竜騎士「空を翔けて冒険生活」(713)

 
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上記の続編になります。

 
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――――【 12月8日 中央軍 】


コンコン…ガチャッ

竜騎士「上官殿、失礼致します」

上官「竜騎士、来たか」

竜騎士「はい…一体どうしたんですか?」

上官「ふっふっふ…」


竜騎士「?」

 
上官「お前の前々から申請していた、空中都市の探索許可が下りたぞ!」

竜騎士「ほ、本当ですか!?」

上官「ほれ」ペラッ

竜騎士「…!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【12月8日】

竜騎士中佐の空中都市探索を許可する
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜騎士「…お、おっしゃああ!」グッ

上官「やれやれ、そんなにあの塔に登りたかったのか?」

 
竜騎士「そりゃ…魔界の手がかりであり、最後の人類の謎じゃないですか!」

上官「…そうは言ってもなぁ」ポリポリ

竜騎士「なんです?」


上官「お前自体は問題ないが、お前の仲間に問題あるだろうが」

竜騎士「あー…まぁでも、最近は頑張ってきてるほうで…」


ガチャガチャッ…バタンッ!!

女武道家「お、遅れましたぁ~!きゃあっ!」

ツルッ…ドシャアッ!!


竜騎士「…」

上官「…」

 
That's where the story begins!
――――――――――――――
【竜騎士「空を翔けて冒険生活」】
――――――――――――――
Don't miss it!

 
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――――【1時間後 中央都市・カフェ】


女武道家「あうぅ~…痛い…」ズキズキ

竜騎士「ノックはしないわ、慌てて転ぶわ、ゲンコツで済んだ分いいと思え!」

女武道家「だからってあんな力一杯殴らなくても…」


竜騎士「…あぁ?」ギロッ

女武道家「怖い!竜騎士さん、いつにもまして怖いです!」

竜騎士「はぁ…今回、お前はやっぱり待機のほうがいいかもな…」

女武道家「?」

 
竜騎士「実はな、"空中都市"っつー遺跡の探索許可が下りたんだ」

女武道家「空中都市ですか?」

竜騎士「魔界の最後の遺産、聞いたことあるだろ?」

女武道家「あ~…はい、確か…魔界と人間界を繋ぐって言われたやつですよね」


竜騎士「そう。魔力の暴走を起こして崩壊したやつな」

女武道家「確か他にもいわくつきでしたよね」

竜騎士「塔のある町、星降町は幾度も問題起こしてなぁ…内戦が絶えなかったんだよ」


女武道家「今ってどうなんでしょうか?」

竜騎士「今は落ち着いてるよ。何代目か前の、その土地を仕切る王女が落ち着かせたらしい」

女武道家「王女様ですかぁ…あこがれますねぇ」ホウッ

 
竜騎士「お前はせいぜい町娘がいいところだ」

女武道家「あ、相変わらずひどいですね…」


竜騎士「で…。問題なのはその塔のてっぺんに作られた魔力で浮く都市の探索なんだ」

女武道家「都市探索…ですか?」

竜騎士「正確には都市跡、遺跡だな。今までとは次元の違う敵がうようよいるんだ」

女武道家「じ、次元の違う…」


竜騎士「俺一人とか、パーティが心強ければ問題ないんだが――…」チラッ

女武道家「…」

竜騎士「どうするか、悩んでたわけだ」

女武道家「わ、私が足を引っ張るとでも!?」ガタッ

 
竜騎士「…支部問題」

女武道家「うっ」グサッ

竜騎士「サバイバル事件」

女武道家「ううっ!」グサグサッ


竜騎士「…な?」ニッコリ

女武道家「で、でで…でも、他にも冒険はしてきましたし…そこでは問題を起こしてませんよぉ!」

竜騎士「そりゃそうなんだが…今回のは今までと全然違うからな」

女武道家「そんなに、ですか?」

竜騎士「あぁ。正直、俺一人だと守りきれる自信がないんだ」


女武道家「…そんな危険な場所に、行きたいんですか?」

竜騎士「…夢、だったからな」

女武道家「夢…ですか?」

 
竜騎士「元々、俺は冒険部志願じゃなかった…のは知ってるよな」

女武道家「ですね。中央でぬくぬく、ぬるま湯に漬かってたかったんですよね」

…ゴンッ!!!

女武道家「」


竜騎士「で、最終的にどうしても行きたい場所があった。それが、"塔"とその"遺跡"なんだ」

女武道家「…なんでですか?」ズキズキ

竜騎士「俺の爺ちゃんも、親父も軍人でな。もう前線で死んじまったけどな」

女武道家(あ…、竜騎士さんの昔の話を聞くの初めてかも…)


竜騎士「爺ちゃんは昔、その空中都市に行ったことがあるらしいんだ」

女武道家「そうなんですか?」

 
竜騎士「その時に見えた絶景と、歴史を刻む物の数々…いつも楽しそうに話してた」

女武道家「…」

竜騎士「だから、いつか俺も行きたいと思った…そういうことだ」

女武道家「なるほど…」


竜騎士「爺ちゃんは格段に強かった。けど、その時ばかりは大怪我をして戻ってきたらしいが…」

女武道家「そんな強い人が、ですか」

竜騎士「丁度、爺ちゃんが訪れたのは俺の歳と聞いたし…これはチャンスだと思った。…な?」

 
女武道家「…ですね。運命かもしれません」

竜騎士「だろう?だからこそ、危険だと分かってる。だけど――…」

女武道家「わかりましたっ!」ビシッ


竜騎士「んお?」

女武道家「今回の探索は、私は…遠慮します。迷惑はかけられませんから」

竜騎士「いや、話は最後まで」

女武道家「頑張って下さい…お話、聞かせてくださいね…」


…ゴンッ!!!

女武道家「」

 
竜騎士「話は、最後まで聞けっつーに!」

女武道家「ボカボカと…バカになっちゃいますよぉ!」グスン

竜騎士「元々アホなんだからいいだろうが!」

女武道家「むぅぅ…」


竜騎士「話を聞け。だけど、仲間で一番のお前に、その世界を見せてやりたいと思ってる」

女武道家「い…一番…?」

竜騎士「当たり前だ。今はお前が俺のそばにいるんだからな」

女武道家「えへへ…」

竜騎士「…どうした」


女武道家「竜騎士さんの一番…、嬉しいなって…」

竜騎士「ご、ごほんっ。で、話を戻すと、見せてやりたいというわけだ」ビシッ

 
女武道家「~♪」

竜騎士(というより、俺以外がコイツと組んだら扱い切れない気がするしな…)

女武道家「で、で?見せてやりたいで、どうするんですか?」


竜騎士「だから、今回は"行ける範囲"まで進もうと思う」

女武道家「行ける範囲?」

竜騎士「何も、全てが危険区というわけじゃないんだよ」

女武道家「ふむふむ」


竜騎士「その塔の入り口から、ある程度は軍部があったり、きちんと整備はされているんだ」

女武道家「へぇ~観光地みたいですね」

竜騎士「だから、ある程度進んで危険だと感じたら戻ることにする」

女武道家「…それでいいんですか?」

 
竜騎士「え?」

女武道家「竜騎士さんが、見たい物を見れるとは限りませんし…やっぱり私に気にせずとも…」

竜騎士「俺は、一番の仲間であるお前と一緒に見たい。それ以外の理由はねえっつーの」


女武道家「竜騎士さん…」


竜騎士「という訳で、出発は2日後。星降町で一度休憩をとって、そのまま塔を登る。いいな」

女武道家「…はいっ♪」

 
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・・

竜騎士の新たな冒険が始まりました。
本日は短めながらここまでです。ありがとうございました。

皆さま沢山のコメント等、とても嬉しく思います。ありがとうございます。
投下致します。

 
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――――【 2日後・12月10日 星降町 】

ガヤガヤ…ワイワイ…

竜騎士「…人が多い」

女武道家「観光客でしょうかね?随分にぎわってますねぇ」


竜騎士「塔も今は観光地だしなぁ、だが!塔の中に入れるのはこの間の許可を得た軍の…」

女武道家「…あ、竜騎士さん名産品が!」ダッ


竜騎士「聞いちゃいねえ」

 
タッタッタッタ…

女武道家「お茶に、お饅頭に、星をイメージした名産品…♪」

竜騎士「ほらほら、子供かお前は…」ハァ

女武道家「色々と世界を駆け回りましたが、観光地らしい観光地は初めてですから…」

竜騎士「まぁ…確かにそうかもな」


女武道家「はい!だから楽しくて…」


竜騎士「…ったく。…少しだけだぞ?」

女武道家「えっ!」ピコンッ


竜騎士「夕方には塔の一番下に到着しないとだめだからな?それまでなら特別な」

女武道家「色々見て…いいんですかっ!」

 
竜騎士「もうすぐ午後になるぞ。時間がなくなるぜ」

女武道家「~っ!…竜騎士さん、コッチ行きましょう!アッチもいいな!」グイッ

竜騎士「いでで!急に引っ張るな!」

タッタッタッタッタ…


竜騎士(考えてみれば…本当はまだ、こういうのが好きな年頃だもんな…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】


女武道家「~♪」ホクホク

竜騎士「満足しましたか」

女武道家「そりゃもうばっちり…。温泉入って…美味しいモノ食べて…」

竜騎士「そりゃよかった」


女武道家「…竜騎士さんは、楽しくありませんでした?」

竜騎士「どう思う?」

女武道家「…もしかして、私…わがまま過ぎましたか」ショボン

 
竜騎士「世界が終わりそうな表情してんじゃねーよ!」

女武道家「でも…」

竜騎士「まぁ少しの休暇と思えば、結構楽しかったよ」

女武道家「!」

竜騎士「こういうのも久々だったしな」


女武道家「デートですもんね!」

竜騎士「で…デート…」


女武道家「ふぅ~…満足しました!それで、塔に向かうんですか?」

竜騎士「そうだな…いい時間だし、そろそろ行くか」

 
トコトコ…

女武道家「さっきから思ってましたけど、結構…軍人さんいますよね」キョロキョロ

竜騎士「軍の支部もあるし、その管轄内だからな」

女武道家「皆さん、塔を登るんでしょうか?」

竜騎士「一般的な階級だし、見回りにあたってる奴らだろ」

女武道家「見回りですか?」


竜騎士「塔に動きがないとはいえ、ありゃ何があるか分からない代物には変わらん」

女武道家「なるほど…」

竜騎士「ま、俺らはそれに今から登るんだけどな!」

 
女武道家「ここからでも塔は見えますねぇ…高い…」

竜騎士「あの頂上に、空中都市があるんだ」

女武道家「なぜあるんでしょうかね」


竜騎士「詳しい事は分からないそうだ。一説によれば、一夜にして現れたとか色々いわれてる」

女武道家「ほえ~」

竜騎士「確かに諸説あるが、詳細は不明らしいな…」

女武道家「割と昔からあるのに、調査は進んでないんですか?」

竜騎士「住み着いてる魔獣の強さがハンパないんだってよ」

女武道家「言ってましたね…」

 
竜騎士「だから調査が進んでないんだよなぁ」


女武道家「う~ん…実力者は世界中にいそうですし、もっと調査が進んで良さそうですけどね?」

竜騎士「俺が言うのもなんだが、中々強い!って人は見た事ないぞ」

女武道家「中央軍に所属していた頃からですか?」


竜騎士「中央じゃ、俺に勝てるのは上官殿と一部の傭兵くらいだった…な、うん」

女武道家「へぇ~…やっぱり竜騎士さんは強いほうなんですね」

竜騎士「昔は、ソロで竜を倒せる人とか結構いたらしいけどな。本当かどうか」

女武道家「信じられませんよねぇ…」

 
竜騎士「俺もそのくらい強かったら、もっと任務も楽にこなせたんだろうが」ハハ

女武道家「私から見たら、誰よりも信頼できるのが竜騎士さんですよ」

竜騎士「お…、おう」

女武道家「えへへ、頼りにしすぎるのも問題ですけど…、頼りにしてるんですから!」

竜騎士「そ、そうか…」


女武道家「あ、見えてきましたよ…塔の入り口」

竜騎士「まだ観光客も少しいるな。隣にある支部にまず行くぞ」

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍・星降軍支部 】


ガチャッ…バタンッ

竜騎士「失礼します。中央軍所属…竜騎士中佐、ただいま到着致しました」ビシッ

女武道家「同じく、中央軍所属の女武道家少尉です」ビシッ


大佐「わざわざご苦労。君が竜騎士くんだな」ビシッ

 
竜騎士「この度は、塔の調査を許可頂きありがとうございます」

大佐「お主の話は聞いているからの。君なら調査も問題ないだろうと思ってね」

竜騎士「はっ!ありがとうございます」


大佐「と…既に上に許可も取ってあるが、一応…コレをもってを持っていきなさい」スッ

竜騎士「これは?」

大佐「私の通行サインだ。上の者は偏屈でな…」

竜騎士「上の者ですか?ここで許可を得れば大丈夫なのかと思ってましたが」


大佐「…知らないのか?」

竜騎士「申し訳ありませんが…存じ上げません…」

 
大佐「ここの支部は塔の管轄だが、上には都市跡を管轄する別の部があるんだ」

竜騎士「全てここで管理しているものだと思ってました」

大佐「確かにそうなんだが、ココと…上の支部の2つで管理しているんだ」

竜騎士「ふむ…」


大佐「まぁ一応な。とりあえずこれを持って行けば大丈夫だろう…ということだ」

竜騎士「わかりました」

大佐「今から登るのか?」

竜騎士「ですね…、上の支部で宿舎があると聞いたので」

大佐「そうだな。それじゃ、武運を祈る」ビシッ


竜騎士「ありがとうございます!」ビシッ

女武道家「ありがとうございます!」ビシッ

 
竜騎士「それでは、失礼致します」

大佐「うむ」

ガチャッ…バタンッ…


女武道家「…これで行けるんですね」

竜騎士「あぁ。いよいよだ…おっしゃあ!上るぞ!」

女武道家「はいっ…頑張りましょうね!」

竜騎士「当たり前だ!」

タッタッタッタッタ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔の1階 】


ガチャッ…ギィィィ…


竜騎士「…」

女武道家「…」


トコ…トコトコ…

兵士「ご苦労様です!」ビシッ

竜騎士「あ、あぁ…うん…」

女武道家「ど、どうもです」

 
兵士「奥にある階段から上へ登れます」

竜騎士「ん…ありがと」

兵士「はっ!」ビシッ


トコトコトコ…

女武道家「意外と中は広いですね」キョロキョロ

竜騎士「…」

女武道家「竜騎士さん?」


竜騎士「うっ…」ブルッ

女武道家「ど、どうしたんですか…?」

 
竜騎士「どうしよう…この気持ち…」ブルブル

女武道家「…?」

竜騎士「嬉しすぎて、興奮して、どうすればいいか分からないんだよ!」

女武道家「そ、そんなにですか!?」


竜騎士「もう、全身の血が沸き立つようだ…!」

女武道家「やっぱり…夢でしたもんね」

竜騎士「あぁ!」

女武道家「嬉しそうで何よりですっ」


竜騎士「…おっしゃ、登るぞ!」ダッ

女武道家「あ、早いですよぉ!」

 
タタタタタッ…タンタンッ…


女武道家「この塔、相当高いですよね」

竜騎士「本来なら10階くらいまでしかなかったらしいが」

女武道家「今は何階構成なんですか?」


竜騎士「どうだったかなー…、とりあえず今はそれ以上の構成だったはずだ」

女武道家「なるほど」

竜騎士「まずは10階。そこで一旦休憩か?俺も色々と細かいのは分からないんだよ。初めて来たしな」

女武道家「竜騎士さんのことですから、色々情報を集めてるものだと思ってました」

 
竜騎士「前も言ったが、ここの探索は許可が必要だって言ったの覚えてるか?」

女武道家「はい」


竜騎士「だから軍事関係者でも、機密性が高い情報として扱っていて…」

女武道家「??」


竜騎士「……、簡単にいえば"情報は公開されていない"だ」

女武道家「なるほど!」

竜騎士「…」ハァ


女武道家「それにしても結構さっきから上ってるんですけどねえ」

竜騎士「そういやお前…このペースで走ってるけど平気なのか?」

タッタッタッタッタッタ…

 
女武道家「少しは疲れてますけど、結構大丈夫ですよ?」

竜騎士(…少なくとも、一般兵よりは体力も戦術知識も付いてきている。尉官にあがったのも頷ける、か)


女武道家「そうそう、聞きたかったんですけど…許可っていうのはどんな条件なんですか?」

竜騎士「実力が認められ、将官と現地支部や軍会議での同意を得ることだ」

女武道家「実質、軍の全てに認められなければならないってことですね」

竜騎士「簡単にいえばそうだな」


女武道家「ってことは竜騎士さん、認められたんですね!」

竜騎士「ま、まぁ…」

女武道家「凄いじゃないですか…凄い!」

竜騎士「ありがとよ」ハハ

 
女武道家「そっかぁ~凄いなぁ~…」

竜騎士(ここ最近頑張って来たのは、お前をパーティ同行でも認められるため、だけどな)

女武道家「私、足を引っ張らないように精一杯頑張りますね!」グッ

竜騎士「おう…当たり前だ。頼むぞ」


女武道家「はいっ!…あっ」ツルッ

竜騎士「…えっ」

ゴロッ…ゴロゴロゴロゴロゴロッ!!!

 
女武道家「あぁぁぁ~!竜騎士さぁぁん……」

ゴロゴロゴロ………


竜騎士「…やっぱり頼まないで俺がしっかりするしかないな」ハァ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔・10階 】


女武道家「頭が痛いです…眼が回ってます…」ズキズキ…グルグル


竜騎士「注意力だけは身に付けろって普段から言ってるだろうが!」

女武道家「あうぅ…すみません…」


竜騎士「さて、気を取り直して…10階だぞ…っと」

ガチャッ…ギィィ…

 
竜騎士「お…」

女武道家「わあ…」

キラキラ…パァァッ…


竜騎士「な、なんじゃこりゃ…真っ黒な魔石…か?」

女武道家「キレイですね…こんな魔石初めて見ましたよ」

竜騎士「見たことねえぞこんなの…」


トコトコ…

???「お話中、失礼します…竜騎士中佐と女武道家少尉殿ですか?」

竜騎士「ん…そうだけど」

女武道家「はい」

 
青空騎士「自分は、青空騎士中尉です。以後お見知りおきを」ビシッ

竜騎士「よろしく」ビシッ

女武道家「宜しくお願いします」ビシッ


青空騎士「はい。竜騎士さんの噂は聞いてます…というか、尊敬しています!」ペコッ

竜騎士「うんうん…って、はい?」

青空騎士「同じ騎士で中央軍のエースと呼ばれて、今や冒険家としても名を馳せているじゃないですか!」

竜騎士「ま、まぁ…」

青空騎士「ですから、僕も貴方のような立派な騎士になりたくて…いつもそう思ってます!」

竜騎士「そ、そうか?あ、ありがとさん…」

 
青空騎士「僕の管轄がここで、竜騎士さんがココに来るとなった時からワクワクしてました!」

竜騎士(何か今日は妙にリスペクトされる日だな…)


青空騎士「10階からの案内は、僕が担当ですので宜しくお願いします」

竜騎士「10階からの…案内?」

女武道家「そういや…ここに階段はないですよね」キョロキョロ

竜騎士「お前そういう所よく気づくよな…この部屋、確かに魔石しかないじゃないか」


青空騎士「ここからは案内人がいないと上れないんですよ」

竜騎士「そうなのか?」

青空騎士「色々な対策のためですよ。それに、ここから上は…」

 
竜騎士「なんだ?」

青空騎士「都市遺跡と繋げる為に軍が伸ばした部分ですので、入り方を知っていても危険ですので」

竜騎士「へぇ…」


青空騎士「それじゃ、こちらです」

トコトコ…

竜騎士「…」

女武道家「…」

 
…ピタッ

青空騎士「ここです」

竜騎士「近っ!」

女武道家「近っ!」


青空騎士「そこの天井の魔石に開いている、穴の部分わかりますか?」

竜騎士「うむ…スゲー人型に開いてるんだけど」

青空騎士「そこは昔、英雄が閉じ込められたといわれているんですよ」

竜騎士「へぇ~…これが…」

女武道家「凄いですねぇ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔の最上階 】


バチバチッ…ギュウウンッ…!!!

スタッ…

青空騎士「…」

竜騎士「…」

女武道家「…」


青空騎士「…酔ってませんか?」

竜騎士「問題ない」

女武道家「…おえっ」


竜騎士「お前…」

>>56
1つ抜けて書き込み忘れです。

>>55 >>58 >>59 
に修正します。

 
青空騎士「そこに見えないように転移装置が埋められています。ってなわけで、僕に捕まってください」スッ

竜騎士「お、おう」ギュッ

女武道家「はいっ」ギュッ


青空騎士「じゃ、上の階に飛びます。強めの転移なので酔うかもしれません」

竜騎士「慣れてるよ」

女武道家「いつでも大丈夫です!」


青空騎士「では…」パァッ

ギュウウウンッ…!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔の最上階 】


バチバチッ…ギュウウンッ…!!!

スタッ…

青空騎士「…」

竜騎士「…」

女武道家「…」


青空騎士「…酔ってませんか?」

竜騎士「問題ない」

女武道家「…おえっ」


竜騎士「お前…」

 
青空騎士「あはは…仕方ないですよ」

竜騎士「仕方ねえなあ…っつーか、ここは11階にあたるのか?」

青空騎士「そうなりますけど、相当高くまで飛びました。そしてココが最上階です」

竜騎士「あぁそうなのか。窓とかあったら下見たいんだけど」

青空騎士「それならすぐそこに。開ければ見れますよ」


竜騎士「どれどれ…」ヨイショ

ガチャガチャ…バタンッ…


竜騎士「…うおっ」

女武道家「おえぇ…ど、どんな感じですか…」ヨロヨロ

 
パァァァッ…ヒュウウウッ…

竜騎士「すげぇ…雲の上だぜ…」

女武道家「す…凄いです…」


青空騎士「これが僕らの仕事場ですからね。命懸けですよ本当に」

竜騎士「そりゃまあ…危険だよなぁ」

青空騎士「実はそれだけじゃなくてですね…」

トゴ゙ォンッ!!!ミシミシ…!!!


竜騎士「!」

女武道家「きゃあっ!なんですかぁ!」

青空騎士「って言ってるそばから…こちらです!」ダッ

竜騎士「何だ今の音は…って!おい待てよ!」ダッ

 
タッタッタッタッタ…!

竜騎士(驚いた…、こんな場所でも地上の支部と変わらない広さなのか…)

青空騎士「驚きました?」

竜騎士「何っ?」

青空騎士「多分、地上と変わらない支部に驚いたんじゃないですか?」


竜騎士「まぁ、確かに少しはおど…」

女武道家「すっごく驚きましたよ!何でですか、どうなってるんですかこれ!?」

竜騎士「…」

 
青空騎士「あはは、建物自体はここに作れるほど頑丈に浮かぶ島に併設されているんですよ」

竜騎士「なるほどな。空中都市ってやつはその名前だけあるってことか」

青空騎士「えぇ。驚くほどに広いですよ」


竜騎士「だが、その分…調査が進んでないのも事実なんだろ?」

青空騎士「はい。その原因の1つが、今の爆発音ですよ」

竜騎士「…どういうことだ?」


青空騎士「今すぐ分かりますよ…あそこが支部と空中都市の入り口の部屋です」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タタタタタッ…ガチャッ、バタンッ!!!


青空騎士「青空騎士、ただいま戻りました!」

軍人「青空騎士か…ごほっ…」

青空騎士「…酷いキズだ。他の方は!?」

軍人「門の守りに出てる…くっそ、今日のアイツらは生きが良すぎる!1人食われた…!」

青空騎士「支部長はどこにいるんでしょうか!?」

軍人「…前線だ。門まで突破されてはいかんからな…っ」

青空騎士「わかりました、任せてください!」


女武道家「竜騎士さん」

竜騎士「…何だ」

 
女武道家「今…気のせいじゃなければ、食われたとか、ヤツラとか色々聞こえたんですけど」ブルブル

竜騎士「あぁ俺も聞こえた。気のせいじゃないな」

女武道家「ヤツラって何でしょう。ヤツラって」ブルブルブルブル

竜騎士「…」


青空騎士「竜騎士さん…出来れば手を貸していただけませんでしょうか!」

竜騎士「あ、あぁ。女武道家、一応武器を準備しておけ」

女武道家「わ、分かりましたぁ…いきなりこんな…」スチャッ


青空騎士「そこの茶色の扉の先が、空中都市の入り口です…行きましょう!」

竜騎士「最初からこんな始まりで…波乱が待ってるようにしか思えないな…」ハハ

女武道家「…これくらいが私たちには合ってるって事ですかね」

 
竜騎士「あぁ、そうかもな…行くぞ!」

女武道家「はいっ!」


青空騎士「それじゃ…開きますね」ググッ


ガチャッ…ギギギ…ギィィ……パァァッ…


竜騎士「!」

女武道家「…!」


青空騎士「支部長より先に言わせて頂きます。ようこそ"地獄の入り口"…空中都市へ…」

本日はここまでです。ありがとうございました。

書き込み忘れの分がありましたので、一応ご報告します。
>>55 >>58 >>59
と続きます。

皆さん有難うございます。投下致します。

 
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ドゴォン!!!

…キィンッ!!!ズバァッ…タタタタタッ…

軍人「裏へ回れぇぇ!相手は単体だ!」

軍人「火力が足りない!」

軍人「魔法を使える者は率先して兵を回復させるんだぁぁ!」


バッサバッサ…ゴォォォッ…

ワイバーン『ギャア…ッ!!』

 
竜騎士「ま、まさか…あれはワイバーン!?」

青空騎士「この都市を探索する為の、弊害の一つに過ぎませんよ。あんなのがウヨウヨいるんですから」

竜騎士「…竜族が普通に生息しているっつーのか」

青空騎士「これで…ここが機密とされている理由も頷けるかと思います」


竜騎士「当たり前だ…。機密事項もいいところ…いつも見上げてた空にこんな…存在…」ブルッ

女武道家「竜騎士さん…」


青空騎士「…やはり、恐ろしいですか?」

竜騎士「…」

 
…ニヤッ

竜騎士「逆だ。ワクワクするぜ…、俺もいよいよ空へ翔けたんだってな!」スチャッ

青空騎士「それでこそ、僕の尊敬する人です」ニコッ

女武道家「ど、どうするんですか…向いますか?」ガタガタ


竜騎士「…青空騎士、ここのワイバーンに特徴はあるのか?」

青空騎士「いえ。一般的なワイバーンと一緒ですよ」

竜騎士「そうか。なら…任せろ!行くぞ女武道家!」ダッ

女武道家「はいっ!」ダッ

 
青空騎士「!」

竜騎士「俺のパートナーと、その戦い方を良く見ていろ!」
 
女武道家「…えへへ」

ダダダダッ…


青空騎士「いくらなんでも2人では!」

軍人「だ、誰だあいつは…!」

軍人「…危ないぞ!?2人だけで突っ込むんじゃない!」

 
ダダダダッ…タァンッ…!!

竜騎士「龍突っ!」ビュッ!

女武道家「掌底波ぁぁっ!」ブンッ!

…ガキィンッ!!!

ワイバーン『…ッ!』


竜騎士「か、かてぇなぁおい!」ビリビリ…

女武道家「い、痛い…」

竜騎士「なら、これならどうだ!」タァンッ!!


青空騎士「と、飛んだ…高い!」

軍人「何て身体能力だ!」

軍人「あの付いてるバッジ…中佐じゃないか?」

軍人「じゃあ、あれが調査許可の下りた竜騎士中佐殿かっ!」

 
ヒュウウウッ…

竜騎士「龍落っ!!」

ワイバーン『カアッ!』クルッ

竜騎士「尾の毒針を刺すつもりか…だがな!」


女武道家「…気攻波ぁっ!」

ビュンッ…ボォンッ!!

ワイバーン『!』グラッ


竜騎士「いいタイミングだ!このまま…首を落とさせてもらうぜ!」

ワイバーン『グアアアッ!』ブンッ

竜騎士「遅い!」ブンッ!!

 
…ズバァンッ!!!…ドシャッ…ゴロゴロ…

ワイバーン『』


クルクルクル…スタッ…

竜騎士「…ふぅ」

女武道家「やりましたねっ!」

竜騎士「ナイスアシスト。もう少し威力高いと楽なんだがな」ハハ

女武道家「精進します…」


ガヤガヤ…ザワザワ…

竜騎士「ん?」

 
軍人「た…助かった。ありがとうございます」ペコッ

軍人「竜騎士中佐殿ですよね。ありがとうございました」

青空騎士「…ワイバーンを軽く倒すなんて…凄い…」


竜騎士「まっ、小柄なワイバーンだったしな。ファイアドレイクよりよっぽど楽だった」

青空騎士「ファイアドレイクですか…?」

竜騎士「あ、こっちの話だ気にしないでくれ…」


パチ…パチパチパチ…

竜騎士「なんだ?」

支部長「ありがとう。助かったよ」

 
竜騎士「あ…、そのバッジ…支部長殿ですね。竜騎士中佐です」ビシッ

女武道家「あ、同じく女武道家少尉です!」


支部長「堅い挨拶はいりませんよ。いやいや素晴らしい。お陰で今日も門を守る事ができました」

竜騎士「いえ、皆さんが相手の体力を奪っていたからこそです」

支部長「そんな謙遜なさらずに」ハッハッハ


青空騎士「そうですよ。思った以上の動きでした…さすがです」

竜騎士「そうか…?じゃ、素直に礼をいっとくよ」ハハ


支部長「…さて、今日はもう夜になる。折角ですし、ワイバーンの料理を振舞いましょう」

竜騎士「あ、はい…」

支部長「寝る場所の案内も致しますので、まずは広間へどうぞ」


竜騎士(別に、偏屈な感じではないんだが…大佐は何を心配してたのかね)

  
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――――【 食 堂 】


カチャカチャ…ゴクゴク…

女武道家「ワイバーンのお肉おいひい…」モグモグ

竜騎士「…」


支部長「喜んで貰えているようで良かったですよ」

女武道家「とっても美味しいです」

支部長「ははは」

 
竜騎士「あ…そうだ。支部長殿、これを」

ゴソゴソ…パサッ


支部長「ふむ…これは?」

竜騎士「"下の"支部から預かってきた大佐殿の許可証のサインです」

支部長「…なるほど。確かに承りました。そろそろサインの話をしようとしていた所でしたので」

竜騎士(…少し、疑っているのか?)


支部長「疑っていると思って気を悪くしましたか?」

竜騎士「あ…いえ」

 
支部長「下の大佐殿は、偏屈野郎とでも自分のことを呼んでいませんでしたか?」ハハハ

竜騎士「…」

支部長「下の者は、上の現状を分かっていない」

竜騎士「このワイバーンのこととか、ですか」


支部長「それもですが、ここは"人類最後の遺産"でもあります」

竜騎士「最後の…遺産、そうですね」

支部長「許可を得たと見せて、宝を探しに来る輩が少なくないのですよ」

竜騎士「…なるほど」

支部長「大抵はあの竜族に倒されるのですが、もし自分たちに分からないスイッチがあったとしたら…?」

竜騎士「スイッチ…ですか?」

 
支部長「はい。この竜族を、世界に解き放つような物だったり、この人類を脅かす何かが…あったとしたら?」

竜騎士「…!」

支部長「それを防ぐためにも、あらゆる想定が必要なのです」

竜騎士「そういうことでしたか…ところで」

支部長「どうしました?」


竜騎士「ここの竜族は、外に行かないのですか?」

支部長「それも不思議な話でしてね。この都市から外に出て行ったというのは確認されていません」

竜騎士「…不思議な話ですね。では、門を攻撃されているというのは…」

支部長「空へは出ないが、度々こうして門から相手が抜けようとするのはあるのです…」ポリポリ

 
竜騎士「…つまり、この門からしか外には出れないと?」

支部長「あくまで可能性です。幸い抜けられた事はありませんし、危険ですのでそのような実験も出来ません。」

竜騎士「なるほど…」


支部長「ここで死にいった者達も、戦う必要もなかったのかもしれませんが…」

竜騎士「…」

支部長「少なくとも、危険は排除するに限ります。可能性がある限り、自らを犠牲にし門を守りますよ」


竜騎士(立派な考え方だ。自分も前線に出てるしな…、偏屈呼ばれる理由もわかった)

 
支部長「それに、この都市…明らかに人工物ですが、人類とは違う何かがあります」

竜騎士「都市遺跡自体、どんなものか判明していないんですよね」

支部長「ですね…長い間、色々と研究はしてきましたが。魔界との繋がりがある都市と有力視はされていますが」

竜騎士「魔界…か」

支部長「貴方がその解く鍵になるかもしれないんですよ」

竜騎士「いやいや…俺がそんな」


支部長「いや…間違いなく、今。この瞬間。貴方が探索をするという人であり、力を持つ人なのですから」

竜騎士「…っ」ドクンッ

支部長「期待せざるを得ませんよ…ね」ニコッ

 
カチャ…カチャカチャ…

女武道家「…これも美味しいです」モグモグ

青空騎士「ですよねーっ!」

グビグビ…プハァッ!!


竜騎士「はぁ~…緊張感がない奴ら」

支部長「はは、長い事ここで戦っていると意外と慣れてしまうものなんですよ」

竜騎士「女武道家はアホなだけですがね。それでえーと、明日から探索を開始しようと思ってます」


支部長「わかりました。では、軽く位置に関して教えておきます」

竜騎士「はい」

支部長「ここはゲートエリア。支部がゲートを管理しています」

 
竜騎士「ゲートエリア…覚えておきます」

支部長「ここを中心に、北側に長方形状に長く都市はあるとされており、現在は3つのエリアがあります」

竜騎士「なるほど」

支部長「おおよそ、ここから2km。そこまでが主な管理されているファーストエリアです」

青空騎士「僕の立ち回るエリアでもありますね」


竜騎士「ふむ」

支部長「そこから更におおよそ3km…そこまでが探索が進んだセカンドエリアとなります」

竜騎士「それより先は?」

支部長「その地点以降をサードエリアといいます。が…そこからはまだ確認されていません」

竜騎士「…セカンドエリアまでは普段は行っているのですか?」


支部長「セカンドの中間まではたまたま行くことはあります。ですが、サードの手前までは行くことはまずないですね」

 
竜騎士「やはり、敵が凶悪になると?」

支部長「はい。相手の強さのレベルも違いますからね…それに今、そこまで辿り付ける方がいるかどうか…」


竜騎士「サード地点か…そこまでたどり着いた人は、さぞかし凄い人だったんですよね」

支部長「まぁ…伝説ですね本当に」


竜騎士「その人の名前は?」

支部長「剛騎士、といいます。当時の軍人の鏡のような方ですよ」

竜騎士「!!…俺の…爺ちゃんだ」


支部長「!」

青空騎士「!」

女武道家「!」

 
支部長「あなたのおじいさん…ですか」

竜騎士「…やっぱり、凄い人だったんだな俺の爺ちゃん…」

支部長「なるほど…再びこうして、貴方がココへ来たのは運命かもしれませんね」

竜騎士「…」


青空騎士「凄いですね…竜騎士さん」

女武道家「これが私の相方さんです」ムフー


竜騎士「…面白くなってきた!」

支部長「はは。さて、今日は夜も遅い。そろそろ休みましょうか」

竜騎士「ですね。明日から、お世話になることもあると思いますが、宜しくお願いします」

支部長「こちらこそ」

 
竜騎士「それでは…」

支部長「あっ、そうだ」

竜騎士「?」


支部長「今回の探索で、ちょっとした得な事をお教え致します」

竜騎士「何でしょう?」

支部長「この遺跡都市には、まだまだ隠された秘宝…、歴史の手がかりが残っています」

竜騎士「言ってましたね」

支部長「ですので、何かあればココへ持ってきてください。査定し、それ相応の報酬を渡しますよ」


竜騎士「発掘しろ…と」

支部長「それも探索の務めの一つだと思っています」

 
女武道家「面白そうですね!何だか、最初の頃を思い出します」

竜騎士「…別にお金の為じゃないんだけどな。ま、そうですね…わかりました」

支部長「ご協力感謝致します」

竜騎士「必要な道具とかはここで貰えますか?」


支部長「もちろんです。必要なもの、欲しいものがあれば部下へ地上へ買いにもいかせますし」

竜騎士「ふむ」

支部長「一応ここに購買できるものものあるので、気軽にお越し下さい」

竜騎士「わかりました」

支部長「とりあえず、当面必要なものや道具は宿舎の部屋に置いておきましたので」


竜騎士「お気遣いありがとうございます」

支部長「いえいえ、これくらい」

 
竜騎士「…さて、宿舎に行くぞ女武道家。皆さん、ありがとうございました」

女武道家「はいっ、それでは皆さまお休みなさいっ!」ペコッ


支部長「お疲れ様でした」

青空騎士「明日からしばらくの間、よろしくお願いしますね」


竜騎士「はい。それでは…失礼します」


ガチャッ…バタンッ…

 
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【12月10日終了時点】

■所持品
・支給 衝撃弾3個
・支給 創傷回復薬5個
・支給 缶詰10個
・支給 乾燥肉800g
・支給 水3リットル
・支給 キャンプキット
(バックパック)

■発掘品
・なし

■探索距離
・なし

やや短めながら本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

  
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――――【 12月11日 】

トコトコ…ガチャッ

竜騎士「おはようございます」

女武道家「おはようございます」

支部長「おはようございます。昨日は良く眠れましたか?」


竜騎士「お陰様で」

女武道家「スッキリですよ!」

 
ガチャッ…

青空騎士「あっ、おはようございます」

竜騎士「おう」

青空騎士「今日からいよいよ出発ですか?」

竜騎士「まずはファーストエリアまで様子見だ。行けるようならセカンドまで向ってみる」

青空騎士「偵察というわけですね」


竜騎士「いきなり全てを見ようとは思えねえからな…、竜族以外にも厄介なのがいそうだ」

青空騎士「ファーストまでなら案内しましょうか?」

竜騎士「いいのか?」

 
青空騎士「ある程度の案内なら任せてください」

支部長「それはいいですね」


竜騎士「じゃあ頼む。女武道家、準備はいいか?」

女武道家「いつでも、バッチリですよ!」

竜騎士「…朝から元気なことで」

女武道家「えへへ」


竜騎士「んじゃ、よろしく頼むよ」

青空騎士「任せてください!」


支部長「気をつけて行ってきてくださいね」

 
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――――【ファーストエリア】


ザッザッザ…

竜騎士「敵の気配はないな…」キョロキョロ

青空騎士「この辺は本来、あまり生物がいないエリアですしね」

竜騎士「しっかし壮大な景色だよなぁ」


ヒュウゥゥ…ゴォォ…

女武道家「右も左も遠めに空。上を見ても空。凄いですよね~…」

竜騎士「これが…爺ちゃんの見てた景色なんだな…」

 
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――――【ファーストエリア】


ザッザッザ…

竜騎士「敵の気配はないな…」キョロキョロ

青空騎士「この辺は本来、あまり生物がいないエリアですしね」

竜騎士「しっかし壮大な景色だよなぁ」


ヒュウゥゥ…ゴォォ…

女武道家「右も左も遠めに空。上を見ても空。凄いですよね~…」

竜騎士「これが…爺ちゃんの見てた景色なんだな…」

 
ザッザッザ…ガツッ!!

女武道家「きゃっ!」

青空騎士「っと…、この辺から瓦礫が増えるので注意してください」

女武道家「あうう…危なかったです」


竜騎士「…ほぉ」

…ゴォォ…

竜騎士「これが都市遺跡…か!」

女武道家「凄い…。碧い空の中に、こんなにも壮大な造形があるなんて…」

竜騎士「広いよなぁ…何て美しいんだ…」

 
青空騎士「ですね。僕も、いつまでもこの景色は飽きませんよ」

竜騎士「…」

女武道家「…」

青空騎士「…」


竜騎士「…あ、いや…ちょっと見とれすぎたか」ハッ

青空騎士「いえ…仕方ないですよ。誰でも見とれてしまいますから」


竜騎士「だよなぁ…さ、行くぞぉ!」ダッ

女武道家「ですねっ!」ダッ

青空騎士「あっ、待って下さい!」ダッ

ザッザッザッザッザ…


竜騎士「はぁ~…空の中を走ってる気分だ…」

女武道家「凄い気持ちいいですよね…」

竜騎士「あぁ…最高だ」


青空騎士「セカンドエリアに入ると、かなり敵を感じますけどねぇ…」

竜騎士「やっぱりその辺から危ないのか」

青空騎士「ですね。注意はしとかないといけませんよ」

竜騎士「んーむ…」


青空騎士「っと、もう少しいった先…あそこの茶色の建物があるんですが、そこまでがファーストです」

竜騎士「ん~…?」ジー

女武道家「あの屋根が崩れてるやつですね?」

 
青空騎士「…見えるんですか?」

女武道家「はい。きちんとペイントで書いてあるみたいですし」

青空騎士「す、凄い視力ですね」


竜騎士「予想外な特技持ってるんだこいつは」

女武道家「予想外ってなんですか予想外って」

竜騎士「うっせ!」

女武道家「むぅぅ~…」


竜騎士「…待て」

…ピタッ


女武道家「っと…急に立ち止まって…どうしました?」

青空騎士「?」

 
竜騎士「静かに。ん~…何かの気配がする」

青空騎士「…何も見えませんが」

女武道家「…」

竜騎士「…」キョロキョロ


青空騎士「気のせいじゃないんですか?」

竜騎士「…うーん」

女武道家「青空さん、こういう時の竜騎士さんは頼りになるんですよ♪」

青空騎士「…僕も結構デキる方なんだけど、こういうのは竜騎士さんに負けるんだな…」


竜騎士「…こっちだ」

 
ザッザッザ…ガチャガチャンッ!!

竜騎士「…ん~」

女武道家「崩れた建物の破片ですよ?」

竜騎士「この辺に何かある気がする…」ガサガサ

女武道家「それはさすがに…気のせいじゃないんですか?」

竜騎士「…何だかなぁ」


青空騎士「建物の下敷きになって何かいるとは思えませんが…」


竜騎士「女武道家」

女武道家「はい?」

 
竜騎士「…もしかしてとは思うが。感知…まだ少し効くか?」

女武道家「分かりません。やってみますか?」

竜騎士「やってみてくれ。強すぎない程度にな」

女武道家「は、はいっ」


ブツブツ…キィィン…

女武道家「んっ…」


青空騎士「感知…ですか?」ボソボソ

竜騎士「女武道家、1回…死にかけてな。その時に会得したんだが…安定もしないし、発動するかも分からないんだ」

青空騎士「なるほど…」

 
女武道家「…っ」キィィン

竜騎士「何か感じるか?」

女武道家「少し…だけ」

竜騎士「…やっぱりか」

女武道家「私の能力が戻ってきたんでしょうか…?」フゥ


竜騎士「いや違うな。この都市自体だ」

女武道家「都市自体?」

竜騎士「変だと思った。お前、最初にここに来た時に吐いたの覚えてるか?」

女武道家「あー…移動で酔ったんですよね…」


竜騎士「多分、移動のせいじゃない」

女武道家「え?」

青空騎士「え?」

  
竜騎士「ここら一帯、いや…空中都市全体が魔力で満ちているんだ。供給過多になった魔力に酔ったんだろ」

女武道家「!」

竜騎士「元々ここの魔力に慣れた人間は、酔わないからな。上に長い事いる面子は大丈夫なんだと思う」


女武道家「竜騎士さんは酔わなかったですよね?」

竜騎士「元々俺は魔力自体が少ないからな。どんな満ちた場所でも感覚が受け付けん」

女武道家「ふむふむ…ってことは私が酔ったのは?」


竜騎士「お前は人並みに魔力があるってことだ」コツンッ

女武道家「あいたっ」

竜騎士「お前の感知が少しばかり戻ったのも、ここが魔力で満ちてるからだろうな」

女武道家「なるほどぉ…」

 
竜騎士「はは…そりゃ魔物たちも興奮するはずだ。こんな場所にいればな」ハァ

女武道家「じゃあ…これからどうしますか?一旦戻ります?」

竜騎士「えーと…女武道家、場所は分かるな?」

女武道家「分かります」

竜騎士「んじゃ青空騎士、俺らはちょっとルート外れてこの辺を探索してみるよ」


青空騎士「え、でも…直進じゃないと結構広いので道に迷ったりするかもしれませんよ?」

竜騎士「こいつの頭ん中に入ってるから大丈夫だ」ポンポン

女武道家「えへへ…」


青空騎士「…マジですか」

竜騎士「マジです」

女武道家「マジですよー!」

 
青空騎士「分かりました。じゃあ僕は戻っておきますね」

竜騎士「戻らなくても心配しないでくれ。キャンプキットもあるみたいだし、ゆっくり探索してくよ」

青空騎士「はい、伝えておきます」


竜騎士「んじゃ、行くか」

女武道家「はーいっ♪」


青空騎士「お…お気をつけて~…」

申し訳ないです。
したらばが調子悪いようで、
多重投稿や >>114 のように名前が表示されなかったり、タイムアウトで書き込みできないので
明日改めて今日の分も含めて投稿致します。

ありがとうございました。

申し訳ないです。
したらばが調子悪いようで、
多重投稿や >>114 のように名前が表示されなかったり、タイムアウトで書き込みできないので
明日改めて今日の分も含めて投稿致します。

ありがとうございました。

調子が直ったようなので、投稿しておきます。
何度も色々と申し訳ありません。

 
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ザッザッザ…

竜騎士「もう、青空騎士はいなくなったな」

女武道家「みたいですね」

竜騎士「…変だな」

女武道家「何がですか?」


竜騎士「少なくとも、上にいる軍人は魔力が満ちている事を知らないわけないんだが」

女武道家「あ~…ですねえ。転移で酔うかもしれないって言ってたのは、知らなかったからでしょうし」

竜騎士「特に、信頼がありそうな青空騎士が知らないとなると…知識不足?」

女武道家「…アホってことですか!」

 
竜騎士「お前に言われたら本当のお終いだよ…」

女武道家「ど、う、い、う、意、味、で、す、か」


竜騎士「…この一帯が魔力が満ちている理由…か」ブツブツ

女武道家「無視しないでくださいよぉ!」


竜騎士「あえて、俺らに教えなかった…いや、女武道家が移動で酔ったと思ってたのは疑いがなかった声だった…」

女武道家「…?」

竜騎士「つまり、やはり支部長が何か噛んでいるのか…?」

女武道家「??」


竜騎士「…いや、考えすぎか。俺の悪いクセだな」ハハ

女武道家「そうですよ!考えすぎて、人をアホ呼ばわりしちゃいけません!」

 
竜騎士「いや、お前はアホだから」

女武道家「そ…そんなぁ~!」

竜騎士「…まぁ、こんな場所だし疑心暗鬼になるのも仕方ない。さ、とりあえず色々探索するか」

女武道家「はいっ」

 
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――――【 午 後 】


ザッザッザ…ガチャガチャ…

竜騎士「~♪」

女武道家「ファーストエリアといっても、広いですね。縦2kmと言っても、結構遠くに感じます」

竜騎士「範囲自体はそこまでじゃないが、瓦礫に魔力に、空で空気薄いし…、な」

女武道家「そこに突然現れる竜族ですもんね…」

竜騎士「どんなに酷い場所かよく分かるよ」


バッサバッサ…

竜騎士「!」

女武道家「!」

 
竜騎士「そこの納屋の下に隠れろ!」

女武道家「は、はいっ!」

タタタタタッ…ズザザザ…


ワイバーン『…』

バッサバッサバッサ…ギャアア!!バッサバッサ…


竜騎士「…ワイバーン。あんまり敵とは出会いたくねえからな…」

女武道家「ですね」


バッサバッサ…バッサ………

竜騎士「ふぅ…行ったか」

女武道家「…外に出ても大丈夫ですね」

 
ゴソゴソ…スタッ

メイルサーペント『…』

竜騎士「…ん?」

女武道家「…え?」

 
メイルサーペント『グガアアアッ!!』

女武道家「きゃあああっ!?」

竜騎士「めめめ、メイルサーペントォォ!?」


メイルサーペント『グァアッ!』ブンッ

竜騎士「ぬっ!…おらぁっ!」ブンッ

ガキィンッ!!!…キィィィンッ!!


女武道家「ふえ…こ、腰が抜けました…」ヘナヘナ

竜騎士「さすがに今のは俺もビビったっつーの!」

キィンッ!!!グググッ…

メイルサーペント『グゥゥ…!』

 
竜騎士「いきなりメイルサーペントかよ…!」ググッ

メイルサーペント『ヌグ…!』グググッ…


竜騎士「硬ぇんだよ…くそっ!おらぁっ!!」

ガキィンッ!!ズザザザ…

メイルサーペント『…!』


竜騎士「まだ小さいタイプで助かった…!女武道家…立てるか!?」

女武道家「こ…腰が抜けて……」

竜騎士「…っ、背中に乗れ、早く!」

 
女武道家「あう…立てないです…腰が…」

竜騎士「くっ…」


メイルサーペント『ググギ…』

ザッザッザ…


竜騎士「やべぇ…そ、そういや支給品に…!」

ゴソゴソ…スチャッ


竜騎士「あった!食らいやがれコラァァ!」ブンッ

…ドゴォォンッ!!

メイルサーペント『!!』

ドシャァッ…ゴロゴロゴロ…

 
女武道家「た、倒したんですか…?」

竜騎士「衝撃弾で吹っ飛ばしただけだ…ええい、恥ずかしいがこのまま抱っこだ!」グイッ

女武道家「えっ?」フワッ

 
竜騎士「ぬぅおおお、脱出だぁぁ!」

ダダダダダダッ!!

女武道家「お…お姫様だっこ…」カァッ

竜騎士「追っては…来てないな…!とにかく離れるぞ!」

ダダダダダッ…!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッザ…ドサッ

竜騎士「はぁ~…疲れた…!」ゼェゼェ

女武道家「うう…ごめんなさいです…」

竜騎士「ま、ありゃ仕方ない」

女武道家「お姫様だっこ…」ポワポワ

竜騎士「もういい…恥ずかしいから言うな…」
 

女武道家「えへへ…」

 
竜騎士「支給品のおかげで助かった…あんなのまでいるのか…」

女武道家「さっきのは何ですか?」

竜騎士「メイルサーペント。甲冑蛇竜…、まぁスゲー防御力を持つ竜族だ」

女武道家「…」


竜騎士「落ち着いて戦えば余裕だが、さすがに驚いて取り乱した」

女武道家「竜騎士さんでも驚く事があるんですね」

竜騎士「当たり前だ…、それと。あそこで戦ってたらワイバーンも飛んでたしな」

女武道家「乱戦になったら危ないですしね」


竜騎士「まぁ逃げ切れてよかったよ。と…日暮れが近いな。見ろ!」

女武道家「…わぁ!」

 
パァァァァ…
 
竜騎士「空の上から、地平線のかなたへ…雲の下へ消える太陽だ。滅多に見れねぇぞ…」

女武道家「凄い…真っ赤です…」

竜騎士「…」

女武道家「…」


竜騎士「あ…女武道家、ここの場所…大体の位置把握できてるか?」

女武道家「あ、一応は」

竜騎士「ここから正規ルートと、支部までの距離は?」

女武道家「そこまで遠くじゃありませんけど、夜遅くはなりそうです」


竜騎士「…一泊だな。夜道はさすがに危ない」

女武道家「そっちのほうが危なくないですか?」

 
竜騎士「ここら辺の相手の動きが分からない以上、動くのはよろしくないからな」

女武道家「なるほど」

竜騎士「その辺にテントでも張ろう。キャンプキットもあるしな」

女武道家「はいっ」


ゴソゴソ…

竜騎士「支給品とはいえ良い物ばかりだ…」

女武道家「あっという間に周囲が暗くなっていきますね」

竜騎士「そうだなぁ…急ぐか」

 
グイッ…ゴソゴソ…

竜騎士「女武道家」

女武道家「はいっ」

竜騎士「ほいっ、食べ物。持ってろ」ポイッ

女武道家「わわっ…ありがとうございます」


竜騎士「えーと…あとは乾燥肉とかか…水もあるな」

女武道家「この缶詰何でしょうかね?無印ですが」

竜騎士「ん~…米?」

女武道家「米…ですか」


竜騎士「まぁ少し待ってろ。簡単に煮込みでも作ろう」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ボォォ…グツグツ…

竜騎士「…あったけぇ」

女武道家「夜になると冷えるんですね」ブルッ

竜騎士「山より高い場所だからな」


女武道家「でもこの感じ、久々ですね」

竜騎士「サバイバルの時はえらい目に合った…なぁ?」

女武道家「…ごめんなさい」

 
竜騎士「はは…まぁいいさ。さて…ほら、煮込み」スッ

女武道家「ありがとうございます」

竜騎士「肉と米を水で煮たもんだけど、塩味効いててうめーぞ」

女武道家「はいっ、いただきます」


竜騎士「…しっかし周囲は真っ暗だな。空には満天の星空だが」

女武道家「この火の明かりを見て敵とか襲ってきませんかね?」

竜騎士「竜も夜は休んで寝るからな。それにファーストエリアは敵も少ないし大丈夫だろう」

女武道家「ご飯、美味しいです~…」モグモグ

竜騎士「聞けよ」


女武道家「明日はどうするんですか?」

竜騎士「一旦支部に戻る。そのあとすぐにセカンドエリアに出発する」

女武道家「戻って何か準備を?」

 
竜騎士「予想以上に敵のレベルが高い。もっと衝撃弾やら支給品が欲しくなった」

女武道家「ふむふむ」

竜騎士「少なくとも、サードエリア…爺ちゃんの場所までは行きたいと思ってる」

女武道家「はいっ。着いて行きますよぉ!」

竜騎士「お前が張り切るとスゲー…不安だ」

女武道家「むぅ、そんな事ないですよ!」


竜騎士「はっは、まぁ今はしっかり食っておけ」

女武道家「はいっ!」


竜騎士「それにしても…人類最後の秘境…か」フゥ

 
女武道家「そういえば、お宝とかは見つかりませんでしたね」

竜騎士「あ~…支部長が言ってたやつか」

女武道家「はい。折角少し遠出気味ですし、何か見つけたいですよね~」

竜騎士「つったってなぁ…ファーストエリアじゃ見つかるもんも見つかってるんじゃないか?」


女武道家「わかりませんよ~。例えば、この座ってる場所の下に…」

ゴソゴソ…

竜騎士「そんなんで見つかったら冒険家はいらねえよ」


女武道家「むっ!」

竜騎士「ん?」

 
女武道家「…ったぁ!」グイッ

竜騎士「?」

女武道家「何かありましたよ変な形の!何ですかねこれ」キラッ

竜騎士「ただのゴミだろ…」


女武道家「きちんと見てくださいよぉ!」

竜騎士「ん~…?」

女武道家「なんか魚みたいな形してる真っ黒な石ですよ」

竜騎士「…」


女武道家「どうです…?」

竜騎士「こりゃ…オブシディアンの…彫刻か!?」

 
女武道家「オブシ…?」

竜騎士「黒曜石だよ。この遺跡に関係するもんかもしれねえな、まさか本当に何かあるとは…」

女武道家「ほらぁ!やっぱりお宝あるじゃないですかぁ!」

竜騎士「しかし黒曜石か…、それがこの空中都市に…?」


女武道家「これってどういう石なんです?お宝じゃないんですか?」

竜騎士「簡単にいえば火山岩だよ」

女武道家「じゃあ価値もないんですね。彫刻とかなら珍しい訳じゃなさそうですし」

竜騎士「価値がないわけじゃないんだが…まぁ持っていこう」ゴソッ


女武道家「…もっと凄いお宝を見つけるにはやっぱりセカンド以降でしょうか」

竜騎士「まぁそうなるだろうな」

 
女武道家「頑張りましょうっ!」

竜騎士「はは、随分なやる気だな。そうだな、頑張るか」

女武道家「えへへ」


竜騎士「っと…待て、静かに…!」

……ギャオォー…バッサバッサ…


竜騎士「…」

女武道家「…」

竜騎士「遠くで雄叫び上げてやがる…」

女武道家「どこからの声でしょうかね…」

竜騎士「相当な遠さだ。…ま、この辺は安全だろうし…今日はもう休むぞ」

 
女武道家「は、はいっ」

竜騎士「火は弱くして維持するが、寒かったら言えよ」

女武道家「わかりました」


竜騎士「それじゃ、お休み」

女武道家「はい。お休みなさいです」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
【12月11日終了時点】

■所持品
・支給 衝撃弾2個
・支給 創傷回復薬5個
・支給 缶詰6個
・支給 乾燥肉200g
・支給 キャンプキット
(バックパック)

■発掘品
・黒曜石の彫刻

■探索距離
・ファーストエリア

本日はここまでです。ありがとうございました。
合間合間のミス等多かったですね…申し訳ないです。

皆さま有難うございます。投下致します。

  
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――――【 12月12日 】


パチパチ…ボォォ…

竜騎士「…ふわぁ~」

女武道家「んっ…」モゾッ

竜騎士「!?」


女武道家「…」スヤスヤ

竜騎士「こいつ、いつの間に俺の隣に…」

女武道家「ん~…」ムニャッ

 
竜騎士「…おい」ペシッ

女武道家「…」スヤスヤ

竜騎士「おい」ペシッ

女武道家「…」クゥクゥ


竜騎士「…おい!」ベシッ!!

女武道家「!!」

竜騎士「おい、目覚めたか…?」


女武道家「…布団は干してくださいよ!!」

竜騎士「えっ」ビクッ

女武道家「むにゃ…」

フラッ…ドサッ…スヤスヤ…

 
竜騎士「…」

女武道家「…」クゥクゥ


竜騎士「…」イラッ!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッザ…

女武道家「竜騎士さん」

竜騎士「あーん?」


女武道家「朝から、後頭部にたんこぶみたいなのあるんですけど」ズキズキ

竜騎士「頭でも寝ている時に打ったんじゃねえの?」

女武道家「…そうなんですかね。瓦礫の場所で寝るのは慣れてませんからね」

竜騎士「今後気をつけるがよろしい」

女武道家「は、はい」

 
竜騎士「さて、もうすぐ支部だからな。お前も必要なもんあったら言えよ?」

女武道家「あ~…その前にちょっとだけ支部に着いたら時間頂いていいですか?」

竜騎士「ん?」

女武道家「すぐ終わるので、ちょっとだけ!」

竜騎士「まぁいいが。出来るだけ早くな」

女武道家「はいっ」


竜騎士「俺は戻るついでに支部長とも話してくる」

女武道家「この辺にある強い魔力のことですか?」

竜騎士「いや、それとは別。この黒曜石とかな」

女武道家「なるほど」

 
竜騎士「お…門が見えたな。まぁ…こうして見ると、結構歩いてきたよな」

女武道家「ですね。今日は戦わずに着けて何よりです」

竜騎士「うむ…。お、あいつは」


ザッザッザッザ…

青空騎士「竜騎士さん!」

竜騎士「おう、どうした?」

青空騎士「いえ、仕事の見回りですよ。昨日、本当に帰ってこないとは思いませんでした」

竜騎士「何、心配したのか?」ハハ


青空騎士「当たり前じゃないですか…その様子だと大丈夫だったみたいですけどね」

竜騎士「この位はな。コイツだって寝息すぐたてたぞ」グイッ

女武道家「あはは…」

 
青空騎士「お二人して落ち着きすぎですよ…」

竜騎士「メイルサーペントと会ったりとかしたんだけどな」

青空騎士「セカンドエリアまでいったんですか?」

竜騎士「えっ」

青空騎士「メイルサーペントはセカンド手前からいる相手ですよ?」

竜騎士「知らない間にセカンド手前まで行ってたのか…」


青空騎士「よくご無事でしたね…はは」

竜騎士「…まぁ、軽く戦ったが相手に出来ない感じじゃなかった。装備を改めて整えて先に進んでみるよ」

青空騎士「それがですね」


女武道家「ふんふん~♪そうですね、がんばりまっしょー!」

竜騎士「女武道家…何でお前、そんなに気分良いの?」

女武道家「何ででしょうか、ちょっとハイですよ!」

竜騎士「…?」

 
青空騎士「とりあえず、一旦支部長に挨拶に行ったほうがいいかもしれませんね」

竜騎士「そうするか」

女武道家「あ、私はちょっと一回先に借りてる部屋に戻りますね!」ダッ

竜騎士「あ、おい!」

タッタッタッタッタ…


青空騎士「…?」

竜騎士「何だっつーんだ…?」

青空騎士「本当に、妙にテンション高かったですよね」

竜騎士「んーむ…まぁとりあえず行くか…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 遺跡支部・支部長の部屋 】


竜騎士「…という訳で、これしか今回は発見できませんでした」

支部長「ご苦労様です。黒曜石の彫刻ですね」

竜騎士「ですね」


支部長「…ふむ」

竜騎士「…」

支部長「これはファーストエリアで?」

竜騎士「そうなります」

 
支部長「…ちょっとこれを」

ゴソゴソ…ペラッ


竜騎士「…!」

支部長「ここで取れた、出土…発掘品の写真です」

竜騎士「こ、黒曜石の彫刻がこんなに…?」

支部長「…どう思いますか?」

竜騎士「うーん…」


支部長「自分は、コレで少し仮説をたてました」

竜騎士「仮説ですか?」

 
支部長「黒曜石が取れるといえば、何を想像しますか?」

竜騎士「そりゃ火山ですが」

支部長「そうです。そして、この都市が現れた時の状況は知っていますか?」

竜騎士「一日にして急に現れた、と表記されているそうですね」

支部長「はい。つまり、それは…何かによって都市が衝撃的に現れたと考えられませんか?」


竜騎士「衝撃的…、エネルギー!火山…そうか!」

支部長「そうです。魔界にあったこの都市が移動した訳は…魔界にあった火山によるものだと…考えています」


竜騎士「なるほど、そうすると…魔界にもコチラのような地形がありふれている可能性も高い…」

支部長「そう…色々と背景が見えてきます。少なからず、この仮説にたどり着いている人はいるでしょうね」

 
竜騎士「…」

支部長「しかし、確証はありません。何かもっと、本質に近づけるものがあればいいんですが…」

竜騎士「…俺が立ち回る間に、何か見つかればいいんですけどね」

支部長「期待していますよ」

竜騎士「はい」ペコッ


支部長「それと…、何か必要なものがあったんでしたっけ?」

竜騎士「購買に一応行ってみます」

支部長「支給品の補給なら、購買に一言いってもらえば。あとは必要なものは各々でお願いしますね」

竜騎士「はい、それでは失礼します」

ガチャッ…バタン

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿 舎 】


竜騎士「さて…とりあえず部屋で所持品の確認でも…」

ガチャッ…


竜騎士「…」

トコトコ…

竜騎士「んっ…?」

女武道家「えっ」

 
竜騎士「!」

女武道家「りり、竜騎士さんっ!」

竜騎士「おまっ、何でタオル一枚なんだよ!!」

女武道家「そ、それはちょっと~…し、シャワー借りようかなって…」アハハ…


竜騎士「シャワー…」

女武道家「折角一回戻れるなら、泥だらけでしたし…」

竜騎士「あ、あぁ…そう…」

女武道家「はい…」


竜騎士「って、落ち着きすぎだろ!」

女武道家「えっ、そ…そうですか」

竜騎士「もっとこう、羞恥心を持てよ…俺が恥ずかしいじゃないか!」

 
女武道家「…」

竜騎士「ったく…一回俺は外に出ておくから、着替えておけよ!」

女武道家「…」

トコトコ…


女武道家「竜騎士さん、待って下さい」グイッ

竜騎士「おわっ…急に引っ張るな!」

女武道家「待って下さい…」


竜騎士「な…何だ?」

 
女武道家「…」ジッ

竜騎士「…?」

女武道家「私って…魅力ないですかね…」

竜騎士「…あん?」


女武道家「竜騎士さんは、私のこと…どう思ってますか…?」

竜騎士「…はい?」

女武道家「…」

竜騎士「そりゃ、ドジでアホ…だが、今は誰よりも大切な仲間だと思ってるよ」


女武道家「仲間として…じゃありません」

竜騎士「ん?」

女武道家「一人の…女としてです…」

 
竜騎士「お、女として?」タジッ

女武道家「はい…。ずっと一緒に旅をしてきて、私ってそんなに魅力がありませんか?」

竜騎士「…い、いや…何で急にそんな…」

女武道家「それなら…あの時も!あの時も…もっと男だったら強気に来て欲しかったです…」

竜騎士「あ、あの時ってどの時だろうか…」ポリポリ


女武道家「竜騎士さん!」

竜騎士「は、はい」

女武道家「私は…竜騎士さんの事が…仲間としてでなく…」

竜騎士「…」


女武道家「私は、貴方を…一人の男の人として…」

竜騎士「…」

 
女武道家「す…す…」

竜騎士「…っ」


女武道家「す…きで…あ、あれっ…?」クラッ

竜騎士「…お、おい?」

フラフラ…ドサッ


竜騎士「お…女武道家…?」

女武道家「…」スヤスヤ

竜騎士「…ね、寝てる…?な…ななな、何だっつーんだ!」


女武道家「…」ムニャムニャ

竜騎士「え…いや本当…どうしたんだ…?」

 
女武道家「…」ヒック


竜騎士「…ま…まさか、こいつ…酔ってたのか!?」

女武道家「…」ムニャムニャ

竜騎士「ま、まさか魔力酔いか…。普段のテンションと変わらないからわからねーんだよ!」

女武道家「えへへ…」スヤスヤ


竜騎士「…道理で朝から色々とおかしいと思ったよ。はぁ~…ったく…」 

女武道家「えへへ…竜騎士さん…」

竜騎士「…このアホが」

 
女武道家「…う~ん」ゴロンッ

ゴロゴロ…パサッ

竜騎士「タオルはだけてんぞ…はぁ」

女武道家「…」スヤスヤ


竜騎士「俺だって男だよ…、アホ」

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3時間後 】


ガバッ!!

女武道家「…!」

竜騎士「起きたか」

女武道家「あ、あれ…私…」


竜騎士「記憶ないんだろ?強い魔力に酔って、色々はっちゃけてたんだよ」

女武道家「…」

竜騎士「でも探索には困るからな、購買で酔いの対策薬を…って、どうした?」

女武道家「…」カァァ

 
竜騎士「…?」

女武道家「ご…ごごご…ごめんなさい…」カァァ

竜騎士「どうした?」


女武道家「その…き、記憶あるんです…」

竜騎士「…えっ」


女武道家「あ…あぁ~っ!!う~っ!!」ゴンゴン

竜騎士「お、落ち着け!」

女武道家「一体私は何を…あ~っ!」ブンブン

竜騎士「…はは」


女武道家「忘れて下さいぃ~…っていうか、私…タオルからいつの間に着替えて…」ハッ

竜騎士「風邪引くと悪いからな…。な…?」

 
女武道家「あぁぁ~~~!!」ゴロゴロゴロ

竜騎士「はっは…それだけ元気があれば…大丈夫っぽいな」


女武道家「…」ハァハァ

竜騎士「落ち着いたか?」

女武道家「うぅ~…お見苦しいところをお見せしました…」

竜騎士「まぁしゃあない」

女武道家「…うぅ、酔ってたとはいえ…あんな本心を…」


竜騎士「ほ、本心ね…はは」ポリポリ

女武道家「あっ…!」

竜騎士「…」


女武道家「ああああっ~~~!!」ゴロゴロゴロゴロ

竜騎士「もういいわ!!」

 
女武道家「で、でもですよ…、純情な乙女心だったのに…あうう~」

竜騎士「ん…まぁ、好きだって言ってくれて嬉しいとは思うよ」

女武道家「うぅ…」

竜騎士「…元気出せ。今日もこれから探索なんだからな!」


女武道家「…竜騎士さん」ギロッ

竜騎士「は、はい」

女武道家「…気持ち、聞かせて下さい!!」

竜騎士「!?」


女武道家「もう色々吹っ切れましたっ!気持ち聞かせて下さいっ!」

竜騎士「え、えぇ~…」

女武道家「酔ってたとはいえ、もっとロマンチックに行きたかったです~…」グスッ

 
竜騎士(な…何だこの凄みは…)

女武道家「恋する乙女は強いんですよ…!」ゴゴゴゴ



女武道家「…」ジー


竜騎士「お…俺も色々考えておく!考えておくからそんな眼で見るな!」

女武道家「むぅ…考えておくってどういうことですか」

竜騎士「…ま、まぁ気にするな」

女武道家「…」

竜騎士「あ、購買に道具頼んでたんだった…よし、行くぞ!」ダッ

女武道家「あっ!はぐらかさないでくださいよぉ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガヤガヤ…ザワザワ…

竜騎士「今日は昼から賑やかだな」

女武道家「…」ブー

竜騎士「あー…もう、わかったよ。この探索が終わったら、色々と俺も伝えるから!」

女武道家「本当ですか…?」


竜騎士「本当だって!だから機嫌なおせって…な?」

女武道家「そういう事なら…」

竜騎士「はぁ~…」

 
トコトコ…

購買員「…あ、竜騎士さん」

竜騎士「さっきお願いしてたのあります?」

購買員「用意は出来ています。泊まりがてらの探索ですか?」

竜騎士「今日はセカンドエリアまで足を運んでみようと思いまして」

購買員「なるほど…」


スッ…ゴソゴソ

竜騎士「っと…バックに入ったな。ありがとうございました」

購買員「いえいえ。必要なものがあればまたいつでも」

竜騎士「あ…そうだ、欲しいものがあるんですが」

購買員「何でしょう?」

 
竜騎士「過剰な魔力を受けた時の酔い止めとかあります?」

購買員「ん~…専用薬になるのでないですが…移動の時の衝撃弱めるのならありますよ」

竜騎士「過剰供給に効果ありますかね?」

購買員「そこまでじゃないですが、一応はあったはずです」

竜騎士「じゃあそれ下さい」

購買員「はい少々お待ちを…」ゴソゴソ


女武道家「私のですね…ご迷惑おかけします」

竜騎士「仕方ないさ」


購買員「…はい、どうぞ。と、今日の夕方から下に購買物の補給に行くのですが、買って来ましょうか?」

竜騎士「あ~…お願いします」

購買員「わかりました」

 
竜騎士「それじゃ、これがお金です…はい、じゃあこれで」ペコッ

購買員「はい、またよろしくお願いしますね~」


トコトコ…

竜騎士「女武道家、ほら…これ飲んでおけ」

女武道家「ありがとうございます…」

カサカサ…パクッ…ボリボリ…


竜騎士「そりゃ飲み薬だっつーの!」

女武道家「あっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【午後3時 セカンドエリア手前】


…ヒュウウゥ

竜騎士「おおう…昨日と変わって今日はもう気温が低いな」

女武道家「山より高いですからね…天候が変わりやすいんでしょうか」

竜騎士「雨が降らないのが救いだな」

女武道家「雲より高いですもんね…」


竜騎士「さて、女武道家…これ持っておけ」スッ

女武道家「何ですかこれ…。緑色の石…ですか?」

 
竜騎士「直接ほどの効果じゃないが、攻撃軽減や抵抗魔法の効果がある」

女武道家「物理と魔法のダメージを軽減するってことですか?」

竜騎士「そうそう。本来なら魔法をかけてやりたいが、俺は覚えてないしな」

女武道家「貴重なものですね…大事にします」

竜騎士「かといって、あんま攻撃受けすぎると割れるからな。慎重にな」

女武道家「はいっ!」


竜騎士「さて…セカンドエリアの入り口だ。今日はメイルサーペントとか会わないといいんだが」

女武道家「あれは腰が抜けました…」

竜騎士「さすがの俺もびっくりしたし仕方ないっちゃ仕方ない」

 
女武道家「あんなのがウヨウヨいるんでしょうかね…」

竜騎士「さぁな…おっしゃ!気合いれて進もうか!」

女武道家「はい!」


ザッザッザッザ…ザッザッ…


竜騎士「…ここからセカンドエリアだ」

女武道家「…」ドキドキ

竜騎士「周囲に気を配りながら進むぞ」

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザ…

竜騎士「建物が巨大化していくな…まるで絵の中にいるようだ」

女武道家「凄い古い感じですね」

竜騎士「よく王政時代のを絵で見るが…まるでそのままだな」


女武道家「でも、見た事ない文様とかも刻まれてますよね」

竜騎士「改めて、ここが魔界のものなんだろうなって思うよ」

女武道家「住民さんとか出てきたらビックリしますよね」

竜騎士「はは、そんな人がいたら既に見つかってるだろ」

 
ガサガサッ!!!

竜騎士「!?」

女武道家「きゃああっ!?」


…ドサッ

軍人「…うっ」


竜騎士「…な、何だ…同業者かよ!」

女武道家「今回は腰は抜かしませんでしたよ…」

軍人「ごほごほっ…ひ、人…?」

竜騎士「…おい、大丈夫か?」

軍人「…助かった…」ガクッ

竜騎士「おい…おい!」

 
女武道家「ど、どうしたんですか…?」

竜騎士「気を失っただけだ。ちょっとその辺の建物に入って横にさせよう」

女武道家「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの建物の中 】

コポコポ…トプトプ…

竜騎士「ほら…牛乳だ。粉乳だから味はそこまで期待するなよ」

女武道家「ありがとうございます」グビッ


竜騎士「こいつのケガも見える範囲で処置したし…あとは目覚めるの待つだけか」

軍人「…」

竜騎士「しかし、こんな場所で何してたんだ?セカンドでも結構進んだ場所だぞ…」

女武道家「もしかして、別の遠征隊と組んで道をはぐれたとか」

竜騎士「…かもな」

  
軍人「う…」ムクッ

竜騎士「おっ」

女武道家「!」


軍人「ここは…」

竜騎士「お前が出てきた廃屋。ほら、牛乳」

軍人「あ…ありがとうございます」

グビッ…

軍人「…粉っぽい」


竜騎士「…」

女武道家「…」

  
美徳戦士「あ、遅れました。私、美徳戦士といいます」

竜騎士「あぁ…俺は竜騎士な」

女武道家「女武道家です」


美徳戦士「お美しい女性ですね」ニコッ

女武道家「そ、そうですか…ありがとうございます」


竜騎士「で、一体どうしてあんな場所に倒れてたんだ」

美徳戦士「本隊とはぐれまして、気づけば竜族にボコボコにされまして」

竜騎士「…あぁ…そう…」

美徳戦士「全く、私の美しい顔を殴るなんて許せませんよね」


竜騎士(やばい、どうしよう…俺コイツ苦手だ)

 
美徳戦士「はぁ~…でも助かりましたよ」

竜騎士「はぐれてどのくらいだ?」

美徳戦士「もう4週間ですよ。多分、死亡扱いにされてるんじゃないでしょうか」

竜騎士「生きてて朗報だな。一刻も早く支部に戻って挨拶してこい」


美徳戦士「そうもいかないんですよね」

竜騎士「…?」

美徳戦士「その前に…私が、今までここで生きて来れた理由…わかりますか?」


竜騎士「そういや…そうだな。竜族でも倒して、食べて…生きてきたか?」

美徳戦士「違います」

女武道家「ま、まさか…他の倒れた仲間を…」

美徳戦士「そんなもの私の美徳に反します」

 
竜騎士(面倒くせええ!)

女武道家(何でしょう、初めて会うのにすっごい複雑な気分になります)


美徳戦士「答えは…この右腕です。力を入れると…」バッ

竜騎士「ん?」

女武道家「…ひっ!」

ザワザワザワ…ビキビキ…

美徳戦士「…」


竜騎士「な、何だこりゃ…腕が木…植物になってるのか!?」

美徳戦士「セカンドエリアには湿地帯があります。そこにいる、魔物によって…やられました」

竜騎士「湿地帯の魔物…」

 
美徳戦士「ドライアド…知ってますか?」

竜騎士「木の精霊だったな」

美徳戦士「そう…彼女はとても美しい姿をした精霊でした」

竜騎士「…」


美徳戦士「私らの隊はその女性に魅入り、次々と倒されました。彼女の木の一部となっていったのです」

女武道家「…」ゾクッ

竜騎士「酷い話だな」


美徳戦士「そして私も殺されると思った時、彼女は私を気に入った様子で…私を捕らえて話し始めました」

 
竜騎士「それでどうなったんだ?」

美徳戦士「そして…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドライアド『お前は美しい…気に入った。このまま、お前を私の傍らに置こう…』

美徳戦士「くそっ…離せぇ!」

ドライアド『それは出来ぬ。私はお前を気に入った』

美徳戦士「…っ」

ドライアド『…と思ったが、自由のない生き物はすぐに廃れる。お前を逃がしてやろう』

美徳戦士「!」

ドライアド『だが…私の眼の届く範囲でな…!』パァァ

美徳戦士「俺をどうするつもりだ…な…何を…!!うあああっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  
美徳戦士「…気がつけば、私の腕、背中には植物が宿木のようにありました」

竜騎士「…」

美徳戦士「その宿木は、どういう事か私に栄養を送ってくれている…だから今まで生きられました」

竜騎士「…」

美徳戦士「そして私は、彼女の範囲から出る事は出来ないのです」

竜騎士(…なるほど、な)


美徳戦士「そもそもセカンドには人もそうそう来ませんし…、どうすればいいのか…」


竜騎士「…まぁ、俺から少し言わせてもら…」

女武道家「助けてあげます!」ビシッ

竜騎士「!?」


女武道家「助けましょう、竜騎士さん!可哀想過ぎますよ…」

 
竜騎士「お前は全く…まぁ…」

女武道家「…助けましょう!」

竜騎士「…わかったよ。まぁ、落ち着け」


美徳戦士「ほ、本当ですか!?」

竜騎士「あぁ本当だ。その前に、あまったお湯で一杯飲もうぜ」

美徳戦士「た、助けてくれるなら早いほうが…!」

竜騎士「落ち着けって。急がば回れだ」


女武道家「慌ててやられたら元も実もありませんからね」

竜騎士「元も子も、だよ…」

女武道家「あれ…」

 
グツグツ…トプトプ…

竜騎士「ほら、美徳戦士も久々のミルクだし…2杯目でも美味いだろうよ」スッ

美徳戦士「あ…そこまでいうなら…頂きます」グビグビ

女武道家「…」グビグビ

…コトンッ


竜騎士「まずは落ち着く事が大事だ。…おっしゃ、じゃあ行こうか。案内してくれ」

女武道家「よーっし、やってやりますよ!」

美徳戦士「ありがとうございます!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【セカンドエリア・湿地帯】

ジメジメ…ギャアギャア…!!!バサバサッ…

竜騎士「うへぇ、こんな場所まであるのか」

美徳戦士「この先を抜けた場所にサードエリアがあるらしいですよ」

竜騎士「マジかよ…」


女武道家「なんか色々思い出しますね」

竜騎士「孤島では酷い目にあった…。もうあん時のようなのは勘弁な…」

女武道家「成長してます!成長してますから、安心してください!」

竜騎士「本当に頼むぜ…」

 
グジュッ…グジュグジュ…

竜騎士「泥っぽいな…動きにくい」

女武道家「こんな場所で敵が出てきたら困りますよね」

竜騎士「相手は木の精だ。テリトリーだし、相手は有利だろうな」

女武道家「えぇ~…大丈夫なんですか?」

竜騎士「…」


ガサガサッ…ピタッ

美徳戦士「この辺です…あっ」

竜騎士「…あれか」

美徳戦士「今は木の姿のままですね」


女武道家「うわっ…大きい木ですね…」

竜騎士「お~…見た目からして魔物って感じがする大木だ」

 
美徳戦士「…」

竜騎士「さってと、女武道家行くぞ!」グイッ

女武道家「え、作戦とか…いきなりですかあ!?」


…スタッ

竜騎士「おい…ドライアド!」

ドライアド『…』

竜騎士「…無視か?」スチャッ


ドライアド『!』

竜騎士「なら、先手必勝をさせてもらうぞ…おらぁっ!」ブンッ

ドライアド『はぁっ!』ビュンッ

カキィンッ!!!

 
女武道家「わわわっ…木の枝が触手みたいに…」

竜騎士「…おー痛ぇ。何つう力だよ」ジンジン

ドライアド『く…くふふ…』

女武道家「笑ってる…?」


ドライアド『あははは!よく来たわね!」バサバサッ

竜騎士「気色悪い笑い方しやがって」

ドライアド『あんた達は罠にハメられたのよ!あの美徳剣士はお、と、り」

竜騎士「…」

女武道家「わ、罠…ですか?美徳戦士さんも…!?」

 
ドライアド『うん…そうそう。後ろに気をつけてね、女武道家ちゃん』

女武道家「えっ?きゃあっ!」グイッ


美徳戦士『…きひひ』ガシッ

女武道家「美徳戦士さん!?」

美徳戦士『…』

女武道家「な、何してるんですか…離して下さい!」ブンブン


ドライアド『その子を操ってたのは私なのよ?うふふ…』

女武道家「そ、そんな!?」


ドライアド『さあ…竜騎士だったかしら。その物騒な武器を下ろしてくれる…?」

竜騎士「…」

ドライアド『どうしたのかしら…?下ろさないなら、そのまま女武道家ちゃんを殺すわよぉ…?』

竜騎士「…」

  
ドライアド『…早く、下ろしなさい!!締め上げるわよ!』

美徳戦士『…』ググッ

女武道家「か、かはっ…り…竜騎士さん…」ギリギリ


竜騎士「…お前も鈍いやつだよなぁ」

ドライアド『何っ!?』

竜騎士「そろそろ…か」


ドライアド『一体何を…、うっ!?」ドクンッ

ドクンドクンドクン…

ドライアド『な…何だ…、気持ち…悪い…?』

 
竜騎士「…」

ドライアド『ち…力が抜ける…!…な、何だこれは…!』クラクラ


美徳戦士『…』フラッ…

女武道家「弱まった…!抜けられる!…やぁっ!」ブンッ

…ドゴォッ!!ズザザザ…ドサッ

美徳戦士『うぐっ…』

女武道家「ごめんなさい…美徳戦士さん」

 
ドライアド『お、おのれ…何をしたぁ!!』


竜騎士「魔力を下げる薬ってさ…あんまり過剰に摂取すると、猛毒になるって知ってるか?」

ドライアド『一体何を…』ハッ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美徳戦士「あ…そこまでいうなら…頂きます」グビグビ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドライアド『あの時に、何かしたな!?』

竜騎士「女武道家用に買った薬を少々ね」


ドライアド『お…おの…れ…』ブルブル

竜騎士「宿木からとはいえ、直接水分を摂ったようなもんだ…効くだろう?」

ドライアド『…ぐ…』

竜騎士「まぁお前が摂ったのは薬、栄養なんかじゃなくて…まるで毒だがな」

 
ドライアド『意識が遠のく…!く…くそ…』

…ズズゥン………ミシミシミシ…


女武道家「…も、もう終わったんですか…?木の触手が全部地面に落ちましたが…」

竜騎士「いや気を失っただけだ。話せる知性のある相手をそう簡単に殺しはせんよ」


女武道家「どうして…これが罠だって先に気づいたんですか?」

竜騎士「美徳戦士がつかまった時の話に出てきた己自身の口調が違う事かな」

女武道家「口調…?」

竜騎士「あいつの話に出てきた美徳戦士は、"俺"だったし、そもそも"敬語を使う人間"じゃなかったことだ」

女武道家「あ…確かに」

 
竜騎士「それに、一度落ち着こうとしたときに…急いで欲しいそぶりもあっただろ?」

女武道家「はい」

竜騎士「今まで生き延びてきたのに、俺らが行くとなった途端慌て始めた。それで核心だと思った」

女武道家「なるほど…凄い読みですね…」

竜騎士「まぁ…な。それよりクビ締められてたが大丈夫か?」


女武道家「あ、だ、大丈夫です…」

竜騎士「余裕を見せておかないと、相手も相手で抵抗しちまう。ギリギリまで余裕を見せたかったんだ」

女武道家「はいっ。さすが竜騎士さんです♪」

竜騎士「んむ…」

  
女武道家「それで…どうするんですか?」

竜騎士「元気になって不利になる前に、美徳戦士の宿木を剥がす。それで弱みを突いて色々聞く」

女武道家「あの…美徳戦士さんは…」チラッ


美徳戦士「…」


竜騎士「恐らく…既に死んでいた。それを宿木で彼をそのままの姿で操ってたんだろう」

女武道家「…」

竜騎士「彼は近くに埋めよう。彼だと分かる持ち物を何かを持っていって、支部に知らせるんだ」

女武道家「はい…」

竜騎士「…」

本日はここまでです。有難うございました。

つずきがきになるーーーーーーーーーーーー

>>218
つ「ず」き て・・・
おま、つ「ず」き、ってどうなん・・・

とりま>>1乙!
こっそり楽しみにしてるぜ

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドライアド『…!』ハッ


竜騎士「よう」

女武道家「おはようございます」


ドライアド『き、貴様らぁぁ!まだいたのか…今度こそ葬ってや…!』ビュッ

竜騎士「これ、なーんだ」スッ


ドライアド『な…!わ、私の宿木!』

竜騎士「ここに、例の液体を入れたら…どうなると思う?」

ドライアド『…っ!』

  
竜騎士「ん~少し話にくいな。人型になれるか?」

ドライアド『くっ…』

竜騎士「手が滑っちゃいそうだー、うわー」グググッ

ドライアド『わわわ、わかった!わかったからやめてくれ!!』

女武道家(竜騎士さん、棒読みなのに凄い楽しそうです…)


パァァッ…スタッ

ドライアド『これで…いいか』


竜騎士「…!」

女武道家「…!」

 
ドライアド『…どうした』

竜騎士「いや、話には聞いていた。だが…こんなに美しい精だとは…思わなかった」

女武道家「こんなに可愛らしくも美しい人がいるなんて…」

ドライアド『…私の美しさに跪くがいい!』


竜騎士「…手がすべるー」グググッ

ドライアド『あ、あぁ!?な、なぜだ!?」


竜騎士「そういうのはいらないから」

ドライアド『はぁ…何てヤツだ…。私を脅して一体、何するつもりだ…?』

竜騎士「聞きたい事がある」

ドライアド『聞きたい事?』

 
竜騎士「お前は、この土地に長く住んでいるのか?」

ドライアド『…』

竜騎士「答えてくれ」


ドライアド『長い。この地が、まだここにはない存在の頃からな』

竜騎士「…それだ!」

ドライアド『何?』

竜騎士「俺が聞きたいのはそれなんだ。この地に一体何があった!?」


ドライアド『…知らないのか?』

竜騎士「知らないも何も、お前も…なぜ軍人らがここに足を運んでいるか知らんのか?」

ドライアド『お前達は…この奥にある"アレ"を欲しがっているんだろう?』

 
竜騎士「…アレ、だと?」

ドライアド『…知らぬのか?』

竜騎士「知らないな」


ドライアド『何?…じゃあ、お前たち人間はなぜ…この先に進もうとするんだ』

竜騎士「アレって何だ?お前はそれを守る何かなのか?」

ドライアド『いや私は、生きる為に人間を食らっているだけだ』


竜騎士「そ…そうか。じゃあ…アレとは何だ?」

ドライアド『…はは、知らないのか』

竜騎士「答えろ!一体何の事を言っている!」

 
ドライアド『…さぁね』プイッ


竜騎士「…宿木に液体入れるぞ、コラ」ググッ

ドライアド『わ、わかったわかった!』

竜騎士「最初から素直に言えばいいものを」フン

女武道家(顔が本当に楽しそう、凄い楽しそうです!竜騎士さん!)


ドライアド『それで、何だっけか』

竜騎士「まぁ2つほど聞かせてくれ。この土地はなんだ?どこから来た?」

ドライアド『魔界』アッサリ

竜騎士「…そこまで簡単に言われると、拍子抜けなんだが」


ドライアド『とは言ってもねぇ…、それ以上でもそれ以下でもないし」

竜騎士「じゃあお前は魔界から来たってことか」

 
ドライアド『この湿地帯は魔界にある時からずっと住んでたしね』

竜騎士「何で魔界がこの世界に来た?」

ドライアド『それに関しては詳細は分からないよ。だけど、さっきの話の奥にあるアレが関係してるのは知ってる』

竜騎士「じゃあ改めて聞くぞ。アレってなんだ?」


ドライアド『魔界と人間界を繋ぐ扉だよ』


竜騎士「…」

ドライアド『…』

女武道家「…」

 
竜騎士「何…だって…?」

ドライアド『正確にいえば機能してないけどね。向こう側からこっちに送らる一方通行のものだし』

竜騎士「じゃあこっちから向こう側と繋がる事はないのか?」

ドライアド『ないと思うよ。実際、今まで繋がってないだろうに』

竜騎士「まぁ確かにな」


女武道家「ドライアドさん」

ドライアド『ん?』

女武道家「それじゃ貴方は…今までずっとココにいたんですか?」

ドライアド『まぁ…そうなるね』

女武道家「長い間、自分の世界から離れて…知らない空の上でずっとですか…?」


ドライアド『何だ急に…?まぁそうだよ』

女武道家「寂しくは…なかったですか?」

 
竜騎士(女武道家…)


ドライアド『寂しいだって?私が?はは、そんなわけないだろう』

女武道家「ウソですよ…だって、声が聞こえますから」キィン…

竜騎士「…お前、待て!感知の能力使ってるな…薬切れ掛かってるだろ…また酔うぞ!」


キィィィン…

ドライアド『何だこの音は…わ、私の心に入ってくる…!』

女武道家「知らない土地で、貴方は…」

ドライアド『や…めろ…!』

女武道家「誰よりも…本当は…」

 
…キィィィィン…キィィィィィン…

ドライアド『その不快な音を…やめろ!!』

女武道家「寂しさが…」

ドライアド『やめろぉぉ!』

竜騎士(態度が変わった!?触れてはいけないことか…!)

ドライアド『うるさい!!私は寂しくもないし、何も怖がっちゃいない!!』クワッ

 
女武道家「違います…だから、貴方は傍に人を置いて、安心するために美徳戦士さんを…」

ドライアド『うるさあああい!!』

メキッ…メキメキメキメキ…!!!


竜騎士「やばい、落ち着け!!毒を入れるぞ!!」

ドライアド『やるならやれぇ!!!人の心を覗くな…殺す!!!』シュバッ

竜騎士「くっ…折角話せる相手を見つけたというのに…!」


ビュンッ…シュバアアッ!!!

竜騎士「…っ!」

 
……ピタッ!!

竜騎士「…?」

ドライアド『…』

竜騎士「…触手が止まった?いや、止めたのか…?」


ドライアド『…お前…何で泣いてるんだ…』

竜騎士「え?」クルッ


女武道家「…」グスッ

 
竜騎士「お…女武道家…?」

女武道家「ごめんなさい…、ドライアドさんの心が見えて…痛いほど気持ちが入ってきて…」ポロポロ


ドライアド『…』


女武道家「失礼ですよね…全部分かってるわけじゃないのに…ごめんなさい」グスグス

ドライアド『…私の気持ちを読んで…泣いたのか?お前が…?』

女武道家「はい…ごめん…なさい」グスッ

ドライアド『…』

 
竜騎士「…おい、ドライアド」

ドライアド『…何だ』

竜騎士「一旦、止めにしないか。お前も、コイツの涙の意味くらい…分かるだろ」

ドライアド『…』

竜騎士「お前の気持ちを汲んでいるんだ。俺もそれに答える。この毒は…捨てる」

…バシャッ…


ドライアド『お前たち…』

竜騎士「休戦だ。いいな?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

グビグビッ…ゴクンッ

女武道家「…ごめんなさい、勝手なことばかり」

竜騎士「いやいい。しっかり酔い止めは飲んでおけ…今は体調は大丈夫か?」

女武道家「はい…」


竜騎士「それと…ドライアド、ちょっといいか」

ドライアド『…何だ』

竜騎士「俺らや、軍人の同業者がここを歩いているのは別にその扉を目指してるわけじゃない」

ドライアド『…そうなのか』

 
竜騎士「お前は知らないかもしれないが、この土地は人類最後の秘境と呼ばれてる」

ドライアド『最後の秘境…だって?』

竜騎士「魔界の手がかりになりうる空中都市遺跡。人間たちはココをそう呼んでいる」

ドライアド『…』


竜騎士「ここにいる竜族や、お前のような次元の違う敵がうようよしているわけもわかったよ」

女武道家「魔界との繋がりが本当にあった都市だったから…ですね」

竜騎士「そうだ。そして、俺たちはこの遺跡を探索して、謎を解き明かしたいだけなんだ」


ドライアド『人間のすることは良くわからないよ。扉を知っていて、それを目指していると思ってたからね』

竜騎士「扉の存在は初めて聞いた。改めてそれが目標にはなっちまったがな」

ドライアド『そうかい』


竜騎士「それと…お前だって人型だろうが」

ドライアド『私は…人型にもなれるだけで、人間ではないよ』

 
竜騎士「お前は今まで人を食った事はあるだろうし、沢山殺したんだろう?」

ドライアド『まぁね』

竜騎士「わかった。お前も生きるためだったんだ…咎めはしない。このまましばらく休戦といけないか?」

ドライアド『それは私に、貴重な食料を見過ごせ、つまり死ねということだね?』

竜騎士「ワイバーンとかは嫌いか?」


ドライアド『嫌いじゃないが、普段から空を飛んでいる相手だ。そうそう上手くいかないもんさ』

竜騎士「…食べる物は、人しかないのかやはり」

ドライアド『いや…あるにはあるよ。だけど、やっぱりね。私のテリトリーを荒されるのはスキじゃない』


竜騎士「女武道家の涙、それを見て攻撃を止めたお前だ。話が通じると思ってる」

ドライアド『…』

  
女武道家「ドライアドさん…お願いします」

ドライアド『…』

女武道家「やっぱり…ダメでしょうか」ジッ

ドライアド『…』

女武道家「…」ウルウル


ドライアド『はぁ…約束は出来ない。それと…この土地を荒らそうとするなら、私は容赦しないよ?』

女武道家「…じゃ、じゃあ!」

ドライアド『…』プイッ


竜騎士「ありがとよ」

女武道家「ドライアドさん、ありがとうございます!」

ドライアド『…ふん』

 
女武道家「良かったです♪」

竜騎士「はは…一件落着…なのか…?」

ドライアド『…』


竜騎士「ドライアド、この湿地帯を抜けた先には何があるんだ?」

ドライアド『また都市遺跡が続いてると思うけど、人間たちがいう"サードエリア"って場所らしいよ』

竜騎士「サードエリア!!」

女武道家「竜騎士さん!」

竜騎士「あぁ…!」


ドライアド『…何か嬉しい事があったのか?』

竜騎士「俺らはサードエリア以降を目指してたんだよ!よっしゃ…よっしゃあ!!」

  
ドライアド『そこから街の大通りになっててね…、一番奥の聖堂にその扉の役割を果たしたのがあったはずだよ』

竜騎士「そこの通りは何か厄介なやつはいるか?」

ドライアド『ファフニールのヤツが巣食ってる。ここにいる竜族の長といえばいいか』


女武道家「竜族の長…ですか」

竜騎士「…また厄介そうなヤツか」ハァ


女武道家「あ、そういえば…ドライアドさん」

ドライアド『何だ?』

女武道家「ドライアドさんの心が見えた時に…」

ドライアド『…』ピクッ

女武道家「あっ…」

 
ドライアド『いやいいよ。私がどうしたって?」

女武道家「…ドライアドさんが、こちら側に来た時の情景が頭に入って来たんです」

ドライアド『へぇ?』


女武道家「いつものように寝て、起きたら…こちら側に飛ばされてたと…そう見えました」

ドライアド『…間違いではない。一晩たって、眠りから目が覚めるとこの有様だった』

女武道家「…そんな」

ドライアド『前の日までは賑わっていた街だった。だが、気づけばこうなっていた…笑えるよ』


竜騎士「待ってくれ。一晩でこんな街になってたっていうのか?」

ドライアド『あぁ。住んでいた者はいなくなり、街は朽ち果てていた。森は私の魔力で残ったようだが…ね』

竜騎士(一晩で…朽ちた…)

ドライアド『何だ?また何か聞きたそうだね」

竜騎士「あ、あぁ…この都市はどんな都市だったんだ?」

 
ドライアド『火山が近くてね…その彫刻品や、特産品で賑わってた。懐かしいね…』

竜騎士(やはり火山…か)


ドライアド『そこにいた住民は、よく私が子供だった頃から水やらお供え物とか持ってきてくれたもんさ』

竜騎士「…へぇ」


ドライアド『…ほら、これだよ』

スッ…キランッ

竜騎士「黒曜石の皿…!?今までよりも洗練されて…不思議な文様が入ってるのか…」

ドライアド『キレイだろう?私だって、その当時は"聖なる木"として崇められたもんだったんだけどね』ハハハ


竜騎士「…信じられん、魔界にこんな技術があるなんて…!人間でもココまでのモノは中々ないぞ…」

女武道家「キレイな皿ですね…吸い込まれそうな漆黒です…」


ドライアド『だけどまぁ今じゃ、この土地に蜘蛛のように根を張って……。どうして、こうなったんだろうか…』グスッ

 
女武道家「…ドライアドさん!」

ドライアド『ん?』

女武道家「友達になりましょう!そうすれば今日からまた、一人なんかじゃないですよ!」

ガバッ…ギュウッ!!

ドライアド『わっ!急に抱きつくな!』

女武道家「ん~…肌すべすべじゃないですかぁ!キレイな上に、こんな…同じ女性として羨ましい限りです!」


ドライアド『こ…こいつはいつもこうなのか?』

竜騎士「恥ずかしながら…」ハァ

ドライアド『はは…無駄に早死にしそうなヤツだ』


女武道家「友達です!ねっ!」

ドライアド『あーはいはい。友達ね…』

 
女武道家「…えへへ」

竜騎士「お前の考えには恐れ入るよ全く」


ドライアド『…友達、か』

女武道家「また会いに来ますからね!」

ドライアド『ふふ、そうか。そうかそうか…なら、コレを持っていけ』スッ


女武道家「え?これって…、ドライアドさんの大事なお皿じゃないんですか?」

ドライアド『過去の産物だ。お前が友達になるなら…過去にすがる必要もないだろう?」

女武道家「…」

ドライアド『遠慮せず持っていけ。友達としての証でな』フンッ

女武道家「…はい♪」

 
ゴソゴソ…
 
ドライアド『アンタにはコレをあげよう。ほらっ』ポイッ

竜騎士「俺にもか?」

ドライアド『それは私に捧げられた蝶の文様が刻まれた銀細工だよ』

竜騎士「俺にも友達になれってか…?」


ドライアド『…』


竜騎士「…いや、もう友達だった。そうだな、ありがたく貰っておく」

ドライアド『うむ、遠慮せず持っていけ』フンッ

竜騎士「あぁ…ありがとよ」

ドライアド『…んむ』

 
竜騎士「さて…友達になったところで、そろそろ日が暮れそうだな」キョロキョロ

女武道家「ですね…どうしましょうか」

竜騎士「さっきの美徳戦士を休ませた場所、周囲が分かりにくくてセカンドエリアでも安心して休めそうだ」

女武道家「じゃあそこまで戻りますか?」

竜騎士「一回そこで休んで、明日にサードエリアまで進む。その後、様子を見て一旦支部に戻ろう」

女武道家「わかりました」


ドライアド『…ここからは私みたいなヤツじゃないからね。本格的な戦いになると思うし…気をつけなよ』

竜騎士「なんだもう心配してくれてるのか」

ドライアド『ふん、そんな事じゃないよ』プイッ

竜騎士「はは…それじゃ、ありがとな。まぁまた通るし…また明日、な」

 
ドライアド『私はこの湿地帯のどこかにいるから…何かあるなら呼べばいい』

竜騎士「あぁ。さ…行くか」

女武道家「はいっ。じゃあドライアドさん…またです!」


ドライアド『調子狂うね全く…はいはい、またね』

ザッザッザッザッザ…


ドライアド『…』

ドライアド『行っちまった…か』

ドライアド『友達…か。ふふ…』

ドライアド『…聖なる我が神木の名において、我が友人の冒険者に幸あらんことを…』

ドライアド『なんて…ね』

 
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【12月12日終了時点】

■所持品
・支給 衝撃弾10個
・支給 創傷回復薬5個
・支給 缶詰5個
・支給 キャンプキット

・購買 酔い止めの薬
・購買 粉ミルク
(バックパック)

■発掘品
・黒曜石の彫刻
・黒曜石の皿
・蝶の文様入りの銀細工

■探索距離
・セカンドエリア、湿地帯

本日の更新はここまでです。ありがとうございました。
次回更新は12月15日(明後日)の同時刻付近の予定になります。

遅れました、投下致します。

  
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――――【 12月13日 】


竜騎士「ん~…!」ノビノビ

女武道家「朝の準備体操も終わりましたし、そろそろ行きますか?」


竜騎士「行くか…。そうだ女武道家、石はきちんと持ってるな?」

女武道家「もちろんです」スッ

竜騎士「なくすなよ」

女武道家「当たり前ですっ」

 
竜騎士「それじゃ、湿地帯からサードエリア目指すか」

女武道家「はいっ!また、ドライアドさんに会えますしねぇ」

竜騎士「あ、あぁ…」

女武道家「どうしたんですか?」
 

竜騎士「いや、変わった奴と友達になっちまったなと…」

女武道家「変わってなんかないですよ。もう、立派な対等なお友達なんですから!」

竜騎士「はは、まぁな」


女武道家「さぁ、出発です!」ダッ

竜騎士「あ、先に走るな!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 湿地帯 】

ドロドロ…ザッザッザ…

竜騎士「…」キョロキョロ

女武道家「昨日、ドライアドさんがいたのはこの辺でしたよね」

竜騎士「ん~…今日はいないみたいだな」


女武道家「折角だから挨拶したり、色々話もしたかったんですが…」

竜騎士「…道の案内も頼めたら頼みたかったんだがな」

女武道家「ですねえ」

 
ザッザッザ…ピタッ

女武道家「…あ、お花が置いてありますよ」

竜騎士「おー…花?」

女武道家「昨日こんなのなかったはずですが…」

竜騎士「何の花だ?」


女武道家「アサガオと、キキョウですね。近くに咲いてるんでしょうか」

竜騎士「…」

女武道家「それとも、ドライアドさんからのプレゼントとかっ!」

竜騎士「…そうかもな」

女武道家「多分、そうですよね♪」

 
竜騎士「後できちんと花として保存するようにしよう。バックの隅っこに入れとけ」

女武道家「はいっ」

ゴソゴソ…


竜騎士「あとな、そりゃアサガオじゃなくてヒルガオだ」

女武道家「ひ、ヒルガオですか?」

竜騎士「ちょっとした違いがあるからな」

女武道家「珍しい花ですね、あまり聞きませんよ」


竜騎士(あいつめ…、何だかんだで友達って喜んでるんじゃねーか)ハハ

女武道家「どうして…笑ってるんです?」

 
竜騎士「その2つの花言葉、教えてやろうか」

女武道家「あっ…だからお花だったんですね。彼女、木…自然の精ですもんね」

竜騎士「ヒルガオは"優しい愛情"だ」

女武道家「愛情…友情じゃなくてですか?」

竜騎士「お前の言葉と態度で、愛情を感じたのかもな」


女武道家「キキョウは…どういう意味なんでしょうか」

竜騎士「"優しい温かさ"だ」

女武道家「優しい…温かさ」


竜騎士「言うところ、優しさと温かい愛情…だな」

女武道家「へへ…なんか恥ずかしいですね」

 
竜騎士「…分からなくもないな」ボソッ

女武道家「えっ?」


竜騎士「何でもねぇ!さっさと行くぞ!」

女武道家「今何て言ったんですか!教えてくださいよぉ!」

竜騎士「あ~もう、置いていこうっと!」ダッ

女武道家「置いていかないでください~っ!」ダッ

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 サードエリア手前 】

ザッザッザッザ…

竜騎士「おっ」

女武道家「あっ!」

竜騎士「湿地帯の終わりだ…。ってことは…あの建物は!」

女武道家「…ついに、サードエリアですね」


竜騎士「…あぁ」

女武道家「湿地帯も結構長い距離でしたけど、敵っていう敵がいませんでしたね」

竜騎士「恐らく最大の天敵はアイツだったんだろうな」

女武道家「ドライアドさんですか」

 
竜騎士「それと、竜族や他の種族の匂いや感覚がなかった。恐らくドライアドがしてくれたんだろう」

女武道家「他の種族が湿地帯に入らないようにですか?」

竜騎士「彼女のテリトリーには、そう簡単に他の種族は侵入できないっつーのもあるが」

女武道家「さすがですね~…」

竜騎士(俺から言わせりゃ、お前がさすがだよ)


トコトコ…ピタッ

竜騎士「さて、ここから先がサードエリアの入り口。聖堂への大通りだ」

女武道家「…」


ガサガサッ…パァァッ…!!

竜騎士「…おぉ」

女武道家「わぁ…」

 
サラサラ…ゴーン…ゴーン…

竜騎士「大通りのに整備された小さな川…。遠くで響く鐘の音…。何て綺麗なんだ…」

女武道家「本当に遺跡なんですか…これ」

竜騎士「今にも住民たちの声が聞こえてきそうだな…」


女武道家「この鐘の音はどうして聞こえるんでしょうか」

竜騎士「恐らくこの先にある聖堂のじゃないか。通りの脇を水が流れているからな。水力で鳴るんだろう」

女武道家「高い技術力ですね~」


竜騎士「…ファースト、セカンドと比べてこの通りは本当に"生きている"ようだ」

女武道家「もしかして、生きているんじゃないですか?」

竜騎士「え?」

 
女武道家「だって、ファフニールさんがいるとか言ってたじゃないですか」

竜騎士「あー竜族の長的なヤツか」

女武道家「知力があるとしたら、他の竜族さんらと町に住んでいるのかもしれませんよ」

竜騎士「その考え…充分有りだ」


女武道家「それと、もしかしたらファフニールさんだって話せば分かる人かもしれません」ムフー

竜騎士「…」

女武道家「手荒にせず、ここは穏便に行くってのもありですね!」


竜騎士「お前、友達になるつもりなの?」

女武道家「ダメですか?」

竜騎士「いや…まぁ…うん…」

 
女武道家「むう」

竜騎士「ドライアドが言ってただろ。ファフニールとは本格的な戦いになるかもしれないとか」

女武道家「あ~…そういえばそうですね…」


竜騎士「ここは慎重に行く。アイツらは匂いにも敏感だしな」

女武道家「はい」


竜騎士「…うし、まずは軽く見納めだ。ここまで来る事はもう難しくはないからな」

女武道家「わかりましたっ」


カサカサ…ヒュ…ビュウウウ~…!!!

竜騎士「うっぷ!」

女武道家「きゃっ!」

竜騎士「突風か!大通りが吹き抜けの役割をしているんだ…!」

 
ビュウウ…ウゥゥ…

竜騎士「ふぅ…収まったか」

女武道家「凄い風でしたね」

竜騎士「水なんかも流れてるし余計かもな……ん?」


ドォンッ!!!バリバリバリッ…

竜騎士「何だ!?」

女武道家「あ…通りの向こう側、遠くの建物から何か飛びだしました!」

竜騎士「何、どのくらいの距離だ?」

女武道家「まだかなり離れ…いえ、凄い速度で近づいてきます!」

 
竜騎士「…一旦ココを離れるぞ!」

女武道家「は、はいっ!」

ゴォォォ…ズズゥゥン!!!グラグラグラ…


竜騎士「なっ!は、早い!」

女武道家「も、もう回り込まれた…!?」

竜騎士「あ、赤く巨大な竜…。まさかこいつが…」


ファフニール『…』


竜騎士「はは…女武道家、一応武器を構えろ」スチャッ

女武道家「…はい」スチャッ

 
竜騎士「…」

女武道家「…」

ファフニール『…』


竜騎士「…ファフニール、俺は争う気はない。出来れば、見逃して欲しい」

ファフニール『…』

竜騎士「お前たちのテリトリーを荒す気はないし、何をする気もない。頼む」

ファフニール『…ほう』

竜騎士(言葉が分かる…!話が通じるか…?)


ファフニール『ココへ人間が姿を見せるのは久しいな』

竜騎士(それにしても、何故俺たちがココにいる事を分かったんだ…)

 
ファフニール『…風に運ばれてきた匂いだ』

竜騎士「!?」

ファフニール『突風にわずかに感じられた匂いに、人の匂いが混じっていたからな』

竜騎士「まさかそんなわずかな…というか、俺の考えを読んだのか!?」

ファフニール『造作もない事だ』

竜騎士「…っ」

女武道家「…心を、読むってことですか…」


ファフニール『…そうか、お前たちは竜騎士と女武道家というのか』

竜騎士「…」

女武道家「…」


ファフニール『…』

竜騎士「…お前は、俺たちと戦うのか?」

ファフニール『…』

竜騎士(こんな相手に、勝てる見込みなんてないんだ…!見逃してくれ!)


ファフニール『…例えば』

竜騎士「…?」


ファフニール『我がお前達を殺すのは簡単だ』

竜騎士「まぁそうだろうな」

ファフニール『で、その時…何か変わるものはあると思うか?』

竜騎士「俺らの存在が消えて、影響がなくはないと信じたい」

ファフニール『あぁ…いや。そういう意味ではない』

竜騎士「何?どういう意味だ?」

 
ファフニール『…我に対して、だ』

竜騎士「お前に対して?」

ファフニール『そう。お前達自身の事はなく、我にとって…何か変わるモノはあるか?という事だ』

竜騎士「…何が言いたい」

ファフニール『はぁ…分からぬか。では、教えてやろう』

竜騎士「…」


ファフニール『我の…"愉しむ心"だ…』ニタッ


竜騎士「…女武道家、逃げろ!!!」

女武道家「!」

 
竜騎士「とにかく、湿地帯を抜ける用に走れぇっっ!!」ダッ

女武道家「は、はいっ!!」ダッ

ダダダダダダッ!!!


竜騎士「全速力だ!振り返るな!!」

女武道家「どどど、どうしたんですか!」

竜騎士「アイツ、俺らを殺す事を"愉しむ事だ"といいやがった!本気で来るぞ!」

女武道家「そ、そんなっ!」


竜騎士「湿地帯ならまだドライアドのテリトリー…アイツだってそう簡単には…」チラッ

ドドォン…ゴォォォッ…!!!

ファフニール『ハハハハッ!全てを燃やしつくし、久々の鬼ごっこと行こうか!』 

竜騎士「…はは」

本日はここまでです。ありがとうございました。
それと、>>262で書き忘れましたが、
沢山のコメントを下さった方々ありがとうございます。

皆さま有難うございます。投下致します。

  
ダダダダダッ…!!!

ファフニール『我の住む場所まで来る人間はいつぶりか!愉しもうではないか!』


竜騎士「爺ちゃんのことか…?く、くそぉ!それよりこのままだと追いつかれちまう!」

女武道家「うう~っ…!」ブルブル

竜騎士「ど、どうした?」
 
女武道家「…もう、我慢できません…」

ズザザザァ…ピタッ


竜騎士「あ、おい!?何で止まるんだ!!」

女武道家「こらぁぁ!ファフニールさんっ!」

ファフニール『む…?』

 
女武道家「これ以上、この森を、自然を壊さないで下さい!!」

竜騎士「何?」

ファフニール『何だと?』


女武道家「ここにはドライアドさんが住んでるんですよっ!そんな暴れたり、燃やしちゃダメです!」

竜騎士「…おま」

女武道家「いくら強い竜だとか、竜族の長とか、関係なく…そういう事は許しませんよ!」


ファフニール『…ふ、ふははははっ!』

竜騎士「…っ」ビリビリ

女武道家「…」ビリビリ


ファフニール『お前自身の事ではなく、まさかドライアドのヤツを気にして…!?』ハハハ

女武道家「何がおかしいんですかぁっ!」

 
ファフニール『あ~…まぁ遅かれ早かれ…こうなってたか』スゥゥ

女武道家「…?」


ファフニール『ガァァァァッ!!!』クワッ

ブワッ…ゴォォォォッ!!!ドォンッ!!!ボォォォッ…!!


女武道家「!」

竜騎士「な…何て量の炎を…森に!全て燃やすつもりか!」

女武道家「ど、ドライアドさんの森が、湿地帯が…!」


ファフニール『ハハハッ!そもそも我らにとっても、この森はジャマだったからな。いい機会だ』

女武道家「な…何て事を…!」

  
竜騎士「…くっ!」

女武道家「許せない…」

ファフニール『む…どうした?もう逃げないのか?』

女武道家「酷い…酷すぎます!」

ファフニール『これで森を気にせずに逃げられるだろう?ほら、逃げろ」

竜騎士「…っ」


ファフニール『少しずつ、お前達の体を壊していく。そして、叫ぶがいいさ…ハハハハッ!』

女武道家「ゆ、許せない…絶対に!」スチャッ

竜騎士「ダメだ!勝てる相手じゃない!」


女武道家「気攻波ぁぁっ!!」ビュンッ!!!

…ボォンッ!!

ファフニール『…ん~?』

 
女武道家「効いてない…!?」

竜騎士「…!」

ファフニール『ははは、何かしたか?まさか、攻撃したつもりか?』ニタッ

女武道家「そんな…」


竜騎士「…早く離れるぞ!」グイッ

女武道家「は、はいっ」


ファフニール『…おっと、待て』

ビュッ…ガシッ!!!

女武道家「!」

竜騎士「女武道家!」

 
女武道家「うっ…くっ…苦し…」ギリギリ

竜騎士「女武道家を離せ!」

ファニフール『…少し、気が変わった』

竜騎士「…何!?」


ファフニール『やはり、鬼ごっこより"戦い"のほうが愉しそうだ』

竜騎士「…っ!」

ファフニール『それと、こっちの女よりお前のほうが実力は高いようだな』

女武道家「うぅっ…」ググッ

 
ファフニール『なら、先にコッチの女を殺してサシでの勝負といこうではないか』スゥ…

竜騎士「なっ…や、やめろ!!!戦いならやってやる…だから女武道家を離してくれ!!」

ファフニール『聞こえないな』スゥゥゥ


女武道家「り…竜騎士さ…」

竜騎士「女武道家ぁ!」

ファフニール『カァッ!!』ゴッ!!

ゴォォォォッ!!!

竜騎士「女武道家ぁぁぁっ!!」

ゴォォォ…フウッ…ドシャッ…

ファフニール『くく…これでサシとなったワケだ!一瞬で見事に黒焦げだな』ハハハ

 
竜騎士「なっ…う、うそ…だろ…?」

ファフニール『…どうした?』

竜騎士「お、女武道家が…も、燃やさ…れ…た…?」

ファフニール『何をしている…さあ、武器を構えよ。我と戦おうではないか』


竜騎士「…」

ファフニール『…早く立て。これで周りの邪魔はいないのだぞ?』

 
…ガクッ

竜騎士「…」

ファフニール『一体どうしたというのだ、座り込んで…。女の仲間一人くらい殺されたくらい…』

竜騎士「…」

ファフニール『…ほう?なるほどな』

竜騎士「…」

ファフニール『お前の恋人だったのか?その淡い感情、恋心…か?』

竜騎士「…」

ファフニール『なら、普通は殺されて復讐心で燃えるものではないか。恋人の敵、取るつもりで来い』


竜騎士「…目の前で…女武道家を…はは…」

ファフニール『…つまらん。脆いヤツだ』ハァ

 
竜騎士「…」

ファフニール『…本当につまらぬ。ならば、一緒に死ぬが良い…』スゥゥゥ

竜騎士「あ…」

ファフニール『カァッ!!!』ゴッ

ゴォォォッ!!!

竜騎士「…終わり、か」


ビュンッ!!!

???『何ボサっとしてるんだよ!』

…ガキィンッ!!!

竜騎士「!」

ドライアド『森の仲間が騒いでいれば…ファフニール!私の土地を燃やすなんて、いい度胸だ!』

 
ファフニール『ぬ…ドライアドか!』
 
竜騎士「ドライアド…」

ドライアド『女武道家は死んでなんかいないよ…ほら』

竜騎士「…え?」


シュバァッ…パラパラ…

女武道家「ごほっ…ごほごほごほっ…!」

竜騎士「お、女武道家!!」


ファフニール『何だと…!?だが確かに燃やした手ごたえはあった!』

ドライアド『あんたが燃やしたのは、女武道家を囲った私の枝だよ。黒こげにされちまったけどね』

竜騎士「…!」


ファフニール『貴様…人間をかばったのか!』

ドライアド『…』

 
竜騎士「ドライアド…な、何て言ったらいいか…!」

ドライアド『…私の枝だけじゃない。そいつの持ってた何かで、ダメージは収まったみたいだけどね』

竜騎士「まさか!」ハッ

ゴソゴソ…チクッ

竜騎士「痛っ…、石が割れている…俺の渡した保護の石か…!」


女武道家「ごほごほ…っ!」

竜騎士「良かった…本当に…」ギュウッ…

 
ファフニール『…ドライアド、どんな風の吹き回しだ?貴様、人間を食って生きていただろうが』

ドライアド『気が変わる事だってある』

ファフニール『道理で人が我の住処へ来た訳だ…、歳をくってボケたか?』

ドライアド『ふん…』


ファフニール『いいだろう。所詮貴様は木の精。我が炎の前には何も出来ぬ!』

ドライアド『さぁね、あくまでもココは私のテリトリーって事…忘れてるんじゃないの?』

ファフニール『ならばその全てを燃やし尽くしてくれる!!』スゥゥゥ

ドライアド『火など吐かせるものか!はぁっ!」シュバアッ!!


シュバァッ!!…バチイッ!!

ファフニール『ぬぐっ…!』


竜騎士「周りの残った木々の枝が…!」

ドライアド『ここは私の森。全てが私の仲間!…ファフニールに思い知らせてやれっ!』

 
竜騎士「…ドライアド、人型から戻らないのか?」

ドライアド『冗談…本態になったらあっという間に燃やされる。小さいほうが有利』


竜騎士「だけど、このままで戦えるのか?」

ドライアド『そう力は変わらないから。それより逃げたほうがいい…恐らく私じゃ勝てない』タラッ…

竜騎士「…一緒に戦えるぞ、俺は」

ドライアド『その子を背負ったまま?』


女武道家「…」

竜騎士「…」

ドライアド『無理でしょ。今は逃げなよ…私が援護してあげるから』

 
竜騎士「くそっ…すまん…」クルッ

ドライアド『久しぶりに昨晩いい夢見れたんだよ…それだけで感謝する。ありがとう』

竜騎士「…」


ファフニール『ガアアアッ!!』ゴォッ!!!

ボォォッ…ボトボトッ…

ファフニール『木々、自然の仲間など堅苦しいわ!』


ドライアド『く…早く!』バッ

竜騎士「くっそ!…生きてくれよ!!俺らは、必ずここに戻ってくるからな…!」ダッ

ダダダダダッ…

  
ドライアド『はぁ~…天敵の属性を持つ相手と殺し合いで、生きてくれよ…か』

ファフニール『ふはは、いいぞ。お前に免じてアイツらは逃がしてやる』

ドライアド『そう?ありがとう…私は貴方を殺すつもりでいくけどね』


ファフニール『…殺すつもりか。面白いな』

ドライアド『あと別にアイツらの為だけじゃない。私のテリトリーを犯した事…それに何より怒ってるだけだ』ギロッ


ファフニール『ハハハハ!…行くぞ!』スゥゥ

ドライアド『…かかってきな!』グググッ

 
…ドゴォォォンッ!!!ミシミシミシ…パラパラ…


竜騎士「!!…今の音、まさかドライアドが…」

竜騎士「…」

竜騎士「…いや、きっと大丈夫だ。きっと…」


女武道家「…」


竜騎士「必ず、必ず戻ってくるからな…!」

タッタッタッタッタッタ…

…………
………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】

ダダダダッ…ガチャッ、バタンッ!!!

竜騎士「はぁ…はぁ…」

青空騎士「あ、竜騎士さん…?慌ててどうかしたんですか?」

竜騎士「コイツ、頼む」グイッ


女武道家「…」


青空騎士「女武道家さん…ど、どうかしたんですか!?」

竜騎士「ケガはないと思うが、医務室に頼む…」フラッ

青空騎士「た、頼むって…竜騎士さんはどうするんですか?」

竜騎士「俺は行く…」クルッ

 
青空騎士「い、行くってどこに!?」

竜騎士「友達のところだ…女武道家にそう言えばわかる。目が覚めたら伝えてくれ」

青空騎士「わ、わかりました」


竜騎士「…」スチャッ

青空騎士「…大丈夫なんですか」

竜騎士「当たり前だ。晩御飯の用意は頼んだぜ?」ハハ

青空騎士「…行ってらっしゃいです」


竜騎士「…あぁ」

ガチャッ…バタンッ

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッザッ

竜騎士「はぁ…はぁっ!友達一人救えなくて、何が軍人だよ…!」

竜騎士「アイツは命をかけたなら、俺だってやれる事はやってやる…!」

竜騎士「待ってろよ…ドライアド!」ググッ


ダダダダダダダダッ…!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


青空騎士「…一体あんなに慌ててどうしたんだろう?」

女武道家「…うっ」モゾッ

青空騎士「あ、気づきましたか?」

女武道家「ここは…?竜騎士さん!?」ハッ


青空騎士「竜騎士さんは友達の場所へ行くとか…ついさっきですよ」

女武道家「…ドライアドさん!?」ガバッ

青空騎士「…?」

 
女武道家「私、ドライアドさんに助けてもらって…その後に気絶しちゃって…」

青空騎士「助け…?どういうことです?」

女武道家「ドライアドさんと友達になって…、それでファフニールさんが…」

青空騎士「…ん?」

ザワザワ…ガヤガヤ…

軍人「今ファフニールとか、ドライアドって…」

軍人「そういえばあの子、竜騎士さんの…?」


青空騎士「…ちょっとココじゃなくて、別の静かな場所で聞かせてください」

女武道家「は、はい」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女武道家「…というわけです」

青空騎士「なるほど…、にわかには信じられませんね…」

女武道家「…」


青空騎士「まさかとは思いましたが、セカンドのドライアドの事だったとは…」

女武道家「やっぱり、ドライアドさんのこと知っていたんですね」

青空騎士「そりゃそうですよ。あそこの湿地帯の主で、あそこを抜けるのは不可能とされましたからね」


女武道家「そ、それより…竜騎士さんのところへ!」ハッ

青空騎士「ダメですよ!まだ目が覚めたばかりですし、安静にしてないと!」

 
女武道家「で、でも!いくら何でも、一人じゃ!」

青空騎士「それに、あの人はきっと大丈夫ですよ。あの"竜騎士"さんですよ?」

女武道家「そ、それはそうですが…」

青空騎士「…ファフニールに対抗できるのはドライアドだけですし、竜騎士さんがいれば何とかなるんじゃないでしょうか」

女武道家「…」


青空騎士「今は信じて待ちましょう。…僕らが行ったところで足手まといですよ、多分…」

女武道家「…」

 
青空騎士「…」

女武道家「…」ズーン…


青空騎士「は~…実力はそれなりにあるのに、どうしてそこまで竜騎士さんに固執するんですか?」

女武道家「え?」

青空騎士「竜騎士さんにそこまでピッタリでなくとも、もっと自分の考えで行動する事も出来ると思うんですが」

女武道家「だ、だから今行こうと考えて…!」


青空騎士「あ…いやそうじゃなくてですね」

女武道家「?」

青空騎士「竜騎士さんは、女武道家さんに自分の事を考えて欲しいと思ってると思うんですよ」

 
女武道家「私自身ですか?」

青空騎士「結構軍の中でも有名ですし、話は聞いてます。竜騎士さんの今回の態度からも、そういう感じでしたし」

女武道家「…」

青空騎士「きっと、もっと自分の幸せのため…生きる為に考えて欲しいという事だと思います」

女武道家「自分の幸せのため…」


青空騎士「…」

女武道家「なら、私の幸せは竜騎士さんと一緒に戦って、笑いあう事です」

青空騎士「だから、それじゃ…」

女武道家「だって!」

青空騎士「!」ビクッ

  
女武道家「小さな田舎に住んでた私に、世界を見せてくれたのは竜騎士さんでした。」

女武道家「人の為に役立つ事で、こんなにも嬉しくなることを教えてくれたのも。」

女武道家「誰よりそばにいて、守ってくれたのも。」

女武道家「私自身、本当にバカですから、きっとこれからも色々やってしまうと思います。」

女武道家「今から行こうとしているのも…きっと私がバカだからなんですよね。」

女武道家「でも、でも…。」

 
青空騎士「…」

女武道家「私は、どんな時でも竜騎士さんのそばにいたいんですっ!!」


青空騎士「…っ!」

女武道家「…はぁ…、はぁ…」

 
青空騎士「…ただのわがままですよ、それじゃ」

女武道家「…あう」

青空騎士「はぁ~…何で竜騎士さんは女武道家さんにずっと付き合ってるんでしょうか…」

女武道家「うぅ…」


青空騎士「いつの間にか、女武道家さんを守れるのが幸せになってるのかもしれませんね…」ハハ

女武道家「…」

青空騎士「分かりました…、分かりましたよ。でも女性を一人で戦場に送るのは出来ませんし、僕も行きますよ」

女武道家「…あ、ありがとうございます!」

 
青空騎士「ただし…条件があります」

女武道家「は、はい」

青空騎士「夕方まで待ちましょう。理由は2つあります」

女武道家「…2つですか」


青空騎士「1つ、竜騎士さんが夕方…夜ご飯までに帰ると言ったからです」

女武道家「はい…」

青空騎士「もう1つは、夕方以降になると他の種族が休憩する態勢に入るからです」

女武道家「休憩ですか?」

青空騎士「夜行性の相手もいますが、厄介な竜族などは休みますからね。昼間の強行突破は危険です」

女武道家「そういえば竜騎士さんも似たような事は言ってました」

 
青空騎士「焦る事は、事故を招きます。今は落ち着きましょう」

女武道家「は、はい…」

青空騎士「…あ、それとこれ」スッ

女武道家「?」

青空騎士「竜騎士さん、慌てて出て行っちゃったのでバックパック置いていっちゃったんですよ」

女武道家「あ、じゃあ私が預かって…」

…ポトッ


青空騎士「あ、お花落ちましたよ」

女武道家「…ドライアドさんのお花です」

青空騎士「ドライアドさんのお花、ですか」

 
女武道家「…ちょっと荷物を整理して、大事なものは部屋にしまってきますね」

青空騎士「わかりました」

女武道家「…」

トコトコ…ガチャッ、バタン…


青空騎士「…竜騎士さん、彼女の為にも早くご無事で戻ってくることを切に願いますよ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】

…ソワソワ

女武道家「…」

青空騎士「…」

女武道家「…」

青空騎士「…」


コチ…コチ…コチ…

女武道家「…」

ボーン!!ボーン!!ボーン!!ボーン!!ボーン!!ボーン!!…

女武道家「…6時ですね。竜騎士さんは…」

 
青空騎士「戻っては…きませんか…」

女武道家「…私、行きます」

青空騎士「分かりました。約束でしたしね…向いましょう」

女武道家「はいっ!」


青空騎士「そこまでの道案内はお願いします。それと、敵とは極力戦う事を避けましょう」

女武道家「わかりました」

青空騎士「それじゃ…行きますか」


女武道家「出発ですっ!竜騎士さん…今行きます!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッザ…

青空騎士「夕暮れだと思ったら、もう辺りは暗闇ですね。好都合ですが」ンー

女武道家「夜の遺跡は少し怖いです。冷えますし」

青空騎士「あはは…夜間活動のほうが僕らは多いんですよ?」

女武道家「そうなんですか?」


青空騎士「さっき言ったとおり、夜間のほうが敵も少ないですしね」

女武道家「なるほど…」

  
青空騎士「…だけど2人パーティで来るのは初めてなので少し緊張してます」

女武道家「普段はもっと多いんですか?」

青空騎士「そりゃ支部の面子の隊で10人から20人で行きますよ。生存力をあげるためにも」

女武道家「凄いですね」

青空騎士「昔はココも統率先頭、前衛先頭、中衛魔法、後衛回復の4人だったらしいですが」

女武道家「そうですね。一番活動しやすいとかなんとか…私もそう習いましたよ」


青空騎士「でも、ここじゃそうはいきません。1人が死ぬ間に、2人が生き残る…そういう犠牲になりたちます」

女武道家「竜騎士さんといると、不思議と2人でも安心します私は」


青空騎士「あの人はかなりの強さですしね…」

女武道家「青空騎士さんも結構強そうですよ?」

 
青空騎士「僕なんてまだまだ。ココに元々配属される事は決まってましたし、それに死ぬ事前提ですし…」

女武道家「え…?」

青空騎士「塔の中枢までの管轄は下の支部です。が、そこより上は、身内での配属になってるんですよ」

女武道家「どういうことですか?」


青空騎士「機密性が高いので、幼い頃から軍関係にいるか、またはその身内で認められた人しかココには配属されません」

女武道家「幼い頃…から?」

青空騎士「今はもうその制度はないですが、僕は同期と共に6、7歳からここにずっといるんですよ」ハハ

女武道家「えっ!」

 
青空騎士「ですが子供の人生を奪う事は非道と、さすがに軍部で禁止になりましたけどね」

女武道家「そこまでですか…」

青空騎士「他に漏らしてはならない、絶対機密ですからね…。ココでの一生が決まっているようなものなんです」

女武道家「外に出たいとは思わないんですか…?」

青空騎士「ずっと、ココにいるのが当たり前ですから。生き延びれば支部長の道もありますけど」ハハハ


女武道家「…」

青空騎士「下に降りることは結構ありますよ?そりゃ楽しそうですけど…僕の友達は空の上、ココにしかいません」

女武道家「…」

青空騎士「友人が消えるのを何度も見てきましたし、目をそむけたくはないんです…」

 
女武道家「じゃ、じゃあ!」

青空騎士「?」

女武道家「もし、竜騎士さんや私がここの謎を解いたり、もう人が死ななくなったら…ここから出られるんですか?」

青空騎士「…!」

女武道家「…」ジッ


青空騎士「…考えた事はないです」

女武道家「え?」

青空騎士「確かに竜騎士さんに多大な期待はあります。ですが、皆思ってます。どうせ"無理"だって」

女武道家「む、無理?」


青空騎士「下の腕利きは何度か来たことはありますが、気づけば皆戻ってこなかった。それが当たり前なんですから」

女武道家「…」

 
青空騎士「でも、今回の竜騎士さんがセカンドの湿地帯を突破できた事…それは…」

女武道家「…」

青空騎士「あ、いえ!何でもありません。急ぎましょう!」


女武道家「…」


青空騎士「…どうしました?」

女武道家「いえ…そうですね、急いで行きましょう」


ザッザッザッザッザ…!!

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さまありがとうございます。本日は短めながら投下致します。

 
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――――【セカンドエリア・湿地帯】


ホウ…ホウ…チチチ…

青空騎士「はぁ、はぁ…」

女武道家「何回か敵に当たりましたけど、何とか逃げ切れましたね…」ハァハァ

青空騎士「本当に湿地帯に敵はいないんですか?この疲れでいたら、最悪ですよ…」


女武道家「湿地帯の主さん…ドライアドさんとは友達なのでっ」

青空騎士「…それならいいんですが」

  
女武道家「それに…、さっきファフニールさんたちと戦ったのはこの辺のはずなんですが…」

青空騎士「…ふむ」

ザッザッザ…


女武道家「…うっ」ツンッ

青空騎士「何ですか、この臭い…」

女武道家「何か…焼けてるような…」

青空騎士「コゲくさい…というか、どういえばいいのか…」


女武道家「…まさか、ドライアドさんが!?」ダッ

青空騎士「あっ、勝手に走っては危ないですよ!」

  
ザッザッザッザッザッザッザッザッ…!!!ピタッ…

女武道家「…!!」

青空騎士「こ…これは…」

女武道家「も…森が…。何もない…全て…燃えて…」

ゴォォォ…パチパチ…


青空騎士「あれから何時間もたってると思うんですが…まだ燃えているとは…」

女武道家「り、竜騎士さーん!!ドライアドさん!!どこですかぁぁ!」

青空騎士「ダメです!」グイッ

女武道家「ふむぐっ…」


青空騎士「そこにまだ敵がいないとは限りません、大声を出してはだめです!」

女武道家「は、はい…」

 
青空騎士「今は落ち着いて周囲を探索しましょう。ここで竜騎士さんたちは戦ってたんですか?」

女武道家「…はい。でも、誰もいませんね…」

青空騎士「まだ辺りの残り火は消えてない。という事は、さっきまで戦っていたのか…?」

女武道家「じゃ、じゃあ竜騎士さんたちはどこへ…」


青空騎士「ファフニールとやらの気配もないですし、何の感じもしませんね…」キョロキョロ

女武道家「…」

青空騎士「一体…」


女武道家「…あっ!」ピクッ

青空騎士「どうしました?」

 
タッタッタッタ…

女武道家「今こっちで何か光った!」

青空騎士「ひか…え?」

女武道家「竜騎士さんかも!」

青空騎士「…急ぎすぎです!」


ダダダダダッ

女武道家「竜騎士さんっ…!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女武道家「…」ゼェゼェ

青空騎士「…」ハァハァ


女武道家「…」ブルッ

青空騎士「…女武道家さん」

女武道家「そ、そんな…」

青空騎士「これは…」

 
女武道家「何で…竜騎士さんの"槍"だけが…落ちてるの…?」

青空騎士「…」

女武道家「…」

青空騎士「月明かりに照らされて光ったのは、竜騎士さんの武器でしたか…」


女武道家「竜騎士さん…どこに…」グスッ

青空騎士「…」

女武道家「…」

青空騎士「…」

女武道家「…」

 
ザワザワザワ…ザワ…

女武道家「…?」

青空騎士「今、何か声が…気のせい…?」


ザワ…ザワ…

女武道家「いえ…聞こえます。声が…します!」

青空騎士「…」

カ…

女武道家「…!」

オ…ウカ…

ワタ…シ……

 
女武道家「今の声は…ど、ドライアドさん!?」

青空騎士「…今の声が?」


ドライアド"『…聞こえる?女武道家…』"


女武道家「は、ハッキリと…聞こえます!ドライアドさん!」

青空騎士「な、何て透き通るような美しい声…!」

女武道家「どこですか!?どこにいるんですか…!」

青空騎士「落ち着いてください、何か話したがっているようです!」

 
ドライアド"『…女武道家、私ドジってファフニールのやつにやられちゃってさ…アハハ』"

女武道家「や、やられ…?で、でもまだ生きていますよね?声…聞こえますから!」

ドライアド"『ゴメン。これは思念体…もう体はないし、魔法の残り香で話しをしているの』"

女武道家「そ、そんな…」


ドライアド"『時間もないし本題。貴方は絶対にココに来ると思った。竜騎士の行方でしょ?』"

女武道家「!」

ドライアド"『彼はファフニールに連れて行かれた。多分、サードエリアの彼の巣にいると思う』"

女武道家「え…」


ドライアド"『まさか、それを追いかけようとして燃やされるなんて…私としたことが…』"

女武道家「ドライアドさんは、もう…死んでいるんですか…?」

  
ドライアド"『…私の実体はないし、魔力がなくなればこの声も消える。折角友達になってくれたのに…ゴメン』"

女武道家「私のせい…ですよね」

ドライアド"『そんな事はないさ。そんな顔されてたら、私もいい思いであの世にはいけないじゃないか』"

女武道家「…」

ドライアド"『本当に、ありがとう』"

女武道家「…はい」


ドライアド"『それより竜騎士だ。ファフニールのことだから、どんな事をしているか…』"

女武道家「…っ」

ドライアド"『女武道家だけじゃ、死にに行くようなもんだ…その後ろの子供が一緒でもね』"

青空騎士「なっ…子供だと…」

 
ドライアド"『私から見たら皆、子供さ。まぁそれは置いといて…女武道家、それでも…行くんだろ?』"

女武道家「竜騎士さんを見殺しにはできません。私…バカですから、危険とわかってても…」

ドライアド"『あはは…そういうと思ったよ』"

女武道家「…」


ドライアド"『だからと言って、友達を見殺しには出来ない。女武道家…良い物をあげよう…』"

女武道家「…?」

ドライアド"『…』"パァッ…

ズズズ…ザワザワザワ…


青空騎士「じ、地面が揺れる…!」

女武道家「き、木が…地面から…!?」

ズズズズズ…

 
ドライアド"『その小さな木に生っているのはアンブロシア。魔界のフルーツ…』"

女武道家「魔界の…フルーツ…」

ドライアド"『私たち自然の精の子。それがやがて大きくなり、我が体となる…貴重なものさ』"

女武道家「…え!?」


ドライアド"『それを食べれば…強くなれるよ。女武道家、食べな。ただ、その分の代償も…』"

女武道家「待ってください。待って…、これは、貴方の次の体ってことですよね?」

ドライアド"『そうなるね』"

女武道家「これを失ったら、ドライアドさんは…もう生まれ変われないんじゃ…」


ドライアド"『…そんな事はないさ。私は高等な魔物だよ?』"

女武道家「…」

 
ドライアド"『…気にする暇があるのか?今は竜騎士を助ける事…それが一番だろう』"

女武道家「わ、わかってますけど…!」

ドライアド"『ならつべこべ言わず、受け入れな…』"


女武道家「…」

ドライアド"『…』"

女武道家「これを食べたら、私はどうなりますか?代償というのは…?」


ドライアド"『強くなるよ、とても…。だけど、それはドーピングみたいなもの』"

女武道家「ドーピングですか」

ドライアド"『反動は来る。そして効力も長いわけじゃない…その覚悟も必要だよ』"

女武道家「…」

ドライアド"『…食べるのは薦めるが、決めるのは女武道家だ』"

  
女武道家「…答えはひとつです。分かっていると…思います」

ドライアド"『…ふふ。やっぱりね。はい…』"

…ビキビキッ…ポトッ…

青空騎士「実が落ちた…」
 

女武道家「ドライアドさん…貴方の生命の樹の実…頂きます」ペコッ

ドライアド"『なぁに遠慮するな!』"


女武道家「…頂きます!」

…ガリッ!!!モグモグ……

………………ゴクンッ…!

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【数十分後…サードエリア・大通り】


タッタッタッタッタッタ…!!!

女武道家「はぁ、はぁ…」

青空騎士「女武道家さん、あれから少し時間がたちましたが体に変化はあるんですか…?」

女武道家「体の中から沸々と魔力が沸く…沸いてると思います」

青空騎士「おも…、思うだけですか!?」


女武道家「でも、助けられる…そんな気はします!」

青空騎士「はは…不安で一杯ですね…」

 
女武道家「でも、ドライアドさんが果物を食べた後…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドライアド"『すぐに効力は現れない。望む時に力が発揮されると思うよ』"

女武道家「はいっ」

ドライアド"『…それじゃ、時間もない。気をつけて行ってくるんだよ』"

女武道家「…はい。何からなにまで有難うございました…!」


ドライアド"『…早く行ってきなっ!』"

女武道家「…はい。行ってきます」

青空騎士「行ってきます」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女武道家「…すぐすぐ力は出てこないんじゃないでしょうか」

青空騎士「そうですね。今はファフニールの場所を目指しましょう」

 
女武道家「竜騎士さんは…聖堂の前にいるファフニールの屋敷…でしたよね」

青空騎士「確かそういってましたね」

女武道家「…」ゴクッ


…タッタッタッタッタッタ

青空騎士「幸い、今の大通りに敵の気配はありません。今はとにかく進みましょう!」

女武道家「…勿論です!」

ヒュッ…!

女武道家「あっ…いけない…青空騎士さん!」

青空騎士「何ですか!」

女武道家「伏せてください、突風がーー……」

ビュウウウウウウウッ!!!!

 
青空騎士「!!」

女武道家「…っ!」

ビュウウウウウッ…ヒュウウウウウウウッ!!!!


青空騎士「な、何て突風…!うぷっ…!」

女武道家「忘れてまし…た!前はこれで…ファフニールさんに居場所がバレてしまって…!」

青空騎士「何ですって!…なら、こちらです!」グイッ

女武道家「は、はいっ」

タタタタッ…ビュウウ…

 
青空騎士「はぁ、はぁ…わき道にそれれば、風は入ってきません…」

女武道家「で、でもこれじゃ…前に進めませんね…」

青空騎士「突風ならすぐに風は止みます。その隙に少しずつ進みましょう」

女武道家「…ですね」


青空騎士「本当の頼みの綱は竜騎士さんです。無事だといいんですが…」

女武道家「無事です…無事に決まってますよ…」

青空騎士「そう、でしたね。すいません…」


ビュウウッ…ウウゥ………ッ

青空騎士「…風が止んだ、行きましょう」ダッ

女武道家「はいっ」ダッ

  
タッタッタッタッタッタ…!!!

…コォ゙ーン…コォ゙ーン…!

青空騎士「鐘の音…?」

女武道家「竜騎士さんが、あれは水で循環して自然に鳴ってるって言ってました」

青空騎士「キレイな音ですね」

女武道家「…」


青空騎士「…聖堂、まだ見えませんね」

女武道家「いえ、見えてます。もうすぐです…!」

ヒュッ…

青空騎士「と、微風…隠れて!」ダッ

女武道家「わき道…!」ダッ

 
ズザザザザ…ビュウウウウウッ!!!

青空騎士「中々進めませんね…」ハァハァ

女武道家「…」

青空騎士「あとどのくらいですか?」

女武道家「次か、次の次あたりで着けると思います。隣にある大きな建物も見えました」


青空騎士「そこがファフニールの住む場所ですね…お」

ウウゥゥ…ゥ…

青空騎士「風が止みました、行きましょう!」

女武道家「はいっ!」

 
タタタタタタタッ…!!

女武道家「…っ」

青空騎士「…」


ゴーン…ゴーン…ゴーン……!!!

青空騎士「また鐘の音…」

女武道家「よく聴こえますね…」


青空騎士「と…見えた!あの正面の白い建物が聖堂ですか!?」

女武道家「恐らくそうです!」

青空騎士「よし、一気に距離を詰めて…」

ヒュッ…

青空騎士「…風!」

女武道家「わき道に!」

  
ズザザザザ…ビュウウウ…

青空騎士「…はぁはぁ…いよいよ、見えましたね…」

女武道家「ですが、他の竜族さんや他の種族さんがいませんね?」

青空騎士「サードのこのエリアは恐らくファフニールのテリトリーなんでしょう」


女武道家「一番きつかったのは敵の数が多いセカンドエリアだったってことですか?」

青空騎士「それと貴方達が解決してくれた湿地帯ですね」

女武道家「…ドライアドさん」ギリッ…


青空騎士「哀しんでいる暇はありませんよ。風が止んだ…走ります!」ダッ

女武道家「はいっ!」ダッ

 
タタタタタタタタタッ!!!

女武道家「もう少し…あと少し…!」

青空騎士「隣の建物も見えた!」

…ゴゴゴ…ゴォォォォン!!!ゴォォォォン!!!…ビリビリビリ…


青空騎士「鐘の音が近っ…み、耳が!!」

女武道家「うぅ…!」

青空騎士(一体何で鐘の音だけが生きているのか…)


ヒュッ…

女武道家「また風…だけど!」

青空騎士「ファフニールの屋敷に突撃します!」

ダダダダダッ…!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【ファフニールの屋敷】


ドォンッ!!!ズザザザザ…モクモク…

青空騎士「…着いた」

女武道家「ここが…ファフニールさんの…」


青空騎士「あんな大音たてて突っ込んだら流石に相手にもバレてそうですね…」

女武道家「よく見えません…、暗すぎます」


青空騎士「月明かりも届いてないようですしね。火魔法っ」ボワッ

女武道家「わっ、明るい」

青空騎士「相手も魔力やらに鋭い反応を持つ相手ですし、あまり使いたくはないんですが…」

 
女武道家「…竜騎士さんは一体どこに…」キョロキョロ

青空騎士「正面の大きな扉。まずはそこから――…」

女武道家「…っ!」ダッ

青空騎士「って、急ぎすぎは事故のもとですよ!落ち着いてください!」


女武道家「竜騎士さん!!」

ガチャガチャッ!!!…ギィィィ……


女武道家「…!」

青空騎士「そんな急ぎすぎないで…、って、あっ!?」

 
モゾッ…チャリッ…

竜騎士「…うっ、だ…誰だ…」


女武道家「り、竜騎士さぁぁんっっ!!!」

青空騎士「竜騎士…さん!鎖で縛られて…ひどい…」


竜騎士「な…んだ…?」


女武道家「良かった、無事だったんですねっ…!!」

青空騎士「…ん?」ピクッ

女武道家「今、助けに…!」ダッ

青空騎士「女武道家さん…待ってください」ガシッ

女武道家「ど、どうしたんですか?」

青空騎士「…何か、います」

 
カツン…カツン…カツン…

ファフニール『…ほう、お客か。女武道家…と、言ったかな?もう1人は知らぬ顔だな』


女武道家「え…?」

青空騎士「こ、これが…ファフニール…?」


ファフニール『知らない人もいるようだ。青空騎士と、言うのか』

青空騎士「なっ…名前を…?」

女武道家「誰ですか!?」

青空騎士「え?」

女武道家「ファフニールさんじゃない…?え…?誰ですか…?」

ファフニール『…"人型"を見せるのはそういえば初だったか』

  
女武道家「人型…!ファフニールさんもなれるんですか…!」

ファフニール『そうしないと、この素晴らしい屋敷が崩れてしまうだろう。で、何の用かな?』

女武道家「決まってます!竜騎士さんを助けに来たんです!」

ファフニール『なんだ…諦めて我に嬲り殺しされにきたのかと…』ハッハッハ

女武道家「…っ」ギリッ


竜騎士「そ、その声…女武道家…か…?」チャリッ…

女武道家「竜騎士さん!私です!」

竜騎士「ど…どこにいる…?見えない…」

女武道家「目の前にいますよ!竜騎士さん!」

竜騎士「…ど、どこだ…ごほっ…ごほごほ…」

  
ファフニール『あー…少し遊び過ぎたか?眼が見えてないようだな』

女武道家「眼が…みえ…てない…?」

ファフニール『あと足元に気をつけたほうがいいな』

女武道家「え?」


…ヌルッ

女武道家「きゃっ!滑る…!」

ベチャッ!!…ドロッ…

女武道家「何ですか…これ…」


竜騎士「…」

ファフニール『彼の足を切り裂いた時に、飛び散ってしまってね』

女武道家「あ…足?」チラッ

  
……ドロッ…ポタ…ポタ…

女武道家「…あ…あぁぁ…!!」

青空騎士「り…竜騎士さんの左足が…ない…!」

ファフニール『折角の遊びだ。死なないように、ジックリとね…はははっ!』

女武道家「…許さないっ…」ギリッ

ファフニール『ほう?面白い眼をしてる…。あの時よりは愉しめそう、かな?』


竜騎士「ダメ…だ。女武道家…」

女武道家「竜騎士さん、私は…貴方と運命を一緒にできれば、本望です…!」

竜騎士「な、なさけねえ…な…俺…」ゴホッ

女武道家「…今は、私が貴方を守ります!」

竜騎士「…」

 
ファフニール『まぁ座談もいいが、君たちは竜騎士を助けに来たんだろう?』

女武道家「…そうですよ」

ファフニール『なら我は少し離れよう。さ、鎖をはずしてあげたまえ』

トコトコ…ストンッ


青空騎士「イスに座って…余裕を見せてるつもりですか?」

ファフニール『なぁに、これも余興と思えば。さ、外してやりたまえ』


…ダッ!!

女武道家「竜騎士さんっ!」

青空騎士「…今、鎖を外します…」

竜騎士「すまん…な」

チャリッ…カチャカチャ…

 
女武道家「…」ギュウッ

竜騎士「…女武道家」

女武道家「良かった…竜騎士さんだ…竜騎士さんの…温かさだ…」グスッ

竜騎士「はは…鼻声じゃないか…。また、泣いてるのか…?」

女武道家「…そ、そんな事はありませんよっ!」

竜騎士「はは…ごほっ、ごほごほ!」


女武道家「ファフニールさん、私は貴方を絶対に…許さないから…!」

竜騎士「ま…待て…お前じゃ…本当にやられ…」

 
青空騎士「竜騎士さん、大丈夫です。女武道家さんは、ドライアドの力を得てます」カチャカチャ

竜騎士「…ドライアド、の…?」

青空騎士「彼女の生命の実を食べたんです。今、鎖をはずしますね」カチャッ…

竜騎士「生命の実…か…」

カチャカチャッ…ガチャンッ!!ドサッ…

竜騎士「ぐっ…!」


青空騎士「コレを食べてください。気付け薬と、麻痺薬です。一時的にですが痛みを緩くします…」

竜騎士「すまん…」モグッ

モグモグ…ゴクンッ…


竜騎士「ぷはぁ…はぁ、はぁ…」ゼェゼェ

  
ファフニール『…』ジリッ

女武道家「…」ジリッ

青空騎士「…」


女武道家「結局、本当に傍観しているだけですか…?」

ファフニール『愉しみというのは、不利な状況から逆転する事だよ。こうして3対1になったわけだ』

女武道家「…」

ファフニール『だがまぁ、いくら踏ん張ったところで…我が不利になることは有り得ないがね!』ポウッ

女武道家「指先に赤い光…?魔法…?」


ファフニール『少し…避けたほうがいいと忠告しておくぞ』ビュンッ!!

…ゴォォォォォッ…ドゴォォォォンッ!!!!!グラグラクラ…

女武道家「!!」

青空騎士「うあぁっ!あ…危ない…!!後方が全て吹き飛んだ…!」

竜騎士「くっ…!」

 
ミシ…ミシミシミシ…

女武道家「な、何て威力…!」

青空騎士「あの小さな火球が…、まるで極火炎クラスか…!」

女武道家「や、やりますね…!」


ファフニール『何、少しの力だぞ?それに今宵は月が美しい夜…素晴らしいディナーなんかいかがかな?』

女武道家「…出来れば、ご遠慮願いたいですね…!」スチャッ

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
ファフニール『まずはこれでどうかな?』ポッ

ドゴォォォンッ!!!ゴォォォ…!!


女武道家「…っ!」

竜騎士「熱い…な、くっそ…!体が思うように動かない…!」ヨロヨロ

青空騎士「…随分荒っぽい輩ですね!」


ファフニール『…ははは、そうやって逃げる姿は滑稽だな!』

 
青空騎士「自分で家を壊して、人型になってる意味もありませんね…!」

ファフニール『…ふむ、そうか。では、外で遊んでもらおうか。外へ行こうではないか』クイッ


青空騎士「…こんな遊び、ゴメンですけどね。遊びだの外だの、自我が定まっていないのか…?」

竜騎士「何を考えてるか…さっぱりだ…。子供がそのまま力を得たような奴なんだ…」

女武道家「…子供のままの大人、ってことですか…」


ファフニール『何をしている?早く来い…貴様ら全て…燃やすぞ?』

青空騎士「それじゃ屋敷がなくなりますよ?」

ファフニール『おっと…そうだったな。早く外へ出よう。今日の月は本当にキレイだ』スッ

女武道家「…」

 
青空騎士「行きましょう、竜騎士さん、女武道家さん」

女武道家「そう、ですね」

竜騎士「あぁ…」

 
トコ…トコトコ…
 
竜騎士「うあっ…」ヨロッ

…ガシッ!!

女武道家「…つかまってください竜騎士さん」

青空騎士「左肩は僕に」

竜騎士「…すまん」

女武道家「気にしないで下さい」


竜騎士(失った左足…。俺はもう、軍人としてやっていけないかもしれんな…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パァァッ…

ファフニール『本当に素晴らしい夜だな。美しい夜空だ…』


青空騎士「あれ…鐘の音が止んでる…?」

女武道家「突風も…止んでます」

竜騎士「聴こえるのはわずかな水のせせらぎだけ…か」

 
ファフニール『もうじき、0時を回る。風は止み、鐘の響きは暗闇の前に静寂となる』

女武道家「…?」

竜騎士「…」

女武道家「それは…一体どういう事ですか?」

青空騎士「…?」


ファフニール『まぁ…気にするな。今はそれよりも遊ぶんだろう…?』

女武道家「本態にはならなくていいんですか?」スチャッ

ファフニール『今はまだ力は抑えてやろう。これは"愉しむ遊び"だといっただろう?』

  
女武道家「それは…ありがたいですね…」

ファフニール『…まずは軽く」ビュンッ

女武道家「…右っ!」

ボォンッ!!


ファフニール『ほう…ではコレはどうだ?』ビュンッ

女武道家「見えますよ!」

ボォンッ!!

女武道家「…その程度なら、避けることは簡単ですよ」

ファフニール『…ほう』

 
竜騎士「ぬ…見えないが…女武道家は大丈夫なのかっ…?」ボヤッ…

青空騎士「結構やれてますよ、上手く避けてます」

竜騎士「…」


ファフニール『なら、その一帯を焼き尽くしてくれる…』ボワッ

女武道家「両手に火球を…!」

ファフニール『はぁっ!』ビュンッ

女武道家「!」

ボッ…ドゴォォォォンッ!!!!……パラパラ…


青空騎士「…!」

竜騎士「今の轟音…無事なのか…!?」

 
…ズザザザ

女武道家「範囲が目に見えてる分、避けるのは余裕です!」

ファフニール『…』


青空騎士「今のを避けたのか…!大丈夫ですよ」

竜騎士「あいつは俺より柔軟性がある…。下手に打ち込むより、守りに徹すればやれるほうだ…」

青空騎士「なら、僕が伝えます、何かアドバイスがあれば!」

竜騎士「…あいつ、人型になっても羽根で飛べる…気をつけろ…と」


青空騎士「わかりました。…女武道家さん!竜騎士さんのアドバイスが…!」

女武道家「聞こえてます。竜騎士さんの声は、ハッキリと」

竜騎士「はは…あいつは耳が良かったんだったな…」

 
ファフニール『一方的な攻撃ではつまらんな。ほら、チャンスをやる…かかってこい』ニタッ

女武道家「…じゃあ、遠慮なく!」ダッ

ダダダダダッ!!

ファフニール『ほう、速いな』


女武道家「掌底波ぁぁっ!」ビュンッ

ファフニール『おっと』ヒュッ

女武道家「…逆足払!」ビュワッ!!

ファフニール『おっ』ヒュッ

女武道家「連撃!小手返!鉄山靠っ!!」ビュビュビュンッ!!


ダァンッ…!!

ファフニール『!』ズザザザ…


青空騎士「最後の一撃が当たった!」

 
ファフニール『威力は低いが、いい連弾だな』

女武道家「…」

ファフニール『近づかれたら不利…体術相手は面倒だ。なら、要望にお答えして…』

ビキビキッ…バサッ…バサッバサッ…


女武道家「半分の擬態を解いたんですか…!?高い!」

ファフニール『この位置からなら、どうだ…?』ポウッ


青空騎士「空から火球を放つつもりですか!」

ファフニール『…はぁっ!』ビュンッ


女武道家「そんなもの…気攻波ぁっ!」ビュンッ

…ドゴォォォンンッ!!!パラパラパラ…

 
青空騎士「空中で相殺した!」

竜騎士「…そうだ。落ち着いて…いけ」


女武道家「…空にいるなら、私の気攻波で落とすだけですよ!」

ファフニール『…これはこれは。中々どうして…』


青空騎士「思った以上に女武道家さん自身の実力が高い…!」

竜騎士「当たり前だ…。誰と一緒に旅をしてきたと思ってるんだ…?」ゴホッ

青空騎士「…少し、羨ましいですね」

竜騎士「ただまぁ…ドジが過ぎることでアイツの良さは全部ダメになってたんだけど…な」ハハ

 
ファフニール『…なら』ビキビキッ…

ズズゥン…

ファフニール『フゥゥ…』

女武道家「…擬態を解きましたか」


青空騎士「で、でっか…!!あれがファフニールの本態…!?」

竜騎士「今の音…本態に戻ったのか…!」


女武道家「やっと本気ですか?」

ファフニール『いやぁ、本気を出せばこの町全体がなくなってしまうからな』

女武道家「…」

ファフニール『何、この前くらいの"軽い炎"だ』スゥゥゥ

女武道家「やらせません!気攻波ぁぁっ!」ビュンッ

 
…ボォンッ!!!

ファフニール『効かぬなぁ…?我の炎を止めるのではなかったのか?』スゥゥゥ

女武道家「…気攻波連弾っ!!」ビュビュビュッ
 
ボボボボォンッ!!!

ファフニール『ハッハッハッハ、軽い軽い!』スゥゥ

女武道家「…くっ!敏捷化っ!」パァッ


ファフニール『カァァッ!!!』ボワッ!!!

ゴッ…ゴォォォォォォォッ…!!!!

 
青空騎士「うああっ!」

竜騎士「くっ…ブレスか…!」

…ゴォォ…ォォ…

竜騎士「ど、どうなった…?」

青空騎士「ブレスの炎で良く見えな…、あっ…あれ!?」

竜騎士「どうした…?」

 
青空騎士「女武道家さんが消えた!?」

竜騎士「…気配はある。どこかにいるはずだ…」

青空騎士「しかし、どこにも…」キョロキョロ

竜騎士「う、上じゃないか…?」


青空騎士「!」ハッ

ヒュウウッ…

女武道家「地面が火の海なら、私も高い空から!」

青空騎士「いました!た、高い!」

 
女武道家「と…あ、あれっ!?…ファフニールさんが消えた!?」  
 
青空騎士「え?…ファフニールもいないっ!」


女武道家「ど、どこに…!」キョロキョロ


シュッ…

ファフニール『後ろに注意だ』ニタッ

女武道家「…!」ゾワッ

ファフニール『ふははっ、反応が遅いぞ』


女武道家「き、気攻…っ!」

ファフニール『攻撃も遅いな』ビュッ!!

…バキィッ!!!

 
ヒュウゥゥッ…ドゴォンッ!!

女武道家「…っつ…!ご、ごほっ…」

ファフニール『いい判断だったようだが、背を見せるようではなぁ』

バサッバサッ…スタッ…


女武道家「…くっ!」バッ

ファフニール『おっと、立たせるか』ビュッ

バキィッ!!…バキバキィッ…!!
 
女武道家「かはっ…!」


竜騎士「ど、どうなってる…!?」

青空騎士「女武道家さんが、ファフニールの足に踏まれて…!」

竜騎士「なっ…」

 
ファフニール『痛いか?ハハハッ!』グググッ

ミシッ…ミシミシッ…

女武道家「…っ!あぁぁぁっ…!」 

ファフニール『ふははっ!』


竜騎士「お、俺の事はいい…、女武道家に支援してやってくれ…!」

青空騎士「わかりましたっ!」ダッ


ヨロヨロ…ドシャアッ…

竜騎士「ぬあっ…な、情けない…、一人じゃ立ても出来ないのか…」

  
ダダダダダッ…!!!

青空騎士「ああああっ!大突っ!!」ビュッ

ファフニール『ぬっ?』

…カキィンッ!!

青空騎士「な、何て皮膚だ…」


ファフニール『貴様程度の2流の槍が我の体を通すと思うか?』

青空騎士「やってみなくちゃ分からないでしょう?」

ファフニール『やってみるがいいさ』

青空騎士「大突連弾っ!」ビュビュビュッ

カカカカキィィンッ…!!

 
ファフニール『ぬははは!かゆさすらないわ!』

青空騎士「じゃ、弱点はないのか…!」


ファフニール『ふむ…だがまぁ、下等な存在とはいえ…攻撃を許すのはいささかイラつくところだな』

青空騎士「何っ?」

ファフニール『カァッ!!』ブンッ

青空騎士「!」

バキィッ!!!…ズザザザ…ドシャアッ…


青空騎士「し…尻尾か…!危なかった…」ハァハァ

ファフニール『ほう!上手く防いだな!』

 
青空騎士「だけど…」チラッ

ファフニール『む?』


女武道家「う…くっ…」ヨロヨロ

青空騎士「女武道家さんを逃がせた…」

ファフニール『…手負いが何を言うか。全てを我の炎で焼き尽くす』スゥゥ

女武道家「…っ」


青空騎士「まずいっ!」ダッ

ファフニール『少しの時間だったが、まぁ…楽しかったぞ』スゥゥゥ

 
ダダダダダッ…!!!

青空騎士「くっ!だ、ダメだ!女武道家さん…ま、間に合わない!」

女武道家「…うっ」ヨロヨロ


ファフニール『カッ…』

ヒュウウウッ…ボォンッ!!!

ファフニール『…うぬっ!?何だ?』


青空騎士「…今のは…!り、竜騎士さん!?」ハッ


竜騎士「足が使えなくても、目が見えなくても…歴戦の戦士だぜ俺は…?」

ファフニール『…衝撃弾か!その距離から当てるとはな…!』

  
青空騎士「女武道家さん!肩!」ガシッ

女武道家「うっ…はぁ、はぁ…。まずっちゃいましたね…」

青空騎士「竜騎士さんが援護してくれたお陰です。竜騎士さん!女武道家さん、無事です!」


竜騎士「…そ、そうか。よかった…そのまま逃げろ…!」

女武道家「えっ…」

竜騎士「生き延びろ…!」

女武道家「い、嫌です…!私も戦って…一緒に…!」


竜騎士「…バカいうなっ!!!」

…ビリビリビリッ…

  
女武道家「…!」

青空騎士「な、何て声…」

ファフニール『ほう、そんなズタボロでよくそんな声が』


竜騎士「お前が生きてくれる事で、俺の救いだ。こんなナリで、もう俺の軍人としての命は終わったんだ…!」

女武道家「…で、でも…」

竜騎士「…でもじゃないっ!」

女武道家「…」ビクッ!


竜騎士「でもまぁ…また会えて、嬉しかったぜ」ニカッ

女武道家「竜騎士さ…」


竜騎士「ムダ話し悪かったな、ファフニール。お前の耳には少しうるさいだろう?この衝撃弾はよ」

ファフニール『ふははは!愉しませてくれる!』

 
竜騎士(あとわずか…少ししか持ってきてないが、あくまでも釣ることは出来る…はず!)

ファフニール『なんだ…少しだけ、か』ハァ

竜騎士「!」ハッ

ファフニール『己の醜さに、我が考えを読む事が出来るのを忘れていたのか?』

竜騎士「…ちっ」


ファフニール『まぁ、あえて貴様を狙ってやろう』ニタッ

竜騎士「…」

ファフニール『その後、あの世からジックリと眺めているがいい。あの2人の無残な最期をな…!』

 
竜騎士「お…おらあぁぁぁっ!」ビュンッ

…ボォンッ!!

ファフニール『…ははっ!効かぬぞ!?』

ズシン…ズシンズシンズシンズシンッ…!!


女武道家「やだ…嫌ぁぁっ!」ダッ

青空騎士「ダメです!」ガシッ

女武道家「離してぇぇっ!!」

青空騎士「ダメです!!彼の思いを無下にしてしまう…今は逃げるんです!」

女武道家「…あぁぁぁっ!!」

…ドクン…ドクン…

 
竜騎士「さっさと行けぇぇぇ!」

ファフニール『特別待遇だ。我が爪にて、血飛沫の中で死ぬがいい!』

ズシンズシンズシンッ…!!!


竜騎士「そうかよ…ははっ!」

ファフニール『いい笑顔だ!』スッ…


ドクン…ドクン…ドクン…

女武道家「嫌ぁぁぁぁっ!竜騎士さぁぁぁんっ!!」

青空騎士「…っ!」

ファフニール『死ねぇぇっ!』ビュッ

竜騎士「っ!』

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
ドクン…ドクン…


ドクン…ドクン…ドクッ…ドクッ…


ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッドクッドクッドクッ……!!

 
………ドクンッ!!!!


女武道家「あぁぁぁぁっ!!」ビュッ…!!!

青空騎士「…えっ?」


ギュンギュンギュンッ…!!!!バキィンッ!!!

ファフニール『ぬおっ!?』ヨロッ

竜騎士「!?」

 
女武道家「はぁ…はぁ…!」

ウネ…ウネウネ…

青空騎士「な、何か地面から…ツタ!?いや…枝!?」


ファフニール『何だ…今のは…!』


竜騎士「まさか今のは…ど、ドライアドの枝!?…女武道家!」ハッ

女武道家「…竜騎士さんを、守るっ…!」

  
竜騎士「…こ、これは…」

青空騎士「…一体」

ファフニール『何だというんだ…!』


女武道家「…」ギリッ

ファフニール『女武道家ぁ…その鞭、枝、どうやって出した…!』

女武道家「お願いします、ドライアドさん!つかまえてください」ヒュッ

ギュンギュンッ!!…ガシッ!!!


ファフニール『…ぬッ!ドライアドだと!?』

 
竜騎士「まさか…」

女武道家「私の中に、ドライアドさんが…いる…!」

竜騎士「や、やはり…!女武道家が食べたのは…ドライアドの移し実だったか!」


ドライアド"『…』"ドクンドクン


女武道家「…力が溢れてくる…!」

竜騎士「…」


ザッザッザ…ガシッ

青空騎士「竜騎士さん、手を」

竜騎士「あ、あぁ…わざわざ来てくれたのか…」

 
青空騎士「もうあの様子じゃ僕はいりませんよ。…一体何がどうなってるんですか?」

竜騎士「恐らく女武道家が食べたのはドライアドの移し身だ」

青空騎士「宿り木…ってことですか」

竜騎士「女武道家は魔力酔いの薬も飲んでいた。その効力が切れて…ようやく体内でドライアドが目覚めたんだ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドライアド"『すぐに効力は現れない。望む時に力が発揮されると思うよ』"
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

青空騎士「…なるほど。道理で力が得るまで時間がかかると言ってたはずだ…」


竜騎士「最も、ドライアド自身だけじゃなく…女武道家の身体をも持ったドライアドだ。強いぞ…」

青空騎士「…っ」ゴクッ

 
ファフニール『ぬ、ぬぐぐっ…』ギリギリ

女武道家「覚悟してください。私は貴方を絶対に許しません…」ギロッ

ファフニール『死にぞこないのドライアド如き…、燃やしてくれる!』スゥゥ

女武道家「やらせない!」ビュッ

…バキィッ!!


ファフニール『…ぬぐっ!』


女武道家"「貴方の動きは、燃やされた私がよーくわかってるから」"
ドライアド"『貴方の動きは、燃やされた私がよーくわかってるから』"


ファフニール『…!』

 
女武道家「…竜騎士さんを、ドライアドさんを…よくも…」ゴゴゴッ

ファフニール『面倒だ!我がツメで切り裂き―…』

女武道家「はっ!」ビュッ

…ドシュドシュッ…!


ファフニール『が…がぁぁぁぁっ!!!』

ポタ…ポタポタ…


竜騎士「…どうした!?今の悲鳴は…!」

青空騎士「め、目です!両目に枝を!」

 
ファフニール『お、おのれ…おのれ!!!」スゥゥゥ

女武道家「また炎を吐くの?その瞬間が貴方の終わりだって分かる?」

ファフニール『…何だと!やれるものならやってみるがいいっ!!」スゥゥゥゥ


女武道家「…!?」ビキビキッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家(ま、待ってください…ドライアドさん!何をするつもりですか!)

ドライアド(女武道家…私を受け入れてくれて有難う。本当に嬉しかった)

女武道家(このままでも勝てます!変な事は必要ないんですよ!)

ドライアド(ううん。ファフニールは強力な相手…油断はナシ)

女武道家(で、でも…このまま私の中にいれば…、いつかまた自分の体を…!)

ドライアド(所詮移し身。長くは持たないから…。それより、"友達"を守らせて)

女武道家(…ドライアドさんっ!!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
ファフニール『行くぞ…』ピタッ

竜騎士「くっ…!」

青空騎士「女武道家さん…!」


ファフニール『ガッッ…!!!』ガバッ

女武道家「はぁっ!!」ヒュンッ

………パクッ…


ファフニール『むぐっ!?』

女武道家「あ…」


竜騎士「な…何だ!?ブレスが止まった…のか?」

青空騎士「今、何か女武道家さんから飛び出して…」

 
ファフニール『な…何か…何だ…!?今、何をしたぁ!』

ドライアド"『…ファフニール、覚えといて?』"

ファフニール『ドライアドの声…!?ど、どこだ!』

ドライアド"『守ろうとする何かがあるってことは、何よりも強いんだってことをね』"

ファフニール『き、貴様、まさか!!』


女武道家「…」

竜騎士「ま、まさか…」

青空騎士「移り実、自分自身をファフニールの体内に!?」

 
ドライアド"『貴方の体の中に眠る魔力の核、炎の根源…私と一緒に…爆ぜさせる!』"

ファフニール『よ…よせ!!」

ドライアド"『竜騎士、女武道家…また、会おうね』"


女武道家「…はい」

竜騎士「もちろんだ。お前のいた場所に…2つの花、置きに行くぜ」ビシッ

ドライアド"『…』"クスッ

 
ファフニール『よ、よせええぇぇっ!』ビキビキッ

ドライアド"『はぁぁぁぁっ!!!』"

ビキビキビキッ…!!!パァァァッ…!!!


ファフニール『ぬ、ぬああぁぁぁっ!!』

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】


ズズゥン…グラグラグラ…!!!!

支部長「…な、なんだ!」

グラグラグラグラ…!!

支部長「地震…!?」


…ガチャッ!

軍人「失礼します!」

支部長「この揺れは何ですか!?」

 
軍人「計測不能な揺れが、空中都市全体に及んでいる模様!」

支部長「揺れの観測点は!?」

軍人「…そ、それが…」

支部長「どこですか!」


軍人「サードエリア…です」

支部長「!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【サードエリア・聖堂前】


ゴォォォ…パチ…パチパチ…

竜騎士「…!」

女武道家「…」

青空騎士「や…やった…」


ファフニール『…ぬぐ…が…』ブルブル

竜騎士「…お前の負けだ、ファフニール」

 
ファフニール『…そ、んなわけ…ある…か…!』


竜騎士「青空騎士、女武道家…最期の仕事だ」

青空騎士「…」コクン

女武道家「…」コクン

…スチャッ

ファフニール『よ…せ…やめ…』


青空騎士「この手で、自分の尊敬する人を殺そうとした相手を倒せる喜びはありませんよ」

女武道家「竜騎士さん、ドライアドさんの敵…今こそです」

 
タッ…タタタタタタッ!!

女武道家「…あぁぁっ!」

青空騎士「うあああっ!」


ザシュッ…ザシュザシュザシュッ…!!!バキッ…

ファフニール『…く…そが…』グラッ

…ズズゥン…

 
青空騎士「…や、やった…」

女武道家「か…勝った…!」

竜騎士「…よく、やってくれた」


女武道家「勝った!!勝ったぁぁぁ!」

竜騎士「はは…喜びすぎだ」


女武道家「竜騎士さんっ!」ダッ

竜騎士「おっ」

タッタッタッタッタ…ダキッ!!ギュウッ…

女武道家「やった、やりました!勝ちました!!」

竜騎士「…おう」

 
女武道家「…」

竜騎士「…よく、頑張ったな」

女武道家「で、でも…私は、友達を犠牲にして…。素直に喜んで…いいのかって…」ブルッ

竜騎士「また泣くのか?ドライアドが哀しむぜ?」

女武道家「許してくださいよ…このくらい…」グスッ

竜騎士「…そうだな」


青空騎士「しかし…本当によく勝てましたね。結果としては、上等魔物同士の対決でしたが…」

竜騎士「俺の人生の中で、最強の相手だったよ」

青空騎士「僕もですよ」

女武道家「私もです」

 
竜騎士「…一人の犠牲はあった。だが、お前らが生き残って…良かったよ」

女武道家「…竜騎士さんが生きててくれて、本当に私も嬉しいです」

竜騎士「あぁ…。正直、助けにきてくれて嬉しかったぜ…ありがとな」ポンッ

女武道家「…はいっ♪」


…ズキッ!!

竜騎士「ぐっ!」

女武道家「竜騎士さん?」

竜騎士「何…足が痛むだけだ…ちぃと動きすぎて、痛み止めが切れたか」

女武道家「そうだ…左足…」

 
竜騎士「何、今の軍の技術ならなくなった足くらい幾らでも復活できるんだぜ?」

女武道家「えっ!」

竜騎士「はは、だから俺は何も心配もしてないだろ?」

女武道家「確かに…そうですねっ」

竜騎士「だがまぁ、今は少しばかし肩を貸してくれ。歩けないしな」ハハハ

女武道家「勿論です♪」


青空騎士(…ウソだ。時間がたちすぎてる。最悪…義足。それに顔色がひどい…!)

竜騎士「ははは…」

青空騎士(素人目にも分かる。あきらかに血を流し過ぎた顔色…、まずい…これは…)


竜騎士「さぁ、支部に戻るか!」

 
青空騎士「…ちょっと待って下さい、その前に」

女武道家「どうしたんですか?」

青空騎士「そろそろ魔力の抑制剤が切れる時間ですが、大丈夫ですか?」

女武道家「え?あ…そうでした、バックに入ってるし…飲みますね」ゴソゴソ

青空騎士「水は確か向こう側に流れているのが飲めるはずです」

女武道家「あ、そうでしたね。飲んできますっ」

タタタタッ…

 
青空騎士「これならいいですね。…竜騎士さん、ちょっとお話が」

竜騎士「…分かってるよ」

青空騎士「このままでは、あなたは帰るまでに…もたない…!」

竜騎士「…言うな」


青空騎士「な、何か体調を整えるものが入っていないか、バッグを見てみますね!」

竜騎士「いや…もういいんだ」

 
青空騎士「で、ですが…!」

竜騎士「止血剤があったとしても、俺はもう血を流しすぎた…無理だ」

青空騎士「諦めては…ダメです。何か方法があるはずだ…!」

竜騎士「…俺がこうしてしゃべってる事ですら…もう限界なんだ…」

青空騎士「…っ」


竜騎士「…なぁ」

青空騎士「はいっ…」

竜騎士「あいつに肩を借りて、死にたくはない。俺を背負っていってくれないか…?」

青空騎士「…」

 
竜騎士「…頼む。お前の背を借りるってのも…本当に悪い話だがな…」

青空騎士「竜騎士さん」

竜騎士「なんだ?」

青空騎士「生きてください…!支部に戻れば、手術は出来る。助かるんです…!」

竜騎士「…無茶、いうやつだな」ハハッ

青空騎士「そんな、無茶だなんて…」


竜騎士「あ、そうそう…それよりファフニールの爪を根元から斬って運んでくれるか?」

青空騎士「爪ですか?」

竜騎士「一級品だ。お前と女武道家で分ければ、相当な資産になる」

青空騎士「竜騎士さんの分もありますよ」

 
竜騎士「俺はいい。女武道家には資産を残したい。俺がいなくなったらアイツを戦場に出したくないんだ…」

青空騎士「…わかりました。採ってきますね…」
 
タッタッタッタ…


竜騎士「…おっ」

タタタタタッ…
 
女武道家「…飲んできました!何か青空騎士さんと話しをしてましたね?」

竜騎士「おう、お帰り。いや、これから無事に戻れるかなーってさ」ハハ

女武道家「戻れますよ!当たり前です」


竜騎士「お、青空騎士…早いな」

タッタッタッタ…

青空騎士「固すぎて片方しか無理でした。あとは支部長にお願いして、換算して出してもらいますよ」ドサッ

竜騎士「そうか…だがまぁ、しっかりとした証拠にはなるか」

 
女武道家「そしたら、普通にこれから戻るんですか?」

青空騎士「サードはファフニール、セカンドの湿地帯はドライアド。そこまでは他の種族は少ないでしょう」

竜騎士「問題はセカンドの中盤だな。まぁ幸い夜だ…大丈夫だろう」ニカッ

青空騎士「ですね!では、急いで出発しましょうか!」


女武道家「竜騎士さん…肩、貸しますよ」

竜騎士「あ、いやそれは」

女武道家「貸します。いえ、おんぶします!」

竜騎士「…無理だろ」


女武道家「…えいっ!」グイッ

竜騎士「うおっ」

 
女武道家「…えへへ、軽いですよ!」

竜騎士「…」

青空騎士「…」


女武道家「じゃ、出発しましょう!ファフニールは後日回収ですね~」

竜騎士「そう…だな」

青空騎士「じゃあ…行きましょう…」

 
女武道家「…爪や資産はいりません。だから…生きてください…」ボソッ

青空騎士「えっ?」

女武道家「い、いえ!出発です!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【セカンドエリア・湿地帯】

ホウ…ホウ…

ザッ…ザッ…ザッ…サッ゙…


竜騎士「…」ハァハァ


女武道家「…竜騎士さん、私に介護してもらって…いつもと何か逆ですね」

竜騎士「はは、そうだな」

女武道家「いつも助けてもらってばっかり…ありがとうございます」

竜騎士「ちっとは進歩しろっ!」コツン

女武道家「あうっ…」

 
ザッザッザ…
 
青空騎士「…」

女武道家「私の町に来た時、覚えてますか?」

竜騎士「忘れるものか…。あの時から俺の人生は狂い始めた」

女武道家「ひ、ひどい!」ガーン


竜騎士「冗談だよ、この野郎っ」ギュウッ

女武道家「…えへへ」

竜騎士「…楽しかったな。みんな、いい人ばっかだった」

女武道家「私の住む町ですもん。当たり前ですよ!」


竜騎士「…そこからお前との冒険は始まったんだよ…な」

女武道家「色々行きましたよね」

 
竜騎士「雪山に…海…、世界を走ったな…」ハァハァ

女武道家「いつも私は迷惑をかけてばかりで」

竜騎士「ははっ、それも楽しかったさ…げほっ!」

…ビチャッ

竜騎士「…すまん」


女武道家「いえ、気にしないで下さい!それより、サバイバルしたこともありましたよね」

竜騎士「あの時もお前が大変…だった…なぁ」ハァハァ

女武道家「…アウルベアさん、懐かしいですね」


青空騎士(まずい…急激に体力が落ち始めてる…!)

 
竜騎士「そう、そ…う…。お前…の、感知の能力…なぁ」

女武道家「でも、そういう体験…竜騎士さんのお陰で、私は強くなれました!」

竜騎士「そう…だ…な」


女武道家「今回も迷惑かけてばっかりで、私っていつまでドジなんでしょうね!」

竜騎士「…は、はは…」

女武道家「これからも、楽しい事とか待ってるんでしょうねっ!」

竜騎士「…う…だ…な…」


青空騎士(竜騎士さんの声が…かすれていく…ダメだ…!気を保ってください…!)

 
女武道家「この深い夜も、いつか朝が来るんです!」

竜騎士「おう…」

女武道家「そしたら…どんな明日が待ってるんだろうって考えると、ワクワクしますよね!」

竜騎士「ん…」

女武道家「あっ、そうだ…竜騎士さん!私、あの返事聞いてませんよぉ…?」

竜騎士「…」

女武道家「…一緒に、これからもずっと旅をするんです。楽しく、笑いあって…!」

竜騎士「…」

女武道家「またドジをしたり、バカをしたら叱って下さいね?私、甘えちゃうんで」

竜騎士「…」

 
女武道家「…急に黙ってどうしたんですか!」

竜騎士「…」

女武道家「明日から、聖堂の謎を解くんですよ?それなのに、そんな元気なくてどうするんですかっ!?」

竜騎士「…」

女武道家「この大きな爪も、私と竜騎士さん、青空騎士さんの賜物ですっ。支部長に褒められますよ!」

竜騎士「…」

女武道家「それとも、やっぱり私の声って大きくて煩いですか?でも、竜騎士さんも怒る時、怖いじゃないですか!」

竜騎士「…」

 
女武道家「…竜騎士さん!それで、それで…!」

竜騎士「…」

…ギュウッ!

女武道家「…えっ…竜騎士さん?」

 
竜騎士「…」ボソッ

女武道家「えっ…?」


竜騎士「…」ボソッ…ボソボソッ…

女武道家「!!」

竜騎士「…」ニカッ

  
女武道家「…竜騎士さん!そ、それって…!」

竜騎士「…」

…ガクッ


女武道家「あっ…!!」

青空騎士「…っ」

 
女武道家「…竜騎士、さん?」

竜騎士「…」ダランッ…

女武道家「…寝ちゃったんですか?」

竜騎士「…」


女武道家「やだなぁ…もうすぐ支部ですよ?」

竜騎士「…」

女武道家「私がしっかり部屋まで届けますからね!つかまっててくださいよ!」

竜騎士「…」
 
女武道家「…だから、だから…まだ、もう少し…このまま…私の背中で寝ていてくださいね…」ブルッ

竜騎士「…」

 
女武道家「…寝て…いて、下さいね…」ブルブル

青空騎士「女武道家さん、り…竜騎士さんは…。一度、ここで腰を下ろして…」

女武道家「…いいんです。このまま、真っ直ぐ…帰るんです。歩くんです…」

ザッザッザッザ…
 
 
青空騎士「…」

女武道家「だ、だって…、前を向いて歩いてれば…いつか幸せはやってくるんです…!」

青空騎士「…」

女武道家「ですよね…竜騎士さん…」グ…グスッ…

 
青空騎士「…女武道家さん」

女武道家「…笑わないと、竜騎士さんにまた怒られちゃいますから…えへへ…」ポロポロ

ザッザッザッザ…コケッ…

女武道家「!」

…ドシャッ…ゴロンッ…

竜騎士「…」


女武道家「あ…あう…」

竜騎士「…」

女武道家「り…竜騎士さ…。うぇ…うぅ…ひぐっ…」

 
青空騎士「…涙を流しても、竜騎士さんは許してくれると思いますよ…」

女武道家「そ、そんなこと…」ハッ

竜騎士「…」


女武道家「で、でも…顔を見ると…うっ…あう…」ヒグッ

青空騎士「…」 
 
女武道家「竜騎士さん…竜騎士さぁぁん…!!!」ポロポロ

青空騎士「…」

女武道家「うぁぁぁん…うわぁぁん…っ!」


青空騎士(竜騎士さん、貴方は大事な人を一人にして…本当に良かったんですか…)

女武道家「ひぐぅ…あうぅぅ…」グスッ…

青空騎士(まだ、彼女はこんなにか弱い…。貴方がもっと傍にいてあげるべきだった…!)


…ポタッ

青空騎士「…ん?」


ポタッ…ポタポタポタッ…ザァァァァァッ…!!!


青空騎士「うわっ!?」

女武道家「あ…雨…」

青空騎士「そんな…バカな…。雲より高い場所で…雨だなんて…」

女武道家「…」

青空騎士「…」

 
女武道家「青空騎士さん…」

青空騎士「…はい」

女武道家「わ…私は、竜騎士さんの為に何か出来たと思います…か…?」

青空騎士「貴方と一緒にいれた時間は本当に幸せだったと思います。見てください、彼の笑顔を…」

女武道家「…」


ザァァァ…

青空騎士「それにしても…不思議な雨ですね。冷たいはずなのに、まるで温かさを感じる」

女武道家「きっと…ドライアドさんの涙です。ドライアドさんも…泣いているんです…」

青空騎士「…」

女武道家「…」


青空騎士「女武道家さん。哀しむ事も大事だが、竜騎士さんの言葉を思い出して…前へ、進みましょう」

 
女武道家「わかって…ます」バッ

青空騎士「…」

女武道家「出発…します。竜騎士さん、もう少し私の背中にいてくださいね」ギュッ…

竜騎士「…」


…ガサッ

青空騎士「…待って下さい。今、何か物音が…!」ハッ

女武道家「えっ?」

 
…パァァッ!!

女武道家「!」

青空騎士「なっ、明かり…!?まさか、敵!」スチャッ

女武道家「て、敵ですか…!」


ザッザッザッザ…ザッザッザッザ…

青空騎士「多数の足音…!」

女武道家「…」ゴクッ


ガサガサッ…ピタッ

青空騎士「…って、あっ!?」

女武道家「!」

 
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【12月13日終了時点】
 
■所持品
・購買 酔い止めの薬
・購買 粉ミルク
(バックパック)

その他消耗品は現場に一時破棄

■発掘品
・黒曜石の彫刻
・黒曜石の皿
・蝶の文様入りの銀細工
・ファフニールの爪

■探索距離
・サードエリア、聖堂前

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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――――【 12月14日 】

…パチッ

女武道家「!」ガバッ

女武道家「…」

女武道家「あれ?私…ここ…どこ?ベッド…」


…コンコン

女武道家「はい」

 
青空騎士「失礼します」ガチャッ

女武道家「あ…青空騎士さん。おはようございます…ここは…」

青空騎士「医務室です。よく眠れましたか?」

女武道家「あ、はい…。そ、それより昨日…!私どうしてここに…」


青空騎士「あぁ…覚えてないんですね」

女武道家「すみません…」

青空騎士「湿地帯を抜けるところで、他の何かの足音が聞こえたのは覚えてますか?」

女武道家「そして武器を構えて、明かりが見えたんですよね」

青空騎士「はい」

女武道家「で、何か出てきて…そこで私…記憶が…」

  
青空騎士「…あの光は、僕たちの支部の軍人たちだったんですよ」

女武道家「そうだったんですか」

青空騎士「ドライアドが犠牲になった爆発で、この遺跡全体に大規模な揺れが生じたらしいんです」

女武道家「…」

青空騎士「それを調査する部隊を緊急的に組んだパーティが僕らと出会ったわけです。幸運でした」

女武道家「…そうだったんですね」

青空騎士「その後、すぐに女武道家さんも倒れてしまって。支部に運んで、医務室で寝てたんです

女武道家「わざわざ、ありがとうございました」


青空騎士「…」

女武道家「あの、聞きたいことが」

青空騎士「彼なら、もうここにはいません」

女武道家「えっ…?」

 
青空騎士「彼の体は、既に今朝早く下に送られました」

女武道家「そう…ですか…」

青空騎士「…それに関して、支部長がお話があるそうですよ」

女武道家「支部長がですか?」


青空騎士「今、呼んで来ますね」

女武道家「あ、はい…」

タッタッタッタ…
 

女武道家「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コンコン…ガチャッ

支部長「どうも、おはようございます。体調はどうですか?」

女武道家「…いい感じです。お話があると聞きました」

支部長「…青空騎士くん、一回外してもらえるかな」

青空騎士「では、失礼します」

ガチャッ…バタンッ


支部長「…さて」

 
女武道家「はい」

支部長「竜騎士さんの事は聞きました。そして、彼を…見させてもらいました」

女武道家「…」

支部長「残念です…本当に」

女武道家「…」


支部長「もうすぐ、あと一歩でこの謎を解けるところまで来てたというのに…」

女武道家「…」

支部長「人類のかけがえのない宝を失った気分です…。貴方の悲しみはそれ以上のものでしょうが…」

女武道家「…」

 
支部長「あ…こんな話で申し訳ない」アセッ

女武道家「い、いえいえ!気にしないで下さい!」


支部長「それで、竜騎士さんに関してなのですが…下で上官殿に任せることにしました」

女武道家「上官さんですか?」

支部長「彼女が一応、竜騎士さんの直属部下ですしね。あとの事はお願いしました」

女武道家「…なるほどです」


支部長「それと、今回見つけてくれた遺跡の様々なもの…簡単にですがコレになります」

ゴソゴソ…スッ

女武道家「これ…何ですか?」ペラッ

 
支部長「貴方が清算を断った銀細工などを除いて、今回の働き分の報酬の報告書になります」

女武道家「え…」

支部長「黒曜石はまともに値段がつきませんが、ファフニールの肉体、探索距離…その結果です」

女武道家「け…ケタ間違ってるんじゃないですか…?」


支部長「それでもファフニールは青空騎士さんと分けてですよ」

女武道家「こ…こんなに…?」

支部長「何より謎に近づけ、サードエリアまでの血路を開いてくれた事の貢献が大きいです」

女武道家「…」


支部長「…不満なら、まだ色をつけるように"上"にお願いしますよ?」

女武道家「い、いえ!」

  
支部長「下手すれば小国家を買収できる額ですよ」ハハハ

女武道家「そんなに凄い事をしたんですか?私たちは」

支部長「人類最大の謎へ最も近づいた報酬。ファフニールという超上級の素材の価値。充分です」

女武道家「そうですか…」


支部長「あと…非常に申し上げにくいのですが…」

女武道家「…何ですか?」


支部長「竜騎士さんがいなくなった今…残念ですが貴方がここにいる事は許されません」

女武道家「あ…」

支部長「体調を考慮し、あと10日前後は許可が出てますが…」

女武道家「そうですよね。探索許可を得たのは竜騎士さんで、私じゃないですし…」

支部長「…やはり、悔しいですか?」

 
女武道家「正直…。でも竜騎士さんは、私に戦いの場にいて欲しくないといってました」

支部長「…」

女武道家「だけど、私は竜騎士さんの追いかけた夢を、まだ一緒に見ていたかった…です」

支部長「…そうだと思いました」

女武道家「えっ?」


フラフラ…

支部長「…あっ…おっとっと…」

女武道家「え、あ…支部長さん?」

 
支部長「何か眩暈がー…」クラクラ

女武道家「だ、大丈夫ですか!?」

支部長「…」ペラッ


女武道家「あ、何かの紙を落としまし…」

支部長「いやー体調が優れなくて何を落としたか何て分からないなぁ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青空騎士(壁越しに聞こえてるけどわざとらしすぎます!)
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女武道家「…こ、これって!」

支部長「…」ニコッ

 
女武道家「支部長さん、この紙にある、特別探索許可しょ…」

支部長「とりあえず!」

女武道家「は、はいっ!」

支部長「今は、体調の回復。それと下へ一度挨拶に伺うことです」

女武道家「上官さんへの報告…ですね」


支部長「はい。それじゃ、自分は失礼します。また何かあれば」

女武道家「は、はい」

ガチャッ…

支部長「話は終わりました。青空騎士くん、何か話したいことがあれば。それでは自分はこれで」

タッタッタッタッタ…


青空騎士「全く…演技が下手な人だ」ハァ

女武道家「支部長さんが落とした特別探さ…いえ、紙のこと、知ってたんですか?」

 
青空騎士「僕が一応お願いしたんです。また戻ってきたいんでしょう?…竜騎士さんの意には反しますが」

女武道家「ありがとう…ございますっ…!」

青空騎士「とにかく今は支部長の言うとおり、回復に努めてくださいね」

女武道家「…はい」


青空騎士「では、自分もこれで失礼します。あとは追々連絡いたしますので」

女武道家「わかりました」

青空騎士「…では」

ガチャッ…バタンッ…

 
女武道家「そう…今、私には、私の出来ること…ですね」グッ

女武道家「それにしても"特別探索許可証"かぁ…私、またここに戻ってこれるって事ですよね」

女武道家「えへへ…私、認められたのかな?ねっ、竜騎士さん!」

シーン…

女武道家「あ…。」


女武道家「…」

女武道家「…」

女武道家「…こうして部屋に一人で長くいる事…随分久しい気がします」

女武道家「でも…、もう怒られる事もないんですよね…」

女武道家「竜騎士さん…」


グスッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
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――――【 9日後 12月22日 】


ガチャッ…バタンッ…

上官「…戻ったか」


女武道家「空中都市探索の結果報告に参りました」

上官「一応、話は聞いてる」

女武道家「…」

上官「ご苦労だった。聖堂の存在、ファフニールの討伐…君の昇進は間違いないだろう」

 
女武道家「…」

上官「本当にご苦労だった…な」


女武道家「…ごめんなさい」

上官「おや?なぜ謝る?」

女武道家「私のせいです。私が…全部悪いんです…」

上官「はぁ…気にするな」


女武道家「…」ブルッ

上官「…さて、次の仕事に関してだが」

女武道家「…」ブルブル

上官「…どうした?」

 
女武道家「ごめんなさい…ごめんなさい…」ポロポロ

上官「…っ!」


女武道家「本当は我慢しようと思ってました…でも、上官さんの顔を見たら…」グスッ…

上官「やめろ…」

女武道家「ひぐっ…」ポロポロ

上官「やめろ!」

グイッ…ダァンッ!!

女武道家「…ひっ」

 
上官「な…泣けば、私の大事な部下が戻ってくるのか!?」

女武道家「…で、でも…」

上官「でもじゃないっ!!」

女武道家「!」ビクッ

上官「私だって本当は泣きたい…だが、涙を流す暇なんてないんだ…!」

女武道家「上官…さん…」

上官「竜騎士は、自分を犠牲にしてお前を守った。お前がそんなんでどうする…!」


女武道家「…」

上官「前を見て歩け!私はそうする。竜騎士もそうやって、前を向いて歩いてきただろう?」

女武道家「そう…ですよね…!」ゴシゴシ

 
上官「…」

女武道家「もう…泣きません」

上官「…」

女武道家「…前を見て歩きます、私も!」

上官「…」

女武道家「…」ジッ…

 
上官「…ふっ、いい目だ」ニコッ

女武道家「…え?」

上官「はははっ…!」

女武道家「…?」

上官「…来い。抱きしめてやる」グイッ…ギュウッ

女武道家「きゃっ…じょ、上官さん?」


上官「…嘘だ」

女武道家「…えっ…?」

上官「私だって本当は一人で泣いた。だが、部下のお前がいる手前、強く見せたかっただけだ。すまんな」

女武道家「…」

上官「よく怖くても、辛くてもココへ報告しに来てくれたな」

女武道家(怖かったの…分かってたんですね…)

 
上官「それでこそ、竜騎士の仲間…私の部下だ」

ポンッ…ナデナデ…

女武道家「あ…竜騎士さんもたまに撫でてくれました」

上官「…ふむ」

女武道家「さっき、でもじゃない!って、竜騎士さんにも言われました…」

上官「はは、アイツは私とずっといたからな…似たところもある…か」ハハ

女武道家「えへへ…」


上官「まぁ…前を見て歩けとは言ったが、反省…過去を省みるなという事ではないからな?」

女武道家「もちろんです!」

上官「そうか…それならばいい。さて…お前に聞きたいことがある」

女武道家「はい」

 
上官「竜騎士の体は今どこにあるんだ?」

女武道家「…え?」


上官「話では、空から一歩早く下へ降ろされたらしいが、場所までは知らないんだ」

女武道家「わ、私も聞いてませんよ?というか…上官さんに聞いてくれ、と言われました」

上官「何?」

女武道家「だから、上官さんが知っているものだと思って…」


上官「待て。それを話したのは誰だ?」

女武道家「上の支部長さんです」

  
上官「私も支部長に聞いたんだが…話が違うな…待ってろ」

トコトコ…ポチポチ…プルルッ、プルルルル…


上官「早く出ろ…」ソワソワ

女武道家「…それは?」

上官「電話、というやつだ。最近開発されてな。通信機器よりよっぽど小さくて便利なんだ」

女武道家「へぇ…電話ですか」

上官「お前たちが戦ってる間に上にも設置されたんだ。まぁそれより…」


…ガチャッ

支部長"「はい、こちら空中都市支部」"

上官「おい、話が食い違ってるぞ」

支部長"「…どなたですか?」"

上官「これは極秘回線だ。相手が誰だか分かってるのに聞くのか?」

 
支部長"「はぁ~…どうせ何か怒ってるんでしょう。声が怖いです」"

上官「当たり前だ!竜騎士の体…、い…、い、遺体は…どうした!」

支部長"「それは前に伝えたはずです。既に下に。女武道家さんにも伝えてるはずですが?」"

上官「その女武道家が目の前にいるんだが?」

支部長"「あちゃ~…予想以上に早く報告に行ったんですね…」"


女武道家「…?」


上官「どういう事か話しをしてもらおうか」

支部長"「…本当にこれは極秘回線ですか?」"

上官「そうだ」

  
支部長"「では…女武道家さんにも聞こえるように近づくようにお願いします」"

上官「女武道家、来い。支部長が何やら一緒に聞いて欲しいらしい」

女武道家「あ…はい」

トコトコ…


支部長"「女武道家さん、聞こえますね?」"

女武道家「はい」

上官「いいから早く話せ」


支部長"「12月31日、年末。そこで竜騎士さんの死を公式に発表します」"

女武道家「…」

上官「…なぜ遅れる?」

  
支部長"「12月31日という新年前のニュースのほうが、人々の受けがイイからですよ」"

上官「…」

女武道家「…」

支部長"「…」"


上官「…バカにしているのか貴様」

女武道家「今のは…さすがに許せませんよ」


支部長"「ふ、二人とも…そんな怒らないで下さいよ!」"

上官「今から貴様を、竜騎士の侮辱罪として軍法会議に持ち出す。覚悟することだな」

支部長"「ま、待ってくださいって!訳があるんですよ!」"

上官「…言ってみろ!」


支部長"「軍法会議されちゃたまったもんじゃないですし、約束に反しますが…仕方ないでしょう」"

上官「早く言え!」

  
支部長"「それが、彼の望んだ事だからです」"

上官「…彼?」

支部長"「自分が言えるのはそこまでです。では、失礼します」"

…ガチャッ!!ツー…ツー…


上官「き、きられた…あいつ!」

女武道家「…12月31日に発表…ですか」

上官「…支部長が言うには、な。あとで色々分かったら連絡はするよ」

女武道家「はい…」


上官「とりあえず今は休暇をやろう。実家に戻って、顔を見せてやれ」

女武道家「わかりました」

 
上官「…また、な」

女武道家「はい…失礼します」


ガチャッ…バタンッ…!!

 
タッタッタッタッタ…


上官「女武道家は…いったか」

ポチポチポチ…プルルッ、プルルルルルルッ…


支部長"「はい、もしもし」"ガチャッ

上官「本気で軍法会議にかけるぞコラァ!」クワッ

支部長"「もおおっ!しつこいですよ!!」"

上官「なら本当のことを話せ!彼とは誰だ!なぜ12月31日に発表する!」


支部長"「…敵わないですよ、そんなに凄まれちゃ。では、本当の事をお教えします」"

上官「当たり前だ。早く話せ」

支部長"「…では」"

 
上官「ん…」

上官「…何?さすがに、冗談だろう?」


上官「ほ、本当なのか…?」

上官「そ…そうか…!そうか…」グスッ…


上官「…分かった。2月だな」

上官「…ん。感謝する」

上官「まぁ…そうなるな」

上官「ふん…」

 
支部長"「とまぁ…以上です。これ以上は話せません」"

上官「いや充分だ。場所は?」

支部長"「それはさすがに…彼の意思ですから」"


上官「アイツらしいな…。わかった、改めて情報、感謝する」

支部長"「いえ…では」"

…ガチャンッ

 
上官「くく…2月が待ち遠しくなったな。あ…いやその前に12月31日か…」

上官「…女武道家も、その時に呼び出さねばな」


コンコン…

上官「ん、入っていいぞ」

軍人「失礼します!今回の会議の議題についての報告書のまとめに参りました!」


上官「…年末は忙しくて嫌いだ。ま、アイツも頑張ってるようだし、私も頑張るかぁ!」ウーン

軍人「へっ?」

上官「あ、いやこっちの話だ。さぁ…仕事をするか!」

 
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――――そして12月31日

竜騎士の死を伝えたニュースは、瞬く間に世界へと広がった。

多くの依頼をこなし、多くの騎士、軍人たちの憧れにもあった竜騎士。

その死は余りにも突然で、余りにも理不尽で…哀しさが世界を包み込んだ。


だが、彼の唯一のパーティだった女武道家は、

竜騎士の壮大な式に顔も出すことはなく、彼女は暫く姿を消した。


やがて月日は流れ…

本日はここまでです。ありがとうございました。

>>彼女が一応、竜騎士さんの直属部下ですしね。

性別はわからないけど、直属の上司じゃなかったっけ?

>>518
自給自足の最後、降格してなかったっけ?

>>518
竜騎士が殉職で、二階級特進でもしたんじゃないか?

おおう…沢山の感想コメント等、有難うございます。

>>518
大変申し訳ないです、こちら側のミスです。正しくは
支部長「彼女が一応、竜騎士さんの直属の上司ですから。あとの事はお願いいたしました」
でした。ご指摘有難うございます。

>>520 >>522
誤解を招くようにしてしまい申し訳ありませんでした。

それでは、投下致します。

 
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――――【 5月16日 】

コンコン…ガチャッ

女武道家「あの~…失礼しま…」


上官「なぁにが2月だ!3ヶ月も遅れてるじゃないか!!」

女武道家「…」ビクッ

上官「何…?そんなもの知ったことじゃない!」


女武道家「あ…あの…」

上官「あ…女武道家か。そうだ…来たよ。じゃあな、電話切るぞ。ん…わかった」

ガチャンッ

 
女武道家「…どなたかと電話でしたか?」

上官「上の支部長とちょっとね。ったく…2月とかウソばっかついて…」ブツブツ

女武道家「…?」


上官「そ、れ、よ、り…」ギロッ

女武道家「…っ」

上官「この数ヶ月、どこに行ってた!!!」クワッ

女武道家「ひ、ひええっ!」

 
上官「お前に連絡をとろうと実家に聞いても帰ってないというし!」

女武道家「あうっ」ドキッ

上官「軍の活動経歴を調べてもあの日から動いてないし!」

女武道家「うぅっ」ドキドキッ

上官「人に心配をかけるな…全く!」

女武道家「あうう…ゴメンなさい…」


上官「あんな事があったばかりで行方不明だとか、肝を冷やしたぞ」

女武道家「…ゴメンなさいです」

 
上官「で、どこへ行ってたんだ」

女武道家「色々と旅をしてまして…」アハハ…

上官「どこに」

女武道家「…」チョイチョイ


上官「ん…?天井指差してどうした?」

女武道家「ですから…上、です」

上官「…上、だと?」


女武道家「こ、これを~…」ペラッ

上官「…何だこれは?…、特別探索許可証…だと!?」

 
女武道家「…あはは」

上官「…」ブルブル

女武道家「あ、私…ちょっと用事思い出して…」コソッ


上官「この…ばかもの!!!」

女武道家「あうぅ~っ!ゴメンなさいです~っ!」


上官「あのバカ支部長め、余計なものを…。手書きだなこれは…!ったく…」ハァ

女武道家「で、でも…前を見て歩けって言ったのは、上官さんですよ!」

上官「む…」

 
女武道家「竜騎士さんの夢の続きを追いかける事が、前を見て歩く事だと思ったんです!」

上官「む…そ、それは…」

女武道家「…ですけど、無断だったのはすいませんでした…」

上官「どうせ支部長に言われたんだろう。内緒で来いとかな」

女武道家「全部分かってらっしゃるんですね…」


上官「あとで怒りの電話は入れておくよ」ハァ

女武道家「あはは…」

 
上官「ま…無事でよかったよ」

女武道家「ありがとうございます。あ…それで、今回呼ばれた理由をまだ訊いてないんですが」

上官「あぁ…そうだった。まぁそろそろかな」

女武道家「そろそろ?」


上官「ま、少し待ってろ。…ところで、竜騎士の待遇を知ってるか?」

女武道家「待遇ですか?」

上官「女武道家はアイツの葬式に出なかっただろう?」

女武道家「…出たくありませんでしたから」

上官「気持ちは分かるよ。まぁ聞いてくれ。…その式で竜騎士は殉職という事で特進とかを受けたんだよ」

 
女武道家「殉職、特別待遇ってわけですか…」

上官「あいつは例外過ぎた。三階級特進とか、過去にも余り聞いた事がないぞ」

女武道家「さ、三階級!?」

上官「中佐から准将も挟んで少将だよ。…笑えるね」

女武道家「竜騎士さんが少将…ですか」


上官「本来なら、殉職扱いじゃなくても中将、いや…大将に上り詰めてたかもしれないんだけどね」

女武道家「いえ、竜騎士さんなら元帥ですよ!」

上官「はっはっは!元帥には私がなるからな、そう簡単に席を譲るものか」ククク

女武道家「…上官さんなら、本当になりそうですよね」

 
上官「何年後になるか分からんがな。必ず私はこの国…いや、世界を導く指導者になってみせる」

女武道家「楽しみにしています」

上官「それでなぁ、あの支部長め…一々私のやる事に文句つけてくるんだよな…」ブツブツ

女武道家「どうしたんですか?」

上官「いや色々とな…割と昔から知ってるやつではあるんだが」


女武道家「仲いいんですか?結構親しげに話しをしてますよね」

上官「あ~…あいつは同期なんだよ」

女武道家「同期!」

 
上官「正確にいえば、私が塔の管轄をした時の知り合いで…同じ歳だって話だがな」

女武道家「塔の管轄!?上官さん、塔にいたことあるんですか!」

上官「上の担当ではないんだけどね。だから竜騎士の許可証もスムーズに運べただろう?」

女武道家「確かにそうですね」


上官「ま、私じゃなくても許可は下りてただろうけどね」

女武道家「なるほど~…」


上官「…しかし」

女武道家「?」

上官「竜騎士だけじゃなくて、女武道家も立派になったな。嬉しいぞ」

 
女武道家「そ、そんな…」

上官「あの時はまだ世間知らずだったが、今じゃ立派な一流の冒険家だ」

女武道家「そ、そうですかね…?だったら、嬉しいな」

上官「…同じ女性としても、誇りに思うぞ」


女武道家「いえ、私から見たら上官さん以上に誇れる人もいないと思います」

上官「照れるじゃないか」

女武道家「本当のことですよ!」


上官「はは…お?」
 
…コンコン

 
女武道家「おや、誰か来ましたね」

上官「…女武道家、そこを一回どけてくれ」

女武道家「あ、は…はい」 


上官「よし…入っていいぞ」

 
ガチャッ…

軍人「大丈夫ですか?こちらです」

コートの男「あぁ…すまない」フラフラ

上官「…来たか」

コートの男「…どうも」


女武道家「だ、誰ですか?」

上官「…」

女武道家(真っ黒なコートにサングラス…。松葉杖…?)

 
上官「…ようこそ、中央軍へ。私が案内状を出した上官だ」

コートの男「…はい」

上官「イスはこちらだ…手招きしよう」ギュッ

コートの男「すいません、ありがとうございます」

ヨロヨロ…ストンッ


上官「よし、君は一度離れてくれるか?」

軍人「了解しました。失礼します」

ガチャッ…バタンッ…

 
コートの男「…」

上官「これで話を聞く人はいない。楽にしてくれ」

コートの男「はは…ありがとうございます」


女武道家「…どちら様ですか?この人の為に私が呼ばれたんですか?」

コートの男「…」

上官「そうだ」

女武道家「でも、私こんな人知りませんよ…?」

コートの男「…」

上官「まぁ後で分かるさ」

 
コートの男「"上官殿"…色々と野暮な話は止めましょうよ」

上官「野暮なものか…。私だって、どういえば良いか分からないんだ」

コートの男「…」


女武道家(あ…)


上官「…何か言わないか?」

コートの男「…いえ」


女武道家(ま…不味いです…)モジッ


上官「…ふむ」

 
女武道家「あ、あの…上官さん。私、ちょっと…」

上官「ん?」

女武道家「少しだけ、行ってきますね」モジモジ

上官「ん?どこにだ?」


女武道家「だ、だからちょっとあの…」モジッ

上官「ああ、トイレか。存分に行って来い」

 
女武道家「えぇっ!上官さんもっとデリカシーを…」

上官「お前が言うな!ま、行って来い」

女武道家「は、はいっ!行ってきます!」ダッ

ガチャッ…バタンッ…タッタッタッタッタッタ…


上官「全く…」

コートの男「…」フッ

上官「…」

コートの男「…上官殿?」

上官「なんだ?」

 
コートの男「聞いてませんね。彼女がココにいるなんて」

上官「まぁまぁ。たまたまだよ」

コートの男「たまたま、ですか。そりゃ都合のいいことですね」
 
 
上官「ま…それは置いといて。調子はどうなんだ」

コートの男「余裕です…と言いたいところですが、見ての通りです」

上官「松葉杖のところを見ると、脚…まだダメなのか」

コートの男「…はい」

上官「そうか…」

 
コートの男「分かってます。自分は既に…」

上官「そう悲願するな。私も出来ることなら手伝ってやる」

コートの男「…ありがとうございます」


上官「で、どうする。本当のことを話したほうがいいんじゃないのか」

コートの男「いや…もう一人で旅立つ時なんです。今も立派に元気じゃないですか」


上官「お前は…それでいいのか?」

コートの男「…いいんです。仕方ありませんよ…」

上官「…」


コートの男「竜騎士は死んだんですよ。もう…この世にはいません」

 
上官「いいや。生きてるね」

コートの男「…」

上官「今、私の目の前に…いるじゃないか」


コートの男「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女武道家「ふぅ~スッキリしました♪」

タッタッタッタ…


女武道家「それにしてもあの黒い人…一体誰なんでしょうか」

女武道家「もしかして私が勝手に遺跡調査に行ったから…執行人とか…!?」ゾゾゾッ

女武道家「うわーーん、まだ軍にいたいですよぉー…」

 
…ボソボソ

コートの男「…です」

上官「…だろう」


女武道家(あ…ドア越しに何か声が…。まさか私の処遇についてですか!)

女武道家(こうなったら…盗み聞きしてやります!)コソッ

 
上官「お前は…それでいいのか?」

コートの男「…いいんです。仕方ありませんよ…」

上官「…」

女武道家(…何の事だろう。私のことじゃないっぽい…?)


コートの男「竜騎士は死んだんですよ。もう…この世にはいません」

上官「いいや。生きてるね」

女武道家(…!?)

 
コートの男「…」

上官「今、私の目の前に…いるじゃないか」


竜騎士(コートの男)「…」


女武道家(え…!?!?)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜騎士(コートの男)「…止めて下さい。もう、俺は竜騎士としては生きていけないんです」

上官「…」

竜騎士「どうせ軍は抹消されました。人々の記憶からも消え、俺はもうただの人間です」

上官「私から見たら、お前はずっと私の部下さ。可愛い愛弟子だ」

竜騎士「…嬉しい言葉ですね」


上官「女武道家にも教えてやればいい。泣いて喜ぶぞ」

竜騎士「だから、もう俺はアイツの傍にはいてやれないんです」

上官「なぜだ」

  
竜騎士「俺は一度死にました。そして、こんな体でどんな顔で会えばいいんですか?」

上官「…いつも通りでいいさ」

竜騎士「…無理だ」

上官「無理じゃない」

竜騎士「無理なんですよ…」


上官「やれやれ…いつの間に私の部下はそんな弱気になったのかねぇ」

竜騎士「…」

上官「確かに、お前は部下として切り捨てたほうがいいかもね。一番弟子でもっといいのを見つけたんだよ」

竜騎士「…誰ですか?」

 
上官「女武道家」

竜騎士「…ふっ」

上官「あいつは凄いぞ?一人で遺跡に行って、竜騎士さんの夢を追いかけるんだーってね」

竜騎士「は…?」


上官「無断で一人で冒険したようだよ?そっちのほうがよーっぽど一番弟子っぽ…」

竜騎士「…っざけないで下さいよ!」ドンッ!!

上官「おぉ怖い怖い…」


竜騎士「ちゃんと面倒見てくださいよ!貴方の部下でもあるんですから!!」

上官「私じゃ無理だ」

竜騎士「無理?上官殿のような人が無理だって…?女武道家、女一人を抑えることがですか!?」

 
上官「そりゃ無理さ。人が人に会うことすら無理な人だっているんだから」

竜騎士「そんな人いるわけ…!」

上官「…」

竜騎士「…っ」


上官「無理するな。会いたいんだろう?お前自身、竜騎士だって伝えたいんだろう?」

竜騎士「くっ…」

上官「伝えればいいさ。お前が…直接な」


女武道家「…」


竜騎士「!」ハッ

 
上官「やれやれ、後ろにいたのも気づかないとは…」


竜騎士「お…女武道家…今の話、まさか全部聞いて…」

女武道家「はい…。あなたが竜騎士さんだった、というところから…全部…」

竜騎士「…そ…そうか…」


女武道家「…」

竜騎士「…」


女武道家「…貴方は、本当に竜騎士さん…なんですか?」

竜騎士「…どう、思う?」

女武道家「サングラスを外して…目を、見せてください。コートを脱いでください。お願いします…」

 
竜騎士「…」

パサッ…カチャカチャッ…


女武道家「…!」

竜騎士「目は開けないんだ。光しか感じることが出来ない。足はない…顔にも酷いキズだ」


女武道家「あ…」

竜騎士「…どうだ?お前の知ってる男とは全く別の…」


女武道家「あ…あぁぁ…」ブルブル

竜騎士「ん…?」

 
女武道家「竜騎士さぁぁぁんっ…!!!」

ダダダダッ…ダキッ…ドォンッ!!ゴロゴロゴロ…

竜騎士「ぬあぁぁっ!」


上官(…やれやれ)

上官「はぁ~…お熱いねぇ…。私は外に人が近づかないようにしておくよ」ハハッ

ガチャッ…バタンッ…

 
竜騎士「っつ…バカ!俺はまだキズも癒えてないんだぞ!」

女武道家「竜騎士さん、竜騎士さんだ…本当に…!」

ギュッ…ギュウウウッ…


竜騎士「…」

女武道家「竜騎士さんの匂い…竜騎士さんの温かさ…そのままだ…」グスッ

竜騎士「…久々に会っても、まだ泣き虫だなお前は」ハァ

女武道家「…竜騎士さぁん…」

 
竜騎士「…いつまで倒れて抱きついてるつもりだ。俺が下じゃキズに障るだろうが」

…ポンッ、ナデナデ…

女武道家「あう…。えへへ…、竜騎士さん…」


竜騎士「…ここまでバレたら仕方ないな…久しぶりだ。女武道家」ニコッ

女武道家「…はいっ!」

 
竜騎士「少し話したいこともあるが、この体勢は少々床が冷たくて痛いのだが」


女武道家「じゃあ、ソファーで抱きしめてくっつきます!」

竜騎士「いや、別にくっつかなくても」

女武道家「竜騎士さんにくっついていたいんですっ!!」


竜騎士「あ…そう…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜騎士「…」

女武道家「竜騎士さん」

竜騎士「ん?」

女武道家「あの時、生きていたんですか…?」


竜騎士「…少なくとも、生きてたっては言えないな」

女武道家「どうして助かったんですか…?」

 
竜騎士「あの、お前の背で倒れた時…俺は死んでいた状態と一緒だったらしい」

女武道家「え…」

竜騎士「…寒かった。暗かった。意識がどこかへ飛んでいく…沈んでいく…あれが死ぬって事なんだろうな」

女武道家「…」

竜騎士「だが…そんな中、暗闇の中から手が伸びてきた。光輝いてた…」

女武道家「手…ですか」


竜騎士「手と一緒に、声が聞こえた。お前の声だ。何よりも…温かかったよ」

女武道家「…私の声」

竜騎士「そして、その手に引っ張られるままに、高く高く進んだ。空を翔けるようにな」

女武道家「…」

 
竜騎士「やがて目覚めると、ベッドの上だった。支部長たちの驚く顔が未だに忘れられん」ハハ

女武道家「一人でよみがえったってことですか?」

竜騎士「いや一応、蘇生術やら色々してたみたいだぜ。諦めた瞬間、俺が息を吹き返したらしい」

女武道家「…」


竜騎士「ま…お前のお陰で、一度死んだ世界から復帰できたのかもしれねえぜ」

女武道家「私、役にたてましたか?」

竜騎士「…おう。当たり前だ」

 
女武道家「でも…痛かったですよね。辛かったですよね」

竜騎士「あぁ。痛かったし辛かったよ。だが…お前に背負われるのは悪い気分じゃなかったかな」
 
 
女武道家「また、背負いますか!?」フンッ

竜騎士「そういう意味じゃねえよ、バカ」

女武道家「あう」


竜騎士「あんなに頼りなかったヤツが、こんなに大きくなってたんだなっていう…な」

女武道家「えへへ…」

竜騎士「改めて褒めてやるよ。そして、ありがとうな」ニコッ

女武道家「はいっ♪」

 
竜騎士「…」

女武道家「あ…そうだ!」

竜騎士「ん?」


女武道家「あの時の言葉、ウソじゃないですよね…」モジッ

竜騎士「あの時?」

女武道家「私に囁いてくれたじゃないですか!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
竜騎士「…」ボソッ

女武道家「えっ…?」


竜騎士「…」ボソッ…ボソボソッ…

女武道家「!!」

竜騎士「…」ニカッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女武道家「私はしっかり覚えてますよ!」

 
竜騎士「あ…あぁ~…」

女武道家「あの言葉通りなら…わ、私たちはどうなりますか?」

竜騎士「…忘れてくれ」

女武道家「えっ…」


竜騎士「忘れてくれ!!あんな死にかけで出たセリフ!!」

女武道家「ええ~っ!じゃ…じゃあ、ナシって事ですか…?」ショボン…

竜騎士「…っ」

女武道家「凄い…嬉しかったのにな…」グスッ

竜騎士「…」ドキン

 
女武道家「でも、仕方ないですよね…」

竜騎士(こいつ、段々…女として悪い方に良くなってる気がするぞ…)ドキドキ

女武道家「あう…」


竜騎士「あ~もう!そんなんじゃ敵わねぇじゃねえか。…そういう意味じゃねえよ」

女武道家「…?」

竜騎士「改めて、きちんとして言いたいだけだ」

女武道家「ほ、本当ですか…?」


竜騎士「約束…だったしな。ほら、俺から一回離れてそこに立て」

女武道家「!!」ピョンッ

 
竜騎士「…こっちでいいのか?目が見えないから良く分からないんだ」

女武道家「私、正面にいますよ!」


竜騎士「…そうか、では…」ゴホン

女武道家「…」ドキドキ


竜騎士「…」

女武道家「…」ドキドキ


竜騎士「…」

女武道家「…」ドキドキ

  
竜騎士「…やっぱ無理だ」プイッ

女武道家「えぇぇっ!」

竜騎士「恥ずかしいんだよ!!」

女武道家「うぅ~…」


竜騎士「っち…あぁ~~~もう!!」

女武道家「!」

 
竜騎士「…」スゥ…

女武道家「…!」


…ガシッ!!

竜騎士「女武道家、俺は仲間である前に…お前の事を"女としても"大好きだ」

竜騎士「だから…俺と一緒にこれからもパーティを続けてくれ。ずっと、な」

女武道家「…っ!!」

 
竜騎士「…」

女武道家「…」

竜騎士「…」


女武道家「…はいっ」ニコッ

 
竜騎士「…っ」カァァ

女武道家「え?」

竜騎士「だぁぁぁ恥ずかしすぎるわ!!ばぁぁかっ!!」

女武道家「え、ええぇ!かっこいいですよぉ!」

竜騎士「そういうことじゃねー!しかも、何だかんだで変なセリフになってるしよ!」


女武道家「恥ずかしがらないで下さいよ…、じゃあ…」

竜騎士「ん?」

女武道家「良く出来ましたで、おでこにチューしてあげます!」チュッ

竜騎士「…」


女武道家「えへへ…いい子いい子」ナデナデ

 
竜騎士「ぬがーーーっ!」

女武道家「きゃああっ!な、何ですかぁ!」


竜騎士「俺の気配の読みなめるなよ?…おらぁっ!」グイッ

女武道家「わっ…」


竜騎士「キスってのはな…こうするんだよ…!」

 
 
…………
………

 
……
… 
 
女武道家「…っ!」

竜騎士「…っ」


……

 
………
…………
 
 
竜騎士「…」

女武道家「…あう」ボンッ

竜騎士「…この歳になって、キスくらいで大騒ぎすると思わなかった。あーくそっ」ボリボリ


女武道家「えへへ…どうしよう、嬉し幸せすぎて死にそうですっ…」

竜騎士「俺が死から戻ったんだ。お前が死ぬ事は俺が許さねぇよ」

女武道家「私だって、竜騎士さんが死ぬ事はもう許しませんからね…絶対に!」

竜騎士「…お互い様だな」ハハ

女武道家「…ですねっ」エヘヘ

 
…ジー

上官「ラブコメディは終わったかい、お二人さん」

女武道家「はっ!」

竜騎士「じょ、上官殿!?ま、まさかそこにいるんですか!?」


上官「本当に私の仕事場でラブラブされると辛いんだけどねぇ」ハァ

竜騎士「も、申し訳ありません!」

上官「ラブラブは否定しないのかよ」ゴツッ

竜騎士「いてっ!」


上官「まぁ…何だ。長い道のりだったが…おめでとう二人とも」

  
竜騎士「…ありがとうございます…なのか?」

女武道家「…ど、どうでしょうね」


上官「ラブラブもいいが…今後について少し話そうと思うが、いいか?」

竜騎士「は、はい」

女武道家「はいっ」

上官「お茶と必要な書類を用意するよ。ま…少し待ってくれ」


竜騎士「書類ですか…?まぁ、はい…わかりました」

女武道家「はい」

本日はここまでです。有難うございました。

また、明日の更新で最終回となります。
読んで下さった方々、有難うございました。

皆さま有難うございます。最終回、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上官「さて…と。じゃあ今後の事についてだ」

竜騎士「はい」

上官「竜騎士、お前はもう軍にはいない身だ。いや…世の中からもいないと一緒だが」

竜騎士「…ですね」


上官「女武道家、君は今年の4月に7昇進が決まり、大尉になったわけだ」

竜騎士「お前が大尉か…笑えてくるな」ククッ

女武道家「相変わらずひどいですね…」

 
上官「それで、どうするつもりだ?お前たち2人がパーティで冒険する事は出来なくなるだろう」

女武道家「え?」

上官「え?って、お前、軍の規定くらい知ってるだろう?」


女武道家「そ、そうなんですか?」チラッ

竜騎士「…あのな、軍人は基本的に一般人と探索とかしちゃダメなの」

 
女武道家「な、なぜですか?」

竜騎士「軍の情報や、軍の技術、軍しか入れない施設にパーティだと入れちゃうだろ?」

女武道家「あ…」

竜騎士「ほら…上の支部だってそうだろ?本来なら一般の立ち入りは禁止だしな」


女武道家「じゃあ…もう、竜騎士さんと旅をする事は出来ないってことですか…」

竜騎士「そうなるな…」

女武道家「い、嫌ですよ。やっとまた会えたのに…!」

竜騎士「…」


上官「だから、一つ案がある。女武道家、軍をやめろ」

女武道家「やめろ…?」

 
上官「一応、一生不自由しない金はあるんだろう?」

女武道家「それは…ありますが…」

上官「竜騎士はな、こう見えて寂しがりやでな。一人じゃリハビリも上手くいかん」

竜騎士「ちょっ…」


上官「お前の故郷の田舎町に一軒家を買え。そこでゆっくりとリハビリをさせるんだ」

女武道家「一緒に住めってことですか…?」

竜騎士「…」

上官「そうだ。軍のままでは、活動記録でどのみちバレてしまうだろうしな」

 
竜騎士「…女武道家、お前はどうだ?」

女武道家「私は…竜騎士さんと一緒にいたいだけです。軍にいて一緒になれないなら、やめます」

竜騎士「そんな簡単に…」

女武道家「簡単くらいが丁度いいんです」

竜騎士「はぁ~…、お前にそう言われたら俺だって頷く以外ないじゃないか」


上官「…あっさりだな。もっと揉めると思ったが」

竜騎士「こういうヤツなんですよ、こいつは」グリグリ

女武道家「…あうう」


上官「それもそうか。あ~あ…それにしても、一番弟子も二番弟子もいなくなるのか~」

 
竜騎士「それはないですよ」

上官「うん?」

竜騎士「俺らは、一生…あなたの部下であり弟子です。上官殿もそう言ってくれたじゃないですか」

女武道家「そうですよ。今まで、お世話になりました。だけど、これからも宜しくお願いします」ペコッ


上官「ふふっ…バカどもが」


女武道家「あ、そういえば軍の退役手続きってどうすればいいんでしょうか?」

上官「ほれ。名前を書くだけでいいように準備しといた」ポイッ

女武道家「準備いいですね…」

 
竜騎士「…はは」

上官「あとこれが田舎町の土地権利書。一応こことの極秘回線電話も引けるようにしといたぞ」パサッ

竜騎士「!?」

上官「あ、田舎町の皆には既にお前が生きてた事も伝えてあるから」

女武道家「!?」

上官「あと家具とかは一式後日、家が出来てから届くようにしておいたからな」


竜騎士「い、いつの間に!?」

上官「お前が生きてるって支部長に聞いた日から準備しといた。こうなると思ってな」

竜騎士「…さすが…だ…」

 
女武道家「でもこれで、ずっと一緒ですね竜騎士さん♪」

竜騎士「…そうだな」


上官「あ、そうそう…竜騎士、お前一応下半身は動くんだろ?」

竜騎士「膝下から動かないだけですよ」

上官「ああそうか。じゃあいいや」

竜騎士「何がです?」


上官「一家の主なるたる男は、やはり言葉や気持ちだけでなく…」

竜騎士「何の話しをしてるんですかぁっ!!」バンッ!!

名前を書くだけ…だと…

 
上官「…大事な事じゃないか」

竜騎士「それはそれ、これはこれですよ!あー…危ない…」

女武道家「?」キョトン

竜騎士「今はお前はまだ気にしなくていいよ…」


上官「何を言う、女武道家は回りから見ても美し可愛い女性。それに運動もやっててスタイルが」

竜騎士「ふんっ!クッション投げ!」

…ボフンッ!!

上官「うぷっ…」

竜騎士「それ以上言ったらダメですって、マジで」


上官「…分かったって。じゃ、女武道家…それに名前は書いたか?」

 
女武道家「はいっ」

上官「よろしい。後日に少し手続きもあるが、まぁ今はこれでいい」

女武道家「分かりました」

上官「…ふふ。お前達は一度、外のカフェで休んでるといい。私は書類を出してくる」

ガチャッ…バタンッ…

 
竜騎士「はぁ~…ひと段落ついたし、上官殿のいうとおりにカフェに行くか?」

女武道家「はいっ♪…それじゃ、上官さんの言う通りにカフェにいきますか」


竜騎士「っと…今はコートとサングラスかけてないと、すぐにバレるからな…」

パサッ…スチャッ…


女武道家「竜騎士さん、これからもいっぱい、沢山、色々なお話しましょうね!」

竜騎士「もちろんだ」

>>608
女武道家「はいっ♪…それじゃ、上官さんの言う通りにカフェにいきますか」

女武道家「はいっ、行きましょう♪」

修正です

 
女武道家「それと…二人の家には、また畑を作りましょうよ!」

竜騎士「ん~?悪くないな。また二十日大根とか植えるか」ハハッ

女武道家「お金の心配もないですし、アーヴァンクちゃんを飼えますよね!」


竜騎士「あー…いいぜ。でもよ、まだ生きてるかなアイツ」

女武道家「生きてますよぉ!この間、実家でも一緒に遊びましたし」

竜騎士「えっ」

女武道家「えへへ…」

 
竜騎士「ま、そういう話はカフェででもしようぜ」

女武道家「あ~…でも、そしたらアヴァちゃん用に小屋も作らないと…」

竜騎士「聞けよ」


女武道家「そうだ、竜騎士さん!」

竜騎士「何だよ」

女武道家「コックさんとか、スミスさんにも挨拶に行かないといけませんねっ」

竜騎士「ん、まぁな。だからとりあえずカフェに…」

 
女武道家「でもでも、二人で一緒に住む家を建てますって恥ずかしいな…」カァッ

竜騎士「…」

女武道家「け、けけ…結婚とか…」チラッ

竜騎士「気がはえぇよ!つか、ここじゃ恥ずかしいからカフェに行こうぜって…」

女武道家「むぅ~…。確かにこういう言葉は男の人から言ってほしいですよね…」ブツブツ


竜騎士「…はは」

女武道家「竜騎士さん?…何で笑ったんですか?」

竜騎士「何となくだよ。生きててお前の笑顔を見れてよかったなー…ってな」ハハ

女武道家「…!」

 
竜騎士「はぁ~…楽しい事になりそうだな、全くよっ!」 
 

女武道家「あ…竜騎士さん…それでね、それでねっ…!!」


……………
…………
………
……

 
――――決して出会う筈ではなかった二人。

だが…運命という名の偶然で、二人は出会った。

そして、二人は冒険に出た。世界を旅した。困難を乗り越えた。


二人は幾度と笑いあい、涙を流し…抱きしめあった。


これからも二人の道は険しいものとなるだろう。

だけどきっと大丈夫。この二人はどんな壁でも、乗り越えられていくだろうから。

 
……
………サァァァッ…

…そして…その年の夏。二人の家の庭には綺麗な2つの花が咲いた。


その2つの花は夏風に揺れながら、静かに静かに咲いていた。

今日もまた、庭先に出た二人は庭の花を見つめると、小さく優しく微笑んだ。

 
【 E N D 】

 
■あとがき
無事に終了できたこと、ひとえに皆さまのおかげです。

また、竜騎士の本編はこれで終了となります。

3作全部を読んで下さった方々、コメントを寄せて頂いた方々、有難うございました。

そして、今年1年…本編にお付き合いくださった皆さま、本当に有難うございました。


※本編は終了しましたが、
  謎解き予想編、アフターストーリー、修正(一部)を掲載しまして終了となります。



シリーズ通して終わりなのかな…

 
謎解き予想編
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


竜騎士「そうだ…女武道家」

女武道家「はい?」

竜騎士「お前、本当に上に行ったのか?」

女武道家「はい。支部長さんや、青空騎士さんらと一緒に聖堂まで行きました」


竜騎士「…そうか。謎、解けたのか?」

女武道家「あ…で、でも…」

  
竜騎士「いや俺のことは気にするな。代わりにお前が謎を解いてくれたなら本望だよ」

女武道家「そう…ですか?」

竜騎士「あれほど戦場に出て欲しくないといったのに、出たのは後でお仕置きだがな」

女武道家「あう…」


竜騎士「で、何が分かった?」

女武道家「結論から言いますと、あの聖堂は"突風"で動いてる事がわかりました」

竜騎士「鐘な…」

女武道家「夜に鐘が鳴らなくなったのは、夜の間だけ突風が吹かないかららしいんです」

竜騎士「なるほどな…確かにそうだった」

 
女武道家「それと、聖堂の中は大きな扉があるだけ。それと…不思議な事がわかりました」

竜騎士「何だ?」

女武道家「その扉、ただ中央に立ってるだけだったんですが…こちら側で作ったものでした」

竜騎士「何?魔界のものじゃないのか!?」

女武道家「はい。造りや材料はこちらのものという事が分かって、ますます謎が深まるばかりだったんです」

竜騎士「ふむ…」


女武道家「支部長さんが考えた仮説では、もしかしてコレは魔界と人間界を繋ぐ扉だったんじゃないかと」

竜騎士「…人間界と魔界か」

女武道家「そして、昔、魔界の住民を奴隷として扱った時代の扉の可能性があるらしいです」

 
竜騎士「…奴隷か」

女武道家「そのせいで、魔界の住人が扉が嫌で、火山のエネルギーを使ってこちら側に送ってきたのでは?と」

竜騎士「…一理あるな」


女武道家「あ、あと。あの残された他の種族たち…妙に若かったじゃないですか?」 

竜騎士「そうだな」

女武道家「あれは残された子供達が成長したのではないか?という話が出てます」

竜騎士「子供たちが残された…だって?」


女武道家「火山のエネルギーなら、住民の避難がいる。その時に捨てられた子供達であると…」

竜騎士「確かに人型なのに、人語を理解しなかったヤツがいるのも繋がるわけか」

 
女武道家「しゃべれたけど、子供っぽかったファフニールとかも理由付けできますよね?」

竜騎士「ドライアドなんかも、子供の頃の記憶で曖昧な部分もあったのかもしれないな」

女武道家「1日で住民が消えてて、町が廃れてたっていってましたが…」

竜騎士「子供心に、急に誰もいなくなったら錆びれたように覚えてしまうもんじゃないか?」

女武道家「う~ん…確かにそうかもしれませんね」


竜騎士「…じゃあ、遺跡だけ妙に魔力が高ぶった理由とかは分かったか?」

女武道家「扉から、魔界の魔力が漏れてる可能性があるそうです」

竜騎士「はは…」

 
女武道家「あ、そうだ!あとですね」

竜騎士「ん?」

女武道家「あの鐘は、こちら側にない物質で出来てて、あれが振動する度に魔力増幅が感知されたそうですよ」


竜騎士「…ハーン」ピンッ

女武道家「何か、わかりましたか?」

 
竜騎士「恐らく、あれは扉を魔界とコチラで維持するためのものだ。当時のやつらが付けたんだろうな」

女武道家「…なるほど」

竜騎士「あの扉がこっち側にきたせいで薄れたが、もしかしたら強い魔力をあてれば…」

女武道家「どうなりますかね」

竜騎士「もう1つの現存している扉と繋がるかもしれない。その扉はこっち側の世界のどこかにあるだろうがな」

女武道家「確かに…」


竜騎士「おっしゃ…俺も早くリハビリして、俺も早く謎解きに参加してぇな!」

女武道家「もちろんです!一緒にいきましょうね!」


竜騎士「ところで、お前が報酬で貰った金ってどのくらいなんだ?俺がリハビリで生活費は大丈夫か?」

女武道家「耳を貸して下さい」

竜騎士「ん」

女武道家「…ぅゴールドですよ」ボソッ


竜騎士「え…マジで?」

女武道家「…」コクン

 
竜騎士「…ほう」

女武道家「全部、竜騎士さんに一任しますけど…」

竜騎士「そうだな、まぁ当面はリハビリで生活費にするとして…あとは家は立派なのにするか」

女武道家「田舎町の支部くらいでもいいですよ?」


竜騎士「ま…そんくらいが落ち着くよな本音としては」

女武道家「楽しみですね、二人のお家!」

竜騎士「同棲だな、本当の」

女武道家「です♪」

 
竜騎士「まずは俺の体を治して、だな」

女武道家「そうですね!一生懸命手伝いますからね!」


竜騎士「…当たり前だ、このバカが!」

女武道家「あーっ!またバカって言った!」

竜騎士「はははっ」

女武道家「もーっ…!」


竜騎士(これからも、一緒にがんばろうな。女武道家…)

【 E N D 】

本来ならここで終了だったのですが、更新分の遅れとして
アフターストーリーを書かせて頂きました。それで本当の終了となります。

 
■アフターストーリー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1年後・12月26日 】

 
グググッ…スタッ…トコトコ…

竜騎士「どうだ!」

女武道家「おぉぉーっ!」パチパチパチ


竜騎士「見ろ!これで完璧だ…もう俺は普通に歩けるぞ!」

女武道家「当初の予定より時間はかかっちゃいましたけど、安心しました」

竜騎士「膝下から動かない状態で、歩くようになったんだぞ…褒めろよ」

 
女武道家「そうでしたね…頑張りましたね、竜騎士さん」ニコッ

竜騎士「…」

女武道家「?」


竜騎士「うっせ!」コツッ

女武道家「あいたっ!何するんですかぁ!」

竜騎士「何となくだよ!」


女武道家「もー」グスン

竜騎士「まぁ…目はリハビリのしようもないし、見えないままなんだがな」

 
女武道家「そう…ですか」

竜騎士「…どうした?」

女武道家「…私の顔も、これから一緒にすることも、全部見えないのかなって…」

竜騎士「あー…」

女武道家「…」ショボン


竜騎士「…女武道家、ジャンケン」

女武道家「え?あ…はい」


竜騎士「ジャーンケーン…」
 
女武道家「ぽんっ」

 
竜騎士「…俺の勝ちな」

女武道家「!?」


竜騎士「感覚だが、分かる。俺の頭に自然と全てが思い浮かべられるよ…音の反響とかもあるがな」

女武道家「え…え!」

竜騎士「ひそかに色々鍛錬はしといたからな。目は見えなくても、心で見えるさ」

女武道家「…!」


竜騎士「さっき、俺に頑張りましたって言った時は笑顔になってただろう?」

女武道家「は、はい!」

 
竜騎士「安心しろ、お前の顔が見えないなんて事は…ないからな」

女武道家「…はいっ」ニコッ

竜騎士(いつかこの目で、お前をもう1度見たいっていうのが本音なんだけどな…)


竜騎士「ふっ…ま、家にいるのもなんでし、外にでも行くか?」

女武道家「そうですねぇ、買い物にでも行きますか?」

竜騎士「…あぁ。久々に中央にでも買い物に行くか…年末の買出しもあるしな」

女武道家「分かりましたっ」


竜騎士「…」

ゴソゴソ…パサッ…スチャッ

 
女武道家「やっぱり外に行く時はそのコートとサングラスなんですね」

竜騎士「…同期のヤツもいるし、見つかったら騒がれるからな。仕方ないことだ」

女武道家「ですよね…」


竜騎士「やっぱり嫌か?俺らしくないもんなぁ」

女武道家「ううん。私は、竜騎士さんは竜騎士さんです…そこにいるだけで幸せですっ」ギュウッ

竜騎士「はは…」

女武道家「えへへ…」


竜騎士「…あ」

女武道家「どうしたんですか?」


竜騎士「気が変わった。日帰り予定だったが…中央に一、二泊しつつプチ旅行で行こう」

女武道家「お泊りですか!」ピョンッ

 
竜騎士「そのほうがいいだろう。奮発して中央都ホテルだ!」

女武道家「わぁい!」

竜騎士「俺の手伝いとか、ずっとしてくれたしな。来年に長期で旅行にでも行こうか」

女武道家「冒険じゃない、観光ってことですか?」


竜騎士「星降も好きだったよな?今度はもっとゆっくりして、世界を旅行ってのも悪くないな」ハハハ

女武道家「…♪」

竜騎士「とにかく今は中央に。よっしゃ、行くぞ!」

女武道家「はいっ!」

 
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・・・
・・

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 】

トコトコ…

竜騎士「…都市も久々に来たなぁ。俺らの家が出来てからは全然きてなかったし」

女武道家「ですね♪」

竜騎士「…嬉しそうだな」

女武道家「こうして竜騎士さんと歩けるのが嬉しくて!!」


街人「あはは…あの人たち熱いねぇ」

街人「お似合いだね」クスクス

 
竜騎士「声がでけえっての!」

女武道家「あう…すいません」

竜騎士「はは」

 
女武道家「えへへ…えいっ!」ギュッ

竜騎士「お…」

女武道家「手繋いでいきましょう♪」

竜騎士「…いいぜ」

 
トコトコ…トコトコ…
 
女武道家「はぁ~…息が白いですね」ホウッ

竜騎士「冷えてきたな。脚のキズが痛んでる気がするよ」

女武道家「…大丈夫ですか?午前中までは少し暖かかったんですけど、やっぱり冬ですねえ」


キラッ……キラキラキラ…

竜騎士「…お、冷たいな…。雪か」

女武道家「!」

 
竜騎士「寒いと思ったら…。中央で雪なんて珍しいな」

女武道家「わぁぁ…キレイですねえ」

竜騎士「そうだな…そのうち、また北部の猛雪山にでも観光に行くか?」

女武道家「いいですねえ、スキーとか」


竜騎士「む…」

女武道家「?」

竜騎士「この足でスキーって出来るのか…?いや、やった事ないからわからんが」

女武道家「ど、どうでしょうか…」


竜騎士「何事も挑戦よ。うっしゃ、来春から旅行に行くか!?」

女武道家「行きますっ!」

竜騎士「おうっ」

  
竜騎士「あ~…そうだ。女武道家、寒くはないか?」

女武道家「は…はくしょんっ!」

竜騎士「おいおい、風邪ひいたんじゃねえの?」

女武道家「何のこれしきの寒さ、何でもありませんよ!」


竜騎士「あー無理すんなよ…仕方ねえ…上着やるから」パサッ

女武道家「!」

竜騎士「ないよりマシだろ。まぁこんだけ人が多かったらコート脱いでも、知り合いも分からんだろうしな」

女武道家「えへへ…あったかい」

 
竜騎士「それは何よりですお姫様」

女武道家「♪」

竜騎士「ただ…まぁ、お前も思ってるほど体は頑丈じゃないんだから…寒いときはきちんと言えよ?」

女武道家「はいっ」


竜騎士「…後で少し休憩だ。喫茶店でも入って珈琲でも飲もう」

女武道家「私、チョコレートパフェがいいです!アイスっアイスっ♪」

竜騎士「お前…俺の話、聞いてた…?」


女武道家「竜騎士さん、竜騎士さん」

竜騎士「ん?」

女武道家「今、私は凄い幸せですっ」

竜騎士「そうだな…俺も幸せだよ」

 
女武道家「…来年も、いい年でありますようにっ♪」



【 E N D 】

 
これで謎解き編、アフターストーリーは終了になります。

何度も申し上げますが、
読んで下さった方々、一瞬でも目を通してくださった方々、コメントを下さった方々…

全ての方へ感謝をこめて。ありがとうございました。

皆さまへ、カスミソウという花に、気持ちを込めて送らせて頂きます。

 
 
それでは…。

 
■修正

>>478

支部長「あ…こんな話で申し訳ない」アセッ

女武道家「い、いえいえ!気にしないで下さい!」


支部長「それで、竜騎士さんに関してなのですが…下で上官殿に任せることにしました」

女武道家「上官さんですか?」

支部長「彼女が一応、竜騎士さんの直属の上司ですから。あとの事はお願いいたしました」

女武道家「…なるほどです」


支部長「それと、今回見つけてくれた遺跡の様々なもの…簡単にですがコレになります」

ゴソゴソ…スッ

女武道家「これ…何ですか?」ペラッ

>>549
 
コートの男「…」

上官「今、私の目の前に…いるじゃないか」


コートの男「…」


女武道家(え…!?!?)

>>608

竜騎士「はぁ~…ひと段落ついたし、上官殿のいうとおりにカフェに行くか?」

女武道家「はいっ、行きましょう♪」


竜騎士「っと…今はコートとサングラスかけてないと、すぐにバレるからな…」

パサッ…スチャッ…


女武道家「竜騎士さん、これからもいっぱい、沢山、色々なお話しましょうね!」

竜騎士「もちろんだ」

じ…次回作のご予定は…?

面白かったよ、乙乙

>>605
コメありです

>>618 >>649
今回の作品にて、竜騎士シリーズは終了となります。
今現在、次回の予定というものはまだありません…。

読んで頂き、有難うございました。

乙。
現行はこの天空都市編しか見れなかったけど楽しませてもらいました。
もう一回全部見直そうかな。

>>651
現行に足を運んでいただき有難うございます。
是非、また次はいつになるか分かりませんが、新作の時にでもお越し頂ければ嬉しいです(´`)

mixiから毎作の宣伝があるたびに現行にきていましたが、
リアルタイムで最終回をみれてよかったです。
今年は少年剣士、竜騎士シリーズのSSを読めて本当に良かったです。
作者さんに最大の乙を!そしてよいお年を!!

超乙
少年からずっとリアルタイムで追っかけてきたけどこの世界観好きになったよもちろんアパートも
新作も楽しみに待ってる

お疲れです、少年剣士がずっと見てましたー
中級魔導がなぜか好きでしたー

あと、作品としてはアパートが一番好きだったかも
楽しかったです

初代をたまたま開いてから、ずっとわくわくしながら読んでました。

作者さんの努力に感謝です。
お疲れ様でした。
そしてありがとうございました

乙~、年超し前にいいスレ見れたよ

個人的には魔法、錬金術メインの話が見たかったりしたw

皆様ありがとうございます。

>>654 >>655 >>656
剣士から、初代から見て頂いてる方が多くてうれしい限りです。

>>657
結構、同じ世界観の錬金術の話を見たいという方も多いので、
そのうち過程等で書くかもしれませんねwご意見感想ありがとうございます。

◆qqtckwRIh. は大好きだが単芝は許さん

乙です

とうとう終わっちゃったか(´Д`)
今回のシリーズも面白かったよ
次回作期待してます

>>653
ありがとうございます、お互い、いいお年を迎えましょう

>>659
oh...大好きといってくれて非常にうれしいです。単芝突っ込みとはっ…
>>660
乙ありです

mixiのコピ館から見てました。
とても面白かったです。また新作が出たら、読みたいです。
作者さんにはラノベ書いて欲しいな(^-^)/

こうして書き込みするのは初めてですが、竜騎士シリーズはすべて現行で読ませていただきました。本当に乙です

人を惹き付ける物語を書ける作者様は、勝手に己の目標にさせていただいております。本編が終わってしまったのは残念ですが、これからも応援してます!

>>661 >>663
ありがとうございます。
新作は未定ですが、またお越し頂ければ嬉しいです。
ラノベ書くのとかも面白そうですよね

>>664
お初コメント感謝致しますっ。
目標とは恥ずかしいですが、惹きつけるというのは嬉しい言葉です。
ありがとうございました。

お疲れ様でした!
自分は少年剣士シリーズから読んでて新シリーズが始まるごとに毎日めちゃくちゃ楽しみにしていました。
女武闘家とほのぼのとした旅を描くこの竜騎士シリーズは大好きです。
大変だとは思いますが次回作を期待しています!

お疲れさまです

乙でした。来年も日々の楽しみを分けていただければと思います!

Twitterとかやってる?
出来ればTwitterとかでも宣伝?してほしい

おつおつ

>>666 >>667 >>670
おつありがとうございます。
次回作があれば是非またお会いしましょう。

>>668
いえいえ、こちらこそ皆さまから元気を分けていただいてる立場ですので。

>>669
度々Twitter等で告知はしてますが、貼っていいものなのかな…?
一応針しておきますね。
https://mobile.twitter.com/naminagares

横からすみませんフォローしますた

明けましておめでとうございます。

せっかくなので、リアルタイムで書きながら投下したいと思います。
(修正ナシでミスがあったり、リアルタイムなので更新がやや遅いです)

>>672
遅れながら、ありがとうございます。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1月1日 】

竜騎士「明けまして…おめでとう!」

女武道家「おめでとうございます~!」


竜騎士「ふーっ…今年もまた始まったか…」

女武道家「そうですね、今年はどんな1年になるんでしょうか」

竜騎士「またお前のドジに振り回されそうな気がしないでもない」

女武道家「あーっ…ひどい!」

あけましておめでとう期待

 
竜騎士「まぁ…仕方ないだろ」ハハハ

女武道家「何も言い返せませんけど…」

竜騎士「それよか、お前とこうして一緒にいられて幸せだよ」

女武道家「…そうですね♪」


竜騎士「さぁてはじめるかな!」ヨイショ

女武道家「何をですか?」

竜騎士「明日のモチやら、料理の準備かな。お前はもう寝てていいぞ?」

女武道家「一緒に手伝いますよ」ムフー

竜騎士「そ、そうか…」


トコトコ…カチャカチャ…

 
竜騎士「既にもらってた材料はあるし、簡単にだけどな。手ぇ洗っとけよ」

女武道家「はいっ」

ジャーッ…ジャバジャバ…


女武道家「ひぇ~冷たいですっ!」

竜騎士「はっはっは、か弱い奴め!」

女武道家「竜騎士さん、じゃあちょっとこの水触ってみてくださいよ…」


竜騎士「何このくらい…」

ジャバッ…

竜騎士「ひうっ!?」ビクッ

 
女武道家「…」

竜騎士「…」

女武道家「…」

竜騎士「…」


女武道家「竜騎士さん?」ジー

竜騎士「ごほん…ま、なんだその…冷たいな…」

女武道家「…」ジー

竜騎士「悪かったよ!!」

 
女武道家「特別に許してあげますよ」

竜騎士「へいへい…」


女武道家「えーっと…私は何をすればいいですか?」

竜騎士「とりあえず冷蔵庫からコックから貰ってた素材あるし、出してくれ」

女武道家「はい~」

ゴソゴソ…


竜騎士「女武道家、そういやさ」

女武道家「はい?」

 
竜騎士「スッゲー…いまさらなんだけど…いいか?」

女武道家「何ですか?」

竜騎士「いやマジですっげー今更なんだ…が…」

女武道家「だから何ですか?」


竜騎士「今さ、こうして一緒に家に住んでるし、まぁその…色々ある…じゃん…?」

女武道家「そうです…ね」カァァ

竜騎士「俺さ、お前の家とか…お前が俺の両親に挨拶ってしたこと…ないよな…?」


女武道家「あ…」

竜騎士「しかも、同じ町内にお前の親いるのに…」

女武道家「あ…あはは…」

 
竜騎士「参ったなぁ…世界を冒険してたとはいえ…これは参った」

女武道家「明日にでも来ますか?」

竜騎士「いきなりかよ!」

女武道家「でも、タイミングなんて…」


竜騎士「ま、まずはさ。お前が俺の両親に挨拶しないか?」ハハ…

女武道家「それでもいいですけど。いつでもいいですよ?」アッサリ

竜騎士「そんなアッサリかよ」

女武道家「普通ですよ」

竜騎士「む…」

 
女武道家「とか、色々言ってる間にだいぶ料理進んでますよね」

竜騎士「素材はいいものだし、切り込んで入れたりするだけだしなぁ」

女武道家「ですね♪」


竜騎士「さて…いや本当に、どうしたものか…」ズーン

女武道家「そ、そんな新年から落ち込まなくても!」

竜騎士「いや男として色々とな…」ハァ

女武道家「あの竜騎士さんですよ?竜騎士さんは竜騎士さんなんですから、自信をっ!」グッ

竜騎士「はぁ~…ありがとうな」ポンッ

女武道家「あうっ…」

 
竜騎士「はは…」

女武道家「じゃあ、竜騎士さんの親に私から挨拶しますよ!」

竜騎士「それもそれでなぁぁ~…」


女武道家「どうすればいいんでしょうねぇ」

竜騎士「いや俺がしっかり、同棲してる竜騎士ですみたいに言えばいいんだろうけどよ」

女武道家「いくつもの冒険をこなしてきた人が、ここまで緊張慎重になるもんなんですね」アハハ…

竜騎士「それとこれは別問題だろうが…」


女武道家「じゃあ、どうすればいいんでしょう…」

竜騎士「要はタイミングとか、何かきっかけがあればいいんだが…」

 
女武道家「きっかけですかぁ」

竜騎士「…何かないか?」

女武道家「このお料理一緒に持ってくとか!」

竜騎士「いやそういうんじゃなくて…」


女武道家「…う~ん。私の実家の道場に入門します?」

竜騎士「あのね」

女武道家「冗談ですよ!」


竜騎士「新年そうそうこんなに頭痛くするとは思わなかったよ…」ハァ~

女武道家「頭痛が痛いですよねえ」

竜騎士「…」

 
女武道家「きっかけ…きっかけ…あっ!」

竜騎士「え?」

女武道家「じゃあ…こんなのはどうですか?」

竜騎士「何だ?」


女武道家「私に、竜騎士さんの子供ができた…とか…」チラッ

 
竜騎士「あのなぁ…」

女武道家「ダメです…か…ね」

竜騎士「冗談でそんなこと言ってみろ。親御さんに怒られるわ!」

女武道家「もしかしたら冗談じゃないかもしれないんですよね…」ボソッ


竜騎士「…あ?」

女武道家「…」

竜騎士「お前…今、なんて…」

プルッ…プルルルルッ…


竜騎士「電話…?こんな時間から…」

タッタッタッタ…

 
竜騎士「…」

ガチャッ…ザザッ…


竜騎士「はい、こちら竜騎士…」

上官"「「はぁぁっぴぃにゅういやあぁっっ!!!」"

竜騎士「うるっさ!!」キーン


…ザワザワ

軍人"「ちょ、それ極秘回線…そんな使っちゃ…!」

上官"「ええいかまうな!竜騎士、来年もいい年でありますようになぁ!」"

軍人"「新年会だからって酔っ払いすぎ…うわっ!」"ガシャーン!!

上官"「わはははー!」"

ガチャッ…ツーッ…ツーッ…

 
竜騎士「…」

女武道家「死んだはずの名前をあんな公に呼んでいいんでしょうかね…」

竜騎士「いやまぁ…しかも、来年宜しくって言ってたよな。今年じゃなくて」

女武道家「酒癖悪い…んです?」

竜騎士「あまり見たことないが…あんな感じらしい…な」


女武道家「…」

竜騎士「…」

女武道家「…ぷっ」

竜騎士「…くく」

 
女武道家「あはははっ!」

竜騎士「はっはっはっは!」


女武道家「まったく上官さん…」アハハ

竜騎士「そうだよなぁ…」ハハハ

トコトコ…ギュッ

女武道家「竜騎士さん?」

竜騎士「そうだな、お正月の間に…挨拶にでも行くとするかな。いつまでもこんなんじゃダメだよな」

女武道家「竜騎士さん…」

 
竜騎士「上官殿のバカな声でちょっと元気出たよ。全くだな」ハハ

女武道家「ですね♪」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上官「はっくしょん!」

軍人「風邪ですか?気をつけてくださいね」

上官「う、うむ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
竜騎士「それと、さっきの話…マジなのか?」

女武道家「子供…ですか?」

竜騎士「ん、んむ」


女武道家「あと少ししないと分かりませんが、そうかも…です」

竜騎士「そうか…そうか」

女武道家「嫌…ですか?」

竜騎士「誰がそんなこと思うか。ありがとう、女武道家」

女武道家「~…♪」


竜騎士「さて…寒くもなってきた。あと少しで料理の詰め込み終わったら今日は寝ような」

 
女武道家「ですねっ」

竜騎士「ははっ…」

女武道家「どうしたんですか?」

 
竜騎士「何でもないよ。ま…改めて今年もヨロシクな、女武道家」ニカッ

女武道家「はいっ、よろしくお願いします!」ニコッ

 
【E N D】

改めて、明けましておめでとうございます。
即興ではありましたが、リアルタイムに書き込みつつ投下したのは一番最初の作品以来でした。

今年も一年、宜しくお願いいたします。

>>676
あけましておめでとうございます。
お早いご挨拶ありがとうございました。

終わったのか…
終わっちまったのか…
乙した!

次回作は竜騎士の子供かな? チラッ

>>698
それはお楽しみにしていただければ…(´`)!

新作きたか

夢追人-YUMETUIBITO-
夢追人-YUMETUIBITO- - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1390043682/)

の連載を開始しました。200~300の短編予定です。


今までと異なって、現代をテーマにしたちょっとしたダークファンタジー的な作品になっています。。
合間を埋める作品として、読んで下されば幸いです。
ちょっとした初試みの点もあるので、色々と失敗してしまうかもしれませんが。

また、従来のファンタジーものはこの連載が終了後に公開する予定です。

では失礼しました。

皆様コメント等ありがとうございます。

>>709
お早い反応、嬉しく思います。ありがとうございます。

新作SS
女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」
女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1390819964/l50)

の連載を開始いたしましたことを報告いたします。

竜騎士のようなストーリーを継ぐ作品で、
従来かつ新作として楽しめるように新たなステージのお話として楽しんでいただければ幸いです。

それではありがとうございました。

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