サーニャ「きみのなかに~わたしをずっと~」芳佳「……」 (127)

サーニャ「ブックマークしてね~」

サーニャ「笑いながらっ、頑張ったと、めちゃくちゃっ、ほめてねっ」

芳佳「……」

サーニャ「どんな時も全部ほ……!?」ビクッ

芳佳「続けて続けて」

サーニャ「あ、もうこんな時間……夜間哨戒に行ってきます」

芳佳「待って!!サーニャちゃん!!」

芳佳「いっちゃったぁ……。可愛い歌だったからもっと聴きたかったのに」

美緒「宮藤。こんなところで何をしている。さっさと自室に戻れ。それとも自主訓練か」

芳佳「すいません。戻ります」

美緒「うむ。寝る前に歯を磨けよー」

芳佳「はぁーい」

次の日

サーニャ「……」キョロキョロ

サーニャ「……きみのなかに、わたしをずっと~、ブックマークしてね~」

サーニャ「笑いながらっ、頑張ったと、めちゃくちゃっ、ほめてねっ」

サーニャ「どんな時もっ、全部本気っ、ギャップにも、驚かないでっ」

サーニャ「たった今を進まなくちゃっ、未来もないでしょ?」フリフリ

芳佳「……」

サーニャ「……!!」

芳佳「アンコールアンコール」

サーニャ「夜間哨戒に行かなきゃ」

芳佳「あぁ!!もっと歌ってよぉ!!」

バルクホルン「宮藤。何をしている」

芳佳「あ、バルクホルンさん。あのですね」

バルクホルン「ほら、風呂に行くぞ」グイッ

芳佳「あぁ……」

次の日

サーニャ「きみとなら~きっとぉ、できること~。ココロ~とココロで、手~を~結んで~」

サーニャ「うんめいぃ~せぇ~ん」クルッ

サーニャ「ぎゅっとっ、かさねたら~。夢へ~のきょ~は~んしゃ~。どこまででも翔べそうっ」

サーニャ「眠れるっ、翼をっ、信じてっ」

サーニャ「……ふぅ」

芳佳「わー!いいね!」パチパチ

サーニャ「……!!」ビクッ

芳佳「今の歌なに?聞いたことないけど」

サーニャ「……行って来ます」

芳佳「サーニャちゃん、ちょっと待ってよぉ」

サーニャ「でも……」

芳佳「今の歌って、もしかしてサーニャちゃんが作ったの?」

サーニャ「……う、うん」

芳佳「へぇー。すごいねー!」

サーニャ「もう行かなきゃ」

芳佳「ねえねえ。サーニャちゃん、また聞きたいな」

サーニャ「……ダメ」

芳佳「どうして?いい歌なのに」

サーニャ「まだ、完成してないから」

芳佳「夜間哨戒に行く前はいつも歌ってるよね?まだ完成じゃないんだ」

サーニャ「うん」

芳佳「聞きに来るのはいいよね?」

サーニャ「でも……」モジモジ

芳佳「おねがいっ」

サーニャ「誰にも内緒だよ?」

芳佳「エイラさんも知らないの?」

サーニャ「きちんと出来上がってから歌いたいから……」

芳佳「そうなんだー。うん!誰にも言わない。約束する」

サーニャ「ありがとう。それなら明日も聞きにきていいよ」

次の日

サーニャ「うんめいせ~ん」クルッ

芳佳「ねえねえ」

サーニャ「なに?どこかおかしかった?」

芳佳「ううん。そうじゃなくて、うんめいせ~んのときだけクルって回るのはどうしてかなぁーって思って」

サーニャ「……なんとなくだから。気になるならやめるけど」

芳佳「ごめん!気にしないで!!ちょっとだけ疑問に感じちゃっただけだから!!」

サーニャ「うん……」

芳佳「でも、本当にサーニャちゃんって歌が上手だよねー」

サーニャ「ありがとう……」

芳佳「この前もネウロイが真似してたぐらいだし」

サーニャ「あれは私を狙っていただけ」

芳佳「そうかな?もしかしたらサーニャちゃんの歌声に惹かれて真似してたのかも」

サーニャ「違うと思う」

芳佳「そんなのわからないよ。サーニャちゃんの歌声、とっても綺麗だし、素敵だもん」

サーニャ「……あまり褒めないで」

芳佳「どうして?」

サーニャ「は、はずかしい……から……」

芳佳「そっか。じゃあ、もう言わない」

サーニャ「それは少し寂しいけど……」

シャーリー「おーい。サーニャー。夜間哨戒はどうしたんだー?坂本少佐が遅れてるっていってるぞー」

サーニャ「あ。もうこんな時間……」

芳佳「ごめん!!私が引きとめたから……!!」

サーニャ「ううん。聴いてくれてありがとう」

芳佳「サーニャちゃん」

シャーリー「早くいかないと怒られるぞー」

サーニャ「今から出ます」

芳佳「いってらっしゃーい!!またきかせてねー!!!」

シャーリー「何をだ?」

芳佳「え!?えーと……秘密ですっ!!」

翌朝 宮藤の部屋

芳佳「すぅ……すぅ……」

サーニャ「……」ガチャ

芳佳「すぅ……すぅ……」

サーニャ「きみのなかに~わたしをずっと~ブックマークしてぇね~」

芳佳「ん……?」

サーニャ「笑いながらっ、頑張ったと、めちゃくちゃっ、ほめてねっ」

芳佳「……サーニャちゃん、おかえりなさい。どうしたの?」

サーニャ「どんな時もっ、全部本気っ、ギャップにも、驚かない……で……」フラッ

芳佳「サーニャちゃん!?」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

芳佳「あぁ!サーニャちゃん、起きて!!ここ私の部屋だから!!」

サーニャ「ん……すぅ……すぅ……」

芳佳「あ、もしかして、私がまた聴かせてって言ったから……。今日だけなら、いいよね。きっと」

サーニャ「うぅん……」

食堂

エーリカ「はむっ」

ペリーヌ「またじゃがいもを蒸しただけですの?」

シャーリー「いいじゃないか。栄養あるし、美味しいし」

ペリーヌ「でも、淡白すぎます……」

エイラ「……なぁ」

バルクホルン「どうした?朝から覇気がないな」

エイラ「サーニャ、みなかったか?」

バルクホルン「いや、見ていないが」

エイラ「そうか……」

バルクホルン「何か気になることでもあるのか?」

エイラ「いや。サーニャの部屋に行ってみる」

バルクホルン「……?」

リーネ「芳佳ちゃーん。ルッキーニちゃんがおかわりだってー」

芳佳「はぁーい!!今行くぅ!!」

廊下

美緒「以前、出現したネウロイだが。やはりサーニャの歌に反応していたのは間違いない」

ミーナ「そうね。ネウロイは一体……」

エイラ「たいへんだぁー!!」

美緒「騒々しいぞ。何があった?」

エイラ「たいへんなん、だぁー!!」

ミーナ「落ち着いて」

美緒「叫ぶだけでは何が大変なのかわからんぞ」

エイラ「だ、だって!!サーニャがいないんだぞ!!」

美緒「なんだと?」

エイラ「朝、私の部屋にこないからおかしいなって思ったんだ。それで、サーニャの部屋を見たら、サーニャがいなかった……」

美緒「哨戒中になにかあったか?」

ミーナ「いいえ。今朝、サーニャさんは任務を終えて基地に……」

エイラ「なら、どうしていないんだ!?」

美緒「どこかで寝ているのだろう。探してみよう」

食堂

シャーリー「ふー。食った食った。よし、訓練はじめるか」

ルッキーニ「にしし。たしか、芳佳とリーネも一緒なんだよねー」

シャーリー「ああ。あたしが宮藤と、ルッキーニがリーネとだな」

芳佳「よろしくお願いします!!」

シャーリー「うん!あたしにまかせとけ!マッハで飛べるようにしてやるから!!」

芳佳「そ、それは少し怖いような……」

リーネ「あはは……」

美緒「お前たち、ちょっといいか?」

ルッキーニ「あ、少佐。どうしたのー?」

美緒「サーニャが行方不明なんだ。誰か見た者はいないか」

シャーリー「いや、みてないな。ルッキーニは?」

ルッキーニ「みてなーい」

リーネ「私も見てないです……」

芳佳(どうしよう……。私の部屋でまだ寝てること言ったら、理由をきかれちゃう……。そうなるとサーニャちゃんが歌を作っていることもバレるかも……)

シャーリー「宮藤は?」

芳佳「え!?いや!!全然、みてないです!!昨日の夜からずっと!!」

美緒「……宮藤?」

芳佳「は、はい!!」ビクッ

美緒「何を焦っている?」

芳佳「な、なにをいってるんですか!!焦ってなんていませんよー!!」

美緒「知っているなら話せ」

芳佳「だ、だから!知らないですっ!!」

シャーリー「みやふじぃ?嘘が下手だなぁー」

芳佳「えぇ!?なんでわかっちゃうんですかぁ!?」

シャーリー「ほら、嘘ついてた」

芳佳「あぁー!!しまったぁー!!」

美緒「宮藤の部屋に行くか」

シャーリー「りょーかーい」

芳佳「ま、待ってください!!サーニャちゃんは私の部屋で寝ているだけなんです!!それだけなんです!!」

ルッキーニ「それだけなら、なんで隠すのぉー?」

シャーリー「だよなぁ」

芳佳「そ、それは……」

リーネ「芳佳ちゃん、正直に言ったほうがいいと思うよ?」

芳佳「だ、だけど……」

リーネ「何かいえない事情でもあるの?」

美緒「……まぁ、その……プライベートなことなら……あまり詮索はしないほうがいいだろうが……」

シャーリー「あ、そっち?悪い悪い」

芳佳「そっちってどっちですかぁ!!」

美緒「嘘をつくのは構わんが、ついた分だけ疑われるのは仕方のないことだ」

シャーリー「ほら、楽になっちゃいな」

芳佳「……あの。な、内緒にしてくれますか?」

美緒「内容によるが、まぁ内密でいうならそうしよう」

リーネ「うん。絶対、秘密にする」

芳佳「実は――」

シャーリー「へぇー。歌をねえ」

美緒「なるほどな」

芳佳「サーニャちゃん、きっとエイラさんをびっくりさせようと思ってるんです。だから……」

シャーリー「そういうことならいいんじゃないですか、坂本少佐?」

美緒「隊の規律を乱すようなことでもない。いいだろう。これはここだけの話として処理する」

芳佳「ありがとうございます!!」

リーネ「でも、いいなぁ。芳佳ちゃんだけ歌を間近で聴けて」

芳佳「完成したらみんなの前でも歌ってくれるよ!!」

ルッキーニ「そうなんだぁー!たっのしみぃ!」

芳佳「だよね!」

美緒「では私は他のものにサーニャが見つかったことを報告してくる。お前達は予定通り訓練に入れ」

芳佳「はい!!」

美緒「サーニャの歌か……」

シャーリー「で、宮藤。どんな歌なんだ?」

芳佳「それは言えません。サーニャちゃんとの約束ですからっ」

滑走路

エイラ「サーニャー!!!!」

エーリカ「おーい。サーニャ、見つかったってさー」

エイラ「どこにいたんだ!?」

バルクホルン「宮藤の部屋で寝ていたそうだ。まぁ、部屋を間違えたのだろう」

エイラ「ど、どうして……!」

エーリカ「寝ぼけてたんじゃないの?」

エイラ「そういうことじゃなくて!!」

バルクホルン「無事に発見されたんだ。良かったじゃないか」

エイラ「……」

エーリカ「まぁ、トゥルーデとしても気が気じゃないよねぇ?」

バルクホルン「何の話だ?」

エーリカ「えー?宮藤の部屋で寝ていたってきいたとき変な声だしたのってぇ、だれだっけぇ?」

バルクホルン「さぁ。鶏かなにかじゃないか?」

エイラ「サーニャ……どうして私の部屋と宮藤の部屋を間違えるんだ……」



サーニャ「タタカイのい~み、ア~タ~タカイな~ら~」

芳佳「……」

サーニャ「どうかした?」

芳佳「え?」

サーニャ「ちょっと、元気がなさそうだから」

芳佳「な、なんでもないよ!!ごめんごめん」

サーニャ「もしかして……歌を聴くの飽きた……?」

芳佳「そ、そんなことないよ!!こんな可愛くて素敵な歌を毎日聴けるなんて、私は幸せ者だもん!!」

サーニャ「……」

芳佳「もうね。1日の終わりはサーニャちゃんの歌を聴かなきゃ眠れない感じだよ!!」

サーニャ「……ありがとう。私も一人で歌っているときよりも、なんだか楽しい」

芳佳「歌ってやっぱり人に聴いてもらうほうがいいもんね。それで聴いてくれた人たちが笑顔になったら、こっちも嬉しいし」

サーニャ「だからかも。笑ってくれる人がいるから、褒めてくれる人がいるから、今が楽しいのかも」

芳佳「サーニャちゃん……」

サーニャ「行って来ます」

芳佳「うん!気をつけてねぇー!!」

サーニャ「……そうだ」

芳佳「なに?」

サーニャ「明日から、一緒に歌う?」

芳佳「いいよ!!私、そんなに上手じゃないし!!サーニャちゃんの邪魔になるだけだよ!!」

サーニャ「私が一緒に歌いたいの」

芳佳「……」

サーニャ「エイラ以外で貴方が初めてだから。こんなに真剣に聴いてくれたのは……」

芳佳「そうなんだ」

サーニャ「嫌なら、いいけど。歌ってほしいな」

芳佳「……それじゃあ、私も歌う。上手じゃないから色々、教えてね」

サーニャ「うん」

芳佳「えへへ」

サーニャ「これから、よろしくね」

別の日 夜 シャーリーの部屋

シャーリー「……うんうん」

バルクホルン「リベリアン。魔法を使って何を聞いている?」

シャーリー「ん?ああ、秘密だよ」

バルクホルン「ふん。どうでもいいがな。それより、明日の任務だが……」

シャーリー「うーん……うん、かわいいなぁ……」

バルクホルン「聞いているのか!!!」

シャーリー「声が大きい!!」

バルクホルン「盗聴でもしているのか、貴様」

シャーリー「まぁ、そんなとこ。あたしはやっぱり……宮藤かな……」

バルクホルン「……」ピクッ

シャーリー「いや、サーニャもいいけど……うん……うん……」

バルクホルン「イェーガー大尉。何を聴いているのか詳しく話してもらおうか?」

シャーリー「だから、秘密だっていって――」

バルクホルン「盗聴なら軍規違反の可能性もある。答えろ」

ミーナの部屋

ミーナ「宮藤さんとサーニャさんが?」

美緒「これは秘密だからな」

ミーナ「分かりました。二人で何をしているかと思えば……歌を……」

美緒「中々、愛らしい歌だぞ。私も何度かこっそり聴いてみたが、気合を入れていないと時間を忘れそうになる」

ミーナ「そんなに?ふふ、なら私も聴いてみたいわね」

美緒「ハンガーのほうへ行けば聴けるぞ。ただし、気配を悟られたら逃げられてしまうが」

ミーナ「そう。なら、もう少し様子をみましょうか。完成が楽しみね」

美緒「全くだ」

ミーナ「ところでネウロイの件だけど」

美緒「ああ。そうだったな。より詳細なデータが届いた」

ミーナ「これは……」

美緒「どう思う?」

ミーナ「検討してみる価値はあるかもしれないわね」

美緒「そうだな。こんなことができるなら、これからの作戦も楽になる」

翌日

シャーリー「おーい、ルッキーニ。そっちのももってきてくれー」

ルッキーニ「うん!」テテテッ

リーネ「あれ?何を作っているんですか?」

シャーリー「ん?ああ、お立ち台」

リーネ「お立ち台……?」

ルッキーニ「やっぱり歌姫は舞台の上で歌わなきゃね!!」

リーネ「それって芳佳ちゃんとサーニャちゃんの?」

シャーリー「ルッキーニが作ったほうがいいってうるさくてさ」

ルッキーニ「あとは、基地全体に歌が届くようにしないと」

シャーリー「いや、島全体のほうがいいんじゃないか?」

ルッキーニ「おぉー!!そうしよー!!」

シャーリー「だな!」

リーネ「あ、あの!!秘密なのにそんなことしちゃダメだと思います!!」

ルッキーニ「芳佳とサーニャには黙っておけばばれないって」



芳佳「サーニャちゃん!!おまたせ!!」

サーニャ「誰にも見られなかった?」

芳佳「うん!もう慣れちゃったよ!!」

サーニャ「ところで、これなんだと思う?」

芳佳「台とマイクかな?」

サーニャ「どうしてこんなものがここに……」

芳佳「さぁ……?」

サーニャ「あーあー。声は響かない……」

芳佳「わかった!!きっとミーナさんじゃない?」

サーニャ「中佐?」

芳佳「坂本さんが前に言ってたもん。ミーナさんは歌がうまいって!!」

サーニャ「それは知っているけど」

芳佳「ミーナさんが歌の練習してるんじゃないかな?」

サーニャ「そうなの……?」

芳佳「折角だし、使わせてもらおっか?」

サーニャ「いいのかな?」

芳佳「借りるだけだし、今は私たち以外にいないでしょ?」

サーニャ「うん」

芳佳「やっぱり舞台の上に立つと気分も出る!」

サーニャ「それじゃあ……」

芳佳「歌うよ!」

シャーリー「(こっちだ。こっち)」

エーリカ「(おぉー。ホントにやってるよぉー)」

バルクホルン「(全く、こんなコソコソせずとも良いだろうに)」

美緒「(ならば出て行けばいい。サーニャは逃げるがな)」

バルクホルン「(そんな無粋な真似はしない)」キリッ

エーリカ「(素直に聴きたいっていえばいいのに)」

芳佳「きみのなかに、わたしをずっと~、ブックマークしてね~」フリフリ

サーニャ「笑いながらっ、頑張ったと、めちゃくちゃっ、ほめてねっ」

食堂

エイラ「あれ?みんなは?」

ミーナ「エイラさん。今、みんなはハンガーにいると思うわ」

エイラ「どうして?」

ミーナ「そこまでは……」

エイラ「……中佐。きいてくれ」

ミーナ「どうしたの?」

エイラ「サーニャが……最近、つめたいんだ……」

ミーナ「え……?」

エイラ「サウナもはいってくれない。最近はずっと大浴場のほうを使っているみたいなんだ」

ミーナ「それは好みが変わっただけじゃ」

エイラ「それだけじゃない!!私の部屋に来る回数も激減した……。少し前まではほぼ毎日だったのに、今じゃ週二日だけだ……」

ミーナ「……」

エイラ「私の部屋で服を脱ぐこともあったのに!!もう私はサーニャの白い肌をみることは――」

ミーナ「エイラさん。あなた、サーニャさんと今まで何をしてきたのかしら?」

ペリーヌ「全く。坂本少佐もどうしてあんな豆狸の歌なんかに……」

ミーナ「ペリーヌさん」

エイラ「歌?」

ペリーヌ「あ、エイラさん」

エイラ「おい。歌ってなんだ?」

ペリーヌ「え、えーと……」

エイラ「なんなんだよ、歌って!」

ペリーヌ「絶対に秘密ですからね?ハルトマン中尉から絶対に喋るなと言われているのですから」

エイラ「わかった」

ミーナ「あぁ……」

ペリーヌ「実は最近、宮藤さんとサーニャさんが歌の練習をしていると……」

エイラ「なんだと……?」

ペリーヌ「いいですか?本人には勿論、他の人にも……。ああ、でも坂本少佐とハルトマン中尉とバルクホルン大尉とシャーリー大尉とルッキーニさん……あら?知らない人って……」

エイラ「サァァァニャァァァ!!!!」ダダダダッ

ミーナ「エイラさん、待って!!」

芳佳・サーニャ「「ぎゅっとっ、かさねたら~。夢へ~のきょ~は~んしゃ~。どこまででも翔べそうっ」」クルッ

芳佳・サーニャ「「眠れるっ、翼をっ、信じてっ」」ビシッ

芳佳「おぉ……これって……」

サーニャ「できた、かも」

芳佳「やったね!!サーニャちゃん!!」ギュッ

サーニャ「うんっ!」

バルクホルン「……」ガタッ

エーリカ「(どうどう、トゥルーデ)」

リーネ「(かわいい歌ですね)」

ルッキーニ「(にしし。明日は島中に聞こえるようにしよっと)」

シャーリー「(それがいいな)」

エイラ「サーニャ!!!」

美緒「!?」

サーニャ「エイラ……?」

芳佳「エイラさん?」

エイラ「なんだよこれぇ!?」

サーニャ「もしかして……聴いてたの……?」

エイラ「酷いじゃないかぁ!!私に隠し事なんてぇ!!」

芳佳「あの!!これはね……!!」

エイラ「宮藤はだまってろよぉ!」

芳佳「ごめん!!」

エイラ「説明しろ!!どうして私にまで秘密にしてたんだ!?私のこと嫌いなのかぁ!?」

サーニャ「違うの。エイラには完成した歌を聴いてほしかったから、黙ってただけ」

エイラ「でも、宮藤と一緒に歌う必要はないんじゃないか?」

サーニャ「ずっと聴いているだけじゃ、退屈だと思って」

エイラ「宮藤じゃなくて私をさーそーえーよー!!」

サーニャ「……」

芳佳「エイラさん!!ちょっと待って!!」

エイラ「私だってサーニャと歌いたいのにぃ……」

サーニャ「わかった。これからは一緒に歌おう。歌も振り付けも完成したから」

シャーリー「なんだ、できたのかぁー」

サーニャ「……!?」ビクッ

美緒「サーニャ。悪いがここ数日の特訓は皆知っている」

サーニャ「ど、どうして……」

ルッキーニ「それはねー芳佳がー」

バルクホルン「ルッキーニ少尉。口元に食べかすがついているぞ」グッ

ルッキーニ「むぅ!?!」

バルクホルン「綺麗にしておかなければな」ゴシゴシ

ルッキーニ「うにゃぁ……うぶぶぶ……!!」

シャーリー「あれだけ歌ってれば嫌でも耳にはいるって。ま、二人の歌声は嫌じゃないけどさ」

リーネ「ごめんね」

サーニャ「いえ……」

芳佳「あははは……。なんだか、恥ずかしい……」

エイラ「サーニャ、これからは隠し事なしだからな!な!」

サーニャ「うん。わかってる」

エーリカ「あれだけ完成度が高いなら明日ぐらいコンサートを開いてもいいんじゃない?」

サーニャ「コンサート……?」

美緒「良い考えだ。特訓の成果を見せてもらうとしよう」

サーニャ「でも、伴奏が……」

バルクホルン「スコアはないのか?」

サーニャ「ありますけど」

エーリカ「なら、ミーナに演奏させちゃえばいいよ」

美緒「そうだな。それぐらいならできるだろう」

サーニャ「……」

芳佳「どうする?」

エイラ「嫌なら嫌って言っていいんだぞ?」

芳佳「私は、歌いたいな」

サーニャ「え?」

芳佳「サーニャちゃんと一緒に練習した歌だもん。歌いたいよ、やっぱり」

サーニャ「……そうだね。歌おう」

翌日

シャーリー「ルッキーニ!!マイクチェックしてみてー」

ルッキーニ「こほんっ。――シャーリー、ボインっ。ペリーヌぺったんこぉー!!リーネはある意味、エースきゅうぅ!!美乳のバルクホル~ン!!!」

シャーリー「よぉーし!!完璧だ!!島中に聞こえる」

バルクホルン「ルッキーニ少尉ぃぃぃ!!!!なんだぁ!!!今の歌はぁぁぁ!!!!」

ペリーヌ「ルッキーニさん!!!貴女にだけは言われたくないと何度言ったらわかりますの!?」

リーネ「ある意味エース級ってなんですか!!」

ルッキーニ「芳佳もぺったんこ~!!」

シャーリー「おーい。マイクチェックはもういいぞー」

芳佳「ルッキーニちゃん、やめてぇぇぇ!!!」

サーニャ「……」

エイラ「ホントにやるのか?」

サーニャ「うん」

エイラ「サーニャがそういうなら……」

サーニャ「聴いててね。一生懸命、歌うから」

ルッキーニ「レディースアンドジェントルメーン!!おー待たせしましたぁ!!本日のメインイベント!!!歌姫のぉ~とーじょーでーす!!」

芳佳「あはは……どうもどうも」

サーニャ「うぅ……やっぱり恥ずかしい……」モジモジ

シャーリー「お、なんだ。衣装まで凝ってるなぁ。あんなフリフリのズボン、持ってたのか」

リーネ「可愛い。あれ、ほしいなぁ」

美緒「サーニャはいいとして、宮藤があんなズボンを持っているとは意外だな」

ミーナ「そうね……。買って来たのかしら?」

エーリカ「誰かが作ったんじゃない?ねえ、トゥルーデ?」

バルクホルン「宮藤!!しっかり歌え!!」

エイラ「サーニャ!!!サーニャ!!!」

ペリーヌ「はぁ……くだらないですわ……」

ルッキーニ「おしずかにぃ~!!ではぁ!!おねがいします!!」

芳佳「宮藤芳佳!!」

サーニャ「アレクサンドラ・ウラディミローヴナ・リトヴャクです」

芳佳「歌います!!来てください!!ブックマークア・ヘッド!!」

ミーナ「伴奏はまかせて」

サーニャ「はい」

芳佳「――きみのなかにっ わたしをずっとっ」

サーニャ「ブックマーク、してねー」

芳佳「わらいながらっ、頑張ったとっ」

サーニャ「めちゃ、くちゃ、ほめてねっ」

ルッキーニ「ひゅーひゅー!!」

シャーリー「あはははは。これはいい。可愛いぞぉー」

バルクホルン「……」

エーリカ「トゥルーデ、鼻血でてない?」

バルクホルン「ででにゃい」

エイラ「サーニャ!!サーニャ!!!」

美緒「おい!!静かにしろ!!聞こえないだろ!!」

ペリーヌ「もう……坂本少佐まで……」

芳佳・サーニャ「「うんめいせぇ~ん」」クルッ

ウー!!ウー!!

美緒「……!!」

ミーナ「敵襲!?」

美緒「総員、出撃準備!!」

ルッキーニ「えぇー!!まだ2番あるのにぃー!!」

シャーリー「文句言うな。ネウロイにここを落とされたら永遠に聞けなくなるぞ」

ルッキーニ「そうだけどぉ」

エーリカ「さくっと倒してコンサートの続きにしよー!!」

リーネ「そうですね!!」

エイラ「許さないぞ……ネウロイ……!!」

バルクホルン「消し炭にしてやる」

美緒「バルクホルンとエイラは気合が入ってるな!!いいことだ!!宮藤、サーニャ!!そのままで出られるな!?」

芳佳「はい!!いけます!!」

サーニャ「やれます」

美緒「よし!!総員、続けぇ!!」

空中

バルクホルン「おのれぇぇぇぇ!!!!砕けろぉぉぉ!!!!」スドドドドド!!!

エイラ「サーニャの歌をきかせろぉぉぉ!!!!」ズガガガガ!!!

芳佳「バルクホルンさん、すごーい」

リーネ「なんだか、いつも以上にキレがあるというか……」

エーリカ「これはまけてられないね!!!」

ペリーヌ「わたくしも!!」

ミーナ「坂本少佐!!コアを!!」

美緒「任せろ。バルクホルン、エイラ!!私が後ろにつく!!波状攻撃でトドメをさすぞ!!!」

バルクホルン「了解!!」

エイラ「サーニャの歌を邪魔すんなぁー!!!」

サーニャ「エイラ……」

芳佳「サーニャちゃんの歌を一番楽しみにしてたのは、やっぱりエイラさんみたいだね」

サーニャ「うん……」

美緒「宮藤の歌を途切れさせた罪を重いぞぉぉぉ!!!!であぁぁぁぁ!!!!」ザンッ

基地 滑走路

シャーリー「はぁー。終わったー。みんなー、おつかれー」

ルッキーニ「よっしか!サーニャぁ!ほら、ステージが二人をまってるよぉ」グイッ

芳佳「ちょっと、ちょっとまって……少し休ませて……」

サーニャ「つかれた……」フラッ

芳佳「わぁぁ!!サーニャちゃん、大丈夫!?」

サーニャ「うん……」

エイラ「ほら、みろ!!休まないからだぞっ」

サーニャ「ごめんね」

エイラ「いや、いいんだけど」

ルッキーニ「ねえねえ!コンサートぉ」

バルクホルン「残念だが、延期だな。宮藤とサーニャに無理はさせられない」

ルッキーニ「えぇぇー!?」

美緒「宮藤のズボン……。悪くないな……。あれを制服にできないものか」

ミーナ「美緒、ちょっといいかしら?」

ミーナの部屋

美緒「結果は?」

ミーナ「まだなんとも……。でも、可能性は高いわね」

美緒「サーニャの歌に釣られてネウロイが……な」

ミーナ「勿論、偶然かもしれないわ。今回だって予報よりも1日早いだけだったし」

美緒「しかし、無視はできない」

ミーナ「そう」

美緒「……危険だが、試してみるか?」

ミーナ「美緒……」

美緒「やるなら明後日だな」

ミーナ「……」

美緒「心配するな。その代わり明日は1日休暇を全員に与える」

ミーナ「そうね……」

美緒「それに決めなくてはいけないこともある」

ミーナ「それじゃあ、ブリーフィングルームにみんなを集めましょうか」

ブリーフィングルーム

美緒「えー、おほん。宮藤、サーニャのコンサートは中断という形になってしまったが、それでも島中に歌が流れたことで既に様々な声が届いている」

ミーナ「はい。赤城の乗組員からも「宮藤軍曹マジ萌え」「宮藤軍曹マジ天使」などの不要で不快な声もありました」

エーリカ「その声の主はもうこの世にいないね」

シャーリー「あはは。怖いこというなって」

エイラ「サーニャにはなかったのか」

ペリーヌ「サーニャさんの声はか細くて、よく聞こえませんでしたし……」

エイラ「なんだとぉー!!文句があるのかぁ!!」

ペリーヌ「客観的な意見を述べているだけです」

エイラ「ツンツン眼鏡めぇ……」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

美緒「そしてこんな意見もあった。「是非とも、ウィッチーズ全員の歌声が聞いてみたい」とな」

ミーナ「これは杉田淳三郎大佐からの要望ね」

芳佳「赤城の……」

美緒「でだ、折角だからみんなでサーニャの歌を歌ってみようと思うのだが、どうだ?」

バルクホルン「まってくれ。そんなことをしている余裕はないはずだ」

ミーナ「わかっています。これは興味のある人だけが参加してください」

バルクホルン「なんだ。そういうことなら構わない」

美緒「二人一組を作り歌ってもらう。好きな者と組んでいい」

バルクホルン「……!」ガタッ

ペリーヌ「まぁ!!あの!!坂本少佐ぁ!!」

美緒「どうした?」

ペリーヌ「是非ともわたくしと……歌を……」モジモジ

美緒「うーん……。宮藤は?」

芳佳「え?私は勿論サーニャちゃんと……」

ミーナ「ごめんなさい、宮藤さん。できるだけ違う人を選んでくれるかしら?」

芳佳「どうしてですか?」

ミーナ「色んな人との組み合わせがあったほうがいいと思うから。ダメかしら?」

芳佳「そういうことなら……」

ミーナ「ありがとう」

エーリカ「みーやふじ!私と歌わない?」

芳佳「あ、はい」

ルッキーニ「芳佳はわたしとなのぉー」グイッ

芳佳「ちょっと、ルッキーニちゃん」

エーリカ「いま、はいっていったぁー」グイッ

芳佳「いたたたっ」

シャーリー「宮藤はあたしとだよなぁ?」ギュゥゥ

芳佳「むぐぅ……!!」

芳佳(胸が顔に……息が……!!)

リーネ「わ、わたしも芳佳ちゃんとがいいー!!」ギュゥゥ

芳佳「もがぁ……もが……」

ミーナ「あらあら。宮藤さん、モテモテね」

エイラ「サーニャ。私はサーニャと歌うからな」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

美緒「おーい。宮藤は一人しかいないんだ。公平にくじかなにかで決めろ」

バルクホルン「それがいい。そんなこともあろうかと、作っておいた。さ、一本引け。先端が赤いものが当たりだ」

エーリカ「えーと、どれにしようかなぁ」

ルッキーニ「大尉、当たりどれぇ?」

バルクホルン「私に訊くな」

シャーリー「当たり、あるんだろうな?」

バルクホルン「当たり前だ」

美緒「どれどれ……魔眼で調べるか」

バルクホルン「坂本少佐!!それは不公平ではないだろうか!!」

ペリーヌ「少佐……なぜくじを……?」

美緒「一応だ。一応」

リーネ(あたりますようにあたりますように……)

ルッキーニ「せーのっ!!――あーん、はじゅれー」

エーリカ「あーあ」

バルクホルン「うむ。よし。私だな」

美緒「ちょっとまて、バルクホルン。お前は参加しないと言ってたではないか」

バルクホルン「証拠がない」

シャーリー「つーか、なんで辺りが都合よくバルクホルンのところにいくんだ?」

ルッキーニ「あーやーしーいー」

エーリカ「トゥルーデがズルしたー」

ルッキーニ「ズルだー!!」

エーリカ「ズルだー」

バルクホルン「ええい!!憶測だけでそんなこというな!!!」

シャーリー「お前、そこまでして宮藤と歌いたいのか?」

バルクホルン「だから……!!」

芳佳「あ、あの!」

リーネ「芳佳ちゃん?」

芳佳「私、みんなと歌います。それなら喧嘩しなくてもいいですよね」

リーネ「でも、疲れちゃうんじゃ……」

芳佳「私なら大丈夫っ!!坂本さんに鍛えられてるし!!」

バルクホルン「宮藤……」

シャーリー「うーん……。ルッキーニ、あたしと歌うか?」

ルッキーニ「そうしようかなぁ。芳佳、疲れちゃいそうだし」

芳佳「シャーリーさん……」

エーリカ「どうする?トゥルーデ?」

バルクホルン「……宮藤だけに負担をかけさせるわけにもいかないか。ハルトマン、私と組むぞ」

エーリカ「はいでありますっ」

芳佳「……」

芳佳(これはこれで寂しい……)

美緒「よし。なら、宮藤は私とだな」グイッ

芳佳「え?あ、はい。おねがいします」

ペリーヌ「えぇぇぇ……!!!」ガクッ

リーネ「……」オロオロ

ペリーヌ「リーネさん……組みますわよ……」

リーネ「はい。お願いします」

ミーナ「決まったみたいね。それじゃあ、各自練習しておいて。明日の夕方ぐらいに練習の成果をここで披露してもらうから」

滑走路

美緒「では!!宮藤!!」

芳佳「はい!!」

美緒「歌の練習をおこなう!!準備はいいか!!!」

芳佳「はいっ!!!」

バルクホルン「……」

エーリカ「恨めしそうに少佐を見ない」

バルクホルン「しかしだな……」

シャーリー「そんなに歌いたいなら、頼みに行けばいいんじゃないか?宮藤なら喜んで歌ってくれるぞ」

バルクホルン「もう決まったことだ!!軍人に二言はない!!」

エーリカ「無理しちゃってー」

ペリーヌ「きーみとならー!!」

リーネ「きーみとならー」

エイラ「あ、一番星だ」

サーニャ「ホントだ」

大浴場

芳佳「……」ブクブク

リーネ「芳佳ちゃん、大丈夫?」

芳佳「うん……」

バルクホルン「だらしがないな」

ルッキーニ「きみのなかにぃ~」

シャーリー「半音あげるなって」

エーリカ「でもさぁ、みんなで歌うのはいいんだけど、張り合いがないよね」

美緒「どういうことだ?」

エーリカ「やっぱり目標があったほうがいいと思わない?」

シャーリー「そうだなぁー。折角歌うんだから、誰かに評価してほしいよ」

ペリーヌ「そんなのどうしますの?」

美緒「うーん。歌を録音して、その録音したものを売れば分かりやすいな」

ルッキーニ「おぉぉ!!売り上げ勝負だ!!」

芳佳「えぇ!?勝負するんですかぁ!?」

空中

エイラ「サーニャ、無理するなよ」

サーニャ「大丈夫。しっかり休んだから」

エイラ「ならいいんだけどさ」

サーニャ「きみのなかに~わたしをずっと~」

エイラ「ブ、ブックマークしてねー」

サーニャ「ふふ……。楽しいね」

エイラ「そうだな。折角だし、練習しながら哨戒するか?」

サーニャ「いいのかな……」

エイラ「誰も聴いちゃいないって」

サーニャ「……うん」

エイラ「なら、私からな。――笑いながら頑張ったと」

サーニャ「めちゃ、くちゃ、ほめてねっ」

エイラ「……サーニャ、その『ほめてねっ』のときにウインクしてみてくれ」

サーニャ「えっと……。ほめてねっ」キラッ

ミーナの部屋

ミーナ「売り上げって……」

美緒「悪い考えではない。予算も削減されたばかりだからな」

ミーナ「上層部がそんなお小遣い稼ぎを許してくれるかしらね」

美緒「構わないだろう。現状士気も上がっているし、歌を聴きたいという要望が多いのもまた事実だ」

ミーナ「……美緒、まさか」

美緒「録音したものでもネウロイを惹きつける効果があるのなら、世界中で活用できる」

ミーナ「そのこと、みんなには?」

美緒「完成してから伝えようと思っている。今は皆が盛り上がってる。水を差すのは気が引けてな」

ミーナ「それならいいのだけど」

美緒「ミーナは歌わなくていいのか?」

ミーナ「私は……別に……」

美緒「組んでやろうか?」

ミーナ「貴女には宮藤さんがいるでしょう?」

美緒「あっはっはっは。なぁに。宮藤だって、誰かと浮気する可能性は高い。未だに全員から狙われているようだしな」

宮藤の部屋

芳佳「どきっとするっ、気がついたら~崖っぷち、ギリギリだったっ」

コンコン

芳佳「はぁーい」

バルクホルン「もうすぐ消灯時間だぞ。明日は休みだが、いつまでも起きているのは感心しないな」

芳佳「すいません。まだちょっと練習したいなと思って」

バルクホルン「そうか……」

芳佳「すぐに寝ますね」

バルクホルン「いや。まだ消灯までは時間に余裕がある。練習するといい」

芳佳「はいっ」

バルクホルン「……」

芳佳「えーと。ぽわっとして、ごめんごめんっ」

バルクホルン「テレっ、パシ~ありがとうっ」

芳佳「え?」

バルクホルン「なんだ?」

コンコン

芳佳「はぁーい」

リーネ「芳佳ちゃん、歌のパートでちょっとわからないところ……が……」

バルクホルン「……」

リーネ「……おじゃましました」

芳佳「リーネちゃん、はいってはいって」

リーネ「で、でも……」

バルクホルン「気にするな。私も宮藤から指導を受けていたところだ」

芳佳「そ、そんな!!」

リーネ「やっぱりずっとサーニャちゃんと練習してきただけあって、上手だもんね」

芳佳「そんなことないよぉ」

バルクホルン「いや、あるぞ。自信を持つといい」

コンコン

芳佳「は、はい?」

シャーリー「いやぁー。ちょっと練習につきあってくれないか、宮藤。どうにもあたしとルッキーニだけじゃ、あっているのか分からない箇所が……。って、なんでリーネとバルクホルンが」

廊下

ペリーヌ『あー!!あ~!!あぁぁぁ~!!!』

ミーナ「ペリーヌさーん。消灯時間ですよー」

ペリーヌ『中佐!?も、申し訳ありません!!』

ミーナ「明日が非番でも夜更かしはダメですよ」

ペリーヌ『は、はい!!』

ミーナ「……よし」

『次、あたしとな!!』

『おい。順番でいえば私のはずだ』

『えぇー?トゥルーデはさっきやったじゃーん』

『あの……もう一度、私と……』

『みなさん!!仲良くしてください!!』

ミーナ「……宮藤さん?」

芳佳『あ、は、はい!!』

ミーナ「賑やかね。誰かのパーティーかしら?」

翌日 ブリーフィングルーム

バルクホルン「どんな時もっ全部本気っ、ギャップにも驚かないでっ」

エーリカ「たった今を進まなくちゃ、みら、いも、ないでしょっ」キラッ

芳佳「すてき……」

リーネ「うん」

シャーリー「バルクホルンもウインクしたら面白いのにな」

美緒「……」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「ふん。サーニャのほうが何倍も上手いな」

バルクホルン・エーリカ「「――眠れるっ、翼をっ、信じて」」

芳佳「わー!!すごーい!!」パチパチ

バルクホルン「宮藤、どうだった?私の歌は」

芳佳「力強い歌声で、また歌の印象が変わってて、良かったです!!」

バルクホルン「宮藤の指導がよかったんだな」

エーリカ「その分、怒られたけどねー」

芳佳「ぽわっとして、ごめんごめん」

美緒「てれっぱしーっありがとっ」キラッ

ミーナ「うーん……」

ルッキーニ「何難しい顔してるのー?」

シャーリー「自分の歌いたいってことしてますねー」

ミーナ「シャーリーさん。からかわないで」

シャーリー「気になることでも?」

ミーナ「え、ええ……」

芳佳・美緒「「眠れる!つばさをっ!!信じてっ!!」」キリッ

バルクホルン「うん……うん……」ホッコリ

エーリカ「宮藤、さっすがぁ!!」

ペリーヌ「坂本少佐!!歌姫そのものでしたわ!!」

美緒「そうか。そういわれると歌ってよかったと思えるな」

ミーナ「これで全員ね。録音も完了したし。みんな、お疲れ様。とてもよかったわ」

エイラ「で、このあとどうするんだ?」

ミーナ「みんなの歌を録音したものを1度、島全域に流します」

美緒「それで気に入った歌があれば買いに来るようにと告知する」

バルクホルン「気に入った歌って、全部同じ歌詞だが」

美緒「宮藤が言っていただろ。歌い手によって歌の印象が変わるものだ」

エーリカ「つまり、好きな歌声で選べってことか」

ミーナ「そうなるわね」

ルッキーニ「誰が一番売れるかなぁ?」

リーネ「うーん。やっぱり、サーニャちゃんとエイラさんかなぁ……?」

シャーリー「坂本少佐と豆だ……宮藤さんペアに決まってますわ」

バルクホルン「同感だ」

エーリカ「トゥルーデ、珍しく手元に大金置いてたけど、あれ、なんのため?」

バルクホルン「なんのことか分からないな」

芳佳「なんだか、ドキドキするね」

サーニャ「うん。でも、こうやって色んな人に歌って聴いてくれるだけで嬉しい」

芳佳「そっか。そうだよね。サーニャちゃんの歌が広まるほうが嬉しいね」

>>73
シャーリー「坂本少佐と豆だ……宮藤さんペアに決まってますわ」

ペリーヌ「坂本少佐と豆だ……宮藤さんペアに決まってますわ」

夜 滑走路

きみのなかに~わたしをずっと~ブックマークしてね~

サーニャ「……」

芳佳「サーニャちゃーん!!」

サーニャ「どうかした?」

芳佳「どうしてここにいるの?みんな食堂で聞いてるよ?」

サーニャ「うん。外のほうが綺麗に聞こえるから」

芳佳「そうなんだ」

サーニャ「……ごめんなさい。戻るわ」

芳佳「いいよ。私もここで聴きたい。サーニャちゃんの歌」

サーニャ「……」

芳佳「ダメ、かな?」

サーニャ「ううん。一緒にきこ」

芳佳「ありがとう!」

うんめいせ~ん ぎゅっと、かさねたらぁ~

芳佳「ホントにいい歌だよね。こういうのってどうやって思いつくの?」

サーニャ「わからない」

芳佳「え?どうして?」

サーニャ「寝て起きたときにふっと歌詞やメロディーが頭の中に出てきて……」

芳佳「すごーい!!天才みたーい!!」

サーニャ「ううん。きっと、偶然だから。もう作れないと思う」

芳佳「そんなことないよ!!」

サーニャ「そうかな」

芳佳「これだけの良い歌が偶然で作れるわけないもん!!」

サーニャ「だといいな」

芳佳「もっといっぱいつくって、家族の人と再会したときに聞かせて上げよう。それでびっくりさせよう!」

芳佳「全世界で歌われている歌は実は私が作ってたんだよーって。絶対に驚くよ、うん」

サーニャ「ふふっ」

芳佳「なに?変なこといったかな?」

サーニャ「違うの。なんだが、そういわれるとそうしたくなるなって……。不思議な気持ち」

ミーナの部屋

美緒「ネウロイは発見されずだな」

ミーナ「そう……」

美緒「サーニャの歌はハズレか……。歌は関係なかったか」

ミーナ「ねえ、もしかして宮藤さん、という可能性はないかしら?」

美緒「まて。以前のネウロイは明らかにサーニャを真似ていた。宮藤は関係ないだろ。それに今日だって宮藤の歌は流れていた。素敵だっただろ」

ミーナ「そうだけど」

美緒「どうしても気になるか」

ミーナ「ええ、そうね。歌に何らかの反応があったのは間違いないと思うの」

美緒「宮藤か……」

ミーナ「考えられないかしら?」

美緒「お前がそこまでいうなら、宮藤にやってもらうか」

ミーナ「ええ。ただし、このことは」

美緒「……あまり宮藤に隠し事はしたくないがな。今回は致し方あるまい」

ミーナ「お願いね」

翌日 滑走路

ルッキーニ「歌姫たちの歌声ありまーす!!」

美緒「ルッキーニが売り子とはな」

ルッキーニ「にひひ。あたしからやるって立候補したんだ!!」

美緒「ほう?」

ルッキーニ「目の前で誰の歌が売れて行くのか見てみたかったしぃ!」

美緒「で、どうなんだ?」

ルッキーニ「あっち」

美緒「ん?」

「宮藤軍曹のを!!!」

「ルッキーニ少尉のください!!」

「宮藤ヴァージョンをあるだけもらう!!!」

「坂本少佐のをあるだけくださいな!!!」

美緒「盛況だな。いいことだ」

ルッキーニ「でっしょ?この分だと、芳佳と少佐の歌が断トツ一位かな?」

廊下

リーネ「芳佳ちゃん!!はやくはやく!!」

芳佳「ま、まってぇぇ、リーネちゃーん」

美緒「宮藤、何をしている?」

リーネ「あ、坂本少佐」

芳佳「あのハルトマンさんが、売るならサインと握手も一緒にしたほうがいいって……」

美緒「……そんなことはしなくていい」

リーネ「いいんですか?」

美緒「不必要に男性隊員と接触すればミーナ中佐が良い顔をしないからな」

芳佳「そういえば……」

美緒「それよりも宮藤、お前に頼みたいことがある」

芳佳「は、はい。なんでしょうか」

美緒「隊の各人とペアを組み、歌ってくれ」

芳佳「はいっ!!え?」

リーネ「全員って……全員ですか?」

美緒「隊の各人とペアを組み、歌ってくれ」

美緒「隊の各人全員とペアを組み、歌ってくれ」

芳佳「でも、どうして……」

美緒「……」

芳佳「どうしてなんですか?みんなは歌いました。それでいいじゃないですか」

美緒「とにかく頼む」

芳佳「坂本さん。何か隠してますか?」

美緒「何故だ?」

芳佳「何となくです」

美緒「そうか。ならば、隠していないと言っておくか」

芳佳「坂本さん。私にできることならなんでもします。だから、理由を言ってください」

リーネ「芳佳ちゃん……」

美緒「理由を言えば、お前は歌わないかもしれない」

芳佳「……」

美緒「だが、疑ったままでもお前は歌わないかもしれないな」

芳佳「はい。言ってくれないなら歌いません!!」

美緒「……分かった。話そう」

リーネ「歌に惹かれてネウロイが現れる?」

芳佳「そうなんですか?」

美緒「ああ。もしこの仮説が立証できれば、我々人類は好きな場所、時間にネウロイを誘き寄せることができる」

リーネ「それでサーニャちゃんの歌を……」

美緒「ああ。しかし、サーニャの歌と歌声では結果がでなかった。そこでだ、宮藤。お前の声ならどうだろうと中佐が言った」

リーネ「すごい、すごいよ、芳佳ちゃん。これでネウロイとの戦いも俄然有利になるね

美緒「どうだ?」

芳佳「……坂本さん。サーニャちゃんはそんなことのために歌を作ったわけじゃないですし、私も戦争のために歌の練習をしたわけじゃないです」

美緒「やはり、嫌か」

芳佳「嫌です」

リーネ「芳佳ちゃん、どうして?」

芳佳「ごめん、リーネちゃん。ネウロイに勝てやすくなるのはわかるけど、それでも戦争のためにサーニャちゃんの歌が利用されるのは……」

美緒「宮藤。お前が歌うだけで守れるものが広がることも事実だ」

芳佳「……」

美緒「考えてくれ」

食堂

ルッキーニ「ではぁぁ!!結果発表ー!!」

シャーリー「誰が一番売れたんだ?」

ルッキーニ「えっと。まず、第5位!!ペリーヌ、リーネペア!!」

リーネ「あぅ……」

ペリーヌ「ま、まぁ、想定内ですわっ。ほーっほっほっほっほ!!」

ルッキーニ「第4位!!バルクホルン大尉、ハルトマン中尉ペア!!」

エーリカ「ま、妥当な順位かな」

バルクホン「ふん」

ルッキーニ「第3位!!エイラ、サーニャペア!!!」

エイラ「くそぉ!買い占めたのにぃ!!」

ルッキーニ「第2位!!ルッキーニ、シャーリーペア!!!」

シャーリー「お。意外だなぁ」

ルッキーニ「第1位はぁぁ……!!芳佳、坂本少佐ペア!!」

芳佳「……」

ルッキーニ「ちなみに、第6位のミーナの歌は一つもうれなかったってー」

バルクホルン「ミーナ!?歌っていたのか!?」

シャーリー「どうした、宮藤?元気ないな。一位だぞ?うりうり」

芳佳「は、はい……」

エーリカ「組織票での一位じゃ嬉しくないよねぇ?」

バルクホルン「ハルトマン。組織票とはなんのことだ?」

エーリカ「あれ?手元にあった大金はどうしたの?どこかで使ったの?」

バルクホルン「なんのことかさっぱりだな」

ペリーヌ「ぬぅぅ……。坂本少佐が一位なのはいいですけど、あの豆狸まで一位なのは許せませんわ」

シャーリー「なんにしても、売り上げ一位の宮藤と少佐の歌は他の基地や戦艦でも流すんだろ。ちょっとしたものだな」

バルクホルン「そのうち、音楽の教材に載るかも知れないな」

エーリカ「それはないでしょー」

芳佳「……すいません。失礼します」

リーネ「あ、芳佳ちゃん!?」

バルクホルン「どうしたんだ……」

滑走路

芳佳「はぁ……」

サーニャ「……」

芳佳「はぁ……私、どうしたらいいのかなぁ……」

サーニャ「きみのなかに、わたしをずっと、ブックマークしてねー」

芳佳「わぁ!?サ、サーニャちゃん!!いつからいたの!?」

サーニャ「今、きたところ」

芳佳「びっくりしたぁ……。声かけてよぉ」

サーニャ「歌で驚かせたほうがいいって言われたから」

芳佳「それは意味が違うよ!!」

エイラ「(いた……。また宮藤と一緒かぁ……)」

芳佳「サーニャちゃんは聞いた?」

サーニャ「何を?」

芳佳「サーニャちゃんが作った歌でネウロイを好きな時間、好きな場所に誘導できるって話」

サーニャ「……うん」

芳佳「ネウロイは人類の敵。倒すべき相手。それはよくわかってる」

サーニャ「……」

芳佳「だけど、だけどね。私はサーニャちゃんの歌をこんなことに……」

サーニャ「芳佳ちゃん」ギュッ

芳佳「サーニャ……ちゃん……」

エイラ「(あー!!なにやってんだー!!)」

サーニャ「ありがとう。私の歌なのに、真剣に悩んでくれて」

芳佳「当然だよ!!だって、サーニャちゃんの歌は人を笑顔にするためにあるんだよ?戦争で使うなんて……!!」

サーニャ「私の歌でネウロイを倒せるなら、私はそれでいい」

芳佳「でも!!」

サーニャ「それで笑顔になれる人が多くいるから」

芳佳「サーニャちゃん……」

サーニャ「だから、使って。ううん。歌って欲しい。宮藤さんにだからこそ、歌を託すことができるの」

芳佳「……うん」

サーニャ「がんばって」

ブリーフィングルーム

美緒「えー。急に召集をかけてすまない。今から全員でとあることをやってもらう」

バルクホルン「勿体ぶらずに教えて欲しい」

美緒「そうだな。これから夜の空に出る。そこで全員に歌ってもらう」

シャーリー「歌うって?」

ミーナ「実験……と言ってしまうと聞こえは悪いけれど、どうしても試してみたいことがあります」

美緒「これが成功すれば、現在の勢力図が一気に覆る可能性も秘めている」

エーリカ「歌うとネウロイがやられちゃうとか?」

美緒「それに近いかもしれない」

リーネ「……」

ペリーヌ「そんなこと……信じられませんわ……」

美緒「私も100%信じているわけではない。だが、可能性にかけてみたいんだ」

芳佳「あの!!みなさん!!どうか私に力を貸してください!!」

バルクホルン「いいだろう」

シャーリー「おいおい。もっと考えてからにしたほうがいいんじゃないか?あたしも賛成だけど」

ルッキーニ「夜の空でコンサートだぁ!!たのしそー!!」キャッキャッ

バルクホルン「遊びにいくのではないのだぞ。ネウロイとの戦闘もあり得る危険度の高い任務だ」

ルッキーニ「わかってるよぉ」

エーリカ「で、全員で合唱するわけ?」

美緒「いや。全員で歌う必要はない。宮藤ともう一人が歌っていればそれでいい」

ミーナ「宮藤さんとパートナーは隊の最後尾へ。パートナーは歌が終わると同時に交代していきます」

美緒「他の者は宮藤たちの盾になるように陣形をつくる。いいな」

シャーリー「歌に釣られてやってきたネウロイを波状攻撃してやるんですね?」

美緒「そういう形をとる。いつ現れるかは分からん。常に警戒を怠るな」

エーリカ「でも、本当に歌に誘われて出てくるかなぁ」

ミーナ「失敗しても構わないと考えています」

バルクホルン「神経をすり減らすコンサートになりそうだな」

エイラ「なんだか、疲れそうだな」

サーニャ「そうだね……」

エイラ「……」

ハンガー

美緒「出撃は15分後だ。焦らなくていい。しっかり準備をしろ」

バルクホルン「こちらから仕掛けるのは初めてだな」

エーリカ「腕と喉がなるねぇー」

シャーリー「考えてみれば、これでさ宮藤と歌ってネウロイが現れたら、各地に引っ張りだこになるんじゃないか?」

リーネ「え?」

シャーリー「だって、ネウロイを誘い出せるんだ。みんな欲しがるだろ、そんな人材」

エーリカ「確かにねー。もう宮藤と一生のバディになるね」

バルクホルン「……きみのなかに~。んんっ!!きみのなかに~。ちがうか……」

ペリーヌ「はぁ……その役目が坂本少佐とわたくしならよかったですのに……」

リーネ「……一生、ペアになるかもしれないんだね、わたしたち」

芳佳「あはは。ドキドキするね」

リーネ「うん!」

サーニャ「……」

エイラ「サーニャ、ちょっと」

サーニャ「なに?」

エイラ「いいのか?お前の歌を軍事利用されるんだぞ」

サーニャ「いいよ」

エイラ「でも」

サーニャ「大好きな人に歌ってもらえるなら、私は満足だから」

エイラ「それって……宮藤か?」

サーニャ「うん」

エイラ「……」

サーニャ「みんなに歌ってほしいから」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「私、みんなが大好きだから」

エイラ「その中で一番好きなのはだれだよー」

サーニャ「それは――」

美緒「よし!!そろそろ出撃する!!全員、続け!!」

芳佳「はい!!!」

空中

美緒「このあたりでいいだろう。宮藤、リーネ。頼むぞ」

芳佳「はい」

リーネ「がんばります!」

ミーナ「では、作戦を開始します」

芳佳「いくよ、リーネちゃん」

リーネ「芳佳ちゃん。手、握っててもいい?」

芳佳「うん」ギュッ

リーネ「ありがとう。こうしてると安心する……」

芳佳「そうだね。私もだよぉ」

リーネ「芳佳ちゃん……えへへ……」

芳佳「えへへ」

美緒「何をしている!!!早く歌え!!」

芳佳「は、はい!!!」

リーネ「ごめんなさい!!」

ミーナ「――次、バルクホルン大尉。お願いします」

バルクホルン「了解した」ブゥゥゥン

エーリカ「私じゃだめだったかぁ」

美緒(やはり歌では来ないか……)

ミーナ(それともサーニャさんと宮藤さんが……?)

芳佳「はぁ……はぁ……」

バルクホルン「宮藤、辛そうだな」

芳佳「はい。もう3回も熱唱してますから」

バルクホルン「ほら、水を飲め」

芳佳「すいません……」ゴクッゴクッ

バルクホルン「宮藤……」ギュッ

芳佳「バ、バルクホルンさん!?」

バルクホルン「手を握ったまま歌えばきっとネウロイは来る。そんな気がする」

芳佳「は、はい!!そうですね!!」

バルクホルン「よし!!歌うぞ!!!絶対にネウロイをここに呼ぶんだ!!!私たちでっ!!!」

ミーナ「――お疲れ様。次……サーニャさん。お願いします」

サーニャ「わかりました」ブゥゥゥン

バルクホルン「……」

エーリカ「よしよし」

シャーリー「なんか、相当自信があっただけに、失敗の反動がすごいなぁー。だいじょうぶかぁー?」

ペリーヌ「な、なんだか、大尉の背中が一回り小さく見えますわ……」

美緒「(分かる。分かるぞ、バルクホルン)」

リーネ「……」

ルッキーニ「リーネもおちこんでるよー」

シャーリー「おいおい。お前たち、宮藤のこと好きすぎだろぉ。あたしも好きだけどさー」

エイラ「まったくダメだな」

芳佳「ふぅ……。サーニャちゃん」

サーニャ「大丈夫?」

芳佳「うん。平気だよ。サーニャちゃんと歌うのなんだか久しぶりな気がする」

サーニャ「そうだね。他の人とたくさん歌ってたから……」

ミーナ「では、開始します」

芳佳「きみのなかに~わたしをずっと~ブックマークしてね~」

サーニャ「笑いながら~がんばったと~めちゃ、くちゃ、ほめてねっ」キラッ

芳佳「どんな時もっ 全部本気っ ギャップに~も驚かないでっ」

サーニャ「たった今をっ 進まなくちゃっ みら、いも、ないでしょ?」

芳佳「タタカイの意味、アタタカイならっ!」

サーニャ「戦いぬく~よっ 戦いなどないっ」

芳佳・サーニャ「「わたしたちの~せ~かいのっ ために~!」」キラッ

バルクホルン「……」

エーリカ「トゥルーデ、前見なきゃ」

バルクホルン「見ている」

シャーリー「おーい。誰か、バルクホルンを正気に戻せー」

ミーナ「坂本少佐?どうかしら」

美緒「まて……きた。ネウロイがきたぞ!!」

芳佳「……!」

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!

美緒「構えろ!!」

ルッキーニ「芳佳とサーニャの歌かぁ!!」

シャーリー「なるほどね!!この前のネウロイもそうだったわけだ!!」

ミーナ「宮藤さん、サーニャさんは歌い続けて」

芳佳「で、でも」

ミーナ「お願い」

芳佳「は、はい」

サーニャ「大丈夫。私がいるから」ギュッ

芳佳「……うんっ」

芳佳・サーニャ「「きみとなら~きっとっ できること~!」」

芳佳・サーニャ「「ココロ~とココロでっ 手をっ 結んで~!!」」

芳佳・サーニャ「「うんめいせ~ん」」クルッ

芳佳・サーニャ「「ぎゅっとっ かさねたら~」」

リーネ「――目標補足!!撃ちます!!」

美緒「まて!!まだ来るぞ!!」

シャーリー「なんだって!?」

ミーナ「まって。数を確認するわ」

美緒「私が視認できるだけでも5体……いや、7体か」

リーネ「あの!!どうしたら……!!」

エーリカ「ペリーヌ。出番じゃないの?」

ペリーヌ「そのようですわね」

美緒「ペリーヌは私の後ろにつけ!!」

ペリーヌ「了解!!」

ルッキーニ「あれ!?上からもくるよ!!」

ミーナ「上!?」

ネウロイ「……」ゴォォォ!!

美緒「これは……!!」

バルクホルン「クロステルマン中尉!!頼む!!数が多すぎる!!」

ペリーヌ「は、はい!!――トネール!!!」バリバリバリバリ!!!

芳佳「きゅっと結ぶ 口もとから~ホホエミが消えた~」

サーニャ「ちょっとわたしっ フライングぎみっ 前しか見てない~」

芳佳「どきっとするっ 気がついたら崖っぷち ギリギリだったっ」

サーニャ「ぽわっとしてっ ごめんごめんっ テレ、パシーありがと~」キラッ

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!

エーリカ「なにこれー!!撃墜数稼ぎ放題にもほどがあるってー!!」

バルクホルン「中佐!!敵の数は!?」

ミーナ「だめ!!際限なく増えていく!!」

リーネ「そ、それって!!」

エイラ「おいおい。なんでだよ」

ペリーヌ「なんでって……」

美緒「――宮藤!!歌うのをやめろ!!」

芳佳「え?あ、はい!!」

サーニャ「あ、ネウロイいっぱい……」

リーネ「芳佳ちゃん!!気をつけて!!」

ネウロイ「……」ゴォォン!!!

芳佳「きゃぁ!!」ギィィン!!!

サーニャ「なにこれ……」

シャーリー「こりゃ、とんでもないコンサートになったもんだー!!」

ルッキーニ「キリがなぁーい!!!」スガガガガ!!

美緒「ふっ!!」ザンッ!!

ネウロイ「……」キャー

エーリカ「トゥルーデー、弾足りる?」

バルクホルン「問題はないが、魔法力はどうかな」

芳佳「こ、これって……」

サーニャ「私のせい……」

芳佳「た、戦わないと!!」

サーニャ「……私の歌でみんなが……」

芳佳「サーニャちゃん!!」

サーニャ「そんな……」

芳佳「しっかりして!!」

サーニャ「でも……宮藤さん……」

芳佳「サーニャちゃんの歌は笑顔になれるよ。ううん、もしかしたらネウロイたちもサーニャちゃんの歌を聴きにきただけかもしれないよ」

サーニャ「そんなわけ……」

芳佳「ううん。違うよね。私とサーニャちゃんの歌を聴きにきてくれたのかもしれない」

サーニャ「……」

芳佳「もう戦いになっちゃって、ネウロイに訊ねたりはできないけど、きっとそうだよ」

サーニャ「そうなのかな……」

芳佳「だって、サーニャちゃんの歌で幸せになれないなんてことは絶対に――」

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!

リーネ「芳佳ちゃん!!!危ない!!」

美緒「宮藤!!後ろだ!!」

バルクホルン「くっ!!」ブゥゥゥン!!!

エイラ「サーニャ!!!」ブゥゥゥン!!!

芳佳「――ないからっ!!!」

芳佳「つっ……」ギィィィン

サーニャ「あ……」

ネウロイ「……」ゴォォ

芳佳「くぅぅ……!!」

サーニャ「……そのままシールドを展開して」

芳佳「うん!」

サーニャ「――発射」ボシュッ

ドォォォン!!

シャーリー「ふぅー。あぶないなぁー。宮藤ー」

バルクホルン「まったく……」

エイラ「宮藤……」

美緒「各個撃破だ!!最後の一体まで気を抜くな!!」

バルクホルン「了解!!」

エーリカ「はいはーい」

リーネ「発射っ!」

基地 滑走路

ルッキーニ「あぁぁ……つかれたぁぁぁ……」

シャーリー「流石に……な……」

リーネ「うぅん……」ガクッ

芳佳「リーネちゃん、大丈夫!?」

リーネ「な、なんとか……」

エイラ「宮藤、おまえこそ大丈夫か?」

芳佳「私は平気。エイラさんこそ怪我はない?」

エイラ「まぁ、掠り傷程度だ。気にするな」

バルクホルン「はぁ……はぁ……」

エーリカ「結構稼げたね、トゥルーデ?」

バルクホルン「ふっ。流石だな。ハルトマン」

ペリーヌ「もう……たてませんわ……」

サーニャ「ねむい……」

美緒「みんな。すまない」

芳佳「坂本さん?」

美緒「私の責任だ。こういった事態を考えなかった、私の……」

ミーナ「いえ。この作戦は私が考案したものです。坂本少佐は……」

美緒「何をいう。私が……」

ミーナ「いや、私が……」

芳佳「あぁ……あの……」

シャーリー「はいはい。少佐も中佐も悪いってことでいいんじゃないですか?」

美緒「な……うむ……」

ミーナ「……そうね。本当にごめんなさい」

バルクホルン「そうだな。この作戦の重大な危険性を考慮しなかった、二人に責任があるといえる」

美緒「その通りだ。気を急いていたのかもしれない」

ミーナ「美緒……」

バルクホルン「そこでだ。処罰があって然るべきだと、私は思うのだが。皆の意見は?」

芳佳「えぇぇ!?そんなぁ!!坂本さんもミーナさんもいつもがんばってくれてるのに!!」

シャーリー「でも実際、誰か死んでいてもおかしくなかったわけだしさ。少佐も中佐も何もなしじゃ気がすまないだろうし。罰ゲームぐらいはアリなんじゃないか?」

ルッキーニ「じゃあじゃあ、少佐と中佐のペアで歌って踊ってもらおー!!」

シャーリー「それいいな!!」

美緒「まて!!きちんとした……」

バルクホルン「少佐、中佐。そういうわけだ」

エーリカ「トゥルーデ、最高にフリフリしたズボンでも作ってあげてよぉ」

バルクホルン「うん。それは妙案だ。冴えているなハルトマン」

ミーナ「あらあら……」

ペリーヌ「そ、そんなの!!ダ、ダメですわよ!!!」

シャーリー「おいおいー。クロステルマン中尉?みたくないのかぁ?フリフリのズボンで躍る坂本少佐をさ」

ペリーヌ「そ、それは……それは……でも……それは……でも……いや……えー……でも……うーん……」

シャーリー「宮藤とリーネも賛成だよな」

芳佳「あ、えっと……」

リーネ「賛成とはいえないですけど……」

シャーリー「じゃ、賛成ってことで」

芳佳・リーネ「「えぇぇ!!」」

エーリカ「どんなのにしよっか」

バルクホルン「そうだな……」

エイラ「部屋に戻るか、サーニャ?」

サーニャ「うん……」

芳佳「サーニャちゃん!!」

サーニャ「宮藤さん……」

芳佳「あの……どういっていいか……わからないけど……」

サーニャ「……」

芳佳「歌うの嫌いにならないでね!!」

サーニャ「……大丈夫だよ。また私、歌うから」

芳佳「サーニャちゃん。ありがとう!!」

サーニャ「私がありがとうって言わなきゃいけないのに……」

芳佳「ん?」

サーニャ「――芳佳ちゃん、おやすみ」

芳佳「……う、うん!!おやすみ!!サーニャちゃん!!」

サーニャの部屋

サーニャ「おやすみ、エイラ……」

エイラ「なぁ、サーニャ」

サーニャ「なにぃ……?」

エイラ「……一番、好きなのって、やっぱり、宮藤なのか?」

サーニャ「うぅん……」

エイラ「なぁ……」

サーニャ「みんな……大好き……」

エイラ「私は何番目なんだよぉ」

サーニャ「……」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「……エイラは一番」

エイラ「サーニャぁ!!だよなぁ!!」

サーニャ「芳佳ちゃんも一番」

エイラ「……わかった。ありがと。サーニャ」

翌朝 宮藤の部屋

芳佳「すぅ……すぅ……」

コンコン

芳佳「うぅ……?はぁーい?」

サーニャ「芳佳ちゃん。おはよう」

芳佳「あれ……?今、何時?」

サーニャ「起床時間から2時間過ぎてるけど」

芳佳「えぇぇぇ!?!?!」ガバッ

サーニャ「……」

芳佳「あぁ!!寝坊ってもんじゃないよぉ!!!」

サーニャ「大丈夫。ゆっくりでいいよ」

芳佳「え?どうして?」

サーニャ「みんなお休みになったから」

芳佳「そーなの?」

サーニャ「昨日のお詫びだって」

芳佳「よかったぁ……」

サーニャ「芳佳ちゃん。また歌を作ったの」

芳佳「ホントに!?どんなの!?」

サーニャ「今度は芳佳ちゃんに歌ってほしいの。それで私が伴奏する」

芳佳「え?いいの?そんな大役、つとまるかなぁ」

サーニャ「芳佳ちゃんのために作るから」

芳佳「嬉しい!がんばって良い歌にしようね!」

サーニャ「うんっ」

エイラ「――おい!!宮藤ぃ!!」バンッ

芳佳「きゃあ!?エイラさん!?どうしたの!?」

エイラ「……サーニャはわたさないからなぁ!!」

芳佳「え?」

エイラ「わたさないからなぁぁ!!」

芳佳「エイラさん!!待って!!」

サーニャ「エイラー」テテテッ

滑走路

美緒・ミーナ「「あ~いされたい!愛して会いたい!ア~~イタイシタイ!!」」キラッ

美緒「独りで~は~!きっとダメなこと~!!」フリフリ

ミーナ「願い~と願いを~!リンクしようね~!」フルフリ

バルクホルン「……」

エーリカ「あははははは!!!あははははは!!!!」

シャーリー「あー……うーん……」

ルッキーニ「なんか似合ってなぁ――」

バルクホルン「ルッキーニ少尉!!口元に食べかすがついているぞ?」グイッ

ルッキーニ「むぐぐぐ!!!!」

ペリーヌ「坂本少佐ぁ……はぁぁ……何をきても……すてきですぅ……」

リーネ「あはは……は……」

シャーリー「というか、あの二人目が笑ってないよな……。あとが怖いぞ、これ」

バルクホルン「だが、これぐらいの罰はあっていいだろ……?」

エーリカ「あははは!!ミーナも少佐もかわいいー!!!あはははは!!!」

エイラ「向こうは楽しそうだなー」

芳佳「坂本さん、可哀相……」

サーニャ「芳佳ちゃん、これ」

芳佳「なになに?え、えーと……どう歌えばいいのかな?」

サーニャ「わーたしにでーきることー。はい」

芳佳「わ、わーたしにでーきることー」

サーニャ「そんな感じ」

芳佳「これ、難しそうだね」

サーニャ「きっとできる」

エイラ「むー……」

サーニャ「サーニャも歌おう」

エイラ「……いいのか?」

サーニャ「うん。私の歌は大好きな人に歌ってほしいから」

エイラ「そ、そういうことなら今日だけ歌ってやる。今日だけだかんなー」

芳佳「それじゃ、歌おっか!」
                    おしまい

>>122
サーニャ「サーニャも歌おう」

サーニャ「エイラも歌おう」

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