少女「何してるんですか?」ホームレス「え」 (20)

少女「えっと、いつもここの橋の下にいるから、気になってて」

ホームレス「(うわ、めんどくさ……せっかく人気も少ない、ライバルもいない良い場所見つけたと思ったのに……)」

少女「あ、あの……」

ホームレス「(『いつも』って言ってたしな。どうせもう噂になってんだろ。移動するか、留まるか……)』

少女「あのっ!!」

ホームレス「うるさいなっ!!」

少女「ひっ」ビクッ

ホームレス「どこの学校? 何年生?」

少女「ぅ……この橋を渡って二つ目の角を曲がってずーっと先にある中学校です……2年生、です……」

ホームレス「(1番めんどくさい時期だな……。はぁ、やっぱり移動するか)」

ホームレス「あのな、嬢ちゃん。茶化したくなる気持ちも分かるが、こちとら仕方なくホームレスやってるんだ」

少女「ちゃ、茶化すなんてそんな! そんなつもり、ないです……」

ホームレス「そっか、まぁ移動するだけなからね、俺。残念だったね」

少女「……あの、これ、受け取ってください!」

ホームレス「(……あんパン?)」

バタコさん「……あの、これ、受け取ってください!」

アンパンマン「(……あんパン?)」

少女「いつも、お腹減ってるみたいだから……」

ホームレス「(罰ゲームかなにか? まぁ腐ってはなさそうだし、受け取って損はないか)」

ホームレス「ありがとう、後で食べるわ」

少女「はっ、はい! ありがとうございます!」

ホームレス「何で君が礼言ってんの」

少女「あっ、そうですね、そういえばそうですね、えへ、ふふっ」

ホームレス「ははは」

ホームレス「(笑いかた気持ち悪)」

少女「私、いつもここ通るんです!」

ホームレス「ああ、そうなんだ、気づかなかった。珍しいな」

少女「それで、あの……毎日、食べ物持ってきていいですか!」

ホームレス「え? なんで」

少女「いえ、そうしたら、おじさんも助かるかな、って!」

ホームレス「いやありがたいけどさ……おじさん、そういう意味で『なんで』って聞いたんじゃないよ。君がそんなことして何の意味があるのかな?」

少女「いえ、助けたいと、それだけで……困ってそうだし……」

ホームレス「(……どうするか)

ホームレス「(まぁ、笑われるのは嫌だが、慣れてるしな……本当に食べ物がもらえるなら罰ゲームでもいいか。割り切ろう)」

ホームレス「そっか。じゃ、ありがたくもらおうかな」

少女「わっ、よかった! それじゃあ、明日も来ますね! 明日もいてくださいね!」

ホームレス「わかったわかった。ありがとうね」ニコ

少女「はい、では!」クルッ

ホームレス「はい、ばいばい」

ホームレス「(こんなの初めてだな。まぁ、餌付け気分でやってるんだろうし、すぐ飽きるだろ)」

ホームレス「(少し腹立つ子だけど、食べ物がもらえるなら……)」

ホームレス「……本当に来るのかねぇ」

翌日、夕方

少女「おじさーん!」

ホームレス「(来たか)」

ホームレス「本当に来てくれたんだね」

少女「はい、食べ物持ってきました!」

ホームレス「ありがとう。早速もらおうかな」

少女「いえ、そんなに慌てなくても! まず、お話したいです」

ホームレス「……いや、持ってきてくれたんでしょ」

少女「え、はい、持ってきましたけど」

ホームレス「……」

少女「す、すみません、今出しますね! お腹減ってますよね!」ガサッ

ホームレス「(……こっちは話なんかしたくないのに)」

ゴッチャア

ホームレス「って、こんなに!?」

少女「はい! ……迷惑でしたか?」

ホームレス「……いいの、これ?」

少女「はい! お金だけはあるんです!」

ホームレス「へぇ……そうなんだ」

少女「喜んでいただけましたか!」

ホームレス「ああ、もちろんだよ」

少女「それはよかったです!」

ホームレス「(すごいな……この子、予想以上に使えるのかもしれない)」

少女「これで、お話してくれますか」

ホームレス「(慎重にいかないとな。いつかは飽きるんだろうが、せっかく捕まえたエサだ)」

ホームレス「(絞れるだけ絞らないと)」

少女「あ、あの……お話したいんです、私。駄目ですか」

ホームレス「ん? ああ、ごめん、そうだったね。嬉しすぎてね」ニコ

少女「……っ! よかったです!」パァァ

ホームレス「ははは。どんなお話がしたいの?」

それから、長いこと話をした。

お話とは言っても、少女が一方的にしゃべり倒すだけだった。

親は共働きで長いこといないこと、小学校までは友達がいたのに中学校で急に友達がいなくなったこと。自分の価値が分からないなんて中学生特有のどうでもいい話も聞いたな。

こんな性格だから人間関係が複雑になってくる中学あたりで友達がいなくなるのも頷ける。

周りからしてみたら鬱陶しいんだろ。

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