竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」(739)

 
竜騎士「ち…ちょっと待ってください。何故ですか!」

上官「何故も何も、決まったことなのだ。明日には向かってもらうぞ」

竜騎士「なんで俺が…」


上官「…とにかく、お前は明日から田舎町の支部に転勤だ」


竜騎士「そ、そんなぁ~…」

 
That's where the story begins!
―――――――――――――――――
【竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活】
―――――――――――――――――
Don't miss it!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【7日後・田舎町】


ミーンミンミンミン…

竜騎士「…暑い」


ジージージー…

竜騎士「そして、セミうるせぇぇ!何で俺がこんな田舎に左遷されなくちゃならないんだよ!」

 
…トボトボ

竜騎士「自然が多いのは嫌いじゃないが…、はぁぁ…」


???「ため息ばかりついてると、幸せが逃げますよ?」

竜騎士「ん?」

女武道家「どーも初めまして、支部に勤めている女武道家と申します。竜騎士さんですよね?」


竜騎士「そうだが…」

女武道家「本部から話は聞いてます。支部まで案内しますので、どうぞこちらへ」

 
トコトコ…

竜騎士「…」


女武道家「…どうかしたんですか?」

竜騎士「いや、何でもないよ。君、いくつ?」

女武道家「女性に歳を聞くのは野暮ですね…。一応18ですがっ」


竜騎士「そうか。俺は今年で24だ。よろしくな」

女武道家「は、はいっ」


竜騎士「君はここに住んで長いのか?」

 
女武道家「私ですか?ここ出身なので、長いも何も、18年間ずっとですよ」

竜騎士「そうか。多少暑いが、いいところだな」


女武道家「…"こんな田舎"ですが、いいところはあると思いますよ」ニコッ


竜騎士「…聞いてたのね」

女武道家「あはは…」


竜騎士「支部ってのは、どんな奴が多いんだ?支部長は?」

 
女武道家「…えっ?」

竜騎士「えっ?」


女武道家「えっ…え?」

竜騎士「えっ?」


女武道家「ん?」

竜騎士「お?」

 
女武道家「あれ…、竜騎士さん…です、よね?」

竜騎士「そうだけど…」

女武道家「…新しい、支部長さんですよね?」


竜騎士「え…えっ?えっ!?」

女武道家「え…ち、違うんですか?本部からはそう連絡を聞いてましたが…」


竜騎士「ちょ…聞いてないんだけど」

 
女武道家「それと、支部は私1人ですよ?」

竜騎士「はぁ!?」

女武道家「…」ビクッ


竜騎士「ちょ、本当に!?」

女武道家「…はい」


竜騎士「…えぇぇ…、待って、女武道家さんの階級は?」

 
女武道家「呼び捨てでいいですよ。一応代理支部長だったりしたので、それも考慮されて軍曹です」ムフー

竜騎士「ぐ…軍曹…。18で軍曹さんか…」

女武道家「竜騎士さんは階級上がったんですよね?支部長ですし」


竜騎士「…少佐のまんまだよ。えぇ~…」


女武道家「本部のほうで、何か悪いことでもしたんですか…?」

竜騎士「…心当たり、ないんだけどなぁ」

 
女武道家「…でも、階級も貰えず、本部からここへ移動って…中々ないですよ」

竜騎士「せいぜい軍事演習で中隊長やって、偏屈な性格の中将率いる大隊を敗北させたくらいで…」


女武道家「…」

竜騎士「…」

女武道家「…」


竜騎士「そ、それだーーーっ!?」

田舎はいいぞ~不便だし夏は暑いし冬は寒いし
星がきれいだ空気がうまい近所付き合いは大切にな
どっか畑借りて野菜作るといいよ筋肉が無駄につくし

 
女武道家「あはは…」

竜騎士「どうせまだ若いからって、左遷させられたのか…ああ~っ、バカなことをしたなぁぁ」ガクッ

女武道家「謝れば、許してもらえたりするんじゃないですか?」

竜騎士「謝ってすむなら、こんな場所にいないよ…」


女武道家「あ~っ、また"こんな"っていう!」


竜騎士「あ、いや…ごめん!つい!」

女武道家「もー…」

 
竜騎士「…うん、ごめんよ」

女武道家「いいですよ、別に!でも、ちょっと嬉しかったりするんです」

竜騎士「"こんな"って言われて?」


女武道家「そっちじゃないです!ようやく、久々に一緒に働く人が出来たな~ってことです」


竜騎士「ああ、なるほど…って、久々?」

女武道家「はい。前は、先輩が2人ほどいたんですけど、今は中央都市に勤めに行きました」

 
竜騎士「昇進?」

女武道家「いえ、自分から志願すれば大体は都市部勤務になりますよ」

竜騎士「え、じゃあ俺ももう1度志願すれば戻れるのか、なんて」

女武道家「どうでしょう…左遷みたいなもんですし…」


竜騎士「そうだよなぁぁ…」ハァ


女武道家「…あ、見えてきました。あれが支部ですよ!」ビシッ

 
竜騎士「…」

女武道家「…」ニコニコ

竜騎士「ねえ、女武道家さん」

女武道家「はい?」


竜騎士「俺には、ただの一軒家にしか見えないんだけど」


女武道家「…かもしれません」

竜騎士「…」ハァ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…カチャカチャ

女武道家「今、お茶出しますね」


竜騎士「ものの見事に、ただの家だな。まともな軍事品が何もない」

女武道家「…変、ですかね?」

竜騎士「変すぎるだろ。変だと思わないのか?」


女武道家「軍に所属してから、ずっとここですので…全部こんなもんかなと…」


竜騎士「…都市部には志願しないのか?」

 
女武道家「私、この町が好きですから」

竜騎士「ふーん…」

女武道家「お茶、どうぞ」

カチャッ…スッ


竜騎士「ありがとう。それで、泊まる場所は?寮なんかはどこに?」グビッ


女武道家「ここです」

 
竜騎士「…ぶーっ!」

女武道家「きゃあっ!」

竜騎士「ここ!?ここ、支部だろ!?」


女武道家「そ、そうですよ?私もここですし…」

竜騎士「…具合悪い」

女武道家「だ、大丈夫ですか!?」

竜騎士「そういう意味じゃないから大丈夫…」

期待ですぞ

 
女武道家「そう…ですか」

竜騎士「じゃあ、ここに一緒に住むのか…?」

女武道家「そうなりますね?」

竜騎士「…き、君の実家はここから近いのかな?」


女武道家「もっと奥ですから、歩いて1時間くらいですかね!」

竜騎士「そ、そう…、家からは通わないのかな?」

女武道家「いえ、義務はしっかり果たします!」


竜騎士「ぎ、義務?」

 
女武道家「夜に住民に何かあったとき、誰もここにいないんじゃダメじゃないですか!」

竜騎士「軍は便利屋さんじゃないんだけどなー」ハハハ…

女武道家「ってなわけで、お互い頑張りましょうね!」


竜騎士(ただの家みたいなところに男女で住むだって…?どうなっちまうんだか…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【1時間後】

…ペラッ

竜騎士「…ふーん。一応、活動はしてたのか」

女武道家「さっき言った通り、便利屋みたいな活動ばっかりですけどね」


竜騎士「この、天然洞窟やらの探索ってのは?」

女武道家「私がここで働く前、森林探索や、天然洞窟の探索が行われたらしいです」

竜騎士「ふむ…、ま、大体わかった」

 
女武道家「ここでやっていけそうですか?」

竜騎士「いけるも何も、やらないといけない状況なんでね…」

女武道家「中央の人は、大変ですねぇ」


竜騎士「出世争い、妬み、裏切り、何でもあるぞー」

女武道家「ひぃっ…」

竜騎士「…ははは、冗談冗談」

女武道家「…怖い」


竜騎士(冗談じゃないけどね)

 
女武道家「それで、これからどうします?」

竜騎士「今やってる業務とかはあるか?それと、中央からの連絡手段はどうなってる?」


女武道家「業務は特にないです。連絡手段は、別の部屋に通信装置はありますので」

竜騎士「なるほどな」

女武道家「はい」


竜騎士「…」

女武道家「…」

 
…ミーンミンミンミン・・・


竜騎士「…」

女武道家「…」

竜騎士「…え、えっと…女武道家は、1日を何して過ごしているのかな?」


女武道家「こうやってお茶を飲んで、外を眺めて、住民の方や、本部からの連絡待ちですとか…」

竜騎士「ほ、ほう…」

女武道家「お昼を食べたら、食後の散歩がてら、外出して見回りとか…」


竜騎士「…頭痛くなってきた」

 
女武道家「だ、大丈夫ですか!?」

竜騎士「だから、そういうのじゃないから大丈夫…」

女武道家「そうですか…」


竜騎士「…参ったな。えーと…今は午後2時か…」

女武道家「そうみたいですね」

竜騎士「んー…、ただいてもしょうがない。さっきの報告書にあった、昔、魔物が出たという場所に行ってみるか」

 
女武道家「えーっ!」

竜騎士「えっ」


女武道家「昔といえども、もしかしたら、今は魔物いるかもしれませんし、危ないですよ!」

竜騎士「そ、そりゃそうだが…。俺らの仕事は魔物退治もあるわけで…」

女武道家「ケガとかしたらどうするんですか!」


竜騎士「…女武道家?」

女武道家「はいっ?」

 
竜騎士「無理やりにでも連れて行く、道案内よろしく」

…ズーリズーリズーリ

女武道家「きゃーーっ!引っ張らないで下さい~!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【天然洞窟】


ヒュウウウウウッ…


竜騎士「ここは少し寒いな」

女武道家「…」ビクビク

竜騎士「何震えてるんだ?寒いかやっぱり?」


女武道家「もも、もしも魔物が出たら怖いじゃないですか!」

 
竜騎士「…」

女武道家「も、もういいですよね?ね?」

竜騎士「…まあ、異常はないようだし…いいか。次行くぞ」

女武道家「まだ行くんですかっ!?」


竜騎士「一応見回りはこういうことを言うんだよ!ほら、次!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉】

…キラキラ

竜騎士「うおっ、透き通って綺麗な水だなおい!」

女武道家「ここは、昔はよく魔物が出ていたらしいので、町人も近づかないんですよぅ…」


ジャブジャブッ…


女武道家「って、何してるんですかぁぁ!」

竜騎士「え、いや、暑いからちょっと水浴びでもしようかなと…」

 
女武道家「ダメですって!何かいたらどうするんですか!」グイッ

竜騎士「あ、おい、ちょ、引っ張るな!こら!」

女武道家「次行くなら行きますよ!ほら!」


竜騎士「少しくらい水浴びさせてくれてもいいじゃないかぁぁ…」

…キラッ


竜騎士「…水の中に何か…ある?」

女武道家「何してるんですか!」

竜騎士「わ、わかったよ!…まあ、いいか…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【迷いの森】


…バサバサバサッ!!…

竜騎士「こりゃまた、見事な森林だな」

女武道家「通称、迷いの森ですね。まだ深部には魔物がいるって話です」

竜騎士「何、そりゃ危ないな。早速、退治に行くか」ヨイショ


女武道家「ちょちょちょ、何してるんですか!」

竜騎士「え、魔物がいたら倒すのは当たり前だろ?」

 
女武道家「なな、何も今行かなくてもいいじゃないですか!」

竜騎士「町人に危険が及んだらどうする。それを防いでこそだろう」


女武道家「…もう、ここ数年は被害なんて聞いてないですから、大丈夫ですってば!」


竜騎士「…そうか?」

女武道家「そうですよ!とりあえず、これで報告書は全部です。一回戻りますよ!」

竜騎士「わ、わかった」


女武道家「全くもう…」


竜騎士(あれ?立場逆転してるし、俺間違った事言ってない…よね?あれ?)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【田舎町・支部】


…バタンッ

女武道家「はー…戻ってこれた。中央の人は、色々びっくりすることしますねぇ…」

竜騎士「…普通だと思うんだが」

女武道家「中央だと普通かもしれませんが、こっちでは私が普通なんですっ!」


竜騎士「そう、なのか…?」

女武道家「せっかちすぎますよー。もっとのんびりいきましょうよ…」

 
竜騎士「うーむ…まあ、確かに…せっかちなのは認めるが…」

女武道家「でしょう?のんびりですよ、のんびり」

竜騎士「ま…、今まで働きづめだったし、久々の休暇と思ってのんびりするか…」


女武道家「休暇!?」

竜騎士「な、なんだ」


女武道家「のんびりしても、しっかり働くのは変わりませんよ!?」

 
竜騎士「朝起きて、昼間でお茶飲みながらココにいて、昼ごはん食べたら…外回りもとい、散歩が…?」

女武道家「外回りがてら、夕飯のおかずを買って、夜は本を読んだりして、お風呂に入って寝る!ここまでが仕事です!」


竜騎士「…」

女武道家「…」エッヘン


竜騎士「あほーっ!世間では、それを"休暇"というんだ!!」

女武道家「きゃああーーっ!お、大声出さないで下さい~!」

 
竜騎士「…明日は住民に一応挨拶がてら顔を出しながら、何か問題がないか聞く!」

女武道家「う、うぅ…」

竜騎士「2人といえども、きちんとした仕事はするぞ!」

女武道家「今まで通りでも良いと思うのに…」ガクッ


竜騎士「スケジュールは今日の夜、相談しながらでも決める!いいな!」

女武道家「ふ…ふぁい…」


竜騎士「…本当に、大丈夫なんだろうか…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コチ…コチ…コチ…


竜騎士「朝は9時までに起床、ここに集合。12時まではしばらく、書類整理だな」

女武道家「書類整理…」

竜騎士「古い書類がたまり過ぎだ、一回整理する必要がある」

女武道家「…うう」


竜騎士「そこから1時までは休憩。1時からは、その記載されている危険な場所を見回る。日替わりだな」

女武道家「…危ないですよう」

竜騎士「知らん!2時からは、住民に何か問題がないか聞いて回る」

 
女武道家「全部回るのに、3、4時間かかりますよ多分…」

竜騎士「…商店街をメインにして、4時までには終わらせる」

女武道家「ちょっとだけ、省きましたね!?」


竜騎士「ごほん。4時から6時までは、鍛錬だ」

女武道家「鍛錬?」

竜騎士「まぁ体力作りとか、演舞とか。そういうのだ」


女武道家「…熱中症になりますよ?」

 
竜騎士「休憩がてら、これは出来る範囲でやっていく。軍人という立場上、必須だ」

女武道家「あうう…」

竜騎士「6時からは自由時間だ。それで仕事は終了、ご飯やらはそこからでいいだろう」


女武道家「すっごい厳しいスケジュールに…」

竜騎士「これで厳しかったら、中央だと死ぬな」


女武道家「そんなきついんですか?」

 
竜騎士「…ふ、ふふ…」

女武道家「ふふ?」

竜騎士「朝5時起床!30キロのマラソンの後、1時間の勉学!演習を含み、12時まで各自必要なー…」


女武道家「わ、わかりました!もうわかりました!私には中央は無理です!」

竜騎士「ふ…ふふ…」

女武道家「つくづく、支部でよかったなと思いますよ」


竜騎士「支部でもこんなになってるのは、レアケースすぎるけどな」

 
女武道家「はー…」

…グゥゥッ

女武道家「!」


竜騎士「…そろそろ、晩御飯…ご飯食べるか?」

女武道家「…はい」カァッ


竜騎士「えっと…冷蔵庫はどこだ?」

 
女武道家「あ…」

竜騎士「…あった、これか。旧式の魔石による冷蔵庫か…懐かしい…」


…ガパッ


竜騎士「…」

女武道家「あう…」

竜騎士「おい」

女武道家「はいっ!」

 
竜騎士「…まともに材料と呼べるのがないぞ。全部、お惣菜と、その余りなのだが…?」

女武道家「え、えーと…それは…その…」モジモジ

竜騎士「あほーーっ!!」

女武道家「今日2度目ーっ!」


竜騎士「しゃあない、この惣菜使って、ちょっとした料理を作ってやる…ご飯でも炊いとけ!」

女武道家「は、はいっ!」

 
竜騎士「…ったく、色々深刻すぎるだろ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


女武道家「んーーーっ!美味しいぃ!」

竜騎士「…」ピクピク

女武道家「料理上手なんですね!さすが、中央の人!」


竜騎士「…なぜ、ご飯がお粥になっているんだ…?」

女武道家「ち、ちょっと水を入れすぎたかなー…なんて…?」

  
竜騎士「1合炊くのに、どれくらいの水を使ったんだ…?」

女武道家「コップ3杯分です!!」

竜騎士「…1合は、コップ1杯分…それでも少し多いくらいなんだぞ!」


女武道家「ひ、ひえぇ、そうなんですかー!」

竜騎士「…」

女武道家「たまに、ご飯がパッサパサだったり、のりみたいだったり…したんです…けど」チラッ


竜騎士「俺が、料理のやり方は教えてやるよ!!覚えろー!」

女武道家「はいいーっ!」

 
竜騎士「…ったく…」


女武道家「えへへ……しいな…」

竜騎士「ん?何て言った?」

女武道家「…やっぱり、楽しいです」

竜騎士「楽しい?」
 
 
女武道家「前のいた先輩がいなくなって、こうやって他の人とご飯を食べるの久しぶりなんです」

 
竜騎士「あー…なるほどな」

女武道家「その時もこうやって言われちゃって。成長してないっていうんでしょうけど…」

竜騎士「…ははは」


女武道家「…」モグモグ

竜騎士「…」モグモグ

女武道家「…」グビッ


竜騎士「…ん?」

 
女武道家「え?」

竜騎士「今、18歳っていったよな」

女武道家「はい」

竜騎士「…いつから軍に所属してるんだ?軍の所属は18歳からだったはずだが…」

女武道家「正式な所属は今年ですけど…元々軍希望だったんで、こんな田舎ですし、大目に見てもらって15歳から働いてました」


竜騎士「あぁ…なるほど」

 
女武道家「だから、中央都市には行かないんじゃなくて、行けなかったのが正しいんですけどね」

竜騎士「行きたいとは思わないのか?」

女武道家「…やっぱりこの町が好きですし」

竜騎士「へぇ…」


女武道家「…よしっ。ご馳走様でした!」

竜騎士「食べるのはやっ!」

女武道家「お風呂、準備してきますね!」


竜騎士「お…おう…」

 
…タッタッタッタ

竜騎士「…」


…ジャーッ…キュッキュッキュ……


タッタッタ…


竜騎士「…」

女武道家「よし、いつでも大丈夫です。お湯が張ったら言いますね、一番風呂をどうぞ!」

 
竜騎士「う、うむ…、本当に所帯染みてるな…」

女武道家「…ふぅ」

…ゴロン


竜騎士「食べた後、すぐに横になると体に悪いぞ」

女武道家「これが好きなんですよー…」

竜騎士「…太るぞ?」


女武道家「…」ピクッ

 
竜騎士「…」

女武道家「い、今何て言いました…?」

竜騎士「太るぞ、と」

女武道家「わ、私太ってます…か…?」


竜騎士「ぷっ…さあな?」

女武道家「…っ、じゃ、じゃあ!見てくださいよ!これ!!どうですか!!」

…パサッ

 
竜騎士「ふ、服を脱ぐんじゃない!」

女武道家「て…撤回してくださいよ!ほら、まだ若いんですからぁぁ!」

竜騎士「わかったわかったーーー!笑ったのは冗談だから!」

女武道家「絶対本気でいったー!」


竜騎士「お、ふ、風呂が溜まった、いってくる!」


女武道家「…もーっ!デリカシーがないんですからぁ!」

本日はここまでです、ありがとうございました。

>>12 田舎はいいですねー。足が少ないし、何もないしw
>>21 期待ありですぞ(A´ω`)

これは関係ないの?
しえ

>>61
一応位置づけは新作という名目で、こちらは不定期でやっていこうと思います。

不定期新作おつ

竜騎士という名前なのに一度も竜が出てこないな
もしかして竜騎士ってドラゴンナイトじゃなくドラグーン(竜騎兵)の事なのか?

世界観は共通で、過去作からそう遠くない未来ってカンジでいいのかな?

過去作は長すぎてちょっとついていけないけど、これは今のところすごく好きな感じ

皆様ありがとうございます。
>>63 それに関しては、作品の成す所を見守ってください
>>64 世界は確かに別作との共通ですが、全くもって新作と認識してもらって結構です
>>65 ありがとうございます。楽しんでいただければ幸いです

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ホゥ…ホゥ

竜騎士「で、どこで寝ればいいんだ?」

女武道家「2階の…ここが寝室です。布団敷きますね」

竜騎士「お、悪いな」


女武道家「いえいえ、どうせ自分のも敷くので」


竜騎士「うんうん…、うん…うん!?」

 
女武道家「うん?」

竜騎士「一緒の部屋で寝るのか!?」

女武道家「そうですけど、何か?」キョトン


竜騎士「それはいささか問題があるような気が…」

女武道家「…男女ですけど、仕事仲間ですし…」


竜騎士「…あのさ、え…、いやそうだけど…」

 
女武道家「…やっぱり、別々のほうがいいですか?」

竜騎士「いや俺は別にいいんだ…けど…」

女武道家「それじゃ、敷きますね!」


竜騎士「あ…あぁ…うん、まあ…いいんじゃないの…」


女武道家「もう夜遅いですし、明日に備えて寝ましょうっ」バサッ

竜騎士「お、おう…」

 
女武道家「…よしっ、出来ました。それじゃ…」モゾモゾ

竜騎士(布団ちけぇ)


女武道家「おやすみなさいっ!」

竜騎士「お…おう、おやすみ」


女武道家「…」スゥッ

竜騎士(そして…寝るのはえぇ)

 
…モゾモゾ

竜騎士(とはいえ…俺も疲れた…。せめて、いい夢だけでも…見たいもんだ…)チラッ

女武道家「…」スヤスヤ

竜騎士(はぁ…、しばらく休暇もらったと思って、楽にするか…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・田舎町の商店街】


…ガラッ

竜騎士「それでは、ありがとうございました」

…バタンッ


竜騎士「挨拶回りも楽じゃないな。それにしても、みんな笑顔でいい人たちだ」

女武道家「ですよね!」ニコニコ

竜騎士「少しでも名前を覚えてくれると良いんだがな」

 
女武道家「でも、竜騎士の名前を受ける位ですから、相当強いんですよね?」

竜騎士「まー…強い、のか…?」

女武道家「竜の力を解放できるとか?おりゃーっ!とか!」

竜騎士「はは、竜のように魅せた戦い技術とか、竜をも砕く騎士!みたいな感じで元帥殿にもらった名前だよ」


女武道家「竜の力を持っている、とかそういうことではないんですね?」

竜騎士「…かの英雄と呼ばれた剣士は、竜の血を持って世界を救ったとか聞いたことあるよ」

 
女武道家「あ、知ってます!勉強で習いました。絵本でも読みましたし」

竜騎士「まぁ…確かに竜族はいるけど、絵本の剣士のように、本当に竜と戦って勝てる自身はないよ…」タハハ

女武道家「へえー…何か、技見せてくださいよっ!」


竜騎士「わ…技…?」

女武道家「その、竜のように魅せる技を!」ブンブンッ


竜騎士「ふむ…よし…」スチャッ

 
女武道家「…」ワクワク


竜騎士「…」スゥゥ


女武道家「…」ウキウキ


竜騎士「龍突っ!!」グワッ

…ズドォォォッ!!!


女武道家「…!!穂先が龍のように飛んでいく!」

…ドォォォッ!!!!

 
女武道家「…お…?」


ドォォォォッ……ドゴォォォン!!ガシャン!!バリン!!

町民「だ、誰だーーー!!!人の家の壁壊したやつはーーー!」


竜騎士「あ」

女武道家「…あ」


竜騎士「や、やべ…逃げろ!!」

 
女武道家「いいんですかー!?」

竜騎士「わざとじゃないからな、わざとじゃ!」

女武道家「わかってますけども!」


竜騎士「はっはっは!」

女武道家「あははっ!」


…タッタッタッタッタ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女武道家「はぁ…はぁ…はー…笑った」クスクス

竜騎士「焦ったぁ…」

女武道家「お堅い人だと思ってたんですけど、意外とユーモアがあって安心しました」


竜騎士「堅そうだったか?」


女武道家「はい、なんていうか…"軍は規律が全て!!"みたいな…」

 
竜騎士「はは、確かに大事だが、それに縛られすぎるのも良くない…そういう考えだ」

女武道家「そうですよね!」

竜騎士「お前みたく、温過ぎるのもどうかと思うけどな」コツンッ


女武道家「あいたっ!」


竜騎士「さて、もうすぐ昼か。お昼ごはん食べたら、まだ挨拶回りを続けるぞ」

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガラガラッ

婆や「女武道家ちゃん、またおいでよ」

女武道家「はいっ、お婆ちゃんも元気でね!」

婆や「漁騎士さんも、これからよろしくね」


竜騎士「り、竜騎士です。これからよろしくお願いします」ペコッ

 
…トコトコ…ジリジリ…


女武道家「一応、商店街と離れの家はこれで終わりですね」

竜騎士「あと、山の奥やら森側に数軒、町外れにもあるみたいだが…日を改めてでいいな」

女武道家「ですね、少し遠いですし」


竜騎士「つーか…」

ジリジリ…ミーンミンミンミンミン…


竜騎士「暑い…暑い…!暑い!!」

 
女武道家「仕方ないですよ、夏ですもん」ニコッ

竜騎士「猛雪山でのミッションが懐かしい…」


女武道家「あー、万年雪山って言われてる所ですよね?」


竜騎士「あそこだと逆に寒すぎるがな…、今何時だ?」

女武道家「午後3時を回るところです」

 
竜騎士「…」ユラッ

女武道家「…?」
 
 
竜騎士「ついて来い!」グイッ

女武道家「えっ、ど、どこに行くんですか!」


竜騎士「暑すぎてな…我慢の限界だ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉】


…ザパァン!!!

竜騎士「冷てぇぇ!」

女武道家「…ど、どこに行くかと思ったら…まさかの…」

竜騎士「こんなにキレイな水で、泳がないのは損だろ!」


女武道家「いやそりゃそうなんですけど…」

 
竜騎士「ほら、来たらどうだ!」

女武道家「いやー…泳ぐのは嫌いじゃないんですけど…何ていうか…」

竜騎士「ん?」

女武道家「自然の泉とか、森の中のとか、キレイすぎる水辺とか…なんか嫌なんですよね…」


竜騎士「嫌?」


女武道家「見るのは好きなんですけど、なんか怖いっていうか…分かりません?」

 
ジャブジャブ…

竜騎士「んー…気にしたことなかったな」

女武道家「疎いだけですよ!」

竜騎士「それに、都市部だとこんな事できないからね~…」


女武道家「あと昨日も言いましたけど、魔物がいたりしたら怖いじゃないですか!」

竜騎士「報告もあがってないんだし、ゆっくりしようよって言ったのは君だぞ?」ハハハ

女武道家「む、むぅぅぅ…」

 
竜騎士「…ん」

…キラッ

竜騎士「…そういや昨日も何か光ってたな。ちょっと潜って見てくる」

女武道家「え、ちょっ!」


ザバザバ…トプンッ…


女武道家「私ここ苦手なんですから、一人にしないでくださいよーーー!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザバァンッ!!

竜騎士「ぷはぁっ!」


女武道家「!」

竜騎士「やー、思ったよりも深くて手間取った」ハハ


女武道家「ご…5分ですよ!?どんだけ潜ってるんですか!」

竜騎士「5分くらい…」ゴニョゴニョ

女武道家「信じられません…」

 
竜騎士「それより…よいしょっと」

…カチャンッ


女武道家「何です?これ?」

竜騎士「泉の深くに落ちてた。金貨…みたいだな」

女武道家「…金貨?」

竜騎士「見たことない金貨だ。なんだこりゃ」


女武道家「使えたり、売れるんです…かね?」

 
竜騎士「変な模様入ってるし…使えないんじゃないか?もしかしたらオモチャか何かもしれん」

女武道家「こんな泉に?」

竜騎士「何があるかなんて、誰にも分からないもんだ」

女武道家「ふむ…?」


竜騎士「うっしゃ、とりあえず戻るか。涼めたし」ザバッ

女武道家「私は違う意味で涼みましたけどね…」

 
竜騎士「とりあえず戻ったら、書類整理の続きだ!」

女武道家「え…」

竜騎士「今までサボってた分のツケが来たと思うことだな」


女武道家「そ、そんなぁ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【 夜 】


…ホー…ホー…

サワサワ…


女武道家「…よし、これで最後で終わりっと♪」

竜騎士「お疲れさん」

女武道家「これで、明日の分は楽になりますよね?」


竜騎士「倉庫いっぱい分あるからな。まだまだだ」

女武道家「うう…」

 
竜騎士「…んー」

女武道家「どうしたんですか?」

竜騎士「…この支部の維持ってどうなってるんだ?」


女武道家「維持?」

竜騎士「考えてなかった。普通は、本部から資金やらを貰えるはずなんだが、貰ってるのか?」

女武道家「あー…一応、月イチですけど、軍に所属している商人が、お金は持ってきますよ?」


竜騎士「いくらだ?」

 
女武道家「えーと…先月が支部の資金が6万ゴールドでした」

竜騎士「…」

女武道家「?」

竜騎士「…そりゃ、食費やら雑費で消えるだろ!どうやってやりくりしてるんだ!」


女武道家「えーと…あと足りない分は、自分の給料から出してます」

竜騎士「きゅ…給料…」

 
女武道家「ですから、私の給料もあわせて、大体1人で生活には困ってませんでしたよ」

竜騎士「…」バンッ!!

女武道家「ど、どうしました?」ビクッ


竜騎士「本部に通信する!通信装置を貸してくれ!」

女武道家「は、はいっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ザザ…ザザザザ…


竜騎士「もしもし、聞こえますか」

上官"「もしもし…おー、竜騎士!」"


竜騎士「久しぶりです」


上官"「心配してたんだぞ、そっちはどうだ」"

 
竜騎士「ええ、まぁ…予想通りといえば予想通りですが…」

上官"「はは…それで、どうした?」"

竜騎士「この支部の設備、運営資金、仕事、その他諸々たくさん聞きたいことがあるんですが…?」


上官"「ふむ」"


竜騎士「まあ何にせよ、きちんと支部として動かすには資金が足りなすぎるんです!」

上官"「どのくらい必要なんだ」"

竜騎士「この通信機器も古すぎますし、いざという設備、装備など…見積もって1500万ゴールドですね」

 
女武道家「ご、1500万ゴールド!?」

竜騎士「…うるさっ!」キーン

女武道家「そんな、そんなにいらないですよ!」

竜騎士「はは…わかったから、静かにしといてくれるかな…」


上官"「わかった、検討して、明日にでも返事を出す。今日はもう夜遅いからな」"


竜騎士「夜分にすいませんでした。よろしくお願いします」


…ザザ…ブツンッ・・・

 
竜騎士「ふう、これで一先ずは安心か」

女武道家「せ、1500万ゴールドとか横暴すぎますよぉ…」

竜騎士「そのくらいないと、この支部は本当にただの"家"だっつーの!」


女武道家「あうう…」


竜騎士「とりあえず、今日も…早めに寝るぞ」

女武道家「は、はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日】

…ザザ…


竜騎士「え…出せない!?」

上官"「すまんな。そちらの支部に送る金額は毎月の6万ゴールド…それが限界なのだ」"

竜騎士「そ、そんな!」


上官"「それと…その会議で決まって、もう1つ、2つほど残念な報告がある」"

竜騎士「なんでしょう?」

 
上官"「もうすぐ、そこの支部はなくなるかもしれん」"

竜騎士「はぁ!?」

女武道家「えっ!?」


上官"「そこの土地は元々、軍の保有ではない。借りている為、毎月別途に土地主に金を払っているのだ」"


竜騎士「…軍にお金はあるんですから、買いましょうよ」

上官"「そこはほとんど、軍のいる意味がない場所だからな。撤廃されても問題ないらしい」"

 
竜騎士「じゃあ、どうすればいいんですか?というか、ここがなくなったら俺はどうなります?中央に戻されるんですよね?」

女武道家「私もどうなるんでしょう…」


上官"「…クビ、だそうだ」"


竜騎士「なんですって!?」

女武道家「クビッ!?」

 
竜騎士「そんな話聞いたことがない!誰が命じたんですか!」

上官"「…それは言えん。だが、何とか出来ないこともない」"

竜騎士「クビなんて嫌ですよ、どうすればいいんですか!」


上官"「毎月の土地代をきちんと支払い、軍としてきちんと活動することだな。認められれば、中央に戻れるだろう」"


竜騎士「…月6万の支給と、我々の給与から支払えと?」

上官"「あと給与だが、そこの支部の活動の結果に左右、つまり歩合制に変更されるようだ」"

竜騎士「さ…散々だ…」

 
上官"「ちなみに、土地代は月20万だそうだ」"

竜騎士「…」

女武道家「そんな…」


上官"「今月の月末の定期報告までに、それなりの結果を出しておかんと厳しいぞ」"

竜騎士「け、結果って…」

上官"「土地代の支払いもある。何とか頑張ってくれ…」"


竜騎士「頑張ってくれって…どうすれば!」

 
上官"「さっきも言った通り、そこの支部が何かしらで利益を出したり結果を出せば、クビは免れ…中央に戻れるかも、しれん」" 

竜騎士「クビは免れるって…」

上官"「ま、何にせよ結果を出せということだ。土地代の支払い、利益も含めてな」"
 

竜騎士「…利益って、何もない状態ですよ!」

上官"「それは…」"

竜騎士「と、とにかく、何かしらで"利益"になる結果、を出せばいいんですね!?」

 
上官"「…う……む……」"

ザザ…ザー……ブツンッ……


竜騎士「あ…」

女武道家「…切れちゃった。通信機器が古すぎるせいですね…」

竜騎士「ど、どうすりゃいいんだよ…、いまさらクビだなんて…」ドンッ!!


女武道家「…どうやってか土地代を稼いで、軍としての活動報告をするしか…」

 
竜騎士「何も揃ってない、住民からの依頼はない、敵はいない!」

女武道家「…八方塞ですね」

竜騎士「頭が痛くなってきた…」

女武道家「大丈夫ですか!?風邪ですか!?」


竜騎士「もうその流れはいいよ…」


女武道家「…どうしますか?」

 
竜騎士「…」

女武道家「…」


竜騎士「そうだ…、深部。森の深部!あそこなら魔物がいるって話じゃなかったか!」

女武道家「確かにいますけど、危ないですし…道も整備されてませんし、迷いますよ…」

竜騎士「だけどな、それ以外にやれることがないんだよ」

女武道家「そもそも、魔物を倒してどうするつもりですか?害はないので、ポイント稼ぎにはなりませんよ…」

 
竜騎士「…」

女武道家「…」


竜騎士「そうだ…、深部。森の深部!あそこなら魔物がいるって話じゃなかったか!」

女武道家「確かにいますけど、危ないですし…道も整備されてませんし、迷いますよ…」

竜騎士「だけどな、それ以外にやれることがないんだよ」

女武道家「そもそも、魔物を倒してどうするつもりですか?害はないので、ポイント稼ぎにはなりませんよ…」

 
竜騎士「魔物を倒して、皮やら何やらを俺の知り合いの中央の商人に売るんだ。まずは利益優先にしよう!」

女武道家「な、なるほど」

竜騎士「きちんとしたハンティングポイントが見つかれば、それだけで儲けになる!」


女武道家「そんな上手くいきますかね…?」

竜騎士「分からんが…。それと、もし処理しきれなかったアイテムは、この支部で販売するのも有りか」

 
女武道家「小売店みたいですね…」

竜騎士「どっちかといえば、卸売りだがな」

女武道家「どっちでもいいです!」


竜騎士「よっしゃ、そこまでの道を整備したりすれば、それなりの活動報告にもなる…いけるかもしれん!」


女武道家「そういう整備用や、そこまで行く道具、食料、装備……出せるお金ないですよ私…」

竜騎士「あ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…チャリンチャリンッ!!

道具屋「毎度ありがとうございましたー!」


竜騎士「…2人分で、大体の道具やら揃えるのに、俺の貯金が吹き飛んでしまった…」

女武道家「あ…あはは…」

竜騎士「しかも、まともな道具がない…。材料が粗悪なのか、すぐに壊れるぞこんなん…」


女武道家「もっと良い材料さえあれば、いい物も作ってもらえたりするんでしょうか?」

 
竜騎士「そ、れ、だ」

女武道家「へっ?」

竜騎士「見たところ、この商店街の人たちは腕は良い。魔物やら自然にある材料を取ってきて、作ってもらえばいいんだ!」

女武道家「なるほど!」


竜騎士「作ってくれそうな店は大体あるしな!」

女武道家「やることが増えてきましたね…」

 
竜騎士「土地代20万を毎月稼ぐのに、森の奥に行く為に材料やら道具を集めて店に渡したり、売ったりするか…」

女武道家「なんか自給自足生活みたいな…」

竜騎士「はぁ…月6万がなんとかの救いだな。支部に戻ったら一度収支付けを…」


女武道家「…」チラッ

竜騎士「…ん?」

女武道家「今日、何月何日か知ってます…?」


竜騎士「8月10日だが?」

 
女武道家「毎月1日にお金は貰えるので、もう今月の支給金はなかったり…」テヘ

竜騎士「…」

女武道家「あはは…」


竜騎士「…」ニコッ

女武道家「…?」ニコッ

…グイッ


女武道家「…何で笑顔で引っ張って…そっちは森で…まさか今日から仕事を…きゃーーー!いやぁぁ!」

 
【現時点での収支】

■収入
・特になし

■支出
・食事代・雑費など6万ゴールド
・土地代(月末支払い予定)20万ゴールド

■収支合計
・マイナス26万ゴールド
(必要な道具に出したお金は竜騎士のポケットマネーなので除外)

本日はここまでです、ありがとうございました。

乙です
温かい雰囲気に癒されます

乙です
漁騎士には笑いましたw

トルネコ+牧場物語か

皆様ありがとうございます。
>>123 >>124 楽しんでいってくだされば幸いです。
>>125 イメージとしてはそんな感じでしょうか。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ミーンミンミンミン…カツーン…カツーン…


竜騎士「とりあえず、今日は深部までの道を確保するぞ」

女武道家「な、何も今日から始めなくても…」シクシク

竜騎士「俺に見捨てられて、クビになりたいなら別だが」


女武道家「さ、竜騎士さん。さっさと道を切り開きましょう!」

竜騎士「…こいつ」

 
…バサッ!!ズバッ!!


女武道家「ふぅ…暑い…」

竜騎士「…おいっしょ…よいしょっと…」


女武道家「それにしても、切り開く必要ありますか?」

竜騎士「道という道がないからな。大物がいたとき、道が確保されていないと運べないだろう」

女武道家「大物…」


竜騎士「簡単に整備しといて、まずは損はない。きちんとするのは、その後だ」


女武道家「ふむー…」

 
…オーイ

竜騎士「ん?」

女武道家「今、誰かが呼んだような…」


オッサン「おーい!こっちだこっち!」

タッタッタ…

竜騎士「ん…こんにちわー」

オッサン「こんにちわ、君たち、一体何をしてるんだい?」

 
竜騎士「まぁ…色々ありまして…、深部への道を切り開いてまして」

女武道家「ですね…」タハハ


オッサン「…軍服。軍人さんだね、何かあるのかい?」

竜騎士「ちょっと人生がかかってるような途中です」

オッサン「お、重いね…」


竜騎士「それで、何か用事ですか?」

 
オッサン「その伐採してる木、どうするんだい?」

竜騎士「…一応、売れるものなら売ろうかなとか思ったりしてます」

オッサン「ふむ、軍人さんが木を売る…?」


竜騎士「はは…ちょっと色々ありまして…」


オッサン「訳有りっぽいね。近くに家があるから、良かったら話を聞きたいんだけど」

竜騎士「えと…その…ですね」

 
オッサン「はは、俺は怪しいもんじゃないよ。この近くで鍛冶場をやってる、スミスってもんだ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【スミスの鍛冶工房】


スミス「…なるほど。そりゃ災難だったね」

竜騎士「本当に…」


スミス「ん~…なるほど…」ブツブツ

竜騎士「?」

スミス「じゃあさ、良かったらなんだけど、その"木"、売ってくれないかな」

 
竜騎士「!」

スミス「鍛冶で火を炊くのに沢山使うんだよね…、ここの経営は俺一人だから、つらくてさ」

竜騎士「願ってもない話です!」


スミス「集まる度に、渡してくれればその量に応じてゴールドを支払うよ」

竜騎士「わかりました!」

スミス「ただ、あまり高値じゃ厳しいけどね」ハハハ


竜騎士「いえいえ、助かります!」

 
スミス「30キロ、2千ゴールドでどうだろう?これでも相場より少し高いくらいなんだけどな」

竜騎士「分かりました、ぜひお願いします」ペコッ

スミス「うん、ありがとう」


女武道家「30キロといえば…どのくらいですか…?」

スミス「あそこのストーブの脇にある蒔が、大体25キロだね」


女武道家「た、沢山なんですね…」

  
竜騎士「木以外にも、必要なものとかあります?」


スミス「ふむ…、基本的には木材だけでも充分だけど、もし鉄鋼やらレアメタルなんか見つけたら、買うよ」

竜騎士「鉱石ですか…」

スミス「ここからしばらく歩いた所に、洞窟があるのは知ってるかい?」

竜騎士「あー…はい」


スミス「あそこはレアメタルやら、鉱石やらよく出た鉱石場だったんだけどねー…」

 
竜騎士「天然洞窟じゃないんですか?」

スミス「もちろん天然さ。そこに鉱夫が入って、よく稼いでたんだけど…」

竜騎士「ふむ…」


スミス「魔物が出現して以来、誰も足を踏み入れてないんだ。もしかしたら、まだ鉱石が眠ってるかもしれないよ」

竜騎士「なるほど。それは面白い…」


女武道家「は…入るんですか…?」

竜騎士「さすがに、鉱物掘るようなモノはまだないからなぁ。そのうち、余裕が出来たら行ってみよう」


スミス「はは、楽しみにしているよ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


スミス「それじゃ、また」


竜騎士「はい、お茶までご馳走になって…ありがとうございました」

女武道家「ありがとうございました」ペコッ


ガチャッ…バタンッ

竜騎士「いやー良い情報貰ったし、なんとか収入は確保できそうだ」

女武道家「木を切るだけなら、この辺なら私も出来そうですしね」

 
竜騎士「今日は切れるだけ、切っておこう」

女武道家「はいっ!」


トコトコ…

…カーン…カーン…カーン…


竜騎士「っしょ…」ブゥンッ

女武道家「…よいしょーっ!」ブンッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…カァ…カァ…


竜騎士「ふぅ~…」

女武道家「もう…夕方、です…ね」フゥ


竜騎士「深部まではまだ遠いけど、それなりに整備できた…かな。君、フラフラじゃないか」

女武道家「はぁ~そりゃそうですよ…、木も結構貯まりましたね」ゼェゼェ

 
…トコトコ

スミス「おやおや、ずいぶん切ったなぁ」


竜騎士「あ、スミスさん」

女武道家「どうですか!」エッヘン

竜騎士「ほとんど俺だけどね…」


スミス「この数だと…、目視での計りでもいいかな?」

竜騎士「えぇ、いいですよ」

 
スミス「えーと…3万ゴールドでいいかな…」

竜騎士「そんなに…ありますかね?」

スミス「まあ、オマケだよ。これからよろしくねっていう感じで」ハハハ


竜騎士「ありがとうございます!」

スミス「はは、そこまで喜ばなくても。それじゃ、はいっ」

スッ


竜騎士「はい、確かに3万ゴールド受け取りました…、これ、全部運びます?」

 
スミス「ああ、いいよ。それは俺がやっておくから」


竜騎士「そうですか、あっちは相当疲れてるようで、休ませたかったので…お言葉に甘えますね」チラッ

女武道家「」


スミス「はは、了解了解」

竜騎士「それでは、失礼します」ペコッ

スミス「はいよ、またな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ドサッ

女武道家「体中が…ガタガタです…。後は寝るだけー…」

竜騎士「あれ式で情けない…。本当に戦士か!」

女武道家「確かに戦士ですけど、木こりじゃないんです!」


竜騎士「ご飯も食ったし、風呂も入った。どうだ、体を使った1日は」

女武道家「ご飯はおいしかったし、お風呂も体中にバチバチ来ました」

 
竜騎士「そうだろうな。悪いもんじゃないだろ?」

女武道家「まぁそうですけど…」


竜騎士「木材の収入は、あくまでもオマケ程度だなー…。明日から、少しずつ深部に入って魔物を探さないとな」

女武道家「魔物ですか…」

竜騎士「皮が売れる魔物とかだといいんだけどなー」


女武道家「倒しても意味のない魔物とかいるんですか?」

 
竜騎士「魔物の種類も、アンデット、精霊、巨人、幻獣、悪魔…とにかく沢山いるわけで」

女武道家「ふむふむ」

竜騎士「例えば、ゴブリン。あいつらは、知性が高いから武器や防具を作ったりするだろう?」

女武道家「そうですね」


竜騎士「ゴブリン自体は意味ないが、そういう武器防具は売れる場合がある。本当は、アウルベアなんかいると…助かるんだけどな」


女武道家「なるほど…って、アウルベア?」

 
竜騎士「まあいわゆる熊の魔物だ。肉は売れるし、皮は高値で取引されるからな。無駄がない」

女武道家「なるほどー…森だし、いそうですよね」

竜騎士「いるといいんだけどな」ハァ


女武道家「そういう売れるもので、これがあれば一発で解決!とかあるんですか?」


竜騎士「そりゃやっぱり、竜の素材だろう」

女武道家「竜!?」

 
竜騎士「爪からウロコ…眼まで全身すべて、最高級品…いや、究極の素材といえるな」

女武道家「へぇぇ…」

竜騎士「まあ討伐にはそれなりの人数、装備がいるし…、失敗は死を意味するくらい最悪な相手だ」

女武道家「怖いですね…」


竜騎士「だが、討伐に成功すれば一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入る」

女武道家「そんなのに挑戦する人たちがいるんですねぇ。バカみたい」


竜騎士「…バカだと!?」

 
女武道家「…」

竜騎士「…」

女武道家「まさか…」


竜騎士「…竜の騎士として、軍の討伐クエストで向かったことはある。失敗したけどな」ハハ

女武道家「まさか、竜騎士さんは幽霊じゃ!?」

竜騎士「生きてるっつーの!」

女武道家「でもさっき、失敗は死を意味するって…」

 
竜騎士「…仲間に守られたおかげで、命からがら帰還したんだよ」

女武道家「…」

竜騎士「ま、後遺症やら大きなキズがなかったのが幸いだった」

女武道家「ほぇー…」


ボーン…ボーン…


竜騎士「もう10時か…、今日は疲れただろうし、早く寝とくか…」フワァ

女武道家「そうですね…」

 
竜騎士「明日からは本格的に探索やら開始するぞ。まずは森の深部に行く」

女武道家「はいっ…怖いですが」

竜騎士「何事も体験だ。俺がついてる限りは、大丈夫だろうしな」

女武道家「頼りにしてますよ…頼りにせざるをえませんけどっ!」


竜騎士「おうおう、んじゃ…」


女武道家「おやすみなさい~です」

 
【8月10日終了時点での収支】

■収入
・木材販売3万ゴールド

■支出
・食事代(雑費含め)6万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・マイナス23万ゴールド

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日は多少短めですがここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・森の深部】

…バサッ…バサッ…


女武道家「ここから先が、深部と呼ばれる所になります…けど…」

竜騎士「へー、鬱蒼としてるな」


バサバサッ…ギャーッ!!ギャーッ!!

女武道家「!」ビクッ

  
竜騎士「鳥だよ鳥。んじゃ、行きますか」

女武道家「ほほ、本当に行くんですかぁ…」

竜騎士「お前は、森を探索する道と、クビになる道、どっちがいいんだ!」


女武道家「行きますか」キリッ
 
竜騎士「…素直でよろしい」


女武道家「一応、武器つけておきますね」スチャッ

竜騎士「うむ。何があるか分からないからな」

 
…バサッ…バサッ…ガサガサ…


竜騎士「歩きにくいな」

女武道家「太陽が見えない…」


竜騎士「深い森って、こういう事をいうんだろうな」

女武道家「…深部ですし?」

竜騎士「そういうことじゃないから」

女武道家「?」

 
竜騎士「この辺の木とか、いいモノだったら売れるんだけどなー」

女武道家「…スミスさんにですか?」

竜騎士「違う違う。木も、種類が沢山あって、貴重な木材とかは高値で取引されるんだ」

女武道家「あぁ…なるほど…」

竜騎士「ま、俺に目利きできるわけじゃないんだがな」

女武道家「商人さんとかいたら、これが素晴らしい!とか言うんでしょうね~


竜騎士「そんなことより…魔物やーい。何かいないか~」


女武道家「変なの出てきたらどうするんですかぁ」ビクビク

 
竜騎士「気配はするんだけどなー…」

女武道家「な、なんのですかっ」ビクッ

竜騎士「何かこう…いる…感じ…」

女武道家「う~っ…」


…ガサガサッ!!!

女武道家「ひっ!」

竜騎士「おっ?」

 
…ズサッ!!

アーヴァンク『…キュイ』


女武道家「…」

竜騎士「あ…アーヴァンクか…」

女武道家「きゃーっ!なんですかアレ!可愛い!」


竜騎士「ビーパーに似てる魔獣だ。害っていう害はないんだ…が…」

女武道家「が…?」

 
アーヴァンク『ギュイッ!』

…タァンッ…ガシッ!!ガリガリッ!!


女武道家「!」

竜騎士「いてて…何でかは知らんが、こうやって男ばっかり攻撃してくるから面倒なんだ。力はないがな」グイッッ

アーヴァンク『キュ…キュキュ…』ブルブル


女武道家「ちょ、そんな強く掴んでイジめないでくださいよ!離してあげて下さい!」

 
竜騎士「一応、こいつの皮と肉は売れるんだが」チラッ

女武道家「だめですーっ!こんな可愛い子を…食べるなんて…」

竜騎士「あのな…」


アーヴァンク『キュイッ!』

ゲシッ!!

竜騎士「いてっ!」


…タタタタタッ…ピョンッ

  
女武道家「!」

…ダキッ

女武道家「え、えっ?」


竜騎士「おーいてぇ…、そしてそいつは何故か女性が大好きでな。そして、女性に抱きついたアーヴァンクは…」

女武道家「あ…」

アーヴァンク『…』スヤッ


竜騎士「寝る」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコ…

女武道家「はーあ、ペットにでもすればよかったなぁ」

竜騎士「売れるのだったのに…、逃がしやがって」

女武道家「ダメです!愛玩動物は殺しちゃいけません!」

竜騎士「だがな…」


女武道家「もっと害悪なものが出たら倒してください!熊とか、猪とか!」

 
竜騎士「そりゃ倒すけどよ」

女武道家「…」


竜騎士「アーヴァンクが消えてから、めっきり気配がない。ただ深い森って感じだな」ハァ


女武道家「ここまで深かったら、何かいそうですけどねぇ」

竜騎士「だから、アーヴァンクが…」

女武道家「…」

竜騎士「冗談だって!」

 
トコトコ…ガサガサ…トコトコ…


女武道家「ん…あれ、何ですか?」

竜騎士「…あー、ウィスプなんかもいるのか…」

女武道家「ウィスプ…精霊ですよね?」


竜騎士「…ここから先は行かない方がいいな…戻るぞ」

女武道家「え?」

竜騎士「ウィスプ自体は害がないが、それ以上は"危険"の印になる」

 
女武道家「危険?」

竜騎士「…ま、いいよ。とりあえずここで一区切りだ。ウィスプがいるとなると…ふむ…」

女武道家「?」

竜騎士「…まあいい、とりあえず別の道を探すぞ」


タッタッタ…

女武道家「あ、待ってくださいよー!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜騎士「…ふーむ」

女武道家「竜騎士さん」

竜騎士「ん?」


女武道家「何でさっき、ウィスプから離れたんですか?危険が危ない?」

竜騎士「女武道家」

女武道家「はい?」

竜騎士「君と話すと、頭痛が痛いよ」

 
女武道家「だ、大丈夫ですか!?」

竜騎士「…はは…冗談だよ…冗談…」ハァ

女武道家「で、ウィスプから離れたのは何でですか?」


竜騎士「…まぁ、ウィスプの正体はよく分かってないんだが…」

女武道家「へぇ」

竜騎士「一部だと、死後の魂だとか、妖精だとか色々ある」

女武道家「ひいっ!」

 
竜騎士「…あいつらに着いてって、悲惨な目に合ったという話は少なくないからな」

女武道家「そうだったんですね」

竜騎士「ま、逆にいえば"何かある"ってことなのかもしれん」

女武道家「!」


竜騎士「…やっぱ戻って行ってみるか?」

女武道家「…」ブンブンブン


竜騎士「全力拒否すぎるだろ」

 
女武道家「…」ブンブンブン

竜騎士「わかったわかった!」

女武道家「…」ホッ


竜騎士「…とりあえず、こっち側は何もないみたいだし…戻るか…」

女武道家「はいっ」

竜騎士「まだ時間はあるし、帰りに木でも切って、スミスさんに届けてからな」

女武道家「は…はい…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】

…コンコン


竜騎士「スミスさーん」
 
ガチャッ

スミス「お、竜騎士くん」

竜騎士「今日も切ったので、運んできました」

スミス「わざわざ運んでくれたのか…ありがとう助かるよ」

竜騎士「いえいえ」

 
スミス「えーと…大体1万ゴールド…かな。いいかな?」

竜騎士「お願いします」

スミス「きつい割りに安いから、もう来ないかと思ってたけど、本当に助かるよ」

竜騎士「そりゃ本気ですからね…」


スミス「今日はどこかへ行ってきたのかい?」

竜騎士「あ、深部のほうへ。まぁ…収穫はなかったんですけど」


スミス「ふーむ…やっぱり、この木材買取だけじゃまともな収入にならないだろう?」

 
竜騎士「正直に言うと…」

スミス「俺がもっと依頼らしい依頼を出せればいいんだけどね」

竜騎士「いえいえ、伐採だけでお金をもらえるなんて…それだけでも充分ですよ」


スミス「ふむ…」


竜騎士「…」

スミス「竜騎士くんは、やれるようなことならやる覚悟はあるかい?」

竜騎士「できる範囲なら、何でもやろうとは思います」

女武道家「えっ」

 
スミス「んじゃー…ちょっと、明日またお昼頃に来てくれる?」

竜騎士「は、はぁ…?分かりました」

スミス「ちょっと…依頼を頼めそうな人がいて、紹介してあげるよ」

竜騎士「それは助かります…が、なぜここまでしてくれるんですか?」


スミス「なぁに、ちょっとした人助けをして、いい気分に浸ってるだけさ。気にするんじゃない」

竜騎士「…ありがとうございます」ペコッ


スミス「それじゃ、また明日」

竜騎士「はい」

女武道家「また明日です」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】


竜騎士「うーむ…」トントン

女武道家「どうしたんですか?」


竜騎士「木材の取引で4万ゴールドの利益を生んだが…」

女武道家「いいペースですね?」

竜騎士「今の時点ですら、今月に君が食事代や雑費に使った6万ゴールドには及ばないわけで…」

 
女武道家「木だけ毎日切ってれば、月収支は浮くんじゃないですか?」

竜騎士「君は、毎日、あの量を伐採し続けられるか?木だって無限じゃないしな」

女武道家「そうですね…」


竜騎士「それと、月末に20万ゴールドの土地代もやってくる」

女武道家「今月は厳しいとしても、来月からは6万ゴールドで多少浮くのでは?」

竜騎士「…食事代、維持費、雑費で6万ゴールドなんかすぐ吹き飛ぶ。むしろマイナスだ」


女武道家「安く済ます方法を考えないといけませんねぇ…」

 
竜騎士「とはいえ、人よりきつい仕事をするからには、それなりの食事がないと倒れる可能性だってある」

女武道家「…」


竜騎士「最低でも抜けるのは、30万ゴールドと見積もったほうがいいな」


女武道家「私たちの給料はどうなるんでしょう?」

竜騎士「歩合制になったといってたな。軍としての活動報告もしっかりして、稼げってことだ」

女武道家「うーん…」

 
竜騎士「俺の貯蓄から出してもいいと考えたが、このペースではすぐ剥がれるし、大体…」

女武道家「大体?」

竜騎士「お前の分の面倒を見るのに、何万も月抜ける計算になるんだよ!」

女武道家「サービスで…♪」


竜騎士「その精神、羨ましくなるよ…。ま、それと話は違うんだけどな」

女武道家「?」


竜騎士「軍での"活動収支"が実質の評価に繋がる部分がある。それを個人の貯蓄から出したって意味がないだろう」

女武道家「なるほど」

 
竜騎士「食事代が足りないので、個人から出しました、なんて言ったら現状じゃ一発でアウトだぞ」

女武道家「あくまでも、軍の支部としての結果を出さないといけないんですね」


竜騎士「まー…とにかく"お金"の儲けを報告するのが一番早い。目標額は…」

女武道家「目標額は…?」

竜騎士「月末までに最低で500万…かな」

女武道家「ごっ…500…!?」


竜騎士「支部の一般的な金額は700万から1000万オーバーだ。これでもまだ安いほうだぞ」

 
女武道家「でも、500万なんてどうすれば…!」

竜騎士「だよなぁ…。土地代ですら危ないっていうのに」

女武道家「うぅぅ…」


竜騎士「とりあえず…」

女武道家「とりあえず?」

 
竜騎士「…一般市民を頼るのはどうかと思うが、スミスさんの明日の話、期待しておこう」ハァ

女武道家「そうですね…」


竜騎士「よし、それじゃ今日は寝よう。明日は少しだけ早めに行くぞ」

女武道家「少し早く?」


竜騎士「こういうのは少しだけ早く行くのがマナーなんだよ!」

女武道家「は、はいっ!」

 
【8月11日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド

■支出
・食事代6万(雑費含め)ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・マイナス22万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後522万ゴールド

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様、ありがとうございます。投下します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・スミス鍛冶工房】

 
コンコン…

スミス「はい、どうぞー」


ガチャッ

竜騎士「失礼します」

女武道家「お邪魔しまーす!」

 
スミス「お、来たか。もう、昨日話してた人は来てるよ」

竜騎士「あ、待たせてしまってすいません」

スミス「いやいや。少し早いくらいだよ、そこのイスに座って待っててくれるかな」

…タッタッタ


竜騎士「はい」

女武道家「わかりましたっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


女武道家「わああっ…」

竜騎士「こ、こりゃ見事だ…」


ホカホカ…グツグツ…


スミス「紹介するよ。こちら、料理師のコック、だ」

コック「初めまして」

 
女武道家「た…食べていいんですか…」ジュルリ

コック「それは挨拶代わり。どうぞ」

竜騎士「…いただきます」


…モグッ


竜騎士「!」

女武道家「!」

 
竜騎士「う…うまっ!何だこれ!」

女武道家「このシチュー、口の中でとろけます…。このお肉もホロリと崩れて…」

竜騎士「このサラダ、自然そのものって感じだ!ドレッシングがマッチして、シャキシャキしてる…」


スミス「ははは、気に入ってもらえたようだね」

コック「…」ペコッ


竜騎士「それで…、コックさんが依頼したいことがあるんですか?」

 
スミス「まずは、腕を見てもらいたかった。美味しいだろう?」

竜騎士「絶品ですね」

女武道家「こんな美味しいもの、久しぶりに食べました!」


スミス「だがな…」

コック「この料理、もうすぐ出来なくなるかもしれん」


竜騎士「なぜですか?」

 
スミス「コック…いいか?」

コック「もちろんだ、これを見てくれ。丁度、痙攣が始まった」スッ

…ブルブル…


女武道家「右腕に…締め付けられたような跡…?」


竜騎士「これは…絞蛇症!」

女武道家「こうじゃ…しょう…?」


スミス「さすがだ。よく知ってるね」

 
女武道家「何ですかそれ?」

竜騎士「そのまんまだ。蛇に絞め付けられたように、痕が現れる。その痕の部分が麻痺する病気だ」

女武道家「!」

竜騎士「その絞めつけは、やがて全身に広がる。それが首、胸、頭のいずれかに広がった時、それは…」


コック「わかってる」

スミス「こいつは頑固でな。気づけばもう、僧侶や薬剤師では手の施しようがない所まで来ているんだ」


竜騎士「…」

 
コック「だが一つだけ方法があると聞いた」


竜騎士「蛇苺、ですね」

スミス「そうだ…」

竜騎士「だが、この周辺にヒュドラどころか、まともな魔物がいるとは思えないのですが」


女武道家「え、ヒュドラ?…一体どういう事ですか?」

竜騎士「蛇苺という、絞蛇症の妙薬…食べ物があるんだ。ヒュドラの卵のことなんだけどな」 
  
女武道家「卵…」

 
スミス「まぁ…実は、ヒュドラの巣がある」

竜騎士「…あるんですか?」

スミス「君たちが見たウィスプのいる深部の更に奥。そこに沼があるんだ。そこが巣…ってとこだな」

竜騎士「なるほど、そういうことでしたか」


スミス「…危険だが、頼めるか?」


竜騎士「請け負いましょう」スクッ

女武道家「ちょっ、わ、私は無理ですよ!死んじゃいます!」

竜騎士「さすがに危険だからな。伐採をして稼いでてもいいぞ?」

 
女武道家「そ、そう言われると…行きたくなりますね!」フンッ

竜騎士「…あのな」


スミス「はは…それで、報酬の話だ。コック、持ってきてたよな?」

コック「あぁこれだ」

…ドサッ

 
竜騎士「これは?」

コック「30万ゴールド。それと今後の料理の面倒を見る」

竜騎士「料理の面倒?」

コック「素材があるなら俺に言え。何でも無料で作ってやる」


竜騎士「!」


コック「もちろん、必要とあらば俺の店でも安く食わせる。どうだろうか」

竜騎士「…わかりました。充分すぎる報酬です」

コック「ありがとう」

 
竜騎士「んー、今…何時ですか?」

スミス「もう12時を過ぎて…13時前だな」


竜騎士「深部の更に奥か…。ウィスプから巣までどのくらいですか?」


スミス「恐らくすぐ、だ」

竜騎士「ところで、その"巣"の情報の出所は?」

スミス「…」スッ


竜騎士「!」

女武道家「!」

 
スミス「俺、自身だ」


竜騎士「腕全体に絞蛇症の痕…」

スミス「若い頃、発症したことがある。その時に何度かヒュドラの巣でお世話になっているんだ」

竜騎士「…なるほど。何よりも信頼できる情報です。少しの間、待ってください」

スミス「あぁ…頼んだぞ」

コック「頼んだ」


女武道家「竜騎士さん…、少しだけ待っててくださいってことは…」

竜騎士「戻って準備だ。すぐに出発する」

女武道家「やっぱり…ですよね…」アハハ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【2時間後・森の深部】


ガサガサ…

女武道家「またすぐ来る事になるなんて…」

竜騎士「どの道、あの奥に進む運命だったってことだな」

女武道家「はぁ…」


竜騎士「ところで、お前は一応武道家だよな?」

 
女武道家「そうですよ?」

竜騎士「何で武道家なんだ?」

女武道家「父親、爺ちゃん、曾爺ちゃん…まあ、一族全てが武道家一家なんですよ」ハハ…


竜騎士「血統書付きか」


女武道家「そうなりますね。私の代で、一人っ子だった上に父親が病で倒れて…」

竜騎士「なるほどな」

女武道家「竜騎士さんみたく、バリバリではないですが…一応その辺の戦士くらいは戦えると思いますよ!」

 
竜騎士「よし、その実力を認めて、アーヴァンク討伐クエストを与える!」キリッ

女武道家「嫌です」ニッコリ


竜騎士「…」

女武道家「あれは愛玩動物です!」

竜騎士「…はは」


女武道家「ふーんだ」

竜騎士「は、はは…、お!いたいた、ウィスプだ」

 
…フヨフヨ…

ウィスプ『…』


女武道家「魂…。確かに言われてみれば…そう見えますねぇ」

竜騎士「よし、行くぞ」ガサガサ


女武道家「えっ、そんな大雑把でいいんですか!?隠れながらとか…」

竜騎士「まぁ通らないといけないし、向こう側から攻撃してくることもないだろう」


ウィスプ『…』フヨフヨ

 
トコトコ…

女武道家「…本当だ。こうしてみると、ただの光の玉って感じで…触りたく…」ソーッ

竜騎士「あ、でも故意に触ったりするなよ。体にたまたま触れるのはいいが、あまり触りすぎると怒るぞ」

女武道家「はっ!気をつけます」ビクッ


竜騎士「…よいしょ…、ツタが邪魔だ…」


…ザシュッ…ザシュッ…

竜騎士「一応、ナタとか持ってきてよかったな。案の定だ」

女武道家「虫がいっぱい…蚊に刺される~…」

 
ザシュッ…ザシュザシュッ…

竜騎士「…うしっ。道が開け…お!」


女武道家「何ですか?」

竜騎士「しっ、静かに」

女武道家「?」


竜騎士「あった。沼だ…確かに何かの気配を感じる」

女武道家「ヒュドラですか?」

竜騎士「わからんが、恐らくそうだな」

女武道家「ところで、ヒュドラってどういう魔物なんです?」

 
竜騎士「動物でいうところの、蛇だ…が…」

女武道家「が…?」


竜騎士「昔は最上位の魔物と呼ばれたこともある。今は力を失った子孫がこうやって群れを成してるしてるんだ」

女武道家「へぇー…」

竜騎士「絵本読んだ事あるんだろ?ヒュドラとの戦いが出ただろ?」

女武道家「覚えてません!」キッパリ


竜騎士「…」

女武道家「…と、とりあえず、行きましょうよ」アハハ…

 
竜騎士「問題は何匹いるか、だ。巣というくらいだからな…その辺を聞けばよかった」

女武道家「昔の話なのに、今も存在してるんですかねぇ?」

竜騎士「今のヒュドラ寿命は160年くらいじゃないか?」

女武道家「わぁー…長生き…」


竜騎士「とりあえず、慎重に進むぞ」

女武道家「はいっ」

 
…ガサ…ガサ…

竜騎士「一歩…一歩…」

女武道家「…」

竜騎士「…んー…、気配はあるんだが…」

女武道家「…むむ」


…シュルンッ!!

竜騎士「!」

女武道家「今のは…」

 
竜騎士「いた…あそこだ…沼の近く」

女武道家「うわぁ…毒々しい…」

竜騎士「目視で1、2…3匹か。腹が膨らんでるな…、子持ちだ…ビンゴ」

女武道家「…なんか、可哀想ですよね」


竜騎士「この世は食うか、食われるかだ」

女武道家「…でも、なんだか納得できないんですよねぇ…」

竜騎士「お前は少し優しすぎるな」

 
女武道家「…そうですかね?」


ヒュドラ『シュルッ…カラカラカラ…』


女武道家「何ですか、あの音…気持ち悪い」

竜騎士「あれでヒュドラ同士のコミュニケーションをとってるとか聞いたことがある」


ヒュドラ『カラカラ…』


…ガサガサッ!!

アーヴァンク『キュイ!』

女武道家「あ…!あれは昨日のアーヴァンクちゃん!」

 
竜騎士「…」

女武道家「ちょっ、大丈夫なんですかあれ!」

竜騎士「いや…あれは…」


ヒュドラ『カラカラッ…!』クワッ!!

シュルシュルッ…!!バクンッ…!!


アーヴァンク『キュ…ッ』ビクンッ


女武道家「あ…あぁぁぁ…」

 
竜騎士「…やはりヒュドラは腹を減らせてるか」

女武道家「あ、アーヴァンクが…」


竜騎士「あれが弱肉強食で…まずは毒を与えて獲物を…って、お、おい!」

…スクッ

女武道家「こらああ!そこのヒュドラ!アーヴァンクを離しなさい!!」ビシッ


竜騎士「おまっ!」

 
ヒュドラA『カラカラカラ…』ピクッ

ヒュドラB『…カラッ』クルッ

ヒュドラC『…シュルシュル』ギロッ


…シュルシュルシュルシュル…


竜騎士「こっち来ちゃったじゃねーか!あいつら毒持ってて噛まれたら命に関わるんだぞ!」

女武道家「噛まれなければいいんですよね」

竜騎士「そりゃそうだが…って、待てっ!」

…ダッ!!

 
女武道家「敏捷化!」パァッ

…ビュンビュンッ!!…


ヒュドラA『カラカラッ!』クワッ

女武道家「衝撃波ァッ!」

…バキィッ!!グシャッ!!


竜騎士「お…おおぅ…強烈な」


女武道家「あんな可愛い子をイジめるヒュドラ…許しませんよ!」スッ


ヒュドラB『シュルッ…』

ヒュドラC『シュルシュル…』

 
ヒュドラB『カァッ!』クワッ

…ヒュッ!!

女武道家「その速度じゃ私には当たりません!」

ヒュドラB『シュルシュル…』

女武道家「こっちの番です、掌底波ァッ!!」


バキィッ!!!…グラッ…ドサッ

ヒュドラB『』

 
女武道家「あと一匹…っ」

ズルッ!!

女武道家「…っ、沼に足をとられ…!」ドシャッ


ヒュドラC『…クァッ!!』クワッ

女武道家「きゃああっ…!」ギュッ

…ガシィッ!!

ヒュドラ『…クカッ!』


女武道家「…へ?」パチッ

 
竜騎士「勝手に突っ走るんじゃねーよ…作戦が台無しじゃねーか」ハァ

女武道家「竜騎士さん!」

竜騎士「…おらよっ」ビュッ


…ドシュッ…ドサッ

ヒュドラC『』


竜騎士「さーて、卵は腹の中から取り出して~…。肉も売れるか持ってくか」

女武道家「そ、それよりっ…!」ダッ

竜騎士「ん?」

 
女武道家「あ、アーヴァンク…」


アーヴァンク『キュイ…』ブルブル


女武道家「…生きてる!竜騎士さん、アーヴァンク生きてますよ!」

竜騎士「あー…噛む力は弱いからな。毒が回ってるようだし…もう、ダメだろうな」


女武道家「そんな…何とかならないんですか…」

竜騎士「弱肉強食っていうのはそういうことだろう」


女武道家「…それじゃ、私が毒を吸い出します!!」

 
竜騎士「ばっか、やめろ!毒の吸出しは、本当にやると虫歯やら雑菌やらで、吸い出した本人も毒にやられるんだ!」

女武道家「で、でも、でもっ…!」グスッ

竜騎士「…はぁ~…、こういうときの女の涙って、本当にズルいよな…」


ゴソゴソ…スッ


竜騎士「ほれ」ポイッ

女武道家「これは何ですか…」

竜騎士「ヒュドラ対策用に一応持ってきた解毒薬。アーヴァンクに効くかは知らんけどな」

 
女武道家「は、はいっ!」

カポッ…ヌリヌリ…

アーヴァンク『キュ…!』ズキンッ


竜騎士「貴重な薬を…。ま、俺はヒュドラの解体の続きだ」

…ザクザク…ビリビリッ…トントン…

ズルッ…ズルズル…


竜騎士「ふむ…女武道家ぁー」

女武道家「は、はいっ?」

 
竜騎士「…ヒュドラの肉、食う?」

女武道家「いりません…ってか、何してるんですか?」チラッ


ヒュドラだったもの『』


女武道家「い、いやぁー!何してるんですか…うっ…」

竜騎士「何って…解体だ。魔物を売るって、こういうことだぞ?」

女武道家「私…そういうのダメです…気持ち悪い…」

竜騎士「…うーむ」

 
アーヴァンク『…キュ』ブルッ 

女武道家「!」


アーヴァンク『…キュイ…?』パチッ


女武道家「あ、あ…!」ブルブル

アーヴァンク『キュ…♪』


女武道家「竜騎士さん!竜騎士さん!」

竜騎士「何だよ!」

女武道家「アヴァちゃん、元気になりましたよ!!」

 
竜騎士「あー…薬効いたんだな。つーか、アヴァちゃんって何だ…」

女武道家「アーヴァンクだから、アヴァちゃんです!」

竜騎士「犬だから、ワンコちゃん?」


女武道家「よくある名前ですね?」

竜騎士「お、おう…そうだな…」


アーヴァンク『キュッ!』ピョンッ

女武道家「あっ」

 
ベタァッ…

竜騎士「うわっぷ」

アーヴァンク『キュ…♪』ペロッ

竜騎士「…何だこいつ、人懐っこいな」


女武道家「違いますよ、助けてくれたのをわかってるんですよ!」

竜騎士「…そうかぁ?」

アーヴァンク『♪』


竜騎士「まぁいいか、女武道家、抱き上げてやれ」

 
女武道家「あ、はいっ」ダキッ


アーヴァンク『…キュウ……』スヤッ

女武道家「寝ちゃった…本当に可愛いなもうっ…」


竜騎士「こっちも解体は終わりだ。内臓は猛毒だし、沼に捨てておくか」

ボチャボチャッ…

 
女武道家「それじゃ、帰りますか?ちゃんと、手洗ってくださいよ」

竜騎士「わかってるっつーの!蛇苺も取れたし、肉も取れたし、皮も剥げたし、こりゃ売れそうだ」

女武道家「商魂逞しいというか…」


竜騎士「お前がなさすぎるんだよ!そろそろ帰るぞ!」

女武道家「はーい…」


竜騎士「それと、そのアーヴァンクは昨日の場所あたりで、降ろしておけよ」

女武道家「飼っちゃだめですか…?」

竜騎士「養えるくらい、稼げるようになったら考えてもいいかもな?」

 
女武道家「そ、そしたらいいんですね!」

竜騎士「ま、今の女武道家じゃまだまだ難しいかな?」

女武道家「いえ…わかりました…稼ぎます!頑張りますよ!」

竜騎士「はは…本当に頼むぞ」


女武道家「はいっ!」


竜騎士「それじゃ、スミスさんの家に戻るかぁ」

本日はここまでです、ありがとうございました。

おつ!
この話って世界観は英雄剣士とかの方に繋がってる感じかな

皆様、沢山の意見、コメ、ありがとうございます、投下開始いたします。

>>245 
世界観が同じ、という名目だけで、別の作品の認識でよろしいです。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【スミスの鍛冶工房】


コンコン…ガチャッ

竜騎士「スミスさん、戻りました」


スミス「おぉ、かなり早かったね!」

竜騎士「もうすっかり夜になっちゃいましたけどね」

スミス「コックー!こっち来い!」


トコトコ…

  
コック「とれたのか?」

竜騎士「…どうぞ」スッ

…コロン…キラッ


スミス「おぉ…これはまさしく…!」

コック「蛇苺だ」


竜騎士「どうですか」ニカッ

 
スミス「でかした…でかしたぞ、竜騎士くん!」バンバン

竜騎士「あいたた…ありがとうございます」

女武道家「やりましたね!」


スミス「こっちはなんだ?」ゴソッ

竜騎士「あー…そっちはヒュドラの肉と皮です、売れないかと思って持ってきました」


スミス「コック、ヒュドラの肉は食えるのか?」

コック「俺なら最高の料理に仕上げられるはずだ」

 
竜騎士「!」

コック「痙攣も今は治まっている。卵を含め、料理を振舞うつもりだったが…どうする?」

竜騎士「…売るつもりでしたが、最高の料理が気になりますね」ハハ

コック「じゃ…」

竜騎士「預けます。最高の料理、お願いしますよ」


コック「あぁ任せてくれ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トントントン…ジューッ…


スミス「後はコックの料理に任せておこう」

竜騎士「はい。でもよかったんですか?料理までさせるなんて…」

スミス「彼が報酬のほかに、料理でお礼をしたいって言ってきかないからな。是非食べてってくれ」


女武道家「はぁ~…大変だったけど、無事に帰ってこれてよかったです」


スミス「…竜騎士くん、本当にありがとう」

竜騎士「いえいえ」

 
スミス「彼は俺の長年の友人でね。本当なら、俺が助けるべきなんだろうけどね…」

竜騎士「…何か、理由が?」

スミス「昔、魔物との戦いでやらかしてね。それ以来、長い時間の戦いが出来ないんだ」


竜騎士「そうなんですか…」


スミス「それでも、戦いの道を止めることは出来ず、こうやって武器や色々作って過ごしてるわけさ」ハハハ

竜騎士「なるほど…」

スミス「だから、君たちに出会えて心の底からよかったと思ってる。こうして助けてくれたんだからね」

 
竜騎士「勿体無い言葉です。スミスさんは、もし俺たちがいなかったらどうするつもりだったんですか?」

スミス「…まさに、自分が蛇苺を採りにいこうとしてた途中だったんだ」

竜騎士「そうだったんですか…」


スミス「あぁ。困ったことがあったら、言ってくれよ。俺も力になってやるからな」

竜騎士「はい」ペコッ

女武道家「スミスさん、スミスさん」

スミス「ん?」


女武道家「そういえば、スミスさんは鍛冶場で…どんな物を作ってるんですか?」

 
スミス「俺の作品かぁ…えっとな」

ゴソゴソ…ドンッ!!!


女武道家「わっ!」

竜騎士「でかっ…なんじゃこりゃ!」


スミス「トゥハンドソードの1種だ。俺のオリジナル、どうだ?かっこいいだろ?」

竜騎士「でっけー…持ってみても?」

スミス「いいが…重いぞ?」

 
スッ…

竜騎士「おぉ…、いい剣ですね」ブンブンッ

スミス「軽々と…どんな腕力してるんだお前はっ!」

竜騎士「はは、本部にいた時は色々やりましたからね。他にはありますか?」


スミス「んー…今出せるのは…」

ポイッ…ガシャンッ…ポイッ、ポイポイポイッ…

スミス「カットラス、バルディッシュ、クリス、サーベル、モーニングスター…」


ポイポイポイッ…

スミス「トライデントに、ハルパー、ショテル…」

 
竜騎士「ち、ちょっと…どんだけ作ってるんですか」

スミス「戦士を引退した後は暇でなぁ、ついつい」ハハハ

竜騎士「ついついって…」

スミス「竜騎士くんの武器は、立派な槍だな」


竜騎士「えぇ、軍の佐官用の支給品ですが使いやすいんです」

スミス「…このトゥハンドソードに持ち替えてみないか?」キラッ

竜騎士「はは…折角ですが剣は性にあわないので遠慮しときます」

スミス「ぬぅ、残念だ」


竜騎士「今度、機会があったらお願いします」ハハ

 
スミス「あぁ、そうだな。…ところで」

竜騎士「はい?」

スミス「ヒュドラの肉があったということは、内蔵もあるはずだが、持っているのか?」

竜騎士「え、あー…あれは危険なので捨てておきました」

スミス「なんだそうか…、武器に塗ればヴェノム武器として使えたんだが」

竜騎士「ヴェノム…、毒の武器ですね」


スミス「折角だから作ってやろうとしたが、ないならしょうがないな」

竜騎士「先に言われれば取っておいたんですけどね」

スミス「そうだなー、ところで…内臓はちゃんと火魔法で処理したか?」

竜騎士「へ?」

 
スミス「俺も昔捨てたことがあるんだが、沼に捨ててな。毒が強力過ぎるのか、内臓から溶け出して周囲の自然枯らしちまったんだ」

竜騎士「…あの、まさに…それです」

スミス「捨てちまったのか?」

竜騎士「沼にぼちゃぼちゃっと…」


スミス「まじか…、どのくらいの量を捨てたんだ?」

竜騎士「平均的なサイズのヒュドラを3匹分ほど…」

スミス「あー…うーん、まぁそのくらいなら大丈夫か…」


竜騎士「一応引き上げてきますかね?」

 
スミス「あぁやめておけ、もう時間がたちすぎてる。とっくに毒は流れ出してるはずだ」

竜騎士「そうですか…やっちまったな…」

スミス「ま、仕方ないさ。今度、毒性のものが手に入ったら持って来るといい。ヴェノム武器に仕上げてやるからな」

竜騎士「はい…」ハァ


スミス「そこまで落ち込むなって」ハハハ

竜騎士「はい、元気出します…」

 
トコトコトコ…

コック「何してるんだ。料理できたぞ」


女武道家「…待ってました!お腹すいちゃって!」グゥゥ

竜騎士「お前はもうちょっと本当に、粗相というものをだ…」

女武道家「粗相でお腹が膨れますか!正直になりましょう!」

竜騎士「…本当にその性格が羨ましくなるよ」


スミス「ははは、とりあえず、頂こうか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キラキラ…

コック「俺が考えたフルコースだ。食べてくれ」

女武道家「ど、どれも美味しそうですぅ…!」

竜騎士「見事すぎる…どれを食べればいいやら…」


コック「それじゃ、新鮮なこれとかどうだ」

 
女武道家「…これですか?」パクッ

モグモグ・・・

女武道家「何ですかこれ…、噛めば噛むほど、味が出てくる…。肉のようなのに、軽い食感で…」


竜騎士「ん、これは…」

女武道家「え?」

竜騎士「俺がさっき一緒に持ってきた、ヒュドラの肉じゃないか」

女武道家「えーーーっ!」ブーッ


コック「旨いだろ?ヒュドラのソテーだ」

 
竜騎士「俺は最高だと思いますよ」モグモグ


女武道家「く…くく…」

竜騎士「どうした?」

女武道家「悔しいけど…旨いです…」

竜騎士「なんだよ悔しいって…」


モグモグ…グビッ…カチャカチャ…

竜騎士「あー…これも美味しい…コックさん、さすがです」

 
コック「あぁ」


竜騎士「それで…卵は…?」

コック「これだ。卵焼きにしてみた。これは俺も食べる」スッ

竜騎士「…是非、食べてください」


女武道家「ヒュドラの卵の卵焼きって…」アセッ

竜騎士「一応な、蛇苺は美食家の中でも有名な食材なんだぞ?」

女武道家「で…でも、あのヒュドラの卵ですよね…」

 
竜騎士「お前、ヒュドラ自体食っちまったじゃないか」

女武道家「ううー…」


コック「うぐっ…」ブルッ

スミス「!」

コック「また痙攣…か」ブルブル


竜騎士「コックさん、早く食べてください。食べればきっと、治るはずです」

コック「あぁ。頂く」

カチャッ…パクッ…

 
モグモグモグ…ゴクンッ

コック「…」


竜騎士「どう…ですか?」

コック「…」

ブルブル…ブル……


竜騎士「…」ゴクッ

女武道家「苦労して取ってきたんです、きっと治ります…!」

 
コック「く…」ブルブル

スミス「蛇苺は即効性がある。きっと治るはずだ、もう一口、食べてみろ!」

コック「わかった…っ」

カチャッ…モグモグ……ゴクンッ…

コック「…」

ブル…ブル………

 
女武道家「…あ!」

コック「…」

ブル………ピタッ………


竜騎士「!」

女武道家「!」

スミス「!」

 
コック「…震えが止まった」

スミス「治ったのか…!」

コック「感覚が戻っていく…まだ俺は、料理を作り続けられるのか…」

スミス「あぁ…そうだ…!」


竜騎士「はは…、さすが蛇苺。良かったですよ…コックさん」ニコッ

コック「…ありがとう。本当にありがとう、竜騎士、女武道家」


竜騎士「いえ、そんな…」

女武道家「本当によかったですっ…!」

 
スミス「俺からも改めて礼をいうよ、ありがとう」

竜騎士「…」ニコッ


スミス「だが、この料理以外にも卵はあるんだろ?定期的に食べるんだぞ?再発防止のためにもな」

コック「わかってるさ。それより」チラッ


竜騎士「?」

 
コック「今晩は大盤振る舞いだ。どんどん食べてくれよ」

竜騎士「えぇ、食べつくす勢いで頂きますよ!」

コック「望むところだ」

 
竜騎士「さぁて、俺も蛇苺を…」

女武道家「この蛇苺…すっごい美味しいですね!!」

…カラッ…


竜騎士「お、女武道家さん…、俺の…蛇苺は…?」

女武道家「…食べないと思って」テヘ

竜騎士「うおおおっ、妙に静かだと思ったら…お前のその手前の皿、全部よこせぇ!!」

女武道家「いーやーですー!!」

 
スミス「はっはっは!」

コック「はは」


竜騎士「くっそ、今度採ったら全部俺が独り占めだからな!」

女武道家「私が食べます!」

竜騎士「食わせるかっつーの!」

ギャーギャー…!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

 
【8月12日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬30万ゴールド

■支出
・食事代6万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・プラス8万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後492万ゴールド

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日、8月13日・支部】


…バタンッ

竜騎士「遅いぞ、おはよう」

女武道家「仕方ないじゃないですか…疲れてたんですよ…」フワァ

竜騎士「まぁ、魔物との戦いもあったしな」


女武道家「それ以上に、あの料理の数々…まだ食べたりません」ジュルリ

 
竜騎士「…ま、同意見だ。本当に絶品だったな」

女武道家「特に、ヒュドラの卵が旨いこと旨いこと…」キラキラ

竜騎士「…そう、ですね!」


女武道家「なんで怒るんですかぁ!」

竜騎士「怒ってませんよ、全然、ぜーんぜん!」バンバン


女武道家「こわいぃ!」

竜騎士「…」フゥ

 
女武道家「…」

竜騎士「…」


女武道家「…ね、竜騎士さん」

竜騎士「なんだ?」

女武道家「私、いいこと思い浮かんだんですけど」


竜騎士「…言ってみな?」

 
女武道家「支部の前に、庭があるじゃないですか?」

竜騎士「庭というか、荒れた草むらだが」

女武道家「どうせなら、畑やりません?」

竜騎士「畑?」


女武道家「新鮮な野菜も手に入るし、手入れで体力もつくし…お金もかかりませんし」

竜騎士「ふむ…畑か…」

 
女武道家「どうでしょう?」

竜騎士「つったってなぁ…、半年や、野菜って普通、1年周期で見るようなものしか作れないだろ?」

女武道家「時間がかかりすぎますかね?」


竜騎士「うーん、悪くない考えだが…俺もよく野菜や栽培のことは知らないんだよ」


女武道家「コックさんに聞いてみませんか?」

竜騎士「あ、いいかもな。早くに収穫できる野菜があれば、やっといて損はない」

女武道家「そういや、コックさんってどこで、お店経営してるんでしょう…」

 
竜騎士「聞いてなかった…。まだ、スミスさんのところにいればいいんだが…」

女武道家「行ってみます?」

竜騎士「そうだな、ついでに書類も届けないといけなかったし…丁度良い」

女武道家「書類?」


竜騎士「軍への依頼書と、完了報告書。これにサインがないと、軍としての活動にならないんだよ」

女武道家「なるほど…」


竜騎士「とりあえず、行くか」

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【スミスの鍛冶工房】


コンコン…ガチャッ


スミス「はいよー…って、竜騎士くんたちか。どうした?」

竜騎士「コックさんって、まだいますか?」

スミス「あー…今朝早く、自分の店に戻ったよ」

竜騎士「一足違いか…、お店って遠いですか?」

 
スミス「いや、それほどじゃない。商店街の一番端だ」

竜騎士「なるほど…そういや、まだあそこは挨拶回り忘れてたかも…」

スミス「一体どうしたんだ?」


竜騎士「いや、ちょっと…畑でもやろうかなと思いまして」

女武道家「すぐに作れる野菜とかあったらなー…とか、思ったんです」アハハ…


スミス「ふむふむ、なるほど。良い心構えだ」

 
竜騎士「じゃあ、コックさんに聞きに行ってみるか…。ありがとうございました、スミスさん」


スミス「あ、待て」

竜騎士「はい?」

スミス「畑なら、あいつより俺のほうが詳しいぞ?」ニタッ

竜騎士「…へ?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


女武道家「わっ、広い!」

竜騎士「広っ!向こう側まで、スミスさんの畑なんですか!?」


スミス「俺も鍛冶だけじゃ稼ぎがない時があるからね。一応こうやって毎年作ってたんだ」


竜騎士「しかし、スミスさんの家の近くにこんな拓けた場所があるなんて」

スミス「で、どんな野菜がご所望だったかな?」

 
竜騎士「あ…えと、出来るだけ早い段階で収穫できるものがほしかったんですが…」

スミス「ふむ…早い段階か」

竜騎士「大きなものが採れないのは知ってますが、それなりのものは欲しいなと」

女武道家「あくまでも家庭菜園だけど、きちんと採れるような感じがいいですよね」


スミス「それなら…こっちだ」

トコトコ…

 
スミス「これ。どうだ?」

竜騎士「これは…」

スミス「二十日大根。聞いたことないか?」

女武道家「聞いたことあります!」

竜騎士「…聞いたことはありますが…これがそうなんですか?」


スミス「そのまんまだ。20日から30日で収穫ができる大根だ。夏場はちと遅れるがな」

竜騎士「大体、欲しい目安で丁度ですね!」


スミス「まぁ、早いといえども、手入れはきちんと必要だぞ?」

 
竜騎士「手入れはもちろん、しっかりやります!」

スミス「じゃ、コックを救ってくれたお礼に、種をあげよう」ゴソゴソ

竜騎士「ありがとうございますっ!」ペコッ

女武道家「ありがとうですっ!支部に戻ったら、早速耕さないといけませんね~」


竜騎士「農耕具…せっかくの報酬で浮いたお金から使うのか…」

女武道家「必要投資だと思えば…」

竜騎士「まぁ…そうだな」

 
スミス「はいよ。あと…ついでにコレも持っていくといい」

女武道家「これは…?」

スミス「サニーレタスの種だ。こっちも聞いたことくらいはあるだろ?」

女武道家「まぁ、聞いたことは…」


スミス「こっちも1ヶ月程度、具合によっては20日程度で食べれるようになるぞ」


竜騎士「ありがとうございます、本当に助かります」

 
スミス「芽が出やすい、収穫しやすいといっても…どっちも面倒は見ないとすぐにダメになるからな?」

竜騎士「はい、心得てます」

スミス「聞きたいことがあったら、適当に来てくれれば答えるから、気軽に来てくれ」

竜騎士「はいっ」


スミス「しかし、畑まで始めるか。完全に自給自足生活みたいなもんじゃないか」

竜騎士「はは…俺も数日前まで、こんなことになるなんて…」

スミス「技術や、知識は持ってて損することはないからな。どんどん吸収するといい」


竜騎士「そうですよね、色々とがんばっていきたいと思います」

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支部・庭 】

…ジージージー…ミーンミンミン…


ザスッッ…ザスッ…


竜騎士「暑い…、思った以上に庭の土が硬い」

女武道家「ふんふん♪」

竜騎士「君は楽しそうだな」


女武道家「家庭菜園みたいなもんじゃないですか。女性のたしなみですよ」フンフン

 
竜騎士「たしなみ…か?」

女武道家「たしなみ、です」

竜騎士「そ、そうか」


…ザスッ…ザスッ…


竜騎士「ふぅー…ちょっと水飲んでくる…」

女武道家「あ、それならこれ使ってください」スッ

竜騎士「水筒?」

 
女武道家「水魔石を入れてあるので、冷たいですよ」

竜騎士「おお…ありがとう」

グビッ…グビッ…


女武道家「はー…それにしても、きちんと耕せましたね」フキフキ

竜騎士「農耕具に数万ゴールド支払った価値はありそうだな」

女武道家「お金ばっかり目をやると、足元すくわれますよ?」

 
竜騎士「そういうのに目をやらなくても、足元すくわれますので」

女武道家「あはは…」

竜騎士「あとは種を蒔いて、きちんと育つのを待つだけだ」


女武道家「水やりとかはどうするんでしょう?」

竜騎士「土が乾いたのを目処に、やりすぎず乾きすぎずを保つこと…かな?」

女武道家「なるほど、任せてください!」

 
竜騎士「うむ…不安だが」ボソッ

女武道家「今、何て言いました…?」

竜騎士「気のせいだ気のせい。よし、後は種を蒔くか」ウーン

女武道家「終わったらどうしますか?」


竜騎士「すぐに野菜が出来るわけじゃないし、やろうと思えばやることは沢山あるんだが…」

女武道家「また探索ですか?」

竜騎士「一番いいのはそれだろうな」

 
女武道家「…んむむ、そうだ、残りの家に挨拶に行くってのはどうですか?」

竜騎士「あー…そういえばまだ挨拶してない家があったな。町外れに数軒残ってたか」

女武道家「ですね、行きましょう」


竜騎士「うむ、泥落としにシャワー浴びてからだな」


女武道家「はい~っ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【町はずれ】


町民「はいよ、これからよろしくね」

竜騎士「はい。これで失礼します」ペコッ


ガラガラッ…バタンッ


竜騎士「ふー、あと何軒だ?」

女武道家「そうですね…と、あそこの家で最後です」ビシッ

 
竜騎士「…随分ボロい家に見えるが。住んでるのか…?」

女武道家「さぁ…私、あまり町外れには来ませんし…」

竜騎士「とりあえず行ってみるか」


トコトコトコ…


竜騎士「ん…看板?」

女武道家「ベーカリーショップ…、パン屋じゃないですかここ?」

竜騎士「こんな場所にパン屋ぁ?」

 
女武道家「パン屋ぁ?じゃなくて、パン屋ですよ!看板に書いてありますし!」

竜騎士「…こんな町外れにか?」

女武道家「私も知りませんでした。とりあえず、挨拶しましょうよ」

竜騎士「潰れてるんじゃないかね…」

コンコン…コンコン……


竜騎士「…」

コンコン…


竜騎士「…」

シーン…

 
竜騎士「返事がない。やっぱ潰れてるんだって」

女武道家「人の気配もないですねぇ…、やっぱり潰れてるんでしょうか」

竜騎士「困った時のスミスさん、じゃないか?」ハハ

女武道家「またですか、迷惑になりますよ?」


竜騎士「だよなぁ、ま…いいか…」


トコトコ…

???「あれ、何やってるんだ」


竜騎士「え?」

女武道家「え?」

 
コック「お前らここで何してるんだ?」

竜騎士「コックさん!」

女武道家「コックさんこそ、どうしたんですか?」


コック「いや、ここ俺の家ね」

女武道家「え!?」

竜騎士「パン…屋?」


コック「あがっていきな。お茶くらい出す」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コトンッ…

コック「はいよ」


竜騎士「ありがとうございます、コックさんの家だったんですね」

コック「もうほとんど使ってないけどな。昔、料理屋する前にここでパン屋やってたんだ」

竜騎士「なるほど」

女武道家「今のお家はどうしてるんです?」

 
コック「商店街の店と家が一緒で住んでる。ここはこうやって様子を見に帰るくらいだ」

竜騎士「へぇー…」

コック「お前らは何でここに?」

竜騎士「挨拶回りですよ。俺が支部に来たって報告です」

コック「あぁ」


女武道家「…」キョロキョロ

竜騎士「どうした?」

女武道家「いや、勿体ないなーと思って」

 
竜騎士「何が?」

女武道家「少し古いとはいえ、手放すのは勿体なくないですか?」

コック「そうだな。人が住まなくなった建物はすぐにダメになるしな」

女武道家「ですよねー」


コック「誰かこの空き店舗、使うやつがいればいいんだが」

竜騎士「スミスさんの鍛冶品を売るとか…?」

コック「うーむ、あいつはあの場所が好きだからな。動かないだろう」

 
 
竜騎士「はは、ですよね」

女武道家「私たちが、お金があって売るものがあれば、借りてそうですよね」

竜騎士「売るものねぇ…」


コック「でもな、立地条件が悪い。こうして町外れだから、人が来にくいんだ」


竜騎士「だから、商店街のほうに?」

コック「まぁな。本当はここで料理屋をやってもよかったんだがな」

 
竜騎士「なるほど…と、コックさん」

コック「なんだ?」

竜騎士「何か、やってほしい事とか、依頼をしたい人とかは知りませんか…?」

コック「ふむ」

竜騎士「とにかく報告書を積まないといけないので…」


コック「んー」


女武道家「どんな些細なことでもいいんです、よね?」

竜騎士「さすがにネズミ退治だとか、掃除とかは無理だけどな…」

 
コック「やはり、人や町の為になることじゃないとダメなのだろう?」

竜騎士「贅沢は言いたくないのですが、やはりそうなりますね」

コック「俺は今、不自由がないからな…どうしたものか。力にはなってやりたいんだが」


女武道家「やっぱり、今は自分らでやれることを考えたほうが良さそうですかねぇ」


コック「うーんむ…身内のバイトの子にでも聞いてみるか?」

竜騎士「ぜ、ぜひお願いします!」

コック「それじゃ、うちの店に来い」

 
竜騎士「え、今から…お邪魔しても?」

コック「俺の弟子が今の時間はやっている。バイトもいるし、丁度いいだろう」

竜騎士「すいません、お手数かけまして」

コック「命の恩人が何をいう。もっと大きく出ていいんだぞ」

竜騎士「はは…」


女武道家「コックさんの料理店…どんなところなんだろ♪」ウキウキ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【コックの料理店】


ガランガランッ!!


竜騎士「おぉ…」

女武道家「お洒落ですねっ」

竜騎士「女武道家さ、いつも思うんだけど、地元なのにあまり地元のこと知らないんだな?」

女武道家「そうですねぇ…買い物とかはもうちょっと大きい町行ったりしてますし…」

竜騎士「まぁ、そんなもんか」


コック「俺の店にいらっしゃいませ」

 
トコトコ…

バイト「あ、コックさんお帰りなさい」

弟子「お帰りなさい」


コック「んむ。こっちは竜騎士と女武道家だ」


竜騎士「よろしくな」

女武道家「よろしく~♪」

 
バイト「あなたたちが!?」

弟子「コックさんに話を聞いてます、師匠の病を治してくれたんですよね!!」

竜騎士「まぁ、そうなるな」


弟子「わぁぁ、一度お礼を言いに行こうと思ってたんです!」

バイト「本当にありがとうございました!」


竜騎士「うん、こっちこそ色々とね」


弟子「師匠の店に、料理を食べにきた…って雰囲気でもなさそうですね?」

 
竜騎士「うん、まぁ…何か君たちに依頼がないかなーって思ってね」

弟子「依頼ですか?」


竜騎士「めっきり仕事もない状況なんだけど、月末までに結果を出さないとクビになりそうなんだよ」

バイト「えぇっ!?」

弟子「クビですか…私たちにとっては痛い言葉ですね」ブルッ

コック「そうならないように精進しとけ」コツンッ


竜騎士「そうなんだよ。クビ回避するために…どうするかってね」

女武道家「お金のやりくりの為に、わざわざ畑で自家栽培まで始める状況ですもんね」

 
弟子「依頼…依頼かぁ…」

バイト「私は今はないかなー。不自由もしてないし」


竜騎士「そうなんだよ。この街は、魔物の被害もないから軍の役割がないんだよなー」

弟子「どんなことでもいいんですか?」

竜騎士「ドブさらいとか、ネズミ退治とか以外なら」


弟子「いや、その…、"コーラル"がほしいんですよ」

 
女武道家「コーラル…?」

竜騎士「幸せを呼ぶというサンゴのことだ。なぜそれを欲しいんだ?」

弟子「いやぁ、実は母親がもうすぐ誕生日でして。そのプレゼントに欲しいんです」


竜騎士「とはいっても、コーラルは高いだろう?」

弟子「だからこそ、です。近くに泉があるのはご存知ですか?」

竜騎士「あぁ、水晶の泉のことか」


弟子「そうです、そこをずっと辿ると、不思議な場所があるんですよ」

 
竜騎士「不思議な場所?」

弟子「汽水域みたいな、泉なのにサンゴや海魚がいる場所なんです。そこにコーラルがあるという話を聞きました。」

竜騎士「汽水域…難しい言葉を知ってるな。しかし泉の奥にそんな場所が?」


バイト「でも、あそこって地元の人も近づかないじゃん」

弟子「そりゃアイツらがいるから…」


竜騎士「あいつら?」

 
弟子「インプの群です」

竜騎士「なんと…、インプが泉に?」

弟子「そこの泉で魚やらを採って生活してるという話を聞いて、地元の人間は近づきません」

女武道家「あ…、私も聞いたことある。昔、結構あそこで町人が事故に巻き込まれてたって話」


弟子「はい。今は誰も近づきませんから、その分被害もないんですけど…」


竜騎士「なるほど、そこを殲滅して安全域を伸ばしつつ、弟子くんの依頼を完遂する…か。悪くない」

弟子「お願いできますか?」


竜騎士「うむ、任された」

 
女武道家「インプは…どのくらい強いんですかね?」

竜騎士「なぁに、小悪魔っていうものが相応しい程度だ」

女武道家「なるほど、それなら安心できます」


コック「おい、お前は報酬は用意してるんだろうな?」

弟子「え、あ、はい…報酬…」


竜騎士「んー、いい情報と引き換えということで、そこまでのはいらないぞ」

 
コック「これはきちんとした依頼だ。それに対しての報酬は出すんだ。それが社会というものだろう」

弟子「は、はい…。えと、コーラルの相場が今、15万ゴールドだったと思います」


竜騎士「まぁそのくらいはするだろうな」

弟子「なので…えと…10万ゴールドだと、厳しいでしょうか」

竜騎士「あぁ、いいぞ」

弟子「…ありがとうございますっ!」ペコッ

 
コック「ふむ、ついでに頼みがある」

竜騎士「はい?」

コック「そこで見かけた食べれそうなもの、持ってきた分に応じて値段をつけて買い取るぞ」

竜騎士「!」

コック「食べれない品でも、買うときは買う。コーラルみたいのがあったら飾りでも使えるしな」


竜騎士「わかりました、任せてください」

女武道家「俄然、やる気になってきましたよ!」

 
コック「出発はいつだ?」

竜騎士「水辺の距離など把握してないので、地図を確認しつつ明日の朝に出発しようと思います」

コック「なるほど、それじゃ出発前にうちに来い」

竜騎士「?」


コック「弁当くらい作っといてやる」


竜騎士「そ、それは嬉しいですが」

女武道家「い、いいんですっかぁ♪」

竜騎士「でも、そこまでお手を煩わせるわけには…」

 
コック「あぁ、そのくらいはな。気にするんじゃない」

竜騎士「すいません、本当に色々と…」

コック「何、本当に気にするな」


女武道家「よっし、それじゃ支部に戻って作戦会議してからですね!」

竜騎士「あぁ、一応資料があるかもしれないからな。それじゃ、失礼します」


コック「あぁ」

弟子「よろしくお願いします!」

バイト「また、来てくださいね」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【夕方・支部】

ペラッ…


竜騎士「探すのには手間取ったが、情報はあったな」

女武道家「40年前の書類って…使えるんですかね」

竜騎士「使えないことはないだろう」


女武道家「地図によれば、泉は、川とぶつかってるところにインプがいるみたいですね」

 
竜騎士「泉自体から湧き水が出てると思ったが、河川から溜まった形なんだな…つか、なんで泉なんだ」

女武道家「結構広いですからね、湖といっても差し支えないかも?」


竜騎士「いや、そういうことじゃない。泉は、地下水がそこで湧き出て溜まった形のものをいうんだ」

女武道家「え?」

竜騎士「湖というのは、川から流れて出来ているものをいうんだ」

女武道家「たまたまじゃないですか?」


竜騎士「まぁ確かに、泉を湖と表記するとこも多いがな」

女武道家「そんな気にするほどじゃないですよ」

 
竜騎士「まぁ…いいか。で、歩いてどのくらいになりそうか…」

女武道家「近いですね、いつもの入り口から20分程度みたいです」

竜騎士「なるほど…もしインプを倒しきったら、魚釣りなんかもできるかもしれん」


女武道家「おぉ、魚釣り…♪」

竜騎士「なんだ、好きなのか?」

女武道家「昔、お爺ちゃんなんかとよく行ってましたから!」

 
竜騎士「感じにもよるが、潜って色々と金になるものが採れるかもしれんしな」

女武道家「潜るのは勘弁してください…」

竜騎士「もっと逞しく生きろよ!」

女武道家「頑張ってみます…」


女武道家「と、とりあえず…大体は憶測がつきましたね!」

竜騎士「そうだな。明日も朝早く出発する。一応釣竿道具なんか商店街から買っておくか?」ハハ

女武道家「…」キランッ

竜騎士「…まじで?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
【8月13日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬30万ゴールド

■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・マイナス2万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後502万ゴールド

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます、投下開始いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【8月14日・コックの料理店】


コック「それじゃ、昨日いった弁当だ」ガサッ

竜騎士「ありがとうございます」ペコッ

女武道家「コックさんのお弁当…」ジュルッ


竜騎士「…それじゃ、行ってきますね」

コック「あぁ気をつけろよ」

 
ガラッ…バタンッ


竜騎士「女武道家って、本当に欲望本能のままって感じだよな」

女武道家「そんな卑猥ですかね?」

竜騎士「そっちじゃねえよ!つか、そういう意味じゃねぇ!」

女武道家「ぬぅ…」


竜騎士「まぁ頑張るか」

女武道家「釣りのためにも!」

竜騎士「弁当食って、釣りに行くって…ただの遊びにしか見えないんだがな」

 
女武道家「立派な節約生活です!」

竜騎士「節約程度じゃ困るんだけどねー…」


女武道家「とりあえず、泉に向かいますか」

竜騎士「準備は整ってるし、ま…大丈夫か」

女武道家「ところで、インプってどんな相手なんですか?小悪魔だけじゃわかりませんよ」


竜騎士「ふむ」

 
女武道家「力が強いとか、魔法を使ってくるとか」

竜騎士「悪魔といっても、妖精の一種だ。主に魔法を使い、イタズラが好きなんだ」

女武道家「イタズラ…」


竜騎士「知性の高いものは人間の言葉をも使う。稀だがな」

女武道家「イタズラって、どういうのをするんですか?」

竜騎士「馬を水に引きずりこんだり、畑を荒らしたり、魔法で人を騙したりだな」


女武道家「最初のは洒落になりませんけど」

 
竜騎士「それと、インプには不思議な力があってな」

女武道家「不思議な力?」

竜騎士「腐った木を蘇らせて、再び果実を生らす、といった事も出来るらしい」

女武道家「へぇ、悪い子じゃないんじゃないですか?」


竜騎士「だがイタズラやら、人間に迷惑をかけるから…あまりよろしくないんだなこれが」

女武道家「そっかぁ…」

竜騎士「ま、それ以後の話は泉についてからだ」

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 水晶の泉 】


トコトコ…

女武道家「情報によると、この辺のはずなんですけど」

竜騎士「だいぶ歩いたな。地図によるとそろそろ川が…」


女武道家「あっ、あれじゃないですか!」

竜騎士「…だな。川が見える」

 
サラサラ…ヒュウッ…

女武道家「ん~…この辺、涼しいですね」

竜騎士「流れがあるからな。汽水域みたいなのはこの辺だと思うんだが」キョロキョロ

女武道家「海の匂いもなければ、インプもいませんね」


竜騎士「もうちょい川に近づいてみるか」


ゴボ…ゴボゴボ…

 
竜騎士「ん?」

女武道家「…泡?」

竜騎士「なんだこりゃ」


ゴボゴボゴボ…ボコンッ……


インプ『プハァッ!』ザバァンッ!!


竜騎士「!」

女武道家「!」

 
インプ『…ン』

竜騎士「い、インプ!?」

女武道家「びっくりしたぁ…」


インプ『…何だお前ら」


女武道家「しゃべったー!?」

 
インプ『…うるさっ』キーン


女武道家「ちっちゃーい!何ですかこれ、愛玩悪魔ですか!」キャッキャ

竜騎士「お、落ち着け、とりあえず落ち着け」


インプ『うるさい女だな…何か用か』


竜騎士「あ、あぁ驚かせてすまなかった。君はインプか?」

インプ『まぁ…インプだが。種族であって名前じゃないだろ、それは。お前は人間という名前なのか?』ケケケ


竜騎士「…」イラッ

 
インプ『というか本当に何の用だ?人間がここに来るのは久方ぶりだな』

竜騎士「ここはインプの集落みたいなのがあるんだと聞いたんだが…」

インプ『仲間なんぞとっくに死んじまったよ。もう俺だけだ』


竜騎士「何?」

インプ『何?も、何もない。それだけか?」


竜騎士「いや、この泉の川とのぶつかる部分に不思議な場所があると聞いてやってきたんだ」

インプ『不思議な場所?』

 
竜騎士「泉なのに、海のものがあるという話だ。コーラルがほしくてな」

インプ『あぁ。なるほどな』

竜騎士「場所、よかったら教えてもらえないか?」

インプ『ないよ』


竜騎士「何?」

インプ『そんなもの、もうない。いつの話をしているんだか』ケケッ

竜騎士「どういうことだ?」

インプ『…』プイッ

 
女武道家「インプさん、よかったら教えて下さい」ニコッ

インプ『…』シーン

竜騎士「…」イライラ


インプ『何か、美味い食べ物をくれたらしゃべってやってもいいかな』ケケケ


竜騎士「この…調子に…!」

女武道家「わかりました、このお弁当で…どうですか?」スッ

竜騎士「お、おい…」

 
女武道家「必要な情報じゃないですか!」

竜騎士「…いいのか?」

女武道家「仕方ないですよ…食べたかったですが」ハァ

竜騎士(へぇ…)


インプ『ほー、これはイイ弁当だな』ガパッ


竜騎士「それでいいだろ、話してくれ」

  
インプ『仕方ない。簡単にいえば、仲間…つまり同胞がいなくなったからだ』

竜騎士「同胞?」

インプ『俺らの魔力で、俺らが住んでいた集落だけ海や河の生命を生んでいたんだよ』


女武道家「それって、もしかして腐った木に実を宿らせるっていう、生命の魔法ですか?」

インプ『よく知ってるな。同胞が失われて、その魔法もなくなったってわけだ」


竜騎士「参ったな…、それじゃコーラルも採れないか」

 
インプ『コーラルがほしいのか?』

竜騎士「あぁ、コーラルを欲しがってる人がいるんだがな」

インプ『…お前ら、強いか?」


竜騎士「まぁ、やれるほうだとは思うぞ」

インプ『…来い』


竜騎士「ん…お、おう…」

女武道家「何なんでしょうね?」

竜騎士「さぁな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉の洞窟】


竜騎士「…ここは」


インプ『俺が今住んでる洞窟だ』

竜騎士「ほぉ」

女武道家「わぁ…ここは洞窟なのに湿気がなくて、過ごし易いですね」


インプ『ケケ、一緒に住むか?』

女武道家「そ、それはちょっと…」

 
竜騎士「で、何の用だ?」

インプ『まぁ待て。俺の宝コレクションから…』

ゴソゴソ…


竜騎士「…」


インプ『ほら、これだろう?』

スッ…キラキラッ…!!


竜騎士「!」

女武道家「うわあ~!凄いきれい…これがコーラル…」


インプ『欲しいんだろう?』

竜騎士「くれるのか?」

インプ『冗談いうな。これは同胞らの魔力と引き換えた、宝だぞ』


竜騎士「…」スチャッ


インプ『お、おい!』

女武道家「ちょ、竜騎士さん!武器なんか構えちゃだめですよ!」

竜騎士「どの道、害を成す魔物だろ。倒して奪ったところで…」

 
インプ『や、やめろって!俺がいないと、泉が死んでしまうんだぞ!』

竜騎士「泉が死ぬ?」

インプ『泉が見てないのか!あそこまでキレイなのは、俺が魔力を出してるからだ!」


竜騎士「それは不都合だな」スッ


インプ『…なんてやつだ』フゥ

女武道家「竜騎士さん、血の気多いですよ…」

竜騎士「ちょっと態度にイラついてしまった…すまんすまん」

 
インプ『で、商談といこうじゃないか』ケケッ

竜騎士「商談だ?」


インプ『お前は…えーと、名前は」

竜騎士「竜騎士だ」

女武道家「女武道家です」


インプ『そう、竜騎士。お願いがある」

竜騎士「なんだ」

 
インプ『この洞窟から歩いてしばらくしたところに、無人の家がある。そこにいるやつを倒して欲しい」

竜騎士「…無人の家?」

インプ『昔は人が住んでたんだが、そこの主人が死んで空家になった。それから俺たちの地獄始まった」

竜騎士「地獄だと?」


インプ『そこに次に住み着いたのは、厄介なことにグレムリンだったんだ』

竜騎士「グレムリン…お前らの子孫みたいなもんじゃないか」


インプ『あんなやつが子孫?やめてくれよ…、あいつは同胞を次々と襲い、食ったんだ…』

 
女武道家「た、食べた…?」ゾクッ

竜騎士「共食いか。悪魔同士じゃ、力を得るためによくある話だが」


インプ『生き残ったのは俺だけになってしまった。だから、あいつに復讐をしたいんだ』


竜騎士「はぁ…悪魔の依頼を受けることになるとはな」

インプ『だめか?』

竜騎士「コーラルのためだ。仕方ない、受けてやろう」

インプ『お…おぉぉ…』

竜騎士「ただし、きちんとコーラルはよこせよ?」


インプ『も、もちろんだ!』

 
竜騎士「うし、女武道家、いくぞ」

女武道家「は、はいっ」


インプ『…頼んだぞ、竜騎士』


竜騎士「おう、期待して待ってろ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉の廃墟】


ヒュウウウッ…


竜騎士「と、ここか」

女武道家「廃墟ですねぇ。グレムリンってどういうやつですか?」


竜騎士「最近確認された、いわば新種の悪魔だ。悪魔族の子孫ともいえるが、イタズラ性質は変わらん」

 
女武道家「いつまでたってもイタズラっ子ってことですね」

竜騎士「どの道、あまり強くはない。ヒュドラといい勝負ってところだろうよ」

女武道家「それなら安心ですね」


竜騎士「だが…気になることもあってな…」ウーン

女武道家「何ですか?」

竜騎士「悪魔同士の共食いによる、力の吸収だ。下手すれば上位魔物に匹敵する力もあるかもしれん」

 
ギシ…ギシ…

女武道家「埃が…」

竜騎士「相手もこちらに気づいているな…?」

女武道家「いつも思うんですけど、よくそういうの分かりますよね」


竜騎士「慣れ、か。何となしに分かるんだよ」

女武道家「なるほど…便利なものです」

竜騎士「それより、慎重に進むぞ、声はできるだけ出すなよ」


女武道家「は、はい」

竜騎士「そこの部屋…入ってみるぞ」


…ギィィィ…
 
女武道家「ど、どこにいるんでしょう…」

竜騎士「左側、右側…違う…正面、…どこだ…」


…ポタッ

女武道家「ひゃああっ!何ですかこれ」ベトォ

竜騎士「大声だすなって!」ボソボソ


女武道家「で、でも何かベトっとしたものが…上から…」ベトベト

竜騎士「…上から?」


…チラッ

 
グレムリン『ガァァッ!!』クワッ


竜騎士「上だ!!よ、避けろぉ!」ガバッ

女武道家「きゃああっ!」

ズザザ…ドォンッ!!


竜騎士「危なかった、天井に張り付いてやがったのか!」

グレムリン『グゥゥ…』ギロッ


女武道家「ぜ、全然可愛くない…、怖い…」

 
竜騎士「か、可愛くないって…どんなの想像してたんだよ」

女武道家「名前からして、何か可愛いと思ったんですよ!」

竜騎士「…」

女武道家「でも、実物はただの獣じゃないですか!話が違うぅ!」


竜騎士「た、頼むから少し黙っていてくれるかな」

女武道家「うぅ~…」

 
竜騎士「まぁ…こんなでっかいグレムリンは見た事がない…やはり力を…」

グレムリン『…ウゥゥ』


竜騎士「…」スチャッ


女武道家「どど、どうするんですか!?」

竜騎士「どうって、倒すんだよ。準備しろ」

女武道家「もーいやぁー!」スチャッ

 
グレムリン『ガァッ!!』バッ


竜騎士「見える、遅いぞ!龍突っ!」

ビュンッ!!!…ドシュッ!!


グレムリン『グゥッ!』

ズザッ…ドシャアッ…


女武道家「や、やった?」

竜騎士「浅い。あれじゃ効いてない」

 
グレムリン『グゥ…』ペロッ


女武道家「…」ブルブル

竜騎士「隙は与えない、龍突っ!!」ビュンッ!


グレムリン『!』ヒュンッ


女武道家「よけられた!」

竜騎士「ちっ…あんまり魔力を使うのは得意じゃないんだが…」

 
女武道家「どうするんですか?」

竜騎士「小火炎魔法っ!」


ボワッ!!…ボォンッ!!

グレムリン『グガァッ!!』


竜騎士「今だ、一瞬のひるみを逃さん、攻撃を叩き込むぞ!」

女武道家「え、えぇぇっ!」

 
タァンッ!!!…スチャッ…

竜騎士「高さから無理やりねじ込んでやる…龍落ッ!」ヒュウウウッ!!

女武道家「も、もー!なすがままです、掌底波ぁぁ!」グワッ!!


ブシュッ…ドゴォッ…!!!

グレムリン『~…ッ!』ビクビクッ


竜騎士「まだまだ!突き抜けろぉぉぉ!」

…ズブズブッ…ズブシャッ…!!


女武道家「うえぇん…ち、血がぁぁっ」

 
…ポタ…ポタポタ……

グレムリン『…』ユラッ


竜騎士「…っ」

女武道家「もう嫌です、倒れてくださいぃ~…」


グレムリン『…』

ドシャッ…


竜騎士「…おし、おっし!」

女武道家「よ、よかったぁぁ」ヘナヘナ

 
竜騎士「ま、終わってみりゃ一瞬だったか」

女武道家「もうこんな相手はこりごりです…服がグレムリンの血に染まっちゃってます…」

竜騎士「そのくらい」ハハハ


女武道家「支部に戻ったらお洗濯しなきゃ」

竜騎士「…水が真っ赤に染まりそうだな」


女武道家「とりあえず、報告しにいきますか?」

竜騎士「まぁ待て。こんあ大物のグレムリン、金になるぞ」


女武道家「え…え、え、え?まま、まさか…まさかですよね?」

 
竜騎士「…」スッ

女武道家「な、ナイフを取り出してどうするつもりです…か?」

竜騎士「…」ニコッ


女武道家「わ、私は外にいますからね!見ませんよ!!」

竜騎士「いや、君はこの家…廃墟の中に使えるものがないか調べてくれないか?」

女武道家「使える、ものですか?」


竜騎士「もう気配もないし、安全だろう。埃っぽのが辛いが…」

 
女武道家「わかりましたっ!」タッタッタ

竜騎士「ここから離れられると思って、にこやかに去っていきやがっが…」

>>378 竜騎士「ここから離れられると思って、にこやかに去っていきやがった…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タッタッタ…

女武道家「竜騎士さん!」

竜騎士「予想以上にでかくで時間かかるな…ノコギリでも持ってこればよかったか」

ゴリゴリ…


女武道家「ひぃぃ…き、気持ち悪いぃ…」

竜騎士「ん、どうした?」

女武道家「ううう…、面白いもの見つけましたよ…」

 
竜騎士「面白いもの?まさか…っ!」ゴクリッ


女武道家「見てください、この土地の歴史本ですっ」バッ

竜騎士「なんだ…前の住人の日記か何かと思ったぞ」


女武道家「よくある小説じゃないんですから…」


竜騎士「まぁたしかに、自分の住んでる土地の馴れ初めとか、実は知ってる人は少ないか」


女武道家「ちょっと面白そうですよね。戻ったら読んでみましょうよ」

竜騎士「そうだな…よし、とりあえず解体は大体済んだし…持ってくぞ」ガサガサ

 
女武道家「どうするんですかそれ…、本当に売るんですか…?」

竜騎士「インプに証拠として見せて、あとは売るだろう」

女武道家「売れるんですか…ね」


竜騎士「さぁ…わからんが、とりあえず持っていこう」ヨイショ

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉の洞窟】


ザッザッザ…

竜騎士「おーい」

女武道家「インプさーん!」


インプ『!』

竜騎士「帰ったぞ、ほらよっ」ポイッ

…ドサッ!

 
竜騎士「グレムリンの死体だ。証拠になるだろ、どうだ」

インプ『こ、これは確かに…』ゴソッ

竜騎士「…どうだ?約束通り、コーラルをもらおうか」


インプ『…ほらよ』スッ

竜騎士「確かに、頂いた」ゴソッ


インプ『…』ジッ

竜騎士「なんだよ」

 
インプ『ケケ…、人間にもいい奴がいるもんだな』

竜騎士「ふん、それじゃあな」クルッ


インプ『お、おい待てよ!』

竜騎士「何だ?まだ何かあるのか?」

インプ『その、あのな。ウソついてたことがあるんだよ』

竜騎士「ウソだ?」


インプ『…俺は最後の生き残りなんかじゃない』

 
竜騎士「何だと?まだ他に生きてるやつがいるのか?」

インプ『い、いやそうじゃない』

竜騎士「?」

インプ『お、俺は…、もう…生きていない…』

竜騎士「どういうことだ?」


インプ『…』パァッ

竜騎士「お、おい、お前体が透けて…」

女武道家「…!」

 
インプ『俺らは全員グレムリンに食われちまった。グレムリンの胃の中で、同胞が俺に魔力をかけてくれた』


女武道家「魔法…?」


インプ『生命の魔法だ。俺は確かに死んだはずだったが、目が覚めると、ここにいたんだ』

竜騎士「ばかなっ!いくら生命の魔法といえども、生物が死から再び目覚めるなど!」

インプ『ケケケ…俺だって信じられなかったよ。だけど、こうやっていたのが真実だ』

竜騎士「…っ」


インプ『だけどな、恨みが晴らされて…もう俺は…ようやく皆のもとへ行けるようだな』パァッ

 
女武道家「…」

竜騎士「幽体っ…!」


インプ『俺が消えたら、そこにあるコレクション…持ってっていいぜ。泉は心配するな、あれもウソだ』ケケケ

竜騎士「はっ、面倒なウソ、ありがとよ」

インプ『…じゃあな』


竜騎士「あぁ、またな」

女武道家「インプさん!!」


…パァァァッ……シュウウウンッ……

 
竜騎士「…」

女武道家「いなくなっちゃい…ましたね」

竜騎士「いけすかねぇやつだったけど、仲間のことを思えるスゲーやつだった…と思う」

女武道家「ですねっ!」


竜騎士「ま、あいつの言った通り、あいつの貯めてたモノ貰うとするか」ゴソゴソ

女武道家「…本当に逞しいですね」

竜騎士「…お、おぉ…、すげえ…、いいものが沢山あるな…と、思ったが…2つくらいしか使えそうなのがない」


女武道家「どんなのですか?」

 
竜騎士「天然の水の魔石に銀の細工のピックハンマー!」

女武道家「銀の細工のピックハンマー?」


竜騎士「洞窟、つまり鉱石の採掘道具だ。銀の魔力が込められてて、力を入れずとも簡単に鉱石を掘れるんだ」

女武道家「へぇぇ、よくわかりませんが…売れるんですか?」

竜騎士「売る…うーん、少し古いから売れるかわからん。新品だと60万ゴールドはくだらないんだが」

女武道家「それじゃどうするんです?」

竜騎士「ま、持って帰るだけ持って帰ろう」ゴソッ

 
…バシャッ!!


竜騎士「ん…?」

女武道家「泉のほうですよ」

竜騎士「何の音だ、まさかあのインプ、生きてたり…」


トコトコ……、バシャッ!!…パシャパシャッ…


竜騎士「!」

女武道家「い、泉に魚が沢山…」

竜騎士「魚って…ま、待て。あれ海魚だぞ!」

 
女武道家「えっ?」

竜騎士「インプのやつ、最後に魔力を使ってこの辺一帯の性質を変えやがったんだ。魔力の痕跡がある…」

女武道家「実は凄いインプだったんじゃ…?」

竜騎士「そうは信じられないが…実際あるしなぁ…」ポリポリ


女武道家「あ、釣り道具ありますよ♪」

竜騎士「しゃーねー…ちょっとだけ世話になるか」ゴソゴソ

女武道家「ですね!」


竜騎士「手間かけさせてもらった分…楽しませてもらうからな!」ビュッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

1日分すべて書こうとしましたが、一旦きりのいい所であげることにしました。
本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます、投下いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【夕方・コックの料理店】


ガランガランッ!!

女武道家「ただいまーです!」


弟子「…竜騎士さん!」

コック「お、戻ったか。どうだった」


竜騎士「コーラルはもちろん、買い取ってもらえそうなもの…持ってましたよ」ドンッ

 
コック「ほぉ、見せてくれ」

竜騎士「まずはコーラル、これでいいか?」

ゴソゴソ…ドサッ


弟子「でっかーー!!え、こんなの採れたんですか!?」

竜騎士「まぁな。お気に召したか?」ハハ

弟子「は、はい!すぐにでも、約束のお金、持ってきますね!」タタタッ


コック「立派なもんだな。で、売れそうなものを見せてもらおうか」

 
竜騎士「天然の水魔石、大型グレムリンの肉と皮、それと海の幸ですね」スッ

コック「大型グレムリン?」

竜騎士「泉から少し歩いた場所にある、無人の家に住み着いていた悪魔です。ついでに退治してきました」

コック「そんな話聞いたことないな」


竜騎士「ちょっとした面倒な状況で、そういうことになりました」ハハ…

コック「そうか。ふむ…天然の水魔石は料理にも使えるし、海の幸はこの辺じゃ珍しいから買い取れるが…」

竜騎士「やっぱりグレムリンはいらないですかね?」

 
コック「うーんむ…さすがにこれは…料理したことない上に相場もわからんな」

竜騎士「生肉ですから、中央の商人にお願いしようとすると腐っちゃいますが、勿体ないですよね」

コック「…ちょっと味を見ても?」

竜騎士「あ、どうぞ」


…ペロッ

コック「…っ!!」

竜騎士「ど、どうですか?」


コック「しょ、しょっぱ…すぎる…何だこれは」ゴホッ

 
女武道家「え、しょっぱい?どれどれ」

スッ…ペロッ

女武道家「ひ~~っ!しょっぱいぃ!」


コック「…ゲホゲホッ!」

竜騎士「あー…使えませんかね」


コック「これは…さすがに…」パァッ

竜騎士「ん?」

コック「お」

女武道家「え?」パァッ

 
…パァァッ!!


竜騎士「これは…生命の魔力の光だ」

女武道家「な、なんだか力がみなぎって来ましたよ!」

コック「なんだこの体の奥から熱くなるような力」


竜騎士「そ…そうか。コイツはインプの力を吸収していたから、生命の魔力を宿していたのか!」

女武道家「ふわあー!力がみなぎってますぅー!!」モリモリ

竜騎士「だが…少々強すぎるようだな…」


コック「ふむ面白い。大体の値段で買い取らせてもらってもいいか?」

 
竜騎士「え、買い取ってくれるんですか?」

コック「滋養強壮として使えそうだ。凍結させれば長く持ちそうだしな」

竜騎士「ありがとうございます!」


コック「海鮮物が5万、水魔石が25万、グレムリンは100万でどうだ?」ゴソゴソ

竜騎士「いいんですか、そんな高値で!」

コック「まぁ滅多に出回らないような品だからな。受け取ってくれ」スッ

竜騎士「…」ペコッ


女武道家「あははー!」ブンブン

 
タッタッタ…

弟子「竜騎士さん…お待たせしました、約束の10万ゴールドです!」スッ

竜騎士「あいよ、確かに」チャリンッ

女武道家「あいっ、ありがとうございますっ!」ブンブンッ


弟子「…どうしたんですか?女武道家さん…何か様子が…」


竜騎士「元々ああいう気質があったんだ。優しく見守ってくれ」ポンッ

弟子「は…はい…?」


竜騎士「それじゃ、これで失礼しますね」

 
コック「あぁまたな」

弟子「ありがとうございましたっ!」ペコッ


トコトコ…

女武道家「ばいばーい!」ブンブンッ

竜騎士「お前はいい加減テンション落とせ」ゴツッ

女武道家「いたいっ!うへへ…」

竜騎士「…」


ガランガランッ…バタンッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

  
【8月13日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド

■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・プラス138万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後362万ゴールド

1G何円ぐらいだっけ?

本日は非常に短めですが、ここで終了となります。
毎日更新をしていましたが、諸事情により次の更新は2日後になります。
ありがとうございました。

>>410
目安で、1円=1Gという考えで宜しいです

次回作はこっちが終わってからかな?

ありがとうございます。
>>414 
別のシリーズのほうは、まだ未定です。
その前に、別の新作のほうを進めているので、ある程度貯まったら公開する予定ではあります。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・8月14日・支部】


…ペラッ…


竜騎士「…ふーん」

トコトコ

女武道家「おはようございます…ふわぁ」

竜騎士「おはよう、お前な…昨日ドンだけ大変だったか…」

女武道家「あ~…ご迷惑おかけしました。ちょっと私には、あのお肉は強すぎたようで…」アハハ

竜騎士「反省してるならよろしい」

 
女武道家「え、えと…土地の歴史の本、何か面白いこと書いてありましたか?」アセッ

竜騎士「いーや、まだ分からん。元々ここは、商人たちが切り開いた土地らしい」

女武道家「商人が?」


竜騎士「分かりやすいようにいうと…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
商人A「中央から結構離れてるけど、キレイな水源もあるし町作れるかも」

商人B「だったら、商人が住む商人たちの町とかどーよ」

商人C「あぁ、いい考えかもね。だったら、凄い商店街とか作ったりしてえな」


商人A「おっしゃ、色々な職人を集めて、一代で素晴らしい富を得よう!」

商人B「あぁ、がんばるぞ!」

商人C「やってやるぞ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
竜騎士「ってわけだな」

女武道家「わー…たんじゅーん…」

竜騎士「町の歴史なんてそんな感じだろ。今も商店街という歴史は残ってるみたいだけどな」

女武道家「今の商店街に繋がってるってことですね」


竜騎士「だが残念ながら、凄い!っていうほどにはならなかったみたいだな」

女武道家「何でだったんでしょうね」

竜騎士「…戦争のせいだ」


女武道家「戦争?」

 
竜騎士「もう何百年も前に起きた、3度の戦争分かるか?」

女武道家「いえ…聞いたことあるくらいです」


竜騎士「1度目は魔王と人類の全面戦争。2度目は人類同士が争った大陸戦争」

女武道家「3度目は?」

竜騎士「一度、この世界が王政になったことがある。その時に起きた王政反逆軍と王政側の大規模な戦争だ」

女武道家「あー…全部絵本で読みましたよ!」


竜騎士「え…絵本…。まぁいい、その戦争の影響を著しく受けたのがこと土地だったってわけだ」

 
女武道家「なるほど!」

竜騎士「魔物も当時は多く住み着いてたみたいだな。魔物にとって、あの泉にしろ、森にしろ、生活するには困らないからなぁ」


女武道家「それから、どうなったんですか?」

竜騎士「戦争が?この土地が?どっちだ」


女武道家「この土地がです」


竜騎士「…んーとな…」ペラッ

女武道家「…」ワクワク

 
竜騎士「…なるほど。だいぶ飛ぶが、ここまでくれば…スミスさんの話通り。あの天然洞窟の存在だ」

女武道家「鉱石が採れるところですね」

竜騎士「洞窟が発見されたのが今から80年前。魔石やらレアメタルが多く採れた、とある」

女武道家「レアメタル?」

竜騎士「希少鉱石。貴重な鉱石ってことだ」

女武道家「ふむふむ」


竜騎士「あったあった、25年前。洞窟の深部にて魔物が確認、鉱夫36人を死傷させる大惨事となる」

女武道家「そんなに!?」

 
竜騎士「36人か。中はよっぽど広いのか?」

女武道家「洞窟怖いですね…」

竜騎士「お前は泉も洞窟も森も、全部怖いじゃねーか。田舎に住んでるのに都会っ子って…」

女武道家「仕方ないじゃないですか!」


竜騎士「はは…、っと、ここで本は終わってる」

女武道家「あれ?最近のことは書いてないんですか?」


竜騎士「発行年がちょうどそこまでだ」

女武道家「あぁ…そういうことですか」

 
竜騎士「ご丁寧に、本の中に当時の洞窟内部の地図まで封入されてるぞ」ペラッ

女武道家「ふむふむ」

竜騎士「…ふーん、思ったより複雑ではないな。主坑道みたいなのがきちんと伸びてるし」


女武道家「これが単純って…」

竜騎士「何箇所か落盤事故、封鎖区間もはっきりしてるな。んー…」

女武道家「どうしました?」

 
竜騎士「…ふむ」

女武道家「?」

竜騎士「あれが…つまり…」ブツブツ


女武道家「何か嫌な予感…、畑に水やりながら散歩に行ってこようかな…」コソッ


竜騎士「…女武道家」ガシッ

女武道家「あ、嫌、何ですかその笑顔、絶対いつもみたく変な場所に行くつもりじゃ」

竜騎士「…」ニッコリ

…ゴソゴソ


女武道家「何でピックハンマーを…、ちょ、洞窟の地図を剥がして…あ、待って…あぁぁぁっ!」ズルズル

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 天然洞窟 】


ヒュウゥゥゥッ…

竜騎士「おふっ…、相変わらず洞窟の中から冷たい風が」ブルッ

女武道家「本当に行くつもりですか…」

竜騎士「多少古いが、地図はあるし大丈夫だって!」


女武道家「で、でもぉ…」

竜騎士「…そんなに心配か?」ウーン

 
女武道家「そ、そうですよ!」ハッ

竜騎士「うーむ」

女武道家「第一、落盤やらで頭に岩が当たったり、昔の地図と違って色々変わってたりするかもしれませんよ!」ビシッ

竜騎士「確かにそれは困るな…」


女武道家「でしょ!ってなわけで、今日は大人しく別の場所に…」


竜騎士「よし、ちょっと待ってろ」

タッタッタ…


女武道家「ふぇ?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


竜騎士「ただいま…お待たせ!ほいっ、これ装備しとけ」スッ

女武道家「な、何ですかこれ、っていうか…」


スミス「やぁ!」ビシッ


女武道家「何で鉱夫の格好したスミスさんがいるんですかぁ!」

 
スミス「いやー、竜騎士くんが天然洞窟入るから着いてきてくれっていうからさ」

竜騎士「魔物が出たら守るし、良い鉱石が出たら安く譲るっていう話で」


女武道家「本気じゃないですかぁ!」

竜騎士「道具やら、防具やら、補えそうなのをスミスさんが持ってたのを思い出して。借りようとね」ハハハ

女武道家「うぅ…もう何言っても無駄ですね…大人しく装備します…」パサッ


竜騎士「ははは、それじゃ出発!」


スミス「はいよっ!」

女武道家「あうう…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【天然洞窟・内部】


カツーン…カツーン…


女武道家「スミスさん」

スミス「んー?」

女武道家「スミスさん、長い時間は戦えないって言ってましたよね?」

スミス「あぁ、そうだね」


女武道家「こういうことは大丈夫なんですか?」

 
 
スミス「こういうこと?」

女武道家「冒険っていうか、探索っていうか…」

スミス「あー、まぁね。一応人並みには体力はあると思うよ。古傷が痛むとかそういうことはあるけどね」

女武道家「なるほど」


竜騎士「じゃなかったら、そもそもクソ重い鉄槌使って武器防具なんて作れないだろ」

女武道家「そういえばそうですね」


スミス「よっぽどな相手が出ない限りは大丈夫だと思うよ」

女武道家「それならいいんですが」

 
竜騎士「…」キョロキョロ

女武道家「まっすぐ広い坑道が続いてますね」

竜騎士「分かれ道も多いけど、この一本道さえ進んでれば大丈夫だろう」


スミス「地図見せてくれ」

竜騎士「どうぞ」スッ

スミス「…、このまま真っ直ぐ行くと、事故現場とやらに繋がるな」

竜騎士「まだ多分、魔物はいますよね」


スミス「どうだろうな?もういなかったりするんじゃないか?」

 
竜騎士「と、いうと?」

スミス「その魔物は、人が侵入してきたから捕食に来ただけってかもしれないだろ?」

竜騎士「あ、なるほど」

スミス「そもそも、生物が住み辛く、虫しかいないような場所に人間の脅威になる魔物がいるか?」


竜騎士「考えてみれば…」


スミス「そうだろう?つまり、人が入らなくなった洞窟の最深部は、安全な可能性もあるということだ」

竜騎士「そう願いますよ」

女武道家「本当に…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【天然洞窟・深部】


カツンカツン…


竜騎士「この辺が事故現場だ」

女武道家「あいたっ!」ゴツッ

竜騎士「どうした?」

女武道家「何かに引っかかりました…」


スミス「お、これは」スッ

竜騎士「なんです?」

 
スミス「当時の人たちの道具のようだ」ボロッ

竜騎士「錆まくってますね。使えそうには…ないか」

スミス「まぁ仕方ないさ」


女武道家「…お?竜騎士さん、このスイッチなんですかね!」

竜騎士「触るなよ!」

スミス「不用意にその辺のもの触ると危ないぞ!」


女武道家「え?」カチッ

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます、投下開始いたします

 
バチ…バチバチッ…!!


スミス「何の音だ!」

竜騎士「何を押した!」

女武道家「このスイッチを…」


パァッ…


竜騎士「…明るくなった」

女武道家「洞窟の中を明るくするスイッチだったんですね」アハハ

竜騎士「アハハじゃないぞ!何かあったら、このまま閉じ込められることだってあるんだ!」

 
スミス「明かりのスイッチだったのか…、良かった良かった」

女武道家「ごめんなさい…」

スミス「次から気をつけるってことで、許してあげるさ」

女武道家「はい…」


竜騎士「ったく…」


……ギャァァァァッ!!!!!


竜騎士「!」

女武道家「!?」

スミス「何だ、今の悲鳴は!」

 
ギャァァァッ!!!…アァァァ……シーン…


竜騎士「耳がいてぇ…何だよ一体!」

女武道家「収まり…ましたね」

竜騎士「こっち側からか…」


スミス「こんな最深部に人?いるわけがない…よな」

竜騎士「…と、なると」

スミス「いるな。魔物、が」


女武道家「なな、何がいるんでしょうか…」

 
竜騎士「この過酷な中で生き抜いてきた魔物だ。相当なやり手かもな」

スミス「どうする?戻るか」

竜騎士「まさか。売れるものかもしれませんしね」スチャッ

女武道家「やっぱり、言うと思いましたよ…」


スミス「はは、こんな男の付き合いで君も災難だな」

女武道家「災難です!!…けど、ちょっとだけ今までと違って楽しいなとか思える部分があるんですけどね」ヘヘ

竜騎士「…はは」


スミス「と、叫び声のほうへ行ってみるか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

チャポン…


竜騎士「…地底湖!」

女武道家「わっ…綺麗」

スミス「透き通るような水だな…」


竜騎士「…」キョロキョロ

女武道家「どうしました?」

 
竜騎士「…敵の気配がない。確かにこの辺から声が聞こえたんだが」

スミス「ふむ、確かにな」

竜騎士「んー…」


女武道家「あ、何ですかあれ?」

竜騎士「あれ?」

女武道家「ほら、湖の脇に並んで生えてる草。こんなところに草生えてるんです?」


竜騎士「…草?」

 
スミス「あぁ…草みたいだな」

女武道家「もしかしたら、珍しい植物かもしれませんよ」

竜騎士「…こんな場所に草…?陽も当たらぬような場所で、水だけで…?」


女武道家「ほらほら、善は急げですよ!」タタタッ

竜騎士「…洞窟…叫び声…水、草…」ブツブツ

女武道家「抜いてみますよー!」


竜騎士「…っ!!」ハッ

女武道家「せーのっ…」グググッ

 
竜騎士「待て…やめろっ!それを抜くなぁぁ!」

女武道家「えっ?」


ググッ…ズボッ…


女武道家「…え、これ…!」

竜騎士「スミスさん、女武道家、耳を塞げぇぇっ!」

 
女武道家「…ひっ!」ギュッ

スミス「っ…!」ギュッ

 
マンドラゴラ『ギャアアアァァッ!!!』


竜騎士「~~…っ!」ビリビリ

スミス「くっ…!」キーン

女武道家「み、耳がぁぁっ!!」ズキズキッ


マンドラゴラ『アァァァ…ァ…』

…ヘナッ


竜騎士「はぁ…はぁ…っ」

 
女武道家「…」フラッ

竜騎士「ちっ…」ダッ

…ダダダダッ…ガシッ!!…ズザザザッ…!!


女武道家「…」

竜騎士「おい、しっかりしろ!」

スミス「く…」フラフラ

竜騎士「スミスさん、大丈夫ですか!?」

 
スミス「何とかね…」

竜騎士「迂闊だった、あそこまで状況が揃ってて…っ、女武道家、目ぇ覚ませ!」

女武道家「…」ユサユサ


スミス「今のはなんだったんだ…?」

竜騎士「マンドラゴラです…くそっ、気付け薬なんて持ってないぞ!」

 
スミス「こいつが…マンドラゴラ…ってやつなのか」

マンドラゴラ『…』


竜騎士「女武道家、起きろぉぉ!」バンッ

女武道家「…うっ…」

竜騎士「!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゴクンッ…

竜騎士「水飲んで、落ち着けたか?」

女武道家「はぁ…はぁ…、一体私はどうなったんですか…?」

竜騎士「小さいサイズで助かった。もう一回り大きかったら、俺らは全員あの世だったな」


女武道家「あの…世…!?」ゾクッ


竜騎士「こいつはマンドラゴラ。錬金術、魔術における貴重な素材の1つって感じか」

 
女武道家「マンドラ…ゴラ…」

竜騎士「見た目はただの小さな植物だが、実際は生きてる魔物だ。抜くと同時に死んでしまう」

女武道家「じゃあ、こいつはもう死んでるんですか?」


マンドラゴラ『…』


竜騎士「あぁ。そして死ぬ時、さっきのような叫び声を出すんだが、あれが厄介でな…死を誘う最悪の声なんだ」

女武道家「よ、よく私生きてましたね…」

竜騎士「たまたま小さめだったからだろう。だが耳を防がなかったら、今も目は覚ましちゃいないさ」

女武道家「…」

 
スミス「…とにかく皆が無事でよかったよ」

竜騎士「本当にそうですね」

スミス「しかし、マンドラゴラは抜いていけないものなのか?」

竜騎士「えっ?」

スミス「貴重な材料となるんだろう?高値で売れるんじゃないのか?」


竜騎士「そりゃ1つ数十万はくだらないですが、命を引き換えにするのはちょっと…」

スミス「手段はないのか?」

竜騎士「あるっちゃあります…が…」


女武道家「どんな方法です?」

 
竜騎士「…犬」

女武道家「わんこ?」

竜騎士「犬の首輪と、マンドラゴラの葉をくくりつけて、主人は離れる。そして、犬を呼ぶんだ」

女武道家「え…そ、それって」


竜騎士「飼い主は遠くで声を聞くだけで、何もない。だが、犬は死ぬ。それでマンドラゴラも死ぬ。一件落着ってわけだ」

女武道家「そ、そんなことダメですよ!!」

竜騎士「これが今のマンドラゴラの入手方法だ。市場に出回っているほとんどが…な」


スミス「そうだったのか…」

女武道家「かわいそうすぎますよ…」

 
竜騎士「俺も初めて聞いた時は残酷すぎると思ったさ」

女武道家「…」

スミス「そりゃここにあるのを抜くのは無理だな…、この1本だけ入手したということで…プラスだと考えよう」

竜騎士「そうですね」


女武道家「…うーん」

竜騎士「ほら、女武道家…いつまで落ち込んでるんだ。探索に戻るぞ」

女武道家「あ、竜騎士さん」

竜騎士「ん?」

 
女武道家「マンドラゴラって、光にも弱いんですか?」

竜騎士「いや?」

女武道家「ですよね。現に今の明かりの下では叫びませんし」

竜騎士「何が言いたい?」


女武道家「じゃあ…さっき、明かりを点けたときに響いたマンドラゴラの声は…なんですか?」

竜騎士「あ…」ハッ

スミス「そうか、魔物の声だけだと思って忘れていた、マンドラゴラが声をあげるのは…」


竜騎士「地中から"抜かれた時だけ"…だ」

 
ザシュッ!!!…

ザッ…ザッ…グルル……

 
スミス「!」

女武道家「!」

竜騎士「!」


ザッザッザ…

???『グルル…』


女武道家「な、ななな…」

スミス「こりゃあ…たまげた」

 
竜騎士「はっ…そういうことか…」


ファイアドレイク『グ…』


竜騎士「ファイアドレイク…竜族…か」

女武道家「りりり、竜!?」

スミス「これはちょっと不味いんじゃないか…?」タラッ


竜騎士「栄養のあるマンドラゴラを食べて生き続けていたってことか」

 
ファイアドレイク『…』ギロッ


スミス「どうするんだ…?」

女武道家「ここ、こ…今度こそ死んじゃいますか…?」クラクラ

竜騎士「ドレイクは竜族なだけで"竜"ではない。もしかしたら…ということもある…」スチャッ

スミス「戦う気か!?」

女武道家「いけるんですかっ…」ブルブル


竜騎士「いや、あくまで足止めだ。女武道家、スミスと外へ出てくれ」

女武道家「竜騎士さんは!?」

 
竜騎士「俺まで逃げたら、こいつが外に出ることになる。それだけは避けなければ」

女武道家「危険ですよ!」

竜騎士「逃げたら周辺の町が危険にさらされる!いいから逃げてくれ!」


女武道家「ううぅ…」

スミス「…竜騎士くん」


竜騎士「これでも竜を狩る者、"竜騎士"ですよ。心配しないでください」ニコッ

ファイアドレイク『グガァァッ!!』クワッ

 
ドッドッドッド…ガキィィンッ!!

ファイアドレイク『…ッ!』ググッ

竜騎士「ぬぐっ…」ブルブル


女武道家「竜騎士さんっ…!」

竜騎士「早く行けっ!!」


女武道家「…ごめんなさい…!いきましょう、スミスさん…」ダッ

スミス「それが懸命だ。今は彼に従おう」ダッ

 
タッタッタッタ…


竜騎士「ふーっ…やっと行ったか…」

ファイアドレイク『…』ググッ


竜騎士「最初から全力だ…龍突っ!」ブワッ

…キキキィンッ!!!

ファイアドレイク『…グ?』


竜騎士「おいおい、全然効いちゃいないのか…」

ファイアドレイク『グゥアッ!』ボワッ

 
竜騎士「ぬあっ!!」
 
ボオオッ…ドゴォォォンッ!!

…パラパラ…


竜騎士「おーあちち…、予想以上の火炎だな、ドレイクさんよ」

ファイアドレイク『…グアアアアッ!!』クワッ


竜騎士「…参ったね」

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆さん沢山の意見や感想など、ありがとうございます。

投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


タッタッタッタッタ

女武道家「うう…」グスッ

スミス「…女武道家」


女武道家「もっと私が強かったら、立ち向かえたんでしょうか」

スミス「わからんさ。今は彼を信じるしかない」

女武道家「外に出たところで…どうすれば…」


スミス「軍の通信機器で、応援を呼ぶことは?」

 
女武道家「壊れてるみたいなんです…」

スミス「なんと…、どうするか…」


女武道家「…」ピタッ


スミス「女武道家?」

女武道家「やっぱり…逃げることは…できないです」

スミス「だが、今の我々では足手まといになるだけだぞ」

女武道家「で、でも…でも…」

 
…ドゴォォォォンッ…!!パラパラ…


女武道家「…」

スミス「なんて轟音だ…竜騎士君は…」


女武道家「やっぱり…助けに行きます!」

スミス「…死ぬかもしれんぞ」

女武道家「竜騎士さんが命を張って私たちを助けようとしてるのに…見過ごすなんて!」

スミス「玉砕覚悟か?」


女武道家「これでも…私は軍人です!」

 
スミス「…」

女武道家「だから、戻ります…戻らせてください!」

スミス「まぁ待ってくれ。なら、一旦俺の鍛冶場に行く」

女武道家「え?」


スミス「俺の仕事、昔と、今。何だったか考えてみてくれ」ニカッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドシャァァッ…ゴォォォ…


竜騎士「げほっ…随分ハデにやってくれるじゃないの…」

ファイアドレイク『グルル…』


竜騎士「さすがは上位種、一筋縄じゃいかない…ってか…」

ファイアドレイク『グゥオッ!』ボワッ

竜騎士「また火吹きかよ…、ぬあああっ!」


ドゴォォォンッ…パラパラパラ…

 
竜騎士「…ふぅ、ふぅ…」

ファイアドレイク『グルル…』

竜騎士「あんま狭い場所で炎吐かないでくれるか…空気も薄くなるだろうが…」

ファイアドレイク『グゥオッ!!』ボワッ

…ドゴォォォンッ!!


竜騎士「くそ…聞いちゃいねえ」

ファイドレイク『グウアッ!!』ビュッ

竜騎士「!!」


ザシュザシュッ!!

  
…ポタ…ポタポタ…

竜騎士「ぐ…早すぎて…見えなかった…う、腕が…っ」ガクッ

ファイアドレイク『グゥ…』

竜騎士「…まだだ、お前を最高の肉にしてやる…からなっ!」スチャッ


ファイアドレイク『…』

竜騎士「龍刃っ!!」ブゥンッ!!

…ガキィィンッ!!…


ファイアドレイク『グググゥゥッ!!』ググッ

竜騎士「まだ足りないのか…うらあああっ!」ググググッ…

 
…ブシュッ…!!

竜騎士「!」

ファイアドレイク『…』


竜騎士「…っ、俺の、腕が…先に壊れたか」ズキンッ

パッ…ガランガランッ…


竜騎士「…」ヨロッ


ファイアドレイク『グ…グルルル…』ギロッ

竜騎士「2人…逃げられたか…?無事なら…いいんだけどな…」


ファイアドレイク『グゥアッ!!』ボワッ

竜騎士「もうちっと生きていたかった…かな」

 
…ゴォォォッ…ボォンッ!!!

竜騎士「!」

ファイアドレイク『!』

 
竜騎士「空中で炎が爆発…した?ま、まさか!」クルッ

女武道家「我が一族に伝わる、気合を飛ばす"気功波"ですっ!」


竜騎士「お前…逃げなかったのか!」

女武道家「もっと生きたいんですよね…お手伝い致します!」

竜騎士「ばかやろう!お前じゃドレイクは無理だ!」

 
女武道家「で、でも…見捨てるくらいなら、一緒に戦って倒れたほうがましです!」

竜騎士「…っ」

スミス「少しだけだが、俺も行くぞ!」スチャッ

竜騎士「ス、スミスさんまで戻ってきたんですか!」


スミス「武器を取りに行って遅れたんだ。久々だな…この感覚」チャキンッ

竜騎士「2人とも…」

女武道家「竜騎士さん、一緒に戦います!」

 
ファイアドレイク『グルルル…』


スミス「…すげぇ気迫だな。弱点とかはないのか?」

竜騎士「竜族は、弱点という弱点は…ないんです。唯一あるのは、"心臓"」

スミス「つまり、心臓を突き刺せばいいんだな?」

竜騎士「簡単なようで、あそこの皮膚は硬く、単純にはいきませんよ」


女武道家「私はどうすれば…?」

竜騎士「気功波、っつったか。あれで前線に出る俺らを援護してくれ」

女武道家「はいっ!」

 
スミス「とにかく弱らせないと話にはならんのか?」

竜騎士「そうです。攻撃が通るのは、硬い皮膚のある隙間の…関節」

スミス「ドレイクの左腕から血が出ているな…、あれは竜騎士くんが?」

竜騎士「はい、ですが…ドレイクに斬られた腕が先に潰れ…完全に切断とはいけませんでした」ズキンッ


スミス「…任せてくれ」ダッ


竜騎士「女武道家、援護!」

女武道家「任せてください…気功波ぁっ!」ビュッ

 
ファイアドレイク『グガ…ッ!』ドォンッ


スミス「ここだ、大斬っ!」ブン!!

…ガキィンッ!!

竜騎士「惜しい、カスった!」

スミス「くそっ…あの動く的で、よく狙って関節に当てられたな」ズザザ

竜騎士「ま、それで食べてますからね」ハハ…


スミス「もう1度、だな」

竜騎士「今度は俺も切り込みます…」スチャッ

 
スミス「その腕、大丈夫か?血が出ているようだが」

竜騎士「なんのこれしき。現役の戦士が、引退した人に遅れをとるわけにはいきませんからね」


スミス「ふ…、まだ若いやつには負けないぞ!」ダッ

竜騎士「スミスさん、無理をなさらずに!」ダッ


女武道家「支援はお任せを!」ググッ!


ファイアドレイク『グルルァァッ…!!』ググッ…

 
スミス「おりゃああっ!」ブンッ!!

竜騎士「刺さりやがれぇぇっ!!」ビュンッ!!!

ファイアドレイク『グウアアアッ!!』ボワッ!!


竜騎士「くっ、また火球…っ!」

…ボォォォッ…ドゴォンッ!!!

女武道家「気攻波…っ!2人を燃やしはしませんよ!」


竜騎士「ナイス…ココだぁぁっ!」タァンッ!!

 
スミス「飛んだ…高い!」

竜騎士「この高さからの一撃なら…どうだっ!龍落っっ!!」ヒュウウウッ


…ガキンッ…ズッ…ズブッ…

竜騎士「!」

…ズブズブズブ…ドシュウッ…!!!


竜騎士「肩を貫いた!」

スミス「おぉ!」

 
ファイアドレイク『グギャアアッ…!!』

竜騎士「…ふんぬっ!」ズボッ

…ポタポタポタ…


ファイドレイク『グ…』ダランッ


スミス「動きが鈍くなったな…いけるか!?」

竜騎士「だが、この槍だけじゃ火力が足りないみたいですね…」

スミス「はは、それじゃ…これの出番だな」

ゴソゴソ…ザシュッ!!!


竜騎士「これは…」

 
スミス「あの時のトゥハンドソードさ。これなら…いけるんじゃないか?」

竜騎士「…本当に持ち替える事になるとは思いませんでしたよ」

スミス「一応、持ってきてよかった。さ…」スッ

竜騎士「はい、貸していただきます」スチャッ…


女武道家「2人とも、危ないです!」


ファイアドレイク『グルアッ!!』ボワッ

…ドゴォンッ!!!…パラパラ

 
竜騎士「く…そ、体は鈍っても底なしの魔力持ちやがって…」

スミス「竜騎士くん、頼んだよ」


竜騎士「剣は苦手ですが…いくぞ、ドレイク!」

ファイアドレイク『グルルルゥ…』


竜騎士「…おああっ!」タァンッ!!

スミス「さっきより高い!」

女武道家「でも、あの高さじゃ…火球の狙いうちですよ!」

 
ファイドレイク『グガアアッ!!』ボワッ


スミス「やはり火球…女武道家、援護を!」

女武道家「だめです、竜騎士さんにも当たってしまう!」


竜騎士「大丈夫だ、心配すんな…」

…ドゴォォォンッ!!!…


女武道家「竜騎士さぁん!!」

 
スミス「いや…!」


竜騎士「あっちいなコラァァ!肉を切らせて…骨をたぁぁぁっつ!!!」ビュウウウンッ!!

ドシュッ…!!!!


ファイアドレイク『グガアアアッ…!!』

竜騎士「まだまだ…まだまだぁぁっ!」グググッ

ファイアドレイク『グウウウッ…』


スミス「いけぇぇ、竜騎士ぃ!」

女武道家「やっちゃってくださああい!」

 
竜騎士「ぬあああっ!!」

……ズバァンッ!!!


ファイドレイク『…ッ』

…ドォォン……パラパラパラ……


女武道家「胸に…剣が刺さってドレイクが…倒れた…!」

スミス「お、おおおお…っ!!」

 
竜騎士「…倒せた、のか?」

女武道家「や、やったんですよ!!」

竜騎士「お、うおおおっしゃああーーーっ!」

スミス「はは…本当に寿命が縮むよ…」


竜騎士「このトゥハンドソードのおかげですよ、ありがとうございます!」

スミス「竜族を倒せたし、この剣はドラゴンスレイヤーとでも名づけようかな」ハハハ

 
竜騎士「そこまで名づけるほどのモノを倒したわけじゃないんですがね」アハハ

スミス「いやいや、十分だよ!」

女武道家「竜騎士さん、凄いですよ!」


竜騎士「…ま、俺一人じゃ死んでたしな。ありがとう、2人とも。2人のおかげで倒せました」

女武道家「えへへ」

スミス「何、足手まといにならなくて良かったくらいだ。気にしないでくれ」

 
竜騎士「…それにしても、最後の炎はちょっと焦りました」タハハ

スミス「肉を切らせて骨を断つか」

竜騎士「正直、気合だけで耐えようとしたんですが、思ったよりダメージを受けませんでした」


スミス「戦いの中で成長しているのかもしれないね。そうじゃなかったら、普通は黒こげだろう」

女武道家「黒こげにならなくてよかったです…」

竜騎士「まぁ…終わってみればスゲェ相手だったな」


スミス「うん、よく倒した!」

 
竜騎士「では…さて!」パンッ

女武道家「…」

竜騎士「…」ニタァ

スミス「お?」


女武道家「私は、そこの地底湖でも眺めてますね」ニコッ

竜騎士「音だけでも楽しんでおけ」ククク

女武道家「うぇええ…」

 
スミス「何をするんだい?」

竜騎士「解体、ですよ。売る為にも!」

スミス「あぁ、なるほど。だが…少々でかすぎないか?」

竜騎士「ですよねえ…自分一人じゃきついかな…どうするか」


スミス「一旦、外に運んでからするのはどうだ?商人なんかだったら、そのままでも買い取ってもらえそうだが」

竜騎士「うーん、知り合いの商人に連絡とろうにも、考えたら通信のが壊れてるんですよね」

スミス「中央まで往復するにも、そこまで時間かかったら腐っちまうか」


竜騎士「どうしたもんか」

 
女武道家「この大きさかぁ…だったら、商店街の皆さんに手伝ってもらって加工する、とか…どうですか?」

竜騎士「商店街の人たちに?」

女武道家「はい。腕はいいってこの間、言ってたじゃないですか?」

竜騎士「あー…そりゃそうなんだけど、劣化とはいえ、竜族の加工はちょっと骨が折れて、工夫が必要なんだ」


女武道家「なるほど…これで、どのくらいの価値があるんでしょうか」

竜騎士「状態にもよるが、ドレイク系統は比較的生息してるからなぁ…、300万…いくかいかないか」

女武道家「充分すぎますね…」

 
竜騎士「俺らの活動報告書としても充分すぎる。これで大きな評価につながったはずだ」

女武道家「と、なると、やっぱりすぐ売りたいですよねー」

竜騎士「んむむ…」


スミス「君は解体できるのか?」

竜騎士「一応経験はありますので…」

スミス「あぁ、だったら簡単な話じゃないか」


竜騎士「え?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【数時間後・商店街】


ガヤガヤ…

町民A「あの時の悪魔か…、よく仕留めてくれた…」

町民B「ワシらの家族の敵だったんじゃ…、ありがとう…」

竜騎士「いえいえ」


コック「おーい、この肉はこのカットでいいのか!」

アクセサリ職人「皮はどう下ろすんだ?もっかい教えてくれ!」

竜騎士「あ、今いきまーす!」タッタッタ

 
女武道家「スミスさん、考えましたね」

スミス「腕がある人たちがいる。加工方法が分からないなら分かる人が教えればいい。それだけだったな」

女武道家「それにしても、皆さん、あのドレイクの存在知ってたんですね」


スミス「俺は知らなかったが、爺さんなんかは皆…涙ながらに話し合ってるな」

女武道家「教えてくれても良かったのに…って竜騎士さんが嘆きそうです」

スミス「歴史がある町や村には、決して口にしてはいけないことがあるんだよ」


女武道家「うーん…」

 
スミス「どうしたんだ?」

女武道家「当時の事故も、しっかり軍の支部の情報に乗ってました。でも、ドレイクのことはなくて…」

スミス「ふむ」

女武道家「…」


スミス「つまり、当時の軍人が、ここの町人だったということだろう?」

女武道家「あ…あー…そういうことなんですかね?」

スミス「そりゃ情報として残しておかないといけないことだろうが、やっぱり身内が殺された事は公にできなかったんだろう」

女武道家「なるほど…」

 
竜騎士「スミスさーん!!」オーイ


スミス「ん…なんだぁー!」

竜騎士「ちょっと、来てください!面白いもの見つけました!」

スミス「わかったー!女武道家、行ってみよう」

女武道家「はいっ!」


タッタッタッタッタ…

 
スミス「なんだい?」

コック「肉の解体をしていたら、内蔵から面白いものが出てきた」

スミス「面白いもの?」


竜騎士「これです。この銀色の…」キラッ

スミス「こっ、こりゃあ…」

竜騎士「多分ですが、ミスリル…かと」


スミス「確かにこれはミスリルだ。これがドレイクの体から!?」

竜騎士「長年、あのドレイクは周囲の岩をも食べて生きてきたようです。取り込まれた岩が、ドレイクの中で変化したものかと」

 
スミス「す、素晴らしいな」

竜騎士「あげますよ。スミスさんがいなければ、あのドレイクは倒せなかったんですし」

スミス「い、いいのか?」

竜騎士「俺が持っていても、売るしか道がありませんから。ぜひ使ってあげてください」

スミス「だが、ミスリルといえば少量でも魔力を宿すという高位鉱石のひとつ…君らの為にもなるんだぞ?」


竜騎士「お金ばかり見て、人付き合いをおろそかにしては元も子もありませんし」アハハ

スミス「竜騎士くん…」

竜騎士「いいですよ、受け取ってください」ニコッ

 
スミス「…っ」


竜騎士「皆さんー!お手伝いしてくださる代わりに、素材は少なからずお渡ししますのでー!」


アクセサリ職人「本当か!?」

コック「そりゃ嬉しいことだが…」

土木職人「俺はこの内臓にたまってるスゲー硬い岩とかでも充分だけどな」

…ザワザワ…


竜騎士「はは、何とかなりそうで良かった」

女武道家「ですね!」

スミス「心からお礼を言うよ。こんな鉱石を加工できるとは思わなかった」

 
竜騎士「いえいえ、さてと…配り終わったら俺は準備しないとな」ヨイショ

女武道家「準備ですか?」

竜騎士「素材を持って、中央までちょっくら行ってくる」

女武道家「中央まで!?」


竜騎士「向こうまで連絡しに行って、来てもらって、また行って、売れたお金持ってきてもらうとか…時間がかかりすぎる」

スミス「確かにね…」

竜騎士「ってなわけで、今日の夜にでも素材もって出発するよ」

女武道家「今日の夜からいないってことです?」

 
竜騎士「そうなるな。往復で1週間…くらいあれば戻ってこれるだろう」

女武道家「1週間もですか?でも、売るだけなら近くの大きな街でもいいような気がしますけど」

竜騎士「中央のほうが高くなるし、売るついでに報告書をまとめたりしてようと思ってね」

女武道家「なるほど…」

竜騎士「なぁに、しばらく留守にしても、その分の稼ぎにはなるんだから安心しとけ」ハハハ


女武道家「そうですよね…留守の間は、任せてください!」


竜騎士「んむ。任せた」

女武道家「え?」

 
竜騎士「え?」


女武道家「え、いや…、いつもなら、"お前じゃ無理だー"とか言うかと…」

竜騎士「あー…」ポリポリ

女武道家「この私をついに認めたってことですね!そりゃあ私がいなかったら確かに竜騎士さんは!」


竜騎士「スミスさん、やっぱコイツのこと、面倒見てください…心配です」

スミス「そうだな、そうするよ」


女武道家「ちょっとおお!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】


ホー…ホー…チチチチ…

 
竜騎士「おっこらしょっと…」

女武道家「リヤカー程度で大丈夫なんですか?」

竜騎士「ま、大丈夫だ。途中から馬車にでも乗っていくからな」


女武道家「道中気をつけてくださいね」

竜騎士「お前もな」

 
女武道家「はいっ。留守は任されました!」

竜騎士「なぁに、出来るだけ早くは帰ってくる」


女武道家「…そういや、竜騎士さん」

竜騎士「なんだ?」

女武道家「腕、大丈夫なんですか?」


竜騎士「腕?」

  
女武道家「血ドロドロだったじゃないですか…。痛そうだったし…」

竜騎士「あー…大丈夫。血も止まったし、一応薬も塗っておいた。ただの切り傷さ」ニカッ

女武道家「それならいいんですが…」


竜騎士「今日は14日か。20、21日くらいには戻ってこれるとは思う。それじゃあな」

女武道家「はいっ!」


竜騎士「くれぐれも、無理はすんなよ。行ってくる」

女武道家「行ってらっしゃいです!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様、ありがとうございます。投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【3日後・中央都市】


…ガラッ…バタンッ


竜騎士「これが、14日までの報告書です」

上官「…確かに受け取った。さっきも軽く聞いたが、よくやってるみたいだな」

竜騎士「色々大変でしたけどね。ドレイクも商人に売れたし、一応は上手くいってます」


上官「…」キョロキョロ

竜騎士「?」

 
上官「ここだけの話だがな」ボソッ

竜騎士「はい?」

上官「お前を左遷させ、クビに追いやろうとしたのは…偏屈な中将殿だ」ボソボソ

竜騎士「やはり…ですか」

上官「わかってたか」


竜騎士「いやでも分かりますよ。俺を潰そうとしてるんですよね」

上官「…俺としては、お前の力は認めている。これからの為にもクビにはしたくない」

竜騎士「俺だってなりたくは…ありませんよ。だから頑張ってるんです」

 
上官「今月末までに、ある程度の結果はこれで回避できそうだな」

竜騎士「まだ目標額には達してません。どうにかして、500万まではもっていきたいところです」

上官「竜騎士が初めて左遷された場所に支部長として結果をあげれば、会議でも話題になるだろう」


竜騎士「まだドレイク程度では話題になりませんか?」

上官「やはりそれではな…。北部や、もっと辺境の果てではこの程度の戦いはいつも行われているわけだしな…」

竜騎士「団体戦での討伐ではないんですけどね…」


上官「だが、この事はしっかり俺に任せておけ。話は出してやる」

 
竜騎士「感謝します。あなたがいて良かったと思います」

上官「はっはっは、褒めても何も出ないぞ」

竜騎士「はは…それでは、報告も終わりましたし、また支部へと戻ることにします」

上官「気をつけてな」


竜騎士「上官殿こそ。それ…では…」クラッ

上官「あぁ、またな」


竜騎士「…あれ?」フラッ

上官「どうした?」

竜騎士「なんか…眼が…霞んで」ゴシゴシ

 
上官「お、おい?」

竜騎士「体が…何か…」フラフラ

上官「大丈夫か?しっかりしろ!」


竜騎士「…う」

フラッ…ドサッ…


上官「おい…竜騎士、竜騎士!!おい!!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【同時刻・水晶の泉】

…ハッ

女武道家「…竜騎士さん?」

スミス「どうした?」

女武道家「あ、いえ…何でも。何か…変な感じが」

スミス「変な感じ…ねぇ」


女武道家「…あ!」パシャッ

スミス「魚がかかってるぞ!」

 
女武道家「うぬぬ…」ソワソワ

スミス「ゆっくりだ、あせるな…!」

女武道家「…」ジー


パシャパシャッ……ザバザバ…


スミス「今だ!」

女武道家「ええいっ!」

 
…ザバァンッ!!…ピチピチッ!!

女武道家「や、やったああ!おっきな魚ゲットですー!」

スミス「やったな!」

女武道家「んふふ~♪竜騎士さんが帰ってきたら、驚きますね!」


スミス「それまで腐っちまうでしょうが…。生簀(いけす)にするなら別だが」

女武道家「だめですか…、スモークとかに出来ませんか?」

スミス「お?スモークか」

 
女武道家「それなら日持ちしますよね?」

スミス「うちに一応、燻製に出来るのはあったな。おっしゃ、いっちょやったるか!」

女武道家「わーい!」


スミス「帰ってきたら美味いモン食わせて、頬落としてやるか」ハハハ

女武道家「きっと疲れて帰ってきますし、せめて美味しいものくらいは食べさせてあげたいです!」


スミス「そうだな、よし、魚キズつけないように慎重に持ち帰るぞー」

女武道家「はーいっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【中央都市・本部・治療棟】


ガラガラガラッ…!!

竜騎士「…」


医僧侶「体熱が上昇しています!急いで水魔石を!」

助手「さっきから処置をしています…熱が下がりません!」

医僧侶「腕の様子は…どんどん黒くなっていく…、血をもっと持ってきてくれ!」


上官「い、医僧侶さん!竜騎士の様子はどうなんですか!一体何が!?」

 
医僧侶「腕の切りキズから、感染症にかかっているようで…危険な状態です」

上官「そんな…!助けてやってください!お願いします!」

医僧侶「分かっております。全力を尽くします…任せてください」

上官「…っ」


ブーッ…ブーッ…!!

助手「医僧侶さん、心音、心拍数が低下!急いでください!」

医僧侶「集中治療室へ!エネルギーの変換もさせる、ありったけのヒーラーを呼んでおいてくれ!」

助手「はいっ!」

 
…ガラガラガラ…バタンッ…


上官「…竜騎士…生きてくれよ…」

???「あらら、大変なことになってるみたいだ」スッ

上官「…誰だ」


中将「目上の者に向かって、なんつー口の聞き方だ」

上官「ち、中将殿!申し訳ありません!」ビシッ

中将「まぁいい。竜騎士くんの容態はどうなんだ」

 
上官「重体です…意識も戻ってないようです」

中将「そうか。彼は、軍の未来を背負うであろう身…こんなところで死んでもらっては困るな」

上官「…」ギリッ

中将「俺からも、竜騎士くんの治療にもっと手が回るように声掛けをしよう」


上官「…お言葉ですが、中将殿」

中将「あん?」

上官「あなたが、竜騎士を左遷し、あんな田舎の町に送らなければ…こんな事にはならなかったはずです」ギリッ

 
中将「…俺のせい、だと?」

上官「少なからず、自分はそう思っております」

中将「ほぉ…大佐程度がいい度胸だ」


上官「まだ若い芽を潰しては、軍は再び崩れ去ります!優秀な部下は、今のうちに育てておかなければ…っ!」


中将「育てておかぬと、また軍政が崩れ去ると?」

上官「可能性はゼロではありません…、記録によれば、1度軍政が滅んだのは、重鎮たちの怠慢からだったという」


中将「怠慢…?軍人として、中将まで上り詰めた俺が、そう言いたいのか!?」

 
上官「…そうでしょう!あなたのせいで、私の部下が…何人酷い思いをしてきたと!」

中将「俺が俺である為だ!悪いか!」イラッ

上官「なっ…それが、仮にも国を動かす人物の言葉ですか!」


中将「俺は実力でここまで上り詰めた。だが、最近の若いやつは俺に従わんからだ」

上官「あなたのような"人"に、従う義理がないから!!」

中将「何だと…、俺は歴戦の戦士であり、キャリアがある!俺に従えば、この世界も潤うのだ!」

 
上官「だから、自分に脅威にある種を…潰すということですか」

中将「目障りなやつ、俺に意見をしてくるやつ、従わぬやつ、そして俺より優秀な人材…そんな奴は…いらん」ニタッ

上官「…っ」


中将「楽しみにしておけよ、お前も月末の会議で俺に対しての傲慢な態度…改めさせてやる」

上官「楽しみにしておきますよ…」


中将「う、うははは、ははははははは!」

ハハハ…ハハ…

…………………

 
上官「…もう、いいぞ。出て来い青年少尉」


…コソッ…

青年少尉「…気づかれませんでしたかね」

上官「歴戦の戦士だか知らぬが、感覚は鈍っているらしいな」フッ

青年少尉「…はは、そうみたいですね」


上官「録ったか?」

青年少尉「えぇ、そりゃもうバッチリと。最初から最後まで」

 
上官「…覚えていろよ、中将め」

青年少尉「考えましたね。中将を怒らせ、本音を言わせてそれを音魔石に入れるなんて」

上官「なぁにちょっとした手だ。竜騎士が倒れた話を聞けば、必ず現れると睨んだからな」

青年少尉「…竜騎士さんのピンチでも、本当にキレる人ですね」


上官「まぁ…それより…竜騎士。本当に心配だ」

青年少尉「はい…。僕も、軍学校時代にお世話になっていたので…」

上官「あいつのことだ。きっと、大丈夫さ」

 
青年少尉「無駄に体だけは頑丈でしたもんね」クスッ

上官「今は信じて待とう」

青年少尉「はい」


上官「さて、竜騎士から預かっている報告書をまとめるか。手伝ってくれ」ウーン

青年少尉「もちろんです」


上官(…竜騎士、俺らも精一杯戦う。だからお前もまだ…戦い続けるんだ)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【8月27日・支部】


…ザアアアアッ…

コンコン

女武道家「はいっ!竜騎士さんですかっ!」

…ガチャッ

  
スミス「悪いな、俺で…ひでぇ雨だ」ビチョビチョ

女武道家「あ…スミスさん」

 
スミス「そう明らかにガッカリされると、俺もへこむんだが…」

女武道家「あ、いえ!すいません…」

スミス「ま、仕方ねえか…、あれからもう2週間になる」


女武道家「…」

スミス「…」

女武道家「もう、戻ってこないんでしょうか」

スミス「…」

女武道家「もしかして、無事に中央に戻れたんですかね。もう、支部には…」

 
スミス「…短い間だが、俺はあいつはそんな白状なやつじゃないと思うぞ」

女武道家「はい…信じてはいます…」

スミス「もしかしたら、何かあったのかもしれん。行く前に、何か言われなかったか?」


女武道家「いえ、急いで帰ってくると…」

スミス「それだけか?」

女武道家「あ…、そういやキズ…」

スミス「キズ?」


女武道家「ドレイクに受けた傷、血が止まったから大丈夫だと放っておいたんです!」

 
スミス「…まさか」

女武道家「い、いや…でも、竜騎士さんですよ?そんな…」

スミス「万が一ということもある。中央からの通達はないのか?」

女武道家「今のところは…ないです」


スミス「少なくとも無事ってことじゃあないのか」

女武道家「きっと、そうですよね」


…コンコン…

女武道家「!」ガタッ

 
タタタタタッ…ガチャッ!!

女武道家「は、はい!どちら様ですか!竜騎士さんですか!」

軍人「こんにちわ、凄い雨ですね…いつもお世話様です」ペコッ

女武道家「あ、こ…こんにちわ」


軍人「…どうかしましたか?」

女武道家「い、いえ…それで、今日は何の用でしょうか」

軍人「本部からの手紙を預かっています。通信器が繋がらないようなので、遅れました」ゴソゴソ

女武道家「手紙…ご苦労様です」


軍人「…こちらになります。それでは、ありがとうございました」

 
…バタンッ…


女武道家「手紙…」

スミス「誰からだ?」

女武道家「待ってください…」ビリビリ


スミス「…」

女武道家「…」


スミス「?」

女武道家「竜騎士さんの上官さんからです」

 
スミス「何て?」

女武道家「え…と…」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本部の上官と申します。この度は、竜騎士の面倒を見てくれてありがとう。

早速本題ですが、今回、竜騎士が中央へ訪れ、報告書を受け取りました。

素晴らしい内容に、感無量です。


ですが…ご報告があります。

この度、竜騎士が本部で感染症を発症し、意識不明の重体になりました。


8月18日現在、治療を終え、そのまま入院をしています。

心配なさらずとも、回復へは向かっておりますので、何とぞお待ちください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
女武道家「…」

スミス「感染症…やはり…」

女武道家「…」


トコトコ…ゴソゴソゴソ…パサッ…


スミス「お、おい、何をしている?」

女武道家「中央へ行きます」

スミス「ま、待て!それはダメだ!」ガシッ

 
女武道家「離して下さい!竜騎士さんが倒れて…倒れ…」グスッ

スミス「女武道家は、この留守を任されたんだろう!君がしっかりしないで、どうする!!」


女武道家「でも、私のせいで…私が、竜騎士さんを1度でも見捨てようとしたから…っ」

スミス「それは違う!!」

女武道家「一緒です!!」


スミス「…」

女武道家「…一緒、です…」ガクッ

 
スミス「…竜騎士は、自分のためだけじゃなく、君のためにも戦っていた。この町のためにも」

女武道家「…」

スミス「そんな男の言葉を、裏切るのか?」

女武道家「で、でも…」


スミス「竜騎士くんは絶対帰ってくる。それを信じて待つのが、君の仕事だ」

女武道家「…か?」

スミス「ん?」

女武道家「大丈夫…でしょうか?本当に」

 
スミス「あぁ。俺が保障する」

女武道家「はい…、わかりました…」

スミス「…」

女武道家「でも、具合が悪いので…少しだけ横になりますね」フラフラ


…ドサッ…ゴロンッ…


スミス(竜騎士くん…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様、ありがとうございます。投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・8月28日】


ミーンミンミン…


女武道家「…」スゥスゥ

ガチャッ…バタン

女武道家「…」スヤスヤ


???「…」

女武道家「…」スヤスヤ

 
ジジジ…ミーンミンミンミン…


???「おい」

女武道家「…ふぇ?」パチッ

???「もう朝10時だぞ。いい加減、起きろ」


女武道家「起きなくてもいいんです!!どうせ今日も一人で支部にいなくちゃいけないんです!」

???「…ああ、そう。んじゃ寝てろ、アホ。俺がいないとすぐこれだ…」ハァ

女武道家「…うっさいです!私の気持ちが…って、誰ですか?」


…チラッ

 
竜騎士「寝起きで、寝癖ひでーぞ。少しくらい整えてこい」ハァ

女武道家「…あ」

竜騎士「中央からお土産も買ってきたしな。あとでスミスさんとかコックさんに持っていかないと」

女武道家「あ、あああ…あああああ!!!」


竜騎士「うっせ!!何だよ!!」

女武道家「竜騎士さん、竜騎士さぁぁぁん!!」ダキッ

竜騎士「な、なんだぁ!?」


女武道家「無事でよかったです、戻ってきたんですね…よかったですぅぅ…うぇええん…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


竜騎士「なるほどな。上官殿が手紙をね…」ペラッ

女武道家「本当に心配しました…全然帰ってこなくて…」

竜騎士「あー…その、心配かけたな…」


女武道家「本当です!!!」

竜騎士「そんな怒らんでくれよ、死に掛けたんだからさ」ハハハ

女武道家「うぅぅ~…」

 
竜騎士「ほら…これ、見てくれ」パサッ

女武道家「…」

竜騎士「腕にガッツリと手術の傷跡だ。ここから全身にウィルス入ったみたいでな」ハハ

女武道家「…本当に死ぬところだったんですね」


竜騎士「俺じゃなかったら、死んでたって医僧侶っつーヤツにも言われてな」

女武道家「本当ですよ…、こんなに早く元気になるものなんですか?」

竜騎士「ありえないぜ、お前の体を解剖させてくれって頼まれた。バカかっつーの!」

 
女武道家「あはは…」

竜騎士「…ま、無事に戻ってこれた。ドレイクは全部で250万で捌けたし、マンドラゴラが20万。上々だな」

女武道家「そんなになったんですか!?」

竜騎士「うむ。目標額まで、あと92万ゴールドだ」


女武道家「でも、期限まであと3日もないですよ…」

竜騎士「そうなんだよな、それが問題だ」

女武道家「あと3日で92万…どうします?」


竜騎士「…どうするったって、マンドラゴラでも抜くか…」

 
女武道家「わんこ使ったりしませんよね」

竜騎士「え、あ…犬の値段計算する準備をしようと…」

女武道家「却下です!!」


竜騎士「くそー…相変わらずだな…」

女武道家「竜騎士さんも…です」

 
竜騎士「ふ…」

女武道家「ふふ…」


竜騎士「はははっ!」

女武道家「あははっ!」


竜騎士「はー…、いやでも、本当にどうするか」

女武道家「ですねぇ」

 
竜騎士「とりあえず、レアメタルの発掘ってのも悪くない…って、あれ?」

女武道家「?」

竜騎士「ここにあった銀のピックハンマーはどうした?」

女武道家「あ、そうでした。少し前にスミスさんがちょっと借りたいって言って…」


竜騎士「そうなのか。何かに使うのかな」

女武道家「今日持ってくる、みたいなことは言ってました」

 
…コンコン…ガチャッ

スミス「入るぞー」


女武道家「あ、噂をすればなんとやらですね」


竜騎士「スミスさん!」

スミス「り、竜騎士くん!!」

竜騎士「久しぶりです…」ペコッ


スミス「本当に久しぶりだ…体、大丈夫なのか!?」

 
竜騎士「ええ、なんとか…」

スミス「よかったな…、女武道家も毎日心配してな…」

竜騎士「…」

スミス「だけど、こうやって元気に戻ってきてくれて、嬉しいぞ」ニカッ

竜騎士「はい、俺もまたこうして会えて嬉しいですよ」


スミス「あ。それと…これ」スッ

竜騎士「これ?」

 
スミス「この2つ。受け取ってくれ」

竜騎士「これは…」


スミス「一つはミスリル鉱で打った特性の槍だ。銀のピックハンマーから銀の魔力を打ち込んだ」

竜騎士「ミスリルの槍!?」

スミス「銀の魔力も入っているから、ただの槍とは違う。普通に突き刺すだけで火力は何倍にもなる」


竜騎士「だ、だけど、ミスリルを使ってまで…」

スミス「無事に戻ってきたときに退院祝いにしようとして。今日は女武道家に見せに来ただけだったが、渡せてよかった」ハハハ

 
竜騎士「でも…」

スミス「こんな希少鉱石を打てただけで、鍛冶屋冥利に尽きるってもんさ!」

竜騎士「ありがたく、受け取らせていただきます…っ」

スミス「あぁ」


女武道家「もう1つは何ですか?」

スミス「ハンマーの銀の魔力を少なくしちまったからな。余ったミスリルと合わせておいた」

女武道家「なんか段々凄いものが出来上がっていきますね…」

 
竜騎士「…だけど、これで上位種が狩れるし、洞窟で改めて探索が出来る!」

女武道家「また、行くつもりですか?」

竜騎士「今はあそこくらいしかもう、成果は上げられないだろう」

女武道家「…ですよね」


竜騎士「あと3日だ…頑張るぞ」

女武道家「はいっ!」

 
スミス「…今日はどうする?まだ昼にもならんし、探索するのか?」

竜騎士「戻ってきたばっかりですが、時間が惜しいです。準備して向かうつもりですよ」

スミス「そうか。じゃ、俺もこの出来を見たいし、着いてっていいか?」

竜騎士「えぇ、構いません」


…コンコン

女武道家「ん…また誰か来た?はーい!」

…ガチャッ


中央商人「こんちゃ。竜騎士、いるかい」

 
女武道家「え?」

中央商人「俺は中央商人。竜騎士の友達だ、おーい!」


竜騎士「あ…中央商人…あー…!」

中央商人「おい、まさか忘れてたんじゃねーだろうな」

竜騎士「や…忘れてはないよ…忘れては…」


中央商人「おい…」

竜騎士「はは…」

 
女武道家「え?何ですか?」

竜騎士「いやさ、前、コックさんの店が余ってるって話聞いて…この間、戻ったときに中央商人に頼んでいた事があったんだ」

女武道家「何ですか?」

中央商人「自分の店を持てるとかっつー話。ここら辺と中央の品を交易使って稼がせてもらおうと思ってよ」


竜騎士「…そういうこと。これで、多少の高値の品でもすぐに金にすることができるしな」

中央商人「安くしてやるけどな」ククク

竜騎士「本当に勘弁してくれ。それと、一緒にコックさんに話をしに行かないといけないんだった」ハァ

 
スミス「なるほどね、悪くない考えだ。それじゃ、午後からにするかい?」

竜騎士「本当にすいません、あとで出発するとき、こちらから伺いますね」

スミス「はいよ。んじゃ、待ってるよ」

…バタンッ…


中央商人「そんじゃ、話聞きに行かせてもらうぜ」

竜騎士「んむ。女武道家も、何かしらの準備はしておいてな」


女武道家「わかりましたっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【コックの家】


コック「いや俺としてはいいんだが、本当にいいのか?」

中央商人「いやいや勿論!こんな立派な店を持てるとは、商人冥利につきますよ!」

コック「それならいいんだが」


中央商人「ここらへんじゃ中央品も不足してるし、交易なら一儲け出来そうですし」

コック「いい材料が入ったら、買ってやるさ」

中央商人「お安くしときますさ」ハハハ

 
竜騎士「あんま調子のんな。商店街に迷惑かけることだけはやめろよ?」

中央商人「その辺は任せてくれって。これでもエリートって呼ばれてたほどの男だぞ」

竜騎士「まあそりゃ知ってるんだが…」


中央商人「看板はどうするか…、パン屋という看板は外しても?」

コック「もちろん。ただ、思い出といえば思い出だ…倉庫くらいにしまって置いてくれ」

中央商人「わかりましたっと。それじゃ、後から俺の部下が来るはずだし、掃除なんかしとくかな」


竜騎士「何、今日から開店すんの?」

 
中央商人「善は急げ、ってな。買取も今日からはじめるぞ」

竜騎士「資本金は?」

中央商人「中央で稼いだ金がある。ざっと…1億飛んで…4000万ってところか」


竜騎士「…お前、よくこの話乗ったな」

中央商人「ははは、気にするな。中央だと何億あっても自分の店なんて持てないしな」

竜騎士「そか。んじゃ、今日も何か売れるもん取ってきたら渡すわ」

中央商人「わかった。楽しみにしとく」

 
コック「中央商人、後でうちに来い。祝いだ、飯くらい作ってやる」

中央商人「本当ですか!いやー、竜騎士に最高の料理って聞いてて、楽しみですわ!」

コック「褒めても何も出んぞ…料理は出るか」


竜騎士「んじゃ、俺は準備して早速また探索に行ってくるよ」

中央商人「お気をつけて」

コック「気をつけて行って来い」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 天然洞窟 】


ヒュウウウッ…

竜騎士「準備はいいかー」

女武道家「いつでも!」


スミス「しっかり稼いで、報告書出して、クビは免れんとな」ハハハ

竜騎士「ですね、新しい装備も手に入ったし、大丈夫ですよ!」


女武道家「あとわずかな時間、頑張りまくりましょう!」

 
竜騎士「そうだな」

スミス「それじゃ、出発するか?」

竜騎士「ですね。この武器があれば、何だって倒せる気がしますよ」ハハ


女武道家「今度は…最初から戦いますからね!」

竜騎士「あぁ、支援は任せるぞ」

女武道家「へへ…」


竜騎士「そんじゃ…出発!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

  
【8月28・29日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド
・ドレイクの素材販売250万ゴールド
・マンドラゴラの販売20万ゴールド
・鉱石販売60万ゴールド

■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・プラス468万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後32万ゴールド

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【そして8月30日】


…チチチチ…

竜騎士「ん~…今日もいい朝だ…」ノビノビ

女武道家「ですねえ、相変わらず外は暑いですが」


竜騎士「…そういや、野菜とかどうなってるんだ?」

女武道家「あ、ちゃんと面倒見てましたよ?芽も出て、すくすく育ってます!」

 
竜騎士「あれからもうすぐ20日になるか…、そろそろ食べごろかな」

女武道家「!」ピョコンッ

竜騎士「少しだけ採ってみるか。ご飯炊いておい…あ、いや…俺がやる…」


女武道家「もう大丈夫ですって!お粥とか、パサパサにはしませんからぁ!」

竜騎士「…信じるぞ」

女武道家「はい、大丈夫です!」

竜騎士「んじゃ、軽くとってくる。何かおかずはあるか?」

 
女武道家「あ、そうだ!釣りで大物を釣って、それをスモークにしといたんですよ!」

竜騎士「ふむ、よし、任せろ。俺が料理してやる」

女武道家「はーいっ!」


竜騎士「んじゃ、準備しといてな」

女武道家「はいっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドンッ!!

竜騎士「大根は微妙だったが、レタスのほうは育成早かったから採ってきた」

女武道家「どんなの作るんですか?」

竜騎士「えーと、まずはセパレートタイプのフレンチドレッシングを作ります」


女武道家「ふむふむ」

 
竜騎士「まずは玉ねぎを微塵切り…って、玉ねぎがないじゃないか!」

女武道家「ですね…」

竜騎士「仕方ない…代用品だ。サラダ油、酢、塩とコショウをあわせ、よくかき混ぜてくれ」


女武道家「は、はいっ」

トプトプ…カッカッカッカッカ…


竜騎士「その間に、俺はこのスモークされた魚を角切りにします…って、こりゃサーモンじゃないか」

女武道家「だめでしたか…?」

竜騎士「いや、最高だ」ビシッ

 
女武道家「よかったですっ」ホッ

竜騎士「で、サーモンを角切りにしたら、レタスを細切りにして…」トントン


ピーッ!!!

女武道家「ご飯、炊けました!」

竜騎士「それじゃ、ご飯をボウルに入れて、さっき作ったドレッシングを入れてまた混ぜてくれ」


ホカホカ…

女武道家「あちち…、よいしょっ!」

竜騎士「ご飯がつぶれないように、やさしくな」

 
女武道家「は、はい」マゼマゼ

竜騎士「それがサワーライスってやつ。大体混ざったか?」

女武道家「はい」


竜騎士「じゃ、このサーモンとレタスも混ぜるぞ…。ここからは俺がやる」

ドサドサッ…マゼマゼ…



竜騎士「あとは皿に移して…簡単だが、スモークサーモンとレタスのサワーライスの出来上がりだ!」

 
女武道家「うわっ…いい匂い…」クンッ

竜騎士「酢飯のようなご飯に、サーモンがしっかり絡んで、レタスの風味をドレッシングが引き出す一品だ!」

女武道家「朝ごはんとしても、スッキリして食べやすそうですね」

竜騎士「さ、まず食べて…今日も天然洞窟でも行くか?」


女武道家「そうですねぇ、この2日、ずっと洞窟に篭りっきりで…正直、少し疲れました。お金にはなってますが」

竜騎士「あー…まあな。目ぼしい所は掘ったし、地図のない場所に足を踏み入れるのもなぁ」

 
女武道家「とりあえず、軽く食べちゃいましょう」ジュルッ

竜騎士「ハラ減らしてるだけだろ」ハハハ

女武道家「むぅ…」


竜騎士「それじゃ、居間に運んでおくから、冷蔵庫から飲み物でも出しといてくれ」


女武道家「わっかりましたぁ~!」

タッタッタッタッタ…

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様ありがとうございます、今日は少し早めに投稿致します

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

モグモグ…ゴクンッ…

女武道家「お…おいしかった…」

竜騎士「だろー!?」


女武道家「コックさんと比べればごにょごにょですけど、十分最高でした…」ムフ-

竜騎士「本業と比べないでください」

女武道家「えへへ…」

 
竜騎士「んじゃー…今日はどうするかなぁ」

女武道家「…そういや、聞きたい事があったんです」

竜騎士「え?」


女武道家「竜騎士さんは、もしですよ?もし、31日の査定で、結果を残し、戻れるとしたら…戻りますか?」

竜騎士「…」

女武道家「ここが存続したら、私はまた残る事になります。竜騎士さんは、戻ってしまうんですよね?」

竜騎士「あー…まぁ…」

 
女武道家「そうですよね…、最初の目的はそれですもんね…」

竜騎士「でも、な」

女武道家「?」


竜騎士「この短期間で出会った人らに感化されたってのは本当だ。今もスゲー楽しいと思う」

女武道家「な、なら…」

竜騎士「で、一番影響を受けたのが…スミスさんだ」

女武道家「影響?」


竜騎士「今回のことは、いわゆる自分自身を見つめなおすいい機会にもなったと思ってる」

 
女武道家「見つめなおす…」

竜騎士「実力にしろ、軍にしろ、出会いにしろ、やっぱり俺は改めて戦士だったと思う。そしてもう1つ」

女武道家「はい」

竜騎士「世界を、見てみたいと思った」


女武道家「…世界?」

竜騎士「スミスさんの口からたまたま出る、旅っていう言葉。少し羨ましくなっていった」

 
女武道家「もしかして、世界を旅したいって事ですか?」

竜騎士「…悪くない」

女武道家「…」

竜騎士「軍にはもう1つ、冒険部ってのがあってな。俺やお前は"通常部"に入っているわけだ」

女武道家「冒険部?」


竜騎士「いわゆる自分で世界を歩き、世界で起きてる事情を解決する、みたいな仕事だな」

 
女武道家「…大変じゃないですか?」

竜騎士「だが、ぬくぬくと本部に浸かっていた頃より、今のほうがよっぽど楽しいと思った。それで気づいたんだ」

女武道家「そう…ですか」


竜騎士「女武道家は、まだここに残りたいと思うのか?」

女武道家「えっ?」

竜騎士「中央に行けば、新たな出会いもある。ここから出ようとは思わないか!?」

 
女武道家「私が中央都市に…?」

竜騎士「いや何も無理にとはいわん。俺は今後どうするか、月末には決める」

女武道家「万が一クビになったとしたら?」


竜騎士「旅に出る。それは変える気はないな」


女武道家「…私も、ちょっとだけ考えてみます」

竜騎士「そうだな…それがいい。もしかしたらこの機会は、天がくれたのかもしれないぜ」


…コンコン

竜騎士「ん、はーい、どーぞ」

ガチャッ!!


中央商人「はぁはぁ…おい!竜騎士!」

竜騎士「あ?どうしたよ」

中央商人「いた…よかった…急いで来てくれ!助けてくれ!!」


竜騎士「…あん?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの街道 】


…ガラガラガラ!!
 
 
弟子商人「ひ、ひぃぃ…」ブルブル

盗賊兄貴「さっさと出せや!お前らが中央から高価な品を取引してるのは知ってるんだよ!」

盗賊A「殺されたいのか?」

盗賊B「あ、ああ、兄貴、め、面倒だ、ここ、殺して奪いましょうよ!」


弟子商人「でで、ですが、これは中央商人さんから預かっている大切な品で…!」

 
盗賊兄貴「さっき、ただでさえもう1人の人間を逃がしてるんだ、軍とか警備隊が来る前に頂くぞ!」

盗賊A「ってな訳だ、恨むなよ?」スッ

盗賊B「う、うへへ、うへへ…」ジリッ
 

弟子商人「い…嫌です…、来ないでください…」ブルブル


盗賊兄貴「積荷を渡すのをジャマするっつーなら、仕方ないことなんだよ」

盗賊A「俺たちだって生きる為だ」

盗賊B「そそ、そうだ…っ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タッタッタッタッタ!!

竜騎士「この辺の街道か!?」

中央商人「あぁ。同行してた馬車商人は町で休ませてる。盗賊に襲われて…ケガしてな…」


竜騎士「くっそ、どこだ…!」

中央商人「無事でいてくれよ…弟子商人。俺はお前を失えないんだ…」

女武道家「竜騎士さんがきっと助けてくれますよ!」

竜騎士「当たり前だ」

 
タッタッタッタッタ……!!!

…ゴォォォ…パチパチ…


竜騎士「!」

中央商人「…あれは…つ、積荷が…燃やされてる…」


竜騎士「弟子商人とやらは!?」

中央商人「そ、そうだ…弟子商人!!どこだぁぁーっ!」

竜騎士「…っ、返事しろー!」


女武道家「どこですかぁーー!」

 
弟子商人「うっ…ここです…」ゴホゴホ

中央商人「…つ、積荷の脇に!」


竜騎士「急げ、積荷が崩れたら巻き添えになるぞ!」ダッ

女武道家「はいっ!」

ダダダダダッ…ズザザザ…ガシッ…!!


中央商人「…!」

竜騎士「おい、しっかりしろ大丈夫か弟子商人!」

弟子商人「ごほごほっ…だ、大丈夫です…少し殴られて…」

 
…ゴォォォォッ…ガラガラガラッ!!!


竜騎士「危ない、崩れるぞ!」

女武道家「離れましょう!」

中央商人「ぬおおおっ!」


…ガラガラガラ…ズズゥゥゥン…モクモク…


竜騎士「危なかった…間一髪だったな」

中央商人「あーあー、見事に燃やしやがって」

 
グスッ…

中央商人「ん?」

弟子商人「あ、あの…その…僕…ごめんなさい。ごめんなさいぃ…」グスッ

中央商人「何、泣いてるんだ?」

弟子商人「僕のせいで、大切な荷物が盗まれて…燃やされて…」ポロポロ


竜騎士「おい…中央商人」

中央商人「わかってるよ。おい、上向け。俺は別に怒っちゃいないし、どうも思わん。それより」

弟子商人「…」グスッ

中央商人「お前が無事…でもないが…、こうやって会えただけでも幸せってもんだ。それが嬉しい。な?」

 
弟子商人「中央商人さん…うぅ~…」


竜騎士「お前さー…口、へったくそだな」ハハハ

中央商人「あぁ!?いいシーンに水を差すんじゃねーよ!」

竜騎士「はは…、ま、そういうことだ弟子商人。大丈夫だ、泣くんじゃない」

弟子商人「ううう…」グスグス


竜騎士「さて…女武道家、俺らは俺らの仕事が…」チラッ

女武道家「うぇええん…」

竜騎士「ええっ!?」ビクッ

 
中央商人「な、何でこいつが泣いてるんだ!?」

女武道家「貰い泣きですよぉ…いい人たちで良かったですね、弟子商人さぁぁん…」ヒクッ

弟子商人「はいぃぃ…」ポロポロ


竜騎士「…こいつら」


中央商人「お互い、似たような後輩もってるな」

竜騎士「笑えるほどにな…」ハハ…


中央商人「さて、どうすっか…」

 
竜騎士「この街道、盗賊が隠れられるようなアジトは?」

中央商人「近くに岩場があって、洞窟がある。そこが拠点だとは聞いた。こんな田舎道、放っておかれてるんだろうな…」

竜騎士「おっし。新しい武器、試す時が来たな」スチャッ


女武道家「え…もしかして銀の槍ですか?」

竜騎士「そうそう。…月末最後の大仕事。盗賊団の殲滅といきますか」

女武道家「大丈夫なんですか…?」

竜騎士「俺のこと心配してんのか?何、俺は心配されるほどヤワじゃ…」


女武道家「いえ…そんな極悪な武器もって攻撃したら、相手の命に関わりそうなんですが…」

 
竜騎士「…」

女武道家「力加減考えてくださいね…、相手は人間なんですから…」ハァ

竜騎士「わかってるっつーの!」


中央商人「んじゃ、反撃といきますか。弟子商人の仇、しっかり取ってもらうぜ」

竜騎士「俺の仕事は高くつくぜ?」

中央商人「なぁに、任せておけ」ハハ


竜騎士「んじゃ、盗賊狩り…行くぞ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【盗賊団のアジト(街道の洞窟)】


盗賊兄貴「しかし素晴らしいモンばっかもってやがったな」

盗賊A「ですねぇ、この衣なんて相当なもんですよ」

盗賊B「お、おお、俺もこれがいいな…」


盗賊兄貴「ダメだ、これは全部売るんだよ。中央でしばらく遊べそうだな」ハハハ

盗賊B「俺、お、女と遊びたい!」

盗賊兄貴「お前はそればっかだな」

 
…ドォンッ!!

盗賊兄貴「なんだっ!?爆発音…?」

盗賊A「外からだ!」

盗賊B「お、俺見てくる…!」


タッタッタッタ…


盗賊B「だ、誰だ!ああ、あ、兄貴のアジトだと知ってのことか!」


…ザシュッ!!!

盗賊B「うあああっ!い、痛いぃ!」

 
盗賊兄貴「!…どうした!」

盗賊A「おい!今の音はなんだ!」


盗賊B「あ…兄貴…誰か来たぁ…血が出てるよぉ…」ドロッ

盗賊兄貴「なっ、おい、大丈夫か!」

盗賊B「痛いよぉ…」


…トコトコ…

竜騎士「んなもんかすり傷だろうが」ハァ

 
盗賊兄貴「…軍服、てめえ軍人か!」

竜騎士「いかにも。お前が襲った商人たちは、俺の知り合いなんだ。そう簡単にくたばれると思うなよ?」

女武道家「そうですよ!」

中央商人「覚悟しろよ」

弟子商人「…」ブルブル


盗賊兄貴「てめ…さっきの…」

盗賊A「やっぱりあの時、殺しておけばよかったんですよ…面倒なことになった」

 
盗賊兄貴「だが、俺もこの生業では有名な身…!そう簡単にやれるかな?」スチャッ

盗賊A「そうだぞ、兄貴…こいつら倒して身包み剥ぎましょうぜ」

盗賊兄貴「かかってこいコラァ!」


竜騎士「ん?お前、結構戦えるほうなのか?」

盗賊兄貴「うはは、俺に恐れをなしたか!?」

盗賊A「兄貴は、昔…竜をも一人で倒した事のあるスゲー方なんだ!命が惜しかったら出て行けや!」


竜騎士「それ本当?なら、遠慮しなくていいんだな?」ググッ

盗賊兄貴「え?」

盗賊A「え?」

 
竜騎士「全力で最初から一撃を決める…龍突っ!!!」ビュワッ!!!!

…ズドォォォォン!!!!!…

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】


竜騎士「あーいってぇ…」

女武道家「し…死ぬかと思いました…」

中央商人「この、馬鹿力が!!洞窟まで崩すことないだろうが!」


竜騎士「俺のせいだっつーのかよ!あいつらが戦えるほうっつーから、本気でやったんじゃねーか!」

中央商人「そんなのウソに決まってるだろうが!」

竜騎士「あー悪かったな!俺が悪かったです!」


中央商人「あぁ!?」

竜騎士「あぁ!?」

 
女武道家「はぁー…」

竜騎士「ははは、だけどこれで報告書も今日までしっかり書けた」

女武道家「もうすぐ中央から報告書受け取りに来るんですよね?」

竜騎士「明日は31日で俺らを決する会議がある。っつーわけで、明日は休みだ」


女武道家「休み!?」ピョコンッ


竜騎士「そうだなー戦いばっかだったし、たまにはのんびり…」

女武道家「釣りですか!?」

竜騎士「気に入ったの?」

女武道家「元々好きですってば!」

 
中央商人「へー、釣りか。面白そうだな」

竜騎士「面白いけどな、お前はその前に…依頼料よこせ」

中央商人「ちっ…金の亡者め」ゴソゴソ

竜騎士「お前にだけは言われたくねえ」


スッ…

中央商人「40万ゴールドだ」

竜騎士「あ?こんなには要らないぞ?」

中央商人「取り戻せた商売品が120万。仇討ちでそのくらいになるぜ」

 
竜騎士「ちょうど欲しい金額だったし、何も言わず受け取るぞ?」

中央商人「おうよ」

竜騎士「ありがとよ」

中央商人「あぁ」


女武道家「もしかして、これで目標金額に…」

竜騎士「500万…突破だ」

女武道家「やったー!」


竜騎士「これで、中央も認めざる得ないだろう。存続または中央へ戻るには十分すぎる」

 
女武道家「結果はいつでるんですか?」

竜騎士「早くて9月1日には出るだろう。通信機が壊れてるから伝えられるのは9月2日か」

女武道家「…怖いですね、少し」

竜騎士「お前も、これからどうするか決めておけよ」


女武道家「中央へ行くか、ここに残るか、ですか…」


竜騎士「俺はもう決めた」

女武道家「…どうするんですか?」

竜騎士「冒険部または旅に行く。世界を見て回ろうと思う」

 
女武道家「そうですか…ここに残るというのは…」

竜騎士「なくはないが、やはり…な」

女武道家「そうですか…」


中央商人「ん~それじゃ、俺らはこれで失礼するぜ」

竜騎士「ん?もうちょっとゆっくりしていってもいいんだがな」

中央商人「いやいや、俺も仕事あるしな。弟子商人、行くぞ」


弟子商人「は、はいっ、ありがとうございました皆さん!」

 
竜騎士「うむ、変なのには気をつけろよ」

弟子商人「はいっ!」


中央商人「またな」

竜騎士「あいよ、またな」

女武道家「またです!」


トコトコ…ガチャガチャ…バタンッ

 
竜騎士「…」

女武道家「…」

竜騎士「さ、報告書でもまとめるか」

女武道家「お手伝いしますよ」


竜騎士「んむ」

女武道家「…」

 
竜騎士「…」

カキカキ…

竜騎士「…」

女武道家「…」


カキカキ…ペラッ…


竜騎士「…」

 
女武道家「…竜騎士さん」

竜騎士「んー?」

女武道家「世界って、広いんですかね」

竜騎士「そりゃあ広いだろ。この町全部の土地を合わせても、世界の1%にも及ばないぞ」


女武道家「世界って、楽しいですかね」

竜騎士「楽しいだろうな。知らない事がたくさんある」

女武道家「そうですか…」

竜騎士「お前は世界を見たいとは思わないのか?」

女武道家「私ですか?」

 
竜騎士「確か、出会った時にこの町が好きだから残っているって言ってたが」

女武道家「言いましたねぇ…」

竜騎士「今はどうだ?戦いとか、新たな出会いを通じて、何か変わったことは」


女武道家「…変わってきました。あのアヴァちゃんみたいな、可愛い動物ってもっと世界に沢山いるんですよね?」

竜騎士「そこか…、まあ沢山いるだろうな」

女武道家「そういうもので、世界を見たいってのは不謹慎ですかねぇ」


竜騎士「不謹慎て…、そんなことないだろ」

 
女武道家「…うーん」

竜騎士「スミスさんじゃないが、何事も動けるうちじゃないかなって思ってな」

女武道家「…」

竜騎士「俺よりも遥かに女武道家は若いし、俺くらいまで鍛錬を積んでからのほうがいいかもしれないが」

女武道家「…」


竜騎士「中央へ行って、もっと世間ってやつを見て、そこから世界へ出る。それも悪くない」

女武道家「色々な手段があるんですね」

竜騎士「無数の未来、無数の道。無限の未来ってやつかな」

 
女武道家「そうですね…」

竜騎士「ま、何にせよ最後に決めるのは自分自身だ」

女武道家「はい」


竜騎士「さて…、報告書がまとまったら今日から少しの間休みだぞ!」

女武道家「が、頑張ります!」

竜騎士「っしゃ、スパートかけてやるぞぉ!」

女武道家「おーっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

  
【8月30日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド
・ドレイクの素材販売250万ゴールド
・マンドラゴラの販売20万ゴールド
・鉱石販売60万ゴールド
・盗賊団の撃破、商人の商品奪還40万ゴールド

■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド

■収支合計
・プラス508万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後0ゴールド

本日はここまでです。ありがとうございました。
次回の更新で、最終回となります。

皆さま有難うございます。最終回、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【8月31日中央軍・本部・会議室】
 

元帥「それではこれより、 月末定例会議を行う!」

大将「うっす」

中将「了解です」

少将「いつでも」


大佐(上官)「お願いします」

中佐「月末の報告書、全てご用意いたしました」

 
元帥「今回の議題は、南部森林における魔物の問題と…」

大佐「お待ちください!」バッ

中将「…!」


元帥「なんだ?」

大佐「少々、お時間を頂きたく存じます。ひとつ、ご報告と、提案がありまして」

少将「お前、元帥殿のお話の最中に何を!」グワッ

大佐「申し訳ない少将殿、これは今後の軍に関わる重要な話。耳を貸して頂けたら幸いです!」バンッ


元帥「…ふむ、良い。申してみろ」


大佐(竜騎士、期待して待っていろ!)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】


竜騎士「さて、今日は…休みだぁ!」

女武道家「何します!?」

竜騎士「何する!?」


女武道家「釣りっ!」

竜騎士「…釣りだけじゃ、何か味気ないないだろう」

女武道家「でも、遊べるところもないですしね」

 
竜騎士「待て、今考える」

女武道家「?」

竜騎士「…スミスさんの工房…釣り…、コックさん…」ブツブツ

女武道家「…」ジー

竜騎士「決めた!決めたぞ!」


女武道家「な、なんですか!?」


竜騎士「来い!」グイッ

女武道家「え、ちょ、このパターン何か久々…引っ張られるのは嫌ぁぁっ…!」ズリズリ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】

スミス「…鉄板?網?準備?…まあいいが」

コック「まあ、今日は店も暇だから手伝うが一体何だ?」

弟子「僕も呼ばれてなんですかね」

バイト「久しぶりですね、皆さん」


中央商人「急に呼ばれたと思ったら、いらん食品8万で安く譲れだぁ?」

弟子商人「まあまあ、助けてもらったお礼ですし…」

 
女武道家「大勢集めて…道具もって、どこ行くんですか?」

竜騎士「まぁまぁ、水晶の泉のいつもの場所行くぞ」


中央商人「…ははーん」ピーン

コック「なるほど」

スミス「あー…いいんじゃないか?」

弟子商人「ちょっと楽しみになってきましたよ!」


中央商人「なら、新鮮な肉もある。それも特別に出してやろう」

竜騎士「お、いいねえ!」

 
女武道家「…??」

竜騎士「お前、まだわからないのか?」

女武道家「…うーん」


弟子商人「アレですよね。これだけの人材と道具が揃っているということは…」

女武道家「なんですかっ!?」


竜騎士「水辺で釣りしながら…バーベキューといこうじゃないか!夏の最後だし、満喫するぞ!」

女武道家「ば…バーベキュー!!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉付近(釣り場)】


…ザバァッ!!

女武道家「きゃーっ、また釣れましたぁ!」

スミス「おお、でかい!」


コック「次々と捌くぞ、弟子、お前はもっと手際よくだな」

バイト「おっそーい」

弟子「うっさいな、バイトもやってみろよ!動く魚なんて滅多に捌かないんだから!」


コック「こりゃ、一から教えなおす必要があるな」

 
中央商人「…肉、これでいいんですか」

コック「あぁ上出来だ。思ったより腕がいいな」

中央商人「これでも一人暮らし長かったんで。あと串に刺すんですよね」

コック「そうだな、スミス…お前、遊んでばっかいないで早く手伝え」


スミス「あー…魚釣るのが俺の仕事だから」

コック「食わせないぞ」

スミス「さ、どれを刺せばいいんだ?」

女武道家「あははっ、スミスさん面白いです」

 
タッタッタッタ…

弟子商人「追加で肉とか野菜、持って来ましたぁ!」

中央商人「暑い中ご苦労さん、ちょっと座ってていいぞ」

弟子商人「いえいえ、手伝いますよ!」


女武道家「うちで採れた野菜もありますよ!」

コック「レタスは肉に巻いて食べると旨い。焼肉ベースも鉄板で設けよう」

スミス「いいねー!」


コック「それじゃ、焼くぞ」

 
…ジュワ~…!!!パチパチ…ジュウウウ…

女武道家「いい音ぉ…」


コック「油がちっと少ないな、弟子、ちゃんとやれ。これはこのくらいの量だ」スッ

弟子「す、すいません…、覚えておきます!」


中央商人「北方牧場からの直送の牛肉と豚肉だ。今朝届いたから、美味いぞ」

コック「脂がしっかり乗ってて、しつこすぎないから料理もしやすい。いい肉だ」

中央商人「へへ、これを機会に御ひいきに」

コック「考えておく」


 
…トコトコ

竜騎士「おー…準備終わってた。遅れました」

女武道家「遅いですよ!企画した本人が消えてどうするんですか!」

竜騎士「はは、ちょっと森の深部まで走って新鮮な肉とってきた。」

女武道家「また…仕事じゃないんですからぁ…」


竜騎士「…ついでにこんなのも着いてきた。くっついて離れないんだよ…」

アーヴァンク『キュイッ!』ベタァ

女武道家「アヴァちゃぁぁんっ!」

アーヴァンク『キュ~♪』

 
竜騎士「そいつの面倒は任せた…あとで寝かせて戻すからな…」

女武道家「ん~…可愛い♪」スリスリ

アーヴァンク『キュウ!』 
 

コック「…ま、持ってきた肉は全部ぶちこめ。俺が旨くしてやる」

竜騎士「美味しいですよきっと」ハハハ


スミス「…いい天気だし、バーベキュー日和ってかんじだな」

竜騎士「ですね、みんな楽しそうで良かったです」

 
スミス「…だが、お前は中央に全部終わったら戻るんだろう?」

コック「そうだったな、短かったが…寂しくなる」

竜騎士「…そこまで言ってもらえると、俺もうれしいですよ」


スミス「お別れ会っていうか、見送り会って感じでもあるかもな」

竜騎士「…ですかね」


スミス「ま、いつでも戻って来いよ。いつでも武器は新調してやる」ハハ

コック「俺は美味いもん食わせてやる」

中央商人「俺はいいもん売ってやるよ。俺は長い間ここに留まるしな」


竜騎士「はいっ!」

 
…ジュワジュワジュワ…ジュウウ…


女武道家「…、……あ、竜騎士さん、焼けましたよ!」
 
竜騎士「お!?」

コック「お前が企画したことだ、最初に食べてみろ。最高の焼き加減だ」スッ 


竜騎士「それじゃ…遠慮なく頂きます」ニコッ

…ハフハフ…モグモグ…

全員「…」ジュルッ



竜騎士「…う、美味い…!!!」ゴクン

 
コック「当たり前だ」フン

スミス「次々焼きあがるぞ、魚も野菜も、どんどん食え、飲め!」


全員「かんぱぁぁいっ!」カァンッ


女武道家「いただきまーっす!!」

弟子商人「う、うまいです!」モグモグ

中央商人「我ながら、いい肉を仕入れて良かった」ハフハフ

バイト「おいっしー!」

弟子「美味しくできてよかったぁ…」モグモグ


竜騎士「…楽しいなぁ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

  
【8月31日終了時点での収支】

■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド
・ドレイクの素材販売250万ゴールド
・マンドラゴラの販売20万ゴールド
・鉱石販売60万ゴールド
・盗賊団の撃破、商人の商品奪還40万ゴールド

■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド
・バーベキュー費用8万ゴールド

■収支合計
・プラス500万ゴールド

■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後0ゴールド

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【そして9月2日…】


コンコン

女武道家「は、はいっ」

竜騎士「…来たか。どうぞ」


…ガチャッ

上官「失礼するぞ。竜騎士、女武道家」

竜騎士「!?」

女武道家「あれ?いつもの人じゃない?」

 
竜騎士「上官殿!?どうして…ここに!」

女武道家「上官さん!?」


上官「なぁに、折角だしココまで来たんだ」

竜騎士「折角だしって…」


上官「話に聞いてた通り、自然が多くていい場所だな」

竜騎士「そりゃそうですが…」

上官「それと、本題はこっちだ。これを伝える為にきた」スッ


竜騎士「この書類は…」

上官「君たちの処遇、この支部に関しての結論が出た」

 
竜騎士「…」

女武道家「…」


上官「…簡単に読み上げる」ペラッ

竜騎士「…」ゴクリ


上官「この支部は存続。予想以上の成果と、竜騎士が軍にとって有益をもたらす重要な人材と認められた」

竜騎士「お…!」

女武道家「え、じゃ、じゃあクビじゃないんですか!?」


上官「もちろん、支部に在籍する1名の軍人も含め、続行される」

女武道家「や、やったああー!」

竜騎士「っしゃあああ!」

 
上官「それと、女武道家。君の働きは中央に認められ、1階級上げて中央勤務が認められる」

女武道家「曹長で、中央に行けと…?」

上官「望めばの話だ。ココに残る場合は、支部長の権限も場合によっては与えられる」

女武道家「場合?」


上官「まぁ、その話はこれの後。竜騎士、中央への復帰が認められたぞ。おめでとう」

竜騎士「!」

上官「つまり、竜騎士が中央へ戻ったら…この支部長として女武道家が迎えられる」

 
女武道家「え…じゃあ私と竜騎士さんが中央勤務を望んだら、この支部はどうなるんですか?」

上官「…」

女武道家「嫌ですよ…、この支部がなくなるのは…思い出が詰ってる場所なんです!」


上官「心配するな」ニヤッ

竜騎士「ま、まさか…上官殿…」

上官「俺…いや、私の任務はここまで。現支部長、竜騎士少佐殿、あなたはこれからどうするのですか?」


竜騎士「…っ、やっぱり…か…」

 
女武道家「え、え?」

上官「月末会議で、少し燃えてしまって、将官たちに生意気な口を聞いてしまってな」ハァ

竜騎士「…」

上官「中将は軍法会議にかけられるが、私はついでにココの支部送りにされてしまった」ハハハ

竜騎士「…」


上官「そんな顔をするな。まぁ、それも謹慎のようなものだし…一時的に左遷されたわけさ」

竜騎士「…わざわざ、俺のために…」

上官「何、気にするな。私は軍の未来を思ってそうしたまでだ。それとな…」

 
竜騎士「?」

上官「昔、私に言ったあの言葉、今も心に強く残っているぞ?」ククク

竜騎士「え…ちょ、それは!」


女武道家「昔、言った言葉?」

上官「ああ、こいつは私の後輩なんだが、その時に学校でな…、面と向かって」

竜騎士「わーっ!わーっ!!!もう忘れてください!僕ももう忘れた事にしてるんですから!」


上官「はははっ!相変わらずだ!」

 
女武道家「?」

上官「あー涙が出るほど面白い。それで、どうするんだ?中央へ戻るか?」

竜騎士「…」


女武道家「竜騎士さん…」

竜騎士「俺は、もう決めています」

上官「ほお…どうするのだ?」


竜騎士「俺は…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【12月26日・馬車の中】


…パカラッ…パカラッ…


運送商人「…」

竜騎士「っていう事があったわけです」

運送商人「へぇ…兄さん、若いのに苦労してるんだね」


竜騎士「今はこうやって、志願通りに世界を巡る冒険部として活躍してますけどね」

 
運送商人「…大変じゃないのかい?」

竜騎士「大変なことも沢山あります。けど、何よりも…楽しいですから」

運送商人「そりゃあいいな。楽しいことが一番さ」ハハハ


ビュウウウッ…!!

運送商人「うう…寒くなってきたな。もうすぐ、猛雪山だよ」

竜騎士「雪が凄いな…」ブルッ

運送商人「吹雪で前が見えなくなる前に、着きたいねぇ」

 
竜騎士「…ですね」


…ガタガタン!!!…

運送商人「おっと!揺れたか…ごめんよ」


ゴロゴロゴロ…ゴツンッ!!

女武道家「あいたぁーーー!」モゾモゾ

竜騎士「うっさ!」

運送商人「あらら…寝てたの起こしちゃったか…ごめんごめん」


女武道家「気にしないでください…」イタタ

 
竜騎士「ったく、どこでも寝るからそうなるんだ」

女武道家「あーっ、ひどい!」

竜騎士「耳元で騒ぐなうるさいー…」キーン


運送商人「はっは、その子が話しに出てきた女武道家さんってことだね?」

竜騎士「えぇ、何を思ったのか…あの時、俺が冒険部に志願した時…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「私も冒険部へ…行こうと思います!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜騎士「軍も何を思ったのか知らないんですが、そのままパーティでくっ付けられて…」ハァ

 
女武道家「いいじゃないですか、楽しいんですから!」

竜騎士「あー…そうね…」

女武道家「今回は、この場所に何の用事ですか?」


竜騎士「山岳にいるイエティの討伐。皮は売れるし、それなりの報告にもなる」

女武道家「山登りですか…」

竜騎士「文句あるなら、登らなくてもいいぞ」

女武道家「い、いえ、登りますよぉ!」

 
運送商人「はっはっは、二人とも、仲がいいねえ」


竜騎士「…」ハハ

女武道家「さーっ、今回もバリバリ働きますよ!」

竜騎士「可愛いのはいないからな?」

女武道家「…えぇ」


竜騎士「はは…いつまでたっても変わらないな、お前は…」

 
―――2人を乗せた馬車は、雪の中を静かに進む。



果たして、彼らはどんな運命を辿るのか。

どんな世界が待っているのか。



…それはまた、別のお話。



【…E N D…】

 
■後書き

これで完結になります。読んで下さった方々、意見感想を下さった方々、心より感謝致します。

本来予定していたよりもやや短めになり、描ききれなかった場面も多くあるのが心残りだったりします。


ですが、こうやって最後まで物語を描けた事をうれしく思い、

ひとえに、皆さんのおかげでもあります。本当にありがとうございました。


短めながら、もう1つの小さなお話を投稿し、本当の終了となります。

 
…その町であったもう1つのちょっとしたお話…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【今から数百年前のこと】


都市商人「暑いなー…こんな場所に本当に町なんて出来るのか?」

王国商人「王に言われたとはいえ、切り開くのだけで精一杯だぞ…」

古商人「俺はちょっと水辺探してくる」

…トコトコ…


都市商人「でもまあ、自然が多いってだけで意外といい場所だとは思うが」

 
王国商人「そりゃそうなんだが…」

都市商人「それに、近くに洞窟があった。ありゃ鉱物が眠ってそうだぞ」

王国商人「本当か!?そりゃいい…うちの王国から腕のいい鍛冶屋を紹介しよう!」

都市商人「お、頼むぞ」

王国商人「近くに大きな林もあったし、そこの付近なら木材も困らん。鍛冶屋の小屋でも建ててやろう」


都市商人「林か…動物も多いだろうし、新鮮な食材も手に入りそうだな」

王国商人「お?確か、お前の所に有名なシェフがいたな。そいつとか連れてこれないのか?」


 
都市商人「さすがに無理だろう、弟子が動けないかは聞いてみる」

王国商人「いいね、そっちも頼むわ」

都市商人「おう、任せておけ」


タッタッタッタ!!

古商人「お、おーい!おーーい!!」


都市商人「なんだ?」

  
古商人「こっちにやばい泉を見つけた!早く来い!」

都市商人「水辺もあったか。何がやばいんだ?」

古商人「とっ、とにかく来い!」


都市商人「?」キョトン

王国商人「?」キョトン

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの泉 】


古商人「見ろ!!」

王国商人「おぉー」

都市商人「でけえ…綺麗だな…」


古商人「ばか、綺麗なだけならどこでもある。よく見ろ!」


都市商人「…?」ジッ

 
…パシャッ!!バシャバシャ…

都市商人「はっ!?ありゃ…海魚じゃねえか…」

古商人「み、水飲んでみろ!」


グビッ…

都市商人「…!」


古商人「…な?」

都市商人「ただの水?なんで海魚がいるんだよ…」

古商人「わからん、不思議な場所だ」

 
王国商人「こりゃあ思ったより、凄い開拓地かもしれんぞ」ワクワク

古商人「楽しくなってきたな!」


…ガサガサッ!!

都市商人「なんだ!?」


インプ『ケケ…なんだお前ら…』

都市商人「インプ…」

王国商人「くっ、やはり魔物がいたのか!」

 
インプ『…人間か』

王国商人「…」

インプ『見た所、商人か?そうか…開拓にでも来たか?』


王国商人「…お前、知性が高いのか?」

インプ『ふん…』

王国商人「それなら話が早い。いずれ、ここに町を開く。その時、人間に手出しはしないでもらいたい」


インプ『…さあな。だが俺たちだって自分の命を脅かすことはしないさ』

 
都市商人「それはありがたい。それと、この泉はなんだ?内地で海の生き物がいるとは…」

インプ『俺らの生命の魔力のおかげだ。勝手に採るなよ?俺らの生活の糧なんだ』

都市商人「なるほどな…。少しだけでも分けては貰えないか?」


インプ『人間に渡すものはない。関わるな』

都市商人「…この泉があれば、民は潤う。頼む」

インプ『だめだ』


都市商人「…なら、これでどうだ」キラッ

 
インプ『…ほぉ』

王国商人「お前、それは…」

古商人「そりゃ…だめだろ…」


都市商人「せめて、民が安定するまでの供給を願う。この"金の魔力の金貨"を泉に落とそう」

インプ『確かに、それがあれば俺たちも楽にこの泉を維持できるな』

都市商人「…どうだ?」

インプ『ケケ…いいだろう。安定するまで、だがな』


都市商人「充分だ…ありがとう」

 
ピンッ…ヒュウウッ…パシャンッ……

パァァァッ…


都市商人「…泉が魔力で満ちていく。素晴らしい輝きだ…」

王国商人「ありゃ、お前が命をかけて手に入れた古代の金貨だろ…いいのか?」

都市商人「これが未来の為になるならば」

王国商人「…よくやるわ」


都市商人「溶けた金貨はいずれ魔力を失い、この泉の底で姿を戻すだろうしな」

王国商人「つったってな、お前生きていないぞ?金の魔力だ…何百年後になるか、何千年後になるか」

都市商人「何、誰かいつか見つけてくれるさ」ハハハ


 
インプ『変わったヤツだ。ま、約束だ。もう少しいった場所に、俺らが住んでいる場所がある。欲しい時はそこに来い』

王国商人「…んー、近くに、開けた場所はないか?」

インプ「泉から少し歩いた場所に、平坦な土地はある」


王国商人「俺らの拠点を作らないか?ここなら飲み水、食べ物にも困らないし」

都市商人「悪くないね」

古商人「いいぞ」


インプ『遠慮のない奴らだ…まぁ…いいが』

 
王国商人「よっしゃ、広大な土地、自然、俺らがここに町を作る!」

都市商人「そうだな、がんばろうぜ!」

古商人「…おう!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【そして、長い時が流れ】


ザバァンッ!!

竜騎士「ぷはぁっ!」


女武道家「!」

竜騎士「やー、思ったよりも深くて手間取った」ハハ


女武道家「ご…5分ですよ!?どんだけ潜ってるんですか!」

竜騎士「5分くらい…」ゴニョゴニョ

女武道家「信じられません…」

 
竜騎士「それより…よいしょっと」

…カチャンッ


女武道家「何です?これ?」

竜騎士「泉の深くに落ちてた。金貨…みたいだな」

女武道家「…金貨?」

竜騎士「見たことない金貨だ。なんだこりゃ」


女武道家「使えたり、売れるんです…かね?」

 
竜騎士「変な模様入ってるし…使えないんじゃないか?もしかしたらオモチャか何かもしれん」

女武道家「こんな泉に?」

竜騎士「何があるかなんて、誰にも分からないもんだ」

女武道家「ふむ…?」


竜騎士「うっしゃ、とりあえず戻るか。涼めたし」ザバッ

女武道家「私は違う意味で涼みましたけどね…」

 
竜騎士「とりあえず戻ったら、書類整理の続きだ!」

女武道家「え…」

竜騎士「今までサボってた分のツケが来たと思うことだな」


女武道家「そ、そんなぁ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
【 E N D 】

 
もう1つのお話は、これで終わりです。

そして、今回はこれで本当に終了となります。


今後、スレが残っている間にまた何か新作があるような事があれば是非、ご報告致したいと思います。

それでは、皆さま、ありがとうございました…。

ありがとうございます。
竜騎士の続編ではございませんが、
やや短め予定の新作を開始したので一応、お知らせしておきます。


勇者「時空に飛ばされたら魔王がアパートに住んでいた」

勇者「時空に飛ばされたら魔王がアパートに住んでいた」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1381850994/l50)

あれもあんたかw
雰囲気違いすぎてスルーしてたwww

鳥は基本的に気にしないからわからんかったよwww

>>731
いえいえ、色々書こうと思っていたのでw
お暇な時があれば、読んで頂ければ幸いです


皆様へ…沢山のコメント、感謝いたします。

竜騎士「孤島に残されサバイバル生活」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1382707710/l50)
竜騎士「孤島に流されサバイバル生活」


竜騎士の続編を開始致しました。

基本的に前作(本作)のテイストを基本にしていく予定なので、
是非、本作を読んでいただいた方は一度目を通して頂ければ嬉しいです。

少し間をおきましたが、

竜騎士「空を翔けて冒険生活」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1386507003/)
竜騎士「空を翔けて冒険生活」

開始したことをご報告致します。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom