千早「大きくなる牛乳」(24)

私の名前は如月千早。16歳。歌がとても大好きで、小さい頃から毎日のように歌っていました。そして今、765プロダクションでアイドルをやっています。

最初は弱小事務所で、あまり歌う機会はなかったけど、Pや春香達のお陰で人気は急上昇。私の大好きな歌を毎日のように歌うことが出来て、念願のトップアイドルまで、少しずつ近づいています。

しかし、そんな私にはある悩みがありました。

ガチャ

千早「おはよう」

響「うぅ…やっぱりあずさは魅力的だなあ…」

真美「お姫ちんも、王女って感じだYO!私も将来はこんなナイスボデーに…」

春香「わ、私もなれたらなりたいなあ…なんて///」

千早「?みんな何見てるの?」

春香「あ、ち、千早ちゃんおはよう///今あずささんと、貴音さんの水着写真集見てるんだ///」

千早「…………くっ」

実は…私の胸のサイズは765プロの中で最も小さく、私より年下のアイドル達より小さい。所謂歳不相応な所がどうしても気になって気になって仕方がなかったのです。

ついでに言えば、私の胸のサイズをネタにして、「板」とか馬鹿にしている人も多く見るようになりました。

でも、そんな苦しい日々を、もう味わなくて済む時が来るなんて…思いもしませんでした。

それは、夕食の準備に入っていた時でした。

千早「あ…もう牛乳がないわ。飲み過ぎたかしら?とにかく買いに行かないと」


~路地~

千早「蒼いー鳥ーもし幸せ~近くにあっても~…ん?」

??「……」

人通りがあまりない路地で歌いながら歩いていると、そこには1人のお婆さんがいました。


千早「あの…お婆さん?こんな所で、一体なにをなさってるのですか?」

謎の老婆「…………」

千早「私の声聞こえてますか?ここで一体何を……『大きくなる牛乳売ります』…?」

千早「あの…『大きくなる』とは一体…?」

謎の老婆「『大きくなる』という意味でございます。」

千早「ですから、何が大きくなるんでしょうか?」

謎の老婆「それは、お買い上げになったお客様だけが、解るのでございます。」

千早(もしかして…胸が大きくなるとか?…そんな都合のいいのがあったら、こんな苦労はしない…でも気になるわ。)

千早「お婆さん。これ、おいくらですか?」

謎の老婆「500円でございます。」

千早「はい。500円です」
謎の老婆「お買い上げ、ありがとうございます」

千早(……気になって買ってしまったわ…もしかして私、あのお婆さんに騙されたのかしら?)

千早「んっ」ゴクゴク

千早「……普通の牛乳ね」
千早「はぁ…一体なんなのかしら」

それから翌日。事務所へついた途端、ある異変に気付きました。

ガチャ

春香「あっ!おはよう千早ちゃん!」

千早「おはよう春香」

P「おはよう千早。…ん?」

千早「プロデューサー?どうかしましたか?」

P「ちょっと千早、そこに立っていてくれるか?」

千早「…?」

するとプロデューサーは私の横まで歩いて来た。

P「千早…背伸びたよな?」

春香「ホントだ!私より少し高くなってる!」

千早「ホントだわ…でも一体どうして…」

謎の老婆(『大きくなる』という意味でございます。)

千早(まさか…)

P「まあいいじゃないか。最初は自分では気付かないもんさ」

千早「はい…」

千早(あの『大きくなる牛乳』は飲むと身長が大きくなる牛乳だったの…?)

その夜、私はお婆さんの元へ駆けつけた

千早「いた!お婆さん!」

謎の老婆「『大きくなる牛乳』は如何だったでしょうか?」

千早「私は身長のことなんて、気にしていなかったので…正直、期待外れでした。」

謎の老婆「……………。」

千早「お婆さん。あなたは一体…ん…?『大きくなるブラジャー』売ります…」

千早「もしかして…胸が大きくなるんでしょうか?」

謎の老婆「ですから、『大きくなる』という意味でございます。」

千早「…何がどうなるかはお買い上げになったお客様だけが、解る。そういうこですか?」

謎の老婆「左様でございます。」

千早(…何を聞いても答えは一緒ね…)

千早「これ、おいくらですか?」

謎の老婆「5000円でございます。」

千早「…高い…」

謎の老婆「高いか安いかはお客様次第でございます。」

千早(…これさえあれば…私もあんな風に…)

千早「買います。」

謎の老婆「お買い上げありがとうございます。」

帰宅した私はお風呂上がりにさっそく、『大きくなるブラジャー』を着けて寝た。

そして翌朝。

千早「う…ん…はっ!そうだ胸…」


千早「え…?」

ポヨン

千早「嘘…?ホントに…大きくなってる!少しだけだけど…」

千早「本物…よね?」

つん

千早「んっ…///」

きゅっ

千早「あっ…///」

ピョン

ボヨヨーン

千早「ほ、本物だわ///」

千早「ついに私は…最高の魅力を手に入れたんだわ///」

千早「はっ!そうだ!さっそく事務所に向かわないと!」

千早「…でも何を着ていこうかしら…」

~事務所~

P「で、ここはこうで」カクカクシカジカ

小鳥「ならここはこうで」ピヨピヨ

春香「でねーそしたらお母さんったら」ペチャクチャ

美希「あははっ…美希のお母さんなんて」ペチャクチャ

ガチャ

千早「おはようございます」ボイン

P「」

小鳥「」

春香「」

美希「」

千早(ふふっ。みんな唖然としているわ。無理もないわね。)

千早「あれ?みんなどうかしたの?」

春香「ななななんでもないよ千早ちゃん」アセアセ

美希「そそそうなの!」アセアセ

P「ききき気のせいだよ千早!ああ俺今から現場に行かなきゃ」アセアセ

小鳥「わわ私もこの書類をまとめなきゃ」ピヨピヨ

千早「……」

ガチャ

律子「ただいまー」

伊織「はぁ…やっとついたわ」

亜美「亜美もぅクタクタだYO!」


あずさ「あらあら~」

千早「あっおかえりなさい」ボイン

律子「」

伊織「」

亜美「」

あずさ「」

律子「ずっと車を運転していたせいかしら…一瞬幻覚を見たような」フラフラ

伊織「なんか私も頭が痛いわ…」

亜美「目眩がー」

あずさ「あらあら~大丈夫ですかー?」

千早「……」

私は後悔した。胸は大きい方がいいという願望が強すぎて相手がどんな反応をするのか、全く考えていなかった。そして、都内某所を歩いてみれば

男A「うぉ!デケーなおい」

男B「F…いやGはあるぞ…」

女A「何よあの女。胸デカいですよアピール」

女B「チョームカツクー」
周りからは私の胸についてをヒソヒソと話したりするのを聞いたり、ナンパや、AVの業者にスカウトされたりもした。

私は無我夢中で家へと走った。

千早「はあ…はあ…もう嫌…胸が大きくなったって…何もいいことないじゃない…」


千早「…肩がこったわ…そういえば…胸が大きいと肩がこるって言ってたわね」

千早「お風呂に入ろう…」

千早(私…これからどうしよう…事務所の人達はあんな状態だったし…相談出来る人がいないわ)

千早(大きくなりたいだなんて、前言撤回……あれ?)

千早(嘘…?元に戻ってる!?でもどうして…?)

千早(あのブラジャーを外したから…?)

その時、私は思った。『大きくなるブラジャー』を着ければ、本当に胸が大きくなるけど、周りから見ればただのパッドをつけているようにしか見えない。

それに胸が大きくなると、男からは嫌らしい目で見られ、女の子からは恨まれるような目で見られるし、そして最大のデメリットは肩こりが生じること…

もしかしたら、あのお婆さんは、

「胸が大きくなってもあまりいいことがない。」

それを教える為のブラジャーだと、そう感じた。

千早「でも、それにしたって5000円はちょっと高すぎね」

千早「返品してもらおうかしら?」

そう決めた私は、『大きくなるブラジャー』を持ってお婆さんの元へ向かった。

しかし、お婆さんはいつもの場所にはいなく、どこを探し回っても、見つかることはなかった。

それから翌朝。

あの件もあって、みんなと合うのが怖かったけれど、今まで通りに接してくれた。中には春香が笑いながら「何でパッドつけて事務所に来たの?」と聞かれたりもしたけど。

本当の事を話しても信じては貰えないし、笑われそうだったから恥ずかしかったけど「一度でいいから私の胸が大きくなった時のみんなの反応が見たかった」と嘘をついた。

それから、私はあずささんや貴音さんのグラビア写真集を見ても気にしなくなった。むしろ、私は

胸が大きくなくても、私には歌があるし、小さい方もそれはそれで何か魅力がある。

そう思うからです。

私は「大きくなるブラジャー」は処分した。

もう必要ない。あのお婆さんのおかげで今のままで十分だと思ったから。

それにしても、あのお婆さんは一体何者だったのかしら?

私はどうしてもそれが気になって、帰り掛けに何度もお婆さんを探した。けれど見つかることはなかった。

真「千早。そういえばこの前の夜、あそこでしゃがんでいるのを見たんだけど。何してたの?」

千早「ええ、お婆さんが1人で何してるのかなと聞いてたんだけどね」

雪歩「お婆さん?私たちが見た時、誰もいませんでしたよ?」

千早「」

終わり

以上初投稿になります。超短編&クソスレ立てて申し訳ないです。

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