少女「ある日森の中、期待値の低いエルフに出会った」 (129)

エルフ「で、出たな人間!!!」

少女「…」

エルフ「森を脅かす悪魔め!!その鹿に一体何をしようとしている!」

少女「…」

鹿「?」

エルフ「お前たちの所業でどれだけ森の仲間たちが傷ついてきたと思っているんだ!」

少女「…」

エルフ「今こそ私がお前たちに正義の鉄槌を下してやる!」バッ

鹿「…フェーンw」クルリ

少女「あ」

エルフ「覚悟しろ!二度と森に近づけない体にしてやる!」

少女「…」

少女「…」ハァ

エルフ「お前ら人間なd」

少女「うるせえ!!!!!!!!!」

エルフ「えっ…」

少女「鹿が!!!逃げちゃったじゃん!!!」

エルフ「あ、…え」

少女「私!ここで!鹿を写生してただけ!」バッ

エルフ「え、しゃ…?」

少女「絵を描いてるの!分かる!?」

エルフ「し、しかし何か刃物を取り出して…」

少女「これはパレットナイフです!!!絵の具を混ぜる!道具!!」

エルフ「…」

少女「…」

エルフ「何か突起物を取り出していたではないか!!」

少女「鉛筆!!!!」

エルフ「鹿に刺そうとしていたのだろうが!!」

少女「刺せるか!!クロッキー用のふにゃふにゃ鉛筆だわ!!」

エルフ「くっ…」

少女「くっ、じゃねえよ…」

エルフ「に、人間め。あくまで己の罪を認めず食い下がってくるとは」

少女「だから絵を描いてただけだって言ってるだろ、その耳はお飾りかよ」

少女「…」

少女「あれっ」

エルフ「な、何だ!どこを見ている貴様っ」

少女「耳が」

エルフ「わ、私の耳を削ごうというのか!?その突起物で!?」

少女「耳がとんがってる」

エルフ「いいだろう相手をしてやろう!このレイピアの錆となるがよい!」

少女「…」

エルフ「さあ来い、返り討ちにしてやる!」

少女「……エルフじゃん」

エルフ「そ、それが何だというのだっ」

少女「…」ポカン

エルフ「何を呆けている!こちらから先手をかけるぞ!?」

少女「…」

エルフ「い、いいのか?斬るぞ?」

少女「…本物のエルフ?」

エルフ「そうだと言ってるだろうが!」

少女「…」スクッ

エルフ「なっ、何だ。ついにやる気になったのか!?貴様のような小娘一人、私がすぐ」

少女「絵描かせて」

エルフ「はっ?」

少女「描かせて」

少女「ちょっと動かないで。すぐパース取るから。…剣構えたままにしててよ」バサッ

エルフ「何だその大きな板は!?た、盾か!?そんなもので私の攻撃は防げんぞ!」

少女「いやスケッチブックだし」シュッ

エルフ「小刀を取り出したな!?やはり貴様、この森を害そうと」

少女「鉛筆削るだけなんですけど」シャッシャッ

エルフ「…」

少女「よし」

エルフ「木屑を地面に捨てたな!人間の公害物で森を汚すつもりか!」

少女「うるさいなぁ!私の行動全てにケチつける気!?」

エルフ「問答無用だ!覚悟!」

少女「あ、動くなってば」

エルフ「はぁああああああっ!」ブン

少女「…」イラッ

少女「動くなって言ったろうが!!」

バゴッ

エルフ「ひっ、いった!?」

少女「あ、つい」

エルフ「…」ワナワナ

少女「ごめん、イラっとして。…ええと、スケッチブックだからそんなに痛くはないと思うけど」

エルフ「ゆ、許さん人間…」プルプル

少女「ごめんって。軽くはたいただけじゃない」

エルフ「お」

少女「お?」

エルフ「覚えていろ!いつか必ずお前に報いを受けさせてやる!!」ダダダ

少女「…」

ガサガサ…

少女「…」

少女「何だ今の」

鹿「フーミーンwwww」

少女「あ、お帰り」

鹿「クーwwww」

少女「よしよし、また続き描いてあげるからね」

鹿「フーンwwww」

少女「うるさかったね、あいつ」

鹿「wwww」

少女「エルフって、マジでいたんだ…」

少女「何か想像してたのよりずっとアホっぽかったけど」ボソ

鹿「クヒーwwwww」

エルフ「…はぁ、はぁ」タタタ

エルフ「くっ…」ヘタリ

エルフ「…」

エルフ(どどど、どうしよう殴られた)

エルフ(何か後遺症が残ってしまうのかもしれない、第一あの武器は何だ?怖い怖い怖い)

エルフ(小娘程度と思って油断してしまったではないか、こ、この私が…)

エルフ(それにあの娘、誰かに私の存在を言いふらすかもしれん。そうなったら…)

へへへ、エルフだぜー

珍しいなぁおい

ヒャッハー!

エルフ「…」

エルフ(うわあああああああああああああああ)

エルフ(や、やんなきゃよかった!娘一人だからって勇気出さなきゃよかった!)

エルフ(何であの時声をかけたんだぁああああ)

エルフ(こ、こうなったら…)

エルフ(あの娘を消すしかない)ギン

エルフ(口封じをするしかあるまい。なに、家まで追いかけて不意打ちをすれば一発だ)

エルフ(私の存在を口外される前に…)ダッ

……


少女「ふんふーん」ガタガタ

ガチャ

少女「ただいまー」

犬「…」チラ

少女「おっす駄犬今帰ったぞ」

犬「…」フイ

少女「相変わらずブサイクだなあ、家帰ってきたら可愛い子犬になってればいいのに」

犬「…」ファー

少女「あのねえ、今日変なやつに会ったよ」

犬「…」

少女「肌が真っ白でね、目が金色でね、髪の毛は見たことない綺麗な銀の…」

犬「…」

少女「エルフ!」

犬「ばふっ」

少女「反応うっす」

犬「…」ノソリ

少女「はいはい、…ご飯ね。ちぇ、可愛くないなあ」

少女「ブタみたいな犬がー荷馬車にゆーらーれー」カチャカチャ

犬「ばふ」

少女「うーられーに行くよー」

犬「…」

少女「ドナドナドーナードーナー…。はい、ご飯」トン

犬「ぶふ」モグモグ

少女「良く噛んで食べなさいよ。あんたももう年なんだから」

犬「…」モグモグ

少女「さて、…私も何か食べようかな」

ガタッ

少女「ん」

犬「…」ピタッ

少女「家鳴りかな」

犬「…」

ガタガタ

少女「んー?」

犬「ばうっ!!!!!!!!!!!」バッ

少女「ひぁ!?」ビクッ

犬「ぐるるるるっ、ばうっ、ばうばうっ!!」ダダダ

少女「どどど、どうしたの!?何よ!?」

<バウバウバウ!!!

エルフ「ひっ!?」ガタッ

犬「がるるるるる…。ばうっ!!」

エルフ(な、なんだこの大きな狼は!!?)

エルフ(何という女だ!まさか番用に狼を飼っているとは!ど、どうしよう…)

「ちょっとー、何?どうしたのよ」

エルフ「!!」

少女「落ち着けってブサ犬。顔真っ赤だ…」

犬「ぐるるるる…」

エルフ「…」

少女「…」

犬「がるるるるるっ!!」ガリガリ

エルフ「う、ひゃっ!?」ビクッ

少女「やめてさしあげなさい駄犬。…屋根から下りろコラ」

エルフ「そ、そのケモノがいては降りられん!」

少女「チッ…。ほら、おいで。良い子良い子。自分より弱いものに吠えちゃだめよ」ナデナデ

犬「…」

エルフ「…」ソロー

少女「はしご持ってこようか?」

エルフ「必要ない!」バッ

シュタッ

エルフ「また会ったな、人間の小娘!」ビシッ

少女「ちーっす」

エルフ「ふん、まさか絶滅したと思われた白銀狼を飼っているとはな。さすが人間、性根が汚い」

少女「あのうこれ、ただの老いぼれ大型犬なんですが」

エルフ「…」

犬「ばふ」

エルフ「犬か」

少女「うん」

エルフ「…」

エルフ「そんなことはどうでもいい!!良いか、私は貴様を処罰しに来たのだ!」

少女「いや別に怒られるようなことしてないよ」

エルフ「黙れ!お前たち人間は森を汚し…」

少女「あんたそればっかりだな…。汚してないから、少なくとも私は」

エルフ「それ以上に姿を見られてはしかたがない!ここで死んでもらう!」

少女「勝手にそっちから出てきたんじゃん」

エルフ「へ、減らず口を!」

少女「それはこっちの台詞。勝手に出てきて絡んで、しかも住居侵入しようとしてたあんたの方が最悪だよ」

エルフ「な…」

犬「わふ」

少女「ねー?」

エルフ「くっ、黙れ黙れ黙れぇええええ!」シャッ

少女「えーもう、何なの君ー」

エルフ「覚悟!」バッ

少女「え、ちょ。やめ」

犬「…」ノソリ

エルフ「はぁあああああああああっ!」

犬「…」アーン

ガブッ

エルフ「」

少女「うわ」

エルフ「…ぁ」

少女「こ、こら!離しなさいっ」

犬「…」ノソノソ

エルフ「…」カラン

少女「大丈夫?」

エルフ「…」フルフル

少女「どこ噛まれた?」

エルフ「…右の尻…」

少女「あー本当だ。ズボン破れちゃってる」

エルフ「…っ、ぐっ、…ひっ…」

少女「あー、大丈夫大丈夫。血も出てないから。中で冷やす?」

エルフ「…っ」コクコク

犬「…わふ」

少女「まだ痛い?」

エルフ「…ヒリヒリする」

少女「一時だから平気だよ。軟膏自分で塗ってね」ポン

エルフ「…」ペタペタ

エルフ「…沁みるぞ!」

少女「沁みないと効かないもん」

エルフ「くっ…。人間の薬を体に取り入れるなど…。なんたる屈辱…」

少女「何かブツブツ言ってら」

犬「…」ファーア

エルフ「…くそ、服が」

少女「ポケットのところ裂けてるけど、まだ着れるよ」

エルフ「…」

少女「お気に入りだった?ごめんね」

エルフ「うるさい」

少女「でもさあ、そっちが先に攻撃してこようとしたんだし」

エルフ「…」

犬「フンッ」

少女「犬に鼻で笑われてるよ…」

エルフ「く、…」

エルフ「わ、私の短剣はどこにやった」

少女「隠したよそんなもん。危ないし」

エルフ「む、無力化した私を…」

少女「するかボケ。没収です」

エルフ「く、くそ…」

少女「はいもう冷えたね、帰ってもらっていいかな?」

エルフ「…」

エルフ「に、人間の小娘」

少女「はい」

エルフ「いいか、私の存在を誰にも話すんじゃないぞ。話したなら森の恐ろしい災いが貴様に降りかかる」

少女「ぶふっw…」

エルフ「何を笑っている!!!ほ、本当に恐ろしい呪いなのだぞ!」

少女「分かった分かった。話さないよ。ってか、きっと誰も信じないし」

エルフ「ほ、本当だな?破ったりしたら…」

少女「絶対言わない。安心しなよ」

エルフ「…」ムググ

少女「森の呪い怖いし」

エルフ「そ、そうだろう!ははは、怯えるがいい!」

少女「だからはよ帰れ」

エルフ「ふん、言われなくても帰る!!!」ダッ

エルフ「しかしこの借りはいつか返させてもら」

少女「閉めて」

犬「…」トン

バタン

エルフ「…」

=次の日

おばちゃん「はぁい、ご注文の砂糖と小麦粉、それからお肉ねー!まいどありっ」ドン

少女「いつもいつもありがとうね、おばちゃん」

おば「いーのよ!少女ちゃんも森の家から村まで買い物来るの、大変だもんねえ」

店主「配達なんかができりゃ、いいんだけどなあ」

少女「へーきへーき。若いし、それに犬も一緒にいてくれるもん」

犬「ばふっ」

おば「あっはっは、そうだねえ!お前も嫌そうな顔してちゃんとご主人様、手伝ってるんだもの」ナデナデ

犬「…」

少女「あ、ところでさあ二人とも」

店主「なんだい?」

少女「…エルフって、見たことある?」

おば「エルフ…?」

店主「エルフ?…ああ、伝説ではここいらにいるって話だけどなあ」

おば「そういや、少女ちゃんのお爺さんもそんな話していたねえ」

少女「やっぱこの森、いるの」

店主「言い伝えだよー。まあ子どもなんかが信じてるんじゃないか?」

少女「ふうん」

おば「ま、北国なんかではチラホラいるって話だけどね。もうここにはいないさ」

店主「いやあ、エルフっていやあよ」

店主「死ぬほど良い女で、賢く凛々しい、神秘の部族だもんなあ!俺も拝んでみてえよ」

おば「顔がやらしいんだよ、この馬鹿亭主」バキッ

店主「タバサ」ドサ

少女「…良い女で凛々しく賢い?神秘?…」クス

少女「全部あてはまらないんだけど」ニヤ

おば「ん?何か今言ったかい?」

少女「ううん、何でも。そろそろ行かなきゃ」

おば「うんっ、またおいでね!」

店主「…ば、ばいばいな…」ヨロ



少女「やっぱ皆ここにいるとは思ってないのねー」

犬「わふ」

少女「うーん、これは私大発見なんじゃない?お金の匂いがする」

犬「…」

「おうい、少女!」

少女「ん」

村長「なんじゃ、久々に森から出てきおったな」

少女「あら村長。こんにちは」

村長「実は用事があってな、お前が来なければ昼にでも訪ねる予定だったのじゃ」

少女「さて家に帰って洗濯しないと」

村長「待たんかいコラ!今日こそ返事を聞かせてもらうぞ!」

少女「きゃあああああああああああやめてよ離してエロジジイ!」

村長「お前ももう17なんじゃ!あんな辺鄙なところで暮らしてないで村に来んか!」

少女「結構です!あそこが心地良いんで!」

村長「んなっ。あんな所にいたら結婚もできやしないぞ!お前の爺さんみたく一生を終えるのか!?」

少女「爺ちゃんを悪く言うなこのハゲ!!」

村長「ハゲとらん!!この干物娘!!」

少女「私は森が好きなの!あそこで爺ちゃんみたいに絵を描いてゆっくり暮らしていくの!それでいいの!」

村長「いいわけなかろうが!わしはな、お前のジジイからお前の将来を託されたのだぞ!」

少女「その話何百回も聞いたし」

村長「あいつはなあ、お前に村や街で暮らし、良い男と結婚し、子を産み、幸せに暮らして欲しいと…」

少女「その話何千回も聞いたし」

村長「村のお前くらいの娘なんか、花嫁修業の真っ最中だというのに。いや、もうすぐ結婚する子もいるに…」

少女「あー、パン屋の娘?あれいいよね、おっぱいデカいし。絶対すぐ売れると思った」

村長「だからお前も、な?」ポン

少女「嫌」

村長「この…」ムカッ

村長「だいたいなあ、娘一人がいつまでも暮らしていけるわけなかろう」

少女「爺ちゃんが死んでから3年間、全く不自由ないんですけどー」

村長「それはジジイの遺産がちょっとばかし残っていたからだろうに」

少女「む。…私だって稼げるもん」

村長「絵か?売れてるのか?」

少女「勿論」

村長「どれくらいだ」

少女「先月は2枚も売れた」ニン

村長「…」ハァ

少女「何よその、部屋の隅の綿ぼこりを見るような目」

村長「言っては何だがな、少女よ」

少女「なに」

村長「お前の絵は、食っていけるものじゃない」

少女「」

村長「わしも何度か見せてもらったことはあるがの…。なんじゃ、あれは?」

少女「な、何って。新しい手法で」

村長「何故動物が青かったりするのだ?空に浮かんでいる大きな星はなんだ?実際にないものを描いてどうする」

少女「しゃ、写実的なものより幻想的で空想的な絵のほうがしっくりくるの!」

村長「しかしジジイもその手法じゃったが、全く評価されんかったろう」

少女「そ、それは…。時代が爺ちゃんに追いついてなかったのよ」

村長「奴の絵もなんじゃ、妖精やニンフといった見たこともないものだったのう」

少女「そういう作風なの!」

村長「現にウケてないだろう」

少女「む、ぐ…」

村長「だから奴も、お前に筆を捨て、普通に生きろと言ったのじゃ」

少女「…」

村長「お前は優しいし明るいし、器量も良い。すぐに婿も決まるだろう。何だったら、その…」

村長「…いや、まあいい。本人から言いたいだろうしな。うむ」

少女「?」

村長「とにかくじゃ。絵描きなんぞ金にならないことはやめて、村に入るのじゃ」

少女「やだってば」

村長「このわからずや娘!引越し費用もわしが持つといっておろうに!」

少女「あーあーあーあーあーあーあー」バンバンバンバン

村長「耳をバンバンすな!話を聞けガキ!!」

少女「あーあーあーあーあー、犬。村長のカツラを奪って」

犬「わふっ」ビョーン

村長「ふがっ!?ややややめるんじゃこれは自前の毛なんじゃぞ!」

犬「わふわふ」グイグイ

村長「やめてええええええ」ズルリ

少女「走れ!逃げるよ」

犬「ばふっ」ダッ

村長「あああああああ返せぇええええ!都で買った高級品なんじゃあああ」

少女「まじ爆笑~草生える~」タタタ

村長「少女おおおおおおおおおおおおおお!!」

……

少女「ただいまー」

犬「わふ」

少女「いやー、久々に良い運動したね」

犬「…」ドサリ

少女「ふん、メタボ犬め。…さて」カタ

少女「この鹿の絵、終わらせないとなぁ」

絵描きになんぞ金にならないことはやめて…

少女「…」ピタ

ジジイも全く評価されとらんかっただろう…

少女「…」

結婚… 嫁入り… 女として普通に生きろ… パン屋の娘… ありゃたしかに良い乳しとるわ…

少女「なんか雑念入った」ブンブン

少女「あー、…何よもう」ボフ

少女「綺麗じゃない、この色使い。ふん、見たままを描くだけなんてもう古いんだわ」

犬「…」タフタフ

少女「ねー?」

少女「あのハゲ今に見てなさいよ。…私、良い素材見つけたんだから」ニヤ

少女「エルフ!」ガバッ

犬「わふ!」

少女「爺ちゃんが長年描こうとしてた、けど描けなかったエルフ!その実体を私は見たんだから!」

少女「鹿はもうやめ!昨日のスケッチからエルフを描きおこそう!」

少女「そしたら…。きっと有名になって、いっぱい絵も売れて」

少女「爺ちゃんの汚名だって晴らせる、もんね」

犬「…」

少女「ね、爺ちゃん」

=森・泉

少女「…」ドサ

少女「やっぱいない、か」

少女(スケッチだけじゃ、何も浮かばなかったし…)

少女(やっぱもう一度実物を見なきゃなぁ)

少女(でももう、絶対現れな…)

パシャ

少女「ん」

少女(…あれ、誰かいる?)

「…ふん、ふーん」

少女「…」ガサ

エルフ「ららら、…ららー…」パシャパシャ

少女「うわあああああああああああああああああああっ」

エルフ「ひ、ひゃぁっ!?」バッ

少女「な、なな、なにやってんの!なにやってんの!?」

エルフ「お、お前こそなんでここに!?なっ、み、見るな!!無礼者!!」バッ

少女「見たくて見たわけじゃないわ!何でこんなところで水浴びしてんだよあんた馬鹿なの!?」

エルフ「黙れ!あ、あっちいけ!!」

少女「最悪…さいっあく…」ガサガサ

エルフ「み、見てないだろうな!?」

少女「目をつぶしたいくらいだわ。二度と見るか」

エルフ「くっ、…。何て娘だ。人の水浴びを覗くなど…」ゴソゴソ

少女「公然猥褻物陳列罪だ!私は被害者だもん!」

エルフ「ええい、何だそのこーぜんわいせ…。くそっ、呪文か!?」

少女「早く服着てよ!!」

エルフ「言われなくても今着ている!」

=数分後

エルフ「ふん、私が丸腰なところを襲おうという魂胆だったようだが残念だったな。失敗だ」

少女「黙れ変態」

エルフ「へっ…。そ、それは罵倒の言葉だろう!知っているぞ!」

少女「露出狂」

エルフ「ろしゅつきょー?…はっ、呪文か!」バッ

少女「馬鹿じゃないのマジで」

エルフ「な、なにっ…」

少女「で」

エルフ「何だ」

少女「やっぱりあんた、」



少女「男なんだね」

エルフ「見て気づくだろうが!」

少女「いやあ、髪の毛長いしなんとなく判断つかなかった。薄々感づいてはいたけども」

少女「がっかりっすわ…」ジト

エルフ「何だ。どういう意味だっ」

少女「いや、エルフって言ったら大体の人がこういうの思い浮かべるじゃん」シャッシャッ

エルフ「…ふむ?」

少女「巨乳、足長、超絶美人、凛々しい雰囲気、知的さ、ミステリアスさ、あと力強さと同居する儚さ」ピラ

エルフ「なんだ、上手い絵だな」

少女「えっ。…どうも」

少女「…いやちがくて。がっかりっすわ」

エルフ「何故だ」

少女「だってあんた、形はいいけどさぁ」

少女「馬鹿だしイタいしドジだし無知だしグズだし弱いし馬鹿だし、その上男って」

エルフ「…な」

少女「期待値ひっく…」

エルフ「き、たいち…?じゅも」

少女「呪文じゃないから。つまり私はあんたの設定にガックリきてるってこと」

エルフ「…何でだろう。よく分からないが、傷ついたぞ」

少女「こっちの台詞だよ。詐欺じゃん…」

少女「あーあーあー、ボーイッシュな女の子っていうわずかな可能性にかけてたのになぁ…」

エルフ「私は男だ」

少女「だよねえ。…ついてたもんねぇ…」ガクリ

エルフ「…っ」カァ

少女「男に顔赤らめられてもなあ…。あーあーあー。女の子だったら燃えるのに…」

エルフ「しかし、…性別など仕様がないことだ。私は悪くないぞ」

少女「はぁ…」

エルフ「な、何なんだ。やめろ、その目を」

少女「大体エルフって男いんの」

エルフ「当たり前だろう。その、…は、繁殖ができないだろ、女性だけだと」

少女「うっそ!エルフってレズレズして何かこう、不思議パワーで生まれてくるんじゃないのおおおお?!」

エルフ「悪書の見すぎではないのか!?」ゾッ

少女「夢無くなるわ」

エルフ「お前は何なんだ…」

少女「…絵、どうしよう。女の子描きたかったのに」

エルフ「何の話だ」

少女「話しかけないで」

エルフ「!…」ガン

少女「折角…。爺ちゃんの夢…はぁ」

エルフ「何だ、お前は絵描きなのか」

少女「そうだよ」

エルフ「ふむ。てっきり森を荒らす悪徳きこりか何かかと思ったが」

少女「あんたの脳内回路どうなってんの。私がきこりって無理あるでしょ」

エルフ「森を荒らしに来たのではないのだな?」

少女「当たり前でしょ!大体私も森の入り口くらいで暮らしてるんだもん」

エルフ「なるほど。…しかし人間だ、私とは相容れん!擦り寄ろうとしたって無駄だ、よそ者め」

少女「うっざ…」ボソ

エルフ「まあいい、精精私の怒りに触れぬよう細々と生きていくんだな」

少女「へいへい」

エルフ「…そういえばお前、私の事を言ったりは…」

少女「してないよ」

エルフ「そうか。ならい…。おい、何をしている?」

少女「帰る」カチャカチャ

エルフ「か、帰る?…」

少女「もう用はないんで。さーせんっしたー。お邪魔しましたー」

エルフ「な、何だ。その冷淡な態度は。…私の何がそんなに気に入らないのだ」

エルフ「いやべつに、お前にどう思われようが知ったことではないが。しかし…」

少女「じゃ」スタスタ

エルフ「あ、…」

エルフ「…」

エルフ「ま、待て!」

少女「…」スタスタ

エルフ「待てと言っているだろうが!!!」

少女「なにもう」クル

エルフ「い、いいか。他の人間にも言っておけ!森に危害を加えたりしたら、私が許さぬと!」

少女「加えたことねーだろ…。ここの村人死ぬほど自然愛強いし」

エルフ「そ、それと森の奥は聖域なのだ!汚れた人間が気安く立ち入るな!」

少女「はいはい」

エルフ「…私の事は誰にも言うなよ!」

少女「じゃあさっきの言葉どういえばいいんだよ…」スタスタ

エルフ「…」

エルフ「そ、それから…」

少女「…」

少女「…」ダッ

エルフ「あ、おい!!」

エルフ「…」

エルフ「はぁ…」

エルフ「なんて逃げ足の速い…。折角忠告してやっているのに」

エルフ「…ん?」

キラリ

エルフ「…これはあの小娘が持っていた…」

エルフ「…ぱれっとないふ、だったか。確か武器だったような」

キラキラ

エルフ「…綺麗だな」ホウ

エルフ「!い、いや。人間の作った物など醜いのだ!こんなもの汚れている!」

エルフ「…」

エルフ「す、捨ててやる」

エルフ「…泉に投げ込んでやろう。ふん、あの人間きっと困るだろう」

エルフ「…」

エルフ「…」ギュ

エルフ「ま、…万が一、万が一水が汚染されたら困るからな。…持って帰ろうではないか」

エルフ「今度会ったら、つき返してやる!ついでに説教の一つでも…」

エルフ「…」

エルフ「帰るか」

ガサガサ

「エルフだ」

「エルフが来たよ」

「あら、何か持ってる」

エルフ「ああ、皆。いやあ、今日は疲れたよ」

エルフ「あのふざけた小娘にまた出会ったんだ。しかも水浴びをしていたときにだ。丸腰なんだぞ」

「まあ、なんてこと」

「なにかされた?なにかされた?」

エルフ「ふん、何てことはない。怒鳴りつけたら大人しくなった」

「すっごおい、エルフ!」

「強いわ、強いわ!」

エルフ「あと安心していい、あの娘はただの絵描きだった」

「知ってる」

「うん、有名だよね」

エルフ「え」

「たまに泉に来るんだ。パンをくれたりするんだ。優しい子なんだ」

「それに、とっても可愛い女の子だしね、えへへ」

エルフ「な、ん…だと」

エルフ「や、優しい?可愛い?どこがだ!悪魔のように気性の激しい娘だったぞ」

「んー、でも森のこと好きなんだねきっと。おれ分かるもん」

エルフ「…動物のカンなんて、役に立たないだろう」ツン

「そんなことないわよう」

エルフ「と、とにかくだ!コレまでどおり人間とは関わるな!危険なんだからな」

「うん。でも、エルフはいいの?」

エルフ「は?」

「人間といっぱいおしゃべりしてるし、何か貰ってるじゃないの」

エルフ「これ、…か?」

「きらきら!」

「なにかしらあ、食べ物かしら?」

エルフ「こ、これは危険なものなんだ!私が処分する」バッ

エルフ「それに娘と接触するのは、…あー、警告のためだ!私は森を守らないといけないからな」

「そうか!エルフかしこい!」

エルフ「さあ、もう皆巣にお帰り。温かくして過ごすんだぞ」

エルフ「皆が寝ている間、森の平和は私がきっちり守ってやるのだからな!」

「ありがとうエルフ!」

「ばいばい、エルフ!」

……


少女「…」

画商「んー、…」

少女「どうですか」

画商「まあ、タッチは繊細でかなり上級ですがねぇ…。いかんせん、色合いが」

画商「それに、何です、この大きな花は?」

少女「あ、それは妖精の花なんです。魔法の蜜が出てて…」

画商「…」フンッ

画商「まあ随分ファンタジーな世界観です、な」バサ

少女「写実的なタッチの中に空想のものを混ぜるんです。配色もありえない様なものを使うことで、一気に幻想的に…」

画商「あー、はい。ええとではこれくらいで」スッ

少女「え、」

画商「こんなの買うの、物好きくらいなもんでしょうよ。このくらいの値段が妥当ですよ」

少女(…赤字じゃねえかタコ)

画商「まあ売れないっていうならいいんですけどねえ」

少女「…あ、いいです。それで…」

画商「あなたも学習しませんね」

少女「え」

画商「おじいさんの真似事ばかりだ。もう少し、時代に合った絵を描きなさいよ」

少女「…都で流行ってるあの、フリフリ着た夫人の絵とかですか?」

画商「そ。自画像なんか金持ちが高く買ってくれますよ」

少女「…でも、私が描きたいのは…」

画商「…」フー

画商「ま、固定概念を一旦捨ててみることですな。芸術にも流行ってもんがある」

画商「時代に乗れないのは、ねえ」

少女「…」


バタン


少女「…はぁ」

少女「懐さみしー…」ガクリ

少女「力作だと思ったんだけどなぁ。あれじゃあ、絵の具代のほうが高いよ」

少女(やっと一枚売れたと思ったらこの値段か。とほほ。子どもの小遣いじゃないんだからさ)

少女「はあ、…帰るか」クル

「おーい、少女-!」

少女「ん」

青年「商談どうだったの」ニコ

少女「げ、ハゲ遺伝さん」

青年「祖父は禿頭でも父は生えてる。僕も希望を捨てないで頑張ってるよ」サラリ

少女「何か用」

青年「相変わらず冷たいなぁ。だから、商談。どうだった?」

少女「ゴミカス」

青年「うん、端的でいい表現だね。まあそんなに落ち込まないでよ」ニコニコ

少女「黙れ成功者め。見下してるんじゃねーぞ」

青年「君ちょっと疲れてるんだよ。どう、祖父が君を昼食に呼んでるんだけど」

少女「行かない行かないぜええええったい行かない」

青年「そんなこと言わないで。僕も久々に君と食事したいな」

少女「勘弁してよ!あんた、ほら。あれだよ。宿屋の娘さん怒るよ?彼女なんでしょ?」

青年「ああ、分かれた!」キラキラ

少女「またかよ」

少女「1ヶ月前にも花屋の娘と別れてたよね」

青年「でも彼女、もう隣町の男と付き合ってるんだ」

少女「お互い乗り換え速いな…。ついてけないわ」

青年「だからさ、おいでよ」

少女「行かない。どうせまた、見合いだの森から出ろだのコキ下ろされるんだから。あんたの爺ちゃんだいっきらい」

青年「今日の昼食、高級牛のステーキなんだ」

少女「青年!久々に食事でもしながらゆっくり語り合おうよ、心の友よ!」

青年「うん。じゃあ、行こ」ニコリ

少女「いやっふー!久々の牛だー!!」

=村長宅

村長「ふっ、案の定肉に釣られよったか」

少女「やだなあ、親友の頼みとあっちゃ断れないじゃないですかあ。ね?」

青年「うん」クス

村長「まあいい、上がりなさい」

少女「おっじゃっましまーす」

村長「…本当にアレでいいのか?」

青年「ん?何が?」

村長「いや…」ハァ

村長「で、絵は売れたのか」

少女「孫ともどもイヤなこと聞かないでよ。絶対ハゲるよ、青年。あんた爺ちゃんとクリソツだもん」

村長「肉没収するぞガキャ」

少女「売れましたぁ」

村長「ふむ。珍しいな。いくらでだ?」

少女「…」

チャリーン

青年「あはは、ふざけてる」

少女「そんなハンサムスマイルで言われても…」

青年「僕のお小遣いの6分の1以下だ」

少女「あんたそんな貰ってんの!?い、いいなあ。私もここの家の子になろうかなあ」

青年「なりなよ」ニコニコ

村長「えー、おほん」

少女「うっす」

村長「分かっていると思うが、こんなはした金では生活なんぞできん」

少女「…んー」

「少女様、どうぞ」カチャ

少女「ありがとう。うわあ美味しそうー!!」

村長「ボッシュート」サッ

少女「あああああああああジジイおいこらああああああああ」

村長「わしの話を聞いてからじゃ」

少女「き、聞くから早くして!!」

村長「端的に言おう。村に住め。花嫁修業しろ。女らしくしろ。絵はあきらめろ」

少女「やだ」

村長「青年、食べていいぞ」

青年「いただきます」

少女「……」ギン

青年「すっごく見てくるんだけど、僕殺されるかなあ」クスクス

少女「…そんなさ、女だからとか下らない理由で爺ちゃんの意思を捨てるわけにはいかないよ」

村長「それだけではないぞ」

村長「今日び、ポっと出の絵描きなんぞ売れん。大学を出て美術を学んだエリートだけが高級画家になれるのじゃ」

少女「おかしいよねー」

村長「おかしいが、それが今の姿。それにお前の爺さんは、画壇でも評価が悪いだろう」

少女「…」

少女「パクりのこと?」

村長「そう。かの有名な画家の構図を丸パクし発表、袋叩きに合っただろう」

少女「あれは爺ちゃんの考えた構図だもん。爺ちゃんの描いた絵だ」

村長「はぁ…」

青年「柔らかいよ、少女」

少女「お前むしるぞ」

青年「…ふふ」クスクス

村長「奴も画壇で評価を受けることを諦めとった。奴は荒んだ…。良い人生とは言えん」

少女「そう?楽しそうだったよ」

村長「そんな大事件を起こした男の孫の絵が、評価されるとは思えんのだ」

少女「やってみないと分かんないぜ、クソジジイ!」

村長「その無駄にポジティブなのが心配なんじゃ!!」

青年「…」カチャ

少女「う、…。うう…」

青年「ごちそうさまでした」ペコ

村長「少女。いい加減自分の未来をしっかり考えるんじゃ」

少女「考えてる、よお」

村長「わしだってな、意地悪で言ってるわけじゃないんだぞ」

少女「…」

青年「君のことが心配なんだよ。娘みたいに思ってるんだ」

少女「そんな…。私の事が心配でそんな頭に…」

村長「あああああああああああああああ!!」ダン

少女「反論いっすか」

村長「なんだ!!」

少女「実はぁ、まあ不本意だけど良い絵のモデルが見つかりましてぇ」

少女「不満は色々あるけど、しっかり活かせば良い絵が描けると思うんですよねー」

青年「へえ」

村長「なんだと?」

少女「ただなあ…男…」

村長「何じゃと?」

少女「いーや何でも。とにかく、次こそはマジで良い絵が描けると思う」

青年「楽しみだな。僕、君の絵好きだよ」

少女「おっハゲ確定のくせに良い目してるね。でしょー?」

村長「待て。お前そういってズルズル何年目じゃ?」

少女「あー」

村長「…よし、分かった」パン

村長「もうすぐ村の若者たちのための祭りがあるな」

少女「うん」

村長「それまでに絵を完成させ、画壇で発表するんじゃ」

少女「なにっ」

村長「わしの根回しで、お前があいつの孫ということは伏せていてやろう。そこで評価がもらえなかったら、終いじゃ」

少女「私には才能がなかった。ってことね」

村長「そうじゃ。絵はもう趣味にしろ、そして村に入り伴侶を探すと誓え」

青年「…」

少女「え、評価受けた場合は?」

村長「そのときは、…好きにしたらいいだろう。都の学校なり、森で引きこもるなり勝手にしろ」

少女「うおおおおおおおおおおおおお!マジでっ!?」

村長「マジじゃ」

少女「頑張る!!!!私頑張る!!!」

青年「絵が評価されたら、どうしたいの?」

少女「うーん、都行く!んで、いっぱい勉強する!でね、私のメチエを知らしめたい!」

青年「都、か」

少女「勿論そのあとは戻ってきて森で気ままに絵を描くの。楽しみ!」

村長「変わってるのお、ほんに…」

少女「じゃあ決まりね。肉食べて良い?」

青年「はい」コト

少女「わーいわーい」

村長「…全く。ピンチということに気づいているのか」

青年「自信家なんだよ。頼もしいじゃないか」

少女「あちっあちっ」


少女「おじゃましましたー。おいしかったでーす」

青年「送っていくよ」

少女「結構でーす」

青年「肉食べた途端に冷たくなるんだから。…じゃあ勝手についていくよ」

少女「ふん」

青年「お爺ちゃんに勝てそう?」

少女「余裕」

青年「…じゃあ勝って、都に行っちゃうわけだね」

少女「絵が評価されたらお金もガッポリだもん。高い道具とかも欲しいんだ」

青年「村には戻ってくるんでしょう?」

少女「まあね。田舎のほうが好きだし。ま、相変わらず森で暮らすつもり」

青年「そっか。…僕、君ってすごく良い子だと思うよ」

少女「はい?」

青年「お爺さんのために一生懸命、絵を描いてるんだから。すごく孝行者だよ」

少女「な、なに。いきなり」

青年「僕は…。お父さんの事業を継いで、言われたとおり働いてるだけでさ。君みたいに立派じゃない」

少女「よく言いますねエリートさんが。何でもかんでも上手くいってるじゃない」

青年「そうかな?そうでもないよ。一つだけすごく大きな悩みがあるし」

少女「へー興味ないや」

青年「だと思った。…ねえ、お祭りには来るんでしょ?」

少女「祭りぃ?あのワッショイ乱交村祭り?」

青年「こら。女の子でしょ」

少女「似たようなものじゃん。村中の娘と男集めてくっつけようって祭りでしょ?」

青年「まあ、そうだけど。乱交まではいいすぎかな」

少女「キャンプファイヤー囲んで槍持って踊るんでしょ?低い棒くぐったり」

青年「踊るしか合ってないよ、少女」

少女「行かない」

青年「何で?絵の評価会まで暇なんだし、一緒に行こうよ」

少女「誰が参加するかあんなボッチつまはじきイベント!こちとらモノノケ姫だぞ」

青年「僕と一緒にいれば一人ぼっちじゃないだろ?」

少女「あんた今フリーなんだからナンパしまくりなさいよ。ああ、イヤでも寄ってくるか女の子…」

青年「僕もう女の子はいいや」クスクス

少女「え?ど、どうしちゃったのハゲ孫…。あんなに盛ってたのに…」

青年「今までの彼女は本命への練習みたいなものだったから。もういいかなって」

少女「えっ怖…。ヤバいなあんた…」

青年「だから行こうよ。楽しいよ?」

少女「やだ。犬と遊びたい」

青年「犬も連れてきたらいいじゃないか」

少女「寝たい」

青年「都から美味しいお菓子の屋台呼ぶんだって」

少女「喜んで参加します」キリッ

青年「あはは。じゃあ、決まりね」

少女「いやあ、早く言ってよねえそういうことー」

青年「全部おごってあげる。その代り、ちゃんと僕のそばにいてね?女の子除けのために」

少女「いいよ!ウィンウィンだね!」ガッ

青年「うん」ガッ

少女「よっしゃあああ待ってろドスコイ淫乱村祭り!!」

青年「うん、黙ろうか」

少女「まあそれまで私は絵で忙しいから!話しかけてくんじゃないぞボンボンめ」

青年「分かった。邪魔はしないよ」

少女「じゃ」

青年「…じゃって。家からまだ数分しか歩いてない…」

少女「じゃ」

青年「…はあ。じゃあね、バイバイ。元気でね」

少女「うーっす」スタスタ

青年「…少女ー」

少女「んー?」

青年「僕、君のこと応援してる。頑張ってね」

少女「キモ。どうも」スタスタ

青年「…ふふ」

青年「手ごわいなー」クスクス

ちょっと切ります
勿論プロじゃないっすよこんなゴミSS書いてるんで

エルフ「…おい小娘!」

エルフ(裏声)『あ、あなたは何時かの!?』

エルフ「また会ったな。森でまたなにか怪しげなことをしてないだろうな?」

エルフ『い、いいえ!あなたの言いつけどおり大人しくしていますっ』

エルフ「ふん、ならばいい…」

エルフ「…」

エルフ「えっと…」

エルフ「も、森の泉の近くにこれを落として行ったな!きちんと私物は持ち帰れ愚か者!」

エルフ『はっ、それは私のパレットナイフ!ありがとうございます!』

エルフ「…」

エルフ「よ、よし」

少女「何やってんだあんた」

エルフ「ひ、うわぁああああああああああああああああああああっ!!」ビックッ

少女「大分イっちゃってるな…。人の家の前でなにやってんの」

エルフ「お、お、お前っ。何故ここにっ」

少女「いやこっちの台詞だよ」

エルフ「あ、あれ?家の中にいたのでは…」

少女「ちょっと村まで出てたのよ。何か用」

エルフ「…」

少女「何」

エルフ「どこから聞いてた」

少女「全部だよそんなの」

エルフ「…」

エルフ「く、ぅっ…」プルプル

少女「渾身の呻きやめてよ…」

エルフ「ぶ、無礼な奴だ。人の行動を何も言わず眺めるなんて、…」

少女「うるせぇなポンコツ妖精」

エルフ「…む、村に行っていたのか」

少女「ん」

エルフ「そうか、道理で人間臭いわけだ。ふん、気分が悪い」

少女「はぁ…」

エルフ「…」

少女「…あの」

エルフ「き、貴様これを森に落としていっただろう!」ズイ

少女「え?…あっ、これ」

エルフ「森の警官を損ねる上に動物たちが怯えていたではないか!気をつけろ!」

少女「探してたんだよね、これ。ありがとう」

エルフ「あり…」

少女「まさかこれ届けに来てくれたの?」

エルフ「…」

少女「え、何」

エルフ「ち、違う!たまたまここら辺を通っただけだ!!!」

少女「あっそう。まあ何でも良いやありがとう」

エルフ「…」ツン

エルフ「全く、忘れ物をするなんて不注意な。お陰でこちらがどれだけ迷惑したと」

少女「はいはいすいやせん以後気をつけます」

少女「…あ、そうだ。丁度良かった。私もあんたのこと探してたんだ」

エルフ「な、なにっ?」

少女「とりあえず家の中入って。お茶でも入れるよ」キィ

エルフ「…に、人間の口にするものなど…」

少女「…」ジト

エルフ「…ふん!そんなに頼まれては仕方がないな」

少女「いやそこまで頼んでない」

バタン

犬「!…うぅう…」

エルフ「ぁひっ」ビク

少女「大丈夫だって、普段は大人しい犬なんだから。変なことしなきゃ何もしないよ」

エルフ「ほ、本当だな?本当だなっ!?」

少女「本当です」

エルフ「…」ソロー…

少女「そこのソファに座っていいよ。今お茶入れるから」

エルフ「あ、ああ」

エルフ「…」キョロキョロ

少女「前回は玄関口で傷の手当てしただけだもんね。入れるのは初めてか」

エルフ「…」オソルオソル

エルフ「…」フカァ…

エルフ「!」ビクッ

少女「何やってんの」

エルフ「こここ、このイスはなんだ!体が沈むぞ!何でできている!?」

少女「布と綿と木だよ。とんだ田舎モノね」

エルフ「や、柔らかくて落ち着かない。なんだこれは…」

少女「嫌なら地べたにでも座れよ」

犬「わふ」

エルフ「ひ、っ。…いや、いい…」ビクビク

少女「はい、ええと。紅茶って分かる?」

エルフ「茶くらい分かる。馬鹿にするなっ」

少女「知識に大分偏りあるな。こりゃ面倒くさい」

少女「砂糖いる?」

エルフ「?…ああ」

少女「うち貧乏なんでひとつで我慢してね」ポチャン

エルフ「!わ、私の飲み物に何を入れた!毒か!?」

少女「砂糖いるって言っただろお前!!何なんだよ!」

エルフ「さ、さとうとは何だ!」

少女「ただの調味料!甘くするやつ!」

エルフ「お前から先に飲め…」

少女「チッ」ゴク

少女「ほら、何もないでしょ?安全です」

エルフ「…」

エルフ「…」スン

エルフ(い、良い匂い。果実の匂いがする…)

エルフ「…」チビリ

エルフ「!!」パァア

少女「どう?」

エルフ「に、人間の飲むものなど実にくだらない!水だけで十分だというのに」

少女「今完全に気に入った顔してたじゃん…」

エルフ「実にくだらない。実にくだらない」ゴクゴク

少女「…」

少女「はい、クッキーもあるから食べて良いよ」コト

エルフ「くっきー?…果物か?」

少女「小麦粉と砂糖とバターを混ぜて焼いたもの。やっぱ知らないか」

エルフ「…」オソルオソル

エルフ「…」サク

エルフ「!!!!」パァアアア

少女「分かり安すぎだろあんた…。笑っちゃうわ」

エルフ「なんだこの、…ふざけた食べ物は!こんな物を作って作物を無駄にするから、自然が…」

少女「あ、もういらないのね?」

エルフ「そんなこと言ってないだろう」サクサクサクサク

少女「…」

エルフ「何をにやついている!ぶ、無礼者め…」サクサクサクサク

少女「いや、別に」

エルフ「…ところでお前、私に会いたかったと言っていたな」ゴクン

少女「探してた、の。会いたかったってほどじゃない」

エルフ「いちいち言葉尻を取り上げるな!な、なにか用があるのだろう!この私に!」

少女「まあ、あるっちゃある」

エルフ「人間の頼みなど誰が聞くか」

少女「まだ何も言ってないだろー…」

エルフ「どうせ森に悪影響を及ぼすような頼みなのだろう!お前の魂胆は分かっているぞ!」

少女「どんだけエコロジストなの勘弁してくれ」

少女「実は私、今ピンチとチャンスが一気にやってきてまして」

エルフ「ああ」

少女「…あ、まず改めて自己紹介でもしようかな。私は、少女。ここに住む絵描き」

少女「んでこっちが飼い犬の犬」

犬「ばう」

エルフ「少女。…ふん、腑抜けた名前だ。いかにもお前らしい」

少女「あんたは?」

エルフ「私はエルフ。誇り高き森の守護者だ」

少女「いってぇ…」ボソ

エルフ「今何か言ったか」

少女「別に。エルフ、ね。よろしく」

エルフ「!う、うむ。よろしく頼む、少女」

少女「んでまあ、さっき言ったとおり私は今非常に大変な状況にあって」

少女「もうすぐ都で大きな絵の評価会があるの。それに向けて作品を出して、評価をもらわないといけないの」

エルフ「ふうん。それが私に何の関係が?」

少女「まあ聞いて。私自慢じゃないけど、中々の腕前なんだけど今まで評価がパッとしなくて」

少女「でも!今度の評価会では絶対絶対、良い賞をもらいたいの!じゃないともう私の人生お終い」

エルフ「何っ!…じ、人生が終わる、だと?!」

少女「もうそれも同然。長年の夢全部パァ」

エルフ「そ、そんなに大変なことなのか。…そうなのか…」アセアセ

少女「で、エルフに頼みがあるのよ」

エルフ「…人生が終わるほどの問題とあっては、無視はできん。何だ」

少女「絶対、絶対口外しないから」

エルフ「ああ」

少女「エルフの村連れてって」

エルフ「は?」

少女「お願い!そこでリアルなエルフを描くことによって私の絵は完成するの!」

エルフ「むら?」

少女「そう!いるんでしょ、エルフの族長や女性や子どもたちなんかが」

エルフ「いないぞ」

少女「え?」

エルフ「森に私以外エルフはいない。村もない。私は一人で暮らしている」

少女「…」

エルフ「おい、顔が青いぞ」

少女「ガッ」

少女「ガッデム…」ドサ

エルフ「お、おい!?」

少女「え、マジであんた一人だけなの?こんな設定崩壊雑魚エルフだけ?オンリー?嘘おおおお」

エルフ「ざこ!?わ、私を侮辱するな!!」

少女「なんだよそれええええなんでぇえええええええ!?」

少女「流石に一人くらいはいるでしょ!?ボインで美人なエルフちゃんが!!」

エルフ「いない。逆に見てみたいくらいだ」

少女「オワタ」

エルフ「エルフを描きたいなら私でもいいだろう!?」

少女「…」

エルフ「なんだその、苦い果実を噛んだような顔は…」

少女「…プライドが…」

エルフ「私の何が不満だというのだ」

少女「ほとんど全部っす」

エルフ「!な、…」

少女「あー…。どうしよう…こんなの描いたって、絶対ウケないよ…」

エルフ「私は悪くないぞ…」

少女「…」ズーン

エルフ「お、おい。落ち込むな。その、ええと」オロオロ

エルフ「何故お前はそこまで女のエルフに固執するのだ?普通の絵では駄目なのか?」

少女「…深い理由があるの」

エルフ「話してみろ」

少女「…私の爺ちゃんのね、夢だったんだ」

エルフ「お前の祖父が…?」

少女「そう。…私がずっと、小さい頃」

……


少女(幼女時代)「ジジイ!なにかいてるのー?」

爺「ジジイ言うな!ああもう、アトリエで暴れるなと言っただろう!」

少女「みせてみせてー」ヨジヨジ

爺「はぁ。どれ、よっこらせ。見えるか?」

少女「うわぁーすごぉーい」キラキラ


少女「なんでこの女の人こんなえっちな下着つけてるのぉー?」

爺「これにエロスを感じるとはさすが我孫じゃな」


エルフ「ちょっと待て」

少女「黙って聞いて」

エルフ「……」

少女「ねえねえ爺ちゃん、そろそろ絵のはっぴょーかいでしょ?」

爺「ああ!この絵を完成させなければならん」

少女「えー、これをー?」

爺「そうじゃ!題名“エロニカ”じゃ!」

少女「えろにかー!えろにかー!!」ピョンピョン

爺「きっと高く評価されるぞ。構図も大胆で斬新なものにしたしな」エヘン

少女「よくわかんないけどすごーい」

爺「評価会で賞金をもらったら、お前に鳥ムネ肉をたくさん食わしてやるからな!」

少女「そこは牛にしてよけちんぼー」

爺「牛なんか駄目じゃ!良質な鳥タンパクでボインにならにゃあかんのだ!」

少女「ふーんー。わかったー」

少女「ねえ、おじいちゃん」

爺「なんじゃ?」

少女「じいちゃんの絵はさ、何でいつも普通の女の人じゃないのー?」

爺「うむ?」

少女「だってさ、この女の人のお耳、とんがってる。それに見たことない髪と目の色」

爺「ああ、これはな、エルフっていうんじゃ」

少女「えるふ?」

爺「そう。美しく気高く、絶滅の危機に追いやられながらも森で生き抜く種族なんじゃ」

少女「人間じゃ、ないの?」

爺「そうじゃな。少し違うな」

少女「普通の女の子を描けばいいのにー。このあいだも、しんさいんのおじちゃん、言ってたよ」

爺「はん。あの耄碌どもの言うことなんざ聞くな」

爺「わしはな…。この美しい種族の絵しか描きたくないんじゃ…」

少女「えるふって、本当にいるの?」

爺「ああ、いるとも」

少女「会ったことあるの?」

爺「むっふっふ、勿論」

少女「ええええええええええええええ!」

爺「その昔な。絶世の美女エルフと出会ったことがあるのじゃ」

少女「すっごおおおおい」

爺「ふふん、わしその子と良い感じだったんじゃぞ」

少女「え?いまはどくしんのどーてーなのに?」

爺「どどど童貞ちゃうわ」

少女「ねえじいちゃんどーてーって何?絵の具やさんのおばちゃんが言ってたよ」

少女「じいちゃんはどーてークソチェリーのくせに、幼女引き取って育ててるって」

爺「あんのブサイクババア…。わしがそんなにギークに見えるってのか…」ブツブツ

少女「ねえねえどーてーって何ー?チェリーってなにー?さくらんぼー?」

爺「いいか少女、まだお前が知る必要ない単語じゃよ」

少女「えー?むずかしいの?せんもんようご?」

爺「…そんなかんじじゃ」

少女「ふうん」

爺「と、とにかくわしはこの絵を仕上げないといけないのだ!お前はもう寝なさい」

少女「はあい」

爺「全く…。とんでもないこと子どもに教えよって…」

少女「おやすみどーてー」

爺「ゴルァ!!!!」



そして、評価会の日が訪れた…。

爺「…」ドキドキ

少女「きゃはは、おっさんいっぱーい」

爺「こら!静かにせんか少女っ」

少女「だって面白いんだもーん。このひとたちも、どーt」

爺「黙らんかいこのピュアモンスター」ガッ

少女「…ぷぁ。やめてよ、くさーい」

爺「…。せめて発表の間だけは静かにしとくんじゃ!」

少女「ふぁーい」

爺「全く…」

「では皆様、賞の発表へと映ります」

爺「!きおった」

少女「わくわくー?」

爺「ああ、わしの絵がきっと紹介されるぞ」

少女「うん!!」

「えーまず、審査員特別賞からの発表です。…作、“エロマンガ島の休日”…」

爺「けっ、あんなしょうもない絵のどこがいいんじゃ」

少女「きれー」

「続いて大臣特別賞、…作“おまわり”」

爺「…」ソワソワ

少女「かわいいー」

「…作、“モンクの叫び”」

「以上が特別賞となります。作者のかたは前に」

パチパチ…

爺「…」

少女「呼ばれなかったね」

爺「アホか。これは特別賞といって、『まあまあ上手く描けましたね~お情けで適当な賞あげまちゅよ~』という雰囲気のもんじゃ!」

少女「そうなんだー。全部すごかったのになあ」

爺「はん、どうだか。ありふれた手法のありふれた絵じゃよ」

爺「次の時代の芸術は、大衆に媚びず自分の世界を確立していないとだめなのだ。わしのように…」

少女「へー」

爺「作者のスピーチも終わりよるわ。昼食が終わったらいよいよ本命の賞の発表じゃ」

少女「ごはん!ごはんー!」


ガヤガヤ

爺「ほれ、ちゃんとマメも食べんかい。ボインになれんぞ」

少女「やだー」

「やあやあ、誰かと思えば先生ではないですか」

爺「あん?」

少女「あぁん?」

弟子「いやあ、ははは。長らく画壇から遠ざかっていたと思っていましたが…。お久しぶりです」

爺「!お、おまえは…」

少女「だれー?この太ったおっちゃん」

弟子「…」

爺「わしの元弟子じゃよ。お前を引き取る前に破門したんじゃ」

少女「おっちゃんはもんされたのー?可哀相ー」

弟子「…」ピクピク

弟子「お、おほん。私が独立して以来、全く姿をお目にかけませんでしたが…」

弟子「ようやく出品なさったんですね。おめでとうございます」

爺「ふん。毎年毎年半端な絵を出品していても、本物の芸術は完成せんのじゃ」

弟子「相変わらずですねえ、全く。時代に少しは馴染まないと」

爺「そーゆーお前こそ、金持ち相手にしょうもない肖像や静物を描いて小銭を稼いでおるのだろう!」

爺「昔から自分のメチエというものを持たず、感性の低い男だったよ。はん」

弟子「やだなあ先生、俺はもうこの会で3回受賞してるんですよぉ?」

少女「えー!すごいねえ、おっちゃん」

爺「…」ムッ

弟子「まあ見ていてくださいよ。今回も俺が入賞してみせます」

爺「巷じゃお前のキナ臭い噂が流行ってるぞ。なんでも人の絵を真似て自分の作品と言い張っている、と」

弟子「…」

弟子「ま、下級絵描きのやっかみですよ。先生も随分通俗的になられた」

爺「…」

弟子「…」

少女「おおー、火花ちってる」

爺「行くぞ少女。そろそろ席につかんとな」

少女「待ってー、まだ食べるー」

弟子「精精健闘を祈ってますよ、先生!」

爺「てめーがなこのエセ画家!!」

少女「まってー、このパンだけー」ムシャァ

爺「早く来んか!」

ズルズル

弟子「…」

弟子(ふん、老いぼれが。たかがお前の構図を絵に取り入れただけで破門しやがって…)

弟子(おまけに芸術に人生を捧げると言って一人身だったくせに、今更孤児なんぞ引き取りおって)

弟子(耄碌ジジイなんかに誰が負けるか…)

「では、いよいよ全作品の中上位賞を発表します!」

弟子(今や俺は、お前を越えて画壇のホープだ)ニヤリ

少女「ねえ、じいちゃん」

爺「ああ腹の立つ。だいたいなんじゃあのタヌキ面は。いかにも卑屈なオタクではないか」

少女「ねえってば」

爺「なんじゃ!」

少女「わたし、あの人に会ったことあったっけ?」

爺「あん?あるわけなかろうが」

少女「ふーん」

少女(どっかで…)

「それでは第10位!」

オオーッ

「…9位!」

オオオーッ

弟子「…」フン

少女「…むにゃ」

少女(つまんない…)コテン


「あ、もしもしー。ここ、画家の爺さんの御宅でしょうかー?」

うん、そだよー

「ワタクシ、先生の担当画商でしてー。絵の出来を少し確認させていただきたいんですが」

でもじいちゃんいないよ?

「いいんです、チラっと見るだけなので。上がってもいいかな?」

うーん、どうぞ


「ありがとうね、助かったよ。じゃあ、ワタクシはこれで」

ばいばいー

「あのね、先生にワタクシが来たことは言わないでおいてね」

なんで?

「私の上司が怒っちゃうんだ。言ったら君も怒られちゃうかも…」

えええっやだー

「だから、秘密だよ」

うん

「良い子だね。じゃあ、さよなら」



「第、3位!!」

弟子(…先生)

弟子(確かにあなたの構図は素晴らしい。技量も、他とは一線を画している…)

弟子(しかし)

弟子(あの独自の世界観は、評価されたことがない。それでは、あまりにもったいない)

弟子(…だから俺が有効活用してあげますよ)

弟子(弟子として、ね)ニヤ

爺「…いよいよじゃぞ!起きろ、少女!」

少女「むにゅ…」

「それでは第、1位の発表です」

爺「…っ」

「弟子作、“我は踊り子”!!!!」


オオオオオオーッ!!

爺「…」

爺「な、」

爺「なん、じゃと…」

少女「…あれ」

爺「ど、どういうことじゃ」

少女「あの絵、爺ちゃんのと似てる」

爺「どういう、どういうことじゃ…」

「では作者は前へ!」

弟子「…」スック

弟子「私のようなものが大賞をいただくなんて、光栄です」

爺「あ、あれはわしの構図じゃ。モチーフも、全部同じ…」

爺「…あやつっ」ガタン

弟子「この絵の作成にはおよそ半年をかけ…」

爺「貴様ぁあああああああああああっ!!」ダン

「な、なんですあなたは!」

少女「じ、じいちゃん!!」

爺「わしの絵を!わしの結晶を汚しよったなぁああ!!」

「降りてください!ちょ、誰か!誰かーー!」

少女「じいちゃん!じいちゃん、…うわぁあああん!」

爺「この外道が!それでも画家のはしくれかぁああ!!」

弟子「は、早く警備員を呼べ!こいつを連れて行け!」


……

「盗作、ねえ」

「きみぃ、馬鹿言ってもらっちゃ困るよ。かの大画家が君の作品を盗むぅ?」

「君の絵もね、審査したがね。ありゃあ、なんだい?ははは、フェアリーテイルのまねごとかい?」

「盗作をしたのは君のほうだろう」

「いやはや、弟子の構図をしかも意味不明な絵で貶めるとは…。落ちぶれたくはないもんだな」

「訴える?ははは、精精君が訴えられないよう覚悟しておくんだね」

「小さい子どももいるんだろう?あのね、多くの貴族スポンサーがつく弟子画伯には勝てんよ」

爺「…」

少女「じーちゃん」

爺「帰ろうか、少女」

少女「…」

爺「今日は何が食べたい?ははは、窮屈な場におしこんですまなかったな。ご馳走にしようか」

少女「ねえ、絵は?」

爺「うん?」

少女「あの絵、ぱくりだよ。怒らなきゃ。それで、爺ちゃんを一位にしなきゃ」

爺「…」ナデ

少女「ねえってば!!」

爺「いいや、もういいんじゃ。もう、な」

少女「だめだよ!!!」

爺「もう賞は決まった。今更難癖つけるのは野暮じゃ」

少女「でも、でもっ」

爺「わしはもう、人から評価されようなんて思わないんだ」

少女「でもぉ…」

爺「いいんじゃ、もう…」

少女「…っ」

爺「泣くな、少女」

少女「わ、私は…」

少女「わた、しは。じいちゃんの絵、だいすきだよっ!じいちゃんの絵が、世界でいちばんすごいよ!」ヒック

爺「少女…」

少女「わたし、分かってるからね!だれも信じてくれなくても、私は覚えてるからね!」

少女「じいちゃんの絵だ!あれは、じいちゃんの絵だもん!!」

爺「…」

爺「ありがとう、少女。お前が味方でいてくれるだけで、わしは大満足じゃ」ギュッ

少女「うう、…うわぁあああ…ん」


こうして落ちぶれた画家と小さな女の子は、画家を非難する都を逃れました。

画家のふるさとである村に戻り、彼らは森の中でひっそりと暮らしはじめました。

画家はしかし、彼の筆を捨てたわけではありませんでした。

爺「少女よ」

爺「わしはな、いくら他人に理解されなくても自分の道を行く」

爺「エルフを。いつか、この手で本物を描くのじゃ。記憶ではない、目の前にある…」

爺「それだけあれば、もうわしに思い起こすことはないのじゃ」

爺「この森にはな、エルフがいる」

爺「絶対いるのじゃ。伝説ではない…」

爺「それを見つけて描くまで…。わしは、死ねん」

爺「あの時見た彼女の感動を、もう一度カンバスに描きおこすまでは…」

爺「わしは…」



爺「絶対に、何が何でも、ボンキュッボン美女エルフのおっぱいを描くまでは死ねんのじゃあああああああ!!!」

少女「がんばれ、じいちゃん!!!!」

……



少女「んでまあ、3年前くらいに死んじゃったんだよね。結局エルフを拝めずに」

エルフ「締めが最悪すぎて今までの良い話が台無しだ!!」

少女「えー?そうかなー?美しき悲しい物語じゃん」

エルフ「いや最後!おまえの祖父は何を目指してるんだ!!」

少女「エロフの絵」

エルフ「やめろ!!!!」

少女「まあそんなこんなで、ジジイの遺志を受け継いだのが私」

エルフ「何て奴だ…。いや、途中まではなかなか同情的だったが…」

少女「まあジジイは私には普通になってほしいとか言ってたけど、そんなの無理だし」

少女「私はじいちゃんの描きたかったものを描きあげて、きっと世間を驚かせてみせる」

少女「それで、じいちゃんの汚名を晴らすの」

エルフ「…うむ」

エルフ「お前の祖父も災難だったな。そのように薄汚い人間の手にかかるなど」

少女「今となっては真相は謎だけどね。ポジティブに言えば、あの事件のおかげでじいちゃんは世俗を捨てれた訳だし」

少女「自分の世界を確立できたというか」

エルフ「いや、もっと怒るべきだろう」

少女「ってなわけで」

エルフ「ああ」

少女「…もうオワタ」

エルフ「そんな目で私を見るな!!やめてくれ!!」

少女「はあもうどうしたらいいんだ」

エルフ「さ、さあ…」

少女「速いところ描いてしまいたかったのに」

エルフ「その、評価会とやらには別の絵を出せば良いのではないか?」

少女「無理だよ。第一もう私はエルフを描くって決めてるんだから」

エルフ「ほら、森の動物を描いたらどうだ?知り合いで見栄えの良いものを見繕ってやろう」

少女「やだ!!!やだやだやだやだ!!」バタバタ

エルフ「頑固な娘だなー…」

少女「ねえどうすればいいと思う、犬?」

犬「…」チラ

エルフ「…」ビク

犬「…わふ」

エルフ「え?わ、私が?」

少女「何?」

犬「わふわふ」

エルフ「私がモデルになればいい、と?」

少女「え、ちょっと。何喋ってるの」

エルフ「この犬が…。私が女エルフの恰好をしてモデルをすればいいと」

少女「…」

エルフ「いや、そんなことでは納得がいかないだろう?第一私は」

少女「それ、いいね!!!!」

犬「ばふっ」

エルフ「はぁああ!?」

エルフ「な、何を言っているのだ私はしないぞ!」

少女「…」

エルフ「女の恰好など…誰が」

少女「…」ハァ

少女「絵を失った私なんて生きてる価値ないんだ。もう、こいつを連れて死ぬしか…」

犬「ばふ、!?」

少女「あなたが協力してくれないならもう望みはないし、いっそのこと…」

エルフ「う、う…」

エルフ「し、しかし…」

少女「今まで辛いことばっかりだったけど、爺ちゃんのところに行けるんなら幸せかも…」

犬「きゅうん…」

エルフ「…」

少女「…」

エルフ「あ、」

少女「…はぁ…」

エルフ「…や、やる」

少女「え?」

エルフ「やればいいのだろう!!だから死ぬなんて言うな!!」

少女「あざーーーーっす!!!」

犬「わふ!!」

エルフ「し、しかし調子に乗るな!私が気に入らないと感じたらいつでもやめてやr」

少女「早速背景とポーズ決めないと。時間ないんだからあんたもチャキチャキ動けよ」

エルフ「お、おい」

少女「やっぱりモチーフは森が良いんだ!どっかいい場所ない?」

エルフ「おいって」

少女「あそこの泉がいいか!花も咲いてるし、いいよね」

エルフ「…」

少女「ってことで、明日の朝泉で会おう。衣装とか小物は私が持ってくるから」

少女「じゃ!」

エルフ「え、じゃって」

少女「じゃあ、ばいばい!」

エルフ「…」

少女「今から構想練りたいから帰ってくれる?また明日ね」

エルフ「え、でも…」

少女「明日ね!!!」

エルフ「…」

エルフ「は、はい…」

=次の日

エルフ「…」

エルフ「まだか、あいつは…」イライラ

エルフ「昨日は同情に流されて承諾してしまったが、もう二度あの娘にはのまれんぞ」

エルフ「いやなことはいやだとハッキリ…」

「おーい」

エルフ「!」

少女「おはよー」ガチャガチャ

エルフ「な、なんだその大荷物は!?」

少女「道具だよ。はあ、重かった」

エルフ「…。それにしても第一、約束を取り付けたお前が遅刻だぞ」

少女「え?ちゃんと朝じゃん」

エルフ「私はまだ日が昇らぬうちから待っていたのだぞ」

少女「あ、原住民の時間感覚とか知らないんで」

エルフ「なっ…」

少女「んでさあ、昨日家で色々考えてみたの!描きたい構図っ」

エルフ「…何だ」

少女「まず、これ!エルフといえば弓でしょっ」バーン

エルフ「はあ、弓か」

少女「あんたも持ってるだろうけど、こっちのデザインのほうが良いと思ってー」

エルフ「何を言っている?弓など持っていない」

少女「え?」

エルフ「ん?」

少女「弓を…持ってない?」

エルフ「触ったこともないな。見たことはあるが…」

少女「…」

エルフ「何だ」

少女「ええ、と。とりあえず引いてみてくれる?」

エルフ「こうか」ギリリ

少女「…なんか、まあ。サマにはなってるけど…」

エルフ「なんだこれは、固いぞ」

少女「そんなことないよ。ただのスポーツ用の弓だから。男の人なら余裕でしょ」

エルフ「あ、ああ。私にかかればこれくらい」

少女「じゃあ、あそこの岩の上に立ってくれる?とりあえずどんな感じか見たいし」

エルフ「分かった」スタッ

少女「大きく足開いて、弓思いっきり引いてね」

エルフ「こうか?」ギリリ

少女「もっと大きくお願い」

エルフ「…」ギリリ

少女「いや、それ限界?もうちょっといけるでしょ?」

エルフ「これくらいでいいだろう!」

少女「…まあ、いいや。このままステイね。動かないでよー」

エルフ「…」グググ

少女「ふんふん、…あー、もうちょっとあおり入れたほうがいいかな」

エルフ「…」ググ

少女「泉をバックに…。髪の毛も散らすかんじで…」

エルフ「…っ」グ

少女「うん、いいかも!少し下から描いて躍動感を出s」

エルフ「う、ううっ」バッ

少女「え」

エルフ「はあ、はあ…」プルプル

少女「…ステイって言ったじゃん。何勝手に動いてるの」

エルフ「こ、この弓…。疲れるんだ!とても長くは引いていられない!」

少女「そんなわけないでしょ!?あんたエルフでしょうが、これくらい頑張ってよ!」

エルフ「腕が攣ったらどうしてくれる!」

少女「な、…」

少女「軟弱者!!!」

エルフ「何だと!?」

少女「あー、もういい!あんたみたいなヒョロガリに局部運動進めたのが間違いだった!」

エルフ「ひょろがりとは何だ!またお得意の罵倒呪文か!」

少女「じゃあ、剣でいいわ剣で。あんたも使ってたでしょ」

エルフ「レイピアか。あれは得意だ」

少女「じゃあそれ構えて」

エルフ「こうだな」シャッ

少女「おお、いいかも。弓の方が良かったけど、これもまた一興かな」

エルフ「このまま動かなければいいのだな」

少女「うん、ステイステイ」

エルフ「…」

少女「ちょっと待ってて、パース取るから」

エルフ「ああ」

=40分後

少女「…」カリカリ

エルフ「…」

少女「…」カリカリ

エルフ「う、…」ガク

少女「ど、どうした!?」

エルフ「足が…だるくて…」

少女「女子か!!」

エルフ「むくんで…」

少女「女子か!!」

エルフ「い、いつまで立たせるつもりだ!」

少女「いやこれ下書きだから!本番こんなもんじゃないんだけど!?」

エルフ「そんなの無理だ!真面目に考えろ!」

少女「あああああ期待値ひっくいなぁああもおおう」バンッ

少女「なんなのあんた!体力という概念あんの!?」

エルフ「何故エルフ族が屈強だと思い込んでいるんだ?」

少女「だ、だって。だってそういうもんでしょ?」

少女「森の中駆け回ったり、弓とか剣とか使ったり、…するでしょ!?」

エルフ「いや、あまり」

少女「…」

少女「いつも何してんの」

エルフ「いつもか?日の出と共に起きて動物と話をし、森の果実を食べ、昼寝をしている」

少女「…」

エルフ「そしてフクロウが告げる時間に眠り…」

少女「生活習慣のいいニートじゃねえか」

エルフ「にーと?…」

少女「呪文でいいわもう!なんかさ、こう、ないの!?エルフっぽいこと!?」

エルフ「とは言われても…。森で自適に暮らす以外は、別に」

少女「残念すぎる…」

エルフ「お前に私の生活をとやかく言われる筋合いはない!」

少女「…あ、そうだ!!」

少女「救いの手が!もうひとつあった!!」

少女「魔法見せてよ!」

エルフ「魔法」

少女「そう!エルフなんだから、使えるよね?」

エルフ「そうだな。エルフ種は人間には使えない多種多様な魔法が使える、優越種だからな」

少女「よし!!よしよしよしよっしゃあああ!来たよ!やってみせて!!」

エルフ「しかし私は使えない」

少女「てめええええええええええええええええ!」ガッ

エルフ「う、うわぁああ!何をするやめっ」

少女「何でお前は生まれてきたぁあああああああああ!!!」

エルフ「ひ、いたい!耳、ひ、引っ張らないで!いたい!!」

少女「エルフに謝れ!全世界のステレオタイプエルフに謝れ!そして死ねぇええ!!」

エルフ「やめて!殴るな!ひ、いやああああ」

……


少女「…」

エルフ「ひぐっ、うっ…。ぐすっ…」

少女「…死にたい…」

少女「…なんか、ごめん。カッとなってやった後悔はしてないけど」

エルフ「ひ、ひどいぞ…。何で私がこんな目に…」グスグス

少女「ごめんて…」

エルフ「わ、私は…。私は正直に答えただけなのに…」

少女「うんうん、そうだよね。でも無能すぎるんだよねあんた」

エルフ「うううぅう…」メソメソ

少女「…」

少女「とりあえず、…私が何か模索するから。服だけ着てもらって良い?」

エルフ「ま、また怒るのだろう?もう帰りたい…」

少女「怒んない!絶対怒んないから!お願いだよ!」

エルフ「ほ、本当だな?」

少女「うん、絶対。まあ、うん、ええと、恐らく」

エルフ「…服を寄越せ」グス

少女「はい、これ。白いシフォン」

エルフ「…こんなもの…。もう、…私は一体何を…」

少女「お互い精神崩壊しそうだよね…。出口が見つからないから余計辛いよ…」

エルフ「…どうやって着ればいいのだ」

少女「背中のボタンあけて被って閉めるだけだよ。ボタンは私がやってあげるから」

エルフ「…」

少女「なに」

エルフ「あ、あっちを向いていろ」

少女「はいはいはいはい」クルリ

バサッ

バサ

少女「できたー?」

エルフ「あ、ああ」

少女「見るよ」クル

エルフ「…ど、どうだ。変じゃない、か?」フワリ

少女「…」

エルフ「へ、変だろう。やっぱやめるべきだ、こんな」

少女「か」

エルフ「か?」

少女「可愛い!!!イケるイケる!!!!」

エルフ「ええええええええええええ」

少女「うおおおお漲ってきたあああ」バッ

エルフ「ひ、!」

少女「髪の毛下ろして!三つ編みにして花を挿して!で、花冠乗せよう!」

エルフ「や、やめろ!ひっぱるな!」

少女「そんでウサギかなにか持てば最高!いい!ファンタスティック!!」

エルフ「き、気に入ったか?」

少女「うん!素朴な感じがいい!儚げ!」

エルフ「そ、そうか…」

少女「こう、やっぱ可愛いもの見るとアイデアが一気にわいてくる気がする!はあああ早く描きたい!」

エルフ「し、しかしこの服、肩の部分がキツいんだが」ズル

少女「脱ぐなクソ野郎。殺すぞ」

エルフ「えっ、あっ」ビクッ

ウサギ「…」モヒモヒ

少女「動かないでって言える?」

エルフ「ああ。眠たいみたいだからじっとしててくれるはずだ」

少女「じゃあ描くよ。あんたも動かないでね」

エルフ「ああ」

少女「…」カリカリ

エルフ「…あの、喋ってもいいのか?」

少女「別にいいよ。ただ顔の向きは変えないでね」

エルフ「分かった。…ええと、…」

エルフ「えっと…」

エルフ「お前、いくつなんだ」

少女「17。そっちは?」

エルフ「私は、ええと。…28、くらいか?」

少女「…長寿設定とかもないんかい。28て。せめて200歳とかにしてくれよ」

エルフ「人間の28歳とはどのような感じだ?」

少女「ああ、あんたとは全然違う。見たとこ15,6って感じだし…。もっとオッサンオッサンしてるよ」

エルフ「そうなのか。ふん、短命種族め」

少女「うっせーニート」

エルフ「…じ、実は。私は人間と喋ったのはこれが初めてなんだ」

少女「ふーん」

エルフ「…森に入ってくる者の姿を見たりはしていたが、直接言葉を交わしたことはなくて…」

少女「言葉とかも勉強したわけ?」

エルフ「あ、ああ。動物の言葉では通じないようだったから」

少女「すげーじゃん」

少女「…もしかして、ずっと喋りたかったとか?」

エルフ「そそそ、そんなわけないだろう!!何故私が下等種族と話など」

少女「動くなって」

エルフ「む。…く、くそ」

少女「あんた、ずっと一人でここにいるの?」

エルフ「…ああ」

少女「寂しくないの?」

エルフ「動物や木々に囲まれているから、孤独は感じたりしない…」

エルフ「…寂しくなどない」

少女「…」カリカリ

少女「どこに住んでるの?」

エルフ「ああ、森の奥の大木」

少女「大木!へえ、なんかファンタジーだね。デカいきのことかで寝てるの?それとも、枯葉の布団とか」

エルフ「…の近くに、もう誰も使ってない小屋があってな。そこで」

少女「死ね」

エルフ「何故!?」

少女「あんた人間ガー人間ガー言いながらも、人間が建てた小屋にいるわけ!?ダッサ!」

エルフ「森の所有物を使うのは当然だ!」

少女「屁理屈こねんじゃねえよガッカリエルフ!!」

エルフ「口が悪いぞ、このチビ!!」

少女「んだとこのウドの大木!!」

ウサギ「…」モヒ

ウサギ「楽しそうねえ、エルフ」

エルフ「は、…え?」

ウサギ「やっとニンゲンのともだちができたのねえ。よかったわねえ」

エルフ「と…」

少女「なんだ?ん?ビビってんのか?おらおら」

エルフ「だ、誰があんなやつ、と…」ボソボソ

=夕方

少女「…よし」パン

エルフ「はぁ…。ったく、いつまで座らせる気だ」

少女「座ってるだけだから楽なもんでしょ!大体ずーっとベラベラ無駄話喋ってたじゃない」

エルフ「私の話は有意義なものだったではないか!ニンゲンがいかに環境を汚染してるか…」

少女「だーーーー、黙れ!!耳もぎ取ってただのヒョロい優男にしたろか!?」

エルフ「耳はだめだ!!!やめてくれ!!」ゾッ

ウサギ「…」ピョン

少女「あ」

少女「待って待って、うさぎ」タタタ

ウサギ「?」モヒ

少女「ごめんね、長くつき合わせちゃって。またいろ塗りもお願いするだろうけど…」

少女「またよろしくね、ありがとう」ペコ

ウサギ「…」モヒ

少女「人参持ってきたから、食べなね。モデル料だよ!ここ置いとくね」ドサ

ウサギ「…」クンクン

エルフ「…」

少女「ふふ、かわいい」ナデ

エルフ「…ふ、ふん…」

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