【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】 (130) 【現行スレ】


・DMM【艦隊これくしょん】と
 DMM【影牢トラップガールズ】(2016/07/29サービス終了)、
 およびPS4【影牢~もう一人のプリンセス】のクロスオーバーです

・キャラ崩壊注意

・提督も艦娘も殆どが不幸属性持ちです

・前スレと前々スレ、さらには前日譚の『墓場島鎮守府?』シリーズを
 全部読まないと話がわからないと思います


・基本的にsage進行しますので、感想、雑談など、書き込みの際は
 メールアドレス欄に「sage」と入れてくださいますよう、ご協力をお願いします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1690021595


前スレまでのあらすじ

太平洋上の孤島に建てられたとある鎮守府に、島流し同然の扱いで着任した提督。
轟沈した艦娘が流れ着く島で、様々な理由で島に来た艦娘たちを保護しながら暮らしていた。
そんなある日、鎮守府が乗っ取られるという非常事態が発生。
罠だらけになった鎮守府に潜んでいたのは、提督を『魔神』と呼び崇敬する、罠の化身、メディウムたちだった。

メディウムたちとの和解後、鎮守府に攻め込んできた深海棲艦や、
提督に罪を着せて重要人物の暗殺を目論む人間たちを撃退する提督たち。
その戦いのさなか、提督を慕う艦娘が倒れたために、提督の魔神の力が覚醒し、
海底火山の噴火が引き起こされ、島は焼き尽くされてしまった。
島を自分たちの終の棲家として再建するべく、提督と、
彼を慕う艦娘、深海棲艦、そしてメディウムたちが奮起するのだった……。



過去のお話はこちら

提督「墓場島鎮守府?」
提督「墓場島鎮守府?」 - SSまとめ速報
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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」 - SSまとめ速報
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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」 - SSまとめ速報
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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」吹雪「その4です!」
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」吹雪「その4です!」 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1652576643/)

【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467129172/)
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515056068/)


舞台の「墓場島」について
 作中の表記は「××国××島」、通称「墓場島」。太平洋上にあるとある無人島、パラオ泊地が一番近いと思われる。
 島の北側には海底火山があり、潮流が強く流れが特殊なため、轟沈した艦娘の亡骸がよく島の北東の砂浜に流れ着いていた。
 鎮守府は島の東側にあったが海底火山が噴火した際に焼失。溶岩は島の全土を焼き尽くし、溶岩によって島の面積は5倍に広がった。
 現在は、提督に縁のある深海棲艦たちの協力によって、島の再建が始められている。

 墓場島と呼ばれるようになった所以は、轟沈して島に漂着した艦娘を提督が埋葬し、墓標代わりに艤装を並べたことから。
 直近では「不要な艦娘の姥捨て山」的な意味に勘違いした海軍の面々から、問題を起こした艦娘が送り付けられていた。


主要な登場人物

・提督
 階級は少尉。一般人には見ることすら出来ない妖精と話が出来たせいで、親からも変人扱いされたため人間嫌いをこじらせる。
 妖精と会話ができることを見込まれて海軍にスカウトされたものの、上官となった大佐に疎まれ、離島の鎮守府に向かわされる。
 その後、大佐が自身の養父である中将の暗殺を企み、その犯人を提督に仕立てようとしたことを知り、
 以前から燻ぶり続けていた人間への怒りと憎悪を燃え上がらせた結果、異世界から『メディウム』たちを呼び寄せてしまった。

・妖精たち(妖精と島妖精)
 提督と小さいころから一緒だった妖精が、提督が島へ渡った際に同行している。その彼女の正体は応急修理女神妖精。
 島を溶岩が覆った際、溶岩から提督たちを守るために力を使い、今は姿を消してしまっている。
 島に住み着いていた妖精たちは、轟沈して島に漂着した艦娘が身に着けていた装備の妖精たち。大佐によって島に置き去りにされた
 人間たちが醜く争うさまを見てきたため人間不信だったが、艦娘の埋葬を提案した提督とは信頼が生まれている。
 なお、妖精と接することができるのは、艦娘や艦娘に近しい人物、あるいは過去の海軍に縁のある人物と考えられている。


『影牢 トラップガールズ』より

・メディウム
 魔神に作られし被造物であり、魔神を崇拝する巫女であり、魔神に代わって力を振るう殺戮者である。
 その姿はいずれも女性で、それぞれが人を陥れる『罠』の化身。突如として鎮守府に現れ艦娘と戦ったが、
 提督を魔神の生まれ変わりと認め、提督に忠誠を誓い従属するしもべとなった。

・『魔神』について
 現在とは違う世界……アルスギア大陸で信仰されるアルス正教の善神アルスに反する存在として、魔神と称される。
 世界を闇で覆い、力と恐怖で世界を支配するべく『アルス=タリアの大収穫』と呼ばれる大災害を引き起こした、と言われている。
 その後、その世界の人間たちにより魔神は封印され、やがてその建物が『アルス=タリア封印神殿』と呼ばれるようになった。

・ニコ・エレメンタル
 封印されし魔神の力そのものの化身と言われている少女。個性的なメディウムたちのまとめ役だが、彼女自身はメディウムではない。
 魔神が封印された神殿で魔神の目覚めを待ち続けていたが、提督の抱いた人間に対する強烈な怒りや憎悪を
 『魔神の力』として感じ取り、異世界から鎮守府に向けて扉を開いて提督との邂逅を果たした。
 見た目こそ少女だが数百年の時を生きているらしく、提督に対してなにかと『お姉ちゃん』ぶる態度をとる。


『影牢~もう一人のプリンセス』より

・エフェメラ
 魔神が生み出したとされる自動人形(オートマタ)。
 複数体存在し、魔神の生贄となる魂を集める者もいれば、魔神の生まれ変わりである提督を支援する者もいる。
 ただ一点、魔神と認めた者のために働くという意味では、どのエフェメラも目的は同じである。


登場艦娘一覧(墓場島への着任順)

・如月:試作の新兵器の威力の実験台にされていたところを脱走し大破、島に漂着。初期艦としてサポートしつつ提督に迫る日々を送る。

・不知火:もと大佐の部下。解体前提で如月捜索に駆り出されたが、提督の計らいで中将麾下に。提督の愚痴に付き合うことが多い。

・朧:吹雪と同時期に捨て艦で轟沈後、島に流れ着く。そのせいか諦観気味でやや擦れた性格になった。本の話を共有しているときが幸せ。

・吹雪:朧と同時期に捨て艦で轟沈後、島に流れ着く。希望は捨てずに諦めないタイプ。提督の自暴自棄な態度に激怒したこともある。

・由良:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く。電の僚艦。軽巡の中では一番古株なためか、無意識に提督をお世話したがるところがある。

・電:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く。由良の僚艦。ある鎮守府の初期艦として、その司令官を諭せなかったことを悔やんでいる。

・神通:慕っていた司令官を謀殺され、その復讐の途中で島に左遷させられた。人の考えを読んで言い当てるのと、気配を消すのが得意。

・大淀:日々の解体任務に疑問を覚えて仕事が手につかなくなり、異動させられた。自身の考えを肯定してくれる提督に好意を抱く。

・敷波:大破進軍後消息を絶った由良と電の捜索を命じられ、そのまま消息不明扱いにされた。提督が自分に似ていると感じている。

・明石:前提督に帳簿の不正を強いられ、そのまま首犯扱いで雷撃処分された。物資不足の島で生活するうちに大工仕事が得意になった。

・朝潮:前提督の不正の内部告発を計画するも逆に犯人扱いされ雷撃処分された。提督に妄信的過ぎて明石や提督に心配されている。

・霞:朝潮と同じく雷撃処分され、沈みかけたところを敷波に助けられた。提督を信頼してはいるが投げやり気味な態度に呆れてもいる。

・暁:信頼していた前提督の変貌に錯乱して敵陣特攻し記憶喪失になる。レディとしての振舞いは忘れておらず、驚くほど大人びている。

・初春:捨て艦で轟沈後、暁に助けられ島に漂着。建造後すぐ轟沈したこともあり、不知火の付き添いで島外の様子を見に行っている。

・潮:変態の前提督に迫られ耐え切れなくなり家出。護衛役の長門に少し依存気味。男性は苦手だが提督には強く出られるようになった。

・長門:変態の前提督に迫られた潮を庇い、逃げる手引きをした。強烈な反面教師を見たおかげで駆逐艦たちと適度な距離で接している。


・比叡:料理上手を前提督に認めてもらえず、ご飯を捨てられ自暴自棄になり轟沈した。暁の必死の看病により回復し、厨房を任される。

・古鷹:お人好し過ぎて自分の練度が上がらないままお世話を続けるも、前提督の見栄のために観艦式において行かれた、超世話焼き。

・朝雲:観艦式に向かう途中で艦隊を離脱して古鷹を追いかけてきた。鎮守府で一番の常識人とは提督の弁。そのせいで苦労人でもある。

・利根:前提督の猟奇趣味に巻き込まれ、地下に幽閉され死にかける。墓場島に来て初めて海に出たことで艦娘として生きる決意をした。

・伊8:オリョールで逃げたル級の代わりにいた軽巡に轟沈させられた。提督のベッドに裸で潜り込むくらいに提督へ依存心が強い。

・大和:島の妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造したら作られた。提督への好意が最初から全開で、大佐を激しく嫌悪していた。

・初雪:艦娘管理ツール使いの前提督に昼夜問わずこき使われ失神後漂着。島に来てからは遠征も出撃もせずマイペースに畑仕事に従事。

・金剛:愛情から目を背ける前提督を説得し続け、煙たがられて左遷された。愛情深いせいか金剛のハグは心地よさで抜け出せないほど。

・五月雨:玉砕覚悟の敵討ちを望むも、仲間を沈めた濡れ衣を着せられて追い出される。ドジではあるが、それで物を壊したことはない。

・榛名:養成所の訓練と称して轟沈するまで戦わされた。それまで出会った人間の態度がモノ扱いだったため提督との出会いを喜んでいる。

・那珂:榛名と同じく過労で失神するまで戦わされ島に漂着。即興で歌った鎮魂歌が島の艦娘から喝采を浴び、歌い続けることを決めた。

・扶桑:理由もなく疫病神扱いされ、戦況不利な海域に誘導され轟沈。自分たちを追ってきた時雨が轟沈したことをずっと後悔していた。

・山城:扶桑と同じ理由で轟沈して島に漂着する。扶桑が好きだが那珂の歌声も好き。自分の幸せを素直に受け入れられない面倒臭い性格。

・龍驤:暴食を強要され体形を馬鹿にされ、ブチ切れて鎮守府を火の海にした。雲龍に懐かれてからは、当たり散らすこともなくなった。

・陸奥:龍驤と同じく暴食を強要され、かつ度重なるセクハラで男性不信になった。男性不信は一部の艦娘と提督のみで秘匿している。

・雲龍:特別海域で艦隊に邂逅できず、餓死寸前だったところを龍驤に保護される。以来、龍驤の後ろをついて回る忠犬的存在に。


・島風:戦艦級の火力を求める前提督を疎まれて、訓練中に除名される。競争相手の白露に妹扱いされ、迷惑そうにしつつも喜んでいる。

・白露:島風と一緒に特訓するため艤装を改造、同じく訓練中に除名。島風に追いつくため艤装を違法改造した結果胸が縮んでしまった。

・黒潮:姉妹艦を人身御供にした前提督にぶち切れて、犯人もろとも海に投げ捨て離反。山雲を救助後、白露、島風に合流し島へ辿り着く。

・山雲:海に現れた直後に、黒潮を探す雪風を追いかける深海勢(空母棲姫)に激突される。ネガティブになると深海棲艦的雰囲気になる。

・三隈:最上にベタベタし続ける前提督にキレて股間を砲撃したため島に送られる。破廉恥な場面に遭遇するとくまりんこと叫ぶ癖がある。

・最上:前の鎮守府で過剰なスキンシップを迫られていた。当人は実はそこまで気にしておらず、鈍いというか明け透けな性格だった。

・摩耶:理不尽な防戦指示を無視したため、前提督に命令違反を咎められ左遷。提督と意見がよく合うが口調を注意され度々口論になる。

・霧島:摩耶と同じく命令違反で左遷される。戦況を好転させる戦果を挙げても摩耶以外には認めてもらえず、自信を喪失していた。

・若葉:前提督が夜戦禁止の腰抜けで、敵輸送部隊殲滅のため夜戦した結果馘に。その前の鎮守府ではレ級と交戦しリベンジを誓っていた。

・川内:若葉と同じく殲滅のために夜戦したら馘になった。その前の鎮守府で暁と一緒だったが暁が記憶を失っていたため分からなかった。

・武蔵:またも妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造して作られた。規律を重んじる真面目な性格で、大和たちを窘める損な役回りに。

・五十鈴:テレビの取材で舞い上がった前提督の散財で、赤札を貼られまくった鎮守府から脱走。五十鈴は飽和状態で解体予定だった。

・筑摩:五十鈴と同じく借金まみれの鎮守府から逃げてきた。長らく邂逅できなかった利根に迫ったため利根が倒れたことを悔やんでいる。

・鳥海:一日提督の無茶のために大破進軍した加古を庇って轟沈した。お人好しで少々世間知らずなところがあり、加古に心配されている。

・加古:鳥海と同じ鎮守府だが、そこの提督に失望し大破進軍して轟沈。寝るのが好きで提督に特注のベッドと抱き枕を買ってもらった。


・千歳:婚活したがっている女提督と喧嘩別れ後、墓場島への案内を任されそのまま着任。お酒好きと言うよりお酒で盛り上がるのが好き。

・足柄:千歳と同じく、女提督と喧嘩別れしたのち路頭に迷っていた。戦闘には積極的だが、たまに人の話を聞いてないときがある。

・隼鷹:ケッコンカッコカリ間近で前提督の頬を叩いたところを上官に見られて更迭後、脱走する。ちょっとお節介焼きなところがある。

・那智:酒飲みの愚痴聞き係で戦線に立たせてもらえなかったため脱走した。以来、禁酒を続けながら、自己鍛錬にいそしんでいる。

・日向:深海棲艦について突っ込んだ考察を出撃前後に前提督に相談しまくった結果追い出される。提督の見解にはある程度納得した模様。

・伊勢:上記の日向の異動にともない、干されていたところを中将の計らいで着任。別に何の落ち度もないのに島に追いやられた不幸な人。

・青葉:写真嫌いの前提督の怒りに触れて左遷……という建前でJ少将から離反した。今後は物騒じゃない写真を撮りたいと考えている。


・北上、霰、満潮:大佐の部下Aのもと部下。中将暗殺の証拠を見つけ、真相追及のため墓場島へ向かい、明石たちと再会を果たした。

・名取、弥生:大佐の部下Bのもと部下。泊地棲姫の塒への吶喊を命じられ敗走、墓場島へ向かうよう指示される。電たちとは初対面。

・初霜:大佐の部下Bのもと部下。泊地棲姫の塒への吶喊を命じられ死にかける。泊地棲姫に鹵獲後、裸リボンで提督に引き渡された。


・時雨:扶桑、山城と同じ鎮守府出身。轟沈した扶桑たちを追い襲撃され島に漂着、埋葬された。エフェメラと邂逅し、蘇生してもらった。

・早霜:L提督が島に来ていた時に漂着していた艦娘。前の鎮守府では司令官の過労による判断ミスで轟沈した。提督に興味を示し蘇る。


・赤城:元大佐の秘書艦。その前は中将の部下で、中将が運営していた鎮守府の評価が下がらぬように大佐の悪事の尻拭いをしていた。
  意図を気取られぬよう冷酷な態度を貫いて付いた渾名が『鉄の赤城』。提督が如月や不知火を助けて以降は冗談を言い合う仲になる。


深海棲艦

・ル級:東オリョール海で毎日潜水艦に小突かれる日々に嫌気がさし脱走。補給を得られず漂着した墓場島鎮守府で、長門と念願の砲撃戦を
  繰り広げた。その後親睦を深め離れ小島に住み着き、時折墓場島で談笑する仲に。提督とはこのままの関係でいたいと思っている。

・軽巡棲姫:人間の研究者たちが開発した、深海棲艦の遺骸から武器を作り出す外法の技術によって、銃の弾丸に作り変えられた深海棲艦。
  後に大佐が提督を撃ったときに体内に残り、謎の力で提督とともに蘇った。その後、泊地棲姫に育てられて軽巡棲姫に成長した。

・泊地棲姫:大佐の中将暗殺に利用された深海棲艦。大佐の部下の艦娘に塒を荒らされ、墓場島に誘い出された挙句、返り討ちに遭う。
  このとき、深海棲艦の弾丸によって深海棲艦化した提督と邂逅しており、興味を持ったのか提督を深海へ勧誘するようになった。

・集積地棲姫:墓場島で深海棲艦が住めるように取り決めたのち、提督に人間からの保護を求めてやってきた引き籠り希望の深海棲艦。

・戦艦棲姫:集積地棲姫のところに押しかけてきた深海棲艦。集積地棲姫に何度か助けられたため、彼女を気に入ってしまったようだ。

以上、テンプレというか個人的まとめ。
その他提督編とメディウム編も書こうと思ったけど無理やわ……。
都度説明していく予定にします。多分。


それでは本編の続きです。


 * 墓場島 埠頭 *

赤城「提督、ご無沙汰しております」ペコリ

泊地棲姫「オ前ハ、アノ船ノ上ニイタ……!」

提督「よう、赤城。あの会議以来か? 定時連絡がなくなってからだと、久々に感じるな」

赤城「そうですね。今後は不知火さんと一緒に、この島への連絡員をさせていただきますので、よろしくお願いしますね」

提督「お前もここに来るのか? じゃあ、お前が提督代理をやってたあの鎮守府はどうすんだ」

赤城「今後は与少将にお任せすることになりました」

提督「!」

赤城「長らく大佐の後任が決まらずにいましたが、中将のお仕事の引継ぎも含めて、正式な後継として与少将が選ばれまして」

泊地棲姫「待テ、大佐ダト? オ前ハ、アイツノ艦娘カ?」

赤城「はい、そうでした。昔の話ですけれど」

提督「警戒しなくていいぞ。赤城はあいつを暗殺しようとしてたくらいだからな」ククッ

赤城「まあ、笑うなんてひどい」ジトッ

赤城「電さんに命じて、その私の邪魔をするどころか、黒焦げにしてくださったのはいったいどこのどなたの差配ですか」ヨヨヨ…

提督「なんだその嘘泣き」

赤城「あら。お気に召しませんか」ケロッ


泊地棲姫「? ドウイウコトダ? オ前、アイツニ歯向カッタノカ?」

赤城「そういうことですね。あの大佐が、自分の父親と提督を殺そうとしていたので、その前に私が大佐を殺すつもりだったんです」

泊地棲姫「……」

赤城「もっとも、それまでの大佐の悪事の隠蔽には私も少なからず関わっていましたから……」

赤城「その贖罪の意味も込めて命を捨てる覚悟で臨んだのですけれど。それがまあ、提督のせいでご破算になりまして」

赤城「提督が私を妨害しなければ、大佐に撃たれることもなかったでしょうに。本当に馬鹿な人です」フゥ…

泊地棲姫「……オ前ハ、貧乏籤ヲヒクノガ本当ニ好キダナ?」タラリ

提督「昔の話だ。結果的に軽巡棲姫も復活できたんだし、今がいいんだから気にしなくていいぞ」

赤城「……私としては釈然としませんが、そういうことにしておきましょうか」

赤城「話を戻しますが、大佐のいた鎮守府の指揮を与少将が執ることになりましたので……」

赤城「今は中将麾下の私たちも、いずれ彼女の艦隊に編入されることになると思います。主な任務も引き続きこれまで通りでしょう」

提督「呉の和中将の妨害は大丈夫だったのか?」

赤城「はい。与少将がこの島に足を踏み入れ、本営中将の後ろ盾も手に入れたことで、和中将も引き下がらざるをえなかったようです」

赤城「与少将がいた鎮守府の後任も、和中将がすでに手配済みでしたし」

赤城「呉鎮守府の空席は、呉の大将閣下の計らいで、和中将にフォローしていただくことになりました」


提督「ふーん……ま、その辺は勝手にやってくれって話だな」

赤城「はい。それから、那智さんはもうしばらく与少将のもとで働くことにしたようですよ」

提督「そうか。ちなみに与少将はどんな部下を連れてんだ? 主力は?」

赤城「主力……戦力的には満遍なく、と言ったところでしょうか。ただ、珍しい艦種の艦娘も多数在籍しているようですね」

赤城「陸軍の揚陸艦であるあきつ丸さんや、水上機母艦の日進さんなどの練度が高いと聞いています」

提督「……いまいちよくわからねえが、いろんな手を打てるって感じか?」

赤城「珍しい艦種の艦娘を育てるのが好きなようですね」

泊地棲姫「裏切ッテ、コノ鎮守府ニ、攻メテキタリシナイダロウナ?」

提督「その辺は大丈夫そうだけどな。お前もこの前会ったろ? 一応、与少将がうざがってる和中将絡みの面倒事にも助言はしたし」

提督「部下の仁提督もそうだが、与少将も割と単純でわかりやすい性格だ。義理も通したんだ、いきなり襲い掛かっては来ねえはずだ」

泊地棲姫「ソウダト、イインダガ」

赤城「それで提督、早速ですがいくつかご報告させていただいても?」

提督「ああ、何かあったのか?」

赤城「日本政府が、提督とお話ししたいそうです」

提督「うわ、面倒臭え」

赤城「第一声がそれですか。良くも悪くも、相変わらずですね」クスクス


泊地棲姫「政府? 軍ジャナイノカ」

赤城「はい、日本は軍事政権ではありませんので。政府と海軍は連携こそしていますが、別ですよ」

泊地棲姫「コノ前、話シタ連中トハ、別ナノカ」

提督「その手の話は不知火に頼むって言ったつもりだったんだがな……」

赤城「頼むのは結構ですが、島の今後の方針を決めるのはあなたです。不知火さんに全部丸投げはだめですよ?」

提督「……しゃあねえな……」

赤城「それからもうひとつ」ス…

泊地棲姫「……」ピクッ

赤城「その政府の中にいる、あなたの弟を名乗る人物が、あなたとの交渉の席に座りたいそうです」ギラッ

提督「……あぁ?」イラッ

泊地棲姫「オ前タチ、イキナリ剣呑ナ雰囲気ニナルナ。何事ダ」タラリ

赤城「早い話が、提督は家族に捨てられたのですよ。それを今頃になって会いたいなどと宣う阿呆がいたものですから」フフフ…

泊地棲姫「ソレデ、ソノ顔カ。確カニ不愉快ダナ」

提督「ったく、H大将に連れてくんなっつったのによ……」ギリギリギリ

赤城「その話をするより前に、政府から申し出があったようですよ。今頃『失せろ』と回答しているはずです」

提督「素直に言うこと聞きゃあいいがな、くそが」イライラ


ニコ「ということは、ぼくたちの出番かな?」ヌッ

提督「!?」ギョッ

赤城「かもしれませんね。ないに越したことはありませんが」

提督「ニコはどこから出てきたんだよ……」

ニコ「魔神様の苛立ちを感じたからね。ぼくは魔神様のお姉ちゃんなんだから、このくらい当然だよ」フフン

提督「そういう意味じゃねえよ……つうことは何か? 俺が怒ったりしたら、お前がそれを察知してすっ飛んでくるってことか?」

ニコ「うん。ぼくたちは魔神様のためにいるんだからね」

提督「面倒臭え……赤城もなんでそんなに平然と流してんだよ。ニコがどこから湧いて出てきたのか疑問に思わねえのか」

赤城「今更、いちいち驚くまでもないのでは?」

泊地棲姫「メディウムノ性質ナラ、コノクライ簡単ニヤレソウダシナ」

提督「……お前ら、順応力高すぎだ」タラリ

赤城「とりあえず、提督の弟らしき人物については、相手にしないほうがよいと思いますが……」

泊地棲姫「敵ダロウ? 提督ガ、ヤルトイウノナラ、私ハ手ヲ貸シテヤルゾ?」ニヤッ

赤城「私は穏便に済ませたほうが賢明だと思いますよ。国家戦力を持ち出されるようなことがあっては、勝ち目がありません」

提督「それもそうなんだよな……おそらく、そっちのほうが後々面倒臭くねえ」


赤城「それからもうひとつ。むしろ、こちらがニコさんたちの出番かもしれませんね」

ニコ「!」

赤城「曽大佐たちが、この島に攻め込むことを決めたようです」

泊地棲姫「ホウ。来ルノカ……!」

提督「そいつはどこからの情報だ?」

赤城「W大佐から連絡が入ったと、X大佐から伺いました」

提督「なるほど。それならまあ信じても良いかもしれねえな」

ニコ「やれやれ、また哀れな人間が攻めてくるんだね」

提督「油断すんなよ。この島に来るのはおそらく、そいつの部下の艦娘だ」

ニコ「……!」

提督「うちの艦娘の半分が、余所の鎮守府へ移動中だ。悪いが、万が一に備えて深海棲艦にも協力してもらわねえとな」

泊地棲姫「アア、好キニ声ヲカケルトイイ」

提督「もちろん、メディウムにも手伝ってもらうぞ。というより、対艦娘はお前らがメインの戦力だ。たくさん働いてもらうぜ」

ニコ「ふふっ、そこまで期待してもらえるんだ。嬉しいな」


赤城「さて、それでは私も島に入らせていただきましょう」

赤城「彼らに動きがあれば、私と不知火さん、それから、ここの大淀さんへ連絡が入るよう手配しています」

赤城「そこでお願いなんですが、艦娘、深海棲艦、メディウムで、それぞれ連絡の窓口を決めていただけますか?」

赤城「有事の際に速やかに連絡できるよう、連絡網を作りたいのですが」

提督「ん-……ニコは普段、大体は神殿のほうにいるんだっけか?」

ニコ「そうだね」

提督「深海棲艦は……戦艦棲姫と集積地棲姫がちょっと離れたところに居を構えてたよな?」

泊地棲姫「アア」

提督「とりあえずは館内放送と、あとはその二か所への通信手段つうか、連絡方法をなんとかすりゃあいいのか?」

泊地棲姫「今ハソレデイイガ、今後、住マイガ増エタラドウスル?」

提督「防災無線かラジオみたいに、個別に増設できる設備を用意できればと思ってんだが、どうだ?」

赤城「では、そのあたりの整理もさせていただきましょうか」

赤城「それから、深海棲艦やメディウムのみなさんの、名簿というか、部隊表のようなものはありますか?」

泊地棲姫「ナイゾ」

ニコ「ぼくたちもないね」


赤城「そうですか……少なくとも人数は確認したいですね。食料や燃料の必要量の把握がしたいですし」

赤城「あとは、島の関係者か部外者かを判断する材料に使えればと思ったのですが。もしくは識別信号のようなものがあると助かります」

泊地棲姫「……ナニカ、目印ダケデモ必要カ」

赤城「メディウムのみなさんについては、ソニアさんから名前を覚えるように言われていますので」

ニコ「ああ……そうだね。またソニアに睨まれたくないからね」

赤城「申し訳ありませんが、特に横文字のお名前は、馴染みが薄いせいかどうにも憶えづらいんですよねえ……」

泊地棲姫(……名前、カ)


 *


泊地棲姫「提督。伝エテオキタイ、コトガアル」

提督「ん? なんだ?」

泊地棲姫「コノ前、貰ッタコーヒーヲ仲間ニ振舞ッタンダガ、ソレ以来、様子ガオカシイ者ガイル」

提督「様子が? どんな感じなんだ」

泊地棲姫「物思イニ耽ッテイタリ、ボンヤリシテイタリ……総ジテ考エ事ヲシテイルヨウナ感ジダナ」


提督「考え事ねえ。そんなにコーヒーがまずかったか?」

泊地棲姫「イヤ、コーヒー自体ハ好評ダッタゾ」

泊地棲姫「オソラクダガ、コーヒーノセイデ、自分ノルーツヲ見ツケラレソウニナッテイルンダロウ」

提督「ルーツ?」

泊地棲姫「例エバ私ナラ、真珠湾ニ縁ノアル『ナニカ』ダ。ハッキリトハ思イ出セナイガ、ソウ確信シテイル」

泊地棲姫「ソノ私カラ見テ、ル級ノルーツハ、オソラク米軍艦ダロウ。コーヒーノ香リヲ、懐カシイト言ッテイタカラナ」

提督「深海棲艦に自分のルーツを探るような話をしちゃいけないってことか……?」

泊地棲姫「ソウジャナイ。モシカシタラ、オ前タチノイウ、姫級ヤ鬼級ニ、ナルカモシレナイ、トイウ話ダ」

提督「なんだそりゃ……?」

泊地棲姫「自分ガ何者カヲ理解スレバ、ソレニ近シイ姿ニナル。思イ出シタイメージガ強ケレバ強イホド、強大ナ深海棲艦ニナルンダ」

提督「いまいちピンとこねえが……」

泊地棲姫「私モウマク説明デキナイガ、私タチガ思イ出ストイウコトハ、ソウイウコトダト思ッテイル」

提督「……そういや、コーヒーじゃねえけど、ルーツって話なら、ヲ級と似たようなことを話したな」

提督「イ級とか見てた時、ふと気になって、深海棲艦の駆逐艦が人型じゃねえのはどうしてだ、って、そのヲ級に訊いたんだけど」

提督「そうしたら、そもそも意識してなかったって話でな。そのあとも俺が立て続けにいろいろ訊いたもんで、ヲ級が考え込んじまって」

提督「その流れで、自分が何者かわかってもいないし、不思議にも思わなかった、って言ってたんだよ」


提督「普段考えてなかったことを訊かれたせいか、ヲ級が具合悪そうにふらふらしててなあ。一応、無理するなよとは言ったんだ」

提督「多分、それと似たようなことが、コーヒーを飲んでた深海棲艦にも起こってるってことだよな」

泊地棲姫「アア。ソノ認識デイイ」

提督「しかし、強くなるのはともかく、感情の抑えが利かなくなるとかねえよな? 見境なしに暴れるようになったら考えるぞ」

泊地棲姫「ソレハ理解ッテイル。ソウデナイナラ、オ前ハ、私タチヲ守ッテクレルカ?」

提督「それをお前たちが望むならな。そこのスタンスは変えねえよ」

泊地棲姫「ソウカ。ソレナラ、イイ」ニコッ

泊地棲姫「ソレカラ……オ前カラハ、私ト同ジ、潮ノニオイガスル」

提督「しおのにおい? そんなのあるのかよ」

泊地棲姫「以前、提督ノ魂ノ半分ガ、私タチト同ジダト言ッテイタガ、オ前ノ血族ニ、真珠湾ニ関ワリノアル者ハ、イナイノカ?」

提督「あるとしたら母親だな。学生のときに海難事故に遭って、それがきっかけで深海棲艦の魂を腹に抱えてたらしい」

提督「ただ、その事故がどこで起こったかまでは俺も知らねえぞ? コーヒー自体に俺が特に思うところもねえし……」

泊地棲姫「ソウカ、残念ダナ。オ前モ、思イ出シタ拍子ニ、深海棲艦ニ、ナリキッテシマエバイイノニ」

提督「……お前、メディウムたちに俺を作り変えるなってクレーム入れたんじゃねえのかよ」

泊地棲姫「マダ理解シテイナイノカ。私ハ、オ前ガ、私タチト同ジ存在ニナッテホシイ、ト思ッテイルンダゾ?」


泊地棲姫「コノ場デ深海ニ引キズリ込ムノモ悪クナイガ、ソレヨリモ、オ前ハ、私ガジックリト……」ジリ…

早霜「……じっくりと?」ジーッ

泊地棲姫「!?」

軽巡棲姫「ナニヲシテイルノ」ヌラッ

泊地棲姫「!?!?」ビクゥ!

軽巡棲姫「ナニヲシテイルノ、ト、訊イテイルノダケレド?」ゴゴゴゴ…

提督「……早霜もなにしてんだよ」

早霜「見ていました。ずっと」

提督「お前……本当にいつも俺を見てるよな」タラリ

軽巡棲姫「ネェ、泊地棲姫? 私ノ提督ニ、ナニヲシテイルノ、ト、訊イテルノヨォ……?」

泊地棲姫「……軽巡棲姫ニハ関係ナイ」プイス

軽巡棲姫「関係ナクナンカ、ナイノヨォ!?」

泊地棲姫「関係ナイ! ソモソモ提督ハ、オ前ノモノジャナイ!」

軽巡棲姫「私ノヨォ!?」

大和「あっ、提督! どこに寄り道してたんですか!」

如月「もう、だめじゃない! すぐどこかに行っちゃうんだから!」

キャロライン「ダーリーーン! 一緒にお茶するヨーー!」

ニコ「みんな落ち着いて。魔神様は疲れてるんだから、ぼくがこれから膝枕してあげるんだよ」

早霜「ふふ……大人気ね、ふふふっ」

提督「……だめだこりゃ」

というわけで今回はここまで。
本スレでもよろしくお願い致します。


続きの前に、今回出てくるメディウムについて。

・ロゼッタ・パンプキンマスク:魔女メディウム。空からハロウィンのかぼちゃを落として人の頭に被せて視界を塞ぐ、屈辱系の罠。
  悪戯と可愛い衣装、お菓子とコーヒーが大好きな、お年頃の少女。大人の女性を自称しているが、おとなしくするのは大の苦手。
・ミルファ・メガロック:チアリーダーメディウム。丸い岩を落とす罠で、坂道であれば転がるしギミックで跳ね飛ばすこともできる。
  元気印の女の子で応援が好きと言うが、両手のポンポンがなんと岩。振り回せば凶悪極まりないし当然重い。ついでに胸も重たそう。
・パメラ・スローターファン:レースクイーン姿のメディウム。設置したファンが回転して人間を吸い寄せ、巻き込んで切り刻む罠。
  手にした日傘は日傘ではなく巨大な刃物のファン。注目を浴びるのが好きらしいが、本人より手にした刃物のほうが注目の的に。
・ジュリア・ハリセン:ボディコンスーツ姿のメディウム。人間の頭にハリセンを振り抜き、痛みと激しい怒りを誘発させる罠。
  バブル期に流行したクラブにいそうなお姉さん。派手な見目に反して、真面目で素直。お願いも不満を言いつつ聞いてくれる。

なにぶん、サービス終了したゲームの話なので、書いておかないとわからないと思い、蛇足ながら。

それでは続きです。


 * 執務室 *

大淀「ええっと、このパーツはどこに……」

ロゼッタ「それならさっき洗ったんじゃない? ほら、それー」

霞「それ、ふきんで拭いてくれる? ここにセットするみたいよ」

大淀「それからフィルターですね。確か、台形の茶色い紙がこの辺に……」

タ級「コレカ?」バサッ

大淀「い、一枚でいいんですよ!?」

ロゼッタ「で、ここに入れて……コーヒーもここに入れるんだよね!」

霞「ちゃんと量って入れないと、苦くなるわよ」

ロゼッタ「わかってるってばあ……あ、入れすぎちゃった?」

タ級「苦イノハ嫌ダゾ」

ロゼッタ「んもぉ、わかってるってばー。私も苦いの嫌だし!」

大淀「それでは、あとはここにお水を入れて……スイッチオン、ですね」

霞「意外と簡単ね?」


タ級「私ニモ説明書ヲ見セテクレ」

大淀「はい、どうぞ」

ロゼッタ「なんか、私の知ってるコーヒーの作り方と違う……」

タ級「違ウノカ?」

ロゼッタ「ルミナに頼んでたまーに作ってもらってたんだけど、こう、まぁるい……ガラス管? で作るの」

大淀「サイフォンですか? 本格的ですね」

ロゼッタ「準備と後片付けが面倒だからーって、たまにしか作ってくれないんだけどねー」

 扉<チャッ

ロゼッタ「あ、先生!」

提督「誰が先生だよ。お前も結構独特な呼び方するな?」

ロゼッタ「えー? でも魔神様でしょ? 『魔』の神様なんだからさー」

ロゼッタ「魔女メディウムのロゼッタちゃんが、先生って呼んでも全然おかしくないと思うけどー?」

提督「俺が先生って呼ばれるのがどうもな……ん? なんだ、大淀もこっちにいたのか。珍しい取り合わせで何してたんだ?」

大淀「コーヒーメーカーの試運転です。通信室の設備点検も、赤城さんへの説明も一通り済ませましたので、今度はこちらにと」


提督「そうか。お前たちもコーヒーが目当てか?」

ロゼッタ「そうでーす!」

タ級「使イ方ノオ勉強ダ。私モ知ッテオキタイカラナ」

提督「へえ、よっぽど気に入ったんだな。それで説明書見て……ん? お前、日本語読めるのか?」

タ級「ワカラナイ! ガ、絵ヲ見レバ、ナントカナル!」

提督「……まあ、いいけどよ」

ロゼッタ「あー、いい匂いがしてきた!」

霞「どうやってお湯を沸かしてるのかしら、これ……」

大淀「超音波で沸かしているみたいですが、原理が良くわかりませんね……」

タ級「……ナア、提督?」

提督「なんだ?」

タ級「コーヒーハ美味シイヨナ?」

提督「……作り方によるがな。氷で薄まったり、砂糖が気持ち悪いくらい入ってるようなのは、勘弁してほしいが」

タ級「ソウイウノジャナクテ! 私ノ同型ニ奨メタラ、ソイツ、泥水トカ言ウンダゼ!? ヒドイト思ワナイカ!?」プンスカ!


提督「泥水? なんだ、ブリテンのお貴族様みたいなこと言ってんな。そいつ、お前と仲がいいのか?」

タ級「イツモ、ツルンデイタトイウカ、成リ行キデ一緒ダッタトイウカ。背中ヲ任セテモイイクライニハ、ウマクヤッテタツモリダッタ」

タ級「ケド、アイツガ、アンナニコーヒーヲ嫌ガルトハ、全然予想シテナカッタ」ムスッ

提督「じゃあ何が好きなんだ、そいつは」

タ級「ソレハ知ラナイ」

提督「お前ら、本当にそういうの意識せず生活してやがったんだな」タラリ

タ級「マア、ソウダナ。艦娘ニ遭遇シテ、ヤット自分ヲ認識シタ感ジダッタシ……オ前ト会ッテカラダゾ? 私タチガ変ワッタノハ」

タ級「アノ洞窟ニイタトキダッテ、オ前ニハ割ト素直ニ従ッテイタダロ?」

提督「そいつは泊地棲姫がおとなしかったからだと思ったんだが……」

タ級「ソレモアルガ、オ前、堂々トシテタカラナ。人間テノハ、私タチヲ見テ、ビビッテ逃ゲルモノダト思ッテタシ」

タ級「度胸ノ据ワッテル奴ハ好キダゾ?」ニヤニヤ

霞「ル級さんとの付き合いもあったし、それなりに深海棲艦に対して悪い感情だけじゃなかった、ってのもあるんでしょうね」

タ級「アイツバカリ、ズルイ」ムスッ

提督「こればっかりはな……だからって、お前も潜水艦に殴られるだけの仕事は嫌だろ」

タ級「絶対ヤダ」


ロゼッタ「よくわかんないけど、いまは先生と一緒なんだから、いいじゃん!」

霞「まあ、考え方によってはそうね。ここ以外で深海棲艦と人間が仲良くできる場所なんてないでしょうし」

タ級「ソウナノカ? ソウジャナイ場所モアル、ッテ聞イタゾ?」

大淀「え!?」

霞「あるの!?」

提督「それは初耳だぞ」

タ級「泊地棲姫ガ提督ニ協力シ始メタコロニ、ホカノ深海棲艦ノトコロデモ、人間ト通ジテルトコロガアル、ッテ」

提督「マジか。海軍が許しておかねえと思ったんだけどな」

タ級「タシカ、北方棲姫ト中間棲姫ノトコロハ、人間ト秘密裏ニヤリトリシテルラシイゾ」

提督「北方棲姫? 泊地棲姫が気にかけてた、あのちっこいやつか。確かにほかの奴よりは攻撃的じゃねえ見た目だったが……」

提督「つうか、そいつらが深海棲艦とうまく取り成してくれりゃあ、俺が四苦八苦する必要なかったんじゃねえか?」

タ級「ソレハ私ニ言ウナ」

提督「それもそうだな」

タ級「ソレニ、秘密裡ッテ言ッタダロウ。多分、人間側モ、ソノ関係ハ秘密ニシテルンジャナイカ」

提督「まだあからさまにできねえ、ってか」


大淀「仮にこの島での深海棲艦との交渉がうまくいけば、他の鎮守府のやり取りも表沙汰にできるかもしれませんね」

ロゼッタ「えー? それってまたこの島が、人間たちの実験台の場所になるってことー?」

霞「考え方によっては不愉快だけど、結果的にはそうみたいね」

提督「目立ちたくねえ……」

霞「あんたはもう、そういう星のもとに生まれたのよ。諦めなさい」

提督「星かよ!?」

霞「そうとしか言えないでしょ。あんたみたいな出生の人なんて2人も3人もいないわよ!」

ロゼッタ「そうそう。魔神様がいっぱいいるわけじゃないしね~」

ロゼッタ「……あ、でも、魔神様に近づきたがる人間は結構出てきたりするかな?」

霞「え? 魔神って人間に崇拝されてるの?」

ロゼッタ「ん-、崇拝はされてなかったんじゃないかなー? ニコちゃんにそういう話、聞いたこともないし」

ロゼッタ「それよりも、魔神様の力が強大だから、どうにかして操ったり自分のものにしたりしようって企む人間のほうが多かったね!」

提督「……そこまで強いのか」

ロゼッタ「強いよー! でも、先生の場合はまだ覚醒してないみたいなんだよね。魔力槽に入って、何回か魔力と慣らしてるんでしょ?」

霞「ねえ、魔神になったら……っていうか、覚醒したら、見た目も変わるの? 誰かもあんたに角が生えたって言ってたじゃない」


ロゼッタ「うーん、そうかもしれないけど、覚醒した魔神様はどんな姿にでもなれるって聞いたよ?」

提督「何でもできるんだな……」

ロゼッタ「そうそう! だから、エフェメラを通じて、全然関係ない人間が魔神様の力を借りて力を振るうなんてこともあったし!」

タ級「エフェメラ? ナンダソレ?」

提督「そういやエフェメラのことを深海棲艦たちに伝えるのを忘れてたぜ……あとで数人集めて話さなきゃな」

タ級「私ニハ、イマ教エロ」ズイ

大淀「このタ級さん、結構ぐいぐい行きますね……油断なりません」ムムム…

霞「えっ? 大淀さん、何が油断なの?」

大淀「いえ!? なんでもありませんよ!?」ワタワタワタッ

霞(怪しすぎる……)タラリ

ロゼッタ「ねーねー、ところでさ! もうコーヒーできたの? 飲んでいいの?」

霞「……大丈夫なんじゃない? もう出てこないみたいだし」

タ級「ソレジャ、コーヒー飲ミナガラ、エフェメラノコトヲ教エテモラウカ」


 * 入渠ドック近くの大浴場 *

ニコ「ということは、エフェメラに対する警戒もしてもらえるってことになったんだね?」

ミルファ「はい! ロゼッタがそう言ってました!」

ニコ「これでエフェメラに対する包囲網が敷けるね。さすが魔神様、お姉ちゃんとして鼻が高いよ」フフッ

パメラ「で、その魔神さんはどこに行ったの?」

ニコ「えーと、たぶん、こっちにいるはずなんだけど……」

パメラ「あら? 魔神さん、あんなところにいるわ」

ミルファ「ほんとだ!」

提督「……」

ニコ「どうしたの魔神様。難しい顔しちゃって」

提督「ん-? いや……まあ、散歩してただけだ」

パメラ「そういう割には元気がないわね? そもそも艦娘や深海棲艦たちもあなたを探してたわよ? なんでこんなところにいるのよ」

提督「たまには一人にさせてくれよ。考え事してる時に愛想良くできるほど、俺は器用じゃねえんだ」

ミルファ「考え事ですかー。そういうときこそ、私たちに話してくださいよ! 力になりますよー!」ピョンピョン

提督「いや……これ、お前たちに訊いていいのかわからないんだがなあ」


パメラ「あらあ、勿体ぶっちゃって。少しは私を見てくれていいのよ? っていうか、もっと私を見てほしいんですけど?」ズイ

ニコ「そうだね。変に遠慮しないでほしいな」

提督「……んじゃあ、訊くけどよ」

ミルファ「はいっ、どうぞ!」

提督「お前たちは、元の世界……あっちの世界で生まれたんだよな?」

ニコ「そうだね」

提督「お前たちのその恰好って、あっちの世界で一般的なのか?」

パメラ「……それって、どういうこと?」

提督「こっちの世界で言うと、例えばニコの衣装はいわゆるロリータとか呼ばれてる衣装だ。フリフリヒラヒラが特徴のな」

ニコ「ふーん、そうなんだ」

提督「お前たちがいた世界で、お前たちと同じ衣装を着た人間がいたかどうかが知りたいんだよ」

ミルファ「私たちと、同じ衣装、ですか……?」

パメラ「……うーん」

ニコ「……ぼくはともかく、ミルファやパメラはいないんじゃないかな?」


提督「他のメディウムたちも、殆どの奴が向こうの世界には存在しない衣装なんじゃねえか、って思ってんだが……どうだ?」

ニコ「うーん……そうかもしれないね」

ミルファ「でも、どうしてそんなことを気になさってたんですか?」

提督「例えば、クレアやリンダは、どう見てもこっちの世界のスポーツ選手のユニフォームなんだよ。剣持って戦う衣装じゃねえ」

ミルファ「そうなの!?」

提督「ソニアやユリア、オリヴィア、カオリ、それからオディールあたりもそうだな。でも、多分お前たちはそういう自覚もねえだろ?」

ミルファ「そ、そうですね、生み出されたときからこうなので、そういうものだとばかり……!」

提督「現代的な衣装ばかりいるように思えてなあ。同じ理屈で言うと、ミルファはチアリーディングの衣装に見えるし」

提督「パメラはレースクイーンって奴だろうな。お前の背負ったスローターファン、本当なら日傘のはずなんだ」

パメラ「……ちゃんと意味があったのね、この衣装」

提督「なんだと思ってたんだよお前……」

パメラ「可愛いしセクシーだからいいかなって」

提督「……それから、さっきトイレで鉢合わせたハナコは、都市伝説で有名なトイレの花子さんと符合するし」

提督「ツバキやアカネ、オボロ、イブキ、ヒサメ、スズカあたりも、名前も含めて日本特有の文化圏の恰好だ」

提督「タチアナのビジネススーツやリサーナのバニーの衣装、フローラのナース服やルミナの白衣も、歴史的には比較的新しめだし」

提督「ニコたちがいた世界の人間が銃すら持ってなかったなら、ブリジットのアーミールックは特に奇異に映ったはずだ」


提督「あくまで俺の想像の域を出ないが、それでもお前たちの時代の衣装とは思えねえんだよな」

ニコ「……」

提督「なあ、ミルファたちは、その恰好で神殿の外に出て、人間どもに変わってるとか珍妙だとか言われなかったか?」

ミルファ「うーん、魔神様の使徒だってことはすぐわかってもらえてたみたいだけど……」

パメラ「そこはそうね。私自身はこの衣装が変わってるとは思ってないし、そう思われるのも心外だけど」

提督「なあニコ? メディウムはあっちの世界の魔神が作ったんだよな?」

ニコ「うん。でも、きみが魔神様でしょ?」

提督「……いや、まあ、そうなのかもしんねえけどよ」

ニコ「ぼくが蘇らせようと思っていた魔神様は、いつの間にかいなくなってたんだ」

ニコ「姿が消えて、その気配を辿ったときに、きみを……魔神様を見つけたんだよ」

提督「……ってことはなにか? 魔神は、最初からこっちの世界に干渉出来ていて、その知識からメディウムの姿を作ったってか」

ニコ「だから、魔神様はきみでしょ?」

ミルファ「うん、それはそうですよね!」

提督「……」


パメラ「ねえ魔神さん? そうやって悩んでるみたいだけど、あなた、最初から私たちを知ってるような感じだったじゃない?」

提督「ん-……確かに、どっかで会ったことある、みたいな感覚が微妙にあったんだよなあ。名前も、なんかすんなり覚えちまったし」

提督「神殿に初めて案内された時だって、初めて入ったはずなのに見覚えがあったし……忘れてたのを思い出した、みたいな感覚だった」

パメラ「なんだかそれって、最初から私たちがこっちの世界に来ること前提で作られたみたいじゃない?」

提督「……!」

ニコ「……!」

パメラ「だって最初から言葉も通じるし、魔神様もちょっとうろ覚えっぽいけど知識もあるし」

ミルファ「やっぱり、魔神様は最初から私たちの魔神様だったんですね!!」

提督「確かにこっちに来る前提なら、こっちの世界を意識した衣装になってもおかしくはねえな……」

ニコ「ぼくも予想外だったけど……魔神様、もしかして最初からこっちの世界に引っ越すつもりでいたのかな?」

提督「で、引っ越し先として俺に白羽の矢を立てた、ってことか……?」

ニコ「どうだろう……? きみは魔神様として覚醒した人間じゃなく、魔神様に選ばれた人間だった、ってことなのかな……」

提督「エフェメラにも目をつけられてたからな。そういうことなのかもしれねえな……」


ミルファ「あの、魔神様は、私たちの装束がこの世界のものだったのがどうしてなのか、悩んでたってことですか?」

提督「ああ。お前たちの存在そのものにかかわることだから、あまり無神経なことを訊いて混乱を招きたくなかったんだが……」

パメラ「こっちの世界に召喚されたことの裏付けみたいになっちゃったわね」ウフフッ

提督「俺としてはありがたいぜ。お前たちが妙なショック受けてたら、相談したことを後悔する羽目になってたんだ」

パメラ「あ、そういえば、アローシューターのミリーエルみたいに耳が長い子もいるけど、こっちの世界に似たような人間がいるの?」

提督「創作物でならエルフがいるな。かなりポピュラーな部類だと思うぞ」

ミルファ「アゴニーマスクのカサンドラは?」

提督「古代の剣闘士がそれっぽいかな。つうか、カサンドラならお前たちの時代にも似たような姿の奴がいそうだけどな?」

ニコ「そうだね、もう少し体つきの大きい男が鉄の鎧を着てたかな」

ミルファ「あと、敵対した人間と似たような服を着てるのは、ゼシールとかノイルースとか……」

パメラ「見たわけじゃないけど、他にもデザインが似てそうなのはルイゼットとかシエラとかかな~」

提督「多分、ニーナとかメリンダあたりもぎりぎりそうじゃねえかな? 俺の想像する中世の世界観に偏見がなければの話だが」

提督「それに比べると、お前たちの着てる衣服は近代から現代にかけてじゃねえと作れない素材のものが多いからなあ」


提督「パメラが履いてるそのストッキングも、紡績業が発達して工業化してないと、存在してねえはずだし」

パメラ「あら、魔神さん、そういうとこもちゃんと見てるのね?」ニマニマ

ニコ「……」ジーッ

提督「ん? なんだ? 俺の顔に何かついてるか?」

ニコ「鼻の下が伸びてないか見てたんだけど」

提督「……」

ニコ「全然そんな気配がないのも、それはそれで逆に心配かな」

パメラ「それはそうねえ? ほーら魔神さん、胸とか脚とか、もっと私のことを見ていいんですよー?」

提督「……」

ミルファ「あ、今の魔神様の表情の意味はわかります! 面倒臭いって思ってますよね!」

提督「俺に関する理解が深まってるようでなによりだ」ハァ…


 * 執務室 *

提督「……とまあ、俺たちが普段やってた仕事はこんな感じだな」

ジュリア「思ったより仕事量が多いですわね……」

提督「とはいえ、その道に精通してる艦娘に手伝ってもらってたからな。そこまで大変じゃねえよ」

 扉<コンコン

不知火「不知火です。失礼します」チャッ

提督「おう、不知火か。この前はありがとうな、助かった」

不知火「お役に立てたようでしたら何よりです」

提督「本当に助かってるぜ。俺みたいなのがいきなり各国の法律の勉強やらされても、全っ然頭に入らねえ」

ジュリア「それについてですけれど……一応、言わせていただきますわね。なんでやねん!」パシーン!

不知火「……いきなり何事ですか。突然、壁をハリセンで叩くなんて」

ジュリア「お仕事中の魔神様の頭を叩くわけにも参りませんでしょう? これでもあたくし、ちゃあんと気を遣ってますのよ?」

提督「? 何か不満でもあったか?」

ジュリア「ええ、ございますとも。あたくしたちの主君たる魔神様が、人間どもが都合の良いように作った法に従おうとしてますのよ?」

ジュリア「魔神様のアイデンティティを揺るがす、前代未聞の一大事ですわ」

提督「ああ……」


ジュリア「魔神様は、人間どもを飼育し管理して、歯向かうものは殺してすべて奪うもの、とニコさんから伺っていたのですけれど」

ジュリア「あなた様は逆に人間と約束事を作り、関わりを控えようとしていますわ。それで、あたくしは違和感を覚えておりますの」

不知火「確かに、メディウムからすれば、人間の法律に従うことがあり得ないでしょうね」

提督「人間を殺す以外に、俺たちが穏やかに暮らす手段を探してるようなもんだ。今時、恐怖政治なんて流行らねえしな」

提督「こっちの世界でお前たちメディウムのやり方と理屈を貫こうとしたら、世界中と全面戦争する羽目になっちまう」

ジュリア「そこでまた魔神様お得意の『面倒臭い』ですの?」

提督「そういうこった。『勝手に俺たちの領海に入るお前らが悪い』っつう理屈を正当化できりゃあ楽だろ?」

提督「俺たちがこの島でそれなりに豊かに暮らしたいなら、打算的ではあるが表向きだけでも味方を増やしといたほうがいい」

提督「と言っても、メディウムや深海棲艦はそういうの苦手だろ。俺や艦娘たちに任せとけって」

ジュリア「……そう仰っていただけるのでしたら、あたくしたちも頼らせていただきますけれど」

ジュリア「つくづく今の魔神様は変わってらっしゃいますわ。まさか、任せとけ、なんてお言葉をいただけるなんて……」

不知火「話を聞く限りですと、メディウムの仕事場は相当ブラックな職場だったんでしょうか」

ジュリア「ブラック? 後ろ暗いという意味では、その通りかもしれませんけれど……」

ジュリア「ゼシールみたいな言い方になりますけれど、お仕事はお仕事として、楽しんでやってましたわよ?」


提督「……仕事はあったほうがいいのか?」

ジュリア「そう言われると、そこは微妙ですわね。まったく仕事がないというのも、腕がなまってしまいそうで怖いですわ」ブンブン

提督「あの素振りのときの掛け声はどうかと思うぞ?」

ジュリア「み、見ていましたの!? んもう、魔神様ったらお人が悪い……掛け声、お気に召しませんこと?」

提督「ああ。『なんでやねん』とか、どこで覚えたんだ」

ジュリア「リンダから助言していただきましたわ。一番格好がつくそうですの」

提督「あいつか……」

不知火「黒潮か龍驤さんかと思いましたが、そちらですか」

提督「リンダの奴、隙あらばボケ倒すからな。最初の2回くらいは付き合ったが、しつこくボケるから途中で面倒臭くなって無視したぞ」

ジュリア「でしたらなおのこと、あたくしが歯止めのためにツッコんでおかないといけませんわね」

提督「調子に乗るからほどほどでいいぞ。ハリセンの振り回しすぎで、リンダの頭はともかくお前の手首が腱鞘炎になったら困る」

ジュリア「なりませんわよ!? それこそなんでやねんですわ! あたくし、そこまでポンコツではありませんわよ!?」

提督「ならいいけどよ。どっちにしてもほどほどにな?」

ジュリア「変なことを心配なさいますのね、魔神様は……というか、リンダの頭はどうでもいいんですの?」

不知火「気付くのが遅いのですが……それはそうと司令、不知火も遅くなりましたがご報告があります」

提督「ん? ああ、なんだ?」


不知火「××国との交渉の件ですが、未だ難航しているようです。今月も××国はこの島の領海に船を出すと主張してきています」

提督「ああ……ま、そうもなるか」

ジュリア「××国、と仰いますと、この島の所有権を主張している国のことですわね?」

不知火「はい。実際の交渉は、海軍と日本政府に任せておりますので、不知火はノータッチですが」

提督「××国にしてみりゃ領海取られ損だしな。弁償しろとか言われてたらしいが、そんなもん海軍にだって無理だろ」

不知火「政府の対応に期待しましょう」

ジュリア「期待、できますの……? 人間は信用なりませんわ」

不知火「深海棲艦との休戦を想定できる事案です。それなりの成果というか、結果を出そうとはするでしょう」

提督「どっちみち、小国の××国が武力なり権謀なりでこの島を取り返すのは現実的に無理だ。海軍に集らざるを得ねえだろうよ」

提督「こっちも譲る気はさらさらねえし、さくっと諦めてくれりゃあいいんだが……どう考えてもゴネそうなんだよな」

提督「まあいいや、向こうが何を言って来ようと放置だ放置。どうせ深海棲艦がいる時点で、連中には手も足も出せねえんだし」

提督「断りなく入ってきた不審な船は沈める。俺たちがそう告げたんだから、そうしてやりゃあいい」

不知火「そうかもしれませんが……」ウーム

提督「艦娘はともかく、俺たちは世界の嫌われ者だ。なんにせよ、攻め込まれる想定はしとかねえとな」

ジュリア「そうですわね。あたくしたちの生活が脅かされるという意味では、敵が存在する事実はよろしくないのでしょうけれど」

ジュリア「逆に敵の現れない世界、というのも、残念ながらあたくしたちは想像できませんわね……」


不知火「なんというか……メディウムの中でも、ジュリアさんのような方は珍しいですね?」

提督「そうだな。俺の執務内容を手伝うために聞きに来たメディウムはジュリアが初めてだ」

不知火「メディウムの多くは好戦的な方だと思っていましたが……」

ジュリア「あら、戦うこと自体は嫌ではありませんわよ? ただ……」

不知火「ただ?」

ジュリア「魔神の使徒として、人目を引くためとはいえ、このように露出の多い服装は、そのぉ……」モジモジ

提督「なんだ? さっきから居心地悪そうにしてたのはそういうことかよ? 無理しないで好きな服着ていいぞ?」

ジュリア「この衣装であたくしを生み出したのは魔神様ではありませんこと!?」プンスカ!

不知火「……司令……」ジトメ

提督「えぇ……? それ、俺のせいになるのか? あっちの世界の魔神に文句言えよ……」

ジュリア「あなた様が魔神様でしょう!? 責任を取ってくださいまし!」

不知火「……この場に勘違いする艦娘がいなくて良かったですね」

ジュリア「どういう意味ですの?」

提督「俺、白と黒しか着ないから、妖精に『私服のセンスは深海棲艦並み』って言われたことあるんだぞ。本当に俺が選んでいいのか?」

不知火「……深海棲艦……」

ジュリア「……まさか、スカートをはかせないつもりですの!? はっ、もしかして脱げと仰る!? 全部脱げと!? 全裸になれと!?」

不知火「どうして3回言うんですか。というか何を聞いていたんですか」

提督「ジュリア……お前、深海棲艦の誰を想像したよ」アタマオサエ


 * 埠頭 *

タ級「エッキシ!」

泊地棲姫「ヘプッ……シュン!」

ル級「……ナニヤッテルノ?」

タ級「イヤ、ナンカ鼻ガムズムズシテ……」

泊地棲姫「プシュッ、クシュンッ……ウウ、ナンダ今ノハ」


というわけで、今回はここまで。

>23
曽大佐の前に、その配下の艦娘と一悶着ですね。

>24
スエゾーは……今のところちょい役の予定しかないです。すみません。

>25
さて、どうなるでしょうね……?


今回登場のメディウムたちはこちら。

・アマナ・バキュームフロア:掃除機を持ち歩くメイドさんメディウム。床にバキュームを設置し、近づく人間を吸い寄せる罠。
  散らかったお部屋を綺麗にするのが好きなメイドさん。今の魔神は元から散らかさないためか、掃除に少し物足りなさを感じている。
・リサーナ・キラーバズソー:バニーさんメディウム。丸鋸を壁から射出して、切りつけた人間をそのまま壁まで運んで叩きつける罠。
  配膳用の丸盆と思いきや、丸鋸を手にした危険なバニーガール。明るく朗らかでおしゃべりが好きで、静かなところは嫌いらしい。
・ベリアナ・ブラックホール:悪魔というかサキュバスなメディウム。ブラックホールで周囲の人間を吸い込んで、上空から吐き出す罠。
  ボンデージビキニのセクシーな悪魔。思わせ振りなセリフで人間だけでなく魔神も誘惑しようとする。人肌が恋しいのか一人は苦手。
・イブキ・ヒートブレス:丈の長い学生服を纏った応援団のような風貌のメディウム。熱波を吹き付けて人間を丸焼きにする罠。
  熱を扱う罠に相応しい熱血娘。声も大きければ行動も豪胆、下着代わりのさらしもあらわで、恥じらいというものには少々疎い様子。
・ヨウコ・メガヨーヨー:戦隊ヒーローものを思わせる衣装のメディウム。巨大なヨーヨーが回転しながら人間を弾き飛ばす罠。
  悪い人間に正義の鉄槌を下す、メディウム戦隊がひとり、メディ・ピンク! 残り4人は募集中。性格はレッド(リーダー)適正あり。
・アカネ・ブラストボム:お団子ヘアにミニ浴衣姿の元気な少女メディウム。いきなり爆発を起こして人間を吹き飛ばす罠。
  お祭り大好き、騒ぐのも大好き。騒いでときどき神殿内を壊したりするお騒がせ娘。いくらなんでも屋内で花火するのはやめなさい。
・ヴァージニア・クイーンハイヒール:威厳漂う女王のメディウム。ハイヒールを履いた巨大な女性の足が人間をぐりぐり踏みにじる罠。
  いかにも豪奢な特注の椅子に座って踏ん反り返る、尊大な女王。メディウムの王たる魔神にも、それ相応の威厳と態度を求めている。
・イサラ・スパークロッド:ぼさぼさの長髪が静電気で広がった引き籠り少女メディウム。発雷するロッドが電撃フィールドを作る罠。
  メディウムの中では珍しい、一人に慣れてる引き籠り。臆病で構ってもらえるのは嬉しいが、熱すぎる相手にはついていけない。
・チェルシー・スイングアンカー:水兵メディウム。船の錨を振り子のように往復させ、軌道上の人間を引っかけて高所から落とす罠。
  船の上が好きで、わざわざ寝床を船の上に作るほど。細身のわりに足腰は強く、ちょっとやそっとじゃ押しても引いても動かないとか。

紹介文、このスレが終わるまでに全員分書き切りたい。
それでは続きです。


 * 墓場島 西岸 *

軽巡棲姫「コレガ今回、海域ニ侵入ッテキタ船ヨ」

提督「2隻あんのかよ……しかもまたボロ船か。こいつらも盗掘目的か?」

伊8「今回は武器のほうが多く積んでありますね。それに思ったよりボロでもないです」

提督「ん? 擬装してるってことか?」

伊8「はい。しかも、この船の上空を哨戒機が飛んでたみたいです」

提督「哨戒機? 人間のか?」

伊8「そうです、人間の乗った軍用機でした。なんとなくですけど、難民を装った便衣兵による侵攻? のように思えます」

伊8「ちなみに哨戒機は、この船2隻が島の海域に入ったのを確認して、引き返したあたりで深海棲艦の攻撃機に撃墜されてます」

提督「船の周囲に艦娘は?」

伊8「いませんでしたね」

提督「その哨戒機、どこから飛んできたかわかるか?」

軽巡棲姫「向カッタ先ニ、ソノ国ノ空母ガイタラシイワヨォ? ソイツト同ジヨウニ、ソノ辺ノ誰カニ沈メラレタラシイケドネェ?」

提督「その辺の誰か……って、誰だ?」

伊8「その海域を縄張りにしている深海棲艦らしいです。私たちとは無関係の」

提督「文字通りの見知らぬ誰かかよ」


伊8「ちなみに、はっちゃんの積んでる水上偵察機で、空母が轟沈させられてるところを確認しました」

軽巡棲姫「私ニ同行シタ、ヨ級タチカラモ、同ジ話ヲ聞イテルワヨ」

提督「今の御時世、艦娘を連れずに海に出るのは自殺行為だってのに、何考えてんだ」

伊8「この鎮守府の深海棲艦が、人間を攻撃してこないと思ってたんじゃないですか?」

提督「そうだとしても、普通の武器担いで艦娘や深海棲艦と戦おうとするか……? ちょっと浅はかっつうか短絡的な気もするな」

伊8「うーん……確かに、考えにくいですかね?」

軽巡棲姫「他国ノ艦娘ニ、協力ヲ要請デキナイヨウナ、後ロ暗イ企ミガアッタ、トカ、ジャナイノ?」

提督「ああ、なるほど。艦娘を連れてない国が、日本海軍や他国を出し抜いて、この島を軍事的に掌握したかったってか」

提督「そうだな……このボロ船の連中を脱走兵に仕立てて、そいつらを空母で追ってきた、ってシナリオならあっても良さそうか?」

提督「最初からこの船の連中は処罰する、もしくは殺すこと前提で、俺たちにお近づきになるために困ってるふりをして近づいてきた……」

提督「自国で艦娘を用立てられないなら、この島の艦娘たちと親密になればいい……って考えてたとか、な」

伊8「そのために、この船の人たちを生贄にするんですか。だとしたら胸糞ですね」

提督「俺の想像だけどな。ま、無断でうちの領海に入ってきたんだから、それに近い考えなんじゃねえかと思うが」

軽巡棲姫「結果的ニハ、良カッタンジャナイノ? メディウムタチニトッテハ、都合ノイイ生贄ナンデショ?」


軽巡棲姫「ツイデニ空母ノ人間モ、生贄ニデキレバ良カッタノカモ、シレナイケド?」

提督「空母の乗組員って言ったら普通に数百人単位じゃねえか? しかも軍人相手じゃ、いくらメディウムでも骨が折れるな」

軽巡棲姫「面倒カシラ?」ウフフ

提督「面倒だな……」

伊8「今の話だと、この船の乗員も軍人の可能性がありません?」

提督「ん? それもそうか……それで片付けられたんなら、メディウムを過小評価してたことになるな」

軽巡棲姫「私タチダッテ、不意ヲツカレタラ罠ニカカルンダカラ、関係ナインジャナイ?」

アマナ「魔神様ー!」(←船の上から手を振り)

リサーナ「マスター! お出迎えに来てくれたのー!?」

提督「! おう、また船内の掃除をしてくれたのか?」

アマナ「はい! こちらの船は綺麗になりましたよ! 元からの汚れは取れませんでしたけど!」

提督「構やしねえよ、どうせこの船もバラすしな」

ベリアナ「ねえねえ魔神様~? わたしも頑張ったのよ? だからぁ、御褒美が欲しいなあ~?」ウシロカラピトッ

イブキ「あ、ベリアナ!? お前、こっちの船はまだ後始末終わってないぞ!」(←別の船の上から)

アカネ「もう、どこ行ったのか探してたのにー!」ウニュー!


リサーナ「ええー!? ベリアナだけ抜け駆けするなんてずるーい!」

ベリアナ「なによぅ、一番乗りして乗員全部ブラックホールに閉じ込めろなんて無理言い出したのイブキじゃなーい」

イブキ「言ったけど! ってか、やりゃあできるんじゃねえか!」

ベリアナ「あんな船に100人以上乗ってるなんて聞いてないわよ~!?」

提督「100人!? そんなにいたか!? それを一人で相手したのか!?」

アマナ「魔神様、信じちゃダメですよ! ベリアナったら人数盛り過ぎです! それでも50人程度はいたと思いますが」

イブキ「それに一人じゃ手一杯だからって、アマナに助けを求めてたしな!」

提督「二人いたって50人も相手したんなら十分大変だよ。手間もかかるし魔力も使うんだろう?」

アマナ「はい! 魔神様が、私たちに魔力を回復できる魔法石を多めに持たせてくださったのが本当に助かりました!」

リサーナ「ニコちゃんはご機嫌斜めだったけどねー!」

ベリアナ「うふっ、ご主人様からは指輪まで貰っちゃったしぃ、これはもう、愛よね! 愛!」キャッ

伊8「……帰還の指輪のことですよね」ドロッ

ベリアナ「ひぃっ!? 目が怖い!?」ビクッ


軽巡棲姫「即座ニ、テレポートデキル道具ナンテ、便利ヨネェ」

提督「メディウムしか使えないとはいえ、そういう便利なもんがあるなら使うべきだ。下手打って帰ってこられなくなるより全然いい」

提督「とはいえ、魔法石にしても帰還の指輪にしても、ニコがこれまで余らせた魔力を使ってこつこつ作って貯めてたものだ」

提督「こうやって今回みたいに、それなりの見返りと言うか、成果がないと無駄遣いになるからなあ。使いどころは考えねえと……」

ヴァージニア「まったくその通りだ。あれほどの人数を踏み潰さねばならぬとは……!」ヌッ

ヴァージニア「この私としたことが、不覚にも『まだいるのか』と思ってしまったぞ……!」

提督「よう、ご苦労さん。後始末は終わったのか?」

ヴァージニア「ああ、終わったぞ。終わらせたが、イブキとアカネよ……貴様たちはなぜこんなところで油を売っている?」ヌゴゴゴゴ…

アカネ「やばっ、すっごい怒ってる……!?」

ヴァージニア「そもそも! なぜこの私が! こんな貧相な船の掃除を引き受けねばならんのだ!!」ウガー!

ヴァージニア「普段大声で騒ぎ立てている貴様たちより、引き籠りのイサラのほうが今の今まで働けているというのはどういうことだ!?」

イサラ「うう、やっと終わったっス……早く帰って引き籠りたい」フラフラ

アカネ「え、えへへへ……」

イブキ「いやあ、その……面目ねえ」


ヴァージニア「ベリアナに至っては、あるじにくっつきたいが故に、人間どもの掃討が終わってすぐ指輪の力で帰還する始末!」

ヴァージニア「後始末のために、掃除を生業にするアマナがいる船に3体、こちらの船に5体を割り振ったというのにだぞ!」

提督「その言い分が本当なら、ヴァージニアの怒りもごもっともだ。申し開きはあるか?」

ベリアナ「えっ、で、でもぉ、あの船に最初に潜入して疲れちゃったのは本当だしぃ……」

軽巡棲姫「潜入ノタメニ、アナタタチヲ載セテ、船ノ中ニマデ入ッタノハ、私ヨォ?」

提督「やれやれ……ベリアナ、お前には別の『御褒美』くれてやってもいいんだぞ?」ワキワキ

ベリアナ「わ、わかったわよぅ! ご主人様の意地悪っ!」ピャッ

ヴァージニア「あるじよ、何をやっている! さっさとその小悪魔の頭を握り潰してしまえ!」

伊8「提督のアイアンクロー、いつの間にメディウムたちの間でも有名になったんですか」

提督「生憎と、何回かやらざるを得なくてなあ……」

軽巡棲姫「魔神サマモ大変ネェ」ウフフッ

提督「ところで、確か8人いるんだよな? あと1人はどうしたー?」

リサーナ「ヨウコなら、チェルシーを呼びに行ったわよー?」

提督「んん? アマナだろ、リサーナ、イブキ、アカネ、ヴィクトリカ、イサラ、ベリアナ、ヨウコ、チェルシー……1人多くねえか?」

伊8「はっちゃんが追加でチェルシーさんを連れて行きました」キョシュ

提督「追加?」


ヨウコ「とうっ!!」バッ!

伊8「おお、噂をすれば。船の上から跳んできた」

 スタッ!

ヨウコ「メディウム戦隊、メディ・ピンク参っ上! 司令、今回の任務は完了だ!」ビシッ!

提督「おう、お疲れ。チェルシーはなんでこの船に乗ったんだ?」

ヨウコ「あれ? チェルシーは司令が呼んだんじゃないの?」

チェルシー「あー、やっぱり船はいいなあ! あ、キャプテーン! この船の操縦、楽しかったですー!」

提督「チェルシーも出て来たか。はっちゃんと一緒に行って乗り込んだんだって?」

チェルシー「はいっ! 潜水艦もいいですけど、あたしはやっぱり波を感じられる船のほうがいいですねー!」

提督「チェルシーは何してたんだ?」

伊8「船の人間を全滅させたら、その船を引っ張ってこないといけないですよね」

伊8「それなら、船の操縦ができる人にまかせたらいいんじゃないか、ってことで、試しに行ってみようと」

提督「それでチェルシーに白羽の矢が立ったってか」


ヨウコ「そうそう! ぶっつけ本番だったけど、うまくいってびっくりしたよ! さすが司令、見事な作戦指示だね!」

提督「いや、今回は俺は指示してねえぞ。チェルシーがそういう技能持ってるって把握してなかったからな」

ヨウコ「そうなの!?」

提督「さっき、チェルシーがなんでこの船に乗ったかを訊いただろ……」

軽巡棲姫「ヨ級タチモ、曳航スル船ガ減ッテ楽ニナッテ助カッタ、ッテ言ッテタワヨ?」

提督「だとしたら、今後も頼んだほうが助かるか……その辺は相談だな」

ニコ「やあ、魔神様。また人間を退治したんだね」

提督「おう、メディウムたちのおかげでな。はっちゃんと軽巡棲姫たちにも手伝ってもらった」

ニコ「ありがとう、助かるよ。ぼくたちも海の上では思うように身動きが取れないからね」

伊8「……それにしても」

ヨウコ「?」

伊8「この船の乗組員は全員メディウムが殺して、いまは無人なんですよね」

提督「まあ、そうだな」


伊8「魔の海域ってあるじゃないですか。その海域に入った船の乗組員が忽然と消えたり、飛行機なら謎の墜落事故が多かったり」

提督「ああ……あれか、バミューダトライアングルみたいなもんか?」

伊8「はい。起こってる事態が、それみたいだな、って。ふと思いました」

軽巡棲姫「ソウイウ扱イニナッテモラッタホウガ、私タチモ過ゴシヤスイカモシレナイワネェ?」

提督「誰も近づこうとしない、というのなら、一番いいかもな。メディウムの存在も有耶無耶にできそうだ」

ヨウコ「なにそのなんとかトライアングル? なんかかっこいい技名みたいだね!」

チェルシー「いやいや、そういう呑気なのじゃないから」

提督「さて、さっさと戻るか。船の曳航、東岸までもうひと頑張り頼むぜ」

軽巡棲姫「フフフ……任テオイテ。帰ッタラ、ワカッテルワヨネェ……?」ニィ…

提督「……俺が対応可能な範囲でな?」

軽巡棲姫「フフフ……」キラキラ

伊8「……」キラキラ

ニコ「魔神様も大変だね?」フフッ

提督「……なんか、さっきも聞いたな? そのセリフ」


 * 東岸 鎮守府工廠前資材置き場 *

明石「ええ、確かに、再利用できそうな廃材はこちらにお願いします、と言いましたけどね?」

軽巡棲姫「ハァァ……」テイトクニダキツキー

提督「……」ダキツカレテナデナデ

軽巡棲姫「ンッ……フゥウ……」ウットリ

明石「なんで私はここで提督がイチャつくところを見せつけられなきゃいけないんですかねえ?」

提督「仕事してきたんだから、労ってるだけだぞ」

明石「金剛さんに、時間と場所を弁えろと、さんざん言われてきませんでしたか?」

提督「そういうあいつのが率先して抱き着いてきてたぞ、定期的に。むしろ抱き着けとまで言われたし」

明石「なんですかそのお約束過ぎる『おまいう』は!!」

伊8「それより早く代わってください。後が支えているんです」

軽巡棲姫「ソ、ソレジャ、次ハ腰ニ手ヲ回シテ……?」

提督「こうか?」グイ

軽巡棲姫「!! アァ……!!」ゾクゾクッ

伊8「早く代わってください」ギラリ

明石「……」アタマカカエ


リサーナ「うわぁ……ね、ねえ、私たちにも同じことするの?」ドキドキ

提督「お前が望むんだったらな。まあ、こういうのはあんまり良くねえのかもしれないが……」

明石「良くないと思うんだったら止めたらいいじゃないですか」

伊8「明石さん何か言った……?」ドロリ

明石「ひぃっ!? 目が怖い!?」ビクッ

リサーナ「なんか、さっきも聞いたわそのセリフ」

提督「なんでもとはいかないが、これじゃないと嫌だって言うんだからご希望通りにするだけさ。軽巡棲姫、そろそろおしまいだ」

軽巡棲姫「……名残惜シイワァ……」ションボリ

伊8「はっちゃんの番ですね」キラキラキラッ

明石「……はあ。まあ、いいですけど……」チラッ

アカネ「あ、あわわわ……」セキメン

イブキ「ご、御褒美ってそういう……!?」セキメン

イサラ「か、帰ってもいいっスか……!?」ガクガク

明石「ほらー提督ー、慣れてないメディウムの皆さんが怖気ついちゃってますよー?」

提督「いや、あくまで希望者だけだぞ? 別に何か欲しいものがあればそっちを優先するし」


ベリアナ「私はご主人様のハグがいいわぁ~! そういうの、たくさんちょうだ~い!」キャー!

提督「あ、ベリアナとイブキとアカネは後半サボったから、ハグとかお願いはなしだぞ」

ベリアナ「なんでよぉ!?」イヤーン!

イブキ「良かったのか悪かったのか……」

アカネ「……イサラちゃんはハグしてもらえるんだねー」

イサラ「ファッ!? ま、まだそうと決まったわけじゃないッス……!!」オロオロ

アマナ「私はどうしましょう……新しいお掃除道具も欲しいし……」ウーン

チェルシー「私も個人的な船が欲しいなあ……でもあの御褒美もちょっと……」ポ

ヨウコ「興味はあるわけだね?」

チェルシー「ま、まあね……?」テレッ

ヴァージニア「やれやれ、これがあの恐れ多いと言われた魔神の姿とは……あるじよ。貴様は部下に対して甘やかしすぎだ」

提督「そうか? やってることは戦争だからな。まともに戦えない俺の代わりに出向いてくれてんだぜ? 労いは必要だろう」

提督「お願いがあるならそれなりに聞いてやらなきゃ、不義理ってもんじゃねえか」

ヴァージニア「む……」


提督「よし、はっちゃんもこのくらいでいいか?」

伊8「堪能しました。また、お願いしますね?」ムフー

提督「おう。さて、それじゃあ一番働いてたヴァージニアに最初に訊くか。お前の希望は?」

ヴァージニア「……無い。施しを受けるのは下々の者がすることだ」プイ

ヨウコ「ヴァージニア!? 司令に向かってなんてことを!」

提督「んじゃあ、下々の者らしくするかね……」グイ

ヴァージニア「わ、私の右手を……な、何をする……!?」

提督「……こうするのさ」ヒザマズキ

ヴァージニア「っ!!」

伊8「あー……なるほど」

リサーナ「ヴァージニアの右手の甲にキスを……!」

軽巡棲姫「アア、ソレモイイワネェ」ポヤーン

明石「うわー、そう来るかあ! もう、なんなのこの人! 普段朴念仁のくせに、こういうときだけわかってるっぽいことする!?」

提督「お前の場合、物をあげたり頭撫でたりすんのも失礼なんだろうからな。これで容赦してくれ」

ヴァージニア「っ……お、おのれ、この粗忽者め……!」セキメン

アマナ(そういう割には嬉しそうですね……)


ベリアナ「ずるい! ずるーい! ご主人様、私にもチューしてぇええ!」

提督「……」ムゴンデテノヒラワキワキ

ベリアナ「ひぃっ!?」タジロギ

チェルシー「そんなに怯えるほどのものなの?」

リサーナ「すごかったわよ~? ベリアナが掴まれてるところをみたけど、本気で痛がってたもん」

ヨウコ「さすが司令だね! 力も強いなんて、頼もしい……はっ!? もしや司令、あなたがメディ・レッド……!?」

提督「いや、俺はブラックかブルーあたりじゃねえか? レッドなんて暑苦しいのは俺のカラーじゃねえ」

伊8「真面目に返すんですね、それ」

提督「ヨウコは冗談を真に受けるタイプだろうから、ストレートでいいんだよ。洒落た冗談返すのも面倒だしな」

提督「つうか、そもそも俺はヒーローってガラでもねえしな。俺は裏方でいいから、目立つ役目はヨウコに任せるぜ」

ヨウコ「司令……あたしを、信頼してくれてるんだね!? よぉし! これからも正義のために、頑張るよ!!」ウオオオ!

提督「ほどほどでいいからな? 適度に力抜けよ?」


明石「……まったく、相変わらず優しいんだか突き放してるんだかわかんないですね?」

提督「俺としちゃあ、この島の住人が気分よく快適に過ごしてもらうために働いてるわけだからな」

提督「俺にできないことは最初から断ってるだけだ。どっちにしても、問題があるなら次から改めるが」

明石「いいえ、ああは言いましたけど、その辺のバランスがあってこの鎮守府が続いてるわけですし」

明石「いろいろとまどろっこしく思いますけど、提督の感覚で対応してもらって大丈夫だと思いますよー」

提督(微妙に棒読みくせえな……)


 *


イサラ「……」カオマッカ

提督「お前の髪の毛、すげえ帯電してんだな。体質……というより、メディウムの能力によるところか、これ」シャッシャッ

イサラ「あ、あの、ま、魔神さん、静電気、痛くないっスか」

提督「おう。大したことねえよ」

イサラ「ま、まさか、魔神さんに髪の毛を梳いてもらえるなんて……」

提督「こんだけ常々帯電していると毛先も痛むんじゃねえかと思って、ちょっと気になっただけだ」


提督「お前自身の能力に差し支えるならやめとくが、このくらいの手入れくらいはしてもいいだろ」

イサラ「め、めっちゃありがたいっス……ナンシーからは、せめてもう少し短くしたほうがいいって言われるっスけど」

提督「そりゃ前髪とか野暮ったく見えるせいだろうな。でも、お前はこのままのほうがいいんだろ?」

提督「枝毛が出来てたりしたらさすがに話は別だが、まあ好きにしていいと思うぞ」シャッシャッ

イサラ「好きに……いいっスか。うへへ……」

提督「よし、こんなもんでいいか。そういえばイサラ、お前、櫛って持ってたか?」

イサラ「い、いや、持ってないっス……」

提督「んじゃ、これやるよ。ついさっき、酒保から買ってきたばかりだから新品だ」

イサラ「い、いいんスか」

提督「おう。使うときは使ってくれ。いらないときは捨ててくれりゃいいし」

イサラ「そそそそんなことは! あ、あの、ありがとうっス……んふ、んふふふ……」ニヤニヤニヤ

チェルシー「なるほど……私も髪の毛、伸ばそうかな……」フムフム

アカネ「アマナちゃん、まだ立ち直れないの?」

アマナ「……」クテェ…

イブキ「そんなに強烈なのか? 魔神様の『耳掃除』ってやつは……」ブルリ

明石「こうやって犠牲者が増えていくのねー。知ってはいたけど」

チェルシー「犠牲者って……」タラリ


伊8「そういえば明石さんも提督にマッサージしてもらってるとき、すごい声出てますよね」

明石「ちょっ!? 聞こえてたの!?」カオマッカ

伊8「ヴァージニアさんも提督にマッサージしてもらったらどうです? 気持ちいいですよ、提督の足裏マッサージ」

ヴァージニア「!?」

チェルシー「ねえ、もしかして犠牲者増やそうとしてない?」タラリ

伊8「そんなことないですよ? みんなに提督がとってもいい人だってことを知って欲しいだけです」デロリ

チェルシー「ひぃい! 笑顔が怖い!!」

明石(朝潮ちゃん並みの狂信者がもう一人……)アタマオサエ

提督「さてと、それじゃあヨ級やカ級たちのところにも行ってくるか。あいつらの望みってなんだろなあ……」

伊8「提督、泳げないんだから一人で行こうとしないでください」

軽巡棲姫「心配ダカラ、私モ行クワネェ?」

チェルシー「私も行こうかなあ……」

 ゾロゾロ

明石「……提督が一人になりたい時間があるっていうのも、あれを見てるとなんか納得しちゃいそうだなあ」

ヴァージニア「馬鹿め。この島のあるじが、独りでいては危険極まりないだろうが」

ヴァージニア「衛兵の一人や二人、常に侍らせておくのが当然なのだ。まったく、不用心が過ぎる……!」ブツブツ

明石「……あなたもついて行きたかった口ですか」

ヴァージニア「んなっ!? そ、そんなわけがあるか!?」


というわけで今回はここまで。
アマナとヨウコの名前は一時期、アマラとヨーコと勘違いしていました。反省。


>48
ご協力ありがとうございます。
スレッドの順番で上にいると、ごくたまに荒らし目的の書き込みがくるときがあります。
幸いにして、これまでそういった書き込みには遭遇していません。

>49-50
丁度その話になりましたが、こんな感じになります。
沈めると言うより鹵獲か掠奪と言ったところでしょうか。
船体から人の魂まで全部奪って無駄にしない精神。

>51
ここで喋らせてもいいけど、どこか作中で言わせるべきか……?
今回は保留で。


今回登場のメディウムはこちら。

クリスティーナ・ライジングフロア:ダンサーのメディウム。床がせり上がり人間を真上に高く飛ばす罠で、ロック系も飛ばすことができる。
  誰よりも高く飛ぶことを目指す孤高のダンサー。日頃から練習に明け暮れる努力家ゆえに無理しがち。休みには紅茶を嗜む優雅な性格。
カトリーナ・スイングハンマー:ガテン系メディウム。巨大な石槌で人間を跳ね飛ばす罠で、柱や石像も軽々とへし折ったり動かすほど。
  巨大なハンマーを担いだ屈強な女性。見た目同様豪快な性格だが、裁縫や料理など一通りの家事も不器用なりに練習する実直さも持つ。
エミル・トイハンマー:お人形のような可愛いドレス姿の幼女メディウム。巨大なピコピコハンマーが、思い切り人間を叩いて辱める罠。
  巨大なおもちゃのハンマーを担いだ少女。メディウムの中でも特に幼い外見だが可愛いと言われるのを嫌う。見栄っ張りで意地っ張り。
オリヴィア・クエイクボム:巨漢ヒール女子プロレスラー姿のメディウム。局地的な地震を引き起こし、人間の動きを封じてしまう罠。
  ルチャスタイルの女性レスラー。痩せやすい体質で普段から食事に気を遣っている。痩せた姿とどちらが本来の姿なのかは不明。

続きです。


 * 本営 *

中将「政府から、××島への使節団派遣の詳細が届いた。交渉日は、最速で×月×日を希望しているということだ」

X大佐「来月ですか。かなり早いですね」

中佐「政府も、こういったケースを想定してしていたのだろう。もしかしたら君と同じ考えの人間がいるのかもしれん」

X大佐「だとすればありがたいですね。では私は早速、提督と日程を調整して参ります」

中将「うむ、頼むぞ。それから、警告しておいた彼の弟についてだが、彼も官僚の一人として乗船は許してほしいと言ってきた」

中将「その代わり、提督との交渉の席には一切姿を見せないことを保証するということだ」

X大佐「ほかの官僚のサポート役をさせようと言うことですかね……承知しました、その件についても提督に連絡いたします」

中将「うむ……それからもうひとつ。海軍は、今頃になって深海棲艦との対話の是非に悩んでいるようだ」

中将「儂も懸念してはいたが……深海棲艦が『人』ではないからこそ、海軍としても容赦ない攻撃ができていたというところは否めん」

X大佐「……」


中将「そして同じく、艦娘も『人』として扱われなかったからこそ、これまで我々が戦い続けられた、というのも、ないとは言い切れない」

中将「皆の不安は様々だ。深海棲艦と対話できるようになって、これまでの我々の戦いを咎められないか」

中将「深海棲艦からどんな恨み節を聞かされるか。なぜ、今更になって深海棲艦と話ができることが分かったのか」

中将「深海棲艦が艦娘と仲良く国を作るとなれば、これまで艦娘の力を借りて……」

中将「否、艦娘に頼りきりだった深海棲艦との戦いは、どう変わってしまうのか」

中将「そして、艦娘にも人権が生まれるのではないか。艦娘が、本当に危険ではないのか」

X大佐「……」

中将「彼らの不安ももっともだ。ある意味、これまでがいびつで、我々にとって都合が良すぎたとも言える」

中将「彼女たち艦娘が、我々海軍に唯々諾々として従っていたのを、何の疑問も持たずに迎合して、利用してきたツケが回ってきたのだ」

X大佐「中将閣下。それは違うと思います」

中将「……」


X大佐「彼女たちは……艦娘は、純粋に人の助けになるために現れたと考えています」

X大佐「深海棲艦という、人間に対する悪意に対抗するために現れた、人間の善意、善性とも言える存在だと考えています」

X大佐「僕たちが彼女たちを裏切ることがない限り、彼女たちは僕たちに協力してくれるはずです。これまでだってそうだったのです」

中将「……」

X大佐「それから、かつての深海棲艦とは話ができたとは思えません。彼女たちは、我々に対し悪意と敵意をむき出しにしてきました」

X大佐「なんらかのきっかけがなければ、提督とはいえ彼女たちとの交流は成し得なかったはずです」

X大佐「都合の良い考えかもしれませんが、我々が深海棲艦と理解し合うためには、時間が必要だったのです」

X大佐「もちろん、後腐れなく、なんて都合のいい話はあり得ないでしょう。人間同士の戦争ですら、そうなのですから」

X大佐「彼女たちが抱えていた悪意を我々が正しく理解し、艦娘とともに共栄できる道を探していくことが大事だと、そう、考えています」

中将「……そうであってほしいものだ」

中将「不確かな情報だが、彼以外にも深海棲艦と内密に交流している海軍提督がいるらしい」

中将「あの島の深海棲艦たちと対話が進めば、他方の深海棲艦とも交流が期待できるかもしれん」

中将「海に平穏を取り戻すため……くれぐれもよろしく頼むぞ、X大佐」

X大佐「はっ!」ケイレイ


 * 墓場島 東沖 *

 * 海軍巡視船内 会議室 *

金剛「テェェェェトクゥゥゥゥ!!」ダキツキー!

提督「どわっ!?」ガッシィ!

陸奥「ちょっと金剛!?」

金剛「うう……寂しかったデース! 逢いたくて逢いたくてたまらなかったデース……!!」スリスリスリスリ

朧「金剛さんは相変わらずですね」

X大佐「どこの金剛も熱烈だよね」

提督「冷やかすなよ……それはそうと、この前の船とは違う船で来たんだな。おかげで深海棲艦たちがざわついてたぜ」

X大佐「あの船は医療船だからね。便利ではあるけど、特に診るべき患者がいないのなら、ここにそれで来る理由はないよ」

X大佐「それで、あの島の再建は順調かな?」

提督「まあ、いまのところは順調だな。もうじき、人間を受け入れて話し合う場所も出来そうだ」

提督「ただし、あくまで話し合いの場だ。飯を出すくらいはしても、寝泊りできるような設備まではこっちじゃ作れねえ」

X大佐「あの島では、食材の自給自足も難しいだろうからね」

提督「ああ。その辺は残念ながら燃費の悪いやつしかいねえんでな……」ハァ…


X大佐「食糧支援はしばらく必要になるということだね?」

提督「あんまり世話になりたくねえんだが……当分は資源や鉱物との物々交換で頼む」

金剛「No probrem... これからのテートクのsupportは、全部私に任せて All Okey デース」ホオズリホオズリ

提督「お前なあ……」

青葉「本当に金剛さんは司令官が大好きですねえ」

島風「提督、ただいまー!」

提督「よう、おかえり……って、お前たちだけか? 武蔵や比叡や白露とかも戻ってくる予定だっただろ?」

青葉「武蔵さんは那智さんと一緒に与少将のところで、もうしばらく勉強したい旨の連絡がありました!」

青葉「比叡さんはW大佐のところの榛名さんにくっつかれているそうで、離れるまでもう少し時間がかかりそうです」

提督「あー……あっちの榛名も比叡の件は相当泣きじゃくってたからな。んじゃ、しゃあねえか」

島風「それから白露も、第二改装が適用できそうだって話で、本営で診てもらってるんだけど……」

島風「今の艤装を改造した経緯? ってのを細かく聞かれてるらしくて、まだ戻ってきてないんです」

提督「あの魔改造、そんなに深刻なのか? 仁提督んとこの明石は、白露の艤装になにしてくれてんだよ」

島風「あっちの明石さんは悪くないですよー、あの改造は白露の希望通りにしてくれた結果ですし!」

提督「そりゃあそうかもしれねえけどな……」


島風「超がつくほど改造好きなのは問題かもしれないですけど、島風たちには優しかったですよ?」

島風「もともと仁提督が駆逐艦に興味なかったせいで、最低限の駆逐艦しかいなかったって言うのもあるんですけど」

島風「あの明石さんも駆逐艦が好きらしくて。どれだけ最高の駆逐艦を作れるか、って、長門さんと夜通し話し込んでたって聞いてます!」

提督「やべえ奴じゃねえか……!?」

島風「そうかなあ? 島風の艤装とか、すっごい念入りにメンテナンスしてくれましたし、悪い人じゃないと思いますけど」

提督「あいつんとこの長門が問題児だからな……そいつと馬が合う明石とか、想像したくねえ」ウヘェ…

青葉「いろいろ思うところはありますが、青葉的にはさっきからずっと抱き着いて離れない金剛さんもなかなかのものだと思いますよ?」

提督「……昔、10分間は抱き着いてもいいってルール作ったこともあるしな。ま、このくらいは黙認してやるよ」ナデナデ

金剛「うへへへ、テートク、愛してマース……!」ンチュー

提督「調子乗んな」アタマガシッ

金剛「ひっ」ビクッ!

島風「ん-、でも、しょうがない感じはありますよね、さっきの話を聞いちゃうと」

提督「ん? どういうことだ?」

島風「金剛さん、あっちの鎮守府で追い掛け回されたんですって!」

朧「は?」


青葉「なんでも、そこの男性に求婚されてたらしいんですよ」

提督「なんだそりゃ。相手はQ中将の後釜の新しい提督か?」

金剛「No ! 違いマース! あちらの鎮守府の新しい提督は、すでに結婚済みで、落ち着いた人デース!」

金剛「私を追いかけてきたのは、その提督の息子さんデス……!」アオザメ

朧「金剛さんが青ざめるほど、嫌な要素があったんですか?」

金剛「Yes...! いくら私でも、小学生と結婚するのは無理デース!!」

提督「はあ?」

朧「しょうがくせい?」

青葉「Q中将の後釜についた提督の息子さんが、金剛さんを気に入ってしまったらしいんですよ」

青葉「大きくなったら金剛お姉ちゃんをお嫁さんにする、とか言って、とにかくくっついてきてたらしいんです」

金剛「私も子供自体は嫌いじゃありまセン。But !! 未成年者とのLoveを育むのはお断りデェース!!」

提督「金剛の倫理観がいまいちよくわからねえ」

島風「なんか、未成年者の略取誘拐罪っていうのに抵触するーって、金剛さんが言ってましたけど本当ですか?」

提督「その辺の法律はわかんねえっつうか知らねえよ」


陸奥「子供の言うことなんだし、適当に流してあげてもいいんじゃないの?」

金剛「子供だからこそ真面目に返してるデース!! 彼が二十歳になるのに11年も待ってられまセン!」

提督「ここのつ、か」

青葉「ここのつ、だそうです」

金剛「最近の小学生はマセすぎデス! 一緒にお昼寝しようとか言い出して胸とか触ろうとするんデスヨ!?」

朧「うわ、確かに触られるのは嫌だなあ……」ウーン

金剛「それに、どこで仕入れたかわからない変な知識を、変な口調でお構いなしに喋り出シテ! 私だって反応に困りマス!」

提督「なんつうか、自分に興味持ってほしくて必死になってる感じか?」

青葉「そんな感じでしょうねえ。とにかく自分を見てほしいんでしょう」

提督「そんな齢の話なんて忘れちまうだろ。陸奥の言う通り適当にあしらっちまえよ」

金剛「No、子供であるほど冗談は通じないものデスヨ? 仮に子供の約束でも、その子が本気なら無碍にはできまセン」

金剛「それに、自分が子供であることを利用して、冗談と本気のギリギリの間を攻めてくるような子供に、中途半端な答えは禁物デス」

金剛「スマホを隠し持って、録音までしようとしてたくらいデスから」

提督「録音とはまた……スト-かーかモラハラ気質になりそうなガキだな。そりゃ将来が思いやられるぜ」


X大佐「注意喚起が必要だね」

提督「よせよせ。親になったことのねえ奴が、他人の子育てに口出ししても、ろくな事にならねえよ。放っとけ」

X大佐「そういう意味じゃなくてね。子供が勝手に鎮守府内をスマホをもって歩き回ることに、だよ」スクッ

提督「!」

 チャッ パタン

陸奥「X大佐がどこかへ行っちゃったんだけど」

青葉「X大佐が怒ってるところ、初めて見ましたねえ?」

島風「あれ、怒ってたの?」

青葉「目は笑ってませんでしたね。なるほど、X大佐は怒ると真顔になるんですねえ」

提督「さては新しい提督を始末しに行ったか?」

朧「始末……そうかもしれませんね」

島風「提督は怒らないんですか?」

提督「関わるのが面倒臭え。これ以上、艦娘に害が及ばない限りは俺はどうでもいいや。現にX大佐が動いてるしな」


金剛「私はひどい目に遭いマシタヨ?」

提督「拒絶して逃げおおせてきたんだろ? もう行く必要がねえなら、それで縁切りでいいじゃねえか」

提督「そのガキが島に来ようものなら、メディウムに歓迎してもらうだけだ」

金剛「……Q中将の奥様が心配デス」

提督「鎮守府の外で会えばいいだろ。っつか、鎮守府勤め自体辞めてもいいんじゃねえか? 海軍の直接の関係者ってわけでもねえんだし」

金剛「そうかもしれマセンネー……」

陸奥「それより、金剛はもう10分以上抱き着いたままだと思うんだけど」

金剛「Hey, 陸奥……? これまで1か月近く提督のもとを離れていたんデス、ちょっとくらい大目に見まセンカ?」

陸奥「2週間くらいじゃなかった?」

金剛「どのくらい誤差デース! テートクから離れていた私のカラダは、テートク分を求めているんデース!!」

提督「なんだその提督分ってのは」

金剛「艦娘に必要な成分のひとつデス。不足すると艦娘の活動に支障をきたす物質で、シレイニウムとも呼ばれていると聞きマシタ!」

提督「なんだそりゃ??」


金剛「とにかくこうやってテートクにくっついて、テートク分を私の体に補充してるデース!」ヒシーッ!

陸奥(わかる気がする……)

朧(わかる気がする……)

 扉<ガチャー!

伊58「ゴーヤもわかるでち!!」

提督「うお、びっくりした。誰だお前」

伊58「あ、はじめまして、伊58です! X提督の潜水艦娘だよ! ゴーヤって呼んでもらってるんだ!」

X大佐「今日は彼女に秘書艦をしてもらっててね」

伊58「X提督、最近はずーっと海外艦と一緒だったから、秘書艦は久し振りなんでち!」ピトッ

X大佐「ゴーヤ、お客さんの前なんだから、あまりくっつきすぎないようにね?」

伊58「えー、なんでー? あっちの金剛さん、ゴーヤよりくっついてるよー?」

提督「金剛。お前、あっちの潜水艦娘よりべったりくっつきすぎだ。見苦しいから少し恥を知れ」

金剛「」

島風「言い方きっつーい!」


青葉「それでX大佐、あちらの提督には釘を刺したんで?」

X大佐「彼の上官に連絡を取ったよ。彼は新婚で息子はいないはずと言っていたから、親戚の子を預かったのかもしれない、だって」

朧「それ、完全に部外者じゃないですか……?」

X大佐「今頃、特別警察が動いてるだろうね。彼が提督業を続けられるかどうかも審査することになりそうだ」マガオ

青葉「釘どころじゃないものがブッ刺さりましたか……」アタマオサエ

島風「良かったですね金剛さん! 二度と会わなくて済みそうですよ?」

金剛「」

朧「提督に突き放されてそれどころじゃないみたいだね……」

陸奥「今のうちに物理的にも引き剥がしとく?」

伊58「こんなにべったりくっつきたがる戦艦さんは初めて見たでち」

X大佐「……ゴーヤといい勝負だと思うけどなあ。君だって隙あらば膝の上に座ってくるじゃないか」

伊58「それは最近X提督がゴーヤたちと向き合ってくれないからでち」

陸奥「あらあら。X大佐も隅に置けないわね」クスクス

X大佐「場を弁えてほしいんだけどね……」


陸奥「まあ、それもそうね。ほどほどにしておかないと……」チラッ

金剛「私は見苦しくないデース!」ダキツキーッ!

提督「いい加減にしろっつってんだ!」アイアンクロー

金剛「Nooooooooo !!」メキメキメキ

伊58「うわあ……」ヒキッ

陸奥「ああなっちゃうかもしれないし、ね?」

青葉「普通はならないと思います」タラリ

朧「提督は普通じゃないですから」

X大佐「そうとは聞いてるけど……戦艦が痛がるとか、いったいどんな握力してるんだ」タラリ

伊58「あの人はツ級の生まれ変わりでちか……」ガクブル

青葉(半分深海棲艦だというのは当たってるから、ノーと言いきれないのが複雑ですねえ)


朧「そういえば、X大佐は金剛さんとは邂逅してないんですか?」

X大佐「できてないんだよなあ。金剛型どころか、戦艦自体と縁がなくてね。大型建造でも伊401が建造できたくらいだし」

X大佐「初めて来た戦艦がビスマルクで、次がローマなのは僕だけなんじゃないかな?」

青葉「それはX大佐しかいないでしょうねえ……」


 * 墓場島 南西に新築された屋敷 *

 * 屋敷の中央の大広間 *

島風「うわ、ひっろーい! ここで交渉が始まるんですね!」

提督「まだテーブルや椅子が入ってねえけどな。海軍が友好を示すために寄贈するとか言ってて、あとでここに運んでもらう予定だ」

電「派手な飾りもないのに、立派なお部屋なのです。ここにお客さんをお招きするのですね」

提督「まあ、招くっつうか堰き止めるっつうか……」

吹雪「堰き止めるって、水門みたいな言い方しますね!?」

提督「実際そうなんだよなあ。この島自体が俺たちの家みたいなもんで、この屋敷がいわば客間だ。長崎の出島みたいなもんだ」

提督「この島に住むのは、穏やかに過ごすことに賛成してくれた連中だ。面倒ごとからは遠ざけたい」

電「メディウムのみなさんもここにいるということは、このお屋敷で戦うことも想定しているってことですか?」

エミル「ぼくはどっちでもいいけどね。ここから奥に入ってきたら、誰だろうととっちめるだけだし!」

オリヴィア「ああ、そうだね。身の程を弁えない、生意気な奴はアタイがのしてやるよ!」

カトリーナ「あたしだって! アニキの敵は、全部ぶっとばしてやるぜ!!」

電「……いささか、血の気が多すぎる気がするのです」

クリスティーナ「そうね。罠なんだから、息を潜めることも大事よ? 血気ばかりが逸るのはどうかしら」

吹雪「そこはそういう意味じゃないと思うんだけど……」


提督「まあ、必ずしも善人だけがここに来ると決まったわけじゃねえからな。残念ながら」

提督「そもそも、メディウムが手を出さない条件は、この島の鎮守府に所属したことのある艦娘を連れていることだ」

エミル「最上とかが連れてきた人間は殺しちゃダメだってことだよね!」

電「加減……は、難しいんでしたね」

カトリーナ「電が殺しちゃ駄目だって言うんなら、ちょっとくらいは考えて戦ってもいいけど、あたしの武器で加減ってのはなあ」

電「確かに、難しそうなのです」

提督「それに、下手に加減すると、勝てると勘違いして向かってくる馬鹿もいるからな」

提督「どうしても、ってんなら、先に電がその相手に会って、信じられるかどうか判断するしかねえんじゃねえか?」

電「かもしれませんね……」

オリヴィア「アタイらの経験上、人間はズルいだからねえ。お人好しの電を騙すかもしれないよ?」

カトリーナ「そんな不届きな奴だったら、なおのこと、あたしが世界の果てまでぶっ飛ばしてやるぜ!!」

提督「なんだ、やけに気合入ってんな」

カトリーナ「あたし、電にはいろいろ世話になってるからさ。その、飯の作り方を教えてもらったりもしてるし……」

電「カトリーナさんのハンマーを勝手に持ち出したこともありましたので、電のできる範囲でやってるだけなのです」


提督「ふーん……お前たち、そこまで仲良くしてたのか。ちょっと意外だな」

オリヴィア「カトリーナはこれでも素直だからねぇ。みんなは単純だなんて言うけど、そこがいいところだとアタイは思うよ?」

カトリーナ「な、なんだよいきなり……照れるじゃねえか」セキメン

オリヴィア「アタイはあんたのことを認めてんだよ。純粋なパワーでアタイに太刀打ちできるメディウムは少ないからねえ」

提督「なるほどなあ……パワー自慢のメディウムって確かに少ねえって、誰かも言ってたな?」

島風「スピードなら負けない!!」

クリスティーナ「高さなら負けないわ!!」

エミル「うぐぐ……ち、ちくしょー! ぼくだって、ぼくだってえええ!!」

提督「張り合うな、って言いたいところだが……まあ、得意分野のひとつやふたつは開拓してもいいかもしれねえな」

エミル「ほんと!? じゃあ、ぼくは何が得意だといいかな!?」

提督「そこは俺に訊くなよ、自分の好みから好きに選べ。こういうのは誰かから押し付けてもらうもんでもねえだろ」

エミル「好み? 好みかあ……うーん」


島風「ねえねえ提督? 思ったんですけど、この部屋の柱、走り回るのになんだか邪魔じゃないですか?」

提督「いや走るなよ……まあ、確かに部屋の見通しは良くねえな?」

カトリーナ「ああ、その柱なら、あたしがハンマーでぶっ倒して下敷きにできるように立ててもらってるんだよ」

島風「はい?」

電「ぶっ倒すんですか?」

吹雪「この柱を?」

提督「そう来るか……」アタマオサエ

カトリーナ「なんなら壁でも天井でもぶっ倒すなりぶち落とすなりして下敷きにしてやっていいんだぜ!」

電「というか、倒したら建物が崩れたりしないのですか?」タラリ

クリスティーナ「柱を抜いただけで天井が落ちてくるほど、やわな造りにはしてないって聞いてるけど」

オリヴィア「それに天井を落としたいなら、フォールニードルのナンシーがいるじゃないか」

カトリーナ「あ、それはそうだな!」

提督「屋敷をぶっ壊す気かよ。元に戻すのが大変すぎるだろうが」


カトリーナ「そうは言うけど、あたしたちが柱をぶっ倒さなきゃならない時点で、敵さんだってなりふり構ってらんねえだろ?」

カトリーナ「抵抗するときでも逃げるときでも、この屋敷を壊さないように、なんて考えたりしないんじゃねえかなあ」

カトリーナ「窓どころか、壁をぶち破ってでも出て行こうとするかもしれねえぜ?」

提督「それもそうか。命の危険を感じてるときに、余所の屋敷の心配する奴はいねえな」

吹雪「……あの、司令官? ちょっと思い出したんですけど」

提督「ん?」

吹雪「メディウムが一番最初に鎮守府を乗っ取ったときのこと、覚えてますか? 私たちはロビーでメディウムの皆さんと戦ったんですけど」

吹雪「その時、アローシューターみたいな矢や、ファイアーボールとかローリングボムみたいな炎や爆発物が飛び交ってたんです」

吹雪「でも、戦い終わってロビーに戻ってみると、例えば矢が刺さった痕跡とか、燃えたり爆発してできた焼け跡とかがなかったんですよ」

提督「……そういやそうだったか?」

クリスティーナ「それは私たちメディウムがつけた傷だからでしょうね」

クリスティーナ「私たちは気付かれずに人間たちを殺さなきゃいけないから、現場に痕跡が残らないようにしてるの」

提督「それも魔力でか?」

クリスティーナ「そういうことになるわね」


提督「随分都合がいい能力だな」

クリスティーナ「当然じゃない。私たちの都合のいいように力を使っているんだもの」

クリスティーナ「私のライジングフロアを発動させるたびに、床に穴をあけてたらきりがないわ」

提督「ああ……それもそうか」

クリスティーナ「さすがに、ライジングフロアで飛ばした人間が壊した天井とかは、復元できないけどね」

オリヴィア「まあ、柱に関しては別にアタイたちだけじゃなく、人間にとっても都合が良かったりするんじゃないかい?」

オリヴィア「逃げ回るときに柱がこのあれば、弾除けくらいにはなるだろうしさ」

提督「深海棲艦だって馬鹿力が多いぞ。ハンマーで倒れちまうような柱が役に立つのか?」

カトリーナ「そうならないように、人間は深海棲艦のご機嫌を取らなきゃいけないんじゃないのか?」

エミル「え? そうなの? ぼく、てっきり、ここで暴れた奴らは、人間でも深海棲艦でも全員やっつけるんだって思ってたけど」

吹雪「ちょっ!? だ、駄目だってば!」

オリヴィア「いや、意外とアリだねえ。話し合う場だって言ってんのに、従わないんじゃあ示しがつかないね。違うかい、アミーゴ?」

提督「確かに、暴れて建物壊されるよりは、そのほうがいいかもしれねえな。そうなったら一番手は、この中からだとエミルか?」

エミル「えっ!? ぼくなの!?」


提督「暴れようとした相手に、警告として軽く一発どつく分には、エミルのトイハンマーか、ジュリアのハリセンが適任じゃねえか?」

提督「複数人の動きを封じるって点ではクエイクボムがいいだろうな」

エミル「やったあ! ぼくが一番乗りなんだ!!」

クリスティーナ「私のほうが適任だと思うけど……」

提督「罠としての発動の速さならな。お前の攻撃を避けられる奴はそうそういねえだろう」

提督「けど、ここでお前のライジングフロアで吹き飛ばしたら、そいつは天井に激突するだろ? 脅しの初手にしては重すぎる」

提督「それにライジングフロアは意外と範囲が広い。一人だけ暴れた時は、ピンポイントにそいつだけ叩きたいとなると、難しいだろ?」

クリスティーナ「……そういうことなら、仕方ないわね」

提督「歯向かうのが一人だけならエミルかシャルロッテ、団体様ならジュリアかオリヴィア、ってとこだろうな」

吹雪「司令官、だんだんと罠の扱いに慣れてきてますね……」

提督「うーん、なんでだろうな? なんとなく、直感でこの罠はこう使う、ってのがわかるんだよな……」

エミル「魔神様なんだから当然じゃないの?」

オリヴィア「そうだよ、アミーゴはアタイたちのことを知ってなきゃおかしいんだ」

カトリーナ「アニキがいるから、ここの艦娘たちと仲良くなれてんだぜ?」


クリスティーナ「もう少し自信を持って、私たちを率いてもらわないと困るわね」

提督「……ま、善処するよ」

電「どう見ても面倒臭がってるのです」

提督「ぶっちゃけ、メディウムが活躍するような事態にはなって欲しくねえってのはあるがな」

クリスティーナ「……まあ、平穏を望むのなら、そうあって欲しくもあるわね」

 扉<ギィッ

青葉「おお、こちらが会議室ですか! なかなか広いですね、このお部屋は!」

金剛「Hmm... 椅子とテーブルがまだだとは言え、Simpleでいいと思いマス」

提督「よう、お前たちが見てきた客間はどうだった?」

金剛「ン-、客室としては本当に最低限、と言う感じデスネー。あまり居心地が良くても問題でショウけど」

提督「準備するだけの控室だからな。全身映せるでかい鏡と化粧台、水回りを置いただけでも、この島の施設としては上等なもんだ」

提督「間違っても人間どもを寝泊まりさせるような設備は置きたくねえし、そもそも居座って欲しくねえ」

青葉「そこは大丈夫ではないでしょうか? 今もお近づきになりたくない人がいるくらいには、忌避されている島ですから」

提督「だといいけどなあ」


青葉「もっとも、このお屋敷をわざわざ鎮守府から一番遠いところに置いたあたりからも……」

青葉「人と関わりたくないからじゃないかと、感じられるところはありましたけどね」

金剛「ところで、このお部屋にメディウムの皆さんがいるということは……」

オリヴィア「アタイたちも部屋の間取りの下見だよ」

オリヴィア「いくら連中のために用意したとはいえ、暴れるようならアタイたちにお呼びがかかるわけだからね」

提督「とはいえ、暴れるのが人間とは限らねえ。この島は、人間と深海棲艦の交渉の場として使われる」

提督「人間を騙し討ちしようとする深海棲艦が来るケースも想定しとかなきゃいけねえんだ。むしろそっちの方が可能性は高い」

金剛「!」

吹雪「そ、そっか……最近、深海棲艦と仲良くしてたから、気が緩んでました」

提督「その時はメディウムだけじゃなく、艦娘の力も借りねえと駄目だ。特に避難誘導とかは艦娘にしか任せられないからな」

金剛「Yes ! そういうことなら、私たちに任せるネー!」

提督「頼むぜ。マジで頼りにしてんだからな……」フゥ…

クリスティーナ「? そういう割にはテンションが低いというか、落ち込んでるように見えるわね?」

電「あ、それは、単に司令官さんが面倒臭がってるだけだと思うのです」

クリスティーナ「」


青葉「各国の代表を受け入れるとなれば、その受け入れ準備とか会場設営とか警備の手配とか、やることは山ほどありますからねえ」

エミル「人間たちの意味でおもてなしが必要なのかあ……それは嫌だね?」

提督「んっとに、マジでやってらんねえ……面倒臭えし、結局お前たちに苦労かけてるし」ガックリ

金剛「Hey, テートク? 私たちがテートクと島のために働くことは当然のことデス。お手伝いするからしっかりするデース」

吹雪「そうですよ、私たちに任せてください!」

提督「んあー、悪いな……」

 *

青葉「ところで司令官? 来月、政府との交渉を決めたそうですが、こちらのお屋敷でやるんですか?」

提督「いや、まだこっちは使わねえよ。そもそも海軍が調度品持ってくるのが来月だし、準備してたら多分間に合わねえ」

提督「つうか、その話は俺たちと政府の対話だからな。こっちの屋敷を使うまでもねえ」

提督「あいつらが船を出して、そこの一室を会場にしたいって言ってきてるから、今回はそれに乗っかるつもりでいる」

青葉「なるほど……そこへ司令官が直参すると」

提督「俺が行くかどうかはまだ決めてねえな」

青葉「そうなんですか?」

提督「今回は向こうの要求を聞くだけだ。何が望みか、何がしたいのかを一通り聞いて、突っぱねるものと受け入れるものを明確にしたい」

提督「だから、あっちの話を聞くのと、必要な資料をまとめてこっちに送る準備をしとけとだけ言っておいた」

提督「それから、あいつらが真面目に俺たちと話そうとしてるかも確かめたいから、その場には深海棲艦にも同行してもらおうと思ってる」

青葉「となると、出向くのは泊地棲姫さんですかねえ……?」

提督「さすがに姫級じゃあいつらもビビるだろ。ル級あたりがいいんじゃねえかな? 良いと言ってもらえたら、だけどな」

提督「できるだけ話のわかる奴がいいな。誰にしようかねえ……」ウーン

と言うわけで今回はここまで。

>71
無人島ですので、使える物は使わないと、ですね。

これから起こる交渉のシーンや、曽大佐艦隊とのやりとりは
ある程度できているので、このあとのシーンが書き切れれば
それなりのスピードで投下できるかもです。


今回登場のメディウムはこちら。名前だけ出てくる子もいます。

・リンダ・ローリングボム:ボーリング選手のような風貌のメディウム。ボール状の爆弾が床を転がり、触れた人間を爆風で吹き飛ばす罠。
  何故か関西弁でボケ倒す、おしゃべり大好きねえちゃん。人を笑わせたいのか気を引きたいのか……というより、そういう性分なのかも。
・ニーナ・ペンデュラム:胸当てとドレスを身に纏ったメディウム。巨大なペンデュラム(振り子)の刃が往復して人間を切り刻む罠。
  花のお世話が趣味のお淑やかな女性。魔神を守る騎士を名乗るだけあって真面目で誠実。細身の体に似合わず巨大な鎖鎌を振り回す。
・ブリジット・ガトリングアロー:陸軍系の軍人っぽいメディウム。ガトリングガンから矢を連射して、人間を蜂の巣にする罠。
  規律正しい軍人と思いきや、実は趣味のコスプレ姿。実戦経験に乏しいので、その場の勢いやテンションの高さで誤魔化している。
・タチアナ・トリックホール:キャリアウーマン風のメディウム。深い落とし穴が突如現れ、足元がお留守な人間を嵌めてしまう罠。
  スーツ姿に眼鏡をかけた、お仕事大好きな真面目さん。書類仕事はお手の物、魔神のためにメディウム運用の効率化まで考えるほど。
・ノイルース・ファイアーボール:エルフのような長い耳を持つ魔導士のような姿のメディウム。火の玉が飛んできて、人間を燃やす罠。
  杖を携え炎を操る、長身のエルフの女性。四姉妹の長姉らしく、物腰柔らかく落ち着いた雰囲気を持つが、炎の話になると饒舌になる。
・キャロライン・ニードルフロア:金髪碧眼で着物姿、海外留学生風なメディウム。とげ付きの床がせり上がり、人間を串刺しにする罠。
  魔神をダーリンと呼び慕う、天真爛漫でアメリカナイズな女の子。生け花を嗜むが正座は苦手で、しょっちゅう足を痺れさせている。
・ケイティー・チャペル:花嫁衣裳のメディウム。教会の鐘が落ちてきて人間を閉じ込める罠。外から衝撃を与えると鐘の音で追撃できる。
  少々とは言えないほど独占欲が強すぎる女性。自分以外に魔神に近づく者をすべて排除し、鐘の中で二人きりになろうと企んでいる。

それでは続きです。


 * 鎮守府内 執務室 *

提督「それで推薦されてきたのが、時雨を見つけてくれたお前か。さっきまでも島の哨戒任務してくれてたんだってな」

ヲ級「……」コク

由良「ずっと哨戒任務を引き受けてくれてるし、この海域に迷い込んだ深海棲艦も保護してくれてるそうです」

提督「そんなことまでしてたのか? お前、すげえな」

ヲ級「……ソウカ? 誰カガ、ヤラナケレバナラナイコトダ。駆逐艦タチニモ手伝ッテモラッテイル」

提督「なんにせよ協力してくれてるのはありがたいぜ。そこに余計な仕事まで押し付けるようで悪いな」

提督「どんな話かは泊地棲姫から聞いたか? いきなり人間たちと話し合えって言われて、戸惑ってないかと思ってたんだが」

ヲ級「イヤ、ソレ程デモナイ。オ前ト話スヨウナモノダト、認識シテイル」

提督「……俺と、ねえ」

ヲ級「ナンダ? ソノ表情ハ」

提督「いや……海軍の人間も言ってたんだが、普通の人間にとって深海棲艦は脅威なんだ」

提督「実際に、お前の持ってる艦載機を使えば人間は殺すのは簡単だろ? お前以外の深海棲艦も砲撃なりなんなりの攻撃手段がある」

提督「何より、お前たち深海棲艦が、敵意を持って人間に触れると、その体が壊死するっつうか、朽ちていくとか言う話もあるし……」


提督「それがどういう理屈なのかはうまく説明できないが、それが事実なもんで、人間たちは深海棲艦をひどく恐れている」

ヲ級「触レルト……? 提督ハ、ナントモナイノカ?」

提督「魂が半分深海棲艦なせいか、俺の身には特に何も起きてねえな。というか、すでに人間じゃないからかもしれないが」

提督「ただまあ、そういう理由があるんで、お前と話す人間たちからそれなりに怯えられたり、嫌がられたりすると思うんだ」

提督「特に、来月乗り込むであろう船には、いろんな奴が乗船してると思う。深海棲艦が嫌いで、あからさまな態度の奴もいるはずだ」

提督「最悪、乗船した艦娘に威嚇されたり攻撃されるかもしれねえ。そういう状況下で落ち着いていられるか、その辺を確認したいんだ」

ヲ級「……イマノ時点デハ、ドウナルカハ想像デキナイ」

提督「うーん、まあ、それもそうだよな……」

由良「ねえ提督さん? その交渉に一緒に行く艦娘は誰にするか、決めてるんですか?」

提督「いや、そっちも決めてねえんだ。朧を候補にと考えてたんだが、露骨に嫌な顔されて断られた」

由良「そうなんですか? それじゃ、扶桑さんや陸奥さんは? 落ち着いてるし、話を聞くのは上手そうですけど」

提督「その二人だと、どっちも頷くと思えねえなあ。あれで扶桑は山城たちから離れたがらねえし」

提督「陸奥もちょっと人間嫌いなところがあってな。大勢の人間の前に立ちたいとは思ってねえんじゃねえかな」

提督「肝が据わってるって点では比叡なんだが、ちょっと素直過ぎて丸め込まれねえか不安だし、何よりまだこっちに戻ってきてねえ」


提督「ほかに適任そうなのは長門や霧島だが、余所の鎮守府に馴染み始めてるし、ここであの二人を頼っても後々うちのためにはならねえ」

由良「いま、この島にいる艦娘の中から選ぶのが賢明、ってことですね」

提督「そういうことだ」

ヲ級「……人間ハ、私タチト、話ガシタイノカ?」

提督「ん? 一応、そうだって言ってきているが」

ヲ級「仮ニ、私ト、艦娘ノ誰カト、提督ガ向カッタトシテ、私ニ声ヲカケテクルダロウカ?」

由良「!」

ヲ級「私ガ……深海棲艦ガ、人間ニ怖ガラレテイルト言ウノナラ、私ガ行ッテモ、提督ヤ艦娘トシカ話サナイコトニナルト思ウガ」

提督「……そうだな。いくらか慣れてる海軍の人間でも、深海棲艦との対話となると、多少なりともビビったりするはずだ」

提督「お前の言う、深海棲艦と艦娘と俺の面子だと、おそらく俺にしか話しかけてこないだろうな」

由良「艦娘にも話しかけてこない、ですか?」

提督「だと思うぜ。俺が島のことを仕切ってるわけだし、だとすれば、連中も俺以外と話をしようなんて思わないだろ」

提督「最悪その場で言質を取ろうと画策してくるかもしれねえ……となると、俺は出ないほうがいいんじゃないか、とも思えるな」

由良「……うーん」


提督「まあ、どっちみち、初回はあくまで顔合わせで済ませたいんだ」

提督「話を聞いて資料をもらって、あとはこっちで持ち帰ってから回答する、で終わらせたい」

提督「ただ、今回が単なる顔合わせだとしても、必ず深海棲艦が関わってくるぞ、って印象付けておきたいとは思ってる」

提督「俺たち全体があいつらに避けられること自体は構わねえが、深海棲艦だけが除外されて扱われるようなことは避けたい」

由良「そうですね。国交の話になると、資料とか山ほどあるでしょうし、その中でおかしな文言が入ってないか確認が必要ですよね……」

ヲ級「……」

提督「そういうわけなんで、まずはあいつらの社交辞令を適当に受け流してもらいながら、睨みを利かせてほしい、っていう難しいお願いだ」

提督「あいつらの無礼もある程度我慢してもらわねえといけなくなるはずだ。嫌な役割だが、頼めないか?」

ヲ級「……構ワナイ。引キ受ケル」

提督「本当に助かる。悪いな」ニコ

由良「……提督さん? 艦娘の出席者も決めないといけないですよね? ねっ?」

提督「そうだな」

由良「でしたら、ゆ」

ヲ級「私カラ、希望シテモイイカ?」

提督「ああ、もちろんだ。誰か一緒に行きたい艦娘がいるのか?」


ヲ級「誰、トイウノハ、ナイガ……艦娘ハ、駆逐艦ヲ連レテイキタイ」

由良「ええっ!?」

提督「……その理由は?」

ヲ級「駆逐艦ハ、人間ノ幼体ニ似テイルノダロウ? 成体ガ私ダケナラ、私ニ話シカケザルヲ得ナイ状況ニナルト思ウガ?」

提督「なるほど。確かに、駆逐艦娘は子供扱いされそうだな」

ヲ級「ソレカラ、イマノ話ニ少シ興味ガ湧イタ。オ前ノ言ウ、私タチニ怯エテイルノニ、軽視シタ態度ヲトル人間ガイノルカ、見テミタイ」

提督「そっちはあまり感心しない理由だな……」

ヲ級「ソウナノカ?」

提督「面白半分でやると痛い目見そうだからな。やるなとは言わないが、人間が用意した席での交渉ごとだ、油断だけはしないでくれ」

ヲ級「……ワカッタ」コク

由良(由良が行って褒めてもらおうと思ったのに)ションボリ

提督「さて、それはいいとして、朧以外に候補と言うと……朝潮は素直過ぎるし、若葉もいねえし、誰がいいかねえ」ウーン

由良「えっと……如月ちゃんは駄目なんですか?」

提督「人間に、肉体的に嫌な思いさせられてるからな。できればそういうトラウマが少なさそうな艦娘を選びたい」


由良「それなら……」

 扉<コンコン

敷波「しれーかーん、入るよー!」ガチャー

初雪「お邪魔します……」

敷波「水路のことで相談が……って、ごめん、取り込み中だった?」

由良「ううん、大丈夫よ。丁度良かった、提督さん、敷波ちゃんはどうですか?」

敷波「へっ?」

 * *

敷波「ふーん。いいよ」

提督「マジか。敷波は、こういうのは嫌がるもんだと思ってたんだが」

敷波「うん、好きじゃないけどね。でも、話としては、相手に適当に愛想良くして、書類をもらってくる、ってことでいいんでしょ?」

由良「そ、その通りだけど……」ウーン

敷波「由良さんさー。多分だけど、あたしのこと、可愛げがなくなったとか思ってない?」

由良「……以前はもう少し、言い方が柔らかかったって言うか、そこまでずけずけ言わなかったんじゃなかったかな、って」


敷波「今更だと思うんだけど」

由良「提督さんのせいですよ?」ジロッ

提督「そんなこと言われてもなあ……」

敷波「もー、由良さんてば、電のこともそうだけど、あたしのこと心配しすぎだって。ヲ級ちゃんもいるんだし、大丈夫だって」

ヲ級「……ヲキューチャン? 私ノコトカ?」クビカシゲ

敷波「あ、なんか違う呼び方のほうがいい?」

ヲ級「……イヤ、オ前タチガ呼ビヤスイナラ、ソレデイイ。私ノ名前ヲ訊カレテモ、思イ出セテイナイカラ」

初雪「名前?」

提督「俺たちは深海棲艦をル級とかヲ級とか呼んでるけど、それは海軍に発見された順につけられた、便宜上の名前だろ?」

提督「もともとはこいつもどこかの国の航空母艦で、その名前が思い出せないまま蘇ったのがこの姿なんじゃないか、って」

ヲ級「ソウイウ話ヲ、提督ト、シテイタ。モトモト私タチハ、人間ニ遭遇スルマデ、名前ナンテ意識シテイナカッタカラ」

敷波「……それじゃあ、そのうち名前を思い出すかもしれない、ってこと?」

提督「そこはわからねえな」

敷波「ふーん。どっちにしても『ヲ級ちゃん』は仮の名前だね」

初雪「メイメイカッコカリ……?」


ヲ級「タシカ……ソウイウノヲ、愛称ト、呼ブンジャナカッタカ?」

初雪「アイショウカッコカリ……!」

提督「そこにカッコカリはいらねえだろ」ツッコミ

リンダ「ええ感じのツッコミが聞こえたでぇ!」ガチャバーン!

提督「……」ムゴンデアタマツカミ

リンダ「へっ!? ちょ、にいさんちょっとタンマ! タンマや!!」アタマツカマレ

提督「ああ、ちなみにだが、お前たちが政府の連中と会うときには、一応だがメディウムも乗せてってもらうからな?」

敷波「はーい」

リンダ「はっ!? も、もしかしてにいさん、うちにそういうお役目を……」

提督「お前は駄目だ。半ば潜入任務みたいなもんだってのに、お前は1分と黙ってられねえだろ」メキッ

リンダ「ひ、ひいい!? そ、そないなことあらしまへんよ!? ううううち、こう見えてヤマトナデシコでございますやし!?」オタオタワタワタ

提督「滅茶苦茶怪しくなってんじゃねえか。そんなんで任せられるか、っての」パッ

リンダ「!」

提督「あまり話を脱線させるなよ。お前はボケられればそれでいいのかもしれねえが、話の邪魔はすんじゃねえ」

リンダ「えへへぇ……その、堪忍な?」


提督「とりあえずだ。敷波とヲ級に行ってもらうことにして、もう一人くらいついて行ってもらえると助かるな」

敷波「ふーん……初雪、一緒に行かない?」

初雪「え。いや……いいけど」

リンダ「いいんかーい!」ツッコミ

提督「初雪がやる気になるなんて珍しいな。大丈夫か?」

初雪「うん、まあ。面倒そうなことは、答えなくていい、なら」

提督「あー……そういう意味では適任か。確かに、ぱっと行って、ぱっと帰ってくるだけの話だしな」

由良「とにかく、会見の実績だけ作っておく、ということですね」

リンダ「なんや、せっかく行くのに挨拶だけで帰るん?」

提督「深海棲艦が政府の船に乗り込んで、書状を受け取って帰るってだけでも、向こうにしてみりゃ大前進だろ」

リンダ「いやいやー、どうせなら派手に一発……」

提督「そういう面倒臭え真似はよせっつってんだろ」テノヒラワキワキ

リンダ「ひっ! いや、いややなあ、ほんの冗談やぁて、冗談? な?」


提督「ま、向こうに落ち度があるんだったら、ぶちかましてもいいけど……かますにしても、ある程度落ち着いてるメディウムがいいな」

リンダ「はいはーい! うち! うちが」

提督「お前は駄目だっつったろ」

リンダ「ぎゃふーん!!」ズコー!

由良「普通、そうなるわよね、ね」

初雪「……司令官のリアクションが分かっててボケてる気がする」

敷波「ていうかさ、連れてったら、絶対うるさくて気が散るよね」

ヲ級「私モソウ思ウ」ウナヅキ

リンダ「なんでや! リンダちゃん泣いてまうで!?」ウルウルッ!

提督「ところで水路の件って何のことだ?」

リンダ「無視かーい!?」

敷波「あー、それさ、周りの建物のせいだと思うんだけど、一部の水路が直角に曲がってるんだよね」

敷波「そのせいで、曲がり切れずに怪我する深海棲艦がいてさ?」

ヲ級「……ソウイエバ、イ級タチガ、カラダヲブツケテタ」

初雪「海水が飛び散って、ビニールハウスの近くや花壇とかに入っちゃうから、見直してほしい……」


提督「あの水路、かなり頑丈に作ってたはずだな……作り直しができるか、タチアナや泊地棲姫に相談してみるか。最悪封鎖だな」

提督「ちょっと行ってみるか。リンダ、悪いが留守番頼む」

リンダ「へっ? にいさん……遂にうちを頼ってくれるん? しょうがないなあ、うちにまかしときや!」

リンダ「こう見えて待つのは得意なんやで? こう、ローリングボムを当てる! っちゅう、集中力ってえの?」

リンダ「百発百中のうちの腕前は、こう、待つことから始まるよってな? 隙を見つけたらこう、ズバーッと!」

リンダ「ズバーッと、て、うちの武器は刃物やないけど、鋭く投げる! こう! こうやで! な?」フリムキ

 シーン

リンダ「って、誰もおらんのんかーい!!」

リンダ「うう、寂しいなあ、あんまりやで、この仕打ち。なんでうちひとりで喋り続けてなきゃあかんねん……あ」

リンダ「ちょっと。そこの画面の前のきみ! そう、きみや! ちょーっと、うちとおしゃべりせぇへん?」

リンダ「あっ、ちょっと、スクロールするのやめてもろて! うちが消える! 消えるて!」

リンダ「ちょ、待ってえなーーー!」


 * 鎮守府 埠頭 *

那珂「メタネタは、使用上の注意をよく読み、用法、用量を守って正しくお使いくださいっ!」ビシッ!

山城「那珂ちゃん? 突然何を言ってるの……!?」


 * 工廠 *

明石「あ、提督! こちらにいらっしゃるなんて珍しいですね?」

提督「よう。忙しそうだな」

明石「いえいえ、いまはそうでもありませんよ? 怪我と言っても、みんな戦闘以外でできた大したことない怪我ばかりですから」

提督「今のところは一応、平和なわけか」

明石「そうですねえ。まさかル級さん以外の深海棲艦も診てほしいとか言われるなんて、思いもしませんでしたけど」

プール内のイ級「」チャプチャプ

プール内のロ級「」チャプチャフ

ヲ級「駆逐艦ノ傷ハ、スグ、治リソウカ……?」

明石「はい、大丈夫ですよ! もうすぐ修理完了です!」

提督「つうか、深海棲艦も診られるようになったこと自体もすげえな」

明石「ええ、もっと褒めてください!」ドヤッ!

提督「お前なあ……まあ、いいか。調子に乗ってもいいくらいの仕事をしてるしな。なんか入用なもんがあるなら、遠慮なく言えよ?」

明石「あれ、いいんですか? それじゃあ……」テマネキ

提督「ん?」


明石「マッサージ用のお部屋をひとつ作ってください。遮音性が効いてるお部屋で……!」ヒソヒソ

提督「……それ、今更じゃねえか?」

明石「今更でもいいんですぅー! 提督、お願いしますよ!?」

提督「お前の場合、自分で作れそうだけどな……まあいいや、あったほうがいいことは確かだし、予定には入れとくか」

ニーナ「遮音性と仰るのでしたら、神殿の中で行ってもよろしいかと思いますが」

提督「うお!?」ビクッ

明石「ひえっ!?」ビクッ

ニーナ「あ、申し訳ありません、驚かせてしまいましたか」

提督「くそ、お前ら気配の消し方うますぎんだよ……」

ヲ級「隠レテタノカ」

ニーナ「はい。時々練習しませんと、いざと言うときに力を出せませんので」ニコ

敷波「遮音性って何の話?」

明石「あ、いえいえ、なんでも……」

提督「内密な話をするときに聞き耳立てられないようにしたいんだよ。そういう場所が欲しいってだけだ」

由良「そうなんですか?」


敷波「ふーん?」

初雪「怪しい……」

ヲ級「……?」クビカシゲ

提督「揃いも揃って疑いの目を向けるなよ。別にいいけどよ」

明石「いいんですか」タラリ

提督「とりあえず、ニーナの申し出は悪くねえが、その前に艦娘を神殿に招き入れること自体は問題ないのか?」

ニーナ「はい、問題ないと思います。以前、魔神様が体を痛めた時に、赤城さんに連れてきていただいていますし」

提督「ああ、俺が魔力槽に入ったときか……」

ニーナ「それから、一番最初に捕縛した如月さんを治療するときにも、入っていただいています」

ニーナ「もちろん、入ってはいけないお部屋も神殿内にはありますが、そうでなければニコさんも何も言わないでしょう」

敷波「入っちゃいけない部屋?」

提督「いろいろ仕掛けのある危ない部屋があるんじゃなかったか。確か、あっちの世界じゃ人間に攻め込まれてたんだろ?」

敷波「危ないものが置いてあるお部屋じゃなければ、入ってもいいってこと?」

ニーナ「はい、そうですね。ただ……」

敷波「ただ?」

ニーナ「よく考えたら、危ないものが置いていないお部屋のほうが少ないですね?」

明石「それじゃ駄目じゃないですか」ガクッ


ニーナ「私が一緒なら、危険な場所は回避できますよ」

提督「そうかもしれねえけど、それじゃ神殿内に一人で入るな、と言ってるようにしか聞こえねえぞ」

初雪「うん……危ないなら入りたくない」

 奥の扉<ガチャッ

ブリジット「自分も入る機会はない方が良いと思うであります!」ビシッ!

ニーナ「あらっ、ブリジット? ここにいたの?」

明石「結構な頻度で来てますよ? ここにある使ってない装備を見せてほしいとお願いされてまして」

ブリジット「様々な装備品がありますので、今後の参考にさせていただいているであります!」

ニーナ「そういえば、隼鷹さんたちがいた時も、飛行機を嬉しそうに眺めてたわね……」

敷波「へー、なんか参考にできるもの、あったの?」

ブリジット「残念ながら、自分の武器は簡単に刷新できるわけではありませんので、眺めて想像するだけであります……」ショボン

明石「そういえば、メディウムの皆さんの武器の強化って、どうするんです?」

ニーナ「私たちの武器で強化できるのは、純粋な威力だとか発動回数、再発動までの時間短縮などです」

ニーナ「あとは、私たちの武器が通用しない相手がいますので、そういった相手の不意を打つ力であったり……」

ニーナ「連撃や複数回攻撃を当てることで、強制的に相手の装甲を破砕する力を、私たちの武器に付与することは可能です」

ブリジット「自分のガトリングアローには、連撃によるアーマーブレイクの力が備っているであります!」エッヘン!


ヲ級「……オ前カ」セキメン

ブリジット「はい?」

ヲ級「アノ時、私タチヲ丸裸ニシタノハ、オ前カ……!」ゴゴゴゴ…

ブリジット「ひいっ!? んななな、何事でありま……あ! も、もしや、貴殿はあの時の……!?」

ニーナ「そういえば、ブリジットは隼鷹さんの流星に乗せてもらっていただったわね。その時に敵空母群に大打撃を与えた、って……」

ヲ級「オ前ノセイデ、私タチハ恥ズカシイ目ニ……!」ズイッ

ブリジット「ひええ! ご、ごめんなさいごめんなさいっ!」

提督「落ち着け落ち着け。何があったかは後で聞く、まずは落ち着け」ワリコミ

ヲ級「……!」

提督「ブリジットも心当たりがあるんだな?」

ブリジット「は、はいであります。おそらく、自分はその航空母艦の深海棲艦殿と交戦し、装甲というか、衣装を破砕したのでは、と……」

提督「衣装を破砕?」

ヲ級「……」ナミダメ

提督「……こりゃ、何も聞かないほうが良さそうか?」

明石「かもしれませんねえ……」


ブリジット「え、ええと、その、その節は、大変申し訳ないことを……」オソルオソル

提督「待て待て。むしろこの場合は俺が謝らなきゃならねえんじゃねえか? 俺が迎撃指示を出したわけだし」

ブリジット「!?」

ニーナ「魔神様!?」

明石「んー、でもまあ、それが一番すっきりしますかね。提督があの戦いの最高責任者であったわけですし」

提督「そういうわけなんで、ブリジットに対しては水に流してくれ。代わりに俺がお前たちの希望を聞くことで勘弁してほしい」

ヲ級「……」ジロリ

ブリジット「ひっ……そのぉ、本当に申し訳ないであります……」

ヲ級「……ワカッタ。責任ハ、オ前ニトッテモラウ」

提督「ああ。あとでもう一度、執務室に来てもらっていいか?」

由良「」ギラギラッ

ブリジット(こっちからも殺気が溢れてるであります!?)ビクッ

明石(うわあ……『責任』の一言で目の色が変わってる)

ニーナ(魔神様は魔神様で平然としすぎです……慣れておいでなのでしょうか)タラリ


敷波「由良さーん、目つき怖くなってるよー」ヒソッ

由良「えっ!? そ、そう?」

敷波「うん。落ち着いて」

明石(敷波ちゃんが落ち着きすぎてる……)

ニーナ(なんて頼もしい……)

初雪「……とりあえず、水路はどうするの」

提督「おう、すっかり話が脱線してたな。作り直せるようなもんか、見に行かねえと。明石にも話を聞きたいんだが、いいか?」

明石「あ、はい! わかりました!」

提督「ニーナはタチアナを連れてきてくれるか? 水路の設計にはあいつも一枚噛んでんだろ?」

ニーナ「そうですね。呼び出しますので、しばらくお待ちください」

提督「あとは泊地棲姫は……」

明石「最近は食堂にいますよ。最近は自分でコーヒーの焙煎を始めたみたいです」

提督「本格的だな……そのうちコーヒー畑でも作りそうだな」

初雪「そうなったら、紅茶派が黙っていなさそう」


 * その後 *

 * 執務室 *

タチアナ「水路の改修工事の件、承りました。あとはこのタチアナにお任せを」ペコリ

提督「ああ、頼むぜ。ところでお前、結構夜遅くまで書類仕事してるんだって? 無理はしなくていいからな?」

タチアナ「ありがとうございます。私は大丈夫ですので」

提督「大丈夫だからって言って無理する奴、数人、心当たりがあるんだよなぁ」ジトッ

タチアナ「そう仰る猊下こそご無理なさらぬよう、面倒ごとがありましたら、私どもにご下知いただければと」

提督「俺は最初から無理はしてねえよ。面倒なことも嫌いだからな。お願いしたいことがありゃあ、誰に対してもそれなりに頼ってるさ」

敷波「……今はね」ジトッ

提督「今は今でいいだろ。昔に戻ったほうがいいのか?」

敷波「それはよくないね。っていうか、いつ戻っちゃうか心配なんだけど」

提督「……」

タチアナ「あの……あまり猊下をからかうべきではないかと」

敷波「からかうつもりはないよ。自分で全部やろうとしたりしてほしくないだけ」

初雪「……それはそう」ウナヅキ


提督「まあ、そういうのをやめろと言われたからな。できる限り分配するっつうか……」

提督「今はさすがに忙しすぎて、協力してもらわねえと俺も休めたもんじゃねえ。勝手を知ってる艦娘が減って、新しい深海棲艦が増えて」

提督「顔覚えるのもそうだし、各々が衝突しないためのルールも決めていかなきゃならねえからな」

敷波「今後あたしたちが生活する場所だし、無関係じゃないんだからさ。あたしたちも司令官に倣ってるだけだよ?」

タチアナ「……異種族との共同作業と言うのは、往々にして衝突が発生します。それを克服しようとする猊下と、その艦娘……」

タチアナ「なんとも、その姿勢に感服いたします」

提督「そんなに堅苦しくなくていいぞ? 楽にしろ、楽に」

タチアナ「いえ、私はこれが普通ですので」

初雪「……朝潮と同じタイプっぽい」

提督「だな」

タチアナ「ところで、先ほどから不機嫌そうにしておいでのそちらのお二人はどうなさったのですか?」

由良「……」

ヲ級「……」

提督「ヲ級にはちょっとした補償をしてやらねえといけねえんだ」

タチアナ「補償……ですか?」


提督「ああ。さてと、待たせたな。ヲ級、とりあえずお前の希望を聞きたいんだが」

ヲ級「ナンデモ、イインダナ?」

提督「俺が出来る範囲でな」

ヲ級「……デハ」コホン


ヲ級「『御褒美』ヲ、ヨコセ」


敷波「……」

初雪「……」

由良「……」

タチアナ「……」

提督「……は?」

ヲ級「聞コエナカッタノカ。『ゴホウビ』ヲヨコセ、ト言ッタンダ」

提督「ごほうび?」

ヲ級「トボケルナ。オ前ハ、任務ヲ終エタ艦娘ニ、御褒美ヲアゲテイルト聞イタゾ」

提督「……どういうこった?」


初雪「あー……もしかして」

タチアナ「何か心当たりがおありで?」

初雪「頭撫でてあげたりする、あれのこと?」

タチアナ「……それが、御褒美ですか」

提督「それでいいのかよ」

ヲ級「ソレハ、ドンナモノダ?」クビカシゲ

提督「どんなものって……」

初雪「……私にやってみたらいいと思う」

敷波「あ、ずるい! あたしも!」

提督「……いいのか?」

敷波「いいんじゃない?」ニコニコ

提督「……」

 ナデナデ…

敷波「ふふーん……♪」

初雪「んふぅ……♪」

タチアナ「……」

由良「……」


ヲ級「……コレガ、御褒美、カ?」

敷波「そうだよー」ニヒヒッ

ヲ級「私ニモ、ヤレ」

提督「いいのかよ……」

初雪「その、あたまの帽子? それって取れないの?」

ヲ級「外サナイト、ダメナノカ?」

初雪「外さなないと、効果は半減する」

ヲ級「……一応、外セル」カポッ

敷波「外せたんだ……!」

ヲ級「コレデイインダナ。サア、来イ、提督……!」キッ!

提督「いや、そんなに力まなくていいぞ? 肩の力を抜け」

 ナデナデ…

ヲ級「……」

提督「……」


タチアナ「なんなんでしょう、この頭を撫でてるだけだというのに、微妙に張り詰めた空気感は」

初雪「由良さんのせいだと思う……」

由良「……」ヌゴゴゴゴ…

敷波「由良さんも司令官へのお願いがいろいろ遠回しすぎて、多分司令官には全然伝わってないんだよねー」

初雪「というか、如月や大和さん、金剛さんと比べて、アピールが弱すぎるんだと思う」

タチアナ「よく見てらっしゃいますね……」

敷波「まあ、いろいろとね?」

提督「これでいいのか……?」

ヲ級「……」ナデナデ…

ヲ級「ナルホド。悪クナイ」スッ

提督「!」

ヲ級「今日ハ、コノクライニシヨウ。マタ、貰イニ来ル」クルリ

 スタスタ…

初雪「行っちゃった……」

敷波「満足したのかな」


タチアナ「げ、猊下、大丈夫なのですか?」

提督「俺は大丈夫だが……あいつの髪、ちょっとごわごわしてたな。なんかいいシャンプーでも見繕ってやらねえと」

敷波「そこを心配するんだ」

提督「みんな気にするんじゃないのか?」

敷波「しないとは言わないけどさ」

初雪「タチアナさんも、司令官に撫でてもらう……?」

タチアナ「はっ!? い、いえ、私は、そのようなことは! とても恐れ多い……」

敷波「して欲しいって言えばしてくれるよ? 遠慮すると損だよ?」

提督「まあ、いつも頑張ってるみたいだしな。頭撫でられるのが嫌な奴もいるだろうし、希望があるなら言っていいぞ?」

由良「……提督さん?」ゴゴゴゴゴゴ…

敷波「あ」

由良「由良も秘書艦の御褒美を前倒しでいただきますねっ! ねっ!」ガッシィ!

提督「うおっ!?」ダキツカレ

由良「しばらくこのままです! このままですから! ねっ!!」グリグリグリ

提督「鼻を押し付けてんじゃねえ! 犬を通り越して猪か、お前は!」

初雪「……由良さん……」ドンビキ

敷波「ため込みすぎるとこうなるんだよねー。タチアナさんは本当に大丈夫?」

タチアナ「はい……あそこまでひどいことに、ならないように努めます」タラリ


 * 居住区 寮ロビー *

如月「……というわけで、来週以降の司令官のお部屋へのお泊りスケジュールは、この通りね」

ル級「来月マデ、予定ガ埋マッテイルノカ。スゴイナ」

軽巡棲姫「アア……待チ遠シイワ」モジモジ

伊8「……大淀さんも予定を入れてるんですか?」

陸奥「あら? これまで入れてなかったの?」

伊8「入れてませんでしたね。陸奥さんも入れてるんですか」

陸奥「私はこれまで遠慮してたんだけど、せっかくだから一回くらいは、ね」ウフフッ

扶桑「……由良は、まだ自分の名前を入れてないのかしら?」

伊8「夜を一緒にするのはちょっと違う、みたいなこと言ってたのを聞きましたけど?」

扶桑「変なところがお堅いのね……? 朝、留守になったあとの提督のベッドに、結構な頻度で飛び込んでいるのに」

陸奥「そんなこと、何で知ってるの?」

扶桑「毎朝、洗濯した提督のお召し物を届けに行ってるの。その時に、ね」

伊8「そんな役得があったんですか……!」

扶桑「届けに行ってるだけだから、残念だけど特に何もないわよ?」ウフフッ


大和「……さりげなくメディウムも入ってきてますね」

朝潮「キャロラインさん……ああ、あの剣山を持った金剛さんのような口調の人ですね」

吹雪「ニコちゃんは入ってないんだ。意外!」

ノイルース「失礼。お邪魔しますよ。この人だかりは何かありましたか?」

吹雪「あっ、あなたは確か……ファイアーボールの」

ノイルース「ええ、ノイルースです。それでこの張り紙はなんと……これは、何かの当番ですか?」

朝潮「こちらは、司令官のお部屋へのお泊りスケジュールになります!」

ノイルース「お泊り? 魔神様と、一夜を共にするということですか……?」

吹雪「ちょ、ちょっと朝潮ちゃん!? 話して良かったの? なんか、聞いてないみたいな反応なんだけど!」

朝潮「キャロラインさんが入っているから問題ないのでは?」

吹雪「いや、でも……!」

ノイルース「ふむ……面白そうですね。良ければ、私の名もそこに書き加えていただけますか」

吹雪「へっ?」


如月「最後になるけれど、いいんですか?」

ノイルース「構いませんよ。魔神様とは、一度ゆっくりとお話ししてみたかったので」ニコ

ノイルース「それ以上に、魔神様のプライベートスペースへお邪魔できると思うと……胸が熱くなりますね。昂ります」

如月(司令官の私室とはいえ、司令官の私物が着替えくらいしかないけれど……)ウーン

大和(むしろ私たちの私物のほうが多い気が……)タラリ

ノイルース「しかし……この話はもっと早くに聞いておきたかったですね。ニコさんは存じておいでなのですか?」

大和「知っていますよ。ニコさんがいるときにこの話をしたことがありますから、聞いていないということはありません」

ノイルース「ふむ。そこにキャロライン以外のメディウムの名前は載っているのですか?」

如月「載っているのはキャロラインさんだけかしら?」

ノイルース「そうでしたか。ではなぜキャロラインだけ……? ニコさんには改めて事情を伺うとしましょうか」

ル級「オ前以外ノ、メディウムモ、参加スルノカ?」

ノイルース「話せば何人かは興味を持つと思いますし、知らないだけなら参加する者はいるはずですよ」


ノイルース「もし、ケイティーがこの話を聞いていたとしたら、真っ先に入っていたと思いますが」

伊8「あ、ケイティーさんなら出禁になりましたよ」

ノイルース「……」

軽巡棲姫「順番ヲ無視シテ、イキナリ寝室ノ提督ニ襲イカカッテ、返リ討チニ遭ッタラシイワネ?」

伊8「飛び掛かったところを頭を掴まれて、そのまま片手でぐるんぐるんぶん回されてから地面に叩きつけられたとか」

如月「本当かどうかはわからないけど、その時一緒にいた人が巻き込まれそうになったから、司令官も相当怒ってるみたいだったわ」

大和「ニコさんも、お仕置き部屋に送ったって言ってましたね」

ノイルース「そういうことですか。そのせいで、ニコさんから我々に話が回って来なかったのかもしれませんね……やれやれ」アタマオサエ

陸奥「ところでノイルース? あなたというか、メディウムがこの寮を訪ねてくるなんて初めてじゃないかしら。なにかあったの?」

ノイルース「いえ、皆さんが普段どのような環境でお休みかと思いまして。勝手ながら興味本位でお邪魔いたしました」

陸奥「あら、そういうことなら案内するわ。炎は出さないように気を付けてね」

ノイルース「ええ、心得ております。よろしくお願いします」ニコ

ル級「ソウイエバ、メディウムガドンナ場所デ休ンデルカハ、見タコトナイナ」

軽巡棲姫「私タチト一緒ニイタトキモ、神殿ニ移動シテタワネ」

大和「どんなところで寝てるのかしら……」


というわけで、今回はここまで。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2023年07月31日 (月) 23:28:11   ID: S:WHwioR

ぶつかるまで秒読みなんですね……

曽さん、ちゃんとヤッタあとのこと考えてるのか?イキったあげく無計画とかだったら、一般市民に迷惑かけまくりだぞ?

2 :  SS好きの774さん   2023年09月17日 (日) 18:07:06   ID: S:jN2wTl

無人島なら資源採掘とかもしてるのかな?そっち方向の確保はしてなかった気がするんだけど、手を入れたら有益な鉱山とかありそう(ダイヤ取れるとこあるなら、他の鉱石もありそうだしね、コスモナイトとか出ないかなw)

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