神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」(1000)

【#1】

 テクテク

神様「う~ さぶっ!!」

神使「氷点下いっているでしょうね」

神様「んなこと言われなくても分かるわ! 腐れ神使」

神使「神様? 一応女性なのですからもう少し上品な言葉使いをなされては・・・」

神様「うっさい! 一応って何だよ! っていうかまだ着かないの~」


神使「そこを曲がれば次の勤務先のにょろにょろ神社です。 宮司さんへのお土産は?」

神様「あるよ。 大九で買ったどらやの羊羹」

 テクテク

神様・神使「・・・・・・」


神様「なぁ、社務所ないぞ? っていうか神社がないぞ?」

神使「これは大きな駐車場ですね・・・」

 ヒュー


――― 翌朝

神様「ヘックショイッ!」ズズー

神使「神様、大丈夫ですか?」

神様「大丈夫なように見える? ねぇ、そう見える?」

神使「いえ・・・ その・・・」


神様「お前は犬に姿を変えられるから良いよな~」

神使「ですから私を抱いていれば少しは暖かいと申しましたのに」

神様「獣臭くなる」

神使「・・・いや、私は姿を変えても神使ですから獣臭くはないかと・・・」


神様「それよりさぁ~、本当にここは東京なのか?」

神使「はい」


神様「でも緑が多すぎると思うんだけど。 川のせせらぎも聞こえるし」

神使「村ですから・・・」

神様「へっ?」


神使「ひのひの村です」

神様「東京じゃないの?」

神使「東京ですよ? 一応、都内です」

神様「・・・・・・」


神使「都内で仕事が少ない所とのご希望でしたので神様の条件にピッタリかと」


神様「神使君さぁ、私の使いは何年目?」

神使「3年目ですね」


神様「うん、そしたらこのチョイスは変だよね」

神使「?」


神様「私はね? 祥寺とか下北とかに行きたいって言ったよね」

神使「はい」

神様「はいじゃ無くてさ、そしたらここは違うと思わない?」


神使「申し上げにくいのですが吉祥寺や下北沢は・・・ その・・・ 位が高くないと・・・」

神様「ん? なに?」


神使「神様の神階では・・・」

神様「あ~、そっか~ そうだよね~ 私、神階が最低位だもんね、忘れてた」ズーン


神使「神様!」

神様「!?」


神使「神様は最低位なんかじゃありません!」

神様「神使・・・ おまえ・・・」


神使「ランク外です。 お間違いの無いように」

神様「・・・・・・」

 ゲシッ ゲシッ

神使「痛っ! 痛いです」

神様「神罰だ」ゲシッ ゲシッ

神使「本当のことじゃないですか、それに神罰じゃなくてただの足蹴りですよそれ」


神様「それよりさぁ、どうすんだよ~」

神使「社がなければ、別の所へ行けますが・・・」


神様「んじゃ、次行く?」

神使「いえ、あるじゃないですかお社が」

神様「へ?」

神使「駐車場の隅に・・・」


神様「いやいや、あれは神棚だろ? ホームセンターで売ってるの見たぞ?」

神使「しかし、ご神体が入っていますので」


神様「え~、あんな小さい所ネズミも住めないって」

神使「規則ですし、形だけでも少しは滞在しないと・・・」


神様「こんな真冬に何日も野宿なんて凍死するぞ?」

神使「その前に警察に通報されますね。 困りましたね・・・」


 テクテク
 そうそう、それでさ~
 へぇ、そうなんだ


神様「ん?」

神使「神様どうされました?」


神様「・・・・・・」ジー

神使「女子高生のようですね。 こんなに朝早くから大変で―――」

神様「お~い」タッ タッ タッ

神使「あっ、神様?」


 タッ タッ タッ

 お~い!
 ちょっと神様~ 待って下さ~い


少女「?」

友「少女ちゃん知り合い?」

少女「知らない・・・」


神様「おはよう!」スタッ

少女「おはようございます・・・ あの失礼ですが」


神様「神使よ、挨拶を」

神使「はい・・・ 私たちこういう者です」スッ


少女「はぁ・・・ 名刺?」

友「神様? 神使?」

少女「神様・・・」

神様「そう、神様!」ヘヘン


友「神様より神使の方が名刺立派なんですね。 紙の厚さも違う」

神様「・・・・・・」


神使「神様は神階がランク外ですが、私は神使の中でも最高位ですので」

 ゲシッ ゲシッ

神使「神様、痛いです」


友「少女ちゃん行こ、神様とか言って変だよこの人達」

少女「うん」


 スタスタ
 なんで神様がジャージ姿なの? 男の人はちょっと格好良かったのに残念
 そうだね

 
神様「少女よ! 私はそこの駐車場にいる。 いつでも来てくれ」バイバーイ


少女「・・・・・・」チラッ

神様「」バイバーイ


 少女ちゃ~ん バス来ちゃうよ~

少女「うん」タッ タッ タッ


神使「神様? どういうおつもりですか?」

 ピロリロリン♪

神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ

神使「いえ、私の携帯です」ポチ ポチ

神様「・・・お前さぁ、着信音変えてくれない? それ私と同じなんだよ」


神使「神宮からです。 荷物は明日到着で送ったとのことです」

神様「は? どこに?」

神使「ここです」

神様「ここ駐車場だよ?」


神使「神宮も駐車場になっていることを把握していないんでしょうね」

神様「勘弁してくれよ。 駐車場に住み着いて野宿する神なんて聞いたことないぞ?」

神使「そうですね、神宮に電話してみますか?」


神様「それよりお腹がすいた。 カストのモーニングへ行かないか?」

神使「ありませんよ」

神様「へ?」


神使「カストも、古野屋も、竹屋もありません」

神様「なんで?」

神使「ちなみに、一番近いコンビニはバスで30分かかります」


神様「朝ごはんは? 朝ごはん食べたい!」

神使「来るとき近くに個人商店がありましたから、何か買ってきますか?」

神様「ダッシュだ犬ころ!」

神使「はいはい、じゃぁ大人しく待っていて下さいよ? 動かないで下さいね」タッ タッ タッ


神様「ったく、子供扱いすんなよ・・・」


神様「しかし・・・さっきの少女って」ポチ ポチ


ゆるゆると行きたいです…


神様「・・・・・・」クニャ クニャ

神使「・・・・・・」クニャ クニャ


神様「なぁ、なんで私たちは朝から駐車場でコンニャクを食べているんだ?」クニャ クニャ

神使「近くにあった商店はコンニャク屋でした・・・」クニャ クニャ


神様「コンニャク屋って何だよ」クニャ クニャ

神使「この辺の名産だそうです」クニャ クニャ


神様「・・・・・・」クニャ クニャ

神使「・・・・・・」クニャ クニャ


神様「お前の味噌って私のと違う?」

神使「私のはゆず味噌ですね」

神様「くれ」

神使「半分だけですよ?」


―――2日後・夕方

 ピンポン


少女「?」


 ピンポン  ピンポン


少女「は~い」


 ガラガラ


神様「ねぇ、なんで来ないの?」ブルブル

少女「・・・・・・」


神様「2日も経ったよ? 駐車場で待ってるって言ったよね」ブルブル

少女「・・・失礼します」ガラガラ

神様「まっ、まって!!」ガシッ


少女「何ですか? 私、宗教とかは・・・」

神様「違うの、寒いの! コンニャクなの! 中に入れて!」

少女「こんにゃく?」

神使「ちょっと神様!」


少女「警察呼びますよ?」

神使「すいません、今帰りますので。 ほらっ、神様行きますよ!」グイグイ


神様「お前、先月神宮へ行ったろ」ジタバタ

少女「!?」

神使「え?」


――― 少女宅


少女「お茶です」コトッ

神使「ありがとうございます」


少女「どうぞ」コトッ

神様「あっ、コーラとかある? 炭酸系」

少女「・・・・・・」

神様「うそうそ。 こたつ強にしても良い?」

少女「・・・どうぞご自由に」


神様「それと、はいお土産」スッ

少女「これは?」

神様「どらやの羊羹。 結構グレード高いヤツ」

少女「・・・ありがとうございます」

神様「気にしないで。 後で食べよ?」

少女「はあ・・・」


神使「お土産自分で食べるんですか?」

神様「良いじゃん、高いヤツだし食べてみたいじゃんよ~」


少女「ところで・・・」

神様「ん~?」ズズッ


少女「なんで私が神宮に行ったこと知っているんですか?」

神様「だって、鞄に付いてるお守り売ったの私だもん」

少女・神使「え?」


少女「でも、これ巫女さんに・・・」

神様「驚くなよ? その巫女さんの正体が何を隠そう私なのだ!」


神使「あ~、神様は位がものすごく低いので巫女のバイトをしないと給料が―――」

神様「うっせんだよ、腐れ神使」ゲシッ


少女「・・・本当に神様なんですか?」

神様「その通り! 初めてでしょ! 初めて見たでしょ!!」

少女「でも神宮で会っているんだよね?」

神様「あ~・・・ うん、そうね・・・」


神使「神様は姿を見せないのが常識なんですが、この方は神力がゼロなので姿を―――」

神様「お前喧嘩売ってんの?」ゲシッ


少女「・・・・・・」ジトー

神様「もしかして疑ってる?」

少女「神様にしては若すぎない? どうみても私と同じくらいの年でしょ?」

神様「彼女は今すごく良いことを言った!! 神使、メモ」

神使「騙されないで下さい。 これでもこの神様は―――」

神様「神使くん? その先を言ったらマジでやばいよ?」ギロッ

神使「・・・・・・」


神様「よし、証拠を見せよう」

少女「証拠?」


神様「神使よ、犬ころに変身する芸を」

神使「芸じゃないんですけど・・・」ボンッ

少女「!?」


神様「どうだ?」フフン

少女「うそ・・・」


神使「私は狛犬の神使でして。 一応神使の中では最高位ですので―――」

神様「だから余計な事は喋らなくて良いんだよ!」


少女「嘘みたい」

神様「これで信じてもらえた?」


少女「あなたは?」

神様「へ?」

少女「え? 神様なんでしょ?」

神様「私は・・・ 神様だから力を見せつけたりはしない!」


神使「神力がないので何もできないのです」

神様「・・・神使よ、人の姿に戻れ」

神使「はい」ボンッ

神様「神罰」ゲシッ ゲシッ

神使「痛い、痛いですって! だからそれ神罰じゃなくて体罰ですから!」


少女「あの・・・」

神様「名前は?」

少女「私?」

神様「うん」


少女「少女です」

神様「神様です」

少女「はい・・・」


神様「よろしくお願いします」

少女「よ・・・ よろしく・・・ お願いします?」

神様「よし」

少女「?」


神様「さてと、空いている部屋とかある?」

少女「部屋?」


神様「泊めてくれ」

少女「えっ?」


神様「お願いします! 泊めて下さい!」ドゲザー

少女「そんな急に言われても」


神様「本当はにょろにょろ神社に滞在する予定だったの」

少女「にょろにょろ神社・・・」


神様「うん、でも行ったら駐車場になってたの」

少女「神社は先月取り壊しで駐車場に・・・」


神様「だから・・・ 住むところがなくて。 もう2日も野宿なの、外寒いの! コンニャクなの」

少女「野宿? っていうか、さっきからこんにゃくって何?」

神様「お願い! 何でもするから! 3月までには出て行くから!」

少女「そんなに長く!?」


神様「大丈夫、家賃は入れる。1人月10万でどう?」

神使「10万って、神様の手取り以上じゃないですか」

神様「は? 私は月14万もらってるぞ?」

神使「それ神宮手当と巫女のバイト代が付いていただけですから」

神様「うそ!」


神使「今月から神様の手取りは確か8万5千円です」

神様「8万5千円!? ちょっと待てよ、少なすぎだろ!!」

神使「私に言われても」


神様「ちなみになんだけどさぁ、神使君はおいくらなの?」

神使「私は手取りで58万5千円です」

神様「なんで使いの方が給料高いんだよ! ふざけんなよ!」

神使「階位で基本給が変わりますので」

神様「くそ! 絶対労働組合作ってやる」グヌヌ

神使「そんなことに労力を使わず、神階を上げようとは思わないのですか?」


神様「少女、家賃は先払いで神使が出す」

神使「私!?」

神様「迷惑料と食費光熱費入れて58万5千円を先払いだ」

神使「ちょっと待って下さい。それ私の手取額じゃないですか」


神様「悪い話じゃ無いだろ~?」

少女「・・・・・・」

神様「足りないか?」

少女「えっ?」


神様「あーあ、また野宿かー。 神社さえ残っていればこんな苦労はしなかったのになー」

少女「分かった。 泊めてあげる」

神使「いいんですか?」

神様「よし! 決まりっ!」


神様「神使、あとで銀行に行ってお金を下ろして少女に渡せ」

神使「・・・・・・」

神様「返事は?」

神使「貸しですよ神様?」ハァー


神様「よし、ところで夕飯は食べた?」

少女「まだ」


神様「神使、食事の準備を超特急で」

神使「少女さん、台所お借りしても良いでしょうか?」

少女「あっ、私作ります」


神様「まぁまぁ、神使は犬ころのくせに料理の腕はそこそこだ。 任せてちょ」

少女「はあ・・・ じゃぁ手伝います。 台所はこっちです」

神使「ありがとうございます」

 スタスタ

神様「・・・・・・」


こんな感じでしばらくダラダラと…


神使「お待たせしました」

神様「なぁ、これって・・・」

神使「コンニャクの煮物、コンニャクのオイスター炒め、コンニャクの―――」

神様「もう良い! コンニャク以外が食べたいよ~」ゴロゴロ


少女「もらい物で・・・ 買い物も中々行けなくて」

神使「明日買い物に行きますから。 ワガママはダメですよ?」

神様「まぁ、味噌だけのコンニャクよりは数百倍マシだな。 白米もあるし」

神使「居候の身分で文句を言わないで下さい。 神の品格に関わります」

神様「うっさいな~ 何だよ品格って」


神使「では、頂きましょうか」

一同「いただきます」


神様「なぁ少女、聞いても良いか?」モグモグ

少女「なに?」


神様「その・・・」

少女「・・・・・・ もしかして神宮でお参りし―――」

神様「ここって夜遊ぶ所ってある?」

少女「へ?」


神様「ゲーセンとか、カラオケとか」

少女「ない・・・ かな」

神様「ビデオレンタル屋は?」

少女「ない」


神様「そうかぁ・・・ もしかしてここはド田舎だったりする?」

少女「超が付くほどのド田舎だと思う」

神様「やっぱり」シュン


少女「知っていて来たんじゃないの?」

神様「いや、私の希望は吉祥寺か下北沢だったんだが」

少女「・・・・・・」


神使「神様の神階が低すぎて行けなかったのです」

神様「・・・神使君さぁ、次の人事査定で評価落とすよ?」

神使「え? 神様って人事権もってるんですか?」

神様「これでも私は君の上司だよ? 神だよ?」

神使「・・・・・・」


神様「あ~あ、今まで全部特A+にしてあげてたのにな~」チラッ

神使「神様、明日はステーキなどいかがですか? 腕によりをかけてお作りします」

神様「うそ! ステーキ? 少女、明日のディナーは豪華だぞ!」ピョンピョン

神使「神様? 食事中ですから跳ねたりしないで下さい」

神様「分かってるよ」


少女「ふふっ」

神様「おっ、やっと笑ってくれた」

少女「・・・・・・ ///」プイッ

神様「う~んっ、照れちゃって可愛いぞっ!」ポンポン


神使「神様? お行儀が悪いですよ?」

神様「だから子供みたいに扱うなよ」


神使「ところで少女さんはお一人でお住まいなのですか?」

少女「ここは祖父の家でして」

神使「そうでしたか。 今日はお出かけですか?」

少女「入院中です・・・」

神使「それは・・・ 大変ですね。 ご両親は別の所で?」

少女「私が小学生の頃に・・・」

神使「・・・すいません」

少女「気にしないで下さい」

神様「」モグモグ


神様「流れぶった切って悪いんだけど、お代わりもらっても良い感じ?」

少女「食べるの早いね」

神様「神様なもので///」テレッ

神使「すいません、躾がなっていないもので・・・」

神様「・・・・・・」ゲシッ



少女「お風呂沸いたけど入る?」

神様「良いの?」

少女「うん、熱かったら水で薄めて」

神様「熱いの大好き!」タッ タッ タッ


神使「・・・色々とご迷惑をおかけいたします」

少女「なんか、急すぎて私もよく分かんない」

神使「反省いたします」


少女「それより、何でこんな田舎に?」

神使「お恥ずかしい話なのですが・・・ 神様が神宮でちょっとミスをいたしまして」

少女「ミス?」

神使「はい、その・・・ 2000円のお守りを300円で売っていて・・・ 3年間も・・・」

少女「・・・・・・」


神使「その罰で他の神社に短期出向を命じられたのです」

少女「その出向先がにょろにょろ神社?」

神使「えぇ、比較的位の高い社の中で100年以上神様の立ち寄りがない神社だったもので」

少女「そうだったんだ・・・」



神様「A CHI CHI A CHI~ 燃えてるんだろうか~♪」ヌギヌギ

神様「やべっ、下着の替え忘れた」

 タッ タッ タッ

神様「あれ? この部屋だっけ?」ソー


 全く神様の相手は疲れますよ
 何となく分かるかも・・・


神様(あの腐れ神使、また私の文句たれてんのか?)コソッ



神使「しかし、駐車場になってしまっているとは知りませんでした」

少女「先月の大雨で裏の山が崩れて神殿が潰れちゃったんです」

神使「え?」


少女「こんな田舎だし、修復するお金も集まらなくて・・・」

神使「そうだったんですか」

少女「放置するのも危険だって、取り壊して先月仮設の駐車場に・・・」


神使「宮司さんは?」

少女「土砂崩れに巻き込まれて・・・ 今は入院しています」

神使「そんな! お見舞いに行きたいのですがどちらの病院か分かります?」


少女「日曜日でよければ一緒に行きますか?」

神使「お知り合いなのですか?」

少女「私の・・・ 祖父です」

神使「!?」



 ヘックショイ!


少女「?」

神使「神様?」スタスタ


 ガチャッ


神使「うわっ、神様下着姿で何やってるんです?」

神様「下着の替えをくれ」

神使「もう、神宮じゃないんですからそんな姿でうろつかないで下さい」

神様「なんだよその言い方。 まるで私が普段から下着姿でうろうろしてる見たいじゃないか」

神使「はぁ~ ちょっと待っていて下さい」


少女「・・・可愛い下着ね」

神様「照れるじゃないか~」クネクネ


 ガサゴソ

神使「はいどうぞ」

神様「サンキュ~」タッ タッ タッ


少女「大変ですね」

神使「世話の焼ける神様です・・・」


 ザバーン
 うぎゃー! 風呂A CHIーー!!


少女・神使「・・・・・・」


おやすみなさい…


神様「・・・・・・」ポチポチ


神使「神様、最近よく携帯いじってますよね」

神様「ん~ あ~」ポチポチ


神使「何やっているんです?」

神様「ライン~」

神使「え? 神様って友達いるんですか?」


神様「・・・・・・」プチッ

神様「よ~し! 腐れ犬ころ、今日という今日は許さないぞ!!」ゴゴゴゴ

神使「すっ、すいません今のは言い過ぎました」


神様「私にだって友達くらいいるわ!」

神使「誰とラインしてたんです?」

神様「A子ちゃん」

神使「去年入った巫女のA子ちゃんですか?」

神様「そう。 A子ちゃんとは話が合うんだよね~」


神使「あの子も結構変わってますからね」

神様「“も”ってなんだよ! 犬ころ」


神使「A子ちゃんは神様の正体は知っているんですか?」

神様「さぁ~、巫女だと思ってるんじゃない?」

神使「教えてあげないんですか?」

神様「え~、だって仕事の事なんて関係ないじゃん」


神使「・・・神様って、きちんと巫女の仕事はしているんですか?」

神様「お前、私の神使だろ?」

神様「神宮だと一緒にいることなんてほとんど無いじゃないですか」

神様「そう言えばそうか」


神使「神様は祭儀にも出ないですし・・・ 出られないですし」

神様「神使君さぁ、なんで今言い直したの?」


神使「そうだ、日曜日にょろにょろ神社の宮司さんのお見舞いに行きますよ」

神様「少女のおじいさまね」

神使「神様知ってい―――」

 ガチャ


少女「部屋の準備できたました」

神使「あっ、ありがとうございます」

神様「どうも~」



少女「しばらくこの部屋を使って下さい」

神様「おっ、広いじゃん! 10畳はあるんじゃない?」


神使「神宮の神様の部屋は3畳でしたからね」

神様「そうそう、押し入れの方が広い・・・ ってどんな間取りやねん!」ゲシッ

神使「ちょ、私に八つ当たりしないで下さい」


少女「・・・じゃぁ、おやすみなさい」

神様「おやすみ~」

 ガチャ


おやすみ~


神使「神様? 少女さんのこと知ってるんですね?」

神様「なにが?」

神使「宮司さんの事とか、にょろにょろ神社の事とか」

神様「うんにゃ、そこまで詳しくは知らなんだ」

神使「でも、何か知ってる雰囲気ですよね? 急に少女さんの家にまで来て」


神様「あ~、これ」サッ

神使「神様の携帯って、かなり古い機種ですよね」

神様「そこじゃねーよ。 画面見ろよ」


神使「神宮お願い事リスト?」

神様「そっ、神宮にお参りした人の願い事をリストにしたやつ」


神使「見せて下さい」

神様「ダメ~ これは神様しか見ちゃいけないんです~」ベー

神使「・・・・・・」イラッ

神使「あれ? ちょっとイラッっとした? ねぇイラッとした?」

神使「してませんが」


神様「ほれ」ポイッ

神使「おっとっと」


神様「他のリストは見るなよ?」

神使「おじいちゃんが元気になりますように(69)、お金があつまりますように(51)」


神使「これは?」

神様「少女が神宮に来たときにお参りした内容~」


神使「この後ろの数字は何です?」

神様「あぁ、成就指数だね」

神使「成就指数?」

神様「うん、70以上が神に上がっていくお願いで90以上が神力成就」


神使「それ以下はどうなるんです?」

神様「祈祷、まぁ神には上がらないお願いってこと」


神使「こんなシステム化されているんですね」

神様「10年前からね」


神使「お金が集まりますようにというのは、さすがに低いですね・・・」

神様「まぁ良くある願いだからね。 普通は成就指数10以下なんだわ」


神使「でもこれって神社復興の為の資金って事ですよね」

神様「たぶん」


神使「なんでこんなに成就指数が低いんです?」

神様「もう少し分かるようにお願いしないと、さすがにこっちも分からんよ」


神使「ちなみに成就指数っていうのはどうやって決まっているんですか?」

神様「下に詳細ボタンってあるだろ?」

神使「はい」ポチッ


 ズラッー


神使「これは・・・」


神様「少女が神宮に来た回数とか買ったお守りの種類とか、その他備考なんか色々」

神使「こんな細かく調べているんですか?」


神様「大変なんだな~ これ作るの」

神使「・・・もしかしてこれ神様が?」

神様「だって、わたし他に仕事ないし~」ゴロゴロ

神使「・・・・・・」


神様「成就指数が上がるように書いたんだけど中々数字が上がらんのよ」

神使「全ての参拝者にやっておられるのですか?」

神様「まさか~ そんなの無理無理。 おっ、みかん見っけ」ヒョイ

神様「たまたま私がお守りを売って、なんとなく気になったからってだけ」ムキ ムキ


神使「やっぱりここに来る前から全て知っていたんじゃないんですか」

神様「そんな訳ないじゃんよ、神力ゼロの私をなめんなよ?」パクッ

神使「威張ることではないと思います」


神様「お守り持った彼女見た時は、こっちがビックリしたわ」モグモグ


神様「このみかん すっぱ!」



――― 翌日

 チュン チュン

神使「神様? 朝ですよ」

神様「ん~ ふぁ~」ノビー


神使「なんで寝たときと頭が逆の位置にあるんですか?」

神様「毛布が気持ちいい~ 神宮の宿舎にも毛布欲しいよな」スリ スリ

神使「え? いや・・・ なんでもないです」

神様「・・・もしかしてさぁ、神使君って自室に毛布ある感じ?」

神使「・・・・・・」

神様「そうなんだ・・・ うん、分かってる」シュン


神使「あ~、ほら神様! 今日は良い天気ですよ?」

神様「うん・・・ 神宮に帰ったら毛布買って・・・」

神使「はい」


 スタスタ

神使「おはようございます少女さん」

神様「ふぉ~ ふぁ~ よ~」ノビー

少女「おはようございます・・・」

神使「神様? 朝の挨拶くらいきちんとして下さい」


神様「うひょ~ 見ろよ神使! 朝ご飯出来てる!」

少女「こんなもんで良いかしら?」

神使「申し訳ございません。 本来は居候である私達の仕事なのに・・・」

神様「達じゃない、お前の仕事だ腐れ犬ころ神使」

神使「・・・・・・」


少女「気にしないで下さい、料理するの好きなんで」

神様「私も! でも、あんま料理作らせてもらえないからな~」

神使「この前10人病院に送ってましたよね」

少女「・・・・・・」


神様「それは私のせいじゃない!」

神使「本当ですか?」

神様「牡蠣だろ? 悪いのは牡蠣だろ? 私じゃないだろ?」

神使「神様が毒を盛っているのを見たとか色々と噂が立ってますよ?」

神様「なんだよそれ! めっちゃ犯罪じゃねーかよ!」


神使「しかも、それを見てほくそ笑んでたとか」

神様「私は悪魔かよ! いい加減にせーや」ムキー


神使「はいはい、分かりましたから落ち着いて下さい」

神様「神宮に帰ったら言いふらした犯人絶対見つけてやる・・・」グヌヌ


少女「・・・さめちゃうし、食べよ?」

神使「そうですね、すいません」

神様「そうだな、食べるか」


一同「いただきます」


神様「うまい!」パク パク

少女「ありがとう」


神使「少女さん、宮司さんがご入院されている病院というのは近いのですか?」

少女「バスで駅まで行って、そこから電車で30分くらいです」

神使「結構距離ありますね」

神様「都会?」モグモグ

少女「そこまで都会じゃないかな。 ここよりはずいぶん栄えているけど」


神使「そうだ、銀行に行きたいのですがここら辺にありますでしょうか?」

少女「ATMであれば駅前にあります」

神使「駅前ですか」

少女「日曜日も空いているんで病院に行く時に寄った方が良いと思います」

神使「そうですね。 お家賃の方はそれまでお待ち頂いてもよろしいですか?」

少女「気にしないで下さい」


神様「私も少しお金下ろそっかな~」

神使「こっちへ来る前に通帳記帳して600円しか入ってなかったじゃないですか」

神様「・・・・・・」


神使「今日は少女さん学校ですよね?」

少女「はい。 18時頃には帰ります」


神様「留守は任せろ! ゲーム機ってある?」

少女「ごめん、ないかな」

神様「遊ぶ所って・・・」

少女「ない」

神様「ですよね~ はい! 寝てます!」


神使「神様は他にやることないんですか?」

神様「巫女の仕事なら出来るぞ? お守りでも売るか!」

神使「なんですか、それ・・・ せめてお掃除とかっていう発想はないんですか?」


少女「あっ、バス来るまであと15分しかない。 急がなきゃ」

神様「じゃぁ、もう一杯だけご飯を」

少女「もう食べたの? 早いね・・・」

神様「神様なもので///」テレッ

神使「・・・・・・」

神様「・・・・・・」ゲシッ

神使「ちょ、何ですか? 何も言ってなじゃないですか」


この神様夢に出てきた… 内容は覚えていない


――― 数日後・日曜日


神使「さてと、神様? そろそろ出ますけど準備良いですか?」

神様「おっけ~」

神使「いや、ジャージはダメです」

神様「やっぱり?」


 ゴソゴソ


神使「この服でどうです?」

神様「おっ、いいね~ かわゆい」


神使「あれ? こんな服ありましたっけ?」

神様「A子ちゃんからもらったお下がり~」


神使「立場が逆じゃないですか? 明らかにA子ちゃんの方が年下ですよね?」

神様「・・・・・・」ゲシッ


神使「お待たせしました」

少女「じゃぁ、いきましょうか」


 テク テク


神様「しかし、何もないね~」

神使「神様? 失礼ですよ」

少女「でも、本当のことだし」ピタッ

神様・神使「?」


神様「どったの? バス停ってもっと先でしょ?」

少女「あっ、休日だからバス予約制でココで乗せてくれるの」

神様「まじで! 家の前まで来てくれんの?」


 プップッー


神使「本当だ、来ましたね」

神様「でもバス? ワゴンだよねあれ」


 ガラガラ


運転手「駅で良いの? 少女ちゃん」

少女「はい、おじいちゃんのお見舞いで」

運転手「そちらさんも?」

少女「はい、祖父の・・・ お知り合いの方達です」

神様「神様です」ドヤッ

運転手「・・・・・・」


神使「すいません。 さっ、面白くない冗談言っていないで早く乗って下さい」

神様「はぁ~っ??」


運転手「他に予約無いから駅までノンストップで行くよ?」

少女「ありがとうございます」


 ブーン


――― 駅前


神様「気持ちわる~」

神使「中々豪快な運転でしたね」


少女「大丈夫?」

神様「大丈夫。 神使、コーラ買ってきて」

神使「お茶とかの方が良いんじゃないんですか?」

神様「どうせ買うなら、甘くて炭酸入っている方が得した感じじゃね?」

神使「・・・お茶買ってきます」


少女「あっ、ATMはそこの角にあります」

神使「電車の時間は大丈夫ですか?」

少女「まだ大丈夫です」


神使「では行って参ります。 神様? 大人しくしていて下さいよ」タッタッ

神様「だから、私は子供じゃないっつてんだろーが」


少女「神使さんいい人ですね」

神様「騙されちゃダメ、あれは腐れ犬ころだからね? 悪の使いだから。 邪犬だから」

少女「そうは見えないんだけど・・・」


神様「それより、おじいさまの具合はどうなの?」

少女「あんまり良くないかも」

神様「そっか」

少女「うん・・・」


神様「すまないな。 わざわざ神宮まで来てお参りしてもらったのに・・・」

少女「元々気休め程度だったし」


神様「役立たずでごめん・・・」

少女「・・・・・・」


 タッ タッ タッ

神使「お待たせいたしました。 はい神様お茶です」

神様「ありがとう」

神使「!? どうしたんです? そんなに体調悪いんですか?」

神様「は?」

神使「神様が素直にお礼を言うなんて・・・」

神様「うっさい、犬ころ!」


神使「? 少女さんもお茶どうぞ」

少女「ありがとうございます」


神使「それと、これ家賃ですのでお納め下さい」スッ

少女「でもこんなに・・・」

神様「気にする必要ナッシング。 正当なお金だ」

少女「・・・・・・」


神様「受け取ってもらわないとこっちが困る」

少女「・・・じゃぁ、お預かりします」

神使「では駅に行きましょうか」

少女「はい」



――― 電車内


 ガタンゴトン


神様「Zzz・・・」カックン カックン


少女「なんか、全然神様って感じしませんね」

神使「お恥ずかしい限りです」


少女「でも、本物なんですよね?」

神使「神力がゼロで姿も見えてますけど、間違いなく神籍を有した神様ですね」


少女「なんだか不思議」

神使「私も思います」


少女「神使さんもそう思ってるんですか?」

神使「私は神宮に3年前に赴任したのですが・・・ 初めてお目にかかったときは、びっくりしました」

少女「?」

神使「巫女の格好でお守りを売っていたんですから。 しかも他の巫女さんと一緒になって」

少女「他の神様はしないんですか?」

神使「ありえませんね。 人や神使と普通に会話をする神なんてこの方くらいかと」

少女「へー、意外です」


神様「Zzz・・・」コテッ

少女「あっ」


神使「神様? 少女さんに寄りかかっちゃダメですよ?」ユサユサ

神様「んぁっ・・・ ごめん」ボー

少女「気にしないで」


神様「ん~ あとどのくらい?」

少女「次の駅かな」

神様「そう。 ふあぁ~~」ノビー


神使「神様? 人前でそんな大あくびなんて、はしたないですよ?」

神様「一々うるさいな~ 少女も何か言ってやってくれ」

少女「私も神使さんと同じ意見かな」

神様「・・・・・・」



―――うめうめ病院

神様「大きな病院だな~」

少女「ここら辺では一番大きいかな」


神様「おっ、看護師さんだ。 ナース服かわゆいな~」

神使「神様? あんまり恥ずかしいことはしないで下さいね」

神様「わかってるよ。 なんだよその言い方」


神使「そこの売店でお見舞いの果物でも買っていきましょう」

少女「あっ、気になさらないで下さい」


神様「私はあの大きい網々のメロンが良いな」

神使「神様が食べるものじゃないんですけど」


 スタスタ

少女「この部屋です」

神様「あ~ 念のため私達が神と神使って言うことは秘密にしておこう」

神使「そうですね」

少女「わかりました」


 ガラガラ


少女「おじいちゃん? 起きてる?」

宮司「少女ちゃんか?」

少女「うん、どう? 体の具合は」

宮司「あ~、天気が良い分いくらかマシだな。 ん? そちらの方は?」


神様「神社の方から来ました」

神使「なんですか、その胡散臭い言い方は・・・」

少女「・・・・・・」


神使「すいません。 神宮から使いで参りました」

宮司「神宮? これはわざわざ」ヨイショ

神使「あっ、そのままで」


宮司「可愛らしいお嬢ちゃんも神宮の方ですか?」

神使「え~と・・・ うちの巫女です」

神様「可愛いだなんて///」クネクネ


神使「この度は大変でしたね」

宮司「大切な社を申し訳けない」


神様「社のことなど気にする必要は無いぞ? 神宮の方でなんとかする」

神使「そんな上から目線なしゃべり方したらバレちゃうじゃないですか」ボソッ

神様「うっ・・・」


少女「この果物お二人からもらったんで台所で切ってくるね」スタスタ


宮司「お嬢さんの方は、もしかして神宮の神様ですかな?」

神様「あっ、バレた?」

宮司「やはりそうですか。 50年ほど前、神宮で5年間奉職していましたので」

神使「そうなんですか!?」


神様「もしかして、私の事知ってたりする?」

宮司「私は事務方でしたので、でも何度かお見かけしました」

神使「神様って、そんなに前から巫女のバイトしてたんですか?」

宮司「巫女? とんでもない! 大変立派な神様でしたよ?」

神使「え?」


神様「うわー! 昔の話はダメ! 絶対!」ゲシッ

神使「痛っ! え? なんで私蹴られたんですか??」


宮司「こんな老いぼれのためにわざわざ・・・ お忙しいのに申し訳ございません」

神使「お気になさらず」

神様「そうそう、全然忙しくないし。 あっ、こいつは犬ころ神使」

神使「申し遅れました。 私、神様の使いで狛犬の神使と申します」

宮司「おや、神使さんまで来て頂けるなんて。 ありがとうございます」


神様「あまり体調がすぐれないようだな」

宮司「正直・・・ 入院前はピンピンしていたのですが。 やはり年ですので一度体を壊すと・・・」

神使「そんなことおっしゃらずに」


宮司「神様と神使様に会えたんですから、いつお迎えが来ても思い残すことありません」

神様「私達なんかに会っても冥土の土産にもならないぞ? そこら辺歩ってるし」

神使「そうですよ、少女さんだってまだ若いんですから」

宮司「ありがとうございます」


神様「すまないな~ にょろにょろ神社は100年以上神の立ち寄りがなかったそうだな」

神使「神宮からの達しで立ち寄りを行うために来たのですが・・・」

宮司「そうだったのですか」


神様「もう少し早く来ていればなぁ」

宮司「いいえ。 跡取りもいませんし・・・ きっとこうなる定めだったのでしょう」

神使「少女さんはお継ぎにならないのですか?」

宮司「あの子には、こんな田舎で一生を終えて欲しくは無いのです」

神様「・・・・・・」



 ガラガラ


少女「おじいちゃん、果物切ってきた」

神様「うまそ~! メロン一切れもらって良い?」

宮司「どうぞ、どうぞ」


神使「神様? さすがにそれはどうなんですか?」

神様「だから遠慮して一切れって言ったじゃん」

宮司「神様と一緒に食べるだなんて、なんだか不思議ですな」


少女「あれ? バレてる?」

神使「はい、バレた原因は神様です」

神様「肝心な部分を端折って話すなよ。 あむっ」モグモグ



――― 病院帰り道


 テクテク


神使「宮司さんお元気そうでよかったですね」

神様「お前の目は節穴だな」

神使「え?」


神様「かなり無理してたぞ?」

神使「すいません、気がつきませんでした」

少女「・・・・・・」ギュッ


神様「・・・・・・」チラッ

神使「? あっ、それ神宮のお守りですね」

少女「え? ・・・はい」

神様「私が売ったやつ~」


神使「神様が直々にお授けされたお守りですから御利益満点ですね」

神様「・・・・・・」ゲシッ

神使「痛っ」


神様「空気読めよ神使」

神使「すいません・・・」


神様「謝るくらいなら私と少女にステーキご馳走しろ」

神使「またですか?」

神様「お店でステーキが食べたいんだよ!」


神使「はぁ・・・ 少女さん、お昼はステーキでも良いですか?」

少女「私はなんでも・・・」


神様「犬ころの奢りだ。 国産黒毛和牛のサーロイン400gとか注文しような」

神使「どんな胃袋してるんですか・・・」

神様「神様なもので///」ゲシッ

神使「痛っ!」


―――数日後


 ジリリリ ジリリリ


少女「はい、もしもし・・・ えっ・・・」

神使「?」


少女「そんな・・・」



神様「燃えろっ! いい女~♪ 燃えろっ! ナッツコ~~♪」テクテク


神様「はぁ・・・ スーパーまで往復1時間って拷問だろ」テクテク

神様「ただいま~」ガラガラ


 スタスタ


神様「みんなが大好きなかわゆい神様がお帰りですよっと」ガチャ

 バタンッ!

神様「ぐへっ!」ビタン

少女「はっ、はっ、はっ」ダッ ダッ ダッ


神使「少女さん!!」

神様「痛い・・・」


神使「神様! 大変です!」

神様「ほんとだよ・・・ 痛つつ」


神使「宮司さんの容体が!」

神様「!!」



神使「先ほど病院から電話があって宮司さんが危篤状態になったと」


神様「・・・お守りがないな」

神使「お守り?」


神様「少女の鞄に着いていたお守りだ」

神使「そういえば飛び出す前に鞄をゴソゴソしてました」

神様「・・・・・・」


神使「私達も向かいますか?」

神様「ここで待とう」

神使「・・・分かりました」



―――翌日


 ガラガラ


神使「少女さん!?」

神様「」


 タッ タッ タッ


少女「・・・・・・」

神使「少女さん! 宮司さんの御容体は?」


少女「意識・・・ 不明です・・・」ギュッ

神様「・・・・・・」


神使「取りあえず家の中へ」

神様「少女・・・ その・・・」


少女「何が・・・」


少女「何が神様よ! こんなお守り効きもしないじゃない!」バンッ

神様「・・・・・・」


少女「神社は取り壊されて、おじいちゃんは意識不明に・・・ なんでよ・・・」

神様「・・・・・・」


神使「少女さん、落ち着いて下さ―――」

少女「出て行って!」


神使「・・・・・・」

少女「何も守ってくれないじゃない! 嘘・・・つき・・・」タッ タッ タッ


神使「少女さん!」


神様「・・・・・・」

神使「神様・・・」


神様「行くぞ」

神使「どちらへ?」


神様「・・・出て行けと言われたんだ」スタスタ

神使「あっ、神様!」スタスタ


 ガラガラ


少女「うっ・・・ うっ・・・」


 トテトテ

神様「・・・・・・」シュン

神使「神様?」

神様「・・・・・・」


神様「神使よ、この近辺で一番神力の強い神はどこにいる」

神使「うごうご山にある、うご山神社の主神様かと・・・」

神様「うごうごか・・・」


神使「神様? 何を考えているんです?」

神様「・・・・・・」


神使「それよりこれからどうするんですか?」

神様「疲れた、寝る」


神使「どこで寝るのですか?」

神様「・・・・・・」


――― 深夜・駐車場


神使「神様?」

神様「・・・・・・」ポチポチ


神使「携帯なんかいじって何しているんです?」

神様「・・・・・・」ポチポチ


神使「今夜は冷えます。 寒ければ私を抱いていて下さい」

神様「・・・・・・」ポチポチ


神使「・・・おやすみなさい神様」

神様「・・・・・・」


 モソモソ


神様「・・・・・・」ギュッ

神使「・・・・・・」



――― 翌日


 チュンチュン


神使「う~ん・・・ 朝?」


 ゴソゴソ


神使「神様?」


 ゴソゴソ


神使「お出かけですか?」

神様「買い物」

神使「今準備しますので少しお待ち下さい」

神様「いや、私一人で行ってくる」


神使「まさか、うご山神社じゃないでしょうね?」

神様「うごうごは・・・ 明日の朝に行く」


神使「ではどちらへ?」

神様「ん? あぁ~」


神使「神様?」

神様「大丈夫だ。 お土産を見繕ってくるだけだ」


神使「ハァ・・・ お金は持っているんですか?」

神様「ぅ・・・」


神使「何を買うのか知りませんが、これで足ります?」サッ

神様「うん」


神使「お戻りは」

神様「夕方には戻る。 私の正装を用意しておいてくれるか?」

神使「分かりました」


神様「じゃぁ行ってくる」テクテク



―――翌日・うごうご山参道


神使「結構急な山道ですね」

神様「はっ はっ」ゼェ ゼェ


神使「神様、大丈夫ですか? 少し休憩をされては・・・」

神様「はっ はっ」ゼェ ゼェ


神使「・・・・・・」



――― 山頂・うご山神社


神様「は~ ふぅ~」

神使「やっと頂上ですね」


 スタスタ


神様「おい、そこの巫女よ」

巫女「?」


神様「私は神宮神籍、内宮付きの神様である」

巫女「神宮!?」

神様「ここの神に用があって参った。 主様に取り次ぎを願いたい」

巫女「はい、少々お待ち―――」

主神「だれかと思えばお前か、久しぶりだな」パッ

巫女「主様」


神様「お願いがあって来た。 話を聞いて欲しい」


主様「隣は?」

神様「私の神使だ」

神使「はじめまして。 神様の使い、狛犬の神使と申します」


主様「巫女よ、下がっていろ」

巫女「はい」スタスタ


主様「その格好・・・ お前巫女にでもなったのか?」

神様「・・・・・・」イラッ


神使「神様は神階ランク外のため礼装がなく申し訳ございません」

神様「・・・・・・」ゲシッ

主様「ははははっ、これは愉快だな」


神様「神階など不要だ」

主様「ほぅ、相変わらずだな。 さて、何用かな?」


神様「にょろにょろ神社の宮司を助けてもらいたい」

主様「ダメだ」

神様「・・・・・・」


主様「人の生死をいたずらに弄るのは規定違反なこと位お前も知っているであろうが」

神様「そこを理解した上でお願いしている」

主様「お前のその発言自体が神としては重罪だぞ?」

神様「承知している」

主様「はぁ~」


神様「お願いします!」

主様「頭を下げてもダメなものはダメだ」

神使「神様・・・ さすがにそのお願いは無茶すぎます・・・」


神様「・・・・・・」ピラピラ

主様「? なんだその紙切れは」


神様「聖騎魔II 黒ミサコンサート」ボソッ

主神「」ピクッ


神様「全席死刑ツアー アリーナ席、前列」ニヤッ

主様「」ピクッ


神様「主様、もう一度お願いします。 宮司をお助け下さい!」ピラピラ

主様「ケーブルカーを使わずよくここまで歩いてきた。 大変だったであろう」

神様「主様へ謁見するのにそのような失礼は出来ません!」ピラピラ

主様「よかろう、褒美だ。 その願い聞き入れよう」

神様「ありがとうございます!」ピラピラ

神使「・・・・・・」


神様「それと主様、もう一つご相談が」

主様「なんだ、まだあるのか?」

神様「デモン閣下ディナーショー S席チケット」ピラピラ

主様「なんだとっ!?」クワッ!

主様「失礼。 お前との仲だ、何でも言うが良い」

神様「ありがとうございます!」ピラピラ

神使「・・・・・・」



 ゴウン ゴウン


神使「帰りはケーブルカーなんですね」

神様「もうあいつに用はないし~」


神使「賄賂だなんて犯罪ですよ?」

神様「何のこと言ってんの?」


神使「コンサートチケットと交換で宮司を助けるだなんて」

神様「は? あれは歩って山頂まで行った褒美だぞ?」


神使「バレたらヤバいですよ?」

神様「バレねーよ、ビビってんじゃねーよ犬ころ」


神使「神様?」

神様「・・・・・・」


神様「なぁ、神使」

神使「なんです?」


神様「神があまり人と接触を持たない理由って知っているか?」

神使「え?」

神様「どの神も若い頃は積極的に人と関わりを持つんだよ。 人が嫌いな神なんかいない」

神使「・・・・・・」


神様「でも・・・ 神のくせに身近な一人の願いすらまともに叶えられない」

神使「・・・・・・」


神様「何回も、何百回も、何千回も・・・ その繰り返しを味わうんだ。 私達は長生きだからな」

神様「そして、いつしか距離を置くようになる。 いや、遠くから見守る存在になると言った方が良いか」

神使「神様・・・」


神様「私はそれでもいいと思っている。 間違っていないしな」

神様「でも・・・ 私は・・・」


神様「今、私の手の届く範囲で神として手を差し伸べなければならない者がいる」

神様「だから私はその者に全力で手を差し伸べる。 力がない分どんな手を使ってでもな」

神様「それが私のやるべき事であり、存在できるたった一つの理由だ」

神使「神様・・・」


神様「だから、神使よ」

神使「はい」


神様「下に降りたら売店で、いか焼きとりんご飴を奢ってくれ」フッ

神使「・・・・・・」


神使「シリアスは最後まで続けないと寒いですよ?」

神様「・・・・・・///」



―――翌日・病院


少女「おじいちゃん・・・」


 トントン


少女「・・・はい」


 ガラガラ


?「にょろにょろ神社の宮司はここで良いのか?」

少女「そうですが、祖父のお知り合いの方ですか?」

?「あ~ 何というか・・・ 神社の方から来た」


少女「・・・・・・もしかして神様のお知り合いの方ですか?」

?「なんだ、あいつを知っているのか?」

少女「・・・・・・」コクッ


主神「じゃぁ話は早い。 うごうご神社の主神だ」

少女「うごうご?」


主神「ちょっと入らせてもらうぞ?」スタスタ

少女「あの・・・」



主神「なるほどな。 さてと、少女よ少し下がっていてくれ」

少女「?」

主神「このじいさんをこれから助ける」

少女「えっ!?」


主神「では、いくぞ」


 ポワッ ポワッ ポワッ


主神「久しぶりだから腕が鈍っていないと良いが」


 ポワッ ポワッ ポワッ


主神「まぁこれで大丈夫だろう。 じゃぁワシは帰るぞ」スタスタ


少女「あの!」

主神「なんだ?」

少女「一体何を?」

主神「その者の生命力を高めた。 時期に目覚めるだろう」

少女「えっ?」


主神「腐れ縁のバカ神から頼まれたのでな」

少女「神様のことですか?」


主神「昨日の朝にワシの所に来てな。 お前のじいさんを助けろと」

少女「神様が・・・」


主神「礼なら私でなくあのバカに言え。 にょろにょろ神社跡の駐車場でしょぼくれているぞ」

少女「なんで神様がそんなことを・・・」

主神「神に願い事をしておいて変なヤツじゃな」


少女「でも、私・・・ 神様に酷いことを」

主神「飯でも作ってご馳走してやれ。 あいつは大抵それで何とかなる」

少女「・・・・・・」


主神「それと、そのじいさんの目が覚めたら、うご山神社の宮司にするから言っといてくれ」

少女「?」


主神「じいさんの命を助ける。 じいさんの再就職先を斡旋する。 そう約束した」

少女「そんなことまで・・・ 神様が・・・」グスッ


主神「あのバカの前でそんな暗い顔や涙なんか見せるなよ? あいつはそういうのが一番苦手だ」

少女「・・・・・・」コクッ

主神「だから、あいつの前では明るく笑っていてやってくれ・・・ って何言ってんだワシは」ボリボリ


主神「じゃぁな。 あいつとの縁は切るなよ」

少女「ありがとうございます」フカブカ

主神「だから礼はあのバカに言えって。 じゃぁ・・・ そうだな、また会おう」ガラガラ



―――駐車場


神様「お前さぁ~ コンニャク以外の物を買ってこいよ!」ゲシッ

神使「付近にコンニャク屋さんしかお店がないんですから我慢して下さい」


少女「神様・・・」

神使「少女さん!」

神様「ん? 少女? って!」

少女「・・・・・・」


神様「あっ、ごめん! すぐこの町から出て行くから」

少女「あの・・・」

神様「分かった! 今すぐ片付ける! ほら神使ブルーシートどかせよ!!」ゲシッ

神使「痛っ」


少女「違う!!」

神様・神使「!?」


少女「違うの・・・ その・・・」

神様「?」


少女「・・・ありがとうございます! それとごめんなさい!」

神様「え? なに? どしたの?」


少女「さっき、うご山神社の主神さまに・・・」

神様「うごうご? アイツに会ったの?」

少女「今日の朝に病室へ来て・・・」


神様「あいつが人前に現れるなんて珍しいな」

神使「そうなんですか?」


神様「まぁ、どうせアイツのことだから私の悪口でもほざいてたんでしょ」

少女「そんなことない」フルフル


神様「うごうごには、聖騎魔IIのチケット渡しに行っただけだって」


少女「私・・・ 神様に失礼なことを言って・・・ どうしよう・・・」

神様「本当のことだし、気にしなくても大丈夫よん」


少女「おじいちゃん、来週には退院できるって」

神様「そう、よかったね」ニコッ


少女「おじいちゃんの再就職先も神様が斡旋してくれたって」

神様「あ~ うご山神社は神主不在で派遣の巫女しかいなかったからね~」

少女「ありがとうございます、神様」

神様「いや、私は何もしてないんだけど・・・」


少女「・・・・・・」

神様「少女?」


少女「その・・・ 料理作ったんだけど食べに来て・・・ もらえないでしょうか」

神様「うそ! いいの?」

少女「はい、ぜひ来て下さい」


神様「行く行く! コンニャク飽きちゃってさ~」

神使「ダメですよ神様? そんな失礼なことを言っちゃ」

神様「うるさいよ腐れ犬ころ」


少女「本当に・・・ ありがとうございます」


神様「ねぇ、敬語はやめて? 友達として接して欲しいな」ニコッ

少女「・・・ ありがとう」グスッ

神様「泣くより笑っていた方が良いと思うよ? 私はそっちの方が嬉しい」

少女「そうだね」


神様「はい」スッ

少女「?」

神様「携帯。 ラインやってる? ふるふるしよ?」

少女「うん」

神様「やった! 二人目だ!」フルフル フルフル


少女「神様? ガラケーじゃ、ふるふる出来ないと思う・・・」

神様「・・・・・・」フル



―――少女宅


神様「いや~ ご馳走様!」

少女「お粗末様でした」

神使「やはり温かいご飯は美味しいですね」


少女「お茶です」コトッ

神使「ありがとうございます」


少女「神様はコーラで良い?」

神様「分かってるね~」

少女「はい」シュワシュワー

神様「ゴクゴク あ~ 美味しい~」ゲップ


神使「神様?」

神様「分かってるよ、下品なんだろ?」


神使「それもそうなのですが・・・ 明後日ここを離れることになりました」

少女・神様「え?」


神使「先ほど神宮から連絡がありまして」

神様「ずいぶんと急だな。 っていうか私にはそういう連絡は来ないの?」

神使「・・・・・・」


少女「まだこっちに来てそんなに経っていないですよね?」

神使「今後のこともありますし、おじいさまが退院するまでは残りたかったんですけどね」

神様「後は神宮の方で何とかすんでしょ。 私達よりは役に立つはずだし」

少女「神様・・・」


神様「少女よ、私との別れは辛いであろう・・・ しかし私は少女の今後を影―――」

少女「私、高校卒業したらおじいちゃんの後を継ぐ!」

神様「はい?」


少女「神主さんってどうやったらなれるの?」

神様「・・・・・・」

少女「やっぱり修行とかしないとダメなのかな」


神使「私もあまり詳しくはないのですが、専門の養成機関や大学などがあるようです」

神様「え? そうなの?」

神使「神様、知らないんですか?」

神様「だって神宮の玄さんなんか草野球やっているときに宮司に誘われたって言ってたぞ?」

神使「それは・・・」


少女「野球できないとダメ?」

神様「いや、2年前入ったB夫は神宮に来る前はハッカーしてたって言っていた」

神使「それ大丈夫なんですか・・・」


少女「一芸なの?」

神使「違います」


神使「少女さんはおじいさまが神職ですし、推薦状があれば養成所に入れると思います」

少女「そうなんですか?」

神使「神様が推薦状を付けてあげれば今からでも間に合うんじゃないですか?」

神様「え~、私の推薦状なんか意味ないだろ」

神使「一応は神様ですし・・・ その位は・・・」


神様「いや、絶対無いと思う。 逆効果になる可能性の方が高い」

神使「あ~ それもそうですね」

神様「そこは否定しろよ」ゲシッ


神使「でも少女さんは高校卒業されたらどうするつもりでいたのですか?」

少女「おじいちゃんの神社のお手伝いをと」

神様「あ~ でも、もう無いよね・・・」

少女「うん」


神使「でも神職だなんて、おじいさまがなんて言うか」

神様「そこは関係ないんじゃない? 少女の人生だし」

神使「そうですね」


少女「それに、この前神様が私の夢に出てきたんだよ」

神様「私?」

少女「うん、凄く神様オーラ全快でちょっとイメージと違ったけど」

神様「うそ、私かわゆかった?」

少女「後ろの光がまぶしくてあんまりよく分からなかったけど。 でもお日様みたいに温かかった」

神様「・・・・・・」


少女「で、神様が私に“立派な<かみしょく>になるがよい”って」

神使「かみしょく? しんしょく(神職)じゃないんですか?」

少女「そうなのかな」

神様「・・・・・・」


神使「神様って夢枕に立てるんですか?」

神様「えっ? 私は・・・ほら、神力ないから夢に入れないんだけどさぁ・・・」

神使「そうですよね。 そんな神様っぽいこと出来ませんよね」

神様「・・・・・・」ゲシッ


神使「でも、少女さんが神職になる頃はにょろにょろ神社も復興されているでしょうしね」

少女「でも、復興には凄くお金がかかるみたいで」

神様「神宮が復興費用を出す。 再建までには何年かかかると思うけど」

少女「えっ?」


神使「話はついています。 近いうちに神宮から復興に関する連絡があると思いますので」

少女「そんなことまで・・・」

神様「仕事だから、し・ご・と! 気にする必要ナッシング」


神様「でも、神主だなんて・・・ 本気?」

少女「うん、絶対揺るがない」


神様「・・・まぁ、好きにしてちょ」



 だからお願いだって!
 良いじゃんよその位さぁ~


神使(ん? 神様? こんな遅くに携帯で誰と・・・)コソッ


 いや、1人くらい入れてあげてよ。
 すごく優秀な子だってば~
 頼むって お前が神勅!とか言えば良いだけなんだから
 なんでも言うこと聞くからさぁ~
 本当? いや~ありがとう!
 うん、じゃぁよろしくね。 バイビー


神使「・・・・・・」フフッ



――― 翌日


神様「あの~ 少女?」

少女「なに?」

神様「本当に神主になるの?」

少女「うん、今年はもう間に合わないけど来年行こうかと思って」


神様「その~ なんか私の知ってる神社が神主候補を募集しているようで・・・ いく?」

少女「えっ? 本当に!?」

神様「少し遠いしここを離れないといけなくなるだろうから無理にとは言わなけどさ」


神使「へぇ~、珍しいですね。 どこの神社なんですか?」

神様「・・・神宮」


少女「神宮って、もしかして・・・」

神使「神社の頂点みたいな所ですね。 普通じゃ入れませんよ?」


神様「たまたま空いていたみたいで・・・ ちょうど相談を受けて・・・」

神使「へぇ~ そうなんですか。 そんな採用枠初めて聞きました」


神様「お前さぁ、なんか言いたいことあるの?」

神使「いいえ、特にありません」ニコッ

神様「・・・・・・」イラッ


少女「ありがとう・・・ でも私ばっかり神様にこんな沢山お願いを叶えてもらって悪い気が・・・」

神様「は? 私は仕事しただけだし、これで給料もらってるから気にする必要は無いと思うけど」


少女「でも・・・ これはお返しします」スッ

神様「・・・・・・」


神使「これは家賃としてお支払いしたお金ですか?」

少女「はい、これはお返しさせて下さい」

神使「気になさらないで下さい。 一度お渡した物ですし」

少女「でも」


神様「おじいさんが退院したら旅行にでも連れて行ってあげれば~」

少女「・・・・・・」


神様「残りは入院費にでもまわせば良いし」

少女「・・・・・・」


神様「気にするなって~、それとも神様が渡した物をいらないと言って返すつもり?」

少女「ありがとう」


神様「神宮へ行くんだろ? 色々お金もかかる。 私からの選別と思ってくれ」ニコッ



神使「神様? それ全額私の給料ですけどね・・・」



――― 夕方


神使「さてと、神様忘れ物はないですか?」

神様「うん」


神使「では、少女さん。 お世話になりました」

少女「また会えるかな」

神様「約束する。 絶対に会える」

少女「うん、楽しみにしてる」


神様「そうだ少女、これ」スッ

少女「お守り・・・」


神様「私が作ったヤツだから御利益ないんだけど」

少女「これって神様が作ったやつだったの?」

神様「御利益なしは実証済みだけど、こんな物しか作れないし」

少女「ありがと・・・ すごい御利益あったよ。 一生大切にする」

神様「いや、そこまでする必要は無い」


神使「神様の神階が上がったら作り直してあげて下さい」

神様「うっせーよ、犬ころ」ゲシッ


少女「ふふっ」ニコッ


神様「じゃぁ、暇なときラインちょうだいね~」

少女「分かった」


神使「では少女さん、お元気で」

神様「ばいば~い」


――――
―――
――



 ガタンガタン


神使「少女さん良い子でしたね」

神様「あれ? ほの字?」

神使「からかわないで下さい。 でも良い神職になれそうですね」


神様「あぁ、きっと・・・ 良い神様になるな」ボソッ

神使「何か言いました?」

神様「いいや、順番的にはお前が先だな」

神使「順番? 何のですか?」

神様「なんでもない」ニコッ

神使「?」


神使「そうだ、神様機構から懲罰書が届いてますよ?」

神様「・・・・・・」


神使「当面、全国の神職不在神社の管理を命ずる だそうです」

神様「えっ?」


神使「それと人事院からも届いています」

神様「はっ?」

神使「半年間給料30%カットを命ずる だそうです」

神様「30%オフって何だよ! 手取りいくらになるんだよ!」

神使「6万切るでしょうね」

神様「無理、っていうか何でバレてんの?」

神使「さぁ?」

神様「お前、まさかチクったんじゃないだろうな?」

神使「私は何もしてませんってば」

神様「なんだよー! なんでだよ! 完璧な作戦だったのに~!」ムキー


神使「あとですね」

神様「なんだよぉ~ まだあるのかよぉ~」


神使「クレジットカードの明細に身に覚えのない項目があるんですけどね?」

神様「・・・・・・」


神使「ヤホーかんたん決済という項目で12万ほど」

神様「・・・・・・」


神使「身に覚えありますか? 神様」

神様「・・・・・・」


神使「最近何か落札されましたか? 例えばコンサートチケットとか」

神様「・・・・・・」


神使「分かりました。 神様の給料から天引きしておきますね?」

神様「えっ?」


神使「来月まで給料ありませんよ?」

神様「狛犬さま~ 堪忍じでぐだざい・・・」

神使「あきらめて下さい」

神様「うぅ・・・」


神使「と言う訳で、このまま次の勤務先に行きましょう」


神様「吉祥寺です?」

神使「まさか~」


神様「下北沢です?」

神使「そんな訳ないでしょうが」


神様「どこです?」

神使「着いてからのお楽しみです」



神様「いやだー! おしゃれな街に行きたいよーーーーー!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#1 ―END


たいした物語でもなく・・・ すいません
反省!(ドゲザ)


~前回のあらすじ~


神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい神様だ!」

神使(訳)「神力ゼロの神様は、神宮でミスを連発し地方へ短期出向を命じられたのでした」


神様「私の神々しい力を待つ者達を救うべく、今日も旅を続ける」

神使(訳)「立ち寄り先で、問題解決のため別の神様へ賄賂を送ったことがバレて無期出向に」


神様「よし! 今日はお前の願い叶えてしんぜよう」

神使(訳)「問題を起こしにあなたの所へ行く可能性があります。 逃げて下さい」



【#2】


 プシュー


神使「神様、ホームに段差がありますから気をつけて降りて下さい」

神様「・・・・・・」


神使「いや~ 疲れましたね」

神様「おい、腐れ神使」

神使「?」


神様「なんだよここ」

神使「しかしか高原駅です」

神様「駅名を聞いたんじゃねぇよ」


神使「いや~ 想像以上に凄いですね」


神様「木しかねぇじゃん、人いねぇじゃん、秘境じゃん!」

神使「この景色、ひのひの村なんか比べものになりませんね」ハハッ


神様「んがーー! なにコレ、嫌がらせなの? ねぇ、悪質な虐め?」


神使「さて、暗くなる前に行きますよ」

神様「マジかよ~ 勘弁してくれよ~」



 テクテク


神様「なぁ、もうだいぶ歩いたけど民家ゼロなんだけどさぁ」

神使「そうですね」

神様「そうですね、じゃなくてさ~ こんな所で何すんだよ」


神使「暗くなってきましたし、懐中電灯つけますか」ポチッ

神様「うわ~ 気味悪いな」


神使「あっ、お社が見えましたよ」



神様・神使「・・・・・・」


神様「神使君、帰らない? コレ絶対ヤバいって」

神使「さすがにちょっと引きますね」

神様「間違いなく幽霊出るってコレ、帰ろ? 怒られても良いから帰ろ?」

神使「きっと怒られるだけじゃすまないですよ?」


神様「でもさぁ~ こんなの無理だって」

神使「取りあえず入りましょう」

神様「嘘だろ~」



 ギィー


神使「・・・・・・」

神様「あっ、無理無理。 床ねーじゃん」


神使「ご神体も見当たらないですね」

神様「よし! ご神体もないし帰ろう!」

神使「神宮に問い合わせてみます」スッ

神様「も~ はやくしてちょ」


神使「・・・圏外ですね」

神様「だよね~ 人いないもん」


神使「神様の神力で神宮に問い合わせできませんか?」

神様「喧嘩売ってるのか犬ころ」ゲシッ


神使「暗くなってきましたし、ここに泊まります?」

神様「はははっ、お前埋めるぞ?」ギロッ


神使「・・・・・・今日は戻って別の場所で宿に泊まりましょう」

神様「よっしゃ、1つ前の駅がしおしお温泉だったよな」


神使「ではそちらへ行きますか」



 テクテク


神使「今から行って泊まれますかね? もう19時まわってますし」

神様「・・・・・・」


神使「神様? どうしました?」

神様「つけられてる」ボソッ

神使「!? ・・・後ろですか?」ボソッ

神様「あぁ」

神使「気付きませんでした、申し訳ありません」


神様「取りあえず駅まで向か―――!? 神使! 伏せろ!!」

神使「えっ?」サッ


 ビュン


神様「神使! 大丈夫か!?」

神使「はい、間一髪です」

神様「当たらなかったか? ケガはないか?」

神使「え、えぇ。 大丈夫です。 これは・・・ 小石?」


神様「誰だ! 姿を見せろ!!」クルッ



 タッ タッ タッ


神使「逃がすか!」

神様「待て! 深追いするな」

神使「しかし・・・」

神様「暗すぎる、危険だ」

神使「分かりました」


神様「もう一本懐中電灯を」

神使「はい、どうぞ」

神様「お前は前を照らせ。 駅まで全速力で走るぞ」

神使「分かりました」


神様「ダーシュッ!」


 タッ タッ タッ



――― しかしか高原駅


 タッ タッ タッ


神様「次の電車は何分だ」ハァ ハァ

神使「30分後です」


神様「電車が来るまで後ろを見張ってくれ、私は前を見張る」

神使「はい」

神様「懐中電灯を灯台のように振って周囲を照らし続けろ」


神様「誰か隠れているみたいだな」

神使「えぇ、2人確認できます」

神様「一体何なんだ?」


神使「でも・・・ 襲ってくる気配はなさそうですね」

神様「大人しく立ち去れってことか?」



 ファーン ガタンガタン


神使「電車が来ました」

神様「早く~! もっと早く~!」


 プシュー


神使「神様、足下気をつけて乗って下さい」

神様「はぁ~、助かった~」


 ガタンガタン
 次は しおしお温泉口です


神使「一体何者なんですかね?」

神様「こっちが聞きたいわ」


神使「どうしましょう、神宮に報告します?」

神様「う~ん、宿に着いてから考えよう」

神使「分かりました。 それより神様ずいぶん慣れてましたね」

神様「あん?」


神使「いや、何かいつものだらしない神様とは別人のような対応でしたので」

神様「全然褒めてないよね? っていうかかなりナメた発言だよね?」

神使「いえ、そう言うつもりではないんですが・・・」


神様「昔は多かったんだよ、こういうの」

神使「そうなんですか?」

神様「あぁ・・・ 多かったんだ・・・」



――― しおしお温泉旅館


神使「すいません。予約なしで突然来てしまいまして」

仲居「気にしないで下さいな。 シーズンオフですし、こっちが助かります」

神使「ありがとうございます」


仲居「時間も遅いですし、先にお食事の支度しちゃいますね」

神使「お願いします」

神様「じゃぁその間に」ヌギヌギ


神使「ちょっと神様? 仲居さんがいるのに下着姿にならないで下さい」

仲居「あら、可愛らしい下着ですね」

神様「照れるじゃないか~」クネクネ

神使「・・・・・・」


神様「お前も浴衣に着替えたら?」

神使「後ほど・・・」ハァ


神様「やっぱ和服の方が落ち着くな~」シュルシュル

仲居「お若いのに珍しいですね。 帯の結びも綺麗ですし」

神様「いや~ん 褒められた?」クネクネ クネクネ

神使「・・・・・・」


神使「あの、ちょっとお伺いしても良いですか?」

仲居「なんですか?」

神使「先ほど、しかしか高原に行ってきたのですが住んでいる方とかいるんでしょうか」

仲居「誰かにお会いになりましたか?」

神様「変な集団に追いかけられた」


仲居「近づかない方が良いですよ? 宗教団体があるんです」

神使「宗教団体?」

仲居「えぇ、詳しくは知らないんですが他人を近づけたがらないんです」

神様「気持ちわる!」

仲居「本当ですよ」


神様「宗教団体ってのが胡散臭さ倍増だな」

神使「・・・自分だってそうじゃないですか」ボソッ


仲居「一体何がしたいんだか」

神使「そうなんですか・・・ 神様どう思います? 」

神様「うわっ、これウマそうじゃん」

神使「・・・・・・」


仲居「しおしお牛のすき焼きです。 食べ終わりましたら廊下にでも出しておいて下さい」

神使「ありがとうございます」

仲居「ではごゆっくり」スタスタ


神様「食べよう!」

神使「そうですね」

神様・神使「いただきます」


神様「うんま! うんまっ!」パク パク

神使「どうされますか?」

神様「どうって?」モグモグ

神使「あの神社ですよ」

神様「う~ん・・・ ちょっとあの社のこと調べてくれる?」

神使「分かりました」


神様「な~んか、嫌な感じするな~」パク パク

神使「嫌な感じですか?」


神様「う~ん・・・ なんかあの神社、昔に一度来た記憶はあるんだけどな~」

神使「本当ですか?」

神様「よく覚えてない」モグモグ


神使「どのくらい前なんです?」

神様「さ~な~ 100年? 500年? いやもっと前だったかな」

神使「はい!?」

神様「だから良く覚えてない」


神使「ちょっと待って下さい、神様ってお生まれはいつなんですか?」

神様「あれ? 聞いてない?」

神使「えぇ、神様に関する情報ってなんか詳しく教えてもらえなかったんです」

神様「ふ~ん」パク パク


神使「教えて下さいよ」

神様「めんどい。 そのうち教えてあげる」モグモグ

神使「はあ・・・」


神様「それより、お前の肉と私のシイタケ交換しないか?」

神使「申し訳ございませんが、それは出来ません」



――― 翌日


神使「神様? 朝ですよ」ユサユサ

神様「あと6時間・・・」


神使「何言ってるんですか。 起きて下さいっ」ユサユサ

神様「も~ なんだよ・・・ まだ昼前じゃん」ヨイショ


神使「あの・・・ 神様? 浴衣はどうされたんですか?」

神様「浴衣?」

神使「下着姿ですよ?」

神様「ん? 本当だ。 あれ? どこいったんだ?」キョロキョロ


神使「昨日の神社の件ですが神宮のデータベースを調べてみました」

神様「あ~ しかしか神社?」

神使「はい。 200年ほど前から宮司と主神の連絡が途絶えているようですね」

神様「神も連絡取れないの?」

神使「はい」

神様「ふ~ん、 逃げたか?」

神使「いえ、主神から神籍抹消依頼が出ているようで・・・」

神様「神籍抹消?」


神使「はい、そこから先の連絡書類が書かれておらず・・・」

神様「それ以降は分からないと?」

神使「そうですね」

神様「神宮も結構雑な仕事してんのな」


神使「なので、神社自体は廃社にはなっていないようです」

神様「どうすっかな~ 明るいうちにもう一回だけ行ってみるか」

神使「それが良いと思います」


神様「それよりさぁ神使君」

神使「何でしょうか」

神様「それ何?」

神使「? ノートパソコンのことですか?」


神様「なんで持ってんの?」

神使「神様も神宮から支給されてませんか?」

神様「私、ワープロだよ? オアシス。 10Kgもあるヤツ」

神使「物持ちが良いですね・・・」

神様「いや、そういう問題じゃないでしょ」


神使「3年ごとに更新されてると思うんですが・・・」

神様「初耳。私の30年くらい経ってるけど?」

神使「・・・私が前に使っていたヤツでよければ差し上げますが」

神様「ソレくれ」

神使「これは・・・ ちょっと・・・」

神様「いいじゃんよ~ 私もちっちゃいパソコン欲しい~」

神使「次のボーナスで買えば良いじゃないですか」

神様「ボーナス?」

神使「まさか神様・・・」

神様「・・・・・・」

神使「すいません」



――― しかしか神社


神様「昨日は暗くてよく分からなかったけど、結構やばいなこの本殿・・・」

神使「よく崩れずに残ってますね」

神様「手分けして何か手がかりでも探してみるか」

神使「そうですね。 私は裏手に回ってみます」テクテク

神様「んじゃ、私は本殿に入りますかねっと」


 ギィー


神様「いや~ やっぱキツいなこれ・・・ 」


 ガサゴソ


神様「ん~ やっぱりご神体ないな~」

神様「でも掃除された形跡はあるなぁ」

神使「神様!」

神様「ん~? なにかあった?」スタスタ


神使「見て下さい。 裏手に建物があります」

神様「うわ~ 仲居さんが言っていた宗教団体のやつじゃね?」


神使「<おきつねこんこん教>って書いてありますね」

神様「なに!? おきつねこんこん教だと!?」

神使「知っておられるのですか?」


神様「引きつけるネーミングだ・・・ 入信したいかも」ゴクリ

神使「何を言ってるんですか・・・」


神使「それよりもどうします?」

神様「お前ちょっと潜入してこい」

神使「・・・・・・」


神様「バレるなよ? 慎重にな」ポンポン

神使「・・・・・・」


神様「どうした?」

神使「すいません、何を言っておられるのですか?」

神様「どうも~! って行っても中に入れてもらえる訳ないだろ?」

神使「そうでしょうね」

神様「そしたら潜入するしかないじゃん」


神使「神様は?」

神様「私は神力がない故に協力が出来ないのだ」フッ

神使「神力関係ないですよ? 私も神じゃないので神力ありませんし」


神様「他宗教である私が行くとか喧嘩売りに行くようなもんだろ?」

神使「私も同じですが・・・」


神様「いいから行けよ! 捕まったら助けるからさ」

神使「本当ですか?」

神様「私がお前を置いて逃げるようなヤツに見えるのかよ。 これでも神だぞ?」

神使「絶対助けて下さいよ?」スタスタ



神使「この壁結構高さありますね・・・」ンショ ンショ


信者「お前何やってんだ?」

神使「えっ!?」


信者「侵入者だ! みんな捕まえろ!」

神使「うわっ、放して下さい~」ジタバタ


信者「あっちに連れの女もいるぞ!」


神様「やべっ」ダッ ダッ ダッ


 こら~ 逃げるな~!!


神様「私関係ないです~!! その人知らないです~!!」

 
 嘘つくなー! 待てー!
 女が駅に向かって逃げたぞ!


神使「神様・・・ あなたって人は・・・」


神様「ぎゃー! 助けて~」ダッ ダッ ダッ


 待てこらー!
 仲間を置いて逃げるな-!


神様「駅だ! おっ、電車いるじゃんよ、ラッキ~」ダッ ダッ ダッ


神様「電車待って~ 乗る! 乗るよ~」


 タッ タッ タッ
 プシュー


神様「ふ~ 助かった~」アセアセ


 ガタンガタン
 次は、たじたじ駅です


神様「あっぶね~ 神使は・・・ まぁ、うん」



――― 2時間後


駅員「お客さん?」ユサユサ

神様「ふぁ」ポー

駅員「終点だよ? 降りて」

神様「んぁ、すいません」


 トテトテ


神様「あれ? ここどこ?」キョロキョロ


駅員「えーと、しかしか高原駅からなんで2360円です」

神様「2360円!? 高けー!」

駅員「だって20駅以上あるよ?」

神様「20駅!? しおしお温泉行きたかったんですけど」

駅員「え? 逆だよ? 戻る? 帰り分でもう2360円かかるけど」

神様「・・・・・・いえ、このまま降ります」



―――あいあい駅前


神様「うわ~ 超寝過ごしたな」


 テクテク


神様「おっ、サイセリアあるじゃん。 お腹すいたし入ろっかな~」

神様「でも、電車賃払ったから金ないしな~」ウロウロ

神様「ほうれん草のソテーだけなら食えるかな・・・」ウロウロ


?「か~みちゃん」

神様「??」


?「久しぶり~」

神様「エキノコックス?」

?「狐神だコラ」ゲシッ

神様「あうっ」


狐神「あんたこんな所で何してんの?」

神様「お腹すいたからサイセリアに入りたいんだ」


狐神「うちの神社素通りしてサイセリアに向かうとか舐めてんの?」

神様「お前の神社?」

狐神「となり」

神様「あ~、神社あったんだ。 気付かなかった」

狐神「お前は、神社よりサイセリアの方が重要なのかよ・・・」


神様「いま金ある?」

狐神「たかりたいの?」

神様「金なくてさ、食わしてよ」



――― サイセリア店内


店員「いらっしゃいませ」

狐神「2人です」

店員「こちらへどうぞ」


神様「よっこいしょ」ボフッ

神様「私はペペロンチーノとほうれん草のソテー、あとドリンクバー」

狐神「私はドリンクバーだけで」

店員「はい」


狐神「で? こんなとこまで来て何用?」

神様「お前こそこんな所で何してんの? びっくりしたわ」

狐神「200年前から隣の神社の主神やってる」

神様「まじで?」

狐神「いや、配属辞令出したのアンタでしょうが」

神様「まじで!?」


狐神「あんたの神使だった私を無理矢理 神籍 に入れて送り込んだ張本人だろうが」

神様「あ~、そんなこともあったっけ。 1000年くらい前?」

狐神「だから200年前って言った」


神様「飲み物取ってくる」

狐神「聞けよ!」

神様「何飲む? ドクダミ茶?」

狐神「はぁ~、いいよ私取ってくる」スタスタ

神様「私コーラね~」


狐神「はい、コーラ」コトッ

神様「サンキュー」チュウチュウ


狐神「で? 何しに来たの?」

神様「神宮の嫌がらせで、しかしか神社の立ち寄り」

狐神「しかしか神社・・・」

神様「そう」

狐神「ようやく神宮も重い腰を上げたんだ・・・ それで私の所に?」

神様「は? 電車乗り過ごしただけだけど? 何言ってんの? バカなの?」

狐神「・・・・・・」イラッ


神様「ぷは~ コーラおいしい」ゲップ

狐神「はしたないわね。 もう少し何とかなんないの?」

神様「お前は私の神使かっつーの」

狐神「元神使ですが?」

神様「私の神使って同じようなヤツばっか」ハァ


狐神「そういえば、あんたって今は神使いるの?」

神様「犬ころ一匹飼ってる」

狐神「狛犬か。 あんたの神使ってことは相当優秀なんでしょうね」

神様「私の元神使がそれ言うの? 自意識過剰なの? バカなの?」

狐神「・・・・・・」イラッ


店員「お待たせしました」コトッ

神様「ん~ おいしそ~!」


狐神「んで、しかしか神社にはもう行ったの?」

神様「さっき行ってきた」モグモグ

狐神「どうだった?」

神様「犬ころが捕まったから逃げてきた」

狐神「・・・・・・え?」


神様「いや~、裏手にあったおきつねこんこん教に侵入させたんだけどさ」

狐神「侵入?」


神様「中に入る前に神使が捕まった」

狐神「まさか神使置いて逃げてきたの?」

神様「人聞きの悪い。 潜入捜査と行ってくれ」

狐神「潜入じゃないじゃん。 捕まってんじゃん」

神様「大丈夫だって」モグモグ


狐神「厄介だよ? しかしか神社は」

神様「なんだよ~ やっぱ曰く付きかよ~」

狐神「元凶はアンタでしょうに」


神様「は? 私何もしてないよ? 何言ってんの? ボケでも始まったの?」

狐神「・・・・・・ あんた200年前ちゃんと事後処理した?」

神様「事後処理?」

狐神「神籍抹消」

神様「??」モグモグ


狐神「しかしか神社の主神から出てた神籍抹消依頼を担当したのアンタでしょ?」

神様「??」モグ… モグ

狐神「やっぱり・・・」


神様「あ~ そういえば昔、そんな手続きした記憶があるかも」

狐神「ちゃんとやったの?」

神様「神籍の抹消手続きは~ した。 うん、間違いない」


狐神「ご神体の方は?」

神様「ご神体?」

狐神「そう、神力抜いた?」

神様「・・・・・・」


狐神「抜いた?」

神様「・・・・・・」モグモグ

狐神「やっぱり」ハァ


神様「だってそんな事言われてないもんっ!」

狐神「常識だろ」

神様「言われたことしかやらない。 それが私流」

狐神「主神がご神体の管理できなくなるのに、神力抜かないでどうすんのよ」

神様「でも宮司がいたし、ご神体の管理くらいできるでしょ」

狐神「主神の神籍抹消の理由は知っているわよねぇ?」

神様「ん~・・・ なんだっけ?」


狐神「宮司と駆け落ち」

神様「まじかよ!」


狐神「あんたが神籍抹消して主神は人間になって宮司と二人でどっか行ったわ」

神様「もしかして・・・ 神力入った状態でご神体放置?」

狐神「そう」

神様「たしか結構強い神力持ってたよね?」

狐神「そう」

神様「ダメじゃん」

狐神「そう」


神様「でも、あの主神はご神体のこと何も言ってなかったよ?」

狐神「神籍抹消でご神体の神力抜くのは常識だから・・・」

神様「それに、ご神体に神力残ってるって言ってなかったし」

狐神「人間になって神力無くなってんのに、ご神体の状態が分かる訳ないでしょ・・・」

神様「・・・・・・」

狐神「はぁ~」


神様「ちょっと待てや。 お前はそこまで知っていてなんで放置してんだよ」

狐神「管轄地域外だから手が出せない」

神様「はぁ~? だったら神宮に連絡しとけや!」

狐神「したわよ。 何度も」

神様「放置してんのか? 神宮は」


狐神「広域特務課って所に何度も申請書類出してるんだけどね・・・」

神様「広域特務課?」

狐神「そう。 アンタ知ってる?」

神様「・・・・・・」


狐神「・・・・・・ もしかしてだけどさぁ」

神様「・・・・・・」

狐神「あんた、今の所属は?」

神様「・・・・・・」

狐神「名刺ちょうだい」

神様「・・・・・・」ソロリ

狐神「内宮神籍 神宮所属 “広域特務課” 審査係 神様、なるほどね」


神様「お願い! 神宮には黙ってて! これ以上減給されると給料マイナスになる!」

狐神「マイナスって・・・」

神様「驚くなよ、私は来月まで無給だ」

狐神「無給なんてあるの?」


神様「この件は私が内密に処理する」

狐神「コソコソやって、ばれるとマズいわよ?」

神様「バレねーよ、ビビってんじゃねーよエキノコックス」

狐神「・・・・・・」ゲシッ

神様「あぅ」

狐神「どうなっても知らないわよ?」

神様「とりあえず、知ってること教えて?」

狐神「ここじゃあれだし、うちの神社行こうか」



――― あいあい神社


神様「・・・コックスの神社って結構大きいのね」

狐神「土地が広いだけで本殿はそんなでもないわよ? って言うかコックスって何よ」

神様「聞く?」

狐神「・・・・・・」ゲシッ

神様「あぅ」


巫女「あ、お帰りなさいませ神様」

神様「ただいま~」

巫女「?」

狐神「気にしないでくれ」

巫女「お知り合いの方ですか?」

狐神「あぁ、コレは一応神宮の神様だ」

神様「ど~も~」


巫女「神宮!? 神様!?」

狐神「そう、しかも私の大先輩だ」

巫女「え!? あっ、初めまして! 私、巫女の・・・あの・・・」アタフタ


神様「あ~、巫女ちゃんさぁ~」ハァー

巫女「はっ、はい! すいません! あの・・・ その・・・」オロオロ

神様「竹箒はもう少し水平にして円を描くように使わないと」

巫女「え?」

神様「貸してみ?」

巫女「はい・・・」

神様「こう」サァー サァー

巫女「お~」


狐神「あんた、何でそんなこと知ってんの?」

神様「私は巫女のスペシャリストだ」サァー サァー

狐神「・・・それ巫女関係ないだろ」



――― 社務所


狐神「適当に座って」

神様「あれ? 宮司とかはいないの?」

狐神「総出で地鎮式。 明日まで帰ってこない」

神様「あ、そう。 ・・・ねぇ、儲かってんの?」

狐神「はぁ?」

神様「装飾とか結構金かかってんじゃん」

狐神「儲かってる訳ないじゃんよ。 年を追う毎に苦しくなる一方よ」


神様「ふ~ん・・・ ねぇ余ってる服とかない?」

狐神「はぁ?」

神様「頂戴」

狐神「服って装束とか?」

神様「ちげーよ、要らねーよそんなの。 普段着だよ普段着!」

狐神「普段着って・・・ あんた、服くらい自分で買いなさいよ」

神様「薄給の私をなめんなよ?」

狐神「あげても良いけど、私ほとんど着物だよ?」

神様「はぁ? 着物? じゃあ要らない」

狐神「・・・・・・」イラッ


 トントン


狐神「どうぞ」

巫女「失礼いたします」スタスタ

神様「?」

巫女「あ、先ほどは大変失礼いたしました・・・」ペコリ

神様「・・・・・・」ジィー

巫女「お茶です///」コトッ


神様「巫女ちゃんはさぁ、ここ何年目?」

巫女「えっ? あっ2年目です」

神様「そう。 ねぇ、コーラとかある? 炭酸系」

巫女「はい! すぐお持ちいたします」

狐神「持ってこなくてもいい。 下がって良いぞ」

巫女「承知いたしました。 失礼いたします」スタスタ


 パタン


神様「偉そうに。 身内にはもっとフレンドリーに接しないとダメよん」

狐神「立場ってもんがあるでしょうが」

神様「あ~やだやだ。 可哀想だからあの巫女ちゃん神宮に頂戴?」

狐神「ダメだバカ。 せっかく見つけたのに」

神様「なんだよケチ」


狐神「そんな事より続きを話すわよ」

神様「へいへい」


狐神「しかしかの主神のその後とかは聞いてる?」

神様「いいや聞いてない。 私その後すぐに異動しちゃったから」

狐神「あんたが神籍抹消した後、二人はどこかでひっそりと暮らしていたみたい」

神様「主神は神籍抹消して人間になったから・・・ さすがにもう亡くなっているか」

狐神「そうね」

狐神「で、残ったご神体は管理されずに神力がそのままで放置された」

神様「危険なことするな~」

狐神「アンタのせいでね」ギロッ

神様「・・・はい」


狐神「ご神体からはゆっくりと神力解放が続いて周辺で不思議な現象が起っていたみたい」

神様「不思議な現象?」

狐神「まぁ、よくある神力による自然現象ね。見えないものが見えたりとか」

神様「あの場所でそれは嫌だな・・・」

狐神「そうねぇ、だからしばらくは人が近づく事なかったんだけど」

神様「状況が変わったと?」

狐神「30年くらい前かな? 願いが叶うってちょっとした名所になって」

神様「願いが叶う?」


狐神「参拝者の願いが結構な確率で叶ってたみたい」

神様「あ~、管理者がいないから無差別に神力が解放されたのか」

狐神「当然そんなことになったら悪巧みする人間も出てくる訳よ」

神様「そりゃそうだわな。 私だって飛びつくわ」

狐神「あんたはそのくらい自力で何とでもなるでしょ」

神様「ねぇ、それ嫌み? 神力ゼロの私へのイジメ?」


狐神「へぇ~ 神力ゼロねぇ~」

神様「・・・なんだよ」


狐神「だいぶ貯め込んでるように見えるけど?」ジー

神様「・・・・・・」


狐神「私を神籍に入れて譲渡したときの神力よりも多いんじゃない?」

神様「・・・・・・」


狐神「狛犬君用?」ニヤッ

神様「・・・・・・」イラッ


狐神「ごめんごめん悪かったって」

神様「お前、それ言い触らすなよ?」ムスッ

狐神「はいはい、神の出生に関わる口外禁止事項ですものね」

神様「だから口にするなっての」

神様「ごめんってば~」


神様「それより、お前かなり神力増えてるんじゃないの?」

狐神「そうでもないと思うけど?」


神様「・・・・・・ ちなみになんだけどさぁ~ フォックスって今の神階は?」

狐神「ん? 従一位」

神様「あ~・・・ そう。 うん、がんばったね」チッ


狐神「っていうか、次コックスって言ったらご神体放置の件神宮にチクるよ?」

神様「は? フォックスって言ったんだけど? 耳まで悪くなったの?」

狐神「うぐっ」イラッ


狐神「話を戻すわよ!!」

神様「へいへい」


狐神「ちょっとした名所になってからすぐに、ご神体が消失する事件があったの」

神様「消失・・・ 盗まれたって事か?」

狐神「えぇ」

神様「持ち出しても意味ないのにな」

狐神「1年後にはちゃんと戻ってきたけどね」

神様「神域から持ち出したら神力解放できないしな」

狐神「盗人もそれに気付いたんでしょうね」


狐神「それと同時に神社の裏手に宗教団体が立ち上がった」

神様「それがおきつねこんこん教か・・・」

狐神「そう、最初はこぢんまりとコソコソ私腹を肥やしてたんだけど・・・」

神様「欲には勝てないと」

狐神「これ以上肥大化する前にはカタ付けておきたいわね」


神様「う~ん・・・ おきつねこんこん教については?」

狐神「信者は30人くらいで幹部以外は真面目な信徒みたい」

神様「ネーミングセンスがイカしてるんだけどキツネと関係あんの?」

狐神「あぁ、しおしお神社って稲荷系だからじゃない? 深い意味はないと思う」

神様「なんだ~ それだけか~ お前とは関係ないの?」

狐神「ない。 私は北海道出身だし」



神様「はぁ~ どうすっかな~」

狐神「きちんと解決していってよね」

神様「めんどくさいな~ 帰りたいな~」


狐神「あんたねぇ、神使置いて帰るつもり?」

神様「あぁ~ 犬ころもいるんだよな~」


狐神「心配なくせに」

神様「・・・・・・」


狐神「もしかして、わざと置いてきたんじゃないの?」

神様「・・・・・・」


狐神「図星?」

神様「もぉ、こいつメンドい」


狐神「まぁ、どっちでも良いわ。 ちゃんと解決してね 」

神様「でもな~ やっぱ、面倒くさいな~」ダラー

狐神「神宮にバレたくなければ解決する以外に道はないわよ?」

神様「はぁ~」ズーン


神様「・・・しゃぁね~な~」スッ

狐神「? なにその手」

神様「金くれ」

狐神「は?」

神様「財布に250円しかない」

狐神「銀行に行って自分のお金下ろしてきなさいよ」

神様「無給だっていってんだろ! 銀行に600円しかねーよ! 下ろせねーよ!」

狐神「本当に無給なんだ・・・」

神様「照れるじゃないか~」クネクネ

狐神「褒めてないし。 貯金くらいしときなさいよ・・・」



―――翌日


神様「さてと、んじゃ連れてって?」

狐神「は?」

神様「いや、従一位様ご自慢の神力使ってバビューンって」

狐神「この駅から向こうは管轄外だから神力効かない」

神様「うそ! だって電車で20駅も先だよ?」

狐神「金あげたでしょ? 5万も」

神様「え~」

狐神「解決して戻ってきたらお駄賃もう5万あげるから」

神様「まじで? よっしゃ! 絶対だぞ! 絶対だからな!! 」

狐神「はいはい。分かったからはよ行けって」ヒラヒラ

神様「燃えたぎってきた~!!! いってきまーーーーす」ダッ ダッ ダッ


狐神「全く、どっちが面倒くさいヤツなんだか・・・」クスッ



 テクテク


神様「ちかれた~ やっと着いたよ」

神様「さて、どうやって潜入しよっかな~」ウロウロ


信者「お嬢ちゃん?」

神様「ん?」クルッ

信者「ダメだよ? 潜入とか物騒な事しちゃ」ガシッ

神様「え? うそ。 もう捕まった??」

信者「監視カメラあるからね」

神様「ぎゃー 助けて~ 襲われる~」ジタバタ

信者「襲わないから、取りあえず事務所来て?」


――― おきつねこんこん教


神様「・・・・・・」

信者「で、なんで勝手に入ろうとしたの?」

神様「昨日来たとき、すごくイカした名前で興味があって」

信者「ん? もしかして昨日逃げた女の子か?」

神様「あいつとは関係ありません。 今日初めて来ました」

信者「言ってること矛盾しまくってるよ?」


 スタスタ

神使「あれ? 神様?」

神様「・・・・・・」


信者「神様?」

神使「はい、昨日私と一緒に居た・・・」


信者「やっぱ逃げた子じゃん」

神様「すいません」


信者「でもこの子が神様なんですか? 狗神様」

神様「狗神?」


神使「ですから、私は神でなくその方の神使なのですが・・・」

信者「またまた。 狗神様はご冗談もうまいですね」ハハハッ


神様「おい、犬ころ」

信者「貴様! 狗神様に失礼な呼び方をするな!」

神様「!? はい! すいませんでした!!」


神使「あの・・・ 申し訳ございませんがこの方と二人にして頂けますでしょうか」

信者「大丈夫ですか?」

神使「ご心配なく」

信者「では、なにかございましたらお呼び下さい狗神様」スタスタ


 ガチャ


神様「ねぇ、神使君っていつの間に神になったの?」

神使「何度も神使だと言ったのですが・・・」


神使「神様に見捨てられた後、びっくりして狛犬になってしまいまして・・・」

神様「あ~、それでお前を神と勘違いしてんのか。 って言うか見捨ててないし」

神使「いえ、それはもう見事な逃げっぷりでした」

神様「・・・・・・」


神様「それより、中の様子はどうだ?」

神使「えぇ、昨日から色々内部を見て回っているのですが特に怪しい気配などなく」

神様「そうか・・・」


神使「皆さんご神体に向かって一生懸命お祈りされていましたね」

神様「しかしかのご神体があるのか?」

神使「よく出来ていますが、たぶんレプリカだと思います」

神様「レプリカか・・・ 本物の場所は分かるか?」

神使「いいえ、まだそこまでは」


神様「ん~・・・」

神使「何かあったのですか?」


神様「実は、しかしか神社のご神体が神力の入ったまま放置されているらしいんだ」

神使「神力が入ったままですか!?」

神様「あ・・・ うん」


神使「それは問題ですね。 すぐに神宮に連絡した方がよろしいかと」

神様「え? いや・・・ これは私達で解決しようと思う」

神使「しかし、神力が入ったままのご神体放置なんて大問題ですよ?」

神様「そうなの?」


神使「もしかして、200年前の神籍抹消と関係しているのでは・・・」

神様「!? で、でも200年も前だし? 神籍抹消の担当神も分からないし? 」アセアセ


神使「なるほど。 分かりました」

神様「よし!」ホッ


神使「神籍抹消を担当したのが神様なんですね?」

神様「・・・・・・」


神使「神様のことですから、その際ご神体から神力を抜くのを忘れた、といった所でしょうか」

神様「・・・・・・」


神使「そうなんですね?」

神様「はい・・・ すいません。 その通りです」

神使「やはりそうですか」


神使「で、どうされるおつもりですか?」

神様「ご神体から神力を抜く」

神使「それは当然ですが作戦は・・・」


神様「う~ん・・・ お前さぁ、このまま神として振る舞ってろ」

神使「え?」

神様「私はお前の神使・・・ いや動物じゃないから巫女。 うん、それで行こう」

神使「作戦の意図が見えないのですが・・・」


神様「決まりだ! 頼んだぞ狗神様」


神使「その作戦大丈夫なんですか?」

神様「大丈夫だよ。 私が神だってバレないようにするからさ」

神使「いえ、神様が神だとバレることはないと思うのですが・・・」

神様「ん? どういう意味?」

神使「神様が自分から神だと名乗っても信じる人はいないと思いますので」

神様「あ~・・・」ゲシッ

神使「痛っ」


神様「ほら、行くぞ」

神使「はぁ」


神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」


神様「早く行けよ、お前が神なんだから先に行くんだよ」

神使「あ、はい。 では失礼します」スタスタ



 ガチッ


信者「あ、狗神様」

神使「お待たせして申し訳ございませんでした」

信者「で、そちらのちっちゃい女の子は一体・・・」


神使「あぁ、え~と・・・」

神様「私は狗神様の使いで巫女をさせて頂いております。 神ちゃんとでもお呼び下さい」

信者「使いの方でしたか。 通りで馴れ馴れしいと思いました」

神様「・・・・・・」イラッ


神使「いいえ、これは神ちゃんの最も優れた特技ですから」

信者「なるほど・・・ さすが狗神様、素晴らしい解釈ですね」

神使「そういうつもりではないのですが・・・」

信者「またご謙遜を」


神様「はははっ。 ところで皆さん、この後は?」イライラ

信者「そうだ! 皆が待ってますので続きを」

神使「はい、今行きます」

神様「つづき?」



 スタスタ


神様「お~ 人がいっぱい居るな~」ボソッ

神使「おきつねこんこん教の信者の方達です」ボソッ

神様「何か一生懸命書いているみたいだけど何やってんだ?」

神使「祝詞を書いているんです」

神様「祝詞?」

神使「はい、明日の朝に読む分だそうです」

神様「ふ~ん。 真面目だな」


女信者「狗神様? お聞きしたいのですがよろしいでしょうか」

神使「はい」スタスタ

女信者「ここなんですけど」

神使「あぁ、これはここで区切ったらどうでしょうか」

女信者「でも、この部分とうまく繋がるかが・・・」

神使「ん? そうですね。 そしたらここでどうでしょうか」


神様「・・・・・・」ジィー



――― 1時間後


信者「では、今日はこの辺で終わりにしましょう」

神使「はい」フゥ


信者「狗神様、今夜も祝詞をお願いできますでしょうか」

神様「? 神が祝詞を朗誦するのか?」

信者「勉強のためにも是非お願いできればと」

神使「分かりました」

神様「・・・・・・」

信者「では、本殿でお待ちしております」スタスタ


神使「本殿はこの先です。 行きましょうか神様」

神様「神ちゃん」

神使「そうでした。 神ちゃん」


神様「それよりお前さぁ、もう少し神らしく―――」

女信者「狗神様、一緒に本殿へ行きましょう!」

神使「あ、はい。 神さ・・・ いえ神ちゃんも行きましょう」

神様「はい・・・」


 スタスタ



――― 本殿


神様「あの祭壇の上に乗っかってんのがしかしか神社のご神体か・・・」

神使「レプリカですが、たぶん本物と形は同じだと思います」


神様「きっとこの建物のどこかに隠してあるんだな」

神使「確証はありませんが、幹部室が一番怪しいかと」

神様「幹部室? あの端の部屋か」

神使「唯一鍵がかかっている部屋でしたので」


神様「なるほどな・・・」


信者「狗神様、準備が出来ましたのでよろしくお願いします」

神使「分かりました。 では―――」

神様「まて、いや・・・ お待ち下さい狗神様」

神使「?」


神様「私が朗誦します」

信者「あなたが?」

神様「神に祝詞を朗誦させるなど、私が許さない。 代わりに私が読む」


神使「神さ―――」

神様「狗神様、どうか使いである巫女の私にお任せ下さい」

神使「・・・神ちゃんが言うのでしたら任せます」

信者「では巫女さんお願いします」


神様「稲荷祝詞でいいか? 何も書いていないから略式だぞ」スタスタ


神様「神聖な祝詞だ。 朗誦中は目を閉じ私の言葉に集中しろ」

神使「皆さん、神ちゃんの言うとおりに」


 ・・・・・・


神様「では」

神様「掛巻も恐き稲荷大神の大前に恐み恐みも白く~」

信者「・・・・・・」


神様「堅磐に常磐に命長く 子孫の八十連屬に至まで~」ゴソゴソ

神使「・・・?」


神様「夜の守日の守に守幸へ賜へと~ 恐み恐みも白す~」



――― 夜・寝室


神使「神様ってあんなにスラスラと祝詞を読めるんですね」

神様「はぁ? お前バカにしてる?」ゲシッ


神使「しかも暗記してるだなんて」

神様「基本くらいは押さえてるっつーの」

神使「はぁ」


神様「それよりもだ」

神使「?」


神様「お前、形とは言え今は神なんだぞ? もう少し神らしく振る舞えよ」

神使「はい?」

神様「もう少し何というか・・・」


神使「そのお言葉そのまま神様へお返しいたします」

神様「ぅっ・・・ 私はほら、神と言っても神力も使えないランク外だし」

神使「いいえ、同じですよ神様だって立派な神なんですから」ニコッ


神様「ったく、どいつもこいつも・・・」ハァ



 モソモソ


神使「?」

神様「寝る」

神使「暖房がないので私を抱いて寝ますか?」

神様「・・・好きにしろ」

神使「それ、私の台詞だと思うのですが・・・」


神様「・・・なぁ」

神使「何ですか?」

神様「お前は・・・ 神になりたいと思うか?」

神使「え?」

神様「・・・なんでもない」



――― 翌日


 チュンチュン


神使「神様?」ユサユサ

神様「ん~ん・・・ あと6時間」


神使「ほら、起きて下さいってば」ユサユサ

神様「なんだよ・・・ 早すぎだろ」ヨイショ


神使「朝ご飯持ってきてもらいましたから食べましょう」

神様「朝ご飯? どこ?」キョロキョロ

神使「目の前にあるじゃないですか」


神様「・・・ なにこれ?」

神使「お稲荷さんです」

神様「小さいなぁ・・・」


神使「それよりどうするんですか?」

神様「今日中にカタを付けるぞ。 長居無用だ」


神使「まずは、ご神体を見つけないとですね」

神様「そう言えば、幹部というのはいるのか?」モグモグ

神使「数日おきにこちらへ来るようなのですが」

神様「ふ~ん。 今はいないんだな?」

神使「えぇ、ただ幹部専用の裏口から入るようで来ても誰も分からないそうです」

神様「よし、今のうちに私が幹部室に潜入して探してこよう」


神使「でも鍵閉まってますよ?」

神様「これ」ジャラジャラ

神使「いつの間に・・・」


神様「昨日、祝詞を読んでいるときにな」

神使「ゴソゴソしていたのはそれですか・・・」

神様「ご丁寧に鍵入れと書いた箱が祭壇の近くにあった」

神使「他の鍵も丸ごと持ってきてバレますよ?」

神様「だから早めに忍び込むんだよ」


神使「昨日の夜に忍び込めばよかったと思うのですが」

神様「私もそう思ったんだが、監視のヤツが扉の前に居てな」

神使「そうなんですか?」

神様「神であるお前が逃げないように監視でもしてるんじゃないか?」

神使「すいません、全く気がつきませんでした」


神様「まぁ、それは良い。朝も当然祝詞をあげるんだろ?」

神使「はい、その後は本殿の掃除と聞いています」

神様「よし、祝詞をあげているときに忍び込もう」



 トントン


神使「はい」


 朝の祝詞のお時間です


神使「分かりました。今参ります」

神様「よし、いくぞ」


信者「あの・・・ 祝詞の方ですが・・・」

神様「狗神様に朗誦させるのはダメだ。 今日はお前達が読め」

神使「そういう事ですので・・・」

信者「・・・分かりました」


神様「私が作った祝詞だ。 これを読むと良い」スッ

信者「はぁ、うわっ長!」


神様「いいか、集中して読めよ? 他の者は目を閉じて言葉に集中しろ」

信者「はい」


神使「いつの間にあんなの用意したんですか?」ボソッ

神様「昨日の夜中にな。 20分は時間が稼げるはずだ」ボソッ

神使「なるほど・・・」

神様「じゃぁ頼んだぞ?」コソコソ



――― 幹部室


 ガチャ


神様「よし! 開いた!」


 ギィー バタン


神様「向かいの扉が幹部専用の入り口か・・・ 帰ってきませんように」パンパン

神様「さてと、ご神体を探しますかね」ガサゴソ



 フンフンフーン♪


神様「嘘だろー 幹部か? ヤバいヤバい! 隠れなきゃ」イソイソ


 ガチャッ


幹部「ん? 誰か居るのか?」


 シーン


幹部「気のせいか・・・」



 prrr prrr
 ピィ


幹部「なんだ? あ~ お前か・・・」

神様(あっぶねー、って言うか私ってついてね~)


幹部「あぁ、順調だよ問題ない」

神様(ん? これってご神体じゃん! ラッキ~ 私ってついてる~)


幹部「だから問題ねーよ・・・ 取りあえずうちの信者達の生前分与だけ急がせろ」

神様(・・・?)


幹部「構わねーよ、こっちにはご神体があるんだからよ。 怖いもんなしだよ」

神様(・・・・・・)


幹部「はぁ? 信者なんてただの金ズルだよ。 面倒くさくなったら切り捨てれば良いんだよ」

神様(・・・・・・)イラッ


幹部「おう、信者の数は半年以内に10倍にする。 あぁ、だいぶ稼げるぞ」



 ガタン


神様「おい!お前!!」

幹部「? なんだ、貴様どっから入りやがった! ってテメーなんでそれ持ってんだ!」

神様「うるさい! ふざけんのもいい加減にしろ!」


信者「恐み恐みも白く~」


 ドタバタ
 ガシャーン


信者「なんだ? 幹部室か?」

神使「神ちゃん」タッ タッ タッ


 ガチャッ


神使「神ちゃん、大丈夫ですか!?」



 ドタバタ
 ガシャーン


神様「信者の心をもてあそぶな! 純粋に信仰を捧げる者達の心を踏みにじるな!」ドタバタ


信者「巫女! あんた何でこの部屋にいるんだ」スタスタ

幹部「おい! この部屋に入ってくるんじゃない!」

信者「」ピタッ


神使「神ちゃん!」

幹部「なんだ? お前、うちの信者じゃないな?」


神様「は~な~せ~よ~」ジタバタ

神使「その方を放しなさい」


幹部「なんだと? おい、お前達その男も捕まえろ!」

信者「・・・・・・」

幹部「何やってんだよ! 早くしろよ!」

神使「幹部さん、あなた達のやろうとしていることは全てバレています」

幹部「あ?」


神様「祭壇に飾っているのはレプリカ、あなたがその手に持っているのが本物ですよね?」

信者「え?」

幹部「!? 何言ってんだ・・・ これはレプリカ。 そうこっちがレプリカだ!」


信者「幹部さん、あなた・・・ もしかして騙していたんですか・・・」

幹部「は? お前達はこんな得体の知れないヤツの言うことを信じるのか!」

信者「・・・・・・」


神使「それとあなたが捕まえた巫女さんですが早く解放した方が良いですよ?」

幹部「はぁ? こんな女ごときに何が出来るってんだよ」


神使「その方は神宮の神ですよ?」

幹部「神だと? はっ、笑わせんな」


神使「その方に危害を加えると大変な神罰が下ってしまいますが・・・ 忠告はしましたからね?」

幹部「・・・・・・」チラッ

神様「いいの? 全力で行くよ?」ベー


神使「神力が本当に存在することくらい、そのご神体の効果で知っていると思うのですが・・・」

幹部「この女が神だって言う証拠でも見せてみろや」


神使「・・・・・・」ボンッ

幹部「うわぁ! なんだ??」

神使「私は狛犬です。 驚きましたか?」

幹部「うそだろ・・・」

神使「神様にわざわざ神力を使わせることなど出来ませんので」ボンッ


幹部「お前達何者だ・・・」

神使「私達は神宮から来ました」

幹部「神宮?」

神使「神職不在のしかしか神社への立ち寄りが目的です」

幹部「じゃぁ、うちと関係ないだろ! 出てけよ!」

神使「あなたの持っているご神体は、しかしか神社のものです」

幹部「・・・・・・」

神使「この土地も、しかしか神社の土地だと思うのですが?」

幹部「・・・・・・」


神使「返して頂けますか?」

幹部「ふ、ふざけるな! 渡すわけないだろ!」


神使「交換条件でどうです?」

幹部「交換条件だぁ?」


神使「そのご神体を置いて今すぐ立ち去るのでしたら一切を不問にします」

幹部「はぁ? 嫌だと言ったらどうすんだよ」

神使「全ての神の力を使って最大の苦痛を永遠に与えることになるでしょう」

幹部「・・・・・・」


神使「本気ですよ? あなたにとっては選択の余地などないと思うのですが」


神様「そうだぞ、あきらめろや!」ジタバタ

幹部「おい! ガキは大人しくしてろ!」ゲシッ

神様「あぅ」

神使「無礼はやめなさい!」

幹部「あん?」

神使「そちらの神様は多くの神の中でも神階を超越した最高神です!」

神様「え? お前なんでそれ知ってんの?」

神使「え?」

神様「え?」


 ・・・・・・


神様「あ~ 秘技! 金玉頭突き!!」ガンッ

幹部「ぁっ・・・」フラフラ

信者「うわぁ、痛そう・・・」キュン

幹部「おま・・・え・・・ そこは・・・」


 バタン


神様「どうだ! 神の力思い知ったか!」フンスッ

神使「神の力なんですか・・・ それ・・・」


信者「狗神様、お見事でした!」

神使「はい?」


信者「まるであの巫女が神のような錯覚を覚えるほどの演技。 素晴らしかったです」

神使「いえ・・・」


神様「狗神様は演技派で売り出し中なのです。 何かあればマネージャーである私を通して仕事をご依頼下さい」

神使「・・・・・・」


信者「やはりこの幹部は私達を騙していたのですか・・・」

神使「残念ながら」

信者「しかし、ご神体を取り戻して頂きありがとうございます」


神使「大変申し上げにくいのですが・・・ このご神体は回収させて頂きます」

信者「回収!?」


 ザワザワ


神使「はい」

信者「そんな・・・ ご神体なしでは私達は・・・」

神使「残念ですが、これは本来ここにあってはならない物なのです」

信者「しかし・・・」


神使「あちらのご神体でも皆さんが大切にして下さればきっと神力も入っていくでしょう」

信者「・・・そうだ! 狗神様がこれからは私達の神様になって―――」

神様「いい加減にしろ!」

信者「!?」

神使「神ちゃん・・・」


神様「ご神体が偽物だと分かった途端、お前達は別の神を見立てるのか」

神様「そのご神体を今まで奉ってきたんだろ! 失礼だとは思わないのか!」

信者「!?」


神様「お前達の信仰はそのご神体にも伝わっている。 悲しませないでやってくれ」

信者「・・・・・・」


神様「狗神様が言ったようにこれからも大切にしろ」

信者「・・・・・・」


神様「行きましょう、狗神様」

神使「え? あっ、はい」

信者「狗神様・・・ どちらへ」

神使「長居も出来ませんので・・・ 申し訳ございませんが失礼いたします」


神様「神宮の使いの者が数日中にここへ来る。 それまでここを絶対に離れるんじゃないぞ」

信者「・・・・・・」


神様「分かったか? 絶対離れるなよ?」

信者「・・・分かりました」

神使「・・・・・・」


神様「行くぞ」ボソッ

神使「はい」



 スタスタ


神使「神様・・・」

神様「あん?」

神使「お願いがあるのですが・・・」

神様「なんだ急に」

神使「このお社は廃社にするんですよね」

神様「ん? あ~ そうだな」

神使「その・・・ もし出来ればなのですが」

神様「?」

神使「あの方達のために、この土地を譲渡するということは出来ないでしょうか」

神様「・・・・・・」

神使「すいません、他宗教ですし無理ですよね。 忘れて下さい」

神様「・・・電車の時間がない。 急ぐぞ」

神使「はい」


――― あいあい神社


神様「ただいま~」

狐神「ん? もう帰ってきたの?」

神使「御邪魔します」

狐神「おや? そちらは神使君?」

神使「初めまして、神様の神使を務めております狛犬です」

狐神「ちょっと! 格好いいじゃん!」

神様「はぁ?」


狐神「あいあい神社の主神、狐神よ。 よろしく」

神使「お初にお目にかかります。 ご丁寧にありがとうございます」

狐神「よく出来た子ね。 あんたには勿体ないわ」

神使「そんなことありません。 私の方が神様には不釣り合いでして」

神様「ねぇ、そういうのやめて? むなしくなるから・・・」

神使「どうして神様がむなしくなるんですか?」


神様「腹減った、何か食わせて~」

狐神「巫女に何か作らせるわ。 巫女! いるか?」

巫女「はい、神様」スタスタ

狐神「何か作ってやってくれるか?」

神様「あ~作らなくて良いよ。ピザ頼もう? ピザ」

狐神「神社でピザかよ・・・ まぁ良いわ、じゃぁピザ注文してくれるか」

巫女「畏まりました。 ご希望はございますでしょうか」

神使「では、みみまでソーセージのベーコンポテトを、あとコーラをお願いします」

神様「さすが犬ころ! 分かってるね~」

神使「神様の大好物くらいは心得ておりますので」


神様「そうだ、はいご神体」コトッ

狐神「え? あんた持ってきたの?」

神様「だって、神力抜く準備とか何もしないで行ったからさぁ」

狐神「・・・・・・」

神様「お前が抜け」

狐神「はぁ?」

神様「いいじゃんよ~ 抜けや」

狐神「もぉ、しようが無いわね・・・」

神様「神力抜いたら、おきつねこんこん教へ送ってくれ」

神使「え?」


神様「もう何十年もアイツらが持っていたんだ。 所有権はおきつねこんこん教にある」

神使「神様・・・」

狐神「へぇ~ 優しいじゃん」

神様「私はいつでも優しくてかわゆいのだ」


狐神「分かった。 明後日おきつねこんこん教へ行ってくるから渡してくる」

神様「は? お前が直接行くの?」

狐神「神宮から連絡があってね。 しかしか神社の廃社手続き処理任された」

神様「・・・・・・」


狐神「でね? その後に、とある団体に譲渡手続きをしに行かないといけないの」

神使「譲渡手続きですか?」

狐神「えぇ、信者さんって方がいる団体に土地と建物を無償譲渡するようにって」

神使「なんでそんな・・・」


狐神「どっかの優しくてかわゆい神が仕込んだんじゃない?」

神使「神様・・・」


神様「コックス君さぁ、なんでそういうことを言うの? トップシークレットだよね? それ」

狐神「そうだったけ?」


狐神「でもさぁ、あんた他の宗教法人へ譲渡するって言ってないでしょ」

神様「・・・・・・」


狐神「神宮は稲荷神社保存の氏子団体って言ってたよ?」

神様「・・・・・・」


狐神「ばれるとマズいわよ~」

神様「ば、バレねーよ・・・ び、ビビってんじゃねーよ」アセアセ

狐神「ふ~ん」


神様「・・・ お願い、黙ってて」

神使「私からも、お願いします!」

狐神「ちょっと、やめてよ。 大丈夫だって、私は言わないから」

神使「ご迷惑をおかけします」

狐神「そんなことないわよ」


神使「神様も・・・ ありがとうございます」

神様「今度うまいもん食わせろよ」


神様「あぁ、それと」スッ

狐神「?」

神様「いや、金!」

狐神「あんた本当に食べることとお金だけは忘れないわよね」

神様「なに? その言い方、私が欲の塊みたいじゃん」

狐神「・・・・・・」

神使「・・・・・・」


神様「え? ちょっと待って、マジでそう思ってんの君たち」

神使「いえ、そのようなことは・・・」

狐神「大丈夫、思ってないって。 はい、お駄賃」スッ

神様「うひょ~ 臨時収入~」キラキラ

神使「なんか、すいません。 神様がいやしいお願いをしたようで」

狐神「気にしないで。 言い出しっぺは私だし」

神様「そうだぞ、私をあんまり蔑むなよ?」


神様「財布に諭吉さんがいっぱい居るよ~」ウットリ

神使「本当ですか?」

神様「見る? 見ちゃう??」


神使「では、没収させて頂きます」

神様「ぇ・・・」

神使「ひのひの村で少女さんに渡した宿代の半分は神様負担ですから」

神様「ぜんぶ?」

神使「1万だけ残してあげます」

神様「半分」

神使「ダメです」

神様「・・・はぃ」



――― 翌日


神使「では、色々ご迷惑をおかけいたしました」

狐神「もっとゆっくりしていけば良いのに」

神様「そうだよ」


神使「次の場所が少し遠いので・・・」

神様「そうなの?」

狐神「まぁ、こんな所にいてもね。 ほら、巫女~」

巫女「あっ、はい」タッ タッ タッ

狐神「お二人がお帰りになるそうだ」

巫女「どうぞお気を付けて」ペコリ

神使「ご丁寧にありがとうございます」


神様「巫女ちゃんさぁ、この狐が嫌になったら私に連絡ちょうだいね」

巫女「え? そんな、嫌になるだなんて」フルフル


神様「はい、これ私のラインのID。 いつでも連絡してね」スッ

巫女「ありがとうございます! 私ラインやってみたかったんです!」

狐神「そうなの? じゃぁスマホ買ってあげないとな」

神様「え? 私にもスマホ買って?」

狐神「なんでお前の分も買わないと行けないんだよ・・・」


神使「神様? そろそろ行きますよ?」

神様「わーてるよ」


神使「狐神様、色々とご迷惑をおかけします」

狐神「気にしないで、仕事だから」

神使「ありがとうございます。 では神様行きましょうか」

神様「おっけ~」


狐神「じゃ、元気でね」

神様「バイバ~イ」

巫女「・・・・・・」フルフル

神使「失礼します」ペコリ



 スタスタ


神様「なぁ神使」

神使「何ですか?」


神様「お前は神になりたいと思うか?」

神使「どうしたんですか?」

神様「いや、深い意味はないんだけどさぁ」


神使「神ですか・・・」

神様「あぁ。 神力を使って多くの人の願いを叶える存在だ」


神使「神力・・・」


神使「興味ありませんね」

神様「!?」


神使「神力には興味ありません。 だって・・・」

神様「?」


神使「私の知っている神様は神力を使わないんです」

神様「・・・・・・」

神使「神力を使わなくても願いを叶えてくれるんです」


神使「方法は、少し強引なんですが・・・ 私はその方を尊敬しています」

神様「・・・・・・」

神使「多くのことを学ばせて頂きたいと思っています」


神使「ですからその方が神である以上、私は神使であり続けたいと思います」

神様「・・・・・・」


神使「つまり・・・ 私はずっと神使のままだと思います」

神様「そうか」

神使「はい」


神様「その神は神使に恵まれているな」フッ



神使「さてと、次の勤務先なんですが」

神様「よし! 吉祥寺か?」


神使「いいえ、ちなみに下北沢でもありません」

神様「どこです?」


神使「着いてからのお楽しみです」

神様「・・・・・・」


神使「さぁ、急ぎましょう。 船に間に合いません」

神様「え? 船? ちょ、待って。 船って何だよ」


神使「行きますよ、神様」

神様「いやだー! おしゃれな街に行きたいよーーーーー!」




神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#2 ―END





神使「あっ、そうだ忘れてました」

神様「?」


神使「神様機構から懲罰書が届いてます」

神様「・・・ぇ」


神使「お前もう神宮に帰ってくんな」

神様「ちょっと待って、本当にそんな口調で書いてあんの?」


神使「それと、人事院からも」

神様「・・・・・・」


神使「給料なし」

神様「それだけ? いつまでとか何%カットとかそういうの書いてないの?」

神使「書いてないですね」


神様「ちょっと何で私だけそんな扱い受けんだよ-!」

神使「神様? 私も同じですよ?」

神様「え?」


神使「当然じゃないですか。 前回の給料30%オフも今回の全カットも同じです」

神様「!?」


神使「神様の神使ですから」

神様「・・・ごめん」


神使「なんで謝るんですか?」

神様「・・・・・・」


神使「これからはバイトでもしながら神社周りしないと行けませんね」

神様「・・・・・・ごめん」


神使「当面は貯金もありますし何とかなるでしょう」

神様「神使、お前私の使いを外れて神宮に帰った方が―――」

神使「神様?」


神様「私が上に話せばその位はやって―――」

神使「お願いですから私を神様の神使でいさせて下さい」

神様「・・・・・・」


神使「私が尊敬する神の使いでいさせて下さい」

神様「・・・お前」


神使「私は神使である以上、神様の使い以外は考えられません。 お願いします」フカブカ

神様「・・・・・・」



神様「なぁ神使、お前の尊敬するその神の正体を教えてやろうか?」

神使「いいえ、結構です」


神様「? 知りたいんじゃなかったのか?」

神使「なんか、それを聞いたら離れないと行けない気がするもので」


神様「そうか・・・」

神使「はい」


神使「あっ、でも一つだけ聞きたいことがあります」

神様「?」


神使「その神様はどうして素性を隠しているのでしょうか」

神様「人が好き、それだけだ。 それ以外は邪魔とでも思っているんじゃないか?」


神使「ありがとうございます」

神様「なんだよ、それ」フフッ


神使「やっぱり私の神様はあなただけです」ニコッ


神様「あ~あ、 面倒くさい神使を持ってしまったようだな」

神使「はい。 あきらめて下さい」


神様「給料ないぞ?」

神使「大丈夫です」


神様「バイトが必要になるぞ?」

神使「任せて下さい」


神様「ずーっと、神社周りになるかも知れないぞ?」

神使「旅は大好きです」


神様「階位が下がるかも知れないぞ?」

神使「階位など不要です」


神様「そうか」フッ


神様「こうなったら日本全国まわっちゃうか!」

神使「はい!」


神様「よし、腐れ犬ころ神使! しゅっぱーつ!」

神使「はい!!」



神様(ありがとう神使・・・)

神使(ありがとうございます神様・・・)




神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 ―END


本当はもっと短くまとめるつもりだったんです…
反省!(ドゲザ)


もったいないし、ちょっとだけ続きを…
そう思ったのでした。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 ボー
 ザバーン ザバーン

神使「いや~ 私フェリーって初めて乗りました」

神様「・・・・・・」バリボリ


神使「風が気持ち良いですね」

神様「・・・・・・」バリボリ


神使「神様? そのえびせんはウミネコの餌用に買った物なんですが・・・」

神様「神使さんよ~ どこ向かってんだよ」

神使「あと15分くらいで島の港に着くと思います」

神様「あん? 島?」


神使「次の立ち寄り先はにゃんにゃん島です」

神様「ねぇ、立ち寄り先って誰がチョイスしてんの? 私そいつシメてくるわ」バリボリ


~あらすじ~

神様「私は神様! みんな大好きとってもかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「神宮が誇る最大の問題児! 減給・左遷を総なめにする絵に描いたようなダメ神です」


神様「悪の手先からの激しい嫌がらせにも負けず、今日も私を待つ者へ神の力を授ける旅をする」

神使(訳)「悪知恵ばかり働く神様に業を煮やした神宮は、無期の長期出向を命じたのでした」


神様「そう、私は強大な神力を持つ心優しき立派な神様だ!」

神使(訳)「神力は使えませんが、心は優しく尊敬できる立派な神様なのです」


#3


神使「神様、タラップと桟橋の間に段差がありますから気をつけて下さい」

神様「分かっとるわ! 痛てっ」ガクッ

神使「全然分かってないじゃないですか・・・」


神様「お~ 向こうに凄い綺麗な海岸があるな」

神使「真っ白な砂浜で綺麗ですね」


神様「沖縄の海水浴場みたいだ」

神使「神様って沖縄に行ったことあるんですか?」

神様「ない」


神使「・・・そうですか」

神様「イメージだよ、イメージ。 そんな感じだろ?」


 ニャー

神様「?」

 ニャー ニャー

神使「猫ですね」

 ニャー ニャー
 ニャー ニャー

神様「・・・ねぇ、ちょっと多すぎない?」

神使「にゃんにゃん島ですから」

 ニャー ゴロゴロ


神様「ワンワンッ!」

 シャーッ!


神使「何やってるんですか神様・・・ 行きますよ?」


 テクテク

神様「しかし、あちこちに猫がいるな」

神使「人懐っこくて可愛いですよね」


神様「犬っころでも猫は可愛いと思うのか?」

神使「まぁ・・・」


神様「で、目的地は?」

神使「この山の頂上にある<もふもふ神社>です」

神様「ふ~ん、初めて聞く神社だな」


神使「10年前から神が配属になったようです」

神様「最近じゃん。こんな所に配属なんて何やらかしたんだ?」

神使「転勤希望だそうです」

神様「希望してこんな僻地にくるなんて物好きもいるもんだな。 ん?」


神使「どうされました?」

神様「いやさぁ、不在神社の管理が私達の仕事じゃないの?」

神使「もふもふ神社には神職と巫女がいません」

神様「神だけいるの?」

神使「そのようです」

神様「ふ~ん」


神使「あっ、見えましたよ」

神様「小さい神社だな」


神様・神使「・・・・・・」


神様「ねぇ、神使君?」

神使「なんでしょうか」

神様「なんで神社の敷地内に喫茶店があるの?」


神使「<喫茶ねこまた>って書いてありますね。 あっ、その下に小さく社務所とも書いてあります」

神様「社務所と喫茶店が同じって変じゃね?」


神使「中に女性の方がいますね」

神様「神職とか巫女さんは居ないんだよな?」

神使「資料ではそうなっています。 取りあえず入りましょうか」


 カランコロン

店員「いらっしゃいませ~」


神使「お邪魔します」

神様「・・・・・・」


店員「お二人ですか? そちらのテーブルへどうぞ~」

神使「ありがとうございます」


店員「は~い、こちらメニューになりま~す」


神様「・・・おい」

店員「?」


神様「お前、こんな所で何やってんの?」

店員「ん? あっ! 神ちゃんじゃ~ん!」


神使「神様、お知り合いですか?」

神様「うん、猫」

神使「すいません、雑すぎて全く分からないのですが・・・」

店員「猫神と申しま~す」

神使「猫神様・・・?」


神様「お前って確か、でかでか大神宮の主神だったよな?」

猫神「10年前までね~」


神使「でかでか大神宮の猫神様!? もしかして神の中でも最大級の神力を持つ・・・」

猫神「ふふっ、大げさよ~」


神使「初めまして、私神様の使いで狛犬の神使と申します」

猫神「神ちゃんの神使さんなんだぁ~ 初めまして」ニコッ


神使「お目にかかれて光栄です」

猫神「そんな堅くならないで~ 仲良くしましょうね」

神使「恐縮です」


猫神「私も昔は神ちゃんの神使だったのよ~?」

神使「えっ? そうなんですか?」


猫神「平安時代だけどねぇ~」

神使「平安時代!?」


神様「申し訳ございませんが、昔話はご遠慮頂けますでしょうか」

猫神「ふふっ、ごめんねぇ~」


神様「なんでお前が喫茶店なんかやってんだよ」

猫神「だって~ 神社だけじゃ生活できないんだも~ん」


神様「境内で関係者が営利事業をするのは禁止!」

猫神「でも土地を寝かせておくのも勿体ないし~」

神様「だーめ!」


神使「なんで神様そんなに厳しいんですか・・・」

神様「自分に優しく、他人にはめっちゃ厳しく! それが私流」


猫神「でも、神宮から許可出してもらったも~ん」ペラッ

神使「拝見します。 たしかに神宮の正式な許可証ですね」


神様「誰だよ、そんな許可出したヤツは! 他に示しがつかないだろ!」バンバン

神使「神宮 広域特務課 審査係 神様、とあります」


神様「・・・今の時代は神社運営だけでは厳しいからな。 良い判断だ」ウン

猫神「さっすが神ちゃ~ん、分かる神は違うわ~」

神様「そうだろ? そこら辺の堅物と一緒にするなよ? 私は先見の明を持っているんだ」

神使「・・・・・・」


猫神「で、ご注文は~?」

神様「コーラ、おすすめデザートセットで」

神使「私は、えっと・・・ ブレンドをお願いいたします」

猫神「は~い、少々お待ち下さ~い」


神様「で? なんでお前はこんなへんぴな島にいるんだ?」

神使「確か、転勤希望と伺っていますが」

猫神「そう、疲れちゃってさ~」

神様「!?」


神使「疲れたと申しますと?」

猫神「ほら、あそこって神宮に次ぐ大きな神社じゃな~い?」

神使「そのようですね」


猫神「他に周辺500個の社の管理もあってね~」

神使「500!?」

猫神「そうなの~ まぁ他にも色々と大変でさ~」

神使「ご苦労様です」

猫神「いやいや、逃げて来ちゃったし~」テヘッ

神様「・・・・・・」


猫神「は~い、お待たせいたしました~」コトッ

神使「ありがとうございます」


神様「ちょ、このケーキめっちゃウマそうじゃん!」

猫神「ふふふ、分かる~ 自信作なの」

神様「お前が作ってんの?」

猫神「腕に自信ありです。 さぁ召し上がれ~」


神様「んじゃ、いただきま~す」パクッ

猫神「どぉ~?」


神様「やばい! うまいっ!」パクパク

神使「神様、一口頂けますか?」

神様「ふざけんなよ」パクパク


神使「・・・すいません、私もケーキを追加でお願いできますでしょうか」

猫神「ありがとぉ~ 今もってくるね」


 カランコロン

猫娘「すいません店長! 遅くなりました」

猫神「あっ、猫娘ちゃんおはよ~ お客様にこのケーキ持って行って~」


猫娘「お客様?」

神様・神使「・・・・・・」


猫娘「いらっしゃいませ・・・ じゃない。 いらっしゃいませニャ!」

神様「あっ、うん。 えっと・・・ 神使君?」

神使「はい」

神様「どうしよう。 人の姿になった猫が喋ってる」

神使「そうですね」


猫娘「正体がバレてる! ニャ」

猫神「あぁ~ 神宮から来た神様と神使さんよ。 気にしないで~」


猫娘「初めまして、バイトの猫娘です。 違う、バイトの猫娘ですニャ!」

神様「なんで言い直したの?」

猫娘「お客さんの前では語尾に“ニャ”を付けろと店長から言われてまして・・・ ニャ」


神様「猫神ちゃんさぁ」

猫神「なぁに~」

神様「露骨すぎだろ」

猫神「え~ だってにゃんにゃん島の喫茶店だもん。 その位の露骨さは必要だよ~」


神使「もしかして、神使として籍に入れるというのはこちらの猫娘さんですか?」

猫神「そうそう」

神様「神使だぁ?」


神使「はい、神使登録の調査依頼が出ております」

神様「へぇー、数日中に神宮から使いの者がくると思うんでそれまで大人しくしていて下さい」


神使「神様・・・ その使いの者が私達なんですが・・・」

神様「はぁ~っ? お前さぁ、なんだよこれ。 どうすんだよこんなの」


猫娘「こんなのだなんて・・・ こんニャにょだニャんて・・・」

神様「だから一々言い直してんじゃねぇよ! しかも噛んでるし」


神使「神使適正を調べて猫娘さんを神使として相応しいか審査して下さい」

神様「審査? 私がすんの?」

神使「はい」


神様「お前がやれよ猫神! 自分の神使にすんだろ?」

猫神「いや~、私じゃ無理なんだよね~」


神使「主神が自分の神使を登録するには一定の規模の社を持っていることが必要なんです」

神様「はぁ? なんだそれ?」

神使「10年前の神法改正で追加された条項です」

神様「なんでそんな変な規則が追加されてんだよ!」

神使「私にそう言われましても・・・」


猫神「そう言うことなんだな~ この社の規模の主神じゃ何も出来ないの~」

神様「・・・面倒くさい時代だなぁ」

猫神「まぁね~ でも規則には従わないと~」


神様「・・・規則ねぇ~」


神使「そういう訳ですので神様、審査をよろしくお願いいたします」

神様「審査って言われても何すんだよ。 知らないぞ私はそんなこと」


神使「神様って審査係ですよね? 専門ですよね?」

神様「ぅっ」ギクッ


神使「神使登録審査は筆記と実技です。 この教本通りに―――」

神様「猫娘は神使になりたい?」

猫娘「猫神様のお役に立てるなら! 立てるニャら!」


神様「・・・猫神は、これが神使で良いの?」

猫神「うん、必要~」


神様「んじゃ、採用。 神使よ審査は合格したから登録を」


神使「えっ? そんな簡単に神使登録など・・・」

神様「こいつが必要だって言ってんだから必要なんだよ。 最低位だったら登録簡単だろ? さっさと登録!」

神使「しかし・・・」

神様「もう人型になってんだから神使にしておいた方が良いだろ」

神使「はぁ・・・ あんなに神使試験大変だったのに、私の立場は・・・」

神様「良いんだよ! 私は私、余所は余所!」


猫神「いや~ すまないねぇ~ 正直試験対策してなかったからどうしようかと思ってたんだ~」

神様「じゃ、そういうことでお前こいつの神使な」

猫娘「ニャニャ! また猫神様の神使でも良いんですか?ニャ」パァッ

神様「?」


神使「登録手続きは後日いたしますが、これからは猫神様の神使・猫娘と名乗って下さい」

猫娘「やったー!! 違う、やったニャー!」


神使「・・・その代わり!」

猫娘・神様「」ビクッ


神使「神に仕える神使として、最低限の作法は私がみっちりとたたき込ませて頂きます」

猫神「それは助かる~ 是非ともお願いします神使君」

神使「お任せ下さい。 これでも神使の階位は最高位です」


神様「猫娘よ、死ぬ気で耐えるんだ。 私に言えることはそれだけだ・・・」

猫娘「ニャ! よろしくお願いします、神使先生!」


神様「んじゃ、授業料として宿の提供と私のケーキ食べ放題をお願いするぞ猫神」

猫神「おっけ~ そのくらいは持つよ。 2階が住居スペースだから空いてる部屋使ってね~」


神使「ケーキ食べ放題はいらないんじゃないですか?」

神様「うっせんだよ腐れ犬ころ! 毎日ケーキ食べたら破産するわ!」ゲシッ


神使「毎日食べるんですか? すいません猫神様」

猫神「いやいや、この位は安いもんだよ」


神様「じゃぁ早速だけど、ケーキお代わり」

猫神「もう食べちゃったの~?」

神様「神様なもので///」ゲシッ

神使「痛! なんで最近その言葉の後に必ず私を蹴るんですか?」


神様「それより、店は儲かってんの? 客一人もいねぇじゃん」

猫神「平日だし~ 明日は土曜日だから忙しいよ~」

神様「ふ~ん」


猫神「お手伝いよろしくね~」

神様「はい!? 何言っちゃってんの? 明日は海行くんだよ! 海!」

神使「海はまだ寒くて泳げませんよ?」

神様「だれが泳ぐなんて言ったよ。 砂浜で寝るんですぅ」ベェー


猫神「え~ バイト代出すわよ~ 時給1500円でどう?」

神様「よろしくお願いいたします猫神店長」


猫神「神使さんも手伝ってもらえると嬉しいなぁ~」

神使「もちろんお手伝いさせて頂きます」

猫神「やった~」


猫娘「明日は外にテラスも出せますね。 ニャ」

神様「猫娘ちゃんさぁ、語尾に“ニャ”を付けるなら徹底した方が良いよ?」


猫神「あ~、でも神ちゃん達の服がないや・・・ どうしよう」

神様「心配無用。 神使よ、私の正装を用意しておけ」

神使「正装って巫女装束ですか?」

神様「神社の喫茶店だ。 巫女さんの格好をした店員がいた方が面白い」


猫神「なるほど~ さっすが神ちゃん! それ採用~」

神様「私は常に最高のアイディーア~を持ち合わせている。 褒めよ」


神使「猫神様は御装束はお持ちですか?」

猫神「う~ん、昔のならあるかな~」

猫娘「私の服はありますか店長? ニャ」

猫神「古くてもよければ私の装束貸してあげるよ~」


神様「んじゃ、明日は神社らしく装束着て正装で接客だ」


――― 夜・厨房

神様「まだ仕込みか?」

猫神「う~ん、もう少しかな~」


神様「急に神使を付けるだなんてどうしたんだ?」

猫神「・・・・・・」


神様「後継者か」

猫神「ふふっ、そろそろ準備しておかないとね~」

神様「平安時代からだもんな。 疲れただろ」

猫神「少しね~ でもまだまだ大丈夫だよ?」


神様「・・・・・・」

猫神「どうしたの?」

神様「10年前の大改革で苦労したようだな」

猫神「う~ん、でも仕方ないよ。 時代の流れだもん」


神様「すまない。 やはり私がもっと反抗しておくべきだった」

猫神「大丈夫だって、神ちゃんが責任を感じることなんてないんだから~」


神様「でかでか大神宮は相当大変だったか?」

猫神「そうね~ 神法改正で参拝者の声を直接聞けなくなったのは寂しかったかな~」

神様「そうか・・・」


猫神「大きい神社だからね~ 仕方ないよ。 私のワガママで迷惑かけられないし~」

神様「お前は人が好きだもんな」

猫神「うん、大好き。 だって命の恩人だもの」

神様「苦労をかけた」


猫神「神ちゃんも私と同じね」

神様「?」

猫神「神ちゃんが地方神社回りだなんて~」

神様「私も人の願いを直接聞くことが出来ないなんて、そんなのは無理だ」


猫神「相変わらず素性は隠してるの~?」

神様「まぁな、この方が自由で気が楽だ。 誰もこんなのが最高神だなんて思わないしな」

猫神「神ちゃんらしいな~」


神様「でも、お前はなんでココなんだ?」

猫神「今の私にはこの位がちょうど良いかなぁって。 猫もいっぱいいるし~」

神様「そうか」


猫神「ごめんね~ 神ちゃんからこんなに強い神力もらったのに」

神様「そんなことお前が気にする必要は無い。 勝手に神力を渡したのは私だ」


猫神「でも、これだけの神力があるのにこんな小さな神社に引きこもって・・・」

神様「お前が平安からどれだけの人の願いを叶えてきたかくらい知っている。 十分だ」

猫神「そう言ってもらえるだけでも嬉しいな~」


神様「後はお前の好きなように生きてくれ」

猫神「ありがと~ 神ちゃん」


――― 寝室

 ガチャ

神様「ふぁ~ 寝み~」トテトテ


神使「あっ、神様どこ行ってたんですか?」

神様「ん?」


神使「ずいぶんと長かったですね」

神様「うんこ」


神使「・・・女性の方があまりそのような単語を口にしない方が良いと思いますが」

神様「へいへい、すんませんね~」


神使「あの神様?」

神様「分かってるって、下品なんだろ?」


神使「いえ、そうではなくて・・・ 猫神様なんですが」

神様「猫神?」

神使「私ごときがお聞きするのは失礼かとは思うのですが・・・」


神様「・・・あいつは平安時代に私が神使に向かえ、そして神にした」

神使「・・・・・・」


神様「あいつは野良猫だったとき、食べ物がなくて餓死しそうだった所を一人の人間に救われたそうだ」

神使「そうなんですか・・・」


神様「人に恩返しがしたい、その一心で神使になってそして私が神力を与え神にした」


神様「神になったあいつは人の願いを聞いて叶えることが生きがいだった。 本当に嬉しそうだったな」

神使「立派な方ですね」


神様「でも10年前の神法改正で、神が人の願いを直接聞くことが出来なくなった」

神使「それで、でかでか大神宮を出てここに・・・」

神様「神職が不在の神社は特例で神が参拝者の願いを直接聞く裁量が与えられるからな」


神様「あいつは本当に人が大好きなんだ。 だから相当つらかったと思う」

神使「・・・・・・」

神様「平安時代から長いこと神として願いを叶えてきてくれたんだ。 少し休ませてやりたいな」

神使「そうですね」


神様「今度は私があいつの願いを叶えてやる番だ」

神使「お手伝いさせて頂きます」

神様「・・・・・・腐れ神使のくせに。 一生腐ってろ。 寝る」ヌギヌギ


神使「あっ、神様の巫女袴がシワシワだったので布団の下に敷いてあります」

神様「は? アイロン掛けくらいしろよ。 なんでそんな原始的なしわ伸ばしなんだよ」

神使「アイロン壊れてしまいまして・・・」


神様「私が史上最悪に寝相が悪いことくらい知ってるだろ? もっとグチャグチャになるぞ?」

神使「では、私の布団の下でも良いですか?」

神様「いいよ」


神使「では、寝る場所を交換しましょう」

神様「ん」モソモソ


神使「それと神様?」

神様「なんだ?」

神使「下着の上に何か着てから寝て下さい」

神様「はい」


――― 翌日

神様「・・・・・・」


神使「猫神様、立派な御装束ですね」

猫神「そぉ~? なんか動きづらくてあんまり好きじゃないんだけどね~」

猫娘「とっても綺麗です! ニャ」


猫神「ふふっ、猫娘ちゃんも似合ってるわよ~?」

猫娘「そうかニャ」

神使「はい、とってもお似合いです。 神用の中でも最高位の御装束ですよ?」


神様「・・・・・・」ムスッ

神使「神様? どうされました?」


神様「おかしくね?」

神使「?」

神様「いや、なんで私の格好が一番しょぼいの?」

神使「それは神様の着ているものは普通の巫女装束ですので・・・」


猫娘「でも、とっても着慣れてる感じがして一番しっくりきてると思う。 ニャ」

神様「だから無理してニャをつけんじゃねぇよ! 徹底しろ! 徹底!」


神使「神様らしい格好で良いと思いますが・・・」

神様「褒められたのかなぁ? でも、私も綺麗なおべべが着たい!」

神使「神様はそれしか装束がございませんので・・・」


神様「犬ころ、お前その上の狩衣脱げ」

神使「え?」


神様「私と同じ白衣と袴だけにしろ」

神使「正装でと言ったのは神様ですよ?」


神様「私が惨めなんだよ! バランス取れよ!」

神使「はぁ・・・ まぁ狩衣は脱いだ方が動きやすいですし」ヌギヌギ


猫神「私達も、上は脱ごうかねぇ~」

猫娘「はいニャ。 ちょっとゴワゴワして接客が難しいニャ」


神様「それより、本当に客なんか来るのか?」

猫神「あと30分で港にフェリーが来るからお昼にはお客さんがいっぱい来るよ~」


神様「こんな島に何しに来るんだよ」

猫神「それは猫を見にだよ~」

神様「猫?」

猫娘「みんな人懐っこくて良い子なの。ニャ」

神使「確かにとっても人に馴れてるみたいですね」


猫神「この島には沢山の猫がいるからね~ 住んでいる島民の数よりも多いんだよ~?」

神様「そんなにいるのか・・・」


猫神「それじゃぁ~ 準備しちゃおうか」


――― お昼

猫神「猫娘ちゃん、これ3番席ね~」

猫娘「はいニャ! これ追加オーダーですニャ」


神様「はぁ~ すんげー混んでんな」

神使「ここまでお客さんが来るとは思っていませんでした」


 すいませ~ん

神使「はい。 神様、テラス席のお客様のご注文お願いしても良いですか?」

神様「あぁ行ってくる」トテトテ



 キャー 巫女さんだ! かわいい~
 そうだろ? かわゆい巫女さんだろ? 本物だぞ?


神使「神様に任せて大丈夫でしょうか・・・」

猫神「大丈夫だって~ 神ちゃん接客上手だも~ん」


神使「まぁ、普段から巫女さんとしてお守り売っていますからね」


 こっちも注文良いですか~?

神使「はい、今お伺いいたします」


――― 2時間後

客A「うそ~ そんなことある訳ないじゃんよ~」

客B「神ちゃん、話盛りすぎ~」ハハハ

神様「いやいや、そう思うだろ? でもまだ続きがあってさぁ」


神使「ちょっと神様、何やっているんですか?」

神様「うるせー犬ころ。 今良いところなんだよ」

神使「ちゃんと仕事して下さいよ~」


神様「あっ、みんなお代わりとか頼むよね」

客A「もち、私同じヤツ追加で」

客B「私も~」


神様「ここのケーキが最高に旨いんだよ。 試してみる価値はあるぞ?」

客A「そうなの?」

客B「神ちゃんが言うなら食べてみようか」


神様「んじゃ、ケーキセット3つ。 私はコーラね」

神使「なんで神様の分も数に入っているんですか・・・」

神様「ケチケチすんなよ。 なぁ皆話の続き聞きたいよな?」


客A「ここでやめられたら困る」

客B「私が神ちゃんの分払ってあげる」

神様「そういうことだ。 さっさと持ってこい犬」


神使「話し終わったら仕事して下さいよ?」

神様「はいはい。 で、続きなんだけどさ~ 私がおまるに跨がった途端―――」


神使「テラス席のお客様、ケーキセット追加で3つお願いします」


 ハハハッ 神ちゃん面白い!
 やばいツボった!!


猫神「神ちゃんまたお客さんと話し込んでるの~?」

神使「もう4組目ですよ? なんの話をしているんだか・・・」ハァ


猫娘「でも、みんな追加注文してくれるから嬉しいです。ニャ」

猫神「さすが神ちゃんよね~ 自分の分までお客さんに払わせるなんて~」

神使「すいません、何のお役にも立てずに・・・」


猫神「そんなことないよ~ お客さんも楽しそうだし、セットで追加取るなんてすごいよ~」

猫娘「あの技、盗みたい。 ニャ・・・」

神使「あまりおすすめ出来ませんが」


猫神「ふふ、はい追加のセット~」コトッ

神使「ありがとうございます」


 すいません、お会計お願いします


猫娘「はいニャ! 今行きますニャ」スタスタ


――― 夕方

神様「いや~ 忙しかった!」

神使「神様ずっとお客さんと話し込んでただけじゃないですか」


猫娘「でも凄い! お客さんみんな楽しそうだった。 ニャ」

猫神「売上もすごいよ~ 客単価とか最高記録かも~」

神様「ほら見ろ」フフン

神使「なんか、納得いかないのですが・・・」

神様「ったく、そんなだからお前はいつまで経っても犬ころなんだよ」


猫神「明日は日曜だからもっとお客さんくるよ~ よろしくね~」

神使「はい、よろしくお願いいたします」

神様「任せろ! それよりさぁ」

猫神「な~に?」

神様「猫はここにいないのか?」

猫娘「皆には境内に入っちゃダメって言ってあるの。 ニャ」

猫神「飲食店だからね~ 衛生上マズいんだよ~」

神様「あ~ 結構リアルな事情なのね」


神使「猫娘さん、今日の夜はお時間ございますか?」

神様「なに、デートの誘い? 犬と猫はさすがにダメだろ~」


神使「何を言っているんですか・・・ 神使の実技指導です」

猫娘「もちろん大丈夫です。 ニャ」ビシッ


猫神「本殿使う~?」

神使「お借りしても大丈夫でしょうか?」

猫神「もちろん大丈夫だよ~」

神使「では、後ほど本殿にて」


――― 夜・本殿

神様「なぁ、私は別に付き合わなくても良いんじゃないか?」

神使「神様も一緒に指導をして頂かないと」


神様「今日はテレビにエガちゃんが出るから見たいんだよ」

神使「・・・神様って江頭2:55さん好きですよね」

神様「あのお方は本物だ」ウン

神使「本物って何ですか・・・」


猫神「神ちゃん相変わらず変わった人が好きだよね~」

神様「はぁ~ エガちゃんのお嫁さんになりたいなぁ~ ///」ウットリ

神使「・・・・・・」


猫娘「そんなに好きなんですか? ニャン」

神様「あぁ。だって、ああ見えてエガちゃんはさぁ―――」

神使「はいはい。 さて猫娘さん、まずは神使としての立ち振る舞いからいきましょうか」

猫娘「はい先生。 ニャ」ビシッ


神使「神様、神壇の前にお立ち頂けますか?」

神様「え? 私が相手すんの?」

神使「できれば・・・」


猫神「あ~ 私がするよ~」

神様「だそうだ」

神使「申し訳ございません・・・ よろしくお願いいたします」

猫神「気にしないで~ 一般的な神勅型で良いかな~?」

神使「はい、お願いいたします」

猫神「お~け~」スタスタ


神使「では猫娘さん、まずこの場合の神使の立ち位置ですが―――」

猫娘「神勅は知ってるニャ」スタスタ ストン

神様「ほぉ~」


猫娘「・・・」ペコリ

神使「では猫神様、なにか当たり障りのない神勅をお願いできますでしょうか」

猫神「はいよ~ では」ゴホン


猫娘「・・・・・・」フカブカ

猫神「神勅、明日のねこねこ島の天気を晴天とす~」

猫娘「・・・・・・・・・ありがたき御神勅、しかとお受けいたしました」フカブカ


神様「なんだ完璧じゃん」

神使「はい。 立ち振る舞いと良いタイミングと良い素晴らしいです」


猫神「うんうん、さすが猫娘ちゃ~ん」

猫娘「・・・・・・」フカブカ

神使「あっ猫神様、締めのお言葉を」

猫神「あっ、ごめ~ん。以上、正一位猫神から神勅を申し伝えた~」

猫娘「ニャッ、大丈夫だったかニャ?」パッ


神使「もしかして、猫娘さんはどこかで神使の実技とか習得されたりしました?」

猫神「猫娘ちゃんは、でかでか大神宮からずっと一緒だからね~」

神様「は? 猫娘はこの島出身じゃないのか?」

猫娘「はいニャ、でかでか大神宮から猫神様にくっついて来たんだニャ」

神様「なんだぁ、そんじゃ心配ないじゃん」


神使「でも神使籍には入っていないのですか?」

猫娘「・・・・・・」


猫神「うん10年前までは私の神使だったんだけどね~」

神様「はい?」

神使「猫娘さん神使だったのですか!?」

猫娘「・・・・・・」コクン


猫神「でもね~ でかでか大神宮にいるときに・・・ 除籍されちゃったの」

神様「除籍!?」


神使「除籍とは穏やかではありませんね」

猫神「私のせいなんだけどね~」

猫娘「猫神様のせいじゃありません! 私が・・・ 私が悪いんです。 ニャ」シュン

神様「・・・・・・」


猫神「神法改正の時にちょっとね~」

神様「なるほどな、猫神寄りの神使であるお前が目を付けられたと」

神使「そんなことで除籍だなんて考えられないのですが・・・」

神様「大きい神社だと複雑な事情があるんだよ。 内部の勢力関係とかな」

神使「そんな・・・」


神様「復籍か~ ちょっと面倒だな」

神使「猫娘さんは神使でいらした時の階位は?」


猫神「う~んと・・・ 一位だったよね~?」

猫娘「はいニャ」

神使「高位ではないですか!」


神様「犬ころの一つ下か。 位が高いとさらに面倒だな」

猫神「そうなの~?」

神様「あぁ、神使の復籍の場合は一つ階位を上げないといけないんだよ」

神使「そうですね、猫娘さんを最高位の特位で神使籍に入れる必要があります」


猫娘「私・・・ 猫神様の神使になれないのですか・・・ ニャ」シュン

猫神「・・・・・・」

神使「最高位となりますと・・・」


神様「ふふふ、そんな時こそ! この、かわゆい神様の出番だ!」

神使「え?」


神様「私は神宮でただ一人の審査係の神だ」ニヤッ

神使「まさか神様・・・ また変なことを考えているのでは?」

神様「変な事ってなんだよ!」ゲシッ


猫神「でも、神ちゃんに迷惑かけられないよ~」

神様「大丈夫! 猫娘よ、お前を神使の最高位として復籍させる」

猫娘「ニャニャ!? 最高位?」

神使「神様、さすがに最高位登録はそんな簡単にできませんよ?」


神様「猫神、お前の神力を少し猫娘に移せ」

猫神「神力を~!?」


神様「そうだ、神登録特例条項を使う」

神使「神登録? そんなのあるんですか?」

神様「あるんだなぁ~ それが」


猫神「でも特例ってなに~?」

神様「神として登録する神使で審査神が未熟と判断した物は神使最高位として待機させるというものだ」


神使「初めて聞きました・・・」

神様「私が前に作ったけど公布していないからな」

神使「え? それって効力あるんですか?」

神様「当たり前だ。 公布していないだけで神登録法には記載されている」


神使「でも異議を唱えられるんじゃ・・・」

神様「神の出生に関するに法律だ、人の審査や異議は受け付けない。 私が法律だ! ババン!!」


猫神「でも~ 勝手に私が神力を移すのは違反な気が~」

神様「ビビってんじゃねーよ、バレねーよ」

神使「その言葉、使わない方が良いと思うんですが・・・ 絶対バレてますよ?」

神様「・・・うん、今の言葉は取り消す」


神使「しかし、多少なり神力を移すと言うことは猫娘さんは神と言うことになるのでは?」

神様「その通り、故にまずは猫娘を神籍に入れる」

猫娘「ニャニャ!? 」

神使「ちょっと待って下さい。 そんないきなり神にだなんて」


神様「猫娘は神使経験がある。猫娘は猫神とどのくらいの期間一緒にいるんだ?」

猫神「う~んと・・・」

猫娘「248年ニャ」

神様「十分だ」

神使「十分といいますと?」


神様「猫神の神力がゆっくり解放されて側近の猫娘に移ってしまったという言い訳が使える」

猫神「へぇ~ そんなことあるんだ~」

神様「いや、まずないな」

神使「は?」

神様「良いんだよ、それっぽい言い訳さえあれば」

神使「神様・・・」


神様「猫神よ、猫娘に神力を移しても良いか?」

猫神「うん、神ちゃんの提案なら異論はないよ~」

神様「よし。 んじゃ猫神、猫娘に神力を与えろ」


猫神「はいよ~ 猫娘ちゃん私の力受け取ってね」ニコッ

猫娘「猫神様の神力を私なんかが・・・」


猫神「猫神ちゃんに受け取ってもらえるなら私はとっても嬉しいな~」

猫娘「猫神様・・・」


神様「神力の量は私が制御するから、猫神は神力をゆっくり与え続けてくれ」


猫神「うん、それじゃぁいくよ~」

 ポワポワ

猫娘「あったかい・・・ ニャ」

 ポワポワ

神様「よし、その位でいいだろ」


猫神「はぁ・・・ 結構大変なんだね~」ハァハァ

神様「思った以上にしんどいだろ?」


猫娘「大丈夫ですかニャ、猫神様・・・」

猫神「大丈夫だよ~ 猫娘ちゃんはどう?」

猫娘「なんだか、不思議な気分ニャ」

神様「神力が体に馴染むまで数日位は違和感があるかも知れないが問題ない」


神使「・・・・・・」


神様「どうした? 犬ころ」

神使「いえ、初めて見たもので」


神様「そりゃ、神の誕生に立ち会うなんて普通じゃ絶対にないからな」

神使「・・・・・・」


神様「お前もここで神にしてやっても良いんだぞ?」

神使「いいえ、私はまだ神様の神使で良いです」

神様「あっそう」


猫神「ふふっ」


神様「さてと、これで猫娘は神になっちゃった訳なんだけど・・・」ゴソゴソ

 ポチッ

神使「神様、その機械は?」

神様「ICレコーダーだ」

猫神「レコーダ~?」


神様「猫娘、私の問いに対し正直に答えよ」

猫娘「はい。ニャ!」ビシッ


神様「嘘偽りは私だけでなく、全ての神に対する侮辱となる。 分かるな?」

猫娘「はい!」


神様「猫娘は本審査に対し誘導尋問を受けているか?」

猫娘「受けていません!」


神様「誓えるか?」

猫娘「猫神様に対しても誓えます!」


神様「よろしい、お前は人が好きか?」

猫娘「はい! 大好きです!」


神様「お前の主神であった猫神を尊敬するか?」

猫娘「もちろん尊敬してます!」


神様「お前は神として長い時を生きる覚悟はあるか?」

猫娘「正直・・・ まだわかりません・・・」


神様「自らを、猫神をも犠牲にし、人の願いを叶えることが出来るか?」

猫娘「それは・・・ 猫神様を犠牲にするなんて・・・ 出来ません・・・」シュン

猫神「・・・・・・」


神様「質問は以上で終了だ。 神宮審査神である私、神様は猫娘を神として相応しくないと判断した」

神使「そんな!」

猫神「・・・・・・」

猫娘「すいません・・・」


神様「よって猫娘は神籍登録を行ったのち神階を保留、特例条項を採用し身分を最高位神使へ置くものとする」

猫娘「ニャ・・・」


神様「猫娘よ、本審査において異議申し立てはあるか?」

猫娘「ないです。 ニャ」


神様「神階の保留期間は、猫神を主神として任命する。 よいか? 猫神」

猫神「はい。 私猫神は審査神・神様の命に従います」


神様「よろしい。 以上を持って、神登録審査を終了する」

 ポチッ


神様「よし、これでOK。 犬ころの“そんな!”が迫真の演技で良い感じだった」

神使「神様があまりにも冷たい言い方でしたのでつい・・・」

神様「はぁ? 儀式的と言えよ」

猫娘「神様とっても威厳があったニャ」


猫神「でも、なんで録音なんかするの~?」

神様「証拠を残しておかないと採用されないんだよ」

猫神「へぇ~ 時代も変わったね~」


神様「失礼しちゃうよな。 私が不正なんかするわけないのに」

神使「・・・・・・」

神様「なんだよ犬ころ!」ゲシッ


神使「あんな酷な質問を毎回するのですか?」

神様「は? する訳ねぇ―じゃん」

神使「え?」


神様「特例を使うためにした質問だよ。 あそこで猫娘が猫神を犠牲にするとか言ったらハッ倒してたわ」

神使「あ~ そう言うことでしたか」

猫神「神ちゃんは相変わらずそういう事をするのがうまいね~」


神様「褒めるな褒めるな///」クネクネ

神使「いえ、褒めているわけではないと思うのですが・・・」


猫神「じゃぁ、お祝いを兼ねて夕食は豪勢にいこうかね~」

神様「いいね~」


猫娘「さっき、島の人からいっぱい牡蠣もらったニャ」

神様「くっは! 牡蠣っ!」クラクラ


猫娘「もしかして、苦手だったかニャ・・・」

神使「逆です。 神様の大好物の中でも他の追随を許さないほど最高に好きな食材です」

猫神「神ちゃんて二枚貝大好きだもんね~」


神様「やったーーー!!! 最高だよ! うひょ~ 牡蠣かよ!」

猫娘「バケツいっぱいもらったニャ」

神様「やべー やべーよ」


神使「でも焼き牡蠣にして食べますよ? 生はダメです」

猫神「そうだね~」

神様「焼き牡蠣も最高だよね。 はぁ」ウットリ


猫神「それじゃ~ 浜焼きの準備しよっかね~」

猫娘「はいニャ。 網焼きセット持ってくるニャ」

神使「お手伝いします」

猫娘「ありがとうございますニャ」


猫神「お~い、神ちゃ~ん」

神様「はぁ」ウットリ

神使「神様はしばらく使い物にならないと思います。 放っておきましょう」


神様「あちちっ」パクパク

神使「神様、そんなに慌てて食べなくても大丈夫すよ」

猫娘「まだまだいっぱいあるニャ」


神様「ふぉもふぁもふん」モグモグ

神使「何言ってるんです?」


猫神「でも美味しいよね~」

神使「本当に。 しかし凄い量ですね」

猫娘「ここら辺は養殖でいっぱい牡蠣が採れるニャ」


神様「最高の環境だな、私もここで巫女として住み着こうかな~」モグモグ

神使「神としてではないんですか?」

神様「神は猫神がいるし、神使も猫娘がいる。 巫女としてなら転勤許可がおりそうじゃん」

神使「なんでそこまで本気で考えているんですか・・・」


神様「はぁ~ 美味しいっ!」パクパク

猫娘「まだまだあるニャ」


猫神「保存できないし、全部食べてね~」

神様「こんなに食べてもいいの~ 最高に幸せだよ~」モグモグ


――― 翌日

 チュンチュン

神使「神様? 朝ですよ?」ユサユサ

神様「ん~ あと6時間・・・」モゾモゾ

神使「またそんなことを言って・・・ 朝食は牡蠣ご飯ですよ?」

神様「それを早く言えよ!」バサッ

神使「うわっ、なんで下着姿なんですか!」

神様「着るの忘れた。 それより牡蠣ご飯は?」

神使「下で猫娘さんが用意してくれてます」


神様「よっしゃ! 待ってろ牡蠣娘!!」タッタッタッ

神使「牡蠣娘って・・・ って神様? 服着てから出て下さい!!」


 ダダダ

神様「朝は牡蠣ご飯と聞いた! どこだっ!!」ズサーッ

猫娘「ニャー!! 神様裸ニャ!」

神様「失礼な! 下着は着ているから裸では無い」


神使「神様ー! 服着て下さいよ」タッタッタッ

神様「着ないとダメか?」

神使「当たり前です」


猫神「神ちゃん、可愛い下着だね~」

神様「照れるじゃないか~///」クネクネ


猫娘「朝ご飯はテーブルに用意してあります。ニャ」

神様「よし! 皆早く席に着け!」サッ

猫神「はいよ~」スタスタ


神様「いいな? では、頂きます!!」

神使「なんで神様が仕切っているんですか・・・」

神様「うるせー犬」


猫神「じゃぁ食べようかね~」

神様「いや~ 朝から牡蠣なんて幸せすぎるぞ」パクッ


猫娘「味はどうですかニャ?」

神様「ひゃーーー!! なんじゃこりゃー!!」


猫神「あれ? 味、変だった~?」

神様「これを作ったのは誰だ!」

猫娘「わたしです。ニャ・・・」


神様「猫娘よ」

猫娘「はい・・・」


神様「わたしのお嫁さんにならないか?」

猫娘「ニャニャ!?」


神使「くだらないこと言っていないで大人しく食べて下さい」

神様「んだよ、腐れ犬ころ」ゲシッ


猫神「神ちゃん、相変わらずだね~」

神使「猫娘さん、神様は美味しいものを食べるとテンションが変になるので気にしないで下さい」


神様「いや~ うんめー」パクパク

神使「そうだ、神様?」

神様「ふぉん?」パクパク

神使「今日一日お手伝いをしたら、最終のフェリーでここを出ます」


神様「はぁ~? 冗談だろ?」

神使「冗談を言ってどうするんですか・・・」


神様「牡蠣は?」

神使「はい? すいません、言っている意味が分からないのですが」

神様「牡蠣食べれないじゃん」

神使「牡蠣を食べるために旅しているわけではございませんので・・・」


猫娘「神様とお別れニャ」

猫神「仕方ないね~ 神ちゃんも仕事だし」

神様「え? なんか皆ずいぶんとあっさりしてない? 引き留めないの?」


猫神「忙しそうだし、引き留めちゃ悪いよ~」

猫娘「ニャ」


神様「・・・・・・そう」モグモグ


神使「で、次の場所なのですが」

神様「どうせまた田舎なんだろ? 次は無人島か?」ハハッ

神使「吉祥寺です」

神様「!?」


神使「吉祥寺です」

神様「騙されません~ どうせ田舎にある吉祥寺とかいうオチだろ?」


神使「東京にある吉祥寺です。 神様の行きたがっていた」

神様「え? 嘘だろ?」

神使「本当です」


神様「猫神、猫娘。 わたしを皆が待っている。 名残惜しいとは思うがお別れだ」

猫神「うん、がんばってね~」


神使「ちなみに猫神様からのご依頼で吉祥寺に行くんですよ?」

神様「はい?」


猫神「お友達の神が有給でお休みする間、神社を管理して欲しいって相談受けてて~」

神使「そう言うことです。 神宮からも正式な代理神として委任も受けました」

神様「やったー! 吉・祥・寺! いえぇ~い」

猫娘「凄く嬉しそうニャ」


神様「やっぱ猫神、お前は最高だよ!」

猫神「よかった~ 楽しんできてね~」


神様「でもさぁ、なんで私に相談の一つもなしにそんなのが決まるわけ?」

猫神「ごめんね~ 驚かせようと思ってさぁ~」

神様「いや、猫神は良い。 問題は神宮が勝手に進めることだ」


神使「私には連絡ありましたよ?」

神様「だから、なんで私をすっ飛ばしてお前に連絡が行くんだよっ!」


神使「神宮に抗議します? 吉祥寺行きは白紙になると思いますが」

神様「やめて! 抗議なし! 従います」


猫神「それじゃ~ 神ちゃんよろしくね~」

神様「任せろ! おしゃれでナウくてかわゆい神ちゃんになってくる!」

神使「そんな言葉向こうで使わないで下さいよ? 死語です」

神様「え?」


猫神「さて、それじゃ~ そろそろ開店の準備しますかね~」

猫娘「はいニャ」

神様「バッチグー!」



――― 夕方


猫神「ありがとうございました~」

猫娘「また来てニャ!」

 カランカラン


神様「いや~ ちかれた!」

猫神「お疲れ~ 今日もいっぱい人来たね~」


神使「神様はまたお客さんと喋ってただけですよね?」

神様「うるせー腐れ犬ころ!」ゲシッ


猫神「二人は今日のフェリーで帰るんだっけ~」

神使「はい、バタバタして申し訳ございません」

猫神「いや~ 吉祥寺行きはこっちからのお願いだし~」


神様「楽しみだな~ 吉祥寺!」

神使「では神様、そろそろ出発しますか」

神様「もう少し休んでから行こうよ~」

神使「最終のフェリーまでそんなに時間もございませんので・・・」


猫神「あっ、じゃぁこれ少ないけど~」スッ

神様「?」


猫神「バイト代~ はい、神ちゃんの分」

神様「そうだった! バイト代もらえるんだ」

猫神「こっちは神使君の分だね~」スッ

神使「私も頂いてよろしいんですか?」

猫神「当たり前だよ~」

猫娘「とっても助かったニャ」

神使「では、お言葉に甘えて。 ありがとうございます」


猫神「道中は気をつけてね~」

神使「猫神様、猫娘さん、お世話になりました」

猫神「こっちこそお店手伝ってもらって助かったよ~」

猫娘「お世話になりました。ニャン」


神様「まっ、何かあったら連絡ちょ」

猫神「神ちゃんも、本当にありがとう~」フカブカ

猫娘「ありがとうございます」フカブカ

神様「いや仕事だし、ケーキ食べたし、牡蠣食べたし、バイト代ももらったし・・・」


神使「神様? せっかくバイト代入ったのに申し訳ないのですがそのお金下さい」

神様「ぇ?」


神使「まだ借金残っていますので」

神様「・・・・・・」


猫神「神ちゃん、相変わらずお金には縁が無いね~」

神様「はぁ・・・ 本当だよ」シュン


神使「では、私達はここで」

猫娘「荷物は宅急便で送っておくニャ」

神使「どうぞよろしくお願いいたします」


神様「そうだ、猫娘」ゴソゴソ

猫娘「はいニャ」


神様「これやる」スッ

猫娘「お守りですかニャ?」

神様「私が作ったヤツだからあんま御利益無いけど」


猫神「お~ 神ちゃんお手製のお守りだねぇ~」

猫娘「ありがとうございます! ニャ」

猫神「大切にしなよ~ 神ちゃんのお守りは凄く貴重なんだから~」

猫娘「はいニャ」

神様「古くて年季が入っているだけだ。 たいしたもんじゃない」


神使「では、向こうに着いたら一度ご連絡いたしますので」

猫神「うん、よろしくね~」

神使「お世話になりました」

神様「じゃーねー」


 カランカラン


猫娘「行っちゃいましたね」

猫神「そうだねぇ~」


猫娘「お守り・・・ 大切にします」

猫神「そのお守り、たぶん神ちゃんがまだ神力使えたときに作った物だね~」

猫娘「そうなんですか?」

猫神「うん。 私達神様の“神様”が作ってくれたお守りだよ~」


猫娘「神様の神様・・・」

猫神「そう、神ちゃんは私達の神様だからね~」


猫娘「・・・・・・」ギュッ


――― 港


神使「神様、船とタラップの間に段差がありますから気をつけて乗って下さい」

神様「だから分かってるってんだよ! 痛てっ」ガクッ

神使「・・・・・・」

神様「・・・・・・」


神様「アチョ~ッ!」ゲシッ

神使「え? なんで蹴られたんですか?」

神様「ん? なんとなく?」

神使「・・・・・・」


神様「いや~ でも吉祥寺か~ 楽しみだな~」

神使「明日の夕方までには着きたいですね」

神様「は? 明日?」


神使「結構距離ありますので」

神様「新幹線なら夜には着くんじゃないの?」


神使「金銭的な問題がありまして・・・」

神様「ふ~ん。 でも、どっかで一泊する方が高くない?」


神使「各駅で行けるところまで行って夜は駅で泊まります」

神様「各駅? 駅で泊まるって野宿って事です?」

神使「そういう言い方もございますね。 廃神社でも良いですが」

神様「うそ~!! マジで言ってんの?」

神使「はい」


神様「嫌ー! 帰る! 牡蠣娘の所に帰る」ジタバタ

神使「ダメです、ほら出航しますよ?」

神様「牡蠣娘ー! 助けてくれ~」

 ボー
 ザバーン ザバーン


猫娘「ニャニャ! 神様の雄叫びが聞こえたニャ!」

猫神「ふふっ、本当だ~」




神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#3 ―END

ゆるゆるとしすぎて…
反省!(ドゲザ)


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 プシュー
 吉祥寺~ 吉祥寺~


神使「お疲れ様でした神様」

神様「・・・・・・」


神使「あれ? どうされたんですか? 吉祥寺ですよ?」

神様「お尻痛い・・・」

神使「12時間かかりましたからね」

神様「でも・・・ 遂に・・・ 遂に! 我、吉祥寺に降り立つ! ドドン!」


神様「・・・お尻痛い」


~あらすじ~

神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「神宮が誇る史上最悪の問題児、左遷と減俸を総なめにする神様は神宮から地方神社へ出向を命じられます。
しかし赴任先の神社ではその問題児ぶりを遺憾なく発揮し、ついには無給と無期出向扱いに。
捨てる神あれば拾う神あり、神様のお友達である猫神様から吉祥寺の神社で代理神として赴任することが出来た神様は、
意気揚々と吉祥寺に降り立つのでした」

神様「アチョ~ッ!」ゲシッ


【#4】

神様「はぁ~ 駅でっかいな」

神使「人も凄いですね」


神様「おっ?」

神使「どうされました? 神様」

神様「見ろよ! ヨトバシ! でっかいヨトバシカメラがある!!」

神使「本当ですね」


神様「ねぇ、ちょっと寄って良い?」

神使「構いませんが、何か買う物でもあるんですか?」

神様「スマホ見たい」

神使「予定よりも早く着きましたし、見るだけですよ?」

神様「金ないんだから買えないことくらい分かってますー」ベェー


――― ヨトバシカメラ

神様「うわ~ いっぱいある」トテトテ

神使「神様はDacomoですから向こうのフロアですね」


神様「ここか」

店員「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」

神様「スマホ見て良い?」

店員「どうぞ、今お使いの機種は何ですか?」

神様「ん? これ」スッ

店員「・・・・・・」


神様「どったの?」

店員「物持ちがよろしいんですね」

神様「やっぱ古いよね、これ」


神使「神様の携帯っていつ買ったんですか?」

神様「う~んと・・・ 分かんないけど中古」

神使「あ~・・・ それアンテナ伸びるタイプでね」


店員「今ですとこちらのアイポンとかがオススメですね」

神様「いいね~ 聞いたことある。 あっ、でもコッチの黄色いちっさいヤツが良いな~」

店員「ソミーの最新機種ですね。 そちらも人気でオススメです」

神様「ふ~ん・・・ ありがと店員さん、行くぞ神使」

神使「もうよろしいんですか?」

神様「うん、やっぱ見てると余計欲しくなる」

神使「・・・・・・」

神様「くそ、神宮の奴ら少しは給料出せっつうの」


 テクテク

神使「では、神社の方に行きますか」

神様「いや~ お店多いな~」

神使「小さなお店が結構多いんですね」


神様「神社はここから近いの?」

神使「はい、駅から歩いて10分くらいだそうです」

神様「最高の立地だな」

飽きるまで書く!
まだ飽きてはいない!


――― きちきち神社

 テクテク

神使「ここですね」

神様「きちきち神社?」

神使「社務所は・・・ あちらですね、行きましょう」

 テクテク

神使「すいませーん」

巫女「は~い」


神使「神宮から参りました」

巫女「ご苦労様です」ペコリ

神使「宮司さんはいらっしゃいますでしょうか」

巫女「呼んで参りますので少々お待ち下さい」スタスタ


神様「結構大きい神社だな」

神使「そうですね。 かなりご立派なお社です」


宮司「ご苦労様です。 きちきち神社の宮司でございます」

神使「はじめまして、神宮から参りました神使と申します」

宮司「これは、神使様でしたか」

神使「本日からご厄介になります」

宮司「どうぞよろしくお願いいたします。 そちらの方は巫女さんでしょうか?」

神使「いえ、代理神の神様です」

宮司「!? 神様!?」


神様「親しみを込めてかわゆい神ちゃんでも良いぞ?」

宮司「・・・・・・」


神様「?」

神使「宮司さん?」

宮司「あ・・・ 申し訳ありません。まさか神様が普通にいらっしゃるとは思っていませんでしたので」


神使「神様は訳ありで姿を消すことが出来ませ―――」

神様「私は常に人と接することを信条としている」

神使「・・・とのことです」

宮司「そうでしたか、大変失礼いたしました」


神使「こちらの主神様は?」

宮司「神殿の方にいらっしゃると思います。 ご案内いたします」


 テクテク

神様「ここの主神は長期休暇でどこかに行くのか?」

宮司「はい、何と言いますか・・・ 私たちと一緒に海外旅行へ・・・」

神使「一緒と言いますと?」

宮司「私と、巫女を含めこの神社で奉職している者と一緒に・・・ 社員旅行みたいなものです」

神使「それはそれは、楽しんできて下さい」

神様「いいなぁ~ 私も海外行きたい」


宮司「こちらが神殿でございます」

 ギィー

宮司「主神様? おられますか?」

主神「どうぞ」


神使「神宮から参りました神使と申します」

主神「これはこれは、どうぞお入り下さい」

神使「失礼いたします」

神様「んじゃ、おじゃましまーす」


主神「!? 神様ではございませんか!」

神様「おっ、久しぶり」

主神「ご無沙汰いたしております」フカブカ


神使「神様、お知り合いですか?」

神様「あぁ、最後にあったのは・・・ 何年前だっけ?」

主神「150年ほど前になります。 そちらの方は?」

神様「犬ころ」


神使「はじめまして、わたくし神様の使いで狛犬の神使と申します」

主神「神様の神使さんでしたか。 ご立派でございますな」

神様「は? 腐った極悪邪道な犬ころだ」

神使「神様、もう少しまともな紹介をして下さい・・・」


神様「しかし、お前は相変わらずイケメンだな~」

主神「そんな勿体ないお言葉」フカブカ

神様「畏まるな、楽にしろって」

主神「ありがとうございます。 宮司、お茶を用意してくれるか?」

宮司「今お持ちいたします」スタスタ


主神「しかし、わざわざ神様がどうしてこのような場所へ?」

神様「臨時で代理神頼んでただろ?」

主神「はい、まだお見えになっていないようですが・・・」


神様「いや、目の前にいるじゃん」

主神「!? 神様が・・・ 代理神!?」

神様「うん」


主神「まさか神様ほどのお方が私ごときの代理など・・・ 失礼大変申し訳ありません」

神使「神様は以前から吉祥寺に来たがっておりましたので、こちらとしてもありがたいお話でした」


主神「神様がこの地へ!? なにか問題事でも感じられたのでしょうか」

神様「いや別に?」

主神「不徳の致すところ、気になることがありましたら私もお手伝いいたしますが」

神様「お前旅行へ行くんだろ?」


主神「しかし、この地に何か問題があるのでしたらそれどころでは・・・」

神様「大丈夫だって、何もないよ」


神使「神様は単純におしゃれな吉祥寺の街を気に入って来たがっていただけですので」

主神「この地をお気に入りに!! ありがとうございます」フカブカ

神様「だから一々大げさだよお前・・・」


主神「私にとっては何よりも嬉しく、そしてありがたいお言葉でございます」

神様「そうなの?」


主神「神様からこの地をお預かりして良い街にしようとがんばって参りました。 幾度もくじけそうになりながらも―――」

神使「神様? なんかもの凄い神様に敬意を払っているようですが・・・」ボソッ

神様「昔からこんな感じだ、こいつは・・・・・・」ボソッ

主神「――― そんな出来損ないの私にねぎらいのお言葉を頂けるなんて・・・ 私は・・・ 私は・・・」グスッ


神様「あ~、うん。 お前はよく頑張った。 ここの神職や巫女達と心ゆくまで旅行を満喫するがよい」

主神「神様・・・」


神様「あとの事は私達に任せ存分に楽しんでこい。 私からの褒美だ」

主神「ありがとうございます」フカブカ


神使「(・・・この主神様、いい人過ぎる)」


 スタスタ

宮司「お茶でございます」

神使「ありがとうございます」


神様「コーラが飲みた―――」

神使「神様?」

神様「・・・美味しそうなお茶だ」ズズッ


宮司「事務的なことは後ほど巫女を交えて引き継ぎさせて頂きたく思います」

神使「よろしくお願いいたします」


主神「神様も長旅でお疲れでしょう。 少しお休みになった方がよろしいかと」

宮司「そうでございますね」

神様「確かに、ちょっとお尻痛いし、お前達が出かけるまで横になろうかな」


主神「どうかなされたのですか!?」

神様「いや~ 電車で12時間も椅子に座ってたからさぁ」

主神「そんなに長く・・・」


宮司「新幹線や飛行機でははかったのですか?」

神様「鈍行なんだよ、この犬ころが金を―――」

神使「神様は無駄なところにお金を使わない主義でして」

主神「さすが神様!」

宮司「素晴らしい」

神様「・・・ほ、褒めよ・・・」

主神「私達も見習わなければなりません」

宮司「はい、主神様」


神様「もういいや、部屋案内して?」

宮司「はい」


主神「神様、どうぞよろしくお願いいたします」フカブカ

神様「旅行楽しんでこいよ」ニコッ

主神「神様・・・」ウルウル

神様「だから一々大げさな態度取るなよ・・・」


――― 夕方

 ガチャ

神使「神様?」

神様「Zzz」グガー


神使「神様? 起きて下さい」ユサユサ

神様「ん~ なに~」ポー

神使「主人様達が出かけられるそうです。 お見送りを」

神様「あ~ そんな時間か」ヨイショ

神使「・・・・・・」


神様「? なんだよ」

神使「また下着姿で寝てたんですか?」


神様「あ~ 布団が気持ちよくてさぁ、肌で感じたかったんだよ」

神使「着るもの持ってきますからちょっと待てて下さい」

神様「ん」


神使「下着と、巫女装束で良いですか?」ガサゴソ

神様「そうね」


 スタスタ

神様「ごめんごめん」

神使「お待たせして申し訳ございません」


宮司「とんでもない」

主神「神様に見送りをさせるなど失礼申し訳ございません」

神様「気にすんなって」


宮司「神宮から代理の巫女の方が本日中に到着すると思いますので」

主神「神様よりも後に来るなど、ご無礼お許し下さい。 神宮にはキツく申し伝えておきます」


神様「気にしないでくれ。 あそこの巫女も結構大変なんだ」

主神「!? 失礼いたしました。 私はまだまだ心が狭いようです。 精進いたします」

神様「あ・・・ うん」


宮司「では、バスの時間も近いので私達はここで」

主神「行って参ります」


神使「どうぞ楽しんできて下さい」

神様「お土産よろぴこ~」


――― 夜

 TV:お前に一言もの申ーす!

神様「うひゃひゃ、見ろよエガちゃんノリノリだよ」ゲラゲラ

神使「も~ ニュース見せて下さいよ」

神様「うるせー」


神使「それよりピザはもう食べないんですか?」

神様「寝る前に夜食で食べるから取っておいて」

神使「冷めちゃいますよ?」

神様「チンしてフニャフニャになったピザもうまいんだよ」

 トントン
 すんませ~ん

神使「? どなたか来られたようですね」

神様「御朱印じゃね? 行ってこいや犬」

神使「はい」スタスタ


 TV:ドーン! ドーン!
   キャ~ こっち来ないで~ 気持ち悪い~

神様「エガちゃんやべ~ ちょー腹痛い!」バタバタ


 ガチャッ

神使「あの神様?」

神様「あ~ 誰だった?」


?「あれ神ちゃんだ」

神様「おわっ、A子ちゃん! どったの?」


A子「しばらくここの巫女やれって神宮から追い出された」

神様「代理の巫女さんてA子ちゃんだったの!?」

A子「うん、神ちゃんも代理でここに来たの?」

神様「私? 私は・・・ えっと・・・」


神使「神様? A子ちゃんは神様が普通の巫女さんだって思っているんですよね?」ボソッ

神様「あぁ、私は正体を話していない」ボソッ


神使「神ちゃんさんはこちらの方とお友達でして、個人的に頼まれてここに来たんです」

A子「あ~ そうなんだ~」

神様「そうそう、猫神から頼まれてさぁ」

A子「猫神?」

神使「猫神様のお使いの方とお友達なのです」

神様「そう! 牡蠣娘」

A子「かきむすめ? 凄い名前だね」

神様「・・・うん」


A子「それより、神ちゃん今までどこいたの?」

神様「神宮の嫌がらせで色々な神社を転々としてた」

A子「神宮の皆も色々噂してるよ?」

神様「そうだな、皆心配してるだろうな・・・」


A子「急に静かになったとか」

神様「私の声を聞けないから寂しいんだろうな」ウンウン

神使「(うるさいヤツがいなくなったということでしょうね)」


A子「初穂料の集計時間が減ったとか」

神様「やっぱり私がお守りを納めないと初穂料も減るよな」ウンウン

神使「(勘定ミスが無くなったんでしょうね)」


A子「私は神ちゃんがいなくなってから寂しくて寂しくて・・・」ヘナヘナ

神様「A子ちゃん・・・ 私もA子ちゃんと別れてから心にぽっかりと穴があい―――」

A子「あっ! ピザだ! 食べても良い? お腹すいちゃってさぁ」

神様「・・・・・・」


神使「どうぞ食べて下さい」

A子「やったぁ!」


A子「しかし、吉祥寺って凄いね~」モグモグ

神様「おしゃれでナウいスポットがいっぱいあるんだよ。 この吉祥寺には!」

A子「神ちゃん相変わらず死語好きだね~ あっ、でも一周まわって逆に新鮮かも!」

神様「・・・・・・」

神使「(さすがA子ちゃん、天然なのかわざとなのか判断が難しいですね)」


神様「そっ、そうだA子ちゃん、明日公園行かない?」

A子「公園?」

神様「そう、近くにでっかい公園があるんだよ」

神使「井の頭公園ですね」

A子「あ! 聞いたことある! 行く!」


神使「いきなり遊びに行くんですか?」

神様「朝行って夕方前には戻ってくるから良いだろ?」

神使「まぁ平日は参拝者もそれほど来ないと言ってましたから私だけでも大丈夫ですが・・・」

A子「神使さん優しい~ 戻ってきたらバリバリ働くから!」

神使「本当ですか?」

A子「巫女嘘つかない」

神様「つかない」


神使「仕事はきちんとして下さいよ?」

A子「大丈夫であります!」ビシッ

神様「あります!」ビシッ


――― 翌日・早朝

 ガサゴソ

神使「・・・ん?」ムニャムニャ

 サァー サァー

神使「(まだ朝の5時・・・ 神様?)」

神様「Zzz・・・」グガー

神使「(・・・ではないですね。 というか、また下着姿で寝て・・・)」

 サァー サァー

神使「(氏子さんが境内を掃除しているのでしょうか・・・)」チラッ


 サァー サァー

参拝者「朝早くからご苦労様です」

A子「おはようございます」

参拝者「こちらの巫女さんですか?」

A子「今日からしばらくこちらでお世話になります」ペコリ

参拝者「そうでしたか、私は毎日朝一番でこちらに来るのが日課でして」

A子「神様もお喜びになると思います」ニコッ

参拝者「・・・それは嬉しいです」


神使「(A子ちゃん?)」


 スタスタ

神様「おい」

神使「神様起きていらしたんですか?」


神様「どこ行くんだ?」

神使「A子ちゃんが境内を掃除しているようで」

神様「知っている」


神使「お手伝いをしようかと・・・」

神様「巫女の仕事だ。 お前はここにいろ」ンショ

神使「しかし・・・」

神様「A子ちゃんに余計な気遣いをさせるな」シュルシュル


神使「神様? 巫女装束なんか着てどうされるんです?」

神様「本殿を掃除してくる。 さすがにA子ちゃんだけじゃ広すぎるし」

神使「え? 神様が本殿を掃除するんですか?」


神様「・・・A子ちゃんの前では、まだダメ巫女の神ちゃんでいたいんだよ」

神使「神様・・・」


神様「7時に朝食だ、社務所で待っている」スタスタ

神使「はい」

神様「あっ、私達の後に入ってこいよ? いいな?」

 ガチャ


――― 朝食

神使「おはようございます」ソロリ

A子「あっ、神使さんおはよ~う」

神様「んじゃ、朝ご飯にしますかね」


神使「あれ? こちらのお弁当は?」

A子「神使さんのお昼ご飯。 私達お出かけするからさぁ」

神使「わざわざありがとうございます」


神様「ついでだ。 A子ちゃんのご飯は最高だぞ? 何しろ実家は料亭だからな」

A子「厳しい料理修行の毎日・・・ 料理を極めた私はこうして立派な巫女になったのです!」

神使「巫女関係ないですよね? それ」


神様「A子ちゃんは神宮美食クラブ料理長だぞ?」

神使「初めて聞きましたが」

神様「当たり前だ。 神宮美食クラブは地下組織だからな」

A子「神ちゃん! その話はマズい!」シーッ

神様「おっと失言だ」


神使「はいはい、では冷めないうちに美食クラブ料理長が作られたホットドッグを食べましょう」


――― 夕方

A子「神使さん、ただいま~」

神様「ただいま~」


神使「お帰りなさいませ。 二人ともすごい量の荷物ですね・・・」

A子「いや~ お金ほとんど無くなっちゃったよ」

神様「私も~」


神使「神様? クレジットカード使いましたね?」

神様「・・・・・・」

神使「天引きですよ?」ハァ

神様「はい」シュン


神様「それより、神社の方はどうだ?」

神使「変わったことはございません。 こちら今日の参拝者お願い事リストです」

神様「ん。 特に神力成就が必要なお願いはなさそうだな」ペラペラ

神使「はい。 それと神宮から“月刊神様”が届いてます」

神様「うわ~ いらね~」

神使「もらっても良いですか?」

神様「お前、これ好きだよな」

神使「どうして神様が読まれないのか不思議なくらいです」

神様「ほれ。 読み終わったらちゃんと燃やしておけよ?」

神使「はい」


A子「・・・私、着替えて社務所で事務処理してくるね~」タッタッタッ

神様「うん、よろぴこー」


神使「神様はこの後どうされますか?」

神様「う~ん、ご神体の神力使ってお願い事リストの祈願だけ軽くしておこうかな」

神使「お手伝いいたします!」


神様「A子ちゃんは~ しばらく大丈夫だよな」

神使「事務処理で一時間くらいは必要かと思います」


神様「んじゃ、バレないようにサクッとやりますかねっと」

神使「はい!」


神様「神使君は何でそんなに力入ってんの?」

神使「神様が祈願する所を見るのは初めてなもので・・・」

神様「あ~」


神使「祭礼用の御装束に着替えられますか?」

神様「いや、私もってないし・・・」


神使「主神様からお預かりしております!」

神様「うわっ・・・ 面倒くさいから良い」

神使「そう言わずに」


神様「っていうか、なんで男のアイツが女物の装束持ってんだよ!」

神使「さぁ? でも、綺麗なおべべですよ?」

神様「うるさい! さっさと行くぞ!」

 スタスタ


――― 30分後・社務所

A子「ふい~ 終わった~」

A子「この位の量、神宮で膨大な事務処理をこなした私にはお茶の子さいさいなのです!」

A子「ん~ 夕飯の準備しちゃおっかなぁ~」

A子「・・・そう言えば神ちゃん達どこ行ったんだろ?」キョロキョロ

A子「本殿に明かりがついてる」

 スタスタ


――― 本殿

神様「よし、こんなもんで良いか」フゥ

神使「・・・・・・」


神様「なんだよ」

神使「いえ、凄いです神様・・・」

神様「は?」

神使「一回一回祈願文を変えるだなんて」

神様「当たり前だろ。 全部お願い事が違うんだから」

神使「・・・・・・」

神様「あーもう! 行くぞ!」ヨイショ


神使「あっ、神様すそ踏んでます」

神様「ん? うわ~」ビタン


神使「大丈夫ですか?」

神様「痛い・・・ だから装束嫌いなんだよ! それに大げさすぎだろこの衣装」

神使「でも、とってもお似合いです。 さすが神様」

神様「てめぇ犬ころ! バカにしてんじゃねーよ」ゲシッ ゲシッ

神使「痛! すいません、本気で痛いですっ」


神様「ほら、行くぞ! A子ちゃんにこんな格好してるの見つかったら言い訳できない」

 ギィー

A子「神ちゃ~ん、いるの~?」

神様「A子ちゃん!!」

A子「・・・・・・」


A子「神ちゃん・・・ その格好って・・・」

神様「あ! これは・・・」アタフタ


A子「それ、上級神の御装束・・・」

神様「・・・・・・」


A子「神ちゃん、まさか・・・」

神様「あっ・・・ 違うんだ」オロオロ


A子「ご祈願するなら言ってくれれば手伝ったのに~」

神様「ほへ?」


A子「私も神ちゃんのご祈願するとこ見たかった!」

神使「A子ちゃん、もしかして神様のことご存じで・・・?」

A子「え? 神ちゃんが神様って事?」

神使「まぁ・・・ はい」

A子「そんなの知ってるよ~」ケロッ

神様「え?」


A子「なんか神ちゃんが隠しているっぽいから聞いたりはしなかったけどさぁ」

神様「A子ちゃん・・・」


神使「でも、どうして分かったんですか?」

A子「え? だって“審査神 神様”って判が押された書類がよく回ってくるし」

神使「あ~」


A子「組織図にも神ちゃんの所に“内宮神籍 神様”って書いてあったし」

神様「あ~」


A子「神様しかもらえない“月刊神様”が神ちゃんの所に毎月届いてたし」

神様・神使「あ~」


A子「それに巫女には神使さんなんて付かないもん」

神様・神使「・・・・・・」


神使「神様? もう隠す必要はなさそうですね」

神様「・・・・・・」


A子「それより、神ちゃん御装束姿すごく綺麗だね~」

神様「ぅ///」


――― 夕食

A子「さぁ、召し上がれ!」

神使「あの・・・ A子ちゃん?」

A子「ん?」

神使「これは・・・」

A子「ピッツァ」

神使「良い発音ですね。 もしかして出前ですか?」

A子「いや~ ご飯炊き忘れちゃってさぁ」


神使「二日連続ピザになってしまうのですが・・・」

神様「私はピッツツアで良い」

神使「言えないならピザで良いと思いますよ? 神様は」

神様「アチョ~ッ!」ゲシッ

神使「痛!」


A子「熱々のうちに食べちゃおうよ」

神使「そうですね。 では頂きましょうか」

神様「うん」


A子「うまうま」ハフハフ

神様「・・・A子ちゃん」

A子「なに?」

神様「その・・・ ごめんなさい!」ドゲザ

A子「え? 急にどしたの神ちゃん」

神様「いや、私が神だって事を隠していて・・・」

A子「あ~ 全然隠れてなかったけどね」


神様「A子ちゃんとは神だとか人だとかそういうの抜きで、その・・・ 友達でいたかったから・・・」

A子「そんなの気にする必要ないのに~」

神様「でも・・・」


A子「やっぱり神と人は一線を置かないといけないの?」

神様「そんなことない!」

A子「じゃぁ良いじゃん。 私バカで礼儀知らないから誰とでもフレンドリーだし」

神様「うん・・・ 知ってる」


A子「それに、他の神様なんて見たことないし接し方とかあんま知らないからね~」

神使「それは巫女としてどうかと思いますが・・・」

A子「じゃぁ神ちゃんのこと、敬い奉ったほうが良い?」

神様「やめて! そういうのだけは絶対やめて!」

A子「そう言うと思った」


神様「でも、本当にごめん!」

A子「だから気にしてないって~」

神様「いや、それじゃ私の気が済まない。 どうしよう」


A子「う~ん・・・ じゃぁ今から私が気になっていたことを質問するから正直に答えること」

神様「質問?」

A子「うん、それで帳消しって事で」

神様「お安いご用だ! 私が知っていることなら包み隠さず話す!」


神使「ちょっと神様、大丈夫ですか?」ボソッ

神様「心配いらない。 A子ちゃんの質問だ、難しいことなんか質問してこないだろう」ボソッ


A子「じゃ~最初の質問!」

神様「バッチこーい!」


A子「神ちゃんて生まれはいつ?」

神様「・・・・・・」

神使「(いきなりストレートパンチですね)」


神様「あー、生まれのことか~」

A子「神ちゃんの由来だけ神様図鑑に載ってないんだよね~」

神様「えっ? そんな図鑑あるの?」

A子「うん」


神使「私も以前に調べたのですが、何の情報も記載されていませんでしたね」

神様「ふ~ん・・・」


A子「きっと裏に何かある! 私はそう思ったのです!」

神様「いや、書き様がないんだよね~」

A子「へ?」


神様「実はさぁ、自分でもよく分からないんだ。 気がついたらいた」

A子「なにそれ~」


神様「ん~ 弥生時代とか呼ばれている時の記憶は少し残ってる。その前は・・・ よく覚えてないな~」

A子・神使「・・・・・・(思っていたよりも古い)」


A子「そんなに昔からいるの?」

神様「あぁ、素っ裸で走り回っていた記憶もかすかにある」

神使「(神様が裸でウロウロする理由はこれですか・・・)」フム

神様「犬ころ、お前なに一人で納得してんだよ」

神使「・・・いえ、別になんでもないです」


A子「そんな昔から神ちゃん何してたの?」

神様「何って仕事さね」

A子「仕事? 神ちゃんのお仕事って何?」

神様「ん~ 突き詰めれば皆が幸せに過ごせるように願いを叶えるための神を作ることかな?」

A子「神を作る!?」

神様「そう」

A子「・・・・・・(思っていたよりも凄い)」

神使「・・・・・・(それが仕事だったのですか)」


A子「神ちゃんてもしかして凄い神様?」

神様「それも質問? 別に凄くは無いけど。 それに厳密に言えば私は神じゃないし」

神使「はい!?」

A子「どういうこと?」


神様「私が神力を与えた者が神と呼ばれるわけで。 だから私は本当は神じゃ無い」

A子「そうですか・・・ よく分かりませんでした」

神様「まぁ深く考えたことないし、呼び名なんてどうでもいいと思う。 引き続きかわゆい神ちゃんと呼んで欲しいな」

A子「え~ そんな風に呼んだことないけど~」

神様「・・・・・・」


神使「もしかして天照大神様も神様が?」

神様「なんでお前まで便乗して質問してくるんだよ! 犬!!」


神使「A子ちゃん、是非この質問も」

A子「興味なーい」

神使「・・・・・・」

神様「うむ。 知らない方が良いこともある」ウンウン

神使「まさかとは思いますが、神様が天照大神様ということは・・・」

神様「はぁ? 天照だぁ? 神話と現実を一緒にすんなよ。 だからお前は犬ころなんだよ」

神使「・・・・・・(本当に聞かない方がよかったかも知れません・・・)」


A子「でも、神様っていっぱいいるんだよね? そんなに必要なの?」

神様「実は神の数は年々少なくなっているんだ」

A子「そうなの?」

神様「あぁ、今は一番多かったときの半分以下になっているだろうな」

神使「どうしてそんなに・・・」


神様「一つは神の在籍する神社への参拝者が減ったこと」

神使「どこの神社も頭を抱えてますよね」

神様「神は参拝者がいなくなると・・・ 力が減ってくるんだ」

A子「力が?」

神様「はっきりと言ってしまうと、神力がなくなって最後は消えてしまう」

A子「死んじゃうって事?」

神様「人で例えるならそう言うことかなぁ」


神使「参拝者の多い神社に集めるというのじゃダメなんですか?」

神様「神は勝手に神社を移れない。 いや移る方法もあるんだけどワンランク下の神社にしか移れない」

神使「猫神様ですか・・・」

神様「そうだ。 あいつは大きいところから小さいところへ移ったから異動許可が出たんだ」

神使「なるほど・・・」


神様「で、もう一つは私が神に任命する者を減らしていること」

A子「なんで?」


神様「例えばさぁ、A子ちゃんが神になったとするじゃん?」

A子「うん」

神様「そしたら、まずは神宮に配属されるんだよ」

A子「人多いもんね~」

神様「そう。 で、一通り仕事を覚えたら地方の神社に異動になるわけ」

A子「独り立ちだ~」


神様「でも、神が不在で参拝者の多い神社って今はほとんど無い訳よ」

神使「一つ目の問題と関係してるわけですね?」


神様「最初から参拝者の少ない神社に配属させるわけにもいかないしさぁ」

A子「参拝者増やせば良いじゃん」

神様「ナイスアイディーア! でも、そう簡単にいかないんだよね~」


神使「何か解決法はないんでしょうか」

神様「神宮が出した答えが十年前の神法改正」

A子「神法改正?」


神様「まぁ簡単に言うと神社の運営なんかを神から人に移譲するってこと」

A子「なんかメリットあるの?」

神様「徹底的な効率化を図って、少ない神で多くの神社を管理できることかな」


神使「それってこの先、神が減るっていうことが前提の話ですよね?」

神様「そうも取れるな」

神使「他にも訳が?」

神様「・・・・・・」


A子「神様が存在してるってバラしちゃえば?」

神様「う~ん、昔はそうだったんだけどね」

A子「なんで今は隠してるの?」

神様「存在がバレるとちょっと面倒事が多いんよ」

A子「そうなの?」

神様「いやさ、面倒なお願いを強要してくるヤツがいるんだよ」

A子「面倒なお願い?」

神様「その・・・ 戦争とかさ? そういう政治的なお願い?」

A子「断れば良いじゃん」

神様「でもさぁ、国の頭とかに国民を守るためだ! とか、このままじゃ大勢の国民が死ぬ! とか言われちゃうと・・・ ねぇ」

神使「なるほど・・・」

神様「神も基本良いやつだからな。 お願いされたら断れないんだよ」

A子「もっと気楽に考えれば良いのに~」

神様「ほんとだよ」ハァ


――― 翌日・早朝

 ゴソゴソ

神使「ん・・・ 神様・・・?」

神様「悪い起こしたか」

神使「早いですね」

神様「巫女さんの朝は早いんだよ」

 サァー サァー

神使「A子ちゃん、もうお掃除してますね」

神様「あぁ、神宮にいたときからA子ちゃんは誰よりも早く掃除を始めるんだ」

神使「立派な心がけですね」


 おはようございます
 おやまたお会いしましたね ハハッ


神使「あの方、昨日も朝早くにいらしてましたね」

神様「ん?」ソォー

神使「よほどこちらの主神様をお慕いしているのでしょうね」

神様「う~ん・・・」

神使「どうかされましたか?」

神様「いや・・・ 本殿掃除してくる」タッタッタッ


――― 朝食

神使「おはようございます」

A子「おは~」


神様「今日の朝ご飯も最高だぞ」

神使「サンドイッチとお味噌汁という組み合わせは凄いですね・・・」

神様「あ? 味噌汁じゃねーよ。 コンソメスープだよ」

神使「・・・コンソメスープって濁りませんよね?」

神様「私の特製スープだ。 心して飲め」

神使「はぁ・・・」


A子「私はわかめスープ」

神様「あっ、私もそれにしよー」

神使「・・・・・・」


神使「神様、今日はどうされるんですか?」

神様「土曜で人来そうだからな~」


A子「授与所と社務所にはだれかいないとね~」

神様「じゃぁ私とA子ちゃんは授与所」

神使「私は社務所でよろしいですか?」

神様「あぁ。 御朱印と祈祷があったらまわしてくれ」

神使「承知しました」


A子「あっ! 神使さん、神ちゃんの特製スープ残してる!」

神使「・・・・・・」


神様「うまいから飲んでみ?」

神使「(このスープ何で出来ているんでしょうか・・・)」


A子「神ちゃんが神使さんのために昨日の夜から作ってたんだよ?」

神様「うむ、私の愛情がギュッと詰まっている」

神使「・・・はい」ズズッ


神様「どうだ?」

神使「!? 美味しい・・・」

神様「見た目は悪いがうまいだろ」フフン


――― 午後


 ガヤガヤ


参拝者「このお守り下さい」

A子「はい。 五百円お納め下さい」


参拝者「このお守りって大きいヤツの方が御利益あるんですか?」

神様「実は同じなんだよ、違うのは大きさだけ。 素材費の違い?」

参拝者「じゃぁ、こっちの安いヤツで」

神様「はい、三百円ね。 ついでにおみくじもやってかない? 百円だし今日は小吉以下って入ってないから」


参拝者「オレおみくじ一回やるわ」

A子「はいどうぞ」

参拝者「可愛い巫女さんじゃん、写真撮っても良い?」

A子「ははは・・・」モジモジ

神様「私なら良いよん♪」クネクネ

参拝者「いいっす」

神様「・・・・・・」ムカッ

参拝者「うわ大凶かよ・・・」

神様「二百円」

参拝者「え? 百円じゃないの?」

神様「そちらは二百円のとっても良く当たるおみくじですので」ニコッ

参拝者「・・・・・・」


 ガヤガヤ


――― 夕方


神使「お疲れ様でした」

神様「本当だよ」ハァ

A子「人多かったねぇ」


神使「神様、こちら今日のお願い事リストです」ドサッ

神様「・・・・・・多いね」ペラペラ

神使「夕飯食べたらご祈願いたしましょう」


神様「ん? これで全部か?」

神使「えぇ」


神様「A子ちゃん」

A子「なにー?」

神様「朝早くお参りに来る男の人知ってる?」

A子「あ~、いるねぇ。 毎朝来てるんだって」


神様「なにか気になったことない?」

A子「気になること? 特に無いけど・・・ お参りして帰るだけだよ?」

神様「お参り? 毎朝来てるって言ってた?」

A子「うん」


神様「・・・・・・ おい、極悪邪道腐れ犬ころ」

神使「私の事でしょうか?」


神様「私達が来る前のこの神社のお願い事リストってあるか?」

神使「えぇ、念のため宮司さんから預かっております」

神様「ちょっと男の人のお願い事が何か調べておいてくれる?」

神使「分かりました」


A子「どったの?」

神様「う~ん、なんか気になるんだよね~」


――― 夜


神使「神様?」

神様「なに?」ペロペロ

神使「・・・そのアイスどうしたんですか?」

神様「あ~ 冷たくておいちい~」


神使「勝手に冷蔵庫を漁っちゃダメじゃないですか」

神様「さっきA子ちゃんが買ってきてくれたんです~」ベー

神使「そうですか」

神様「お前の分もあるぞ “アイスな実”、メロン味だけ私にくれ」

神使「はぁ」


神様「で、何か用か?」

神使「過去1週間分ですが私達が来る前のお願い事リストを調べてみました」

神様「あ~ どうだった?」ペロペロ

神使「実は、リストには朝に来る男性と思われる記載が見当たらなく・・・」


神様「ふ~ん・・・ やっぱりか」ペロペロ

神使「?」



 ガチャ


A子「あっ、神ちゃんここにいた。 お風呂沸いたから先入っちゃってよ」

神様「A子ちゃん先に入って良いよ。 私もうちょっとダラダラしたい」

A子「んじゃ、先もらうね~」


A子「あっ、神使さん」

神使「はい」

A子「冷蔵庫に“アイスな実”あるから。 巨峰味だけ私にちょうだいね~」


 スタスタ


神使「・・・・・・」


神様「おい、犬ころ」

神使「これ以上“アイスな実”を取られたら私の分無くなってしまうのですが・・・」

神様「違うわ。 お前、今日寝るのか?」

神使「すいません、仰っている意味がよく分からないのですが・・・」


神様「お前、今日徹夜したいだろ」

神使「いいえ、寝たいです」


神様「徹夜したいだろ?」ニコッ

神使「・・・はい」


神様「拝殿に身を潜めて気配を殺して見張ってろ」

神使「拝殿にですか?」


神様「このお守りを持ってジッとしてろ」スッ

神使「・・・すごく嫌なのですが」

神様「このお守りを持っていれば大丈夫だ。 たぶん」

神使「大丈夫と言い切って頂けないでしょうか?」

神様「うん、大丈夫。 これでいいか?」


神使「・・・・・・ 何かあるんですか?」

神様「分かんない」

神使「・・・・・・」


神様「何かあったら私の携帯に電話してくれ。 絶対に外に出るなよ?」

神使「はぁ・・・」


――― 夜中

神使「はぁ~ 三時ですか・・・ 神様は一体何を考えているのでしょう・・・」


 ガサッ ガサッ


神使「(? こんな時間に参拝者・・・)」


参拝者「・・・・・・」キョロキョロ

神使「(本殿を覗いて何しているのでしょうか・・・)」


参拝者「・・・・・・」ガサゴソ

神使「(まさか・・・ 賽銭泥棒!? 神様に電話を!)」ピッピッ



 prrr prrr


神様『ん゛・・・』

神使「あっ、神様ですか? 賽銭泥―――」

神様『何時だと思ってんだよ』ガチャ


 p- p- p-


神使「・・・・・・」


―――翌日・早朝


 サァー サァー


神様「んぁ・・・ A子ちゃん・・・」ポー

神様「もう五時か・・・ フワ~ァ」ムニャムニャ


神様「ん? 犬ころがいないな」キョロキョロ

神様「こんな朝早くから散歩か?」



 スタスタ


神様「A子ちゃんおはよ~」

A子「おはよ~」


神様「犬ころ見なかった?」

A子「神使さん? 見てないよ」

神様「あの腐れ犬ころ勝手にどこ行ったんだ?」


神使「ここに居ますが・・・」

A子「?」

神様「お前、拝殿の中で何やってんだよ」

神使「・・・・・・」



――― 朝食


神様「だからゴメンって言ってんじゃんよ。 な? 私のタコさんウインナーあげるから」ホレ

神使「今日は神様も一緒に起きていて下さいよ?」

神様「わーったよ」


A子「でも本当に賽銭泥棒なの?」

神使「暗くてよく見えなかったのですが本殿の周りをウロウロしていましたね」

神様「でも賽銭は無くなってなかったんだろ?」

A子「開けられた形跡も無かったね」


神使「しかし参拝にしては不自然だったのですが・・・ 私が吠えたら居なくなってしまいまして」

A子「下見とか?」

神様「どうかな~」


――― 夜・社務所

神様「さてと、んじゃ今日は三人で見張りって事で」

神使「順番で交代制にしますか?」

神様「いや、全員で朝まで見張る」

A子「どこで見張るの?」

神様「私は万が一の時に神力が使えるよう本殿にいる。 A子ちゃんは社務所で待機」

A子「ほい」


神使「私はいかがすればよろしいでしょうか」

神様「昨日と同じく拝殿にいろ。 もし不審者が来たら本殿に誘導してくれ」

神使「大丈夫ですか?」

神様「代理とはいえ一応はこの社の神だぞ? ご神体経由だけど神力が使える私は無敵なのだよ」フフン

神使「はぁ、でも無茶はしないで下さいね」

神様「へいへい。 じゃぁ、昨日は三時頃に来たようだしその時間は要注意で」



――― 深夜


 コソコソ


神使「(来ましたね)」


 バンッ


参拝者「!?」

神使「こんな時間に当社にご用でしょうか?」

参拝者「あ・・・ いえ本殿をちょっと見たくて・・・」


神使「そうでしたか。 ではどうぞ本殿にお入り下さい」

参拝者「え? いいのですか?」

神使「今お開けいたします」



 ギィッ


神使「さぁ、お入り下さい」

参拝者「・・・・・・」


 ギィッ バタンッ


参拝者「!?」


神様「ふふふ、盗人め! 我が社に忍び込むとは良い度胸! だが相手が悪かったよう・・・ ん?」


参拝者「神様・・・」

神様「・・・・・・」


神使「? 神様どうされました?」

神様「犬ころ! そいつは敵だ! ガブッっと噛みつけっ!!」

神使「え?」


参拝者「そんな敵だなんて・・・」

神様「てめぇは何でこんな所に来てんだよ!」

参拝者「いえ・・・ その・・・」


神使「もしかして神様お知り合いですか?」

神様「しらねー」

参拝者「そんな殺生な・・・」


神使「あの、失礼ですが・・・」

参拝者「あっ、私は神様の夫です」

神使「・・・・・・」


神使「え? 神様の旦那様!?」

参拝者「はい」


神様「結婚なんかしてないだろ! 嘘つくんじゃねーよ!」

参拝者「許婚ですから結婚しているも同じです」

神様「お前が勝手に言っているだけだろうが!」


神使「あの・・・ どう言う事でしょうか?」



――― 社務所


A子「お茶です」コトッ

参拝者「ありがとうございます」

神様「こんなやつにお茶なんか出す必要ないぞ」


A子「いや~ 神ちゃんに旦那さんがいたなんてびっくりしたよ」

神様「A子ちゃん? 私は結婚してないから、ね?」


神使「失礼ですがお名前は・・・」

参拝者「申し遅れました。 私、神様の夫である昭和神宮の主神で昭宮神と申します」

神様「さりげなく夫とか付けてんじゃねーよ」


神使「昭和神宮の主神様ですか!?」

A子「昭和神宮?」

神使「東京で最高位のお社です。 まさか昭宮神様が神様の旦那様だったなんて・・・」

神様「神使君? 私は結婚してないから、ね?」


A子「神ちゃんの旦那さんて凄い神様だったんだね~」

昭宮神「いえ、私など神様の足下にも及びません」

神様「あーもうっ! 結婚してないって言ってんじゃん! 私の旦那さんはエガちゃんって決まってんの!!」


神使「神様? 昭宮神様は大変素晴らしい神と伺っております」

神様「だからなんだよ」

神使「これほど素晴らしいお話など、今後神様には縁遠いかと思―――」

神様「・・・・・・」ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ

神使「痛い! 痛いです神様、ちょ・・・ 本気で痛いです」


A子「昭宮神さんって、すごく格好いいですね~」

昭宮神「ありがとう、お世辞でも嬉しいですね。 神様、是非皆さんを紹介して下さい」

神様「あ~ この子は神宮の巫女でA子ちゃん。 私の大親友であり神宮では常に私と一緒にコンビを組んでる」

昭宮神「神様のご親友で側近の巫女さんですか! 今後ともよろしくお願いいたします」

A子「神ちゃんと私は見えない深いところで繋がっている最強コンビなんです!」

昭宮神「素晴らしい! なんて頼もしい関係なのでしょう」


神様「んで、こっちは犬」

神使「・・・・・・神様の使いを務めております狛犬の神使と申します」


昭宮神「ほぉ、もしかして最高位の神使さんですか? 今月の月刊神様にインタビューが載っていましたね」

神様「え? おまえ取材なんか受けたの?」

神使「はい、ダメ神との付き合い方というコーナーで」

神様「なにそれ! 超気になるんだけど!」

昭宮神「大変興味深い記事でした。 こうして神様とお目にかかれたのも神使さんの記事のおかげです」

神様「あ?」


昭宮神「今週からこちらの神社で神様が代理神を勤められると紹介がございましたので」

神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」

神様「犬ころ、お前明日からドッグフードな」


A子「神ちゃんは何で結婚しないの?」

神様「私はエガちゃんと・・・」

A子「茶化さないの」


神様「・・・いやさぁ、私は人じゃないし結婚とかそういう概念が無いからさぁ」

A子「神様って結婚できないの?」

神様「そんな決まりは無いけど・・・ 人と恋に落ちて神の職を捨てるヤツもいるし」

A子「じゃぁ良いじゃん」

神様「ちょっと待って? なんで私を結婚させようとしてんの?」

昭宮神「私が神様と結婚したいからです」

神様「てめぇは黙ってろや」


神使「許婚と仰ってましたが」

神様「あ~ 昔こいつに私の名前を教えたんだよ」

A子「うん」

神様「それだけ」

A子「はい?」

神様「いや、昔はさぁ女が男に名前を教えるって結婚前提の行為だったんだよ」


神使「それっていつの時代ですか?」

神様「すんげー昔」

昭宮神「奈良時代です」

神使・A子「・・・・・・(古すぎる)」


神使「と言うことは、昭宮神様は奈良時代から神様のことを・・・」

昭宮神「はい、お慕い申し上げております」

神様「・・・・・・」


A子「神ちゃん、これは腹くくるしかないよ」

神様「い・や・だ!」

A子「こんなに長く想ってくれる人なんていないよ?」

神様「人じゃないから、こいつ神だから」

A子「も~ そんな減らず口叩いて~ 人も神も恋愛は同じです!」

神様「ぅぐ」


A子「でも神様同士の結婚って結婚届とかあるの?」

神様「さぁ? そんなの聞いたことないけど」

A子「じゃぁ、結婚してるも同じじゃん」

神様「違うから。 同じじゃないよ?」

A子「でも昔、神ちゃんは昭宮神さんに名前を教えたんでしょ?」

神様「そうね・・・」

A子「事実婚じゃん」

昭宮神「話が分かる巫女さんです。 その通りなのです」

神様「お前は黙ってろや!!!!」


A子「う~ん、神ちゃんの負け!」

神様「いやいや、勝負じゃないから。 私は同意してないから、ね?」

A子「も~ 諦めた方が良いよ?」

神様「嫌だ!」ブーブー


神使「でもなんでこんな時間にこちらへ・・・」

昭宮神「この時間しか私の自由にならないもので」

神使「お忙しいのですね」


昭宮神「神様からお預かりした職務ですので苦ではございません」

神様「・・・・・・」


神使「しかし、こんな遅くでは神様もご就寝されているので会えない可能性が高いと思うのですが」

昭和神「一目だけでもお姿を拝見したく、本殿でご就寝されているものと思っておりましたので・・・」

神使「確かに神は普通本殿から出ませんからね」

神様「あんな何も無いところで寝られないっつーの」


昭宮神「相変わらず寂しがり屋なところは変わらないんですね」

神様「てめぇ! それ以上戯れ言を抜かすと蹴り飛ばすぞ!」

昭宮神「ははっ、失礼しました」

A子「もう、神ちゃんたら照れ屋さんなんだから」

神様「照れてないよ? 全然照れてないよ? むしろ怒ってるからね?」


昭宮神「・・・どうやら、今は私の出る幕はなさそうですね」ニコッ

神使「?」


昭宮神「では、私はこれで失礼いたします」

A子「もう帰っちゃうの?」

昭宮神「もうじき朝のお勤めが始まりますので。 神様とお話しできただけでも、あと300年はがんばれます」

神様「そうかい、んじゃはよ帰れ」ヒラヒラ

神使「神様? せっかく来て下さったのに失礼ですよ?」

昭宮神「いえ、私の方がこんな時間に申し訳ありませんでした」

神使「お気を付けて」

昭宮神「失礼いたします」


神様「おい」

昭宮神「?」

神様「まぁ、がんばれよ。 お前のことは信頼している。 これからも頼んだぞ」

昭宮神「神様・・・ 神様が伴侶となって下されば私はもっと―――」

神様「調子に乗ってんじゃねーよ! 帰れっ!」


昭宮神「ふふっ、神様が元気になられたようで安心いたしました」

神様「・・・・・・」

昭宮神「では、またお目にかかれる日を楽しみにしております」スゥ

A子「わっ! 消えた!」


神様「ったく、不愉快だ。 寝る」

神使「そろそろ私達も朝のお勤めが始まる時間ですが・・・」

神様「・・・昼まで寝かしてくれ」スタスタ


 ガチャッ


A子「神ちゃん嬉しそうだったね」

神使「そうですか? 私には不機嫌全開のように見えましたが」

A子「照れ隠しだよ~ 神使さんは乙女心が分からないんだね~」

神使「すいません、乙女ではないもので・・・ 乙女?」


A子「私もお昼まで寝るー」

神使「えっ?」

A子「神使さんはお昼から寝て良いよ?」

神使「私、二日連続で起きているのですが・・・」

A子「大丈夫だって、神使さん! ここは男を見せるところです!」

神使「ハァ・・・ お昼にちゃんと起きて下さいよ?」

A子「巫女嘘つかない」

神使「では後ほど」

A子「じゃぁお休み」スタスタ


 ガチャッ


神使「私の知らないことばかりですね・・・」

神使「さて、もう一踏ん張り。 リホビタンD飲んでおきましょう」スタスタ



 テクテク


神様「・・・・・・」ハァ

神様「・・・///」



――― 数日後


神様「ふぁ~ぁ」ゴロゴロ

神使「神様、だらしないですよ? 神の品格に関わります」

神様「うるせー 誰もいないじゃねーかよ」グダグダ


神使「そう言えば、A子ちゃんはどちらに?」

神様「ん? 駅で帰りの切符予約してくるんだって」

神使「そう言えば、今日の夕方に主神様達がお戻りになるんですよね」

神様「あ~あ、吉祥寺ともお別れか~ もう少し居たかったな~」



 ガラガラ
 ただいまー


神使「A子ちゃん帰ってきましたね。 では、最後のご祈願を致しましょうか」

神様「そうだな、主神達が帰ってくる前に終わらしておくか」

神使「では」ゴソゴソ

神様「何やってんの?」

神使「最後ですから、祭儀用の御装束でご祈願を」

神様「え~ それ裾がちょっと長いんだよ」

神使「全て着用せずとも簡易型で結構ですので」

神様「それでも面倒くさいって」


 ガチャ

A子「いや~ 新幹線最後の一席だったよ。 あぶねーあぶねー」

神使「お帰りなさい」


A子「あれ? ご祈願するの?」

神使「はい、主神様達が帰ってくる前にと思いまして」


A子「あっ、神ちゃん今日は御装束着るんだ」

神様「面倒くさいから着替えなくても良いと思うんだよね」

神使「最後なんですから・・・ A子ちゃんからも言ってやって下さいよ」


神様「!? A子ちゃん・・・」ワナワナ

A子「?」


神様「その服・・・ すごく、かわゆい・・・」ゴクリ

A子「あ~これ? いいでしょー」フリフリ

神様「どこで買ったの? 教えて!」

A子「去年買ったヤツだからもうないと思うなー」

神様「そうかー・・・ 残念」

A子「あげようか? 私こっちで新しいの買ったし」

神様「うそ! いいの!」

A子「その代わり、神ちゃんはご祈願で御装束を着ること」


神様「神使! 祭儀装束を用意しろ! 手を抜くなよ!」

神使「(さすがA子ちゃん、神様の扱いは完璧ですね)」



――― 夕方


神様「よし、祈願の方はこれで全部か?」

神使「はい。 お疲れ様でした」

神様「いや~ ちかれた」フー


A子「ねぇ、神ちゃん?」

神様「なに?」

A子「・・・私もご祈願してもらいたいんだけど良い?」

神様「A子ちゃんも何かお願い事あるの?」

A子「うん」


神様「私なんかより神宮で祭儀神にやってもらった方が良くない?」

A子「神ちゃんにやってもらいたいなって」


神様「ん~・・・ でも私じゃ御利益薄いよ? 階位最低のダメ神だし」

A子「そんなことないよ。 神ちゃんとっても立派な神様だよ」

神様「・・・・・・」


A子「それに、今の神ちゃんとっても綺麗で威厳があるもん」

神様「・・・分かった。 全身全霊を込めて神力成就でやってあげる」


神使「A子ちゃん、ご祈願の種類は?」

A子「はい、これ」スッ

神使「お預かりします」


 スタスタ


神使「神様どうぞ」スッ

神様「はい」ペラペラ

神様「・・・・・・神恩感謝?」


A子「うん」

神様「・・・・・・」


A子「これからもよろしくね、神ちゃん!」ニコッ

神様「A子ちゃん・・・」フッ


神様「よっしゃ、それじゃぁ本日最後のご祈願を執り行いますか」


 ギィ


主神「私もご祈願のお手伝いをさせて頂いてもよろしいでしょうか」

宮司「私もご一緒いたします」

神使「主神様に宮司様、お戻りでしたか。 気付かず申し訳ございません」


宮司「本殿に明かりが付いていたもので、もしやと思いまして」

主神「神様のご祈願を拝見するのは初めてでしたので外から拝聴しておりました」

神様「すげー恥ずかしいんだけど・・・」


主神「神様のご祈願、心が洗われました。 私など足下にも及ばず恥ずかしい限りでございます」

神様「お世辞言っても何も無いぞ?」

主神「尊敬する神様に対してお世辞などとんでもございません、本心でございます」

神様「あっそ」


主神「もしよろしければ神様の副神を務めさせて頂いてもよろしいでしょうか」

神様「お好きにどうぞ」


宮司「私は神使様の補佐をさせて頂きます」

神使「ありがとうございます」


神様「じゃぁ神恩感謝と・・・ A子ちゃんの諸願成就を願って祈願を執り行う」

神使「二神でのご祈願なんて相当な御利益ですね」



神様「A子よ」

A子「はい」


神様「其方の願い、我が神力成就で叶えて進ぜよう」ニコッ



――― 翌日


神使「神様? 忘れ物は無いですか?」

神様「んー、大丈夫」


神使「主神様からもらったお土産が床に転がっているんですが・・・」

神様「これさぁ、何?」

神使「マーライオンの置物ですね・・・ 見た感じ結構高そうな物だと思うのですが」

神様「A子ちゃん欲しい?」

A子「いらなーい」


神様「犬ころ、これ私からのプレゼント。 同類だろ?」ホイ

神使「何ですか同類って・・・ 神様の鞄に入れておきますよ?」ゴソゴソ

神様「ちょ、入れるなやー」


A子「神ちゃん達は次どこ行くの?」

神様「知らない。 次どこ?」

神使「着いてからのお楽しみです」

神様「たぶん、人もいないようなド田舎だと思う」

A子「そっか~ またしばらくお別れだね」

神様「でもA子ちゃん、必ず近いうちに会える。 別れは辛―――」

A子「がんばってねー」

神様「・・・・・・うん」

神使「主神様と宮司様が、外でお待ちですから行きますよ」



 テクテク


神使「お待たせして申し訳ございません」

宮司「いいえ、こちらこそ駅までお見送りできず申し訳ございません」


主神「この度は本当にありがとうございました」フカブカ

神使「こちらこそ、貴重な経験をさせて頂き感謝いたします」


主神「宮司、神様達にお礼を」

宮司「はい、こちら少ないですがお納め下さい」

神使「ありがとうございます」

宮司「こちらは巫女さんの分です」

A子「私ももらって良いんですか?」

宮司「こんなに綺麗に掃除までして頂いたのですから、そのお礼と思って受け取って下さい」

A子「ありがとうございます」


宮司「そして、こちらは神様の分でございます」

神様「うそ! 私も良いの!?」

宮司「どうぞお納め下さい」

神様「やったー」ビリビリ

神使「ちょっと神様! はしたないからやめて下さいよ・・・」

神様「すげー こんなに入ってるよ!!」

神使「こちらでお預かりします」

神様「ぇ・・・」

神使「先日は豪快にクレジットカード使いましたよね? 借金もまだ残っています」

神様「・・・・・・」


神使「はい、神様の分です」チャリン

神様「500円・・・」

A子「うわ~ 神ちゃん可哀想・・・」

神様「私は子供かよ!!」

神使「クレジットカードは魔法の財布では無いんですよ?」

神様「はい・・・」シュン


神使「では、主神様、宮司様、大変お世話になりました」

宮司「こちらこそ、無理なお願いを聞いて頂きありがとうございます」

神使「では、失礼いたします」

A子「お世話になりました」

神様「ハイバーイ」



――― 駅前


 テクテク


神使「そうだ、神様?」

神様「あん?」

神使「ちょっとヨトバシ寄って良いですか?」

A子「買い物?」

神使「えぇ、受け取りなのですが」

神様「んだよ、お前だけ買い物しやがってずりーな~」



――― ヨトバシカメラ


神使「店員さん、神使と申しますが」

店員「お待ちしておりました。 こちらが新しいスマホです」スッ


神様「うわっ、この腐れ犬ころ私の欲しいスマホにしやがった」

神使「神様のスマホですよ? 受け取って下さい」

神様「ほへ?」

神使「この黄色い小さいヤツで良いんですよね?」

神様「えっ? 私の?」

神使「さすがに神様の携帯は古すぎますから」


A子「うわ~ 最新型じゃん! いいな~」

神様「いや、でもわたし金ないし・・・」

神使「この位は大丈夫です。 新幹線を使ったと思えばトントンですから」


神様「でも・・・」

神使「なに遠慮してるんですか? 神様らしくない」


神様「本当に大丈夫?」

神使「その代わり、弄って良いのは1日1時間までですよ? あと課金は一切NGです。 約束できます?」

神様「約束する!」


店員「では、付属品などはこちらになります」

A子「神使さん優しい~」

神使「さすがにあそこまで古い物をもたれると神様の品格に関わりますので」

神様「ありがとうな、大切にする」



――― 電車内


 ガタンガタン


A子「これでやっと神ちゃんとLINEがリアルタイムで出来るね」

神様「前のヤツは面倒くさかったからな~」

A子「ガラケーってリアルタイムじゃ出来ないもんねー」


神使「あっ、神宮アプリは入れておいて下さいね」

神様「嫌だよ、そんなの」

A子「あれ重いからね~、私は削除したー」


神使「A子ちゃんは東京から新幹線ですよね」

A子「うん」


神様「っていうか私達は次どこだよ」

神使「まぁ隠す必要もございませんし・・・ 京都です」

神様「え~ 京都なの~?」


A子「あれ? じゃぁ名古屋まで新幹線一緒じゃん」

神様「そうだね」


神使「私達は各駅ですので」

神様「・・・・・・えっ?」クルッ


神使「鈍行です」

神様「ねぇ、巫女さんが新幹線で神と神使が鈍行ってその差は何?」

神使「A子ちゃんは神宮の職員ですから経費で落ちますが、私達は違いますので」

神様「いやいや、そこは経費で落とそうよ」

神使「ですから、私達には経費という概念がございませんので」


神様「A子ちゃんも鈍行で行かない?」

A子「新幹線で帰る」

神様「まぁ・・・ そうだよね」


A子「でも鈍行で京都って、今日中に着くの?」

神使「うまくいけば日付が変わる直前には着きます」

神様「ねぇ、まだ14時だよ?」


A子「うわ~ お尻割れちゃうね」

神様「吉祥寺に来るときも鈍行で12時間も揺られてきたんだよ? もうお尻粉々だよ」

神使「はしたない会話をこんな場所でしないで下さい・・・」

神様「へいへい」


 ご乗車ありがとうございました
 まもなく東京です


神使「そろそろ着きますね」



――― 東京駅


A子「じゃ、わたし新幹線ホームだから」

神使「お気を付けてお帰り下さいね」


神様「そうだ、A子ちゃん?」

A子「なに?」

神様「これ、もう少し後に渡すつもりだったんだけど」スッ

A子「お守り?」

神様「私が作ったやつだから御利益は無いんだけどね」

A子「神ちゃんが作ったの?」

神様「うん」

A子「結構年期はいってるね」

神様「昔に作ったヤツだから古くさくてゴメンね」

A子「そんなことないよ。 ありがとう! 大事にするね」


神様「じゃぁ、気をつけて。 皆によろしく」

A子「うん、またね~」バイバーイ

神様「元気でねー」フリフリ


神使「さて、私達もいきましょうか」

神様「あぁ」


 テクテク


神様「京都か・・・ 久しぶりだな~」

神使「どのくらい前に行かれたんですか?」

神様「ん? 去年」

神使「結構最近じゃないですか・・・」



 神様! 神様~


神様「?」キョロキョロ

神使「あっ、あれ昭宮神様じゃないですか?」

神様「げっ、なんでアイツがいるんだよ」

神使「なんか、凄い量のバラの花束を持っていますけど・・・」

神様「神使! 逃げるぞ!」タッ タッ タッ

神使「え? 神様?」


 待って下さいよ~ お見送りさせて下さい~


神様「お前、仕事抜けられないんじゃないのかよー!」


 あと十分しかないんです~


神様「じゃぁ帰れよっ!」


神使「神様、待ってあげた方が良いんじゃないですか?」

神様「ふざけんなよ」


 神様~ 神様~
 わっ、ちょっと何ですか?


神使「神様! 昭宮神様が警備の人に捕まってます!」

神様「よし、今のうちに全速力で逃げるぞ!」ダダダダ


 神様~~!! お元気で~


神様「・・・・・・」ピタッ クルッ

神使「?」


神様「お前もなーー!」フリフリ

神使「神様・・・」



神様「神使よ」

神使「はい」


神様「良い街だったな」

神使「そうですね」


神様「また来たいな」

神使「はい、また来ましょう」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#4 ―END



【おまけ】


 ガタンガタン
 次は浜松~


神様「んぁ・・・」ポー

神使「Zzz」スースー


神様「まだ浜松かよ・・・ なぁ犬ころ~」ユサユサ

神使「Zzz」スースー


 ストン


神様「ん? 月刊神様・・・ そう言えばアイツ取材受けたって言ってたな」



月刊神様 962号
集中連載 ~ダメ神との付き合い方~
神宮所属 狛犬 神使さま


――今日はお忙しい中ありがとうございます。

神使:いいえ、こちらこそ。どうぞよろしくお願いいたします。


――まず神使さんの経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか

神使:はい。 神使として登録されたのは8年ほど前でして、奈良の『ならなら神社』で奉職しておりました。


―――神宮にいらしたのは?

神使:3年前です。 神様という方にお仕えするよう辞令を受け赴任いたしました。


―――神使になられて8年で最高位の階位とはご立派ですね。

神使:そんなことはございません。 私などまだまだひよっこですので日々勉強の毎日です。


――さて、神使さんの主神様についてお聞かせ頂けますでしょうか。

神使:はい。 私の主神様は神宮所属で内宮神籍の女神で神様と申します。


――内宮神籍と言うことはかなりご立派な神なのでしょうね。

神使:階位は最低位、しかもランク外、左遷と減給を繰り返す絵に描いたような問題児です。 ちなみに現在は無給です。


――それは…… 凄いですね(汗)

神使:月刊神様を読まれている神の皆さまは、きっと『あ~あの方か』とお分かりになると思いますが(笑)


――まさにこのコーナーにピッタリの主神様ということですね

神使:そうかも知れませんね。


――初めてお目にかかったときのご印象は?

神使:びっくりした、の一言です。


――びっくり?

神使:はい、巫女の格好をして授与所でお守りを参拝者の方々に授けておられました。


――神様がですか?

神使:えぇ、普通じゃ考えられませんよね? しかも夕方には箒を持って境内のお掃除までして。


――それは興味深いですね。 どのような意味があるのでしょうか。

神使:巫女の仕事をしないと給料が低すぎて暮らしていけないようです。


――あぁ……

神使:自身の神力も使えないので祭儀にも出られませんし、業務の90%以上は巫女さんでしたね(笑)


――えーと…… 話題を変えますがその神様との付き合い方に関してエピソードなどございましたら是非。

神使:夜ご就寝されるときに下着のまま寝る癖があるので、そこは一番注意しております。


――下着のままですか? 女神様ですよね?

神使:えぇ。 寝相も最悪ですので、酷いときは布団を抜け出し下着姿で廊下で寝ていることもございます。


――えーと…… 神様のことは普段なんとお呼びしているのですか?

神使:周りには『かわゆい神ちゃん』と呼ばせたがっているようですが、私は『神様』とお呼びしております。


――『かわゆい神ちゃん』ですか?

神使:自身以外で、そのように呼んでいる方は見たことありませんけどね。


――……話題を変えます。 今は全国のお社をまわっておられるとお伺いしておりますが。

神使:はい。 主に全国の神職不在神社を中心にまわっております。


――今までのお話をお伺いした限りだらしなさそうな神様でしたが、やはりご立派なのですね。

神使:神宮で2000円のお守りを300円で売っていることがバレまして、その罰なんですよ(笑)


――あぁ……

神使:本当は一社のみの予定だったんですが、赴任先で賄賂疑惑や過去の職務怠慢が発覚しまして無期出向となりました。


――……

神使:?


――失礼しました。 私も色々な神様や神使様をインタビューさせて頂いているのですが、ここまでのダメ神は初めてです。

神使:ありがとうございます。でも、勘違いはなさらないで頂きたいのですが私は主神である神様を尊敬しております。


――尊敬ですか?

神使:神様は他の神とは異なる位置におられ、私も素性は詳しく知らないのですが、とても人に近い神なのです。


――人に近い神?

神使:『私は神力が使えない分、どんな手を使ってでも願いを叶える』 神様からこの言葉を伺ったとき感銘いたしました。


――なるほど。 他の神とは異なるお言葉ですね。

神使:神力が使えないのに願いを叶えるって凄く難しいと思うんです。 でも神様は叶えてくれるんです。


――それがどんな手を使ってでも、という事ですね?

神使:はい。 神力を使って願いを叶えるだけが神ではないということを教えて頂いたんです。


――興味深いお話です。

神使:今度、是非神様にもインタビューして下さい。 美味しいご飯を用意して頂ければ大抵ついてきますから(笑)


――はい、是非近いうちに『かわいいい神ちゃん』に取材させて頂きます。 この後、神使さんはどちらのお社へ行かれるのですか?

神使:来週から吉祥寺の『きちきち神社』で神様が代理神を務められますので同行いたします。


――本日はありがとうございました。

神使:こちらこそありがとうございました。



神様「・・・・・・」ハァ

神使「Zzz」

神様「まぁこの位は許してやるか・・・」

神様「・・・・・・」


神様「な~んて、許すわけないじゃん! 犬ころ!!」

神使「はい!」ビクッ

神様「寝起きはどうだ?」

神使「急に大声出してどうされたんですか?」


神様「これ」パンパン

神使「月刊神様?」


神様「てめぇ、私の事を変にベラベラ喋ってんじゃねぇよ!」

神使「え? 全部本当のことではないですか・・・」

神様「これじゃぁ、私がすげぇダメ神じゃんよ」

神使「そういうコーナーですので」


神様「もっと褒めろよ! 嘘でも奉っとけよ」

神使「神使嘘つかないです」

神様「・・・・・・」


神様「神罰!」


 ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ ゲシッ


神使「痛い、痛いですよ神様。 それは神罰でなく体罰ですから」


神様「うるせー、京都までずっと折檻してやる!」

神使「やっぱり体罰じゃないですか~」


神様「うひゃひゃ、もっと泣き叫べ~」


 ドタバタ






神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」―END

よし、終わった!
相変わらず内容が薄くてすみません!


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 プシュー
 京都~ 京都~


神使「お疲れ様でした神様」

神様「・・・・・・」ゲッソリ


神使「名古屋あたりから神様の生気を感じなかったのですが・・・」

神様「狛犬さま・・・」

神使「?」

神様「何でも言うこと聞きますから、次は新幹線使って下さい」


神様「・・・お尻痛い」


~あらすじ~

神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「ダメ神です」


【#5】


神様「あ~ どうすんだよ! 座り疲れてケツ粉々だよ」

神使「ですから、そういう言葉は使わないで下さい・・・」

神様「で、京都まで来てどこ行くんだ?」

神使「七逆神社です」


神様「・・・・・・ごめん、急用思い出したから帰るわ」

神使「神様?」

神様「ちょっと待ってよ~ なんで七逆神社なの?」

神使「助っ人です」

神様「嫌だよ~ この時期に七逆神社関係って事は絶対に祭りの手伝いだろ?」


神使「神様? お祭りにご参加なさるのは高位神の神の方達です」

神様「あ?」

神使「神様は階位的にお手伝いも出来ませんので」


神様「神使君さぁ、最近結構ズバズバ言うようになったよね」

神使「そうでしょうか?」


神様「まぁ良いわ。 んで? 私達は何をすんだよ」

神使「京都中の神や神職の方がお祭り準備のお手伝いをされますため、各神社が手薄になるんですよ」

神様「そんなのさぁ、ここらの神や神主が順番でまわせば良いと思うの」

神使「今年は特に大きいお祭りですので、余力がないそうです」

神様「それはお忙しいことで」


神使「そういう訳ですので、手薄になるお社での勤務となります」

神様「で? なんで七逆神社に行くんだよ。 あそこは手薄になんかならないだろ」

神使「各神社の宮司の方がお集まりになるそうですので、ご挨拶を兼ねてお伺いするよう言われております」

神様「面倒くせーな~ 舞妓ちゃんと遊んで鴨川縁で一日中寝てたいな~」

神使「残念ですが、その希望は一切叶わないと思います」



―― 七逆神社・貴賓殿


神使「初めまして、神宮より参りました神使と申します。 こちらは代理神の神様です」

神様「ども」ペコ


宮司A「こんな遅くまでご苦労様」

宮司B「神様は神宮の内宮神籍とお伺いしておりますが」

神様「まぁ一応」

宮司C「という事は神階も相当なのでしょうね」


宮司A「京都のお社は社位も高いので、位の高い神が代理神として来て下さると助かります」

宮司B「全くですな」

神様「・・・・・・」イラッ


宮司A「お付きの神使さんも神宮所属ですかな?」

神使「はい、階位は特位となります」

宮司一同「すばらしい!」


宮司B「これは私達も七逆様のお祭りの方だけに専念できますな」

宮司C「今年の祭りは五十年に一度の大祭、成功すれば七逆の宮司A様も神宮付になられる」

宮司A「私なんかが神宮付になんて、そんな器じゃ無いよ」

宮司B「またまたご謙遜を」


神使「あの~」

宮司A「あぁ、失礼。 私達はこれから祭儀の打ち合わせがありますので、神様達は社務所の方へどうぞ」

神使「はぁ」


神様「いくぞ、犬ころ」


 テクテク


神様「ハァ~・・・」

神使「どうされたんですか?」

神様「あれが神職? 笑わせるなっつーの」


神使「皆さんかなり位が高い宮司様のようでしたが」

神様「位? そんなもん何の役に立つんだよ」

神使「お給料が高くなります」

神様「・・・・・・」ゲシッ

神使「痛!」


神様「先に飯行くぞ」

神使「でも社務所の方に」

神様「そんなの後で良いって。 お腹すいたの!」


まだいける!
そう思ったのでした。



 テクテク

神使「どちらへお食事に行かれるんですか?」

神様「ん~ あ、あった。 ここ」


神使「・・・・・・あの、神様」

神様「あん?」

神使「ここって、有名な料亭ですよね」

神様「そうなの?」


神使「一見さんお断りのお店ですよ? 私達じゃ入れませんよ」

神様「へー」スタスタ


神使「ちょっと神様? 聞いてるんですか?」


―― 料亭


 ガラガラ


女将「おこしやす」

神様「あの~、かわゆい神ちゃんだけど」

女将「お待ちしておりました。 さ、どうぞお上がり下さい」

神様「ほ~い」

神使「・・・・・・」


 スタスタ

女将「こちらのお部屋でいかがです?」

神様「おっ、いいね~ 個室」

神使「・・・・・・」


女将「ほな、ごゆっくり」スタスタ


神使「ちょっと神様!」

神様「なんだよ」

神使「この料亭って座っただけで三万円の超高級料亭ですよ!」

神様「へ~ そうなんだ」

神使「三万は私達の今月分の食費と同じなんですよ!? 座っただけで今月分の食費が飛ぶんですよ?」

神様「心配すんなって。 大丈夫だよ」


 トントン


料理長「失礼いたします」

神様「あ、久しぶり」

神使「お知り合い・・・ ですか?」

料理長「A子がいつもお世話になっております」

神使「A子?」


神様「ここA子ちゃんの家、でお父さん」

神使「巫女のA子ちゃんですか!?」


神様「A子ちゃん家は料亭って言っただろうが」

神使「えぇ、でもまさかこの高級料亭とは思いませんでした・・・」

料理長「高級やなんてめっそうもない」


神様「いや~ 急に連絡しちゃってメンゴメンゴ」

料理長「気にせんといて下さい。 ほんまいつもごA子がご迷惑おかけしてます」

神様「そんなことないって」

料理長「今日はA子からも最高のもてなしをするように言われてますんで、ごゆっくりお寛ぎ下さい」

神様「ん~ 楽しみ!」

料理長「ほな、すぐ料理お持ちしますんで」スタスタ


神使「いや、びっくりしました」

神様「なにが?」

神使「いや、まさかA子ちゃんがこんな高級料亭の娘さんだったなんて・・・」

神様「他のヤツには黙ってろよ」

神使「でもお代の方が気になります・・・」


神様「ふふ~ん。 これ」ピラピラ

神使「何ですか? その紙は」

神様「このお店のフリーパス券」

神使「そんな物があるんですか?」

神様「私だけが持つことを許されているのだよ」フフン


神使「“フリーパス、なんでもタダ”って書いてありますね・・・ A子ちゃんの字で」

神様「凄いだろ」

神使「それ、使えるんですか?」

神様「あたりませさね。 私はこれで5回ここに来てる」


神使「・・・・・・あまり使わない方が良いと思いますよ? お店の方にご迷惑ですから」

神様「んなことないよ」


神使「まぁ、来てしまったものは仕方ありません」

神様「よし、たらふく食べるぞ!」オー!


―― 帰り道


神様「あ~ 美味しかった!」ゲップ

神使「私、あんな美味しいもの食べたの生まれて初めてです」ジーン

神様「な? 来て良かったろ?」

神使「幸せなひとときでした・・・」


神様「明日も来る?」

神使「さすがに迷惑ですのでやめておきましょう」

神様「A子ちゃんのお父さんも京都に居るうちは毎日来て下さいって言ってたじゃん」

神使「社交辞令です」

神様「え~ そんなことないと思うのにな~」ブーブー

神使「さて、だいぶ遅くなってしまいましたし社務所に行きますよ?」

神様「あぁ~ お楽しみもここまでか・・・」


―――社務所


 ガラガラ

神使「すいませーん」

巫女「はい」

神使「神宮から来ました神使と申します」

巫女「お待ちしておりました」ペコッ


神使「遅くなりまして申し訳ございません」

巫女「いいえ、どうぞお入り下さい」

神使「失礼いたします」

神様「おじゃましまーす」


巫女「? あの、こちらのお嬢様は?」

神使「代理神の神様です」

神様「かわゆい神ちゃんと呼んで欲しい」


巫女「神様!? し、失礼いたしました!!」

神様「そんな気を遣わなくて大丈夫よん」


神使「すいません、こちらの神様は姿が見えっぱなしでして」

神様「なんかその言い方ってトゲがない?」

神使「深く考えすぎでは?」


巫女「あの、本殿にご案内した方がよろしいでしょうか?」

神使「いいえ、こちらで十分でございます」

巫女「しかし、神様がこのような場所に・・・」オロオロ

神様「大丈夫だって。 私は本殿より社務所派、もっといえば授与所派だから」

巫女「?」

神使「気にしないで下さい。 巫女さん好きな神様なもので」

神様「だから言い方にトゲがない?」

神使「気にしすぎでは?」


巫女「で、では・・・ 早速ですが、こちらが明日の受け持ちリストになります」

神様「どれどれぇ?」ニョキッ


神使「嵐山の“たけたけ神社”ですか」

巫女「三連休ですので相当大変かと思います」

神様「うげ~」

神使「名所ですからね」

巫女「私も一緒に同行させて頂きますので」

神様「ん? たけたけ神社って普段から結構な数の巫女いるよね」

巫女「えぇ・・・ あの・・・ この三連休はお休みのようで」

神使「三連休で参拝者が沢山いらっしゃるのにお休みなんですか?」

巫女「はい・・・」

神様「ふ~ん」チラッ

巫女「・・・・・・」


神使「承知いたしました。 では明日は朝六時にここで待ち合わせでよろしいですか?」

巫女「はい」

神使「では神様、疲れたでしょうからお休みなりますか?」


神使「そうね。 私達は今日どこで寝れば良い?」

巫女「それが・・・」

神使「?」

神様「巫女ちゃん?」

巫女「あっ、はい! あの・・・ ご案内いたします」


―― 宿舎


 スタスタ


巫女「本日はこちらの宿舎をお使い下さい」

神使「立派な宿舎ですね」


 ガラガラ


巫女「どうぞ」

神使「失礼します」

神様「おじゃま~」

巫女「こちらへどうぞ」


 スタスタ

巫女「本来は本殿をご用意するべきだと思うのですが、こんな所で申し訳ありません」

神使「本殿は神々の皆様が禊ぎ中でしょうし、気になさらないで下さい」

神様「案外遊びにいってるかもよ?」

神使「神様? 失礼ですよ?」

神様「まぁ、本殿で寝るのなんかイヤだけどね~」

巫女「?」

神使「神様は本殿とかが合わない性分でして」

巫女「はぁ・・・」


神使「神宮の神様のお部屋は三畳しか無いのであまり広すぎると緊張してしまうのです」

神様「神使君さぁ、喧嘩売ってる?」

神使「事実を申したまでですが」

神様「・・・・・・」ゲシッ


巫女「本日はこちらの部屋をお使い下さい」


 ガチャ


神様「ん? この部屋だれか使ってるんじゃない?」

巫女「すいません、私の部屋でして・・・」

神使「巫女さんのお部屋ですか?」

神様「いや、巫女ちゃんは今日どうするの?」

巫女「私は・・・ 徹夜で仕事がありますので」

神様「・・・・・・」

神使「あのー」

巫女「では! 明日社務所でお待ちしております!」タッ タッ タッ


神使「神様、どういたしましょう」

神様「・・・・・・」



―― 貴賓殿


宮司B「まったく、階位も低いくせに内宮神籍ってだけで調子に乗りやがって」

宮司C「B宮司? 一応はあれでも神なのですから」

宮司B「どの口が、作戦の立案者のくせに」

宮司C「でも、あんなお子ちゃま神様を排除するくらいで神法改正の修正案が通るんですか?」


宮司A「十年前の神法改正で最後まで首を縦に振らなかったのがアイツなんだよ」

宮司B「あれでも審査神だから必ず神に関する法規関係はヤツの同意が必要なんだ」

宮司C「ここであのお子ちゃまが盛大な失敗を起こして神宮から職を剥奪できれば・・・」

宮司A「その隙に修正案を可決させることが容易になる」


宮司B「そういえば、お子ちゃまと神使はどうした?」

宮司A「隅っこの放置社殿で寝てるんじゃないか?」

宮司C「罰当たりな宮司だこと」



―― 貴賓殿・裏手


巫女「・・・・・・」

神様「そう言うことか」フムフム

巫女「!?」

神様「おっと、声を上げずに」シー

巫女「神様・・・」ボソッ

神様「こっち来て」



 スタスタ


神様「アイツらが貴賓殿から出て私に寝床譲れよ。 全く・・・」

巫女「あの・・・ 申し訳ございません神様」ドゲザ

神様「ちょ、頭上げてよ。 巫女ちゃんがそんなことをする必要ないよ?」

巫女「・・・・・・でも」


神様「しかし、あんな絵に描いたような悪代官キャラ本当にいるんだ」

巫女「神様のことをあんな言い方するなんて・・・」

神様「いやいや、私は結構嬉しかったりするよ?」

巫女「え?」


神様「だって、アイツらの中で神の位置が奉ってヘコヘコするような存在ではないって事だからさ」

巫女「そんな恐れ多いこと」

神様「人と分け隔てなく扱ってくれることは、私にとっては結構本望だったりな事なんだよね~」

巫女「・・・・・・」


神様「でも、ちょ~と悪意を向けるのは個人的にカチンとくるけど」

巫女「・・・・・・」



神様「少し歩こうか」

巫女「・・・はい」



 テクテク


神様「ん? あれがアイツらがいっていた放置社殿ってやつ?」

巫女「あっ、はい・・・」

神様「昔さぁ、あそこには可愛らしい女神がいたんだよ。 すごく良いやつだったなぁ~」


巫女「神様、お願いですから神宮にご報告を」

神様「面倒くさ~い」

巫女「でも、神様にこんな酷い対応をするなんて・・・」


神様「大丈夫だって、こんなの馴れてるから」

巫女「神様・・・」


神様「あの宮司達だって、きっと今の制度に不満があるだけだ。 それを改善できないのは神の責任な訳だしね~」

巫女「・・・・・・」


神様「それより、巫女ちゃんはどうして自分の部屋を私達に提供してくれたの?」

巫女「それは・・・」


神様「悪いけど、巫女ちゃんを追い出してあの部屋で寝ることは出来ないな~」

巫女「私の事は気になさらずに―――」

神様「ダメ、気にする。 だから今日は一緒に部屋で寝よう!」

巫女「!? 私なんかが神様と一緒の部屋にだなんて!」

神様「決まり! さぁ部屋戻るよ♪」ガシッ

巫女「うわっ、ちょ、神様!?」ズリズリ



―― 宿舎


神使「そんな・・・」

巫女「・・・・・・」

神使「神様、これは反逆に等しい行為かと思うのですが」


神様「ふふふっ」

神使「あの・・・ 神様?」

神様「面白い、実に面白い、久しぶりに面白い!」クックックッ

神使「どちら様ですか・・・」


神様「この勝負、受けて立とうじゃないか。 なぁ神使君や」ニタァ

巫女「・・・・・・」ブルッ


神様「この対決、こちらには巫女と腐れ犬ころ、そしてかわゆい神ちゃんの三人がいる。 最強と思わんかね?」

神使「神様がいることによって最“凶”に字が変わるのですが」

神様「ウルトラスーパー アチョ~」ゲシッ ゲシッ

神使「痛っ! 痛っ!」


巫女「あの・・・ 私もですか?」

神様「もちろん、今から巫女ちゃんは“かわゆい神ちゃん”チームの一員だ」

神使「なにも巫女さんを巻き込まなくても・・・」

神様「なぁ巫女ちゃんや、一緒にアイツらをコキャッと言わせたいだろ?」ニヤッ

巫女「こきゃ?」


神様「これは楽しみだ。 うひゃ・・・ うひゃひゃひゃ」

神使「(この方は本当に神なんでしょうか・・・ もしかしたら鬼のたぐいなのでは・・・)」


神様「まぁそれは良いとして、明日は早いし今日はもう寝るかね」

神使「はい。 えーと、神様はタオルケットだけあれば良いですよね」


神様「あ~ 神使君さぁ」

神使「?」

神様「お前今日は外で寝てね」

神使「・・・・・・え?」

神様「犬ころに変身すれば外で大丈夫だろ?」ニコッ

神使「・・・・・・」



――深夜


 ワオーン ワンワン


神様「う~ん、メロン八ツ橋の中身がイチゴって へっへっへ」ムニャムニャ

巫女「(神様の寝言が気になって寝られない・・・)」



――翌日・朝


巫女「あの、神様? 朝でございます」

神様「Zzz・・・」

巫女「神様?」


 トントン


巫女「はい」


 おはようございます、神使ですが


巫女「どうぞお入り下さい」



 ガチャ


神使「おはようございます、巫女さん」

巫女「おはようございます」ペコリ


神使「あれ? 神様はどちらへ?」

巫女「あそこに・・・」

神使「なんですか、あの隅っこの大きな芋虫は・・・」

巫女「何度もお声をおかけしているのですが」


神使「神様は揺らさないと起きませんので」

巫女「私なんかが神様に触れるなんて」

神使「お気になさらずに。 ユサユサして下さい」

巫女「・・・はい。 では、失礼いたします・・・ 神様?」ユサユサ


神様「んぁ・・・」ポー

巫女「すいません!」


神様「朝?」

神使「もう出かける時間ですよ? 早く着替えて下さい」

神様「へいへい」ヨイショ

巫女「キャッ///」

神様「ん?」

神使「神様? 下着姿です」

神様「あれ? パジャマ着て寝たはずなんだけどな~」キョロキョロ

神使「神様のパジャマは廊下に落ちていました」

神様「お~」

神使「どうやって寝たらパジャマだけ廊下に転がるんですか・・・」

神様「気にすんなって」


神使「おや? 巫女さんは私達と一緒にお出になるのですよね?」

巫女「はい」

神使「巫女装束で行かれるのですか?」

巫女「業務時間内でございますので」

神使「では、神様も巫女装束で」

神様「まじかよ! 勘弁してくれよ」


巫女「神様は向こうで祭儀装束に替われば良いかと思いますが」

神使「すいません、神様は巫女装束しか支給されていないんです」

巫女「え?」

神使「神階が最低位で、しかも神力が使えないので祭儀に出る必要もございませ―――」

神様「うっせー」ゲシッ



―― 七逆神社前


神様「あ~ なんか雲行きが怪しいな~」

神使「午後に小雨が降るかも知れないと天気予報で言ってました」

神様「ふ~ん」


神使「巫女さん、たけたけ神社まではどのようにして?」

巫女「はい、駅まで歩いてそこから電車で移動となります」

神様「え? 車じゃなくて?」

巫女「すいません・・・」


神使「気にしないで下さい。 神様?」

神様「いや、電車で行くのは良いんだけどさぁ。 この格好で街を歩き回るのは、さすがの私も恥ずいなぁって」

神使「下着姿でウロウロする方が比較にならないくらい恥ずかしいと思うのですが」

神様「そんな格好で外出て歩いてないだろうが!」


神使「気にしなくても着物来た人いっぱいいますから大丈夫ですよ」

神様「いや、でもこれはさすがに目立つでしょ」

神使「覚悟を決めて下さい」

神様「え~」



 テクテク

神様「うわ~ 朝早いのに人多いな」

神使「京都の繁華街の通りですから」


 あのー

神様「ん?」

観光客「すいません写真一緒に良いですか?」

巫女「あっ、あのこちらは神宮の神・・・ いえ、そのお写真のほうは―――」

神様「よっしゃ! 神使お前カメラ撮ってやれ」

神使「はい」

巫女「え!?」

観光客「ありがとうございます。 この辺の神社の巫女さんですか?」

神様「私は神宮で、この子は七逆神社の巫女」

観光客「すごーい」


神様「どっから来たの?」

観光客「私達、東京から来ました」

神様「そう! 私も一昨日まで吉祥寺に―――」

神使「神様? 写真撮りますよ?」

神様「あぁ、ほら巫女ちゃんも」

巫女「私もですか?」

神様「当たり前じゃん、早く」

巫女「はい」

神使「では、ハイチーズ」カシャ


観光客「ありがとうございました」

神様「またね~」

巫女「・・・・・・」



 ガタンガタン


観光客「神ちゃん面白い~」ゲラゲラ

神様「いやいや、こっからが傑作でさぁ~ 私がおまるに跨がった途端―――」


巫女「・・・・・・」ジー

神使「どうされました?」

巫女「あっ、なんでも・・・」

神使「?」



――― たけたけ神社


神様「・・・あれ? ここってこんなに大きい神社だったっけ?」

巫女「最近整備されて倍の大きさに広げられたそうです」

神使「普段は何人でまわしているんですか?」

巫女「巫女六人と、神主五人が常駐していると伺っております」

神様「あ~ そうなんだ・・・」


神使「神様、この大きさの神社を三人でまわすのはかなり無理があるかと・・・」

神様「アイツら中々面白いことやってくれるじゃないか」

神使「授与所を開けるのは何時からですか?」

巫女「九時からです」

神使「あと二時間ですね。 どうされますか神様?」

神様「授与所は二箇所か・・・ 大きい方だけ開けて少し様子を見よう」

神使「分かりました」


神様「巫女ちゃん、授与品のリストってある?」

巫女「はい、こちらです」

神様「多いな・・・ 5、10、15・・・ お守りだけで30種もあるのか」

巫女「他に御札と絵馬が合わせて10種ございます」


神様「う~ん、私のエリアと巫女ちゃんのエリアで全部対応できるようにレイアウトを変えよう」

巫女「えっ!? 神様もお守りを売られるのですか?」

神様「当たり前じゃん」

巫女「しかし、神様にそのようなことをお願いするわけには・・・」

神使「お気になさらずに。 神様の主成分は巫女で出来ておりますので」

神様「神使君さぁ、やっぱり何か言い方にトゲがない?」

神使「そんなことはございませんよ? で、私は何をすれば良いでしょうか」


神様「あぁ、犬ころは御朱印中心で空いてるときはサポートにまわってくれ」

神使「分かりました」


神様「よし、じゃぁ社務所に荷物を置いてこよう」

巫女「あの・・・」

神様「どったの?」

巫女「社務所なんですが・・・ 立ち入りを禁止されておりまして・・・」

神使「えっ?」


巫女「このお社の人間以外は立ち入りを禁止していると言われております」

神使「お金の管理はどうするのですか?」

巫女「お釣りなどは私が預かっております」ジャラッ

神様「・・・・・・」


神使「神様、いくらなんでもこれは・・・」


神様「ひっひっひっ、中々手が込んでるじゃないか。 なぁ神使君や」ニタッ

巫女「・・・・・・」ブルッ

神使「神様・・・ お願いですから邪神にはならないで下さいね?」


神様「いいぜ、この勝負全部まとめて買ってやるよ! ドドン!」

巫女「ドドン?」

神使「神様の自分で言う効果音です。 気にしないで下さい」



―― 昼


参拝者「神宮の御札を頂けますか?」

巫女「はい、こちらになります」

神様「巫女ちゃん? それは、たけたけ神社の御札。 神宮の御札は右側のヤツ」ボソッ

巫女「あっ、すいません・・・」


参拝者「おみくじ十番が出ました」

巫女「あっ、はい十番ですね」ゴソゴソ

神様「は~い、こちらになりま~す」

巫女「?」

神様「巫女ちゃん? そっちは別のおみくじだよ?」

巫女「あっ、すいませんでした・・・」

神様「焦らないで」

巫女「はい・・・ 申し訳ございません・・・」


参拝者「交通安全のお守りってどれですか?」

神様「千円と千五円の二種があるんですけどね、おすすめはコッチ」

巫女「・・・・・・」


参拝者「あの、御朱印をお願いしたいんですがどこでもらえますか?」

巫女「はい、ご案内いたしま―― キャッ!」ドサッ

神様「! 巫女ちゃん大丈夫!?」

巫女「大丈夫です! すいません、すいません!」



―― 夕方


神使「お疲れ様でした」

神様「パトラッシェ、僕もう疲れたよ・・・」グテッ


巫女「・・・・・・」

神使「巫女さんもお疲れ様でした」

巫女「・・・本当に申し訳ありませんでした!」

神様「気にしないでって、あの量の参拝者だもん。 よくがんばったよ」

巫女「・・・・・・」


神様「しかし、どうすっかな~」

神使「何がですか?」

神様「今日は途中で小雨が降ったりしたから何とか対応できたけど、明日は厳しいかもな」


神使「天気予報では絶好のお出かけ日和といっていました。 やはり三人では・・・」

神様「収拾つかなくなってパンクするよな」

神使「はい・・・」


神様「ところでさぁ、今日寝る所どうすんの?」

神使「そういえば社務所には入れないですよね」

巫女「参拝者用の休憩所で過ごせと・・・」

神様「まじか~」


神使「神様、さすがに文句を言った方がよろしいのでは」

神様「めんどい」

神使「・・・・・・」


神様「仕方がない、本殿で寝よう」

巫女「しかし本殿にも鍵が・・・」


神様「良いことを教えてやろう」

神使「良いことですか?」

神様「本殿には裏側に隠し扉があってバレずに出入りが出来るのだよ」ヘヘン

神使「隠し扉?」

神様「神が周りにバレないように抜け出すときのためにある」

神使「なんでそんなものが・・・」


神様「よく禊ぎとか言って神が籠もるだろ?」

神使「えぇ」

神様「抜け出して遊びに行くんだよ」

神使・巫女「・・・・・・」


神様「だれにも言うなよ?」シー

神使「あまり聞きたくありませんでした・・・」

神様「ちょっと探してくるわ」タッタッタッ


神使「ハァ~ すいませんね、変な神様で・・・」

巫女「いいえ・・・」


神使「では、私は門を閉めてきますので」

巫女「あっ、私が」

神使「大丈夫です。 少し休憩されていて下さい」スタスタ



―― 裏庭


巫女「ハァ・・・」シュン


神使「裏にこんな所があったんですね」

巫女「あっ、神使様!」

神使「お気になさらず、そのままベンチに座っていて下さい」

巫女「すいません・・・」


神使「はい、ジュースです」

巫女「ありがとうございます・・・」


神使「ここは風が気持ちいいですね」

巫女「この場所は風が通ってとても涼しいんです」

神使「よくご存じですね」

巫女「私、生まれがこの近くで小さい頃からよくここに来ていて」

神使「そうだったのですか」


巫女「申し訳ございません。 私、鈍くさくてお役に立てず」

神使「そんなことありませんよ? 私と神様だけでは乗り切ることは出来ませんでした」


巫女「私・・・ 巫女なのに神様にお手伝いをさせて・・・ しかも沢山ご迷惑まで・・・」

神使「迷惑だなんてとんでもない」


巫女「・・・・・・きっと怒ってらっしゃいますよね」

神使「神様って怒っているときは無言になるんです。 眉間にしわを寄せて、ほっぺをぷくっと膨らませて」

巫女「・・・・・・」


神使「少なくとも今日は神様が怒っていたことはございませんよ? 神使嘘つかない」

巫女「でも、私やっぱり巫女に向いてないんです。 毎日神主様や先輩にも怒られてばっかりで・・・」


神使「巫女さんは何年目なんですか?」

巫女「三年目になります」


神使「どうして巫女さんになろうと?」

巫女「私、小さい頃からこの神社が大好きで。毎日のように来ていたんです」

神使「とても良い所ですよね」


巫女「私ってこんな性格だから、その・・・ 学校ではあまり馴染むことが出来なくて・・・」

神使「・・・・・・」

巫女「でも、分かっているんです。 私が鈍くさくて周りに迷惑ばかりかけていたから・・・ そんな自分が嫌で」


巫女「ここに来るとそんな事を忘れることが出来たんです。 ・・・変ですよね私」

神使「そんなことないと思いますよ?」


巫女「高校を卒業する少し前に、いつものように夜ここで座っていたら主神様が現われて・・・」

神使「主神様が?」

巫女「はい、その時は神様が本当にいるなんて知らなかったので凄くびっくりしました」


神使「主神様とはお話しなされたのですか?」

巫女「いつも来てくれてありがとう、って・・・」

神使「優しいお方ですね」

巫女「すごく嬉しくて・・・ 次の日、この神社の宮司さんに巫女になりたいですって直談判をしてました」

神使「そうだったんですか」


巫女「私がお社にご奉職するときには宮司さんは別の神社に移ってしまわれて、私は七逆神社に配属になってしまったんですが」

神使「いつか、ここに巫女として配属される日が来ると良いですね」

巫女「・・・・・・」


神使「そうだ、折角ですし神様にお願いされてはいかがですか?」

巫女「え?」


神使「神様はまだ隠し扉を探しているんでしょうか・・・」キョロキョロ

巫女「でも、私なんかが神様にお願いだなんて」

神使「まぁ、あの神様は神力が使えないので御利益は薄いんですけどね」

巫女「神力が?」

神使「えぇ、その代わりどんな手を使ってでもお願い事を叶えようとするんですよ?」

巫女「私なんかより、お参りして下さった他の方のお願い事を・・・」


神使「では、巫女さんもお参りをしましょう」

巫女「私も?」


神使「神様はお願いを聞くのがお仕事ですから。 サボれないように仕事を増やしちゃいましょう」

巫女「・・・・・・」


神使「さぁ、いきましょう」

巫女「ありがとうございます。 神使さん」



―― 本殿裏


神様「おっ、隠し扉み~けっ」ゴソゴソ

神様「はへ~ 本殿の中すげーな~ 儲かってんだな・・・」


 カラン カラン


神様「ん?」コソッ


 パンッ パンッ


神様「(巫女ちゃん?)」

巫女「(・・・・・・)」フカブカ



神様「・・・・・・」



―― 本殿前


神様「おまたせ~」テクテク

神使「あっ、神様。 隠し扉はありましたか?」

神様「うん、裏に回ったところにあった」

神使「これで寝る場所は確保できましたね。 では、本殿に入りましょうか」


神使「あ~ 私ちょっと出かけてくるわ」

神使「どちらへ行かれるんです?」

神様「ん~ ちょっとこの先」

神使「何を考えているんですか?」

神様「お前変に疑いすぎ。 ちょろっと遅くなるかもだから先に休んでて~」タッ タッ タッ


神使「ハァ~、また何か企んでますね神様は・・・」

巫女「?」


神使「仕方ありません、私達だけ先に休みましょう」

巫女「はい」



―― 翌朝


神使「結局、神様は戻ってきませんでしたね」

巫女「やっぱり怒って帰ってしまわれたのでは・・・」

神使「巫女さん? 神様はそんな方ではありませんよ?」

巫女「あっ、申し訳ありません」

神使「でも、無断外泊はダメですね。 少し厳しくご指導をしないと神としての―――」


 ギィー


神様「ただいまー」

神使「あっ、神様! どこへ行ってらし・・・ て・・・」


 ソロゾロ


神使・巫女「・・・・・・」


神使「神様? こちらの方達は・・・」

神様「右から平安大神社の主神、下鴨川神社の主神、七逆神社の主神、一番左がたけたけ神社の主神」


神使「まさか拉致してきたんですか!?」

神様「んなわ訳ねーだろ!」

神使「でも、主神様達が憔悴しきっているのですが・・・」

神様「この先にある神様機構の保養所で麻雀やってるところを連行してきた」

神使「麻雀!? でも、主神様達は今お祭りに向けた禊ぎ中のはずなのでは・・・」


神様「ハァ~、神使君さぁ~ お祭りって言うのはね? 人が勝手に決めて勝手にやってるものなの」

神使「はぁ・・・」

神様「だから神にとっては、その日は休日なの」

神使「・・・・・・」


神様「禊ぎだ~ とか言って本殿に籠もっているふりして遊びにいってるの」

神使「・・・・・・」


七逆神「神ちゃん! それ言ったらアカンやろ」

神様「まぁ、凄ーく立派なヤツはお祭りの日もきちんと仕事するんだけどね?」チラッ

京神一同「・・・・・・」


神様「でも、この神達は麻雀してたの。 まぁ、別に休みだから良いんだけどさぁ」

七逆神「ほな、放っといてくれや」


神様「でもね?」ギロッ

神一同「!?」


神様「お前達の神社の宮司達が暴走してるからね? 代わりにお前達にお灸を据えようかと思ってね?」

下鴨神「お灸って何? 人の問題は人同士で解決してくれや」

神様「あ? 私に迷惑かかってんだよ! 私は一応神! 神に迷惑かかってんだよ!」

平安神「そやかて、ワシら休暇中やし・・・」


神様「麻雀のレートは?」

京神一同「・・・・・・」


神様「審査神である私神様は、違法な賭け麻雀の現場を目撃したため神様機構に報告を―――」

下鴨神「分かった! 分かったって! で? 何すればええんよ。 宮司達にコラッって言えばええの?」


神様「お守り売るの手伝って?」

京神一同「・・・・・・え?」


神様「お守り売るの手伝って?」

七逆神「うちらが?」

神様「そう」


下鴨神「お守り売るんか?」

神様「そう」


平安神「どこで?」

神様「ここで」


京神一同「・・・・・・」


七逆神「ここって、たけ神の神社やな?」

たけ神「えぇ・・・」

巫女「・・・・・・」


たけ神「あれ?」

神様「なんだよ、たけちゃん」

たけ神「いえ、神様でなくそちらの巫女はん」

巫女「私ですか!?」

たけ神「久しぶりですね。 巫女にならはったんですね」

巫女「私の事・・・ 覚えてくれているんですか?」

たけ神「当たり前やないですか。 毎日参拝して頂いた方を忘れる訳ないですわ」


神様「七逆神は巫女ちゃんを知ってるか?」

七逆神「? 初めまして・・・ やな」


神様「この子は七逆神社で巫女をやっている」

七逆神「!? ・・・・・・あぁ! 本宮の巫女はんか! 知ってるで」アセアセ

巫女「・・・すいません、私は宮付きでは無いです」

七逆神「・・・・・・すまん」


神様「七逆神、お前今日は死ぬ気で働け」ギロッ

七逆神「・・・・・・」


―― 昼

参拝者「このお守り下さい」

七逆神「えっとー 五十円やったかな」

巫女「すいません、千八百円お納め下さい・・・」

七逆神「たっか!」


参拝者「七逆神社って、ここからどう行けば良いですか?」

平安神「平安大神社は93系統っちゅうバスに乗って―――」

参拝者「いえ・・・ 七逆神社に行きたいんですが・・・」


参拝者「あの、御朱印お願いできますか?」

下鴨神「あ~ 御朱印な」サラサラ

参拝者「(下手くそ・・・)」

下鴨神「どうぞ」ハイ

参拝者「あ・・・ ありがとうございます」

神使「(下手ですが神が書いた御朱印なんて凄いですね・・・)」



―― 夕方


七逆神「ハァ~」グッタリ

神様「お疲れ、今日はもう休んで良いぞ」

下鴨神「今日は?」


神様「明日もよろしく」

神一同「(うそ~ん)」


七逆神「うち社務所でちょっと横になるわ」

神様「社務所入れないよ?」

七逆神「は?」


神様「ここの宮司から入るなって命令されてる。 鍵かかってるし」

たけ神「変やな、いつも鍵なんてかけへんのに」

七逆神「お前ん所の宮司って嫌なヤツやな」

たけ神「前の宮司はええ人やったんですけどなぁ・・・ 今の宮司はちょっと・・・」


神様「あっ、ちなみに数々の嫌がらせはお前達の神社の宮司がグルになってやってるから」

京神一同「・・・・・・」


神様「私達は本殿で寝るから、お前達はそこの参拝者用休憩所で寝てくれ」

京神一同「(小さっ!)」


下鴨神「神ちゃん、あそこに男四人はキツいわ・・・」

平安神「一回宿戻るけ?」

神様「宿の方はチェックアウトしておいた」

京神一同「(うそ~ん)」


神様「明日は朝六時起きな。 じゃ、よろぴこ~」スタスタ

京神一同「・・・・・・」



―― 翌日


 ガヤガヤ


参拝者「交通安全のお守りが欲しいんですけど」

巫女「千円と千五円の二種がございます」

・・・

参拝者「家内安全の祈祷をして頂けますでしょうか」

たけ神「はいはい、う~ん・・・ 祈祷せんでも大丈夫みたいやけど、やっとく?」

・・・

参拝者「この付近って他におすすめスポットってあります?」

平安神「そやな~ この先にさがさが神社があるんやけど主神が美人でな~ 酒持って行くと願い叶うで」


神使「巫女さんも馴れてきたようですね」

神様「ん? あ~、彼女も私と同じでやれば出来る子なんだよ」


神使「それより、主神様達が予想以上に戦力ですね」

神様「あいつらも、こうして人と接するのが久しぶりで楽しいんだろ」

神使「そうかも知れないですね」


神様「人と接するのが嫌な神なんかいない。 人と神は身近でないとダメなんだよ」

神使「・・・・・・」



―― 夕方


神様「ハァ~ もうダメ・・・ ちかれた」

七逆神「燃え尽きたで・・・ もう真っ白や・・・」ゲッソリ


神使「何とか無事乗り切れましたね、神々の皆様ありがとうございました」

たけ神「うち、祈祷の受付からお祓いまで一人でやったの初めてやわ・・・」

七逆神「たけ神、お前ん所お守りの種類多すぎやで? 少し減らしや」

たけ神「そやね~ 七逆神社はお守りいくつあるん?」

七逆神「そんなん多くて10種がええとこやろ~ なぁ巫女はん?」

巫女「うちはお守りだけで全部で48種ございます」

七逆神「・・・・・・すまん。 ちょっと減らさせるわ」


神様「んじゃ、お腹もすいたし食事に行こう」

下鴨神「昼はおにぎりだけやったし倒れそうやわ」

七逆神「美味しいもん食わせてや神ちゃん」


神使「神様、こんな大勢ですと入れるところも限られますが・・・」

神様「大丈夫、予約はしてある」ニヤッ

神使「まさか・・・」



―― 料亭


七逆神「!? これは・・・」

平安神「う・・・ うまい!」

巫女「美味しい・・・」

神様「どうだ、うまいだろう?」フフン

七逆神「うちの神社の近くにこんな美味しい店があったとは知らんかったわ」

女将「おおきに」

料理長「神ちゃんさんの大切なお客様ですので、腕によりをかけてお作りさせてもらいました」


平安神「料理長はん、うち平安大神社の者なんやけど次の大祭の時に料理お願いしてもええか?」

料理長「名誉なことありがとうございます」

神様「お前達、使いもしない金が沢山あんだろ? 定期的に来い」

七逆神「わし、毎週来るわ」


神使「ちょっと、神様!」ボソッ

神様「なんだよ」

神使「支払いどうするんですか! 私そんなにお金持ってきていませんよ?」


神様「フリーパス券があ―――」

神使「ダメに決まっているじゃないですか!」


神様「今日の売上から出そ―――」

神使「もっとダメです!」


神様「私のクレジットカー―――」

神使「神様が払いきれる訳ないじゃないですか・・・」

神様「分かってるって~ 任せてちょ」


神様「料理長、会計お願い」

料理長「そんな、神ちゃんさんからお金は受け取れまへんよ」

神様「でも悪いよ、なぁ皆?」

七逆神「そりゃそうですわ。 こんな良いもん出してもろてタダなんてワシのプライドが許さへん」

下鴨神「ほんまやで」

七逆神「神ちゃんから受け取れないんやったらワシが出すわ。 料理長ええか?」

神様「・・・・・・」ニヤリ

料理長「おおきに」


神様「んじゃ、七逆神ごちです! 巫女ちゃんもお礼を」

巫女「七逆神様、ありがとうございます」

七逆神「かまへんかまへん」

神使「(神様・・・ 相変わらず悪知恵ばかり良く働きますね・・・)」



 テクテク


神様「良い店だったろ?」

平安神「最高やわ、神ちゃんにええ店教えてもろて感謝や」


神様「巫女ちゃんも満足できた?」

巫女「あんな高い物を私なんかにご馳走して頂いて申し訳ありません」

七逆神「気にせんでええって、うちで働いてる巫女ちゃんのこと知らなかったお詫びや。 すまんな」

巫女「そんな・・・ 私なんて知らなくて当然です・・・」

七逆神「そんなことないわ」

巫女「こうして神様方と一緒にいること自体が場違いですし・・・」


神様「さてと、お前達はこの後どうすんの?」

七逆神「折角やし、みんなうち寄ってくか? ええ日本酒があんねん」

下鴨神「ええな」

平安神「ほないこか」


たけ神「神ちゃん達はどうするん?」

神様「先に社務所に行って売上置いてくるから、その後で合流~」

七逆神「ほな、社務所まで一緒に行こか」


 テクテク



―― 七逆神社


宮司A「七逆神様! それに下鴨神様に平安神様・・・ たけ神様まで! 」

七逆神「お~ 今戻った」


宮司A「皆さん、禊ぎ中では?」

京神一同「(やべっ・・・ 忘れてた!)」


宮司A「ん? なんで巫女のお前が神々様と一緒にいるんだ?」

巫女「その・・・ 申し訳ありません!」

七逆神「まぁ、良いじゃないか宮司」

宮司A「巫女の教育は神職、いえ人の勤めです。 神々の方は口を挟まないで頂けますか?」

七逆神「・・・・・・」


神様「七逆神に夕飯をご馳走してもらっただけだって」

宮司A「なっ! 神々様と食事だと? 無礼者!!」

巫女「申し訳ありません」ビクッ

宮司A「身分をわきまえろ!」


神様「巫女ちゃんは私が無理矢理誘っただけだしさぁ」

宮司A「禊ぎ中の神々をたぶらかして食事ですか? 良いご身分ですな、さすが内宮神籍の神だ」

神様「・・・・・・」ムスッ プクー


神使「まずいですね・・・ 神様が、おこです・・・」


巫女「そんな・・・ そんな言い方・・・ 神様に失礼です!」

宮司A「私に口答えするのか! 無礼な巫女だ!」

神使「宮司様、落ち着いて下さい」


宮司A「お前は今日でクビだ! 荷物をまとめて出て行け」

巫女「・・・・・・」


神使「神様・・・ なんとか仲裁を」コソッ

神様「七逆神社は巫女ちゃんをクビにするのか?」

七逆神「撤回はしませんぞ」

神様「じゃ、クビで」

神使「ちょっと、神様」

七逆神「神ちゃん・・・ あんまりやわ」


神様「巫女ちゃん」

巫女「・・・・・・はい」グスッ

神様「明日から巫女ちゃんを神宮の内宮神付きの巫女として採用する」

巫女「え?」

宮司A「なっ! 内宮神付き!?」


神様「明日辞令を出す。 神使、手続きしておけ」

神使「え? あっ、はい」


神様「それと宮司」

宮司A「なんでしょうか?」イラッ

神様「これ、たけたけ神社の売り上げ。 いや~ 参拝者いっぱい来て楽しかったわ」ホレッ

宮司A「・・・・・・」ジャラッ


神様「んじゃ、用事も終わったし皆で飲み直そう!」

七逆神「ふははっ、神ちゃんやっぱ最高やわ」ハハハッ

たけ神「神ちゃんは相変わらずやな」


神様「巫女ちゃんも行くよ? 内宮神付きの巫女は神様の相手が仕事だからね?」

巫女「神様・・・」


神使「では、私は神様用のコーラをコンビニで買って参ります!」

神様「さすが犬ころ! 2リットル5本くらい買ってきて」

平安神「ほな、本殿行きましょか」


 ゾロゾロ


宮司A「・・・・・・クソッ」イラッ

神様「そうだ、宮司さ~ん?」

宮司A「なにか?」

神様「週明けに神様機構と合同で神宮の査察入るらしいよ? 会議資料とか注意してね~」

宮司A「・・・・・・」

神様「今から隠せば間に合う! ガンバレ~」



―― 本殿内


七逆神「でも神ちゃん、巫女ちゃんをいきなり内宮付きなんて可哀想過ぎちゃいますの?」

下鴨神「神宮は相変わらずギスギスしてるんちゃいます?」

神様「あ~ べつに神宮には連れて行かないよ」

神使「しかし、ここに残ってもやりづらいのでは・・・」


神様「たけちゃんさぁ」

たけ神「なんでっしゃろ」

神様「たけたけ神社で巫女ちゃんを預かってくれない?」

たけ神「うちの神社ですか?」

神様「うん」


たけ神「かまへんですけど。 巫女ちゃんは小さい頃からうちの神社に来てくれてましたし」

神様「巫女ちゃんは、たけたけ神社で良い?」

巫女「私が・・・ たけたけ神社で?」

神様「こっちからのお願いだから無理にとは言えないんだけど・・・」

巫女「神様・・・」

神使「たけたけ神社も宮司同士が繋がっているのでは?」


神様「たけたけ神社を別表にする」

神使「別表!? 神宮管理にすると言うことですか?」

神様「あんなデカい規模の神社が個別管理ってのはダメ」

神使「たしかに、神宮に登録されている資料と境内の大きさが全然違いますが」

神様「どうせ勝手にデカくしたんだろ」


たけ神「ということは宮司も変わるんちゃいます?」

神様「もち、飛ばされた前の宮司を推薦する予定」

たけ神「それは嬉しいですわ」


神使「しかし、そんな大きい改革できるんですか?」

神様「相当面倒な根回しが必要だな~」

神使「大丈夫ですか?」

神様「私は神力が仕えない分、どんな手を使ってでも願いを叶える」

巫女「!!」ハッ

  ~
  パンッ パンッ
  巫女「(昔の素敵なたけたけ神社に戻りますように)」フカブカ
  ~

神使「・・・・・・」チラッ

巫女「・・・・・・」ウルウル


神使「そう言うことですか・・・」フッ


神使「私に出来ることがあれば遠慮無くおっしゃって下さい、神様」

たけ神「私も協力しますよ?」

七逆神「もち京都中の神は神ちゃん派やで」

神様「気持ちが悪いので、そういう馴れ合いは勘弁して下さい」


神様「それに・・・」

神使「?」

神様「これは、私の仕事だ」ニコッ



――翌日


神使「神様?」ユサユサ

神様「ん~ あと1日・・・」

神使「何ですか、それ・・・ いい加減起きて下さいよ」ユッサユッサ

神様「なんだよ・・・」ムニャムニャ

神使「人事院から連絡がありました」

神様「連絡?」ポー


神使「巫女さんの内宮付き巫女の登用許可が出ました」

神様「あっそう」ノビー

神使「それと・・・ 内宮神様から神宮に一度戻るようにとメールがありました」

神様「はぁ? 内宮神?」

神使「はい」

神様「・・・・・・」


神使「たけたけ神社の別表化に関してでしょうか?」

神様「アイツがそんな事に首突っ込む分けねぇよ」

神使「(内宮神様でもアイツ呼ばわりですか・・・)」


神様「ハァ~ 面倒くさ・・・」

神使「神様? 内宮神様にそんな口の利き方したらダメですよ?」

神様「ねぇ、バッくれて遊び行かない?」

神使「ダメです。 神様を連れて行かないと私が怒られます」

神様「大丈夫だよ、アイツは私にはとっても優しいから」


神使「・・・・・・私は内宮神様にお目にかかったことが無いのですが」

神様「まぁそうだろうな。 びっくりするぞ? 保証する」ニタッ

神使「(なんでしょう、この嫌な感じ・・・)」


神様「それより、巫女ちゃんは?」キョロキョロ

神使「神様のせいでここをクビになったので、荷物をまとめて引き上げる準備に」

神様「すげー刺々しい言い方じゃね?」

神使「事実ですので」


 トントン


神使「どうぞ」

巫女「失礼いたします」


神様「ちょうどいいや、巫女ちゃん」

巫女「はい」

神様「これから辞令交付を行う」

巫女「辞令ですか?」


神使「まさか、ここでやるんじゃないでしょうね?」

神様「なにか問題あるのかよ! 犬ころ!」


神使「他の主神様達が酔いつぶれて、そこら辺に転がっているのですが・・・」

神様「気にすんなって」

神使「それに・・・ お酒臭いです」


神様「おい、たけちゃん」ユサユサ

たけ神「う~ん・・・ なに? 朝け・・・?」ボー

神様「巫女ちゃんの辞令交付するからお前は起きろ」

たけ神「あい・・・」


神様「それでは、巫女ちゃん」

巫女「はい」

神様「其方を本日付で神宮の巫女とし、辞令を発令する」

巫女「お受けいたします」

神様「所属を内宮神付き巫女とし、たけたけ神社の主神付き巫女として出向を命ずる」

巫女「はい」


神様「たけ神よ、挨拶を」

たけ神「Zzz・・・」グー

神様「以上を持って辞令交付とする」

神使「・・・・・・」


神様「巫女ちゃん、がんばって。 良い巫女さんになってね」ニコッ

巫女「ありがとうございます、神様」



―― 夕方


神使「神様? 準備は良いですか?」

神様「あぁ、大丈夫」


神使「本当に皆さんにお別れはしなくても良いんですか?」

神様「あいつら絶対起きないし、巫女ちゃんも今日中に引っ越ししないとだから」


神使「分かりました、では行きましょうか」



 テクテク


神様「犬ころ?」

神使「なんでしょうか」

神様「神宮に戻る前に一箇所行きたいところがあるんだけど良いか?」

神使「でも、内宮神様からの呼び出しですから急ぎませんと」

神様「頼む・・・ 京都に来たら昔から毎回寄ることにしているんだ・・・」

神使「昔からですか?」

神様「あぁ、古いなじみというか・・・ 無理だったら諦めるけど・・・」

神使「神様?」

神様「・・・・・・」


神使「・・・分かりました。 お供いたします」

神様「すまない、我が神使よ」


―― 舞妓茶屋

神様「うひゃひゃ、舞妓はんの負け~!」

舞妓「神ちゃんはん、強すぎやわ~」

神様「私に運で勝とうとするなんて二千年早いわ!」カッカッカッ

神使「・・・・・・」


神様「あっれ~? 神使ちゃん、もしかしてご機嫌斜め~?」

神使「はい」

神様「舞妓は~ん、この犬ころがご機嫌斜めで~す」

舞妓「どないしはったんどす?」

神使「いえ、先ほどから下着一丁で遊んでいる女性の方が信じられなく」

神様「お? それって私? なんと! 私下着一丁だ~! キャ~ はじゅかち~」イヤーン

舞妓「自分から脱ぎはったんやないですか。 神ちゃんはん、ほんま面白いわぁ~」

神様「舞妓ちゃん、かわゆい~ もう一回言って?」


神使「ハァ~ どこのオヤジですか・・・」ゲンナリ



 テクテク


神様「は~ 満足満足!」ツヤツヤ

神使「神様? いくらかかったと思ってるんですか?」

神様「良いじゃん、たまには羽目を外さないと疲れちゃうし~」


神使「当分の間、天引きですよ? お小遣いなしですからね?」

神様「へいへい」


神様「でも・・・ 念願の舞妓さん遊びも出来たし、楽しかった!」

神使「そりゃあれだけ遊べば楽しかったでしょうね」


神様「あぁ、これで思い残すことはないな・・・」

神使「?」


神様「ありがとうな、ワガママ聞いてくれて」ニコッ

神使「神様?」


神様「さてと、神宮へ行きますか」

神使「はぁ・・・」


神様「帰りは新幹線だぞ? のぞみ乗ろう! のぞみ!」

神使「・・・・・・」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#5 ―END


次の回で・・・


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 ファーン
 ガタンガタン


神様「ひょ~ 新幹線早ぇー!」

神使「神様が電車の中で寝ないなんて珍しいですね」


神様「おっ?」

神使「どうされました?」

神様「あの山沿いの道、昔さぁ京都行く時はあそこ歩いたんだよ」

神使「昔は鉄道なんてありませんでしたからね」

神様「そうだな・・・ 良い時代だ・・・」

神使「神様?」

神使「時代の流れもどんどん早くなるんだろうな・・・・・・」


~あらすじ~

神様「私は神様! 問題ばかり起こすダメ神で、迷惑ばかりかけるけど・・・ 皆の願いを叶えたい」

神使(訳)「!?」


【#6】


―― 神宮裏手


神様「うまっ」モグモグ

神使「その赤福は何個目ですか?」

神様「いや~ 地元土産って食べる機会そんなにないじゃん?」

神使「そう言われれば、あまり食べた記憶ありませんね・・・」


神様「お前にも一個やるよ」ホレ

神使「私のお金で買ったんですが・・・」

神様「細けーこと言ってんじゃねーよ」


神使「あの、神様?」

神様「なんだよ、もうやらないぞ?」モグモグ

神使「いえ、内宮神様にお会いするんですよね」

神様「そのつもりだけど」


神使「内宮本殿ではないのですか?」

神様「本殿には居ないんだな~」

神使「え? ではどちらに」

神様「こっち」スタスタ



――― 神宮・奥庭のさらに奥


神使「ずいぶん奥まで入ってきましたね・・・」

神様「ん? でも、まだ神宮の敷地内だけど」

神使「私ここまで入ってきたことないです」


神様「おっ、あった。 あれ」

神使「ずいぶん小さなお社ですね」


神様「なあ、犬ころ」

神使「はい」

神様「神宮主神をはじめ内宮神、外宮神の三神は基本的に誰とも会わない」

神使「はい、神宮の大宮司さんも会ったことがないと聞いております」

神様「何故だか分かるか?」

神使「?」


神様「まぁ、お前なら大丈夫だと思うが・・・ 気をつけろ」

神使「どう言う意味でしょうか・・・」


神様「内宮神は神宮三神の一人だ、ラベルが違う」

神使「・・・・・・レベルです」ボソッ

神様「内宮神は神宮三神の一人だ、レベルが違う」

神使「心得ております」


神様「怒らせるなよ? 私でも庇いきれない」

神使「・・・・・・」ゾクッ

神様「フーッ、緊張するな」ソワソワ

神使「(神様でもこんなに緊張するなんて・・・)」


神様「よしっ、いくぞ」

神使「・・・はい」



 ギィー


神様「内宮神様! 失礼いたします! 神様でございます」ドゲザ

神使「し、失礼いたします! 神様のお付き、狛犬の神使でございます」ドゲザ


内宮神「遅いではないか?」

神様「申し訳ありません」

神使「?(内宮神様って女神様だったのですか・・・ でもこの声・・・)」


内宮神「遅れた理由を述べよ」

神様「この腐れ神使が舞妓茶屋から離れようとしなかったもので!」

神使「えっ!?(うそ~ 神様また裏切った!)」


内宮神「まことか? 極悪邪道腐れ犬ころっ!!」

神使「いえ・・・ その・・・ も、申し訳ございません!」


内宮神「後ほど、この世のものとは思えぬほどの恐ろしき神罰を与える。 覚悟せよ」

神使「!?」ゾクッ

神様「ありがとうございます!」

神使「・・・・・・」


内宮神「二人とも、面を上げよ」

神様「はっ、失礼いたします」

神使「失礼いたします」



神使「・・・・・・えっ?」


内宮神「はろー」


神様「ぷっ、犬ころいい顔だわ」ゲラゲラ

内宮神「うひゃひゃ、びっくりした? 」


神使「神様が二人・・・?」


内宮神「神様だ!」ヘヘン

神様「私も神様だ!」ヘヘン


神使「あの・・・ これは・・・」

神様「どう思う?」


神使「姉妹・・・ いえ、双子でしょうか・・・?」

内宮神「あ~ まぁ普通はそう思うよな」

神様「なんて説明すれば良いか分かんないけど・・・ 分身?」

内宮神「まぁ、そんな感じ?」


神使「分身? どちらがオリジナルなのですか?」

神様・内宮神「・・・・・・」


神様「やっぱ分身じゃないね」

内宮神「違うね」


神使「・・・・・・」


神様「かわゆい神ちゃんと」

内宮神「かわゆい内宮神ちゃんは」

神様・内宮神「同じ」キラッ


神使「あの・・・ 申し訳ないのですが、よく分からないです・・・」


内宮神「だからお前は犬ころなんだよ。 考えるんじゃない、感じるんだ」

神使「・・・・・・」


神様「あれ? 犬ころ理解してる?」

神使「私の理解を超えておりますが、神様が二人いるという事だけは理解しました」

神様「二人と言っていいのか微妙だけど」


神使「しかし、なんでこんな・・・」

神様「話すの面倒い」

神使「教えて下さい」

神様「あれ? 犬ころがこういう話に突っ込んでくるの珍しいじゃん」

神使「さすがにこれは聞いておきたいです」

神様「しょうがないな~」

内宮神「ちょっとだけ教えてあげよう!」

神使「ありがとうございます」


神様「実はさぁ~ 良く分からないんだよ」

神使「え?」

神様「二百年くらい前にね、気付いたら別れてた」

内宮神「以上!」


神使「またそれですか・・・ 相変わらず神様って分からないことだらけですね」

神様「褒めるな褒めるな///」テレッ


神使「ということは、最高神様と外宮神様も・・・」

内宮神「お前さぁ、神宮で最高神達って見たことある?」

神使「いいえ、一切お姿をお見せにならないとお伺っておりますので」


神様「だっていないんだもん」

内宮神「見られるわけないじゃん」

神様・内宮神「ね~」

神使「・・・・・・」


神様「強いて言うなら、私達が内宮神で外宮神」

内宮神「ついでに、神宮主神だから」

神様「最高神ってわけ! ドドン!」

神使「・・・・・・」


神使「ちょっと待って下さい」

神様「ん?」

神使「今、神宮主神と仰いました?」

内宮神「うん」

神様「最高神で最低神!」ドヤッ

神使「・・・・・・」


神使「天照大神様は・・・」

神様「ハァ~ この前言っただろ? そんなヤツいないって」

神使「神話・・・ ですか?」

神様「そう、天照大神って言う最高神は存在しない」

神使「・・・・・・」


神様「だから私が最高神!」


神使「どうして、そのことを秘密にしているんです?」

神様「ん~ 恥ずかちい」

神使「・・・・・・」


神様「犬ころ凄い顔してるな」

神使「とんでもない暴露をされて困惑中です」

内宮神「だれにも言うなよ?」


神使「ちょっと待って下さい・・・」

神様「ん?」


神使「内宮神様と神様が同じというなら、なんで態々神様をお呼びになったのですか?」

神様「あ~ それね」

内宮神「そこが分かんないのよ」

神使「はい?」


内宮神「呼んでないし」

神様「呼ばれてないし」

神様・内宮神「呼ぶ必要ないし!」


神使「つまり・・・」

神様「誰かが何か企んでいる」

神使「お心当たりは?」

神様「う~ん・・・ どれだろう」

神使「いっぱいあるんですね」

内宮神「・・・まぁ」


神使「それと・・・」

神様「どうして、お前に私の本性を教えたのか」

内宮神「だろ?」

神使「はい」


神様「もしかしたら、今回の件が引き金になって大きく流れが変わるかも知れない」

神使「流れ・・・ ですか?」

内宮神「あぁ、・・・今はこれで勘弁してくれ」

神使「分かりました」

神様「お? 今回はずいぶんあっさりじゃん」


神使「神様が言いにくいことを無理に聞く気はございませんので」

神様「さすが犬ころ、私の躾は完璧だな」カッカッカッ

神使「調子に乗らないで下さい」

内宮神「はい」


神使「・・・私は今、神宮主神である最高神に無礼を言ったんですね・・・・・・」

神様「その通り! 赤福十個で許そう」

神使「先ほど買ってあげました。 次はご自分のお金で買って下さい」

神様・内宮神「はい・・・」


神使「それで、この後はどうするんですか?」

神様「あれ? もうこの状況を飲み込んじゃった感じ?」

神使「飲み込むも何も、考えてどうにかなるものでもありませんので」

内宮神「いいね~ その適応能力」

神様「弥生時代にタイムストリップしても暮らしていけるよ」


神使「で? どうなさるんですか?」

内宮神「あの・・・ タイムストリップは無視ですか?」

神使「あっ、すいません。 混乱していて突っ込み忘れました」

神様「・・・・・・そう」


神使「で?」

神様「あぁ、まずは~ 誰が私を呼んだのかを調べることからだな」

神使「召喚状に記載してある場所に行けば、誰か分かると思うのですが」


神様「良いかい? 神使君。 敵が誰なのかは事前に調べておく必要があるのだよ」

内宮神「それで作戦が大きく変わる」


神使「しかし、どのようにして調べるんですか?」

神様「召喚命令はお前の携帯に来たんだよな」

神使「そうです。 いつものように神宮からメールで」

神様「そのメール、私のかわゆいスマホに転送してくれ」

神使「はい」ピッピッ


 ピロリン♪

神様「よし。 で、これを転送っと」ピィ

神使「どなたに転送されたんですか?」

神様「B夫」

神使「B夫って、神職のB夫君ですか?」

神様「そう。 いま居るかな~」ピピピッ


 prrr prrr
 ガチャ


B夫『B夫っす』

神様「ども~ かわゆい神ちゃんだけど」

B夫『なに?』

神様「今さぁ、B夫にメール送ったんだけど、ちょっと調べてもらいたい事があって」

B夫『なに?』

神様「メールの送り主が誰か調べて欲しいの」


B夫『メール、メール・・・ これか』

神様「どう?」

B夫『ん~ ヘッダが変・・・ 串通してるね。 どこまで調べんの?』

神様「徹底的に。 内宮神からの命令だから極秘でお願いしたいんだよ」

B夫『内宮神・・・ それ面白い。 引き受けた』

神様「何か分かったら連絡ちょーだい」

B夫『OK、送り主の尻毛の数まで調べてや―――』


 ピッ


神様「これでよしっと」


神使「B夫君って何者なんです?」

神様「神宮で神主やる前はハッカーだったみたい」

神使「前にそんなこと言ってましたね。 でも、なんでハッカーが神職なんかに・・・」

神様「十年前の神法改正の際に作ったシステム化の時に神宮が引き抜いたんだって」

神使「あぁ~ なんか凄いシステムらしいですね」


神様「B夫は神宮だけじゃなく、神様機構や関連施設の全システムを管理しているんだよ」

神使「神職ですよね?」

神様「建前上はな。 神宮に入る前に一週間だけ神職の講義を受けた」

神使「・・・・・・」



 ポッポー ポッポー ポッポー


内宮神「あっ、お昼だ」

神様「犬ころ、声を上げるんじゃないぞ」

神使「?」


 ゴソゴソ ゴソゴソ


神使「(扉の前に誰か・・・)」


 よしっ!と。 今日は鯛の塩焼き! 我ながら完璧なのです!

 パンッ パンッ
 何の神様だかよく分からないけど今日も楽しく過ごせますように!

 タッ タッ タッ


内宮神「・・・・・・」コソッ

神様「行ったな」



 ギィー


神様「うひょ~ 美味ちそ~!」


神使「今の声って、もしかしてA子ちゃんですか?」

内宮神「あぁ、こんな離れのちっぽけな社にも毎日食事を持ってきてくれるんだ」

神様「こんな所にまでお供えを持ってきてくれたのはA子ちゃんだけだ」


神使「A子ちゃん毎日こんな事をしてたんですか・・・ 全然知りませんでした」

神様「本当に良い子なんだよ」


神使「A子ちゃんもまさか最高神にお供えしているなんて思ってもいないでしょうね・・・」

内宮神「そんなの知る必要なんかないよ。 隅っこの可哀想な神にお裾分けくらいに思ってもらった方が気が楽だし」


内宮神「さて、食べるかね」

神使「美味しそうですね・・・」

内宮神「残念だけど一人分しかないから犬ころは昼抜きな」


神使「あの、一口だけでも良いのですが・・・」

神様「しゃーねーな~ ちょっとだけだぞ?」ホレ

神使「いただきます」パクッ

内宮神「うまいだろ」

神使「良い塩加減ですね、最高に美味しいです」モグモグ

神様「神宮美食クラブ料理長だからな」パクパク


神使「A子ちゃんは、神様がここに居るって事は知らないんですよね」

内宮神「当たり前だよ」モグモグ

神使「不思議な子ですよね」



 prrr prrr


神様「B夫から電話だ」゙


 ピィ


神様「もしもし~」

B夫『B夫』

神様「どした?」

B夫『メールの解析終わった』

神様「もう分かったの?」

B夫『メールは神宮法規室の参事が使ってる端末から送られてる』

神様「法規室?」


B夫『そう、でもクッションとして使っただけ。 バレないように念を入れだけってやつ』

神様「そのメールを送らせたヤツって調べることは出来たりするの?」

B夫『次期大宮司、今は外宮の宮司か』

神様「あいつか・・・」

B夫『ちなみに、尻毛の数は――――』

神様「うん、それは興味ない」


B夫『それと神ちゃん、もしかして神宮に居る?』

神様「・・・・・・」

B夫『離れの小さいお社とか?』

神様「なんで知ってんだよ・・・」

B夫『携帯の電波で居場所が分かる』


神様「もしかして、他のヤツも知ってるの? 特に次期大宮司とか」

B夫『言っていない。 ちょっと話がある、そっち行っても良い?』

神様「・・・・・・」

B夫『最高神の件について』

神様「!!」

B夫『誰にも気付かれないように行く、良い?』

神様「分かった、一時間以内に来れる?」

B夫『五分でいく』

神様「待ってる」

B夫『私あなたのことをいつまでも待ってるわ、って言って欲し―――』


 ピィ


神様「う~ん・・・ まずいかも」

神使「どうされたんですか?」

神様「予想以上に深刻な状態かもな~・・・」


―― 5分後


 ガサガサ


神使「誰か来たみたいですね」

神様「B夫かな?」


 トントン


内宮神「神聖な社に何用か? 合い言葉を述べよ」

 神ちゃんはお守りだけじゃなく御札も値段を割引して売ってい―――

 バン!


神様「だからなんでそんなことまで知ってんだよ!」

B夫「授与品在庫管理システムと売り上げ管理システム作ったのオレ」

神様「・・・どうぞお入り下さい」フカブカ


B夫「わっ、本当に神ちゃん双子だったんだ」

神様「あ~ まぁ双子とは違うんだけどそんな感じ」


B夫「すげー。 あっ、これ差し入れ」

神様「気が利くじゃ~ん なに、ケーキ?」パカッ

神様「・・・・・・」


神使「これって、猫神様が喫茶店で出していたケーキでは?」

神様「なんでお前が猫神のケーキ持ってるんだよ」

B夫「神宮に来てる。 語尾に無理矢理ニャを付ける変な女と一緒に」

神使「猫娘さんも・・・ どうして神宮に・・・」

B夫「さぁ?」

神様「・・・・・・」


B夫「で、早速なんだけど」

神様「あぁ」

B夫「最初に二人に謝っておく、ごめん」

神使「?」

神様「私達の行動を調べていた件か?」

神使「行動?」

神様「バレないはずの私の素晴らしい行いの数々が神宮に筒抜けになっていた件」

神使「そう言えば、減給がリアルタイムで行われていましたね」

B夫「神ちゃんの携帯を細工して音声と位置情報が把握できる様にした」

神様「やっぱりな~ 変だと思ったよ」

B夫「本当にごめん」

神様「そんなことは気にしてないから謝る必要は無い、B夫の仕事だったんだろ?」

B夫「ごめん」


神使「と言うことは、今もこの会話は筒抜けに・・・」

B夫「携帯変えたでしょ。 京都行く前に」

神様「あ~ 替えた。 見る? 私のかわゆい携帯」ゴソゴソ

神使「なるほど、携帯を変えたから盗聴できなくなったと・・・」

神様「ほら、良いでしょ。 かわゆくない?」ホレ

B夫「良い趣味。 オレと同じ」ホラ

神様「・・・・・・そう」


B夫「神宮アプリ入れてないよね、神ちゃんそれ正解」

神使「アプリ?」

B夫「全部筒抜けになる」

神使「そう言えば、神様入れませんでしたよね」

神様「お、おう。 知ってのことだ。 褒めよ」


神使「私のスマホには入っているんですが・・・」

B夫「神使氏の端末は傍受してない、でも念のため後で消す」

神使「どうも・・・」


神様「もしよかったら私達のことを調べるよう指示したのが誰か教えてくれると嬉しい」

B夫「次期大宮司」

神様「分かりやす~い」


神使「なんで、次期大宮司がそんなことを?」

B夫「たぶん神ちゃんに関係ありそうだから言う。 神法大改正を進めている」

神様「大改正!?」

B夫「神ちゃん十年前の改正の時にかなり反抗したでしょ」

神様「まぁ・・・」


B夫「つまり今回の改正は神ちゃんが邪魔って事。 しかもアイツら大改正って言ってるし」

神様「なるほどね~」

B夫「それで神ちゃんのボロをアイツら調べてる」

神使「でも、神様をこれ以上失墜させるほどの事なんかもう無いと思うのですが・・・」

神様「神使君さぁ、ちょっと余計な言葉が多いよね?」

神使「そうですか?」


B夫「最高神」

神使「最高神・・・? まさか!」

B夫「あいつら最高神に関して色々探ってる」

神様「・・・・・・」


B夫「少し前に神宮本殿を調べてた」

神使「神宮本殿は神でも立ち入りが禁止されている神聖な区域のはずでは?」

B夫「かなり特殊な検査装置で周りから調べたらしい。 オレが電源とネットの引き回しを担当したから間違いない」


神様「最高神の所在か・・・」

B夫「それしか考えられない」

神様「なるほどねぇ~」


神使「神様、どうなさるんですか?」

神様「取りあえず、アイツらの計画を聞いてからだな」

神使「次期大宮司にお会いになりますか?」


神様「B夫さぁ、お前これからかわゆい神ちゃんチームね」

B夫「それ面白いこと起こる?」

神様「あぁ、最高にエキサイチングでイカす出来事が待っている」

B夫「いいね、神ちゃんチームに鞍替え」

神様「よし、今日の夜に作戦会議だ」

神使「大丈夫ですか?」

神様「うひゃひゃ、楽しいぞ~」ニヤッ

神使「・・・・・・」


神様「さて、取りあえず次期大宮司と言っているけど絶対になれない残念なヤツの所へ行くか」

神使「次期大宮司の前でそんな呼び方しないで下さいよ?」

神様「B夫、夜に来てくれ」

B夫「OK」



―― 外宮宮司室


 トントン
 どうぞ


神様「失礼~」

神使「失礼いたします」


次期宮司「これは神様、どうされましたか?」

神様「ん? お前に呼ばれたんだけど」

次期宮司「・・・はて、私は呼んでおりませんが?」

神様「そう? おかしいな~ 人違いだったかな?」


神使「・・・内宮神様に呼ばれてきたのですが」

次期宮司「そうでしたか」


神様「そうそう、とっても立派な内宮神様に呼ばれたんだった」

次期宮司「私はお目にかかったことはないのですが、さぞご立派な女神様なのでしょうね」

神様「へぇ~ 内宮神が女だって知ってるんだ」

次期宮司「・・・・・・」


神様「お前、私を試そうとしているな? やめとけ、ボロが出るだけだぞ」


次期宮司「先日、神宮本殿を調べさせてもらいました」

神様「ほぉ~」


神使「神宮本殿は神でも立ち入れない聖域だと思いますが」

次期宮司「様々な測定器を使って内部を調べただけだ。 踏み込んではいない」

神使「なんて罰当たりな・・・」


次期宮司「三神は言わば神宮の最高責任者だ。 宮司すらも見たことがないというのは変だろ?」

神使「知る必要があるのでしょうか?」

次期宮司「存在しない物を崇め奉るという時代じゃないんだよ」

神使「それは、人が勝手に―――」

次期宮司「だから、それを戻そうとしているんじゃないか」

神様「戻す?」


次期宮司「はい、そのためには三神が本当に存在するのかを確認しなくてはならないのです」

神使「しかし、それが本殿を勝手に調べる理由にはならないのでは?」

次期宮司「三神は神宮の象徴。それが実は居ませんでした、ではマズいんだよ」

神様「まぁ一理あるな。 で? 三神は居たか?」

次期宮司「いいえ、天照大神様どころか最高神は一人も存在しませんでした」

神使「しかし、私は先ほど最高神様にお目にかかってきました」


次期宮司「そこの神様が最高神なんだろ? いや、最高神役か」

神様「・・・・・・」

次期宮司「ついでに、内宮神と外宮神も神様が役を演じていたってことも知っている」

神使「へぇ~ よく調べたじゃん」


次期宮司「神宮宮司記録に神様の記載が見つかりましてね」

神使「神宮宮司記録?」

次期宮司「歴代の大宮司以外は見ることが禁止されている書物だ」

神様「おまえ、神宮の大宮司じゃないだろ」

次期宮司「神様が深入りするところではございませんよ?」

神様「・・・・・・」イラッ


次期宮司「大宮司様は入院しておられます。 私が代理で大宮司を執行しておりますので権限があります」

神様「大宮司が入院!? 聞いていないぞ!」

次期宮司「人の問題に神々のお手を煩わせるのも失礼ですので」

神様「・・・・・・」イラッ イラッ


次期宮司「記録によると、神様は二百年ほど前に猫神様の紹介で神宮に来ていますな」

神使「二百年前・・・(神様が二つに分かれた時代ですか・・・)」

神様「何が言いたいんだ?」


次期宮司「神様は双子のようですな、いやびっくりしたよ」

神様「・・・・・・」

次期宮司「神様の片方を神宮三役として置く。 大宮司以外一切秘密とする、と書かれていました」


次期宮司「まさかとは思ったが、神様が神宮から離れてその存在が確証できました」

神使「もしかして・・・ それを調べるために神様を出向に!?」

次期宮司「考えすぎだ、神様は神宮で問題を起こしたから出向してもらったまでだ」


神使「なんて卑怯なことを・・・」

次期宮司「卑怯? どっちがだ」

神使「どう言う意味です?」

次期宮司「神宮の最高神が、神力も使えないお飾りだったなんてことを知られたらどんなことになると思っているんだ?」

神使「神様になんて無礼な事を!」

神様「よせ、犬ころ」

次期宮司「しかし、神様!」

神様「黙ってろ」


神様「少なくとも私はこれでも神の端くれだ。 嘘偽り無く腹を割って話そう」

次期宮司「はい」


神様「何が望みだ?」

次期宮司「先ほども申しましたが、神力が使えない神が最高神というのは神宮としての威厳に関わります」

神様「だから何だ」


次期宮司「ご存じかと思いますが、神社界も参拝者の減少が酷く立て直しが急務なんです」

神様「だから何だと聞いている!」


次期宮司「神様に最高神役を降りて頂き、私達が推薦する者を三神として迎え入れて頂きたい」

神様「そんなものを引き受ける神がいると思えないが? 神には上下はない」

次期宮司「私達が推薦する者を神へ上げて頂きたいと思います」


神使「まさか、神様の力を知っているんですか?」

次期宮司「過去の文献や言い伝えを徹底的に調べてようやくたどり着いた」


神様「なるほど・・・ 確かに私は人を神にすることが出来る。 神宮主神は誰にするんだ?」

次期宮司「宮司会で決定することになると思います」

神様「お前なんだろ?」

次期宮司「さぁ、それは分かりかねますが」

神様「無理、お前を神にすることは絶対にないから」

次期宮司「・・・・・・」

神様「さらに言うと、私以外にこの役割をやらせるつもりは無い」


神様「犬ころ、帰るぞ」

次期宮司「二日後に、宮司会が開かれますのでそこで神法大改正を決議いたします」

神様「あ?」

次期宮司「よろしくお願いします、最高神様」

神様「・・・・・・」ムスッ プクー

神使「(神様、激おこですね・・・)」



―― 神宮裏参道


神使「どうされるんですか?」

神様「・・・コーラ買ってくる! 適当にブラブラしてろ!」ズカズカ

神使「ちょ、神様・・・」ハァ


猫神「神ちゃん、ご機嫌ななめだね~」

神使「猫神様!? やっぱり神宮にいらしてたんですか」

猫神「うん、呼び出し受けちゃってさぁ~」

神使「先日はどうもありがとうございました」ペコッ

猫神「こっちこそ~」

神使「呼び出しというのは・・・」

猫神「ちょっとね~」

神使「・・・・・・」


神使「やはり、神法大改正がらみですか?」

猫神「神使君は神ちゃんからどこまで聞いたの~?」

神使「神様が最高神で、二人いるところまでは伺いました」

猫神「そっか~・・・ ねぇ、少し時間ある~?」

神使「はい」


 テクテク


猫神「今から話すことはたぶん神ちゃんから絶対聞くこと出来ないだろうから、私から話すね~」

神使「そんなに話しにくいことなんですか?」

猫神「そうだね~ 正直私もどうしようか悩んだよ~ 誰にも話すなって言われてるし~」

神使「無理には伺いませんが・・・」

猫神「う~ん、でも神使君には知っておいてもらいたいかなぁ~って。 神ちゃん絶対自分のことは喋らないし~」

神使「・・・・・・」


猫神「神ちゃんねぇ、千三百年位前に当時の偉い人から頼まれてある役を引き受けたんだよ」

神使「千三百年前!?」


猫神「神ちゃんが居る小さなお社ってねぇ、国を滅ぼす悪い龍が眠っているの~」

神使「はい?」

猫神「その龍が、出てこないように神ちゃんに封印してもらいたいって」


神使「そんな・・・ 迷信ですよね?」

猫神「もちろんそんな悪い龍とか居ないし、封印だとかそんなこと出来ないしね~」

神使「では、なぜ神様はそんな役を・・・」

猫神「当時の人たちにとってはもの凄い不安だったんだよ~ それこそこの国を揺るがしかねないくらい」

神使「・・・・・・」


猫神「神ちゃんさぁ~ それが皆の願いだったら自分が死ぬまでその願いを守るって約束したの」

神使「死ぬまで・・・」


猫神「そんな神ちゃんに人は敬意を表して神宮を作ったんだよ」

神使「神宮は神様のために作られたんですか!?」

猫神「そうだね~ でも神ちゃんって、そう言うの嫌いだから神話を作ってね~」

神使「天照大神・・・」

猫神「そうそう、よく出来てるでしょ~」


猫神「でも、神ちゃんも神を作らないといけないから仕事を両立させるのが大変だったんだ~」

神使「どちらも神様しか出来ない事ですよね」


猫神「神宮に入れない時間は、信頼の置ける巫女さんに神ちゃんの代理をしてもらってたんだけどね~」

神使「代理・・・」

猫神「しばらくは何とかまわってたんだけど、五百年前にバレちゃってさぁ~」

猫神「当時の神宮の大宮司がちょっと癖のある人でね? 巫女が天照大神様の代理などケシカラン! って」


猫神「その時代は神ちゃんの存在自体を皆は知らなかったし、架空の最高神がねじ曲がった存在になってたんだよね~」

神使「ねじ曲がった存在?」

猫神「人が最高神を見ること自体処刑の対象になるくらい神格化されて・・・」


神使「それじゃぁ、その巫女さんは・・・」

猫神「・・・・・・」

神使「まさか!」


猫神「神ちゃん相当ショックだったみたいで・・・ 自分のせいだって、少し塞ぎ込んじゃったんだよね~」

神使「・・・・・・」


猫神「あの時の神ちゃん、凄く苦しそうだった。 笑顔も消えちゃって・・・」

神使「そんな神様なんて想像できません・・・」

猫神「全部自分の責任だって背負い込んで、社に籠もってひっそり最高神役を続けてたんだ~」

猫神「私と、仲の良かった昭宮神君と何度も神ちゃんの所に足を運んだんだけど・・・」

神使「・・・・・・」


猫神「そんな期間が二百年くらい続いてさぁ~」

神使「二百年も・・・」


猫神「でね、ある日突然神ちゃんが二人になったの」

神使「その原因が分からないんですが、一体何がおこったんですか?」

猫神「分からないんだよね~ 神ちゃん自身も驚いてたくらいだし」


神使「原因不明ですか・・・」

猫神「そうだね~ でも神ちゃんが二つに分かれて問題が起ったの・・・ 神ちゃんの神力が使えなくなっちゃって・・・」

神使「その時に神様は神力ゼロに・・・」

猫神「う~ん、表現が難しいんだけどそんな感じかな~」

神使「・・・・・・」


猫神「それで、私が片割れの神ちゃんを見習い神として神宮に入れたんだ~」

神使「最高神の神様と、最低神の神様・・・」

猫神「そうだね~ それ以来少しずつ神ちゃんも元気になってくれてね~」

神使「そんな過去が神様にあったなんて・・・」


猫神「もう、神ちゃんの苦しむ姿は絶対見たくなな~」

神使「お任せ下さい。 私が絶対にそんな事させません。 これでも神様の神使ですから」


猫神「神ちゃんってあんな性格だけど、他人の事ばっかり気にして自分の事は二の次で~」

猫神「何千年もそうやって・・・ 少し休ませてあげたいなぁ~って・・・」


神使「神様も先日猫神様の事をそう仰っていました」

猫神「神ちゃんが?」

神使「猫神様の願いを叶えて、少し休ませてやりたいって」

猫神「・・・・・・そう」フッ


神使「これからどうなるんでしょうか・・・」

猫神「さぁ~ どうなるんだろうね~・・・」


神使「神様がどう出るか全く分かりません」

猫神「今回ばかりはね~ でも、何かあったら言ってね? どんなことでも協力するから~」

神使「最大級の神力をもつ猫神様が付いて下さるなら負ける気はしません!」


猫神「私は、猫娘ちゃんと近くのホテルにいるから何かあったら電話ちょうだいね?」

神使「神様にお会いにならなくてもよろしいのですか?」

猫神「やめとくよ~ たぶん神ちゃん私を巻き込まないようにするはずだし~」

神使「分かりました。 色々教えて頂いてありがとうございます」ペコリ

猫神「今の神ちゃんのお付きが神使君で本当によかった~」ニコッ

神使「・・・・・・」


猫神「それじゃぁ~」テクテク


―― 離れのお社


 ギィー


神使「あれ? 神様、コーラを買いに行ったのでは?」

内宮神「あ? 私は千年以上前からここにいるぞ」

神使「あっ、すいません・・・・・・」

内宮神「・・・・・・」


神使「あの~」

内宮神「なんだ?」ムスッ

神使「何か怒ってらっしゃいます?」

内宮神「次期大宮司と話をしていた私とここにいる私は同じだ」

神使「そうでした・・・」

内宮神「・・・・・・」

神使「・・・・・・」


内宮神「なぁ、犬ころ」

神使「はい」


内宮神「私は・・・ 必要だと思うか?」

神使「え?」

内宮神「もしかしたら、神という存在をこの時代は必要としていないんじゃないか?」

神使「・・・・・・」


内宮神「昔はさぁ、神なんかになりたいなんて思うヤツいなかったんだよ。 神にする者を探すが大変だった」

神使「神様?」

内宮神「神は権力者じゃない、人の上に立つような存在でもない。 神は・・・・・・」


神使「神様はどうして居もしない悪い龍の封印のマネなんてしているんですか?」

内宮神「お前何でそれ知ってんだよ・・・ ま~た猫神か」ハァ

神使「はい、先ほどお会いいたしました」

内宮神「誰にも言うなっていったのに・・・」ムスッ


神使「どうして秘密になさるのですか?」

内宮神「・・・・・・」

神使「秘密にしているから皆勘違いすると思うのですが」

内宮神「・・・・・・」


神使「みんなが神の存在なんて知らないのに必要としていないって言うのは変だと思うのですが」

内宮神「やっぱ、お前最近遠慮なしに言うようになったよな」

神使「すいません・・・」

内宮神「謝ることじゃない」

神使「・・・・・・」


内宮神「今からでも受入れてくれると思うか?」

神使「わかりません」

内宮神「そうだよな」フッ


 ギィー


神様「腐れ犬ころのくせに生意気」

神使「あっ、神様」


神様「でも・・・」

内宮神「一応礼は言っておく」


神様「ほら、奢りだ。 飲め」ポイッ

神使「おっと、ありがとうございます(トクターペッパー・・・)」


B夫「何の話? オレも混ぜて」

神様「ひやーーっ!」ビクッ

B夫「神ちゃん驚きすぎ」


神様「いつから後ろ居たんだよ!」

B夫「神ちゃんがコーラとトクペを間違えて買って全部の自販機の釣り銭の所をゴソゴソして、その後少し涙を流しながら歩いていた位のと―――」

神様「アッチョー」ゲシッ

B夫「痛っ!」ガクン

神様「ほとんど最初からじゃねーかよ! それに泣いてねーし!」



―― 外宮宮司室


次期宮司「では、よろしくお願いします。 正一位猫神様」

猫神「本当に神ちゃんには手を出さないんですね~?」

次期宮司「無論です」


猫神「・・・他に方法はないんですか~?」

次期宮司「ここまでこじれてしまった以上、修復は難しいと思います。 神社界もこのままでは維持できません」

猫神「・・・・・・」


次期宮司「二日後に開かれる宮司会の決定を神々代表として、正一位猫神様の名において神勅頂きたく思います」

猫神「・・・・・・」

次期宮司「どうぞよろしくお願いいたします」



―― 離れのお社


B夫「で、作戦プランは?」

神様「う~ん、宮司会の模様をテレビで生中継するとか!」

神使「そんなものを全国に流してどうされるんですか・・・」

神様「アイツらの黒い部分を一滴も残さずお茶の間にお届けする」

内宮神「どう?」

B夫「無理」

神使「私も無理だと思います」


B夫「宮司会は開催場所と時間がトップシークレット。 場所も分からないようじゃ中継のセッティングが出来ない」

神様「そうか~・・・」

神使「それにテレビだなんて・・・ なにか他の手を考えないと」


 ゴソゴソ
 ちょっと押しちゃダメだよ
 ごめんニャ


内宮神「!?」バッ

神使「扉の前に誰かいますね」

内宮神「誰だ!」


 バン!


A子「あっ、神ちゃん」

猫娘「ごめんなさい。ニャ!」

内宮神「A子ちゃん! 牡蠣娘!」


A子「いや~ 夜のお供えを持ってきたら中から神ちゃんと神使さんの声が聞こえたもんで」

神使「どうして猫娘さんまで・・・」

猫娘「A子さんに境内を案内してもらって見学してたんです。ニャ」

神様「もう夕飯の時間だったか・・・」


A子「わっ! 神ちゃんが二人いる!!」

神様「あ~・・・ うん」


神使「取りあえずお二人に入って頂いた方がよろしいかと」

内宮神「そうね。 二人とも入って」


A子「ごめんね神ちゃん、盗み聞きするつもり無かったんだけど・・・」

神様「私でも中から声が聞こえたら聞き耳立てるし、気にしないで」


A子「それより・・・」

内宮神「あ~」


A子「私の知ってる神ちゃんはどっち?」

神様・内宮神「はい」

A子「・・・・・・?」


神使「神様、お二方にはきちんとお話になった方がよろしいかと」

神様「うん。 実は・・・・・・」








A子「マジっすか!」

神様「黙っててゴメン!」

猫娘「びっくりしたニャ~ 神様が最高神だったなんて。ニャ」


A子「なるほど、私は神ちゃんに毎日お供えをしてたって事か」フム

神様・内宮神「タダ飯くらっててすいませんでした!」ドゲザ


A子「いや~ 最高神様にご飯を食べて頂けていたなんて光栄でございますよー」

神様「すいません・・・」


A子「それに、毎日最高神様と一緒にお守り売っていたなんて光栄でございますよー」

神様「ごめんA子ちゃん! そんな呼び方しないで! 普通に接して! お願い!」ドゲザ


A子「冗談だよ~ それよりその次期大宮司? ちょっとお仕置きしないとダメだね」

猫娘「猫神様もこっちに来てから頻繁に呼び出されています。ニャ」

神様「そうか・・・ それと猫娘さぁ」

猫娘「?」

神様「さすがに語尾にニャを付けるならそろそろ馴れようよ・・・」

B夫「いや、これかなりグレード高い。 その計算されたぎこちなさが世の男を引きつける。 策士?」

神様「B夫さぁ、気持ち悪い」ゲシッ ゲシッ

B夫「痛っ」


A子「あっ、そうだ。 これお供えのご飯なんだけど」コトッ

神様「おいちそ~ でも、他の人の分がない・・・」


神使「私コンビニで買ってきましょうか」

神様「お~ 犬ころ気が利くじゃん。 よろぴこ」

猫娘「私も一緒に行きます。ニャ」

神使「ありがとうございます。 では、行って参ります」


 スタスタ
 ギィー バタン


A子「ねぇ、その宮司会ってもしかして明後日のやつ?」

神様「そう」

B夫「場所と時間が分からないから手の打ちようがない」

A子「私、式次第持ってるよ?」ゴソゴソ

神様「え?」


A子「ほら」

B夫「どれどれ・・・ 間違いない。 宮司会の式次第。 時間場所、それにタイムスケジュールも書かれてる」

神様「どうしてA子ちゃんがこれを?」

A子「ん? 私、当日資料配りとかお茶入れの係だから」

B夫「ナイスA子ちん」


A子「あっ」

神様「どったの?」

A子「他の人に見せたり無くしたらクビって言われてた」

神様「私は人じゃないから大丈夫」

A子「そうだね、でもB夫さんは・・・」

B夫「オレ紳士だから」

A子「へ~ B夫さんって神使さんだったんだ。 んじゃ良いか」

神様「・・・・・・」


B夫「これは役に立つ。 場所は内宮迎賓館の特別会議室か」

神様「迎賓じゃないだろアイツら」


B夫「OK、明日中に会議室に中継用のカメラを設置する」

神様「でもテレビは無理なんだろ?」

B夫「ネット配信」

A子「ネット配信?」

B夫「ネコネコ生放送」

神様「ネコ生か!」


B夫「会場を事前に見たい」

神様「よし、これから一度見に行くか」

A子「この時間なら警備の人もいないしね」

神様「善は急げ、早速行ってみよう」



――― 十分後


 ギィー


神使「ただいま戻りました」

猫娘「ご飯買ってきました。ニャ」


神使「・・・・・・」

猫娘「誰もいないです。ニャ」

神使「あの三人が大人しく待っているわけ無いですよね・・・」ハァ



――翌日(宮司会前日)


B夫「はい、これ内宮迎賓館に入ることが出来るセキュリティーカード」

神使「ありがとうございます」

A子「結局昨日はセキュリティーカードがなくて入れなかったしね~」


B夫「迎賓館の正面玄関には警備がいて入れないから勝手口から入る。 このカードで入れる」

神様「さすがB夫」


神使「このカードはどこで入手したんです?」

B夫「さっき作った。 セキュリティーカード作っているのオレだし」

神使「・・・・・・」


B夫「問題は迎賓館に行くまでに、ここからだと一度内宮の社務所を通る必要があること」

神使「確かに・・・ バレますね」

A子「今日の夜から待機する?」

B夫「無理。 監視カメラに写り込む」


神様「あ~、トンネル使えば内宮本殿まで行ける」

神使「トンネル?」

神様「ここと内宮本殿、外宮本殿、神宮本殿は隠しトンネルで繋がってるんだ」

A子「すごい、そんなのあるんだ!」

神様「うん、バレずに行き来できるようになってるんだよ」

B夫「トンネル使って内宮本殿まで行けば見つからずに迎賓館まで行ける」


神様「よし、んじゃ作戦の最終確認だ」

神使「すいません、私これから神使会がありまして・・・」

神様「は?」

神様「私も先ほど聞いたのですが・・・ たぶん宮司会に関する事かと」」


神様「まぁ、明日のことが少しでも分かるかも知れないしな。 行ってこい」

神使「はい、猫娘さんも行きますよ?」

猫娘「私もですか?ニャ」

神使「猫娘さんも建前上は最高位の神使ですから」

猫娘「ニャ」


神使「では、行って参ります」

猫娘「行ってきます。ニャ」


 スタスタ
 ギィー バタン


A子「猫娘さんって可愛いよね~」

B夫「よく分かってらっしゃる」


A子「猫神様の神使さんなんでしょ?」

神様「あ~ あれは半分神で半分神使だから」

A子「猫娘さんて神なの?」

神様「うん、扱い上は神使だけど・・・ 猫神が後継者にするんだって」

A子「へぇ~ そうなんだ~」


神様「A子ちゃんも神になって私の後継者にならない?」

A子「ならな~い」

神様「・・・・・・そう」



――― 一時間後


 ギィー


神使「ただいま戻りました」

猫娘「ニャ」


神様「あ~ どうだった?」

神使「少しまずい事に・・・」

A子「まずい?」


神使「明日の宮司会に神使代表で“でかでか大神宮”のうさ夫さんが出席する事に・・・」

神様「うさ夫?」

神使「はい、次期大宮司寄りの改革派筆頭です」


神様「でかでか大神宮って言ったら猫神と、猫娘が前にいたところだな」

猫娘「はいニャ・・・」

神様「・・・なるほど、お前と猫神を追い出したやつか」

猫娘「・・・・・・」


神使「結構癖のある方でした。 申し訳ありません猫娘さん、嫌な思いをさせてしまって」

猫娘「大丈夫です・・・ ニャ」


神使「それと、宮司会の代表神として猫神様が決定したそうです」

神様「猫神が!?」

神使「はい」


神様「まずいな・・・」

猫娘「猫神様じゃダメなんですか? ニャ」

神様「宮司会で決議された内容は、代表神が可決し神勅を出す」

神使「今回は猫神様が代表神という事ですよね」

A子「それじゃぁ、猫神様が嫌だって言えば終わりだね」

猫娘「そうニャ。 猫神様がそんな物可決するわけないニャ」


神様「いや、代表神には否決する権限はないんだよ」

神使「えっ?」

神様「それが神を支える宮司会の願いである以上、神は拒む事なんか出来ない」


神使「そんな・・・ でも十年前の時は神様が否決したのでは?」

神様「あの時は代表神使が意見を保留にしたから審査神の私へ可否の権限が与えられた」

神使「では大改正の法案はこのままだと可決に・・・」


B夫「いいね、それ」

神使「どう言うことですか?」

B夫「宮司会の壊しがいがある」

神様「B夫もそう思う?」

B夫「もち」

神様「うひゃひゃ、燃えたぎって参りました!」メラメラ

神使「・・・・・・」


A子「あれ? もう一人の神ちゃんは?」

神使「そう言えば、ちょくちょく居なくなっていますよね」


神様「あ~ 今は神宮本殿にいる。 お願い事リストを見に行ってるんだよ」

A子「へぇ、ちゃんと見てるんだ」

神様「当たり前さね、直接お願い事を聞く事は出来ないけどお願い事リストは用意されてるし」


神使「神様本当に人が好きなんですね・・・」

神様「・・・・・・」


 ゲシッ ゲシッ ゲシッ


神使「痛い! 痛いです・・・」



――― 宮司会当日


B夫「神ちゃん、ちゃんと台詞覚えてきた?」

神様「もち。 宮司会を混沌に陥れてやるよ。 ひっひっひっ」


神使「私、結局何も聞かされていないんですが・・・」

猫娘「私も作戦を聞いてないニャ」

神様「あ? 大丈夫だよ、このかわゆい神ちゃんの言うとおりに付いてくれば問題ない」

神使「それが一番不安なのですが・・・」


A子「じゃぁ、私は準備があるから先に行くね?」

神様「うん、会場で会おうね~」


B夫「猫さんは、オレと一緒に会議室隣の準備室ね」

猫娘「ニャ」

神様「よし、それじゃぁ行くぞ!」



――― 宮司会会場


次期大宮司「参拝者の減少による収入減の対策は一刻の猶予も残されていない」

出席者「その通り、神宮ですら厳しい財政。 地方の神社など崩壊寸前です」

次期宮司「今回提案する神法大改正は、その問題を一気に解決できる」


 ザワザワ


次期宮司「十年前の神法改正で廃案となった神の統制を神宮が直接行う条項を復活、神職・神使・神を一元管理する」

出席者「人が神を管理すると・・・?」

次期宮司「まさか。 神宮主神を最高位に置く事に変わりは無い」

出席者「では、今のままで問題ないのでは?」

次期宮司「今の神宮主神制度は過去に作られた神話が元になっている」


 ザワザワ


司会「ご静粛に」


出席者「まさか、天照大神様の事を言っているのですか?」

次期宮司「この中で最高神を見た者はいるか?」

出席者「最高神様は誰ともお会いにならないのでは」

次期宮司「そんなものいないんだよ。 神が人を操るために作った創作だ」

猫神「!?」


 ザワザワ  ザワザワ


司会「ご静粛に!」

次期宮司「私達は長きにわたり、居もしない神宮主神を奉ってきたのだ」

猫神「ちょっと待って下さい!」

次期宮司「猫神様? 今は宮司会の最中です。 神の発言は宮司会規律違反でございますよ?」

猫神「でも!」


次期宮司「では猫神様? 天照大神様は神宮に存在しますか?」

猫神「・・・・・・」


次期宮司「答えられないと?」

出席者「そんな・・・・・・」


 ザワザワ  ザワザワ


次期宮司「最高職となる神宮主神・内宮神・外宮神は今後、人・神使・神から選出しその職へ就くものとする」


 ザワザワ  ザワザワ


司会「ご静粛に!」


次期宮司「では、今提案した―――」

A子「お茶です」コトッ

次期宮司「・・・・・・あぁ。 では、今提案した神法大改正について皆の決を採る。 賛成の者は挙手を」


 スッ スッ スッ


次期宮司「神宮神職は賛成多数で可―――」

A子「赤福です」コトッ

次期宮司「・・・・・・君、下がっていろ」

A子「はい」スタスタ


次期宮司「あー、神宮神職は賛成多数で可決とする」

神使代表「神使会も賛―――」

A子「うわ~!」ズコッ

司会「・・・大丈夫かい? A子君」

A子「すんませ~ん」スタスタ


代表神使「・・・・・・神使会も賛成いたします」

次期宮司「うむ。 大宮司は入院中のため、代理として私が宮司会を代表し神法大改正を可決とする」

司会「では、本案を代表神・猫神様から神勅としてお出し頂きたく思います」

猫神「・・・・・・」


A子「猫神様、赤福でございます」コトッ

猫神「・・・・・・?」

司会「A子君・・・ 本当、邪魔だから」シッ シッ

A子「すんませ~ん」テクテク

司会「猫神様、神勅を」



 ちょっと待ったー!
 バンッ!


猫神「神ちゃん・・・?」

次期宮司「・・・・・・」チッ


神様「かわゆい神ちゃん登場! ドドン!」

 パッ パッ


神使「(なんでスポットライトがあるんですか・・・)」




――― 会議室隣・準備室


B夫「OK、決まった。 最高に古くてダサい登場、萌える」

猫娘「カメラで神ちゃんをアップで写すニャ」

B夫「神ちゃん台本通りにちゃんと出来るかな?」



――― 宮司会会場


猫神「神ちゃん、どうしてここに~?」

神様「よく耐えたな。 ご苦労だった、猫神」

猫神「・・・・・・」

神様「安心しろ、この改正案は絶対に潰す。 宮司会をグチャグチャにしてやる」ボソッ

猫神「神ちゃん・・・」


神様「よーし、お前達! このかわゆい神ちゃんが、お前らに一言もの申―――」

神使「皆さんにお聞きしたい事がございます」

神様「―― あ~ん?」


神使「皆さんは神の存在意義をどのようにお考えになられているんですか?」

次期宮司「何だ急に」

神様「そうだぞ、台本では私がこの後“ドーン! ドーン!”をやって会場を―――」

神使「懲罰は受けます」

神様「―――え? 懲罰? 私は受けないよ?」


神使「是非ご意見をお聞かせ頂けますでしょうか」

出席者「人の願いを聞き、それを叶えて下さるのが神の存在意義では?」

神使「では、神の願いは?」

出席者「?」

神使「あなた達は・・・ いえ私を含めて神々の存在を勘違していたようです」

次期宮司「何が言いたいんだ?」


神使「A子ちゃん」

A子「私?」

神使「A子ちゃんは神様とはどういうご関係ですか?」

A子「神ちゃん? う~ん・・・ 神ちゃんは友達」


神様「そう! 私とA子ちゃんは深い精神のところで繋がっ―――」

神使「先日、神様が昔は神も神使も人も区別はなかったと仰っておりました」

神様「――― あん?(言ったっけ?)」


出席者「何を世迷い言を。 神と人を同列に扱うなどそんなバチあた―――」

A子「赤福です」コトッ

出席者「――― あぁ。 ・・・冷たいお茶も頼む」

A子「ありません」スタスタ

出席者「・・・・・・」


神使「神々の皆さまは人の願いを聞き、それを叶えて下さいます」

次期宮司「当然だ」


神使「人はそれに対して何をするのでしょうか?」

出席者「神の住む社を維持し信仰を捧げることですかね」

神使「神様がそれをお望みに?」

出席者「信仰無くして神は存在できませんよ?」


神使「あなた達に信仰を感じないのですが」

出席者「なっ、何を無礼な! 最高位の神使だからって調子に乗りすぎですぞ」

神使「お気に召さないようでしたら、私の階位を剥奪して頂いて構いません」

出席者「言ったな! 忘れるんじゃないぞ!」


神使代表「ふっ」ニヤッ

神様「あっ、うさぎ野郎! お前、今笑ったな? うちの極悪邪道犬ころを笑っ―――」

神使「どうぞ、ご自由に。 神使の階位は皆さんに決定権がありますので、私は今日から最低位で結構です」

神様「―― え!? いいの? 給料下がるよ? 私を養えるの?」


神使「神様、少し黙っていて下さい」

神様「はい・・・」


神使「私、どうして神様が神力を無くしてまで二人に別れて外に出てきたのかがようやく分かりました」

神様「!?」

神使「きっと、友達が欲しかったんです。 人と接したかったんです。 ずっと一人で古い社に閉じこもって寂しかったんだと思うんです」

神様「・・・・・・」

神使「神様はとても優しいから・・・ 何千年も自分を犠牲にして皆さんのお願いを叶えて守ってきてくれたんです」


次期宮司「なにが言いたいんだ?」

神使「神様のお願いは私達が叶えてあげないといけないんです」

A子「人の願いは神が叶える、神の願いは人が叶える! だね」


神使「今回の神法大改正は逆の事をしようとしています」

次期宮司「何を訳の分からない事を、とっとと出て行け!」


神使「どうして今まで気付かなかったのか私自身腹立たしく思います。 神使失格ですね」


神使「神様? お願い事はございますか?」

神様「神使・・・ お前・・・」


神使「今、私の手の届く範囲で手を差し伸べなければならない方がいます」

神使「だから私はその方に全力で手を差し伸べたいと思います。 神力がない分どんな手を使ってでも」

神使「神様? 神様の願いを私に叶えさせて下さい」

神様「・・・・・・」


猫神「神ちゃん? 神ちゃんだってお願い事を聞いてもらう権利くらいあるんだよ~?」

神様「私は・・・ 私は・・・」


神様「ただ・・・ 人と神使と一緒に・・・ グスッ 遊んで・・・ 喋って・・・ 一緒にいたいよー!」ウエーン

神様「うえ~ん うえ~ん」


神使「神様・・・」ダキッ

神様「うえ~~ん うえ~~ん」ゲシッ ゲシッ

神使「!?(おかしい・・・ なぜこんな場面で神様は私を蹴っているんです?)」


神様「うえ~ん うえ~ん」ゲシッ ゲシッ

神使「あの・・・ 神様?」ボソッ

神様「台本とかなり違うが、まぁ良しとしよう」ボソッ

神使「!?(まさか、神様・・・ 演技!?)」


神様「うえ~ん うえ~ん」ゲシッ ゲシッ

次期宮司「何だ、この茶番は! こいつらをつまみ出せ!」



 トントン


巫女「会議中に失礼いたします」ペコッ

次期宮司「大事な会議中だ! 入るなと言っただろうが!」

巫女「それが・・・ 緊急でして・・・」オロオロ

次期宮司「緊急?」

巫女「この会議内容がライブ配信されているようで・・・」

次期宮司「ライブ配信!?」

巫女「その・・・ 世界中にインターネットを通して生放送されています」

次期宮司「!!」

巫女「電話がパンクする量の抗議と、各方面から呼び出しが・・・」


次期宮司「な・・・ 何を言って・・・ お前達か! お前達が仕組んだのか!!」

神様「うえ~ん うえ~ん」

神使「・・・・・・(どっちが悪者だか分からなくなってしまいました・・・)」


猫神「フフッ、さすが神ちゃ~ん」

神様「うえ~ん うえ~ん」ニヤッ



――― 会議室隣・準備室


 ドンドン
 こら! すぐココを開けろ!
 自分でやっていることが分かっているのか!!
 ドンドン


B夫「神が存在していたなんてニュース、これ大スクープ。 ネコ生のサーバー持つか?」

猫娘「この数字が見ている人の数ですか? ニャ」

B夫「そうそう、すげー数。 あっ、猫さん、神ちゃんの顔あまり写さないで。 ちょっとカメラ引きで」

猫娘「ニャ」


B夫「神ちゃん右手に持ってる目薬何とかしてくれないかな。 カメラワーク面倒い」

猫娘「さっきから、神使先生を蹴り続けてる。ニャ」

B夫「次期大宮司ゆでだこで怒ってるよ。 これはさすがに俺クビだな」

猫娘「大丈夫ニャ、ねこねこ島の神社で神職兼、喫茶店のウエイターとして席を空けて置くニャ」

B夫「いいね、それ。 田舎暮らし悪くない。 ホームページ作って通販やろう」


司会「次期大宮司様・・・ 宮司会は中止にした方がよろしいかと・・・」オロオロ


A子「赤福です」コトッ

次期宮司「もういらん! クソッ!」



―― 数日後・神宮


TV:司会者「先日神宮から配信されたと思われるネット配信はドラマ撮影であるとのことですが」

TV:コメンテーター「最高神役の女の子が目薬持ってましたからね。 リハか何かだったんでしょう」


B夫「やっぱ目薬画面に入り込んでたか」

神使「今回一番損をしたのはB夫さんですね・・・」

A子「まさかクビになるなんて」

神様「すいませんでした!」ドゲザ

B夫「もう辞めようと思ってた所だし。 覚悟の上。 最後に一波乱起こせたのはグー」


神様「なんなら神にでもなる? すぐ出来るし、空いてる神社とか紹介するけど」

B夫「やだ」

神様「痛くないって、すぐ終わるし。 ねぇ~ どう?」


神使「でも、B夫さん今後どうされるんですか?」

猫娘「ねこねこ島で一緒に働くんだニャ」

神様「猫神の所行くの?」

B夫「そう、ネット通販担当兼雑用」

神様「私も牡蠣島行きたい!」

神使「ねこねこ島です」


猫娘「B夫博士、よろしくニャ」

B夫「お任せ。 オレの知識を全て使ってねこねこ島をサイバー島にする」

神使「もう一度よく考えた方がよろしいのでは・・・」


A子「でも、これで問題解決だね!」

神使「次期大宮司も地方のお社の宮司として転勤になったようですし」

A子「よくクビにならなかったね~」

神使「神様が取り繕ったと聞いておりますが?」

神様「・・・・・・どこ情報だよ、それ」

B夫「オレ情報。 間違いは絶対に無い」

神様「・・・・・・」ギロッ


A子「神ちゃん優しいな~」

神様「神は常に人のためにある。 どんなヤツでも人を見放すような者は神としては終わりだ」


A子「神ちゃん格好いいね~ 尊敬するよ」

神様「そう? じゃぁその尊敬するかわゆい神ちゃんと同じ神にA子ちゃんもなってみない?」

A子「ならな~い」

神様「・・・・・・」


神使「さて、神様そろそろ行きましょうか」ヨイショ

神様「は? どこへ?」

神使「次の勤務先です」

神様「何言っちゃってんの? 問題は全て解決したでしょ?」


神使「神法大改正の件は解決しましたが、神様の出向は解かれておりませんので」

神様「はぁ!? 何でだよ!」

神使「三年にも及ぶお守りの値引き販売と、数々の問題行動は帳消しになっておりません」

神様「・・・・・・」


A子「神ちゃんまた出かけるんだ」

猫娘「次はどんな辺境の地ですか?ニャ」

神様「・・・ちなみに何処?」

神使「着いてからのお楽しみです。 あっ、もちろん移動は鈍行電車ですから」

神様「嫌だ! ここに残る!」

A子「大丈夫だよ、内宮神ちゃんも居るし神ちゃんは地方に行ってきな」

内宮神「A子ちゃん? かわゆい内宮神ちゃんもかわゆい神ちゃんも同じだから・・・」


神使「ワガママ言っていないで行きますよ?!」ガシッ

神様「嫌だ! 放~せ~よ~!!」ズルズル



 放せよ~
 ダダこねないで下さい、神様


昭宮神「神様元気ですね」

猫神「あっ、昭宮神君~ 神宮に来てたの~?」

昭宮神「マイワイフにもしもの事があったら困りますから」

猫神「ふふっ、今回は大丈夫だったみたいだね~」


昭宮神「神様があんなに元気になってくれたなんて・・・ 私達が神様を元気づけていた二百年間って何だったんでしょう・・・」

猫神「本当~ あの子達に任せておけば大丈夫そうだね」

昭宮神「不思議ですね」

猫神「私達もそろそろ引退だね~ 次はあの子達の時代」

昭宮神「楽しい時代になりそうですね」

猫神「神ちゃんが楽しそう時は良い時代になるからね~」



 ズルズル


神様「あっ! 猫神じゃん!! お願い助けて~!!」ズルズル

猫神「頑張ってお勤め果たしてきてね~」

神様「薄情者! 隣のストーカーでもいいや、助けてくれー」ズルズル

昭宮神「お達者で!」

神様「てめぇ! 覚えてろよ! 次会ったら全力で蹴り飛ばしてやるからなー!!」ズルズル


神使「ほら、神様ダダこねてないで行きますよ」

神様「助けて~!!!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#6 ―END



――― とある田舎町


役場職員「何故こんな田舎に・・・」

村長「昨日、急に連絡があって」

役場職員「まさかバレたんじゃ・・・」

村長「バレるわけ無いだろ。 最近変なことも続いてるし・・・ それを調べるんじゃないか?」


 スタスタ


神使「あの~、すいませんが・・・」

役場職員「はい、どうされました?」

神使「ここって、こわこわ神社で間違いないでしょうか?」

村長「そうですが・・・ どちら様で?」


神使「申し遅れました。 私、神宮から参りました神使と申します」

役場職員「神宮・・・ こちらのお嬢ちゃんは?」



神様「神様だ!」

神使「神力ゼロですが・・・」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」END


ダラダラと長く書いてしまいました
またどこかで!

乙!
大好きでした。神ちゃん養ってあげるからうちにおいで。


神様「牡蠣ある?」

神使「>>826さん、もう一度考え直した方が良いと思います」


スレ少しあまっているし……
短めの物を、と思ったのでした。

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 テクテク

神様「暑い~!」パタパタ

神使「神様? Tシャツをパタパタさせないで下さい・・・ お腹見えてますよ?」

神様「暑いんだよ!」

神使「もう少し女神らしく御淑やかにされてはいかがですか?」

神様「うるせー 極悪邪道腐れ犬ころ変態神使」ゲシッ

神使「私に変なあだ名を付け足していかないで下さい。普通に“狛犬の神使”と呼んで頂きたいです」

神様「じゃぁ私のことも“かわゆい神ちゃん”って呼べよ」

神使「・・・・・・」

神様「呼べよ!!」


~あらすじ~

神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「神宮が誇る最悪の問題児、減給左遷を総なめにするダメ神です」


神様「悪の手先の陰謀にも負けず、今日も私を待つ者を救うべく旅を続ける」

神使(訳)「数々の問題行動の発覚により神宮から無期出向となった神様は全国の廃神社の管理を命じられたのでした」


神様「そう! 私は神の中でも最も優れた力を持つ最強の神様だ!」

神使(訳)「神力ゼロです・・・」


【#7】

 テクテク

神様「で? どこに行くんだよ」

神使「こわこわ神社という廃神社が次の勤務先です」

神様「」ピクッ

神使「どうされました?」

神様「よし、神宮に帰るか」

神使「神様?」

神様「お前さぁ、バカなの?」

神使「いきなりなんですか・・・」


神様「こわこわ神社って幽霊が出るって噂の場所だろ?」

神使「幽霊?」

神様「まとめブログの危険マップに必ず載ってる」

神使「そういうのはあんまり本気にしない方が良いですよ?」

神様「い~や、こわこわ神社に向かって手をかざしてみろ」パッ

神使「?」

神様「邪悪な気を感じる。 ビビビッ」

神使「こわこわ神社は反対側です」

神様「ビッ・・・」


神様「ちょっと待てよ。 なんで私たちは反対側に向かって歩いてんだよ!」

神使「今日はもう遅いので宿で一泊して、神社の方は明日伺います」

神様「そうなの? まだ暗くないのに珍しいな。 いつもなら宿代ケチるくせに」

神使「・・・・・・。 さっ、早く宿に行きましょう」

神様「ん? あぁ」

 テクテク


――― こわこわ旅館

 ガラガラ

神使「ごめんくださ~い」

若旦那「はい~」スタスタ


神使「本日予約してます神使と申します」

若旦那「お待ちしてました。 どうぞお入りください」

神使「失礼いたします」


神様「・・・・・・」キョロキョロ

神使「神様、どうされました?」

神様「ん? いや、何でも無い」スタスタ


 ガラガラ

女将「こちらがお部屋になります」

神使「ありがとうございます」

女将「お茶ご用意しますね」

神様「コーラ飲みたいなぁ~」

女将「ございますよ。 1本400円ですがよろしいですか?」

神様「・・・・・・」

神使「お飲みになるならご自分のお財布からお支払いくださいね?」

神様「やっぱお茶でいいです・・・」


女将「どちらからいらっしゃったんですか?」

神使「神宮から参りました」

女将「」ピクッ


神使「こわこわ神社の方に用がございまして」

女将「こわこわ神社・・・」

神様「・・・・・・」ジィー

女将「あっ、そうでしたか」


神様「やっぱ出るの?」

女将「出るというのは?」

神様「幽霊」


神使「まだ言ってるんですか?」

神様「お前幽霊怖くないの?」

神使「怖いも何も、いない物を怖がっても仕方が無いと思うのですが・・・」

神様「いーや、幽霊は絶対いる!」

女将「・・・・・・」

神使「女将さん?」

女将「え? 幽霊ですか? どうでしょうね~」

神様「・・・・・・」

女将「では、何かございましたら内線ください」スタスタ

 ガラガラ バタンッ


神使「神様、本当に幽霊信じているんですか?」

神様「神使みたいな訳の分からないのがいるんだから幽霊だっていても不思議じゃないだろ」

神使「一緒にしないで頂きたいのですが・・・ どちらかというと神様の方が不思議だと思います」


神様「それより、あの女将さん」

神使「どうかされましたか?」

神様「お前さぁ~ もう少し人間観察しろよ」

神使「?」

神様「ハァ~ まぁ良いわ。 疲れたからちょっと寝る」ポイポイ

神使「また下着姿で・・・ 寝るならパジャマ着てください」

神様「暑いからこれで良いの!」

神使「そんなこと言って、冬も下着姿じゃないですか・・・」

神様「うるせー おやちゅみ~」モソモソ


── 1時間後


神使「神様? 起きて下さい」ユサユサ

神様「ん~ 何だよ~ もう少し寝かせてくれよ」モソモソ

神使「外から何か変な音が聞こえるんですが・・・」

神様「音?」ムニャムニャ

神使「はい、悲鳴というか笑い声というか・・・」

神様「は?」ヨイショ


 キェッ! キェッ! キェッ!


神使「聞こえました?」

神様「窓開けてくれ」

神使「それが窓が開かないんです」

神様「んっ! んっ! 本当だ開かない」ガチャガチャ


 ギャハッ! ギャハッ!


神様「少し遠いな。 鳥とか動物の鳴き声じゃねぇの?」

神使「そうでしょうか・・・」


神様「あれ? 森の方がなんか光ってるな」

神使「本当ですね。 なんでしょうか、あれ」

神様「ここで私のかわゆいスマホの出番だ!」ゴソゴソ

神使「スマホですか?」

神様「グーグーマップで確認すればあそこに何があるか分かる」ポチポチ

神使「どうです?」

神様「ん~ あの位置は・・・・・・」

神使「神様?」

神様「こわこわ神社だ」

神使「・・・・・・」


 バチン!


神様「なんだ!?」

神使「停電!?」

神様「取りあえず部屋を出よう」


 スタスタ


神使「あれ?」ガチャガチャ

神様「何やってんだよ、早くしろよ」

神使「ドアが開きません」

神様「あん? 何でだよ」ガチャガチャ


 ギャー--!!!!


神様「ひやっー! 何この叫び声!!」


 バタン


神様「え? ちょと神使君??」

神使「・・・・・・」

神様「うそ、霊的な何かにやられた感じ? おい大丈夫か?」ユサユサ


 ギャー--!!!!


神様「ひやっー! なんだよこの声~! めっちゃ怖えー!」

神様「取りあえず、こいつだけは・・・ お守りまだあったよな・・・ 神力残ってるかな?」ゴソゴソ

神様「よし! 封じし我が神力を解放す! 我が神使を不可思事象から解き放て!」


 ポワポワ


神様「よし、もうちょっと神力残ってるみたいだな」

神様「事象の元凶を遠ざけ我に平穏を与えよ!」


 ポワポワ


 痛っ!
 タッ タッ タッ


神様「ん?」

神様「今、廊下から聞こえた声って・・・」


 パッ


神様「あっ、電気ついた」

神様「おい、犬ころ大丈夫か?」ユサユサ

神様「こいつなんで意識戻さないんだ? 私の神力鈍ってんのか?」

神様「まさか・・・ 怖くて意識失っただけ・・・ とか?」


── 30分後

神様「さて、我が神使狛犬よ」

神使「はい」セイザ

神様「神使奉務心得・第三章を述べよ」

神使「神使の袴の色は浅葱色とする」

神様「・・・・・・ 第四章だった」

神使「神使は主神である神に仕える際は常に主神の身を守ることを責務とする」

神様「それ!」

神使「ちなみに第二章です」

神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」

神様「神使君さぁ、もしかして幽霊怖い?」

神使「」ピクッ

神様「怖くて意識失っちゃった系?」ニヤッ

神使「・・・・・・」


神様「なぁ神使さんよ~ ここは相談なんだけどバックレて帰らねぇ?」ズイ

神使「しかし・・・ 神宮からこわこわ神社を調べるよう命令を受けています」

神様「大丈夫だよ、バレねぇよ」ズイ ズイ

神使「ダメです。 神宮からの命令は絶対です」

神様「主神の私と神宮の命令どっちが重いんだよ!」

神使「神宮です」キッパリ

神様「即答っすか!」


神使「しかし、先ほどはお見苦しいところを失礼いたしました」

神様「まぁそれは別にいいんだけどさぁ~ なんか変だよな~」

神使「変?」

神様「さっきの現象は霊的・・・ いや神力由来の類いじゃない」

神使「え?」


神様「人が意図的に起こした可能性が高い」

神使「人が?」

神様「たぶん・・・ この旅館の女将とか」

神使「女将さんが? なぜ・・・」

神様「こわこわ神社から聞こえた変な声とも関係ありそうだなぁ~ 面倒くさそぉ~」ハァ


神使「こわこわ神社に行ってみますか?」

神様「いや、今日はもう暗いしやめておこう」

神使「はい・・・ しかし、神様ってご自身の神力使えないんじゃないんですか?」

神様「あ? 今は使えないけど、昔作ったお守りに当時の神力が入ってるから解放すればちょっと使える」

神使「そうだったんですか」

神様「でも一つのお守りにちょっとしか入っていないから使い捨てだな」

神使「すいません、私なんかのために一つ無駄にしてしまい・・・」

神様「まだ何個かある、気にすんな。 それと!」

神使「?」


神様「お前を守るのは私の務めでもある。 変な気を遣うな」

神使「神様・・・」


神様「でも、どうしてもお礼をしたいのならコーラ買ってくれ」

神使「・・・・・・冷蔵庫に入っているそうですから取っていいですよ?」

神様「やった~♪」


 パカッ


神様「ぇ・・・」

神使「どうされました?」

神様「輸入コーラだ・・・ しかも250ml缶・・・ これが400円なの??」

神使「それ、スーパーで2本50円で売ってましたね・・・」

神様「うぅ・・・」シュパッ

神使「あっ、でも飲むんですね・・・」

神様「グビッ・・・ 私の求めるコーラとなんか違う・・・」シュン


── 翌日

 チュンチュン


神使「神様? 朝ですよ?」ユサユサ

神様「ん~ あと6時間・・・」

神使「またそんなことを言って・・・ ほら、起きて下さい」ユサユサ

神様「も~ 分かったよ」ムニャムニャ


神使「お着物用意しておきましたので早く着替えちゃって下さい」

神様「Tシャツと短パンが良い」

神使「ダメです。 正装でお願いします」

神様「正装ったって普通の巫女装束じゃん・・・」

神使「神様は階位的にこれしか支給されておりませんのでこれが正装です」


神様「私もさすがに神用の装束揃えてもらおうかなぁ~」

神使「安い物でも20万はしますよ? 買えるんですか?」

神様「え? 神宮が買ってくれるんじゃないの?」

神使「財政難らしくて今年から神と神使の服は全部自腹です」

神様「マジかよ!」


神使「神様の襦袢とか足袋とかも全部自費購入なんですから大切にして下さいね?」

神様「神に厳しい時代だな~」


――― フロント

神使「すいませ~ん」


 シーン


神様「誰もいないな」

神使「連泊の予約してますし、このまま外出しちゃいますか」

神様「え~ ここで連泊するの~?」

神使「この村には旅館がここしかないようでして・・・」

神様「ふ~ん、んじゃ行くか」

神使「あっ、こわこわ神社に行く前に村役場へ行きますので」

神様「役場?」

神使「はい、神宮から一度役場に行けと言われておりまして」

神様「何しに行くんだよ」

神使「さぁ、ただ最初に村長へ挨拶をしろとだけ・・・」

神様「村長? なんか引っかかるなぁ」


――村役場

神使「すいません、神宮から参りました神使と申しますが」

受付「神宮? ・・・なんでしょうか」

神使「村長さんはいらっしゃいますでしょうか」

受付「ご用件は?」

神使「神宮より村長さんにご挨拶をするように言われておりまして」

受付「少々お待ち下さい、確認いたします」


神様「・・・・・・」ジィー

神使「神様、何を見ているんですか?」

神様「あの写真」

神使「村長さんみたいですね」


神様「あれ、前に神宮にいた神主じゃないか?」

神使「え?」

神様「ほら、二年くらい前まで外宮にいた民俗学研究担当の」

神使「そう言われれば・・・」


受付「お待たせいたしました」

神使「あっ、はい」

受付「村長はこわこわ神社の方に行っているようです」

神使「こわこわ神社に?」

受付「はい」

神使「神様、どういたしましょうか」


神様「ねぇ、今の村長さんっていつから村長やってんの?」

受付「一年前からです」

神様「この村の人?」

受付「いえ、たしか伊勢の方だったと」

神様「ふ~ん」

神使「やはり外宮の神職でしょうか」

神様「・・・取りあえずこわこわ神社に行こう」

神使「分かりました」



 テクテク


神様「あちぃ~ やっぱTシャツ短パンにすれば良かった・・・」

神使「そんな格好で公務をするのは神の品位に関わりますので」

神様「巫女装束あっちーんだよ! スケスケした巫女服買ってくれよ!」

神使「スケスケの服なんてもっとダメです。 それに、神様はそういうの似合いませんよ?」

神様「うっせーよ犬ころ! 私だって女神なんだからスケスケした服で男どもを悩殺することくらいできるわ!」

神使「それは、神の仕事では無いと思うのですが・・・」


神様「ったく。それにしても暑いな~ 汗だくだくだよ」フキフキ

神使「神様・・・ 袖で汗をぬぐわないで下さい」

神様「あ? じゃぁどうすんだよ」フキフキ


神使「ハンカチ持ってきてないんですか?」

神様「お前の服が私のハンカチだ~」ガシッ

神使「ちょ! 離れて下さい!」


神様「ふわ~ 私の汗がお前の服に吸われる~」スリスリ

神使「いい加減にして下さい! はい、ハンカチです」スッ

神様「ん」フキフキ

神使「もぉ~ 男性に抱きつくなんて、はしたないですよ?」

神様「いい年して照れてんじゃねーよ」フキフキ

神使「いい年してもう少し恥じらいを持って下さい」ハァ


神様「ん? お前のハンカチ良いにおいするな」クンクン

神使「香り袋と一緒に置いておいたので、その香りかと」


神様「お前って結構オシャレさんなのな」

神使「嗜みです。 神様も少し気を遣われた方がよろしいですよ?」


神様「わたし汗臭い?」クンクン

神使「そのようなことはございませんが・・・ やはり神としての品格を・・・」

神様「私に品格を求めても仕方ないだろ」

神使「・・・・・・」


神様「それよりまだ着かないのか? これ以上歩いたら暑くて溶けちゃう」

神使「あっ、あれが“こわこわ神社”じゃないでしょうか」


 スタスタ


神様「お~ 以外とでかいな。 それに廃神社と思えないほど綺麗だけど・・・ あれ? ここって・・・」

神使「神様このお社知っているんですか?」

神様「えっ? いや・・・ 気のせいかな」

神使「?」


神様「それより、あそこに誰かいるぞ」

神使「村長さんでしょうか・・・」

神様「やっぱあれ外宮にいた神主だよ」

神使「そうですね、とても似ています」


―― こわこわ神社


神使「あの~、すいませんが・・・」

役場職員「はい、どうされました?」

神使「ここって、こわこわ神社で間違いないでしょうか?」

村長「そうですが・・・ どちら様で?」

神使「申し遅れました。 私、神宮から参りました神使と申します」

役場職員「神宮・・・ こちらのお嬢ちゃんは?」


神様「神様だ!」

神使「神力ゼロですが・・・」


村長「神様!?」ハッ

神様「おや? 私のことを知ってるの?」

村長「・・・・・・」


神様「やっぱり外宮にいた神主か」

役場職員「村長・・・」

村長「え? あぁ・・・ すまないが席を外してもらえないか?」

役場職員「分かりました。先に役場に戻ってます」


神様「神主やめて村長になったのか?」

村長「ご無沙汰しております、神様」フカブカ


神使「私、神様の使いで狛犬の神使と申します」

村長「神宮で何度かお見かけいたしました」フカブカ


神様「訳ありっぽいな、理由を聞いても?」

村長「はい・・・ 社務所でもよろしいでしょうか」

神様「オッケ~」


―― 社務所


村長「わざわざ神様が出向くなど、そんなに深刻な状況でしょうか」

神使「神宮からこわこわ神社を調べるように命を受けまして」

村長「・・・・・・」


神様「私は神力が使えないから正確には分からないけど、この近辺に神が居るな」

村長「!?」

神使「え? 神がいるんですか!?」

神様「あぁ、けど何か変だ」

神使「変と言いますと?」

神様「私が神にした覚えがない、というより別の方法で神・・・ いや神に近い存在になった感じだな」

神使「そんなことあるんですか?」

神様「話を聞こうか、村長」

村長「・・・はい」


村長「私は二年ほど前から外宮の宮司様の命を受けこの村を調査しております」

神様「外宮の宮司?」

神使「先日神様が失脚させた次期大宮司さまですね」

神様「人聞き悪いなお前」ゲシッ


村長「先ほど神様が仰ったとおり、この村に特殊な方法で神となった者がいるということで調査のために来たのです」

神使「特殊な方法?」

村長「はい、外宮宮司からはその方法を調べるよう命を受けました」

神様「なるほどね。 私を通さなくても神になる方法があればあいつが知りたがるのも無理はないか」

神使「そんなこと可能なのですか?」

村長「それが・・・ 調べるどころか、その神にすら会えない状況でして」

神様「会えない?」


神使「神職が神に会えないとは珍しいですね・・・」

村長「どうも存在を知る一部の村民が極秘にしているらしく」

神使「極秘ですか」


村長「そこで村の長としてこの村に入れば調べることができるのではと、外宮宮司が・・・ その・・・ 工作をして、一年前に私を村長に」

神様「アイツ・・・ そういうところは徹底してるよな」

神使「でもまだその存在を確認できないと?」

村長「はい」


神使「まさか、昨日の旅館での出来事と関係あるのでしょうか」

村長「何か不審なことでも?」

神様「女将さんに心霊現象もどきを味合わせられた」

村長「・・・そうでしたか」


神使「何かご存じで?」

村長「旅館の女将さんは、神もどきの事情を知っていると私は睨んでいます」

神使「女将さんがなぜそんな細工をする必要が・・・」

神様「神もどきの存在を知られたくないんだろ」

村長「えぇ。 噂を聞きつけこの地に入った者を追い返す方法の一つかと思います」

神使「なるほど」


村長「それと、昨日の夜にこの神社で極秘の祭儀が一部の村民で行われたと情報を聞きました」

神使「それで村長さんはこちらに来られたのですか?」

村長「はい、何か手がかりになる物でもあればと思いまして」


神使「神様、どう思われます?」

神様「う~ん、その神もどきは間違いなくいる。 今もかなり近くに居る気配は感じる」

村長「!?」


神使「失礼ながら、神力が強い神の方に来ていただいた方がよろしい気がするのですが・・・」

神様「あまり事を大きくしない方が良い気がする」

神使「どういうことですか?」

神様「・・・・・・」

神使「神様?」


神様「さて、ちょっと境内を案内してもらえるか?」

村長「承知いたしました」


―― 本殿


 ギィー


村長「こちらが本殿です」

神使「廃神社とは思えないくらい綺麗ですね」

村長「暇を見つけて私が掃除を・・・ これでも神職ですので」

神使「ご苦労様です」


神様「ご神体が無いみたいだけど?」キョロキョロ

村長「ご神体は私が来てすぐに消失してしまいまして」

神様「・・・・・・」


村長「これは無くなる前に撮った写真ですが」ピラッ

神使「拝見いたします」

神様「どれどれ」ヒョコ

神使「女神さまの像でしょうか・・・」


神様「うげっ・・・・・・」

神使「神様ご存じですか?」


神様「私だ」

神使「はい?」


神様「私! かわゆい神ちゃん像」

村長・神使「・・・・・・」


神使「なるほど、今回の事件の謎がすべて解けました」

村長「え?」


神使「神様って、ご神体でも問題児なんですね」

神様「うわっ、何それ! お前、私が悪いって言うのか!?」

神使「神様? 今回の件、何かお心当たりはございませんか?」

神様「ちょ、待てよ! なに、そのまた神様ですか? みたいな目!」


神使「しかし、神様のご神体なんて・・・ 初めて見ました」

神様「ほほほっ、私を奉るなんて良い心がけじゃないか」

村長「このご神体ですが、元は別の場所にあった物かと思われます」

神使「別の場所?」

村長「はい、150年ほど前まで“わらわら神社”で祭られていたご神体と似ています」

神様「」ピクッ


神使「わらわら神社?」

村長「えぇ、芸の神様をお祭りしている神社です」

神使「そ、そうだな! 私は芸達者だからな」


村長「その・・・ お笑いの神様として有名です」

神様「・・・・・・」

神使「ぷっ」

神様「てめぇ犬ころ! 今笑ったな!」

神使「さすが神様、お似合いです」

神様「神罰」ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ!

神使「痛い! 神様、本気蹴りはやめて下さい」


神様「ハァ~ でも、村長さぁ」

村長「はい」

神様「お前に調査の命を出した外宮の宮司はもう神宮にいないし、神宮帰ってもいいよ?」

村長「・・・ 神宮からもそう言われております」

神使「なにか問題でも?」

村長「神職としてこの村で起こっている出来事は放っておくわけにも行かず・・・ 民俗学的にも興味がありまして・・・」

神使「そうですよね」

神様「真面目だね~」


神使「原因は神様でしょうから、過去の神様の行動をたどれば解決するのでは?」

神様「お前、本当に私が犯人って思ってるわけ?」

神使「100%間違いないと思います」

神様「・・・・・・」チッ


神使「村長さん、調べたことで分かっていることを教えていただけますか?」

村長「はい。 村に伝わる過去の文献に150年前に一人の女神様が立ち寄られたと記載がありました」

神使「神様ですね。 お心当たりは?」

神様「ない!」プイッ


村長「その女神様は、お腹が空いていたようで牡蠣ご飯を頂く代わりに由緒あるご神体をお預けになると約束をしたそうです」

神使「牡蠣ご飯ですか・・・」チラッ

神様「うっ・・・ 私じゃ・・・ ない・・・」

神使「神様の好物は?」

神様「コーラ・・・」

神使「食べ物です」

神様「・・・二枚貝」

神使「牡蠣ですよね?」

神様「ハマグリも好き・・・」


村長「・・・女神様は毎日のように牡蠣ご飯をねだり、困り果てた村人たちが神様が夜寝ている間に隣村に捨ててきたそうです」

神使「神様・・・ そんなに牡蠣ご飯をねだったのですか?」

神様「そんなにねだってねーよ! それにヤツらご神体を奪って私を隣町の廃神社に捨てたんだぞ!」

村長・神使「・・・・・・」


神様「ぁ・・・」

神使「やっぱり・・・」ハァ

神様「てへっ!」


神使「神宮にバレるとマズいことがあるのですね?」

神様「はい」

神使「具体的にどのあたりが?」

神様「神力がたっぷり入ったご神体をまるっと取られました」

神使「わらわら神社のご神体ですね?」

神様「そんな名前の神社だったような気がします」


村長「しかし、なぜ神様が自身のご神体などお持ちだったのですか?」

神様「分社を作ろうと思いまして・・・」

神使「分社!?」

神様「すいません、出来心だったんです。 反省してます」ドゲザ

神使「・・・・・・」


神様「だから神宮には黙ってて! マジで怒られる! シャレにならない!」

神使「村長、どうされますか?」

村長「神様がそこまで言うのでしたら・・・ 私は何も・・・」

神様「マジで! ありがとう村長! 何でも言うこと聞く!」

神使「ハァ~ やはり解決しないと帰れませんね・・・」

神様「女将さんを拉致して吐かせりゃ良いんだろ」ポキポキ

神使「そんなことダメに決まっているじゃないですか・・・」


村長「神もどきの原因はそのご神体ということでしょうか」

神使「はい、神様が無くしたご神体の神力が原因でしょうね」

神様「無くしたんじゃない! 取られたの!」

神使「今となっては確認のしようがございませんのでどちらでも良いのですが」

神様「酷っ!」


神使「神様、神もどきに関しては何かご存じですか?」

神様「知らな~い」

神使「ご神体の神力が人に移ってしまったという事は考えられませんか?」

神様「そんなことで神力が人に移るわけ無いじゃん」

村長「ご神体の一部を体内に取り込めば可能性はございますか?」

神様「あ~ それなら可能性はあるかもね。 でも私と同じ波長を持った人なんてそんなにいないと思うけど」


神使「神様と同じ波長を持った人であれば可能なんですか?」

神様「まぁ、そうね・・・ でも数千年の中で2人しかいなかったよ?」

神使「そんなに少ないんですか・・・」

神様「うん、特に神もどきは私の神力をそのまま受け入れているっぽいし・・・ 結構すごい人なんじゃないの?」

神使「まぁ・・・ 神様の凄さは確かに否定はいたしませんが・・・」

神様「素直に私は立派でかわゆい理想の女神だって事を受け入れろよ!」



 ガサゴソ


神使「?」

村長「あ~ 狸ですね。 この神社によく出るんですよ」

神使「へぇ、かわいいですね」

神様「・・・・・・マジかよ」

神使「あれ? 神様は狸さんが苦手ですか?」


神様「あの狸・・・ 私の神力持ってる・・・」

村長・神使「・・・・・・」

神使「あの・・・ どういう事でしょうか?」


神様「あの狸を確保!」ダッ

神使「え? ちょ神様?!」



── 境内


神様「まてコラ~!」ダッ ダッ ダッ

狸「!?」タッ タッ タッ

神使「神様~ 一体どういう事です~」タッ タッ タッ


神様「待て~ うぎゃっ!」ビタンッ

神使「大丈夫ですか神様? 派手に転びましたね・・・」

神様「痛い・・・」グスッ


村長「逃げてしまいましたか」

神様「くそっ! あの狸め!」グヌヌ


神使「あ~神様、巫女装束ボロボロですよ・・・」

神様「やべっ! 私のおべべが・・・」

神使「新調しないとダメですね」

神様「神宮持ち?」

神使「自腹です」

神様「うそ! 狸! 弁償しろよ!!」グスッ


村長「まさか、神もどきの正体が狸だったとは・・・」

神使「あの狸さんは神様と同じ波長を持っていたと言うことになりますね・・・」

神様「・・・・・・」

神使「神様って狸さんと同じレベ―――」

神様「てめー、その先言ったら地球の裏側まで蹴り飛ばすぞ!」

村長「・・・取りあえず、対策は明日にでも考えましょう」


――― 旅館


神様「ハァ~ おうち帰りたい」グテー

神使「・・・・・・」ペラ

神様「?」チラッ

神使「・・・・・・」ペラ


神様「ねぇねぇ、何見てんの?」ヒョコ

神使「神様の新しい巫女装束の注文をするのにカタログを見ているんです」

神様「ふ~ん」

神使「今回から自費購入となりますので・・・」

神様「あ~・・・ 金ないし安いので良いぞ」


神使「しかし、頻繁に着る物ですしあまり安いと見た目も・・・」

神様「スケスケのやつが良い」

神使「ダメです」


神様「お? これ安いじゃん」

神使「あまり素材が良くないですよ?」

神様「十分だよ。 今まで神宮から支給されていたヤツだって安っすいヤツだろ?」


神使「では、私もこれにしますか」

神様「お前も買うの?」

神使「はい、ついでにと思いまして」


神様「・・・お前、今着てるのって良いやつだよな」

神使「?」

神様「さっきスリスリした時、肌触りが違った」

神使「よくそこまで分かりましたね・・・」


神様「・・・お前のそれと同じヤツで良い」

神使「結構しますが・・・」

神様「ん? いくら?」

神使「白衣と袴を合わせて12万です」

神様「・・・お、おう」


神使「無理なさらなくても、私も神様と合わせますので」

神様「いや、それで良い。 私のカードで買ってくれ」シャキーン


神使「大丈夫ですか?」

神様「お前の分と合わせて12回払いで頼む」

神使「え? 私の分は自分で支払いしますが」

神様「いや、私が買う。 お前が私の神使になってそろそろ4年目だ。 プレゼントって事で受け取ってくれ」

神使「神様・・・」

神様「ついでに今回の件を神宮に報告しないという口止め料も込みだ。 そこを忘れるなよ?」

神使「ふふっ」

神様「何だよ・・・」

神使「では、ありがたくお受けいたします」

神様「買収されるのにありがたいとかあるのか?」

神使「はい、とても嬉しい買収です」ニコッ


神様「・・・寝る!」モソモソ

神使「ありがとうございます、神様」ボソッ

神様「・・・・・・」モソモソ


――― 翌日

神使「神様! 神様!」ユッサ ユッサ

神様「なんだよ~ もう少し優しく起こせよ・・・」ムニャムニャ


神使「狸さんを捕まえたそうです!」

神様「よっしゃ! 神使よ、私の正装を!」ガバッ

神使「ボロボロですが・・・」

神様「あぁ・・・ Tシャツと短パンで・・・」


――― こわこわ神社


神様「うわっ、なんか人だかりができてるぞ」

神使「警察もいますね」


村人「入れろよ!」

警官「ダメです。 近づかないで下さい」

女将「お願いです! 入れて下さい!」

警官「ダメダメ」


神使「すいません、関係者ですが中に入れてもらえないでしょうか」

警官「関係者? どちらさん?」

神使「神社を管理しております神宮の者なのですが」

警官「神宮?」


村長「あっ、神使様」スタスタ

警官「村長さん」

村長「関係者の方です。 入れてあげて下さい」

警官「はぁ・・・ どうぞ」

神使「ありがとうございます」

神様「どうも~」

警官「おっと、お嬢ちゃんはダメだよ」

神様「私も関係者! 神宮の者!」

警官「その格好で?」

神様「・・・・・・装束汚れちゃったんだもん」ブーブー

村長「そちらの方も入れて下さい」

警官「・・・・・・どうぞ」

神様「サンキュー」スタスタ


女将「私たちも関係者です!」

警官「ダメだって言ってんでしょ」

村人「神罰が下るぞ!」


神使「村長さん、これは一体・・・」

村長「狸狩りをしているところを村人に見つかってしまいまして・・・」

神様「あ~ それでこんななってんのか」

神使「狸さんが捕まったと伺いましたが」

村長「はい、社務所にいます。 どうぞ」


 スタスタ


── 社務所


神様・神使「・・・・・・」

神使「あの、これは・・・」

村長「8匹捕まえましたが、どれが神力を持った狸か分からずでして」


神使「神様、お分かりになりますか?」

神様「え? う~ん・・・ あっ、あの右端のヤツ!」

狸「!?」


神様「さてと、ハロ~ たぬちゃ~ん」

狸「・・・・・・」

神使「神様、いくら何でも言葉は通じないと思うのですが・・・」

神様「そうかな~?」ゴソゴソ

神使「何してるんです?」


神様「これな~んだ」

狸「!?」

神使「牡蠣せんべい?」


狸「くれ!」

神使・村長「・・・・・・」

神様「やっぱり」ニヤッ

狸「あっ!」

村長「狸がしゃべった・・・」

狸「私には“たぬ吉”という名がある」

神使・村長「・・・・・・」


神様「おい、たぬ吉さんよ~」

たぬ吉「なんだ」

神様「お前、私のかわゆい神ちゃん象どこに隠したんだ?」

たぬ吉「知らん」


神様「この煎餅、牡蠣が丸ごと入ってんだよ。 おいしいぞ?」

たぬ吉「旅館の女将が持ってる」

神様「ほぉ」


たぬ吉「その煎餅くれ!」

神様「ほれ」

たぬ吉「うまい!」ムシャムシャ


神使「神様、これは一体・・・」

神様「神力の影響だ」


神使「言葉をしゃべると言うことは神使と同じと言うことですか?」

神様「いや、神使になる過程をすっ飛ばして神になったな。 お前人の姿になれるか?」

たぬ吉「私はただしゃべることができる狸なだけだ」

村長「こんなことって・・・」

神使「どうされるんですか? 神様」


神様「おい、たぬ吉」

たぬ吉「なんだ」

神様「お前、どうしたい?」

たぬ吉「どうとは?」

神様「・・・・・・」


たぬ吉「私は普通の生活に戻りたい、しかしここの村民の願いも叶えてやりたい」

神様「願い?」

たぬ吉「この村は見ての通り何も無い退屈な所だ。 年に数回の神事が皆の唯一の楽しみだからな」

村長「神事というのは?」

たぬ吉「わらわい神事」

神使「わらわい神事?」


たぬ吉「明日が本祭の予定だ」

神様「どんな神事だ?」

たぬ吉「参加してみるか?」

神様「・・・・・・明日夜に来れば良いんだな?」


神使「神様、まさか・・・」

神様「ご神体が無い状況じゃどうしようもない。 村長、たぬ吉を一度解放してやってくれ」

村長「神様がそれでよろしければ」

たぬ吉「うむ」

神使「このまま解放して大丈夫でしょうか・・・」

神様「大丈夫だ」

たぬ吉「この力はお嬢ちゃんの物なんだろ?」

神様「・・・・・・」

たぬ吉「明日の神事後に私から力を抜くのであれば従う。 元々私の力じゃないしな」

神様「・・・・・・」

たぬ吉「それでは、明日会おう」テクテク


――― 境内


女将「あっ、たぬ吉様!」

村人「ご無事か!」

狸「・・・・・・」タッ タッ タッ


女将「あなたたち一体・・・」

神様「私は、神宮に籍を置く神だ」

女将「!?」

神様「こっちは、私の神使で狛犬」

神使「神様の使いで狛犬の神使と申します」

村人「神と神使だぁ?」


神様「神使よ、狛犬になれ」

神使「はい」ボンッ

女将・村民「!?」


神様「納得したか?」

女将「うそ・・・」

神様「お前たちが崇めるたぬ吉が神としてふさわしいかを明日確認させてもらう」

女将「・・・・・・」

村人「よそ者が何を!」

神様「あれは正式な手順を踏まずに神の力を得た。 これはあってはならない事だ」キリッ

村人「・・・・・・」

神様「明日の神事如何で今後の対応を決めることにした。 決定は覆らない」

女将「・・・・・・」


神様「いくぞ、神使」

神使「はい」

神様「村長、車を」

村長「え? 神様?」


 スタスタ


神使「偉そうな事を言ってますが、元凶は神様ですよ? 分かってます?」ボソッ

神様「うっせー、あいつらに聞こえるだろ! ここは格好つける場面だ、黙ってろ!」

村長「神様? 私、車で来ていないのですが・・・」ボソッ

神様「・・・・・・」


――― 翌日・こわこわ神社


神使「結構大勢の村の方がいますね」

神様「これだけの人数がいてよく今まで極秘にできたな」

村長「村のほとんどの人間がいるとは・・・」


女将「わらわい神事へようこそ。 本日は半年に一度の本祭、存分に楽しんで下さい」

 ワーワー
 ガヤガヤ

神使「申し訳ございません、一体どのような神事なのでしょうか?」

女将「今日の本祭は、たぬ吉さまがお話しになる笑い話を最後まで拝聴する神事です」

神様「はい?」

女将「途中で笑ったら即退場。 笑いをこらえた者だけが、たぬ吉さまのお話を最後まで聞くことができるんです」

神使「はぁ・・・」

村人「たぬ吉さまのお話は、爆笑必至だ。 気を許すと一発で退場だぞ」

神様「・・・・・・」


女将「前の方の席を空けますので座ってお聞きになりますか?」

神様「いや、私たちは後ろで立って聞くから気にしないでくれ」

女将「分かりました」スタスタ


神使「神様、座らなくてもよろしいんですか?」

神様「私たちは部外者だ。 わきまえろ」

神使「失礼いたしました」


女将「それでは! たぬ吉さま~ ご入場~」


 トテトテ


たぬ吉「始める」

神様「早っ」ズコッ


たぬ吉「神宮に一人の女神さまがいたそうだ」

神様「」ピクッ


女将「神ちゃんシリーズだわ! これは爆笑必至ね」

村人「俺、このシリーズ最後まで聞いたこと無いんだ。 今日は絶対こらえてみせる!」

神様「・・・・・・」


たぬ吉「女神さまは神力が使えず神宮の神職から役立たずと罵られていたが、持ち前の明るさで毎日元気に過ごしていた」

たぬ吉「ある日女神さまは自身の分社を作ろうと、わらわら神社からご神体を借り受けて別の神社に向かっていたそうだ」

神使「(このお話ってもしかして・・・)」チラッ

神様「なんだ?」ギロッ

神使「・・・・・・いえ」


たぬ吉「女神さまは途中・・・ この村に立ち寄った」

女将「この村のお話!?」


 ザワザワ


たぬ吉「数百年ぶりに村に神様がお越し下さった! 村人は女神さまにおもてなしを沢山した」

たぬ吉「女神さまの好物が牡蠣であることを知れば牡蠣ご飯を用意し、甘い飲み物が好きと知ればうんと甘い飲み物を献上した」

神様「・・・・・・」


たぬ吉「数日後、女神さまはこの村をたつため本殿の扉を開けると、そこに一匹の狸が倒れていた」

たぬ吉「そう・・・ この神社の本殿・・・ 神宮から来たお嬢ちゃんが立っている場所だった」

神様「・・・・・・」


たぬ吉「狸は、とある事情でまもなく死を迎えようとしていたそうだ」

たぬ吉「女神さまは、その狸に自身のご神体の一部をなんの躊躇もなく割って飲み込ませた」


たぬ吉「狸の体を女神さまの優しさが包み込んだ」

たぬ吉「女神さまは、その狸が回復するのを待つまでこの村に残ると言ってくれた」


たぬ吉「村人たちは、そんなことなど露知らず・・・ いつまでたっても居座る女神さまに不信感を募らせていった」

たぬ吉「裕福でない村は神様の食事を献上するのが大変だったのだ」

たぬ吉「女神さまは献上はしなくて良いと何度も話をしたが、神罰におびえる村人は牡蠣ご飯を献上し続けた」

たぬ吉「女神さまは、献上された牡蠣ご飯を狸にすべて与えてくれた」


たぬ吉「なんとか命の危機を脱した狸が女神さまにお礼をしようとしたその時・・・」

村人「」ゴクリ


たぬ吉「女神さまは村人に捕らえられ、隣町まで連れて行かれてしまったそうだ」

たぬ吉「狸は村人を恨んだ・・・ 自分を死の淵に追いやるだけでなく、命を救って下さった心優しい女神さまにこんな仕打ちをするなんて・・・」

たぬ吉「しかし狸の中にある女神さまの神力は、そんな村人を全く恨んでなどいなかった・・・」

神使「・・・・・・」


たぬ吉「女神さま・・・」トテトテ

神様「?」

たぬ吉「命をお助けいただきありがとうございます」チョコン

神様「・・・・・・」


女将「!? 女神さまって!」

村人「この女の子が・・・!?」


 ザワザワ


たぬ吉「私は、あのとき以来ずっと村人のみんなを笑顔にするために生きてきました」

たぬ吉「みんなの笑顔が私の何よりの宝物でした」

神様「そうか・・・」


たぬ吉「ご神体の神力をお返しいたします」

神様「・・・・・・」


女将「たぬ吉さま!」

村人「そんな・・・」


神様「今のお前から神力を抜くと死ぬぞ?」

たぬ吉「心得ております」

神様「覚悟の上か・・・」

神使「神様・・・」


神様「神勅を申し伝える!」

一同「!?」


神様「私、神様は“たぬ吉”をこわこわ神社の主神として任命する!」

たぬ吉「なっ・・・!」

神様「たぬ吉よ、お前は本日をもって神籍に登録。 神階を従三位とする」


神様「村人達よ、たぬ吉は人の姿を持たぬ特殊な神だ。 皆でたぬ吉を守ってやってくれ」

女将「女神さま・・・」