芳佳「十一人の怒れる魔女」 (108)

ある日の朝…



ミーナ「…みんな集まったわね」

坂本「ああ」

ミーナ「とりあえず点呼を取りましょう。呼ばれたら返事をするように。坂本少佐。」

坂本「はい。」

ミーナ「バルクホルン大尉。」

バルク「はい。」

ミーナ「宮藤さん。」

宮藤「はい!」

ミーナ「リーネさん。」

リーネ「はい。」

ミーナ「ペリーヌさん。」

ペリ「はいっ。」

ミーナ「シャーリーさん。」

シャーリー「はいっ!」

ミーナ「ルッキーニさん。」

ルッキ「はいはいはーい!」

ミーナ「エイラさん。」

エイラ「ハイ。」

ミーナ「サーニャさん。」

サーニャ「はい…。」

ミーナ「うん、全員揃ってるわね。」

芳佳「…ちょ、ちょっと待って下さい! ハルトマンさんがいません!」

坂本「ん? まあ…そのことなんだが…。」

芳佳「…?」

坂本「…ミーナの方から説明がある。よく聞くように。」

   ①


ミーナ「今日、皆に急遽集まってもらったのは、"あること"について一つの結論を出して欲しいの。」

シャーリー「あること?」

ミーナ「えぇ。もしかすると、今日一日使っての議論になるかもしれない…。だから、心して聞いて欲しいの。」

芳佳「…は、はい」



ミーナ「…あのね…。」

芳佳「…。」(ゴクリ)




ミーナ「食料倉庫に保管してあったじゃがいもが…全て無くなっていたの。」

芳佳「……………えっ」

芳佳「ええ~~~~!!」

バルク「なんだと!?」

ペリーヌ「本当ですの!?」

エイラ「…そんなことかヨ…。」

サーニャ「……。」

ルッキーニ「な~んだ~。」」

シャーリー「なんだよ。驚かせないでくれよ~。」

リーネ「いやっ、た、大変なことだよ!」

坂本「まあ落ち着け、みんな。」

バルク「…なるほど、つまり犯人はどう考えてもハルトマン…! そんなことをしそうなのはアイツしかいない!」

芳佳「で、でもちょっと待って下さい!昨日の早朝の時点ではしっかりじゃがいもはありましたよ!」

リーネ「その日は私と芳佳ちゃんが調理当番だったから、私も確認しました!」

坂本「無くなってると気づいたのは昨日の夕方だ。」

ミーナ「ええ。食糧倉庫から、綺麗サッパリ無くなっていたわ。」

芳佳「そんな…貴重な野菜だったのに…。」

坂本「そこでだ。皆も知っている通り、昨日はハルトマンはいつも以上に寝坊をした。そして午前の訓練は参加していなかった。」

バルク「あぁ。」

坂本「昼食後の午後からの飛行訓練から参加だったが…気付いた人も多いだろうが、その日はどうも本調子ではなかったな。」

バルク「はっきり覚えている。」

ミーナ「このことから、ハルトマン中尉がなんらかの理由があって、じゃがいもを全て食べてしまった…もしくは盗んで隠した、あるいは処分したとして、罰則を与えることに決めたの。」

バルク「うむ、妥当だ。」

坂本「罰則は、"3日間の自室待機処分"。 今日から3日間は一切部屋から出ることを禁止する。」

芳佳「えっ…ちょっと待って下さい! ハルトマンさんは何も言ってないんですか!?」

ミーナ「もちろん、昨日の夜のうちに美緒とふたりで本人に問いたわ…。」

坂本「本人は…もちろん否定した。そこで罰則の内容を伝えたんだが…。」

芳佳「伝えたら…?」



坂本「…素直に受け入れた。」

ミーナ「ええ、心なしか、少し喜んでいるように見えたわ。」

バルク「なっ…! 奴の寝坊グセがここまで来たというのか! 数日ひたすら訓練に参加せず、ただ寝ていたいがためにわざと罰則を受けるようなことを…!」

リネット「大事な食料を…ハルトマンさんが…。さすがにひどいと思います…。」

エイラ「中尉もおわったナ。」

ルッキーニ「え~~~っ! もうしばらくじゃがいも食べられないの~!?」

シャーリー「残念だけどな。まあ、仕方ないことだ。」

芳佳「…。」

シャーリー「ところで中佐。議題は結局なんなんだ。」

ミーナ「ああ…ごめんなさい。要するに、この罰則について賛成か反対か、皆に決めて欲しいの。残念だけど、これは上からの命令でね。」

坂本「軍の上層部も少し怒り気味だ。最近の501は特にたるんでると思われているしな。」

芳佳「…。」

バルク「くっ…これを期に、ネウロイから世界を守ることが我々の指名だという強い認識を改めて持たなくてはな…。」

坂本「ちなみに言っておくが、10人中10人全員が賛成、もしくは反対でないとこの議会は終われない。丸一日この議会にあてるよう命令された。そこで、今日の訓練は急遽中止だ。」

ルッキーニ「えっ!ほんとに!? やったー!」

シャーリー「こっコラ!ルッキーニ!」

ルッキーニ「ていうことはさ!早く終わらせちゃえば今日は一日遊べるってことじゃん!」

坂本「まあ、そうなるな。」

ルッキーニ「うじゅうう~。」

ペリーヌ「正直、長引く余地は無いでしょうに。」

エイラ「だよナ。」

芳佳「………。」

 
坂本「このことに関して、異論はないか?」

バルク「無い。はやく決めてしまおう。…私は悲しい。ハルトマンに対しても、それを厳しく叱ってやれなかった私に対しても…。」

リーネ「バルクホルンさん…。」

ルッキーニ「早くぅ~! 早く終わらせようよ~!」

芳佳「……………。」

 
ミーナ「では、一人づつ順番に言ってもらうわ。ちなみに私は賛成ね。では、坂本少佐。」

坂本「非常に残念なことだが…私は賛成だ。すこし頭を冷やしてもらわないとな…。」

ミーナ「賛成2票。では、バルクホルン大尉。」

バルク「もちろん賛成だ! いや、もっと厳しい罰則を与えても私は構わない!」

ミーナ「賛成3票。次、シャーリーさん。」

シャーリー「賛成かな~。ハルトマンは実力はあるけど、だからといって今回の件を見逃すわけにはいかないしな~。」

 
ミーナ「賛成4票。ルッキーニさん。」

ルッキーニ「賛成賛成!! ねえシャーリー、今日はいい天気だからさ!海で泳ごうよ!」

シャーリー「気が早いぞルッキーニ。」

ミーナ「賛成5票。エイラさん。」

エイラ「私も賛成ダナ。」

ミーナ「賛成6票。サーニャさん。」

サーニャ「…賛成…。」

 
ミーナ「賛成7票。ペリーヌさん。」

ペリーヌ「私も賛成ですわ! 大尉も言ったように、メンバー全員が軍隊としての自覚を持ついい機会ですわ!」

ミーナ「賛成8票。リーネさん。」

リーネ「さ、賛成で…。」

ミーナ「賛成9票。では最後、宮藤さん。」

芳佳「………。」

ミーナ「宮藤さん?」

 
芳佳「私は……わたしは…」

坂本「宮藤、早く決めろ。」

ルッキーニ「シャーリー!それか虫捕りに行こうよ虫!」

シャーリー「いやあ…そ、それは遠慮しとく…」

バルク「早く決めてくれ宮藤! これはハルトマンの今後、そして501の未来に関わる大事な議会なんだ!」

ペリーヌ「まったく!これだから決断力の弱い人は…!」

ミーナ「宮藤さん…?どうしたの?」

芳佳「わかりました……」





芳佳「………賛成…です…。」

 
 
 
坂本「決まったな。」


エイラ「なんかあっけなかったナ。」

芳佳「…。」

ルッキーニ「シャーリー! やっぱり久々にドライブしようよ!」

シャーリー「おっ! いいなそれ! たまにはハンドル握ってぶっとばしたいしな!」

バルク「ハルトマンには、あとで私からもキツく言わねばならん。」

エイラ「サーニャ、今日は一日中サーニャの今後の運勢を占ってあげるぞ。」

サーニャ「う、うん…」

坂本「ちょっと皆一旦静かにしてくれ! 最後にミーナにしめてもらう!」

芳佳「……。」

 
ミーナ「え~では、賛成10票、反対0票につき、ハルトマン中尉は3日間の自室待機処分決定。これにて議会を…」

芳佳「すみません!!!! ちょっと待ってください!!!!!」

坂本「なんだ?宮藤。」

芳佳「やっぱり…」




芳佳「やっぱりわたし反対です!!!!!」

坂本「えっ…」

ミーナ「えっ?」

ルッキーニ
シャーリー
リーネ
ペリーヌ     「えええええええええええ!!!!!!!!!」
バルク
エイラ
サーニャ

   ②

ペリーヌ「正気ですの!? 宮藤さん!」

バルク「宮藤!何を言っているんだ!どう考えてもハルトマンに罰則は必要! そうだろ!?」

リーネ「芳佳ちゃん…」

ミーナ「しかし困ったわねえ。」

坂本「正直、私もすぐ終わる議会だとばかり思っていたからなあ。」

 
ミーナ「しかたないわね。え~っと…賛成9票、反対1票。何か意見がある方は挙手をお願いします。」

芳佳「はい。」

ミーナ「宮藤さん。」

芳佳「みなさん………みなさん無責任です! ただ『それらしい』という根拠もない理由だけでハルトマンさんを悪者にしたて上げて…。」

坂本「そ、そうは言ってもだな宮藤。」

芳佳「私達は仲間です!大切な大切な…! 仲間を信じてみたらどうですか! ハルトマンさんは否定してるんでしょ!?」

 
ミーナ「たしかにそうだけど…。」

バルク「根拠ならあるぞ宮藤。」

芳佳「?」

バルク「本当に否定しているんだったら、罰則は決して受け入れないはずだ。いくらハルトマンでも、それくらいは言うはずだ。」

芳佳「それは…そうですけど…。」

バルク「ミーナ。その手に持ってる資料を見せてくれ。そこにもっと決定的な証拠があるんだろう?」

ミーナ「証拠になるかどうかわからないけど…これは前日から当日までの詳しい経緯をまとめたものよ。」

  ③


ミーナ「現状、把握している内容をまとめるとこうね。」

坂本「なるほど、これはわかりやすい。」

 
前日

20:00 食料倉庫を確認。じゃがいも18個

21:00 夕食はジャガイモのスープ etc...。 じゃがいも14個確認

当日

6:00 食事担当:宮藤&リネット じゃがいも14個確認

7:30 食料支給到着。主に調味料で、野菜類は無し & 朝食 扶桑料理 じゃがいも使用せず

8:00 午前訓練開始。

11:00?~11:30? ハルトマン起床&食事

12:30 昼食(屋外) 扶桑料理の弁当

13:30 午後訓練開始

 
14:00 ハルトマン訓練参加

18:00 訓練終了

19:30 夕食 扶桑料理 調理開始 じゃがいも使用せず

20:00 ミーナ&坂本 食糧倉庫確認 じゃがいも0個

21:00 夕食

22:30 ハルトマン 自室待機処分(仮)

翌日

9:00~ 議会開始

ペリーヌ「これでもまだハルトマン中尉が無実とでも言うんですの?」

バルク「11時半に起きて残っていた朝食を食べていたとしても、そこから訓練参加まで2時間半というのはあまりにも空白の時間が多すぎる。」

エイラ「これはもう言い逃れできないぞ、ミヤフジ~。」

芳佳「なにかが、なにかがおかしいんです。」

坂本「何がだ?」

 
芳佳「それは……わからないですけど…。」

坂本「…宮藤…。」

バルク「宮藤、ふざけるのもいい加減にしてくれ。」

ルッキーニ「ねえよしかー。絶対ハルトマン中尉が犯人だよー。はやく話し合い終わらせようよー。」

シャーリー「ちょ、ルッキーニ!」

リーネ「芳佳ちゃん…。」

 
芳佳「えっと……そうだ! ハルトマンさんが盗むところ、もしくは食べるところを見たという人はいないんですか!?」

坂本「事件の目撃者はいない。」

芳佳「だったらまだ証拠不十分です! ハルトマンさんが犯人と決めつけるには早いですよ!」

坂本「しかしだな宮藤。」

ミーナ「宮藤さん。実は、ハルトマンさんが食堂から自室に向かうところを見たと言っている人がいるの。」

芳佳「えっ?」

 
ミーナ「廊下を掃除していた男性なんだけど、訊くところによると、12時過ぎごろに苦しそうにしながら部屋へ向かっていたらしいの。」

芳佳「『苦しそう』ってどんなかんじですか!?」

ミーナ「彼曰く、手をお腹に当てながら、ふらふらと歩いていたらしいわ。」

芳佳「そんな…。」

坂本「なるほど、やはり隠したのではなく、すべて食べていたのか。」

バルク「おのれハルトマン…! ますます怒りが湧いてきた…!」

 
リーネ「お、落ち着いてください!バルクホルンさん!」

バルク「落ち着いてなどいられるか! 私のしつけが甘かったようだ! すまないミーナ、私も反対に1票だ。奴に3日間の刑罰はぬるすぎる。私はもっときつい刑を要求する!」

リーネ「なっ…えっ…」

ミーナ「えっと…。賛成8票、反対2票…っと。」

坂本「でもこの反対の2票は全く意見が一致してない。」

エイラ「ますますややこしい方向に向かっているナ。」

シャーリー「…。」

ルッキーニ「もうやだぁ~~~。 はやく遊びたいよ~。海に行きたいよ~。」

 
ペリーヌ「ルッキーニ少尉! あなたまじめに議会に参加していますの!?」
 
ルッキーニ「うるさい、つんつんメガネ~」

ペリーヌ「なっ!」

坂本「おちつけふたりとも。とにかく、全員が納得する結果になるまでこの議会は終われないんだ。協力してくれ。」

ペリーヌ「少佐がそうおっしゃいますのなら…。」

ルッキーニ「でたでた~坂本少佐にデレるペリーヌ~。」

ペリーヌ「あなた! 口をつつしみなさい!」

ミーナ「とにかく、意見のある方は挙手をお願いします。」

芳佳「はい!」

ミーナ「宮藤さん。」

芳佳「と、とりあえず! みなさん賛成の理由を具体的にお願いします! あ、バルクホルンさんは反対の理由も。」

ペリーヌ「あなたの反対の理由もちゃんと言うんでしょうね。」

 
芳佳「そりゃ…もちろん言います…。」

ミーナ「じゃあまずリーネさんから。」

リーネ「私は…やっぱり普段から寝坊グセがあることと…それから…。」

芳佳「それから?」

リーネ「………」

芳佳「………?」

リーネ「えっと………じゃがいもが…好きだから…?」

芳佳「それじゃあ理由になってないよリーネちゃん。」

  
リーネ「でも…。」

芳佳「リーネちゃん!」

リーネ「…………。」

ミーナ「ま、まあそのへんで。次、エイラさん。」

エイラ「リーネと大体一緒ダナ。訓練を合法的にサボれる方法を中尉なりに考えた結果がじゃがいも泥棒だろうナ。」

芳佳「エイラさん…!」

 
エイラ「まあいいじゃないか芳佳。本人も3日寝ていられるし本望だろうしサ。」

芳佳「そんなんでいいんですか…」

芳佳「……………。」

エイラ「な、ナンダヨ。」

芳佳「いえ、なんでもないです…。」

 
ミーナ「えー、では次、サーニャさん。」

サーニャ「…………………。」

エイラ「サーニャ?」

ミーナ「サーニャさん?」

芳佳「サーニャちゃん?」




サーニャ「…ごめんなさい、私、反対に変えます…」

 
エイラ&芳佳「ええっ!!!」

サーニャ「一昨日の訓練終わりに、ハルトマンさんとふたりきりで海岸沿いを散歩していたんです…。」

エイラ「えっ、嘘ダロ、サーニャ。」

サーニャ「そのとき、ハルトマンさんが言っていたんです。私、最近どうも食欲がなくて体が疲れてるって。」

エイラ「さっ、サーニャ…?」

芳佳「サーニャちゃん!」

 
サーニャ「ハルトマンさんは皆を心配させたくないから、できれば内緒にしておいてくれって言ってたんですけど…。大事なことを黙っててごめんなさい。」

ミーナ「いいのよサーニャさん。気にしないで。」

エイラ「…………………。」

芳佳「ということは、ハルトマンさんは当日は暴食できない状況だった。ということだねサーニャちゃん!」

バルク「まて宮藤! ハルトマンのことだ、どうせ一日休めば体調なんて復活するに決まってる!」

芳佳「でもハルトマンさんは『最近』って言ったんだよね!サーニャちゃん!」

 
サーニャ「確か…。あれ?」

芳佳「サーニャちゃん?」

サーニャ「でも、『朝から』だったような気が…」

芳佳「そこ大事なとこだよ!」

サーニャ「ごめんなさい……」

バルク「ま、食べられなくても隠すことはできたはずだ。」

芳佳「…バルクホルンさん、もういい加減にしてください!」

 
バルク「それはこっちのセリフだ宮藤。どうして理解しようとしないんだ!」

芳佳「どうもおかしいんですこの議会は! わたしにはなにか理由をつけて、ハルトマンさんに罰を与えようとしているようにしか見えないんです!」

バルク「私には宮藤がハルトマンの悪事をかばっているようにしか見えない!!!!」

芳佳「ハルトマンさんは『やってない』って言っているんです!バルクホルンさんが信じてあげなくて誰が信じるんですか!!!!」

バルク「奴に罰を与えてやることが私にできる最大のしつけであり、私なりのハルトマンへの『愛』だ!! お前に何がわかる!!!!」

 
芳佳「それは絶対に間違っています!!」

バルク「なんだと宮藤!!!! だったらお前の言い分も聞かせてもらおう!!!!!」

芳佳「もういいです!!!! 私バルクホルンさんのこと嫌いになりました!!!!!」

バルク「!!!!!!!!!」ガーン


エイラ「」

 

リーネ「芳佳ちゃん言い過ぎだよ!」

芳佳「あっ…。すみません…。」

バルク「いや、こちらこそすまない…。怒鳴って悪かった…。」

芳佳「いえ、私こそすみませんでした…嫌いになんてなってませんから。」

バルク「みっ、宮藤ぃ…」




シャーリー「ひとついいか? さっきバルクホルンは『食べたのではなく隠した』みたいなこと言ったよな。」

 
バルク「ああ。」

シャーリー「だとしたら、どうして食事の後に手で腹を抑えて苦しそうに部屋に向かっていったんだ?」

バルク「それは…。」

シャーリー「その証言からだと、食べ過ぎて苦しかったと見るのが普通だ。でも、実際は食欲がなかったため小食だった。」

バルク「ああ、そうだ。でもそれは仮の話だ。実際はもうすでに元気だったかもしれない。」

シャーリー「…一つ聞きたいが、バルクホルンは毎朝ハルトマンを起こしに行ってるよな?」

 
バルク「確かにそうだが。」

シャーリー「ということは事件当日も起こしに行ったはずだ。」

バルク「ああ…」

シャーリー「ちゃんと起こせたのか?」

バルク「いや、いつものことだが、返事がなかったからそのまま私は訓練に参加した。」

シャーリー「いつも? いつも返事がないのか?」

 
バルク「あ、ああ…」

芳佳「わたし、よく朝にバルクホルンさんの怒鳴り声を耳にします! 確か、『あと2時間とはなんだ!』とか言っていた気が…。」

バルク「な、宮藤…」

シャーリー「会話してるじゃないか。正直に言え。」




バルク「…………いつもは私に反論する…………でも、その日は全く返事がなかった。ただ…手をふって答えるだけだった。」

 
シャーリー「うん、決まりだな。ハルトマンは事件当日、朝から体調が悪かった。ま、これはあくまで私個人の意見だけどな。」

坂本「ということは、シャーリー、お前も…」

シャーリー「ああ、私も反対だ。」

芳佳「シャーリーさん!!!」

ミーナ「ということは、賛成6票、反対3票、その他1票ね。」

 
坂本「なんだ? "その他"とは。」

ミーナ「トゥルーデのことよ。彼女も反対に入れるとややこしいから。」

坂本「なるほどな。」



芳佳「ありがとうございます、シャーリーさん。」

シャーリー「おぉぅ。」

ペリーヌ「ちょ、ちょっとみなさん!一番大事なことを忘れていませんこと!?」

 
坂本「なんだペリーヌ。」

ペリーヌ「もしハルトマン中尉が無実だとしたら、誰がじゃがいもを盗ったっていうんですの?」

坂本「まあ、確かにそうだ…。」

ペリーヌ「それがわからない限りは、私はハルトマン中尉が犯人だという意見を変えませんわ!」

 
ミーナ「…実はね、反対意見で一致したら、その場合は真犯人を探すのも私達の議題の一つなのよ。」

バルク「なんだって!?」

坂本「どうしてそんな大事なことずっと黙っていたんだ!」

ミーナ「仕方ないじゃない! 私だってこんなに長引くなんて思ってないもの! てっきりハルトマンさんが犯人ということですぐ決着するものだと…。」

坂本「まあ、反論できないな…」

  ④

坂本「意見をまとめるとこういうわけだ。」


賛成

ミーナ
坂本
エイラ…「寝坊グセがあるので、いっそ休ませてあげたい。」
リネット…「ジャガイモ大好き! だからこいつ犯人。」
ルッキーニ
ペリーヌ

反対

芳佳
シャーリー…「事件当日の体調から、14個ものじゃがいもを盗むのは不可能。」
サーニャ…「上に同じく。」

保留

バルクホルン…「罰を与えるのは賛成だが、もっと厳しい罰を要求する。」

 
リーネ「ちょっと私の意見の書き方おかしくないですか?」



ミーナ「じゃあまだ意見を言ってない人から何か言ってもらいましょうか。ペリーヌさん。」

ペリーヌ「簡単ですわ。さっきも言いましたが、ハルトマン中尉が犯人じゃなければ誰がじゃがいもを盗ったっていうんですの?」

芳佳「そ、それは…。」

ペリーヌ「宮藤さん。あなたは自分の感情に任せて突き進むクセがありますの。冷静になって考えてみなさい。ハルトマン中尉以外は8時から18時までは一切基地に戻らなかった。違いますこと?」

芳佳「………。」

 
ペリーヌ「そしてハルトマン中尉が訓練に参加したのは14時になってから。ということは、その間にキッチンに入ることができる状況にいたのは、ハルトマン中尉のみ。」

芳佳「…………。」

ペリーヌ「………なにか言ってみてはどうですの?」

芳佳「でっ…でも! じゃがいもが無くなったのを確認したのは夜になってからです! 皆が基地に帰ってきてから無くなったとは考えられないんですか!?」

ペリーヌ「だとしたら、貴方とリーネさんが怪しいですわよ。」

リーネ「えっ…?」

 
芳佳「な、なんでですか!?」

ペリーヌ「だって、その日夕食を作っていたのはあなた達ですわ。それ以外のメンバーは一切キッチンに入っていなければ、もちろん食糧倉庫も確認していない。」

芳佳「そ、そうですけど…。」

ペリーヌ「訓練終了から事件発覚までの時間、食糧倉庫を開けることができたのはあなた達ふたりだけのはず。」

芳佳「わ…わたしもリーネちゃんも、じゃがいもなんて盗んでません!」

 
リーネ「作ってる私達も、夜は食糧倉庫は確認していないんです。」

芳佳「私達が料理当番の日は、朝に3食の献立を決めて、必要な材料は朝のうちに倉庫からキッチンに移動させるんです! 本当です…!」

ペリーヌ「そう。だとしたら、考えられる犯人は誰ですの?」

芳佳「それは…………。」

ペリーヌ「訓練をサボって一人基地に残っていたハルトマン中尉。そうでしょう?」

 
芳佳「私達以外にもたくさん人は基地にいました! ハルトマンさんを見たと言っている人だってそうです!」

ペリーヌ「まだ反論するんですの…!? いいですこと!? 食糧倉庫の鍵は私達501のメンバーしか所持していないことは、貴方もよく知っているはずですわ!」

芳佳「ううっ…」

リーネ「………。」

坂本「さすがだ。冷静に状況を把握できている。」

ペリーヌ「しょ、少佐ぁ…//」

 
ミーナ「では、ルッキーニさん。意見をお願いします。」

ルッキーニ「………………。」zzz

ミーナ「…ルッキーニさん?」

ルッキーニ「…………。」zzz

シャーリー「…おい!寝るな!」

ルッキーニ「…ンがっ! …おはよー。議論終わったぁ?」

 
シャーリー「おまえなぁ…。」

ルッキーニ「えっと…フアァーア…………さんせぇー。あたし、賛成だよー。」

シャーリー「賛成か反対かは今はどうでもいい。意見を言えと言ってるんだ。」

ルッキーニ「わかんないよ~! あたしこういう話し合いとかしたことないもん!」

ミーナ「でもね、これはすごく大事な議会なの。下手をすると、501の今後を左右するかもしれないわ。」

坂本「なぜ罰則に賛成なのか。ルッキーニなりの理由を話してくれ。」

 
ルッキーニ「意見なんて無いよぉ! ただ、皆賛成だったから私も賛成にしただけで…。こんなことになるなら、まだ一日中訓練してたほうがマシじゃんか!」

芳佳「ルッキーニちゃんの発言が、もしかしたら私達の意見さえもすべて覆すほどの力を持ってるかもしれないんだよ?」

ルッキーニ「だから! もう私わかんないよ! 誰が正しくて誰が間違ってるのか! もう私抜きで話し合ってよぉ!」

シャーリー「だから正しいか正しくないかは別としてだな。」

坂本「ルッキーニが思ってること、そのまま口に出すだけでいい。」

 
ミーナ「何を言っても、私達が怒ることはないわ。議会なんだもの。すべての意見が正しいと、私は思っているわ。」

ルッキーニ「もういや! ハルトマン中尉が犯人ならそれで結構! もう待機処分にでも打ち首にでもなんでもしちゃってよーー!!!!」ダッ!

坂本「あっ!逃げた!」

シャーリー「コラー! ルッキーニー!」

ミーナ「シャーリーさん! 追って!」

シャーリー「待てぇ~! ルッキーニィィ!!!」

ダダダダダ…

   ⑤

坂本「いろいろあったが…次は私達ふたりの意見だな。」

ミーナ「ええ、そうね。」

坂本「…正直、上層部の言うように最近の501はどうも緊張感がない。私にも少し責任はあるがな。」

ミーナ「そこで、今回の事件が起こったわけなのよ。」

坂本「ここでハルトマンに罰を与え、ストッパーをかけないとこの先ますます501は堕落していくと、私達は考えた。」

 
ミーナ「…納得してくれたかしら、宮藤さん。反論があればいくらでも答えるわ。」

芳佳「…………ハルトマンさんは犯人じゃありません。」

坂本「宮藤…」

芳佳「それに、ハルトマンさんに罰を与えて何が解決するっていうんです! さっきも言ったけど、この議会はどうもおかしいんです!」

ミーナ「?」

芳佳「何か、みなさん大事なことを忘れている気が…。」

 
坂本「大事なこととは何だ?」

芳佳「それは、わからないですけど…」

エイラ「あ、デジャヴ」

ペリーヌ「ふざけるのもいい加減にしなさい。ほら、私達賛成派の意見は皆出ましたわよ。宮藤さん、はやく反対意見を言ってちょうだいな。」

芳佳「わたしは…ただハルトマンさんが無実の罪を着せられてるのがかわいそうで…。」

ペリーヌ「はぁ?」

芳佳「本人が否定してるんだったら、犯人と決め付けるのは絶対おかしいと思うんです! 実際、当日の体調では盗むのは不可能だったはずです。」

ペリーヌ「ですから宮藤さん。さっきの私の話を聞いていらして? ハルトマン中尉以外に考えられる犯人はいないんですわよ。」

 
芳佳「たしかにそうですけど…。」

ペリーヌ「少佐、中佐、はやく決を取って下さいな。これ以上話し合いを続けても無意味ですわ。」

芳佳「ペリーヌさん!」

坂本「シャーリーとルッキーニがまだ帰ってきてないが…とにかく一旦決を取ろう。」 

ミーナ「ええ、そうね。では、今から小さいメモ用紙を私含め8人に配ります。それに『賛成』か『反対』かどちらかを書いて私のところに文字が見えないようにして持ってきて下さい。」

すまん
ちょっと11時頃まで席外す

一応元ネタの予告編だけ貼っとくわ
ttp://www.youtube.com/watch?v=A7CBKT0PWFA
ttp://www.youtube.com/watch?v=XUHiDVO8reQ

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