穂乃果「海未ちゃん、キスしよう」 (12)

穂乃果「海未ちゃん、キスしよう」

海未「い、いきなりなにを言うのですか、あなたは!」

穂乃果「なんか今、友達同士でキスするのが流行ってるんだって」

穂乃果「それで穂乃果もしてみようと思ったの」

海未「流行っているからといって、私たちもそうする必要などないはずです!」

海未「それにキ、キスだなんてハレンチです! ……そういうのはちゃんと好きな人とするべきかと」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんこと大好きだよ」

海未「!」

穂乃果「海未ちゃんは穂乃果のこと……嫌い?」

海未「そ、そんなことはありませんが……」

穂乃果「じゃあ好き?」

海未「……ええ、まあ」

穂乃果「じゃあキスしよう!」

海未「それとこれとは話が別です!」

穂乃果「ちぇ、海未ちゃんはキスしてくれないか。ならことりちゃんとしてこよう」

海未「え、ことりとはまだしてないのですか?」

穂乃果「うん、一番は海未ちゃんとって思ったから」

海未「そ、そうですか……」

穂乃果「でも海未ちゃんがしてくれないならしかたないか」

海未「ま、待って……ください!」

穂乃果「うん?」

海未「わかりました、キ、キスしましょう!」

穂乃果「本当! やったー!」

海未「ただし、一度だけですからね!」

穂乃果「うん! じゃあ早速!」

海未「待ってください! まだ心の準備が……」

穂乃果「もう、まだそんなこと言ってるの?」

海未「だ、だってキスなんて初めてで……どうしたらいいか……」モジモジ

穂乃果「隙あり!」チュッ

海未「──っん!」

穂乃果「……んん」

海未(穂乃果とキス……どれほどこのときを夢見てきたか──でも)

穂乃果「……ぷはあ。えへへ、なんかくすぐったいね。変な感じ」

海未「…………」ポロポロ

穂乃果「──海未ちゃん!? そんな、泣くほど嫌だったの!?」

海未(嫌なんて、そんなことあるわけ──)

穂乃果「ごめんね、穂乃果が無理強いしちゃって!」

海未(嫌なことなんてあるわけない。むしろ私だって望んでいたことだ……でもこのキスは──)

穂乃果「海未ちゃん──」



コンコン

海未「!?」

ことり「送れちゃってゴメンね──って海未ちゃん、どうしたの!?」

海未「──っ!」ダッ

ことり「あ! ……行っちゃった」

ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃんと喧嘩でもしたの? でもなんかそんな雰囲気じゃなかったけど……」

穂乃果「うん、実は──」

ことり「なるほど、そういうこと」

穂乃果「うん……、海未ちゃん、やっぱり嫌だったのかなぁ。穂乃果が無理にお願いしたから」

ことり「うーん……」

穂乃果「穂乃果、謝ってくる!」

ことり「待って、穂乃果ちゃん!」

ことり「待って、穂乃果ちゃん!」

穂乃果「え、なに?」

ことり「海未ちゃんは別に穂乃果ちゃんとキスするのが嫌だったわけではないと思うよ」

穂乃果「え、でも海未ちゃん、あんなに泣いてたし」

ことり「それはそうだけど、でも海未ちゃんはキスが嫌で泣いていたんじゃないと思うの」

穂乃果「でも、それ以外の理由なんて考えられないよ……」

ことり「穂乃果ちゃんならそうかもね」

穂乃果「──え?」

ことり「ねえ、穂乃果ちゃん、謝るのはもちろんだけど、ちゃんと海未ちゃんの話を聞いてあげて」

ことり「穂乃果ちゃんの、その真っ直ぐなところはもちろん良いところだけど、誰だってそう在れるわけではないの」

ことり「海未ちゃんだってそう。海未ちゃんはハッキリとした女の子だけど、それでもいっぱい胸に秘めてることがあるの」

ことり「穂乃果ちゃんは、海未ちゃんのそういうところをもっと知ってあげて」

穂乃果「……うん、わかった。私、海未ちゃんのこと、わかってあげられてなかったんだなあ……」

ことり「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん。海未ちゃんが穂乃果ちゃんのこと嫌いになるなんて絶対にないから。だって二人は生まれる前から幼馴染なんだから」

穂乃果「ことりちゃん……」

ことり「さぁ、行ってあげて。きっと海未ちゃんだって待ってるよ」

穂乃果「うん!」

ことり「……行っちゃった」

ことり「本当に世話の焼ける二人」

ことり「それでも私にとって、とっても大切な二人……」

ことり「海未ちゃん、私の分まで幸せになってね」

海未「ここは……どこでしょうか」

海未「ああ、いつも練習で使っている屋上……」

海未「無意識にこんなところに来るなんて、私にはここがもうそれだけ大切な場所になったってことなのでしょう」

海未「でも、もうお終いでしょう。あんなことがあったのですから」

海未「思えば、穂乃果のことを意識しはじめたのはいつごろからだったのでしょうか……」

海未「きっとどれだけ思い返してもわからないでしょう。それだけ長くいつも一緒にいたのですから」

海未「私の人生は穂乃果とともにあったと言っても過言ではありません」

海未「私には穂乃果が必要だったが、きっと穂乃果には私は必要ないでしょう」

海未「これまではことりがいて、これからはμ'sの仲間がいる」

海未「あのみんなならきっと穂乃果と一緒にいても見劣りはしないだろう。堂々と歩いていけるだろう」

海未「でも、私は……」

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