芳佳「大掃除!大掃除しましょう!今すぐに!!」美緒「どうした?」 (128)

リーネ「んー……」

芳佳「すぅ……すぅ……」

リーネ(芳佳ちゃんはまだ寝てる……。静かに着替えよう……)

リーネ「今日もいい天気ー。何かいいことがありそう」

芳佳「リーネちゃぁん……だい、すき……その……おおきな……おっ……」

リーネ(芳佳ちゃん、どんな夢みてるんだろう。ふふっ)

リーネ「あれ? この黒い雑巾なんだろう?」ツンツン

バッ!! カサカサカサカサカサカサカサ…!!

リーネ「……」

エーリカ「すー……すー……」

バルクホルン「起きろ。ハルトマン。起床時間が迫っているぞ」

エーリカ「うーん……あと30分……」

バルクホルン「全く」

『キャァァァァァ!!!!!』

バルクホルン「……朝のコーヒーでも飲むか」

バルクホルン(このマグカップにも少し飽きてきたな。宮藤が新しいのを選んでくれないだろうか……)

バルクホルン「……ん?」

バルクホルン「なんだ? 何かが蠢いて……」

エーリカ「すー……すー……」

バルクホルン「これは……? ダニか? いや、それにしては大きすぎるな」

バルクホルン「この形、どこかで……」

『イヤァァァァ!!!!!』

バルクホルン「どこだったか……」

シャーリー「ふわぁぁ……ねむい……」

ミーナ「シャーリーさん。おはよう」

シャーリー「おはようございます、しょうさ」

ミーナ「勝手に降格させないで」

シャーリー「あ、中佐だったんですか」

ミーナ「また遅くまでエンジンの調整でもしていたの?」

シャーリー「いや、まぁ、そのつもりだったんだけど。途中からそれができなくなったんですよ」

『きゃぁぁぁああああ!!!!』

『リーネちゃん!! 落ち着いて!!!』

ミーナ「……なにか、あったの?」

シャーリー「これ、見てください」

ミーナ「なっ!?」

シャーリー「変な虫が大量発生したんですよ。いつの間にか機械の中にも入り込んでいたみたいで、もうその駆除に追われちゃって」

ミーナ「な、なに、この小さな虫……いっぱいいる……」

エイラ「すぅー……すぅー……」

サーニャ「……」バタッ

『アァァァァァアアアア!!!!!』

『だ、だれかリーネちゃんを止めてー!!』

エイラ「うぇ!? なになに!?」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「なに部屋まちがえてんだよぉ」

サーニャ「うーん……かゆい……」

エイラ「サーニャ?」

サーニャ「かゆぃ……」

エイラ「どうした? 蚊にでもやられたのか?」

サーニャ「うぅぅ……」

エイラ「あれ? サーニャの足、所々赤くなってんな。なんだ、これ? 虫刺されなら宮藤に診せるか」

サーニャ「た……たすけて……」

ペリーヌ「……なんですの? 妙に騒がしいですわね」

リーネ「いやぁぁぁぁあああ!!!!」

ペリーヌ「ちょっと、リーネさん? スクランブルでもないのに廊下を走るなんて――」

リーネ「ペリーヌさーん!!!!」ギュッ!!!

ペリーヌ「な、なんですの!? ちょっと!!」

芳佳「あ、ペリーヌさん!! 大変です!!」

ペリーヌ「何かありまして?」

芳佳「私たちの部屋にあの……ゴキブリが……」

ペリーヌ「何を害虫が出たぐらいで……。この基地は歴史ある建物ですし、少しぐらいは仕方ないですわ」

芳佳「少しじゃないんです!!」

ペリーヌ「え? まぁ、1匹見かけたら10匹はいるといいますし」

芳佳「違うんです!! 20匹、いえ、25匹はいました!!!」

ペリーヌ「……ということは、250匹は宮藤さんの部屋にいる計算になりますわね」

リーネ「ひっ――」

美緒「いい汗をかいた。さてと、風呂にでも入るか」

『きゃぁぁぁああああ!!!! もういやぁぁぁぁ!!!!!』

美緒「リーネ……? なにかあったのか?」

美緒「――どうした!?」

芳佳「あ、坂本さん!!」

リーネ「さかもとしょうさぁ……たすけてくださぁい……!! ペリーヌさんが……ペリーヌさんがぁ……」

美緒「ペリーヌがどうした?」

ペリーヌ「わたくしは何もしてませんでしょう!?」

リーネ「だ、だって……250匹もいるなんて……想像しただけで……」

美緒「何が250匹もいたんだ?」

芳佳「ゴキブリです!!」

美緒「……お前たち、部屋の掃除はきちんとしろ」

芳佳「し、してますよぉ!!」

リーネ「毎日、してます!!」

美緒「――つまり、20匹ないし25匹の害虫が部屋で固まっていたと」

芳佳「リーネちゃんはそれを雑巾か布かと思って触ったらしいんです」

美緒「気が付くと思うがな」

芳佳「寝起きでよくわからなったみたいで」

美緒「何に集っていた?」

芳佳「わかりません」

ペリーヌ「何か食べ物を持ち込んで、それを床に落としていたとかでは?」

リーネ「そ、そんなことないとおもいますけど……」

美緒「ともかく現状を知りたい。宮藤とリーネの部屋に行くか」

リーネ「えっ!?」

美緒「なんだ?」

リーネ「も、もう、あの部屋は見るのも嫌です……」

美緒「だが、駆除はしなければならん。他の部屋に移るかもしれんぞ」

ペリーヌ「そ、それは困りますわ!!!」

美緒「ここか……」

ペリーヌ「なんだか、この扉が重々しく感じますわね」

芳佳「坂本さん、気をつけてください!!」

リーネ「と、とんでくるかも……」

美緒「……」ガチャ

美緒「――なるほど」バタンッ

ペリーヌ「少佐? あの、内部の様子は?」

美緒「手遅れだ」

リーネ「あぁ……」フラッ

芳佳「リーネちゃん!? しっかりして!!」

美緒「この部屋は永久に封印する。ペリーヌ、板をもってこい。扉に打ち付けて隙間を塞ぐ」

ペリーヌ「は、はい!!」

芳佳「私とリーネちゃんの部屋が……」

美緒「諦めろ」

リーネ「うっ……うぅ……お気に入りのティーセットが……あったのに……」

バルクホルン「そうか。わかったぞ。この虫はやはりダニの一種だ。本などによく這っていた奴か」

エーリカ「すぅー……すぅー……」

バルクホルン「雑食性でホコリや人間のフケなども食していたはずだ……つまり……」

エーリカ「うぅーん……もうたべられなぁーい……」

バルクホルン「おい!! 起きろ!!! ハルトマン!!!」

エーリカ「ん? もう30分たったのぉ?」

バルクホルン「お前の所為で小さな虫が沸いている!!! どうにかしろ!!!」

エーリカ「……それ、飼ってるから」

バルクホルン「ペットを数千匹と飼うやつがあるかぁ!!! さっさと駆除しろぉ!!!」

エーリカ「えー?」

バルクホルン「私の領土まで虫が侵攻している!!! しかも!!! マグカップにも侵入しているのだぞ!!!」

エーリカ「でもぉ」

バルクホルン「なんとかしろ!!!」

ミーナ「トゥルーデ、あの、手伝って……どうしたの?」

バルクホルン「ミーナか。見てくれ、あの惨劇を。流石に看過できないだろう? そろそろ清掃を義務付けるべきだと思うぞ」

リーネ「うっく……ぐす……」

芳佳「リーネちゃん、泣き止んで……」

エイラ「ここにいたのか、宮藤」ポリポリ

芳佳「エイラさん。おはようございます」

エイラ「おはよー。サーニャのことでちょっとさぁ。ん? リーネ、ないてるのか?」ポリポリ

芳佳「は、はい」

リーネ「うぅぅ……ぅぅ……」

エイラ「なら、あとでいいや。じゃな」ポリポリ

芳佳「え? サーニャちゃんがどうかしたんですか? 私に頼むって事は……」

エイラ「実はさ、サーニャのやつ、至る所を虫にやられててさぁ」ポリポリ

芳佳「それは大変じゃないですか!! すぐに行きます!!」

エイラ「そうか? 頼むな」ポリポリ

芳佳「あの、エイラさん? ずっと腕を掻いてますけど……?」

エイラ「なんでもない。さっさとサーニャのところにいってくれ」ポリポリ

芳佳「ちょっと腕をみせてください!!!」

美緒「――よし。これでいいか」

ペリーヌ「害虫はこれで身動きが取れませんわね」

美緒「とはいえ、その場しのぎだ。いつか奴らはここから這い出てくる」

ペリーヌ「では、わたくしの魔法で根絶やしに」バチッ

美緒「待て待て、ペリーヌ。お前の魔法は強力だ。建物まで壊すつもりか」

ペリーヌ「しかし、量が量だけに……」

美緒「分かっている。発炎筒でも投げ込むという手もあるが」

ペリーヌ「それはあまりにも危険ですわ。二次被害が基地全体に及んでしまう可能性もあります」

美緒「そうだな……。どうするべきか」

シャーリー「少佐、今いいか?」

美緒「どうかしたか?」

シャーリー「あたしの部屋に虫が大量発生しちゃってさぁ。殺虫剤の類があれば欲しいんですけど」

ペリーヌ「が、害虫ですの?」

シャーリー「それはわかんないな。まぁ、噛まれたりはしてないけど」

美緒「この基地で何が起こっている……」

芳佳「もう大丈夫だと思うよ」

サーニャ「ありがとう、芳佳ちゃん」

エイラ「よかったな、サーニャ」

サーニャ「ええ」

芳佳「だけど、サーニャちゃん。いつごろ虫に……というか、多分ダニだと思うけど、やられちゃったの?」

サーニャ「昨日、起きたらもう……」

エイラ「夜間哨戒中、大変だったらしい」

リーネ「でも、急にどうして……。今までそんなことなかったのに……」

芳佳「カビなんかがあれば爆発的に増えるっていいますよね」

エイラ「私たちの部屋はそんな不衛生にはしてないぞ!! 中尉じゃあるまいし」

サーニャ「うん。エイラが毎日掃除してくれているもの」

エイラ「サーニャが襲われないように……ずっと守ってたのに……!! ダニめぇ!!」

芳佳「エイラさん……」

ミーナ「みんな、ちょっと集まってくれるかしら?」

芳佳「は、はい」

芳佳「シャーリーさんとバルクホルンさんの部屋でも虫が!?」

シャーリー「参ったよ。精密機械の中で繁殖されてたら不具合がでるかもしれないしさ」

バルクホルン「ダニ程度では問題ないだろう。お前のそれはそんなに柔なのか?」

シャーリー「そんなわけないだろ」

バルクホルン「だったら、心配するな」

シャーリー「でも、気持ち悪いだろ?」

バルクホルン「野戦もあり得る私たちが虫ごときでそんなことを言ってどうする。時には虫を食して飢えを凌がなければならないんだぞ」

シャーリー「ダニやノミで腹が膨れるのか?」

バルクホルン「……」

美緒「どうやら全ての部屋で異常があったようだな」

ペリーヌ「あの清掃班を呼んで徹底的に掃除してもらうのはいけませんの?」

美緒「男が我々の宿舎に足を踏み入れることはどんな理由があってもできないことになっているからな」

エイラ「私たちだけで何とかするしかないってことか」

美緒「そうなる」

エーリカ「殺虫剤ばらまいちゃおうよ。それが一番楽じゃん」

ミーナ「空から散布する手も考えたけれど……」

サーニャ「何か問題があるんですか?」

美緒「発生源を突き止めないと奴らは永遠に出現する」

リーネ「実家に帰ります」

芳佳「リーネちゃん!!」

リーネ「でもぉ!!」

バルクホルン「発生源など確かめるまでもない。外から侵入しているだけだろう。侵入を防ぐ意味でも空からの散布は有効だと思うが」

シャーリー「各部屋にも撒いたほうがいいだろうな。その後の掃除が大変だけど」

エーリカ「死骸の処理しなきゃいけないもんね」

サーニャ「おぇ」

リーネ「……」

ミーナ「リーネさん。気持ちは分かるけどそれしか手は無いわ。協力してくれるわね?」

リーネ「は、はい……」

美緒「大丈夫か……? シャーリー、ルッキーニを呼んで来い。大事な戦力だ」

シャーリー「了解っ」

シャーリー「おーい、ルッキーニ。起きてくれー」

ルッキーニ「んにゃ? どうかしたのー?」

シャーリー「今、基地中に虫が発生していて大変なんだ」

ルッキーニ「むしぃ!? やったぁー!!」

シャーリー「お前の考えている虫じゃないぞ。害虫の類だ」

ルッキーニ「えぇー? きもちわるーい」

シャーリー「とにかく、一緒にきてくれ」

ルッキーニ「わかったぁー」

シャーリー「宮藤とリーネの部屋が特に酷いんだ。ルッキーニは宮藤たちに協力してほしい」

ルッキーニ「何がそんなに発生してるの?」

シャーリー「ゴキブリみたいだ」

ルッキーニ「えぇぇ……きも……」

シャーリー「殺虫剤を撒くだけだ。やってくれ」

ルッキーニ「いいけどぉ」

シャーリー「助かるよ」

芳佳「開けるの、怖いね」

リーネ「う、うん……」

ルッキーニ「わっ!!」

リーネ「きゃぁぁぁ!!!!」

ルッキーニ「あにゃ!?」

芳佳「ルッキーニちゃん!! 驚かさないでよぉ!!」

ルッキーニ「手伝いにきたよっ」

リーネ「あ、ありがとう。ルッキーニちゃんがいてくれるだけで、心強いよ」

芳佳「今、打ち付けた板を外したところなの。それで……」

ルッキーニ「うじゃじゃしまーす」ガチャ

リーネ「そんないきなりあけたら――!!」

ルッキーニ「おぉぉぉ!!! にゃにこれー!!! よしかぁー!! リーネー!!! しゅごいよー!! 壁に変な模様があるー!!」

芳佳「も、もよう? そんなのないはずだけど……」

ルッキーニ「あ、これ、ゴキだ」

リーネ「ひぃ……」

美緒「――バルクホルン、ハルトマン。空中からの散布はお前たちに任せる」

バルクホルン「任せてくれ。いくぞ、ハルトマン!!」

エーリカ「しかたないなぁー」

美緒「ふむ。これで悪化することはないはずだ。あとは――」

『ぎゃぁぁあああああ!!!!』

『よしかぁー!! みてみてー!! でっかいのつかまえたぁー!!!』

『もういいからぁぁぁあ!!!!』

『だいじょーぶ!! ぱっと見ただけならカブト虫のメスだよー!!!』

『ちがうよぉぉ!!!!』

『確かに触覚があるからゴキ感は否めないけどー』

『やめてぇぇぇぇ!!!!』

美緒「何をしている……」

エイラ「少佐!! タイヘンだー!!!」

美緒「今度はなんだ?」

サーニャ「シャーリーさんがお風呂場でカマキリの卵を見つけたって……」

シャーリー「孵化する前で助かった……」

ミーナ「古い建物とは言え、どうしてこんなに虫がいるのかしら」

シャーリー「他の場所も見ておいたほうがいいかもしれませんね」

ミーナ「ええ」

美緒「シャーリー。卵はどうした?」

シャーリー「ここに。今から捨てにいきます」

美緒「頼む」

シャーリー「これはルッキーニには見せられないな。飼いはじめそうだ」

ミーナ「美緒、清掃班に頼みましょう」

美緒「いいのか? お前が作った規律だが」

ミーナ「四の五の言っていられる状況ではなくなってきたわ。このままでは士気に関わるもの」

美緒「それもそうか……。では、今すぐ要請しよう」

ミーナ「私が言ってくるから。美緒は他の場所を点検してくれないかしら?」

美緒「分かった。あまり考えたくはないが食堂も見ておくか」

ミーナ「……何か異常があったとき、まずいわね」

ペリーヌ「うーん……これは……?」

美緒「ペリーヌ」

ペリーヌ「ああ、少佐。どうも」

美緒「どうした、難しい顔をして」

ペリーヌ「念のため、食堂も見ておこうかと思いまして」

美緒「そうか。何かあったのか?」

ペリーヌ「ここ、保管庫のところなんですが」

美緒「なんだ……?」

ペリーヌ「蓋の裏にびっしりと何かの卵が」

美緒「……」

ペリーヌ「わたくし、こういうのには疎いものでして……。少佐はご存知ですか?」

美緒「閉めろ」

ペリーヌ「え?」

美緒「今すぐ、閉めろ!!!」

ペリーヌ「は、はいぃ!!!」

バルクホルン「結局、清掃班頼みか」

エーリカ「よかったじゃん。みんな嬉しそうに掃除してるし」

バルクホルン「そうだが、何故あいつらの表情が緩んでいるのか……」

芳佳「これで安心だね、リーネちゃん」

リーネ「うん……」

ルッキーニ「気持ち悪いもんねー」

シャーリー「お前はその気持ち悪いのを手で掴んで二人を追い回したんだろ?」

ルッキーニ「あれはすごい大きくてかっこよかったんだよぉ?」

エイラ「かっこいいからって、よく持てるな」

ルッキーニ「そう?」

芳佳「と、とにかく、これで解決だよね!!」

サーニャ「うんっ」

清掃班「――清掃、終了しました!!」

ミーナ「はい。ご苦労様」

エーリカ「はぁー、やっとねれるよー」

芳佳「リーネちゃん、部屋に戻ろう」

リーネ「ごめんね、芳佳ちゃん……私はもう……」

芳佳「綺麗になったんだし」

リーネ「ダメ……なの……体が……拒んでる……」

芳佳「リーネちゃん……」

ペリーヌ「宮藤さん、いいかしら?」

芳佳「ペリーヌさん? その箱……」

ペリーヌ「この食料は全て廃棄するそうですから、手伝ってもらえるかしら?」

芳佳「廃棄ですか? もったいないですよぉ」

ペリーヌ「少佐の命令ですわ」ドサッ

芳佳「わわっ……わかりました」

ペリーヌ「それから。蓋はあけないように」

芳佳「え? 何かあるんですか?」パカッ

芳佳「おぉ……」ビクッ

リーネ「よ、芳佳ちゃん? なにがあったの?」

美緒「これで全てか……? それならいいのだが」

ミーナ「美緒。各部屋の清掃は終了したわ。もう大丈夫よ」

美緒「そうか。あとで礼を言っておかなくてはな」

ミーナ「ただリーネさんが……」

美緒「あれだけの数がいたんだ。無理も無い」

ミーナ「暫くは他の部屋を使ってもらうことにしたほうがいいわね」

美緒「となると、リーネと宮藤を受け入れる者を探さなければならんか。前基地と違い、使用できる部屋が限られているからな」

ミーナ「そうね。シャーリーさんなら――」

バルクホルン「私が引き取ろうか」

美緒「バルクホルン。ありがたいが大丈夫か? ハルトマンもいるのだぞ」

バルクホルン「清掃が終わったばかりだ。暫くは平気だろう」

ミーナ「なら、バルクホルン大尉に宮藤さんとリーネさんを任せるわね」

バルクホルン「了解!!」ダダダッ

ミーナ「リーネさんが心配ね」

美緒「清掃したというだけではな。トラウマになっていなければいいが」

バルクホルン「さ、入れ」

芳佳「すいません、お世話になります」

リーネ「ごめんなさい」

バルクホルン「害虫程度で精神を侵されるなど軍人としてはどうかと思うが、今回の一件は同情の余地がある。特別に許可してやる」

芳佳「はい……」

リーネ「……」

エーリカ「大変だったなぁ、二人とも。ま、ゆっくりしていきなよ」

芳佳「わぁ、すごく片付いてますね」

バルクホルン「今だけだ。三日もすれば元に戻る」

エーリカ「なんだよー。宮藤とリーネがいるなら一週間は大丈夫だろー」

バルクホルン「一ヶ月は今の状態を保とうとは思わないのか!?」

芳佳「あはは」

リーネ「はぁ……」

バルクホルン「宮藤は私のベッドを使えばいいからな」

芳佳「でも、それだとバルクホルンさんの眠る場所がないんじゃ……?」

バルクホルン「一緒に寝ればいいだけだろう」

芳佳「い、いいんですか!? 寝袋、もってきたんですけど」

バルクホルン「宮藤がそうしたいなら、それでも構わない」

芳佳「それなら、折角ですし、一緒に……」

バルクホルン「そうか!!! それはいい考えただな!!!」

エーリカ「リーネは私と一緒に寝る?」

リーネ「……」

エーリカ「リーネ、大丈夫か?」

リーネ「あ、はい。なんとか……」

エーリカ「もういないって。綺麗になったんだしさ」

リーネ「でも、なんだが今にも物陰から出てきそうで……」

エーリカ「おいで」

リーネ「ハルトマンさん……」

エーリカ「心配ないって、出てきても私がぺちゃんこにしてあげるからさ」ナデナデ

リーネ「そのときは、お願いします……」

数日後

エイラ「あれから見なくなったなぁー」

シャーリー「隅々まで掃除してくれたみたいだしな」

エイラ「サーニャも今は安心して眠れるってさ」

シャーリー「だけど、リーネと宮藤はまだ部屋に戻れてないんだろ?」

エイラ「まぁ、私たちの状況とは違いすぎるしなぁ」

シャーリー「可哀相だけど、こればっかりは本人たちの気持ち次第だし、あたしたちの出来ることは限られるよな」

エイラ「だなー」

シャーリー「私ならメシを食べて風呂に入ったら、気持ちは切り替わるんだけど」

エイラ「みんなシャーリーみたく図太いわけじゃないだろー。それができれば苦労しないってー」

シャーリー「そうかー。ま、とにかくメシだ、メシ」

エイラ「ダナっ」

シャーリー「今日のごはんはー……?」

エイラ「なんだ? スープの中に黒いのが……」

シャーリー「んー? ボタンか? いや、違うな。つーか、動いてないか、これ?」

芳佳「リーネちゃん、まだ怖い?」

リーネ「怖いというより、気持ち悪くて……」

芳佳「そっか」

リーネ「それにね、まだ居そうだから」

芳佳「それはない――」

『ウワァァアアア!!!!』

芳佳「な、なに!?」

リーネ「エイラさんの声……?」

エイラ「誰だ!? 料理の中にこんなものいれたのはぁ!!!」

シャーリー「誰って勝手に入ったんだろうな」

エイラ「うぇー!! もうくえねー!! 宮藤かサーニャの手料理以外、口にしないぞ!!! 絶対だかんな!!!」

シャーリー「まだ生き残りがいたのか、それとも外から入ってきたのか……?」

芳佳「シャーリーさん、どうかしたんですか?」

シャーリー「スープの中にこいつがさ」

リーネ「……!?」

芳佳「さかもとさぁぁぁん!!!」

美緒「なんだ、宮藤? 騒がしいぞ」

芳佳「大掃除!! 大掃除しましょう!! 今すぐに!!」

美緒「どうした? 大掃除なら先日済ませたばかりだろう」

芳佳「違うんです!! あれで終わらなかったんですよぉ!!!」

美緒「なんだと?」

シャーリー「少佐ぁ!!」

美緒「シャーリー。まさか、出たのか?」

シャーリー「食堂と通路。それから脱衣所にもいた」

美緒「何故だ……」

シャーリー「それからバルクホルンの部屋からまた小さな虫が出てきたらしい。数自体は前より少ないみたいだけど」

美緒「外から侵入してきたとは考えにくいな。ならば、壁の中に潜んでいたか……」

シャーリー「それはありえる。一度、徹底的に掃除するべきだよ。あのエイラですら涙目になってたしさ。このままじゃペリーヌやサーニャだってどうなるか……」

美緒「……宮藤、全員をブリーフィングルームに集めろ」

芳佳「は、はい!!」

ミーナ「これは忌々しき事態ね」

バルクホルン「害虫がまた発生するとは……。清掃班は何をしていたんだ!!! 私たちの部屋を隅々まで清掃したのではないのか!!!」

ミーナ「彼らの掃除は行き届いていたはずよ。責める事はできないわ」

バルクホルン「だが、結果的に……!!!」

リーネ「よしかちゃん……わたし……ここにいたくないよぉ……」

芳佳「リーネちゃん、大丈夫。大丈夫だから……」

バルクホルン「宮藤とリーネの心的外傷は計り知れない!!」

美緒「分かっている。もう一度、清掃班には協力してもらう。とはいえ、奴らが潜んでいると思われる範囲があまりにも広い。清掃班だけでは対処できないと思われる」

バルクホルン「どうするつもりだ」

美緒「今度は私たちも清掃に全面協力する」

バルクホルン「……それしかないか」

ミーナ「各部屋の壁の中に巣を作っている可能性もあるわ。一度、内部を見てみましょう」

エーリカ「それなら大量に出た宮藤の部屋から見るのがいいかもね」

美緒「ネウロイの巣だけでもうんざりしているというのに……」

ミーナ「行きましょう」

美緒「……」ガチャ

芳佳「私たちの部屋、どうなってますか……?」

美緒「……」バタンッ

ペリーヌ「少佐? あの……」

美緒「突入部隊を発表する。私とバルクホルン、それからルッキーニだ」

バルクホルン「了解」

ルッキーニ「にひぃ!!」

エイラ「な、なにを見たんだ?」

サーニャ「エイラ……訊いちゃダメよ……」

ミーナ「美緒、生きて戻ってきてね」

美緒「心配するな」

ルッキーニ「うじゃじゃしまーす」ガチャ

バルクホルン「待て!! ルッキーニ!! 不用意にあけるな!!!」

ルッキーニ「おぉぉぉ!!! 黒い絨毯が蠢いてりゅー!!! あ、これ、ゴキだ」

エイラ「うわぁぁぁ!!!」

バルクホルン「どうして……こんな惨状に……」

ルッキーニ「にゃはー、おもしろーい」ツンッ

バッ!!

ルッキーニ「きもっ」

美緒「やめろ!! ルッキーニ!!!」

バルクホルン「本当に壁の中なのか……?」

美緒「バルクホルン。壁の一部を破壊してみてくれ」

バルクホルン「分かった。はぁぁぁ……」

ルッキーニ「えいっ、えいっ」プチップチッ

美緒「ルッキーニ……。頼もしい反面、恐ろしいな……」

バルクホルン「であぁぁ……!!!」ベリベリッ

美緒「内部の様子はどうなっ――」

カサカサカサカサカサカサカサカサ……!!!!

バルクホルン「ぉわぁ!?!」

ルッキーニ「ぎゃぁぁぁ!!!! いっぱいでてきたぁー!!!!」

ミーナ「美緒!? どうしたの!?」

『絶対に開けるな!!! 絶対にだ!!!』

リーネ「あ……あぁぁ……」

エイラ「少佐ぁー!!! どうなってるんだー!!!」

ペリーヌ「少佐ぁ!! 少佐ぁー!!!」

シャーリー「ルッキーニ!!! 無事か!! おい!!!」

『にゃはははは!!! 黒い雪崩ー!!!』

『ルッキーニ!!! 何を笑っている!!! なんとかしろ!!!』

『なんとかって踏めば良いじゃん』

芳佳「私たちの部屋、そんなに酷かったんだ……」

エーリカ「あ……! ミーナ!! 扉から離れて!!」

ミーナ「え!? きゃぁ!?」

シャーリー「げぇ……!? ついに隙間からでてきたか……!!」

リーネ「う……」フラッ

芳佳「リーネちゃん!? リーネちゃん!! しっかりして!! ここからにげよう!!」

サーニャ「こ、こんなに……」

エイラ「サーニャは私が守る!!」

サーニャ「エイラ……!!」

カサカサカサ……ブーンッ

エイラ「うわ、とんできたっ」サッ

ピトッ

サーニャ「……え?」

ペリーヌ「サーニャさん!!! 顔!! 顔に!!!」

エイラ「うわぁぁぁ!!! サーニャ!!!」

ミーナ「リーネさんは私が避難させるわ。シャーリーさん、ここはお願いできる?」

シャーリー「お願いって言われても……。仕方ない、久しぶりに拳銃使うか」チャカ

芳佳「シャーリーさん!!」

シャーリー「援護してほしいけど、宮藤は持ってないよな?」

芳佳「す、すいません」

シャーリー「気にしなくていいさ。ここはあたしが食い止めるから、早く逃げろ。リーネの傍に居てやれ、宮藤」

美緒「はぁぁぁ!!!」ザンッ!!!

バルクホルン「このっ!!!」ドゴォ

ルッキーニ「潰しても潰してもわいてくりゅー!!!」

バルクホルン「少佐、こいつらを野外に出すというのはどうだ? こんなことをしていても限が無い」

美緒「そうだな。バクルホルン、壁に大穴を開けてくれ」

バルクホルン「了解!!」

ルッキーニ「そだっ! 魔法で……。突撃ー!!!」ダダダッ

美緒「黒い海が割れていく……。モーゼのようだな……」

バルクホルン「はぁ!!!」ドゴォ!!!

バルクホルン「開けたぞ!!!」

美緒「よし!! なんとかこいつらを外に出せ!!!」

バルクホルン「宮藤の部屋を汚すな!!!」

美緒「ルッキーニも手伝え!!」

ルッキーニ「にひぃ!! ルッキーニにおまかせー。えいっ、とぉっ」ポイッポイッ

バルクホルン「しかし、どちらにせよこの部屋は放棄したほうがよさそうだな……。流石の私もこの部屋で生活はしたくない……」

ミーナ「リーネさん。しっかりして」

リーネ「ごめんなさい……ごめんなさい……」

ミーナ「いいのよ。あんなに見たら誰でも気持ち悪くなるわ」

リーネ「うぅ……」

ミーナ「しばらく医務室で休んでいればいいから」

リーネ「は、はい……」

ミーナ「それにしてもいくら古い建物とはいえ、ここまでとはね……。根絶やしにすることは難しいかもしれないわね」

リーネ「ミーナ中佐、どうしたら……いいんでしょうか……私……このままだと……」

ミーナ「心配しないで。何とかしてみせるから」

リーネ「お、おねがいしま――」

エイラ「中佐!!!」

ミーナ「今度はなに?」

エイラ「少佐たちがアレを外に出したみたいんだけど、殆どが階下に逃げ込んだんだ!! 清掃班も大パニックになってる!!」

ミーナ「えぇ……!?」

リーネ「……おやすみなさい。きっとこれは夢……そう……目を覚ませば、また芳佳ちゃんの寝顔が傍にあるの……はやく夢から覚めないと……」

『うわぁぁ!!!』

『たすけてー!!! 服の中にはいってきたぁぁ!!!』

シャーリー「阿鼻叫喚だな……」

芳佳「シャーリーさん!! 階下が大変なことになってます!! 清掃班の人たちは今、ゴキブリの渦に飲まれて……!!」

シャーリー「なんだって?」

ルッキーニ「――シャーリー!!! タイヘンダー!!!」

シャーリー「お前!! 中でなにやったんだ!?」

バルクホルン「外に逃がそうとしたんだが、8割ぐらいが窓を通じて中に……」

シャーリー「なんで……」

美緒「先日、殺虫剤を散布した所為で外には出られなかったのだろう。外敵を退ける壁が、奴らを中に引き戻した……皮肉な話だ」

シャーリー「つまり拡散したってことですよね?」

ルッキーニ「そだよー」

ペリーヌ「掃除どころではありませんわ……」

美緒「……もう手段を選んではいられんな。ペリーヌ、頼む」

ペリーヌ「分かりました」バチッ

サーニャ「みなさん、こっちです」

清掃班「ひぃぃ……!!」

エイラ「サーニャ!! 無事か!?」

ミーナ「清掃班は速やかに避難して!!! ここは私たちが食い止めます!!」

サーニャ「エイラ。見て……」

エイラ「うぇ……なんだ、あれ……」

ミーナ「くっ。いくらなんでも、多すぎるわ。今まで息を潜めて戦力を蓄えていたのね」

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ……!!!!

サーニャ「私がなんとかするしか……」ジャキン

エイラ「サーニャ、屋内でロケット弾はまずいって」

ミーナ「そうよ。ここが崩落したら、宿舎だけに被害が留まらないわ」

サーニャ「でも……このままじゃ……」

ペリーヌ「――心配はいりませんわ」

エイラ「ペリーヌ!?」

ペリーヌ「一瞬で終わらせます」

ミーナ「お願いね、ペリーヌさん……」

ペリーヌ「お任せを」

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ……!!!!

ペリーヌ「これ以上の狼藉はこのペリーヌ・クロステルマンが許しませんわ」

ペリーヌ「――トネール!!!!」パチンッ

バァン!!!

ミーナ「や、やったの……!!」

エイラ「ペリーヌ!! 見直したぞ!!」

サーニャ「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「ふっ……まぁ、これぐらいのことは余裕ですわ」

ミーナ「え、ええ……ありがとう、ペリーヌさん……」

エイラ「おぇ……」

ペリーヌ「なんですの、エイラさん? その汚物を見るような目は?」

サーニャ「ペリーヌさん……返り血というか……返り汁が……」

ミーナ「ペリーヌさん、お風呂にいってきなさい。今すぐに」

バルクホルン「全滅、したのか?」

ミーナ「それはまだわからないけど、ペリーヌさんが大群を死滅させたことは間違いないわね」

エーリカ「はぁ……なんだ。折角、銃器揃えてきたのにぃ」

ミーナ「銃器を使っていれば建物の破損はこれよりも酷いものになっていたでしょうね」

美緒「ペリーヌのおかげで被害は最小限に抑えられたということだな」

ミーナ「ええ」

エーリカ「残党はどうするの?」

美緒「既にルッキーニが動いている」

ルッキーニ「うにゃー」ポイッ

ミーナ「バルクホルン大尉、ハルトマン中尉も協力してあげて」

バルクホルン「了解」

エーリカ「しかたないかー」

美緒「リーネは大丈夫か?」

ミーナ「ええ。まだなんとか」

美緒「ならば、あとは宮藤に任せるか」

芳佳「リーネちゃん、今ねペリーヌさんがやっつけてくれたって」

リーネ「そう……なんだ……」

芳佳「このあとみんなで掃除するって。リーネちゃんはどうする?」

リーネ「うん……私も……掃除しなきゃ……」

芳佳「リーネちゃん……」

リーネ「だいじょうぶだから……わたし……よしかちゃんが……いてくれたら……それで……」

芳佳「リーネちゃん、傍にいるからね」ギュッ

エイラ「リーネのやつ、このまま潰れたりしないよな?」

美緒「リーネは見た目以上に強い。心配はいらん」

エイラ「それなら、いいんだけどさ」

サーニャ「エイラ。私たちも残党をやっつけにいこう」

エイラ「そうだな」

美緒「私も行こう。食堂や風呂場も気になるしな」

エイラ「そもそもあいつら昔から壁の中にいたのか?」

美緒「そこだ。数日前にいきなり姿を現したのも妙な話だからな」

清掃班「バルクホルン大尉。部屋の清掃が終了しました」

バルクホルン「ありがとう。助かった」

エーリカ「はぁー。もういないよねー」

バルクホルン「どこかに卵があれば問題だが、清掃班の話ではそれはないとのことだ」

エーリカ「よかったじゃん。これで一件落着かー」

バルクホルン「だが、引っかかるな」

エーリカ「なにが?」

バルクホルン「数日前、奴ら以外にも虫が大量発生しただろう」

エーリカ「それが?」

バルクホルン「以前からこの基地内部で生息していたのなら、私たちがここに来たときから定期的に奴らの姿を見ていなければおかしい」

エーリカ「言われてみれば、そうだね」

バルクホルン「何かきっかけがあるはずだ。大量発生した……原因がな……」

エーリカ「どーでもいーじゃん。もう片付いたんだからー」

バルクホルン「……どこから湧いて出た……やつらは……」

ペリーヌ「リーネさん、ご無事ですの?」

リーネ「あ、ペリーヌさん……はい……」

ペリーヌ「もう奴らはいませんわ。ルッキーニさんとシャーリーさんがまだ巡回中ではありますが、もう姿を見せることはないでしょう」

リーネ「はい……」

芳佳「ペリーヌさん。大量に出てきた原因が分からないと、また繰り返すような気がするんですけど」

ペリーヌ「わたくしもそれは懸念しております。いくら綺麗にしようとも巣を排除できないのであれば意味などありませんから」

芳佳「巣はあったんですか?」

ペリーヌ「いえ……よく分からないらしいですわ」

芳佳「そんなぁ……」

ペリーヌ「今回の騒動で巣が移動してなければいいのですけど」

芳佳「私、行ってきます」

ペリーヌ「どこへ?」

芳佳「ルッキーニちゃんとシャーリーさんと一緒に巡回します!!」

ペリーヌ「わかりました。リーネさんはわたくしが看ておきます」

芳佳「ありがとう、ペリーヌさん」

ルッキーニ「どう、シャーリー?」

シャーリー「うーん。宮藤の部屋の壁にはもういないみたいだな。次いくか」

ルッキーニ「卵は?」

シャーリー「え?」

ルッキーニ「卵は殺虫剤じゃ片付かないから、あったらそこからでてきちゃうよー」

シャーリー「卵って、どんな形してるんだ?」

ルッキーニ「シャーリーしらないのー?」

シャーリー「悪いな」

ルッキーニ「それじゃ、あたしがみりゅー」

シャーリー「頼むぞ」

ルッキーニ「あいっ!!」

芳佳「シャーリーさん!! 何か手伝えることはありませんか!?」

シャーリー「宮藤。リーネはいいのか?」

芳佳「はい。今はペリーヌさんが――」

ルッキーニ「にゃはー!! みつけたー。みてみてー。これがたまごー」

芳佳「きゃぁぁあああ!?!!?」

シャーリー「これか……。どれぐらいあるんだ?」

ルッキーニ「いっぱいありゅー。もうすぐ孵化しそうなのもあるけど」

シャーリー「それはまずいぞ」

芳佳「ど、どうするんですか!?」

ルッキーニ「いっぱいありすぎて、どうにもできないよ」

シャーリー「なんで、こんなことに……」

ルッキーニ「エサがいっぱいあったんだろうねー」

シャーリー「エサってなんだ?」

ルッキーニ「何でも食べるよ?」

芳佳「な、なんでもって……」

ルッキーニ「髪の毛とかもむしゃむしゃたべるしー。とりあえずゴミがあればいいんだよ」

芳佳「えぇぇ……」

シャーリー「……ルッキーニ。ちょっとこい」

芳佳「ど、どうしたんですか?」

バルクホルン「小さな虫?」

シャーリー「お前の部屋から出てきたんだよな?」

バルクホルン「ああ。あれはダニの一種だ」

シャーリー「それは本当にダニか?」

バルクホルン「間違いない。何度か見たことがあるからな」

シャーリー「あいつらの幼虫ってことは……」

バルクホルン「いくらなんでもそれはない。流石に気が付く」

ルッキーニ「だよねー」

エーリカ「なんだー? 私の部屋に巣があったとでもいうのかー?」

シャーリー「そういうわけじゃないんだけどさ」

芳佳「でも、それを食べて大きくなるってこともあるんじゃ……」

バルクホルン「……エイラとサーニャの部屋にも発生していたな」

シャーリー「ああ。そう言ってたな」

バルクホルン「となれば食物連鎖だ」

芳佳「食物連鎖、ですか?」

バルクホルン「ダニはダニを食べる。私の……いや、ハルトマンが飼っていたというダニはそういう類だ。だからこそ、目で見えるほど大きい」

芳佳「それって、つまり……」

バルクホルン「エイラの部屋に住んでいたモノが何らかの理由で繁殖し、それをエサにするものがハルトマンの部屋にいた」

バルクホルン「そして、それらが部屋を出て他の場所に移動すし、もっと大きな存在が捕食する」

シャーリー「で、いつしか数が増えていったわけだ」

バルクホルン「どちらも短期間で爆発的に増えるからな。昔からいたというよりは、ここ数週間で増えたといったほうが正しいかもしれん」

芳佳「そ、それなら原因は……?」

バルクホルン「エイラの部屋で何故か増えてしまったダニかもしれない。しかし、しかしだ……」

エーリカ「すぅー……すぅー……」

シャーリー「ここから発生した虫が少なければ、こんなことにはならなかったかもしれない、か」

ルッキーニ「難しいことはよくわかんないけど、ハルトマン中尉がわるいってこと?」

エーリカ「なんでー!?」

バルクホルン「お前が直接の原因でなくても!! 遠因であることにはかわりが無いだろう!?」

エーリカ「また私が悪者ー!? もういい加減にしてよー!!」

芳佳「ハルトマンさん……」

ミーナ「リーネさんの様子はどう?」

ペリーヌ「今、眠ったところですわ」

美緒「リーネにとって辛い一日となったな」

ミーナ「そうね……」

サーニャ「あの。いいですか?」

ミーナ「サーニャさん? どうしたの?」

エイラ「サーニャがさ、心当たりがあるって言い出してさ」

美緒「心当たり? 何に対してだ?」

サーニャ「どうして虫が大量発生したかについてです」

ペリーヌ「え……?」

サーニャ「数日前、私は体中を虫に襲われました」

美緒「ふむ、それは聞いた。ダニによる虫刺されただったのだろう?」

サーニャ「どうしてエイラが毎日掃除してくれているのに、あんなことになったのか……」

ミーナ「まぁ、ダニは必ずいるものだけど……」

サーニャ「あの日よりも前に何かがあったかもしれないと思って、色々考えたんです。そしたら――」

ミーナ「みなさん、集まってくれてありがとう。今回の騒動で判明したことが2つあります」

シャーリー「ふたつ?」

バルクホルン「ハルトマンのこと以外に何かあるのか?」

エーリカ「はいはい。また禁錮でしょ? もう慣れたよ」

ミーナ「一つはそれです。もう一つは……ルッキーニさん」

ルッキーニ「え?」

芳佳「ル、ルッキーニちゃん?」

ミーナ「数日前、貴女が何をしていたのかよく思い出してみて」

ルッキーニ「えー? うーんと、外でねてたー」

ミーナ「他には?」

ルッキーニ「他……?」

シャーリー「中佐、ルッキーニがどうしたっていうんだ?」

美緒「ルッキーニ。サーニャの部屋に行っていないか?」

ルッキーニ「あ、うん。遊びにいったー。とった虫を自慢しにー」

ミーナ「ルッキーニさん、貴女が様々なものを外から中へ持ち込んだ可能性が浮上しました」

ルッキーニ「えぇ!? なんでー!?」

シャーリー「待ってくれ!!! いつも外で寝ているからって言いがかりだ!!! ルッキーニは毎日風呂にはいってる!!」

エイラ「ルッキーニ自身が綺麗でも服はどうなんだ?」

シャーリー「それは……」

美緒「ルッキーニ、残念だが現状ではお前しか考えられない」

ルッキーニ「えー!?」

ミーナ「木の上で寝ていれば、多くの虫が服に付着することもありえるわ。そして、奴らは服の中に入ってくることもある」

ルッキーニ「うぇぇぇん……シャーリー……!!」

シャーリー「証拠はあるのか!! 証拠は!!!」

美緒「今日からルッキーニには野外で寝ることを禁じる。それで数週間、何事もなければいい証拠になる」

エイラ「うんうん」

ルッキーニ「うぇぇぇぇん」

シャーリー「あんまりだ!!」

バルクホルン「シャーリー、ルッキーニの潔白を証明したいなら少佐のいうことに従ったほうがいい」

シャーリー「くっ……」

芳佳「ルッキーニちゃん、リーネちゃんのためにも少しの間だけ我慢してくれない?」

ルッキーニ「よしかまでぇ……」

エイラ「またサーニャの顔面にゴキブリが飛びついてもいいのか?」

サーニャ「……」

ミーナ「ルッキーニさん、お願い」

ルッキーニ「えぇぇ……」

エーリカ「もういいじゃん。私と一緒に禁錮刑うけろー」

ルッキーニ「うじゃぁ……ぁぁ……」

シャーリー「ルッキーニ、心配するな。あたしはお前の味方だ」

ルッキーニ「シャーリー!!」

シャーリー「いつでも待ってるからな」

美緒「……シャーリーの部屋にも小さな虫が発生したこともルッキーニが関係しているのかもしれないな」

ペリーヌ「傍迷惑ですわね、ホント。掃除だって大変でしたのに」

ミーナ「宮藤さんはリーネさんについていてあげてね」

芳佳「はい、わかりました」

リーネ「そうなんだ……」

芳佳「だからね、もうあんなことにはならないよ。絶対に」

リーネ「うん……」

芳佳「悪い夢だったの。全部」

リーネ「うん……うん……」

芳佳「リーネちゃん、坂本さんが新しい部屋も用意してくれるって言ってたから。安心していいよ」

リーネ「芳佳ちゃんと相部屋?」

芳佳「もちろんだよ!! 私もリーネちゃんと一緒がいいから!!」

リーネ「嬉しい……」

芳佳「今はゆっくり休んで、リーネちゃん」

リーネ「うん……すこし、やすむね……」

芳佳「お休み、リーネちゃん」

リーネ「芳佳ちゃん……だいす……」

芳佳「リーネちゃん? 寝ちゃった?」

リーネ「……」

数週間後

芳佳「あれからすっかり見なくなりましたね」

シャーリー「やっぱり、ルッキーニの所為だったのか……」

バルクホルン「それ以外にないだろう」

シャーリー「あたしは信じたかったんだよ!!」

芳佳「あはは」

リーネ「芳佳ちゃーん、そろそろ訓練の時間だよ」

芳佳「うん! すぐいく!!」

シャーリー「ま。リーネが元気になったんだから、よしとするか」

バルクホルン「そうだな」

ルッキーニ「うぇー……外でねたいよー」

シャーリー「格納庫も今は禁止だもんな」

ルッキーニ「うん……。あ、そういえばシャーリー。いっぱいあった卵ってどうしたの? 駆除するの大変だったんでしょ?」

シャーリー「え?」

バルクホルン「卵? なんの話だ?」

サーニャ「ふわぁ……」

エイラ「今日もいい天気だなー。いいことあるかも」

サーニャ「そうね」

エイラ「……!」ゾクッ

サーニャ「エイラ? どうしたの?」

エイラ「何か……来る……」

サーニャ「何かって?」

ペリーヌ「お二人とも、おはようございます」

サーニャ「おはようございます」

エイラ「こっちだ!!」

サーニャ「どうしたの、エイラ?」

ペリーヌ「エイラさん、どちらへ?」

エイラ「こ、ここだ!! ここから嫌な予感がする!!」

ペリーヌ「ここって……」

サーニャ「芳佳ちゃんとリーネちゃんの部屋……」

美緒「では、訓練を始める」

芳佳「はい!」

リーネ「お願いします!!」

美緒「まず――」

『ウワァァァァ!!!!! アァァァ!!!! サーニャぁぁぁ!!!!』

『エイラ……はやくとって……かおの……とって……』

『トネール!!!!』

ドォォォォン!!!!

芳佳「私たちの部屋だね」

リーネ「……そうだね」

美緒「ペリーヌが掃除をしてくれたようだな」

芳佳「流石、ペリーヌさんですねっ」

ミーナ「みんな!! 大変よ!! また大量に出てしまったわ!!! 手を貸して!!」

芳佳「お、大掃除しましょう!! 今度こそ!!! ちゃんと!!! 坂本さん!!! リーネちゃんのためにも!!!」

美緒「ああ。急ごう。我々の戦いはまだ終わっていない」
                                     BAD END

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