佐天「吸血鬼を召喚し使役する能力かぁ」 (154)

初春「……ずいぶん変わった能力ですね」

佐天「吸血鬼って、なんかすごくない!?」

黒子「この学園都市で、非常識な能力ですわね」

初春「うーん、何かの比喩でしょうか?」

佐天「吸血鬼かぁ、なんだかわくわくするわね!」キラキラ

黒子「ばっかばかしい。そんなの都市伝説に決まってますわ」

佐天「そんなー」ガッカリ

黒子「だったら、実際に使ってみたらどうでしょうか?」

佐天「そうですね。やってみましょう」

初春「あ、でも昼間に召喚したら、吸血鬼はダメなんじゃないでしょうか?」

佐天「それもそうね」

黒子「そんなマジメに考えなくてもよろしいのに」

佐天「帰ったら試してみるよ」

初春「えー、危ないですよー」

佐天「そうかな?」

初春「絶対にひとりで召喚しちゃダメですからね!」メッ

佐天「う~……」

黒子「お二人とも、早く行かないとタイムセールが終わってしまいますわよ」

初春「あっ、もうこんな時間!」

佐天「御坂さんも来ればよかったのに、新作ケーキのタイムセール」

黒子「仕方ありませんわ……」

黒子「お姉さま、最近なんだかとてもお悩みになっていらしたようですし」

初春「きっと、何か理由があるんだと思います」

佐天「分かった!きっとかれ(ry」

黒子「のおおおおおおおおおおおおおお!!!」ゴロゴロ

初春「白井さん!」

佐天「なーんてね」

佐天(とは言ったものの、やっぱり気になるなぁ)

1時間後

佐天「あー、美味しかった」

黒子「なかなかの味でしたわね」

初春「そろそろ帰りましょうか」

佐天「そうだね。じゃ、また明日」

初春「佐天さん」

佐天「ん?」

初春「吸血鬼、勝手に召喚しちゃダメですからね!」ギロッ

佐天「あははー、分かってるってー」

黒子「初春は心配症ですわね」

その夜、佐天の部屋

佐天「しっしっし、ごめんね初春」

佐天「せっかくの能力だもの。使わない手はないわ」

佐天「それに吸血鬼なんて、都市伝説ハンターの血が騒ぐじゃない!」

佐天「もしものときのために、ニンニクも食べたしね」

佐天「ちょっと口臭が気になるけど……」

佐天「それにしても、吸血鬼って、どんなのが出てくるんだろう」

佐天「ええい、考えてもしょうがない。そりゃ!」

煙がもくもくと立ち昇る。
その煙の向こうに、人影がゆらりと現れた。

アーカード「……ここはどこだ」

そこには、赤いコートを着た長身の男が立っていた。

佐天「本当に出たあああ!?」

驚く佐天。男が尋ねる。

アーカード「おい娘」

佐天「は、はい!?」

アーカード「ここはどこだ?」

佐天「が、学園都市です!」

アーカード「学園都市?知らん名だな」

アーカード「チェシャ猫を追っているうちに妙なところに出たようだ」

佐天「あ、あの~」

アーカード「私を呼んだのはお前か?」

佐天「そうですけど……」

アーカード「ふん、こんな小娘に呼び出されるとはな」

佐天(なんかスゴイ人が来ちゃったなぁ……)

佐天(この人、やっぱり吸血鬼なのかな……)

アーカード「おい娘」

佐天「な、なんでしょう……?」

アーカード「腹が減った。血をよこせ」

佐天(やっぱり吸血鬼だ!)

佐天「って、私を吸血鬼にするつもり!?」

アーカード「安心しろ。そのつもりはない」

アーカード「これ以上従僕が増えるのは面倒だからな」

佐天「で、でも、噛みついたりはしないですよね?」

アーカード「指先をほんの少し切ればいい」

佐天「でも……」

アーカード「早くしろ!」

佐天「はひっ!」

机からカッターを出し、佐天は指先を切った。
うっすらと血が滲む。
佐天は心臓が高鳴るのを感じた。

アーカード「それでいい」

アーカードが跪く。
舌先が佐天の指を這う。

佐天(なんか……変な気分……)

アーカード「……ふむ、正真正銘100%処女の血だな」

佐天「い、言わなくていいです!」

アーカード「さて、それでお前は私を呼び出してどうするつもりなんだ?」

佐天「え?えっとー、それはですね~」

佐天(しまった、何も考えてなかった……)

アーカード「どうした、早く答えろ」

佐天(うわー、なんかイライラしてるよ……)

佐天「そ、そう言えば、あなたの名前はなんて言うんですか?」

アーカード「アーカードと呼ばれている」

佐天「私は佐天涙子って言います。よろしくお願いしますね」

アーカード「おい娘、早くしろ」

佐天「せっかく名前教えたのに……」

佐天「そうですね、まずは親睦を深めるためにゲームを」

アーカード「断る」

佐天「ですよねー」ウルウル

アーカード「と言いたいところだが、どうやら今はお前が私の主らしい」

佐天「え、そうなんですか?」

アーカード「主の命令ならば逆らえん。付き合おうか、その遊戯に」

佐天「やったー!じゃあ準備しますね!」

ウキウキとした気分で、佐天はゲーム機を取り出しテレビにつないだ。

佐天「マリカーしましょ、マリカー!」

アーカードの方を振り返ると、そこには少女がいた。

佐天「……え?」

アーカード「どうした、娘」ニヤニヤ

佐天「なぜ黒髪ぱっつん!?なぜ声だけダンディー!?」

アーカード「ふん、姿形など、私にとっては何の意味もない」

佐天「だったら声も可愛くしてくださいよ!」

アーカード「五月蠅い。さあ、早く始めようか」

2時間後

佐天「なんでこの人こんなに上手いの……」

アーカード「どうした?まだ50連敗しただけだぞ。かかってこい」

佐天「まさかこの私が負けるなんて……」

佐天(しかし、吸血鬼とゲームをするなんて、思ってもみなかったなぁ)

隣の少女を見る。
可憐な少女が楽しそうにゲームに興じていた。

佐天(こう見ると、可愛いかも)

アーカード「早くコンティニューしろ。ハリー!ハリー!」

佐天(でも声が……)

こうして夜が更けた。

翌朝

佐天「……あれ?いつの間にか寝ちゃった?」

ベッドの中で身を起こす。
カーテンの外はすでにかなり明るい。
時計を見ると、正午を回ったところだった。

佐天「アーカードさん?」

部屋を見渡す。
彼の姿はない。
少女の姿の彼もない。
代わりに部屋の真ん中に、巨大な黒い棺桶があった。

佐天「なにこれ……」

佐天「もしかしてアーカードさんのベッド?」

佐天「吸血鬼って、カンオケで寝るんだ。へー」

表面に何か文字が書いてある。
佐天が手を伸ばす。

佐天「ざ・ばーど・おぶ・はーめす?」

アーカード「触れるな」

佐天「うわっ!?」

少しだけ開いた棺桶の中から、鋭い眼が見えた。

アーカード「私の棺に触れるな」

佐天「ご、ごめんなさい……」

佐天(大切なものなのかな。アーカードさん怒ってる……)

シュンとする佐天。
しばらくすると、棺桶がごそごそと動き出した。

佐天「え?」

見ると、脚が生えている。それもたくさん。

佐天「きゃあああ!!!」

Gの如く動き回る棺桶。
棺桶はそのまま脚でドアを開けて、部屋の外へと消えていった。

佐天「吸血鬼ってなんなの……」

アーカード「おい」

佐天「うわっ!いきなり後ろから声をかけないでください!」

佐天「ていうかあなた棺桶の中にいませんでしたっけ!?」

佐天「ていうかていうか!あの棺桶!どこ行ったんです!?」

アーカード「いちいち喧しい娘だ。そんなことはどうでもいい」

佐天「ツッコミが追い付かないよぉ……」

アーカード「さあ我が主よ。次のオーダーをよこせ」

佐天「命令って言われてもなぁ」

佐天(また女の子の姿に戻るのもいいなぁ)

佐天(でも今の状態もちょっと格好良いかも)

佐天「どんなことができるんです?」

アーカード「いろいろできる。ナチスをくびり殺したり神父の心臓を」

佐天「けっこうです」キッパリ

佐天(この人、実はかなり危ない人かも……)

佐天(でも、とても強いのかな……だったら……)

佐天「だったら、私の友達を助けてください!」

アーカード「ほう」

佐天「私の友達にとっても困っている人がいて、でもその人はとっても強くて」

佐天「私に助けを求めたりしなくても自分で何でも解決できちゃうすごい人なんですけど」

佐天「でもそれでも、その人が今困ってて、私はその人の力になりたいんです!」

アーカード「……」

佐天「あの……ダメですか?」

アーカード「くっくっくっく……」

佐天(こわっ!!)

アーカード「いいだろう、我が主よ。そのオーダー、確かに承った」

佐天「ありがとうございます!」

佐天(御坂さん、私、あなたのお手伝いがしたいんです)

佐天(迷惑かもしれない。必要ないかもしれない)

佐天(でも私、あなたのために何かしたい)

佐天(じっとしているのは、嫌だもんね!)

学園都市、とある路地裏

佐天「……とは言ったものの、どこにいるのかしら……」

佐天は当てもなく路地裏を歩く。
陽はすでに傾きかけていた。

佐天(アーカードさん、ちゃんとついてきてくれてるかな)

アーカード(お前の影の中にいる。問題ない)

佐天(うわ~、私テレパシーで会話しちゃってるよ……)

佐天「こんなんで、見つかるのかなぁ」

アーカード(私の”体”が街中を走っている。すぐに”掛かる”)

佐天(意味分かんないけど凄そう……。吸血鬼ってこんなんだっけ?)

佐天「そう言えば、さっきはごめんなさい」

アーカード「何の話だ」

佐天「ごき……棺桶に勝手に触ってしまって、ごめんなさい」

佐天「あれ、あなたの大切な物なんですよね」

アーカード「……私の最後の領地だ」

アーカード「あそこで生まれ、あそこで死ぬ」

佐天(アーカードさん、ちょっと寂しそう)

角を曲がる佐天。

アーカード「おい」

佐天「え?」

どすん

誰かにぶつかった。

佐天「きゃ!?」

不良A「おいおいおいおい、いってぇじゃねーかよぉ?」ニヤニヤ

不良B「骨が折れちまったぞ、どうしてくれる?」ニヤニヤ

佐天「ご、ごめんなさい……」

不良C「あれあれぇ?この子可愛くない?超可愛くない?」ニヤニヤ

不良A「うっへっへ、こりゃあいいや」ニヤニヤ

佐天(アアアアアーカードさーん!)

3人の不良が佐天を取り囲む。

不良B「ねえカノジョー、俺たちと楽しいことしない?」ニヤニヤ

不良A「それでチャラにしてやるからさぁ」ニヤニヤ

アーカード(まったく、どこにでもこの手の輩はいるものだな)

佐天(そんなこと言ってないで、助けて下さいよ!)

不良C「オラ何とか言えよ!」ドン!!

佐天「痛っ!」

アーカード「しょうがない小娘だ」

不良たちは見た。
ビルの壁面に映った少女の影から、人の上半身が浮かび上がってくるのを。
影の手が伸びる。

アーカード「ゴミどもめ」

不良達「……!!」

アーカードの眼が妖しく光る。

アーカード「失せろ」

不良達「はい」

佐天は目を丸くしたまま、3人の不良の背中を見送った。

佐天「え?え?今何したんです?」

アーカード「何もしていない」

佐天「はぁ……」

佐天(エ口光線か何かかな……)

アーカード「それはそうと、お前は本当に危機感が足りんな」

アーカード「それではいくつ命があっても足りん」

佐天「反省します……」

アーカード「……それはまあいい」

アーカード「ところで、お前の輩(ともがら)が見つかったぞ」

佐天「本当ですか!?」

アーカード「……」

佐天「どうし……!?」

佐天は見た。
アーカードの顔には、怖気のするような笑みがあったのだ。

アーカード「どうやら、”楽しいこと”になっているようだぞ」

佐天「御坂さん……!」



人いない……寂しい……

とある倉庫街に爆音が響く。

一方通行「ヒャーッハッハハハハハッハハハッ!!!」

一方「いつまで逃げてるつもりですかァ?三下ァ!」

上条「ちくしょう!」

一方「クケケケケケケ!」

再び爆音。
髪をツンツン立てた少年が宙を舞う。

御坂「うう、強い……」

御坂美琴は傍らに倒れている々姿の妹を見つめる。
生きてはいるが、すでに意識が無かった。

御坂「やっぱり無理なのよ……あいつに勝つなんて」

御坂「あいつまで巻き込んで……私、バカみたい……」

御坂は気を失った。
3人の敵を倒し、一方通行は再び笑う。

一方「ケケ、雑魚どもがよォ。もちっと楽しませろよなァ」

アーカード「おい」

声が掛かった。

一方「あァン?」

そこには赤いコートの男が立っていた。

一方「誰だァ、てめェ?」

アーカード「俺の名前はアーカード。HELLSINGのゴミ処理係だ」

一方「ヘルシングだァ?聞いたことねェなァ?」

一方「でもちょうどいいや。ゴミならあるぜェ?生ゴミが3つもなァ!」

アーカード「……まったく、気配を感じて来てみたら、こんな餓鬼だとはな」

一方「……あァン?」

一方通行の表情が歪む。

アーカード「餓鬼が餓鬼をいたぶって好き勝手絶頂やってもらわれると、この上なく不快だ」

アーカード「そうだろう、娘?」

佐天「うえっ!?」

物影に隠れていた佐天に向かって、アーカードは言う。

アーカード「さあ我が主よ。オーダーを。オーダーをよこせ」

佐天「……そいつを倒して、御坂さんたちを助けて!」

アーカード「認識した。マイマスター」ニィ

一方「何だァ?何ですかァ?」

一方「主だの何だの、SMプレイですかってンだ」

一方「おいおっさン。俺が誰だか分かってンのかァ?」

アーカード「知らんな」

一方「ケッ、じゃあ教えてやるよ。俺は一方通行だ」

一方「学園都市の最強の超能力者(レベル5)様だよォ!」

佐天(マジで!?実在するんだ!?)

佐天「アーカードさん!さっきの取り消し!やばいって!」

佐天「早く御坂さん達を助けて逃げようよ!」

一方「もうおっせェよ!」

一方通行が地面を蹴る。

無数の砂利が、まるで散弾銃のようにアーカードを襲う。

佐天「アーカードさん!!」

肉と内臓が引き裂かれ、血が噴き出す。
佐天が悲鳴を上げる。

一方「ウヒャヒャヒャヒャ!どうしたよォ、糞奴隷野郎!」

アーカードが倒れる……と思われた。

アーカード「餓鬼が」

佐天「え?」

一方「なッ!?」

バラバラになったはずのアーカードの身体が再生する。

アーカード「なるほどなるほど、そういう能力か」

佐天「すごい……」

一方「へへ、どういう細工か知らねェが、随分と楽しませてくれるじゃねぇか!」

轟ッ!

一方通行の身体が加速し、弾けたようにアーカードに突進した。
アーカードは銃を抜き、それに応じる。

ヒュパ!

連発する破裂音。
しかし一方通行は止まらない。

一方「ミンチにしてやンよォ!!」

アーカードの首が飛ぶ。
佐天がまた悲鳴を上げる。

一方「まだまだァ!」

無数の鉄骨が飛来し、アーカードを押し潰していく。

佐天「アーカードさーん!」

砂煙と血の臭いが空間を満たす。

一方「どうだァ、ゴミ処理係ィ?自分がゴミカスになる気分はよォ!」

一方通行の邪悪な笑いがこだまする。

しかし――

アーカード「拘束制御術式第3号、第2号、第1号、開放」

アーカード「状況A 『クロムウェル』発動による承認認識」

アーカード「目前敵の完全沈黙までの間、能力使用限定解除開始」

チキチキチキチキ

一方「な、なンだァ!?」

アーカード「教育してやろう。吸血鬼の闘争というものを」

アーカードの身体が拡散していく。

黒い闇の中に、不定形の”何か”が浮かび上がる。

それは黒い獣となって、一方通行に襲いかかる――!

一方「なンだよこれはァ!?」

咄嗟に身をかわす。
最強の自分が、身をかわすことになるとは。

ゾルッ!

一方「うぎゃああああああああ!!俺の腕がああああああ!!!」

右腕が、黒い獣に食いちぎられていた。
真っ赤な鮮血が生々しく光っている。

一方(畜生ちくしょう、どうなってやがンだチクショウ!)

反射膜は確かに張っていた。
しかし防げなかった。

アーカードの声がする。

アーカード「おいどうした最強?」

アーカード「まだ腕が一本千切れただけだぞ。かかってこい」

闇の中からアーカードが言う。

一方「うぎぎぎぎぎ……」

アーカード「その程度の傷で戦闘不能とは情けない」

再び獣が一方通行を襲う。

一方「うげェ!」

左脚が闇に消える。
迸る血が夜を染める。

アーカード「もはや演算もできんか」

アーカード「能力に比べて、肉体と精神が脆弱すぎるな」

静かに歩み寄り、アーカードが一方通行に囁く。

アーカード「ときに最強。貴様はどのくらいの間、不眠不休で闘える?」

アーカード「何も食べず、眠らず、休まず、何年くらい闘っていられるかね?」

アーカード「私を打ち倒したいのならば、早く立つことだ」

アーカード「なあに、あとたったの3,000,000回くらいだ」

虫のように這いつくばる一方通行をアーカードは見下ろす。

一方通行は恐怖していた。
はじめて感じた、真の恐怖であった。
長い間ずっと忘れていた、本物の恐怖。

死だ。
死がそこにあった。

アーカード「1度目の攻撃を阻止できなかったのは、まあいい」

アーカード「しかし2度目ンオ攻撃を反射できなかったのはどうしてだと思う?」

アーカード「恐怖だ。お前は恐怖を知らなかった。否、見ようとしていなかった」

アーカード「自らの内の恐怖を克服しない限り、貴様は私を倒せない」

一方通行の目の前に絶望が広がる。
こいつは本物の化物だ。
もう演算も糞もない。
ただただ、一方通行は怯えていた。
今まで忘れていた恐怖を、思い出していた。

アーカード「ほう、貴様……」

アーカードが何かに気付いた。

アーカード「天使の、いや、天使の偽姿をその身に宿すか」

アーカード「なるほど。貴様のその能力もそれならば頷ける」

アーカード「だがこれではっきりした。貴様では私を倒せない」

アーカード「私を倒すのは、倒していいのは……」

佐天「待って!」

アーカードと一方通行の間に、割って入る者がいた。
佐天だ。

アーカード「……」

佐天「もういいです!もういいんです!」

佐天「どうかこの人を、見逃してあげてください!」

眼前の少女は怯えていた。
しかし、その双眸はしっかりと見開かれ、アーカードを捉えていた。

アーカード「どけ」

佐天「どきません!」

アーカード「これが闘争の契約だ」

アーカード「何者かを打ち倒しに来た者は、何者かに打ち倒されなければならん」

佐天「そんなの知りません!」

佐天「どうしても闘うというのなら、私が相手になります!」

アーカード「……ふん」

アーカードが踵を返す。

佐天「アーカードさん……」

アーカード「走狗は飼い主を噛まん。好きにしろ」

アーカード「……いいのかもしれない。お前のようなものがいても」

佐天「アーカードさん……」

佐天の顔に安堵がにじむ。

上条「おい、あんた……」

見ると、両脇を2人の少女に支えられて、少年が立っていた。

上条「助けてもらったみたいだな。礼を言うぜ」

アーカード「……!」

吸血鬼の眼が見開かれる。

アーカード「幻想殺しか。まさかここで、こんなものに出会えるとはな」

上条「あんた、これを知ってるのか?」

アーカード「小僧、名を何と言う」

上条「上条当麻だ。あんた、吸血鬼か?」

アーカード「ふふ、だったらどうする」

上条「どうもしない。俺には興味もない。ただ」

少年の表情が険しくなる。

上条「あんたが俺や俺の仲間の敵になるってんなら、容赦はしない」

アーカード「くくく、楽しみにしておこう、”機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキーナ)”よ」

上条「え?」

アーカード「だがお前では私を倒せない」

アーカード「お前のような、”人々の願った英雄”ではな」

上条「……どういうことだ?」

アーカード「化け物を倒すのはいつだって人間だ」

アーカード「英雄や機械仕掛けの神の如き、自動存在ではない」

アーカード「人間でなくちゃあならないのだ」

上条「?」

アーカード「お前は不幸になる」

上条「もう十分すぎるほど不幸ですよ……」

アーカード「これから先、お前を待っているのは血塗られた運命だけだ」

アーカード「その中でお前は闘い続ける」

アーカード「それがお前の宿命だ」

上条「よく分かんねーけど、ひとつだけはっきりさせておくぜ」

上条「宿命だか運命だか知らねぇが、そんなもの、俺が全部ぶち殺してやるぜ」

少年は拳を突き出す。
吸血鬼は笑う。

アーカード「帰るぞ、涙子」

佐天「あ、ちょっと、待って下さいよ!」

佐天「みんな怪我してるんですよ!」

アーカード「知らん」スタスタ

佐天「この、一方通行さんはどうするんです?」

アーカード「奴の能力なら、千切れた手足を繋ぎとめることもできよう」スタスタ

佐天「そんな無責任な……」

御坂「佐天さん!」

御坂が呼び止める。

佐天「御坂さん、大丈夫ですか!?」

御坂「私たちは平気。佐天さん」

佐天「な、なんですか?」

御坂「ありがとう」

佐天「そんな、私何も……」

御坂「そんなことないよ。本当に、ありがとう……」

佐天「そんなお礼なんてー。あははははー」

佐天「わ、私、もう行きますね!邪魔みたいですし!」

御坂「ちょ!ちょっとこれはそんなんじゃ!///」ビリビリ

上条「うわ痛ぇ!何しやがるビリビリ!」

御坂「うっさいわねー!支えてあげてるんだからありがたく思いなさいよね!」

ミサカ妹「お姉さま、照れ隠しは良くないですとミサカは」

御坂「あんたは黙ってなさいよ!」ビリビリ

上条「不幸だー!」

帰り道

佐天「って、あれ?」

佐天「アーカードさん、そう言えばさっき、私を名前で呼びませんでした?」

アーカード「ふん、小娘が」

佐天「ひっどーい!私にはちゃんと佐天涙子って立派な名前が」

アーカード「五月蠅い。お前なんかただの娘で十分だ」

アーカード(そう、ただの娘で十分だ)

死人が舞い地獄が歌う、死の世界
自分はそこで生きてきた。
そんなものとは無縁の、無垢な少女
ただの娘

アーカード(永い間、忘れていた)

アーカード(これもまた人間の姿なのだ)

アーカード(闘争も戦争も知らない、何も知らない、なんと甘美で暖かな……)

深夜、佐天の部屋

佐天「今日はなんだか疲れてしまいました~」

ベッドに入り、少女が笑う。
吸血鬼は、それを見つめる。

佐天「アーカードさん」

アーカード「どうした」

佐天「眠るまで、手を握っててください」

佐天「命令ですっ」

にっこりと佐天が微笑む。

アーカード「ヤー、マイマスター」

眠る佐天を見つめる。
その首筋を見つめる。

アーカード「……」

佐天「って、何やってるんですかああああああ!!!」

バキーン

佐天「もう!乙女の血を吸おうとするなんて、信じらんない!」

アーカード「く、ははは」

アーカード「お前は本当にいい女だ。血を吸いたくなる」

佐天「もう///」

アーカードが佐天の手を包む。

アーカード「おやすみ、お嬢さん(フロイライン)」

佐天「おやすみなさい、アーカードさん」

アーカード「ああ、おやすみ。涙子」

少女が眠る。
夢を見る。

そう、すべては夢。

朝、佐天の部屋

佐天「ん~、よく寝た!」

佐天「今朝はなんだか調子がいいぞ~」

佐天「あれ?こんなとこ怪我してる」

指先の怪我をじっと見つめる佐天。

佐天「なんだっけ、何か大事な……」

佐天「うーん、忘れた!」

少女の1日が始まる。

いつもどおりの、平和な日常が。

2030年、ロンドン

アーカード「……」

セラス「あ、やっと起きましたね、マスター」

アーカード「セラスか……」

セラス「椅子の上で眠れるなんて、本当に器用ですね」

セラス「これも吸血鬼の力?」

アーカード「……」

セラス「もー、寝ぼけてないで手伝ってください」

セラス「さっきインテグラ様から命令で、中東のテロリストぶっ殺して来いーだとか、」

セラス「異教徒殲滅して来いーだとか言われたんですから」

セラス「本当に、人使いが荒いですよ。だから小ジワが……」

インテグラ「聞こえてるぞ、セラス」

セラス「ギャー!銃を向けないで!銀の弾丸装填しないで!ギャー!」

アーカード「相変わらず、騒々しい連中だ」

インテグラ「ん?どうしたアーカード」

アーカード「何がだ?」

インテグラ「ずいぶん上機嫌だな。良い夢でも見たのか」

セラス「へー、どんな夢見たんですか、マスター。ちなみに私はですねー」

インテグラ「お前の話は聞いとらん」

セラス「うう、ひどい……」

アーカード「……」

インテグラ「何をニヤけている、気持ち悪い」

アーカード「ふん、なんでもないさ、お嬢さん」

立ち上がり、インテグラの前に跪く。

アーカード「オーダーを。我が主」


END

スレ建てる時間を間違えた
こんな犬の糞のような駄文を読むなんて、あなたたちヒマ人ね!

なんか姫神好きな奴が多いっぽいのが申し訳ない
でも姫神ってあれじゃん
あれじゃん、あれ

佐天さんが吸血鬼キャラ召喚しまくるってのも面白そうだな
誰か書け

俺は寝る

暴君ヴァルバトーゼ(以下暴君で)「……む。ここは何処だ」

佐天「あ、ここは学園都市です」

暴君「学園都市? 聞いた事がないな」

佐天「あの、貴方は吸血鬼ですよ、ね」

暴君「そうだが」

佐天「なんで太陽の下なのに平気なんです」

暴君「……? なんの事だ」

佐天「え、吸血鬼って太陽の下だと灰になるんじゃ……」

暴君「知らんな。太陽の下では能力が下がりはするが、灰になるといった事はないな」

※吸血鬼が日光で燃え尽きるという演出を最初に行ったのはF・W・ムルナウ監督映画『ノスフェラトウ』(1922年)からで、以後はこの演出が頻繁に使われるようになり一般化ものです

初春「あ、佐天さん。アリサさんとの待ち合わせ時間が……って、誰です! その人は!!」


この後、色々と有り、エンディミオン倒壊を閣下の膨大な魔力で防いだりしたとか。

佐天『吸血鬼召喚!』
DIO「貴様は今まで食べたパンの枚数を覚えているのか?」
レミリア「私の友人は十三枚だそうよ」
アルクェイド「志貴いないなら早く帰りたいんだけど!」
ブレイド「同胞と共闘とはな」
伯爵「やめて太陽銃やめて」
ヴァンプ「激しく同意」
セラーナ「早く太陽の無い所へ……」
令裡「誰か招いて下さるの?」
デミトリ「come on baby...」
萌香「身の程を知れ」
荒木飛呂彦「若さの秘訣は波紋法です」

ざっとこれくらいか
案外出てこないなぁ

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