神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 3社目(955)



神様「前スレだ!!」
神様「神様だっ!!」 神使「神力ゼロですが・・・・・・」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1471198434/)

神使「読む必要は無いようですね」

神様「!?」


神様「前々スレだ!」
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1455635965/)

神使「こちらも読まなくて良いと思います」

神様「そうなの!?」


神様「・・・・・・」ジー

神使「あの、神様?」

神様「何だよ」

神使「早くお決め下さい」

神様「そんな事言ったって、こんな重大な事すぐに決められないって」

神使「選択肢はないと思うのですが・・・」

神様「でもっ・・・」

神使「・・・・・・」


神様「よし、決めた!」

神使「どちらに?」

神様「店員さん、私“あんまん”で」

店員「あい」


~あらすじ~

神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「神宮が誇る最大の問題児。 給料14万円、貯金残高601円で無期出向中のダメ女神です」


【#14】

――― きせき野町


神使「“あんまん”と“もずくまん”なんて悩む必要ないと思うんですが」

神様「いや、以外と美味いかも知れないじゃん。もずくまん」

神使「そうでしょうか?」

神様「なんでピザまんが売り切れなんだよ」パクッ

神使「あっ! 神様、歩きながら食べるなんてダメですよ」

神様「うるせー」パクッ パクッ

神使「神宮の女神である事を少しは自覚して下さい」

神様「私のお金で買ったんだし好きにさせろってーの!」アムアム

神使「あまり無駄にお金を使っているとすぐに無くなっちゃいますよ?」

神様「そうね、すでに残り250円しかない。 銀行にある601円と合わせて私の全財産は851円だ」

神使「・・・・・・」

神様「ちゃんと私を養ってね、高給取りの最高位神使さま。 ハート」


神使「さてと。 では次の勤務先に急ぎましょう」

神様「話をおそらしになられましたね?」

神使「私は金づるではありません」

神様「私は神使君のヒモです!」

神使「どこの世界に使いの者に集る神がいるんですか・・・」

神様「ココにいます!」フンスッ

神使「・・・・・・」


神様「妾は神宮が誇るかわゆい女神でありんすぞ? 我が使いはその身をもってもてなすのじゃ」

神使「言葉遣いが変です、何年この国にいるんですか・・・」

神様「2000年以上おりますが」

神使「そんな立派な神なのにどうして悪さばかりするんです?」

神様「してねーよ! いつしたよ! してねーよ!!」

神使「お守りの値引き販売、他の神への賄賂、職務怠慢、神宮菜園からの野菜泥棒」

神様「・・・・・・」

神使「減給は日に日に額が大き苦なる一方、私も連帯責任で―――」

神様「分かった! 分かったよ・・・ 次はちゃんと仕事するから」

神使「お願いしますよ?」

神様「でもさぁ~ 出向という名の左遷はいつまで続くんだ?」

神使「最低でも2000円のお守りを300円で売り続けた3年間分の補てんが完了するまでは、神宮に帰れないと思います」

神様「結構な数売ったしなぁ~ こりゃ帰れないな。 ハハハッ」ズーン


テクテク


神使「あっ、見えましたね。 たぶんあのお社が次の私達の勤務先です」

神様「神明社か?」

神使「よくお分かりになりますね」

神様「一応これでも業界人なもので」

神使「はさまれ神社です」

神様「何に挟まれてんだよ・・・」


――― はさまれ神社


神様「あぁ~・・・ 確かに挟まれてるね」

神使「お隣は教会とお寺さんのようです」

神様「神社、細長!」

神使「両隣は大きいんですけどね」

神様「やっぱ神社って弱いよね~」

神使「・・・・・・行きましょう」


神様「ちょっと待った!」

神使「?」

神様「まず、今回の目的を聞きたいと思っている神ちゃんであった」

神使「復興です」

神様「は?」

神使「はさまれ神社を建て直せと」

神様「なるほど、三大宗教の激突ですね?」

神使「・・・・・・」


神様「帰らない?」

神使「神宮からの指令です」

神様「いやいや、私達は何と戦うんだよ」

神使「キリストさん?」

神様「わざわざ日本に来ないだろ・・・ っていうかいるのか?」

神使「お釈迦様?」

神様「ココは立川かよ・・・」

神使「・・・取りあえず社務所に行きましょう」


テクテク


暇を持て余す
のんびり行こうと思うのでした


―――社務所


ガラガラ


神使「・・・・・・」

神様「うはっ! カビ臭!」

神使「荒れ放題ですね」

神様「今までほったらかしにしておいて、どうやって他宗教にタイマン張るんだよ」

神使「別に喧嘩しろと言う事ではないと思うのですが」

神様「取りあえず窓開けよう」

神使「はい」ガラガラ


ブオォー


神使「うわっぷ・・・」ガラガラ ピシャッ

神様「何、今の冷たい風」

神使「お隣のエアコンの室外機でしょうか」

神様「仕方ないな、反対側の方だけ開けるか」ガラガラ


ブオォー


神様「ぶばばばば・・・」ガラガラ ピシャッ

神使「・・・・・・」


神様「帰ろ?」

神使「よ、良かったじゃないですか。 神様の憧れていたコンクリートジャングルですよ?」

神様「ん? コンクリートじゃなかったよ? お隣のお寺さん立派な木造建築」


神使「後ろ、裏手の窓を開けましょう」ガラガラ

神様「墓!」

神使「・・・・・・」ガラガラ ピシャッ


神様「墓見えた! 一面墓畑!」

神使「変な言葉を作らないで下さい」

神様「なんだよ、この神社の立地は・・・」

神使「そ、そういえば神様お昼寝まだでしたよね。 少しお休みになりますか?」

神様「どこで寝るんだよ。取りあえず寝る場所だけでも確保しないとマズいな」

神使「そうですね。 社務所は厳しそうですし・・・ 本殿の方を見てみましょうか」

神様「そうね」


――― 本殿


ギィー


神様「・・・・・・」

神使「これはこれは・・・」

神様「ねぇ、廃社にしない? 復興とか無理だって」

神使「・・・・・・」

神様「これ寝る場所確保するの無理だろ。 床に穴あいてるよ?」

神使「今日は無理でも2~3日使って掃除すれば寝る場所くらいは・・・」

神様「お前は狛犬に姿を変えれば外でも良いかもしれないけど、私は無理だからね?」

神使「私もできれば外で寝たくはないです」


神様「ん? 犬ころ、手に持ってる袋って何?」

神使「お隣さんへのご挨拶用の洗剤セットです」

神様「ふ~ん」

神使「先にご挨拶にでも行きましょうか」

神様「問題先送りってヤツですね」

神使「・・・・・・」


――― キセキ野教会

ギィ


神使「すいませ~ん」

神様「留守?」

神使「でも扉が開いていますので誰かいると思うのですが」

神様「寒いから中入ろうぜ」トテトテ

神使「ちょっと神様、勝手に入っちゃ・・・」


スタスタ


神様「うわぁ~ 凄いな」

神使「立派な礼拝堂ですね」

神様「ん?」

神使「どうされました?」

神様「あの壁画」

神使「随分と前衛的な絵ですね・・・ マリア様と天使でしょうか」

神様「犬ころ、僕もう疲れたよ。 一緒に休もう・・・」

神使「神様、フラソダースの犬好きなんですか?」

神様「あ?」

神使「よくその言葉を仰ってますので」

神様「読んだ事無いけどね~」

神使「そうですか・・・」


修道女「あの~」

神様・神使「?」クルッ

修道女「礼拝でしょうか?」

神使「申し訳ございません、勝手に入ってしまいまして」

修道女「いいえ、大丈夫ですよ」ニコッ

神様「!? あ・・・ ぁ・・・」ワナワナ

修道女「?」

神使「神様? どうされたんですか?」

神様「修道服、かわゆい・・・」ゴクリ

神使「神様、本当に制服好きですね・・・」


修道女「あの・・・」

神使「あっ、申し訳ありません。 私達、はさまれ神社に赴任して参りました神宮の者です」

修道女「はさまれ・・・ お隣の神社さんですか?」

神様「かわゆい神ちゃんです!」

修道女「本当に可愛い巫女さんですね」ニコッ

神様「でしょ! 犬ころ、メモ」

神使「・・・私は神使と申します」

修道女「はじめまして、シスターと申します」

神使「ご挨拶にと思ったのですが、扉が開いていたものでつい・・・」

修道女「日中はどなたでも入れるように開けているので気になさらないで下さい」

神使「そうだったのですか。 立派な礼拝堂ですから多くの人に見て頂きたいですものね」

修道女「ありがとうございます」


神様「ねぇ」

修道女「?」

神様「あの絵って・・・」

修道女「以前ここに寄贈された絵画と聞いております」

神様「へぇ~」

神使「神様、あの絵が気になるんですか?」

神様「ん? いや~ 凄く精神の深いところに訴えかけてくる絵だなぁ~って思って」

神使「そうですか?」

修道女「私もあの絵は大好きです」


神使「あっ、これよければお使い下さい」スッ

修道女「ご丁寧にありがとうございます。 まぁ、お掃除洗剤」

神使「ありきたりな物ですいません」

修道女「そんなことありません。 とても助かります」ニコッ

神使「色々とご迷惑をおかけするかも知れませんが、どうぞよろしくお願いいたします」

修道女「こちらこそ、よろしくお願いいたします」ニコッ


神様「」キョロキョロ

神使「今度はどうしたんですか?」

神様「ん? いや・・・ また来てもいい?」

修道女「ふふっ、いつでも気軽に遊びに来て下さい」

神様「宗教違うけどいいの?」

修道女「もちろんです。 神社さんのお話もぜひ聞かせて下さい」



テクテク


神使「とても素敵な方でしたね」

神様「う~ん・・・」

神使「なにか気になる事でも?」

神様「なんでシスターがいたんでしょ~か」

神使「教会ですからシスターさんが居ても不思議はないと思うのですが・・・」

神様「そう? まぁいいや。 次は寺行くの?」

神使「はい」


――― キセキ野寺


住職「チャオ!」

神様・神使「・・・・・・」

住職「?」

神様「ココのお寺の人?」

住職「そうで~す。 オ~ ベリッシマな巫女さ~ん」

神様「・・・・・・」


神使「外国の方ですか?」

住職「すごい! よく分かりましたね~ イタリアの人で~す」キラッ

神様「見りゃ日本人じゃないことくらい分かるわ・・・」


神使「私達、隣の神社に赴任いたしました神宮の者です」

住職「オ~ 神社! 私大好きで~す」

神使「ご迷惑をおかけするかも知れませんが、よろしくお願いいたします」

住職「何でも相談して下さ~い。 スィニョリーナ、コーヒーでもいかがですか?」キラッ

神様「いえ、私はコーラ派ですので今日は失礼いたします」ペコリ

住職「オ~ 残念。 あいにくコーラ切らしてます・・・」


神使「あの、これ良ければお使い下さい」スッ

住職「デテルジェンテ! 助かりま~す」

神使「・・・それでは、私達はこれで」

住職「お構いも出来ず、すいませ~ん」

神使「お気になさらず」ハハハ


住職「スィニョリーナ! コーラ用意しておきますからいつでも来て下さ~い」

神様「はい」ペコリ


――― はさまれ神社


神使「ビックリしましたね」

神様「お経とかちゃんと読めるのか?」

神使「さぁ・・・ でもあれだけ大きいお寺さんの住職様ですから・・・」

神様「なんか私、あれ嫌い」

神使「そんな、初対面で失礼な・・・」

神様「クソ坊主がケンカ腰で塩いて出てくるのを期待してたのに」

神使「そんな分かりやすい態度をとってくる方が異常だと思いますが」

神様「それよありさぁ~ どうすんだよこの神社」

神使「修繕できるところは直して寝るところだけでも確保しましょう」

神様「どちらにしろ今日は泊まれないから宿は用意しておけよ?」

神使「はぁ・・・」

神様「ヌルヌルした温泉付きの宿で頼む。 肌に良いんだよヌルヌルが」

神使「・・・・・・」


――― 夜


神様「嫌だよ~」

神使「そう言わずに・・・」

神様「だってさぁ~」

神使「駅前に出ればネットカフェがありますから」

神様「ネカフェで一夜を過ごす神とか現代の闇に馴染みすぎだろ!」

神使「では、外で野宿しますか?」

神様「勘弁して下さいよ、神使さ~ん」

神使「私が狛犬になりますので、抱いていればいくらか暖かいと思います」

神様「生死をかけてまで寝たくない!」

神使「ワガママ言っていないで行きますよ」

神様「ヤダヤダ! 旅館が良い! ヌルヌルした温泉に入りたい!」ジタバタ


修道女「?」キョロキョロ

神様「あっ、シスターちゃん」


修道女「どうされました?」

神使「夜分に大きな声を出してすいません・・・」

神様「神社が廃墟で寝る場所がないの」

修道女「それは大変ですね。 もしよろしければ、お部屋をお貸しいたしますが」

神様「マジで!?」

神使「お気になさらずに。 駅前で夜を過ごしますので」

神様「え~ でもネカフェだろ~?」


修道女「ネカフェ?」

神使「その・・・ 24時間営業のカフェの様な所です」

修道女「それでは体も休まらないでしょう。 どうぞ遠慮なさらずお入り下さい」

神使「しかし・・・」


神様「今日は甘えようよ」

神使「本当によろしいのでしょうか?」

修道女「どうぞ、空いている部屋は沢山ありますから」ニコッ


――― キセキ野教会


神使「本当に申し訳ありません。 正直助かりました・・・」

修道女「気になさらないで下さい、お互い様です」

神様「おっと、犬ころはここまで~ 今日は礼拝堂の隅っこで寝ること」

神使「えっ?」

神様「お前は礼拝堂から奥に入っちゃだめ。 その方が良いでしょ? シスターちゃん」

修道女「・・・・・・」


神使「何か問題でもあるんですか?」

神様「ここ、修道院だよね。 しかも女子修道院」

神使「修道院!?」

修道女「よくお分かりに・・・ しかし私以外に人はおりませんから気になさらなくても」

神様「?」

神使「どうされました? 神様」

神様「いや何でも。 取りあえず犬ころは今日はココで寝ること」

神使「そう言うことでしたら、気にしないで下さい。 私は外でも寝られますから」

修道女「しかし、客間の方をお使い頂く位でしたら」

神様「大丈夫だって。番犬にもなるし丁度良いって」

修道女「番犬!? そんな・・・ 信仰は違えど神にお仕えする方を番犬扱いなど・・・」

神使「お気になさらず。 ワンワン」

神様「ね?」

修道女「フフッ。では、お布団をお持ちいたしますので」スタスタ


神使「神様?」

神様「あ?」

神使「何か知っているんですね?」

神様「嫌だな神使君、なんでもごじゃりませんよ?」

神使「こちらの修道院にお心当たりがあるんですね?」

神様「・・・・・・」

神使「言いたくなければ無理には伺いませんが」

神様「・・・あれは、私がお爺さんと愛犬のパトラッシェと一緒に住んでいたときだった。 貧しい生活に耐―――」

修道女「お待たせいたしました。 お布団です」スタスタ

神使「ありがとうございます」

神様「・・・・・・」

神使「あっ、すいません神様。 まだお話になります?」

神様「いや、いいや・・・」


神様「ねぇシスターちゃん」

修道女「はい?」

神様「この修道院は他に人は居ないって言ってたけど?」

修道女「人は・・・ 私だけです」

神様「人以外は?」

修道女「!?」

神使「神様、何を言っておられるのですか?」

神様「あ~ ちょっと意地悪な質問だったかな」

神使「?」


神様「フラソダーピスチヌ会女子修道院、設立者はシスターアロハ」

修道女「よく・・・ ご存じで・・・」

神使「随分お詳しいんですね」ジー

神様「何見てんだよ。 やんのかコラッ!」

神使「なんでそんなに柄悪いんですか・・・」

神様「お前じゃねーよ」

神使「?」


ダダダダダッ


?「神ちゃん!?」ズサッー

神様「やっぱり居た」

修道女「シスターうさー! お戻り下さい」

神使「シスターうさー・・・?」

修道女「いえ・・・ これは・・・」オロオロ

うさー「大丈夫だよシスターちゃん! 彼女は私の友達だから!」

修道女「シスターうさーのお知り合いなのですか?」

うさー「うん! 神ちゃんって言って神宮の神!」

修道女「神!?」


神様「あっ、本業は見ての通り巫女ね。 神はバイトみたいなものだから」

神使「立場が逆かと・・・・・・」

修道女「・・・・・・」


うさー「久しぶり! 神ちゃん!」

神使「神様、ご紹介お願いします」

神様「こいつは、はさまれ神社の主神でうさー」

神使「主神様!?」

神様「神階の登録は・・・ 従三位だっけ?」

うさー「正三位だよ! もうどっちでも良いけど」

神様「こんな性格だから神階は高くないけど、神力は猫神と同じくらいある」

神使「え!?」


神様「お前いつまで修道院にいるつもりだよ」

うさー「私は修道女! ここで祈りの生活を続けるの!」

神様「はぁ? お前、神だろ・・・」

うさー「もう神社に戻らないもん! シスターとして修道院で生きていくんだもん!」

神様「お前は日本の神! 自分の立場も忘れたのかっ!!」

神使「神様・・・ それブーメランですよ?」


うさー「それより、そっちの男の人は~ ・・・だれ?」

神使「申し遅れました。 私、神様の使いをしております狛犬の神使と申します」フカブカ

うさー「神ちゃんの神使さんなんだ。 よろしくね!」


修道女「そんな・・・」

神様「どったの?」

うさー「あ~ 自分の信仰する神には会った事がないのに、こう簡単に他の宗教の神に会ったら・・・ ねぇ」

修道女「い、いえ! 神は存在します! 主よ、少しでも疑念を抱いてしまった私をどうかお許し下さい。 アーメン」

神様「ラーメン」

神使「・・・・・・」


神様「ねぇ、シスターちゃん?」

うさー「なに?」

神様「お前じゃねーよ、偽シスター」

うさー「に、偽!?」


神様「シスターちゃんは、うさーの正体を知ってるんだよね?」

シスター「はい。 しかし過去はどうであれ今は敬虔な修道女、シスターうさーです」

うさー「そう! 私はこの修道院で祈りの生活を送るシスターなのです! ラーメン」

神様「塩バタコーンラーメン」

神使「・・・・・・」


神使「何故うさー様は、修道院で修道女など・・・」

うさー「ここが私の本来の居場所だからです。 塩バタコーンラーメン」

神様「塩バタコーンネギチャーシューラーメン、大盛」

うさー「素晴らしい! お~神よ、この者達に祝福を」ピカー

神使「!? 後光が!」

シスター「シスターうさー、力が漏れています・・・」オロオロ

うさー「あっ、失礼」シュー

神様「・・・・・・」


うさー「神ちゃんありがとう! 来てくれるって信じてた!」

神様「は?」

うさー「この修道院を守るために来てくれたんでしょ!?」

神様「いいえ、違いますが。 何わけの分からない事を仰っているのですか?」

うさー「そんな事言って、相変わらず照れ屋さんなんだから!」

神様「神社VS教会VS寺の右手で握手して左手で殴り合う陰湿な宗教戦争をするために来たのです」

うさー「!?」

神様「三大宗教をぶっ潰して“神ちゃん世界教”を作るのさ」ウヒヒヒ

神使「違います。 そんないかがわしい教団作りませんし、宗教戦争など起こしませんから」

神様「あ? そろそろ私の時代だろ。 私が頂点に立つ頃合いだろ」

神使「そんな世界お断りいたします」

神様「うん、確かに何度かこの国を治めていた時は失敗した。 でも、その教訓を生かせば次は大丈夫だと思うんだよ!」

神使「・・・・・・」


うさー「お願い神ちゃん! 助けて!」

神様「お前はさっきから私の話の腰を折ってんじゃねーよ! もっと乗っかって来いよ!」

神使「何か問題事でも?」

うさー「バレそうなの」ウルウル

神様「はぁ? 」

修道女「実は・・・ シスターうさーの力が知られてしまったようで・・・」

神使「力・・・ ですか?」

神様「お前、神力使って何かしたのか?」

うさー「気づかないうちに漏れちゃったみたいで・・・」


修道女「司祭様がここを尋ねてきたときに、その・・・ 先ほどのように後光が・・・」

うさー「しかも慌てて隠したら力が暴走して宙に浮いちゃって」

神様「すげーじゃん。 どうやって浮くの? 私にも教えて?」

うさー「うん。 神力放出を逆に―――」

修道女「シスターうさー、真面目に」

うさー「はい・・・」

神使「司祭様にうさー様の力を見られたというのですね?」

修道女「はい。 見事な後光を出して宙に浮いたところを・・・」

神様「そんなの適当にあしらっておけば良いんじゃないの? 幻覚とか言って」

修道女「実は、司祭様がバチカンにご報告をしてしまい・・・ パチカンから奇跡調査が来る事に」

神使「奇跡調査?」


修道女「シスターうさーの力を奇跡として認定しようとしているのです」

神使「なにか不都合でもあるのですか?」

神様「日本の神がパチカンに奇跡として認定とか普通に考えてダメでしょ」

神使「まぁ、そうですよね」

神様「この修道院だってタダじゃ済まないし、マジもんの宗教戦争だよ?」

神使「・・・・・・」

うさー「お~ 神よ、救い給え・・・ 塩バタコーンネギチャーシューラーメン、大盛」

神様「君、何の神にお祈りしてるの? 自分も神だからね?」


うさー「神ちゃん、お願い! 修道院を守って!」

神様「だからなんで私なんだよ!」

うさー「くろまやラーメンの塩バタコーンネギチャーシューラーメン大盛ご馳走するから」

神様「え~ 私はとさん子ラーメン派なんだけど~」

神使「神様、何とかならないんですか?」

神様「他宗教に手を出すのはさすがにダメだって」

うさー「神ちゃんしか頼りに出来る人がいないの」

神様「お前がココを出て行けば解決するだろうが。 神社に戻れよ」

うさー「・・・・・・」

神様「?」


うさー「お願い神ちゃん、虫のいいお願いだけど・・・ この修道院を救って下さい」フカブカ

神様「・・・・・・」


〓〓〓

神様「パチカン!」

修道女「申し訳ございません・・・」ペコリ

〓〓〓


――― 夜


神使「神様? そろそろ10時ですから就寝されます?」

神様「そうね。 しかし、あいつらが8時に寝るとは思ってなかった・・・」

神使「その代わり朝3時起きと言ってましたから」

神様「早いね~」ポイポイ

神使「・・・さすがに下着姿で修道院内をウロウロするのはダメですよ?」

神様「分かってるよ」

神使「あの・・・」

神様「ちゃんとパジャマ着る!って」

神使「当たり前です。 それより、うさー様のことお伺いしても良いでしょうか?」

神様「うさー?」


神使「はさまれ神社の主神さまと先ほど仰っていましたが」

神様「あ~ うさーは元神使で、その前はシスターアロハに飼われていたウサギなんだよ」

神使「シスターアロハ? 確か、初代院長でしたっけ」

神様「そうそう。 その後、私の神使を経て神になって神社に赴任した」

神使「なるほど」

神様「で、風の噂でシスターアロハが修道院を作るって話がうさーの耳にも届いてさぁ」

神使「うさー様は恩返しで手助けしたくなりますよね」

神様「あいつ、はさまれ神社の土地を半分譲っても良いか? って私に相談しに来て」

神使「しかし、他宗教ですし神宮が許可しませんよね」

神様「大変だったよ、小細工するのは・・・」ハァ

神使「譲ったんですか!?」


神様「神社の土地10%だけ。 うさーのやつ、何日も私の前で土下座しに来やがって・・・」

神使「まさか、神宮に内緒で・・・」

神使「10%減るくらいなら大したことないと思ったんだけど、今日見た感じでは90%以上減ってたな」

神使「真逆じゃないですか・・・ それで、はさまれ神社はあんなに細長かったのですね」

神様「しかも、アロハ1人だけじゃ修道院を運営できないから手伝いもするって」

神使「それ以来うさー様は修道院に残っていると言う事ですね」

神様「そうね」

神使「何故、うさー様は修道院にこだわるのでしょうか?」

神様「・・・・・・」

神使「シスターアロハはすでにお亡くなりになっているのですよね、なぜ今も修道女を・・・」

神様「・・・・・・」

神使「神様?」

神様「取りあえず今日は寝よう」

神使「分かりました」


神様「そうだ、犬ころは今日寝たくないだろ?」

神使「・・・・・・。 はい?」

神様「眠れないだろ」

神使「程よい疲労感による眠気が私のまぶたを下げようとしておりますが」

神様「奇跡調査というのが気になる。 寝ずに番犬してろ」

神使「・・・神様は?」

神様「程よい疲労感による眠気が私のまぶたを下げようとしているから、奥の部屋のベットに身を委ねる」

神使「・・・・・・」

神様「おやすみ、パトラッシェ」トテトテ


――― 翌朝


神様「ふぁ~ よく寝た」トテトテ

神使「あっ、神様おはようございます」

神様「何か変わったことは?」

神使「特にございませんでしたが」

神様「あっそう」

神使「・・・・・・」

神様「まぁ、そういうこともあるさ。 ほら、ご褒美に“うんまい棒”やるから」ホレッ

神使「どうも・・・(粉々・・・)」


修道女「おはようございます。 お二人ともゆっくり眠れましたか?」スタスタ

神様「バッチシ!」

神使「・・・・・・」

神様「うさーは?」キョロキョロ

修道女「シスターうさーは朝食の準備を」

神様「じゃぁ犬ころ、私達も朝ご飯食べに外行こうか。 朝焼肉が良いと思うの」

神様「何ですかそれ・・・」

修道女「お二人の分も用意いたしておりますのでぜひご一緒に」

神様「私達も良いの?」

修道女「もちろんです」ニコッ


――― 食堂


神様「このパン美味しい」モグモグ

神使「私達だけメニューが違うようで申し訳ありません」

修道女「お気になさらず」

うさー「さすがにお客様に修道女と一緒のメニューはキツいだろうしね!」

神様「シスターちゃん達はそれだけで足りるの?」モグモグ

修道女「馴れてしまえば大丈夫です」

神使「神様も、普段は質素な食事を心がけてはいかがですか?」

神様「は? お前、巫女はガテン系だぞ? もりもり食べないと仕事できないってーの」

神使「いつの時代から巫女はガテン系になったんですか・・・」


神使「それより、どうなさいます?」

神様「何が?」モグモク

神使「うさー様の件ですよ」

神様「あ~」

神使「うさー様が神力を無意識のうちに放出しなくなれば良いんですよね?」

神様「いや~ 問題はそこじゃないだろうな~」

うさー「・・・・・・」

神様「お前、神辞めて人になるか?」

うさー「神を、辞める・・・」

神様「・・・・・・」ジィー

うさー「やっぱり・・・ それしか方法無いのかな・・・」シュン

修道女「シスターうさー・・・」


神様「さてと、ごちそうさま。 犬ころ、帰るぞ」

神使「え?」

神様「私達も仕事がある。 シスターちゃん、泊めてくれてありがとう」ペコリ

神使「大変お世話になりました」ペコリ

修道女「いえ、こちらこそ逆にご迷惑をおかけしてしまったようで」

うさー「・・・・・・」


神様「うさー」

うさー「?」

神様「お前のしている事は許される事ではない。 神法上では重罪だ」

うさー「・・・・・・」コクッ

神様「でも、私はお前に神の力を与えた以上・・・ その行使がどんな物であれそれを受け入れる」

うさー「神ちゃん・・・」


神様「シスターちゃん」

修道女「はい」

神様「どの宗教の神を信じようが、この国にいる以上私は皆の力になる。 遠慮しないで頼って欲しい」

修道女「ありがとうございます」フカブカ


神様「帰るぞ、犬ころ」トテトテ

神使「はい。 いつでも相談に来て下さいね」ペコリ

修道女「・・・・・・」


テクテク


神使「神様、もしよろしければ教えて頂きたいのですが・・・」

神様「あ?」

神使「なにか気になる事があるんですよね?」


神様「・・・あの修道院は奇跡が満ちている」

神使「奇跡? うさー様の神力という事ですか?」

神様「神の力は奇跡じゃない」

神使「?」


――― 午後・はさまれ神社


神様「うへ~ ちかれた」グテッ

神使「えっ!? まだ掃除始めて1時間も経っていませんよ?」

神様「だってさぁ~ これ掃除しても無理だって」

神使「しかし・・・」

神様「それに、か弱い私に力仕事なんて出来ないよ」

神使「・・・あの、先ほど巫女はガテン系だと仰ってませんでしたっけ?」

神様「いつまでも過去に囚われてんじゃねーよ。 今を生きろ!」

神使「・・・・・・」


ギィー


修道女「あの~」

神様「ん?」

神使「シスターさん」

修道女「先ほどはどうも」ペコリ

神使「どうされました?」

修道女「・・・少しお時間よろしいでしょうか」

神使「?」


――― 境内


神使「まともな場所が用意できず申し訳ございません」

修道女「いえ・・・ お気遣い無く・・・」

神様「ねぇ、なんで真冬なのに外でパラソル出して話しをしなきゃいけないの」ブルブル

神使「社務所も本殿も崩壊寸前ですから」

神様「せめてサ店行こうぜ、サ店」

修道女「私のことでしたらお気になさらず。 この格好ですのであまり外をうろつくのもアレですし」

神様「え~」

神使「はい、神様コーラあげますから」コトッ

神様「キンキンに冷えてんじゃねーかよ! 何、嫌がらせ? ねぇ、嫌がらせ?」プシュ

修道女「・・・(でも飲むんですね)」


神使「うさー様はお留守番ですか?」

修道女「えっ? あ、はい・・・」

神使「それでお話しというのは?」

修道女「実は、シスターうさーの件でして」

神様「寝ている時間が長くなった?」グビグビ

修道女「!?」

神使「お寝坊さんと言うことですか?」

修道女「私も最初はそう思って注意をしていたりしたのですが・・・」

神使「体調でも悪いんでしょうか?」

修道女「シスターうさーは気にしないでと言っているのですが、最近は私を気遣って無理をしているような気がします」

神様「あいつは神だからな、まぁ当然だね」ゲップ

神使「どういうことです?」


神様「少なくともあいつはこの神社の主神だ」

神使「まぁ、形式上はそうですね」

神様「この状況見ろよ。 参拝者なんて何年も来てないだろ」

神使「確かに、その気配は感じられませんよね」

神様「そういうこと」

神使「?」

神様「だから神は参拝者からのお願い事で神力が溜まるの」

神使「・・・しかし、うさー様は無意識で放出するくらい神力が強いのでは?」

神様「あれはアイツ自身が持ってる元々の神力、資本金みたいな物だよ」

神使「・・・・・・」

神様「何だよ」

神使「神様、今の説明凄く分かりやすかったです」

神様「軽くバカにした?」ゲシッ


修道女「では、シスターうさーの神力というのが底をつきかけていると?」

神様「もって1年」

修道女・神使「!?」

神使「ど、どういうことですか?」

神様「1年後に消えるって事、もっと早いかも」グビグビ

修道女「そんな・・・」

神使「何か方法はないんですか?」

神様「神社に戻すか、神を辞めて人になるかの2つしか方法はない」

修道女「・・・・・・」


神様「シスターちゃんはどうしてあの修道院でシスターに?」

修道女「・・・私、孤児なんです」

神使「ご両親がお亡くなりに?」

修道女「いいえ、その・・・ 捨て子でして」

神使「ぁ・・・」

修道女「あの修道院の前に捨てられていたそうです」

神使「そうだったのですか・・・ 立ち入ったことをすいません」

修道女「いいえ、お気になさらず」ニコッ

神様「シスターアロハって知ってる?」

修道女「私が物心つく前にお亡くなりになったと聞いています」

神様「そう」

修道女「以来、シスターうさーが私をここまで育ててくれて」

神使「うさー様が修道院を離れない理由はそういう事があったのですね」


神様「・・・シスターちゃんはどうしたい?」

修道女「・・・・・・」

神様「このままだとアイツは1年以内に消える。 人で言う死ぬって事」

神使「ちょっと、神様・・・」

神様「神社に戻せば神力は回復できる。 ただアイツは神法違反をしている」

修道女「神法違反?」

神様「神宮に引き戻して最低でも数百年はまともに外には出られない」

神使「そんな・・・」

神様「神力を無くして神籍抹消すれば人になることも出来る」

神使「うさー様は躊躇していたみたいですが」

神様「そうだろうな~ あいつはたぶん人には戻らないと思う」

神使「なにかお心当たりが?」

神様「・・・・・・。 ハァ~ どうすっかな~」


修道女「私にできることはないでしょうか」

神様「・・・・・・」ジッー

修道女「?」


神使「そういえば奇跡調査の方は?」

修道女「まだ・・・ 事前連絡なしで来るとのことですので」

神様「あ~ そっちもあるんだよな・・・ 面倒くさい」

神使「面倒だなんて失礼ですよ?」

神様「先にそっちをどうにかしないとな」

神使「何か策はあるんですか?」

神様「シスターちゃん」

修道女「はい」

神様「私からもお願いがあるんだけど良い?」

修道女「?」


――― 夕方・キセキ野教会


神使「・・・・・・」

神様「ふへへ~♪」ニッコニコ

うさー「うん、神ちゃん似合ってる!」

神様「やっぱり? 私って何着ても似合うよね」


神使「あの・・・」

神様「何だよ犬ころ」

神使「なぜ神様が修道服を?」

神様「私はシスターかわゆーいカミーです」


神使「何ですかその名前・・・ かわゆーいは不要だと思うのですが」

神様「天の裁き!」ゲシッ

神使「痛っ!」

神様「天にましまし神よ、この邪道極悪腐れ犬ころを地獄に送り給え。 次郎系ラーメン」

神使「ましまし、って・・・」


うさー「神使くんも似合ってるよ! 本物の神父様みたいだね!」

神使「ありがとうございます・・・」



ギー


司祭「失礼いたします」

修道女「司祭様!?」

司祭「おや、お客様ですか?」

修道女「あっ、こちらは・・・」


神様「初めまして、シスターかわゆーいカミーです」

司祭「シスターカミー?」

神様「シスター“かわゆーい”カミーです!」

司祭「はじめまして、シスターカミー」

神様「・・・うん」


司祭「そちらは?」

神様「こっちはシンシー神父」

神使「え!?」

神様「話を合わせろ」ボソッ


神使「は、はじめまして。 神父のシンシーと申します」ペコリ

司祭「これはこれは初めまして、シンシー神父。 どちらの教会から?」

神様「伊勢! 私達はシスターうさーに呼ばれて参りました」

司祭「それはわざわざご苦労様です。 私はこの地区一帯を管理してます司祭と申します」


修道女「あの、司祭様? 今日はどのようなご用件で」

司祭「そうでした、今日の夕方にパチカンから使者の方がお見えになります」

うさー「今日!?」

修道女「そんな急に・・・」

司祭「シスターうさー、あなたの奇跡を認定するためにです」

うさー「・・・・・・」


神様「その件で司祭様にお話しがございます」

司祭「これからパチカンの使者をお迎えに行かなくてはならず。 その後でもよろしいでしょうか?」

神様「いいえ、ダメです」

司祭「・・・・・・」


神様「犬ころ、狛犬になれ」

神使「はい。 ・・・はい!?」

神様「はやくしろ」

神使「え~・・・」ボンッ

司祭「!?」

修道女「うそ・・・」

うさー「ちょっと神ちゃん! 神使君! 何やってんの!?」

神様「犬ころ! 司祭を確保!!」

神使「その必要は無いかと・・・」

修道女「司祭様!」

うさー「あ~あ、司祭様ビックリして気絶しちゃったよ」


神使「神様・・・ どういうことですか?」ボンッ

神様「今からこの修道院は悪魔が占拠する!」

修道女「!?」

うさー「神ちゃん! いつ悪魔に魂なんか売ったの!?」

神様「この修道院とお前を助けるためだったら悪魔でも何にでもなってやるよ」イヒヒヒ

うさー「神ちゃん・・・」ウルウル

神使「うさー様、神様が良いことを言っているように感じるかも知れませんが本気にしないで下さい」

うさー「え?」

神様「何だよ、良いこと言ってんだろうが!」

神使「神様のあの笑い方は、絶対に良からぬ事を企んでいるはずです」

神様「・・・・・・」


うさー「知ってるよ! 神ちゃんに全部任せれば良いって事だよね!」

神使「かなり危険な橋だとは思いますが」

うさー「でも神ちゃん」

神様「あ?」

うさー「昔みたいに島を一つ消しちゃうような事はしないでね!」

神使「島を!?」

修道女「消す!?」

神様「えっ? してないよそんな事」

神使「・・・・・・」ゾッ

修道女「・・・・・・」ゾッ

神様「ちょ、本当してないって! 適当なこと言ってんじゃねーよ、うさー!」

うさー「ふふっ!」ニコッ



――― 1時間後


司祭「う~ん、ここは・・・」ボー

神様「目が覚めましたか?」

司祭「シスターカミー!?」

神使「・・・・・・」

司祭「あっ・・・ あぁぁぁ」ゾッ

神様「シンシー神父がどうかしましたか?」

司祭「あ、悪魔・・・」ブルブル

神様「見てしまったのですね?」

司祭「お~ 神よ、救い給え・・・ アーメン」

神使「・・・・・・」


神様「なんか言えよ」ボソッ

神使「ワンワン」

司祭「ひぃ~!」ブルブル

神使「・・・・・・(すいません)」


神様「私は悪魔祓いを専門に扱うシスターです」

司祭「Exorcist!?」

神様「え?」

神使「エクソシスト、悪魔祓いの事です」ボソッ

神様「そう! 私はエクソシスター!」

司祭「そんな! 神の御業をシスターカミーが!?」

神様「ん?」

神使「エクソシストはパチカンでは神の権能なんです」ボソッ

神様「へ~」


司祭「何故この修道院に悪魔が・・・」

神様「心配いりません、この悪魔は私の力により下僕化しています」

司祭「お~ 何ということでしょう! この国にExorcistがいたなんて・・・」

神様「司祭様、この修道院には解決しなければいけない事がまだあるのです」

司祭「どういう事でしょうか?」

神様「救わなければならない者がいます」

司祭「・・・まさか、シスターうさー!?」

神様「迷える子兎をを私は救わなければなりません」

神使「子羊です」

神様「・・・・・・」ゲシッ

神使「痛っ!」

司祭「!?」


神様「あっ、この悪魔の邪心が開きそうだったんで制裁を」

司祭「その悪魔はどのように? 早めに消した方がよろしいのでは?」

神様「そうですね。 木っ端みじんにしましょうか」ニヤッ

神使「勘弁して下さい・・・」

神様「邪には邪を、まだコイツには利用価値があります」

司祭「そうだ! パチカンの使者もExorcistと伺っておりますのでお呼びした方が!」

神様「え!?」


神使「お、お前の管理する司教区で悪魔がでたんだぞ? パチカンに知られても良いのか(棒)」

司祭「!?」

神様「私が隠密に対処します。 くれぐれもパチカンの人間を近づけさせないように」

司祭「わ、分かりました」



ギィー
バタン


神様「行ったか?」

神使「はい」

神様「危ねぇ、危ねぇ」フー

神使「なんで私が悪者に・・・」

神様「いや~ 良い演技だった」ポンポンッ

神使「事が済んだら私の汚名を晴らして下さいよ?」

神様「分かってるって。 しかし宗教が違うと訳わかんねーな」


うさー「ねぇ神ちゃん、大丈夫?」

神様「任せておけって」

修道女「・・・・・・」

神様「心配?」

修道女「い、いえ・・・ 神である方にこのような事をさせてしまって、私・・・」

神様「シスターちゃんの信じる神のことは私は畑違いだからよく分からないけど、神は人のためにいる」

修道女「人の・・・」

神様「人の願いを叶えるのがお仕事。 だからその願いを叶えるためだったら何だってする、どんな手を使ってでもね」

修道女「神ちゃん様・・・」

神様「お前もそうなんだろ? うさー」

うさー「・・・・・・」コクッ


神様「さてと、シスターちゃんお使い頼まれてくれる?」

修道女「お使い・・・ ですか?」

神使「買い物でしたら私が行って参りますが」

修道女「・・・いえ、私が行って参ります」

神様「メモしてあるからこれ買ってきてくれる?」スッ

修道女「・・・分かりました」

神様「ごめんね、よろしく」

修道女「それでは」ペコリ


スタスタ
ギー バタン


神様「頭の良い子だな」

神使「?」

神様「さてと、うさー」

うさー「ん?」

神様「時間が無いし隠し事は禁止だ。 正直に言え」

うさー「・・・・・・」コクッ


神様「お前とシスターちゃんの状況は見れば分かる。 どういう経緯があったかを教えてくれ」

うさー「シスターちゃんは孤児なんだよ」

神使「たしか、修道院前に捨てられていたと・・・」

うさー「うん。 20年前の真冬に外で・・・ シスターアロハがそれを見つけて」

神様「シスターアロハが!?」

神使「この修道院の院長様ですよね」


神様「それでお前はシスターちゃんを助けるために神力を渡したな?」

うさー「・・・」コクッ

神使「え!? 神力を?」

神様「やっぱり・・・」ハァ

うさー「シスターちゃんを救うには、それしか方法がなかったんだよ!」

神使「と言うことは、シスターさんは」


 「お願いします、話を聞いて下さい!」
 「シスター、そこをどいて下さい」


神様「ん?」

神使「外で何か争っているような声ですが」



 バンッ


調査官「パチカンから来ました神父と申します」

神様「・・・」チッ


司祭「シスターカミー、やはりパチカンの神父にお任せした方が良いかと・・・」

神様「・・・・・・」

神使「神様、どうしましょう」


神様「あっ! 悪魔が逃げた!」

神使「?」

神様「おい、お前犬ころになって外を散歩してこい」

神使「え~・・・」

神様「早くしろ、この状況はマズい」

神使「も~ 勘弁して下さいよ」ボンッ

調査官「なに!?」


神使「あ、悪魔様のお通りだー。 どけどけ~(棒)」タッタッタッ

調査官「逃がすか! 悪魔め!」タッタッタッ

司祭「お、お待ち下さい神父~」タッタッタッ


神様「よし、これで少しは時間が稼げるな」

うさー「ねぇ、神使君あの姿で外を走り回るのマズくない?」

神様「マズいね。 私の来月の給料が減給になるのは間違いない」

うさー「そのレベルで済めば良いけどさぁ・・・」


神様「取りあえず場所を変えよう」

うさー「場所って・・・ 神社?」

神様「でも、ボロボロだし見つかったら逃げ道がないしなぁ・・・」



 「スィニョリ~ナ!」


神様「?」クルッ

住職「うち来る? 歓迎しま~すよ」キラッ

神様「・・・・・・」

修道女「住職さん?」

住職「チャオ!」

うさー「かくまってくれるの?」

住職「美しいスィニョリ~ナ達をお迎えできるなんて大歓迎で~す!」

うさー「助かるよ! イタリアン住職君!」

神様「・・・・・・」



―――キセキ野寺


住職「さぁ、遠慮しないで上がってスィニョリ~ナ達」

神様「随分立派な寺だなぁ~ 儲かってんのか?」

うさー「神ちゃん、失礼だよ!」

神様「え~ だってそこら中キラキラじゃん」

住職「お金よりもスィニョリ~ナ達を助ける事が私の使命で~す」キラッ

神様「うざっ!」チッ

うさー「も~ 神ちゃん! ゴメンね住職君、神ちゃん仏教のことあまり快く思っていなくて」

住職「気にしないで下さ~い」

神様「ちげーよ、そんなこといつまでも根に持ってないっつーの。 いつの話してんだよ」

住職「奥の部屋をお使いくださ~い。 今お茶持ってきま~す」テクテク


スタスタ


神様「この部屋か?」

うさー「そうだね、入ろ!」


ガチャッ


神様「うへ~ ちかれた」グテッ

うさー「確かに」グテッ

修道女「シスターうさー? お行儀が悪いですよ?」

うさー・神様「ごめんなさい」

修道女「いえ、神ちゃん様は別に・・・」


神様「でも修道服って動きづらいな。 首元がキツい」

うさー「あ~ うちの修道院の服って古いタイプだからね!」

修道女「申し訳ありません、あまり他の修道院や教会と交流がないもので・・・」

神様「いや別に謝る必要ないけど。 私は古い修道服の格好の方が好きだし」


うさー「それより、神使くんは大丈夫かな?」

修道女「心配ですよね・・・」

神様「まぁ、なんとかするでしょ」

うさー「信頼してるんだね!」


神様「それよりもだ」

うさー「?」

神様「アロハに関して、私から話しておくことがある」

うさー「シスターアロハ? 神ちゃん知ってるの?」

神様「私は過去にアロハと会ったことがある」

うさー・修道女「え!?」


神様「アロハは・・・ 元、神宮の神だ」

うさー「なっ!?」

修道女「院長が神!?」

神様「元と言ったでしょ。 少なくともうさー達が知っているアロハは神を辞め人に戻った後だ」

うさー「ど、どういう事!? 神ちゃん!」

神様「私がアロハを神にして、その後アロハの意思で神籍を抹消した経緯がある」

うさー「そんな・・・ 知らなかった」


コンコン


住職「失礼しま~す。 お客様で~す」

神様「客?」

うさー「まさか奇跡調査官!?」


ガチャッ


神使「私です」スタスタ

神様「お~ 悪魔か」

うさー「神使君! 上手く逃げられた?」

神使「大変でした・・・」


神様「アイツらは上手く撒けたか?」

神使「はい。 しばらく時間は稼げると思います」

神様「よし。 でも、どうして私達がココにいることが分かったんだ?」

神使「神様達を探して、はさまれ神社の裏にいたところを住職さんに」

うさー「そうなんだ! ありがとね、住職君!」

住職「礼には及びませ~ん」


神様「おい、クソ坊主」

うさー「ちょっと、神ちゃん!」

住職「なんで~すか?」

神様「お前、何者だ?」

うさー「何言ってるの? この寺の住職君じゃない」

神様「違うね」

住職「・・・・・・」

神様「私を騙すことは出来ないぞ?」


住職「さすがで~す。 私、パチカンの者で~す」

一同「!?」

住職「おっと、今回パチカンが寄越した調査官とは無関係で~すよ」


神様「目的は何だ?」

住職「私の目的は一つ、修道院の保護で~す」

神様「何の保護だ?」

住職「・・・・・・」

神様「答えられないか?」

住職「私は20年前、あの修道院で奇跡を見ま~した」

神様「・・・・・・」


修道女「どのような奇跡を見たのですか?」

うさー「・・・・・・」ドキドキ


住職「それは~・・・」

神様「・・・」キッ

住職「お教えできませ~ん」ニコッ

神様「変な笑顔を私に向けるな」プイッ

住職「ははっ、私ちょっと仕事ありますから失礼しま~す」テクテク


ガチャッ


神使「何か隠している感じですね?」

神様「・・・犬ころ、ちょっと付き合え」

神使「はい」


――― 廊下


スタスタ


神使「まさか住職さんがパチカンの方とは思いませんでした」

神様「怪しいもんだ」

神使「え? パチカンの方というのは嘘ですか?」

神様「いや、嘘は言っていないと思う」

神使「どういう事です?」

神様「それを確かめに行くんだよ」

神使「?」


神様「この部屋だな」

神使「住職執務室? 住職さんとお話しに?」

神様「お前は入り口で待ってろ」

神使「分かりました」


――― 住職執務室


コンコン


神様「私だ、入るぞ」


 どうぞお入りくださ~い


ガチャ


神様「立派な部屋だな」トテトテ

住職「お連れさんは中に入らなくて良いので~すか」

神様「一対一だ」

住職「分かりま~した」


神様「私は神宮の神、名を神様と言う。 一応この国の最高神ということになっている」

住職「ご丁寧にありがとうございま~す。 私はパチカンの使い、この国でいう神使でしょうか?」

神様「天使・・・ でいいのか?」

住職「はい、合っていま~す」

神様「まさかこの国に天使がいるなんて驚いた」

住職「私のような一使いがこの国の最高神様とお話しなど、無礼をお許し下さ~い」フカブカ

神様「今更だな」

住職「・・・・・・」

神様「冗談だよ」


住職「コーヒーでもお飲みになりま~すか?」

神様「いらない」

住職「おっと、コーラ派でしたね。 すいませ~ん、まだ買ってないです」


神様「目的はうさーか?」

住職「・・・・・・」

神様「・・・修道院の壁画か?」

住職「私達は“神の息吹”と呼んでいま~す」

神様「たいそうな名前になったもんだ」

住職「神の息吹は奇跡をもたらす物の総称で~す」

神様「奇跡、か・・・」

住職「パチカン最上級の宝物で~す」


神様「あれは元々私の物だぞ?」

住職「ノンノン、あなたはあれを修道院に譲渡しました。 その時点で所有権は我々にありま~す」

神様「詳しいな」

住職「私は修道院が出来た時からずっ~といるんですよ?」

神様「・・・・・・なぜ持ち帰らずに何十年も監視なんかしているんだ?」

住職「持ち帰っても良いので~すか?」

神様「・・・・・・」キッ

住職「すいませ~ん。 冗談で~す」


神様「一つ聞かせてほしい」

住職「なんで~すか?」

神様「パチカンは敵か? 味方か?」

住職「どちらにでもなれま~す」


神様「うさーは、日本の神だ。 お前達が手を出すことは許さない」

住職「彼女は監視対象から外れていま~す。 興味ありませ~ん」

神様「本当か?」

住職「でも~ あの教会にいる限り私達の管理下で~すよ?」

神様「・・・・・・」

住職「私達は神社に手出しはしない。 あなた達は教会に手出しはしない。 約束事で~す」

神様「心得ているつもりだ」

住職「それは良かったで~す」ニコッ

神様「・・・・・・」



バタン


神様「ふ~っ」ハァ

神使「神様・・・ かなり緊張したやり取りでしたね・・・」

神様「ああいう探り合いは馴れないな。 好きじゃない」

神使「パチカンはあの絵画が目的だったのですね」

神様「そんな訳ないだろうが」

神使「え!?」


神様「いま何時だ?」

神使「もうじき18時です」

神様「コーラが飲みたい。 ちょっと外出よう」

神使「はい」


テクテク


――― 客間


うさー「ん~・・・」ソワソワ

修道女「シスターうさー、どうしました?」

うさー「え? いや、えっと~・・・ ちょっと外行ってくる!」スタッ

修道女「・・・神ちゃん様達の後をつけてはダメですよ?」

うさー「嫌だなぁ~ トイレだって」

修道女「本当ですか?」

うさー「う~・・・」

修道女「・・・お手洗いは玄関近くにありましたから」

うさー「あ、ありがとうシスターちゃん!」タッタッタッ

修道女「まったく、シスターうさーときたら・・・」ハァ


修道女(そう言えば、神ちゃん様のメモ・・・)ピラッ

修道女(これ買ったら19時までに礼拝堂集合)

修道女「あと1時間・・・ 今買いに行けば間に合いますね」スッ


――― はさまれ神社・境内


トテトテ


神使「コーラ売っていなくて残念でしたね」

神様「・・・あぁ」チラッ


 うさー「・・・・・・」コソッ


神様「・・・・・・」

神使「神様?」

神様「ん? あぁ、たまにはペポシでもいいや」プシュッ


神使「神様、修道院の絵画って何か曰くがあるのですか?」

神様「・・・神が人に戻るとき、私は必ずある物を渡すことにしているんだ」

神使「?」

神様「そいつの神力を抜いて別の物に移して渡す。 アロハにはあの絵画に神力を移して渡した」

神使「それが修道院の絵画と言うことですか?」

神様「そう。 その神力は人になった後、1度だけ使うことが出来る。 まぁ退職金みたいなもんだ」


神使「もしかしてあの前衛的な絵って・・・」

神様「私が書いた」

神使「・・・なるほど。 通りで意味不明な絵だと思いました」

神様「・・・・・・」ギロッ

神使「すいません」


神様「この修道院に奇跡を・・・」

神使「え?」

神様「20年前、アロハはあの絵にそう願っているようだ」

神使「奇跡・・・」


神様「うさー、隠れてないで出てこい」

神使「うさー様?」


うさー「・・・・・・」テクテク

神様「お前は、シスターちゃんを助けるため自分の神力を渡した」

うさー「うん」

神様「そうしないとシスターちゃんを救えなかった。 そうだな?」

うさー「うん」


神使「シスターさんが神力を受け取ったということは、神になったということですよね?」

神様「・・・・・・」


神使「一つ疑問があるのですが」

神様「なぜ成長しているのか、だろ」

神使「はい」

神様「神の力を得た者はその時点で成長が止まる」

うさー「・・・・・・」


神様「お前、シスターちゃんが成長するように自分の神力を少しずつ渡してるな?」

神使「え!? うさー様の神力を?」

神様「そうだな?」

うさー「・・・・・・」コクッ


神様「特定対象者への連続的な神力使用は立派な神法違反だぞ?」

うさー「だって! だって・・・ そうじゃないとシスターちゃんが・・・」

神使「うさー様・・・ それで今まで修道院に・・・」


うさー「神ちゃん、どうしよう。 私、神力がなくなりそうで」

神使「神力がなくなったら、うさー様は・・・」

うさー「私なんてどうでも良いんだよ! でも、シスターちゃんは・・・ シスターちゃんだけは!」


神様「お前の神力は少なくなってるけど、消えることはないみたいだ」

うさー「えっ!?」

神様「はさまれ神社のご神体はすでに神力が枯渇している。 参拝者もろくに来ていない」

神使「この状態ですからね・・・」

うさー「ごめん・・・ 私のせいだよね」シュン


神様「でも、お前は今でも存在している」

神使「それは、うさー様の元々の神力が強いからですよね?」


神様「うさー、ちょっとおでこ貸せ」

うさー「おでこ?」

神様「少し触れるぞ」ピトッ

うさー「ひやっ!」

神様「・・・・・・」

うさー「・・・神ちゃん?」

神様「なるほどな」スッ


神使「何がですか?」

神様「予想よりも神力が多く残ってる」

うさー「え!?」


神様「たぶん、シスターちゃんに渡した神力がお前にそのまま還元されている」

うさー「私が渡していた神力が使われずに戻ってきてるって事!?」


神使「ちょっと待ってください。 では、どうしてシスターさんは成長をして・・・」

神様「奇跡・・・ だな」

神使「神力とは違うのですか?」


神様「日本の神は“確率”を扱い神力を操作する。 簡単に言えば“運”だな」

うさー「うん」

神様「・・・・・・」ゲシッ

神使「痛っ! え!? なんで私が蹴られたんです??」スリスリ


うさー「奇跡・・・ まさか、シスターアロハの願い!?」

神様「シスターちゃんは、うさーとアロハの神力を得ている」

神使「2つの神力を!?」

うさー「で、でもシスターちゃんからシスターアロハの神力は感じなかったよ?」

神使「そもそも、神力すら使えない感じでしたが」

神様「シスターちゃんの神力は押さえ込まれていると思う。 うさー、お前もだ」

うさー「でも、私は少しだけど使えるけど?」

神様「お前は神力が強すぎるから押さえられない部分が暴走している」

神使「それで、あの時に後光が・・・」

うさー「でも押さえ込むって、どうやって?」


神様「“奇跡”を扱うのは」

うさー「パチカン・・・」

神様「そう、あのクソ天使が監視しているのはシスターちゃんだ」

神使「しかし、住職さんはそんなこと言っておられませんでしたが」

神様「私に隠し事なんていい度胸してるよな」


うさー「住職くんがシスターちゃんを狙ってるってこと!?」

神使「シスターさんを一人にするのはマズいのでは?」

神様「大丈夫だよ。 あのクソ天使もシスターちゃんを連れ出せない理由がある」

神使「理由?」

神様「あのクソ天使よく考えたわ」

うさー「?」

神様「本当、敵か味方かわかんねーな」


神使「そう言えば、シスターさんはどちらに?」

うさー「シスターちゃんなら部屋にいると思うけど」

神様「私が頼んだ買い物をしに行ったと思う」

うさー「え!? 急いで連れ戻さないと!」

神様「大丈夫」

神使「どういう事です?」


神様「楽しいショータイムの始まりだよ、神使君や」ウヒャヒャヒャヒャヒャ

うさー・神使「(悪魔がココにいる・・・)」


神様「犬ころ、お前は調査官達を探して1時間後に礼拝堂に連れてこい」

神使「え!?」

神様「ギリギリまで粘ってから見つかれよ?」

神使「・・・・・・」


神様「うさー、お前主神やってた時の祭儀装束ってまだ持ってるか?」

うさー「装束? たぶんあると思うけど」

神様「今日だけで良い。 日本の神として責務を果たして欲しい」

うさー「でも私・・・」

神様「シスターちゃんを救うんだろ?」

うさー「・・・分かった! 今日は神さまやる!」

神様「よし、19時に修道院の礼拝堂で合流だ」

神使「・・・はい」

神様「行くぞ、うさー」

うさー「うん!」


――― キセキ野寺・墓地


神使「あの人達はまだココにいるでしょうか・・・」コソコソ


司祭「あの悪魔いませんね」キョロキョロ

調査官「隅々まで探しましょう」

司祭「しかし、これだけ大きな墓地ですと・・・」

調査官「そうですね・・・ そうだ! 墓地全体を清めましょう!」

司祭「え?」

調査官「悪魔がこの墓地にいれば、きっと苦しくて出てくるはずです」

司祭「なるほど、さすがパチカンの神父様! では早速」


神使「私には効かないですよね・・・ 祓われたらどうしましょう・・・」



――― キセキ野教会・うさーの部屋


うさー「う~ん・・・ ここに隠しておいたと思うんだけど~」ゴソゴソ

神様「しかし、何もない部屋だな」キョロキョロ

うさー「修道女の部屋なんてこんなもんだよ」

神様「私なら退屈すぎて30分で発狂する自信がある」

うさー「はははっ」ゴソゴソ


神様「ん? あれって・・・」トテトテ

うさー「どしたの?」

神様「この写真」


うさー「あ~ シスターアロハだよ」

神様「・・・いつの写真だ?」

うさー「う~んと、亡くなる少し前だから・・・ 20年くらい前かな?」

神様「・・・・・・」


うさー「懐かしい?」

神様「老けたな。 私が知っているアロハは20歳くらいだったから」

うさー「そっか」

神様「彼女は常に弱き者の味方で・・・ 本当に立派だった」

うさー「そうだね。 私の知ってるシスターアロハも同じ」

神様「アロハは私が神にする前も修道女だったんだよ」

うさー「そうなんだ」


神様「驚かないんだな」

うさー「だって、シスターアロハが修道女以外の事をしているなんて想像できないもん」


神様「今みたいに教会が受け入れられる前でさ、凄く苦労してた」

うさー「なんで別の宗教だったシスターアロハを神になんかしたの?」

神様「宗教とかそんな壁どうでも良いんだよ。 人が勝手に区別しているだけだ」

うさー「え~ でも神宮が納得しないでしょ、そんなの」

神様「あぁ、許さなかった。 神宮はアロハを使って教会を手中に収めようとしていた」

うさー「そんな事まで!?」

神様「アロハには辛い思いをさせてしまった・・・」


うさー「そんな過去があったんだ」

神様「恨んでいるだろうなアロハは・・・ 神の除籍をした後、私は会わす顔がなかった」


うさー「・・・あの壁画って神ちゃんが描いてシスターアロハに送った物なんでしょ?」

神様「結構自信作なんだけど、お前までいちゃもんつける気か?」

うさー「シスターアロハ、毎日あの絵にお祈りしてたよ?」

神様「え?」

うさー「とっても大切で、最も尊敬する親友から頂いた宝物だって」

神様「・・・・・・」

うさー「修道院の運営が立ちゆかなくなった時も、あの絵だけは守り通したんだ」


うさー「椅子とか聖書とか売られても、あの絵だけは誰にも触れさせなかった」

神様「・・・・・・」

うさー「シスターアロハが神ちゃんを恨むはずないじゃん」

神様「だと、嬉しいな」

うさー「このバタバタが終わったらシスターアロハの墓地に一緒に行ってくれる?」

神様「そうだな」

うさー「ありがと!」


神様「で、装束はあったのか?」

うさー「うん一応・・・ まさかこれ着るの?」

神様「当たり前だろ。 服は着るためにあるの!」

うさー「え~ 神ちゃんはいっつも脱いでるじゃん」

神様「着てるだろ! 見ろよ! ちゃんとおべべ着てるだろうが!」

うさー「あっ!」

神様「なんだよ」

うさー「この装束を売れば良かった! 結構価値あるよね、この服って!」

神様「・・・・・・」

うさー「冗談だって! これは神ちゃんからもらった物だもん、私の宝物!」

神様「あ~ それ猫神のお古だから。 私そういう装束とか大っ嫌いだから邪魔だったんだよ」

うさー「!?」



 修道女「ただいま戻りました。 神ちゃん様いらっしゃいますか?」


神様「シスターちゃん帰ってきたみたいだな」

うさー「ほんとに着なきゃダメ? 恥ずかしいよ」

神様「私は先に礼拝堂に行ってるから、ちゃんと着替えてこいよ」トテトテ

うさー「う~・・・」



――― 礼拝堂


修道女「神よ、どうか私達をお守りください・・・」


ギィ


神様「お疲れちゃん」トテトテ

修道女「神ちゃん様」

神様「頼んだ物は買えた?」

修道女「・・・はい」

神様「どれどれ~」ゴソゴソ

修道女「一体何に使うのですか?」

神様「ウヒヒ、これでアイツらをコキャと言わせるの」

修道女「コキャ? 」



ギィ


うさー「神ちゃ~ん・・・」モジモジ

修道女「シスターうさー? そんなところに隠れてどうしたんです?」

神様「何やってんだよ、早く来いって」


うさー「う~・・・」テクテク

修道女「シスターうさー!?」

うさー「はははっ、似合わないよね・・・ 自分でも分かってるし!」

修道女「・・・・・・」

神様「今日は神さまやるんだろ?」

うさー「そうだけどさぁ~・・・」


神様「シスターちゃんに紹介しよう。 はさまれ神社の主神、従三位ウサノ神だ」

うさー「正三位だよ! どっちでも良いけど・・・」


修道女「それが・・・ シスターうさーの本当のお姿なのですね?」

うさー「え!? 違うよ! 私はシスター! シスターうさーだよ!」

神様「ウサノ神だろ?」

うさー「も~ 分かったよ! 今日は神さまのウサノ神!」

修道女「とてもご立派ですよ、ウサノ神様」ニコッ

うさー「シスターちゃんまで、からかわないでよ!」

修道女「・・・・・・」フカブカ

うさー「え!? ちょ、やめてよシスターちゃん」オロオロ


神様「よし、それじゃぁこれ」スッ

うさー「なにこれ?」

修道女「台本・・・ ですか?」

神様「神ちゃん特性台本! そして~」ゴソゴソ

うさー「かぶり物?」

神様「私は悪魔のボス! 大悪魔だ!」カポッ

うさー「え~ ぴえろのかぶり物じゃん」

神様「・・・・・・」

修道女「すいません、そのぴえろが一番インパクトが強かった物で・・・」シュン

うさー「えっ、それシスターちゃんチョイスなの!?」


神様「まぁ・・・ 私の演技力でカバーするから大丈夫・・・」

うさー「演技? 学芸会でもするの?」

神様「違うわ! 面倒な調査官達を蹴散らすんだよ」

うさー「どうやって?」

神様「その為の台本だよ」

うさー「ふ~ん」


神様「もうすぐうちの犬ころが調査官達を連れて礼拝堂に入ってくるから。そしたらこの台本通りでお願いね」

修道女「え!? 後10分しかありませんが!?」

うさー「・・・ねぇ、神ちゃん?」ペラペラッ

神様「あ? 泣き言なら聞かないぞ」


うさー「これ神使くんの台詞もあるけど打ち合わせしたの?」

神様「・・・・・・」

修道女「一行目から神使さまの台詞ですが」

神様「・・・・・・」


うさー「まさか、神使くん知らないんじゃ・・・?」

神様「だ、大丈夫! 犬ころならきちんと出来るって。 あいつと私は深い精神の所で繋がっているから!」フンスッ

うさー「神ちゃん、色々無理・・・」


――― キセキ野寺・墓地


神使「もうじき19時・・・ そろそろ行きますか」ボンッ



司祭「やはりここから逃げて別の所にいったのでは?」

調査官「そのようですね、他を探してみましょう」


神使「う、うわー 苦しいー(棒)」

司祭・調査官「!?」

神使「お、お前達何をしたー(棒)」

調査官「出たな悪魔め!」

司祭「さすがパチカンの神父! 効果覿面ですな」


神使「くそー、逃げてやるー(棒)」タッタッタッ

調査官「今度は逃がすか!」タッタッタッ

司祭「待ってください~ 神父~」タッタッタッ


――― キセキ野教会・礼拝堂


神様「よしっ、と」グイグイッ

うさー「シスターちゃん、キツくない?」

修道女「大丈夫です」

うさー「別にシスターちゃんを縛り付けておかなくても良いんじゃない?」

神様「あ? 人質は縄で縛るのが常識だぞ。 私なんか捕まったときはいっつも縄で縛られるし」

うさー「そうなの?」


神様「あとは、犬ころが入って来るのを待つだけだ」

うさー「えっと~ “大悪魔様、我々の理想郷を作るために生け贄を連れて参りました”っていう神使くんの台詞だね」

神様「よし、うさーは柱の裏にでも隠れてろ」

うさー「うん」スタスタ


神様「シスターちゃんは恐怖におびえた子兎のようにプルプルして、できるだけ言葉は発しないように」

修道女「難しいですね・・・ 出来るでしょうか?」

神様「大丈夫。 さて、私も準備を」カポッ

修道女「・・・・・・」


神様「大悪魔に見える?」

修道女「・・・・・・」

神様「嫌だな、まだ話はしても大丈夫だよ」

修道女「・・・はい。 インパクトはありますね・・・ すいません」


神様「よし! 準備オッケー」



バンッ


神様「来た!」


神使「神様~ あとはお願いします~」タッタッタッ


神様「・・・・・・」

うさー「あちゃー、やっぱり神使くんの台詞全然違うよ・・・」


調査官「!?」

司祭「シスターカミー、そのお面は何ですか?」

神様「・・・わ、私は悪魔の親方! 悪魔長だ! ドドン!」

一同「・・・・・・」

修道女(大悪魔では・・・)


司祭「シスターカミーですよね?」

神様「悪魔長だ! 犬こ・・・ 下級悪魔よ、 悪魔長である私の隣へ来い!」

神使「私ですか?」スタスタ

神様「さぁ、人間どもを威嚇するのだ! 犬こ・・・ 悪魔犬よ!」

神使「・・・ワンワン」

うさー(せめて呼び名は統一しようよ、神ちゃん・・・)


一同「・・・・・・」


神様(確か、コイツ尻尾握ると吠えまくったよな)


ギュッ


神使「!! ギャーッ!!!」

一同「!?」ビクッ

司祭「ひぃぃぃ~!」ブルブル


神使「神・・・ 様・・・ 尻尾はダメで・・・す・・・」バタン

神様「やべっ、強く握りすぎたか」


調査官「悪魔を一瞬で!?」

神様「わ、私の力を思い知ったか!」

調査官「修道女の格好などして、私達を騙していたと言うことですか」

神様「その通りだよ! うひゃひゃひゃひゃ!」


調査官「何という凶悪な悪魔・・・」

司祭「神父、さすがにそれはないと思うのですが・・・」


調査官「いいえ、確信しました。 あれは悪魔特有の笑い方です」

司祭「なんと!」


調査官「それと、あのお面は魔面に似ています」

司祭「魔面?」

調査官「14世紀に悪魔崇拝者が書いた禁書に出てくる最凶の悪魔が被っていた物です」

司祭「なんと!」


神様「・・・・・・」

調査官「まさか魔面を持つ物が悪魔の親玉だったとは・・・」


調査官「・・・・・・」ジリジリ

神様「おっと、それ以上近づくとこのシスターがヤバいことになるよ?」

修道女「・・・・・・」プルプル

調査官「卑怯な! 私達の敬虔な修道女をすぐ解放しなさい!」

神様「嫌だね~ うひゃ・・・ イヒヒヒヒッ」


うさー(ここで出て行けば良いのかな?)

うさー「待ちなさい! 大悪魔!」


神様「だ~れ~だ~?」クルッ

うさー「その人を解放しなさい!」スタスタ

司祭「シスターうさー?」


神様「お前は、日本の神で神力がめっぽう強いはさまれ神社の主神ウサノ神だな?」

司祭「シスターうさー、その格好はどうしたのです?」

うさー「わ、私は日本の神ウサノ神である! 今から悪魔を懲らしめる!」

神様「やれる物ならやってみろ~」


調査官「シスターうさー、危ないので離れていてください」グイッ

うさー「え?」ズルズル

神様「ちょ、うさーと戦わせろよ」

調査官「その必要はありません」


シャキン


神様「!?」


調査官「この聖剣で悪魔どもを封じます」

神様「ちょ、ナイフはダメだって」

調査官「聖剣です」

神様「ナイフだろ! そんなの悪魔じゃなくてもダメージ受けるわ!」

うさー「そ、そうだよ! 私の神の力で神ちゃ・・・ 大悪魔と戦うから!」ジタバタ

司祭「シスターうさーはおとなしくしていて下さい」ガシッ

うさー「放してよ~」ジタバタ


神様「やべーな・・・」


――― キセキ野寺


住職「さて~ 私の目的は感づかれてしまいましたかね」

住職「取りあ~えず、何か策を考え――― !?」ガタッ

住職「・・・・・・」


住職「墓地から負の瘴気が消えて・・・・・・」

住職「マズいで~す!」タッタッタッ


――― キセキ野教会


神様「・・・・・・(くそ、逃げるか・・・)」ジリジリ

調査官「一歩でも動いたら投げますよ?」スッ

修道女「ちょっと待ってください! ここは教会ですよ? そんな物騒な物・・・」

調査官「聖剣です」

神様「聖剣なら聖剣らしい使い方しろよ! なんで投げる気満々なんだよ!」

うさー「そ、そうだよ! 投げたら危ないよ!」ジタバタ


神様「あー! もうっ! ナイフ投げるなら私がいなくなってからにしろよ!」タッタッタッ


うさー「神ちゃん!」ジタバタ

司祭「シスターうさー! 暴れないでください!」ガシッ

うさー「うるさい! 放せ!!」バッ

司祭「シスターうさー! 危ないですから戻って!」



調査官「神の名のもとに、悪魔よ! 消えろ!」シュッ

うさー「!? 神ちゃん! 後ろ!!」タッタッタッ


神様「うげっ! あの野郎、本当に投げやがった!」ササッ

調査官「くそ! 逃がすか!」シュシュッ

神様「てめー! 何本持ってんだよ! 聖剣なんて普通1本だろ!!」


うさー「神ちゃーん!」タッタッタッ

神様「バカ! うさー! 危ない逃げろ!」


修道女「シスターうさー! 後ろ!」

うさー「え?」



バンッ

住職「これは!?」ハッ


神様「おい、うさー! 大丈夫か!? うさー!」タッタッタッ

うさー「う~・・・」


神様「!? ・・・・・・おい、何だ・・・ あれ・・・」

うさー「へ? あれ? ナイフは?」キョロキョロ

司祭「ナイフ・・・ 聖剣が空中で止まって・・・」


ポワポワ


神様「シスター・・・ ちゃん?」

うさー「シスターちゃんが・・・ 光ってる」

神様「壁画も光って・・・」



ポワポワ


修道女「・・・・・・」スー


調査官「バカな・・・ 宙を浮いて歩いて・・・」

司祭「そんな!?」


ポワポワ


修道女「神ちゃん」

神様「シスターちゃ・・・ アロ・・・ハ・・・?」

修道女「ありがとう」ニコッ

神様「・・・・・・」


うさー「シスターアロハ・・・?」

修道女「立派になったわね、うさー」ニコッ

うさー「うっ・・・っ うん!」ポロッ


住職「・・・・・・」



修道女「この修道院は神の力で救われます。 うさーの言葉に従いなさい」

住職「・・・・・・」フカブカ


修道女「」スー パタリ


神様「光が消えた・・・」

うさー「シスターちゃん!」ユサユサ


スタスタ

住職「スィニョリーナ」ボソッ

神様「・・・・・・」ポケー


住職「スィニョリーナ!」

神様「んぁ!?」ハッ


住職「大丈夫で~すか?」ニュッ

神様「わっ、顔近い! な、何だよ」

住職「失礼、墓地からの負の瘴気が消えていま~す」

神様「瘴気・・・? やっぱりお前が墓地からの瘴気を使ってシスターちゃん達の力を押さえ込んでいたのか」

住職「シスターさんが意識を取り戻す前にもう一度瘴気を出してきま~す」

神様「その必要はない」

住職「?」


神様「シスターちゃんにも正直に話すべきだ」

住職「・・・・・・」

神様「力の扱いをどうするかは本人が決めるべきだ」

住職「分かりま~した」


神様「それより、お前はあそこの二人をどうにかしておけ。 お前達の管轄だぞ」

住職「?」クルッ


調査官「」ポケー

司祭「」ポケー


神様「記憶くらいは書き換えておけよ?」

住職「そうです~ね」ハァ


住職「それと、シスター・・・ いえ、うさー様?」スタスタ

うさー「え? 私?」

住職「この修道院の導きを、うさー様のお言葉で」フカブカ

うさー「・・・・・・」

神様「アロハからの願いだ。 お前の言葉で伝えるんだ」

うさー「私の言葉・・・」

神様「神宮もパチカンも、お前の言葉に従うだろう」



うさー「私は・・・ 私は日本の神! この修道院は日本の神の力で守られる! ウサノ神からの神勅とする!」


神様「いいのか?」

うさー「今日は神さまやるって神ちゃんと約束したし! 私は、約束は守るんだよ!」プイッ

神様「だってさ」

住職「よろしいので~すか?」

うさー「神勅なんだから絶対まげない! 日本の神は言った言葉に責任を持つんだよ!」

住職「素晴らしいお言葉で~す。 これからもご尽力くださ~い」フカブカ


神使「う~ん・・・」ムクッ

神使「あれ?」ボー

神様「目が覚めたか」

神使「どうなったんです? これ?」

神様「解決したよ、お前の名演技のおかげでな」

神使「はぁ・・・ (お尻が痛い・・・)」スリスリ


――― 深夜・キセキ野寺・住職執務室


 コンコンッ


住職「?」

神様「扉開けっ放しだぞ?」トテトテ


住職「こんな遅くにどうされたので~すか?」

神様「お前こそ、こんな遅くに何の荷造りしているんだ?」

住職「私は明日にでもこの国を出ま~す」


神様「シスターちゃんは私達の管理下でも良いと言うことか?」

住職「あの修道院はパチカン管理でなくなりま~したからね」

神様「随分引き際があっさりしてるな」


住職「・・・私、シスターさんをどうすれば良いのか正直分からなかったんで~す」

神様「・・・・・・」

住職「私はただ彼女の力を押さえつけるだけで、それ以上の方法を思いつきませんで~した」


神様「まさか、ずっとそばにいて守り続けるつもりだったのか?」

住職「はい」

神様「・・・即答か」

住職「私の役目で~すから」ニコッ

神様「何十年でもか?」

住職「はい」

神様「何百年でもか?」

住職「もちろんで~す」


神様「立派だな・・・ とでも言うと思ったか? そんなものただの自己満足だ」

住職「・・・・・・返す言葉もありませ~ん」


神様「彼女はもう子供じゃない」

住職「そうで~すね・・・」

神様「でも、今まで彼女の身を案じ、守ってくれたことに関しては深く礼を言う」フカブカ

住職「頭を上げてくださ~い。 あなたはそういう事が似合いませ~ん」

神様「?」ジーッ


神様「・・・お前、もしかして以前に私と会ったことがあるか?」

住職「・・・・・・」


神様「ミカエル・・・」

住職「お~! 思い出してくれましたか! 嬉しいで~す!」

神様「確か・・・ 800年くらい前か」

住職「またお目にかかれて光栄で~した」フカブカ

神様「・・・・・・」

住職「?」


神様「あの時はすいませんでした!」ドゲザ

住職「もう昔の話で~す」ハハッ

神様「異国の者が珍しくて裸に剥いてしまい申し訳ありません!」

住職「・・・忘れましょう」


神様「でも、大天使がわざわざ出張るほどの重要案件だったと言うことか?」

住職「バチカンと日本の神の力を持つ人間で~すよ?」

神様「まぁ、確かに」

住職「でも、心置きなく帰れま~す」


神様「・・・お前達の主に伝言をお願いできるか?」

住職「もちろんで~す」

神様「あの修道院は、私達日本の神の管理下になる」

住職「・・・・・・」

神様「しかし、修道院と隣のはさまれ神社を私達とお前達の共有管理にしたい」

住職「神社もで~すか!?」


神様「あの二人が信仰しているのはお前達の神だ。 そこに私は立ち入れない」

住職「しかし・・・」

神様「彼女たちの力を維持するには神社が必要だ。 二人ともこの国の神力を持っている」

住職「・・・・・・」

神様「教義はパチカンだが、彼女たちが平和に暮らせるよう私達の力も扱わせたい」

住職「ご立派です。 主に必ずお伝えしま~す」

神様「頼んだ」

住職「日本の最高神様からのお願いです、主も意義なく全面承認されるでしょう」


住職「あっ、でもアレは持って帰らせてもらいます~よ」

神様「あれ?」

住職「神の息吹」

神様「力の無くなった物を持って帰っても仕方ないだろ。 今は私の描いたただの落書きだぞ?」


住職「私も大天使で~す。 パチカンには依頼を完遂したという示しが必要で~す」

神様「なるほどな」

住職「複製が終わり次第、すぐに修道院に戻しま~す」

神様「お前達の物にするんじゃないのか?」

住職「いりませ~ん」

神様「・・・・・・」

住職「それに、あの絵はあの修道院に飾られるべき物ですから」

神様「本当に建前上持って帰るだけなんだな・・・」

住職「ふふっ」


神様「あの落書きが海を越えてパチカンに行くことになるとは思ってもみなかった」

住職「複製はパチカン大聖堂に飾られて沢山の信者が祈りを捧げることになると思いま~す」

神様「パチカンはそれでいいのかよ・・・」

住職「パチカン自体は私達にはあまり関係ありませんから好きにやらせておけば大丈夫で~す」

神様「そんな発言、パチカンのお偉いさんが聞いたら泣くぞ・・・」

住職「内緒でお願いしま~す」


神様「最後に一つ聞いていいか?」

住職「?」


神様「お前達は敵か? 味方か?」

住職「パチカンはどちらにもなれま~す」

神様「・・・・・・」


住職「でも~」

神様「?」

住職「主と私達天使は、日本の神と神使の味方で~す。 断言できま~す」ニコッ

神様「そうか」フッ

あと2~3回の投下で終わるかな・・・


〓〓〓

>>192

神様「パチカンだろ!」

住職「すいませ~ん」ドゲザ

〓〓〓


――― 翌日・フラソダーピスチヌ会墓地


テクテク


うさー「ここがシスターアロハのお墓だよ」

神様「随分と質素だな・・・」

うさー「シスターアロハの遺言なんだ」


 神使「神様~」タッタッタッ


神様「?」

うさー「神使君、どこ行ってたの?」

神使「お花を買いに。 神様、これでよろしいですか?」

神様「おっ、いいね~ さすが悪魔」

神使「悪魔じゃありません。 神に仕える神使です」

うさー「そうだよ~ あんまりいじめちゃ神使君が可哀想だよ」

神様「へいへい」


うさー「へぇ~ 綺麗だね」

修道女「私、こんな色のバラ初めて見ました」


神様「人の造りし花・・・ でも、綺麗な青色だな。 人のイデオロジーも凄いな」

修道女・うさー「?」


神使「・・・・・・もしかして、テクノロジーの事ですか? バイオテクノロジー」

神様「お前はそうやってすぐに難しい言葉を使うな! 意識高い系神使でも目指してんのか!」

神使「え!? イデオロジーなんて言葉の方が難しいと思うのですが・・・」

神様「うるさい! 極悪邪道腐れ犬ころ変態すけこま意識高い系アホ神使!」

神使「それ、次も同じ順番で言えます・・・?」

神様「うるせー、早く花を寄こせよ」

神使「はい、どうぞ」

神様「ったく」



トテトテ


神様「アロハ、心配かけたな・・・」

神様「ゆっくり話をしたいところだが神は墓地に長くいることは出来ないから・・・ 一言だけ」

神様「安らかに・・・ アーメン」


一同「アーメン」


―――――
―――


――― 帰り道


テクテク


うさー「ありがとうね、神ちゃん!」

神様「いや・・・」


うさー「ねぇ、皆お腹空かない? ラーメン食べようよ」

神様「いいね~」

修道女「シスターうさー? そんなお金・・・」

うさー「大丈夫だよ、一日くらい」

修道女「明日からしばらくパンを一つ減らしますからね?」ハァ

うさー「え!?」


ブルブル


神使「?(メール?)」ゴソゴソ



神様「そうだ、近いうちにシスターちゃん宛に神宮の使いを寄こすから」

修道女「ご使者の方ですか?」

神様「まぁ、神力の使い方とか簡単なレクチャーだけ受けておいて」


うさー「ね~ 神ちゃん、本当に私達このまま修道院にいても良いの?」

神様「その代わり、はさまれ神社の手入れもこれからはきちんとするんだぞ」

うさー「う~・・・ 分かった」


修道女「・・・・・・」

神様「心配?」

修道女「急だった物で・・・ 私に神の力があるだなんて・・・」

神様「大丈夫。 アロハの神力だ。 暴走することなんてないから」

うさー「私の神力もシスターちゃんにあるんだよ!」ニコニコッ

神様「・・・神力が暴走しないよう、レクチャーはちゃんと受けて慎重に扱うように」

うさー「ひどい! それじゃ私の神力が暴走するみたいじゃん!」

神様「みたいじゃない、するんだよ」

うさー「酷いよ神ちゃん・・・」


修道女「本当に、神ちゃん様には何とお礼を言えば良いか・・・」

うさー「神ちゃん、本当にありがとう」


神様「うさー」

うさー「ん?」

神様「私を庇ってくれてありがとう」

うさー「え!? いや、体が勝手に動いちゃっただけだし。 私こそ色々とゴメン」

神様「やっぱり、私はお前を神にしたことは間違っていなかった」

うさー「神ちゃん・・・」


神様「まっ、それは置いておいて早くラーメン食べに行こう!」


神使「・・・・・・」

うさー「どうしたの神使くん、元気ないね」

神使「いえ・・・ その・・・ 神宮からもの凄い量の着信とメールが・・・」

神様「神宮?」

神使「はい、100件以上も・・・」

うさー「あ~ 神使くん狛犬の姿で街中走り回ったから・・・ バレたんでしょ」


神様「うげっ! 私も着信凄い!」

神使「どうしましょう」

神様「取りあえず、早めに逃げた方が良いみたいだな」

神使「そうですね」

神様「じゃ、私達は逃げるから!」


うさー「え!? ラーメンは?」

神様「これで二人して食べてこい」ジャラジャラ

うさー「・・・神ちゃん」

神様「遠慮するな」フッ

うさー「いや・・・ 250円しかないよ?」

神様「私の手持ちの有り金だ。 それで腹一杯食べてこい」キラッ

うさー「う~ 一応、ありがとう・・・」


神様「よし、犬ころ! 逃げる準備は良いか?」

神使「はぁ」


うさー「ねぇ神ちゃん、また会える?」

神様「当たり前だ」

うさー「本当に? 嘘ついてない?」

神様「大丈夫だよ、あの修道院だって神宮の管理下に入ってるんだし。 また遊びに来るよ」

うさー「約束だからね!」

修道女「本当にお世話になりました」フカブカ


神使「こちらこそ、お世話になりました」

神様「じゃ!」


うさー「元気でねー また来てね~!!」

修道女「・・・・・・」フカブカ


―――――
―――


テクテク


神様「神ちゃん世界教はまだまだお預けのようだな」

神使「きっとその日は来ないと思いますが・・・」


神様「きせき野町か・・・」

神使「町の名前の通り奇跡に満ちていましたね」

神様「あぁ・・・ さて、急ぐぞ。 早めにこの町を出た方が良い気がする」

神使「そうですね」


ブーン キキィ!


神様「危ねっ! なんだ!?」

神使「黒塗りの車! まさか!」


バタン!


神様・神使「!?」



神様機構長官「久しぶり、神ちゃん」

神様「長官君!?」


神使長「ご無沙汰だ、神使君」

神使「神使長!」


長官「探したよ」

神使長「なぜ2人とも電話に出ないんだ?」


神様・神使「・・・・・・」


長官「中々楽しい事をしていたみたいだね?」

神様・神使「・・・・・・」


神使長「まぁ、とやかく言っても仕方ないから連絡事項だけ伝えておく」

長官「まずこれ」ドンッ!

神様「この紙の束は何でしょうか、長官君・・・」

長官「ん? それいっぱいに反省文を書いて」

神様「え!? コレ何枚あるの?」

長官「500枚」

神様「・・・・・・」


神使長「あと、これね」ペラッ

神使「これは・・・」

神使長「2人の辞令だ」

神使「辞令!?」


長官「今まで出向ご苦労様だったね」ニコッ

神様「まさか、出向が解かれてるの!?」

長官「長い間不便な思いをさせて済まなかったね、神ちゃんと神使君」

神様「おっ、神宮帰還?」

神使「・・・・・・」


神様「どったの?」

神使「いえ・・・ この辞令は・・・」


長官「本日付で2人は調査室に転属だ」

神様「調査室? そんなの神宮にあったっけ?」

神使長「いやいや、神宮にはそんな部署は無いよ」

神使「辞令に“神様・神使を神宮付きから解くものとする”と書いてあるのですが・・・」

神様「ふぇ?」


長官「好き勝手するのに神宮の名前は邪魔だろうからね」

神様「それって・・・」

神使「・・・・・・クビですか?」

神使長「いやいや、優秀な2人をそんな事するはず無いじゃないか」


長官「辞令とは別にリストが付いているだろ?」

神使「沢山神社の名前が書いてありますが・・・」

長官「要調査神社の一覧だ」

神使「要調査?」


神使長「今後2人でその神社を調査するのが仕事になる」

神様「うげっ! なにこの数!」

長官「やりがいがあるだろ?」

神様・神使「・・・・・・」


長官「それじゃ、私達は帰るよ」

神使長「健闘を祈る」

神様・神使「・・・・・・」


長官「そうだ、2人とも半年間は給料が出ないから」

神使長「反省文は今月中に提出するように」

神様・神使「・・・・・・」


バタン
ブーン


神様・神使「・・・・・・」


――― 車内


ブーン


神使長「本当によろしいのですか? 長官」

長官「あの2人は私達が長い時間をかけても解決できなかった問題を、全てたった数日で解決してくれている」

神使長「そうですが・・・」


長官「あの2人なら大丈夫だよ」

神使長「可愛い子には旅をさせろ、ですか?」

長官「いや・・・ 神宮は大きくなりすぎた。 スリムアップかが急務だ」

神使長「大変な作業ですな」

長官「その間はあの2人を巻き込みたくないからね」

神使長「その為の一時的な措置ですか・・・」


長官「神ちゃんは自ら神宮を出て行ったんだ。 また戻ってきたいと思える姿にするのが私達の使命だ」

神使長「・・・・・・」

長官「神ちゃんの理想とした神宮の姿を取り戻す」

神使長「可能ですか?」

長官「さぁ、どうかな。 ・・・それよりもだ」

神使長「気が重いですな」

長官「相手はパチカンだしな・・・」

神使長「今回の件でパチカンとの追加契約書だけでも300ページはありますからね」

長官「神ちゃん、こっちの身も考えてくれよ・・・」

神使長・長官「ハァ~・・・」ゲンナリ


ブーン


―――――
――――
――



神様「神使君?」

神使「何でしょうか?」

神様「これって神宮から追い出されたって事?」

神使「その認識で合っていると思います」


神様「私、ついに野良神になった?」

神使「私も野良神使ですかね・・・」


神様「半年間、給料出ないって言ってたよね?」

神使「はい」

神様「私のローンの支払いは?」

神使「・・・・・・」


神様「私、銀行に601円しかないよ? 手持ちはゼロ。 財布にレシートとポイントカードしか入ってない」

神使「私の貯金で半年持つでしょうか・・・」


神様「ちゃんと私を養ってね、ハート」

神使「・・・・・・」

神様「・・・・・・」


神様・神使「ハァ~」ゲンナリ


神使「仕方ありません、早速次の勤務先に行きましょう」

神様「都会がいい。 都会に行きたい」

神使「ワガママ言っている場合ではありません」

神様「え~ こんなに沢山神社あるんだから都会行こうぜ~」

神使「都会の神社は大変ですよ? 人間関係とか色々。 なんと言っても要調査神社ですから」

神様「・・・・・・。 だよね~」

神使「近場から行きましょう」


神様「その前に二人で温泉行こうぜ~」

神使「温泉!?」

神様「疲れちゃったしさぁ~」

神使「しかし・・・」


神様「最近、宿に泊まってないし・・・ お前とゆっくり過ごしたい」

神使「・・・・・・」


神様「ダメ?」

神使「・・・そうですね。 たまには贅沢も良いでしょう」ニコッ

神様「途中、廃神社によって賽銭パクっ・・・ もらってさぁ」

神使「それはダメです!」

神様「え~ 大丈夫だよ。 昔はよくパクッ・・・ もらったぞ?」

神使「バレたらシャレになりませんよ?」

神様「駅前に結構デカい無人の神社があったんだよ。 行こうぜ~」タッタッタッ

神使「ちょ、神様~」タッタッタッ


神様「早く来いよ~! あそこなら絶対賽銭多いから~」

神使「待って下さ~い」


タッタッタッ




神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
#14「キセキ野教会」 ―END


一番長い話になってしまいました、すいません……
また暇があったら書きたい、そう思ったのでした

ありがとございました


神様「ありがと“う”ございました! アホ!!」


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

神様「フフフ~ン~♪」ジャバジャバ

神使「神様・・・ お願いですから、もう少しお行儀良く入浴して下さい」

神様「うるせー犬、人がいないんだから良いじゃねぇかよ」バシャバシャ

神使「人はいませんが、他の神と神使が沢山いますので・・・」

 他神・他神使「・・・・・・」

神様「あ?」バサァ!

神使「ちょっと神様! 素っ裸で立たないで下さい///」

神様「神様機構付属神苑温泉! 神と神使のユートピア! ここに羞恥などという言葉はない!!」

 他神・他神使「・・・・・・」

神様「おや~? かわいらしいお猿さんの神使み~つけた~」ニヤリ

キー子「ヒィッ!」ビクッ

神様「か~わ~ゆ~い~ わたしと一緒に遊びましょ~」ピョン!


 イヤ~!
 ウヒャヒャヒャヒャ!


~あらすじ~

神様「私は神様! とっても立派なかわゆい女神!」

神使(訳)「神宮を追い出されたダメ女神です」


【#15】


――― 更衣室


神様「すいませんでした。 調子に乗りすぎました」ドゲザ

支配人「・・・・・・」ギロッ

神様「!? ほ、本当にもう他のお客さんにちょっかい出したりしませんので!」ドゲザ

神使「私からも後でキツく言って聞かせますので」ドゲザ

支配人「周りに迷惑かけないで下さいよ? た・の・みますよ」スタスタ


神様「ひぇ~ おっかね~ あの支配人・・・ マジで殺されるかと思った」ホッ

神使「筋肉ムキムキでしたね」

神様「さすが、熊の神使だ・・・」

神使「部屋に戻りましょうか」

神様「あぁ」トテトテ

神使「ちょと待って下さい神様! 全裸ですから浴衣着て下さい!」



――― 宿泊部屋


仲居「お湯の方はいかがでしたか?」

神使「・・・とても良いお湯でした。 すいません」

仲居「?」


神様「ここの温泉って昔はもっとヌルヌルしてトロトロだった気がするんだけど」

仲居「最近、ちょっと泉質が落ちてまして・・・」

神使「何か原因でもあるんですか?」

仲居「えぇ・・・ まぁ・・・」

神使「?」


仲居「お食事は17時から20時までの間に1階の食堂へどうぞ」

神使「あっ、はい。 分かりました」

仲居「それでは、ごゆっくり」スタスタ


神使「神様、仲居さんの様子が少し変でしたね」

神様「そう? 特に違和感は感じなかったけど」

神使「気のせい・・・ ですかね」


神様「しかし、機構の保養所に連れてこられるとは思ってなかった・・・」

神使「一般の旅館になんか泊まれるわけないじゃないですか。 そんなお金ありません」


神様「ハァ~ 周りが神と神使ばっかで休める感じがしないんだけど」

神使「そんなこと言わずに。 見て下さい、外の景色とても綺麗ですよ」ガラガラ

神様「・・・何もねぇな」

神使「だから良いんじゃないですか」

神様「周りにある宿は、普通の旅館なのか?」

神使「そのようですね。 この旅館は表向き企業の保養所になっているそうです」

神様「企業ねぇ~」


神使「1週間ほど予約しましたからゆっくり骨休みしましょう」

神様「こんな所に1週間もいるのかよ・・・」


――― 1時間後


神様「・・・・・・」ボー

神使「神様どうしたんです? さっきから外ばかり見て」

神様「んぁ~?」

神使「反省文まだ1枚も書いてないじゃないですか。 期限は今月中ですよ?」スタスタ

神様「ん~」ボー

神使「ずっと同じ所を見ているようですが何かあるんですか?」ニュッ

神様「あんだよ、あっち行けよ」シッシッ


神使「あれ? 向かいの山の中腹に神社がありますね」

神様「・・・・・・」


神使「あの神社を見ていたんですか?」

神様「わたし見えな~い」

神使「・・・いえ、結構な規模の神社ですが」

神様「見えな~い。 神使君、頭だけじゃなくて目もおかしくなっちゃったんじゃないの?」


神使「・・・・・・」ペラッ

神様「? 何、その紙」

神使「フロントでもらった観光案内です。 え~と・・・ この温泉地帯の守護神様がお祀りされている神社のようですね」チラッ

神様「・・・・・・」プイッ

神使「気になるのでしたら後で行ってみましょうか?」

神様「気になってねぇし! 神社なんて行くのイヤだし!」


神使「神様?」

神様「休暇中なんだし神社のことは忘れようぜ~」

神使「あの神社、長官さんからもらった要調査神社に名前が記載されています」

神様「だから?」

神使「行きます」


神様「神使君、あそこはダメだ。 あそこに私達は近づいてはいけない」

神使「?」

神様「大いなる災いが私達を襲うであろう。 触らぬ神に祟りなし」

神使「触れて下さい。 仕事です」


神様「絶対行かないぞ! 私は何があろうと、この宿から一歩も外に出ない!」

神使「そうですか」

神様「うむ。 神の発した宣言は絶対なのだよ」ウンウン

神使「それでは、私一人でちょっと付近を散歩に行ってきます」

神様「おみやげよろ~」


神使「この温泉街は“牡蠣アイス”というのが名物のようですね」

神様「!?」

神使「アイスはさすがに溶けてしまうので、神様には温泉卵でも買って参りますね」スタスタ

神様「ちょ、ちょっと待って! 牡蠣アイスって何? 私も行く~!」タッタッタッ


続きは書いていない。
どういう話になるんだろう。



――― 泉源山


テクテク


神様「・・・・・・」

神使「ここが温泉の泉源がある泉源山ですか」

神様「おい、犬」

神使「?」

神様「牡蠣アイス食いに来たんじゃないのかよ」

神使「そのつもりですが」

神様「ここって宿から見えた神社がある山じゃん。 騙したな?」

神使「騙すだなんて人聞きの悪い、アイスは神社で売っているんです」

神様「はぁ?」


神使「では、行きましょう」

神様「ヤダ! 行きたくない!」

神使「“牡蠣アイス”食べないんですか?」

神様「く、くそっ・・・ そんな卑怯な手を・・・」ムググ

神使「早く行きますよ」

神様「そうだ! お前が買ってくれば良いんじゃん。 私ここで待ってる」


神使「あっ、参道の出店に牡蠣フライ棒が売ってますね」

神様「よし、行くぞ神使よ。 もたもたするな」トテトテ



――― 参道


テクテク


神様「なぁ~ まだ階段上るのかよ・・・」ハァハァ

神使「あと半分くらいですね」

神様「牡蠣フライ棒、あと1本しかないんだけど」

神使「え!? もう食べちゃったんですか?」

神様「はぁ? 5本しか買ってないんだぞ?」

神使「・・・・・・」


神様「それより、参道綺麗に掃除されてるな」

神使「これだけ長い参道をここまで綺麗に維持するなんて、結構な数の神職さんや巫女さんが居るんでしょうね」

神様「さすがだねぇ~」



――― 10分後


テクテク


神使「そろそろ階段も終わりみたいですね」

神様「へふぼぐばー」ゼェゼェ

神使「・・・なんて言っているんですか?」

神様「やっぱり・・・ 帰ろうぜ・・・」ゼェゼェ


神使「あっ、階段登り切ったところにまた牡蠣フライ棒の屋台がありますね」

神様「よし! もう少しだ! 気合い入れろ!」スタスタ

神使「・・・・・・」



――― 境内


神様「おっちゃん! 牡蠣フライ棒2本!」

屋台店主「あいよ」

神使「私はもう食べられないので1本だけで・・・」

神様「あ? 私が食べる分だよ」

神使「・・・そうですか」

屋台店主「はい、揚げたてどうぞ」

神様「ども~♪」


神使「しかし、どうして牡蠣フライ棒なんですか? 私、初めて見ました」

屋台店主「あ~ ここの神社は屋台出すためには牡蠣関係じゃないと許可おりないんだよ」

神使「・・・・・・」

神様「んめ~ 牡蠣フライんめ~ やっぱ揚げたてが一番だよね」パクパクッ


神使「・・・神様?」

神様「言っておくけど、私は関係ないぞ」アムアム

神使「本当ですか?」

神様「それより、早く牡蠣アイス食って帰ろうぜ」


神使「店主さん、こちらで牡蠣アイスが売っていると聞いたのですが」

屋台店主「あ~ 境内の右手にある授与所で売っているよ」

神使「ありがとうございます」



―――授与所


神使「この授与所ですかね?」

神様「誰もいねーじゃん。 お~い巫女さ~ん、奥にいないの~?」


 幼女「ねぇ、ねぇ。 お兄ちゃん達参拝に来たの?」


神使「え?」クルッ

幼女「参拝に来たの?」

神使(かわいらしいお稚児さんですね)

幼女「・・・・・・」ジーッ

神使「神様、後ろ見て下さい。あの子、巫女服着てかわいらしいですよ」


幼女「お兄ちゃん?」

神使「あっ、ごめんなさい。 聞こえてますよ」ニコッ


幼女「・・・なんじゃ、こちら側の者か。 珍しいな」

神使「えっ!?」

幼女「我を子供扱いするんじゃない無礼者」ムスッ


神使「あの神様、って・・・ 神様どうして後ろ向いたままなんです?」

神様「わ、わたくしそろそろ帰りますわね。 おホホホホ」

神使「何ですかその言葉使い・・・ しかも裏声で・・・」

神様「しっ! 帰るぞ」ボソッ


幼女「おや~? もしかしてお前・・・」

神様「・・・・・・」


幼女「おい、そこの女。 こちらを向いてワシに顔を見せろ」

神様「・・・そ、そんな幼女神さまに見せる顔など」

神使「だから何ですかその裏声は・・・ って“ようじょしん”さま?」

神様「あぁぁぁぁぁぁ!!!! セイッ!」ゲシッ

神使「痛っ!」


幼女神「お前、ワシを知っておるのか?」ニヤッ

神様「イヤですわ、わたくしそんな事言っておりませんの事ですわよ?」


幼女神「そうか、いやワシの知っている者と後ろ姿がよく似てるのでな」

神様「その方は美人さんなのですわね」

幼女神「いや、その者は中身が腐っておってな? 全身からクズのオーラが滲み出ておるのじゃ」

神様「わ、私と正反対ですわね」プルプル

幼女神「ふむ。 しかもそいつは何を勘違いしておるのか、自分がとても“かわゆい”と信じ切っておるのじゃ」

神様「てめぇ! 幼女だからって調子にのってるとケチョンケチョンにしばき倒すぞ!」クルッ


幼女神「やはりお前か」ニヤッ

神様「うぐっ!」


神使「あの・・・神様、これは・・・」

神様「あ? 見てわかんないかよ。 巫女服着た幼女だよ、幼女」

神使「どうしていつも紹介が雑なんですか・・・」


幼女神「ワシは、この社の主神じゃ」

神使「主神様でしたか! 初めまして、私こちらの神様に使える狛犬の神使と申します」フカブカ

幼女神「ほぉ、倭国神の使いか」

神使「わこくしん?」

神様「その名前で呼ぶの止めてくれない? 前にも言ったよね?」

幼女神「お前、誰に向かって口を利いているんだ?」

神様「うぐっ・・・ す、すいません」

神使「!?」


幼女神「久しぶりじゃな」

神様「ご無沙汰しております」フカブカ

神使「えっ? え?」


幼女神「なんじゃ、狛犬の神使よ」

神使「いえ、神様が他人にこんな態度を取るのを初めて見た物で・・・」

神様「ばか! 余計なことを喋るな!」

幼女神「まぁ無理もなかろう。 そいつはこの国の最高神だからな」

神使「はぁ」

幼女神「ほぉ、これは驚いた。 神使の身分であるお前がこいつの正体を知っておるのか!?」

神使「はい・・・ 一応、神様の使いですので」


幼女神「なるほど、そういうことか」ニヤッ

神様「チッ」イラッ


神使「主神様はとても・・・ その、何と言いますか・・・ お若いですね」

幼女神「お前も外見で判断する類いの者か?」

神使「いえ、そのようなことは・・・」

幼女神「クックックッ、すまぬ。 冗談じゃ楽にしろ」

神使「・・・恐れ入ります」ペコリ


神様「そ、それでは私達はこれで」

幼女神「待て待て、折角来たんじゃ。 茶の一杯くらい飲んでいくが良い」

神様「いえ、私達も色々と忙しいもので」ペコリ

幼女神「特製の牡蠣アイス、食べたくないか?」

神様「お言葉に甘えます!」クワッ!


――― 社務所


幼女神「茶を入れてくるから、この部屋で待っておれ」テクテク


神使「神様、幼女神さまというのは・・・?」

神様「私よりも前からこの国にいる神だよ。 元々は、あれが最高神だった」

神使「え!?」

神様「内緒にしておけ、私以外知らないはずだし」

神使「ど、どういうことです!?」

神様「あれが引退して、私が後を継いでいるんだよ」

神使「引退って・・・ いつのことですか?」

神様「えっと~ 私が卑弥呼になった少し前だから~」

神使「・・・・・・」

神様「何だよ」

神使「いえ・・・ 何となく気付いてはいましたが、聞かない方が良かったなぁと思っただけで」

神様「どういう意味?」


幼女神「あまりワシの居ないところで昔話をするでない」テクテク

神様「別にいいじゃん」

幼女神「言葉使い」

神様「それを言うならあんたもだろ! その見かけで、その言葉使いは違和感ありまくり!」

幼女神「ほぉ~ そんなことを言っても良いのか?」ニヤッ

神様「何だよ」

幼女神「よいしょ」スッ


テクテク
ガラガラ


神様「あんだよ、寒いから窓開けんなよ」ブルッ

幼女神「外に参拝者が居るのぉ」ニヤッ

神様「?」


幼女神「ふぇ・・・」グスッ

神様「!?」

幼女神「びえぇぇーん! おねぇちゃんがいじめるよ~ びぇぇぇーん!」

神様「ちょ! お前! 何さらしとんじゃ!!」ガシッ


ガラガラ ピシャッ



幼女神「ヘッ」ニヤッ

神様「何ていう姑息な手を」グヌヌ

神使「・・・・・・(何でしょう、この方から神様と同じニオイがします・・・)」

幼女神「このガキとワシを一緒にするでないわ」

神使「!?」


神様「あ~ こいつ勝手に心を覗くから注意した方が良いぞ」

神使「心を!? そんなこと可能なんですか?」

幼女神「当たり前じゃ。 この位そこのクソガキだって出来るだろう?」

神様「・・・・・・」

神使「神様も!?」


神様「私は・・・ 覗かない」

幼女神「ほぉ」

神様「必要のない力だ」

幼女神「なるほどな」

神様「あー! もう! 早く牡蠣アイス出せよ!」バンバン

幼女神「まぁまぁ、少し待つが良い」

神様「だから来たくなかったんだよ・・・」


神使「あの、幼女神さま?」

幼女神「なんじゃ?」

神使「神職や巫女の方の姿が見受けられないのですが、祭儀中とかでしょうか?」

幼女神「おらぬ」

神使「え?」

幼女神「この社に神職や巫女はおらぬ」

神様「あんた一人なのか?」

幼女神「神使がいる。 もうじき戻ってくると思うが」


 ?「ただいま戻りました~」


幼女神「噂をすれば、戻ってきたようじゃ」

神使「女性の神使なのですね」



ガラガラ


キー子「幼女神さま、ただいま戻りました」

幼女神「ご苦労」

キー子「あっ、失礼しました。 お客様でしたか」ペコリ

幼女神「気にすることはないぞ」


神様「あっ」

キー子「? ・・・あっ!」


幼女神「なんじゃ、顔見知りか?」

神様「べ、べ、別に・・・ は、初めましてだよ」アセアセ

神使「先ほど、神様が機構の温泉で悪戯した方です・・・ 素っ裸で飛びついて長時間スリスリしてました」

神様「何その言い方! スキンシップって言えよ!」


幼女神「・・・・・・お前」ゾッ

神様「おい、そこ! 引くな!」


キー子「支配人のゴリ夫さんに首を捕まれて温泉から連れ出されていましたが、大丈夫でしたか?」

神様「そういうこと言わないで・・・ 私の立場が悪くなるだけだから・・・」


幼女神「お前は相変わらず、おバカじゃのぉ」ハァ

神様「幼女に吐き捨てるように言われると精神的にキツいんですけど・・・」


幼女神「キー子、帰って早々すまぬが牡蠣アイスを用意してくれるか?」

キー子「はい、ただいまお持ちいたします」ペコリ

神様「特盛りでお願いね」

キー子「はい、分かりました」フフッ


スタスタ



神使「しかし、何故牡蠣なのですか?」

幼女神「この世で一番美味いものだからだ」

神様「さすが、良くお分かりで」ウンウン

神使「・・・・・・」


幼女神「昔はよくお前と海で牡蠣を食べたな」

神様「そうだっけ?」

幼女神「なんじゃ、もう忘れたのか?」

神様「いつの話だよ」

幼女神「まだ人が石を投げてウホウホ言っている時代じゃ」

神使「え!? それって石器時代とかですか?」


神様「嘘つくなよ! そんな時代に私はまだいねーよ!」

幼女神「そうじゃったか?」

神使「・・・・・・」

神様「神使君? コイツの話を真に受けないでね? さすがに私はそこまで古くないから」


幼女神「ハハハッ! 愉快じゃ!」ゲラゲラ

神様「アンタさぁ、そういう嘘言って楽しいわけ?」

幼女神「すまぬ、すまぬ」ハハッ


神使(幼女神さま、楽しそうですね)

幼女神「ワシも楽しむことくらいある」

神使「あっ、すいません・・・」ペコリ

神様「ったく・・・」



スタスタ


キー子「お待たせいたしました」


神様「待ってました!」

キー子「どうぞ」コトッ

神使「普通のアイスクリームのようですが?」

キー子「中に牡蠣が入っているんです」


神様「どれどれ~」ホジホジ

幼女神「何じゃお前は。 折角綺麗に盛り付けてあるのに、ほじくり返すな」

神様「お~ カチンコチンの牡蠣発見!」

神使「神様、お願いですからもう少しお行儀良くして下さい・・・」

神様「うるせー」パクッ

神使「では私も、いただきます」パクッ


神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・(生臭い)」


キー子「お口に合いませんでしたか?」

神使「いえ・・・ 何と言いますか、独特な・・・ どうですか神様?」


神様「うっ・・・ うめえーー!!」

神使・キー子「!?」ビクッ

神様「うめー! うめー!」パクッパクッ

幼女神「そうじゃろう、そうじゃろう」ニコニコッ


幼女神「狛犬の神使には普通のやつが良いじゃろ。 キー子、入れてやれ」

キー子「はい」スッ

神使「日本酒・・・ ですか?」


キー子「一般にお出ししている物はお酒に浸しておりまして」トクトクッ

神使「そうだったのですか」

幼女神「まぁ、これで食べられるじゃろ」

神使「それでは、改めていただきます」パクッ


キー子「いかがです?」

神使「臭みが消えて美味しい!」

幼女神「そうじゃろ?」


神様「私もそれ食べたい」

神使「ダメです、神様お酒弱いじゃないですか」

神様「私だってお酒くらい大丈夫だよ」

幼女神「止めておけ、牡蠣の濃厚な味が弱くなるぞ」

神様「ふ~ん、じゃこのままで良いや」パクパク


神使「生臭くないですか?」

神様「そこがいいんじゃん」

神使「はぁ・・・」


神様「それより、さっき温泉に入ってきたんだけどさぁ」

幼女神「保養所のか?」

神様「なんか昔よりヌルヌルしなかったんだけど」

神使「仲居さんも、最近泉質が悪いようなこと言っていました」

キー子「・・・・・・」

幼女神「結構頑張って温泉を作っているんじゃがのぉ」

神様「あ? 泉質とアンタって関係あるのか?」

幼女神「当たり前じゃ。 温泉の効能はワシ自身の神力だからのぉ」

神様「は?」

神使「どういうことです?」


幼女神「元々この地の温泉はただの白湯じゃ。 そこにワシが神力を入れてこの地一帯に出している」

神使「神力入りの温泉・・・ 通りで効能が日本一のはずです」

幼女神「しかし、最近は旅館が増えてのぉ。 理想の泉質に中々追いつかないのじゃ」

神様「アンタそんな事してたのかよ」


キー子「幼女神さま、そろそろ明日汲みあがる分の温泉を作りませんと」

幼女神「そうじゃな、行ってくるか」ヨイショ

神使「どのようにして神力を入れるのですか?」

幼女神「見てみるか?」ニヤッ



――― 源泉殿


神様「何? この掘っ立て小屋」

幼女神「おい、失礼だぞ」

神使「こちらで温泉をお作りに?」

キー子「はい。 中には源泉をくみ上げた湯を張っておりまして、幼女神さま専用の入浴場所です」

神様「入浴?」

幼女神「そうじゃ。 さて準備するかの」ポイポイッ

神使「・・・・・・」


キー子「幼女神さま? 失礼ですが、お客様もおりますので浴衣を着用されては?」

幼女神「いまさら他人に裸を見られたところでなんとも思わんわ」

キー子「しかし・・・・・・」

神使「私達の事はお気になさらず。 神様もいつも裸ですので」

神様「神使君、その言い方おかしくない? 悪意あるよね?」



幼女神「さて、入浴ターイム!」サブ-ン!

神使・神様「・・・・・・」


幼女神「ふい~ 気持ちいいのぉ~」チャプン

神様「おい・・・ もしかして、温泉の元ってお前が入浴して神力入れてんの?」

幼女神「そうじゃ。 ワシも気持ちいいし一石二鳥だと思わんか?」

神様「マジかよ・・・・・・」

幼女神「?」


神様「ここの温泉って幼女の出し汁かよ!」

幼女神「出し汁とか言うな! 無礼者!」


神様「あのヌルヌルでトロトロした温泉の元が幼女の絞りかすだったとは・・・」

幼女神「クソガキ! それ以上ワシを侮辱すると牡蠣を絶滅させるぞ!」

神様「・・・・・・。 幼女神さまの有り難き神力を下々の者が享受できる最善の方法、感服いたしました」フカブカ

幼女神「そうじゃろ? 中々良い案であろう?」フフン

神様「はい、このような素晴らしき方法は私には思いも付きません」

幼女神「うむ。 どうだ? お前も一緒に入らぬか? 特別に許可しよう」

神様「いえ、私のような半人前が幼女神さまと一緒に入浴などおこがましく」

幼女神「遠慮はいらん。 さぁ一緒に入ろうではないか」


神様「・・・・・・キー子ちゃんは一緒に入ら―――」

キー子「あっ! 私、境内のお掃除の時間ですのでお先に失礼いたします」ペコリッ

神様「わ、私も! キー子ちゃんとお掃除に行って参ります! お湯はその後で頂きます!」

幼女神「そうか・・・ まぁ入浴は掃除の後の方が良いな。 頑張ってこい」シュン


キー子「で、では失礼いたします」ペコリ

神様「失礼します!」ペコリ


タッタッタッ


神使「あっ、神様・・・」


幼女神「おい、狛犬の神使や」

神使「はい!?」

幼女神「お前はどうじゃ?」

神使「え!?」

幼女神「一緒に風呂に入らぬか」

神使「私がですか?」

幼女神「遠慮することはない。 源泉になど中々入ることは出来ぬぞ?」

神使「しかし・・・・・・」

幼女神「腰痛・肩のこりが酷いようじゃな。 その位、この湯に浸かるだけで一発で治るぞ?」

神使「お言葉に甘えます」ペコリ



神使「気持ちいいですね」フ~

幼女神「そうじゃろう、肩まで良く浸かれよ」


神使「幼女神さまは毎日このように温泉をお作りになっているのですか?」

幼女神「うむ。 朝昼夕と日に3度じゃな」

神使「そんなに!?」

幼女神「大きな宿が出来てのぉ、中々追いつかないのじゃ」

神使「それは大変ですね」

幼女神「なぁに、皆が温泉に浸かって少しでも疲れが癒えるのならそれでいい」

神使「・・・・・・」


幼女神「何で温泉の神なんかやっているのかって?」

神使「あっ、すいません・・・」


幼女神「牡蠣と・・・」

神使「?」

幼女神「アイツは、牡蠣と温泉が好きなんじゃ」

神使「・・・・・・」

幼女神「・・・・・・」


神使「そうですね」

幼女神「アイツが好きな物はワシも大好き、それだけじゃ」


神使「・・・・・・」

幼女神「何か気になることでもあるのか?」

神使「え?」

幼女神「ワシに隠し事など出来ぬぞ?」ニヤッ

神使「・・・・・・」


幼女神「そうか。 今日は気分が良い、少しだけ昔話をしてやろう」


幼女神「遙か昔、人がワラや木を組んで住居を作り始めた頃、ワシはこの国の未来をあのガキに託した」

神使「そんなに古く・・・」

幼女神「古い、か・・・」

神使「?」

幼女神「アイツが神になってから今までの期間より、ワシはもっと長くこの国の神をしていたんじゃぞ?」

神使「え!?」


幼女神「神の仕事を託てしからのアイツは・・・ それはもう酷いもんじゃった」

神使「・・・・・・」


幼女神「卑弥呼に据え国を治めさせれば失敗。 その後も何度か国を治めていたが失脚、逃亡・・・ 最低じゃった」

神使「そうでしょうね・・・」

幼女神「アイツの側近はいつも大変そうじゃったな」

神使「最高神がアレですから、周りがきちんとしないと歯止めがきかないですよね・・・」

幼女神「そう。 そこじゃ!」

神使「はい?」


幼女神「アイツは短期間でこの国をここまでの姿に変えた。 それはアイツがダメ神だったからなんじゃ」

神使「どういうことでしょうか?」

幼女神「こう見えて、ワシは完璧主義者でな? 何かを成すときは必ず順を追って物事を進めるのじゃ」

神使「ご立派です」

幼女神「いいや、それがダメだったんじゃ。 それをやるのはワシではなかった・・・ ワシがやってはいけなかった」

神使「?」


幼女神「ワシはアイツよりも長く最高神をしていながら・・・」

幼女神「・・・・・・」ハァ

神使「幼女神さま?」


幼女神「あのクソガキは優秀だ。 ワシは到底アイツにはかなわない」

神使「そのようなことはないと思うのですが・・・」

幼女神「いいや、お前も気付いているのであろう? アイツの偉大さが」

神使「・・・・・・」


幼女神「多神の存在、神社や神宮の機能。 全てアイツが作った・・・ いや、上手く言って作らせた物だ」

神使「そう言われれば・・・ 素晴らしい仕組みですね」

幼女神「神使の存在もアイツが作ったのだぞ?」

神使「え!?」


幼女神「お前とあのガキは良い夫婦じゃ」

神使「め、めおと!?///」


幼女神「真っ赤になって源泉にでもやられたか? 上がって体を休めると良い」ニヤニヤ

神使「そ、そうさせてもらいます」ザバー

幼女神「きちんと体を拭くんじゃぞ」


神使「・・・・・・」チャポン

幼女神「どうした?」

神使「無礼を承知の上で、一つ伺いたいのですが」

幼女神「?」



神使「神様はどのように生まれたのですか?」


幼女神「アイツの生まれか?」

神使「はい。 もし差し支えなければ・・・」

幼女神「ふむ。 アイツは・・・ ワシが朝、目を覚ましたら隣にいた」

神使「え?」

幼女神「目を覚ましたらジーッとワシを見ていての~」

神使「どこからか歩いて来たとかですか?」

幼女神「分からぬ。 とても不思議な感じじゃった」

神使「不思議?」

幼女神「まるでワシが分裂したかのような・・・ 最初は意識もある程度共有されていた気がする」

神使「それって・・・・・・」


~~~



神様「二百年くらい前にね、気付いたら別れてた」



神使「原因が分からないんですが、一体何がおこったんですか?」

猫神「分からないんだよね~ 神ちゃん自身も驚いてたくらいだし」



~~


神使「・・・・・・」


幼女神「そうか、そんなことがあったのか」

神使「あっ」

幼女神「すまん、お前の心を見てしまった」

神使「もしかして、同じでしょうか・・・」

幼女神「そうだな」

神使「ということは、神様はもいずれ・・・」

幼女神「お前が気にすることはない」

神使「そう・・・ ですよね。 幼女神さまも最高神をお譲りになってもお元気ですし」

幼女神「・・・ワシは、まだあのガキに渡していない物があるからな」

神使「渡していない物?」


幼女神「それをアイツに渡せば、ワシは・・・ この世から消えるであろう」

神使「!?」

幼女神「ただ、受け取ってくれなくてのぉ」

神使「一体何を・・・」

幼女神「教えないよーだ」ベー

神使「・・・・・・」


幼女神「そろそろ上がった方が良い。 源泉故少し湯あたりがキツいと思うしな」

神使「はい」ザバッ


幼女神「狛犬の神使よ」

神使「?」

幼女神「知っているとは思うが、あのガキはお前を好いておる。 そして、お前もな」

神使「・・・///」

幼女神「アイツはワシにとって・・・ いや、この国にとっても大切な宝じゃ」

神使「・・・・・・身分不相応な感情お許し下さい」

幼女神「そんなことはない。 ただ、一つだけ言わせて欲しい」

神使「はい」


幼女神「アイツをよろしく頼む」

神使「幼女神さま・・・」



――― 更衣室


神使(のぼせてしまいました・・・ 早く着替えて私もお掃除を手伝いましょう)スタスタ

ガラガラ


神様「んがっ!?」ビクッ

神使「うわっ! 神様! キー子さんと掃除に行かれたんじゃないんですか!?」

神様「え? パ、パンツ忘れちゃって」

神使「・・・神様は温泉入っていないじゃないですか。 それにパンツだって今日は履いてないですし」

神様「履いてるよ! 見ろよ! 超かわゆいパンツだろ!」ズルッ

神使「履いているじゃないですか」


神様「?? あっ! お前騙したな!」

神使「こんな手に引っかかるなんて・・・」



神様「ったく・・・ 幼女のやつベラベラ喋りやがって」ボソッ

神使「盗み聞きしていたんですか?」

神様「ん? してないよ?」

神使「・・・今ベラベラと喋りやがって、って」

神様「言ってないよ?」

神使「・・・・・・」


神様「そんなことはどうでも良いの! 話があるから着替えたら社務所の裏まで来い」

神使「話?」

神様「いいから! 早くしろよ」タッタッタッ



――― 社務所裏


神使「・・・・・・」


神様「うひゃひゃ! このスベスベな肌がたまんねーよ。 気持ちい~い~」スリスリ

キー子「あの・・・ そんなにくっつかれると動き・・・ にくいのですが・・・」

神様「高速スリスリ―!」スリスリスリスリ


神使「神様?」グイッ

神様「ぐへっ!」ズルズル

神使「どうしてそんなにキー子さんにくっつくんですか・・・」

神様「だって、見ろよこの透き通るような白い肌! ツルツルスベスベで辛抱堪らん」グヘヘ

キー子「・・・・・・///」

神使「その発言は変質者としか思えないんですが・・・」


神様「犬ころ、お前幼女くせーな」スンスン

神使「え!?」

神様「幼女としっぽり裸の付き合いを堪能したんですね、分かります」

神使「温泉に入っていただけですから・・・ 見ていたんじゃないんですか?」

神様「見てねーし。まぁ良いや」


神使「それより、こんな所に呼び出してお話しというのは?」

神様「お前、この神社が要調査神社に指定されているって言ってたよな」

神使「えぇ。 それほど重要性は高くはありませんでしたが」

神様「理由は?」

神使「主神さまの神階調査書が神宮に提出されていないと」

キー子「・・・・・・」


神様「何? 神階調査って」

神使「神社の格や主神さまの神階を規定するため、身上や主神さまの神力量を記した報告書です」

神様「そんなのあるの? 私、今まで書いた覚えないよ?」

神使「神様、聞いていました? “神社の主神さま”が書く物です。 神様は神社の主神ではございませんので」

神様「・・・あぁ~」ゲシッ

神使「痛っ!」

神様「そんなの出さなくたって問題ないだろ」

神使「はい、ですから重要度はそれほど高くないと」

神様「ん~」チラッ

キー子「・・・・・・」


神様「聞きましょうか?」

キー子「え?」

神様「何かあるんでしょ? 私これでも神宮が誇る最強の女神だよ?」

キー子「神宮の!?」

神使「元です。 先日、神宮から―――」

神様「ア~チョ~ッ!」ゲシッ

神使「痛い!!」ガクッ


神様「確かに、私はかわゆくて神に見えないと思うけど立派な女神なの」

キー子「はい。 幼女神さまと同じ気を感じます」

神様「・・・・・・」

神使「気? ですか?」


キー子「一緒に来てもらいたいところがあるのですが、よろしいでしょうか」



――― 高級ホテル・ホテルニューよこどり


神使「ここは?」

キー子「2年ほど前にオープンした高級ホテルです」


神様「すげー・・・ 神使君、今日から私達ここに泊まらない?」

神使「きっと1泊何万もするんでしょうね・・・」

キー子「最低でも一泊4万円するそうです」

神様「一泊4万!?」

神使「機構の保養所に20日間も泊まれますね・・・」

神様「え!? 私達の宿って一泊2千円なの? 安っす!」

神使「しかも食事付きです」

神様「いくら神宮からの補助が出てるっていっても安すぎだろ・・・」


神使「こちらの高級ホテルに何かあるのですか?」

キー子「取りあえず中に」スタスタ

神様「一張羅着てくれば良かった」トテトテ

神使「そうですね、神様ジャージですから・・・」


ウイーン


神様「なにこれ・・・」

神使「中も立派ですね・・・」

神様「建物の中なのに噴水があるんですけど」

神使「正面にある案内板だけで神様の神宮の部屋より大きですね・・・」

神様「そういうこと言わないで、悲しくならから」



――― フロント


従業員「いらっしゃいませ」

キー子「日帰り温泉に入りたいのですが・・・」

従業員「そちらのお客様もご一緒ですか?」

キー子「はい、3名でお願いします」


従業員「・・・・・・」チラッ

神様「ジャージじゃダメ?」

従業員「いいえ、3名様で1万5千円になります」

神様・神使「!?」


キー子「回数券で」スッ

神様「日帰り温泉が1人5千円!?」

従業員「当ホテルは最高の温泉施設を有しておりますので、きっとご満足頂けると思います」


キー子「行きましょう、こっちです」スタスタ

神使「あっ、はい」スタスタ

神様「高け~」トテトテ



テクテク


神使「私達の分は後ほどお支払いいたしますので・・・」

キー子「お気になさらず。 温泉組合専用の回数券がありますから」

神使「すいません・・・ お言葉に甘えさせて頂きます」ペコリ


神様「5千円の温泉ってどんなかな~♪」

神使「しかし、この辺の温泉は全て源泉が同じなんですよね?」

キー子「はい。 この時間ですと露天風呂が空いていると思いますのでそちらに行きましょう」

神様「いいね~ 露天」



―――よこどり大露天風呂


神様「大露天風呂入り口か」

神使「では、私は男湯の方で」

神様「覗いちゃいやよ~ 覗いたら罰としてお前は明日から3食コンビーフな」

神使「覗きません。 っていうか何でコンビーフなんですか・・・」


キー子「では、後ほど」

神使「はい。 私の方が早く上がると思いますので、ここのロビーで待っております」

キー子「ふふっ」クスッ

神使「?」



ガラガラ


神使「お~ これは広いですね。 神様もいませんし、久しぶりにのんびりできそうです」

神様「神使君さぁ、本人のいる前でそういうこと言っちゃダメだと思うの」

神使「え!?」クルッ


神様「いや~ん、豊満な私の体を見たくて変質者が女湯に紛れ込んでるぅ~」クネクネ

神使「女湯!? え? 私、男湯の方から! あれっ!?」キョロキョロ

キー子「安心して下さい。 ここの露天は混浴ですから」

神使「そ、そうでしたか」ホッ


神様「犬ころ、お前覗いたから明日からコンビーフな」

神使「覗いたって・・・ 混浴ですから仕方がないかと思うのですが・・・」

キー子「この一帯の温泉は露天風呂は混浴という決まりがありまして」

神使「そうだったんですか」


キー子「まだ他のお客さんもいないようですから入りましょう」

神使「はい」

キー子「その角を曲がれば露天風呂です」


神様「おっ風呂~ おっ風呂~♪」トテトテ

神使「神様・・・ 混浴なんですからキー子さんのようにタオルを巻くとかして下さいよ」

神様「何で風呂入るのにタオルなんか巻くんだよ。 お前もその腰に巻いているタオル取れよ!」グイグイ

神使「ちょ、止めて下さいよ! あっ、引っ張らないで下さい!」

キー子「ふふっ」クスクス

神様「キー子ちゃんも一緒に裸になりましょ~」ピョン

キー子「すいません、止めて下さい」キッ

神様「・・・・・・はい」

高くなったのは10年ぐらい前に法律変わってコン”ビーフ”だから牛肉使わないといけなくなったから

昔のままの原材料(馬肉など)の「コンミート」なら少し安い

神ちゃん「コンビーフ」なのは犬ころに良いもの食べさせてあげたいのか?…んなわけないか



スタスタ


神使「お~! すごい大きさのお風呂ですね」

キー子「国内でも有数の大きさを持つ露天風呂だそうです」

神様「よっしゃー! 客いねーし泳ぎまくってやる!」ピョーン


ザブーン


神使「神様、何度も申しておりますがもう少しお行儀良くして下さい・・・」

神様「あれ? この温泉、昔入ったやつと同じだ」

神使「昔?」

神様「トロトロでヌルヌル、保養所の温泉と全然違う」

神使「え?」


キー子「汲み上げ直後の源泉掛け流しですので」

神様「うわっ、そういえばこれ幼女の出し汁だった・・・」

神使「では、私も失礼して」チャポン


神使「確かに全然違いますね」

神様「なんでこんなに違うの?」

キー子「幼女神さまがお作りになった源泉は、地下で鉱物などと合わさって汲み上がるんです」

神様「幼女汁は地下で熟成するって事か」

神使「熟成って・・・ 保養所の温泉や他の旅館は違うのですか?」

キー子「同じなんですが・・・」

神使「?」


キー子「このホテルが建つ前は、この場所は汲み上げ場の一つだったんです」

神様「汲み上げ場の上にホテルがあるの?」

キー子「温泉の管理組合が資金難で、3年前にこの土地を売ってしまい・・・」

神使「なるほど・・・ それで、ホテルニューよこどりがこの場所に建ったと」

キー子「今は他に湧く場所がなく、他の旅館もここから温泉をもらっております」

神使「他の場所からは出ないのですか?」

キー子「もう一つあったのですが・・・ 枯渇してしまいまして」

神使「そうだったのですか」

キー子「それで、無理を言って各旅館へ源泉を融通してもらっている状況なんです」

神様「は~ん、周りの旅館には源泉を薄めて渡しているって事か」

キー子「確証はないので何とも・・・」

神使「それが本当だとするとちょっと許せないですね。 周りの旅館から文句は出ないのですか?」

キー子「施設自体はこのホテルの物ですし、薄めているとはいえ譲ってもらえるだけでも有り難い部分もありまして」


神使「組合の方で汲み上げ場を新設するのは難しいのでしょうか?」

キー子「何千万円もかかりますから・・・ とてもそんな予算は・・・」

神様「金に困ってなかったらこの場所売ってねーだろ」

神使「まぁそうですよね」

神様「それに他の旅館分の源泉もこの状態で作るのは、あの幼女の神力が追いつかない」

神使「そう言えば、今も日に3度作っていると仰っていましたね」

神様「このホテル、神ちゃんパワーで潰しちゃう?」ニヤッ

神使「またそんなことを言って・・・」

キー子「このホテルのおかげで、周りの施設にもお客さんがたくさん来てくれている事もありますので・・・」

神使「持ちつ持たれつ、って事ですね」


神様「幼女は知ってんの?」

キー子「・・・いいえ」

神様「でも、あいつに隠し事なんか出来ないでしょ」

神使「そう言えば、幼女神さまは心を読むことが出来ますからね」

キー子「幼女神さまは、私の心は読めないようで」

神使「え?」

神様「ふ~ん」

神使「どういうことです?」

神様「キー子ちゃんは、いつからあの幼女と一緒に?」

キー子「三百年ほどお仕えしております」


神様「幼女の神力、昔よりかなり減っているよね?」

キー子「・・・はい」

神使「そうなんですか?」

キー子「先月の簡易測定では8カミーでした」

神使「8カミーって結構高いんじゃないですか? 最高は10カミーですよね?」

神様「神使君? カミーの最高値は100だよ?」

神使「しかし、最大の神力を持つ猫神さまが10カミーですよ? 10カミーが最高じゃないのですか?」

神様「カミーの基準値って何か知ってる?」

神使「基準?」

神様「私の神力が基準になっているのだよ。 そう! 私の神力が上限値の100カミーなのだ!」フンスッ

神使「・・・・・・」


神様「ビックリした? ねぇ、超ビックリしたでしょ」

神使「神様は0カミーじゃないんですか?」

神様「今の話じゃねーよ! 私の最盛期は100カミーだった訳よ。 ユーノウ?」

神使「・・・・・・」

神様「あ~ 驚いて言葉も出ない? それも仕方のないこと、私の凄さに恐れ戦きひれ伏した後に牡蠣を納めよ!」カッカッカッ

神使「そうですか。 で、キー子さん。以前の幼女神さまの神力はどのくらいあったのですか?」

神様「あれ? 神使君? もっと、こう“さすがかわゆい神様! かわゆいだけではないと思っていました!”とかないの?」

神使「神様? いくら何でも100カミーは盛りすぎです。 せめて20カミーくらいでないと信憑性がありません」

神様「いや・・・ まじで私100カミーなんだけど・・・」


キー子「以前の幼女神さまは30カミーほどありました」

神使「30カミー!?」

神様「ほら! 30カミーだってあるじゃん! 私は100カミー!!」

神使「30カミーだなんて、ちょっと想像できませんね・・・」

キー子「日本中の温泉は幼女神さまが過去に全国を旅して神力を入れていった物だそうですので」

神使「日本中の!?」

神様「マジかよ・・・ でも温泉から神力を全く感じないけど」

キー子「神力がバレないように調整するのが非常に難しいそうです。 それにここと違って1回限りの神力注入なので」

神使「日本の温泉が特殊なのはそういうことだったのですか」

神様「うげー、温泉全部が幼女の出し汁なのかよ・・・」


神使「やはり幼女神さまの神力減少は、温泉の作りすぎという事でしょうか?」

神様「う~ん」


神使「神社に来る参拝者からの願掛神力はどうされているのですか?」

キー子「実は・・・ 私が頂いておりまして・・・」

神使「え? キー子さんが神力を?」

キー子「あっ、でも頂いたお力は参拝者さんのお願い事の成就に使っておりますので」

神使「それは・・・」

キー子「幼女神さまは、何と言いますか・・・ あまり成就などのお仕事は好きでないようで・・・」

神様「あ~ 私と違って幼女はそう言うの好きじゃないしな」

神使「・・・・・・ (やっぱり神様と似ていますね)」

キー子「でも、温泉を作ったり屋台の牡蠣フライ棒や牡蠣アイスなどの監修でお忙しので」

神使「はぁ・・・」

キー子「それに、幼女神さまの負担を少しでも軽くしたくて・・・ 成就は幼女神さまからの許可も得ております」


神使「しかし、それは神の仕事であって・・・」

神様「キー子ちゃんは三百年もいるんだぞ? もう神使の枠を超えてるだろ」

神使「ちょっと待って下さい。 するとキー子さんは神使でなく・・・」

神様「まぁ、ある意味神だよね。 幼女の代わりに神力使って参拝成就しているわけだし」


神使「ちなみに、いつからキー子さんが幼女神さまの代わりを?」

キー子「三百年ほど前から・・・」

神使「幼女神さまとお会いになった時じゃないですか・・・」

キー子「・・・はい」

神使「では幼女神さまは何百年も神力補充をしていないと言うことですか?」

キー子「そう・・・ なりますね。 幼女神さまが神力を得ているところを見たことありませんので」

神使「それでは幼女神さまの神力は減る一方じゃないですか」

キー子「・・・すいません」


神様「私が最高神を継いだとき、幼女はまだ私と同じくらいの見かけだった」

神使「え!?」

神様「アイツは大人から子供へと成長の過程をたどる。 今の仕組みとは逆だ」

神使「ちょ、ちょっと待って下さい。 どういうことですか?」

神様「赤子から子供、そして大人になるという成長過程の前は逆だったんだよ」

神使「・・・はい?」


神様「進化の試行錯誤。 どうやって成長させたら良いのか色々と試していたわけ」

神使「そんな時代があったんですか?」

神様「私はその時代の事は知らないけどね。 昔、幼女から聞いただけだし」

神使「ということは幼女神さまは最後は赤子になると?」

神様「さーね。 私には分からないけど成長しているって言うことはそうなんじゃない?」

キー子「・・・・・・」


神様「まぁ早い話が今の幼女はヨボヨボのお婆ちゃんが老体にむち打って仕事してるって事」

神使「老体って・・・」

神様「アイツは他の神とは根本的に違うから、神力補給とかいう概念が分からないんだろ」

キー子「神力の補給をすれば幼女神さまの神力量は戻るのでしょうか?」

神様「たぶん」


神使「キー子さんは幼女神さまにご助言はされたのですか?」

キー子「いいえ・・・ 私もそういう事はよく分からないもので」

神使「神使学校や講習会で習ったと思うのですが?」

キー子「すいません。 そういうのは出たことないんです」

神使「・・・失礼ですが、キー子さんは形式上は神使なのですよね?」

キー子「はい。 幼女神さまから神使と言われております」

神使「神使としての階位は?」

キー子「階位・・・」

神様「あ~ たぶん未登録だろうなぁ~ あの幼女が神宮の規律なんか知らないだろうし」


キー子「そう言えば、以前神宮から色々と書類を出せと言われたことはあります」

神使「登録書類はお出しに?」

キー子「はい。 結局返事が来なかったので、どうなっているのかは分からないんですが」

神様「さすが神宮はザルだな。 やっぱり、かわゆい神ちゃんが頂点に立って構造改革をするべきだと思うの」


神使「神宮のだれ宛てに申請を?」

キー子「広域特務課? という所へ審査申請を送りました」

神使「・・・・・・広域特務課」チラッ

神様「あはは~ やっぱり広い温泉は良いなぁ~ わたしちょっと奥で泳いでくる~」バシャバシャ

神使「神様?」グイッ

神様「ぐへっ!」

神使「温泉は泳ぐところではありません」

神様「ちょ、苦しい! 直接首掴むなよ!」ジタバタ


神使「そのような書類を受けた記憶は?」

神様「・・・あった気がする」


神使「なぜ審査なさらなかったのですか?」

神様「だってさぁ~ 書類記載神使の神使籍をデータベースで調べたらなかったから~」


神使「なかったからどうしたんです?」

神様「後でやろうかなぁ~ って思って・・・」


神使「何をやろうと思ったんです?」

神様「なんか・・・ こう、良い感じの手続きを・・・」


神使「本当は?」

神様「・・・面倒くさいんで見なかったことにしました」


神使「神様のやるべき事は三つ」

神様「温泉に入る。 牡蠣を食べる。 昼寝する。 ですね? その願い、我が身をもって成就して進ぜよう!」


神使「一つ目はキー子さんの手続きをして処遇をハッキリさせること」

神様「はい」


神使「二つ目は、源泉問題の解決」

神様「幼女にむちを打って働かせろと言うことですね? さすが極悪邪道犬ころ、悪魔に魂を売った男はひと味違う」


神使「三つ目は、幼女神さまの神力問題の解決」

神様「そんなのどうやって解決するんだよ」

神使「分かりましたね?」


神様「・・・一つ目だけで解決したことにしない?」

神使「ダメです。 三つとも解決して下さい」

神様「・・・・・・」


神様「キー子よ」

キー子「はい?」

神様「神勅! キー子を神籍登録し神階を従三位とする。 神様から神勅を申し伝えた!」

キー子「・・・・・・」


神様「一個解決した」

神使「そんな簡単に神勅出さないで下さい・・・ しかも露天風呂なんかで・・・」

神様「あ? 場所なんてどこでもいいんだよ」

神使「キー子さんの主神である幼女神さまに断りもなく・・・ 怒られますよ?」

神様「・・・・・・」

神使「知りませんよ?」

神様「・・・今の神勅は無しで」

神使「神勅はそんな簡単に取り消せません」

神様「ですよね~」


キー子「あの・・・ 今、私が神と・・・」

神使「はい。 神様が神勅を発してしまいましたので・・・」

神様「今日からキー子ちゃんは神! キー子神。 美容の女神とかどう?」

キー子「いえ・・・ そんな、私が神だなんて烏滸がましい。 しかも、め・・・ 女神だなんて///」

神様「そのツルツル美肌が手に入るなら、私はキー子神を主神の女神さまとして崇め奉る!」

キー子「はぅ・・・///」


神使「きちんと幼女神さまに報告して下さいよ、神様?」

神様「分かったよ。 次にアイツと会うのは百年くらい先だと思うけど」

神使「今日中に報告して下さい」

神様「え~」

神使「分かりましたね?」

神様「へいへい。 でもその前に行きたいところあるんだけど」

神使「どこです?」

神様「キー子ちゃんに案内してもらおう」



――― かれかれ汲み場


キー子「ここが枯渇した源泉の汲み上げ場です」

神使「確かに何も出ていないですね」

神様「う~ん・・・」クンクン

神使「?」

神様「・・・・・・」

神使「どうされました?」

神様「いや、別に」


神使「この場所は枯渇した後も土地を売らずに残っているんですね」

キー子「はい。 神社が保有している土地なので売却はできないんです」


神使「枯渇したのはホテルニューよこどりが建った後だと仰っていましたが」

キー子「1週間ほど経った頃だったと思います」


神様「その期間に何か問題とか異常とかは起こらなかった?」

キー子「そうですね・・・ 急に源泉の汲み上げ量が増えたので幼女神さまが体調を崩された位でしょうか」

神様「ふ~ん」クンクン

キー子「!?」

神使「ちょっと神様、キー子さんに何しているんですか・・・」

神様「あ? キー子ちゃんのにおいを嗅いでいるんだよ」クンクン

神使「意味が分からないのですが・・・ 失礼ですよ」グイッ

神様「あんだよ~ 嗅がせろよ!」ジタバタ

キー子「・・・///」


神使「全く・・・ で、どうですか?」


神様「二つ目の問題は解決できる」

神使「二つ目って、源泉問題の事ですか?」

神様「ここの枯渇した汲み上げ場から温泉を再び出すことは可能だ」

キー子「え!?」

神使「では早速!」

神様「待てっちゅーの。 物事には順番というのがあるのだよ神使君や」

神使「順番?」

神様「先に保養所の方に行くか」



テクテク


神使「保養所へは何をしに?」

神様「このまま汲み上げ場から温泉を出したらどうなると思う?」

神使「ニューよこどりから薄めた源泉を分けてもらわなくて済みますね」

神様「そんな上手くいく分けねーだろ」

神使「どういうことです?」

神様「さっき話しただろ。 源泉が足りないんだよ」

神使「幼女神さまへの負担ですか・・・」

神様「あいつは無理してでも源泉を作ろうとするだろうけどね~」


神使「そういえば、それが原因で体調を崩されたと先ほど仰っていましたね」

キー子「・・・はい」コクッ

神様「神力が不足しているわけ。 だったらそれを補うしかない」

神使「しかし、幼女神さまは他から神力をもらうのを嫌がるようなことを仰っていませんでした?」

神様「それは~ まぁ、良い感じに手を打ってだねぇ~」

神使「それに結構な量の神力が継続的に必要になると思うのですが、そんな簡単にどこから集めるんです?」

キー子「なんとかして神社の参拝者からの願掛け神力を幼女神さまに―――」

神様「ダメ! それは絶対ダメ。 神社で得た神力はきちんと参拝者のために使うこと」

キー子「そう、ですよね・・・ 失言でした」

神使「ではどうやって神力を?」

神様「それを解決するために向かっているのだよ」ニヤッ



――― 神苑温泉


支配人「入湯税を導入しろだぁ?」

神様「ダメ?」

支配人「この保養所は神と神使のユートピア。 実費以外の金銭要求は神宮規定で禁止されています」

神様「金銭以外は良いんだな?」

支配人「どういう意味です?」


神様「ここに来た神から入湯税として神力をもらう」

支配人「はぁ?」

神様「神力は金じゃないから神宮規定に引っかからないだろ」

支配人「そんなの無理です。 だいたい貴方たち誰なんですか?」


神様「ふふふっ、私は何を隠そう神宮が誇るかわゆい女神!」

支配人「神宮の女神!?」

神様「我が神使よ、私の神籍証をこの者へ見せてやれ!」

神使「いや・・・ それは・・・」

神様「私も権力を盾にすることは本意ではないが、仕方のないことなんだ」

神使「・・・・・・こちらが神様の神籍証です」スッ

支配人「・・・・・・」

神様「うひゃひゃ! どうだ! 我を敬い奉り、ひれ伏した後に大量の牡蠣を献上せよ!」

支配人「神力ゼロ、神階なしで所属無しの野良神ですか?」

神様「はい?」

神使「残念ですがこれが神様の新しい神籍証です」

神様「うがっ!」


支配人「ご用件は以上ですか?」

神様「ねぇ~ 一応ここに来てる神達に聞いてみてよ~ 熊夫ちゃ~ん」

支配人「ゴリ夫です」

神使「ダメでしょうか?」

支配人「ダメです」

神様「良い子紹介するからさぁ~ 東北に熊好きのかわゆい巫女がいるんだよ~」

支配人「ダメなものはダメです」


キー子「無理は承知です。 神々の皆さんにお話しだけでもさせて頂けないでしょうか?」

支配人「うっ・・・ キ、キー子さんがそこまで言うのなら・・・」デレー

神様「え? キー子ちゃん今初めて喋ったんだよ? そこまで言ったのはこのかわゆい神ちゃんだよ?」

神使「神様、可愛いは正義なんです」

神様「私だってかわゆいだろ!」

神使「性格の話です」

神様「・・・・・・」



――― 神苑温泉・とある部屋


神A「見てくれよコレ」コトッ

神B「何それ! 我らのアイドル、キー子ちゃんのフィギュアじゃん!」

神A「知り合いの原型師に作ってもらったんだよ」

神B「さすが秋葉を牛耳るオタク神。 よく出来てるなぁ」

神A「はぁ~ 可愛いよなぁ~ キー子ちゃん」ウットリ

神B「会いに行きたいけど、あの神社はなぁ・・・」

神A「近づきがたい神力を感じるしな」

神B「独特の神力だよな。 強くはないけど畏怖を感じるもん」

神A「キー子ちゃんが、毎日この保養所に遊びに来てくれれば良いのになぁ」



ピン ポン パン ポーン♪


神A・B「?」


『本日は、神様機構付属神苑温泉にお越し頂きありがとうございます』


神A「おっ、この声はキー子ちゃんだ!」

神B「スピーカー越しの声も良いよなぁ~」


『当旅館にご滞在の皆様に ・・・わ、わたくしキー子よりお願いがありご連絡いたします』


神A・B「!?」


『もし、お時間があるようでしたら大広間の方へお集まり頂けますようお願いいたします』


ピン ポン パン ポーン♪



神A「さて、久しぶりに本気で仕事をするか」

神B「おいおい、お前は静養に来たんだろ? ゆっくりここで休んでいろって」


神A「・・・・・・」

神B「・・・・・・」


ダダダダダッ



――― 放送室


キー子「これでよろしいのでしょうか?」

神様「バッチグー!」


神使「こんな事で皆さん集まってくれるんですか?」

神様「だからお前は犬ころなんだよ。 今の放送を聞いて集まらない奴は神ではない!」

神使「え~・・・」


神様「さて、大広間の方に移動しますか」

支配人「・・・やはり、考え直して止めた方が良い気がしてきました」

神様「熊夫ちゃんさぁ」ズイッ

支配人「ゴリ夫です」


神様「これが上手くいったら、明日から毎日ここにキー子ちゃんが来てくれるんだよ?」

支配人「毎日!?」

キー子「え?」

神使「ちょっと神様、またそんな勝手な約束を承諾もなく・・・」

神様「い~や、キー子ちゃんは毎日ここに来ることになる。 熊夫ちゃんに会うためにね」ニヤッ

支配人「わ、私に会いに!?」

神様「そう! ここに! 熊夫と会うために!」

支配人「ウホウホ!」

神使「・・・(熊だかゴリラだか分からないんですが・・・)」

神様「ここで止めておく?」

支配人「続けて下さい」キリッ



――― 大広間


ガヤガヤ ガヤガヤ


神使「・・・・・・(こんなに宿泊している神と神使がいたんですか・・・)」


ガヤガヤ


神A「あれ? キー子ちゃんは?」

神B「キー子ちゃんまだ~?」

神C「キー子ちゃ~ん、はよはよ」


神使「・・・・・・」



神様『レジ~ス アンド ジィエントルメ~ン!』


神A「何だ?」

神B「キー子ちゃんの登場か?」

神C「待ってました! キー子ちゃん!」ヒューヒュー



神様「ようこそ! お集まりの皆さん!」トテトテ


シーン


神A「やべぇ、神ちゃんだよ・・・」

神B「そう言えば神ちゃんも泊まっているんだった・・・」

神C「どうする? 逃げるか?」


神様「おい、そこ! 一歩でも動いたら明日から3食“卵の白身だけかけご飯”だからな」


シーン


神様「え~ 今日からこの神苑温泉では入湯税を徴収することになりました」

神A「入湯税!?」

神様「おい、次喋ったらお前カンチョー100回な」

神A「!?」


神様「入湯税は、一神につき0.5カミーの神力を頂く」

神B「0.5カミーって結構な量じゃないか?」

神様「お前、喋ったから後でカンチョーな」

神B「!?」


神様「意見のある者はいる?」

神C「その分宿泊費が安くなるとか―――」

神様「お前、喋ったから後で金ケリな」

神C「!?」


神様「他にカンチョーと金ケリが欲しい・・・ いや、意見のある神は?」


シーン


神使A「あの・・・」

神様「なんだい? そこの勇気ある神使くんや」ニコッ

神使A「神使は神力が無いんですが、お付きで来た私達神使は入湯税の方はどうするんでしょうか?」

神様「お~ 良い質問だ。 主神から一神使につき0.1カミーをプラスで徴収することにしよう」

神達「・・・・・・」


神様「心配するな、私だって鬼じゃない。 入湯税の徴収は強制ではなく任意だ」

神A「なんだ~ よかった」ホッ

神B「任意なら良いや。 0.5カミーも取られたら戻るまで結構時間かかるもんな」

神C「でも、神力なんか徴収して何に使うの?」


神様「うむ。 徴収した神力はこの温泉の効能維持に使う予定だ」

支配人「維持?」

神様「ここの温泉を、いや他の旅館の温泉も全て以前の在りし日の泉質に戻すことに使われる」

支配人「融通してもらっている温泉を薄めずにもらうということですか!?」

神様「ノンノン。 枯れたとされる汲み上げ場から、再び温泉を湧き出させる」

支配人「そ、そんなこと出来るのですか!?」

神様「それがこの町に住む人々の願いなんだろ? だったらそれを叶えるのが私達、神の勤めだ」


神A「なんだ神ちゃん、そういう事かぁ~ だったら協力するよ」

神B「てっきり神ちゃんが神力使って、また悪さするのかと思ったよ」

神C「本当、この前も神ちゃん他の神から神力集めて光玉とか言って売り捌こうとしてたし」

神使「あの、すいません。 その話を詳しく教えて頂けないでしょうか」

神様「うるせー! お前ら全員金ケリだ、金ケリ! 一列に並べ!! ぶっ潰してやる!」



――― 30分後


神様「あ~ 楽しかった!」ツヤツヤ

神使「これって、皆さん大丈夫なんでしょうか・・・」

神様「大丈夫だろ。 情けで弱めの電気アンマにしたから」

神A「弱くないよ! 全力でしょ! 絶対全力だよね?」イタタ

神B「うっ・・・ うっ・・・」ピクピク


神様「キー子ちゃんもやれば良かったのに」

キー子「えーっ!? 私なんかが神々の皆様にそのようなことは」

神様「スカッとするよ? なんか自分のさじ加減でどうにでも出来る状態になってるヤツを見てるのってゾクゾクしない?」

神使「神様、キー子さんに変なことを教え込まないで下さい」


キー子「あの・・・ 神々の皆様、大丈夫でしょうか?」

神A「問題ありません」キリッ

神B「全然平気です」キリッ


キー子「よかったです。 安心しました」ニコッ


神A「なんてお優しい・・・」

神B「女神がいる・・・」


神様「ほら、大丈夫じゃん」

神使「そうでしょうか? 皆さん前傾姿勢で足がプルプルしてますが・・・」


神様「遊びはこの位にして、早速入湯税の神力徴収でもはじめるか」

神使「神力ってどうやって集めるんです?」

神様「なにか神体になるようなものはないかなぁ?」キョロキョロ

神使「神々の皆様からお集めになる神力ですから、それ相応の神体でないといけませんよね」


神様「おっ!」ジー

神A「?」


神様「おい、そこの・・・」

神A「おれ? 秋葉神だけど」

神様「お前、良いの持ってんじゃん。 それくれ」

神A「!? こ、これは俺の宝物! 例え神ちゃんでもこれだけは!」


神様「キー子ちゃん、あの人形が神体に相応しいから譲ってもらって?」

キー子「あの人形・・・ 私に似ている気がするのですが・・・ 他のものではダメでしょうか?」

神様「アレじゃなきゃ嫌だ」

キー子「・・・・・・」

神様「あれ譲ってもらって?」


キー子「すいません、そのお人形を譲って頂くことはできませんでしょうか?」

神A「はい、喜んで」スッ

キー子「あ、ありがとうございます・・・」

神A「細かい設定まで忠実に再現させた自信作です」

キー子「私、巫女服って着たことないのですが・・・ どうして巫女服を着ているのですか?」

神A「いつか着て下さい。 キー子さんが巫女装束を着てくれるのであれば、いくらでも神力をお渡しいたします」

神様「期待しろ。 お前の願いは、この神ちゃんの力によって成就される!」

神A「なんと!」


神様「キー子ちゃん、明日から巫女姿で1日1回この保養所に神力を取りに来ること」

キー子「え~っ!?」


神様「熊夫くん、キー子ちゃんの世話と護衛の大役は任せたぞ」

支配人「承知! この熊夫、責任を持って毎日キー子さんをお迎えいたします!!」

神使「・・・(ゴリ夫じゃないんですか?)」


神A「まさか、神力の授受ってキー子ちゃんが!?」

神様「あぁ、キー子神が直接執り行う!」

神B「キー子神? キー子ちゃんって神使では?」

神様「驚け! キー子は先ほど私の神勅により神籍に入った!」

神達「おぉ~」


パチパチ パチパチ


キー子「私のような何の取り柄もない者が申し訳ありません!」フカブカ

神様「神としての初仕事。 これはキー子ちゃんにしか出来ないことだ。 誇りを持って」

キー子「は、はい・・・///」


神A「よっしゃー! これからキー子ちゃんと会えるとなれば、俺はここに通い詰める!」

神B「俺も神使いっぱい連れてくる!」


神様「ほぉ~」ニヤリ

神使「・・・・・・(神様が何か思いついた顔してますね)」


神様「よーし! お前達の気概をくみ取り、このかわゆい神ちゃんがさらなる約束をしよう!」

神達「?」


神様「神力徴収の際に0.5カミーの入湯税で、キー子ちゃんから優しい微笑みをプレゼント!」

神達「!?」


神様「1カミーで神力徴収時にキー子ちゃんが手を添え手伝ってくれる!」

神A「なっ!?」


神様「そして、1カミー以上を払った者へは~」

神B「払った者へは・・・」ゴクリ


神様「巫女服姿で抱擁だ!!」

キー子「え~!! 抱擁!?」


神A「よっしゃー!!」

神B「おれ、神力枯れるまで全部渡す!!」

神C「俺も来週は隣町の神使も引き連れて来る!!」


神様「よしよし、それじゃぁ~ キー子ちゃん、今日の分を早速―――」

支配人「お待ち下さい!」

神様「あ?」


支配人「キー子さんが私服のままです」

神様「今日は良いだろ」

支配人「ダメです。 巫女装束でご奉仕なさると先ほどお約束しましたので」

神使「しかし、巫女装束の手持ちが今はないので・・・」


支配人「ここは旅館といえど、神様機構付属の神宮直轄施設ですよ?」

神様「まさか!」

支配人「最高級の巫女装束一式が用意できます」


神様「」グッ

支配人「」グッ



――― 保管庫


支配人「え~と・・・ 巫女装束は確かここに」ゴソゴソ

キー子「とても立派なご衣装がたくさんありますね」

支配人「はい、巫女装束から最高神様用のご装束まで全て揃っております」

神様「最高神用?」

支配人「いざという時のために、神宮規定の全装束が準備してあるんです」


神使「あっ、この大きな木箱ですね。 最高神様用御装束って書いてあります」

キー子「木箱の装飾がとても綺麗ですね」


支配人「この箱だけでも表に出せば国宝級だと思います」

神様「へぇ~ でも、私見たことないけど」

支配人「私もございません。 神力錠で封印されていますので一度も開封されたことはないと思います」

神様「神力錠なんて珍しいな」

神使「神力錠?」

神様「神の力に対応する専用の鍵だよ。 作るの面倒だから最近は使ってないんだけど」


支配人「一度で良いから最高神様の御装束を見てみたいものですよ」ハハハ

神使「確かに、興味ありますね」

支配人「ここだけの話、本当は最高神なんて存在しないんじゃないかって噂がありますので一生見られないと思いますが」


神様「これ、確か手をかざして念じれば解除されるんだよな」

支配人「あなたが最高神様であればですけどね」

神様「我、錠の解除を命ず」


ガチャン


支配人「・・・・・・」

キー子「鍵が!?」

神使「あぁ・・・」

支配人「ちょちょちょ! え? えっ?」

神様「なに? 開けちゃダメだった?」

支配人「ど、どうして神力錠が! 絶対に壊れたり誤動作しないはずなのに!」


神使「すいません、この方はこう見えて実は神宮最高神の女神でして・・・」

支配人「最高神!? し・・・ しかし、野良神って」

神使「話すと長くなるのですが、素性を隠しているといいますか・・・」

神様「いや~ん 私の正体がばれちゃった~」クネクネ


支配人「さ・・・ 最高神様!?」ドゲザ

キー子「・・・・・・」ドゲザ

神様「やばい、面倒なことしちゃった・・・」


支配人「数々のご無礼、お許し下さい!」フカブカ

キー子「最高神様とは知らず、申し訳ございません」フカブカ

神様「いや・・・ そういうのいいんで普通にして下さい」ペコリ

神使「神様はあまり仰々しくされるのが好きではないので、今まで通りフレンドリーに接してあげて下さい」


神様「そうだ!」

神使「?」

神様「この装束、キー子ちゃんにあげる」

キー子「え!?」

神様「これ、私のだから好きに使っていいんだよね?」

支配人「もちろんです。 しかしこの地からの持ち出しだけは規定で禁止されておりまして・・・」

神様「うん。 キー子ちゃんが神社で神力成就するときに着てよ」

キー子「そ、そんな!? 最高神様のご衣装を私なんかが!?」

神使「きっとお似合いになりますよ?」

神様「そうそう。 神なんて、それっぽい格好しているのが仕事みたいなものなんだから」

神使「もう少しオブラートに包んで言って下さい・・・」


神様「いいこと思いついた! サプライズで今日はこれ着て入湯税を徴収しよう」

神使「神になった記念でもありますし、いい案ですね」

キー子「!?」

神様「大丈夫。 何だかんだ言ってもただの装束だし」

神使「神用のご装束ですから神以外の着用は禁止されていますが、キー子さんは神ですから」


神様「ほらほら、着て見せてよ。 いいよね熊夫くん」

支配人「最高神様のご希望であれば。 わ・・・ 私もキー子さんが着ているところを見たいですし・・・」

キー子「私、こんな立派なものを着たことがないもので・・・ その・・・」

神使「大丈夫です。 私が着付けのお手伝いをいたします」



――― 30分後


神使「神様、キー子さんのお着替えが終わりました」

キー子「い、いかがでしょうか・・・」


神様「お~ すげー。 これ、いくらかかってんだよ」

支配人「なんと美しい・・・」ポー

神使「良くお似合いですよ」

キー子「あ、ありがとうございます///」


神様「なんか、アイツらに見せるの癪だな。 犬ころ、お前がアイツらの相手してこい」

神使「暴動が起こります」


神様「この感情、抑えきれない! キー子ちゃんは私のものだ~」ピョーン

神使「神様」グイッ

神様「ぅおぷっ!」

神使「キー子さんが汚れます」

神様「おま! 汚れるって何だよ!」

神使「もうこの時代では作れない最高級の装束ですよ? 神様のヨダレが付いたら大変です」

神様「ヨダレなんか付けねーよ」

神使「すでに垂れてます」

神様「おっと」ジュルリ


神使「皆さんお待ちのようなので行きましょうか」

キー子「はい」



――― 大広間


神様「待たせたな、お前達!」

神A「待ちくたびれたよ~」


神様「待たせただけはあるぞ?」ニヤッ

神B「期待してるよ~」


神様「お前達! キー子ちゃんの巫女姿が見たいかー!」

神達「オーー!!」

神使「・・・・・・(なんですか、この気迫は・・・)」


神様「私の巫女姿も見たいかー!」


シーン


神様「見たいかー!」


シーン


神使「お、お~」モジモジ

神A「・・・さすが神ちゃんの神使」

神B「あぁ、良く調教されている」

神使「うぅ・・・///」


神様「神使君?」

神使「は、はい」

神様「私のかわゆさを理解できるのは君だけのようだ。 こいつらちょっと絞めるから手伝って?」

神使「それより、早くキー子さんを」

神様「あ? ったく、しょーがねーな~」チッ


神様「今日はキー子にとって神になった記念すべき日。 特別仕様でお披露目する!」

神B「特別仕様?」

神様「従三位! キー子神のお披露目だ! ババン!」



キー子「・・・・・・///」テク テク

神達「・・・・・・」ポケー


シーン


キー子「あ、あの・・・」

神A「言葉では言い表せない美しさ・・・」

神B「これは間違いなく女神さま・・・」

神C「本物の最高神はこの地に居たか・・・」

キー子「はうっ///」


神様「よーし! 入湯税を支払うものは一列に並べ!」


ダダダダッ


神様「小さく前へならえ!」

神達「」サササッ

神様「直れ!」

神達「」ササッ


神様「最初の者、前へ!」

神A「よしっ!」テクテク


神様「キー子ちゃん、神体の前へ」

キー子「は、はい」テク テク


神様「アニオタ、お前は何カミー支払うんだ?」

神A「私は! 3カミーお支払いします!」


神達「お~」パチパチ


神様「お前、3.5カミーしかないのに3カミーも出したら倒れるぞ?」

神A「自分のキー子ちゃんフィギュアがご神体に、しかもトップバッター。 ここで私が男を見せるんです!」フンスッ

神様「その心意気、しかと受け止めた! 礼に私もお前にハグしてあげよう!」

神A「あっ、そう言うのは結構です」

神様「・・・・・・」


キー子「あの、私はどうすれば・・・」

神様「ん? 秋葉神の神力は感じる?」

キー子「・・・気は感じますが」

神様「それが神力。 元々キー子ちゃんは神力を感じ取る力があるみたいだから」

キー子「これって、神力だったのですか・・・」

神様「まぁ厳密に言うと、表には出ない神力も感じているようだけど」

キー子「表には出ない?」

神様「いや、何でもない」

神使「?」


神様「よし、秋葉神! 手を前に!」

神A「はい!」スッ


神様「いい? 神体にこれから神力を徴収して何に使うかを、そして神力を渡してくれる神に深い感謝を強く念じて」

キー子「はい」


ポワ


神様「そう、その調子。 もう少し力を抜いてリラックスしようか」

キー子「はい」

神様「うん、今の感じを覚えて。 じゃぁそのまま続けてみて?」

キー子「」コクッ



ポワポワ


キー子「秋葉神さまから頂く神力はこの地に住まう、そしてこの地を訪れた人々の笑顔を守るため使わせて頂きます」

神A「はい!」


ポワポワポワ


キー子「秋葉神さまに深い感謝を」ギュッ

神A「ふぉーーー!! キー子ちゃんの熱い抱擁!! 最高・・・ で・・・ す・・・・・・」バタリ


神様「3.3カミー頂きました!」

キー子「あ、あの! 大丈夫ですか!?」オロオロ

神A「問題ありません」キラッ

神様「さすがキー子ちゃん、生かさず殺さずギリギリの神力を持っていくとは末恐ろしい」

キー子「いえ! そんなつもりは・・・」

神様「まぁ、最後の方はコイツ自分から神力放出してたから自業自得なんだけど」

神様「熊夫くん、こいつ温泉にでも放り込んでおいて」

支配人「承知!」ヨイショ

神A「あっ、お構いなく。 キー子さんの近くに居れば回復しますので」

支配人「行きますよ」スタスタ

神使「秋葉神様、大丈夫でしょうか・・・」


神様「よし、それじゃぁ次の神は前へ!」

神B「はい!」



――― 1時間後


神様「お~ 結構集まったな」

神使「皆さん死んだように倒れておりますが・・・ すごい惨状ですね」

キー子「・・・・・・」


神様「さてと、何カミー溜まったかなぁ?」

支配人「神力計を用意してあります」スッ

神様「気が利くねぇ」

神使「小型の懐中電灯みたいですね」

支配人「最新型ですから。 対象に向けて上のボタンを押すと液晶部分に神力量が表示されます」

神様「ふ~ん。 ハイテクだねぇ~ ポチッと」ポチッ


ピピッ


神様「お~すげ~ 40カミーもある」

神使「みなさん倒れるまで神力を差し出していましたからね・・・」


キー子「神々の皆さん、本当にありがとうございます」フカブカ

神C「何のこれしき・・・ 明日も神力渡すからね・・・」バタリ

キー子「いえ・・・ そこまでなさらなくても・・・」


神様「おい犬ころ、ちょっと出かけるぞ」

神使「?」

神様「キー子ちゃんはコイツらを介抱しててくれる?」

キー子「はい」

神様「すぐ戻ってくるから後で合流ね」

キー子「お気をつけて」



――― かれかれ汲み場


神使「汲み上げ場に戻ってきてどうされるんです?」

神様「この場所からキー子ちゃんの香りがした」

神使「香り? そう言えば、先ほどキー子ちゃんをクンカクンカしていましたね」

神様「・・・・・・。 ここから温泉が出なくなったのはキー子ちゃんが原因だ」

神使「え!?」

神様「幼女が体調を悪くしたって言ってただろ?」

神使「そう言えば、急に源泉の汲み上げが増えたからと仰っていたような」

神様「キー子ちゃんは幼女に代わって普段から祈願成就をしている」

神使「それが何か関係あるんですか?」


神様「たぶん、キー子ちゃんは見よう見まねで祈願成就をしているんだろう」

神使「神使講習も受けていないくらいですからね」

神様「自分のお願いも知らずに成就している」

神使「自分のお願い?」

神様「幼女が体調不良になってお願い事をするとしたら、お前なら何て願う?」

神使「体調が良くなりますように・・・ でしょうか?」

神様「そう、体調が良くなるには?」

神使「汲み上がる源泉の量を減らす・・・」

神様「この場所は神社の飛び地、ニューよこどりの汲み上げ場よりも影響を受けやすい」

神使「キー子さんは知っているのでしょうか?」

神様「自覚なんかないだろ。 でも、幼女は知っているかもな」

神使「・・・・・・」


神様「私の神力が入ったお守り、一つくれ」

神使「はい」スッ

神様「お守りに封印されし我が神力を解放す」


ポワ


神様「神力祈願で成就されし願いを我が命令で上書きせよ」


ポワポワ


神様「これで良しと。 ん~ 神力少し余ったなぁ~」

神使「あの、特に変化ないようですが?」


神様「明日には源泉が出るだろうよ」

神使「キー子さんには何と・・・」

神様「言う必要なんかないよ。 彼女の神力が上がって、いずれこの場所へ来たときに気がつくだろう」

神使「大丈夫でしょうか? キー子さん自分の行いにショックを受けるのでは・・・」

神様「そんな弱っちい者は私は神にしない。 キー子は私が認めた神だ」

神使「そうですね」

神様「いずれ真実に気付いたとき“さすが私のかわゆい神様! ぜひスリスリしてもらいたい!”と私を―――」

神使「そろそろキー子さんと合流して神社に行きましょうか」スタスタ

神様「・・・・・・」



――― 神苑温泉前


神様「お~い、キー子ちゃ~ん」

キー子「あっ、ご用の方は終わったのですか?」

神使「遅くなりましてすいません」


神様「あれ? キー子ちゃん私服に着替えちゃったの?」

キー子「歩くのが少し大変なので・・・」

神様「巫女服でもいいんですぜ?」グヘヘ

キー子「・・・・・・。 祭儀服と巫女服は後で熊夫さんが神社に持ってきてくれるそうです」

神使(あっ、もう熊夫さんになっちゃったんですね)

神様「それじゃぁ、行きたくないけど幼女のところに行きますか・・・」

神使「幼女神さまを説得させるの大変そうですね」

神様「うっ・・・」



――― 泉源神社


神様「ちょっと私一人で幼女と決闘してくるわ」

神使「大丈夫ですか?」

神様「二人は障子に耳でも付けて成り行きを見守っていてくれ」

神使・キー子「はい」コクッ

神様「ふ~ ・・・よし!」トテトテ


ガラガラ


神様「幼女!」

幼女神「お~ クソガキか。 キー子のヤツを見なかったか?」

神様「そんなことはどうでもいい。 アンタに大事な話がある」

幼女神「あ?」



――― 社務所


幼女神「断る」

神様「そう言うと思った」

幼女神「なら一々聞くでない。 だれが他のヤツの神力なぞもらうものか」フンッ


神様「アンタ今の状態で倍の源泉なんか作れるのか?」

幼女神「出来るわ! 入浴回数を倍にすれば良いだけじゃ!」

神様「無理だね」

幼女神「・・・・・・」

神様「そもそも今の状態で温泉作れるのって、後どのくらいだよ」


幼女神「・・・お前気付いておるのか?」

神様「当たり前だろーが。 私これでもあんたの後を継いだ神だよ?」

幼女神「わ、ワシの後はキー子が継いでくれる!」

神様「それはアンタが決めることじゃない」

幼女神「うるさい! 一々口出しするでない!」


神様「ニューよこどりが出来て・・・ キー子ちゃんの願いを知ってるんだろ?」

幼女神「お前、汲み場のことを知っているのか・・・」

神様「だから、私を誰だと思ってるんだよ」

幼女神「まさか原因のことをキー―――」

神様「いいや、話してない」

幼女神「そうか」ホッ


神様「それに、私はアンタからまだもらっていない物がある」

幼女神「・・・・・・」

神様「それをもらうまで消えることは無理だよ~」

幼女神「ワシの神力がなくなり、寿命を迎えれば有無を言わずにお前に伝わる」

神様「私はアンタからもらうって決めてるし。 それまで勝手に消えることは許さないし」

幼女神「なにを勝手なことを」フンッ



神様「アンタさぁ、この神社の主神を引退しろ」

幼女神「はぁ? 引退じゃと!?」

神様「私これでもこの国の最高神。 アンタでも私の命令に背くことは出来ない」

幼女神「・・・何を考えている」


神様「神宮の主神規定ってのがあってさぁ」ゴソゴソ

幼女神「?」

神様「これ、神力計。 これで神力量が測れるんだわ」

幼女神「ま! まて、計る前に準備を!」

神様「ズルはダ~メ~」ピピッ

幼女神「くっ!」


神様「2.5カミーか。 大分少ないようで」

幼女神「・・・・・・」

神様「キー子ちゃんは前回の測定で8カミーって言ってたけど、あれってキー子ちゃんの神力量だよね」

幼女神「お前そこまで知って・・・」

神様「キー子ちゃんは騙せても私には通用しないぞ。 私くらいになると見ただけで神力量なんて分かるんだわ」

幼女神「相変わらず面倒くさい力を・・・」


神様「2.5カミーしかないんだったら主神としてこの神社への配属は無理だなぁ~」

幼女神「姑息な手を・・・」


神様「神勅。 泉源神社の主神である幼女神を神力不足により解任、キー子神を新たな主神として任命する。 最高神神様から神勅を申し伝えた」

幼女神「!?」

神様「じゃ、そういう事で」

幼女神「まて! キー子にはまだ早すぎる! アイツはまだワシの神使で教えていないことも沢山―――」

神様「さっき神勅出してキー子ちゃんを神籍に入れたから問題ないし」

幼女神「神籍じゃと!? お前・・・ 勝手に何をしているのじゃ!!」

神様「今のアンタよりキー子ちゃんの方が神力高いんだし、当然でしょ」

幼女神「・・・・・・」グヌヌ

神様「世代交代だよ~ お疲れちゃん。 これからはキー子ちゃんが主神、幼女はさっさとここから出て行くこと」

幼女神「きさま・・・」


神様「」チラッ

幼女神「?」



 ちょ、キー子さん落ち着いて!
 は、放して下さい!


神様「いいタイミング」ニヤッ

幼女神「・・・お前、まさか!」


バンッ


キー子「最高神様!」

神様「おや? 主神様の登場か」

キー子「酷すぎます! 幼女神さまは・・・ 皆のことを思って温泉を作っているのに・・・」ワナワナ

神使「キー子さん・・・」


キー子「私は幼女神さまから離れません! この神社の主神様は幼女神さまで、私はそのお付きです!」

神様「ほぉ」ニヤリ


幼女神「バカ! キー子、余計なことを喋るな! このクソガキは何か企んで―――」

神様「今、この神社の主神はキー子ちゃんだ。 神勅宣言はしなかったが、この社においては同等の力を有す」

幼女神「くっ!」

神様「その主神がなんて言った?」

幼女神「お前・・・」


神様「なんと! 神力の少ない幼女を主神にすると! しかし、この幼女は神力が神宮規定以下の量しかない」

神様「どうすれば良いんだー。 泉源神社の主神が発した神勅には逆らえないしー」ウーン

キー子「・・・あの」


神様「あっ! キー子神が手に持っているのは神力が詰まった神体!」

神様「そうか! それを幼女が取り込めば主神認定分の神力が溜まるということか!」

キー子「・・・最高神様?」


神様「なに!? しかも毎日その神体分の神力量が手に入るって!?」

神様「さすが、キー子神! 準備はすでに出来ていたと!」

神様「素晴らしい作戦! 私もそれに乗ろう!」

キー子「・・・・・・」ポカン


神使「神様・・・ 棒読み過ぎるんですが・・・」


神様「おい、幼女。 主神様からアンタの神力を上げるように言われたぞ。 さっさと取り込んで神力上げろ」

幼女神「んがー! なんという回りくどいことを!!」ジタバタ


神様「最高神と主神からの命だ。 神宮規定でお前は逆らえないし言うこと聞いておけ」

幼女神「こんな下らない仕込みを見抜けなかった自分が悔しぃー!!」ジタバタ

神様「心ばっか読んでるからだ。 ざまー」ニヤッ

幼女神「んがー! んがー!」ジタバタ



――― 本殿


キー子「では、幼女神さま」

幼女神「ふん!」プイッ

神様「おい、往生際が悪いぞ。 あんまりダダをこねてるとママ許しませんよ?」

幼女神「うっさいわ! 誰がママじゃ!」

神様「そうですか、幼女神さまはキー子ちゃんの神勅を無視する気ですね? 見損ないました」

幼女神「うっ・・・ わ、分かったわ! しかし何じゃこの神体は」

神様「あ? 現代の職人が腕によりをかけて作り上げた唯一無二の工芸品だぞ? 文句あるのか?」

幼女神「これは・・・ キー子ではないのか?」

神様「この地に相応しい神体だろ? みんな大喜びでコレに神力入れてたぞ?」

キー子「・・・ぅぅっ///」


神様「いいから早く手を出せよ」

幼女神「ったく」スッ

神様「キー子ちゃん、よろぴこ」

キー子「は、はい」スタスタ

幼女神「?」

キー子「善意ある神々から頂きし神力を我が主神である幼女神さまへ解放されたし」


ポワッ


幼女神「キー子・・・ お前・・・」

神様「さっき言っただろ、キー子ちゃんは神籍に入ったの。 神力操作位は扱えるようになってるの」

幼女神「そうか・・・」フッ



ポワポワ ポワポワ


幼女神「ふむ。 これでいいか?」

一同「・・・・・・」

幼女神「なんじゃ、皆してアホずらしおって」

キー子「幼女神さま・・・ ですか?」

幼女神「あ? 何を言っておるのじゃキー子」

神使「神様が二人!?」

幼女神「? なんか背が伸びた気がするのぉ」

神様「随分と成長・・・ いやアンタからしたら若返ったのか」

神使「神様とうり二つですね」

幼女神「ふむ。 懐かしい感じじゃ」


神様「せめて髪型くらい変えとけよ。 かわゆい神ちゃんがいっぱいいると困る」ムスッ

幼女神「そうだな。 ではワシは男どもに大人気のポニーテールにでもするかのぉ」

神様「え!? ポニーテールって野郎どもが好きなの?」

幼女神「なんじゃ、知らぬのか? ナウいおなごはポニーテールなんじゃぞ?」

神様「・・・幼女はそのままでいろ。 私がポニーテールにする!」

幼女神「狛犬の神使は、どちらが好みじゃ?」

神使「え!? 私は・・・ 特に髪型にこだわりは・・・」

幼女神「・・・・・・」ジーッ

神様「あっ! お前犬ころの心覗いたろ!」

幼女神「いいや?」ニヤッ

神様「どっちだったんだよ! 気にはならないけど、教えろよ!」

幼女神「ワシはポニーテールにする。 お前はそのままでいるんじゃな」ヒヒヒ

神様「んがー! ムカつく!」



――― 数分後


 おい教えろよ~
 あっちに行け! それ以上近づいたら電気アンマじゃぞ!!


神使「幼女神さま元気ですね」

キー子「・・・・・・」

神使「キー子さん?」

キー子「最高神様って凄いですね」


 ねぇ~ お願いだから~
 まとわりつくな! 用が済んだらとっとと帰れ!!


神使「・・・だと良いのですが」


キー子「私、幼女神さまの神力がどんどん減っていくのを見てどうすることも出来ず・・・」

神使「・・・・・・」

キー子「何十年も一人で悩んで・・・ でも、最高神様が来てたった1日で全部解決してくれて」

神使「お役に立てて何よりです。 神様もああ見えて一応神ですから、お願い事を成就するのが好きなんです」

キー子「尊敬いたします」

神使「なんか、神様が褒められると私も嬉しいですね」ハハハッ

キー子「神になった今、最高神様の凄さがハッキリと分かります。 とても強いお力をお持ちなんですね」

神使「力は・・・ どうなんでしょう。 神力ゼロですからね」

キー子「ゼロ? またご冗談を。 凄い量の気・・・ いえ、神力を感じますよ?」

神使「はい?」



ガバッ


キー子「きゃ!」

神様「犬ころの分際でしっぽりしやがって、私もキー子ちゃんとしっぽりするー」グヘヘ

神使「神様! どこから湧いたんですか!」

神様「キー子ちゃんは、やっぱり私のものだ~」スリスリ

キー子「最高神様! ちょ! あの!」

神様「うへうへ~、高速スリスリ~」スリスリ スリスリ

神使「それはしっぽりとは言いません。 ただの変質行為です」グイッ

神様「ぅおぷっ!」


神使「さて、日も暮れてきましたしそろそろ戻りましょうか」

神様「そうね、幼女いじるのも飽きたし」

キー子「え!? もう少しゆっくりされては・・・ 何でしたらお泊まりに」

神使「そんな迷惑をおかけするのも悪いですし」

キー子「迷惑だなんてそんな事は」

神使「いえ、キー子さんに被害が及ぶという意味ですので」

神様「ぐへへ~」ワンワナ

キー子「・・・・・・」


神使「神様? 口からよだれが垂れてます」

神様「おっと」ジュルリ


キー子「・・・・・・。 あっ、幼女神さまを呼んで参ります」

神様「良いって、また遊びに来るから」

神使「よろしいのですか?」

神様「それより、キー子ちゃんをお持ち帰りして―――」

神使「では失礼いたします。 ほら、神様行きますよ」グイッ

神様「あんだよ~ もっとキー子ちゃんとくっつきたい~」ズルズル

キー子「・・・・・・」


神様「キー子ちゃん! またね~」ズルズル

神使「幼女神さまによろしくお伝え下さい」ペコリ


キー子「ま、またお目にかかれる日を楽しみにしております」フカブカ



――― 参道


神様「おっちゃん! 牡蠣フライ棒30本!」

店主「はいよ!」

神使「ちょっと、何ですかその数・・・ すいません、3本で良いです」

店主「はい、牡蠣フライ棒3本」スッ

神様「え~ 私30本くらい食べれる~」

神使「食べられる食べられないの問題ではありません」

神様「なんだよ、ケチ」ブー



テクテク


神使「今回も無事解決できて良かったですね」

神様「まぁ、私にかかればこんな問題何でもない訳よ」パクパク


神使「あの、一つ良いですか?」

神様「あ? 食べ歩きくらい良いだろ」アムアム

神使「いえ、神様が幼女神さまに神力補給の神勅を出すだけで良かったのでは?」

神様「それじゃぁ面白くないだろ? もう少し幼女を“ぎゃふん”と言わせるような手をだね~」

神使「」ジーッ

神様「な、何だよ」


神使「誰も傷つかず関係も壊すことなく、なおかつ今まで以上に皆さんが喜ぶ方法でしたね」

神様「・・・何か言いたいんだよ」

神使「さすが神様です」

神様「ま、まぁ神使君が私の素晴らしさに気付いて崇め奉り大量の牡蠣を納めようとしている気持ちは―――」

神使「またそうやって照れちゃって」

神様「・・・・・・」


神様「買いかぶり過ぎだよ。 幼女はキー子ちゃんの願いは絶対に断らないし」

神使「そうなんですか?」

神様「主神と神使はそういうもんだ」

神使「・・・・・・。 では、毎日裸でうろつくのは止めて下さい」

神様「うろついてねーだろ! 毎日ちゃんとおべべ着てるだろーが! 見ろよ!」


神使「とにかく、今回もご苦労様でした」

神様「ご苦労しました」


神使「では、暗くなってきましたし急ぎましょう」

神様「まぁ、これでミッションクリアって訳だな」

神使「そうですね」

神様「次はもう少しだけ都会が良いなぁ。 あと、海が近いところで。 楽しみだな~」

神使「何を言っているんです?」

神様「は? いや、次の町に行くんだろ? そういう流れだったじゃん」

神使「今日の朝着いたばかりですよ? 一週間泊まると言ったじゃないですか」

神様「・・・・・・え?」


神使「今日から6泊しますので」

神様「いや・・・ もういいって言うか・・・ こんな所でやることないんだけど」

神使「何を言っているんですか。 反省文、まだ書いていませんよね?」

神様「・・・・・・」


神使「500枚ですからね?」

神様「どうにかして提出しなくてもいい方法ってないかなぁ」

神使「あるわけないじゃないですか。 さ、早く宿に戻りましょう」

神様「うぅ・・・ 私だけ願いが成就されないままだよ・・・・・・」



――― 神苑温泉


ガラガラ


神様「たでーま~」

支配人「お帰りなさいませ、最高神様」ドゲザ

神様「いや、普通にかわゆい神ちゃんって呼んで欲しいんだけど。 っていうか何コレ!?」

神使「どうしてエントランスに神々の皆さんが?」

支配人「明日の分の入湯税徴収の順番待ちです」

神様「順番って・・・ 並んでないじゃん、倒れてんじゃん」

神使「あまり景観がよろしくないですね・・・」


神様「おいクズども、徹夜待ちの者は明日キー子ちゃんの顔を拝めないぞ!」

神達「え!?」

神様「熊夫くん、徹夜待ちのヤツをチェックしておいて」

支配人「承知!」


ダダダダダッ


神使「すごい早さで居なくなりましたね・・・」

神様「ったく、アイツらときたら」


支配人「神ちゃん様!」

神様「え!? なに?」

支配人「神ちゃんさまには何とお礼を申し上げたら良いか」フカブカ

神使「源泉のことでしたらお気になさら―――」

支配人「キー子さんの入湯税徴収サービスの噂を聞きつけ、向こう3年分の宿の予約が埋まる勢いです」

神使「あっ、そちらの話ですか・・・」

神様「良い案だっただろ?」ニヤッ

支配人「神々の皆さんが長期滞在で予約を入れて下さり大変有り難いことです」

神使「長期滞在なんかして皆さん神力は大丈夫なんでしょうか・・・」


支配人「大のキー子さんファンでもある神様機構の長官様と、神使長様もご予約頂きまして」

神様「アイツらもかよ・・・」

支配人「視察名目で本日1泊だけですが、早速お越し頂けるとの事でご連絡頂きました」

神様「ぇ・・・・・・」サー

神使「神様? 顔色が悪―――」


ダダダダダダッ


神使「神様!?」



――― 宿泊部屋


神使「どうされたんです? そんなに急いで部屋に戻って」ハァ ハァ


ポワポワ


神使「?」

神様「よし、と」


神使「神様?」


神様「おい、荷物まとめて速く逃げるぞ」イソイソ

神使「反省文の件ですか? 提出期限までまだありますから大丈夫だと思いますが」

神様「私がそんなもの書くわけねーだろ!」

神使「・・・・・・。 私はほとんど書き上げたので・・・ 少しお手伝いしましょうか?」


神様「もう書けねーんだよ」

神使「どういう意味です?」


神様「・・・・・・。 これ」スッ


神使「それは千羽鶴ですか?」

神様「うん」

神使「どうしたんですか、それ?」

神様「感想文の紙で作りました」

神使「・・・・・・」

神様「最初は数羽だったんだけど・・・ 気がついたら・・・ 全部・・・ こんなになって・・・」

神使「でも、神様の分だけですと500羽ですよね?」

神様「・・・・・・」

神使「あの・・・ 所々に文字の書いてある鶴があるのですが・・・」

神様「神使君の分も鶴にしてみました」テヘッ

神使「!?」


神様「合わせて1000羽、みたいな?」

神使「私の反省文が!」

神様「諦めるんだ! もう戻せない!」

神使「ちょ、何で鶴にしちゃたんですか!?」

神様「なってしまったものは仕方がないんだ! 良いからアイツらが来る前にずらかるぞ」


長官「誰が来る前にだって?」

神様「長官くんと神使長だよ! あいつら私達を見たら絶対反省文のこと言って・・・ って」クルッ

長官「反省文は書けたのかい? 神ちゃん」

神様「・・・・・・」

神使長「神使君は出来たのかな?」

神使「・・・・・・」


神様「あっ、長官くん! 足下にゲジゲジがいる!」

長官「!?」


神様「逃げるぞ! 犬ころ!!」ダダダッ

神使「え!? ちょ、神様!?」


 早く来いやー!! ダダダッ


神使「いや・・・ あの・・・」オロオロ

神使長「君の主神様がお呼びだ。 お付きの神使なら主神に従いなさい」

神使「すいません、失礼します」ペコリ


神使「神様~ 待って下さ~い」ダダダッ


長官「全く・・・」ハァ

神使長「ん? これは・・・」

長官「千羽鶴のようだね」

神使長「これ、反省文の紙じゃ・・・」

長官「神ちゃんは一体何をやって・・・ ん?」

神使長「長官さん?」


長官「これは・・・ 千羽鶴から神ちゃんの神力を感じる・・・」

神使長「そんな! 最高神様の神力!?」

長官「・・・・・・」



ブルブル


長官(メール?)




From:神ちゃん
Title:それ
本文:私達からのプレゼント 神宮のみんなにあげるから許してちょ





長官「全く」フッ

神使長「?」

長官「最高神の神力入り千羽鶴だなんて、神宮久しぶりの宝物だな」


長官「今日は素晴らしい日だ」



テクテク


神使「も~ どうするんですか・・・」

神様「だって、アレに捕まったら面倒だろ?」

神使「面倒ってそんな・・・ 元々の原因は私達ですから」

神様「宿に戻れないし、このまま次の所に行こうぜ~」

神使「荷物がまだ宿にありますから戻りますよ。 それに宿泊費は前金で入れておりますから泊まらないと損です」

神様「え~ マジかよ」

神使「長官さん達は1泊と言っていましたから、私達は明日宿に戻りましょう」

神様「今日はどうするの?」

神使「野宿とか?」

神様「申し訳ございませんが、そういうのは本当に勘弁していただけないでしょうか」

神使「では」



テクテク
ピタッ


神使「本日はこちらにお世話になりましょう」

神様「まぁ・・・ 野宿よりはマシか・・・」ハァ


ガラガラ


神様「たでーま~」

神使「おじゃまいたします」


キー子「最高神様、狛犬の神使さま。 お帰りなさいませ」ニコリ

幼女神「なんじゃ、夕飯は食べてしまったぞ? 食後の牡蠣アイスでも一緒に食べるか?」ニコッ





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
#15「神苑温泉」 ―END

2~3回位の投下で終わる短いヤツをこの後で・・・



――― 深夜


神使「Zzz・・・」スヤスヤ


ゴソゴソ


神使「ん・・・」ムクッ


ゴソゴソ


神使「・・・神様?」ポー


幼女神「・・・・・・」

神使「幼女神さま? あれ、神様は・・・」キョロキョロ

幼女神「少し位はアイツと間違えると思ったのにのぉ」ハァ

神使「そんな失礼はさすがに・・・」

幼女神「しかも、目覚めて早々アイツの心配か」

神使「あ、いえ。 そういう訳では・・・ すいません///」

幼女神「謝る必要はない。 本心なのであろう?」

神使「ぅ・・・///」


幼女神「アイツなら本殿にいる」

神使「こんな夜中に本殿で何を・・・」

幼女神「キー子へ祈祷や祭儀の作法を教えているようだ。 ワシのやり方は古いそうでのぉ」

神使「そうでしたか」

幼女神「・・・・・・」


幼女神「この度は、この地の問題を解決してくれてありがとう」ドゲザ

神使「ちょ、幼女神さま! 止めて下さい」オロオロ

幼女神「それだけでなく、その・・・ ワシ自身の問題ごとまで解決してくれ何と礼を申したら良いか」

神使「私は何も・・・ 全部神様が一人で解決されたことですので。 私ではなく神様に」

幼女神「お前に礼を言えば同じであろうと思ってな」

神使「・・・直接お話しして頂いた方が神様も喜ぶと思いますよ?」

幼女神「ワシはこう見えてプライドが高いのじゃ」

神使「はぁ・・・」

幼女神「見たんまんま、と思っているのであろう」

神使「いえ、そんな事は・・・ すいません、心を読まれているので嘘は付けないですね・・・」

幼女神「読んでおらん」

神使「え?」


幼女神「そんなことより、お前に頼みがある」

神使「私にですか?」

幼女神「受け取ってもらいたい物がある」

神使「?」

幼女神「本来はアイツに渡すべき物なのだが」

神使「もしかして、神様が受け取ってくれないというやつですか!?」

幼女神「そうじゃ」

神使「しかし、それを渡してしまうと幼女神さまが・・・」

幼女神「今の最高神に渡せばな。 だがお前は違う、お前に渡してもワシは消えん」

神使「そんな大切な物を、私なんかがお預かりするというのは身分不相応かと」


幼女神「いいや、お前になら安心して渡せる。 出来れば生涯アイツの身近にいるお前に預かってもらいたい」

神使「・・・・・・」

幼女神「ずっと一緒にいるのであろう?」

神使「・・・・・・///」

幼女神「案ずるな。 爆発したり、道中かさばるような物でもない」

神使「しかし・・・」

幼女神「頼む。 アイツが信頼し、心許すお前に頼みたいのだ」

神使「・・・・・・。 承知いたしました、お受けいたします」フカブカ

幼女神「よし、そのまま楽にしておれ」

神使「?」


ポワン ポワン


幼女神「終わった」


神使「何か頭の中に・・・ 祝詞・・・ いや呪文でしょうか? なんですかこれ?」

幼女神「最後の言霊」

神使「最後の・・・ 言霊?」

幼女神「唱える者の願いを何でも叶えるそうじゃ」

神使「願い・・・」

幼女神「あぁ、何でも叶う。 この世をゼロにすることさえ出来る」

神使「え!?」

幼女神「その代わり、唱えた者の存在は消えるがの」

神使「命と引き換えの願い・・・ ということですか?」

幼女神「と、言われているがワシも知らん。 使ったことないしな」

神使「・・・・・・」


幼女神「呪文の意味が理解できぬ。 意味を理解しないと唱えても効果はないみたいじゃ」

神使「と言いますか、これ発音自体分からないのですが・・・」

幼女神「そうじゃろ? ワシも分からん。 まぁこの先あいつも必要になる事などないと思うが」

神使「だと良いんですが、教えてしまうと面白がって使いかねませんからね・・・」

幼女神「あいつもそこまでアホではなかろうに」ハハハッ

神使「私の命にかえても守り通します。 それこそ墓まで持っていく覚悟で」

幼女神「賢明じゃ」


幼女神「これでワシの役目は終わったな。 はぁ~・・・ いざ消えるとなると少し寂しいな」フッ

神使「!? 幼女神さま! 先ほど渡しても消えないと!!」


幼女神「プッ! 引っかかった~ 本気にした? ビックリくりした?」ウヒャヒャ

神使「・・・・・・」


幼女神「安心しろ。 ワシなら大丈夫じゃ」

神使「この雰囲気でそういう冗談は勘弁して下さい」ホッ

幼女神「すまぬ。 さて、少しキー子の様子でも見てくるか」ヨイショ

神使「お供してもよろしいでしょうか?」

幼女神「もちろんじゃ、行こうではないか」



――― 本殿前


♪~


幼女神「なんじゃ? この音は」

神使「巫女舞ですね。 神様はキー子さんに巫女舞も教えているのでしょうか?」

幼女神「そういえば、あのガキは昔から踊るのが好きじゃったからのぉ」


 もっと前に! 足が伸びすぎ! 少ししゃがむ位の感じで!
 は、はい!


神使「随分とスパルタですね・・・」

幼女神「あのガキがこんなに熱心になるとは珍しいの」

神使「邪魔してもアレですし、こっそり覗いてみましょうか」

幼女神「そうじゃの」



ソォー


神様「そんなんじゃ男どもを悩殺できないって! もっと襦袢見せて!! もっと肌出して!!」

キー子「え~っ!?」


神使・幼女神「・・・・・・」


神様「良い? 男達の視線を真っ赤な襦袢からその白い肌に向けさせる感じを意識し―――」


ガラガラ
バンッ!


神様「!?」ビクッ


幼女神「おい」

神様「あれ~ 幼女ちゃん・・・ 神使さんも一緒で・・・」タラタラ


神使「神様? 巫女舞にそんな振りはございませんよね?」

神様「・・・・・・」


幼女神「何を悩殺させるって?」

神様「・・・・・・」

幼女神「勅令口呪符霊不~」ポワン ポワン


ゴゴゴゴゴ


神様「ちょ、お前それマズいって! ダメだよマジモンじゃねーかよ!!」アワアワ



――― 数十分後


神様「・・・・・・」ゲッソリ


幼女神「ったく、何をしておるのじゃお前は」ハァ

神様「いや、キー子ちゃんが効率よく神力徴収が出来るようにと思いまして・・・」

神使「神様・・・ いくら何でもあれは・・・」

幼女神「祭儀の作法を教えるのではなかったのか?」

神様「教えたよ!」

キー子「神ちゃんさまからは一通り教えて頂き、時間が余ったので他の物をと私からお願いしただけですので」

神使「キー子さん、別に庇わなくても良いですよ?」

神様「いや待てよ! 基本形は本当に全部教えたって!」


幼女神「キー子は他に何を教えてもらったのじゃ?」

キー子「そうですね・・・ 神ちゃんさまの有り難いお札を作成して神力徴収の際に神々の皆さんにお配りする案を」

幼女神「無料か?」

キー子「1枚500円です。 でも凄いんです! 神ちゃんさまが半分この神社に初穂料を寄付してくれると仰ってくれまして!」

幼女神「・・・・・・」ピクッ

神様「ぁ、キー子ちゃん? あんまりそこら辺は・・・」


キー子「あと、神ちゃんさまグッズの案も色々頂きました!」

幼女神「そうかそうか」ニコッ

神様「・・・・・・」


幼女神「勅令口呪符霊不~」ポワン ポワン


ゴゴゴゴゴ


神様「だからそれダメだって! おい犬ころ! 逃げるぞ」ガシッ

神使「ちょ、神様!?」ズルズル

神様「あれくらったら意識失うぞ!」ダダダダッ


バリバリバリバリ


神様「犬ころ! もたもたするなー!」ダダダダッ

神使「私、関係ないのに何でー」タッタッタッ


幼女神「二度と足を踏み入れるな! この出来損ないの最高神がー!!」



シーン


キー子「行ってしまいましたね」

幼女神「全く、あいつは別れ際はいつもこんなじゃな」ハァ

キー子「しかし、神ちゃんさまってとても尊敬できる方ですね」

幼女神「あんなのを尊敬などすると大変じゃぞ?」

キー子「私の憧れる神が増えました」

幼女神「・・・・・・」

キー子「幼女神さまと、神ちゃんさま。 私は尊敬しお慕い申し上げます」フカブカ

幼女神「アイツと一緒というのが癪に障るが・・・ まぁ確かにアイツは優秀だ。 認めよう」

キー子「はい」ニコッ


幼女神「さて、こんな遅くなのにアイツらのせいで寝られそうにない」

キー子「温泉、お作りになります?」

幼女神「そうじゃな。 明日からは少し多めに作らんといかんし」

キー子「あ、あの・・・ 私も一緒に作らせて頂いても良いでしょうか?」

幼女神「・・・・・・」

キー子「すいません! 調子に乗ったことを・・・」ペコリッ

幼女神「いいや、助かる。 手伝ってくれるか?」

キー子「はい!」

幼女神「では、行こう」



――― 神社入り口


神様「ハァ・・・ ハァ・・・」ゼエゼエ

神使「もう、神様・・・ 何てことを・・・」ゼエゼエ

神様「仕方ないだろ! お金欲しかったんだもん!」

神使「そんな直球で言わないで下さい」


神様「あ~ 折角の寝床が・・・ 今日は野宿確定か」ゲンナリ

神使「神様のせいです」

神様「へいへい、すんませんね~」


神使「さて、どこで休みましょうか」

神様「探しながら少し散歩でもしないか?」

神使「そうですね、とても眠れる感じでもありませんし」



テクテク


神様「あ~ 今日は月がまん丸だな」

神使「満月ですね」

神様「良いこと教えてやろうか、月にウサギなんていないんだぜ?」

神使「・・・知ってはいますが、立場上あまりそういう事は言わない方が良いですよ?」

神様「私は月より団子派、情緒より娯楽。 現実主義者なのだよ」

神使「神様って本当に我が道を行く、ですね」

神様「それ褒めてるの? 貶してるの?」

神使「褒めているんですよ」

神様「斬新な褒め方ですな~」



テクテク


神様「おっ、ここ野宿に丁度良いんじゃない?」

神使「程よい草地、月も見えて良い感じですね」


神様「私、こっち側~」ゴロン

神使「隣に失礼します」ゴロン


神様「もっとこっちに来いよ、お前半分草地から出てるじゃん」

神使「では、お言葉に甘えて」ピタッ


神様「はぁ~ 今日は長い一日だったな」

神使「とても良い一日でした」


神様「・・・・・・」



神様「なぁ、どう思う?」

神使「何がです?」


神様「私さぁ、お前とこうして旅に出てから毎日が楽しくて仕方ないんだ」

神様「朝起きてから寝るまで、いや夢の中でもかな。 本当に毎日が楽しくて楽しくて」

神使「・・・・・・」


神様「私は神だ。 この国にいる人の願いを聞き成就するのが責務であり、私が存在できる理由でもある」

神様「そんな私がこんなに楽しんで良いのかってさぁ」

神使「・・・・・・」


神使「良いと思いますよ? 神様が楽しければきっと周りも幸せです」

神使「神様が毎日ニコニコされていれば私は嬉しいですし、きっと皆も同じだと思います」

神様「・・・・・・」


神使「神様は最高神ですから。 神様がこの国で一番幸せになっても良いんじゃないですか?」

神使「周りに沢山迷惑かけて、自由奔放で何の悩みもなく好きなことを好きなだけする」

神様「・・・・・・」


神使「皆、そんな神様のお相手をするのがとても楽しいんです」

神使「朝起きてから寝るまで、夢も中でもいつも一緒の私が言うんですから間違いありません」


神様「そうか」


神使「私も、こうして神様と一緒にお供できて毎日とても楽しいです」

神様「よかった」


神使「神様と出会い、旅をするのが規定事項だったとしても偶然の悪戯だったとしても・・・」

神使「神様の隣でこうしてお話しができ、一緒に居ることのできる幸せを与えて下さったことに私は・・・・・・」

神使「・・・・・・」


神様「?」

神使「・・・・・・」

神様「何だよ、急に黙り込んで」


神使「神様、私は自分で意志が強いと思っておりましたが・・・」

神様「?」

神使「どうも違うようです」

神様「どしたの?」

神使「そして、私の身勝手な理由で待って欲しいなどとワガママを・・・」

神様「・・・・・・」


神使「・・・・・・神様」ジッ

神様「ぇ、ぁ・・・ な、なに?」


神使「先日、私が胸を張って神様にお伝えできるその日まで時間を下さいと言いました」

神様「・・・・・・」

神使「でも、お待たせするわけには行きません」

神様「・・・・・・」

神使「いえ、私が待てそうにありません。神様にはもっと幸せになって頂かないと」



神使「今日の私は少し・・・ いえ、かなり自信過剰です。 許して下さい」ニコッ






神使「神様、どうか私をあなたの―――――――」





神様「!?」



――― 神社・浴室


チャポン


キー子「幼女神さま?」

幼女神「なんじゃ?」

キー子「神ちゃんさまの神力なんですが・・・」

幼女神「・・・お前には見えたか」

キー子「幼女神さまによく似ておりましたが・・・」

幼女神「でも桁が違ったじゃろ」

キー子「はい。 一体どのくらいの量なのか検討もつかない位・・・」


幼女神「もう何百年も封印している感じじゃな」

キー子「封印?」

幼女神「きっと、渡したい相手がいるんじゃろ。 あいつは自身の神力を渡すことで神を作る」

キー子「神を?」

幼女神「あぁ、自身の半分の神力を渡すんじゃよ。 きっと沢山渡したい相手でも居るんじゃないのか?」

キー子「そうですか。 それであんなに」

幼女神「でも、近いうちにアイツも神力を再び使えるようになるじゃろ」


幼女神「アイツと同じ強い神力を授かり・・・ 二人がこの国を笑顔が絶えぬ国へと導いてくれる」

キー子「楽しみですね」


幼女神「見てみろ、今日は月がまん丸じゃ」

キー子「満月ですね」


幼女神「今日は素晴らしき日じゃ」


チャポン




神使「ぅ・・・///」カーッ

神様「嬉しいな。 今まで生きてきた中で一番嬉しい言葉だ」

神使「すいません・・・ ムードもへったくれもなく・・・///」


神様「神使・・・ いや、神使さん」

神使「!?」



神様「その言葉、お待ち申し上げておりました」ギュッ

神使「神様・・・」




喜んでお受けいたします
私の一生をあなたに捧げます
不束者ですが、どうぞよろしくお願いします



私の愛する神使さま


神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」―END


おしまい
ありがとうございました!

春先にあらすじ書いて完結出来なさそうだったのでお蔵入りしたヤツですが……
頑張ってみる!

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


【#16】「お花を摘みに」


ガタンゴトン


神様「ねぇねぇ神使く~ん」モジモジ

神使「どうしたんです?」

神様「私、結婚式は牡蠣の養殖場が見える海辺の教会がいいなぁ~」クネクネ

神使「どこにあるんですかそんな場所・・・ って、神社じゃなくて教会なんですか!?」

神様「白無垢よりドレスが着たい!」

神使「・・・・・・」

神様「それよりさぁ~ 一つ聞いてもいい?」

神使「なんです?」

神様「どこ向かってるの? 神宮と逆向きだよね、この電車」

神使「良くお分かりになりましたね」

神様「私くらい立派な神だと、上りと下りの電車くらい分かるんだわ」


神使「夏と言えば?」

神様「夏休み!」フンスッ


神使「夏休みと言えば?」

神様「アルバイト!」


神使「アルバイトと言えば?」

神様「生活費の足しを求めて私達が行うもの!」


神使「さすが神様、正解です!」


神様「・・・予想はしていましたが、浮かれていた気分が一気に冷めました。 はい」



─── とある神社・参道


テクテク


神様「はえ~ デカい神社だな~」

神使「参道も大きくて長いですよね。 本殿がまだ見えないですよ」


神様「お前の友達って結構良いとこに勤めてるのな」

神使「友さんはとても優秀な神使ですから」

神様「も~ 自分の方が優秀なくせに謙遜しちゃって~」ウリウリ

神使「・・・・・・」



 お~い


神様「ん? あれ知り合い?」

神使「友さんです」


友「よー神使。 久しぶり」タッタッタッ

神使「ご無沙汰しております」ペコリ

友「わざわざこんな遠くまですまないな」

神使「お気になさらず。 バイトさせてもらう身分ですから」

友「ん? となりの子は巫女さんかい?」


神使「ご紹介します。 こちら私の主神様で神様です」

神様「はじめまして。 かわゆい神ちゃんと申します」ペコリ


友「・・・確かお前って神宮の神付き神使だったよな」

神使「はい」

友「という事は、こちらは神宮の・・・」

神様「内宮神籍で女神をやらせて頂いております」

友「!? ・・・・・・」スッ

神様「おっと! ふかぶか禁止!」


神使「神様は仰々しいのが苦手なので友達感覚でフレンドリーに接してあげて下さい」

友「いや・・・ あの・・・ 神宮の女神様にそのような事は・・・」


神使「神宮の神と言っても今は野良───」

神様「アッチョー!」ゲシッ

神使「痛いっ!」ガクッ

友「・・・・・・」


神様「気にせず、かわゆい神ちゃんと呼んで下さいね」ウフン

友「はぁ・・・ では、初めまして神ちゃん様」

神様「堅いな~ “かわゆい”かみちゃん、で良いって」

友「分かりました、神ちゃんさん」

神様「・・・うん」


神使「しばらくご厄介になります」

友「いや~ 神使が来てくれて助かったよ。 この時期どこも人手不足で」

神様「夏休みだものねぇ~ みんな夏休みだものねぇ~」ジロッ

神使「・・・・・・」


神様「この神社って神は誰が配属されてるの?」

友「この神社に神は配属されていません」

神様「え? これだけ大きいのに?」

友「そう思いますよね・・・ でも立派なのは参道だけなんです」


神使「お社の方は小さいのですか?」

友「まぁ見てもらえれば分かるとは思うけど・・・ 立ち話も何だし、歩きながらでも」



テクテク


神様「なんか、風化した石像みたいなのが参道横に沢山並んでるな」

友「八百万の神をお祭りしている石碑です」

神使「へぇ、珍しいですね」

友「何の神かは今となっては分からないんだけどな」


神様「八百万って便利なシステムだよね~」

神使「・・・立場上、あまりそう言う事は言わない方が良いですよ?」


友「昔は一体一体把握していたと思うんですが、さすがに今では何をお祀りしていたか分からずで」

神様「だいぶ風化しているし、神力は全部空っぽか」



テクテク


友「着きました」

神様・神使「・・・・・・」


友「これが当社の本殿です」

神様「え? どれ?」キョロキョロ

友「ですから、こちらです」コンコンッ


神使「いや、友さん・・・ 今日は暑いですから冗談は良いので早く案内して下さい」

友「うん、言いたい事は分かる。 でも本当なんだよ」


神様「ちょっと待って、これって・・・」


神使「あの・・・ これ、トイレですよね?」

友「厠だな」

神様「?」


友「当社の本殿でございます」

神様「・・・ごめん、ちょっと何言っているのか分からないんだけど」

友「当お社は、花摘み神社と申します」


神使「・・・なるほど、そう言うことですか」

神様「え? なんで今ので神使君は分かっちゃうの?」


神使「神様、よくお手洗い行くときに何て言って出かけます?」

神様「うんこ行ってくる、かな?」

神使「・・・普段おちゃらけて言う事があるじゃないですか」

神様「お花もりもり摘んでくる?」

神使「それです!」


神様「お花を摘む、花摘み・・・ 花摘み神社、トイレ!」

神使「そうです!」

神様「隠語じゃん! マジで?」

友「はい」


神様「このトイレが本殿?」

友「はい」



神様・神使「・・・・・・え!?」


ゆるりと行きたい


神様「・・・神使君、帰ろ?」

友「まっ! 待って下さい! 帰りたい気持ちは分かります! ですが!」

神様「いやいや、だってトイレじゃん! 私ずっとこの中でお花摘むの?」

神使「普段は自分から進んで本殿には入らないじゃないですか」

神様「お~ 良くお分かりで」


神使「しかし、本殿なのにどうしてこんな隅の方に・・・」

友「え? 厠だし」

神使「確かに普通神社ではお手洗いは隅に設置しますが・・・」


神様「あっちにある建物は? あれ本殿じゃないの?」

友「あちらは社務所です」

神様「何で社務所が参道の正面にあるの? 何で本殿が隅っこなの? 設計したヤツどんだけ捻くれてるの?」


神使「どうしてトイレが本殿がなんです?」

友「さぁ? 詳しい事は俺も・・・ やっぱ花摘み神社だからじゃないか?」


神様「友くんは、この神社の神使なんだよね?」

友「いえ、私はここから5kmほど離れた立派天満宮の神使です」

神様「ん? ここの神使じゃないの?」

友「このお社は神がいませんから、神使も不在です。 神職も巫女もいません」

神使「では、なぜ友さんがこちらの管理を?」

友「数年までは宮司さんがいたんだけど、後継者がいなくて今は立派天満宮が管理しているんだよ」

神使「そういう事でしたか」


神様「こんな所で私達は何のバイトするの? トイレ掃除? まさか一日中ブリブリするの?」

友「さすがにそれは・・・ この神社は24時間見張りを付ける事になっておりまして」

神使「24時間体制ですか?」

神様「トイレしかないのに?」


友「実は、このお社には埋蔵金伝説がありまして」

神様「埋蔵金!?」クワッ


神使「・・・本当にあるんですか?」

友「さぁね。 そんな資料や文献は見つかっていないし都市伝説だと思うけどさ」

神使「なるほど、埋蔵金目当てで忍び込む人達がいるんですね?」

友「そう言うこと」

神使「困ったものです」ハァ


神様「火のない所に煙は立たぬ!」キラキラッ

神使「神様・・・ 瞳に¥マークが浮かんでいます」


友「これだけ広い神社で何にもないと逆に何かあるんじゃないか? って思う気持ちも分かるけどな」

神使「徳河の埋蔵金レベルの話しですね。 そんなありもしない物を・・・」

神様「徳河の埋蔵金ならあるよ?」

神使・友「え!?」


神様「いや、徳河の埋蔵金ならあるって」

神使・友「・・・はい?」


神様「日光にキラキラピカピカ神社あるじゃん?」

神使「西照宮の事ですか?」

神様「そうそう。 そこに今も手つかずで埋まってると思うけど」


神使・友「・・・・・・」


神様「本気で金に困ったら掘り返しに行こうぜ」ニヒヒ

神使「あの、それって本当なんですか?」

神様「埋めるとき私もその場にいたし。 何を隠そう許可を出したのは私なのだ!」フンスッ

神使「・・・・・・」

友「何か、今凄い事を聞いてしまった気が・・・」


神様「それより、この神社の埋蔵金だよ。 さすがの私も初耳だ」

神使「徳河の埋蔵金の方が気になるのですが・・・」

神様「あんなの、すぐに掘り返せないしこっちの方が面白そうじゃん!」

神使「・・・・・・」

神様「私のカンだと、この神社間違いなく何か隠していると思うんだよ」クンクン

友「ま、まずは社務所の方にでも・・・ 参拝者の方に聞かれるとアレですし」



─── 社務所


神様「変わった形の社務所だよね。 なんかキノコみたい」

神使「一周丸い形の社務所って初めて見ました」

友「この神社は色々と特殊でな」

神様「いいね~ もう埋蔵金が埋まっているって言っているようなものだよね」

神使「・・・・・・」

神様「よっしゃー! 燃えたぎってきた! 神使君、超特急でこの神社の事調べて!」

神使「え!?」


神様「神勅! 花摘み神社の由緒を徹底的に調べよ!」

神使「!?」フカブカ


神様「神宮の総力を挙げ徹底的に調べるんだ。 財宝は私のものだ!」

友「まさか、財宝を独り占めに!?」

神使「友さん、神様の神勅中です」ボソッ

友「あっ」フカブカ

神様「うそうそ、財宝が出たら全部寄付するに決っているじゃん。 イヤだな~ 私これでも神だよ?」アセアセ

神使・友「・・・・・・」ジトー

神様「と、取りあえず花摘み神社の事を早急に調べよ! 内宮神籍神様からの神勅を申し伝えた!」

神使「神様! そんな事で神勅なんて出さないで下さいよ」

神様「良いから、さっさと仕事!」シッシッ

神使「全く・・・」


神様「それより、この神社に詰めるのは私と犬ころの2人だけ?」

友「私も一緒にここにおりますので3人体制です」

神使「友さんはご自分のお仕事はよろしいのですか?」

友「夏休み中だし俺も一緒にここにいるよ」

神様「え? 夏休みなの?」

友「はい。 特に休んでもやる事はないですから」

神様「海とか、買い物とか、貝食いツアーとかしないの?」

神使「貝食いって・・・ そんな事するのは神様くらいですよ?」

神様「いやいや、巫女のA子ちゃんはプール行って海行って温泉入るって言ってたけど?」

神使「どんだけ水が好きなんですか・・・ そんな事するのは神様とA子ちゃんくらいです」

神様「何だよその言い方! 私とA子ちゃんが外れ者みたいじゃん!」

神使「そう言ったつもりです」

神様「・・・・・・」


友「神使・・・ お前、神に向かって随分とキツい発言するな・・・」

神様「友くん! もっと言ったって! この子、私に凄くきつく当たるの!」


神使「神様? 神社で奉職するというのは仕事とは違うんです」

神様「またそんな労働基準法の抜け道みたいな事言いやがって!」

神使「友さんも神様を甘やかさないで下さい。 すぐ調子に乗りますから」

友「・・・・・・」

神様「労働基準法を遵守せよ!」ギャーギャー


友「お、おれ夕飯買ってくるわ・・・」


─── 夜


侵入者A「おい、今日はこの辺でも掘ってみるか?」

侵入者B「そうだな。 じゃぁ早速───」


 神様「オラァァーーッ!!」ダダダダダ


侵入者A「やべ、巫女だ!」

侵入者B「逃げろ!」タッタッタッ


 神様「穢れなき神聖な場所で何やってんだ!! 呪うぞ! 狐神呼んで陰湿な呪いくらわすぞ!」



友「なぁ、あの方は本当に女神様なのか?」

神使「はい、神宮が誇る穢れなき神聖な女神さまです」

友「穢れなきねぇ・・・」



 神様「コラー!! お前も私の財宝を狙っているのか! 猫神呼んで折檻させるぞ!!」ダダダダダ



─── 社務所・深夜


ガラガラ


神様「ふぃ~ いい汗かいた」

友「・・・・・・お疲れ様でした」


神様「友君さぁ、盗人達の普段の追い返し方が不十分なんじゃない?」

友「そ、そのようですね」ハハハ

神様「まぁ、これでしばらくは邪魔者は来ないだろう」


神使「神様、神宮から花摘み神社の資料がメールで届いてます」

神様「お~ 早いな」

神使「神勅ですから・・・ 神宮の資料室の方達も総出で対応したようです」

神様「どれどれ~」


友「へぇ、さすが神宮。 見た事ない資料ばっかりだ」

神様「何か変わった事あった?」

神使「そうですね、この神社ですが過去に社名が変更されているようです」

神様「名前が?」

神使「はい、以前は“茶摘み神社”と言われていたようです」

神様「茶摘み? そうなの?」

友「はじめて聞きました」


神様「茶摘みって、トイレ関係ないじゃん!」

神使「私に言われましても・・・」

神様「あっ、お茶飲むとトイレ行きたくなるからってやつ?」

神使「そんな理由で神社名を変更しないと思うのですが・・・」


神様「他に何か埋蔵金のヒントになりそうなものは?」

神使「茶摘み神社時代の資料はもう残っていないようです」

神様「う~ん、茶摘みか・・・」

友「摘むという部分は変わっていないんですね」


神様「茶摘み・・・ 夏も近づく八十八夜・・・」

神使「え?」


神様「茶摘みだよ。 茶摘みの歌」

神使「歌?」

神様「♪夏も近づく八十八夜~ 野にも山にも若葉が茂る~」

神使「その歌が何か関係あるんですか?」

友「まさか、茶摘み歌がこの神社と関係があると?」

神様「・・・・・・」

神使「ちょっとこじつけ過ぎではないですか?」

神様「いや、そうとも言い切れないぞ」

神使「どういう事です?」

神様「大抵昔の歌は歌詞をもじって秘密を記すのが常識だ」

神使「どこの常識ですかそれ・・・」


神様「この辺ってお茶の産地なの?」

友「いいえ、聞いた事ございませんね」

神様「八百万の神が祀られているんだったら、お茶の神もこの神社に祀ってあるんじゃない?」

友「あるかも分かりませんが・・・ 今この神社で把握しているのは三つだけです」

神様「三つ?」

友「はい。 今日は遅いですし、明日朝にでもご案内いたします」

神様「もう2時か・・・ 眠いわけだ」フワー

友「朝までは私が見張りを」

神使「いえ、私が見張りをします。 その為にバイトに来たので」

神様「犬ころが犬ころである所以、神使君は番犬なのだよ。 それ以外の何ものでもない」

神使「狛犬です」

神様「へいへい、それじゃおやちゅみ~」バタン


神使「え!? ここで寝るんですか?」

神様「だって~ 私と神使君はもう離れられない関係だし~」ポッ

神使「うっ・・・///」

友「?」

神使「あっ、特に深い意味はございませんから。 気にしないで下さい友さん」

友「意味も何も、神付き神使は主神と道中離れちゃいけないからだろ?」

神使「え!? そ、そうでした。 そう言うことです」アセアセ

友「どうしたんだ?」


神様「ウヒヒヒ。 ま、そう言う事にしておきますか」



─── 翌朝・社務所


チュンチュン


神様「・・・・・・朝?」ボー

神使「あっ、神様起きられます?」

神様「ん」モソモソ


神使「今日は珍しく寝相が良かったですね」

神様「・・・あ? お前膝枕してたの?」

神使「えぇ、まぁ」ポリポリ



ガラガラ


友「あっ、神ちゃんさんおはようございます」

神様「おはよう」


友「献身的な神使ですな。 頭が下がるよ」

神使「からかわないで下さい」

友「からかってないよ」

神使「・・・・・・///」


友「朝食を買ってきました」



─── 居間


神様「やっぱりおにぎりはツナマヨだよね」モグモグ

友「良くお分かりで」モグモグ

神使「お二人がツナマヨが好きなのは良いのですが、全部ツナマヨというのは・・・」

友「だから野菜スティックも買ってきただろ?」

神使「はぁ・・・」


神様「食べた食べた。 ごちそうさま」

友「では、昨日お話ししたお祀りしてある3つの石碑にご案内します」

神様「あ~ ここから近いの? 外暑そうだしあんまり動きたくない」

友「すぐ近くなので大丈夫です」



─── 社務所前


神様「朝なのに暑いね~」

神使「ここ数日、良いお天気ですよね」


神様「それじゃ、行きま───」

友「こちらが石碑です」

神様「え? まだ社務所前だよ? 三歩しか動いてないけど」

神使「確かに、石像っぽいのが三つ並んでいますが」

神様「社務所の真ん前って・・・ 昨日は気がつかなかった」

友「原型は分からないほどに風化していますし、かなり小さいものなので」


神様「これ参道の真っ正面にあるって事は結構重要なものじゃないの?」

神使「普通はこの場所には本殿がありますから、ご神体という事も考えられますよね」

友「確かに・・・ どうして脇にあるトイレが本殿なのかなぁ?」


神様「まぁいいや。 で、この三つは何を祀ってんの?」

友「“水”と“お米”の神と聞いております」

神様「水と米ねぇ~」

神使「確かに石碑には米印(※)の刻印がありますね。 真ん中のヤツは特に米印も大きいですし」

神様「三つとも米印があるのか・・・」


神使「中心が米で両隣が水でしょうか? 随分と変わった祀り方ですよね」

友「米を育てるのに水は不可欠だし、日照り続きで米が不作にならないように合祀しているんじゃないのか?」

神様「ん~」キョロキョロ

神使「神様、どうされました?」

神様「この石碑の前だけ石畳が敷かれてるな。 結構広い」

神使「本当ですね。 綺麗に石が揃っています」

友「祭りの日にこの場所で巫女舞が奉納されるので、そのスペースになっているからだと思います」

神様「ここで巫女舞が・・・」


神使「そのお祭りはいつ頃なのですか?」

友「確か、5月の第1日曜日だったかな」

神使「・・・八十八夜に近いですね」

神様「やっぱり何かあるなぁ~」

神使「まさか本当に埋蔵金が?」

神様「ここ掘り返してみる?」

神使「ダメに決まっているじゃないですか。 それに歌が埋蔵金のありかを示しているのであれば他の歌詞も解かないと・・・」


友「失礼ですが、神ちゃんさんの神力で調べたり出来ないのでしょうか?」

神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」

友「?」


神様「こんな事で神の力を使うなんて事は出来ない。 神力は人の願いを成就するためにあるのだよ」

友「!? し、失礼しました!」フカブカ

神使「・・・・・・」ジーッ

神様「そんな見るなよ。 照れるだろうがっ!!」ゲシッ

神使「痛い!」

友「ん? どうした神使」

神使「いえ、何でもありません」スリスリ


神様「他の歌詞かぁ~」


神様「♪夏も近づく八十八夜
    野にも山にも若葉が茂る
    あれに見えるは茶摘みじゃないか
    茜(あかね)襷(だすき)に菅(すげ)の笠~ 」


神使「茜(アカネ)、襷(タスキ)、菅(スゲ)という言葉が出てきますね」


神様「茜・・・ アカネ・・・」

友「アカネは確か染料で使いますよね。 赤い染料」

神使「神社だと巫女さんの緋袴の色ですね」

神様「緋袴・・・ 巫女かぁ~ そう言えば昔はアカネで袴を緋色に染めたな」


友「あっ! そう言えば、参道の脇にアカネが沢山植えられています」

神様「マジで!?」

友「えぇ、入り口の鳥居からここまでの参道までビッシリと」

神様「アカネの帯か・・・ 茜襷はそれを意味しているな。 後は菅の笠・・・」

神使「スゲはしめ縄で使われたりしますが」


友「この社も、しめ縄と社務所の屋根がスゲで作られていた気が・・・」

神使「そう言えば、社務所の屋根が笠に見えますよね」

神様「このキノコ型の社務所の屋根は笠を表してるのか!」

友「菅の笠・・・ ですか」

神様「ほぉ~ 繋がったな。 間違いない、茶摘み歌はこの神社の事を歌っている」

神使「でも、肝心の茶摘みの由来が分からないですが」

神様「お茶と、この神社を結ぶ何かがあるはずだ」

友「お茶・・・ う~ん、思いつかないですね」

神様「財宝が近づいてきている! これで地獄のローンともおさらばだ!!」

神使「・・・・・・」ジトー

神様「うそうそ、皆が幸せになれるの間違い」ハハハッ

神使「全く・・・」ハァ


神様「それより、神事の時の巫女舞って誰が舞うの?」

友「伝承では村の生娘だったと聞いておりますが、今はうちの巫女達が奉納しています」

神様「ちょっと見てみたいんだけど、お願い出来たりする?」

友「夕方でよろしければ。 ただ巫女も夏休みに入っている者が多く人数が少ないですがよろしいですか?」

神様「うん。 一人だけでも振りが分かれば、他は何となく補完できるから」

友「え?」

神使「神様はこう見えて巫女なので」

友「巫女?」


神使「実は神力ゼロなので神宮では巫女の仕事しかやらせてもらえ───」

神様「セイッ!」ゲシッ

神使「痛っ!」

友「・・・・・・」


神様「私は巫女舞に関しては誰にも負けないほどには造詣が深いのだよ」

友「さすが神宮の女神さま。 見かけによらずやる事は押さえているのですね」フム

神様「・・・・・・」

神使「メモします?」

神様「う~ん、今のはいらない」


神使「さて、それでは本日の奉務をはじめましょう」

神様「今日は境内を徹底的に調べる感じだな」

神使「神様? お忘れかも知れませんがアルバイトをしに来たのですよ?」

神様「分かってるよ。 掃除しながら調べりゃ良いんだろ」


友「私は普段手つかずの裏庭の草むしりをしてきます」

神使「では、私は建物周りを。 神様は参道のお掃除をお願い出来ますか?」

神様「へいへい。 って、私の範囲広くない?」


神使「箒を持たせて神様の右に出るものはおりませんから」

神様「やっぱり?」

神使「神様の箒捌きは、神宮の庭師の方ですら真似できないと言わしめるほどです」

神様「だよね~ まぁこの位の広さの参道なら半日やればできちゃうけどね!」

友「半日!? 1人でですか?」

神様「あれ~ 信じてないな? よかろう! 神使くん、箒を」

神使「はい、どうぞ」スッ

神様「その目で刮目せよ、神ちゃんの箒捌きを!!」タッタッタッ


友「・・・単純で良いな」

神使「はい」



─── 参道入り口


サァ サァ


神様「♪夏も近づく八十八夜~」

じいさん「おんや~ 珍しい。 巫女さんがおる」ヨロヨロ

神様「おはようございます。 絶好の徘徊日和ですね」

じいさん「じじいはそれが仕事じゃからの」

神様「その年でボケないのは毎日の徘徊のおかげという事ですね!」

じいさん「徘徊するのはボケてる証拠じゃがな」

神様「面白い!」ハハハッ

じいさん「じゃろ?」ハハハッ


神様「・・・・・・」

じいさん「・・・・・・」


神様「じいさんはこの村は長いの?」

じいさん「生まれてからず~とこの村に住んどるな」

神様「じゃぁ、この神社の事って詳しい?」

じいさん「不思議な所じゃよ」

神様「不思議?」


じいさん「入り口の横に池があるじゃろ?」

神様「ん? あ~ まん丸の小さい池があるね」

じいさん「参道をはさんで反対側にもあるんじゃよ」

神様「そうなの?」トテトテ

じいさん「今は枯れているがのぉ」

神様「本当だ、空っぽ」

じいさん「小宝池と言ってな? 池の水はとても清らかで“宝水”と言われているんじゃ」

神様「宝水・・・ たから!?」


じいさん「両方の池に水が張ったとき、村が豊かになるという言い伝えがあるそうじゃ」

神様「ほぉ~ 村が豊かに」

じいさん「ワシが小さいときに爺様から聞いた話じゃがな」

神様「両方の池に水か・・・」


じいさん「この地区は近くに川もなければ水もでない場所でな。 地下に水脈がなく昔は年中水不足じゃった」

神様「あ~ それで宝水か・・・ 財宝の事じゃないんだ」

じいさん「水の話をしていたら喉が渇いた。 巫女ちゃんも何か飲むか? その自販機で買ってやるぞ」

神様「コーラを! 赤い缶のやつ」

じいさん「これか」ポチッ


ガコン


じいさん「ほれ、じゃぁな。 可愛い巫女ちゃん」ヨロヨロ


神様「じいさん、トクターペッパーだよこれ・・・」



─── 夕方・社務所前


神様「ふ~ 疲れた」トテトテ

神使「ご苦労様です。 落ち葉は捨ててきました?」

神様「裏庭にまとめて置いてきた」

友「本当にお一人でやってしまったんですね」

神様「おかげで調査の方は出来なかったけど・・・」

神使「それで良いんです」


神様「ん? 友くんの隣にいる子は?」


巫女「初めまして、立派天満宮の巫女と申します」ペコリ

神様「これはこれはご丁寧に。 神宮の内宮巫女のかわゆい神ちゃんと申します」ペコリ

友「神事の巫女舞をと思いまして」

神様「あ~」

巫女「申し訳ありません、今日は私しか出勤しておらず・・・」

友「でも彼女が巫女舞は彼女が一番上手ですから」

巫女「いえ、そんな事は・・・」

神様「楽しみ~」

巫女「そんな神宮の巫女様にお目にかけられるほどのものでは・・・///」

神使「ご心配なく。 正式な神事とは違いますので、気を楽に」

友「じゃ、早速で悪いんだけどお願い出来る?」

巫女「はい」スタスタ


友「神ちゃんさん、始めてよろしいですか?」

神様「うん。 よろぴこ」


巫女「では、はじめます」



♪~


神様「・・・・・・」ジー



─── 十分後


♪~


巫女「以上です」ペコリ

神様「・・・・・・」

神使「神様、どうですか?」

神様「巫女ちゃんって浦安の舞とか出来る?」

巫女「浦安・・・ はい、あまり得意ではありませんが」

神様「さわりだけでも良いから見せてもらってもいい?」

巫女「分かりました」



♪~


神様「おっけ~ ありがと」

巫女「?」


神使「もうよろしいんですか? 10秒くらいしか経っていませんよ?」

神様「巫女ちゃん、舞が上手だね」

巫女「お褒め頂きましてありがとうございます」ペコリ

神様「A子ちゃんの百倍は上手だ」

神使「比べる相手の次元が・・・ A子ちゃんは舞で転んでそのままでんぐり返して退場しますからね・・・」

神様「アレは斬新だよね」

友・巫女「・・・・・・」


神様「気になった事があるんだけど聞いてもいい?」

巫女「はい」

神様「この神社の神事の舞の時、動きがぎこちなかった気がするんだけど」

巫女「あっ・・・」


神様「足下を気にし過ぎていた感じかな。 浦安の舞の時はそれを感じなかった」

神使「そうですか? とても美しい舞でしたが」

巫女「いえ・・・ 仰る通りだと思います」

神使「どういうことです?」


巫女「こちらが花摘み神社の舞の教本です」スッ

神様「見てもいい?」

巫女「どうぞ」

神様「・・・なにこれ?」ペラッ


神使「八五左、八七右・・・ 昔の棋譜のようですね」

巫女「はい、仰るとおり棋譜です」

神様「ん?」

巫女「実は、足の置く位置が石畳の決められた場所になっていまして」

神使「石畳?」

巫女「はい。 最初の“八、五、左”というのは正面から八つ目、右手から五つ目の石畳の上に左足を置くという意味なんです」

神様「なるほど・・・ それで足下を気にしながら舞っていたんだ」

友「へぇ~」

神使「友さん知らなかったんですか?」

友「さすがに巫女舞の事は・・・」

神使「これ、覚えるの大変ですよね」


神様「この舞って、他に何か特殊な事ってある?」

巫女「そうですね・・・ 神事の時は三人で舞うんですが、本当は一人だけのようです」

神様「一人?」

巫女「はい。 ただ一人だけですと少し寂しいので三人に増やしたと聞いております」

神様「・・・・・・」


神使「何か分かりましたか?」

神様「巫女舞に関しては私より知識のある奴はいないと自負しているけど、こんな変な舞は初めてだな」


神使「ちなみに、これは何という舞なのですか?」

巫女「“長閑の舞”と申します」

神様「“のどかのまい”か・・・」

神使「聞いた事ありませんね」

神様「私も初耳だ」


友「お役に立てましたでしょうか?」

神様「最後に一つ巫女ちゃんにお願いがあるんだけど良い?」

巫女「?」

今週は更新できないかも
いっぱい投下したから許してネ


>612

友「でも彼女が巫女舞は彼女が一番上手ですから」



友「でも巫女舞は彼女が一番上手ですから」


今週はないのか
生きるのやめよかな

ドゴーン!!\,,(’ ⌒`;;)
   ,’ (;; (´・:;⌒)/ ←ココに>>622
 この辺→(;. (´⌒` ,;) )
    ((´:,(’ ,; ;’),`
  ∩∩
 /⌒ヽ)
 i  っT ならば僕の手で
 U U□



─── 夜・社務所


ガラガラ


巫女「お邪魔します」

友「おっ、ご苦労様」

巫女「」ペコリ

友「神ちゃんさんへの教授は終わった?」

巫女「私が知っている事は全て」

神使「あれ? 神様はまだ外ですか?」

巫女「それが・・・ もう少し練習したいと」

友「そりゃ随分と熱心だな」


神使「巫女舞に関しては神様なりの拘りがあるようですので」

友「へぇ~」


巫女「凄いんですね」

神使「あ~ たぶん自分の知らない巫女舞だったので興味津々なだけだと思いますから」

巫女「はぁ・・・」

神使「もっと言えば、自分の知らない巫女舞が存在しているという事が納得いかないのでしょう」

巫女「・・・・・・。 で、でも神ちゃんさまとても綺麗な舞で・・・ あんなに美しく舞える方、初めてお会いしました」

神使「神様は巫女舞に関しては神宮で一番お上手ですから」

巫女「通りで・・・」


友「さて、今日は遅いし巫女ちゃんは上がって良いよ?」

巫女「はい。 それではお先に失礼させて頂きます」ペコリ



─── 1時間後


ガラガラ


神様「ふへぇ~ 疲れた」トテトテ

神使「あっ、神様。 随分と熱心でしたね」

神様「ひっひっひっ」ニヤッ

神使「?」

神様「覚えてやったぜ!」

神使「覚えたって・・・ あの巫女舞をですか?」

神様「おうよ! 最初から最後までな!」


神使「あんな数字の羅列、この短時間で良く覚えきれましたね」

神様「まぁ私にかかればこのくらい朝飯前だって事!」

神使「さすが巫女舞に関しては敵無しですね・・・」

神様「私の知らない巫女舞は存在しない! これがこの世の理!」

神使「そうなんですか・・・」

神様「でもさすがに疲れたな」

神使「時間も遅いですし、お休みになりますか?」

神様「そうね・・・ でもその前に」トテトテ

神使「どちらへ?」


神様「寝る前にお花もりもり摘んでくる」

神使「・・・そうですか」


神様「それはもう、もりもりと!」

神使「分かりました・・・」


神様「信じられないくらい、もりも───」

神使「もう良いです。 あっ、社務所のお手洗いは友さんがお掃除中ですよ」

神様「まじで!? んじゃ外の方に行ってくるわ」トテトテ

神使「暗いので気をつけて下さいね」

神様「へいへい」ガラガラ



─── 数分後


ガラガラ


友「ふぅ」

神使「あっ友さん、掃除の方は終わったんですか?」

友「あぁ。 ・・・あれ? 神ちゃんさんは?」

神使「お手洗いの方へ」

友「でも、すれ違わなかったけど?」

神使「お掃除中と言ったら外のトイレに行くと」

友「・・・多分、本殿のトイレだよな」

神使「だと思いますが」


友「どうしよ」

神使「何か問題でも?」

友「あそこ、トイレって言っても一般には解放していないんだよ」

神使「え?」

友「一応本殿扱いだし。 あれでも重要文化財だから」

神使「連れ戻しましょうか?」

友「う~ん」

神使「出たばかりですからまだ間に合うかと思いますよ?」

友「いや、神に本殿使うなってのも失礼だろ」

神使「まぁ、そうですね・・・」



─── トイレ本殿


ギー


神様「うわ~ 古! 和式じゃん! しかも蓋付き!?」パカッ


チョロチョロ


神様「ん? 下に小川・・・ 用水路か? この時代に垂れ流し式って平安でもオマルだったぞ・・・」

神様「まぁいいや。 秘技! 袴を脱がずにトイレをする術!」ゴソゴソ


神様「さて、お花をもりもり摘みませう・・・ って、壁に何か書いてある」




 摘んだか



神様「摘んだか・・・ って、何を? あっ、取っ手がある」

神様「はは~ん、お花を摘んだ後に取っ手を引く。 中にちり紙が入ってるのかな?」ギィ


プシュー


神様「ウギャー! お尻に水が!! まだしてない! まだしてないよ!」ビクッ


プシュー


神様「真水のウォシュレットかよ! 冷てーよ!」ジタバタ



ミシミシ


神様「?」


バキバキ


神様「なるほど、床が腐っているのですね? そして暴れた私は床が抜け無残に落ちてしまうのですね? 分かりました」


バリバリ


神様「覚悟は出来ている! さぁ落とせるものなら落とすが良い!」



ドーン
ジャボン


神様「あ~れ~ 流されるぅ~」


バシャ バシャ



神様「行ってきま~す」



─── 社務所


友「なぁ、神ちゃんさんちょっと遅くないか?」

神使「きっとコーラでも買いに自販機まで行ったのでは?」

友「コーラ?」

神使「参道の入り口に自販機がありましたから、時間的にそろそろ帰ってくるかと」

友「そう・・・ なのか?」


ガラガラ


神様「たでーま~」

友「お~」

神使「あっ、やっぱりコーラ持ってますね。 ダメですよ神様、こんな時間にコーラだな・・・ ん・・・ て?」


友「神ちゃんさん! どうしたんです?」

神使「ビショビショじゃないですか! 雨でも降っているんですか?」


神様「トイレに落ちた」

神使・友「・・・・・・」


神様「いや~ 久々に焦ったわ」

友「落ちたって・・・ トイレの中にですか?」

神様「そうそう」

神使「それにしては、その・・・ 綺麗ですね」

神様「ん?」


友「確かに。 使っていないトイレでもさすがに落ちれば・・・ もっと、こう・・・」

神様「くみ取り便所じゃないよ? あのトイレ、下に人が入れるくらいの用水路が流れてるんだよ」

神使「用水路?」

神様「すんげー昔の仕組みだね、あれ」

友「そんな構造になっているんですか」

神様「え? 知らないの?」

友「あそこはトイレとしては使っていませんから」

神様「・・・・・・」


神使「一応本殿ですし、一般開放されていないそうなんです」

神様「あ~ それで床が腐っていたのかぁ~ なるほどね~」ハハハ

友「あははは」


神様「先に言えよ!」ゲシッ

神使「痛っ! え!? 私ですか?」スリスリ

神様「ったく・・・」


友「でも、本殿の下に用水路があるなんて初耳でした」

神使「随分と変な構造ですね」

神様「そうか、そう言う事か!」

神使「何がです?」

神様トイレに流されて分かったことがあるんだよ」

友「?」


神様「神社の入り口横に池があるの知ってる?」

友「あ~ 小宝池でしたっけ」

神様「そう、参道を挟んで左右にある小さな丸い池」

神使「その池がどうしたんですか?」

神様「私が流されて、たどり着いたのが池だったんだよ」

友「トイレ下にある用水路が池と繋がっているという事ですか?」

神様「両方の池に水が張ったとき、村が豊かになる」

神使「?」

神様「参道を掃除していた時じいさんから聞いたんだよ」

神使「両方の池に水・・・」

神様「そう。 今は片方しか池に水がないの」

友「そう言われれば」


神使「友さん、池の調査とかはやられていないんですか?」

友「一応、神池だしな。 この神社自体あまり調べたりとかそう言う事はしていないんだよ」

神様「きっと枯れた片方の池にも同じような仕組みがあるんじゃない?」

友「何かの原因で片方の用水路には水が流れていないと考えるのが普通ですよね」

神様「そう! きっとその用水路を見つけて水を流せば両方の池に水が!」

友「両方の池に水が張ると・・・」

神様「村が豊かになる」

友「それって・・・」

神様「財宝だよ」ニヤッ

友「神ちゃんさん!」

神様「友くん!」


友「」グッ!

神様「」グッ!


神使「・・・・・・友さんはいつから神様派になったんです?」


わかりにくいので境内見取り図くらいは・・・・・・
http://imgur.com/a/p4RKS

巫女さんが神ちゃんか?

ドゴーン!!\,,(’ ⌒`;;)
   ,’ (;; (´・:;⌒)/ ←ココに>>645
 この辺→(;. (´⌒` ,;) )
    ((´:,(’ ,; ;’),`
  ∩∩
 /⌒ヽ)
 i  っT 君も僕の手で
 U U□

   ドゴォォォォン!!
; '   ;
\,,(' ⌒`;;)
(;; (´・:;⌒)/
(;. (´⌒` ,;) )’
((´:,(’ ,; ;'),`
   ▲_∧
    (・ω・ ) みんな爆破っ!
   o┳o )
    □ J∪

自販機がすき


神様「よーし! それじゃぁ早速───」

神使「ダメです。 今日はもう遅いんですから」

神様「え~」

神使「盗人の監視役が盗人になってどうするんですか・・・」

神様「神社の物は私の物! 私が財宝をもらう権利があるの!」

神使「ないです」

神様「あるの!!」

神使「それでは、全国の神社の借金も神様の物という事で良いですか?」

神様「えっ!?」

神使「全部神様が引き取っていただけるんですね?」

神様「撤回。 神社の物は皆の物」


神使「ハァ・・・ まぁ、このまま無視しておくのもモヤモヤしますし明日調べてみましょう」

神様「よしっ! じゃぁ今日は寝る!」

神使「そんなビショビショで寝るんですか? シャワー浴びて着替えて下さい」

神様「ん」トテトテ


神使「パジャマ脱衣所に持っていきますから、ちゃんと着て下さいよ?」

神様「分かったよ」

神使「あとパンツもちゃんと履いて───」

神様「うるせーよ! 履くよ!! 私を全裸キャラにするなよ・・・」トテトテ

友「・・・・・・」



─── 翌日・朝


神様「はよ~」ムニャムニャ

神使「おはようございます、神様」

友「おはよ・・・う・・・・・・」

神様「ん? どったの友くん」

友「いえ、その・・・///」

神使「神様? パジャマどうされたんですか?」

神様「起きたら着てなかった」

神使「はい、廊下に落ちていましたから着て下さい」スッ

神様「お~」イソイソ

神使「上着とズボンが別々の場所にありましたよ?」

神様「たぶん、私のパジャマには付喪神が宿っているんだよ。 だから歩くんだよ」

神使「またそんな・・・ すいません友さん」

友「い、いや・・・」


神使「コンビニでおにぎり買ってきましたから」

神様「おにぎり飽きたな~」ゴソゴソ

神使「今日はいつもと違う具にしましたので」


神様「ねぇ、ツナマヨないよ?」

神使「聞いていました? いつもと違う具です」モグモグ

友「神使は分かってないよな~ ツナマヨを食べないと1日が始まらないって事を」

神使「友さんまで・・・ はい、神様は鮭です」

神様「これさぁ、本当に鮭なの? オレンジ色した糸くずじゃない?」

神使「友さんは昆布です」

友「・・・また微妙なものを」

神使「嫌なら朝食抜きです」

神様・友「!? 食べます!」


神使「それで、今日はどうされるんですか?」

神様「もちろん枯れた池に繋がる用水路探し」モグモグ

友「神ちゃんさんが流された用水路は地下を流れていたんですよね?」

神様「そうそう。 水量は多くなかったけど、ちょっと坂になっててツルツルーって」

神使「用水路の水はどこから来ているんですか?」

友「う~ん・・・ この辺に川なんて無いんだけどな」

神様「じいさんもそんな事言ってた」

友「あの池の水も地下から湧き出しているかと思ってた」

神使「用水路が繋がっているという事は、池に出口があるはずですよね」

友「そんなもの見た事無いんだけどな~」

神様「でも、私が流されてたどり着いた先は小宝池だったよ?」

神使「先に池の方に行ってみましょうか」

友「そうだな」



─── 小宝池(左)


神使「綺麗な神池ですね」

神様「でもトイレの出口~」

神使「・・・・・・」


友「ぱっと見、用水路の出口は見当たらないんだけどな~」キョロキョロ

神使「神様は本当にこの池に流れ着いたんですか?」

神様「嘘言ったって仕方ねーベ! 池から這い上がって自販機でコーラ買ったんだし」


友「あっ、おい神使あそこ見てみろ。 縁の所」

神使「木片がいっぱい・・・ 土手の土が少しめくれていますね」

友「もしかして・・・」テクテク

神使「ちょっと、友さん。 池に入るんですか?」

友「あぁ、膝下までしか深さはないし」



バシャバシャ


友「ん~」ゴソゴソ

神様「どう? なにか変なところある?」


友「この木片は・・・」

神使「?」


友「おい、これ見てみろ」


ギィー


神様・神使「!?」


友「用水路の出口だ」

神使「そんなところに扉が・・・」

友「内側からの圧で開いて押し出すタイプだな」

神使「水草や土が張り付いていて池の方からは分からないんですね」


友「この木片は神ちゃんさんが床を抜いた本殿の木だよ。 一緒に流されたんだろうな」

神様「わざとじゃないからね? 腐ってただけだから弁償はしないよ?」


神使「と言う事は、反対側の枯れた池にも同じ仕組みが・・・」

友「あぁ、見てみよう」テクテク



─── 小宝池(右)


友「あったぞ!」


ギィー


神様「用水路!」

神使「水は流れていませんね」


友「ギリギリ行けるな」

神使「まさか、中に入るんですか?」

友「行けるとこまで。 懐中電灯あるか?」

神使「えぇ」スッ

友「サンキュ、ちょっと見てくるわ」

神使「気をつけて下さいね」



─── 数分後


友「ふぅ~」

神使「あっ、友さん」

神様「どうだった? お宝山盛り?」

友「途中で扉があって進めないですね。 たぶん内側からじゃないと開かないと思います」

神使「池の用水路出口と同じ構造ですね・・・」

友「あぁ、どこかに用水路の起点があるはずだと思うんだけどな」

神様「もうさぁ、この参道全部掘り返しちゃおうよ」

神使「ダメに決まってるじゃないですか」

神様「茶摘み歌と良い、この仕掛けといい宝は間違いなくこの神社にある!」


神使「・・・う~ん」

神様「どったの?」

神使「いえ、何か引っかかるんです」

神様「?」

神使「茶摘み歌です」

友「何が引っかかるんだ?」

神使「確かに、フレーズを見るとこの神社と合致しているところは多いのですが・・・」

神様「なら良いじゃん」

神使「いえ、やはりおかしいと思います」

友「聞こうじゃないか」


神様「♪夏も近づく八十八夜
    野にも山にも若葉が茂る
    あれに見えるは茶摘みじゃないか
    茜(あかね)襷(だすき)に菅(すげ)の笠~ 」


神使「“あれに見えるは茶摘みじゃないか”って、思いっきり茶摘みと言っているんです」

神様「分かりやすくて良いじゃん」

神使「もし、茶摘み歌が埋蔵金のありかを示しているのであれば隠すはずです」

神様「マジで!?」

神使「神様が言ったんですよ? 歌詞をもじって秘密を記すのが常識だ、って」

神様「言ったっけ?」

神使「・・・・・・」


友「なるほど・・・ 確かに普通は隠すよな」

神使「はい、思いっきり場所を言ってしまっているんです」

神様「でも、茜・襷・菅の笠はこの神社じゃん」

神使「この神社の事をうたっているのであれば、その部分の歌詞は必要ないのでは?」

友「何か別の意味があると?」

神使「・・・・・・」

神様「え~ でもこの神社の事をうたっているのは間違いないと思うんだけどなぁ~」

神使「しかし隠す必要があるのであれば肝心の場所がすぐに分かっては意味ありません」

神様「だから神社名を変えたんじゃない?」

神使「歌に合わせて神社名を? 普通歌の方が合わせませんか?」

神様「まぁ、そうね」


神使「仮に歌の方に合わせて神社名を変えたとなると、その時に初めてこの歌が秘密の歌として効力を発揮します」

友「つまり、埋蔵金は茶摘み神社時代ではなく花摘み神社時代に出来上がったと?」

神使「いえ、時代的にそれはないとは思うのですが・・・ なにか引っかかるんですよね・・・」

友「この辺は特に民間信仰が強かったから、何か別の意味があるのかもな」

神使「民間信仰ですか・・・」


神様「あっ、だったら専門家に聞けば良いんじゃない?」

神使「専門家?」

神様「ほら、民俗学の第一人者に知り合いがいるじゃん」

神使「・・・まさか」



─── 翌日


村長「お久しぶりです」ペコリ

神様「おひさ~」

神使「ご無沙汰しております。 たぬ吉さんはお元気ですか?」

村長「はい、毎日ご立派にお務めを行っております」

神様「たぬきのお務めって何だよ・・・」


神使「友さん、ご紹介します。 こちら村長さんで“こわこわ神社”の宮司さんと、村の村長さんを兼任されています」

神様「兼、神宮の民俗学研究担当なのだ!」


友「はじめまして、花摘み神社の管理を任されております友と申します」

村長「ご丁寧にどうも。 しかし中々興味深い神社ですね」

神様「でしょ? で、早速で悪いんだけどさぁ~」

村長「私にお手伝いできる事があれば何なりと」

神使「実は村長さんのご意見を伺いたい事がありまして」

友「とりあえず社務所の方へ。 詳しくお話しいたします」



─── 社務所


村長「なるほど・・・」

神使「いかがでしょうか?」

村長「非常に興味深いお話しですね」

神様「これ間違いなく埋蔵金だよね!」

村長「茶摘み歌がこの神社の事をうたっているのは間違いないと思います」

神様「やっぱり? さすが私の推理力も大したもんだ!」カッカッカッ

神使「村長さんの考えをお聞かせ頂けないでしょうか?」

村長「まだ仮説ですが紐解いていって見ましょう。 まず、茶摘み歌1番の3節目を見て下さい」


神様「あれに見えるは~ 茶摘みぢやないか~♪」


村長「ありがとうございます」

神様「どういたしまして」ペコリ


村長「これは、茶摘み神社の事です」

神使「私達もそう思ったのですが・・・」

友「直球で場所をバラすような事をするのは変ではないかという結論に至りまして」

村長「そうですね。 厳密に言えばこの神社の事を指してる訳ではないと思います」

神様「え?」

神使「どういう事です?」


村長「隠語です」

神様「隠語?」

村長「1番の第1節に戻ります」


神様「夏も近づく~ 八十八夜~♪」


村長「どうも」

神様「いえいえ」ペコリ


村長「八十八。 これはお米ですね。 88歳が米寿と言われる所以でもあります」

神様「社務所の前に※印の石碑があるんだよ」

村長「先ほど私も見ました。 両隣には2つの石像がありますね」

友「はい」


村長「八十八夜に行われる巫女舞の祭事写真はありますか?」

神使「神宮の資料に確か・・・」ペラッ

村長「なるほど・・・ 見て下さい、石碑の位置を」

神様「あれ? 縦に並んでる」

神使「今は横並びですよね?」

友「あ~ 神事の時には左右の石碑を移動させて横位置から縦位置にするんです」

村長「理由はご存じですか?」

友「いいえ、伝承でそのようにと」

村長「ちなみにこの舞は何という名だかお分かりに?」

神様「長閑の舞」

村長「のどか・・・ なるほど」

神使「何か気になる事でも?」


村長「その前に、第2節に戻りましょう」


神様「野にも山にも~ 若葉が茂る~♪」


村長「恐れ入ります」

神様「なんのなんの」ペコリ


神使「茂る・・・」

村長「はい。 茂っているんです。 ボウボウと」

神様「ボウボウ?」

村長「はい、それはもうボウボウです」

神様「嫌だな村長~ ひ・わ・い!」

村長「はい、かなり卑猥ですね」

神様「?」


村長「1番の最後、第4節」


神様「茜だ───」

神使「あかねだすきに~ すげのかさ~♪」


神様「!?」ゲシッ ゲシッ ゲシッ

神使「痛い! 痛いです! すいません」

友「・・・・・・」


村長「茜は真っ赤ですね、それは血のように」

神使「・・・・・・はぁ」


村長「茜で染めたタスキ、昔は止血として使われてもいます」

友「・・・・・・まぁ」


村長「そして、笠。 丁度この社務所のように立派な形をしているんじゃないですかね? 太くて先が笠のようになって」

神様「・・・・・・ぁぅ///」


村長「まとめます」

村長「八十八夜にこの神社ではある神事があったはずです」

村長「その奇祭では男は裸。 もうボウボウと茂った立派で勇ましい若い男」

村長「そして、中央には3つの※印が付いたものが縦一列に、中央がメインでしょうな」

村長「茶摘み、これは茶入の事だと思います。 隠語で女性の大切な場所の事です」

村長「そして、そこがあかね色に染まる───」

神様「シャウエッセン!! もう良い! もう良いって分かったよ! 何だよそれ・・・///」


村長「きっと、この祭りの伝承を茶摘み歌に託したのでしょう」

友「なるほど、と言う事はあの石像も・・・」

村長「はい、神事化した際に女性と見立てたものだと思います」

神様「シャウエッセン!」

神使「随分と変わった神事なんですね・・・」


村長「似たような奇祭が別の村にもあります。 その地区の昔の初夜についての伝承です」

神様「え? 初夜!?」

神使「という事は婚礼に関わる儀式という事ですか?」

村長「はい、忌み祭でなく夫婦を誓うとても幸せで大切な神事です。 町の人に囲まれて行われるんです」

神様「なら良いけど・・・ って良くねーよ! なんでそんな衆人環視でやるんだよ! どんだけ見られたいの?」

村長「今とは価値観も違いますから。 村の習わしで、村から出た事のない民は抵抗すらなかったのでしょう」

神様「ちょっと待って? って事は埋蔵金は?」

神使「この歌の歌詞を見る限りでは埋蔵金の事は差していないと思います。 伝承歌ですから」

神様「うぅ~ 私の埋蔵金・・・」ガクッ

神使「神様の物ではありません」


村長「しかし、気になる事があります」

友「なんですか?」

村長「私も民俗学者として、神職として様々な神社を見てきましたが・・・ この花摘み神社の設計は明らかに変です」

神様「そう! トイレが本殿なんて変だよ!」

村長「この神社の設計者ですが、からくり技師だった可能性があるんです」

神様「からくり技師?」

村長「はい、彼は様々な山車のからくりを考案した天才で生前に1社だけ神社設計をしたと記録があるのです」

神使「それがこの神社だと言うんですか?」

村長「分かりません。 しかし、彼はこの村出身だったと考えられているんです」

友「だとすると、この神社を設計した可能性が高いですね」

神使「そう言えば、小宝池の用水路もトリックじみた感じの作りですよね」


神様「あっ、そう言えばトイレ本殿がウォシュレットだった」

神使・村長・友「え!?」

神様「何か取っ手引いたら水が勢いよく噴き出してきてビックリして飛び跳ねたから床が抜けて落ちたんだよ」

神使「友さん、本殿のトイレは改築や修繕などは行われているのですか?」

友「いや、重要文化財で勝手にはいじれないし出来た当時のままを維持しているはずだ」

神様「でも、あれウォシュレットだよ? 川の水で冷たかったけど」

村長「・・・からくりの可能性がありますね」

神使「と言う事は、この神社には何か別の隠された物があると言う事でしょうか?」


村長「・・・歌詞の2番です」

神様「そう言えば、茶摘み歌って2番があるね」

村長「はい。 この神社の別の秘密が2番に隠されているのではと」

神様「シャウエッセン!」


村長「歌詞の2番です」

神様「・・・・・・」

神使「あれ? 神様、歌わないんですか?」

神様「・・・知らない」ボソッ


友「日和(ひより)つづきの今日このごろを
  心のどかに摘みつつ歌ふ
  摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ
  摘まにゃ日本(にほん)の茶にならぬ」


村長「ありがとうございます」

神様「いえいえ」ペコリ

友「!?」


村長「先ほどのお話しの中で出てきた単語が入っています」

神様「ん?」

神使「のどか・・・」

村長「そうです」

神様「長閑(のどか)の舞!」


友「確かに・・・」

村長「関係がありそうですよね?」

神使「しかし、それ以外の言葉に思い当たる節が・・・」

村長「3節目の歌詞が気になります」

神使「摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ。 ですか?」


神様「摘む・・・ あっ!」

神使「どうされました?」

神様「摘んだか!」

神使「はい?」

神様「いや、取っ手の横に“摘んだか”って字が掘ってあったんだよ」

神使「取っ手ってウォシュレットの取っ手ですか?」

神様「うん」

村長「・・・・・・」

神使「何か関係があるんでしょうか?」


村長「再現してみましょう」

神様「トイレでお花摘む?」

村長「その前に歌詞の1番から順を追って再現しないとダメなような気がします」

神使「歌詞の1番って・・・」

友「さすがにそれは・・・」

神様「いくら私でも周りに人がいるとちょっと恥ずかしいなぁ~ ねぇ、神使君?」ポッ

神使「・・・・・・」

村長「いえ・・・ 行為は必要ありませんので・・・ と言いますか舞でないとダメだと思います」

神様「あぁ~ 舞だけで良いんだ、残念。 神使くんのフランクフルトは出番なしか」

友「フランク!? 神使、お前ってそんなに・・・」

神使「何言っているんですか友さん・・・」

神様「安心するんだ友くん、神使くんの普段はポークビッツだ。 フランクフルトになるのは朝起き───」

神使「やめてください!」

友「・・・・・・」


村長「えっと・・・ この辺りは最近お天気はどうでしたか?」

神使「え? お天気ですか?」

神様「快晴、ずっと良い天気だった」

村長「雨は降っていないんですね?」

友「はい、何か関係が?」

村長「“日より続きの”と歌詞にありますから、できるだけその状態が良いかと」

友「でしたら問題ありません。 取水制限が起こりそうなほど水不足です」


村長「それと、八十八夜の神事の“長閑の舞”が出来る方はおられますでしょうか」

友「巫女ちゃんを呼びましょうか?」

神様「いや、私が舞う」

神使「神様が?」

神様「巫女ちゃんに教えてもらったし」

神使「しかし、石畳の順番もありますよ?」

神様「私を誰だと思ってるわけ? 巫女舞に関しては誰にも負けないのだ!」フンスッ



─── 社務所前


村長「それでは、神事と同く再現してみましょう」

友「石像を動かします」

神使「手伝います」


ゴリゴリ ゴリゴリ


友「この並びが神事と同じものです」

神使「参道に向かって縦一列ですね」

村長「それでは神様、準備はよろしいでしょうか」

神様「おうよ! いつでもオッケー」

村長「ではお願いします」


神様「長閑の舞」ペコリ


♪~


友「!?」

神使「? どうされました?」

友「凄く綺麗な・・・ いや、優雅な舞だな・・・」

神使「神様は舞に関しては神宮一ですから」


♪~


友「毎年見ている巫女舞と同じとは思えない」

神使「ありがとうございます」



♪~


神様「・・・終わった。 ミスゼロ!」ヨシッ!


ガチャン
ギギギギ


神様「? 何この音」

神使「地下から聞こえますね」

村長「からくりが動き出したようです」


ギギ…


神様「止まった」

村長「第1段階クリアと言ったところでしょうか」


友「毎年舞を奉納しているのに、こんなの初めてだ」

村長「たぶん人数の問題でしょう」

神使「そう言えば、巫女さんも本当は1人で舞うものだと言っていましたね」

村長「3人で舞えば石畳を押していく順番が狂いますからね」


神様「さて、お次は~?」

村長「神様が見つけたウォシュレットのあるトイレですね」

神様「トイレ本殿だ!」タッタッタッ


友「元気だな・・・」

神使「目に¥マークが浮かんでいた気がしますが・・・」

村長「私達も行きましょう」タッタッタッ


友・神使(村長の目も!?)



─── トイレ本殿


ギィー


友「うわっ、これは・・・」

神使「神様、盛大に壊しましたね・・・」

友「修復できるのかな・・・」

神様「床が腐ってたの! 私のせいじゃないから弁償はしないからね?」


友「でも、本当に下に用水路があるんですね」

神使「水量はそれほど多くないようですが」


村長「神様、取っ手というのは?」

神様「あ~ 座らないと見えないんだよ」

村長「床がほとんど崩れていて座るのは難しいですね」

神様「両端にちょっとだけ床が残ってるし、私なら大丈夫かな」ヨイショ

神使「また落ちないで下さいね?」

神様「あった。 で、この取っ手を引けば良い?」

村長「・・・4回引いて下さい」

神様「4回?」

神使「なるほど“摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ”で摘むが4回」

神様「んじゃ、引くよ」



キコッ キコッ キコッ キコッ


一同「・・・・・・」

神様「何も起こらない、って言うかウォシュレットも動かな───」


ゴゴゴゴゴゴ


神様「ん? なにこの音」

神使「用水路の上流から聞こえる気がしますが」

村長「!? まずい! 神様、そこから離れて下さい!」

神様「え?」



ザザザザザー


神様「うわ! 水!! ぶばばば」

神様「あっ」ズルッ


ジャボン


神使「神様!」


ジャバ ジャバ


神様「あ~れ~ 流される~」


ジャバ ジャバ


神使「神様~!」


 神様「行ってきま~す」


友「神様が流された!」

村長「用水路はどこに繋がっているんです?」

神使「池です」

友「神社入り口の小宝池です」


村長「急ぎましょう」


タッタッタッ



─── 小宝池


神様「うへぇ~ また流されちゃったよ」ゲホッ

じいさん「・・・・・・」プルプル

神様「おっ、じいさん! また会いましたね! 今日も徘徊?」

じいさん「どうして・・・」

神様「?」


 神使「神様~!」タッタッタッ


神様「ん?」クルッ


神使「大丈夫ですか?」

神様「いや~ 地下の用水路が結構狭くてさぁ、あちこち体をぶつけて痛いの」


友「枯れ池に水が溜まってる!」

村長「先ほどのからくりはこれでしたか」

友「え?」

村長「おそらく、長閑の舞で作動したからくりで地下用水路のつなぎが変わったのでしょう」

神使「その後に、私達がトイレ本殿のからくりで水を流して枯れ池に水が流れたという事ですか?」

村長「そうだと思います」

友「じゃぁ、両方の池に水が溜まったという事は・・・」


神様「ねぇ、取りあえず私の心配しようよ。 早く引き上げて」


神使「あっ、すいません神様。 って・・・ 池の水が溢れ出してきましたが」

神様「へ?」

友「反対側の池からも水が溢れ出してる」


チョロチョロ


神使「どうしましょう。 水が参道まで」

村長「・・・・・・」

神使「村長さん?」


村長「見て下さい、参道まで溢れた水が社務所の方に向かって流れています」

友「本当だ・・・」


神様「これは・・・ フランクフルトの子宝原理!」

神使「フラ? なんですかそれ・・・」


村長「なるほど!」

神使・友(え!? なにが?)


村長「そう言う事でしたか! さすが神様!」

神様「褒めよ」


神使「すいません・・・ どういう意味でしょうか?」

村長「両方の丸池は小宝池、“子宝”です」

神様「きんたま!」

神使・友「・・・・・・」


村長「そこから出た水が参道を通り本殿に向かっています」

友「え~と・・・ それって・・・」

神使「左右の丸池、まっすぐ延びた参道・・・ まさか」

村長「はい、私には・・・ その・・・ “ナニ”に見える気がします」

神様「ちんぽこ!」


神使・友「・・・・・・」


村長「するとその先は」

神様「社務所だ! 社務所の屋根!」

友「なるほど、先っちょという事ですね?」

神使「先っちょって・・・」


神様「急ぐぞ! モタモタするな、極悪邪道腐れ犬ころ変態すけこま意識高い系ポークビッツアホ神使!」タッタッタッ

友「え!? 何それ? あだ名?」

神使「気にしないで下さい、と言うかどうしてそんな長い物を覚えていられるんですか・・・」


じいさん「・・・・・・」



─── 参道正面・社務所前


タッタッタッ


友「・・・・・・」

神使「どうされたんですか、友さん」

友「いや、あのお爺さんどこかで見た気がするんだよなぁ」

神使「参拝でよくいらっしゃる方ではないんですか?」

友「う~ん・・・」


 神様「早く来いよ犬ころ!」


神使「今行きますから~」



タッタッタッ


神使「お待たせしました」フー


神様「私より後に来るなんていい度胸してるね」

神使「あんな全速力の神様なんか追いつけるわけないじゃないですか・・・」

友「何かあったんですか?」


村長「見て下さい」

神使「池から流れ出た水が石畳の下に流れ込んでいますね」


ギギギ


村長「次のからくりが動き出したようです」


神様「次はどこだ?」キョロキョロ


ゴゴゴゴ


友「見ろ! 社務所の屋根が!」

村長「これは凄い・・・」

神様「先っちょが割れた! 宝か! いよいよ財宝の登場なのか!?」


プシュー


一同「!?」

神様「先っちょから水が・・・」



プシュー


神使・友「・・・・・・」

村長「これはまるで・・・ え~と・・・ 噴水のようですね」

神様「射せ───」

神使「神様? その先は言っちゃダメです」

神様「え~」


友「何と言いますか・・・」

神様「これでもか! って言うくらい卑猥な仕組み~ ウブな私は照れちゃうの~」クネクネ

一同「・・・・・・」


神様「それより、私の宝はどこ?」トテトテ

神使「神様、それ以上近づくと水が降って───」



ザバー


神様「うわ! ぶばばばば」

神使「あ~・・・」

村長「皆さん、社務所の屋根を見て下さい」


ピュッ ピュッ


神使「一定間隔で水が噴き出していますね・・・」

友「凄いこだわりだな・・・」


 女神さま・・・


一同「?」クルッ


じいさん「女神さまだ・・・」プルプル

友 (この人・・・ まさか・・・)


神使「失礼ですが、神様をご存じなのですか?」

村長「・・・神使さん、友さん、神様を見て下さい!」

友・神使「え?」クルッ


神様「も~ ビショビショだよ・・・」

一同「・・・・・・」


神様「ん? 何? 何でそんなに私を見てるの?」

神使「神様・・・」

友「なんと美しい・・・」


神様「え? 何々? 私のかわゆさにようやく皆気がついた?」

村長「それは・・・ 神様のお力ですか?」

神様「はい? まぁ私のかわゆさの事を言っているのであればそれは私の生まれ持った───」

神使「神様にかかった水が太陽に照らされて光り輝いて・・・ それと、後ろに丸い虹が後光のように・・・ 」

神様「え? 虹? 私には見えないけど」キョロキョロ


じいさん「このお社に再び女神さまが・・・」ドゲザ

神様「ちょ、何?」アタフタ


カチャ


神様「ん?」チラッ

村長(この音・・・ トイレ本殿から?)チラッ


神使「とてもお美しいですよ、神様」

神様「えっ? あ、うん。 その・・・ ありがと///」モジモジ


神使「神様、そんなにモジモジしてると足滑らせますから気をつけ───」

神様「あっ」ズルッ

神使「言ったそばから・・・」

神様「痛たたた・・・」

神使「・・・・・・」


ツルー


神様「ちょ、あれ!? 水に流される!」

一同「・・・・・・」


神様「行ってきま~す」ツルー


友「なぁ、神ちゃんさんはいつもあんな感じなのか?」

神使「この数日一緒にいてもまだ分かりませんか?」

友「いや、素なんだな・・・ あれは・・・」


 ズドン
 神様「ぐへっ!」


神使「・・・・・・」

友「あれ、絶対痛いぞ。 思いっきりコンクリの壁にぶつかったし」

神使「3分間動かなければ迎えに行きます」

友「・・・うん」


友「それより」キョロキョロ

神使「どうされたんです?」

友「じいさんがいない・・・」

神使「あれ? 先ほどまでいたんですが、どこに行ったのでしょう」キョロキョロ

友「・・・・・・」



─── 翌日・社務所


チュンチュン


神使「神様? Anmazonから荷物が届いていますが」

神様「おっ、サンキュ~ 昨日の夜に注文したのにもう来るなんて凄いね~」

神使「何を買ったんです?」

神様「お洋服」

神使「あまり無駄遣いしちゃダメですよ?」

神様「分かってるって」

神使「・・・・・・。 開けてみないんですか?」

神様「ん? あとで見るの」ニヒヒ

神使「?」


友「しかし、昨日は散々だったな」

神使「そうですね」

村長「警察や、役場の方がたくさん来ましたね」


神様「それよりこの社務所どうすんだよ」

神使「屋根が開いて空が丸見えになっちゃいましたね」

友「見事にぱっくり割れてるな」

村長「昨夜はとても綺麗な星が見えて良い眠りにつけました」

神様「私はたくさん蚊に刺されて、あちこち赤い膨らみが出来ました」

神使「それ、蚊ではなくダニじゃないですか?」

神様「え!? まじかよ・・・」ポリポリ


友「そうそう、役場から湧き出した水の簡易結果が朝一で届いてたよ」

村長「長年地下に溜まっていた水ですから衛生的に心配ですね」

神様「私たらふく飲んじゃってんだけど・・・」


友「飲料にもそのまま使えるくらい綺麗な水質だそなのでご安心を」

神様「よかった」ホッ

友「地下に石が敷き詰められていて濾過の役割を果たしていたのではという事です」


神使「神社から湧き出るお水なんて御利益高そうですね」

神様「御利益なんてねーよ」ポリポリ

神使「神様? そう言う神聖なものを扱うのが私達の役目ですよ?」

神様「へいへい。 でも、財宝がただの水だったなんてショックだわ~」

神使「この町にとっては水源はとても貴重な物です。 まさに財宝ですよ」

神様「そーですね。 有り難きお水さまー」ポリポリ


神使「?」ジー

神様「何だよ。 だからそんなに見つめられると照れちゃうって言ってんだろーがよ!」ゲシッ

神使「痛い! ・・・いえ、今回は随分と諦めが良いですね?」スリスリ

神様「へ!?」ギクッ

神使「いつもの神様だったら、諦めきれずにそこら辺を掘り返す位の事はすると思うのですが」

神様「神使くんさぁ、私をどういう目で見てるの?」

神使「まぁ、悪さしなければ良いんですが」

神様「そんな面倒くさいことしません~ ねぇ~村長さん」ポリポリ

村長「・・・・・・」


神使「?」


神様「さて、私は奥の部屋でちょっと二度寝してくるね~」スクッ

神使「神様?」

神様「え? 何? 悪さなんかしないよ?」

神使「荷物、持って行かなくて良いんですか?」

神様「お~ 忘れてた。 サンキュー」ヨイショ


神使「神様?」

神使「今度は何だよ・・・」

神使「足、掻きすぎじゃないんですか?」

神様「うおっ! 血が出てる!」

神使「はい」スッ

神様「ギンカン・・・ まさか、この状態で足に塗れと?」

神使「耐えて下さい」ニコッ

神様「・・・・・・」


友(・・・鬼だ)



─── 深夜・トイレ本殿前


覆面A「間違いないな」

覆面B「はい」


覆面A「どうやって中に入るかだな」

覆面B「・・・・・・」

覆面A「鍬を持ってきておいて良かった。 これで一気に!」


 待ちなさい!


覆面A・B「!?」クルッ

神使「そこまでです。 神聖なお社で何をしているんですか!」

覆面A「チッ、逃げるぞ!」


友「そう簡単には逃がさないぞ」ガシッ

覆面A「ぎゃ! 放せ!」ジタバタ

友「あれ? この声・・・」

神使「やはり・・・」ハァ

覆面A「うぐっ!」


神使「・・・忍び装束、良くお似合いですね神様?」

覆面A「な、何を言っている! 私は格好いい忍者だ!」

神使「友さん、覆面をはいで下さい」

友「覆面を取りますね神様?」


スポッ


神様「こんばんは。 友くんってよく見るとイケメンだよね」


神使「神様?」

神様「いやいや、神使くんの方がイケメンだって」

神使「そういう事を言っているのではありません」


友「という事は、もう1人は・・・」

村長「申し訳けありません・・・」スポッ

友「どうして村長さんまで・・・」

村長「神様がお忍びでどうしても調べたい事があると」


神使「何かこの本殿にあるんですね?」

神様「知らない」プイッ

神使「正直に話すか、今後コーラと牡蠣禁止の罰どちらが良いですか?」

神様「実は、昨日このトイレ本殿からからくりが動いた音がしたので見に来ました」

神使「音?」


友「どうしてお忍びで・・・」

神使「粗方、財宝があると睨んだ神様が独り占めしようと私達に内緒で来たのでしょう」

神様「うっ・・・」ギクッ


神使「しかしその忍び装束はどこから・・・ まさか、今朝届いたAnmazonからの荷物って・・・」

神様「雰囲気が大事だと思いまして。 やっぱり忍者の格好かなぁと思い購入させて頂きました」

神使「いくら使ったんです?」

神様「二着で3万です」

神使「二着って・・・ 村長さんの分もですか?」

神様「1人じゃ恥ずか・・・ きっと村長も着たいかなぁと思って」

村長「え!?」

神使「無駄使いにもほどがあります」

神様「はい、すいません」

友「・・・・・・」


神使「全く、神様はすぐ暴走する癖を直さないとダメですよ?」

神様「善処します」


友「しかし、何のからくりが動いたんですか?」

村長「中を見ないと何とも」

神使「なにも鍬で壁を壊さなくても、明日明るくなってから調査すれば良いのでは?」

神様「急ぎたいんだよ。 本当にわずかだけど中から神力を感じるんだ」

神使「え!? 中に神がおられるという事ですか?」

神様「分かんない。 今ここに来て初めて感じた位の微妙な神力だから」

神使「今までは感じなかったんですか?」

神様「うん、たぶんからくりが動いた事が原因だと思うんだけど」


神使「でしたら急がないと行けませんね」

友「どうする? 1枚ずつ壁の木を剥がしていくか?」

神使「もし神がいるのでしたらそんな悠長な事をしているわけにはいきませんね」ガシッ

友「おい神使、まさか鍬で壁を!?」

神使「皆さん離れていて下さい」ソレッ


ドンッ!


神様「キャ~、神使さん格好いい~」ヒュー

友「重要文化財が・・・」


ボロボロッ


神使「これは!?」


神様「何々? 宝?」ヒョコッ

村長「小さな部屋のようですね」

神使「トイレの奥にこんな隠し部屋があったんですね・・・」


友「見て下さい。 下に降りる階段があります」


神使「神様どうですか? 神力は感じます?」

神様「う~ん・・・ 本当にわずかだけど階段の下の方から感じる」

村長「ご神体に入った神力とは違うのですか?」

神様「神体の神力と神の神力って微妙に違うんだよ。 この感じは神体の神力じゃない」

神使「神が幽閉されて弱っているのかも知れませんね」

神様「・・・・・・」


神使「行きましょう」


テクテク



─── 地下


テクテク


友「真っ暗だな」

神使「神様、足下気をつけて下さいね」

神様「分かって── うぎゃ!」ズルッ


コロコロ


神様「グヘッ!」ドンッ

神使「・・・・・・大丈夫ですか?」

神様「痛い・・・ 痛い! 痛ーい!!」ジタバタ

村長「壁・・・ いや、扉のようですね」

神使「開けてみましょう」

友「手伝うよ」


神使・友「せーの!」


ギーッ


一同「!?」

神様「なんだよ・・・ ここ・・・」

村長「これは・・・ 一面花畑ですね・・・」

友「なんで地下なのに明るいんだ?」

神使「電気ではないようですが、これもからくりなのでしょうか」


村長「見て下さい、部屋の中央に誰か倒れています」

神様「!?」タッタッタッ

神使「あっ、神様」



神様「おい、しっかりしろ!」ユサユサ


神使「女性の方・・・ 友さん、ご存じですか?」

友「いいや。 ただこの格好・・・」

村長「はい。 今では使われておりませんが、過去に使用されていた上級神様のご装束です」

神使「上級神様!? 神様、ご存じの方ですか?」


神様「うそだ・・・ どうしてこんな所に・・・」

神使「神様?」



?「良くこの場所までたどり着けたのぉ」テクテク



一同「!?」クルッ


神使「おじいさん?」

友「貴方・・・ もしかして?」

じいさん「5年前まで花摘み神社の宮司をしておった」

神使「花摘み神社の?」

友「それで・・・ どこかで見覚えがあると思いました」


神様「どうして・・・ どうして“ミズハ”がここに・・・」

神使「ミズハ?」

村長「まさか、ミズハノメ様!?」


じいさん「そうじゃ。 彼女はミズハ、この社の主神をしておった」

神使「どうして主神様がこんな所に・・・ 神様、ミズハ様の具合は?」

神様「神力がほとんど残っていないな。 かろうじて存在できるギリギリのレベルだ」

村長「ミズハノメ様といえば、数百年前に神籍抹消された水の女神様ですね」

友「神籍抹消?」


神様「行方不明で神力確認が取れなくなったんだ。 でもミズハはこの社の主神じゃなかったはず」

じいさん「400年ほど前、この地に立ち寄られたミズハは村が水不足に悩んでいる事を知ってやってきたんじゃ」

神様「ミズハがここに?」

じいさん「」コクリ


じいさん「ミズハは、村の者と力を合わせ水不足を解消しようと尽力された」

じいさん「じゃが・・・ あろうことかミズハはこの村の男と恋に落ちたんじゃ」

村長「神と人の恋ですか・・・」

神使「・・・・・・」


友「その男というのは?」

じいさん「とある・・・ からくり技師じゃ」

一同「!?」


じいさん「人が神と恋に落ちるなど許されん。 男は村人達によってその命を閉じたそうじゃ」

神使「そんな・・・」

じいさん「じゃがのぉ、ミズハは自身の神力を使いからくり技師に再び生を与えおった」

神使「生き返らせたという事ですか? そんな神力を使ったらミズハ様は・・・」

じいさん「そうじゃな。 ミズハはそれ以降目覚める事はなかった」

神様「・・・・・・」


じいさん「からくり技師はミズハのために社を建て直し、再び目覚めるその日が来るまでこの場所でかくまったんじゃよ」

村長「見る限りミズハノメ様を囲んでいるのはアカネのようですが」

じいさん「彼女は花が好きでのぉ、特にアカネが大好きじゃった」

村長「・・・・・・」


じいさん「からくり技師は神社の名を花摘み神社に改め、彼女の残した神聖な水を年に一度村へ引く仕組みと神事を作った」

友「どうしてそんな回りくどい事を?」

じいさん「彼女を・・・ ミズハを忘れないため」

友「でしたら何も年に一度でなくても・・・」

村長「いえ、神事化すれば年に一度必ず行われ伝承も言い伝えとして後生に残ります」

神使「有り難みもその方が増しますからね」

友「なるほどな・・・ でも、こんな奇妙な仕掛けをこしらえる必要はなかったんじゃ?」

じいさん「彼女は面白い事が大好きでな、からくり技師のヘンテコな仕組みをいつも喜んで見てくれた」


神使「からくり技師さんのその後の事は残っているのですか?」

じいさん「・・・彼はからくりを捨て、宮司としてこの社を守る事を決めたそうじゃ」

神使「神職に・・・」


じいさん「じゃが・・・ 何年経ってもミズハは目覚める事はなかった」

じいさん「神事も次第に改変され神水を出す事もなくなった・・・ いや、必要が無くなったと言った方が良いかのぉ」

友「そんな大切な伝承なのにどうして・・・」

村長「時代の流れです。 こればかりは当事者にしか分かりませんが、どうしようもない事も多々あったのでしょう」

じいさん「いや、男は挫折してしまったんじゃよ・・・ 何百年待ってもミズハは・・・」

神使(何百年?)


じいさん「お社へ来る参拝者も減り、埋蔵金目当ての盗賊しか訪れん有様・・・ 不甲斐ない」

じいさん「宮司は社の管理を他社へ任せ退く事にした。 そして、ひっそりとこの社の行く末を見守る事にしたんじゃ」

神使「ちょっと待って下さい。 それって最近の出来事では?」


村長「あなたが、そのからくり技師なのですね?」

神使・友「え!?」


友「ちょっと待って下さい。 それじゃ宮司さんは・・・」

じいさん「どうしてじゃろうな? いくら経っても死ぬ事ができんのじゃ」

神使「まさか、ミズハ様の神力でおじいさんは・・・」

神様「いや、じいさんは間違いなく人だ。 神力を全く感じない」

神使「そんな・・・ ではどうして・・・」

じいさん「バチが当たったんじゃろうな。 人が神に恋などした罰じゃ」

神様「・・・・・・」


じいさん「もうこの社には足を踏み入れない、そう誓ったはずじゃったが・・・ からくりが動いているのを見てのぉ・・・」

神使「おじいさん・・・」


神様「からくり技師は、今でもミズハの事を想っているか?」

じいさん「一日も忘れた事などない。 毎日・・・ 日に何度も神社の入り口から・・・」


神様「再びミズハが生を取り戻すことが出来るとしたら?」

じいさん「許されるのであれば・・・ 死ぬまで彼女を守り・・・ 通したい・・・」


神様「代わりにからくり技師に残酷な罰が下るとしてもか?」

じいさん「彼女のためであれば喜んで受ける」


神様「ミズハノメノ神に誓えるか?」

じいさん「もちろんじゃ」


神様「・・・・・・」

神使「神様・・・」


神様「残念だけど、今の状態のミズハを再び目覚めさせるのは正一位の神でも不可能だ」

じいさん「・・・・・・」

神様「ただ・・・ じいさん、アンタついてるな」

じいさん「?」

神様「あんたは私にジュースを奢ってくれた。 トクペだったけど・・・」


神様「神は人からもらった恩は、その者の願いを成就させるのが勤めだ。 神は人なしで存在できないからな」

神使「神様・・・」

神様「喜べ。 お前が願った神は神宮最高神であり、この国の神の頂点に立つ女神だ」

じいさん「!?」

友「さ、最高神様!?」


神様「私はそこら辺の神とはひと味違うぞ?」ニヤッ


神様「我が神使よ」

神使「はい」フカブカ

神様「神力を・・・ 少し使っても良いだろうか」

神使「私に断りを入れる必要などないと思いますが?」

神様「いや、私の神力はお前に渡すものだ。 自由に使えるような代物ではないと思っている」

神使「・・・・・・。 ミズハ様のためにぜひお使い下さい」ニコッ

神様「ありがとう。 ミズハは私にとっても大切な存在だ、親友のために少しだけ使わせてもらう」


神様「それに・・・ 私の神力解放の予行練習にも丁度良いしな。 いざお前に渡すとなったときに鈍っていたら格好もつかないし」

神使「神様の格好いいお姿をぜひ見せて下さい」

神様「分かった。 よく見ていろよ!」

神使「はい!」



神様「皆、私から少し離れていてくれ」

一同「」スタスタ


神様「これからここで行われる事は他言無用で頼みたい。 それと、事が済むまで言葉を慎んで欲しい」

一同「畏まりました」フカブカ



神様「我、神力を解放す」


ピカー キラキラ


一同「!?」

友(すごい・・・)

村長(なんという荘厳なお姿・・・)

神使(これが本当の神様・・・ 最高神様・・・)



キラキラ


神様「ミズハノメノ神よ、我が願いを聞き答えよ」

ミズハ「・・・・・・」


神様「汝に神力を与えん。 神としてその役を勤めよ」


ポワポワポワ


ミズハ「ん・・・」モソモソ

じいさん「!」



神様「おい、ミズハ」ユサユサ

ミズハ「はい!」バッ


神様「おはよう」

ミズハ「神ちゃん様・・・?」


神様「起きられるか?」

ミズハ「はい・・・ あの・・・ どうして神ちゃん様がここに?」

神様「私より、そっちの男を見て驚け」

ミズハ「殿方?」キョロキョロ


じいさん「・・・ミズハ」

ミズハ「技師・・・様・・・? 技師様!」

じいさん「ミズハ・・・ うっ・・・ うぅぅ」ヘナヘナ

ミズハ「そう言えば私、さっき技師様を生き返らせるために全神力を使って・・・」

神様「今、お前に新しく神力入れたんだよ」

ミズハ「そうだったのですか・・・ 申し訳ございません、ご迷惑をおかけしたみたいで」フカブカ

神様「本当だよ、折角神力たっぷり貯めておいたのに」ハァ

ミズハ「でも、神ちゃん様とてもご立派なお姿ですね。 久しぶりにそのお姿を拝見しました」

神様「うるさい。 神力封印!」シューン

ミズハ「あっ、お戻りに・・・」


神様「私をいじるより、そこで泣き崩れているじいさんを何とかしろや」

ミズハ「そうでございますね」スタスタ


じいさん「ミズハ・・・」

ミズハ「私にとっては先ほどまでご一緒におりましたが・・・ だいぶお待たせさせてしまったようで」

じいさん「うっ・・・ うっ・・・」

ミズハ「またお目にかかれて嬉しゅうございます。 技師様」ギュッ

じいさん「お帰り・・・ ミズハ・・・」ギュッ


友「神使・・・ ウッ・・・ 神使~・・・ ウッ・・・」ユサユサ

神使「友さん、気持ちは分かりますが・・・ あの・・・ あまり揺らさないで下さい」


神様「ハァ・・・ ちかれた」トテトテ

村長「お疲れ様です、最高神様」フカブカ

神様「それ、やめて?」


神使「神様?」テクテク

神様「あ?」

神使「とてもお美しかったです」

神様「お、おう・・・」

神使「・・・・・・」

神様「何々? 神使くんったら私を惚れ直しちゃった?」ウリウリ

神使「はい、こんなに美しくてご立派で素敵な女神様が私のお嫁様だなんて今でも信じられません」

神様「はぅっ///」


友「は!?」

村長「え!?」

ミズハ「お嫁さん!?」

神使「あっ・・・ いえ・・・ その~・・・」


神様「そう! 私と神使くんは結婚して仲睦まじい夫婦なのです! ドドン!!」フンスッ

一同「・・・・・・」

神使「神様、私が言うのも何ですがあまり大っぴらに言わない方が・・・」アタフタ


友「神使・・・ お前、奥手だと思っていたのに神を奥さんにするなんてそんな大胆な事を・・・ しかも最高神様と・・・」

村長「これはこれは・・・」


ミズハ「神ちゃん様! あの・・・ 神と神使は結婚しても・・・ その・・・ 許されるのでしょうか?」

神様「ダメなんて言う規則ないし。 それに愛し合ってるんだも~ん///」クネクネ

ミズハ「で、では・・・ 神と人もその・・・ 結婚は許されるのでしょうか?」

神様「あ?」

ミズハ「・・・申し訳ありません、やはり禁忌でございますよね」シュン

神様「問題ないだろ、そんな事一々聞くなよ」

ミズハ「えっ?」


友「いいの?」クルッ

神使「私に聞かないで下さい友さん・・・」


神様「人、神使、神はみんな一緒に遊んで恋をし生きることができる」

神使「だ、そうです」

友「そうなんだ。 はじめて聞いた」



ミズハ「神ちゃん様・・・ そうでございますか。 それは、うれしいお言葉です///」ニコッ


神様「そんな事よりミズハ~」クネクネ

ミズハ「何でございましょう?」

神様「いきなりで悪いんだけど~ 財宝とかってない? 金銀財宝とかあったらさぁ~ くれ」

神使「神様・・・」

ミズハ「財宝ですか?」

神様「何て言うのかなぁ~ その~ お駄賃が欲しいわけよ」クネクネ

ミズハ「失礼を承知の上ではございますが、お金位しか・・・」

神様「お金!? 全然オッケー、むしろ喜んで!」

ミズハ「でも・・・ 神ちゃん様は莫大な役料の支給があると思いますので、私が持っているお金など大した額では・・・」

神様「いつの話してんだよ・・・ お金なんかもうスッカラカンよ」

ミズハ「はぁ・・・ 技師様、私のお金はまだございますでしょうか?」

じいさん「ミズハの眠っていた下に隠し扉があるはずじゃ」

ミズハ「ここでございますか?」ゴソゴソ

神様「手伝う、手伝うよ~ どれどれ」ヨイショ



パカッ


神様「?」

神使「うわっ! 小判じゃないですか!」

村長「慶長小判がこんなに!?」

ミズハ「たぶん1000両くらいだと思うのですが、これでもよろしいでしょうか?」

一同「せんりょう!?」

神様「・・・・・・」

村長「1000両といったら今の価値で───」

神様「え~ 昔のお金じゃ~ん」

ミズハ「え!?」

神様「こんな古いの今は使えないよ」

ミズハ「えっ、古い!? でも先日幕府から預かった物なのですが・・・」

一同(幕府って・・・)


ミズハ「あの・・・ 私、どのくらい眠っていたのでしょうか?」

神様「400年」

ミズハ「・・・・・・はい?」

じいさん「400年じゃよ」

ミズハ「・・・・・・江戸?」

神様「平成」

ミズハ「へいせい?」

神様「江戸、明治、大正、昭和、平成!」

ミズハ「・・・・・・家康公は?」

神様「誰それ?」

ミズハ「・・・・・・」

神使「いや、神様それはさすがにどうかと思いますが・・・」


ミズハ「あ、あの・・・ 私、外に出るのが少し怖い気が・・・」

神様「この時代は凄いんだぜ? 江戸から京まで二刻かかんないで行けるんだぜ?」

ミズハ「!?」

神様「1町の鉄の塊が人乗せて空飛んでるんだぜ?」ニヤッ

ミズハ「そ、そんな! 人が空を!?」ブルブル

神使「神様、そんなにいじめちゃダメですよ」グイッ

神様「うおっぷっ!」

じいさん「大丈夫じゃよ。 ワシがついている」

ミズハ「技師さま・・・///」ウルウル


神様「イチャついてんじゃねーよ! ねぇ~ 神使くん、私達もイチャつこう?」クネクネ

神使「・・・さて、皆さん取りあえず戻りましょうか」

神様「んも~ 照れちゃって、可愛いぞ!」ツンツン

神使「神様?」

神様「へいへい」


神様「あっ、そうだ。 神使くんさぁ、後でその小判を神宮に買い取らせる手続きしておいて」

神使「小判をですか?」

神様「そう。 んで、その金で花摘み神社の修繕を」

ミズハ・じいさん「え!?」


神様「じいさん、悪いけどあんたにはミズハを助けた代わりの罰を与えないといけない」

じいさん「・・・・・・」

ミズハ「神ちゃん様・・・ 技師様にも深いわけがあって・・・ せめて情状酌量の余地を───」

神様「あんた、この神社の宮司職に再び就く事」

じいさん・ミズハ「!?」


神様「それと、ミズハ」

ミズハ「は、はい」

神様「上級神のくせに元の担当神社ほったらかしにした罪は重いぞ」

ミズハ「心得ております・・・ どのような罰でもお受けいたします」

神様「よし。 それじゃ、これからこの社の主神として赴任する事」

ミズハ「え?」

神様「まぁ、花摘み神社を2人でよろしく立て直す事だな」

ミズハ「それが、罰でございますか?」

神様「そう。 このご時世、神社運営は大変だぞ~? まぁ頑張るこったな」

ミズハ「あ、ありがとうございます、神ちゃん様・・・」フカブカ

じいさん「ありがとうございます、最高神様」フカブカ

神様「罰を与えただけだし、お礼言われる事じゃないし」プイッ

神使「フフッ、では上に戻りましょう」ニコッ


じいさん「ミズハ、手を」スッ

ミズハ「はい、技師様///」スッ


神様「・・・・・・」ジー

神使「神様?」

神様「え!? あっ、何でもない」


神使「・・・神様も手を」スッ

神様「神使・・・///」スッ


神使「1人で歩くとまた転ぶんですから、しっかり手を握って下さいよ」

神様「あ?」

神使「傷の手当て、薬代だってバカにならないんですから気をつけて下さいね」

神様「!」ゲシッ ゲシッ

神使「痛い! って、うわっ!!」ズルッ

神様「ちょ、お前私まで!!」ズルッ


コロコロ


神使・神様「グヘッ!」ドンッ!


友「仲がよろしい事で・・・」



─── 数日後・社務所


神使「神様、神宮から小判の買い取り金の一部が入金されました」

神様「お~ おいくら万円?」

神使「・・・こちらが明細です」

神様「ん~ 一億円か・・・ まぁこんなもんだろうな」

神使「換金は全部で20億らしいです」」

神様「は!? 20億だぁ!? いやいやおかしいだろ。 私の感覚だと1億くらいだけど」

神使「やはり小判の価値をご存じだったのですね」

神様「そりゃ使ってたんだし、いくら位の物かは分かるよ」

神使「当時の価値で言えば神様の仰った額でしょうけど、現代では慶長小判は大変希少で1枚あたりの取引額がとても高いんです」

神様「そうなの!?」


神使「希少価値がついてプレミアがついているというわけです」

神様「マジかよ・・・ え? じゃぁ残りの19億は?」

神使「残りは全て“ミズハ基金”の設立にまわされるそうです」

神様「なんだよ、ミズハ基金って・・・」

神使「おじいさん・・・ いえ、宮司さんから残りは他の神社の修繕にまわして欲しいと神宮へ連絡があったそうです」

神様「太っ腹すぎだろ・・・」

神使「1億でも結構立派なお社が改築できると思いますから」

神様「まぁ、ミズハも一応は上級神だな」


神使「ちなみに400年前、地方で神社建立を行うための1000両が行方知れずになった記録があるようです」

神様「間違いなくこの金やね」

神使「当時発行元の幕府と受け取り側の神宮の間でかなり揉めたそうで、結局幕府側がもう一度1000両を神宮に納めたと」

神様「よくあの堅物幕府が金出したな」

神使「当時、神宮の女神様がダダをこねて幕府に乗り込み暴れまくったと記録に書かれているそうですが」ジー

神様「そう・・・ すごい女神だね・・・ うん」プイッ


神使「一応、神宮からこのお金の出所は明らかにしないように通達がありました」

神様「そうね、あんまり探らない方が良いかもね」


神使「でも神様、小判の価値を知っていてよくネコババしようと思わなかったですね・・・」

神様「そんな高額なプレミアがついているなんて思わなかったし・・・ それに」

神使「それに?」

神様「神勅出しただろ。 “財宝が出たら全部寄付する”って」

神使「覚えておられたのですか・・・」

神様「自分で出した神勅くらい覚えてるっつーの」フンッ

神使「さすがですね」

神様「まぁ、つい言っちゃっただけだけど・・・ 今はもの凄く後悔しています」

神使「やはり…」


神様「あぁ~あ、1両だけでも貰っておけば良かったなぁ~」

神使「もらわないところが格好いいんじゃないですか」

神様「そうだけどさぁ・・・ まぁ、私はあんまりお金には興味ないし宵越しの分だけあれば十分だけど」

神使「それは困ります。 もう少し計画性を持ってお金を貯めて下さい」

神様「へいへい、善処しますよ」


神使「それと・・・」

神様「ん?」



ガラガラ


棟梁「よう! また会ったな」

神様「・・・・・・」

棟梁「神宮からこの神社を作り直せと言われてな」

神様「まぁ、そうなるよな」

神使「はい」


棟梁「施主さんはどこだい?」

神使「ご案内します」



─── 参道


神様「お~い! ミズハ~」トテトテ


ミズハ「あっ、神ちゃん様」

神様「どこ行ってたんだ?」

ミズハ「技師様と外に散歩へ」

神使「お着物、とてもお似合いですね」

ミズハ「お洋服というのがどうしても違和感がありまして・・・」

神様「馴れれば私みたいにかわゆい格好も出来るようになるって」

ミズハ「その・・・ 肌が露出しすぎではないのでしょうか?」

神使「Tシャツ短パンは可愛い格好とは言えないと思うのですが・・・」

神様「え~? そんな事ないと思うんだけどなぁ」


神使「外の方は馴れましたか?」

ミズハ「まだ少し怖いですね。 あまりにも変わりすぎて・・・」

じいさん「ゆっくりでいい」

ミズハ「はい、技師様///」


神様「じいさんは、この神社の神域内にとどまっている限りは年をとったりしないけど、外出ると時間が流れるから気をつけろよ」

じいさん「はい」

ミズハ「申し訳ありません、私が下手な願掛けをしてしまったせいで・・・」

じいさん「こうしてまたお前と同じ時間を過ごせるんじゃ、気にするでない」

ミズハ「技師様はお優しいですね///」ポッ


神様「人前でイチャつくのはその位にして頂けませんか?」

ミズハ「あっ、申し訳ございません・・・ あれ? お隣の方は?」

神様「あ~ 紹介するわ。 神宮お抱えの棟梁、花摘み神社の建て直しをするために来てもらった」


ミズハ「本当にこのお社を建て直してもよろしいのですか!?」

神使「さすがに社務所もぱっくり割れて住めませんし・・・」

神様「ちゃんとした本殿も必要だしな」

棟梁「最高の神社にしてやるぜ」

ミズハ「ありがとうございます」ペコリ


棟梁「何かご希望はありますかい?」

ミズハ「あの・・・ その・・・」モジノジ

神様「一度作ったら建て替えなんか出来ないんだから、言うなら今のうちだぞ」

ミズハ「そ、そうですよね・・・ 実は、参道の両端は本殿まで茜と噴水に囲まれた感じにしたいと・・・」

棟梁「花と噴水が参道に・・・ これはまた面白い」

じいさん「地下にからくりの水路が通っておるから再利用できるはずじゃ」

棟梁「からくり?」

神様「あ~、このじいさんからくり技師なんだよ」

棟梁「ほぉ~」ニヤッ

神使(まずい雰囲気ですね・・・)


ミズハ「あと・・・ 欲を言えば、参拝に来た方達に綺麗な水の音をお聞かせするような仕組みを・・・」

じいさん「手水舎がししおどしになっているとか良いかもしれんのぉ」

棟梁「水琴窟とかどうじゃ?」

じいさん「なるほど・・・ 一つ面白い手法を考えついたぞ」

棟梁「決まりだな。 少し予算オーバーしそうだが」

神使(あ・・・ その言葉は・・・)

ミズハ「棟梁様と技師様でお好きに作って下さいませ! 私、それが見てみたいです!」キラキラ

棟梁「任せろ、全力でいくぜ! 仕掛け満載の最高の水の女神を祀る神社にしてやる!」

ミズハ「うれしゅうございます!」キャッキャッ

神様・神使「・・・・・・」


神使「ミズハ様?」

ミズハ「はい?」

神使「神専用神社建て替えローンは100年までですから注意して下さいね・・・」

ミズハ「?」



 タッタッタッ
 お~い 神使~


神使「友さん」

友「ミズハ様、綺麗なお着物ですね」

ミズハ「ありがとうございます」ニコッ


神使「手続きの方はいかがですか?」

友「あぁ、神宮に出す書類の申請は全部終わったよ」

じいさん「手を煩わせてすまなかったのぉ」

友「お気になさらず。 後日うちの神職達を来させますので引き継ぎはその時にでも」

神使「ご苦労様でした」


友「そうだ、神ちゃんさん」

神様「ん?」

友「うちの立派天満宮の主神様が神様とお会いになりたいと言っているのですが」

神様「良いけど、友くんの神社って主神は誰なの?」

友「オカマ神さまです」

神様「・・・・・・」

神使「神様?」


神様「うん。 私、忙しいから会うのはまた今度で。 じゃ!」トテトテ

友「あっ、神ちゃんさん! お願いします、会ってあげて下さい!」スタスタ


神様「ヤダよ! オカマだろ? 絶対イヤだ!!」ダダダタ

友「逃げないで下さい! オカマ様は我々男性の者にもとても優しくスキンシップしてくれる優しい神ですから~」

神様「あいつ男だろーが! ヤベーよそれ!」

友「大丈夫です~ 若い女性にもとても優しく、特に小さな女の子には愛を持って接してくれますから~」

神様「もっとヤベーよ!」

友「待って下さ~い」

神様「帰れ! とっとと帰れ~!!」


ダダダダ



神使「騒がしくてすいません・・・」

ミズハ「そんな事ありません。 神ちゃん様はいつの時代でも楽しい方ですね」クスクス

じいさん「とても立派な神さまですな」

神使「そう言って頂けるとありがたいです」

ミズハ「ふふっ」クスクス

神使「?」

ミズハ「申し訳けありません。 お二人はとても良い仲なのですね」

神使「・・・///」

じいさん「大切にするんじゃぞ」

神使「はい」


神使「あの、おじいさん・・・ いえ、宮司様に伺いたい事があるのですが」

じいさん「ワシにか?」

神使「どうして本殿がその・・・ トイレなのですか?」

じいさん「ワシはアレをトイレや本殿などとして作ってはいないぞ?」

神使「え?」

じいさん「ワシがあまりにも大切にしていたもんじゃから誰かが本殿などと・・・ 建屋の形もトイレのような感じじゃったからな」

神使「噂が一人歩きしてしまったのですね・・・」

じいさん「あの小屋はからくりの制御と地下への通路を繋ぐために建てたものじゃ。 中には、たくさんの茜が植えられていたんじゃよ」

神使「茜が?」

じいさん「そうじゃ。 その茜を摘んでいくと、からくりが動作する取っ手が現れる仕組みじゃったんだ」


神使「しかし取っ手のある部屋には茜はありませんでしたが・・・」

じいさん「日光を反射して送り届ける仕掛けが壊れて、中の茜が枯れてしまっていたようじゃ」

神使「では、茶摘み歌の“摘めよ摘め摘め”というのは・・・」

じいさん「中の茜を摘めという事じゃ」

神使「そうだったのですか・・・」

じいさん「しかし、あの小屋のからくりは壊れかけていたんじゃがよく動いたのぉ」

神使「神様が床を壊したり取っ手を何度も動かしたので・・・」

じいさん「奇跡じゃな」


ミズハ「奇跡ではありませんよ」

じいさん・神使「?」


ミズハ「神ちゃん様が私達を助けてくれたんです」

じいさん「そうじゃな。 池で会ったのも偶然ではないのだろうな」


神使「では、このお社の本殿は・・・」

じいさん「ミズハが目覚めてから建てるつもりじゃった。 神が不在の神社に本殿は建てられん」

神使「そうでしたか・・・」


じいさん「これで、ようやく・・・ 本殿が建てられる」

ミズハ「お待たせして申し訳ございません」フカブカ

じいさん「二人で力を合わせて立派な神社を作っていこう」

ミズハ「はい」ニコッ

神使「私達に出来る事があれば何なりと言って下さい」

じいさん「恩に着る」


ミズハ「それより、はじめて聞く言葉なのですがトイレというのは何でしょう? 私が眠っていた小屋の事ですよね?」

じいさん・神使「・・・・・・」

ミズハ「?」

神使「その・・・ え~と・・・」

じいさん「なくてはならないとても大切な場所じゃ・・・ のぉ?」

神使「はい。 とても大切な場所です」アセアセ

ミズハ「そうでございますか。 私はそのような大切な場所で眠っていたのですね」

じいさん・神使「・・・・・・」



 ギャーーー!!


一同「?」クルッ



ダダダダ


神様「なんでお前がここに居るんだよ!!」

オカマ神「いや~ん 神ちゃんに会いたくてぇ~ 久しぶりなんだからたっぷりお話ししましょうよ~」ウフン

神様「うるせーよ! 帰れよ! こっち来んなよ!!」

オカマ神「駆け足は負けないぞ~」ウフン

神様「早えー! ちょ、待って! イヤ! 助けて~!!」

オカマ神「私の勝ち~」ピョーン

神様「ひゃーーー!!」



神使「うるさくてすいません・・・」

ミズハ「ははは・・・」



ギャーーー! 喰われる~!!!






神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
#16「お花を摘みに」 ―END

何とか摘んだかな?
ありがとうございました

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


─── 廃神社・本殿


神様「・・・・・・暇だな~」ゴロゴロ

神様「お~い、神使く~ん」


シーン


神様「・・・・・・。 スマホでテレビでも見るか」ポチッ


ザー


神様「ですよね~」グテッ


神様「暇すぎ~! 誰か遊んで~!!」


~あらすじ


神様「私は神様! 神宮に籍を置く立派でかわゆい理想の女神!」

狐神「ぷっ! どこがかわゆいって? どこが理想だって?」ケラケラ

神様「・・・・・・」イラッ


【#17】


─── 少し前


テクテク


神様「おい~ まだかよ~」

神使「神宮アプリだとこの辺に廃神社があるみたいなんですが・・・」キョロキョロ

神様「も~歩けないって~」

神使「ですから一緒に行きませんか? って聞いたじゃないですか・・・」

神様「何で私が神使会に行く必要あるんだよ」

神使「別に会議に出席なさらずとも、宿にいれば良いのでは・・・」

神様「宿って神宮付属宿舎だろ? いかねーよ、そんな所」


神使「しかしこんな田舎・・・ せめて都会までは一緒に行けば良いと思うのですが」

神様「だって~ バスと電車で2時間もかかるじゃん」

神使「すでに田舎道を2時間は歩いているのですが・・・」

神様「地図で見たら近かったんだけどなぁ~」

神使「ここまで来たら仕方ありません。 見つけるまで探しましょう」

神様「もう、ここで野宿でも良いかな・・・」



─── 30分後


神使「あっ、神様見て下さい。 正面の小さい山の上」

神様「鳥居! やったー! 神社発見!」

神使「間違いありません、地図に載っている神社のようです」

神様「神社を見てこんなに嬉しいなんて初めてだよ」

神使「それは関係者としてどうかと思いますが・・・」

神様「早く行こうぜ~」タッタッタッ

神使「あっ、待って下さい~」



─── 廃神社


神使「廃神社にしては意外と綺麗ですね」

神様「小さいけど本殿はあるし良いね~。由緒とかは?」

神使「データベースには特に詳しい事は書かれてはいないようですが、八幡宮のようですね」

神様「まさか、長官くんリストの要注意神社とかじゃないだろうな」

神使「いいえ、ここはリストにも記載はございません」

神様「良かった。 んじゃ、私ここでお留守番してる」

神使「本当に一人で大丈夫ですか?」

神様「神使くん? こう見えて私は昔、一人で旅をしていたのだよ?」

神使「そうですね。 分かりました、ではこれをどうぞ」ドサッ


神様「重! なにこの袋」

神使「食料です。 二週間は持つと思いますので」

神様「え!? 二週間?」

神使「はい、合宿もありますから。 昨日言いましたよね?」

神様「・・・・・・そ、そうね」

神使「では、何かあれば電話下さい」

神様「あっ、うん」

神使「それでは行って参ります」ペコリ

神様「ぁ・・・ いってらっしゃい・・・」フリフリ


────
───
──



─── 廃神社・本殿


神様「なんだよ、二日位かと思ってたのに。 こんな所で二週間もどうすんだよ」モグモグ

神様「はぁ~・・・ 神使君と別れて早1時間。 すでにバナナは全部食べてしまった・・・」ポイッ


神様「どうやって暇潰すかなぁ~」ゴロゴロ


ゴンッ


神様「痛っ!」


ゴロッ


神様「この神社の神体か。 ん~ 暇だしちょっと覗いてみるか」


神様「・・・・・・。 たまには神使くんに買ってもらった祭儀服でも着て神さましちゃう?」


シュルシュル


神様「うん、良いね~ かわゆい」

神様「すげー、本物の神さまみたい」


神様「それでは、神ちゃんの成就の儀スタートゥ!」


ポワポワ


神様「う~ん・・・」



バンッ


神様「!?」クルッ

村人A「ん? お前、こんな所でなにやってんだ?」

神様「やだなぁ、誰もない本殿でやる事なんて言ったら一つしかないじゃんよ~」

村人B「まぐわい・・・」ゴクリ

神様「違うわ!」

村人A「何だ? このバナナの皮の量・・・ あんた何日住んでんだ?」

神様「1時間ほど前から」

村人B「たった1時間でこんなに散らかしたのか・・・」


村人A「この村の者じゃないな? おい、取りあえず縛っておけ」

村人B「おう」スタスタ

神様「やっぱり縄で縛られるのですね?」


ギシギシ


村人B「変な格好しやがって。 ほら大人しくしてろ、服が破けるぞ」

神様「おい。 私を痛めつけるのは別に良いが、この服に少しでも傷を付けたらタダじゃおかないぞ」キッ

村人B「はぁ?」

神様「理解できないか? この先まともな生き方が出来ると思うな、という意味だ」ギロッ

村人B「!?」ゾクッ

神様「それと変な服じゃない、祭儀服だ。 失礼だぞ」

村人B「あ、あぁ・・・ 分かった。 すまない」


ギシギシ


神様「あっ、でも縛るんですね・・・」

次は10月かな?



─── 数分後


村人A「で? こんな所でなにやってたんだ?」

神様「それはこっちの台詞! ここは神社の本殿だろ、関係者以外立ち入り禁止だぞ」

村人C「ここは村の集会場なんだよ」

神様「は? 神宮管轄の神社じゃないの?」

村人A「こんな山奥の田舎神社に参拝者なんか来るわけないだろ?」

神様「うん」

村人A「かといって放置していたら神社は崩れ落ちて本当の廃墟になる」

神様「うん」

村人A「人がいれば神社も廃墟にならない」

神様「うん」

村人A「ここで会合を開いて定期的に人が来れば神社は守られるわけだ」

神様「なるほど」フム


村人A「Win-Winだと思わないか?」

神様「思う」

村人A「だろ?」

神様「神社を維持して頂きありがとうございます。 神宮に変わってお礼をいたします」ペコリ


村人B「あんた、神宮の人なのか?」

神様「まぁ、遠からず近からず・・・ 一応神宮に籍はある」

村人B「籍?」

村人A「俺たち、これから村の会合をここで開きたいんだけど」

神様「ん~ まぁ良いけど。 私も一応ここにいるよ? 本殿以外いるとこないし」

村人A「分かった。 ただ会合の邪魔だけはしないでくれ」

神様「うん」

村人A「よし、みんな入った入った」


ゾロゾロ


村人A「それじゃ、会合を始める」


ペッコン


村人A「先週、役場から町営バス廃止の通達があった」

村人達「バスが廃止!?」


ペッコン ペッコン


村人A「1日に平均2人しか乗降客がいないというのが致命的なんだと」

村人B「鉄道の駅も廃止にるって噂もあるんだが・・・」

村人C「一つ先の駅は大きなロータリーまで作ってるのになぁ」

村人A「あっちは、去年ゴルフクラブが出来ただろ? 好調なんだとよ」


ペッコン


村人B「くそう・・・ 一つ前の集落は近所にイヤンモールが出来て賑わってるっていうのに・・・」

村人C「この集落もいよいよ終わりかもな」

村人A「うちも何か人が来るようなものを作れば良いんだよ!」

村人B「それ、先月も言ってた。 先々月も、ここ何年かずっと言っている気がする」

村人C「そうそう。 この村に何があるんだよ・・・ 野生の動物がうろついているだけじゃないか」


ペッコン


村人達「・・・・・・」


ペッコン ペッコン ペッコン ペッコン


村人A「・・・なぁ」

神様「ミー?」


村人A「さっきからペッコンペッコンうるさいんだけど・・・」

神様「いいでしょ、ビードロ」ペッコン

村人A「良くないし。 気が散るだけだから」

神様「どこも田舎は大変だよね~」ペッコン

村人A「勝手に会合に参加しないでくれ・・・」


神様「そこの端っこに座っている少女は参加しないの?」ペッコン

少女「!?」

村人達「・・・・・・」


村人A「あぁ~ 彼女は・・・ なぁ」

村人B「そうそう。 コン子はいいんだよ」

コン子「・・・・・・」シュン

神様「ふぅ~ん」ペッコン



─── 会合終了・本殿外


村人B「いや~ 次回の会合までに何か策を考えておかないとなぁ~」

村人C「そうだなぁ~」

ゾロゾロ


コン子「・・・・・・」トボトボ

 お~い!

コン子「?」クルッ


神様「初めまして、私は神ちゃん」

コン子「は、はじめまして・・・」ペコリ

神様「ちょっとお話ししたいんだけど良い?」

コン子「あっ・・・ でも私、家に帰らないと・・・」

神様「歩きながらでも良いから」

コン子「・・・・・・」コクリ



─── 農道


神様「コン子ちゃんで良いのかな?」トテトテ

コン子「はい」テクテク

神様「生まれはこの村?」

コン子「・・・そうです」

神様「ご両親も?」

コン子「・・・・・・」

神様「あんまり村の人と良い関係じゃない感じだったけど」

コン子「・・・・・・」


神様「」クンクン

コン子「!? ちょ、急にどうしたんですか!?」

神様「ごめんごめん」

コン子「あ、あの・・・ 私の家そこですから///」

神様「そう」ニコッ

コン子「し、失礼します」ペコリ


タッタッタッ



神様「・・・・・・」



─── 翌日・朝


神様「しかし本当何もないな~」トテトテ

神様「この道のどこがメインストリートなんだよ・・・ 店どころか家すらねぇじゃん」

神様「どっかに食える物でも生えてないかなぁ~」キョロキョロ


 ?「お利口さんだねヨシヨシ」


神様「ん? この声・・・」コソコソ


 コン子「山から出てきちゃダメよ? 後でご飯持ってくるからね」


神様「・・・・・・」ジーッ


村人A「コン子! お前こんな所で何を・・・ こいつ、またキツネに餌付けしやがって!」

コン子「!?」

村人A「おい皆! コン子がまたキツネを呼んでるぞ!」

コン子「違うんです! この子達は悪さするために出てきたんじゃな───」

村人A「どけっ!」ドンッ

コン子「キャッ!」ドサッ


村人「猟銃持ってきたぞ」タッタッタッ

コン子「やめて! やめて下さい! この子達はまだ子供なんです!」

村人A「うるさい! おい、逃げないうちに早く猟銃で───」


神様「何やってんの?」トテトテ

村人達「!?」


神様「あれ~ 猟銃? まさかキツネを撃つつもり?」

村人A「だ、だったら何だ」

神様「ここ公道だよ? 許可は?」

村人A「うっ・・・」

神様「大丈夫だよ。 私がコン子ちゃんにキツネを見せて欲しいって頼んでただけだから」

村人A「あんたが?」

神様「コンクリートジャングルで荒んだ暮らしをしている私は中々キツネを見る機会なんかないからね~」

村人達「・・・・・・」

神様「ダメ?」

村人A「程々にしておけよ、おい帰るぞ」スタスタ



村人達「全く、本当にキツネに取り憑かれてるんじゃないのか? あの子」

村人達「気持ち悪いったらありゃしない」

ゾロゾロ


コン子「・・・・・・」

神様「大丈夫?」

コン子「ありがとうございます」ペコリ

神様「コン子ちゃん、強いね」

コン子「え?」


神様「この村、君みたいな子は居づらいんじゃない?」

コン子「・・・・・・」

神様「いつから人の姿に?」

コン子「!!」

神様「心配しないで、私は君みたいな子をいっぱい知っているから」ニコッ



─── 神社・本殿


神様「自己紹介がまだだったね」

コン子「確か、神宮の方と・・・」

神様「神宮、内宮神籍の神様。 一応、神として女神なんかをやらせてもらっています」ペコリ

コン子「神宮の女神さま!?」

神様「いや~ そんな“かわゆい女神さま”だなんて言われると照れちゃうなぁ~」クネクネ

コン子「・・・・・・」

神様「?」

コン子「あっ、すいません。 神さまが本当にいるだなんて・・・」

神様「驚いた?」

コン子「」コクッ

神様「コン子ちゃんが、昔はキツネだったって事は見て分かった」

狐子「!?」


神様「いつから人の姿に?」

コン子「・・・覚えていなくて」

神様「コン子ちゃんの周りに人の姿になったキツネは他にいる?」

コン子「」フルフル

神様「じゃぁ、ずっと一人?」

コン子「」コクン

神様「そっか・・・ ずっと一人でキツネたちを守って面倒を見てるの?」

コン子「あの子達は、人と仲良くしたいだけなんです・・・ でも、村の方達から見ればただの・・・」

神様「農作物を荒らす憎い存在」

コン子「あの子達が畑を荒らした事なんて一度もありません!」

神様「・・・・・・」

コン子「あっ、すいません・・・ 大声を出してしまって」


神様「これ、何か知ってる?」コトッ

コン子「それは・・・ 確かこの神社のご神体」

神様「そう、神体には参拝に来た人の願いが記録されるんだよ」

コン子「願いが?」

神様「どうでも良いような願いが大半だけど、この中に無視できない大きな願いを2つ見つけたんだ」

コン子「大きな・・・ 願い・・・」

神様「一つは村の人みんなが思ってお願いをしている事」

コン子「みんな・・・ 村のことですか?」

神様「昨日も会合で話してたけど、みんなこの村が好きなんだね」

コン子「はい。 みなさんこの村を愛していると思います」


神様「そして、もう一つはここ数十年に渡って毎日記録されているお願い」

コン子「・・・・・・」

神様「この2つのお願いを見てしまった以上、私はこれを叶える義務がある」

コン子「え?」

神様「まぁ、一つ目の願いは何てことはないけど問題はもう一つの方かな」

コン子「・・・・・・」

神様「神は人の願いを叶えるために存在する。 残念ながらもう一つは人ではない者の願いだ」

コン子「・・・そう ・・・ですか」

神様「他の神なら残念ながら成就する事は出来ない。 でも~ 私には出来る」

コン子「!?」

神様「その代わり、それ相応の対価は付く事になるけど」

コン子「対価・・・ でも私、その・・・ お金などは全く持っていなくて・・・」

神様「コン子ちゃんはどうやって暮らしているの?」


コン子「村の畑のお手伝いをしたりしながら・・・」

神様「でも、それだけじゃ暮らしていくの大変じゃない? キツネたちの世話もしているんでしょ?」

コン子「月に一度、町に出てストラップを卸してます」

神様「ストラップ?」

コン子「これです」スッ

神様「お~ かわゆい。 キツネの尻尾みたい」

コン子「あの子達の抜け毛を使って・・・ 動物園などで売ってもらっているんです」

神様「なるほど。 まさに自給自足ってわけだ」

コン子「でも、抜け毛も売り物に使えるのはわずかしかなくて・・・」

神様「へ~」

コン子「なので、毎月の生活だけでほとんどお金を使ってしまって」

神様「大丈夫、お金なんかいらないよ。 対価・・・ いや、代償はコン子ちゃんのこれからの人生」

コン子「私の人生?」


神様「コン子、其方の今後の人生を捨ててでも願いを叶えたいか?」

コン子「もし・・・ もし、あの子達が安心してこの村で暮らせるようになるなら私はどうなっても!」

神様「本当か?」

コン子「はい!」

神様「分かった。 其方の願い、この神ちゃんが叶えて進ぜよう」

コン子「あ、ありがとうございます」フカブカ

神様「んじゃ、2つとも一遍に叶えちゃいますか」

コン子「え?」

神様「その前に~ コン子ちゃんにちょっとだけお願いがあるんだけど~」

コン子「私に出来る事でしたら」

神様「本当に?」

コン子「・・・どのような事でしょうか?」

神様「ちょっと、言いにくいんだけど~」クネクネ

コン子「?」


神様「その~ お耳をチョコンと出して欲しいなぁ~ って」

コン子「耳?」

神様「そう、キツネのお耳を頭にチョコンて」

コン子「はぁ・・・」ニョキ

神様「!?」

コン子「これで良いでしょうか?」

神様「ぁ・・・ あぁ・・・」ワナワナ

コン子「?」

神様「辛抱たまらん」ピョン

コン子「え!? ちょ・・・」

神様「きゃわいい~!」アムアム

コン子「ぁっ、そんな耳をハムハムされると・・・」ヘナヘナ

神様「ちょー可愛い!! コン子ちゃんは私のものだ~!!」アムアム

コン子「はぅ///」ヘナヘナ



─── 30分後


神様「先ほどは我を忘れてしまい、大変失礼いたしました」ドゲザ

コン子「い、いえ・・・ 随分と長く我を忘れてしまっていましたね・・・」


神様「私からのお願いというのは、明日ここに村の人を呼んでもらえないかと」

コン子「村の方達をですか?」

神様「そう、夕方頃がいいかな」

コン子「・・・分かりました」

神様「コン子ちゃんは、その前にここに来てくれる?」

コン子「はい」

神様「あっ、それとキツネたちをすぐに呼べるように待機させておくことは出来る?」

コン子「はぁ、大丈夫ですが」

神様「よし、じゃぁ明日!」



─── 翌日・本殿


神様「犬ころのヤツ、缶詰おいてくのは良いけど缶切りがねーよ・・・」ポイッ


トントン


神様「お、来たか。 どうぞ~」


ギィ


狐神「・・・・・・」

神様「おせーよ」

狐神「遠い! 遠すぎ!!」

神様「だから言ったじゃんよ、始発で来いって」

狐神「始発よ! っていうか・・・ あんた、何でこんなに散らかってんのよ」

神様「堅い事言うなって、まぁ上がれや」


狐神「はい、これ」ドサッ

神様「お~ こんなに沢山」ゴソゴソ

狐神「重かったんだから。 でも、祭儀服なんて何に使うのよ」

神様「お前、結構良いヤツ持ってんじゃん」

狐神「一応体裁ってもんがあるし、それなりにお金は掛けてるつもり」

神様「おっ、これ良いね~」バサッ

狐神「さすが目の付け所が良いわね。 それは最近拵えたお気に入りなの」

神様「そう。 んじゃこれくれ」

狐神「・・・・・・は?」

神様「ん? これ頂戴って言ったの」

狐神「冗談じゃないわよ! あんた人の話聞いてたの?」

神様「え~ くれよ~」

狐神「それだけはダメ!」

神様「まぁ、お前はこの祭儀服を渡さなければならない状況にならなくなるから後でも良いや」

狐神「はぁ? あんた・・・ 私に何させるつもり?」



トントン


神様「お、主役も到着したようだ」

狐神「主役?」


ギィー


コン子「お待たせしました」

神様「ナイスタイミング」

狐神「・・・・・・」

コン子「あっ、お客様でしたか」


狐神「ねぇ・・・ 神ちゃん?」

神様「なに?」

コン子「説明してくれる?」


神様「こちらは、コン子ちゃん」

コン子「コン子と申します」ペコリ

神様「」ニコッ

狐神「終わりかよ! 説明になってない!」ムキー

神様「これ、コン子ちゃんの先輩で従一位の狐神」

コン子「狐神!?」

狐神「正一位、狐神。 あと、ちゃんと様を付けなさい」

コン子「す、すいません! 狐神様!」

神様「ん? 正一位だったっけ?」

狐神「位が上がったの」ニヤッ

神様「・・・マジかよ」


狐神「これで正真正銘、稲荷のトップってわけよ」フフン

神様「今度、お祝いに大好きな油揚げ食い切れないほど送りつけてやるよ」チッ

狐神「油揚げなんか好きじゃないし。 あんたが変なデマ流すから同族一同迷惑してんだけど・・・」

神様「まぁ位なんてどうでも良いけど。 さて、お互い紹介も終わったところで」

狐神「終わってない! ちゃんと説明しなさいよ!」


神様「コン子ちゃん、キツネたちは呼んである?」

狐子「はい、神社の裏にいます」

狐神「キツネ!?」

神様「沢山いるぞ~」

狐神「!?」

神様「会いたい?」ニヤッ

狐神「そりゃ~ まぁ・・・ 都会にはあまりいないし・・・ たまには・・・」ソワソワ

神様「コン子ちゃん、ちょっとだけ中に入れてもらっても良い?」

コン子「はい、呼んで参ります」テクテク



─── 数分後


狐神「あ~ かわいい~」ワシャワシャ

キューン キューン

狐神「お前、べっぴんさんだねぇ~ 私のキツネ時代にそっくりよ」デレデレ



神様「なんだよ、あの気持ち悪いヤツは・・・」

コン子「みんなとても楽しそうです」

神様「そうなの?」

コン子「あまり人とふれあえる機会なんてないですから」

神様「おい狐神、あんまり可愛いからって持って帰るなよ」

狐神「そんな事しないわよ。 この子達はここでコン子ちゃんと一緒に暮らしたいって言っているし」

コン子「・・・///」


神様「それなんだけどさぁ~ ちょっと狐神の力を借りたいなぁ~って」

狐神「私の?」

神様「実はコン子ちゃんを含め、このキツネたちが村から迫害されているんだよ」

狐神「あ? この子達が?」ギロッ

神様「そう。 “迫害”されてんだよ」

狐神「分かった。 この村を呪えば良いのね? 滅ぼせば良いのね?」

コン子「!?」

神様「違うって。 お前のちんけな悪戯なんかじゃ何の解決にもなんねーよ」

狐神「ちんけ言うな!」

神様「村の奴らもこの集落を守るためにちょっと過敏になっているだけなんだよ」

狐神「なるほどね。 それで私に何をしろと?」

神様「それなんだけどさぁ~」ズイッ

狐神「何よ。 顔近いって」

神様「この・・・・・・ で~・・・・・・ ちょっとだけ・・・・・・」ゴニョゴニョ

狐神「はぁ!?」


神様「良い案でしょ?」

狐神「それ、マジで言ってんの?」

神様「マジ」

狐神「・・・・・・」ジー

コン子「?」


狐子「あんた、責任とれんの?」

神様「何バカな事言ってんだよ。 お前が責任を取るんだよ」

狐神「・・・・・・」


神様「このかわゆい子達は何?」

狐神「キツネ」


神様「コン子ちゃんは?」

狐神「・・・キツネ」


神様「お前は?」

狐神「・・・・・・キツネ」


神様「この神社は?」

狐神「稲荷・・・ じゃない! 八幡でしょ!」

神様「そんなの今日から稲荷にしておけば良いじゃん」

狐神「あんた・・・ そんな勝手な・・・」

神様「この神社、由緒がないみたいだし。 稲荷の勢力拡大、みたいな?」

狐神「勘弁してよ・・・」ハァ


神様「狐神ったら、同族想いだしその祭儀服をかわゆい後輩にあげちゃうんだろなぁ~」チラッ

狐神「・・・・・・」

神様「先輩がかわゆい後輩へ餞として上げちゃうんだろうなぁ~ 優しいなぁ~」チラッ

狐神「分かったわよ。 はい、これ貴方にあげる」ドサッ

コン子「え!? 私にですか?」

狐神「これから大変なこともあるだろうけど頑張りなさい」

コン子「?」

狐神「ん? ねぇ、神ちゃん?」

神様「あ?」

狐神「コン子ちゃんは、その・・・ これからのことを知っているの?」

神様「今から説明する」

狐神「ちょっと・・・ 順番が逆でしょ・・・」


神様「コン子」

コン子「はい」

神様「ちょっと、こっちに来て座りなさい」

コン子「はい」スタスタ


チョコン


神様「狐神、ちょっと神力もらうぞ」

狐神「え!? 私の力使うの!?」

神様「他に誰がいるんだよ。 その為にお前を呼んだんだから」

狐神「勘弁してよ・・・」

神様「も~ うだうだ言っていないで協力しろよ」


狐神「その前に、コン子ちゃんにきちんと説明しなさいよ」

神様「面倒くさいな~」

狐神「説明くらい最低限のことでしょ」

神様「分かったよ。 コン子、これからお前の人生をもらい受ける」

コン子「代償・・・ ですね」

神様「そうだ」

コン子「覚悟は出来ています。 ひと思いに!」

神様「そんじゃ狐神、ちょっと神力もらうぞ」

狐神「も~ あんまり持って行かないでよね・・・」

神様「んじゃ、二人とも私の手を握って」

狐神「ん」ニギ

コン子「・・・・・・」ニギ



ポワポワ


コン子(暖かい・・・)

狐神(辛い・・・)


神様「はい、オッケー」

コン子「?」

狐神「うへぇ~ ダルい・・・」グテッ


神様「どんな感じ?」

コン子「なにか・・・ 不思議な気分です」

神様「これでコン子ちゃんの代償は頂戴した」

コン子「今のでですか?」


ガヤガヤ


神様「外が騒がしいな」

コン子「そろそろ夕方ですし、皆さんが集まりだしたのでは?」

神様「まぁ、頃合いだな」


狐神「う~ しんどい・・・」グテッ

神様「おい、コックス。 私は外で村人の相手してくるからコン子ちゃんに祭儀服着せて準備しておけ」

狐神「私が着させるの?」

神様「他にそんな変な服の着方なんか知っているヤツいねーよ」

狐神「変な服言うな!」

神様「それとコン子ちゃん」

コン子「はい」

神様「それ着たら、何匹か横にキツネを従えて扉の前に立ってて」

コン子「え!?」

神様「さて、神ちゃんプロデュースショーでも始めますか!」



─── 境内


ガヤガヤ


神様「皆の者、待たせたのぉ」トテトテ

村人A「あんたは・・・」

村人B「俺たちはコン子に呼ばれたんだが」

神様「私がコン子ちゃんに言付けを頼んだんだよ」

村人A「俺たちを呼び出して何の用だ?」

神様「この村のこと、それからコン子のことを少し」

村人B「よそ者には関係ない」

村人達「そうだそうだ!」


神様「そんな事を言って良いのかな?」ニヤッ

村人A「どういう意味だ?」

神様「この村を観光客がたくさん来る有名な村へと変えてやろう」

村人A「はぁ? 何をバカなことを」

村人B「アンタのようなガキにそんな事できるわけ無いだろ!」

神様「私の力を甘く見ているようだな」

村人A「お前みたいな小さなガキに何が出来るんだ?」

神様「村人A!!」

村人A「!?」

神様「娘さんの大切にしていた“ほそ末さん”ストラップを壊したようだな。 代わりは見つかったか?」ニヤッ

村人A「何故それを・・・」


村人B「ほそ末さんって何だ?」

神様「村人B!!」

村人B「!?」

神様「収穫した人参の選別、SサイズをMサイズにしているのがバレないと良いな?」ニヤッ

村人B「な、何故それを・・・」

村人C「お前、そんな事してたのかよ・・・」

神様「村人C!!」

村人C「!?」

神様「イヤンモールの受付の子には告白できたか?」ニヤッ

村人C「どうしてそれを・・・ 誰にも言っていないのに・・・」

神様「誰にも言ってない? じゃぁなんで私は知っているんでしょ~か?」


神様「村人D! 宝くじの当選祈願だけしかしないようなヤツが当選するはず無いだろ!」

神様「村人E! ジャガイモからかわゆい女の子なんか生まれないぞ!」

神様「村人F! 金くれって雑すぎだろ! 私が欲しいわ!」

神様「村人G! 賽銭くらい入れろ! アホちん!」

神様「村人H! ・・・なんか願っとけよ!」


村人達「・・・・・・」


村人A「あんた・・・ まさか・・・」

村人B「本物の・・・」


神様「ある時は“かわゆい少女”、ある時は“かわゆい巫女”、その正体は!」

村人達「正体は・・・」ゴクリ

神様「神宮が誇る美貌と教養を持つ“かわゆい女神”神ちゃんだ!」フンスッ

村人達「・・・・・・」



─── 本殿内


狐神「も~ 神ちゃんったら、いつも一言どころか二言三言余計なんだから・・・」ヨイショ

コン子「面白い方ですね」

狐神「まぁね。 ほら、腕もっと高く揚げて、袖通すわよ」シュルシュル

コン子「はい! すいません」

狐神「まったく、この装束特注で作ったばかりなのに・・・」ハァ

コン子「あの、どうして私がこんな綺麗な格好をさせられているんでしょうか?」

狐神「この服は、これからアンタが毎日着て暮らす服だからよ」

コン子「え!?」

狐神「ちゃんと着方を覚えておきなさいな」シュルシュル

コン子「・・・・・・」



─── 本殿外


村人達「・・・・・・」

神様「まぁ、皆が驚くのも無理はない。 神宮の女神が降臨しているんだからな」ウンウン

村人A「ほ・・・ 本当に神さまなのか?」

村人B「なんでこんな村に・・・」

神様「こんな村? おい、お前の住んでいる村はその程度のものなのか?」

村人B「!?」

神様「先日、この神社の神体を覗かせてもらった」

村人A「神体?」

神様「そうだ。 神体にはお前達が願ったことが記録される」

村人B「それで、俺たちの秘密を・・・」


神様「お前達の願いだけじゃないぞ? この神社が建立されてからの全ての願いを覗かせてもらった」

村人A「全て!?」

神様「神体を覗き、とても大きな願いを知った私はそれを叶える事にした」

村人A「大きな願い・・・」


神様「お前達、この村が好きなんだろ?」

村人達「・・・・・・」


神様「この村のことを多くの人に知ってもらいたいんだろ?」

村人達「・・・」コクリ


神様「隣村に負けたくないんだろ? 隣村よりこの村の方が素晴らしいんだろ?」

村人A「当たり前だ! この村が一番だ!」

村人達「そうだそうだ!」


神様「この村の素晴らしさを伝えられるんだったら何でもするんだろ?」

村人B「当然だ! 俺たちが出来ることならなんだってやるさ!」

村人C「おうよ、役場の集落活性化企画委員会設置準備室の奴らじゃあてにならねー!」

村人達「そうだそうだ!」

村人B「でも・・・ 意気込みだけはあるんだけど・・・」

村人C「あぁ、何から手を付けたら良いのか・・・」


神様「安心しろ、その為に私がいる。 私にかかればそんな事たやすいことだ」

村人達「お~」パチパチパチパチ

神様「この村を盛り上げるぞー!」

村人達「おー!」

神様「この村に観光客をいっぱい呼ぶぞー!」

村人達「おー!!」

神様「自分たちの手でこの村に元気を取り戻すぞー!」

村人達「おー!!!」



─── 本殿内


コン子「すごい・・・ こんな村の皆さんはじめて見ました」

狐神「相変わらず周りを巻き込むことに関しては天才的ね、神ちゃんは・・・」ヨイショ

コン子「今回は本当に何とかなりそうな気がしてきました」

狐神「アンタがするんだけどね」

コン子「私が!?」

狐神「はい、着付け終わり! 姿見で自分の格好を見てみなさいな」

コン子「え? あっ、はい」


スタスタ


コン子「・・・・・・」

狐神「どう? すごく似合ってるわよ」

コン子「これが私・・・」

狐神「私のとっておきの装束だけど・・・ 悔しいけどアンタの方が似合うわ」

コン子「綺麗・・・ 自分じゃないみたい」

狐神「これからは、その格好に合った生き方をしないとね」

コン子「え?」

狐神「さ、そろそろ出番よ。 準備して」

コン子「出番?」

狐神「キツネちゃん達もコン子ちゃんの隣にスタンバイね」


テクテク


狐神「お利口ね。 コン子ちゃん、背筋を伸ばしてまっすぐ正面を見ていてね」

コン子「あの、何が始まるんでしょうか・・・」

狐神「あなたの、初仕事よ」



─── 本殿外


村人A「でも、神さまよ~ どんな策でこの村に人を?」

村人B「お金だって無いしなぁ」

神様「金なんか必要ない。 この村にあるものだけで1週間後には観光客でごった返すことになる」

村人達「たった1週間で!?」

神様「あぁ、でもそれを叶えるのは私ではない」

村人A「じゃぁ別の神さまが?」

神様「そうだ。 喜べ! 今日からこの神社に神が常駐することになった!」

村人達「お~~」パチ パチ パチ

神様「紹介しよう! 従三位コン之神だ!」


ギーッ



村人達「・・・・・・」


コン子「え? あ、あの・・・」キョロキョロ

狐神「キョロキョロしない。 背筋を伸ばして顔は正面、遠くでも見てなさい」ボソッ

コン子「は、はい!」


村人A「なぁ、神ちゃんさん・・・ あれ、コン子じゃないのか?」

村人B「立派な服着てるけどコン子だよなぁ」

神様「そうだよ? コン子ちゃんは神だから」


村人達・コン子「えっ!?」


村人A「おかしいだろ。 コン子自身が驚いているじゃないか」


狐神「ゴホン! お初にお目にかかる」テクテク


村人A「あなたは?」

神様「紹介しよう。 あいあい神社の主神で従一位、狐神だ」

村人A「狐神!?」

狐神「様を付けろ、無礼者」

村人A「す、すいません・・・」ペコリ

狐神「それと従一位ではなく、正一位! 稲荷を統括する神だ」


村人B「あぁ~ なんだ、こちらの方が本物の神さまですか」

村人C「ビックリした。 コン子が神さまだなんてなぁ」

狐神「なにを言っている、コン子は正真正銘の稲荷神だぞ?」


村人A「確かにコン子が人ではないことは知っているけど・・・」

村人B「だからって神さまだなんていきなり言われても、なぁ?」

村人達「うんうん」


神様・狐神「はい?」


村人A「いや、だって年とらないし」

村人B「俺が子供の時からコン子は村に居たし」

村人C「俺のばあちゃんが子供の頃もコン子は居たって聞いてる」

神様「あ~・・・」


狐神「お前達はコン子が人ではないことを知っていて今まで接していたのか?」

村人A「まぁ、コン子に関しては何て言うか~」

村人B「昔から触れないのが暗黙の了解っていう感じで」

神様「ほぉ~ この時代にこんな不思議な存在を受け入れているとは面白い村だ」

狐神「通りで神の存在もすぐに信じたわけだ」


村人A「でも、さすがコン子が神さまだなんて信じられないな」

村人B「そうだな。 神社になんか会合の時しか来ないし」

村人C「家も隅っこの小さな小屋だし」

村人D「畑の手伝いして生活する神さまなんていないよな」


コン子「ぅぅ・・・///」モジモジ


狐神「まぁ、証拠を見せた方が早いな」ハァ

村人A「証拠?」

狐神「コン子、お前には先ほど私の神力を分け与えた」

コン子「神力?」

狐神「この者達に神力を使って神としての証拠でも見せてやれ」

コン子「そんな・・・ どうやって・・・」

狐神「ここはお前の社だ。 神力も自由に使えるはずだ」

神様「コン子ちゃん、この神社の神体の力は感じ取れる?」

コン子「神体?」

神様「そう、頭の中で神体を感じてみて?」

コン子「頭の中・・・ あっ」

神様「そしたら、そうだなぁ~ 神体から力を少しもらって手のひらにのせる感じを想像してみて?」

コン子「手のひら・・・」ジーッ

村人達「・・・・・・」ジーッ



ポワポワ


村人達・コン子「!?」

神様「そうそう、うまいうまい」

狐神「狐火だな」

村人A「そんな・・・」

村人B「うそだろ・・・」


ザワザワ


狐神「コン子はこの地に住まうキツネたちを守り、そしてこの村の人々を守る存在」

村人達「・・・・・・」

狐神「お前達はコン子に今までどんな接し方をしてきた?」

村人達「・・・・・・」

狐神「この村のキツネたちに何をしてきた?」

村人達「・・・・・・」


狐神「コン子、神であるお前の口から村の者達に言うことはあるか?」

コン子「・・・・・・」

神様「コン子ちゃん、正直に」


コン子「私は・・・ 皆さんと違って人ではありません・・・」

コン子「でも、そんな私をこの村に居させてもらったことを本当に感謝しています」


村人達「・・・・・・」


コン子「この子達も、悪気があって村まで出ているわけではなかったのですが・・・」

コン子「でも、野生のキツネですから驚かせてしまったことはこの子達も反省しています」

コン子「私も、この子達もこの村が大好きです。 もし私が力になれることがあるのであればその恩返しをさせて下さい」

コン子「よろしくお願いいたします」フカブカ


村人達「・・・・・・」

狐神「本心でこれか・・・ 大した子だ」フッ


神様「コン子ちゃん、キツネ達を境内に呼んでもらえる」

コン子「はい。 みんな出ておいで」


テクテク


神様「お~ たくさんいるね~」

コン子「これでもこの村にいる子達の1/3程です」

狐神「結構な数がいるな」

コン子「ほら皆、ちゃんとご挨拶して? この日のために覚えたんでしょ?」


キツネたち「キュ~ン キュ~ン」ペコリ ペコリ


狐神「ふぁぁ~」ニンマリ

村人達「・・・・・・」


村人A「コン子・・・」

コン子「?」

村人A「すまなかった」ドゲザ

コン子「やめて下さい、謝らなければいけないのは私達ですから」オロオロ

村人B「すまない」ドゲザ

村人C「確かに・・・ キツネたちが村を荒らしてるところなんか見たことないしな・・・」ドゲザ

コン子「ちょ、皆さんやめて下さい」


スリスリ


村人B「?」

キツネ「」ペロペロ

村人B「・・・・・・。 こんな優しいキツネに猟銃を向けたなんて情けねぇ」グッ

コン子「あれはこの子達が出てきては行けない場所に出てきたのが悪いんですから」

村人B「いや・・・ 悪いのは俺だ・・・」

コン子「この子達には、村まで出て行かないようにキツく言っておきましたから」


神様「その必要は無い!」

コン子「え?」

神様「これからは、キツネたちは村中を自由に出歩くことを命ずる」

コン子・狐神「!?」

狐神「ちょっと神ちゃん、どういう事?」


神様「村人達も、これからは村の中をキツネが出歩いていても自然に接すること」

村人A「もちろんだ」

村人B「約束する」

村人達「うんうん」

神様「この村を活性化するにはそれだけで良い」


一同「はい?」


神様「コン子ちゃん、これからはこの神社に住みキツネたちはここを住処にさせるように」

コン子「この神社にですか?」

神様「そう、そして村の中をキツネたちが多く出歩くように指示してほしい」

コン子「?」


狐神「ちょっと、どういう意味があるのか説明しなさいよ」

神様「キツネの住む神社と、キツネが町中を闊歩する村。 これは最高の村おこしだと思わないかね?」ニヒヒ

狐神「アンタまさか・・・」

神様「神ちゃんプロデュース第二章の始まりだよ、コックスくんや」ニヤッ

狐神「コックス言うな」ゲシッ

神様「あぅ」



─── 1週間後・神使会休憩室


ガチャ


神使「ふ~ さすがに座学だらけだと疲れますね」

神使友「おい、神使これ見てみろよ」

神使「テレビですか?」


レポーター『見て下さい。 今、私の横を可愛いキツネが何の警戒もなく通り過ぎていきましたよ』

レポーター『あそこにも、あっちにも村中にキツネがいます。 村の人達も一向に気にしていませんね』


神使「へぇ~ 凄い村ですね」

神使友「おれ、この村に住んでみたいなぁ~」

神使「そういえば、神使友さんはキツネさんでしたね」

神使友「あぁ。 最近この村の神社に神が常駐されたみたいで、その神の発案だって噂」

神使「人と動物のふれ合い・・・ 立派な神ですね」

神使友「この神社に転勤したいなぁ」

神使「これだけ大胆な発想ができる神なんて、きっと優秀でご立派な方なんじゃないですか?」

神使友「だよな~ 絶対ハードル高いよな」



レポーター『このキツネさん達、普段はこの神社で生活しているそうなんです』

レポーター『うわ~ 凄いキツネさんと観光客の数ですね~』


神使友「お! 神社も取材されてるじゃん」

神使「神も写りますかね?」


レポーター『あっ、巫女さんがいますね。 ちょっとお話を伺ってみましょう』

レポーター『こちらの神社の巫女さんですか?』

神様『あ! テレビ? いえ~い。 写ってる?』ピース


神使「・・・・・・」

神使友「なんだよ、この巫女さんは。 バイトか?」


レポーター『ははは・・・ 元気な巫女さんですね。 ちょっとお話しを伺っても良いですか?』

神様『これカメラ? イエーイ! 神使く~ん、見て───』


ピッ


神使友「おい、どうしたんだよ。 急にテレビ消して」

神使「も、もうじき次の座学の時間です。 行きましょう」

神使友「まだ早くないか?」

神使「早く行かないと良い席が取られてしまします。 行きましょう」

神使友「お、おう・・・ って言うか、今の巫女さん、お前の名前呼んでなかったか」

神使「気のせいでは?」

神使友「そうかなぁ?」



─── 翌週


ガタンゴトン


神使(おかしいです)


ガヤガヤ


神使(確か2週間前、この電車は1両編成でお客さんは全く乗っていなかったはず・・・)


ガヤガヤ ガヤガヤ


神使(どうして5両編成でこんなに混雑しているのですか? しかも・・・)


車掌『本日は臨時快速おきつねふれ合い号をご利用頂きありがとうございます』


神使(臨時って・・・)



─── 駅


神使「・・・・・・」


ガヤガヤ ガヤガヤ


村人A「こんこん稲荷神社行きの直通バスはこちらになります~」

神使「あの、すいません」

村人A「はい?」

神使「こんこん稲荷神社って先週テレビに映っていた神社ですか?」

村人A「そうですよ。 直通バスはこちら、先払いで片道250円です」

神使「うわ、満員ですね」

村人「後ろのバス2台も臨時なので空いている方へどうぞ」

神使「そうですか・・・」テクテク



─── 神社前


ガヤガヤ ガヤガヤ


狐神「境内へのご入場は現在1時間待ちとなっておりま~す」


神使「・・・・・・」


狐神「村の中にもキツネちゃん達が沢山いますので、お時間のある方は先に村の散策を───」

神使「あの、狐神様ですよね?」

狐神「ん?」クルッ

神使「お久しぶりです・・・」

狐神「お~ 神使君か。 丁度良かった、上で着替えてすぐに神ちゃんを手伝ってくれる?」

神使「それより、これは一体・・・」

狐神「説明は後! 神ちゃんヘロヘロになってるから!」

神使「は、はい!」タッタッタッ



─── 境内


ガヤガヤ ガヤガヤ


神使「あの廃神社にこんなに人が・・・ というか稲荷でなく八幡だった気がするのですが・・・」


 お守り~ 牡蠣フライ~ おみくじ~ 牡蠣フライ~


神使「あの声は・・・」スタスタ



神様「こちらがお守りになります」スッ

参拝者「ありがとうございます」

神様「名物の牡蠣フライも一緒にどうですか?」

参拝者「牡蠣フライは・・・」ハハハ


神使「あの・・・」

神様「はい、牡蠣フライですか? お守りでしたら全種一律300円!」

神使「何でお守りと牡蠣フライを一緒に売っているんですか? 神様」

神様「お~ 犬ころじゃん。 丁度良かった手伝ってくれ」

神使「今日はお祭りか何かなのですか? 凄い人ですが・・・」

神様「先週からずっとなんだよ。 凄いだろ、もうボロ儲けだよ」ウヒャヒャ

神使「巫女さんの格好でボロ儲けだなんて言葉を使わないで下さい・・・」

神様「良いから早く着替えて来いよ。 本殿あいてるから」

神使「後でちゃんと説明して下さいよ?」スタスタ



─── 本殿


ギィー


神使「全く神様ったら今回はどんな悪巧みを───!?」

コン子「!?」クルッ

神使「し、失礼しました!」

コン子「いえ、お気になさらず」


スリスリ


神使「? キツネさん?」


コン子「こら、ダメよ? 勝手にすり寄っちゃ迷惑でしょ?」

神使「いえ、お気になさらずに。 人懐っこくて可愛いキツネさんですね」ヨシヨシ

コン子「あの、失礼ですが・・・」

神使「失礼しました。 私、神様の仕いを務めております狛犬の神使と申します」ペコリ

コン子「神ちゃんさんの?」

神使「はい。 それより、主神様のいる本殿に勝手に入ってしまい申し訳ございませんでした」フカブカ

コン子「そ、そんな・・・ 主神様だなんて・・・///」

神使「?」

コン子「最近神ちゃんさんに神にされたばかりで、私なんかまだ何も・・・」

神使「・・・そうですか。 やはりこの惨状は神様の企てですか」ハァ

コン子「神ちゃんさんは、この村を・・・ とても素敵な村に変えてくれたんです」ニコッ

神使「・・・あの、詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか」

コン子「はぁ」



─── 1時間後


バンッ


コン子「!?」

神様「犬ころ! 着替えにいつまで時間かかってんだよ!!」ズカズカ

コン子「あっ、神ちゃんさん・・・」


神使「はい・・・ えぇ、出来ればそのような形ですと有り難いのですが・・・ はい」


神様「ん? 犬ころ電話中なのか」

コン子「はい、先ほどから」


神使「では、よろしくお願いします」ピッ


神様「どこ電話してんだよ。 はよ手伝えや、忙しくてかなわないんだよ」

神使「お待たせしてすいません。 すぐ行きます」

神様「んじゃ、神使君はコックスと交代で下で入場列の整理やってくれる?」

神使「分かりました」

神様「そろそろコックスのヤツへたってる頃だと思うし」

神使「神様は?」

神様「私はもう少しお守りと牡蠣フライ売ってくる」

神使「何故、牡蠣フライも一緒に売っているのですか・・・」

神様「売れるから良いんだよ!」


コン子「あの、やはり私もお手伝いを」

神様「コン子ちゃんは、ここにいて」

コン子「でも、私も何か・・・」

神様「これから毎日この状態が続くんだから。 主神のコン子ちゃんに疲れが出ちゃうと村全体に影響しちゃうの」

コン子「・・・・・・」

神様「その気持ちだけで十分。 主神はこの村とキツネちゃん達を陰から見守るのが仕事」

コン子「分かりました」

神様「よし。 それじゃぁもうひと頑張り!」フンスッ



─── 夜


神様「うへ~ ちかれた~・・・」グテッ

狐神「ぁ・・・ ぁ・・・」ピクピク

神使「狐神様、大丈夫ですか?」

狐神「ダメかも・・・」


神使「しかし凄い人の量ですね」

狐神「神ちゃん・・・ これ人来すぎじゃない?」

神様「想像以上だな」

神使「テレビで取材されたらこうなりますよ・・・」

コン子「明日は土曜日・・・ 大丈夫でしょうか?」

神様・狐神「・・・・・・」


神使「ちなみに、土日対策は?」

神様「・・・・・・」

狐神「してるわけ無いじゃんよ・・・」

神使「だろうと思いました」ハァ


神様「どうしよう・・・ お守りも牡蠣も全然足りない」

神使「明日の早朝に神宮から巫女と神職の応援が20名ほど来ます」

一同「え!?」

神使「それと、仮設の授与所用にテントが3つほどきます」

狐神「そんな手配いつの間に?」

神使「稲荷用の祈祷済みお守りが5000個、おみくじ1000セットも明日着で届く予定です」

神様「まさか、さっき電話してたのって・・・」


神使「村おこしの案としては大変素晴らしいと思いますが、先のことも考えておかないとダメですよ? 神様」

神様「はい」

神使「それと、コン子さんの件を神宮に報告していませんね?」

神様「・・・はい」

神使「先ほど神宮に無理を言って、コン子さんの神籍追加と神社の社名変更を至急してもらうように手配しました」

狐神「あ~ 神宮に登録しておかないと面倒だもんね」

神使「神宮登録の内容と違うと巫女と神職の派遣も出来ませんので」

神様「すんません、ありがとうございます」ドゲザ

コン子「私のせいでご迷惑を・・・ 申し訳ありません」ドゲザ

神使「お気になさらず。 言い出しっぺの神様に変わって私がすることですから」


神様「ん? お守りとかの補充は良いけど牡蠣は? 牡蠣の補充は?」

神使「してませんよそんなもの・・・」

神様「それはマズいだろ~」

神使「土日は私が焼きそばの屋台でも開きますから」

神様「でも~ 牡蠣はこの神社の名物で~」


狐神「しかし、神宮が今日明日のことなんかでよく動いてくれたねぇ」

神使「神宮の各部署には知り合いが沢山いますので、少し無理を言って」

狐神「神宮に長くいる神ちゃんより神使君の方が顔が利くんじゃない?」

神使「さすがにそれは・・・」

神様「そうだよ! 私の方が顔聞くって!」

狐神「はいはい。 分かったわよ」


神使「明日は早くから準備が必要です。 今日は寝ましょう」

神様「そうね、おやちゅみ~」ゴロン

狐神「おやすみ~」ゴロン

コン子「お休みなさいませ」ゴロン

キツネ達「」パタリ

神使「あの・・・ 私の寝る場所が・・・」


神様「Zzz」グガー

狐神「Zzz」スピー

コン子「Zzz」スヤスヤ

キツネ達「Zzz」


神使「・・・はい、外で寝てきます」テクテク


─── 翌日・駅前

村人A「こんこん稲荷神社行きの直通バスはこちらで~す」

村人C「よ! 凄い人だな~」スタスタ

村人A「あぁ、役場に言ってもう何台かバスを出してもらわないとな」

村人C「臨時電車も増便になったぞ。 しかし、こんな事になるなんて想像できなかったな」

村人A「そうだな・・・ コン子が機会を与えてくれたんだ。 ここからは俺たちの頑張りだ」



─── 町中

観光客「きゃ~ かわいい~」モフモフ

村人B「この子はキッコちゃんって言うんだよ」

観光客「キッコちゃんか~ 街の中にキツネがいるなんて凄いですね」

村人B「この子達はこの村の住人だ。 いて当たり前なんだよ」

観光客「へぇ~ 住人か~」

村人B「あぁ、大切な村の仲間だ」


─── 神社前

狐神「最後尾はこちらで~す。 現在境内までのご入場に2時間待ちとなっておりま~す」

巫女「狐神様、私が代わりますのでご休憩を」

狐神「ありがと、頼んだ」

 子供「ねぇ~ まだ並ぶのぉ?」

 母親「もう少し我慢してなさい」

狐神「ぼく?」

子供「な~に?」

狐神「あそこを歩いているキツネ、キツミちゃんって言うのよ? 呼んでごらん?」

子供「キツミちゃ~ん」

 キツネ「・・・」タッタッタッ

狐神「キツミ? 沢山遊んでもらいなさい?」

 キツネ「」コクコク

子供「すごい! 返事したみたい!」

狐神「順番がくるまで、この子と遊んであげてね?」ニコッ


─── 参道

参拝客「焼きそば3つ下さい」

神使「はい! 3つですね?」


ジュージュー


参拝客「ねぇ、牡蠣フライは売ってないの?」

神使「・・・焼きそばじゃダメですか?」

参拝客「この神社、牡蠣フライが名物だって聞いたんで」

神使「・・・・・・。 すいません」

参拝客「無いんじゃ仕方ないか。 焼きそば2つ下さい」

神使「はい。 すいません・・・」


ジュージュー


─── 境内

神様「お待たせしました、こちらお守りです」スッ

参拝客「ありがとうございます」


巫女「神ちゃんさん、お守りの補充を持って参りました」

神様「ありがと、あと釣り銭が少なくなってきたから祓い済みのヤツ持ってきてくれる?」

巫女「はい、すぐに準備します」


参拝客「すいません、このお守り下さい」

神様「はい、300円お納め下さ~い」



コン子「・・・・・・」ジー

 ?「こちらの主神かな?」

コン子「!? え? あの・・・ 私は・・・」


?「大丈夫。 神宮の神様機構長官と申します」ペコリ

コン子「神宮・・・ あっ、神ちゃんさんはあちらに───」

長官「いや、良いんだ。 ちょっとした申請が出ていたから視察をしに来ただけだから」

コン子「はぁ・・・」

長官「しかし、凄い量の参拝者だね」

コン子「全部、神ちゃんさんのおかげです」

長官「いや、この神社の主神であるコン之神の力だよ」

コン子「私なんか何も・・・ ただこうして影から見ているだけで・・・」

長官「下地を作ったのは君が今まで頑張ってきたからだ。 誇りを持ちなさい」

コン子「・・・・・・」


長官「はい、これ」スッ

コン子「これは?」

長官「神籍証。 神の証だよ」

コン子「神籍・・・」


長官「さて、視察も終わったし申請も問題なさそうだから私は帰るよ」

コン子「あの、申請って?」

長官「神ちゃんから、この神社に寄付金の申請があってね?」

コン子「寄付金?」

長官「あぁ、それが少し大きな額だったものでね」

コン子「おいくら位なのでしょうか?」

長官「1億円」

コン子「!?」


長官「結構な額だろ?」

コン子「そんな大金をどうして?」

長官「そう思うよね? だから見に来たんだよ。 でも妥当な額だと思う」

コン子「妥当って・・・」

長官「これだけの参拝者がいるのに社務所もなければ拝殿もない。 授与所だって無いし、全部新しく拵えたら最低でもその位はかかるね」

コン子「この神社の?」

長官「一番急ぎなのは、稲荷神がいる神社なのに鳥居が八幡タイプだ。 これはすぐに直さないとね」ハハハ

コン子「そんな、私みたいな者にそこまで・・・」

長官「神のいる神社は今はとても少ないんだ。だから最大限の協力はさせてもらうよ。 それに・・・」

コン子「?」


長官「村中の人が協力してくれているだなんて、こんな素敵な村には素敵な神社がないとね」

コン子「・・・嬉しいお言葉、ありがとうございます」ウルウル


長官「コン之神、ここからが君の力の見せ所だ。 大変だろうけど頑張るんだよ」

コン子「はい!」フカブカ


長官「それじゃ、神ちゃん達によろしく伝えておいてくれ」テクテク

コン子「・・・・・・」フカブカ




 神様「は~い! お守り、おみくじはこちらですよ~」

 狐神「キツネたちと沢山遊んであげてね~」

 神使「焼きそばです」



コン子「ありがとうございます。 神ちゃん様、狐神様、神使様。 そして村の皆さん」フカブカ



狐神「? 神ちゃん」クイクイ

神様「何だよ」

狐神「あれ」

神様「?」クルッ



 コン子「」フカブカ



神様「・・・・・・」

狐神「あの子がいれば、この村も安泰ね」

神様「当然!」ニコッ



─── 数日後


神様「い~や~だ~」ジタバタ

神使「ダメです。 ほら、ワガママ言っていなで」グイグイ


コン子「あれ? 神ちゃんさん、どうされたんですか?」

狐神「いやね、神ちゃん達帰るんだって」

コン子「え?」


神様「帰んない! ここでコン子ちゃんとモフモフした生活をしてダラダラ暮らすの!」

神使「どんな生活ですかそれ・・・ 神様が居ても食い散らかして本殿を汚すだけです」

神様「これからは食べ終わったゴミはちゃんとゴミ箱に捨てるから!」

神使「そんな最低限のこと約束しないと出来ないなんて・・・」


狐神「神ちゃんったら、キツネたちの餌も食べようとしてたんだよ?」

神使「神様・・・」ゾッ

神様「引くな! だって、皆美味しそうに食べてたし・・・」

コン子「あの餌は寄生虫対策も兼ねた特製の物なのであまり食べない方が・・・」

神様「・・・ぇ?」


狐神「ちょっと、まさかアンタ食べたの?」

神様「た、食べても大丈夫だよね?」タラタラ

コン子「自然の物で作っているので大丈夫ですが・・・ お腹壊しませんでした?」

神使「神様は牡蠣の毒にも負けない胃袋の持ち主ですから」

狐神「でも、野ねずみとかは食べちゃダメよ?」

神様「喰わねーよ!」

狐神「ここのキツネ達は食べるものが管理がきちんとされているんだね」

コン子「はい。 私のあげる餌以外は食べないように厳しく言ってありますので」

神使「神宮所属の獣医の方にキツネさん達を調べてもらってお墨付きを頂きました」

神様「狐神、お前もついでに調べてもらったら?」

狐神「必要ない」ゲシッ

神様「あぅ」


コン子「あの・・・ 神ちゃんさん本当に帰られてしまうんですか?」

神使「次の仕事もありますので・・・ あまり一カ所に長居も出来ないんです」

コン子「そう・・・ ですよね・・・」シュン

神様「ほら! コン子ちゃんあんなに悲しそうな顔してるじゃん!」

神使「神様ここ数日何もしてないじゃないですか・・・」

神様「牡蠣フライの監修してるだろ!」

神使「食べてるだけじゃないですか・・・」

神様「巫女舞だってまだ教えてないし!」

神使「コン子さんは巫女じゃありません」

神様「祈祷とか、祈願成就の仕方とか!」

狐神「それは私が教えてる」

神様「・・・・・・」


神使「だそうです」

神様「しょうがねーな~」チッ

コン子「・・・・・・」

狐神「コン子ちゃんも気持ちは分かるけど、ね?」

コン子「はい」


神使「では、早く荷物をまとめて下さい」

神様「へいへい」

コン子「もう一日だけ・・・ もう一日待って頂けないでしょうか?」

神使「はぁ・・・ 一日くらいでしたら大丈夫ですが」

コン子「ありがとうございます!」タッタッタッ

狐神「ちょ、コン子ちゃんどこ行くの!?」


神使「行ってしまいましたね・・・」

狐神「全く」ハァ

神様「別に出かけるくらい良いだろうが」

狐神「出かけるのは良いけど、目立ちすぎるでしょ」

神様「?」

狐神「装束着たままよ?」

神様「あ~ 確かに、あんな変な格好じゃ怪しさ満点だな」

狐神「変な格好言うな!」ゲシッ

神様「あぅ」

神使「参拝者も観光客の方も帰られて少ないですから大丈夫だと思いますが・・・」

狐神「後で少しお説教しないとね」ハァ



─── 翌日


神使「では、神様そろそろ行きましょうか」

神様「へいへい」


コン子「あの・・・」

神様「ん?」

コン子「これを」スッ

神様「わ! モフモフストラップじゃん! デカい! しかも真っ白!」

コン子「ぜひ、神ちゃんさんに使って欲しくて///」

神様「かわゆい~ これ、キツネちゃん達の抜け毛?」

狐神「白キツネなんてこの村にいたっけ?」

コン子「いえ・・・ その・・・ 私の毛を・・・」

一同「え!?」


神様「だって、コン子ちゃん抜け毛なんてないでしょ」

コン子「昨日、ちょっとブラッシングをしまして。 ははは・・・」スリスリ

狐神「・・・・・・」


神様「そう・・・ わざわざありがとう。 宝物にする」

コン子「そんな! そこまでの物では・・・ 何か買ってプレゼントしたかったんですけど時間もないしお金もなくて・・・」

神様「」ギュッ

コン子「!?」

神様「沢山勉強して良い神さまになって。 そしてこの村を末永く守っていってね」

コン子「はい。 神ちゃん様に会えて、私・・・ 本当に・・・ ありがとうございました」グスッ

神様「元気でね」

コン子「はい」


神使「では、参りましょうか。 コン子さんお元気で」

コン子「神使様も色々とありがとうございました」フカブカ

神使「村の皆さんにもよろしくお伝え下さい」

コン子「はい!」ニコッ


神様「じゃ、狐神。 あとはよろぴこ」

狐神「はいはい」


神様「じゃ、またね~」


テクテク



─── 駅


ファーン


神使「あれ? 次の電車までまだ時間があるんですが、もう来ましたね」

神様「田舎だから交換待ちとかあるんじゃね?」


プシュー


神使「回送って書いてありますね」

神様「なんだよ、乗れないならドア開けんなよ」


車掌「帰りの電車待ち?」

神様「あっ、村人C! あんた車掌だったのかよ!」

車掌「乗っていくかい?」

神使「しかし、回送では?」

車掌「おかげさまで最近満員で座れないから、ついでだし乗って行きなよ」

神使「そんな・・・ 良いんですか?」

車掌「気にすんなって」

神様「やったー! 貸し切り~」トテトテ



─── 車内


車掌「右側の窓が全開になってる席に座って」

神様「うへ~ クーラーかかってない・・・」

車掌「回送だし」

神様「マジかよ・・・」ヨイショ

神使「座って帰れるだけよしとしましょう」

車掌「綺麗な車窓でも眺めながらごゆっくり」テクテク



ガタンゴトン


神使「コン子さん、とても良い子でしたね」

神様「そうね」

神使「でも、大丈夫でしょうか?」

神様「心配ないよ。 あの子は絶対に道を間違ったりしない」

神使「そうですね」



ファーン ファーン ファーン


神使「?」

神様「なんだ? 急にスピード落ちたぞ」


神使「あっ、神様! 外見て下さい、川の向かい側!」

神様「ん?」


 お~い! 元気でな~
 また遊びに来てくれよ~


神使「村の方達ですね。 大きな横断幕まで・・・」

神様「・・・・・・」

神使「コン子さんもあんなに大きく手を振って、キツネさん達も沢山いますよ」


神様「・・・中々イキなことしてくれるじゃん」チラッ

車掌「」グッ



 コン子「神ちゃんさ~ん! また村に遊びに来て下さいね~!!」フリフリ


神様「・・・・・・」

神使「神様・・・」



神様「おーよ! また来るー! 皆元気でな~」フリフリ



ファーン
ガッタン ゴットン



神様「神使くん」

神使「はい」

神様「・・・・・・。 やっぱ私、コン子ちゃんの所に帰るわ」ヨイショ

神使「神様、真顔で何言っているんですか。 ちょ、電車動き出してますから!」ガシッ

神様「放せ~ もっとコン子ちゃんをモフモフするんだ~」ジタバタ

神使「神様! ちょっと勘弁して下さいって。 結構なスピード出てますから!」



神様「モフモフさせろーー!!」









神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
#17「こんこん稲荷神社」 ―END


#14 「キセキ野教会」 >>1-229
崩れかけの廃神社。寝るところが無い神様は隣の修道院にお世話になる事に・・・

#15 「神苑温泉」 >>246-492
休暇で訪れた温泉。お猿の神使キー子にメロメロの神様は何か気になる様子・・・

幕間 「満月の夜」 >>497-527
神様と神使は野宿する嵌めに。満月が綺麗な夜に二人の思いは一つになって・・・

#16 「お花を摘みに」 >>551-796
埋蔵金伝説が噂される無人神社。歌に隠された暗号を元に神様が真実に迫る・・・

#17 「こんこん稲荷神社」 >>809-947
廃神社でお留守番の神様。村八分状態のコン子ちゃんがとても気になる様子・・・


また機会があれば……
ありがとうございました <(_ _)>

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年08月14日 (月) 08:08:08   ID: PrG9Qzws

追いついた!楽しみです

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