神様「神様だっ!!」 神使「神力ゼロですが・・・・・・」(947)


~あらすじ~



神様「前スレだ!」
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1455635965/)


神使「一行も読む必要は無いそうです」


神様「!?」


【#9】


―――のんびり村・廃神社


 ミーンミンミン


神様「Zzz・・・」グガー

神使「神様、神様?」ユサユサ


神様「ん~ なんだよ・・・」

神使「ここは神社の本殿です」

神様「だから?」

神使「お昼寝は構いませんが、下着姿で寝ないで下さい」

神様「暑いんだから良いだろーが。 誰も見てねぇし」


神使「神宮所属の女神なんですから、もう少し品格というのをですねー」

神様「変なイメージ作ってんじゃねーよ、極悪邪道腐れ犬ころ神使」


神使「・・・何度も言っておりますが、私には“狛犬の神使”という名前があります」

神様「へいへい、犬ころ様。 じゃ、おやちゅみ~」


神使「神様?」

神様「も~ うるさいなぁ~・・・」


神使「そんなことだから神宮から左遷や減給処分を頻繁に受けるんですよ? 今回だって・・・」

神様「あいつらの考え方が古いの! 私は常に正しいのだよ、神使君」


神使「お守りを値引き販売したりするのは正しくありません!」

神様「お守りっつても、紙切れのやつだぞ? 利益考えても2000円は高いだろ!」


神使「それに、神宮のお供え用の畑から野菜を盗んだりするなんて泥棒ですよ?」

神様「お前・・・ なんでそれ知ってんだよ」

神使「やっぱり神様が犯人でしたか」


神様「うぐっ! だ、だって給料低すぎて生活大変なんだよ! 手取り14万の神とかおかしいだろ!」

神使「減給処分中ですから今は手取り6万ですけどね」

神様「・・・・・・」


神使「神階が低いから給料も低いんですよ?」

神様「私は人が勝手に作った神階なんかに興味は無いのだよ」

神使「また減らず口を・・・」

神様「うるせー」


神使「はい、ご装束を用意しましたから早く着替えて下さい」

神様「え~ ご装束って、ただの巫女服じゃん」

神使「神階最低位で神力も使えない神様は巫女装束しか支給されてないですから」

神様「神使君さぁ~ けんか売ってる?」


神使「神宮でも巫女の仕事しかさせてもらえないなんて・・・ 見返してやろうとは思わないんですか?」

神様「別に~ 私、巫女の仕事好きだもん」


神使「・・・・・・」ジトー

神様「なんだよ、その哀れむような目は! 神罰」ゲシッ

神使「痛っ! ですから、それは神罰でなくただの足蹴りです」


神様「じゃ、そう言うことでおやちゅみ~」


神使「ほら、いい加減に仕事しますよ神様!」

神様「も~!5時間も鈍行で揺られてきて疲れてんの!」グダグダ


神使「この神社の廃社審査を早くしないといけないんですから・・・」

神様「廃社審査? そんなの聞いてないし~ そうだ、ボケモンGOしよっと」

神使「こちらへ来る途中に言いました」

神様「嘘だ~ 私聞いてないも~ん。 うわっ、ボケモンいねーじゃん・・・」


神使「やっぱりボケモンGOに夢中で聞いていなかったんですね?」

神様「・・・・・・」


神使「スマホ没収します。 渡して下さい」

神様「!? ヤダ!」


神使「渡して下さい」

神様「これがないと、私生きていけない!」


神使「誰かと話をしているときはスマホをいじってはいけないと約束しましたよね?」

神様「でも・・・ でも1日1時間以上はやってないから!」

神使「・・・・・・」


神様「もう、しない! 誰かと話してるときはスマホいじらない!」

神使「・・・・・・」


神様「着替える! おべべ着る!」


 イソイソ
 シュルシュル


神様「ほら! 巫女服着た! 帯もいつもより綺麗に結んだぞ! 襟元も凄く綺麗!」

神使「・・・・・・」


神様「お願いします! 許して下さい! スマホだけは・・・ スマホだけは!」ドゲザ

神使「神宮の神が、スマホを死守するために土下座とは・・・」


神様「このスマホは、お前に買ってもらった大切な物だから・・・ 手放したくない・・・」

神使「神様・・・」


神様「だから、お願いします!」

神使「分かりました。 でも約束は守って下さいよ?」

神様「はい!」ニヤリ


神使「それと、不敵な笑みをするのは見えないようにやって下さい」

神様「・・・・・・」


更新ペースは遅いと思うけど……
ゆっくりいきたい



―――廃神社・境内


 ミーンミンミン


 テク テク


神様「あっち~」

神使「荒れ放題ですね・・・」


神様「絵に描いたような廃神社だな」

神使「ご神体もありませんし、神社としての機能はほとんど残ってませんね」


神様「これさぁ、どう頑張っても廃社以外ないと思うの」

神使「修繕をするにしてもかなりのお金がかかりますね・・・」


神様「うん、廃社決定~! 神宮に言っておいて」

神使「その前に、地元の方に説明と同意を取らないといけませんので」

神様「あっそう。 じゃぁ、よろぴこ」


神使「神様が説明するんですよ?」

神使「え?」


神使「廃社の説明は宮司、またはその神社の主神と決まりがあります」

神様「わたし、ここの主神じゃないし」

神使「今のところは、神様がこの神社の代理主神です」

神様「・・・・・・」


神使「宮司はこの神社にはいませんので、現在の責任者は神様です」

神様「・・・・・・まじで?」

神使「はい」ニコッ



 ニャー


神様「? おっ、あの猫で良いんじゃね、主神」

神使「何言ってるんですか・・・ ただの猫さんじゃないですか・・・」

神様「ほ~ら 猫ちゃん~ 神にならんかね~」チッチッチ


 シャー
 タッ タッ タッ


神様「あ! 逃げられた・・・」


神使「ほら、行きますよ?」

神様「しゃーねーな~」


 テク テク



―――田舎道


 テク テク


神様「で? どこ行くんだ?」

神使「まずは、氏子総代のお宅へご挨拶に」


神様「100m以上は歩かないぞ」

神使「すぐそこですから」

神様「ん」



 テク テク


神様「おい、犬ころ」

神使「はい?」


神様「どう考えても1kmは歩いてるよな?」

神使「もうすぐです」

神様「本当かよ~」



 テク テク


神様「犬!! ボケモンの2Km卵が孵化したぞ!」

神使「もう少しです」


神様「もう歩かない!」

神使「本当にすぐそこですから」

神様「ヤダ!」



神使「ハァ~ おんぶしてあげますから・・・」ハイ

神様「お? 良いの?」ヨイショ


神使「行きますよ?」

神様「オッケ~」



 テク テク


神様「楽ちん~楽ちん~♪」


神使「神様って、意外と軽いんですね」

神様「だろ? あっ、でも私の豊満な胸が神使君の理性を壊しちゃってるかも」

神使「いえ、背中にまんべんなく神様の体が当たっていますので」

神様「お前! それツルペタだって言ってんのかよ!」

神使「いえ・・・」


神様「しんば―――」

神使「ちょ、こんな状況で足蹴りされたら神様落ちちゃいますよ!」

神様「チッ、しょうがねーな。 今回は許してやる」

神使「それは、どうも・・・」



―――30分後


 テク テク


神使「このお宅のようですね」

神様「・・・・・・」スヤスヤ


神使「神様? 着きましたよ?」

神様「・・・・・・」スヤスヤ


神使「どれだけ寝るのが好きなんですか・・・ 神様?」ユッサユッサ

神様「んぁ・・・」


神使「氏子総代のお宅です。 降ろして大丈夫ですか?」

神様「ん・・・ 大丈夫。 降りる」モソモソ


神使「はい、しゃがみましたから足付けて下さい」

神様「ありがと」ピョン


神使「お水飲みます?」

神様「少し」

神使「はい、どうぞ」スッ

神様「ん」ゴクゴク


神使「目、覚めましたか?」

神様「ふぁ~ぁ・・・ 大丈夫、覚めた」


神使「こちらが、氏子総代のお宅のようです」

神様「へぇ~ 昔ながらの家って感じだな」

神使「そうですね、ご立派ですよね」


神様「ん?」

神使「どうされました?」

神様「いや、表札。 神宮の大宮司と同じ名前だ」

神使「本当ですね。 珍しいお名前ですよね」



―――氏子総代の家


 ピンポン
 は~い


神使「神宮から参りました」


 ガラガラ


女「こんにちは」

神使「初めまして、神宮から参りました使いの者ですが」

女「神宮? 兄さんの件ですか?」

神使「お兄様?」


女「はい、うちの兄が神宮にいるので・・・」

神様「もしかして、神宮の大宮司?」

女「さぁ、役職までは分からないんですが」


神使「この先の廃神社の件で少しお話があるんですが、お時間大丈夫でしょうか?」

女「廃神社・・・ どうぞお入り下さい」


神使「失礼いたします」

神様「お邪魔しま~す」



女「どうぞ、お茶です」コトッ

神使「ありがとうございます」


女「お嬢ちゃんはジュースが良い?」

神様「できればコーラ・・・」

女「良かった、はいコーラ」コトッ

神様「やったー!」


神使「・・・すいません、躾がなっていないもので」

神様「一言多いぞ、犬!」ゴクゴク

女「ふふっ」


神使「お兄様が神宮に奉職されていると先ほど・・・」

女「えぇ、学校を卒業してからずっと神宮にいるようです」

神使「それは随分と長いですね」

女「昔のものですが、そこに写真が」


神様「あ~ あれ大宮司の若い頃だ」

神使「神様ご存じなんですか?」

神様「当たり前だろ、ああ見えて大宮司は昔結構ヤンチャだったんだよ」

神使「へぇ~ 今は全然そんな雰囲気ないですけどね」

神様「私と一緒によく海へ行って牡蠣取ったりしたな。 あいつ潜るの得意でな」


女「・・・・・・お若いのに、兄の若い頃を知っているんですね?」

神使「!?」

神様「あっ・・・ えっと~ 聞いた話・・・」


女「大丈夫です。 私も昔は巫女をしていましたから」

神様「え? そうなの!?」

女「・・・その廃神社がまだ活気のあった時ですけど」

神使「そうだったんですか」

女「もう30年以上も前ですから」


神様「じゃぁ、神とか神使とかの存在も?」

女「はい、お目にかかったのは今日が初めてですけどね」ニコッ


神使「恐れ入ります。 こちら神宮の神で神様です」

神様「“かわゆい神ちゃん”でよろしく」

女「よろしくお願いいたします」


神使「私は、神様の使いで狛犬の神使と申します」

女「まぁ、狛犬様なんですか? よろしくお願いいたします」


神様「よそよそしいのは苦手なんで気軽に接してちょ」

女「ふふっ、分かりました。 神ちゃんと神使さん」


神使「今日、お伺いした件なのですが・・・」

女「廃神社の件と」

神使「はい、私たち廃社調査の命を神宮から受けて参りまして」

女「廃社・・・」


神様「見た感じご神体はないし、何十年も手入れがないようだけど」

女「はい、私がまだ動けるときは時々手入れをしていたのですが」

神使「お体が?」

女「年には勝てず・・・ 兄も神宮に行ったきり戻ることが難しいようで」

神使「大宮司は分単位でスケジュールが詰まっていますからね・・・」


神様「復興という手もあるけど、たぶんかなりのお金がかかる」

女「はい」

神様「正直、今の状況を見る限り廃社にするのが一番だと思う」

女「そうでしょうね」


神様「すまない。 力及ばずで」ペコッ

女「そんな神様が頭を下げる必要など・・・ 管理できない私たち村の責任ですから」


神使「廃神社で巫女をしていたと伺いましたが」

女「えぇ」

神使「当時は宮司さんなどが居られたのですか?」

女「元々はうちの本家が代々宮司をしておりまして・・・」

神使「そうだったんですか」


女「私たちは分家なので継ぐことはなかったのですが、今は本家の人間全員この村を出てしまって」

神使「それで宮司不在になって廃神社に・・・」

女「申し訳ございません」

神様「跡継ぎのない神社の定めだ、今は腐るほどある。 気にしないでくれ」


神使「では、廃社という形を取らせていただきますがよろしいでしょうか?」

女「異存はございません、全てお任せいたします」



―――帰り道


 テクテク


神使「神様? 廃社でよろしいんですか?」

神様「あぁ、神宮に廃社審査の結果を報告して手続きを進めてくれ」

神使「分かりました」



 ピロリロリーン♪


神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ

神使「私です」

神様「だから、お前着信音変えろよ!」


神使「神宮からの一斉メールですね」

神様「え? 一斉? 私・・・ 届いてないけど・・・」


神使「!?」

神様「ねぇ、私のとこにやっぱ来てないよ? 一斉メール」


神使「これは・・・・・・」

神様「ん? なになに」


 ジリリリーン♪


神様「あ、電話だ」ゴソゴソ

神使「私です」

神様「・・・・・・」


神使「はい、神使です」

神使「はい・・・ はい・・・ 承知いたしました・・・ はい、失礼します」ピッ


神様「お前さぁ~ 電話も着信音私と一緒だから変え―――」

神使「神様、一度神宮に戻ります」

神様「って、え? 神宮に?」


神使「大宮司が退職されるそうです」

神様「!?」

待ちきれなくてスレに来た
乙です

>>42
飽きるまでごゆるりと <(_ _)>



―――神宮・会議室


司会「え~ と言うことで、大宮司は今月末をもって定年という形になります」

内宮宮司「しかし、予定では年末ということでなかったのですか?」

大宮司「ただでさえ年末年始の忙しい時期に、皆の手を煩わすのもどうかと思ってね」


外宮宮司「でも急に今月で退職というのも・・・」

大宮司「組織変更もあるだろうし新年は新体制で落ち着く形にしておきたくてね」


大宮司「それに・・・ 先月のように急に倒れて皆に迷惑かけるのも避けたい」

外宮宮司「・・・・・・」


司会「神様、なにかございますか?」

神様「ん? 私は神職の件に関しては全て一任しているんで、決定に従う」

司会「承知いたしました」


内宮宮司「提案なのですが・・・」

大宮司「ん? なんだね?」


内宮宮司「神宮の名誉宮司としてしばらく残って頂くことはできませんでしょうか?」

外宮宮司「それは、良い案です。 名誉宮司でしたら負担も少ないかと」

内宮宮司「いかがでしょうか、大宮司」

大宮司「私が名誉宮司だなんて恐れ多い。 ジジイはさっさと出て行くのが良いと思うが・・・」


司会「神様、いかがですか?」

神様「ん? 私は神職の件に関しては全て一任しているんで、決定に従う」

司会「承知いたしました」


内宮宮司「お願いします、大宮司」

大宮司「しかしだね・・・」

司会「では、多数決を取ります」


司会「大宮司を神宮名誉宮司として推薦する方は挙手を」


 スッ スッ


司会「賛成多数により大宮司を神宮名誉宮司として推薦することにいたします」


司会「神様、いかがですか?」

神様「ん? 私は神職の件に関しては全て一任しているんで、決定に従う」

司会「承知いたしました」


大宮司「・・・・・・」ハァ…

神様「・・・・・・」ジィー



―――神宮・会議室廊下


 ガヤガヤ


内宮宮司「これからもよろしくお願いします」

大宮司「ははは・・・」

内宮宮司「やはり、今の神宮を統制できるのは大宮司しかいませんからね」


神様「大宮司」

大宮司「?」

神様「少し時間は取れるか?」


大宮司「はい、私の部屋でもよろしいですか?」

神様「あぁ」



―――大宮司室


 ガチャッ


大宮司「そこの椅子へ」


神様「ふぅ~」ギシッ

大宮司「はぁ~・・・」ギシッ


神様「簡単には辞められそうにないな」

大宮司「神ちゃんに少しは加勢して欲しかった」


神様「あの席で私が彼奴らの反対意見を言ったらそれこそ問題だろ?」

大宮司「それはそれで面白かったかも知れないけどな」

神様「これ以上、給料下がるの嫌だし~」


大宮司「元気でやってるのか?」

神様「まぁ、ぼちぼちね」


大宮司「お付きの神使はどうだ?」

神様「犬ころ? 頼りにしてる」

大宮司「それは良かった」


神様「お前は神宮に来て何年だっけ」

大宮司「20歳でここに入ったから40年だ」

神様「年が流れるの早いね~ ヤンチャしてたのがつい最近のように思える」

大宮司「全くだ」


神様「極悪邪道腐れ神職のお前が、今は神宮の大宮司だもんな~」

大宮司「みんな辞めてしまって私しか残っていないだけだよ」


神様「名誉宮司なんか引き受けて良いの?」

大宮司「仕方ない、会議で決まってしまったことだ」


神様「本当に?」

大宮司「神職一筋でやってきたんだ。 急に外にでても役立たずの老いぼれだしな・・・ ここに骨を埋めるよ」

神様「・・・・・・」


大宮司「それに、神宮はそんなに甘くない。 私の意見など無いに等しい」

神様「怖い場所だね~」

大宮司「全くだよ・・・」ハァ


神様「・・・今さぁ~ 私、のんびり村にいるんだよ」

大宮司「!?」


神様「お前の故郷なんだってな」

大宮司「なんでのんびり村なんかに・・・」

神様「村に唯一残る神社の廃社審査」

大宮司「廃社・・・ そうか、あのお社も廃社なのか・・・」


神様「昨日、氏子総代の家に行って廃社の確認をしてきた」

大宮司「氏子総代はどこがやってるんだ?」

神様「・・・お前の妹」

大宮司「妹が!? 妹に会ったのか?」

神様「あぁ、言葉には出さなかったけど会いたがってる感じだったぞ?」

大宮司「何十年も戻っていないからな・・・」


神様「名誉宮司になったら少しは時間もできるだろ」

大宮司「そうだな」フッ


神様「・・・・・・じゃ、犬ころ待たせてるし帰る」ヨイショ


大宮司「神ちゃん」

神様「ん?」


大宮司「私の名誉宮司任命式の代表神を・・・ 神ちゃんにお願いできないだろうか」

神様「私!? 祭儀神の方が良いだろ」

大宮司「いや、神ちゃんにやってもらいたい」

神様「・・・・・・」


大宮司「頼む」

神様「分かった。 引き受ける」

大宮司「ありがとう」


神様「腐れ縁・・・ いや旧友の頼みだ、礼はいらないよ~」

大宮司「旧友か、嬉しいね」フッ


神様「じゃ~ね~」


 バタン


神様「・・・・・・」

今週はここまで



――― 神宮・境内


 テクテク


神様「あれ? この自販機もコーラねーじゃん・・・」


 神使「あっ、神様!」


神様「ん?」


 スタスタ


神使「打ち合わせ、終わりましたか?」

神様「あぁ、待たせた」


神使「だいぶ遅くなってしまいましたし、今日は神宮に泊まって明日のんびり村に戻りましょう」

神様「そうね」


神使「ご自分の宿舎に戻られますか?」

神様「あ~、それよりさぁ」

神使「?」


神様「コーラの売ってる自販機ってここら辺になかったっけ」

神使「一番近いのは裏の駐車場かと」

神様「遠いなぁ~」


神使「私も飲み物が欲しいので買ってきましょうか?」

神様「じゃぁ一緒に行くか」



 テクテク


神様「あっ、こっちの裏道の方が近い」

神使「道なんて見えないんですが・・・」


神様「よく見ろよ、草が少し薄いだろ」

神使「え~・・・ 境内で迷子なんて嫌ですよ・・・」

神様「大丈夫、私を信じろって」

神使「それが心配なのですが・・・」



 テクテク


神使「こんな所、初めて来ました」

神様「まぁ普通は来ないよな、あそこに私の昔の住居が・・・」ピタッ

神使「どうされました?」

神様「シッ!」

神使「?」


神様「誰かいる」ボソッ

神使「・・・本当ですね」ボソッ



 パン パンッ
 フカブカ


神使「参拝者・・・?」

神様「あれ大宮司じゃないか?」

神使「え? あっ、確かに・・・」


神様「・・・・・・」

神使「なんで大宮司がこんな奥社で・・・」



 大宮司「・・・・・・」

 スタスタ



神使「行っちゃいましたね」

神様「あの社に行ってみよう」



―――古い社


神使「小さなお社ですね」

神様「一人住む分にはこれで十分だよ」


神使「先ほど神様が昔お住みになっていたと仰ってましたが」

神様「かなり前だけどね~。 今は私の倉庫に使ってる」

神使「倉庫?」

神様「私の私物を仕舞ってある」


神使「なぜ大宮司はここで参拝していたんでしょう」

神様「・・・・・・」


神使「このお社はお願い事の自動記録って動いているんですか?」

神様「いや、ここは誰も来ないし仕組み自体入れてないと思う」


神使「願いの叶わないお社で大宮司は何を・・・」

神様「・・・・・・」



―――深夜・神使宿舎


神使「Zzz・・・」スヤスヤ


 バン!


神様「起床!」

神使「うわっ!」バッ


神使「ちょと神様! こんな夜中にどうしたんですか」

神様「出かけるぞ」

神使「こんな遅くに、どちらへ?」

神様「私の倉庫」

神使「倉庫・・・? 日中に行った奥社ですか?」


神様「・・・・・・」

神使「神様?」


神様「これは!?」ハッ

神使「?」


神様「部屋が・・・ 涼しいだと!?」

神使「はい?」


神様「まさか・・・」キョロキョロ

神使「どうしたんですか、いきなり」


神様「あーーっ! この部屋エアコン付いてる!」

神使「えぇ、まぁ・・・」


神様「お前、私は20年前の扇風機だけで我慢してんのに!」

神使「20年前!? 物持ちが良いんですね・・・」

神様「ボタン壊れてて微風しか動かないんだぞ!」

神使「・・・・・・」


神様「うわっ! トイレと風呂まで! キッチンまである!!」

神使「・・・・・・」

神様「これが格差社会・・・」ガクッ


 コロン


神使「? 神様、何か落ちましたよ」ヨイショ

神様「お~ やべぇやべぇ」


神使「鏡・・・ですか? って、これは!?」

神様「知ってんの? それ」


神使「まさか、これ神宮のご神体じゃないですか!?」

神様「うん、本殿から持ってきた」

神使「ダメじゃないですか、勝手に持ってきたら!!」

神様「あ? 大丈夫だよ。 誰にも見つかってないし」

神使「そういう問題じゃありません! 神宮本殿から出しちゃダメって事です! 国宝級ですよ?」

神様「日が出る前に戻せばバレねーよ」

神使「勘弁して下さいよ・・・」


神様「ちょっと神力を使おうと思ってさ」

神使「ご自身の神力を使えば良いじゃないですか・・・」

神様「てめぇ! 私が神力ゼロって知ってんだろーが!」

神使「だからって、神宮のご神体の神力に手を出すなんて」

神様「ちょっと位大丈夫だって」


神使「明日、祭儀神様にバレたら大問題になりますよ?」

神様「あ~ それは心配ない。 あいつのもたまに私用で使ってるから」

神使「・・・・・・」


神様「それより、倉庫に行くぞ」

神使「この神宮・・・ 大丈夫なのでしょうか・・・」



―――古い社(神ちゃん倉庫)


 ギィー


神様「さすがに夜は暗くて見づらいな・・・」

神使「懐中電灯持ってきました」パチッ

神様「お~ ナイス」


神使「うわ、箱だらけですね・・・」

神様「だから倉庫って言っただろうが」


神使「こんなに何を保管してるんですか?」

神様「ん? いろいろ」

神使「嫌な感じしかしませんね・・・」


神様「そうだ、お前古い本とか好きだったよな」ゴソゴソ

神使「古典のことですか?」


神様「あった。 ほら、コレやるよ」

神使「随分古いですね・・・」

神様「私が持ってる本で一番古いヤツ」

神使「ありがとうございます。 ん? コレって・・・」

神様「あれ? もしかして読んだことある?」


神使「古事記じゃないですか!」

神様「大昔に書いたヤツから貰ったんだよ」

神使「もしかして、原本って事ですか?」

神様「そうそう」

神使「・・・・・・」


神様「他の本が良い?」

神使「いえ・・・ そういう訳ではないのですが、私がコレを持つこと自体が間違いな気がします」

神様「?」


神使「この無造作に積まれた箱の中にはこのような物が入っているのですか?」

神様「金に困ったら売り飛ばそうかと思って取ってあるんだけど、古すぎてもう金にならないだろうな~」

神使「そうですか・・・(きっと歴史が変わってしまうような物が沢山あるんでしょうね・・・)」


神様「他には~」ゴソゴソ

神使「いえ、もう大丈夫です。 こちらも読み終わりましたらすぐお返しいたしますので」

神様「読み終わったら捨てて良いよ? さすがにボロボロで売れないだろうし」

神使「・・・・・・」


神様「さて、時間も無いし始めますか」

神使「一体何をするんです?」

神様「大宮司のお願い事を調べる」

神使「しかし、このお社にはお願い事の自動記録はないのでは?」

神様「そのためのコレだよ」コンコン

神使「ご神体?」


神様「ご神体の神力を経由してお願い事を復元する」

神使「そんな事できるんですか?」


神様「神使君、忘れちゃってるかも知れないけど私これでも神だからね?」

神使「でも、お願い事の復元だなんて聞いたことないのですが・・・」

神様「ふっふっふっ、まぁ見ていたまえ」


神様「我、神体の神力を解放す!」


 ポワポワ


神様「よし、と・・・ ん?」

神使「どうされました?」


神様「いや、直前に祭儀神がこの神体を使ってる」

神使「祭儀神様ですから、別に不思議はないかと思うのですが」


神様「いや・・・ これは・・・」

神使「?」


神様「祭儀神のヤツ、キャバクラで今日C子嬢が出勤してますようにって願掛けしてるな」

神使「・・・・・・」


神様「これは良いことを知った。 何かの時に脅しで使えるな」ニヤッ

神使「・・・・・・私、今のは聞かなかったことにします。 あのご立派な祭儀神様が・・・」


神様「まぁ、それは置いておいて」


神様「おい、犬ころ」

神使「はい」

神様「お前も私の隣へ座れ」

神使「私もですか?」


神様「ついでだ。 お前も一緒に願いを聞いとけ」

神使「しかし、私は神ではございませんので・・・」

神様「良いんだよ。 勉強だと思え」

神使「・・・分かりました」スッ


神様「私の肩に手を置いて」

神使「失礼します」サッ


神様「力を抜いて楽にしていろ」

神使「はい」

神様「じゃぁ、いくぞ」


神様「我、祈願を執り行う。 当社に納められし願いを我の元へ」



 ポワポワ


~~~


久しぶりに会ったな、神ちゃん・・・
旧友と言ってくれて嬉しかったよ
私は神ちゃんのことを今は娘のように思っているがね


退職後は故郷に戻って余生を過ごしたいと思っていたんだが・・・・・・
そうも行かないようだ
たぶん死ぬまでここを出られないだろうな


神ちゃん・・・
君は神宮に囚われることなく皆の願いを叶えていってくれる事を祈る


私の分まで神ちゃんはいつまでも自由でいてくれ


~~~


 ポワポワ


神様「・・・・・・」

神使「神様・・・」


神様「神使」スタッ

神使「はい」


神様「朝一でのんびり村の廃社許可を取り消してくれ」テクテク


神使「あっ、神様!?」


 ギィー バタン



神使「神様・・・ 私をここに一人残されても困るのですが・・・」



―――翌朝・神様宿舎


 トントン

 神様「だれ?」


神使「神使です」


 神様「あ~ 入って良いよ」


神使「失礼します」


 ガチャッ


神様「適当に座って」

神使「えっと・・・ 座る場所が・・・」


神様「ごめんね~ 私、神階最低だから部屋が狭くてさぁ」ギロッ

神使「いえ・・・」


神様「布団の上で良いよ」

神使「はぁ、失礼します」ヨイショ


神様「はい、うちわ」スッ

神使「・・・ありがとうございます。 扇風機は付けないんですか?」

神様「昨日の夜、帰幽した」

神使「壊れちゃったんですね・・・」


神様「廃社許可の取り消しはしてきたか?」

神使「先ほど書類を提出してきました」

神様「よし」


神使「しかし、廃社しないということは復興という形になるのですが・・・」

神様「復興費用は神宮からどのくらい出せる?」

神使「神宮も財政が厳しいですし、あまり期待できないかと思います」

神様「う~ん・・・」

神使「数日中に神宮負担分の通知は来ると思いますが」

神様「分かった」


神使「この後はどうされますか?」

神様「すぐにのんびり村へ戻って廃神社を少しでも修復しよう」

神使「承知しました」


神様「お金か~」

神使「失礼ですが、神力を使って成就させるのがよろしいかと思うのですが」

神様「・・・・・・」

神使「神宮のご神体を使えば神様でも・・・」


神様「どうして大宮司がお願い事リストから外れた社で参拝したのかを考えろ」

神使「・・・・・・」


神様「神力で成就することがアイツの望みじゃない・・・」

神使「失礼いたしました」



―――のんびり村・廃神社


神様「いや~ しかし本当にボロボロだな・・・」

神使「廃神社という言葉がピッタリですね」


神様「どっから手を付けて良いか分かんねーな・・・」

神使「本殿と鳥居の修復、付属施設も取り替えないといけませんね」

神様「そういえば社務所がないよな」

神使「はい、新しく建てる必要があります」


神様「うへ~ いくらかかんだよコレ」

神使「何千万円単位でお金がかかりますね」

神様「神宮からそんなに出るかなぁ」



 ピロリロリーン♪


神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ

神使「私です」

神様「・・・・・・」イラッ


神使「神宮から復興費用の負担金の結果が来ました」

神様「お~ いくら出すって?」

神使「・・・・・・500万だそうです」

神様「え!? それだけ?」

神使「全然足りませんね・・・」


神様「仕方ない・・・ 犬ころは明日から見積もり計算と、直せる所の補修をやっておいてくれ」

神使「分かりました。 神様は・・・?」

神様「寄付金を募ってくる」

神使「しかし、この付近はあまり民家もございませんよ?」

神様「集まらなければ隣町でも行くよ」

神使「隣町って・・・ 10Kmはありますよ!?」

神様「そのくらい大したことない」

神使「神様・・・」


―――翌日


 ピンポーン♪

 村民「はい」ガチャッ


神様「村の神社の者ですが」

村民「なにか?」


神様「村の神社の建て替えを予定しておりまして」

村民「神社?」

神様「こちら趣意書になりますのでもしよろしければ―――」


 ピシャッ


神様「・・・・・・」


 トテトテ



 コンコン

 村民「は~い」ガチャッ


神様「村の神社から来ました」

村民「あら、かわいらしい巫女さんね」

神様「村の神社の建て替えを計画しておりまして、こちら趣意書です」ペラッ

村民「あの神社再建するの?」

神様「はい、もしご賛同頂くことができればと思いまして」

村民「ちょっとお待ち下さいね」

神様「はい」


村民「少ないですけど、こちらでお願いします」

神様「ありがとうございます!」ペコリ



―――深夜


 ギィー


神様「ただいま~」

神使「神様! 遅かったですね、心配しましたよ」

神様「いや~ やっぱ隣町は遠いな」


神使「ご寄付の方はどうでした?」

神様「厳しいけど・・・ これリストと寄付金」スッ

神使「お疲れ様です」


神様「明日は知り合いの神達に電話して金を無心するか」

神使「そんな・・・ ご迷惑では?」

神様「給料いっぱい貰ってる奴らもいるし」

神使「ほどほどにして下さいね?」

神様「ん。 ふぁ~ぁ・・・」


神使「だいぶお疲れのようですね。 お休みになります?」

神様「そうね・・・ ちょっと疲れて・・・ 眠いかも」

神使「では、パジャマを用意・・・」

神様「Zzz・・・」



神使「1日に50件もまわったら疲れますよね・・・ お休みなさい、神様」



―――翌日


 チュンチュン

 prrr prrr


神友A『はい』

神様「もしもし~ かわゆい神ちゃんだけど~」

神友A『神ちゃん? 久しぶり!』

神様「悪いんだけどさぁ~ 私が代理神を任されてる社を立て替えしたくてさ~」

神友A『へぇ~ 大変だね~』

神様「うん。だからぁ・・・」

神友A『はいはい、寄付でしょ?』

神様「良い?」


神友A『神ちゃんからの直々のお願いじゃ寄付しないとね~』

神様「でも、お前の神社の金は使わないで欲しいんだ」

神友A『・・・・・・分かった。 私の貯金から出すよ』

神様「無理言ってごめん」

神友A『神ちゃんらしくないな~ そんなの気にしないで』

神様「ありがと」

神友A『周りの神にも私から連絡しておくよ』

神様「助かる」

神友A『じゃぁ後でお金送るね~』

神様「うん」


 ピッ


神様「さてと、次は・・・」


神使「神様?」

神様「ん?」


神使「見積もりの方が出ました」

神様「おっ! どのくらいになりそう?」


神使「本殿の修復が3000万、社務所が2000万という所でしょうか」

神様「最低でも5000万か~」


神使「細かい物は知り合いが奉職している神社から使わなくなった物を頂けることになりましたので」

神様「お~ それは助かるな」


神使「じゃぁ、私は作業に戻ります」

神様「よろぴこ~」


神使「・・・神様は今日はどうされます?」

神様「もう一つ先の町まで行ってみようかなぁって」

神使「あまり無理をしないで下さいね」

神様「大丈夫」



―――数日後


神使「さて、では寄付金の集計をしてみますか」

神様「結構集まったんじゃない?」


神使「まずは神宮の500万円」

神様「ケチくせ~な~」


神使「それと、町民の皆さんからの寄付金が200万円」

神様「いいね~」


神使「神々の皆様から頂いた寄付が1500万円」

神様「よっし! さすがため込んでるヤツ集中して電話した甲斐があった!」


神使「それと、私も少し寄付させて頂きます」

神様「おっ!」


神使「私からは300万を」

神使「そんなに寄付して大丈夫か!?」

神使「これでも、階位は最高位ですからお給料は貰っていますので」

神使「恩に着る」


神使「あと、神使仲間の友人からも合わせて500万頂きましたので」

神使「そうか・・・ わざわざすまない」


神使「合計すると3000万円となります」

神様「ありがたいな」


神使「目標額まであと2000万ですね・・・」

神様「う~ん・・・」

神使「神宮に掛け合ってみますか?」


神様「私の倉庫に眠ってる物を売ったら多少は金になるかなぁ?」

神使「・・・・・・」


神様「お前、明日神宮に書類出しに行くよな」

神使「えぇ、まぁ・・・」

神様「金になりそうな物売って足しにしてくれない?」

神使「(マズいですね。 表に出すと歴史が変わってしまうかも知れません・・・)」

神様「どったの?」

神使「いえ、別に・・・」


神様「私ももっと身銭切りたいんだけどなぁ~」

神使「神様は十分頑張ったと思いますよ?」


神様「給料の前借りって出来るのかなぁ? ちょっと聞いてきてくれる?」

神使「はぁ」

神様「借りられるようだったら寄付金に回して」

神使「一応聞いてみます」


神様「あっ、それと倉庫から1つ持ってきて貰いたい物があるんだけど」

神使「?」



―――翌日


神使「では、神宮に書類を提出して参りますので」

神様「よろぴこ~」


神使「遅くなりますが今日中には戻りますので」

神様「ん。 お土産よろ~」



―――神宮


神使「さて、資料の提出も終わりましたし・・・ 倉庫に行ってみますか」


 テクテク




―――神宮・奥社(神ちゃん倉庫)


 ギィー


神使「先日来たときは暗くてよく分かりませんでしたが、凄い量の荷物ですね・・・」

神使「一応、中身を見てみますか」ガサゴソ


神使「ん? この箱“わおうの時のやつ”って書いてありますね。 何でしょう?」


 パコッ


神使「・・・・・・印鑑? こんなに沢山」ゴロゴロ

神使「金印? 奴國王印・・・? まさか!?」

神使「・・・・・・」


 パコッ


神使「え~と、見なかったことにしましょう」


神使「神様がもってこいと言っていた箱は・・・ あった! これですね」ゴソゴソ



神使「やはり、ここにある物は売ってはいけない気がします・・・ しかし、あと2000万・・・」


 ~神様『私ももっと身銭切りたいんだけどなぁ~』~


神使「身銭・・・ ですか」



―――夜・廃神社


神使「ただいま戻りました」

神様「お~ どうだった?」


神使「復興に関する全ての書類を受理して頂きました」

神様「お金は?」

神使「結構手こずりましたが・・・ クリアできそうです」

神様「グッジョブ! さすが犬ころ」

神使「・・・・・・いえ」

神様「?」


神使「それと、本殿の修復と社務所の建築は明日から始まりますので」

神様「結構かかるよね」

神使「神宮専属の建築部隊が総出で当たるので、月末までにはある程度形になってるはずです」

神様「早っ!」


神使「あっ、それと頼まれていた物を倉庫から持ってきました」

神様「サンキュー」

神使「何が入ってるんです?」


神様「いや、この神社ってご神体無いじゃん?」

神使「そういえば・・・」


神様「やっぱご神体がないと神社じゃないしね~」

神使「何をご神体にするんですか?」

神様「ん? これ」ゴソゴソ


 パコッ


神使「これは!!」



―――数週間後・任命式前日


神使「神社の方もだいぶ形になってきましたね」

神様「なんか・・・ 思ったより豪華じゃね?」


棟梁「ちょっと小ぶりだが、神宮と構造は同じだから見た目は申し分ねぇと思うぜ」

神使「こんなに立派にして頂いてありがとうございます」


棟梁「新しい神社なんか作ること滅多にねぇし、全力で行くぜ」

神様「良いね~ 全面的に任せるから好きにしてくれ」


神使「では神様、神宮の方へ行きましょうか」

神様「任命式は明日か・・・」



―――神宮・任命式当日


司会「え~ 以上が、大宮司の辞任式の流れとなります」

大宮司「あぁ」


司会「辞任式が終わった後、そのまま名誉宮司の任命式に移ります」

大宮司「そうか・・・」


司会「では神様、今打ち合わせした通りの進行でお願いします」

神様「ん」


祭儀神「神ちゃん、神宮での祭儀なんてどのくらいぶりだ?」

神様「ん~・・・ たぶん最後にやったのは500年以上前だと思う」


司会「あの・・・ やはり祭儀神様が執り行った方が良いのでは・・・」

大宮司「神様はこんななりでも神宮の神だ。 失礼だぞ?」

司会「申し訳ございません・・・」

神様「いや、大宮司の発言の方が失礼な気がするんだけど・・・」


祭儀神「でも、神宮は面倒な手順が多いしやっぱ神ちゃんは副神の方が―――」

神様「C子嬢は元気か?」ボソッ

祭儀神「・・・・・・」


司会「祭儀神様もこう言っておられることですし・・・」

祭儀神「やっぱ神ちゃんが代表神で行こう」

司会「え!?」

祭儀神「うん、任命式の代表神は神ちゃん以外考えられないと思う」

神様「そうだろ?」


司会「しかし・・・」

祭儀神「まぁ、俺が副神で付くから何かあったらフォローするさ」

司会「はぁ・・・ では、式次第通り恙なくお願いいたします」



―――控え室


 ガラガラ


神使「あっ、神様お打ち合わせは終わりましたか?」

神様「終わったー」

神使「では、お着替えを」

神様「ん」ポイポイ


神使「もう、また脱ぎ捨てて・・・ シワになっちゃいますよ」


神様「もしかして、そこにかかってる装束着るの?」

神使「はい。 とってもご立派なご装束ですよね」

神様「うへ~ 着るの面倒くさそ~」

神使「私が着付けしますので」


神様「前にお前に買ってもらったやつが良い」

神使「あれは簡素な物なので、このような席で着用される物ではないのですが・・・」

神様「動きやすいしあれが良いの!」

神使「はぁ・・・」


神様「お前も、もう少し動きやすいのにしておけ」

神使「今回はそれほど動かないので問題ないと思いますが・・・」

神様「全力ダッシュ出来るくらいにしておいた方が良いぞ」ニヤッ

神使「?」



 ガラガラ


祭儀神「あっ、神ちゃん着替え中だったか」

神様「なに?」

祭儀神「すまん、後で出直す」

神様「あ~ 気にしないでいいよ」


祭儀神「ん? 神ちゃん着る服が違うんじゃないか?」

神様「これで良いんだよ」

祭儀神「まぁ、俺はどっちでも構わないが・・・」


神様「何か用か?」

祭儀神「任命式の手順だけ最終確認しようと思ったんだが」

神様「・・・・・・」

祭儀神「?」


神様「悪い犬ころ、ちょっと席を外してくれるか?」

神使「? 分かりました」


 ガラガラ ピシャッ



祭儀神「神使は良いのか?」

神様「あぁ・・・」


祭儀神「そんな事より神ちゃん! なんでC子嬢のこと知ってんだよ!」

神様「うひゃひゃ、安心しろ。 誰にも言わないから」

祭儀神「頼むよ」


神様「それより、任命式の時にさぁ・・・」

祭儀神「?」



―――任命式


司会「以上をもちまして大宮司の辞任式を終了いたします。 引き続き名誉宮司の任命式を執り行います」

司会「代表神様が変わりまして内宮神籍 神様が代表神、神宮 祭儀神様が副神をお務めされます」


神使「神様、祭壇へ上って下さい」ボソッ

神様「あぁ」トテトテ


司会「神使君、神様のご装束が指定の物と違うんじゃないか?」

神使「申し訳ありません・・・」

司会「君も略式のようだが?」

神使「・・・・・・」

司会「後で顛末書を提出しなさい」

神使「はい・・・」



神様「・・・・・・」トテトテ


司会「それでは、名誉宮司任命の御神勅を代表神様より頂きます」

司会「ご列席の皆様、御神勅が始まりましたらご発言はお慎み下さい」

一同「」フカブカ


祭儀神「皆、表を」

一同「」サッ


神様「大宮司、長きにわたり神宮での奉職ご苦労であった」

大宮司「」フカブカ


神様「貴殿が神宮に残した功績は計り知れない。 神の代表として深く礼を申す」


神様「・・・ここに列席している皆も周知の通り私は神階も低く自身の神力も使えぬ故、神としての存在意義は薄い」

神様「大宮司はそんな私に巫女の奉務を任せ、皆と接する機会を与えてくれた」

神様「私は、お前に救われた。 この場を借りて感謝の言葉を述べさせて頂きたい」


神様「大宮司、ありがとう」

大宮司「・・・・・・」フカブカ


神様「きっと、私のように大宮司に救われた者も沢山いることであろう」

神様「そんな貴殿の功績を称え、神を代表し新たな職務を任命する」



神様「神勅!」

一同「」フカブカ



神様「貴殿を・・・ のんびり村神社の宮司に任命する!」

大宮司「!?」


 ザワザワ


司会「神様、予定と違う発言は―――」

祭儀神「神勅の発令中である! 言葉を慎め!」

司会「!!」フカブカ


 シーン


神様「大宮司、私は神力が使えない。 だから、どんな手を使ってでも願いは叶える」

大宮司「・・・・・・」


神様「其方の願い、私が責任を持って成就する」

神様「それが私のやるべき事であり、存在できるたった一つの理由だ」

大宮司「・・・・・・」フカブカ


神様「以上! 代表神 神様より神勅を申し伝えた!」


一同「・・・・・・」ポカーン


神様「犬ころ! 逃げるぞ!」ダッ ダッ ダッ

神使「え? ちょ、神様!」


神様「ダッシュだ犬ころ!!」

神使「神様~ 待って下さい~」


ダッ ダッ ダッ



祭儀神「ふっ、はっはっはっ! さすが神ちゃん、やっぱ最高だ!」ハッハッハッ

大宮司「・・・・・・神ちゃん」フッ



ありがとう



―――数日後


 のんびり村~ 終点です
 プシュー


大宮司「のんびり村・・・ 懐かしいな」


 神様「よっ!」

大宮司「神ちゃん・・・」



―――田舎道


 テクテク


神様「どうだ? 数十年ぶりの故郷は」

大宮司「昔と何も変わっていない気がする」


神様「着いて早々で悪いけど、先にお前の新しい勤務先に直行だ」

大宮司「廃神社の宮司に任命するなんて神ちゃんも何を考えているんだか・・・」


神様「面白かっただろ?」

大宮司「あの後は大変だったんだぞ?」

神様「私も~ 10分おきに電話かかってきた。 全部無視してるけど」


大宮司「神勅は発令されたら出した神以外で取り消しは出来ないもんな」

神様「久しぶりに全力で逃げたよ」

大宮司「相変わらず逃げるのは得意だな」ハハッ

神様「褒めるな、褒めるな」テレッ

大宮司「褒めてないぞ?」

神様「・・・・・・」


大宮司「しかし、廃神社か・・・ 先が思いやられるよ」

神様「綺麗にしておいたから大丈夫~」


大宮司「廃社申請時の写真を見たよ。 あれをどう綺麗にしたのか楽しみだね」ハハッ

神様「結構頑張ったつもり」

大宮司「それは、ますます楽しみだ」


神様「おっ、見えてきた」

大宮司「ん? あれは・・・・・・」



―――新のんびり村神社


大宮司「・・・・・・」

神様「どうだ? “新のんびり村神社”の出来は」


大宮司「これは・・・ 一体・・・」

神様「裏側はまだ工事中だけど、今日からすぐに執務は行える状態になっている」

大宮司「まさか、復興させたのか!?」

神様「元神宮の大宮司が奉職する神社だ。 それなりの体裁は整えておかないとね~」


大宮司「あの廃神社をここまでにするなんて・・・ ほとんど新築じゃないか!」

神様「まぁ細かい物はもらい物だけど。 建物は全部新築だ」


大宮司「ここまでの物を作るなんて相当なお金が必要なはずだ。 そんな大金の決済など私の所に来ていなかったぞ?」

神様「そりゃそうだよ。 神宮からの復興費用なんて大した予算しかもらえなかったし」


大宮司「まさか、神力を使って!?」

神様「私が自分の神力を使わないことくらい知ってんだろ?」

大宮司「・・・・・・」


神様「さっ、本殿へ」



―――本殿


大宮司「立派な本殿だ・・・」


神使「規模は小さいですが神宮と同じ仕様で作られています」

大宮司「神使君」

神使「こんにちは、さぁ本殿の中へ」


 ギィー


大宮司「!?」

女「兄さん、久しぶり」

大宮司「妹か!」


女「何十年ぶりかしら?」

大宮司「・・・・・・そうだな。 元気だったか?」

女「なんとか。 兄さんも元気そうで良かった」

大宮司「申し訳ない、戻るのが遅れた」


神様「さてと、大宮司?」

大宮司「?」


神様「実は、ここのご神体はすでに紛失していて無くなっている」

大宮司「あぁ、廃社申請書類にもそう書かれていたな」

神様「そこで新しいご神体を用意した」

大宮司「新しい?」


神様「神使」

神使「はい」スタスタ


 コトッ


大宮司「この箱は?」

神様「お前の務めるこの神社に相応しいご神体が入っている。 開けてくれ」

大宮司「・・・・・・」


 パカッ


大宮司「これは!?」

神様「どうだ」


大宮司「神宮のご神体じゃないのか!?」

神様「似てるだろ?」

大宮司「レプリカか」


神様「千年前に神宮で盗難が頻発してな。 念のためオリジナルのご神体を私が保管してダミーを神宮に入れたんだよ」

大宮司「と言うことは・・・これは・・・」

神様「オリジナルの方だ。 神宮にあるダミーはそのまま別の神力が入ってしまったから動かせなくなっちゃって」

大宮司「・・・・・・」


神様「このオリジナルには、私の昔の神力が入っている。 自分で言うのも何だけど結構強い神力だぞ?」

大宮司「そうだったのか・・・」


神様「由緒は誰にも言うなよ。 問題になって私の給料がまた減るから」

大宮司「減給だけではすまないレベルの大問題だな」

神様「うっ・・・」

大宮司「ははっ、私はもう神宮の人間ではない。 神ちゃんをどうこうする権限はないよ」ハハハッ

神様「焦った・・・」ホッ


大宮司「立派なご神体だ。 それにこのご神体を奉るに相応しい本殿」


神様「本殿もだけど、鳥居も立派だったろ?」

大宮司「あぁ、当時の倍は大きいな」


神様「新しくお守りの授与所も作った」

大宮司「あぁ、沢山参拝者を呼ばないとな・・・」


神様「社務所も新設した!」

大宮司「あぁ・・・ なんて立派な・・・」


神様「今日からここがお前の新しい奉職先だ!」

大宮司「・・・・・・」


神様「大宮司、お前の願いは成就できただろうか?」

大宮司「あぁ・・・ いや、ありがとうございます・・・ 神様」フカブカ


神様「よかった」ニコッ

あとちょっと!



―――翌日・田舎道


 テクテク


神様「うへぇ~ 二日酔いで頭痛い・・・」

神使「神様コーラしか飲んでないじゃないですか・・・」

神様「お前、宮司と一緒にあれだけ飲んだくせによく平気だな」

神使「かなり強引に飲まされたね・・・ 大宮司ってお酒が入るとあんなになるんですね・・・」


神様「あ~ 迎えコーラ飲みたい・・・」

神使「バス停まで行けば自動販売機がありますから辛抱して下さい」


神様「いや~ でもあの予算でよくあそこまで立派な物が出来たよな」

神使「・・・・・・」

神様「どうした? 犬ころ」


神使「実は、予算がかなりオーバーいたしまして・・・」

神様「まぁそうだろうな。 どう見ても立派すぎたもんな」

神使「えぇ、棟梁がかなり頑張ってしまいまして」

神様「大丈夫なのか? 棟梁は」

神使「・・・・・・」


神様「神使君?」

神使「不足分は神様にローンが組まれています」

神様「・・・・・・」

神使「神様機構の“神専用神社建て替え長期ローン”が神様名義で・・・」

神様「・・・・・・えっと~ おいくらかしら?」


神使「元々足りなかった2000万と超過分の5000万の合わせて7000万円が60年ローンです」

神様「ぇっ・・・・・・」


神使「毎月10万円が60年間、神様の給料から引かれていきます」

神様「ちょっと待てよ! 超過分だけで5000万!? 1億もかかってんのかよ!」

神使「神様が棟梁に“全面的に任せるから好きにしてくれ”なんて言うからですよ・・・」

神様「だからって倍も超過するかよ普通!!」

神使「何を言っても手遅れです・・・」

神様「っていうか、毎月10万って私の手取り以上なんだけど・・・」

神使「今月で減給が解除されるので神様の手取りは14万に戻るのですが」

神様「え~ 60年も4万で過ごすの!? 無理だろ~」


神使「それが・・・ 任命式の件で来月からまた減給処分となりますので」

神様「・・・・・・」

神使「来月から、手取り50円となります」


神様「あっ、蝶蝶飛んでる」

神使「蛾です」

神使「・・・・・・」


神使「神様、現実逃避したい気持ちも分かりますが完済して下さいね」

神様「マジかよ~!!」

神使「身銭を切れて良かったじゃないですか」

神様「切りすぎだろ! 魂まで切っちゃってるよ!」


神使「二人でコツコツ払えば大丈夫です!」

神様「おうち帰りたい・・・」


神使「早期完済を目指して、次の勤務先でも頑張りましょう!」

神様「嫌だ~ だれか私に寄付してくれーーー!!!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#9 ―END


おわた


神使「神様、色々とお声がかかっているようですが」

神様「いいね~ どこでも行くよ?」


神使「でも、神宮からは戻ってこいとは言われないんですね」

神様「・・・・・・」

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


神様「お前! ふざけるのもいい加減にしろ!!」

神使「・・・・・・」


神様「私が・・・ 私が、どれだけ・・・」

神使「・・・・・・」


神様「もう・・・ 二度と私の前に顔を見せるな」スタスタ




神使「あっ、神様・・・」


~あらすじ~


神様「私は神様! 神宮に籍を置くとってもかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「神宮が誇る最悪の問題児。減給左遷を繰り返すダメ神です」


【#10】


―――とある廃神社


神様「」ムスッ

神使「あの・・・ 神様?」

神様「」プイッ


神使「お猿さんに本気で怒っても仕方ないかと・・・」

神様「あの猿、私の団子盗んだんだぞ!」

神使「きっとお腹が空いていたんでしょうし・・・」


神様「もう3日連続なんだよ! そこそこデカい町なのに何で猿がいるんだよ!」

神使「裏がすぐ山ですので・・・ 神様が気をつけて食べれば良いのでは」


神様「お前犬ころだろ! 猿とは仲悪いんじゃないのかよ!」

神使「いえ、別に・・・ 私狛犬ですし」

神様「猿の肩を持つのか! 私はお前をそんな子に育てた覚えはないぞ!」

神使「育てられた覚えがないのですが・・・」

神様「フンだ!」プイッ


神使「ほら、拗ねてないでお仕事行きますよ?」

神様「嫌だね」

神使「今回は神様も喜ぶと思うんですが・・・」

神様「どうせ、また私の過去が暴かれて減給処分に発展するパティーンだろ?」

神使「・・・・・・」


神様「大体仕事する度に減給になるって何だよ! 私ここで寝てる!」

神使「では、私一人で視察に行ってきますよ? “巫女カフェ”に」

神様「巫女カフェ!?」ガバッ


神使「お留守番よろしくお願いしますね」

神様「ちょ、ちょっと待った!!」


ノープランだけど突き進む!



 テクテク


神使「やはり巫女という言葉には勝てませんでしたか・・・」

神様「当たり前だろ、私は本職だぞ」

神使「いえ・・・ 本職は神だと思うのですが・・・」


神様「って言うか巫女カフェって何だよ」

神使「神社を模した喫茶店のようで、名前の通り巫女さんが接客をしてくれるそうです」

神様「いいね~ でも、そんなの視察してどうするんだ?」

神使「実は働いている巫女さんが本職ではないかと神宮に問い合わせがあったようで・・・」

神様「本職?」


神使「神社で奉職している巫女が、そのような場所で働いているというのは問題もありますので」

神様「それを調べると?」

神使「もし本職ですと色々と問題もございますので」

神様「別に仕事が終わった後なら個人が何しても良いだろうが」

神使「神社で奉職するというのは仕事とは違いますので・・・ “奉職”ですから」

神様「うわっ、なにその労働基準法の抜け道みたいな言い方」

神使「・・・・・・」

神様「夜くらい好きにさせろよ」

神使「しかし・・・」

神様「神社に居ないときまで管理されるとか、どんだけブラックだよ」


神使「ですから、通常奉職時間内でもお店が開いているんです」

神様「え?」

神使「お昼から夜9時まで営業しているようです」

神様「じゃぁ本職の巫女じゃないだろ。 普通なら神社に居るはずだし」

神使「ですよね・・・」

神様「どうせちょっとお行儀の良いコスプレ巫女ちゃんだろ?」

神使「でしたら問題ないのですが・・・」


神様「まぁチョロっと見てすぐ帰ろう。 本職か偽物かなんて見たらすぐ分かるし」

神使「そうですね」



―――巫女カフェ


神使「ここのようですね」

神様「すげー 玄関に鳥居があるじゃん」

神使「手水舎まで・・・ 以外と凝っていますね」


神様「んじゃ入ってみますかね」スタスタ

神使「神様、手水しなくて良いんですか?」

神様「・・・いや別にいいだろ。 それに私は十分浄らかだし~」

神使「そうですか・・・ そうですか?」

神様「なんで疑問形で言い直したんだよ!」ゲシッ



 カランコロン


神様「すいませ~ん」

巫女A「は~い」

神使「入っても大丈夫でしょうか?」

巫女A「何名様ですか?」

神使「2人です」

巫女A「ご案内いたします。 奥のお席へどうぞ」


神様「お~ 内装が神社っぽいな」

神使「結構凝っていますね」


巫女B「こちらがメニューになります」

神様「ども~」ペラ

神使「あの・・・ こちらのお店は席料とかかかるのでしょうか?」

巫女B「お飲み物と別にお席料として200円お納め頂いております」

神使「分かりました。 神様? 飲み物決まりましたか?」

神様「コーラは・・・ あった。 初穂料300円?」

巫女B「神社ですので」ニコッ

神使「注文一回ごとにおみくじも付くんですね」

神様「良いアイデアじゃん」


神使「では、コーラ1つと私はブレンドでお願いします」

巫女B「ただいまお持ちいたしますので少々お待ち下さい」ペコッ


神様「結構良い雰囲気じゃん」

神使「お値段もそんなに高くないですね。 席料も良心的ですし・・・」

神様「でも喫茶店で席料って変じゃね?」

神使「いえ、以前行ったメイド喫茶は席料で1時間500円取られましたので」

神様「神使君ってそういう所行くんだ・・・」

神使「・・・・・・昔、友人に連れて行かれただけです。 すいません」

神様「別に謝られても・・・」


神使「えっと・・・ あっ、従業員の方が着ている巫女装束はきちんとしたものですね」

神様「そうね、本職と同じものだろうな」

神使「それで皆さん本職と勘違いされているのでしょうね。 普通はピンクだったりミニスカのような袴ですから」

神様「神使君詳しすぎない?」

神使「・・・・・・1杯だけ飲んで帰りましょう」

神様「うん・・・」



――― 3時間後


神様「どうよこの話!」

巫女A「神ちゃん面白い~」ゲラゲラ

巫女B「最高! お腹よじれる」ゲラゲラ

神使「・・・・・・」


神様「でしょ? 実はこの後が面白くてさ~ 私がオマルに跨がった瞬間―――」

神使「あの・・・ 神様?」

神様「あ? なんだよ、今良いところなんだよ」


神使「もう3時間もいるのですが・・・ そろそろ・・・」

神様「え~ こんな事言ってるけど私帰った方が良い?」

巫女A「ダメダメ! 続き聞かないと夜眠れない」

巫女B「せめてこの話だけでも!」

神様「だ、そうだ。 犬ころ、お前カウンターでミルクでもペロペロしてろ」

神使「・・・・・・」



―――カウンター


神使「はぁ~・・・」

C子「面白い方ですね」

神使「それだけが取り柄でして・・・」

C子「ふふっ、何かお飲みになりますか?」

神使「では、アイスコーヒーをお願いします」

C子「日本酒もございますよ?」

神使「奉務・・・ いえ、仕事中ですので」

C子「巫女カフェに来るのがお仕事なんですか?」フフッ

神使「!? いえ、その・・・」

C子「はい、アイスコーヒーです」

神使「ありがとうございます」


神使「面白い作りのお店ですよね」

C子「巫女カフェですから、内装もそれなりに」

神使「表に手水舎まであるなんて本格的です」

C子「お詳しいんですね」

神使「いえ・・・ その・・・ 神社巡りが趣味でして」ハハハッ

C子「そうなんですか」



 ドン ドン


神使「太鼓?」

C子「あっ、そろそろ閉店の時間ですね」

神使「もうそんな時間・・・ すいません、お会計をお願いします」

C子「あちらで下着姿になって踊っているお嬢さんと一緒で良いですか?」

神使「・・・・・・はい」

C子「1800円お納め下さい」


神使「ではこれでお願いします」」

C子「初穂料は奥の賽銭箱の方へお納め下さい」

神使「賽銭箱・・・ ですか?」

C子「神社ですから」ニコッ



神使「神様?」


神様「うひゃひゃ、どうよこの腰のひねり具合!」クネクネ

巫女A「もうダメ、神ちゃん面白すぎる」ゲラゲラ

巫女B「お願い、もう帰って! これ以上笑ったら明日に響く」ゲラゲラ

神使「コーラだけでよくそこまで羽目を外せますね・・・」


神様「犬ころも一緒に踊る?」クネクネ

神使「踊りませんよ・・・ 閉店だそうですから帰りますよ」

神様「もう閉店なの?」

神使「もうって・・・ 夜9時過ぎてますが」

神様「しゃーねーな。 んじゃ帰るか」テクテク

神使「神様、服着て下さい・・・」


神様「おっ、犬ころお金持ってんじゃん。 くれ」

神使「これはお会計のお金です。 そこのお賽銭箱にお代を入れるそうです」

神様「賽銭箱?」


神使「これですね」

神様「へぇ~ 正面に神棚まであるよ」

神使「凝ってますよね」

神様「ちゃんとお願い事しとけ。 神宮より御利益あるかもよ?」

神使「何を言っているんですか・・・ でも折角ですからお願い事でもしておきますか」



 ジャラジャラ


神使「」パンパン


 フカブカ


神様「・・・・・・」

神使「よしっと」


神様「」ジィー

神使「どうされたんですか? 神棚をじっと見つめて」

神様「ん? いや・・・ 帰ろう」

神使「はぁ・・・」


神使「では、お邪魔いたしました」

C子「ご苦労様でした」


巫女A「神ちゃんまたねぇ~」

神様「うん、また来る~」


 カランコロン



―――帰り道


神様「あ~ 楽しかった!」ツヤツヤ

神使「結局閉店まで入り浸るなんて・・・ すぐ帰るって言ったじゃないですか」

神様「だって楽しかったんだもん」


神使「でも、あそこにいた巫女さん達はただのコスプレ巫女さんでしたね」

神様「いや、あれは本職だ」

神使「えっ!?」


神様「少なくとも私と一緒に居た巫女ちゃん達は本職の巫女」

神使「どちらかというと、カウンターにいた方が上品で巫女さんぽかったと思いますが・・・」

神様「見る目がないね~ だからお前はいつまで経っても犬ころなんだよ」

神使「・・・・・・」


神様「まぁどちらにしろ全員神社関係で働いた経験がある奴らだな」

神使「・・・もしよろしければ理由を聞かせて頂けますか?」

神様「巫女装束の着方が綺麗だった」

神使「それは理由にならないのでは・・・」


神様「巫女装束は普通の着物と違う巫女用の着方があるんだよ」

神使「でも、それだけで決めつけるのは・・・」


神様「仕草」

神使「はい?」

神様「わざと本職じゃないように見せていたが、時折見せる仕草までは隠せなかったようだ」

神使「そんな仕草なんてありましたか?」

神様「無意識のうちに手の置き方が叉手になってた。 あれはもう癖になっているな」

神使「え?」


神様「飲み物をお盆にのせて持ってくる時、鼻より上に高く掲げてた。 普通の人はあそこま高く掲げない」

神使「・・・・・・」


神様「あと、店内にあった神棚。 お札とお供えがあっただろ」

神使「神棚ですから普通かと」

神様「置き順が完璧すぎるし、用具が全部神宮指定の神具屋の品だった。 あれは一般には卸してないし」

神使「よくそこまで分かりましたね・・・」


神様「それだけじゃない。 “いらっしゃいませ”も“ありがとうございました”も言わなかっただろ?」

神使「そう言えば・・・」


神様「それに・・・」

神使「?」

神様「いや、ちょっとあの巫女カフェ調べる必要があるな。 面倒くさそ~」ハァ



―――翌日・廃神社


 チュンチュン


神使「神様、神様? 起きて下さい」ユサユサ

神様「んぁ・・・ 朝?」ポー

神使「朝ご飯の準備が出来ました」

神様「ふぁ~」ヨイショ


神使「お好きな物を先に選んで下さい」

神様「またコンビニのおにぎりかよ・・・」

神使「文句言うなら朝ご飯抜きですよ?」

神様「!? 私シーチキンとおかか!」

神使「はい、どうぞ」

神様「ん、いただきます」ペリペリ


神使「お茶です」コトッ

神様「モーニングコーラが良い」モグモグ

神使「変な言葉を作らないで下さい」


神様「ハァ~ でもコンビニのご飯も飽きたな・・・」

神使「この神社、台所のような設備がありませんので・・・ 廃神社ですし」

神様「なんで今回は泊まるところが旅館じゃなの?」

神使「外泊するお金なんかありません」

神様「まじで!? そこまで金欠!?」

神使「神様の給料50円ですよ? 私も連帯責任で減給になりましたし」

神様「そ、そうね・・・」モグモグ


神使「それより、巫女カフェの方はどうされるんですか?」

神様「あ~、お前ここら辺にある神社をちょっと調べてくれる?」

神使「それでしたら簡単にですが事前に調べてありますが」

神様「さすが犬ころ、仕事が早いね~」


神使「20km圏内で、神職か神の居る神社は1件もありません」

神様「そうなの?」

神使「はい。 無人の神社も私たちの居るこの廃神社だけです」

神様「う~ん」モグモグ


神使「何か気になることでも?」

神様「少なすぎね?」

神使「そう言われれば・・・」


神様「そこそこ人もいる街なのに20km以内でこの廃神社しかないなんて変だと思うの」

神使「確かに・・・」

神様「まぁいいや。 これ食べたら巫女カフェにもう一度行ってみよう」

神使「分かりました」



―――巫女カフェ前


神様「まだ開いてないな」

神使「オープンはお昼からですからまだ2時間程ありますね」

神様「ん? なんか張り紙してないか?」

神使「昨日は気づきませんでしたね」


神様「巫女募集・・・」

神使「カフェ参拝者のお相手とお掃除など・・・とありますが」

神様「時給900円か・・・」


神使「昨日来たときは私達しかお客さんがいませんでしたけど忙しいんですかね?」

神様「暇な喫茶店で巫女・・・ いいねぇ~」ニヤッ

神使「まさか神様・・・」

神様「大丈夫、業務時間が終わってから働くから」

神使「ダメです。 それに神には業務時間などという概念はございません」

神様「は!?」

神使「神と神使は人と違いますから」

神様「だからその労働基準法の抜け道みたいな表現やめろよ」

神使「・・・・・・」


神様「金欠なんだろ? 私がここで夕方5時から閉店の9時まで働けば1日3600円もらえるぞ?」ニヤッ

神使「それは・・・ 魅力的ですが・・・ でも神宮にバレたらマズいですよ?」

神様「大丈夫だよ、バレねぇよ」

神使「・・・・・・」

神様「ちょっと行ってくるわ。 犬ころはここで待ってろ」


 スタスタ



―――店内


 カランコロン


神様「すいませ~ん」

C子「!?」

神様「バイト募集の張り紙見てきたんですけど」


C子「あら? またお会いしましたね」

神様「昨日はどうも~ とっても楽しかった!」


C子「ここでバイトしたいんですか?」

神様「うん・・・ じゃなかった。 はい!」

C子「奥のテーブルに座っていて下さい」

神様「はーい」スタスタ



―――数分後


C子「お待たせ」

神様「さっき神主さんみたいな格好してたね」

C子「あ~ 気にしないで」

神様「似合ってた」

C子「ありがとう」ニコッ


神様「表に貼ってあるバイト募集のポスターを見て・・・」

C子「どうしてここでバイトしようと?」

神様「巫女さんが大好きなので」


C子「着ている衣装が?」

神様「それもそうだけど・・・ 実は私、神社で巫女のご奉仕をしていたことがありまして」

C子「え!?」

神様「一通りの巫女の仕事は出来るよ。 でも喫茶店だからあんまり役に立たないかな?」

C子「・・・・・・」

神様「ダメ?」


C子「何か特技はある?」

神様「う~ん・・・ 巫女舞を少々」

C子「あら、得意な舞は?」

神様「一応全部舞える・・・ 舞えます」

C子「全部!?」


神様「神宮が定めている物は一通り」

C子「・・・・・・」

神様「?」


C子「えっとー 神さまって信じてる?」

神様「信じるというのは?」

C子「お願いをすると叶えてくれると思う?」

神様「う~ん、叶えてはくれると思うけど神も少ないだろうし全部は無理かなぁ」


C子「・・・分かりました。 今日はありがとう」

神様「え? やっぱダメ?」

C子「いつから来られますか? できれば土日中心でお願いできると助かるのですが」

神様「もしかして採用!?」

C子「はい」ニコッ



―――土曜日


神使「神様、忘れ物はないですか?」

神様「うん」

神使「接客業なんですからきちんとして下さいね?」

神様「大丈夫だよ。 お守り売りで鍛えた神ちゃんトークは完璧だ!」

神使「お守り授与でそんなトーク必要ないと思うんですが・・・」


神様「んじゃ犬ころ、お留守番よろぴこ」

神使「私も後ほど伺いますので」

神様「え~ 金かかるし来なくていいよ」

神使「そう言わず」


神様「お前は、私がバイト中に近隣の神社に関してもう少し詳しく調べておいてくれ」

神使「・・・・・・」


神様「犬ころ?」

神使「分かりました。 超特急で調べてからコーヒーだけ飲みに伺います」

神様「お、おう」


神使「では行ってらっしゃいませ」

神様「行ってきま~す」



―――巫女カフェ


C子「神ちゃん、4番席にこれ持って行ってくれる?」

神様「ほいさ」


神様「お待たせいたしました、お抹茶になります」コトッ

客「注文良いですか?」

神様「はい、今行きます」スタスタ


客「すいません、メニューってありますか?」

神様「今行きます~」スタスタ


C子「神ちゃん、これ3番席の分」

神様「はい~」スタスタ



―――夜


神様「はぁ~・・・ ちかれた・・・」グテッ

C子「お疲れ様でした」


神様「休みの日がこんなに人来るとは思わなかった・・・」

C子「ふふっ、結構遠くからも来てくれるのよ?」

神様「なんで一番多い土日に昨日の二人は来ないの?」

C子「えぇ・・・ 他の仕事があって・・・」

神様「他の?」

C子「・・・・・・」


神様「C子さん?」

C子「あっ、ごめんなさい。 日曜もたくさん来るからよろしくね」ニコッ

神様「マジっすか・・・」



 カランコロン


神使「遅くなりました」ハァハァ

神様「犬ころ?」


神使「アイスコーヒーを」

神様「もう閉店だけど」

神使「・・・・・・ぁ」



―――廃神社


神様「はぁ~ ちかれた」

神使「調べ物が手こずりまして巫女カフェに行くのが遅れてしまいました・・・」シュン

神様「だから無理してこなくてもいいのに」


神使「明日は! 明日は絶対行きますので!」

神様「お、おう・・・」


神様「で、何か分かったか?」」

神使「はい、神宮から近辺の神社マップを取り寄せまして」

神様「神社マップ?」

神使「神宮が管理する全国8万の神社が地図上に掲載されている資料です」

神様「へぇ~ そんなのあるんだ」


神使「これがこの近辺の神社マップです」ペラッ

神様「ん~・・・ この廃神社しか掲載されてないな」


神使「念のため過去のマップも取り寄せたのですが、見て下さい」ペラッ

神様「3年前のマップ?」

神使「今のマップには載っていない神社が2社掲載されています」

神様「本当だ」

神使「しかも両方とも比較的大きな神社です」


神様「あれ? この場所って・・・」

神使「はい、一つは今の巫女カフェがある場所です」

神様「昔あの場所に神社があったって事か・・・」


神使「神宮の資料によりますと“よわよわ稲荷神社”と記載がありました」

神様「よわよわ稲荷・・・」

神使「ご存じですか?」

神様「いや、はじめて聞いたな」


神使「よわよわ稲荷神社は3年程前に廃社になっています」

神様「廃社・・・ ということはもう一つも?」

神使「いえ、もう一つは“おらおら神社”というらしいですが今は神宮の管轄外となっています」

神様「管轄外?」

神使「えぇ、こちらは3年前に神宮と包括契約を解除して独立しています」

神様「なんだそれ?」


神使「どうも一方的に神宮へ契約解除を通知してきたそうです」

神様「管理外になったから神宮の神社マップに載っていないという事か・・・」

神使「そういう事になりますね」

神様「通りで神社の間隔が開きすぎていたはずだ・・・」


神使「同じ時期に2つも、明らかに変ですよね」

神様「そうだな。 何かありそうだな」

神使「これ以上は神宮の資料だけでは調べるのが難しいかと」

神様「そうか~・・・」


神使「神様は明日も巫女カフェに出勤ですか?」

神様「うん。 日曜は人がいっぱい来るから私の舞でも見てもらおうかと思って」

神使「神様の巫女舞!?」

神様「なんだよ」

神使「神様巫女舞だけはお上手ですからね」

神様「神使君さぁ、相変わらずトゲのある言い方じゃない?」

神使「いいえ、神様の舞は群を抜いて他の巫女さんより優雅です。 私、以前拝見して涙が出ました」

神様「おっ、褒められた?」

神使「明日は絶対に行かないといけませんね」

神様「いや、だから金勿体ないから来なくていいって」

神使「神様のバイト代もあることですし今月は余裕もありますので」」

神様「巫女カフェで貯めたバイト代を巫女カフェで使ってどうすんだよ!」



―――日曜日


 カランコロン


神様「ご苦労様です」ペコリ

神使「お疲れ様です神様」ペコリ

神様「何だ、犬ころかよ」


C子「あら、こんにちは」

神使「お邪魔いたします」


神様「ねぇ、お前もしかして暇なの?」

神使「そんなことはございません。 これも仕事ですので」ニコッ

神様「ハァ~ まぁいいや。 何飲む? ミルクでもペロペロするか?」

神使「しませんよ・・・ ブルーマウンテンをお願いします」

C子「はい、ありがとうございます」

神様「なに高いの頼んでんだよ・・・ ったく」


神使「神様が千早を羽織っているの久しぶりに見ました」

神様「あ~ 巫女舞するからね」


神使「巫女舞はこの後ですか?」

C子「えぇ、もうじき始まりますので楽しみにしていて下さい」

神使「間に合って良かったです」

神様「でも一人だからあんまり期待すんなよ」


C子「それじゃぁ、神ちゃんそろそろお願いできる?」

神様「オッケ~」

神使「カウンターからですと見にくいので、私は前のテーブル席で拝見させて頂きます」スタスタ

神様「神使君・・・ なんでそんな必死なの?」トテトテ



 カランコロン


男「お邪魔するよ」

C子「・・・・・・」キッ

男「そんな怖い顔しないでくれよ。 客だぞ?」


C子「何かご用でしょうか?」

男「近くまで来たのでね。 ウイスキーを」

C子「はい」


男「ん? あの子は? 初めて見る顔だな」

C子「昨日からお手伝いに来てもらっているバイトの子です」



 ♪~~~


男「ほぉ、巫女舞か・・・ これは中々のものだ」

C子「以前、どこかの神社で巫女の経験があるそうです」


男「うちの巫女とは比較にならない綺麗な舞だな・・・ 良いのを見つけてきたな」

C子「・・・・・・」



 ~~~♪


神様「浦安の舞でした」ペコリ


  パチパチ  パチパチ


男「君! ちょっと話をしたいんだが良いかね?」

神様「わたし?」

男「あぁ」


神様「犬ころ、ここにいてカウンターの男と私の会話を聞いてろ」ボソッ

神使「分かりました」ボソッ


神様「なに?」トテトテ

男「ここに座って。 何か飲むかい?」

神様「奢り?」

男「あぁ、好きなものを」

神様「じゃぁコーラフロートビッグサイズで」


男「とても綺麗な舞だったよ」

神様「いや~ 巫女としては当然の嗜みってやつ?」

男「神社で巫女をしていたそうだね」

神様「少し前に」


男「どこの神社だい?」

神様「えっと~・・・ 伊勢の方?」

男「伊勢?」


C子「はい神ちゃん、コーラフロートのビッグサイズ」コトッ

神様「やった~!」

男「・・・・・・大きいな」

神様「値段もビッグだから自腹じゃ頼めないんだよね~」

男「そ、そうか・・・」

神様「いただきま~す」ゴクゴク


男「・・・君、名前は?」

神様「かわゆい神ちゃん」

男「その・・・ かわ・・・ え~と、神ちゃんに相談があるんだが」

神様「なに?」


男「うちで巫女のバイトしてみないか?」

C子「!?」

神様「え~、引き抜き~? でもここでバイトしてるし~」

C子「そうです! おらおら神社は巫女が沢山居るじゃないですか!」

神様「おらおら神社?」

男「知っているかい? 私はそこで宮司をしていてね。 時給は1200円でどうかな?」

C子「・・・・・・」


男「是非、うちの神社で巫女舞を舞ってもらいたいと思ってね」

神様「いいね~ でも、ここのバイトもあるから平日の夕方までなら良いけど?」


男「どうだC子君?」

C子「しかし!」

神様「ただし条件、時給1500円!」


男「良いだろう。 では明日の朝、おらおら神社に来てくれるかい?」

神様「オッケ~」

男「じゃぁよろしく頼むよ」

C子「・・・・・・」



――― 夜


神様「ほら、コーヒー」

神使「ありがとうございます」

神様「話は聞いていたか?」

神使「はい。 バイトなんか引き受けて大丈夫なんですか?」

神様「おらおら神社を調べるチャンスだ」

神使「しかし・・・」

神様「宮司の顔を見ただろ? “私悪者ですが何か?”みたいな滲み出る悪人面」

神使「見た目だけで判断するのは流石に失礼では・・・」

神様「あれ、相当やらかしてるぞ?」

神使「・・・・・・」

神様「それと、C子さんが男と話をしているときの表情も気になった」

神使「あまり仲は良くない感じですね・・・」



 ドンッ ドンッ


神様「おっ、閉店だ。 犬ころ、お前先に外で持ってろ」

神使「分かりました」


神様「えっと~ 犬ころの伝票はこれか・・・ って、こんなに頼んだの?」

神使「すいません・・・」

神様「私のバイト代一日分飛んでんじゃんよ」ハァ


神使「で、では入り口で待ってますので・・・ C子さんお邪魔しました」

C子「ご苦労様でした。 またお越し下さい」


 カランコロン


神様「さてと、んじゃ片付けちゃいますかね」

どうでもいいけど、神ちゃんがおマルに跨った瞬間何があったか気になって夜しか眠れない

>>241
俺も気になる


神様「♪~」フキフキ

C子「神ちゃんお疲れ様。 もう上がって大丈夫よ」

神様「でもまだ途中だよ?」


C子「お連れの方、外で待ってるんでしょ?」

神様「あ~ 犬ころだから気にしなくても」

C子「大丈夫、後は私で出来るから」

神様「そう? んじゃ帰るね」

C子「はい、ご苦労様でした」



神様「・・・・・・」

C子「どうしたの?」


神様「その神棚、ちょっとだけ見ても良い?」

C子「神棚?」

神様「興味があるというか・・・ ちょっとだけ」

C子「ふふっ、どうぞ」ニコッ


 スタスタ


神様「開けても大丈夫?」

C子「えぇ、いいわよ」



 ギィ


神様「あっ!」

C子「どうしたの?」

神様「ご神体に蜘蛛が巣張ってる」

C子「え?」

神様「何か掃くものある?」

C子「ちょっと待ってて。 確か奥の部屋にあったと思う」スタスタ


神様「行ったな・・・ 我、神体の神力を解放す」ボソッ


 ポワポワ


神様「やっぱり・・・・・・」



 スタスタ


C子「お待たせ、これで大丈夫かしら」


神様「ん? あ~」

C子「蜘蛛は?」

神様「逃げちゃった」

C子「そう、良かった」


神様「立派な神棚だね」

C子「ありがとう」ニコッ


神様「C子さんってどこの神社にいたの?」

C子「えっ?」

神様「この前、神主の格好してたから」


C子「あら、気になる?」

神様「稲荷系かな~」

C子「!?」

神様「・・・・・・」ジィー


神様「まぁいいや。 このご神体凄く立派だからきちんとしたお社に祀りたいね~」

C子「・・・・・・」


神様「じゃ、明日はおらおら神社に行ってくるから夕方こっち来るね」

C子「何かあったら連絡頂戴ね」

神様「はーい。 んじゃ、ばいびー」スタスタ


 カランコロン


C子「変わった子ね」フフッ



―――帰り道


神使「本当におらおら神社でバイトするんですか?」

神様「こんな都合の良い接点なんか他にないだろ」

神使「なんか心配です」

神様「大丈夫だよ。 私はこれでも神宮の巫女だぞ? 内宮の巫女長だぞ?」

神使「いえ・・・ 神宮の神だと思うのですが・・・」

神様「神の仕事より巫女の方が私には合ってるんです~」ベー

神使「神様の巫女好きにも困った物ですね・・・」ハァ

神様「うっせーよ!」ゲシィ


神使「あっ、コンビニで明日の朝食を買っていきます」

神様「そうね」



―――コンビニ


 ピヨピヨ


神様「私カゴ持つね~」

神使「ダメです」

神様「何でだよ!」

神使「アイスとお菓子を入れるからです」

神様「・・・・・・」


神使「明日の朝食だけ買いますよ?」

神様「分かったよ」チッ


神使「おにぎりと・・・ サラダも買いますか」


神様「ねぇ、コーラは良いだろ?」

神使「そういえば、そろそろ無くなりそうでしたね」

神様「んじゃ、これ」ゴロゴロ

神使「なんでこんなに缶コーラばかり・・・ 1.5リットルの1本で良いんじゃないですか?」

神様「は? お前、缶コーラとペットボトルコーラの味の違いも分からないの?」

神使「え?」

神様「だから、いつまで経っても犬ころなんだよ」ハァ

神使「・・・・・・」



―――翌日・おらおら神社


男「え~ 今日から巫女のバイトで入ることになった神ちゃんだ」

神様「神ちゃんです! よろしくお願いします!」ペコッ


男「詳しい仕事の内容は巫女長に聞いてくれ。 じゃぁ頼んだ」スタスタ


巫女長「私がおらおら神社の巫女長だ」

神様「よろしくお願いします!」ペコリ

巫女長「隣は巫女のA子君とB子君」


巫女A「あっ、この前カフェに来た子だ!」

巫女B「本当だ」

神様「あれ? ここの巫女さんだったの?」

巫女長「こら! 私語は慎め」

巫女A・B「すいません・・・」

神様「・・・・・・」ペコリ


巫女長「じゃぁ3人は境内の掃除から始めてくれ」



―――境内


 サァー サァー


神様「ねぇ、この神社って職員どのくらいいるの?」

巫女A「宮司以下神職が5人と、巫女が神ちゃん入れて10人かな」

神様「結構多いんだね」

巫女B「巫女使いが荒い神社だよ」

神様「ふ~ん」


巫女長「おいBグループ! 私語は慎めと言っただろ!」

巫女A・B「すいません!」ペコッ

巫女長「新入りも気をつけろよ」スタスタ

神様「」ペコッ


神様「あの巫女長、厳しすぎない? しゃべり方も男みたい」

巫女B「私達、陰では鬼軍曹って呼んでるけど」

神様「ふ~ん・・・ ところでBグループって何?」

巫女A「あ~ 元からこの神社にいた巫女さんがAグループ」

巫女B「他から来た私達がBグループって分けられてるの」

神様「他から?」

巫女A「私とB子ちゃんは、よわよわ神社っていうお社の巫女だったの」

神様「よわよわ神社!?」

巫女A「神ちゃん知ってるの?」

神様「ん? いや・・・」



巫女長「おい、Bグループ」

巫女A・B「はい!」


巫女長「本殿にお供えを運ぶからちょっと来てくれ。 バイトもこっちへ」

神様「はい」


 スタスタ



―――社務所


巫女長「バイトの君に本殿にお供えを運ぶ手順を教える」

神様「はい」


巫女長「お供えはこの三方と言うおぼんに入れてから運ぶこと」

神様「立派な三方ですね」

巫女長「当たり前だ。 この神社で使っている品は全て一級品だ」

神様「はぁ・・・」


巫女長「では、私と同じようにそれを持ちなさい」

神様「・・・・・・はい」


巫女長「A子君とB子君も一緒に来なさい」

巫女A・B「はい」


神様「あの~」

巫女長「どうした?」

神様「持ち方ってそれでいいの?」

巫女長「なに?」ギロッ


巫女A「ちょっと神ちゃん!」ボソッ

神様「あ~・・・ すいません、何でもないです」


巫女長「言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」

神様「・・・・・・もう少し高く揚げないと、神に捧げるものに息がかかるのはダメじゃない?」

巫女長「!?」


神様「まぁ、神もそんなの気にしないと思うけど・・・ 一応作法として」

巫女長「こ、この神社は他のお社よりも社位が高いんだ。 作法も普通の神社と違うことがある!」

神様「そうでしたか。 失礼しました」


巫女長「君は巫女の経験があるようだがどこに居たんだ?」

神様「えっと~・・・」


巫女長「どうせ作法も教えられないような小さい神社だったんだろ?」

神様「」ムスッ

巫女長「この辺ではこの神社より立派なところはないからな」


神様「神宮にいました」

巫女長「神宮!?」

巫女A・B「うそ!」


巫女長「じ、神宮のバイトか」

神様「内宮で巫女長を務めてました」

巫女長「!?」

巫女A「内宮の巫女長!?」

巫女B「神ちゃんてそんな凄かったの?」

神様「いや、別に凄くはないけど」


巫女長「こ、ここは神宮の管轄外の独立神社だ。 作法は神宮と違う!」

神様「そうですよね。 出しゃばった発言すんませんでした」

巫女長「あとは、Bグループだけで片付けておけ!」スタスタ


巫女A「ちょっと! 神ちゃん神宮にいたって本当!?」

巫女B「しかも内宮の巫女長って!」

神様「あ~ まぁ・・・」

巫女A「はぁ~ 通りで手際が良い訳だ」


神様「ごめん、ちょっとイラッとして口答えしちゃった」

巫女B「気にしないで良いよ」

神様「でも、私だけじゃなくて二人も目付けられちゃったね・・・」

巫女A「大丈夫だって~」

巫女B「そうそう、私たちはここに来たときからずっと目付けられてたしね」

巫女A「それにスッキリした。 Aグループの巫女の作法ってちょっと気になってたんだよね」


神様「どうして二人はこんな扱い受けてまでここにいるの? なんだったら別の神社紹介するよ?」

巫女A「ありがとう。 でも大丈夫だよ」

巫女B「私たち、よわよわ神社の巫女だから」ニコッ

神様「でも、よわよわ神社って・・・」


巫女B「巫女カフェにC子さんっていたでしょ?」

神様「うん」

巫女B「あの人ね・・・ よわよわ神社の宮司さんの娘で神主さんなんだ」

神様「・・・・・・」

巫女A「よわよわ神社は借金抱えて廃社になっちゃったんだけど」

神様「借金・・・」

巫女B「C子さんあの土地だけは取り戻すって」

神様「それで巫女カフェを?」


巫女A「あのお店、ここの宮司がオーナーで借金の返済を口実にC子さんを働かせているの」

巫女B「返済が終わったらあの土地を返してくれるって言われて」


神様「でも、A子ちゃんとB子ちゃんは何で巫女カフェに? 今はここの巫女でしょ?」

巫女B「平日は昼から夜まで巫女カフェに行くように宮司に言われて・・・」

巫女A「C子さん巫女じゃないしね。 巫女カフェにはやっぱり巫女が必要だから」

神様「そうだったんだ・・・」


巫女A「私達、よわよわ神社には凄くお世話になって」

巫女B「だから少しでも恩を返したいなって」

神様「よわよわ神社の宮司さんは?」

巫女A「5年前に・・・」

神様「そう」


巫女長「こらBグループ! またサボってんのか!」

巫女A・B「すいません!」イソイソ

神様「・・・・・・」



―――昼


男「ではA子君は午後から巫女カフェに行きなさい」

巫女B「え? 私は・・・」

男「B子君は午後から神ちゃんと舞を夕方までお願いする」

神様「夕方まで!?」

巫女B「・・・・・・分かりました」ペコッ

男「頼んだぞ」スタスタ


神様「夕方まで舞うの!?」

巫女B「たぶん神ちゃんが来たから舞の回数を増やすんだと思う」

巫女A「巫女舞付きのご祈祷は初穂料が高いからね」

神様「うへぇ~ マジっすか・・・」


巫女A「私、舞が下手だから・・・ 手伝えなくてゴメンね」

巫女B「気にしないで。 こっちが終わったらすぐ巫女カフェ行くから」

神様「巫女カフェ、一人で大丈夫?」

巫女A「平日だし、日中は大丈夫だと思う。 じゃぁ先に行ってるね」スタスタ


巫女B「それじゃ神ちゃん、神楽殿行こっか」

神様「うん」



―――神楽殿


神様「うわっ、結構人居る・・・」


巫女長「じゃぁ君とB子君は客がいっぱいになったら適当に舞を始めてくれ」

巫女B「はい」

巫女長「後は頼んだ」スタスタ


神様「後は頼んだって、そんな雑な・・・」

巫女B「ご機嫌斜めだね、巫女長・・・」ハハハッ


神様「ねぇ、お囃子軍団は?」キョロキョロ

巫女B「CD音源・・・」

神様「マジっすか!? 巫女カフェで見るのと一緒じゃん」

巫女B「確かに」


神様「これって一人いくら払ってんの?」

巫女B「一人2万だったかな」

神様「・・・神宮より高いよ」

巫女B「はははっ・・・ 待機列出来ちゃってるし、始めよっか」

神様「まぁ見てくれる人には関係ないし・・・ 全力でやりますか!」フンスッ


 ♪~~



―――夕方


神様「じがれだ・・・」グテッ

巫女B「神ちゃん、お疲れ様」ハァ


神様「マジでしんどい・・・ これ以上やったら干からびるよ・・・」

巫女B「神ちゃん凄いね。 すごく上手でビックリしたよ」

神様「いや~ん、褒められると照れちゃう」クネクネ

巫女B「今度、巫女舞教えて」

神様「いつでも良いよん」


巫女B「あっ、もう4時だ!」

神様「そろそろ巫女カフェの方に行く?」

巫女B「そうだね。 神楽殿の鍵閉めてくるから神ちゃん先に社務所行ってて」

神様「うん」


巫女B「あっ、巫女長に見つからないようにね。 帰ろうとするとすぐ仕事押しつけてくるから」

神様「ほ~い、気をつける」

巫女B「じゃ、また後で」


 スタスタ



―――社務所


神様「はぁ~ ちかれたな~」トテトテ


巫女長「おい、バイト」

神様「うげっ」クルッ


巫女長「丁度良かった。 これ洗濯しておいてくれ」

神様「私バイトのお仕事は夕方までだよ?」

巫女長「だから何だ? 神に仕える巫女は仕事ではない。 奉職だ」

神様「・・・・・・」

巫女長「洗濯が終わったら帰ってもいいぞ」スタスタ

神様「」ムスッ


―――社務所裏


巫女B「あれ? どうしたの神ちゃん」

神様「巫女長に見つかった」ゴシゴシ

巫女B「洗濯・・・ 私も手伝うね」

神様「ありがと」


巫女B「ごめんね・・・」ゴシゴシ

神様「B子ちゃんが謝る必要ないよ?」

巫女B「なにも神ちゃんまで目の敵にしなくても良いのに・・・」

神様「よくこんな扱い耐えられるね。 私なら2日で爆発するよ」

巫女B「私もA子ちゃんも拾われてる身だから」ハハハッ

神様「でもさぁ~ やっぱり勤め先変えた方がいいよ・・・」

巫女B「C子さんだって耐えてるんだもん、このくらい大丈夫」ゴシゴシ

神様「・・・・・・」



―――夕方・巫女カフェ


 カランコロン


C子「あっ、神ちゃんお疲れ様」

巫女A「ずいぶん遅かったね~」


神様「ゴメン、おらおら神社の巫女長にちょっと捕まっちゃって」

巫女B「神ちゃん初日から目を付けられたみたい」ハハッ

C子「それは災難ね・・・」



  客「酷いもんだろ~」

  神使「そうなんですか・・・」



神様「ん? また犬ころ来てんのかよ・・・」


C子「酒屋のおじいちゃんと意気投合してるみたいよ」

巫女B「絡まれてるだけのようにも見えるけど・・・」


神様「まぁいいや、放っておこ。 すぐ着替えてくるね」スタスタ

巫女B「私も着替えてきます」スタスタ


神使「興味深いお話ありがとうございました」

客「良いって、こっちも楽しかった」

神使「お気を付けてお帰り下さい」

客「おう! んじゃC子ちゃん、またな」

C子「ご苦労様でした、またいらして下さい」


 テクテク


神使「ふぅ~・・・」


神様「ほら、コーヒー」コトッ

神使「あっ、神様! 何時こちらに?」

神様「お前が酒屋のじいじと話してるとき」

神使「気づかず失礼しました」


神様「お前、本当ここ好きだな・・・」

神使「仕事ですから」キリッ

神様「・・・さよですか」


神使「あの、私コーヒー注文してないのですが・・・」

神様「私の奢りだ。 たんとお飲み」

神使「これはありがとうございます」


神様「廃神社に戻ってから飯食うから、それ飲んだらお前先帰れ」

神使「分かりました。 後ほど少しお話ししたいことがございます」


神様「よわよわ稲荷の件か?」ボソッ

神使「はい。 出来れば急ぎで」

神様「分かった。 今日は平日で巫女カフェも暇そうだし早めに上がる」ボソッ



―――廃神社


 ギィー


神様「ただいま~」

神使「お帰りなさいませ、神様」


神様「話があるって?」

神使「今日一日巫女フェにいたのでお客さんとお話をしたのですが、気になる情報をいくつか」

神様「お前の会計が凄い金額だと思ったら一日あそこにいたのかよ・・・」

神使「コーヒーが美味しいんです」

神様「へいへい。 で、何か分かったのか?」


神使「3年前によわよわ稲荷が破産状態に陥ったらしく、莫大な借金を抱えたそうなんです」

神様「あ~ 巫女ちゃんもそんなこと言ってたなぁ。 原因って何なの?」


神使「よわよわ神社の境内で事故があったようで、その賠償が巨額だったそうなんです」

神様「事故か・・・」

神使「設置してあった灯籠が倒れて3人が下敷きになったと聞きました」

神様「その賠償が原因か・・・」


神使「よわよわ神社だけではとても払えず、おらおら神社が全て肩代わりしたそうです」

神様「その返済を理由にC子さんを巫女カフェで働かせているんだろ?」


神使「しかし、変なんです」

神様「何が?」


神使「事故が起こった直後、おらおら神社が急に羽振りが良くなったと皆さん仰っていました」

神様「ん? 変じゃね? 賠償金肩代わりしたんだから逆だろ」

神使「実はこの時期に、おらおら神社がよわよわ稲荷の敷地を地元不動産業者へ売却しているそうです」

神様「売却?」

神使「よわよわ稲荷は敷地がかなり広かったようで相当な金額になったようですね」


神様「いくら賠償を肩代わりしたからって、おらおら神社がよわよわ稲荷を売却なんて出来ないだろ」

神使「よわよわ稲荷の宮司様は5年前に帰幽されており、おらおら神社の宮司が代理宮司を兼任してたそうです」


神様「ん~ でも廃社申請は、神職も神も居ない廃神社じゃないと出来ないんじゃない?」

神使「売却前に、よわよわ稲荷の神職だったC子さんを解任して廃神社状態にしたようです」


神様「お父さんが亡くなってから神主はC子さんだけだったのか・・・ 巫女は?」

神使「二人いたそうですが、二人ともおらおら神社が引き取っています」

神様「A子ちゃんとB子ちゃんだな」

神使「はい」

神様「それなら書類上は無人神社だから廃社申請は通るか。 手の込んだ事を・・・」


神使「噂では、よわよわ稲荷の売却益は全ておらおら神社の懐に・・・」

神様「でも賠償金は払われているんだろ?」


神使「酒屋のお爺さんの話ですと、事故に巻き込まれた3人は不動産屋の社員だそうです」

神様「!?」

神使「事故直後なのにピンピンしていたそうですよ?」

神様「・・・・・・」


神使「この町では、よわよわ稲荷の崇敬が多かったようで当時おらおら神社の規模はかなり小さかったそうです」

神様「よわよわ稲荷がなくなって、得をしたのはおらおら神社という訳か・・・」

神使「はい。 ここら辺で残る神社はおらおら神社しかないので独占ですね」

神様「不動産屋は膨大な土地を手に入れてウハウハか・・・」

神使「互いの思惑が一致したんでしょうね」


神様「でも、流石に金の流れは神宮の年度末調査でバレそうなもんだけど・・・ あいつら金の事は厳しいから」

神使「現在おらおら神社は神宮の管轄ではありません」

神様「まさか、それを見越して神宮と包括契約を解除したのか!?」

神使「独立神社ですから神宮が調べることは出来ませんので、年度末調査は実施されません」

神様「すげー手を使ってんな・・・」


神使「これは私の憶測ですが、今回の件よわよわ稲荷を潰す為に仕組まれたのではないかと」

神様「・・・・・・」


神使「事が事だけに真相を調べるのは私達では無理があると思いますが」

神様「いや、一つだけ方法がある」

神使「え?」


神様「事の顛末を全て見てきたものに聞けば良い」ニヤッ

神使「?」



 グゥー…


神使「あっ、そう言えば夕食まだですね」

神様「そうね、久しぶりに外食したいなぁ~」チラッ

神使「ずっとコンビニのご飯でしたからね・・・ 何か食べたいものありますか?」


神様「う、鰻重?」

神使「何で鰻重なんですか・・・ ハンバーガーとかどうです? 牛丼でも良いですよ?」


神様「鰻重」

神使「・・・・・・」


神様「鰻重食べたい!」

神使「分かりました、神様バイト掛け持ちで頑張ってますからね。 鰻重食べに行きましょう」

神様「よっしゃー!! 言ってみるもんだ!! 鰻重なんて三年ぶりだよ!」ウヒョー



―――うなぎ屋


神様「いや~ 腹減った」

店主「らっしゃい! ご注文は」

神様「鰻重!」

神使「では鰻重を2つお願いします」

店主「上うな重、特上うな重もあるよ?」

神様「特上・・・ どうする? 神使く~ん」キラキラ

神使「・・・では、特上を2つお願いします」

神様「嘘! いいの!?」

神使「今日は特別です」

神様「よっしゃー!! 店主! 特上! 特上で!」

店主「ははっ、はいよ。 特上二丁~!」


神使「私も鰻重なんて久しぶりですよ」

神様「・・・・・・」ジィー

神使「神様?」


神様「ねぇ店主」

店主「何だい?」

神様「あの神棚」

店主「ん?」

神様「中に入っているお札って、よわよわ稲荷のだよね」


店主「あ~ もう無くなっちゃったんだけどな」

神様「あのお札はどうやって?」

店主「無理言って譲ってもらったんだよ」


神様「もしかしてC子さんに?」

店主「なんだ、C子ちゃんを知ってんのか?」

神様「まぁ・・・」


店主「今は、この辺にはおらおら神社しかないけどよ~ 俺たちの中での氏神様は、よわよわ稲荷なんだよ」

神様「・・・・・・」

店主「本当に良い神社だったんだ。 宮司も巫女もみんないい人でさぁ。 町のみんなから愛されてた」

神使「そうでしたか」

店主「でも神社はなくなっても俺らの心までは・・・ 忘れちゃいけないと思ってさ」

神様「・・・・・・」

店主「C子ちゃんだって頑張ってんだ」


店主「はいよ、特上うな重!」ドンッ

神様「!? で、でかい!」

神使「これは立派ですね」

店主「値段も立派だけどな」ハハッ

神使「・・・・・・」


神様「いただきます!」ガツガツ



―――帰り道


神様「もうダメ・・・ 歩けない・・・」ゲップ

神使「神様おんぶされてるだけで歩いていないじゃないですか」テクテク

神様「仕方ないだろ~ お腹キツくて動けないんだもん」

神使「確かに、いつもよりお腹の部分がぽっこり背中に当たっていますね」

神様「でしょ~」ゲシッ ゲシッ

神使「痛っ! すいません!」

神様「ったく。 おっとっと」ユラッ

神使「ほら、暴れてるからですよ? 落ちないようにしっかり掴まっていて下さい」

神様「ん」ギュッ


 テクテク



神様「あれ? あそこ、電気ついてるの巫女カフェじゃない?」

神使「もう夜11時になるのに・・・ C子さんまだいるんでしょうか?」


神様「ちょっと挨拶していこーよ~」

神使「こんな遅くにご迷惑ではないですか?」

神様「大丈夫だよ」

神使「ではご挨拶だけ」


 テクテク


神使「中に何人かいるみたいですね・・・」


 C子「話が違うじゃないですか!」

 巫女B「騙してたんですか!?」


神使「巫女さんも一緒のようですが、何か変ですね」

神様「おい、ちょっと降ろせ」モゾモゾ

神使「はい」

神様「よいしょ」ピョン


神使「奥にいるのって、おらおら神社の宮司じゃないですか?」

神様「・・・・・・」コソッ



―――巫女カフェ店内


男「ここは私の店だ、どうしようと勝手だと思うが?」

C子「来月で借金は返し終わるはずです! なのに今になってそんな・・・」

男「この巫女カフェの土地を二千万で買うと言っている人がいてね」


巫女B「賠償金の返済が終わったらこの土地を返すって言ったじゃないですか!」

男「差額を君たちが用意すれば良いじゃないか? そしたらこの土地はC子君のものだ」

C子「そんな! 」

巫女A「卑怯です!」


男「まぁまぁ、不動産屋も駅前に巫女カフェ用の場所を新たに提供してくれると言ってくれている」

巫女A「もしかして、はじめから土地を返すつもりなんて無かったんじゃ・・・」

男「おいおい失礼だな。 こっちはビジネスなんだよ」

C子「ビジネスですって!?」

男「条件の良い方と契約するのは当たり前だろ?」



 カランコロン


C子「!?」

巫女B「あっ、神ちゃん!」

男「なんだ、バイトか。 どうしたんだこんな遅くに」


神様「ちょっと近くまで来たから」

C子「ゴメン神ちゃん、ちょっと取り込んでて・・・」


男「私の話は終わったから帰らせてもらう。 今週中に荷物はまとめておけ」スタスタ


 カランコロン


C子「・・・・・・」

巫女A「ゴメン、神ちゃん。 もしかして聞いてた?」

神様「丸聞こえだった」

C子「ごめんなさいね・・・ バイト採用したばっかりだったのに」

神様「大丈夫、この神ちゃんに全てお任せ!」

C子「?」


神様「神宮の力の見せ所だ!」

C子「神宮?」

神様「あ~ 隠すつもりはなかったんだけど、私と犬ころは神宮から来たの」

巫女B「神宮で巫女してたんだよね?」

神様「チッ、チッ、チッ。 今も神宮に籍があるんだナウ」


巫女B「え? 神ちゃん神宮の人なの!?」

神様「うん。 よわよわ稲荷が無実の罪で廃社になった件について調査中」

C子「!?」

巫女B「神ちゃん、なんでその事!?」

神様「私の調査能力を甘く見ちゃだめよん」


神使「あの・・・ 私がほとんど調べたのですが・・・」

神様「知ってるよ。 ここに一日中入り浸ってたのはその為だろ?」

神使「・・・・・・」

神様「ちなみに、私がここで稼いだお金を綺麗に還元してた事も知ってる」

神使「ご存じだったのですか?」

神様「腐れ犬ころの分際で、私に隠し事をするなんて二千年早いわ」


神使「C子さん、事情は大体把握しています」

C子「折角で悪いけど・・・ もう神宮でもどうにもならないの」


神様「犬ころ」

神使「はい」

神様「明日神宮に連絡して、よわよわ稲荷の廃社手続きに不備がないか徹底的に洗い出すように言ってくれ」

神使「廃社申請書類ですか?」

神様「あぁ、徹底的にだ。 どんな小さなミスも見逃さないように念を押せ」

神使「はぁ・・・」

C子「ちょ・・・神ちゃん!?」


神様「もう一つ、おらおら神社の神宮との包括契約の解除申請についても調べ直すように手配しろ」

神使「分かりました。 法規室にチェックしてもらいます」

神様「神様機構の長官でも内宮神の名でも何でも使え」

神使「そこまでですか!?」

神様「善良な神社が廃社になった。 絶対に許せない」

神使「・・・・・・」


神様「神宮が許可を出さなければこんな事にはならなかった。 神宮の責任が一番重いことを一緒に伝えておけ」

神使「承知いたしました」

神様「明日中に何が何でも申請不備を見つけ出して結果を出させるんだ」

神使「はい」


C子「・・・・・・」



神様「さてと、暴露ついでにもう一つ話しておく事がある」

巫女B「もう一つ?」


神様「犬ころ、狛犬になれ」

神使「はい」ボンッ

C子「!?」

巫女A「え!?」

巫女B「うそ!」


神様「こいつは神宮の犬ころ」

神使「・・・神宮所属の狛犬で神使と申します」ボンッ

巫女B「うわっ! 人の姿に戻った!」


神様「そして、私は内宮神籍の神。 名をかわゆい神ちゃ―――」

巫女B「すごーい! 神使さんって本当にいたんだ~」

C子「神使って、伝説上の存在かと思っていました」


神様「あの・・・」

巫女A「あっ、ごめんね神ちゃん」

巫女B「神使さんとお知り合いなんて神ちゃん何者?」

神様「いや・・・ だから神宮の神・・・」

C子「・・・・・・」


巫女B「嫌だな~ 神ちゃん、そんなの冗談でも言っちゃダメだよ。 神さまに失礼だよ?」

神様「本当なの! 神宮の神なの! かわゆい女神なの!」

巫女A「またまた~ 相変わらず面白いんだから」


神様「よ~し! 証拠だ! 証拠を見せてあげる」ズカズカ


 ギィ


神様「我、神体の神力を解放す!」


 ポワポワ


C子「!?」

巫女A「ご神体が光ってる!」

神様「どう? 信じてもらえた?」


巫女B「神ちゃんが、神宮の神さま!?」

巫女A「本当に!?」

神様「うん」

C子「そんな・・・ !!」ハッ


C子「」フカブカ

巫女A・B「」フカブカ


神様「あ~ そういうのやめて? 苦手だから」

神使「神様は堅苦しいのが苦手なので、今まで通りダメ巫女という体で接してあげて下さい」

神様「お前、一言余計なんだよ」ゲシッ


巫女A「でも、神って普通姿を見せないって聞いた事が・・・」

神様「・・・・・・わ、私は特別なの」

神使「神と言っても自身の神力が使えませんので、姿を消す事が出来な―――」

神様「アッチョー」ゲシッ

神使「痛っ!」

C子「・・・・・・」


巫女B「でも、おらおら神社で巫女舞を・・・」

巫女A「巫女の作法も完璧だったし・・・」

神様「優秀な神は巫女の仕事も完璧にこなせるの!」

神使「神宮が誇るダメ神なので、巫女の仕事しか任せてもらえないんで―――」

神様「お前! 黙ってろや!!」ゲシッ ゲシッ ゲシッ

神使「痛っ! 痛いですよ、神様!」


C子「・・・・・・」ジトー

巫女A「・・・・・・」ジトー

巫女B「・・・・・・」ジトー


神様「うっ! なにこの突き刺さる“こいつ本当に神かよ~”な視線・・・」

神使「・・・・・・」ジトー

神様「なんで犬ころまで半信半疑なんだよ!」


神使「しかし神様、正体までばらしてどうされるんですか?」

神様「みんなの願いを聞いちゃったからね~」

C子「え?」


神様「C子さん、巫女ちゃん達、それからここに来た沢山のお客さんの願い・・・」

神様「こここまで大勢の人が一つのお願いをしてるんだ・・・ 叶えないなんて神失格だと思う訳よ」

神使「しかし、さすがに今回ばかりは神宮の力を使っても・・・ 民間の契約絡みですから証拠が・・・」


神様「そこで、これだよ」


 ポワポワ


神使「ご神体・・・」

神様「そう」

神使「“事の顛末を全て見てきたもの”というのはご神体の事ですか・・・」

神様「神体は絶対に嘘はつかない」


神使「しかし、さすがに神体の力を証拠にするのは・・・」

神様「神宮へ説明するのはこれで十分だ」

神使「神宮は良いとしても、一般的には・・・」

神様「ふふふっ・・・ その為にあるのが神罰なのだよ、神使君や」ニヤッ



―――翌日・廃神社


 テクテク


?「ここか・・・」


 ギィ


?「誰かいる~?」

神様「後ろ」ヌゥ

?「うわっ! ちょっとビックリさせないでよ!」

神様「めんごめんご、 悪いね呼び出して」

?「本当だよ、すごく疲れたんだけど・・・」

神様「エキノコックスも年だもんなぁ」

?「狐神だコラ」ゲシッ

神様「あうっ」


狐神「で、どうしたの? あんたが呼び出すなんて珍しい」

神様「ちょっと見てもらいたい物があって、一緒に来てくれる?」

狐神「私、長旅から到着したばかりなんだけど・・・ お茶くらい出してよ」

神様「あ? ココ廃神社だぞ? 六畳の本殿だけで台所なんかねーよ」

狐神「あんた、相変わらず狭いところ好きね」

神様「お前みたいに金持ちじゃねーんだよ! 従一位狐神さんよ~」

狐神「はいはい、ごめんなさいね」


神様「・・・・・・」

狐神「?」


神様「・・・お前ここまでどうやって来たの?」

狐神「普通に電車に乗ってきたけど」

神様「え!? その格好で?」

狐神「か、神なんだから外出する時だってそれなりの格好じゃないとダメでしょ」

神様「凄い注目浴びなかった?」

狐神「・・・・・・」


神様「何時代からタイムスリップしてきたんだよ・・・」

狐神「電車に乗って移動するなんて初めてだったから・・・///」

神様「よくここまで一人で来れたな」

狐神「うちの巫女にそこまで一緒に来てもらった・・・」

神様「あっ、そうなんだ」

狐神「こんな遠くまで来るなんて100年ぶりだし」

神様「でも、その格好はさすがの私でも引かざるを得ないんだけど・・・」

狐神「・・・///」

神様「私のジャージ貸そうか?」

狐神「うん」



―――巫女カフェ


 カランコロン


神様「ども~」

C子「あっ、神ちゃん」

狐神「お邪魔する」


C子「? 神ちゃん、そちらの方は?」

神様「エキノコックス」

狐神「狐神だ! ちゃんと紹介しろ!」ゲシッ

神様「あうっ」


C子「えっ!?」


狐神「私は、あいあい神社の主神で従一位の狐神という」

C子「従一位って・・・」

巫女A「まさか、神さま!?」

巫女B「私、神さまって始めてお会いしました!」

狐神「普段は姿を見せぬからな、無理もない」

C子「」フカブカ

巫女A・B「」フカブカ

狐神「そんなに畏まらなくても大丈夫だ。 楽にしてくれ」


神様「・・・・・・」

狐神「ん? あんたは正体話してないの?」

神様「昨日話したつもりなんだけど・・・ あれ? おかしいなぁ?」

狐神「・・・・・・」


狐神「しかし、随分と変わった所だな・・・」キョロキョロ


巫女B「狐神さま、ジャージ姿だね」ボソッ

巫女A「やっぱり今時の神さまって着る服も現代に合わせるんだね」ボソッ


狐神「・・・・・・」

神様「ぷっ」ニヤニヤ

狐神「!!」ゲシッ

神様「あうっ」


狐神「で! 何を見せてくれるんだ?」

神様「ちょっと神体を見てもらいたくって」

狐神「神体?」

神様「うん。 五年分くらいの記録をサラッと覗いてくれる?」

狐神「五年分って・・・ そんな簡単に言われても」

神様「あ? そのくらい一瞬で出来るだろ?」

狐神「あんたみたいに、どの神体もほいほい扱える訳じゃないんだから・・・」

神様「大丈夫だって、ちょっと覗いてみ?」

狐神「へいへい」


 ギィ


狐神「へぇ~ 結構古そうな神体だね」

神様「800年くらいかな~?」


狐神「じゃぁ早速。 神体の神力を解放する」


 ポワポワ


狐神「おっ、稲荷系のご神体じゃん。 私の神力によく馴染んで心地いい♪」

神様「だから言っただろ?」

狐神「神体よ、我が望みを受け答えたまえ!」


 ポワポワ ポワポワ


狐神「・・・・・・」

神様「どう?」

狐神「これ・・・ 本当なのか?」

神様「お前のお膝元である稲荷の分社がこんな仕打ちを受けちゃったの」

狐神「・・・・・・」


神様「酷くない?」

狐神「久しぶりに不愉快だな」

神様「しかも、こんなに強い皆の願いを無視する訳にはいかんでしょ? “神”ならば」

狐神「そうだな、神としての腕の見せ所だな」

神様「よし! その調子!」


狐神「でも、おらおら神社はギッタンギッタンにするとしてよわよわ稲荷はどうする気?」


神様「それは~」サササッ

狐神「なによ、急に寄ってきて気持ち悪い・・・」


神様「再建させるに決まってんじゃん」ボソッ

狐神「はぁ!?」

神様「声でけーよ! みんなに聞こえちゃうだろ?」シーッ

狐神「ゴメン。 でも、再建って・・・」ボソッ

神様「稲荷系の神社だよ? お前の管理社だよ?」

狐神「だから?」

神様「お前の金で再建させるのが筋だろ」

狐神「・・・・・・」


神様「本当は私が自腹で再建したいんだけどさぁ~ この前別の神社を復興させて金無いんだよ」

狐神「あんたが自腹で!?」

神様「だから、うるせーって!」

狐神「あっ、ごめん」ボソッ

神様「1億円もかかっちゃってさぁ~ 60年のローン組んだし」

狐神「え、偉いじゃん・・・」

神様「金に縁の無い私がだよ? 主神でもない神社を自腹で建て直したんだよ?」

狐神「・・・・・・」


神様「この神社は何系?」

狐神「稲荷」


神様「お前は何系?」

狐神「・・・稲荷」


狐神「ご神体は?」

狐神「・・・・・・稲荷」


神様「再建するのは?」

狐神「・・・・・・・・・稲荷?」


神様「さすが、稲荷の頂点、狐神だ!」カッ カッ カッ

狐神「ハァ~・・・ 分かったわよ。 なんとかする」


>>333

×
狐神「ご神体は?」

狐神「・・・・・・稲荷」




神様「ご神体は?」

狐神「・・・・・・稲荷」



ですね。
すんません……



 カランコロン


神使「神様! こちらでしたか」

神様「犬ころじゃん、どこ行ってたんだ?」

神使「神宮から書類が届いていたので郵便局の方へ」

神様「ふ~ん」


神使「あれ? 狐神様じゃないですか。 どうしてこちらに?」

狐神「このダメ神に呼び出された」

神様「一応よわよわ神社は稲荷系だから狐神に話はしておこうと思って」

神使「そうでしたか、よろしくお願いします狐神様」ペコリ

狐神「あっ、うん・・・」


神様「で、どうしたんだ?」

神使「神宮からよわよわ稲荷の廃社申請書類と、おらおら神社の契約解除書類の検証結果が届きました」

神様「お~ 早かったな」


神使「まず、よわよわ神社の廃社申請書類ですが書類上の不備が確認できました」

神様「いいね~」

神使「廃社申請書に記載されているよわよわ稲荷の宮司名が、おらおら神社の宮司になっていまして」

神様「よわよわ稲荷の代理宮司はおらおら宮司だから問題ないんじゃないの?」


神使「神宮に登録されていたよわよわ稲荷の宮司名と違うんです」

神様「ごめん・・・ よく分かんない」


神使「5年前のよわよわ稲荷宮司のお名前はC夫さんと登録されております」

C子「それ、私の父です」


神様「お亡くなりになって、おらおら宮司が代理宮司になったんだろ?」

神使「いえ、帰幽される直前だと思うのですが宮司変更がC夫さんから神宮に出されていまして」

C子「え!?」


神使「よわよわ稲荷の宮司はC子さんで申請が出ていました」

神様「・・・・・・」



狐神「皆に愛される神社をC子が作っていく事を願う・・・」


C子「狐神様?」

狐神「帰幽される直前、神体に祈願された父上の願いだ」

C子「・・・・・・」


神様「と言う事は、おらおら宮司は廃社申請の資格がないと・・・」

神使「そういう事になります」


C子「お父さん・・・ 私、大切な神社を・・・」


狐神「古き物を守るのも大事だが・・・ お前が新しく歴史を作っていけば良い。 父上もそれを望まれている」

C子「狐神様・・・」


神様「神宮とおらおら神社の契約解除に関してはどうなんだ?」

神使「それが・・・」

神様「?」


神使「神様機構の長官から預からせて欲しいと」

神様「預かる?」

神使「はい、後ほど神様宛に通達を出すそうです」

神様「ふ~ん」


狐神「どうすんの、神ちゃん?」

神様「決まってんじゃん」

狐神「?」


神様「楽しい神ちゃんショーの始まりだ」ニタァ



―――夜・おらおら神社・社務所


巫女長「今日は凄い霧だな・・・」


 コンコンッ


巫女長「?(こんな遅くに誰だ?)」


 ガラガラ


巫女長「どなたですか?」


狐神「夜分遅くに失礼します」ペコリ

巫女長「本日は業務が終了してますので明日お越し頂けますか」

狐神「では、ご案内だけ」

巫女長「案内?」


狐神「この神社に神罰を下します」

巫女長「何を言ってるんだ?」

狐神「巻き込まれたくなければ今日中にお逃げなさい」

巫女長「・・・・・・」


狐神「これは警告です」

巫女長「ふざけた事を言っていると警察を呼ぶぞ?」

狐神「好きになさい。 では私はこれで」


 スゥー


巫女長「!? 消えた!」キョロキョロ


―――社務所裏


 スタスタ


狐神「これで良い?」

神様「上出来! さすがコックスは演技派だねぇ~」パタパタ

狐神「うまく消えたように見えたでしょ」

神使「さっきからドライアイスで煙を出していた理由はこれですか・・・」パタパタ

狐神「これが結構効果的なんだよね」


神使「でも、狐神様は神力が強いのですから消える事くらい出来るのでは?」

狐神「あ~ 管理地外だから神力使うには事前申請が必要なの」

神使「・・・そうなんですか」


神様「さてと、じゃぁ始めますか」

神使「あの、神罰ってどうやって下すんです?」


神様「まずは~」ヨイショ

神使「ずいぶん大きな風呂敷ですね・・・ 中に何が入ってるんですか?」

神様「ん? これ」ジャラジャラ

神使「鎌? しかもこんなに沢山」


神様「犬ころ、これをそこら辺の木に突き刺してこい」

神使「・・・はい?」


神様「この鎌を木に突き刺してこいって言ったの!」

神使「なんでそんな事を・・・」

神様「なんか呪いっぽくね?」

神使「呪いって・・・ 神罰を下すのでは?」

神様「お前さぁ、なにか勘違いしてない?」ハァ

神使「?」

神様「神罰って神力を使って天罰を起こすとか思ってんじゃないの?」

神使「・・・違うのですか?」

神様「そんな事出来ねぇよ、アホか」

神使「えっ?」


狐神「残念だけど、神力で人を苦しめるような事は出来ないの」

神使「では、神罰は・・・」

神様「人力、っていうか神がするからある意味神力?」」

神使「・・・・・・」

神様「分かったら早くこれ突き刺してこい。 時間ないんだから」


狐神「あっ、神使君」

神使「な、何でしょうか」

狐神「これに着替えてくれる?」バサッ

神使「・・・これって」

狐神「白装束、あと頭にこのペンライト巻き付けて」

神使「・・・・・・」


神様「おっ、いいね~ なんか本格的じゃん」

狐神「出来れば誰かに見つかるくらい音を立ててもらえると効果あるんだけど、お願いできる?」ニコッ

神使「・・・・・・」


神様「じゃ、私達別の仕掛けしてくるから後で合流な」スタスタ

狐神「よろしくね、出来るだけ怖がらせてね」スタスタ


神使「これ、ただの悪戯じゃないですか・・・」



―――翌日・おらおら神社


神様「おはよ~」テクテク

巫女A「あっ、神ちゃん」


 ザワ ザワ


神様「どしたの?」

巫女B「それが・・・」


神様「うわ~ 木にいっぱい鎌が刺さってる~ 怖ーい(棒)」

巫女B「昨日の夜に、男の人が打ち付けてるのを神職の人が見たって・・・」

巫女A「しかも周りにこの紙がいっぱい落ちてて」

神様「どれどれ? “呪”か・・・」

巫女B「怖いよね」

神様「あいつ、なんだかんだ言って結構ノリノリじゃん」ボソッ

巫女A「神ちゃん?」


神様「神罰だよ」

巫女B「じゃぁこれって・・・」

神様「間違いない」

巫女A「狐神さまの神罰・・・」

神様「アイツの神罰ってえげつないんだよね~」ニヤッ

巫女A・B「・・・・・・」ブルッ



―――社務所


神様「今日の朝一って、あくあく不動産の商売繁盛の祈願だよね」

巫女B「うん、私達を補佐に付けるなんて嫌がらせとしか思えないよ・・・」

巫女A「本当・・・」


神様「大丈夫。 今日はきっとエキサイチングな祈願になるよ」

巫女A・B「?」

神様「うひゃひゃ」



―――拝殿


巫女長「では、あくあく不動産の商売繁盛のご祈祷を執り行います」


社長「巫女カフェ跡にパチンコ店を立ち上げるんだ。 しっかり頼むよ?」

男「巫女長、社長から果物を頂いた。 祭壇に一度上げておけ」

巫女長「はい」スタスタ


 コトッ



 ミシミシ
 ガシャーン! ガラガラ


巫女長「えっ!?」

男「!?」


巫女A「祭壇が!」

巫女B「壊れた!」

神様「あー 祭壇の足がポッキリ折れてるー(棒)」


社長「おい、なんだこれは! 縁起でも無い!」

男「すぐに新しい祭壇を準備しろ」

巫女長「は、はい」


神様「」ニヤッ



―――授与所


巫女長「今日は一体どうなっているんだ・・・」ハァ


  ~この神社に神罰を下します~


巫女長「・・・まさかな」フッ


 『あら、まだ居たのですか?』

巫女長「!? この声は、昨日の!」


 『仕方ありません。 あなたにも神罰を下さねばならないようです』

巫女長「な、何を言っている! どこに居るんだ!」キョロキョロ


 『この神社は神の怒りを買った。 稲荷の屈辱を思い知るが良い』クッ クッ クッ

巫女長「・・・・・・っ」ゾクッ



―――授与所・裏手


狐神「最後の警告です。 すぐにここから立ち去りなさい」

神使「・・・・・・」


狐神「これで良しっと」ポチッ

神使「何の為のマイクかと思ったら・・・」

狐神「昨日授与所の足下にスピーカーを取り付けておいてね」

神使「どこでそういう方法を調べたんですか・・・」

狐神「これも結構効果あるんだよ~?」

神使「確かに、姿が見えないのに声が聞こえたら怖いですよね・・・」



 タッ タッ タッ


神使「あっ、巫女長さんが」

狐神「血相変えて逃げてったね」

神使「効果覿面ですね・・・」


狐神「さてスピーカー回収しないと。 神使君、その箱もって一緒に表に行くよ」スタスタ

神使「えっ?」



―――数分後


男「どうしたんだ、こんな所まで連れてきて」

巫女長「いえ、気になる事がありまして」


男「!? 何だこれは!」

巫女長「お守りが! いつの間に!?」


神様「どうしたの~ 大きな声出して」トテトテ

巫女B「うわっ! お守りが全部黒い!」

巫女A「“呪”って書いてある・・・」

巫女長「さ、さっきまで普通のお守りだったのに」オロオロ


男「・・・・・・と、とにかく片づけろ!」

神様「ダメ!」

巫女B「神ちゃん?」


神様「これ・・・ 触らない方が良い」

男「何だと?」

神様「前に神宮の大宮司から聞いた事ある。 手にした者の寿命を吸い取る呪い袋だよ」

巫女長「!?」ゾクッ


男「お前達、早くこれを捨てるんだ!」

巫女長「すいません・・・ わたし、体調が悪いので今日は帰らせて頂きます」スタスタ

男「おい! 巫女長」


神様「私、扱い方知ってるから片付けても良いよ?」

男「じゃぁ、ここは頼んだ」スタスタ

神様「はーい」ニヤッ


巫女B「巫女長、顔真っ青だったね」

巫女A「神ちゃん、これもやっぱり神罰?」

神様「そだねー 怖いよねー」テキパキ

巫女B「え? そんな普通に手に取って大丈夫なの?」

神様「うん。 呪いなんかある訳ないじゃ~ん」

巫女A・B「・・・・・・」


神様「コックス~ 居るんだろ~?」

狐神「だから狐神だって言ってんだろーが!」ゲシッ

神様「あうっ」


狐神「ちょっとやり過ぎたか?」

神様「いや、今日巫女長はここにいない方が都合が良い」

狐神「ふ~ん。 あっ、それこの箱にちゃんと戻して」

神様「これ面白いな。 私も欲しい」

狐神「特注品だから結構高いよ?」



 ピロリロリン♪


神様「ん? メールだ」ゴソゴソ

狐神「どこから?」

神様「神様機構・・・ 長官だ」

狐神「長官君?」

神様「ほぉ~ 神宮もやるときはやるじゃん」

狐神「?」


神様「二人にお願いがあるんだけど、良い?」

巫女A「私達?」

神様「うん。 おらおら宮司を本殿に呼び出して欲しいんだけど」

狐神「呼び出してどうするの?」

神様「最終決戦だよ。 まぁ私に勝てる訳なんか無いんだけどね~」


ようやく終わりが見えてきて一安心……

神様「神勅!」

>>1「」フカブカ

神様「>>1よ、このssを永遠に書き続けていくように言い渡す」

神様「以上! 代表神 神様より神勅を申し伝えた!」



―――夕方・本殿


 ギィー


神様「おっ、いらっしゃ~い」

男「私を呼び出したのは君か?」

神様「うん、あとこいつも」

狐神「こんにちは」ニコッ


男「誰だ?」

狐神「私は稲荷を管理する従一位で狐神という」

男「狐神?」

狐神「神を目の前にするのは初めてのようだな、不作法者め」

男「何を馬鹿げた事を」ハハッ


狐神「宮司のくせにその年になって神を目にした事がないなど、お前本当に神職か?」

男「失敬な女だな。 そんな戯言など子供にすら信じてもらえないぞ?」

狐神「まぁ良い、信じる信じないは人の勝手だ」


男「お遊びに付き合っている暇はない。 帰るぞ?」

神様「ねぇねぇ、おらおら神社に下された神罰はどう?」

男「神罰? ハッ、あんな子供騙しなど」

神様「ほぉ~」

男「・・・まさか、お前の仕業か? 何が目的だ」


狐神「我の分社であるよわよわ稲荷を潰した責任を取ってもらおうと思ってな」

男「責任?」

神様「も~ 分かってるくせに」

男「C子から何を聞いたのか知らんが、お前達には関係の無い事だ」

狐神「そうかな?」

男「残念だが、よわよわ稲荷は事故が原因で廃社になったんだよ。 全く惜しい事だ」


狐神「その社を売り飛ばすなど言語両断だ!」

男「賠償金が巨額だったものでね。 他に方法がなかったのだ。 苦渋の決断だったよ」

神様「賠償金を払う事が目的でよわよわ稲荷を売り飛ばしたんだな?」

男「随分と含みのある言い方だな」

神様「ちゃんと払われたのかな~?」

男「・・・なんだと?」

神様「賠償金。 ちゃんと払われたのかなぁ、って思って」

男「無関係の人間が変に首を突っ込まないほうが良いぞ?」


神様「それが、無関係じゃないんだな~」

男「どう関係があると言うんだ?」

神様「私達さぁ、実は神宮の者なんだよね~」

男「神宮だと?」

神様「うん」


男「なら、なおさら関係の無い話だな。 ここは神宮の管理外の神社だ」

神様「あ~ そうだったっけ?」

男「残念だな」ニヤッ


神様「オッケ~ それじゃぁ面白い物見せてあげる」

男「一体何だ」


神様「まずはこの紙」ペラッ

男「?」

神様「本日付で発行された、よわよわ稲荷の廃社申請取り消し通知書」

男「なに?」


神様「当時神宮に出された廃社申請に不備があったんだよね~」

男「そんな訳ないだろ」

神様「申請宮司名がお前になってんだよ」

男「だからなんだ? 何もおかしい事はないじゃないか」


神様「よわよわ稲荷の宮司はC子さんなんだよ」

男「何をバカな事を、よわよわ稲荷の宮司が亡くなる直前に私が代表宮司になっている。 C子の父親が申請を出したはずだ」

神様「いや~ 残念だけどその時に申請された書類にはC子さんを宮司にするって書かれてんだわ」

男「・・・・・・」


神様「つまり、この廃社申請はよわよわ稲荷の宮司じゃないお前が勝手に作った書類ってわけ」

男「あの野郎、勝手な事を・・・」イラッ

狐神「本性が現れてきた?」

男「・・・・・・」


神様「それと、おらおら神社の神宮契約の通知書類、これも無効~」ペラッ

男「無効だと?」


神様「契約解除通知を出す2日前まで遡ってお前は神職階位剥奪。 つまりこの書類を出す資格無し」

男「何を馬鹿げた事を。 廃社書類といい、そんな事を今さら言われて効力あると思ってんのか?」

神様「うん。 だってお前犯罪を犯したんだもん」

男「犯罪? 随分と名誉毀損な事を言ってくれるじゃないか」


神様「事故で負傷したとされる不動産屋の社員の保険金、お前も受け取ったろ」

男「・・・・・・」

神様「しかも賠償金も払われていないよな」

男「・・・・・・」


神様「よわよわ稲荷の土地を売り飛ばしたお金も全部自分の懐に入れたんだろ?」

男「証拠でもあるのか?」

神様「少なくとも神宮を動かすだけの証拠はある」

男「神宮限定じゃ法には裁けないぞ」

神様「お前さぁ、神宮ナメちゃだめだよ?」

男「・・・・・・」


神様「おらおら神社は神宮との包括契約が無効になった事で今は神宮管理下なんだよね~」

狐神「つまり、神宮がおらおら神社を徹底的に調べることが可能になったわけだ」

男「くっ!」


神様「鳥居の前に黒塗りの車が止まってるだろ?」

男「?」クルッ

神様「あれ、な~んだ?」

男「・・・・・・」


神様「神宮を敵に回すとめっちゃ怖いからね?」

男「・・・何が望みだ。 金か?」

狐神「この期に及んでまだそんな事を!」

神様「まぁまぁコックス君や、そう慌てなさるな」

狐神「でも!」

神様「おらおら宮司さんよ~ 私と取引しない?」ニヤッ



―――翌日・巫女カフェ


 カランコロン


神使「失礼いたします」

神様「ハロ~」


C子「あっ、神ちゃんに神使さん!」

巫女B「大変だよ神ちゃん!」

神様「ん? どしたの?」

巫女A「それが、あくあく不動産経由でC子さんにこの土地の権利書が届いて」

神様「良かったじゃん」


C子「・・・神ちゃん、何かした?」

巫女A「昨日、本殿でおらおら宮司と何の話したの?」

神様「ここの土地くれって」

巫女B「そんな簡単に言って、返してくれる訳ないじゃん・・・」

神使「よわよわ稲荷の廃社申請が取り消しになりましたから、土地が戻ってきただけですよ」


C子「神ちゃん・・・ ありがとう」

巫女B「神社は無くなっちゃったけど、土地だけでも戻ってきて良かった」

巫女A「そうだね」



 カランコロン


狐神「無くなってなどいないぞ?」

C子「狐神様!」


?「ほぉ~ こりゃ面白い作りの喫茶店だなぁ」

神様「あっ! 棟梁だ!」

棟梁「お~ また会ったな」

神使「のんびり村の時はお世話になりました」

棟梁「良いって事よ。 あの神社良い出来だったろ?」

神使「えぇ・・・ おかげさまで・・・」

神様「・・・・・・」


棟梁「立て続けに神社作らせてもらえるなんてありがてぇ」

神様「コックス君? もしかして、棟梁に神社頼むの?」

狐神「当たり前だろ。 神社を作らせて棟梁の右に出る者はいない」

神様「まぁ・・・ そうだけどさぁ・・・」


狐神「棟梁、頼んだ。 全てお前に任せるから好きにしてくれ」

棟梁「任せな!」

神使「あっ・・・ その言葉は・・・」

神様「棟梁! 最高の稲荷神社にしてくれ!」

棟梁「おうよ! 一番立派な稲荷にしてやる!」

神使「・・・・・・」


C子「ちょっと神ちゃん! 神社を作るって・・・ え!?」

神様「よわよわ稲荷の再建だ」

巫女B「うそ!?」

巫女A「よわよわ稲荷が!?」

C子「再建・・・」


狐神「当たり前だろ。 おまえ達、人の願いを叶えるためにいるのが私達神の務めだ」

神様「良い事言うね~ さすが従一位エキノコックス!」

狐神「狐神だ!」ゲシッ

神様「あうっ」


神使「あの、狐神様?」

狐神「何だい? 神使君」

神使「神専用神社建て替えローンは100年までですから注意して下さいね・・・」

狐神「?」


神使「では神様、御神勅をお願いできますでしょうか」

神様「そうだな。 狐神、神勅を」

狐神「何言ってんのよ、あんたが出しなさい。 言い出しっぺでしょ」

神様「私が出しても良いの?」


狐神「私より、あんたの神勅の方が重いでしょ」

神様「んじゃ、お言葉に甘えて」


神様「神勅を申し伝える!」

神使「」フカブカ


狐神「ほら、あなたたちも。 神宮の神からの神勅よ?」

C子「」フカブカ

巫女A・B「」フカブカ


神様「不当な理由により廃社となったよわよわ稲荷の社位を二段階上げ再建する事とする」

神様「再建されるよわよわ稲荷神社の宮司をC子に任命、神宮はその管理をすべて宮司に委ねる」

C子「!?」


神様「また、おらおら神社をよわよわ稲荷の管理下に置き、C子が宮司を兼任する人事を合わせて発令する」

巫女B「うそ!」

狐神「ゴホン!」チラッ

巫女B「ぁ・・・」フカブカ


神様「と、ここまでは神様機構の長官経由で決定していて神宮の許可まで出ているんだけど~」

狐神「?」


神様「さらに、私から神勅を付け加える事とする」

狐神「え?」


神様「追加の神勅! 再建されるよわよわ稲荷に巫女カフェを併設するものとする」

狐神「・・・・・・はぁ?」


神様「また、かわゆい神ちゃんを名誉巫女店員に任命」

狐神「いや、あんたそれは―――」

神様「うるさいぞ狐神、神勅の発令中だ」

狐神「うっ・・・」


神様「よわよわ稲荷は、様々な取り組みを行う次世代神社として位置づける」

神様「以上、神宮審査神・神様から神勅を申し伝えた!」ドヤッ


棟梁「ほぉ~ 巫女カフェ・・・ 次世代神社・・・ ちょっと予算オーバーするが面白そうだな」

神使「(絶対ちょっとじゃないですよね・・・)」


狐神「あんた、なに勝手な神勅出してんのよ!」

神様「あ?」

狐神「巫女カフェって何よ! ここ稲荷よ? 私の分社よ!?」


神様「神社は本来、地域に住む氏子達の集会場を兼ねていた」

狐神「だから?」

神様「街に住む皆が気兼ねなく集える場所を作りたい」

狐神「それが巫女カフェって訳?」


神様「今時さぁ、集会場とか作って誰が来るんだよ」

狐神「そりゃそうだけどさぁ・・・」

神様「古き物を守るのも大事だが、新しく歴史を作っていくのも大事なんだろ?」

狐神「・・・・・・」


神様「私達も新しい物を積極的に取り入れていくべきだ」

狐神「神ちゃん・・・ お金出して神社作るの私なんだけど・・・」



―――帰り道


 テクテク


神使「無事解決できて良かったですね」

神様「かわゆい神ちゃんの手にかかれば全てがOKなのよ♪」


狐神「ハァ~・・・」ゲンナリ

神使「神様に神勅を任せた時点でこうなる事は、ある程度予想できたかと・・・」

狐神「まぁ、それはいいんだけどさぁ」

神使「まだ、何かあるんですか?」


狐神「神ちゃん、あんたどういうつもりなの?」

神様「あ?」

狐神「おらおら宮司の件よ!」


神使「そういえば・・・ おらおら神社の宮司さんはどうされたんですか?」

狐神「聞いてよ神使君!」

神使「はい・・・」

狐神「神ちゃん、おらおら宮司を神宮にスカウトしてんの!」

神使「えっ!?」


狐神「なんで神宮がクビにしたヤツを神宮に向かえ入れんのさ・・・」

神様「お前も聞いてたろ? 交換条件だよ」


神使「私その場にいなかったので聞いていないのですが、どういう交換条件だったんですか?」

狐神「よわよわ稲荷の土地とおらおら神社の放棄を条件に、全ての問題帳消しとおらおら宮司を神宮の神職として迎える」

神使「それは・・・ 随分とおらおら宮司さんに都合がいい条件ですね・・・」


狐神「警察に突き出すとかいくらでも出来たでしょ?」

神様「あの男、凄いぞ?」

狐神「何、そのアホっぽい言い方・・・」


神様「本格的な巫女カフェを作るという発想が気に入ったんだよ」

狐神「はぁ?」


神様「それに、鳴かず飛ばずだったおらおら神社をあそこまで立て直した点も評価できる」

狐神「それは、よわよわ稲荷を潰したおかげでしょうが」

神様「いや、それだけではあそこまで大きく出来ない」

狐神「そりゃそうかも知れないけど・・・」

神様「あいつの能力は高く評価できる。 このまま捨ててしまうのは勿体ないぞ?」


狐神「ねぇ神使君、どう思う?」

神使「神様がそう決めたのであれば、きっと正しい選択であったと私は思います」

狐神「さすが神ちゃんの神使だね~ 頭下がるよ」ハァ

神様「大丈夫だよ、神宮でしっかり管理させるから~」

狐神「本当・・・ 神ちゃん優しすぎだよ・・・」

神使「神様から巫女と優しさを取ったら、悪ガキ成分しか残りませんから」

神様「うっせーよ! 極悪邪道腐れ犬ころ変態神使!」ゲシッ

神使「痛っ!」


狐神「全く・・・ 昔から何にも変わらないわね、神ちゃんは」フッ



―――翌日・廃神社


神使「神様、忘れ物ございませんか?」

神様「大丈夫」


狐神「あんた達、次はどこいくの?」

神様「どこ行くんだ? 犬ころ」

狐神「あんた、知らないの・・・?」

神様「こいつ、いつも教えてくれないんだよ」

神使「教えてしまうと神様が行くのを嫌がりますので」

神様「つまり、人もいないような超ド田舎って事だと思う」

狐神「そうなんだ・・・」


神様「お前はどうすんの?」

狐神「私は、よわよわ稲荷再建の手続きで今週まではここにいる予定」

神様「あっそ。まぁ頑張れや」

狐神「本当は神勅出したあんたがやる事なのよ?」

神様「私がそんな面倒くさい事なんかしないって知ってんだろ?」

狐神「“しない”じゃなくて“できない”でしょ?」

神様「・・・・・・」


神使「さすが狐神様。 神様の事をよく分かっていらっしゃいます」

神様「だから、お前一言多いんだよ! 神罰」ゲシッ ゲシッ

神使「痛っ! 痛いですよ!」


狐神「相変わらず良いコンビね」

神様「・・・おい犬ころ、この狐ガブッといったれ!」

神使「何を言っているんですか・・・」


狐神「まっ、元気でね。 何かあったら連絡頂戴」

神様「あぁ、よわよわ稲荷よろしく頼んだ」

狐神「分かったわ」


神様「んじゃ、行くか犬ころ」

神使「巫女カフェの皆さんに挨拶していかなくても良いんですか?」

神様「忙しいだろうし、いいよ」

狐神「みんな寂しがるよ?」

神様「大丈夫だよ」


狐神「そう言うと思って、呼んであるんだけどね」

神様「あ?」


 テクテク


巫女B「あっ、神ちゃんだ」

巫女A「神ちゃん、この廃神社に住んでたんでたの?」

C子「ここって住むところあったっけ?」

神様「・・・・・・」


狐神「本殿六畳に三人で寝泊まりしてたんだよねー」

神使「神様は広いところが苦手なのでこのくらいの部屋じゃないと緊張し―――」

神様「アチョー」ゲシッ ゲシッ

神使「痛っ!」


巫女B「神ちゃんここを立つって狐神様から聞いて」

巫女A「せめて最後にお礼をと思ったの」

神様「そんなの気にしなくて良いのに、私の仕事なんだから」

C子「私達にとっては今後の運命を左右するくらいお世話になったから・・・」

神様「・・・そう言ってもらえると嬉しい」


C子「神様、ありがとうございました」フカブカ

巫女A・B「ありがとうございました」フカブカ


神様「あ~ そういうの照れちゃうから・・・」

C子「でも、何かお礼をしないと」


巫女B「私、これから毎日神ちゃんに朝拝と夕拝する!」

巫女A「私も!」

C子「そうね」

神様「いや・・・ そういうの本当やめて下さい・・・」


狐神「神にとっては毎日朝夕挨拶してもらえるなんて嬉しい事じゃない」

神様「そんな事されてもその場に居なけりゃ分かんないじゃんよ」

狐神「だから、そういう古くから伝わる儀式の根底をひっくり返すような事を暴露するなよ・・・」


巫女B「あっ、これお店で買ったんだけど電車の中で食べてよ」スッ

神様「ん?」パカッ

神様「うわっ! これ向かいのお店で売ってる団子じゃん! しかも一番高いヤツ!」


神使「良かったですね。 神様こちらに来て少ないお小遣い全部使って買ったのに、一つも食べられませんでしたからね」

狐神「そうなの?」

神様「そう! 猿に全部取られたんだよ」

神使「今度は取られないようにしないとですね」

神様「もうここ出るし~ 取られる心配ナッシング!」


神使「それでは、皆さんお世話になりました」ペコリ

神様「ありがとね」

C子「お気をつけて」


神様「そうだ、三人にプレゼントあげる」コトッ


神様「えっと~」ゴソゴソ

C子「?」


神様「はいこれ」スッ

C子「お守り?」

巫女B「うわー ありがとう」

巫女A「どこのお守り?」

神様「私が昔作ったヤツで、御利益薄いけどこんな物しか持ってないから」


狐神「神ちゃんお手製のお守りは、この世で一番貴重なお守りだよ?」

C子「ありがとう」

巫女A「大切にするね」

巫女B「私も、肌身離さず持つ」

神様「そこまで大切に扱わなくても良いって」


神使「あっ!?」

神様「何だよ犬ころ。 大声上げて」

神使「神様がもらったお団子が!」

神様「えっ!?」クルッ


 ウキッ


神様「!? てめぇ!! また私の団子を!!」

猿「ウキキ」タッ タッ タッ

神様「待て! さすがに今度ばかりは許さないぞ!!」タッ タッ タッ


狐神「も~ そんなところに置くからよ」

神使「神様も学習しないですね・・・」



神様「止まれ猿!! お願い! 止まって!」

猿「ウキキッ」タッ タッ タッ

神様「団子~ 私の団子~~」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#10 ―END


着地点決めずに書き始めたから長くなってしまいました……
反省!

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 テクテク


神様「いや~ 京都より西に来たのって久しぶりだよ」

神使「最後にいらしたのはいつ位ですか?」

神様「いつだったかな~ 確か神使2~3人連れて歩いて来た気がする」

神使「神様って昔はそんなにお付きの神使がいたんですね」

神様「道中長いからね~ 途中で神使見つけたり神にしたりしながら旅したんだよ」

神使「そうなんですか!?」


神様「神宮が今の体系になる前だから結構昔だけど」

神使「今度昔のお話も聞かせて下さい」

神様「大して面白い話なんかないけどね~」

神使「あっ、そろそろ次の目的地の神社に着きますね」


~あらすじ~


神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい理想の女神!」

神使(訳)「神宮が誇る最大の問題児! 減給・左遷を総なめにする絵に描いたようなダメ神です」


神様「悪の手先からの激しい嫌がらせにも負けず今日も私を待つ者へ神の力を授ける旅をする」

神使(訳)「悪知恵ばかり働く神様に業を煮やした神宮は無期の長期出向を命じたのでした」


神様「そう、私は強大な神力を持つ心優しき立派な神様だ!」

神使(訳)「神力ゼロです」


【#11】


―――もももも神社


神様「・・・・・・ねぇ、神使君?」

神使「?」


神様「なにこの神社の名前・・・」

神使「もももも神社です」

神様「いや、見りゃ分かるけど・・・ 読みにくすぎだろ」

神使「おとぎ話に出てくる桃太郎さんを祀っているんじゃないか、と言われているそうです」

神様「へぇ~ 桃太郎ねぇ~・・・」フム


神使「どうされました?」

神様「ん? 別に。 で、何するんだこんなところで」

神使「実は長く封印されていた開かずの宝物の開封式があるそうでして」

神様「開かずの宝物?」

神使「はい、その立ち会い依頼が神宮に来ていまして」

神様「私達がその立会人ってこと?」

神使「そうなりますね」

神様「・・・・・・」


神使「神様?」

神様「えっ!?」

神使「何かマズい事を思い出した時のような挙動ですね」

神様「いや全然だよ? 何言ってんの神使君」


神使「お心当たりがあるんですね?」

神様「いやだな~ そんなことないですよ」

神使「明らかに変なんですが・・・」

神様「お前変に疑いすぎ! 取りあえず面倒くさいし帰らない?」

神使「ダメに決まっているじゃないですか。 行きますよ?」

神様「マジかよ」



――― 社務所


 トントン


 巫女「は~い」

 ガラガラ


神使「神宮から参りました神使と申します」

神様「神ちゃんです!」

巫女「ご苦労様です。 どうぞお入り下さい」

神使「失礼いたします」

神様「おじゃま~」


 テクテク



 ガチャッ


巫女「宮司を呼んで参りますので、こちらの部屋でお待ち下さい」

神使「ありがとうございます」



神使「立派な神社ですね」

神様「結構古いよね~」

神使「何か思い出しましたか?」

神様「さっぱり。 たぶん私とは無関係だと思う訳よ」

神使「だと良いのですが・・・」



 ガチャッ


宮司「お待たせいたしました」

神使「はじめまして、神宮より参りました神使と申します」

宮司「ももも神社の宮司でございます」

神様「“も”足りなくない? やっぱ言いにくいよね・・・」


宮司「わざわざ遠いところ、ありがとうございます」ペコリ

神使「こちらは、神宮所属の神で内宮神籍の神様です」

神様「かわゆい神ちゃんと呼んで欲しい」

宮司「神宮の神さま!?」


神使「開封の儀立ち会いの命を受け参りました。 よろしくお願いいたします」ペコリ

神様「よろです」ペコリ


宮司「わざわざ神宮の神さまに来ていただけるなんて・・・ ありがとうございます」フカブカ

神様「あ~ そんなに畏まらないで」

神使「神様は堅苦しいのが苦手ですので、どうぞ普通に接してあげて下さい」

神様「そうそう」

神使「できれば、神としてではなく巫女として接して頂けると喜びますので」

神様「巫女の仕事は完璧にこなせる!」

宮司「・・・・・・はぁ」


神様「ところで、ももも神社に伝わる開かずの宝物って何?」

宮司「ももも“も”神社です、少し言いにくいですが」ハハハッ

神様「・・・・・・」

神使「神様? 失礼ですよ神社名を間違えるなんて」

神様「え? だって、さっき宮司も・・・」


神使「宝物は本殿の方でしょうか?」

宮司「はい。 ご覧になりますか?」

神使「もしよろしければ一度拝見してもよろしいでしょうか」

宮司「では、ご案内いたします」

神様「もももも!」


更新頻度が数日置きとかになるかもですが
ゆるりとお付き合い頂ければ嬉しいです



――― 本殿


 ギィー


宮司「どうぞ、お入り下さい」


神使「正面にある木箱が開かずの宝物でしょうか?」

宮司「はい。 正式には神宮管理ユ―26号と申します」

神様「なにそれ?」

宮司「中身が何か分からないもので・・・ 名称が登録番号のままなのです」


神使「木箱が結構痛んでいますね」

宮司「えぇ、今回開けようと思ったのもそれが一番の原因でして」


神使「神様、何か思い出しましたか?」

神様「あ? 本当に私に関係あるとか思ってるの?」

神使「はい」

神様「即答かよ・・・」


宮司「ユ―26号は神様に由緒のある宝物なのですか?」

神使「間違いなく神様が関係しているものであると思います」

神様「・・・」チッ


神使「ちなみに、ユ―26号には由緒などがあるのでしょうか?」

神様「ねぇ、普通に木箱って言おうよ・・・」


宮司「ユ―26号は桃太郎が鬼退治をした際に没収した宝であると言い伝えられております」

神使「おとぎ話の桃太郎さんですか?」

宮司「えぇ、当神社の言い伝えですと桃太郎は女の子だったそうですので鬼退治というのも比喩かと思うのですが」

神使「桃太郎が女性!?」

神様「・・・・・・」


神使「あの、もう少し詳しく教えて頂いてもよろしいでしょうか?」

神様「いや、別に聞かなくても良いんじゃない?」

神使「宮司さま、是非教えて下さい」

神様「・・・・・・」

宮司「はい・・・」


宮司「その昔、一人の少女が三人の動物を引き連れこの地を訪れたそうです」

神様「動物なのに三人って変じゃね?」

神使「神使でしょうね。 ということは少女というのは神であった可能性が高いですね。 つまり女神さま」チラッ

神様「・・・・・・」


宮司「少女はこの地の名産である牡蠣を食すために訪れたそうです」

神使「牡蠣ですか・・・」チラッ

神様「・・・・・・」


宮司「しかし悪商人が幅をきかせ、少女は牡蠣を食べる事が出来ずに怒り狂ったと」

神使「それは怒りますよね、神様?」

神様「わ、私に聞くなよ・・・」


宮司「少女は鬼の形相で悪商人が住む島へ向かい成敗したと伝記には書かれております」

神様「鬼の形相って・・・ でも桃太郎ちゃん良い子だね、悪いヤツを成敗したんだし!」


宮司「いえ、ここからが恐ろしく・・・」

神使「恐ろしい?」

宮司「はい、何ヶ月もこの地に住み着き牡蠣を・・・ ほぼ食い尽くしてしまい・・・ 遂には―――」

神様「ちょっと待って! 何でそれを書いた書物があるの? 書き直しさせたんだけど!」


神使「・・・・・・」

宮司「・・・・・・」


神様「ぁ・・・」


神使「やはり神様ですか・・・」ハァ

神様「あ、いや・・・ その~・・・」

神使「一体どれだけ牡蠣を食べたんですか・・・」

神様「もももも!」


神使「神様?」ジトー

神様「・・・すいません、あのときの事は反省してますので」ドゲザ


宮司「まさか、伝記に登場する桃太郎というのは・・・」

神使「間違いなく、こちらの神様のことですね」

宮司「・・・・・・」


神様「ちょっとだけ言い訳させて」

神使「何です?」

神様「こっちは伊勢からはるばる来たのに牡蠣を一つも喰えなかったんだぞ!」

神使「それで、仕返しに何をしたんですか?」

神様「・・・えっと~」


宮司「余りにも惨い仕打ちで表現できないと伝記には書かれていますが・・・」

神使「まさか神様・・・」ゾッ

神様「まて! 私は神! 人の幸せを見るのが生きがいのかわゆい理想の女神!」

神使「理想の女神様は表現できないような酷い仕打ちなどしないと思いますが・・・」

神様「だからそんな酷い事はしてないって!」


神使「しかし牡蠣を食べ尽くすだなんて、この土地の人にとってかなりご迷惑ですよ?」

神様「食べ尽くしてねーよ! どんだけだ喰うんだよそれ・・・」

神使「しかし伝記に書かれている以上、本当ではないんですか?」

神様「お前さぁ、伝記が全部本当だったら日本は妖怪だらけだぞ」


神使「ちょっと待って下さい」

神様「あ?」

神使「宮司さま、こちらの神社でお祭りされているのは桃太郎さんですよね」

宮司「はい」

神様「・・・・・・」


神使「今の神様のお話ですと、桃太郎というのは神様の事で・・・」

宮司「まさか!?」

神使「そうなるかと・・・」

宮司「」フカブカ


神様「あ、すいません。 なんか歴史を曲げてしまった罪悪感を感じます」フカブカ

神使「桃太郎が神様だったなんて・・・」

神様「だから嫌なんだよ、昔の事を掘り返すのは」


神使「ユ―26号の中身って何なんですか?」

神様「いや~ 何だろう? やっぱヨ―28号は私と関係ないんじゃない?」

宮司「ユ―26号です」

神様「どっちでも良いの!」

神使「やはり開けてみるまで分からないみたいですね・・・」



――― 夜・社務所


宮司「では、私達は失礼いたします」

神様「あれ? 宮司はここに住んでないの?」

宮司「はい、別の場所に自宅が。 巫女も近くにアパートを借りておりますので」

神使「最近は神職の方も通勤される方が多いみたいですよ?」

神様「ふ~ん」


宮司「お休みの際は奥の客間をお使い下さい」

神使「わざわざありがとうございます」

宮司「それでは、失礼いたします」ペコッ



――― 客間


 ガチャッ


神様「おっ、良いね~ いかにも客間って感じだよね」

神使「お布団も敷いてありますね」

神様「私、窓側~」ポフッ


神使「ゴロゴロするならパジャマに着替えて下さい」

神様「あとで~」ゴロゴロ

神使「シワになっても知りませんよ?」

神様「大丈夫だよ」


神使「神様、明日はどうされますか?」

神様「サ―27号の開封式は二日後だよな?」

神使「ユ―26号です」


神様「んじゃ、特に予定はないんだよな?」

神使「そうですね。 お社のお手伝いでもされます?」

神様「え~ 一日ゴロゴロしてたいな~」

神使「ユー26号の事も少し調べないとですね」

神様「いいよ、そんなの」


神使「開封の前に中身が何なのかをある程度調べておいた方が良いのでは?」

神様「今更調べても仕方ないだろ」

神使「しかし、禍々しいものだったりしたら大変ですし」

神様「大丈夫だって」

神使「だと良いのですが・・・」



――― 1時間後


神様「犬ころ~」ゴロゴロ

神使「どうされました?」

神様「ひまじゃね?」

神使「これが終わったらお相手しますから」カキカキ


神様「何してんの?」ニョキ

神使「神宮へ提出する日報を書いているんです」

神様「そんなのサボって花札しよーぜ」

神使「ダメです」

神様「え~ 良いじゃんよ。 花札~」

神使「ワガママ言っていると花札しませんよ? 終わるまで本でも読んでいて下さい」

神様「うん」


神使「はい、どうぞ」スッ

神様「月刊神様じゃねーかよ・・・ 読まねーよそんなの」

神使「とても為になるので読んでおいた方が良いですよ」


神使「ん?」

神使「どうされました?」

神様「表紙、猫神じゃん」

神使「そう言えば、隣の県でK7サミットをやっているんですよね。 確か今年は猫神さまが議長だったと」

神様「K7?」

神使「位の高い七神の皆さんが集まって開かれる全国神さま会議です」


神様「私呼ばれてないよ?」

神使「神様聞いていました? “位の高い神”の皆さんの会議です」

神様「はいはい、どうせ私は神階が最低位ですよ~だ」

神使「神様は最低位じゃありませんよ。 それは私がよく知っていますから」

神様「神使・・・ お前」

神使「最低位のランク外です。 お間違いのないように」

神様「お~け~! 神罰!」ゲシッ

神使「痛っ!」


神様「ったく」ヨイショ

神使「お手洗いですか?」

神様「ちょっとコーラ買ってくる」

神使「後で私が買って参りますが」

神様「良いって。 暇だしついでに散歩してくる」

神使「境内から出ちゃダメですよ?」

神様「私は子供かよ・・・」スッ

神使「?」


神様「お金」

神使「神様、コーラ買うお金もないんですか?」

神様「お前の分も買ってくるから1000円ちょうだい」

神使「お小遣い込みで500円です」ハイ

神様「へいへい。 何飲む?」

神使「では、冷たいお茶をお願いします」

神様「ドクダミ茶?」

神使「そんなの売っていないと思うのですが・・・ できれば緑茶で」

神様「ほうじ茶ね、んじゃ行ってきまーす」スタスタ


 ガチャッ


神使「絶対に緑茶は飲めないですね・・・」ハァ


>>450

×
神使「ん?」

神使「どうされました?」




神様「ん?」

神使「どうされました?」


すんません

つ牡蠣


神様「!? 牡蠣だ!」パクッ

神使「ちゃんと >>455 さんにお礼しないとダメですよ?」

神様「ども~」



――― 境内


 テクテク


神様「おっ、自販機が境内にあるじゃん」

神様「コーラはペットだけか・・・ しゃーねーな~」ポチ


 ガコン


神様「犬ころは・・・ あっ、メロンソーダ! これでいいや」ポチ


 ガコン


神様「・・・お前は何か飲むか?」

?「さすが神様、お気づきでしたか」スッ

神様「神力ダダ漏れ」

?「神様の背後から申し訳ございません」


神様「久しぶりだな、犬ころ。 いや初代犬ころか」

狗神「その呼び名、懐かしいですね。 ご無沙汰しております」フカブカ


神様「鉄人29号の件か?」

狗神「鉄?」

神様「大丈夫だよ、お前が一番分かっているだろ?」

狗神「それはそうですが・・・」


神様「箱を封印していた神力がなくなったみたいだな」

狗神「はい。 神様にご連絡をと思っていたところでした」

神様「そうか・・・ 良いタイミングだな」


狗神「神力の消失を確認したのは2週間程前なのですが・・・」

神様「それで周りの木箱が傷んできたのか・・・」

狗神「念には念をと思いまして・・・ 箱の腐食まで頭が回らず申し訳ございません」

神様「そんな事ないって。 長きに渡りお前には負担をかけた、礼を言う」

狗神「神様・・・」


神様「二日後の開封式までに何とか出来るか?」

狗神「この命に代えてでも」

神様「すまない、私にまだ力があればお前にこんな苦労はさせずに済んだのだが・・・」

狗神「これが私の使命ですので」


神様「今日は遅い。 明日の夜に執り行う」

狗神「はい。 明日は満月、周りに気づかれず月明かりだけでもこなせるかと」

神様「ツイてるな。 あまり見られたくないしな」

狗神「・・・・・・」


神様「最後まで気を抜くなよ?」

狗神「心得ております。 夜8時頃でいかがでしょうか」

神様「分かった。 開封の儀までには再封印しないとまずいしな」

狗神「神様・・・ わたくし・・・」グスッ


神様「ほれ、コーラ。 私の奢り」ポイッ

狗神「コーラ・・・」

神様「私が一番好きな飲み物だ。 今日はそれ飲みながら帰れ」

狗神「ありがとうございます」

神様「もし・・・ 二人とも無事でいられたら・・・ 祝杯でも上げよう」ニコッ

狗神「はい!」


神様「今日はゆっくり休めよ」

狗神「神様も明日は万全の体制で」

神様「あぁ、じゃあまた明日」

狗神「失礼いたします」


 スタスタ


神様「アイツにだけは知られたくはないな・・・」フッ



――― 客間


 ガラガラ


神様「ただいま~」

神使「お帰りなさいませ」

神様「はい、お前のジュース」ポイ

神使「・・・あの緑茶を頼んだつもりなんですが」

神様「そうだっけ? 同じ緑色だし良いじゃん。 後で半分飲ませて?」

神使「神様が飲みたいだけじゃないですか・・・」プシュッ


神様「ハァ~・・・」ゴロン


神使「あの神様?」

神様「ん~?」ゴクゴク

神使「・・・・・・いえ」


神様「まさか、聞こえてた?」

神使「聞くつもりはなかったのですが・・・ 自販機がこの部屋の真ん前ですので」

神様「あ~・・・」

神使「盗み聞きのような真似をして、申し訳ございません」


神様「・・・・・・」

神使「話しにくいようでしたら無理には伺いませんが」


神様「1000年以上前になるかな~ 当時この地域に“鬼”と呼ばれるものがいてさぁ」

神使「鬼・・・ ですか?」

神様「まぁ鬼って言っても神力の塊のようなものだけど。 それを封印してるんだよ、国道26号に」

神使「ユー26号」


神様「その後、私の側近だった神に管理を任せた」

神使「先ほど神様とお話をされていた方でしょうか?」

神様「そう。 お前の大先輩の元狛犬で狗神だ」

神使「狗神さまは、この神社の主神さまではないのですか?」

神様「あれがウロウロしていたらバレるからな。 余所から遠隔管理をしていたんだ」

神使「そうだったのですか・・・」


神様「私のせいで・・・ アイツには長きにわたって迷惑をかけてしまった・・・」

神使「神様・・・」

神様「昔の話だ。 気にしないでくれ」


神使「今でもユー26号の中にはその鬼が?」

神様「さぁな。 ただ封印していた神力が消失しても異常は見つかっていないし」

神使「鬼という物が何かはよく分かりませんが、神宮に移して厳重な封印管理をした方がよろしいのでは?」

神様「心配いらない、明日の夜に再封印を行う。 開封の儀までには間に合わせるよ」

神使「しかし、万が一という事も」

神様「この地でないといけないんだよ」

神使「・・・・・・」


神様「大丈夫だって、何も起こらないよ」

神使「分かりました」

神様「すまないな、心配かけて」ペコリ

神使「どうしたんですか? 神様らしくないですよ」

神様「当時の事を思い出すと、少しね・・・」


神使「そうだ! K7に参加されている猫神様に来て頂くというのはどうでしょうか?」

神様「あ?」

神使「確か、K7は明日の夕方で終わりのはずですし」

神様「呼ばなくて良いって」

神使「しかし、神力が強い猫神様でしたら何かあっても助けてくれるのでは」

神様「あいつも忙しいだろうし、それに~・・・」

神使「それに?」

神様「とにかく、呼ばなくても良いから!」

神使「・・・・・・はぁ」



――― 翌日・朝


神様「Zzz・・・」グガー

神使「神様?」ユサユサ

神様「ん~ 昼?」ポー

神使「朝です」

神様「もう少し寝かせて・・・ 今日の夜は忙しいし」モゾモゾ


神使「私、少し出かけてきますが一緒に行きます?」

神様「デパート?」

神使「今日はK7最終日なので議長声明を聞いてこようかと思いまして。 運良く隣の県ですし」

神様「はぁ? 行かねーよ、そんなの」

神使「では、私一人で行ってきます。 夜には戻りますので」


神様「明日の開封の儀までゆっくりしてきていいぞ。 ついでに観光でもしてこい」モゾモゾ

神使「居ない方が良いような言い方ですね?」

神様「・・・・・・んなことないって。 ほら再封印の儀式は危険だからさ」


神使「私は立ち会わなくてもよろしいのですか?」

神様「狗神と二人でやるから大丈夫だよ」

神使「くれぐれも無茶はなさらないで下さいね」

神様「へいへい」

神使「では、行って参ります」スタスタ


 ガチャ


神様「」ニヤリ



――― K7サミット会場


 テクテク


神使「さすが位の高い神々の方のお話はひと味違いますね」

神使「とても神様が同じ神とはとても思えません・・・」


 お~い 神使君~


神使「? これは、猫神様!」

猫神「いや~ 久しぶりだね~」

神使「ご無沙汰しております」フカブカ


猫娘「お久しぶりです。ニャ」

神使「猫娘さんも一緒でしたか」

猫娘「猫神様の神使なので、どこでも一緒です。ニャ」


猫神「神使君がいるって事は、神ちゃんも一緒~?」

神使「いえ・・・ 神様はこういう所は苦手でして・・・」

猫神「まぁそうだよね~ 楽しくない所に神ちゃん来ないしね~」

神使「申し訳ありません、神様もこういう場所に来て勉強して頂きたいのですが・・・」

猫神「いやいや~ それは絶対無理だよ~」


猫娘「神様は一人でお留守番ですか? ニャ」

神使「はい、私達隣の県にあるもももも神社におりまして」

猫神「もももも神社~!?」

神使「猫神様、ご存じですか?」


猫神「・・・・・・何か問題事~?」

神使「いえ、そこまでではないのですが・・・ 開かずの宝物の開封式が明日ありまして」

猫神「ユー26号・・・」

神使「さすが猫神様! やはりご存じでしたか」


猫神「あの箱に何かあったの~?」

神使「それが、箱の腐食が酷く・・・ 明日、神社の方で開封の儀を行う事になっておりまして」

猫神「でも、あの箱は神力封印で開封できないはずだけど~・・・」

神使「神様のお話ですと封印が解けているそうで、今日の夜に神様が再封印の儀を行うようです」

猫神「・・・・・・」

神使「猫神様?」


猫神「神使君、私達このあと帰るだけだから一緒にもももも神社に行くよ~」

神使「・・・やはり重大な問題でもあるのでしょうか」


猫神「神ちゃんをあの箱に近づけさせたらマズいよ~」

神使「!?」

猫神「神ちゃんいつ箱を触るって言ってた~?」

神使「今日の夜・・・ たしか8時だったと」


猫神「神使君、猫娘ちゃん急いで行くよ~」

神使「はい」

猫娘「はいです。ニャ」



―――もももも神社・夜


宮司「では、私達は帰りますので」

神様「あぁ、お疲れちゃん」


巫女「お一人でも大丈夫でしょうか・・・」

宮司「何でしたら、神使さんが戻るまで私達もここにいますが」

神様「大丈夫だって、これでも神宮の神だよ?」

宮司「承知いたしました。 では何かございましたらご連絡下さい」

神様「おっけ~ 箱の開封の儀は明日の朝だよね?」

宮司「はい、ム―26号の開封式は朝9時からを予定しております」

神様「・・・ユー26号じゃない?」


宮司「私達は準備のため、朝5時にはこちらに入りますので」

神様「随分早いね・・・」

宮司「?」

神様「いや、何でもない。 よろぴこ」


宮司「神様も明日は立ち会い、どうぞよろしくお願いいたします」

神様「おっけ~ じゃぁ明日また」

巫女「はい、それでは失礼いたします」ペコッ

宮司「失礼いたします」ペコッ

神様「ご苦労様・・・」ペコッ


 スタスタ


神様「狗神、居るか?」

狗神「はい」スッ


神様「始めるぞ、準備を」

狗神「炭入れから始めますので、1時間後には」

神様「宮司達が朝5時出勤だから少し急ぐぞ」

狛犬「はい」


神様「覚悟は良いか?」

狗神「いつでも」

神様「よし、数百年ぶりに全力でいくか!」


 ギィー


――― 一時間後


神使「午後7時50分、間に合いましたね」ハァハァ

猫神「神ちゃんは本殿の中だね~」

猫娘「でも中は真っ暗です。ニャ」


猫神「満月・・・ 気づかれないように月明かりでやるつもりだね~」

神使「一体、この中で何が・・・」


猫神「・・・いくよ~」

神使「はい」



 バンッ!


神様・狗神「!?」

猫神「ハロ~ 神ちゃ~ん」

神様「猫神っ!!」


猫神「何してるの~?」

神様「え!? いや・・・ 点検?」


猫神「狗神君も一緒なんだ~」

狗神「・・・・・・」

猫神「狗神君? 何してるの~?」

狗神「・・・あの ・・・これは」オロオロ


神様「お前が何でここにいるんだよ!」

猫神「K7サミットの帰り~ 会場で偶然神使君に会ってさぁ~」

神様「・・・」チッ


猫神「あれ? 私が封印した箱が開いてるわね~ 何でだろう~」

神様・狗神「・・・・・・」


猫神「もしかして~ 開けた?」ニコッ

神様・狗神「・・・・・・」ダラダラ


猫神「開けた~ぁ?」ギロッ


神様「逃げるぞ! 狗神!」

狗神「え!? 神様?」


猫神「どうして逃げるの~?」ササッ

神様「早いっ!」クッ


猫娘「猫神様から逃げられる事なんて出来ません。ニャ」

神様「しゃべり方はゆっくりのくせに、何で動きはそんなに機敏なんだよ!」

猫神「だって~ 猫だも~ん」


神使「あの・・・ これは一体・・・」


狗神「・・・・・・」ソロソロ


猫神「は~い、狗神君はそこで止まって~」

狗神「」ピクッ

猫神「正座~」ニコッ

狗神「はい・・・」ストン


猫神「少しでも動いたら全力でいくからね~?」

狗神「・・・・・・」


神使「猫神様? 状況が飲み込めないのですが・・・」


猫神「神使君も箱の中見てみたら~?」

神使「ユー26号の中ですか?」

猫神「うん」


神様「バカ! 見るんじゃない! この世の物とは思えないおぞましき物が入っているんだぞ!」


 スタスタ


猫娘「箱の中身は何だろな~♪ ニャ」

神使「磯の香り?」


神様「よせ! 来るな!! 呪われるぞー!」

猫神「神ちゃんは箱から離れてね~」ガシッ

神様「嫌だー!」ズルズル


神使「これは!」

猫娘「ニャニャ!」


神使「神様の反応である程度予想はしていましたが・・・」

猫娘「牡蠣が沢山います。ニャ」


神使「とても大きいですね」

猫娘「なんで箱の中に牡蠣が入っているんですか? ニャ」


猫神「一つ食べてみたら~」

神使「食べても大丈夫なんですか?」

猫神「人だったらちょっと面倒だけど、君たちなら大丈夫だよ~」


猫娘「やったー! 牡蠣食べる!ニャ」パコッ

神使「では、私も」パコッ

神様「私も」

猫神「ダ~メ」グイッ

神様「私も食べたい!!」ジタバタ


猫娘「あむっ」チュルン

神使「はむっ」チュルン

神様「あーー!!」


神使「美味しい!」

猫娘「こんな美味しい牡蠣はじめてです。ニャ」


 ポンッ
 ポコポコッ


神使・猫娘「・・・・・・」


神使「あの、猫神様?」

猫神「な~に?」

猫娘「牡蠣が増えた! ニャ」


神様「・・・・・・」


猫神「その牡蠣ね~ 神ちゃんの神力が宿ってるの~」

神使「え!?」

猫神「ねぇ~ 神ちゃん?」

神様「私の神力だって証拠でもあるのかよ!」

猫神「」ギロッ

神様「あい。 すいませんです」ドゲザ


猫神「昔ね~ この地方の人が長い月日をかけて改良して作った鬼牡蠣っていう美味し~い牡蠣」

神使「鬼牡蠣・・・ 確かに大きいですよね」

猫娘「今までこんな牡蠣見た事ないです。ニャ」


猫神「養殖するのが凄く難しくてね~ たぶん今はいないんじゃないかなぁ~」

神使「そうなんですか、残念ですね」

神様「でしょ? こんなに美味しいのに! 勿体ないでしょ!?」

猫神「神ちゃん?」ニコッ

神様「・・・・・・」


神使「なるほど。 神様はこの牡蠣が気に入って神力を使って養殖していたのですね?」

神様「絶対絶滅させちゃいけない品種なんだよ!」

猫神「神ちゃん、ちょっと黙ってて」ギロッ

神様「・・・はい」


神使「しかし、先ほど食べ終わった後に増えた気がするのですが・・・」

猫神「食べた分だけ永遠に増え続けるの~」

神様「なんてメチャクチャな・・・」

猫娘「凄いです。ニャ」


猫神「でも、神力を使って養殖した牡蠣を人が食べちゃったら大変だしね~」

神使「それで猫神様が封印を・・・」

猫神「うん。 神力封印すれば神ちゃんでも開けられないし~」

神使「そうだったんですか」


猫神「でも誤算だね~ 狗神君が仲間に付いていたなんて」

狗神「すいません、あまりに美味しい牡蠣だったもので・・・ 味を忘れられず」

猫神「でも、簡単に解けるような神力封印じゃなかったと思うんだけど~」

狗神「毎日少しずつ封印の神力解放を続けていました」

神使「そこまでして・・・」


猫神「神力封印が解けても、新しく封印が発動すると思うけど~?」

狗神「封印の神力が消失後は箱を開けない限り再封印はかからず・・・ 箱を開けても再封印は翌日に発動するようで」

猫神「そんな穴があったんだ~」


神使「つまり牡蠣を食べられるのは、封印が解けた一日だけということですか?」

狗神「はい。 封印が解け再封印がかかる一日で食べまくり・・・ それを数百年におきに」

神使「何という執念・・・」

猫娘「尊敬します。ニャ」


神様「お願い! この牡蠣を食べるのは数百年に一度の私の楽しみなの! 見逃して!!」ドゲザ

猫神「も~ 神ちゃんは仕方ないな~」

神様「!? ありがとう猫神!」

猫神「絶対に開かないように永久封印しないとね~ 神力結構使うな~」

神様「ぇ・・・」


神使「猫神様、神様も当時は桃太郎として悪商人を成敗して人々を助けたみたいですし少しくらいは・・・」

猫神「神ちゃんが桃太郎~?」

神様「バカ、犬ころ黙ってろ!」


猫神「嫌だな~ 神使君。 何言ってるの~?」

神使「え? ももも神社に伝わる伝記にそう書かれているようですが」

神様「“も”が足りねーよ! もももも!」


猫神「神ちゃんは悪商人と手を組んで、鬼牡蠣を血眼で探したんだよね~」

神様「・・・・・・」

猫神「離れ小島に生息しているのを知って、その島に鬼がいる事にして~」

神使「はい!?」


猫神「何だっけ~ 鬼は牡蠣が嫌いだから無限に作れば鬼退治できるんだっけ~」

神様「うぐっ・・・」

猫神「村の人にお願い事を強要して勝手に叶えたんだよね~ 鬼牡蠣の無限増殖っていう自分の願いを」

神様「・・・・・・」


神使「神様・・・ 昨日私に話してくれた昔話と違うのですが」

神様「私は嘘なんか一つもついてないぞ! 神力を宿した鬼が封印されていただろ!」

神使「では再封印の儀式というのは・・・」

神様「私達が箱を開ければ次の日には再封印がかかるんだよ! ついでに牡蠣食うだけ!」


神使「最低です・・・」ジトッ

神様「さ、最低とか言うな!」


猫神「あれ~ まだ反省してないの~? 当時あんなになるまでお説教したのに~」

神様「・・・・・・」

猫神「もう一回お説教する~?」

神様「い、いえ! 必要ありません!!」ブルブル

神使「(神様があんなに震えるなんて、一体どんなお説教だったんでしょう・・・)」


神使「では、桃太郎さんというのは・・・」

猫娘「悪い鬼を退治した猫神様ですね。ニャ」

神使「猫神さまが桃太郎・・・ つまり悪い鬼というのは・・・・・・」チラッ

神様「・・・・・・なんだよ」

神使「神様、この神社に伝わる伝記を書き換えさせようとしたと仰っていましたね」

神様「なんの事かな~」プイッ


神使「猫神さま、神様にキツいお説教をお願いいたします」

神様「!?」

猫神「神使君に言われたらするしかないね~」

神様「あっ、いや・・・ 反省してますので! すいません! 本当すいません!」ドゲザ


猫神「神使君と猫娘ちゃんは、ちょ~っと本殿から出てくれる~?」

神使・猫娘「はい!」スタスタ


 ギィー バタン



猫神「神様、生きてここから出られますかね? ニャ」

神使「狗神さまも無事だと良いのですが・・・」


 ギィャーーーー!!!!


神使「まぁ、自業自得ですね」

猫娘「ニャ」


>>502

 ×
猫神「神様、生きてここから出られますかね? ニャ」



 ○
猫娘「神様、生きてここから出られますかね? ニャ」


ごめんなさい



――― 翌日・朝


神様「・・・・・・」ボー

狗神「・・・・・・」ボー


猫神「二人ともよく似合ってるよ~ 予備の装束持ってきて良かった~」

猫娘「神さまっぽいです! ニャ」


宮司「・・・あの神使さん?」

神使「はい」

宮司「なぜ神の方が三人もいるのでしょうか・・・ しかもあちらは正一位の猫神様では?」

神使「驚かせてしまい申し訳ございません」

宮司「三神体制だなんて・・・ そんなにユー26号は禍々しい物なのですか?」

神使「いえ、そういう訳ではないのですが・・・」


巫女「神様すごくやつれているように見えます。 体調が優れないのでは?」

宮司「狗神さまも先ほどから足がプルプル震えているような・・・」

神使「(猫神様、早朝まで一体どんなお説教をされたのでしょう・・・)」


猫神「宮司さ~ん」

宮司「はい、何でしょうか猫神様」フカブカ

猫神「残念だけどユー26号は開封する訳にはいかないから~ 再封印の儀を行いますので~」

宮司「承知いたしました」


猫神「狗神君~?」

狗神「はい!!」

猫神「新しい箱を本殿に入れて~」

狗神「ただいま!!」プルプル

宮司「あっ、私がお持ちいたします」

狗神「ありがとうございま―――」

猫神「狗神君が一人で持って行って~」

狗神「・・・・・・私、正座のしすぎで足が思うように動かな―――」

猫神「狗神君が一人で持って行って~」ニコッ

狗神「はい・・・」


猫神「神ちゃんは、私の神力を経由して神力封印ね~」

神様「あの、それメッチャ疲れるんで猫神がやれば良いと思―――」

猫神「神ちゃ~ん」ニコッ

神様「承知いたしました」フカブカ


猫神「永久封印だからね~?」

神様「それって唱えるだけで3時間くらいかかると思―――」

猫神「永久封印だからね~?」ニコッ

神様「はい・・・」


――― 夕方・客間


神様「ハァ~・・・ ちかれた・・・」トテトテ

神使「お疲れ様でした」

神様「目の前にある究極の牡蠣を食べずに封印するなんて、私の精神はボロボロだよ」シュン

神使「過去の過ちは悔い改めるべきです」

神様「お前、いつから牧師になったんだよ・・・」


神使「うだうだ言っていないで、装束脱いで下さい」

神様「そんな体力ない・・・」ゴロン

神使「ちょっと神様、装束着たまま布団に転がらないで下さいよ」

神様「疲れたんだよ・・・ パトラッシェ」

神使「猫神様の装束なんですから、怒られますよ?」

神様「!?」ヌギヌギ


神使「シワになりますからもう少し丁寧に脱いで下さい」

神様「うるせー」ヌギヌキ


神使「あの、下着まで脱がなくても・・・」

神様「裸で布団に包まれたい気分なの!」

神使「ダメです。 ちゃんと服は着て下さい」

神様「いいじゃんよ~」


神使「もう出発するんですから。 猫神様が外で待っていますので」

神様「私、完徹なんだけど・・・ 少し寝かせてよ」

神使「電車の中でたっぷり寝る時間ありますから」

神様「もももも・・・」



――― 境内


 テクテク


神使「お待たせいたしました」

神様「おまたせー」


宮司「神々の皆様、本当にご協力ありがとうございました」

猫神「気にしないで~ ユー26号は神力封印で永久に開く事はないから~」

宮司「代々お守りして参ります」


猫神「それじゃぁ~ 私達はこれで~」

宮司・巫女「お世話になりました」フカブカ

神使「ご苦労様でした」

猫娘「また来ます。ニャ」


猫神「神ちゃん~、狗神君~ ちゃんとご挨拶しないとダメよ~」

狗神「・・・この度は、大変お騒がせいたしまして申し訳ございません」フカブカ

神様「深く反省しております」フカブカ

宮司「?」

神使「で、では・・・ 失礼いたします」ペコリ



 テクテク


神様「ハァ~ 散々な目に遭ったよ・・・」

神使「元はと言えば神様が原因ですよ?」

猫神「あれ~ まだ反省してないの~?」

神様「反省してます!」


猫娘「そういえば、狗神様はどうしたんですか? ニャ」

神様「タクシーで帰ったよ。 足プルプルして歩けないんだと」

神使「狗神様も神様と付き合ったばかりに災難ですね・・・」



――― 駅


神様「さて、私達は次どこ行くんだ?」

神使「東北方面ですね」

神様「遠いなぁ・・・」


猫神「私達と一緒だね~」

神様「そういえば、猫組も東北だな。 飛行機か?」

猫娘「新幹線で仙台です。ニャ」

猫神「飛行機は苦手でね~」

猫神「6時間かかるので疲れます。ニャ」


神様「たった6時間くらいで根を上げるようじゃまだまだだな。 私は電車で12時間耐え抜いた事がある」ドヤッ

猫神「12時間も!? すごいね~」


神使「今回は記録更新しそうですね」

神様「は?」

神使「予定では35時間かかるみたいですので」

神様「・・・・・・」

猫娘「35時間ですか!?」

神様「おい猫娘、“ニャ”忘れてるぞ」


猫神「どういうルートで行くの~?」

神使「鈍行ですので・・・ 途中廃神社で1泊いたしますから電車に乗るのは27時間くらいですが」


神様「猫神さぁ、私達の切符と交換しない?」

猫神「え~ 嫌だよ~」

神様「良いじゃんよ、交換しようぜー」

猫神「じゃぁ、私達も一緒に鈍行で行ってあげようか~」

猫娘「ニャニャ!?」

神様「・・・・・・」


猫神「ふふっ、冗談だよ~ 神ちゃんは神使君と二人が良いんだもんね~」

神様「猫神さぁ・・・」ギロッ

猫神「あ~ 怖い~ 神ちゃんが本心を見抜かれて怒ってる~」


神使「・・・・・・あの、あまり神様をからかわないであげて下さい」

猫神「冗談だよ~」

神様「さっさと新幹線でねこねこアイランドに帰れ!」


猫娘「猫神様、新幹線ホームはこっちです。ニャ」

猫神「じゃぁ私達はここで~」

神様「へいへい」


神使「今回は色々とありがとうございました」

猫神「どういたしまして~ 元気でね~」

神使「また、暇を見つけてねこねこ島の方へ遊びに伺いますので」

猫娘「待ってます! ニャ」

猫神「じゃぁね~」


神様「んで、私達はどこだ?」

神使「3番線ですから向こう側ですね」

神様「長旅だなぁ・・・」

神使「頑張っていきましょう!」

神様「何を頑張るんだよ~」

神使「では、東北へ向け出発です!」

神様「お家帰りたい!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#11 ―END


猫神「お~い、神ちゃ~ん」

神様「あん?」


 スタスタ


猫神「神ちゃんにこれ渡すの忘れてた~」

神様「ん? なにこの書類」

猫神「K7の議事録~」

神様「あ~」

猫神「40ページあたりからの報告書だけでも後で読んで感想聞かせてもらえると嬉しいなぁ~」

神様「分かった」


神使「K7と言えば、猫神様の議長宣言は大変素晴らしかったです!」

猫神「嫌だなぁ~ 聞いてたの~?」

神使「毎年素晴らしいお言葉ですが、今年は特に心に染みました」

猫神「うれしいね~」


神使「神様にもぜひ聞いて頂きたいお言葉でした・・・」


神様「“神があって人があるのではない、人があって神がある”か?」

神使「はい、とても考えさせるお言葉です・・・ って、神様ご存じなんですか?」


猫神「ふふっ、それ神ちゃんの言葉だよ~」

神使「えっ?」


猫神「これは秘密なんだけど~ K7で出す議長宣言って神ちゃんが毎年考えてるんだよ~」

神使「神様が!?」

猫神「うん、毎年ぎりぎりで今回も当日の朝にメールで送られてきたんだけどね~」

神使「・・・・・・」


神様「何だよ」

神使「いえ・・・」


神様「神使君さぁ忘れちゃってるかも知れないけど、私これでも神宮の神だからね?」

神使「そ、そうですよね・・・ 確かにこの国の神は神様から生まれてるんですよね・・・」


神様「母なる神ちゃん!」フンスッ

猫神「え~ 嫌だな~ その表現」

神様「・・・・・・すいません、調子に乗りました」ペコリ


神使「やっぱり神様は凄いんですね・・・」

猫神「その神様を支える神使君はもっと凄いと思うよ~」

神使「いえ、私などまだまだ・・・」


猫神「こんなにいつも一緒にいる神使なんて神ちゃん初めてじゃな~い?」

神様「あ?」

猫神「神ちゃんって神使なんて眼中になかったもんね~ 一ヶ月に一回会ってくれたら良い方だったし~」

神様「・・・申し訳ございませんが過去の話を持ち出すのは勘弁して頂けないでしょうか」

猫神「ふふっ、ゴメ~ン」


猫娘「猫神様、新幹線出ちゃいます! ニャ」

猫神「じゃぁ今度こそ、バイバ~イ」

神様「へいへい」

神使「色々とありがとうございました」

猫神「どういたしまして~ 元気でね~」


 スタスタ


神使「さてと、では神様行きましょうか」

神様「30時間か・・・」

神使「すいません、お金の方が少し厳しく神様にご不便をおかけしまして」

神様「そんな事を気にする必要なんかないよ」

神使「しかし・・・」

神様「私はお前となら歩いて東北まで行くのも苦じゃないしさ」

神使「神様・・・」


神様「我が神使、狛犬よ」

神使「はい・・・」


神様「神にならない?」

神使「お断りします」


神様「・・・少しは考える振りくらいしろよ」チッ

神使「以前も申しましたが、私は神様の神使でいたいのです」

神様「・・・・・・」

神使「電車の時間です。 行きますよ?」

神様「やっぱ、新幹線にしない?」

神使「ダメです、お金がないって言ったばかりじゃないですか」

神様「じゃぁ神になってよ」

神使「しつこいですよ?」

神様「私のお願い、一つくらい聞けやーー!!」





神様「神様だっ!!」 神使「神力ゼロですが・・・・・・」 ―END


おわたー
どうもありがとうございました<(_ _)>



 ガタンゴトン


神使「神様?」

神様「なんだよ、極悪邪道腐れ犬ころ変態神使」

神使「スレが余っています」

神様「だから?」

神使「まだ私達の旅を書き記せます」

神様「いや、もう良いんじゃね?」

神使「もうじき次の目的地にも着きますし・・・」

神様「どうせ減給になるだけだから行かなくて良いと思うの」

神使「では、このまま鈍行に乗っていますか? 永遠に終わる事のない鈍行の旅・・・」

神様「!? “神ちゃんと行く全国牡蠣食べ尽くし漫遊記”スタートゥ!」

神使「タイトルが違います」


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


神様「神様だっ!!」 神使「神力ゼロですが・・・・・・」



 ガタンガタン
 プシュー


神使「いや~ 良い所ですね」

神様「マジで30時間も電車に乗せられるとは思わなかった・・・」ゲンナリ


神使「見て下さい神様! この景色!」

神様「緑色しか見えないんだけど・・・ 人は? お店は? 人工物は?」キョロキョロ

神使「ホームしかないですね、この駅」ハハハ

神様「勘弁してくれよ~ 山しかねーじゃん・・・」


神使「私こういう雰囲気大好きです」

神様「私はコンクリートジャングルの方が好きです!」



~あらすじ~


神様「かわゆい神ちゃん!」

神使「ダメ神です」



【#12】


 テクテク


神様「ねぇ、また廃神社だったりするの~?」

神使「次の勤務先の神社は有人です。 神職と巫女さんが居るようですね」

神様「え? マジで?」

神使「はい、あにあに神社という小さなお社のようです」

神様「んじゃ私達が行く必要なんかないんじゃね?」


神使「神社運営の指導という形になります」

神様「指導?」

神使「ですので、私達が神使と神という事は内緒でお願いいたします」

神様「あ?」


神使「あくまでも神宮からの教育係としての赴任となりますので」

神様「まぁ私は巫女が本職だから良いけど、お前はどうすんの? 番犬か?」ウヒャヒャ

神使「・・・神職という事でお願いします」

神様「神職? お前が?」

神使「これでも神職の資格は持っているんですよ?」

神様「え? うそ!」

神使「神宮に赴任する前に階位を取得しました」


神様「じゃぁ神になれば神・神職・巫女、全部出来るじゃん!」

神使「そういうつもりで取得したつもりはないのですが・・・ あと巫女は関係ないと思います」

神様「一人で全部こなしてこそプロフェッショナルだと思うの。 じゃぁ早速神に―――」

神使「なりません」

神様「・・・」チッ



――― あにあに神社


 ガラガラ


神使「ごめんください」

巫女「はい?」


神使「神宮から参りました神使と申します」

巫女「神宮!? ど、どうぞお入り下さい」

神使「失礼いたします」スタスタ

神様「おじゃまー」トテトテ


神使「権禰宜さんはいらっしゃいますでしょうか」

巫女「はい!今呼んできますので少々お待ち下さい」スタスタ


神様「宮司じゃなくて良いのか?」

神使「神宮の資料ですと先日転勤されたそうで、今は権禰宜の神職と巫女さんの二人だけだそうです」

神様「へ~ 宮司不在なんだ」

神使「大変ですよね」


神様「それより、さっきの巫女さん若いな。 初々しくて良いね~」

神使「いじっちゃダメですよ?」

神様「いじるって何だよ・・・ 私は新入りちゃんにはとっても優しいのだよ? 神使君」

神使「それは良かったです」



 スタスタ


神主「お待たせしました、あにあに神社の権禰宜で神主と申します」ペコリ

神様・神使「・・・・・・」

神主「?」


神様「随分若いね~ 袴の色も白だし、もしかして入ったばっかり?」

神主「四月に研修所を卒業して、先日市内のお社で研修を終えたばかりです!」

神使「・・・そうですか」


神使「巫女ちゃんも新人ぽいけど?」

巫女「はい! 私も先日からこちらに・・・」

神使「お二人とも新人さんという訳ですね?」

神主・巫女「はい!」

神様「神宮も無茶するよね~」


神使「神宮から連絡があったかと思いますが、しばらく私たちが指導と管理体制のお手伝いをさせて頂きます」

神主・巫女「よろしくお願いします!」


神様「私は神宮の巫女で、みんな大好きかわゆい神ちゃん」

巫女「よろしくお願いします! 神ちゃんさん!」

神様「かわゆい神ちゃん」

巫女「はい! 神ちゃんさん!」

神様「・・・うん」


神使「私は・・・ 神宮の神職で神使と申します」

神主「ご指導よろしくお願いいたします! 神使先生!」

神使「よろしくお願いいたします」


神様「荷物を置きたいんだけど部屋に案内してもらってもいい?」

巫女「はい! 神ちゃんさん!」


神様「かわゆい神ちゃんさん先生」

巫女「はい! 神ちゃんさん、ご案内します!」


神様「君、中々見所あるね・・・」

巫女「ありがとうございます! 神ちゃん!」

神様「・・・・・・」



――― 客間


 ガラガラ


神主「滞在中はこちらのお部屋をお使い下さい」

神使「ありがとうございます」

神様「ども~」トテトテ


巫女「あっ、神ちゃんさんのお部屋は隣です」

神使「私と神様は同じ部屋で大丈夫です」

巫女「しかし・・・」

神主「男女同じ部屋というのも・・・」


神様「ノープロブレム! 神使君は夜一人だと寂しくて寝られないんだよ」ニヒヒ

神使「夜ヒマになっても花札で遊んであげませんよ?」ボソッ

神様「・・・部屋を二つも使うなんてそんな贅沢は出来ないから一つで良いの」

神主「そう言うことでしたか。 さすが神宮に御奉職されている方の考えは立派ですね」

神様「でしょ? 勉強したまえ」

神使「・・・・・・」


神主「では、私達は社務所におりますので」

神使「わかりました。 後ほど伺います」


 ガラガラ


神使「では、着替えてお仕事に入りましょうか」


神様「う~ん・・・」

神使「どうされました?」

神様「何で新人が神社の管理してんだ? しかも宮司不在なんて変だろ」

神使「・・・実はこの神社、この1年で宮司が五人も変わっているようでして」

神様「そんなに!?」


神使「全員神宮辞令の転勤で来られたそうなのですが、皆さんすぐにお辞めになってしまうようです・・・」

神様「神宮辞令・・・ 理由は?」

神使「住人の方との関係が上手くいかないと・・・」

神様「うへ~ マジっすか・・・」


神使「昔ながらの集落ですので、よそ者は嫌煙されるんじゃないでしょうか」

神様「だったら神職不在神社にしておけば良いじゃん」

神使「それが、神宮がこのお社を重要視しているようでして」

神様「重要視? 見た感じ普通の神社みたいだけど?」

神使「確かにお社の社位もそれほど高くはないようですし、どうしてかは私も知らされていないのですが・・・」

神様「そんな重要視するような所に新人ってどうなの?」

神使「ですから、その体制の見極めもかねて私達がここに来た訳で・・・」

神様「やっぱ曰く付きかよ~・・・」ハァ



――― 夕方


 サァー サァー


神使「さてと、境内のお掃除はこんなもんで良いでしょう」

神主「はい!」


神使「では、この後は本殿でご祈祷の実技を―――」

神主「あっ」

神使「?」クルッ


村人「・・・」ジー


神使「こんにちは」ニコッ

村人「・・・・・・」


神使「今日からこちらでお世話になります神使・・・ いえ、神職の神使と申します」ペコリ

村人「・・・・・・」

神使「?」


村人「よそ者は、夜に出歩くでねぇぞ」

神使「夜?」

村人「分がっだな? 村の掟だ」スタスタ

神使「・・・・・・」


神主「私達あまり歓迎されていないようです・・・」

神使「あの方は?」

神主「毎日ここに来る方なんですが、いつもあんな感じで・・・」

神使「毎日・・・ ですか?」


神主「なんか監視されているみたいで少し怖いですよね」

神使「・・・・・・」



―――社務所


神様「うへへ、お芋・・・ Zzz・・・」グガー

神使「神様?」ユサユサ

神様「んぁ・・・ 芋?」

神使「何ですか芋って・・・ 巫女さんと一緒に紙垂を作っていたんじゃないんですか?」

神様「ん~ とっくに終わった」ボー


神使「巫女さんはどちらに?」

神様「知らない」


神使「神様、教育係なんですからもう少し責任持って下さいよ・・・」

神様「豚汁の匂いするから夕食でも作ってんじゃないの?」

神使「調理場は別棟なのによく分かりますね・・・」

神様「良い香りがプンプンするじゃん」クンクン


神使「夕食前に二人に講習会を開きますから神様もご指導お願いします」

神様「え~ お前一人でやれよ」

神使「私は巫女のお仕事はよく分かりませんから」

神様「講習とか面倒くさいと思うの。 私嫌い」

神使「神様の好き嫌いは関係ありません。 仕事です」

神様「へいへい。 厳ちーね~」ヨイショ



――― 本殿


 ダッ ダッ ダッ


巫女「遅くなりました!」ハァハァ


神使「17時から講習会と言いましたよね?」

巫女「・・・はい」

神使「今何時ですか?」

巫女「17時10分です・・・」

神使「遅刻です」


巫女「夕食の準備をしてまして・・・」

神使「遅刻は遅刻です」


神様「ちょっと神使君? 厳しすぎない?」

神使「いえ、遅刻は奉職上問題がございますので」

神様「はい・・・」


神使「それと、社殿内で走ってはいけません」

巫女「すいません」ペコリ

神使「では、講習会を始めます」

神主・巫女「よろしくお願いいたします!」



――― 2時間後


神使「では、故実に関してはこの位で」

神主「ありがとうございます神使先生!」

神使「実際やってみないと分からない事も多いと思います。 これからゆっくり学んでいきましょう」

神主「はい!」


神使「では、次は神様から巫女の奉務に関してよろしくお願いいたします」

神様「特にないけど」

神使「・・・・・・巫女さん、何か聞きたい事ありますか?」

巫女「はい! 私は普段何をすれば良いでしょうか!」

神様「巫女の仕事すれば良いと思う」


巫女「具体的には!」

神様「お守りの頒布とか?」

巫女「参拝者が来ません!」

神様「あ~ 巫女舞とか?」

巫女「舞う神事がありません!」

神様「え~と・・・ 掃除!」

巫女「なるほど」

神様「一に掃除、二に掃除! 徹底的に掃除をしまくる!」

巫女「分かりました!」

神様「うんうん」ドヤッ


神使「そんなどや顔されましても・・・」

神様「私は座学でなく実践派なのだよ」

神使「そうですか・・・ では、明日からみっちり実践でご指導下さい」



――― 翌日


 チュンチュン


神様「おはよ~」トテトテ

巫女「おはようございます」

神様「よく起きられたね~」

巫女「昨日は早く寝ましたので!」

神様「んじゃ、巫女ちゃんは裏側から掃除お願い」

巫女「はい!」タッ タッ タッ


神様「走っちゃダメだよ~」


 巫女「はい! すいません!」



神様「かわゆいね~ さてと、私は中庭からやりますか」



 トテトテ


神様「ん?」

村人「・・・・・・」ジーッ


神様「おはようございます。 絶好のキノコ狩りの天気ですね~」

村人「新入りが?」

神様「昨日から巫女を少々。 私の事はかわゆい神ちゃんとお呼び下さい」

村人「うぢらの指示さなしで勝手に村さうろづぐんじゃねぇぞ」

神様「・・・・・・」

村人「分がっだな?」スタスタ



巫女「神ちゃんさ~ん」スタスタ


神様「え? なに?」クルッ

巫女「朝拝始めるそうですから本殿に」

神様「うん・・・」


巫女「どうしました?」

神様「何言っでっが分がんねーよ~」

巫女「?」



――― 翌日・本殿


神主「こんな感じでどうでしょうか」

神使「祝詞の方はそんな感じで問題ありません。 そしたら巫女さんはこの後に―――」

巫女「キャッ!」ビクッ

神使「巫女さん?」


神主「神使先生・・・ 後ろ」

神使「?」クルッ

村人「・・・・・・」ジィー


神使「なにかご用でしょうか?」

村人「今日の午後、おはしら山に来い」

神使「おはしら山・・・ ですか?」


村人「山が騒がしい」

神主「ご祈祷のご依頼でしょうか?」

村人「14時から始める」

神使「あの・・・ どのような趣旨のご祈祷でしょ―――」

村人「お前達は言う事だけすれば良い」スタスタ


神使「・・・・・・」

神主「どうしましょう、神使先生」

神使「氏子さんからのご依頼ですし無視する訳にも行きませんね・・・」

神主「しかし、ご依頼の内容も分からないようでは・・・」


神使「山が騒がしいと仰っていましたね・・・ 取りあえず清祓いの準備をお願いします」

神主「分かりました」



――― 社務所


神様「Zzz・・・」グガー

神使「神様? 神様?」ユサユサ

神様「ん~ 夕飯・・・?」

神使「まだお昼ですが・・・」


神様「なんだよ~」ムニャムニャ

神使「私達外祭の方に行って参りますが、どうされます?」

神様「お留守番してる~」モゾモゾ

神使「では、お任せいたします」

神様「ん・・・ Zzz」グガー



――― おはしら山


神使「おはしら山はこのあたりですよね」


神主「あっ、あそこ。 村の皆さんじゃないですか?」

巫女「大勢・・・ 10人くらい集まっていますね」

神使「行きましょう」


 スタスタ


神使「お待たせいたしました」

村長「あにあに神社の神主か?」

神使「先日神宮から指導役で赴任いたしました神使と申します」ペコリ


村長「山が悪さしおる」

神使「悪さ・・・ ですか? 一体どのような―――」

村人A「ご託は良いから黙って祈祷するんだ! 山巫女様の命令だ」

村長「おい! 部外者に無用な話はするな!」

村人A「すいません・・・ 村長」


神使「あの、山巫女様というのは・・・」

村長「余計な詮索はせずに黙って祈祷をするんだ」


神使「・・・承知いたしました、清祓を執り行わせて頂きます。 神職さんお願いします」

村長「お前がするんじゃないのか?」

神使「あにあに神社の神職である彼が―――」

村長「お前がしろ」

神使「私ですか?」

村長「お前の方が徳が高そうだ」

神使「僧侶ではないので徳とかは関係ないのですが・・・」

村人A「つべこべ言わずにお前がするんだ」

神使「・・・分かりました、私が斎主を務めます。 神主さん準備をお願いします」

神主「はい」



――― 帰り道


 テクテク


神主「しかし、不気味な村ですよね・・・」

神使「山巫女様というのはご存じですか?」

神主「さぁ、私は特に」

巫女「私も存じ上げません」


神使「・・・・・・何かありそうですね。 この村」

神主「・・・・・・」

巫女「私、この村の神社でご奉仕する自信が無くなってきました」シュン

神使「時期に打ち解けますよ」

巫女「だと良いんですが・・・」



――― 社務所


神主「それでは、私達は用具を仕舞ってきますので」

巫女「先に中に入っていて下さい」

神使「ありがとうございます」


 ガラガラ


神使「ただいま戻りました」


神様「ふあぁ~ よく寝た」トテトテ


神使「あっ、神様」

神様「お~ お出かけか?」

神使「外祭に行くとお話ししたと思うのですが・・・」

神様「あ~ 言ってたな。 地鎮式?」

神使「清祓を。 村の方10人くらいでしたね」

神様「ふ~ん・・・」ジー

神使「?」


神様「お前、風邪でも引いたか?」

神使「私ですか?」

神様「少し顔が赤い気がするけど」

神使「そいうえば、少し悪寒がありますが・・・」

神様「ゆっくり休んどけよ。 お前が寝込むと私の仕事が増える」

神使「神様、寝てるだけじゃないですか・・・」

神様「仕事の効率が良すぎるから早く終わるの!」

神使「・・・そうですか」



――― 夜


 ピピピピ


神様「38度か・・・」

神使「申し訳ありません・・・」

神様「だから休めと言っただろ」

神使「返すお言葉もございません」


神様「熱が引くまでゆっくり寝てろ」

神使「神様にご迷惑をおかけしてしまい神使失格ですね・・・」

神様「熱が引いたら焼き肉ご馳走しろよ」

神使「はい・・・」



――― 翌日・朝


神様「Zzz・・・」コクッ コクッ


 チュンチュン


神様「んぁ・・・ 朝?」


神使「う~ん・・・」ゼェゼェ

神様「?! おい、どうした神使!」

神使「すいません」ゲホッ

神様「昨日より悪化してないか? ちょっと、おでこ貸せ」ピトッ


神様「・・・・・・」


神使「ここまで酷い風邪を引いたの初めてです」ゲホッ ゲホッ

神様「なんで、もっと早く言わないんだよ!」

神使「すいません、神様が気持ちよさそうにお眠りでしたので」


神様「・・・お前、いつから体調が悪くなったのを感じた?」

神使「昨日、外祭に行った後くらいでしょうか」

神様「外祭・・・ 確か清祓って言ってたな」

神使「はい」

神様「・・・・・・」



――― 社務所


 ガチャ


巫女「あっ、神ちゃんさん。 神使先生の容体はいかがですか?」

神様「少し熱が上がってる感じ」

巫女「そうですか・・・」

神様「・・・・・・」ジィー

巫女「?」

神様「神主君は居る?」


神主「はい、何でしょうか」

神様「昨日、うちの犬ころが清祓に行ったって聞いたけど」

神主「えぇ」


巫女「おはしら山です」

神様「おはしら山・・・ どんな清祓だった?」

神主「普通の・・・ 神宮指定のマニュアルに沿った清祓だと思います」


神様「・・・ちょっとその場所まで案内してもらってもいい?」

神主「・・・・・・」

巫女「私、ご案内します」

神主「分かりました。 私もご一緒いたします」



――― おはしら山


神主「神使先生が清祓をしたのはこの場所です」

神様「ふ~ん、特に変わった場所じゃ・・・・・・ !?」ピタッ

巫女「神ちゃんさん?」

神様「清祓の内容は?」

神主「確か、山の安全祈願だったと」

神様「・・・・・・」


巫女「あっ!」

神様「?」クルッ


村民「・・・・・・」ジィー


神主「村の人が見てますね」

神様「・・・引き上げよう」

巫女「え?」


神主「ご祈祷などをなさるのでは?」

神様「・・・必要ない」スタスタ

神主「あの、神ちゃんさん?」

神様「急げ」

神主「はい」


 スタスタ



――― 夜・寝室


神様「・・・」ゴソゴソ

神様「え~と、神ちゃんお守りは・・・ まだあるな」ギュッ


神使「Zzz・・・」


神様「・・・お守りに封じし我が神力を解放す。 我が神使に付きし災厄を緩和せよ」ボソッ


 ポワポワ


神様「よし、と」スタッ


 トテトテ


神使「神様?」

神様「あっ、悪い起こしたか」


神使「こんなに遅くにお出かけですか?」

神様「・・・・・・」


神使「何をなさるのか知りませんが、あまり無理なさらないで下さいね?」

神様「・・・・・・あぁ」

神使「私もすぐに治りそうですから」

神様「そんな事が分かるのか?」

神使「はい。 神様から御利益を頂きましたから」


神様「そうか・・・ でもおとなしく寝てろ」

神使「・・・分かりました」

神様「私の素晴らしい力を持ってすれば病気の一つや二つちょちょいのちょいだ」

神様「はい、やはり神様は素晴らしい神です」

神様「照れるじゃないか」

神様「いいえ、さすがかわゆい神ちゃんと皆から慕われるだけの事はありますね」

神様「そうだろ? なんと言ってもやはり私は―――」

神使「あの? 神様・・・・・・」

神様「あ?」


神使「何一人で漫談しているんですか?」

神様「お前の心の代弁をしたんだけど」


神使「いえ・・・ そこまで思っておりませんでしたが・・・」

神様「あっ、そ」


神使「山は冷えます。 暖かくしてお出かけ下さい」

神様「まるで私が山にでも行くような言い方だな」

神使「・・・・・・お供できず申し訳ありません」

神様「そうだな。 エキサイチングになりそうなのに残念だな」フッ


神使「・・・そのご装束、神様によくお似合いです」

神様「お前、自分が買い与えた物を褒めるなんて良い趣味だな」

神使「できれば、後でお写真を取らせて下さい」

神様「嫌です~」ベー


神使「お気を付けて」

神様「あぁ。 もう少しの辛抱だ、ゆっくり寝ていろ」スタスタ


 ガラガラ ピシャ



神様「さてと、行きますか」


 スタスタ



――― 1時間後


神使「また神様にお守りを使わせてしまいましたね・・・ でも、だいぶ楽になりました」

神使「・・・心配ですが、私が出る幕ではないようですね・・・」シュン


神使「溜まっていた日報でも書いておきますか。 寝ながらでも出来ますし」ゴソゴソ


 ストンッ


神使「? これは・・・ たしか、猫神様が神様に渡したK7の議事録・・・」

神使「神様、また私の鞄に入れて・・・ 通りで重いと思いました」ハァ



~猫神『40ページあたりからの報告書だけでも後で読んで感想聞かせてもらえると嬉しいなぁ~』~



神使「・・・・・・」ペラッ

神使「え~と、四柱結界に関して・・・・・・?」


神使「・・・・・・」ペラ ペラッ

神使「!? これは!」

おいついた!
新作キター!!
かわゆい神ちゃん最高っ!

またかわゆい神ちゃんに会えた記念に
岩手県宮古市産の花見牡蠣(一般牡蠣の三倍の大きさ)を奉納します

猫神様に怒られて鬼牡蠣食べ損ねてたし
鬼牡蠣より小さいかもだけど、是非どうぞ



―――

神使「神様、牡蠣が奉納されました」

神様「なに!?」ガバッ

神使「>>599さんにお礼を」

神様「次から私の格好いいシーンが始まる! 見届けよ!」キラッ!

―――



――― おはしら山


神様「・・・さてと、久しぶりの大仕事だから緊張するな・・・」

神様「体調良し! 神ちゃんお守りよし! それじゃ・・・ 始めますか!!」


神様「我! お守りに封印されし神力を解―――」


 ウー
 ピカピカ


神様「?」



 バタン


警官A「君、こんな遅くに何してんの?」

神様「・・・・・・」

警官B「その格好・・・ なに?」

警官A「コスプレ?」

神様「犬ころに買ってもらった装束をバカにすんな! クソポリ公!」

警官A・B「・・・・・・」

神様「あっ! すいません。 私の事なら気にしないで下さい、普通は見えないはずなので」オロオロ

警官B「何言ってんの?」

神様「他の神は見えないんだけど、私は見えちゃうから」アセアセ


警官A「・・・ちょっとパトカー乗ってくれる?」

神様「いや、でも少しやる事があって・・・」

警官B「はいはい、警察署でやって」ガシッ

神様「マジっすか~!?」ズルズル


 バタン
 ブーン


神主「・・・・・・」



――― 隣町・警察署


警官A「どっから来たの?」

神様「あにあに神社」

警官A「正直に話して?」

神様「だから、あにあに神社から来たの!」

警官A「はいはい。 じゃぁ、あの無人神社で寝泊まりしてるの? 家出?」

神様「無人?」

警官A「あそこの神社は神主さんも居ない無人神社だよ? そうだよな?」

警官B「えぇ、村からの届け出は無人神社となってますね」

神様「・・・・・・」


警官A「身分証ある? 免許証とか」

神様「身分証・・・」ゴソゴソ

警官B「君の名前とか分かるものね」


神様「古いけど・・・ これしか持ってない」スッ

警官A「・・・内務省神社局? なにこれ?」

神様「昔のだから・・・」

警官A「明治33年発行って・・・ 君、いくつよ・・・」

神様「あぁ~・・・」

警官B「これ、ご先祖様とかの身分証? 内務省に居たんだ、偉かったんだね~」

神様「・・・・・・」


警官A「学生? それともどこかに勤めたりする?」

神様「勤め先は・・・ 神宮?」

警官A「私に聞かれても・・・ 名刺とかある?」

神様「名刺ならある」スッ

警官A「神宮 広域特務課 審査係・・・ 本当に神社の関係者なの?」

神様「嘘ついたって仕方ねっペ!」

警官A「確認のために電話するけど良いね?」

神様「マジっすか・・・」


警官A「ちょっと電話して確認してくれる?」

警官B「はい」スタスタ


警官A「で、なんであんな所にいたの? しかもそんな格好で・・・」

神様「儀式っぽい事しようと思って・・・」

警官A「ぽいって・・・ 儀式とは違うの?」

神様「神宮が規定している清祓とかの祈祷とは少し違って・・・」

警官A「専門用語使われても分からないよ?」

神様「はぁ・・・」


警官A「呪いの儀式とか、そんな感じのヤツ?」

神様「私がそんな事する訳ねっぺさ!」

警官A「君・・・ どこの人?」


警官B「お待たせ」

警官A「おう、どうだった?」

警官B「神宮で働いてるって。 当直のA子さんっていう人に確認してもらった」

神様「A子ちゃん・・・ 夜中に何で巫女が神宮にいるんだよ。 また何かやらかしたな」


警官A「まぁ、確認取れたし・・・ 今後はもう少し気をつけてね」

神様「釈放?」

警官A「逮捕した訳じゃないから。 帰って良いよ?」

神様「え・・・ ここまで拉致してきて一人で帰れっての?」

警官A「パトカーはタクシーじゃないからね」

神様「いやいや、帰り方分かんないよ」

警官A「地図書いてあげるから。 徒歩で2時間歩けば帰れるよ」

神様「嘘でしょ・・・ 送ってよ~ こんなにかわゆい子を一人夜道に放り出すの?」


警官A「仕方ないな、その格好だし・・・ 今回は特別だよ?」

警官B「でも、あんまりあの村行きたくないな・・・」

神様「やっぱ変だよね、あの村」

警官A「まぁ確かに協力的ではないよね・・・」

警官B「特に夜は近づくなって言われてるし」


神様「あの村には見回りとかよく行くの?」

警官A「・・・いや、今日は通報があったから」

神様「通報?」


警官A「不審者がうろついているって。 行ってみたら君がいたという訳」

神様「不審じゃないでしょ私!」

警官A「いや、そんな格好で夜中にあんな場所に居るのは不審者以外何者でもないよ」

神様「装束! 正装!」プンプン


警官B「でも珍しいな、夜に村の方から来いなんて」

警官A「よっぽど君が怪しかったんだろ」ハハハッ

神様「・・・・・・」

吉備団子国に来てカキオコを賞味せずご出立なされるとは…

つ⌒【虫明のカキオコ】



―――

神使「神様、カキオコが奉納されました」

神様「おっ! 虫明の牡蠣てんこ盛りじゃん!」パクッ

神使「>>616さんにお礼を」

神様「今日こそ! 私の格好いいシーンを堪能せよ!」

―――



――― 参道前


 ブーン


警官A「じゃぁここまでで良いよね」

神様「え~ 参道前じゃん。 社務所まであと200m位ある~」

警官B「ここから先は私有地だから」

神様「持ち主の私が良いって言ってんだからさぁ~」

警官A「君の物じゃないでしょ、神社は・・・」

神様「神宮の物は私の物だと言っても過言ではない」フンスッ

警官B「なにメチャクチャな事言ってんの・・・ 早く降りて」

神様「分かったよ・・・」ガチャッ

警官A「気をつけてね」


 ブーン


神様「気をつけて、とか言うなら最後まで送り届けろっつーの!」


神様「ハァ~ どうすっかな~ 今からおはしら山に戻ってもなぁ~」ウーン

神様「3時か・・・ 日が明けると面倒だし、明日だな」


 トテトテ


神様「これ、月明かり無かったらヤバくね? 街路灯設置しろよ・・・」


神様「あれ? 道の周りにこんなに木があったっけ・・・?」

神様「でも、一本道だったよな・・・」キョロキョロ

神様「・・・まぁ良いか」


 トテトテ



――― 社務所


神様「良かった、神社着いた」ホッ


 ガラガラ


神様「犬ころはちゃんと寝てるのか?」ソォー

神様「ん? 犬ころがいない・・・ 便所か?」



 ギィー


神様「犬ころ?」

神様「いない・・・ どこ行ったんだ?」



――― 1時間後


神様「神主君も巫女ちゃんもいない・・・ 私の荷物もない・・・」


 ピポパ
 prrr prrr


神使『はい、神使です。 神様ですか?』

神様「あ~ 悪い。 お前さぁ、今どこにいるの?」

神使『どこって、部屋です。 それより神様―――』

神様「あにあに神社・・・ だよな?」

神使『えぇ、そうですが』

神様「いや、今部屋にいるんだけどお前いないじゃん」

神使『・・・はい?』


神様「巫女ちゃんもいないけど?」

神使『巫女さんは、すでに外で庭掃除しているようですが?』

神様「・・・・・・」

神使『あの神様? それより大変な事が―――』

神様「後でかけ直す・・・ ちゃんと寝てろよ」

神使『えっ、ちょと神――――』


 ピッ


神様「・・・・・・」

神様「さてと」ヨイショ

神様「どこやねん! ここーー!!」


神様「な~んてね、グーグーマップ使えば衛星写真で位置が分かるのだよ」ニヒヒ

神様「・・・・・・あれ?」

神様「拡大するとボケる・・・ 山しか見えない! ふざけんなよ田舎!」

神様「やっぱどこやねん! ここーー!!」


神様「な~んてね、出てきたら~?」


 シーン


神様「ふ~ん、誰もいないんなら本殿にでも行ってみようかなぁ~」トテトテ

神主「・・・・・・止まって下さい」スッ


神様「神主君か~ どうしてここにいるの?」

神主「・・・・・・」

神様「答えないなら~ 本殿にダッシュだーー」ダッ ダッ ダッ

神主「!? まっ!」ダッ ダッ


神様「ふふふ、この神ちゃんを捕まえる事が君に出来るのかなぁ?」ダッ ダッ ダッ

神主「早い!」ダッ ダッ

神様「ほらほら~ 早くしないと本殿に着いちゃうよ~」シャー

神主「!?」

神様「うひゃひゃ! 見たか! 激安足袋の滑りを考慮した私のコーナリングを! って」


 ズルッ


神様「ぐへっ!」ビタンッ!

神主「・・・・・・」


神様「痛つつ・・・ 犬ころのヤツ、さらに安い足袋にランク落としやがったな!? 滑りすぎ!」

神主「・・・・・・」


神様「あっ、やっぱり捕まえたりするの?」

神主「はい」

神様「だよね~ 優しく縛ってね」



――― あにあに神社


神使「・・・」スタスタ


巫女「神使先生!」

神使「あっ、おはようございます巫女さん」

巫女「まだ寝ていないとダメですよ!」


神使「・・・少し伺いたい事があるんですが、この神社以外で村にお社はございますか?」

巫女「えっ?」

神使「神様がどうも他の神社にいるようでして」

巫女「!?」

神使「巫女さん?」

巫女「・・・・・・少しお話する時間ありますでしょうか」

神使「?」



―――??神社


神様「ねぇ、縄の結び雑じゃない?」

神主「・・・・・・」


神様「もっとさぁ~ こう、あるでしょ?」

神主「そっち系の趣味はないので・・・」

神様「ちげーよ! 結び目くらい神社に勤めてんなら少しは凝れよ! 〆はお守り結びくらいヤレってーの!」

神主「そういうのは苦手で・・・」


神様「おま・・・ 神職だろ? 教えてやるから一回ほどいてみ?」

神主「・・・はぁ」


 シュルシュル


神様「良い? 最初に左側の紐で輪を作って」

神主「こうですか?」

神様「違う違う。 2本いっぺんに」


村長「おい」

神様「?」

村長「何やってんだ? お前達・・・」

神主「村長・・・ 村の方も・・・」

村民「・・・」ソロゾロ

神様「うわ~ こんな早い時間なのにいっぱいお出ましで・・・」


村長「おい、その縄で縛っておけ」

神主「・・・はい」ギシッ ギシッ

神様「・・・逃げときゃ良かった」ガクッ


村長「お前は確か神宮から派遣されて来た巫女だな?」

神様「皆は親しみを込めて“かわゆい神ちゃん”と呼んでおります」


村長「なぜ、お前がここにいるんだ?」

神様「警察に捕まって帰ってきたらここに着いた」

村長「警察?」

神様「あ? お前達が通報したんじゃないの?」

村長「まさか、夜に部外者をこの村に入れる訳ないだろ。村で誰か通報したのか?」

村人A「いいえ、そのような事は聞いておりませんが」


村長「神主、君か?」

神主「いえ、私も知りません」

神様「?」

村長「何で夜に出歩かせるような事をした! ちゃんと見張っていたんじゃないのか!?」

神主「・・・すいません」


村長「まぁ良い。 で、おはしら山で何をしようとしていたんだ?」

神様「神力封印」

村長「神・・・ なに?」

神様「お前達、うちの犬ころ使ってあそこで何かしただろ」


神主「あの清祓に何か問題でも?」

神様「大ありだね。 指示したのは誰だ?」

村長「・・・・・・」


神様「あんまり勝手な事してると、この村滅ぶぞ?」

村長「!? な、何を言っているんだ縁起でもない」

村人A「そうだ! 山巫女様の言うとおりにしていれば村は守られる!」

神様「山巫女?」

村長「おい!」

村人A「あっ、すいません・・・」


村長「気になるか?」

神様「・・・・・・」


村長「山巫女様の所に連れいていけ」

神主「しかし・・・」

村長「どちらにしろ、このまま帰すわけにはいかない」

神主「分かりました・・・」

神様「・・・・・・」



―――??神社・本殿


 ギィー


村長「そこの柱に縛り付けておけ」

村人A「はい」


 ギシッ ギシッ


神様「痛いって・・・ もっと優しくして? うふん」

村人A「・・・」チッ

神様「お前! 今、舌打ちしたろ!」

村人A「恐怖の余り暴れて逃げ出されても困るからきつく締めるぞ」

神様「えっ!? もしかしてこれジェットコースター? ドッキリ系?」


村長「ご神体の扉をお開けしろ」

神主「・・・はい」スタスタ

神様「何? 何か飛び出してくるの?」ワクワク


 ギィー


神様「・・・・・・ぇ」


村長「神主、外に出るぞ」

神主「はい」


 スタスタ


村長「本殿の戸を閉めて鍵を掛けろ」


 ギーッ バタン


村長「夜まで見張っておけ」

神主「分かりました・・・」


村長「深夜に山巫女様が現れたら対応を賜る」

神主「・・・・・・」


 ギャーーー!!!



神様「ギャーー!! 何だよあれーー!!」バタバタ

神様「ミイラじゃん! ミイラじゃん! ふざけんなよーー!」ジタバタ

神様「なんで神社にあんなのがあるんだよ! 寺に持って行けよ! 寺!」

神様「すいませーん! お巡りさーん!! 殺人事件です! 千年以上前っぽいけど!!」


神様「も~ 勘弁してよ~・・・」

神様「お家帰りたい!!」



――― 30分後


神様「いつまで閉じ込めておくつもりだよ~」

神様「・・・巫女服着てるし、あのミイラがご神体の山巫女・・・?」

神様「あれを経由すれば神力で抜けられる・・・」


神様「いや~ でも、さすがの私でも嫌だなぁ~」

神様「ミイラってだけなら我慢するけど、なんか変な神力混じってるし・・・」


 ガタガタ


神様「!?」



 ゴソゴソ


神様「なんだよ~・・・ 誰かいるの?」


 ゴソゴソ


神様「悪霊退散! 悪霊退散!」ジタバタ


巫女「・・・・・・」

神様「巫女ちゃん?」

巫女「今、縄をほどきます」


 シュルシュル


神様「どうして巫女ちゃんがここに・・・」

巫女「お話は後ほど。 まずはここから出ましょう」

神様「え? でも入り口には村の人が・・・」

巫女「ご神体の裏に秘密の抜け道があります」

神様「あ~ 神用の抜け道だね。 よく知ってるね」

巫女「さっ、早く」

神様「うん」


 スタスタ



 ゴソゴソ


神様「本殿裏だ・・・」

巫女「あの竹藪に入ります」

神様「え~ 大丈夫なの? 道ないけど・・・」

巫女「付いてきて下さい」

神様「逃げられるなら何でもいいや」

巫女「じゃぁ行きます」


 スタスタ
 ガサガサ



神主「・・・・・・」チラッ



 ガサガサ


神様「葉っぱが当たって――― 痛!」

巫女「大丈夫ですか?」

神様「なんとか・・・ でも巫女ちゃんが通った後の葉っぱが――― 痛!」

巫女「あっ、出口です」

神様「やっと竹藪から出られ――― 痛!」



 ガサガサ


巫女「ふぅ~」

神様「あれ? ここって・・・」

巫女「あにあに神社です」


神様「さっき居た神社は?」

巫女「あにあに神社です」


神様「・・・そうですか。 異次元っていうやつですね? 次元の狭間っていう事ですね?」

巫女「あにあに神社は2つあります」

神様「なんと! 何そのミステリアスな殺人トリック!」

巫女「私の知る限り誰も死んでいないと思いますが・・・」

神様「って事は、この中でうちの犬ころが!?」ハッ


神使「私がどうしました?」スタスタ

神様「あっ、生きてる」

神使「勝手に殺さないで下さい」

神様「だって、これから“神ちゃん殺人事件・あにあに神社トリック案内”が始まるんじゃないの?」

神使「それですと、亡くなるのが神様になるんですが・・・」

神様「・・・・・・」


巫女「もうじき村の人が来ます。 続きは社務所で」

神様「続けるの?」



――― あにあに神社・社務所


巫女「お茶です」コトッ

神様「コーラが良いな。 無ければ炭酸系で」

巫女「炭酸水ならありますが」


神使「炭酸水でお茶を煎れますか?」

神様「・・・ノーマルグリーンティーで大丈夫です」ズズッ


神使「巫女さん、先ほど教えて頂いた事を神様にもお話し頂けますでしょうか?」

巫女「はい・・・」


巫女「先ほどもお話しいたしましたが、あにあに神社はこの村に2つございます」

神様「さっき私が縛られていた方が、本物だよね」

巫女「・・・そうです。 こちらはカムフラージュのために存在するあにあに神社です」


神使「どうして、こちらが偽物だと分かったんです?」

神様「あっちに祀られている神体の神力が高かった。 相当崇敬されている感じだったし」

巫女「山巫女様です・・・」

神様「巫女服着たミイラ」

巫女「はい。 村の伝承では、山の守り神でおはしら山とこの村を守っている言われています」


神使「神様はどうして向こうの神社へ?」

神様「いや、おはしら山に行ったら警察に捕まってさぁ。 釈放されて戻ってきたらあそこに着いたんだよ」

神使「・・・・・・」


巫女「参道の途中で道が二つに分かれるんです」

神様「え? でも一本道だったよ?」

巫女「夜になると月明かりと地形に由来する影の影響で別の道が現れてもう一方の神社へ続くんです」

神使「夜に出歩くなと言うのは、本物のあにあに神社に行かせないためですね?」

巫女「はい・・・ お二人の事は日中は村の人が見張り、夜は私達が監視しておりました」

神使「しかし、昨日の夜は神様一人でおはしら山へ行かれたんですよね」

神様「そうね」

神使「監視されていなかったのですか?」

巫女「・・・・・・」

神様「わざとでしょ」

神使「え?」


神様「出てきたら~? バレバレだよ?」

神使「?」



神主「・・・・・・」


神使「神主さん」

巫女「あっ・・・」

神主「大丈夫、村の人には知らせてないから」


神様「さて、それじゃ色々と聞かせてもらいましょうか」

神使「古の昔より―――」

神様「ちょっと待て、何でお前がしゃべり出すんだよ!」

神使「先ほど、伝記を拝見いたしましたので・・・」

神様「二人に譲れ」

神使「すいません。 どうぞ」


神主「・・・古の昔より、おはしら山には不思議な力が隠されていると伝えられています」

神様「不思議な力ね~・・・」

巫女「その力の暴走を止めるため、神さまが結界を張ったそうです」

神主「何千年も前のお話の伝承のようですが・・・」


巫女「神さまから結界の守りを任されたのが、あにあに神社の巫女だそうです」

神使「それが、山巫女様と言う事ですね?」

巫女「はい。 彼女の死後も村民が村の守り神としてお祀りしたと・・・」


巫女「山巫女様は、現在もあの神社で守り続けていると言われています」

神様「・・・・・・」

巫女「その山巫女様をお守りするのが、代々私の家系でした・・・」

神使「失礼ですが、神主さんはどのような経緯で?」

神主「私は、彼女の・・・ その、婚約者でして、婿養子として近いうちに籍を入れる予定です」

神使「なるほど、それで神職に?」


神主「・・・私と巫女ちゃんは昨年まで市内にあるスーパーで働いていました」

神使「と言う事は、あのご神体を守るためにこの村に戻って来られたと?」

神主「いえ・・・」


巫女「今の時代、山巫女の結界なんて誰も信じていませんでした。 私の母も父も市内で会社勤めしていましたし」

神主「村の人もそんな昔話は誰も信じておらず・・・ 私達も最初は村に戻るつもりなどありませんでした」

神様「でも、村長以下村人全員山巫女を信じているっぽかったけど?」


巫女「・・・1年ほど前から山巫女様に異変が・・・」

神使「異変・・・ ですか?」

巫女「はい。 夜になるとお告げのような物を出すようになったんです」

神様「お告げ?」


巫女「山巫女様から、直接お言葉が・・・」

神様「マジかよ・・・ 怖いなそれ・・・」

神使「そのような現象というのは例があるんでしょうか?」

神様「いや~ 私は聞いた事無いけど・・・」


神主「私も最初は信じていなかったのですが・・・ その、ハッキリと・・・」

巫女「私も何度か聞きました」

神様「う~ん・・・」


神主「村長の命令で、さすがに巫女ちゃんは村に戻らざるをえなくなりまして」

巫女「しかし、一人で村に戻るのはさすがに・・・」

神主「私が神職の資格を取るので、それまで待って欲しいという条件で・・・ 先月私が資格を取ったため二人で戻ってきたのです」


神使「その間、神宮が宮司の派遣を行っているのですが村からのご依頼でしょうか?」

巫女「いいえ、私は存じ上げません」


神主「村は山巫女様の存在を隠す方向で動いていましたので、村以外から人を呼ぶというのは考えられないのですが・・・」

巫女「現に、村の人は追い返すため色々と行っていたようですし・・・」

神様「・・・・・・」


神使「あの、神様?」

神様「ん?」

神使「四柱結界と関係あるのでは・・・」

神様「猫神が渡したK7の議事録か?」

神使「神様、読まれていたのですか?」

神様「ここ来る前に電車の中で読んだよ」

神使「それで、私の鞄に入れたんですね・・・」

神様「お前読んだのか?」

神使「すいません、盗み見するようなまねをして・・・」

神様「お前に読ませるために入れたんだよ」

神使「え?」

神様「今までの説明とあの資料を見て、お前ならどう判断する?」


神使「神力を安定させるための四柱結界のうち第三柱近辺から神力異常が発生していると記載がありました」

神様「書いてあったね」

神使「場所は記載されておりませんでしたが、おはしら山ですよね? 第三柱がある場所って」

神様「そうだね」

神使「今回の現象は四柱結界の異常による神力放出では?」

神様「当ってる」

神使「やはり・・・」フム


神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」


神様「終わり?」

神使「はい。 まだ何か?」

神様「50点」

神使「え!?」


神様「おはしら山の第三柱に神力異常が発生しているのは間違いない。 私も神力放出は確認した」

神使「はい」

神様「犬ころは神力放出が起こっている山で何をした?」

神使「おはしら山・・・ 清祓・・・ まさか!」

神様「そう、お前は神の力を祓おうとしたんだよ」

神使「と言う事は、私が体調を崩したのは・・・」

神様「神の力を祓ったから斎主であるお前に厄がふりかかったの。 神の力を祓うなんて良い根性してるよね~」

神使「・・・・・・」

神様「まぁ、その件に関しては私がお守りの神力で押さえ込んでいるから良いんだけど・・・」


神様「祈祷は山巫女の指示?」

神主「はい・・・」

神様「指示の内容を詳しく覚えてる?」

巫女「確か“外より参りし者が持つ神の力を用いて山を鎮めよ”だったと」

神様「なるほどね、確かに正しいお告げだな。 回りくどい言い方だけど・・・」

神使「え?」

神様「神の力を用い、つまり神力を使ってどうにかしろって事」

巫女「神使先生が神職の高い階位をお持ちだと伺ったもので・・・ すいません」シュン

神様「いやいや、気にしないで。 神の力とか言われても、ね」

神使「では、本来祈祷するのは私でなく・・・」

神様「そだね~」


神使「山巫女様というのも、同じく神力異常が原因ですか?」

神様「いや~ 山から出てる神力だけで喋り始めるとかありえないわ~」

神使「では一体・・・」


神様「まぁ、正体は後で暴きましょ。 その前におはしら山の神力放出を止めますかね」

神主「すぐに準備いたします」

神様「いや、夜に行く」

巫女「夜・・・ ですか?」

神様「神の力は夜が一番強いんだよ?」


―――

神使「神様、皆様から色々と頂いてしましました」

神様「嬉しいね~ 責任を持って私が全部食べる!」

神使「・・・・・・」

―――



――― 昼


神主「私は一度、本あにあに神社に戻りますので」

神様「ばれない?」

神主「山巫女様は深夜0時に現れるので、それまでは本殿には誰も立ち入りません」

巫女「まだ神ちゃんさんは本殿で縛られていると思っているはずです」

神主「出発は何時頃です?」

神様「夜8時くらいかなぁ~」

神主「それまでには戻ります。 巫女ちゃん、こっちは頼んだよ」

巫女「うん!」

神主「では、後ほど」スタスタ


巫女「そうしましたら、お二人は客間でゆっくりしていて下さい」

神様「ほい」



――― 客間


神様「うへ~ 眠い・・・」ゴロンッ

神使「神様?」

神様「ん~?」

神使「軽はずみな行動を取ってしまい、申し訳ありませんでした」

神様「あ~ 気にすんなって」

神使「しかし、神を祓う行為など・・・」

神様「大丈夫だよ。 神を祓うとか言ってもただの神力だし」

神使「これからは、もう少し慎重に行動いたします」

神様「そんな事しなくても良いって。 それよりもだ」

神使「?」


神様「私を警察に通報したやつがいるんだよ」

神使「・・・・・・」

神様「誰だ?」

神使「すいません」ドゲザ

神様「やっぱりお前かよ・・・」

神使「K7の議事録に四柱結界の事が書いてあるのを読んで、神様が知らずにまたやらかすと大変だと思ったもので・・・」

神様「やらかすって・・・」

神使「これ以上神様の減給が増えると、ローンに影響しますし・・・」

神様「・・・嫌な事を思い出させるなよ」

神使「本当に申し訳ありませんでした」


神様「まぁ、そのおかげで山巫女の存在も分かったし良いんだけどさ」

神使「神様、山巫女様の事何かお分かりになったんですか?」

神様「いや、まだ推測だけどね~」

神使「?」


神様「疲れたし、時間まで寝る」ポイポイ

神使「・・・・・・」

神様「下着姿が落ち着くの! 本当は裸になりたいのを譲歩してやってんの!」

神使「せめて腹巻きだけでも」スッ


神様「・・・お前、なんで私の腹巻き持ってんだよ」

神使「神宮のA子ちゃんから先日宅急便で・・・」

神様「A子ちゃんが!?」

神使「神様は冬に必ず巫女装束の下にこの腹巻きを着けて仕事をしているから、と書いてありました」

神様「ばらさないでよA子ちゃん・・・ 地味に恥ずかしいから・・・///」



――― 夜


神使「神様? 神様」ユサユサ

神様「んぁ・・・」ポケー


神使「夜7時30分です。 そろそろ起きた方が・・・」

神様「んあ~ そうね」ムニャムニャ

神使「巫女装束でおはしら山に行きますか?」

神様「お前に買ってもらった装束も着る」

神使「腹巻きは?」

神様「いらねーよ!」



――― 社務所


神使「お待たせいたしました」

神様「おっ、神主君も戻ってきてるね」

神主「はい」


神様「村の監視はいなくなった?」

巫女「先ほど帰ったのを確認しました」

神主「村の人たちは、夕食を取って本あにあに神社へ向かうはずです」


神様「んじゃ、おはしら山へ行きますか」



 テクテク


神様「ねぇ、一つ聞いても言い?」

巫女「私ですか?」

神様「なんで私を助けたの?」

巫女「何となく・・・ 神ちゃんさんを助けないと、と・・・」


神使「何かそう思う理由などがあったんですか?」

巫女「・・・お二人はどのようなご関係なんです?」

神様「私と犬ころ?」

巫女「はい」

神様「神宮の巫女と・・・ 神職だっけ?」


巫女「それ、嘘ですよね?」

神様「・・・・・・」

巫女「神ちゃんさん、神使先生の事凄く大切に思ってらっしゃる感じがして・・・ 同僚以上の関係というか」

神様「私が? これ犬ころだよ?」

巫女「神使先生が寝込んでいるとき、ずっと寄り添って・・・ 普通あそこまで出来ませんよ?」

神様「・・・・・・」

巫女「神使先生も、神ちゃんさんをとても大切になされていましたし」

神使「・・・・・・」

巫女「あっ、別に正体を詮索しようとは思ってませんから!」


巫女「神ちゃんさんがいなくなった時、神使先生とても心配そうでしたので・・・ それが理由でしょうか」

神様「・・・・・・そう」


神様「で? 神主君は?」

神主「巫女ちゃんが神ちゃんさんを助けたのであれば、それ以上の理由は必要ありません」

神様「いいね~ 男だねぇ。 犬ころ、メモ」

神使「メモしてどうするんですか・・・」


神様「私をおはしら山へ行かせた理由は?」

神主「私にも分からないのですが・・・ 近寄りがたい雰囲気が・・・」

神様「え? 私そんなに怖かった?」

神主「ご装束を着た神ちゃんさんが・・・ その、とても神聖に見えたもので」

神様「犬ころ、メモ」

神使「・・・・・・」



――― おはしら山


巫女「この場所で大丈夫ですか?」

神様「オッケ~」


神使「念のためお祓い用の用具を持ってきましたが、準備した方が良いでしょうか?」

神様「あ? そんなのいらないよ」

神使「では、どうやって・・・」

神様「神の力だよ、神使君や」

神使「でも神様、神力が・・・」

神様「これ」スッ


神使「それは、神様の昔の神力が入っているお守りですか?」

神様「そうそう」

神使「しかし、そこには少ししか神力が無いのでは?」

神様「まぁ火種みないな物だよ。 一旦火を入れれば燃える物はここに沢山ある」

神使「?」


神様「まぁ、見てろって。 神主君と巫女ちゃんは少し下がっていてね」

神主「はぁ・・・」

巫女「何が始まるんですか?」


神様「イッツ ショータイム!」



神様「お守りに封印されし我が神力を解放す」


 ポワ


神様「この地に宿りし神力と我が力を同期せよ」


 ポワポワ


神様「・・・よし、っと」


神使「終わり・・・ ですか?」

神様「あ? これからだよ。 ビックリして腰抜かすなよ?」ニヤッ

神使「?」


神様「犬ころ、私の隣に来い」

神使「・・・はい」スタスタ


神様「よく見ておけ。 私の力を」

神使「神様の・・・ 力・・・?」


神様「我! 神力を解放す!」


 ボー


神使「!?」

巫女「え!? 神ちゃんさんが・・・ 光ってる・・・」

神主「そんな・・・」


神様「我、おはしら山を御する代理神なり! 我と同期しこの地に宿る神力の片鱗を見せよ!」


 ゴゴゴゴ


巫女「地震!?」



 ボワーン


神主「山が・・・」

巫女「すごい・・・ 一面光ってる・・・」

神使「・・・・・・」

神様「思った以上に神力が漏れ出してるな・・・」チッ


 ゴゴゴゴ


神様「神使」

神使「・・・・・・」ポケー

神様「おい! 狛犬の神使!!」

神使「!? は、はい何でしょう」

神様「私が神力放出を封印した後、山のどこかが一瞬強く光るはずだ。 見逃すな」

神使「分かりました」ゴクリ



 ゴゴゴゴ


神様「我、天を制し地を制す者なり! その力を持って我に御されし神力の封印を命ず!!」


 ゴゴゴゴ


神様「四柱結界! 第三柱神力封印!!」


 ゴゴゴゴ
 バリバリッ!


巫女「キャッ!」

神主「雷!?」



 ピカッ


神使「!? 神様、右14時の方向です!」

神様「・・・あれか」チラッ


 ゴゴ…
 ゴ…


巫女「・・・・・・」ポカーン

神主「・・・・・・」ポカーン



 シーン


神様「ふぃ~ もう大丈夫」


神主「あの・・・ 今のは一体・・・」

巫女「神ちゃんさんって、もしかして・・・ 神さま?」

神主「神さま!?」


神様「神宮の女神!“かわゆい神ちゃん”とは私の事だ!」フンスッ

巫女「そんな・・・」

神主「神なんて・・・ 本当に存在していたんですか!?」


神使「すごい・・・」

神様「おっ、神使君もようやく私の事を見直して―――」

神使「神様の後ろに後光が・・・」

神様「ん?」


 ポワポワ


神様「あ~ ちょっと強めの神力使ったから、まだ光ってるね」

神使「神様こんな凄い力を使えたんですね・・・」

神様「昔の私はこんなレベルじゃないぞ?」

神使「!?」


神様「それより、さっき光った場所ちゃんと覚えてるか?」

神使「え? あっ、はい」

神様「そこに第三柱がある。 位置を正確に記録しておけ」

神使「分かりました・・・」


神様「あと、おでこ貸せ」

神使「おでこ? 私のですか?」

神様「お前の厄を取り除く」

神使「・・・はい」


神様「・・・私のデコが届かないからちょっとしゃがめ」

神使「すいません」スッ

神様「・・・ん」ピトッ

神使「!?」


神様「我、汝に付きし災いの元となる厄を祓いその身を清める・・・」ボソッ


ポワポワ


神様「よし、これでオッケー」

神使「・・・あ、ありがとうございます///」



神様「?」


神主・巫女「・・・・・・」フカブカ


神様「あっ、そういうの苦手なんで・・・ やめてもらって良いっすか?」

神主「まさか、神ちゃんさんが神さまだったなんて・・・」

巫女「今までの無礼お許し下さい!」


神様「二人ともさぁ、勘違いしてるよ?」

神主・巫女「え?」

神様「神は別に偉くないの」

神主「そんな事は・・・」


神使「神様? 一応体裁というのもございますし・・・ 威厳も必要かと思うのですが・・・」

神様「あ? そんなの人が勝手に決めただけだろーが」

神使「そうかも知れませんが・・・」

神様「嫌いなの! そういうのは!」

神使「・・・・・・」ハァ


神様「さて、次は山巫女ちゃんの所に行きますか! あんまり行きたくないけど・・・」



――― 本あにあに神社


 スタスタ


神様「たのも~!」

村民「!?」クルッ

村長「お前、なんで外にいるんだ! 本殿の中にいるはずじゃ・・・」


神主「・・・・・・」

村長「神主! お前何をしている!」

村人A「巫女まで一緒に!」


神様「あ~ 言いたい事は分かる」ウンウン

村長「うるさい! 捕らえろ!」


 ダダダダッ


神様「待った!」

村民「!?」ピタッ


神様「山巫女の正体を教えてあげる」

村長「なに?」

神様「1年前から続く様々な異変の元凶に関しても全部教えてあげる」

村長「・・・・・・」


 ザワザワ


神様「知りたいでしょ? 本当の事」ニヤッ



――― 本殿


神主「そろそろ山巫女様が現れる時間です」

神様「なんか、嫌~な感じの神力が上がってきてるな・・・」

神使「・・・」ゴクリ


 ピカッ


神使「目が光った!?」

神様「うへ~ 悪趣味な演出・・・」


村長「山巫女様!」ハハァー

村民「山巫女様だ!」ハハァー


山巫女「うむ。 面を上げよ」

神様「声、低! どこのジジイだよ! 巫女ちゃうんかい!」

村長「な! 何を失礼な!」


山巫女「無礼者がいるな」

神様「え!? いや・・・」

山巫女「ん? その声は・・・」

神様「・・・・・・」

山巫女「牡蠣好きのガキか?」

神様「やっぱ凄爺かよ・・・」ハァ

神使「凄爺・・・って、りんごちゃん神宮の凄爺神さまの事ですか?」

神様「だろ」

神使「神階最高位の守護神さまじゃないですか!」


神様「なんか、嫌な神力を感じると思ったら・・・」

凄爺「嫌な神力じゃと?」

神様「あっ、いえ何でもありません。 守護神凄爺さま」ドゲザ

凄爺「勝手に正体をばらすでない! ガキが!」


村長「あの山巫女様、これは一体・・・」

神様「山巫女の神力を経由して“りんごちゃん神宮”にいる凄爺が喋ってんだろ」

凄爺「バレてしまったものは仕方が無い。 そのガキが言ったとおり私はりんごちゃん神宮の神じゃ」

村長「今までのお告げは、その・・・ 凄爺神さまが・・・?」

凄爺「うむ」


神様「こんなジジイ声の巫女がどこにいるんだよ・・・」

凄爺「おいガキ! 相変わらず生意気な事を! 少しお仕置きが必要じゃな」

神様「出来るもんならしてみろよ~ おしりペンペ~ン」ベー

凄爺「・・・次に会ったときは覚悟しておけよ、ガキが」

神使「・・・・・・(神様、本当に子供ですね・・・)」


巫女「あの、どうして凄爺様が山巫女の役など・・・」

凄爺「この地に封じし神力結界が破れつつあった。 故に再封印を行うため指示を出していた」

神主「封印は、先ほど神ちゃん様が・・・」

凄爺「知っておる」


村長「この巫女が?」

村人A「お前何者だ?」


凄爺「無礼であるぞお前達!」

村長・村民「!?」

凄爺「そこのガキは見た目はあれだが、この国の守護神! 神の頂点に立つ最高神だぞ!」


一同「!?」


村長「最高神!?」


 ザワザワ


巫女「そこまで偉い神さまだったんですか・・・ 神ちゃ・・・ 神様」

村民「今までの非礼、お許し下さい」フカブカ

神使(国の守護神?)


神様「あの、内緒にしている事をべらべら喋らないでもらえないでしょうか・・・ 最高機密なんですが・・・」

凄爺「さっきのお返しじゃ」

神様「・・・・・・」チッ


神様「回りくどい事を・・・ 凄爺が来て直接やれば良かったと思うの!」

凄爺「わしは今は動けん」

神様「?」


神使「もしかして、宮司の派遣は凄爺様が・・・」

凄爺「そうだ。 しかしこの村の者が全て追い返すもんじゃから、しかたなく暇そうであったお前達を向かわせた」

神様「暇じゃねーよ!」

凄爺「嘘つくでない! 噂では相変わらずそこら中で悪さしているそうじゃないか!」

神様「うぐっ・・・」

凄爺「適任じゃ」

神様「指示が雑! 昔と違うんだからもっと分かりやすく指示しなきゃダメ!」

凄爺「そんな事まで面倒見切れん!」

神様「逆切れかよ・・・」


村長「と言う事は、このミイラ・・・ 山巫女様は・・・」

神様「ただのご神体。 勝手に喋ったりすることなんて無いから」


凄爺「さてと、直近の問題も解決したしワシは引き上げるぞ」

神様「とっとと帰れ! 散々掻き回しやがって!」

凄爺「次に会うときが楽しみじゃな。 覚悟しておけ! 牡蠣ガキ」スッ

神様「もう会う事なんてありませんし~」ベー

神使(神様に伝えた方が良いでしょうか・・・ 次の訪問先の事を・・・)


山巫女「・・・・・・」

神使「消えたようですね」

神様「じじくさい神力が消えたな」


神使「しかし、凄爺様も結界が壊れているから直せと神宮に言えば済んだのでは・・・」

神様「四柱結界は最高機密なんだよ。 私も一部の神にしかその存在を知らせてないし、神宮の人間も知らないはずだ」

神使「ここにいる方にはバレてしまいましたが・・・」

神様「大丈夫。 この地に住んでいるものは知る資格があるし、それに・・・」

神使「?」

神様「なんだかんだ言っても、山巫女の存在を今まで秘密にしてこれたんだ。 信頼できる」


神様「村長」

村長「?」


神様「そのミイラを山巫女ちゃんとしてゆるキャラを作って、2つのあにあに神社を一般に公開しろ」

村長「え!?」

神様「きっと、大勢の人たちが訪れる。 とても豊かで明るい村に生まれ変わるはずだ」

村長「そんな罰当たりな事・・・」

神様「いいや、そんな事はない。 この巫女も明るい村が好きだったみたいだし・・・ きっと喜ぶと思う」

神使「神様・・・」


神様「その代わり一つだけ条件がある」

村長「条件?」

神様「ロイヤリティーとして商品の上代4%を発案者である私に納付する事。 それだけだ」フッ


一同「・・・・・・」


神使「神様?」

神様「・・・・・・あにあに神社の財源として納付する事」

村長「分かりました」



――― 翌日


巫女「本当に神ちゃん様にはなんとお礼をしたら良いか」

神主「ありがとうございました」

神様「いやいや~ 元はこっち側の問題だし。 めんごめんご」


神使「では、私達はこれで失礼いたしますので」


神様「・・・・・・」

神使「神様?」


神様「・・・巫女ちゃんに一つお願いがあるんだけど良い?」

巫女「私ですか?」


神様「その・・・ 山巫女のミイラをあんまり嫌いにならないで欲しいなって」

巫女「山巫女様を?」


神様「まぁ、さすがにミイラは私もどん引きしたけど・・・ 山巫女は凄く良い子だったんだよ」

巫女「え?」

神使「神様、山巫女様をご存じなんですか?」

神様「凄く明るくて、楽しくて・・・ 村を本当に大切にしてたんだ。 だから・・・」

巫女「任せて下さい! 山巫女様の代わりは私には出来ないですが・・・ 大切にお守りします!」

神主「それに、この村には国を守る大切なお柱もあるんです。 自慢の村です」

巫女「うん!」


神様「ありがとう」

巫女「きっと山巫女様もまた神様に会えて嬉しかったんじゃないですかね?」フフッ

神様「そうかな。 だと嬉しいな・・・」


神使「では、行きましょうか」

神様「あぁ」


神主「道中お気を付け下さい」

神使「神主さん、巫女さん。 どうぞお幸せに」

神主・巫女「ありがとうございます!」

神様「はいばーい!」



――― 田舎道


 テクテク


神使「神様、山巫女様の事知っていたんじゃないですか・・・」

神様「いや、昔はそんな名前じゃなかったし・・・ 正直、第三柱の場所も忘れてた」

神使「きちんと覚えておかないとダメですよ・・・」

神様「千年以上も前なんだ。 全部は覚えきれない・・・ でも・・・ そうだな、忘れちゃダメだったな」

神使「あっ、いえ、別に責めている訳ではないのですが・・・」アセアセ


神様「でも、よく似ていた」

神使「?」

神様「山巫女と・・・ 巫女ちゃん」

神使「もしかして・・・ 山巫女様は巫女ちゃんのご先祖様かも知れませんね」

神様「そうかもな」



 テクテク


神使「そうだ、一つ気になる事があるのですが」

神様「あ?」

神使「なぜ第三柱が神力放出を起こしたのか・・・」

神様「・・・・・・」

神使「あっ、すいません。 最高機密でしたよね」

神様「四柱結界全体が不安定な状況なんだわ」

神使「え!?」


神様「そんな簡単に破られるものじゃないんだけどな」

神使「破る? ・・・だれかが結界を破ったと言う事ですか?」

神様「ん~・・・ 自然決壊とは考えにくいな」

神使「そんな・・・」


神様「まぁ、分からない物を考えても仕方ないし今はいいや」

神使「きちんと対策した方が良いと思いますが・・・」

神様「大丈夫だよ。 その為に守護神を配置しているんだし」

神使「凄爺神さまですね?」

神様「まぁ、凄爺もそのうちの一人ではあるね」


神使「一度お会いしてみたいですね」チラッ

神様「やだ! 絶対に会いたくない! 次に会ったら私は間違いなくコキャとやられる」

神使「そうですか」


神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」


神様「・・・・・・お前、何隠してる?」ジー

神使「何故そう思ったのですか?」

神様「何故質問に答えず、別の質問で返すのですか?」

神使「・・・・・・」


神使「急ぎましょう、電車に乗り遅れます」

神様「嘘つけよ! さっき社務所に張ってある時刻表見たら次の電車2時間後だったぞ!」


神使「一本前に乗ります」

神様「え!? だって後5分しかないよ?」

神使「走ります!」

神様「マジかよ!!」


神使「行きますよ!」タッ タッ タッ

神様「ふざけんなよ! おんぶしろ! おんぶ!! 私は走らないぞ!」

神使「神様が私を追い抜く事が出来れば、途中で牡蠣食べ放題に寄りましょう」

神様「!?」



 ダダダダ


神様「うひゃひゃ、私に勝とうなんて千年早いわ!」ダダダダ

神使「負けませんよ?」タッ タッ タッ


神様「!? お前、なに本気で走ってんだよ! 牡蠣食わせろよ!」

神使「神様が勝てば良いだけですよ」


 ダダダダ


神様「まって! 牡蠣~! 牡蠣食べたいよ~!!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#12 ―END


ありがとうございました!<(_ _)>

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 テクテク


神様「はぁ~ お腹いっぱい」ゲープッ

神使「神様・・・ そんな大きな・・・ はしたないですよ」

神様「出ちゃうものは仕方ないの!」ゲップ

神使「一人で牡蠣60個とか食べ過ぎですよ。 お店の人ビックリしてましたし」

神様「食べ放題だしさぁ~ でも産地で結構味違うもんだな。 食べ比べできたのも食が進んだ原因だね」

神使「私には全く分からなかったんですが・・・」

神様「塩気が全然違っただろうが。 だからお前はいつまで経っても犬ころなんだよ」

神使「そう・・・ なんでしょうか・・・ でも沢山食べて元気百倍ですね」

神様「そうね~」

神使「では、次の場所ではお仕事頑張って下さいね」

神様「任せろ!」


 ゲップ


~あらすじ~


神様「私は神様! みんな大好き、とってもかわゆい理想の女神! 私の神力で皆の願いをビビッと叶えちゃう!」

神使(訳)「神宮が誇るダメ女神。 問題行動連発による無期出向と減給、多額のローンにより手取り50円。 財布に300円しかない残念な神様です」



【#13】


――― りんごちゃん神宮前


神様「い~や~だ!」ジタバタ

神使「ダダこねないで下さい」グイグイ

神様「絶っ対、嫌!」


神使「どうして、そんなに嫌がるんですか」

神様「ふざけんなよ! 嫌にきまってんだろうが! りんごちゃん神宮じゃないかよ!」

神使「はい」

神様「はい、じゃねーよ! 極悪邪道腐れ犬ころ変態アホ神使!」

神使「なんですかそれ・・・」


神様「りんごちゃん神宮だよ? 凄爺のお膝元だよ?」

神使「凄爺神様は最高位の神階を持つとても立派な神とお伺いしております」

神様「お前・・・ 神階が高けりゃ会いたいのかよ!」

神使「勿論です。 最高位の神ですからお目にかかるのが楽しみです!」

神様「神使君さぁ、勘違いしてるよ? あにあに神社の時に気づけよ」

神使「?」


神様「じゃ、私は体調不良だから駅前で買い物してそのまま神宮に帰るね?」スタスタ

神使「ちょと神様、300円しか持っていないのに何買うんですか? 電車で県外からも出られませんよ」ガシッ

神様「放せよ~ 神宮まで歩いて帰る~」ジタバタ

神使「無理です。 先ほど仕事を頑張ると仰ったばかりですよ? ほら、行きますよ」


神様「ノー! 私まだ死にたくない~!」ズルズル



――― りんごちゃん神宮


神使「これは・・・」

神様「でかっ!」

神使「さすが神宮と名の付くだけありますね」

神様「中庭が学校のグランドくらい広いんだけど・・・ 何この無駄な空間」

神使「神様はりんごちゃん神宮には来た事が無いんですか?」

神様「室町くらいの時に一回来たけど、こんなに広くなかったぞ?」

神使「かなり昔なんですね・・・」

神様「新年の挨拶に来い! ってうるせーから行ったのに、滅茶苦茶怒られたからすぐ逃げ帰ってきたけど」

神使「また何か生意気な事を言ったんじゃないですか?」

神様「言ってねーよ。 半年くらい行くのが遅くなっただけで」

神使「そうですか・・・ 取りあえず社務所の方へ行きましょう」



 テクテク


神使「建物も大変立派ですね。 色鮮やかで神宮とはまた違った荘厳さがありますよね」

神様「なんか、平城京の大内裏みたい」

神使「そう言えば、神様は平城京は生で見ているんですか?」

神様「住んでたね」

神使「え!?」

神様「私これでも人が素っ裸で走り回っていた時代からいるんだよ?」

神使「そ、そうですよね。 すいません、神様が昔は偉い方だったと言う事をつい忘れがちで・・・」

神様「なにその言い方・・・ それより社務所あれじゃないの?」

神使「あれは第四社務所ですね。 私達が最初に行くのは第三社務所です」

神様「そうなんだ・・・」



――― 第三社務所


 ガラガラ


神使「すいません」

巫女「はい?」

神使「神宮から参りました神使と申します」

巫女「ご苦労様です」

神使「宮司様はおられますでしょうか?」

巫女「あいにく宮司は本日不在でして」

神使「そうでしたか。 神宮から今日こちらに伺うように言われておりまして」

巫女「そういたしましたら、向かいの第五社務所の方へお願いいたします」

神使「わかりました」

神様「反対側じゃん・・・」

神使「仕方ありません」



――― 第五社務所


神使「こんにちは」

巫女「こんにちは」

神使「神宮から参りました神使と申します」

巫女「遠い所ご苦労様です」

神使「神宮から伺うように言われておりまして」

巫女「お約束でしょうか?」

神使「主神様にお目にかかりたく」

巫女「主神? あ~ 本殿への立ち入りですね? 第二社務所の方で立ち入り手続きをお済ませ下さい」

神使「第二社務所ですね。 ありがとうございます」

神様「・・・・・・」



―――第二社務所


神使「失礼します」

巫女「はい」

神使「神宮から参りました神使と申しますが、本殿への立ち入り申請はこちらでよろしいでしょうか?」

巫女「本日ご予約などはございますか?」

神使「神宮から連絡などありませんでしたでしょうか」

巫女「確認いたしますので少々お待ち下さい」スタスタ


神様「ねぇ、面倒くさくない?」

神使「これだけ大きいお社ですから、仕方ありませんよ」

神様「いや~ なんか嫌な感じがする」



巫女「お待たせいたしました」スタスタ

神使「いかがでしょうか?」

巫女「まだこちらの方へは申請が上がって来ていないようですね」

神使「はぁ」

巫女「ちなみに、どの部署宛でしょうか?」

神使「部署・・・ ですか? 主神様とお話しできるとありがたいのですが」

巫女「主神? 祭祀担当でしょうか?」

神様「凄爺!」

巫女「すごじい?」

神様・神使「・・・・・・」

巫女「?」


神様「あ~ また出直すね。 行くぞ、犬ころ」テクテク

神使「え? ちょっと神様?」スタスタ



――― 中庭


 テクテク


神使「神様、どうされたんですか?」

神様「面倒くせーよ。 それにあの巫女ちゃん、凄爺に会った事無いぞ。 たぶん神がいる事自体知らないんじゃない?」

神使「え!?」

神様「ハァ~・・・ ん?」ピタッ

神使「神様?」


神様「ねぇ、あそこでアイス食べたい」

神使「休憩所・・・ そうですね」



――― 休憩所


おばちゃん「いらっしゃいませ」


神使「神様は何にしますか?」

神様「りんご味とかあるよ・・・」

神使「それにします?」

神様「ん~・・・ りんご味とチョコ味」

神使「え? 二つも食べるんですか?」

神様「お前はストロベリーな」

神使「私、抹茶が食べたいんですけど・・・」

神様「じゃぁ抹茶とストロベリー頼めよ」

神使「・・・・・・」


神様「おばちゃん! 私はりんごとチョコ、こいつは抹茶とストロベリーで!」

おばちゃん「二人で四個食べるの?」

神様「やだな~ 私が三個食べるんだよ」

おばちゃん「すごいね~。 はい、落とさないでね」

神様「うほ~ 渦巻きが綺麗! うまそ~」ペロペロッ

神使「椅子に座って食べて下さい」

神様「へいへい」ヨイショ


神使「この抹茶アイスほろ苦くて美味しいです」ペロッ

神様「おい犬ころ、ストロベリー私の方に向けてろ」

神使「はいはい、どうぞ」

神様「ん。 お~ ストロベリーも美味しいね~」アムッ


神使「両手にアイスを持って・・・ 凄い食べ方しますね」

神様「気取って食べても仕方ないだろーが。 高速ペロペロ~!」ペロ ペロ ペロッ

神使「もう少し上品に召し上がって下さい。 神の品格に関わります」

神様「私に品格なんてありません~」ベー

神使「・・・・・・」ハァ


神様「それよりさぁ」

神使「?」

神様「向こうの柱の影からこっちを見てるのってお前の知り合い?」ペロ ペロッ

神使「柱?」



?「・・・」ジー


神使「あっ、もしかして狐娘さん!?」

狐娘「やっぱり! 神使先輩ですか?」スタスタ


神使「お久しぶりですね」

狐娘「ご無沙汰してます! どうしたんですか、こんな所で!?」

神使「神宮から派遣されてきたんですが、たらい回しにされていまして・・・」

狐娘「そうでしたか、申し訳ありません」ペコリ


神様「神使君の知り合い?」ペロ ペロッ

神使「はい、神使研修所で一緒だった後輩の狐娘さんです」


狐娘「りんごちゃん神宮で神使を務めております狐娘と申します」ペコリ

神様「私は、かわゆい神ちゃん! 神宮の内宮巫女長」フンスッ

狐娘「初めまして、社務所の方へご案内しますのでよろしければ」

神使「ありがとうございます。 助かります」ニコッ

狐娘「はぅ・・・ ど、どうぞ///」スタスタ


神様「ほぉ~」ニヤリ

神使「?」



――― 第一社務所


狐娘「どうぞ」コトッ

神使「ありがとうございます。 あっ、これは」

狐娘「先輩は濃いめの緑茶に、お抹茶を少し入れるのが好きでしたよね?」

神使「覚えていてくれたんですね。 嬉しいです」ニコッ

狐娘「・・・///」

神様「」ニヤニヤ

神使「神様、先ほどから何ニヤニヤしているんです?」

神様「ん? 何でもない」

狐娘「ここへはどのようなご用でいらっしゃったんですか?」

神使「実は私も詳しい事は聞いておらず・・・ 宮司様か主神様にお目にかかれればと思ったのですが」

狐娘「宮司はあいにく出張中でして・・・」

神使「そのようですね。 主神様は?」

狐娘「・・・・・・少しお待ち下さい」スタスタ


神様「可愛い子だね~」

神使「私の妹と同期なんです。 研修所では成績も優秀で聡明な方でした」

神様「あ~ 妹ちゃんと同期か・・・」

神使「神宮に神付き神使として奉職申請を出されていたようですが空きがなく・・・ こちらに御奉職されていたんですね」

神様「ふ~ん。 憧れを追うのは大変だね~」

神使「?」


神様「お茶美味しい」ズズッ

神使「お抹茶が入っていますからね」

神様「犬ころこれ好きなの?」

神使「はい。 お抹茶の上品な甘みがあって美味しいと思いませんか?」

神様「玉露で良いじゃん。 面倒くさい」

神使「・・・・・・違います」ズズッ



 スタスタ


狐娘「お待たせいたしました。 三日前に神宮からお二人の主神謁見書類が届いていますね」

神使「良かったです」ホッ


狐娘「ただ、本殿への立ち入りは申請に一週間ほどかかるんです」

神使「え? そうなんですか!?」

狐娘「その後、主神様への謁見審査がありまして・・・ 私の知る限りここ数年は申請自体通った事はないんですが・・・」

神使「それは・・・」

神様「うへ~ 面倒くさ!」

狐娘「神にはそう簡単に会えないんですよ? 特に凄爺様は神階も最高位なので」

神使「まぁ、普通はそうですよね」チラッ

神様「なに? 何か言いたいの? 神使君」

神使「いえ、別に」


狐娘「私も四年ほどここにいますが数回しかお目にかかった事ありませんし。 神宮も同じじゃないんですか?」

神使「確かに・・・ 神宮も神職や神付き神使でもそう簡単に会う事はできませんからね」

狐娘「先輩は神宮の神付き神使ですよね? 主神様とはお会いになれるんですか?」

神使「えぇ・・・ まぁ・・・ 私の主神様はちょっと特殊でして・・・」

神様「毎日会ってるよね~」

狐娘「毎日!? 神宮の神なのにそんな頻繁にお会いになれるんですか!?」

神使「・・・はい。 その・・・ 今も私の隣にいますね」

狐娘「?」

神様「ハロー」

狐娘「え?」

神様「神宮所属 内宮神籍の女神、かわゆい神ちゃんと申します。 この犬ころの主神をやらせて頂いております」ペコリ

狐娘「・・・・・・」


神使「信じられないかも知れませんが本当なんです。 こちら神宮の神です」

狐娘「で、でもさっき巫女って!」

神使「それも本当で・・・ 神様は神宮で巫女のアルバイトもやっておりまして」

狐娘「・・・・・・はい?」

神使「お給料が低いのでアルバイトをしないと生活が苦し―――」

神様「アッチョー!」ゲシッ

神使「痛っ!」


狐娘「神・・・ さま・・・ !!」スッ

神様「ストーップ! ふかぶか禁止!」

狐娘「!?」

神使「神様はそういう畏まられたり奉られたりするのが苦手でして・・・ 友達のように普通に接してあげて下さい」

神様「うんうん」コクコクッ


狐娘「でも、神宮の神にそんな不敬なことは」オロオロ

神様「別に偉くないんだし。 それにこの犬ころだって普通に接してるでしょ?」

狐神「はぁ・・・」


神使「私は、本心では崇め奉りたいほど尊敬しているんですよ?」

神様「よせやい、照れるじゃないか~」クネクネ

神使「きちんと仕事をして頂ければ。 神としての威厳を出して頂ければ。 下着姿で寝なければ・・・ ですが」

神様「それもう私じゃないじゃん!」ゲシッ

神使「痛っ!」


狐娘「・・・・・・」


神様「それより、ジジイは居るの?」

狐娘「はい?」

神使「神様? きちんと凄爺神様と言わないとダメです。 先日も生意気な口聞いて怒られているじゃないですか」

狐娘「!?」

神様「良いんだよ。 あんなジジイ逆に私がお尻ペンペンしてやる!」

狐娘「あの!」

神様・神使「!?」ビクッ

狐娘「凄爺様とお会いになったんですか!?」

神使「直接お目にかかった訳ではないのですが・・・」

神様「神力越しで会話したくらい。 相変わらず堅物なお節介ジジイだったよ」

狐娘「そうですか・・・」ホッ


神使「何かあったんですか?」

狐娘「あっ、いえ・・・」

神様「凄爺、ここに居ないんでしょ?」

狐娘「!?」

神使「それは、お出かけ中という意味ですか?」

神様「いや、年単位で不在かな?」チラッ

狐娘「・・・・・・」

神使「どういうことです?」

神様「凄爺の神力が全く感じられない」

神使「神様、凄爺神様が居ない事を知っていたんですか・・・」

神様「ここに凄爺がいたら私がノコノコと足を踏み入れる訳ないだろ?」

神使「ずいぶんと威勢が良いと思ったのはそういうことでしたか」

神様「そんじゃ主神もいないし帰りますか~」

神使「しかし・・・」


狐娘「あの! 神宮神様!」

神様「?」キョロキョロ

神使「神様の事です」

神様「ミー?」


狐神「非礼を承知で・・・ ご相談に乗っていただけないでしょうか・・・」

神使「分かりました」

神様「ちょっと待って神使君。 今の私宛だよね? 私の意見は?」

神使「牡蠣ご馳走します」ボソッ

神様「よろしい、この神ちゃんに何でも相談しなさい。 たちどころに解決して進ぜよう」フンスッ

神使(この単純さ、私も少し見習いたいですね)



――― 本殿入り口


テクテク


狐娘「本殿はこの門の先になります」

神使「大変立派な門ですよね」

神様「羅城門かよ・・・」

神使「神様、羅城門は実物を・・・」

神様「もちろん見てるね。 悪戯書きして凄爺に折檻された」


狐娘「・・・あの、失礼ながら神宮神様は何の神なのでしょうか?」

神使「何の神なんです?」

神様「・・・・・・かわゆい神?」

神使・狐娘「・・・・・・」



テクテク


神主「あっ、狐娘さん。 どうされたんですか?」

狐娘「こちらの方達を本殿へご案内いたします」

神主「え!? 本殿への立ち入り申請は今日はなかったと思うんですが」

狐娘「神宮からの御使者です」

神主「しかし、入館審査証がないと・・・」


狐娘「御正体をお話ししてもよろしいでしょうか?」

神様「オッケ~」


狐娘「こちらは神宮の神さまです。 対応をわきまえて下さいませ」

神主「神宮の神さま!?」


神様「うむ。 神宮所属内宮神籍の神であるぞぉ~」

神使「こちら神様の神籍証と、私の神使籍証です」スッ


神主「!? た、大変失礼いたしました」フカブカ

神様「フカブカいらないぞぉ~」

神主「え!?」


狐娘「神宮神様はお忍びで来られておりますのであまり公にしたくないそうです」

神主「そ、そうですよね。 失礼いたしました」フカブカ

神様「ユー、面白いぞ~」


狐娘「私達が本殿から出るまで誰も中に入れないようお願いします」

神主「分かりました。 中央の扉からお入り下さい」



 ギィ


狐娘「神宮神様、どうぞ」

神様「我が神使よ、参るぞぉ~」

神使「・・・・・・はぁ」


 スタスタ


狐娘「この庭を抜ければ本殿です」

神使「お庭も大変立派ですね・・・」キョロキョロ

神様「我が神使よ。 我は疲れた、おんぶせよぉ~」

神使「調子に乗らないで下さい」


神様「え~ もう少し神さまごっこしよーぜ~ おんぶ~」

神使「ダメです。 あまりみっともない行動しないで下さい」

神様「んだよ、ケチ!」


狐娘「・・・・・・」


神使「どうされました?」

狐娘「!? いえ・・・ 神宮神様に随分と何と言いますか・・・ 対応が・・・」

神様「そうだよ。 もう少し優しく扱えよ。 私はガラスのように繊細なんだから」

神使「厚さ1メートル位の強化防弾ガラスですよね」

神様「うへ~ ちょっと聞きました? 狐娘さん。 うちの子ったら」

狐娘「・・・・・・」

神様「?」


狐娘「あっ・・・ すいません。 仲がよろしいんですね」シュン

神様「・・・・・・ごめん、そんなつもりじゃ」


神使「どうされたんですか神様?」

神様「・・・」ジロッ

神使「?」

神様「」ゲシッ

神使「痛っ! え!? 私なんで蹴られたんです?」

神様「アホ神使」



――― 本殿


 ギィー


狐娘「こちらが本殿です」

神様「なんだよこの広さは!」

狐娘「本殿の広さだけで言えば最大の面積はあるかと思います」


神様「あれがご神体の内内陣かな?」

狐娘「はい」

神様「ちょっと中見るね」トテトテ



 ギィ


神様「あ~・・・」

神使「どうされました?」


神様「我、神体の神力を解放す」


 ポワ


狐娘「!?」

神様「・・・やっぱり」ハァ

神使「神様?」


神様「凄爺が最後にここに来たのっていつ?」

狐娘「確か二年ほど前だったと思います」

神様「あのジジイ・・・」

神使「何か分かったんですか?」

神様「ん~ まずは狐娘ちゃんの話から聞きましょ」

神使「そうですね。 狐娘さん、相談というのは?」


狐娘「はい。 実は凄爺神様が行方不明でして・・・」

神使「行方不明・・・ ですか?」

狐娘「はい。 二年前から一度もこちらにはお入りになっていないんです」

神使「神宮に報告は?」

狐娘「いいえ・・・ 宮司の判断で、その・・・ 体面的な事もありますので」

神様「神宮って名前が付いているのに神不在じゃ、間違いなく社位は落ちるしねぇ~」

狐娘「・・・・・・」


神使「凄爺様が出て行かれたお心当たりは?」

狐娘「いいえ」

神使「しかし、ご神体はあるんですよね」


神様「今ここに納められている神体は中継神体だ」

神使「中継神体?」

神様「本体は別の所にあって中継しているだけのお飾り。 摂末社とかでよく使うんだけど」

神使「と言う事は、凄爺神様は別の場所におられると?」

神様「ジジイの居場所はこの中継神体をたどればすぐ分かるけど」

狐娘「!?」


神使「では、早速」

神様「いや~ でもそれじゃ解決にはならないでしょ」

神使「しかし、お会いになって理由を聞けば・・・」

神様「ん~ ジジイ自分の事は喋らない主義だしなぁ~」

狐娘「・・・・・・」


神様「狐娘ちゃん、相談する事はそれだけ?」

狐娘「・・・・・・はい」

神様「そう」ヨイショ

神使「神様?」

神様「取りあえず、今日は疲れたし寝る。 宿行こう、宿」

神使「・・・・・・。 狐娘さん、お願いがあるのですが」

狐娘「?」



――― 客間


狐娘「申し訳ありません。 急でしたのでこんなお部屋しか用意できなかったのですが・・・」

神使「無理言ってすいません」

神様「・・・広っ!」


狐娘「本当に本殿でなくても良いんですか? 神宮神様にこのようなお部屋というのも・・・」

神使「いえ、こんなに広いお部屋贅沢すぎです。 ねっ、神様?」

神様「旅館が良い。 温泉入りたい。 神社ヤダ」

神使「そんなお金ありません。 折角用意して頂いたのに失礼ですよ?」

神様「へいへい。 でもこの1/4の広さで良いのに・・・ 20畳くらいあるよね、この部屋」


狐娘「本来は別々にお部屋をご用意したいのですが・・・ すぐに間仕切りを入れますので」

神使「お気遣いなく。 このままで大丈夫です」

狐娘「しかし、それでは・・・」

神使「主神と同行の神使は一緒にいないといけないもので。 同じ部屋で大丈夫です」

狐娘「・・・・・・」


神様「大丈夫だよ、犬ころは悪さしないように隅っこの一畳だけで生活させるから」

神使「・・・・・・」

狐娘「では、何かご用がございましたらご指示下さい」


 スタスタ
 ガチャッ


神使「神様、何か解決策はありますか?」

神様「う~ん・・・ 神使君ってさぁ、モテた?」

神使「・・・はい?」

神様「女の子からモテたかって」

神使「・・・・・・質問の意味が分からないのですが」

神様「告白された回数は?」


神使「それは今回の件と何か関係あるのでしょうか・・・」

神様「うん」


神使「・・・・・・8回ほど」

神様「」イラッ

神使「すいません、9回でした」

神様「」ゲシッ

神使「痛ぃ! 何ですか・・・」

神様「極悪邪道腐れ犬ころ変態すけこまアホ神使」

神使「それ言いにくくないですか?」

神様「寝る!」モソモソ


神使「私買い物に行ってきますので、夕方に目覚まし掛けておきますから起きて下さいね」

神様「ん」モソモソ



――― 夕方・社務所


 テクテク


神使「コーラが特売で助かりました。 これだけあればこちらにいる間は大丈夫でしょう」

神使「しかし、神様のコーラ代もバカにならなくなってきましたね・・・」


 ザワザワ
 あの子下着姿でどうしたのかしら・・・ ヒソヒソ
 何で廊下で寝てるの? ヒソヒソ


神使「?」



 狐娘「あの、大丈夫ですか? 風邪引いてしまいますが・・・」


神使「狐娘さん、どうされたんですか?」スタスタ

狐娘「あっ、神使先輩。 それが・・・」



神様「Zzz・・・」グガー



神使「あ~ すいませんご迷惑をおかけして」

狐娘「何度かお声をおかけしているんですが・・・」

神使「神様は揺らさないと起きませんので」

狐娘「しかし、神宮神様に触れるだなんて・・・」

神使「気にしないで下さい。 すぐ片付けますから」

狐娘「片付け!?」


神使「神様、廊下で下着姿なんかで寝てちゃダメですよ。 通行の邪魔です」ヨイショ

狐娘「!?」

神使「お騒がせしました」スタスタ


 すごーい! 脇に抱えて持ってった
 あの男の人格好いいね~


狐娘「・・・・・・」



――― 客間


 ガチャッ


神使「神様、まだ寝ます?」

神様「まんにゃむみゃ・・・」

神使「はいはい」ヨイショ

神様「みゅみょむ・・・」

神使「はい、布団です。 ちゃんと肩まで掛けて下さい」パサッ

神様「ん~ Zzz・・・」スースー

神使「フフッ」ニコッ


神使「さて、コーラを冷やしてきましょう」スタスタ



 ガチャッ


狐娘「!?」ビクッ

神使「うわっ! 狐娘さん!」

狐娘「あっ、すいません。 神宮神様は大丈夫でしょうか」

神使「先ほどは驚かせてしまって申し訳ありません」ペコリ

狐娘「あっ、いえ」

神使「コーラを冷やしたいのですが冷蔵庫をお借りしてもよろしいでしょうか?」

狐娘「コーラですか?」

神使「神様の大好物でして・・・ コーラを切らすと風当たりが強いもので」

狐娘「台所に私物入れの冷蔵庫があります。 ご案内します」

神使「ありがとうございます」


 スタスタ


神様「Zzz・・・」グガー


 猫神『神ちゃ~ん、起きないとお説教だよ~』


神様「!?」


 猫神『神ちゃ~ん、そんなにお説教されたいの~』


神様「まって! 起きる!!」ガバッ


 猫神『神ちゃ~ん、起きないとお説教だよ~』


神様「・・・目覚ましかよ。 何だよこの悪趣味なアラームは・・・」


 ポチッ


神様「ハァ~ 最悪の目覚め・・・ おい犬ころ!」


 シーン


神様「そういえば買い物行くって言ってたな・・・ まだ戻ってないのか」

神様「・・・・・・」ブルッ

神様「お花を摘みに行きたい。 そう思う神ちゃんであった」トテトテ


 ガチャッ



――― 廊下


神様「も~ 広すぎてトイレの場所わかんねーよ~」トテトテ



 神使『へぇ~ そうだったんですか』

 狐娘『はい、面白いですよね』クスクス



神様「ん? 犬ころと狐娘ちゃん・・・」ニヤリ

神様「」コソッ



――― 台所


神使「では、そろそろ神様が起きる時間ですので」

狐娘「ぁ・・・ あの神使先輩!」

神使「はい?」


狐娘「その・・・/// 先輩ってお付き合いされている方とかいるんですか?」

神使「え!? 私ですか?」

狐娘「先輩、すごくモテてましたから・・・ 今はどうなのかなぁって」

神使「そんな事ありませんよ。 そのような方はおりませんよ?」

狐娘「そうなんですか!?」パァ


神使「狐娘さんは、おられるのですか?」

狐娘「いえ・・・ あの、憧れている方はいるのですが・・・ ///」モジモジ

神使「あっ、では私と同じですね」

狐娘「えっ、えっ!?」ソワソワ

神使「私もお慕いしている方はおります。 全く相手にされていないんですが」ハハッ

狐娘「え・・・?」


神使「私はその方をとても尊敬しております。 私にとっても女神様ですね」ニコッ

狐娘「それって・・・ お気持ちは、お伝えになったのですか?」

神使「まさか。 私がそのような事を口にするのは大変失礼ですし、その資格はございませんから」

狐娘「・・・・・・」



神様「・・・・・・」

 トテトテ


神様「・・・///」

 タッタッタッ



――― 客間


 ガチャッ


神様「!?」

神使「あっ、神様起きておられてのですね」

神様「!? んぁ!? あ・・・ あぁ」

神使「どうされたんですか? 顔真っ赤ですよ? まさか熱があるんじゃ!」

神様「え!? いや、ほら今日暑いじゃん? ///」パタパタ

神使「そんな事はないと思いますが。 まさか凄爺様が嫌で清祓いをして逆に祟られたとか!?」

神様「しねーよそんな事! あの・・・ あっ、目覚まし! 目覚ましに驚いたの!」

神使「あぁ~ やはり効果覿面でしたか」

神様「何だよあの目覚まし・・・ 悪質ないじめだぞ?」


神使「先日、猫神様に神様が中々起きないと相談したら目覚ましに声を吹き込んでくれまして」

神様「なんだよそれ・・・」

神使「猫神様がこれなら絶対に神様は起きるからと」

神様「猫神のヤツ・・・」


神使「そうだ。 先ほどコーラ買ってきましたのでお飲みになります?」

神様「飲む」

神使「はい、どうぞ」スッ

神様「わ~ 瓶コーラじゃん。 すげー」

神使「特売で売っていまして。 瓶は返すと10円戻してくれるそうですから飲み終わったら渡して下さい」

神様「うん」プシュッ


神使「それより神様、凄爺様の件はどうされますか?」

神様「ん~ そうだな~・・・」ゴクゴク

神使「何か難しい問題でもあるんでしょうか?」

神様「いや、そっちは簡単だけど・・・ もう一つが・・・」ゲップ

神使「もう一つ?」


神様「明日、ジジイの所に行くか・・・」

神使「神様、凄爺様の居場所をご存じなんですか?」

神様「まぁ・・・ その~ お前も一緒に来る?」

神使「そのつもりですが?」キョトン

神様「いや~ でも、どうすっかな~・・・」ウーン

神使「?」



――― 翌日・ひねくれ神社


神使「ここは?」

狐娘「確かうちの兼務社で“ひねくれ神社”・・・」


 キャッ キャッ
 ワー ワー


神使「随分と賑やかな場所ですね・・・」

狐娘「神社を囲むように公園と幼稚園があるんです」

神様「元々この一帯はひねくれ神社の神域だったんだよ」

神使「え? そうなんですか?」

神様「でも今は小さいよね~ この鳥居も・・・ !?」ハッ


 タッ タッ タッ



神使「神様! 急にどうされたんですか~」



――― ひねくれ神社・本殿


 バンッ


神様「!?」

神使「神様、急に走ってどうされ・・・ これは!?」

狐娘「凄爺神様!!」

神様「おい、凄爺! どうした! おい!!」ユサユサ


神使「これは一体・・・」

神様「そこの座布団を並べて凄爺を寝かせるぞ。 急げ!」

神使「はっ、はい」

神様「しっかりしろ! 凄爺!」

凄爺「・・・・・・」



――― 1時間後


凄爺「・・・・・・ん」

神様「気づいたか」

狐娘「凄爺様!」


凄爺「お前は・・・ りんごちゃんの狐娘か」

狐娘「はい。 よかった」ホッ

凄爺「牡蠣ガキも一緒か」チッ

神様「命の恩人にその態度はないんじゃな~い?」ニヤッ

凄爺「神がそう簡単に死ぬわけないだろ!」

神様「へぇ~」


凄爺「・・・ん? となりのヤツは誰だ?」

神使「申し遅れました。 神様の使いで狛犬の神使と申します」フカブカ

凄爺「その声・・・ 確かあにあに神社でも聞いたな」

神使「恐縮でございます」

凄爺「賢そうな狛犬だ」

神使「私などまだまだ右も左も分からない未熟者でございます」


凄爺「・・・なるほどな」チラッ

神様「何だよジジイ・・・」プイッ



狐娘「それより凄爺様、どうしてこのような場所に」

凄爺「お前らに話す事ではない」

狐娘「・・・・・・」シュン


神様「ご神体の神力が枯渇してるけど?」

凄爺「牡蠣ガキ! お前ワシの神体を勝手に覗いたのか!」

神様「覗いてないって。 神力の量なんて見れば分かるっつーの」

凄爺「相変わらず神力操作だけは得意だな」

神様「何その言い方・・・」

凄爺「褒めてやったんだ、感謝しろ」

神様「へいへい。 で? りんごちゃん神宮の神力全部使ってまで何したんだよ」

凄爺「大した事じゃないわ! とっとと帰れ牡蠣ガキ!」


神様「うへ~ 面倒くさ~・・・」ゲンナリ

神使(なるほど、確かに面倒ですね・・・)



狐娘「凄爺神様、りんごちゃん神宮の皆も心配しています。 お戻り頂けませんでしょうか?」

凄爺「まだ戻れん。 そう伝えてくれ」

狐娘「・・・・・・」


神様「だから何やってるか言わないと心配すんだろーが。 向こうじゃ出来ないのかよ」

凄爺「ワシの仕事に一々口を出す出ない!」

神様「仕事だったら向こうでも良いだろーが」


神使「確か凄爺神様は守護神様でしたよね」

凄爺「・・・・・・」

神様「まさか、ジジイ・・・」

凄爺「なんだ」

神様「あにあに神社の時、動けないとか言ってたな」

凄爺「・・・変な事だけは覚えているんだな」


神様「神体を借りるぞ」スタスタ

凄爺「バカ! 神体に触れるでない!」

狐娘「凄爺様、お体に触ります」


神様「我、神体の神力を解放す。 我の問いに答えたまえ」


 ポワポワ


神様「!?」

神使「神様?」


神様「嘘だろ・・・」

凄爺「」チッ


神使「神様? どうされたんです?」

神様「四柱結界が壊れてる・・・」

神使「えっ!?」

狐娘「四柱・・・ 結界?」


神様「凄爺、いつからだ?」

凄爺「・・・・・・」

神様「凄爺!!」

凄爺「亀裂が入り始めたのは百年前。 決壊が発生し始めたのは三年ほど前だ」

神様「なんで黙ってたんだよ!」

凄爺「四柱結界の守護は私の仕事だ。 それに十分修復も可能だ」


神様「・・・・・・まさか私が神力を使えなくなってからずっと一人で・・・」

凄爺「勝手に神力を失いおって。 ガキの力なんか無くてもワシ一人でどうにでもなるわい」

神様「・・・・・・」


凄爺「すぐに神力は満杯になる。 あと数回再結界を行えば維持できる」

神様「すまない・・・」シュン

凄爺「お前が一々責任を感じる事では無い。 ワシが守ると約束したんだ」

神様「・・・・・・」グッ


神使「神宮から行うのはダメなのでしょうか? あそこならりんごちゃん神宮より強い神力が・・・」

凄爺「四柱結界の基盤はこの場所で行った。 この場所以外で修復は行えん」

神使「そうでしたか。 失礼いたしました」

神様「・・・・・・」

凄爺「おい牡蠣ガキ、ワシはお前との約束を果たしている。 お前も果たしに来たと思って良いのか?」チラッ

神使「?」



神様「・・・・・・」テクテク

 ギィ


神使「あっ、神様」スタスタ

狐娘「」スタスタ




凄爺「ったく、だから誰も知らせたくなかったのだ」ハァ



――― 境内


神使「神様?」

神様「私はやっぱりダメ神だな・・・」

神使「そんな事はございませんよ? とてもご立派な女神様です」

神様「優しいな・・・ でも私はお前が思っているような・・・ そんな立派な神じゃない」グッ

神使「神様・・・」

狐娘「・・・・・・」


神様「私は、自分勝手だ。 神にしている者も私の友達・・・ いや、ただ友達になりたいヤツだけで」

神使「・・・・・・」

神様「面倒くさい事は他の神に全部押しつけて・・・ 私は毎日ただ遊んでいるだけで・・・」

神使「そんな事は・・・」


神様「神力も使えない神なんて、お前の主神である資格すらもないしな」

神使「そんな事ありませんよ? 神様は私が尊敬する主神さまです」

神様「・・・」フッ


神様「いや。 自分の事は自分が一番分かっている。 だから・・・」

神様「潮時かもな。 潔く神なんか辞めてニートにでもなっ―――」

神使「神様!!」

神様「!?」ビクッ


神使「見損ないました」

神様「ぇ・・・」


神使「私の知っている神様はどんな状況でも絶対に諦めたりしません」

神使「私の知っている神様は神力がなくてもどんな願いだって叶えてくれます」

神使「そんな神様を私は・・・」


神使「今の神様は、私の知っている神様ではありません」ウルウル

神様「・・・・・・神使」


神使「失礼します」スタスタ

狐娘「あっ、先輩・・・」



神様「・・・・・・」ウルウル

神様「ふぇ・・・ ぐすっ」ポロ ポロ

神様「うぇ~ん! ひぐっ・・・ うぇ~んっ!」ボロ ボロ


 トテトテ





狐娘「・・・・・・神宮神様」



神使「・・・・・・」テクテク


 凄爺「おい狛犬」


神使「凄爺神様・・・」フカブカ


凄爺「話がある、本殿に上がれ」

神使「・・・はい」スタスタ



――― 本殿


神使「・・・先ほどは申し訳ございませんでした」フカブカ

凄爺「何故謝る?」

神使「一介の神使が神に・・・ いえ最高神様に非礼な事を・・・」


凄爺「アイツの正体はどこまで知っているんだ?」

神使「神宮三神を隠れて兼任している事と・・・ 二百年前に分裂してお二人いると言う事までは・・・」

凄爺「ほぉ~ あのガキの神使は何年目だ?」

神使「神様にお仕えして4年になります」

凄爺「たったそれだけか?」

神使「・・・はい」


凄爺「ワシは神になる前はあのガキと40年ほど一緒にいた」

神使「・・・・・・」

凄爺「だが、あんなにギャンギャン泣いたのを見たのは初めてだ」

神使「申し訳ありません・・・」フカブカ

凄爺「だから、何故謝る」

神使「神様はこの国の最高神です。 そのような立派な方にあのような非礼を・・・」


凄爺「ワシはあまり自分の事を喋らん主義だが・・・ まだ神になる前に、その・・・ 思いを寄せていたヤツに告白した事がある」

神使「え!?」


凄爺「彼女はどんな時も他人を優先し、どんな難しい難題でもあらゆる手を使って解決してくれた」

神使「・・・素晴らしい方ですね」

凄爺「当時はまだ神力が使えていたが、名実ともに神の頂点と言って良い素晴らしい女神だった」

神使「それって・・・」

凄爺「言わすな、恥ずかしい」

神使「それで、神様・・・ いえ、その方からのお返事は」

凄爺「まぁ・・・振られたな」

神使「・・・・・・」



凄爺「雲一つ無き青空と、夕日に燃える朱色の・・・」

神使「え?」

凄爺「・・・・・・なるほどな。 そう言うことか」フッ


神使「あの・・・」

凄爺「いや、すまん」

神使「?」


凄爺「アイツは毎日一緒にいても飽きなくて、お金にはうるさいけど定期的に好物を食べさせてくれる使いが好きだと言っていた」

神使「随分と限定的な方なのですね・・・」

凄爺「そうだな。 ワシも全く同じ事を言った」

神使「そうでしたか・・・」


凄爺「まぁ、盛大に振られた代わりアイツは一つだけ約束をしてくれた」

神使「約束・・・ ですか?」

凄爺「もし好きなやつが出来たときはワシの所に連れて来るとな・・・ 全く悪趣味なヤツだ」


神使「その後、神様は誰かお連れになったのですか?」

凄爺「ワシが神になってから一人だけ男を連れてきた」

神使「!?」

凄爺「誰だか分かるか?」

神使「・・・・・・もしかして、昭宮神様でしょうか」

凄爺「昭宮神? あの妄想野郎を知ってるのか?」

神使「はい。 神様の旦那様だと仰っておりました」


凄爺「あの変態が勝手に言っているだけだろ。 アイツが昭宮神を連れてきた事など一度も無いぞ」

神使「では一体・・・」


凄爺「お前だ」

神使「えっ?」

凄爺「お前以外であのガキがワシの前に男を連れてきた事は無い」

神使「それは・・・ 私は神様の神使ですので当然かと」

凄爺「そうかもな。だが、アイツの神使や使いで男は今まで沢山いた」

神使「・・・・・・」


凄爺「アイツが自分の使いに会うのは月に1回あれば多い方だ。 お前はどのくらいの周期で会っているんだ?」

神使「・・・・・・毎日お会いしております」

凄爺「そうか」



凄爺「アイツは途方もない長い時間を過ごしている。 ワシでも想像できないような辛い出来事も経験しているはずだ」

神使「・・・・・・」

凄爺「あんな小さな体で、あんな性格なのに何千年もそれに耐えてきたんだ」

神使「はい・・・」


凄爺「そんなヤツがたかが4年一緒にいる神使にキツく言われただけであんなに泣くと思うか?」

神使「えっ・・・」


凄爺「羨ましいわ」ボソッ

神使「凄爺様・・・」


凄爺「あのガキ、お前に嫌われたと思っているだろうな」

神使「え?」

凄爺「たぶん初めての感情だったんだろ。 あんなに泣きやがって」

神使「・・・・・・」


凄爺「あとはワシは知らん。 お前が決めるんだな」

神使「ありがとうございます。 私は、どんな形であれ神様をお守りすることをお約束します」

凄爺「・・・・・・」

神使「しかし、私は神様の神使です。 神ちゃんさんに相応しい男になった時に、この思いをお伝えいたします」フカブカ

凄爺「そうか」




凄爺(なるほど、確かにお前の言う通り私はコイツに勝てないな)フッ



――― ひねくれ神社・境内の端っこ


神様「・・・・・・」シュン



狐娘「神宮神様?」

神様「・・・狐娘ちゃん」グシグシ


狐娘「少しお話しをしてもよろしいでしょうか?」

神様「・・・うん」


狐娘「先輩に怒られちゃいましたね」

神様「・・・うん」

狐娘「私、先輩が怒っているところ初めて見ました」

神様「・・・・・・」


狐娘「ちょっと羨ましいです」

神様「え?」

狐娘「先輩って、どんな人にも全く同じ対応なんですもん。 誰にでも優しくて、頼み事だって絶対断らないんですよ?」

神様「知ってる・・・ でも私のお願いはあんま聞いてくれないけど・・・」


狐娘「私、神宮神様といるときの先輩の対応を見てびっくりしました」

神様「あいつ、私を見下してるから・・・」

狐娘「先輩が神を・・・ いえ、人も神使も見下すなんて事は絶対にありません」

神様「・・・・・・」


狐娘「私、先輩の妹と研修所時代の同期なんです」

神様「この前アイツから聞いた」

狐娘「妹さんはご存じですか?」

神様「うん」

狐娘「先輩、妹にも敬語なんですよ?」

神様「・・・うん」

狐娘「先輩って女性と話すときは絶対に一歩自分を引いて話すんです。 相手が妹でも」

神様「・・・・・・」

狐娘「神宮神様と一緒の時はその距離がありませんでした。 あんな先輩初めて見ました」

神様「でも、それは・・・」


狐娘「それに、どんなに親しくても先輩が女性を脇に抱えて歩いたりするなんて考えられませんよ」

神様「さすがにそんなこと私もされた事無いけど・・・」


狐娘「・・・先日、神宮神様を脇にお抱えになっていましたよ?」

神様「え!?」

狐娘「廊下でお眠りになっていたときに・・・ 覚えていないのですか?」

神様「・・・・・・うん」

狐娘「手慣れた感じでしたし、何度もされているのでは・・・」

神様「・・・///」

狐娘「大変非礼な発言ですが、あんなの見せられて・・・ 私、嫉妬しちゃいました」



神様「・・・・・・狐娘ちゃんは、犬ころの事を好きなんだよね」

狐娘「はい」


神様「・・・あいつ優しいから、ちゃんと思いを伝えれば大丈夫だと思うよ」

狐娘「私もそう思っていました。 でも先輩はすでにお慕いしている方がいるようですし」

神様「今なら大丈夫だよ。 たぶんそいつ嫌われたし」シュン


狐娘「私が神使先輩に告白しても絶対にお返事はもらえません。 先輩を悩ませちゃうだけです」

神様「でも・・・ 思いを伝えるのは大事だよ?」

狐娘「神宮神様は思いをお伝えになったのですか?」

神様「・・・・・・」



狐娘「神使先輩は神宮神様にお譲りします!」

神様「でも・・・ 私は嫌われたし・・・」

狐娘「あの先輩が神宮神様の事を嫌いになるわけ無いじゃないですか」

神様「狐娘ちゃん・・・」


狐娘「神さま、どうか神宮神様が神使先輩と共に歩んでいけますように」パン パンッ

神様「・・・・・・」

狐娘「これが、私から神様へのお願いです」ニコッ

神様「ありがとう・・・///」


狐娘「はい、お賽銭です」ジャラ

神様「130円?」

狐娘「裏手に自動販売機がありますので、一緒にコーラ買いに行きませんか?」

神様「うん。 ありがとう狐娘ちゃん」

狐娘「出過ぎたまねを失礼いたしました」ペコリ

神様「後でアイツに謝まる。 もう絶対神を辞めるなんて言わない!」

狐娘「ふふっ、そうですね」ニコッ



―――ひねくれ神社・本殿前


 テクテク


神様「狐娘ちゃん、折角ジュース買うのに水とか無いわ~」

狐娘「そうでしょうか・・・」


神様「あっ・・・」


神使「・・・・・・」



神様「・・・・・・」シュン


狐娘「神宮神様? 謝るのでは?」ボソッ

神様「神使・・・ あの、さっきは・・・」モジモジ



神使「神様? またコーラを勝手に買ったんですか?」

神様「え・・・? いや、これは・・・」


神使「これからは、1日2本までですよ?」

神様「・・・・・・」

神使「約束できますか?」

神様「する・・・ 約束する!」

神使「ありがとうございます」


神様「それと、もう一つ約束する事がある」

神使「?」


神様「もう、神を辞めるだなんて言わない。 冗談でも絶対に言わない! だから・・・」


神使「よくよく考えたら神様が神を辞めるわけなんかありませんからね」

神様「え?」

神使「神様は神以外の仕事は出来ませんし」

神様「・・・どういう意味?」

神使「そのままの意味です」

狐娘「」クスッ


神様「あのさぁ、勘違いしてもらっちゃ困るんだけど私の本職は巫女だからね?」ハァ

神使「そうでした。 内宮巫女長でしたね」

神様「その通り! 神としての神階は最低位だけど巫女としては優秀なのだよ」カッ カッ カッ


 凄爺「おい」


神様・神使「?」


狐娘「凄爺様、お体に触りますのでお休みになって頂かないと・・・」


凄爺「悪いんだが、お前達うるさいから帰ってくれないか? ゆっくりできん」」

神使「も、申し訳ございません」フカブカ


神様「へぇ~ こんなにキッズ達がウジャウジャいるのに、そっちはうるさくないの?」ニヤッ

凄爺「・・・あのガキ達はしかたあるまい」

神様「だよね~ 好きで無きゃ神宮の反発を押し切って土地を切り売りして幼稚園誘致したり公園にしたりしないもんね~」

凄爺「・・・おい牡蠣ガキ、なんでそれを知っているんだ!!」

神様「前に、神宮の大宮司が教えてくれたの」

凄爺「あの野郎・・・」


神様「狐娘ちゃん、色々ありがとう」フカブカ

狐娘「そんな! やめて下さい」

神様「これ、お礼にもならないと思うんだけど受け取って」スッ

狐娘「お守り?」

神様「うん。 私が作ったヤツだから御利益薄いけど・・・」

狐娘「ありがとうございます。 大切にいたします」


凄爺「ほぉ~ お前お守りなんか作っていたのか」

神様「なんだよ・・・」

凄爺「ワシの分は無いのか?」

神様「ありません~ これは私の大事な友達にだけあげてるんです~」ベー

凄爺「何だと? 生意気な!!」


神様「よし! 逃げるぞ犬ころ!」タッ タッ タッ

神使「え!? ちょっと、神様?」

凄爺「おい!」


 神様「狐娘ちゃん、元気でね~」タッ タッ タッ


狐娘「はい! お元気で!」


 神様「おいジジイ! 次に私が来るときは牡蠣用意しておけよ~」タッ タッ タッ


凄爺「うるさいわ! お前が土産を持って来い!」


神使「申し訳ありません! 凄爺様、お世話になりました」

凄爺「期待しているぞ、狛犬の神使」

神使「はい! 狐娘さんも頑張って下さい」

狐娘「ありがとうございます」ペコリ


神使「では、失礼いたします」フカブカ


 神使「神様、待って下さ~い」タッ タッ タッ




凄爺「ったく、ワシは縁結びの神では無いぞ・・・」

狐娘「これを機に、縁結びの神としても活動されてはいかがでしょうか?」

凄爺「バカを言うな。 こんな面倒くさい事してられんわ」



――― 帰り道


 テクテク


神様「なぁ、犬ころ」

神使「何です?」


神様「私はお前を絶対に神にするぞ」

神使「何度もお話しいたしましたが、私は神様の神使でありたいのです」


神様「人よりは随分と長いけど、神使にも寿命がある」

神使「・・・・・・」


神様「お前が私の神使として過ごす時間は・・・ 私にとっては短すぎる」

神使「神様・・・」

神様「だから、その・・・ 何というか、私はお前を・・・///」モジモジ


神使「神様? その先は今は言わないで下さい」

神様「・・・・・・」

神使「ワガママですが私が胸を張って神様にお伝えできるその日まで、もうしばらくお時間を下さい」

神様「そうか。 私はお前がおじいちゃんになってからでも構わない。 その時を待ち続ける」



神使「神様、おんぶしましょうか?」

神様「・・・そうだな。 少し疲れたかも」

神使「はい、どうぞ」スッ

神様「ん」ヨイショ



 テクテク


神様「今日は良い天気だな」

神使「そうですね。 雲一つ無い快晴です」

神様「お前の袴の色と同じだ」

神使「確かに。 似た色ですよね」

神様「私はその色が大好きなんだよ」

神使「私も巫女さんの緋色の袴は大好きですよ?」

神様「うれしいな。 毎日これで過ごすかな」

神使「それは止めて下さい」

神様「何でだよ・・・」

神使「神様は・・・ いえ、かわゆい神ちゃんは私の大切な方です。 あまり他人に見せびらかしたくありませんので」

神様「・・・そういうことを言うのは先じゃなかったのか?」

神使「そうでした。 今のは胸にしまっておいて下さい」

神様「分かった・・・///」ギュッ



 テクテク


神使「それでは、心機一転。 次の出向先へ向かいましょう」

神様「都会が良い」

神使「・・・そうですか」

神様「都会?」

神使「・・・・・・」


神様「・・・おい」

神使「頑張っていきましょう!」


神様「ふざけんなよ! 絶対田舎だろ! 間違いなく次の場所は田舎だろ!」

神使「神様の言う田舎という定義が私の定義と同じかどうかが分からないので何とも言えないのですが」

神様「何わけ分かんねーこと言ってんだよ! コンクリートジャングルに行かせろよ!」ゲシッ ゲシッ

神使「ちょっと! 神様! この状態で足蹴りはマズいですよ!」

神様「うるせー! 神罰だ!」ゲシッ ゲシッ

神使「うわっ、ちょっと! 本当にマズいですって!」フラフラ

神様「うひゃひゃ、都会って言うまで折檻だ~」ゲシッ ゲシッ


神使「止めて下さい~!!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#13 ―END


――――
―――
――


~~ ずっとずっと昔


凄爺(若)「主神様はどんな方が好みなんですか?」

神様「そんな事を聞いてどうするのだ?」

凄爺(若)「盛大に振られた記念にぜひ教えて頂けないでしょうか」


神様「・・・その者は雲一つ無い青空、私は夕日に燃える朱色なんだ」

凄爺(若)「?」

神様「お金にはうるさいけれど定期的に好物を食べさせてくれる私の使い・・・ そんな者が私の好みだ」

凄爺(若)「随分と限定的な方なのですね・・・」


神様「その者と私はいつも一緒にいて、寝るときも同じ部屋なのだぞ?」

凄爺(若)「使いと一緒の部屋にですか!?」

神様「あぁ。 その者はいずれ神となり、私と共にこの国を守ってくれる」

凄爺(若)「・・・・・・」

神様「私は、その者を一生愛し続け片時も離れる事は無いであろう」

凄爺(若)「主神様・・・」

神様「お前も時が来れば神になる。 いずれ会わせてやる」

凄爺(若)「それは、複雑な気分でございますね・・・」

神様「約束する。 お前はその者には勝てないと役不足を痛感するはずだ」ウヒヒッ


――
―――
――――


凄爺「確かにワシでは役不足だったな・・・」

狐娘「凄爺神様?」

凄爺「浅葱色の袴と巫女の緋袴か・・・ なるほどな」フッ

狐娘「?」


凄爺「お前は良いのか? 思い人を取られても」

狐娘「私も・・・ 役不足でした」ニコッ

凄爺「ハハハッ、お互い甘酸っぱい経験をしたな」

狐娘「そうでございますね」


凄爺「さて、結界の確認でもするか。 お前もワシの隣でよく見ておけ」

狐娘「え?」

凄爺「今日からお前にも手伝ってもらおう」

狐娘「しかし・・・ 私のような者がお側にいるとご迷惑では・・・」

凄爺「お前にも四柱結界の守護を手伝ってもらう事にする」

狐娘「!?」

凄爺「不満か?」

狐娘「いいえ! ぜひ勉強させて下さい!」

凄爺「よし。 では牡蠣を買ってこい」

狐娘「牡蠣・・・ ですか?」

凄爺「そうだ。 アレを喰うと力が湧く。 ワシが尊敬する神から教えてもらったのだ」

狐娘「分かりました! すぐに買って参ります」


 タッ タッ タッ



 チュンチュン


凄爺「良い天気だ・・・」


 トテトテ


子供「ねぇ、神社の神主おじいちゃん」

凄爺「なんだ? 勝手に本殿に入ってきてはダメであろう」

子供「この前のお話しの続き聞きたい」

凄爺「話?」

子供「神ちゃんの昔話」

凄爺「お~ そうだったな。 良いぞ、聞かせてやろう」

子供「やった! 皆~ 神ちゃんの昔話の続き教えてくれるって~」


 ワー ワー
 キャッ キャッ


凄爺「さてと、どこからだったかな?」

子供「神ちゃんが池から出てきた所から~」

凄爺「そうだったな。 では」


凄爺「神ちゃんが池から這い上がると、そこにおまるがあってな? そのおまるにまたがった次の瞬間―――」




 ワハハッ
 ギャハハッ





神様「神様だっ!!」 神使「神力ゼロですが・・・・・・」―END


#09 「のんびり村」 >>1-153
神様の悪友である大宮司が退職。大宮司の思いを知った神様はある決意をする・・・

#10 「巫女カフェ」 >>165-410
本職の巫女が喫茶店で働いている。真相は三年前に起った事件が引き金だった・・・

#11 「もももも神社」 >>419-526
もももも神社に伝わる開かずの宝箱。その箱には神様が知られたくない過去が・・・

#12 「あにあに神社」 >>542-725
新米神職の指導のために着任する神様。しかし村人から歓迎されていない様で・・・

#13 「いつでも一緒」 >>739-854
神様と神使がお互いの気持ちに気づいたとき・・・ 新たな旅が始まるのであった・・・


ありがとうございました <(_ _)>


スレがまだ余っているだと?
埋めなくては!(強迫観念)


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【#0】「旅立ち」


――― 四年前・神宮


神使「さすがに神宮は大きいですね」


?「ねぇ、ねぇ」


神使「?」キョロキョロ


?「うしろ」


神使「あっ、すいません・・・(巫女さん?)」

巫女「おみくじやってかない? 今日大吉いっぱい入れておいたからさぁ~」

神使「おみくじ・・・ ですか?」


巫女「お守りもあるよ?」ゴソゴソ

神使「・・・なぜお守りとおみくじを売り歩きしているんですか?」

巫女「いや~ 今日人少なくてさぁ~ ちょっと売り上げ的にマズいんだよね」

神使「・・・・・・」

巫女「このペラペラのお守りなら2000円の所300円にオマケしちゃうよ? おみくじも一回サービス!」

神使「授与品を割引販売するのはどうかと思いますが・・・」

巫女「ん? もしかして関係者?」

神使「ならなら神社の者です」ペコリ

巫女「あ~ そうなんだ。 じゃ、いいや。 バイバイ」トテトテ


 おみくじ~ お守りはいかがっすか~


神使「変わった巫女さんですね・・・」


――― 数分後


神使「おかしいですね・・・ こちらの方で道はあっていると思うのですが・・・」キョロキョロ


 おみくじ~ お守りはいかがっすか~


神使「あっ、先ほどの巫女さん・・・」


巫女「?」クルッ


神使「その・・・ またお会いしましたね」ハハハ

巫女「おみくじやる?」

神使「いえ・・・」

巫女「やってよ~ すんごい当たるから」

神使「・・・では1回だけ。 100円で良いですか?」

巫女「サンキュ~ はい、どうぞ」スッ


神使「では」ゴソゴソ

巫女「何番?」

神使「18番ですね」

巫女「おめでとう! 大吉!」


神使「・・・・・・」

巫女「・・・・・・」


神使「えっ!? くじ紙とかないんですか?」

巫女「紙が欲しかったら、そこら辺の授与所で“神ちゃんくじ”18番の紙くれって言えばくれるから」

神使「・・・はぁ」


巫女「じゃあね~」トテトテ


神使「あっ、あの!」

巫女「?」


神使「すいません・・・ 内宮の社務所ってどちらでしょうか?」

巫女「社務所?」

神使「大宮司さまと約束で来たのですが・・・」

巫女「あ~ 迷ったのね。 案内してあげよっか?」

神使「でも、お忙しいのでは」

巫女「大丈夫だよ」

神使「しかし・・・」


巫女「んじゃ、交換条件でどう?」

神使「交換条件ですか?」


そんなに長くないと思うので……



 ガコンッ


神使「これでいいんですか?」ハイ

巫女「サンキュ~」プシュッ


神使「奉務中に飲み物なんて・・・ しかもコーラですか?」

巫女「バレないって」ゴクゴク

神使「では行きましょうか」

巫女「君は買わなくても良いの?」

神使「大丈夫です」



 テクテク


巫女「あっ、ここ右」

神使「はぁ・・・ かなり参道から外れているようですが」

巫女「そうね~ 近道だから。 関係者以外は通らないし」ゲップ

神使「・・・・・・」

巫女「あ~ ゴメンね私だけ飲んで」

神使「美味しいんですか? それ」

巫女「最高だよ~ あれ? もしかしてコーラ飲んだ事ないの?」

神使「はい、普段は白湯かお茶ですので・・・」

巫女「マジで!? 飲む? 一口ならあげるよ?」

神使「いいえ大丈夫です」

巫女「美味しいのに・・・ ん?」ピタッ

神使「どうされました?」



 ?「フンフン~♪」


神使「林に誰かいますね・・・」

巫女「あれって・・・」

神使「お知り合いですか?」

巫女「お~い、何やてんだよ~」


 ?「あん?」


神使「あの方は・・・ まさか!」

巫女「なんでこんな所ににいるんだ? またサボりか?」

?「禊ぎ中だ」

巫女「あ~ 抜け出してきたのね」


神使「さ、祭儀神様! 神様図鑑と同じ・・・ 本物!」ドゲザ

祭儀神「ん?」

巫女「君、急に土下座なんかしてどうしたの?」ケラケラ

神使「巫女さん! こちら神宮の祭儀神様ですよ!?」


祭儀神「・・・こいつ関係者か?」ボソッ

巫女「あ~ ならなら神社の、って酒くさ! お前、酒飲んだろ」

神使「!? 祭儀神様にお前だなんて・・・ 申し訳ありません! 神宮の巫女さんですのでどうか御慈悲を!」フカブカ

祭儀神「・・・・・・」


巫女「ねぇ、何してたの?」

祭儀神「ちょっと野暮用でな・・・」

巫女「ふ~ん。 んじゃ、私達は社務所行くから。 ここでサボってた事を神職に伝えておくわ」

祭儀神「!? ちょ、ちょっと待った!」

巫女「なに?」

祭儀神「・・・午前中にやった祭儀のお供え物を後で持って行かせる」

巫女「オッケ~。 私はここでお前には会わなかった」

祭儀神「」ホッ


巫女「それじゃ神使君、行こうか」

神使「は、はい。 祭儀神様、お目にかかれて光栄でした」ペコリ

祭儀神「あ、あぁ・・・」



テクテク


巫女「いや~ お供え物ゲット! ラッキ~♪」

神使「祭儀神様にあんな対応をするなんて・・・」

巫女「え~ アイツってそんなに有名なの?」

神使「神宮の祭儀神様ですよ? 神階最高位の神ですよ!?」

巫女「ただのジジイじゃん」

神使「・・・・・・」


巫女「あの建物が内宮の社務所」

神使「さすが大きいですね」

巫女「おっ、玄関に大宮司いるじゃん」


巫女「お~い、大宮司~」

神使「大宮司様にもそのような態度なのですね・・・」


大宮司「ん? あ~ 神ちゃんか、サボりか?」

巫女「ちげーよ! 客連れてきたの!」


神使「・・・ならなら神社から参りました神使と申します」フカブカ

大宮司「君が神使君か。 待っていたよ、中に入ってくれ。 神ちゃんも一緒に―――」

巫女「玄関落ち葉だらけじゃん。 ちょっと掃除するから箒取ってくる」タッ タッ タッ

大宮司「おい神ちゃん・・・ はぁ~ 逃げられたか・・・」


神使「変わった巫女さんですね・・・」

大宮司「彼女と何か話したのかい?」

神使「とてもフレンドリーな巫女さんですね」

大宮司「そうだね、少しフレンドリーすぎる気もするが」

神使「先ほど、祭儀神様とお会いしたのですが・・・ 神と接する態度とは思えないほど何と言いますか・・・」

大宮司「はははっ、仲の良い先輩と後輩というヤツじゃないのか?」

神使「?」

大宮司「まぁ、詳しくは中で話そうじゃないか」

神使「はい」



――― 大宮司室


大宮司「さてと、まずは神宮へようこそ」

神使「私のような未熟者をご採用頂きましてありがとうございました」フカブカ

大宮司「いやいや、その若さで最高位の神使だなんて十分立派だと思うよ?」

神使「そんな事ございません。 全身全霊を込めて神宮でご奉仕させて頂きます」

大宮司「まぁ、堅い話は無しにして楽にいこうじゃないか」

神使「お気遣いありがとうございます」


大宮司「神使君は神宮の神についてどのくらい知っているかね?」

神使「神宮主神である最高神様、内宮神様、外宮神様の神宮三神を筆頭に祭儀神様などの神々の皆様がおられるという程度ですが・・・」

大宮司「神宮三神は別格である事は承知だと思う」

神使「はい。 人や神使はもちろん神職でさえ謁見は禁止されていると聞いております」

大宮司「そうだな。 取りあえず神宮三神は置いておくとして、それ以外で今現在神宮には二人の神がおられる」

神使「たった二神なのですか?」

大宮司「最高神様の希望らしくてね。 最低限の神しかいないのだよ」

神使「そうなのですか・・・ 勉強不足で申し訳ございません」

大宮司「いやいや、表には出していないから知っていたら逆に大変だよ」ハハハッ

神使「祭儀神様は神社界では著名な神ですので知っているのですが・・・」


大宮司「もう一人が・・・ まぁ君の主神となる神で女神様だ」

神使「女神様・・・」

大宮司「ちなみに、神様図鑑にも載っていないぞ?」

神使「そのような神がおられるのですか?」

大宮司「別格だからね。 良い意味でも悪い意味でも・・・」

神使「? 一体ご専門は・・・」

大宮司「う~ん・・・ 確か審査神だったかな?」

神使「・・・審査神?」

大宮司「広域特務課? とかいう場所に所属していた気がする」

神使「はぁ・・・」

大宮司「いや、忘れている訳じゃないんだよ? 普段は違う仕事をしているものでね」

神使「違う仕事・・・ ですか?」

大宮司「君に隠しても仕方がないから言ってしまうが、すでに君と面識がある」

神使「?」


大宮司「あれ」クイッ

神使「? 窓の外?」


 サァ サァ サァ


神使「先ほどの巫女さんがお掃除しているようですね」

大宮司「さっきからこちらが気になるのかチラチラと見ているみたいだが」ハハハッ

神使「あの巫女さんが何か?」

大宮司「あれが君の主神」


神使「・・・・・・はい?」


大宮司「内宮神籍の神様で巫女さん」

神使「・・・・・・」


大宮司「うん、言いたい事は分かる。 でも神ちゃんは巫女としては優秀でね、内宮巫女長なんだよ」

神使「あの・・・ 冗談でなくですか?」

大宮司「神ちゃんはちょっと特殊な神でね。 周りには神である事を隠しているんだ」

神使「はぁ・・・」

大宮司「ああ見えて、神宮は長いんだよ?」

神使「何故そのような神が巫女さんを・・・」

大宮司「まぁ、訳ありでね・・・ その、神力が少し弱いんだよ」

神使「神力が・・・ それで巫女さんの仕事を?」

大宮司「まぁ何というか・・・ そうであって、そうでないというか・・・」


神使「えっと・・・ 私はどのようにお付き合いすればよろしいんでしょうか?」

大宮司「そうだね~ どうしようかな」

神使「・・・・・・」


大宮司「大丈夫だよ。 何も考えずに神ちゃんが君を神使に付けたはずないだろうし」

神使「え? 神様が私をお選びになったのですか?」

大宮司「ん? そんな事言ったかね? 私が選んだんだよ、厳正なる選考でね」アセアセ

神使「・・・・・・はぁ」


大宮司「神ちゃんはすごく面白いからすぐに仲良くなれるよ」

神使「神使が神と仲良くなど、そんな非礼な事は・・・」


大宮司「君に一つだけ言っておこう」

神使「?」


大宮司「神と神使、神と人の付き合い方とあり方の常識を捨てなさい」

神使「常識を・・・ 捨てる?」

大宮司「君は、何故神を崇め奉るんだい?」

神使「それは・・・」

大宮司「人に対しても立派な人には神のように崇め奉ったりするかい?」

神使「・・・・・・」


大宮司「まぁ、今は何のことだかよく分からないだろうが時期分かる」

神使「はい」

大宮司「急に今までの常識を捨てろと言われても戸惑うかも知れないが・・・」

神使「いえ、仰る事は何となくですが分かったような気がします」

大宮司「そうか。 期待しているぞ、神使君」

神使「ありがとうございます」フカブカ


大宮司「神勅が発せられる任命式は明日だ。 それまでゆっくりしていなさい」

神使「承知いたしました」

大宮司「よしと」スタスタ



 ガラガラ


大宮司「おい、神ちゃん」


 神様「なに?」


大宮司「掃除はいいから、こっちに来てくれるか?」


 神様「ん」トテトテ


大宮司「神使君を宿舎に案内してあげてくれるか?」

神様「あ~ 良いけど、コーラおごって」

大宮司「分かったよ、後で宿舎に届けさせる」


神様「んじゃ、案内するから一緒に行くぞ」

神使「は、はい! よろしくお願いいたします!」フカブカ

神様「あ~ そういうのしなくていいから」

神使「?」


神様「まぁ、いいや。 行くよ~」

神使「はい!」



 テクテク


神様「・・・・・・」

神使「・・・・・・」カチコチ


神様「ねぇ・・・」

神使「はっ、はい! 何でしょうか神様!」

神様「もっと普通で良いよ。 社務所行く前みたいな感じで」

神使「しかし・・・」


神様「私、堅苦しいのは苦手でさ。 距離を置かれるの好きじゃないんだよね」

神使「そうなのですか?」

神様「別に神って偉い存在ではないしさ?」

神使「そのような事はないと思うのですが」

神様「・・・・・・」


神使「ところで、私は普段どのような補佐をすればよろしいでしょうか? 祭儀などは頻繁になされるのですか?」

神様「私は祭儀とかしないね」

神使「では、神力成就がご専門で?」

神様「・・・それもしないね」


神使「では普段はどのような・・・」

神様「巫女」

神使「巫女・・・ さんですか?」

神様「そう、巫女。 私は、普段は神としての仕事は全くしていない」

神使「大宮司様が内宮巫女長と仰っておりましたが」

神様「そうそう。 だから私の神使なんてやる事ないと思うよ?」


神使「・・・では、私はなぜ神様の神使に任命されたのでしょか?」

神様「まぁ、近いうちに必要になるし」

神使「?」


神様「あっ、でも私以外の神に付きたいと思ったら遠慮なく言ってね」

神使「そんな事は・・・ そんな非礼は神使として失格です」

神様「いや、祭儀神とか他の神階の高い神に付きたいと思ったら正直に言う事。 それだけは約束してくれる?」

神使「はぁ・・・」

神様「まぁ、これでも神宮は長いからどの社の神にでも神使として付ける事くらい出来るし」

神使「え!?」

神様「神宮三神以外だったら誰でも良いよ? だから約束して。 君の人生を無駄にしたくない」

神使「分かりました」


神様「よし! まぁ、しばらくは適当に仕事見つけてプラプラしててよ」

神使「そんなアバウトな事でも良いのですか?」

神様「いいよ」

神使「・・・・・・」


 テクテク


神様「あっ、あの建物が宿舎。 神使君は右側の建物だね」

神使「立派な宿舎ですね」

神様「じゃ、また」トテトテ

神使「あの、神様!」

神様「?」

神使「明日の任命式でのご神勅、どうぞよろしくお願いいたします」フカブカ

神様「へいへい」スタスタ


神使「・・・・・・」



――― 任命式


大宮司「狛犬の神使よ」

神使「はい」

大宮司「本日付で神宮所属とし主神付の神使とする」

神使「ありがとうございます」フカブカ


大宮司「神様、神勅をお願いいたします」

神様「Zzz・・・」コクッ

大宮司「おい、神ちゃん」ボソッ

神様「んあ?」ポー

大宮司「神勅」

神様「あ~」ヨイショ

神使「・・・・・・」


大宮司「神勅は内宮神籍・神様から賜る」

神使「」フカブカ


神様「神勅! 狛犬の神使よ、其方を本日付で神宮主神付とし我が神使として任命する」

大宮司・神使「」フカブカ

神様「以上、内宮神籍神様より神勅を申し伝えた」

神使「神様の主神付神使として恥じぬよう誠心誠意ご奉仕いたします」

神様「堅い!」

神使「・・・神様の神使として頑張ります」

神様「いいね~ んじゃお祝いパーチィ―でもしますか」

大宮司「まだ日が出てるぞ? 早すぎじゃないか?」


神様「祭儀神がバーベキューの用意始めちゃってるんだよ~」

大宮司・神使「・・・・・・」


神様「取りあえず私と神使君は先に行くから大宮司達は後から来て」

神使「え? 私、ならなら神社に戻って私物を取りに行かないといけないのですが・・・」

神様「そんなの明日の始発で行けば良いじゃん。 夜通しでパーチィーなんだから」

神使「夜通し!?」

大宮司「・・・・・・私はこのあと会合だから頑張ってくれ。 それじゃ」スタスタ


神様「マジかよ・・・ まぁ良いや。 いくぞ神使君」ガシッ

神使「えっ、ちょ・・・」ズルズル

神様「レッツゴー!」



――― 裏庭


神様「うひゃひゃ! どうだ! キレッキレの神ちゃんダンシングは!」クネクネ

祭儀神「いいぞ~ クネクネしてて全然キレてないけどな」

神使「・・・・・・」

祭儀神「キレると言えば、この肉って何の肉だ? ゴムみたいでかみ切れないぞ?」モグモグ

神使「あの・・・」

祭儀神「あん?」

神使「神様が下着姿で踊っているのですが、お止めにならなくても良いのでしょうか?」

祭儀神「ほっとけ。 アイツは寝るときと機嫌が良い時は裸になるんだよ」

神使「・・・・・・」


神様「? おっ、犬ころも一緒に踊るか?」クネクネ

神使「犬!? 私の事ですか!?」

神様「ほかに犬ころなんか居ないだろ~が~」

祭儀神「はははっ。 良かったな、早速あだ名付けてもらえて」

神使「・・・・・・」


神様「それより、みんな遅くね? ちょっと見てくるわ」トテトテ

神使「!? 神様、裸ですよ?」

神様「うひゃひゃ! このまま境内までダッシュしてやる~」

神使「ちょ! ダメです! そんな格好で走り回ったら通報されますから!」ガシッ

神様「大丈夫だよ~」ジタバタ

神使「ダメです! 参拝者だってまだいるんですから!」


祭儀神「そうだぞ、神ちゃん。 お付きの言うことちゃんと聞いておけ。 通報されるとまた面倒だぞ?」

神様「分かったよ~ んじゃ寝る。 みんなが揃ったら起こして?」バタン

神使「神様・・・ そんな格好で寝たら風邪引きますよ・・・」

神様「ん~ Zzz・・・」グガー


神使「祭儀神様・・・ 神様が・・・」

祭儀神「こんなにはしゃいだ神ちゃん見たの久しぶりだ」

神使「?」

祭儀神「神ちゃんの神使、よろしく頼むぞ」

神使「祭儀神様・・・」


祭儀神「さて、もうじき他の連中も来るし神ちゃんの服だけでも着せておくか」

神使「そう言えばまだ日も落ちていないんですよね・・・」


祭儀神「ワシは追加の肉持ってくるから、神ちゃんは頼んだぞ」

神使「え!? 私が服を着せるのですか?」

祭儀神「当たり前だろ。 神使なんだから主神の世話はお前の役目だ」

神使「・・・・・・」


祭儀神「大丈夫だよ。 お前は神ちゃんに選ばれた神使なんだ」

神使「・・・やはり、私を選んだのは神様ご本人なのですか?」

祭儀神「ん? そんな事言ったか? 選んだのは・・・ なんか選考とかだろ?」アセアセ

神使「・・・・・・」

祭儀神「じゃ、きちんと服着せておけよ」スタスタ


神使「私、朝まで持つでしょうか・・・」ゲンナリ

神様「Zzz・・・」グガー



――― 翌日・ならなら神宮


友「おう、神使~」

神使「あ、友さん」

友「任命式終わったのか?」

神使「はい、昨日終わりました」


友「なんかお前、目の隈すごくないか?」

神使「夜通しで歓迎会がありまして・・・」

友「夜通し!?」

神使「まるで地獄絵図でした・・・ 耐え抜くのが大変でした・・・」ゲッソリ

友「優秀なお前でもそんな弱気になるなんて、さすが神宮・・・ 俺には無理だな」ハハハッ


神使「友さん、今までお世話になりました」ペコリ

友「いやいや、世話になったのはこっちだよ。 しかし、お前もついに神宮の神使か~」

神使「神宮の神さまにお仕えするのは私の夢でしたから」

友「だよな、ところで神さまとお会いになったんだろ?」

神使「まぁ・・・ 一応・・・」

友「やっぱり、神宮の神さまともなると凄いんだろうな~」

神使「・・・そうですね、ある意味想像以上でした。 私の考えていた神の概念を変えなくてはいけないほどです・・・」

友「就任早々弱音か? お前らしくないな」

神使「そうですね。 でも・・・」

友「?」

神使「なんだか楽くなりそうです」ニコッ



――― 二年後


神使「あっ、神様! やっと見つけました」

神様「お~ 久しぶり~」トテトテ


神使「また祭儀の補佐をサボったそうですね」

神様「なんで知ってんだよ・・・」

神使「巫女の御奉仕も良いですが、たまには神の仕事もして頂かないと困ります」

神様「相変わらずうるせーな~ 分かってるって・・・」

神使「いえ、全然分かっていないようですので少しお話しをさせて下さい」

神様「うっせー! ばーか」タッ タッ タッ

神使「ちょっと、神様! まったく・・・ 逃げ足だけは速いんですから・・・」ハァ


大宮司「はははっ、だいぶ手を焼いているようだね」

神使「大宮司様。 ご苦労様です」フカブカ


大宮司「安心したよ、神ちゃんと上手くやっているようで」

神使「上手く・・・ やれているんでしょうか?」

大宮司「合格点だよ。 神ちゃんと良いコンビだと思うよ?」

神使「そんな・・・ 主神付神使としては落第点だと思うのですが・・・」

大宮司「そんな事ないよ、期待以上だ。 これからもよろしく頼むよ」

神使「はぁ・・・」

大宮司「しかし・・・ 神ちゃんはこの後、私と打ち合わせをするという事を忘れていないだろうか・・・」



――― 大宮司室


 トントン


大宮司「誰かな?」


 ガチャッ


神様「神ちゃんどぇす」

大宮司「打ち合わせはちゃんと覚えていたか」

神様「私からお願いしたんだから忘れないっつーの」

大宮司「そこのソファーに」

神様「ん」ボフッ


大宮司「・・・本当に、神宮を出て行くのか?」

神様「うん」

大宮司「でも、急にどうして・・・」


神様「アイツに・・・ 犬ころに色々と教えておきたくてね~」

大宮司「そうか」

神様「まぁ、近いうちに神宮から私が出て行く事になるだろし」

大宮司「外宮宮司か?」

神様「・・・もし、私が出て行かざるを得ない状態になったときは流れに任せてくれ」

大宮司「分かった・・・」


神様「大丈夫だよ、犬ころは優秀な神使だ」

大宮司「神宮も寂しくなるな」

神様「片割れはココにいるんだ。 まぁ本殿と住居から出てくる事はないけど・・・」

大宮司「そうだな」


神様「別に神宮が嫌になって出て行くわけじゃないんだし、また戻ってくるって」

大宮司「なんだか娘を送り出すような気分だよ」

神様「嬉しい事を言うね~」


大宮司「神階を上げておくか? 外を回るなら役に立つだろ」

神様「いいよそのままで。 そういうの好きじゃないし」

大宮司「そうか」フッ


神様「なんだよ・・・」

大宮司「いや、少し羨ましく思ってね」

神様「・・・なんならお前も神になって一緒に来る?」

大宮司「私はそんな器じゃない、神になどならないよ。 それに・・・ 二人で行きたいんだろ?」

神様「・・・・・・」


大宮司「行き先は決めてあるのか?」

神様「最初は犬ころに任せるつもり。 その後は・・・ まぁ神様機構の長官君が指示出すでしょ」

大宮司「無茶だけはするなよ? 何かあったらすぐに連絡すること」

神様「お前は親かよ・・・」

大宮司「さっきも言ったろ? 娘みたいなもんだって」

神様「・・・そうだな。 ありがとう」ニコッ



――――
―――
――



――― 半年後


 テクテク


神様「う~ さぶっ!!」

神使「氷点下いっているでしょうね」

神様「んなこと言われなくても分かるわ! 腐れ神使」

神使「神様? 一応女性なのですからもう少し上品な言葉使いをなされては・・・」

神様「うっさい! 一応って何だよ! っていうかまだ着かないの~」

神使「そこを曲がれば次の勤務先のにょろにょろ神社です」


神様「にょろにょろ神社か・・・ 良いネーミングだな」

神使「そうでしょうか?」

神様「にょろにょろだよ? こう、脳天を揺さぶるような素敵な物語が始まる感じしない?」

神使「・・・・・・いえ、しません」

神様「さよですか」


 テクテク


神様「・・・なぁ、社務所ないぞ? っていうか神社がないぞ?」

神使「これは大きな駐車場ですね・・・」


 ヒュー


――――
―――
――



神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#0 ―END


おまけの0話はここまで
ダラダラと2スレも使ってすいません……


以上で、
・神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
を終わります



お読み頂きました皆様、ありがとうございました <(_ _)>

>>1の神ちゃんとか神使君の創造像を教えて欲しい

なんかすいません
色々ありがとうございます


>>934
特にコレっていうのは考えて書いていないのでご想像にお任せです

一応書いていく上での設定というか備考録的な書き殴りはあるので
置いておきます

途中で変わっている部分があるんですが直すのめんどいのでそのまま貼ります

★神様
・内宮神籍 神宮所属 広域特務課 審査係・審査神 and 神宮 内宮 巫女 巫女長
・巫女装束(正装)→オーソドックスな巫女、冬は腹巻き着用(A子から)
・神用の装束無し→神使に買ってもらう(常装用の表着)
・半袖短パン、ジャージ愛用(巫女の後輩からもらった高校のジャージ)
・見た目は中学~高校
・普段は精神年齢低めな振る舞い→考え方は大人以上(真剣なときのみ使う)
・神階は最低でランク外(神宮の最高神だけど隠している)
・神力ゼロ(神力を封印していて自身の力は絶対使わない)
・貧乏→基本給8万+巫女手当6万=14万(神宮時)旅していくと減給が進む/8万→0円→3.8万→50円
・お金はもらった分だけすぐ使う(貯めない:経験上お金の価値を信用していないor浪費癖)
・寝るのが趣味→眠そうな目
・神宮の宿舎は3畳(押し入れの方が広い)/畳敷き/壊れかけの扇風機→壊れた/風呂トイレは共有

・あだ名:かわゆい神ちゃん(自称で誰も呼ばない)/皆からは神ちゃん
・寝るとき下着姿→神使から寝間着を与えられている
・薄い青色が好き(浅葱色の袴好き:内緒)
・呼び:神使君、犬ころ
    A子ちゃん、B夫、猫神、猫娘(牡蠣娘)、~君(神主君)、~ちゃん(巫女ちゃん)
    神は基本呼び捨てorたまに君付け(お願い事の時は様付け)

・変な笑い方(うひゃひゃ にひひ) or 裸好きですぐ服を脱ぐ(ポイポイ)
・好物→コーラ系の炭酸飲料 →偽物は許さない。缶コーラ一番/貝(二枚貝、蛤とか牡蠣)→牡蠣
・新しい物好き/ひらがな入力でブラインドタッチ可能/30年落ちのワープロ所有
・スティック型の古いガラケー(アンテナ伸びる)→スマホ(ソミ―黄色い小っちゃいヤツ)

・おべべ/かわゆい/うひゃひゃ/~だと思うの/タッ タッ タッ/トテトテ/二千年早い!

★神使
・神宮所属 神祇管理局 局長待遇・ 神様付神使
・階位は特位(最高位の神使)
・普段:普通の服/常衣:白衣+袴(浅葱色)/正装:狩衣
・基本給¥600,000(最高額)/減給中で¥320,000

基本:犬ころ
→派生:腐れ神使、極悪邪道腐れ犬ころ神使、極悪邪道腐れ犬ころ変態神使、
    極悪邪道腐れ犬ころ変態アホ神使、極悪邪道腐れ犬ころ変態すけこまアホ神使

・呼び:神様(正体を隠しているとき:神ちゃんさん)
・年上&神には ~様(猫神様)/年下or女性の神使&人には ~さん(猫娘さん)
 例外)巫女A子だけは“ちゃん”(A子ちゃん)
 対妹:妹さん/対外:妹

・見た目は人:20代前くらい(神ちゃん対比:頭一つ分くらい高い)
・神の命令以外で狛犬になるのは禁止/ビックリしたときにはなる事もある
・狛犬バージョンは怖くない
・他人優先
・古典好き
・神職階位取得済み(明階)/身分(二級上)
・神宮宿舎は2DK/冷房・トイレ・風呂完備

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