スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」(103)

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 01: ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
 02: C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」
 03: シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」

全速力で!

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■夜間 処刑場にて ─────

ゼロ「……敵が怯んだ!今だ、グラウンド中央の磔台を引き倒せ!」
   「枢木スザクを救出せよッ!」

同志たち「うおおおおおおおッ!」

ゼロ(……残念ながらコーネリアは逃したが、スザクこそが真の第1目標だ)
   (これで目的は達せられ、俺たちの組織の評価はさらに増す……)
   (ククク……コーネリアは、徐々に追い詰めてやる……俺とスザクでな……)

同志A『……ぜ、ゼロ!おい、こいつぁ……!』

ゼロ「何事だ?」

同志A『こっ……こいつ、狂ってやがるぞ!!』

ゼロ「……何だと?」

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(混乱する現場から、ノイズ混じりに聞こえてきたその声は、まさしくスザクのものだった)
(しかし、その内容は……)


スザク『……せっ!やめろ、くそおッ!離せ、オレに構うなあッ!』
    『オレは、オレはここで死ぬんだあああああッ!』
    『ユーフェミア様のために今死ぬしかないんだ!やっと覚悟を決めたんだ!』
    『やめろ!オレを死なせろテロリストどもぉ!!』

ゼロ(スッ、スザク!?……お前、何を言っているんだ……!?)
   「……逆らうなら多少痛めつけても構わん!そのままスザクをさらえ!」


(無線機の向こうから聞こえてくる怒号、何者かが暴れるような音、うめき声……)
(しかし、急に音が途絶える)


ゼロ(……まさか……殺したのか……?)

同志A『………………』
    『枢木を車に積んだ!戦線を離脱する!』

ゼロ「よし、目標は達せられた!」
   「全軍、状況から速やかに撤退せよ!」カチッ

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(兵舎から約1km離れた場所にある、高級ホテルの最上階……)
(俺とC.C.はそこを、臨時指令室としていた)
(処刑場となった軍のグラウンドを双眼鏡で一望しながら指示を出していたのだ)

(無線を切った瞬間、俺は一気に脱力しソファにもたれかかる)
(空調の効いた室内にも関わらず、俺は自分が汗だくになっていたことに気付く)
(しかし、思わず口から洩れたのは安堵の溜息ではなく、苛立ちの言葉だった)


ルル「……スザクの奴、何を考えているんだッ!」ガン!!

   (ユフィが何だと叫んでいたが……俺の知らない、何かがあったのか?)
   (これでは、安易に奴に正体を見せると逆効果になりかねん……)
   (おのれ……俺が全てをさらけだせる、最も仲間にしたい男だというのに……!)

C.C.「どうした、作戦は成功したんじゃないのか?」

ルル「ああ……したはずだ……」

C.C.「はず?」キョトン

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■夜半 兵舎 隣接グラウンド(臨時処刑場) ─────

(トウキョウ租界の防衛任務につくブリタニア軍の、兵舎にあるグラウンド……)
(ここが、枢木スザクを銃殺する臨時の公開処刑場となった)

(グラウンドの中央には磔台が設置され、その上には一人の男が縛り付けられていた)
(照明に煌々と照らし出されたその姿は、枢木スザク……)
(クロヴィス殿下暗殺の幇助という、無実の罪を着せられた男だ)

(その周囲には、銃器を構えた十数名の兵士が、さらにその周囲には装甲車両や)
(ナイトメアなどの、枢木スザクの奪還をはかる者を迎え撃つための部隊がずらりと控えていた)

(そして、グラウンドを見下ろす形になる観覧席──防弾設備も整ったボックス席──には、)
(コーネリアとユーフェミア他、政庁の要人たち数名が控える)
(そのボックスからやや離れた位置には、ディートハルトたち報道陣が控え、)
(処刑執行の時をかたずをのんで見守っている)

(さらに、処刑場の入口は、ジェレミア・キューエル両名の部隊が警備にあたっていた)
(純血派のプライドにかけても、この場でテロリストを壊滅させてやろうという気迫と共に、)
(ルルーシュたちの襲撃を今や遅しと待ち構えていた)

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(しかし、それは数時間前の話……)

(照明が壊され、月明かりの中に浮かび上がったグラウンドは砲弾の跡で荒れ果てていた)
(硝煙の匂いがいまだ漂う中、ナイトメアの残骸や兵士たち、そしてレジスタンスたちの死体が)
(点々と散らばり……中央の磔台は倒され、そこにいたはずの男の姿はなかった)

(そして、グラウンドを見下ろす形の観覧席にいたはずの、)
(コーネリアやユーフェミアの姿も消えていた……)

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■臨時処刑場 中継車内 ─────

ジェレミア「……いいな、我々の許可があるまで、この件に関する情報は一切流すなよ……」

キューエル「……」

ディートハルト「はい、承知しました……」


(険しい表情の軍人2名は、私の返事を聞くとそのままきびすを返し、中継車を出た)
(結果が結果であるし、こうなるのはわかっていたが……)


ディートハルト(しかし……ジェレミア卿もキューエル卿も、どうしてテロリストに対して)
      (処刑場の門戸を開けてしまったのだ?極めて不自然な出来事だった……)

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■数週間前 政庁内 ─────

ジェレミア「……なにっ?それでは今、殿下は執務室にただ一人でいらっしゃるのか!?」

キューエル「……ジェレミア卿、これは?」

ジェレミア「……急ごう!」


(キューエルと数名の兵士を連れ、ジェレミアはあの時、執務室へと急いでいた……)
(クロヴィスが誘拐・殺害された、あの日の事だ)
(かれらは、政庁の執務室へ続く廊下を走る……と、その時、行く手に人影がみえた)
(男女2名と思しき兵士たち、そして……その肩にかついでいるのは、クロヴィスだった!)


ジェレミア「貴様ら止まれえッ!何をしておるか!」チャキッ!!

キューエル「止まれ!所属を言え!」チャッ

兵士A「……」ピタ

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(立ち止まった兵士2名は、しかし彼らの問いかけにも応えず、黙って見ている)
(そのうちの男兵士が、親指でヘルメットをくいっと上げた)


兵士A「ジェレミア卿、落ち着いてください……私は純血派の者です」


(まだ幼さの残る顔立ちの兵士は、己の胸を指さす……)
(両名の胸には、確かに純血派の証であるバッジがあった)


ジェレミア「それはわかった、殿下をどこにお連れするつもりだ!」

兵士A「殿下は、気分がすぐれないとのことで、私たちに介抱を申し付けられました」

兵士B「……」

キューエル「医者を呼べばいいだろう!」

兵士A「ジェレミア卿、それにキューエル卿……我々は、純血派の同志ですよ?」


(彼らはふと、男の声に奇妙な響きを感じ取った)
(彼らは、男の顔を凝視する……)

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兵士A「……純血派のバッジをつける者の行動を咎めるな!」キュィィィン!!

ジェレミア「ぬうっ……!?」

キューエル「ぐ……!?」


(男兵士……ルルーシュのギアスは、ジェレミア達の思考を遮り、ねじ伏せた)
(わずかの間、身体を硬直させた彼らであったが……)


ジェレミア「…………わかった、丁重にお連れしろ」

キューエル「……早く行け」

ルル「イエス、マイロード……」ニヤッ

   ~ ~ ~ ~ ~

ジェレミア「……私は、何をしていた……?

キューエル「……そうだ、殿下は……?」

ジェレミア「!!殿下……急げ!」ダダッ…!!

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─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


(……彼らは以降、"純血派のバッジをつける者"に対しては、その行動を咎めたり遮ることが)
(一切できなくなっていたのだ)
(しかし、純血派は結束力のある集団……そもそも、互いに咎める行為自体をすることが)
(なかったがゆえ、彼ら自身も、そして周囲の者もその異常が全くわからなかった)

(周囲の者が、その異常に気付いた時には……)

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■政庁内 尋問室 ─────

尋問官「……ジェレミア卿、もう一度訪ねます、貴方の任務は、何でしたか?」

ジェレミア「処刑場入口の警備だ……」

尋問官「にも関わらず、どうしてテロリストどもを処刑場内に通したのですか?」

ジェレミア「……純血派の証をつけていたからだ……」

尋問官「……なぜ、それをつけていただけで通しましたか?」
    「コーネリア総督も、そんな指令は出していないとおっしゃられている」

ジェレミア「……」

尋問官「初動で連中の戦力をそぎ落とさなかったがゆえ、我が軍は苦戦を強いられた」
    「随分な大言壮語を口にされていたそうですね、入口で連中を潰してみせると……」

ジェレミア「…………」

尋問官「……なぜですか?」
    「なぜ、テロリストどもを通したのですか?」

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ジェレミア「……連中が純血派のバッジをつけていたからだッ!」
      「ならば、その行動を咎めたてる必要は一切ないッ!」ダン!!

      『何度言わせるんだ!私が何を間違っているというのだ!』
      『純血派のバッジは忠義の証!それが間違いを犯すはずがないだろう!』

尋問官『辺境伯、落ち着いてください』

ジェレミア『これが落ち着いていられるかッ!』
      『私を今すぐ解放しろ!私を誰だと思っている!純血派の……』

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─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


ジェレミア『私を今すぐ解放しろ!私を誰だと思っている!純血派の……』


(ジェレミア達の尋問風景の録画を見ていたコーネリアは、深いため息をつく)
(その腕には包帯が巻かれており、それを首から吊っていた)


コーネリア「…………ずっとこの調子か」

尋問官「はい……キューエル卿もこれと大して変わりません」
    「頑なに、純血派だったから、と……」

将官「ジェレミア卿の部屋を捜索したところ、クロヴィス殿下が誘拐された日の」
   「監視映像のディスクが保管されていました」
   「それには、同じ純血派と見られる男女2名が殿下を拉致しているのを」
   「彼らが看過する場面が残っていました」

尋問官「しかし、それを見せても『彼らを疑う必要はない』の一点張りで……」

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コーネリア「……まさか、連中がテロリスト共とグルだったとはな……」
      「純血派の一味は把握しているか?」

将官「はっ……」

コーネリア「即刻、全員拘束しろ」

将官「イエス……ユアハイネス」

コーネリア「……就任直後に、このような身内の恥を晒すことになるとはな……」ギリッ…
      「全軍に綱紀粛正を促す、私が来たからにはこのような醜態は二度と許さん!」

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■租界周辺ゲットー 地下倉庫 ─────

(枢木スザク奪還計画────)
(相当の損失を織り込んだ上での強行作戦であったが、枢木スザクの救出に成功し、)
(しかも被害は想定よりも遥かに軽微で済んだ……この上なき戦果であった)

(再び地下倉庫に集結したレジスタンス達は、拘束衣にくるまれた枢木スザクの姿を)
(壇上に認めると、一斉に歓喜の雄叫びをあげた)
(これまでブリタニアに虐げられ続けてきた彼らの、待ちに待った勝利の瞬間であった)


ゼロ「諸君!レジスタンスの諸君ッ!我々はついに成し遂げた!」
   「ブリタニア帝国に、敗北の味を思い知らせることができたのだッ!」バッ!!

扇「オレ達の同胞、そして無実の罪を着せられた仲間を、こうして救いだせた!」
  「全ては……君たちのおかげだッ!」


(俺たちの言葉に、人々は再び歓声を上げる)
(壇上から、扇グループのメンバーも全員無事であることを確認した扇は、喜びの涙を流す)
(俺も、彼らの歓喜に対しゆっくりと頷いてみせる……が、内心はそれどころではなかった)

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ルル(……奴を、どうするか……)
   (スザクの表情を見ればわかる、この状況を奴は不服に感じている)
   (それにあの、処刑場での言葉……奴に、真意を問いただす必要があるな)


(想定外の難問を突き付けられていた俺は、その対応策に苦慮していた)
(勝ち戦ですっかり祝賀ムードに沸く連中に背を向け、近くにいた者に指示を出した)


ゼロ「……枢木スザクを奥の部屋に連れてきてくれ、直接聞きたい話がある」

同志「イエッサ!」

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─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


(同志数名が、俺がいる部屋にスザクを連れてきた)
(椅子に座らせるよう合図し、しばらくこの部屋に誰も近づけないよう命令をする)

(スチール製の机を挟んで向い合せに座るスザク……)
(部屋に入った瞬間から、奴はずっと俺を睨みつけていた)


ゼロ「……さて、枢木スザク、どうかな……」
   「数時間前には死んでいるはずだった身が、今もまだ命を長らえている気分は?」

スザク「…………感謝しろ、とでも言うのか?」ギロッ

ゼロ「そんなものは求めていない」
   「ただ、君はあそこで死ぬべきではないから救っただけだ」

スザク「……余計なことを……」プイッ

ゼロ「それだ、私は君を救った時から、ずっと気にかかっていたのだ)
   「君は……死にたかったのか?」

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(無線で聞いて以来今まで考えていたが、全く理解のできない話だった)
(あのスザクが、無実の罪を着せられて銃殺に甘んじるなど……)
(本人から直接聞かない限り、理由が皆目見当がつかない)


ゼロ「君はあの現場で、ユフィ……ユーフェミア副総督の名を口にしたな?」
   「あれは一体、どういう意味だ?」

スザク「……お前たちテロリストには、理解できないさ」

ゼロ「私たちはテロリストではない、圧政に対する反逆者の集団だ」

スザク「クロヴィス殿下を暗殺したお前が?丸っきりテロリストのやることじゃないか」

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ゼロ「我々は、理由もなくただ恐怖を与えるためだけに人を殺したりはしない」
   「奴は、死なねばならない理由があった、だから殺したのだ」
   「その理由は君もわかっているはずだ」

スザク「……」

ゼロ「そうだ、ゲットーでの日本人の虐殺……君はあれを、許せるのか?」
   「私は許せない……だから、だ」

スザク「あれは……殿下が、あれをしたのは……」ググッ…

ゼロ「…………入ってこい」


(俺は、部屋の奥の扉に声をかける)
(扉を開け、中に入ってきたのはC.C.だった……スザクの目が、驚愕で見開かれる)


スザク「な……君は……ッ!?」

C.C.「……また会ったな、少年?」ニコ

ゼロ「……」

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■アッシュフォード学園 シャーリーの部屋 ─────

シャーリー(なっ……何が起きたの?)
      (スザク君、ひょっとしてテロリストにさらわれちゃったの!?)


(さすがに、処刑の場面まではとても見ることができなかったけれど、)
(枢木スザク……という名の、ルルの友達が結局どうなったのかは気になっていた)
(けれど、ニュースを見たらとんでもない事態になったことがわかった)

(処刑間際にテロリスト達が死刑囚を強奪したこと、コーネリア総督もユーフェミア副総督も)
(共にご無事だが、租界には再度戒厳令が敷かれたこと、以降総督府から発表があり次第)
(続報を流すこと……)


シャーリー(……な、何だか最近のエリア11、すっごく物騒じゃない?)
      (これから、爆弾テロとかどんどん起きるのかな……怖いなあ……)ウルウル

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■租界周辺ゲットー 地下倉庫 奥の部屋 ─────

スザク「なぜ君がこんなところにいるんだ!」

C.C.「なぜって……私も仲間だからな、こいつの……」チラ

ゼロ「……」

スザク「君は……まさか君も、クロヴィス殿下を……」

C.C.「私は奴をさらってくる手助けをしただけだ、殺したのはこいつさ」

スザク「……」

ゼロ「……スザク……」

スザク「……!?」


(スザクの名を呼んだ俺の声に、奴は一瞬呆けたような顔つきをした)
(やがて……その表情は驚きに変わる)


スザク「……まっ……まさか……!?」

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(俺は、仮面のあごに指をかける……留め金を、カチリと外した)
(正直に言えば今、この瞬間も俺は迷っている……本当に、この選択は正しいのか)
(だが……たとえ間違っていようと、確実に歩みを進めることが最も重要だ……!)

(いいだろう運命の悪魔よ、賭けよう……俺の人生を)


ゼロ「……」カポ…

スザク「……ルル……シュ……!?」ブル…!

ルル「スザク……」
   「今度は、俺がお前を助ける番だったよな……」ニコッ


(そう、シンジュクゲットーでお前は、殺されかけた俺を助けた)
(今度は俺が、殺されようとしていたお前を助ける)
(俺とお前は、そういう仲だろう……俺が、そう言いかけたとき……)


スザク「……ル……、ルルーシュ!」
    「お前は、なぜオレをさらったアアアッ!!」ガタッ!!

ルル「!?」

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スザク「オレは、あそこで死ななければならなかったんだッ!」
    「オレが死ぬことで、全てが完結していたんだッ!」

ルル「スザク!?ちょっと待て、どういうことだそれは!」

スザク「オレは……オレは、死ぬべき男だったんだッ!」
    「日本が負けてしまったことも、日本人が悲惨な運命に巻き込まれたことも、」
    「全てオレに原因があるッ!オレが悪かったんだ……!」
    「それがどれだけの苦しみだったか……お前にはわかるのかアッ!」ドガッ! ドガッ!


(拘束衣で手足が自由にならないスザクは、代わりに己の額を、)
(目の前のスチール製の机に何度も打ち据える)
(乾いた室内に、鉄板の音がぐわんぐわんと響き、奴の額が割れ血が飛び散った)


ルル「やめろ、スザクッ!」

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スザク「やっと死ねる……やっと報われて死ねると思っていたのに!」
    「お前は、オレの尊厳を奪った……ッ!奪ったんだよおッ!」ガシッ! ガシッ!

ルル「スザク……な、何を…………!?」

C.C.「……」


(別に、感謝の言葉を期待していたわけではない)
(しかし、まさか詰られるとは思ってもいなかった……信じ難かった……)

(もはや正気とは思えないスザクの言動に、俺はただ呆然とするしかなかった)
(C.C.も、奴の様子に多少驚いているようだ……)
(……しかし、奴のこのような姿を放っておくと、レジスタンスの連中への影響が懸念される)

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ルル「……C.C.、たのむ……」

C.C.「……」コクッ


(C.C.は、暴れるスザクに近づくと、その肩にそっと触れる)
(途端にスザクは、電撃を受けたかのように身体をそらした)


スザク「うあ!……や、やめろおおおおおお!」ビクッ、ビクッ…

C.C.「……」ギュウゥ

スザク「そ、そんな……ちがう、そんな気じゃ……なかったんだああ……」ピク、ピク


(日本解放戦線の片瀬との面会時、C.C.が草壁に対して言った言葉……)
(その"力"を、実際に目の当たりにするのはこれが初めてだった)
(スザクの動きは止まり、震えながら何事かを呟いているだけだった)
(目の焦点もまったく定まっていない……)

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ルル「これが、ショックイメージというやつか」

C.C.「ああ、これで意識を失うまで、こいつはトラウマの檻の中で苛まれ続ける」
  「一体何を見ているのかは、私にもわからないけどな……」

スザク「ゆる……して…………」プル…プル…

ルル「……フウ……」ドサッ


(俺は、ふたたび脱力して椅子に腰を落とした)
(賭けは……俺の負けだろうか……)


ルル(俺は、失敗したのだろうか……?)
   (スザクを助けたのは、そもそも間違いだったのだろうか……?)
   (しかし、助けなければ殺されていた……奴を失いたくなかったんだ……)

ルル「……一体、どうしてこんなことに……」ガク…ッ

C.C.(……ルルーシュ、哀れな……)

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■数日後 政庁内 ユーフェミア個室 ─────

ユフィ「……そうですか……まだ行方がわかりませんか……」

職員「はい、総督も周辺に部隊を派遣し、捜索されているのですが、それらしき報告は……」

ユフィ「……わかりました、ありがとう」…ピッ


(ゼロと名乗るテロリストが、枢木スザクを処刑場から連れ去ってから幾日かが過ぎた……)
(あれ以来、わたしは彼の安否が気になっていて、状況をたびたび尋ねているのだけど)
(手がかりがない、という報告ばかりだ)


ユフィ(……まさか、わざわざ奪っていったテロリストが彼を殺すとは思えないし、)
   (たぶん無事でいるとは思うのだけど……)

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(コーネリア姉様には、彼の容疑が晴れたとメディアで流してはどうか、と提案をしてみた)
(でも、姉様は首をたてに振らなかった……今ここで恥の上塗りはできない、とのことだった)
(もし彼が今戻ってくると、やはり処刑されてしまうのだろうか……)

(クロヴィス兄様の突然の死は悲しかった、けれどもその代償に無関係な死を生み出しても)
(問題は一向に解決しない)

(牢の中でひざをついていた彼の、あの優しそうな微笑み……)
(すんでのところで、処刑台の上であの優しさを散らしてしまうところだったことを思うと、)
(わたしはブリタニアという国の歪さに考えを巡らせずにはいられなかった)


ユフィ(……誰もが悲しまずに済む世界を作りたい……)
   (今のままでは、ブリタニアは間違った解決方法ばかり選んでしまう……)
   (でも、わたしだけの力ではダメだわ……誰かの助けが……!)

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■ネリマゲットー カンエツハイウェイ接続口近辺 ─────

(……枢木スザクは、解放戦線経由でキョウトへ移送されることとなった)
(本来なら枢木家に戻すべきだが、そうできない事情がある……とは片瀬の弁だ)

(秋の訪れを感じさせる、風の強い夕刻……空には、夜の気配が忍び寄っている)
(俺は、藤堂らを見送るため、C.C.と共に周辺ゲットーの外縁まで足を運んだ)
(荒れ果てた街並みの中、"無頼"を積んだトレーラーが密かに待機していた)

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藤堂「他地域での作戦に必要なのでな、これらは一旦本部へ引き上げる」
   「だが、少将は今後の君の作戦にも協力する意向だ」

ゼロ「ああ、わかった……片瀬少将によろしく伝えてほしい」

藤堂「承知した……ゼロ?」

ゼロ「なんだ?」

藤堂「正直なところ、片瀬少将が全面的に協力すると言った時には、君を疑っていた」
   「度胸はあれど、向こう見ずな若者に過ぎないのではないかとな」

ゼロ「……」

藤堂「だが、私の過ちだったようだ……これからも、共に戦ってゆければ良いな」

ゼロ「"奇跡"を見せられたから、か?」

藤堂「……全ては、調査と計画と実行力、だろう?」ニヤッ

ゼロ「その通りだ……」

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ゼロ「ところで藤堂……君は、知っているのか?」

藤堂「うむ?」

ゼロ「……枢木が、あのようになった理由だ」
   「片瀬少将は『戻れない』と言っていたが……」

藤堂「……」チラッ


(藤堂は、背後にあったトレーラーの開け放たれたシャッターの方に視線を移す)
(トレーラーの座席には、自失状態のスザクが男二名に挟まれ大人しく座っていた)


藤堂「……彼は、父親に対する罪の意識を抱えている」

ゼロ「父親……枢木ゲンブか?」

藤堂「そうだ……スザク君は、父親の死に強く関わっている」
   「それが彼を、今のような状態まで追い詰めた」

ゼロ(……まさか?)

藤堂「済まないが、この件について子細は話せないのだ」
   「これ以上の長居は好ましくない、そろそろ出発するぞ」

ゼロ「ああ……それでは」

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(トレーラーは、その巨大な身を震わせ始動した)
(追跡を避けるため、数グループに分散し各方面からナリタ連山に向かう予定となっている)
(藤堂がトレーラーに乗り込むと、シャッターがゆっくりと閉じてゆく)
(生気を失ったスザクの顔がシャッターの陰に隠れるまで、俺はそれを見つめていた)


ゼロ「……」

C.C.「……ルルーシュ、そろそろ戻ろう……」
   「今日は早く帰ると、ナナリーに約束をしたのだろう?」

ゼロ「ああ……戻らなければな……」
   「前へ進むために」


(俺はきびすを返し、トレーラーと逆の方向へ歩み始める)
(スザクを救い出す……ともかくにも、その目的は果たしたのだ)
(スザク自身が解決すべき問題は、奴が対処するしかない)

(風がひと吹きした……漆黒のマントが、ばさり、と力強くはためく)
(俺は、俺の"戦い"を継続しよう)
(何者も奪うことのできない、俺のサンクチュアリを築き上げる戦いを……)

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■ Intermission ─────

(コーネリアの指示により、総督府内の純血派は全員拘束され、あるいは職務をはく奪された)
(俺のギアスにより無抵抗でレジスタンスたちを通過させたジェレミアとキューエルは、)
(彼らの必死の弁解も空しく"反逆者"として本国へ送還されることとなった)

(枢木スザクの扱いは、"逃亡中の指名手配犯"となった)
(奴の首には賞金もかけられた……スザクの生い立ちから、奴が反政府組織のリーダと)
(なることもありえるのだから無理もないだろう、だが今の奴は、とてもそのような責務を)
(負える状況にはない……皮肉な話だ)

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(総督府および守備軍の再編成を行ったコーネリアは、いよいよエリア11内の"掃除"に)
(とりかかった……サイタマゲットー、チバゲットー、カナガワゲットー等の周辺ゲットーに)
(自ら乗り込み、主だったレジスタンス組織を次々と潰してゆく)

(だが、それは想定済みの……否、俺にとってはむしろ有難い戦略だった)

(スザク救出の功績を認めたキョウトからの手厚い支援を受けた俺たちは、コーネリアの)
(鉄の粛清から逃れた彼ら残党たちを、密かに、貪欲に吸収してゆく……)
(その規模は、すでに300名に迫るものとなっていた、軍隊ならば中隊を十分に編成可能な)
(規模に相当する……人を石垣とするなら、俺は確実に我が"領土"を広げつつあった)

(しかしこうなると、懸念が一つ持ち上がってくる)
(アッシュフォード学園の学生、という俺のもうひとつの姿……)
(……本来は、こちらが本当の姿だが……についてだ)

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(当初から予測できたことなので回避策をいろいろと講じていたが、)
(それでも学生と革命家の2足わらじはかなりきつくなってきた)

(授業中のいねむりは毎度のこと、生徒会も何かと口実を作ってサボるようになり、)
(シャーリーから毎朝、学校に来いというメールが送られてくる始末だ)
(カレンは「とっととやめればいいじゃん、私みたいに」と言ってけらけらと笑ってくれる)
(俺だって、できるならそうしている!この不良ゴリラ女が……!)

(それができない理由は……ナナリーの存在、そしてアッシュフォード家だ)
(俺は、ナナリーを俺の裏の姿に関わらせたくなかった……できるだけアッシュフォード学園の)
(生徒として、平和な学生生活を営んで欲しかった)

(俺が学生をやめたとなると、ナナリーもすぐにやめてしまうだろう……そしてそれは、)
(これまで俺たちのバックアップをしてきたアッシュフォード家の顔に泥を塗ることでもある)

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


ルル「どうしたものかな……」

C.C.「やめてもいいんじゃないのか?」
   「こうして居場所も作ったのだし、ナナリーもここへ呼べばよかろう?」


(街路樹が枯葉を落とすようになった頃、租界の一角にあるマンションの一室───)

(家出したという名目で匿ってきたC.C.だったが、クロヴィスらがいなくなったこともあり、)
(またそろそろクラブハウスから出さないと不要な噂が出かねないことから、)
(俺はC.C.のためにこの、3DKの手頃なマンションを借りた)
(学園から徒歩で20分程度の位置にある、日当たり良好な物件だ)

.
(表向きは貿易商の事務所……いわば、レジスタンスが本家であり、)
(ここ貿易商はフロント企業となる)

(この場所は、俺たち以外には知らせていない、レジスタンスの幹部にも、だ)
(俺が、表で堂々と動くための拠点として活用するつもりだ)


ルル「……そういうわけにはいかん、俺がいない時のナナリーの世話は、咲世子にしかできん」
   「それともお前、世話ができるのか?」

C.C.「私が?おいおい、お前の妹だろう?」

ルル「そういうだろうと思った……全く期待もしてなかったけどな」

.
ルル「そういえば、いちばん奥のお前の部屋、ちゃんと掃除してるか?」
   「借り物の部屋だから、絶対に汚すんじゃないぞ?」

C.C.「ああ…………ばっちりだ、問題ない」

ルル「…………」ガタッ テクテク

C.C.「あっ、こら!女性のプライバシーを……!」

.
(俺は有無を言わさず、C.C.の部屋に通じる扉をバアンと開け放つ)
(……が、開けなければ良かった、と全力で後悔するような惨状だった……)
(脱ぎ散らかし、食べ散らかし、遊び散らかしの3拍子揃った散らかし具合に眩暈を覚える)


ルル「……"女性"のプライバシー?」カツカツ
   「この、解体もせずそのまま山積みしたピザの空箱の山が、か?」

C.C.「お前が帰った後、片付けるつもりだったんだ!」
   「お前はいつも、そういう所でタイミングが悪いんだよ!」プンスカ!!

ルル「……いちばん下の箱の日付が、1週間以上も前だ」

C.C.「……まとめて掃除するつもりだったんだ……」

ルル「全く……ッ!ひとりでいるならやるかと思っていたが、お前はやはりダメか!」
   「とっとと片付けるぞ、手伝わんか!今後は毎日チェックするからな!」バサバサバサ!!

C.C.「……最初からそうしていれば良かったんだよ」ブツブツ
   「まったく、誰の部屋だと思っているんだ……」

ルル「お・ま・え・の・部屋だろうが!」

.
■政庁 特派トレーラー内 ─────

ロイド「……」ショボーン
    「セシルく~ん、もういいよぉ~」ハァ…

セシル『ロイドさん、そのあからさまにがっかりな態度、ちょっとどうかと思いますよ?』ニコッ

ロイド「だってねぇ……」
    「デバイサーとしては君も悪くないんだけど、スザク君の後だとねぇ……」ピッピッ

    「89%かぁ……あと10%は、ランスロット側に補助ユニットを入れて、」
    「能力をカバーするしかないかぁ……」

セシル『いないんだから、しようがないじゃないですか……』
    『……でも、彼、あれから音沙汰が全くありませんね……』
    『無事だといいけど……』

ロイド「ほんと……どうしてるんだろうねぇ~……」

セシル(……あら、彼の安否を少しは気にしてるのかしら?)

ロイド「……あぁぁ~、デバイサーも自分で作れないものかなぁ~……」ハアアァァァ…

セシル(……)イラッ

.
■キョウト 皇(すめらぎ)家 ─────

(平安時代から続く家柄である、皇家───)
(広大な敷地に構えた寝殿造りの"御所"の一角に備えられた座敷牢に、)
(枢木スザクの姿があった……)

(精神的にはだいぶ安定したものの、ブリタニアにその存在を知られると政治的に)
(芳しくないこととなるため、時期が来るまで牢で留め置かれることとなったのだ)
(彼は、牢の中で静かに横たわっていた)


スザク(助け出されたと思ったら、また牢の中か……)
    (まあ、これまでも牢の中にいるも同然な人生だったしな、)
    (いるべき場所にいるようなものだ、逆に落ち着く)


(……と、そこへ牢に近づく足音を聞いた)
(スザクは身体を起こし、音のする方へ向いてあぐらをかく)

.
スザク「……神楽耶か……」

神楽耶「ご機嫌はいかがかしら?」


(皇神楽耶……スザクとは従妹筋にあたる、皇家の当主だ)
(まだ年端もいかぬあどけなさを残すように見えて、しかしその眼光の力強さには)
(当主の気概をすでに持つことを窺い知ることができる)


スザク「おかげさまで……暇すぎて、身体がなまってしょうがないよ」ニコ

神楽耶「そう……身動きできないほど狭い牢ではありませんわ、」
    「存分に運動なさってもよろしいですのよ?」

スザク「……そうだね……」

.
(だが、この娘……従兄弟であるスザクが、嫌いであった)
(枢木ゲンブを殺したこともさることながら、枢木家を出て名誉ブリタニア人になったことを)
(心底から侮蔑していた)


神楽耶「ああ、それともアレかしら、」
    「ブリタニアの方は、スポーツジムでないと汗を流せないのかしら?」
    「私も、そこまではご用意できませんのでお許しください」ニコッ

スザク「……」

神楽耶「本日は、別にスザクの運動量について聞きたかったわけじゃありません」
    「スザク……あなた、ゼロ様とお会いしましたよね?」

スザク「ああ、会ったよ」
    「彼に助けてもらったんだしね……」

神楽耶「あなたなら、拝見してるかと思いましてね、」
     「ゼロ様の素顔、ご覧になりました?どのような殿方でしたか?」キラキラ

スザク「!!」

.
(ゼロの素顔……彼がルルーシュであるということは、決して語ることのできないことだった)
(藤堂や片瀬からも、ゼロについて知り得たことは決して他言するなと念押しをされていたが、)
(そもそも親友である彼を、スザクは誰に対しても売る気にはなれなかった)

(自分を助けたことも当初は怒りを覚えていたが、今ではその気持ちを素直にありがたいと)
(思えるくらいにはなった……次に出会ったら、必ず礼を言う気だった)


スザク「いや、顔は見せてもらってない」
    「僕の前でも仮面を被ったままだったよ」

神楽耶「……そうですか……」
     「あの、深く陰のあるお声、絶対ステキな殿方のはずなのに……」ハァ…
     「あなたって、やはり使えない方ですわね……」

スザク「……」

.
■ナリタ連山 日本解放戦線アジト ─────

草壁「……こうして、ここに君たちだけを集めたのはほかでもない」
   「最近の組織の状況について、腹を割って話をしたいのだ」ボソボソ

幹部A「……藤堂の姿がないな?」ボソボソ

草壁「奴は、片瀬少将に心酔しておる……この会合には相応しくない」ボソボソ

幹部B「ゼロとやらに関する話か」ボソボソ

草壁「そうだ……」ボソボソ
   「アレと少将が面会して以降、少将はゼロがすっかり気に入られたようだ」

幹部A「うむ」
    「先日の事でも、我々にとっても少なからぬ負担となる支援を、即断なされたな?」

草壁「そうだ……枢木の救出劇、あれが運良くうまくいったから良いようなものの、」
   「ゼロがもししくじっていれば、我々の戦力は大幅に失われていた」

幹部C「あれはヒヤヒヤした……」

.
草壁「得体の知れん女を引き連れていたのも気に食わん……」
   「それもだが、知っているか、ゼロ達が今、我々とは別に」
   「キョウトからも支援を受けていることを?」

幹部A「なに?初耳だ」

草壁「連中はそれで租界周辺域での勢力を増強しておる」
   「コーネリアがゲットーの"掃除"を手掛けているが、それで生き残った残党や」
   「粛清を恐れる小グループをどんどん吸収しているらしい」

幹部B「ほう……」

草壁「不気味なのが、その全容が我々にも見えないことだ」

幹部A「なんだと?」

.
草壁「細胞……というのか?」
   「命令系統が一本化している我々と異なり、複雑な構成になっているようだ」
   「誰にさぐりを入れても、自分のすぐ近くの者のことしかわからないのだ……」

幹部B「革命細胞というやつか」

草壁「そのあたりは詳しくないが、おそらくそういう組織だろう」
   「全ての全容を知る者はゼロしかいない……扇ですら、細胞の一つに過ぎないようだ」

幹部C「不気味な……」

草壁「その通り、不気味極まる」
   「何を考えておるのか……ゼロにしろ、少将にしろ……」

幹部A「……」
    「草壁、それはそうと例の計画については?」

.
草壁「そのことだ……少将の裁可を得られそうにないのだ」

幹部C「なにぃ?」
    「あの、ゼロとやらの無謀な計画には首をたてに振って、」
    「我々の計画は認められないだと!?」

幹部A「それはいつの話だ?」

草壁「本日、午前の話だ……だから君たちを集めた」

幹部たち「…………」

幹部A「…………もう時間がないぞ?」

草壁「そうだ、時間がない……私は、もう決断を済ませた」
   「後は君たちが決断するだけだ」

幹部B「……」

.
■総督府政庁 総督執務室 ─────

コーネリア「ユフィ、何か話があるとか?」パラパラ…

ユフィ「はい、私にも、何か副総督としての仕事をお任せください」
    「ここに赴任して、仕事らしきことをまだ何もしておりません……」

コーネリア「……」ピタ
      「そうだな……では、ユーフェミア副総督」

ユフィ「はい」

コーネリア「サクラダイトの生産国会議が、ここエリア11のカワグチ湖で行われるのだが、」
      「それに総督府の関係者として参加してもらいたい」

ユフィ「関係者として、ですか?」

コーネリア「うむ、実際の分配量については大筋は決まっているんだ」
      「会議ではその確認および、細かな調整が主な内容となる」

.
コーネリア「本国からエネルギー相が代表として派遣されてくるから、」
      「ユフィは彼に付き添い、交渉事の場面を実際に見て学ぶといい」

ユフィ「はい!」

コーネリア「うん……いい返事だ」ニコッ
      「会議の内容について、後でレポートを提出してくれ」

ユフィ「わかりました……コーネリア総督」ニコッ

コーネリア「うむ」ニコニコ

.
■アッシュフォード学園 ルルーシュ達のクラス ─────

ルル「……」Zzz…

女子A(彼、また居眠りしてるよ……)

女子B(すごいよね、ひじついて教科書を読みふけってるように見える……)
    (先生、誰も気づかないもんね……)

シャーリー(……ほんとね……)

教師「……では、今のところを……ルルーシュ、答えてみてくれ」

ルル「!!」ガタッ
   「えー……当初日本は、帝国にとってただの補給基地に過ぎなかったのですが、」
   「後にサクラダイトの発見により……」スラスラ

教師「その通り、座りなさい……つまりサクラダイトこそが……」

ルル「……」ガタッ…Zzz…

シャーリー(……あれが信じらんないよね、ほんと……)

女子C(さすがだわぁ……ス・テ・キ……)ウルウル

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


シャーリー「ルル、こら!」ペシ

ルル「!……なんだ、シャーリー?」

シャーリー「なーんだじゃないでしょ!授業、もう終わってるの知ってた?」

ルル「ああ、そうなんだ……ふわあー」セノビ-

シャーリー「ねえルル、居眠りしてるのにどうして先生の質問に答えられるの?」
      「みんな不思議がってるよ?」

ルル「そんなの簡単な話さ……」
   「その時間に、教科書のどこからどこまでをやるのかは決まっている、」
   「なら、質問のほとんどはその範囲から出されるよな?」

シャーリー「うん」

ルル「且つ、生徒に答えさせるということは、重要性のあるポイントだということだ」

   「ならば、その範囲内で質問してきそうなところを予め押さえておき、」
   「授業中に指名されたら黒板の最後の内容と授業の時間がどれだけ過ぎたかを確認し、」
   「それを元に質問された箇所を判断して用意した答えを言えばいい」

.
シャーリー「…………」
      「ルル、あのね、」

ルル「なんだ?」

シャーリー「絶対それ、間違ってると思う……」

ルル「いいんだよ、結果が全てなんだから」ニヤリ

シャーリー「またあ……ダメだよ、そういう考え方は……」
       「って、違う違う、そうじゃないの!」

ルル「ん?何が?」

シャーリー「会長がね、来週の休日にみんなでカワグチ湖に行かないか、って!」
      「コンベンションセンターでパーティがあるんだけど、そこに招待されたんだって!」

ルル「ふーん……」

.
シャーリー「ね、ね!行こうよルルも!」

ルル「残念だけど……その日は予定を入れちゃってるんだ」

シャーリー「えっ……そうなんだ……」ショボン

ルル「ごめん、誘ってくれてありがとう」ニコッ

シャーリー「えっ、ううん!予定があるなら、しょうがないよね!」
      「会長には私から言っとこうか?」

ルル「いや、今日は生徒会に出るから……俺から断っておくよ」

シャーリー「そっかー、うんうん」
      (……ルル、用事があるのかぁ……)

.
■一週間後 周辺ゲットー ─────

カレン「……すごいね、このトレーラー……」カツカツ

扇「よくこんなモノが手に入ったな……」シュイーン


(キョウトからの支援に加え、チェスの弱い貴族からの"ご厚意"を得て、)
(俺は居住可能な大型トレーラーを手に入れた……中もちゃんとバリアフリー構造にしてある)
(これが、レジスタンスの今後の拠点になる)
(シャーリーたちと一緒に行けなかったのは、この受け渡しが今日だったためだ)

(扇たちは、興味津々で室内のあちこちを見回っている……)
(子供のようにはしゃいでいる彼らの姿に、俺は若干の不安を覚えた)

.
玉城「おいゼロぉ、個室は?オレの個室はあンのかよ!?」

ゼロ「君らの個室はない、司令塔をマンションと勘違いしているのか?」

玉城「ンだよ、ケチくせえなぁ……おメエの部屋はあるのによォ!」

南「相部屋でも寝れりゃいいだろ、ゼイタクいうな」

カレン「すっごい……シャワーもあるよ!」
    「うわっ、こっちはリビングだ!なんか高級マンションみたい……!」キラキラ

井上「すごいわね、ほんと……ここに住みたいわ……!」キラキラ

.
ゼロ「ここは、我ら幹部だけが使用する拠点になる」
   「個室まではないが、君たちがくつろげる程度の設備は整えておいた」

扇「こんなすごい施設、今までなら絶対に手に入らなかった……」ウルッ…
  「オレの車椅子の新調も含めて、君にはいくら感謝してもし足りない……!」ウルウル…

ゼロ「……」


(今回の調達のついでに、扇にも自走可能な車椅子を与えた)
(単純に、カレンをいつまでも扇の押し手にしておく気はなかっただけだが、)
(顔をくしゃくしゃにして喜んでいる彼を見て、そう思わせておくかと考え直した)

.
南「おっ、AVもあるぜ!至れり尽くせりだなぁ……」ピッ

玉城「AV!?マジかよォ!ゼロ、おめ、やっべーッて!用意しすぎだって!」
   「井上やカレンもいるんだぜェ!?」デヘヘー

南「……テレビとオーディオのことだけどな……ん?速報?」ピッピッ


『……カワグチ湖周辺には現在、厳戒態勢が敷かれております』
『生産国会議の出席者を狙ったとみられる立てこもり事件は、緊迫した情勢となりました……』


扇「カワグチ湖?」

南「そういや、サクラダイトの分配会議があるって言ってたなぁ……」

.
ゼロ(ふむ……カナガワのどこかのセクトが動いたのか?)


『会場を襲撃・占拠している組織は、自らを日本解放戦線と名乗っております』
『このエリア11で最大の反政府組織の行動に、総督府関係者は……』


扇「ゼロ!?……これは?」

ゼロ「少将や藤堂からは話を聞いていない……彼らの独自作戦か、もしくは……」

   (どちらのケースなのか、早急に藤堂に確認してみる必要があるな)
   (もし、片瀬や藤堂が関与していないなら……)

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


藤堂「……バカなっ!?」ダン!!


(日本解放戦線のアジトで、"四聖剣"と共にTV中継を見ていた藤堂は思わず怒鳴った)
(ここ数日、草壁ら一部幹部連中の姿を見ないと訝しんでいたところにこの報道だ……)

(草壁らの独断による作戦遂行に、片瀬は唸る)
(彼らの立案に裁可を与えなかったのは、各国の政治にも影響を与えうる生産国会議の)
(妨害は避けたかったためだ)

.
桐原「……それを草壁は、好機と捉えたか……」

片瀬「はっ、誠に私の不徳の致すところであります!」

桐原「そこが、奴の限界か……」
   「片瀬、あるいはこれは、お主の組織の致命傷となるやもしれんぞ?」

片瀬「はっ……承知しております……!」

桐原「……"無頼改"は予定通り受け渡す、始末をつけろ……」カチッ

片瀬「…………」

.
(別室で、キョウト六家の重鎮である桐原と協議をしていた片瀬は、通話を切った瞬間)
(背中にびっしょりと汗をかいていたことに気付いた)
(即座に藤堂らを呼び、今後の対応策について話をするが……)


藤堂「少将、お許しいただければ私が中佐らの粛清に……!」

片瀬「それはならん……お前が行けば、草壁ともどもブリタニアに攻撃されてしまう」
   「それに奴らも、我らが同胞なのだ……」

千葉「しかし少将!そもそもこれは、少将を蔑ろにした行為では……!」

片瀬(我らが手を下すことはできん、それこそ、組織が崩壊してしまう)
   (かと言って、いつまでも手をこまねいて見ているわけにもいかん……)

   「…………藤堂、ゼロに連絡を取れ」

藤堂「少将!?」

片瀬「恥も外聞もない……」
   「この件、決してブリタニアに解決させてはならん」
   「穏便に済ませねば、日本が潰えるのだ……」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


藤堂「……そういう訳なのだ、我々は動くことができない」
   「君なら、あるいは……」

ゼロ「……やってみよう」
   「作戦の立案に、できる限りの情報が欲しい」
   「草壁らがそちらに残した資料をすべてこちらへ送ってくれ」

藤堂「承知した」

ゼロ「それと、確認がある」

藤堂「なんだ?」

ゼロ「草壁らは、どうする?」

藤堂「……人質らの安全が最優先事項であるとだけ、片瀬少将はおっしゃった」
   「後は君の判断に任せる……」

ゼロ「承知した」ニヤリ

.
(俺は、仮面の中でほくそ笑む……)
(想定通りだ……我ながら恐ろしいほど、想定通りに事が進んでいる)
(片瀬にギアスをかける計画をした時点で、この事態はすでに計画の内であった)

(草壁ら古参の幹部にすれば、俺のような"どこぞの馬の骨"が片瀬に気に入られ、)
(采配を存分にふるうのはしゃくに触るはずだ……自分たちの存在意義を示すため、)
(必ず独断の行動を起こす……まあ、その程度の連中ということだが)

(暴走した古参の連中を俺が始末することで、日本解放戦線の弱体化を図り、)
(と同時にキョウトへの影響力をさらに増大させる……ゆくゆくは、日本解放戦線も)
(我が"領土"に組み込むことが、その目標だった)

(ただ……彼らが選んだ"クーデター"の舞台は想定よりもいささか大きいものだった……)
(ブリタニアも絡んでくるとなると、一筋縄ではいかない)

.
カレン「ゼロ、今の話は……?」

ゼロ「カワグチ湖の一件、解決してくれと頼まれたんだ」

カレン「ええ!?」

扇「片瀬少将からか?」

ゼロ「ああ、そう考えていいだろう……ッ!?」


(扇たちの質問に答えながら、俺は何気なくTVの画面に目をやった……と、)
(俺はそこに、信じがたい場面を目にした!)
(人質の中に、シャーリーやミレイ、リヴァルたちがいる……!?)

.
『解放戦線の声明によると、生産国会議の出席者以外にも当時コンベンションセンターで』
『開かれていたパーティの出席者やセンターの関係者など120名余りを人質にとっており、』
『当局の出方次第では公開処刑をする、とのことです……』


カレン「……あれ?いま、見たことある人がいたような……?」

ゼロ「……シャーリーだ……」ボソッ

カレン「え?」

ゼロ「……私は、作戦を考える」バッ
   「君たちは荷物整理をした後に、ここで待機していてくれ」カツカツ…シュイン

扇「ああ、わかった」
  「みんな、荷物はたくさんあるぞ、手分けして片付けよう」

南「あいよ!」バタバタ

カレン(……シャーリー、って、どこかで聞いた名前だ)
    (どこだっけ……)

.
■カワグチ湖 コンベンションセンターホテル周辺 ─────

コーネリア「……ならん!テロリスト共の要求には決して屈するな!」
      「空と湖からの突入はどうなっている!」

将官「はっ!只今部隊を派遣しております!」
   「ですが、激しい抵抗があり、状況は困難だとの……!」

ギルフォード(……姫様、ユーフェミア様の事は、まだ連中にばれていないようですが……)
      (このままでは、いずれ……)ボソボソ

コーネリア(わかっている……!)ギリッ…

.
■レジスタンストレーラー ─────

カレン(コンコン)「……ゼロ?入っていい?」


(わたしがインターホン越しに室内にいるゼロに問いかけると、ドアがすぐに開いた)
(中に入ると、ゼロ……仮面を脱いだルルーシュは、TVでニュース画面を流しながら)
(わたしを一顧だにせずにPCを操作していた……ドアはまたすぐに閉まる)


ルル「……何だ?」カタカタ

カレン「思い出した、わたしたちのクラスにいた子だね……シャーリーって」

ルル「そうだな」カタカタ

カレン「わたし、あんまり話したことはなかったけど……」
    「明るくていい子だったよね」

ルル「ああ、いい子だ」カタカタ

.
カレン「……あの子、助けるんだよね?」

ルル「そういう依頼だしな」カタカタ

カレン「……」カチン
    「じゃ、見殺しにしろっていう依頼なら、彼らも殺すの?」

ルル「そんな依頼は出ないだろう?何を言ってる?」カタカタ
   「それとも、作戦に対して何かアイデアでも持ってきたのか?」


(期待していた言葉が出ないことに、わたしは軽い苛立ちを覚えた)
(友達が死ぬかもしれないというのに、依頼とか、作戦とか、そういう言葉がまず先に出る?)

.
カレン「……ねえルルーシュ、学園をやめる気はないの?」

ルル「…………今はそんな話をする状況にないだろ」ピタッ
   「どうしたんだ、カレン?」

カレン「ルルーシュ……あの子が友達だから、救うんでしょ?」

ルル「人質が俺の友達かどうかは、作戦に全く関係のない話だ」
   「解放戦線の連中が暴走した、このままではブリタニアにとって都合のよい結末となる、
   「それを俺が防ぐ……この話に、何か不満でもあるのか?」


(ルルーシュは、あくまで"作戦"だと言うつもりなんだろうか?)
(ならさっき、彼女の名を呟いたのはどういう意味だったのか?)
(彼だってほんとは、私情が混じることだってあるということじゃないのか?)

.
カレン(わたしだって、元クラスメイトのことは気になるのよ!)
    (いま、ここにはわたししかいないんだから、言ってよ……!)

    「……ねえ、ルルーシュの頭の中って、打算しかないの?」

ルル「打算?」

カレン「大切な人とか、かけがえのない人とか……いないの?」

ルル「…………カレン、」ギシッ
   「それは、残り時間の限られている、この作戦に、何らかの関係のある話なのか?」

.
(わたしに真正面から向かう形で椅子に座りなおしたルルーシュは、そう言った)
(その目は真剣そのもので、その言葉は今の状況を完璧に言い表していた……)
(彼が、初めてわたしたちのアジトに足を踏み入れた時に言った言葉を思い出す)

  『作戦遂行上ではそれら(個々の事情)に無駄に拘るほど、敗北の足音が近づいてくる』


カレン「…………ありません」

ルル「君は今回の作戦から外す、トレーラーで待機していろ」

カレン「はい……失礼します」カツカツ


(……彼の口から言って欲しかった言葉は、ついに出なかった)
(友達だから、なおさらでも助け出す……そう言わなかった彼にわたしは、)
(仮面を脱いだその下に、さらに冷たい"仮面"を被った彼を見た気がした……)


カレン(あの時、わたしを勝利に導く、って言ったのも……そういう"作戦"だからなの?)

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


ルル「…………!!」ギリッ
   (何を考えているんだ、あの女───!)

   (今この瞬間にもシャーリー達が殺されるかもしれない、絶叫したくなるほどの状況を、)
   (しかし指揮官である俺がそうだと言えるわけがないだろうが……!)

   (くそッ、カレンで突撃をかける作戦は使えなくなった!)
   (あんな精神状態では、今回の綱渡り的な作戦では問題を起こしかねん!)
   (解放戦線から"無頼"を借り受けるにも時間がなさすぎる!)
   (陽動しかない……しかし、どうやって……!)

.
■夜8時 キョウト 皇(すめらぎ)家 ─────

??「…………スザク、スザク……起きなさい」

スザク「…………???」ゴソゴソ


(明かりひとつもない座敷牢の中で眠っていたオレを、起こす声……)
(オレは暗闇の中、声のした方に顔を向ける)
(闇に徐々に目が慣れてくると……そこにいたのは神楽耶だった)
(まだ寝惚けているオレの顔をまっすぐ見ている)


スザク「……どうしたんだ?」

.
神楽耶「ゼロ様からのご指名ですわ」
    「あなたをここから出し、ゼロ様の下に連れて行きます」

スザク「今から!?」

神楽耶「今すぐです、いけませんか?」

スザク「いけないも何も……わけがわからないんだけど」

神楽耶「ゼロ様が指示を出してくださいます」
    「あなたは、ゼロ様の言うとおりに動けばいいのです」


(神楽耶がそう言って手を打つと、その背後から数名の武装した男たちが現れた)
(牢の中に入り、手慣れた手つきでオレに拘束具をとりつけてゆく)


スザク「……あまり嬉しくない出獄だな」ニコ…

.
神楽耶「ひとつ、はっきりと申し上げておきますわ」

スザク「……なんだい??」

神楽耶「運命から逃げ出し、名誉ブリタニア人となったあなたを、私は全く信用しておりません」

スザク「……」

神楽耶「ですが、ゼロ様が役に立つとおっしゃったのでお送りするのです」
    「途中で逃げたりしたら、せっかくあなたを助けたゼロ様の面子も、そして我々の面子も」
    「丸つぶれになります……その場で死んでいただきます」

スザク「……逃げないさ」

神楽耶「どうだか……」
    「さあ、早くお連れして、時間がないそうです」

.
■数時間後、深夜 カワグチ湖近辺 ─────

男たち「……枢木スザクを連れてきた」

南ら「ありがとう、そこへ置いてくれ」


(ゼロ達のトレーラーは、カワグチ湖周辺の林の中に到着していた)
(そこへ、スザクは急ぎ皇家から連れてこられる)
(トレーラーの外で待ち構えていた南達は、スザクの身柄を受け取ると、あたふたと車内に)
(連れて入り、ゼロの部屋へと向かった)


ゼロ「枢木スザク、待っていたよ……今回の作戦は、君の力が必要だ」
   「そこへ座ってくれ」

スザク「……」

.
(ゼロは、他の者は部屋から出るよう、手振りで促す)
(部屋の扉が閉まり、二人だけになると、ゼロは仮面を脱いだ)


ルル「……ふう」

スザク「あまり快適そうじゃないな、その仮面……」

ルル「ん?ああ、特に夏場はキツいよ」
   「出来は気に入っているんだがな……」


(ルルーシュはそう答え、にこりと笑う)
(共に微笑んだスザクの表情に、内心で安堵した)


ルル(あの時よりは随分と回復したんだな、良かった……)
   (作戦は遂行できそうだ)

.
ルル「……スザク、時間がない、本題に入る」
   「ここへ来る途中、簡単なブリーフィングを受けたと思うが?」

スザク「ああ、人質をとっている話は聞いたよ」

ルル「その人質には、ユーフェミアが含まれている……」
   「コーネリアが未だ強硬手段をとらないのはそれ故だ」

スザク「!?」ギョッ

ルル(ふむ……やはりか)
   (スザクとユフィは、何か関係があるようだな……)

   「……だが、このまま時間がたてばコーネリアとて手段が選べなくなる」
   「最終的には、人質を全員犠牲にしてでもテロリストを排除するだろう」

.
ルル「いま、連中は地下の搬入路からの侵入を準備しているところらしいが、それは失敗に」
   「終わる率が極めて高い……搬入路には、リニアキャノンが設置されているからだ」

スザク「リニアキャノン?」

ルル「巨大な砲台だと思えばいい、拡散弾を打ち出す仕組みだ」
   「直線の搬入路では回避手段がない……通路自体を、砲塔にしてしまっているんだ」

スザク「なるほど……」

ルル「そうなると、特派に話がゆく……ランスロットという実験機だ、わかるな?」

スザク「……僕が乗っていた機体だからね」

ルル「そう、お前の機体だったな?」
   「相当な動力性能があると聞くが、それを出せとなるだろう」
   「だが、それでも失敗に終わる可能性がある……なぜかわかるか?」

スザク「??」

.
ルル「お前がいなくなってから、ランスロットが作戦で使われたという報告がない」
   「おそらく、パイロットがいないんだ」

スザク「いない?」

ルル「または、実戦で使えるパイロットがいない」
   「その状況で出撃して、結果はどうなるか……」

スザク「…………ルルーシュ、まさか?」

ルル「ああ、そうだ」
   「お前が、ランスロットを強奪し、操縦しろ……リニアキャノンを突破するんだ」ニヤッ

スザク「!!」

.
■カワグチ湖 コンベンションセンターホテル ─────

片瀬「草壁……!貴様、どうしてもやり通すつもりか……ッ!」

草壁「……少将、我々はすでに覚悟を決めた者なのです」
   「もう後へは引けません……いかなることがあろうと……」カチッ

同志A「……少将は、何と?」

草壁「フッ、やめろ、とな……これで覚悟はできた」
   「ブリタニアが屈するか、我々が死ぬかの二者択一!断固たる意志で貫くぞ!」
   「おい、予告した時間だ、ブリキどもに我ら流の交渉術を見せてやれ!」

同志B「はっ!」ダダッ…

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


ギルフォード「……姫様!極めてマズい状況が!これをご覧くださいッ!」

コーネリア「何だ…………こ、これはッ!?」


(ギルフォードが持ってきたカメラ映像には、ホテル屋上の様子が映し出されていた)
(そこには、解放戦線の者達と、人質と思しき者が数名、並んで立っていた)

(そのうちの、いちばん右に立っていた人質が、解放戦線の者から背中をこづかれ、)
(必死になって抵抗しているようだった……が、蹴り倒され、そのまま屋上から転落した)
(予告通り、公開処刑を行ったようだ)

.
(しかし、本当の問題は……右から4番目の女性の姿!)


コーネリア「ユ……ユフィ……!?」

ギルフォード「姫様……!」

コーネリア「おのれ……イレヴンどもが……ッ!」ギリ…ッ!!


(強く握りしめた拳は爪が食い込み、血が床にしたたる)
(1名30分としても、制限時間はあと1時間半……)
(コーネリアは、それまでに行動を起こさなくてはならなくなった)


ギルフォード「……これは、もはや明確な意図があります……」
      「ユーフェミア様は……」

コーネリア「……」ギリ…

もしかして>>1はカレンとかミラクルがギアスもらうss書いてたひと?

>>86 です。


将官「コッ、コーネリア様!」
   「搬入路には巨大な砲塔が設置されており、突入に失敗したとの報告が!」

コーネリア「…………」ギリ…ギリ…

ダールトン「……姫様……」

コーネリア「……特派に指令だ……」
      「作戦を許可する、搬入路の突破を図れ……」

ダールトン「イエス、ユアハイネス……!」

コーネリア「ギルフォード……お前は、強襲部隊の用意をしろ……」
      「もしユフィに何かあれば、その瞬間に連中を皆殺しにしてやる……!」
      「いいな、跡形も残すな……この世から消し去ってやれ……!」ゴリッ…

ギルフォード「イ、イエス……」ゴクッ

.
■その約10分前 ホテル内 人質が集められた一室にて ─────

兵士A「……ブリタニアは、我らとの交渉に応じる気はないようだ……」
    「お前たち人質のうちから数名を選び、報道陣の前に"展示"してやる」
    「我らが本気だということを、思い知らせてやるのだ……」


(解放戦線の兵服姿の男はそう言いながら、人質の集団を見回す……)
(うち数名を指さし、外へ連れ出す……そのうちの1名に、ニーナが選ばれた)

.
ニーナ「……やっ!嫌アッ、やめて触らないでえっ!」バタバタッ
    「気持ち悪いっ!イレヴンが、イレヴンがあ!」

兵士A「なっ、何イイッ!?きさまあッ!」バキッ!!

ニーナ「ぐ!」ドタッ!!

兵士A「イレヴンだと……イレヴンだと!?……き、気持ち悪いだとオッ!!」
    「おい、こいつを連れていくぞ!真っ先にぶち殺してやるッ!」ガシッ

ニーナ「いやっ、ィやあああア゙ア゙ッ!!」


(倒れたニーナの頭髪をがっしと握りしめ、逆上した兵士が叫ぶ)
(驚いたミレイ達は、口々に叫びながらその兵士の手足に必死にしがみついた)


ミレイ「だめ、お願いです!やめてください!この子は……!」

シャーリー「ニーナちゃああん!」

リヴァル「おっ……おい、やめろおっ!ニーナを離せえ!」ガバッ!!

兵士B「くそっ、離せ、離れんか!」バキッ、ドガッ!!

リヴァル「ぐへ!」ズルズル…

.
兵士C「面倒だ、こいつら全員……」

??「おやめなさい!」


(混乱した空間に突如、澄み切った声が響いた)
(全員がその声の主を見る……そこには、集団の中から一人の女性が屹立していた)


??「その子の代わりに、私を連れていきなさい……!」

兵士B「なんだあ、貴様……!」

??「私は、ブリタニア第3皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアです……!」


(女性の言葉に、部屋にいた全員が大きくどよめいた)
(兵士たちも、予想外の"大物"の出現に、とまどいを隠せない)


ユフィ「あなた……大丈夫?殴られたところ、問題ない?」ニコッ

ニーナ「はっ……はい……」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


草壁「……ふうむ」

同志A「どうする?」

草壁「……あのコーネリアのことだ、たとえ皇女でも取引には応じまい」
   「ただし、我々が決して殺さないだろうと踏んでいるなら……だ」

同志B「すると?」

草壁「何も言わず、ユーフェミアも一緒に屋上へ並べろ、順番は4番目だ」
   「最初の奴はすぐ殺せ、以降は予告通り、30分おきに一人ずつ処刑する」
   「1時間半だけ、猶予を与えよう……必ず、何らかの接触をしてくるはずだ」ニヤッ

同志B「はっ!」

.
■カワグチ湖周辺 特派トレーラー ─────

ロイド「君しかいないから乗ってもらうんだけどぉ……」
    「ほんとは乗せたくないんだよねぇ~……」ハァ…

セシル「……フルスペックを発揮できないから、でしょう?」

ロイド「本来、デバイサーじゃないでしょう、キミは?」
    「この作戦、君だと失敗する確率が高いし、死ぬと今後の研究に困るんだよねぇ……」

セシル「あら、デバイサーなら死んでもいいんですか?」

ロイド「それが役割でしょ?」

セシル「……ほんと、壊れてますわね、ロイドさんは」

ロイド「それは今さらだねぇ~」ニコニコ
    「さあ、命令も出たことだし、そろそろ準備しないと……気をつけてねぇ?」

セシル「大丈夫ですよ……やばそうなら離脱します」ゴソゴソ

.
??「動くな!」チャッ

ロイド「へ?」


(出撃準備をしていたロイドたちを、突然、武装した男女数名が取り囲む)
(見れば、特派の他技術員たちもすでに拘束されていた)


ロイド「あれえ?なにごと?」キョトン

セシル「まさか……テロリスト!?」

??「お久しぶりです……」


(背後からの聞き覚えのある声に、二人は同時にそちらを向く)
(そこには、なんと……枢木スザクの姿が!)


スザク「セシルさん、選手交代です」ニコッ

セシル「すっ……スザクくんっ!?」

.
ロイド「あらあら、セシルくんざんね~ん!」
    「ランスロットに乗りにきたんだねぇ~?」ニコーッ!!

スザク「そうです」
    「リニアキャノンへの突撃作戦、僕が引き受けます!」


(セシルは改めて、周囲の武装兵を見回す……)
(ブリタニアの正規兵は一人もいない様子だ)


セシル「スザクくん……無事だったのは嬉しいんだけど、」
    「総督の命令じゃなさそうね……ここへ帰ってきたわけじゃないの?」

スザク「はい、ごめんなさい……僕はもう、特派には戻れない人間になったんです」
    「僕たちの邪魔をしない限り、皆さんの身の安全は保障されます」

ロイド「今回限りかぁ~……」
    「まあいいよ、僕のランスロットのフルスペック、存分に発揮してねぇ~!」ニコニコ

スザク「はい!」

.
(スザクは手早くパイロットスーツを着用し、ロイドが投げ渡したキーを掴むと)
(滑り込むようにランスロットに乗り込んだ)
(身体になじんだコクピットの中に戻ると、興奮状態が和らいでくる……)
(ふと、コクピット内にセシルの香水の匂いが漂っていることに気づき、苦笑した)


スザク『セシルさん、僕がいない間、大変だったみたいですね?』

セシル「そうよ、予備デバイサーとしてずっとこき使われてたのよ?」

ロイド「だからぁ~、君しかいないからしようがないじゃないってぇ……」

スザク『ふふ……ロイドさん、現場のマップをお願いします!』

ロイド「はいはい~」ピピピッ
    「スザクくん、いまランスロットには、セシル君のために補助ユニットをつけてるから、」
    「そこをバイパスして……うん、それで君向けのカスタマイズに戻るよ~」

スザク『……』ピピッ、カカカッ…
    『バイパスしました、再起動します』

ロイド「うん、それでオッケ~!」

武装兵「スザク、ゼロからの合図を待て!」
    「作戦はその瞬間からスタートだっ!」

スザク『了解ッ!』

(久しぶりの主(あるじ)を得て、ランロットはその魂に炎を灯した)
(OSが起動、ユグドラシルドライブが高速で作動し始める)
(計器が輝かしく明滅し、数秒の後に全ユニットに異常のないことがディスプレイにて知らされた)
(ゼロからの合図を待ち、スザクは待機状態に入る)


スザク(ユーフェミア様も人質になっていると、ルルーシュは言っていた……)
    (彼女の為にも、オレがこの作戦を絶対成功させてやる!)



   ────── 続く

くぅ疲!

いいとこで終わらすね~!!

>>100
はい!終わらせました!

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