エレン「俺の家族と幼馴染」(91)
調査兵団に入団して数日がたった。
旧調査兵団本部の暗く冷たい地下室が俺の寝床。
今夜はなぜだか眠れない。
ついこの間までは、眠れない夜でも必ず誰かの寝息が聞こえていたこともあり、
一切他人の気配がない、静まり返ったこの部屋はひどく居心地が悪い。
もう何度目かわからないほどの寝返りをうつと、大切な二人の顔が頭に浮かんだ。
俺の大切な家族と親友。
ミカサとアルミンは、今ごろ寝てるだろうか。
消息不明の親父を抜かせば、唯一の家族であるミカサ・アッカーマン。
東洋人とかいうめずらしい人種の血を引いているらしい。
なかなか珍しい顔立ちをしているが、同期の男子達曰く、かなりの美人らしい。
そういった意識をしてミカサを見たことはなかったが、
思えばあいつは美人なのかもしれない。
俺は幼い頃にミカサを人さらい共から救った。
ミカサはそいつらに両親を殺されたため俺の家で引き取ることになり、
俺たちは家族になった。
俺が助けたか弱い小さな少女は、いつの間にか驚くほど強くなった。
歴代の訓練生の中でも類を見ない逸材として、過去最高の評価を受けたらしい。
もちろん今期の卒業生の中でもぶっちぎりで首席だった。
俺は過去に守った少女に守られている。
あいつにとって俺は守るべき存在なのかと思うと、自分が情けなくてたまらない。
だからと言って、どんなに努力をしたって俺はあいつには敵わない。
そんなことは、もうずいぶん前からわかってた。
だからせめてあいつに俺のことを認めて欲しかった。
お前に守られなくても、俺は生きていける。
そうわかってもらいたかった。
でも、俺は結局ミカサに守られてばかり。
俺はあいつに守ってもらわないと生きていけないのだろうか。
俺が調査兵団に入ったのは、あいつにとって確実によくないことだ。
俺が巨人に食われそうになったら、ミカサはきっと自分の命を捨てても俺を助けるだろう。
俺はそれが一番怖い。
ミカサの人生なんだ、
あいつの好きに生きればいい。
今まで悲しいことばかりだったから、
ミカサには世界で一番幸せになってほしい。
憲兵団に入って、安全な内地でゆっくり暮らしてほしい。
ミカサは美人らしいから、嫁の貰い手には困らないだろう。
だから、自分を大切にしてくれるいい男見つけて結婚とかしてほしい。
俺は、ミカサの唯一の家族として、誰よりもあいつの幸せを願ってる。
こんばんは
遅くなってすみません
待っていてくれた方、ありがとうございます
最近はメインがすらすら書けるので、
息抜きとして書いているこちらの方はあまり書くことが出来ません。
ですが、書き始めてしまったものなので、必ず完結はさせます。
かなり遅筆になるかと思いますが、それでもよろしければ、完結までお付き合いください
それでは、ぼちぼち投下していきますね
ミカサには力が、アルミンには知恵がある。
じゃあ、俺には何がある?
確かに俺は巨人になれる。
だけど巨人化の能力なんて、自分でもよくわかってないばかりか、ほとんどコントロールできない。
そんなものを『特別秀でたもの』とは思えなかった。
訓練兵の時は格闘術が得意で、最終的な成績はは2位まで登り詰めることができた。
でも、それは『ミカサに次いで』だったし、
アニの方が俺よりもよっぽど強い事くらい知ってる。
俺には才能がない。
常日頃からジャンに言われてきた言葉だ。
俺はそんなこと知ってたし、何も気にしてなかった。
才能が無くたって、努力すれば強くなれる。
だから死ぬ気で訓練して、必死に努力をした。
なんとか結果もついてきて、卒業するときの俺の順位は5位だった。
才能なんて関係ない、そう思ってた。
乙です こっちも書いてたんですね ネコは元気ですか?
お久しぶりです、1です
もう少し頑張ってみますとか言ったそばからこんなザマですみません
待っててくれた方がいるなら、本当に申し訳ない、そしてありがとう
>>38
向こうも読んでいただいてるみたいで、ありがとうございます
更新遅くて本当にごめんなさい
猫はおかげさまで元気になりました、ありがとう
それではぼちぼち投下します
よろしくお願いします
声が聞こえて目を覚ますと、真っ暗な空間に、
蝋燭の灯がゆらゆら揺れて兵長の顔をぼんやりと照らしていた。
エレン「お、おはようございます」
リヴァイ「ずいぶんぐっすり眠ってたな」
エレン「すみません!急いで準備します!」
まだ半分以上夢の世界に突っ込んだままの身体を、強引に現実へと引きもどすと、
兵長は俺の手枷の鍵をかちゃりと外した。
リヴァイ「こんな朝日も入ってこねぇ部屋じゃ、起きられないのも仕方ない」
リヴァイ「どうせ俺がコイツを外しに来るときに起こすんだから、別にいいだろ」
リヴァイ「俺が来る前に起きたって、どうせ何も出来ねぇしな」
エレン「はい、すみません。ありがとうございます」
兵長は部屋の蝋燭に灯を点けると、そのまま「早く準備しろ」と言って出て行った。
ひんやりと冷たく、真っ暗なこの地下室は、朝と夜の境界ががひどく曖昧だ。
窓のないこの部屋に朝日が入ってくるはずもなく、
俺にとっては、毎朝手枷を外しに来る兵長の持ってくる蝋燭の灯りが朝日の代わり。
訓練兵の時の習慣があるから、この時間に起きることが出来るけど、
昨日のように少しでも夜更かしをして、リズムを壊してしまえば絶対に起きられない。
重くてうっとおしかった手枷がとれた手首をギュッと握った。
?
エレン「あぁ、早く準備しねぇと」
?
俺は兵長が点けていってくれた灯りを頼りに着替えを始めた。
薄暗い中でベルトを付けるのは骨が折れる作業ではあるが、仕方ない。
階段を上ると、窓から射しこむ朝日に思わず目が細くなる。
エレン「おはようございます」
ぺトラ「おはよう、エレン。眠そうね、顔洗っておいで」
朝にふさわしい爽やかな笑顔で、
ぺトラさんはタオルを片手に、パタパタと調理場の方へ走って行った。
きっと朝食の当番なんだろう。
睡眠不足からか、頭がずっしりと重く、身体もなんとなくだるい気がする。
そして何よりも眠い。
早く顔を洗ってしゃきっとしないと、と大きなあくびをしながら井戸へ向かった。
パシャパシャと冷たい水で顔を洗うと、いくらか眠気はなくなって、
ぐっと背伸びをすると、身体のだるさもマシになった。
重い頭をぐるぐると回しながら、食堂の方へ向かう。
朝食までに、食堂を掃除しておこう。
頭をぐるぐる回しても、目が回るばかりでずっしり重いままだ。
気だるい気持ちを振り落とすように頭を振って、
気合いを入れるために両頬を叩いた。
ペトラ「あら、エレンくま出来てる」
朝食の準備が出来て、みんなで食べているときに
目の前に座っていたペトラさんが心配そうに聞いてきた。
ペトラ「眠れなかったの?」
エレン「あ、ええ。でも大丈夫ですよ」
くまが出来ているらしい目をゴシゴシ擦ると「擦っちゃダメだよ」と、ペトラさんに言われた。
なんだかミカサみたいだ。
ほんの少し会ってないだけなのに、こんなにも懐かしい感じがする。
ペトラ「今日は早く寝なきゃダメだよ」
ああ、いつかミカサも同じようなことを言っていた気がする。
ペトラさんのように笑ってはいなかったけど、
少し心配そうな、少し呆れたようなミカサの顔が目に浮かんだ。
エルド「体調管理も大事な仕事だからな」
エルド「でもまぁ、眠れないのは仕方ないか。今日は頑張って早く寝ろよ」
エレン「…が、頑張ります」
どう頑張ればすんなり眠れるのかわからないけど、とりあえず返事をした。
そんな俺の気持ちに気づいたのか、
エルドさんは少し笑って俺の肩をポンと叩いた。
訓練兵の時は、アルミンから眠れない夜用に、と難しい本を貸してもらっていた。
今思えばあれの効果は絶大だった。
何回か開いて数ページほど読んだけど、何が書いてあるか理解する前に眠っていた。
アルミンに言わせれば難しいけど、興味深いらしい。
俺にとってはただの睡眠導入剤のようなものだった。
でも、ひたすら真っ暗なあの地下室ではあれを読むこともできないし、
そもそも手元にないから、まずアルミンに借りに行かなければいけない。
グンタ「ま、この間まで大人数の部屋で寝てたのに、急に真っ暗な地下室に1人じゃ寂しくもなるよな」
エレン「俺、別に寂しいわけじゃないですって」
一人前とは言えないかもしれないが、もう訓練兵を卒業したんだから、
寂しいから眠れませんでした、なんて恥ずかしすぎる。
エルド「アハハ、恥ずかしがんなって」
ペトラ「そうそう、私もそういうときあるからさ!」
グンタ「幼馴染の2人とも離れちゃったしな、仕方ないって」
オルオ「まだまだガキだからな」
エレン「俺はガキじゃないですよ!」
リヴァイ「15じゃまだまだガキだろうが」
兵長がそう呟きながら独特なカップの持ち方でお茶をすすると、
楽しそうに笑って痛い先輩方は一層笑い声を大きくした。
恥ずかしかったけど、楽しい朝食の時間だった。
古城での孤独な生活も、この人達のお陰であまり苦とは感じない。
優しくて明るい先輩たちだ。
エレン「つ、疲れた……」
今日の訓練が終わった。
睡眠不足のせいか、いつもの訓練がものすごくキツく感じた。
掃除洗濯、そして人類最強と一緒に訓練。
間近で見るリヴァイ兵長はやっぱり凄くて、人類最強たる所以がよくわかる。
俺もあんな風に飛べる日が来るだろうか。
兵長の強さが才能なのか、新兵で付き合いの浅い俺にはわからない。
有名なゴロツキだったらしいから、
きっと地下街でゴロついてたころから強かったんだろう。
団長にスカウトされたらしいし。
やっぱり努力だけじゃ、兵長のようにはなれないんだろう。
俺はミカサだって越えられないんだ。
少し曇った気持ちを吐き出すように、大きく息を吐いた。
気のせいかも知れんが
アンタもう一個のスレ放置してないかね乙
こんばんは
レスくれた方、ありがとうございます
お待たせしてごめんなさい
>>56
してますね、ごめんなさい
なかなか時間が取れなくて、少しずつしか書きためられないんです
もうちょっとで書きため終わるから、そしたら更新します
それではぼちぼち投下します
少ないですが、よろしくお願いします
ペトラ「エレンの幼馴染ってどんな子なの?」
入浴後に全員で用意した夕食を、だだっ広い古城の食堂で囲む。
ここでの食事は、食べ盛りの俺からすると 正直足りないが、
慢性的な資金不足の調査兵団で、食べられるだけありがたい。
エレン「めちゃくちゃ強いやつと、めちゃくちゃ頭がいいやつです」
エルド「雑だな」
エレン「けっこう的を射った答えだと思いますよ」
エルド「だとしても、雑だな」
エルドさんはパンをちぎりながら、ハハハと笑った。
ペトラ「めちゃくちゃ強いって……」
ペトラ「あ、もしかして歴代でも類を見ない程の逸材と噂の104期の首席の女の子?」
エレン「そうです、そいつです」
ほぁー、と謎の言葉を発しながら、ペトラさんはスープをくるくるかき混ぜた。
ミカサの噂は調査兵団にまで届いていたようだ。
優秀な訓練兵に目をつけておくのも、当たり前のことなのだろうか。
リヴァイ「ああ、あいつか?黒髪のデカイ女だろ?」
グンタ「兵長、会ったことあるんですか?」
リヴァイ「まあ、遠目からな」
ペトラ「どんな子でしたか?」
リヴァイ「すげえ睨まれたな。おいエレン、あいつはいつもあんな顔なのか?」
エレン「ま、まさか!いつもは大人しそうな顔してますよ」
きっと、審議所での事だ。
俺が兵長にボコボコにされている間、ミカサは兵長にガンを飛ばしまくったんだろう。
先輩方は、口々に「度胸あるな」とか言っている。
俺もそう思う。
ごめんなさい、今日はここまでで
明日はもっと更新します
それではおやすみなさい
こんばんは
レスくれた方、ありがとうございます
それではぼちぼち投下していきます
本日もよろしくお願いします
ペトラ「もう1人の子は?もしかして両方女の子?」
エレン「いえ、男ですよ。遠目から見ると女に見えないこともないかもしれないけど」
ペトラ「そんなの誰だって遠くから見ればそうよ」
ペトラさんは短く息を吐き出して、少し口角をあげた。
確かに遠くから薄目で見れば、兵長だってミカサに見間違えるかもしれない。
ペトラさんもアルミンに見えないこともないかもしれない。
エルド「めちゃくちゃ頭がいいって言ったら、座学がトップだったとかか?」
エレン「そうですね、いつもトップでしたね。でも、それだけじゃなくて、あいつは異常に頭がキレるというか…」
エレン「この前、俺が駐屯兵団に殺されそうになったときも、あいつが説得してくれたんですよ」
グンタ「そんなやつがいたのか、すごいな」
リヴァイ「金髪の、チビか?」
エレン「はは、そうです」
たぶんアルミンの身長は、兵長よりもほんの少し高いと思うが、これは言わないでおこう。
ペトラ「兵長はその子とも会ったことがあるんですか?」
リヴァイ「遠目から見ただけだがな。中身の詰まってそうな頭してた」
今日の兵長は、いつもよりもよく喋る。
そのせいなのかはわからないが、今日はいつになく盛り上がった。
喋るのや聞くのに夢中になって、食べ終わるころには、すっかりスープは冷めていた。
先輩方の訓練兵時代の話も聞かせてもらえた。
オルオさんの武勇伝だとか。
オルオさんが自慢気に話始めると、すぐにペトラさんが話を止めたから、
数あるオルオさんの武勇伝は、すべてはじめの方しか聞けていない。
それでも本当に面白かった。
こんなに楽しい夕食は、いつぶりだろう。
楽しかった夕食も終わり、使った皿を綺麗に洗って片付ける。
それが終わればお茶を入れて、ミーティングが始まる。
何をするかと言うと、明日の予定の確認とか、壁外調査のことだとか、まあいろいろだ。
ペトラさんが入れた紅茶を、俺が運ぶ。
やっぱり唯一の女性だからなのか、ペトラさんが入れたのが一番うまい、らしい。
全員のお茶を運び終わり、席についたところで兵長が口を開く。
リヴァイ「まず明日だが、まぁいつも通りだ」
そこまで言って、手のひらに熱い湯気を受けながら、まだ熱い紅茶に口をつけた。
リヴァイ「それと明後日だが、次の壁外調査のメンバーで陣形の確認をする。朝早くに出発するから、明日は早く寝ろ。以上だ」
次の壁外調査のメンバーってことは、ミカサとアルミンも来るんだろうか。
久しぶりに顔が見たい、会って話をしたい。
でも、許可をもらえないと俺はどこへも動けないから、
会っても話をする許可をもらえないかもしれない。
それから少し真面目な話をして、解散となった。
ペトラ「エレン、ちょっとカップ持ってこっちおいで」
ミーティングが終わればもう何もないので、
適当な時間に各自でカップを洗い、適当な時間に眠る。
俺はいつもミーティングの後は、いつも空き部屋で筋トレをしている。
少しでも早く先輩たちに追い付きたいし、足を引っ張らないため。
ペトラさんからこうやって呼ばれたのは初めてのことだ。
俺はペトラさんに呼ばれて調理場へ入ると、暖かいミルクの匂いに驚いた。
ペトラ「もういいかな。エレン、カップ貸して」
言われるがままに自分のカップを手渡すと、
小さなミルクパンに入った温かいミルクをそれに注いで、
スプーン1杯分の蜂蜜をミルクに溶かした。
ペトラ「はい、どうぞ。見てわかると思うけどホットミルクよ」
エレン「でも、牛乳も蜂蜜も高いのに、申し訳ないです……」
ペトラ「そんなの気にしないで、それにもう作っちゃったからもったいないよ」
ペトラ「兵長が許可してくれたの、大丈夫よ」
ペトラさんの優しい笑みに負けて、俺は温かいミルクを一口飲んだ。
なんだかひどく懐かしい味がして、涙が出そうになる。
ペトラ「私もね、たまにあるんだよ。寂しくて眠れない夜。エレンより少しお姉さんだけど、それでもまだまだガキなのね」
ミルクパンに残っていた牛乳でミルクティーを作りながら、ペトラさんは恥ずかしそうに笑った。
温かいミルクの匂いと、やさしい蜂蜜の甘さに背中を押されて、俺は口を開いた。
エレン「俺には、才能がないんです」
すいません、今日はここまでで
もっと書くはずだったんだけど、全く書けなかった
また明日来ますね
それではおやすみなさい
風邪に気をつけて、よい夢を
こんばんは
遅くなってすみません、ちょっと体調崩してました。
みなさんも気をつけて
レスくれた方、ありがとうございます
予想外の多さに正直ビックリ
ほんとに見てくれてありがとう
スローペースですが、どうぞ最後までお付き合いください
それでは、少しですが投下します
本日もよろしくお願いします
エレン「あいつらは2人とも、才能溢れる凄い奴らなのに。俺だけ何もない」
エレン「ずっと一緒だったのに、急に遠くに行ってしまったような気がするんです」
ぽつりと言葉を落として、またホットミルクに口をつけた。
いつか母さんが作ってくれたものとよく似た味が身体に馴染んで、
ずっと隠してた自分の弱い部分がほんの少しずつ顔を出す。
ペトラ「壁の中の人たちがみんなそれぞれ何かの才能をもっているのかはわからないけど」
ペトラ「きっとそれを花開かせることが出来るのはほんの一握りよ」
ペトラ「私も、自分に何かの才能があるのかわからないよ。たぶんみんなそう」
エレン「でも、ペトラさんは精鋭班であるリヴァイ班に抜擢されたじゃないですか」
ペトラ「私がここにいるのは、ただ必死こいて頑張ってきたからよ。死にたくないからね」
ペトラ「ただの努力よ、誰にだって出来るわ」
ペトラさんはそう言って目線を下げて、ミルクティーを一口飲んだ。
それにつられて、俺もホットミルクに口をつける。
ペトラ「優れた才能があるって言われている人たちは、きっとそれに見合うだけの対価を支払っているのかもね」
エレン「対価、ですか。じゃあ、あいつらもきっと……」
その才能に見合うだけの対価。
ミカサの強さも、アルミンの頭脳も、誰にでもできる努力なんかじゃ身に付かない。
二人は俺には検討もつかない何かしらの対価を支払って、その才能を開かせたのか。
俺がいくら背伸びをして両腕を千切れるほどに伸ばしても、決して届かない。
ハハハ、と乾いた笑いが口から漏れた。
暖かなろうそくの光が、ゆらゆらと白い水面に揺れる。
エレン「もう、あいつらとは並んで歩けないんですかね」
俺が化け物だから。
言いかけたその言葉は、すんでの所で飲み込んだ。
ペトラ「きっと大丈夫だよ。今は一歩遅れてるかもしれないけど、そのうちきっとまた、ね」
エレン「そのうちって、いつですか?」
ペトラ「さあね、知りたいなら壁外調査で死なないこと!」
いたずらっぽく笑うペトラさんのお陰で、陰っていた気持ちがいくらか晴れた。
少し冷めてしまったホットミルクを一気に飲んで、「言われなくても死にません」と笑ってみた。
ペトラ「私はあなたより少し年上ってだけのガキだから、こんなこと言えるような立場じゃないのかもしれないけど」
ペトラ「エレンには、絶対に何か大きな力があると思うわ。巨人になれるとか、そういうのじゃなくてね」
ペトラ「あなたがなんと言おうと、私はそう思う」
そう言って最後にニコリと笑うと、ペトラさんは残っていたミルクティーを飲み干した。
リヴァイ「おいエレン、お前はもう寝ろ」
いつから居たのか分からないが、兵長は調理場の入口に立って俺に声をかけた。
俺は少し驚いて、調理場の隅に置かれた小さな丸椅子から勢いよく立ちあがったから、椅子も後ろに傾いた。
ぺトラさんにお礼を言うと、にっこり笑って「いいのよ」と言ってくれた。
カップも洗っておいてくれるそうだ。
先輩にやらせるのは気が引けたが、兵長が急かすのでお願いした。
ぺトラ「おやすみ、エレン。きっと今日はよく眠れるはずよ」
エレン「ありがとうございます。おやすみなさい」
今日はここまでで
なかなか進みませんね、すみません
ペトラの勝手なイメージは優しいお姉さんです
それではもう寝ます
早いものでもう12月です
寒さにも磨きがかかってきたころでしょうか
みなさんも風邪をひかないように、暖かくしてください
おやすみなさい、よい夢を
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません