女「絶望を切り裂く者」阿部さん「ソイツは俺じゃあないさ」(11)

 西暦2014年。 夏。

 日本は未曾有の危機に襲われた。

 どこからともなく現れた怪物達。 大きさも形も統一性がまるで無く。

 唯一の共通点は、人のみを貪り喰らうと言う事。

 誰とも無くこう呼び始めた。「悪夢」と。
 
 人類最大の敵の被害を抑える為の核による焦土作戦の提案もあったが、人道的理由でその案は破棄。

 焦土作戦の代案として日本は、怪物の被害を抑える為に国際社会から遮絶された。

 翌年秋。 命令系統の簡略化を計る為に皇室の復権がなされた。

それにより日本は西暦を破棄。 皇紀(すめらこよみ)を公的な物と定める。

 皇紀2676年。 夏。

 荒廃しかけた日本で、一人の男による反撃の烽火が上がる。
 男の名は阿部・高和。

 つなぎ姿のいい男だった。


あと、頼んでも良い?



 日本は皇居、国会議事堂等が集まる東京を最重要拠点都市として守りを固めて「悪夢」との戦闘に備え各地の自衛隊の戦力を集めた。


 しかし、その結果。


 皇紀2770年。

 帝都東京にて浮遊する超大型の「悪夢」が大挙し、戦力は瓦解。

 第二次世界大戦、東京大空襲によって灰燼と帰した街並みを再現する事となった。

>>4
ミス

皇紀2770年ではなく


皇紀2680年です。

 灰燼と化した街並みを歩くつなぎ姿のいい男。

 彼の名は阿部・高和。

 自動車整備工をしていたが、「悪夢」来襲の時より武器を手に戦う戦士となった。

 恵まれた体躯、人間離れした戦闘能力から敬意を込めて周囲からは「阿部さん」と呼ばれていた。

そう呼ばれていたのだ。 つい数日前までは……。


阿部さん「きれいさっぱり焼け野原じゃあないの……」

 見渡す限りの焼け野原となった東京で彼は寂しげに呟く。


阿部さん「すまないな道下……お前との約束、守れなかった」

 彼は、戦友にして愛する男、道下を失った。

 絶望に暮れたその顔は、泣き出していないのが不思議な程悲痛な表情で空を見上げていた。



 しかし、彼は歩みを止める訳には行かなかった。

阿部さん「俺はまだ、戦える。 諦める訳には行かない」


 「……あの」

 瓦礫の影から人影が現れた。


阿部さん「……なんだ、雄かと思ったら雌か……」

女「なんで初対面の出会い頭にがっかりされたのですか?」

阿部さん「俺はな、ホモだからな」

女「ホモサピエンス? だったら私もホモですよ!」

阿部さん「んー惜しいな、ホモサピエンスではあるが、更に俺はホモセクシュアルなんだよ」
女「……なる程」

 この出会いが、時代を変える出会いだとは、二人はまだ知る由も無かった。



女「帝都は……壊滅してしまいましたね……」

 よく見るとコイツも戦士か。
阿部さん「仲間はどうした?」

女「……その身を賭して、わが国の礎となりました」

 どこも同じか、つくづく笑えないじゃあないの。


阿部さん「おまえさんは助かって良かったな」


女「おめおめと生き残り恥だと――」

阿部さん「そいつは俺も同じさ。 逆に考えりゃあ良いじゃないか」

女「え?」

阿部さん「まだ戦えるだろ?」

 そうだ、戦うんだ……。

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