桐乃「もうすぐバレンタインかぁ…」(198)

桐乃「どうせ兄貴はチョコなんて貰えないだろうし…ふふん、ちょっと可哀相だから作ってやろっかな」




みたいなのお願いします

桐乃「あんた、どうせ今年も地味子からしか貰えないんでしょ?」

京介「うっせー、ほっとけや。あー、あやせから貰えたらなぁ…」

桐乃「うわっ、キモっ。中学生からチョコ欲しがるとかマジキモい」



誰か続きよろしく

京介「おっ」

あやせ「あ、お兄さんじゃないですか。こんにちは」

京介「こんちわ。なんだ、今日は普通に挨拶してくれんだな」

あやせ「・・・やっぱりさっきの取り消します。さようなら死んでください」

京介「お、おいおい、待てよ悪かったって」

あやせ「分かれば良いんですけど、でも呼び止められはしましたが、何か用ですか?
     私にはお兄さんと話す事なんて何1つないんですけど?」

京介「相変わらずだな・・・いやほら、もうすぐバレンタインじゃん?」

あやせ「死んでください、変態。何タカろうとしてるんですか?脳みそ腐ってますね」

京介「そこまで言うか!?」

あやせ「お兄さんには麻奈実お姉さんがいるじゃないですか。十分でしょう?」

京介「いやほら、やっぱ我が愛しのあやせたんからも貰えたら幸せだなぁと」

あやせ「ホンっっトにキモいですね。戯言ぬかしてないでそこの電柱に頭ぶつけて死んでください」

京介「あ、お、おい!あやせ!・・・あーあ・・・行っちまった。怒らせちまったかね・・・」

---

あやせ「・・・割れチョコ・・・買ってこうかな・・・」

書いてよー

えっ

京介「結局あやせたんからはもらえないんだろうな~・・・」

京介「いや、落ち着け俺。まだ周りにはたくさんの美少女がいるじゃないか!」

京介「え~っと、まずは・・・」


後は任せた

干す

早く書けよ

ほっ!

オラ、早く書けよ

―13日―

桐乃「さて、と…材料は買ったしあと作るだけ…か」

桐乃「…アイツ帰って来る前にちゃっちゃと作らないと…」

桐乃「んと、まずは湯煎して…と」カチャッ

桐乃「~♪」

ガチャッ

「ただいまー、っと」

桐乃「ひゃうっ!?」ビクゥッ

ガチャ

京介「ん、なんだお前帰ってたのな」

桐乃「なっ…なんで帰ってくんの!?」

京介「はぁ!?自分家に帰って何が悪いんだよ!…つーか何してんだお前?」

桐乃「し、知るかっ!馬鹿っ!」

京介「何怒ってんだよ…この甘い匂い…チョコ…?まさか…お前っ…!」

桐乃「っ!!ち、違っ…」

京介「か、彼氏…とか…?」

桐乃「…は?」イラッ

京介「そうか…まぁ、頑張れよ…?」

桐乃「ちっがう!!っていうかあたし彼氏なんかいないし!!何変な勘違いしてんの?キモいんですけど!」

京介「じゃあ誰に作ってんだよ!?」

桐乃「と、友チョコだからっ!」

京介「はい?」

桐乃「だーかーらー、友達同士で交換すんの!」

京介「あ、あやせ…とか…?」

桐乃「そうだっつってんでしょっ!いいから出てけ!気が散るから!!」

京介「す、すまん…だがそんなに怒鳴ること…」

桐乃「早く出てけっ!!馬鹿っ!!死ねっ!!」

京介「はぁ…はいはい」パタン

桐乃「はーっ…はーっ……馬鹿兄貴…」ボソッ

京介「…いやしかし…そういえばバレンタインか…」

京介「…まぁ、今年も麻奈美からは貰えるかな…」

京介「…麻奈美のおかげで毎年チョコが貰えないということは無いが…」

京介「もっと…こう…ギャルゲ的なイベントがあってもいいのではなかろうか…」

京介「はぁ…」

――――――――――
桐乃「出来たっ!」

桐乃「これがあやせので…こっちが加奈子の…と」

桐乃「で、これが…」カァッ

桐乃「あ、余りだから!!」

―朝―

京介「ふぁ…」ムクリ

京介「…」

京介「はぁ…1年で1、2を争う鬱な日が来てしまった…」

京介「…仕方ない…まぁ別に期待は最初からしてないが…」

京介「…だりぃ」

京介「飯食わんとな…ん」

桐乃「げ」

京介「…朝っぱらから失礼だな、おい」

桐乃「…」

京介「?」

桐乃「あ、あのさ…」

京介「ん?」

桐乃「~~~っ!」カァッ

京介「…何だよ」

桐乃「な、なんでもない!馬鹿っ!早くどっか行けっ!!」

京介「はぁ?お前なぁ…」

桐乃「うっさい!!」プイッ

京介「…意味がわからん…」

京介「…桐乃のヤツなんだってんだ…まぁ、いつも通りか…」

京介「おし…いってきまーす、っと」

ガチャッ

京介「…ん?」

あやせ「あっ…」

京介「あやせか、どうした?桐乃ならまだ中に…呼んで来るか?」

あやせ「ま、待って!」

リビングルームに入ったら桐乃がそう呟くのが聞こえた。
俺は無意識的にその言葉に反応していた。

京介「バレンタイン?」

桐乃「…んっ!?なにあんたいきなりバレンタインとかいっちゃってんの?
いつもチョコレート貰えないから妹に催促しに来たわけ?そんなに必死なんだぁ。」

京介「いや、お前が今『もうすぐバレンタインかぁ…』って呟いたから思わず聞き返しただけだよ。
それにな、家族にチョコレートを催促するほど、俺も飢えてねーよ。
毎年1個は確実にゲットしてるしな。」

桐乃の口からバレンタインという言葉が漏れていたという俺の指摘を無視して、
桐乃はこう返事をしてきた。

桐乃「それって地味子から貰うことを言ってる?
幼なじみから貰うチョコを楽しみにしてるなんて、あーやだやだ。」

桐乃に痛い所を指摘されたので、俺は開き直って言ってやった。

京介「ああ、俺には幼馴染みくらいしかチョコくれねーよ。
でも、それが楽しみなんだ。なんだか知らねーけど落ち着くって言うかさ。」

桐乃「キモっ…」

桐乃はそう言うなりリビングから出ていってしまった。
俺の発言のどこが気に入らなかったのかは知らないが、
そのどこがお気に召さないかわからないのはいつものことだ。

まぁ、俺も男だし、麻奈美がくれる義理チョコじゃなくて出来れば本命チョコとか貰ってみてーよ。
誰か俺に本命チョコくれねーかな。
あやせたんとか、あやせたんとか、あやせたんとか。

次の日の学校からの帰り道を、俺は麻奈美と一緒に歩いていた。
俺は桐乃と喧嘩したことを、この幼馴染みに喋った。

麻奈美「そしたら京ちゃん、私からチョコ貰うこと喜んでくれてたんだ…
いつもチョコ渡しても反応がこれといってなかったから、もしかして私からチョコ貰うの嫌なのかなと思ってたけど、
嬉しかったんだね。」

京介「嬉しくないわけ無いだろ?
麻奈美、改めていうけど、俺に毎年チョコくれてありがとう。」

麻奈美「うっ、うん。あたし、今年は頑張っちゃおうかな。
京ちゃん、期待しててね。」

京介「おうっ。」

そんな会話をしているうちに俺の家にの前まで来たので、麻奈美とは別れた。

それは寒い風が吹き荒れる、ある冬の日のことだった。

「はい、お兄さんっ」
「…………え?」

オ、オイオイ……俺の目ん玉はどうかしちまったんだろうか。
俺の見間違えじゃなきゃ、マイスイートエンジェルたるあやせたんが俺にチョコレートを渡そうとしてくれているんだが。

「……どうしたんですか? 鳩が豆鉄砲喰らったような顔って、こういう表情のことを言うんですか?」

えっと、その控え目な笑顔とか眩しすぎて見てらんねぇ。
ハッ、そうか! これは夢だな!?

「あやせにチョコレートもらいたいばかりに、こんな夢を見てしまうなんて……俺も末期だな」

しかし、ちょっと待て。
よくよく考えると、夢の中とはいえこのようなおいしいシチュエーションをみすみす見逃してもいいものなのだろうか。

「あのー、お兄さん? 夢を見てるとか仰ってますけど……大丈夫ですか?」
「え? あぁ、悪い悪い。俺があやせからチョコ貰えるなんて夢以外の何物でもないからな」

俺がそう言うと、途端あやせの顔から能面のように表情が抜け落ちた……って、えっ?
なんだかこの震える感じ、凄い身に覚えがあるうえに夢とは思えないくらいリアルなんだが……!

「へぇ~、薄々感づいてはいましたけど、お兄さんって鈍感ですよね?」
「ど、どういう意味だ……?」

「私は、こう見えてもお兄さんに感謝していたんですよ?」

こ、怖い……!
あやせさんマジぱねぇっす!!

「わ、悪かった! 別にふざけてたわけじゃねぇんだよ! 本当にあやせからチョコを貰えることが意外でだな!」
「……はぁ、分かっていますよ、冗談だってことくらい」
「あ、ははははは……」

割と冗談じゃなかったりしたんだが、絶対に言えねぇ。

「とりあえずお兄さん、これ、受け取ってもらえますよね?」
「お、おう」

女の子って、どうしてこう表情がコロコロと変わるんだろうな。
さっきまで無表情すぎて怖かったくらいの顔には、誰もが見惚れるような魅力的な笑顔が浮かんでいて。
不覚にも俺は、数瞬あやせに釘付けになってしまった。

「かわいい……」
「えっ!?」

おっと、思わず素直な感想が口から漏れてしまったぜ。
まぁ、こんなこと言っちまったら恥ずかしくなっちまうもんなんだろうが……今の俺はそれどころじゃなかった。
目の前であやせが、あのあやせがだぜ?
顔を真っ赤に染めながら、口をパクパクしていた。

「なっ、何を急に言っちゃってるんですかっ、お兄さんはっ!?」
「えっ、あ、いや……思わずポロっと」
「まったくもう! お兄さんはそういうことを誰にでも言うんですね!?」
「なぁっ!? そ、それは流石に誤解だ! 誰にでも言うわけないだろ!?」

俺が咄嗟に誤解を解こうとして叫んだ言葉を聞いたあやせは、突然俯いてモジモジしている。
ここで、「トイレか?」なんてアホなことを言うほど落ちぶれちゃいないつもりではいるが……正直、次に何を言われるのかさっぱり分からん。
お互いが無言のままその場に立ち尽くしていたんだが、暫くして「じゃあ……」というあやせの声が聞こえた。
会話がないってのは空気悪いし、ここは素直にあやせの話を促すべきだよな、うん。

「な、なんだ?」
「じゃあ……本当に、私のことをかわいいと思ってくれたんですか……?」

なんだろう、この雰囲気は。
妙に甘ったるくて、フワフワして、全然落ち着かねぇ。

「そ、そりゃあ、思わず言っちまうくらいなんだから……そんだけかわいかったってことだろ」
「っ……」

な、なんだ? あやせの態度がさっきからおかしいな?
普段ならこういう時、嫌味だったり罵声だったりが飛んでくるようなところだと思ったんだが。

「あ、あやせ? どうかしたのか?」

あやせに頭が上がらない俺からすれば、現時点でもうアウトだ。
ヘタレ野郎と罵られようが構いやしねぇ、脳が本能的なところで危険だと訴えてきやがる。
俺はこのあと来るであろう惨劇の被害を最小限に抑えるべく、低姿勢でお伺いを立てる。

「……お、兄さん。ちょっと目を瞑ってもらえますか?」

ひぃーっ!?
な、何されるんだ俺は!?

「わ、分かった……」

ヤバいヤバいと思っていても、拒否するという選択肢がない時点でヒエラルキーが底辺決定な俺。
ぐっ……こ、こうなったらどんな直接攻撃or精神攻撃が来たとしても根性で乗り切って―――

『チュッ……』

「あ……? え……?」

な、なんだ今の感触は……?
この唇に触れた柔らかなものは一体……?

「お兄さん、これちゃんと渡しましたからね!? そ、それじゃあさよならっ!!」
「え、あっ、ちょ、オイ!? あやせ!?」

俺がフリーズ状態から立ち直った頃には、あやせの背中は結構遠くに行ってしまっていた。
あやせの走っている時に、ふわりと浮かんだ髪の毛から覗いた首筋は真っ赤になっていて―――

「~~~っっっ!?」

唐突に、それはもう本当に一瞬のうちに、俺はあやせにキスをされたことを悟った。
なんなんだろうね、このモヤモヤする感じは。

とにかく、俺の18回目のバレンタインデーはこうしたサプライズで幕を閉じることになった。
家に帰宅した際に、桐乃から「何ニヤけてんの、キモっ」という言葉をいただいてしまったことも、些細なことだっつーくらい、それはそれは素晴らしい一日だったね。

書き溜めないとキツイ
ってか、誰か書いてちょ

俺はロムに戻る

2月13日電話にて

黒猫「あなたの周りに誰か人の気配はある?」
京介「い、いや……誰もいないが」
黒猫「そう……なら、れっ例の作戦のに日時が決まったわ//」
京介「は??例の作戦??」
黒猫「ほ、ほら前にいったじゃないかしsづいsdfvj///」
京介「最後のほう何言ってるかわからないんだが?」
黒猫「と、とにかかく、明日、学校が終わったらいつもの喫茶店にきてちょうだい!!」
京介「あ、ああわかった。それじゃ用件はそれだけだな」
黒猫「そ、そうね」
京介「じゃあまた明日、おやすみ」
黒猫「お、お休みなさい……兄さん)ボソ」
ガチャ

京介「あいつ最後なんて言っていたんだ?明日聞けばいいか」
黒猫(あー、すごく緊張したわ……でも、明日は多分もっと……
こ、これだけ練習したんだから、きっと想いは伝わる、いえ伝えるんだわ……たとえ、それでも
私の望も結末にならなくても――)


桐乃「あんた、今だれと話してたの?」
京介「別に誰でも構わないだろ」
桐乃「はーー?何その態度、せっかく私が話しかけてやってんのに超むかつくんですけど!?」
京介「はいはい、悪かったな。友達だよ・・・・・」
桐乃「あっそ!!」
京介「聞いといてそれかよ、じゃあ俺は寝るかr――」
桐乃「ねぇ、明日何の日か……い、いいや、やっぱ何でもない!」
京介「???じゃ、じゃあおやすみ」
桐乃「……うん、お休み」

京介(黒猫といいこいつといいいったいなんなんだ?)
桐乃(……ばか、こんな日に誰と話してたか気になるでしょ、普通)

京介「深夜の2時に目が覚めるなんて、お茶でものむか」

1階
京介「あれ??電気がついてる。今日は親父がいないから、桐乃のやつアニメでもみているんだろうか?」

桐乃「納得いくまで作ってたらこんな時間になっちゃった……あ、明日も早いし片づけて寝――って足音が聞こえる!!」
京介「桐乃、お前何や――」
桐乃「な、な何しに来てんのよ、アンター!?」
京介「あー、目が覚めちまったからお茶でも飲み――」
桐乃「こ、こないで、この変態バカ兄貴!!!」
京介「ってなんでだよ!?」
桐乃「い、いいからこないで!!!」
京介「ちっ、わかったよ、明日寝坊しても絶対に起こさないからな!!」

桐乃「……馬鹿」
桐乃(どうしていつもこうなんだろ……)グスン

2月14日
学校
京介「なんだ、今日はやけにざわついているんだな」
男子「今日はバレンタインだろ」
京介「へっ、どいつもこいつも、企業の売り上げ伸ばしたいからってのがみえみえなんだよ!」
男子「僻みにしか聞こえないぜ」
京介「勝手に言ってろ!」
京介(まぁ俺は毎度のこと麻奈美とおふくろから貰えるだろうからお前らと違ってゼロではないし……)

京介(終業のチャイムが鳴った、結局俺は誰からもチョコレートを貰うことはなかった。
さて、これからどうするかな?)


どうしようか?

せめて赤城にしようぜ

京介(コンビニで立ち読みをしていたら、俺は昨日電話で黒猫との約束を思い出したので、
急いで約束していた場所に行くことにした。)

京介「悪い遅れちまって」
黒猫「べ、別にいいわよ!!私もそんなに待ったわけじゃないから」
京介(机の伝票から紅茶が3杯もオーダーされているのがわかった。こいつ絶対かなり待ってたな)
黒猫「こ、ここではあれだし、公園に場所を変えてもよろしいかしら?」
京介「ああ、わかった」
京介(約束に遅れたのは俺だから会計は俺が済まし、人気のない公園に行った)

>>120
新キャラ?
攻略対象に入れるべき?

赤城ってBL妹の兄かよ!!

赤城「京介、お前家族以外からチョコもらったか?」
京介「いや、いつもどうりさ、お前はどうンなんだよ?」
赤城「お前と一緒だよ……」
京介「そっか!」
赤城「ってなんでそんなうれしそうなんだよ!?」
京介「……実は俺、これ、作ってきたんだ」
赤城「??え、俺に??」
京介「ほんとは昨日渡したかったんだが、お前に彼女とかいたらと思うと気が引けてな……」
赤城「ありがとう」
京介「う、受け取ってくれるのか?」
赤城「当たり前だろ、だって俺たちはもう・・・・・・」
京介「……赤城」

こうして俺たちの甘いヴァレンタインは1日遅れでやってきた。


このまま落とすのは勿体ない+スレタイを考えるのが面倒という理由で乗っとります。


バレンタインもの。一度に読むには長いです。

京介、後に桐乃視点。濃度は桐乃:黒猫=4:6。

地の文アリ。最後の最後にほんの少しだけ原作ネタバレあり。

設定は4~5巻までの間、原作との相違点矛盾点には目を瞑ってもらえると幸いです。


―――


2月14日。

俺のように健全な男子高校生にとって、絶対に見過ごすことのできない超がつくほど重要な日。

そう。

今日は世の恋する女の子が男の子にチョコだの何だのを渡すバレンタインデーである。

放課後に至るまで、視界の隅にチョコを渡す女子の姿やチョコを貰う男子の姿が映っていた。

堂々としたやり取りは大抵義理の類から多いから、俺としてはあまり気にしないんだが、

本命のチョコを渡す女子は少なからず恥じらいがあり、人目につかない場所に男子を呼び出して受け渡しをする。

・・なーんて、ことが水面下で行われていると思うと、俺を含む蚊帳の外の男どもから見れば、

それはそれで色んなところが煮えくり返りそうになるのである。


「おい高坂、これ見てくれよこれ~」

「見えてるからグイグイ押しつけんじゃねぇよ、気持ち悪い。

 っていうか、それを見せ付けられるのはこれで5回目だ」



意中の女子からプレゼントを貰った男子は、この赤城浩平のように大抵腑抜けになる(ここまで感情を表に出す奴も稀有だが)。

赤城が持っているのはバレンタインのプレゼントと思しき、赤のリボンやピンクの巻紙で綺麗に包装された長方形の箱。


「で、それを誰から貰ったんだ。おまえのふやけ具合を見りゃ何となく見当つくけどよ」

「よっくぞ聞いてくれましたっ!何を隠そう、愛しいマイシスターからのチョコレー・・」


Prrrr・・!


「ん、メールか」


シスコン野郎の終わりなきノロケ話に終止符を打ってくれた俺の携帯電話に感謝しつつ、

そのディスプレイを見ると、メールマークと共に人畜無害な俺の幼馴染みの名前が表示されていた。

赤城の話を聞き流しつつ、メールに目を通した俺は呪縛から解放されたように立ち上がる。


「おいコラ高坂、俺の話はまだっ、」

「分かったよ赤城、明日その味の感想も含めて聞いてやるから、そのバカになった口を明日まで閉じてろ」



ぶっきらぼうに捨て台詞を吐き、俺はそそくさと教室を出た。

これ以上付き合ってられるかっつーの、こちとら慈善事業じゃねぇんだ。

くそ、胃がムカムカする・・。


「ちっ・・」


バレンタインの儀式を執り行ってる男女がそこら中にわんさか居やがる。

俺は今日が平日であることを心の底から憎みながら、昇降口へと向かった。

当然のことだが、俺の下駄箱にチョコが入れてあるはずもなく・・。

俺は普段から「普通」を愛してやまない人間だから、女にアプローチをかけるなんてことはそれほどない。

そのツケがここで回ってくるんだよな、毎年のことなんだけどよ。


自分の心が荒んでいくのが分かるぜ・・。

こういう憂鬱な日はさっさと学校を出るに限るんだよ、ちくしょう。


―――


時刻は午後4時半。

くさくさした気持ちのまま、俺は行き慣れた田村家に上がり込んでいた。

別にバレンタインの恩恵を受けられなかった悔しさから麻奈実の懐へ逃げ込んだわけじゃないぞ。

麻奈実にメールで呼び出されたから仕方なく来たんだ。うん、きっとそうだ。


「ごめんね、きょうちゃん。急に呼び出しちゃって・・」

「いや、俺としても学校に長居したくなかったからな、丁度良かったよ」


理由は言いたくないけどな。


「そ、そっか~・・丁度良かったんだっ」


む・・やけに麻奈実の様子がよそよそしい。

トイレにでも行きたいのか?



「どうしたの、きょうちゃん?」

「・・いや、何でもねぇ」


出された煎餅を一枚頬張りながら、麻奈実の振る舞いを観察する。

う~ん、相変わらずおとなしい奴だ。

平々凡々をこよなく愛する俺だが、麻奈実には劣るぜ。


「そういえば、きょうちゃん。今日は何の日か覚えてるよね?」

「あぁ。糖分補給日だろ、イケメン限定のな」


綺麗さっぱり断ち切ったはずの赤城のドヤ顔が真っ先に頭に浮かぶ。

くそ、血縁関係のある女から貰ったチョコなんて数に入れて良いはずがねぇ。



「・・き、きょうちゃん。もしかして機嫌悪いの、かな?」

「あ、いやそういうわけじゃねぇんだ。そう見えちまってたのなら謝る」

「うぅん、大丈夫だよっ・・ところできょうちゃんは今日ちょこれーととか貰った?」

「ぐぅっ!?」


ま、麻奈実よ・・俺の気持ちを理解してくれた上でそんなことを聞くのか。

純粋な奴ほど、懐に携える言葉の鋭さは半端じゃないぜ。

まぁ、相手は麻奈実だし、ここで見栄を張って嘘をつく必要もないよな。


「・・おまえの予想通り、ゼロだよ。ゼロ」

「えっ、そんな予想なんてしてないよぉ」

「・・名高い可憐な美少女が実は俺のことを好きで、影ながらいつも俺のことを見つめてくれていて、

 いつもは周囲の目もあって話をする機会すら設けられないけれども、今日はバレンタインだからと腹を括って、

 俺にチョコをプレゼントしてくれたりなんかしちゃって~、とかそういう展開もなかったしな」


「そうなんだ・・あの、きょうちゃんはさ、」

「ん、何だ?」

「・・美少女からじゃないと、ぷれぜんとを貰っても嬉しくない?」


んぁ?

いきなり何を言い出すんだコイツは。

そりゃ確かにプレゼントを貰うなら可愛い女の子であるに越したことはないけどよ。

美少女からプレゼントを貰って喜ばない奴が居たのならそいつは男じゃないし、俺が全身全霊を込めてそいつを殴りに行く。

・・まぁ、でも俺は自分の身の程を弁えている男だ。


「・・いや、相手が誰であろうと、俺は嬉しいぞ」

「そ、そっか・・それなら、」


姿勢良く正座していた麻奈実が、ふと立ち上がる。

俺はようやく麻奈実がトイレに行くと決めたのだろうと思い、

二枚目の煎餅に手を伸ばそうとしていたところだった。


そのとき、俺の目の前に小奇麗に包装されたやけに細長い箱が差し出される。


「きょうちゃん、これ・・」

「何だこれ?」

「あのっ・・開けてみて」


何の疑いも持たずに俺はその箱の包装を剥ぎ取り、中のブツを確認しようとする。

伏し目がちな麻奈実が俺の手つきを恥ずかしそうに見つめていた。

心なしか、頬が少し赤らんでいるようにも見える。

その様子に対して疑問符を浮かべながら、いざ中身を見てみると、そこには綺麗な水色に染まった、


「ネクタイ、か?」

「うん・・」


ネクタイにこれといった説明なんて要らないだろう。

水色一色で、いくつもの白いラインが斜めに敷かれているとだけ言えば簡単に想像がつくはずだ。


普段制服の一部としてネクタイをつけてはいるが、これに関しては少し上品な香りがする。

一般庶民男子としては、いくらしたんだろうかと考えてしまうぜ。


「これどうしたんだ・・っていうか、もしかしてこれ、」

「きょうちゃんへの、ばれんたいんのぷれぜんと・・だよ」

「プレ、ゼント・・お、おう?」


参ったぜ、完全にやられた。粋なことしやがって麻奈実の奴・・!

俺がするには色合いが少し派手な気もするが、この際関係ねぇ。


「もしかして気に入らなかった、かな?」

「バカ野郎っ、そんなわけあるかっての・・嬉しいぜ、本気で」

「ほ、ほんとっ?・・わたしに気を遣わなくても良いんだよっ」

「気なんて遣ってねぇよっ・・!」


確かに麻奈実は恋愛対象に入るような、下心ある目で見れるような女じゃないが、これは正真正銘の贈り物だ。

学校に居たときにメラメラと燃え上がってた俺の嫉妬の炎も少しは鎮火してくれたよ。


「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ~」

「ん、そうか?」

「きょうちゃんには毎年ぷれぜんとしてるしね」

「・・あ」


諸君、俺は毎年誰からもプレゼントを貰っていないと言ったな。

あれは嘘だ。

一応、麻奈実からは毎年欠かさず贈り物をしてもらっている。

なぜ伏せていたかというと、幼馴染からのバレンタインプレゼントなど数に入らないと思っていたからだ!


「と、いうかこんなの学校で渡してくれれば良かったのによ」

「そ、それは・・ちょっと恥ずかしかったから」

「?」


ああ、なるほどね・・確かにバレンタインに麻奈実が俺にプレゼントなんて寄越したら、

周りの奴らに(特に赤城)勘違いされる可能性もあるしな。


「それにしてもどうしてネクタイなんだ?」

「ちょこれーととか甘いものはいつもうちで食べてるし、ばれんたいんはお菓子以外でも良いって聞いたから・・」

「だからネクタイを選んでくれたってわけか」

「うん、だからきょうちゃんが学校にいくとき付けてもらえれば・・って、あぁっ!」

「ん、どうした?」


にこやかな表情から一変、慌てふためき始めた麻奈実。

何だ、いまさら返せって言っても返さないぞ(><)


「いや・・学校に付けていけるネクタイって確か、学校指定のものじゃないといけないんだよね」

「あぁ、そういやそうだったな」


ウチの高校のネクタイの色は地味な青と紺の中間くらいのものと指定されている。

こんな明るい水色のネクタイをしていったら、速攻で没収されるのがオチだな。

「まぁ、確かに・・ちょっと無理かもしれねぇな」

「実用性のあるものをって思って贈ったのに、実用できないなんて・・抜けてるにも程があるよね」

「良いんだよ別に、数年後ネクタイを買う必要がなくなったって思えば」

「うぅ・・ごめんね」

「ばか、気にすんな」


ベタな言葉だが、こういうのは気持ちが大事っていうしな。

プレゼントされた側が文句を言う権利はないし、何より文句なんてこれっぽっちもない。

おまえの気持ちはプレゼント以上に伝わったよ、十分な。


「ありがとよ、大事にする。

 使う機会がない間も大切に保管させてもらうし、不安なら部屋の壁にでもぶら下げておこうか」

「い、良いよっ・・もうそれはきょうちゃんの物なんだから、どう扱おうがきょうちゃんの勝手だよ」


この年でネクタイをプレゼントされるなんて思ってなかったが、嬉しいことには変わりはない。

この世の男は異性にプレゼントを貰えば例外なく腑抜けになるのさ、もちろん、この俺もな。


「そうだ。ホワイトデーのお返し、何が良い?」

「え、えっと・・何でも良いよ、きょうちゃんがくれるものなら何でもっ」


う~ん、何でも良いってのが一番困るんだよな。

麻奈実は和菓子屋の娘だから、やはり食べ物系をあげても効果が薄い気がする。

まぁ、こいつの性格を考えるに何をあげても喜んでくれはするだろうが、

今回これだけのことをしてくれたんだ・・男なら恩も怨みも倍返し。

麻奈実が本当に心から喜んでくれるような贈り物をするのが、筋ってものだよな。


「そうか。まぁ楽しみにしといてくれ、あんまり期待はしないでくれよ」

「ふふっ、分かった・・きょうちゃん、もうちょっとゆっくりしていく?」

「いや、今日はちょっと早めに帰らないといけないんだよな・・」


言っていなかったと思うが、今日は木曜日だ。

お袋が習い事で家を開ける日であると同時に、我が妹とゲーム(不健全)をする日と決まっている。

もとい、決まってしまっている。


「そっか・・そういえば今日の夜は雪が降るって言ってたし、長居させちゃうのはまずいよね」

「ああ、俺としてはもうちょっとここに居たいんだが・・悪いな、プレゼントだけ貰いに来たみたいになっちまってよ」

「うぅん、大丈夫、気にしないで。来てくれただけでも十分だから」


ったく、本当に生き仏みたいな奴だよおまえは。

絶対死後は天国に行けるぞ。

などと、荒みつつあった俺の心が心優しい幼馴染のオーラに当てられていたそのとき、


Prrrr・・!


閑静な和室で携帯電話が空気を読まずにけたたましく鳴り響く。

麻奈実から贈られたネクタイを丁寧に箱にしまい、ポケットを弄って携帯を取り出した。


「な・・こりゃまた珍しい」


ディスプレイには『黒猫』と表示されている。

どういうわけかそれを見た瞬間、心臓が口から飛び出そうになった。


「きょうちゃん・・?」

「悪いな麻奈実、もう帰るわ」

「あ、うん。ほわいとでー・・楽しみにしてるから」

「おう、任せとけ。また明日学校でな」


麻奈実が聖母のような微笑みで俺を送り出す。

俺はそんな聖母マリアがくれたプレゼントを左手で鷲掴み、ポケットに入れ、

玄関へと向かうと急いで靴を履き、田村家から出た瞬間に通話ボタンを押す。

かれこれ五十秒くらいは着信音が鳴りっぱなしである、失敬。


「もしもし、俺だが」

『出るのが遅いわ。ところであなた、これからの予定は?』

「・・・」


挨拶もなしかよ。

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