ルッキーニ「おままごとしよっ」芳佳「おままごと?」 (138)

美緒「話は以上だ。すまなかったな、こんなことで呼び出して」

芳佳「いえ。では、失礼します」

美緒「ああ。しっかり休め」

芳佳「はー。午後はお休みかぁー。なにしようかな」

ルッキーニ「よっしかー!!」

芳佳「ルッキーニちゃん。どうしたの?」

ルッキーニ「お昼から暇?」

芳佳「うん。訓練もないし」

ルッキーニ「それならおままごとしよっ。おままごと」

芳佳「おままごと?」

ルッキーニ「うんっ!ほら、早く早く!こっちだよ!」

芳佳「う、うん」

芳佳(ルッキーニちゃんってホントに子どもっぽいんだ。ふふっ)

ルッキーニ「もう準備もできてるんだー」

芳佳「へぇー。そうなんだ」

ルッキーニ「じゃーん!!ここが今からあたしの芳佳の家だから」

芳佳(どこから持ってきたんだろう、この絨毯……)

ルッキーニ「芳佳はママね」

芳佳「いいよ。ルッキーニちゃんは?お父さん?」

ルッキーニ「ううん。芳佳の子どもっ」

芳佳「そうなんだ」

ルッキーニ「それじゃあ、はじめるね」

芳佳(昔、私もよくやったなぁ、おままごと。なんだか、懐かしい気分)

ルッキーニ「ママー」

芳佳「どうしたの?」

ルッキーニ「犬、拾ったんだけど、飼ってもいい?」

バルクホルン「く、くぅーん……」

芳佳「バ、バルクホルンさん!?何してるんですか!?」

ルッキーニ「ねえ、ねえ。飼ってもいいよね?」

芳佳「えーと……」

バルクホルン「……」

芳佳(どうして、あのバルクホルンさんが……犬役で……)

ルッキーニ「よしかぁー」

芳佳「あの……」

バルクホルン「わん!!」

芳佳(役になりきってる……!?こんなことに付き合うなんてバルクホルンさんってやっぱり優しいんだ)

ルッキーニ「いいでしょぉー?」

芳佳「……ちゃんと世話できるの?」

ルッキーニ「する!!」

芳佳「なら、いいよ」

ルッキーニ「やった。ありがとー!これからよろしくね」ナデナデ

バルクホルン「わふっ」

芳佳「……」

ルッキーニ「首輪もつけてっと。よし、出来上がりっ」

芳佳「首輪までつけるの?流石に怒られるんじゃ……」

ルッキーニ「へーき、へーき。ね?」

バルクホルン「わん」

芳佳「あの、バルクホルンさん?」

バルクホルン「今は犬だ」

芳佳「はぁ……」

ルッキーニ「それじゃあ、早速散歩に行って来る!!」

芳佳「散歩?」

ルッキーニ「いくよ、バルクホルン号!」グイッ

バルクホルン「ぐっ……!!」

芳佳「ル、ルッキーニちゃん!?ちょっと乱暴にするのは……」

ルッキーニ「らんらーん」

バルクホルン「……」トコトコ

芳佳(何かあったのかな……)

ルッキーニ「お手っ」

バルクホルン「わん」サッ

芳佳「……」

シャーリー「なんだ?なにやってんだ?楽しそうだなぁー、あたしも混ぜてよ」

芳佳「あ、シャーリーさん。バルクホルンさんの様子がおかしいんですけど」

ルッキーニ「おかわり」

バルクホルン「わん」サッ

シャーリー「はははは。ルッキーニ、あたしも参加していいよねー」

ルッキーニ「うん!!シャーリーはペットのウサギね」

シャーリー「よしきた」

芳佳「ウサギ!?いいんですか!?」

シャーリー「面白ければなんでもいいよ」

芳佳「そうですか」

シャーリー「さてと。ウサギか。――さみしくて、しにそー。誰か、かまってくれー」ゴロンッ

芳佳「……」

ルッキーニ「うーん。遅いなぁ……」

芳佳「誰か待ってるの?」ナデナデ

シャーリー「あははは!!お腹を撫でられると、くすぐったい!!」

芳佳「あ、ご、ごめんなさい!!」

ルッキーニ「ちょっと呼んでくる!!」テテテッ

芳佳「ルッキーニちゃん!」

バルクホルン「くぅーん」

シャーリー「バルクホルン、首輪似合ってるなー」

バルクホルン「……言うな」

芳佳「あの……。シャーリーさんはともかく、バルクホルンさんはどうして……」

バルクホルン「宮藤には関係ない。お前は私を犬として扱えばいいんだ!!」

芳佳「そんなことできません!!!」

バルクホルン「今を乗り越えれば……今を……」

芳佳(やっぱり何かあったんだ……)

ルッキーニ「おまたせー!!連れて来たよー!!」

芳佳「え……」

ルッキーニ「ほら、首輪つけて」

ペリーヌ「でも……」

ルッキーニ「ママー。ネコも拾ったんだけど。いいよね?」

芳佳「猫って……」

ペリーヌ「……」

ルッキーニ「ニャアでしょ、ペリーヌ?」

ペリーヌ「にゃ、にゃー」

ルッキーニ「バルクホルン大尉を見てよ。きちんと犬になりきってるよ?」

バルクホルン「わん!!わん!!」

シャーリー「迫力あるなぁー」

ペリーヌ「大尉まで……うぅ……」

芳佳「あの、ペリーヌさん……?」

ペリーヌ「にゃぁん」

ルッキーニ「そうそう。そんな感じ」

ルッキーニ「ちなみに猫は芳佳に懐いてる設定だからね」

ペリーヌ「な……!!」

ルッキーニ「な?」

ペリーヌ「なぁー」

芳佳「ペリーヌさん。無理はしなくても」

ペリーヌ「にゃぁ」スリスリ

芳佳「わわ!!ペリーヌさん!!ちょっとぉ!!」

ペリーヌ「ナァー」

芳佳(いい匂いがする……)

バルクホルン「ワォーン!!!」

シャーリー「なぁ、ルッキーニ。ここからなにしたらいいんだ?」

ルッキーニ「え?」

シャーリー「これじゃあ、動物園だぞ」

ルッキーニ「あんまり考えてなかった」

シャーリー「まぁ、他にも狼とか狐がいないと動物園にはならないけどさ」

ペリーヌ「ニャァ」スリスリ

芳佳「よしよし」

バルクホルン「くぅーん……」スリスリ

芳佳「なんでですか!?」

ルッキーニ「よーし!!なら、もっととりあえずもっと集めてこようかな」

シャーリー「そうしたほうが盛り上がるからな」

ルッキーニ「えっと非番の人は誰だったかなー」テテテッ

ペリーヌ「ちょ、ちょっと!!宮藤さん!!馴れ馴れしいですわよ!!!」ドンッ

芳佳「きゃぁ!?いたーい!!ペリーヌさんから擦り寄ってきたのに!!」

ペリーヌ「仕方なくですわ!!勘違いしないでください!!」

バルクホルン「全くだな」スリスリ

芳佳「バルクホルンさん、一体何があったんですか?」

バルクホルン「ルッキーニ少尉のレクリエーションに参加しただけだ」

芳佳「でも、バルクホルンさんはこんなことしないじゃないですか」

バルクホルン「こういうことをする人間だったんだ、私は」スリスリ

シャーリー「ルッキーニに弱味でも握られたのかぁ?」

バルクホルン「……証拠はあるのか。証拠は?さぁ、そこまでいうなら証拠を見せてみろ、リベリアン」

シャーリー「いや、冗談だけど」

ペリーヌ「はぁ……こんなところ、坂本少佐に見られたら……自害も考えないと……」

芳佳(ルッキーニちゃんはどうやってバルクホルンさんとペリーヌさんを説得したんだろう……)

ルッキーニ「つれてきたー!!」

エイラ「なんだよー。夜間哨戒明けでねむいんだよー」

リーネ「あの、ルッキーニちゃん、おままごとって……」

シャーリー「エイラとリーネか。いいんじゃないか?」

ルッキーニ「今日、暇なんだって」

エイラ「暇じゃないぞ」

リーネ「私もミーナ中佐に頼まれていたことが……」

ルッキーニ「いいからいいからぁ。エイラは迷い込んできた狐。リーネは野良猫ね」

エイラ「なんだよそれ。せめて飼ってくれよな」

リーネ「の、のらねこ……」

ルッキーニ「ママー。また、あの汚い猫がきてるよー」

芳佳「え?」

リーネ「にゃ、にゃぁ」カリカリ

芳佳「リーネちゃん!!」

リーネ「にゃぁー」

芳佳「この子は拾わないと!!うん!!」

ルッキーニ「えー?もうペリーヌいるのにー?」

ペリーヌ「そうですにゃ。わたくしの飼い主は節操というものがにゃいんですの?」

シャーリー「なんだ、そういう設定になったのか?じゃあ……。宮藤ぃー。寂しいピョーン」

バルクホルン「ワンワン!!」

エイラ「なにやってんだよ……みんなして……」

ルッキーニ「狐はなんて鳴くの?」

エイラ「え?そうだなぁ……。キューンとかかな?」

ルッキーニ「えへへー。なら、それね」

エイラ「え……」

エイラ「クニャァー……キュゥーン」スリスリ

ルッキーニ「すごいすごい!」ナデナデ

芳佳「ルッキーニちゃん」

ルッキーニ「なに?たのしくない?」

芳佳「ううん。色んな人のいろんな一面を見れるから、楽しいのは楽しいけど。やっぱり、こんなことしちゃダメだよ」

ルッキーニ「えー?でも、みんな楽しんでるよ?」

芳佳「そうなの?」

ペリーヌ「にゃんですか。こんにゃの楽しめるわけがありませんにゃ」

ルッキーニ「にしし……ペリーヌぅ?」

ペリーヌ「と、いうのは冗談ですにゃ。冗談。おほほほほ」

芳佳「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「ニャァ」スリスリ

芳佳「わー!!またですか!?」

ルッキーニ「そうそう。楽しいほうがいいよね」

シャーリー「ピョーン!!ピョーン!!誰か、あそんでくれー。マジで死ぬぞー」

リーネ「芳佳ちゃぁーん」ギュゥゥ

芳佳「リーネちゃんも無理に付き合う必要はないよ?」

リーネ「でも、バルクホルン大尉までしてるから……」

ルッキーニ「ふわぁぁ」

シャーリー「飽きたのか?」

バルクホルン「――ルッキーニ少尉。飽きたならこの辺で終わりにさせてほしいワン」

ルッキーニ「まだだよー。今日の夕食まではやるんだから」

ペリーヌ「にゃんですって!?夕食まで!?」

エイラ「結構長いなぁ。私、寝てていいか?」

ルッキーニ「えー?それはつまんないよー」

シャーリー「でも、ずっとこれじゃあやることないだろ?」

バルクホルン「確かにな。私もこんなとこで吠えていたくはないワン」

ペリーヌ「わたくしだって、にゃーにゃー言いたくはにゃいですにゃ」

リーネ「癖になっちゃいそうですよね」

ルッキーニ「そうだねー。それじゃあ、設定を変えよー」

芳佳「ふぅ……」

ペリーヌ「ご主人様?元気がにゃいですわね」

芳佳「うん……。色々とね……」

リーネ「私、知ってるよ。芳佳ちゃ……じゃなくて、奥様がいつも大変なこと」

ペリーヌ「野良猫風情が黙ってにゃさい!!」

リーネ「にゃぁ!?私だって、奥様にはお世話になってるんです!!心配してもいいじゃないですか!!」

ペリーヌ「ふん。所詮はゴミ箱を漁るしかできにゃい野良猫でしょ?そんにゃきたにゃらしい猫に心配されたくありませんにゃっ!」

リーネ「な……!!」

ペリーヌ「そうですわよね、ご主人様?」スリスリ

芳佳「う、うん……」

シャーリー「おーい。帰ったぞー」

芳佳「シャーリーさん……」

シャーリー「なんだぁ?また猫とお喋りか?お前はあたしの嫁だろぉ?こんな猫、早くすてちまいな!!」バシッ

ペリーヌ「ぅにゃ!?」

芳佳「ペ、ペリーヌちゃん!?」

ペリーヌ「眼鏡……眼鏡……」オロオロ

芳佳「ひ、酷いことしないで!!」

シャーリー「お前があたしに力で勝てるとでも思ってるのか?」グイッ

芳佳「いたっ!!」

シャーリー「どうなんだ?あぁ?」

リーネ「やめて!やめて!!」

ペリーヌ「ご主人様ににゃんてこと!!はなしにゃさい!!このケダモノ!!」

シャーリー「さぁ、今から夫婦水入らずで楽しもうじゃないか」

芳佳「うっ……」

シャーリー「なぁ……?」

ペリーヌ「……」ドキドキ

リーネ「わぁ……」

「まて!!」

シャーリー「誰だ!?」

バルクホルン「犬のおまわりさんだワン!!」

シャーリー「なんだって!?」

バルクホルン「お前を逮捕するワン」

シャーリー「ちっ……!!」

バルクホルン「大丈夫だったか?」

芳佳「な、なんとか……」

バルクホルン「もう心配はないワン」

芳佳「はい……」

バルクホルン「……」

芳佳「……」

バルクホルン「んー……」

芳佳「えっ!?んんっー!?!?」

ルッキーニ「つまんなぁーい。おままごとじゃないしぃー」

リーネ「だよね……」

ペリーヌ「だから、無理があると言ったでしょう?全くもう」

シャーリー「そうかぁ?犬のおまわりさんは結構良い感じがしたんだけどな」

ルッキーニ「やっぱりきちんとしたおままごとがしたいな」

エイラ「動物園みたいにするからややこしくなるんだろ」

ルッキーニ「でも、動物はいっぱいいたほうが楽しいよ」

エイラ「そうかもしれないけどさ」

バルクホルン「ふぅ……。いつまでこんなことを続けるつもりなんだ、ルッキーニ少尉」

芳佳「うぅ……」モジモジ

リーネ「芳佳ちゃん、どうかしたの?」

芳佳「なんでもないよ……」

シャーリー「なら、動物のままごとでいいんじゃない?」

ペリーヌ「動物の?」

シャーリー「各人が好きな動物になりきって、ままごとをする」

ルッキーニ「おもしろそー!!」

シャーリー「だろ?」

ペリーヌ「まだ……続けるのですか……はぁ……」

芳佳(やっぱり様子が変だよ。あのバルクホルンさんが、私のおでこにキスするなんて……。何かあるんだ……)

ミーナ「リーネさん……遅いわね……」

エーリカ「どうしたの?」

ミーナ「え?ちょっと、リーネさんに頼みごとをしたのにまだ来てくれないの」

エーリカ「リーネ?リーネならハンガーでみんなと遊んでたよ」

ミーナ「そうなの?」

エーリカ「トゥルーデも一緒だった」

ミーナ「ありがとう。行ってみるわ」

エーリカ「うん」

ミーナ「もう……リーネさん……こっちは急いでいるのに……」

エーリカ「……」

サーニャ「……エイラ……どこにいったんだろう」キョロキョロ

エーリカ「サーニャ。何してるの?」

サーニャ「起きたら、エイラがいなくて。探しています」

エーリカ「そっかそっか。それより、ちょっと付き合ってくれない?」

サーニャ「はい。いいですよ」

ミーナ「いた……。リーネさ――」

バルクホルン「ワンワン!!」

芳佳「きゃぁー!!」

シャーリー「あの子犬を襲う大型犬をとめろー!!」

リーネ「やめてくださーい!!」

エイラ「やめろー。家族を襲ってどうするんだー」

ルッキーニ「あはははは」

ペリーヌ「ふわぁ……。騒がしいですにゃ」

ミーナ「リーネさん!!」

リーネ「え!?あ!!」

ミーナ「頼んでいたものはどうなったのかしら?」

リーネ「す、すいません……」

ミーナ「早急にといったでしょ?それに何をしているの?」

ルッキーニ「おままごとだよ」

ミーナ「とてもそんな雰囲気ではなかったように思えるのだけど……」

シャーリー「今は丁度、家庭内暴力をテーマにしてたからな」

ミーナ「ともかくリーネさん。頼まれたことを投げ出すのは感心しません」

リーネ「はい……」

ミーナ「あとはこちらでやっておくわ」

リーネ「あ、そんな」

ルッキーニ「ミーナっ。リーネに何頼んだの?」

ミーナ「……ルッキーニさんには関係のないことです」

ルッキーニ「当ててあげようか?」

ミーナ「え……」

ルッキーニ「坂本少佐の――」

ミーナ「……!!」グイッ

ルッキーニ「むぐっ」

ミーナ「あ、あなた……どうして……それを……」

ルッキーニ「にひひ。狼役、してくれる?」

ミーナ「おお、かみ……?」

芳佳「ミーナ中佐?どうかしたんですか?」

ミーナ「……」

シャーリー「なんだ?」

エイラ「ん?参加するのか?楽しくないし、やめておいたほうがいいぞ」

ミーナ「オォォォーン!!!」

リーネ「中佐!?」

バルクホルン「ミーナ……」

シャーリー「動物増やしてどうするんだ?」

ルッキーニ「犬芳佳が狼に襲われるところもあったほうがいいでしょ?」

シャーリー「どんなままごとだよ」

ルッキーニ「次はイジメ問題をテーマにします」

ミーナ「オォォォン!!!」

ペリーヌ「ルッキーニさんは一体……」

バルクホルン「ミーナすらも陥落するとは……。ルッキーニ少尉……」

ルッキーニ「にしし。よっしかー!!もう一度、最初からやろー」

芳佳「ただいワン……」

ペリーヌ「おかえりなさい。にゃんですか、その覇気のにゃい顔は」

芳佳「なんでもないワン……」

リーネ「芳佳ちゃん。言い難いことでもあるの?」

芳佳「そんなことは……」

ミーナ「ガルルルルル。宮藤さんは、いる?」

芳佳「ひっ」

ペリーヌ「誰ですにゃ!?」

ミーナ「見て分かりませんか?狼です」

芳佳「でたぁー!!」

ミーナ「ちょっと来てもらえるかしら、イヌ藤さん」

芳佳「や、やだー!!」

ミーナ「がおー!!」

バルクホルン「やめろ!!私の妹犬に手を出すなワン!!」

ミーナ「貴方が噂の姉犬ホルンさんね。私に勝てるかしら?がおーっ」

美緒「どうだ?素晴らしいだろ?」

エーリカ「これって少佐が作ったんですか?」

美緒「ああ。焼き物には少し拘りがあってな。その中でもこの湯のみは私の最高傑作だ」

エーリカ「へー。これがー」

サーニャ「……」ツンツン

パカッ

サーニャ「!?!?」ビクッ

美緒「最近は寝る前に湯のみで茶を飲むのが日課になっていてな」

エーリカ「ふーん」

サーニャ「……」オロオロ

エーリカ「サーニャ?どうかしたの?」

サーニャ「な、なんでもない」

美緒「なんだ、サーニャも気に入ったのか?」

サーニャ「はい。手触りがとても……」

サーニャ(湯のみが縦に割れた……。どうしよう……)オロオロ

エーリカ「私にも触らせて」

サーニャ「あ、あの。少佐」

美緒「ん?なんだ?」

サーニャ「これ、お借りしてもいいでしょうか?」

美緒「湯のみをか?別に構わんが……」

サーニャ「ありがとうございます」テテテッ

美緒「サーニャも湯のみの良さがわかるのか。扶桑の文化も捨てたものではないな。うんうん」

エーリカ「ところで少佐。あの湯のみ、他にも見に来た人いるんじゃない?」

美緒「ああ。お前たちで全員に見せたことになるな」

エーリカ「てことは、ミーナにも?」

美緒「勿論だ」

エーリカ「……なるほど」

美緒「何がなるほどなんだ?」

エーリカ「私もハンガーにいこっと。坂本少佐も仕事が落ちついたら来るといいよー」テテテッ

美緒「ハンガーで何かやっているのか?」

サーニャ「どうしよう……。綺麗に割れてる……」

サーニャ「私……突いただけなのに……」

エイラ「お。サーニャ、起きたのか」

サーニャ「あ、エイラ。あのね……」

エイラ「こっちにきてくれよ。もうサーニャがいないとやってられないんだ」

サーニャ「あの……その……」

エイラ「おーい。サーニャも混ぜてくれー」

サーニャ「あ……」

ルッキーニ「おぉー!!サーニャもー!!」

シャーリー「大歓迎だ。そろそろ新しい登場人物が欲しかったところだ」

サーニャ「はい……」

ミーナ「ミ、ミーナさん?その湯のみ……」

サーニャ「え?はい。坂本少佐のです」

バルクホルン「ワン!!ワンワン!!!」

ペリーヌ「にゃんでこんにゃところにもってきてるんですにゃ!?」

>>58
ミーナ「ミ、ミーナさん?その湯のみ……」

ミーナ「サ、サーニャさん?その湯のみ……」

サーニャ「え……これは……」

ペリーヌ「それは坂本少佐の私物のはずでしょう!?」

サーニャ「そうだけど……」

芳佳「あ……それ……」

バルクホルン「サーニャ。それ、どうして持ち出したんだ?」

ミーナ「ええ。勝手に持ち出すのは、いけないことだわ」

サーニャ「いえ、少佐から許可を頂きました」

ペリーヌ「許可を……?」

バルクホルン「そんなバカな……」

ミーナ「そ、そう……。なら、しかたないですね……」

ルッキーニ「サーニャ?」

サーニャ「なに?」

ルッキーニ「……割ったんじゃないの?」

サーニャ「……!!」フルフル

エイラ「おい、ルッキーニ。なにいってんだよ」

サーニャ「私、湯のみに目がないから」

シャーリー「へぇー。意外だなぁー」

エイラ「そうなのか?知らなかった」

ルッキーニ「なら、湯のみ触らせて」

サーニャ「ダメ。これは手放せない。大事なものだから」

リーネ「坂本少佐のなら、大事だもんね」

芳佳「あのー。それー」

ルッキーニ「まぁ、いっか。サーニャも参加しよ!!湯のみは持ったままでいいから」

サーニャ「う、うん」

芳佳「ああ!!ちょっと!!」

リーネ「どうしたの、芳佳ちゃん?」

芳佳「あの湯のみは割れてるはずなんだ」

リーネ「そうなの?」

芳佳「うん。急に割れちゃったらしくて。坂本さんはきっと焼き方が悪かったんだって言ってたけど」

リーネ「なら、危ないね。あの湯のみ」

芳佳「綺麗に割れてるから、手を切るようなことはないと思うんだけど……。あと眺めるだけなら問題ないって言ってた。触るとパカッてなるみたい」

リーネ「でも……」

ルッキーニ「サーニャは猫ね」

サーニャ「わかった」

エイラ「まてよ。この家、猫何匹いるんだよ」

ペリーヌ「そうですにゃ。猫はわたくしだけでよろしいですにゃ」

バルクホルン「いや、猫と犬は何匹いても構わないはずだワン」

シャーリー「まぁ、狼や狐までいるからなぁー」

ルッキーニ「なら、ニャーっていって。ニャーって」

サーニャ「ニャァ」

エイラ「私が飼う」

ルッキーニ「えぇー?狐が猫を飼うのー?」

エイラ「別にいいだろ。狐だって、猫を飼いたくもなる」

サーニャ「ニャァ」

ミーナ「まぁ、いいんじゃないかしら。とにかくその設定でやってみましょう」

エイラ「キュゥゥン。キュゥゥン。サーニャ、お腹すかないか?」

サーニャ「大丈夫にゃ」

エイラ「そうかそうか。今日だけは甘えていいからな。でも、今日だけだかんな」ナデナデ

サーニャ「うんにゃ」

芳佳「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」

バルクホルン「な、なんだ!!」

芳佳「私も、サーニャちゃんみたいに甘えたいワン!!

バルクホルン「ダメだ!!いや!!今回は特例で許可する!!さあ、こい!!!」

シャーリー「みやふじー。ほーら、おいでー。ふわふわのウサギが抱きしめてやろうー」

芳佳「おぉぉ……!!確かにウサギさんのほうが……」

バルクホルン「リベリアン!!お前はウサギだろ!!犬でないなら、邪魔をするな!!」

シャーリー「はぁ?狐と猫だって仲良くなってるんだ。ウサギと犬が仲良くなってもいいだろ」

ルッキーニ「うんうん。みんなたのしそうだし、よかったよかった」

ペリーヌ「何がいいんですにゃ……。不毛なだけですにゃ」

ミーナ「がおーっ。家にいれなさーい」

エーリカ「おぉー!!なんだか、面白そうなことやってるじゃない」

リーネ「ハルトマン中尉まで……」

ルッキーニ「混ざってもいいよー」

エーリカ「これ、なにしてるの?」

ルッキーニ「動物ままごとだよー」

エーリカ「そうなんだー。それじゃあ、私は犬!!」

バルクホルン「ハルトマン……!!お前もか……」

エーリカ「わんわんっ。よーしか」

芳佳「あ、はい」

エーリカ「よろしくわーんわん」

芳佳「よろしくワン!」

エーリカ「お?サーニャ。その湯のみ、まだ持ってるの?」

サーニャ「え……」

エーリカ「さわらせてー」

サーニャ「だ、だめにゃぁ」

エーリカ「いいじゃない、ちょっとだけ。ちょっとだけ」ググッ

サーニャ「ニャァ……!!」

エイラ「おい、やめろ!嫌がってるだろ」

エーリカ「でも、これは坂本少佐のだしぃ」

バルクホルン「まて、ハルトマン。無闇に触らないほうが良い」

ペリーヌ「そうですにゃ」

ミーナ「サーニャさんが持っていたいというならそれを尊重するべきじゃないかしら?」

バルクホルン「えー?私も湯のみの興味あるんだけど――」

サーニャ「ふーっ!」

バルクホルン「グルルル……」

ペリーヌ「ガルルルッ」

ミーナ「ガオーッ」

エーリカ「……必死だなぁ」

リーネ「なんだろう。やっぱりみんな少し変だよね、芳佳ちゃん」

芳佳「うん。ねえ、ルッキーニちゃん。ちょっといい?」

ルッキーニ「んにゃ?なに?」

芳佳「どうやってバルクホルンさんたちを説得したの?」

ルッキーニ「あそぼうって言っただけだよ?」

芳佳「それであのバルクホルンさんやミーナ中佐まで参加するとは思えないんだけど……」

ルッキーニ「魔法の言葉があるからね」

芳佳「魔法の言葉ってなに?」

ルッキーニ「それは――」

美緒「お前たち。ハンガーで何をしている?」

ペリーヌ「さ、坂本少佐!!」

サーニャ「……!!」

バルクホルン「少佐!!これはレクリエーションの一環だ!!」

美緒「そういうことは自室でやれ。全く、ミーナ中佐まで一緒とはな」

ミーナ「ごめんなさい。楽しくなって……」

シャーリー「少佐もやるー?」

美緒「……」

エイラ「少佐が参加するわけないだろ」

美緒「何をやっているんだ?」

シャーリー「動物になりきってままごとだよ。案外楽しくてさ」

美緒「擬態の特訓になるかもしんな。いいだろう。私は犬になりきろう」

シャーリー「マジ……?」

エーリカ「なら、犬同盟を組もう。ほらほら、犬は集まれー」

バルクホルン「宮藤、呼ばれたぞ」

芳佳「ま、まってください!!魔法の言葉を聞いてないんです!!」

ルッキーニ「盛り上がってきたー!!なら、こっちは猫の家にしよー!!猫はあつまれー!!」

ペリーヌ「わたくし、犬のほうが……」

リーネ(魔法の言葉って……なんだろう……)

サーニャ「……にゃー」

リーネ「あ、そうだ。その湯のみのことだけど」

サーニャ「なに?割れてないけど」

リーネ「ううん。初めから割れてるって芳佳ちゃんが。だから、あまり触れないほうがいいと思うよ」

サーニャ「え……?ホントに?」

リーネ「うん」

サーニャ「……」

リーネ「あの……」

サーニャ「……」フラッ

リーネ「きゃぁ!?しっかりして!!」

サーニャ「にゃぁ……これ……割れてたんだ……」

リーネ「うん」

サーニャ「よかったニャァ……よかったニャァ……」

リーネ「もしかして自分で割ったって思ってたの?」

サーニャ「うん……」

ペリーヌ「リ、リーネさん!!」

リーネ「はい?」

ペリーヌ「坂本少佐もいますのよ!?そういうことは黙っておきなさいにゃ!!」

リーネ「でも、坂本少佐も知ってるって……」

ペリーヌ「え……?」

エイラ「おい!!サーニャ!!どうしたんだぁ!!」

サーニャ「平気……。安心しただけだから……」

エイラ「なにがあったんだよぉ」

サーニャ「この湯のみ……」

エイラ「これがどうしたんだ?」ツンツン

パカッ

エイラ「おぉぉ!?!」

サーニャ「あー……」

エイラ「サーニャ!!これ、少佐のだよなぁ!?あぁぁ!!えぇぇ!?」オロオロ

サーニャ「大丈夫。それ、初めから割れてたって」

エイラ「な、なんだよぉ……。意地悪するなよぉ」

サーニャ「ゆるして、にゃんっ」

エイラ「勿論、ゆるすけどさぁ」

シャーリー「おー。見事に割れてるなぁ。少佐ー。これ、どうしたんですかー?」

美緒「違うぞ。宮藤。こうだ!!――ゥオォォォン!!!!」

芳佳「うおぉぉーん!!」

エーリカ「わんわんわーんっ♪」

バルクホルン「わふっ」

美緒「宮藤、もっと尻を下げて、胸をそらせ!!!顔は天を仰げ!!!」

芳佳「は、はい!!――うおぉぉーん!!」

美緒「そうだ!!でも、がおーって言ったほうがいいな!!」

芳佳「はいっ!!――がおー」

美緒「合格だ!!宮藤!!」

芳佳「ありがとうございます!!」

シャーリー「少佐ー!!きいてますかぁー」

美緒「どうした?」

シャーリー「これ割れてますよ」

バルクホルン「……!!」

ミーナ「あぁ……!!」

美緒「ああ。これな。最高傑作だったんだが、割れてしまってな」

シャーリー「へえ。残念ですねー」

美緒「全くだ。焼き方が悪かったのだろうな」

バルクホルン「……え?」

ミーナ「……」

美緒「ん?どうした、二人とも。目を丸くして」

バルクホルン「いや……」

ミーナ「美緒、それいつの時点で割れていたの?」

美緒「昨日の夜に割れていた。だが、飾っておくぶんには問題はないからな。はっはっはっは。これからは見て楽しむとするよ」

ミーナ「なんだ……」

バルクホルン「よかった……。そうだ。手に持っただけで割れるなんてことありえるはずがない……」

美緒「ん?なんだ、まさか自分で割ったと思っていたのか?」

ミーナ「ええ。そうよ。最高傑作なんていうから、言い出しにくくて……」

バルクホルン「すまない、少佐。隠蔽しようとしたことは軍人として恥ずべき行為だった」

美緒「それは悪かったな。私も見せたときに割れているとは言えなくてな。お互い様だろう」

リーネ「芳佳ちゃんも手に持ってみたの?」

芳佳「うん。持ったときに真っ二つになっちゃって――」


芳佳『あ……あぁぁ……!!』ガクガク

美緒『どうした、宮藤?奇怪な声を出して』

芳佳『さ、さかもとさぁん……ご、ごめ……ご、めんなさい……』

美緒『あ……』

芳佳『割ってしまいましたぁ……』

美緒『はっはっはっは。泣くな。初めから割れていたんだ』


芳佳「あのときは心臓が止まるかとおもったよ」

リーネ「びっくりしちゃうよね」

ペリーヌ「はぁぁ……」ガクッ

エイラ「どうした?」

ペリーヌ「安堵で腰が抜けましたにゃ……」

エイラ「なんだよ。情けないやつだな」

ペリーヌ「あ、あなただって!!変な声を出していたではありませんか!!」

エイラ「しーらない」

バルクホルン「くっ……。真相を知っていれば……こんな辱めを受けることなんて……!!!」

ミーナ「全くね」

芳佳「どういうことですか?」

バルクホルン「ルッキーニ少尉にこのことは黙っているから、一緒に遊んで欲しいと脅迫を……」

ミーナ「私もまさかルッキーニさんが知っているとは思わなくて……」

リーネ「あれ?それ、なにかおかしくないですか?」

美緒「どういうことだ?」

リーネ「バルクホルン大尉とミーナ中佐が同時に割ったというなら、そういった脅迫もできますけど」

エイラ「あれ?そういえばサーニャにも割ったんじゃないかって、訊いてたな」

ペリーヌ「わたくしもルッキーニさんに割ったことを……」

美緒「どういうことだ?何故、ルッキーニは全員が割ったことを知っている?」

芳佳「バルクホルンさん。もしかして、少佐の部屋を出たときにルッキーニちゃんに声をかけられませんでしたか?」

バルクホルン「あ、ああ。そうだ。酷い顔をしていたと思う」

芳佳「坂本さん。実は私も、坂本さんの部屋を出た直後に声をかけられたんです」

ペリーヌ「わ、わたくしもです」

美緒「ふむ……。おい、ルッキーニ」

エーリカ「にげたよ」

シャーリー「あーあ。逃げたら、庇えないぞ。ルッキーニ」

バルクホルン「……まさか……」

ミーナ「そう……そういうことですか……」

ペリーヌ「ルッキーニさんが……」

サーニャ「少佐の湯のみ、割った?」

美緒「なるほど。触れれば割れることを知っていたからこそ、触れた人物、あるいは挙動がおかしい人物を脅迫できたわけだ」

バルクホルン「さがせぇ!!!フランチェスカ・ルッキーニ少尉をさがせぇ!!!!」

ペリーヌ「きぃぃー!!!ルッキーニさん!!!ゆるしません!!!!」

ミーナ「ふふ。みなさん。必ず見つけてくるように」

リーネ「芳佳ちゃん……こわいよぉ……」ギュゥゥ

芳佳「わ、わたしも……こわいよ……」

美緒「全く。困ったものだな」

芳佳「でも、坂本さん。本当にルッキーニちゃんが割ったんでしょうか?」

美緒「状況的にはルッキーニで間違いないだろう。何故だ?」

芳佳「昨日の夜なんですよね。坂本さんが割れているのを知ったのは」

美緒「ああ、そうだが?」

芳佳「ルッキーニちゃんにはいつ見せたんですか?」

美緒「確か……」

シャーリー「昨日の夕方ぐらいだったんじゃないかな。あたしも一緒にいたし」

美緒「ああ。そうだ。シャーリーも同席していた」

リーネ「あれ?それじゃあ、シャーリーさんは割れる瞬間を見ていたことになるんですか?」

シャーリー「いや。気づいたときには割れた湯のみを手にしながらプルプル震えてたな」

美緒「おまえも同罪だな」

シャーリー「はぁーい。ルッキーニが逃げなきゃ、あたしが割ったことにもできたのに」

芳佳「シャーリさん、割れたときの音は?」

シャーリー「音?いや、気づかなかったなぁ。少佐と話してたし」

リーネ「あ……」

美緒「そうか……。割れたら音がするな。普通なら」

シャーリー「んー。なら、やっぱり初めから割れてたのか?」

美緒「んー……」

芳佳「ほら!ルッキーニちゃんは悪くないんです!!私、みんなを止めてきます!!」

リーネ「あぁ!!まって!!芳佳ちゃん!!私もいく!!」

芳佳「ありがとう!!行こう、リーネちゃん!!」

リーネ「うんっ!!」

美緒「悪いことをしてしまったか……。私の作り方が悪かった所為で……」

シャーリー「でも、少佐って焼き物に拘りがあるんですよね?」

美緒「ああ。湯のみも何度か作った」

シャーリー「あんなに綺麗に割れることってあるんですか?しかも、自然に」

美緒「ありえない話ではない。だかまぁ、割れるなら焼いている最中に割れるだろう」

シャーリー「うーん……」

エーリカ「ふんふーんっ。私も探しにいこーっと」

バルクホルン「ルッキーニ少尉!!!お前はもう完全に包囲されている!!!早く木から下りて来い!!!」

ペリーヌ「謝ってください!!ルッキーニさん!!!」

ルッキーニ「ひぃぃ……」ブルブル

ミーナ「ルッキーニ少尉?怒らないから、おりてきてください」

ルッキーニ「うそだぁ……」

ミーナ「嘘じゃないですよぉ?うふふ」

エイラ「おい!!サーニャに恥ずかしいことさせた罪をつぐなえー!!」

サーニャ「にゃー」

エイラ「……まぁ……かわいいから……あれだけど……さぁ……」

バルクホルン「それでも軍人か!!人を貶めて!!!恥ずかしくないのか!!!」

ルッキーニ「ひぃぃぃん……」

芳佳「ま、待ってください!!!」

ミーナ「宮藤さん?」

リーネ「ルッキーニちゃんは悪くありません!!」

バルクホルン「……我々を脅迫したことと、少佐の湯のみを割ったこと。これは重罪だぞ、リーネ。それでもルッキーニを擁護するのか?」

芳佳「確かにルッキーニちゃんは悪いことをしました。バルクホルンさんを犬のように扱い、ミーナ中佐までペット扱い……」

芳佳「これは駄目なことです!!」

バルクホルン「宮藤もこういっている!!」

芳佳「だけど、ルッキーニちゃんが湯のみを割ったことは間違ってます!!」

ルッキーニ「芳佳……?」

芳佳「そうでしょ?ルッキーニちゃん。初めから、割れてたんだよね?」

ルッキーニ「……ぅん」

芳佳「ちょっとびっくりしたんだよね?それで怖くなったんだよね?」

ルッキーニ「よしかぁ……」

芳佳「でも、どうしてあんなおままごと始めちゃったの?あんなことしないで、正直に話していれば……」

ルッキーニ「だって……普段、あんな遊びできないし……」

リーネ「おままごとはしたかったんだ……」

ルッキーニ「うん……」

芳佳「ルッキーニちゃん。あんな脅迫みたいなことしなくても、頼めばみんなしてくれたよ」

ルッキーニ「だって、ミーナ中佐とかバルクホルン大尉とか……絶対にやってくれないもん……」

バルクホルン「当たり前だ!!誰があんなことを――」

芳佳「バルクホルンさん!!」

バルクホルン「うっ……。時間に余裕があれば……付き合った……」

ペリーヌ「しかしですね。そんな幼稚な理由で、罪をなすりつけようとすることは看過できませんわ」

エーリカ「そうだねー。だめだよねー」

リーネ「ハルトマン中尉」

エーリカ「でも、坂本少佐も自分に非があるって認めてたよ?だから、情状酌量の余地はあるんじゃないかな?」

エイラ「サーニャを猫扱いにしたのは許せないぞ。なぁ?」

サーニャ「私は……別に……。楽しかったし」

エイラ「なんだ。サーニャがいいなら、私も許そうかな」

ミーナ「ルッキーニさんの動機は分かったわ」

芳佳「ミーナ中佐、それじゃあ」

ミーナ「とにかく降りてきて、ルッキーニさん」

ルッキーニ「……おこらない?」

ミーナ「ええ。怒らないから」

ルッキーニ「ごめんなさい……」

バルクホルン「こんな騒ぎはこれっきりにして欲しいものだ」

ルッキーニ「あい……」

芳佳「も、もういいじゃないですか!!ルッキーニちゃんは反省してますよ!!」

リーネ「わ、私も同じ立場ならきっと怖くなって逃げ出していたと思います!!」

ペリーヌ「わたくしは納得できませんわ」

美緒「まぁ、そういうなペリーヌ」

ペリーヌ「坂本少佐!!」

芳佳「坂本さん、あの……」

美緒「ルッキーニ」

ルッキーニ「ひゃい……」ビクッ

美緒「すまなかったな」

ルッキーニ「え……」

美緒「私の腕が悪い所為でアレは割れたんだ。決して、お前の所為でない」

ルッキーニ「少佐……」

芳佳「坂本さん!!ありがとうございます!!ルッキーニちゃん、よかったね!!」

ルッキーニ「よしかぁー」テテテッ

美緒「しかーし!!!自身の罪を他人に、それも上官までも巻き込み、擦り付けようとした行為は無視できるものではない!!!」

ルッキーニ「ひぃっ!?」

ミーナ「そうね」

美緒「聞けば、ミーナ中佐には遠吠えをさせ、バルクホルン大尉にいたっては首輪をつけてハンガー内を散歩したそうだな。多くの整備員が証言している」

ペリーヌ「流石は坂本少佐。毅然とされていますわ」

エーリカ「まぁ、そっちはどうしようもないよね」

芳佳「あ、あの……でも……えーと……」

美緒「フランチェスカ・ルッキーニ少尉!!」

ルッキーニ「は、はいぃ!!」

美緒「罪は償ってもらおう」

ルッキーニ「うぇぇん……よしかぁーたしゅけてぇー……」

芳佳「坂本さん、穏便に……」

美緒「こっちにこい」

シャーリー「うーん……。やっぱりこの湯のみ……。お、帰ってきたか」

ルッキーニ「シャーリー……」

シャーリー「どうしたんだ、泣きそうな顔して」

美緒「シャーリー大尉も同罪だったな」

シャーリー「ああ。そうですね」

美緒「ならばお前も参加しろ」

シャーリー「何にですか?」

美緒「無論、特別訓練だ」

シャーリー「そうなるかぁ……。覚悟はしてたけど……」

ルッキーニ「うぇぇぇ……」

美緒「まずは準備体操からだな。腕立て100回からだ」

シャーリー「はぁーい」

美緒「なんだ、嫌そうだな。いいだろう。50追加だ。そのあとは滑走路を50往復してもらう」

ルッキーニ「ひぃぃぃ!!!」

シャーリー「りょーかーい」

芳佳「よかった。あれだけで済んで……」

バルクホルン「あれでも甘いと思うがな」

ミーナ「まぁ、いいと思うわ。坂本少佐もルッキーニさんの気持ちを察してくれたのでしょう」

リーネ「そうですね」

美緒「しっかりやれ!!」

ルッキーニ「うぇぇぇん……」

シャーリー「61……62……」

エーリカ「さーてと、私たちは先に夕食にしますか」

芳佳「そうだ!準備しなきゃ!!」

リーネ「そうだね。いこっ」

芳佳「うん」

ペリーヌ「ほんと、坂本少佐の優しさには敬服いたしますわ……」

エイラ「サーニャ、もういっかい、言ってくれ。たのむ」

サーニャ「うん……。がおーっ」

エイラ「はぁ……サーニャぁ……」

ルッキーニ「もうだめぇ……」

美緒「それぐらいでいいだろう。それではな」

シャーリー「ああ、少佐。ちょっと」

美緒「どうした?」

シャーリー「湯のみを調べてみたんだけど。この底のところみてくれ」

美緒「底?」

シャーリー「下の部分が少し欠けてるんだ。真っ二つになったから誰もここまで見てなかったと思う」

美緒「確かに……欠けているな……」

シャーリー「これって、誰かが落としたんじゃないかって思うんですけど」

美緒「誰が?」

シャーリー「それがわかんないんですよねぇ」

美緒「だが、私が皆に見せたとき、そんなことは起こっていないぞ」

シャーリー「落とした奴はその湯のみが割れていることを知っていたはずですから、きっと触れようとはしなかったんじゃないですか?」

シャーリー「普通は触れる。扶桑出身でもなければ湯のみなんて珍しいから。焼き物の湯のみなんてとくに」

美緒「……なるほどな。触れようとしなかったものが、真犯人か」

食堂

シャーリー「あー、ハラへったー」

ルッキーニ「ちゅかれたぁー」

芳佳「ルッキーニちゃん、どうぞ」

ルッキーニ「よしか……」

芳佳「どうしたの?」

ルッキーニ「今日は……ありがとう……」

芳佳「え?」

ルッキーニ「庇ってくれたから……」

芳佳「だって、ルッキーニちゃんは割ってなかったもん」

ルッキーニ「でも、でもね。少佐の部屋から芳佳が暗い顔で出てきたら、あたし……芳佳のことも……」

芳佳「いいよ。その話は。ほら、食べよ」

ルッキーニ「……うんっ!!」

シャーリー「ま、楽しかったもんな、ままごと自体は」

芳佳「それは、はい。ミーナ中佐の遠吠えもかっこよかったですし。ペリーヌさんの猫もかわいかったです」

リーネ「また、やろうね」

ルッキーニ「いいの!?」

芳佳「もちろんだよー」

ルッキーニ「約束!!約束だからね!!」

シャーリー「はいはい。興奮するなって」

サーニャ「あの、私も……」

エイラ「サーニャが参加するなら、私もするからなっ」

芳佳「みんなでまたやりましょー!!」

エーリカ「そうだねー。私もやろうかなー」

バルクホルン「ふん……私も暇なときなら……」

ペリーヌ「わたくしはもう……。あら?」

ミーナ「……」

エーリカ「んー?どうしたの、ペリーヌ?」

ペリーヌ「ミーナ中佐?どうされたので――」

ミーナ「エーリカ・ハルトマン中尉。お話があります」
                                  END

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