絵面ですね」

ジェニー「まったくだわ」


霞「朝潮! なんであんたパンツはいてないのよ!」

朝潮「もがぁ……」

霞「若葉! ロープで作った猿轡、外しなさいよ!」

若葉「朝潮が意味不明なことを叫ぶから、黙らせろと言ったのは霞だろう?」

霞「そりゃ言ったけど! そもそも、なんでパンツの代わりが絆創膏なのよ!」

利根「それなら吾輩もそうじゃぞ?」スカートメクリ

霞「なんで利根さんも貼ってるのよ!」

利根「朧の使っていた絆創膏じゃが、具合が良くての。衝撃に強く、はがすとき痛くない!」ドヤッ

霞「いいからあんたたち全員ちゃんとパンツはきなさいよ!」

武蔵「こ、この武蔵もか?」カァァ

霞「ちょっ……当たり前でしょ! なんで顔を赤くすんのよ!」

武蔵「な、なあツバキ、お前もそう思わないか」

ツバキ「なんでうちに振りますのん」

武蔵「だってお前もさらしだろう?」

ツバキ「うちは下帯どす」

霞「どっちでもいいわよ!」ガーッ


ハナコ「どっちでもいいですから、早く降ろしてくださ~い!」ギシギシ

朝潮「んふううう」ビクビクッ

霞「しょ、しょうがないでしょ! この罠のひっこめ方わかんないんだから!」

ハナコ「だいたい、さっき降ろしてくれたのに、縛ってからまた乗せるとかわけわかんないです~!」

若葉「この縛り方は三角木馬に乗らないと絵にならないんだ」キリッ

ハナコ「え~ん、この人、何を言ってるかわかんないです~~!!」

キャロライン「ね、ねえ、ハツハル……」ハァハァ

初春「な、なんじゃ、どうした!?」

キャロライン「な、なんか、だんだん、気持ち良くなってき」ハァハァハァ

初春「気をしっかり持つんじゃあああああああ!!」

ル級(ナニヤッテルノヨ、コノコタチハ)シロメ


 * そのころのモニタールーム *

ルミナ「なんだいこの変態博物館は」ドンビキ

フウリ「はわわわ……」カオマッカ

カサンドラ「は、はれんちです!」ハナヂ

ルミナ「まあ変態でも何でも、ニコ君に相談だ。」

今回はここまで。

大変お待たせしました。
投下します。


 * 太平洋上 研究施設の沿岸 *

赤城「艦載機のみなさん、用意はいい!?」

瑞鶴「第二次攻撃隊、稼働機、全機発艦!!」

蒼龍「……」

加賀「……蒼龍。何を躊躇っているの」

蒼龍「……いえ、こうしている間に、少尉の艦娘たちがメディウムと戦っているんですよね……」

加賀「そうね」

蒼龍「加賀さんは、何も感じないんですか」

加賀「赤城さんが抱えていた苦悩に比べたら、割り切ることが出来ている分だけマシなんじゃないかしら」

蒼龍「……加賀さんは強いんですね」

加賀「五航戦の子なんかと一緒にしないで」

瑞鶴「ちょっと加賀さん!?」

 * *

 ドーン

 ドンドンドン

 ドカァン

ヲ級(中破)「ク……ッ」

タ級「ヲ級ガヤラレタ!」

ヘ級「対空迎撃、急ゲ!」

 艦載機<ギュォォオオオ

 艦載機<バババババッ

チ級(大破)「!」ドォン

リ級「クソ、ナンテ数ダ……!」


 * *

祥鳳「敵艦載機、全機撃墜しました!」

ローマ「砲戦、用意! 主砲……撃て!」

ビスマルク「逃がさないわよ!」

プリンツ「Feuer ! Feuer !!」


朝雲「敵潜水艦発見! 山雲、行くわよ!」

山雲「りょーうかーい!」

古鷹「加古は大丈夫かなあ……」

筑摩「姉さんも頑張ってるかなあ……」


那智「どうだ、まだ来るか……!?」

千歳「……敵影はひとまず途切れたみたいね」

足柄「そう? みんなは大丈夫なのかしら……」

島風「今のところは優勢みたいだよ?」

白露「私たちも提督に会いに行きたいけど……今はこっちに集中しなきゃね」


 * 戦闘海域の後方 中佐の巡視船内 *

通信(ヴェールヌイ)『司令官、敵艦隊の前衛を八割方撃退したよ』

中佐「よし。このまま徐々に追いつめるぞ、ただし、深追いはするな。あまり追い詰めて撤退させない程度に押しては退いてを繰り返せ」


H中将「中佐。潜入した艦娘たちはどうなったんだ?」

中佐「交渉は決裂したとの連絡を受けました」

H中将「それでは……」

中佐「艦娘たちは、魔神となった提督少尉との直接交渉のため、メディウムとの交戦を開始したとのことです」

中佐「泊地棲姫もまた施設内にいるとの報告があり、交戦は避けられないとの判断……」

中佐「泊地棲姫の部下に泊地棲姫を援護させるわけにもいきませんし、殲滅して泊地棲姫を怒らせるわけにもいきません」

H中将「このまま時間稼ぎするつもりか」

中佐「ええ。彼女たちは提督少尉を止めるため頑張っています。そのためにも、ここは我々が繋ぎ止めてジリ貧に追い込む……」

中佐「そのために知り合いや協力できる艦隊に援護を募って、今こうして戦っています」

通信『X中佐、聞こえるか。こちらW大佐艦隊。外洋からの深海勢力の撃退に成功、引き続き警戒に当たる』

中佐「ありがとう、よろしく頼む」

中佐「艦隊聞こえるか。このまま戦線を徐々に前へ詰める。後顧の憂いはW大佐たちに絶ってもらっている」

中佐「メディウムたちの奇襲に警戒しつつ、前進だ……頼んだぞ」

通信(ヴェールヌイ)『了解』

H中将「こうなると、うまくいってくれることを望むだけだな……!」

中佐「ええ。そのためにも、今は僕たちができることに全力を尽くしましょう……!」


 * 施設 地下通路 *

 タッタッタッタッ…

龍驤「なあ、長門を連れてこないで、ほんまに良かったん?」

陸奥「仕方ないでしょ。長門がああ言い出したら止められないもの」

龍驤「まあ……せやけど、長門だって提督に言いたいことたくさんあったんちゃうんか」

雲龍「……ここにいる人たちはもっと切実な人たちだと思う」

五月雨「……」

金剛「……」

大和「……」

不知火「……」

軽巡棲姫「……」

龍驤「……あぁぁもぉぉ、空気が重たいなあ」

金剛「Hey, 龍驤。私はあなたの軽口、嫌いではありませんヨー?」ニコッ

龍驤「……そう? せやったらもう少しお喋り……あ、あかんわ。敵さんおるやん」

金剛「!」

雲龍「正面の扉に敵影1……ね」

不知火「強行突破します」ジャキ


 ドンドンッ

 扉<ドカァン

金剛「Oh, 物騒なドアノックですネ!」

大和「本当に物騒なのは、その扉の向こうの相手ですよ……!」

扉の先の人影「……!」

 バシュバシュバシュッ

 深海艦載機<ブゥゥゥン!

不知火「敵艦載機……!」

龍驤「艦載機のみんな!」バッ

雲龍「行って」バッ

 烈風&流星改<ブルーン!

 バババババッ

 ドドドドンッ

龍驤「よぉっし、制空奪ったでぇ!」

不知火「しかし……この程度では動じてくれませんか」

金剛「さすがは泊地棲姫ネ」


泊地棲姫「……来タノカ」ジロリ


泊地棲姫「外ガ騒ガシイト思エバ、今度ハコチラカ……忌々シイ艦娘ドモメ……ッ!」

大和「……泊地棲姫。ここは通してもらいます」

五月雨「司令官に……提督に会わせてください!」

泊地棲姫「会ッテドウスル。オマエタチガ会ッタトコロデ、コノ先ノ未来ハ変エラレナイ……!」

人影×2「」タッ

金剛「あれは……!」

大和「来ます! 金剛さん!」

 ガガッ

金剛「……ブッキー……!」ググッ

吹雪「……お久しぶりです、金剛さん!」ググッ

大和「如月さん……背が伸びましたね」ギギッ

如月「成長したのは、背丈だけじゃありませんよ」ギギッ

 バッ

不知火「……3対8……ですか」

陸奥「数で有利と言っても、姫級がいるのよ……って、こっちにもいたわね」

軽巡棲姫「怖ジ気付イタノ?」

雲龍「まさか」


龍驤「ま、メディウムもその辺に控えてるんやろからなあ……数はあてにならんよ?」

五月雨「でも、やることに変わりはありません!」

金剛「Yes ! 提督に会わせてもらうネー!」

大和「いきましょう!」

金剛&陸奥「「全砲門!」」バッ

陸奥「開け!」ジャコン

金剛「Fire !!」ジャコン

大和「行きます!」ジャコン

軽巡棲姫「……」ジャコン

如月「っ!」バッ

 ドガガガン

泊地棲姫「……ッ!」ドドォン

不知火「如月たちはうまく避けましたか……」

陸奥「泊地棲姫もさすがに頑丈ね……!」

ディニエイル「あなた方はどうなのでしょうね? ミス陸奥?」ヒュッ

 コールドアロー<シュパッ

不知火「! 陸奥さん!」バッ


陸奥「不知火!?」

 コールドアロー<パキィン

不知火「くぅ……腕が……!!」ピキパキッ

キュプレ「隙ありぃ! くっつけちゃう!」

 ペッタンアロー<ヒュパッ

龍驤「あ、あかん!」バッ

 ペッタンアロー<ペタッ

龍驤「って、な、なんやこれ!? あかん、うちがあかんでええ!?」グイーン

陸奥「龍驤!」

リンダ「ぺったんこの子にぺったんアローがくっついたんやね。て、どんな洒落やねんな!」パッ

龍驤「!」

リンダ「怖い顔せんで、この辺でリタイアしとき!」ローリングボムカマエ

雲龍「いけない……!」バッ

ノイルース「あなたの得物は式神ですか。陸奥さんともども、よく燃えそうですね」メラッ

雲龍「な……!」

陸奥「やらせないわよ……!」


 ピキッ

ノイルース「? この冷気は……」

 ピキパキパキッ

陸奥「全砲門、装備換装!」ジャキン

ノイルース「陸奥さん……まさかあなたが載せているのは」

陸奥「自分で凍らせてしまえば、砲塔の爆発なんて怖くないわ」ニヤッ

 陸奥の艤装→コールドアロー砲台<バシュバシュバシュッ!

ノイルース「な……!!」ピキパキパキッ

泊地棲姫「クウウ!? ナンダ……氷ノ雨カ!?」ピキッ

ディニエイル「部屋中、氷漬けに……!」

吹雪「見境なしですか!?」

イブキ「やばっ、ノイルースが凍っちまう! 今解かすから待ってくれ! うおおおお!」

 ヒートブレス<ゴォォォ!

 ジュウウウウ…

イブキ「ど、どうだノイルース!?」

ノイルース(凍結)「」

イブキ「あ、あれ?」


不知火「すみません、助かりました」シュウウ…

イブキ「え、ええええ!? 解かしたいのはあんたじゃねえっての!!」

ディニエイル「ならばもう一度凍らせるまでです!」ギリッ

不知火「同じ攻撃を二度も食らうほど、この不知火も間抜けではありません……!」シュッ

不知火「ましてや、かつて力を借りて戦ったあなたなら、なおのこと……!」ドンッ

 不知火の砲弾→ファイアーボール<ゴォォォ!

ディニエイル「な!?」ボワッ

不知火「自分の氷を解かすために、無駄弾は撃ちたくありませんでしたので」

ディニエイル「あちっ! 熱、あちー!?」メラメラメラ

リンダ「ちょ、イブキもデニやんも、なにしとん!?」

如月「こうなったら……吹雪ちゃん!」バッ

吹雪「はいっ! 各個撃破で行きましょう!」バッ

五月雨「!」

大和「五月雨ちゃんを狙いますか!」バッ

金剛「あなたたちの相手は私たちデース!」バッ

如月「そうやってまとまったところを……」

泊地棲姫「狙イ撃ツ……!!」ジャキン


龍驤「……今やぁ!!」

 スリップフロア<パキパキパキーーン!

泊地棲姫「ウオア!?」ズデーーン

如月「きゃあ!?」ズルーン

吹雪「えええ!?」ビダーン

リンダ「んなアホなーー!?」スッテーン

キュプレ「イヤーン!?」ツルーン

イブキ「ギャフン!?」ベターン

不知火「この隙に突破しましょう!」タッ

金剛「龍驤! 早くこっちに来るデース!」

龍驤「ちょい待って! うちも動けへんねん!」ツルツルッ

金剛「それなら私の奥の手を使いマース! これに捕まっててくだサーイ!」

 金剛の艤装→ペッタンアロー<チャキッ

ベリアナ「そうはいかないわ」ズオッ

 ブラックホール<ギュワァァァァ!

金剛「!?」

 ペッタンアロー<バシュ!


 ブラックホール<ギュゥゥゥン ペターン

金剛「Oh !? 私の arrow が black hole に吸い込まれまシタ!?」

陸奥「だ、大丈夫なの!?」

金剛「何かにくっついてマス! どなたか引っ張るのを手伝ってくだサーイ!」グイッ

五月雨「えええ!? お、お手伝いします!」グイーッ

 ペッタンアロー<スポーン

金剛「Okey , 五月雨、nice assist デース!」

五月雨「金剛さん、矢の先っぽに何かついてますよ?」

金剛「? なんでしょウ、紐みたいな布きれのような……」

ベリアナ「それ私のビキニよぉぉぉ!!」スッポンポーン

金剛「!?」

五月雨「ベリアナさん!?」

キュプレ「ベ、ベリアナったら何をしてるのぉ!?」

ケイティー「こうなったら、私が……旦那様のもとには誰も近づけさせないわ!!」グワッ

雲龍「……どいて」ビュッ

 フライングケーキ<ビューン

ケイティー「!?」ベチャ


ケイティー「……」

雲龍「……」

ケイティー「なんのつも」

雲龍「えい」

 フライングケーキ<ビャッ

ケイティー「り」ベチャ

 フライングケーキ<ビャッビャッビャッ

ケイティー「かし」ベチャベチャベチャ

雲龍「……」

ケイティー「……」ベッチャリ

雲龍「……」ビュシ

ケイティー「ら」ベチャー

雲龍「……」

ケイティー「……」

ケイティー「あな」

雲龍「……」ビュ

ケイティー「た」ベチャ

雲龍「……」


ケイティー「……いっ」

雲龍「……」ビャッ

キュプレ「わぷぅ!?」ベチャ

雲龍「あ、ごめんなさい。手元が狂ったわ」ビャッ

ケイティー「たい」ベチャ

雲龍「……」

ケイティー「……何を考えてらっしゃるの……」ベッチャリー

雲龍「……」

ケイティー「……ちょっとあなた……自分がやったことについて、何か一言、言うことはなくて?」ケーキマミレー

雲龍「……自分でやっといて言うのもおかしいけど……あなた、おいしそう」

ケイティー「!?」

雲龍「少しでいいから……食べさせて」ニジリヨリ

ケイティー「な、何を言ってるの!? そういう行為は、だ、旦那様にしか許してないわ!?」ジリッ

雲龍「ひとくちでいいから」ジュルリ

ケイティー「……い、い、いやあああああ!?」ダッ

雲龍「……逃げちゃった。じゃあ、あなたにしようかしら」クルリ

キュプレ「え」ベチャー


雲龍「ひとくち、ちょうだい?」ペロ

キュプレ「」

雲龍「うん。甘くて、おいしい」

キュプレ「……ひやああああああああああ!?」カオマッカ

雲龍「?」クビカシゲ

キュプレ「だだだ駄目です! 私は人と人とを結びつけるのがお仕事であって、私が誰かと結びつくわけにはっ!?」ズザザッ

雲龍「あ、逃げないで。もうひとくち」アーン

キュプレ「駄目です! 駄目ったら駄目です! 私はそういうことしちゃ駄目なんですぅぅぅ!!?」ズザザザザッ

雲龍「……逃げられちゃった」ションボリ

泊地棲姫「何ノ茶番ダァァァァ!!」ウガーー!

陸奥(そういえば戦闘中だったわ……)

泊地棲姫「ニーナ! 来イ! 全員コノ場デ切リ裂イテヤル!!」

ニーナ「はいっ!」パッ

泊地棲姫(ペンデュラム装備)「食ラエエエエエ!!」ブォォン!

五月雨「そ、そうは、いきません! えーい!」

 バナナノカワ< ポイッ

泊地棲姫「エ」ギュム


泊地棲姫「キャアアアア!?」ズルーーン!

 ズドデェェェェン!

泊地棲姫「キュウ……」ピヨピヨピヨ

ニーナ「もういや……」ピヨピヨピヨ

陸奥「す、すごい音がしたわね」

五月雨「だ、大丈夫なんでしょうか……」オロオロ

不知火「泊地棲姫は陸上型ですから、格別に効果的だったんでしょう……多分」

吹雪「き、如月ちゃん……!」

如月「……」

大和「この辺で諦めてもらえませんか、如月さん」

如月「……っ」

大和「私にはもうわかってますよ。ここに……」

 フォールニードル<ガララララッ

五月雨「きゃあああ!?」

大和「ナンシーさんが潜んでいることも」スッ

 フォールニードル<ガキッ

五月雨「お、落ちてくる天井を傘で受け止めるなんて……」

大和「二回目ですから」スッ

金剛「大和の電探は対空電探デスネー」


 大和の艤装→サーキュラーソー<チャキッ

如月「う……」グッ

大和「これ以上、戦う意味はありますか?」

吹雪「如月ちゃん!」ダッ

金剛「ブッキーも動かないでくだサーイ!」バシュッ

吹雪「そんな見え見えのペッタンアローに捕まったりは……」

 バナナノカワ<ギュム

吹雪「あいたーーー!?」ズッテェェン

五月雨「あっ、私の罠をしまってませんでした!」

金剛(吹雪もドジっ子属性持ちデスカ……)

 ペッタンアロー<ペタッ

吹雪「ひゃうっ!?」

金剛「Oh...矢がブッキーのお尻に命中しましたヨ……」

五月雨「え!? ってことは……」

 ペッタンアロー<グイッ スポーン

吹雪「い、いやああああああ!?」


ペッタンアローにくっついてきた吹雪のパンツ「やあ」

金剛「……ブッキーが戻ってきました……」

五月雨「……はい……」

金剛「……変わってないみたいで何よりデース……」

五月雨「……はい……」

吹雪「見ないで! 見ないでえええええええええ!?」

如月「……」

如月「……はぁ」

大和「如月さん?」

如月「なんだか、戦うのが馬鹿馬鹿しくなってきちゃったわ」

ナンシー「如月ちゃん?」パッ

如月「だって、そうでしょう? 吹雪ちゃんと金剛さんのやり取り見てたら、あの島で過ごしてた時のことを思い出しちゃって……」

如月「なんだか、戦える気分じゃなくなっちゃった」クスッ

大和「如月さん……」

如月「大和さんたちだって、提督に会いたくてここへ来たんでしょう?」

如月「長門さんだって、最初は和解しようとしてくれた。私たちが受け入れられる話かどうかは別にしても、ね」

大和「……」


如月「ね、ナンシーさん。みんなを、司令官に会わせてあげたいんだけど、駄目かしら?」

ナンシー「あ、あたしはいいと思うんだけどぉ……ニコちゃんはなんて言うかなあ?」

ルミナ「私は如月君の意見に賛成だよ」スッ

ナンシー「ルミナ!?」

ルミナ「これ以上の抵抗は、私たちの被害が広がるだけで意味がない。残念ながら私たちの『説得』は失敗だ」

ルミナ「君たちが持ち込んだフォージド兵のおかげで、私たちは総崩れ。ニコ君も渋々だろうが承知してくれるさ」

如月「……」

ルミナ「大和君。私たちは、君たち艦娘に対しては一枚岩じゃない」

ルミナ「ニコ君やケイティー君のように、人間に与する者を徹底的に敵視している者もいれば」

ルミナ「ナンシー君やフウリ君のように、かつて魔神君に仕えていた艦娘である君たちとは仲良くしたいと思っている者もいる」

ルミナ「皆が皆、君たちを排斥したいわけではないよ。とにかくこの場はお互い矛を収めよう」

大和「……わかりました」スッ

軽巡棲姫「……ソンナコトヨリ、早クコノ場ヲ収メタホウガイイワ」ユビサシ

ルミナ「んん?」クルッ


龍驤「で、誰がぺったんこやて聞いとん。答えてみいや」エリクビツカミ

リンダ「い、いややわあ姉さん、うちの失言やー認めるから。やから、堪忍。堪忍して」ボロッ

龍驤「悪かったなあ、つるっつるのぺったんこで? どーせみんなに比べたら、うちの胸部装甲は摩擦係数ゼロや。アイスバーンや」

リンダ「そ、そんなことない! ていうか、うちそんなこと言ってへんて!! せやから落ち着いて……」

龍驤「ほーぉ、そんなことないんやったら、うちの胸がどこにあるか当ててみ? ほれ、どこにあるんや」ギヌロ

リンダ「せ、せやから姉さんもうやめてえな! 弄りすぎたんは悪かったって! ほんまに堪忍! 堪忍やーて!」ナミダメ

イブキ「ちょ、ちょっと、誰かあの人止めてくれ!」ボロッ

陸奥「雲龍、早く龍驤を慰めてあげて!」

雲龍「……もっとケーキ食べたかった……」ズーン

陸奥「あとで買ってあげるから! 早く!」

不知火「それよりイブキさんは早くこちらに」

ディニエイル「ノイルースを解凍してあげてください」

ノイルース(凍結中)「」カチーン

イブキ「お、おう」


金剛「ブ、ブッキー、元気を出すデース……」

吹雪「いいんです……私はどうせ全然成長してないお子様下着のもと駆逐艦娘なんです……」タイイクスワリ

五月雨「そ、そんなことないですよ! 胸だって大きくなってるし!」

吹雪「栄養が全部胸に行って頭の中身はそのまんまって、最悪の成長パターンですよね……ええ、わかります」

金剛「Oh, ... こんなに Negative な吹雪は吹雪じゃないデース、元気出してくだサーイ!」

吹雪「ふふふ……元気だけが取り柄の私がこんな風になったら本当に役立たずですよね……ほっといてくださっていいんです……」

五月雨「そんなことより早くぱんつ履いてください! 風邪をひきます!」

吹雪「……ああ、空はあんなに青いのに……」

金剛「現実逃避しないでくだサーイ! ここは地下デース!!」ガーン


ルミナ「……」

軽巡棲姫「……」

如月「……」ズツウ

大和「休戦、しましょうか……」

ナンシー「さーんせーい!」バンザーイ

というわけで今回はここまで!

当初ここまで物語を大きくするつもりはありませんでしたが、
1スレでは収まらない文章量になりそうです。
はみ出す分は僅かだとは思いますが、続きを落とせそうになり次第、
2スレ目をたてようと思います。

それではまた。


こちらの本編はもう少しお待ちを。

保守のついでに、この鎮守府とは関係ない過去作です。


【艦これ】提督「明石、下着を買いたいんだが」明石「へっ!?」
【艦これ】提督「明石、下着を買いたいんだが」明石「へっ!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486816166/)

【艦これ】朧「秋月型の机の上からカニ食べ放題のグルメ雑誌が見つかった」
【艦これ】朧「秋月型の机の上からカニ食べ放題のグルメ雑誌が見つかった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1497974830/)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月16日 (土) 12:12:23   ID: ctwtOmeb

どシビアな展開が続いていたのに、何やらコミカルになってきたな…。

しかし、「人類の敵」認定されてる現状だと、どう足掻いても平穏は来ないよなぁ…。

2 :  SS好きの774さん   2017年10月30日 (月) 00:09:38   ID: qrdH6rMN

とうとう最終かドキドキするぜ

3 :  SS好きの774さん   2017年11月09日 (木) 20:49:18   ID: jQBEVB2a

わーい続きだー

4 :  SS好きの774さん   2017年11月12日 (日) 20:25:28   ID: yvX7zeQX

とりあえず、艦娘とメディウムで共同戦線でも張って、
元凶たる大本営の欲ボケ共を掃除するのが先決じゃないかな?

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom