美緒「そうか。新任も用意せず一人残らずか。杜撰だな、全く」
ミーナ「同感ね。それだけ急を要することだったのかもしれないけど」
美緒「ネウロイの被害が広がり、医療班も人手不足になっているのか……。とはいえ、医務室が使えないぐらいなら問題はないか」
ミーナ「それでも空室にしておくのはね」
美緒「心配はいらんだろう。我々には宮藤もいるしな」
ミーナ「掠り傷や発熱程度で宮藤さんを頼るのもどうかと思うけれどね」
エーリカ「ミーナ、少佐。何の話してるの?」
美緒「ハルトマンか。なに大したことではない。医務室の常務者らに急な配置換えが下ってな、暫くの間は医務室が無人になるだけの話だ」
エーリカ「ふぅん」
ミーナ「数日以内に新しい人が就くはずだけどね」
エーリカ「……ねえねえ。その医務室の勤務、私でもやれたりする?」
ミーナ「え? エーリカが? それは構わないけど……」
医務室
ミーナ「それじゃあ、よろしくね」
エーリカ「はいであります」
美緒「ハルトマンのシフトは少し変更せざるを得ないな」
ミーナ「そうね。とりあえず午前か午後は医務室に居てもらったほうが良いだろうし」
美緒「となると――」
バタンッ
エーリカ「……」
エーリカ(いやぁー、言ってみるもんだねー。前から秘かにやってみたいと思ってたし)
エーリカ(この白衣も、中々似合ってる似合ってるぅ)
エーリカ「にひぃ」
エーリカ「……」
エーリカ「でも、一人はつまんないなぁ……」
エーリカ「……そうだ」
芳佳「ちこく、ちこくっ」テテテッ
エーリカ「みーやーふーじー」
芳佳「ハルトマンさん? どうも」
エーリカ「何を急いでるの?」
芳佳「これから掃除なんですけど、食事の準備は少し遅れちゃって」
エーリカ「そうなの。エラいねー」
芳佳「ありがとうございます。それでは」
エーリカ「宮藤っ」グイッ
芳佳「ぐぇ!? な、なんですか!?」
エーリカ「宮藤って実家が診療所なんだって?」
芳佳「は、はい、そうですけど?」
エーリカ「じゃあ、そういう仕事にも当然、興味あるよね」
芳佳「勿論です。扶桑に戻ったら私はお母さんのあとを継いで――」
エーリカ「なら、宮藤が行くべき場所は食堂じゃなくて、こっちだね。れっつごー」
芳佳「え? あの……どちらへ……」
医務室
エーリカ「ここが、エーリカのイケない保健室ぅ~。はい、拍手」
芳佳「……」パチパチパチ
エーリカ「とりあえず、これ着て。医務室には看護師がいないと締まらないし」
芳佳「は、はい」
エーリカ「うん。似合う似合う。いいねぇ」
芳佳「ありがとうございます……」
エーリカ「それじゃ、よろしく」
芳佳「え、あの……」
エーリカ「重症患者が来たら、起こしてね」
芳佳「……」
エーリカ「ふわぁ~。昨日は7時間しか寝てないんだよね。ごめんね」
芳佳「はぁ……」
エーリカ「すぅ……すぅ……」
芳佳「……あの、私は何をしたら……」
『エーリカ。いるのか?』コンコン
芳佳「ど、どうぞー」
バルクホルン「ミーナから聞いたぞ。急に何を始めて――」
芳佳「あ、バルクホルンさん」
バルクホルン「み、宮藤……!!」
芳佳「怪我ですか?」
バルクホルン「……なにをしている?」
芳佳「えーと。自分でもよくわかりません」
バルクホルン「……」
芳佳「急につれてこられて……あはは……」
バルクホルン「ハルトマンは?」
芳佳「ベッドで寝てます」
エーリカ「すぅ……すぅ……」
バルクホルン「ハルトマン!!! 起きろ!!! 宮藤に何を着させているんだ!!!」
エーリカ「ん? なに? あ、トゥルーデかぁ……。宮藤のナース姿をもう拝みに来たの?」
バルクホルン「そんなわけあるか!! お前がおかしなことを始めたと聞いたから様子を見に来たんだ!!」
エーリカ「おかしなことって、医務室に誰も居ないって結構不便でしょ?」
バルクホルン「だとしてもお前がここにいる理由にはならない!!」
エーリカ「私が白衣を着ちゃいけない理由はないはずだけど?」
バルクホルン「あのなぁ!!」
芳佳「バルクホルンさん。落ち着いてください」
バルクホルン「宮藤……」
芳佳「ケンカはダメですよ」
バルクホルン「……」
芳佳「落ち着いて話し合いましょう。ハルトマンさんだって、何も考えずにこういうことをしたとは思えませんし」
エーリカ「いやぁ、さすがは宮藤だねぇ。私のことをよくわかってるぅ」
バルクホルン「……」
エーリカ「ちゃんとミーナからの許可も貰ってるし、サポート役として宮藤を置いておくことも承認済みだから」
芳佳「そうなんですか!?」
バルクホルン「こんなことばかり手が早いな、お前は……。まぁ、正式な手続きを踏んでいる以上、私からは何も言えない。だが、任務や訓練があることも忘れるな。いいな?」
エーリカ「はいはい」
バルクホルン「全く……」
芳佳「あの、バルクホルンさん……」
バルクホルン「宮藤も、本分があることは弁えていろ」
芳佳「は、はい」
バルクホルン「……怪我をしたら、来る」
エーリカ「おまちしてまぁす」
バルクホルン「ふん」
エーリカ「相変わらず素直じゃないなぁ」
芳佳「あの、ハルトマンさん。私、何も言われてないんですけど……」
エーリカ「嫌だった?」
芳佳「嫌と言うか……。急にこんなことになって戸惑っているというか……」
エーリカ「これ強制じゃないし、疲れたらいつでも辞めていいからね。ただ、今日のお昼まではいてほしいなぁ」
芳佳「どうしてですか?」
エーリカ「まだ、寝たりないから」
エーリカ「すぅ……すぅ……」
芳佳(お昼までかぁ……。料理はできないか。リーネちゃんにあとで謝っておかなくちゃ)
コンコン
芳佳「はーい。どうぞー」
サーニャ「失礼します」
芳佳「あ、サーニャちゃん。どうしたの?」
サーニャ「あれ? 芳佳ちゃん、どうしたの?」
芳佳「臨時で看護師になっちゃって」
サーニャ「そうなんだ……」
芳佳「どこか怪我でもしたの?」
サーニャ「うん。さっきサウナに入ったら、痣があって。少し見てもらおうかなって」
芳佳「痣? どこ?」
サーニャ「首のところに」
芳佳「ホントだ。不自然だけど、どこかにぶつけた覚えはないの?」
サーニャ「うん。芳佳ちゃん……これって病気……?」
芳佳「とりあえず治療を――」
エーリカ「宮藤ぃ」
芳佳「ハルトマンさん?」
エーリカ「原因が分かってないのに、治療していいの?」
芳佳「あ……そうですね。ここで治療してもまた同じ痣が出てきたら……」
エーリカ「ちゃんと調べてあげないと」
芳佳「すいません」
エーリカ「謝る必要はないけどね。それじゃ、おやすみ」
サーニャ「ハルトマンさんもいたんだ……」
芳佳「ああ、えっと。サーニャちゃん。この痣ははじめて?」
サーニャ「分からないわ。鏡を見たらあったから……」
芳佳「うーん……」
サーニャ「病気? 死ぬ?」ウルウル
芳佳「いや!! こんなのでは死なないよ!! 絶対!!」
サーニャ「よかった……」
芳佳(サーニャちゃんは肌が白い分、余計に痛々しい……)
サーニャ「……」
芳佳(でも、どうして首に痣ができるんだろう?)
サーニャ「芳佳ちゃん……やっぱり、これ病気?」
芳佳「いや、痣って皮膚表面に散っちゃった血液が見えているだけなの。何かがあって毛細血管が切れちゃっただけだから、病気じゃないよ。放っておいても数日で治るし」
サーニャ「芳佳ちゃんがそういうなら、信じるね」
芳佳「だけど、中々首にこんな痣ができることはないんだけど……」
サーニャ「起きている間はどこもぶつけてないから、寝ている間かもしれない」
芳佳「サーニャちゃんって寝相悪い?」
サーニャ「部屋は良く間違えるけど、ベッドから落ちたことはないかな」
芳佳「そうなんだー。私はよく落ちちゃうんだー」
サーニャ「痛くない?」
芳佳「痛いというより、驚いちゃって。目が一発で覚めちゃう」
サーニャ「ふふ……」
エーリカ「――これ、誰かに吸われたんじゃないの?」
芳佳「ハ、ハルトマンさん!! いつのまに!?」
サーニャ「吸われたって……?」
エーリカ「宮藤、腕出して」
芳佳「はい」
エーリカ「いただきます」
芳佳「え!?」
エーリカ「むぅぅ~」チュゥゥゥ
芳佳「ハ、ハルトマンさん!!! なにしてるんですかぁ!!!」
サーニャ「あ……」モジモジ
エーリカ「ぷはぁ!! ほら、宮藤の腕、赤くなったでしょ?」
サーニャ「本当だ」
芳佳「ひどいです……」
エーリカ「きっと誰かに首を狙われたんだね」
サーニャ「でも……誰が……」
エーリカ「寝る前、誰かが近くにいなかった? 間違えた部屋の相手とかさ」
芳佳「うぅ……」
サーニャ「……わかりました」
芳佳「サーニャちゃん?」
サーニャ「ありがとう、芳佳ちゃん。大丈夫だよ。もう分かったから」
芳佳「治療は?」
サーニャ「治るなら、いい。芳佳ちゃん、診てくれてありがとう」
芳佳「ああ、ううん。また何かあったら、きてね」
サーニャ「うん。芳佳ちゃん、その服、かわいいよ?」
芳佳「え? そ、そうかなぁ? えへへ」
サーニャ「失礼しました」
エーリカ「お大事にぃ」
芳佳「ハルトマンさん、良く分かりましたね。あれが吸い付いたあとだって」
エーリカ「首に痣といったら、それぐらいしかないでしょう」
芳佳「でも、どうして首に吸い付くんですか?」
エーリカ「吸血鬼でもいるんじゃない?」
芳佳「吸血鬼……!?」
エーリカ「それじゃ、寝るから」
芳佳「は、はい」
芳佳(ハルトマンさん、すごいなぁ。私は吸い付いたなんて少しも思いつかなかったのに……)
芳佳(それにしても吸血鬼なんて……)
エーリカ「ああ、宮藤。今の患者のこと、そっちの紙に記入しててね。来室者は記録しておかないといけないみたいだから」
芳佳「はい!」
エーリカ「お。急にどうしたの。元気になって」
芳佳「いえ。私もハルトマンさんみたいになりたいなって思ったら、元気が出てきました」
エーリカ「そう。悪い気はしないねぇ。がんばって」
芳佳「はい!!」
芳佳(まだまだ勉強しなきゃいけないことは多いみたい。頑張ろう!)
芳佳「えーと……来室者はサーニャちゃん……来室内容は吸血鬼に首を……」カキカキ
コンコン
芳佳「はい、どうぞっ」
ルッキーニ「うぅ……芳佳ぁ。たじゅけてぇ……」
芳佳「ルッキーニちゃん!? どうしたの?」
ルッキーニ「あのね、昨日ね、木の上で寝てたんだ。それでね、朝起きると、足が痒くて……」
芳佳「うわ。内腿が真っ赤になってるよ」
ルッキーニ「もうかゆいのぉー!! かゆいかゆいぃー!!」
芳佳「あぁ! かいちゃだめ! 余計に酷くなっちゃうから!!!」
ルッキーニ「でも……でも……」
芳佳「待ってて。今、治療をしてあげるから」
ルッキーニ「はやくしてー!!」
芳佳「ふっ……」パァァ
ルッキーニ「はぁ~……かゆみがなくなってくぅー」
芳佳「……ふぅ。どう?」
ルッキーニ「ありがとう、芳佳ぁ!! もう大丈夫みたい!!」
芳佳「よかったね」
ルッキーニ「バイバーイ!!」ダダダッ
エーリカ「宮藤。ルッキーニには痒み止め渡したほうがよかったんじゃない?」
芳佳「え? でも、あれならすぐに治せましたから」
エーリカ「また来ると思うけどなぁ」
芳佳「そうですか?」
エーリカ「まぁ、いいけど」
芳佳「そうだ。今のも記録しておかなきゃ」
コンコン
芳佳「は、はーい」
バルクホルン「……」ガチャ
芳佳「バルクホルンさん?」
バルクホルン「……怪我をした」
芳佳「え!? どこをですか!?」
バルクホルン「肘だ。ランニング中にこけてしまった」
芳佳「大変!! 血が出てますよ!! 今、治療しますね!!」
バルクホルン「頼む」
昼 食堂
芳佳「ごめん!! リーネちゃん!!」
リーネ「仕方ないよ。私は大丈夫だから」
芳佳「でも、大変だったでしょ?」
リーネ「ううん。ペリーヌさんが手伝ってくれたから、大変じゃなかったよ」
芳佳「今度の当番は私が一人でするよ」
リーネ「気にしないで。それよりも医務室での仕事のほうが忙しいんじゃない?」
芳佳「うん。割とみんなが利用してて、驚いちゃった。私はまだ一度も行ったことがなかったから」
リーネ「私も行ったことないなぁ。でも、芳佳ちゃんがいるなら……」
芳佳「え?」
リーネ「あ、ううん!! なんでもない!!」
バルクホルン「……」スリスリ
美緒「バルクホルン、さっきから肘を擦っているが、どうかしたのか?」
バルクホルン「……なんでもない」
美緒「うむ。幸せそうな顔だな。痛めたわけでないなら別に良いが」
ミーナ「宮藤さん、ちょっといいかしら?」
芳佳「あ、はい!」
ミーナ「明日と明後日もできれば医務室にいてもらいたのだけれど、いいかしら?」
芳佳「私でよければ」
ミーナ「助かるわ。エーリカも貴方が居てくれると安心だって言っていたから」
芳佳「そんなことないですよ。私のほうこそ学ぶことが多くて」
ミーナ「あら。数時間で遣り甲斐を感じたのかしら?」
芳佳「そうですね。そうかもしれません」
ミーナ「可愛い保険医さんね。私も通っちゃおうかしら」
芳佳「えぇ!?」
美緒「宮藤を困らせるな。そんなことを言えば、医務室を自室にし兼ねんぞ、宮藤は」
ミーナ「ふふっ、そうね」
芳佳「そこまではしませんよぉ」
美緒「ならいいんだが。よし、午後は訓練だ。行くぞ、宮藤!!」
芳佳「はいっ!!」
夕方 医務室
芳佳「……」ガチャ
芳佳(あ、ハルトマンさんがいない……。もう部屋に戻っちゃったのかな……)
芳佳(記録書をまとめておかないと……)
芳佳「……」カキカキ
コンコン
芳佳「はーい」
シャーリー「すいませーん。指、切っちゃって――って、宮藤。どうして、ここにいるんだ? 午前中だけじゃなかったのか?」
芳佳「その午前にいたときの記録をまとめてなくて……」
シャーリー「なんだ、そうなの」
芳佳「手、出してください」
シャーリー「え? ああ、いいって。消毒してなんか貼っとけば」
芳佳「シャーリーさん」
シャーリー「……それじゃあ、頼んじゃおうっかなぁ」
芳佳「はい。少しじっとしていてくださいね」パァァ
芳佳「これでよしっと。さて、部屋に戻ろう」
エーリカ「宮藤?」
芳佳「ハルトマンさん、どうしたんですか?」
エーリカ「どうしたもこうしたもないよ。シャーリーから聞いて飛んできたんだから」
芳佳「え?」
エーリカ「宮藤は午前だけでしょ?」
芳佳「記録書のほうがまだ書けてなかったので」
エーリカ「そんなの明日やればいいよ。書いている間に怪我人がいっぱい来たらどうするの?」
芳佳「治療します」
エーリカ「ダメダメ。宮藤は訓練もやってるんだから。倒れちゃうよ」
芳佳「でも……」
エーリカ「頼んだのは私だけどさ。ここまですることはないから」
芳佳「そうですか?」
エーリカ「うん。記録書も宮藤が書けなかった分は私がやっておくし」
芳佳「わかりました」
翌日 医務室
芳佳「……」ガチャ
エーリカ「んー……。宮藤、おはよう」
芳佳「ハルトマンさん? もう来てたんですか?」
エーリカ「おやすみぃ……」モゾモゾ
芳佳「あぁ、やっぱり寝ちゃうんですね」
エーリカ「午前はここで寝れてサイコーだね」
芳佳(もしかして……ハルトマンさんって寝るために医務室勤務を……)
コンコン
芳佳「はい、どうぞー」
美緒「宮藤。相談があるのだが」
芳佳「坂本さん? 怪我でもしたんですか?」
美緒「いや。怪我ではないんだが……」
芳佳「なにか?」
美緒「実は最近、どうにも疲れやすくてな。訓練中も満足にできんのだ」
>>41
美緒「実は最近、どうにも疲れやすくてな。訓練中も満足にできんのだ」
↓
美緒「実は最近、どうにも疲れやすくてな。訓練も満足にできんのだ」
芳佳「そうは見えませんでしたけど」
美緒「顔には出さんさ。だが、体は正直でな」
芳佳「えーと……」
エーリカ「はい、少佐」
美緒「なんだ、この紙コップは?」
エーリカ「尿検査用」
美緒「なに?」
芳佳「えぇ!? どうしてですか!?」
エーリカ「健康診断では一番手っ取り早いしね」
芳佳「そうかもしれませんけど……」
美緒「分かった。ここでしたほうがいいか?」
芳佳「あのトイレで!!! トイレでおねがいします!!!」
美緒「はっはっはっは。冗談だ。冗談」
芳佳「坂本さんのは冗談に聞こえません……」
美緒「では、取ってこよう」
芳佳「でも、坂本さんでもそういうことがあるんだぁ……」
エーリカ「多分、体の不調とかではないと思うけど」
芳佳「どういうことですか?」
エーリカ「すぐにわかるよ」
芳佳「はぁ……」
ペリーヌ「あの!!!」ガチャ
芳佳「わ!? ペリーヌさん!?」
エーリカ「ノックしてよ。病人が寝てる場合もあるんだからさ」
ペリーヌ「あ、も、申し訳ありません……」
芳佳「怪我ですか?」
ペリーヌ「さ、坂本少佐が出てくるのを見ましたわ」
芳佳「あ、はい」
ペリーヌ「どこか、お体でも悪いの!? 怪我はしていなかったようなのに!!」
芳佳「あ、あの……」
ペリーヌ「はやく言いなさい!! 答えなさい!! 宮藤さん!!!」
エーリカ「最近疲れやすいっていって来ただけだって」
ペリーヌ「疲れやすい? やはり、お体を悪くして……」
エーリカ「少佐はそんなに柔じゃないでしょ」
ペリーヌ「そんなのわかりませんでしょ!?」
芳佳「ペリーヌさん、大丈夫ですから。そのために今、坂本さんには採尿を……」
ペリーヌ「わたしくが坂本少佐の疲れを癒して差し上げなければ!!」
エーリカ「……マッサージでもしてあげたら?」
ペリーヌ「マ、マッサージ!?」
エーリカ「お風呂上りとかにしてあげると、疲れは吹っ飛ぶだろうねぇ」
ペリーヌ「マ、マッサージ……坂本少佐をマッサージ……あぁ……失礼します……こっていますわね……あぁ、やだ、手が滑って……そんな、少佐……」モジモジ
芳佳「ペリーヌさん?」
ペリーヌ「わたくし!! 用事を思い出したので、失礼します!!」ガチャッ!!
芳佳「廊下を走ると危ないですよー」
ペリーヌ『きゃぁっ!? こ、これは!? 坂本少佐!? 申し訳ありません!! あら、なんだか、臭い……』
美緒『ペリーヌ、急に出てくるとは思わなかったぞ。しまった。折角、取ってきたのに……。ペリーヌにかかってしまったな。大丈夫か?』
芳佳「坂本さん、夕方に来るって言ってましたね」
エーリカ「ま、仕方ないね」
芳佳「ペリーヌさん、かわいそうだったなぁ」
コンコン
芳佳「どうぞー」
ルッキーニ「よしゅかぁ……」
芳佳「ルッキーニちゃん!?」
ルッキーニ「かゆいよぉー……虫がズボンの中に侵入してきたみたぃ~」
芳佳「えぇ!? そんなところ……」
ルッキーニ「かゆいぃ……」
芳佳「ダメダメ!! かいちゃダメ!! 今、治療するから!!」
ルッキーニ「うぅ……はやくぅ……」
エーリカ「ルッキーニ。これ、あげるから。虫除けと痒み止め。外で寝るのはいいけど、対策しておかないと」
ルッキーニ「うん……」
芳佳「ふっ……」パァァ
コンコン
芳佳「はい」
バルクホルン「宮藤」
芳佳「バルクホルンさん!!」
バルクホルン「怪我をしてしまった」
芳佳「どこをですか!?」
バルクホルン「膝だ。ランニング中にこけてしまってな」
芳佳「わかりました!! 待っててください!! ふっ……」パァァ
バルクホルン「すまない」
芳佳「気にしないでください!!」
エーリカ「昨日も転んでなかったっけ?」
バルクホルン「歳かな……」
エーリカ「……」
リーネ「失礼します……。包丁で指を切っちゃって……」
芳佳「あ、リーネちゃん。ちょっと待ってて」
芳佳「ふぅー。これで大丈夫」
リーネ「ありがとう」
エーリカ「何で包丁で指を切ったの?」
リーネ「今日、料理当番で……」
芳佳「あれ? そうだったの? てっきりシャーリーさんだと思ってた」
リーネ「シャーリーさんのお手伝い。芳佳ちゃんが頑張ってるから、私もできることをしようって思って」
芳佳「リーネちゃん、嬉しいよ!!」
エーリカ「まぁ、いいけど。お大事に」
リーネ「はい。芳佳ちゃん、その服、可愛いね」
芳佳「ありがとう。サーニャちゃんにも言われてたよ」
リーネ「うふふ。それじゃあね」
芳佳「うん」
エーリカ「皆、こんなに怪我したっけ?」
芳佳「バルクホルンさんもリーネちゃんも怪我の理由は珍しいですけど、ありえないわけじゃないですし」
エーリカ「……そうだけどさ」
昼 食堂
シャーリー「いやぁ、助かったよ。リーネがいなきゃ、缶詰になるところだったからなぁ」
リーネ「いえ、そんな」
ルッキーニ「リーネ、おかわりっ!!」
リーネ「はい」
芳佳「……」
エーリカ「宮藤?」
芳佳「なんですか?」
エーリカ「午後は訓練だよね?」
芳佳「はい、そうですけど」
エーリカ「休んだら? 結構疲れたでしょ?」
芳佳「いえ、これぐらい平気ですから!!」
エーリカ「そう?」
バルクホルン「……」スリスリ
ミーナ「トゥルーデ? 膝がかゆいの? ずっと擦ってるけど」
夕方 医務室
芳佳「……」ガチャ
エーリカ「なにしにきたのかなぁ?」
芳佳「わっ!? ハルトマンさん、いたんですか?」
エーリカ「記録なら書いておいたよ」
芳佳「ありがとうございます」
エーリカ「ほら、もう鍵を閉めるから、部屋に戻った戻った」
芳佳「え? でも……」
エーリカ「でも、なに?」
芳佳「坂本さんが来るって……」
エーリカ「それは私がやっとくから」
芳佳「あの、できればハルトマンさんの傍で勉強をしたいなぁって」
エーリカ「勉強? ああ、そういうことかぁ。宮藤は真面目だねぇ」
芳佳「いえ、そんな」
美緒「――持って来たぞ。すまんが頼む」
エーリカ「はい。あずかり――うわ……」
芳佳「き、きいろい……」
美緒「おい。あまりまじまじと見るな。存外に恥ずかしいぞ」
芳佳「す、すいません!!」
エーリカ「疲れてるねぇ。これは」
芳佳「坂本さん、無理してませんか?」
美緒「しているつもりはないのだがな」
芳佳「でも……」
エーリカ「毎日、限界まで体を虐めて、更にストレスもあるんじゃない?」
美緒「ストレスなど体を動かしていれば発散される」
エーリカ「何かに焦ってるとか」
美緒「……」
エーリカ「栄養剤、いる?」
美緒「……貰っておこう」
エーリカ「どうぞ」
美緒「世話になったな。ああ、これは他言無用だ」
エーリカ「了解であります」
芳佳「あの!!」
美緒「どうした?」
芳佳「辛いときは辛いって言ってください!! 私にできることなんてそんなに多くないですけど、でも、疲れをとるぐらいのことはできますから!!」
美緒「宮藤……」
芳佳「坂本さん……」
美緒「ありがとう。その言葉だけで元気が出てくる」
芳佳「無理はしないでくださいね」
美緒「ああ。約束しよう」
エーリカ「お大事にぃ」
芳佳「できるだけ坂本に負担をかけないようにしなきゃ……」
エーリカ「そういう宮藤は?」
芳佳「私は何ともないですよ? ほら、元気ですから!」
エーリカ「そっか。じゃ、今日はここまで。また明日ね、宮藤」
翌日 医務室
エーリカ「うーん……」
芳佳「おはようございますっ。ハルトマンさん」
エーリカ「ん? おはよう。それじゃあ、寝ようかなぁ」
芳佳「はい」
コンコン
芳佳「どうぞ」
バルクホルン「宮藤」
芳佳「バルクホルンさん!? どうしたんですか!?」
バルクホルン「胸の奥が苦しんだが……」
芳佳「えぇ!? どう苦しいんですか!?」
バルクホルン「なんだろう……締め付けられるような感じというか……」
芳佳「大変!! 今、治療を!!!」
エーリカ「宮藤。まずは聴診、触診からでしょー」
芳佳「え!? ああ、そうですね!! では、バルクホルンさん、上着を脱いでください!!」
バルクホルン「あ、ああ……」スルッ
芳佳「で、では……」ワキワキ
バルクホルン「頼む……」
エーリカ「よっと」ムニッ
バルクホルン「エーリカ!?」
エーリカ「ふむふむ。これは恋わずらいですね」
バルクホルン「な、何をいっているんだぁ!!!」
エーリカ「なら、仮病かな?」
芳佳「仮病!?」
バルクホルン「いや!! 違うんだ!! 本当に一昨日ぐらいから寝るときに胸が苦しくなってだな!!!」
芳佳「じゃあ、大変です!!」
エーリカ「そのとき、何考えてるの?」
バルクホルン「え……うーん……」
エーリカ「宮藤のことを考えてるなら薬で治せない病気だから、帰ってよ」
バルクホルン「……そうだな。戻ろう」
芳佳「大丈夫ですか!?」
バルクホルン「ハルトマンが言っているんだ。心配ないだろう」
芳佳「でも、一応」パァァ
バルクホルン「ほぅ……」
エーリカ「宮藤、ダメだって」
芳佳「だけど……」
コンコン
エーリカ「はーい?」
エイラ「うぅ……うぅ……」
芳佳「エイラさん!? 左頬が腫れますよ!?」
エイラ「うぅ……」
エーリカ「誰かに殴られたような感じだね」
芳佳「誰にそんなことを!?」
エイラ「じ、じぶんで……殴った……だけだ……」
バルクホルン「エイラ、自傷癖でもあるのか?」
エイラ「宮藤……治してくれ……」
芳佳「はい!! すぐに治療するから!!」
エイラ「うぅぅ……」
エーリカ「トゥルーデはもういいよね?」
バルクホルン「ああ。ありがとう、宮藤」
芳佳「いえ、何かあればすぐに来てください」
バルクホルン「そうさせてもらう」
エーリカ「……」
芳佳「これでどう?」
エイラ「うん。もうなんともないな。助かったよ。腫れたままで訓練には出たくなかったしな」
芳佳「そんな。でも、自分で自分を殴らないようにしないと」
エイラ「そうだな。気をつける」
芳佳「はい」
エーリカ「……そりゃ、寝込みを襲えばサーニャも驚いてぶっちゃうよねー」
エイラ「……いや、今日だけ。今日だけだったんだ」
芳佳「ふぅ……」
エーリカ「宮藤、大丈夫?」
芳佳「え? はい、平気ですよ」
エーリカ「……」
芳佳「あの、ハルトマンさん? どうかしました――」
エーリカ「私から頼んどいてあれだけどさ、もうやめていいよ?」
芳佳「ど、どうしてですか? 私、とっても楽しいです」
エーリカ「そうなの?」
芳佳「正直に言うと、戦争なんかよりこうやって人の役にたてるほうが……嬉しいですから……」
エーリカ「ふぅん」
芳佳「できれば銃なんて持ちたくないですし。あ、ごめんなさい。こんなこと言っちゃって……。もう軍人なのに……」
エーリカ「あははは。何きにしてんの。それが宮藤のいいところじゃない」
芳佳「そうですか?」
エーリカ「そっか。人を助けるのが好きか」
芳佳「はいっ」
午後 滑走路
バルクホルン「行くぞ、ハルトマン」
エーリカ「はーい」
バルクホルン「今日の訓練は――」
エーリカ「……」
美緒「まずは何事においても体力だ。お前達は色んなものが足りていない!!」
芳佳「は、はい!!」
リーネ「はぁ……はぁい……」
美緒「しっかり走りこめ!! このあとは射撃訓練を行う!!」
芳佳「が、がんばります!!」
リーネ「はぁ……い……!!」
エーリカ「……」
バルクホルン「エーリカ!! 聞いているのか!?」
エーリカ「なに? 聞いてなかった。もう一回言って」
夕方 医務室
芳佳「……」ガチャ
芳佳(今日は疲れたなぁ……)
芳佳(記録……つけ――)
エーリカ「おっと」ギュッ
芳佳「……え?」
エーリカ「……やっぱり。そろそろだと思ってたんだ」
芳佳「ハルトマンさん、すいません。ちょっとよろけて……」
エーリカ「坂本少佐に言ったこと、自分でやれないんじゃ説得力ないよ」
芳佳「あ……」
エーリカ「横になって」
芳佳「ごめんなさい……」
エーリカ「宮藤に治療を頼りすぎだよね。とくにトゥルーデが」
芳佳「あはは」
エーリカ「でも、宮藤も助けるのが好きだから無理しちゃうんだよね。わかるわかる」
芳佳「……」
エーリカ「だけど、あんなに訓練で張り切ってたら倒れて当然だって」
芳佳「坂本さんに楽になってほしいから、頑張らないとって……」
エーリカ「なんで宮藤が焦る番になってるの? すぐに体力なんてつくわけないしさ」
芳佳「そうですね……」
エーリカ「それに坂本少佐は新人のことで頭を悩ませてるんじゃないから」
芳佳「そう、なんですか?」
エーリカ「こんなに一生懸命な部下を持って、幸せだと思ってるぐらいじゃない?」
芳佳「それなら……いいんですけど……」
エーリカ「……ごめんっ!」
芳佳「え?」
エーリカ「まさか宮藤がここまでやるとは思ってなかったよ。こんなことになるなら声をかけなきゃよかった」
芳佳「わ、私は感謝してます!! こういうことが経験できて……」
エーリカ「うんうん。気が楽になったよ。とりあえず、今は休んでて」
芳佳「は、はい」
コンコン
エーリカ「はい」
ミーナ「エーリカ。宮藤さんは……」
エーリカ「寝てるよ」
芳佳「すぅ……すぅ……」
ミーナ「体のほうは?」
エーリカ「疲れただけだと思うよ。扶桑からこっちに来てからの疲労もあったと思うけど」
ミーナ「隊長失格ね。宮藤さんの異変に気がつけなかったなんて」
エーリカ「少佐と同じで顔に出さないからね。無意識なんだろうけど」
ミーナ「そうそう。新任が決定したわ。明日には着任するみたいだから、今日で最後になるわね。ご苦労様」
エーリカ「やっとかぁ」
ミーナ「あら、嫌だったの? 自分から言い出したのに」
エーリカ「午前中ゆっくり眠れるのはいいけど、宮藤が――」
ミーナ「午前中、なんですって? エーリカ・ハルトマン中尉?」
エーリカ「……なんでもなーい」
芳佳「あ……うぅん……」
エーリカ「起きた?」
芳佳「ハルトマンさん……。ごめんなさい、すっかり寝ちゃって……」
エーリカ「いいって。今までお疲れ様、宮藤」
芳佳「どういうことですか?」
エーリカ「エーリカの保健室は今日までだって」
芳佳「あ、そうなんですか……」
エーリカ「なんだなんだ? 嬉しくないの?」
芳佳「もう少し、ハルトマンさんと一緒に出来たら良かったです」
エーリカ「そうだねぇ。宮藤はもう少し魔法に頼らないで治療ができたらいいね。宮藤も魔法に頼りすぎているところもあるし」
芳佳「そ、そうですね。これじゃあいざってときに何も出来ないかも」
エーリカ「だから――」
ドンドンドン!!
エーリカ「だれー?」
バルクホルン「宮藤!! 大丈夫かぁ!! 今、ミーナから倒れたって……!!」
芳佳「はい、もう何ともありません」
バルクホルン「はぁ……よかった……」
エーリカ「……ねえ、宮藤。魔法を使わないで治療する。今から少しぐらい実践しておくべきじゃない?」
芳佳「それは勿論したいです。だから、私、もう少しハルトマンさんと一緒に……」
エーリカ「では、早速やってみようか。丁度、患者もいるしね」
芳佳「え? どこにですか?」
エーリカ「そこにいるでしょ」
バルクホルン「いや。まぁ、そこまでの心配はしていなかったがな。これも上官としては当然の行動であるわけで……」
芳佳「バルクホルンさんが?」
エーリカ「トゥルーデ、ちょっといい?」
バルクホルン「なんだ?」
エーリカ「まだ、胸が苦しくなったりする?」
バルクホルン「ああ。今だって息苦しさを感じるほどだ」
エーリカ「そう……。辛いなら、治してあげられるよ?」
バルクホルン「何を言っている。薬はないのだろう?」
エーリカ「実はあるんだよ」
バルクホルン「本当か? 宮藤の魔法以外であるのか?」
エーリカ「うん。とにかくベッドに寝て」
バルクホルン「わかった」
芳佳「あの……」
エーリカ「宮藤、これをトゥルーデに投与して」
芳佳「こ、これって!!」
エーリカ「トゥルーデ、うつ伏せになって」
バルクホルン「薬だろ? どうしてうつ伏せになる必要がある?」
エーリカ「いいから。すぐに元気にしてあげるって」
芳佳「ハルトマンさん、これは風邪のときじゃ」
エーリカ「だから、トゥルーデは風邪なんだって」
芳佳「そうなんですか!?」
エーリカ「これの経験はまだないでしょ?」
芳佳「お母さんにしてもらったことはありますけど、私自身が他人にしたことは……」
胃腸科肛門科に来ました。
男「先生、どうでしょうか?」
医者「心配ないですよ。よく効く座薬がありますから、それを使いましょう」
男はパンツを脱いで、お尻を先生の前に突き出しました。先生は肩に手を掛けました。
医者「いいですか? イキますよ。ハイ、力を抜いて」
男「ううっ」
座薬が何個も入ったようでした。
医者「この座薬を毎朝、1週間続けてみてください」
男「どうもありがとうございました」
翌朝。言われたとおり座薬を入れようとしたが上手くいきません。そこで嫁に頼むことにした。
嫁「これをお尻に入れればいいのね。わかった。いくわよ」
嫁は右手で座薬をつまみ、左手を肩に掛けました。
男「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
嫁「どうしたの?! ごめんなさい、痛かった? 大丈夫?」
男「うわぁぁぁぁ!! 違う、今、気がついたんだ! うわぁぁぁぁ!!!」
嫁「なに? 何に気付いたの?!」
男「あのとき先生は、俺の肩に両手を掛けていた!!」
エーリカ「だよねー。こういったことも経験しておくべきだって」
芳佳「誰でもできるような……」
エーリカ「トゥルーデも元気になるし。ほら、やろうやろう」
芳佳「わ、わかりました……」
バルクホルン「まだか?」
エーリカ「トゥルーデ、お尻あげて」
バルクホルン「何故だ? 薬を飲むだけなのだろう?」
エーリカ「ほら、早く」
バルクホルン「全く……何がしたいんだ……」
エーリカ「――せい!!」ズルッ
バルクホルン「わぁ!? お前!! ズボンを!!」
芳佳「し、失礼します!!」ズッ
バルクホルン「ぁ――!!!」
シャーリー「――おーい。宮藤ー。ルッキーニが痒み止めをデリケートな部分に塗っちゃったみたいで、痛がってるんだけど。どうしたらいいんだ? って……なにやってんだ、お前ら」
ルッキーニ「た、たしゅけてよしかぁ……」モジモジ
芳佳「これで大丈夫だよ」ゴシゴシ
ルッキーニ「あぁー、死んじゃうかとおもったぁ。ありがと」
シャーリー「よかったなぁ、ルッキーニ」
ルッキーニ「うん」
バルクホルン「……」
エーリカ「トゥルーデ、元気になった?」
バルクホルン「……ある意味な」
エーリカ「だって、よかったね、宮藤」
芳佳「はい。一回で出来てよかったです」
美緒「おーい。尿検査の結果は出たかー? ん? なんだ、随分と人が多いな。何をやっているんだ」
エーリカ「少佐、これこれー」
美緒「うむ……。異常はなしか」
エーリカ「かなりの疲労が溜まってるのは確かだけどねー」
美緒「耳が痛いな」
エーリカ「ま、程ほどにってことで」
食堂
ルッキーニ「えぇぇー? 芳佳、もうやめちゃうのぉ?」
ミーナ「元から新任が決まるまでの約束だったからね」
シャーリー「勿体ないよなぁ。あの姿。宮藤もハルトマンも新鮮でよかったぁ」
バルクホルン「ふん。ネウロイにも軍にも関係のないことだ。そんなことでいちいち浮かれるな」
シャーリー「医務室最多来室者が言うことかぁ?」
バルクホルン「何を言っている。どこにそんな証拠がある?」
シャーリー「あれ? 来診者記録あるのしらないのか? バルクホルンの名前がずらーっと並んでたけど」
バルクホルン「な、なんだと!?」
美緒「人気だな、宮藤は。確かに花はあった」
ペリーヌ「つ、次はわたくしが務めます!! そうすれば坂本少佐の……お……おしっ……手に……」
エイラ「サーニャ、あれは誤解なんだぁ」
サーニャ「……」
エイラ「サーニャぁぁ……」
サーニャ「しらないっ」プイッ
キッチン
リーネ「……芳佳ちゃん」
芳佳「なに?」
リーネ「ごめんね……」
芳佳「なにが?」
リーネ「……ごめんなさい」
芳佳「リーネちゃん?」
リーネ「私、芳佳ちゃんに酷いことしちゃって……」
芳佳「なんのこと!?」
リーネ「指、治療してもらったから!!」
芳佳「怪我したら治療するよ!!」
リーネ「違うの……!! そうじゃなくて……!!」
エーリカ「まぁまぁ、リーネ。今度から包丁を使うときは気をつければいいじゃない」
リーネ「ハルトマン中尉……」
エーリカ「でしょ?」
芳佳「リーネちゃん……」
リーネ「私、芳佳ちゃんが倒れたって聞いて……だから、謝っておきたくて……」
エーリカ「宮藤が困ってるじゃん。心当たりがなさすぎて」
芳佳「……リーネちゃん。なんのことか良く分からないけど、私はリーネちゃんのこと簡単に嫌いになったりしないよ」
リーネ「え……」
芳佳「だって、リーネちゃんは大切な親友だから!!」
リーネ「芳佳ちゃん!」ギュッ
芳佳「わわっ!? リ、リーネちゃん!? 胸が……」
リーネ「芳佳ちゃん……芳佳ちゃん……」スリスリ
芳佳「えへへ……」
エーリカ「抱き合うのはいいけど、ご飯まだー?」
芳佳「あ、はい!! すぐに!!」
リーネ「ごめんなさい!!」
エーリカ「宮藤、よろしくねっ」
芳佳「はい!」
エーリカ「つっ……!?」ビクッ
バルホルン「どうした?」
エーリカ「指、切れちゃった」
ミーナ「あら……コップにヒビが……。これで切ったのね」
芳佳「大丈夫ですか!?」
エーリカ「うん。なんでもないよ」
美緒「だが、化膿することもありえる。宮藤、頼むぞ」
エーリカ「大したことないのに」
芳佳「はい! 今、治療を――」
芳佳(あ、ダメだ。ハルトマンさんに言われたばかりなのに。すぐに魔法に頼っちゃダメ。えーと……そうだっ)
芳佳「ハルトマンさん。これぐらいなら舐めておきましょう」
エーリカ「え?」
芳佳「んっ……」チュッ
エーリカ「おぉ……」
リーネ「……」ガタッ
さすがリーネちゃん!
芳佳「ふぁいふぃーふれふか?」チュパチュパ
エーリカ「あはは。宮藤、くすぐったいって」
芳佳「でふぉ、ふぁるふぉふぁんふぁんふぁ……」チュパチュパ
エーリカ「あははは。もう、やめてぇー」
芳佳「ふぉうひょっろだふぇ……」チュパチュパ
ミーナ「あらあら……」
ルッキーニ「シャーリーもあたしにああしてくれるときあるよねー」
シャーリー「掠り傷なんて唾つければ十分だからなぁ」
エイラ「……サーニャ、今度怪我したら……」
サーニャ「やめて」
ペリーヌ「なぁぁ……!! その手がありました……!!!」
美緒「宮藤。衛生面を考えればあまりいいことではないんじゃないか?」
芳佳「ふはぁ。あ、そうですか?」
エーリカ「あはは。ありがと、宮藤。すっかり治ったよ」
芳佳「それならよかったです」
夜 宮藤の部屋
コンコン
芳佳「あ、はーい」
リーネ「芳佳ちゃん……。指から血が出ちゃって……」
芳佳「どうしたの!? とりあえず舐めてあげるね!!」チュッ
リーネ「んっ……。ペンで突いちゃって……」
芳佳「ふぉうなふぉ?」チュパチュパ
リーネ「うふふ……」
バルクホルン「――宮藤」
芳佳「あ、バルクホルンさん」
バルクホルン「指を怪我し――リーネ!! お前……!!」
リーネ「ご、ごめんなさい!!」ダダダッ
芳佳「あ、リーネちゃん!!」
バルクホルン「……私も戻る」
芳佳「あれ!? 指の治療はいいんですか!?」
芳佳「バルクホルンさん!!」ダダダッ
エーリカ「宮藤? 今度は宮藤芳佳のイケない保健室かな?」
芳佳「あ、ハルトマンさん。いえ、そんなつもりは……」
エーリカ「ふふ。ま、宮藤は好きでやってるから、止めないけどね」
芳佳「ありがとうございます。あの、また機会があれば勉強とか一緒にしませんか?」
エーリカ「いいよ。いつでもおいでよ」
芳佳「はいっ!!」
エーリカ「……ねえ、宮藤?」
芳佳「はい?」
エーリカ「指、まだ治ってなかったんだけど……いいかな?」
芳佳「あ……。はいっ。いいですよ」チュッ
エーリカ「……」ピクッ
エーリカ(これじゃあ、トゥルーデやリーネを注意できないや……。みんなが宮藤を頼る理由が分かった気がする……)
美緒(指であれだけのことをするなら……刀で体中を切り刻めば、宮藤は……なるほど、な……。――よし、ストレスを溜めないためにもマッサージは宮藤に頼むか)
おしまい。
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