提督「安価でよりみんなと遊ぶ」 (1000)

提督「くくく、此処までのようだな、南方棲戦姫」

南方棲戦姫「くっ……」

提督「人類はすべて支配した。まさか深海棲艦が最後まで立ち塞がるとは思っていなかったが、それももう終わりだな」

南方棲戦姫「黙れぇ!! まだ終わってなど……!」

提督「レ級」

レ級「はーい、南方棲戦姫様、大人しくしないと……やりすぎちゃうよ?」

南方棲戦姫「レ級! 人間ごときにに従うなど――」

ドーン

レ級「……あーあ、やり過ぎちゃうって言ったのに」

提督「ふん、最後まで立ち塞がった事だけは褒めてやろう。さあ、今この瞬間を持って、俺の世界征服は完了した!!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434116382

霞「カス司令官……あんた、変わったわね」

提督「変わった? 違うな、俺は元々こんなだった。それを秘書官は分かっていなかっただけの事」

霞「……」

提督「それより、この俺に対してなんて呼んだ?」

霞「……! まさか、私にもっ」

提督「俺は差別などしない。人間も艦娘も深海棲艦も妖精もな。レ級、こいつを地下室にもっていけ」

レ級「おっけー!」グイッ

霞「くっ、カス司令官! いつか、破滅を見る羽目になるわよ!」

提督「破滅? ……むしろ、俺は欲しているんだ。世界を掌握した、この業を背負う事を」

扶桑「自分から、不幸を求めているんですか……」

提督「扶桑か。そうだな……征服したところで、何も変わらなかったからな」

扶桑「何も……」

青葉「司令官、伝達です! 反乱をしようと、現在あちらの地区のほうで準備が行われているとのこと!」

提督「ふん……動くぞ。第一艦隊を呼べ、つまらん反乱の目をを叩き潰す」

青葉「はっ!」

扶桑(提督は変わられました。あの日、あの子を失ってから……)

~~~~~~~~

提督「……ふわぁ、なんか変な夢を見たような……」

「ん……なんですか……?」

提督「起こしたか? 悪いな」

「いえ……昨日がちょっと激しかったので、少しだけ疲労が残っているだけです」

提督「お前だって、あんなに求めて来たくせに」

「む、そういう意地悪なこと、いうんですか」

提督「ははは、すまんすまん。疲れているなら、まだ寝てな」

「……行くんですか?」

提督「ああ、まだ、終わっていないからな」

「……」

提督「世界征服が完了するのは、世界中が俺の名の下に一つになるときだ。だから、それまで待っててくれよ、ヲ級。ん……」

ヲ級「ん……はい」

~~~~~~~~

ヲ級「っっっ!?!?!?」ガバァ

ヲ級「なな、なんて夢を! あろうことか二段落ちなんて!」

ヲ級(夢はその人が求めている事が出るともいうし……!)

ヲ級「うぅぅぅうううう~~~~~~」


レ級「どうしてヲ級は唸ってるの?」

ル級「しらない」

以上、前スレ1000の内容でした



前々々々々スレ
提督「安価でみんなと遊ぶ」
提督「安価でみんなと遊ぶ」 - SSまとめ速報
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前々々々スレ
提督「安価でもっとみんなと遊ぶ」
提督「安価でもっとみんなと遊ぶ」 - SSまとめ速報
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前々々スレ
提督「安価でさらにみんなと遊ぶ」
提督「安価でさらにみんなと遊ぶ」 - SSまとめ速報
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前々スレ
提督「安価でまだまだみんなと遊ぶ」
提督「安価でまだまだみんなと遊ぶ」 - SSまとめ速報
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前スレ
提督「安価でつづけてみんなと遊ぶ」
提督「安価でつづけてみんなと遊ぶ」 - SSまとめ速報
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※雑談自由・キャラ崩壊注意
※安価は自由にしてます(遊ぶに縛られなくてもいいや)
※人生がENDにいきそうな安価は曲解します
※毎日亀更新

―執務室―

提督「なんとなく、世界征服がしたくなった」

霞「妄言はいてないで、仕事しなさい」

提督「もう終わりましたー!」

霞「珍しいわね……でも、今日中にしなくてもいいやつなら他にもあるわよ」

提督「……遊びに行ってくるぜ! ひゃっはー!」ダッ

霞「あっ……まあ、私も変な夢見て休みたいし、今日はこの辺りにしておきましょ」


提督「さーて、今回は何をしようか」

下2

―秋月型の部屋―

提督「秋月、俺の為にご飯を作ってくれ」

秋月「……はい?」

提督「俺の為にご飯を」

秋月「二回言わなくても良いです」

提督「だったら、作ってくれるか?」

秋月「それは構いませんけど……」

提督(ここ最近の食に対する態度、出された料理でどう変わったのか判断する)

秋月「少し、待ってください。食材があるかどうか……」スタスタ

提督「突然だし、あるもので構わないぞー」

~数十分後~

秋月「どうぞ、炊き立てのご飯に、お味噌汁。それと焼き鮭です」

提督「やっぱり超質素!!」

秋月「沢庵も無かったので……すみません」

提督「いきなりだったから、こっちが悪いんだけどさ……いただきます」

秋月「で、でも、鮭の焼き方には気を付けましたよ」

提督「焼き鮭ごとき、焼き方に気をつかったところで……モグモグ……美味しい!!」

秋月「本当ですか?」

提督「鮭だけでこんなに美味しいなら……この、炊き立てのご飯と一緒に……ごくり」

秋月「……」

提督「モグモグ……うっ……美味い!!」

提督「この二つはかなりのコラボを生み出すことを知ってはいたが、鮭の美味しさが増したことにより炊き立てご飯の美味しさがさらに引き立て、そのご飯もまた焼き鮭の美味しさに拍車をかけてまさに通常出すことのできない味をうまく引き出すことに成功していてこの二つが合わさればおそらく間宮の料理にも負け劣らずな対決が可能に為りそうで――」

秋月「し、司令、ちょっとまってください!」

提督「はっ……ついこの美味しさに感動して、己を失ってしまった」

秋月「いきなりびっくりしました……」

提督「それにしても、結局普段の料理はあまり変わらないんだな」

秋月「その、色々連れて貰って、思ったんです」

提督「ふむ」

秋月「豪華な料理はたまに口にするからこそ価値があって、普段から口にしてしまえば、その価値も薄れていきそうだと」

提督「その意見は一理あるな」

秋月「だからこそ、豪華な食事を価値あるものに維持するためにも、私は普段の食生活を変えるつもりはありません」

提督「ふーん、秋月がそう決めたなら、俺は特に何も言わない。ただ……」

秋月「ただ?」

提督「……たまにでもいいからまたこれ作ってくれない?」

秋月「ええ、いいですよ」

―執務室―

提督「ご飯には卵をかけるのも乙だが、焼き鮭もまた格別だ」

提督「……でも量は少ない。食堂でもうちょっと食べて来よう……」

下2

―大和型の部屋―

大和「……!」ゴソゴソ

武蔵「何を一生懸命に探しているんだ?」

大和「ないの、その、私の……」

武蔵「なんだ、またPADがなくなったのか」

大和「だからPADじゃないから!」

武蔵「まあ、そんなことは何でもいいさ。犯人は大和でもわかっているだろうからな」

大和「……やっぱり?」

武蔵「だろうな」

―執務室―

提督「ふんふーん」

ガチャ

大和「提督!」

提督「なんだ大和、そんなパグみたいな顔をして」

大和「どういう例えですか! それより、またやりましたね!」

提督「ん?」

大和「しらばくれないでください! 前にも同じことがありましたよね」

提督「前にも?」

大和「私の……三重装甲を変えたことです!」

提督「三重装甲って、あれじゃ敵の攻撃は防げないだろう」

大和「知っているじゃないですか」

提督「しまった!」

大和「返してもらいますよ」

提督「……こ、今回盗んだなんて、俺言ってないし?」

大和「なんで盗まれたって知っているんですか。言ってませんよ」

提督「…………か、返せって言ってたからな。そうじゃないかと思ったんだ」

大和「返せと言われて盗んだと考えるのは、図星だからじゃないんですか」

提督「……大和、成長したな」

大和「むしろ提督が成長していないだけです」

提督「うぐ、大和が辛辣……」

大和「当然です」

~~~~~~~~

提督「大和は奪ったものを持って出て行った」

提督「相手に寄ったら砲撃や爆撃をされていただろうから、かなり優しく感じた」

↓2

―古鷹型の部屋―

古鷹「おめでとう、加古」

提督「おめでとー」

加古「いやー、こうなるとあたしもちょっと照れるな」

古鷹「ふふ、加古頑張っていたからね」

加古「まあ、古鷹が改二になったからね。ちょっとくらいは、やる気も出すよ」

提督「へー、いつも寝てる印象あるんだけど」

古鷹「それは失礼ですよ、提督」

提督「はは、悪い悪い」

加古「それで、何かプレゼントあるんだよね」

提督「さっそく催促か。この、いやしんぼ!」

加古「だって、そんな大きなものに布をかけているだけで隠されたら、いくらあたしでも気になるって」

古鷹「そうですよね、それなんですか?」

加古「あれ、古鷹も知らないの?」

古鷹「一緒に買いに行ったけど、お互い買っている姿は見てないから」

加古「……それ、大丈夫?」

古鷹「あはは……」

提督「大丈夫だ、絶対加古なら喜ぶ」

加古「お、言ったね? じゃあ、見せてもらおうかな」

提督「とくと見ろ! このプレゼントを!」

加古「……天蓋付きベッド?」

古鷹「こ、こんなもの買っていたんですか」

提督「まあ、比較的安かったしな。よく寝てる加古にはちょうどいいかと」

古鷹「ベッドの材質も良いものですし、加古なら喜びそうですね」

加古「あー、気持ちはありがたいんだけどさぁ。これじゃ、古鷹のスペースが無くならない?」

提督「あ」
古鷹「あ」

加古「古鷹……」

提督「しまったな……二人部屋だから、確かにスペースが無い。どうしよ……」

古鷹「少しくらい狭くても、別にかまいませんよ?」

加古「あたしが気にするって」

提督「じゃあ、シーツとかだけ剥いで、天蓋とか捨てる?」

加古「そ、それはもったいない! ……じゃあ、上の掛布団だけもらって、後は談話室にでも置いといてよ」

提督「スペースは確かにあるが、勝手に使われるぞ?」

加古「いいって。あたしは新しい布団と枕があれば十分だからさ」

―執務室―

提督「……まあ、そんなわけで天蓋ベッドが談話室におかれると」

提督「まあ、あそこで寝る奴多いし、使わないことは無いだろう」

下2

―夕雲型の部屋―

提督「夕雲を赤面させてみたいんだが」

長波「……なんでそれをあたしに相談するんだ」

提督「夕雲型の中で話しやすくかつ知ってそうだから」

長波「高評価はありがたいが、そんな事に付き合わせんな」

提督「えー、とにかく教えてよ。礼はするから」

長波「はぁー……じゃあ、後ろから抱き付けばいいんじゃね。女の子の憧れだって話だし」

提督「あすなろ抱きか。長波も結構乙女チックな事を知ってるな」

長波「うるさい」

夕雲「あら、提督。私達の部屋に用ですか?」

提督「ああ、夕雲を照れさせてやろうと思ってな。何をしたら照れるんだ?」

長波(結局直接聞くのかよ)

夕雲「あら、それでしたら……頭を撫でてくれたら、照れると思いますよ」

提督「おお、良い事を聞いた。ではさっそく。おー、よしよし」ナデナデ

夕雲「うふふ」

提督「はー、こういうの好きだわー」ナデナデ

夕雲「あら、そうなんですか?」

提督「なんとなくだけどな」ナデナデ

夕雲「あらあら」

提督「……なあ」

夕雲「どうかしました?」

提督「照れるの嘘だろ」

夕雲「どうしてそう思うんですか?」

提督「さっきから声が余裕過ぎるんだ! 『まんじゅうこわい』みたいなことしないでくれ!」

夕雲「ばれちゃいました? ふふ」

提督「まったく……」

夕雲「では、ここらで一杯お茶を用意しますね」スクッ

提督「……」

夕雲「ええと、どの辺りに置いていたかしら……」

提督「えい」ギュッ

夕雲「きゃっ! て、提督?」

提督「ふふふ、後ろから抱かれる分にはどうだ?」

夕雲「も、もう、提督ったら悪戯好きなんですから。お茶を用意するので、離してください」

提督「ちぇー、結局効かないのか」


夕雲「とつぜんあんなことをして……びっくりしたわ」

長波「……なぁ夕雲、さっきの照れてただろ」

夕雲「な、長波さん!? そ、そんなわけないでしょ?」

長波「ま、後ろから抱き付いた提督には気付かれてないと思うぞ」

夕雲「もう……」

―執務室―

提督「夕雲は難攻不落だ。あれを赤面させるのは難易度が非常に高い」

提督「だが、いつかは成功させてみせる。たぶん」

下2

―朝潮型の部屋―

朝潮「司令官、どうぞ」

提督「ありがとう。でも悪いな、一人でゆっくりしているところを」

朝潮「いえ、そんな。むしろ一人で暇でしたから、ありがたいです」

提督「そうか? そう言ってくれるなら、嬉しいな」

朝潮「司令官はまた遊びに来たんですか?」

提督「なにかパーティゲームでも、とは思ったんだが、今日は一人しかいないみたいなんでな」

朝潮「す、すみません。私しかいなくて……」

提督「いや、謝る事じゃ……うーん、じゃあ、映画でも見ようか」

朝潮「映画ですか?」

提督「ああ、これは冗談抜きの感動作で……まあ、ごちゃごちゃいう前に持ってくるよ」

~~~~~~~~

朝潮「『HACHI 約束の犬』?」

提督「洋画なんだが、元ネタは日本の忠犬ハチ公と言う話が元になっている」

朝潮「そうなんですか……」

提督「知らないとぴんと来ないか。じゃあつけるが……」

朝潮「どうかしましたか?」

提督「この映画は、マジで泣けるから、注意しろよ」

朝潮「は、はあ……」

提督「絶対だぞ! ハンカチ用意しとけよ!」

朝潮「わ、分かりました」

提督「ではスタート」

~一時間半後~

朝潮「うっ……ぐすっ」

提督「ああ、いつみても泣ける話だ……」

朝潮「最後の、なんだかこっちにも気持ちが伝わって来るようでした……」

提督「元ネタ知っていたとしても、これは最高に来ると思うぞ……」

朝潮「……」

提督「……」

朝潮「あの、すみません、ちょっと、出かけてきますね」

提督「ああ……」

ガチャ バタン <ウエエエエーン

提督「……だよなぁ。これ、大の大人でも泣くから」

―執務室―

提督「ああ、本当にいい作品だ。気が向いたら、皆にも教えてあげたい」

提督「……あれ、でもなんで俺は朝潮に見せようと思ったんだろうか。まあ、理由なんてどうでもいいんだけど」

下2

―川内型の部屋―

提督「那珂ちゃーん」

那珂「もー、楽屋の中にはアイドル以外入っちゃダメだって」

提督「楽屋じゃないし、仮に楽屋だとして同室の二人もアイドルってことになるぞ」

那珂「それもそっか」

提督「まったく。それで那珂ちゃん、ビートルズって知っているか」

那珂「ビートルズ?」

提督「ふぅ……そんなんじゃ音楽の世界で生きていけないぞ」

那珂「いやー、那珂ちゃんアイドルだから……」

提督「甘い、甘いぞ! そんな事で今のアイドル戦国時代は生き残れないぞ!」

那珂「この艦隊の戦艦に一人、知ってそうに無いのに生き残ってる子がいたような……」

提督「自分より下を探そうとしている時点でアイドル失格だぞ。というか、キャラ」

那珂「ごっめーん☆ 那珂ちゃん頑張る☆」キャピ

提督「そんなキャラだっけ。まあいいや、とにかくビートルズはかなり有名だ」

那珂「そうなの?」

提督「……まあ、一度聞いてみたらいいだろう」

那珂「持ってるの?」

提督「おう、話をするのにCDを持ってきていない訳が無いだろ」

那珂「準備ばっちりだねー」

提督「CDプレイヤーかしてくれ。あるだろ?」

那珂「はーい」

~数十分後~

提督「どうだ?」

那珂「音楽としては良いと思うけど、那珂ちゃんとしては……ねぇ」

提督「日本のアイドルが歌うのと違うのは確か」

那珂「やっぱり、那珂ちゃんは明るく楽しい曲を振り付けで歌うのが一番!」

提督「それでこそ那珂ちゃん、って感じはするな」

那珂「えへへー」

提督「少しでもアイドルになる為の手助けになれば、と思ったけど必要ないみたいだ」

那珂「そうだったの? ありがとうございまーす!」

提督「ま、頑張れ」

那珂「はい! じゃあ、那珂ちゃんは早速レッスンしてきまーす!」ダッ

提督「那珂ちゃんは目標に向けて突っ走っているところが眩しいな」

提督「……あ、ちょっと、なにさりげなくCD持って行っているんだ!? 気に入ったの!?」

―執務室―

提督「はぁ……間違えて持って行ったと言っていたが、本当だろうか……」

提督「ま、まあ、とにかく布教としては成功したか」

下2

―売店―

提督「何か売れ残っているもので驚かせるようなものは無いか?」

明石「そんな都合の良い物があるわけないですから」

提督「ですよねー」

明石「でも、在庫処分品であればこちらに数点ほど」

提督「在庫処分って……」

明石「今なら半額ですよ」

提督「しかも金取るんかい」

明石「そりゃ、唯で仕入れている訳じゃ無いですから」

提督(その前に、無駄なものを仕入れるなよ……)

―暁型の部屋・深夜―

提督「というわけで、売店で買ったタイツとともに、きちゃいました」

提督(やっぱり寝起きドッキリが一番だ。お邪魔しまーす)

「ん……」

提督「おっと、静かに……」

「……スゥ」

提督「よし。これで朝になったら……」

提督(……)

提督「電がいないっ!」

電「いるのです」

提督「なにっ!?」

電「正直、司令官さんが企むときは非常にわかりやすいのです」

提督「分かりやすいと言っても、そもそも人とあんまり関わっていなかったんだが」

電「それを踏まえて、分かりやすいのです」

提督「ああ、そう……」

電「分かったら早く立ち去るのです」

提督「くっ……ならば、せめてこれだけはやらせてもらう」

電「フライパンとお玉……? あ、まさかですか!」

提督「秘技、死者の目覚め!」カンカンカーン

雷「きゃっ!!」
暁「んー、なに~?」
響「うるさい……」

提督「寝ぼけているからか驚いていない気もするけど、これで任務達成だ! さらば!」


電「いったい何なのですか……」

雷「どうかしたの~?」

―執務室―

提督「タイツの存在価値はゼロ。いや、何に使えばいいのか分からなかっただけだけど」

提督「さて、次はどうするかな……」

下2

―売店―

提督「さーて、今回も良いのが無いかなー」

比叡「あれ、司令じゃないですか」

提督「おお、比叡が一人できてるなんて珍しいな」

比叡「どういう意味ですか?」

提督「なんでもない。それで、何か探しているのか? なんなら手伝うけど」

比叡「そうですね、また久しぶりに料理でも作ろうと思って、本を」

提督(また兵器を作るつもりか!)

比叡「司令?」

提督「……あ、あそこに遊べそうな物があるぞ! 比叡、料理なんていいから、今はとにかく遊ぼうではないか!」

比叡「あっ、司令!?」

―母港―

提督「というわけで、ビーチじゃないけどビーチバレーをするぞ」

金剛「やるデース!」

霧島「はぁ、どうして私も……」

榛名「比叡お姉さまのお料理を食べる位なら、と思えばいいのでは?」

霧島「……幾分気が楽になったわ」

提督(霧島チョロイな……)

比叡「ひえぇ……なんだか上手く気を逸らされた気もします……」

金剛「比叡、そんな暗い顔をしちゃノー! エンジョイしまショー!」

比叡「金剛お姉様……はい! 気合! 入れて! 行きます!」

提督(あっちはあっちでチョロイ)

~数十分後~

榛名「はいっ!」ポン

霧島「これで、ゲームセットです!」バァン

金剛「オゥ……霧島強すぎネー」

比叡「すみません金剛お姉様……比叡がもっと頑張っていれば!」

提督「いや、霧島何気に武闘派だし、この結果はおかしくも何ともないぞ」

霧島「司令、私は頭脳派です」

提督「え?」

霧島「どうやら、司令は一発顔面スパイクを貰いたいようですね」

提督「やめてくださいしんでしまいます」

金剛「霧島、もう一回やるデース!」

比叡「次は負けませんよ!」

提督「ほ、ほら、二人もああいっている事だしな」

霧島「……分かりました。試合中にミスするかもしれませんので、気を付けて下さい」

提督「ひえぇ……」

―執務室―

提督「五回くらい当ててきやがった……全部避けたけど」

提督「まあ、これで無差別兵器が開発されなかったことを思えば安いものかもしれないけど」

下2

―V・ヴェネト級の部屋―

提督「ローマ、この鎮守府には馴れたか?」

ローマ「はい、個々の人達には良くしてくれて、大変助かっています」

提督「うむ、それならよかった」

ローマ「用事はそれだけですか?」

提督「ああいや……」

提督(くっ、馴れてないと言ったらこの鼻眼鏡で皆との距離をぐっと縮めよう……とか言おうと思っていたのに」

ローマ「どう考えても縮まりませんから」

提督「なにっ! 心の声を読んだな!」

ローマ「口に出してましたし。というか、わざとですよね」

提督「計画がばれた今、隠すことも無い。さあ、これを付けるのだ」

ローマ「嫌ですけど」

提督「なぜだ!」

ローマ「逆に何故つけると思っていたんですか」

提督「ローマなら、あるいは……」

ローマ「心外です」

リットリオ「楽しそうじゃない、この眼鏡」

ローマ「姉さん……」

リットリオ「私はローマが着けているところを見てみたいなー」

ローマ「……面白そうだからって、同意するのは止めて」

リットリオ「てへっ」

提督「リットリオもこう言っているんだ。な?」

ローマ「な、じゃないです」

提督「いけるいける! きっと似合う!」

ローマ「これが似合う女性って世の中に居るんですか」

提督「ええい、埒が明かん! 無理矢理にでもつけさせてやるぞ!」バッ

ローマ「えっ、きゃっ!」

提督「ははは、これで付け替え完了――ぐふっ!」
ローマ「止めて下さい!」ドスッ

リットリオ(よく分からないけど、肘打ちされたんでしょうか?)

ローマ「まったく、頭を冷やしてください」スチャ テクテク

リットリオ「……大丈夫ですか?」

提督「まあ、一応……でも、リットリオが同調するなんてな。もっと過保護かと思っていたぞ」

リットリオ「ローマが、此処で楽しい思い出を作れるのなら、それに越したことは無いですから」

提督「ふーん」

―執務室―

提督「くっ、あれを掛けたローマの写真を撮る時間が無かったのが悔やまれる……」

提督「あと、リットリオは結局過保護ってことか」

下2

―渋谷駅前―

朝潮「……」ソワソワ

提督「悪い、待ったか」

朝潮「い、いえ、今来たところです!」

提督「そうか、それはよかった」

朝潮「それで、司令官。ここに来たのは……」

提督「ちょっと前に話した、忠犬ハチ公の銅像だ」

朝潮「ですよね。だから、この場所を待ち合わせ場所に選んだんですよね」

提督「ああ、ここは待ち合わせ場所としても有名だし」

朝潮「そうなんですか……」

提督「そして、目的地もここだ」

朝潮「……はい?」

提督「いやー、いつみてもこの忠犬ハチ公像はよくできてるなー」

朝潮「司令官、これを見に来るためだけにここまで?」

提督「? おう」

朝潮「……」

提督(あれ、心なしか朝潮の表情が暗く……)

朝潮「教えてくれたのはうれしいんですけど……」

提督「ああ」

朝潮「実は、もう見に来ているんです」

提督「え゛」

朝潮「すみません、見に行ける距離だったので、すぐに……」

提督(そういえば、待ち合わせにここを伝えたときも、知ってそうな感じだったか)

朝潮「本当に、すみません」

提督「あ、いや、真面目な朝潮だから、こういう可能性も頭に思い描くべきだった」

朝潮「……」

提督(しまった、ここ以外で適当な場所に行くことも考えるべきだった。そもそも、ここまできて本当に銅像以外に何も考えてないっていうのも――)

朝潮「し、司令官」

提督「っ! な、何だ?」

朝潮「だったら、その……少し、遊びませんか?」

提督「遊ぶ?」

朝潮「い、いえ! お忙しいのなら、無理にとは言いませんから」

提督「そんなことはない、大歓迎だ!」

朝潮「はいっ!」

提督(ほっ、よかった。朝潮のおかげで妙な空気にならずに済んだ)

―執務室―

提督「これを機にちゃんと遊びに出かけるときは予想外の事態にも対応できるよう計画を立てておこう」

提督「……そもそも、像を見るためだけに待ち合わせをする方がアホか」

下2

提督「秘書官、遊びに行かないか?」

霞「はぁ? カス司令官、どれだけ仕事がたまっているか分かっているわけ?」

提督「え? ……山になっているこれだよな?」

霞「ええそうよ。終わらせる気があるわけ?」

提督「全部やれば、秘書官は遊んでくれるんだよな?」

霞「……いいわよ」

提督「よし、今に見ていろ。ものの一時間で終わらせてやる」

霞(一時間で終わる量なわけないじゃない)

~二時間後・将棋クラブ~

提督「王手」

霞「残念だけど、それは罠よ。はい」

提督「なっ……一手で戦況がひっくり返っただと!」

霞「それにしても、本当に終わらせるなんてね。一時間と言ったわりにはその倍かかったけど。はい、王手」

提督「御愛嬌御愛嬌。えーと、ここは……こう」カタッ

霞「はい、王とって終わり」

提督「ええ、桂馬で取られるとか……」

霞「あんた、そんなんで司令官としてやっていけるの?」

提督「盤上の駒と艦娘は違うから……」

霞「はぁ……そもそも、どうして外に出て将棋クラブに……」

提督「いやー、あんまり行く機会ないからさ」

―ビリヤード場―

提督「……」コンッ

霞「……」

提督「……よし、これで一番から七番までは俺が落としたな。どうした? 秘書官にも苦手な物があったって事か?」

霞「そりゃ、一つや二つはあるわよ。でも……」スッ コン

提督「……! 八と九を一緒に落としただと!?」

霞「慢心は敗北を生み出すわよ」

提督「ぐわぁあああああああ! 負けたぁああああああ!」

霞「ふん、最後までボールの位置を考えないからこうなるのよ。最後油断したでしょ」

提督「おっしゃる通りです……」

霞「気を付けない。……で、どうしてビリヤードなの?」

提督「やっぱり行く機会ないからさー」

霞「はぁ……」

~~~~~~~~

提督「秘書官と遊んだ」

提督「あっちも意外とノリノリで……まあ、楽しかったかな」

下2

―A・ヒッパー級の部屋―

提督「オイゲン、良いものを試しに作ってみた」

プリンツ「いいモノ?」

提督「ふっふっふ、この巨大プリンだ!」

プリンツ「わぁっ……!」

提督「通称バケツプリン。あまりにでかいから、カラメルソースも別に作って、付けて食べれるようにした」

プリンツ「ゴクリ……」

提督「一人じゃ食べられないし、オイゲンにも分けるぞ」

プリンツ「本当!?」

提督「ああ」

プリンツ「ダンケ! じゃあ、まずは一口……」

提督「……どうだ?」

プリンツ「ん~、美味しい~」

提督「それは良かった。所詮は素人の作ったプリンだから、ちょっと心配だったんだ」

プリンツ「アトミラールさん、こういうのも作れるんですね」

提督「まあな。間宮に教えて貰ったところも多いけど」

プリンツ「それでも、凄いですよ!」

提督「……パクパク」

プリンツ「あー、食べるの早いですって! もう」

~~~~~~~~

提督「はぁー、流石にプリンだけこの量は飽きるな……」

プリンツ「そうですか? 凄く美味しかったですよ」

提督「それならよかった」

プリンツ「ところで、どうして私にくれたんですか? ビスマルク姉様達じゃなくて」

提督「……最近よく頑張っているみたいだから、ご褒美だな」

プリンツ「そうなんですか? でも、それならなおさらビスマルク姉さまの方が……」

提督「オイゲンはビスマルク程押しが強くないから、我慢している事もあるだろう。その分って言う事にしておいてくれ」

プリンツ「そんな風に見てくれてたんだ……ダンケシェーン、アトミラールさん!」

提督「他にしてほしい事があれば、なるべく力になるが」

プリンツ「……それでしたら、やっぱりビスマルク姉様たちにもなにか……プリンでも、ご馳走してあげてください」

提督「オイゲン……分かった。また時間が空いたら作っておくよ」

―執務室―

提督「プリンとプリンツをかけた、とは言えんよな。前も誤魔化したし」

提督「それにしてもバケツプリンを再びか……まあ、そんなに手間はかからないからいいか。何時か作ろう」

下2

―売店―

明石「最近売れ残って困っているんですよねー」

提督「ふーん、何がだ?」

明石「えっと……このDVDなんですけど」

提督「なるほど、よし、まかせておけ!」


―談話室―

提督「というわけで、売れそうなレビューを頼む」

吹雪「いやいやいや! 司令官が受けた話ですよね!?」

提督「俺がしたい所なんだが、明石から見るなと言われてな」

吹雪「なんですか、その怪しそうな感じ……」

提督「まあ、実際上司のレビューより、同じ同僚のレビューの方が見ている人も安心出来るだろう」

吹雪(売るだけなら、司令官が書いた方が良いと思うんですけど……)

吹雪「分かりました。それで、そのDVDはどこですか?」

提督「はいこれ。じゃあ、完成したら渡してくれ」

吹雪「はい」

ガチャ バタン

吹雪「……さて、どんな内容なんだろう。司令官にも見せられない……」ピッ ガシャン

吹雪(……)

吹雪「こ、これは……」

~数時間後・執務室~

吹雪「司令官、完成しました」

提督「おお、早かったな。それで、どんなのだった?」

吹雪「あはは……知らない方が良いと思います」

提督「逆に気になる返答なんだが」

吹雪「とりあえず、ネタバレにならない程度に内容に触れて、なおかつ良い所を書き連ねてみました」

提督「基本的だな。それだけで販促になるのか?」

吹雪「大丈夫です、間違いなく」

提督「そうか……吹雪がそこまで自信もって言うなら、本当に大丈夫なんだろう。これは明石に渡しておく、吹雪には後でお礼の品を渡すから」

吹雪「はい。失礼します」

提督「あー、でも、どんなのか気になるなー。勝手に見ちゃダメかなー、駄目だよなー」

吹雪(モザイク処理有りの司令官の盗撮映像だから、見ない方が良いです)ガチャ

バタン

提督「ご丁寧に吹雪は封筒に入れてレビュー書いてるし。相当見られたくないものだったのだろうか」

提督「いっそ自分で買うとか……はっ、もしかして、こうして買わせるのが明石の作戦か……!」

提督「……アホな事言ってないで、明石に届けておこう」

下2

―白露型の部屋―

提督「春雨の髪の色ってどうなっているんだ?」

春雨「色、ですか?」

提督「ほら、先っぽの色が少し違うだろ。染めてるのか?」

春雨「染めては無いですよ」

提督「じゃあ地毛かー。はー」サワサワ

春雨「変、ですか?」

提督「いや、綺麗だなーと思ってな」

春雨「綺麗?」

提督「だって、こんなきれいなグラデーションしているんだぞ。俺はきれいだと思うな」

春雨「……」

提督「もしかして、綺麗だって言われるの嫌だったか」

春雨「そ、そういうわけじゃないですよ。ただ、私自身あまり気にしたことが無かったので……」

提督「へー」サワサワ

春雨「……あの、あんまり触られると……」

提督「色は付けられた感じはしないし、本当に地毛だな。この色の変わりで切ったら髪が伸びる時は同じように伸びるのかそれともこの色はもう戻らないのか……」ブツブツ

春雨「し、司令官?」

提督「ん? ああ、悪い悪い。ちょっと気になって」

春雨「……どうしても気になるなら、その……少しくらいなら、切っても……」

提督「もったいないから嫌だ」

春雨「そ、そうですか?」

提督「そんな実験目的で女の髪を切るわけないだろ。特に春雨はきれいなんだから、もっと大事にしろ」

春雨「……」

提督「ほら返事。髪を切るのは俺が許さん」

春雨「は、はい!」

提督「よし。というわけで春雨」

春雨「はい?」

提督「もっと触っても良いか?」

春雨「……髪を大事にしたいので、お断りします」

春雨(これだけ言われてから触られるのは、なんだか恥ずかしい……です)

―執務室―

提督「あの展開なら快諾してくれると思ったのだが」

提督「そういえば、春雨は艦だったころに船尾が……なんて話もあったっけ」

下2

―天龍型の部屋―

天龍「これだ!」

提督「はいババ。これで俺のあがりっと」

龍田「はい天龍ちゃん罰ゲームよ~」

天龍「あー! くそっ!」

提督「負けたやつが勝った奴の言う事を聞く。天龍、貴様は龍田の言いなりだ」

天龍「ぐ……って、それは提督もだろ!」

提督「え?」

龍田「……」ニコッ

提督「……マジか」

~~~~~~~~

提督「うん……? あれ、俺は……」

龍田「あ、起きましたか~」

提督「龍田? ええと、見ていてくれたのか」

龍田「はい~。流石に、罰ゲームで毒物を食べさせて放置するのは酷いかと思いまして」

提督「毒物……ああ、比叡カレーか。何で持ってたんだよ……」

龍田「売店にありましたよ」

提督「本当にあそこは何でもあるな」

龍田「それで、お身体の方はどうですか~」

提督「まだ少し気分が悪い……」

龍田「ゆっくりしても良いんですよ」

提督「……なんか龍田が優しくて気持ち悪い」

龍田「その舌、切り落としましょうか~?」

提督「すまん。でも、なんで今日は変に優しいんだ。何時もの龍田らしくなくて、なんか変な気分に……」

龍田「聞こえませんでした~、もう一度言ってくれますか?」

提督「本日はお機嫌が良いようですが、何か良い事でもありましたか」

龍田「あら、そんな言い方じゃ無かったですよね~」

提督(聞こえてるじゃん)

龍田「冗談です。天龍ちゃんが後で面白いものを見せてくれるから、楽しみなだけですよ」

提督「へー。……何やらせたんだ」

龍田「見てのお楽しみですよ」

提督「なるほど、楽しみか……」

龍田「ふふ、そろそろゆっくり寝てください。おそらく、起きた時にはすっかり元気になってますから」

提督「う……ん…………」

―執務室―

提督「……寝過ごして天龍が何やったか見れなかった……」

提督「噂によると、アイドル服着て踊り付きで歌を歌ったとか。見てみたかった……」

下2

―暁型の部屋―

響「ふーん、夏の水着特集か……」

暁「何見てるの?」

響「ファッション雑誌だよ」

提督「へー、響がファッション雑誌とか、なんか珍しいな」

響「そうでもないよ。私だって、ファッションに興味はあるさ」

提督「ああいや、ファッションに興味が無さそうという意味じゃなくて、雑誌を買う事が珍しいといったほうだ」

雷「あら、女は誰だってファッション雑誌とか、そういう物に興味あるわよ。ね、暁」

暁「え? あ、と、当然よ!」

提督(ファッション雑誌とか見ないな、こいつ)

電「響ちゃん、何かいいものはあるのですか?」

響「うーん、私達が着れる物は無いかな」

提督「そうか? これとかどうだ」

響「うーん、私としては、もうちょっと大人しめの方が良いかな」

提督「ほうほう、なるほど」

電「……」

雷「どうしたの、電」

電「……司令官さん、また何か企んでいるのです」

雷「司令官が? あはは、電ったら、考え過ぎよ」

電(電の司令官に関する予感は当たるのです)

~数日後~

提督「――というわけで、用意してみた」

電「……」

響「まさかいつの間にか買っているとは……」

雷「でも、丁度欲しかったものね」

暁(わぁ、可愛い水着だ)

提督「喜んでくれて、こっちとしても嬉しい」

電「……そういえば、第七駆逐艦隊の子たちが水着で出撃していたのです。まさか……」

提督「え?」

響「もしかして、これも?」

提督「いや、出撃翌用で渡すわけじゃ……プライベートで来てくれたらと思って」

雷「つまり、これが司令官の好みなのね!」

電「司令官さん……」

提督「え、何その目。なんか変な誤解かけられてる!?」

響(……そう言う事に疎い司令官が、邪な目的で渡している訳じゃ無いことは、皆分かっているけどね)

―執務室―

提督「あいつら、善意の行動を悪意ある瞳で見つめてきやがる」

提督「……いや、でもよく考えれば異性から水着を貰うなんて、セクハラに感じたのかもしれんな。うん」

下2

―青葉型の部屋―

提督「何? 例の罰ゲームの映像が手に入った?」

青葉「はい! あの天龍さんが生まれてきたことを後悔するほどのネタにまみれた映像が手に入りました!」

提督「ネタにまみれたって……ていうか、それぐらい凄いものだったのか?」

青葉「ええ、まあ。私自身、これを映像として残すのはためらわれましたよ」

提督「それほどか。本当に何をされたんだ……」

青葉「それで、どうですか。買います?」

提督「……えっ、金とるの」

青葉「はい」

―天龍型の部屋―

提督「天龍、そんなわけで買ってきたぞ」

天龍「」

提督「おい天龍、寝るにはまだ早いぞ」

天龍「いやおい、絶対に見るなよ!!」

提督「え?」ウィーン

天龍「見るなって言っただろ!」

提督「だって、天龍がそんなに焦るなんて、面白いじゃないか」

天龍「面白くねえよ!」

提督「ほら、始まるぞ」

天龍「あーあーあーあー!」

提督「ほー、なるほど先ずはそう来たか」

天龍「そういえば今日の演習は楽勝だったなー! この天龍様のおかげだったからだなー!」

提督「はー、なるほど、そんなことまでさせるのか」

天龍「今日のトレーニングはまだ何が残ってたっけなー! ちょっと確認するか!」

提督「うわ、まじか……さすが龍田、天龍に対して容赦ない。これが愛か」

天龍「そろそろ出撃してえなー! 早く出撃命令こねえかなー!」

提督「天龍」

天龍「な、なんだ?」

提督「これあんまり面白くないな」

天龍「だったら見るな!」

―執務室―

提督「天龍のコスプレ集だった。正しくは、コスプレしながら歌と踊りが入っている内容だった」

提督「天龍が羞恥心振り切ったのか堂々とやっていたせいで、期待していたものと違った。残念」

下2

提督「那珂ちゃん解体!」

那珂「」

提督「もとい、解体現場を見に行くぞ」

那珂「解体ってところは変わらないんだ!?」

提督「解体するところ見たいしな」

那珂「そ、それって……」

提督「大丈夫、那珂ちゃんだって楽しめると思うぞ」

那珂(て、提督ってこんなバイオレンスだったっけ? もしかして、そのあと那珂ちゃんも……)

提督「プロの解体なんてめったに見れないんだ。行くぞ!」ガシッ

那珂「ま、待って! 那珂ちゃんは――」

―解体現場―

<ドーン ドーン ドグシャァ

提督「おおおおお! 凄い綺麗に壊れていったぞ! 見てたか那珂ちゃん!」

那珂「うん、前にも似たようなことあったよね。那珂ちゃん忘れてたよ」

提督「ん? どうした、何だか疲れたような表情をしているが」

那珂「うん、那珂ちゃん一人だけ空回りしてたんだ……」

提督「那珂ちゃんらしくないな」

那珂「だいたい提督のせいだよ!」

提督「ははは」

那珂「もう……それにしても、凄かったねー、爆破解体」

提督「日本で見られることなんてまずないからな。今回も一部の人にしか知らされてないし」

那珂「一部って……一般公開じゃないの?」

提督「ああ、なんでもこのビルは深海棲艦に付いていた人間のアジトだったとか」

那珂「え」

提督「此処に集まっているのは、深海棲艦となんらかのかかわりがある人だけだ。恨みつらみを爆破にぶつけるんだと」

那珂「那珂ちゃん、大変なことを聞いちゃったかも……」

提督「とはいえ、俺みたいに爆破解体を見たくて来た奴も多い。まあ、こんな話、もう出る事無いから忘れてていいけどな」

那珂「……見たくて来るって、どうして那珂ちゃんを連れてきたの?」

提督「どうしてって……」

那珂「爆破解体が好きそうな子は他にもいっぱいいるよ?」

提督「そりゃあみだくじで決めたからな」

那珂「あみだくじ……」

提督「那珂ちゃんは考え過ぎだ。昔の楽観的な那珂ちゃんはどこに行ったんだ」

那珂「うーん……那珂ちゃん、今日はオフだからねー」

提督「そうなのか?」

那珂「艦隊から離れた時はアイドルは休憩。だからね、提督」

提督「うん?」

那珂「何処か寄り道して帰ろー!」

提督「なるほど、分かった。いいぞ!」

―執務室―

提督「カラオケ寄って帰った。なんだかんだで那珂ちゃん普通に上手だった」

提督「その後アイスとかも食べて……うむ、普通に充実したオフだった」

下2

―暁型の部屋―

提督「お迎えに上がりました、暁お嬢様」

響「またやっているのかい」

暁「なんで私に言うの!? どう考えても司令官の方でしょ!」

電「司令官さんを使ってレディ扱いされても、虚しいだけなのです」

暁「だから私じゃないって! 司令官もなんとか言って!」

提督「では僭越ながら。電お嬢様、私めは皆様方の執事でございますから、傅く事も当然なのです」

電「」ゾワァ

雷「大変よ、電の鳥肌が凄い事に!」

提督「お傍に控えておりますので、何でも御用をお申し付けください」

電「夢……これは夢を見ているのです……」ブツブツ

響「……なんでもいいのかい?」

提督「はい、なんなりと」

響「だったら、普段通りに戻って」

提督「普段通り、とおっしゃいますと?」

響「昨日までの司令官に戻って、ということだよ」

提督「……」

雷「司令官? 何か困った事があれば私がやってあげるから、無理することは無いのよ!」

提督「二人共……それは、命令ですか?」

響「うん、命令だよ」

雷「うう、司令官に命令なんて……お、お願いよ! お願い!」

提督「わかった、そこまで言うのなら、きちんと命令を受け入れよう」

響「そうか、良かったよ」

雷「今度は私から司令官に何かしてあげるわね!」

提督「いや、その申し出はまだだ」

雷「どうして?」

提督「電と暁は何も言ってなかったから、このまま続行するだけだ。お嬢様ー! 片時も離れませんよ!」

電「」

暁「電が戻らないんだけど!? って、司令官、こっちに来るのは――!」

―執務室―

提督「結局暁をお嬢様扱いしただけだった」

提督「電が思考停止に陥ってたしな……あんな姿始めてみた」

下2

―食堂―

五月雨「きゃっ」コケッ

ガッシャーン

五月雨「あああ、すみませんすみません!」

提督「おいおい、大丈夫か」

五月雨「司令官……はい……」

提督「しかし、今日は一段と酷いな。いつもは食器をひっくり返すほどは酷くなかったのに」

五月雨「実は、今日の運勢が最悪だったんです……」

提督「運勢?」

五月雨「はい……」

提督(占いとか信じているのか。可愛い奴め)

五月雨「多分、今日はいっぱいドジしちゃいます……」

提督「そうだな……じゃあ、今日一日ドジのフォローでもしてあげようか」

五月雨「えっ」

提督「まあまあ、そう遠慮すんなって」

五月雨「別に遠慮をしているわけでは……そもそも、何も言ってませんけど……」

提督「まずは落とした食器の後かたずけだ」

五月雨「は、はい」

提督「この後も手下のようについていくからな」

五月雨「私何とも言ってないんですけどね……」

~~~~~~~~

五月雨「あっ! 報告書が!」シュー

提督「まかせろ!」バラバラ

~~~~~~~~

五月雨「あっ、バケツの水が!」ガッ

提督「まかせろ!」バシャァ

~~~~~~~~

五月雨「あっ、こんな所にバナナの皮が!」ツルッ

提督「まかせろ!」ズザー

五月雨「……どうして司令官は、同じような事をしているんですか?」

提督「五月雨以上の失態をすれば、比較的に五月雨のドジはちょっとしたミスってことになるだろ」

五月雨「意味がよく分かりません……」

提督「つまり五月雨以上の下がいるって事さ。ははは」

五月雨(よく分かりませんけど、元気づけようとしてくれるのは、分かります)

―執務室―

提督「だいたい一日で二十回ほどか。多いのか少ないのか……」

提督「というか、運が悪いとドジは関係ないんじゃないだろうか」

下2

―街中―

時津風「しれー、今日は散歩?」

提督「たまにはこうしてゆっくりするのも良いと思って」

時津風「しれーって、いっつも騒いでるか落ち着いているかのどっちかだよねー」

提督「メリハリが効いていていいだろう」

時津風「天津風とかはうっとおしいって言っていたけど」

提督「え」

時津風(まあ天津風は悪口言った後、自分で何かフォローするけどねー)

提督「さて、どうする? やっぱりデパートにでも行くか?」

時津風「んー……このまま歩こうよ」

提督「歩こうって、それだけでいいのか」

時津風「しれーとこういう時間をとれる事なんて、あんまりないからねー」

提督「時津風がそれで良いならいいが」

時津風「じゃあ、いこっか。せっかくなら、あんまり言った事無い場所に行ってみたいなー」

提督「おーけー。分かった」

~~~~~~~~

提督「へー、こんな所にケーキ屋があるのか」

時津風「こっちは駄菓子屋さんがあるよ」

提督「街中ってもっと洒落ている店ばかりかと思ったら、意外とこういう店もあるんだな」

時津風「散歩もたまにはいーね。しれー」

提督「だな。散歩と言うか……もしかしたら時津風と一緒にいるからかもな」

時津風「しれー?」

提督「……おっ、あっちにはワッフルの屋台がある」

時津風「……もしかして、食べ物ばかり見てると思ってる?」

提督「ぎくっ」

時津風「しかも甘味ばかり」

提督「……デザートって美味しいよな?」

時津風「もー、しれー!」

~~~~~~~~

提督「ひとななまるまる。夕焼けだぞ、時津風」

時津風「だねー。あー、一日中歩いたー」

提督「休憩はいれていたが、やっぱ疲れたか?」

時津風「……んーん。楽しくて、あんまり疲れた感じしなーい」

提督「そうか、それは良かった」

時津風「……あたし、この時間、割と好き」

提督「俺も。またいつか、夕焼けを見るか?」

時津風「今度は、雪風と初風と天津風、四人で来れたらいいねー」

提督「そりゃいい考えだ。……ん? 四人? 俺抜けてる?」

時津風「かもねー。それとしれー、ほっぺたにクリームついてる」

提督「なにっ」

―執務室―

提督「散歩は一緒に歩く相手によって、見えるものが違うような気もする」

提督「だからこそ、散歩ってのは面白い」

下2

―秋月の部屋―

提督「秋月、誕生日おめでとう」

秋月「え?」

提督「おいおい、今日は秋月の誕生日だろう」

秋月「誕生日ですか?」

提督「もしかして忘れてたのか。まあ、意外と本人が忘れているというのも珍しくは無い」

秋月「いえ、そういうことではなく……」

提督「もしかして、もうプレゼントか? いやいや、まだ早いだろ」

秋月「そういうことでもなく……」

提督「もしかして料理か? 大丈夫だ、今日は秋月にあわせて和食で来た。ちらしずしも手作りだぞ」

秋月「ええと……」

提督「まだ何か心配ごとがあるのか。……ああ、ケーキか」

秋月「……」

提督「ケーキは流石に自分で作るのもなんだから、間宮に作ってもらったぞ!」

秋月「はあ……」

提督「どうした?」

秋月「ええと、その、言っても良いですか?」

提督「? うむ」

秋月「誕生日、昨日ですよ」

提督「……な、何だと!?」

秋月「本気で気付いていなかったんですか」

提督「え、いや、カレンダーには……しまった、これ日曜日で折り返すタイプのやつだ……」

秋月「ええと……」

提督「……きょ、今日の所はここで勘弁してやる!」ダッ

秋月「し、司令!?」

秋月「……えっと……」

秋月「この用意した物は、どうしましょうか……」

―執務室―

提督「もったいないので、戻ってプレゼント渡して普通に祝った」

提督「いやまあ、ミスは誰にでもある」

下2

―食堂―

提督「ほら、食堂を借りてきた」

春雨「あ、ありがとうございます」

提督「いいってことよ。春雨を食べられるなら安いものだ」

春雨「春雨って……はう……」

提督「じゃあ、今日も美味しい春雨を頼むぜ!」

春雨「でも、料理なら私よりも、間宮さんや鳳翔さんの方が上手ですよ?」

提督「こと春雨に関しては、お前の方がおいしい」

春雨「はうっ……!」

提督「今日も楽しみにしてるぞ」

春雨「わ、分かりました……」

提督「……」

春雨「……あの、じっと見られると、作りづらいんですけど……」

提督「手伝おうか?」

春雨「え?」

提督「料理自体には手を付けないが、器具の用意とかいいだろ?」

春雨「えと……いいんですか?」

提督「振舞われるだけというのもなんだしな。結構頻繁に作ってもらってるし、手伝いくらいはする」

春雨「司令官……わかりました。では、お皿の準備をお願いしますね」

提督「よしきた! ……あれ」

春雨「どうかしました?」

提督「お皿を任せるって、それ遠回しにキッチンから追い出す方法だと聞いた事があるんだが」

春雨「そ、そんなつもりじゃないですよっ」

提督「じゃあ、もっと関われそうなのが良いんだが……」

春雨「と言われましても、材料の切り口一つで料理という物は大きく変わりますから……」

提督「そ、そこまで?」

春雨「やっぱり司令官には、美味しい春雨を食べてもらいたいから……」

提督「……なら、今日は他のものにするか」

春雨「良いんですか?」

提督「今日は春雨と料理を作りたい気分だからな。フライパンまで出したから……カレーでも作るか」

春雨「そこでカレーはよく分かりませんけど……分かりました。一緒に作りましょう!」

~~~~~~~

春雨「では、司令官は材料を切るのをお願いしますね」

提督「まかせろ。食べやすいように小さく切った方が良いか?」

春雨「フライパンで作るとはいえ、大きく変わりませんから、普段通りで良いですよ」

提督「分かった。でも、春雨って結構料理知っているのか? 突然別の物を作ると言った俺が言うのもなんだが」

春雨「鳳翔さんの所で練習する時に、いろいろ教えて貰ったんです」

提督「へぇ」

春雨「でも、まさか司令官と並んで料理をする日が来るとは思いませんでした……」

提督「こんなところ誰かに見られたら、茶化されたりして。夫婦みたい、とか」

春雨「……っっ!!」ガタッ

提督「わっ、冗談だからフライパンを振るな! 痛っ!」ゴン

―執務室―

提督「フライパンで殴られると意外と痛い。まあ、悪いのは悪い冗談を言った俺だが」

提督「もし逆に春雨が切る方だったらやばかったな……」

下2

―街―

響「ありがとう司令官、付き合ってくれて」

提督「響のわがままは滅多にないし、このくらいお安い御用だ」

響「滅多にないかな……?」

提督「ないな。そうだ、荷物も持つぞ」

響「でも、これは私の荷物だよ」

提督「こういう状況は男が持つってなんカの雑誌で見た」

響「そうなんだ。じゃあ、まかせようかな」

提督「まかせろ」

提督「……お、あそこにアイスクリームを売っている店があるぞ」

響「本当だ。司令官、欲しいの?」

提督「響がほしいといえば買ってくる」

響「そっか、じゃあ欲しいな」

提督「よし、すみませーん! ソフトクリーム二つ!」

響「味は何にするんだい?」

提督「俺はチョコにする」

響「じゃあ、抹茶にしようかな」

提督「なかなか渋い趣味だな」

響「たまに欲しくなる日が来るんだ」

~~~~~~~~

提督「あー、美味しい」

響「暑くなってきたし、ちょうどいいよ」

提督「……」

響「……」パク

提督「抹茶美味しいのか?」

響「うん」

提督「じゃあ、その……一口だけもらえないか?」

響「仕方のない司令官だね。少しだけだよ」

提督「ありがと。パクッ……ん、確かに美味しい」

響「それならよかった」

提督「じゃあ、お礼に……あーん」

響「! い、いや、私はいいよ」

提督「遠慮するなって。チョコも美味しいぞ」

響「……なら、一口だけ。ん……」

提督「どうだ、美味しいだろ」

響「……ハラショー」

―執務室―

提督「そういえば響と二人きりって、ほとんどないっけ」

提督「達観しているようで、いろいろと可愛いところも見られて満足だ」

↓2

―白露型の部屋―

提督「五月雨、誕生日を祝うから、何が欲しいか言ってみてくれ」

五月雨「そんな、悪いですよ!」

提督「いやいや、気にしなくていいって。五月雨には世話になっているしな」

五月雨「世話……?」

提督「ああ、そうだ」

五月雨(最近した事と言えば……)

提督「ドジで粗大ごみを破壊したり、ドジで比叡の毒物を処理したり、ドジで面倒な書類を破棄したり」

五月雨「そんなことしてませんよ!?」

提督「そうだっけ? まあ、好きな物を頼め。なんでもいいぞ」

五月雨「なんでも?」

提督「なんでも」

五月雨「……でしたら、時間を貰えますか?」

提督「時間? 俺、時をどうこうする力は持っていないんだけど」

五月雨「そういう意味じゃないですって」

提督「冗談だ。で、時間をとるのはいいが、なにをするんだ?」

五月雨「提督にお礼をしたいんです!」

提督「五月雨の誕生日なのにか?」

五月雨「今日まで、色々な事をしてくれましたから」

提督「大したことをした覚えは無いんだが……まあいいや」

五月雨「困らせちゃいましたか?」

提督「いいや、そう言ってくる可能性を考えて、事前にプレゼントを用意しておいた」

五月雨「えっ?」

提督「アクセサリーだ。受け取ってくれ」

五月雨「でも……」

提督「受け取らなきゃ、ゴミ箱に行っちゃうぞ」

五月雨「そ、それは駄目ですよ!」

提督「だったら、受け取れ」

五月雨「もう、提督は強引なんですから……」

提督「いつものことだろう。誕生日おめでとう、五月雨」

五月雨「ありがとうございます、提督!」

―執務室―

提督「その後、白露型の皆と祝った」

提督「ちなみに七月六日は五月雨の進水日。なんにせよ、おめでとう」

下2

―ペットショップ―

時津風「犬可愛いねー」

提督「だな。でも、こっちの猫も可愛いぞ」

時津風「だねー」

提督「でも飼う余裕とかないからなー」

時津風「鎮守府にいっぱいいるしね」

提督「そうそう。って、そういうことじゃないから」

時津風「あははっ」

提督「球磨とか多摩が聞いたら怒るぞ」

時津風「本人そう言われるの好きじゃないみたいだしねー。でも、実際に動物っぽいでしょー?」

提督「お前だって動物っぽいんだから、あんまりいうと代わりに飼うぞ」

時津風「いいねーそれー」

提督「ほう? なら、首輪選んでやろうか。時津風に似合っている奴を選んでやるぞ」

時津風「ほんと?」

提督「時津風は小さいから、小型犬とかに付ける小さい奴とか……」

時津風「えー、こっちの棘付きの奴とかいいんだけど」

提督「時津風は動き回るから、そういうのはなぁ……」

時津風「えー」

提督「なら、猫みたいな鈴付きの首輪にしようか。これなら迷子になってもすぐに見つけられるぞ」

時津風「なるほどねー。うん、だったらこれにしようかなー」

提督「……なあ、もしかして本気でつけるつもりか?」

時津風「でも、しれーは付けてほしいんでしょー?」

提督「いや、あれはあくまで冗談で……」

時津風「ふっふっふー……なーんて、冗談だよ、しれー!」

提督「え、冗談?」

時津風「本気で首輪なんてするわけないでしょー。もー、しれーってば」

提督「だ、だよなー。ふぅ、びっくりした……」

時津風「動物用の首輪は薬とかしてるから、そのままつけたら危ないんだよー」

提督「それもそうか。……え、もしかしてそれが理由とか」

時津風「あー! しれー、こっちの子も可愛いよー!」

提督「……まあ、いいか」

―執務室―

提督「実際ファッションならチョーカーという物があるし、首輪を付けるのはどうかと……」

提督「……でも、騒がしい奴を止めるのには使えるか」

下2

―海水浴場―

提督「海日和だし、海水浴に来てみた」

漣「何しているんですか、ご主人様。ゆっくりしていると、置いて行っちゃいますよ!」

提督「オーケー、今行く!」

曙「二人共、子供っぽいんだから」

朧「そんな事言って、曙こそ行きたそうにうずうずしているようだけど?」

曙「そ、そんなわけないわよ!」

潮「ま、まあまあ、曙ちゃん、せっかく海に来たんだし、楽しもう。ね?」

曙「潮がそう言うなら……」

朧「口ではしぶしぶなのに、浮き輪持ってさっそく準備してるし」

曙「う、うるさい!」

提督「さて、海に来たからには、きちんと準備体操をしてから入らなければならない」

漣「どうしてですか?」

提督「そりゃ、途中で足をつったり、怪我をする可能性があるだろ」

漣「何言っちゃっているんですかー。漣たちは艦娘ですよ。そんな事ないない」

提督「艦娘っても水上スキーだろ。泳ぐのとは違うぞ」

漣「ご主人様は心配性なんですから」

提督「当然の事だと思うんだが……」

曙「嫌だけど、クソ提督の言う事には一理あるわよ」

提督「おや曙、浮き輪を持ってどこに行こうというのか」

曙「私の勝手でしょ」

提督「つれないな。じゃあ、代わりに潮と遊ぼうか」

潮「わ、私ですか?」

曙「ちょ、卑怯よ!」

朧「いや、まだ卑怯な事は何もしていないと思うんだけど」

提督「まだとはなんだ、まだとは」

曙「どうせ、交換条件に遊べとか命令するんでしょ、この屑!」

提督「は? そんな事をする必要は無い。さあ行くぞ、潮」ギュッ ダッ

潮「きゃっ、て、提督っ!?」タッ

曙「あ、待ちなさい!」ダッ

朧「なるほど、潮を連れて行けば、自動的に曙もついて来るってこと」

漣「って、もしかして漣忘れられてる!? ご、ご主人様ー!」ダッ

朧「やれやれ」

―執務室―

提督「普通に泳ぐのを楽しんだ」

提督「ちなみに、漣は案の定、足をつってしまった。やはり準備体操は大事だ」

下2

―提督私室―

提督「さて」カチッ

加賀『あら、私と……五航戦の子の人形?』

瑞鶴『どうして私の人形と……一航戦の人形が』

提督「マイク良し、カメラ良し。そんなわけで、二人の人形をそれぞれの部屋においてみた」

赤城「また提督は……」

翔鶴「いつの間に部屋に入ったんですか」

提督「まあ気にするな。それで、今回こんなことをしたのは、そろそろ二人の仲を再確認しておこうと思ってだ」

赤城「最近はこれと言って敵視することは少なくなりましたね」

翔鶴「長い間、一緒の鎮守府に居ますからね」

提督「成長してるって事だろ。とにかく、人が見ていないところで、人形を置いてみたらどうするか、そう言う実験だ」

赤城「でも、加賀さんの事だから気にしないと思うのですけど」

翔鶴「瑞鶴は……どうでしょう、隠しそうな気がします」

提督「はたして、そうなるかな」

赤城「?」

加賀『赤城さんが用意したとは思えないし……そうね、捨てましょう』

赤城「……」

提督「赤城、表情が少し崩れているぞ」

赤城「予想していませんでしたから……」

提督「そして、瑞鶴の方は……」

瑞鶴『私の人形はともかく、廃品回収にでもだしましょ』

翔鶴「瑞鶴ったら……」

提督「こうなるか。まあ、前の時は二人とも爆破したから、改善にはなっているか」

赤城「……前にもやっているんですか?」

提督「おう」

赤城「すみません、用事を思い出しました」

翔鶴「わ、私も……」

提督「えー。確かに、早い終わりではあったけど……って、もういない」

提督「しょうがない、片づけるか」

加賀「大人しく、証拠を隠させると思っているんですか」

瑞鶴「流石に、二回目は引っかからないわよ」

提督「……まて、話し合おう」

加賀「提督がこのような事をしないと誓うのであれば、一発だけで許しましょう」

瑞鶴「提督さんの事だから、絶対やめないわよ。さっさと、お灸をすえた方が良いわ」

加賀「爆撃する大義名分が欲しかっただけです」

瑞鶴「なんだ、そういうこと」

提督「仲良いな! って、まて、二人同時は流石に……!」

ドーン

―執務室―

提督「久しぶりに爆撃を喰らった気がする」

提督「とりあえず、二人の仲はこれくらいでいいだろう。たまにお互い鋭い視線を送る事があるみたいだけど」

下2

―夕雲型の部屋―

提督「そう言えば早霜、その髪暑くないのか」

早霜「そうでもない……」

提督「そうなのか? なんか、見ているとどけたくなるというか……」

早霜「邪魔……?」

提督「ああいや、言い方が悪いな……いじらせろ」

早霜「司令官、直接的……ぽっ」

長波「いやいやいや、それはないだろ」

提督「なんだ、長波も居たのか。とにかく、早霜、その髪を触らせてくれ」

早霜「いいよ……」

提督「よしっ」

早霜「でも、どうするの……?」

提督「そうだな……何か髪をまとめられるものは無いか」

長波「そんなの置いてるわけないだろ」

提督「……」

長波「なんだよ」

提督「それだっ!」ガサゴソ

早霜「司令官、どうして化粧台を探っているんですか?」

長波「って、それたしか誰も使ってないところだが」

提督「いや、確かこの辺に……あったあった、リボンだ」

長波「なんでそんな場所に……って、それあたしのリボンじゃん!」

提督「ほら、早霜」スッ

早霜「ん……」

提督「こう、纏める場所は前面にして……よし、これでいいだろう」

早霜「……なんだか、変な感じ」

提督「普段片目が隠れてるからな。違和感があるんだろう」

早霜「そう……でしょうね」

長波「……なあ、前髪をまとめるなら、ヘアピンとかの方が良かったんじゃないか?」

提督「リボンの方が可愛いだろ」

長波「趣味嗜好かよ」

早霜「可愛く見える?」

提督「おお、可愛いぞ」

早霜「……ふふ」

長波(あたしだけ蚊帳の外みたいだな。しゃあない、散歩でもしてくるか……)

―執務室―

提督「結局は馴れないという事で、すぐに外した」

提督「前髪をまとめてリボンを着けるだけで、結構雰囲気が変わるものだ」

下2

―夕雲型の部屋―

提督「長波、髪をいじらせろ!」

長波「は? 嫌だけど」

提督「えっ」

長波「何で不思議そうな顔をするんだよ」

提督「夕雲と同じ髪型になれるんだぞ?」

長波「巻雲なら釣れるかもしれないけど、あたしは釣れないぞ」

提督「くっ、ガードが固いな」

長波「普通じゃないか……?」

提督「ならば、無理矢理するだけだ!」

長波「なにっ!? ちょ、やめろって……ったく……」

提督「これしきで諦めるなんて、長波も案外ちょろいじゃないか」

長波「どうせ提督は諦めないだろ。なら、意地の張り合いになる事は目に見えてるからな……」

提督「よく分かっているじゃないか。長波のそう言うところ好きだぞ」

長波「はいはい」

提督「一回髪解くな」

長波「好きにしろ」

提督「分かった。あ、三つ編みにするつもりだけど、そこのところは大丈夫だな」

長波「嫌ならすぐにほどくから気にするな」

提督「う、ううん、そう言われるとある意味やりにくい」

長波「提督もプレッシャーを感じる時があるのか」

提督「当たり前だろ。何だと思っているんだ。……よし、できた」

長波「……本当に夕雲みたいな髪型のしたのか」

提督「有言実行って言うしな」

長波「その情熱をもっと別の方向に持っていけたらなぁ」

提督「それで、どうだ」

長波「髪型の事か? 別に、ちょっと変な感じがするだけで、どうこうってことはない」

提督「そうか。俺個人の感想を言わせてもらえば……三つ編みも可愛いぞ」

長波「……それって、遠まわしに自分を褒めてるよな」

提督「ははは」

―執務室―

提督「三つ編みなんか結んだこと殆どないから、予想以上の出来に自分で驚き。素材が良かったともいう」

提督「それと、なんだかんだでいじらせてくれる長波はチョロイ」

下2

提督「ぬいぬい! にらめっこで勝負だ」

不知火「は? というか、なんですかぬいぬいって」

提督「勝った方は何でも言うことを聞くんだぞ、ぬいぬい」

不知火「やりません。それと、ぬいぬいはやめてください」

提督「まあまあ、ほらいくぞー」

不知火「だから、やりませんって」

提督「にらめっこしましょう、あっぷっぷー」

不知火「……」

提督「……」

不知火「……」

提督「……ぷっ」

不知火「なにもしていないんですけど」

提督「いや、なんかずっと真顔の不知火を見てたら、なんかおかしくて……」

不知火「失礼なことを言いますね」

提督「さあ、次行くぞ」

不知火「まだするんですか?」

提督「三回勝負だからな。さあて、どんな手でいこうか」

不知火(このパターンは、何回やっても続きそうなパターンですね……)

提督「よし、決めた」

不知火「少し待ってください、本当に次で終わりですよね」

提督「何言っているんだ、俺が勝って続く可能性もあるだろう」

不知火「司令官の顔に興味ない以上、そんなことは万に一つもないですけど」

提督「え、ひどくない」

不知火「仕方ないですね。この勝負で本当に終わりというのなら、素直に相手をしてあげましょう」

提督「ほう、不知火の本気を見れるというのか」

不知火「戯言はいいですから、早く始めましょう」

提督(なんかいつも異様に辛辣)

提督「じゃあ、にらめっこしましょう、あっぷ……ぶふぅ!」

不知火「早すぎませんか」

提督「すまん、普段無表情の不知火が顔にてお当てただけで面白かったもんで……ぷふっ」

不知火「なんだか、馬鹿にされているようで頭にきます」

提督「ま、まあまあ。一応勝ったんだし、なにか頼みたいことはあるか?」

不知火「……真面目に仕事、ですかね」

提督「!」

―執務室―

提督「ふう、疲れた……もう何でもするとか言わない……」

提督「……と思ったけど、リターンもでかいよな。やっぱりやめられないな。どちらかといえば、不知火ににらめっこで勝負を仕掛けたのが間違いだった」

下2

―デパート―

白露「提督と買い物って初めて~!」

提督「おいおい、初めてってことはないだろ」

村雨「初めてよ?」

提督「……え?」

白露「提督とプライベートで話すのって、初めてなんだよ?」

提督「……マジで?」

村雨「提督ったら、村雨たちとはあまり話をしないんだから」

提督「白露型の部屋にはお邪魔することがあるというのに……むむ、悪い事をしたな」

白露「気にしなくて良いよ! 今日を楽しめばいいんだから!」

提督「まあ、そう言う事なら楽しまなくちゃな」

白露「そうだよ! ほら提督、あっちの方に面白い人形が売ってるよ!」

提督「おお、まるで比叡カレーを食べた妖精さんみたいな顔してるな」

白露「こっちにはその比叡さんのポスター!」

提督「おお、超レアの予感!」

村雨「二人共、はしゃいじゃって」

提督「なーに大人ぶってるんだ」

白露「そうだよ。村雨だって一緒に買い物来たかったでしょ?」

村雨「ふふ、確かにそうだけど」

白露「だったら、もっとはじけなきゃ! 提督も居るんだから」

村雨「はじけ、と言うのは意味が分からないけど、確かにそうね」

提督「那珂ちゃんのCDが100円で売られてる……」

村雨「じゃあ、そろそろ行かない?」

提督「え? 目的地はこの小物が売っているところじゃないのか?」

白露「もー、女の子が買い物に行くって言ったら、服に決まってるよ!」

村雨「いえ、決まってはいないけど……そうだ、提督も選んでくれる?」

提督「服か……なあ」

村雨「なに?」

提督「付いて行っても、期待するようなことは何もないと思うぞ」

村雨「私達は提督に服を見てほしいだけよ?」

提督「ん、まあ、それだけなら」

~~~~~~~~

提督「こっちの色の方が白露に合いそうだな。こっちは村雨が好きな色で……」

白露「女性用の服の前で生き生きしている人って、危ない人だよね!」

村雨「たしかに、少し思うかも……」

提督「おお、これもなかなか……」

白露「長くなりそうだし、私達は私達で見てまわろうか!」

村雨「そうね、そうしましょ」

―執務室―

提督「気が付けば、白い目で見る店員と変な人を見る目の客たち」

提督「普通に女性用の服を見ていただけなのに、まったく」

下2

時雨「へえ、二人と買い物に行ったんだ」

提督「ああ。荷物持ちをすることになったけど、楽しかったな」

時雨「……僕は?」

提督「ん?」

時雨「あ、いや、なんでもないよ」

提督「……そういえば、デパートのペットショップに行くのを忘れてたっけ。犬とかみてみたいなー。誰か一緒に来てくれる人とか居ないかなー」チラッ

時雨「……ふふ、しょうがないね。僕がついて行ってあげるよ」

提督「そうか、ありがとな」

時雨「こちらこそ」

―ペットショップ―

提督「デパートの中にペットショップって、珍しくないよな」

時雨「最近は店舗持っている方が少ないんじゃないかな」

提督「確かに。おっ、あっちの犬可愛いぞ」

時雨「マルチーズだね。小柄でかわいいよ」

提督「こっちの犬も人形みたいでキュートだ」

時雨「トイプードルだね。確かに、人形みたいだ」

提督「でもやっぱり柴犬かな。ちょっと馬鹿っぽい所が良い」

時雨「柴犬は馬鹿ってわけじゃないんだけどね」

提督「……というか、時雨よく犬種を答えられるな」

時雨「そこに書いてあるじゃないか」

提督「あ、本当だ」

時雨「それにしても……」

提督「どうした、もしかして、飼いたくなってきたか?」

時雨「ふふ、その通りだよ。実際に飼うとなれば難しいんだけどね」

提督「鎮守府にいるうちはなぁ」

時雨「今は見ているだけでも満足だよ」

提督「その口ぶりは、いつか買うみたいな?」

時雨「平和になったら、その時考えるよ」

提督「そうだな。俺もその時になったら、考えてみようかな」

時雨「提督も同じ気持ちなんだ」

提督「でも、今のままなら……」

時雨「鎮守府にはペットがいるから大丈夫、って?」

提督「よ、よく分かったな」

時雨「提督ならそう言いそうだと思っただけだよ」

―執務室―

提督「時雨はエスパーか何かか……」

提督「ちなみに、猫の方もあったけど……あっちには見知った顔が居たのでよしておいた」

下2

―翔鶴型の部屋―

提督「瑞鶴、南の島にバカンスに行こうぜ」

瑞鶴「はあ? 何言っているの、提督さん」

提督「バカンスだよ、バカンス。南の島に」

瑞鶴「それ、本当にバカンス?」

提督「……休暇ではないが、島の視察と言う名目でバカンスが出来るぞ?」

瑞鶴「はあ、そういうことね」

提督「じゃあ、さっそく行こうか」

瑞鶴「今から!?」

提督「ふっ、こうして二人で誰も居ない場所にいくの、楽しみだな」

瑞鶴(提督さん、テンションあがってるからか、変な事言ってる……)

――の前

翔鶴「……こ、これは……」

―島―

提督「ほら、スマッシュ!」ドシュン

瑞鶴「きゃっ! もう、提督さん本気出し過ぎ!」

提督「すまんすまん」

瑞鶴「って、じゃなくて、視察は!?」

提督「だから、艦載機飛ばしてるだろ。そんな大きくない島だし、十分だと思うのだが」

瑞鶴「そう言う問題じゃないわよね!」

提督「秘書官みたいなことを言うな……」

瑞鶴「むしろ、提督さんは遊ぶことしか頭に無いの?」

提督「いやー、ははは」


翔鶴「何て言っているのかよく分かりませんが、何やら楽しそうですね……」

翔鶴(部屋の前では、二人きりで楽しみ、みたいなことが聞こえたんですけど)

翔鶴「……もうすこし見守りましょうか」

~~~~~~~~

瑞鶴「暇」

提督「バカンスに来て暇ってことは無いだろう」

瑞鶴「だから、視察でしょ」

提督「やれやれ」

瑞鶴「せめて、翔鶴姉が居たらなー」

ガサッ

提督「瑞鶴」

瑞鶴「分かってるわよ」

提督「海の真ん中にある島だ。深海棲艦かもしれん」

瑞鶴「辺りは付けた、外さない」

ガササッ

瑞鶴「……逃げた?」

提督「みたいだな。艦載機全機発艦はやっぱりミスだったな」

瑞鶴「提督さんが無人島だから全機飛ばしても良いって言ったんでしょ!?」


翔鶴(み、見つかるところでした……)ドキドキ

―執務室―

提督「敵の危険性があるなら、のんきにバカンスしている場合じゃ無い。予定より早く帰る羽目になってしまった」

提督「まったく、せっかく合法的に休めるチャンスかと思ったのに……次あったときはおしおきだ」

下2

―提督私室―

夕立「提督さんに頭を撫でられると気持ちいいって聞いたっぽい!」

提督「なんだそれ」

夕立「色んな子から聞いてるっぽい」

提督「色んな子って……好意的に受け止められた相手は少ないと思うんだけど」

夕立「皆素直じゃないっぽい!」

提督「そうなんかね。まあ、夕立の方から撫でてって言うなら、こっちとしてもやぶさかではないけど」ナデナデ

夕立「あははっ、提督さん、そこは頭じゃなくて首だって」

提督「おお、犬っぽくてついつい」

夕立「もー、夕立は犬じゃないっぽい」

提督「そこでぽいをつけるのは、いかがなものかと」

夕立「とにかく提督さん、頭を撫でて!」

提督「しょうがないな……よしよし」ナデナデ

夕立「わふ……」

提督「気持ちよさそうに目を細めおって。愛い奴だな」ナデナデ

提督(……そういえば、この耳っぽいくせ毛どうなっているんだろうか)

夕立「……提督さん?」

提督「夕立、この髪梳いても良いか?」

夕立「提督さんがしたいのなら、お好きにどーぞ」

提督「ホントか。よーし……」サワッ

夕立「ん……ちょっとくすぐったいっぽい!」

提督「触り馴れられていない場所だからか。……しかし、このくせ毛は……ちょっと待ってて」スタスタ

夕立「……?」

~~~~~~~~

提督「またせたな」

夕立「何を持っているの?」

提督「水気で髪をうるおわせて、ヘアアイロンで乾かす。これで跳ねた髪を直そうかと」

夕立「それで直るなら、お風呂上りに癖がは出てないっぽい」

提督「言われてみれば、夕立は常にその髪だな……なら、櫛で落ち着かせてみようか」

夕立「他の皆にやって貰った事あるけど、あんまり意味ないっぽい」

提督「そうなのか? なら、蒸しタオルで刎ねた髪を直してみようか」

夕立「……提督さんはそれで直ると思う?」

提督「いや、悪いがその刎ね方はもはや直るものじゃないと思う」

夕立「提督さんは正直っぽい」

提督「でもまあ、一応やるだけのことはやってみよう。そうでなくても、蒸しタオルを頭に乗せるのって気持ちいいしな」

夕立「そうなの?」

提督「やってみればわかる。ほれ」ファサ

夕立「ぁ…………うん、提督さんの言ったことも、理解できるっぽい」

―執務室―

提督「結局直らなかった。いやまあ、あれが夕立の髪型なんだろう」

提督「というか、あれを直すなんてとんでもない。十分似合ってるしな」

下2

―古鷹型の部屋―

古鷹「台風が来るみたいですから、外出しないようにしてくださいね」

加古「わざわざ外に出るわけないだろー。まったく、古鷹はあたしのことをなんだと思ってるのさ」

古鷹「その言われ方は腑に落ちないけど……とりあえず、私が言ったのは提督に向けてだよ」

提督「む、俺が台風に日に外に出るとでも?」

古鷹「きちんと鎮守府内で静かにしていられるんですか?」

提督「……台風、それは子供心をくすぐられる自然現象」

古鷹「提督……」

加古「無駄だよ古鷹。提督は人に言われたくらいじゃ信念を曲げない」

古鷹「それはそうだけど……」

提督「よく分かっているじゃないか」

古鷹「はぁ……」

~~~~~~~~

提督「というわけで、外に出た」ビュービューブワァー

古鷹「本当に外に出ましたね……」

加古「うわっ、風が強いね」

古鷹「提督、こんな強風の中、何をするつもりなんですか?」

提督「TMRごっこだ」

古鷹「なんですかそれ?」

提督「見ていればわかる」プチプチ バサッ

古鷹「きゃっ! て、提督、いきなり前を開けないでください!」

加古「提督ー? 古鷹は純情なんだから、その辺は気を付けなきゃ」

提督「すまん。でも、こっちのほうが服がなびいてそれっぽいからさ」

古鷹「それっぽい?」

提督「では、ゴホン。チャチャチャチャラチャラ…こーごーえそーな――」

加古「……あ、それ聞いた事ある」

提督「お、本当か」

加古「たしか、あーいを どーこーいーうの♪ ~~」

提督「加古知ってるじゃないか。では……」

提督・加古「「あたーためーあーおう♪」」

古鷹(何なんでしょう、これ。それに……)

古鷹「風邪ひきますよ? しかも、風の吹いている方向に立つなんて」

提督「大丈夫だ!」

古鷹「その根拠はどこから来るんですか……二人共風邪ひいても知りませんからね」

加古「古鷹は心配性だな~」

古鷹「加古も乗り気じゃ無かったのに。もう」

―執務室―

提督「風邪なんかひかなかった……」

提督「のは俺だけで、加古だけはしっかりと引いていた。何故だ」

下2

提督「那珂ちゃんよ、この前見たマグロの解体ショーをするぞ」

那珂「なーにー提督ー。まさかまたやってるの?」

提督「だから、やるんだ」

那珂「そうなんだ、やるんだ……え?」

提督「そんなわけで、那珂ちゃんには助手をやってもらおうかと」

那珂「ちょっと待って! 誰がやるの?」

提督「俺だ」

那珂「提督出来るの?」

提督「ネットで勉強した」

那珂(これは流石の那珂ちゃんでも不安になっちゃうよ……)

―食堂―

提督「レディースアーンド、ジェントルメーン! さあさあ、ご覧に入れられますのは、今日の朝にゴーヤに頼んで取ってきてもらった大きなマグロでございます!」

提督「……って、人居なくない?」

那珂「え、いるよね? ほら」

妖精「たのしみです」

友永隊「解体ですか。なかなかに興味深いですな」

江草隊「ふふふ~、こういうショーもたまにはいいですね~」

提督「いるけど妖精さんじゃん」

那珂「提督、お客さんはお客さん、ファンはファンなんだよ!」

提督「そうだな」

那珂「貴賤は問わず、それがアイドルなんだよ!」

提督「お、おう」

那珂「じゃあ、文句言わずに早くショーを始めてよね!」

提督(なんか那珂ちゃん怖い。あれかな、舞台の上に立つからにはってやつかな)

~~~~~~~~

提督「解体した」

那珂「え、いつの間に……?」

提督「さて、出来上がった鮪の刺身だが……残念ながら初心者がやったものだ。皮と骨がたくさん入ってる」

那珂「皮と骨取りを綺麗にするのはプロの技だもんね」

妖精「でもすごかったです」

友永隊「なかなかスマートでしたぞ」

江草隊「楽しかったです~」

提督「……」

那珂「どうしたの?」

提督「いや……こう褒められるとなかなか嬉しいものだと思って」

―執務室―

提督「皮取りと骨取りは間宮がやってくれた。ついでに、身が残っていたらしく鳳翔は残骸を綺麗にしてくれていた」

提督「エンターテイメントでは那珂から厳しい視線を貰ったし。いや、素人が簡単に出来ることじゃないね」

下2

―朝潮型の部屋―

提督「朝潮、チェスをしよう」

朝潮「チェスですか? すみません、ルール知らないんです……」

提督「そうなのか? まあ、大丈夫だ。しっかりと教えてやるからな」

朝潮「でも、初心者とすることになるから、司令官にご迷惑をおかけしそうで……」

提督「ははは、そう卑下するな。心配しなくても、実力は同じだ」

朝潮「同じ?」

提督「なぜなら、俺もルールブックを見て来ただけだからな」

朝潮「そうだったんですか……では、朝潮、司令官のチェスにお付き合いさせて頂きます」

~~~~~~~~

提督「将棋と同じように追い詰められたら負けか」コト

朝潮「みたいですね。駒の動きは将棋より分かりやすい感じですね」コト

提督「で、追い詰めた時はチェック……と」コト

朝潮「は、早いですね。ええと、ではこうしましょうか」コト

提督「伊達に司令官やっている訳じゃ無いさ。では、ここをこう……」コト

朝潮「では、こうして……」コト

提督「チェック」コト

朝潮「司令官、流石にお強いです……これは、どうしようもないですね……」

提督「はっはっは、朝潮も頑張った方だよ」

霞「……これ、ポーンが進行を妨げているわよ。素直にサクリファイスした方が良いわね」

提督「なっ、秘書官!」

朝潮「たしかに……でも、蛇に睨まれているような状況で、動かせないの」

霞「初心者にツークツワンクとは、大人気ないわね」

提督「い、いいだろ別に」

霞「はあ……一つだけ助言。カス司令官の陣形には穴があるから、それを突けば勝手に瓦解するわよ」

朝潮「穴……?」

提督「ふん、このボーンの堅い守りはおいそれと破られるものか!」

朝潮「……」

提督(やばい、何か長考してる。いや、大丈夫だ。昨日wikiを見て一生懸命覚えたこの陣形が崩されるはずが無い!)

朝潮「……あっ、ここですね!」コト

提督「」

―執務室―

提督「ボーンチェーンが緩かった。敗因はそこだ」

提督「そ、そもそも、チェスは初めてだし。しょうがないよな」

下2

―天龍型の部屋―

提督「天龍、今度の遠征は悪いが――」

天龍「え?」E:白ビキニ

提督「……もう夏だもんな。熱いからその気持ちは分かる」

天龍「いや、待て、何か勘違いしているだろう」

提督「隠さなくていい。薄着になりたい日くらいあるだろう」

天龍「いや、だからな……」

提督「悪かったな。もうノックなしで入ったりしないから……」バタン

天龍「ま、待てって言ってるだろ!」

~~~~~~~~

提督「ふーん、罰ゲームね」

天龍「ああ。だから、決してオレの趣味じゃない。分かったな」

提督「分かった。そう言う事にしておく」

天龍「分かってないだろ!」

提督「まあ、でも……」

天龍「な、なんだよ、そんなに見てきて」

提督「……似合ってるんじゃないか。天龍はプロポーション良いしな」

天龍「なっ……ば、馬鹿言ってんじゃねーよ!」

提督「ははは、冗談だ」

天龍「な、なんだ、冗談かよ……」

龍田「提督~? 冗談と言えば許されると思っていませんか~?」

提督「ぎくっ! た、龍田?」

龍田「うふふ、天龍ちゃんがお世話になったみたいね~」

提督「い、いやそういう訳じゃ無いが……見ちゃまずかった?」

天龍「おい、何で龍田に聞くんだ」

龍田「そうねぇ、その眼を抉り落とさなければならなくちゃいけなくなったわ~」

天龍「龍田も何言ってんだ!?」

提督「ひっ! た、助けてくれー!!」ダッ

バタン

龍田「あら~、冗談だったのに」

天龍「龍田……お前恐ろしいな……」

龍田「だって、天龍ちゃんには今日一日寝るまでずっとそれ着てもらう予定だもの~。目についちゃうわ~」

天龍「え」

―執務室―

提督「龍田怖い。あいつ天龍のことになると、本当になんでもやるからな……」

提督「天龍はどこぞのモデルみたいで、十分見る価値あったとは思うけど」

下2

―飛鷹型―

飛鷹「今年は暑くなりそうね」

隼鷹「まじか。酒も進まなくなってくるな……」

飛鷹「飲むんじゃない」

隼鷹「待てよ、逆に波止場で涼みながら酒も行けるんじゃないか」

飛鷹「飲むのは止めないのね……」

提督「クーラー付ければいいんじゃないか?」

飛鷹「夏の風刺を楽しむのよ。器具に頼るのはあんまり良くないわよ」

提督「なんかおばあちゃんみたいなこと言ってる……」

飛鷹「だれがおばあちゃんですって!?」

隼鷹「まあまあ飛鷹。そんなムキになるなって」

提督「だが、夏の風刺を楽しむというのには同感できる」

飛鷹「急に同意するなんて……あやしいわね」

提督「疑うなって。俺とてこの四季をつかさどる日本生まれの男子。季節を楽しむ邪魔はしない。むしろ手伝おうかと思っているくらいだ」

飛鷹「……」

隼鷹「提督、凄い警戒されてるぞ」

提督「とりあえず、その一環としてクールビスを提唱したいと思う」

飛鷹「こっちの反応は無視なのね。……って、クールビス?」

提督「たとえば……飛鷹や隼鷹はその服装だと暑いだろ」

飛鷹「……まあ」

隼鷹「たしかに暑いよなー。それで、クールビスってどうすんだ?」

提督「手始めにその和服をノースリーブと短パンに改造するか」

飛鷹「ちょっとまって。クールビスってそう言う事じゃないと思うの」

提督「え?」

隼鷹「まあ、服を改造するのは違うよなぁ」

飛鷹「せめてまともな案を頂戴」

提督「えー、まともなつもりだったのに……」

飛鷹(あれで……?)

提督「じゃあもう上着の前を開けたらいいじゃん。それだけで涼しくなるぞ」

飛鷹「なんでちょっと拗ね気味なのよ」

隼鷹「でもそれいただき!」

飛鷹「え?」

―執務室―

提督「その後軽いクールビスを行う二人の姿があったとか」

提督「でも、上着の前開けるだけって大したクールビスになってないような気もする」

下2

―鳳翔の店―

提督「あ、お団子一つ追加で」

龍鳳「はい、かしこまりました」

提督「それで、那珂ちゃん悩み事だって?」

那珂「うん……」

提督「うーん、最近元気な那珂ちゃん見ていないから、調子が狂うな」

那珂「……最近ね、アイドル業が上手く行って無いの」

提督「そうなのか? CDとか出して、順風満帆かと思っていたが」

那珂「うん、そうなんだけど……」

提督「あ、分かった。キャラが定まってないからだな。この前の時も、テンションが少し落ち着いていたし」

那珂「それ提督のせいなんだけどね」

提督「え?」

龍鳳「はい、追加のお団子です」

提督「……まあ、とりあえず、追加が来たから団子食え。美味いぞ」

那珂「うう……」モグモグ

提督「でも、確かに最近はずっと鎮守府に居るよな」

那珂「うっ……提督って、はっきり言うよね。那珂ちゃん的にはそっちの方が助かるけどー」

提督「しかし上手くいって無いのか……なら、イメチェンとかどうだ」

那珂「イメチェン?」

提督「キャラは兎も角、服装や髪形を変えるだけで一気に変化が起きたように見えるからな」

那珂「あ、それいいね!」

提督「ふふん、だろう」

那珂「でも、どんなのがいいんだろう」

提督「そうだな……髪型は元を残す感じで……頭の団子を増やそう!」

那珂「え?」

提督「ポニテとツインテだと印象が大きく変わるだろ。つまりそれだ」

那珂「その二つは全然違うと思いまーす」

提督「細かい事はいいんだよ! では、さっそく試させてもらおう!」バッ

那珂「て、提督!?」

提督「手始めにその団子の数を二倍にしてやろう!」

那珂「あ、アイドルの髪は命なんだから、勝手に触らないでー!」

~~~~~~~~

提督「……団子は増やしても変化少ないな」

那珂「提督が言ったんでしょ!」

―執務室―

提督「那珂ちゃんはとりあえずキャラを固定させることから始めた方が……」

提督「……そもそも、今の時代キャピキャピ系は流行らないのではないのだろうか」

下2

―母港―

提督「……」

雲龍「何しているんですか」

提督「日向ぼっこだよ。ほら、今日は天気が良いだろ」

雲龍「そうですね。風も出てますし……」

提督「これから暑くなると日向ぼっこも出来ないしな。今の内ってわけだ」

雲龍「そうですか」

提督「……」

雲龍「……」

提督「……何?」

雲龍「お邪魔しても良いですか」

~~~~~~~~

天城「……姉様?」

雲龍「うん……? 天城?」

提督「よー天城。天城も日向ぼっこするか?」

天城「日向ぼっこ? どうして姉様も一緒に?」

雲龍「……なんでだっけ?」

提督「雲龍から混ざって来たんだろ。……天城も日向ぼっこするか?」

天城「ですが……」

提督「遠慮するな。日向ぼっこが出来るチャンスは今くらいしかないぞー」

天城「で、でしたら、お邪魔しますね」

~~~~~~~~

葛城「何やっているのよ」

提督「今度は葛城かー?」

葛城「部屋に居ても何時までも誰も戻って来ないし……どこに行っているのかと思えば、こんなところで寝ていたのね」

提督「寝ているんじゃない。日向ぼっこをしているんだ」

葛城「何が違うのよ」

雲龍「太陽を身に浴びるところ……?」

天城「普通に横になるより気持ちよくなれるところ……?」

提督「体にいいような気がするところ……?」

葛城「姉さんたち含めて疑問形じゃない!」

提督「日向ぼっこをしていると、こう……思考が回らなくなるからなー」

葛城「凄いダメ人間っぽいんだけど」

雲龍「ダメ人間っぽい?」

天城「そう、かもしれませんね……」

提督「葛城ー、お前のせいで二人が落ち込んだぞー。これは責任もって一緒に日向ぼっこしなきゃなー」

葛城「なんでそうなるのよ!」

雲龍「嫌……?」

葛城「う……わ、分かったわよ……」

提督(ちょろい)

―執務室―

提督「日が暮れてきた辺りで、眼が冴えてきたので解散した」

提督「なんだかんだで、みんなのんびりできたようだ。よかったよかった……俺が執務をサボっていたことを秘書官に怒られた事以外は」

下2

卯月「弥生を笑わせるぴょん!」

提督「いいね!」

卯月「だから、司令官からなにか案は無いぴょん?」

提督「案か……なら、強制的に笑わせるのはどうだ?」

卯月「どういう意味?」

提督「変顔をしても笑わない奴は笑わない。なら、強制的に笑わせるしかないだろう」

卯月「……! なるほど、司令官もなかなかあくどいぴょん」

提督「ふふふ、だろう」

―睦月型の部屋―

卯月「やよぴょーん、遊ぶぴょん!」

弥生「今本を読んでいるんだけど……」

卯月「そんなの後でも出来るぴょん!」

弥生「そうだけど……」

卯月「いいから卯月と付き合うぴょんー。さもないと……」ガシッ

弥生「っ……? 卯月?」

卯月「ふっふっふー。さあ司令官、やるぴょん!」

提督「待ってましたー!」

弥生「えっ、司令官……」

提督「くらえ、くすぐり攻撃!」コチョコチョ

弥生「っ! ぁっ……!?」

提督「ほれほれ、食らいやがれー!」コチョコチョ

弥生「はっ……! くっ……」

提督「ほらほら、我慢は体に良くないぜ?」

弥生「うっ……んっく……」

弥生「んんっ……うぁ……」

弥生「しれ……やめ……!」

提督「……」

卯月「どうしてやめるぴょん?」

提督「いや、なんか……いかがわしい事をしているような気がして」

卯月「ぷっぷくぷぅ~司令官はヘタレぴょん!」

弥生「というか二人共……何でこんなことを……」

提督「弥生を笑わせたかった」

弥生「……方法は、考えてください……」

提督「は、はい」

―執務室―

提督「最後のセリフ目が笑っていなかった」

提督「くすぐりは耐性ある奴も居るから、なかなかウィークポイントだけを責めるのは難しい」

下2

―談話室―

提督「暇だから誰かと出かけようかなー……お、春雨じゃないか」

春雨「し、司令官?」

提督「何か読んでいるみたいだけど、何を見ているんだ?」

春雨「えと、ファッション雑誌です。夏用に何かかわいい服がほしいと思いまして……」

提督「ほうほう、服ね……買いに行くか?」

春雨「はい、そのつもりですよ」

提督「よしわかった。昼食べたら入り口で集合な」

春雨「え? は、はい」

提督「約束だからな。さーて、外に出る準備するか」

春雨「えっと……あれ?」

―デパート―

提督「これ涼しそうでいいな。春雨にも似合っていそうだし、いいんじゃないか?」

春雨「少し高いですね……」

提督「女性のおしゃれは金がかかって当然だ。なんなら、買ってあげてもいいぞ」

春雨「そ、そこまではいいですからっ」

提督「そうか? 遠慮ならしなくてもいいが」

春雨「だ、大丈夫ですっ。まだまだいろいろな服を見たいですし……」

提督「なるほど、確かに即決するのはよくないな。時間もあるし、もっとゆっくり見ようか」

春雨「はい…………」

提督「どうした?」

春雨「その……えっと、どうして司令官もついてきてくれているんですか……?」

提督「い、嫌だったのか?」

春雨「そ、そういう意味じゃありませんから! ただ、忙しい中悪いんじゃないかと……」

提督「おいおい。こうして遊びに出ているのに忙しいわけないだろ」

春雨「そうなんですか?」

提督「……」

春雨「……」

提督「……おっ、可愛いのがあそこにあるぞ! 涼しそうなワンピースだし、いいんじゃないか!」

春雨「うぅ……大丈夫ならいいんですけど……あっ、司令官、それお値段が……」

提督「ん? ……げっ、余裕で五ケタとかやべえ……」

春雨「私はそんないいのじゃなくて、こっちの安い方でいいですよ」

提督「……いや、これを買ってやろう」

春雨「えっ!?」

提督「一瞬目が輝いたの、見逃していないからな。もう決めた、これをプレゼントしてやる」

春雨「い、いえっ! 本当に悪いですって!」

提督「もう決めたから! 絶対撤回しない! どうしても嫌なら、別の子にあげるし」

春雨「もう、司令官は強引なんですから……でも、ありがとうございます」

―執務室―

提督「デパートに五ケタ越えの夏服があるとは、ちょっと驚きもあった」

提督「もしくは、女性の服はこれが当たり前なんだろうか……」

下2

提督「うーむ……そういえば、執務室の模様替えを行っていないな……」

高波「し、失礼します」

提督「高波か。遠征の報告書か?」

高波「はい、そうかも、です」

提督「そうか。時に高波よ」

高波「?」

提督「執務室に何が足りないと思う?」

高波「執務室に足りないもの、ですか?」

提督「ああ。なんとなく思いついたものでもいいぞ」

高波「ええと……台所が足りないかも、です」

提督「台所……」

高波「へ、変な事を言ったかも、です……」

提督「いや、確かにそれは一理ある。しかし、台所は部屋ごと改装しなきゃいけないからな。もっと軽いものは無いだろうか」

高波「それなら、模型とか掛け軸を変えるといいかも、です」

提督「おお、良いな高波。お前を頼ってよかった」

高波「い、いえ、普通の事かも、ですよ」

提督「じゃあ、掛け軸は俺の直筆サインで、模型はこの前通信販売でかった奴を飾るか」

高波「え……」

提督「よーし、俄然張り切って来たぞ!」

高波「いえ、その……」

提督「ん? どうした」

高波「……いえ、なんでもない、かもです……」

高波(それは提督のセンスが問われそうな気がするかも、なんですけど)

~次の日~

高波「……」

提督「おお高波、完成したぞ」

高波(……あれ、サインが雰囲気に沿っているかも……それに、模型もかなりいい出来かも……)

提督「いや、本当に高波には感謝だな!」

高波「し、失礼しました」

バタン

提督「凄い意外そうな顔していたが……何だったんだろうか」

提督「まあ、サインも一日かけたし、模型もかなり根が張るものだしな。職人妖精さんには不満げな顔されたけど」

↓2

―縁日―

提督「少々遠出になってしまったが、ここなら祭りをやっているぞ」

熊野「これが縁日ですの……」

鈴谷「別に提督も来なくてもよかったんだけど?」

提督「鈴谷酷い!」

鈴谷「冗談だって」

提督「鈴谷の冗談は冗談に聞こえないから困る……」

鈴谷「それで、熊野はどう、縁日に着た感想」

熊野「思ったより普通ですわ」

提督「どういう想像していたんだ」

熊野「でも、思ったより人は少ないですわね」

提督「そりゃ、まだ人がまばらになる時間を狙ってきたからな。初心者が一人で祭りに来ると、大体はぐれる」

熊野「む、私をなんだと思ってますの」

提督「世間知らずお嬢様?」

熊野「世間知らずではないですわ! ……ところで、鈴谷は何処に?」

提督「え、その辺に……あれ?」

熊野「……迷子?」

提督「まっさかー……ちょっと探してくる」

熊野「あっ」

提督「どうした熊野」

熊野「あっちの屋台に並んでいますわ」

提督「……」

~~~~~~~~

提督「おい鈴谷、勝手にどこかに行くの五回目だぞ」

鈴谷「あはは、ごめんごめん」

提督「謝る気ないな……」

熊野「鈴谷らしいですわ」

鈴谷「まあまあ、そう呆れないでよ。色々買ってきてあげてるんだからさ」

提督「む……」

熊野「たしかに、鈴谷は私達にも分けてくれてますわね」

鈴谷「提督のポケットマネーだしね、一人で使うのもアレじゃん」

提督「……ん? 今なんて言った?」

鈴谷「ほら熊野、かたぬきしにいこうよ!」

熊野「わ、分かりましたわ」

提督「え、ちょっと、聞いてないんだけど……」

―執務室―

提督「なんだかんだで二人共祭りは初めてだから、少し抑え目にした」

提督「今度行くときは自分で色々出店を周るけど」

↓2

―縁日―

提督「ほら、チョコバナナだぞ」

葛城「ありがと」

提督「ここの花火は見ごたえがあるらしいから、期待して良いぞ」

葛城「そうなの」

提督「時間あるし、舞台の方も見てみるか?」

葛城「やめとく」

提督「そ、そうか……なあ、機嫌悪いのか?」

葛城「いきなり連れて来られて喜ぶ子がいると思う?」

提督「え……居ると思うけど」

葛城「く、駆逐艦は含めない! 空母の中で!」

提督「飛龍なんかはノりそうだな」

葛城「もうっ!」

提督「まあ、深くを考えるなって。俺はあくまで葛城と花火を見たいだけなんだから」

葛城「わ、私と?」

提督「そうそう」

葛城(ええと、これはそのまま受け取って良いのよね? 他に深い意味があるとか、そういう訳じゃ無いわよね……?)

提督「葛城なら無意味に出店の食べ物強請るほど無邪気じゃないし、かつ程よく花火に興奮してくれそうだからな」

葛城「……褒めてないわよね?」

提督「まあな」

葛城「提督!」

提督「ははは、ほら、あっちの方が花火が綺麗に見れるってさ。行くぞ」ギュッ

葛城「あっ……もう」

~~~~~~~~

バーン バーン

提督「たーまやー」

葛城「かーぎやー」

提督「……」

葛城「何よ。別に良いじゃない」

提督「いや、やっぱりそれなりに興奮してくれているなって」

葛城「うぐ……い、いいじゃない! こういうの見るの初めてなんだから!」

提督「予想通りでなにより」

葛城「むうう……デリカシーないんだから」

提督「デリカシーねぇ……花火綺麗だな」

葛城「また話逸らして……」

提督「でも花火より、葛城の方が綺麗だと俺は思うぞ」

葛城「……それがデリカシーのある発言?」

提督「違った?」

葛城「はぁ……ううん、いいわよ、それで」

―執務室―

提督「女性と二人で出かければデートだと……うん、前にも言ったか」

提督「でも、やっぱり女性の機微は分からん。雑誌とか見て勉強しているんだけどな」

↓2

提督「うーむ……」

筑摩「あら、どうかしたんですか?」

提督「それが、かくかくしかじかで」

筑摩「……? かくかくしかじかじゃ伝わりませんよ」

提督「やっぱり? まあ、葛城とデートに行ったんだよ」

筑摩「デート?」

提督「ああいや、間違えた。縁日の花火を見に行ったんだ」

筑摩「ああ……それがどうかしたんですか?」

提督「なんか、デリカシーないみたいなこと言われて、男女がどうあるべきか、今一度考えていたんだ」

筑摩「提督ですからねぇ」

提督「その、そういう結末になって当然みたいに言うの止めて」

筑摩「うふふ、すみません」

提督「……笑う子にはおしおきだな」

筑摩「はい?」

―夜景の見えるホテル―

提督「女性の扱いのノウハウを学ぶには、実践が一番だよな」

筑摩(知識も無いのに実践しても意味は無いと思うのですけど)

提督「何か言いたそうだな、筑摩」

筑摩「いえ、このような場所は利根姉さんと来た方が楽しかっただろうと思いまして」

提督「俺ですみませんでしたねぇ!」

筑摩「うふふ、冗談ですよ」

提督(嘘つけ、目がマジだったぞ)

筑摩「でもいいんですか? こんな高そうなところで食事なんて」

提督「いいよいいよ。ここ高そうなだけで高くないし」

筑摩「……まあ、いいですけどね」

提督「……」カチャカチャ

筑摩「……」スッ…カタッ

提督「……」カチャン

筑摩「……」コト

提督「……喋らない?」

筑摩「大人のディナーがしたいと言ったのは提督でしょう」

提督「まあ、そうなんだけどさ」

筑摩「大人は多くは語らないものです。静かに食事は摂りましょうね」

提督「……なるほど、分かった」

筑摩「分かっていただけましたか?」

提督「俺にはデートは合わないって事だな!」

筑摩「……」

提督「ありがとう筑摩。良い事を学んだよ」

筑摩(どうしてこんなのを好きになる子がいるのでしょうか……あ、でもここの料理はおいしいわ)

―執務室―

提督「そもそも遊びに行く事に、特に気に掛ける必要なんてなかったな。うむ、ディナー代の分は学ぶことが出来た」

提督「決して理解できなかったからって、理解することを諦めた訳では無い」

↓2

―縁日―

提督「三日目だよ! この地区の祭り最終日だよ!」

秋月「はあ、確かにそうですね」

提督「だから秋月、お前は最終日に共に祭りに行くと言う栄光に選ばれたのだ」

秋月「栄光でもなんでもないですよね」

提督「まあな。自分で言っててもそう思った」

秋月「自分で言いますか……」

提督「そんな個人の感性による印象なんてどうでもいい。とにかく出店を周るとするぞ」

秋月(適当ですね)

提督「さて、秋月は何を食べたい? ポテトか? わたあめか? たこやきか?」

秋月「それでしたら、私は…………」

提督「……? どうした?」

秋月「た、高くありませんか?」

提督「そうか? これくらいが普通だと思うが」

秋月「いえ、高いですよ!」

提督「お、おう」

秋月「これ一つで牛缶は買えます」

提督「いやぁ、それは微妙に足りないんじゃないかな」

秋月「それはそうかもしれませんが、これなら自分で買って来た方が安く済みますよ」

提督「秋月の言いたいことは分かるが、これは必要な事なんだ。お金が無くては祭りも続けられないしな。昨今は規模が縮小していく祭りもある事だし」

秋月「ぁ……そういえば、そうですね……」

提督「だから、そういう事は気にするな。祭りに参加することは、この地区の発展の礎にもなるんだ」

秋月「司令……はい、司令の言う通り、楽しむことを第一にします!」

提督「その意気だ! じゃあまず秋月、何を食べる!」

秋月「そうですね……じゃあ、あれがいいです!」

提督「クレープか。なかなかいいじゃないか」

秋月「いえ、その隣です」

提督「隣?」

秋月「牛缶の屋台ですよ!」

提督「牛缶の屋台!? って、マジでクレープの隣に建ってる!」

―執務室―

提督「やっぱり割高だな……しかし、牛缶売っている店がある事が驚きだった」

提督「なんにせよ、秋月は満足してくれたようで嬉しい」

↓2

阿武隈「提督、改二になりましたよ!」

提督「ふーん」

阿武隈「……その、私の改二には興味無いカンジですか?」

提督「いや、そういう訳じゃ無いが」

阿武隈「ぅぅ、じゃあ、どうしてそんなに冷淡なんですかぁ!」

提督「こういう冷たくした方が、面白い反応してくれるだろ」

阿武隈「もおぉ! 提督の意地悪!」

提督「ははは、今更だな。ところで……」

阿武隈「むぅ、何よぉ」

提督「相変わらずその髪型は変わらないみたいだな」

阿武隈「セットは大変ですけど、気に入ってますから」

提督「ふむふむ、なるほど……」

阿武隈「……な、なんですか?」

提督「改二祝いだ。思いっきり頭を撫でてやろう!」バッ ナデナデナデ

阿武隈「ふぇぇえ!? や、やめてぇ!」

―大和型の部屋―

大和「……」ゴソゴソ

武蔵「どうかしたのか」

大和「また、無いの」

武蔵「無い? 何がだ」

大和「……前にも提督にとられた、あれです」

武蔵「……ああ、PADか」

大和「そうそう、そうです……って、PADじゃない!」

武蔵「どっちでも良いだろう。とにかく、また提督の下へ行くのだろう」

大和「ええ」

武蔵「なら、ついでに報告書も頼む」

大和「そう言うのは自分で……いえ、行ってきますね」

武蔵(突然物わかりが良くなったな。大和もなかなか可愛い奴だ)

―執務室―

提督「はー、ねむ……」

大和「失礼します、提督」

提督「大和か。どうした?」

大和「報告書です。どうぞ」

提督「ん? お、おう」

提督(あれ、もしかしてこれはばれていないパターンか? なんだ、つまらん)

大和「……」ニコニコ

提督(……にしては、なんかいつもより笑みが深いな。なんだ、知っているのか?)

大和「如何かなされましたか?」

提督「い、いや、なんでもない」

提督(くっ、一体全体どうなっているんだ……!)

大和(どうやら提督も無意味に深く考えているようですね。後ろめたい事が有る人は、どこか疑り深くなってしまうものですから)

提督「……な、なあ、最近困ったことは無いか?」

大和「困った事、ですか」

大和(攻勢に転じてきましたね。このままではジリ貧と判断したんでしょうか)

提督「たとえば……身につける物が一枚無くなったとか」

大和「!」

大和(自分から振って来るんですか!? 観念した、という訳じゃ無さそうなんですけど……)

提督「そこのところ、どうなんだ?」

大和「……ええ、はい。確かに、無くなって困ってますよ」

提督「ふっ、それならよかった」

大和(良かった……? あっ、もしかして……)

提督「とある悪戯ウサギが、また何かやらかしたという情報を聞いてな。当たってみれば、何か知っていると思うぞ」

大和(これは、やられました。情報だけ教える事によって、この場において逃げる隙を与えてしまったみたいですね……)

提督「では、下がっていいぞ」

大和「……失礼しました」

大和(あの口ぶりでは、実行犯は悪戯ウサギさんで合っているようですね。してやられました……)

バタン

提督「……プライド捨てて『実は知っている』からの『犯人は提督ですね』って言えばよかったのに」

提督「人をつかって隠すのも、意外と楽しかった。まあ、なんにせよ悪戯ウサギよ、俺の分も怒られて来い」

↓2

バタン

提督「……プライド捨てて『実は知っている』からの『犯人は提督ですね』って言えばよかったのに」

提督「人をつかって隠すのも、意外と楽しかった。まあ、なんにせよ悪戯ウサギよ、俺の分も怒られて来い」

↓2

阿武隈「うぅ~……また、提督のせいで髪が崩れたぁ……」

提督「悪かった。直してあげるから許して」

阿武隈「……ちゃんとしてくださいよ」

提督「分かってるって」

阿武隈「本当にわかってるんですか……?」

提督「そうだ、撫でるだけじゃ寂しいから、温泉にもいこうか」

阿武隈「また突然ですね」

提督「今思い付いたからな」

阿武隈「提督ったら、もう……」

―温泉―

阿武隈「――ここが温泉ね」

提督「そうだぞ。肩こり腰痛捻挫や美容、色々な事に良い効果が出るんだぞ」

阿武隈「そうなんですか……って、提督!?」

提督「何を不思議がっているんだ。混浴なんだから当たり前だろう」

阿武隈「あ、当たり前じゃないですよぅ! どうしてくる前に言ってくれなかったんですか!」

提督「言ったぞ? 阿武隈が聞いてなかっただけだろう。阿武隈はそそっかしいからな」

阿武隈「そそっかしいって……! ま、間違ってないないけどぉ……」

提督「どうせ入ることになったんだ。背中位流すぞ」

阿武隈「も、もう、提督デリカシーなさすぎ!」

提督「デリカシー、と言われてもなぁ。別に一緒にお風呂に入るんだったら、普通の事なんじゃないか?」

阿武隈「うぅ、提督ですから、そう言うと思ってました……」

提督「ほら座れ、優しくしてやるから」

阿武隈「……ほ、本当に優しくしてくださいね?」

~~~~~~~~

阿武隈「なーんてことになると思ってたけど、ほんの普通の温泉だったみたい」

阿武隈「……」

阿武隈「そ、そっちのほうがいいからね!? 期待してたとかそんな事無いから!」

提督『何言ってんだー?』

阿武隈「ひゃうっ!? 提督!?」

提督『客いないからってあんまりはしゃぐなよ。あと、日帰りだから忘れものに気を付けろよ』

阿武隈「わ、分かってるからっ! 温泉のさく越しに話しかけるのはマナー違反だからね!」

提督『へーい。まさか阿武隈に咎められるとは……一年に一回あるくらいか?』

阿武隈「聞こえてるからっ!」

―執務室―

提督「温泉もたまにはいい。日帰りなら軽く行けるしな」

提督「阿武隈はどうだったんだろうか。結構興奮してたみたいだし、気に入ったのかな」

↓2

―暁型の部屋―

提督「暁、今年も肝試しをするぞ」

暁「……え?」

提督「聞こえなかったのか? 今年も肝試しをするぞ」

暁「き、聞こえてるわよ。き、肝試しね……」

提督「お、もしかして、レディともあろうものが怖いとか?」

暁「そ、そそ、そんなわけないわよ。で、でも……」

暁(司令官と肝試しをするとき、いつも何か変な事が起こるんだもん……)

提督「そうだ、響もどうだ」

響「司令官は暁と一緒に行きたいんでしょ。私がいると邪魔になるだろうし、遠慮するよ」

暁「ひ、響!」

響(また巻き込まれるのは絶対にいやだからね)

暁(響も肝試し行きたくないだけでしょ!)

提督(雷と電も誘いたかったけど、二人は遠征で居ないからな。しょうがないか)

~夜・鎮守府内~

提督「いやぁ、今回は何もセットが出来なくて、唯の見回りみたいになって悪かったな」

暁「じゅ、十分じゃない? ほ、ほら、片づけも大変じゃない」

提督「それもそうか。あ、探照灯もう少し下げてくれ。足元が少し暗い」

暁「分かったわ」

暁(ほっ、今回は何も無さそうね。ただ暗いだけなら、さすがに平気だし)

提督(……)

暁(……む、無言でいるのもちょっと寂しいし、司令官に何か話し掛けてみようかしら)

暁「ねえ、司令官は……あれ?」クルッ

シーン

暁「……し、司令官? どこに行ったの?」

暁(さっきまでは居たわよね? だったら……ま、また私を怖がらせようと、隠れているのかしら? そ、その手には乗らないわ! 私だってもう改二になって、誰から見ても一人前のレディになったんだから! この程度、何でもないわ!)

暁「だ、だから、無駄なことしてないで、早く出てきなさい! ど、どうせ曲がり角とかに隠れているんでしょ!?」タッタッタ バッ

提督「……」

暁「や、やっぱり居るじゃない! 予想通り曲がり角の先に隠れるなんて、司令官も甘くなったわね!」

提督「……」

暁「……司令官?」

暁(あ、あれ、何も言ってくれない……それに、私はずっと探照灯を前に向けてたはず。一本道の廊下を先行できるはずが無いし、走るなら足音とかも聞こえるはず……あれ? じゃあ、この司令官は……)

タッタッタ

暁「ひっ!? だ、誰の足音!?」クルッ ピカー

提督「おおい、先に行くなんてひどいじゃないか!」タッタッタ

暁「し、司令官……が、ふた――」バタン

提督「あ、暁!?」

―執務室―

暁「迷惑かけたわね、司令官」

提督「いや、大丈夫か? 昨日はいきなり倒れたけど……調子が悪いなら休んでもいいんだぞ」

暁「ううん、昨日は司令官のベットでぐっすり休んだから、全然平気よ」

提督「それならいいけど」

暁「じゃあ、響きも心配しているだろうし、部屋に戻るわね」

提督「あ、ああ」

バタン

提督「……いちおう、曲がり角の先には鏡があったが……たしかに夜に見る鏡は何か怖いモノがあるが」

提督「本人が大丈夫と言っているなら、大丈夫なんだろう」

↓2

―談話室―

提督「……」

利根「……」

提督「ここは上官に譲るべきじゃないか?」

利根「何言っておるんじゃ。現場で動いておるものに譲るべきじゃろう」

提督「だったら、その現場で涼めばいいんじゃないですかね」

利根「暑くてそれすらも億劫じゃ。それを言うなら提督も執務室に戻るとええじゃろうが」」

提督「あそこサウナ状態だから、扇風機つけたって無駄なんだよ」

利根「そんなの知った事ではない。いいからこっちに向けるのじゃ~!」

提督「扇風機は俺の方に向きたいって言ってるし、こっちに向かせるのが一番だ!」

筑摩「……何をしているんですか?」

利根「吾輩が涼んでおるところを提督無理矢理奪ってきたんじゃ!」

提督「人聞きが悪いぞ。ちょっとトイレに行っている隙に奪ったのは利根だろう」

利根「ふん、扇風機を放っておくのがいけないんじゃ」

提督「付けっぱなしにしてたんだから、誰か使ってるって思うだろ」

利根「居ない者は居ない。戻ってくるかなんて考えんわ」

提督「ああいえばこういう……」

筑摩「クーラーは付けないんですか?」

提督「今鎮守府全体の冷房設備を点検中。すぐ終わるらしいけど、その間が地獄なんだ」

利根「すぐ終わるんじゃろう。なら、吾輩が使っても良い筈じゃ」

提督「それはこっちも言える事だ。いい加減扇風機は諦めろ」

利根「なんじゃと~」

筑摩「そうやって喧嘩している方が暑くなりませんか?」

提督「……」

利根「……」

提督「思い出させるなよ筑摩……」

利根「うう、言われてみれば、暑くなってきたような……」

筑摩「す、すみません。でも、二人で一緒に涼めばいいんじゃないでしょうか?」

提督「……しょうがない。筑摩に免じて、それで妥協するか」

利根「スイングは風が当たらない時間の方が長く感じるから、嫌なんじゃけど……」

提督「わがまま言うな、俺も同じ条件だ」

利根「じゃな……」

筑摩「一件落着、ですね」

提督「筑摩はいいのか?」

筑摩「はい」

利根「無理しなくてもいいのじゃ」

筑摩「無理はしてないわ。だって、外ではほうが涼しいから」

提督・利根「「……」」

―執務室―

提督「家の中にいるより外の方が涼しいって、よくある事だよな」

提督「意地でも扇風機に縋る二人の姿もあったが……」

↓2

―天龍型の部屋―

提督「龍田もおそろいの水着を買ったって?」

龍田「あらあら、それをどこで聞いたのかしら?」ジャキン

提督「す、ストップストップ。天龍から聞いたんだよ」

龍田「天龍ちゃんね~。後でお仕置きしておかなくちゃ」

提督「お、おしおき? そんなことしなくても……」

龍田「提督に知られたら、何をされるか分かったものじゃないもの~」

提督(え、俺のせいなの)

提督「で、物は相談なんだが、着てみてくれないか?」

龍田「うふふ、それは目を潰されたいという事で良いのかしら~」

提督「バイオレンスだな! そうじゃなくて」

龍田「ん~?」

提督「そのだな……そう、天龍が見たいって!」

龍田「天龍ちゃんはここには居ないけど~?」

提督「は、恥ずかしいらしくてさ」

龍田「あら、本当かしら~」

提督「本当だ」

龍田「……」ジー

提督「……」

龍田「……分かりました。ちょっとだけですよ?」

提督(すまん、天龍)

~~~~~~~~

龍田「どうかしら~?」

提督「いいぞ。」パシャッ

龍田「おさわりは禁止ですよ~?」

提督「撮影だから問題ない」

龍田「うふふ、あと、天龍ちゃんに伝えておいてくれませんか~?」

提督「なんて?」

龍田「人を使う時は、秘密を厳守してくれそうな人じゃないと報復が来るわよ~って」

提督「……」

龍田「あと提督も、そんなにじろじろ見ていたらつい盲目にさせたくなりますからね~」

提督「ついでやっていい範疇じゃないと思います」

龍田「冗談よ~」

提督(冗談なら笑って。いや、何時もの笑み状態ではあるけども)

―執務室―

提督「龍田の弱点が知りたいって相談を受けたのは事実だが、写真を撮るだしに使っただけなんだよな……」

提督「全部天龍に行くか、真実分俺の方に来るか……とりあえず修復材用意しておこう」

↓2

―海水浴場―

提督「あきつ丸よ」

あきつ丸「なんでありますか、提督殿」

提督「なぜ海に来てパーカーを着こんでいる」

あきつ丸「は、その……」

提督「……ははぁん、ひょっとして恥ずかしいんだろ。普段肌を晒す事なんてないからな」

あきつ丸「わ、分かっているのであれば、聞かないでほしいであります……」

提督「嫌だね。俺は海水浴に来たんだ。ならば、その付添いに部下のお前も共にするのが合理的という物だ!」

あきつ丸「提督殿が勝手につれて来たのだから、合理的でも何でもないであります」

提督「あきつ丸も最近言うようになったなぁ……」

あきつ丸「自分もここに来てから変わったであります」

提督「ま、変わったと言ってもなんだかんだであきつ丸はチョロイからな」

あきつ丸「本人を前にしてその口ぶり!」

提督「とにかく、これは泳ぐ訓練でもある。しかし水上移動が出来るといっても、状況がそれを許してくれないときもある」

あきつ丸「ふむ……」

提督「そういう時に泳ぐことが出来ないと、待っているのは死だけだ」

あきつ丸「それは確かに、であります」

提督「それに、海軍での水泳能力は必須項目だ。覚えておかないといけないことである」

あきつ丸「なるほど、提督殿が海に連れて来たのは、陸軍出の自分を心配してくれてのことでありますね!」

提督「え? あ、うん」

あきつ丸「提督殿の行為を無駄にしないよう、あきつ丸、頑張るであります!」

提督(チョロイ)

~~~~~~~~

あきつ丸「はぁ……はぁ……」

提督「なんだ、もうばてたのか」

あきつ丸「提督殿の体力が無尽蔵なだけであります……!」

提督「そうでもない」

あきつ丸「普通の人は泳いで海域を移動しないと思うのであります」

提督「ははは、まあ確かに」

あきつ丸「はぁ……」

提督「じゃあ、普通に遊ぶとするか?」

あきつ丸「そのほうがまだいいであります……」

提督「じゃあ、手始めに……あの島まで競争しようか」

あきつ丸「……え」

―執務室―

提督「あきつ丸は表面上真面目だけど、その気にさせたらノリが良いから扱いやすい」

提督「あきつ丸からすると心外だと思うけど」

↓2

―廊下―

島風「提督ー、おはよー!」

提督「おう、島風は起きるのも早いな」

島風「提督が遅いだけだよ!」

提督「それは夜中まで仕事しているんだから当然だな」

島風「じゃあ、私は外を走って来るねー!」

提督「おー……おっ?」

島風「どうかした、提督?」

提督「いや、なんだかいつもと島風が違く見えて……んん?」

島風「もう、どこ見てるの提督!」

提督「どこって……ああ、何時もと着ているパンツが違……ええっ!?」

島風「おうっ!? な、何か変?」

提督「いや、変て言うか……まず普通の下着を履くのはあまりにも……っていうか、なんでそうなったと疑問に思うというか……」

島風「着替えるのも早くしたら、洗濯が間に合わなくなったの」

提督「着替えるのも早くって、何故そんな事を……いや、それはまだいい。それ、島風の物じゃないだろ」

島風「そうだよ、友達に貸してもらったの」

提督(友達? 一番に思いつくのは天津風だが、性格を考えれば彼女じゃないよな……)

島風「提督ー?」

提督(面倒見のいい奴なら貸すか? しかし、それで島風と仲がいいっていったら……)

島風「てーいーとーくー!」

提督「ん、なんだ?」

島風「返事するの遅いー! もう、外走って来ても良いよね!」

提督「あ、ああ」

島風「じゃあ、島風行ってきまーす!」ダッ

提督「……って、やっぱりそのままの格好じゃ不味いだろ! 島風ー! せめてズボンを履けー!」ダッ

島風「えー! だって、あれ着たら遅くなるでしょー!」

提督「いろいろ驚いて反応遅れたが、そのまま外出ると、恐ろしいことになるぞ!」

島風「お、恐ろしい事?」

提督「口に出すのもはばかられる、恐ろしい事だ」

島風「……う、うん、わかった」

提督「よしよし、これでパンツ大公開時代は終わりを告げられたな。ふう……」

―執務室―

提督「――って、思ったけど、放っておいた方が面白い結果になったよな」

提督「しまったな……あの時は混乱していたから、しょうがないともいえるけど」

↓2

―吹雪型の部屋―

提督「さて、ここが例の部屋か」

吹雪「意味深な言い方をしなくても、ただの私達の部屋ですよ」

提督「それはそうだが、今回は用事があって来てるしな」

吹雪「初雪の事ですね」

提督「そうだ。それで、初雪がどんな状況だって?」

吹雪「はい、遠征の時間なので呼んでいるんですけど、反応が無くて……」

提督「え、もしかして、熱中症とかそんな感じのやばい奴?」

吹雪「そんな事なら司令官なんて呼びませんよ」

提督(なんてって……)

吹雪「多分、見てもらった方が早いです。どうぞ」

提督「こ、これは……!」

初雪「……だるぃ……」グデー

提督「……いつもどおりじゃない?」

吹雪「いくらなんでも遠征を無視するような子じゃないですよ」

提督「ああ、そういう」

吹雪「これが俗にいう暑さに溶けてるって事ですよね。あ、司令官には縁がありませんか」

提督「なんか辛辣……」

吹雪「私もちょっと暑さで機嫌が悪いかもしれません」

提督「気持ちは分からんでもない。でだ、初雪、起きてるか?」

初雪「ずっとねてる……」

提督「いやいや、今から遠征だろ? いかなきゃ」

初雪「いかない」

提督「そこだけはっきり言うのか。しかし、このままだと後悔するぞ」

初雪「えぇ……」

提督「今日は吹雪型は全員遠征に出る。その中初雪だけが出ない」

初雪「ん……」

提督「そうなると、ご褒美のアイスは、皆が食べてる中……」

初雪「……う……それは……」

提督「どうする? 初雪、決めるのはお前だぞー」

初雪「……」

提督「……今なら伊良湖のアイスと俺の手作りアイスも進呈」

初雪「……吹雪、いこ」

吹雪「あっ、うん。司令官」

提督「なんだ? ああ、お礼はいいぞ。当然のことをしただけだからな」

吹雪「私達の分も用意しておいてくださいね」

提督「……」

―執務室―

提督「結局、人数分を用意した。伊良湖とかは快く頼まれてくれたが」

提督「今思えば、あれは吹雪型の作戦だったんじゃないかと思う。初雪いつもあんな感じだし」

↓2

提督「暑い……何て暑さだ……なぜクーラーよ壊れた……」

霞「点検時に問題が見つかったらしいわね。どうせそんなに時間もかからないんだから、我慢しなさい」

提督「この蒸し暑い執務室でデスクワークだぞ……苦とデスワークに分裂して俺を殺しにかかってくるんだ……」

霞「何言ってんのよ。ついに壊れた?」

提督「もはや執務室の命運は尽きた……ならば、この俺の生き様を鎮守府に刻みつけるのみ……」

霞「……」

提督「者ども行くぞー! この暑さを生みだすイフリートを退治しに行くんだー!!」ダッ

霞「……今日は休ませてあげましょ」

―廊下―

春雨「ふんふん♪ 今日は暑いので冷やし春雨です。司令官美味しいって言ってくれるでしょうか」

提督「うおおおおおおおおおお!!」ダダダダ

春雨「あっ、司令官、丁度良い所です」

提督「……」ピタッ

春雨「その、冷やし春雨を作ったんです。えっと、よければ、その……食べて、くれませんか?」

提督「食べりゅうううううううううう!!」バッ

春雨「ひゃっ!? し、司令官!?」

提督「はむはむもふもふ!」

春雨「し、司令官……! それ、違……っ!」

提督「これは……ラーメン!」

春雨「ラーメンじゃないです! わ、私の髪の毛ですよ!」

提督「髪……? 髪……春雨の、髪……春雨……はる……春雨ヌードル!」

春雨「ち、違いますって!」

提督「ああああああ! 春雨ヌードルぅううううううううう!」

春雨「ひゃああああああ!?」

提督「ずるずる! んふっ、えふっ! ああ、んまい~」

春雨「や、止めて下さい! 汚いですから!」

提督「臭いも香しい! そしてヌードルはやっぱりスープ! ズズズ……」

春雨「きゃぁっ! やめ、止めて! んぅっ!」

提督「あぁ^~、春雨ヌードルうまいんじゃぁ^~」

春雨「ぁっ! 本当に、やめ――」

―執務室―

提督「――ん? あれ、俺は一体」

春雨「お、起きましたか?」

提督「ああ、なんだか変な夢を見ていたような……」

春雨「そうなんですか? あ、よろしければ、春雨の冷やし春雨、食べてください」

提督「ありがとう。喜んで食べさせてもらうよ」

春雨「いえ、では、失礼しますね」

提督「……春雨、もしかしてお風呂入った?」

春雨「今日は暑いですから、ね」

バタン

提督「……まあ、いいか。さて、冷やし春雨を食べるとするか」

↓2

―???―

提督「おでん作ったぞー」

レ級「わーい!」

タ級「王子様は料理も上手なのね!」

ル級「いや、そう言う話じゃないと思うのだが」

ヲ級(何故人間が……)

提督「いやー、レ級にさらわれてさ」

レ級「さらってきちゃった」

ヲ級「なんてことを……」

提督「聞けば南方棲戦姫は遠征だろ? なら、まあいいかと思って」

ル級「もはや私達を何とも思っていないな」

ヲ級「というより、そう言う事を言う時ってだいたい……」

南方棲戦姫「帰ったぞ」

「「「!?」」」

レ級「おかえりー、南方棲戦姫様」

南方棲戦姫「うむ。……む、なんだかおいしそうな匂いがしているな」

タ級「あ、今王子様がおでんを作ってくれたところなんです」

南方棲戦姫「おうじ? なんだかしらんが、貰うぞ」


ヲ級「(どうするんですか。見つかって殺されますか)」

提督「(馬鹿言え。こんなところで死んでたまるか。ヲ級、協力しろ)」

ヲ級「(敵に協力を要請しないでください)」

提督「(協力しないと―――)」

ヲ級「(――わ、分かりました)」

南方棲戦姫「そんなところで何をこそこそしている」

ヲ級「えっと、南方棲戦姫様、一つ面白い遊びを提案したいのですが」

南方棲戦姫「ほう、面白い遊びだと」

レ級「どんなの?」

ヲ級「め、目隠しをして……ええと、具を当てるゲームです」

南方棲戦姫「そんな事をするくらいなら、普通に食べた方が良い」
レ級「面白そう! 南方棲戦姫様、失礼するね!」シュルッ

南方棲戦姫「なに、待て、何を! 目隠しを外せ!」

レ級「ル級、そっち掴んで!」

ル級「ええ……じゃあ、失礼します」

南方棲戦姫「何をする、離せ!」

ヲ級「まあまあまあまあ。お一つどうぞ」グイッ

南方棲戦姫「待て! 何か湯気が来ているぞ! 絶対熱いだろう! やめろ! 近づけるな!」

ヲ級「遠慮しないでください。ささ、ぐいっと」バシャッ

南方棲戦姫「熱い! 液体だったぞ! 口に直接かけるな!」

レ級「これとかどう?」グイッ

南方棲戦姫「んぐっ” あふい! あふっ……ぶっ! こんにゃくを口に詰めるな!」

レ級「すごい! よく分かったね!」

提督「じゃあ次これ!」グイッ

南方棲戦姫「だから口に無理矢理……んんんぅううう!!? ふぁにこれぇ!?」

ル級「ちくわぶか……あれ熱いよな」

タ級「王子様のあーん、羨ましいな……」

南方棲戦姫「くそっ! いい加減にせんか!」ガシャン

ル級「やばいっ」パッ

提督「あっ、今離すと――」

ドーン

―執務室―

提督「どさくさに紛れて戻って来れた」

提督「ちなみにリアルにおでんを口に詰め込むと火傷の心配もあるから注意。深海棲艦だから大丈夫だろうけど」

↓2

―食堂―

摩耶「クーラー無いとあっついなー」パタパタ

提督「こら摩耶、胸元をパタパタするのははしたないぞ!」ゴトッ

摩耶「おかんかよ。って、何してんだ」

提督「何って、かき氷機だ」

摩耶「へえ、こんなのあるんだな。初めて見た」

提督「うちは間宮アイスがあるから、こういうのを作る事無いしな。今日は売店で売ってたから買ってみたんだ」

摩耶「作るのか?」

提督「そりゃ、買ったからにはな。ちょっと待ってろよ、氷貰ってくる」

摩耶「ああ、だから食堂に持って来てたのか」

~~~~~~~~

提督「ゴリゴリーっと。ついでに貰ったシロップかけて完成ー」

摩耶「これがかき氷か……」

提督「食べるか、摩耶」

摩耶「いいのか? へへ、じゃあ貰うな」

提督「氷とシロップだけだから沢山作れるし、食べるなら一緒の方がおいしいだろ」

摩耶「ん、これけっこう美味しいな」シャクシャク

提督「無視か……まあ、シロップも間宮特製のだし、そりゃあな」

摩耶「……」シャクシャク

提督(一心不乱に食べてる……美味しいからなのか暑いからなのか……)

摩耶「……」シャクシャク

提督「っておい、そんなに一気に食べると……」

摩耶「うっ……!」キーン

提督「ほらみろ」

摩耶「なんだと……まさか、毒を仕込んでいたのか……!」

提督「違うからな! かき氷は一気に食べるとそうなるものなんだ。まったく」

摩耶「そ、そうか……ふう、かき氷って危険な物なんだな」

提督「ゆっくり食べればいい話だし。っと、これで俺のも完成」

摩耶「ん? あたしのと色が違うな」

提督「そっちはブルーハワイ味。俺のはイチゴ味」

摩耶「なんか違うのか?」

提督「市販のシロップの味は同じらしいから、間宮に作ってもらったんだ。一つ食べるか」

摩耶「じゃあおかわりな」

提督「食べるの早すぎだろ……」

―執務室―

提督「暑い夏にはかき氷がいい。安く済むし」

提督「というか、かき氷なら低費用で皆に配れるんじゃ……ちょっと考えておくか」

↓2

金剛「提督ぅー! 流しそうめん機というものがあると聞いたデース!」

提督「流しそうめん機ー? あんなん邪道だ邪道」

金剛「ワッツ? 流しそうめんはノーなんデスカー?」

提督「流しそうめんが駄目というか、機械が駄目だな」

金剛「?」

提督「一時間後、庭に出て来い。本当の流しそうめんという物を見せてやるよ」


~一時間後・庭~

金剛「提督のお誘い楽しみネー!」

提督「金剛、遅かったな」

金剛「遅かった? でも、時間通りですヨー?」

提督「他の三人に比べてな」

金剛「……わかってたネー」

霧島「それで、私も本当の流しそうめんという物に興味があるのだけれど」

榛名「榛名、気になります!」

提督「いや、興味を誘う為に大げさに言っただけで、実際大したことは無いんだが……竹で作った流し台だ」

比叡「ひえー、こんなので流したら、落ちちゃいますよ」

提督「もちろん下には受け皿を使う。水を流す用意も出来ている。ついでにコンロを用意してゆでながら流すこともできるぞ!」

霧島「用意周到ですね。まるで、始めから準備していたような……」

提督「皿と箸は持ったか。じゃあ、一束目流すぞー」

霧島「いつものスルーですか」

提督「それ」スッ

ポチャン

提督「……全員なんで手を出さない!?」

榛名「その、どうやってとればいいのか……」

霧島「思ったより早かったもので」

比叡「金剛お姉様、お先にどうぞ!」

金剛「つ、次は絶対にとりマース!」

提督「わかった、じゃあ次流すぞ。そうだな……俺の愛(そうめん)を、受け取れ!」スッ

霧島「何ですかそれ」

提督「掛け声あった方が盛り上がるかなと」

比叡「逆に取りたくなくなると思います!」

提督「比叡は正直だな。お前の分はもう流さん」

比叡「ひえー!」

提督「それで、流した分は……」

金剛「……」ガチッ
榛名「……」ガチッ

提督「二人箸はマナー違反だからな」

―執務室―

提督「四人共満足そうに片づけを手伝ってくれたし、成功かな」

提督「だが一番の予想外は、皆量を食べて俺の分が無かったことだ」

↓2

―白露型の部屋―

涼風「提督……まだ直んねえの?」

提督「まだって、何がだ?」

涼風「クーラーのことさ」

提督「もう冷房のことは忘れて夏の風刺を楽しまないか」

涼風「ってぇことは……」

提督「ここにちょうどよくうちわが二つある。これで涼もう」

涼風「なんつーこったよ……」

提督「はい、涼風」

涼風「はぁ……生ぬるい風しか送られねえよ」

提督「気温自体が高いしな……そうだ」

涼風「まぁた、余計な提案かい?」

提督「余計とはなんだ。うちわのあおぎ合いを提案しようと思っただけだ」

涼風「それが余計な提案と言わずなんになるよ」

提督「いやいや、自分にかかる風は自分で仰ぐものじゃないから、なんとなく疲れにくく感じるだろ?」

涼風「それはないんじゃないか……?」

提督「そんな真面目なトーンで言われても……一回だけ、な、な?」

涼風「しょーがないね。ちょっとだけな」

提督「……」パタパタ

涼風「……」パタパタ

提督「なんか自分にする分じゃないから、逆につかれた気分になるな」

涼風「提督は本当にぶれないねぇ」

提督「そもそも扇風機でよくない?」

涼風「その通りだけど」

提督「……扇風機出してくるわ」

涼風「じゃあなんでうちわを出してきたって聞くのは、野暮な話なんだろうね」

―執務室―

提督「実際うちわってあんまり見なくなった気がする」

提督「まあ、冷房器具が壊れなきゃうちわなんて使う機会なかっただろうけど」

下2

提督「第……えーと、八回マリカー対決を始める」

龍驤『八回か。うちらがやったときと回数が進んでないんやな』

大鳳『うちらと言っても、一人メンバーが増えて、一人変わっているみたいですよ』

瑞鶴『あ、葛城は私が呼んだの』

葛城『はい! 瑞鶴先輩に御呼ばれしたので、今日は参加させていただくことになりました!』

瑞鶴『葛城、固くならなくても良いからね』

葛城『わ、分かりました』

提督「葛城については瑞鶴が言った通り。龍鳳は瑞鳳が参加できないのもあって俺が呼んだんだ」

龍鳳『こういう集まりに参加をするのは初めてですけど、頑張ります』

龍驤『……最下位におとしたる』ボソッ

大鳳『何か聞こえたんですけど』

提督「ほら、龍驤はアレルギーがあるからさ……」

~ダイジェスト~

提督「流石にみんな上手だな。練習してきたな」

龍驤『当たり前や。前みたいにはいかへんで』

大鳳『運で勝てないなら、実力で勝ちあがるのみです』

瑞鶴『最近はイカの方やっているんだけどね。でも、一位を取るつもりで行くから』

龍鳳『皆さんにおいて行かれないように、練習してきましたから!』

葛城(瑞鶴先輩に良い所を見せようと思ってたけど……全員早いわ! 特に提督が一つとびぬけてる!)

提督(今回の初心者枠は葛城か……即投げトゲだけ警戒しておこう)


提督「ここから飛んでショートカットっと……」

龍驤『当然やな』
大鳳『あっ、ぶつかってこないでください! あぁ……』
龍鳳『す、すみません』
瑞鶴『確かここからよね』

葛城『え? え?』

提督「初心者枠、お前はそのままでいいんだ……」

瑞鶴『緑コウラ、目の前の龍鳳に向かいなさい!』

龍鳳『あっ、危ないです!』スカッ カンッ

瑞鶴『こっちに返ってきた!? っと、危ない』スカッ

大鳳『えっ』バシッ

提督「あ、音だけで分かった」

龍驤『相変わらず運悪いんやな……』


葛城『わ、私だけ遠くに居ない?』

提督「まあ、その腕だとな」

龍驤『年季の差や』

大鳳『鍛錬の量に違いがありますから』

龍鳳『気持ち……とかでしょうか』

瑞鶴『頑張りが足りないんじゃない?』

葛城『なるほど、流石瑞鶴先輩、ためになりますね!』

提督「一番どうでもいい返答のみ受け取ったぞこいつ」

~~~~~~~~

提督「一位は何時も通り俺で……龍鳳が何気に二位か」

龍鳳『た、たまたまですよ』

龍驤『くっ……狙いすぎてしもた……』

瑞鶴『まあ、前回走った人を警戒しちゃうしね』

大鳳『次は一位取りますから』

葛城『(私が一番空気だったような……)』

瑞鶴『葛城も、また次をするわよね』

葛城『はいっ!』

提督「じゃあ解散……っと」

提督「……葛城あんなにチョロイ奴だったか? 別に良いけど」

↓2

―白露型の部屋―

五月雨「どうぞ、提督」

提督「ふーん、久しぶりに入ったけど……」

五月雨「どうかしましたか?」

提督「……五月雨のほっぺたってやわらかそうだな」

五月雨「はっ……? えと、何か言いましたか?」

提督「五月雨のほっぺたは、やわらかそうだな、と言ったんだ」

五月雨(聞き間違えじゃ無かった……)

提督「触っても良いか?」ズイッ

五月雨「そ、それは……」

提督「……」ジー

五月雨「う……す、少しだけですよ?」

提督「少しで済めばいいがな」ムニ

五月雨「ひゃうっ、て、ていとく……もっと優しくしてくだひゃい」

提督「ん、悪い。うーん……しかし、この感触……」

五月雨「ふぉうかしましたか?」

提督「効果音と同じくもちみたいな感触だ」モチモチ

五月雨「あ、あんまいうれしくないれす……」

提督「大丈夫だ、見た目からして吹雪の方がもち肌っぽい」

五月雨「そういうふうに比べられるのも……」

提督「……ふぅ、堪能した」

五月雨「でも、どうしていきなり?」

提督「いや、そこの部屋の隅にあるスキンケア特集だとかの雑誌がな」

五月雨「――! わ、私のではないですよ!」

提督「まったく、五月雨はだしっぱにして置くなんて、ドジッ娘なんだから」

五月雨「だから違いますよ!」

提督「隠したい事なら、今後から尚更気を付けるようにな」

五月雨「て、提督!」

提督「はっはっは、あ、新しい姉妹が発見されたらしいから部屋のスペース開けとくようにな」

五月雨「部屋に来て見回していたのはそう言う事だったんですか!?」

―執務室―

提督「ただ用件言うだけじゃ寂しいと思い、ついついちょっかいかけてしまった」

提督「そもそも、本当に五月雨の物じゃ無かったなら、隠そうとしないだろうし」

↓2

―妙高型の部屋―

那智「フルハウスだ! 私の勝ちだな!」

足柄「私のフォーカードの方が強いわよ」

那智「なにぃ? スリーカードの唯の上位互換の癖に……」

羽黒「上位互換だから強いんじゃ……」

提督「というか、もう那智酔ってるのか」

那智「酔ってない、酔ってないぞ!」

妙高「言葉はしっかりしてるけど、完全に酔ってるみたいね……」

提督「こっちの方がノリいいし、いいんじゃね」

那智「次だ、次いくぞ」

足柄「うーん……私は二枚交換よ」

羽黒「私は一枚……」

提督「……五枚だ」

妙高「奇遇ですね。私も五枚です」

那智「な、なに? じゃあ私も五枚だ!」

足柄「那智姉さん、捨てたカードでフラッシュが出来て……いえ、何でもないわ」

提督「というか、順番すらずれてるぞ」

妙高「遊びですし、それもいいんじゃないでしょうか」

提督「えー、俺としては高度な心理戦とかしたかった」

羽黒「え……高度な心理戦がしたかったんですか?」

那智「早く手札を公開するぞ! 私はツーペアだ!」

提督「いや、酒持ってきた時点でそれは無かったな」

足柄「私はスリーカード。羽黒は?」

羽黒「フラッシュ……」

提督「俺と同じだな」

妙高「では私がストレートフラッシュですから、私の勝ちですね」

提督「五枚交換してストレートフラッシュだと!? インチキだ!」

足柄「提督だってフラッシュじゃない」

那智「私が最下位か……ならば、罰ゲームを甘んじて受け入れるほかあるまい」

羽黒「罰ゲームなんて決めてたっけ……?」

那智「妙高型二番艦那智、この達磨を一気飲みする!」

提督「いよっ、待ってました!」

足柄「いっき! いっき!」

羽黒「え、ええっ!? 妙高姉さん、一気飲みなんていいの?」

妙高「……楽しそうだから、いいんじゃないかしら」

羽黒(……! もしかして、皆酔ってる……の?)

―執務室―

提督「……気付けば雑魚寝してたんだが、ポーカーしてた事以外あんまり覚えてない……」

提督「というか、持ってきた酒のなかにくっそ度数の高い酒が紛れ込んでいたという」

↓2

~朝・朝潮型の部屋~

提督「みんな、良い朝だ。こんな日は外でラジオ体操をしよう」

朝潮「え、え?」

満潮「何……まだ五時よ?」

朝雲「というか、なんでいきなりラジオ体操なの」

提督「朝だからな」

霰「話がつながってない……」

荒潮「司令官だしね~」

提督「というわけで、今からすぐに外に集まれ! じゃあ、俺も準備してくるな!」ダッ

満潮「……放っておくのは駄目なのかしら」

霞「またうっとおしく部屋に来るわよ」

朝潮「うっとおしいというのは流石に……」

大潮「とりあえず、準備をしましょう!」

―庭―

朝潮「司令官、準備できました……えっ」

提督「では、ストレッチ体操を始める!」

朝雲「な、何あの恰好?」

大潮「司令官がストレッチマンの格好をしています!」

山雲「司令さんの趣味かしら~」

荒潮「あらあら~」

霰「なつかしい……」

満潮「懐かしいって、どう考えても気持ち悪さの方が先に出るでしょ」

提督「怪人秘書官め! 覚悟しろ!」

霞「は?」

提督「さあ、みんなでストレッチだ! 横になって、足をこうして……いーち!」

妖精A「にーい」
妖精B「さーん」
妖精C「しーい」

提督「ごー! ストレッチパワーが、ここにたまってきただろう!」

朝雲「今どこから妖精さんが出て来たの!?」

霞「最初から準備してたわね」

提督「食らえ怪人秘書官、ストレッチ……」

霞「あんまりふざけると、今日の業務全部あんたに回すわよ」

提督「…………」ポチッ

ターンターンタッタッタッタターンターンタッタッタッタ

提督「はい、背伸びの運動から。いっちにっさんしー」

朝雲「あっ、普通のラジオ体操も持って来てたのね」

霰「服はそのまま……」

大潮「動きやすそうでいいんじゃないでしょうか!」


提督「というか、皆驚きが小さかったな……」

霞「一番驚いてる朝潮は固まってて、他はカス司令官が少々奇行をしても気に留めないからよ」

提督「なるほど、つまり次は皆が驚くくらい凄い事をしろと」

霞「やめなさい」

―執務室―

提督「ふう、念の為まともなラジオ体操を用意しておいて助かった」

提督「しかしもっとすごい事をするか……朝潮が可哀想な気もするが、何事も犠牲もつきものだししょうがないな」

↓2

―執務室前―

金剛「今日は提督をティータイムに誘うデース! ……あれ、何か話声がするデース」


提督『――でだ』

比叡『ですけど、それは……』


金剛「提督と比叡? 一体どうしたんでショウ……」


提督『いいや、もう決めた。金剛には誅をする』

比叡『ひえぇ……手加減はしてくださいね?』


金剛「ちゅう……チュウ!?」

金剛(て、提督が私にチュウ!? こ、これはじっとして居られないデス。提督が私を求めていマース!)

ガチャ

金剛「提督ぅー!」

提督「ん、金剛か」

比叡「ひえぇ……お姉様、来てしまったんですね」

金剛「さあ提督! 私にディープなベーゼを!」

提督「ディープなベーゼ? 何言ってんだ、話は聞いていたんだろ」

金剛「チュウをするんでショウ?」

提督「聞いているじゃないか。さあ、こっちにこい」

金剛「わかったデース! ドキドキ……」

提督「何ドキドキ言っているんだ? ま、いいけど」ガシャン

金剛「……手錠?」

提督「さあて、貴様にする天誅は此処に比叡がいる事から推測できるだろう」

金剛「ちょ、ちょっと待つネ! もしかしてチュウって……」

提督「天誅ってさっき言っただろ。容疑は食べ物の横領な」

金剛「そっちだったですカ……って、身に覚えがないデス!」

提督「談話室においていたプリン……」

金剛「どうしてそれを……ハッ」

提督「比叡、あれを」

比叡「はい……すみません、お姉様」

金剛「あ、あれは出来心と言いマスカ……ア――」

~~~~~~~~

提督「実際の所、何十個と作ってあって、皆に渡すようだから少しくらい食べても良かったけど」

提督「どちらかといえば、一緒に作った比叡の方のプリンを何とかして消化したかったゆえの方便の方が強かったり」

↓2

初春「そう言えば」

提督「何だ?」

初春「改二になった者を祝っているそうじゃな」

提督「んー、時間と都合があった時だけな。出来てない奴も居るが、そう言う奴は他の子が何か開いてるだろ」

初春「そうじゃが……むう」

提督「……もしかして、祝ってもらいたかったとか?」

初春「そ、そんなことは無いぞ!」

提督「くくく、素直になればいいものを」

初春「う、うるさいのじゃ! ……」

提督「……それで?」

初春「貴様……言いたいことは分かっておるくせに……」

提督「えー、俺は初春の口からじゃないと何にもわかんないなぁ」

初春「ぐ……」

提督「ほら、あんまりプライドが高いと損をするぞー」

初春「な、ならばよいっ! ふんっ!」

提督「ありゃ、すまんすまん。やり過ぎた」

初春「別に、妾のこと何てどうでもいいんじゃろ!」

提督(完全にへそ曲げてる……そういえば、あそこの棚にいい物があったっけ)

初春「もうよいわ! 妾は部屋に戻る!」

提督「ちょっと待ってくれ。初春」

初春「なんじゃ! どうせ、どうでもよい事じゃろう!」

提督「扇子。オーダーメイドで頼んでいたんだ」

初春「なに?」

提督「やっぱり改二に適した良い物をあげようと画策していたんだが……間に合わなくてな」

初春「ふむ……」

提督「機会を狙っている内に、渡しそびれて」

初春「……もうよい」

提督(やっぱこれじゃだめだったか……)

初春「貴様の気持ちも、その、分からんでもないしな」

提督「うん?」

初春「時期を過ぎれば渡しにくくなるという物。よく分かった」

提督「……」

初春「ま、まあ、遅くはあったが、貴様の行為を受け取らなければ不遜になるじゃろう。じゃから……」

提督「あ、うん。はいこれ」

初春「ふ、ふん、結構良い柄じゃな」

提督「オーダーメイドしてたことは本当だし……」

初春「今後は、気にせずとも良いからな」

提督「……」

初春「ではな……ふふん♪」

バタン

提督「……まあ、一応オーダーメイドしてたものだが、改二に合わせていたというのは嘘だ」

提督「忘れていたから、お詫びに作ったものだし……なんだ、目的は達成されたな」

↓2

―食堂―

提督「夏バテは大変だよな」

鈴谷「夏バテになった事無いから分からないけど」

提督「……夏バテは大変なものだ」

鈴谷(言いなおした)

提督「もし夏バテになってしまうと、常に初雪や望月と同じような感じになってしまう」

鈴谷「提督は二人をなんだと思ってるワケ?」

提督「大事な部下」

鈴谷「そう言う返しをすると嫌われるよ」

提督「じゃあ何て答えれば……って、それはともかく、今から夏バテに効くカレーを作ろうと思う」

鈴谷「カレー? カレーならいつも作ってるじゃん」

提督「いつものようなカレーではない。夏野菜カレーだ!」

鈴谷「夏野菜カレーなら、この前食堂で出たけど」

提督「え? マジ?」

鈴谷「マジ」

提督「……というわけで、一緒に夏野菜カレーを作ろうか」

鈴谷「自分に都合が悪くなるとすぐにスルー……え、一緒に?」

提督「鈴谷カレー好きだろ」

鈴谷「好きだけど、作るの? 一緒に?」

提督「二人だけのカレーを作ろう!」

鈴谷「え、えー……別に、いいケド……」

~~~~~~~~

提督「そして、完成した物がこれになる」

鈴谷「何か飛んだ気がするけど…」

提督「気のせいだ。俺達は、きちんとこのカレーを作った」

鈴谷「じゃあ提督、味見してみて」

提督「俺から行くのか? むう……では」

鈴谷「どう?」

提督「……普通」

鈴谷「普通って、もうちょっと言える事はあるでしょー」

提督「鈴谷も食べてみればわかるって」

鈴谷「えー。ん…………食堂で食べた物の方がおいしい」

提督「そりゃそうだろ。これ単体でどう思うかだろ」

鈴谷「……普通じゃん」

提督「だろ?」

―執務室―

提督「逆に言えば、いきなり作って普通程度の味が出せたのが凄い……いや、レシピ通りに作れば当たり前なんだけど」

提督「鈴谷もあれでカレー作るの上手だし。心配することは何も無かったかな」

↓2

秋月「司令、相談良いですか?」

提督「秋月から相談なんて珍しいな。なんだ、何でも話してみろ」

秋月「貸してください!」

提督「……」


―秋月型の部屋―

提督「あんな生活してるのに金が無いかと思った……知恵を貸してほしいね」

秋月「私の妹が着任したのでお祝いをしてあげたいと思ったのですが、どうすれば分からないもので……」

提督「お祝いかー。お祝いなんものは、こう、パーッと……」

秋月「ぱーっと?」

提督(まてよ、秋月の妹だし、もしかすると質素な方が良いのか? こればかりは性質によるものだし……)

提督「……よし、任せろ! 秋月にも動いてもらうことになるぞ!」

秋月「はい!」

~~~~~~~~

照月「秋月姉が呼んでるって聞いたけど……」

秋月「えいっ!」パーン

照月「わっ! 敵襲!?」

提督「落ち着け、ただのクラッカーだ」

照月「提督? あれ、どうしたのこれ」

秋月「あの、照月のために準備したの。どう?」

照月「秋月姉と提督が? ……」

秋月「迷惑だった……?」

照月「……ううん、嬉しいよ、秋月姉!」

秋月「本当? 良かった……」

提督「さあさあ、そんなところに突っ立ってないで、こっちに来て座ろうじゃないか」

照月「うん? あ、この料理どうしたんですか?」

提督「秋月と一緒に作ったんだ。照月の着任を祝ってな」

照月「こんな豪勢な料理を用意してくれるなんて、本当にありがとうございます!」

提督(豪勢……? やっぱり、作る品は秋月に任せて正解だったか)

秋月「じゃあ、よそってあげるから、そこに座ってね」

照月「うん!」

提督「あ、俺大盛りね」

照月「照月姉、私もー!」

秋月「はい、分かりました」

―執務室―

提督「秋月も初めての妹だし嬉しいだろうな」

提督「でもああいう祝い事に混ざっていい物なのかな、とは思う。混ざるけど」

↓2

白露「提督ー! 福引で花火が当たったから、一緒にしようよ!」

村雨「凄いものは無いけど、少しくらい楽しめると思うわよ!」

提督「花火か、いいな!」

白露「じゃあ、夜になったら外に出てね!」

提督「ちなみに、どんな花火があるんだ?」

白露「えっとねー」

村雨「袋から見えるのは、線香花火とかの手持ちだけみたい」

提督「どれどれ……ああ、ススキ花火やスパーク花火……多分変色花火か? とかもあるな……普通の花火セットか」

白露「詳しいね、提督」

提督「花火は大好きだからな」

―夜・母港―

提督「またせたか?」

白露「今来たところ!」

村雨「だから、花火をする為の準備がまだよ」

提督「バケツと火だろ。ちゃんと用意してきた」

白露「用意してくれたんだ。ありがと、提督!」

村雨「じゃあ、まずは吹き出すタイプの花火からやりましょ」

提督「そうだな。はい、チャッカマン」

村雨「ありがとう。……それっ」シュワァアア

白露「あたしにも火を頂戴!」

村雨「いいけど、向きは考えてよ。って、その方向だと……」

提督「あつっ! ちょ、こっちに向いてるって!」

白露「あ、ごめんね」

提督「白露、花火をするときは周りも気を付けてくれないと怪我するぞ」

白露「はーい」

村雨「提督、服の端ちょっと燃えてる……」

提督「え? ……ぬわー!」ダッ バシャァン

白露「海の近くで良かったね」

村雨「こうなる可能性を考えてたからなんだけどね。でも、本当になるなんてね……」

白露「タオルも持って来てて良かったよね」

提督「そう言うところに気を回せるなら、最初から防げただろ……」

~~~~~~~~

村雨「やっぱり最後は線香花火よね」

提督「分かってるな。好みがあるから、絶対そうしろとは言わないけど」

白露「あたしも線香花火は好きだよ」

村雨「嫌いって言う子は少ないんじゃない?」

白露「だよねー」

提督「これ終わったら片付けだぞ。分かってるよな」

村雨「提督ー、まだ線香花火の途中なんだから、風流の無い事言わないで」

白露「片付けとかは、終わった後に考えよう! 提督らしくないよ!」

提督「た、確かに……! くっ……線香花火で気分がしんみりしてしまったからか!」

村雨「それは違うんじゃないかしら」

―執務室―

提督「最近自分らしくない気のまわし方が多いな……うーん、少し反省するべきだな」

提督「白露とかともうちょっと話しても良かった。あんまり話す機会ないしな……」

↓2

―吹雪型の部屋―

提督「叢雲、俺の懺悔を聞いてくれ」

叢雲「なにを突飛なことを言っているのよ」

提督「最近の自分の行いに、反省がしたいんだ!」

叢雲「まず、いきなり懺悔とかしてくる時点で反省する気が無いように思えるんだけど」

提督「本気なんだよぉ~! いいじゃんかよぉ~」

叢雲「すり寄って来ないで! はぁ……とりあえず、言うだけ言ってみなさい」

提督「はいきた! 叢雲様天使!」

叢雲「そういうのはいいから、早く言いなさい」

提督「はーい。最近なぁ、ふざけ度が足りない気がするんだ」

叢雲「はい、さようなら。もうそんな用事で来ない事ね」

提督「まてまてまて。割と本気の懺悔なんだ!」

叢雲「まったく……」

提督「そのせいか、皆の反応も大分薄くなっている」

叢雲「慣れてるだけじゃない?」

提督「これじゃあ、皆を楽しませることが出来ない!」

叢雲「誰も楽しんでいないと思うのだけど」

提督「だから、今後はもうちょっと突飛な行動を増やしていこうかと……」

叢雲「誰も望んでないからやめなさい」

提督「いや、懺悔したいだけで返事とかいらないから」

叢雲「……」イラッ

提督「そんなわけだから、心を入れ替えて今後とも頑張る」

叢雲「ふん、勝手にすればいいじゃない」

提督「じゃあ叢雲、この辺りで退散するな!」

叢雲「本当に用事はそれだけなのね」

提督「ああ」

叢雲「ふうん……」

提督「……そうだ、早速だが、叢雲と遊ぶか」

叢雲「は、はぁ? 何よ、いきなり」

提督「さっきいっただろ、突飛な行動を増やすって」

叢雲「それに付き合うなんて一言も……あっ! 腕引っ張らないで!」

提督「ははは! まずは庭でなわとびだ!」ダッ

叢雲「やる事は凄く子供っぽいわね!」


吹雪(……嫌なら振りほどけばいいんじゃないかなーって、いうのは野暮かな)

―執務室―

提督「なんだかんだで付き合ってくれるし、秘書官と違ってツンデレ気質だった」

提督「懺悔してる時もアンサーくれてたし、結構面倒見もいいよな」

↓2

―談話室―

提督「……」

春雨「スー…スー…」

提督「なるほど、なるほど。これはつまり、イタズラをするチャンスと言う事だな」

春雨「ぅん……」

提督「今のは肯定と受け取っていいんだな。よしよし……じゃあ、額に肉とでも……」

「甘いぴょん!」

提督「何奴!」

卯月「ふっふっふー、イタズラの伝道師、うっずきっだぴょん!」

提督「なんだ、うーちゃんか」

卯月「なんだとは何だぴょん!?」

提督「それで、一体何の用だ。今イタズラするので忙しいんだが」

卯月「それぴょん!」

提督「それ?」

卯月「司令官はイタズラが甘いぴょん! うーちゃんが、真のイタズラという物を見せてあげるぴょん!」

提督「いや要らないし。というか、起きるからもうちょっと静かにしろ」

卯月「むー……」

提督「しかし、どんなイタズラが良いか……」

提督(うーちゃんにならう訳じゃ無いが、確かに額に肉は安直すぎるな……もうちょっとかわいげのあるイタズラとか……)

提督「……そうだ、髪型を変えておいてやろう」

卯月「髪型ぁ? ぷふー!」

提督(微妙に頭に来る笑い方だな……)

提督「だが、俺はこれでいく。ふん、可愛げがあるくらいが丁度良いんだ!」

卯月「でもつまんないぴょん!」

提督「ええい、そんなもの知るか! じゃあさっそく……」スッ

卯月「だったら司令官にイタズラしてやるー! ぴょん!」ピョン

提督「突然飛び乗るな……っとっと! ――――」グラッ

卯月「司令官がうーちゃんを無視するから――え」

提督「――」
春雨「ん……」

卯月「あわ……あわわわ……しれーかんが……」

提督「――っは! なな、何という事を……」

春雨「ぅ……なにか、騒がしいなぁ……あれ、司令官……?」

提督「こうなれば、腹を掻っ捌いて謝罪を……!」

卯月「わー! やめるぴょん! 今のはうーちゃんが悪かったし、ただの事故ぴょん!」

春雨「え? え……?」

―執務室―

提督「……まあ、ぶっちゃけほっぺならセーフだよな。そんな謝る事でもないし」

提督「というか、気付かれてなかったし、言わなきゃいいだけか。うーちゃんは何か誤解してたっぽいけど」

↓2

―睦月型の部屋―

提督「如月について相談いいか」

睦月「睦月に? いいよー」

提督「そのだな……如月の言動を止めることはできないだろうか」

睦月「? どういうこと?」

提督「ほら、なんていうか……誘ってくるようなこと言ってくるだろ? ああいうの、よくないと思うんだよ」

睦月「提督は純情だにゃー」

提督「いや、あれ外でやられたとき、危うく警察を呼ばれそうになってな……」

睦月「どうして?」

提督「俺にもよくわからんが、あんまりよろしくないらしい。そんなわけで、何か案はないものかと」

睦月「うーん……あっ、それなら――」

~~~~~~~~

如月「あら司令官?」

提督「お邪魔している」

如月「ふふ、ゆっくりしていってね」

提督「今まさに如月のプライベートは結構普通なんだと思い知っているところだ」

如月「如月のプライベートが気になるの?」

提督「いや、あんまり男にそういうことを言うのはよくないと思うぞ」

如月「司令官になら特別に教えてあげても……え?」

提督「ただでさえ今はセクハラやパワハラなんかも多いんだ。隙を見せるのはよくない」

如月「こ、こういうことをするのは司令官だけですから」

提督「だとしてもだ。勘違いされたらどうする」

如月「あら、私は司令官に勘違いされる分には、構いませんよ?」

提督「なら、正面から誘ってくれ」

如月「え?」

提督「俺はどうやら鈍感らしいからな。遠まわしに言われても、如月が何を伝えているのかわからない」

如月「それは、つまり……」

提督「もし何か伝えたいことがあるのなら、分かりやすく、率直な言葉で伝えてくれ」

如月(も、もしかして、これはチャンス? な、なら、司令官の言うとおり……)

如月「すー……はー……」

提督「……」

如月「し、司令官、如月と……その……お食事、してくれない?」

提督「もちろん、いいぞ」

如月「……うふっ♪」


睦月(よくわかんないけど、丸まったのかな? 正直に伝えればいいって言ったの、正解みたいでよかった)

―執務室―

提督「案外かわいい願い事で拍子抜けした」

提督「如月も、言動はあれだが意外と奥ゆかしいのかもしれんな」

下2

―売店―

提督「久しぶりにコスプレしようかなー。何かある?」

明石「うーん……そういえば、こんなものが出来てますね」

提督「これは……また長10cm砲ちゃん?」

明石「ちっちっち。ちょっと違いますよー」

提督「うん? ……なんか、ちょっとごつい?」

明石「ふふふ、これは照月ちゃんの長10cm砲ちゃんバージョンなんです!」

提督「な、なんだってー!」

明石「ぶっちゃけ、元々のから少し改装をしただけなんですけど」

提督「まあ、形は同じだしな」

明石「それで……買います?」

提督「買おう」

―廊下―

「照月ー!」

照月「提督? ……ひっ!!??」

八頭身照月ver長10cm砲ちゃん「はっはっは! 長10cm砲ちゃんが会いに来てやったぞ!」

照月「きゃぁああああああああ!!」ダッ

八頭身照月ver長10cm砲ちゃん「む、どこに行く。……追いかけっこか!」ダッ

~~~~

照月「な、何で鎮守府に変態が……? と、とりあえず、談話室の方に……」ガチャ

八頭身(ry「逃げられると思ったか?」

照月「きゃぁ!? な、なんで先に部屋にいるのぉ!?」クルッ ダッ

~~~~

照月「倉庫の方なら……」オドオド

八頭身(ry「逃げられると思ったか」

照月「な、なんでぇ!?」ダッ

―秋月型の部屋―

照月「はあっ……はあっ……気が付けばいなかったけど……」

秋月「どうしたの? そんなに息をきらして」

照月「聞いて秋月姉! ついさっき廊下で――」

八頭身(ry「ずず……はあ、秋月のお茶は美味しいな」

照月「――ひっ」

秋月「もう司令官、そんな格好をしているから、照月が驚いちゃってるじゃないですか」

照月「……しれ、いかん?」

八頭身(ry「部屋に戻ったらな。それで照月」

照月「えっ? え?」

八頭身(ry「はいタッチ。鬼ごっこは俺の勝ちだな」

照月「???」

秋月(かみ合ってない感じがしますね……それにしても、司令官がいきなり窓から来た時は驚きましたよ)

―執務室―

提督「大体パルクールの要領で、廊下を使わずに追いかけてみた。壁をクライミングしたのは流石に初めてだったけど」

提督「最後に秋月の所に駆け込むのは分かってたから、追い詰めるのは簡単だった」

↓2

―食堂―

曙「市販のアイスは久しぶりだわ。ふふっ」パキッ

提督「何のアイスだ?」

曙「!? な、なによ!」

提督「そう敵意を向けるなよ。何を食べてるのか気になっただけだって」

曙「ふん、何でもいいじゃない」パクッ

提督「ほう、チューペットか」

曙「チューペット?」

提督「そのアイスの名前だが……知らなかったのか?」

曙「し、知ってたわよ!」

提督「ふーん……」

曙「な、なによ、言いたいことがあるなら言えばいいじゃない!」

提督「呼び名、どうせちゅーちゅーって言ってたんだろ? 可愛い言い方するなぁ」

曙「言って無いわよ!」

漣「いえ、言ってましたよご主人様」

曙「漣! 余計な事言わないで!」

提督「でも、ちゅーちゅー言っている曙を想像すると……」

漣「可愛いですよね!」

提督「そうだな!」

曙「て、適当な事言わないで!」

提督「ほほう、そんなことを言うのは、この可愛い唇か?」スッ

曙「ひゃぁっ!? さ、触るなクソ提督!」

漣「とか言っちゃいまして、ご主人様が居るのにこんな短いスカートをはくなんて、誘ってるんじゃないの?」サワッ

曙「漣も調子に乗らない! てかめくるな!」

提督「曙は可愛い反応するなぁ」

曙「あーもう! 朧助けて!」

朧「調子に乗っている二人を相手にするのは、ちょっと嫌かな」

曙「もー!」

潮「あの、提督……」

提督「ん? 潮も混ざるか?」

潮「今日の限定カツカレー、無くなっちゃいますよ?」

提督「何だと! こうしちゃおれん、そのために食堂に来たというのに!」ダッ

曙「はあ……何だったのよ……漣」

漣「ビクッ」

曙「後で一発、返させてもらうわよ」

―執務室―

提督「机の上に常温で解凍されたチューペットが……何この地味な嫌がらせ」

提督「曙はもっとよしよししたかったけど、時間的な都合がね」

↓2

―遊戯室―

提督「では、今からバレーボールをする」

高翌雄「バレーボール、ですか」

摩耶「というか、こんな部屋あったか?」

提督「即席で体育館っぽい内装で作ったんだぞ。今更やめるとかやめてほしいぞ」

妙高「はあ、わざわざ作ったんですか……」

足柄「というか、なんでそんな本気なの」

提督「ほら、今バレーボールの大会やってるだろ。だからな」

鳥海「司令官さんはいつもメディアに感化されてますね」

提督「いいじゃないか。バボちゃんだってかわいいしな」

羽黒「バボちゃん?」

バボちゃん「……」フリフリ

愛宕「あらあら~」

那智「かわい……はっ。な、何でもないぞ」

~~~~~~~~

提督「点数は14点で一セットな。あんまり長いと疲れるだろうし。あと四人だしポジションとか無しな」

那智「相手は高雄型か……14点ならすぐに終わってしまいそうだな」

摩耶「始まる前から敗北宣言か? 面白くねえな」

那智「……いいだろう、ならば受けてみろ。このサーブを!」シュッ バシュッ

摩耶「な……」

提督「あ、あれは大王様のような強烈なジャンプサーブ! 摩耶、反応できなーい!」

那智「どうやら口だけだったようだな」

摩耶「あ、あんなの返せるか!」

高雄「では、私に任せてもらいましょうか」

摩耶「ああ……」

那智「ふん、人が変わっても同じ事」

妙高「バボちゃん見れて興奮するのは分かるけど、あんまり調子に乗るのは駄目よ」

那智「こ、興奮などしていない!」シュッ バシュ

高雄「あら、甘いサーブですわよ」ポン

愛宕「いい高さね。えいっ」パァン

提督「おお、レシーブでクイックか! てか音やばいけどボールだいじょうぶか」

那智「なんだと……」

妙高「だから言ったのに」

足柄「でも、こうじゃなきゃ面白くないわ。楽に手に入る勝利何て、欲しくは無いもの」

羽黒(つ、ついていけそうにないかも……)


バボちゃん「……いやー、しかし、凄いですね」

提督「確かにな。……あ、バボちゃんは喋っちゃダメだぞ」

バボちゃん「……」

―執務室―

提督「ボールが耐えられなくなって終了した。一応妙高型優勢ではあった」

提督「しかし、バレーボールは本当にすごかった。他のスポーツもうまかったから選出したが、正解だった」

下2

―庭―

提督「よーし、来たか舞風」

舞風「庭に出て、いったい何をするんですか? ダンス?」

提督「ダンスでもいいが、夏も終わるから、夏にしかできないことをしようと思う」

舞風「夏にしかできない事? ……花火、とか?」

提督「花火もいいが、今日は虫取りをしようと思う」

舞風「む、虫とり?」

提督「そうだ。セミは夏にしか出ないからな。ついでに……」ゴソゴソ

舞風「せめて、虫とりが好きそうな子を呼べばいいのに……あれ、何の用意をしているんですか?」

提督「たき火だ。セミを焼くためのな」

舞風「…………」

提督「その顔は察しているような顔だな」

舞風「……私は見ているだけでいいですよね」

提督「想像ついていて付き合ってくれるのなら、舞風も付き合い良いよな」

~~~~~~~~

提督「セミはコツさえつかめてれば、難無く捕まえられる。というわけで、アブラゼミをつかまえた」

舞風「火の準備は出来てますよ」

提督「流石だ舞風。わざわざ火の準備までしてくれるなんてな」

舞風「早く済ませて、提督とダンスの時間にしたいからね!」

提督「え、そんな約束したっけ……まあいいか。では、今から焼きまーす」

舞風「本当に、その……口にするの?」

提督「いや、意外と美味しいぞ。とはいえ、普通に焼くだけだと、風味が消えてうまみも減るが」

舞風「じゃあ、なんでわざわざ?」

提督「夏も終わるからな」

舞風(本当にそれだけなんだ……)

提督「ではさくっと焼いて……いただきまーす」パリパリ

舞風「ど、どうですか?」

提督「……うん、そこそこ」

舞風「そこそこ?」

提督「から揚げとかにするともっと美味いんだが、さすがに焼いただけだとな……」

舞風「じゃ、じゃあ食べたら動きましょ~。はい、お手を取って」

提督「そうだな。じゃあ、この後は踊るとするか」

舞風「はい!」

―執務室―

提督「食べるなら幼虫を素揚げだな。羽はちゃんと取った方がいい」

提督「というか、舞風には悪いことしたな……虫を食べるなんて、今じゃ殆ど無いのに」

↓2

―公園―

陽炎「今日も付き合わせて悪いわね」

提督「なに、限定販売ならば仕方ないさ」

陽炎「お礼に……あ、あそこでワッフル売ってるし、奢るわよ」

提督「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうか」

陽炎「ええ、その辺に座って待ってて」タッタッタ

提督「その辺、と言っても…………ベンチは埋まってるな……ん?」

~~~~~~~~

陽炎「待たせた……って、どこに座ってるの」

提督「ブランコ」

陽炎「もう、司令は子供っぽいんだから」

提督「いやいや、ブランコは凄いんだぞ。休憩代わりに座れるし、遊べる」

陽炎「ベンチとして使うのは子供の邪魔になるからやめなさい」

提督「子どもが来たら察して譲るさ。それより、陽炎」

陽炎「何よ」

提督「隣が空いてるだろ。座らないか」キコキコ

陽炎「……他に空いてないし、子供が来るまでだけよ」

提督「とかいって、実は座りたかったとか」

陽炎「そ、そんなわけないでしょ。はい、ワッフル」

提督「さーんきゅ!」

陽炎「パクらない!」

提督「はっはっは」キーコキーコ

陽炎「……」キコキコ

提督「んー、美味しいな」ビュンビュン

陽炎「気に行ったのなら、良かった」キーコキーコ

提督「あんまりワッフルは食べないからなー。型とか無いから自力じゃ作りにくいってのもあるし」ビューンビューン

陽炎「へぇ、珍しいわね」ビュオンビュオン

提督「!? ……まあ、俺だってっ、何でも作ってるわけじゃ無いしっ」ブオンブオン

陽炎「そうなんだっ!」ブンッブンッ


黒潮「あれ、陽炎と司令やん」

不知火「一回転しそうな勢いね。危ないし、見なかったことにしましょう」

黒潮(あー、関わりたくないだけなんやなー)

―執務室―

提督「ワッフル食べながら喋りながらブランコを漕ぐと言う高等技術」

提督「実際、ワッフル落ちてもおかしくなかったよな」

↓2

―吹雪型の部屋―

提督「白雪ー」

白雪「はい、私ですか?」

提督「白雪にプレゼントだ」

白雪「わ、なんでしょう」

提督「サボテンだ」

白雪「……え?」

提督「ミニサボテンだ」

白雪「……」

~~~~~~~~

白雪「と、いうわけで貰ったんだけど……」

叢雲「本当に司令官ってたまによく分かんないことするわよね」

初雪「サボテンは意外と大変……」

磯波「あ、聞いた事ある。梅雨時期は湿気多いから水は少なくとか、季節で水をあまりあげなくても良いこともあるとか」

深雪「え、サボテンの癖に水いるのか」

吹雪「結構枯らす人も多いみたいだよ」

白雪「そうなんだ。育てるの、大変かも……」

吹雪「駆逐艦も飽和してきて出撃も減ったし、他に趣味を見つけたらっていう、司令官の気遣いだったりして」

叢雲「それはないわね」

白雪「司令官自身も、そんな感じじゃ無かったしね」

吹雪「だよねー」

白雪「でも、そっか……うん、今から売店で、育て方の本が無いか聞いてくる」

―売店―

白雪「明石さん、サボテンの育て方が書いてある本は無いですか?」

明石「サボテン? ……あ、ああ、あるけど」

白雪「本当ですか!」

提督「お、あげたサボテン育てる気になってくれたのか」

白雪「司令官。せっかくのプレゼントですし、ちょっと、育ててみたいと思ったんです」

提督「うむ、喜んでくれてなにより」

明石「はい白雪さん。これがその本」

白雪「ありがとうございます。これお代です。では、さっそく部屋に戻っていろいろ見てみますね」スタスタ

提督「大事に育ててくれよー」

明石「……あれって、鎮守府の景観を良くするために、花を買って来てほしいって霞さんに言われて買ってきた奴では?」

提督「いや、サボテンじゃ景観が良くなるわけないでしょって怒られたから、プレゼントしたんだ」

明石「理由が酷いですよね」

提督「……」

―執務室―

提督「サボテンだって可愛い花を咲かせるんだよ。時間がかかるけど」

提督「そう思えば、吹雪型はあんまり相手にしてあげれてないし、丁度良かったのかもしれない」

↓2

―食堂―

提督「おめでとー!」パァン

赤城「えーっと……何がでしょうか?」

提督「改二だよ改二。一航戦と二航戦の改二が出来るようになるって」

赤城「え?」

飛龍「改二、ねぇ」

蒼龍「(どう思う、加賀さん)」

加賀「(姉妹艦でもない私達が同時に来るなんてありえないでしょう。また提督のドッキリか、勘違いでしょうね)」

提督「おいおい、何隅っこで内緒話をしているんだ。パーッといこうぜ、パーッと」

飛龍「パーッとって、もしかして食堂陣取ってるけど、まさか他にも呼んでる?」

翔鶴「そうですよ。先輩方の改装という事で、少しばかり規模が大きいんですよ」

雲龍「まだ今は私達だけだけど」

蒼龍「(早く止めないとこれ、下手すると私達も恥をかくことになるかも)」

加賀「(鎮守府を巻き込むのは本意ではないわね……)」

加賀「すみません、提督――」
瑞鶴「ねえ、提督さん」

提督「なんだ瑞鶴。ん? 加賀も何か口に出そうとしてたな」

加賀「……いえ、此処は譲ります」

瑞鶴「珍しいわね……それで提督さん、四人が同時っておかしくない?」

提督「そうか?」

瑞鶴「二航戦の二人は姉妹艦だから同時は分かるけど、一航戦の二人は姉妹艦ですらないじゃない」

提督「……たしかに」

瑞鶴「手間が違うし、ガセ情報なんじゃない?」

赤城「(へえ、なかなか目ざといですね)」

加賀「(嫉妬で言っただけじゃないかしら)」

飛龍「(それでもこういう場面は褒めてあげなよ)」

蒼龍「(加賀さんが五航戦の子に厳しいのは分かってるけどね)」

瑞鶴「それで、どうなの?」

提督「う、うーん、それは……」

霞「カス司令官、此処に居たのね」

提督「秘書官じゃないか。ちょうどいい、改二の事だが……」

霞「改二? 妖精さんが言ってたことなら、五航戦の改二の事よね」

提督「……」

霞「それよりあんた、演習命令出したなら、ちゃんと編成しときなさいよ。あの子達困ってたわよ」スタスタ

提督「……」

加賀「はぁ、提督はやはり提督でしたね」

翔鶴「そ、その言葉は……す、すみません。今はフォローできそうにありません」

赤城「(加賀さんが悪態をつく結果になったわね)」

飛龍「(一発逆転されたような気分だろうしね)」

蒼龍「(後輩に抜かれたってことでもあるしね)」

瑞鶴(改二……ふふっ)

雲龍(改二の装備、貸してくれるくらいは……)

―執務室―

提督「噂程度の情報を鵜呑みにしてはいかんな」

提督「とりあえず、適当な祝い事にすり替えて、なんとか切り抜けられたが……」

↓2

―長良型の部屋―

提督「……」ガチャ

由良「な、なに? 提督さん?」

提督「……」スタスタ

由良「その、無言で近寄られると怖いんだけど」

提督「……」ナデナデ

由良「ひゃっ!?」

提督「失敗したんだよ~、慰めてくれよ由良~」

由良「慰めるって……じゃ、じゃあなんで撫でてるの」

提督「由良の髪のさわり心地はいいから、これが俺にとっての慰めなんだ」

由良「何それ……別に良いけど」

提督「ふんふ~ん♪」シュルシュル

由良「え、提督さん、髪解くの?」

提督「ちゃんと結い直してやるから、許してくれ」

由良「……ちゃんと直してね?」

提督「はいはいーっと」シュルッ

由良「提督さんって、髪弄るの好き、なの?」

提督「んー? なんでそう思うんだ?」

由良「だって、前にも私の髪、楽しそうに触ってたでしょ?」

提督「あのときは好きと答えたはずだが」

由良「もしかして、私には髪だけなのかなって、そう思って……」

提督「はっはっは、面白い事を言うな」スッスッ

由良「別に、面白い事を言ったつもりは無いんだけど……」

提督「髪なんて、由良の魅力の一つに過ぎない。こうして俺が髪を弄るのは……」ササッ

由良「弄るのは?」

提督「単にこの行為が好きなだけだからだ」カチャカチャ

由良「……」

提督「なんだ、呆れたか?」サー

由良「ううん、提督さんらしいと思って、ね」

提督「そうか」

由良「それで、話をしている間に、何をしているの?」

提督「ん? 髪の手入れのお手伝い」

由良「……本当に提督さんらしい、ね」

―執務室―

提督「最後の微妙な顔は何だったんだろうかね」

提督「でもまあ、由良の髪を弄りたくなるのはしょうがない。うん」

↓2

霞「ねえ」

提督「ん? どうした」

霞「モンドセレクションって、知ってる?」

提督「ああ、あの製品の審査をする団体だろ」

霞「金賞受賞ってのが来てるんだけど」

提督「――え?」

霞「だから、金賞。何送ったのよ」

提督「きん、しょう……」

霞「……その反応だと、間宮さんのじゃないわよね。鳳翔さんのでも」

提督「……比叡カレーだ」

霞「なん、ですって……!」

~数日前・金剛型の部屋~

提督「最近面白い事ないなぁ」

比叡「では、また料理の練習に付き合ってください!」

提督「え゛」

比叡「嫌そうな声出さないでください!」

霧島「暇なんでしょう、付き合ってあげたらどうですか?」

提督(霧島の謎の援護が入って来たな……金剛と榛名がいないし、止めてくれそうな奴はいない……しかし、味見でもあれは食べたくない!)

提督「い、いいだろう。どうせなら、とある機関に応募してみないか」

比叡「応募、ですか?」

提督「ああ、いい案だと思うんだが」

比叡「……」

提督(だ、だめか? やはり味見は避けられぬ運命なのか?)

比叡「いいですね! 自分の実力を試すことは大事ですし!」

提督「よし、じゃあ、準備するからな――」

~~~~~~~~

提督「――って、言った奴だけど」

比叡「それがどうかしたんですか?」

提督「……比叡カレーが、モンドセレクションの金賞を受賞した」

比叡「ひ、ひえー! ……モンドセレクションってなんですか?」

提督「とにかく、食品として認められたって事だ」

比叡「そうなんですか! ……食品として認められた?」

提督「ごほん。まあ、どこでどう評価されたのかは知らないが、嬉しい事ってことだ」

比叡「でも……それでも不思議ですね」

提督「まあな。商品としての項目は明石と霧島に任せたんだが……何か知ってるか?」

霧島「全部正直に書きましたよ」

提督「全部?」

霧島「はい、大衆には劇物ですが、一部の物には歓喜の品だとも」

比叡「げ、劇物ってなに!?」

提督「モンドセレクション……謎に包まれている」

―執務室―

提督「比叡の伝説がまたここに一つ……」

提督「まあ、商品展開も少しだけだがしてみるか……金賞取ったし」

↓2

―陽炎型の部屋三号室―

提督「――っていう事があったから、磯風の料理も送ってみたいと思う」

浜風「死人が出ますよ」

磯風「失礼な。そんな被害を出したことは無いだろう」

提督「いや、あの比叡カレーをだしても大丈夫だったんだぞ。おそらく、彼の団体には凄まじいお人が居るに違いない」

浦風「希望的観測はようないと思うんじゃけどなぁ……」

提督「ていうか、お前たち食べたことあるのか?」

浜風「物事を知るには、体験するのが一番早いんですよ」

谷風「ぶっちゃけマズイ!」

提督「本当にぶっちゃけたな」

浦風(マズイじゃすまんかったんじゃが……いや、言わんでええか)

磯風「しかしモンドセレクションか……商品に対して評価されるのだったか。いいのか?」

提督「その辺は明石とかにポイーで」

谷風「適当だねぃ」

浜風「……なんにしても、私達に被害が被らないのであれば、好きにしていいですよ」

浦風「困るのは提督さんじゃけえのう」

提督「困る? どういう……」

磯風「よし、そこまでいわれたら、後には引けないな。待っていろ司令、とびきりおいしいシチューを作って来てやる」

提督「ん? いや、送る前に応募をしなくちゃだから、今じゃなくて……」

磯風「善は急げだ、いってくる!」ダッ

提督「あ、ちょ……」

浜風「ちゃんと作ってきた料理は食べてくださいね」

谷風「せっかく作った料理を食べてくれないってのは、悲しいもんだからねぇ」

浦風「同感じゃ」

提督「なん……だと……」

~~~~~~~~

磯風「できたぞ!」

提督「シチューなのに赤いんだけど」

磯風「緑のシチューとかあるだろう。そういう物を作ってみたつもりだ」

提督「いや、あれは野菜を入れてるからなんだけど……赤って……」

浦風「唐辛子、とか?」

谷風「赤だけならトマトとかでも出せるねぇ」

提督「そう言う色には見えないんだけど……なんだか、えーっと……そう、血の色みたいな赤」

浜風「でも食べるんですよね」

提督「……」

磯風「……」

提督「ええい、ままよ!」パクッ

磯風「ど、どうだ?」

提督「…………オイシイヨ」

磯風「本当か! 比叡さんに教えて貰ったかいがあったというものだ」

浜風(あれ、間違いなく正気じゃないですよね)

浦風(ありゃあ、気ぃ失うとるの)

谷風(大丈夫か? 一応、胃薬用意しとこうか)

―執務室―

提督「暫く記憶が無いんだが……磯風の料理を食べてから何をしていたんだ……」

提督「とりあえず、磯風の料理は送る事にするか。毒物として処理されなきゃいいんだけど」

↓2

―温泉旅館―

提督「しっかし、ここもよく福引で当てるなぁ」

陽炎「前にも来たことあるの?」

提督「まあ、何度かな」

陽炎「ふうん……じゃあ、混浴だってのも知ってるわけね」

提督「そうだな。とはいえ、混浴風呂に行かなければいいわけだが」

陽炎「やっぱりそうなの。じゃあ、そうするわ」

提督「というか、よく知ってたな。調べたのか?」

陽炎「そりゃ、一応一泊するわけだしね。事前情報は大切よ」

提督「言われてみれば、調べる方が当然か……」

提督(……今まで言った奴の中にも、実は知ってた奴が居たのか? わからん……)

~~~~~~~~

陽炎「ふう、和風の旅館だけあって、食事も純和風ね。なかなか食べる機会が無いから新鮮だったわ」

提督「けっこう美味しいしな」

陽炎「さてと……そろそろお風呂に行こうかしら」

提督「混浴する?」

陽炎「怒るわよ?」

提督「冗談だ」

陽炎「もぅ……」

提督「でも、俺も風呂に行くとするよ」

陽炎「そう? じゃあ、一緒に行きましょ」

提督「ええと、必要なものは……」

陽炎「準備していないの? ……はい、タオルと着替えはこれ。袋はここにあるのを使いなさい」

提督「逆に陽炎は準備が出来過ぎだろう……」

陽炎「性分なのよ」

~~~~~~~~

提督「さて、寝る時間だが……」

陽炎「どうしたの?」

提督「このまま寝るには惜しいと思わないかっ!?」

陽炎「お話でもしたいの?」

提督「それもいいが……ここの旅館には、例のパズルがある」

陽炎「The T? へえ、面白そうね!」

提督「少し気になってはいたんだが、今まで来たときは人数も多かったし、話の方が弾んだからな。今日はこれを完全攻略するまで寝られません!」

陽炎「いいわよ。簡単にクリアしちゃうんだから!」

提督「よし、長期戦に備えて売店で何か買って来るか」

陽炎「あ、じゃあ私も」

提督「面白かったら土産に買って帰るか」

陽炎「いいわね!」

―執務室―

提督「あー……旅館に行ったのに徹夜になってしまった」

提督「完全クリアして、個人で問題を考えたりしてたからなんだが……」

↓2

―夜・母港―

千歳「夜の風が涼しいわね」

千代田「そうね、千歳お姉」

千歳「……あら、あそこにいるのは……」

提督「ん? なんだ、二人も夜酒か」

千歳「いえ、ただの散歩ですよ」

千代田「提督、千歳お姉との二人きりの散歩を邪魔しないでください」

提督「そりゃ悪かったな」

千歳「こら、千代田」

千代田「だって、千歳お姉……」

提督「別に良いさ。千代田は元気があるくらいが丁度良いしな」

千歳「提督……」

千代田「変な物でも食べた?」

提督「いや、不敬に対してはいつもこんな感じの対応だったと思うが」

千歳「……あの、ご一緒してもいいですか?」

千代田「千歳お姉!?」

提督「それはこのお酒を狙っての言葉かな?」

千歳「そうかもしれませんね、ふふ」

千代田「ああ、千歳お姉お酒好きだもんね……」

提督(なるほど、こう言うことで、俺と千歳を素直に納得させられるのか。さすが千歳だな)

千歳「では、酌も空いていることですから、どうぞ」

提督「おお、ありがたい」

千代田「提督、私達の分は?」

提督「千代田も飲むんかい」

千代田「飲まないとは言ってないでしょ。それに、千歳お姉が飲むならやっぱり一緒にしたいじゃない」

提督「千代田らしい答えだな。一応、ここに予備の物があるけど」

千代田「ありがと。じゃあ、千歳お姉の分は私がお酌してあげる!」

千歳「あら、ありがとう千代田」

提督「あんまり量は飲むなよ」

千代田「そんなに飲まないわよ。千歳お姉も……大丈夫よね?」

千歳「私も酔うのは早いから、大丈夫ですよ」

提督「ふうん、それならいいけど」

千歳「心配してくれているんですか?」

提督「……いや、俺の分の酒を飲まれるのは嫌だからな」

千代田「ついに強欲な本性を現したわね!」

提督「いや、らしくないと言われたから、言って欲しそうな言葉を口にしただけだが……ああ、もういいや。好きに飲め……」

千代田「言われなくてもそうするわよ。はい、千歳お姉」

千歳「もう、千代田はいつもこうなんだから」

提督(千歳の前だから、いつもより少しマイルドな方なんだがな)

―執務室―

提督「寝酒の時間でもあるし、軽くだけにしておいた。千歳なんかはほろ酔いだったが」

提督「そもそもたくさん飲むなら、酒豪たちと共にするし」

↓2

―川内型の部屋―

提督「夕方の時間にこんにちは。まだ夜戦にはまだまだ早い時間だな」

川内「そうだよ。あ、二人は今日買い物に行っているから居ないけど」

提督「いや、今日は川内に用事があって来た」

川内「私に?」

提督「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズという物がある」

川内「それが?」

提督「面白かったからおすすめしようと思って」

川内「えー、それだけ?」

提督「一応忍者タートルズという略称もあるから、そこ繋がりでもあるけど」

川内「へー。それで、どういう物なの?」

提督「ええと……」

漣「説明しましょう! ティーン(中略)タートルズとは、米国にて大人気のアメコミで、今も根強い人気を誇るアニメシリーズの事です!」

提督「漣はこういう話題になると急に出て来るよな」

川内「米国で人気って、面白いの?」

漣「前にニンポとかやりましたよね。あれも米国にて人気の作品ですよ」

川内「そうだったんだ……」

提督「そうだったのか……」

漣「ご主人様も知らなかったんですか!? ……まあとにかく、これは過去に日本で放送したときも好評でしたから、実際面白いと思いますよ」

提督「そうだな。そして、テレ東版が手にはいったわけだ」

川内「そうなんだ。夜まで暇だし、それくらいまでなら良いかな」

提督「ふっふっふ、そう言っていられるのも今のうちだ」

川内「どういうこと?」

提督「米国、そして日本でも人気を博した作品は伊達じゃないって事さ」

川内「?」

漣「wwktk!」

~~~~~~~~

提督「やべー、二回目だけど普通に面白いわ。やっぱサワキちゃん良いキャラしてるわ」

漣「アフレコも多いですし、掛け合いも独特でいいですよねー!」

川内「……」

提督「……気に入らなかったか?」

川内「……次は?」

提督「え?」

川内「だから、次は無いの?」

提督「でも、もう夜だぞ」

川内「ああ、夜戦……夜戦と、タートルズ……」

漣「(はっ、超レアシーン発見!)」

提督「(これが大人気アニメの強さか!)」

川内「夜戦……やっぱ夜戦に行ってくる!」

提督「あ、でもこれ借りものだから期限あるぞ」

川内「提督、早く次の見せてよ!」

提督「ふっ」

漣(ご主人様、もしかして計算して……!)

―執務室―

提督「計画通り……なんて、こうなればいいなー、と思ってただけだけど」

提督「それに、休んだ次の日の夜戦は特別うるさいものになるから、中途半端に休まなくてよかったし……」

↓2

―秋月型の部屋―

秋月「照月が来てから部屋が狭くなったように感じられます」

提督「お、愚痴か?」

秋月「強いていえば、嬉しい悲鳴ですね」

提督「そうか。一人だったし、そうだろうな」

秋月「今日も一緒にご飯を食べる予定なんです」

提督「へー」

提督(まるで不妊から奇跡的に生まれた子供みたいな扱いだ)

秋月「……? どうかしましたか」

提督「いや、なんでもない……」

照月「秋月姉、帰ったよー……あれ、提督? どうかしたんですか?」

秋月「おかえり照月。司令はたまに部屋に来られるんですよ。用も無しに」

照月「そうなんだ」

提督「用も無しって……事実なだけに、棘があるように感じられるな」

秋月「そ、そんなつもりはありませんから!」

照月「うーん、じゃあ、提督も夕食後一緒しますか?」

提督「いいのか?」

秋月「断る理由は無いですから」

提督「それなら、お邪魔させてもらおうか」

~~~~~~~~

提督「なんだかんだでもう夜も深くなってきたか……邪魔したな」

秋月「いえ」

照月「あれ、もう戻るの?」

提督「もうって言っても、そろそろ寝る時間だろう」

照月「それもそうだけど……」

提督「じゃあ……」

照月「……」

秋月「(すみません司令、照月は夜が苦手らしくて)」

提督「(そうなのか? じゃあ……)」

提督「……よし、眠くならないなら、眠くなるまでトランプでもするか!」

照月「! 分かった、いいよ!」


照月「zzz……」

提督「zzz……」

秋月「ふふ、司令まで寝ちゃって」

秋月(わざわざ付き合わせたのもあるし、起こすのも忍びないかな。今日は、寝かせておきましょうか)

秋月「ふわぁ……私も眠くなってきましたし……照月、横に失礼します……」

―執務室―

提督「朝起きたら秋月の部屋で寝ててビックリした。なんだかんだで朝ご飯までいただいたけど」

提督「いや、秋月の味噌汁は美味しかった。たまにはああいう食事も良い」

↓2

―鳳翔の店―

春雨「いつも厨房を貸して頂いてありがとうございます」

鳳翔「いえ、春雨さんの春雨は鎮守府一なので、私も勉強させてもらってますから」

提督「……そういえば、春雨以外は作らないのか?」

春雨「春雨、以外ですか……」

龍鳳「作っている姿は見ますけどね」

春雨「その、練習はしているんですけど……春雨程には上手くいかなくて……」

提督(え、春雨程って、そりゃ厳しくない)

龍鳳(得意料理と同等とは、志が高いですね)

提督「……なら、今日は料理できる人も集まっているし、至高の中華料理を作ってみるとするか!」

春雨「し、至高の中華料理ですか!?」

鳳翔「面白そうですけど、何を作るんですか?」

提督「そうだなぁ……ラーメンとかどうだ?」

鳳翔「ラーメンは中華料理ではないのですが……」

提督「え、マジで?」

龍鳳「似た言葉はあるんですけど、料理としてのラーメンは日本独自の部分が多いので、中国の方でも別料理として扱われているんです」

提督「初めて知った……じゃあ、手軽に麻婆豆腐にするか」

春雨「手軽に麻婆豆腐、ですか」

龍鳳「それはちょっと甘いと言わざるを得ませんよ」

春雨「そうです。家庭の麻婆豆腐はインスタントを使いつつ軽く出来ますけど、実際には火力、時間、扱い諸々きちんと考えて作らなきゃいけないんです!」

提督「お、おう」

鳳翔「ふふふ、至高と言っても、究極と勝負するわけじゃないんですから、自分が『至高』と思ったもので良いんですよ」

提督「よく分かんないけど、鳳翔が良い事言った!」

春雨「一利、あるかもです」

龍鳳「確かに、気負い過ぎても良いものは作れませんからね」

春雨「分かりました! では、今から麻婆豆腐を作ります!」

提督「よく言った! では早速厨房を使わせてもらうぞ――」

~料理中はカット~

春雨「――完成です!」

提督「はっ、気付いたら終わってる!」

鳳翔「豆腐の崩れは無し……香りもよく、見た目もいいですね。盛り付けにも気を配ったようですし、言うことはありません」

春雨「一人で作っていたら、ここまでの物は出来上がりませんでした。皆さん、本当にありがとうございます」

提督「よく分からんけど、早速食べてみるか」

春雨「はい!」

龍鳳「どうぞ、お茶です」

提督「気が利くな」

龍鳳「いえ、途中から殆ど春雨さんがやっていたので、手持無沙汰だっただけですから」

提督(マジ作ってる最中の記憶が無い)

春雨「……」ジー

提督(というか、さっきから春雨がじっとこっちを見つめてくる……そろそろ食べるか)

提督「モグモグ…………う……」

春雨「ど、どこかダメでしたか?」

提督「う……うぅーーーーまーーーーいーーーーぞぉおおおおおおお!!!」

春雨「ほ、本当ですか!」

龍鳳「ほんと、美味しい……」

鳳翔「ふふ、上手に出来てますね」

―執務室―

提督「気付いたら麻婆豆腐が無くなっていた。一時的に気を失う……まるで比叡料理のようだ」

提督「ベクトルは真逆なわけだが。今まで食べた中からすると、たしかに至高であった」

↓2

―売店―

『西瓜』

提督「……これ何だ?」

明石「スイカですよ。読めないんですか?」

提督「いや、それくらい読めるが。ちょいと季節に外れつつあるんじゃないかなと」

明石「ですから、最後のスイカです」

提督「最後?」

明石「甘いと評判の、季節最後のスイカです」

提督「ああ、なるほど。これ以上入荷は無い訳ね。しかし、最後と言われると欲しくなってくる……」

明石「さあ、今がチャンスですよ。今を逃せば、もう今年は手に入りませんよ~」

提督「うむむ……」

神通「提督、唸っているみたいですけど、調子が悪いんですか?」

提督「……神通、共にいただこうではないか」

神通「は、はい?」

―川内型の部屋―

提督「川内と那珂ちゃんは……よし、いないみたいだな」

神通「どうして二人が居ないことを確認したんですか?」

提督「そりゃ二人占めするためさ」

神通「……私も席を外した方が良いですか?」

提督「それだと寂しいだろ!」

神通「そ、そうですか……」

提督「というか、ずっと思ってたんだが……なんで浴衣なんだ?」

神通「その、夏も終わりなので。それに、三人で花火をしてきたんです」

提督「え、なにそれ知らない」

神通「余った花火で小さくやってきたんですから、知らないのも当然ですよ。私は一足先に帰って来たんです」

提督「なるほど、川内はそのまま夜戦で、那珂ちゃんは付き合わされてるって感じか」

神通「ま、まるで見て来たかのようですね……」

提督「さて、そうこう言っている間に切ったぞ。食べやすく八つ切りだ」

神通「綺麗に切れてますね。本当にいただいても?」

提督「流石に目の前にして食べるな、なんて鬼畜なまねはしないって」

神通「では、いただきます」

提督「シャクシャク……ん~、さすが明石が言うだけあって美味しいな」

神通「そうですね……凄く甘い……」

提督「種の無いスイカってのもあるらしいけど、やっぱスイカは種ありだよな」

神通「そんなスイカもあるんですか」

提督「ん、知らないのか。目にする機会はあんまりないから知らないのも当然か」

神通「実際見た事無いですからね……」

提督「……」

神通「……? どうかしましたか?」

提督「いや、夏も終わるけど、浴衣にスイカってのはやっぱり夏っぽいなって」

神通「あ……そう言われてみればそうですね」

提督「また、来年もこういう日が来ればいいな」

神通「はい、私もそう思います」

―執務室―

提督「食べ終わったあたりで叫びながら川内が帰ってきた。那珂ちゃんは満身創痍みたいな感じだったけど」

提督「ていうか、他の二人は浴衣じゃ無かったのか……いや、浴衣だからこそ神通は先に帰って来れたのか」

↓2

提督「最近浴衣が流行ってるのか?」

霞「なんでよ」

提督「いや、なんかこの季節に着ている人がちらほら」

霞「この時期にするお祭りも多いし、おかしなことじゃないと思うけど」

提督「そう言われてみれば……秘書官は着ないのか?」

霞「仕事のせいでそんな事をしている暇もないわよ」

提督「そうか。なら――」

ガチャ

朝潮「失礼します。遠征の報告ですけど……」

提督「――朝潮でもコーディネートしてやるか」

朝潮「え……はい?」

霞「することしてからよ」

提督「オーケイ」

朝潮「な、何ですか、いったい?」

―朝潮型の部屋―

提督「朝潮は……うーん、青系の方が髪の色も合わせて映えるかなー」

朝潮「ええと……」

提督「いや、暖色系の方が朝潮としての人に合うかもしれない」

朝潮「あの……」

提督「朝潮ならむしろ何でも合いそうな……」

朝潮「す、すみません!」

提督「ん? ああ、朝潮本人の意見も聞かないとな。どういうのがいいんだ?」

朝潮「いえ、その前に、どうしてこんなことになっているのか……」

提督「最近皆浴衣着てるだろ」

朝潮「はい」

提督「だからだ」

朝潮「はい。……はい?」

提督「まあ、細かい事はいいだろう。それより、浴衣の事だ」

朝潮「司令官がそう言うのなら……」

提督「朝潮はどんな浴衣が良い?」

朝潮「浴衣、ですか。……司令官が選んでくれたものなら、どんなものでも嬉しいですよ」

提督「嬉しいことを言ってくれるな。でも、自分の意見を言うことも大事だぞ」

朝潮「はい。でも、それ以上に司令官が選んでくれたものの方が良いんです」

提督「朝潮……」

朝潮「す、すみません。お手を煩わせるようなことを言って」

提督「……いや、それが朝潮の意思だというのならば、それを尊重しよう」

朝潮「あ、ありがとうございます、司令官」

提督「さーて、そうと決まればより一層熱が入るな。どんなのがいいかなーっと」

朝潮「そういえば、ここの浴衣はどうしたんですか?」

提督「朝潮に見繕いたいって言ったら、明石が快く貸してくれた」

朝潮「そうなんですか?」

提督(販促用に写真との交換だがな)

―執務室―

提督「朝潮は素直だから実に相手にしやすい」

提督「もちろんいい意味でな。朝潮型は他が一癖ある子が多いから……」

↓2

―朝潮型の部屋―

提督「大潮っていつも同じ帽子を被ってるよな」

大潮「お気に入りですから!」

提督「ふむふむ、お気に入りと。他の帽子はかぶったりとかは?」

大潮「……そういえば、あまりありません!」

提督「なに、それはもったいないな。よーし、せっかくだし、色々帽子を見に行かないか」

大潮「一緒にですか?」

提督「嫌か?」

大潮「いえ、むしろ嬉しいくらいです!」

提督「よーし、そうと決まれば早速見に行くぞ!」

大潮「おー!」

―売店―

明石「それでここに来るのは、私を何でも屋と勘違いしているんじゃないですか」

提督「でも帽子くらい売ってるだろ?」

明石「それはそうですけども……」

提督「ほら、ここにはテンガロンハットがある」

大潮「シルクハットとかありますね!」

提督「マ○オの帽子も売ってるぞ!」

明石「それは、まあ、帽子って並べておくだけでも内装の見た目が良くなりますし」

提督「トリコーンハットで内装が良くなるわけないと思うが……」

明石「もう! そう言う事はいいですから、見るならお好きに見てください!」

提督「何で怒られたんだ……?」

大潮「どういう帽子が良いですかね?」

提督「うーん、実のところ帽子についてのセンスはあまりないんだが……ほれ」ポン

大潮「あっ、この帽子は……?」

提督「麦わら帽子だな」

大潮「麦わら帽子、ですか?」

明石「カンカン帽ですね。女性用も今は多くありますし、悪くない案だと思います」

提督「あとは……キャスケットとか。はいっと」ポン

大潮「わ、わざわざ被せるんですか?」

提督「次は……」

~数十分後~

提督「うーん……大潮って、大体の帽子を違和感なくかぶることが出来て、一つを選ぶとなれば難しいな……」

大潮「そ、そうですか? 何だか照れちゃいます……」

提督「大潮はこれってやつは無いのか?」

大潮「そうですね……あ! これがいいです!」

提督「こ、これ? んー、まあいいか。明石」

明石「はいはい。あれ、提督。他の帽子も買うんですか?」

提督「大潮自身に選ばせたものだけっていうのは、流石に冴えないだろう。まあ、俺が気に言った物だけだが」

明石「珍しく気が利いてますね」

提督「ええ、珍しいって酷くね……大潮はどう思うよ」

大潮「いつもの司令官、ですね!」

―執務室―

提督「今思ったけど、気が利くって方にいつものと言ったんじゃなくて、ああいう漫才をしている方にいつものと言われた気がする」

提督「いやまあ、大潮の言ったことに間違いはないが……」

↓2

―金剛型の部屋―

提督「榛名、やらないか?」

榛名「……! な、なにをですか?」

霧島(司令の勘違いさせる発言をうまく捌くとは。榛名が成長してる……)

提督「やる気があるのなら、私室に来てくれ」

榛名「し……っ!?」

霧島(誤解を加速させるさせるようなことを言ったー! これが司令!)

榛名「じょ、冗談は止めて下さいよ?」

提督「俺は本気だ」

榛名「提督……」

提督「じゃあ、覚悟が決まったら来てくれ」

バタン

榛名「……」

霧島(司令のあの発言、わざとなのかたまたまなのか、いまだにわかりませんね……)

―提督私室―

榛名「し、失礼します」

提督「来たか、榛名」

榛名「やる、とのことですけど……それは……」

提督「まあそこに座っていろ。直にビデオが始まる」

榛名「ビデオですか?」

『――バレーボール大会、一回戦の様子をお伝えします』

提督「大会やってるしな。スポーツにはこういう見学も必要だろう」

榛名「え、あ……はい」

提督「俺も見るのは二回目だが……いやー、わくわくするな」

榛名「……」

―遊戯室―

榛名「……」

提督「さて、部屋でバレーの試合も見たし、それなりにイメトレも出来ただろう」

榛名「……」

提督「次は実戦の時間だ。まずはレシーブの練習から……どうした?」

榛名「いえ、気が抜けたと言いますか……」

提督「大丈夫か?」

榛名「分かっていました……榛名はだいじょうぶです……」

提督「大丈夫ならいいが……」

榛名(提督の事ですから、こうなることは簡単に予想出来た事なんですけどね……)

提督(まあ、今回はわざと誤解っぽく言ったしな)

―執務室―

提督「榛名も気落ちしていたようだし、早いとこ切り上げた」

提督「そもそも二人じゃ試合とかできないしな。しょうがない」

↓2

―天龍型の部屋―

提督「天龍って眼帯つけてるけどさ」

天龍「おう」

提督「もしかして、同じものをつけてるのか?」

天龍「そんなわけないだろ。提督はバカだな」

提督(こいつ、ここぞとばかりに言い返してきたな……)

天龍「どうした、もしかして気になるのか」

提督「いや別に。じゃあな」

天龍「……ほ、本当にいいのか? 今なら見せてやるぞ?」

提督「天龍って本当にメンタル弱いよな」

天龍「よ、弱くねーよ!」

提督「まあ、天龍がそういうなら、見せてもらおうか。どういうことなのか」

天龍「フフフ、驚きすぎてひっくり返るなよ」

提督(天龍が得意げな時って、だいたい大したことないんだけどな)

天龍「これが、この眼帯の秘密だ!」

提督「おおっ! 同じ眼帯がいっぱい!」

天龍「どうだ、驚いただろう」

提督「驚いたな……これで自信満々に発表できる天龍に……」

天龍「な、なんでだ? ほら、なんか硬派な感じがするだろ?」

提督「そうかもしれんが、これだけ同じものしかないと異様だぞ……」

天龍「異様って言うな!」

提督(やっぱりメンタル弱い)

提督「……でも、こういうコレクションもいいんじゃないか」

天龍「だ、だろ! やっぱ、一本筋が通ったやつもいいよな!」

提督「アクセサリーだしな。それじゃ、秘密もわかったことだし戻るとするよ」

天龍「ああ」

提督(特にこれ以上いても何もなさそうだし。無駄に詮索して龍田に咎められるのも嫌だし)

バタン

天龍「……下の方は見なかったか」

龍田「なにをほっとしているの~」

天龍「た、龍田? いつから……」

龍田「最初からよ~。でも、天龍ちゃんが二重底にして可愛い系を隠しているのは知ってるから、隠さなくてもいいわよ?」

天龍「」

―執務室―

提督「天龍はかわいい系のも持っている、とも聞いたんだが、ガセ情報だったか」

提督「隠していた……いや、あの天龍がうまく隠せるはずもないか」

下2

提督「これで書類も終わり……っと」

霞「お疲れ様」

提督「秘書官から労いの言葉なんて、珍しいな。雨でも降るんじゃないか」

霞「血の雨でも降らせてあげましょうか?」

提督「いや、今日の天気予報は晴れと言っていたから、雨なんて降らないぞ。うん」

霞「まったく……相変わらず懲りないんだから」

提督「ははは。わるいな。そうだ、今まで世話になりっぱなしだし、なにかお礼でもしようか?」

霞「司令官がちゃんとすることが一番のお礼になるわよ」

提督「あー、そりゃ無理な相談だな」

霞「でしょうね。じゃあ、私は部屋で休んでるから、何かあったら呼びなさいよ」

バタン

提督「いつも世話になってるが、なにかお礼したことあまりないな……やっぱり何か返そうか……っと、未記入の奴が混じってるな。珍しいミスだな」

―朝潮型の部屋―

霞「ったく、司令官ったら……」

霞(でも、何かお礼……ね。なんだかんだで満たされてるし、必要なものは売店で取り寄せもできるから……)

霞「……改二、かしらね」

提督「霞でも改二が欲しくなる事があるんだな」

霞「そりゃあね……クズ司令官、いつからいたの」

提督「改二ってところから」

霞「はぁ……ちゃんとノックしなさい。いいわね」

提督「一応していたんだが……気付かないほど考えてたのか、改二の事」

霞「うぐ……」

提督「良いネタ発見! それでそれで、霞はどんなのがいいんだ!?」

霞「面倒な事に……そうね、もうちょっと服装は戦いにも適した恰好かしらね」

提督「ちっ、面白くないことを言って。いっそ幸子みたいな衣装にしたいと言えば面白いものを」

霞「幸子が何の幸子か分からないけど、女優以外のならお断りよ」

提督「でも、もうちょっと派手なのには憧れるんじゃないか?」

霞「そうねぇ。白露型みたいな変化ならいいかしらね」

提督「バストアップだな!」

霞「今日の天気をどうしても雨にしたいようね」

提督「冗談だから、その拳を下ろしてくれ」

霞「……大人っぽくなりたい、っていうのはあるわよ」

提督「ほうほうほう。霞の口からそう言うことが聞けるとは、とてもレアだ」

霞「別に良いじゃない。私だって、もうちょっと成長したいのよ。肉体的にも、精神的にも……ね」

提督「ふーん。まあ、それなりに考えておく」

霞「考えておく? なにをよ」

提督「改二、な」

霞「……期待はしておかないわ。でも、できるのなら冬に間に合わせなさい」

提督「了解」

―執務室―

提督「霞も武勲艦だからな……旗艦を務めたり、戦場でも救助を引き受けたり……改二はどうなるか」

提督「というか、了解っていったはいいものの基本は妖精さん任せだから、俺に言われても無駄なんだよね」

提督「……あ、書類の事忘れてた」

↓2

―廊下―

五月雨「提督、今いいですか?」

提督「どうした、五月雨」

五月雨「装備についてなんですけど、ちょっと不備があるようなので……」

提督「だいたい秘書官が指定した物でいいが……どうかしたのか?」

五月雨「こっちの書類に書いてあるものが無いんです」ペラッ

提督「書類? ……はあ、那珂ちゃんのライブが近日公開ね」

五月雨「? ライブって……」

提督「これ広告のチラシだぞ。那珂ちゃんが配ってた」

五月雨「え……っ! あっ!」

提督「またドジッ子か?」

提督(たしか那珂ちゃんは色々なところに配ってたから、紛れたんだろうな)

五月雨「すみません! またドジをしちゃって……!」

提督「まあ、それでこそ五月雨だし」

五月雨「うう~……」

提督「そんなに気にするな。ミスは誰にでもある」

五月雨「でも……」

提督「気にし過ぎだ。何時もの五月雨なら、これからどうするかだろ」

五月雨「……もう、ドジをしないように頑張ります!」

提督「殊勝なことだ。うん、そうだな……那珂ちゃんのファン辞めて五月雨教に入信します!」

五月雨「ええっ!?」

提督「五月雨教は様々派閥の一つであり、その実態は五月雨ドジッ子な五月雨を見守るとか……」

五月雨「そ、そんなのがあるんですか?」

提督「いや、今考えた設定だ」

五月雨「で、ですよね。ちょっとほっとしました……でも、当然どうしてそんな事をいったんですか?」

提督「頑張ろうとする五月雨を支えたいという心の表明だ」

五月雨「そんな、提督にわざわざそこまでしてもらわなくても大丈夫ですから!」

提督「まあまあ、前にドジをフォローするのとは違って、信者という物は見守る方だ」

五月雨「見守る?」

提督「俺は五月雨を信じる。だから、五月雨はそれに答えてくれればいい」

五月雨「提督……ありがとうございます」

提督「信じれば必ず叶うってな。五月雨、頑張れよ」

五月雨「はい! では、私は急いで戻りますね!」ダッ

提督「ああ。だが、そんなに急ぐと……」

五月雨「きゃっ」コケッ

提督(何もない廊下でこけるとは、これが信じる効果か)

―執務室―

提督「信じれば必ず叶う。そう、五月雨のドジが見れることがな」

提督「あ、今回五月雨に言った言葉は口八丁なんで。だれもドジが直る事を信じるとは言っていない」

↓2

提督「もっとみんなと仲を深められる方法は無いもんかね」

霞「いつもやってるじゃない」

提督「いや、うちも増えて来たし、もっとパーッとみんなで盛り上げれるものとか」

霞「パーッとね。宴会でもしたら」

提督「宴会じゃ駆逐艦の子が入って来れないだろ」

霞「それもそうね」

提督「だから、みんなが楽しめるような案を求む」

霞「はぁ……そんな事をしている暇があると思ってるの?」

提督「だが考えてもみてほしい、信頼し合うには、やはり親交が不可避だろう」

霞「……」

提督「秘書官だって、人となりを知っていないと作戦も立てにくいだろ?」

霞「……まあ、一理あるわね。最近は人も増えてなかなか親交を深める機会も無いし」

提督「だろう。やはり、何かを行う必要がある」

霞「そうねぇ……」

提督「ちょっとみんなの意見も聞いてくるか」

―食堂―

提督「――というわけで、何か無いか?」

大和「大食い大会とかどうでしょう?」

赤城「いいですね、それ」

提督「うちの資材を脅かさない範囲で頼む」

日向「瑞雲展覧会はどうだ」

大鳳「それ誰が喜ぶんですか」

祥鳳「装備できる人も限られてますしね……」

秋津洲「そうそう! 二式大艇ちゃんの方がみんな喜ぶかも!」

最上「そういう意味で否定してるんじゃないと思うよ」

川内「じゃあ、みんなで夜戦しようよ!」

木曾「夜戦出来ない奴の事も考た方が良いぞ」

8「読書会とか……」

島風「みんなでかけっこしよ!」

提督「何処から湧いて出たんだってくらい、いきなりみんな出て来たな!」

霞「これ意見を纏めるのすら大変じゃないかしら」

提督「結構好き好きに言ってるしな……というか、皆で楽しめるものだぞ、皆で」

香取「皆で、というのは難しいと思いますよ。私達も広く居るのですから」

提督「だよなぁ」

島風「かけっこはー? ねえ、かけっこはー?」

提督「それじゃ、人によって差がで…………」

島風「提督?」

霞「何か思いついたの」

提督「……そうだ、かけっこだけが駄目なら、短く済むやつをいろいろやれば良いのか」

大和「どういうことですか?」

提督「大食いも、人数絞ったりルールを決めれば簡単にできる」

日向「なるほど、瑞雲展覧会も他と共に出せばいいのか」

秋津洲「二式大艇ちゃんの方が絶対人気出るかも!」

提督「いや、展覧会は誰も喜ばないから無理だろ」

日向「なん……だと……」

川内「夜戦は出来るね!」

提督「そうだな、人呼んで、秋の鎮守府大運動会と行こうか!」

香取「なるほど、いい案だと思います」

霞「そうね。でも、一つ難点があるわね」

提督「ん? この素晴らしいアイデアに難点が?」

霞「スケジュールの調整」

―執務室―

提督「出稼ぎも何名かいるし、少し後に持越しということになった」

提督「というか、本当に何で今日はみんな集まって来たんだ……」

↓2

―秋月型の部屋―

提督「照月、紅葉狩りに行こうぜ!」

照月「紅葉狩り? どうして突然?」

秋月「司令が突然なのはいつものことなんですよ」

照月「そ、そうなんだ」

提督「それで、どうする? 行くか?」

照月「秋月姉は……」

秋月「ごめんなさい、今日は用事があって」

照月「そうなんだ。うーん……」

提督「嫌なら無理にとは言わないぞ」

秋月「司令、それ分かってて言ってますよね」

照月「わかってて?」

提督「伝わってないからどのみち無意味だ」

照月「うん? ……とにかく、それなら一緒に行きましょうか!」

提督「よし、そうと決まればさっそく例の山へゴーだ!」

―近くの山―

提督「というわけで良い紅葉が並木になっていると聞いたので、来てみた」

照月「わぁ……」

提督「まだ秋には早いと思っていたが、ここは紅葉がちゃんとみれるな」

照月「もう少し遅く来ればちょうどいいかもね」

提督「その時はまたみんなを誘ってくるか」

照月「賛成!」

提督「さて、こういうところに来たんだし、先ずは記念撮影といこうか」

照月「いいですね!」

提督「きちんとスタンドも持ってきたから、二人で撮るのにも困らない!」

照月「さすが提督、準備がいいですね!」

提督「あの木の下で撮ろうか。じゃあ、照月、準備するから……」

照月「えいっ」パシャッ

提督「おっと。なんだ、照月も持ってきてたのか」

照月「提督みたいに脚は持ってきてないですけどね。ふふ、一枚目は提督が組み立ててる写真。帰ったら照月姉にも見せてあげよ」

提督「おいおい、紅葉撮れよ」

~~~~~~~~

提督「お、あそこも綺麗だな」

照月「そうですね」

提督「いやー、紅葉狩りもいいものだな」

照月「うーん、照月はもっと面白い物の方がいいかなぁ」

提督「はっはっは、正直だな」

照月「提督だって、そっちのタイプですよね」

提督「どっちもだな。こうした季節にちなんだ紅を見せてくれるのは、また別の良さがあるからな」

照月「……」

提督「どうした?」

照月「……ふふっ、紅って……」

提督「ちょ、ちょっとかっこつけたかっただけだよ。悪いか!」

照月「いいえ。でも、今日は提督のことよく知れた気がします」

提督「はぁ、なんにしても、楽しんでくれたのならよかったよ」

照月「はい。秋月姉にはいい土産話ができちゃった♪」

―執務室―

提督「近くの山だから、とくに泊まることもなく日帰りで」

提督「照月も日が落ちる前に帰りたそうにしてたけど、個人的には夜の紅葉もアリかなって」

下2

提督「長波、俺は栗ご飯が食べたい」

長波「そうか」

提督「栗拾いに行くぞ」

長波「買い物行くなら売店よりデパートに行った方が安……なんだって?」

提督「栗拾い」

長波「はぁ!? なんでわざわざ拾いに行くんだ?」

提督「ほら、自分で選んだ栗は格別だったりするだろ」

長波「いや、安定のある店の栗を使った方が絶対にいいと思うんだが」

提督「ふっふっふ、甘いな長波。店の力に頼るなんて。自分で選別するからこそ価値がある」

長波「何言ってんだこいつ……」

提督「じゃあ行くぞ! すでに予約は入れてある!」

長波「しかも準備済み……つーか、農園って店の力と何が違うんだよ……」

―農園―

提督「ちょっと遠くまで来たが、ここは栗拾いができるところだ」

長波「ホント、わざわざ遠出してまでなんてな……」

提督「長波はなんだかんだでついてきてくれるから、好きだぞ」

長波「放っておいたら別のやつを連れてっただろ」

提督「見てくれ長波、あそこの木に一杯生ってるぞ!」

長波「話を逸らすのもいつものことだな。……おい、それ以上歩くな」

提督「え?」

長波「足元にも栗がいっぱい落ちてる」

提督「ん? あ、マジだ」

長波「基本的に落ちてるの拾おうぜ。蹴っ飛ばして頭に落ちてくるところを見るのも面白そうだけど」

提督「いい性格してるな」

長波「提督もな」

~~~~~~~~

提督「よーし、かご一杯! 結構拾ったな」

長波「こっちも拾ってたから量があるな……持って帰るのが大変だぞ、これ」

提督「大丈夫大丈夫。いざとなったらその場で食べる」

長波「それって意味ないんじゃねーの」

提督「栗ごはん分は持って帰るから、意味なくはない。パクリ」

長波「言ったそばから……まあ、食べるけど。むぐむぐ……」

提督「……うん、いい仕事してるな」

長波「何様だよっ。そういえば、イガに入ってるのと、むき出しので品種違うのって知ってたか?」

提督「へー、じゃあ、食べ比べてみるか」

長波「だな。じゃあ提督、このイガあけてくれ」

提督「任せろ! ……イガのトゲが痛いんだが」

長波「いや、踏んで開けろよ」

―執務室―

提督「そういやこの季節だとほかの味覚もあるな……秋ってやつはいろいろ楽しめるな」

提督「あ、木を揺するのは農園によってはマナー違反だから。ガイドブックに書いてあった」

下2

―庭―

提督「……」

磯波「……あの、何をしているんですか?」

提督「写生」

磯波「写生、ですか……」

提督「……」

磯波「……」

提督「暇ならそこの予備で描いても良いぞ?」

磯波「え、いいんですか? では……」

提督「……うーん、なかなか纏まらないな」

磯波「そうなんですか?」

提督「こう……なんか違うんだよ。なんつーか……心眼が見えない的な」

磯波「は、はあ」

磯波(提督ってたまに難しいことを言いますよね……)

提督「磯波はどうだ? 何か見えないか?」

磯波「わ、私ですか? その……何も、見えません……」

提督「だよなぁ。うーん、写生とは奥が深い……」

磯波(私としては、提督の方が奥が深いです……)

提督「よし、こうしていても始まらないし、とりあえずはありのままを描いてみようか」

磯波「はい!」

提督「まず木々を彩る深緑をぱぱっと描き、蒼き空を表す蒼天の色に……」

磯波「そういえば、どうして提督は写生を?」

提督「近々大会があるんだ」

磯波「あ、そうなんですか」

提督「俺が主催の鎮守府内限定だけどな」

磯波「な、なるほど……」

提督「イベントの一環と言うことで、秘書官には許可を得てる。一応俺も参加するが、優勝は厳しいだろうな」

磯波「優勝の自信が無いんですか……? 提督にしては珍しいですね」

提督「俺だって謙虚な日本人だからな」

磯波「……あ、この方向なら花壇も入っていい感じです」

提督「ちょっと、スルーは良くないよ」

磯波「す、すみません。いい感じの景色が視界に入ったので……」

提督「悪気なかったのか……あー、なら磯波はそれで描け。こっちはもうちょっと粘ってみる」

磯波「分かりました」

提督「うーん……ん? ああ、これなら……」

~~~~~~~~

磯波「……」

提督「ま、まあそう怒るな。同じような景色になった事は謝るから」

磯波「恥ずかしいんです! ひ、人が描いてる後ろから描くなんて……うぅ……」

―執務室―

提督「結果佳作。磯波の方が評価としては上だった」

提督「同じようなもの描いたし、単純にクオリティの差で負けたっぽい」

↓2

―果樹園―

提督「秋の味覚の一つ、リンゴ狩りに来ました!」

利根「リンゴ狩り……つまり食べ放題じゃな!」

提督「そう、園内なら食べ放題! でもごみのポイ捨ては駄目だぞ」

利根「わ、分かっておる!」

筑摩「姉さん、一つ剥いておきましたよ」

利根「おお、ありがたい。筑摩は気が利くな」

提督「筑摩、俺の分は?」

筑摩「はい、どうぞ」スッ

提督「……これ、ただの果物ナイフに見えるんだけど?」

筑摩「自分の好みで切られた方が良いかと思いまして」

提督「うん……知ってた……筑摩はそういう子だよね……」

利根「なんじゃ、落ち込んで」

提督「落ち込んでないし。再確認してただけだし」

利根「……むう、でもあんまり甘くないのじゃ」

提督「そうなのか?」

利根「ほれ、口を開けてみい」

提督「あーん」

利根「一つとって……ほれ」スッ

筑摩(! 姉さんが、提督に向かって、あーんを……!)

利根「どうじゃ」

提督「ムグ……たしかに、甘さが足りてないな」

利根「まだ季節じゃないからか?」

提督「いや、リンゴは今が旬だし、少々外れてても美味しく食べられたりするものだが……おそらく、筑摩が選んだものがまずかったんじゃないか?」

筑摩「……」

利根「はっ……提督、謝るのじゃ!」

提督「すみませんでした筑摩さん!」

筑摩「いえ、実際はずれを選んだのは事実なので……ただ、姉さんに甘みが足りてないリンゴを差し上げたことが……」

提督(おい利根、こんなにシスコンだったか?)

利根(筑摩もリンゴ狩りは初めてじゃろうし、テンションが上がってるだけではないか?)

提督(なるほど)

提督「……さて、落ち込むのはそれくらいにして、今度は甘そうなリンゴを探してみるとするか」

利根「分かるのか?」

提督「ちっちっち、リンゴは赤く、下の方が未熟な時より黄色くなっているのが良いんだ」

利根「ほう、よく知っておるの」

提督「って、ガイドブックに書いてあった」

利根「少し感じた尊敬の念を返すのじゃ」

筑摩「でも、意外と難しいんじゃないですか?」

提督「まあ、野菜を買う主婦のように、経験がものを言う所でもあるからな。でも、ここはどこだ?」

筑摩「果樹園?」

提督「筑摩から天然な答えが返ってくるとは思わなかった」

利根「筑摩は意外と天ね……た、食べ放題じゃな! ここは!」

提督「そ、そうだ。だから、少々の失敗を恐れず、甘い物を見定めれるようになろうか!」

利根「おー!」

提督(失敗続きで恥ずかしいのか、筑摩の目が笑ってなかった……)

利根(あの状態からつつくと、長い説教が始まるから注意が必要じゃな……)

―執務室―

提督「概ねあたりが分かるようになったところで、飽きて終了」

提督「リンゴは意外と数が食べられない気がする。お腹にもたまるし」

↓2

提督「リベッチオリベッチオ」

リベッチオ「なーに、提督さん?」

提督「パスタの作り方を覚えたから、ご馳走しようと思う」

リベッチオ「いいの? わーい、提督さんのご飯大好き!」

提督「よしよし。じゃあ、鳳翔の店にきてくれ」

リベッチオ「うん! ……ほうしょうのみせって何?」

提督「……ああ、そういえばリベッチオは最近来たばかりだから知らないのも当然か。じゃあ、着いて来て」

リベッチオ「分かった! でもどうして食堂じゃないの?」

提督「昼時だと人が多いからな、食堂は」

―鳳翔の店―

提督「――というわけで、完成品だ」

リベッチオ「わぁー! おいしそー!」

提督「今回のパスタはリットリオやローマにも手伝って……」

リベッチオ「むぐむぐ、むぐむぐ」

提督「……もう食べてる」

龍鳳「提督の説明は長いですからね。はい、お茶です」

提督「そんなにかなー……そもそも聞く耳すらなかったわけだし……」

リベッチオ「……!」

提督「ん、どうだ?」

リベッチオ「なんだか、最近食べたのより甘くない!」

提督「ああ、だからこれはリットリオや――」

リベッチオ「むぐむぐ」

提督(これ嫌われてるわけじゃないよね)

リベッチオ「提督さん、料理上手!」

提督「あ、うん、だろ」

リベッチオ「マミーヤより美味しいかも……!」

提督「それは無いと思うけど……いや、なるべく本場っぽく作ったから、口に合うのかも。人柱もいるし」

リベッチオ「リベは毎日これでもいーよ!」

提督「それは俺の負担がやばいから勘弁」

鳳翔「私でもいいのならば、お作りしますよ?」

リベッチオ「ほんとう? ありがとう、ホーショーさん!」

鳳翔「ふふ、わかりました」

提督(俺じゃなくてもいいのね……いや、そっちのほうがありがたいけど)

リベッチオ「でも、たまにでいいから、提督さんも作ってくれると、うれしいな」

提督「……たまにはな」

龍鳳(提督のデレ、久しぶりに見ました)

―執務室―

提督「トマトを主に使ってソースを作った。それだけでもリットリオとローマに認められるまで厳しかったが」

提督「というか、実物知らないからなぁ……二人も詳しくないから、ただ単に日本のパスタを口に合わせただけって感じだな」

↓2

―中庭―

レーベ「ほらほらー」

提督「おやレーベ、何をしているんだね」

レーベ「うん、なんだか買ってる猫の機嫌が悪くて……」

提督「猫ぉ? そういえば、いつの間にか飼ってたっけ」

レーベ「少し前からね」

提督「一応軍の基地なんだが、動物を飼うのは……」

レーベ「駄目なの?」

提督「……いや、うちもペットっぽいの沢山いるし、今更だな」

レーベ「……提督も猫を触ってみる? 可愛いよ?」

提督「そうだな、ちょっとだけ……」スッ

猫<バッ

提督「……この猫警戒心強いんだけど」

レーベ「猫はそういうものだから」

提督「ならば、この猫じゃらしが相手だ!」

レーベ「よく持ってたね」

提督「多摩相手に使うことあるしな。ほれほれ~」

猫<ダッ

提督「……なんで逃げられるんだ」

レーベ「猫ってそういうものだから」

提督「とりあえずそれで済まそうと思ってないか?」

レーベ「マックス達はすぐに懐かれたのにねー」

猫<ニャー

提督「くっ、何か通じ合ってる様を見せつけられるのが辛い!」

レーベ「じゃあ、僕が持っててあげるから撫でてみる?」

提督「いや、それは俺のプライドが許さん。嫌がるのに無理矢理と言うのは、俺の性に合わない」

レーベ「……」

提督「ん? どうかしたか?」

レーベ「あ、ううん。なんでもない」

レーベ(噂じゃよく強引だって言われてるんだけど……)

提督「……よし、将を射るならまず馬と言う。レーベ、遊びに行こう!」

レーベ「え、遊びに? うん、いいよ」

提督「よし、手始めに公園だ。今日は屋台が来てるはず!」グイッ

レーベ「あっ」

猫<シャー ガリッ

提督「痛ぁっ!」

レーベ「だ、駄目だよオスカー!」

提督「引っかかれるなんて、今日は不幸だ……」トボトボ

レーベ「提督……そうだ、まだお昼の餌あげて無かったんだ。だから、機嫌が悪かったんだね」

猫<ニャー

―執務室―

提督「くぅ、猫のひっかき結構痛いんだよ……痕に残るほどじゃなかったけど」

提督「というか、さっきのことを山城に話したら鼻で笑われたのが一番つらい」

↓2

―廊下―

曙「このクソ提督!」ダッ

提督「ああ……」

漣「あらら、また逃げられちゃいましたね。今日は何をしたんですか?」

提督「いや、漣と同じようにご主人様って呼ばれたいなぁと」

漣「強要するのは引きます」

提督「きょ、強要まではしてない!」

漣「それで、どうするんですか?」

提督「別に、何時もの会話だしどうもしないが」

漣「ちっちっち、甘いですよご主人様。今日という今日は徹底抗戦しましょう!」

提督「徹底抗戦?」

漣「いいですか、まずは……」

提督(ふと思ったけど、漣と卯月のいたずらで碌な目に遭った事無い気が……)

~~~~~~~~

曙「漣ー。おかしいわね、この辺りに来いって言った本人がいないって、どういうことよ」

ゴソゴソ

曙「ん? ……クソ提督、何してるの」

提督「はっ! く、クソ提督って言ったな!」

曙「クソ提督をクソ提督って言って何が悪いのよ。それより、漣の事知らない?」

提督「く、くそぅ、曙のその態度が変わらないなら、自害してやる!」

曙「は、何言って……ちょっと、何その槍」

提督「うおおおおおおおおお!」

ズブゥッ

曙「な……」

提督「我が生涯にグフゥ!」バタッ

曙「っ……!」

漣「ぼのちゃーん、待たせた……ご、ご主人様が死んでる!」

曙「……」

提督「」

漣「ぼのちゃん、如何してご主人様を……」

曙「……」

曙(演技が下手過ぎて反応できない!)

曙(そもそも何いきなり!? 槍突き刺してあんな出血の仕方するわけないでしょ!? どう考えても血のりにしか見えないわよ!)

曙(そもそも漣も真面目な時にぼのちゃん呼びしないでしょ! 顔も笑ってるし、隠す気ないでしょ!)

曙「っ……はぁ~~~~」

漣「あれ?」

曙「……もしもし霞? 今目の前でクソ提督が死んだんだけど」

提督「どわーーー!! そんなことは無いぞ秘書官! ちょっと寝てただけだ!」

漣「ありゃま」

曙「ったくこのクソ提督! 変なこと目の前でするんじゃないわよ!」

提督「あれ、電話は?」

曙「そんなのフリよフリ!」

提督「な、なんだ。ほっとした……あれ、曙、何かちょっと目が赤いような……」

曙「っ! うるさいクソ提督!」ダッ

提督「?」

漣(ご主人様って時たま鈍感になりますよね)

―執務室―

提督「いやー、即バレするとは。前に死んだふりした時も即バレした気もするけど」

提督「あれがあるから秘書官には釘を刺されてるんだよな……悪趣味なまねは止めろって」

↓2

―夜・廊下―

提督「う~、誰だよ全部の窓開けたの……なんか今日の夜風凄く冷たいんだが」

春雨「あ、司令官、こんばんわ」

提督「ばんわ。何しているんだ?」

春雨「えっと、ついさっきまで鳳翔さんの所で料理の練習を」

提督「ふん。ところで、窓が全開になっているのは何でか知ってるか」

春雨「いえ……換気ではないんですか?」

提督「やっぱそう思うよな。勝手に締めたらまずいか……う、寒」ブルッ

春雨「……あの、よければですけど、部屋で暖まっていきますか?」

提督「ん? ああ、そうか、この近くに部屋があったな」

春雨「はいっ」

提督「……じゃあ、お邪魔させてもらうわ」ガチャ

―白露型の部屋―

春雨「今誰も居ませんね……あ、そこ座ってください」

提督「んー」

春雨(勢いで連れてきちゃったけど、ど、どうしよ)

提督「なあ春雨」

春雨「は、はい」

提督「寒いからもうちょっと近づいてくれないか?」

春雨「寒い、の?」

提督「ああ、だから……」ガバッ

春雨「きゃっ! しし、司令官!?」

提督「……zzz」

春雨「……寝てるの? な、なんだ……」

春雨(疲れてたのかな? だったら、休ませてあげた方が良いかな)

春雨「とりあえず、このままだと部屋の中でも風邪ひきそうだから、布団持ってこなきゃ……あの、司令官」

提督「zzz……」

春雨「離してもらえると、嬉しんですけど……」

提督「zzz……」

春雨「うぅ、この状態じゃ起きそうにない……しょうがないから、満足するまでこのままに――」

~~~~~~~~

白露「遅くなった、ごめーん!」

時雨「寄り道寄り道って、なかなか戻るのに時間がかかったよ」

夕立「その代わりお土産をいっぱい買ってきたっぽい!」

五月雨「あれ、春雨ちゃんは……」


提督「zzz……」ギュー

春雨「スー……スー……」


五月雨「……お布団だけ、かけておきましょう」

村雨「そうね。そうしておきましょう」

―執務室―

提督「気付けば朝だった。春雨の体温丁度良くて、不自由なく暖かかったおかげかな」

提督「ちなみに窓全開はやはり換気の為だったらしい。寒ければ締めて良いといわれたが、もうちょっと早く言ってくれれば……」

↓2

―扶桑型の部屋―

提督「山城、ネコミミを着けてくれ」

山城「……上司からセクハラとか、不幸だわ」

提督「いやいや、純粋な気持ちだから、セクシャルじゃないから」

山城「さっきの発言をどうすればセクハラ以外にとらえればいいんですか」

提督「可愛い服を贈ったりするとかと同じ感じでとらえれば」

山城「それもセクハラですけど」

提督「まじか! だが、そんなことはどうでもいい。俺はこのネコミミをしている山城が見たいんだ!」

山城「変態みたいなこと言わないでください」

提督「お願いします、着けてみてください」

山城「絶対に嫌です」

提督「シャチョさんシャチョさん、一回、ドウ?」

山城「そんな言い方して従う人はいないと思いますが」

提督「こんなに言っているのにか? 土下座してでもか?」

山城「とにかく、そんなもの着けませんから!」

提督「……扶桑が見てみたい、と言っていたとの情報があってもか?」

山城「なんですって?」

提督「山城がそこまで言うなら仕方ない。扶桑には残念だったと伝えておこう」

山城「くっ……」

山城(何時ものように罠なのは明白……でも、もしかすると本当に姉さまが楽しみにしている可能性も……!)

提督(仮に本当だとしても、扶桑の前でだけ見せるという選択肢もあるのだがな。言わないけど)

山城「……確認をとってからです」

提督「ほう?」

山城「提督の言っていたことが本当だとは限りませんから」

提督「なるほど、冷静な返しだ。では、扶桑が戻ってくるまで待つか」

山城「ふん、いいでしょう」

~~~~~~~~

山城「扶桑型戦艦、山城です……にゃ」

扶桑「ふふ、可愛いわ山城」

山城「本当ですか? 姉さまに言われると嬉しいです!」

提督「ふっふっふ」

山城「な、なんですか提督。言っておきますけど、提督の為じゃないですから」

提督「分かってる分かってる」

山城(姉さまに喜ばれたのは嬉しいけど、提督の言う通りになったのはちょっと癪……はぁ)

―執務室―

提督「扶桑は山城が本気で嫌がってない限り、素直に肯定してくれるからな」

提督「さて、こっそり撮った写真を大事に保管しておくか。見つかったら絶対消去されるだろうし」

↓2

―金剛型の部屋―

提督「へい、金剛! 最近お疲れの様子らしいじゃないか」

金剛「提督? そういうわけじゃないデース」

提督「無理をするんじゃない。そんな金剛にプレゼントがある」

金剛「プレゼント?」

提督「ああ」

金剛(提督からプレゼントをもらうのは久しぶりデース!)

金剛(身に着けるもの……もしかすると、ケッコンの書類とか……なんて、さすがにそれは夢見すぎですネー)

提督「…っと、はい孫の手」

金剛「……マゴノテ?」

提督「知らないのか? こう、かゆいところに手が届かないときに使うものでな」

金剛「そういうことではないデス」

提督「えー、じゃあどういうことだ?」

金剛「そもそも、どうしてこのプレゼントなのデスカ」

提督「敬老の日だろ?」

金剛「ウン」

提督「ほら、いつも苦労を掛けている金剛に、こういった慰労できるような器具でお礼をと」

金剛「……?」

提督「ピンとこないか。まあ、お疲れということだよ、金剛おばあちゃん」

金剛「……! て、提督ー!」

提督「ははは、悪いね」


霧島「珍しく正面からネタ晴らししてますね」

比叡「お姉さまにあんなことを……許せません!」

榛名「でも、本気で嫌がっていないようですので、温かく見守るのもいいと思いますよ」

比叡「う……」

霧島(最近あまり構ってもらえてなかったですしね)

―執務室―

提督「しかし、生まれの年を考えると、艦娘はほとんどが老人ということに……」

提督「……まあどうでもいいか」

下2

―千歳型の部屋―

提督「秋と言えば何だと思う?」

千歳「また突然な質問ですね」

千代田「どうせどうでもいいことでしょ」

提督「まあまあ。とにかく、何だと思う?」

千歳「読書の秋、とかですかね」

千代田「スポーツの秋」

提督「まったく、二人共を守るかのように食欲の秋が出ないなんて」

千代田「戦艦や正規空母じゃないんだから一緒にしないで!」

千歳「それで、どうして食欲なんですか?」

提督「焼き芋が食べたくなったから」

千歳「あら」

千代田「本当にどうでも良い事だった……」

提督「なんだと、そんな事言う奴に焼き芋はやらんからな」

千代田「む」

―庭―

千代田「ほら、出来たわよ」

提督「なんだかんだ言ってノリノリじゃないか」

千代田「べ、別に欲しくてしてる訳じゃ無いから! 千歳お姉が欲しそうにしてたからなんだから!」

千歳「あら、私はどっちでもいいのだけど?」

千代田「千歳お姉、意地悪」

千歳「ふふ、ごめんなさい」

提督「じゃあ、できた灰の中にこの焼き芋を投入してくれ」

千代田「そのまま?」

提督「気になるならアルミホイルで巻いても良いぞ」

千代田「ん、そうする」

千歳「あとは一時間ほど待つだけですよね」

提督「だな、暇つぶしにしりとりでもするか」

千代田「本当に唯の暇つぶしね……」

~~~~~~~~

提督「し、し……老舗」

千代田「せ、せ……」

千歳「提督、そろそろじゃないですか?」

提督「お、そんな時間か」

千代田「ちょっと待って、ここで終わったら私が負けみたいじゃない!」

提督「負けず嫌いだな……じゃあ、灰とか全部どかして……はい」

千歳「ありがとうございます」

千代田「う~……ありがと」

提督「では早速半分に割って……おお、湯気が凄い」

千歳「美味しそうな匂いがしますね」

千代田「はふっ……! あふい!」

提督「そりゃさっきまであの中にあったわけだし。しかし、モグモグ……うん、甘い」

千歳「良いお芋ですね。焼き芋でこれだけ甘いのはなかなかありませんよ」

提督「厳選して買ってきたものだから、当然」

千代田「ねえ、提督」

提督「ん?」

千代田「おかわり、ない?」

提督「……灰の中から探してくれ」

―執務室―

提督「たき火で作る事はあんまりないから新鮮だった」

提督「今はたき火禁止してる所も多いから、機械で作る機会を作った方が良いな」

提督「…………なんかすまんかった」

↓2

―飛鷹型の部屋―

提督「書道の秋だ」

飛鷹「書初めは元旦よ?」

提督「書初めではない。書道だ」

隼鷹「同じじゃないか?」

提督「とにかく、書道をしよう。おまけで龍驤も連れてきた」

龍驤「おまけってなんや!」

飛鷹「本当にするの? 準備とかは……」

提督「すべてそろえてあるに決まっているだろう」

飛鷹(こういう時のていとくの行動力って、無駄にすごいわよね)

隼鷹「酒は?」

提督「書道するときに酒は飲むなよ」

―庭―

飛鷹「……なんで庭なの?」

提督「青空の下で書道も風流だろ」

龍驤「落ち葉とか邪魔やろ。それに寒いんやけど」

隼鷹「酒を飲むにはいい感じに冷えるねえ」

龍驤「ほんま酒ばっかやな……」

提督「とにかく、書道を始めようじゃないか」

飛鷹「はぁ……あれ、墨汁は?」

提督「ほらこれ」

飛鷹「わざわざ固形のものにしたのね」

提督「風情があるだろ」

龍驤「面倒なだけちゃうんか」

提督「なにをいう。擦るの楽しいだろ?」

龍驤「それは、まあ……」

飛鷹(小学生みたいなこと言ってる……)

~~~~~~~~

提督「よしできた。みんなはどうだ?」

龍驤「ふっ、完璧や」

飛鷹「一応ね」

隼鷹「ぷはぁー! 散る葉を見ながらってのも乙だねぇ」

提督「隼鷹は怪しいが、ある程度出来たようだな。では一斉に、はい」

龍驤「プフー、提督へったくそな字やな」

提督「蛇のような明朝体を描いてる龍驤に言われたくないねー!」

龍驤「なんやと!」

提督「なんやて!」

飛鷹「変な事で喧嘩しない。それで、隼鷹は?」

隼鷹「ん? まあ、こんなもんだよ」

飛鷹「…………」

提督「どうした飛鷹、絶句して…………」

龍驤「何二人して…………」

隼鷹「さーて、新しい酒を持ってこようかね」

―執務室―

提督「まあ、流石というかなんというか……」

提督「とりあえず、貰ったから適当なところに飾っておこう」

↓2

―母港―

提督「数年から十数年に一度見られるという、エクストリーム・スーパームーン……28日の今日がその日らしい」

天龍「え、今日は29だが……」

龍田「天龍ちゃん? 今日は28。良いわね?」

天龍「お、おう。そうだったな、今日は28だ」

提督「それでだ、月を見るならやっぱり団子もいるよな」

天龍「お、気がきいてるじゃねーか」

龍田「提督、こんな日の団子にギャンブル要素を含んでいる、なんてことないですよね?」

提督「……」スッ ポイッ

天龍「おい、なんで五つほど別の袋に入れたんだ」

提督「なんでもない」

天龍「いや、今目の前で……」

龍田「天龍ちゃん、あんまり気にすると月が赤く染まるわよ?」

天龍「怖いなおい! べ、別に怖くねーけど!」

提督(どっちだ)

提督「まあ、とりあえず団子食え。間宮作と鳳翔作と提督作のが入ってるから」

龍田「あら、その中に混ぜるなんて、提督もなかなか自信満々の御様子」

提督「団子なんぞ味付けがすべてだ。ただ料理が上手なだけな人に負けないからな」

天龍「一緒にしたら味付けも混ざるんじゃねえの?」

龍田「天龍ちゃんにしては慧眼ね~」

提督「……」スッ

天龍「おい、なんでまた分けた」

提督「この中には間宮作と鳳翔作のが入ってるぞ」

天龍「さりげなく台詞変えるなよ!」

龍田「全然さりげなくないと思うわよ~」

天龍「そうか? オレじゃ無かったら気付かなかっただろ」

龍田「……」

提督「……」

天龍「なんだその目!」

提督「じゃあ月見よう月。そもそも、月を見る為にここにいるんだろ」

龍田「それもそうねー」

天龍「……まあ、いいけど。モグモグ」

提督「しかし、ここから見える月は赤くないな」

天龍「え、龍田の冗談じゃないのか?」

龍田「スーパームーンは皆既月食と重なった時に赤くなるのよ~」

提督「アジア圏じゃ重なる時は昼らしいから、今年は見れる事は少ないだろう」

天龍「ふーん……」

龍田「(わざわざ調べましたね~?)」

提督「(わ、悪いか)」

天龍「あー、団子うめぇ」

―執務室―

提督「なんだかんだで団子を食べてた時間の方が長かった」

提督「情緒ないことを言えば、実際スーパームーンと言ってもちょっと大きく見えるだけだから……」

↓2

―売店―

春雨「~~♪」

提督「何を買ったんだ?」

春雨「ひゃわっ!?」

提督「そんな驚くこと無いだろ」

春雨「す、すみません。いきなり話し掛けられたもので……」

提督「いや、謝ってほしかったわけじゃないが……で、何を買ったんだ?」

春雨「ドングリです」

提督「え……食べるの?」

春雨「はい、食べますよ」

提督「!?」

提督(いや、俺も若し頃は食べたことあるけど、わざわざ買ってまでドングリを食べようとは思わなかった……)

春雨「えっと……?」

提督「……春雨、なかなかやるな」

春雨「え、え?」

―白露型の部屋―

リス<カリカリ

提督「なんだ、リスのご飯か」

春雨「はい、可愛いんですよ」

提督「他の奴もそうだが、最近何時の間にかペット飼ってる奴多いよな」

春雨「そうですねぇ。私もちょっと可愛い動物さんに憧れていたところがありますから」

提督「で、リスと」

春雨「はい」

提督「……りすー、ほれほれ」クイクイ

春雨「あ、司令官、あんまり食事中に触ると……」

リス<ガブッ

提督「ぬわー!!」

春雨「あわわ! こ、こらっ」

提督「……すまんが救急箱あるか」

春雨「そ、そうですね! 今持ってきます!」

~~~~~~~~

提督「いやー、遠慮なく噛み付いて来るとは……」

春雨「すみません!」

提督「今回ばかりは不用意に触った俺が悪い。謝るな」

春雨「は、はい」

提督「ちなみに、普段は噛んでこないんだよな?」

春雨「少なくとも、白露型の皆は噛まれていませんが……」

提督「やっぱ食事中がまずいか」

春雨「ドングリ食べ終わったみたいですし、今なら大丈夫だと思いますよ」

提督「そうか? よ、よし……」クイクイ

リス<……ガブッ

春雨「あっ……」

提督「……」スッ

春雨「だだ、大丈夫ですか司令官!?」

提督「……何か悪いことした?」

春雨「さっきの食事、ですかね。あっ、手当てします!」

―執務室―

提督「あれは完全に敵だと思われた。主人と違ってなかなか怖い奴だ」

提督「……いや、警戒心と言う意味では似たもの同士か」

下2

―球磨型の部屋―

提督「わたあめを作るぞ!」

球磨「提督は何時も突然クマね」

提督「そんな褒めるなよ」

球磨「褒めてないクマ」

提督「さて、わたあめは難しそうに見えて実は簡単に作る事が出来るんだ。機械があればな」

球磨「その機械は何処にあるクマ?」

提督「知らん」

球磨「……」

提督「ま、まあこういう時は売店に行くのが良いだろう」

球磨「提督は適当クマね」

~~~~~~~~

提督「偶に使うから貸出だとよ」

球磨「そうクマか」

提督「ではさっそく買ってきたザラメを入れて……はい、箸」

球磨「ちゃんと分量考えてるクマ?」

提督「多くてもどうせ誰か食べるだろ」

球磨「本当に適当クマ……」

提督「まあまあ、とりあえずやってみようではないか」

球磨「分かったクマ。…………クマ? わたのつくバランスが……」

提督「はっはっは、なかなか出店で売っているようにはいかんな」

球磨「うるさいクマ!」

提督「コツはこう、くるくる回しつつ、足りないところを補うように……」

球磨「おおー、上手クマ」

提督「……ついでに、飴なんかも入れてみようか」

球磨「クマッ!? それ、大丈夫クマ?」

提督「ふっふっふ、知らないようだな……実は、これで色つきのわたあめが出来るのだ!」

球磨「なるほどクマ! ……でも、機械によっては、じゃないクマ?」

提督「…………だ、大丈夫みたいだ。うん」

球磨「ちゃんと確認してから入れるクマ」

提督「ええい、文句を言うならこのわたあめをくれてやらんぞ!」

球磨「自分で作るからいいクマ」

提督「球磨が冷たい……」

球磨(実は作るのちょっと楽しいなんて言えないクマ)

―執務室―

提督「わたあめってふわふわして美味しいよな。もちやすいから縁日の友でもある」

提督「球磨も食べている姿は可愛かった」

↓2

提督「祭りに行こう!」

レーベ「まつり?」

マックス「この前行ったと聞きましたが?」

提督「お前達と行く祭りはまた違うだろ! さあ、浴衣を着て準備をするのだ!」

マックス「ですけど……」

提督「気が乗らないのか? あれか、やっぱパイを投げ合ったりシャンパンをかけあったりする祭りの方が好きか」

マックス「いえ、そういうことじゃないです」

レーベ「でも何かすごいお祭りでもあるの?」

提督「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれたな。実は今日は、日本三大花火大会が開催される日なんだ」

レーベ「三大……!」

マックス「すごいんですか?」

提督「ああ。お前達、花火を見たと言っても、まだまだ小さい物だろう。やはり、本物の花火という物を見せてやりたくてな」

レーベ「行ってみようか、マックス」

マックス「……分かりました。行ってみましょう」

―花火大会会場―

レーベ「人多いね」

提督「チケット取って無かったら大変だったな」

レーベ「うん。花火は何時から始まるの?」

マックス「あともうちょっとよ。レーベ、何か必要な事があれば、今のうちにしておきなさい」

レーベ「そうだね」

提督「レーベはなんだかわくわくしているみたいだけど、マックスは冷静だな」

マックス「別に、火薬とかは普段から使っているわけですし」

提督「ふふふ、その余裕がいつまで続くかな」

マックス「……?」

レーベ「あっ」

提督「どうした?」

レーベ「カメラとか持ってくるの忘れてたよ」

提督「それくらいなら……」
マックス「私が持ってきていますよ」

レーベ「ありがとう、マックス」

マックス「いえ」

提督(……マックス、表情に出さないようにしているだけで、楽しみなのを隠してる?)

~~~~~~~~

提督「はぁーーーー……良かった」

レーベ「なんだか、圧倒されたよ」

マックス「……」

提督「席が取れたら来年も来てみたいものだ」

レーベ「今度は他の皆も呼べたらいいね」

提督「だな。ところで、マックスはどうしたんだ?」

マックス「……」

レーベ「……予想以上で、みとれたのかも」

提督「まあ、こういった花火はここでしかみれないからな」

レーベ「実感したよ。マックス、もう終わったよ」

マックス「……はっ、もう終わったんですか?」

提督「マックスにしては珍しい呆けぶりだった」

マックス「う、うるさいですよ」

レーベ「ん、マックスも楽しんだようでよかった」

マックス「別に楽しんだわけじゃ……ああ、もう」

提督「誤魔化すの、あきらめたな」

マックス「もうバレバレのようですからね……」

―執務室―

提督「やっぱ目を奪われる美しさだった。あんまり二人にかまってやれなかったのは心残りではあるが」

提督「……でもまあ、二人とも楽しんでくれたようでなにより」

↓2

―球磨型の部屋―

多摩「いやにゃ! 絶対に食べるにゃ!」バタバタ

木曾「やめるんだ! そんなものを食べたら絶対にお腹壊すぞ!」ガシッ

球磨「そうクマ! それは食用じゃないクマ!」ガシッ

提督「……何やってるんだ?」

北上「なんでも、金魚が食べたいらしいよ」

提督「金魚を? 大丈夫か、入渠するか?」

北上「それはあたしに言われても困るな~」

球磨「というか、提督も止めてほしいクマ!」

多摩「ふしゃー! 多摩の猫の血が騒ぐにゃ!」

木曾「散々猫って言うなと自分で言っていたじゃねーか!」

提督「キャラ崩壊を起こしている姿が痛々しいな……」

大井「どうでもいから早く止めませんか? うるさくてかないません」

提督「大井らしいが、もう少し言葉を柔らかくだな」

大井「今『北上さんダイアリー2014年度版』を見返しているから静かにしてほしいんですけど」

提督「本当に大井らしいな! 後にして止めるの手伝え!」

大井「ちっ」

提督「舌打ちされたんだけど」

球磨「どうでもいいからさっさと止めるの手伝えクマ!」

多摩「ニ゛ャー!!」

提督「そもそも、どうしてこんなことになってるんだ。大型戦艦や正規空母はともかく、多摩はそこまで食いしん坊じゃないだろ」

木曾「それが、談話室においてあるおにぎりをたべたらこんなことになったんだ」

提督「談話室のおにぎり……?」

~数十分前・談話室~

提督「なにやってんだ磯風」

磯風「む、司令か。具の入っている握り飯を作ろうと思ったが、肝心の具が無くて買いに言って来ていたのだが……」

提督(また兵器を作って……)

磯風「戻って来た時には何個か減っていたんだ」

提督(つまみ食いした奴ご愁傷様)

磯風「誰か食べたのだろうか……まだまだ材料はあるから良いが」

提督(良くないんだな、それが)

~~~~~~~~

提督(あれか)

多摩「金魚を食べされるにゃああああああああ!!」ジタバタ

球磨「そろそろ止めないと不味いクマ!」

木曾「そうはいうが、どうしたらいいんだ?」

大井「いっそ、一発大破させてしまえばいいのでは」

球磨「そんなことしたら部屋も大破になるクマ!」

提督(多摩本人にはいいのか)

多摩「にゃ! いまにゃ!」スルッ バッ

球磨「あっ!」

木曾「しゃあない。ふっ」トスッ

多摩「うっ」バタッ

提督「は、早すぎる手刀だと……」

北上「最初からそれすればよかったんじゃないの」

木曾「手刀の気絶は障害を残す可能性があるからな」

球磨「そこはリアルクマね」

―執務室―

提督「金魚騒動は多摩の鎮静化によって終わりを告げた」

提督「ちなみに艦娘なら入渠でだいたい直るが、リアルの人間にそういうのはないので手刀はやめておこう」

↓2

―庭―

提督「やっぱ秋刀魚を焼く時は八輪だな」

利根「そうじゃな、八輪じゃな」

筑摩(間違えてる姉さん可愛い……提督には後でお伝えしておきましょう)

利根「しかし、突然八輪で秋刀魚を焼くとは、何の思い付きじゃ?」

提督「間宮から少しだけもらったんだ。ふっふっふ、魚の見極めには自信があるからな」

利根「つまり、後に食堂で出る秋刀魚は……」

提督「ああ、脂がのっている秋刀魚は俺が頂いているからな」

利根「お、恐ろしい事をする奴じゃ……」

提督「はーっはっは!」

筑摩(間宮さんがそのあたりを失念しているとは思えませんけどね)

利根「そろそろ焼けたんじゃないのか?」

提督「おお、そうだな。ほれ食べろ」スッ

利根「先に頂いても良いのか? では……はふっ、熱……」

筑摩「姉さん、はい、冷たいお茶」

利根「悪いの。モグモグ……おお、うまい」

提督「だろう。やっぱ八輪で焼くに限るな」

筑摩(間違えている限りはその言葉も薄いんですけどね……)

提督「なんだ筑摩、そんな目をして……はっ」

筑摩(あら、もしかして気付きましたかね)

提督「……あと数秒待ってくれ。すぐに焼き上がるからな」

筑摩「いえ、秋刀魚が欲しい訳では無いのですけど……いえ、いいです」

提督「……よし、筑摩と俺の分も焼けたし……」

利根「……」

提督「どうした利根。秋刀魚の骨でも刺さったか」

利根「二度も同じことはせん!」

提督「え、前にもやったのか」

利根「って、そうではない! 吾輩が焼いても良いか聞きたかったのじゃ!」

提督「ん? 利根がか……」

筑摩「やらせてあげても良いと思いますよ」

提督「筑摩がそう言うなら」

利根「筑摩は吾輩の保護者ではないぞ! こうなれば、吾輩の方が上と言うことを証明してやるのじゃ!」

提督「……あ、そういえば、脂ののっている秋刀魚なんだが……」

ボワッ

利根「ぬわーーー! 突然燃え上がったぞ!?」

提督「うわっ、めっちゃ脂落ちてる! 水、水!!」

―執務室―

提督「脂ののっている秋刀魚を焼くときは、脂に注意して焼こう。いろいろ大変なことになる」

提督「ちなみに八輪では無く七輪である。……と、利根を試しただけだし。わざとだし」

↓2

―作戦会議室―

青葉「失礼します、提督」ガチャ

提督「来たか青葉。まずはその辺に座ってくれ」

青葉「いったい何の用ですか? 滅多に使わない会議室に呼び出して……」

提督「実はだ。鎮守府内からこんなものが見つかった」

青葉「これは……注射器?」

提督「何故こんな物があると思う」

青葉「本来であれば、医療器具に使用した忘れ物、と言う可能性もありますが」

提督「艦娘に注射器を使う機会があると思うか?」

青葉「ないですね。さらに言えば、司令官しか人間がいないので、注射器は鎮守府に置いていない筈です」

提督「つまり、この注射器は誰かがオーダーメイドで取り寄せたものなんだ!」

青葉「……これは事件の香りがしますね」

提督「さあ探すぞ青葉!」

青葉「楽しそうですねぇ、司令官」

―食堂―

提督「情報集めにはやっぱ人が集まるところと相場が決まってるよな」

青葉「セオリーですね」

提督「ではまずは間宮辺りに聞いてみるか。間宮ー!」

間宮「は、なんですか?」

提督「誰か注射器を持ってそうなやつに心当たりない?」

青葉「司令官!? 正面から聞いても何の情報も得られる訳が……」

間宮「注射器ですか? ああ、そういえば……」

青葉「知っているんですか!?」

間宮「誰かがお医者さんごっこをすると、言っていたような気がします」

青葉「あ、全く関係ないですね」

提督「いや、重要なファクターだ」

青葉「は?」

提督「よし、その線で捜査を続けるぞ!」

青葉「ええー……絶対関係無いと思うんですけど……」

~~~~~~~~

提督「ようやく追いつめたぞ、犯人」

?「くっ……」

提督「食堂で呟いたのを皮切りに、様々な駆逐艦を誘い、さらには実の姉まで手を掛けた犯人……」

青葉「……いえ、ちょっと待ってください。なんでもうここまで来ているんですか!?」

提督「ちょっと、今良い所なんだから止めるなよ」

青葉「あ、すみません……って、そうじゃありません! 何か気付かない間に捜査が終わりに向かっているんです!」

提督「まあ時間の都合上な。だが、これで最後だ。犯人はそう……日向、お前だ!」

日向「何故わかった、提督よ……」

提督「ふっ……そりゃ、聴取した人みんな瑞雲のミニチュア持ってたからな」

日向「そうか……瑞雲を配るためにお医者さんごっこをする作戦が裏目に出たか」

青葉「証拠が残る方を作戦の肝にするって、どう考えても失敗する未来しか見えないんですけど」

提督「しかし、これで注射器の持ち主も見つかったな」

日向「ん? 注射器? そんなもの知らないが」

提督「え?」

日向「遊びにそんなものは使わんし……そもそも私がしたのは心理方向のお医者さんごっこだ」

提督「なん……だと……」

青葉「そういえば、あの注射器は本物でしたし……遊びに使うにしては、ちょっと危険ですよね」

提督「つまり、犯人は別にいるということか……」

―執務室―

提督「青葉は捜査の続きをするということで、一時解散した」

提督「まあ、青葉に任せれば犯人も分かるだろう。そもそも注射器があるからどうだって話だし」

↓2

―庭―

提督「煙突でも焼き芋を焼くことが出来るらしいな」

春雨「ええと……?」

提督「つまりその背中に付けている煙突で焼き芋を焼きたい」

春雨「や、焼き芋をですか?」

提督「ああ」

春雨「この煙突はそのための物ではないんですけど……」

提督「まあまあ、使える物は何でも使うべきだろ」

春雨「いえ、だからその為の物ではないんですけど……」

提督「じゃあ、まずは落ち葉とかでするように燃やす事から始めようか」

春雨「あの……もういいです……」

~~~~~~~~

春雨「焼き芋美味しいですね~」

提督(まさか本当に出来るとは思わなかった)

春雨「司令官は食べないんですか?」

提督「ああ、食べるよ」

春雨「あんまり焼き芋って作る機会ないんですけど、自分で作るのも良いものですね」

提督(自分の煙突で作る機会はそりゃないだろう)

春雨「? やっぱり、何か考え事しています」

提督「いや、だって、気にならないのか?」

春雨「はあ、何がでしょう?」

提督「それで焼き芋作った事」

春雨「……そ、そうです! 掃除大変なんですよ!」

提督「今更だな。もうちょっと早く突っ込んでも良かったんだぞ」

春雨「だって、司令官は言ったって止めないじゃないですか」

提督「いや、流石に艦装で無理矢理作るつもりは無かったから、半分冗談のつもりだったんだけど」

春雨「そ、そうだったんですか?」

提督(そもそも途中から春雨の方がノリノリだったしな)

春雨「もういいですけどね、やってしまったものは仕方がないですし……」イソイソ

提督「何故次のさつまいもを用意しているんだ」

春雨「どうせならもう一回くらい作った方が良くないですか?」

提督「なかなか豪胆な性格してるよ」

―執務室―

提督「春雨も料理のことになると意外と……」

提督「あと、春雨には悪いがわざわざ煙突で作るくらいなら、落ち葉で作った方が良いような気もする」

↓2

―母港―

提督「はぁー……」

鳳翔「お疲れのようですね」

提督「ん、鳳翔か。まあな……」

鳳翔「お一つ、いかがですか?」

提督「つまみか。たまたま会ったにしては準備良いな」

鳳翔「ええ、本当に奇遇です」

提督(どう考えても偶然じゃないと思うんだが)

提督「まあ、隣座れ。立たせておくのもなんだしな」

鳳翔「では、失礼します」

提督「しかし、今日はきれいな月が出ているな」

鳳翔「あら、それは提督がよく仰っている意味で言ってるんですか?」

提督「なっ……ったく、鳳翔が冗談を言うとは思わなかった」

鳳翔「意外と茶目っ気があるって言われるんですよ」

提督「そりゃ、その評価は案外正しいのかもな」

鳳翔「ふふ……でも、私として本気で言って貰ってもかまいませんよ」

提督「はいはい冗談冗談。あんまりからかうな」

鳳翔「ふふ、すみません」

提督「あんまりそう言うことを外で言うなよ。シャレにならん」

鳳翔「はい、気を付けます」

~~~~~~~~

提督「最近月を見る事が多くなったな……」

鳳翔「この季節、とても綺麗に見えますからね」

提督「確かに、それもまた一つの理由かもな」

鳳翔「……そうですね」

提督「それに……っと、つまみがなくなったな。少しペースが速すぎたみたいだ」

鳳翔「追加、いりますか?」

提督「そうだな、今日はもうちょっと風に当たっておきたい」

鳳翔「では、今から作ってきますね。追加のお酒も持ってきます」

提督「ありがとう鳳翔」

鳳翔「いえ、これくらい当然ですよ」

提督「……それで、本当に偶然か」

鳳翔「偶然、で良いではないですか」

提督「……ま、いいけどな」

―執務室―

提督「月見、は今回あんまりしてなかったか」

提督「しかし、鳳翔は甲斐甲斐しい。あれを秘書官に一欠けらでも分けてあげられないだろうか」

↓2

―金剛型の部屋―

提督「一緒に夜釣りをしよう!」

金剛「夜釣り、デスカー?」

霧島「またどうして」

提督「海軍たるもの釣りもできるようにしておくのは当たり前だろう!」

霧島「本音では?」

提督「秋の夜釣りはいろいろ釣れるから、楽しそうだろ!」

榛名「本当に正直ですね」

比叡「私は金剛お姉さまが行くのであれば!」

霧島「私はパスさせてもらいます」

金剛「何言ってるネー! 私たちもみんなで行きまショー!」

提督「よしきた! では、用意してるから日付が変わる前に集合だ!」

榛名「わ、わかりました」

金剛「楽しみデース!」

霧島「……はぁ、いいですけど」

―母港―

提督「……」

榛名「調子はどうですか?」

提督「榛名か。どうやら俺は才能がないようだ」

榛名「あはは……」

金剛「少し遅くなったデース!」

提督「問題はない。夜は長いからな」

霧島「道具は揃えてあるんですよね」

提督「釣竿やら餌やら料理器具やらな」

霧島「……料理器具?」

提督「夜は長いし、釣った魚を捌いたり焼いたりするのに必要だろ」

榛名「でも、さっきから釣れていないご様子ですが……」

提督「う゛っ」

比叡「榛名って、さりげなく傷を抉ったりするよね」

榛名「え?」

~~~~~~~~

金剛「オゥ、アナゴデース」

比叡「流石です、お姉さま!」

霧島「アナゴも釣れるんですね」

榛名「いろいろな種類のお魚が釣れますね」

提督「ふーん」

金剛「提督が淡白デース」

比叡「どことなく荒んでますね」

提督「荒んでいるつもりはないが……お前たちがあまりに釣れすぎているせいでな」

霧島「嫉妬ですか」

提督「いや、そのせいで用意しておいた肉を焼くスペースがない」

霧島「なぜ焼肉……」

提督「まあ、釣れるのは悪いことじゃない。適当なタイミングで焼くさ」

榛名「ちゃんと焼くつもりではあるんですね」

比叡(餌つけてないし、釣るつもりはなさそうですけど)

―執務室―

提督「釣りは待ち時間の方が好きだったり。いや、待ち時間しかなかったけど」

提督「そもそも、あいつらがバンバン釣るのが悪い。初心者っぽかったのにあんなに釣れるとは……」

下2

―動物園―

提督「早くペンギンに会いたいぜ!」

朝潮「司令官はペンギン好きって本当だったんですね」

提督「ペンギン可愛いからな!」

朝潮「そうですね、ペンギンは可愛いです」

提督「まあでも、ペンギンに会いに行くのは後でもいいんだぞ」

朝潮「そうなんですか? 我慢しなくてもいいんですよ」

提督「いやいや、朝潮に楽しんでほしくて来たのに、俺だけ楽しんだら意味ないだろ」

朝潮「あ、ありがとうございます」

提督(ペンギンの行進は午後からだしな)

朝潮(司令官、優しいです)

~~~~~~~~

朝潮「見てください司令官、このうさぎふわふわです」

提督「うさぎだしな。しかし、触れ合いコーナーなんてものもあったのか」

朝潮「司令官は触らないんですか?」

提督「いや、どうせだからな」ナデナデ

朝潮「どうですか?」

提督「……感動した」

朝潮「感動ですか?」

提督「俺に撫でられても嫌悪感を示さない動物がいるとは……」

朝潮「そ、そうですか。司令官はむしろ、好かれそうだと思うんですけど」

提督「そうかなぁ……」ナデナデ

朝潮「……あの、どうして私の頭をなでるんですか?」

提督「確認」

朝潮「わ、私で確認になるのであれば、どうぞ」

~~~~~~~~

朝潮「お土産はどうしようかな……」

提督「とりあえずクッキーあたりを買えばはずれはないぞ」

朝潮「そうですね。そうしましょうか」

提督「あとは人形とか、グッズとか」ヒョイヒョイ

朝潮「そんなに買ってもいいんですか?」

提督「ふっ、欲しいものがあれば金に糸目はつけない」

朝潮「いえ、提督のお財布もですけど、秘書官に怒られるのでは……?」

提督「お、思い出したくない単語を言いやがって……」

朝潮「す、すみません!」

提督「とはいっても、経費さえ使わなければお金についてはノータッチだけど」

朝潮「そうですか、それならよかったです」

提督(……まあ、遊園地とかのグッズはだいたい使うこともなく、なくすことも多いんだけど。すぐにゴミになったらさすがに怒られるから、注意しないと)

―執務室―

提督「無事に帰還」

提督「朝潮も一応楽しんでくれていたかな。結構自由にやっちゃったからなー」

下2

―演習場―

提督「今日も今日とで流星を飛ばしてるな、速吸」

速吸「はい、私も早く皆さんに追いつきたいですから」

提督「ほうほう。今日の演習で『一発大破された不幸だ』と言っていた戦艦がいると聞いたが」

速吸「た、たまたまですよ!」

提督「そうかたまたまか。じゃあその戦艦にはまぐれで大破されたとチクっておくか」

速吸「次の演習が怖いのでやめてください!」

提督「冗談だ冗談。流石に追撃はかわいそうだ」

速吸「それに私としては、流星も良いですけど、水上機とかも使ってみたいな、とも思うんですけど……」

提督「速吸……まさか、日向の毒牙に……」

速吸「そ、そういうわけではないんですけど」

提督「んー、まあ、それなら次の演習の時には瑞雲をつけてやろう。様々な機体を運用するのも悪くない」

速吸「提督さん……ありがとうございます!」

―最上型の部屋―

提督「――ということがあったんだが」

最上「そうなんだ、いい子だね」

提督「そこで、最上にも聞きたいことがある」

最上「ボクに?」

提督「ぶっちゃけ、最上も流星を使えるんじゃないの?」

最上「……」

提督「だって、あっちは補給艦だぞ。最上は航空巡洋艦。なんであっちが使えてこっちが使えないの?」

最上「提督、彼女の装備とボクの装備は別モノなんだよ」

提督「そうだけど、その装備も妖精さん製だろ。成せばならないのか?」

最上「ならないよ」

提督「えー」

―工廠―

提督「――と言ってたけど、実際どうなんだ」

夕張「妖精さんの製作した物は謎が多いですから、私のは無理ですよ」

最上「だから言ったじゃないか」

提督「でも、流星拳とかしたくないか?」

最上「したいと思わないけど……というか、流星拳ってなにかな」

提督「そうか……最上は他の航空系と違って謙虚だな」

最上「謙虚というつもりはないんだけどね」

速吸「あ、提督さん。また会いましたね」

提督「同じ鎮守府内にいるしな。ああ、速吸、その艦装を最上がつけたら流星を飛ばせるか?」

最上「まだあきらめないんだね」

速吸「私の艦装をですか? すみませんが、そもそも装備が出来ないと思います」

提督「だよなぁ」

速吸「そういえば提督さん、私の水上機は何を使えばいいですか?」
最上「瑞運とかいいと思うよ」

速吸「そ、即答ですね」

提督(……最上、もしかして飛ばせないんじゃなくて……)

―執務室―

提督「勘違いと思いたいが、最上も瑞雲教の一人になったというのか……」

提督「……いや、そんな教ないけどさ」

↓2、

―秋月型の部屋―

提督「秋月、バーベキューだ!」

秋月「ば、ばーべきゅー?」

提督「なんだ、しらないのか? バーベキューというのは、肉やら野菜などを焼く調理法の事でな」

秋月「そ、そう言う意味じゃないです!」

提督「じゃあ、何を戸惑って……ははあ、もしかして高級な肉とかが出ると思って、躊躇しているんだな」

秋月「ち、違うんですか?」

提督「いや、その通りだけど」

秋月「……」

提督「さて、さっさと行くぞ秋月。もう準備はしているんだ」

秋月「は、はい」

―庭―

秋月「えっと、照月は……」

提督「照月は用事があるから後だと」

秋月「そうですか……」

提督「……そろそろ吹っ切ってくれてもいいんじゃないか?」

秋月「あ、頭では分かっているんですけど、どうにも、困惑の方が強くて……」

提督「難儀な性格してるな」

秋月「で、では焼きましょう。多分、馴れてくるはずですから」

提督「それもそうだな。じゃあ、時間かかりそうな肉から……」

秋月「そういえば、どうして突然バーベキューを?」

提督「そりゃ、前に夜釣りの時に余ったからな」

秋月「夜釣りでどうしてお肉が余ったんですか」

提督「本来余る予定じゃ無かったんだけどな……」

~~~~~~~~

秋月「司令、この肉生焼けですよ」

提督「おっと、本当だ」

秋月「このかぼちゃはそろそろ取った方が良さそうです。あっ、ここ空いてるから追加でこれも焼いておきましょう」

提督「……いや、本当に馴れたな」

秋月「自分の為、と思うのではなく、誰かの為、と思えば気にならなくなって来ましたから」

提督「少しは自分も食べろよ」

秋月「はい」

照月「あー、先にやってる!」

秋月「大丈夫、まだまだあるから」

提督「高そうな肉は全部いただいたけどな」

照月「提督ー!」

秋月「嘘はだめです、司令」

提督「悪い悪い」

提督(秋月が奉行してるから、先にいただくとかできなかったし)

―執務室―

提督「秋月もノリノリでバーベキューに参加してくれたし、催しとしては成功か」

提督「当初の躊躇も、奉行している間は気にならなかったのだろう」

↓2

―食堂―

提督「今日の献立は秋刀魚か」

電「司令官さん、奇遇なのです」

提督「電か。奇遇ついでに、一緒に食べるか?」

電「……こっちなのです」スタスタ

提督「え、今露骨に嫌そうな顔しなかった?」

電「気のせいなのです」


暁「電、ようやく来たのね」

雷「あら、司令官も! ええと、開いている席は……」

響「……」スッ

提督「さりげなく譲ってくれてありがとな、響」

響「司令官が真ん中に来た方が、皆も喜ぶだろうしね」

暁「皆って、私は違うわよ!」

電「ありきたりな反応なのです」

提督「変な事言うなよ響。それよりさっさと食べようぜ」

響「そうだね」

暁「むー……いただきます」

雷「あっ、司令官、私が秋刀魚を食べさせてあげるわよ!」

提督「いやいや、わざわざいいよ」

雷「そう? 遠慮しなくてもいいのよ?」

提督「それに、秋刀魚は結構食べやすい魚だしな」

響「?」
暁「えっ」
雷「そうなの?」

提督「響も食べ方知らないのか、意外だな」

響「ほら、私は一応ロシアの記憶もあるからさ……」

電「完全にいいわけなのです」

提督「電は知ってるのか?」

電「前に調べたことがあるのです」

提督「ふーん、まあ、知らない三人のために適当に教えるか」

暁「し、知らない訳じゃ無いわよ!」

提督「今更そういうのいいから。まず、頭から尾にかけて、背中に切れ込みを入れるんだ」

電「力を入れなくても、スッと入るのです」

響「へぇ……」

提督「そして、上を頭の方から綺麗に剥がして食べる。次に、下の方だ」

暁「下の方……」

雷「暁はお腹の方は苦くて嫌いなのよね」

暁「あ、あんなもの楽勝だし!」

提督「食べれないのなら左上においとくのがマナーだ。骨も同様に左上だ。そして、裏面を食べる時は、大きな骨を尻尾の方から取る」

響「後は普通に食べればいいんだね」

電「なのです」

提督「というわけで、簡単な講義終了。鎮守府じゃ食べる順番とか気にしなくて良いけどな」

暁「暁としては、司令官がマナーを知っていたことが驚きだわ」

提督「一応提督だし。そもそも暁にマナーとか言われてもなぁ……」

暁「な、何よ!」

―執務室―

提督「暁以外は今後も使っていきそうだ。暁は忘れそうだが」

提督「まあ、マナー以前に食べやすく片づけやすいから、焼き魚全般はこの食べ方が良いのだけど」

↓2

~運動会前日~

提督「明日ようやく運動会が始まるぞ!」

霞「そうね」

提督「いやー、楽しみで眠れないね!」

霞「そうね」

提督「おいおい秘書官さんよー、言葉に気持ちがこもってないぜー!」

霞「あんたが楽しみにしすぎなだけよ」

提督「そりゃ、鎮守府での一大イベントなんて、なかなかないだろ!」

霞「旅行とか行ったことはあるけど……確かにないわね」

提督「だろ。だから楽しみだなー」

霞(……だいたいこのパターンでいえば……)

~当日~

ザーザー

提督「……」

霞「……」

提督「……よし、運動会始めるか」

霞「外を見なさい。見えないのなら教えてあげるわ、今日は雨よ」

提督「わー!! 聞きたくないぞー!!」

霞「あんたが何を言おうと、現実は変わらないわよ」

提督「……室内で行うとか」

霞「これだけの数の人数を収められる部屋があるなら教えてほしいわね」

提督「ダメかー」

霞「ダメね」

提督「……もしかして、本当に運動会終わり?」

霞「そんなわけないじゃない。いくら身内行事といっても、みんなからブーイングが出るわよ」

提督「つまり……!」

霞「来週までにはするわよ。心配しなくても」

提督「やったー!」

霞「はいはい、喜ぶのはいいからさっさと仕事をなさい」

~~~~~~~~

青葉「なるほど、ということは、数日中に行うんですね」

提督「秘書官はそういってた」

青葉「ふむふむ、では、そのように通達しておきますね!」

提督「いやー、広報はまかせてるよ、青葉」

青葉「青葉だって、ネタになりそうなことは手伝いますからね!」

提督「ところで、今日が雨でガッカリしている奴はいるのか?」

青葉「それはそうですよ。駆逐艦の子も大なり小なりガッカリしてますし、戦艦の方も落ち込んでいる様子でした」

提督「だよな。うん、俺だけが楽しみにしていた訳じゃ無い」

青葉「? まあ、このくらいで青葉は失礼します」

バタン

提督「……そんなわけで、少し延期にはなったが、無事開催されるらしい」

提督「それまでに体力つけとかなくちゃな。鎮守府トップが運動不足とかシャレにならん」

下2

―伊勢型の部屋―

伊勢「そういえば、最近映画を見たんですよ」

提督「映画? へー、伊勢が見そうなものとは気になるな」

伊勢「そんな、有名なやつですよ」

提督「有名?」

日向「となりのトトロだ」

提督「本当に有名なものを見たな……」

伊勢「でも、いいですよね。夢があります」

日向「トトロは妖精らしいな。あんなものが居るというのなら、一度お目にかかってみたいものだ」

提督「妖精なら毎日見てるだろ」

日向「そう言えばそうだったな。一本取られたよ」

伊勢「千と千尋もなかなか面白かったですよ」

日向「魔女宅とかもな」

提督「……アニメ、しかもジブリばかりだな」

伊勢「ハウルをテレビで見て、それから売店で中古があったもので」

提督「……アニメ系なら、毎年映画を上映しているやつもあるな」

日向「コナンとかだな」

伊勢「でも、遡っていたら時間かかりますよ」

提督「最近面白かった奴だけで良いよ。話は繋がってないし」

日向「面白かった、というと?」

提督「今年は引っ越しくらいか。最近見返した中だと、コナンはベイカー街とか面白かった」

日向「ふむ……よくわからんな」

伊勢「まあ、今度見てみましょう日向」

日向「というか、他にないのか、他に」

提督「他に?」

日向「アニメ以外にだ」

提督「最近の映画はチェックしてないからなぁ……スタンド・バイ・ミーとかトイストーリー3はテレビで見てたが、相変わらず面白かったな」

伊勢「[たぬき]?」

提督「スタンド・バイ・ミーは海外の映画の方だ。あれは少年の頃を思い出させるよ」

日向「映画みたいなことでもあったのか?」

提督「そういうんじゃないって。ただ、昔はこんな気持ちだったこともあったし、次へ続く自分を思い出すこともできる……って、分からんか。すまんすまん」

伊勢「とにかく、それだけ面白いって事?」

提督「まあな。あれはオススメだ」

日向「では、トイストーリーはどうなんだ?」

提督「あれこそ、お前達には合ってるかもな。おもちゃたちが繰り広げるどたばたな物語。でも、そこにはきちんと終着点があり、その終着点はおそらく多くの人が感情を揺り動かされるだろう」

伊勢「さっきもそうだけど、無駄に表現が難解ですね」

提督「それだけ良かったって事だ! ったく、トイストーリーの方は持ってるから、何時でも見られるように談話室に置いておく」

伊勢「あ、ありがとうございます」

日向「では、さっそく見てみるとするか」

提督(あれ、本当に映画を紹介するだけで終わった)

―執務室―

提督「映画館まで行く暇が無いから、テレビ中心になるのは仕方がない」

提督「……いや、暇なら作れるけど、流石にね」

↓2

―白露型の部屋―

提督「五月雨は髪を結ったりしないのか?」

五月雨「髪を、ですか?」

提督「どうせなら上手く結んでやるぞ」

五月雨「何がどうせならなのかは分かりませんけど……でも、提督がしたいのであれば、いいですよ」

提督「言ったな、言質は取ったぞ」

五月雨「は、はい」

提督「よーし、五月雨に似合いそうなのはこのリボンかな」

五月雨「そのリボン、どこから出したんですか」

提督「それはまあ、企業秘密で」

五月雨「なんですか、もう」

提督「じゃあ、まず軽く髪を梳かすからな」

五月雨「は、はい」

提督「さーて、まずは何しようかな」

五月雨(提督、楽しそう。前もだけど、やっぱり好きなんだろうな)

提督「~~♪」

五月雨(……なんだか、こうしていると、安心して――)


~~~~~~~~

提督「というわけで完成」

五月雨「えっ……あれ、もうですか」

提督「結構時間かけていたんだが。もしかして、寝てたのか」

五月雨「ぅん……そうみたいですね……すみません」

提督「まだ寝ぼけてるみたいだな。あと、謝ることは無い。安心できたということだろう」

五月雨「ふわ…………あれ、提督?」

提督「本当に寝ぼけてたのか。まあいい、ポニテが出来たぞ」

五月雨「ポニテ……? あ、本当です」

提督「やっぱり、五月雨はそういう髪型も似合っているな」

五月雨「あ、ありがとうございます」

提督(元から五月雨の髪はまとまってるから、違いが感じにくいってのもあるけど)

五月雨「……それで、どうしましょうか?」

提督「ん? いや、もう解いても良いけど」

五月雨「本当は結びたかっただけなんですね」

提督「そうともいうな」

五月雨「……でも、ちょっともったいないですから、しばらくこのままにしておきます」

提督「五月雨がそれでいいなら、いいと思うが」

五月雨「提督、ありがとうございます」

提督(お礼言われるようなことしていないと思うんだけど)

―執務室―

提督「最初から結びたかったから、リボンは持って行っていただけである」

提督「あと、五月雨はしばらくこのままにすると言っていたが、すぐにドジッ子をして解けたという」

↓2

―談話室―

五十鈴「んー、今日は運勢が悪い感じね」

由良「今日の演習もんまり上手く行って無かったし、結構あってるかも」

提督「何してるんだ?」

五十鈴「占い」

提督「トランプで? あてにならないなぁ」

由良「提督さんならこういうの好きそうだと思ったのだけれど」

提督「すきだぞ。だが、当たらない」

五十鈴「まあ、所詮は遊びの一つなわけだから」

提督「そう、トランプ占いをしていると、秘書官に怒られるんだ」

五十鈴「それ、遊んでるって思われているだけね」

提督「……まあ、久しぶりにトランプ占いするもの良いかもな」

五十鈴「じゃあ、私が占ってあげようか?」

提督「五十鈴が? 何の占いをするつもりなんだ……」

五十鈴「何で微妙に警戒しているのよ。有名な奴、四枚のエースよ」

由良「でもそれって一人でもできるよね」

五十鈴「由良、そういうツッコミは要らない」

提督「四枚のエースなぁ……今更断る理由もないか。始めてくれ」

五十鈴「じゃあ、まず13枚のカード」

由良「確か、エースがあればいいんだよね」

提督「そうみたいだが……ないな」

五十鈴「いきなり運が悪いわね、はい、次」

提督「…………入れ忘れてるって事無いよな」

由良「またなかったの?」

五十鈴「提督の不運はもう確定したようなものね。次」

提督「不吉な事言うなよ……」

由良「どう、提督さん?」

提督「……だめだ、無い」

五十鈴「じゃあ、最後のこれに……あぁ、やっぱり」

提督「もしかして、全部固まってたのか」

五十鈴「……今日は休みなさい、それが良いわ」

提督「五十鈴が珍しく慈愛の目を俺に向けてくる!」

由良「提督さん、怖いなら由良がついていてあげるから……ね?」

提督「由良まで!?」

―執務室―

提督「占いの結果は最悪だった。あれちゃんとシャッフルしたんだよね」

提督「信じる訳じゃ無いけど、今日は大人しくしておこう……」

↓2

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月25日 (月) 11:14:42   ID: khZx3K28

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