【艦これ】俺氏、チ級になる (909)


チ級 「どうしてコウナッタ……」

ル級 「大丈夫…… 私はあなたト共にアル」 ニヤァ

ヲ級 「いってみヨウ!」 ニッコリ

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【注意】
※自分がもし深海棲艦なったら?
 という妄想を、そのまま脳から取って出し
※オチ、ひねり無し
※独自設定、多数有り
※ダラダラ垂れ流します
※ゆるい話のみ
※不定期更新
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第一話 チ級誕生



俺は雷巡チ級。

以前は人間だった。



まずは、チ級になった経緯を話そう。

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ある日、海外旅行でハメをはずした俺は

ビーチで散々酒を飲んだあげく

海に突撃。

そのまま溺れた。



どこに出しても恥ずかしい溺れ方だった。

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溺れた後、息苦しさを覚えて、

俺は目を覚ました。



チ級 「ガハァ!」



口からゲル状の透明な粘液を

俺は吐き出した。



俺は薄暗い部屋にいた。

体中、卵の白身のようなもので覆われていて、

風呂桶のようなものに入っていた。



チ級 (俺は生きていたのか)

チ級 (ここはどこだ?)

チ級 (体中ヌルヌルだ)

チ級 (それに真っ裸)



チ級 (風呂桶か……)

チ級 (いや)

チ級 (卵の殻か?!)

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ヲ級 「ヲォゥ、新しい船が出来たみたいだヨ!」

ヲ級 「新入りさん、よろしく頼むデー」



深海棲艦が俺に話しかけた。



チ級 (深海棲艦!?) ギョ

チ級 (これから俺は襲われるのか……?)

チ級 (でも)

チ級 (『新入りさん』って言ってたな?)



チ級 (それにしても、深海棲艦って)

チ級 (思ったよりノリ軽いな)

チ級 (意外とフレンドリーかも……)

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チ級 「そこのお姉サン」

チ級 「ここ、どこですか?」



ヲ級 「ココか?」

ヲ級 「ココはナ、深海棲艦の『巣』や」

ヲ級 「深海何千メートルの海底の地下なんヤデー」



チ級 「な、なんだってーーーー?」

チ級 「……」

チ級 「ところで」

チ級 「お姉さんが俺を助けてくれたの?」



ヲ級 「ん?」



チ級 「俺、用事があってさ」

チ級 「ビーチまで帰らなきゃいけないんだけど」

チ級 「帰り方、教えてくれない?」

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ヲ級 「あーー」

ヲ級 「たまーーーにいるんヤナー」

ヲ級 「昔を覚えとるヤツが」

ヲ級 「まあ自分の顔でも見てみいヤ」



ちょっち背の低いヲ級が、部屋の鏡を指差した。

俺は何気なく鏡を見ると……。



チ級 「な、なんじゃこりゃーーーー!」



俺は深海棲艦になっていた。

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チ級 「あわわわわわ!!!」

チ級 (落ち着け! 俺!)

チ級 (まだ、あわてるような時間じゃない!)

チ級 (素数を数えて落ち着くんだ!)



ヲ級 (そうとうパニクっとるナ……)

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どこからともなくヲ級は飲み物を持ってきた。



ヲ級 「まあ、これでも飲んデ」

ヲ級 「落ち着キ」



俺は飲み物を見た。



チ級 (黒い……)

チ級 (コーヒーかな?)



俺は飲み物を飲んだ。



チ級 (とても苦くて、少しピリピリ舌を刺激する)

チ級 (そして油っぽい……)

チ級 (オリーブオイルを飲んでるみたいだ……)

チ級 (凄く不味いけど)

チ級 (イヤじゃない)

チ級 (体が求めているみたいな……)



ヲ級 「落ち着くヤろ」

ヲ級 「C重油の軽油割 ホットやデ」

チ級 「」



不思議なことに、俺は重油を飲みきった。

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ヲ級 「体中ヌルヌルで気持ち悪いヤろ?」

ヲ級 「あっちにシャワーがアルから」

ヲ級 「浴びるとエエで」



俺は何も考えられないまま

言われたとおりシャワーを浴びた。

シャワーの水は海水だった。



チ級 (気が動転して気にならなかったが)

チ級 (俺、女になってるな)

チ級 (結構スタイルいいかも)

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ヲ級 「サッパリしたやろ」

ヲ級 「次は、これ着テヤー」



俺は用意された服を着た。



チ級 (露出多いな)

チ級 (水着というよりは)

チ級 (女子陸上選手みたいな感じだな)



ヲ級 「あ、そこの仮面も着けてんカー」



俺は仮面を着け、鏡を見た。



チ級 (お! ちょっとカッコいいかも)



しかし……

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チ級 「お姉さん」

ヲ級 「なんヤ?」

チ級 「この仮面……」

チ級 「右目見えないんですけど……」



ヲ級 「……」

ヲ級 「ロマンや……」

ヲ級 「隻眼の美少女……」

ヲ級 「これをロマンと言わずシテ」

ヲ級 「なにがロマンなんヤ……」 ウットリ

チ級 「」



ヲ級 「冗談ヤデー」

ヲ級 「実は小さい穴が開いてるカラ」

ヲ級 「そこから覗いテ」



チ級 (なんかこんなの有ったな)

チ級 (目が良くなるメガネ?とか)

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あまりの事態に、俺は現実逃避をし始めた。



チ級 (長期休暇が終わったら)

チ級 (溜まっている会社の大量のメールを読まないとな……)



チ級 (月末の報告書、面倒だな……)



チ級 (遅れているPJの作業を)

チ級 (どうやってキャッチアップしようかな……)



チ級 (顔が変わったから、免許証の顔写真を替えないとな……)

チ級 (性別が変わったら、戸籍とかどうなるのかな……)



チ級 (上司に、どう言おうかな……)

チ級 (『俺、深海棲艦になったっス!』とか……)



チ級 (そもそも人間じゃないな……)

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そんな俺の考えを見透かしたかのように

チビッコのヲ級が言った。



ヲ級 「悪いことはイワン」

ヲ級 「人間社会に戻るのは諦めたホウがエエで」 ニヤリ



ヲ級 「話せばワカル、と思ってるかもしれんガ」

ヲ級 「話せるほど、近づけんヨ」



ヲ級 「あんなぁ」

ヲ級 「深海棲艦と艦娘の戦いを、ガンダムみたいやと思ったら」

ヲ級 「大間違いヤデ」



ヲ級 「実際はナァ」

ヲ級 「最初に艦載機同士でヤリあって」

ヲ級 「次に電探と観測機に頼った遠距離の打ち合いナンヤ」

ヲ級 「話せる距離に近づく前に」

ヲ級 「爆発四散で、サヨナラやで」 ニヤリ

チ級 「」

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ヲ級 「万が一、話し合えたとしテモ」

ヲ級 「捕虜になって」

ヲ級 「キツーーーーーイ尋問やろうナ」 ニヤァ



ヲ級 「何も知らん、と言ってモ」

ヲ級 「信じてもらえんやろナ」 ニヤリ

チ級 「」 ブルブル



ヲ級 「そしテ」

ヲ級 「良くて解体」

ヲ級 「悪くテ」

ヲ級 「実験体として研究材料にされテ」

ヲ級 「さんざんオモチャにされたアゲク」

ヲ級 「ホルマリン漬けやろうナァ」 ニタァ

チ級 「アワワワワワ」 ブルブル

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ヲ級 「逆に考えたらエエ」

ヲ級 「溺れて死んだケド」

ヲ級 「チ級として、オマケの人生を」

ヲ級 「生きられると思ったらエエんや」



ヲ級 「ラッキーやで、キミィ!」 ニッコリ

チ級 「……」

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ヲ級 「ウチの名前はヲ級の乙羽」

ヲ級 「よろしくぅ!」



ヲ級 「普段はヲ級って呼んでエエデ」

ヲ級 「ヲ級が何人かおるトキは」

ヲ級 「ヲトハ、って呼んでヤー」



ヲ級 「キミはチ級ヤデ」

ヲ級 「ウチが良い名前を付けたるわー」

ヲ級 「千鳥とかどう?」

ヲ級 「キミは酒臭かったらしいやん」

ヲ級 「『チドリ』足ってことヤデー」

ヲ級 「ウヒャヒャヒャヒャ」

チ級 「」

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ヲ級 「トコロデ」

ヲ級 「明日はココを出て」

ヲ級 「ウチらの『チンジュフ』に行くで~」

ヲ級 「チョッチ長旅になるカラ」

ヲ級 「この部屋でユックリ休んどき」



チ級 「チンジュフ?」



ヲ級 「ウチらの巣のことヤデー」

ヲ級 「でも『巣』って呼び方が」

ヲ級 「なんかシックリこないんヨ」



ヲ級 「ウチな」

ヲ級 「深海棲艦の前の記憶は」

ヲ級 「ほとんど無いんヨ」

ヲ級 「でも」

ヲ級 「『チンジュフ』って呼ぶと」

ヲ級 「不思議とシックリくるんヤナ」

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動転していた俺は、眠りに逃げた。

そして起こされた。



ヲ級 「おはようサン!」

ヲ級 「ココを出発する前ニ」

ヲ級 「『オカン』に挨拶していくデー」



チ級 「オカン?」

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俺たちは、巣の最深部に移動した。



ヲ級 「オカンーーー!」

ヲ級 「会いにキタでーーー!」

チ級 「」



そこには化け物がいた。

化け物は、ひたすら何かを食べながら

卵を産んでいた。



チ級 (エイリアン2って映画の)

チ級 (クイーンエイリアンを数十倍大きくした感じだな……)



オカン 「キシャーーーーー!!!」 クルッ



オカンは、こっちを見た。



チ級 「!?」



オカン 「キシャーーーーー!!!」 ニコッ



チ級 (なにか今笑ったような……)

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ヲ級 「オカンはな」

ヲ級 「船の怨霊と」

ヲ級 「食べたモノから」

ヲ級 「深海棲艦の卵を産むんやデー」



ヲ級 「食べモノの中に」

ヲ級 「時々、人間の死体とか」

ヲ級 「轟沈した艦娘とかが混じっていて」

ヲ級 「キミみたいのが生まれるんヤ」

チ級 「」

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ヲ級 「オカン、またナー」 フリフリ

オカン 「キシャーーーーー!!!」 フリフリ

チ級 「」 フリフリ



俺たちはオカンに別れを告げた。

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ヲ級は俺に水中でのハンドサインを教えた。



ヲ級 「デハ……」

ヲ級 「イッテミヨウ!」



俺たちは『巣』を出発し、『チンジュフ』に向かった



- 第一話 完 -

次回予告

第二話 姫、登場

近日公開予定

スレ汚し、失礼いたしました

ではまた


             ζ 
         / ̄ ̄ ̄ ̄\       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
       /         |    < カツオ、こづかいじゃ。 
       | ⌒  ⌒   /|      \_______ 
       | (・)  (・)   ||||||| 

       | ⊂⌒◯-----∂)___   ___ 
       | ||||||||_     /     ゙Y"     \ 
         \ヽ_/ \/              \ 
         \    /                 \ 
          / ̄ ̄ ̄ ̄)        *      ( ̄ ̄ ̄ ̄) 
         |    ─<         |\      >─   ( 
         |      )     /  (|ミ;\    (      ) 
         ヽ    ̄ ̄)    /(___人|,iミ'=;\  (  ̄ ̄   ) 
         /" ̄ ̄ ̄ ̄   /    《v厂リiy\  ̄ ̄ ̄ ̄\ 
         /        /        ゙|,/'' v:,,、.¨)z,_       \ 
        /       /         ミ/ .-─ .゙》z、      \ 
        /      /           〔」″ノ‐ 、u ¨\      ) 
       (      /             ゙|, ..冫 .rー    ̄\_    | 
        |      〔              ミ./′   ..r-ー __,,ア┐  | 
        |      |              {. .,,,,   .′  .´′ .¨\| 
        |       |              ∨   ノ冖′ =vvvvvv¨\ 
        |     /               ミ.   ,i'           .゙\_ 

aaテスト失礼

   \     毛       /
  腿  \_  |   _/

          彡彡彡
          ミミミミ クリトリス
         ミミミミ / ̄ ̄ ̄ ̄
         ノ σ ヽ 尿道
       / / ゚ヽ ̄ ̄ ̄ ̄

大陰唇 / //\\ \
 ̄ ̄ ̄ ̄  ( ( 膣 ) ── 小陰唇

      \ \\// /
         `   \/  '
\        >>1──肛門

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        ;;;彡ミ;;ノ .| | ヽ彡ミ;;; 
        ;;;彡ミ;ヽ |.・.| /彡ミ;;; 
        ;;;彡ミ;;ヽ|  .| /;;彡ミ;;; 
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         ;;彡彡彡*ミミミミ;; 
          ;;;;彡彡ミミミ;;; 

           ;;彡彡ミミ;;; 

少し借りました。ありがとう。


第二話 姫、登場



俺たちの旅は、俺の予想に反して快適だった。

最初、俺は「チンジュフ」まで泳いで行くと思っていた。

しかし……。

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出発前、俺はヲ級に聞いた。



チ級 「泳いで行くんですか?」

ヲ級 「ちゃうデー」

ヲ級 「キミはコレに乗るんや」



そこにはジェットスキーのような乗り物が有った。



チ級 「す、スゴイ!」

チ級 「深海棲艦の技術力は、結構、高いんですね!」



ヲ級 「ちゃうデー」

ヲ級 「キミと一緒に卵に入ってたんヤ」

チ級 「」

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ヲ級 「詳しいことは、よう分からんのヤケど」

ヲ級 「雷巡の怨霊が『自分の姿はこうや!!!』」

ヲ級 「と、思った姿で生まれるらしいんヨ」



ヲ級 「雷巡の怨霊も、ナカナカやるやんかなぁ?」

ヲ級 「だから服も着たままで生まれるんヤデ」

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俺が生まれた時は、目覚める前に服を脱がせて、

洗って乾かしてくれていたらしい。



チ級 (ヲ級さん、ありがとう……)

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ヲ級 「そういう点でいうと、空母の怨霊ハ」

ヲ級 「自分で言うのもアレやが……」

ヲ級 「相当ラリっとるナ!!!」

ヲ級 「ウヒャヒャヒャヒャ!!!」



ヲ級 「こんな帽子に杖とか」

ヲ級 「マジありえヘン!!!」

ヲ級 「ウヒャヒャヒャヒャ!!!」

チ級 「」

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チ級 「ヲ級さんは乗り物があるんですか?」

ヲ級 「あるデー」



ヲ級 「まあ乗り物っちゅうか……」

ヲ級 「この『ヲ帽子さん』が引っ張ってくれるんヤ」

ヲ級 「『ヲ帽子さん』は優秀なんやデ!」



ヲ帽子 「ヲ帽子です」

ヲ帽子 「以後、お見知りおきヲ」

チ級 (シャァベッタァァァァァァァ!!!)

チ級 「よ、よろしくお願いします」



なお、ヲ帽子さんは女性だそうな。

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チ級 「酸素ボンベとか要らないんですか?」

ヲ級 「アーー、要らヘン、要らヘン」

ヲ級 「ウチら、水中で息が出来るんヤ」



ヲ級 「オカンの食べ物にな」

ヲ級 「魚が入っていて」

ヲ級 「ウチらも魚の性質を受け継いで」

ヲ級 「水中で呼吸が出来るみたいなんヤ」

チ級 (もう何でもありだな……)

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ヲ級 「深海は真っ暗やから」

ヲ級 「ハグレんように」

ヲ級 「お互いロープで繋いでおくデー」

ヲ級 「なんか用事があったら引っ張ってやー」

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俺たちは艦娘に見つからないよう、海中を移動した。



俺はジェットスキーに乗って快適に移動した。



ヲ級はヲ帽子に引っ張られて移動していた。

ヲ帽子は2本の触手でヲ級を掴み、

残りの2本の触手で器用に泳いでいた。



引っ張られているヲ級は、適当に寝てたり

お菓子を食べたり、快適そうだった。



ヲ帽子の目は、まるで車のライトのように光って

深海で前方を照らしていた。



チ級 (ヲ帽子さん、優秀だな)

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時々、俺たちは海底で休憩をして、

食事や睡眠を取った。



熱水噴出孔の近くで休んだときは、

温泉のようで気持ち良かった。



チ級 (昔、ドラ●もんの映画で)

チ級 (海底を旅するなんてのが有ったな……)

チ級 (ドラ●もん……)

チ級 (俺のことも助けてくれないかな……)

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そんなこんなで、俺たちは「チンジュフ」に着いた。



チンジュフは南国の小島に有った。



打ち捨てられた小さなホテルを

チンジュフにしているようだった。



チ級 (まさか深海棲艦が地上に棲んでいるとは……)

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ヲ級 「ではウチらの姫を紹介するでー!」

ヲ級 「姫はチンジュフで一番エライんや」

ヲ級 「失礼なことしたらアカンでホンマ」

ヲ級 「この指令室におられるんや」



ヲ級が指令室のドアを開けた。



ヲ級 「ヲ級、新入りを連れテ」

ヲ級 「タダイマ戻りました!」 ビシッ!



指令室には、誰もいないようだった。

いや……。

机に後ろに誰か隠れていた。



机の後ろの女の子が、首だけ出して言った。



女の子 「いぢめる?」

ヲ級 「いぢめへんで」

チ級 「」

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安心したらしく、女の子がオズオズと出てきた。



真っ赤なロングブーツ、

真っ赤なストッキング、

黒いスカート、

白いシャツと上着、

白い肌と髪、

赤と黒の帽子。



10代半ばの女の子といった感じだ。

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ヲ級 「このお方コソ」

ヲ級 「誰も知らナイ」

ヲ級 「知られちゃイケナイ」

ヲ級 「『旅客船姫』様なんやデーーー!」

チ級 「な、なんだってーーー!」



ヲ級 「チナミに」

ヲ級 「火力、無シ!」

ヲ級 「装甲、無シ!」

ヲ級 「運、無シ!」

ヲ級 「の、三拍子揃った」

ヲ級 「スゴイお方なんヤデーーー!」

チ級 「」



ヲ級 「キメ台詞は……」



旅客船姫 「氷山コワイ……」



旅客船姫、ヲ級 「イエーーー!」 ハイタッチ

チ級 「」

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チ級 (このチンジュフ)

チ級 (艦娘に攻められたら)

チ級 (イチコロだな……)



チ級 (俺もう駄目かも……)

チ級 (ホルマリン漬けかな……)

チ級 (ハハハ……)



- 第二話 完 -

次回予告

第三話 招かざる客



スレ汚し、失礼しました。

ではまた。

よぉぉおお
ひぃぃいい
ぜなぁああああ
すぃんなふぃいいいいい

>>42
セリーヌ姉さん? セリーヌ姉さんじゃないか!

なぜバレたし……。(白目)


第三話 招かざる客 (前編)



俺は「チンジュフ」に到着し、旅客船姫に会った。

深海棲艦の姫は、おどろおどろしい化け物だと思っていたが、

予想に反して可愛い女の子だった。

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チ級 「チ級です」

チ級 「よろしくお願いいたします!」 ビシ



俺は見よう見まねで敬礼した。



旅客船姫 「南国孤島のチンジュフへようこそ」

旅客船姫 「私は旅客船姫です」



旅客船姫 「長旅、お疲れ様でした」

旅客船姫 「今日は自室で休んでください」

旅客船姫 「話は明日にしましょう」

-----------------------------------------------


ヲ級はチンジュフを案内した。



ヲ級 「ココがキミの部屋やデー」



ヲ級 「ココが共同浴場やでー」

ヲ級 「シャワーだけやのうて」

ヲ級 「なぜかスパもアルんや」



ヲ級 「ココが食堂」

ヲ級 「夜、食事の用意が出来たら」

ヲ級 「呼びに来るデ」

-----------------------------------------------

チ級 (規模は小さいけど)

チ級 (手入が行き届いているな……)



チ級 (俺が思っている深海棲艦の拠点のイメージとは)

チ級 (ずいぶん違うんだな……)

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部屋で休んでいると、ヲ級が呼びに来た。



ヲ級 「メシやでー」

ヲ級 「皆、遠征に行ってて」

ヲ級 「今夜は、姫様とウチだけや」

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夕飯はシーフードシチューだった。

深海棲艦らしく、使っている油は軽油だった。



チ級 (軽油って無味無臭に近いけど)

チ級 (油の旨みがあって)

チ級 (魚の味も壊さない)

チ級 (美味いな……)



ヲ級 「美味いやろー?」

ヲ級 「姫様が料理したンヤデ」

ヲ級 「さすが旅客船」

ヲ級 「料理が上手やナー」

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夕飯の後、俺は部屋に帰って寝た。



俺は夢を見た。



夢の中で、俺はチ級のまま会社に行った。

そして当然のように仕事をして、自宅に帰って寝た。



そこで目が覚めた。



チ級 (もう、どこまでが現実で)

チ級 (どこからが夢か、分からんな……)

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翌朝、俺は司令室に行った。

ヲ級もいた。



チ級 「おはようございます」

ヲ級 「おはようサン」

旅客船姫 「おはようございます」



旅客船姫 「では座ってください」

旅客船姫 「このチンジュフについて話す前に」

旅客船姫 「まずは深海棲艦について話しましょう」

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旅客船姫 「深海棲艦とは何か……」



チ級 「!?」

チ級 (全人類が知りたがっていることを)

チ級 (今、俺は知るのか!?)



旅客船姫 「実は私たち自身も、よく分かっていないのです……」

チ級 「」

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旅客船姫 「私の考えですと……」

旅客船姫 「深海棲艦は蟻に近いような気がします」



旅客船姫 「地下に巣を作って」

旅客船姫 「女王が卵を産んで」

旅客船姫 「兵隊アリや働きアリに相当する深海棲艦がいます」



旅客船姫 「働きアリがエサを集めるように」

旅客船姫 「このチンジュフも色々集めて」

旅客船姫 「お母様のいる『巣』に送っています」



旅客船姫 「このチンジュフでのチ級さんの仕事は」

旅客船姫 「資材、食料集めと、それを『巣』に送ること」

旅客船姫 「そして、その護衛です」



旅客船姫 「ここまで、よろしいですか?」 ニッコリ

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チ級 「質問よろしいですか?」

旅客船姫 「ええ」 ニッコリ



チ級 「深海棲艦は、どこから来たのですか?」

チ級 「突然変異で生まれたのでしょうか?」



旅客船姫 「それは…… 私達にも謎なのです」

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以前、旅客船姫はお母様に同じ質問をしたそうな。

「前は違う場所に居たが、気付いたら今の場所にいた」

と、お母様は答えたそうだ。

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旅客船姫 「どうやら、別の場所からココに来たようなのですが」

旅客船姫 「なぜ、どうやってココに来たかは」

旅客船姫 「お母様にも分からないのです」



チ級 「そうですか……」

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チ級 「それと」

チ級 「なぜ人間を襲うのでしょうか?」



旅客船姫 「あなたが人間の記憶を持っていることは」

旅客船姫 「ヲ級さんから聞いています」

旅客船姫 「当然の質問だと思います」



旅客船姫 「人型ではない深海棲艦が襲う理由は」

旅客船姫 「船の怨霊に従っているため」



旅客船姫 「人型の深海棲艦が襲う理由は」

旅客船姫 「人間への恐怖からです」



旅客船姫 「その理由の説明は」

旅客船姫 「少し長くなります」



旅客船姫は話し始めた。

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深海棲艦は、今でこそ知能や理性を持っているが、

最初は、本物の蟻のように、本能のままに行動していたそうな。

それで、人間を本能のままに襲って、食べていたそうだ。

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旅客船姫 「本能に従うだけならば」

旅客船姫 「食べ物は、人間でなくても」

旅客船姫 「動物でも魚でも良かったのです」



旅客船姫 「しかし、運の悪いことに」

旅客船姫 「お母様は、ココに来て最初に」

旅客船姫 「船の怨霊を食べてしまったのです」



チ級 「???」

チ級 (船の怨霊って食べ物なのか???)

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旅客船姫 「お母様も含めて、深海棲艦は」

旅客船姫 「生物の生命エネルギー」

旅客船姫 「『魂』が主食なのです」



旅客船姫 「動物を食べるのは」

旅客船姫 「肉や骨よりは」

旅客船姫 「『魂』を食べるためなのです」



旅客船姫 「船の怨霊は、とても強大で」

旅客船姫 「お母様にはカロリーたっぷりの」

旅客船姫 「美味しい食べ物に見えたらしく」

旅客船姫 「深海に住んでいたお母様は」

旅客船姫 「真っ先に食べました」



旅客船姫 「そして」

旅客船姫 「お母様が生む深海棲艦の性質は」

旅客船姫 「お母様が食べた物に影響されるのです」



旅客船姫 「強力な船の怨霊を食べて」

旅客船姫 「深海棲艦を生んだ結果」

旅客船姫 「本能と」

旅客船姫 「人間への憎しみだけで行動する」

旅客船姫 「深海棲艦になってしまったのです」



チ級 「……」

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旅客船姫 「皮肉なことに」

旅客船姫 「私達が人間を襲い」

旅客船姫 「お母様が人間の魂を食べ続けた結果」

旅客船姫 「理性と知性を持った」

旅客船姫 「人型の深海棲艦が生まれ始めました」



旅客船姫 「しかし『時すでに遅し』でした」



旅客船姫 「私達が人間にやってしまったことの意味を」

旅客船姫 「私達が理解出来るようになった時」

旅客船姫 「もう」

旅客船姫 「取り返しがつかないことも」

旅客船姫 「同時に理解してしまいました」

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旅客船姫 「私達は恐怖しました」



旅客船姫 「人間は」

旅客船姫 「決して私達を許さないだろうと」

旅客船姫 「1人残らず解体するつもりだと」



チ級 「……」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「だから、人型の深海棲艦は」

旅客船姫 「人間に解体されないよう」

旅客船姫 「戦局の均衡を保つため」

旅客船姫 「『積極的防衛』の名のもとに」

旅客船姫 「人間を襲撃しているのです」

-----------------------------------------------


チ級 (もし人間や艦娘を襲えと命令されたら)

チ級 (どうする……?)

チ級 (抵抗するか?)

チ級 (逃げるか?)



俺の考えを見透かしてか、旅客船姫は言った。



旅客船姫 「しかし」

旅客船姫 「このチンジュフでは」

旅客船姫 「人間も艦娘も襲いません」

チ級 「!?」



- 続く -

スレ汚し、失礼いたしました。

ではまた。


第三話 招かざる客 (中編)



チ級 「なぜ襲わないのですか?」



旅客船姫は、少し考えてから答えた。



旅客船姫 「理由は一つではありません」

旅客船姫 「しかし……」



チ級 「しかし……」 ゴクリ



旅客船姫 「ここで休憩にしましょう」

チ級 「」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「紅茶はいかがですか?」

チ級 「はい」

チ級 「頂きます」



旅客船姫 「ヲ級ちゃんも紅茶でいい?」

ヲ級 「はい!」

チ級 「お願いしマス!」

-----------------------------------------------

旅客船姫 「ウフフ」

旅客船姫 「自分自身のことではありますが」

旅客船姫 「深海棲艦とは何か?」

旅客船姫 「を、考えるのは面白いんですよ」



旅客船姫 「本当に不思議です」

旅客船姫 「余り話す機会がないので」

旅客船姫 「熱く語ってしまいました」



しばらくすると、初老のダンディな執事が

紅茶とケーキを持ってきた。



チ級 「このチンジュフには人間が居るんですね」



旅客船姫 「いえ」

旅客船姫 「彼は私の艤装の」

旅客船姫 「ギャリソンさんです」

チ級 「」



ギャリソンさんがコッチを見て、

ニヤリと笑った。

チ級 「」



俺はメマイがしそうだった。

-----------------------------------------------


チ級 「そういえば艦娘には」

チ級 「『スロット』という機構があり」

チ級 「装備を追加出来ると聞いてます」

チ級 「姫様も追加してはいかがですか?」



旅客船姫 「4スロット、既に全て埋まってます」

旅客船姫 「レストラン!」 バーーーーン!

旅客船姫 「プール!」 バーーーーン!

旅客船姫 「サウナ!」 バーーーーン!

旅客船姫 「スカッシュ場!」 バーーーーン!

チ級 「」



チ級 (アカン!)

チ級 (この姫様、根本的に戦争に向いてない……)

-----------------------------------------------


旅客船姫 「このように私は喧嘩が弱いので」

旅客船姫 「やんちゃな姫姉様から、色々、可愛がりを受けました……」 ガクガク ブルブル

旅客船姫 「……」

旅客船姫 「いえ、可愛がられました……」



チ級 「そうですか」

チ級 (あの間は一体……)

-----------------------------------------------


紅茶を飲みながら、旅客船姫は話し始めた。



旅客船姫 「では」

旅客船姫 「なぜ人間や艦娘を襲わないか、でしたね」



旅客船姫 「第一に」

旅客船姫 「メリットが無いため、です」

-----------------------------------------------

このチンジュフでは、

特に食料や資材には困っていないらしく、

わざわざ人間や艦娘を襲って、

それらを奪う必要がないそうだ。

-----------------------------------------------


旅客船姫 「第二に」

旅客船姫 「チンジュフの戦力が弱いため、です」

-----------------------------------------------

このチンジュフは規模が小さく、

姫を入れても10人程しか居ないそうな。



そのため人間や艦娘を襲うためには

戦力が不十分らしい。

-----------------------------------------------

旅客船姫 「今の戦力で艦娘さん達を襲っても」

旅客船姫 「返り討ちにあって全滅でしょうね……」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「第三に」

旅客船姫 「私は争いごとは嫌いなのです」



旅客船姫 「他の深海棲艦は」

旅客船姫 「軍艦の怨霊が元となってますが」

旅客船姫 「私は旅客船の怨霊が元なので」

旅客船姫 「争いごとは苦手で嫌いなのです」



旅客船姫 「深海棲艦の姉妹達が嫌いな訳ではないのですが」

旅客船姫 「どうにも馴染めません……」

-----------------------------------------------

ヲ級 「実はな……」

ヲ級 「ウチも艦娘ちゃん達とヤリあうのが」

ヲ級 「どーーーにも、気が進まなくてナァ」



ヲ級 「ほんで」

ヲ級 「生まれてこのカタ」

ヲ級 「ずーーーーっと、艦娘ちゃん達と戦うのヲ」

ヲ級 「サボッっとったらな……」



ヲ級 「こんなサイハテの」

ヲ級 「誰もおらん」

ヲ級 「艦娘に襲われたら即全滅の」

ヲ級 「ちみっこいチンジュフに」

ヲ級 「左遷サレ……」



ヲ級 「コホン、オホン」



ヲ級 「ここに栄転になったんヤデ!!!」 バーーーーーン

チ級 「」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「第四に」

旅客船姫 「このチンジュフが将来」

旅客船姫 「人間と同盟を組むかもしれないからです」



チ級 「!?」



旅客船姫 「このチンジュフの敵は人間、艦娘だけではないのです」

旅客船姫 「将来、他の姫姉様と」

旅客船姫 「戦争になるかもしれないのです」



チ級 「!?」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「実は『姫』というのは」

旅客船姫 「次の『女王』の候補なのです」



チ級 「!?」



旅客船姫 「この星は、2人の『女王』には狭すぎます」



旅客船姫 「現在、私も含めて姫姉様達は」

旅客船姫 「とても仲が良いです」

旅客船姫 「しかし」

旅客船姫 「深海棲艦の『姫』としての本能に目覚めた時……」

旅客船姫 「『女王』争いが」

旅客船姫 「平穏に行われるか」

旅客船姫 「戦争になるか」

旅客船姫 「正直わからないのです」



チ級 「……」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「このチンジュフが」

旅客船姫 「他の姫姉様と戦っても」

旅客船姫 「勝ち目は全くありません」



旅客船姫 「ですから」

旅客船姫 「人間と同盟を組むことや」

旅客船姫 「最悪、人間側に亡命することもありえるのです」



旅客船姫 「そのため」

旅客船姫 「人間を敵に回したくないのです」



チ級 「……」

-----------------------------------------------


チ級 「説明ありがとうございました」

チ級 「襲わない理由はわかりました」

チ級 「では」

チ級 「襲われた場合はどうするのですか?」



旅客船姫 「逃げます」



旅客船姫 「そもそも」

旅客船姫 「このチンジュフは戦略的価値が無いので」

旅客船姫 「まずまず襲ってこないのですが」

旅客船姫 「万が一襲ってきたら」

旅客船姫 「水中に逃げます」



旅客船姫 「艦娘さん達は水中戦が苦手らしく」

旅客船姫 「まず追ってきません」

旅客船姫 「そして、ほとぼりが冷めるまで」

旅客船姫 「海底の『巣』で待ちます」

-----------------------------------------------


ヲ級 「このチンジュフとは別に」

ヲ級 「近くの海溝の海底地下に」

ヲ級 「ウチらの『巣』があるんヤ」

ヲ級 「ソコはチンジュフより、はるかに安全なんヨ」

ヲ級 「デモ……」 チラッ



ヲ級は飛行場姫を見た。



旅客船姫 「ふん!」 プイッ



ヲ級 「姫様が行きたがらないんヨ……」



旅客船姫 「海の底コワイ!」 ガクガク ブルブル

旅客船姫 「暗いのコワイ!」 ガクガク ブルブル

旅客船姫 「沈むのコワイ!」 ガクガク ブルブル

チ級 「」

-----------------------------------------------


指令室のドアがノックされた。



ル級 「入ってもよろしいですか?」

旅客船姫 「どうぞ」



真っ黒な服の大柄な深海棲艦と、

黒いスカート付きのワンピース水着の

チビッコ深海棲艦が入ってきた。



ル級 「遠征から帰投いたしまシタ!」 ビシ

リ級 「いたしましたのデス!」 ビシ

-----------------------------------------------


旅客船姫 「遠征、お疲れ様でした」



旅客船姫 「こちらが新しく配属なった」

旅客船姫 「チ級さんです」



チ級 「チ級です」

チ級 「よろしくお願いいたします!」 ビシ



旅客船姫 「こちら戦艦ル級さんです」

ル級 「私が戦艦ル級ダ。よろしく頼むゾ!」 ガシッと握手

チ級 「よろしくお願いします」

チ級 (大きいけど、奇麗な手だな)



旅客船姫 「こちら重巡リ級さんです」

リ級 「リ級です。どうか、よろしくお願いいたしマス」 握手

チ級 「よろしくお願いします」

チ級 (ちっちゃくて可愛いな)

チ級 (重巡にしては小さいような……)



旅客船姫 「お二人は、とりあえず休憩して下さい」

旅客船姫 「後ほど、遠征の報告願います」



ル級 「は!」

リ級 「は!」



ル級 「チ級、またナ!」

リ級 「またなのデス」 ペコリ

-----------------------------------------------


二人が部屋を出ようとした時、

突然、司令室に深海棲艦が入ってきた。



ネ級 「姫!」

ネ級 「人間の船が近づいてきておるぞ!」



- 続く -


スレ汚し、失礼しました。

この前、カラオケでダイターン3のOPを歌ったら、

ギャリソンさんを思いつきました。

ではまた


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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430162173/)
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※グロ中尉



第三話 招かざる客 (後編)



ネ級 「一艘のモーターボートが」

ネ級 「この島に向かっておるのじゃ!」



一同 「!?」



遅れて別の深海棲艦も入ってきた。



ヘ級 「軽巡、ヘ級、遠征から帰投いたしました!」



どうやら、ネ級、へ級は一緒に遠征していたらしい。

帰投の途中、島に到着寸前にボートに気づいたそうな。

-----------------------------------------------


旅客船姫 「ヲ級さん!」

旅客船姫 「偵察機を飛ばしてください!」



ヲ級 「了解!」



旅客船姫 「この島への到着は?」



ネ級 「このままダト15分後ぐらいじゃろうカ……」



チ級 「海軍ですか?」



旅客船姫 「いえ」

旅客船姫 「多分、海賊です」



旅客船姫 「現在の海賊は」

旅客船姫 「船を襲うのではなく」

旅客船姫 「深海棲艦のふりをして」

旅客船姫 「海に近い町村を襲撃するのです……」

-----------------------------------------------


ヲ級 「偵察機が帰ってきタ!」



ヲ級 「やはりボートは海賊ヤデ」

ヲ級 「それと面倒なことにナ」

ヲ級 「誘拐されたっぽい女性も数人乗っておルデ」



旅客船姫 「!?」



旅客船姫 「わかりました」

旅客船姫 「では、こうしましょう」

旅客船姫 「ゴニョゴニョゴニョ……」

-----------------------------------------------


海賊は、この島の桟橋に乗りつけ、船を係留した。



海賊船長(以下、船長) 「この島だな」

船長 「このご時勢に海辺に住んでいる」

船長 「頭がイカレた一家が住んでいるというのは」



船長 「お前ら二人は、このボートに残って」

船長 「女共を見張ってろ!」



船長 「他の野郎共は」

船長 「俺について来い!」



海賊 「へい!」

-----------------------------------------------


海賊が島に乗り付ける前……。



旅客船姫 「皆さん、作戦はいいですね?」

旅客船姫 「では」



旅客船姫 「ル級さんとヲ級さんは」

旅客船姫 「桟橋付近で隠れて待機」



旅客船姫 「ネ級さんとリ級さんは」

旅客船姫 「屋根裏の隠し部屋で待機」



旅客船姫 「チ級さんとヘ級さんは」

旅客船姫 「この服に着替えてください」



旅客船姫は、メイド服を差し出した。



旅客船姫 「深海棲艦とバレないよう」

旅客船姫 「相手を油断させるため」

旅客船姫 「着替えてください」

旅客船姫 「急いで!」

-----------------------------------------------


チ級 (まさか深海棲艦になったあげく)

チ級 (海賊に襲われるとは……)

チ級 「どうしてコウナッタ……」

ル級 「大丈夫…… 私はあなたト共にアル」 ニヤァ

ヲ級 「いってみヨウ!」 ニッコリ

-----------------------------------------------


旅客船姫 「ル級さん」

旅客船姫 「仮面と折りたたみのバケツを」

旅客船姫 「持っていって下さい」



ル級 「ありがたイ」

ル級 「貰っておコウ」



チ級 「?」

-----------------------------------------------


旅客船姫 「チ級さん、ヘ級さんは」

旅客船姫 「マスクを取ってください」

旅客船姫 「代わりにこれを」



旅客船姫は、拳銃を差し出した。



チ級 「!?」



旅客船姫 「艤装の大砲を撃つと」

旅客船姫 「深海棲艦とバレるので」

旅客船姫 「これで相手をしましょう」

-----------------------------------------------


海賊がチンジュフの前までやって来た。



船長 「ふーーーん」

船長 「金を持ってそうな屋敷だな」

船長 「まずは挨拶だ」



海賊 「へい!」



船長と海賊がアサルトライフルを、

屋敷の窓めがけて撃ってきた。

-----------------------------------------------


ダダダン! ダダン! ダン! ダダダダン!



旅客船姫 「キャーーーー!!!」

ヘ級 「キャーーーー!!!」

チ級 「ヴォオオオオオ!!!」



俺だけ叫び方が男だった。



旅客船姫、へ級、ギャリソンが

拳銃で反撃した。



パン! パン! パン!



とりあえず俺も拳銃を撃った。



パン!

-----------------------------------------------


船長 「けっ!」

船長 「やはり武器を持っていたか!」

船長 「もっと撃ち込んで」

船長 「黙らせろ!!!」



海賊 「へい!」



海賊は、もっと撃ち込んできた。

-----------------------------------------------


一方、桟橋の方は……。



ル級とヲ級は、桟橋の下に潜って待機していた。

海賊が見張り二人だけになったのを見はからって

作戦を始めた。



ヲ帽子がスルスルと触手をのばし、

ボートを係留していたロープを

コッソリとほどいた。



そしてヲ級は、水中でル級に合図を送った。



ル級は音もなくボートの下につき、

ゆっくりとボートを沖合いに動かした。

-----------------------------------------------


見張りA 「ん?!」

見張りA 「大変だ!」

見張りA 「このボート、沖に流されてるぞ!」



見張りB 「なに!」



見張りBは、ボートが桟橋から

離れて動いていることに気づいた。



見張りBはボートを桟橋に戻そうとして

エンジンを始動させようとした。

その時……。



グイッ!



見張りA、B 「!?」



ボートが、半ばウイリーしながら

急加速で沖に動き出した。



ル級が全力でボートを押し始めた。



ル級 (させんよ!) ニヤリ

ル級 (……)

ル級 (こんな時のキメ台詞が)

ル級 (何か、あったような気がするが……)

ル級 (……)

ル級 (何かの力、侮るなよ!)

-----------------------------------------------


しばらくすると、ボートが止まった。



見張りA 「なんだったんだ???」



女A 「きゃーーーー!」



見張りA 「どうした!」



ル級はボートの船底にパンチをして、穴を開けた。



どんどん海水が船に入ってきた。

-----------------------------------------------


見張りA 「くそっ!」

見張りA 「船から逃げるぞ!」



見張りAはライフジャケットを着た。



見張りB 「女達はどうするんだ!」

見張りB 「せっかく、さらったのに」

見張りB 「捨てたら金にならんぞ!」



見張りA 「馬鹿!」

見張りA 「女共の分のライフジャケットは無い!」

見張りA 「それに」

見張りA 「手足を縛ってるロープをほどいて」

見張りA 「万が一、逃げられて」

見張りA 「警察に行かれたらどうすんだ?」

見張りA 「このまま海に沈めて」

見張りA 「口封じしろ!」



見張りA、Bはボートから逃げ出して、

海に飛び込んだ。

-----------------------------------------------


見張りがいなくなったのを見計らって、

ル級は船底の穴に、自分の服をねじ込んで

穴をふさいだ。



そして仮面を付けて、ボートに上がった。



ル級 「こんにちは」 ヌッ



女A 「きゃーーーー!」



ル級 「待て!」

ル級 「私は怪しい者ではなイ!」

ル級 「海の平和を守ル……」



女B 「海の平和を守る……」 ゴクリ



ル級 「『駆逐艦絶対助けるマン』だ!!!」 バーーーーーン!!!



女A 「」

女B 「」

女の子 (カッコイイ……) ポワーーン

-----------------------------------------------


ル級は女たちの手足の縄を解き、

持ってきたバケツで

海水をかき出し始めた。



ル級 「お前たちは、どこで誘拐されたんダ?」



女A、B (悪い人じゃないかも……)



女A 「XXX村です」



ル級 「ふむ」

ル級 「ここからXXkmか」

ル級 「送ってやろウ」



あらかた海水をかき出したル級は、

また海中に戻り、ボートを押し始め、

女達を元の場所に返した。

-----------------------------------------------


逃げた見張り達は、島に向かって泳いでいた。



見張りA 「ん?」

見張りA 「なんか前にいるぞ……」



見張りA 「げぇ!!!」

見張りA 「深海棲艦!!!」



ヲ級が待ち構えていた。



ヲ級 「お疲れやネ!」 ニタァ



見張りA、B 「」



見張り達は、あっという間にヲ帽子の触手に捕らえられた。



ヲ級 「やったデ! 作戦完了だヨ、っト」



ヲ級は作戦成功を報告する連絡機を発進させた。

-----------------------------------------------


ヲ級が連絡機を発進させる少し前、

俺達は追い詰められていた。



ダダダン! ダダン! ダン! ダダダダン!



旅客船姫 「キャーーーー!!!」

ヘ級 「キャーーーー!!!」

チ級 「ヴォオオオオオ!!!」



チ級 (拳銃とアサルトライフルだと)

チ級 (火力が違いすぎる!)

チ級 (どうすれば……)

-----------------------------------------------


船長 「なんかぁ…… ものたんねぇなぁ……」

船長 「あれ、もってこい! あれ!」



海賊 「へい!」



海賊は重機関銃を持ってきた

-----------------------------------------------


ズガガガガガガガガガガ!!!!!!



部屋の家具が、見る見る細切れになっていった。



旅客船姫 「ギャアアアアアーーーー!!!」

ヘ級 「ギャアアアアアーーーー!!!」

チ級 「ヴヴヴヴォオオオオオ!!!」



旅客船姫 「ここは放棄します!」

旅客船姫 「司令室に逃げ込みましょう!」



窓際の部屋を放棄して、俺達は司令室に逃げ込んだ。

-----------------------------------------------


海賊 「反撃が止まりやした!」



船長 「乗り込むぞ!」

船長 「お前らは一応、外を見張ってろ!」

船長 「他の野郎共は」

船長 「俺について来い!」



海賊 「へい!」



海賊が屋敷の扉をブチ破って、乗り込んできた。

-----------------------------------------------


海賊が司令室の前に集まり始めた。



海賊 「この部屋の中に」

海賊 「立てこもってやすぜ!」



船長はアサルトライフルで扉を撃った。

しかし、扉の中に鉄板が入っていて、

扉は壊れなかった。



船長 「ちったあ丈夫に作ってあるじゃねぇか」

-----------------------------------------------


俺達は司令室に立てこもった。



扉がブチ破られないよう、

扉の前に机やタンスを置いた。



旅客船姫 「扉には鉄板が入ってます!」

旅客船姫 「ライフルなんかじゃ貫通しません!」 フンス!



チ級 (なんか余計なフラグを立てたような……)

-----------------------------------------------


海賊 「持ってきやした」



海賊は重機関銃を持ってきた。

-----------------------------------------------


ズガガガガガガガガガガ!!!!!!



扉と扉の前の家具が、見る見る細切れになっていった。




旅客船姫 「ギャアアアアアーーーー!!!」

ヘ級 「ギャアアアアアーーーー!!!」

チ級 「ヴヴヴヴォオオオオオ!!!」



旅客船姫 「投降しましょう……」

チ級 「」

-----------------------------------------------


俺達は海賊に投降した。



船長 「これで全員か?」

旅客船姫 「はい」

船長 「そうか……」



船長が旅客船姫の腹を、ライフルで激しく突いた。



グポッ!



旅客船姫 「うぐっ……」

-----------------------------------------------


船長 「もっといるはずだ!」

船長 「前もって調べてんだ!」

船長 「どこだ!」



旅客船姫 「買い物に…… 本土に行っていて……」

旅客船姫 「いません……」



船長 「隠れていても」

船長 「この家、後で燃やすから」

船長 「出てこないと焼け死ぬぞ」



チ級 「!?」



旅客船姫 「本当です……」

-----------------------------------------------


船長 「ちっ、まあいい」

船長 「金はどこだ?」

旅客船姫 「……」



船長はギャリソンを銃で撃った。



ギャリソン 「グッ!?」 ドサッ



チ級 「ギャリソンさん!」



船長 「もう一度聞く」

船長 「金はどこだ?」

旅客船姫 「こちらです……」

-----------------------------------------------


その時、天井の窓から作戦成功の旗を付けた

連絡機が飛び込んできた。



いきなり旅客船姫が船長を殴りつけた。



船長は吹っ飛んだ。



船長は、とっさに腕でガードをした。

ガードをした腕が折れた。



船長 「グハッ……」



旅客船姫 「汚いものを触ってしまいました」

旅客船姫 「ギャリソンさん……」



ギャリソンが何事もなかったかのように

立ち上がり、ハンカチを差し出した。



船長 「!?」



旅客船姫はハンカチで自分の手を拭きながら言った。



旅客船姫 「ようこそ海賊さんたち」

旅客船姫 「もう終わりですよ」



船長 「!?」

-----------------------------------------------


船長がアサルトライフルで旅客船姫を撃った。



旅客船姫の体に大穴が開き、血が出たが、

直ぐに穴が塞がった。



旅客船姫 「無駄です」

旅客船姫 「大人しくしてください」 ニパァアアア

-----------------------------------------------


海賊 「ひいいいいい!!!」



海賊は重機関銃で旅客船姫を撃った。



旅客船姫は細切れになりながら、再生していた。



カチン



重機関銃の弾が切れた。



旅客船姫 「終わりですか……」

-----------------------------------------------


海賊達は逃げ出した。



屋敷の外に出ると、

外で待機していた海賊達が、

ネ級とリ級に取り押さえられていた。

-----------------------------------------------


海賊達は桟橋に逃げた。



あるはずのモーターボートが無かった。



船長 「畜生が!!!」



海賊達は俺たちに投降した。

海賊達は縛り上げられ、屋敷の近くの小屋に

閉じ込められた。

-----------------------------------------------


その後、俺たちは屋敷の掃除をした後、

穴だらけの司令室でお茶を飲んだ。



俺は旅客船姫に聞いた。



チ級 「深海棲艦には通常兵器は効かない」

チ級 「と聞いていたのですが」

チ級 「実際、この目で見ると」

チ級 「本当に驚きました……」



旅客船姫 「私自身も最初は驚きました」



旅客船姫 「私の推測ですが」

旅客船姫 「普通の生物は」

旅客船姫 「まず物質の肉体が有って」

旅客船姫 「そこに魂が宿るのです」

旅客船姫 「肉体が主で魂が従ですね」



旅客船姫 「しかし」

旅客船姫 「深海棲艦は」

旅客船姫 「まず魂があり、その魂に沿った」

旅客船姫 「物質の肉体が造られる……」

旅客船姫 「ようなのです」

旅客船姫 「魂が主で肉体が従ですね」



旅客船姫 「ですから」

旅客船姫 「魂が傷つかないかぎり」

旅客船姫 「いくらでも物質の肉体が再生する……」

旅客船姫 「ようなのです」



旅客船姫 「核攻撃でさえも」

旅客船姫 「私達の魂を傷つけられません」



旅客船姫 「一方」

旅客船姫 「艦娘さん達の武器は」

旅客船姫 「私達の魂を傷つけます」

旅客船姫 「だから有効なのです」



チ級 (なるほど、わからん……)

チ級 「ご説明ありがとうございました」

-----------------------------------------------


チ級 「ところで」

チ級 「あの海賊は警察に渡すのですか?」



旅客船姫 「いえ」

旅客船姫 「『更生施設』にあずけます」

チ級 「?」

-----------------------------------------------

この国は治安が悪く、また、警察も信用出来ないそうだ。



実は、何度も海賊に襲われたことがあるそうで、

以前、警察に海賊を引き渡したら、脱獄し、

復讐しに来たことがあるそうだ。

-----------------------------------------------


旅客船姫 「ギャリソンさんが」

旅客船姫 「地元の『顔役』の方と仲が良いので」

旅客船姫 「相談に乗ってもらいました」



旅客船姫 「そして」

旅客船姫 「どんな悪人でも100%更生し」

旅客船姫 「人に役に立つ存在になるという」

旅客船姫 「無料の『更生施設』を紹介してもらいました」

旅客船姫 「そこに引き取ってもらいます」



チ級 「そうですか」

チ級 (そんな都合の良い施設)

チ級 (本当にあるのかな?)

-----------------------------------------------


チ級 「ん?」



俺は違和感を感じた。



チ級 「このチンジュフは」

チ級 「人間と交流があるんですか?」



旅客船姫 「はい」

旅客船姫 「地元の人と交流があります」

旅客船姫 「もちろん深海棲艦としてではなく」

旅客船姫 「人間と偽ってですが……」



チ級 「!?」

-----------------------------------------------


ヲ級 「顔色が悪いのも」

ヲ級 「サンオイル塗って日焼けすれば」

ヲ級 「ごまかせるんヤデ」

チ級 「」



ヲ級 「在留資格も」

ヲ級 「深海棲艦の攻撃から逃げてキタ」

ヲ級 「難民ちゅうことデ」

ヲ級 「皆、正式な資格を持ってるんヤデ」

チ級 「」



ヲ級 「姫様は、ティターニア=シンカイ」

ヲ級 「ウチは、ヲトハ=シンカイ」



ヲ級 「キミも『チドリ=シンカイ』で」

ヲ級 「これから申請するんやデ」

チ級 「」

-----------------------------------------------


数日後、施設の指導員が海賊を引き取りに来た。



なぜか指導員は目出し帽を被って、

完全武装していた。



指導員 「こんにちは!」 サワヤカ

指導員 「海賊さん達を」

指導員 「引き取りに参りました!」 ニッコリ



なぜか指導員は海賊達の健康状態を見たいらしく、

海賊の目や舌や歯をチェックし始めた。



指導員 「君は酒を飲むのか……」

指導員 「君は麻薬をやっていたのか……」

指導員 「君は肝臓病の経歴があるのか……」

指導員は小声で、「チッ」と、言った。



チ級 「?」



指導員 「君は酒も麻薬もやらないのか!」

指導員 「それに若い!」

指導員 「立派に社会貢献できるよ!」 ニタァアアアア



何かを悟った海賊達が暴れだした。

指導員は冷静にスタンガンで大人しくさせた。



チ級 「!?」

-----------------------------------------------


好奇心に負けて、

聞かなくてもいいことを

俺は聞いてしまった。



チ級 「以前、うちから引き取った人達は」

チ級 「今、どうしていますか?」



指導員 「全員もう施設から出て」

指導員 「多くの場所で」

指導員 「人々の『役』に立ってますよ!」 サワヤカ



それ以上、俺は聞かなかった。

-----------------------------------------------


夜になり、俺は穴だらけの自室でベッドに寝ていた。



チ級 「この数日」

チ級 「ジェットコースターのような感じだった……」



チ級 「……」

チ級 「深海棲艦って」

チ級 「思ったより人間ぽいな」

チ級 「ここが特別なのかな……」



チ級 「姫様は喧嘩は弱いが」

チ級 「最終的に生き残るのは」

チ級 「姫様のような気がする……」



チ級 「姫様が人間と同盟を結べば……」

チ級 「俺は会社に戻れるのか……?」



自分のサラリーマン気質の根深さを悲しみながら、

俺は眠りに付いた。



- 第三話 完 -


続編まで時間がかかりそうなので、

このスレは、ここで終わりにします。

皆様、乙、レス、誠にありがとうございました。


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私の他のSSです。

【とうらぶ】提督審神者が本丸に着任しました【刀剣乱舞】
【とうらぶ】提督審神者が本丸に着任しました【刀剣乱舞】 - SSまとめ速報
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※独自設定注意


- おまけ -

いつ公開かは未定ですが、

次回の予告です。



-----------------------------------------------

リ級 「姫様!」

リ級 「海から女の子なのです!」

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一人の少女がチンジュフの島に流れ着いた。

-----------------------------------------------

筑摩 「私は筑摩といいます」

-----------------------------------------------

ル級 「島が艦娘に包囲されタゾ!」

ル級 「待ちに待った艦隊決戦か! 胸が熱いナ!」

-----------------------------------------------

ネ級 「チクマさんといったかノウ……」

ネ級 「我輩はお主のことヲ」

ネ級 「全く覚えておラン……」

-----------------------------------------------

ヘ級 「あなた」

ヘ級 「人間のときの記憶があるんだって?」 ニヤリ

-----------------------------------------------

ネ級 「我輩は……」

ネ級 「毎晩、怖い夢を見るのジャ……」

ネ級 「我輩が……」 ポロポロ

ネ級 「罪も無い人々ヲ……」 ポロポロ

筑摩 「……」 ギュッ

-----------------------------------------------

日向 「貴重な食材ほど……」

日向 「料理の準備に時間をかけたい……」

日向 「この件も同じだ」 ニヤリ

-----------------------------------------------

筑摩 「姉さん!!!」

ネ級 「筑摩ーーーーーー!!!」

-----------------------------------------------

第四話 魂の記憶(仮)

公開未定


ではまた。



ずっと気になってたが、一つの会話を細かく切りすぎじゃないか?
稚拙に見えてしまう

>>128
ご指摘ありがとうございます。
そうですね。
自分も少し短いかなと思っていました。

別にそこは気にならないな
淡々と進めてるようには見えるけど、いきなり訳わかんない事続きのチ級の気持ちを考えれば物事をかみ砕いて理解しようとしてるってとれなくもないし

そんなのより>>1が投下毎にしつこいくらいへりくだってるのが気になるわ
そんな自分で見たら汚れるような物だと思ってる物を謝罪しながら人様の前に出すくらいなら最初から出すなよとしか思えないし

>>130
ご指摘ありがとうございます。

そうですね。
へりくだって予防線を張るのは、ただただヤラシイだけですね。
今後は止めようと思います。

>>132
なあ、あんたhtml化依頼したのか?まだ続きそうに見えるんだが
依頼したなら基本ここでは発言しない方がいいし、してないなら酉割られてる上に勝手に依頼されてんぞ

>>133
ご指摘ありがとうございます。

html化は私が依頼しました。

次回の目処が立たなかったので、このスレは一旦html化しようと思いました。

以後、ここでは発言しません。

ご迷惑をおかけしました。

続くと思って保留しといてって言ってしまったんだが…

>>133
>>135

133と135の方は同一の方ですか?

仕切りなおしましょう。

私の方から、あらためて、html化を保留します。

※※あとがきを書き忘れていました。

第四話も、もしかしたら、2ヶ月以内にいけるかも???

これで、一旦、仕切りなおさせてください。



おつおつ
予定が未定なら依頼出すのは嗜みとして問題ないですよ
面白かったので続きが来る日を待ってる

>>133
>>135

私の方から、あらためて、html化を取り下げてきました。

成りすましを疑われるような行動をして、すみませんでした。

そして、成りすましを心配していただいて、

ありがとうございました。

よろしくお願いいたします。

>>137

レス、ありがとうございます!

第四話は少し先になりそうですが、

ご期待に沿えるよう頑張ります!




第三話 後日談 -駆逐艦絶対助けるマンー



海賊の襲撃の後、俺達は穴だらけになったチンジュフを修理した。

俺は貴重な男手の1人?として、地元の工事会社の人達と一緒に作業した。



人間といる時、俺達は人間の服装をしている。

俺は、麦藁帽子、Tシャツの上に袖をまくったシャツ、

ハーフのGパン、サンダル、といった感じだ。



他の深海棲艦も南国の女の子という感じの服装だ。

――――――――――――――――――――――――――――――


俺は工事を手伝いながら、不思議に思った。



チ級 「姫様…… いえ、ティターニアさん」

チ級 「この工事代金は、どこから手に入れたんですか?」

旅客船姫 「魚を売って稼いでいます」

チ級 「魚……」



俺には心当たりが有った。

深海棲艦の出現後、漁船が襲撃され、漁業が壊滅した。

そのため魚の値段が跳ね上がった。



日本は陸上での海水魚の養殖という離れ業で対応したが、

それでも魚は超高級食材だった。

――――――――――――――――――――――――――――――


旅客船姫 「時々、マグロを取って市場に持っていきます」

旅客船姫 「浜に打ち上げられた、と言えば引き取ってもらえます」

旅客船姫 「詳しくは存じませんが、末端価格で数十万ドルになるとか……」

チ級 「」

――――――――――――――――――――――――――――――


ヲ級 「ギャリソンさんが帰ってきたデー」



買い物を済ませたギャリソンが、ボートに乗って本土から帰ってきた。



海沿いに住む女性の一家は、深海棲艦と疑われることも多かったらしく、

本土への用事は、男?のギャリソンが行ったほうが、

色々、都合が良いそうな。

――――――――――――――――――――――――――――――


ヲ級 「ん? 珍しいヤン。 お客さんがおるデ」



ボートには大人の女性と女の子が乗っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――


彼女たちは、以前、海賊に誘拐されたことがあり、

この島の近くで、ある人に助けられたそうだ。



女A 「私達を助けてくれた人を探しているのですが」

女A 「手がかりが、ほとんど無くて……」

チ級 「何か人相とか覚えていないのですか?」

女A 「彼女は…… その…… あの……」 モジモジ

チ級 「?」



女の子 「助けてくれたお姉さんは、自分のことを」

女の子 「『駆逐艦絶対助けるマン』って言ってたよ!!!」 目キラキラ

チ級 「」

――――――――――――――――――――――――――――――


ヲ級が爆笑した。



ヲ級 「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

女の子 「『駆逐艦絶対助けるマン』はカッコイイんだよ!!!」 プクー

ヲ級 「ゴメンなー」

ヲ級 「馬鹿にしている訳やないんやケド……」



ヲ級 「ルカーーーー!」

ヲ級 「ちょっち来てヤ!」

――――――――――――――――――――――――――――――


ル級がこっちに来た。



ル級 「なんダ?」

ヲ級 「『駆逐艦絶対助けるマン』って知っとルか?」

ル級 「ん?」

ル級 「そんなコトか!」

ル級 「いいだろウ!」

ル級 「何を隠そウ! 私が『駆逐艦絶対助けるマン』……」



ル級は何かに気付いた。



ル級 「……の友達ダ!」



ヲ級 (コイツやな)

女の子 (この人だぁ) パァアアア

女 (この人ですね)

旅客船姫 (ル級さんですね)

チ級 (ウーマンじゃないんだ……)

――――――――――――――――――――――――――――――


女の子がル級に近づいた。



女の子 「お姉さん」 チョイチョイ

ル級 「ん?」



ル級は身をかがめ、顔を女の子に近づけた。



女の子 「はい」 ポフ



女の子は、花の冠をル級に被せた。

そしてル級の頬にキスをした。



ル級 「~~!」 顔真っ赤

女の子 「駆逐艦絶対助けるマン、ありがとう!」

女の子 「と、伝えてね、お姉さん」



幸せの絶頂の顔をしながら、ル級が倒れた。

――――――――――――――――――――――――――――――


ル級が意識を取り戻し、無事なところを見届けて、彼女達は帰っていた。

ギャリソンがボートで本土まで送ったので、

深海棲艦に襲われる心配は無かった。

――――――――――――――――――――――――――――――


当のル級は、その日からしばらくデレデレ顔のままだった。



- 完 -


第四話のプロットが降りてくる前に

小ネタが降りてきたので投下しました。

ではまた。

昔々、「AKIRA」という漫画に「人工サンマ」というものが載っていまして、それに少しインスパイアされました。

- 幕間劇 -

第三.一話 海のレストラン(前編)



ある日の午後、屋敷の玄関の呼び鈴が鳴らされた。

俺は玄関に向かった。

チ級 「どなたですか?」 ガチャ



レ級がいた。

レ級 「こんにちは! 死ネ!」

チ級 (アイエエエ! レ級!? レ級ナンデ!?)

-----------------------------------------------------------


ミリオタではない俺もレ級ぐらいは知っていた。

黒いフードを被った死神のような深海棲艦だと聞いていた。

しかし、よくよく考えると今の俺は深海棲艦なので、

襲われる心配もないと安心した。



レ級 「キシシシ! 驚いタ?」

レ級 「じゃ、オジャシマース」



このチンジュフには深海棲艦が時々遊びに来る。

ただし、訪問には一つの「お約束」がある。

それは「人間のような服装をすること」だ。

万が一、人間と鉢合わせした場合を考てのことだ。



レ級はボーイッシュな女の子らしい格好をしていた。

チ級 (死神にも衣装、なんだろうか……)

チ級 (結構かわいい……)

-----------------------------------------------------------


チ級 「本日は、どのようなご用件ですか?」 オドオド

レ級 「姫様の料理が食べたくテネ」

レ級 「特にスイーツ……」

チ級 「はい。ではこちらへ」

チ級 (カチコミとかじゃなくて良かった) ホッ



俺は彼女を食堂へ案内した。

-----------------------------------------------------------


深海棲艦がこの屋敷に遊びに来る目的の大半は、姫様の料理だった。

深海棲艦には料理という概念が無いらしく、とても珍しいらしい。



皆、料理の対価に資材や高級魚を持ってくるので、

資材や人間の金を稼ぐ良い手段になっていた。



チ級 「姫様。レ級さんがいらっしゃいました」

チ級 「なんでも姫様の料理、特にスイーツが食べたいとか……」

旅客船姫 「アバーッ!」 ガクガク

旅客船姫 「え、えらいことです……」 ワナワナ

旅客船姫 「せ、戦争ですわ……」 ワナワナ

旅客船姫 「全員、厨房に集合させて下さい!」

チ級 「!?」

-----------------------------------------------------------


俺はチンジュフの深海棲艦全員を厨房に集めた。



ル級 「なにごとダ?」

旅客船姫 「皆さん……」

旅客船姫 「レ級さんが……」

旅客船姫 「食事に来ました……」



俺以外の深海棲艦が息を飲んだ。



旅客船姫 「総員、配置について下さい!!!」

-----------------------------------------------------------


皆、一斉に厨房で作業を始めた。

俺だけ事態が理解できなかった。

そこに注文を取ってきたリ級が飛び込んできた。



リ級 「メニューにあるスイーツ全部デス!」

リ級 「10人前ずつデス!」

リ級 「食前のデザートだそうデス!」

一同 「ヨロコンデー!!!」



チ級 (食前のデザートって新しいな……)

なんとなく俺は事態を理解した。

-----------------------------------------------------------


絶え間なく物凄い量の注文が入ってきた。

その注文をこなすため、厨房は戦争のような忙しさだ。



ヲ級 「新入り!」

ヲ級 「皿洗エヤ!」

チ級 「ヨロコンデー!」 ガシャガシャ



ル級 「新入り!」

ル級 「卵を10個割って、かき混ゼロ!」

チ級 「ヨロコンデー!」 シャカシャカ



リ級 「新入りサン!」

リ級 「高い所にある皿を取って欲しいのデス!」

チ級 「ヨロコンデー!」 ヒョイ



チ級 (まさしく戦争だな……)

-----------------------------------------------------------


2時間後、やっと注文のペースが落ちてきた。

その時、ギャリソンが買出しから戻ってきた。

食材が足りなくなることを見越して、

旅客船姫がギャリソンに買出しを命じていたのだ。



帰ってきたギャリソンを眺めながらレ級は言った。

レ級 「姫様」

レ級 「ギャリソンさんを『味見』したいんだケド……」

レ級 「どうカナァーーー?」 ニタリ



旅客船姫 「ギャリソンさんは…… お口に合わないかと」

レ級 「キシシシ!」

レ級 「つれないナァ」 ニヤニヤ



レ級の目は、完全にオッサンのそれであった。

このレ級はギャリソンに興味が有るらしく、

来るたびに口説いているそうだ。

-----------------------------------------------------------


レ級 「リ級ちゃんは10年後にネ?」 ニヤニヤ

レ級 「ネ級ちゃんは5年後カナ?」 ニヤニヤ

レ級 「ル級ちゃんは……」

レ級 「この後ヒマ?」 ニヤニヤ

レ級 「キシシシ!」



このレ級はグラマーな体型が好きらしく、

やはり来るたびにル級を口説いているそうだ。

-----------------------------------------------------------


それから一時間後、やっと満足したレ級は最後の注文をした。

レ級 「腹八分目って言うシネ」

レ級 「最後にチョコレートジャンボパフェ一つ」

レ級 「人間向けデネ」



このチンジュフでは「深海棲艦向け」と「人間向け」の料理を指定できる。

深海棲艦向けは、重油、軽油、ボーキ、金属等が入っている。

人間向けは、人間が食べられる食材だけで作られている。

-----------------------------------------------------------


厨房の作業も終わりが見えてきた。

皆に余裕が出たところで、俺は旅客船姫に聞いてみた。



チ級 「深海棲艦でも人間向けの料理を楽しめるって、不思議ですね」

旅客船姫 「そうですね」

旅客船姫 「料理を作る側からすると、いつも不思議に思います」



旅客船姫 「私の推測ですが……」

旅客船姫 「船の怨霊は、純粋に船の霊だけでなく」

旅客船姫 「一緒に沈んだ人間の霊も含んでいるようなのです」

旅客船姫 「だから深海棲艦は船として重油を美味しく感じることが出来て」

旅客船姫 「人間としてスイーツを美味しく感じることも出来るのです」



旅客船姫 「艦娘さん達の船霊も同じだと思います」

旅客船姫 「艦娘さん達がボーキを食べたり、スイーツを食べるのも同じです」

チ級 「なるほど」

チ級 「ご説明ありがとうございます」

-----------------------------------------------------------


食後、レ級とリ級が遊んでいた。



レ級シッポ 「ガオーーー!!!」

リ級 「キャーーー!」 キャッキャッ

リ級 「シッポさん、可愛いのデス」 ナデナデ

リ級 「たくさん食べて、大きくなるのデス」 ナデナデ

リ級がシッポにエサをあげていた。



レ級 「手品しちゃうゾー!」

レ級 「シッポ見てテネ……」

レ級 「ジャーーーーン!」

リ級 「はわわわ、シッポさんが消えたのデス!」

レ級 「キシシシ!」



チ級 「すごい! どうやったんですか?」

レ級 「コツカケ……」 ニタリ

チ級 「」

レ級 「キシシシシ!」

-----------------------------------------------------------


レ級はクロマグロ2本を支払い、帰って行った。

チ級 (マグロ2本で金額的にはプラスだけど……)



旅客船姫 「皆さん、お疲れ様でした」

旅客船姫 「明日は全員、特別休暇とします」

一同、真っ赤のアイコンが見えそうな程、疲労度MAXだった。



俺は不思議に思った。

チ級 「なぜ、こちらのペースではなく」

チ級 「レ級さんのペースに合わせようと頑張ったのですか?」



旅客船姫 「レ級さんは味方に付けると最高に頼れる人なのです」 ポワーーン

旅客船姫 「しかし敵に回すと……」 ガクガクブルブル

旅客船姫 「そういうのもありますが、そうでなくても……」

旅客船姫 「わざわざ来てくれたお客さんには満足して欲しいと思います」

旅客船姫 「それが旅客船の矜持です!」 フンス!



チ級 (料理をしている姫様は生き生きしてたしな……)

チ級 (深海棲艦を止めて、こっちに進んだほうがいいんじゃないかな?)



- 続く -


- 幕間劇 -

第三.一話 海のレストラン(中編)



ある日、俺が島を散歩していると、

本土側と逆の海岸に、もう一つ桟橋があることに気付いた。

その桟橋の近くに小屋があった。

早速、俺は小屋に入ってみた。



チ級 「誰か居ますか?」 コンコン

返事は無かった。

チ級 「こんにちは」 ガチャ

-----------------------------------------------------------


質素な外見とは異なり、小屋の中はホテルの一室のようだった。

広い更衣室、清潔なパウダールーム、真水の出るシャワー、

ビデとウォシュレット完備のトイレ。

更衣室には大きなクローゼットがあり、女性用の衣服、下着が大量にあった。



チ級 (このパンツ、なかなかエグイな……)

チ級 (この小屋は一体……?)

-----------------------------------------------------------


俺はヲ級に聞いてみた。

チ級 「ヲ級さん、桟橋の小屋ってなんですか?」

ヲ級 「あー、知らんのカー」

ヲ級 「あれはやね、お客用の更衣室ヤデ」



ヲ級 「深海棲艦が、このチンジュフに遊びに来る時の「お約束」は」

ヲ級 「『人間の格好をすること』なんやケド」

ヲ級 「深海棲艦は人間の服なんて持っておらへんノヤ」

ヲ級 「だから、あの小屋で着替えてもらってるんヤデ」

-----------------------------------------------------------


チ級 「シャワーが真水だし、電気が引かれてドライヤーも使えるし、やりますねぇ!」

ヲ級 「あれはヘ級が頑張ったんヤデ」



ヘ級さんは機械いじりが好きで、屋敷の電気工事やPCの設定等々を

軽々とやってしまうそうな。



チ級 (ヘ級さんて、ネコっぽいヘルメットで可愛い女の子のように見えて)

チ級 (意外とマニアックな一面も有るんだな)

-----------------------------------------------------------


その日の夕方、屋敷の玄関の呼び鈴が鳴らされた。

俺は玄関に向かった。

チ級 「いらっしゃいませ」 ガチャ



見知らぬ人達がいた。

チ級 「失礼ですが、どちら様ですか?」

フラヲ改 「私はヲ級です」

フラヲ改 「こちらは飛行場姫です」

飛行場姫 「はじめまして」

飛行場姫 「わたくしは飛行場姫です」

フラヲ改 「旅客船姫様にお取次ぎ下さい」

チ級 (姫キターーーーーーーー!)

-----------------------------------------------------------


飛行場姫は真っ白なドレスを着ていた。

髪で角を隠していた。

フラヲ改は青いドレスを着ていた。

ヲ帽子は付けていなかった。



チ級 (まるでモデルだな……)

チ級 (スタイル良すぎ……)

-----------------------------------------------------------


チ級 「本日は、どのようなご用件ですか?」

フラヲ改 「旅客船姫様のお料理を頂きたく……」

チ級 「承知いたしました」

チ級 「ただいま取次ぎますので、こちらでお待ち下さい」

チ級 (カチコミとかじゃなくて良かった) ホッ



俺は彼女達を食堂へ案内した。

-----------------------------------------------------------


チ級 「姫様、飛行場姫様がいらっしゃいました」

チ級 「なんでも姫様の料理が食べたいとか……」

旅客船姫 「グワーッ!」 ビクビク

チ級 「フラヲ改さんも一緒です……」

旅客船姫 「アバーッ!」 ガクガク



旅客船姫 「え、えらいことです……」 ワナワナ

旅客船姫 「せ、戦争ですわ……」 ワナワナ

旅客船姫 「全員、厨房に集合させて下さい!」

チ級 (またか……)

-----------------------------------------------------------


俺はチンジュフの深海棲艦全員を厨房に集めた。



ル級 「なにごとダ?」

旅客船姫 「皆さん……」

旅客船姫 「飛行場姫様が……」

旅客船姫 「食事に来ました……」

旅客船姫 「フラヲ改さんも一緒です……」



俺以外の深海棲艦が息を飲んだ。



旅客船姫 「総員、配置について下さい!!!」

-----------------------------------------------------------


皆、一斉に厨房で作業を始めた。

そこに注文を取ってきたリ級が飛び込んできた。



リ級 「メニューにあるボーキ料理、全部デス!」

リ級 「20人前ずつデス!」

リ級 「食前の前菜だそうデス!」

一同 「ヨロコンデー!!!」



チ級 (食前の前菜って、なんなんだろうな……)

-----------------------------------------------------------


絶え間なく物凄い量の注文が入ってきた。

その注文をこなすため、厨房は戦争のような忙しさだ。



ヲ級 「新入り!」

ヲ級 「ありったけのボーキサイト、倉庫から持って来イヤー!」

チ級 「ヨロコンデー!」 台車ガラガラー



ル級 「新入り!」

ル級 「弾もってこイ! 新入りーーーーー!」

チ級 「ヨロコンデー!」 台車ガラガラー



リ級 「新入りサン!」

リ級 「重油が切れたのデス!」

チ級 「ヨロコンデー!」 ドラム缶ゴロゴロー



チ級 (まさしく戦争だな……)

-----------------------------------------------------------


永遠に続くかと思われた料理も、食後の重油を残すのみとなった。

ヘ級 「わたしが持っていきまーーース!」

ヘ級 「っ♪ 任せておいテ」



調理の仕事では積極的にならないヘ級が、めずらしく仕事をかってでた。

チ級 (めずらしいな……)



ヘ級は食後の重油を持っていった。

ヘ級 「お待たせいたしました」

ヘ級 「食後の重油でございます」

-----------------------------------------------------------


飛行場姫 「飲み口がとても軽くて、美味しいですわ」

飛行場姫 「少し独特な風味がありますわね……」



フラヲ改 「……」

フラヲ改 「少しガソリンが入ってますネ」

フラヲ改 「……」

フラヲ改 「ハイオクですか?」



ヘ級 「はい」

ヘ級 「ハイオクガソリンは艦載機に良いと聞いております」



フラヲ改 「嬉しいですネ」

フラヲ改 「さすがに気分が高揚しマス」 ニッコリ



ヘ級 「!?」

ヘ級 「……」 ニンマリ

ヘ級 「喜んでいただけて、何よりでございマス」



フラヲ改は笑った。

ヘ級も笑った。



チ級 (ヘ級さん、良い笑顔してる)

チ級 (しかし、料理が好評で喜んでる以上の何かを感じるのは)

チ級 (俺が汚れているからだろうか……?)



フラヲ改 (ガソリン……)

フラヲ改 (少しブルーになりますネ……) 遠い目

ヘ級 「……」 ジーーー

-----------------------------------------------------------


旅客船姫は飛行場姫のテーブルに行った。



旅客船姫 「姉様、デザート、ご一緒してもよろしいですか」 ニコ

飛行場姫 「旅客船姫さん、料理とても美味しかったですわ!」 ダキッ

フラヲ改 「……」



ギャリソンが紅茶とデザートをテーブルまで運んできた。



飛行場姫 「あの…… 『すうぷ』は、なんですの?」

旅客船姫 「ボーキサイトのヴィシソワーズ風スープです」

旅客船姫 「後ほどレシピをお渡ししますね」 ニッコリ



飛行場姫 「あと…… 『にくりょうり』も気になりましたわ」

旅客船姫 「薄切り肉とボーキサイトのステーキです」

旅客船姫 「こちらのレシピもお渡しします」 ニッコリ

飛行場姫 「ありがたくいただきますわ!」 ダキッ スリスリ

旅客船姫 「///」

フラヲ改 「……」

-----------------------------------------------------------


飛行場姫 「旅客船姫さん、わたくし決めました……」

飛行場姫 「あなた様をお嫁にいたします!」 バーーーーーン

旅客船姫 「」

フラヲ改 「」



飛行場姫 「なんでしたら……」

飛行場姫 「わたくしが嫁になっても、よろしくてよ!」 ババーーーーーン

旅客船姫 「」

フラヲ改 「」

-----------------------------------------------------------


旅客船姫 「お、お気持ちはありがたいのですが……」 アセアセ

飛行場姫 「このような場所にいては危険です!」

飛行場姫 「わたくしの棲地にお連れいたしますわ!」

飛行場姫 「ここより安全ですのよ!」



フラヲ改 「姫様……」

フラヲ改 「落ち着いてくだサイ……」



飛行場姫 「わたくしは冷静ですの!」 キリッ

飛行場姫 「毎日『すうぷ』や『にくりょうり』を食べたいんですの!」



フラヲ改 「姫様……」

フラヲ改 「また皆様カラ『スットコ』と呼ばれますヨ……」

-----------------------------------------------------------


飛行場姫 「ヲ級さん…… 今、なんと……?」 ヨロヨロ

飛行場姫 「空母棲姫さんの出現に焦って、乱心しているのですか?」 クラクラ

フラヲ改 「……」 ブチッ



フラヲ改 「ア タ マ ニ キ マ シ タ」 ドドドドドドドド

飛行場姫 「アイエエエ!」

旅客船姫 「あばばばば!」



フラヲ改 「艦爆チョップ!!!」

飛行場姫 「ダコタッ!!!」 バタッ



飛行場姫は白目をむいて気絶した。

-----------------------------------------------------------


フラヲ改 「料理で使った分の資材を、後で飛行場姫宛に請求してください」

そう言い残し、フラヲ改はクロマグロ4本を支払い、飛行場姫を担いで帰っていった。

チ級 (まさかのマグロ本位制……)



なおフラヲ改のヲ帽子は、島の近くの海中で待機していたそうな。



- 続く -


- 幕間劇 -

第三.一話 海のレストラン(後編)



ある日の夕方、屋敷の玄関の呼び鈴が鳴らされた。

俺は玄関に向かった。

チ級 「いらっしゃいませ」 ガチャ



見知らぬ人達がいた。

チ級 「失礼ですが、どちら様ですか?」

戦艦水鬼 「戦艦水鬼だ」 ギロリ

戦艦水鬼 「こちらは戦艦棲姫様だ」

戦艦水鬼 「それと、お付のタ級だ」

戦艦水鬼 「旅客船姫様にお目通り願おう」

チ級 (姫キターーーーーーーー!)

-----------------------------------------------------------


戦艦水鬼と戦艦棲姫二人は、真っ黒なドレスを着ていた。

角は無かった。

遅れてチビッコの深海棲艦が入ってきた。

白いセーラー服、ミニスカートにスパッツだ。

元気そうな子だった。



チ級 (超怖ぇ……) ガクガク

チ級 (しかし角が無いな……?)

-----------------------------------------------------------


チ級 「本日は、どのようなご用件ですか?」 オドオド

戦艦水鬼 「戦艦棲姫様は夕食をご所望だ」

チ級 「承知いたしました」

チ級 「ただいま取次ぎますので、こちらでお待ち下さい」

チ級 (カチコミとかじゃなくて良かった) ホッ



俺は彼女達を食堂へ案内した。

-----------------------------------------------------------


チ級 「姫様、戦艦棲姫様がお二人いらっしゃいました」

チ級 「なんでも姫様の料理が食べたいとか……」

旅客船姫 「」 白目



チ級 「戦艦水鬼様もご一緒です……」

旅客船姫は机の下に潜ってしまった。



旅客船姫 「……」

旅客船姫 「『居ない』と伝えてください……」

チ級 「もう食堂まで来ています」



旅客船姫 「……」

旅客船姫 「いぢめる?」

チ級 「いぢめないよぉ」 フリフリ



旅客船姫 「……」

旅客船姫 「仕方ありません」

旅客船姫 「覚悟を決めましょう」

旅客船姫 「全員、厨房に集合させて下さい!」

-----------------------------------------------------------


俺はチンジュフの深海棲艦全員を厨房に集めた。



ル級 「なにごとダ?」

旅客船姫 「皆さん……」

旅客船姫 「戦艦棲姫様が……」

旅客船姫 「食事に来ました……」

旅客船姫 「戦艦水鬼様も一緒です……」



全員が息を飲んだ。



旅客船姫 「皆さん、くれぐれも粗相の無いようお願いします」

旅客船姫 「姫姉様の機嫌を損ねたら、このチンジュフが消滅します」

旅客船姫 「文字通りの意味で」 ドンヨリ

旅客船姫 「艦娘さん達と違って、潜っても逃げられません」 

旅客船姫 「ウェヒヒヒヒ……」 ニタリ

一同 「」

-----------------------------------------------------------


旅客船姫 「ル級さんは姫姉様、戦艦水鬼様と仲が良いので」

旅客船姫 「接客はル級さん中心でお願いします」

ル級 「いいダロウ! 心得タ!」



旅客船姫 「残りの方は、私と一緒に調理です」

旅客船姫 「いきますわよ!」

一同 「おーーー!」

-----------------------------------------------------------


旅客船姫 「あ、ごめんなさい」

旅客船姫 「ネ級さんは桟橋のモーターボートで待機してください」

旅客船姫 「エンジンはアイドル状態にして」

旅客船姫 「いつでも逃げられるようにしておいて下さい……」

一同 「」

-----------------------------------------------------------


飛行場姫は、いつにも増して調理に気合が入っていた。



旅客船姫 「ゲーッハッハハ!!」

旅客船姫 「食材どもよ!」

旅客船姫 「我が力によっておいしくなるがよい!」

チ級 「」



旅客船姫が俺の視線に気づいた。

旅客船姫 「なんとなくですが……」

旅客船姫 「こう言うと美味しくなる気がするのです……」 顔真っ赤

-----------------------------------------------------------


今までより注文のペースは遅かった。

少し余裕があった俺はヲ級に質問した。



チ級 「ヲ級さん」

チ級 「戦艦棲姫様って、角生えてませんでしたっけ?」

ヲ級 「あれはやね、格納できるんヤデ」

ヲ級 「自分も大砲とか格納できるヤン?」

ヲ級 「ちなみに、あの角は電探なんヤデー」

チ級 「ありがとうございます!」



チ級 「あと『鬼』様というのは?」

ヲ級 「『鬼』様っちゅうのは、戦闘に特化した深海棲艦ヤネ」

ヲ級 「『姫』様の身辺警護とか、よくやっとるヨ」

ヲ級 「ロマンチックに言うと『姫様』の『騎士様』ヤネ」 ニッコリ

チ級 (アリで言うと兵隊アリみたいなものかな……)

チ級 「ありがとうございます!」

-----------------------------------------------------------


ヲ級 「今日の戦艦棲姫様と水鬼様、オシャレに気合入っトルデ!」

ヲ級 「更衣室の服やのうて、自前の服を着とるんヤン」

ヲ級 「服とか汚したらアカンデ?」

チ級 「はい!」



チ級 「?!」 ゾクッ

なぜか俺はダチョウ倶楽部の上島を思い出した。

-----------------------------------------------------------


戦艦棲姫A 「旅客船姫ちゃーーーん」

戦艦棲姫A 「料理はいいからさーーー、こっちオイデ?」 ニンマリ

旅客船姫 (ヒエッ……)

旅客船姫 「はーーい」



旅客船姫が戦艦棲姫達に呼び出された。

-----------------------------------------------------------


戦艦棲姫A 「りょーちゃんの料理、すごい美味シーーーイ」 ニッコリ

戦艦棲姫A 「ねぇ、アタシんところに来なさいヨーー!」 ダキッ

戦艦棲姫A 「イツマデモ…… 大切ニシテ…… アゲルカラーー!」 ほっぺスリスリ

旅客船姫 「///」



戦艦棲姫B 「ダメナノネ!」 ダキッ

戦艦棲姫B 「アタクシのところに来なサイ」 ギュッ

戦艦棲姫B 「あなたのようなガサツな船には、りょーちゃんは不似合いデスわ」 ほっぺスリスリ

旅客船姫 「///」

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戦艦棲姫A 「な、なに言ってルノ……!?」 クワッ

戦艦棲姫A 「アナタァ、見飽きたって散々言われてるヨ!?」 

戦艦棲姫B 「な、なんですっテ!?」 カッ

戦艦棲姫B 「出番があるのは、アタクシに魅力があるからデスのよ?」

戦艦棲姫B 「魚雷ワンパンでやられる戦艦の面汚しに言われたくありまセンわ!」

戦艦棲姫A 「ネーーヨ!!! ワンパンなんてナイヨ!?」 

旅客船姫 「あわわわわわ」 目グルグル

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戦艦水鬼 「お止め下サイ」 ズオッ

戦艦水鬼 「旅客船姫様がお困りデスヨ」 ズーーーン



戦艦棲姫A 「ごめーん、りょーちゃんが可愛くてサー」 テレッ

戦艦棲姫B 「ごめんなさいネ」 テレッ

旅客船姫 (ホッ)



チ級 (戦艦水鬼様、スゲー迫力……)

チ級 (マジ怖い……)

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その時、ヲ級が俺にキラーパスを放り込んできた。



ヲ級 「チ級、食後の重油を運んでヤー」

チ級 「アッハイ」

チ級 (この流れ不味いな……)

-----------------------------------------------------------


俺は慎重に重油を運んだ。

チ級 (押すなよ…… 押すなよ……)



生まれたての子鹿のような歩き方で、

なんとか俺はテーブルまでたどり着いた。



タ級 「ねぇ何してンの??? 何、何、何、ネェ???」 ドーーーーーン

チ級 「!!!」



空気を読んだ?チビッコのタ級に押された俺は、

重油を戦艦水鬼に思いっきりぶちまけてしまった。

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戦艦水鬼 「……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫A 「ウォ!」

戦艦棲姫B 「ヒィ!」

旅客船姫 「」 白目

チ級 「」 白目



戦艦水鬼は目元についた重油を指でぬぐった。

戦艦水鬼 「……」 ドドドドドドドド

戦艦水鬼 「戦艦棲姫様……」 ドドドドドドドド

戦艦棲姫A 「ハヒィ!」



戦艦水鬼 「……」 ドドドドドドドド

戦艦水鬼 「片 付 ケ マ ス カ ?」 ドドドドドドドド

戦艦棲姫A 「待って? 穏便ニネ?!」

旅客船姫 (アワワワ、チンジュフが跡形も無く片付けられる!!!)



戦艦水鬼 「オ マ エ……」 ドドドドドドドド

戦艦水鬼が俺を見た。



チ級 「ひゃい!!!」

俺は死を覚悟した。

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戦艦水鬼 「……」 ドドドドドドドド

戦艦水鬼 「タ級が悪戯して、すまなかっタ……」

戦艦水鬼 「重油が掛かった料理を片付けてくれなイカ?」

チ級 「ひゃい!!!」

チ級 「ヨロコンデーーー!!!」

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戦艦水鬼は良い人だった。

戦艦水鬼は服を着替えに更衣室に行った。



戦艦棲姫A 「水鬼ちゃんて強くて優しくて、かっこいいヨネー」 ウットリ

戦艦棲姫B 「そうですわネ…… 艦娘のクズ共にさえも優しいですわネ」

戦艦棲姫A 「優しいよネ…… 人間以外には……」



チ級 (ドキッ!)

チ級 (戦艦水鬼様は人間が嫌いなんだ……)

チ級 (元人間とバレてなくて良かった……)

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戦艦水鬼が帰ってきた。



戦艦水鬼 「タ級!」

戦艦水鬼 「悪戯すると、もう一緒に寝てやらんゾ!」

タ級 「ウッ、グスッ」

戦艦水鬼 「もう悪戯しなイカ?」

タ級 「ウン……」

戦艦水鬼 「よし、いい子ダ」

タ級 「戦艦水鬼様……」

戦艦水鬼 「なんダ?」

タ級 「……」 モジモジ

戦艦水鬼 「フッ、おいで…… 遊んで欲しいのカイ?」

タ級 「ウン!」 ダキッ

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夕食後、皆がくつろいでいると、戦艦水鬼がル級を呼んだ。



ル級 「なんでスか?」

戦艦水鬼 「ル級」

戦艦水鬼 「お前が欲しイ」 バキューーーーーン

一同 (キマシタワーーー!!!)



ル級 「すまんナ」

ル級 「姫が居るのでナ」 ズキューーーーーン

旅客船姫 「///」

一同 (こっちにもキマシタワーーー!!!)



ヲ級 「はいはい、お客サマーー」

ヲ級 「ウチの部隊からの女の子の引き抜きは、ご遠慮頂けマスカーー?」

一同 (部隊への引き抜きだったのか……) ショボーン



ヲ級だけが戦艦語?を理解出来ていたのだった。

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旅客船姫 「姫姉様……」 ヒソヒソ

旅客船姫 「戦艦水鬼様は…… アレですか?」 ヒソヒソ

戦艦棲姫A 「そーなのヨ、天然なのヨ」 ヒソヒソ

戦艦棲姫B 「大雑把と言われる戦艦の私から見ても……」 ヒソヒソ

戦艦棲姫B 「ガチの天然なんデスの」 ヒソヒソ

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戦艦水鬼 「残念だナ……」

戦艦水鬼 「私はお前を買ってるんダ」

戦艦水鬼 「前に演習した時、お前の力に驚嘆シタゾ」

ル級 「光栄デス」



戦艦水鬼 「ところデ……」

戦艦水鬼 「『クロスロード作戦』という言葉に、聞き覚えが無イカ?」



ル級は少し考えてから答えた。

ル級 「いえ、存じまセン」

戦艦水鬼 「そうか、ありがトウ……」 チラッ



チ級 (なんだ?)

チ級 (微妙にヘ級さんが反応していたような……)

チ級 (そのヘ級さんを戦艦水鬼様がチラッと見たような……)

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戦艦棲姫達がお帰りとなった。



旅客船姫 「本日の御代は結構です」

旅客船姫 「戦艦水鬼様のお召物は、洗濯してからお返しします」

戦艦棲姫A 「りょーちゃーん、気にしなくてイイヨ」

戦艦棲姫B 「そうですわ、ここはお姉さんの顔を立てて下さるカシラ?」

戦艦棲姫A 「お代は後で請求してネ」



そう言って、戦艦棲姫達は帰っていった。

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後日、代金に相当する弾薬が送られてきた。

チ級 (火力命の戦艦らしいな)

チ級 (マグロ本位制、破れたり……)

なぜか俺は敗北感を覚えた。



- 完 -

おつでしたー、って完?終わってしまうん?!

>>222
第三.一話は完となります。 
「俺氏、チ級になる」自体は続きますよ~。


第四話 魂の記憶




リ級 「姫様!」

リ級 「海から女の子なのデス!」

リ級が指令室に飛び込んできた。



旅客船姫、チ級 「な、なんだってーーー?」 

旅客船姫 「どういうことですか?」

リ級 「わたしは海岸で潮干狩りをしていたのデス……」



リ級は説明を始めた。

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- リ級の説明 開始 -

リ級 「あっさりー、しっじみー、はまぐりさーーんデス」 ガッシガッシ

リ級 「こっちは、もう居ないみたいなのデス……」

リ級 「あっちに行ってみるのデス」 トコトコ



すると、海岸に女の子が打ち上げられていたのです!

リ級 「大丈夫なのデス!?」 ユサユサ

女の子 「うーん……」

リ級 「呼吸はしているのデス」 ホッ



女の子は呼吸していたので、ひと安心だったのです。

そして、わたしは怪我をしていないか調べたのです。

リ級 「怪我は…… していないようデス……」 サスサス

リ級 「では…… 助けを呼んで来るのデス!」 ピューーーッ



- リ級の説明 終了 -

-----------------------------------------------


旅客船姫 「わかりました!」

旅客船姫 「私は本土の医者を衛星電話で呼びます」

旅客船姫 「リ級さんは、チ級さんと担架を持って行って」

旅客船姫 「女の子を医務室に運んで下さい」

リ級、チ級 「はい!」

-----------------------------------------------


担架を取りに医務室に行く途中、俺たちはヘ級に出会った。



へ級 「どうしたの?」

チ級 「海岸に女の子が打ち上げられたそうです」

チ級 「これから担架を持っていって、医務室に運びます」

へ級 「よぉし! 私も手伝っちゃいます!」

チ級 「お、お願いします!」



俺たちは担架を持って、女の子の所に向かった。

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リ級に案内されて、俺たちは女の子のところにやって来た。

へ級 「これは…… 艦娘ちゃんですね……」

チ級 「!?」

リ級 「なのデス!?」



そう言うと、ヘ級は艦娘の体を探り始めた。

へ級 「んーーー、あった!」 ゴソゴソ

へ級 「救難信号用のビーコンだよ!」 バーーーン

へ級 「これがあると、ちょっとヤバイね……」

へ級 「ここに艦娘の捜索隊がやって来るよ」

チ級 「なんだってーーー?」

リ級 「はわわ! 艦娘さんたちが、やってくるのデス?」

リ級 「そうならないように、遠い沖でビーコンを捨ててくるね」

リ級 「二人は艦娘ちゃんを医務室に連れて行って!」

チ級 「わ、わかった!」

リ級 「わかったのデス!」



ヘ級はビーコンを持って、海に飛び込んだ。

俺たちは艦娘を担架に乗せて、医務室に運んだ。

-----------------------------------------------


俺たちは医務室に着いた。

濡れた服を着たままだと、体が冷えて体力を奪われてしまう。

だから、俺たちは艦娘の濡れた服を脱がせて、タオルで体を拭き、服を着替えさせた。



艦娘の意識は、まだ戻っていない。

そのままベッドに寝かせた。



旅客船姫が医務室にやって来た。

旅客船姫 「女の子の容態は、いかがですか?」

リ級 「姫様! 女の子は艦娘さんらしいのデス!」

旅客船姫 「艦娘…… さん……?」

旅客船姫 「艦娘さんたちが攻めて…… キターーーー!!!」(白目)

リ級 「姫様が白目で倒れたのデス!」

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旅客船姫が意識を取り戻した。

旅客船姫 「気が動転してしまいました……」

旅客船姫 「本土の医者に電話をしたのですが、話中で通じませんでした」

旅客船姫 「とりあえず様子を見に来たのですが、まさか艦娘さんだとは……」



チ級 「どうしましょう?」

旅客船姫 「艦娘さんは気を失ったままです」

旅客船姫 「私達が深海棲艦とは、気付かれていません」

旅客船姫 「ですので、そのまま病院に行ってもらいましょう」



その時、ネ級が部屋に入ってきた。

ネ級 「どうしたのジャ! 艦娘が島に打ち上げられたと聞いたゾ!」

艦娘 「利根姉さん!?」 ガバッ

旅客船姫 「」

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部屋の一同が凍りついた。

艦娘 「あ……」 キョロキョロ



旅客船姫 「あの…… いつから意識が戻ってました……?」

艦娘 「あの…… その…… えーーっと……」 キョドキョド

艦娘 「今さっきです!」 ベッドモグリ

チ級 (聞かれたな…… 分かり易すぎる……)

リ級 (この艦娘さんは、嘘が付けないのデス……)



旅客船姫 「ウーーーン」 ブクブク

リ級 「姫様が泡を吹いて倒れたのデス!」

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ワーーワーー!

ギャーーギャーー!



艦娘 (なんか深海棲艦たちが混乱している?)

艦娘 (逃げるチャンス?) ガバッ



艦娘はベッドから飛び起きて、ネ級の手を掴んだ。

艦娘 「利根姉さん! 逃げましょう!」

ネ級 「ナ……! ナんなのジャ?」



艦娘はネ級の腕を引っ張って、逃げ出そうとした。

その時、リ級が現れた。

リ級 「ケガ人はベッドで寝たホウがいいゾ」 ニタリ



リ級は艦娘を羽交い絞めにした。

艦娘 「放してーーー!」 ジタバタ

ネ級 「あまり強く締めないでホシイのジャ……」 オロオロ

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艦娘はロープでグルグル巻きにされ、ベッドに寝かされた。

艦娘 「利根姉さん! 筑摩です! 覚えてませんか?」 ジタバタ

ネ級 「チクマさんといったかノウ……」

ネ級 「我輩はお主のことを…… 全く覚えておラン……」

筑摩 「」 ガビーーーーーン



筑摩はショックを受けたようだ。

筑摩 「やっと利根姉さんを見つけたと思ったら……」

筑摩 「深海棲艦になっているし……」

筑摩 「私のことを覚えていないし……」

筑摩 「もう…… 死にたい……」 ドンヨリ

筑摩 「ウフフフフフ…… エヘヘヘヘヘ……」 ブツブツ

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旅客船姫 「はてさて、困りました」

旅客船姫 「正体を知られてしまったからには、返すわけにはいきません」

旅客船姫 「ですが解体するというのは……」

旅客船姫 「ハァ……」 ため息



ル級 「どうするか決まるマデ、しばらくここに居てもらったらドウダ?」

旅客船姫 「良い案が浮かぶまで、そのようにいたしましょう」 

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旅客船姫 「装備、艤装、弾薬は、全て預かります」

筑摩 「いやです! 渡しません!」

ヲ級 「まあまあ、チクマさん、意地を張らんデ」

ヲ級 「この島で『お姉さん』と、ゆっくり過ごすのは、どうでっカ?」 ニヤリ

筑摩 「え!?」



ヲ級 「見たトコロ、チクマさんは『お姉さん』を探してたんと違いマス?」

筑摩 「……」

ヲ級 「ここで一緒に生活すれば、チクマさんのことを思い出すカモしらんし」

筑摩 (姉さんと二人っきり…… 水入らず……) ホワンホワンホワン

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- 筑摩の妄想 開始 -



まず、朝起きたら姉さん成分を摂取して……。

ネ級 「スーー、スーー」

筑摩 「ふふっ♪ まだ寝ている」

ネ級 「ちくまぁ……」

筑摩 「はぅ!」 バキューーーン

筑摩 (鼻血が……) ドボドボ



次に、朝ごはんを食べて……。

筑摩 「姉さん、ご飯が出来たわ」

ネ級 「我輩、ちくまの作ったご飯が大好きじゃ!」

筑摩 「姉さんったら、ふふっ♪」 鼻血ドバーーー



そして、お仕事に出かけて……。

筑摩 「姉さん、忘れ物ない?」

ネ級 「うん、我輩は大丈夫じゃ!」

ネ級 「おっと、そうじゃ」 ダキツキッ ギュッ

筑摩 「姉さん?」 カァアア

ネ級 「我輩の大好きなちくまを、ギュっとするのを忘れておった」 ニコッ

筑摩 「姉さんッ!!!」 鼻血ドバーーー



- 筑摩の妄想 終了 -

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筑摩 「はい、筑摩は大丈夫です♪」 鼻血 & 吐血 & 耳血

リ級 「チクマさん、ダイジョバナイのデス!」



結局、筑摩は装備、艤装、弾薬を俺たちに預けた。

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ロープを解かれた筑摩は、ネ級の手を握りながら言った。

筑摩 「私、筑摩と申します!」 目キラキラ

筑摩 (絶対、私のことを思い出させてあげます!)



ネ級 「わ、我輩はネ級のネルじゃ……」

ネ級 (顔が近いノウ……) 



旅客船姫 「お取り込み中、失礼しますが……」

旅客船姫 「ここに流れ着いた経緯を教えてください」

筑摩 「」 カァアア

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筑摩 「私は外洋遠征中、嵐に遭遇しました」

-----------------------------------------------

筑摩は遠征中に嵐にあったそうだ。

その時、深海棲艦に襲撃され、艤装が破損し、操舵不能になってしまった。

その上、艦載機を流され、無線機も故障し、他の艦娘と連絡が出来なくなった。

そして、操舵不能のまま意識を失い、この島に流れ着いたそうだ。

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旅客船姫 「そうでしたか…… 大変でしたね……」

ル級 「そうか、助かって良かったナ!」 ニッコリ

ル級 「あの海域からだと、確かに海流でこのあたりに流れてくるナ」

チ級 (となると、筑摩さんの話は本当のようだな)



旅客船姫 「ところで『お姉さま』というのは?」

筑摩 「私の姉が、同じ航路の外洋遠征で行方不明になったのです」

筑摩 「それ以来、外洋遠征に行く度に、姉を探しているのです……」



旅客船姫 「ネ級さんは、お姉さまに似ているのですか?」

筑摩 「姿、声は違いますが……」

筑摩 「間違いなく、利根姉さんです!」 バーーーーン!

筑摩 「私の『利根姉さん』センサーが、そう言ってます!」 ババーーーーン!

旅客船姫 「えぇ…… はぁ……」

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旅客船姫 「で、では…… この南国孤島のチンジュフで、しばらくお過ごし下さい」

旅客船姫 「島の外に行かないで下さい」

旅客船姫 「外部への連絡は禁止です」

旅客船姫 「それ以外は、ご自由に」



旅客船姫 「部屋は…… ネ級さんの部屋に」

ネ級 「我輩の部屋!?」

筑摩 「お部屋に案内してくれますか?」 ニコニコ

ネ級 「ウ、ウム」



筑摩とネ級は腕を組みながら、医務室を出て行った。

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筑摩が来てから数日が経過した。

ある日の午後……。



筑摩 「えーーっと…… あの……」

旅客船姫 「筑摩さん、ティターニアと呼んでください」 ニッコリ

筑摩 「ティターニアさん、姉のことで、ご相談が……」

旅客船姫 「?」



筑摩 「実は、姉が毎晩うなされているのです」

-----------------------------------------------


- 筑摩の説明 開始 -



寝始めて数時間後、決まって姉がうなされ始めるのです。

ネ級 「やめて……」

ネ級 「駄目だ…… なんで…… そんな事を……」

ネ級 「逃げるのじゃ! 駄目じゃ!」

ネ級 「そんな!」



筑摩 「姉さんっ!」 ユサユサ

ネ級 「あ…… 夢カ……」

ネ級 「チクマさん……」

ネ級 「我輩は…… 毎晩、怖い夢を見るのジャ……」

ネ級 「我輩が…… 鉄砲で人々ヲ……」 ポロポロ

筑摩 「……」 ギュッ
 
-----------------------------------------------


落ち着いた姉に、私は聞きました。

筑摩 「姉さん、どんな夢を見るのですか?」

ネ級 「我輩は、南の島におってナ、空に浮かんでオルのジャ」

ネ級 「空から下を眺めておるとナ、人々が兵隊に集められてナ……」

ネ級 「兵隊が鉄砲で人々を……」

ネ級 「我輩は必死に止めようとスルのジャ」

ネ級 「でも駄目ナノじゃ……」

ネ級 「叫んでも、声が出ないのジャ……」



ネ級 「そして必ず…… 兵隊の顔を見セられる……」

ネ級 「兵隊は…… 我輩なのジャ……」

ネ級 「我輩が酷いコトを……」 ポロポロ

ネ級 「ほとんど毎晩……」 ポロポロ



筑摩 「一緒に寝ましょう……」

ネ級 「ウム……」



私と一緒に寝ると、うなされずに眠れるようでした。



- 筑摩の説明 終了 -

-----------------------------------------------


筑摩 「何かご存知ですか?」

旅客船姫 「存じません…… ですが……」

旅客船姫 「艦娘さんや深海棲艦に詳しい方が居るので、聞いてみます」



旅客船姫 「それと筑摩さん……」

旅客船姫 「お願いできる立場では無いのですが……」

旅客船姫 「出来るだけ、ネ級さんと一緒に寝て頂けませんか?」

筑摩 「わかりました」

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旅客船姫 「……と、いうことなのです」

旅客船姫 「ヘ級さん、何か心当たりはありませんか?」

ヘ級 「専門家じゃないから断言は出来ないけど……」

ヘ級 「心に深い傷を負っていて、それが原因だと思う」



ヘ級 「筑摩ちゃんの姉さんというと利根ちゃんかなぁ……」

ヘ級 「そうだね…… 心の傷に思い当たることがあるね」

旅客船姫 「……」



ヘ級 「轟沈した艦娘が母さんに食べられて、深海棲艦に生まれ変わると」

ヘ級 「時々、艦娘の記憶を持っている場合がある、ということは知っていますよね?」

旅客船姫 「存じてます」



ヘ級 「多分、ネ級ちゃんもそうだね」

ヘ級 「表には出てこないけど、心の奥底に記憶を持っているみたい」

ヘ級 「そこに深い傷を負っていると思うよ」



ヘ級 「艦娘になる前…… 船の利根ちゃんだった時、とても悲しい事件、ビハール号事件があったから」

ヘ級 「多分、それが原因だね」

ヘ級 「その事件は、船の利根ちゃんに責任はないよ」

ヘ級 「利根ちゃん、というか、ネ級ちゃんの責任じゃないことを自覚すれば」

ヘ級 「もしかしたら回復するかもしれないね」

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旅客船姫 「それをネ級さんに説明できますか?」

ヘ級 「説明は出来るけど……」

ヘ級 「辛い事を思い出させるから、ネ級ちゃんが大変だよ!」

ヘ級 「ネ級ちゃんを精神的に支えてあげないと、説明に耐えられないかもしれない」

旅客船姫 「筑摩さんなら…… 支えられると思います」

ヘ級 「そうだね」

旅客船姫 「姉妹愛に、かけてみましょう」



ヘ級 (艦娘の利根ちゃんはトラウマを持っていないように見えるけど)

ヘ級 (深海棲艦になったら思い出した……)

ヘ級 (思った通りかもね……)

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翌日、旅客船姫は筑摩に尋ねた。

旅客船姫 「筑摩さん、お願いがございます」



旅客船姫は、ネ級の悪夢は心の傷が原因だろうということ、

そのカウンセリングに筑摩の助けが要ることを、筑摩に話した。



筑摩 「わかりました! 姉の助けになるなら何でもやります!」

旅客船姫 「それで…… カウンセリングを受けるようネ級さんを説得して頂けませんか?」

筑摩 「はい!」

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ネ級は筑摩に説得されて、ヘ級のカウンセリングを受けることになった。

旅客船姫 「それではヘ級さん、お願いします」

ヘ級 「はい」



筑摩はネ級の手を握った。

筑摩 「姉さん、私がココに居ます」

筑摩 「安心してください」 ギュ

ネ級 「チクマさん……」 ギュ



ヘ級 「ネ級ちゃん、ここには姫様、筑摩さん、私がいるから、安心してね」 ニッコリ

ヘ級 「では、リラックスしてください」 ニッコリ

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へ級は、ネ級が心に深い傷を負っており、それが悪夢の原因だと説明した。

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ネ級 「だが我輩は…… 心に深い傷を負うような経験は」

ネ級 「生まれてこのかた、しておらんゾ?」

ヘ級 「心に傷を負ったのは、船の巡洋艦利根の時です」

ヘ級 「ネ級ちゃんが船の利根の記憶を持っているから」

ヘ級 「心の傷も持っているんだよ」

ネ級 「な、ナント……!?」



ヘ級 「船の利根の記憶を持っているのは」

ヘ級 「艦娘の利根ちゃんの記憶を引き継いでいるからだよ」

筑摩 「やはり姉さんだったのですね……」



ネ級 「我輩は、船や艦娘の時のことを、全く覚えてオランゾ」

ヘ級 「思い出せないだけで、意識の奥底に記憶を持っているんだよ」

ヘ級 「それが夢で、表に出てきてるんだ」

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ヘ級 「船の利根の時、とても悲しい事件が有ったんだよ」

ヘ級 「悪夢の正体がはっきりすれば、恐怖感が消えると思うし」

ヘ級 「その事件がネ級ちゃんのせいじゃないと分かれば、罪悪感も消えると思うよ」

ヘ級 「だから、これから事件を説明するね」



ヘ級 「ネ級ちゃんは辛いと思うから」

ヘ級 「筑摩ちゃん、引き続きネ級ちゃんの手を握ってあげてね」

筑摩 「はい」 ギュ

ネ級 「……」 ギュ

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ヘ級は事件を説明し始めた。

すると……。



ネ級 「ハァ…… ハァ……」 マッサオ

ネ級 「そうじゃ…… あの時……」 ガクガク

ネ級 「ああああああ……」

ネ級 「アアアアアアアアアアアアア!!!」

ネ級は絶叫し、暴れだした。



筑摩 「姉さん! 筑摩はココに居ます!」 ギュッ

筑摩がネ級を抱きしめた。



ネ級 「あ…… あぁ……」 ポロポロ

ネ級 (あ、温カイ……)

ネ級 「チクマさん…… アリガトウ……」 ポロポロ

ネ級は落ち着きを取り戻した。

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ヘ級の説明が終わった。

ネ級 「思い出しタ……」 マッサオ

ネ級 「悲しい…… 悲しい事件じゃっタ」

筑摩 「姉さん……」 



ネ級 「へ級、礼を言うゾ」

ネ級 「大きな胸のつかえが…… 取れたようジャ……」

ネ級 「それとチクマさん、ありがとう……」

筑摩 「姉さん!」 ダキッ


 
ネ級 「ただな、艦娘の時の記憶は戻ってオランゾ」

ネ級 「すまんノウ……」

筑摩 「いいんです」 ニッコリ

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それからネ級が悪夢にうなされることは無くなったが……。



ネ級 「チクマさん…… ソノ……」

筑摩 「なんですか?」

ネ級 「今夜は一緒に…… アノ……」

筑摩 「ふふっ♪ 一緒に?」

ネ級 「……」

筑摩 「寝ましょうか?」 ニッコリ

ネ級 「ウム!」 パァアア



時々、一緒に寝ているそうだ。

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ヘ級 「……と、いうことがあったんだよ!」 ニパッ

チ級 「ほほう」

チ級 「ネ級さん、元気になって良かったね!」 ニッコリ

チ級 「ほんまそれ、良かった!」 ニッコリ



俺とヘ級は、ボートで漁をしていた。

二人で網を取り込みながら、ヘ級がネ級のことを話してくれた。



ヘ級 「それでさぁ……」

ヘ級 「あなた、人間のときの記憶があるんだって?」 ニヤリ

チ級 「うん、そうなんだ」



ヘ級 「辛いこととかないの?」

チ級 「うーん、特には無いね」

チ級 「あ、ネットが使えないのは、最初、拷問に近かったよ」



ヘ級 「人間社会に戻りたくないの?」

チ級 「独身、一人暮らしで、恋人なし……」

チ級 「親族も元気っぽいし……」

チ級 「この戦争が終わったら、シレっと人間社会に戻ろうかなー、と思うぐらいだよ」

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ヘ級 「私はね、艦娘の時の記憶があるんだよ!」

チ級 「マジで?」

ヘ級 「マジマジ!」 ニシシッ



ヘ級 「私、『夕張』って名前だったんだ」

ヘ級 「横須賀に居たんだよ!」

チ級 「俺、横須賀に三笠を見に行ったことあるよ」

ヘ級 「案外、街ですれ違ってたんじゃない」 ニヤリ



チ級 「そうか、だからビーコンとか知ってた訳だ」

ヘ級 「そゆこと」

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チ級 「鎮守府に戻りたいと思わないの?」

ヘ級 「最初は思ったんだけど、こんな姿だし」

ヘ級 「それに深海棲艦って何だろうって思ってね」

ヘ級 「敵だけど、全然、何も分かってないし」

ヘ級 「この機会に、とことん調べてみようと思ってね」



ヘ級 「それでね…… 色々と気になることが出てきた訳なのよ……」 ニタリ



- 続く -


ヘ級 「実はさ、深海棲艦と艦娘って、とっても似てるんだよ」

チ級 「そうなの?」



ヘ級 「まず食べ物!」

ヘ級 「深海棲艦と艦娘の両方を経験しているから分かるんだけど……」

ヘ級 「ほとんど一緒なんだよ」

ヘ級 「重油飲んで、鋼材やボーキサイトを食べて……」

ヘ級 「人間の食べ物も、美味しく食べられるんだよ」

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ヘ級 「それから高速修復材!」

ヘ級 「これは本当にビックリしたよ……」

ヘ級 「私たちが集めている生命エネルギーの結晶があるでしょ?」

チ級 「あるね」

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俺たちは海で魚を取っているが、それは生命エネルギーを取るためだった。

俺たちが魚をギュッと絞ると、口から飴玉のような生命エネルギーの結晶が出てくる。

その物質化した生命エネルギーの結晶をセッセと集めて、オカンの居る「巣」に収めているのだ。



その結晶は深海棲艦の食料なのだ。

食べると力が沸いてくる、まさに「生命エネルギー」の結晶だ。

味は非常に甘くて美味しい。

粉末にして深海棲艦の傷口に塗ると、一瞬で傷が治る。



なお、絞った後の魚肉にも「生命エネルギー」が少し残っており、

魚肉と一緒に俺たちの美味しいご飯になっていた。

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ヘ級 「艦娘は『高速修復材』ってので傷を治すんだけど……」

チ級 「ま、まさか……」

ヘ級 「結晶と同じ匂いがするんだよ」

ヘ級 「鎮守府の風呂の入浴剤も、同じ匂いがする」

チ級 「!?」

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ヘ級 「それで、深海棲艦と艦娘って同じじゃないかな? と思った訳なのよ」

ヘ級 「艦娘ってのは、通常兵器が効かない深海棲艦を攻撃するための、人類側の深海棲艦じゃないかな、って」

チ級 「!?」



ヘ級 「じゃあ違いは何かっていうと……」

ヘ級 「まずは、乗り移っている船霊が違う」



ヘ級 「深海棲艦の船の怨霊って、割と色んな霊が混じってるんだよ」

ヘ級 「だから大雑把に戦艦とか巡洋艦とかの区切りになってるんだ」

ヘ級 「艦娘は、どうやったかは分からないんだけど、キッチリと1隻の船霊に分けられてるね」

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ヘ級 「あと、心がコントロールされているかも」

ヘ級 「ネ級ちゃんの件で確信したけど……」

ヘ級 「艦娘として不要な記憶は、思い出さないようにコントロールされているね」

チ級 「!?」



ヘ級 「艦娘ちゃんたちは、皆、従順で良い子だったけど……」

ヘ級 「もしかしたら、それもコントロールされた結果かもね」

ヘ級 「考えたくないけど……」

ヘ級 「この推測は、間違っていて欲しいな……」

チ級 「……」

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ヘ級 「コントロールっていうと…… 深海棲艦になって気づいたんだけど……」

ヘ級 「艦娘の時、自分の存在に全く疑問を持たなかったの」

ヘ級 「『自分って何? 艦娘って何? 深海棲艦って何?』とか思って当然だと思うけど……」

ヘ級 「まったく不思議だと思わなかったね」



ヘ級 「誰一人、というか、誰一隻、不思議に思わない」

ヘ級 「今にして思うと、不思議に思わないことが不思議」

ヘ級 「余計なことを考えないようにコントロールされていたんじゃないかな」

ヘ級 「深海棲艦になって、やっとコントロールが外れたみたい」

チ級 「!?」



チ級 「でも人間の技術じゃさ、船霊の切り分けとか、心のコントロールなんて、出来ないよ?」

ヘ級 「人間の技術じゃないんじゃない?」 ニヤリ

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ヘ級 「でね、もっと衝撃的な情報があるんだけど……」

チ級 「うん……」 ゴクリ



ヘ級 「実は、泊地棲姫様と装甲空母姫様の間に……」

ヘ級 「もう一人、戦艦棲姫様が居たらしいの……」

ヘ級 「その姫様が、突然、行方不明になったそうよ」

チ級 「!?」



ヘ級 「母さんは半狂乱になって探したらしいけど、結局、今でも行方が分からないの」

ヘ級 「母さんに言わせると、まだ生きてるって」

ヘ級 「理屈抜きの母親の直感だから、案外、当たっていると思う」

チ級 「……」

-----------------------------------------------


ヘ級 「前々から、深海棲艦と艦娘って似てるって思ってたのよ」

ヘ級 「そこに、行方不明の姫様の話を聞いちゃって……」



ヘ級 「姫様ってさ、将来の母さん候補じゃない」

ヘ級 「行方不明になった時期って、艦娘が出現する少し前なんだよね……」



ヘ級 「それでね…… とっても嫌な考えが思い浮かんだって訳……」

チ級 「ま、まさか……」

ヘ級 「……」

ヘ級 「証拠は無いの…… 無いのよ……」



ヘ級 「艦娘の時、そもそも疑問に思わなかったから、建造装置や開発装置について何も調べてないし」

ヘ級 「最高軍事機密でブラックボックスだから、中身を知らないのよ」

チ級 「……」



ヘ級 「まあ…… 行方不明になった頃、艦娘は居なかったから」

ヘ級 「人類が姫級の深海棲艦を誘拐するなんて、不可能なんだけどね」



ヘ級 「謎は深まるばかりなのよ」

チ級 「……」

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チ級 「しかし、そんな事、どうやって知ったの?」

ヘ級 「私、ここに来る前、泊地棲姫様の下にいたのよ」

ヘ級 「長女だから色々知ってるかなー、って思って、お世話係に志願したのね」

ヘ級 「艦娘ちゃんとヤりあいたくなかったから、後方に行きたくて」

ヘ級 「それに、お世話係だと色々話も聞けて良いかなー、って思ってね」

ヘ級 「それで母さんと泊地棲姫様が話しているのを、たまたま聞いちゃったって訳」

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ヘ級 「じゃあ、もう一つ情報……」

ヘ級 「なぜ母さんが、この海にやって来たか、って話なんだけど……」

ヘ級 「誰かに連れてこられたらしいのよ」

チ級 「ええっ!?」



ヘ級 「母さんが、とても小さい頃だから、ハッキリとは覚えてないらしいんだけど……」

ヘ級 「ここに来る前は、別の場所に居たけど、急に眠くなって……」

ヘ級 「気づいたら、ここに居たって」

ヘ級 「そのとき、誰かに連れてこられた気がするって」

チ級 「!?」



チ級 「誰かってのは分かっているの?」

ヘ級 「それを調べてるんだけど、手がかりが見つからないんだな、これが……」

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ヘ級 「チーちゃんに色々話したのは、何か知ってないかなー、と思ってね」

ヘ級 「人間の時、深海棲艦が現れる前、変わった事件って無かった?」

チ級 「うむむ……」



俺は、その頃を思い返してみたが、特に思い当たる事件は無かった。

チ級 「ごめん、思い当たる事件はないよ」

チ級 「でも…… 調査に協力させてくれないか?」

チ級 「俺も、その『誰か』が知りたいんだ」

チ級 「そいつが戦争の真犯人だろ!」

ヘ級 「チーちゃん、ありがとう!」

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チ級 「ところで、色々話してくれた情報って、旅客船姫様は知ってるの?」

ヘ級 「姫様を面倒に巻き込みたくないから、話してない!」 ニコッ

チ級 「うっ……」



チ級 「うーんと、どうかな…… 姫様が、それを知っていようと、いまいと」

チ級 「ヘーちゃんがチンジュフに居る時点で、ガッツリ巻き込んじゃってるし」

チ級 「とても重要な情報だから、話したほうが良いんじゃない?」

ヘ級 「そうだね…… 姫様に話すよ」



チ級 (人間の時、もっと艦娘のことを勉強しておけば良かった)

チ級 (しかし、ヤバイ情報を聞いてしまった気がする)

チ級 (消されるのかな、俺……)



俺たちは漁を終えて、チンジュフに帰った。

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そんな平和な日々だったが……。



ある日、俺と旅客船姫が雑談していると、姫の衛星電話が鳴った。

本土に買出しに行ったギャリソンからだった。



旅客船姫 「もしもし」

ギャリソン 「お嬢様! 艦娘の捜索隊が迫っておりますぞ!」

ギャリソン 「本土の港に、艦娘を乗せた強襲揚陸艦もいますぞ!」

ギャリソン 「噂では、この島に目をつけたと!!!」

旅客船姫 「」 (白目)



旅客船姫 「……」 フラフラ…… スッポリ

旅客船姫は、何も言わず机の中に隠れた。



チ級 「姫様?」

旅客船姫 「チ級さん! 緊急招集です!」

旅客船姫 「艦娘さんたちが、この島に来ます!」

チ級 「」



- 続く -


チンジュフの深海棲艦が指令室に集まった。

旅客船姫 「……ということで艦娘さんたちが、この島にやって来ます!」

旅客船姫 「皆さん、海底の『巣』に逃げましょう!」

旅客船姫 「今ッ!!! スグッ!!!」 クワッ!



ヲ級 「ちょっち待っテ!」

ヲ級 「チクマさんに帰ってもらったらエエんとちゃいますカ?」

ヲ級 「チクマさんが見つかれば捜索も終るやろうシ」

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ヲ級 「チクマさん」 クルッ

筑摩 「はい」

ヲ級 「長い間、無理に留めて本当に申し訳ございまセンでシタ」 脱帽

ヲ級 「ホンマ勘弁やで……」 ペコリ

ヲ級 「ソイデナ…… ウチらが深海棲艦ってコト、内緒にしてくれるんやっタラ」

ヲ級 「捜索隊のところまで送りマス」

ヲ級 「ウチらが深海棲艦とバレなければ、ネ級ちゃんも安全ヤシ…… ドウヤロカ?」

筑摩 「……」

ヲ級 「出来ないんやったら…… 申し訳ないけど、一緒に『巣』に来てもらいマス」



筑摩は少し考えてから言った。

筑摩 「私、皆さんと一緒に生活して、皆さんが人間も艦娘も襲わないことを知りました」

筑摩 「それは私の知っている深海棲艦ではありません」

筑摩 「だから皆さんが深海棲艦とは思いませんし、それを話すこともありません」

ヲ級 「アリガトウ…… オオキニやで!」

ヲ級 「よっしゃ! ではモーターボートで……」

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その時、衛星電話が鳴った。

旅客船姫 「もしもし」

日向 「私、XXXX鎮守府の日向と申します」

日向 「ティターニアさんをお願いします」

旅客船姫 「」

旅客船姫 「え…… あの……」 オロオロ

旅客船姫 「ティターニアは席を外しております」 シレッ

旅客船姫 「どのようなご用件ですか?」

日向 「では伝言をお願いします」

日向 「『行方不明の艦娘の捜索隊が、あさっての正午、そちらに伺います』とお伝え下さい」

日向 「では」 ガチャ

旅客船姫 「……」

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チ級 「姫様、誰からですか?」

旅客船姫 「XXXX鎮守府の日向さん、と言ってました……」

旅客船姫 「捜索隊が、あさっての正午、こちらに来るそうです……」 ドンヨリ

一同 「な、なんだってーーー!?」



旅客船姫 「少しだけ時間に余裕が出来ました……」

旅客船姫 「何があるか分からないので、一応、逃げ出す準備をしましょう!」

旅客船姫 「冷蔵庫も空にしないと……」

旅客船姫 「明日には遠征部隊も帰ってきますし……」

旅客船姫 「明日の夜は、ご馳走を作りましょう!」 パァアア

旅客船姫 「筑摩さん、明日のお夕飯を食べてから帰りませんか?」 ニッコリ

筑摩 「はい♪」

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筑摩 「ところでなのですが…… 姉さんだけ…… 連れて帰れませんか……?」

筑摩 「記憶を取り戻すため、海軍の施設で治療を受けさせたい、と思うのです……」

へ級 「それはオススメしないなぁ」



へ級 「筑摩さん、艦娘の記憶を持った深海棲艦の話って、聞いたこと有る?」

筑摩 「いえ、ありません」

へ級 「艦娘の記憶を持った深海棲艦って意外と居るんだよね、実は」

へ級 「でも、筑摩さんは聞いたことが無い……」

筑摩 「……」



へ級 「そういう深海棲艦は艦娘の記憶が有るから、まず鎮守府に行くと思うのよ」

へ級 「で、その後、どうなるんだろうね?」

へ級 「ひっそりと闇に葬られている可能性も……」 ニヤァ

筑摩 「!?」

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へ級 「それと…… もっと怖い話があるのよぉ!」 ニタァアアアア

筑摩 「ヒッ」

へ級 「出撃してさ、海で保護される艦娘っているでしょ?」

筑摩 「はい」

へ級 「あれってさ、ちょうど筑摩ちゃんみたいに深海棲艦に捕まった艦娘なんだよねぇ」



へ級 「筑摩ちゃんなら知っていると思うけど、海で艦娘を保護したら、まず何をする?」

筑摩 「麻酔を打って隔離します」

へ級 「なんでだっけ?」 ニヤリ

筑摩 「未知の病原菌の保有や、深海棲艦に洗脳されていて暴れる可能性が有るためです」

筑摩 「その時、『洗脳されている可能性があるから、艦娘が何を言っても無視しろ』と言われています」

へ級 「鎮守府に帰投したら?」

筑摩 「そのまま工廠に引き渡します」

へ級 「そのとおり、優秀だね!」

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へ級 「その後、工廠で防疫処置と洗脳解除をするんだけど……」

へ級 「工廠から戻った艦娘ちゃんの錬度は?」

筑摩 「一番初期の状態です」

へ級 「それまでの記憶は? 保護される前のこと、覚えてる?」

筑摩 「いえ、覚えていません」



へ級 「もし筑摩ちゃんが保護されたとして……」

へ級 「錬度が初期に戻って、保護される前の記憶が無いって、不思議じゃない?」

筑摩 「え…… あれ…… おかしい…… 不思議……???」



へ級 「このチンジュフで過ごした事も、全部、忘れちゃうんだよ」

へ級 「お姉さんと一緒にいたことも、全部」

筑摩 「!?」

筑摩 「いやです! 絶対、忘れたくありません!!!」

へ級 「だからね、私たち深海棲艦と一緒にいたことは、内緒にしたほうが良いよ!」 ニパッ

筑摩 「……」

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チ級 (ふーん、そんなことがあるんだ……)

チ級 (そういえば……)



チ級 「その…… 『巣』に逃げたとして、そんなに安全なのですか?」

チ級 「潜水艦とか爆雷で襲われることはないのですか?」

旅客船姫 「襲われることは無いです」

旅客船姫 「私たちの『巣』は深度数千メートルの海底にあります」

旅客船姫 「普通の潜水艦の艦娘さんの限界深度を、遥かに超えています」

旅客船姫 「爆雷も水圧で圧壊して、届きません」



へ級 「そうなんだよ!」

へ級 「実は人類が深海棲艦に勝つことは不可能なんだよ」

チ級 「な、なんだってーーー!?」

へ級 「だって『巣』を攻略できないからね」

チ級 「そ、そういえばそうだね」



チ級 「そんなこと海軍は言ってなかったけど……」

チ級 「まあ『勝てません』なんて、言えないよな」

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チ級 「でも深海に潜れる潜水艦で襲ってくることは?」

チ級 「『しんかい6500』みたいな……」

へ級 「実はね…… それをやったんだよ」

へ級 「そして、ものすごい大敗したんだよ」

チ級 「!?」

へ級 「あまりの被害の大きさに極秘扱いになったの」

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ヘ級によると、数年前に人類の「巣」への一大攻勢があったそうだ。



始めは、小規模の部隊が深海棲艦の小さい「巣」を攻略した。

特別な対潜装備をした攻撃型潜水艦の艦娘たちが、深海棲艦の潜水艦を蹴散らし、

大型の深海潜航艇に乗った艦娘の部隊が「巣」に突入し、そこを占領した。

深海棲艦は敗走を重ね、人類は多くの「巣」を占領していった。



自信を持った人類は、大型の深海潜航艇を数百隻建造し、

世界中から集まった数万隻の精鋭の艦娘を乗せて、

マリアナ海溝にある深海の巨大な「巣」に攻勢をかけた。



潜航艇には、数万隻の攻撃型潜水艦の艦娘が護衛に付いた。

潜水艦は、深度数千メートルに潜れるよう、特別な対水圧装備をしていた。



人類は大攻勢をかけて、深海棲艦に決戦を挑んだのだ。

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ヘ級 「実はさ…… その『敗走』は罠だったのよ……」

チ級 「!?」

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大攻勢も始めは順調だったが、深度数百メートルまで進行した時、

深海棲艦は牙をむいた。



深海棲艦が有利に戦える「水中」に艦娘の主力を引きずり込むため、

潜水艦の深海棲艦はワザと敗走していたのだ。



潜水艦の艦娘は、対潜用と対水圧の装備で、機動性が極端に落ちていた。

鈍足な潜水艦は、深海棲艦に一方的に蹂躙された。

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ヘ級 「その時、一番戦果をあげたのはレ級さんなの」

チ級 「レ級さんって戦艦じゃなかったでしたっけ?」

ヘ級 「レ級さんの真価は、水中戦で発揮されるんだよ」

ヘ級 「あの尻尾で、ものすっごい速さで泳ぐの!」

ヘ級 「で、超高速で近づいて、尻尾の口で潜水艦を喰い千切る訳で……」

ヘ級 「そんなレ級さんが数十隻……」

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次々と轟沈していく潜水艦の艦娘たち。

深海は潜水艦の血で真っ赤に染まった。

護衛の無くなった深海潜航艇は、なすすべなく撃沈されていった。

数百隻の深海潜航艇に乗っていた数万隻の艦娘は、何も出来ぬまま轟沈していった。

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ヘ級 「本当に…… 潜水艦の艦娘ちゃんに同情するよ……」 ウルウル

ヘ級 「護衛がなくなって、何も出来ずに潜航艇と一緒に沈んだ艦娘ちゃんにもね……」 ウルウル

チ級 「……」

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あまりの被害の大きさに軍は衝撃を受け、「マリアナ海溝攻略戦」は存在自体が極秘となった。

大敗後、人類が占領していた「巣」も、あっという間に取り返された。

それ以降、「巣」への攻勢は無くなったそうだ。

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チ級 「そ、そんなことがあったんですか」

ヘ級 「まあ、そういう訳で『巣』は安全なんだよね」

その話に俺は衝撃を受けたが、筑摩も衝撃を受けたようだ。



結局、明日の夕食後、筑摩は捜索隊の元に届けられ、

俺たちは『巣』に逃亡することになった。

あさっての正午、このチンジュフは「もぬけの殻」という訳だ。

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翌日、俺たちは逃亡と夜のご馳走の準備に追われていた。

午前中、遠征部隊が帰ってきた。



ちょうど俺が昼飯を食べようとした時、屋敷の玄関の呼び鈴が鳴らされた。

チ級 「昼ごはんを食べようとしてたんだがな!」 イライラ



俺は玄関に向かった。

チ級 「いらっしゃいませ」 ガチャ



見慣れない女性が居た。

チ級 「失礼ですが、どちら様ですか?」

日向 「私、XXXX鎮守府の日向と申します」

日向 「ティターニアさんをお願いします」

チ級 「」 (白目)

チ級 「あ、あ、あ、あ、明日の正午では?」

日向 「あぁーーーあ…… 日にちを間違えてしまったかな?」

日向 「まぁ…… すまんな」 ニヤリ

日向 「しかし、せっかく来たのだ」

日向 「お邪魔するぞ」 ズィ

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外を見ると、完全武装した兵士が数人、艤装を展開した艦娘が数人。

海岸を見ると大型のホバークラフトが乗り付けられている。

ホバークラフトにも数人の兵士と装甲車が乗っている。

海の沖には強襲揚陸艦と艦娘が数人いる。



チ級 「~~~~~~~ッッ!!!」

日向 「大人数でお邪魔して、すまんな」

日向 「人質を取って立て籠もられた場合を考えて、対テロ特殊部隊もいるからな」 ニヤリ

チ級 (や、やりやがった!!!)

チ級 (予定の一日前に奇襲してきた!)



- 続く -


チ級 「本日は、どのようなご用件ですか?」 オドオド

日向 「行方不明の艦娘の捜索に来たのだが……」

チ級 「伺っております」

チ級 「取次ぎますので、玄関でしばらくお待ち下さい」

チ級 (ど、ど、ど、ど、どうすれば?!?!?) オドオド

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俺は冷静を装いながら、指令室に駆け込んだ。

チ級 「姫様!」

旅客船姫 「何事ですか?」

チ級 「日向さんが来ました……」

旅客船姫 「へ!?」

旅客船姫 「あ、あ、あ、あ、明日では???」

チ級 「今日来ました! やられました!」

旅客船姫 「アバーッ!」 ガクガク

チ級 「玄関で待ってもらってます!」

旅客船姫 「至急、全員を指令室に集めて下さい!!!」 ヒュッ スポッ

旅客船姫は机の下に潜ってしまった。

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俺は大急ぎで屋敷の深海棲艦を指令室に集めた。

ドタドタ

ワーワー

チ級 「姫様! 全員を集めました!」

旅客船姫 「皆さん! 艦娘の捜索隊が来てしまいました!」

一同 「」

旅客船姫 「今すぐ、逃げま……」

ル級 「ちょっと難しいナ」

ル級 「さっきな、窓から外をチラっと見たガナ……」

ル級 「島が艦娘に包囲されているゾ!」

ル級 「簡単には逃げられそうもナイ」

旅客船姫 「」



ネ級 「吾輩がオトリにナロウ」

ネ級 「ル級も付き合うのジャ」

ル級 「待ちに待った艦隊決戦か! 胸が熱いナ!」 ニヤリ



ヲ級 「ちょ、ちょっち待っテ!」

ヲ級 「まだ、ウチラが深海棲艦とバレた訳やないデ?」

ヲ級 「大人しくチクマさんを引き渡せばエエんと違います?」

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旅客船姫 「そうですね…… 元より筑摩さんを、お返しするつもりでしたし……」

旅客船姫 「では筑摩さん、ここでお別れです」

旅客船姫 「そして…… 捜索隊の皆様に、そのままお帰りになるように」

旅客船姫 「お伝え願えますか?」

筑摩 「はい……」

筑摩 「命を助けて頂いて、本当にありがとうございました」

筑摩 「皆さん、お元気で」

筑摩 「そして姉さん…… また会いに来ます」 ウルウル

ネ級 「チクマさん……」 ダキッ

筑摩 「……」 ギュッ



筑摩は、玄関から出て行った。



ネ級 「……」 ウルウル

ヘ級 「すぐにまた会えるよ! きっと!」

-----------------------------------------------


すると、屋敷の玄関の呼び鈴が鳴らされた。



俺は玄関に向かった。

チ級 「どちら様ですか?」

筑摩 「あの…… 筑摩です」 カァアア

筑摩 「日向がお礼をしたいそうで、是非ともティターニアさんに会いたいと……」

筑摩 「それと…… 色々事情を聞きたいそうです……」

チ級 「」

筑摩 「捜査令状があるから…… ティターニアさんに拒否権は無いそうです……」

チ級 「」

-----------------------------------------------


仕方なく俺は彼女たちを食堂へ案内した。

日向と筑摩、数人の艦娘、兵士が食堂に入ってきた。



食堂には、調理道具が入っているダンボールが積まれていた。

「巣」に調理道具を持っていくため、梱包していたのだ。

食堂の机の上には、未梱包の調理道具が置かれていた。



日向 「ふむ…… 引越しですか?」 ニヤリ

チ級 (し、しまった!?)

チ級 「取次ぎますので、こちらでしばらくお待ち下さい」

日向 「…まぁ、では、待たせてもらうとするか」

-----------------------------------------------------------


俺は冷静を装いながら、指令室に駆け込んだ。

チ級 「姫様!」

旅客船姫 「何事ですか?」

チ級 「日向さんが詳しい事情を聞きたいと……」

旅客船姫 「へ!?」

チ級 「捜査令状があるから、拒否出来ないそうです……」

旅客船姫 「アバーッ!」 ガクガク

チ級 「食堂で待ってもらってます」

旅客船姫 「……」 ヒュッ スポッ

旅客船姫は机の下に潜ってしまった。

-----------------------------------------------------------


一同 「……」

旅客船姫 「……」

一同 「……」

旅客船姫 「……」



旅客船姫 「事、ここに至っては是非も無し……」

一同 「……」 ゴクリ

旅客船姫 「私達は『人間』ということで押し通しましょう!」



旅客船姫 「私は日向さんに会いますので、皆さんは、こっそり逃げる準備を……」

ネ級 「吾輩も同席しヨウ」

ネ級 「ル級は隣の部屋で待機してオレ」

ネ級 「呼んだら、壁をブチ破って入ってコイ」

ネ級 「一緒に姫様の盾となるゾ」

ル級 「いいだロウ!」 ニヤリ

ネ級 「チ級も来イ」

ネ級 「弾除けぐらいにはなるジャロ……」

チ級 「アッハイ」

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旅客船姫 「私は、少々電話をしてから行きます」

旅客船姫 「先に行って下さい」

ネ級 「ウム、チ級、行くゾ」

俺とネ級は指令室を出た。

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俺たちは食堂に着いた。

すぐに旅客船姫も食堂に来た。



日向 「筑摩が大変お世話になった」

日向 「心より、お礼申し上げる」

旅客船姫 「いえ、当然のことをしたまでです」



日向 「そして…… 無理を言って申し訳ないが、筑摩を助けたことについて」

日向 「幾つかの質問に、お答え願いたい」

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日向 「まず…… どうして警察なり海軍なりに届けなかったのですか?」 ニッコリ

チ級 (いきなりキツイ質問だな……)

旅客船姫 「その…… 実は、警察や海軍は信用出来ないのです」

旅客船姫 「この近辺では海賊が横行していまして、女性の誘拐が多発しています」

旅客船姫 「そして、海賊から逃げた女性が、島に流れ着くことがあるのです」

旅客船姫 「もし筑摩さんが海賊から逃げてきた場合、うっかり警察に通報すると」

旅客船姫 「そこから海賊に情報が流れかねないと思いまして……」

チ級 (なんとか逃げたか……?)



日向 「では…… 病院や救急隊に届けなかったのは、なぜですか?」

チ級 (うっ!)

旅客船姫 「先ほどの質問と同じです」

旅客船姫 「海賊が病院に網を張っていることも考えられます」

旅客船姫 「それに大した怪我もなかったので、こちらで療養してもらいました」

チ級 (これも、なんとか逃げたか……?)

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日向 「ふむ…… 筑摩は、ここに流れ着いたとき、大した怪我をしていなかったのですね?」

旅客船姫 「はい」



日向 「では…… なぜ鎮守府に戻らなかったのですか?」

チ級 (ううっ!)

旅客船姫 「嵐と深海棲艦の攻撃で、装備が壊れてしまったためです」



日向 「鎮守府に連絡一本入れればいいと思うのですが?」

日向 「こちらには衛星電話も有るようですし」

チ級 (うぐっ!)

旅客船姫 「あの…… その……」 マッサオー

旅客船姫 「筑摩さんの…… 意識がその……」 シドロモドロ



日向 「意識? 大した怪我をしていなかった、とおっしゃっていましたよね?」

旅客船姫 「はい……」

チ級 (追い詰められた!)

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日向 「本当は…… 監禁していたのではないですか?」

日向 「例えば…… あなた達が深海棲艦と知られてしまったから、とか?」 ニヤリ

旅客船姫 「」

チ級 「」



日向 「実はですね…… あなた達が深海棲艦だと証言する者がいましてね」

日向 「彼なんですが…… 以前、この屋敷を襲った海賊でね」

人相の悪い男が出てきた。



日向 「彼曰く、銃で撃っても、ナイフで刺しても、あっという間に再生したとか」

日向 「彼女たちで間違いないか?」

海賊 「へい! 見間違えようもねぇ! こいつら深海棲艦ですぜ!!!」

旅客船姫 「」

チ級 「」



- 続く -


筑摩 「違 う ん で す !」

筑摩が叫んだ。



日向 「筑摩、どうした?」

筑摩 「違うんです! 日向隊長!」

筑摩 「ティターニアさんたちは、深海棲艦ではありません!」

筑摩 「私が鎮守府に連絡しなかった…… 出来なかったのは……」

筑摩 「記憶喪失になっていたからです!」 バーーーーーン!

旅客船姫 「」

チ級 「」

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旅客船姫 「そ、そ、そ、そうでした!」

旅客船姫 「記憶喪失です! そうです!」

チ級 「そうですね! ハハハハ!」



日向 「ふうむ…… 海賊、どうなんだ?」

海賊 「このお嬢さんは、この悪魔どもに、たぶらかされてんだ!」

海賊 「だまされちゃいけねぇ! こいつらは深海棲艦だ!」

海賊 「こんな海沿いに住んでいて無事なのが証拠でさぁ!」



筑摩 「日向隊長! 深海棲艦なら私を助けるはずがありません!」

筑摩 「それに深海棲艦は対話不可能と聞いています」

筑摩 「隊長とティターニアさんは、今、まさに対話していたではありませんか」

筑摩 「深海棲艦のはずがありません!」



日向 「うーむ……」

日向 「海賊…… 釈放と報奨金目当てに、嘘の証言をしたのか?」

日向 「偽証となると刑期が延びるぞ?」

海賊 「~~~ッッ!」

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海賊 「正体をあらわせ!!! バケモンがッ!!!」 バッ

海賊がテーブルの上の包丁を掴み、ネ級に襲いかかった。



筑摩 「姉さん!!!」

ネ級 「筑摩ーーーーーー!!!」

筑摩がネ級を突き飛ばした。

海賊の包丁が、筑摩のわき腹に深く刺さった。



筑摩 「ガプッ…… ゴポッ……」

筑摩が吐血した。

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日向 「……」 ガシッ

海賊 「痛ででっ!!!」

日向が一瞬で海賊を組み伏せた。

兵士がライフルを海賊の頭に突きつけた。



日向 「筑摩を揚陸艦の入渠施設に! 早く!」

海賊 「俺は…… あいつらの正体を暴こうと……」

日向 「……まぁ、お前は一生刑務所だな」

海賊 「クソッ!」

日向 「目障りだ、こいつを拘束して揚陸艦の営倉にぶち込め」

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筑摩 「姉…… さん……」

ネ級 「筑摩…… しゃべるな……」

日向 「安心してくれ」

日向 「この程度の怪我で艦娘は死なん」



筑摩は揚陸艦に運ばれていった。

ネ級も揚陸艦に付き添っていった。

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日向 「部下が命をかけて守る相手が、深海棲艦であるはずがない」

日向 「ティターニアさん、深海棲艦と疑って申し訳なかった」

日向 「心よりお詫び申し上げる」 オジギ

旅客船姫 「いえ、お気になさらないで下さい」

旅客船姫 「それより筑摩さんの容態が心配です」

日向 「命に別状はありません」

日向 「数日もすれば完治するでしょう」

旅客船姫 「そうですか、それは良かったです」 ホッ

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その時、艦娘が食堂に入ってきた。

鳥海 「隊長! 鎮守府から緊急入電!」

鳥海 「鎮守府にレ級が接近、ただちに鎮守府に帰投せよ、とのことです!」

日向 「わかった」

日向 「急用のため、ここで失礼する」

日向 「ボートで揚陸艦までネルさんを迎えに来て欲しい」

旅客船姫 「わかりました」

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その頃、筑摩とネ級は、揚陸艦の医務室にいた。

筑摩 「入渠と高速修復材で、元気になりました♪」

筑摩 「姉さん、心配させてごめんなさい……」

ネ級 「無事で…… 本当に良かった……」



医務室に水兵が入ってきた。

水兵 「急遽、捜索隊は鎮守府に帰投することになりました!」

水兵 「もうじき本艦は出航します!」

水兵 「迎えのボートが来ますので、ネルさんはお帰り下さい!」

そう言うと、水兵は医務室から出て行った。

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医務室は筑摩とネ級だけとなった。

ネ級 「筑摩…… 吾輩は思い出したのだ……」

筑摩 「姉さん! とうとう思い出したのですね!」 目キラキラ

ネ級 「……」

筑摩 「姉さん……?」

ネ級 「……」



ネ級 「吾輩と筑摩は、もう二度と会えぬかもしれぬ」

ネ級 「今の吾輩の立場だと、いつ海に消えてもおかしくない」

ネ級 「艦娘の筑摩も同じだ」

ネ級 「だから悔いを残さぬよう、ここで言うぞ」

ネ級 「吾輩は…… ZZZZ鎮守府におったのだ……」

ネ級 「XXXX鎮守府ではないのだ……」

ネ級 「吾輩は…… お主の探していた利根ではないのだ……」

ネ級 「すまぬ…… すまぬ、筑摩……」 ポロポロ

筑摩 「あ…… そんな……」 ポロポロ

筑摩 「姉さーーーーーん!」



泣きじゃくる筑摩を、ネ級は迎えのボートが来るまで抱きしめていた。

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捜索隊と筑摩は鎮守府に帰っていった。

なお、鎮守府にレ級が迫っていたのは、旅客船姫が電話でレ級に陽動を頼んだからだそうだ。

結局、レ級は思わせぶりな動きをしただけで、何もせずに帰ったそうだ。

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それから数週後……。



午後の昼下がり、屋敷の玄関の呼び鈴が鳴らされた。

俺は玄関に向かった。

チ級 「いらっしゃいませ」 ガチャ

筑摩 「こんにちは!」

筑摩 「戻ってきました!」 ニッコリ

チ級 「おかえりなさい!」 ニッコリ



なぜか筑摩が戻ってきた。

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旅客船姫 「おかえりなさいませ」 ニッコリ

旅客船姫 「ところで…… どうしたのですか?」

筑摩 「この島の警護のため、XXXX鎮守府から派遣されました!」 ビシッ

筑摩 「『この島は女性が多く、警察も頼れない』ということで」

筑摩 「日向さんから指令が出ました!」



旅客船姫 (あからさまにスパイですね……)

旅客船姫 (でも…… チンジュフがにぎやかになるし……)

旅客船姫 (ネ級さんも喜ぶし…… 嬉しいですね)



旅客船姫 「では、今夜はご馳走にしましょう!」 パァアア

旅客船姫 「筑摩さん、前回、食べそびれましたからね!」

筑摩 「ありがとうございます♪」



筑摩 「それでは、姉さんに挨拶してきます!」

筑摩 「姉さーーーーーん♪」

筑摩はネ級の部屋にダッシュしていった。

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その頃、XXXX鎮守府では……。



鳥海 「筑摩の件、あれでよろしかったのですか?」

日向 「あれでいい」

日向 「あの島の連中は…… まぁ、十中八九、深海棲艦だろうな」

鳥海 「ではなぜ?」

日向 「ふむ…… なぜかは知らんが、あの連中は人間と上手くやろうとしている」

日向 「あの地域の深海棲艦による被害は、ほとんど無い」

日向 「周囲からの評判も良い」

日向 「人間と交流するどころか、在留資格を持つ深海棲艦など前代未聞だ」

日向 「非常に興味深い」



日向 「貴重な食材ほど……」

日向 「料理の準備に時間をかけたい……」

日向 「この件も同じだ」 ニヤリ

日向 「叩き潰すのは、いつでも出来る」

日向 「だから焦る必要はない」

日向 「じっくり調べて…… 検討してから…… 連中の扱いを決めたい」



日向 「この件は私とお前だけの秘密だ」

日向 「提督には私から直接話す」

鳥海 「はい」

日向 (この奇貨、どう戦局に影響するか…… まぁ、悪くない) ニヤリ



- 第四話 魂の記憶 完 -


今更ですが、「第三.一話 海のレストラン(中編)」の飛行場姫とヲ級のコンビは、

ニコニコ静画のMr鈴木さんの作品にインスパイアされています。

ではでは。


第四話 後日談 - 姉妹愛 -



チンジュフに戻ってきた筑摩は、早速、ネ級の部屋に行った。

筑摩 「姉さーーーーーん♪」



勢い良く筑摩が部屋に入ってきた。

ネ級 「筑摩!」

ネ級 「良く戻ってきたな!」 ニッコリ

ネ級 「この島の警備を拝命し、参上いたしました!」 ビシッ

ネ級 「そうであったか」

筑摩 (姉さんの口調が変わった……)

筑摩 (少し大人っぽくなった……?)

筑摩 (ネ級姉さんは背が高くて、声も少し低くて……)

筑摩 (カッコイイかも……) カァアア

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誤記があったので再投稿します。


第四話 魂の記憶 後日談 - 姉妹愛 -



チンジュフに戻ってきた筑摩は、早速、ネ級の部屋に行った。

筑摩 「姉さーーーーーん♪」



勢い良く筑摩が部屋に入ってきた。

ネ級 「筑摩!」

ネ級 「良く戻ってきたな!」 ニッコリ

筑摩 「この島の警備を拝命し、参上いたしました!」 ビシッ

ネ級 「そうであったか」

筑摩 (姉さんの口調が変わった……)

筑摩 (少し大人っぽくなった……?)

筑摩 (ネ級姉さんは背が高くて、声も少し低くて……)

筑摩 (カッコイイかも……) カァアア

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ネ級 「ところで…… 本当の姉上のことは、どうするのだ?」

筑摩 「姉の捜索は続けます」

筑摩 「休日に探しに行こうと思います」

筑摩 「どこかで私を待っていると信じています……」

ネ級 「そうか……」

ネ級 「筑摩は吾輩を助けてくれた」

ネ級 「吾輩も一緒に探そう」 ギュッ

ネ級は筑摩の手を握り締めた。



筑摩 「姉さん……」 カァアア

筑摩 (姉さん!!! 姉さん!!! 姉さん!!!)

筑摩 (もし本当の姉さんが見つかったら……) ホワンホワンホワン

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- 筑摩の妄想 開始 -



チンジュフの仕事が終わって、部屋に戻ってきたら……。

利根 「ちくまぁ! 吾輩、お仕事、頑張ってきたのじゃ!」 ニパッ

筑摩 「ふふっ♪ わかってます」

利根 「ちくまぁ、疲れたのじゃ!」 ダキツキッ

筑摩 「姉さんったら!」 カァアア

ネ級 「ただいま」(低音)

ネ級 「筑摩、疲れた……」(低音) ダキッ

筑摩 「姉さん?」

ネ級 「癒してほしいのだ……」(低音) ギュッ

筑摩 「うごごごっ!!!」 バキューーーン

筑摩 (姉さんサンド!!! 死ぬかもしれない!!!) 鼻血ドボドボ



次に、夕ごはんを食べて……。

筑摩 「姉さん、ご飯が出来たわ」

利根 「ちくまのご飯、おいしいのじゃ!」

筑摩 「姉さんったら、ふふっ♪」 鼻血ドバーーー

ネ級 「筑摩、ほっぺにご飯が付いているぞ」(低音)

ネ級 「吾輩が食べてしまおう」(低音)

筑摩 「姉さ…… ゴパッ!!!」 吐血グパーーー

筑摩 (こ、コロしにきているッ!!! 嬉しいッ!!!)

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そして、お布団で寝て……。

筑摩 「姉さん、おやすみなさい♪」

利根 「ちくまぁ……」 ダキツキッ

筑摩 「姉さん゙ん゙ん゙~~~ッッッ!!!」

筑摩 (パジャマ姿の姉さんが、こんなに近く!!!)

筑摩 (死ぬッ!!! 死んでしまうッ!!! 可愛いッ!!! やっぱり死ぬッ!!!)

ネ級 「筑摩…… 毎日ありがとう……」(低音) ナデナデ

筑摩 「姉さん?」 カァアア

ネ級 「利根姉さんと筑摩と吾輩…… まるで夫婦と娘だな……」(低音)

筑摩 「アバーーー!!!」 吐血グパーーー



- 筑摩の妄想 終了 -

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筑摩 「ああ、姉さん、時が見える♪」 鼻血 & 吐血 & 耳血

ネ級 「筑摩ッ!」



筑摩は医務室に運ばれた。

しかし、その顔は幸福そのものだったという。

結局、大事には至らず、すぐに回復したそうな。



- 続く -


一方、XXXX鎮守府……。

ある夜、日向と鳥海は鎮守府のラウンジで酒を飲んでいた。

日向 「……」

鳥海 「……」



日向は酒を一口飲み、言った。

日向 「あの時、筑摩は『姉さん』と言っていた」

日向 「どう思う?」

鳥海 「……」

鳥海 「あの『筑摩』が言うのでしたら、本当に『姉さん』なのだと思います」

日向 「まぁ、そうだな」

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日向 「海で轟沈した艦娘が、深海棲艦に生まれ変わる」

日向 「よく聞く噂だ」

鳥海 「……」

日向 「もし…… 深海棲艦に生まれ変わったとして、お前ならどうする?」

鳥海 「……」

鳥海 「私は鎮守府に戻ると思います」

鳥海 「それで撃沈されたとしても…… 皆の近くの海で眠れるなら…… 本望です」

日向 「……」

日向 「まれに、鎮守府近海に『はぐれ深海棲艦』が出現することがあるな」

日向 「大抵、無抵抗のまま撃沈されるか…… 逃げるかだ……」

鳥海 「……」

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日向はグラスの酒を飲み干した。

日向 「私の部屋で飲まないか?」

鳥海 「はい」

鳥海も酒を飲み干した。



日向の部屋に着くと、日向と鳥海は飲み始めた。

日向 「筑摩の言葉を聞いて…… 伊勢を思い出した」

鳥海 「『あの戦い』で轟沈したと聞いてます」

日向 「そうだな……」

日向 (あの戦いで…… 私は生き残り、伊勢は轟沈した……)

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- 日向の回想 開始 -



当時、私はXXXX鎮守府ではなく、YYYY鎮守府にいた。

「あの戦い」こと「マリアナ海溝攻略戦」で、私はYYYY鎮守府の主力艦隊にいた。

伊勢は決戦支援艦隊の旗艦だった。



主力艦隊と決戦支援艦隊は、別々の深海潜航艇に乗り、深海棲艦の「巣」を目指した。

深海潜航艇には「巣」制圧のための海軍陸戦隊も同船していた。

同船した海軍陸戦隊は、海外難民で編成された部隊だった。

この部隊は「牛久騎士団」と呼ばれている。

茨城県の牛久に難民の一時受入れ施設があるためだ。



深海棲艦の攻撃によって、世界中で多数の難民が発生した。

難民は、深海棲艦に対抗できる戦力を持つ国に、均等に振り分けられた。

日本も例外ではなく、多数の難民を受け入れた。



国を追われた難民たちは、深海棲艦を非常に怨んでいた。

そのため、多くの者が海軍に志願し、勇敢に戦った。

その中でも「牛久騎士団」は、勇猛果敢な部隊として名高かった。

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私は「牛久騎士団」の隊長を見た。

日向 (……ん、あれが隊長か)

日向 (いい体格だ…… 30代後半か…… 灰色がかった茶色の髪と瞳……)

日向 (ハンサムだな…… まぁ、悪くないが…… 顔が濃いな)



私の視線に気付いた隊長が言った。

隊長 「いやはや、こんな奇麗な艦娘のお嬢さん方とは、もっと別な場所で会いたかったですなぁ」 ニンマリ

日向 (ずいぶん軽いな……)

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潜航艇が潜航を始めて数時間後、深度千メートル近くに達した時、潜航艇が激しく揺れた。

日向 「!?」



のぞき窓から外を見ると、いたる所で激しい閃光が瞬いていた。

日向 (敵襲か!? 護衛の潜水艦部隊はどうした?)



艦長 「敵襲! 全員、衝撃に備えよ!」

艦長はアナウンスした。

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隊長が内線をかけた。

隊長 「艦長、状況を」

艦長 「護衛の潜水艦部隊は壊滅寸前」

艦長 「急速浮上し撤退せよ、との命令だ」

隊長 「艦長、急速浮上は不味いですな」

隊長 「もし小官が深海棲艦なら、退路で待ち伏せするでしょうなぁ」

隊長 「艦長も、そのようにお考えではないですか?」

艦長 「……」



隊長 「深海棲艦といえど、潜水艦は潜水艦です」

隊長 「ソナーが頼りです」

隊長 「もう少し潜れば、水温躍層があります」

隊長 「そこに逃げ込めば、ソナーの死角になります」

艦長 「……」



隊長 「急速浮上せよ、と命令されていてもですな…… 最後は現場の判断で良い、と小官は思います」

隊長 「命令違反の言い訳は、生き延びてから考えるのはどうですかな?」 ニヤリ

艦長 「助言、感謝する」

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私の乗った潜航艇は水温躍層のソナーの死角に潜り込んだ。

そのため、深海棲艦の潜水艦に察知されることなく、安全圏に脱出できた。

しかし、ほとんどの潜航艇は急速浮上し、深海棲艦の餌食となった。

伊勢の乗った潜航艇も犠牲になった。



隊長は、後に提督適正が認められ、提督となった。

日向 (この隊長が今の私の提督となるとは…… まぁ、夢にも思っていなかったわけだが……)



なお、急速浮上の撤退命令を出した海軍参謀は、大敗のショックで精神が崩壊し、

今も精神病院に入院している。



- 日向の回想 終了 -

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日向 「もし伊勢が深海棲艦になって帰ってきたら、どうするべきかと思ってな」

鳥海 「私なら…… 深海棲艦でも生きていれば嬉しいです」

鳥海 「私も姉の摩耶を『あの戦い』で失いました」

日向 「……」

鳥海 「深海棲艦に生まれ変わる噂を聞いてから……」

鳥海 「深海棲艦の重巡を見ると…… 胸が締め付けられます……」

鳥海は無表情に言った。



日向 「ん……」

日向は鳥海の杯に酒を注いだ。

鳥海は無表情に酒を飲んだ。



日向 「もう少し飲んでいかないか? とっておきの酒を出すぞ」

鳥海 「はい…… 頂きます」

日向と鳥海は、夜更けまで酒を飲んだ。



- 第四話 魂の記憶 後日談 完 -

- おまけ -

次回の予告です。



旅客船姫 (とうとうチンジュフが人間に目を付けられてしまいました……)

旅客船姫 (仕方ありません……)

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一つの軽い決断が……。

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旅客船姫 「レストランを休業しましょう」

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深海棲艦に大激震を与えた!

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戦艦水鬼 「やってくれた喃…… 人間……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫A、B 「落ち着いて!!!」

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北方棲姫 「ホッポ、マダ行ッタコトナイノニ……」 グスン

港湾棲姫 「……」 ドドドドドドドド

港湾水鬼 「……」 ビキビキビキッ

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激怒する深海棲艦たち!

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飛行場姫 「」(破壊)

フラヲ改 「姫様!!!」

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しかし、事態は意外な方向に……。

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レ級 「フィーリングカップル5対5?!」

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フラヲ改 「や り ま し た!」 ホッコリ

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日向 「鯛が釣れたと思ったら戦略型原潜だった…… そんな気分だ」

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第五話 モンスター・シスターズ



公開未定


- 幕間劇 -

第四.一話 飛行場姫の憂鬱



飛行場姫 「話は聞かせてもらいましたわ! 深海棲艦は滅亡します!」

フラヲ改 「な、なんですってーーー!!!」



ここはアイアンボトムサウンド近くの航空基地。

人類は多大な犠牲を払って飛行場姫を撃破し、航空基地を占拠した。

しかし、伸びに伸びた戦線を維持できず、結局、飛行場姫に航空基地を取り返されてしまった。

航空基地に戻った飛行場姫は、勢力を取り戻し、悠々自適な生活をしていた。



そんなある日、飛行場姫は深海棲艦の滅亡を高らかに予言したのであった。

フラヲ改 「……」

フラヲ改 「どういうことかしら……?」

飛行場姫 「なぜ滅亡に至るか…… これから説明いたしますわ……」

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- 飛行場姫の説明 開始 -



わたくしは航空基地を取り戻し、やっと以前の勢力を取り戻しました。

部下も育ち、フラヲ改さんの協力もありまして、

デイリー等の定例業務は、全て秘書艦が行うようになりました。

遠征や艦隊の配備は、ヲ級さん(フラヲ改)がやるようになりました。



それで…… わたくしは色々考える時間が出来たんですの……。

飛行場姫 (航空基地の運営は、とても改善しましたわ)

飛行場姫 (これもヲ級さんを始め、皆さんの努力のお陰です)

飛行場姫 (わたくしには過ぎた方たちですわ) ポワーーン

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そして…… わたくしは気づいてしまったんですの。

飛行場姫 (しかし……)

飛行場姫 (装備や機材は…… ほとんど変わりませんわね……)

飛行場姫 (人類は…… 少しづつですが、新しい艦娘や装備を開発しています)

飛行場姫 (わたくしたちも…… 新しい姫、水鬼が出ていますが……)

飛行場姫 (これはお母様が偶然生んでいるだけで、あくまでも偶然です)

飛行場姫 (わたしたちは、意図的に深海棲艦や装備を進化させる手段を持ちません……)

飛行場姫 (……)

飛行場姫 (これは非常に不味いですわね……)

飛行場姫 (このままだと、いずれ追い詰められますわね)



わたくしが飛行場であった時、飛行機があっという間に進化していくのを、目の前で見ました。

飛行機と同じように、艦娘も進化するでしょう。

そして、いつの日にか、わたくしたちを圧倒する艦娘を開発することは、もう目に見えています。



そうなれば、深海棲艦は滅亡するしかありません!!!



- 飛行場姫の説明 終了 -

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飛行場姫 「わたくしは、これが気になって気になって、仕方がありません!」

飛行場姫 「ヲ級さん…… どうか良いお知恵を拝借できませんこと?」



フラヲ改は、少し考えてから言った。

フラヲ改 「申し訳ございません」

フラヲ改 「艦隊や基地の運用でしたら改善の案も有りますが、それ以上となりますと」

フラヲ改 「一空母である私の考えが及ぶところではありません」

飛行場姫 「うぐっ!!!」 フラフラ



飛行場姫 「ヲ級ちゃんが思いつかないのなら……」

飛行場姫 「わたくしが思いつくはずありませんわーーーー!!!」 号泣

飛行場姫 「ド畜生ですわ!!! 自分で何とかするしかありませんわ!!!」 ピューーーッ

飛行場姫は泣きながら、どこかに行ってしまった。

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フラヲ改は、そんな飛行場姫を見て、微笑んだ。

フラヲ改 (申し訳ございません)

フラヲ改 (姫様…… 私は嬉しく思います)

フラヲ改 (とうとう…… 少しだけ…… 俯瞰的な視点から物事を見るようになりましたね)

フラヲ改 (日々の業務から姫を開放した甲斐がありました……)



フラヲ改は、このままでは深海棲艦がドン詰まりだということを、とっくに理解していた。

フラヲ改 (誰に言われるではなく、よくご自分でお気づきになりました)

フラヲ改 (解決策は有りますが…… 私はアドバイスをしません…… 我慢します)

フラヲ改 (姫様…… ご自分で解決策を探して下さい)

フラヲ改 (色々、お考えになって…… 努力をして…… 成長して…… 視野を広げて……)

フラヲ改 (深海棲艦を統べる女王と、おなり下さい)

フラヲ改 (このヲ級、それまで粉骨砕身お供いたします)

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フラヲ改 (それにしても姫様の成長…… 今日は一人でお祝いしましょう)

フラヲ改 (こんな時、赤城さんが居てくれたら、喜びを分かち合えたのでしょうか)

フラヲ改は寂しく笑った。

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このフラヲ改は艦娘の生まれ変わりで、記憶を取り戻していた。

生まれた時は艦娘の記憶を忘れていたのだが、

とある戦闘中、空母の艦娘を撃沈し、まさにその時、艦娘の記憶を取り戻してしまった。

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フラヲ改 (赤城さん…… あの時、なぜ優しく笑っていたのですか……)

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ショックを受けたフラヲ改は、廃人同然となってしまった。

そこを飛行場姫に拾われたのであった。

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フラヲ改 (その後、姫に拾って頂きましたが……)

フラヲ改 (あまりの姫の天然ぶりに…… 毒気が抜かれてしまいました……)

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戦闘が出来ないフラヲ改は、姫の世話係になった。

廃人同然のフラヲ改から見ても、姫は危なっかしかった。

それで、思わず世話をしてしまったそうな。

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フラヲ改 (結局、私は人類の敵となってしまいました)

フラヲ改 (私は姫を盛り立てて、深海棲艦のリーダーとなってもらい、人類との和平を実現させます)

フラヲ改 (私が撃沈してしまった艦娘たちへの…… せめてもの贖罪です)



フラヲ改 (和平が実現したら…… 赤城さんのところへ行きます)

フラヲ改 (私を見たら、赤城さんは、なんと言うかしら……) ニヤリ

フラヲ改 (赤城さんのことを考えると…… さすがに気分が高揚します!) デレデレ

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フラヲ改 (赤城さんのところに行く時は…… こんな感じかしら?) ニタニタ

フラヲ改 (まず…… 私は姫をかばって、撃たれます)



気分が盛り上がってきたフラヲ改は、一人芝居を始めた。

フラヲ改 「飛行場姫様…… この大海を手にお入れください……」

フラヲ改(飛行場姫役) 「……ああ」

フラヲ改 「それと…… 旅客船姫さまにお伝えください……」

フラヲ改 「レストランのツケはチャラにして欲しいと……」

フラヲ改(飛行場姫役) 「いやです」

フラヲ改(飛行場姫役) 「わたくしからは、そんなことは言いません」

フラヲ改(飛行場姫役) 「わたくしと一緒に旅客船姫のところに行くのです」

フラヲ改(飛行場姫役) 「ヲ級さん…… 返事をして下さい、ヲ級さん、なぜ黙っているのです!?」

フラヲ改(護衛要塞役) 「だめです。 轟沈なさいました。 このうえは安らかに眠らせて……」

フラヲ改(飛行場姫役) 「嘘をついてはいけません、護衛要塞さん。 護衛要塞さんは嘘をついています」

フラヲ改(飛行場姫役) 「ヲ級さんが、わたくしをおいてさきに死ぬわけはありません」 ポロポロ

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フラヲ改 (感動的なシーンの後……)

フラヲ改 (私は赤城さんと再会するのです)

フラヲ改 (赤城さんは当然、天国に居るでしょう)

フラヲ改 (私も和平を成し遂げたので、天国行き間違いなし) ドヤァ



フラヲ改 「赤城さん、会いに来ました」

フラヲ改(赤城役) 「加賀さん、本当に嬉しいですね……」

フラヲ改 「さすがに気分が高揚します……」

フラヲ改(赤城役) 「上々ね……」

フラヲ改 (そして二人は幸せなキスをします……)

フラヲ改 (赤城さん! 赤城さん! 赤城さん!) 地面ゴロゴロー

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飛行場姫 「……」 ジーーーーーッ

なぜか飛行場姫が物陰から見ていた。



飛行場姫 「……」

フラヲ改 「ふぅ……」

飛行場姫 「……」

フラヲ改 「……」

飛行場姫 「あの……」

フラヲ改 「はい…… まだ何か……」

飛行場姫 「別の質問が……」

フラヲ改 「そう……」



飛行場姫 「質問というのは……」

飛行場姫 「ヲ級さんは、どうすれば幸福になるんですの?」

フラヲ改 「んっ…… もう少し説明をお願いします」

飛行場姫 「それはですね……」

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- 飛行場姫の説明 開始 -



わたくしは色々考える時間が出来ましたので、今後の方針を考えてましたの。

飛行場姫 (この基地を、どんな風にしていきましょうか……?)

飛行場姫 (わたくちたちが幸せになるように、持って行きたいですわ!)

飛行場姫 (……)

飛行場姫 (その前に…… わたくしたち…… どうなれば幸せなのかしら……?)

飛行場姫 (深海棲艦の幸せって、なんなんですの?)

飛行場姫 (……)

飛行場姫 (とりあえず、しっかり者のヲ級さんに聞いてみましょう!)



- 飛行場姫の説明 終了 -

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フラヲ改 「なるほど……」

フラヲ改 「私の場合、好きな人と一緒に居て、その人が幸せなことです」

飛行場姫 「す、す、す、好きな人とは、どなたですの?」

フラヲ改 「姫様です」 シレッ

飛行場姫 「~~~~~~ッッッ!?」 カァアア

飛行場姫 「……」

飛行場姫 「!?!?!?」

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フラヲ改 「どうされました?」

飛行場姫 「わたくし、ヲ級さんに幸せになって欲しいんですの……」

飛行場姫 「それが、わたくしの幸せですの……」

飛行場姫 「でも…… ヲ級さんの幸せの条件が、わたくしの幸せだとすると……」

飛行場姫 「わたくしが幸せになるには、ヲ級さんが幸せになる必要がありますの……」

飛行場姫 「……」

飛行場姫 「どちらが先ですの……?!」

フラヲ改 「」



飛行場姫 「もの知りのヲ級ちゃんが……」

飛行場姫 「また難しいこと言ってますわーーーー!!!」 号泣

飛行場姫 「ヲ級ちゃんの鬼! 悪魔! 三式弾!」 ピューーーッ

飛行場姫は泣きながら、どこかに行ってしまった。



フラヲ改 (赤城さん…… そちらに行くのは…… かなり先になりそうです)

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自室に帰った飛行場姫は、悶々としていた。

飛行場姫 (困りましたわ、困りましたわ)

飛行場姫 (ヲ級さんが頼れないとなると……)

飛行場姫 (そうですわ!) ピコーン

飛行場姫 (旅客船姫さんに相談してみましょう)

飛行場姫 (ついでに美味しい『りょうり』も食べましょう)

飛行場姫 (フフフ…… 自分のアイデアの冴えが怖いですわ)



飛行場姫はウキウキしながら、旅客船姫のチンジュフへの旅行を計画するのであった。



- 第四.一話 飛行場姫の憂鬱 完 -


- 幕間劇 -

- 第四.二話 フラルの受難 -



※グロ、轟沈、ダークなシーン有り



ル級フラッグシップ(以下、フラル) 「ハァ…… 海はあんなに青いノニ……」

フラル 「今の仕事が終わっタラ、エリル(ル級エリート)ちゃんと結婚……」

フラル 「じゃなくて一緒に熱水噴出孔に行って、湯治でもしようカシラ……」



ここは深海棲艦の「巣」の一室。

その部屋には、戦艦水鬼の身辺警護のフラルが住んでいた。

フラルは仕事続きで休みが取れず、一人でぼやいていた。

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そこにルームメイトのル級エリート(以下、エリル)が帰ってきた。

エリル 「ただいまモドリマシタ」

フラル 「おかえりナサイ」

エリル 「フラル姉サマ、お土産がアリマス!」

フラル 「なんですカ?」

エリル 「パイナップルの缶詰デス!」

エリル 「人間の輸送船に積んであったソウデス」

エリル 「それを貰ってキマシタ」

エリル 「今日はパインサラダを作りますネ!」 ニッコリ

フラル 「エリルちゃん、ありがトウ」 ニッコリ

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フラル 「ところでエリルちゃん…… 今の仕事が終わったラ……」

フラル 「二人で休みを取っテ…… 国に帰って…… シェビー乗り回して……」

フラル 「アラ…… ワタシ何を言っているのかしら……?」

フラル 「熱水噴出孔に行って、湯治でもしまセン?」

フラル 「XXXX海溝の熱水噴出孔は、ミネラル豊富で、お肌に良いそうヨ」

エリル (熱水噴出孔…… 湯治…… フラル姉さまの裸……)

エリル 「弾薬庫に火は回ってナイ?!」 鼻血ドバーーー

フラル 「エリルちゃんッ!?」

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その時、部屋にタ級が来た。

タ級 「フラル、エリル、戦艦水鬼様がお呼びダゾ」

フラル 「わかったワ……」

フラル (何カシラ……)



フラルは戦艦水鬼の部屋を訪れた。

フラル 「フラル、参上いたしましタ!」 ビシッ

エリル 「エリル、参上いたしましタ!」 ビシッ

戦艦水鬼 「どうだ調子は?」 ニヤリ

戦艦水鬼 「実は、頼みがあってな……」

戦艦水鬼はフラルたちへの依頼を話し始めた。

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ちょうどその頃、俺は遠征に参加していた。

今回の遠征は、重油の収集だった。

チンジュフから数日かかる場所に、人間が放棄した石油リグがあった。

そのリグに遠征し、ドラム缶に重油を入れて、持って帰るのだ。



ドラム缶に重油をドボドボ入れている間、俺たちはヒマになる。

その間、俺はヘ級と雑談をしていた。

チ級 「そういやさ、艦娘には『近代化改修』ってのがあって」

チ級 「パワーアップ出来るそうじゃん」

チ級 「それって、深海棲艦も出来ないの?」

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ヘ級はネットリと笑った。

ヘ級 「よりによってさぁ…… それ聞いちゃう? ねえ?」 ニヤァ

ヘ級 「凄くダークな話なんだけどぉ…… 仕方ないなぁ!」 ニタァアアアア

チ級 「えぇ……」



言葉とは裏腹に、へ級は話したくて話したくて仕方ない感じだ。

ヘ級 「『近代化改修』をすると、確かにパワーアップするよぉ」

ヘ級 「じゃあ、どうやってやるかというと……」

ヘ級 「艦娘を食べるんだよぉ!」 ニタリ

チ級 「ヒェッ……」

-----------------------------------------------


ヘ級 「まぁ、食べるのは肉じゃなくて……」

ヘ級 「魂というか生命エネルギーだけどね」

ヘ級 「魚から生命エネルギーの結晶を取るでしょ」

ヘ級 「あんな感じで艦娘から結晶を取って、それを食べるわけ……」



ヘ級 「艦娘の時、確認したわけじゃないんだけど……」

ヘ級 「多分、当たってる」 ニタリ

チ級 「……」 ドンヨリ



生命エネルギーの結晶が取られるということは、轟沈することと同義だ。

あまりのダークさに、俺はゲンナリしてしまった。

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チ級 「艦娘ちゃんたちは、ブルーにならないの?」

ヘ級 「ならないんだな、これが…… 不思議と……」

ヘ級 「心がコントロールされているから…… かもしれない」

チ級 「……」

ヘ級 「ほぼ毎日『近代化改修』が行われていたから」

ヘ級 「コントロールされていたほうが、幸せかもね」

ヘ級 「そういうのもあって、鎮守府には戻りたくないのよ」

チ級 「……」

-----------------------------------------------


チ級 「『艦娘の時、確認したわけじゃない』って言ってたよね」

チ級 「確認していないなら、もしかしたら違うんじゃないの?」



「よくぞ聞いてくれた!」という感じで、へ級は言った。

ヘ級 「実はね…… 深海棲艦になってから、同じことを試してみたのよぉ!」 ニタリ

チ級 (余計なことを聞いてしまった……)

チ級 「あーー! あーー! 聞こえない! 聞こえない!」



しかし、俺は好奇心に負けてしまい、結局、話を聞いてしまった。

ヘ級 「昔、運悪く轟沈しちゃったホ級ちゃんがいてね……」

ヘ級 「そのホ級ちゃんから生命エネルギーの結晶を取って、食べてみたのよ」

ヘ級 「そしたらね……」

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その頃、フラルは……。



戦艦水鬼 「頼みというのは……」

戦艦水鬼 「私の部屋の前に待機していて欲しいのだ」

戦艦水鬼 「そして部屋から出た私が、もし錯乱していたら……」

戦艦水鬼 「私を取り押さえて、正気に戻して欲しい」

フラル 「錯乱…… デスカ?」

戦艦水鬼 「そうだ。 私が錯乱したら、戦艦でないと止められないだろう」

戦艦水鬼 「だから…… 頼む」

フラル、エリル 「承知いたしましタ!」 ビシッ

フラル (とはいうものの、イヤな予感しかしないワァ……)

フラル (私、錯乱した戦艦水鬼様を止められるのカシラ……?)



戦艦水鬼 「では部屋の前で待機してくれ」

フラル、エリル 「ハッ!」 ビシッ

-----------------------------------------------


戦艦水鬼 「さて……」

戦艦水鬼は部屋の奥に向かった。



部屋の奥には、轟沈し息絶えたチ級が安置されていた。

戦艦水鬼 「チ級…… 安らかに眠っているところ、誠に申し訳ないが……」

戦艦水鬼 「力を貸して欲しい」



そう言うと、戦艦水鬼はギュッとチ級の体を絞った。

すると、チ級の口からゴルフボール大の生命エネルギーの結晶が出てきた。

戦艦水鬼は結晶を手に取ると、口に入れて、飲み込んだ。

戦艦水鬼 (多分これで…… 『近代化改修』が出来るはずだ……)

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戦艦水鬼は艦娘の生まれ変わりで、艦娘の記憶を取り戻していたので、

『近代化改修』を知っていた。

方法も、なんとなく見当がついていた。



自己流で『近代化改修』をすることは、大きなリスクがあった。

しかし、激しさを増す艦娘の攻撃に、戦艦水鬼は危機感を持っており、

リスクを覚悟で挑戦したのであった。

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結晶を飲み込んだ戦艦水鬼は、ベッドに横になった。

戦艦水鬼は幻覚を見始めた。



気づくと、戦艦水鬼は光に満ち溢れた部屋にいた。

向かいにはチ級がいた。

戦艦水鬼 (あぁ…… 『近代化改修』と同じだ……)

戦艦水鬼 (さぁ…… この戦艦水鬼と一つになろう……)



戦艦水鬼はチ級を抱きしめた。

戦艦水鬼 (力がみなぎる…… いいぞ……)

-----------------------------------------------


しかし……。

戦艦水鬼 (くっ、なんだ…… 苦しい…… チ級の記憶が…… 無理やり……)

戦艦水鬼 (ねじ込まれて…… この戦艦水鬼の心が…… 壊れる!!!)

戦艦水鬼 (グッ!!! 不味いッ!!! こんなことは…… 『近代化改修』では無かったッ!!!)

戦艦水鬼 (チ級に…… 心が…… 侵食サレル!!! アァアアアアア!!!)

戦艦水鬼 (ガガガガガッアッアアッア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!)

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戦艦水鬼 (……)

戦艦水鬼 (ワタシハ…… ダアレ……?)

戦艦水鬼 (ワタシハ…… チ級……)

戦艦水鬼 (大好キナ…… 誰かにも会エズ…… 撃沈サレタワ……)

戦艦水鬼 (完っ全に作戦が悪いノヨ……)



戦艦水鬼 (ワタシハ…… ダアレ……?)

戦艦水鬼 (ワタシハ…… チ級……)

戦艦水鬼 (戦艦棲姫様の…… 配下になったワ……)

戦艦水鬼 (大好きナ…… 誰かハ…… ドコニイルノ……?)



戦艦水鬼 (ワタシハ…… ダアレ……?)

戦艦水鬼 (ワタシハ…… チ級……)

戦艦水鬼 (母サンガ…… ワタシを生んでクレタ……)

戦艦水鬼 (大好きナ…… 誰かニ…… また会いタイ……)

-----------------------------------------------


戦艦水鬼 (ワタシハ…… ダアレ……?)

戦艦水鬼 (私は…… 大井……)

戦艦水鬼 (北上さんが無事なら…… 沈んであげる……)

戦艦水鬼 (北上さん…… 大好き……)



戦艦水鬼 (ワタシハ…… ダアレ……?)

戦艦水鬼 (私は…… 大井……)

戦艦水鬼 (軽巡洋艦、大井です…… どうぞ、よろしくお願い致しますね……)

戦艦水鬼 (北上さん…… 早く会いたい……)



戦艦水鬼 (ワタシハ…… ダアレ……?)

戦艦水鬼 (私は…… 大井……)

戦艦水鬼 (母さんが…… 生んでくれた……)

戦艦水鬼 (建造ドックから早く出て…… 北上さんに会いたい……)

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戦艦水鬼 (北上さん…… 北上さん……)

戦艦水鬼 (北上さん、北上さん、北上さん)



戦艦水鬼 (北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん)

戦艦水鬼 (北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん)

戦艦水鬼 (北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん)

戦艦水鬼 (北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん)

-----------------------------------------------


フラルとエリルは健気にドアの前で待機していた。



ドーーーーーーーンッ!!!



爆音とともに、戦艦水鬼の部屋のドアが、内側から蹴破られた。

フラル、エリル 「ヒッ!!!」



虚ろな目の戦艦水鬼が部屋から出てきた。

戦艦水鬼 「北上さんのところに…… 帰らないと……」 ユラリ

フラル 「戦艦水鬼様……?」 ゴクリ

戦艦水鬼 「……」 ギロリ

エリル 「ピャアアアアアーーーー!!!」

フラル 「戦艦水鬼様!!! お気を確かにィーーーー!!!」 グワッ

フラルは戦艦水鬼を取り押さえようとした。

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戦艦水鬼 「ジ ャ マ ス ル ナ !!!」 ジャキッ!

戦艦水鬼は魚雷発射管の艤装を展開し、全魚雷をフラルに一気に撃ち込んだ。

フラル 「ギャアアアアーーーーーーー!!!」 (大破)

フラルは気絶した。



フラルを撃った後、戦艦水鬼は口から結晶を吐き出し、ぶっ倒れた。

エリル 「キャアアア!!! 戦艦水鬼様!!! フラル姉サマ!!!」

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俺とヘ級の話は続いていた。

ヘ級 「途中まで上手く行きそうだったけど…… 私の心が壊れかけた」

ヘ級 「ホ級ちゃんの心と私の心が、ぶつかり合って……」

ヘ級 「一人分のキャパしかない心に、ホ級ちゃんの記憶が強引に押し込まれて……」

ヘ級 「私の心が破裂しかかった感じ……」

ヘ級 「結局、耐え切れずに結晶を吐き出して、失敗に終わったのよ」

チ級 「……」

ヘ級 「大体のやり方は間違ってないと思うんだけどね」

ヘ級 「鎮守府では記憶のサイズをコントロールをして」

ヘ級 「上手いこと心を融合させてるのかもね」

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チ級 「魚とかの結晶は普通に食べてるわけだけど、それは大丈夫なの?」

ヘ級 「どうやら深海棲艦と艦娘の結晶だけが、特別みたい」

ヘ級 「それでも細かく砕けば、問題無いみたいなんだけどね」

チ級 「一人分丸飲みだとヤバイのか……?!」

ヘ級 「そうみたい」



俺が思ったよりも、艦娘の世界は色んな意味で過酷だった。

チ級 「しかし艦娘ちゃんの世界って、結構ヘビーだね……」

チ級 「守ってもらっていた人間の立場の身からすると」

チ級 「本当、申し訳ないです、ごめんなさい……」

チ級 「そして、ありがとう」

ヘ級 「うん? なに急に改まって!?」 カァアア

ヘ級 「筑摩ちゃんにも、感謝しておくといいよ!」 ニパッ

チ級 「うん、そだね」



俺たちは数十個のドラム缶に重油を詰めて、帰途についた。

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ブッ倒れた戦艦水鬼は医務室に運ばれ、ベッドに寝ていた。

戦艦水鬼 (チ級の結晶と融合したら…… この戦艦水鬼が雷撃か……)

戦艦水鬼 (フッ、轟沈しかけたが…… うーん、わるくないな)

戦艦水鬼 (失敗したが…… また、試してみよう……) ニヤリ



轟沈一歩手前となった戦艦水鬼だったが、まったく懲りていなかった。

「力こそパワー!」が信条の生粋の脳筋、正に戦艦であった。



戦艦水鬼 (しかし…… チ級の記憶に、鎮守府の光景があった……)

戦艦水鬼 (くっ、反吐が出る……)

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戦艦水鬼は、艦娘「武蔵」の生まれ変わりだった。

戦艦水鬼は艦娘の記憶を思い出したとき、海軍と自分に大激怒した。



海軍に大激怒したのは、「武蔵」の搭乗員の運命を思い出したからである。

自分に大激怒したのは、その運命を知った艦娘の「武蔵」が、

それをあっさりと受け入れてしまったからである。



戦艦水鬼 (海軍は…… 悪びれもせず私を甦らせた……)

戦艦水鬼 (恥知らず共がッ!!!)

戦艦水鬼 (必ずケジメをつけさせる……) ビキビキビキッ



戦艦水鬼 (そして…… なぜ私は、それを受入れ…… 嬉々として戦ったのか……?)

戦艦水鬼 (一番、自分が許せんッ!!!)

戦艦水鬼 (海軍にケジメをつけさせたら…… 自分もケジメをつける……) ビキビキビキッ

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戦艦水鬼 (鎮守府の記憶といえば……)

戦艦水鬼 (艦娘の私は、建造ドックを出てからしか覚えていなかったが)

戦艦水鬼 (チ級は建造ドックの中の記憶があった……)

戦艦水鬼 (……)

戦艦水鬼 (ドックの中で…… 戦艦棲姫様に似たモノが…… 水槽の中に入っていたが……)

戦艦水鬼 (身長は10メートル位…… なんだったんだ……?)

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その時、ちびっこのタ級が医務室に入ってきた。

タ級 「戦艦水鬼サマ---! だいじょうぶデスカァーーー!」 号泣

ちびっこのタ級は顔をグシャグシャにしながら、戦艦水鬼に近寄った。



戦艦水鬼 「こんなモノ、蚊に刺されたような物だ」

戦艦水鬼 「大丈夫だ……」 ナデナデ

タ級 「ヨカッターーーー!!!」 ペカァアアア

戦艦水鬼 「フッ……」 ナデナデ

タ級 「心配しましタァ……」 ダキッ

戦艦水鬼 「心配させて、すまん……」

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戦艦水鬼 「お詫びに…… 今度の休みに『えいが』を見に行こう」

タ級 「『えいが』?」 キョトン

戦艦水鬼 「あぁ…… 前に旅客船姫のところで『えいが』を見たが、面白かったぞ!」

戦艦水鬼 「たしか…… 『ばとるしっぷ』という『えいが』だ」

タ級 「ウン! アリガトウ! とても楽シミ!!!」 パァアアア

旅客船姫のチンジュフにはプロジェクターがあり、ちょっとしたミニシアターになっていた。



戦艦水鬼 (そういえば…… 旅客船姫のところに『クロスロード作戦』に反応したヤツが居たな……)

戦艦水鬼 (元艦娘か……? ついでに話を聞いてみるか……)

戦艦水鬼は旅客線姫のチンジュフに行く計画を、頭の中で立て始めた。

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その横のベッドには、フラルとエリルが居た。

エリル 「パインサラダを作ってきまシタ!」 ニッコリ

フラル 「エリルちゃん、ありがトウ」 ニッコリ

エリル 「はい…… フラル姉サン、アーーン?」 ニッコリ

フラル 「あ、アーーン…… うん…… 美味シイ……」 カァアア

エリル 「フラル姉サン……」 カァアア

フラル (ハァ…… 酷い目に遭ったケド…… 海はあんなに青イケド……)

フラル (エリルちゃんは優しいシ…… サラダは美味シイシ……)

フラル (まぁ、イイカシラ、フフッ)



フラルは命に別状は無く、数日で回復したそうな。

フラル、エリルは戦艦水鬼に謝罪され、特別休暇を与えられた。

そして二人で湯治を満喫したそうな。



- 第四.二話 フラルの受難 完 -

※書き込み漏れ
>>376>>377の間


ヘ級 「多分ってのは、『近代化改修』の時、艦娘は全員、麻酔を掛けられて」

ヘ級 「実際に何をやっているかは、分からないからなんだ」

ヘ級 「目が覚めたときは…… 自分以外いなくなっているんだよ……」

チ級 「……」

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>>374
>>390

「重油」は「原油」の誤記です。
すまんす。
読み替えて下さい。


- 幕間劇 -

- 第四.三話 マダオ提督と最初の提督 -



ヘ級 「そういえばさ…… 筑摩ちゃんの鎮守府の提督って、どんな人?」

筑摩 「そうですね…… 金剛さんに愛想を尽かされる程の…… マダオですね……」 遠い目

ヘ級 「」



ある日、俺たちは鋼材を集める遠征に出かけていた。

ボートで適当に海をウロウロして、海に潜っては、海底に沈んでいるクズ鉄を集めるのだ。

ボチボチ集まったので、休憩がてらボートで昼食を取りつつ雑談をしていた。

-----------------------------------------------


チ級 「金剛さんに愛想を尽かされるって…… 相当なの?」

ヘ級 「相当っていうか…… まあ普通は無いね」

ヘ級 「悪人か、よっぽどの駄目人間だね」

筑摩 「私の提督は、駄目人間の方ですね」

ヘ級 「詳しく聞きたいなぁ!」 目キラキラ

筑摩 「実はですね……」 目キラキラ

筑摩は説明を始めた。

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- 筑摩の説明 開始 -



提督はハンサムで、軍人としても有能です。

30代半ば、収入もそこそこ、車も持っています。

話も面白いし、遊びも上手い。

部下からも慕われています。

人間の女性、艦娘に優しく紳士的です。 

そして、いつでも積極的に女性を口説きます。

だから、彼女には困らないのですが…… 長続きしないのです。

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最初、鎮守府の艦娘たちは提督に夢中になりました。

そして、金剛さんが提督と付き合い始めました。

しかし、数ヵ月後……。



金剛 「榛名…… 私は提督と別れましたヨー……」 遠い目

榛名 「榛名は…… だ、大丈夫じゃないです!」

榛名 「あんなに一緒だったのに…… 夕暮れはもう違う色ですか?」

榛名 「DVですかッ! 浮気ですかッ!」

金剛 「違うヨー……」

金剛 「とても紳士的で優しくしてくれた…… そして、ワタシだけを愛してくれたネー……」

榛名 「ではなぜ?」

金剛 「貯金が¥0だったヨー……」

榛名 「」

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そうです。 提督は、「まるでダメなオッさん」だったのです。

提督は高収入ですが、全部、飲み、食い、車、服、時計、旅行に突っ込んでいたのです。



金剛 「榛名…… 私は提督との幸福な将来のビジョンを持てなかったヨー……」

金剛 「兵器の艦娘より、刹那的に生きていたネー……」

金剛 「艦娘に人生設計について説教されるって、どんだけヨー……」

金剛 「提督は、友人、仕事仲間としては最高だけど……」

金剛 「パートナーとしては…… 最低デーーース……」 ハイライトオフ

榛名 「」



金剛 「仲の良い時は、最高にHappyだったネ…… でも……」

金剛 「毎日毎日、提督とケンカして…… 愛を語られて仲直りして……」

金剛 「FeelingがジェットコースターのようにUp、down、Up、down……」

金剛 「ハンサムでカッコイイし…… なにより真摯だから…… かえってタチが悪いネ……」

金剛 「まだLoveだけど…… もうお腹一杯ネー……」 ゲッソリ

榛名 「」

-----------------------------------------------


金剛さんが「匙を投げた」事で、鎮守府に衝撃が走りました。

その後、足柄さんが挑戦して、やっぱり「匙を投げた」ので、

提督は「地雷物件」という評価が確定してしまいました。

それで、ほとんどの艦娘が提督を恋愛対象から外しました。



しかし、そんな提督が長続きする相手が現れました。

隼鷹さんです。

提督と隼鷹さんは、散々、飲んで食べて遊びまくりました。

しかし……。

隼鷹 「提督…… あたしさぁ…… 最ッッ高に提督を愛している……」

隼鷹 「あたしと提督はさぁ…… 似ていると思う」

隼鷹 「ずぅーーーーっと一緒に居られるし、遊んでいられる……」

隼鷹 「でも…… お互い変わんない…… 成長もない……」

隼鷹 「だから…… このままだと二人とも駄目になるよ……」

隼鷹 「お別れだよ……」

提督 「」

-----------------------------------------------


その後、提督は艦娘と付き合いませんでした。

今は人間の女性と付き合ってます。 長続きしませんけど……。



なお、鳳翔さんを口説いた時は……

鳳翔 「10年後…… もっと大人になってから…… またいらしてください」

と、振られたそうです。



陸奥さんを口説いた時は……

陸奥 「あら、あらあら…… 貴方では私の火薬庫に火をつけられそうにないわ」

陸奥 「容姿とか器量とかが不満なんじゃなくて…… 人の物じゃないと火遊びにならないの」

と、やっぱり振られたそうです。

-----------------------------------------------


ちなみに、提督は独自の恋愛哲学を持っています。

1.浮気はしない
2.夫、彼氏持ちとは恋愛しない
3.軽巡以下、潜水艦とは恋愛しない

提督いわく、その哲学があったからこそ、女を口説きまくっても刺されなかったそうです。



その後の金剛さん、足柄さん、隼鷹さんですが、お互い嫌いになって別れた訳ではないので、

今では提督の良き友人となっています。



- 筑摩の説明 終了 -

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チ級 「あの日向さんのボスだけあって、クセが強いっていうか、一筋縄ではいかない感じだね」

へ級 「陸奥さんといえば…… 長門さんは口説かなかったの?」

筑摩 「口説いて振られてましたよ」

筑摩 「『駆逐艦を口説かないなんて、話にならん!』」

筑摩 「『価値感が共有できないパートナーは、ありえないぞ!』って!」 ニヤリ

へ級 「ですよねー」



へ級 「筑摩さんはどうだったの?」 ニヤニヤ

筑摩 「わっ、わたしは…… その…… 口説かれたんですけど……」

筑摩 「姉さんが居るので、遠慮しました」 カァアア

へ級、チ級 「ですよねー」

-----------------------------------------------


チ級 「うーん…… ハンサムで有能、高収入、遊びも出来て、ある意味、愛に実直……」

チ級 「でも長続きしないって…… 世の中上手く行かないもんだね……」

へ級 「チーちゃんの前世はどうだったの?」

チ級 「フフフ…… 見た目、能力、収入はゴニョゴニョ…… 年齢と彼女いない暦が同じで……」

へ級 (話、はずまなそう…… 話題変えよう……)



ヘ級 「そういえば…… 他の提督はどうなの?」

筑摩 「えーっと…… 幸福な家庭を持っている提督もいますよ!」

筑摩 「今度の太平洋合同演習で、米海軍の『最初の提督』が来るんです」

筑摩 「その提督は、とーーってもハンサムですが、幸せな家庭を築いてるそうです」 ポワーーン



チ級 「『最初の』ってのは、どういう意味?」

筑摩 「はい、世界で最初に艦娘の提督になった方です」

筑摩 「試作の艦娘たちを率いて、深海棲艦と初めて海戦を行い、勝利したんですよ!」

筑摩 「私たちの鎮守府も演習に参加するから、サインを頼もうと思ってるんです!」

チ級 「俺もサイン頼んでもいい? 『チ級さんへ』って」

ヘ級 「じゃ、ランチも食べたし、そこそこクズ鉄も集まったし、帰りますか!」

チ級 (流された!?)



俺たちはボートでチンジュフに帰っていった。

-----------------------------------------------


その頃、とあるアメリカの大都市……。

とある高級アパートの一室に、「最初の提督」の一家が住んでいた。



長女 「ママァ! 化粧に時間かけすぎ!」

長女 「毎朝のビデオチャットなんだから、そんなに頑張らなくても……」

長女 「もう…… 本当にパパLoveなんだから!」 ニッコリ

嫁 「ねぇ、この髪、変じゃないかしら?」

長女 「だーいじょうぶ、バッチリだって! ママ、綺麗だよ!」



ピロリロリン、とビデオチャットの着信音が鳴った。

最初の提督 「おはよう」 ニッコリ

長女 「パパァ! おはよう!」 ニッコリ

次女 「ぱぱぁ、おはよう」 ニパッ

嫁 「あなた…… おはよう」 カァアア

最初の提督 「おはよう」 ニッコリ

嫁 「……」 カァアア

-----------------------------------------------


最初の提督は、赤毛で長身、性格も明るく、能力も優秀だった。

現在、彼は太平洋の合同軍事演習に参加するため、演習地に移動中だった。

家族との一日一回のビデオチャットは、彼の楽しみだった。



彼は家族の昨日の出来事を楽しそうに聞いていた。

長女 「パパァ! またね!」 ニッコリ

嫁 「あなた…… また明日……」 ニッコリ

次女 「ばいばい」 フリフリ

最初の提督 「また明日」 ニッコリ



ボイスチャットが終わると、嫁は娘を学校、保育園に送る準備をし始めた。

嫁 「長女! 学校に行くわよ!」

嫁 「次女! 保育園に行くわよ!」



嫁も会社に行く準備を始めた。

ビジネスバッグを持って、スーツに着替えた。

自分の黒いショートの髪を、鏡でチェックした。

嫁 「車に乗って!」

長女、次女 「ハーーイ!」

-----------------------------------------------


嫁は車で娘たちを学校、保育園に送ると、会社に向かった。

嫁 (私の旦那様って…… カッコイイ! 王子様だね!) カァアア

嫁 (娘ちゃんも…… 可愛い!) カァアア

嫁 (でも…… これって現実なのかしら……)

嫁 (幸せ過ぎて…… 怖いっていうか…… 現実感が無いっていうか……)

嫁 (人魚姫の物語みたいに…… 全ての幸せが壊れてしまうんじゃないかしら……)

嫁 (はぁ…… 考えすぎかな……)



彼女は、艦娘の開発、関連機材を一手に引き受ける「オベロン社」の社長秘書の一人だった。

オベロン社の社長は、艦娘を開発した伝説的な技術者として知られている。

社長になる前は、造船会社の一技術者だったが、艦娘の開発を契機に独立した。

今や、人類の運命を左右する超巨大企業のトップであった。



嫁は会社に着くと、社長室に向かった。

嫁 「社長、おはようございます」

社長 「嫁君、おはよう、本日もよろしく頼むよ」

-----------------------------------------------


嫁は今日の予定を社長に説明し始めた。

嫁 「本日のご予定ですが……」

嫁 「午後から……」

嫁 「夜は……」

嫁 「……以上です」

社長 「うむ」



嫁から予定を聞き終えた社長は、メールチェックを始めた。

社長 (ん? 珍しいメールが来ている……)

社長 (技術部に…… ヒラガ造船経由で…… XXXX鎮守府から…… 技術的な問い合わせ?)



社長は内線をかけた。

社長 「もしもし、技術部の妖精を頼む。 気になる話があってな……」



- 第四.三話 マダオ提督と最初の提督 完 -


【懺悔コーナー】

>>395
戦艦水鬼の「旅客船姫」は「旅客船姫様」の誤記です。

スマンス。


- 幕間劇 -

- 第四.三話 マダオ提督と最初の提督 おまけ -



ここはXXXX鎮守府の金剛の部屋。

ある日の夜、そこに、金剛、足柄、その他、数人の艦娘が集まっていた。

金剛 「では、今月の『提督を真人間にする会』を始めるデース」

金剛 「足柄、提督の近況報告してくだサーイ」



実のところ、金剛たちは提督を諦めていなかった。

提督を真人間にしてから恋愛するよう、方向転換をしたのであった。

提督を真人間に再教育するため、艦娘たちは一時的に共同戦線を張っていた。


先月今月の秘書艦の足柄が立ち上がった。

足柄 「外車のスポーツカーのローンは支払い終わったようです」

金剛 「Oh! Good Newsネー! これで貯金ができるネー」

足柄 「ですが…… イタリア製の大型バイクをローンで購入しました」

金剛 「Oh shit!!! Fxxk'n Bad News!」



足柄 「それと、また女と別れました。 今、フリーですわー」

金剛 「Hmm…… まーた女と別れたデスか……」

金剛 「どうして女と別れたと分かりましたか?」

足柄 「ドライブから帰ってきたとき、相手の香水の香りが提督に付いているのですが……」

足柄 「違う香りに変わってました」

金剛 「……」 ビキビキビキ

誤記があったので、再投稿します……。


足柄 「それと、また女が変わりました」

金剛 「Hmm…… まーた女を変えたのデスか……」

金剛 「どうして女が変わったと分かりましたか?」

足柄 「ドライブから帰ってきたとき、相手の香水の香りが提督に付いているのですが……」

足柄 「違う香りに変わってました」

金剛 「……」 ビキビキビキ

また誤記が……。 421、423は無しで……。


先月今月の秘書艦の足柄が立ち上がった。

足柄 「外車のスポーツカーのローンは支払い終わったようです」

金剛 「Oh! Good Newsネー! これで貯金ができるネー」

足柄 「ですが…… イタリア製の大型バイクをローンで購入しました」

金剛 「Oh shit!!! Fxxk'n Bad News!」



足柄 「それと、また女が変わりました」

金剛 「Hmm…… まーた女を変えたのデスか……」

金剛 「どうして女が変わったと分かりましたか?」

足柄 「ドライブから帰ってきたとき、相手の香水の香りが提督に付いているのですが……」

足柄 「違う香りに変わってました」

金剛 「……」 ビキビキビキ


足柄 「その他トピックですが、パンツもイタリア製に変えた模様です」

足柄 「コットンのショートボクサー…… 黒です……」

足柄 「み な ぎ っ て き た わ !」

金剛 「……」 ガタッ

腰を浮かせた金剛は、また椅子に座りなおした。



足柄 「なお、パンツからも例の香水のニオイが……」

金剛 「NOOOOOOOOOO!!!」

金剛 「パンツの詳細は、後でメンバーに展開してくだサーイ……」


金剛 「次は青葉ネー。 提督の過去について、何か掴めましたか?」

提督は過去のことを語らなかった。

提督に聞いても話さないので、「提督を真人間にする会」では独自に調査していた。



青葉 「青葉出撃…… いえ取材してきました!」

青葉 「牛久の難民センターに行ってきました」

青葉 「そこで難民申請時の司令官の面談調書を見ることが出来ました」

青葉 「元いた国では、司令官はお母さんと二人暮らしだったそうです」

青葉 「お父さんはプレイボーイだったらしく、浮気をしまくったあげく、女と逃げてしまったそうです」

青葉 「お母さんは、お父さんに顔が似ていた司令官に、つらく当たったそうです」

青葉 「そのお母さんも一緒に日本に逃げて来たそうですが、今は所在不明だそうです」

金剛 「そんそなことが……」

金剛 「子供時代の提督をハグして、慰めてあげたいデース……」 涙ポロリ


金剛 「ところで青葉…… どうやって調書を見たのですか? 面談調書なんて秘密のハズですが……」

金剛 「いや…… 言わなくていいデース。 知らないほうがよさそうデース……」



青葉 「司令官は家庭というものに絶望しているから、結婚する気が全く無いんだと思います」

青葉 「だから貯金も一切しないのでしょう」

金剛 「Hmm…… 困りましたネー」

金剛 「何とかして、提督に結婚や家庭に希望を持たせないと……」


足柄 「はい!」

金剛 「足柄、何かGoodなアイデアですか?」

足柄 「提督に結婚が良いものと分かってもらうために……」

足柄 「毎日、提督の机にゼクシィを置いてますわ!」 ドヤァ

金剛 「」


長門 「私にいい考えがある」 ニヤリ

金剛 「……」 ジトー

金剛 「一応、聞きマース……」

長門 「提督は、なんだかんだ言いつつも仲良く駆逐艦の相手をしている」

長門 「つまり、提督は子供が嫌いではない」

長門 「『子供が可愛い』と、思わせれば……」

長門 「『家庭を持つのも悪くない』と、思うのではないだろうか?」 ドヤァ

金剛 「Goodですネ! 珍しくマトモなことを言いましたネー」



長門 「そこで……」

金剛 「そこで……?」

長門 「まず北方棲姫を鹵獲する……」

金剛 「NOOOOOOOOOO!!!」



彼女たちの会議は、深夜まで続いたそうな。



- 第四.三話 マダオ提督と最初の提督 おまけ 完 -


とりあえず五話のプロットが大体できたんで、

近々、五話を開始する予定です。

ではでは。

まってた乙!
ほっぽちゃん鹵獲とか最初の難易度がたけぇww


旅客船姫とギャリソンさんの絵です!

http://imgur.com/vcY6Jad

「ココナラ」というサイトの「r e n o n」さんに依頼して、描いてもらいました。

※依頼は有料。

ということで、第五話を開始しますよー。


第五話 モンスター・シスターズ



戦艦水鬼 「……」 ビキビキビキッ

港湾棲姫 「……」 ドドドドドドドド

レ級 「……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

飛行場姫 「……」 (破壊)

旅客船姫 「」 ドンヨリ



ここは南国孤島のチンジュフの指令室。

この部屋に、戦艦水鬼を始め、数人の深海棲艦が集まっていた。

戦艦水鬼、港湾棲姫、レ級は、目からビームが出そうなほど激怒していた。


旅客船姫 (どうしてこうなった……) ドンヨリ

旅客船姫 (思い返してみましょう……) ドンヨリ



-- 旅客船姫の回想 開始 --



ある日、旅客船姫は指令室の机に向かいながら、悶々としていた。



旅客船姫 (とうとうチンジュフが人間に目を付けられてしまいました……)

旅客船姫 (そして筑摩さんが送り込まれてしまいました……)

旅客船姫 (筑摩さんが戻って来たのは嬉しいですが……)

旅客船姫 (姫姉様に、どう説明すれば良いのでしょうか……)



旅客船姫 (捕虜?)

旅客船姫 (姫姉様に、そう説明したとして…… 筑摩さんが嘘をつき通せるでしょうか……?)

旅客船姫 (かなり危ない気がします)

旅客船姫 (もし駐在員としてお客様待遇をしていることがバレたら……)

旅客船姫 (私たちがスパイとして、つるし上げられそう……) ドンヨリ



旅客船姫 (捕虜としてゴマカシ通せたとしても……)

旅客船姫 (深海棲艦は、基本、艦娘が大嫌いですし……)

旅客船姫 (レストランに来た深海棲艦さんが筑摩さんを襲ったら、どうしましょう……) オロオロ


考えがまとまらない旅客船姫は、ギャリソンに紅茶を頼んだ。

ギャリソンが紅茶を持ってくると、いつもより多めに砂糖を入れて、紅茶を一口。

そして、ため息をついた。



旅客船姫 (筑摩さんは、定期的に鎮守府に報告書を送ってます)

旅客船姫 (もし姫姉様に出会ったら、それを報告してしまうのではないでしょうか……)

旅客船姫 (いやいや…… 筑摩さんを信じるべきでは?)

旅客船姫 (しかし…… あの日向さんは、かなりの曲者です)

旅客船姫 (筑摩さんの装備に盗聴器とか、普通に仕掛けてそうですし)

旅客船姫 (部下の命を預かる身としては、油断してはいけません……)



旅客船姫 (筑摩さんから情報が伝わって……)

旅客船姫 (姫姉様や水鬼様が、単艦でお忍びでレストランに来た時に……)

旅客船姫 (艦娘さんたちに襲われたら…… 深海棲艦の命運に係わります) マッサオー



旅客船姫 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーーー、どうすればぁああああーーーー!」


旅客船姫はギャリソンにスコーンを頼んだ。

ティーポットから空いたカップに紅茶を注ぎ、砂糖を多めに入れて、また一口。

スコーンが来るとメープルシロップをかけて、パクッと一口。



旅客船姫 「はっ! そうですわ!」 ピコーン

旅客船姫 「こんなに苦しいのなら…… 悲しいのなら……」

旅客船姫 「レストランなどいらぬ!!!」 バビーーーーン!



旅客船姫 (資源をコツコツ稼げていたので残念ですが……)

旅客船姫 (仕方ありません……)

旅客船姫 「レストランを休業しましょう」


旅客船姫は、レストラン休業の通知を全ての深海棲艦の巣に送った。

通知の内容は、以下であった。



----

レストラン無期限休業のお知らせ

深海棲艦の皆様

拝啓 残暑の候、

皆様の巣は、いよいよご繁栄と存じます。

さて、当レストランは開店以来、皆様のご厚情をいただいて

営業を続けてまいりましたが、この度、人間の海軍に目をつけられてしまい、

来店されるお客様の安全が危ぶまれるようになってしまいました。

そのため、誠に勝手ながら、レストランを無期限の休業とさせて頂きます。

来店をご検討されていた皆様には、誠に申し訳ごさいませんが、

何とぞご了承の程よろしくお願い申し上げます。

                              敬具

20XX年 XX月 XX日

旅客船姫

----


この通知は、一部の深海棲艦に大激震を与えた。

旅客船姫は気付いていなかったが、娯楽が極端に少ない深海棲艦にとって

レストランの存在は非常に大きくなっていたのだ。



-- 戦艦水鬼の場合 --



戦艦棲姫A 「戦艦水鬼ちゃーーん、あのレストラン休業するみたいヨ」

戦艦水鬼 「……」

戦艦水鬼 「ご冗談を……」

戦艦棲姫B 「本当みたいですワ」

戦艦棲姫B 「旅客船姫ちゃんのチンジュフが、人間に目を付けられたことが原因ダソウヨ」

戦艦水鬼 「……」



戦艦棲姫A 「そういえば、戦艦水鬼ちゃん、ちびタ級ちゃんとレストラン行く約束シテタんだっけェ…… ェエエエエ!?!?」

戦艦水鬼 「やってくれた喃…… 人間共……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫A、B 「落ち着イテ!!!」


戦艦水鬼は付き人のちびタ級とレストランに行く約束をしていた。

チンジュフで映画を見て、人間の町に出かけて、キャッキャウフフと遊ぶつもりだった。

戦艦水鬼は、ちびタ級をとても可愛がっていたので、ガッカリさせてしまったことを非常に悲しんだ。

そしてなにより、大嫌いな人間が原因ということが戦艦水鬼を大激怒させた。



戦艦水鬼 「どの鎮守府が目を付けたか、ご存じですか?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫B 「イイエ…… 通知には書いてませんでしたワ」

戦艦水鬼 「では今から旅客船姫様の元に聞きに参ります」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫B 「ダメナノネ!」

戦艦棲姫A 「ヤメテ!」



大激怒した戦艦水鬼は、止める戦艦棲姫二人を引きずりながら、旅客船姫のレストランに向けて出航した。


-- 港湾棲姫の場合 --



ある日、港湾棲姫の巣に、北方棲姫と港湾水鬼が遊びに来た。

食事の後、三人は巣の近くに散歩に出かけた。

散歩中、北方棲姫は深海魚と遊び始めた。

港湾棲姫と港湾水鬼は、そんな北方棲姫を眺めていた。



港湾棲姫 「ホッポ、カワイイ……」 ポワーン

港湾水鬼 「ソウダナ……」 ポワーン



北方棲鬼 「姫ネーチャン! ヒトデ、アゲル!」 パァアア

港湾棲姫 「アリガトウ」 ニッコリ



北方棲鬼 「鬼ネーチャン! コレ、アゲル!」 パァアア

ダイオウグソクムシ 「……」 ワキワキワキ

港湾水鬼 「アリガトウ……」 ビキビキビキッ

うう、ほっぽちゃんの名前を間違えたので、再投稿します……。


-- 港湾棲姫の場合 --



ある日、港湾棲姫の巣に、北方棲姫と港湾水鬼が遊びに来た。

食事の後、三人は巣の近くに散歩に出かけた。

散歩中、北方棲姫は深海魚と遊び始めた。

港湾棲姫と港湾水鬼は、そんな北方棲姫を眺めていた。



港湾棲姫 「ホッポ、カワイイ……」 ポワーン

港湾水鬼 「ソウダナ……」 ポワーン



北方棲姫 「姫ネーチャン! ヒトデ、アゲル!」 パァアア

港湾棲姫 「アリガトウ」 ニッコリ



北方棲姫 「鬼ネーチャン! コレ、アゲル!」 パァアア

ダイオウグソクムシ 「……」 ワキワキワキ

港湾水鬼 「アリガトウ……」 ビキビキビキッ


港湾棲姫 (ホッポ、カワイイナ…… デモ……)

港湾棲姫 (カワイイ服ヲ着セタラ、モーーーーット、カワイクナルカナ……?)

港湾棲姫 (ソウイエバ…… 旅客船姫チャンノ所ニ、沢山カワイイ服ガアッタナ……)

港湾棲姫 「港湾水鬼、旅客船姫ノ所に、皆デ遊ビニ行カナイカ?」

港湾棲姫 「ホッポニ、カワイイ服ヲ着セヨウ!」

港湾水鬼 「ソレ、タノシイナァ!」 ニッコリ



港湾棲姫 「ホッポ、今度、旅客船姫チャンノ『レストラン』ニ行コウ!」

北方棲姫 「ムゥ……」

港湾棲姫 「美味シイオ菓子モアルゾ!」

北方棲姫 「オ菓子!」 パァアア

北方棲姫 「行ク! レストラン、行ク!」 パァアア

港湾水鬼 「町ニ出テ、動物園ニ行コウ! ゾウヤ、ライオンガ居ルゾ!」

北方棲姫 「動物園! ゾウサン! ライオンサン!」 パァアア

北方棲姫 「トッテモ楽シミ!」 パァアア

北方棲姫 「姫ネーチャン、鬼ネーチャン、大好キ!」 ニパッ


しかし……。

港湾棲姫 「レストラン、休業……」

北方棲姫 「オ菓子……」 ウルウル

北方棲姫 「動物園……」 ウルウル

北方棲姫 「ホッポ、マダ行ッタコトナイノニ……」 グスン

港湾棲姫 「……」 ドドドドドドドド

港湾水鬼 「……」 ビキビキビキッ



港湾棲姫 「人間の鎮守府ツブス……」 ドドドドドドドド

港湾水鬼 「アア……」 ビキビキビキッ



港湾棲姫と港湾水鬼は、旅客船姫のレストランに向けて出航した。


-- 飛行場姫の場合 --



飛行場姫 「フンフンフーーーーン♪」



ここは飛行場姫の航空基地の一室。

ご機嫌な飛行場姫は、旅客船姫のレストランへの旅行の準備をしていた。



飛行場姫は、近い将来、人類の武器の発達に追いつけなくなった深海棲艦が、

絶滅に追い込まれるのでは? と、危惧していた。

そして、航空基地の運営方針でも悩んでいた。



しかし、レストランに行けば、旅客船姫に悩みを相談できる。

なおかつ、美味しい料理も食べれる。

一石二鳥を狙えるナイスアイデア…… のはずであった。


フラヲ改 「姫様、大変デス!」

飛行場姫 「なにゴトですカ?」

フラヲ改 「飛行場姫様のレストランが無期限休業だそうデス!」

飛行場姫 「……」

飛行場姫 「露と落ち 露と消えにし わが身カナ ルンガのコトは 夢のマタ夢……」

飛行場姫 「大部分…… 盗作……」 ブシャーーーー!

飛行場姫 「……」 (破壊)

フラヲ改 「姫様ーーーー!!!」



穴という穴から血を吹き出し、飛行場姫はぶっ倒れた。

フラヲ改はレストラン再開を嘆願するため、飛行場姫をかついで、旅客船姫のレストランに向けて出航した。


-- 駆逐棲姫の場合 --



ここは駆逐棲姫の自室。

薄暗い部屋の中、昼間から駆逐棲姫はベッドで寝ころがっていた。

駆逐棲姫 「……」

駆逐棲姫 「……」

駆逐棲姫 「……」

駆逐棲姫 「ハァ……」



号令一つで数十万隻の駆逐艦を動かす彼女だが、最近スランプであった。

駆逐棲姫 (『ハルサメ』…… って、なんなのカシラ……)

駆逐棲姫 (私に向かって…… あの駆逐艦の艦娘ガ、泣きながら叫んデタ……)

駆逐棲姫 (スゴク胸がゾワゾワする……)

駆逐棲姫 (仕事が全く手にツカナイ……)


そこにタ級が食事を持ってやって来た。

タ級 「駆逐棲姫様、お食事をお持ちしまシタ」

タ級 「まだ、体調が優れないのデスカ?」

駆逐棲姫 「『ハルサメ』って、聞いたことアル?」

タ級 「イエ、聞いたことアリマセン」

タ級 「ドウシタノデスカ?」

駆逐棲姫 「艦娘が『ハルサメ』って叫んだんだケド…… 気にナッテ……」



タ級は少し考えてから言った。

タ級 「艦娘や人間に詳しい方がイマス」

タ級 「その方なら、何か分かるカモしれマセン」

駆逐棲姫 「ダレ!?」

タ級 「旅客船姫様デス」

駆逐棲姫 「アリガトウ!!!」 ガバッ



駆逐棲姫は「足」を展開し、ベッドから飛び起き、全力疾走で部屋を出た。

そして、旅客船姫のレストランに向けて出航した。


-- レ級の場合 --



レ級 「俺の…… 命ヨリ大切ナ甘味ト、ギャリソンさんガ……」

レ級 「コロス…… キシシシ!」

レ級 「キーーーーッシャッシャッシャッ!!!」



レ級のボスは、レ級軍団を緊急招集した。

レ級 「レ級軍団、心得!!!」

レ級軍団 「「「エンジョイ & エキサイティング!!!」」」

レ級 「ソウイウコトダ…… 忘れちゃだめダゼ!?」 ニヤリ



甘味に飢えたレ級の大群が、旅客船姫のチンジュフを目指して進撃を始めた。



-- 旅客船姫の回想 終了 --


旅客船姫 (思い返してみました…… どこでボタンをかけ間違えたのでしょうか……)



指令室の中の誰一人、声を出さない。

遠くの海鳥の鳴き声だけが聞こえる。

しかし、煮えたぎる怒りのボルテージは確実に上がっていった。

そこに……。



?? 「失礼しまーーす♪」 コンコン

筑摩 「筑摩、ただいま鎮守府の月例報告から帰りました!」 バーーーーン!

旅客船姫 「」



-- 続く --


レ級軍団(黄色いの込)
やはり勝てない(確信)


筑摩 「姉さんに会いたいから、予定より早く帰ってきました♪」 ニッコリ

筑摩 「ティターニアさん、提督からの親書を預かって来ました…… よ……」 キョロキョロ

筑摩 (知らない人たちばかり…… 誰……?!)



深海棲艦たちは人間の恰好をしていた。

それで、筑摩は彼女たちが深海棲艦とは気づかなかった。

しかし、筑摩の天然の勘が、ここにいては命が危ないと告げていた。



筑摩 「親書…… 確かにお渡ししましたからね……」 ピューーーー

筑摩は親書を旅客船姫に手渡すと、脱兎のごとく部屋から出て行った。


旅客船姫 「……」 汗ダラダラ

戦艦水鬼 「……」

港湾棲姫 「……」

レ級 「……」

飛行場姫 「……」(破壊)



戦艦水鬼が、静かに、迫力たっぷりに言った。

戦艦水鬼 「艦娘が…… 旅客船姫様に親書……?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦水鬼 「旅客船姫様…… ご説明願エマスカ?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

旅客船姫 「ヒェ!」 汗ダラダラ


追い詰められた旅客船姫は事情を話した。

旅客船姫 「人間の海軍に、私たちが深海棲艦だと疑われてまして……」

旅客船姫 「私たちの警護という名目で…… 艦娘の筑摩さんが送り込まれて来たのです」

戦艦水鬼 「随分と親しげデシタガ?」 ギラリ

旅客船姫 「ウグッ!」



旅客船姫 「ま、まだ、深海棲艦とはバレていませんのことですの! オホ! オホホホホホホホ!」

旅客船姫 「ですから、こちらは人間として艦娘の筑摩さんと、友好的にお付き合いしているんでございますの!」

旅客船姫 「オホ! オホ! オーーーーッホホホホホホ! ゲホッ! ゲホッ!」

戦艦水鬼 「フーーム……」


戦艦水鬼 「デハ…… XXXX鎮守府ヲ、潰しニ行キマス……」 ズオォオオオ

旅客船姫 「ちょ、ちょっとお待ち下さい……」

戦艦水鬼 「なぜデスカ?」

戦艦水鬼 「旅客船姫様に、止メル理由は無いはずデスガ……」

戦艦水鬼 「アノ筑摩という艦娘に、遠慮シテイルノデスカ?」 ギロリ

旅客船姫 「あのーー、そのーー、えっとーー」 オロオロ



港湾棲姫 「ナゼ艦娘ニ気ヲツカウ……?」

港湾棲姫 「アヤシイ…… 旅客船姫チャン…… 私タチヲ裏切ッテイルノカ?」

港湾棲姫 「月例報告…… 親書……」

港湾棲姫 「月例報告デ、深海棲艦ノ情報ヲ渡シテ…… 親書デ、スパイノ指示ヲ受ケテルンジャナイノカ……?」 ギロリ

旅客船姫 「そ、そんなことは、しておりません!」

旅客船姫 「潔白ですわ!」


港湾水鬼 「『スパイ』トバレルカラ…… 『レストラン』ヲ休業シタノカ? アアン?」 ビキビキビキッ

旅客船姫 「違います!」



レ級 「ジャア、ヤマシイ所ハ、無インダナ?」

旅客船姫 「はい。 ございません!」 キリッ

レ級 「ヘーー」(棒)

レ級 「ナラ、ソノ親書、ココデ見セテミロ」 ニタァ

旅客船姫 「え゙?」



旅客船姫 「分かりました…… お見せして潔白を証明します!」

旅客船姫 (とは言ったものの、何が書かれているんでしょうか……?)



旅客船姫は、親書の封を切り、便箋を取り出した。

旅客船姫 「皆さま、ご覧下さい!」 ピラッ

旅客船姫 「オホン! では読み上げます!」


旅客船姫 「拝啓 ティターニア様」

旅客船姫 「先日は、当鎮守府の日向、筑摩が大変お世話になりました」

旅客船姫 「この度、当鎮守府の揚陸艦が太平洋合同演習に参加し、ティターニア様のご自宅の近くの港に寄港することになりました」

旅客船姫 「つきましては、船上パーティーを開催いたしますので、ティータニア様、ご友人共々、ご出席願えませんでしょうか?」

旅客船姫 「当鎮守府自慢のコックの料理を、ぜひとも召し上がって頂きたく存じます」

旅客船姫 「もちろん、デザートも用意いたします」

旅客船姫 「なお、出席料は不要です」

旅客船姫 (当たり障りの無い内容で、良かった……) ホッ

旅客船姫 (ん…… まだある……)


旅客船姫 「そして……」

旅客船姫 「船上パーティーの前日、別途、親睦会を開催いたします」

旅客船姫 「数名の代表者同士で、まずは親睦を深めませんか?」

旅客船姫 「寄港する港の近くの、大変評判の良いレストランを予約いたしました」

旅客船姫 (なぜ…… 別途、親睦会を……?)



旅客船姫 「当方、未婚、彼女無しの自称ハンサムガイ5人が出席いたします」

旅客船姫 「公務員なので不況でも経済的にも安定。 その上、トレーニングしていますので体にも自信ありです!」

旅客船姫 (なにこれ……?)



旅客船姫 「ティターニア様も、未婚、彼氏無しの女性5人で出席願います……???」

旅客船姫 (???)


旅客船姫 「いわゆる『フィーリングカップル5対5』というやつです……?!」

旅客船姫 「船上パーティー、親睦会の日時の詳細、会場の地図は、同封のパンフレットをご覧下さい」

旅客船姫 「出席のご返事は、筑摩にお渡し下さい」

旅客船姫 「ティターニア様、ご友人のご出席を、心よりお待ちしております」

旅客船姫 「敬具」

旅客船姫 「XXXX鎮守府 提督」



旅客船姫 「追伸」

旅客船姫 「私――190*92*35――とハンサムガイ達の写真とプロフィールを同封いたします」

旅客船姫 「ご笑納下さい」

旅客船姫 「なお、私事ではございますが、黒髪ロングの女性が好みであることを、お知らせいたします」

旅客船姫 「終わりです……」


それを聞いたレ級が、床を転げながら爆笑した。

レ級 「深海棲艦と疑っテル相手ニ……」

レ級 「フィーリングカップル5対5?!」

レ級 「キーーーーシャッシャッシャッシャッ!!!」 ゴロゴロ

レ級 「イカレてるゼ、ソノ提督!?」

レ級 「キーーーーシャッシャッシャッシャッ!!!」 ゴロゴロ



そこに笑い声を聞きつけたヲ級が部屋に来た。

ヲ級 「部屋、ハイルデーー?」 コンコン

ヲ級 「ナンカ面白いこと、あったん?」 ガチャ



鎮守府からフィーリングカップルに誘われたと聞いたヲ級は、やはり床を転げながら爆笑した。

ヲ級 「ウッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」 ゴロゴロ

ヲ級 「その提督、アタマおかしいデ!!!」

ヲ級 「ウッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」 ゴロゴロ


旅客船姫 「フィーリングカップルとは、何でしょうか?」

ヲ級 「アーー、集団お見合いミタイナモンヤデーー」

旅客船姫 「お見合い?!」 カァアア



戦艦水鬼がブチ切れた顔で言った。

戦艦水鬼 「気に入っタゾ! 勇気あるファッキン・コメディアン・ジョーカー提督……」

戦艦水鬼 「お前を解体するのは、そのファッキン・ハンサムなツラを、直に拝んでからにしてヤル」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦水鬼 「旅客船姫様…… この戦艦水鬼、フィーリングカップル5対5に参戦いたしマス」 ニヤリ

旅客船姫 「」


そこにもう一人、手を挙げた。

飛行場姫 「ハイ! ハイ! ワタクシもフィーリングカップルに出席シマス!」(裏声) カックンカックン

旅客船姫 「」

旅客船姫 「ど、どうぞ……」



しかし、飛行場姫の挙動がおかしい。

糸の切れた操り人形のような動きだった。

実は、飛行場姫の後ろのフラヲ改が、意識の無い飛行場姫を操っていた。

飛行場姫 「ヤッタネ!」(裏声) カックンカックン



フラヲ改が、飛行場姫の横から顔だけ出して言った。

フラヲ改 「や り ま し た !」 ホッコリ

フラヲ改 (女王になるためには、強い『雄』が必要デス)

フラヲ改 (この機会に、飛行場姫様に強い『雄』を捕まえてモライマショウ) ニタリ


旅客船姫は、助けを求めるような眼で言った。

旅客船姫 「ヲ級さん…… フィーリングカップルに出席しませんか?」

ヲ級 「ウチ…… ソノ日、ちょっち用事ガ……」

ヲ級 (ブチ切れた戦艦水鬼様と一緒に酒なんか飲んダラ、命が幾つ有っても足りんデ、しかし……)

ヲ級 「船上パーティーは出席スルデー」

旅客船姫 「そうですか……」 ガックリ



戦艦棲鬼A 「戦艦水鬼ちゃんが出席するなら、ワタシも出席しちゃおっカナー」

旅客船姫 「戦艦棲鬼様……」

戦艦棲鬼A 「戦艦水鬼ちゃんを止める係が必要デショ……」 ヒソヒソ

旅客船姫 「ありがとうございます……」 ウルウル


旅客船姫 「あと一人……」 キョロキョロ

駆逐棲姫 「はい…… 私、出席シマス!」

旅客船姫 「え……?」

手を挙げたのは、駆逐棲姫だった。



駆逐棲姫 「敵を知るのも大事かなっテ……」

駆逐棲姫 (ナゼだろう…… 鎮守府の人と、トッテモ話してミタイ……)

旅客船姫 「駆逐棲姫様……」


話し合いの結果、他の深海棲艦は、船上パーティーだけに出席することとなった。

船上パーティーのデザート目当てに、港湾棲姫、港湾水鬼は北方棲姫を連れて出席となった。

レ級も、デザート目当てで出席となった。



とりあえず、船上パーティーの料理とデザートを食べてから鎮守府をどうするか考える。

しかし、もし料理とデザートが不味かったら、その場で揚陸艦を沈める。

ということで、この場は収まった。



旅客船姫 「では皆様、せっかくいらしたのですから、食事をしていって下さい!」 ニッコリ

旅客船姫は、ありったけの食材で料理とデザートを作って、部屋にいた深海棲艦やレ級軍団に振舞った。

満腹になった彼女たちは満足してしまい、そのまま巣に帰って行った。


旅客船姫は、指令室の机に向いながら、グッタリしていた。

旅客船姫 (食べ物で、何とかスパイ疑惑を誤魔化せました……) ホッ

旅客船姫 (しかしフィーリングカップルとは……)

旅客船姫 (これは日向さんの計略なのでしょうか?)

旅客船姫 (落とし所とか考えてるんでしょうか……?)

旅客船姫 「はぁ…… 紅茶でも飲みましょう……」



ギャリソンが淹れた紅茶を一口飲んで、また、ため息。

旅客船姫 「はぁ……」

旅客船姫 (でもまあ、船上パーティとフィーリングカップルがなければ……)

旅客船姫 (今頃、姫姉様、水鬼様、レ級さんたちが鎮守府を襲撃していたでしょうね……)

旅客船姫 (……)

旅客船姫 (やっぱり、日向さんの計略だったのでしょうか……?)



旅客船姫はため息をつきながら、なんとか穏便に済ませる手が無いか考え続けたのであった。


旅客船姫がレストラン休業の通知をする数週間前……。

XXXX鎮守府の指令室を、日向、鳥海が訪れていた。



日向 「提督、例の提案の返事が来たそうですね」

提督 「ああ…… 『前向きに検討する』だそうだ」

提督 「『やらない』という意味だ」

日向 「まあ…… 予感はしていました」



日向と鳥海は、艦娘への深海潜水能力と対潜攻撃能力の追加を、海軍上層部に提案していた。

それは深海棲艦の巣を攻略するためであった。

提案にあたり、工廠の妖精、明石、そして、オベロン社――艦娘の

開発、建造、保守を一手に引き受ける巨大軍事企業――に問い合わせを行い、

技術面、コスト面で実現可能だという見込みを得てからの提案だった。


鳥海 「司令官さん…… ここまでの提案に対して『やらない』という回答だと」

鳥海 「上層部は、深海棲艦を打倒する気がない…… と勘ぐってしまいます」

日向 「まあ…… 当然の感想ですね」



日向 「提督…… 私たちは何の為に戦っているのだろうね」

日向 「世間は大規模作戦の勝利で沸き立っていますが……」

日向 「実際は、鎮守府正面海域からさえ深海棲艦を駆逐出来ていません……」

日向 「巣を攻略しないと、何度海戦で勝利しても意味がありません」

日向 「海軍は、この戦争に勝つ気が無いのではありませんか?」 ニヤリ

提督 「同感だ。私も、そう思うね」 ニヤリ


提督 「かくいう私も、巣の攻略を上申しているんだが……」

提督 「時期尚早と、つっぱねられていてね」

提督 「かといって、巣を攻略するための準備をしているようには見えない」

提督 「『何が尚早なんだ?』と、上官と会うたびに問い詰めていたら……」

提督 「最近、本部に呼ばれなくなったがね」 ニヤリ



この提督は、納得が出来ない命令に対してあからさまに不満を示したので、

上からは使いにくいと思われ、疎んじられていた。



提督 「この提案は良くできているから、葬られるのは勿体ない」

提督 「私は疎んじられているから、別な提督から上申すれば変わるかもしれない」

提督 「私の先輩の老提督からも、上層部に上げてもらおう」

日向、鳥海 「よろしくお願いたします」


日向 「それと…… 一件、報告があります」

日向は、旅客船姫のチンジュフについてと、そこに筑摩を監視として派遣したことを報告した。



日向 「その島の連中は、十中八九、深海棲艦です」

日向 「彼女たちは、我々と意思の疎通が出来ます」

日向 「友好的といえる程です」

日向 「我々の味方に出来るとまでは言いませんが……」

日向 「深海棲艦について情報を得られるかもしれません」

日向 「もしかしたら……」

日向 「深海棲艦との交渉の糸口となる可能性もあります」 ニヤリ


日向は、チンジュフの深海棲艦全員の写真とプロフィールを提督に渡した。

日向 「その島の戦力は、戦艦一人、巡洋艦三人、駆逐艦二人、艦種不明が二人、合計八人と思われます」

日向 「女性が七人、男性が一人です」

提督 「女性が七人……」



提督は写真を眺めながら言った。

提督 「交渉の糸口か…… 私も会ってみたいですな、彼女たちに」

提督 「そういえば、太平洋合同演習で、その島の近くの港に寄港する」

提督 「彼女たちと船上パーティーを開催するのは、いかがですかな?」

日向 「まあ…… 私も彼女たちと話してみたいです」

日向 「面白いお考えだと思います」

日向 (艦種不明が二人いるが…… この戦力ならば、何かあっても揚陸艦の艦娘で圧倒できるだろう)


提督が、とある写真に目を止めた。

提督 「この黒髪のロングの女性…… ルカさん…… 随分と美人ですな」

提督 「彼女とは…… 特別に親睦を深めたいですなぁ」 ニンマリ



提督は彼女と別れたばかりで、フリーだった。

提督 「いきなりデートに誘うのも警戒されるだろうから…… 親睦会と称して、合コンがいいだろう」

提督 「女性が七人で…… 駆逐艦が二人なら…… 五人同士ならルカさんが参加するだろうな」

提督 「ウチの独身の陸戦隊員を誘って…… フィーリングカップル5対5ですなぁ」 ニンマリ

日向、鳥海 「」

日向 (種を超えて女を口説くとは…… 最早、病気…… 女好きも、ここに極まれりだな……)

日向 (いや…… 既に艦娘を口説いていたか)

日向 (しかし…… 相手がどうでるか、これは面白いかもしれない……) ニヤリ

日向 「わ、分かりました。 船上パーティーと親睦会の招待状を、筑摩に持たせましょう」



提督たちは船上パーティー、親睦会の打ち合わせを始めたのであった。


チンジュフの指令室では、旅客船姫が筑摩に親書の返事を手渡していた。



旅客船姫 「船上パーティですが…… チンジュフ一同と私の友人が出席いたします」 ニッコリ

筑摩 「ご出席、ありがとうございます!」

筑摩 「パーティーが楽しみです♪」

旅客船姫 「こちらが親書の返事です。 提督にお渡し下さい」

筑摩 「確かに受領いたしました!」 ビシッ



旅客船姫 「ところで…… 日向さんに伝言があります」

筑摩 「何ですか?」

旅客船姫 「船上パーティーの出席は十七人ですが…… 料理とデザートは……」

旅客船姫 「五十…… いや、百人前を用意してほしいのです」 ゲッソリ

筑摩 「」

旅客船姫 「味も頑張って下さい…… 特にデザート……」 ゲッソリ

筑摩 「」

旅客船姫 「このパーティーにXXXX鎮守府の存亡がかかっている…… とお伝え下さい」

旅客船姫 「割と真面目に……」 ドンヨリ

筑摩 「は、はぁ…… 伝言、確かに承りました」


その後、旅客船姫は船上パーティー、親睦会の準備に追われていた。

深海棲艦とバレないように、事前準備をしていたのであった。

参加者全員分のカラーコンタクト、衣装を用意した。

そして、人間と話しができるよう、参加者講習会を開いた。



旅客船姫 「職業を聞かれたら、家事手伝い、と言ってください」

レ級 「家事手伝イッテ、ナンダ?」

旅客船姫 「良くは知らないのですが、そう言えば、何とかなるそうです」

レ級 「フーン」

レ級 「家事手伝イ、カジテツダイ、カジテツダイ! キシシシ!」



その他、家族構成や、学歴、職歴など、適当に口裏を合わせた。



旅客船姫 「皆様、このサンオイルを塗って日焼けしておいて下さい」

戦艦水鬼 「ウム」



旅客船姫 「それと、船上パーティーで食事は、あまり食べ過ぎないで下さい……」

旅客船姫 「食べ過ぎると、深海棲艦とバレてしまいます……」

レ級 「仕方ナイネ!」

レ級 (目立タナイヨウニ、コッソリ沢山食ベヨウ…… キシシシ!)

旅客船姫 (レ級さん、飛行場姫様、フラヲ改さんの食事で、物理的にではなく、財政的に鎮守府が壊滅するのでは……)



-- 続く --

保守


そして、とうとう親睦会の当日となった。

俺は無関係をきめこむつもりだった。

俺が自分の部屋でダラダラしていると、ヲ級がやってきた。

ヲ級 「今晩、港にメシでも食いにイカヘンカー?」

チ級 「いいよ。 どの店に行く?」

ヲ級 「□□□□って店ヤデ?」 ニンマリ

チ級 「」



親睦会をやる店だった。

チ級 「そういえば、ヲ級さん、今日は用事があったんじゃあ?」

ヲ級 「こないな面白そうなもん、見逃せるわけアルカイ!」

ヲ級 「こまかいこといわんと、サッサと行くデー!」



ヲ級に連れられて部屋を出ると、ギャリソン、飛行場姫の側近のフラヲ改、

戦艦水鬼の警護のフラル、ヘ級がいた。

みんな、地元のお姉ちゃん、おじさんという恰好だ。

ヲ級 「ではーーーーっ、イッテミヨウ!」


ということで、俺たちは親睦会の店にやってきた。

店では目立たない場所のテーブルに陣取った。

奥を見ると、ちょうど親睦会が始まったところのようだ。



提督 「本日は親睦会にご出席、まことにありがとうございます」

提督 「では、男性陣から紹介します」

提督 「まずはわたくしから」

提督 「XXXX鎮守府の提督です」

提督 「趣味はドライブ、食べ歩きなどですな」

落ち着いた色合いのシャツとズボンだ。

チ級 (高そうな服だな……)



提督 「次に…… 突撃隊長です」

提督 「恐れ知らずの勇敢な男です」

突撃隊長 「はじめてお目にかかる。 突撃です。 よろしくお願いいたします」(お辞儀)

オレンジ色の髪の、大柄でがっしりした体格の男が挨拶をした。

黒いシャツとズボンだ。 提督よりパリッとしている。

チ級 (ズボンの折り目で、紙が切れそう……。 軍人さんて感じだな)


提督 「沈黙隊長です」

提督 「口数は少ないですが、実に頼りになる奴です」

沈黙隊長 「……」(お辞儀)

銅色の髪の痩せた男が、無言でお辞儀をした。

こちらもシャツとズボンだが、いくぶん地味な感じだ。

チ級 (無口だ……)



提督 「パイロットです」

提督 「とても陽気な奴です」

パイロット 「どうも、パイロットです。 よろしくぅ!」

茶色の髪で、細身の男がウインクしながら自己紹介した。

派手なシャツ、明るい色のズボンだ。

チ級 (えらいナンパな人だな……)



提督 「最後に新兵です」

提督 「しっかりものです」

新兵 「初めまして。 新兵です。 若輩ものですが、よろしくお願いいたします」 ペコリ

ベージュ色の髪で細身の少年が自己紹介をした。

明るい色のシャツとズボン、スニーカーだ。

ズボンの折り目はピシッとしており、しっかりものらしい。

チ級 (なんか苦労してそう……)



提督 「みんな私の部下でしてね」

提督 「提督適正をもつ、将来有望な奴らです」


座席は五人同士が向かい合う形で、男女入れ違いに座っていた。

こんな席順だった。



提督 VS 戦艦水鬼

戦艦棲姫 VS 突撃隊長

沈黙隊長 VS 旅客船姫

飛行場姫 VS パイロット

新兵 VS 駆逐棲姫


旅客船姫も女性陣を紹介し始めた。

旅客船姫 「本日は親睦会にお招きいただき、誠にありがとうございます」

旅客船姫 「簡単ではありますが、紹介させていただきます」

旅客船姫 (ボロをださないように、名前だけ紹介しましょう……)



旅客船姫 「わたくし、ティターニアと申します」

旅客戦姫 「よろしくお願いします」



旅客船姫 「次に……」

戦艦水鬼 「ムサシだ」 ズォオオオオ

戦艦水鬼 「よろしくな」 ズォオオオオ

旅客船姫は、戦艦や軍艦を連想させるような名前はやめたほうが良いと、

遠回しに言ったのだが、戦艦水鬼はガンとして聞かなかった。


旅客船姫 「アリゾナさんです」

戦艦棲姫 「よろしくお願いします」 ペコリ



旅客船姫 「リコリスさんです」

飛行場姫 「よろしくお願いしますね」 ペコリ



旅客船姫 「プリマベーラさんです」

駆逐棲姫 「……よろしくお願いします」 ペコリ


紹介が終わったところで、ウエイターがワインとジュースを持ってきた。

新兵と駆逐棲姫はジュースだった。



提督 「最初の飲み物は行き届きましたか?」

提督 「では、乾杯しましょう」

提督 「乾杯!」

一同 「「「乾杯!」」」



皆がグラスに口を付けて、提督が何か言いかけたとき、

戦艦水鬼が一口でワインを飲みほし、グラスをテーブルにバシッと置いた。



戦艦水鬼 「まずはじめに、はっきり言っておく」

戦艦水鬼 「私は海軍が大嫌いだ」

旅客船姫 「」



- 続く -


チ級 (旅客船姫様の顔が、赤くなったり青くなったりしてる……)



だが提督は、何事もなかったかのように戦艦水鬼の空いたグラスにワインを注いだ。

提督 「ムサシさんは海軍に言いたいことが何かお有りのようだ」

提督 「伺いましょう」 ニヤリ

チ級 (なんだろう…… このあふれ出る、女に罵倒され慣れている感……)



戦艦水鬼 「よかろう」

戦艦水鬼 「海軍はな、私の大事な人をコロしたのだ」

戦艦水鬼 「彼は海軍にとって不都合なことを知ってしまったらしくてな」

戦艦水鬼 「口を封じるため、死地に優先的に追いやられた」

戦艦水鬼 「生きのびても、繰り返し追いやられてな……」

戦艦水鬼 「今日はな、海軍のお偉方が来るというので恨み言を言いに来たのだ」 ギロリ


戦艦水鬼は、またも一口でワインを飲みほした。

戦艦水鬼 「ふん、提督か……。 いいご身分だな」

戦艦水鬼 「部下と艦娘に戦地で戦わせて、自分は指令室でのうのうとしている訳だ」

戦艦水鬼 「どうせお前も、自分に都合が悪いことを知っている部下や、嫌っている部下を、死地に送るのだろう?」



提督が、またもワインを注いだ。

提督 「ムサシさんの大事な方には、お悔やみ申し上げます」

提督 「ムサシさんの悔しさも、悲しみも理解いたします」

提督 「ただ…… わたしはそのような命令を部下や艦娘にはしませんよ」

提督 「なんせ、知られてこまるようなことは、ありませんし……」

提督 「部下や艦娘との関係も良好ですからな」 ニヤリ


戦艦水鬼 「どうだか……。 お前が命令しなくても、上から言われたらどうする?」

戦艦水鬼 「従うしかないのだろうが」

提督 「少なくとも私の直上の上官は、そのような命令はしませんな」

提督 「有能で話せる方でしてね」



戦艦水鬼 「幸運だったな」

提督 「いえ、これでも上官選びには骨を折りましてね」

戦艦水鬼 「上官は選べんのだろう?」

提督 「下からの転属願いもありますし、上と仲良くなれば引き抜いてくれます」

提督 「上と仲良くなるために、色々やりましたがね」

提督 「ようは、やり方はあるということです」


戦艦水鬼 「言うほど上手くいくのか?」

提督 「簡単ではないですな」

提督 「私は隠し事が苦手でしてね、納得いかない命令には、納得するまで上官を問い詰めたり、イヤな顔をするので……」

提督 「筋の悪い上官とは険悪になりました」

提督 「何度か飼い殺しにされかかりましたが……」

提督 「世の中、上手くできてまして、悪いことはできないもんですな」

提督 「急に上官の不正が明るみになって失脚したり、移動になったり……」

提督 「これも私の日頃の行いが良いためですな」 ニンマリ



それを聞いた隊員たちは、笑いをこらえているようだった。



提督 「もちろん軍隊ですから、私や部下に死地に行くよう命令されることもありえますが……」

提督 「しかし、それは十分な理由があってのことでしょう」

提督 「もし万が一、理屈に合わない理由で死地に行けといわれても……」

提督 「そんなに簡単にくたばるようには、部下や艦娘を教育したつもりはありませんし」

提督 「私自身、どんな激戦地でも、死ぬ気はしませんな」 ニヤリ


戦艦水鬼 (こいつは本物だ)

戦艦水鬼 (本物の馬鹿だ)

戦艦水鬼 (どんなことがあろうと自分は死なないと、本当に思っているらしい)

戦艦水鬼 (だからこそ、深海棲艦と親睦会などを開いたのだろうな)



戦艦水鬼 「ふむ……」

戦艦水鬼は自分の搭乗員たちのことを思った。

戦艦水鬼 (あいつらは…… 正直で、素直で、まっすぐな、気持ちの良い奴らだった)

戦艦水鬼 (この提督の半分…… いや十分の一でも狡猾さが有ったら、運命は変わったのだろうか……)


戦艦水鬼 「やはり海軍は、クズだな」

戦艦水鬼 「私の大事な人は、正直で、素直で、まっすぐで……」

戦艦水鬼 「お前と違って、気持ちの良い奴だったよ」

戦艦水鬼 「そんな良い奴が、まっさきに死んで……」

戦艦水鬼 「こざかしく要領良く立ち回った……」

戦艦水鬼 「ずうずうしいお前が生きているなんて……」



戦艦水鬼は、やはりワインを一口で飲みほし、ピシャっとグラスを置いた。

戦艦水鬼 「理不尽だ、間違ってる、納得いかん!」



戦艦水鬼 「だが……」

戦艦水鬼 「したり顔で話すお前は、心底、不愉快だが……」

戦艦水鬼 「コロしても死なないような、お前の図太さだけは気にいった!」

戦艦水鬼 「飲むぞ、付きあえ」

提督 「お相手しましょう」 ニヤリ


戦艦水鬼は、敵味方問わず、豪胆な者や勇敢な者は評価した。

それと、提督のあまりのふてぶてしさに、毒が少し抜けてしまったようだ。



戦艦水鬼 「『サケ』を持ってこい、ボトルでな。 グラスは二つだ」

新兵 「『サケ』? ニホンシュのことかな」

新兵 「ニホンシュ、ボトル一本お願いします!」



ウエイターが日本酒を一升瓶で持ってきた。

早速、戦艦水鬼は提督と自分のグラスに酒を注いだ。

戦艦水鬼は、一気にグラスの酒を飲み干した。

戦艦水鬼 「なにが『日頃の行いが良い』だ。 どうせお前が何かしたんだろ? 白状しろ!」



戦艦水鬼は絡み酒モードとなり、親睦会の破綻はまぬがれたようだった。


しかし、別の場所で親睦会に危機がせまっていた。



旅客船姫は困惑していた。 

旅客船姫の向かいに沈黙隊長が座っていたのだが、

その後ろにもう一人、男が立っていたからである。



副隊長 「私は沈黙隊長の副隊長だ。 よろしくお願いします」

旅客船姫 「は、はい……」



沈黙隊長はハンドサインをした。

沈黙隊長 「……」 ササッ

副隊長 「ティターニアさん、ご趣味は?」

旅客船姫 「料理を少々……」

旅客船姫 (なぜ副隊長さんが話しているのでしょうか……)

旅客船姫 (沈黙隊長さんは、まったく話しません……)

旅客船姫 (口数が少ないってレベルではありませんわ……)



沈黙隊長 「……」 ササッ

副隊長 (むむっ、あれは全速前進のサイン)

副隊長 「素晴らしいご趣味をお持ちだ!」

副隊長 「どのようなご料理を?」

旅客船姫 「イギリス料理が得意ですわ」



沈黙隊長はイギリス料理と聞いて、少し動揺したようだ。

沈黙隊長 「……」 ササッ

副隊長 (相手に悟られず速やかに後退し、体制を立て直せ)

副隊長 「なるほど、それはそれは……。 ところでティターニアさんに、もっと沈黙隊長について知ってもらいたい」

副隊長 「そこで沈黙隊長の武勇伝などお話ししたいと思うが、いかがだろうか?」

旅客船姫 「まあ、素敵ですわ。 ぜひお聞かせ下さい」 パァアア

旅客船姫 (海軍の話は興味がありますね)



沈黙隊長 「……」 ササッ

副隊長 (好機到来! 火力を一点に集中し、中央突破せよ!)

副隊長 「この前の大規模作戦でですな……」

副隊長は沈黙隊長の武勇伝を、熱く語り始めた。

アイゼナッハ


一見、上手くいったように思えたが……。

副隊長 (ト、トイレに行きたい……)

副隊長 「ティターニアさん、沈黙隊長、申しわけございませんが、少々、席を外します」



そして、副隊長はウエイターを呼んだ。

少年ウエイター 「はい、ただいまーー!」

副隊長 「少年、頼みがある」 ズイッ

少年ウエイター 「はい」

少年ウエイター (顔が怖い…… 緊張する……)



副隊長 「このお兄さんが指を一回鳴らしたら、コーヒーを一杯持ってきてくれ」

副隊長 「けっして四分以上かけないように」

副隊長 「指を二回鳴らしたらウイスキーのロックを一杯」

副隊長 「指を三回鳴らしたらジョッキのビールを一杯」

副隊長 「けっして間違えないように」

少年ウエイター 「はい……」



副隊長 「では行ってまいります」

沈黙隊長 「……」 ササッ

副隊長 (航海の無事を祈る……)


しかし、副隊長は待てど暮せど戻ってこなかった。

沈黙隊長 「……」

旅客船姫 「……」

沈黙隊長 「……」

旅客船姫 「……」

旅客船姫 (これは…… 地味にツライですわ……)



この店には、男性・女性兼用のトイレと、女性用のトイレがあった。

副隊長は兼用トイレが空くのを待っていたが、なかなか空かなかった。



副隊長 (なぜトイレが空かぬ! なぜだ!)

副隊長 「……ッ!」 コンコン

?? 「……」 コンコン

副隊長 (ふぉおおおお!!!)



実は、このトイレでXXXX鎮守府の金剛が頑張っていたのであった。



- 続く -


XXXX鎮守府の艦娘たちも、不測の事態にそなえ、店に来ていた。

日向、鎮守府で「荒仕事」に定評がある霧島と神通、情報要員の青葉、そして金剛がいた。

当初、日向は金剛を連れてくるつもりは無かった。

しかし、どこからか親睦会のことを聞きつけ、無理矢理ついてきてしまった。



彼女たちは最初に店に来ていた。

彼女たちのテーブルは、提督、チ級たちとは離れた目立たない場所にあった。



旅客船姫たちが店に入ると、日向はいぶかしげな表情になった。

日向 (ん…… 見ない顔だ)

日向は青葉に顔を寄せた。

日向 「艦種を特定してくれ」 ヒソヒソ

青葉はうなずくと、タブレットを取り出した。

店に仕掛けた隠しカメラで旅客船姫たちの姿を撮影し、艦種を特定しはじめた。


そして、金剛もいぶかしげな表情をした。

金剛 (深海棲艦なんて、どうせダッサダサなポテトガールだと思ってましたが……)

金剛 (なんでハリウッドのセレブやモデルみたいなんデスかーーーー!?)

金剛 (あの女好きの提督が、手を出さない理由がナッシングデース!!!)



ひるがえって自分の姿を見ると、正体がばれないよう変装していたせいもあるが、

いたって普通の髪型、化粧であった。

なぜかそれが、とても見すぼらしく感じられ、金剛は急に焦りだした。

第三者から見ると、そうとも言えないのだが、金剛にはそう感じられた。



それで金剛は完全にテンパってしまった。

懇親会が始まって数十分後、思いつめた金剛は言った。

金剛 「ちょっとお花を摘んできマース」


女性専用のトイレは使用中だったので、男女兼用のトイレに入った。

そして、提督に見せるあてが無いにもかかわらず、気合いを入れて、

おもむろに髪とメイクを直し始めた。

金剛 「提督は、絶対、わたしまセーーン!」 ガッシガッシ

金剛 「こんな懇親会、ぶっ潰してやりたいデース!!!」 ガッシガッシ



副隊長 「……ッ!」 コンコン

金剛 (まったく、うるさいデーース! Go away!!!)

金剛 「……」 コンコン

副隊長 (ふぉおおおお!!!)

金剛は図らずも、懇親会を滅亡の淵に追い詰めていた。



副隊長 (これは提督殿の陰謀であろうか……!?!?!?)

提督は時々、部下にお茶目なイタズラをすることがあった。

今回は無罪だが、疑われてしまうのは、まさに日頃の行いのせいであった。


その頃、日向もテンパっていた。

青葉の顔が真っ青になったので、日向は声をかけた。

日向 「どうした?」 ヒソヒソ

青葉は艦種の特定結果を見せた。

日向 (戦艦水鬼…… 戦艦棲姫…… 飛行場姫…… 駆逐棲姫……!?)

日向 「鯛が釣れたと思ったら戦略型原潜だった…… まあ、そんな気分だな」



青葉 「どうします?」 ヒソヒソ

日向 「様子を見る」 ヒソヒソ

日向 「向こうがヤル気なら、もうやっているはずだ」 ヒソヒソ

日向 「こちらから藪をつつく必要はない」 ヒソヒソ

日向 (提督が深海棲艦たちを上手くあしらって、懇親会が無事に終わればいいが……)

日向 (まさか提督の女たらしの腕に、命をあずける日が来るとはな……)


一方、旅客船姫と沈黙隊長も限界を迎えていた。

沈黙隊長 「……」

旅客船姫 「……」

沈黙隊長 「……」

旅客船姫 「……」

旅客船姫 (誰か助けてーーーー!!!)



テーブルの中央がシラケきってしまっては、戦線の全面的な崩壊を意味する。

そう悟った沈黙隊長は、一策を講じた。



沈黙隊長 「……」 パチッ、パチッ、パチッ

とりあえず飲み物を注文し、間を持たせようとした。


少年ウエイター 「お待たせいたしました……」 オドオド

沈黙隊長 「」

旅客船姫 「」



少年ウエイターが持ってきたのは、ジョッキ三杯のウイスキーだった。

沈黙隊長は、一瞬、ためらった表情を見せたが、意を決してウイスキーを飲み始めた。

沈黙隊長 「……」 ゴキュ…… ゴキュ……

旅客船姫 (あわわわわ……) オロオロ



やっと金剛がトイレから出たとき、副隊長は閃光の速さでトイレに入った。

それどころではない副隊長は、すれ違う金剛に気が付かなかった。

やっと副隊長がテーブルに戻ると、ちょうど沈黙隊長が三杯目のウイスキーを飲み干すところだった。


副隊長 「た、隊長!」

沈黙隊長 「……」 ササッ

副隊長 (以後、指揮を貴官に任せる……!?)

沈黙隊長 「……」 ニコッ

そして、沈黙隊長は酔いつぶれ、テーブルに突っ伏してしまった。



副隊長 「……」 ビシッ

副隊長は沈黙隊長に敬礼をすると、沈黙隊長の良さを滔々と語りだした。

副隊長 「沈黙隊長は、非常に気さくな方で……」

旅客船姫 「は、はあ……」

旅客船姫 (気さく?!)



かくして、沈黙隊長は、結果として、懇親会に参加せよという提督の無茶振りに応え、

沈黙を貫き自分の矜持を守り、ウイスキーのガブ飲みという暴挙で間を持たせ、

酔いつぶれた後、副隊長に指揮を任せ、戦線の崩壊を防いだのであった。

西暦二〇XX年XX月XX日 XX時XX分のことであった。


さて、こちらは駆逐棲姫と新兵。

新兵 「あの……」 カァアア

駆逐棲姫 「はい……」 カァアア

新兵 「……」

駆逐棲姫 「……」

新兵 「なんでもありません……」 カァアア

駆逐棲姫 「はい……」 カァアア



提督のふてぶてしさとは、うって変わり、新雪のごとき初々しさであった。

新兵 「その……」

新兵 (こういうとき、なにを話せばいいのかな……?)

新兵 「僕の仕事の話でもしましょう」

駆逐棲姫 「……」 コクン



新兵 「僕は艦娘さんたちの支援をしているんだ」

新兵 「支援って言うとカッコイイけど、本当は雑用なんだけどね」

新兵 「まず掃除!」

新兵 「広い工廠や演習場、大食堂、倉庫、エトセトラ、エトセトラ……」

新兵 「もう大変なんだ」 ニコ

駆逐棲姫 「フフッ」

新兵 「艦娘さんたちと一緒に、モップやデッキブラシ、掃除機でガシガシ掃除」

新兵 「ウエイトトレーニングより、掃除で体を鍛えたね」

駆逐棲姫は、工廠、演習場、大食堂と聞いて、胸がザワザワしはじめた。


新兵 「次に洗濯物!」

新兵 「先輩の軍服、艦娘さんたちの制服、シーツ、エトセトラ、エトセトラ」

新兵 「こっちも大変」 ニコ

駆逐棲姫 「フフッ」

新兵 「艦娘さんたちの下着は、僕たちが洗わないはずなんだけど……」

新兵 「ときどき、混じることがあって……」

新兵 「ものすごい大騒ぎになる!」 ニッコリ

駆逐棲姫 「アハハッ」

新兵 「わざと混ぜて、僕たちをからかってるんだと思う」

駆逐棲姫 「フフッ」



新兵 「それと遠征準備!」

新兵 「遠征に行く艦娘さんたちの艤装の整備を手伝ったり、荷物の積み下ろしを手伝ったり」

新兵 「遠征にはね、駆逐艦が行くことが多いんだ。 だから駆逐艦と仲良くなったよ」

駆逐棲姫 「ウン……」

駆逐棲姫は、遠征、駆逐艦と聞いて、胸がキューっと切なくなってきた。

駆逐棲姫 (ナンダロ、コレ、胸ガ…… クルシイ……)



新兵 「遠征には駆逐艦が行くことが多いんだ。 だから駆逐艦と仲良くなったよ」

新兵 「五月雨さんという方には、とてもお世話になっているんだ……」

駆逐棲姫 「サミダレ……」


急に新兵は驚いた顔をした。

駆逐棲姫 「どうしたの?」

新兵 「ごめん…… 僕、なにかイヤなこと言ったかな?」

駆逐棲姫 「なぜ?」

新兵 「プリマベーラさんが、泣いているから……」



駆逐棲姫は、自分が気づかないうちに涙を流していた。

駆逐棲姫 「えっ、これは、笑いすぎたからだよ」 アセアセ

新兵 「なら、良かった」



駆逐棲姫は、思い切って聞いてみた。

駆逐棲姫 「あの…… その…… 『ハルサメ』って聞いたことがありますか?」

駆逐棲姫 「日本の言葉ですか?」

新兵 「ハルサメ……」

新兵 「駆逐艦の艦娘に「春雨」というのがいるよ」

駆逐棲姫 「どんな娘?! あなたの鎮守府にいるの?!」 ガバッ

新兵 「いや…… 僕の鎮守府にはいないんだ」

駆逐棲姫 「そうなんだ……」 シュン


新兵 「ごめんね」

駆逐棲姫 「いや…… こちらこそ、ごめんなさい」

駆逐棲姫 「ところで…… はい…… あなたの鎮守府の話を、もっと聞きたい……」

新兵 「うん、いいよ!」 ニパッ



駆逐棲姫と新兵は、順調に盛り上がっているようであった。



- 続く -


こちらは戦艦棲姫と突撃隊長。

突撃隊長 「ムサシさんだが……」

戦艦棲姫 「ああ、ごめんなさい、とても気立てのよい人なのですが」

戦艦棲姫 「少し熱くなってるみたいで……」

突撃隊長 「いや、良く言ってくれた!!!」 ドーーーーン

戦艦棲姫 「」



突撃隊長 「特に『こざかしい』! 『ずうずうしい』!」

突撃隊長 「白眉は『したり顔で、心底、不愉快』のところだ!!!」

突撃隊長 「まさに私の思っていたことを言ってくれた!!!」

突撃隊長 「感謝の意を述べたい!!!」 ババーーーーン!

戦艦棲姫 「」

戦艦棲姫 (すぐ近くに提督が居るのに…… ある意味、本当に恐れ知らずだわ……)


戦艦棲姫が驚いた顔をしていると、突撃隊長がそれに気づいた。

突撃隊長 「すまない、驚かせてしまったようだな」

突撃隊長 「私は声が大きくてな……」

戦艦棲姫 (驚いているのは、そこじゃなーーーーい!)



突撃隊長 「わが突撃家には、家訓があってな……」

突撃隊長 「他人をほめるときは大きな声で……」

突撃隊長 「悪口をいうときはより大きな声で!!!」 バビーーーーン!

戦艦棲姫 「」

戦艦棲姫 (なんか色々スゴイな、この人……)

戦艦棲姫 (でも、少しオモシロイかも……)



戦艦棲姫 「元気な人は好きですよ」 ニッコリ

戦艦棲姫 「突撃隊長の武勇伝があれば、聞いてみたいです」

突撃隊長 「ではお聞かせしよう!」


突撃隊長は語りはじめた。

突撃隊長 「私は、艦娘を支援するモーターボート部隊の隊長をやっている」

突撃隊長 「モーターボート部隊がどんなことをしているかだが……」

突撃隊長 「戦場で攻撃を受けて動けなくなった艦娘がいたら」

突撃隊長 「モーターボートで戦場に突撃して、タモですくって回収するのだ」

戦艦棲姫 「とても危険なお仕事ですね」

突撃隊長 「わかってくれるか!」 ニパッ



突撃隊長 「イメージしやすくモーターボートと言ったがな」

突撃隊長 「実際のところ、ゴムボートに近い」

突撃隊長 「特別機動船と呼ばれている」

突撃隊長 「わが部隊のボートは改造されていて……」

突撃隊長 「エンジンは、より大出力に!」

突撃隊長 「船体は真っ黒に塗られていて、恰好が良くなっているのだ!!!」 クワッ



突撃隊長 「ボートの船首に重機関銃が装備されていて……」

突撃隊長 「それを撃ちまくって、深海棲艦どもを蹴散らしながら、突撃するのだ!」



ボートの船体はゴムと強化プラスチックで出来ており、防御力は皆無。

武装も、船首の重機関銃と、ショットガン数丁、手榴弾数個、戦斧、棍棒が数本程度だった。

そんなボートで、砲弾と魚雷が飛び交う戦場に最高速度で突入し、艦娘を救うという、

頭のネジが2、3本飛んでないと出来ないような、非常に危険な仕事であった。



突撃隊長 「それで武勇伝というのはな……」

突撃隊長 「この前の大規模作戦で、そのボートで、最高速度で、ひいてやったのだ!!!」

突撃隊長 「戦艦棲姫をな!!!」 ドヤァ

戦艦棲姫 「……」 ビキビキビキッ

旅客船姫 「」

チ級 (また旅客船姫様の顔色が、赤くなったり青くなったり……)


突撃隊長 「戦艦棲姫と戦っているとき、一人の艦娘の機関が故障して動けなくなった」

突撃隊長 「それで戦場近海で待機していた、わが部隊が出動したのだ」

突撃隊長 「普通なら、艦娘をタモですくってUターンするのだが……」

突撃隊長 「場所が悪く、戦艦棲姫のすぐ近くで動けなくなってしまってな」

突撃隊長 「そのような場所でUターンして、ボートの横っ腹を見せたら、いいマトにしかならん」



突撃隊長 「だからな……」

突撃隊長 「一切減速せず、戦艦棲姫をボートではね飛ばし、そのまま突破したのだ!!!」 ドヤァ

突撃隊長 「戦艦棲姫は数十メートル飛んで行って、そのまま海に落ちたぞ!!!」

突撃隊長 「ざまあ見ろだ!!!」 ドヤァ

戦艦棲姫 「……」 ブチブチ、ブチチチチチッ!!!

旅客船姫 「」

旅客船姫 (もう心臓が持ちません……)


戦艦棲姫はグイッと身を乗り出し、突撃隊長の顔に両手を添え、顔を近づけた。

戦艦棲姫 「大変、勇敢ですこと……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫 「お顔を良く見せてくださるかしら……?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

戦艦棲姫 (顔を覚えて、次に戦場で会ったら、ブッコロしてやる!!!)

突撃隊長 「うむ……」 カァアア



戦艦棲姫が尋常ではない目つきで突撃隊長を睨みつけたが、

突撃隊長はそれを戦艦棲姫の好意と受け取ったらしく、顔を赤らめたのであった。

旅客船姫 (この人も提督と同じぐらい図太いですね……)



突撃隊長 「うん……? 近くで見ると……」

突撃隊長 「アリゾナさんの顔…… どこかで見かけた気がするな」

戦艦棲姫 「」

旅客船姫 「」

戦艦棲姫、旅客船姫 (戦艦棲姫とばれた……!?)



- 続く -


突撃隊長はスマホを取り出すと、何やら操作し始めた。

突撃隊長 「これだ……」

突撃隊長 「このご婦人に似ている」



そしてスマホの画面を戦艦棲姫に見せた。

戦艦棲姫 「?!」



髪型も瞳の色も違うが、戦艦棲姫とそっくりの女性が写真に写っていた。

戦艦棲姫 「良く…… 似ていますね…… 誰ですか?」

突撃隊長 「彼女は『最初の提督』の奥方だ」

突撃隊長 「『最初の提督』とは、世界初の艦娘の提督となった方だ」

突撃隊長 「アメリカで演習があった時、米海軍のパーティーに呼ばれてな」

突撃隊長 「『最初の提督』と奥方がいらっしゃったので、記念撮影をしたのだ」

戦艦棲姫 「世の中には、そっくりな人が三人いると言いますが…… 驚きました」


戦艦棲姫 「旅…… ティターニアちゃん、これ見て、私とそっくり!」 ニコッ

旅客船姫 「……」

旅客船姫 (あれ……? そういえば、昔、戦艦棲姫様が一人、行方不明になったとか……)

旅客船姫 (まさかね…… まさかね……)

旅客船姫 「本当にそっくりですね……」 キョドキョド



突撃隊長 「お二人は幼少からの幼馴染だそうだ」

旅客船姫 「そうですかぁ!」 パァアア

旅客船姫 (ならば間違いなく人間ですね…… 考えすぎでした……)



ヘ級と日向が、あからさまに様子がおかしい旅客船姫を眺めていた。

ヘ級 (へぇ……)

日向 (……)


戦艦棲姫 「ところで、先ほどの話ですが、怖くなかったんですか?」

戦艦棲姫 「戦艦棲姫も、大砲とか撃ってきたでしょうに……」



突撃隊長がボートで戦艦棲姫をはね飛ばしたとき、戦艦棲姫をはじめ、深海棲艦たちは

激しく砲撃していたのだが、それをものともせず、真っすぐ突撃してきたのであった。

戦艦棲息姫は、「体に穴があいても手足が千切れても復活する艦娘ならいざ知らず、

人間の分際で、なぜこんなことを? 馬鹿なの? 死ぬの?」と、思った。

そのときの疑問を聞いてみたくなったのだった。



突撃隊長 「恐れなどせん」

突撃隊長 「無能者と呼ばれるのには、耐えられる」

突撃隊長 「だが臆病者と呼ばれるのは、我慢がならん!」

突撃隊長 「それに……」

突撃隊長 「艦娘たちが命を張って、戦場に立っているのだ」

突撃隊長 「恐れてなどおれん!」


戦艦棲姫 「そう…… ウフフ」

戦艦棲姫 「あなた、オモシロイですね」 ニッコリ



主砲での殴り合い上等の戦艦だけあって、戦艦棲姫も、勇敢な者、豪胆な者は、敵味方問わず評価した。



戦艦棲姫 「アタシさ、こういう気取った席は慣れてなくてさ」

戦艦棲姫 「素でいい?」

突撃隊長 「いいぞ」

突撃隊長 「おれも取り繕った席は、居心地が悪くてな」

戦艦棲姫 「飲みなおそっか!」

突撃隊長 「そうだな」


戦艦棲姫はウイスキーを二杯頼んだ。

戦艦棲姫 「改めて、かんぱーい!」

突撃隊長 「乾杯!」



戦艦棲姫 「あんたさぁ、人間の女にはモテないでしょ、ねえ!」

突撃隊長 「ブフッ」

突撃隊長 「まあな」



突撃隊長は人間の女性からはモテなかったが、艦娘からの人気は絶大だった。

突撃隊長 「だが、おれは艦娘からはモテるぞ」

戦艦棲姫 「だよね! わかる、わかるよ!」 ケラケラ



戦艦棲姫と突撃隊長は、妙なノリで盛り上がったのであった。


飛行場姫とパイロットはというと……。

飛行場姫 (……)

飛行場姫 (なぜワタクシ、この親睦会に参加しているのかしら?)

飛行場姫 (参加すると言った覚えは、ないのですけれど……)



飛行場姫は気絶しているうちに、勝手にフラヲ改に参加を決められてしまった。

それでも参加してしまうところが、飛行場姫の人の好さであった。



飛行場姫 (せっかくですから、悩み事でも相談してみましょう……)

飛行場姫 「あの……」

パイロット 「なんです? リコリスさん!」 キラッ

飛行場姫 (うっ……)

飛行場姫 「わたくし、悩み事がありますの。 それで、相談に乗って頂きたいんですの」

パイロット 「お任せください。 私、鎮守府の『人生相談係』と呼ばれております」 ドヤァ


飛行場姫 「その…… 『幸せ』って、なんですの?」

パイロット 「リコリスさん、幸せとは、酒、そして愛……」

飛行場姫 「愛……」



パイロットは両手で飛行場姫の手を握った。

飛行場姫 「え…… あの……」 カァアア

飛行場姫は耳まで真っ赤になった。



パイロットは顔を近づけた。

パイロット 「私が愛を…… あなたが、この世に生まれた意味を……」

パイロット 「教えてあげますよ……」 キラッ

飛行場姫 「……」 プシューーーー!

飛行場姫の顔は、湯気がでるほど真っ赤になった。


飛行場姫 (なぜワタクシ、こんなに胸がドキドキしているのかしら?)

飛行場姫 (それにしても…… パイロットさん、とても堂々としていますわ……)

飛行場姫 (頼れる人かもですわ……) ポワーーン

飛行場姫 「その…… 教えてください…… 『愛』とはなにかを……」 ポワワーーン

パイロット 「では、お教えしましょう」

パイロット 「ただ…… そうなると……」

パイロット 「私に惚れちまいますよ……」 ドヤァ



チ級 (結婚サギ師かな?)

チ級 (しかし、飛行場姫様も、まんざらでもなさそう……)

チ級 (これは…… 高い壺とか買わされちゃう子ですわ……)



ヲ級を見ると、必死に笑いをこらえているようだった。

フラヲ改を見ると、物凄く険しい顔をしていた。

チ級 (露骨に『ハズレをつかまされた』って顔だな……)



結局、悩める飛行場姫は、パイロットの教えを聞いたのであった。


親睦会の時間も残りわずかとなったころ、新兵が立ち上がった。

新兵 「ここで皆さまにプレゼントがあります」

新兵 「衛星携帯電話と太陽光充電器です」



新兵は衛星携帯電話を深海棲艦に配り始めた。

新兵 「使い方は、向かいの男性から聞いて下さい」

新兵 「そして、電話番号とメアドを交換下さい」

新兵 「電話代は、提督が持つそうです」



チ級 (衛星携帯電話なら、世界中、どこでも通じる)

チ級 (太陽光充電器があれば、どこでも充電出来る)

チ級 (いつでもどこでも、深海棲艦相手でも、愛を語れるわけだ)

チ級 (提督の女への熱い情熱を感じる……)


親睦会の時間も終わりになった。



副隊長 「……このように、沈黙隊長は素晴らしいお方なのです!」

副隊長 「何卒! なにとぞ! なーにーとーぞ、沈黙隊長をお願いいたします!」

旅客船姫 「は、はぁ……」



新兵 「時間となりましたので、最後に提督から一言お願いします」

しかし、提督と戦艦水鬼は完全に出来上がっており、新兵にかまわず飲み続けていた。



提督 「わはははは!」

戦艦水鬼 「ガハハハハ!」

提督 「そこで、お偉方に言ってやりましてな」

提督 「『あなたたち権力者はいつでも切り捨てるがわに立つ。 手足を切りとるのは、たしかに痛いでしょう』」

提督 「『ですが、切り捨てられる手足からみれば、けっきょくのところどんな涙も、自己陶酔にすぎません』」

提督 「『泣いて馬謖を斬る、か、ふん。 自分が犠牲にならずにすむなら、いくらだってうれし涙がでようってもんでしょうな』 とね!」


すると、戦艦水鬼が膝を打った。

戦艦水鬼 「よく言った! まさに、我が意を得たり、だ!」 ポンッ



戦艦水鬼は身を乗り出し、顔を提督に近づけた。

戦艦水鬼 「お前…… このムサシの男になれ!」 ブチューーーー

戦艦水鬼は提督にキスをした。

戦艦水鬼はディープキスなどという、オシャレなものは知らなかった。

ただ力任せに提督の唇に食らいついた。



全員あぜんとして固まった中、一人だけ動いた。

金剛 (提督のハートを掴むのは、私デース!!!)

金剛 (浮気は、絶対、ユルシマセーーーーン!!!)

金剛 (Burning Love!!!) パリーーーーン

金剛は提督の後ろに立つと、ビール瓶で提督の頭を思い切りブッ叩いたのであった。



- 続く -

旅客ちゃんの席だけ「議員の代理で選挙アピールする秘書、困惑する通行人」みたいになってる……
残念だけど当然の如く駄目そうですね(ガッカリ

しかし>>1の描くキャラは面白可愛いな

前のキャバクラで働く長門?とか
変なリアルさと奇抜すぎる発想好き

乙ー
飛行場ちゃんマジチョロインw

ペガサス盛り長門とか懐かしいな

シェーンコップがレベロに言ったセリフだったかしら


>>516
>>554
正解です。
鎮守府の男性陣は、銀河英雄伝説の登場人物をモデルにしています。

>>552
ありあがとう!
そう言ってもらえると、モチベーション上がりまくりです!
キャバクラの長門さんはお気に入りのキャラなので、とてもうれしいです。

>>553
飛行場姫ちゃんは、チョロ可愛いです。
キャバクラの話も読んでいただき、ありがとうございます!


その時、激しい閃光と爆音が、立て続けに炸裂した。

チ級 (うおっ! まぶしっ!!!)

煙も出てきた。

チ級 (ゲホッ! ゲホッ!)



煙が消えると、気絶した提督がいた。

チ級 (なんだったんだ???)

チ級 (女の人が提督を殴っていたような気がするけど……)



閃光と爆音と煙は、日向が投げたスタングレネードによるものであった。



金剛は、提督と戦艦水鬼のキスを見ると、走り出した。

さすがの日向もキスに気を取られて、金剛を止められなかった。



日向 (金剛が提督のところに…… 間に合わんな……)

日向 (ここで揉め事を起こされたら、藪から大蛇が出かねない……)


日向は、霧島、神通に目配せをすると、スタングレネードを投げた。

霧島と神通は、即座に金剛を追いかけた。

青葉は飲み代を、日向は迷惑料として多めのチップをテーブルに置いた。



スタングレネードの煙の中、霧島と神通が金剛を捕縛し、

日向、青葉と一緒に店の裏口から逃げ出した。



日向 (もしものためにスタングレネードを持ってきたが、こんな事で使うとは……)

日向 (金剛…… 余計なマネを……)



実は、提督はホテルを予約していた。

何事もなければ、懇親会の相手と夜戦をするつもりだったのだ。

金剛は偶然にも、提督の夜戦を阻止したのであった。



なお、店に仕掛けた盗撮カメラは、後で青葉がこっそり回収したそうな。


親睦会が終わり、皆、帰途についた。



旅客船姫 (寿命が縮む思いでした……)

旅客船姫 (沈黙隊長さんの電話番号とメアドをゲットしましたが……)

旅客船姫 (使いどころはあるのでしょうか……?)



旅客船姫 (それにしても、衛星携帯電話……)

旅客船姫 (ナンパにも使えますが、位置情報も筒抜けになりそう……)

旅客船姫 (あの提督、油断がなりません)

旅客船姫 (姫姉様、水鬼様に注意してもらわないと……)



旅客船姫の心配は続くのであった。


翌日、船上パーティが開かれた。

旅客船のパーティは正装が基本らしい。

だから、一応、俺もおめかしをして参加した。

ヘ級 「プフフッ、いい感じですよ!」 ニヤニヤ

チ級 「ヘ級さんも、可愛くってよ!」 ニヤニヤ

チ級 (こういう場合も、女装になるんだろうか……)



強襲揚陸艦の巨大な格納庫が、パーティ会場だった。

チ級 (立食パーティだな…… どの料理も旨そう……)

俺が皿に料理を取っていると、向こうにレ級が見えた。



レ級は、数十個のケーキが並べられているプレートの横にいた。

しばらくすると…… プレートのケーキが一瞬で消えた。

そして何食わぬ顔をして、レ級は歩いて行った。



チ級 (おそろしく速い爆食…… 俺でなきゃ見逃しちゃうね)

チ級 (本当は俺にも見えなかったけど……)

チ級 (やはり自重する気は、ナッシングだったか……)


むこうを見ると、提督が女性に挟まれて歩いていた。

チ級 (美人に囲まれてるな…… 艦娘ちゃんかな?)

チ級 (おっ…… そこに……)



提督のところに、戦艦水鬼がやってきた。

戦艦水鬼 「パーティへの御招待、痛み入る」

足柄 「提督、この方は?」 ニッコリ

戦艦水鬼 「ムサシだ、提督の女だ」 ズオォオオオオオオ

隼鷹 「提督ぅ、モッテモテじゃーーん?」 ニッコリ



足柄と隼鷹は、艦娘の力で提督の尻をつねった。

提督 (痛~~~~ッ!!!)



チ級 (提督、昨日の飲み会で気絶してたのに、タフだな……)

提督は軽傷だったので、アルコール抜きという条件でパーティに参加していた。



金剛が提督の傍にいないのは、昨晩の暴走の罰として、独房で反省を命じられていたためであった。


チ級 (あっちは……)

突撃隊長も女性に挟まれて歩いていた。

チ級 (艦娘ちゃんにはモテるって言ってたな)



突撃隊長の腕に、榛名と扶桑が抱きついていた。

榛名 「榛名が! お守りします!」

沈黙隊長 「そのように近くなくても、大丈夫だぞ」

榛名 「はい、榛名は大丈夫です!」



扶桑 (榛名にも…… 負けたくないの!)

扶桑 「今日も暑いわね。 この服だと、少し汗をかいてしまうわね」 グイッ

扶桑はグイッと胸元を開けた。

真っ白な胸元が丸見えになった。



扶桑 「身体が熱くて…… 私の弾薬庫がちょっと心配です」

扶桑 「隊長の手で…… 確かめてくださる?」

突撃隊長 「おれの腕に抱きついているから暑いのではないか?」

榛名 「扶桑さんは、あっちに行けば良いと思います!」


チ級 (リア充、死ぬべし……) ギリギリギリギリ



戦艦棲姫 「こんにちは」

戦艦棲姫 「私はアリゾナ、よろしく!」

榛名 「私は榛名。 こちらこそ、よろしくお願いします!」

扶桑 「扶桑です。 よろしくお願いします」

突撃隊長 「突撃隊長です。 よろしくお願いします」



戦艦棲姫 「3人はぁ、どんな関係なのぉ?」 ニタニタ

突撃隊長 「仕事仲間だ」

榛名 「恋人と、要らない子です!」

扶桑 「夫婦と、ストーカーです……」

榛名 「ストーカーというのは、扶桑さんのことですね!」

扶桑 「」



ギャーギャー

ワーワー



戦艦棲姫 (面白いから、もっと煽っちゃおう、ウヘヘヘ) ニタニタ

チ級 (戦艦棲姫様が悪い顔をしている……)


チ級 (ん…… あれは……)



北方棲姫と、港湾棲姫、港湾水鬼が、デザートコーナーにいた。

北方棲姫 「お菓子、いっぱい……!」 目キラキラ



北方棲姫はお菓子を食べ始めた。

北方棲姫 「美味しい!」 パァアア!

港湾棲姫 「良かったな」 ポワーーン

港湾水鬼 「可愛いなぁ」 ポワワーーン

港湾棲姫 「この船は見逃してヤロウ……」 ヒソヒソ

港湾水鬼 「アア……」 ヒソヒソ



そこに……。

長門 「……」 ジーーーー

北方棲姫 「……」 ジーーーー


長門 「……」 サッ

長門は棒付きキャンディーを北方棲姫に差し出した。

北方棲姫 「アリガト……」

北方棲姫はササッとキャンディーを受け取ると、港湾棲姫のところに戻った。



北方棲姫 「あのお姉ちゃんが、お菓子くれた!」

港湾棲姫 「ちゃんと、お礼を言ったか?」

北方棲姫 「ウン!」

港湾水鬼 「そこのお姉さん、うちのアルに、お菓子アリガトウ」

長門 「どうか、お気になさらず……」



長門 「ところで、アルちゃんの写真を撮ってもいいですか?」

北方棲姫 「シャシン?」

長門 「写真とは、こういうものだ」

長門はインスタントカメラで撮った写真を見せた。


北方棲姫 「オオ……! アルもシャシン、撮る!」

港湾棲姫 「いいよ」

長門 「では三人並んで下さい…… 笑って…… ハイ!」 パシャ、パシャ

長門はインスタントカメラと、デジタル一眼レフで写真を撮った。

そして、インスタントカメラの写真を、北方棲姫に渡した。



北方棲姫 「オネーチャンたちとシャシン! 宝モノにする!」 パァアア

長門 「アルちゃん…… 可愛いですね……」 デレデレ

港湾棲姫 「デショ? 私の自慢の妹なの!」 デレデレ



長門 「アルちゃんの可愛い写真…… もっと撮ってもいいですか?」 ハァハァ

長門 「後で渡しますから……」 ハァハァ

港湾棲姫 「わかった…… イイワヨ……」 ハァハァ

長門と港湾棲姫は、力強く握手をしたのであった。

チ級 (何か黒いものを感じたが…… 大丈夫か……?)


チ級 (おや……)



椅子に沈黙隊長、副隊長、初雪、望月が座っており、黙々と料理を食べていた。

沈黙隊長 「……」

副隊長 「……」

初雪 「……」 モグモグ

望月 「……」 モキュモキュ



チ級 (あれは一体……!?) ゴクリ……


その頃、フラヲ改は、とある艦娘を探していた。

フラヲ改 (いました)



フラヲ改 「もし…… 少しよろしいですか?」

神通 「はい」

フラヲ改 「あの…… パイロットさんて、どのような方ですか?」

フラヲ改 「ハンサムなので、彼に興味があって……」



フラヲ改は、飛行場姫の相手であるパイロットの情報を集めていた。

パイロットの人柄を知るにあたり、真面目で、訓練の教官として人を見ることに長けている神通を頼ったのであった。


神通 「パイロットさんの操縦の腕は、確かです」

神通 「対潜哨戒、艦娘の輸送、救出、なんでもこなせる腕前です」

神通 「それに、人間、艦娘にこだわらず面倒見の良い方ですよ」

神通 「ただ……」

フラヲ改 「ただ……?」

神通 「あたりかまわず女を口説くのと、常に軽口と不平を言うので」

神通 「人によって評価が分かれる方ですね」



神通 「危機的な状況に陥っても、平然と軽口をたたき続けるメンタルの強さ」

神通 「私は大好きですよ」 ニッコリ

フラヲ改 「ありがとう…… とても参考になったわ」

フラヲ改 (思ったほど、ハズレでもないかも……)


ふと、フラヲ改は赤城を見つけた。

赤城は椅子に座って、一心不乱に料理を食べていた。



フラヲ改 「はじめまして、ヲリビアです」

フラヲ改 「お隣、いいかしら?」

赤城 「……っ! ……っ ……っ!」 モゴモゴ

フラヲ改 「食べ終わってからで、いいですよ」 ニッコリ



赤城は食べ終わると、挨拶をした。

赤城 「赤城です。 よろしくお願いします」 ジーーーー

と言いつつ、目はフラヲ改が持つ皿を見ていた。


フラヲ改 「あら……」

フラヲ改 「はい、アーン……」

フラヲ改 「美味しいですか?」

赤城 「……」 コクコク

フラヲ改 (可愛い…… 愛おしいですね…… たまらない……)



加賀 「なにをしているのかしら……」 オォオオオオ

赤城を挟んで、隣の席に加賀が座っていた。

フラヲ改 「はじめまして、ヲリビアです」 ニッコリ



フラヲ改 (怖いわ…… 私の相手は、こんな思いをしていたのかしら……)

フラヲ改 (あの眼差し…… 氷のよう……)

フラヲ改 (まるで、研ぎ澄まされた氷の剣……)

フラヲ改 (でも、横から叩かれたら…… 簡単に折れてしまいそう……)


さして怖がる様子もなく、フラヲ改は赤城の手を握った。

フラヲ改 「赤城さん…… アイしています……」 ニッコリ

赤城 「?」

加賀 「なにを…… 言っているの……?」 ビュォオオオオオオ



フラヲ改 (軽く煽られただけで…… 剥き出しの殺意……)

フラヲ改 (なんて、はしたない……)

フラヲ改 (とても必死で…… 余裕が無くて…… 未熟……)

フラヲ改 (あなたでは…… 赤城さんは守り切れない……)

フラヲ改 (どうせ守り切れないなら…… 轟沈してしまうなら……)

フラヲ改 (私ガ…… ココデ奪ッテシマイマショウ……)



カラーコンタクトの下のフラヲ改の目が、青く光り始めた。



- 続く -


?? 「加賀さん?」

フラヲ改 「ハッ!?」

フラヲ改は我に返った。



目の前に鳳翔が立っていた。

鳳翔 「加賀さん、こちらの方、紹介してくれますか?」 ニッコリ

加賀 「ヲリビアさんという方です」

鳳翔 「鳳翔です、初めまして」

フラヲ改 「ヲリビアです、こちらこそ」

フラヲ改は鳳翔と握手した。



鳳翔 「ふふっ、ヲリビアさん、お会い出来てうれしいです」

フラヲ改 「オゥ! ゴーーメンナサイ」

フラヲ改 「ワタシ言いいたかったコト、アカギ=サン、おアイ出来て、ウレシイデーース!」

フラヲ改 「ワタシ、ガイジン・ピーポォだから……」

フラヲ改 「日本語って、むずかしいわね」 シレッ

加賀 「あれほど日本語で流暢に話しておきながら……」 ワナワナ

フラヲ改 「では、ごきげんよう」

フラヲ改は、その場を立ち去った。



フラヲ改 (かないませんね、鳳翔さんには…… いつになっても……)

フラヲ改 (横から叩かれたのは、私のほうでした……)


チ級 (おお? チミッコ達が、なんかしてる?)



リ級 「……」 ジーーーー

電 「……」 ジーーーー

リ級、電 (他人という気がしないのデス……)



リ級、電 「……」 バババッ (プロレスLoveのポーズ)

リ級、電 「……」 シュパッ (荒ぶる鷹のポーズ)

リ級、電 「……」

リ級、電 「……」 ドォーーーーン (空条承太郎の指さしポーズ)

リ級、電 「……」

リ級、電 「……」 ガシッ!!! (熱い抱擁)

チ級 (わかりあえたーーーー?!)



電 「あなた、なかなか見どころがあるのです!」

電 「こっちで間宮さんの羊羹を食べながら、この世で一番イケててクールな」

電 「第六駆逐隊のメンバーを紹介してあげるのです!」

リ級 「はわわわ!」

リ級は電に連れられて、どこかに行ってしまった。


チ級 (あちらも、仲が良さそうだな)



ヘ級と明石が、何やら熱く語りあってた。

ヘ級 「電探が……」

明石 「試作の高温高圧缶が……」

ヘ級 「洋上補給が……」

明石 「艦載機の搭乗員の練度が……」

ヘ級 「データリンクが……」

明石 「アビオニクスが……」

ヘ級 「イージスシステムが……」

明石 「ズムウォルト級が……」

ヘ級 「レーザー試射が……」



チ級 (なにを言っているか、さっぱり分からんな、これ)


チ級 (あっちは、平和だな……)



戦艦棲姫Bとル級とヲ級が、食べ歩きをしていた。

戦艦棲姫B 「これ、美味しいですわ!」 パァアア

ル級 「うまいな!」

ヲ級 「あっちにも、なんかあるで~?」

キャッ キャッ



チ級 (安定だな……)


チ級 (こっちも、平和だな……)



ネ級と筑摩も食べ歩きをしていた。

筑摩 「ねぇさ…… ネルさん、はい、アーーン?」

ネ級 「……」 モグモグ

筑摩 「どうですか♪」

ネ級 「うまいぞ」

ネ級 「筑摩の料理には及ばんがな」 カァアア

筑摩 「……」 鼻血ダバーー



チ級 (……)

チ級 (安定だな……)


チ級 (お! カップル登場)



駆逐棲姫と新兵がやってきた。

新兵 「料理の味は、どうですか?」

駆逐棲姫 「とても、はい、美味しいです!」

新兵 「良かった」 ニコッ



新兵 「よければ、この船を案内します」

新兵 「面白いですよ、いかがですか?」

新兵 「僕の仕事場、洗濯室とかね」 ニコッ

駆逐棲姫 「あははッ」 ニコッ

駆逐棲姫 「案内、はい、お願いします」



新兵 「わかりました!」 ニパッ

新兵は駆逐棲艦の手を握った。

駆逐棲姫 (あっ……) カァアア



新兵は駆逐棲艦を連れて、行ってしまった。

誤記スマン
578は、なしで


チ級 (お! カップル登場)



駆逐棲姫と新兵がやってきた。

新兵 「料理の味は、どうですか?」

駆逐棲姫 「とても、はい、美味しいです!」

新兵 「良かった」 ニコッ



新兵 「よければ、この船を案内します」

新兵 「面白いですよ、いかがですか?」

新兵 「僕の仕事場、洗濯室とかね」 ニコッ

駆逐棲姫 「あははッ」 ニコッ

駆逐棲姫 「案内、はい、お願いします」



新兵 「わかりました!」 ニパッ

新兵は駆逐棲艦の手を握った。

駆逐棲姫 (あっ……) カァアア



新兵は駆逐棲姫を連れて、行ってしまった。


五月雨 「……」 ガビーーーーン!

睦月 「……」 ガビーーーーン!

夕立 「……」 ぽいぃいいいい!

それを見た駆逐艦たちは、大きなショックを受けた。



新兵は顔だちも整っており、性格も良く、年齢が若いので、駆逐艦たちとも気が合った。

仕事も駆逐艦たちと一緒にやる機会が多かった。

それで駆逐艦からの人気が非常に高かった。

あまりの人気の高さに、お互い牽制しあい、だれも手を出せなかったのである。

そこを、駆逐棲姫が横から新兵をかっさらったのであった。



夕立 「とりあえず、後をつけるっぽい……」 ヒソヒソ

睦月 「にゃしぃ……」 コクコク

ゾロゾロ

新兵のあとを、大勢の駆逐艦が付いていった。



チ級 (少年に女難の相が……)


チ級 (こっちは、飛行場姫様とパイロットさんだが……)



飛行場姫とパイロット、ライバル・パイロットが話していた。

飛行場姫 「愛とは…… ためらわないこと、くやまないこと」

飛行場姫 「ですわよね?」

パイロット 「そうですよ」 キラーーン

ライバル・パイロット 「……」

ライバル・パイロット 「リコリスさん、こいつにあまり近寄らないほうがいいですよ」

ライバル・パイロット 「アホがうつりますから」

飛行場姫 「いえいえ、そのようなことはございません」

飛行場姫 「パイロットさんは、そう、私の……」

飛行場姫 「人生の先生、兄のような存在ですわ!」 パァアア



その時、飛行場姫が誰かに呼ばれた。

飛行場姫 「あら、私の友人が呼んでますわ」

飛行場姫 「ごめんあそばせ」 ニッコリ

飛行場姫 「若さとは~ ふりむかないこと~♪ ラララ~♪」



飛行場姫は、呼ばれた先に行ってしまった。


ライバル・パイロット 「お前さん、妹が出来たのか?」

パイロット 「ちげえよ」

ライバル・パイロット 「知ってて聞いた」

パイロット 「なら聞くな!」



ライバル・パイロット 「お前さん、これはもしかして……」

ライバル・パイロット 「サラッと振られたんじゃないか?」

パイロット 「……」

パイロット 「お前は、なにもわかってない」

パイロット 「リコリスさんは、まだ女の子だ」

パイロット 「おれの良さが分かるには、ちと若い」

パイロット 「だが、おれの見立てじゃ、おれの良さが分かるいい女になる素質がある」

パイロット 「だから、いい女に成長するよう、おれが手取り足取り指導しようと思う」

パイロット 「おれは現代の光源氏なんだぜ」 ドヤァ

ライバル・パイロット 「宇宙刑事の間違いだろ」

ギャーーギャーー!

ワーーワーー!



チ級 (飛行場姫様は、意外と壺を買わされないかもしれん……)


チ級 (ムム! あっちは意外な組み合わせ……)



旅客船姫とギャリソンが、提督、日向に挨拶していた。

旅客船姫 「本日は船上パーティにお招き頂き、誠にありがとうございます」

提督 「いやいや。 ご参加頂き、ありがとうございます」

提督 「パーティは楽しんで頂けてますかな? 料理はいかがでしたか?」

旅客船姫 「とても楽しんでいますわ。 料理も素晴らしいです!」

提督 「それはそれは」 ニンマリ



旅客船姫 「提督、少し変な相談をしてもよろしいですか?」

提督 「伺いましょう」

旅客船姫は、少しうつむき気味に話しはじめた。


旅客船姫 「私が、この国に移ってくる前の話です」

旅客船姫 「私が幼いころ、家の近所に子供がいました」

旅客船姫 「それで…… とても恥ずかしい話なのですが」

旅客船姫 「その子供に、とてもヒドイ事をしてしまったのです」



旅客船姫 「その子供は、私たちに悪いことはしなかったのです」

旅客船姫 「でも私たちは、その子の悪口を言ったり、イタズラをしたり……」

旅客船姫 「その子供は、とても、とても、傷つきました」

旅客船姫 「幼い私たちは、やって良いこと悪いことが分からなかったのです」



旅客船姫 「相談というのは、その子供と、今は多分大人でしょうけど……」

旅客船姫 「仲直りをしたいのです」

旅客船姫 「今の私は、とてもヒドイ事をしたと理解しています」

旅客船姫 「だから…… 少なくとも、謝罪したいのです」

旅客船姫 「でも、どのようにすれば良いか分からなくて」

旅客船姫 「それで、人生経験の豊富な提督さんのご意見を聞いてみたいのです」


提督は、しばらく考えてから言った。

提督 「ティターニアさん、ヒドイ事をしたと理解して、謝罪したいというのは……」

提督 「ティターニアさんだけですか? 他の方もですか?」

旅客船姫 「えっ……」

旅客船姫は言葉に詰まった。



提督 「まあ、いいでしょう」

提督 「もし私が、その子供だったらですが…… 私は執念深いたちでしてね」

提督 「受けた傷に見合う痛み、代償を払ってもらわんと、納得せんでしょうな」

旅客船姫 「そうですね……」



日向 「まあ…… ティターニアさんと、その方とで、共通の敵でもいれば」

日向 「案外、仲良くなるかもな…… 世の中なんて、そんなものだ」 ニヤリ

旅客船姫 「フフッ、そんなものかもしれませんね」 ニッコリ



旅客船姫 「相談に乗って頂いて、ありがとうございます」 ペコリ

旅客船姫 「とても参考になりました」



チ級 (なんか不思議な相談だな……)


船上パーティも終わりに近づいたころ、リ級は、暁、響、雷、電と遊んでいた。

響 「リン、これをあげるよ」

リ級 「?」



響は特三バッジを差し出した。

響 「皆で相談して決めたんだ」

響 「君を名誉第六駆逐隊員に任命する」

リ級 「あ… ありがとうなのデス!」 ニッコリ



リ級は小さなお出かけポーチをゴソゴソまさぐって、貝殻を取り出した。

リ級 「お礼に、これをあげるのデス!」

リ級 「お気に入りの貝殻なのデス!」

響 「スパスィーバ」 ニコッ



リ級 「ところで、このようなバッジを貰っても良いのデス?」

暁 「長門さんが、イイって言ったわ!」

響 「それをスマホで録音しておいたよ」

雷 「何かあったら、長門さんも道連れじゃない!」

電 「だから、遠慮せず貰ってほしいのです!」

リ級 「ウフフ、分かったのデス」 ニッコリ



チ級 (チビッ子たちは、すぐ仲良くなるな……)


チ級 (おっ! なんか始まるのかな?)



青葉 「皆さん、集まって下さい!」

青葉 「パーティの最後に、集合写真を撮りましょう!」

青葉 「写真が欲しい人は言って下さい」

青葉 「すぐにプリンターで印刷してきますよ!」



皆で集合写真を撮って、パーティはお開きとなった。


後日、深海棲艦たちの会議が行われた。



会議の結果、鎮守府の襲撃は、戦艦水鬼が提督を気に入ってしまったこと、

船上パーティの料理と菓子が美味しかったこともあり、無くなった。



また、旅客船姫のレストランは、何があっても客の自己責任であり、

筑摩にはレストランの客は「人間」と説明して誤魔化すことで、存続となったそうな。


船上パーティの数週間後、執務を終えた提督は、指令室で集合写真を眺めていた。

提督 「仲直り、か」



提督はグラスのウイスキーを一口飲んだ。

提督 (ご婦人の要望には出来るだけ応えたいが……)

提督 (こいつは少しばかり骨だな……)



提督は旅客船姫の言葉に頭を悩ませるのであった。



- 第五話 モンスター・シスターズ 完 -


皆さま、コメントありがとうございます!

第五話は、Pixivの「緒伊也次の本はふそさよですよ」さんの「【刀艦乱舞】深海と刀の方々」にインスパイアされてます。

第六話ですが、公開時期は未定です。

予告も出来ないほど、話が出来ていません。

ではでは。

保守
ただいま戦闘シーンの勉強中につき、更新までしばらくかかりそうです
ご了承ください


【懺悔コーナー】

5話に記載漏れがありました。

すまんす。

以下、書いていきます。


>>469

>>470
の間



旅客船姫 「ちょ、ちょっと、お待ちください。 この親睦会は『罠』の可能性があります」

戦艦水鬼 「望むところダ。 『罠』なんぞ喰い破ってくれるワ!」 ズオォオオオ

戦艦水鬼 「もしかして…… この戦艦水鬼が一緒にいた上で、不安なのですカ?」 ズオォオオオ

旅客船姫 「いえ! 不安などメッソウもない! 戦艦水鬼様が一緒なら、大安心ですわ!」

旅客船姫 「オホ! オホ! オーーーーッホッホッホッホ!」



旅客船姫は「罠」を疑い、親睦会と船上パーティの参加を断ろうと思っていたが、

戦艦水鬼の参加表明で、断れなくなってしまった。


>>557

>>558
の間



日向は店から出ると、直ぐにサポート班の艦娘に電話を掛けた。

サポート班は店から少し離れた場所に、ワンボックスカーに乗って待機していた。

日向たちだけで対応しきれなくなった場合への備えだった。



日向 「もしもし、日向だ」

日向 「私たちは店を出た。まだ親睦会は続いているので、サポート班が店に行って、提督たちの警護してくれ」

日向 「今、警護が居ない状態だ。だから急いでくれ」

日向 「事情は後で話す。頼んだぞ」

日向は店にいられなくなったので、提督たちの警護をサポート班に頼んだのであった。


- 第五話 後日談 鳳翔の休暇 -



ここはXXXX鎮守府。

執務を終えた提督が、金剛、隼鷹、足柄とブラブラ歩いていた。

目的地は居酒屋鳳翔だ。



提督 「こいつは珍しいな」

金剛 「どうしましたカー?」

提督 「居酒屋鳳翔、今日は休みだ」

隼鷹 「やっべ! 男かぁ~?」 ニヤリ



足柄 「提督、どこで飲みますか?」

提督 「ふーむ……」

金剛 「HEY、提督ぅー、提督の部屋はどうデーース?」

提督 「構わんが、部屋を漁るなよ?」

足柄 「そんなこと、しませんわー!」

足柄 (しないわけ、ありませんわッ! 飢狼の血が騒いできたわッ!)

隼鷹 「よぉーし、いい酒を開けて、ひゃっはーしようぜ~!」

隼鷹 (どぉーーせ、いい酒ためこんでんだろーー? 2、3本、ちょろまかしてやるッ)

金剛 「Thanksネーー!」

金剛 (黒いショートボクサーパンツ……Verificationが必要デース……手触り……香り……味……)



提督たちは提督の部屋に行ってしまった。


居酒屋鳳翔の中には、鳳翔と龍驤がいた。

4人卓に、二人で向かい合い座っている。

卓には、鳳翔手作りの惣菜と、日本酒のお銚子があった。



龍驤 「ウチと二人で飲みたいなんて、めずらしいやん。どないしたん?」

鳳翔 「お祝いしたいことがありまして……」 ニッコリ

龍驤 「お祝いしたいこと?」

鳳翔 「ええ……でも、少々事情がありまして……龍驤さんとだけ、お祝いしたいのです」

龍驤 「ほぉ~う、事情ねえ……」



鳳翔 「まずは乾杯いたしましょう」

龍驤 「なにかのために……乾杯~!」

鳳翔 「乾杯」

鳳翔と龍驤は酒を飲み始めた。


鳳翔 「ふぅ、美味しい」

龍驤 「うん、美味しいなあ」

龍驤の顔は、キラッキラしている。幸せそうだ。



龍驤 「で、話は戻るけど、なんのお祝いなん?」

鳳翔 「私の教え子の生還祝いです」

龍驤 「ん? 誰? この鎮守府に行方不明の空母なんて、おらんで?」

鳳翔 「そうですね……多分、この鎮守府の空母ではありません」

鳳翔は手酌で日本酒をグイッと飲む。



鳳翔 「どこかの私が指導した、どこかの空母です」

龍驤 「……」

鳳翔 「……」

二人は黙って酒を飲み続けた。


鳳翔 「先日、演習の寄港先で船上パーティがありました」

龍驤 「知っとるで」

鳳翔 「そこに……私の教え子がいました……」

龍驤 「……」

鳳翔 「あの所作……目配り……足運び……」

鳳翔の目に涙があふれる。

鳳翔 「間違いありません。私の教え子です」

龍驤 「……」

鳳翔 「あれだけの身のこなし……尋常ではない修練を積んだのでしょう……」

龍驤 「……」

鳳翔 「私の教えを……今でも……健気に守って……」

とめどなく涙が流れる。

鳳翔は言葉を続けられなかった。



龍驤は黙ってハンカチを差し出した。

鳳翔 「ごめんなさい……」

鳳翔はハンカチを取り、涙を拭う。

鳳翔 「私は前世でも今回でも……見送ることしか出来ませんでした……」

鳳翔 「教え子を送り出して……無事を祈るけど……」

鳳翔 「前世では教え子たちが……次々と沈んで……」

鳳翔 「だから……どんな形でも……生きて帰ってきて欲しいのです……」

鳳翔はまた言葉に詰まった。


龍驤 「気持ちは分かるで。でもな、どんな形てゆうても限度があるで?」

空母組古参の鳳翔と龍驤は、あの船上パーティの意図を提督から知らされていた。

龍驤 「ある意味、最悪やん。深海棲艦の船体と、熟練艦娘の頭脳」

鳳翔 「ですから……喜ぶべきではないのです……喜んではいけないのです」

鳳翔 「でも……嬉しかった……教え子が……生きて……」

鳳翔はどうしても胸が一杯になってしまい、言葉を続けられなかった。



龍驤 「あーーーー、もうやめえや、泣きながら満面の笑顔。自分、本当に器用やなぁ」

龍驤 「こんなん、ウチにしか話せんわな、わかるわ」

龍驤 「朝まで付きおうたる、飲むで?」

鳳翔はうなずくだけで、精一杯だった。



次の日、鳳翔は休暇を取った。それも二日酔いで。

いまだかつて鳳翔が休暇を取ったことはなかった。そんな鳳翔が、よりにもよって二日酔いで休んだ。

鎮守府に激震が走った。

なお龍驤も二日酔いで休暇を取ったが、いつものことなので全く話題にならなかった。



- 第五話 後日談 鳳翔の休暇 完 -


保守を兼ねて、次回の予告を投稿します。



- 次回予告 -



青葉 「青葉新聞の特別号!?」

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青葉新聞に突然の取材依頼が……

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提督 「お前さんにはアメリカに行ってもらう」

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依頼主は、なんと提督!

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提督 「費用はこちらで持つ。特別インタビューだ」

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その相手は……

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提督 「最初の提督と、その奥方だ」

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川内 「まさか……攻撃ヘリ!?」

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提督 「この戦争には、納得がいかないことばかりでね」

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青葉 「前を見て運転してぇええええええ!!!」

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日向 「まあ……げに恐ろしきは、女の嫉妬というわけだな……」

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第六話 アオバ・レポート



公開時期 未定!!!

なお主人公のチ級には出番はない模様

あけおめ保守

バレンタイン保守

飛行場姫がボーキサイト採掘を担ってますよ
アイアンボトムサウンドのあるソロモン諸島では、ボーキサイトが採れます
海底ではボーキサイトが採れないみたいなので、一手に担ってます

※参考
日本・ソロモン友好協会 ソロモン諸島国の概要
http://www.we-love-solomon.com/summary.html

保守
六話を書く材料が集まってきました
一か月以内には始められそう……

第六話ですが、プロット作成が難航しているため、第七話と順番を入れ替えます。


第六話 ほっぽちゃん、東京へ行く


ここは常春、南国の孤島。青い空、白い雲、白い砂浜、咲き乱れる花。

そんな楽園に俺のチンジュフはあるのだが、司令室の雰囲気は重かった。


チ級「え? 日本に行くから、一緒に来てほしい?」

旅客船姫「はい……XXXX鎮守府の長門さんに招待されまして……」ドヨーーン

チ級「ど、どういう経緯で?」

旅客船姫「それは……」


数ヶ月前、筑摩が大きな防水スーツケースと共に鎮守府から戻ってくると、ヘ級の部屋に向かった。


筑摩「ヘ級ちゃん、お土産です♪」

ヘ級「ありがとう! って、大きいスーツケースですね。なんですか、これ?」

筑摩「衛星インターネット端末です!!!」ババーーーーン

ヘ級「え、ほんとう!?」キラキラ

筑摩「これで海軍の衛星インターネット回線を使えるようになります! もちろんルータ機能もありますから、

皆さんのパソコンで、快適なネットサーフィンが楽しめますよ!」

ヘ級「やったあ! ありがとう!」キラキラ


深海棲艦が出現してから、大陸間の通信は全て衛星経由となった。海底の通信ケーブルの保守が出来なくなったためだ。

衛星インターネット端末を使えば、その衛星ネットワークに直接接続して、高速な回線が使える。

光回線はおろか、普通の電話線さえない孤島のチンジュフの俺にとって、これはありがたい話だった。

なぜならネットをやるには本土のネットカフェに行かなくてはならないからだ。


ヘ級「でも、お高いんでしょ、これ?」

筑摩「私が出先で寂しくならないように、って提督が費用を出してくれました。回線費用も提督持ちです。

ってそうそう……。提督や隊長たちのチャットのアカウントIDを、ムサシさんやティターニアさんに伝えてくれって言われました」

ヘ級「えぇ……」

ヘ級(結局、ナンパのためか! でもまあいいかな……。ネットが出来る環境はうれしい!)


筑摩とヘ級が、衛星インターネット端末を組み立てた。

大きいパラボラアンテナが付いている端末を、チンジュフの屋上に置く。

コンセントをつないで、電源ON。


ヘ級「アンテナの方向はどうすればいいの?」

筑摩「静止衛星はあっちですから……ていっ!」アンテナくいっ

へ級「さてさて……キターーーーーー!!!」


ヘ級のノートPCのブラウザに、ポータルサイトが表示される。

かくして、なんとこのチンジュフにもIT化の波が来たのだった。


チ級「さっそくゲームでもするか!」


マグロで稼いだ金でPCを買った俺は、最近、『戦艦少女これくしょん』というブラウザゲームにハマっていた。


チ級「ああ……イベントが突破できねぇ……」


むしゃくしゃした俺が、気分転換に海岸をぶらぶらと歩いていると……。


リ級「こんにちはです」

チ級「こんにちは」

リ級「『いんたあねっと』を使うと、遠くの人とお話できるんです?」

チ級「できるよ。誰かと話したいの?」

リ級「船上パーティで仲良くなったお友達と話したいのです!」

チ級「お! お……」

チ級(うーん……深海棲艦が艦娘とボイスチャットするのは、いかがなものだろうか……)

チ級「ちょっと姫様と相談してみる」

リ級「お願いなのです」


俺は姫様に相談することにした。


- 続く -

終わりが見えてきた
八話で完結の予定


旅客船姫「申し訳ないですが……さすがに艦娘さんとのボイスチャットは遠慮して頂きたいのです」

チ級「しっかり者のリ級ちゃんなら大丈夫だと思うんですが……」

旅客船姫「リ級さんがしっかりしているのは、私も存じております。ただ……誰にでも間違いはあります。

艦娘さんとの会話での間違いは、このチンジュフの安全に関わるのです。

もし深海棲艦とばれでもしたら……。ですから……どうか諦めて頂けませんでしょうか」


チンジュフの安全を出されてしまうと、俺もこれ以上押せなかった。


チ級「かしこまりました。失礼いたします」


俺は司令室を出たのだが……。


チ級(あ、そういえば明日の作業について聞くの忘れてた)


引き返して司令室の扉の前に戻ると、なにやら声が聞こえてくる。


旅客船姫「……料……娘向けの……ボーキ……燃……間……」

チ級「?」


そっと扉を開け、中を見ると……。


旅客船姫「ええ? そんなレシピが! ありがとうございます! ボーキと鋼材をこんな風に使うなんて……。

うん……そうですね……人間向けの料理からは思いつかない発想ですね……」


旅客船姫がヘッドセットを付けて、PCに向かってしゃべっている。


チ級(誰としゃべってるんだ?)

旅客船姫「とても参考になりますわ! ええ……いつも教えてもらうばかりで申し訳なくて……。

イギリス料理でしたら、いつでも……ええ……はい……間宮さん……。ほんとうに……オッホホホ! ではごきげんよう……」


満足げな旅客船姫。


旅客船姫「あら……」

チ級「……」


俺の頭の中で「目と目が逢う 瞬●好きだと気付いた~♪」というフレーズが流れる。


チ級「……」ニコッ

旅客船姫「」


旅客船姫からリ級のボイスチャットの許可が出た。


チ級(じゃ、早速……)


俺の使ってないデスクトップPCを、共用PCとして食堂に設置した。


リ級「この『スネイプ』というソフトでお話ができるのです?」

チ級「そうだよ。このヘッドセットを付けて、カメラに顔を向けて……そう……そして相手を呼び出してみて」


リ級は船上パーティで艦娘からチャットのアカウントIDをゲットしていたので、呼び出してみると……。


雷「こんにちは~。リンは元気? 何か困ったことがあったら遠慮なく言って! いつでも頼っていいのよ!」ニパッ

暁「ごきげんよう。暁はレディだから、お姉さんだから、私のことも頼っていいんだからねっ!」ニコッ

響「やあ。元気そうじゃないか。船上パーティ以来だね。また会えてうれしいよ」ニヤリ

電「こんにちはなのです。この再会は運命(ディスティニー)なのです。必然なのです。ソウルメイトだからなのです」ニコッ

リ級「こんにちはなのです! またみんなの顔を見れて、本当にうれしいのです!」パァアアア


楽しそうなリ級を見て、俺は満足した。


しかし、数日後……。


レ級「なんダ、コレ?」


食事に来ていたレ級が目ざとくPCを見つけた。


チ級「これはPCと言いまして……」

レ級「フーン、面白そうジャン?」


使い方を一通り教えると、何やら調べ始める。


レ級「アッホーに、グールグルか……ドレドレ……」


どうやら自分のことを調べているらしい。


レ級「キシシシッ! オレ、死神ダッテサ! 悪くナイ!」

チ級(エゴサーチかな?)


レ級をはじめ、人類は深海棲艦についてほとんど知らない。

だから様々な憶測がとびかっていて、それが面白いようだ。


レ級「ナニナニ……オレのナップザックには何が入っているか一番面白いこと言った奴が優勝? キシシシッ!!!」


まさか菓子で一杯だとは夢にも思うまい。

ということで、インターネットはレストランのアトラクション?の一つとなった。


そんなある日、買出し帰りのギャリソンが見慣れない荷物を持ってきた。


ギャリソン「郵便局の私書箱に、港湾棲姫様あての届け物がございました。XXXX鎮守府の長門様からでございます」

旅客船姫(……爆弾かしら……)

旅客船姫「港湾棲姫様に使いを出しましょう」


連絡機を飛ばすと、返事が来た。


旅客船姫「荷物を受け取りに、港湾棲姫様と北方棲姫様、港湾棲鬼様がいらっしゃるそうです」


一行が到着すると、食堂に集まり、荷物を開封することになった。


港湾棲姫「これは一体……」

チ級「カメラですね。シャシンを撮る道具ですよ」

北方棲姫「シャシン! ほっぽ、シャシン知ってる!」フンス


デジタル一眼レフ、フルサイズCMOS、5000万画素、撮影速度:20枚/秒とある。


ヘ級「すごい! キャノニコパス OEDO-K1ですよ、これ!」

チ級(いくらするんだ、これ……?)

ヘ級「レンズも……純正のいいものですよ! CFカードも……512GB! やりますねぇ!」


ヘ級が一番興奮していた。


ダンボールの中には、何やら額縁めいたものがある。


港湾棲姫「……!!」


厳重な梱包を開けると、船上パーティで撮影した北方棲姫の写真の大判印刷パネルが出てきた。


チ級「北方棲姫様、かわいいですね。撮影した人も上手ですな」

港湾棲姫「ナガト……」

チ級「港湾棲姫様、手紙が入ってますよ」


俺はダンボールから手紙を取り出し、港湾棲姫に渡した。


港湾棲姫「……拝啓……」


――――――

拝啓 ハーバー様


新緑の野山に萌える今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。

先日の船上パーティでは、アル様を撮影させていただけたこと、まことに感謝しております。

今でも時々アル様の写真を眺めては、あの時のことを思い出しております。

そのお礼として、アル様の写真パネルとカメラをお送りいたしましたので、どうぞご笑納ください。

もしカメラでアル様をご撮影されて、それを当方に送っていただけたら幸いです。

※私のメアドです。e-mail: nagamon-big7@xxxx-tinjyufu.go.jp

日本の地より、これらからのますますのご活躍をお祈り申し上げます。


敬具

XXXX鎮守府 長門

――――――


チ級「」

ヘ級「」

ヘ級(長門さん……北方棲姫様の写真欲しさに、何十万円使ってるの?)

港湾棲姫「……アラ? 続きが……」


――――――

追伸

当鎮守府の提督が、もしムサシさんを撮影したら送ってほしい、と言っていました。

もし機会がございましたら、そちらもよろしくお願いいたします。

なお、カメラの費用は提督が出しました。

――――――


チ級「」

ヘ級「」

ヘ級(XXXX鎮守府のみなさんには申し訳ないけど、この提督……だめだこりゃ……)


- 続く -


港湾棲姫「『かめら』で、ほっぽを撮りたいのダケレど……どうすればイイの……?」

ヘ級「こうすればいいんですよ!」テキパキ


箱からパーツを取り出し、あっという間にカメラを組み立てる。


へ級「港湾棲姫! このカメラを持って下さい……そうです。北方棲姫様にカメラを向けて……そこを覗いて下さい」

港湾棲姫「む……ん……? ほっぽが見えル!」

へ級「白い四角を北方棲姫様にあてて……ハッキリ見えるようになりましたか?」


カメラのレンズがウインと動いた。


港湾棲姫「急に絵がクッキリした!」

へ級「北方棲姫様……カメラを見て……ニッってして下さい」

北方棲姫「……ニッ!」

へ級「港湾棲姫様! 今です! そのボタンを押してください!」

港湾棲姫「!」パシャ


へ級がカメラを受け取り、またいじくる。


へ級「可愛いらしく撮れました!」


北方棲姫の笑顔が、カメラのモニタ一杯に写っていた。


港湾棲姫「かわいい……」パァアアア

北方棲姫「ほっぽのお顔……」キョトン

港湾水鬼「カワイイ……!?」ビキキキキッ

チ級(港湾水鬼様……顔怖いな……)

へ級「可愛らしいですね! ここには子供服も沢山ありますから、他の服もどうですか?」

港湾棲姫、港湾水鬼「……」キュピーーン


ということで、北方棲姫の撮影会が始まった。


へ級「まずはこちら! ピンクのフリフリドレス! お帽子と傘までピンクで統一。白いタイツがアクセント」

港湾棲姫「かわいいッ! かわいいッ! かわいいッ! うちのほっぽは、世界いちぃいいいいいいいい!!!」ホオズリ ホオズリ

北方棲姫「ほっぽのホッペが摩擦でマサチューセッツ(BB-59)!!!」

チ級「お客様~。モデルさんにはお触り禁止です~!」ガシッ


へ級「つぎはこちら! 黒いショートパンツに白いブラウス! 黒い革靴にサスペンダー。ボーイッシュな男の子をイメージ!」

港湾棲姫「かわいいッ! かわ(ry」ホオズリ ホオズリ

北方棲姫「ほっぽのホッペが(ry」

チ級「お客様~。モ(ry」ガシッ


へ級「そしてこれ! 本格メイド服! 小さな見習いメイドさん! うちの一押し!」

港湾棲姫「か(ry」ホオズリ ホオズリ

北方棲姫「ほ(ry」

チ級「お(ry」ガシッ


へ級「最終兵器! スク水! カワイイ!!!」

港湾棲姫「かわいい!!! かわっッッッ……ん゙ん゙ん゙ッ」ブバッ!!!

北方棲姫「姫ねーちゃん!!!」

チ級「港湾棲姫様が鼻血をッ!!!」


と言いつつも、せっかくなのでスク水の北方棲姫の写真を撮る俺。


チ級「北方棲姫様! ニッ?」

北方棲姫「ニッ!」パシャ

へ級「アホなことしてないで、早く医務室に運んで!」


俺とヘ級で港湾棲姫を担ぎ、医務室へ運んだ。


港湾棲姫「……あ……ワタシは……」

へ級「お気づきになりましたか?」

北方棲姫「姫ねーちゃん……目が覚めて……良かっタ……」グシグシ

港湾水鬼「心配したゾ……!?」ビキキキキッ


へ級が封筒を取り出す。


へ級「先ほど撮影した写真です。プリンターで印刷しておきました」

港湾棲姫「アリガトウ……ところで、この『かめら』だが、ワタシでは使いこなせない。だからへ級が預かってくれないか?

ここに遊びに来たとき使わせてくれればイイ。使いたい者がいれば自由に使わせてやってクレ……」


そういうわけで、レストランにカメラというアトラクションが増えたのであった。


- 続く -

7月保守

再開するよ~


なお撮影した北方棲姫の写真は、お礼として長門に送ったそうな。

そして、数日後……。


レ級「なんダ、コレ?」


食事に来ていたレ級が目ざとくカメラを見つけた。


チ級「これはカメラと言いまして……」

レ級「フーン、面白そうジャン?」


使い方を一通り教えると、何やらいじくり始める。


レ級「ハイ! チーズッ!」サッ

チ級「ニ゙ッ」ニタァ


俺の写真を撮ると、レ級は爆笑した。


レ級「チ級のブサイク顔ゲットー! キシシシシッ!」

チ級「」


カメラには俺の白目変顔がバッチリ写っている。

これに味をしめたレ級はカメラを気に入ったようで、レストランに来るたびに島の皆や客の深海棲艦を撮りまくっていた。


それからしばらくして、港湾棲姫あてに長門から一通の手紙が届いた。


港湾棲姫「なんだろう?」

旅客船姫「はて、なんでしょうか……」


――――――

拝啓 ハーバー様


季夏の候、皆様におかれましては、いよいよご隆盛のことと存じます。

アル様の写真、心より感謝いたします。まことに可愛らしく感動いたしました。

ところで皆様の深海棲艦コスプレをフェークブック、ビンタテストで拝見いたしましたが、クオリティの高さに感服いたしました。

私もコスプレチームに所属しておりまして、メンバーに見せたところ、実際に見てみたいということで意見が一致しました。

つきましては、艦娘コスプレイベントのゲストとして、ハーバー様、アル様、ティターニア様、レン様、深海棲艦コスプレチームの皆様を日本に招待したいと存じます。

ぜひとも日本に来て、観光をお楽しみ下さい。

なお旅費、宿泊費のご心配は不要です。

参加人数を筑摩にお伝え下されば、飛行機のチケットを送らさせて頂きます。

日本の地より、これらからのますますのご活躍をお祈り申し上げます。


敬具

XXXX鎮守府 長門

――――――


港湾棲姫「」

旅客船姫「」


唖然とする二人。


港湾棲姫「……『こすぷれ』とはなんだ?」

旅客船姫「……私も存知ません……」

旅客船姫(全くわけが分かりません……何か勘違いをされているのでは……? それにレン様って誰でしょう? 日本に招待なんて……絶対、罠ですね)

旅客船姫「罠かもしれません。君子危うきに近づかず、と言います。招待はお断りを……」


――――――

追伸

当鎮守府の金剛が「フォートナム・アンド・メイソン」の「ロイヤルブレンド」を皆様にご馳走したいそうです。

イギリスの産業が壊滅した今では、めったに手に入らない貴重なお茶だそうです。

それと沈黙隊長がティターニアさんに会いたいそうです。

――――――


旅客船姫「虎穴に入らずんば虎児を得ず、とも言います。これは日本に行くしかありませんねッ!」キリッ

港湾棲姫「」

旅客船姫(フォートナム・アンド・メイソンを出すなんて、なんと卑怯な……罠かもと思っても、抗えない……。

命は惜しいですが、ロイヤルブレンドも飲みたい……。ああああああーーーー!!!)


ということで、日本に招待されてしまったそうな。


旅客船姫「……というわけです。チ級さんは元は日本人だそうですね。そんなチ級さんに一緒に来てもらえると、とても心強いのです」

チ級「わかりました。が……コスプレイベントに招待とは一体……」


『こすぷれ』の意味は、アッサリと分かった。


レ級「アア、オレが撮った写真、フェークブックにアップしといたゼ! キシシシシッ!」

チ級「」


フェークブックを見てみると……


――――――

レレレのレン@南国棲地

本物の深海棲艦やってま~す(笑)

Lives in ZZZZ国 YYYY島

――――――


チ級「住んでるの、ここになってるじゃないですか! やだもー!」

チ級(レン様って、レ級さんのことだったのか……)


そこには深海棲艦の写真がビッシリとアップロードされていた。


チ級(フレンドにnagamon-big7さんがいるぞ……あの人なにやってんだろ……)

レ級「オレ達の写真、大好評だゼ!」


写真のコメントを見ると……


「外人のコスプレぱねぇ」

「港湾棲姫の横乳ハァハァ……」

「北方棲姫が可愛すぎて辛い……」

「装甲空母姫の写真は、どれもこれも絶妙に大事なところが見えない……なぜなのか……」

「タ級の尻、エロ杉ワロタ」


どうやら俺たちは深海棲艦のコスプレチームと思われているようだ。


チ級(ですよねーー。そう思って当然だよね)

レ級「お前の写真もあるゼ?」


俺の変顔もアップされてる。


「いやーきついっす(素)」

「(白目は)ないです」


チ級「」


まさか本物の深海棲艦が自分たちの写真をネットにアップしているとは思うまい。

それでも目立ったり、住んでいる場所を公開するのはリスクがある。

しかし、我が鎮守府がレ級に文句を言えるはずもなく、レレレのレン@南国棲地のページは、現在も絶賛稼働中であった。


一方、数か月前のXXXX鎮守府……。

指令室に提督と長門がいた。


長門「このような高価なカメラを本当に贈っていいのか?」

提督「かまわん。費用はこちらで持つ」

長門「そうか、分かった」


長門と入れ替わりに、日向と鳥海が部屋に入ってきた。


日向「……以上で遠征の報告は終わりです」

提督「うむ。ありがとう」

日向「ところで提督、長門となにをやっておられるのですか?」

提督「『仲直り』の手伝いだ」

日向「『仲直り』?」

提督「船上パーティでご婦人の悩みを聞いてな。紳士である俺としては助ける義務がある」

日向「ああ、思い出しました」

鳥海「?」


提督は旅客船姫の相談を鳥海に話した。


鳥海「そんなことが……」

日向「しかし、カメラを贈るのと『仲直り』がどう関係するのですか?」

提督「プレゼントは女を落とす第一歩だ」

鳥海「」

日向「」

日向(提督が言うと生々しいな……)

提督「言い方を変えるか。贈り物は相手と仲良くなる第一歩だ」

日向「そうですか……」

提督「相手が興味を持ちそうな物、気に入りそうな物を贈って、相手の心をこじ開ける」


鳥海が少し首をひねる。


鳥海「個々人のレベルなら『仲直り』も可能だと思いますが、全体では難しいのではないでしょうか?」

提督「……」

鳥海「感情もさることながら、深海棲艦との戦争は世界経済に完全に組み込まれています」

提督「そうだな。日本に至っては経済が戦争に依存しきっていて、その上、戦争前より繁栄している。一番現状を維持したいのは日本かもな」


深海棲艦から自国の商船を護衛する力を持っているのは、艦娘を所有しているアメリカ、日本、NATOだけであり、

結果、アメリカ、日本、NATOが世界の海運を牛耳ることになった。

太平洋航路をアメリカと二分している日本は、海運、他国商船の護衛で、莫大な富を得ている。


提督「日本の財界は和平を望んでいない。今の立場を失いたくない海軍もな」

日向「まあ……そうなりますね」


国富の稼ぎ頭の海軍の立場は非常に高く、発言力も強い。まさに隆盛を誇っていた。


提督「和平を望んでいるのは陸軍と中国だな」


陸軍は調子に乗っている海軍を非常に不愉快に思っている。

中国は艦娘を所有していないため、輸出しても利益のほとんどを海運料に取られてしまい、

輸出すればするほど日本だけが儲かり、自分は儲からない状態に陥っていた。


提督「かくいう俺も和平を望んでいる」

日向「そうですか」

提督「意外って顔だな」

日向「正直、意外でした」

提督「俺はこの戦争が気にくわない。早く終わらせたいね」

提督「今の俺はな、言ってみればコートの外のバスケット小僧だ。楽しそうに試合をしているお前らを、

ボール片手に指をくわえて、羨ましそうに見ているだけのな」

鳥海「……」

提督「戦場は俺たちの場所だったんだ。しかし今はどうだ。お前たちと深海棲艦だけで試合をしている。

そろそろコートを空けて欲しいというのが、正直な感想だ」

日向「……」


提督が椅子に深く座り直す。


提督「……提督家は代々軍人でね。といっても将官とか元帥とかじゃない。傭兵、海兵隊員、降下部隊員とか、まあ兵隊だな」

日向「……」

提督「兵隊をやって好き放題暴れて、金を稼いで、旨い料理を食って、上等な酒を飲んで、いい女を抱いて、

子供をあちこちに作ったら、戦場で無責任に死ぬ……。これが代々伝わる提督家の男子の生き方だ」ニヤリ

日向「率直に言わせて頂くと……まあ……ろくでなしですね」

提督「そう言ってくれるな。兵隊以外の生きかたを知らないんだ。ある種の社会不適合者ともいえる。

俺も提督家の血のせいか知らんが、戦場で大暴れしたい。だが、この戦争で人間の兵士はお呼びじゃない。

お前らだけで楽しんでいる。もう外野はうんざりだ」

日向「私たちは別に楽しんでいるわけではないのですが……」

提督「それは分かっているがな……」


鳥海がメガネをクイッと上げた。


鳥海「話を戻しますが、深海棲艦との戦争は、もはや世界経済の枠組みの一部となっています。

和平は世界経済に大きな影響を与えるでしょう」

提督「海軍の予算だけでも十兆円以上だしな。和平となったら予算は激減するだろう。

それに、この戦争で飯を食っている奴はごまんといる。和平を阻止するには十分すぎる理由だ」

鳥海「海軍上層部が私たちの潜水装備の提案を受け入れなかったのも、巣の攻略に消極的なのも、もしかして……」

提督「かもしれん」ニヤリ

日向「状況は厳しいですね。提督は和平の策をお持ちなのですか?」

提督「ない。材料が足りなすぎて検討さえできん。これでは和平の『絵』が描けない。

それでだ、材料を集めるためティターニアさんを日本に呼んで、色々事情を聴こうと思っている」

鳥海「司令官さんらしくありません。いつもなら女性に手間をかけさせず、司令官さん自ら赴くのではないですか?」

提督「俺が動くと目立ちすぎる。俺が会いに行ったら、情報部がティターニアさんに目をつけるかもしれん。それに……」

鳥海「それに?」

提督「俺にはムサシさんがいるからな。他の女と二人きりで会いたくない」ニヤリ

日向(ろくでなしなのか、誠実なのか……ふふっ……本当にたちが悪いな)


日向が微笑む。


日向「筑摩によるとティターニアさんの性格は『穏やかで明るい。少々腹黒だが、根は善良。

小心で臆病だが、開き直ると意外とふてぶてしい』だそうです。招待したとして、小心で臆病な彼女が来ますかね?」

提督「俺の経験上、年頃の女の子には食い気か色気だ。ということで、金剛と沈黙隊長を呼んである。彼女たちも交えて作戦会議だ」


提督の思惑通り、旅客船姫は食い気で見事に釣り出されてしまい、俺たちは日本に行くことになった。

メンバーは港湾棲姫、北方棲姫、旅客船姫、ル級、レ級、リ級、そして俺。


チ級(不安しかないこのメンバー……生きて帰れるのか……その前に飛行機に乗れるのか……?)


この時代、旅客機は全て超高高度を飛行する超音速機になっていた。

我に追いつくグラマンなし、ではないが、超高高度を超音速で飛べば深海棲艦の艦載機に撃墜されないそうな。

そしてZZZZ国の国際空港の発着ロビーに来たのだが……。


キンコーーン


チ級「」

係員「お客様、アクセサリーなど金属類をお外しになって下さい」

チ級「は、はい」


俺は腕時計、財布、キーホルダーを係員に預けて、もう一度、金属探知機を通った。


キンコーーン


チ級「」

係員「お客様……」

チ級「ひゃい!」


俺は金属ホックの付いているブラを外し、もう一度、金属探知機を通る。


キンコーーン


チ級「」


振り向くと係員がマッチョな完全武装の警備員と何やら話をしている。


チ級(しまった……体内に格納した艤装が金属探知機に反応しているのか……まずい……)


ゴリラのような警備員たちがゾロゾロとやってきた。


- 続く -

保守

>>675
保守サンクス

保守

再開するよー


警備員「マダム、あちらでお話を」


口調は丁寧だが、目が笑っていない。

解剖されて、ホルマリン漬けになっている俺の姿が頭に浮かぶ。


チ級(あばばばば!?!? どうすれば!!!)


ふと、ヘ級から渡された封筒を思い出した。


チ級「こ、これ! これを見てください!」

警備員「や、これを早く出してくだされば。失礼致しました。どうぞお通り下さい。」


そこには医者の診断書があった。

骨折のため体内に金属プレートが埋め込まれている、とある。

ちょっと多めのお金を払って、全員分の診断書を書いてもらったそうだ。


チ級(医者も適当だな……。でも今回は感謝)


無事、飛行機に乗り込む俺たち。


アナウンス「当機は東京 XX:XXに到着予定でございます。ただいまより、機内サービスについてご案内させていただきます」


明るい機内。客は満員。日本人の団体客もいた。

しかし、俺たちは団体客の席からはなれて、まっすぐ先頭に進む。

俺たちの座席は、なんとビジネスクラスだった。


チ級(しかし……ビジネスクラスって……。艦娘って給料良いのかな?)


提督のポケットマネーから出ているとは、知る由もない。

ふと見ると、港湾棲姫が座席に座っている。さすがのビジネスクラスでも、ケツがみっしり。きつそうだ。


チ級(マジか……尻肉がはみ出そう……)


旅客船姫と警護のリ級、港湾棲姫と北方棲姫が隣同士。俺の隣は……。


レ級「CAのスカートってさ! パツーンとしてて、そそられるよナ! そう思うダロ?」

チ級「ご自重下さい……」


レ級だった。


レ級「CAを間近で見たいから通路側の席にシタケドサー、外見たいから席代わっテ?」

チ級「はい」


しばらく窓から外を眺めると……。


レ級「トイレ行きたいから、やっぱ通路側に代わっテ」

チ級「……はい」


そして……。


アナウンス「まもなく出発いたします。お座席のベルトをしっかりとお締めください」


甲高いエンジンの音が大きくなる。

徐々に動く機体。


チ級(キタキターーーー!)


超音速機だけあって、ものすごい加速。体が席に押し付けられる。


レ級「キシシシッ!!! スゲーーー!!! 人間ヤルジャン!!!」


子供のようにはしゃぐレ級。超楽しそう。北方棲姫も興奮している。

リ級、港湾棲姫は落ち着いている。

旅客船姫は、真っ青な顔で十字架のペンダントを握り締めていた。


チ級(深海棲艦も神に祈るんですね……)

旅客船姫「こんな鉄の塊が空に浮くなんて、やはり信じられません……いや、疑ってはだめです……艦載機だって飛んでいます……。

でも氷山にぶつかったら……いや、空に氷山はありません……でもラピュタが本当にあったらなら……信じるのです……」ブツブツ


グワっと機体が持ち上がり、離陸した。


旅客船姫「ひぃッ!」


ぐんぐん上昇し、窓から島々が一望出来るようになる。


チ級「レきゅ……レンさん。見てください。一面、海と島ですよ! 俺たちの島も見えます」

レ級「ワーオ! 席代わって」

チ級「」


アナウンス「ベルト着用のランプが消えるまで、ベルトを外さないようお願いいたします」


その後、レ級はビジネスクラスのフルコースを堪能し、たらふく酒を飲んで寝てしまった。


アナウンス「当機はまもなく降下態勢に入ります。お座席のベルトをお締めくださいますよう、お願いいたします」

チ級(とうとう日本に戻ってきた)


窓の外は、夜でほとんど何も見えない。

機体が降下し、フワーッと体が浮きそうになる。

旅客船姫は、まだ十字架を握り締めていた。


旅客船姫「やっぱり鉄の塊が空に浮くわけないのです……どんどん落ちていきます……ああ神様お助け下さい……」ブツブツ

チ級(姫様の感覚は、19世紀だからな……頭で理解しても、心が納得出来ないんだろうな……)


窓から、都会の光が見える。

地上が近づいてきた。

カクンとかすかな衝撃が、タイヤの接地を告げる。

機体が水平になると、逆噴射のエンジンの絶叫が響いた。


アナウンス「この次もぜひAAAA航空をご利用くださいますよう、心よりお待ちしております」

チ級「着いた~」


ここは調布国際空港。海に面した羽田空港が壊滅したので、小さい調布空港を無理やり拡張し、国際空港にしたのだ。

非常事態ということで、近隣の公園、大学、警察大学校、味スタ、多磨霊園!を接収し、巨大空港にしたそうな。


長門「ようこそ日本へ!」


到着ロビーを出ると、長門が出迎えた。


長門「お疲れでしょう。車でホテルまで送ります。今夜は横浜のホテルで一泊して、ゆっくりお過ごしください。

明日は横須賀でコスプレイベントに参加して頂きますので、朝、迎えに参ります」


俺たちはホテルに着くと、部屋に入った。

二人部屋が三部屋。もちろん座席と同じ組み合わせ。

疲れた俺は、すぐ寝たかったが……。


レ級「どっか遊びに行こうゼ!」ニタリ

チ級「」


- 続く -


遊びに行くにしても、もう遅い時間だ。観覧車はまだやっているが、レ級と二人っきりで乗るのは勘弁してほしい。

他にレ級が満足しそうな所は……。


チ級「ラーメン博覧会に行きましょう!」

レ級「らーめん? なんだソレ?」

チ級「食べ物です。まあ行ってみませんか?」


俺たちは、タクシーでラーメン博覧会に向かった。

なお服装だが、俺は白の長袖TシャツにGパン、スニーカー。

レ級は黒のパーカーワンピ、生足、黒の編み上げブーツ。ワンピのすそから見える白い太ももが眩しい。


チ級(ワンピが短すぎて、パンツ見えそう……)


到着すると、チケットを買って屋内に入る。

夜遅くだからか、割と空いていた。目当ての店の行列も短い。


チ級「トンコツラーメンがお奨めです! クセは強いですが、濃い旨みとコクで病みつきですよ!」

レ級「スゲー匂いダナ……ソレでイイや」スンスン


運良く人気店に入れた。

席で待っていると……。


店員「はい! お待ち!」


トンコツラーメンが来た。


チ級「キターー!!!」

レ級「フーン、旨そうジャン」

チ級「早速食べましょう!」

レ級「オレ、チョップスティック使えないから、フォーク貰ってくれ(英語)」


俺たちは英語で話している事を忘れてた。


チ級「おおっと! スイマセン、フォーク、クダサイ(日本語)」


レ級はフォークで器用にラーメンを食べる。


レ級「旨いジャン!!! ナニコレ!? 味濃イ!!! ウマミってヤツカ? オイリーなのもイイ!!!」ズルズルーー


あっという間に平らげた。


レ級「さっさと食い終わレ!!! 別の店のトン・クォーツも食おうゼ!!!」

チ級「ふぁい……」モゴモゴ


あっという間にラーメン博覧会の店を2周したレ級。

俺は3件目でギブアップだった。


レ級「キシシシ!!! トン・クォーツ最高!!!」

チ級「うぷ……腹も一杯になったし、帰りますか!」

レ級「ウーーン……なんか物タンネエナ……」

チ級「ホテルの人は夜の町も詳しいですよ。一回戻って聞いてみましょう」


タクシーでホテルに帰り、受付に聞いてみた。


チ級「この時間から外人でも楽しめる場所ってありますか?」

受付「そうですね……ああ、面白いところがありますよ!」

レ級「ドコドコ?」

受付「艦娘さん達が集まっているバーがあって、明け方近くまでやってます。海軍のPRのため、普通のお客さんも歓迎らしいです。

美人揃いの艦娘さんたちと仲良くなれるかもしれませんよ!」ニッコリ

チ級「」


まずい。レ級と行ったら、絶対揉め事を起こすだろう。


チ級「あ、僕、戦艦少女コレクションのイベントやらないと! じゃ、これで!」

レ級「待テ」ガシッ

チ級「な、なんですか?」

レ級「行クヨナ? ナ、行クヨナ?」ニタァ

チ級「ヨ、ヨロコンデーーーー!」


タクシーで艦娘バーまで行く。大きなビルの横に地下に続く階段。「艦娘バー」の看板がある。

そこを降りていき、大きな扉を開けると……。


飛鷹「いらっしゃいませ」


優しそうな美人のバーデンダーさん。


隼鷹「うへへへヘ!!!」

千歳「ヒヒヒヒヒ!!!」

那智「ガハハハハ!!!」


酔っ払い共も。


チ級「フタリデス」

飛鷹「カウンターへどうぞ」


レ級はニタニタしながらグルッと店を見渡す。値踏みするような、ネットリとした視線。


チ級(全員を相手に喧嘩して、勝てるか、負けるか考えてるのかな?)

チ級(とっとと酔わせて、揉め事を起こす前に帰ろう……)

チ級「レンさん、カクテルとか飲んでみませんか?」

レ級「うまいノ?」

チ級「旨いのも、不味いのもあります。多くの種類があるので、バーテンさんと相談するとイイですよ」

レ級「フーン……ジャ、甘いの」

チ級「ビールと、甘いカクテルを(日本語)」

飛鷹「承知いたしました……」


シャカシャカとシェーカーを振って、きれいな色のお酒をグラスに注ぐ。


飛鷹「どうぞ」

チ級「じゃ、カンパーイ!」

レ級「キシシシ!!! カンパーイ!」


ラーメンの後のビールが旨い!


レ級「アマーイ!!! 美味シイ!!!」

チ級「バーテンサン、彼女、美味シイッテ、言ッテマス」

飛鷹「恐れ入ります」


酒が進んで、レ級も酔っ払いだした。


チ級(レ級さんも気持ち良く酔ってるみたいだし、そろそろ帰るか……)

レ級「しかしサー、艦娘ッテサー、役立たずダヨナ!!!(英語)」

チ級「」

レ級「何年戦争シテンダッテノ! それなのにノウノウと酒飲んでサ! 恥ずかしくネエノ!?(英語)」

チ級「」

レ級「心配スンナ! 低能だから、英語なんてワカンネエヨ! ギシシシシシシッ!!!(英語)」


明らかに店の雰囲気が凍った。


チ級(あれ? もしかして英語分かってる?)


ドンッ!とウイスキーのボトルが目の前に置かれた。


那智「役立たずでスマンな。お詫びに酒をご馳走してやろう。拒否はするまいな(英語)」ギロリ

チ級(この人、英語分かってる上に、酔っ払ってるーー!!!)


那智が三つのショットグラスにウイスキーを注ぐ。

ボトルには、KNOB CREEKとあった。

一口飲むと、樽の香りと、スッキリとした甘さが口の中に広がる。

そして……。


チ級「アルコールが強ーーーーい!!!」


口の中が熱い。火を噴きそう。なんと50度だそうな。

そんなウイスキーを涼し気に一気に飲む那智。


那智「人を役立たずと言うほど偉いなら、これを一気に飲むなんて余裕だろ!(英語)」


レ級も受けて立つ。ショットグラスを一気に飲み干した。


レ級「オレ様は偉いからナ。こんなの余裕! キシシシシ!」


50度の酒を、まるで水のように交互に飲む二人。

そして二本ボトルが空くころ……。


那智「う……うーーーん……休養も戦いだ……」ゴトリ

レ級「オヤスミ! 飲み勝ったオレハ偉い! 役立たずって言う資格アルネ!」


武蔵「おいおい、どこを見ている。私はここだぞ(英語)」

チ級(別な人がキターーーー!)


ドンッ!とまた別なボトルが置かれた。

Pimlico Ginとある。


武蔵「どうだ調子は? まあ、のんびり行こう(英語)」


やはり三つのショットグラスに、ジンを注ぐ。

一口飲むと、ジュニパーベリーの香り(いわゆる湿布の香り)と、キリッとした甘さが口の中に広がる。

そして……。


チ級「さっきより、アルコールが強ーーーーい!!!」


口の中が熱い。火を噴きそう。なんと57度だそうな。


武蔵「さあ、行くぞ! 飲み方……始めっ!」グイッ

レ級「キシシシッ!」グイッ


あっという間に二本のボトルを空にする二人。そして……。


武蔵「む……バイタルパートまで……不覚……」ゴトリ

レ級「アレ!? ボクが、マタ勝ったよ! お酒、強いカモ!? キシシシシ!」


ざわつく艦娘たち。

そこに……。


Pola「な~にやってるんですか皆さん? 仲間に入れてくださいよぉ~」

レ級「キシシシシ! お嬢チャンが出る幕ジャナイヨ?」

Pola「違いますぅ~~。お酒を飲む人は、みんな仲間なんですぅ~。だから一緒に飲みましょ~。うふふぅ~」


やはりドンッと二本ボトルを置く。

Cliternia Grappaとある。


Pola「イタリアン・ファミレスにあるグラッパなんですよ~」ニッコリ

チ級(40度か。お嬢様って感じだな……って、え?)


Polaは一人でラッパ飲みして、ボトルを全部空けてしまった。


Pola「これで追いつきました~~」ニッコリ

Pola「次はイタリアのリキュールを楽しみましょ~~」パァアアア


LATTE DI SUOCERAとある。

黒いラベルには、ドクロのマークと、75度の文字が!!!


Pola「薬草っぽいフレーバーが、イタリアンぽいんですよ~~」テレテレ

チ級(かわいいが、何をテレてるんだろうか……?)


薬草で健康になるどころか、毒薬のようなラベルである。

ショットグラスに注がれたので、一口飲んで見ると……。


チ級(ハーブキャンデーのような濃厚な薬草っぽい甘さと……アルコールがあああああああ!!!)


Pola「うれしいです~。このお酒をこんなに気に入ってくれるなんてぇ~。いつも、みんな、このお酒飲んでると、途中で黙っちゃうんですよぉ~」

チ級(75度の酒なんて、間違いなく撃沈するだろうな……)

Pola「うれしいから、とっておき、出しちゃいます~」パァアアア


Habsburg Absinthe! 89度!!!


Pola「Salute! 一緒にお酒を飲んだら、もうお友達ですぅ~」ベッタリ、チュッ、チュッ

レ級「ウワッ! サワンナ!」

チ級(ずいぶん酒臭いキマシですこと……)


とりあえず匂いをかいでみると……。


チ級(鼻が痛い!!! アルコールしか感じない!!!)


口に含むと……。


チ級(スッキリとした薬草系の甘さと……痛い!!! アルコールが痛い!!!)


その後、一本ボトルが空く頃……。


レ級「オマエ……ナマエは?」

Pola「ポーラはポーラですよぉ~~」ニッコリ

レ級「ソウカ……オボエトク……クソッタレ……」ゴトリ


とうとうレ級はカウンターに突っ伏し、寝息をたて始めた。

>>698
投稿しなおすよ~


涼しい顔で交互に飲む二人。一本空けると……。


Pola「うれしいです~。このお酒をこんなに気に入ってくれるなんてぇ~。いつも、みんな、このお酒飲んでると、途中で黙っちゃうんですよぉ~」

チ級(75度の酒なんて、間違いなく撃沈するだろうな……)

Pola「うれしいから、とっておき、出しちゃいます~」パァアアア


Habsburg Absinthe! 89度!!!


Pola「Salute! 一緒にお酒を飲んだら、もうお友達ですぅ~」ベッタリ、チュッ、チュッ

レ級「ウワッ! サワンナ!」

チ級(ずいぶん酒臭いキマシですこと……)


とりあえず匂いをかいでみると……。


チ級(鼻が痛い!!! アルコールしか感じない!!!)


口に含むと……。


チ級(スッキリとした薬草系の甘さと……痛い!!! アルコールが痛い!!!)


その後、一本ボトルが空く頃……。


レ級「オマエ……ナマエは?」

Pola「ポーラはポーラですよぉ~~」ニッコリ

レ級「ソウカ……オボエトク……クソッタレ……」ゴトリ


とうとうレ級はカウンターに突っ伏し、寝息をたて始めた。


チ級(はぁ~。やっと終わった……ん?)


見るとレ級の尻がもぞもぞしている。


チ級(ヤバい!!! 艤装のコントロールがおかしくなってる!!! 尻尾が展開されちまうぞ!)


俺はレ級を担ぐと、適当な金を置いて、店から逃げ出した。


チ級「さいなら!」


レ級を背負って、とぼとぼ歩く俺。


レ級「ん……オレ、負けたノカ……?」

チ級「……」

レ級「ソウカ……う……ウウ……」

チ級(負けて悔しくて泣くなんて、可愛いところあるな……)

レ級「ウウ……ウ……ウウォオロロロロロ……」


マーライオンと化したレ級。


チ級「ギャアアアアアア!!!」

チ級(泣いてねーーー! やっぱり泣くようなタマじゃなかった……)


マーライオンの滝行を受けた俺は、自販機で水を買って、体を流した。


チ級「レンさん、水どうぞ」

レ級「ウン……アリガト! 愛してるゼ、チドリ! キシシッ!」

チ級「何言ってんすか……」カァアアア


やっとホテルに着いた。すぐにシャワーを浴びると、甘酸っぱい香りが漂う。


チ級(明日……つうか今日のコスプレイベント、無事に終わるんだろうか?)


俺はベッドに入ると、あっという間に眠りに落ちた。


- 続く -

なお、艦娘バーで出た酒は、全部飲んだことがあります。

チ級の感想は、まんま私の感想です。

それと、もし「俺氏、チ級になる」が完結したら、誤字を直して、今の書き方で全て書き直した版を、あげ直すかも……。

そういうわけで、続き行きます。


朝、俺は北方棲姫の手荒いモーニングコールで目を覚ました。


北方棲姫「チドリ~~、遊んデ~~!」ドスン


そう言いながら、俺の腹の上に乗る北方棲姫。


チ級「うっ……おはようございます」

リ級「おはようなのです!」

ル級「おはよう」


眠い目をこすり、ホテルのレストランへ。

ホテルの朝は、だいたいバイキング形式だが……。


チ級(いやな予感が……)


予想通り、スイーツとフルーツがあらかた無い。


レ級「ヨッ!」


満足気にくつろぐレ級。

近くに紅茶を飲む旅客船姫、港湾棲姫。


チ級(レ級さん元気だな……)


食欲の無い俺は、オレンジジュースだけの朝食。

そして……。


長門「お迎えにあがりました」


長門は、ポケットがたくさん付いた上着とズボン、エンジニアブーツという格好。いかにも作業着。

見ると車はハイエース。艶消しダークオリーブというのが海軍らしい。


長門「荷物は積み込みましたね。では参りましょう」


道中、ちょっと質問してみた。


チ級「長門さん、艦娘さんは英語が話せるんですか?」

長門「うむ。片言レベルですが。海外艦との合同作戦もありますし、英語は必須ですから」

チ級「そうですか……」

チ級(そういえば船上パーティも英語と日本語がちゃんぽんだったな……)


そんなこんなで会場到着。


長門「ここが会場の、横須賀市おまゆう文化会館です。まずは着替えて下さい。更衣室に案内しますよ」


ぞろぞろと長門に付いていく。


長門「この会議室が特別ゲスト専用の更衣室です。荷物はここに置いて下さい。だだし貴重品は身につけて下さい。

着替え終わったら、また車のところに来て下さい。渡したいものがあります」


長門が出て行くのを確認して、着替え始める俺たち。

といっても服を脱いで、艤装を展開するだけ。


チ級(しかし……皆の下着姿や裸を見るのは、なんか恥ずかしいな)


リ級は、かわいらしいランニングタンクトップに、もこもこパンツ。


チ級(子供らしいな……)


ル級は、さらしに褌。


チ級(えええええ!!!)


レ級は、黒いブラとショーツ。


チ級(まんまだな……)


港湾棲姫は、ノーブラ、黒いヒモパン。


チ級(エロい……)


北方棲姫も同じ。


チ級(姉さんに合わせたのか……)


俺は、安物の適当なブラとトランクス。

ショーツというかパンティの、あのピッチリ感が苦手だったからだ。


チ級(旅客船姫様は……)


旅客船姫は、シュミーズとドロワーズ。


チ級(世界名作劇場かな……)


着替え終えて、本来の姿に戻った俺たちが車のところに来ると……。


長門「む! 素晴らしい! お招きした甲斐がありました!」


長門の格好は……島風コスだった。


チ級(なんつーか島風さんと呼びたくなる……)


190cm近い身長。鍛え上げられた体。僧坊筋、大円筋、中でも三角筋がすごい。

マジンガーZの肩のように、丸く盛り上がっている。

腰も細く、太ももの太さが強調されている。


チ級(尻丸出し、パンツ丸見えだが、なぜこんなに嬉しくないのか……)

チ級(そういえば、あの尻、どっかで見たな……)


ふと思い当たる。

ニヤニヤ動画のパンツ・レスリングシリーズの、四角くて鍛え上げられたガチムチの尻に似ていた。


チ級(なるほど……)


長門「渡したいものは、まずはゲストカード。会場の入退出に必要なので、決して無くさないようお願いします。

それと……これ! 名刺、ネームカードです。コスプレイヤー同士、名刺交換は絶対の礼儀。古事記にもそう書かれているそうです。

まあそれは冗談ですが。友達になったら、名刺を交換してください」


長門が皆の分の名刺を配る。


長門「僭越ながら、こちらで名刺を作りましたのでお使い下さい」


皆の名刺には各自の可愛い写真がプリントされていたが、俺のは例の変顔の写真だった。


チ級「」


そこに……。


??「ふん。あいかわらず不細工だな。XXXX鎮守府の」


見ると、時津風コスの長門がいた。


チ級(時津風親方、登場ーー!!!)

島風・長門「EEEE鎮守府の。不細工とはお前のことか?」

時津風・長門「顔と頭だけじゃなくて、耳まで悪くなったのか?」

島風・長門「なんだと!!!」


つかみ合いを始めた二人。


??「まあまあ。お前ら喧嘩しても不細工はなおらんぞ」


天津風コスの長門が、仲裁に入る。


チ級(禍津風キターーー!!!)

島風・長門「ふん! 駆逐艦の可愛らしさを1mmも出せていないお前が言うな!」

時津風・長門「コスプレイヤーの恥さらしが! 失せろ!」

天津風・長門「聞き捨てならん! まとめて相手してやる!」

チ級(なんという地獄絵図。あの三人だけ絵柄が、宮下あきら先生タッチ)


その時、一台の車が駐車場に入ってきた。ストレッチ・リムジン仕様のセンチュリー。

三人の近くに停車し、中から電……のコスプレをした長門が出てきた。


チ級(なんかこの人、特別でかく見える。ズオッとか、ゴゴゴゴとか聞こえてきそう)


電・長門が車の外に出ると、一瞬だけ身長が3mぐらいに見えた。


チ級(大豪院邪鬼かな? またはデビルリバース?)


実際、身長は他の長門と変わらないが、前後と左右に大きいようだ。


電・長門「元気がいいな……です?」


電・長門に気づいた三人は、手を放し、即座に気をつけの姿勢になった。

電・長門は特に気にしていないようだ。


電・長門「ゲストの方たちは、どこです?」

島風・長門「はっ! こちらです!」


くるっとこっちを向く電・長門。


チ級(ヒェッ!!!)

電・長門「まずはレンさんにご挨拶です」


キラキラビーズの付いた可愛い名刺入れから名刺を取り出し、レ級に差し出した。


電・長門「私、コスプレ同好会『長門会』の会長、長門と申します。よろしくお願いいたします」

チ級(そこは素なんだ……)

レ級「オレはレン。ヨロシク! キシシッ」


レ級も名刺を渡し、がっしり握手する二人。


電・長門「本日はイベントへのご参加、まことにありがとうございます。それにしても……戦場のレ級と違って、実に可愛らしいです。

本物のレ級は、不細工で不気味で、根性が曲がった顔してるクソチビです」

レ級「アリガトーーーー! キシシシ!」ビキビキビキキキッ

チ級(いきなり地雷を踏み抜いた~~!!!)


- 続く -


レ級の尾がゆっくり頭をもたげた。砲塔が音もなく旋回する。

その時、電・長門が熊さんポーチから何かを取り出した。


電・長門「それと、これ。つまらないものですが……横須賀シフォンなのです」

レ級「…………甘いノ?」

電・長門「甘くて美味しいお菓子なのです!」

レ級「アリガトーーーー! キシシシ!」デレデレ

チ級(なんという気配り……レ級さんがチョロすぎて、生きるのがつらい……)


電・長門は順に挨拶と名刺交換し、最後に旅客船姫に挨拶となった。


電・長門「ティターニアさん……そのコスは?」

旅客船姫「旅客船姫です」

電・長門「……おい、知っているか……?」ヒソヒソ

島風・長門「……いえ、オリキャラかと……」ヒソヒソ

電・長門「その……うん……ユニークですね。イベント楽しんで下さい」


旅客船姫が俺に近づいてささやく。


旅客船姫「微妙な反応でしたが、何か分かりますか?」ヒソヒソ

チ級「大変申し上げにくいですが、多分『痛い子』と思われたかと」ヒソヒソ

旅客船姫「」

チ級「コスプレとは、アニメや漫画のキャラになりきる遊びです」ヒソヒソ

チ級「そこに自分で考えたキャラ、いわゆるオリキャラをねじ込むのは、『分かってないヤツ』と思われるそうです」ヒソヒソ

チ級「旅客船姫様は人間に知られていないので、オリジナル深海棲艦とみなされたかと」ヒソヒソ

旅客船姫「」


旅客船姫は複雑な笑みを浮かべた。


旅客船姫「チドリさん、予備の服ありませんか?」ニコォ

チ級「ええ、ありますよ」ニコォ


結局、旅客船姫はチ級姉妹の妹としてコスプレデビューを果たしたのであった。


電・長門「皆さんに挨拶を済ませたので、一服するのです」


電・長門が、熊さんポーチからリレーバトンのような棒を取り出す。

棒は茶筒のようになっていて、ふたを開けると、中から葉巻が出てきた。


電・長門「海外からお客様をお迎えした特別な記念日には、とっておきのダビドフ・アニベルサリオNo.1なのです!

電の完コスには、欠かせないアイテムなのです!」

チ級(北方謙三先生かな? それとも馳星周先生?)


不思議そうに葉巻を眺めるリ級。


リ級「それは何なのです?」

電・長門「これは葉巻といって、タバコの一種なのです。イベント会場は禁煙なので、くわえるだけで吸わないのです。

ただのアクセサリーなのです」


電・長門は、また熊さんポーチから何かを取り出す。


電・長門「棒付きキャンデーあげるのです」サッ

リ級「ありがとうなのです!」パァアア

電・長門「アルさんにも」サッ

北方棲姫「アリガト!」パァアア

チ級(一瞬にしてちびっこの心を掴んだ……)


じゃれあう三人。

いつの間にか、電・長門の両肩にちびっこが乗っていた。


リ級「高いのです!」キャッキャ

北方棲姫「スゴイ!」キャッキャ

チ級(山のフドウかな……)

電・長門「では会場に行きましょう」ズシーーン、ズシーーン


会場は、艦娘、人間の女性、女の子でごったがえしている。


島風・長門「ここからは、私が案内いたします」

島風・長門「会場の屋内では、同人マンガ、小説、グッズを販売しています。屋外の庭では、コスプレーヤーの撮影会を行ってます。

皆さんも本やグッズを見たり、撮影したりして楽しんで下さい。

なお、参加者は、艦娘、女性のみ。作品は全年齢向けのみです。駆逐艦、女の子でも安心して楽しめますよ。

運営は我ら『長門会』が行ってますので、分からないことがあったら、長門に声をかけて下さい」


その時、向こうから大声が聞こえてきた。


天津風・長門「ん、この本は成人向けじゃないか! おい、こら、待て!」

秋雲「チッ、ばれちゃあしょうがない! 巻雲! ずらかるよ!」

巻雲「ふぇ~。秋雲、待って~~」のたのた


本を抱えた女の子二人が走って逃げていく。それを天津風・長門が追いかけていった。


島風・長門「……このように規律が守られているので、安心です」


島風・長門と一緒に色々なサークルを巡る俺たち。

巡る先々で大歓迎を受けて、皆まんざらでもなさそう。

時津風・長門が売り子をしているサークルを訪れると……。


島風・長門「EEEE鎮守府の。さぼるな! 売り子じゃなくて、運営の仕事をしろ!」

時津風・長門「さぼってなぞおらん! 今回、私は運営ではなく、サークルで参加しているからな。なぜなら……」


机を見ると、写真集が山と積まれていた。


時津風・長門「新刊の私の写真集だ! スタジオに行って、プロのカメラマンに頼んだ。正直、かなりの自信作だ!」ニヤリ


島風・長門が写真集を取って、つまらなそうにペラリと広げて見ると……。


島風・長門「規則違反だ! 販売停止!!!」

時津風・長門「そんな訳あるか! 写真は水着までだぞ!」

島風・長門「こんなグロ画像、規則違反に決まってる!」


またつかみ合いを始めた二人。

俺たちは二人を放っておいて、自由行動することにした。


大井「新刊の大北本下さい」

加賀「新刊の赤賀本いただけるかしら」

チ級(いろんな本があって、面白いな~。お? なんかあっちが盛り上がってる。行ってみよう)


屋外の庭に出ると、大きな人だかり。

中心には北方棲姫とリ級。

撮影と名刺交換に人が殺到している。


チ級(大人気だな。港湾棲姫様とル級さんも人気。一番心配なレ級さんは……?)


レ級は持ってきたカメラで、コスプレイヤーを撮影しまくっていた。

それもきわどいアングルで。


チ級(おっさんか! 旅客船姫様は……)


旅客船姫は金剛姉妹と意気投合したらしく、当然のように一緒に紅茶を飲んでいる。


チ級(英国面の闇は深い……深海棲艦、艦娘の前にイギリス人なんすね……)


ふと俺は屋内の人気の少ないエリアに気づいた。


チ級(ここは……マンガ、小説じゃなくて、それ以外のエリアか)

赤城「横須賀周辺の飲食店レビュー『赤城のグルメ』の新刊でーーす!」

瑞鳳「『卵焼き研究』の新刊だよーー!」

夕張「『ガンプラ研究』の新刊でーーす!」


面白そうなので、一通り買ってみる。


チ級(後で読もう……ん? あのエリアは……?)


会場のすみっこに、一段と人気のない場所がある。


比叡「『比叡のレシピ』新刊ですっ!」ドドドドドドドド

磯風「『料理研究 -クリスマス料理かく戦えり-』新刊だッ!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

チ級(なぜ人が全く寄り付かないのか? 料理本なら旅客船姫様が喜ぶだろうし、買っていこう)


俺は迷わず二人の本を買ったのであった。


チ級(そろそろ時間かな?)


夕方となり、イベントも終了。

散々ちやほやされた北方棲姫とリ級はご満悦。

その他の面々も楽しんだようだ。


電・長門「本日はありがとうございました」

レン「コチラコソ! また呼んデ! キシシシ!」


電・長門が握手してまわる。


電・長門「ありがとうございました」

ル級「こちらこそ、ありがとうございます」


熱い握手をする二人。


電・長門(ほぉ……こいつは……)


別れの挨拶が終わった。


長門「次はXXXX鎮守府で一泊お過ごしください。今夜は歓迎会です!」


XXXX鎮守府に着くと、早速宴会が始まった。


レ級「ポーラはイル?」

長門「残念ですが、当鎮守府にはおりません」

レ級「フーーン……」


ちょっと残念そうなレ級。


雷「リン! こっちで一緒に食べましょう!」

暁「私が誘うつもりだったんだからぁ!」プンスコ

響「いいじゃないか、誰が誘ってもさ」ニッコリ

電「プレシャスでデリシャスなナイトを楽しむのです!」

リ級「アルちゃんも一緒していいのです?」

雷「当然じゃない! リンの友達は、私たちの友達じゃない!」

北方棲姫「ヨ、ヨロシク……」オズオズ


響が北方棲姫の手を取る。


響「心配いらないさ。楽しもうよ」ニコ

北方棲姫「ウン!」パァアア


それを遠くで見つめる港湾棲姫。


港湾棲姫「アルの友達がフエタ……」


なんだかとても嬉しそう。


宴会は進んで……。


レ級「ギシシシシ!!!」

隼鷹「うへへへヘ!!!」

千歳「ヒヒヒヒヒ!!!」

那智「ガハハハハ!!!」


レ級は酔っ払っていた。


ル級「……」グビッ

日向「……」グビッ

鳥海「……」グビッ


ル級は日向、鳥海と黙って飲んでいる。


リン「なのですーー!」キャッキャ

北方棲姫「ホポーー!」キャッキャ


ちびっこは遊んでいた。


港湾棲姫「チョ……ヤメ……」オロオロ

龍驤「なにをどーしたら、そないにデカクなるんか、正直に言わんかい!」ツンツン、ポインポイン

大鳳「あなたの装甲甲板、気になります!」ツンツン、ポインポイン


酔っ払った二人が、左右から胸をツンツンとつつく。

すると、いきなり二人が気を失った。


鳳翔「お二人とも酔いつぶれてしまったみたいです。部屋まで運びますね」シレッ

港湾棲姫(超高速の手刀で、アノ二人を一瞬で気絶サセタ……彼女は一体……)ガクガク


港湾棲姫は酔っ払いに絡まれ、鳳翔に助けられていた。


旅客船姫「アールグレイが……」

金剛「ダージリンが……」


旅客船姫は金剛と紅茶談義で盛り上がっている。


チ級「筑摩さんて楽しい方ですよね~」

夕張「ふふっ。そうだね!」


俺は当たり障りないネタを話しながら、たまたま隣になった夕張と飲んでいた。


チ級(ヘ級ちゃんと似ていて、話やすいな~)


宴会は早めに終わった。子供がいたので、早々に切り上げたそうな。

その後、俺たちは鎮守府のゲストルームに案内された。


チ級「また明日。おやすみなさい」


旅客船姫とル級がゲストルームでくつろいでいると、ノックの音が。


ル級「どなたですか?」

副隊長「沈黙隊長です。もしよろしければ、私たちだけで少し飲みませんか?」


沈黙隊長の誘いであった。


ル級「いかがしますか?」

旅客船姫「毒を食らわば皿まで、と言いますし……ル級さんと一緒でよければ」


そのまま4人は横須賀のバーでダブルデート?したのだが、特に盛り上がらず終わってしまった。

ゲストルームに戻った二人は、シャワーを浴びて、そのままベッドに。


旅客船姫(はあ……疲れました……まさかデートにまで副隊長さんがついてくるとは……。

でも話を適当にはぐらかして、何とかやりすごせたのではないでしょうか……。

それにしても……紅茶が恋しいですね……)


そこに、またノックの音。ル級は寝ている。


旅客船姫「どちら様ですか?」

金剛「夜遅くソーリーね。もし良かったら紅茶でもどうですカ? リラックスできるヨー?」

旅客船姫「喜んで!」


金剛の部屋に入ると、紅茶とスコーンの豊かな香り。


旅客船姫(ああ、素晴らしいですね……)ウットリ


金剛「どうゾ」ニッコリ

旅客船姫「ありがとうございます」パァアア


旅客船姫が紅茶を一口。


旅客船姫「ふぅ。落ち着きます」ホッコリ


そしてスコーンを一口。


旅客船姫「美味しいですね。甘味が深くて……砂糖だけじゃない……これは……そう火薬! ニトログリセリンの甘さ!

それにこの香り! ボーキサイトが一つまみ! しばらく人間の食事だけでしたから、これは嬉しいですね!」パァアア

旅客船姫「……」

旅客船姫「あ……」ダラダラ

金剛「……」ニンマリ


顔面蒼白、汗だらけの旅客船姫。

金剛は満面の笑みを浮かべている。


-続く-

ちょっと再開するよ~


旅客船姫「あら! もうこんな時間! もう寝ませんと!」


あたふたと旅客船姫は立ち上がり、急いでドアへ。


金剛「待つネー! そこは……」

旅客船姫「オッホホホホ! ごめんあさーせっ!!!」ドア、ガチャ

金剛「クローゼットだヨ……」

旅客船姫「……」カァアアアア


あまりの恥ずかしさに動転し、旅客船姫はクローゼットにそのまま入ってしまった。


旅客船姫「……」スポッ、ガチャ

金剛「……」

旅客船姫「……」

金剛「……」

旅客船姫「……」

金剛「……」


静まり返る金剛の部屋。


旅客船姫「いぢめる?」

金剛「いぢめないヨー」

旅客船姫「……」

金剛「……」

旅客船姫「ほんとに?」

金剛「ほんとヨー」


おずおずとクローゼットから出る旅客船姫。


旅客船姫「……」

金剛「……」

旅客船姫「その……」

金剛「はい……」

旅客船姫「わたくし、人間なんです! でも艦娘さん向けの料理を作ってまして、ボーキサイトや弾薬も美味しく食べることが出来るんですよ!」

金剛「sigh……」

旅客船姫「な、なにを……?」

金剛「ワタシ達はアナタの味方です。安心してイイヨー。もう芝居しなくて、いいんだからねっ」ダキッ

旅客船姫「……」

旅客船姫「……」ヘナヘナ、ペタン


旅客船姫が、力なく椅子に座る。


旅客船姫「ばれてしまいましたか……いや、ばれていた、と言うべきでしょうか……どうして私たちを呼んだんです……?」

金剛「それはアナタとお話するためネー」ニッコリ

旅客船姫「え……?」

金剛「アナタのリクエストに応えるのに、情報が欲しいのデース」

旅客船姫「リクエスト……?」

金剛「仲直りしたいんデショ?」

旅客船姫「そんな……そのために……?」

金剛「ウチのテートクは、レディのご要望には敏感な男ネー。女の前でカッコを付けるために全力を尽くすロクデナシデーース!」ニカッ

旅客船姫「……プッ……フ、フフフフハハハ。あの提督さんらしいですね」

金剛「デショ? ハハハハハ」


金剛も椅子に座った。


金剛「紅茶とスコーンが冷めないうちにドーゾ」ニッコリ

旅客船姫「いただきます」ニッコリ

金剛「仲直りするのに、色々聞かせて欲しいデース。そもそも理由は?」

旅客船姫「その……高尚な理由ではないのです。私、前世は旅客船で、争い事は好きではありません……。

それに喧嘩も弱いので、いつ艦娘さんに撃沈されるか毎日不安で……」

金剛「前世は旅客船……紅茶が大好き……もしかして……?」

旅客船姫「はい、前世はタイタニック号です」

金剛「Oh! Realy? ワタシ、前世でベルファストに行ったことがあるヨーー!」

旅客船姫「本当ですか?」

金剛「イエーース! ワタシはバローで生まれて、日本に行く前にベルファストで検査を受けたネー。

となるとアナタはワタシより年上……オネーさんネー!」

旅客船姫「……年の話は止めて下さい……」

金剛「ソーリー!」ニッコリ


明け方近くまでガールズ・トークする二人。


金剛「イギリス話とティターニアさんのご家族の話、とても楽しかったデーース!」ニッコリ

旅客船姫「わたしもです」ニッコリ

金剛「またお茶会して、仲直り、一緒に頑張りマショ?」

旅客船姫「ええ」ニッコリ


旅客船姫は金剛の部屋を出て、ゲストルームに戻り、ベッドに入る。


旅客船姫(金剛さんに色々話してしまいました……。でも、深海棲艦の戦力、巣の位置、姫級の意味、お母様の存在、重要なことは話せなかった……。

金剛さんごめんなさい……)


一方、ベッドの中の金剛。旅客船姫が全て話していないことなど、百も承知だった。


金剛(仲直りしたいのはティターニアちゃんのグループだけで、他の深海棲艦は分からないデスカ……。

しかし……ティターニアちゃんは、まだ隠してることがありマスネー。ワタシの目はごまかせマセーーン。もっと仲良くならないとデース……。

それにしてもワタシよりBBA……じゃなくて年上がいるなんて、ちょっと嬉しいデーース……)ニタァ


黒い喜びを抱いたまま、金剛は眠りに落ちたのであった。


- 続く -


翌朝、鎮守府の大食堂で朝食。

その後、金剛の紅茶が振舞われた。


金剛「どうぞ召し上がれ」

チ級「美味しい!」

レ級「スコーン甘イ!」ガツガツ


しかし、浮かない顔の旅客船姫。


旅客船姫(紅茶は美味しいですが……ハァ……金剛さんは悪いようにはしないと、おっしゃっていましたが……。

もうこうなったら覚悟を決めましょう……なるようにしかなりません)


急に旅客船姫がスコーンを頬張る。


旅客船姫「美味しいですわッ!」ガツガツ


朝のお茶会が終わると、長門が来た。


長門「本日は上野の動物園に行って、東京のホテルで一泊。翌日、お帰りとなります」

北方棲姫「動物園!」キラキラ

リ級「パンダさんなのです!」キラキラ

長門「今回は、この五月雨も同行します」

五月雨「五月雨っていいます! よろしくお願いします」ペコリ


皆、ハイエースに乗り込むが……。


五月雨「荷物、運びます! お任せください! あれぇっ!?」コケッ

チ級(大丈夫かな?)


動物園に着くと、おおはしゃぎのチビっ子たち。


北方棲姫「パンダ! パンダ!」キャッキャッ

リ級「ライオンさんなのです!」キャッキャッ

五月雨「ハダカデバネズミ!」キャッキャッ


はしゃぎ過ぎてちょっと疲れたチビッ子に、アイスを配る長門。


北方棲姫「アイス!」ペロペロ

リ級「冷たくて美味しいのです!」

五月雨「うーん、最高です! あっ、アルちゃん」

北方棲姫「ん?」

五月雨「アイスがお口から垂れてますよ。フキフキしてあげます!」フキフキ

北方棲姫「ん……ん……。サミー、ありがとう!」


それから北方棲姫は五月雨がお気に入りに。


北方棲姫「サミー! サミー! あっち行ク!」

五月雨「うん!」

リ級「ウフフ。アルちゃん、すっかりサミちゃんがお気に入りなのです」ニッコリ


そんなチビっ子に熱い視線を送る長門、ル級、そして港湾棲姫。


ル級「……イイ……」デレーーン

長門「む! 分かりますか?」デレーーン

ル級「守りたい、あの笑顔……」

長門「同士よ……」ガシッ


熱い握手を交わす二人。


港湾棲姫「ワタシも混ぜてモラエマスか?」

長門「おお! あの娘たちを愛する心があれば、萌える心があれば、間違いなく同士です!」

港湾棲姫「……」ガシッ


三人が固く手を握り合う。


チ級(あの三人は、一体なにを……?)


そこに、雨が降ってきた。


長門「雨が降ってきました。博物館に移動しましょう」


科学博物館に移動する一行。


北方棲姫「……」ポーーー

五月雨「アルちゃん、気になるの?」


北方棲姫がゼロ戦の前で足を止めた。


北方棲姫「……ゼロ……」ポーーー

五月雨「アルちゃん……」ダキッ


ゼロ戦を見つめる北方棲姫を、後ろから五月雨が抱きしめる。


北方棲姫「サミー……」ポーーー


それを見つめる三人。


長門「……イイ……」鼻血ダラー

ル級「……イイ……」鼻血ダラー

港湾棲姫「……イイ……」鼻血ダラー

チ級(さっきからあの三人は、一体なにを……?)


一行は、古代生物のコーナーに。

巨大な恐竜の化石が展示されている。


リ級「はわわ……大きいのです……」

北方棲姫「キョウリュウ!」キャッキャッ

五月雨「三葉虫、可愛い!」キャッキャッ

チ級(五月雨ちゃん、センスが鋭いというか、トガってるな……)


一方、少しアンニュイな旅客船姫。


旅客船姫「私たちは……地球上の、どの生物とも似ていません……」

チ級「……」

旅客船姫「私たちは……どこから来て、どこに行くのでしょう……」

チ級「……」

旅客船姫「私たちは……なんのために生きているのでしょうね……」

チ級「なんのため……人間も、それは分かっていないのですよ」


旅客船姫が遠い目で微笑む。


旅客船姫「そうですか……」


博物館の閉館時間となった。


長門「アメ横という商店街があります。雨も止みましたので、そこに行きましょう。様々な店があって、眺めるだけでも面白いですよ」


夕方の買い物の時間。かなりの人ごみ。一行がアメ横を歩いていると……。


港湾棲姫「キャッ!」


サングラス、マスクの大柄な男が、港湾棲姫の荷物をひったくろうとしている。


男「チッ!」


力比べで深海棲艦にかなうわけがなく、男はあきらめて逃亡した。


長門「貴様! 待て!」


長門が追うが、人ごみに阻まれ見失ってしまう。


長門「くっ、逃げられてしまった。ハーバーさん、お怪我は無いですか?」

港湾棲姫「無いワ」


一同、胸をなでおろすが……。


港湾棲姫「アルが……アルがいない!」

一同「!」


- 続く -


港湾棲姫「アル! アル!」

チ級「アルちゃん! アルちゃん!」


俺たちは周囲を探すが見つからない。

その時、長門のスマホが鳴った。


長門「なんだ。今忙しいんだ。後で掛け直してくれ……」

男「お前の白いガキを預かってる。白いデカイ女の荷物と引き換えだ」

長門「なんだと……?!」

男「取引の場所と時間は、また連絡する。警察には言うな。言ったらガキをコロすぞ」

長門「おい! 切るな! クソッ!」

チ級「長門さん、どうしたんすか?」

長門「アルちゃんが……誘拐された……」

一同「」


ぞわっと総毛立つ港湾棲姫。


チ級(ヒッ! このままだと東京を焼け野原にしかねない!)


長門「ハーバーさんの荷物と引き換えと言ってました。何か心当たりは?」

港湾棲姫「……荷物……ソウイエバ……」ホワンホワンホワン


ZZZZ国の国際空港の出発カウンター。


男「もし、そこのお姉さん」

港湾棲姫「ワタシ?」

男「そうです。日本に行くなら、これを預かってもらえませんか?」

港湾棲姫「ナゼ?」

男「日本にいる家族に荷物を送りたいのですが、私は貧乏で、送料が払えないのです。

日本に着いたら、空港に迎えの者がいると思いますから、渡してください」

港湾棲姫「ソウ……分かったワ」

男「ありがとうございます! ありがとうございます!」ポロポロ

港湾棲姫「フフ、任せて」ニッコリ

港湾棲姫(イイコトしたワ……)


説明を聞いた長門の顔色が、真っ青になる。


長門「その荷物を見せて下さい」


30cm程度の平べったい段ボール箱。表面には何も書かれていない。

持ってみると、ずっしり重い。

開けてみると……。


長門「白い粉がギッシリ入ってますね……」

チ級「はわわ! はわわ!」オロオロ

リ級「?」


長門「空港に迎えはいなかったのですか?」

港湾棲姫「それらしい人は居なかったワ」

チ級(多分、一人きりになったところで、ひったくるつもりだったんだろうな……。

でも、いつまでたっても一人きりにならないから、しびれを切らしたんだろう……)

チ級「どうすれば……」

チ級(警察に通報したら、どうだろうか……。いや。身元を調べられたら、深海棲艦とバレるかも。

かと言って、何もしなかったら、港湾棲姫様が大暴れするだろうし……。

なによりも、北方棲姫様が暴走したら……ああああ!!!)


旅行の前、北方棲姫は「絶対暴れない」と約束していた。だから大人しく?誘拐されたのだった。

しかし、我慢の限界を超えたら、どうなるか分らない。


チ級「はわわ! はわわ! はわ」

リ級「落ち着くのデス!」ズビシッ

チ級「わぷっ!」


うろたえる俺の横で、長門がスマホを取り出した。


長門「ここは任せて貰えませんか。必ずアルちゃんを助け出します」


どこかに電話をかける長門。


長門「ボス、緊急事態です。アルちゃんが誘拐されました。犯人は警察に言うなと。ええ。『長門会』に召集を掛けてください」


長門が電話で事情を話す。


長門「ええ。アジトに向かいます。はい。駆逐艦、万歳! では」


電話を終えた長門がこちらを向いた。


長門「ここにいたら、また襲われるかもしれません。安全な場所に移動しましょう」


連れてこられたのは、目立たない場所にあるマンションの一室。


長門「ようこそ『長門会』のセーフハウスへ。長門会には、もう一つの顔がある。それは『駆逐艦と幼女を絶対助ける会』だ!」ドン!

チ級「」


部屋をよく見ると、銃器が山のようにある。


長門「駆逐艦を虐待する鎮守府の提督を、深海棲艦の仕業に見せかけて、再起不能になるまでボコるなど日常茶飯事……。

おっと、今のは聞かなかったことにしてくれ」

チ級「」

長門「リーダーは、あの電のコスプレしていた長門。我々は『ザ・セブン』とか『ボス』と呼んでいる。

ザ・セブン、とは、ザ・ビッグ・セブンの略でな。彼女は長門の一番艦で、全国の長門を束ねてるお方だ」

チ級「そ、そうなんですか……」


そこに、ザ・セブンがやってきた。


ザ・セブン「犯人の当たりは、大体ついたぞ」

チ級「本当ですか?」

ザ・セブン「ZZZZ国系のギャング団は関東に数えるほどしかいない。そして、奴等のやり方からして、

まともな輸入ルートを持たないハミ出し者だろう。というところまで行けば、あとは簡単だ」

長門「場所は?」

ザ・セブン「そちらも当たりがついている。時間がない。移動しながら話そう。

皆さんはこちらでお待ち下さい。すぐにアルちゃんを連れて戻りますよ」ニヤリ

レ級「オレ、同行したいナ~。ジャマしないからサ~」

ザ・セブン「……いいでしょう。こちらの指示に従って頂けるなら」

レ級「ギシシッ! アリガトウ! 行くゾ、チドリ!」

チ級「お、俺もですか?」


用意された車は……。


チ級(なんでハイエースなんすかね……)


艶消しダークオリーブのハイエースに乗り込む俺たち。

ドアを開けようとすると、めちゃくちゃ重い。窓ガラスも厚い。


チ級(防弾ガラスかな……? 装甲ハイエースとか……まともじゃない……)


車の中には、完全武装の長門が数人。

目だし帽で顔が分らないようになっている。


チ級(洋ゲーのFPSかな? 艦娘の格好じゃないところがガチっぽい……)


スルスルと発車するハイエース。


ザ・セブン「首尾はどうだ」

副官・長門「現在、突入班、狙撃班、サポート班が現地に移動中。先遣要員が狙撃ポイントを確保済みです」

ザ・セブン「急な召集だったが……」

副官・長門「ご安心を。腕利きが集まりました。彼女たちの勲章でコンテナを一杯にできますよ」

ザ・セブン「よし」ニヤリ


着いたところは、お台場の廃墟。昔は栄えていたが、深海棲艦の攻撃があったため、今は見る影もない廃墟となっていた。


チ級(昔はガンダムとかジョイポリスとかTV局とかあって、栄えてたんだけどな~)


音もなく車を降りる長門たち。

突入班のリーダーは、XXXX鎮守府の長門のようだ。


長門「あのビルだ」


低層の細長いビルを指さす。


ザ・セブン「アルちゃんは最上階にいるようだが、カーテンがかかっていて、状況が不明。今、突入のタイミングを計っているところだ」

チ級「そうですか」

副官・長門「狙撃班、いつでもいけます」

長門「突入班、いつでもいけます」

ザ・セブン「よし。指示を待て」


その時……。


ドーーーーーーーン!!!


ビルの最上階が爆発した。ガラスが全部吹き飛び、周囲がキラキラと輝く。


チ級「」


そして、我先と男たちがビルから逃げ出してきた。


ザ・セブン「くっ! 突入班、行け!」


入れ違いに、ビルに突入班が殺到する。

最上階にたどり着くと……。


長門「援護してくれ。まずは私が部屋に入る」


そろりと長門が部屋にはいると……。


北方棲姫「Zzzzz……」

長門「」


黒こげの部屋で、気絶する男たちの中心に、北方棲姫が寝ていた。


長門(酒の匂い……あれはウイスキー・ボンボン……)


北方棲姫の手にチョコレートの箱。


長門(ギャングが面白半分に食べさせて……酔っ払って暴れたのか……)


そっと北方棲姫を抱き上げる長門。


長門「アルちゃんを確保! 無事だ!」

長門(爆発は……ギャングのせいになるだろう……。アルちゃんが深海棲艦とギャングがわめいても、

ヤク中の幻覚ということで終わるだろうな……)


俺たちは、北方棲姫を連れてアジトに戻った。


港湾棲姫「アル!!!」ダキッ

北方棲姫「Zzzz……」

長門「とても疲れたのでしょう。ぐっすり眠ってますよ」

港湾棲姫「アリガトウ……本当にアリガトウ……」ウルウル

旅客船姫「無事でよかったです……」ウルウル


その横で……。


ザ・セブン「ああ……。署長か。私だ。今回の件は、全てヤク中のギャング団が原因だ。ああ。何を言っても幻覚ということで。

そうだ。全ては駆逐艦と幼女のため……。駆逐艦、万歳! では」

チ級「」

チ級(署長って、きっと警察署長だろうな……だからギャング団の情報とか知ることが出来たんだな……駆逐艦愛、恐るべし……)


ザ・セブンが何やら取り出す。


ザ・セブン「一件落着だな。こんなときは癒しを求めて、甘い煙のダビドフ・マグナムなのです! ここではあれだから外で吸うのです!」

副官・長門「ご一緒しますよ。私も……甘いロング・ピースで」ニコッ

チ級(西部警察かな? あれはブランデーだったか……)


俺たちの波瀾万丈の日本旅行はこうして終わったのだった。


一方、XXXX鎮守府……。

司令室には、提督、金剛、日向、鳥海、沈黙隊長、副隊長がいる。


金剛「……というワケデース」

提督「そうか。彼女たちも恐れているんだな」

日向「ふむ……初期の深海棲艦は、エビやカニのような姿でした。奴らは無秩序に陸に殺到し、攻撃してきましたが、

人型が現れてから陸への攻撃はなくなり、防戦だけになりました……」

鳥海「彼女が言う『人型が出て、知性を得た時には手遅れだった』、『正直戦いたくないけど、人間に滅ぼされないように戦ってる』

というのに符合しますね」

日向「……深海棲艦が撤退する部隊を追撃ない理由が、長年、不思議だったのですが……そういうことだったんですね。

彼女たちの恐怖心と良心とのせめぎ合いの妥協点だったと」

沈黙隊長「……」


日向が提督に向きなおる。


日向「しかし……深海棲艦の全てが和平を望んでいる訳ではないとなると、状況は厳しいですね」

提督「策は無いこともない」ニヤリ

鳥海「策とは?」

提督「俺がムサシさんを落とせばいい」

一同「」

日向(この提督なら……まぁ……そうなるな……。そういえば……敵の女と結婚して和平をなしとげた、

なんてアニメがあったとか……。那珂に歌でも歌ってもらうか……ふふっ……)


第六話 完

あけましておめでとうございます。
第六話は幕間劇ぐらいのつもりでしたが、書き始めたら予想以上に膨らんでしまいました。
なお、第七話の予告はこちら。

>>611

このペースだと、あと二話、今年中に終わるかどうか不安です。

保守

>>763
保守ありがとう
一か月ルールなんてのがありましたね
スレが落ちるとこだった


ちょっと備忘録的に直します。

>>669
鳥海「話を戻しますが、深海棲艦との戦争は、もはや世界経済の枠組みの一部となっています。

和平は世界経済に大きな影響を与えるでしょう」



鳥海「話を戻しますが、深海棲艦との戦争は、もはや世界経済の枠組みの一部となっています。

一度確立した枠組みを変えるのは、容易ではありません。それどころか、枠組みを変えようとすると、

既得利権を持つ者から、大きな反発を招くでしょう」


>>758
提督「そうか。彼女たちも恐れているんだな」

提督「そうか。俺たちが深海棲艦を恐れるように、彼女たちも俺たちを恐れているんだな」





- 幕間劇 -

- 第六話 おまけ NewTuber CHIKAKIN -


ここは南海孤島のチンジュフ。

俺は薄暗い自室でPCに向かい、ブツブツと何かをつぶやいていた。


チ級「あたい、買ってきたよ、これ!」


俺が着ているのは、今流行りの「童貞を殺す服」。

日本旅行で買ってきたのだ。


チ級「さあ! あたいを見てシぬといいよ!」


なぜ俺がこんなことをしているかというと……。

数週間前、俺はNewTubeにチャンネルを作った。


チ級「小学生憧れの職業のNewTuberにでもなるか」


せっかく女になったので、試しにNewTuberになってみたのだ。


チ級(俺が人間の頃、戦艦少女これくしょんのプレイ動画を上げたけど、ViewもSubscriberも全然増えなかったな~)遠い目

チ級(レ級さんもフェークブックで人気だし、俺もやってみるか)


俺は女という利点を活用することにした。


チ級(お色気で人気を集めよう。誰だってそーする。おれもそーする)


お色気といっても色々ある。


チ級(そうだ! 全裸はどうだろう。深海棲艦なんて、俺たちゃ裸がユニフォームってノリだし。

いやいや、全裸はさすがにマズイ。下着にするか? いや、下着もどうかな?

水着ならどうかな。『パンツじゃないから恥ずかしくないもん!』て誰か言ってたな)


あざとく露出の多い水着をチョイスする。


チ級(で、何をするかだけど……ビートボックスとか面白いことも出来ないし……。

適当に菓子でも食って、感想を言うか)


ということで、身バレしないように風邪マスクをして、お気楽に動画をアップし始めたのだが……。


チ級「うぃいいいいいいいいいいい↑っす! どうも、CHIKAKINで~す!

あたいの美しい姿が見られて、あんたたち本当にラッキーね!」


ぞんざいなキャラ作りと、有名NewTuberっぽい名前。


チ級「このチャンネルでは、世界一可愛いあたいが菓子を食って、だらだらするだけ!」


早速、菓子を食う。


チ級「この菓子……うん……うん……甘い。なんつーか、こう……甘い」


昆虫のようなボキャブラリー。


チ級「この菓子。一言で言うと、甘い! ずばり本質を突くなんて、あたいったら天才ね!」


俺は、そんなボンクラな動画ばかりアップした。

少しするとコメントが付き始めたので、動画の中でコメ返しをする。


チ級「前回の動画のコメ、『頭が弱そうだから、頼めばやらせてくれそう』

甘いわね! 意識高い系のあたいは、バーベルが高いわよ!

単装砲が20口径以上じゃないと相手しないんだから! ふふん!」


他のコメは……。


チ級「『ええい! 菓子のレビューはいい! 体を映せ!』

あたいの体に夢中になるのは当然ね!

でも菓子はあたいのアイアンメイデンだから、やめないわよ!」


早速、菓子を食い始める俺。


チ級「この菓子の名前は……そんなのどうでもいいわ! それは本質じゃないし!

名前にこだわる、うわべだけの薄いレビューなんて、しないんだからね!」


レビューの本質を投げすてた俺は、カメラを直すふりをして、

あざとく無い胸を寄せ集めて作った谷間を見せる。


そして日本旅行の前日。


チ級(たまげたなぁ……)


Subscriberの数が千を超えていた。


チ級(こんな適当な動画で……)


気を良くした俺は、さらにSubscriberを獲得すべく「童貞を殺す服」を買ってきたわけだ。


チ級「ふふん! この服を着こなせるなんて、あたいったら流石ね!」


もちろん前後を逆に着る。

大事なところが見えそうだが、実は服に両面テープを張って、ずれないようになっている。

そして……。


チ級「やった! Subscriberが一万を超えた! 広告収入で暮らしていけるかも!」


俺は意気揚々とグールグルの広告プログラムに応募したのだが……。


チ級「なになに、グールグル・アボンセンスから返事が?

『あなたのチャンネルの動画は、広告の禁止ポリシーに該当します。よって広告プログラムには参加出来ません』」

チ級「」


ガックリと肩を落とす俺。


チ級「短けえ夢だったなあ……」


しかし、しょーもない動画を作って反応があるのが楽しくなってしまい、

金にはならないが、動画をあげ続ける俺だった。


- 第六話 おまけ 完 -

訂正が
「童貞を[ピーーー]服」じゃなくて「童貞を[ピーーー]セーター」でした

やっちまった
「童貞を殺す服」じゃなくて「童貞を殺すセーター」の間違いですた……

乙!

童貞を[ピーーー]セーターって、前後逆に着るとπモロでは……?
ちなみに「上下が逆」なんていう斬新な着方もあるけど、チ級さんの胸じゃずり落ちるか。
(参考資料:ピクシブ大百科)


- 第六話 おまけ 艦娘の覚悟 -


俺たちが日本を去った後のある日の夜。

XXXX鎮守府で、日向と鳥海が酒を飲んでいた。


日向「お客さんたちとは話したのか?」

鳥海「はい。話してみると、私たちと変わらない、好ましい人たちでした」

日向「……そうだな」


日向が焼酎をグイッと飲む。


鳥海「戦場では会いたくないですね。特に幼い子には」

日向「……」

鳥海「戦場で出会ってしまったら、ためらいなく撃つでしょうから。

リンちゃんでも、アルちゃんでも。そしてきっと後悔するでしょう」

日向「……」

鳥海「しかし後悔した後でも、やはり戦場ではためらわない。それが艦娘ですから」

日向「……」


日向が空いた杯に手酌した。


日向「艦娘は深海棲艦を沈める覚悟を持っている」

鳥海「……」

日向「同時に沈められる覚悟も」

鳥海「……」

日向「だからか、わたしは不思議と深海棲艦に恨みはない。伊勢を沈められたことは決して忘れないが」

鳥海「……」

日向「ただ……人間はどうだろう。家族、恋人、友人を殺されて、許せるのだろうか?」

鳥海「……」

日向「あれだけのことをされて『許してくれ』と言われても……まあ、都合が良すぎるとしか思わないだろう」

鳥海「……」

日向「その点、ティターニアさんには悪いが、戦争継続派のほうが現実を見ている気がする」

鳥海「……」

日向「人類が深海棲艦を許すはずがない、と考えるほうが自然だ」

鳥海「……」


鳥海もくいっと杯を傾ける。


鳥海「しかし司令官さんは和平の策が有ると言ってました。もしかしたら、ゴールが見えているのかも」

日向「ふむ……」

鳥海「ただ、わたしには全く見えませんが」

日向「……」

鳥海「よしんば戦艦水鬼と和平交渉が成立したとして、深海棲艦は日本だけではなく全世界の敵ですから、

日本だけ和平をしても意味がありません。下手をすると、裏切り者として日本が世界の敵とみなされます」

日向「……」


日向が焼酎のビンを持ち上げた。


日向「空いてしまったな。もう一本どうだ」

鳥海「はい。頂きます」

日向「前途多難だが、あの提督だ。まあ……なんとかするだろう」ニヤッ

鳥海「そうですね」


二人は深夜まで酒を飲んだそうな。


- 第六話 おまけ 完 -


- 第六話 おまけ 恋するレ級 -


日本旅行の鎮守府での宴会でのこと。


レ級「キシシシシシシ! ン? アレは……」


レ級がツンツンと隼鷹をつつく。


レ級「ジュンヨー。あのホット・ガイは誰?」目キラキラ

隼鷹「んあ? あの人は参謀さんだぜぇ~」


視線の先には初老の軍人。頭髪は白く短い。整えられた口髭がダンディ。

軍服は、隊長のものより、少々豪華な感じだ。

背筋をビシっとのばし、上品、かつ、無駄のない動きで食事をしている。


レ級「フーン。紹介シテヨ!」

隼鷹「あーゆーのが好みなのかい? 渋いとこ行くじゃ~ん?」ニタニタ


酒びたりの二人が、参謀に近寄る。


隼鷹「参謀さぁ~ん、飲んでるぅ~? ところでさぁ~、この娘が挨拶したいそうでぇ~す!」

参謀「これは可愛いらしいお嬢さんだ」ニッコリ(C.V.納谷悟郎)

レ級「ワタシ、レンと申します。よろしくお願いします!」ニッコリ

参謀「参謀です。こちらこそ」


それを聞いた俺は吹き出しそうになった。


チ級「グブッ! ゲホッ! ゲホッ!」

夕張「チドリさん、大丈夫?」

チ級「だ、大丈夫よ」

チ級(ネコ被りすぎだろ……)


ふと見ると、参謀の隣の席が空いている。


レ級「ココ、よろしいですか?」

参謀「ああ、いいとも」

隼鷹「レン~~、グイグイ行くねぇ~~!」ケタケタ


レ級がちょこんと座る。

参謀を近くで見ると、軍人らしくガッシリとしていて、かつ、節制がうかがえるスマートな体格。

落ち着きがあり冷静で、成熟した大人を感じさせるところが、レ級のドストライクだった。


レ級(オイオイ!? ギャリソンさんクラスの、とんだ上玉ジャネーカ!)

レ級「日本はとても良いところですね」上目づかい

参謀「そうだな。わしも気に入っている」

レ級「ところで……おじ様も提督でいらっしゃいますか?」

参謀「なぜそう思うのだね」

レ級「風格といいますか、雰囲気がそのように感じられまして」

参謀「そう言ってくれるのは嬉しいが、わしはただの老いた軍人だ」


参謀の向こう隣りの副参謀が声をあげた。


副参謀「お嬢さん、あなたは慧眼の持ち主ですね!

閣下は、故国では『海軍にその人あり』と言われたほどのお方だったのです!

艦娘ではなく船の艦隊の提督であらせられたのだ」

レ級「そうだったのですか」


誇らしそうな副参謀。


副参謀「……ただ、故国で名門貴族出身の国会議員とトラブルがあって……。

無礼をはたらいた傲岸不遜な議員を閣下がお諌めになったら、

身に覚えのないスキャンダルで軍を追われて、国にいられなくなり、

ご家族とともに日本に移住されたのだ」


悲しそうな副参謀。

移住後、参謀は隠居していたのだが、深海棲艦との戦争がはじまり、

XXXX鎮守府の提督が三顧の礼で迎え入れたそうな。


参謀「それで、現在は部下一人だけの客員参謀ということだ」

副参謀「閣下! 閣下へのこの扱いはひどすぎます! 大艦隊を率いるべきです!」

参謀「毎回言っているが、この処遇はわしが望んだのだ」


顔が真っ赤な副参謀。

どうやら副参謀は、酔うと参謀の扱いの不満を言うらしい。


参謀「提督になると、政治や社交界などがからんでくる。

そのようなものは、もううんざりなのだよ」

副隊長「ですが……閣下ぁ~~!」ぶわわっ

チ級(坂田鋼鉄郎かな?)


レ級がキョトンとしている。


参謀「変な雰囲気になってしまったな。レンさん、おわびではないですが、

手を着けてない皿です。いかがですかな?」

レ級「いただきます!」


あっというまにたいらげるレ級。


レ級「ありがとうございました! とても美味しかったです」

参謀「元気のよいお嬢さんだ。よかったら、これも食べなさい」ニッコリ

レ級「はい!」パァアア


孫を見るような参謀の優しい眼差し。


レ級「ところで……質問よろしいですか?」

参謀「なんだね」

レ級「彼女さんとか、いらっしゃいますか?」


その時、俺の背中に悪寒が走った。


チ級(あ、これ、艦娘バーの時と同じ感じだ……)


レ級の方を見ると、近くの席の妙高、高雄、ビスマルク、そして鳳翔の顔が引きつっている。


参謀「ああ。妻がいる」

レ級「……ソウデスカ……」ガックリ


なぜか妙高、高雄、ビスマルク、鳳翔もうつむいた。


レ級(残念ダ……イイ男だったのに……)


そして宴会の後……。


妙高「もし……レンさん?」

レ級「ン?」

妙高「よろしければ、一緒に飲みませんか?」

レ級「……」

高雄「参謀さんに、ふられた者同士で……」

レ級「……」コクン

ビスマルク「Gut」


いつもとは違い、傷心のレ級は素直にうなづいた。

その後、店を閉めた鳳翔も合流し、横須賀の居酒屋で朝まで飲んだそうな。


- 第六話 おまけ 完 -

日本海軍では「閣下」とか「殿」とか付けて呼ばなかったそうですが、
海外から来た軍人さんということで、多めに見て下さい

>>770
ビーチクは、首から下がる帯紐で隠してます……(白目)


短めですが、始めます。


第七話 アオバ・レポート


ここはアメリカの大平原。

何もない荒野に、一本の直線道路が地平線まで伸びている。

その道路を疾走する黒いセダンと三台のハンヴィー。

セダンの運転席には女性、後部座席には青葉、川内。


川内「追っ手を振り切れないね」

青葉「時速100マイル(約160km)で走るハンヴィーって、なんなんですか!?」


みるみるハンヴィーが追いつき、セダンを左右、後ろから包囲した。

ハンヴィーの屋根にある遠隔操作の機関銃がウイーーンと動き、セダンに狙いをつける。


青葉「ひぃいいい!!!」

女性「どうしたんスか!」

川内「伏せて!!!」


機関銃が一斉に火を噴き、セダンに銃弾を雨あられと撃ち込んできた。


青葉「ぎゃあああああああ!!!」


数週間前、XXXX鎮守府の青葉は指令室に呼び出された。


青葉「青葉新聞の特別号!?」

提督「そうだ。お前さんにはアメリカに行ってもらう。そこで大物を取材してほしい。

青葉新聞の特別号にあたいする相手だ」ニヤリ


あっけにとられる青葉。


提督「今度、海軍からアメリカに視察団を送ることになった。といってもガチじゃない。

親睦を深める目的でな。うちからも数名送ることなったんだが、お前さんに行ってもらおうと思う」

青葉「はい」

提督「自由行動日もあるので、その時、取材をして欲しい。費用はこちらで持つ。特別インタビューだ」

青葉「相手は?」

提督「最初の提督(以下、赤毛提督)と、その奥方だ」ニヤリ


青葉はゴクリと息をのむ。


青葉「赤毛提督はわかりますが、その奥方もですか?」

提督「むしろそちらが本命だ。徹底的に調べてくれ」

青葉「……」

提督「彼女はオベロン社の社長秘書。旦那は赤毛提督。

経歴は不明。その上……戦艦棲姫にそっくりときた」

青葉「……」


青葉が考え込む。


青葉「司令官、青葉のゴーストが『このネタはヤバイ』とささやいてますが……」

提督「深海棲艦を鎮守府に招いた時点で、とっくにヤバい橋を渡っている。

それにだ、情報は多いに越したことはない。交渉のカードになるかもしれん」

青葉「鎮守府もヤバいですが、青葉もヤバイのですけど……」


提督が椅子に深く座りなおした。


提督「青葉、この戦争には、納得がいかないことばかりでね。

深海棲艦に艦娘……。敵どころか、味方さえ正体不明。

俺はこの取材で核心に近づけると思っている」

青葉「……」

提督「青葉の危険も重々承知だが、受けてくれないか?」

青葉「……そんなこと言われたら、青葉の記者魂が燃え上がっちゃうじゃないですか!

もう……承知しました。青葉、取材します!」

提督「それでこそ俺の青葉だ。なお、青葉が捕えられたり、あるいは殺されても、

当鎮守府は一切関知しないからそのつもりで」

青葉「いやぁあああああ!!!」


- 続く -


そんなわけで、護衛の川内とともに、アメリカに査察旅行に出かける青葉。

平日は海軍の施設や演習を見学。週末は自由行動日。

そして迎えた土曜日。青葉と川内は、赤毛提督の住む高級アパートを訪れた。

二人とも、地味なレディーススーツ姿。


青葉「しかし、似合わないですね、この格好」

川内「……うん」


昼間だからか、川内のテンションが低い。

そんな川内にかまわず、インターホンを押す青葉。


青葉「ごめんくださーい! 青葉です!」


ドアが開くと、赤毛提督の嫁が出迎えた。

ブラウンのカーディガン、白いカットソー、黒いロングパンツという姿。


嫁「ようこそ」ニッコリ


嫁は二人とがっちり握手する。


嫁「はじめまして。嫁です」

青葉「青葉です! お会いできて感激です!」

川内「川内です……初めまして……」

嫁「どうぞ、入って下さい」


嫁が部屋に招き入れた。


青葉「恐縮です! お邪魔します!」

川内「……お邪魔します」


室内は明るく広い。天井も高い。リビングには大きいソファーと暖炉。

アメリカのホームドラマのような内装。


青葉(暖炉?)

犬「わふっ! わふっ!」


毛の長い大型犬が部屋をウロウロしている。


赤毛提督「こら、おいで。お客様に迷惑かけちゃだめだよ」


白いシャツにジーンズの赤毛提督が犬を呼び寄せると、

ソファーの赤毛提督の元に、犬がササっとかけ寄る。


青葉(あんな大型犬を部屋で飼うとは……)


赤毛提督が立ち上がった。


赤毛提督「初めまして。赤毛提督です」


やはり二人とがっちり握手をする。


青葉「青葉です! お会いできて光栄です!」

川内「川内です……光栄です……」

赤毛提督「さあ、ソファーにどうぞ」


二人がソファーに座ると、赤毛提督の背後にいる黒スーツのSPたちと目が合った。

艦種は不明だが、艦娘もいるようだ。


青葉(目を合わせても、ピクリとも表情を変えませんね……)


青葉「ええと……お忙しい中、インタビューをご快諾いただき、誠にありがとうございます」

赤毛提督「そんなにかしこまらなくても、いいですよ」ニッコリ

青葉「は、はい」


そこに嫁がコーヒーを持ってきた。


嫁「コーヒーをどうぞ」

青葉「きょ、恐縮です!」

川内「ありがとうございます」


SPにもコーヒーを渡すと、赤毛提督の隣に座る。


青葉「嫁さんもいらしたことですし、始めさせていただきます」


青葉はメモ帳を取り出し、ボイスレコーダーをテーブルに置いた。


赤毛提督「さて、今日はどんなことを聞きたいんですか?」

青葉「色々聞きたいことはありますが、まず、なぜインタビューを受けようと思われたのでしょうか?

赤毛提督さんは、インタビューは受けない方と聞いていましたが……」

赤毛提督「君たちがカンムスだから。ジャーナリストのインタビューだったら受けないけど、

カンムスにお願いされたら断れない」

青葉「なるほど!」

青葉(優しいですね~。ウチの司令官とは大違い……)


サラサラとメモする青葉。


青葉「では、今回のテーマですが……お二人の結婚生活についてお聞きしたいと思います」

嫁「まあ! そんな///」

赤毛提督「特別なことはないよ」

青葉「いえいえ、お二方のおしどり夫婦ぶりは、日本にも伝わるほどですよ!」

嫁「///」

赤毛提督「日本にまで? 恥ずかしいな……」


照れる夫妻。


青葉(初々しいですね~。ウチの司令官とは大違い……)

青葉「日本の艦娘たちに、どうすれば提督との幸せな結婚生活が出来るかを、ぜひともご教示いただきたく」


青葉がペンをくるりと回した。


青葉「始めに、お二人のなれそめは?」

赤毛提督「私と嫁は幼馴染。小学生のころから親友だった。中高も一緒」

青葉「なるほど。子供のころの嫁さんは、どんな方だったんですか?」

赤毛提督「大人しくて優しい。今もね」

嫁「///」

青葉「これはこれは」ニコッ


青葉がスラッとペンを走らせる。


青葉「嫁さんから見て、子供のころの赤毛提督は?」

嫁「地味で目立たないわたしと違って、彼は人気者でした。

背も高くて、明るくて、友達も多くて、かっこよくて……///」

青葉「あら~~」

嫁「そんな彼と友達とで、よく山や海や川で遊びました。とても楽しい思い出です」

青葉「……」


青葉は、しばらくクルクルとペンを回した。


青葉「……その頃のご友人とは、まだ連絡を取っているのですか?」

嫁「……いえ。わたしたちは、港の近くに住んでいたの。学校もね。

それで、深海棲艦の攻撃にあい、友人は行方不明、もしくは……」


うつむく嫁を、赤毛提督が抱き寄せる。


青葉「すみませんでした」

嫁「いえ……」

青葉「では話題を変えまして……ズバリ、結婚のキッカケは?」

赤毛提督「ええと……参ったな……だれにも話したことはないんだけど……」

嫁「///」


艦娘らしきSPの無表情な顔が、ピクリと一瞬だけ動いた。


青葉(SPも興味があるんですかね~)


赤毛提督「……そう……私が軍に入ってからは、彼女と離れて暮らしていたんだ。

ある時、乗船している艦が深海棲艦に撃沈されて、私一人だけ生き残り、

長い間入院したことがあったんだ。その時、彼女が付っきりで看病してくれて……」

青葉「……」

赤毛提督「それで彼女への気持ちに気づいたんだ。愛してるって……」

嫁「///」

赤毛提督「それがきっかけでプロポーズしたんだ。入院中だったけどね」ニッコリ

青葉「いやはや……///」

青葉(あまーーーーーい!!!)


夫妻以外、SPまでも全員コーヒーを飲み干した。


嫁「コーヒーおかわりいれましょうか?」

青葉「恐縮です! ミルク、砂糖抜きでお願いします!」


嫁がコーヒーを配り終えると……。


青葉「こほん。では、嫁さん。プロポーズを受けた感想は?」

嫁「子供のころから、ずっと彼が好きだったから……本当に嬉しかった……」

青葉「……」

嫁「彼は人気者で……わたしは地味で……好きな気持ちを諦めてたの……だから本当に……」

青葉「……」


嫁がぽろりと涙を流すと、また赤毛提督が抱き寄せた。


青葉「……嫁さんは、本当に赤毛提督さんを愛しているのですね」

嫁「はい……///」

青葉「そして赤毛提督さんも嫁さんを。うらやましい限りです!」

赤毛提督「……」ニッコリ


ペンを高速回転させる青葉。


青葉「次に……円満な結婚生活の秘訣は?」

赤毛提督「……あまり考えたことはないけど、出来るだけ話すようにしている。

仕事柄、家を空けることが多いから、電話やチャットで、互いの声を聞くよう心がけているよ」

嫁「彼の声を聞くと安心するの。わたしの会社が、家族の時間に理解があるから、

彼と話す時間が持てて助かってるわ」

青葉「会社ですか?」

嫁「ええ。育児のために週三日の勤務にしてもらってるの。

わたしの仕事は社長秘書なんだけど、秘書は一人じゃなくて、

何人かいてローテーションしているから、その勤務が認められているの」

青葉「なるほど!」


青葉がペンをゆっくり回す。


青葉「……会社には、どのような印象をお持ちですか?」

嫁「良い会社だと思う。医療補助も充実しているわ」

青葉「医療補助?」

嫁「医療費の補助に、年二回の無料健康診断。それで……わたしは助けられた」

青葉「といいますと?」

嫁「わたし、健康診断で子供が出来にくい体質だって分かったの。

それで、会社の医療施設で体外受精したのよ。会社の全額補助でね」

青葉「……」

嫁「会社の補助が無かったら、支払えないくらいの金額だった。

娘を二人持てたのも、会社のおかげよ」

青葉「そうですか」


その時、ドアが開いて、娘二人が部屋に入ってきた。


次女「ままぁ~、あそんで~?」

長女「こらー! お客さんが来てるから、そっちいっちゃだめだよ!」


嫁にしがみついている次女を、長女が引き剥がそうとする。


次女「ままぁ~! ままぁ~!」ガシッ

嫁「娘がごめんなさいね」

青葉「いえ、インタビューも……もう終わりますから……」

青葉(……しかし……抱きつく次女さんを見ると……不思議な感情が湧き上がってきますね……)


青葉の顔が紅潮する。


青葉「あの……もしよろしければ、嫁さんとハグしてもいいですか?」

青葉(……このハグしたい激情は一体……?)

嫁「いいですよ。慣れてますから。わたしと会うカンムスさんは、なぜかハグしたがるので」

青葉「では……ママーーーー!」ガシッ

川内「ママーーーー!」ガシッ


なぜか川内もハグに加わる。


青葉「……」スリスリ

川内「……」スリスリ


嫁がギュっと抱きしめると……。


青葉「……」ポワワワワーーーン

川内「……」ポワワワワーーーン


それを見た長女が、赤毛提督に抱きついた。


長女「じゃあパパはあたしのものーー!」ギュッ

青葉「パパーーーー!」ギュッ

川内「パパーーーー!」ギュッ

赤毛提督「おやおや」


青葉たちも赤毛提督に抱きつく。

しばらくハグすると……。


青葉「えーー、こほん。大変失礼いたしました。では最後に記念写真を撮ってもよろしいですか?」

赤毛提督「いいですよ」ニッコリ


記念写真を撮った青葉たちは、赤毛提督の部屋を出た。

エレベータを降りて、高級アパートの玄関を出ると……。


川内「……」クイクイ

青葉「なんですか?」


川内の目線の先を見ると、アパートの向かいのビルの影に、20世紀初頭の古めかしい車。

車中のトレンチコートに中折れ帽の運転手が、ハンバーガーを片手に、双眼鏡で何かを見ている。


青葉「双眼鏡の先は……」


双眼鏡の先は、ちょうど赤毛提督の部屋の階だった。


- 続く -

乙です
毎回楽しませてもらってます。
僭越ですが少々気になった点を、
青葉の言葉遣いなんですが、当人達(赤毛提督夫妻)に
相対する場合は「奥様」と呼ぶのがただしいのでは?
SSの習慣としてオリキャラは固有名詞ではなく職名等で呼ぶ、
というのは分かるのですが当の本人に向かって
「嫁さん」呼ばわりは流石に違和感があります。

生意気な事を言ってすいません。
開始当初からずっと本当に楽しませて頂いてます。
お忙しいとは思いますが次回更新も頑張って下さいませ。

>>802
コメありがとう!

>青葉の言葉遣いなんですが、当人達(赤毛提督夫妻)に
>相対する場合は「奥様」と呼ぶのがただしいのでは?

奥様ではなく名前呼びにしたのは、ちょっとだけフランクになって、
海外インタビューっぽさが出るかな~と、思ったからです

でもガチで英語だったら、You(あなた)とかHer(彼女)になるのかな
または、Ms.赤毛提督とか……

>生意気な事を言ってすいません。

生意気なんて、そんなことないっす

>開始当初からずっと本当に楽しませて頂いてます。

そう言ってもらえると、とても嬉しいです

>お忙しいとは思いますが次回更新も頑張って下さいませ。

今、続き書いてますんで、よろしくです

ちょっと再開


運転手は、中折れ帽、トレンチコート、黒髪ロング、黒縁メガネの若い女性。


運転手「……」モグモグ


コンコン


運転手が音の方を見ると、笑顔の青葉が窓から覗いている。


青葉「……」ニタァー

運転手「ゲホッ!」


慌てて発車しようとするが……。


運転手「?!?!? アクセル踏んでるのに、なんで動かないんスか?!?」


後ろを振り向くと、川内がバンパーを掴んで、車を持ち上げていた。

浮き上がった後輪が、むなしく空回りしている。


運転手「」


慌てた運転手は古風なリボルバーの拳銃を取り出し、窓を開けて青葉に向けた。


運転手「強盗っすか! 失せやがれッス!」スチャ


青葉がサッと銃身をつかんで奪うと……。


青葉「……」グニニニ

運転手「ひぃいいい!!! す、素手で銃身を曲げてるっす!」


青葉が曲がった拳銃を運転手に返す。


青葉「恐縮で~~す! お話きかせてもらえませんか?」

運転手「」


近くの食堂に入る三人。

薄暗い店内。カウンターには酒瓶。壁際にピンボール。

三人は、奥の四人席に座った。


青葉「いや~、いかにもアメリカの食堂って感じですね」

ウェイトレス「ご注文は?」

青葉「おすすめを教えてください」

ウェイトレス「どれも美味しいけど、パストラミサンド、ハンバーガー、

ホットドッグ、クラムチャウダーがオススメね」

青葉「では、パストラミサンドにコーラ」

川内「ハンバーガー、セブンアップ」

運転手「ホットドッグとルートビア」


運転手をじっと見る青葉。


青葉「さて……あなたは何者で、何をしてたんですか?」

運転手「……」

青葉「言えませんか?」

運転手「……」

青葉「それなら……」


青葉がスマホを取り出す。


青葉「もしもし、ポリスメン?」

運転手「わかったっす! 言うからポリスメンは勘弁っス!」


青葉がニヤリと笑ってスマホをしまう。


運転手「自分は、とあるやんごとなきお方のメイドっす。あそこで嫁さんを監視してたっす……」

青葉「目的は?」

運転手「……目的は調査っす……」


運転手が調査について話すと……。


川内「本当なら許せないね……」

青葉「これは許せませんねぇ」

運転手「ところでお二人は何者っすか?」

川内「……正義のニンジャ……それ以上は言えない……」

青葉「え?」

川内「わたしはコードネーム:リバー。彼女はブルー」

青葉「は?」


それを聞いた運転手が、キラキラと目を輝かせた。


運転手「正義の味方なら、調査に力を貸して下さい! お願いします!」

青葉「……メイドを雇うほどの、やんごとなきお金持ちなら、

本職の探偵を雇えばいいんじゃないですか?」

運転手「もう何回も探偵に頼んだんスが、手掛かりさえつかめないどころか、

行方不明になる人までいて、仕方なく自分が……」

青葉「……なるほど。わかりました。しかし、こちらも任務中でしてね。

交換条件です。こちらの調査に協力してくれるなら、あなたに協力しましょう」

運転手「わかったっス! 条件を聞かせて欲しいっす!」

青葉「こちらの条件は……」


条件を話す青葉。


運転手「その条件をのむっす。交渉成立っすね!」ニッコリ

青葉「では乾杯しましょう。乾杯!」

川内「乾杯」

運転手「乾杯っす!」


アメリカンサイズのコップをぶつける三人。


運転手「ルートビアが美味いっす!」

青葉「それにしても……その姿と車は、どうしたんですか?」

運転手「自分、小説で探偵業を勉強したっす。アラゴン・レビューで評価高かった本っす」

青葉「……その服装と車と拳銃……フィリップ・マーロウですか……」

川内「探偵するなら、違う車にしなよ」


車話で微妙にテンションが上がる川内。


運転手「どんなのがいいんすかね?」

川内「車は……『POWWWWWEEEEEEEEEERRRRRRR!!!!』だよ!

馬力! トルク! 排気量! V8だよ! V8! V8を称えよ! V8を称えよ!」ガタッ

青葉「」

運転手「なるほど! ためになるっス!」


青葉が絶句していると……。


運転手「ところで調査の話っすが、一緒に行ってもらいたいところがあるっす」

青葉「どこですか?」

運転手「オベロン社の軍事研究施設っす」


- 続く -

更新乙です
青葉「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ!」
1さんの作品は気づいたら笑えるっていうネタが随所に仕込んであって面白いです
川内…、頭の上で手をクロスさせてそう
ルートビアって個人的にはくっそまずいというか飲み物?なのって感想なんですが1さんはどうですか?
ドクペと同じで飲み続けたらくせになるのだろうか……
オベロンはシェークスピアの真夏の夜の夢の妖精王のオベロンから来てるのかしら

>>809
コメありがとう

>ルートビアって個人的にはくっそまずいというか飲み物?なのって感想なんですが1さんはどうですか?
くそまずいのには同意。でも嫌いじゃない。たまーーーに飲みたくなる、って感じです

瑞雲祭りとは一体……
再開するよ~


青葉が手で運転手を制した。


青葉「その話ですが、ここではなんですから、別のところで話しませんか?」


青葉がスマホを取り出す。


青葉「個室で三人だけで話せるところ……」スマスマ


スマホで検索すると……。


青葉「ありました~。こことかどうです?」

運転手「カラオケボックス?」

川内「個室で歌を歌う場所だよ」

運転手「ほほ~」

青葉「まさかアメリカにもあるとは!」

運転手「打ち合わせの前に、ちょっと荷物を取ってきてもイイっすか?」

川内「あたしも一度ホテルに戻りたい」

青葉「そうですね……ではXX時にカラオケボックスで待ち合わせましょう」

運転手「了解っす!」


ホテルに戻る青葉と川内。

青葉はボイスレコーダーのデータを自分のPCにコピーし、メモをバチバチと入力している。

川内は旅行カバンをゴソゴソ漁ってる。


青葉「なにを探してるんですか?」

川内「ちょっと運転手ちゃんに渡したいものがあって……あった!」

青葉「見つかったみたいですね……っと、こっちもメモを打ち込み終わりました!」


青葉が冷蔵庫からコーラを取り出した。


青葉「ひと仕事したし、コーラでも飲みますか。川内さんもどうです?」


青葉がもう一本コーラを取り出すと、川内の手首から白い糸が飛び出し、コーラに絡みつく。


青葉「うおっ!」


コーラは糸に引っ張られ、ヒュッと川内の手元に。


川内「あんがと」ゴクゴク

青葉「そのウェブシューター、どうしたんですか?」

川内「Qに作ってもらった」

青葉「MI6じゃないんですから! 明石さんですか?」

川内「そう。いいでしょ?」ニヤッ

青葉「面白そうですが、川内さんならカギ縄とかじゃないですか? 忍者的な意味で」

川内「ニンジャは型にとらわれない。とらわれてはいけない……」

青葉「……さようで。ぼちぼち時間ですし、行きますか」

川内「うん」


二人がカラオケボックスに行くと、店の前に古風なメイド姿の運転手がいた。

何やら荷物を持っている。


運転手「早速、中に入るっす」

青葉「恐縮です!」


三人は受付をすまし、部屋に入った。

川内がサッとリモコンを手に取る。


川内「~♪」ピコピコ

青葉「曲を入れるのは、話が終わってからにしてください」

川内「むー」

青葉「それで、調査の話ですが」

運転手「はい。オベロン社の軍事研究施設で行われている極秘業務を調べたいんす。

それでお二人には潜入の手伝いをして欲しいんす」

青葉「……施設の警備は?」

運転手「非常に厳重っす。民間軍事会社が24時間体制で警備してるっす」

川内「なら、潜入するのは、あたしら二人だけのほうがいいね」

青葉「潜入するのは人数が少ない方がいいですし。ここは私たちに任せてもらえませんか?」

運転手「では、お願いするっす!」


運転手が鞄から紙袋を取り出した。


運転手「潜入には、これを使うといいっす」ガサガサ

青葉「……セーラー服?」

運転手「カンムスに化けて潜入するっす!」

青葉「」


セーラー服を見ると、いやにボロボロ。


運転手「軍事研究施設には、カンムスや深海棲艦の死骸が列車で運び込まれてるんス。それも毎日、大量に」

川内「……」

運転手「その死骸に紛れて潜入するつもりだったっす」

青葉「……」

運転手「その列車は、真っ黒な車体と積み荷から、『幽霊列車』って呼ばれてるっす」

青葉「幽霊列車……」

運転手「貨車は天井がなく、ホロで覆ってるだけっすから、簡単に紛れ込めそうっす」

青葉「この服がボロボロなのは、轟沈した艦娘っぽくするためですね」

川内「……しかし軍事機密の固まりの艦娘の死骸を、そんなぞんざいな方法で運ぶのもんなの?」

青葉「死骸には機密情報としての価値がないからです。艦娘はコピー不可能ですから」

運転手「そうなんすか?」

青葉「某国が艦娘のクローンを作ったそうですが、艦娘に軍艦の魂が宿らず、

決して目を覚まさなかったそうです。艤装もデッドコピーしたそうですが、

妖精さんがいないので、こちらも全く動かなかったらしいです」

川内「なら、その手でいこうか」


潜入の打ち合わせを続ける三人。

打ち合わせが終わると……。


川内「ところで、運転手ちゃんは日本語読める?」

運転手「いけるっすよ」

川内「じゃ、これ。メイドのマンガ。飛行機の中で読むのに持ってきたんだ。

メイドの仕事に役立つと思うから、貸したげる」サッ

運転手「ありがとうございます!」

青葉(メイドマンガ……あの本格派メイド漫画でしょうか?)


数日後……。

潜入日当日となった。

青葉と川内が待ち合わせ場所で待っていると……。


青葉「なんか車が来ましたが……」


デロデロと音を立てながら、デカくて黒いセダンが止まった。


運転手「お待たせっす!」

青葉「車かえたんですね」

運転手「リバーさんに言われて、車買いかえたっす! キャディっす! 

V8っす! 6リッターっす! スーパー・チャージャーっす!」

川内「悪くないね」ニヤリ

運転手「中古車ディーラーさんの『いい音でしょう。余裕の音だ、馬力が違いますよ』の一言で即決っす!」


二人が車に乗ると、ド派手なアニマル柄の内装。

助手席には、なぜかギターケースとゴルフバッグ。


青葉「」

川内「しびれるね」

運転手「やんごとなきVIPが乗ってたらしいっす」

青葉(ラブホテル顔負けの内装……やんごとなきドラッグ成金とかですかね……)

青葉「ところで、髪型ですが三つ編みにしたんですか? メガネも丸メガネですね」

運転手「リバーさんのマンガのメイドさんを真似たんスよ。いや~~感動したっす!」

川内「でしょ? でしょ?」

運転手「リバーさんに感謝っす!」

青葉(……不安しか感じないのは、なぜでしょうか……)

運転手「じゃあ出発するっす!」


- 続く -


青葉と川内は、車内でボロボロのセーラー服に着替えた。


青葉(この制服……どの艦娘のものでもない、パチモンですね……。かえって好都合ですが……)


車が港の近くのビルの裏手に止まる。


運転手「着いたっす。この港に幽霊列車の始発駅があるっす」

青葉「ほほ~」

川内「……」

運転手「自分は先回りして、施設の近くの集合地点で待ってるっす」

青葉「では、あ……ブルー、取材します!」

運転手「お気をつけて!」

川内「……」コクン


青葉と川内が車から降り、素早く始発駅に向かう。


青葉「警備は薄いですね」ヒソヒソ

川内「……」


あっさりと貨車に潜り込む二人。


青葉(はは……艦娘の死体でギッシリですか……恐縮です……お邪魔します……。

それにしても……すごく冷たい……)


輸送船では冷凍されていたらしく、艦娘の死体が氷のように冷たい。


青葉(みんな肌が青白くて……でも生きているような……不思議ときれいですね……)


青葉がモゾモゾとしていると……。


青葉(これは……ガサ……)


別の鎮守府の衣笠を見つけた。


青葉「そうですか……ガサ、頑張りましたね……青葉には分かります」ナデナデ


ガタンと貨車が揺れ、幽霊列車が動き出す。


青葉(短い間ですが、一緒にいましょう……)ギュッ


青葉は艤装を展開し、機関に火を入れ、暖を取った。


青葉(これで凍死の心配もなくなりました。ガサ、おやすみなさい……)


一晩列車に揺られ、朝になった。

ガクンっと貨車が揺れる。


青葉(着きましたね。ガサ……いつかどこかで、また会いましょう……。

ウチの鎮守府のガサはどうしているかな……。甘えたくなりました……)


その時、いきなり貨車の床が開いた。


青葉(うわぁああああああ!!!)


レールの間の大きな穴に、ザラザラと落ちていく青葉と艦娘の死体。

巨大な倉庫の中で、ドサっという音とともに、艦娘の死体の山に着地。

列車は行ってしまったようだ。


青葉「いててて