【艦これ】少女「私、妖精さんが見えるんです」海兵「……」 (247)

まったり投下するスレ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402239456

少女「…………」

海兵「…………」

少女「…………」

海兵(……なんだろう。あの子、ずっとこっちを見ている気がするが……)

海兵(昼間から公園のベンチに一人腰掛ける男はそんなに不審だろうか……)

少女「……」

海兵(気まずいな……話しかけてみるか……? 憲兵沙汰にならないだろうな……?)

海兵「……あの」

少女「!」ビクッ

ドサドサ

海兵「あ、荷物が……」

少女「あわわ……」オロオロ

海兵「……すまない、拾うの手伝うよ」

少女「ご、ごめん……なさい……」

海兵「随分大荷物だな……買い物帰りか?」

少女「は、はい……家からこの街まで遠いので、まとめて買い溜めするんです……」

海兵「そうか……偉いな。どれくらい遠いんだ?」

少女「○○の外れにある村から歩いてなので、けっこう……。4時間くらいは……」

海兵「と、徒歩以外に手段はありそうなものだが……」

少女「なるべく無駄なお金は使いたくないし……私、身体が弱いので、体力つけたくて……」

海兵「なおさら歩かない方が良いだろ!」

少女「ご、ごめんなさい……」

海兵「い、いや、謝らないでいいが……」

海兵「これから、また歩いて帰るのか?」

少女「はい……」

海兵「……送っていこうか?」

少女「! だ、ダメです!」ブンブンブン

海兵(…………そりゃそうか)

少女「え、えっと……ごめんなさい……お気持ちだけで大丈夫です……」

海兵「……そうか。気をつけてな」

少女「はい……」

少女「…………あの……」

海兵「?」

少女「私、半月に一回ここに来るんです」

海兵「大変だな……」

少女「それで……その……」

少女「ま、また会えますか……?」

海兵「? ああ……多分」

少女「そうですか……」

少女「じゃあ、私これで……ありがとうございました……」ペコリ

海兵「ああ、気をつけてな」

海兵(…………何だったんだろう……まさか一目惚れされたとか……)

海兵(…………無いよな)

……………………

少女「あ……」

海兵「ホントにちょうど半月だったな」

少女「海兵さん……!」タッタッ

海兵「走るとまた荷物落とすぞ」

海兵「……? あれ? おれが海兵だって話したっけ?」

少女「あ……いえ、なんとなくそんな気がしただけです」

海兵「すごいな……人を見る目があるのかな」

少女「そ、そんなことないですよ……」

海兵「また今回も大荷物だな……」

少女「はい……父と母の分の食糧もあるので……」

海兵「……ご両親と一緒に来るわけにはいかないのか? さすがに一人は重労働すぎるだろう……」

少女「はい……そうなんですけど……色々あって……」

少女「ええと……」ソワソワ

海兵(マズい……訊いちゃいけない話だったか……)

少女「…………」

海兵「そ、それにしても良い天気だな!」

少女「え? そ、そうですね……」

海兵「こういう日は公園で昼寝するに限るな」

少女「身体を動かすべきなんじゃ……」

海兵「……」

少女「あの……海兵さんって軍人さんなんですよね……?」

海兵「まあ、海軍だからそうなるな」

少女「そうですか……」

海兵「……?」

少女「え、えっと……海兵さんっていっつも船に乗って忙しくしてるイメージなんですけど……」

少女「今日は休みなんですか?」

海兵「そうだけど……最近はお世辞にも忙しいとは言えないな」

少女「?」

海兵「今、海の治安がすこぶる悪くてな……」

少女「そういうときこそ海兵さんの出番なんじゃないんですか?」

海兵「それが……そうもいかないんだよ」

少女「?」

海兵「海を荒らしてるのが密漁船やら海賊ならまだしも、正体不明の化け物なんだ」

海兵「不死身の化け物たちだ。恥ずかしながら、俺たちじゃまったく手に負えない」

少女「…………」

海兵「御伽噺とかじゃないぞ。俺もこの目で見るまでは信じられなかったが」

海兵「そいつらが現れてから、漁船やらタンカーやらの護衛が主な仕事だったんだが、対抗策が見つからなくて……」

海兵「今は誰も彼も極力海に出ないようにしてるんだ」

少女「…………」

海兵「決してファンタジーな小説を読み過ぎたわけじゃないぞ」

少女「だ、大丈夫です。わかってます」

海兵「おかげで護衛任務もめっきりなくなって……体の良い謹慎状態だ」

少女「そうですか……」

海兵「ま、こんな辛気くさい話はどうでもいいか。すまない」

少女「い、いえ、私が訊いたんですから……」

海兵「そういえば、まだ名前を聞いてなかったな」

少女「な、名前は……」

少女「無い……です……」

海兵「………………」

海兵(ま、また地雷を踏んでしまったか……!)

少女「ごめんなさい……」

海兵「いや、謝らないでくれ。俺が悪い」

少女「……」

海兵「……」

少女「あの……私……」

少女「今日は……これで帰ります……」

海兵「あ、ああ……」

少女「次は……ちゃんと話題を用意してきますから……」

海兵「……了解した」

海兵(予想以上に訳ありな子みたいだな……表情や話し方もさることながら)

海兵(まあ、深く訊かない方が良いだろう……)

今回はここまで

ゆっくり投げていくね

……………………

少女「…………」ボー

海兵「やあ」ポン

少女「!」ビクッ

海兵「!?」

少女「び、びっくりした……げほっげほっ……」

海兵「す、すまん……そんなに驚かれるとは……大丈夫か?」

少女「へ、平気です……けほっ……」

少女「今日は遅かったですね……」

海兵「司令部で会議があってね」

少女「はぁ……」

海兵「内容は話せないけどね。ほら、国家機密というやつだよ」キリッ

少女「な、なんかかっこいいですね……!」キラキラ

海兵(ま、対して実のある話はしてないんだけど……)

海兵(それにしても……初めてこの子の少女らしい顔を見た気がするな……)

少女「あれ? でも……この前の話は国家機密ではないんですか?」

海兵「…………多分」

少女「多分、って……」

海兵「海に出たことある人なら一般人でも例の化け物のことは知ってるし、平気平気」

少女「そうなんですか……」

少女「私、海に出たことなんてないなぁ……」

海兵「興味あるか?」

少女「え、えっと……友達に昔の軍艦が好きな子がいて……」

海兵「軍艦に? 変わった友達だな……」

少女「は、はい……変わってるんです……」

海兵(戦史オタクか何かだろうか)

海兵「その友達も一緒に来ればいいのに」

少女「えっと……」

海兵「……そうもいかないのか」

少女「…………そうみたいです」

海兵「?」

少女「……海兵さん」

海兵「なんだ?」

少女「私……その……」モジモジ

海兵「……?」

少女「な、なんでもないです……ごめんなさい……」

海兵「そ、そうか……」

海兵(突然告白でもされるものかと……そんな日には俺はどうしたらいいんだ……)

……………………………

海兵「今日は雨だな……」

少女「そうですね……」

海兵「どこか食べ物屋にでも行くか? 雨の中話すのも何だし」

少女「……あの……海兵さんのおうちに……行きたいです」ソワソワ

海兵「え?」

少女「……や、やっぱりご迷惑ですよね……ごめんなさい……」

海兵「うーん……基本、軍の寮で暮らしてるからな……そこに連れて行くわけには……」

少女「そうですか……」

海兵「いや、それ以外の時に使ってる借り部屋なら大丈夫だ」

…………

海兵「ここだ」

少女「…………」キョロキョロ

海兵「我ながら散らかり放題だな……」

海兵「長いこと男やもめな上に、ずっとここにいるわけじゃないから、寝泊まりするだけの場所になっててな……すまない」

少女「い、いえ、うちの方が散らかってます……」

海兵「それは相当だぞ……」

海兵「これを機にちょっとは整理整頓するか……」

少女「あ……」

海兵「?」

少女「あの、この本……」ペラッ

海兵「ああ、太平洋戦争の戦史だな」

海兵「軍艦好きな友達がいるんだっけか。持って帰ってもいいぞ」

少女「良いんですか?」

海兵「構わないさ」

少女「あ、ありがとうございます……! ちゃんと洗ってお返しします……!」ペコペコ

海兵「いや、服じゃないんだから……」

海兵「友達が軍艦や船に興味があるのはわかったが、君はどうなんだ?」

少女「私は……海に……出てみたいかな……」

少女「……いつか身体が良くなってからでいいから……広い海に……」

海兵(歩ける元気があれば、船くらい大丈夫そうだが……)

少女「で、できたら海兵さんと一緒に……」

海兵「俺でいいなら、いつでも行くさ。軍艦ではちょっと難しいが……」

少女「ぐ、軍艦じゃなくてもいいです」

海兵「そうか……なら、約束しよう。一緒に、海に」

少女「はい……!」

今回はここまでです、しれぇ!

……………………………

海兵「ああ、また俺の遅刻か。待たせてしまってすまない」

海兵「この前の本は……」

少女「海兵……さん……げほっ」

海兵「お、おいおい、いつもより顔色が悪くないか?」

少女「ごめんなさい……今日は……あんまり調子がよくないかも……」

海兵「買い出しがあるのはわかるけど、無理しちゃダメだろ……」

少女「でも……海兵さんに会いたくて……」

海兵「気持ちはありがたいが……」

少女「すみません……こほっ……」

海兵「医者に行くか?」

少女「……」フルフル

海兵「今日ばっかりはさすがに家まで送って……」

少女「だ、ダメです……!! げほっげほっ!」

海兵「……」

少女「ごめん……なさい……うちの村の人たち……軍人さんが……苦手なんです……」

海兵「……別に海兵だって言わなきゃいい」

少女「でも……もしバレちゃったら……海兵さんに絶対迷惑がかかります……!」

少女「ホントは……こうやって話してることも……知られたら……」

少女「すみません……」

海兵(……そんなに毛嫌いされてるのか……珍しいことでもないけど)

海兵「とりあえず良くなるまでうちで休んでいくんだ。いいな?」

少女「でも……」

海兵「いいから」

少女「ごめんなさい……迷惑かけて……」

海兵「気にしなくて良い」

……………………………

少女「ふぅ……ふぅ……」

海兵(辛そうだな……)

海兵「何か欲しいものあるか?」

少女「無い……です……」

海兵「……身体が弱いとは聞いたが、どこが悪いんだ?」

少女「わからない……です……」

少女「……お医者さんに診てもらったこと……なくて……」

海兵(おいおい……)

海兵「そんな状態でよくこんな無茶な生活を……」

海兵「なら、今すぐにでも診てもらった方がいい」

少女「……」フルフル

海兵「…………ご両親は心配しないのか」

少女「……」

海兵「……そうか」

少女「このまま帰らなかったら……さすがに……心配してくれるかも……しれませんね……」

海兵「それは君の心配か? 食糧の心配か?」

少女「…………」

海兵「……すまない。イヤな言い方をしてしまった……」

少女「いえ……けほっ」

海兵「俺は……ただただ、君の事が心配だ……」

少女「ありがとうございます……そんなに気遣ってもらえるなんて、私……嬉しいです……」

少女「すぅ……すぅ……」

海兵(この子は……誰かに助けて欲しいのだろうか……)

海兵(その誰かが、たまたま俺だったんだんだとしても……)

海兵「俺は君を助けたい……」

海兵(……今は待つだけだ。この子がちゃんと話してくれるのを)

少女「…………」モゾモゾ

少女(ありがとう……海兵さん……)

…………………

海兵「もう大丈夫なのか?」

少女「はい……あの一晩泊めてもらっちゃって……ありがとうございます……」

海兵「……一人で平気か?」

少女「はい。慣れっこですよ、えへへ……」

海兵「無理はするな。何かあったらいつでも頼ってくるんだ」

少女「でも……」

海兵「良いな?」

少女「……はい」

少女「海兵さん……本当に……ありがとうございました」

海兵「ああ、またな」


……………………………

海兵(それから、あの子はぱったりと来なくなってしまった)

ここまでなのじゃ
寝るのじゃ

海兵(彼女の住む村とやらに行くことも考えたが、あの子は俺が訪れるのを頑なに拒んでいた……)

海兵(あの子の気持ちを無視してでも、安否を確かめに行くべきか……)

海兵(もう……最後に会ってから三ヶ月は経つのか……)


「……というわけだ。君、聞いているかね?」

海兵「は、はい!?」

「……しっかりしてくれたまえよ」

海兵「も、申し訳ありません少将殿!」

海兵「ぐ、軍を敵視する者がいるとの話でしたが……」

「ああ。軍本部への反乱を企てる動きもあったと聞く。件の化け物……『深海棲艦』を神聖視する者たちの中でな」

海兵「神聖視……悪魔信仰という奴なのでしょうか」

「前時代的だな。全くくだらん」

海兵「では、その集団の鎮圧が我々の任務なのでしょうか」

「いや、もう済んどるよ……二ヶ月も前の話だぞ? 本当に話を聞いていないな」

海兵「も、申し訳ありません……」

海兵(完全に上の空だった……)

「どちらにしろ私たちの仕事ではない。そちらは大本営から陸軍への指令だった」

「軍警たちの主な任務は一般民衆の思想取り締まり……危険思想の排除だ」

「今回の件はまさにそれだな」

「事後処理にも海軍の出る幕はないだろうな。ほとんどがその場で射殺だったと聞く」

海兵「そう……ですか」

海兵(なんとも……やりきれない話だな……)

海兵(それだけデリケートな話題ということだろうか……深海棲艦ってやつは…)

「大本営からの指令は、『○○の外れのある村への交通網の遮断』……これこそ海軍の仕事ではないだろうに……」ブツブツ

海兵「!!」

海兵「○○の……外れの村……なのですか……? その騒動があったのは……」

「そうだ。大体あんな辺境の村への交通手段など限られているのに……海軍は相当に暇人だと思われているらしい」
 
海兵「……か、関係のない村人は……どこに避難したのですか?」

「関係のない者などおらんよ。制圧の対象はその村に住む者全員だ」

「……? どうかしたかね?」

海兵「い、いえ……」

「まったく……こんなことに手を焼いている場合ではないというのに……」

………………………

海兵「くそっ……!」

海兵(なんで知らなかった! なんで! 二ヶ月も前の軍の動きを!)

海兵(阿呆か、俺は!)

海兵(あの子が来なくなったことと、無関係なわけがない……! 直接行って……!)

海兵(……行って、どうする……? もはや……無事であるとは考えにくい……)

海兵(ほとんどが銃殺……残りはどうなった……?)

海兵「……………」

……………………………

海兵「………………」

海兵(……こうしてベンチで頭を抱えていたら……ふらっとあの子が現れたりしないだろうか……)

海兵(……あの、最後にあった日……俺が引き留めていたら……彼女だけでも助かったのだろうか……)

海兵(後悔してもしきれないな……)

海兵「話してくれるのを……待っている余裕なんてなかったのか……」

ポツ ポツ

海兵「……雨か」

海兵「帰ろう……」

今回はこれだけ
またね

………………………

海兵(……あの子がまた来るときのために少し片づけた部屋だが……今は虚無感を煽るだけになってしまったな)

海兵(……寝て起きたら、三ヶ月前のあの日に戻ったりしないだろうか)

海兵(……あの日の……)

海兵(……いつか海に行く約束を……)

……………………

……………

……


コン コン コン

海兵「ん…………」

海兵「……今何時だ……?」ムクッ

海兵「二時……こんな真夜中に……」

海兵(今、確かにノックの音が……)

ガチャ

海兵「はい……どなたです……か……」

少女「お久しぶり……です……えへへ、やっと……会いにこれました……」

海兵「……!」

少女「ずぶ濡れで……ごめん……なさ……」フラッ

海兵「し、しっかりしろ!」ガシッ

少女「海兵さんの手……温かい……」

海兵「無事……とは言い難いが……」

少女「はぁ……ふぅ……」

海兵「また会えて良かった……本当に……!」ギュッ

少女「はぁ……はぁ……」

海兵「まだ辛いか?」

少女「横になったら……少し楽になりました……」

海兵「長いこと雨に打たれてたんだろ。ゆっくり休むんだ」

少女「ありがとうございます……」

少女「着替えも……貸してもらっちゃって……」

海兵「…………」

海兵(この子だけ逃げてきたのか……? ご両親や友達は……?)

海兵(三ヶ月以上もどこにいたんだ……?)

海兵(訊きたいことは色々あるが……)

少女「海兵さん……」

海兵「?」

少女「私……住むところ……なくなっちゃって……お父さんも……お母さんも……」

少女「頼れる人……海兵さんしかいなくて……それで……」

海兵「やはり君の村だったんだな……」

少女「はい……知ってますよね……軍の人ですもんね……」

海兵「すまない……」

少女「海兵さんは何も悪くないです……いつかこうなるだろうって……わかってたんです……」

少女「悪いのは……私たちです……」

少女「父や母や村のみんなが……歪んだ考えを持ってるって……知ってたんです……」

少女「でも……私には……どうしようもなくて……」

海兵「……ご両親から疎外されていたのはそのせいか。君だけは違ったから」

海兵(もしかしたら、村民からも……この子は……)

海兵「前に話してくれた、友達っていうのは……その子は君の味方だったんじゃないのか?」

少女「……」

少女「海兵さん……私……」

少女「私……妖精さんが見えるんです……」

ちょっとだけ投下
また今度

海兵「……」

海兵「妖精さん……?」

少女「ずっと……物心ついたときから……一緒にいてくれる……小さい妖精さん……」

海兵「それが、友達の正体なのか?」

少女「今も、側に……」

海兵「君以外には見えないのか……?」

少女「……こんなこと、信じてもらえるわけないですよね……」

海兵「信じるさ」

少女「……ありがとう……海兵さん」

少女「……あの日」

海兵「?」

少女「あの日……初めて海兵さんに会った日……海兵さん……にも……」

少女「妖精さん……が……」

少女「……」

少女「すぅ……すぅ……」

海兵「……休ませるつもりが、話に夢中になってしまっていたな」

海兵「……」

海兵「軍艦好きな妖精さんとやら……今そこにいて、俺の声が聞こえるならお願いがある」

海兵「これから、俺と一緒にこの子を守ってやって欲しい」

海兵「……頼む」

………………………

少女「海兵さん……」チョンチョン

海兵「ん……」

海兵「あ、ああ……悪いな……眠ってしまっていたのか……」

少女「すみません……起こしてしまって……」

海兵「いや、助かったよ。今日も一応仕事だからな……」

海兵「体調はどうだ?」

少女「だいぶ良くなりました……」

海兵「なら良いが、まだ安静にしていなさい。夜には帰ってくるから」

少女「はい……」

海兵(本当ならずっとついていてあげたいところなんだがな……)

少女「大丈夫です……そう言ってもらえるだけで……嬉しいです……」

海兵「え……?」

少女「?」

海兵「……なんでも……ない……」

ちょこちょこ投下
ここまで
また今度

…………………………

少女「おかえりなさい」

海兵「ただいま帰還した。顔色は……まあまあ良くなったな」

少女「海兵さんのおかげです……」

海兵「俺は何もしてないよ」

少女「そんなことないです……」

少女「暖かいお布団で寝るのって……やっぱり幸せですね……」

海兵「汗くさかったりカビ臭かったりしなかったか?」

少女「しません……けど、海兵さんの匂いがします」クンクン

海兵「か、嗅ぐんじゃない……」

少女「……」クンクン

少女「……はっ!」

海兵「!? ど、どうした?」

少女「か、海兵さん……わ、私……」

海兵「具合が悪くなったか?」

少女「私……く、臭く……ないですか……?」

海兵「……え?」

少女「私……ずっとお風呂に入ってなくて……川で身体洗ってただけなんで……」

海兵「……もしかして、三ヶ月近く野宿を?」

少女「は、はい……」

海兵(本当に……よく生きてたな……)

少女「ど、どうですか? 臭いますか?」

海兵「別に臭わない……というか、昨日一応身体は拭いて着替えたろ」

少女「そ、そうなんですか?」

海兵「どう見てもそれ俺の服だろ……ブカブカだし」

少女「あ……」

海兵「いくらなんでも、ずぶ濡れのまま寝かせるわけないだろ」

少女(ということは……海兵さんが私の着替えを……は、裸を……)モンモン

海兵「見ていない!」

少女「ご、ごめんなさい……」

少女「……?」

海兵「ま、まあ……それでも臭いが気になるなら風呂に入ってくれば良い。元気があるならの話だが……」

少女「お、お借りします……」

………………………

少女「海兵さぁーん……」

海兵「ん……?」

海兵「どうしたー? お湯が出ないかー?」

少女「いえ、お湯は出ましたー……身体もちゃんと洗いましたー……」

少女「あの……着替えをもう一着貸してもらっても良いでしょうか……」

海兵「ああ、そうか……」

海兵(……そういえば……)

少女「これ……学校の制服、ですか?」

海兵「ああ……」

少女「見たことはあったけど……着るのは初めてです……似合ってますか?」クルクル

海兵「似合うな……とても」

少女「え、えへへ……」

少女「でも、なんで海兵さんが女の子用の制服を?」

海兵「……」

海兵「昔の……恋人が置いていったのを……捨てられなくて……」

少女「…………」

海兵「引かないでくれ」

少女「すみません……」

海兵「こ、今度服を買いに行こう。その服はそれまでのつなぎとしてだ」

少女「い、いえ……これでいいです。私、服を買うお金無いし……」

海兵「遠慮するなって」

少女「あ、ありがとうございます……! でも、この服も……たまに借りて着てたいです」

海兵「……?」

少女(海兵さんの恋人……)モンモン

海兵「ほ、欲しいならあげるが……こう……怨念みたいなのが」

少女「怨念の残るような別れ方したんですか……?」

海兵「……昔から女心のわからない男だと言われていた」

少女「……」

今回はここまで
またね

…………………………

少女「~♪」

海兵「……………」

海兵(買い物にいく約束をしたは良いが、この子を連れて出歩いても大丈夫だろうか……)

海兵(あれから軍の中であの村の話題は聞かないし……この子を捜している様子もない……)

海兵(……さすがにこの子一人を指名手配犯よろしく追いかけ回すほど暇じゃないか……)

少女「?」

少女「な、なんでしょう、海兵さん。そ、そんなにじっと見られても何も……」

少女「ね、寝癖でもついてます?」アセアセ

海兵「ああ、いや……そういえば、随分髪が伸びてるなぁと思って」

海兵「ちょくちょく会ってた頃は、肩くらいまでで切りそろえてあったよな」

少女「伸ばしっぱなしだったので……」

海兵「まあ……だろうな」

少女「ご、ごめんなさい……みっともなくて……」

海兵「いや、それはそれで可愛いんじゃないかな」

少女「!」

少女「か、海兵さんはどっちが好みですか?」

海兵「……ショートかロング?」

少女「」コクコク

海兵「そうだな……どちらかといえば短い方が君らしい気が……」

少女「切ります」

海兵「……」

少女「ハサミを貸してください」

海兵「いや……切るにしてもちゃんと美容院に行こうか……」

少女「びょ、病院で髪を切るんですか?」

海兵「び・よ・う・い・ん。一度病院にも行くべきだけどな……」

今回はこれだけ

短くてごめんなの

…………………………

提督「さすがに休日だと人通りが多いな」

少女「そうですね……」

提督(でもまあ、平日の昼間に制服姿の女の子を連れ回すわけには行かないし)

少女「改めて見ると……いろんなお店があるんですね……」

提督「買い物のときに寄ったりしなかったのか?」

少女「興味はあったんですけど……欲しい物があって買いたくなっちゃったら困るので……」

提督「そうか……けど、今日はそんな心配はいらないな」

少女「海兵さん……」

提督「散髪の前にいろいろ買い物していこうか」

……………………………

少女「ここは何屋さんなんですか?」

提督「雑貨屋。これからあの部屋で生活するのに君の日用品は必要だろ?」

提督「一応、その制服みたいな負の遺産はいくつかあるけど……」

少女「負の遺産ですか……」

提督「何か欲しいものはあるか?」

少女「少し、見て回ってもいいですか?」

提督「もちろん。言っておくけど、買いたい物があったら遠慮はなしだからな」

少女「は、はい!」

海兵(さて、俺も何か見て回るか)

………………………

海兵(マグカップとか……食器も買い足した方がいいかもしれないな)

少女「海兵さん海兵さん」チョンチョン

海兵「ん? 何か良いものあったか?」

少女「これ……どうでしょう?」

海兵「髪留めか」

少女「はい」

海兵「錨をモチーフにした飾りがついてるのか……渋い趣味してるな」

少女「女の子らしくないですかね……」

海兵「そんなことない。似合うと思うな」

少女「えへへ……じゃ、じゃあこれを……」

少女「あっ……でも、髪切っちゃったらあんまり意味ないのかな……」

海兵「少し長めに切って、結えばいいんじゃないか?」

少女「そ、そうします」

…………………………

海兵「本当にそれだけで良かったのか?」

少女「はい!」

少女「でも……また行きたいです。綺麗な小物がたくさんあって、見てるだけで楽しかったです」

海兵「ああ、いつでも行こう」

海兵「さて、次は服を見に行くか、先に美容院に行くか……」

少女「……?」ピタッ

海兵「?」

少女「海兵さん。あれ、何ですか?」

海兵「ああ、クレープ屋の屋台だな」

少女「くれーぷ……?」

海兵「ええと……小麦粉の生地を薄く伸ばして焼いて、中にアイスクリームとか果物とかをくるんで食べるデザート……って言ったら良いのかな」

少女「あいすくりーむ……?」

海兵「わかった。食べよう」

少女「は、はい!」ワクワク

海兵「久しぶりに食べたが、美味いな」モグモグ

少女「美味しい……世の中にこんな美味しい物があったんですね……」モグモグ

海兵「たくさんあるさ。これから色んな物食べような」

少女「はい!」

海兵(と、思ったが……病気とやらが心配だな……)

少女「……」

少女「あの……こんなこと言うと怒られちゃうかもしれないんですけど……」

少女「私……どうせ死ぬならたくさん楽しいことして、たくさん美味しい物食べて死にたいです……」

少女「海兵さんに会ってから……そんな風に考えて……」

海兵「…………」

少女「ご、ごめんなさい……後ろ向きなこと言っちゃって……」

海兵「いや……構わない」

海兵「ただ、治る病気かもしれないなら、治してから色んなことした方が良いとは思う」

少女「……私の身体が弱いのは……きっと、治らないです」

少女「そもそも、病気じゃないんです……私の身体……」

海兵「それはどういう……」

少女「! ご、ごめんなさい! こんな話はやめましょう!」

海兵「しかし……」

少女「せっかく楽しくお買い物してるんですから! ね?」

海兵「あ、ああ……」

少女「ところで海兵さん。私、さっきから気になってたんですけど……」

海兵「?」

少女「くれーぷって、男の人と女の人の2人組じゃないと買えないものなんですか?」

海兵「別にそういうわけじゃないが……まあ、客層は偏ってるかもしれない」

海兵「いつからか恋人同士で食べる物っていう流行りがあるみたいで……」

少女「そ、そうですか……えへへ」

海兵(その無垢な笑顔が心にくるな……)

少女「…………!!」

少女「か、海兵さん!」

海兵「ん?」

少女「あ、あーん……」ズイッ

海兵「おおう……」

少女「あ、あの……向こうの方々が……食べさせあってて……楽しそうだったので……」

海兵「だろうな。さっきから向こうをチラチラ見てたもんな」

海兵「…………」

海兵「はい、あーん」

少女「あ、あーん」

海兵「……」モグモグ

少女「……」モグモグ

海兵「……美味いな」モグモグ

少女「ひゃい……」モグモグ

今回はここまで

またね

>>100まで海兵で>>109で提督になって>>110の最後で海兵に戻ってるこの人は何者

>>129
初めてのSSだけど、いつもの癖で
×提督
○海兵

指摘ありがとね

…………………………

少女「お、お待たせしました……」

海兵「ああ」

海兵「やはり短めの髪の方がしっくりくるな」

少女「ふふっ、すっきりしました。けど、ちゃんと結べるくらいには残してもらいましたよ」

海兵「結んでやろうか?」

少女「ぜ、是非!」

海兵「じゃ、後ろ向いて」

少女「はい……」

海兵「………………よし、できたぞ」

少女「えへへ、似合いますか?」

海兵「ああ、とても。まあ、顔立ちが整ってるから何でも似合うだろう」

少女「そ、そそそんなことないです……」

海兵「さて、夕飯の買い物して帰るか」

少女「は、はい!」

…………………………

少女「…………これは何ですか?」

海兵「そうか。カレーを食べるのも初めてか」

少女「は、はい。かれー、というんですね……とっても良い匂いです」

海兵「口に合うかわからないが、あまりレパートリーが広くなくてな……簡単なんだ、カレー」

少女「そうなんですか?」

海兵「カレーを不味く作る方が難しいくらいだ。まあ、とにかく食べてみてくれ」

少女「は、はい」パクッ

少女「……!」モグモグ

海兵「……どうだ?」

少女「美味しい! とっても美味しいです!」

海兵「……」ホッ

少女「……!」モグモグモグモグモグモグ

海兵(……良い食べっぷりだな)

少女「……はっ! ふ、ふみまへん……!」モゴモゴ

海兵「いや、そんなに喜んでくれると、作った甲斐があったというものだ」

少女「あ、あの、今度私にも作り方教えてください!」

海兵「ああ、良いな。君の作った料理も是非食べてみたい」

少女「頑張ります!」

……………………

少女「くれーぷといいかれーといい、あんなに美味しいものがあったなんて……」

少女「海兵さん、このご恩はきっと……」

海兵「大げさな。これは……そうだな、軍人としての君への償いだとでも思ってくれ」

少女「そ、そんな……海兵さんは何も」

海兵「ところで、クレープとカレー、どっちが美味しかった?」

少女「え? それはもちろん海兵さんの手料理の方が!」

少女「あ、でも……」

少女(食べさせ合ったクレープは、こう……特別な味がしたなぁ……なんて)

少女「えへへ……」

海兵「?」

少女「なんでもないですよー」

海兵「とりあえず、今日はもう寝るか。歩き回って疲れただろうから」

少女「はい」

海兵「俺はこっちの床の布団に寝るから、君は向こうのベッドを使って……」

少女「し、失礼しまーす」モゾモゾ

海兵「待たんかい」ガシッ

少女「な、何でしょう?」

海兵「君は! 向こうのベッド!」

少女「で、でも居候の身ですし……」

海兵「それ以前に、君は一応病人だ」

海兵「というか、居候ではない。俺と君はもはや家族だ」

少女「!!」ドジャアアァァン

海兵「なんか今雷に打たれなかった?」

少女「か、かか家族なら同じ布団で寝るべきかと!」フンフン

海兵「……例えば、この年の兄が妹と同じ布団で寝てたらどう思う?」

少女「…………」

少女「…………そういうのもアリだと思います」

海兵「頼むわかってくれ。俺は一応秩序を守る側の人間なんだ」

海兵「とにかくベッドで寝るんだ。良いね?」

少女「はい……」

海兵「夜中に体調が優れなかったりしたらすぐに呼ぶんだぞ」

少女「はい……」

海兵「……そんなに消沈しないでくれ。俺が悪いことしてるみたいじゃないか……」

少女「…………」

海兵「……おやすみ」

少女「おやすみなさい……」トボトボ

海兵(……さすがに寂しいんだろうか。本当に悪いことをしてしまったかな)

海兵(いや、同じ布団はマズいだろ……)モンモン

海兵(……いかん……なんかこう……血圧が上がってきた気がする……無心だ……無になれ……)

海兵(………)

…………………………

チュンチュン

海兵「…………ん……」

海兵(朝か……)モゾモゾ

海兵(なんか……体がやけに重いな……昨日の買い物だけでそんなに疲れ……)フニッ

海兵「え?」

少女「んふふ……かいへ……さ……くすぐったい……むにゃ……」ギュッ

海兵「」

今回はこれまででち
おやすみなさいでち

…………………………

海兵「心臓に悪いからやめてくれ……」

少女「ごめんなさい。寝相が悪くてそっちの布団まで転がって行っちゃったみたいです」

海兵「そうか。奇跡の寝相だな」

少女「はい!」

海兵「…………朝ご飯にしようか」

少女「はい!」

少女「…………」モグモグ

海兵「……」ペラッ

少女「? 新聞ですか?」

海兵「ああ……」

海兵(新聞には当然載ってないし、軍の中でもあれからこの子の村の話も聞かないな……)

海兵(そこまで執着するような案件でもなかったのか……)

少女(コーヒー冷めちゃわないかなぁ。煎れ直してあげたほうがいいかな……)

海兵「いや、構わない。冷めたコーヒーも好きだ」ペラッ

少女「え? あ、はい」

たった2レスだけだけど生存報告だっぴょん
これからはちゃんと書くから許して欲しいっぴょん

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年07月25日 (月) 00:00:19   ID: Oa12ZT0f

いい感じなのに勿体無いな

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