末期癌、医者に宣告された時は頭の中が真っ白になった。
最近身体の調子が悪い、ただの疲労だと思いながらも確認の為に社長に休みを貰って行った病院で言われた一言。
「肝臓癌……末期です」
その時の事はあまり思い出したく無い、あの時程神様を恨んだ事も無い
冗談かと思った、冗談だと思いたかった。
医者の深刻そうな顔……嘘をついている顔じゃなかった
余命二ヶ月…いや……もしかしたらもっと早く死ぬのかもしれない
もしかしたらもう少し長く生きられるのかもしれない
P「…あと二ヶ月か」
今ままだ受け入れられていない…当たり前だ
信じたくなんか無いし……それに
P「……まだ死にたく無い」
あと58日
P「……」
重い身体を無理矢理起こす、まだ頭がぼーっとする。
癌を宣告されてからまともに食事をとっていない
ゆっくりとベッドから起き上がり冷蔵庫へと向かう
フラフラする…頭がぐらぐら揺れてるのが分かる
P「うぇ…気持ち悪い」
冷蔵庫を開けてお茶を取り出す
凄く重く感じた…こんな事今まで無かったのにな
コップにお茶を注いで一気に飲み干す
喉が潤され少しだけだが力が漲る
P「はぁ…」
P「今日も頑張りますか…」
顔を洗いに洗面所へ向かう、頭痛に襲われ倒れそうになるが無事たどり着く。
情けない…歩くだけなのに、ただ歩くだけなのに……
当たり前が当たり前じゃなくなっていく
確実に…死へと向かっている
怒りが込み上げて来る、目の前のガラスを思い切り殴ろうかとさえ思った。
でも……そんな事しても変わりはしない
分かってる……分かってるから辛いんだ
P「……早く洗って…事務所に行くか」
両手に水を溜めて顔に掛けてやる
気持ち良かった、鏡で自分の顔を確認。
あはは…ヒゲが生えてきてる
P「剃らないとなぁ…皆に笑われちまう」
顔を整え終えると服を着替えに部屋に戻る
やっぱり…少しだけ歩き辛い
でも今はそんな事を考えないでいよう
P「今は仕事の事だけ…考えよう」
スーツに右腕を通した時に携帯が鳴る
慌てて携帯を手に取り確認……美希からだった
めんどくさい奴……お前、今日学校だろ
P「…おはよう」
美希『ハニー?ミキだよ』
分かってるさ…つーかお前しかいないだろ
P「で…朝っぱらからなんなの?」
美希『ミキからのモーニングコールなの』
P「……切るぞ」
美希『ハニー…』
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
鬱陶しい…今すぐにでも切りたかった
電話越しでも分かる美希の姿、わかりやす過ぎ。
P「お前…学校なんだろ?」
美希『うん!もう学校だよ?』
こいつ……学校に携帯持ってってるのか
いや、今はそれが当たり前なのかな
P「お前なぁ…学校に持ってくなっていったろ?バレて取り上げられたらどうすんの?」
美希『だ、大丈夫なの』
何が大丈夫なんだか…このわがまま姫には困ったもんだ
その後美希と他愛も無い話で15分だろうか
それ位経った時に美希の方から俺に言ってきてくれた
美希『じゃあ先生が来ちゃうからお別れなの』
P「はいはい…学校頑張ってくださいね」
美希『ハニーもお仕事頑張ってね』
当たり前だろ…適当にやって良いなら適当にやるっつーの
P「じゃあな」
美希『うん!またかけるね』
響「はいさいwwwwww」
P「お願いがあります…」あずさ「プロデューサーさん?」
春香「響ちゃんの誕生日だね!チキン取って千早ちゃん」千早「えぇ」
誰か上のとズンチのURLください!
P「うっわ…もう時間無いし」
慌ててスーツを着て戸締りの確認
全て確認し終え深呼吸
大丈夫…大丈夫だから
頼むから今日も皆の前では今までの俺でいてくれ
バレたら全てが終わる、コレは俺の…俺だけの戦い
彼女達を巻き込むわけにはいかない、巻き込んじゃいけない
そう自分に言い聞かしドアノブに手を掛ける
お願いします、またこのドアノブを握るまでは
身体に何も起きませんように…
P「……行ってきます」
自分以外、誰も居ない部屋に一言呟く。
ドアノブに力を込めドアを開ける……やっぱり重く感じた
P「お願いがあります…」あずさ「プロデューサーさん?」
P「お願いがあります…」あずさ「プロデューサーさん?」 - SSまとめ速報
(http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1319293170/)
春香「響ちゃんの誕生日だね!チキン取って千早ちゃん」千早「えぇ」
千早「ズンチズンズチwwwズンチズンズチww」
千早「アンコtheKanCrew?」
車に乗り込み深呼吸、別にしなくても良いのだが、こうしないと何か落ち着かなかったから…
P「早く事務所に行かないとな…もう時間無いしなぁ」
鍵を差し込みエンジンを掛ける、同時に車内に響く綺麗な歌声
彼女……如月千早の曲
俺が初めて作詞、作曲を務めさせて貰った自慢の一曲
P「そういや今日千早とだったかなぁ…」
P「うひひ…この曲かけてからかってやるか」
ゆっくりとアクセルを踏み車を動かす
事務所まで20分もかからない、だけど今の時間帯は少しだけ混む
だから早く出たかったんだよ…
P「あーもーあの金髪があぁ!」
苛立つ俺の心を落ち着かせてくれる彼女の歌声、でもその歌声もあと二ヶ月で聴けなくなる。
P「……」
響「……wwwwww」
>>23
マジサンクス
P「おはようございまっす」
小鳥「あっ、おはようございます」
決まって最初に声を掛けてくれるのが彼女
何時になったら結婚するんだか…まぁどうでもいいか
お前の花嫁姿なんてなぁ…
P「なぁ…」
小鳥「はい?どうしました?」
P「……いつ結婚すんの?」
小鳥「ぴっ!?」
そんな驚かなくても良いだろ…俺は彼女を無視して席に着く
パソコンを立ち上げ今日の予定表に目を通す
やっぱり千早と一緒だった、ラジオの収録。今日の予定はそれだけ…
P「情けないねぇ……スケジュール表ほぼ真っ白だ…」
小鳥「ぷ、プロデューサーさん…」
彼女が俯きながら俺に近づいて来る、お茶を持って…
小鳥「おっ…お茶です」
P「ありがと」
彼女にそう言い放つと再びパソコンに目をやる、律子達の活躍をみて見たかったから
竜宮小町…それだけで幾つもヒットするサイトの量にほくそ笑みながらも悲しくなった
P「律子は凄いよな…」
小鳥「あっ、竜宮小町ですか?」
P「あぁ……俺はこんな風に彼女達をプロデュース出来なかったからさ」
ふと漏らしてしまった言葉に寒気を感じた
しまった……なに変な言い方してんだよ俺
彼女を横目で見るがどうやら気づいては無いみたいだ
良かった……バレなくて
千早「あの、プロデューサー」
P「あっ、おはよう」
千早「おはようございます」
素っ気ない…つーか冷たすぎ
千早は未だに俺に心を開いてくれてない
一言で片付けようとする言い方、俺もそうだが相手に使われると良い気はしないな
P「今日のラジオ…まぁ何時も通りにやれば良いから」
千早「……はい」
そう言うと彼女は俺から離れる
えっ?それだけ?幾らなんでもそれは無いだろぉ…
俺どんだけ嫌われてんだよ…
P「…小鳥」
小鳥「ぴよ!?」
P「俺ってさ……そんなに近寄り難いかな?」
小鳥「そそそっ!そんな事無いですよ!」
耳が痛くなった…そんな声張り上げて言うなよ馬鹿
でもありがとう、嬉しい。
彼女が淹れたお茶を啜る……薄い
アイドルになって二年…私はプロデューサーに色々な事を教えてもらった
合唱部で燻っていた私をプロデューサーはアイドルの世界に引き込んでくれた
空っぽだった私に、入りきらない位プロデューサーは詰め込んでくれた。
本当は……仲良くなりたい、もう少しだけ…プロデューサーに近づきたい。
でもプロデューサーは私だけのプロデューサーじゃない…
だからかしら……何時からか私はプロデューサーと距離を置くようになったのは
千早「…」
小鳥さんとパソコンの画面を食い入る様に見てる…挨拶しないと
今日はプロデューサーと二人きりでのお仕事、久しぶりね…
プロデューサーに近づく度に心臓の鼓動が早まるのが分かる
恥ずかしい…胸が苦しい
千早「あの、プロデューサー」
P「あっ、おはよう」
言葉に詰まる、プロデューサーの顔を見るといつもそう。
素直になれたらどれだけ楽なんだろう、言いたい事が言えたらどんなに楽なのかしら…
千早「おはようございます」
そう言うしか出来なかった、必要最低限の言葉…
馬鹿みたい…なんで私はいつもこうなのかしら……
プロデューサー、本当は…本当はもっと話しがたい……
私がその場を去ろうとすると、プロデューサーは私を見ながら言ってくれた
P「今日のラジオ…まぁ何時も通りにやればいいから」
千早「……はい」
耳たぶが熱い、きっと私、顔が赤くなってるわね…
そんな顔、プロデューサーに見せられない。幻滅されそうだから…
私は早足でプロデューサーから離れた
……また、何時もと同じ私を演じる為に
P「えーっと、もう少しだけ時間があるな」
小鳥「そういえばプロデューサーさん」
P「は?なんだよ」
小鳥「ジュピターってアイドルグループ、知ってますよね?」
知らない筈が無いだろ
ジュピター…961プロの主力アイドル
三人組の男性ユニット、デビューして以来テレビの引っ張りだこの売れっ子アイドル
P「ジュピターがどうしたんすか?」
小鳥「いえ…最近良くない噂を聞くので」
良くない噂……まぁ売れっ子にはつきものだろう
しかし、961プロと言うとあまり良い噂は聞かない
裏で色々やっているとこっちの業界でもよく言われている
P「別に…関係無いだろ、家には」
小鳥「……それが」
小鳥「律子さんが言ってたんですけど」
小鳥「昨日、ジュピターと一緒にお仕事した時に奇妙な事が起きたって…」
P「奇妙な事?」
律子の奴…他人になすりつけるなんてな
自分の非を他人のせいにするのは良くねぇだろ
小鳥「はい…彼女達のメイク担当が急に来れなくなったり衣装担当の人が倒れて現場に来れなかったりって」
P「…はぁ?」
あり得なかったメイクと衣装担当が来れない……
長い事プロデューサー業をやっているから言えるがそんな事は絶対に起きない筈
それなのに彼女はそれが起きたと言う
P「嘘だろ?じゃ、じゃあ律子達はどうなったんだよ」
小鳥「…ステージは中止になって、ジュピターのソロで収録を終えた……と」
P「マジかよ…」
すみません、30分程抜けさせて貰います。保守、お願いします
そろそろか…
言葉を失った、何言ってるのか分からなかった。
でも、それでもジュピターって…961プロの仕業と決まった訳じゃ無いだろ
疑うのは良くない、いくら961が悪い噂を抱えてたとしてもだ…他事務所の妨害まではしないだろ
P「…」
小鳥「決まった訳じゃ無いんですけど…やっぱり…」
P「そんな訳無いっすよ……運が悪かっただけ…じゃないの?」
軽く受け流し気持ちを落ち着かせる
なんで俺に言ってくれなかったんだよ馬鹿律子
そんなに頼りにならないのか俺?
苛立ちと不安が胸を締め付ける
その時だった…喉元から込み上げる何かを感じ……
P「お"ほっごほっ、っごっほ!!」
小鳥「だ、大丈夫ですか?」
慌てて口を塞ぎそのまま咳き込む、やめろ
朝、家を出る前に頼んだばっかだろ……
P「……」
小鳥「プロデューサーさん」
やっくりと手を口から離す
……あはは、やっぱり
昨日、俺を地獄に叩き落とした物が手の平を染めていた
P「…トイレ」
小鳥「プロデューサーさん?!」
席を立ちトイレへと駆け込む、蛇口を捻り水を出す
……なんでだよ、まだ二ヶ月も有るのによ
なんでこんなにも早く症状が出るんだよ!!
癌と宣告されてまだ三日目だぞ!
今まで……医者に宣告されるまでこんな事起きなかっただろ?!
瞬間…止めど無い吐き気に襲われその場で吐いた
朝飲んだお茶しか出なかった…あとは胃液
でも吐き気が治まらず数分間その場で悶え苦しんだ
P「…ぅ…っはぁ……くっそ…」
握り拳を作り思い切り腹を殴る
何度も……何度も
P「くっそ!!…出てけよっ!出てけよっ!!」
P「なんでなんだよ!なんで俺だけこんなに苦しまなきゃなんないんだよ!!」
もう…嫌だ、こんないつ死ぬか分からない恐怖と戦うのは……嫌だ
入院、そうすれば少しは楽になるかな
ベッドの上でずっと休んでいられる、こんな苦しい思いしなくてすむかも知れない
P「……はっ…なに考えてんだよ」
そうだ…あの時決めただろ、鞭打ってでも俺は働くって。
それが俺の出来る恩返し…
社長に対する、彼女達に対する
……765プロに対する
P「…恩返し」
頭から水を被り髪を洗う、荒く手を動かしゴシゴシと音を立てて
あははは……そうだよ、先ずは落ち着かなきゃダメだろ
手の動きを止め顔を上げる、鏡が水しぶきを受け水滴の粒が無数に散らばっていた
自分の顔を確認して笑顔を作る、作り笑い
P「……気持ち悪り」
あれ…目から薄いらぁめんのスープが…
トイレから出て辺りを見渡す、千早が心配そうな表情で俺を見つめる
大丈夫……少なくとも今日は千早の為に頑張るから
……心配すんな
小鳥「ぷ、プロデューサーさん!もー何やってるんですかぁ!」
彼女が俺に駆け寄りタオルを渡してくれる ありがとう…急な対応、悪いな。
タオルを受け取りそのタオルで思い切り頭をかく、水しぶきが彼女の服を濡らしていたがそんなの関係無かった
小鳥「ぴーよー!!」
P「ぷっ…あははは!!わ、悪いっ!」
小鳥「最低ですよ…びしょ濡れです」
俺はタオルを彼女の頭に掛け千早に駆け寄る
スッキリした!モヤモヤが晴れた気分だ、今なら大丈夫!
P「いよっし!行きますか」
千早「は、はい…」
カブトムシやんねぇかな…
千早を先に駐車場に向かわせ俺は現場に行く為の準備をする
机の引き出しからメモ帳、机の上に置いて有るノートパソコン。
その他もろもろを鞄に詰めて準備完了!
P「……の前に」
先ほどタオルを掛けて放置した彼女に近づく、彼女はタオルを両手で持ち鼻に押し付けていた。
小鳥「…すぅー」
P「なにしてんだよ変態」
小鳥「ぷひゃ!?ま、まだ言ってなかったんですか?!」
慌ててタオルを後ろに隠して俺に言い放つ
正直言って彼女の性癖は理解出来ない、臭いフェチってやつなのか?
まぁ良い、今はただ、お前に言いたい事が有るから
P「あのさ…小鳥」
P「今日の収録終わって、お前が仕事終えたらさ……」
P「呑みに行こう、二人で」
小鳥「えっ」
それだけ……
どうせこの先もっと悪くなるんならさ、良い時に思い出いっぱい作りたいから
P「おまたせいたしましたー」
俺の車の前で彼女……千早が俺を待っていた
まだ心配そうな表情で俺を見つめる彼女に歩み寄り、声をかける
P「なははは、ほらぁ、笑顔笑顔」
千早「…プロデューサー」
P「笑顔は?」
彼女は渋々笑顔を作る、あはは、作り笑顔ってやっぱ気持ち悪いな。
俺は彼女のほっぺを両手で摘み優しく引っ張る
千早「ひゅ、ふひょふゅーひゃ?」
P「……ぷっ」
P「あはははは!千早、ナイス変顔!」
手を離し彼女を指差し笑う、彼女は頬っぺたを両手で摩り俺を睨みつける
うんうん、千早はそうやって積極的に表情を出した方が絶対良い
千早「プロデューサー、急になにするんでしか…」
P「うるへー!…ほらっ、早く現場に行くぞー!」
彼女を車に乗せてエンジンを掛ける
もちろん……彼女の曲も同時にかかる
千早「ぷ、プロデューサー?!」
P「なんだよ?俺が聴きたい曲、聴いたらダメ?」
千早「…私がいる前で私の曲なんてかけないでください」
うひひ、顔真っ赤な千早も可愛いな。
もう少しだけ……もう少しお前を変えてやらなきゃないけないな
千早……あと少しだけどさ、俺は千早と居れる時間を楽しむよ。
P「だからさ……千早も楽しんでくれよ」
千早「えっ?」
P「……何でもない」
アクセルを踏み、車を走らせる
現場に向かう途中、軽い渋滞に巻き込まれる。
幸い時間には余裕が有るし……
そうだな、この際千早に色々聞いて見るか
P「なぁ千早」
千早「なんですか?プロデューサー」
P「お前ってさ……やっぱ居るの?好きな奴」
千早「ん"っ!?」
俺の質問に驚いたのか彼女はむせ返る
あぁ…居るんだなぁやっぱり、おんなじクラスの奴かな
それとも先輩?もしかして後輩?
P「どうなのさ?教えてくれよ」
千早「お、教えません…」
P「んだよけちんぼ!」
千早「……」
俺がそう言うと彼女は俯き横目で俺を見る
んだよ……こ、怖いっつーの
けちんぽに見えた俺は風呂入って来ますね
P「だったらさ」
P「千早は……その……」
千早「はい?」
コレは……聞き辛いな、つーかあんまり聞きたく無いな。
でも、やっぱり聞きたいな…
俺は重い口を開き彼女に問いかけた
P「千早は…や、やっぱり……」
P「大物にっ……な、なりたいのかな」
千早「大物?…ですか」
大物……まぁ、簡単に言うとトップアイドルの事なんだけどさ
言えなかったよ……なんか胸の中がぐるぐるしちまってさ
千早「……それは…もちろんなりたい…です」
P「だ、だよなっ!当たり前だよな!」
P「業界のトップに立ちたいのは誰だって同じだよな!……うん」
千早「あの、プロデューサー?」
苦し紛れの言葉がこれだよ…馬鹿丸出しだよな俺
>>91
どけちんぽに見えた俺は後2ヶ月か…
そう…トップアイドル
何時かは大きな会場を、ファンで埋め尽くしてさ
その中を皆が歌うんだ、俺と律子、小鳥は裏でお前達を見届ける。そんな夢……もう叶わない夢
千早「わ、私は…」
P「ご、ごめん!今の無しな!」
右手で眉間を押さえる、ダメだ…最近妙に涙脆くなっちまった。
そのまま涙を拭いハンドルに手を掛ける
千早「…大丈夫ですか?」
P「なははは…だ、大丈夫大丈夫!」
俺はドアポケットに入れてあるガムを取り出し彼女に差し出す
P「ほらっガム、食べる?」
千早「あ、ありがとうございます」
彼女に渡すと俺も一粒だけ取り出し口にほおりこむ
P「……辛いな」
千早「辛いですね」
ブラックは無いな…
ちんぽちんぽうるさいYO!
現場に着き携帯で時間を確認
よしっ、なんとか間に合ったな。
俺は彼女と一緒に建物の中に入って行く
P「…」
千早「プロデューサー、どうかしたんですか?」
P「へっ?!」
千早「いえ…なんでも無いならいいんですが」
千早……お前鋭いよ
実は俺さ、恥ずかしながら昨日の雪歩の事思い出してたんだ。
こうやって二人で歩いて狭い個室に連れていかれて、それから雪歩にコスモス咲かせたんだっけ……
P「なはははは…ほらっ、行こうぜ」
千早「は、はい」
ムズ痒くなる股を気にしながら俺は千早をラジオの収録現場まで連れて行く
「はいっ、じゃあー今日はよろしくね」
千早「よろしくお願いします」
P「彼女をよろしくお願いします」
一礼して俺はディレクター達と共に彼女を見守る
一人のラジオ収録って緊張するのかな…俺はやった事無いから知らないんがやっぱり緊張するんだろうな
「このラジオ、結構人気なんだよ」
P「本当ですか?」
当たり前だろ、だって千早がパーソナリティ勤めてるんだぞ?
彼女の声で癒されない奴は人間じゃないだろ……
スタッフやディレクターとの会話であっという間にラジオも終わりを迎える
千早「それでは、ラジオパーソナリティの如月千早がお送りいたしました」
ズンチズンズチwwwwズンチズンズチwwwww
悲しいよな……本日の仕事終了
やるせない気持ちを胸に抱え彼女に歩み寄る
P「お疲れさん…あはは、今日の仕事終わりだ…」
千早「…は、はい」
やっぱり疲れるんだな…毎回額に汗を溜めて出てくる千早を見てしみじみ思う
俺はポケットからハンカチを取り出し彼女の額を拭う
千早「きゃっ」
P「あっ、悪い…」
軽く悲鳴にも聞こえる叫び声をあげると俺から飛び離れる
悪気は無かったんだぞ?つ、つーかそんなに嫌がる事か?
千早さん……俺ショックですよ
千早「ぷ、プロデューサーはいつも急すぎます……も、もう」
そう言うと彼女は右手を差し出した
俺は手に持ったハンカチを彼女に渡して様子を伺う
……千早、結局俺のハンカチ使うんなら別に飛び上がらなくても良かったろ
P「…女って難しいですわ」
「あはは、そんなもんですよ」
スタッフの甲高い笑い声が部屋に響いた
P「すまん千早、俺ちょっとトイレに行って来る」
千早「あ…はい」
P「鍵渡しとくから先に車の中で待っててくれ」
彼女に鍵を渡すと俺は早足でトイレに向かう
向かう途中スタッフの方々に挨拶をする
正直な話し……こういった関係を作るのが一番苦労する
見ず知らずの奴にペコペコ頭を下げて仲良くなり
仲良くなった後もペコペコ頭を下げなければならない
それが最高に嫌だった…
P「でもまあ仕方ないよなぁ…仕事上は」
P「俺は一番低いんだしねぇ」
トイレに着いてため息一つ
とりあえずは……耐えれたな
鏡を見る。安堵の表情で俺を見つめる鏡の中の自分
P「はあぁー…良かったぁ」
顔を洗い、先ほど彼女に渡したハンカチで顔を拭う
今日はコレで終わり…コレで終わり
そう自分に言い聞かせ目を瞑る
P「……」
目を開けトイレから出ようとする俺の目に映る一枚のポスター
P「…ジュピター」
『ジュピター』961プロ所属の男性ユニット
デビューするや否やすぐさまトップアイドルにまで登り詰めた人気アイドル
P「……はっ」
P「SMAPの方が100倍良いな」
男の俺から見ても…いや、プロデューサーの俺から見ても彼等には光る物を感じた
黒井社長、961プロの総責任者
凄いね……目の良さは俺の数十倍は有るよ
P「…」
だからこそ、認めたくないんだ。
そんな人が裏で色々やってるなんて事、信じたくない
プロデューサーとして…目指すべき目標として
P「まっ、今の俺には関係無いかな」
澄ました態度でトイレを後にする
この時は気づかなかったけど…洗面所、赤く染まってたらしい。
気づかないうちの吐血、痛みなんて無かったのにな
P「千早…お前車ん中で待ってろって言ったろ?」
千早「…すみません」
P「いや、別に良いけどさ」
建物の待合室で健気に俺を待っていてくれた千早
ふふっ……可愛いとこ有るじゃん
それだけに何であの時俺から飛びのいたんだよ
P「じゃあ、とりあえず事務所に制服と教科書とか置いてあるんだよな」
千早「はい」
P「じゃあパパッと帰って千早を学校に送りますかぁ」
千早「……はい」
彼女を連れて車に乗り込む
その間の千早の切なそうな表情に何故か胸が痛くなった
P「はあぁ…」
P「じゃあ事務所に向かいますか」
俺の問いかけに返事が返ってこなかった
心配になり千早の方を向くと先ほどの表情のまま…
目を虚ろにし下だけを見つめる千早
P「ち、千早?」
千早「……すみません」
P「は?」
千早「………私」
次の彼女の言葉に俺は耳を疑った
まさか彼女がこんな事を言うなんて思っても見なかったから
千早「今日は……行きたくないんです」
千早「……学校」
虚しく響く彼女の声、確かに聞こえた
行きたくない?どうしてだよ
まさかイジメ?いや……もしそうだとしても千早がそんな事に屈する筈も無いし
P「な…なんでだ」
突然の千早からの告白
どうしよう…いや、俺にどうしろと
車の中、エンジンを掛けようと思ってたら真横からいきなり
P「は……はい?」
千早「…すみません」
そう言うと彼女は瞳に涙を浮かべ身体を小刻みに震えらせる
突然過ぎるシチュエーション、どうすりゃ良いんだ
これは滅多に見られない……ファン憧れのプルプル千早ことプルチハじゃん
P「…あ、アンビリーバボー」
考えろ…どうすれば良いんだ…
傾向と対策、俺の脳に聞くべし
千早「…」
P「えっと…つまりサボりたいと」
俺の問いかけに首を縦に振り泣き崩れる千早
……困った
すみません、突然クソみたいな雰囲気にしちゃって…
1時まで抜けさせてくださいお願いします
全く関係無いんですがローソンでキャンペーンやってるんですね
スロ…カブトムシPは美希とラバー当ててなかったっけ
人違いかな
>>150
あっ、それは違う人ですね
外に出ないしテレビも見ないんでキャンペーン自体知りませんでした
では一時まで保守の方、よろしくお願いします
無音の車内…いや、彼女のすすり泣く音が響き渡る。
千早が泣き崩れてどれ位経ったのだろうか
目の前の信号が青から黄色に変わる時
ゆっくりとブレーキを踏み速度を落とす
P「…な、なぁ」
俺の呼びかけ、千早に聞こえてるのだろうか。
千早は俺の方を見ようともせず、ただすすり泣いているだけだった。
P「泣いてちゃ理由もわかんないだろ…」
千早「…すっ…すみませっ…」
困ったぁ、なんか俺が泣かせたみたいになってんじゃん。
こういうの弱いんだよ、悪く無い筈なのに罪悪感に駆られるっつーか…
P「学校……嫌なのか?」
俺の問いかけに首で反応する千早
もちろん、首は横に振られた……
P「だったら何で行きたくないんだ?」
P「行ってくれないと俺が困るんだけど…」
信号が青に変わる、目の前の車に当たらないよう慎重にアクセルを踏む。
何度目だろうな、俺、何回も千早に問いかけたぞ…
なのに千早は完全に俺を無視……いや、首で返事はしてるか
P「…と、とにかく事務所に向かっても良いのか?」
首を横に振り泣き声をあげる彼女
本当にどうしちまったんだよ千早の奴
さっきまでは普通だったろ?どうして急に泣き出すんだよ
P「……」
P「あっ」
刹那、先ほどの事を思い出す。
そうだ…建物を出て車に向かう途中
千早、悲しそうな表情を俺に見せたっけ
P「…」
携帯を取り出し時間を確認する
もうすぐ12:00、予定ではこのまま事務所に行き、千早を学校に送ろうと思ってた。
……予定変更
俺は進路を変えて車を走らせる、千早は相変わらず泣いているが俺には……関係無いよな
カーステレオを弄り曲を変える
彼女の存在を世に知らしめた
………千早の歌『青い鳥』に
P「分かったよ、もう聞かないから」
イントロが流れると同時に彼女は顔を上げる
鼻、目元、耳、顔全体が真っ赤になってる千早の顔を見ると、やるせない気持ちになった。
そういえばお前…俺と初めて会った時もそんな顔してたっけ
遠くを見ている様で近くを見ている、近くを見ている様で実は何も見ていないそんな女
久しぶりの千早の表情……見たくなかったな
今の俺には彼女の気持ちなんて分からない、多分…理解しようとしても出来ないだろう。
だってよ…今の千早、閉じちまってるもん
見たいのにさ、見せようとしないんだもん
そんな千早をよそに俺は車を走らせる……ゆっくりと
P「付き合ってやるよ…お前に」
P「言っとくけど今日だけだからな」
彼女にハンカチを手渡す、それを受け取ると使わずに膝の上に置く
それを見た俺はすぐさまハンカチを千早の顔の前に持って行く
P「拭けよみっともない」
数分後、ようやく落ち着いたのか彼女は顔を上げてくれた。
曲も終わりに差し掛かり俺は彼女に問いかける
P「今日さ…楽しかったか」
千早「え…」
P「仕事、楽しかったのか」
彼女は口を閉じ、また俯いた。
答えを知りたいのに答えてくれない、ヒントさえ与えてもらえない。
このモヤモヤ……なんともいえないもどかしさに苛立ちを感じ、貧乏揺すりが始まる
P「…まぁ良いや」
P「もうすぐ着くからさ、その表情…どうにかしてくれ」
千早「……すみません」
彼女の一言、何気ない言葉なのに重く感じた。
何を考えてるのか分からない、もうどうでも良くなってくる……
でもそれじゃあダメなんだよな、わかってる。だから俺は千早にしつこく問いかけるんだろうな
P「着いたぞ、降りろ」
千早「……はい」
着いた場所、如月千早と初めて会った場所
正確にはここじゃないんだけど、まぁ細かい事は置いといて
コンビニ、俺は彼女を連れて店内に入る
扉が開くと機械音が出迎えてくれて、店員が出迎えてくれる
千早「あの…プロデューサー」
P「もう昼なんだしさっ、ほら、早く選べよ」
千早「…はい」
相変わらず俯いてるなぁ…なんか苛々してくる
俺は多分こういうタイプの女大嫌いだな
……だけど、今は我慢。千早の為に…俺の為に
俺がお弁当コーナーを離れようとすると彼女から声をかけてきてくれた
千早「プロデューサーは食べないんですか?」
P「……いいよ、腹減ってないし」
どうせ吐くんだ…入れるだけ後で辛くなるだけだしな
缶コーヒーが置かれている場所へと向かい俺はずっとある物を探していた
P「……無い」
黄色の細長い缶、黒い文字で真ん中にMAXと印刷されているコーヒーが
辺りを見渡すがやはり無かった……
仕方なくパックジュースの中に有るミルクセーキを手に取り彼女の元へと向かう
彼女は小難しそうな顔でスパゲッティと睨めっこをしていた
さっきまでの涙はなんだったんだよ……ま、まぁ可愛いから許す
P「千早、決まったか?」
千早「すみません…もう少しだけ時間をくれませんか?」
P「…別に良いけど」
まさかこれから30分も待たされる事になるとは思いもしなかった
あはは……やっぱり女って難しいや
心の中で呟いた
車内へ戻り座り込む
俺は飲み物しか買っていない為千早をじーっと見つめる
そんな俺の視線が嫌なのか彼女はそっぽを向いて俺に一言
千早「ど、どうして見つめてくるんですか…」
P「…内緒」
さっきの仕返しだよ仕返し
じーっと見つめていると彼女は諦めたのか前を向いて先ほど選んだスパゲッティを袋から取り出す
千早「……見ないでください」
P「嫌だね」
ミルクセーキの蓋を開けストローを刺す、もちろんその時も彼女から目を離さない
俺からの些細ないたずら、思う存分味わえよ、如月千早
食事も終わり、俺は車を走らせる
千早は俺にありがとうございましたと一言言うと窓を見つめてそれっきり
なんだよ…昼飯効果無しですか、勿体無い事したような気がする
P「…千早は何処に行きたいんだ?」
俺の一言に千早はゆっくりと顔を俺の方へとやる
それから少しして、ゆっくりと口を開き、呟く様に俺に言い放つ
千早「プロデューサーが行きたい所」
P「お、俺の行きたい所?」
意味が分からない…そんなの事務所に決まってるだろ
でも、今事務所に戻っちまったらきっと今までと変わらない冷めた千早に戻るんだろうなぁ…
P「行きたい所ねぇ…」
P「……千早を学校に連れて行きたいかな」
瞬間、千早は瞳に涙を浮かべ泣き崩れた。
しまった…今の千早には冗談が通じないのか
P「う、嘘だっての!あ、謝るから泣き止んでくれ」
もう寝させてくださいすみません、起きたらすぐ書きます
数分の沈黙、彼女は俺のついた嘘が気に入らなかったのかときおり俺を見てはそっぽを向く。
やっちまったな…千早の奴、完全に拗ねてる。
P「な、なぁ…嘘位誰だってつくだろ?」
当たり前だが俺の問いかけは彼女の耳には入る筈もなく車内に虚しく響き渡る
き、気まずい…無視は無いだろ無視は
ハンドルを握る手が滑る、確認はしないが間違いなく汗ばんでる
P「じゃ、じゃああそこ行こうか、あそこ」
千早「……何処ですか」
P「落ち着ける所…?」
そう言うと目の前の信号が黄色に変わる
くっ…タイミング悪過ぎだろ、質問責めされるの確定じゃねぇか
俺の考えを裏切ってはくれず彼女は口を開き俺に問いかける
千早「…プロデューサー」
千早「プロデューサーは、迷った時はどうしてますか?」
P「……は?」
迷った時?突然過ぎる質問、意外過ぎる質問。
彼女は俺を見ないで前だけ見つめている
ただ……俺の答えを待っているのだけは伝わった
P「迷った時って……突然どうしたんだよ」
千早「……答えてください」
くあぁ…完全に主導権握られてる
迷った時って言われてもなぁ…俺なんて毎日迷走してるから答えなんて出せないぞ
信号が赤から青に変わるまでの間、凄く長く感じた。
千早は相変わらず前だけ見つめてる、俺の事を横目ですら確認しなくなった。
全然分からない…彼女が全く見えてこない
頭を掻き毟りアクセルを踏み込む
答えが出ない……それに、今向かってるのは事務所。
このままじゃ答えを出せないまま事務所に着いてしまう
P「……迷った時」
P「迷った時………」
P「……顔洗う」
自分でも驚いた、コレが言いたかった訳じゃない。
脳で考えてこれを口に出そうと思った訳じゃ無い
ただ…無意識の内に口からこぼれた言葉
彼女の方を見る、彼女も俺の方を見ている。
千早「か、顔を…ですか」
P「あっ……あ、あぁ」
もう良い、これを通そう。
実際の所間違いじゃ無いしな…ここ数日、何か有る度に顔を洗って心を落ち着かせてたし。
……そうだよな、俺って何か壁にぶち当たる度にトイレに駆け込んで顔を洗ってたっけ
P「うん、とにかく洗う」
P「水をな?顔面に叩きつけてさ、そのままうがーっ!……みたいな感じで」
千早「…」
あはは…駄目だったかな
俺なりの答えだったんだけど、千早、お前に届いたかな
先ほどまでの考えが嘘の様に言葉が口から出てきた。
今はこれを千早にぶつけよう、俺を知ってもらう為に、千早に俺を見せよう。
P「ま、前髪をびしょ濡れにしてさ」
P「鏡で自分の顔を見るんだ」
P「そしたらさ、前より明るい自分が映ってるんだよ!鏡に」
千早「前より明るい自分……ですか」
ここ数日、顔を洗ったら鏡を見ていた
どんなに辛くても、どんなに苦しくても
死にたいって思った時も、心が折れそうになった時も
顔を洗って鏡を見たっけ……
千早「……」
千早「ありがとうございます」
P「へ?あ、ありがとう?」
彼女の不意打ちに心を揺さぶられた
ありがとう?ま、まぁ答えてやったんだからお礼を言ってくれたんだよな…?
そんな俺の考えをよそに彼女は俺を見て一言
千早「帰りましょう……事務所に」
P「は?事務所に?」
千早「はい」
千早「学校……もう授業が始まりますから」
予想外だった、まさか学校に行きたいなんて言い出すとは
でも…千早、お前いま良い顔してる、笑顔じゃ無いけどさ
多分……いや、絶対、心の中じゃ笑顔なんだろうな
P「良いのか?俺とのドライブ、もう少し楽しみたくないのか?」
冗談混じりの一言、俺もいつしか彼女に気兼ねなく当たっていた
千早、少しだけだけどさ…分かった気がする
ありがとうな?見せてくれて……千早の新
しい顔を
千早「授業の方が大切ですから」
左手をハンドルから離し彼女の額に近づける
中指を曲げて親指で固定する……デコピンの形を作り力を込め、彼女の額を当てる
バチンと鈍い音が車内に響き俺は彼女に言い放つ
P「じゃかましい」
千早「…つぅ…ぷ、プロデューサー…」
P「ほら…もうすぐ着くぞ、事務所に」
P「着きましたぜい、千早殿」
まだ額を押さえてやがる…そんなに痛かったのかなぁ
俺は彼女に近づき右手で額を押さえている手をどける
P「oh…」
千早「…許しませんから」
真っ赤に腫れていた、多分あの鈍い音
爪が直撃したんだろうな、あはは…
俺を振り解き事務所に向かう彼女を追いかける、すっごい怒ってるよ
P「わ、悪かったって」
千早「許しません…」
怒ってる筈なのにな…千早の顔が緩んでる
それが嬉しくなった俺は彼女の額に軽いビンタを浴びせる
千早「ぷ、プロデューサー!いい加減にしてください!」
P「うひひひ、悔しかったら捕まえてみろよぶぅわ~か」
そう言うと俺は駆け足で事務所へ向かう、もちろん…後ろから彼女も俺を追いかけてきてくれてる。
その時だった……一瞬、一瞬だけ意識が飛んだ
身体から力が抜けるのが分かった、視界がグラつき
俺はその場に倒れこんだ
目を覚ますとそこは事務所
あれ……俺、確か外で倒れた筈なんだけどな
頭が割れる様な痛みに襲われ顔を歪める
P「いっつうぅ…」
俺の声に気づき彼女達が俺に駆け寄ってくる
あぁ…そっか、俺…千早と小鳥に運ばれたんだっけ
薄っすらと思い出す、倒れ込んだ時の事を
千早の声がして……それから小鳥の声が聞こえたんだっけ
そのまま二人に担がれて事務所に…
千早「プロデューサー」
小鳥「プロデューサーさん!だ、大丈夫なんですかぁ!?」
うぅ、脳に響くから…黙れ
小鳥が俺の肩に手を添えて俺を揺らす
痛い、身体中に痛みが走る……つーか、少しは丁寧に扱えっつーの
P「あぁああ!小鳥!!俺に触るな」
小鳥「ぴっ…」
P「ああぁ……頭いってぇ」
千早「プロデューサー、お水です」
千早から差し出されたコップを受け取りそのまま流し込む
P「ありがとう…千早」
千早「それより大丈夫なんですか?」
大丈夫じゃ無いから倒れたんだけどな
いや…多分千早も分かってる。ただ安心を得たいんだろうな
笑顔を作り千早の頬に右手を当てる
温かい……うん、落ち着いた、ありがとうな千早
千早は冷たい俺の手を驚く様子も無く受け止めてくれた
指に湿り気を感じた…千早の涙だった
俺の右手を両手で握り千早は俺に言い放つ
千早「……バカ」
千早「…バカですよ……プロデューサーは」
P「あはは…ご、ごめん」
千早「許しま……せんからっ…」
俺を握る手に力が込められるのが伝わってきた
痛いよ……力込め過ぎだっての
事務所の窓から外を見る
おかしい……外が赤みを帯びている
……ま、まさか
P「ち、千早…いま何時だ」
千早は泣いてるだけで俺の質問に答え様としてくれない
仕方なく空いてる方の手で携帯を取り出し時間を確認
17:26分……やっちまった、俺、5時間近く気を失っていたみたいだな
無理やり身体を起こし千早に両手を離す様に指示を出す
ゆっくりと千早は握っている両手を離し俺を見つめる
P「…お前、なんで待ってたんだよ」
P「せっかく学校行くって言ったのに」
瞬間、胸に衝撃が走る。
千早が俺の胸に顔を埋めて来たんだ
相変わらず千早は軽いな……いや、有る意味凄く重いけど
P「なぁ…どうして小鳥に頼んで連れてって貰わなかったんだ」
そう言うと次は背中に痛みを感じた
痛い……爪を尖らせて俺を握り潰そうとするなよ
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE ~輝く季節へ~ 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD ~支配者の為の狂死曲~
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世
SS予定は無いのでしょうか?
小鳥「千早ちゃん、プロデューサーさんが起きるまでここを動かないって…」
小鳥が俺の疑問の答えを運んで来てくれた。
なるほど……俺を待っててくれたのね、でもそれは間違いだろ
俺は千早の肩に手を掛けて彼女に呟いた
P「何処にも行かねぇからさ…」
P「離してくれないかな、い、痛いんだよ…背中」
千早は俺の言葉が気に食わなかったのだろう、よりいっそう力を込めて俺にしがみつく
背中が熱くなる、間違い無く血が出てるな。感触で分かった
スーツを脱いでるからだろうなぁ…つーか誰だよ、スーツ脱がしたばかちんは
P「…千早」
P「……顔、洗いに行きたいんだけど」
その一言が千早には理解できる筈、俺が千早にだけ教えた秘密の合図
迷ってる時…辛い時、苦しい時は顔を洗う
なぁ千早……お前も洗いに行ってこいよ
今のお前、すっげー情けないぞ
背中に掛かっていた負荷が徐々に失われて行く、千早が俺から手を離し、ゆっくりと俺から離れて行く
千早「……」
P「ごめん…心配かけて」
俯いて、俺を見ようとしない千早
少しだけ悲しい、少しだけ嬉しい。
今の千早の顔……見たく無いから、今は嫌われてる位が丁度いいから……
P「俺、ちょっとトイレに行ってくるから」
小鳥「あっ、は、はい」
一歩、また一歩、ゆっくりとトイレに向かう。
また突然気を失う訳にはいけないから、もしこの場で倒れちまったら本当に終わってしまう気がする。
誤魔化しきれる自信も無いし……でも、今はトイレに行きたい
後ろを向くと千早が佇んでいる
ったく、お前が一番迷ってる筈だろ……いい加減にしろ
苛立ちを言葉に込めて千早にぶつける
P「ほらっ!お前も来るんだよ、千早!」
そう言うと千早は俺同様、ゆっくりと歩いて俺に歩み寄る。
そう……それで良いんだよ、素直になるが宜しい
トイレのドアを開け、目の前に有る鏡に近づく
鏡を見て、俺は驚いた
自分の顔…酷く青ざめてる
P「あ……あはは」
当たり前、それは分かってた。
ここ数日水分以外は全くと言っていい程とっていない
倒れたのも多分それが原因…
冷たい手で自分の頬に触れる
……冷たかった
自分自身が怖くなる、なんだよこいつ…骸骨じゃねぇか
なんでだ?確かに朝、俺はここで顔を洗った筈なのに
その時は………その時は…
多分…まともな筈……だっただろ?
恐怖が俺の心を締め付ける、吐き気に襲われその場で思い切りぶちまけた
P「う"っぐ……ぷっ…」
胃液と黄色い液体が口からこぼれ落ちる
昼間飲んだミルクセーキ、結局吐いちまった
次は喉元が熱くなる…吐いてる途中に咳き込んだ為口を手で覆ってはいない
P「ごほっ!げっ…っごほっ!お"っ」
苦しさが消え、顔を上げる
もう一度自分の顔を鏡で確認、もちろん良くはなっていない。寧ろ悪くなっていた
P「…は、ははっ」
虚しさが俺を襲う、切なさで涙が溢れ出す。
下を見ると、やっぱり赤かった。吐血、俺の血……俺の現状
蛇口を一番右まで捻り勢い良く水を出す
両手でその水に触れるも水圧に耐え切れず慌てて手を離す
蛇口を少し締めて水圧を弱める、水を両手に溜めてそれを口に持っていく。
口に含め、少しだけ何もせずに立ち尽くす
数十秒後、うがいを開始する。
P「がっ!?」
喉元に痛みが走る、含んだ水を吐き出しまた、咳き込む。
P「ハァァ……はあぁ…」
ゆっくりと息継ぎをする、喉元を押さえ気持ちを落ち着かせる。
大丈夫…大丈夫だ、大丈夫、大丈夫大丈夫
心に言い聞かせ自分に暗示を掛ける
P「……はあぁ」
息を吐いてその場に停止、今はコレが一番良い気がしたから。
瞳を閉じて深呼吸、吸って、吐いて…吸って、吐いて
P「……よし」
両手で自分の頬を思い切り叩く
痛快な音がトイレに響く、頬に痛みを感じてまだ自分は生きているんだと身体に実感させる。
P「今日は…このまま千早を送って行って…帰りますか」
ゆっくりとドアに手を掛ける、朝と同じ
いや……今の方が少しだけ、重かった
事務所に向かい周りを確認する
千早は俺を待っていた様に両手に荷物を抱え俺に歩み寄る
ごめんな…その制服と教科書、俺のせいで不要になったんだよな。
P「荷物かせよ、持つから」
千早「大丈夫です」
P「……本当に?」
千早「はい、プロデューサー」
千早の表情を見て申し訳なくなる
俺から言い出したのにさ、俺の顔は一切晴れちゃいない。
それなのに千早……お前は少しだけ晴れてるよ
P「じゃあ俺は千早を送ってあがりますから」
小鳥「あっ………はい」
P「?」
俯く彼女をよそに千早と共に事務所を出て、駐車場へと向かった。
車に乗り込み、まずは彼女に一言
P「悪かったな……今日は」
千早「もう気にしてませんから」
P「……悪い」
呟くと同時に車のエンジンを掛け、車を走らせる。
カーステレオから流れる彼女の曲
でも……今は全く耳に入ってこなかった、そんな余裕が今の俺には無かったから。
彼女の家まで、俺は終始無言だった。
いや……話せなかったんだ
もしそれで吐き気に襲われたりするのが怖かったから
彼女の問いかけにも鼻で返事をした
家に着くまでの間にどれ位そのやりとりをしたんだろう
それすら覚えていない、千早…ごめん
P「……着いたぞ」
千早「…はい」
P「……お疲れ様」
千早「はい、プロデューサーも、お疲れ様です」
P「またな」
彼女が車のドアを閉める音が耳に入ってくるのを感じ、俺は車を走らせた。
サイドミラーで彼女を確認すると、ずっと俺を見ていてくれた。
その行為に胸が締め付けられ…苦しかった
俺は何をやってるんだ…せっかく千早が俺に心を開いていてくれたのに
やっと千早とまともに話せていたのに
P「……ばかちんは俺の方だよ」
ハンドルを強く握り締め自宅へ向かう
その時、ポケットに入れていた携帯が音を立てて揺れた
……美希からの電話だ
P「昼間掛かってこなかったと思ってたら……今かよ」
タイミング良く信号に差し掛かり、黄色に変わる
ブレーキを踏みしめ渋々携帯を触り電話に出た
美希『あっ!ハニ
P「今運転中」
そう言い放つと電話を切り再びポケットに入れる
数秒後、携帯が騒がしくポケットで暴れるのを感じ再び取り出す
美希『ハニー…ミキ、何か悪い事したの?』
P「あぁ、つーか現在進行形で悪い事してるよ」
美希『だ、だったら教えて欲しいの!』
信号が青に変わると同時に電源を落としアクセルを踏む
俺は自宅へ急いだ
P「ただいま…」
返事が返ってこないのが当たり前
でも今はその当たり前が凄く落ち着く
何も変わっちゃいない、そう心に言い聞かせて。
携帯の電源を入れてすぐの事、携帯に表示されるメールマーク
おおよその見当はついている、メールを確認して溜め息をこぼす
P「はぁ…やっぱり美希からか」
先ほどのやりとりから30分位だったか?ゆっくり帰って来たからそれ位時間がかかった
P「未読メール16件……恐っ」
俺は携帯をベッドに投げつけ脱衣所に向かった
今日の嫌な出来事を洗い流す為に
風呂から上がり俺はテレビの電源を入れる
相変わらず見る番組は無いがなんとなく落ち着くから
P「あっ、そう言えば今日中日との一戦じゃん」
チャンネルを変え、野球中継を見る。
ソファに腰掛ける前に先ほどベッドに放置した携帯を取りに行く
着信4件、未読メール21件
P「ふ、増えてやがる…」
これ以上無視をすると仕事に影響が出ると読んだ俺は彼女に電話を掛ける事にした
最初は話し中、次も話し中、次も話し中…
5回目でようやく繋がり彼女が電話に出る
美希『ハニー…』
P「ハニーだけじゃ分からないんですけど」
ぶっきらぼうに返事をして彼女をからかう
正直なところ今すぐにでも切りたかった
数秒の沈黙の後、彼女が喋り出す
美希『ミキの事、嫌い?』
答え辛い質問、何度も言うがストレートすぎるだろ美希…
俺が答え様とする前に彼女が俺に言葉を浴びせる
美希『ミキはハニーの事、大好きだよ?』
美希『だからミキ、ハニーがお仕事頑張ってるの知ってるから昼間は電話もメールもしなかったんだよ?』
美希『ずっと耐えてたんだよ?ずっとずっと我慢してたの』
美希『やっとハニーに電話して…ハニーが電話に出てくれた時すっごく嬉しかったの』
美希『なのに…なのにハニーは…』
P「あ、あははは……」
やっぱり女って難しいよ
美希『笑い事じゃないの』
P「…すんません」
美希『許さないの』
その語尾の『~の』正直苛々するんだよ
美希の特徴的な喋り方だが…俺は苦手だな
P「ど、どうすれば許してくれますでしょうか美希殿」
美希『ハニーが考えるの』
普段は明るく、高い声の美希だが歌う時はこうやって低い声を出すんだよなぁ。
俺はこっちの美希の方が好きだよ
P「か、考えるのって…無茶言うなよ」
美希『無茶じゃないよ…ハニーなら出来るの』
い、意味が分からない…何言ってんだこの金髪さんはよぉ
電源ボタンに手を伸ばし切ろうとした瞬間、彼女からの警告を喰らう
美希『今切ったらミキ……もう仕事行かないから』
P「……すみません」
俺は携帯を持ったままその場で土下座をした
P「えっと…じゃあさ」
P「今度の土曜日、一緒に出かけようか」
今日は火曜日、土曜日までは四日も有る
いや…三日かな
俺の提案に彼女からの返事が来ない、失敗か……そう思っていた矢先だった
美希『ぜっ、絶対?今度の土曜日にハニー…ミキとデートしてくれるの?』
デートとは言ってないだろ…俺達付き合って無いんだし
まぁ、今は美希に合わせるとしよう。これ以上話がややこしくなる前に
P「あぁ…ほら、この前の誕生日、何もプレゼント渡して無いだろ?」
P「だから美希にプレゼントを買ってあげようと思ってさ…」
我ながらこういう都合の良い事はぽんぽん出てくる、自分の悪知恵に頭が下がる。
美希『はっ、ハニー!』
美希『わ、分かったの!』
P「じゃあ俺…忙しいから切るぞ」
美希『う、うん!ハニー、またね!』
おはよう!晩ご飯!!
遅くまで保守していただき本当に申し訳ございません
それでは30分程時間をいただきます、保守よろしくお願いします
あと小鳥さんことぴよぴよさんと一緒に居酒屋は需要有るんですかね?
彼女との話を早々と切り上げる事に成功した俺はそのままソファに座り込みテレビに目を移す
美希の奴…そんなに買い物が楽しいのか?
それも野郎の俺とであんなに喜ぶんだ
だったら女同士だともっと喜ぶんだろうな。
P「うへぇ…ノリで言っちまったけど今度の土曜かぁ」
P「あー……休み潰れたぁ」
ふてくされる様にボヤくと再びテレビに集中する
……喉が渇きを訴えてくる、正直今は何も入れたく無いのだが仕方ない
ゆっくりとソファから起き上がり冷蔵庫に向かう
P「えっと…」
お茶に手を伸ばす時、ふと目に止まる飲み物
缶ビール……最近呑んで無かったな、久しぶりに呑もうかな
缶ビールに手に取り蓋を開ける、その音でふと思い出す………彼女との約束を
P「あっ」
完全に頭の中から消えていた彼女との約束
そうだよ…今日の朝約束したんだ、お互いに仕事が終わったら呑みに行こうって
P「ゔーむ…」
少し考えた後、渋々缶ビールを流しに持って行き中身を捨てる。
今から呑むんだし…それに今飲酒運転なんてしてしまったら冗談抜きに死にかけない
P「……はぁ」
携帯を取り出し彼女に電話を掛ける、数回鳴らした後、彼女が電話に出てくれた。
小鳥『あっ、どうしたんですか?プロデューサーさん』
物音が聞こえる、まだ彼女は仕事中なのだろう。
俺は財布をスーツから取り出しながら彼女に話し掛ける
P「まだ仕事なのか?」
小鳥『あはは……はい、まだ仕事中ですよ』
少しだけ嫌そうに俺に言い掛けてくれた
そうだよな…毎日遅くまで事務所に残ってるんだよな
P「今からそっちに行っても良いか?」
小鳥『えっ?事務所にですか?』
予感的中、やっぱりまだ事務所に残って仕事をしてる。
なんとなくだが申し訳なくなる、本当になんとなくだけど…
P「あのさぁ…朝の約束……覚えてる?」
そう言うと彼女は黙り込む、多分…俺に気を使ってくれてるんだろう
そりゃそうだ…さっきまで倒れていた人を呑みに連れて行くなんて普通は考えられない事なのだから
少しの沈黙の後、彼女が俺に話し掛ける。
その声は低く、申し訳なさそうだった
小鳥『きょ、今日はゆっくり休んでください……呑みには何時でも行けるじゃ無いですか』
何時でも……か
彼女の言葉に今度は俺が黙り込む
何時でも行ける…あぁ、確かにな何時でも行けるよ
普通なら……な
俺は眼を閉じて携帯を持っていない方の手で握り拳を作る
俺にはもう……時間が無い、なら…彼女と一緒に
それに……もう約束は破りたく無いかな、例え彼女がアイドルじゃ無くても
俺にとっての大切な人は、765プロに所属する全員なんだから
P「俺は行きたい、あんたと呑みに行きたい」
小鳥『えっ』
P「今日……ダメかな、俺さ…今日呑みに行きたいんだ」
握り拳を解いて瞳を開ける、もう俺には時間が無いから
P「おねがい…します」
小鳥『…本当に良いんですか?』
P「俺の方こそ、本当に良いのか?」
数秒の沈黙の後、彼女が俺の問いかけに答えてくれた
その声は明るく、俺が知ってる何時もの彼女の声だった。
小鳥『だ、だったらもう少し待ってください、すぐに終わらせますから!』
P「良いよ別に、今から事務所に向かうから」
小鳥『ぴよっ!?だだだ、ダメですよ!私、制服なんですよ!』
何気してるんだよこの人は、今更?
別にどんな服装だって変わらないだろ
まぁ……服に臭いが染み付くけど一ちゃくだけとかじゃ無いんだから良いだろ
P「だーめ、今から事務所に行くからそれまでに仕事片付けとけよ」
小鳥『ぷ、プロデューサーさ
彼女の言葉を最後まで聞く前に俺は携帯の電源を落とした
俺からのとびっきりの悪戯、受け取りんしゃい
P「よっしゃ、行きますかぁ」
事務所に向かう途中、コンビニに寄り二本、同じ飲み物を買う。
お酒前の強い味方、居酒屋に行く前には必ず飲んでた飲み物
コンビニを出てすぐに事務所に向かう
不思議と身体が軽く感じた、なんでかな
多分、これからの出来事を楽しみにしてるからだろう。
弾む心を押さえつけ俺はアクセルを強く踏み込む
P「しっかし小鳥と二人で呑むのって何時ぶりだろうな」
P「仕事でスタッフ達と呑む事は多かったけど……」
P「小鳥と……それに二人で呑むって初めてか?」
少しだけ嬉しい、まだ初めてに出会えるんだな。
それだけで満足!……って、呑む前から満足してちゃ楽しめないよな
P「うーっす、終わったかい」
事務所のドアを開けて彼女を探す
俺の椅子に座りお茶を啜っていた、何故かふてくされるが
彼女に近づくと彼女は湯のみを机の上に起き椅子から立ち上がる
向こうの方から俺に近づいて来た
P「終わった?」
小鳥「…酷いですよプロデューサーさん」
P「はい?」
小鳥「私だって女の子なんですよ!?こんな服で呑みに行きたく無いですよー」
まだ気にしてるんだなこの人は
それに聞こえた謎のワード……女の子?
30近い女性が女の子…?笑わせてくれるよこの人は
P「…ふふ」
小鳥「何がおかしいんですかー!」
彼女の肩をポンと叩き事務所を出ようとする俺に彼女は慌てて着いて来る
小鳥「ちょっ、プロデューサーさん!湯のみ位洗わせてくださいよー」
P「先に駐車場で待ってるぞ~」
車の中で待っていると足音が近づいて来る
ドアを開けようとドアに手を掛けるが空かない…
ガチャガチャと何度もドアを開けようとする音が聞こえる、それに堪えきれず吹き出してしまった
小鳥「ぴ━━━━よ━━━━!」
P「ぷふわははははは!い、今開けるからちょっと待ってろよ」
ドアのロックを解除して彼女を隣に乗せる、顔を真っ赤にして俺に罵声を浴びせる。
小鳥「もう!プロデューサーさんはなんでこう自分勝手なんですかぁ!」
小鳥「いきなり事務所に来たと思ったらこんどは車のドアを閉めて私をからかって……そんなに楽しいんですか!」
P「空いてたよ」
俺の呟きに彼女は言葉を失う
そうだよ…空いてたんだよ、後ろはな
P「後ろ、空いてるんですけど?」
P「閉めてたのは前だけですよ?小鳥さん」
小鳥「ぴ…」
P「そんなに俺の隣に座りたかったんですかい?小鳥さん」
小鳥さん、俺が彼女をからかう時にだけそう呼ぶ。
まぁ最初の頃はちゃんとさん付けで呼んでた
だけど向こうから呼び捨てで呼んで欲しいと言われて以来小鳥と呼んでる
P「ん~?だんまりですか小鳥さぁん」
小鳥「…」
俯く彼女をよそに俺は袋から有る物を取り出す
先ほどコンビニで買った飲み物だ
それを彼女の頬に近づけ、そのままくっつける
小鳥「冷たっ」
P「何時まで下向いてんだよばーか」
突然の出来事に驚いたんだろう、その顔は怒りに満ち溢れてんのかな?とりあえず顔が赤かったからそうなんだろ
P「ほら、今から呑みに行くんだからさ」
俺が差し出した物を彼女は乱暴に受け取り蓋を開け、一気に飲み干す。
P「やっぱ呑む前にはこれだよなぁ」
俺も片手で蓋を開けてソレを飲み干す
不味くは無い、けど甘く無いから俺は好きじゃ無い。
P「マズイよな、さすがウンコの力」
小鳥「うっ!?」
小鳥「ウンコじゃなくてウコンですよ!」
P「あっ、今ウンコって言ったろ」
小鳥「ぴぴ!?」
他愛ないも無いやりとり、コレが普通なんだよな
ただ、今は凄く楽しい。呑みに行くからかな
それともあんたと一緒だからかな?
P「ウン小鳥さぁん」
小鳥「ぴ━━━━よ━━━━!」
居酒屋の近くの有料駐車場に車を停めて俺達は暗い夜の街を歩く
相変わらず彼女はぶつくさ言ってるみたいだ
P「なぁ、そんなに私服に着替えたかったのか?」
小鳥「当たり前ですよー、せっかく呑みに来たのに制服じゃなんか不細工じゃ無いですかぁ」
不細工ねぇ、居酒屋って基本仕事帰りの人が多いから制服が普通なんだけどな
俺達は街をうろつきどの店にするか探す
P「うーん、どこにしようかなぁっと」
小鳥「プロデューサーさん」
P「はい?」
小鳥「だったら私行きつけのお店に行きませんか?ある程度勝手が分かってた方が楽ですよ?」
今の一言で悟ってしまった
こいつ……一人で呑んだ事有るな
それも一度じゃなく何回も…
P「わ、分かった…案内してくれ」
小鳥「任せてください!」
一軒目は彼女行きつけの店、落ち着いた店……と言うか小汚い店だな
小鳥「ママーまた来ちゃいましたよー」
「あらぁ、小鳥ちゃん二日ぶりねぇ」
やっぱりな、しかも二日前にもこの店に来てたのかよ
俺は彼女が最高に可哀想に思えてきた、幾ら出会いが無いからって酒で誤魔化すのかよ…
P「どうも、初めまして」
「あらっ?小鳥ちゃんの彼氏さん?」
小鳥「もーママったらぁ!からかわないでくださいよー」
あぁ、俺こういうノリ好きじゃ無いんだよなぁ。
なんつーか…気まづい、知らない奴にからかわれてる様な感覚に陥る
小鳥「ささっ、座ってくださいよプロデューサーさん!」
P「……あぁ」
俺は心臓辺りを摩り自分に言い聞かせる 大丈夫だ、大丈夫だからな
「はい、焼酎のお湯割りよぉ」
小汚いテーブルに出されるお酒、本日一杯目はまさかの焼酎。
彼女にはんば強引に勧められて嫌々頼んだのだが……俺あんまり焼酎好きじゃ無いんだ
小鳥「えへへ、プロデューサーさん、かんぱーい」
P「……乾杯」
コツんとグラス同士がぶつかり合う音が静かな店内に優しく響く
しかし……一つ気になる事が有った
P「あのさ小鳥」
小鳥「はい?どうしました?」
俺が気になった事は小鳥の服装だった
明らかにはだけさせている、ぶっちゃけウザい。
目のやり場に困るし、こいつに遠慮するのも癇に障る
P「服…なおせよ」
小鳥「もぉ…プロデューサーさんのエッチ」
グラスを彼女に投げつけてやろうとさえ思った、だがいきなりそんな事しちまったら彼女は泣きじゃくるだろう。
そう思い彼女を無視して焼酎を一口
喉が焼かれる感じ、久しぶりの感覚だな
何杯呑んだだろうか、少しだけ気が楽になる。
彼女を見ると俺の倍は呑んだであろう酒の臭いが鼻をさす
彼女は軽く酔い潰れて机に顔を伏せている
小鳥「うぅ…な、なんで私には出会いがないんでずがぁ……ま"まぁ…」
「小鳥ちゃんには隣のお兄さんがいるじゃない」
黙れババア、何小鳥に吹き込んでんだよ。
グラス投げて気絶させるぞおい
グラスを強く握り締めグラスの中の焼酎を呑み干す
P「…ゔ」
胃か肺か分からないが痛みに襲われる
吐き気はしない、ただ…痛い
胸を押さえ付け俺も机に伏せる、小鳥は相変わらずママと呼ばれる人と話している
小鳥「無理ですよぉ…彼には若い子が沢山いるんですからぁ……どーせ私なんて眼中に無いんですよ」
「あらぁ?彼も満更じゃないみたいよぉ」
痛い…確かに強くなってゆく痛みにはち切れそうだった
やっぱ無理が有ったかな……調子良いと思ったんだけどなぁ
誤算だった…苦しい、腹から何かが産まれそうな位痛い
P「…ぐっ…ゔぅ…」
「ほらぁ、彼も嬉しいですよって言ってるわよ?」
小鳥「ぴへへ、本当ですかぁ?」
机に伏せてる俺をよそに二人は好き勝手話してる
今の俺は機嫌が悪いんだ、だから俺をダシに話すんじゃねぇ……ぞ
P「ゔっ…ぎ…」
腹を押さえ歯を食いしばる、正直もう帰りたかった。
もうこの店であがろう……だから今は耐えろ
ゆっくりと深呼吸を繰り返す、何回も、何回もやった。
空気を吸う度に瞳を閉じ、吐く度に瞳を開ける
P「っはぁ……はぁ」
ゆっくりと顔を上げ目の前の魚の開きに箸を伸ばす
身を取り出し、口に運び食べ様とするが突然の手の痙攣に箸ごと床に落とす
小鳥「もぉ、プロデューサーしゃんは子供でしゅねぇ」
彼女が床に落ちた箸を拾い俺の机の上に置く、彼女は俺の額に手をくっつけて一言
小鳥「痛いの痛いの~」
小鳥「飛んでけーっ!!」
その言葉を最後に俺は彼女の胸もと目掛け倒れ込んだ
小鳥「ぷ、プロデューサーさん!?」
薄れゆく意識の中…確かに俺は彼女の声を聞く
悪い……無理だった
楽しみにさせてごめんな、小鳥…
もう少しだけ、あんたと一緒に居たかったかな……
小鳥「ま、ママ!きゅ、救急車!救急車呼んで!」
「え、えぇ、分かったわ!今すぐ呼ぶから彼を奥の私の部屋に連れて行きなさい!」
小鳥「は、はい!」
重い瞼を少しだけ開き彼女……小鳥を見る
あはは…なにそんなに慌ててるんだよ
お前さっきまで酔ってただろ
なんで……泣いてんだよ
残り5X日
恋
バ
ナ
オ
ワ
リ
はい、癌P編第二話、無事終わりました遺影ッ!
小鳥さんをダシにPを倒れさせて無理矢理終わらせた感が凄まじいですがそんな事は無いですYO!!
今回は千早でしたね、前回みたく誰得なP視点のエロは削除しました
こっちの方が淡い感じが出て良いんじゃ無いですかね…
それではまた会いましょう!!
レッツアイマス!
正直な話し今はカブトムシは全然思い浮かんでこないんでもう少しお待ちください
自分はコレと一昨日?書いたえびすアイドルを書こうかなと思ってますね
建てるなら前とスレタイは変えません、もし見かけたらよろしくお願いします
癌なら明日建てます!今から書きたいのが有るのでそれに一日使わせてください
えっと、あんまり載せたくは無いんですけど一応この続きをと…
P「今日から765プロに入る事になった三人組だ」
P「今日から765プロに入る事になった三人組だ」 - SSまとめ速報
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それでは今度こそさよならです
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