カレン「わたしの紅蓮弐式!!!!!1」ゼロ「うむ」(91)

■前回まで

前スレ:C.C.「デートねぇ……」/コーネリア「デートだと!?」 - SSまとめ速報
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これまでのまとめ:http://geassfun.at.webry.info/

 01 ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
 02 C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」
 03 シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」
 04 スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」
 05 ルルーシュ「デートか……」/ユフィ「デートです!」
 06 C.C.「デートねぇ……」/コーネリア「デートだと!?」

全速力で!

.
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

(地下水道のある、じめじめとした牢獄の中、手足を鎖でつながれたソードS……)
(連日の拷問で衰弱していた彼の心を、今まさに"恥辱"が打ち砕こうとしていた……)


ソードS「いやだ!……僕は、誇り高きブリタニアの王侯騎士だ……君などに……」

漆黒の翼「フハハ……まだわかっていないのか、ソードS!」
      「お前はもう……俺という"闇"から逃れることはできないのだよ……」…チュッ

ソードS「なっ、何を、バカな……やめろお……ッ!」ググゥ…

.
(漆黒の翼は、果実のように赤い舌をちろりと出し、ソードSの滑らかな、光沢を放つ胸板に)
(ゆっくりと這わせる……ソードSの身体が、ぴくり、と跳ねた)


漆黒の翼「クク……」ヌラア…ッ
      「正直になれよ、S……自分の心に……!」
      「お前の心も、身体も……俺に捧げるんだ……クク……」チュク…チュ

ソードS「クッ……貴様ァ……ッ!」ガチャガチャ!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

シャーリー「…………」カリカリカリ

ニーナ「…………」カタカタカタ

シャーリー「……ニーナ?」ピタ

ニーナ「なに?」ピタ

シャーリー「漆黒って、やっぱり受けの方がいいのかなあ……」

ニーナ「うーん、意外性はあると思うけど……王道でしっかり作る方がいいんじゃない?」
    「奇をてらいすぎて滑ったら元も子もないよ」

シャーリー「うん……そうだね」カリカリカリ

.
ニーナ「……これで3作目だっけ?」
    「シャーリーって、ストーリーテラーの素質があるとは思わなかったなー」

シャーリー「自分でも意外だよ……」カリカリカリ
       「でも、もっと表現の勉強をしなくちゃ……まだ全然、買ってもらえないしね」

ニーナ「わたしは、シャーリーの描く話は好きだよ?」ニコッ

シャーリー「ありがと!がんばる!」カリカリカリ

.
■昼下がり 貿易商事務所 ─────

C.C.(ふわあ……ヒマだ……)
   (積んでいた本はみな読んでしまったし、ゲームもだいたい遊び飽きた……)


(冬の空の下、窓の外では木枯らしが吹く日……)

(私は、暖房を効かせた貿易商の奥の部屋で、ヒマを持て余していた)
(ここは、ルルーシュが設立したダミーの会社……実態はほとんどない)
(私も、普段はここで留守番代わりにヒマを潰しているだけだ)

(下着姿でベッドに寝転がり、チーズくんを抱きかかえながら私は、)
(退屈さで死にそうな思いでいた)

.
C.C.(クラブハウスなら、ヒマな時はルルーシュの様子を見に行ったりして時間が潰せるが、)
   (ここではそれもできん……街に出ても欲しい物がない……)

   (……この間の、カレンとのデートを邪魔した時は、久しぶりに楽しい時間を過ごせた)
   (私とカレンに挟まれ、苦虫を噛み潰したような奴の顔……愉快だったなあ……)
   (また誰かとデートをしないかな、今度も邪魔をさせてもらおう……)

.
C.C.(……しかし退屈だ、どうにかならないものか、これは)
   (今日、奴がきたら、クラブハウスに戻すように言ってみるかな……)

   (……きっと奴も、部屋に戻っても私がいないので、退屈しているはずだ)
   (「俺がいないと駄目なのか、この魔女め」などと照れ隠しに言うかもしれない)クスクス
   (あれが、ツンデレ、というのだろうな……)


(……と、そこへ、隣の事務室で電話が鳴った)
(電話番は私の仕事だ)

.
C.C.「はいはい、よっこいしょ……」ギシッ、テクテク…ガチャ
   「こちらルロワ商事だが……」
   「…………うむ……わかった、こちらから後程ご連絡を差し上げる」カリカリ
   「ではまた」ガチャ


(私が受話器を置き、再び奥の部屋に戻ろうとするとまた電話が鳴った)
(今日はよく電話が鳴る日だ……)

.
C.C.「めんどうな……」…ガチャ
   「こちらルロワ商事だ……」

??『……シーツー……?その声、C.C.だよね……?』
   『僕だよ、マオだ……!』

C.C.(…………なに!?)ギョッ!!


(その声を聞いた瞬間……私はその場に凍りついた)
(私がここにいることを、なぜあの子が……!?)

.
■租界 某所 倉庫内 ─────

(俺は、最近増えてきた入団希望者の面談を行っていた)
(最下層に位置する"実動員"の場合は面談を扇たちに任せているが、幹部候補と)
(なりうる人物の場合は、身辺チェックを念入りに行った上で俺が直接話をする)

(今日は、その幹部候補となる人物との面談だ)


ディートハルト「……お初に、お目にかかります……」
      「こちらが私の経歴になります」

ゼロ「うむ……そこに腰かけてくれ」
   「ディートハルト・リート……報道局にいたのか……元プロデューサーか、」
   「しばらく前に退職した、とあるが?」

.
ディートハルト「ええ、実は……カワグチ湖の件で、局をクビになりましてね」
      「今はフリーランスなのです」

ゼロ「……ふむ」

ディートハルト(こう言えば、ゼロはきっと気づくだろう)
      (あの、全国への中継を独断で行ったのがわたしだと……)

ゼロ「……なるほど、わかった……ディートハルト君、しかし君はブリタニア人だ」
   「現体制が維持される方が君にとってかしこい選択の筈だが?」

ディートハルト「ゼロ、私はあなたに……ドラマを見たのですよ」

ゼロ「ドラマ?」ギシッ

.
ディートハルト「そう……ドラマです」
      「ここエリア11を基点にし、いずれ全世界を巻き込むであろう壮大なドラマを……」
      「その混沌の中心で、愉快そうにタクトを振るう、あなたの姿を……!」
      「私は、そのエキサイティングなドラマの、"演出"をお手伝いしたいのですよ」

ゼロ「買い被りだよ……」ギイッ
   「しかし、君の経歴は注目に値する……」
   「君への返答は追って行う、待機していてくれ」

ディートハルト「ありがとうございます……」
      「ご期待に、必ずやお応えいたします……!」

      (ふふふ……これで、間近でゼロの"奇跡"を見ることができる……)
      (ああ、楽しみだ……私にもっと、ドラマを、混沌を見せてくれ……!)ギンギン

.
■貿易商事務所 ─────

C.C.「……はい?どなたかしら?」

マオ『C.C.、僕だよ、マオだって!ずっと探していたんだよ!』

C.C.「わたくしはセシリアと申します、C.C.という方は存じませんわね」
   「当社になにかご用?」

マオ『セシリア!?嘘いわないでよC.C.!』
   『その声は……』

C.C.『いたずら電話はおやめくださいませ~!』
   『……次かけたら警察を呼ぶぞ?』ガチャ!!

.
(……私は、とっさに別人を装い、受話器を乱暴に置いた)
(あの声、喋り方……間違いない、マオだ!)
(どうやって調べたのかはわからないが、ここに私がいると思ってかけてきた……)

(ここは、ルルーシュ以外に知る者のいない場所だ)
(取引先はごくわずか、そこへの納品も運送を使わず奴が直接会って手渡している)
(業者づてではない、では、まさかルルーシュからバレた……!?)

(……私がそのことについて考えを巡らしていると、また電話が鳴る)
(しかし私はもう、今日は電話に出たくなかった)
(重い足取りで奥の部屋に戻る……ベッドにもぐりこみ、ふとんをすっぽりとかぶった

(電話は、そのまま10分くらい鳴り続けていたが、やがて鳴らなくなった)

.
■夜半 租界街路 ─────

ルル(とりあえず監視は継続させているものの……)カツカツ
   (……スザクの奴、どうしたものか……)


(俺は、貿易商の事務賞に向かう途中、考え事に耽っていた)
(先日から、俺の中でスザクとユフィの件が重くのしかかったままだ)

(スザクに俺の正体を明かす、という賭けは、思いもかけぬ形で裏目に出た)
(まさか奴がユフィに心酔し、俺を脅迫するとは……)

.
(今はまだ、奴もユフィも具体的な動きをしていない)
(しかし、一度でも脅しの言葉を吐いた以上、奴はもう信用すべきではない……)
(……俺の理性がそう俺に語りかけると同時に、俺の感情はそれを否定する)
(俺の正体を誰にも言わないのは、奴にとっても俺は親友だからだ、信用すべきだ、と……)

(……事務所に入ると明かりがついており、C.C.がソファに座ってTVを見ていた)
(C.C.は、少し驚いたように俺の方を振り返る)


C.C.「!!……おかえり」

ルル「ただいま……C.C.、変わりはなかったか?」

.
C.C.「ああ……電話があったよ、いつものお客さんだ」
   「次は100個を納品してほしいそうだ」

ルル「100個か……わかった、後で俺から連絡を入れておこう」

C.C.「……そのくらいだ」

ルル「ふむ」


(俺は、上着をハンガーにかけながら、ふとC.C.の様子がおかしいことに気付く)
(何かしょげているような……あまり元気がなさそうだ)
(C.C.だから、風邪などの病気でないのは確かだが……?)

.
ルル「どうした?」

C.C.「……ルルーシュ、クラブハウスに戻りたい……」

ルル「は?」

C.C.「…………ここは、退屈なんだ」ニコ


(そう言って、C.C.は俺に微笑みかける)
(また無理を言って、俺を困らせる気なのか……)

.
ルル「本でもゲームでも、ヒマを潰せるものがあるだろう?」

C.C.「それらも飽きてしまった」
   「……お前が、私にとっていちばんのおもちゃなんだよ」

ルル「ふざけたことを言うな、俺は忙しいんだ」
   「そんなに退屈してるなら、騎士団の連中の手伝いでもしていろ」

C.C.「…………冗談だよ、ルルーシュ」
   「お前の邪魔をする気はない」ゴロン


(そのまま、ソファに寝転がったC.C.は、眠るように目をつぶった)
(……いつもと何かが違う、どうしたんだ、こいつは?)

.
ルル「……なにがあった?」

C.C.「何もない」

ルル「本当か?」

C.C.「ないっていってるだろう」

ルル「……それならいいが、思いつきで喋るのはやめてくれ」
   「クラブハウスに戻ろうにも、ナナリーたちを納得させられる言い訳が……」

C.C.「もういいよ、気にするな……忘れろ」

.
(C.C.は、ソファの上でもぞもぞと動いて俺に背を向けた)
(こいつ……放っておかれていると思って拗ねたのか?)


ルル「…………全く、俺がいないとダメなんだな、お前は?」ニヤリ

C.C.「……」ピク

ルル「片付けもできない料理もできない……しかも、ひとりで時間を潰すことすらできない」
   「一体、俺と会う以前はどんな生活をしていたんだ?」

C.C.「……うるさいな……もういいと言っただろう?」
   「私は寝る……」ガバッ、テクテク…バタン

ルル(全く、わけのわからん奴だ……)ハァ…

.
■次の日 貿易商事務所 ─────

(予想通りに……マオは再び電話をかけてきた)
(私がここにいるということに、すでに確信があるのだろう)

(無駄だとは思いつつも、私はふたたび別人を装う)


C.C.「ですので、C.C.という人はここに在籍しておりません!」
   「他の会社とお間違えになって……」

マオ『あはははは、そんなヘタなうそ、すぐ見破っちゃうよ!』
   『だって君の"声"、僕には聞こえないんだから!C.C.だよ君は!』

C.C.(なに!?じゃあ、国外からではなく、すでにこの近くに……!)

.
(……私のわずかな逡巡が、マオの言葉の肯定となってしまった)
(受話器から聞こえるマオの声がさらに弾む)


マオ『やっぱりそうだった……C.C.、C.C.だ!』
   『C.C.、ほんとに逢いたかったんだ、僕は……!』
   『ひどいよ、どうして何もいわずに置いてきぼりにしたんだよ……』
   『すごく寂しかった、心が……ちぎれてしまいそうだったよ……』
   『C.C.も同じだろ?僕から離れちゃうなんて……でも、もう安心だよ、』
   『僕は、いつだって……C.C.と一緒さ……』

.
C.C.「マオ……帰るんだ、お前がいるべき場所に」

マオ『うん、だから一緒に帰ろうよ!今から迎えに』

C.C.「来るな!来ても私は出ない!」

マオ『どうして!?なぜだよ!?やっと君を見つけたのに!!』
   『……ねえ、僕の今までの寂しさ、わかるかい?』
   『C.C.に抱いてほしくて、いつも泣いてたんだよ……』
   『君の声を録音したテープを聞きながら……』
   『いつか、ホンモノの君に再会できる、そう信じてたんだ……』
   『やっと見つけた……ほんとに……』

.
(今までのことを思い出したのか、マオの声は徐々に泣き声に変わってゆく)
(どうにしろ、バレてしまった以上は一度は逢わないとダメだろう……)


C.C.「……マオ、それほどに私に逢いたいのか?」

マオ『うん!逢いたい!』

C.C.「じゃあ…………」

.
■シンバシ 繁華街 ─────

(……私は、マオと待ち合わせをした店へと向かう)
(わざと、約束の時間よりも10分遅れていった)

(約束をした場所は、繁華街の真ん中に位置するカフェテラス……)
(マオにとっては地獄のような場所だ、マオ一人なら、決して行かないだろう)
(だが、今は私との約束がある……きっとあの子は、そこにいる)

(……店に到着し、席を見渡すとマオがすぐわかった)
(一人で座り、俯きながらじっとしている……)
(全身から脂汗をたらしながら、必死に耐えているのだろう)

.
(私は、黙ったまま静かに、マオの前の席に腰を下ろした)
(マオは、私の気配に気づき、ゆっくりと顔を上げる……苦痛に歪んでいたであろうその顔が、)
(瞬時に喜びのそれに変化した)


マオ「あは……ははっ!C.C.……ひさしぶりだね……!」

C.C.「……よく、私がここにいることがわかったな?」

マオ「わかるよ……あの、ゼロってやつにギアスを与えたんだろう?」
   「そんなことができるのは、C.C.しかいないじゃないか」

C.C.(ほぼ想像通りだったか……)
   (ゼロ……ルルーシュの思考を読み、近くにいるはずの私の存在を確認し、)
   (そして居場所を調べたのか……)

.
(ホテルジャック事件ではひとつ、大きな疑問点が残ったことがマスコミでも指摘されていた)
(解放直前、ホテルジャック実行犯の幹部たちがみな自決していたことだ)
(また、スザク救出劇でも、ジェレミア達がなぜ敵を素通ししてしまったのかも、大きな謎として)
(世間では語られている)

(いずれも、ゼロの巧みな話術によるもの、という曖昧な結論になっていたが、)
(どちらもギアスによりなし得た"奇跡"だ……だから、ギアス所持者ならピンとくる)
(マオと同様、きっとシャルルもわかっただろうし、ゼロがルルーシュであることも見破っただろう)

.
(私が黙って考え事をしている間も、マオは嬉しそうに喋りつづけていた)


マオ「さあ、帰ろうよ、C.C.……」
   「オーストラリアに家を買ったんだよ、二人だけで暮らせる家を……」
   「50km以内には誰も住んでいない、すてきな環境だよ!」
   「昼間はカンガルーが近くを飛び跳ねてるのを眺めて、夜はC.C.の子守歌を聞きながら」
   「眠るんだ……いいだろう、きっと、すごく幸せな生活だよ?」

   「もうどこにもいかないで……C.C.……」
   「そこで、誰にも邪魔されず、二人だけで……」

.
C.C.「マオ……」


(私は、彼の言葉を遮った)
(ゆっくりと、かぶりを振る)


マオ「どうしたの、C.C.?」

C.C.「……無理だよ、マオ、そこにはいけない……」

マオ「どうして?航空券を買えばいけるよ?」

C.C.「お前はもう、私との"契約"を果たせないんだ」
   「だから一人で生きていくんだ、マオ……」

.
マオ「契約?どうでもいいじゃないか、そんなの?」
   「C.C.は僕と一緒にいるのが一番いいんだよ?」


(私は、それを聞いて寂しく微笑んだ)
(やはり、契約の意味がわかっていない……契約を果たす意思を失った者とは、)
(関係を続けることはできないということが、マオには理解できないのだ)
(それに、私にはもう、ルルーシュがいる……)


C.C.「……私は、奴から離れられないんだ」
   「すでに契約をしたからな」

.
マオ「……契約……けいやく、ケイヤクケイヤクケイヤクケイヤクケイヤク……」プル…プル…
   「…………ケイヤクなんてどうだっていいだろ、C.C.!」ガシャン!!


(マオは、突然激昂して立ち上がった)
(目の前のテーブルが脚に当たり、騒々しい音をたてて倒れた)
(この子はやはり、今でも感情がコントロールできないのか……)


マオ「そんなの関係ないよ!」
   「僕はC.C.が好きだし、C.C.だって僕が好きじゃないか!」
   「……ぐあ……っ!!!」


(……と、突然マオの顔が醜く歪んだ)
(こうなるだろう、と想像した通りの状況になった)

.
マオ「うああ!……くっ、くそお!黙れ、黙れよお前らあっ!」
   「僕に話しかけるな!やめろ、黙れえっ!」
   「くそお、僕を……C.C.を侮辱するなぁ!この……下品な連中があっ!」


(マオは、周囲の人々を見回しながら、誰彼かまわずに罵倒する)
(周りの人間は、マオに何も言っていないにも関わらず、だ)
(そんなマオに、周囲の者からの道化を見るような視線がさらに集中する)
(……ついにマオは、その場に倒れ頭を床にこすりつけ始めた)

.
マオ「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいいいぃぃぃぃッ!」
   「やめろ、もうやめろおおお!何も考えるなよおおおおおお!」
   「くそおおおッ!死ね!お前らみな死ねええええええ!」

C.C.「……マオ、無理なんだよ……」


(床でのたうちまわっているマオを見下ろしながら、私は同じことを静かに、繰り返し告げる)

.
(……マオのギアスは、最大で500m先にいる者の心の声が聞けるギアスだ)
(だが、もはや暴走状態で、近距離の人間の心の声はすべて聞こえてしまう)
(常時耳元で、大きな雑音が鳴りつづけているのと同じ感覚だ)

(しかも、今の私とのやりとりで、周囲の客がみな、私たちに興味をもってしまった……)
(人々の関心がすべて自分に向けられてしまうと、マオにとってはそれが、)
(耳元で一斉にわめかれるのと同じ苦痛となる……しかも、嫌でも聞かされるのだ)
(たとえ鼓膜を破っても、悪意の声の集団は脳に直接響き続ける……)

(床の上で、口からよだれをたらしながら悶絶しているマオ……)
(だが、私には、何もできない……ただ、見守るしかできないのだ……)
(それも、私がマオから離れた理由のひとつだった)

.
マオ「うあ……あ……ああああアアアアアア!」ダダッ!!


(もはや耐えきれなくなったのか、マオは絶叫しながら跳ね起きると、店を飛び出した)
(私は、周囲の視線も意に介さず、テーブルを元に戻すと、勘定を済ませ店を後にする)
(店の外には、マオの姿はなかった……)


C.C.(マオ……許しは乞わない、お前と言う存在もまた、私の"罪"だ……)
   (できれば、帰ってくれ……お前が静かに、安らかに暮らせる場所へ……)

.
■夜半 貿易商事務所 ─────

(日が落ちるまで……ルルーシュが事務所へ戻るであろう時間まで、)
(私はあそこへ戻る気になれなかった)
(街中を適当にぶらぶらしながら、時間が過ぎるのを待ちつづける)

(夜も更け……私が事務所に戻ると、変わらぬ様子のルルーシュがいた)
(ソファに座り、顔写真の貼られた書類に目を通している)


C.C.「……いたのか」

ルル「帰るなり、いたのか、はないだろう」
   「珍しいな、こんな時間まで外出とは」

C.C.「ただいま……」テクテク

.
ルル「……食事は済ませたのか?」

C.C.「まだだ」ゴソゴソ

ルル「じゃあ残りを食え、ほら」ガサッ


(奴が差し出したのは、ピザの箱……まだ7切れ残っていた、奴は1切れしか食べてない)
(私はそれを手に取り、しばし見つめる)


C.C.「…………」

ルル「……それじゃ少ないとか言うなよ?」
   「もう店は閉まってるんだからな、我慢しろ」

.
C.C.「いや……いただこう」テクテク…モスッ


(私は、ピザの箱をかかえながら奴の隣にすわった)
(奴はチラリと私を見たが、またすぐに書類に視線を戻す)


ルル「ソファの上にチーズをこぼすなよ?」

C.C.「こぼさない」モグモグ

ルル「……」

C.C.「…………」モグモグ

.
(窓のブラインド越しに見える、冬の夜の街……)
(マオは私のことをあきらめていない、そう感じる……きっとこの街のどこかで、耳を押さえて)
(うずくまっているのだろう)

(あの子がどう出るか……私を説得できない、となると、実力行使に出るかもしれない)
(このことを、ルルーシュにも話しておくべきなのか……本来そうすべきなのだろう、)
(しかし、マオのことはなるべく語りたくない……)


ルル「…………言い訳を考えた」

C.C.「……ん?」

.
ルル「家に帰っても状況はさらに悪化した、ついに母親は浮気・家出をし、」
   「父親は借金苦で自殺、家は追い出され借金取りには追われ、貯蓄も全くないし」
   「知り合いが俺しかいない……」
   「定職と、新たな住処を見つけるまでは、クラブハウスにいるしかない……」

   「……というのは、どうだ?」チラッ

C.C.「…………」


(クラブハウスへ戻るのはもういい、と言ったのに……)
(……こいつは、また、珍妙な理由をこさえて……!)


C.C.「…………」クスッ
  「どうしても私を、とても不幸な人生を送る女ということにしたいのか?」

ルル「他にナナリーたちを一発で説得できる理由があるか?」
   「あるなら、教えてくれ」

.
C.C.「そのような変な言い訳をせずとも、私とお前は将来を誓いあった仲だと……」

ルル「それはナナリーが誤解するからやめろと言うんだ!」
   「第一、お前がクラブハウスへ帰りたいというから、俺は……」

C.C.「まあカッカするな、別に私はあせっていない」
   「ゆっくりと考えようじゃないか……ほら、口をあけろ?」
   「私のピザをわけてやろう」ウリウリ

ルル「元はオレが買ったピザだろう……あー……」パクッ

C.C.「ふふ……ソファにチーズをこぼすなよ?」

ルル「……お前といっしょにするな」モグモグ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(……貿易商のビルと隣のビルの隙間で、マオはビルの壁面によりかかり、)
(寒さに震えながら"聞いて"いた、ルルーシュの心の声を……)


マオ(むかつく……クソッ、僕のC.C.と楽しそうにしやがって……!)
   (なんだよ、そのC.C.への気持ちは……C.C.は僕のことが好きなんだよ……!)
   (お前さえいなけりゃ、C.C.はまた僕と一緒になれる……)
   (お前が……お前さえ……!)

.
■日中 周辺ゲットー ガレキ撤去作業現場─────

(ユフィの口添えのおかげで、ここゲットーでのガレキ撤去作業のために)
(グラスゴーを1台、政庁が貸し出してくれることになった)
(土木作業用に改造されたもので、ダンプの荷台にグラスゴーがくっついているような)
(感じだ、もちろん戦闘には使えない)

(そして当然ながら、ゲットーにはグラスゴーを操縦できる人間はいない……)
(必然的に、オレが操縦することになった)


スザク(ランスロットに比べたら鈍重だけど、シンプルで操縦が楽だな)ガコンガコン
    (作業してる他の人にも教えて、誰でも使えるようにするか……)

.
(グラスゴーに乗って作業をしていると、ケータイが鳴った)
(片手でスロットルを操りながら電話に出る)


スザク「はい、もしもし?」

ルル『スザク、今時間は大丈夫か?』

スザク「大丈夫だよ、どうしたんだ?」

ルル『この間の話についてだが……』

.
(騎士団を解散しないか、と言ったことについてだろうか)
(オレもあの時は、ユフィと話した直後で興奮していたこともあって、ついルルーシュに対し)
(きついことを言ってしまった……彼が気にしてなければいいんだけど……)


ルル『色々と考えたんだが、やはり簡単に解散とはいかない』

スザク「そうだろうね……わかるよ」

ルル『だが、ユフィが考えている構想の内容によっては、俺たちも協力できるだろう』
   『俺たちも別に、何が何でも戦争がしたいわけではないからな』

スザク「なるほど」

.
ルル『話の進み具合や具体的なことを、教えてくれないか?』
   『いま決まっている限りで構わない』

スザク「いや、まだ何も決まってはいないよ」
    「この間の話では、特区みたいなものを作るのが一番早いんじゃないか、って」

ルル『特区?』

スザク「租界みたいな形で、一定区域を特別行政区にするんだ」
    「そこだけの特別法で、ユフィの理念を具体化するわけさ」

ルル『ふむ……』

.
スザク「エリア11を丸ごと変えるのは大変でも、これならそう難しくないはずだ」

ルル『てっとり早いのは確かだな』
   『他には?』

スザク「まだそのくらいさ……」
    「……でも、嬉しいよ」

ルル『ん?』

スザク「君が賛同してくれるなんて……」
    「昔みたいに、いっしょにやれるかな?」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~

ルル「!!」


(それを聞いた瞬間、俺は一瞬言葉に詰まった)
(彼らに協力するどころか、俺はその計画を潰すために話を聞いていたのだ)
(前もって情報を仕入れておけば、いくらでも対処方法を見つけることができる)

(その言葉、まさか俺の真意を確かめるために……?)
(先日の脅迫で、俺がどう考えたのかを勘ぐっているのか!?)


ルル「……ああ、やれるといいな」
   「俺とお前が組めば、できないことは何もない」

.
スザク『そうだね……』
    『そろそろ作業を再開しなきゃ、それじゃ』

ルル「ああ、また連絡する……」…ピッ


(……アッシュフォ-ド学園の誰もいない屋上で、俺はスザクとの通話を切った)
(昔なら……いや、少し前までなら、俺たちの絆の強さを喜べるはずだった言葉が、)
(今ではそれすらも疑惑に変わる……)


ルル(……お前が、俺の下に来さえすれば、)
   (こんな疑いも抱く必要がないというのに……)ググッ…

.
■ペンドラゴン 宰相執務室 ─────

シュナイゼル「なるほどね……特区か」

ユフィ『はい、ただ、今はお姉様がエリア11の治安の安定に心を砕かれていますし、』
    『今すぐやってみたい、というわけではないのですが……』

シュナイゼル「面白い試みだと思うよ、ユフィ」
      「なにも、銃剣でのみ平和を成し得るわけではない、」
      「話し合いもまたひとつの手段だろうね」

ユフィ『では、シュナイゼル兄様も……!?』

シュナイゼル「時節が来れば応援しよう」
      「今は、しっかりと計画を練るといいだろう」

ユフィ『ありがとうございます!』

.
(……先ほどから通話にて、シュナイゼルはユフィの相談に応じていた)
(コーネリアには相談しがたいことがある、ということで聞いていたが、確かにそれは)
(彼女なら一笑に付す程度の話であった……だが、シュナイゼルは全く別の捉え方をした)

(ユフィとの通話を終え、彼は傍にいた側近のカノンに声をかける)


シュナイゼル「カノン、今の話はどう思うかな?」

カノン「殿下からおっしゃられる方がいいかしらと思っておりました、」
    「願ってもないお話かと」

.
シュナイゼル「うん……あの、ゼロという男が率いる組織が、どこまで育つかにもよるね」
     「今よりも大きく育つなら、特区の設立は丁度いい実験にもなる」
     「皇帝陛下が推し進めてきた、武力一辺倒の戦略からの転換に道筋をつけることが」
     「できるかもしれない」

カノン「殿下……皇帝陛下は、最近は?」

シュナイゼル「まつりごとは、私に任せっきりだよ……どこにいらっしゃるのかも不明だ」
     「何を考えておられるのか……」

.
(シュナイゼルはそう言うと、小さくため息をつく)
(シャルル皇帝の、野放図と表現するしかないこれまでの拡張戦略のために、)
(ブリタニアは全世界を敵に回しつつあった)
(宰相としてシュナイゼルは、中華連邦との全面戦争を回避しつつ、中東などでの戦火が)
(他に飛び火しないよう奔走している毎日であった……)


シュナイゼル(ブリタニアも、永遠に強国でいられるわけではない……)
      (弱体化した暁には報復の応酬となり、世界はまた戦火に包まれてしまう……)
      (その繰り返しこそが歴史だというのは、あまりにも愚かな話だ)

      (戦争を終わらせる一手、か……)
      (どうすればいいものか……)

.
■ナリタ連山 コードR研究所 ─────

研究員A「……どうだ、拒否反応は?」

研究員B「……0.3、0.3、0.4……よし、問題なさそうだ!」
      「脳とのリンクはうまくいってるか?」

研究員C「ああ、問題ない」
      「視覚のオーバーライドもできてるようだ」

研究員A「そうか……なら、起こすぞ」パチパチパチ
      「……ヴィレッタ、起きるんだ、ヴィレッタ……」

.
(研究員は、溶液で満たされた巨大な試験管の中に浮かぶヴィレッタに、)
(マイクを通してそっと話しかけた)
(彼女の身体には様々な色とりどりの管が繋がれ……その頭部には、ヘルメットを)
(縦に2つに割ったような機械がかぶさっている)

(声をかけられたヴィレッタは、ゆっくりと目を開いた)


ヴィレッタ『……お、おはよう……ございました……』ゴポゴポ

.
研究員A「ヴィレッタ、いま君の眼には何が見えている?」

ヴィレッタ『赤と……青……』

研究員A「サーモグラフィだ、よし成功だな!」パチンパチン

研究員B「結局、コードR特有のシナプス構造の解析には失敗したが、」
      「副産物でこんなのができるとはな……!」

研究員A「サイバネティック技術の蓄積ができたし、」
      「あるいは、擬似コードRの実装もいずれは……」


(研究員たちは、満足げにヴィレッタを見つめる)
(一糸まとわぬ姿でいるヴィレッタだが、彼らの視線に全く無頓着の様子だ)

.
研究員A「ヴィレッタ、君の自殺願望をなくすために、脳の部位を物理的に切除した」
      「そのままでは生命維持ができないので、生体機器を接続させてもらったよ」
      「具合はどうかな?」

ヴィレッタ『たいへん……よろしかったようです……』

研究員C「……言葉があやふやだな」

研究員B「それはしようがない、」
      「言語中枢も一部切除しないとならなかったからな」
      「今後、彼女が話し続けることで、断絶した言語野の再構築がされるだろう」

.
研究員A「よし、まずは第1段階はクリアだ」
      「次は、背中の電位接続端子の整合をチェックしよう」

ヴィレッタ『ここは……どこであったでしょうか……』

研究員A「OK、ヴィレッタ、また休んでくれ」パチ

ヴィレッタ『わたしのmごいあhfぃあうべmmmmmmm───……』カクン

.
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

シャーリー「…………」カリカリカリ
      (うーん……ソードSを漆黒とうまく対比させないといけないんだけど、)
      (どうも漆黒の方がキャラクタが前に出てきちゃう……)
      (ルルをモデルにしてるからかなあ……)

      (ソードSはスザクくんをモデルにしたけど、彼のことあまり知らないもんなあ……)
      (ルルの友達ってことだけど……でも、それだけでよくここまで妄想するよね、)
      (わたしも……すっかり腐っちゃった……)カリカリカリ

.
ルル(ガチャ!!)「ふう……ん?今日はシャーリーだけか」
        「何をしてるんだ?」テクテク

シャーリー(二人の間にもう一人、キャラを追加する方がいいかなあ……)カリカリカリ
      (ソードSの拷問担当がソードSを好きになるってのも、アリだよね……)
      (あ、そうしたら三角関係だよ!話が動く!これだ!)

ルル(……俺に気付いてないのか?)
   (何をそんなに、集中して書いているんだ……?)ノゾキー

シャーリー(うんうん、拷問官はもともと漆黒の愛人で……)
      (だけどそんな悪い人じゃなくて、ソードSの高潔さに惹かれてしまう、と……)カリカリカリ

.
ルル「……」ジー

シャーリー(漆黒にとって、拷問官は自分のおもちゃのつもりだったけど、)
      (そのことを知ってさらに嗜虐心が昂ぶる、と……)カリカリカリ

ルル「……漆黒の翼って?」ボソッ

シャーリー「ほっ、ほわぁ!?」ガタガタッ!!
      「ルッ、ルルう!?いつの間に背後にっ!?///」

ルル「今さっき来たところだよ」
   「シャーリーが集中してたから、悪いかなとは思ったんだけど……」

.
シャーリー「まさか、よっ……読みましたか、これ……?」ウルウル…

ルル「少しだけね」
   「シャーリー、小説を書くんだな……驚いたよ」

シャーリー「えっ!?……う、うん、小説を、ちょっとね!」
      「ほんと最近だよ、書き始めたのは!」
      (ボーイズラブだって気づいてないのかな……)

ルル「完成したら、俺にも読ませてくれないか?」
   「どんな話を書いているのか、ちょっと興味がある」ニコ

シャーリー「えええええええっ!?興味あるのっ!?」

ルル「うわ!いきなり大声を上げるなよ……俺に見せるのは、嫌か?」

シャーリー「いや、というか……恥ずかしいよ……///」

.
ルル「えっ?誰かに読んでもらいたくて書いてるんだろ?」キョトン

シャーリー「そっ、そうだけど!」
      「でも、ほら……知り合いは……なんだか、ねえ……///」

ルル「ふむ?」

シャーリー(……うわー、あぶなかったー!バレてないっぽい!)
      (もう生徒会室では、書かないようにしようっと……)

.
(内心、ものすごい冷や汗をかいていたわたし……)
(ちょうどその時、ケータイが鳴り始めた)


シャーリー「あっ、ルル、ちょっとごめんね!」ピピッ
      「もしもし……あ、お父さん?」
      「うん……うん、こっちは変わりないよ……」

ルル(……登場人物が漆黒とかソードとかいう名か……ファンタジー小説か?)ジー

シャーリー「だめ!見ないで!!///」バサバサバサ!!
      「あっ、ううん、こっちの話!そっか、いまナリタなんだ……」

.
■キョウト 六家会合 ─────

桐原「……いよいよ、ナリタ侵攻作戦が遂行される」

刑部「解放戦線を捨て置けぬ、というわけか」

桐原「うむ……」
   「……片瀬は、無駄死にとなったな……」

宗像「コーネリアは、本気で……?」

桐原「大規模な派兵を行うようじゃ」
   「しかも、包囲殲滅戦……完全に潰すようだな」

.
公方院「藤堂らには知らせぬのか?」

桐原「……今回は、黙っているしかあるまい」
   「事前に相応の防衛体制を敷いているとまずいのだ」

公方院「なぜじゃ?」

桐原「NACとキョウトの繋がりを疑われている気配がある……」

刑部「なんと?」

桐原「コーネリアは……解放戦線のみならずキョウトも潰す気じゃ」
   「そのために、わざと総督府の文官に漏えいした……儂はそう睨んでおる」

.
公方院「なるほどのう……漏えいすれば、NACが即ちキョウトである、と……」
     「……では、見殺しにするかのう?」

桐原「致し方あるまい……"無頼改"が惜しいが、餞別代りとしよう」
   「それに、藤堂達も武人としては秀でた者共よ、自助に期待する他ない」

刑部「その名で思い出した、"紅蓮弐式"はどうした?」

桐原「ああ、あれは騎士団にやった」

刑部「……神楽耶様か?」

桐原「うむ、どうやら騎士団がすっかりお気に入りのようじゃ」
   「神楽耶様のご執心にあてられたか、儂もちと興味が湧いてきたのでな……」
   「近々、ゼロを呼んでみようかと思うておる」

宗像「またそれか……」
   「お主の冒険心、いつかその身を滅ぼすぞ……?」

.
■トウキョウ基地 兵舎通用門 ─────

ルル(……今度は、100個発注か……)
   (大規模な侵攻が行われる可能性があるな……)


(考え事をしながらミニ配送車を運転していた俺は、貿易商で扱っている商品の)
(納入先である、ブリタニア軍の兵舎の通用門前に到着した)
(先日、C.C.が電話で受けた発注分の納入だ)

(通用門の兵士に挨拶をし、出入業者の通行証と目的を告げると、中に通された)
(俺は、資材部門の倉庫を訪れる)


ルル「こんにちわ、ルロワ商会です……」

担当官「ああ、ルロワさんの使いか、済まないね急な発注で……」

.
ルル「いえいえ……こちらでよろしいですね?」


(俺は、車から台車に乗せかえ運んできたダンボールのふたを開けた)
(中には、片手に乗るほどの、レンズの付いた機械がずらりと並んでいる……)


担当官「うん、これだね……型番も問題なし、納入数は100……」

ルル「よろしければ、受取証にサインを」

担当官「よし、いいだろう、ペンはある?」

.
(……このレンズは、ナイトメアのファクトスフィアの中央についている、小型のセンサーだ)
(感光や感熱など、複数のセンサーがまとめられたもので、非常に高性能なのだが、)
(しかし精密機器ゆえにかなり壊れやすく、またこれが欠けると作戦活動に支障をきたすので)
(交換用の予備在庫は絶対に欠かせない)

(これをはじめとした、絶対に欠かすことができなく、また海外からの輸入に頼らざるを得ない)
(小さな消耗品を、俺の貿易商では扱っている……すべて、軍相手のものだ)
(それらの発注数により、ある程度軍の動静は把握できる)

(そして、もうひとつ……)

.
ルル「今回は発注が多いですね」

担当官「ああ……君には言えないが、作戦を計画中なのでね」

ルル「なるほど……」ジロッ
   「……計画中の作戦について、知っていることを詳しく教えてください」

担当官「…………」
    「来週、我々はナリタにある日本解放戦線を潰す作戦を遂行する」
    「規模は四個大隊で、ナリタ山を包囲する形で……」


(……そう、ギアスだ)
(この担当官にはすでに、「軍の作戦について俺から問われたら、他人に内緒で全て教える」)
(というギアスをかけてある)

.
(作戦の遂行にあたり、補給体制は絶対に疎かにできない、つまり兵站の担当官は、)
(これから行われる作戦の全体像について必然的に知っている)


ルル(ククク……他で扱ってないものを暴利で売りつけ、さらに情報までせしめて……)
   (コーネリアがこのことを知れば、さぞかし怒り狂うことだろう・・・・・)
   (……しかしそうか、ナリタを攻めるか……いよいよ、解放戦線を吸収する時がきたな)

担当官「というわけだ……」
    「…………ん?そんな聞きたそうな顔をしても教えないよ?」

ルル「ええ、わかっています、軍事機密、ってやつでしたっけ」
   「毎度ありがとうございます」ニコッ

.
■ゲットー 騎士団トレーラー ─────

カレン「……えっ、ハイキング?」キョトン

ゼロ「ああ、来週あたり、ナリタ連山は行楽日和になるそうだ」

扇「ナリタ連山って……確か、日本解放戦線の……?」

ゼロ「そうだ、本拠地のある場所だな」

玉城「ゼロよォ、ハイキングも悪かねェけどよォ、もう雪積もってんだろ……」
   「行楽って、冗談じゃねェぞ……」

ゼロ「本当にハイキングに行くわけがないだろう?」
   「我々は、黒の騎士団だぞ?」

.
南「何が目的なんだ?」

ゼロ「軍事演習だ」


(勿論違う、目的は、ブリタニア軍に奇襲をかけコーネリアを捕縛することにある)
(しかし、それを言えば今のこいつらは尻込みをするだろう……)

(最初に起こした"奇跡"であるスザク救出作戦、そしてホテルジャック……)
(それ以降、戦略上の必然とはいえ、基本的には作戦対象に御しやすい相手しか選んで)
(いなかった……世間での評価も上がりつつある現在、騎士団内に、看過できない"緩み"が)
(目立ち始めていた)

(先日も、経理を任せていた玉城が勝手な使い込みをしていたことがわかり、お役目御免に)
(したばかりだ……黒の騎士団はもはやお友達の集団ではなく、目的を持つ軍隊であることを、)(こいつらに今一度よく理解させる必要がある)

.
井上「演習?」

ゼロ「キョウトから送られてきた"無頼"と"紅蓮弐式"を用いた実弾演習を行う」
   「戦闘細胞に呼集をかけろ、全員、装備を整えてナリタへ向かう」
   「……カレン、」

カレン「はい?」


(俺は、"紅蓮弐式"の起動キーをカレンに投げて渡す)
(器用にキャッチしたカレンは、受け取ったそれが何なのかわかると目を輝かせた)


カレン「……ゼロ、これって……!」

ゼロ「"紅蓮弐式"は君のものだ」

.
カレン「……本当にいいの?」
    「ゼロが乗った方が……」

ゼロ「俺は指揮官、そして君がエースパイロットだ」
   「キーを預けた以上、完璧に乗りこなしてくれることを期待する」
   「付属のマニュアルの内容を現地までに頭に叩き込んでおけ」

カレン「……はいっ!」キラキラッ

玉城「なんだよ、カレンが最新機かよォ……」
   「訓練とかなら、行楽の方がマシじゃねェか……めんどくせえ……」ブツブツ

ゼロ「……玉城は、ナイトメアはいらないようだな?」
   「先日の件で反省してもらう必要もある、バズーガ砲を抱えて突撃する役割を担うか?」

.
玉城「ゼロおめェ!だァからアレは、団員を慰労する目的での利用であってだなァ……!」

カレン「へえー、慰労ねぇ……」
    「わたし、知ってんだからね、どんなとこ行ってんのか!」

玉城「えっ……そうなの?」

ゼロ「ほう……どこへ行ってるんだ?」

カレン「えっ!?いやっ、その……///」

玉城「聞くか、それ……!?」

.
(……コーネリアによるナリタ侵攻について、藤堂たちには知らせないことにした)
(キョウトが、最新鋭のナイトメアフレームである"紅蓮弐式"をこちらへ回した意味を考えれば)
(結果は明白、日本解放戦線は見捨てられた、ということだからだ)

(だが、そのまま捨てるくらいなら俺が貰い受けよう)
(藤堂たちが騎士団の戦力になれば、取り得る戦術に更なる幅ができる)
(まさかキョウトも嫌とは言えまい、自分たちが見捨てた者なのだからな……)

.
(冬のナリタ連山……)
(雪に覆われた山腹での戦闘は、俺もそうだがおそらくコーネリアにとっても未経験だろう)
(春の雪解けを待たずして作戦を実行する理由は分かりかねるが、これはチャンスでもある)
(高低差のある戦場でのメソッドである高地の先取を行えば、勝機は見えてくる)

(そう……コーネリアを、このタイミングで捕縛する必要があるのだ)
(母上殺害の真相を問いただすこともさることながら、もう一つ重要な目的のためにも……)


ゼロ(輻射波動機構か……)
   (ならば、冬山らしく、ナリタ連山には雪崩を起こしてもらうとするか……)
   (とびきりに盛大な奴をな……ククク……フハハハハハハ……!)


   ────── 続く

今回ちょい短いですごめんなさい、くぅ疲ッ!

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