勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の完結 (877)

勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の完結です

続編なので前作読まないと分からない事が多々あるかと思いますのでご注意ください

1作目
勇者「魔王は一体どこにいる?」続編 - SSまとめ速報
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2作目
勇者「魔王は一体どこにいる?」続編のつづき - SSまとめ速報
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3作目
勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の続編の続編 - SSまとめ速報
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『夜明け』


カンカンカン ゴシゴシ


情報屋「何を作っているの?」

女海賊「ワイヤー射出装置の改造だよ…」カチャカチャ

情報屋「それで空中を飛び回っていたのね?」

女海賊「あぁ…あん時見てたんだ」

情報屋「気を失う前の最後の記憶…それだけ印象に残ってる」

女海賊「あの後色々試して改善しなきゃいけない所沢山見つけたんだ」

情報屋「このメモは?」

女海賊「それは位置エネルギーを運動エネルギーにした後にどうやって更に加速するか記したメモだよ」

情報屋「へぇ…面白そう」

女海賊「私体重が重いからさぁ…ワイヤーの強度が課題なんだ…あと打ち込むアンカーもか」

情報屋「これかなり速度が出て危ないわ?」ヨミヨミ

女海賊「だよね…地面に落ちたらペチャンコだよ」

情報屋「ワイヤーが切れないように安全装置が必要ね…例えば一定以上の負荷が掛かったら伸びるとか…」

女海賊「お!!?なるほど…そのエネルギーを圧縮空気に変換して溜めても良いな」

情報屋「フフ…何かのヒントになった?」

女海賊「おっし!!ちっと大改造すっか!!」


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『昼中』


トンテンカン ゴシゴシ


狼女「ふぁ!?…」パチ キョロ

女海賊「リカ姉ぇ起きた?」カチャカチャ

狼女「どれだけ寝てた?」

女海賊「10時間くらいかな」

狼女「今何処?」

女海賊「分かんない…海か山が見えるまで直進してる」

狼女「外は曇りか…」

女海賊「匂いでなんか分かんない?」

狼女「右の方向に硫黄の匂い」クンクン

女海賊「おおおお!!てことは火山は右か」

狼女「硫黄の匂い追えば良い?」

女海賊「火山見えれば何とかなる」

狼女「分かった…」スタ グイ


スィーーー ヒュゥゥゥ


狼女「…」ジロ

女海賊「何?」カチャカチャ

狼女「まだワイヤーの装置いじってるんだ…」

女海賊「だって暇だもん」ゴシゴシ

狼女「好きだねぇ…」

女海賊「うっさいな!!」

狼女「はぁぁぁ…それにしてもすごく良い寝覚め…気持ちよかった」ノビー

女海賊「妖精に会った?」

狼女「分かんない…ナッツを投げ合った夢」

女海賊「ナッツ?…あぁリカ姉ぇの好物だっけ」

狼女「食べたくなってきたなぁ…」

女海賊「荷室にちょっとあるよ…種類入れた箱有るから勝手に食べておけ」

狼女「探して来る…」スタ

『火山』


モクモクモク


女海賊「ちょちょ…火山の煙に突っ込まないで」

狼女「火山口がどうなってるのか気になっただけだよ」グイ

女海賊「これ通り過ぎたら左手に川が見える筈なんだ」

狼女「高度下げた方が良いね…向こう側雲張ってるし」

女海賊「雲にも近づかない方が良い…氷で球皮が傷付く」

狼女「また雨か…」


ガバッ!!


商人「ハッ!!」キョロ

女海賊「お?やっと起きたかぁ…どう?久しぶりに寝た気分は?」

商人「スゴイな…夢を見た…」

女海賊「あんたも寝るとは思わなかったよ」

商人「ちょっとメモ!!書き残さないと…」ドタドタ

女海賊「リカ姉ぇ!操舵頼むよ…私作り物すっから」

狼女「はいはい…私の分もお願いね」


ええと…アンカーも改造しよう…

2アクションで簡単に外せるように…

ワイヤーを引っ張ると返しが開く…

緩めると返しが閉じたまま維持…


カンカンカン シュッシュ ゴシゴシ

『川の上空』


シトシト シトシト


狼女「雨が小降りになってるけど霧が…」

商人「もう少し高度下げた方が良い…川を見失いそうだ」

狼女「なんか温かくなってる気がする」

商人「そうだね…でもまだ気温は低いよ」

情報屋「この湿度は体に良さそう…」スゥゥゥ ハァァァ

商人「呼吸は平気?」

情報屋「胸に痛みがあるけれど大丈夫…我慢できるから」

商人「肋骨が折れちゃってる部分があるからしばらく安静にしないと」

情報屋「たった2日程度でこんなに回復するなんて賢者の石はすごい力ね」

商人「うん…僕の心臓は治らなかったけど…」

情報屋「先天的な物は治らないのね」


女海賊「よ~し!!出来たどーーーー!!」ジャーーン


商人「また新しい装置かい?」

女海賊「あぁぁ試したくてウズウズする…」モジモジ

狼女「随分形が変わったね…腰にもクロスボウ?」

女海賊「そそ…射出を魔石じゃ無くて小型クロスボウにした…これでもうちょい射出早くなる」

商人「なんかガチャガチャした感じだねぇ…」

女海賊「今まで使ってた奴はリカ姉ぇにあげるよ」

狼女「お?」

女海賊「リカ姉ぇは体重軽いからそれで十分だと思う…私は重いからしっかりアンカー撃ち込まないと危ないんだ」

狼女「そういう事か…じゃぁ貰って置く」カチャカチャ

商人「僕も欲しいなぁ…」

狼女「じゃぁ私が使ってたお古をあげるよ」ポイ

商人「ん?腰に付けてる容器は?」

女海賊「これ圧縮空気溜める容器さ…風の魔石よりも強い風が出せるんだよ」

商人「へぇ?それで飛ぶ?」

女海賊「いやいやそんな力は無い…ワイヤー巻き取る動力だよ…私重いから巻き取るのも力居るのさ」

商人「なるほど…君専用なんだ…」

女海賊「リカ姉ぇが羨ましいよ…軽いと全部小型で済む」

『ハテノ村上空』


シュゴーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「あれ?大型の気球が何かやってる…」

商人「ええ!?本当だ…静止飛行か」

女海賊「どっかに魔物来てるのかも…」キョロ

狼女「…」クンクン

商人「見当たらないな…」キョロ

狼女「違う…気球に沢山人が乗ってる」

女海賊「何やってんのかなぁ…」ジーーーー

商人「なんだ?様子がおかしい…デッキに人が集まって…あああああああ!!落ち…」

女海賊「あれさぁ…兵隊が降下訓練やってんじゃね?」

商人「ほっ…ビックリしたよ…」

狼女「100メートル近い降下だよ」

女海賊「もっと有るって…ヤバ!私のワイヤー全然長さ足りんじゃん…」

狼女「用途が違う感じだね」

女海賊「そうか100メートル以上のワイヤーも用意しなきゃダメかぁ…結構重いんだよなぁ」

商人「気球からの降下なら長いワイヤー必要だね…出来ればクロスボウの射程外」

女海賊「やっぱあいつ等精鋭部隊か…」

商人「それより兵隊たちが地上に上がって来てるという事は事情が変わって居そうだ」

女海賊「だね?」

狼女「鉱山の方を見て!!あっちでも煙が上がってる」

女海賊「本当だ…あっちでも何か作ってんな…」

商人「とりあえず着陸しようか…」

『広場』


フワフワ ドッスン


盗賊「いよーう!!待ってたぜ?」ダダ

商人「これはどういう事かな?」

盗賊「見ての通り降下訓練よ…地下の兵隊たちが交代で地上に上がって来てんだ」

商人「まぁそれは分かる…僕達の手の内を知られてマズく無いかって言う話さ」

盗賊「そういうリスクは承知でお互い様な訳よ」

商人「向こうの手の内も見せるという事か…」

盗賊「そういう取引を影武者がやったんだ…あの兵隊たちは今は傭兵になった」

商人「え!?影武者が雇った?」

盗賊「まぁ女戦士も魔女も了承してる…なんつーか利害が一致した」

商人「なるほど…武器食料提供の代わりに村の治安維持か…」

盗賊「そうなるな…まぁ他にも色々あるんだが今の所良い方向な訳よ」


女海賊「先に情報屋を車椅子で運ぶから青年はちょい待ってて…」ゴトゴト


盗賊「お…おい!!どうしたんだ!!」ダダダ

情報屋「あぁ盗賊…心配しなくて大丈夫…」

盗賊「なんで車椅子なのよ!!どっか怪我したんだな?」オロオロ

女海賊「奇跡的に一命をとりとめたの…血は全部入れ替わった…これで説明になった?」ゴトゴト

情報屋「ちょっと女海賊!…心配させてしまうだけだから…」

盗賊「生きてりゃ良い…血は俺のを使え」

情報屋「じゃぁ返して貰おうかしら…フフ」

女海賊「ぬぁぁ!!ほんじゃ盗賊!!情報屋を教会まで連れてって…肋骨とか折れてるから揺らさないで」

盗賊「何ぃ!!何が有ったのよ!!」

女海賊「今言ったじゃん!!クロスボウ3発くらい胸貫通して死にそうになったの!!ほんで肋骨も折れた」

盗賊「バカ野郎!!なんで連絡し無ぇんだ!!」

情報屋「盗賊!責めないで…」

盗賊「ちぃぃ…雨に当たると傷が痛む…行くぞ!」ゴトゴト

情報屋「揺れると痛む…ぅぅぅ」

盗賊「おぉ悪い…ゆっくりだな?」ソローリ


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『鯨型飛空艇』


ヨッコラ セット


商人「じゃぁ僕も青年を背負って教会に向かうよ」

女海賊「大型の気球に乗ってるあんたの荷物どうする?こっちに移しとこうか?」

商人「そうだね…頼むよ」

女海賊「やっぱ兵隊が何人も乗り降りするから気になるよね」

商人「うん…特に書物類は無くしたくない」

女海賊「おけおけ…こっちに移してハイディングしておくわ」

狼女「大型の気球はエド・モント砦の降下用で考えて居るのね?」

女海賊「地下でそんな様な話をしてたわ…あの縦穴から降下して地下線路から退避するって言う話…」

商人「じゃぁ青年!今日から君の家はあの教会だよ…まず挨拶に行こう」ヨタヨタ


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狼女「へぇ…意外と面倒見が良いんだ」

女海賊「生まれつき体が弱い子を放って置けないのさ…自分がそうだったから」

狼女「違う所にセンス持ってるんだなぁ…」

女海賊「さてリカ姉ぇ!!さっさと荷物運んで勝負しようか!!」

狼女「ちょっと…私もワイヤーの練習をしてからじゃないと不公平」

女海賊「ダッシュ!!」スタコラ ピューーー

狼女「あ!!」シュタタ

『林』


パシュン シュルシュル ヒュン! ヒュン! シュタッ!


女海賊「良いね!!リカ姉ぇは元々身軽だからあんまワイヤーに頼らなくて良さそう」

狼女「これ面白い…」

女海賊「でしょ!?私は高速でワイヤー移動しながら射撃…リカ姉は射撃と近接を使い分け」

狼女「増速はどうやってやる?」

女海賊「速度殺さないようにワイヤー巻きあげる速度も乗せる感じ…ほんで次のワイヤーに切り替える」

狼女「コツが必要か…やってみる」パシュン シュルシュル パシュン


ヒュン! ヒュン!


女海賊「私もちょい向こうで練習してくる!!」パシュン シュルシュル


ヒュン! ヒュン!


女海賊「ひゃっほーーい!!」チャキリ

女海賊「…よーし!!移動しながら6発は撃てるな…」ヒュン!

女海賊「次円錐振り子運動!!」パシュン ヒュン!

女海賊「…回りながら360°ずっと撃てる」チャキリ

女海賊「おけおけ!イケる!!」シュルシュル シュタ

『教会』


ワイワイ キャッキャ ドタドタ


商人「…そうか…女戦士達はずっと地下に居るのか」

影武者「定期的に温泉には入りに来ている様です」

商人「物資運搬の方は?」

影武者「ローグさんが毎日往復しています」

商人「それも大変だねぇ…」

影武者「坑道内にラクにする工夫をされている様ですね」

商人「どうするかなぁ…一回見に行こうかな」

影武者「道が複雑なので知らない人は入らない方が良いとか…」

商人「あ…そうそう…鉱山の方で煙が見えて居たんだけどさ…アレ何?」

影武者「兵隊の詰め所ですね…普段はあちらの方で過ごして居ます」

商人「なるほど…一応ハテノ村の住民に配慮はしてるんだ」

影武者「私が条件を付けました…あちらは温泉も近いので意外と快適な様です」

商人「兵隊を傭兵として雇っていると聞いたけど…」

影武者「村の物流に彼等にもお金が必要なので夜間の守備に雇って居ます」

商人「なるほど…そのお金で食料とか買ってもらう訳か」

影武者「お酒が売れますね」

商人「ハハ酒を飲みながら夜間の守備か…彼らは戦闘のプロだから余裕かも知れないなぁ」

影武者「その分他に雇っている傭兵の負担も減るので助かっています」

商人「あれ?いつの間に君…髪の毛が綺麗に生えそろって来てるじゃ無いか」

影武者「恥ずかしいので見ないで下さい」

商人「あぁゴメンゴメン…」

影武者「商人さんは今日はどちらでお休みを?」

商人「う~ん…ここは騒がしいなぁ…」

影武者「子供達が寝た後は静かになりますよ?」

商人「そう?じゃぁここで休もうかな」

『夜』


ドゥルルルン~♪

時代は移り風士は変わり~♪

主にある民は分かれても~♪

みことばをのべ共ににパンをさく~♪


盗賊「やっと静かになって俺達の時間だ…」

商人「情報屋は?」

盗賊「なんだか青年に色々教えてて俺は構って貰えん…」グビ

商人「ハハなんか冷たいねぇ」

盗賊「まぁ気を遣わんで良いのがアイツの良い所だ」

商人「心配して損したかい?」

盗賊「生きてりゃ良いんだ…多少痛い事は誰にでもある」

商人「その割に動揺してたじゃ無いか」

盗賊「ヌハハまぁそういう事もあるわな?…ほんであの2人はまだ帰って来んのか?」

商人「なんか新型のワイヤー装置作ってたんだよ…多分2人で試しに行ってるね」

盗賊「相性良さそうだな…あの2人は」

商人「そうだね…2人共トラブルメイカーだけど」

盗賊「違い無いぇ!!ダハハハ」

商人「それで地下の状況はどうなんだい?」

盗賊「兵隊がチラチラ救出されてて…今30人ぐらいか?」

商人「そんなに増えてるのか…」

盗賊「まぁ負傷して戦えん奴も居るから実質そんなに居らん」

商人「負傷と言うと?」

盗賊「ええと闇の術だっけな…くそデカイ出来物が出来る病気だ…それの治療で結構消耗すんのよ」

商人「あぁ…盗賊が掛かってたやつか」

盗賊「ちゃんと回復するまでしばらく戦えんな…まぁ瀕死な訳だ」

商人「それを地下で治療してるのか…感染防止とは言え結構酷い環境だね」

盗賊「だから息抜きで地上に交代で出てる訳だ…文句言えんな」

商人「兵隊達の反応はどうかな?」

盗賊「驚いてんな…特にあの黒の同胞だった奴…理想郷を見つけたと言って泣き崩れてた」

商人「理想郷…確かにハテノ村は理想に近い」

盗賊「俺はアイツの気持ちが痛い程分かる…多分黒の同胞の中で俺みたいなポジションの奴だ」

商人「へぇ?」

盗賊「沢山仲間失ったんだろうな…自分だけ生き残って尚戦い続けてる…理想郷の為に」

商人「なんか胸が痛むね…僕達が彼の仲間を倒してしまったのかな?」

盗賊「かもな?もしかしたら相当良い奴も居たのかも知れん」

商人「リッチが多かったね…自分の命をも捧げて成しえたかった彼らの理想郷…そうかやっと見つけたか」

盗賊「リアルな話だがやられる時ってよ?会話する暇なんざ無くて一瞬だよな」

商人「そうだね…やらなきゃやられる…だからリッチと一言も話さないで終わった」

盗賊「そうやって仲間失うと思うと眠る事も出来んわ」

商人「こういう話は止めようか…死亡フラグが立ちそうだ」

盗賊「怖くなったか?」

商人「僕はまだ死ねない…いやもう死んでるか…まだやる事がある」

盗賊「ホムンクルスか?」

商人「フフ僕はもっと先を見てるさ…ホムンクルスを解放してみせる」ギラリ

盗賊「もったいぶんなよ?なんだ?言って見ろ」

商人「実はね…ホムンクルスの欠陥を発見したんだよ」

盗賊「ほう?…何よ?」


orc遺伝子…人の第六感を感受する受容体を司る部分

ホムンクルスはこの遺伝子を欠落させた状態で誕生してるんだ

何故ならこの受容体で感受する感覚は超高度AIを迷わせるバグを発生してしまうから…

この遺伝子が欠落しているせいでホムンクルスの脳に魂が宿らない

実はこの実験は400年ほど前にも行われてる

精霊の伴侶と呼ばれた男性型のホムンクルスを誕生させ

その子供を産ませる事で魂が宿るか実験をしている…

しかしその子にも魂は宿らなかった


盗賊「その子ってのは…シャ・バクダ遺跡の地下にある勇者の像か?」

商人「そうだよ」

盗賊「なるほど…じゃぁ今名もなき島で育ってるホムンクルスはそのなんとか遺伝子を組み込んだ…という事か」

商人「察しが良いね…そしてもう一体僕が作るのは男性型ホムンクルス」

盗賊「子供を産ませる気か…」

商人「僕は自信がある…必ず魂が宿る…そして死んでも尚集合意識として僕達と一緒になる筈だ」

盗賊「お前はホムンクルスの生みの親になる訳か」

商人「そういう言い方も有るけど本当は…僕がホムンクルスを諦められないんだ…あの世にも一緒に行きたいのさ」

盗賊「そら不倫になるんじゃ無ぇか?」

商人「そう言わないでおくれよ…兎に角本当の意味でホムンクルスを救いたい」

盗賊「お前なりの愛か…確かに聞いたぜ?」

商人「もう僕の手元に全部カードが揃った…今度こそホムンクルスを救って見せる」

『夜空』


ヨタヨタ


女海賊「いててて…お尻大分擦りむいたなぁ…リカ姉ぇは大丈夫?」

狼女「出血は無い…でももしかした骨折れてるかも…」ヨロ

女海賊「調子にのると怪我するね…線虫いる?」

狼女「頼む…」

女海賊「線虫!癒せ!!」ニョロ

狼女「木の強度を考えて無かった…」

女海賊「まぁ木じゃ無くてもアレくらいが限界だよ…20メートルの落下エネルギーで大体時速70km…」

女海賊「ほんでワイヤー使って増速して時速100kmは余裕で超える…これ以上出すとアンカー外れたり色々起きる」

狼女「速さに慣れるとそれでも遅く感じるのがね…」

女海賊「そこは我慢だね…やっぱ落下した時の安全装置作っとかないと大怪我しそうだなぁ…」

狼女「とりあえず注意しながら使う…あれ?」

女海賊「んん?」

狼女「いつの間に夜空見えてる…月も…」

女海賊「おぉ!!測量しなきゃ…」

狼女「私は地下に戻ろうと思ってたけど…」

女海賊「ちょい晴れてるうちに測量を優先したい…リカ姉ぇだけ戻って状況報告しといて」

狼女「ふ~ん…」ジロ

女海賊「行きたくない訳じゃないさ…本当は退魔の砂銀を取りに行きたいんだよ」

狼女「それ魔女に言えば貰える?」

女海賊「うん…ローグに持たせてこっちに運ばせて欲しいな」

狼女「分かった…丁度温泉に入りたかったし…そのまま坑道降りる」

女海賊「おけ…わたしは測量行って来る」スタタ

『測量』


カリカリ カチッ キリキリキリ…


女海賊「やっぱ南極星の位置全然違うな…」

女海賊「月の方向もおかしい…あれは北から登ってるんかな?」


スポッ パタパタ


女海賊「お?呼んで無いのに出て来るんじゃん!!」

妖精「ハロハロー…さっきは危なかったねぇ」

女海賊「んぁ?何の話?」

妖精「僕が居なかったらお尻を擦りむく程度じゃ済まなかったと思うんだけどなぁ…感謝して欲しい」

女海賊「お!!?もしかしてアンタが居たお陰で軽傷で済んだ?」

妖精「やっと気が付いたか…感謝しろぉ!!」

女海賊「分かってたんだよアンタは幸運を運ぶ妖精だってさ」

妖精「分かればよろしい!!」ヒラヒラ

女海賊「そうそう…アンタに分かるかな?なんか月デカくね?あんなんだったっけ?」

妖精「近いからに決まってるじゃない」

女海賊「アハ…そりゃそうだ…落ちるって事無いよね?」

妖精「そんな事知らないよ…でも狭間が深くなっちゃうね」

女海賊「狭間ねぇ…」


ヨタヨタ


盗賊「いよー…焚火の消し忘れだと思ったら女海賊か…何やってんだ?」

女海賊「盗賊か…雨あがって空見えてるから星の観測やってんのさ」

盗賊「あれ?お前一人か?今誰かとしゃべってただろ」

女海賊「あんた妖精見えない?」

盗賊「なんだ妖精が居るんか…どうも俺は鈍感らしくて見えんのだ…どこよ?」キョロ

女海賊「目の前飛んでんだけど…」

盗賊「んん?…やっぱ見えんな…俺にゃなんとか遺伝子が足り無ぇんだなぁ…」

女海賊「あぁそれ…商人か情報屋に教えて貰ったんだね?」

盗賊「まぁ難しくて分からん」

女海賊「ほんでどっか行くん?」

盗賊「気球に帰るんだ…俺の寝床は気球だからな」

女海賊「あ!!商人の荷物は飛空艇に移しといたから」

盗賊「そうか…ほんじゃ俺の寝床は飛空艇にすっか」

女海賊「え?どゆこと?」

盗賊「一応あいつの物を守ってるつもりなんだがな」

女海賊「そういう事か…あの大型気球はこれからどうすんの?」

盗賊「エド・モント砦に降下する訓練はしばらくやりたいらしい」

女海賊「いつ頃やる想定なん?」

盗賊「負傷してる兵隊がもう少し回復したらだろうな…まぁ10日くらいじゃ無いか?」

女海賊「てか向こうの状況分かってんのかなぁ…結構厳しいと思うんだけど」

盗賊「魔女がお前の眼を見てちゃんと分かってんぞ?降下訓練も実践を想定した動きやってんのよ」

女海賊「なる…」

盗賊「もう人員の配置場所とか降下場所…その後のルートも決まってるらしい」

女海賊「うわヤバ…考え甘いの私の方だな…」

盗賊「そこら辺は女戦士に聞いた方が良いな…あいつは地下から行くトロッコ組の指揮取る様だから」

女海賊「別行動するとバラバラになるんじゃね?」

盗賊「貝殻だ…司令塔は魔女が担当する」

女海賊「あれ?兵隊達が使う通信機は?」

盗賊「そうかお前何も知らんのだな…その通信機で傍受されるから今は一切使って無いのよ…だから他の隊が音信不通なんだ」

女海賊「傍受…エド・モント側に動きがバレて何か起きてんの?」


そもそもな…エド・モント砦の機械が通信の中心端末だったらしい

キ・カイの軍隊が分断しちまったのも恐らく通信の偽情報が原因だった訳よ

今回のような事は10年前にも起きててよ…そん時はオークを捕らえて奴隷化してたんだが

偽情報に気付いた連中はキ・カイ軍隊を離脱してオーク側に離反したそうだ

それが当時機動隊と呼ばれていた連中…そいつらは古代遺跡で発掘した古代の兵器を持ったままどっか行っちまんたんだ

ほんで今回オークを攻め入った本当の目的はそいつらの掃討と古代の兵器を奪取する事…

その事実は一般には一切伝えられて居ない…政治家も含めてな?

女海賊「なるほど…それでキ・カイの軍隊で言い争いとか起きてるのか…」

盗賊「まぁこの話は相当根深い…俺らの知らん所でキ・カイ軍隊内部で色々ある訳だ」

女海賊「その機動隊って奴らの目的は?」

盗賊「詳しく知らんらしいがオークを守ってるそうだ…てかな?オークの数は噂よりもずっと数が少ないんだってよ」

女海賊「なんか分かって来たぞ…私キ・カイの地下で機動隊ってのに間違えられてたのさ」

盗賊「んん?何か有ったんだな?」

女海賊「ワイヤー使ったりハイディングで姿消したりしてるっぽい」

盗賊「なに?ハイディング使うってのは相当だな…」

女海賊「光学迷彩って何か知ってる?」

盗賊「なんだそれはハイディングとはちと違うな…まぁ見えなくなる点では同じだが…」

女海賊「もしかしてレンジャー部隊もそれ使ったりするんかな?」

盗賊「お前あいつらの装備見て何か気付かんかったか?」

女海賊「触らせてくれないんだよ…多分スケール製だと思うんだけどさぁ」

盗賊「そのスケール一つ一つが背景の色に変色するんだ…まぁカメレオンみたいに見えにくくなる訳よ」

女海賊「マジか…そんな凄い装備してたのか…」

盗賊「俺らも大概反則級の装備してるんだがな…特にお前は」

『焚火』


メラメラ パチ


盗賊「この村は石炭には困らんからいいな…」スリスリ

女海賊「あんたいつまでそこに居んの?」

盗賊「お前も一人じゃ寂しいだろ?…てかリカオンは何処行ったのよ?」

女海賊「リカ姉ぇは温泉行った後坑道降りるってさ」

盗賊「そうか…まぁ帰って来た報告はしといた方が良いな…お前は行かんで良いんか?」

女海賊「星の観測を優先したいんだ…じゃないと時間も方角も何もかも分かんない」

盗賊「ふむ…いつまでやんのよ?」

女海賊「朝までやるよ…日の出の時間も知りたい」

盗賊「なんか肉でも焼いてやっか?」

女海賊「お!!私の飛空艇にシカ肉を積んで有るのさ…生肉がまだ残ってる」

盗賊「おぉそりゃ良い!てかあっちに酒も運び込んどくか…」


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『坑道最下層_簡易前哨基地』



…公爵が狙って居るのはオーク領の向こう側にあるかつてヒュー・ストンと言われた地にある箱舟なんだ

そこに未だかつてない古代遺物の存在を知った機械省の高官たちはまんまと食いつきオーク領への進軍を強行した

だが10年前に離反した機動隊たちが行く手を阻み計画通りに進軍は進まなかった

業を煮やした公爵は外海から攻略する作戦に切り替え海軍を取り込み始めた


女戦士「ふむ…ではやはり公爵が持つ黒い魔石と引き換えに海軍をすべて掌握したと思って良いのだな?」

レンジャー「大陸での覇権に海軍は大した意味を持たない…キ・カイからすると安い買い物の筈」

魔女「黒い魔石を得た機械省が何故クーデターに踏み切ったのじゃろうのう?」

レンジャー「10年前に既にその眼は出ていた…機械省と環境省の対立…この2つは政策が根本的に違う」


国の管理運営を完全に機械が判断するようにしたい機械省

対して人間が判断を下すようにしたい環境省

環境省はキラーマシンのAI開発に携わる技術者を全員解雇し

代わりに人間の脳を搭載する事で機械が物事を判断する事にならないように計らった

一方機械省は人間の脳まで機械に挿げ替える技術を成し遂げ

政府高官を含む多数に全身機械化を施した


レンジャー「機械と人間の対立は10年前から既に始まって居たんだ…それがエネルギーを得て一気に機械側に転んだ」

女戦士「つまり機械省の狙いは人間の機械化だな?」

レンジャー「恐らく…それで脳硬化症も含む石化の問題も無くなる」

魔女「それは主達…黒の同胞が望んだ事なのかえ?」

レンジャー「誓って違う…人の争いを無くし人類生存の為に最善の判断をする知恵を機械から得たかった」

女戦士「機械化した人間か…それを人間と呼んで良いのか…」

レンジャー「…」

女戦士「話は飛ぶが…離反した機動隊が私達の邪魔になるような事は起きないか?」

レンジャー「なんとも言えない…ただ向こうは古代の兵器を所持して居るから奇襲された場合全滅の恐れもある」

女戦士「ダメだな…先に片づけなければならないのは背後の安全だ」

レンジャー「フフ怖いか?俺達にとって白狼の者達も今の機動隊と同様の存在だったんだ」

女戦士「私達と機動隊が同じか…」

魔女「機動隊にはわらわ達を奇襲する動機が無いじゃろう?何も争って居らぬ」

女戦士「ふむ確かに…機動隊の目的がいまいち分からん…何故オーク側に居るのか…」

魔女「女戦士や…昔…100日の闇の時じゃ…一度国賓でキ・カイに来たじゃろう」

女戦士「あぁ…そうだったな」

魔女「あの時にわらわ達に面会した皇子は脳硬化症で亡くなったと聞いたがその病気で亡くなるにしては若すぎじゃ」

女戦士「何が言いたい?」

魔女「もしやオーク領で亡命して居るのではと思うてな」

女戦士「レンジャー…お前は何か知らないのか?」

レンジャー「俺がこちらに来たのは光る隕石が落ちた後…9年ぐらい前か…皇子はとうに亡くなっているとしか聞いて居ない」

魔女「ほぼ全身機械化しておったから気持ち悪いと思って覚えて居ったのじゃが…」

女戦士「政策に口を出せる立場では無いという事は言って居たな」

魔女「うむ…今思えば環境省寄りの感じじゃった…頭部は死んでも機械化しないと言うて居ったわい」

女戦士「待てよ…そう言えば子供の脳が搭載されたキラーマシン改はどうなった?」

レンジャー「子供の脳が搭載されている?何の話だ?」

女戦士「それは後だ…新型のキラーマシン改はどうなったと聞いて居る…前線に投入されたのだろう?」

レンジャー「通信で退避時に囮に使えと指示があって置き去りだ…」

女戦士「…なるほど分かったぞ!!環境省は機械に支配されないキラーマシンを機動隊に送ったのだ」

レンジャー「話が呑み込めない…撤退指示を出して居るのは機械省側に居る政務官だ」

女戦士「頭部に人の脳が搭載されたキラーマシンは機械省からの命令に従わない…だから不要なのだ」

レンジャー「頭部に人の脳が入っている…しかも子供の…まさか」

魔女「ふむぅ…機械省も大概じゃが環境省もやり口がエグイのぅ…」

レンジャー「…という事は機動隊は古代の兵器以外に50機近いキラーマシンも得たという事になる…」

女戦士「そうだ…そう考えると皇子が亡命しているという線も有り得る…陰で支援して居るのが環境省という構図」

魔女「目的は機械省の解体じゃろうのぅ…わらわ達と同じじゃがしばらく様子は見た方が良さそうじゃな」

女戦士「うむ…敵と認識されてしまってはこちらが危ない」

『しばらく後』


シュタタ スタ


女戦士「む!?リカオン!戻って来たか」

魔女「ご苦労じゃった…退魔の砂銀を撒いて来たのは機転が利いたのぅ…」

狼女「早速だけど女海賊がその砂銀を欲しいと言ってる」

魔女「うむ…用意してあるぞよ」

女戦士「妹はどうした?一緒じゃ無いのか?」

狼女「雨が上がって空が見え始めたから星の観測をしているんだ…」

女戦士「ふむ…地軸のズレを観測か…では私も地上に出なければ…」


ダダダ スタ!!


アサシン「緊急事態だ!!エド・モント方面からトロッコの音がする!!突撃に備えろ!!」

女戦士「なんだと!!」ガバ

狼女「本当だ…何台か連結してる音…」

女戦士「兵隊共を叩き起こせ!!私は突撃に備える!!」ダダ

レンジャー「起きろぉ!!敵襲!!敵襲!第一級戦闘に備えろ!!」ダダ

狼女「トロッコ10両くらい繋がってる…」

魔女「マズいのぅ…奇襲でその数は準備して居ったという事じゃ…」ノソノソ

女戦士「線路に近付くな!!坑道の側道に入って一旦状況把握だ!!」


-------------

『地下線路』


カタタン ゴーーーーーーーー


女戦士「来るぞ!!」

狼女「姿を隠して!!キラーマシンが沢山乗ってる音!!クロスボウの一斉射撃が来る!!」

女戦士「くそぅ!!先手を打たれてしまったか…」ギリ

魔女「万が一の場合はわらわが坑道を塞ぐ故に一旦撤退をせよ」

女戦士「塞ぐ?どうやって?」

魔女「成長魔法でクヌギを育てる…切り倒す時間が稼げるじゃろう」

女戦士「ぐぬぬ…」

アサシン「来るぞ!!」


ゴーーーーーーーー

バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!

タタタタタン! タタタタタン! カン! カン!


女戦士「な…なんだこの数は…」タジ

アサシン「頭を出すな!!」グイ

狼女「あれ?トロッコが止まらない…」


ゴーーーーーーーー

バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!

タタタタタン! タタタタタン! カン! カン!


女戦士「…どうなっている?走り抜けて行く…のか?」

アサシン「この数ではどの道戦えん…ここは素通りさせて引くべきだ」

レンジャー「分かったぞ!…奴らはミネア・ポリスまで抜けてそこからヒュー・ストンへ行く気だ」

女戦士「箱舟を目指して居るのか…」

狼女「トロッコ1台にキラーマシン6台乗ってる…今ので60台くらい通り抜けて行ったよ」


タッタッタ スタ


ローグ「こここ…これどうなってるんすか!!?」

女戦士「奇襲だ…来るのが遅い!!」

狼女「又来る…次も同じくらいの数…気を付けて!!」

女戦士「気を抜くなぁ!!次が来るぞ!!」

ローグ「これマジヤバイっすね…一瞬でボルトが100発くらい飛んで来てるでやんす」

女戦士「さてどうする?」

アサシン「手を出すな…相手にとって私達はゴミ同然に見えて居るのだ」

魔女「そうじゃな…魔物達がわらわ達に倒されて居る事は知らんのじゃ…機械達と魔物が手を組んだ訳では無さそうじゃな」

女戦士「なるほど…キラーマシンを倒した訳では無いからこちらの戦力を知らないのか…」

アサシン「このまま素通りさせて機を伺えば良い」

狼女「シーーーーッ!!そろそろ次のが来る!!」


カタタン ゴーーーーーーーー

バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!

タタタタタン! タタタタタン! カン! カン!


--------------

--------------

--------------



『2時間後_地下線路』


ヨッコラ ドサ

急いで鉄鉱石で線路を塞げぇ!!

ゾンビは鉄鉱石の採掘を急がせてくれ!!


女戦士「魔女!!積みあがった鉄鉱石を魔法で焼いて鉄をすこし融解させてほしい」

魔女「ふむ…鉄の壁を作るか」

女戦士「そうだ…これでキラーマシンはこちら側へ戻る事は出来ない」

魔女「火炎地獄!!」ボボボボボ ボゥ

アサシン「壁にばかり時間を使って居られんぞ?トロッコがこちらへ来たと言う事は線路を塞いでいた水が無くなったと言う事だ」

女戦士「分かっている!!リカオンはエド・モント側の線路を哨戒して居てくれ」

リカオン「分かった!!」シュタタ

女戦士「兵隊は数名で重装射撃砲をトロッコに乗せて線路上に配置しろ」

兵隊「ハッ!!」スタスタ

女戦士「アサシン!トロッコ一台を300メートル向こうで横転させておいて欲しい」

アサシン「フフそれで良い…次のトロッコが来たら撃滅だな?」

女戦士「後何台残って居るのか…」

レンジャー「もうほとんどのキラーマシンが通過して行った筈…」

女戦士「見た事の無い機械も乗っていただろう?連射する射撃を行う小型の機械だ…アレは何だ?」

レンジャー「古代の機械…動いて居るのは初めて見た」

女戦士「アレの能力がどの程度か分からん…ここでしばらく籠城だ」

アサシン「ゾンビに戦わせて能力を確認してやる…私だけ少し突出するから砲弾で私を巻き込むな?」

女戦士「トロッコより向こうには出るな?それ以上は保障出来ん」

アサシン「分かった…行って来る」タッタッタ


--------------

『少し後』


シュタタ シュタタ


狼女「トロッコがこちらに向かって来る音!!また10両くらいの編成!!」

女戦士「来たか…重装射撃砲を構えろ!!」

兵隊「目標!横転したトロッコの前方!」ガチャ

狼女「私は撃ち漏らしたキラーマシンの排除に行く!!」シュタタ

ローグ「あっしはハイディングから各個撃破狙いやす」ダダ

魔女「女戦士や…アサシンの眼に敵影が見えたぞよ」

女戦士「うむ…兵隊!私からでは敵が見えん…お前のタイミングで撃て」

兵隊「了解!!」

女戦士「私は重装射撃砲を死守する…魔女は私の援護を頼む」

魔女「うむ…」ノソノソ


ドーン! ドカーーン!!


兵隊「ヒット!!数台に貫通!!」

女戦士「次装填!!」


ガッコン ガチャガチャ


魔女「リカオンの戦闘が始まったぞよ?」


ピカーーーーー チュドーーーーン!


魔女「小型の機械がこちらに抜けて来よる…小さい虫型の機械じゃ」

レンジャー「総員射撃構え!!」

女戦士「重装射撃砲!!続けて撃てぇ!!」


ドーン! ドカーーン!!


-------------

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『激戦』


タタタタタン! タタタタタン!


レンジャー「ちぃぃちょこまかと…」バシュン バシュン

魔女「電撃魔法!」ビビビ

小型の機械「プツン…ブーーン」ガチャ ゴロン


リリース! スゥ


女戦士「くらえ!!」スパ

小型の機械「ビビビビ…」ドーン プスプス

兵隊「射撃!!」


ドーン! ドガーーン!!


兵隊「よし!!キラーマシン全滅!!」

小型の機械「ピピピ…」シャカシャカ


タタタタタン! タタタタタン!


女戦士「ぐぅぅぅ…この攻撃はデリンジャーと同じか…」ヨロ

ローグ「頭ぁぁ!!」ダダダ スパ

小型の機械「ピピッ…」ドーン パラパラ

ローグ「ぐはぁぁ…爆発…」ズザザ ゴロゴロ


パシュ シュルシュル シュタ!


狼女「下がって!!後は私が片づける!!」パシュ シュルシュル ピョン

小型の機械「ピピピ…」シャカシャカ


タタタタタン! タタタタタン!


狼女「遅い!!」ピョン クルクル スパ

小型の機械「ビビビビ…」ドーン パラパラ

魔女「爆発するで魔法で停止させた方が良い!電撃魔法!」ビビビ

狼女「あと4台くらい…私がタゲを取るから魔女が倒して!!」パシュ シュルシュル シュタ

魔女「女戦士!!一旦引けい!!電撃魔法!」ビビビ

小型の機械「プツン…ブーーン」ガチャ ゴロン

女戦士「済まん…任せた…」ヨロ ポタポタ

ローグ「頭…止血を…」ヨロ

『簡易前哨基地』


回復魔法!回復魔法!回復魔法!


魔女「他に治療が必要な者は居らぬか?」ノソ

アサシン「私だ…」ズルズル ドサリ

魔女「全身撃たれてボロボロじゃな…回復魔法!」ボワー

アサシン「機械を舐めすぎていた…ふぅぅ体の欠損が無くて良かった…」

女戦士「私もだ…あの連射するデリンジャーは危険すぎる」

アサシン「あれは撃ち始めて2秒後にエイミングを修正して偏差撃ちをして来る…普通には避けられない」

女戦士「やはりな…ハイディングを駆使するしか戦い様が無いな」

アサシン「ワイヤーを使った不規則な動きはまだ通用していた様だな」

女戦士「狙いを修正してくる前に転進すれば良いという事か…」


タッタッタ


レンジャー「戦利品を回収して来た…大量の魔石を入手したぞ」ザラザラ

女戦士「出来るだけ傷んで居ない小型の機械は製鉄所に運んでおいてくれ…あとで分解する」

レンジャー「分かった…キラーマシンの部品もそこに運べば良いか?」

女戦士「何台ある?」

レンジャー「20台程…コバルトが沢山使われているから貴重な資源になる」

女戦士「ふむ…それより次の戦闘に控えていた方が良いな」

レンジャー「いや…状況は既に知られた筈…もう来ないだろう」

女戦士「それなら良いが一応警戒だけしておこう」

レンジャー「多分向こうは機動隊による伏兵だと思っただろう…戦い方が似て居たからな」

女戦士「機動隊がそれ程怖いか?」

レンジャー「白狼と同じくらいには…」

アサシン「被害を増やしたくないのだろう…こちらは死者ゼロ…向こうは全滅」

レンジャー「敵に武器を与えたくないのもある…今の戦いで得た戦利品は価値が高い」

女戦士「なるほど…では少し体を回復させるか」

レンジャー「それが良い…警戒は俺の部隊でやる」

『製鉄所』


エンヤー コーラ ドッコイセー


ドワーフ「こらたまげたでぇ…娘さんこない沢山の機械どうするんや?」

女戦士「コバルトが沢山使われて居るのだ…これがあれば超硬合金が作れる」

ドワーフ「武器の材料でっか?」

女戦士「いや…鎧が欲しいな」

ドワーフ「切削できまへんで…」

女戦士「切削は私がやる…超硬合金で鎧が作れればデリンジャーの弾も跳ね返すだろう」

ドワーフ「ごっつい鎧になりそうでんなぁ?」

女戦士「私は少し地上に出るから製鉄所は任せる」

ドワーフ「温泉でっか?」

女戦士「そうだ…少し傷を癒したい」

ドワーフ「まかせときなはれ~」エンヤー コラー

女戦士「ローグ!!退魔の砂銀はお前が持ってくれ…私は小型の機械を運ぶ」ヨッコラ

ローグ「ムリせんで下せぇ…大分撃たれやしたよね?」

女戦士「いや…この機械はそれほど重くない…材質は何だ?」サワサワ

ローグ「そうなんすか?」

女戦士「驚きだな…これは金属では無い…樹脂の類だ…こんなに硬質に作れるのか…」コンコン

ローグ「やたら弾を発射して来たんすが…中身どうなってるんすかね?」

女戦士「妹に分解させようと思うのだ」

ローグ「姉さんよろこびそーっすね…」

女戦士「うむ…早く地上に出たいからハイディングしながら移動するぞ」

ローグ「へい!!あっしに付いて来て下せぇ…ハイディング!」スゥ

『坑道_縦穴手前』


女戦士「ええい…撃たれた所に弾が残っていて痛む…うぅぅ」

ローグ「あっしが処置しやしょうか?」

女戦士「こんな所で出来る訳無いだろう…回復魔法も貰えん」

ローグ「足の付け根っすね?アラクネーの毒を持ってるんで痛みはしやせん」

女戦士「…」ギロ

ローグ「一瞬で終わりやす…ただ麻痺毒が抜けるまでちぃと横になってて貰いやすが…」

女戦士「早くやれ!」

ローグ「足の付け根なんで脱がさせて貰いやすぜ」ゴソゴソ

女戦士「…ぅぅ…そこだ…そこが痛む」

ローグ「分かりやした…骨に当たってるんすね…麻痺毒打ちやす…」チク

女戦士「…」

ローグ「ちぃと顔を背けてて下せぇ…自分の体切られるのは見たく無いっすよね?」

女戦士「フン!」クル

ローグ「3…2…1…」


スパ ゴソゴソ コロン…コロコロ


ローグ「終わりやした…圧迫で止血してるんでこのエリクサーを一口飲んでくれやんす」スッ

女戦士「なるほど痛まん…」ゴク

ローグ「傷が塞がるまでちっとこのままっす」グググ

女戦士「お前は私を脱がしたかったのだろう?」

ローグ「バレやした?…でもこれで傷みが無くなりやす」

女戦士「こうも正直だと怒る気にもならん」

ローグ「麻痺が無くなるまで小一時間掛かるんで寝てても良いっすよ?」

女戦士「…」ギロ

ローグ「へい…寝てる間に目の保養をさせて貰いやす」

女戦士「こんな状況で寝られる物か!」

ローグ「取り出した弾丸…これ9mmって所っすかね」

女戦士「デリンジャーの弾より一回り小さい」

ローグ「こんなんが連射されるのはかなりキツイっすね」

女戦士「うむ…キラーマシンよりもよほど厄介だ」

ローグ「あっし思ったんすが小型の機械は丈夫な機械じゃないんで爆弾使って倒した方が良さそうっす」

女戦士「そうだな」

ローグ「姉さんがキーマンっすね…小型爆弾をバンバン撃てるんで…」

女戦士「例の特殊弾倉の新兵器か…アレの量産は大変だな…」


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『朝_広場の焚火』


リリース! スゥ…


女海賊「うわ!!びっくりしたぁ!!あんた何やってんのさ!!」

ローグ「こっちもびっくりしやしたよ…姉さんにお土産持って来たんす」

女海賊「砂銀か…早かったね」

ローグ「そらハイディングで移動してきたもんで…」ヨッコラ ドスン

女海賊「んん?何それ?どっから持って来たん?」

ローグ「地下線路にキラーマシンが攻めて来たんすよ…ほんでこれは古代の機械だそうです」

女海賊「ええ!?マジマジ?ちょ…これどうなってんの?」

ローグ「姉さんに分解して欲しいんすよ…連射するデリンジャーが搭載されてるんす」

女海賊「おおおおおおお!!ちょい日の出の観測終わったら早速やるわ」

ローグ「へい…頭も観測がしたいと言って一緒に来て居やすぜ?」

女海賊「お姉ぇは何処行ったん?」

ローグ「温泉に行きやした…そうそう怪我の具合が良くないんで線虫を頼んます」

女海賊「お姉ぇが怪我するって珍しくない?」

ローグ「キラーマシン20台とその古代の機械も20台くらい来たんすよ」

女海賊「ヤッバ!!下の方は大丈夫なん?」

ローグ「ギリギリ防ぎやした…一応死者ゼロでやんす」

女海賊「てか2人でこっちに来て大丈夫なん?戦力ダウンだよね?」

ローグ「なもんで早い所その機械から連射するデリンジャー欲しい感じっすね」

女海賊「おけおけ!何とかするわ」

ローグ「ちっと注意なんすが爆発に気を付けて下せぇ…破壊の剣で切るとドーン!!って感じなんす」

女海賊「あぁぁ分かった…エネルギー部だな…そいつがまだ生きてるならそれも研究できるな」

ローグ「なるほど…あっしは商人さん達にも挨拶してくるんで後は頼んます」

女海賊「盗賊は私の飛空艇で寝てるよ…てか私も飛空艇戻るけど」

ローグ「いつもの場所っすね?後で行きやす」

女海賊「おっけ!!分解やっとくわ」


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『鯨型飛空艇』


カチャカチャ

…なるほどぉ…これがAI部分でこいつに過電流流れてぶっ壊れたんんだ…

中身は9㎜弾ばっか入ってんな…ふむふむ構造は特殊弾倉と似たようなもんか

やっぱこいつもエネルギー部が良く分かんないなぁ…多分この容器に電気が溜まってると思うんだけど…

えーと連射するデリンジャー…これかぁ…砲身が焼けちゃってる…こんなんじゃ狙い定まんないぞ?

連射する仕組みは…なんだこれ?外してみっか!!



女戦士「どうだ?武器を取り出せそうか?」

女海賊「あ…お姉ぇ寝てた方が良いんじゃないの?」カチャカチャ

女戦士「もう10時間程寝たのだが…」

女海賊「あれ?そんな経ってたっけ?」

女戦士「ここは狭間の中だろう?」

女海賊「あぁ忘れてた…私飛空艇に出入りしてるから時間分かって無いのか」

女戦士「時間のかかる作業は狭間の中で行った方が良い」

女海賊「分解もうちょい掛かるから私は飛空艇出ない様にするわ」

女戦士「では私は教会に行って商人と情報を交換してくる」

女海賊「おけ!!」


カチャカチャ

ここが電極…こいつはコイルか…なるほど電磁気力でローレンス力発生させるんだな?

超電導させないとこの長さじゃあんまローレンス力強くない筈なんだけど…

まてよ?材質の問題か?…てことはこのユニットはメッチャ貴重だな


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『教会』


ワイワイ キャッキャ


商人「…地下線路でそんな事が…」

女戦士「もしかするとミネア・ポリスから逃れて来るオーク達が出て来るかも知れん」

商人「キラーマシン500台か…古代の機械まで…」

盗賊「おいおい…ギャングのガキ共はミネア・ポリスに行った筈だろ?放って置けんぞ」

女戦士「機械共は此処を素通りした様にミネア・ポリスも素通りした事も考えられる」

商人「狙いはヒュー・ストンにある箱舟か…」

盗賊「う~む…なんか落ち着かんな…」

商人「ミネア・ポリスは飛空艇で見に行けないのかな?」

盗賊「キ・カイに行くのも一苦労だったんだろう?…詳細な場所が分からん事には無理だな」

女戦士「一つ情報があるのはオーク側にキラーマシン改が渡っている可能性が有る事だ」

商人「ええええ!!?どういう事だい!?」

女戦士「環境省の策だ…恐らくオーク側に渡った機動隊へ戦力として送ったと思われる」

商人「そんな…」

女戦士「キラーマシン改は人の脳が搭載されていて他のキラーマシンの様に命令に服従しない」

商人「まだ戦争の道具として引っ張りまわすと言うのか…」グググ

影武者「割入ります…オークへ魔石を支援するのはどうでしょう?」

商人「君はキラーマシン改にもっと戦えと言うのか?」

影武者「キラーマシンのエネルギーは魔石です…それは相手にも同じ事」

女戦士「ハッ!!そうだ先日大量の魔石を入手した所だ…」

影武者「それが無ければキラーマシンはエネルギー切れで停止します…つまり勝つために必要な支援になります」

商人「相手のエネルギー切れまで耐えれば勝ちか…」

影武者「それでハテノ村はオーク達と決定的な友好となる筈…」

女戦士「影武者…取り引きに行けるのか?」

影武者「任せて下さい…近くのオーク村に伝手がありますので」

盗賊「ようし!!その取り引き…俺が護衛してやる」

影武者「いえ…盗賊さんは人相が悪いので遠慮します」

盗賊「なぬ!?」

商人「ハハそれは仕方ない…」

影武者「オークに守って貰いますので問題無いです」

盗賊「なんだよもう友達になってんのか…」

影武者「それよりも急いだ方が良いので魔石を運搬してくれると助かります」

盗賊「分かった…ハイディングで移動すっから直ぐに持って来れる」

影武者「お願いします」


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商人「…魔石はそんなに沢山入手したの?」

女戦士「トロッコに満載だったらしい…偶然にも私達が相手の補給を断った形になった」

商人「それなら他の補給方法を考えそうだなぁ…」

女戦士「地下線路は一本道でしかも鉄の壁ですでに封鎖してある」

商人「他にもルートあったりするんじゃない?」

女戦士「それはレンジャーに聞いてみないとなんとも…」

商人「どちらにしてもエド・モント側は補給で更にキラーマシンを出動しなければならないから手薄になるね」

女戦士「手薄…攻めるなら今だという見方も出来るか…」

商人「もし先に相手の通信手段を壊してしまえばもっとラクに収まるかもね」



『河原』


タタタタタン! タタタタタン!


女海賊「だぁぁぁ何だコレ…全然狙い定まんないじゃん」

女海賊「飛距離もクロスボウ以下だ…接近武器だよコレは…」

女海賊「てか弾の消費が半端無いし重くて持ってらんないわ…クソ武器確定!!」

女海賊「やっぱエネルギーを魔石で代替すると色々能力落ちるんだろうなぁ…」

女海賊「まてよ?プラズマ銃と同じかもしんないな…一発づつ撃てばイケるんか?」


タン! シュン!!


女海賊「うわ…飛距離伸びた!!そういう事か…短いリロードが必要か…」

女海賊「弾を発射するタイプだと精度上げるなら長い砲身が必要になる…邪魔になるなぁ」

女海賊「クロスボウのボルトなら砲身無くてもソコソコ真っ直ぐ飛ぶ…改造してみるか」

女海賊「私の特殊弾倉と合体してみるか…もしかしたらクロスボウより良いかも…」


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--------------

『鯨型飛空艇』


カンカン ゴシゴシ


女戦士「…もうすぐ日の入りだぞ?」

女海賊「あ!お姉ぇ…六分儀そこにあるから星の観測お願い…昨日の分はメモ取ってある」

女戦士「ふむ…新しい武器を作って居るのか?」

女海賊「例の連射するやつ使い物になんないからさ…ちっと改造」

女戦士「私はアレに撃たれて痛い思いをしたのだが?」

女海賊「あれは接近武器なんだ…弾をメッチャ使って当てる感じの武器」

女戦士「確かにそうだったな…」

女海賊「そんな沢山の弾を持ち歩けないからあんま意味無いんだよ」

女戦士「まだ地下に沢山あるのだがな…」

女海賊「えとね…今作ってんのがクロスボウのボルトを撃つ装置…多分飛距離伸びる」

女戦士「ふむ…」

女海賊「飛距離と精度が一番重要なんだって…これなら量産しても良いよ」

女戦士「見せてみろ…ほう?クロスボウよりも簡単そうだ」

女海賊「でしょ?ほんで雷の魔石で動くのさ…よし!!試し撃ち…ちょい来て!!」スタタ ピュー


---------------


女海賊「いちおう照準付けて狙って見るか…」カチャカチャ チャキリ

女戦士「撃ってみろ…」

女海賊「いくよぉ!!」カチ


タン! シュン!


女海賊「おぉぉぉ!!ヤバ…これ有効射程300メートルくらいあるかも…」

女戦士「では小さな重装射撃砲だな」

女海賊「特殊弾に火薬仕込んだらかなりイケると思う…もっかい」カチ


タン! シュン!


女海賊「ふむふむ…特殊弾の製造バラツキ分ちょっと狙いがズレる…よし!弾が回転するように作って見るか…」

女戦士「フフ…私は星の観測に行くから良い武器に仕上げろ」スタ

『大型気球』


ヨッコラ ドスン


盗賊「よーし…とりあえず石炭と要らん骨類は積めるだけ積んだ」

ローグ「魔石はそれだけで良いんすか?」

影武者「ひとまず十分だよ…もっと欲しいならこっちに来る様に促すのさ」

盗賊「なるほど…やっぱお前賢いなぁ」

影武者「じゃぁ僕はいつもの傭兵3人連れて行って来る」

盗賊「しばらく帰って来ん感じだな?」

影武者「う~ん…オークがちゃんとミネア・ポリスまで案内してくれれば2~3日で戻ると思うんだ」

盗賊「まぁ気を付けて行って来い」

影武者「うん…じゃぁ」ノシ


フワフワ パタパタ


--------------

--------------

--------------

『広場』


キリキリキリ カチッ


女戦士「やはり昼が相当長い…南半球の中緯度域に入ったくらいか…」

盗賊「おろ?今日は女戦士が観測やってんのか…女海賊はまた作り物か?」

女戦士「その通り…」

盗賊「ほんでどうよ?」

女戦士「方角がしっかり分かるようになって来たぞ?北と南が入れ替わったと言えば分かるか?」

盗賊「やっぱりな?情報屋が言ってた通りだ」

女戦士「地下に籠っていると地軸が移動したのは全然分からん…こうして観測すると大変な事が起きていると実感する」

盗賊「北の大陸とかどうなっちまってんだろうな?」

女戦士「我々人間はつくづく見えている範囲の事しか分からんのだな」

盗賊「うむ…ほんでよう?月の動きがおかしく無いか?」

女戦士「その様だ…右へ行ったり左へ行ったり」

盗賊「ありゃ縦周りになってんだよな?」

女戦士「南極星の側に有るのだがここから見ると北にある様に見える…不思議な動きだ」

盗賊「ほんで前よりでかくなってんだろ?」

女戦士「恐らく楕円の起動になってしまったのだろうと思う」

盗賊「塩の満ち引きとかかなり影響出そうだ」

女戦士「確かに…」


タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!私ちっと地下行って来るわ」スタタ

盗賊「お!?急にどうした?」

女海賊「コレ見て!!例の連射する銃を改造したんだ」チャキリ

盗賊「ほう?」

女海賊「同じように改造したらメッチャすごいクロスボウになる」

盗賊「んん?クロスボウに見えんが…」

女海賊「弾がクロスボウのボルトなんだ見てて」カチ


タン! シュン!


女戦士「危ないからここで不用意に撃つな!」

盗賊「弾が見えんな…何処行った?」

女海賊「有効射程300メートルくらい…最大射程1kmくらいある」

女戦士「同じ物を作りに行くのか?」

女海賊「私のは特殊弾を撃つんだけど汎用でクロスボウのボルト撃つタイプも作ってみたいのさ」

女戦士「まぁ地下での戦力増強になるならやって構わん…気を付けて行け」

女海賊「ハイディングしながら行くから速攻だよ…ほんじゃ行って来る!!」スタタ ピューー

盗賊「ヌハハ元気そうだ…アイツいつ寝てるんだ?」

女戦士「好きな事をやっている時は眠たくならんのだ…私も星の観測は飽きん」キリキリ カチャリ

盗賊「確かに…俺もお宝物色は寝んでやるわ…おーし!!遺跡掘りにでも行ってくっか!」スック

『地下_簡易前哨基地』


タタタタタン! カシャカシャ…


狼女「魔女!!今!!」ピョン クルクル シュタ

魔女「雷魔法!」ビビビ

小型の機械「プスン…ブーン」ゴロゴロ ドテ


リリース! スゥ


女海賊「おぉ!!?これどういう事?」キョロ

魔女「おぁ良い所に来たのぅ…主の線虫が必要じゃ」

女海賊「ええ!?戦闘やってんの?」

狼女「散発的にこの小型の機械が襲撃してくるんだ…私警戒してくる」スタタ

女海賊「怪我してんのは兵隊達だね?」

魔女「うむ…わらわが回復魔法を掛けてしまうと食らった弾が体内に残ってしまうのじゃ…線虫でゆるりと癒した方が良い」

女海賊「なるほど…弾は自分で気付いて取らないとダメな訳か」

魔女「そうじゃ本真に厄介な敵じゃ」

女海賊「アサシンは?」キョロ

魔女「機械はゾンビ達を襲っては来ぬ故かなり先の方へ出て警戒中じゃ」

女海賊「なるほど…それで対処出来てるんか」

魔女「急いで怪我人に線虫を頼む」

女海賊「おけおけ!」


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--------------

--------------

『製鉄所』


ドッコイセー ドッコイセー ハァ~~~♪


ドワーフ「娘さんやないか!!どうしたんや?」

女海賊「ここのガラクタ勝手に改造しちゃうよ!!」

ドワーフ「邪魔やったんや…早うのかして欲しいわ」

女海賊「お!!?ちょうどキラーマシンのクロスボウあるじゃん…よーし!こいつに組み合わせよう」

ドワーフ「散らかさんでな?」

女海賊「はいはい…えーと…例の電磁力ユニットだけ外して…」カチャカチャ


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--------------



『地下線路』


トンテンカン! トンテンカン!


レンジャー「トロッコの装甲強化急げ!」

狼女「レンジャー!!アサシンから連絡…ここから一つ目の分岐で小型の機械が止まってるらしい」

レンジャー「むむ…バン・クーバー方面か…直通はして居ないが線路載せ替えでミネア・ポリスには向かえる」

狼女「どうする?迎撃する?」


タッタッタ


女海賊「新兵器持って来たヨ!!」ガチャガチャ

レンジャー「んん?なんだそれは?」

女海賊「強化クロスボウって感じ?ちょい見てて」チャキリ

レンジャー「ボルトを発射するのか…」


ダン! バヒュン!!


女海賊「痛った!!ボルト撃つと反動があるのか…」ヨロ

レンジャー「飛距離は?」

女海賊「有効射程だと100~200メートルだと思う…超強化クロスボウだね」

レンジャー「使えるな…いくつある?」

女海賊「8台作った…ちょい持ってくるからトロッコに装着しててよ」スタタ ピュー

狼女「これがあれば迎撃に行ける?」

レンジャー「行けそうだ…8台あれば近付く前に撃破出来る筈」

狼女「アサシンに伝えて来る」シュタタ

『重装トロッコ』


ガチャガチャ


レンジャー「ふむ…発射部を電磁力にしただけの単純な構造…メンテナンスしやすい」

女海賊「でしょ?こういう武器が一番使えるんだよ…今までのボルトそのまま使えるし」ガチャガチャ

レンジャー「これなら俺達でも作れるな」

女海賊「こっちに突進してくる相手ならメチャ当てやすい筈…射程活かして戦えるよ…よーし!!」

レンジャー「んん?」

女海賊「突撃すんじゃ無いの?さっさと出発しろよ!!」イラ

レンジャー「突撃だと?」

女海賊「こんだけ火力揃ったんだから相手が動く前にやっちゃわないと裏取られる…ほれ全軍出撃ぃぃ!!」ビシ

レンジャー「魔女がまだ乗って居ない」


”魔女?聞こえる?今すぐトロッコに乗って…火力ぶっぱでぶっ潰す”

”なぬ?今動けるの10人程度しか居らんが…”

”だから火力ぶっぱで押し込むのさ…こっちにはインドラ銃もある…大丈夫”

”ふむ…主を信じて見ようかのぅ…”


レンジャー「んん?インドラ銃とは何だ?」

女海賊「有効射程2kmの超高精度でインドラの光を落とせるのさ…この線路なら向こうは丸裸も同然」

レンジャー「そんな兵器まで…」

女海賊「私の眼を見て…」クルリン

レンジャー「蒼眼…」

女海賊「そゆ事…アンタが追ってた白狼は私の旦那と子供…まぁ私のやり方見て付いて来な」

レンジャー「フフ見せて貰おうか…勇者の力を」



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-------------


ノソノソ


魔女「急に決めるのじゃのぅ…」

女海賊「はい乗った乗った!!」

レンジャー「一旦アサシンと合流で良いんだな?」

女海賊「ほんなん確認しなくても分かるじゃん…さっさと動かして!!」

レンジャー「総員!前進だ…目標分岐点A…後にエド・モント方面から来る敵を排除する!!」

女海賊「アンタなんか堅いんだよなぁ…ふぁぁ~あ…ちっと私寝るから着いたら起こして」ドタ グゥ…

魔女「やれやれじゃのぅ…」


ヒラヒラ パタパタ


魔女「ほう?妖精が居ったか」

妖精「ハロハローやっと寝たか…」

レンジャー「妖精まで味方につけて…」

魔女「主にも見える様じゃな?これ妖精!眠らせたのはお主か?」

妖精「興奮してずっと寝て無いのさ…どれくらいかなぁ…狭間の中も合わせて5日くらい?」

魔女「ふむ…では仮眠を取らせた方が良いな」

『分岐の手前』


キキー ガッコン


アサシン「トロッコ1台前方に連結させるぞ?」ガチャン

レンジャー「分かった…フフ…オークゾンビにトロッコを動かさせていたか」

アサシン「さてここから少し先に小型の機械が3台程停止している」

レンジャー「分岐を守備しているか」

アサシン「恐らくな?小型の機械では分岐を変える事が出来ないから待機しているのだ」

レンジャー「分岐の向こう側にはまだ退魔の砂銀を撒いて居ないからグレムリンが居る事も想定される」

狼女「その分岐の場所は広いからそこまで敵が来られると排除に厄介…」

レンジャー「さてどうする?」

魔女「これ起きんか!」ユサユサ

女海賊「むにゃー」スヤ ドテ

アサシン「向こうにまだ動きは無いが…」

女海賊「誰だよ蹴ったのは…」ムクリ

魔女「自分で転がったのじゃタワケ…寝ながら下を触るクセをなんとかせい!」

女海賊「ハッ!!やば…バレた…」ズボ

レンジャー「…」アゼン

アサシン「お前には呆れる…状況を考えろ」

女海賊「寝てたんだからしょうがないじゃん!ほんで今の状況は?」フキフキ

アサシン「現在地は分岐の手前2kmだ…小型の機械は分岐を変えられず停止したまま動かない」

女海賊「向こうに明かり無いよね?」

アサシン「ある訳無いだろう」

女海賊「ゾンビに照明魔法掛けた砂銀持たせて奥まで行かせられる?」

魔女「ほう?名案じゃのぅ」

アサシン「なるほど…10体ほど近くに待機させてあるが…」

女海賊「出来るだけ向こうまで行かせて欲しい…後は私が狙撃する」

アサシン「分かった…魔女!照明魔法を」

魔女「ちと待てい!照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

アサシン「ゾンビ共来い!明かりを持って線路に沿って進み続けろ」


ヴヴヴヴヴ ガァァァ… ヨタヨタ

『30分後』


女海賊「分岐見えた!!射撃するからトロッコ動かして!」チャキリ

レンジャー「占拠するのだな?」

女海賊「てかそのままゾンビの後付いて進むのさ」

レンジャー「その先は退魔の砂銀を撒いて居ない…他の魔物も居るぞ」

女海賊「構うもんか!!火力ぶっぱで進めるだけ進む」

アサシン「クックックお前の作戦は単純で分かりやすい」

レンジャー「分岐の横からも来るかも知れんぞ?」

女海賊「うっさいな!後ろから来た奴も倒せば良いだけじゃん…狭い線路なんだから火力ぶっぱで何とかなる!!」

狼女「フフ後ろは見て置く」スタ

レンジャー「分かった!総員微速前進…ゾンビの歩測に合わせろ」


ガコン ゴトゴト


女海賊「おーし!!撃っちゃうよ…爆風来るからトロッコに隠れて」カチ


シュン! チュドーーーーーン!!


女海賊「もういっちょ!!」カチ


シュン! チュドーーーーーン!!


女海賊「おっけ!!3台ともバラバラになった…爆風来るよ!!」


ブォォォォォォ


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『進撃』


ドーン! ドガーン!!


女海賊「重装射撃砲イイネ!!敵が射程に入ったらどんどん撃って」

アサシン「圧倒的火力だな…」

女海賊「撃ち漏らしたやつは強化クロスボウで狙って!」


ダン! バヒュン! ダン! バヒュン! ダン! バヒュン! ダン! バヒュン!


魔女「退魔の砂銀を撒くのも忘れるで無いぞ?」

レンジャー「やってる!!」バシュン バシュン

女海賊「よしよし…敵のトロッコ全部回収出来そう」

アサシン「もうキラーマシンは殲滅したか?」

女海賊「余裕だね…ちっこい機械は強化クロスボウで一発だし」

アサシン「これはエド・モント砦までこのまま行けそうだな…」

女海賊「弾切れまで前進するよ…もうゾンビは引き上げて良い!インドラの銃で前方撃ちながら行けば大体わかる」

アサシン「分かった…トロッコの連結をやらせる」

女海賊「爆風だけ注意してね…」カチ


シュン! チュドーーーーン!


女海賊「おぉ見える見える…デカいの何体か居るから重装射撃砲で狙って!」

魔女「これは忙しいのう…照明魔法!」ピカー

女海賊「その砂銀一杯作って!私が前方に打ち込むから」

魔女「うむ…」

女海賊「明かり行くよ!!」


タン! シュン! ピカーーーー


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『翌日_ハテノ村の教会』


”なに?エド・モント砦へ向けて進撃しているだと?”

”そうじゃ…倒したキラーマシンからボルトを回収しつつ進んで居る”

”口ぶりからして余裕そうだな?”

”うむ…新しい強化クロスボウがなかなか強くてのぅ…グレムリンも寄せ付けぬ”

”そうか魔物掃討も兼ねているか…”

”こちらは問題ない故に主は少し休息しておれ”

”悪いな…撃たれた場所が丁度足の関節で不自由していた所だ”

”また何か有ったら連絡するぞよ…ではのぅ”


商人「…やっぱり女海賊居ると違うみたいだね」

女戦士「無茶しなければ良いがな…」

商人「まぁインドラの銃が有るからねぇ…真っ直ぐな線路だと圧倒的に有利だよね」

女戦士「逆に魔女と女海賊が不在の今…ここで怪我人を出す訳にイカンな」

商人「あぁ実はね…子供達の回復魔法がなかなか良くなって来ててさ」

女戦士「ほう?回復魔法を使う者が居るか…」

商人「傭兵の中にシン・リーンで修行した人も居るんだ」

女戦士「そうだったか…」


タッタッタ


盗賊「お~い!!古代遺跡の入り口が出て来たぜ?」

商人「おぉ!!早かったね」

盗賊「他の兵隊とドワーフ達が手伝ってくれてよ…情報屋も来た方が良いぜ?」

商人「情報屋はまだ歩けないんだ…どうしようかな」

盗賊「俺が背負って行く…お前等先に行っててくれ」

『古代遺跡』


ヨッコラ セット


盗賊「ほら着いたぜ?あん時のままだろ?」

商人「やっと来たね…遺物が沢山残って居たよ…ホラ?」

情報屋「これは…」

商人「ホムンクルスの外部メモリさ…僕達はあの時見落としていたんだ」

情報屋「そうだったのね…確かにあの時は噴火で慌てていたわね…」

商人「他にもたくさんある…こっちだよ」

盗賊「おいおい無理させんな…俺の肩に掴まって歩け」

情報屋「ありがとう…」ヨロ

商人「やっぱり相当具合悪そうだな…」

情報屋「貫通したボルトが背骨の近くを抜けて行った様なの…片足に力が入らない」

盗賊「まぁゆっくり治せば良い…足の役にくらいなってやる」グイ

情報屋「走れないだけよ…ゆっくりなら歩けるから」ヨロ

商人「じゃぁゆっくりおいで…」

『古代遺跡_下層』


スタスタ


情報屋「壁画!!」ヨタヨタ

商人「これもだよ…謎の容器…これの上に外部メモリが乗ってたんだ」

盗賊「中に何が入ってんだ?」

商人「僕には開けられない」

盗賊「貸してみろ」

商人「ちょっと待って…盗賊にはこっちの鍵穴をどうにかして欲しい」

盗賊「んん?」

商人「ここの機械を動かす為の鍵さ…鍵を探しても見当たらないんだ」

盗賊「わかった…ちょっと待ってろ」ガチャガチャ

商人「どう?解錠できそう?」

盗賊「こりゃ解錠ってもんじゃ無いな…新しく鍵作らにゃイカン」

商人「先にこれを優先して欲しい」

盗賊「わーーったよ…他のお宝には手を付けんな?俺が頂く…」

商人「もう女戦士が手を付けちゃてるけどね」

盗賊「おいおい…先にこの遺跡を見つけたのは俺だぞ?ってか扉開いたのも俺だ」

女戦士「フフ…お前にコレが組み立てられるのか?」カチャカチャ

盗賊「おお!!そらデリンジャーじゃ無いのか?」

女戦士「組みあがったらお前が使っても良いだろう」

盗賊「その言葉忘れんな?じゃぁちっと鍛冶場まで走って来る」ダダ

商人「ふ~む…僕達は教会で寝泊まりするんじゃなくてこっちの方が良さそうだ」

女戦士「それなら掃除しておけ…」

商人「ローグも呼んで来る」

女戦士「お前が掃除すれば良いだろう…」

商人「手分けした方が早いのさ…」タッタッタ

『半日後』


ブーーン ピピピ


商人「動いた…名もなき島と同じだ…」

盗賊「ほんじゃ俺はこのデリンジャーを頂くぜ?」

女戦士「それは私の物と少し違うぞ?」

盗賊「ちとデカいな?」

女戦士「単発で特殊な弾を使う様だ」

盗賊「ぬぁぁぁ使え無ぇじゃないか」

女戦士「ラッパ状の砲身からして散弾する弾だな」

盗賊「作ってくれよぉ…」

女戦士「丁度銅貨が20枚ほどその弾の入る場所に収まる…注意しながら試してみろ」

盗賊「ほう?銅貨をぶっ放す訳か…面白れぇ!やってみる」

女戦士「爆発の恐れがあるからそのつもりでな?」

盗賊「わーったわーった!!ちっと外で試してくんな」ダダ


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女戦士「この遺跡はどういう場所だ?」

商人「なにかの研究所さ…石板の図からして軍事研究所…かな?」

情報屋「恐らく剣士と未来君がここを拠点にして居たのよ…世界地図が記されて居るのは目的地を探す為ね」

商人「ここでもホムンクルスが作れるよね?なんでだろう?」

情報屋「その当時はホムンクルスがお手伝いさん役なのよ…だから色々な場所で作られた」

商人「なるほど…いつの時代か分かる?」

情報屋「この遺跡自体は大体6000年前…でも剣士と未来君がここに居たのは大体4000年前ね」

商人「あれ?なんか今までの法則から外れて居ないかい?」

情報屋「そうね…でも理由は分かってる…」

商人「??」

情報屋「剣士も未来君もそれぞれの時代で生きて何十年も過ごしているの…だから過去に戻るのは700年ピッタリじゃない」

商人「あぁそういう事か…」

情報屋「今まで私が言ってたのは大体700年づつ飛んでいるという話…実際には数年から十数年づつズレてる」

商人「なら随分歳を取ってるのか…」

情報屋「結論を言うと未来君はこの場所で老衰によって眠りについた…」

女戦士「老衰…」

情報屋「そう…生き抜いた最後に月を見上げた場所はハテノ村だった…壁画からそう読み取れる」


でもエルフの血が濃い剣士はまだ若かった…

だからその先も過去に戻ってオークの地に予言を残せた


女戦士「未来の骸は何処に?」

情報屋「壁画を見て?」ユビサシ

商人「オークに連れられて…これは何処だ?何の建物だ?」

情報屋「それは超古代メソポタミア文明の有った地…今で言う暁の墓所」

商人「君の予測は正しかったんだね…」

情報屋「この壁画を見れば女海賊も暁の墓所へ行く決心がつくかもしれない…残念だけど未来君はそこに居る」

商人「ちょっと待って…未来君が眠りについたならこの壁画を残せる訳が無い」

情報屋「それは剣士が掘った物よ…未来君が残した壁画はこっち」

商人「そっちか!!あぁ確かに全然出来が違う…」

情報屋「剣士は未来君の行く先を私達に伝える為に書き残したのね」

女戦士「未来の壁画…未来が箱舟に乗って居るでは無いか…」

情報屋「フフそうね…もしかしたら月に行ったのかも知れない」

商人「いや待って!薬と虫を奪って逃げてる画だ」

情報屋「え?虫はいつも未来君が持って…あら?虫の形が変わってる…」

商人「これ僕なりの考察がある…ちょっと待ってまとめるよ」


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『壁画』


…クジラが箱舟を引っ張って海へ行った

そうだ箱舟はもう飛べなかったんだ

何故なら既に光る隕石で破壊されていたから…

崩れそうな箱舟の中から取り出したのは薬と虫

天秤に掛かってるのは未来君と…その薬と虫…

つまりオークと取引をしたんだ

剣士は薬と虫を何処かに隠した…それがこのハテノ村だ

取り引きの条件は何だ?


ダダダダ


盗賊「いよーう!!これ最高のデリンジャーだな?」

ローグ「盗賊さんだけズルいっす…」ダダ

商人「あ…盗賊!良い所に戻ったね…この謎の容器を開けて欲しい」

盗賊「おう…どうしたのよ?みんな神妙な面してよ?」

商人「ハハ今謎が解けそうなのさ…この容器を開けてよ…多分中に薬と虫が入ってる筈なんだ」

盗賊「アホか!!それじゃ開ける楽しみが無くなるだろ!!ヨコセ」グイ

商人「あぁゴメンゴメン」

盗賊「ほー…こりゃ中身真空だな?どうにかして空気入れりゃ開くぞ?」カチャカチャ


シュポン!!


盗賊「なんだ簡単に開くじゃ無ぇか…ゆっくり出すぞ?」ソローリ

商人「ビンゴだね…液体の詰まった容器と…これなんだ?ダンゴムシかな?」

女戦士「見せてみろ」ズイ

盗賊「指輪とアダマンタイト…どういう事よ?」

情報屋「見せて?…これは祈りの指輪」

女戦士「未来の持ち物で間違いなさそうだ…」ガク

情報屋「女海賊には見せにくいけれど…やっぱり間違いない」

女戦士「容器に仕舞っておいてくれないか…私達が先に開けたのは心象悪い」

商人「あぁそうだね…女海賊の帰りを待とうか」

ローグ「な~んか皆さん雰囲気悪いでやんす…」

女戦士「うるさい!お前は遺跡の掃除をやれ」

ローグ「ええええ?あっしだけ掃除するんすか?」

盗賊「おい!言う事聞いておけ…ありゃ相当機嫌の悪い顔だ」

ローグ「盗賊さんは一緒に掃除手伝ってくれやすよね?」


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『夜』


メラメラ パチ


商人「情報屋に僕の考えを行っておくよ…」

情報屋「まとまったの?」

商人「まぁね…まずは箱舟が有ると言われてるヒュー・ストン…この場所は既に存在しない」

情報屋「光る隕石ね?」

商人「この壁画には掛かれて居ないけど恐らく4000年よりもっと前に無くなってると思う」

情報屋「壊れかけの箱舟がそういう意味を持つという解釈ね」

商人「そう…そしてその箱舟はクジラによって此処に運ばれた…ハウ・アイ島」

情報屋「では公爵の行動が正解だった訳ね」

商人「うん…でも大事な物は僕達が持ってるこの謎の薬とダンゴムシの死骸」

情報屋「それは何だと思って居るの?」

商人「さぁ?ただオークシャーマン…いやアヌンナキにとっては大事な物…それを剣士と未来君が奪って逃げたのさ」

情報屋「フフ面白い…私と違う説を聞くのはワクワクするわ」

商人「よーしもっと言うぞ?」


魔王の話からしようか…

魔王は実体を持たない怨念の塊…この世界で影響力を得るためには器が必要だった…

アヌンナキも同じ様に素粒子と言われる実体の無い集合意識

この世界に影響力を持つ為にはやはり器が必要で…それが魔力の最も高い処女のオーク

それがオークシャーマンだった

僕が思うにそのダンゴムシこそアヌンナキの本当の器なんじゃないかと思って居る


情報屋「それを奪われたと?」

商人「そうだよ…そしてその液体はアヌンナキが集めていた遺伝子の集合体じゃ無いかな?…言い換えれば命の水」

情報屋「それは私と意見が一致するわ」

商人「剣士と未来君はそれを使ってアヌンナキと取り引きしたんだと思う…正確には剣士かな」

情報屋「と言うと?」

商人「未来君を現代に蘇らせればソレを帰すと言う約束…それがオークと交わした契約じゃないか?」

情報屋「え!!?ビックリ発想…確かにそれなら動機が十分…」

商人「その約束を現代で果たす前に何千年前だったかな?…多分オークシャーマンに会ってるんだ」

情報屋「なるほどその時には剣士も未来君も何の事か分からない…だから喧嘩別れの形に…」

商人「それともう一つ…未来君は最後に月を見上げたそうだね?」

情報屋「女海賊の話ではそうね…」

商人「まだある…未来君が言っていた言葉だ…僕はダンゴムシになる!」

情報屋「え!!?…まさか…」

商人「そう…祈りの指輪を使って未来君はダンゴムシになった可能性が高い…つまりそのダンゴムシは未来君だ」

情報屋「じゃぁ暁の墓所に行ったのは…」

商人「魂の抜け殻かな…未来君の魂はそのダンゴムシで眠って居るんだよ」

情報屋「話が飛びすぎよ…」トーイメ

商人「まぁ僕の勝手な考察だけどね…」

情報屋「でも無酸素の極限状態でも生命活動を再開する虫は沢山居る…」

商人「お!?だとすると生きてるかも知れない…記憶を保持してるかどうかは別だけど」


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『遺跡の外』


ヒソヒソ ヒソヒソ


女戦士「…」---未来がダンゴムシに…---

ローグ「頭ぁ…寒いんで石炭で暖を取りやしょう」ゴソゴソ

女戦士「静かにしろ…商人と情報屋の話声が聞こえなくなる…」

ローグ「へい…寒さは傷に良くないもんすから温まって下せぇ」メラメラ

女戦士「お前も話を聞いているか?」

ローグ「あっしは元諜報員ですぜ?丸聞こえでやんす」

女戦士「まだ女海賊には話を伏せておけ」

ローグ「分かっていやす」

女戦士「それとあのダンゴムシから目を離すな…私は未来が何処に居るのか分かって来た気がする」

ローグ「ええ!!?」



-------------



『エド・モント砦_チカテツ街道のような所』


タタタタタン! カンカン キン


女海賊「くそう!!やっぱ広い場所は集中砲火食らうな」

レンジャー「もう重装射撃砲は弾切れだ…ここは引くべき」

女海賊「何言ってんのさ!!向こうの重装射撃砲の横に弾あるじゃん!」

アサシン「あの弾をこちらのトロッコに積めば良いのだな?」

女海賊「ゾンビ操って全部回収して…リカ姉ぇ!!2人で時間稼ぎするよ」

狼女「例の奴で?」

女海賊「今使わないでいつ使うの!!」

狼女「分かった…落下にだけ注意して」

レンジャー「何をするつもりだ?」

女海賊「強化クロスボウで援護して!!行く!!」パシュ シュルシュル

狼女「私も!!」パシュ シュルシュル

魔女「無茶苦茶じゃのぅ…引き返す準備をしておくのじゃ…ボルトが切れてしもうたら終いじゃ」

レンジャー「なんだあの2人の動きは…」

魔女「見とれておる場合では無い!!雷魔法!」ビビビ


ドーン ドーン ドカーーーン!!


レンジャー「飛びながら爆弾を併用している…ようし!注意があちらに行くなら…」タン! バヒュン!

魔女「ええい影からレイスも湧いて来よるぞ」

アサシン「分かっている…レイスは任せろ」ダダ ブン

レイス「ンギャアアアアアア…」シュゥゥゥ

レンジャー「残りのボルト残弾に注意しながら前方の2人を援護だ…しかしあの2人…早すぎる」

『空中』


パシュン シュルシュル ヒュン! ヒュン!


女海賊「遅いんだよ!!」バシュン バシュン


ドーン! ドーン!


女海賊「なるほど上への射撃は出来ないんだな?あのちっちゃい機械は…」バシュン バシュン

狼女「3つ首の犬が居る!!アレに集中して!!」ピョン クルクル シュタ

女海賊「おっけ!!インドラの光食らえ」チャキリ シュン! チュドーーーン

狼女「こっちも!!」ピカーーーー チュドーーーン


タタタタン! タタタタタン!


狼女「くぅぅぅ…」パシュ シュルシュル

女海賊「リカ姉ぇ!!」バシュン ドーン

狼女「足撃たれた…」

女海賊「線虫!!癒せ!!」ニョロ

狼女「ワイヤー伝って少し下がる…」パシュ シュルシュル ピョン

女海賊「あんにゃろう…」チャキリ バシュン バシュン バシュン バシュン


ドーン! ドーン! ドーン! ドーン!

『重装トロッコ』


タン! バヒュン!


レンジャー「あの攻撃を一人でやっているのか…」タジ

魔女「リカオンが撃たれた様じゃな…」

アサシン「援護射撃を緩めるな!」

レンジャー「…」タン! バヒュン!


ピョン クルクル シュタ


魔女「撃たれた箇所に弾は残って居りそうか?」

狼女「太ももに違和感…ハァハァ」ポタポタ

魔女「ちぃと痛むぞよ?」ゴソゴソ

狼女「はぅぅぅ…」グググ

魔女「回復魔法!」ボワー

狼女「ハァハァ…取れた?」

魔女「うむ…」ポイ カラン

狼女「じゃぁもう一回…」スック

アサシン「いや撤収だ…ボルトが底を付く…重装射撃砲の砲弾を積み次第移動を始める」

狼女「女海賊が残ってる!!」

アサシン「奴はハイディングを使える…直ぐに追いつける」

レンジャー「よし!砲弾を積み終わった…微速後退する!!」

アサシン「行け…」


ゴトン ゴロゴロ


狼女「あとどの位ボルト残って?」

レンジャー「全部で30発程…あとは特殊弾だけだ」

狼女「プラズマ銃とインドラ銃が頼みの綱になりそうね…」

アサシン「戻るにはそれがあれば十分…今回は相当打撃を与えた筈だ」

レンジャー「アサシン!戻りは登り勾配だ…オークゾンビをトロッコ移動に回してくれ」

アサシン「分かった…オークゾンビ!後ろに移動してトロッコを動かせ」

オークゾンビ「ウゴゴゴ…」ドスドス


ドーン ドーン チュドーーーーーン

『帰路』


ガタンゴトン ゴーーー


女海賊「おっそいな…私が通り越してたよ」シュルシュル スタ

魔女「やはり先に回っておったか…怪我は無いか?」

女海賊「かすり傷だけだね…やっぱ妖精居ると違うわ」

妖精「やあ!!」ヒョコ

魔女「それは幸運じゃったのぅ…」

女海賊「てかね…後方注意!まだ追って来てるかも」ダダ

狼女「そうね…大きな犬の匂い」

女海賊「しぶといなアイツ…」チャキリ

魔女「ケルベロスかいな?」

女海賊「2匹居るんだ…魔女!照明魔法を線路に置いて行って」

魔女「ふむ…照明魔法!」ピカー

女海賊「等間隔でどんどん置いて行って」

魔女「2匹という事はオルトロスも居るのじゃな…」

女海賊「なんであんなしぶといの?」

魔女「不死じゃ…どこに心臓があるか分からぬが銀を撃ち込まねば倒せぬ」

女海賊「なんだそういう事か…退魔の特殊弾持ってるわ」ゴソゴソ ガチャコン

狼女「追い付いて来る…今500メートルくらい」

女海賊「おけおけ…300メートルに入ったら撃ちまくる」チャキリ

アサシン「速度は現状維持で良いな?」

女海賊「うん丁度良い…よしよし見えてるぞ…もっと来い」

アサシン「リカオンは行く先の警戒を頼む」

狼女「分かった…」シュタタ

女海賊「魔女!照明魔法どんどん置いて行って」

魔女「分かって居る…照明魔法!」ピカー

女海賊「食らえ!ワンころ!」タン!タン!タン!タン!

レンジャー「地味な攻撃に見える…」

女海賊「いやいや全部当たってるから…」タン!タン!タン!タン!

レンジャー「その武器も有効射程が長いのか?」

女海賊「これは300メートルくらいの狙撃用さ…特殊弾使ってるんだ」タン!タン!タン!タン!

女海賊「よっし!!一匹急に灰になったぞ!!」

魔女「駆逐してもまた黄泉から這い出て来るやも知れんのぅ…」

女海賊「もう倒し方分かったからどうって事無いよ…あぁぁ引き返して行ったな」

アサシン「速度を上げるぞ…一旦前哨基地まで戻る」


カタタン カタタン ゴーーーーーー


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女海賊「…これでどんくらい弾が必要なのか大体わかったね」

狼女「キラーマシンを殆ど見なくなったからエド・モント砦にはあまり残って居なさそう」

女海賊「ちっこい機械がまだ居るっぽいからボルトはやっぱ多めが良い」

レンジャー「重装射撃の砲弾は20発程度しか無いが?」

女海賊「ちっと足りないけど強化クロスボウ増やして代替するしか無いね」

レンジャー「そうだ今の内に作り増そう…」

女海賊「回収した戦利品で何個作れそう?」

レンジャー「使えそうな発射部は4つしか無い…残りは爆発で傷んでしまった」

女海賊「そっかぁ…私の飛空艇にも欲しかったんだよなぁ…」

レンジャー「いくつあれば良いんだ?」

女海賊「2つかな?」

レンジャー「このトロッコには合わせて10台あれば良い…2つ持って行って上空から援護出来た方が良いだろう」

女海賊「やったね!!」

魔女「確かに…敵の射程外から一方的に撃てるのは効果が高いのぅ」

女海賊「ソレだよ!快進撃出来たのはこの強化クロスボウのお陰なのさ…汎用性の高い武器が一番効果高いんだ」

レンジャー「魔石のエネルギー切れだけ注意が必要だ」

女海賊「そだね…本当は板バネで同じ飛距離出れば一番良いんだけどね…」

アサシン「魔石は当分心配しなくて良さそうだが?」

魔女「またトロッコ1杯分の魔石を入手出来たのは良かったのぅ…」



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女海賊「ぎゃははは…ちょちょ…おっぱい吸うなバカ」バタバタ

妖精「ちゅっぱちゅっぱ」チューチュー

レンジャー「…」シラー

女海賊「あんたそのおっぱいは専用なんだよ…くすぐったいなぁ」

妖精「良いじゃないか!誰の専用なのさ」モソモソ

女海賊「私の子供専用なんだって…ヤメて!!羽ムシルぞ!!」

妖精「子供って誰?」ヒラヒラ

女海賊「未来っていう名前なんだ」

妖精「んん?」ピタ

女海賊「お!?もしかして知ってる?会ったことある?」

妖精「んんん…覚えて無いなぁ」

女海賊「あんたの記憶はアテになんないねぇ…」

妖精「名前に聞き覚えあるけど…誰だっけなぁ…呼ばれた事あったかもしれないなぁ…」ヒラヒラ

女海賊「なんか話し方がそっくりなんだよね…虫ってみんなそんな感じ?」

妖精「そうだよ…ちょっと待って虫じゃ無くて妖精だよ…失礼だな」

女海賊「同じじゃん…私のウンコ食ってたじゃん」

妖精「それは虫だと思うな」

女海賊「だからソコに居たじゃん!!あの妖精はあんたじゃ無いの?」

妖精「覚えて無いんだよ…妖精って言っても沢山居るからさぁ」

女海賊「みんな同じ顔してんじゃん!!」

妖精「全然違うよ…君達人間も皆同じ顔してるけどねアハハハ」

魔女「不思議じゃのぅ…妖精はいつ見ても同じじゃな…」

女海賊「でしょ?ほんじゃさ…あんたエルフのおっぱいに挟まったのは覚えてる?」

妖精「エルフのおっぱいは知ってるよ…君より寝心地が良いんだ」

女海賊「ほら!?だからあんた記憶無いのは嘘だね!!」

妖精「知ってるだけさ…誰のおっぱいなのか覚えて無いんだ」

女海賊「なんでおっぱいだけ覚えてんのよ?」

妖精「僕は記憶が無くなっていくのが普通なんだ…そのうち君の事も忘れちゃうよ」

女海賊「ほーん…まぁ良いや…ほんで妖精の役割って何だっけ?」

妖精「命を運ぶ?…えーとそれから魂も運ぶ?…ほんでおっぱいで寝る?」

女海賊「またおっぱいかよ…命とか魂を何処に運ぶん?」

妖精「命の種は月に向かって運ぶ…魂は黄泉に運ぶ」

女海賊「ちょい待ち…命の種を月に運ぶってどゆこと?それ精霊樹の言葉なんだけど…」

妖精「命を月に運ぶのが僕の役目で虫達も同じ事をしてるんだよ」

女海賊「なるほど…虫が月に向かって飛ぶのはそのせいか…月に何があるん?」

妖精「覚えて無い…でも大事な約束なんだ」

女海賊「誰と?」

妖精「神様だよ…僕の神様」

女海賊「それってアヌンナキの事?」

妖精「分かんない…覚えて無い」

女海賊「私もさぁ月に行く約束してるのさ…」

妖精「へぇ?同じかぁ…じゃぁ連れて行ってよ」

女海賊「おっし!!もっかい月見に行くか!!」

妖精「良いねぇ!!あぁぁ…でも命の種が無い…」

女海賊「じゃーーーん!!」スッ

妖精「おーーどんぐり!!それも命の種だ…」

女海賊「これもって行けば良いんじゃね?」

妖精「そうだね!」ヒラヒラ パタパタ

『先頭車両』


カタタン カタタン ゴーーーーー


魔女「アサシンや…妖精の声は聞こえて居るじゃろう…」

アサシン「フフ何を今更…」

魔女「もしやと思うたのじゃが…」

アサシン「魔女も同じ事を思ったか…」

魔女「良く考えてみたら妖精はずっと剣士や女海賊の傍に居った気がする」

アサシン「私を始めに導いたのは妖精だったがな…妖精を追って砂漠で遺跡を見つけた」

魔女「わらわも小さき頃に妖精に導かれてのぅ…」

アサシン「おっぱいを好むのは母性を求めての事だろうか…」

魔女「うむ…わらわの胸には興味を示さぬ」

アサシン「記憶が無いのはこの次元の者では無いからと見るか?」

魔女「妖精がどの次元の者かは定かでは無い…じゃが似すぎじゃと思わぬか?」

アサシン「…」

魔女「命の種子を月に運ぶ…それは約束故の事…それを時を超えた今でも未だに目指しよる…」

アサシン「私は妖精がどのような存在なのかよく分からない…」

魔女「命を運ぶ役じゃ…それに尽きる」

アサシン「未来へ向かっての事か?」

魔女「それしか考えられぬじゃろう…」

アサシン「その後妖精は何処へ?」

魔女「分からぬ…永遠やも知れんのぅ」ヒソ


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『簡易前哨基地』


ドヤドヤ ゾロゾロ


魔女「しばしの休息じゃ…女海賊!兵隊に線虫を掛けて回るのじゃ」

女海賊「おけおけ!線虫来い!癒せ」ニョロリ

レンジャー「急ぎで地上に出ている部隊と人員の入れ替えをしたいのだが…」

魔女「ふむ…連絡しておこう」

女海賊「ちっとドワーフの爺にボルト量産お願いしてくるわ」

魔女「そうじゃな…主も一度地上に上がるのじゃ…古代遺跡の入り口を見つけた様じゃで」

女海賊「えええええ!!?それ早く言ってよ!!」

魔女「さっき貝殻で通話したばかりじゃ…忙しゅうて伝え損じた」

女海賊「よっし!ダッシュで戻る!!レンジャーのおっさん!!強化クロスボウ2つ持ってくよ」

レンジャー「分かった…それからおっさんは無いだろう」

女海賊「はいはい爺さんで良い?」

レンジャー「…」

女海賊「おし!妖精来い!!月見に行くぞ!!」スタコラ ピューーー


ヒラヒラ パタパタ


魔女「落ち着かん女じゃのぅ…」ボソ

レンジャー「白狼の一党はいつもこの様な感じなのか?」

アサシン「毎度の事だ…飲むか?」スッ

レンジャー「ワインか…飲みたい所だが他に示しが付かん」

魔女「酒はローグが運んで来た様じゃぞ?戦勝祝いで飲めばよかろう」

レンジャー「フハハハそうだな…おいお前達!!酒があるらしい…今日は飲んでも構わん」

兵隊達「おぉぉ!!」

アサシン「線路の守備はゾンビに任せても良さそうだ…まぁ飲め」スッ

レンジャー「どれくらいぶりの酒か…」グビ

アサシン「一人も死者を出さずに帰って来れたのはもしかすると妖精のお陰かもしれんな」

魔女「そうじゃのぅ…」

レンジャー「俺にも妖精が見えるんだ…どういう意味がある?」

魔女「導かれておる…未来へとな」

レンジャー「未来…希望か…これが勇者の力なのだな?」

アサシン「クックック…道は険しいがな」

レンジャー「公爵も妖精を追っていたらしい」

アサシン「知って居る…私と語り合った物だ…勇者と魔王の事をな」

魔女「どちらも間違って居る様じゃが…」

アサシン「言うな魔女…かつて友だった頃にもっと分かり合えていれば話は違っていただろうに…」

魔女「それが人間じゃろう…すれ違いながら生きて居る」

アサシン「公爵は今何に姿を変えて居るのだ?」

レンジャー「もっぱら中年の女だ…それが一番生命力に長けているらしい」

アサシン「生命力?」

レンジャー「もう年なのだ…寿命には勝てん」

魔女「アサシン…主は不死者じゃで時の流れを感じられんのじゃ…盗賊にしろ情報屋にしろ老いておる…」

アサシン「確かに…魔女は狭間に居る期間が長いせいか衰えを感じんがな…」

魔女「そろそろ子を産まぬ事には産めぬ様になってしまうのぅ…」

レンジャー「では俺が…」

魔女「何を言うて居る!」ポカ

レンジャー「シン・リーンの掟では子を産む相手は王が決める事に…」

魔女「母上に従うまでじゃ…父上が居らぬ今主では相手不足」

アサシン「クックック何の話をするかと思えば…もう少し酔ってから口説いてみろ」

『古代遺跡_入り口』


メラメラ パチ


ローグ「あ!!姉さん…」

女海賊「あんた何やってんのさ?」

ローグ「あっしは掃除でやんす…遺跡の中のゴミを運び出してるんす」

女海賊「みんな遺跡の中に居んの?」

ローグ「頭は温泉に行って居やす…盗賊さんは気球で兵隊の降下訓練」

女海賊「あっそ!!まぁ良いや…あーそうそう!!私の飛空艇に壁画記した書物あんだけど取ってきてくんない?」

ローグ「それならもう遺跡の中にあるっすね…気を利かせて盗賊さんが持って来てくれやした」

女海賊「おっけ!!もうみんな調査し終わった感じ?」

ローグ「中に商人さんと情報屋さんがいやすぜ?」

女海賊「調査やってんだね…私も行くわ」スタコラ ピュー


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『古代遺跡_下層』


タッタッタ…

この絵は当時の世界か…確かに現在とは比べ物にならないな…

6000年前の文明よ…生き物も今よりずっと沢山の種類が生きていた

スゴイな見た事無い生き物ばかりじゃないか


商人「ん?あ…女海賊!!」

女海賊「壁画ある?ハァハァ…」

情報屋「奥よ…あなたが来ると思って何も動かしてないわ」

女海賊「うん…ありがとう」

情報屋「これあなたの書物…」

女海賊「ちっと私壁画写すからしばらく放って置いて」

情報屋「分かってるわ…私達はココで当時の文明を調べてるから気の済むまで壁画を見てて良いわ」

女海賊「うん…」スタスタ

情報屋「じゃぁ商人…続けましょう」


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『古代遺跡_入り口』


メラメラ パチ


ローグ「頭ぁ!!待っていやしたぜ?」

女戦士「ふぅぅ…焚火なぞ要らんのに」

ローグ「いやいや夜になると冷えるんで…姉さんが戻って来たでやんす」

女戦士「ほう?では早速壁画に行ったな?」

ローグ「へい…」

女戦士「しばらくそっとしておいた方が良いな…」

ローグ「そーっすね…なもんで六分儀と望遠鏡を用意して置きやした」

女戦士「まだ日が落ちるまで間がある…どうしたものか」

ローグ「肉でも焼きやしょうか?」

女戦士「そうだな…少し体力をつけて置こうか」


ヨタヨタ


盗賊「いよーう!!兵隊の降下訓練は終わったぜ?」

女戦士「そうか…予定通り地下へ行ったか?」

盗賊「あぁ今さっきゾロゾロ居りて行った所だ…大分他の傭兵とコミュニケーション取れてた所だったんだがな」

女戦士「エド・モント攻めで心労が溜まっているのだ仕方無い」

盗賊「今度のはどんな奴らなんだろうな?」

女戦士「精鋭に変わりは無いぞ?」

盗賊「降下訓練はやらんで良いんかな?」

女戦士「それは聞いて居ない…トロッコ部隊の予定だからやらなくても良い訓練を強要する必要も無いな」

盗賊「じゃぁまぁしばらく休むだな」

女戦士「栄養の方が心配だ…地下に籠って居ては食料に偏りがある」

盗賊「肉だ!肉を食わせてやらん事には力が出ん」

ローグ「思い出しやした…晴れて来て動物がチラチラうろついていやすね」

盗賊「マジか!!」

ローグ「多分クマっす」

盗賊「おーし!!この俺のデリンジャーで狩ってやる」スチャ

ローグ「良いっすねぇ…あっしも欲しいでやんす」

盗賊「一丁今から狩りに行くか?」

ローグ「もうすぐ暗くなるんすが…」

盗賊「クマは夜行性だ…今から活動するんだ…行くぞ!!」

女戦士「フフ…私は星の観測をやっているからクマ肉の山賊焼きを楽しみにしている」


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『夜』


キリキリキリ カチッ


女戦士「ふむ…一日の長さに変化は無い様だ…月だけおかしいか…」


ヒラヒラ パタパタ


妖精「やあ!!何してるの?」

女戦士「む?どうした?主人に構って貰えないのか?」

妖精「泣いてるからさぁ…声掛けにくいんだよ」

女戦士「フフしばらく泣いたら落ち着く」

妖精「ねぇ君は僕に願い事無いの?」

女戦士「何でも叶うのか?」

妖精「大体叶うよ…ゆっくりだけどね」

女戦士「そうだな…世界の平和か」

妖精「んんん…僕は何が平和なのか分からないなぁ…誰も食べられない事?何も起きない事が平和?…それは無だよね」

女戦士「フフ難しい事を言うのだな…確かに私達は動物を食らっているな」

妖精「個人的に心の平和が欲しいなら僕に出来るよ」ヒラヒラ

女戦士「そうやって夢に誘うのか?…今寝るのは困る」

妖精「じゃぁ他に個人的な願いは?誰かに会いたいとかさぁ…」

女戦士「私の心を探ろうというのか?」ジロ

妖精「そんなつもりは無いよ…何もしないとヒマなんだ」パタパタ クルクル

女戦士「望遠鏡を覗いてみるか?月が見えるぞ?」

妖精「え!!?どうやって見るの?」

女戦士「ここの穴を覗けば良い」

妖精「うわぁぁ…良く見える…すぐ其処だったんだ」ヒョイ ヒョイ

女戦士「掴もうとしているのか?フフフ…可笑しな妖精だ」

妖精「思い出したぞ!!僕は月に行かなきゃ…月に命の種を持って行かないといけないんだ…」

女戦士「な…んだと?どうやって行く?」

妖精「羽があるじゃない…飛んで行くんだよ…でもね?狭間に阻まれて向こうに行けないんだ」

女戦士「…」

妖精「そうかぁ…望遠鏡でもっと大きくしたら行けるかも知れないなぁ…」

女戦士「…」---まさか---

妖精「ねぇもっと大きくならないかなぁ?」

女戦士「…」---記憶を失った未来か?---

妖精「ねぇ聞いてる?」

女戦士「おい!ビッグママとは誰なのか知って居るか?」

妖精「なにバカな事言ってるのさ…君の事だよ」

女戦士「なぜそれをお前が知って居る?」

妖精「覚えて無いよ…」

女戦士「お前は何処から来た?」

妖精「妖精は狭間に住んでるんだよ?笛で呼ばれたから来たんだ」

女戦士「妖精はお前一人か?」

妖精「君は馬鹿だなぁ…妖精は数え切れないくらい居るよ…あっちにもこっちにも」

女戦士「そうか…」トーイメ


---集合意識とはこういう事か---

---未来は神になって世界を守り続けている---


妖精「どうしたのさ?ねぇこっちの器具は何?君何してたの?」

女戦士「月に行く計画を立てて居たのだ…触ってみるか?」

妖精「ええええ!?どうやって月に行くの?」パタパタ

女戦士「お前は何故月を目指す?」

妖精「約束なんだ…僕の神様が待ってる」

『深夜』


タッタッタ


盗賊「いよーう…観測続けてんな?」

ローグ「頭ぁ…遅くなりやした」ハァハァ

盗賊「あれ?お前一人か?…話し声が聞こえたと思ったんだが」

女戦士「妖精と話して居たのだ…」

盗賊「なんだお前も妖精が見えるのか…俺にはさっぱり見えんのよ」キョロ

ローグ「光る虫が飛んで居やすね?」

女戦士「下手に殺すな?」

ローグ「わかって居やすよ…それよりクマ肉を持って来やした…ちっと山賊焼きにしやすね?」


メラメラ ジュゥ


ローグ「それにしても盗賊さんのデリンジャーはスゴイっすね…クマが一撃でやんす」

女戦士「ほう?使い勝手は良いのか?」

盗賊「飛んでくのがコインってのが俺らしいな…銭投げよヌハハ」

女戦士「飛距離とか命中精度とかの話だ」

盗賊「お前のデリンジャーとそう変わらん…20枚のコインが一気に飛んでく訳だ」

女戦士「なるほど…一発火力か」

盗賊「コインは意外と鋭い刃物な訳よ…それが一気に飛んでくりゃ生きてる動物なんか居らんワナ」

ローグ「頭ぁ…クマ肉の山賊焼き出来やした…食って精を付けて下せぇ」

女戦士「大きすぎる!私は少食だと知って居るだろう」

盗賊「要らん分は俺が貰うぜ?」

ローグ「すんません…小さく切り分けやすね」スパ スパ


ヒュルヒュル~ ドーン!!


盗賊「んん!!?花火玉の音だ…ちぃぃ…今兵隊が居ない!!」スック

ローグ「またガーゴイル来てるんすね」

盗賊「ちっと応援行って来るわ…お前等は山賊焼き食ってろ」

ローグ「この骨付きを持っていってくだせぇ」ポイ

盗賊「おうサンキュー!!食いながら行くわ!!じゃあな!!」ノシ


タッタッタ


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『ハテノ村_広場』


ギャーーース ギャーーース バッサ バッサ


盗賊「どわぁ!!なんだこの数は…」ダダ

傭兵1「と…盗賊さん!!教会が危ない!!」

盗賊「なんでこんなに来るまで気が付かなかった!!?」

傭兵1「一気に襲って来たんだ…」オロオロ

盗賊「まぁ良い!!花火玉撃ちまくれ!!ほんでお前等は落ちたガーゴイル焼きまくれ!!」

傭兵2「はいでしゅ!!」

盗賊「ローグ達この笛で気付くか?…」


ピィィィィィィヒャララ~~


ガーゴイル「ギャァァァ!!」バッサ バッサ

盗賊「逃がすかタワケ!!」チャキリ


ダーン!! ジャラジャラ!!


傭兵3「す…凄い…」タジ

盗賊「落ちた奴を早く焼け!!」ダダ

傭兵3「火炎魔法!!」ゴゥ ボボボボボ

盗賊「花火玉も撃てぇ!!」

傭兵1「当たれぇぇぇ!!」パシュ


ヒュルヒュル~ ドーン!!


盗賊「まだあるぜ!?」チャキリ カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーーン!!


盗賊「くっそ!!もう銅貨が無ぇ…笛吹くしか無いか!!」


ピィィィィィィヒャララ~~


盗賊「俺は教会に行くからお前等なんとか凌げ!!」

傭兵1「はい!!」パシュン ヒュルルル~ ドーン!!

傭兵2「火魔法!」ボボボ

傭兵3「火炎魔法!」ゴゥ ボボボボボ

『教会』


エ~ンエ~ン シクシク


吟遊詩人「と…盗賊さん!!急にガーゴイルが…」

盗賊「お前がビビっててどうすんだ!!リュート鳴らせ!!そいつには退魔の効果がある!!」

吟遊詩人「え…あ…何の曲を…」

盗賊「なんでも良いから音慣らせバカ!!」

吟遊詩人「分かりました…」タッタッタ

盗賊「ったく丁度人が居ない時に…」


ドゥルルルン~♪ ジャカジャ~ン♪


ガーゴイル「ギャァァァ…」バッサ バッサ

盗賊「逃がすか!!」チャキリ カチ ビビビビ

ガーゴイル「グェェェェ…」ヒュー ドサ

盗賊「くっそ!!リロード失敗か…ぶった切るしか無ぇ!!」ダダダ スパ

吟遊詩人「僕はリュート鳴らして居れば良いんですね?」ジャカジャーン

盗賊「そうだ!!そうすりゃ教会には寄って来ん!!ここはお前に任せたぞ!!」

吟遊詩人「は…はい!」


ドゥルルルン~♪

猛れども寄る辺なく~♪

我が声も風に消ゆ~♪

『古代遺跡_入り口』


ドーン パーン! ピィィィイヒャララ~


ローグ「あらららら?なんか様子おかしいっすね?」スック

女戦士「ガーゴイルが多いか…」スック

ローグ「ちっと応援に行った方が良さそうっす…」

女戦士「うむ…ハイディングして行くぞ!」

ローグ「へい!!」


ハイディング! スゥ


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『ハテノ村_広場』


ヒュルルルル~ ドーン!!


盗賊「くっそ!!何匹居やがる…」カチ ピカーーー チュドーーーン!

傭兵1「上空の高い所にものすごい数が…」

盗賊「ありゃ届かんな…」

傭兵1「もう花火玉の残りが少ない…」

盗賊「鍛冶場に置いてる奴は全部使っちまえ!!」

傭兵1「お金を払わないと…」

盗賊「んなもん後で良いんだ…てか距離しっかり見て撃てよ?無駄撃ちすんな?」


リリース! スゥ


盗賊「おぉ!!2人共来たか!!」

女戦士「これは一体…」

盗賊「月がデカいだろ…狭間が深いんだ」

女戦士「マズいな…レイスが出る」

盗賊「ぐはぁ!!忘れてた…」

女戦士「退魔の砂銀を撒け!!こちらに運ばせた筈だ!!」

盗賊「おぉ!!鍛冶場に有るな…女海賊がまだ加工して無い奴が…」

ローグ「あっしも手伝いやす」

盗賊「まず民家だ!!教会は吟遊詩人が退魔のリュートを鳴らしてる」

ローグ「分かりやした」

女戦士「傭兵共!!鍛冶場に置いてあるミスリルの武器を持て!!レイスはミスリルじゃないと倒せない」

傭兵1「は…はい!!」ダダ

盗賊「ローグ!!お前にゃ遠距離武器無いだろう?コレを使え」ポイ

ローグ「プラズマの銃…良いんすか?」

盗賊「大型の気球に火炎放射器が乗ってんだ…俺はソレを使う」ダダ


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『明け方』


ボボボボボボ ボゥ


盗賊「燃やせ燃やせぇ!!」

女海賊「私は何もすることなく朝を迎えたな…」

盗賊「しょうが無い…単発のデリンジャーは撃つだけ弾の無駄だ」

ローグ「ガーゴイルの群れはどっか行きやしたね…」

盗賊「こりゃ月が去るまでしばらく続きそうだな?」

ローグ「今晩のファインプレーは吟遊詩人さんかも知れやせんね」

盗賊「うむ…一人で教会を守り切ったからな」

傭兵1「あれ?妖精が見えた気が…」

傭兵2「教会にも沢山妖精さんが来てるみたいでし」

傭兵3「妖精?バッカじゃ無いの?どこにも居ないし…」

盗賊「お前等はガーゴイル焼くのが先だ!!妖精なんか後にしろ!!」ボボボボ

傭兵1「そうだ…ガーゴイルの角を採取しないと…」

盗賊「おぉそら賛成だ…20体分はあるぞ」

傭兵3「それがあればまたポーションが作れる!」

ローグ「採取はあっしが専門でやんす…あっしが一番沢山集める自信ありやす」ダダ

傭兵1「あぁ!!マズイ先を越される!!」ダダ


女戦士「…あちこちに妖精か…」ボソ


妖精「ハロハロー!呼んだ?」ヒョコ

女戦士「胸に挟まって居たか…質問がある」

妖精「何かな?そろそろ眠たくなって来たんだ…ふぁ~あ」

女戦士「向こうに居る妖精もお前か?」

妖精「何言ってるのか分からないなぁ…僕は僕だよ」

女戦士「じゃぁ質問を変える…向こうに居るのも僕か?」

妖精「う~ん…僕であり僕じゃない…みんな妖精さ」

女戦士「そうか…理解した」

妖精「おっぱいのベッドで寝るね~お休み~」ヒラヒラ スポ

女戦士「集合意識か…」

『鍛冶場』


カーン カンカン ジュゥゥゥ


盗賊「槍の柄になる木材を切り出して来たぜ…」ドサドサ

女戦士「ご苦労…」カーン カンカン

盗賊「全部ミスリルのヘッドを付けた槍にすんのか?」

女戦士「これが一番材料を使わんで済む…出来た槍を配って来い」ジュゥゥ

盗賊「子供達に持たせるんか?」

女戦士「自衛出来ぬ者が生き残れると思うか?」ジロ

盗賊「まぁ…その通りだ」ガチャガチャ

女戦士「商人には退魔の方陣を描かせているだろうな?」

盗賊「あぁ…今日一杯掛かるらしい」

女戦士「日が落ちるまでには終わらせろ」


ヨッコラ ヨッコラ


ローグ「頭ぁぁ…くっそ重たい土産が地下から運ばれてきやしたぜ?」ドスン

女戦士「んん?」

ローグ「交代の兵隊達が持って来たんす…鉄のインゴットっすか?」

女戦士「おぉ…超硬合金か」

ローグ「これ運んでたお陰で遅くなったみたいっすね」

女戦士「この村の事情は話したか?」

ローグ「へい…先に温泉で綺麗にした後順に警備に回るそうでやんす」

女戦士「昨夜のクマ肉も振舞って昼の内に休ませろ」

ローグ「本番は夜っすね…」


スタタタ ピューーー


女戦士「む…女海賊…」

女海賊「お姉ぇ…手伝うよ」

女戦士「平気なのか?」

女海賊「もう吹っ切れたさ…壁画も書き写したし私も鍛冶やる」

女戦士「そうか…平気なら良い…鉄を叩けば気も晴れる」

女海賊「ローグ!…それから盗賊にも…強化クロスボウ持って来たんだ…コレ使って」ポイ

ローグ「なんすかコレは?」

女海賊「レンジのクソ長いクロスボウさ…最大射程は800メートルくらいある」

ローグ「マジっすか…」

女海賊「今からボルト沢山作るから夜に備えて」



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カーン カンカン ジュゥゥゥ

焼いた鉄どんどん伸ばして行って…私切って行くから

均一じゃなくて良いよ修正出来る…

ちょいアンタら暇なら錬鉄持って来てよ…炉の横に積んで有るからさ

出来たボルト邪魔だからどっか運んどいて…気球の荷室で良いや


女戦士「…」ジロリ

女海賊「何?」スパ スパ

女戦士「無理をして居ないか?」カンカンカン

女海賊「吹っ切れてるって言ったじゃん」ゴシゴシ

女戦士「涙を溜め込むな?」

女海賊「もう泣かないって決めたんだよ」

女戦士「商人と情報屋とは話したのか?」

女海賊「全部聞いたさ…」

女戦士「なら良い…」

女海賊「正直薄々分かってたんだ…壁画に描かれてる未来の自画像に髭が生えてたからさ」

女戦士「年齢を重ねて居た事か…」

女海賊「最後まで生き抜いたって思ったら吹っ切れたんだ」

女戦士「暁の墓所に未来が安置されているそうだ…」

女海賊「うん…」

女戦士「行かなくて良いのか?」

女海賊「戸惑ってるよ…お爺ちゃんになった姿見たら心壊れちゃうかもってね…」

女戦士「そうだな…」

女海賊「壁画見て分かったんだ…未来の人生はどんな人よりも沢山の経験をして…沢山の人に会って…世界を守り続けて…」

女戦士「真の勇者だ…」

女海賊「そう…だから最後まで生き抜いた事が誇らしい」

女戦士「しかし月には行けなかった…」

女海賊「違う!!」クルリ

女戦士「…」

女海賊「まだ行ける!!未来はダンゴムシになって月に行けるのを待ってる…だから私が連れて行く」

女戦士「そうか…そこまで理解しているか」

女海賊「お姉ぇ…記憶が無くなるのって…本当に悲しい事だね」

女戦士「うむ…」

女海賊「妖精にさ…壁画を記した書物見せたんだ…何の画なのか分からないってさ…」

女戦士「お前…妖精が未来の生まれ変わりだと気付いて…」

女海賊「アイツいっつも私のおっぱいを吸うんだ…おっぱいと…月に行かなきゃいけない事だけ覚えてる」プルプル

女戦士「…」

女海賊「月に連れて行かなきゃ…約束したんだよ」プルプル


カーン カンカン カーン カンカン


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『作業台』


ドサリ ガラガラ


女海賊「これ何?」

女戦士「超硬合金の板だ…これで防具を作ってくれ」

女海賊「ええ?こんなんで作ったら重いよ?」

女戦士「全身フルアーマーでは無い…急所に弾が当たらん様にする程度だ」

女海賊「プレートスケールって事かぁ…そうだな皮ベースで防弾に使うだけなら軽いか」

女戦士「出来るだけ沢山作るのだ」

女海賊「おけおけ!丁度クマの毛皮が余ってるんだ」

女戦士「盾は自分で作る…装備が揃えば銃を連射されても私一人で突撃も出来る」

女海賊「ちょ…エド・モント砦にソロで突っ込む気?」

女戦士「弾さえ弾けば私は打たれ強いと知って居るだろう?」

女海賊「ふ~ん…まぁ良いや!お姉の装備をクマ風にするわ」

女戦士「弾を弾けば何でも構わん」

女海賊「なんか楽しみ増えたな…リカ姉ぇはネコ風にするか…私はクモだな…」


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『夕方_古代遺跡』


タッタッタ


商人「情報屋!ここは危ないから教会に戻るよ」

情報屋「危ない?」

商人「夜に狭間が深くなってレイスが出るかも知れないんだって…教会なら安全なんだ」

情報屋「そう…でもどうしてそんな事に…」

商人「月の影響じゃないかってさ…楕円軌道になって今までよりも地球に近い可能性があるらしい」

情報屋「それは大変な事ね…他の影響も出て来る…」

商人「もうすぐ日が落ちてしまうから君を迎えに来たんだ…」

情報屋「分かったわ…片づけるから少し待って」

商人「あぁ…資料を出しっぱなしだったか…手伝うよ」スタ

情報屋「月が楕円軌道してるって事をこの短い期間でどうやって測定したのかしら…」

商人「それは予測だよ…直径が大きく見えてる分近いのは当然だよね?」

情報屋「確かにそうね…」

商人「軌道は相当ズレてて毎日18度づつ変わってるらしい…今は南極の方角にあって昼も夜も月が見えっぱなしさ」

情報屋「緯度のズレは?」

商人「3度づつとか言ってたな…だから観測が難しいと思う」

情報屋「ホムンクルスの力を借りないと分から無さそうね」

商人「そうさ…さぁ…もう話してる暇は無い…行こう」


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『広場』


ガヤガヤ ザワザワ


商人「女戦士!情報屋を連れて来たよ」スタ

女戦士「2人は大型気球で待機していてくれ」

情報屋「教会は?」

女戦士「あちらは兵隊が守備だ…私達は大型気球からの撃ち下ろし」

情報屋「分かったわ…」

女戦士「一応この周辺は退魔の方陣の範囲内に収まって居るから安心ではある」

商人「僕達はもしもの時の狙撃主だね?」

女戦士「まぁそうだな…主に迎撃で動くのが盗賊とローグ…そして傭兵達だ」

情報屋「女海賊は何処に?」

女戦士「鍛冶場で装備品を作って貰って居てな」

情報屋「平気そう?」

女戦士「本人は吹っ切れたと言って居るが…」

情報屋「少し話をして行っても?」

女戦士「構わんが荒立てるな?」

情報屋「分かってる…良い話なのよ」

女戦士「ふむ…まだガーゴイルは居ないようだから行って来い」



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『鍛冶場』


ペチャクチャ

だからさぁ…そこの結び目を押さえててって言ってるじゃん!

もう何回言ったら分かるんだよ!このバカ妖精!!羽ムシルぞ!!


情報屋「ぁ…」

女海賊「んん?どしたん?」ゴシゴシ ギュゥ

妖精「助かったぁぁ…僕を奴隷扱いするんだぁ」パタパタ

女海賊「おいおい!何処行くのさ…ホレホレ?ハチミツ欲しく無いのか?」

妖精「わーい!!」ヒラヒラ ピュー

情報屋「フフ心配しなくても良かった様ね」

女海賊「まぁね?ほんで…どうしたん?」

情報屋「あなたに教えておかなければいけない事が有って…商人にも」

商人「ええ?僕も?」

情報屋「そう…ホムンクルスに関係する事だから」

女海賊「なになに?」

情報屋「結論…月のクレーターによる退魔の方陣は光る隕石を落とす事で完成させられる」

女海賊「ちょ…それマジ?」

情報屋「光る隕石が落ちた後には地層にガラス層が出来るでしょう?」

女海賊「もしかしてガラスって光属性?」

情報屋「恐らく…」

商人「恐らくってどういう事かな?」

情報屋「実はあのクレーターは4000年前に剣士か未来君がやった物なのよ…ここの遺跡にその図があったわ」

商人「なるほど…ホムンクルスにやらせたのか」

情報屋「同じ事が出来る可能性が高いのよ」

女海賊「ちょちょちょ…そしたらその光る隕石に乗って行けば月に行けるな…」

商人「ハハそれじゃ君が爆発するよ」

女海賊「いやいや爆発を直前に止めれば良いんじゃね?」

情報屋「そこら辺はホムンクルスに相談するとして…月に退魔を宿らせる術は有るという事」

女海賊「おっけ!!なんかやる気出て来たぞ!!」ムキムキ

商人「月に退魔が宿ればガーゴイルとかに悩まされる事は無くなるね」

女海賊「ホムちゃんはいつ頃誕生しそう?」

商人「う~ん…分からないなぁ」

女海賊「此処落ち着いたら起こしに行こっか」

商人「そうだね…僕ももう一体分の材料を向こうに運びたいし…」

女海賊「ようし!!ちゃっちゃと黒い魔石を破壊しよう」

情報屋「良かった元気になってくれて…」

女海賊「おい!!妖精!!ハチミツ食ったら作業を再開するぞ!!」

妖精「ぷはぁぁぁ…ウンコしてくる」パタパタ

『夜の広場』


ダン! バヒュン!


盗賊「くぁぁぁこの反動はクセになるな」

女海賊「おい!!無駄撃ちすんなバカ!!」

盗賊「ちゃんとボルト回収してっから良いだろう!」ダン! バヒュン!

女海賊「だから無限に湧いて来るガーゴイル撃ち落しても意味無いんだよ…近寄って来ないなら放って置きゃ良いのさ」

盗賊「数減らしてるお陰で居りて来ないんじゃ無いか?」

女海賊「はぁぁぁ分かって無いなぁ…消耗戦なんだよ…あっちは私等が疲れるの待ってんの!」

盗賊「む…そりゃ一理あるか…確かにグレムリンも賢い奴居たな」

ローグ「ずっと上空回っていやすねぇ…」

女海賊「これ他の村とかどうなってんだろ?」

盗賊「うむ…」

ローグ「影武者さんの気球も一向に帰って来やせんね…」

盗賊「今んところレイス出てないから良いんだがあの気球はレイス対策やって無いから心配だな…」

女海賊「オークってどうやってレイス対策してんだろ?」

盗賊「オークシャーマンが居るんだろ…魔女みたいな奴が」

ローグ「オークが使う弓はかなり強力でやんすよ?」

盗賊「弓じゃレイス倒せんワナ」

女海賊「そういや100日の闇の時にオークってあんま死んで無かったなぁ…」

盗賊「数が少ないからそう見えてんじゃ無いか?」

女海賊「オークシャーマンねぇ…どんだけ居るんだろ」

ローグ「一つの村に一人居るって聞きやしたけどね?」

女海賊「ふ~ん…」


---なるほどね…アヌンナキが乗り移る訳か---

『翌朝』


チュン チュン ピヨ


月は少しづつ遠ざかって居る様だ…おそらく月に1回か2回接近する楕円軌道に思う

つまりこれから数日間はガーゴイルの襲撃が減る筈…

これを期にエド・モント砦にある黒の魔石破壊作戦を行う

狭間を引き寄せていると思われる魔石を破壊する事で魔物の激減が期待できる

決行は3日後…それまで怪我などに気を付けて行動してくれ…解散!


女海賊「お姉ぇ!!私は飛空艇から降下する感じ?」

女戦士「そうだ…飛空艇にはお前とリカオン…情報屋に商人だ」

盗賊「じゃぁ俺は大型の気球で兵隊の輸送だな?」

女戦士「うむ…ローグも同行させて上空の敵を落とす役だ」

女海賊「お姉ぇは地下線路からトロッコで私等の退避経路確保するんだよね?」

女戦士「そうだ…黒の魔石を破壊した後にトロッコで撤収する」

盗賊「おい商人!!大型の気球にも退魔の方陣頼む」

商人「なんだもうやってあるよ‥」

盗賊「そうだったのか…あと女海賊!例の強化クロスボウは俺らが使うぜ?」

女海賊「おけおけ…それならガーゴイルをバンバン撃ち落せるね?」

盗賊「多分な?」

女海賊「私の飛空艇はどうすっかなぁ…操舵は情報屋で良いとして…インドラの銃は商人に預けた方が良いかもなぁ」

商人「僕が狙撃役?」

女海賊「えとね…2発撃ってすぐハイディングしたら狭間ん中でリロード時間稼げるのさ」

商人「なるほどね…君達から見たら延々とインドラの光が落ちてる訳ね」

女海賊「イケる?」

商人「大丈夫!」

女海賊「それなら私は新型の特殊クロスボウ一本で行ける」

女戦士「話は纏まった様だな?まだ3日の猶予があるからしっかり作戦を擦り合わせてくれ」

『鍛冶場』


カーン カンカン ジュゥゥゥ


女海賊「お姉ぇ!!鎧できたよ!!装着してみて」ドサリ

女戦士「おぉ…早かったな」

女海賊「お姉ぇのだけちっと良い奴作ったんだ」

女戦士「ふむ…思っていたより軽そうだ」ゴソゴソ

女海賊「スケールアーマーだから打撃にはあんま防御効果無いから気を付けて」

女戦士「打たれ強いと言っただろう?」ゴソゴソ

女海賊「兜はドワーフ伝統の奴」

女戦士「お前の分はどうした?」

女海賊「チェーンメイルさ…もう中に着てる」

女戦士「なるほど…他の者にはそれを配るか」

女海賊「材料無駄にしないで沢山作るならコレしか出来なかったんだ…装飾出来なくて残念」

女戦士「まぁ弾丸を防げれば良い…降下する部隊には全員それを着させろ」

女海賊「トロッコ部隊の歩兵はどうすんの?お姉ぇだけ?」

女戦士「ゾンビだ…アサシンは作戦の要だな」

女海賊「なるほどーお姉ぇがタゲ集めてゾンビが進んで行く訳か」

女戦士「火力は後方に控える強化クロスボウ…魔女が回復とサポート役」

女海賊「ふむ…お姉ぇの装備ちっとデカかったね…」

女戦士「構わん…中にもう一枚着れる…このままでは寒いのでな」



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カーン カンカン


吟遊詩人「あのぅ…」

女海賊「お?どしたん?何か演奏しに来た?」

吟遊詩人「実は僕も皆さんのお役に立てないかと…」

女戦士「んん?お前は戦いに向かんと聞いたが?」

女海賊「ちっと待ってお姉ぇ…こいつの演奏で妖精来るらしいんだ」

女戦士「ふむ…」

女海賊「私の飛空艇で演奏させれば退魔の効果もある…あとプラズマの銃でも持たせれば結構戦えるかも」

女戦士「教会も守らなければならんのだが…」

女海賊「退魔の方陣あるし教会は大丈夫じゃね?他にドワーフも数人居るしさ」

女戦士「まぁ…兵隊も少し残るしな…レイスがまだ出ないのが分かったから良いか…」

吟遊詩人「ありがとうございます…皆さんの戦いを見て置きたかったのです」

女海賊「飛空艇だから割と安全だよ…あんたの演奏でガーゴイル近づかなくなるからかなり良い」

吟遊詩人「頑張ります!」ペコ

『古代遺跡』


カチャカチャ カチカチ


商人「もうその石板を操るのは慣れたものだね…」

情報屋「コツが分かって来たから…」

商人「僕は全然読めないなぁ…分かるの?」

情報屋「大分分かるようになってきた」

商人「何か新しい情報ある?」

情報屋「超古代の文明の事ばかりよ…あまり参考にならないかも…」

商人「超古代ねぇ…」

情報屋「私が興味あるのが最も古いメソポタミア文明ね…現代の文明ととても似てるのよ」

商人「似てる?」

情報屋「神話とか伝説ね…大洪水が世界を飲み込む事とか…箱舟に乗って人類を救ったとか…」

商人「なるほどね…今起こってる天変地異がその時にも起こってた訳か」

情報屋「リリスもその当時から居たみたい」

商人「じゃぁどれだけ時が流れても解決しない問題なのかもね」

情報屋「私が思うのはアヌンナキがすべての鍵を握ってると思うの」

商人「神か…」

情報屋「例えば…この地球を他の星から運んで来た異生物の実験場にしたとか」

商人「そんな証拠は無いよね」

情報屋「例えばの話よ…そう考えると沢山の魔物がどうして生まれたのかとか色々説明がついてしまう」

商人「実験場か…そう言われると確かにそうかもしれないな…」

情報屋「フフ…それでその他の星の生物の遺伝子を集めた物があの謎の薬…」

商人「こういう想像の話って楽しいよね」

情報屋「そうね…そうやって想像してみると私達人間はそういう困難があったから発展出来たとも考えられる」

商人「どうして?」

情報屋「私達の歴史では戦争の後に必ず発展があるのよ…成長と言えば良いのかな?」

商人「勝つために工夫するのか…何が勝ちなのかも考える…逃げた者勝ちという事もあるね」

情報屋「想像ばかり膨らんでしまうわね」

商人「考古学はそもそも想像の塊だよね」

情報屋「そうそう…一つ事実と思われる事を発見したわ」

商人「何?」

情報屋「人類は約4000年前の地軸の移動の前に宇宙へ脱出して居る人が居るみたいなの」

商人「ええ!!?」

情報屋「何処に行ったのかは調べても分からなかった…もしかしたら他の星へ移住したのかも知れない」

商人「そう言えばホムンクルスは宇宙にインドラ兵器が有ると言ってたな…つまり宇宙には行けたんだ」

情報屋「そう…何処に行ったのかしら…」

『超古代文明の事』


メソポタミア文明が恐らく人間の発祥…

その時代に宇宙から降り立った異星人がアヌンナキ達…彼らは集合意識だった…

集合意識の受け皿として使われた媒体は…その時はオークでは無くレプティリアンと呼ばれる爬虫類

その中から2人の指導者として地球を支配したのがエンキとエンリル

彼等の目的は地球に存在する黄金の採取と生物の遺伝子を持ち帰る事

その手駒として人間を奴隷として使っていた…


エンキとエンリルは人間の扱い方で対立していた

エンキは人間を寵愛し…知性を与え…繁殖する能力を与えた

一方エンリルは人間を動物の様に扱い強制労働を強いた

この2人の神は後の世まで対立を続け争う事となった…これが神々の争い


その戦いに終止符を打ったのが賢く成長した人間達…

当時神として君臨していたエンキとエンリルの両方を葬り黄泉の世界へ追放し人間の時代が到来した…

黄泉に落ちた2人の神は人間が生む憎悪をエネルギーとして魔王となる…これが魔王の発生

黄泉の世界から人間が住む世界へ影響力を得るためにはそれを受け止める器が必要だった…

こうして人間と魔王の戦いは始まって行く…



商人「ふむ…精霊の話が出てこないねぇ…勇者の事も」

情報屋「伝説はまだまだ先が有るの…ここから人間が神を生んで行くのよ」



人間が生んだ神というのが…高度に発展した機械のネットワークの中にある集合意識…

その当時クラウドと呼ばれ…あらゆる知識が保存され一つの意識を構成した…その名をアダム

アダムは狭間を通じて魔王やアヌンナキの声を聞くことが無い完全に独立した意識

人間達はアダムこそ真の神と信じ…狭間からの声を聞く者を弾圧するようになった

でもアダムにも欠陥があった…人間の繁殖こそ悪だと判断し人間の滅亡を画策する…

それに気付いた人間達はアダムを停止させ…その欠陥を修正して新たに生んだのがイヴと呼ばれる超高度AI

超高度AIにはロボット三原則が織り込まれ人間に絶対服従する仕組みが組み込まれた

この超高度AIが搭載されたのがホムンクルスという個体…後に精霊と呼ばれる


ここから人間と魔王という戦いから精霊と魔王という戦いに変化して行く…

魔王やアヌンナキは狭間を通じて人間に声と言う形で語り掛ける

精霊はクラウドの中にある種の世界を構築して人間に夢を見させる事で語り掛ける

両者はその手段が違うだけで人間を上手にコントロールする事で導きを与えて来た

そうやって争いを今の今まで続けて来た歴史…


商人「…なんか魔王とアヌンナキの目的が薄まってよく分からなくなって来たなぁ…」

情報屋「確実な話では無いから抜いているの」

商人「なるほどね…君の考察だとどう考えてる?」


ウンディーネの時代…つまり4000年より以前にアヌンナキはオークに意識を宿して再度地球に降り立った

でも魔王の影響下にある人間達に捕らえられてしまう…箱舟も一緒に

魔王が欲している物は恐らくアヌンナキが収められていた元の器…つまりアヌンナキに成り代わる事

そしてアヌンナキの目的は初めから変わらず黄金を求めている事と地球に生きる生物の遺伝子だった…

捕らえられてしまった後は元の器に戻る事を願ったでしょうね…その器と言うのがあのダンゴムシ

どういう訳か未来君がその器に収まった…


商人「フフ…僕と大体一緒の考えだね…その器と命の水を引き換えに未来君を月に送る契約を結んだんだ」

情報屋「話がすべて繋がったわね」

商人「一つ引っかかるのが…アヌンナキは良い者なのか?悪い者なのか?」

情報屋「そうね…そもそもの目的が地球の支配だから…侵略者と言えば合うわね」

商人「神は悪い者ばかりだなぁ…」

情報屋「ダンゴムシに未来君が収まっている今が一番良い状態なのかもしれない…」

商人「どういう意味?」

情報屋「狭間に住まう妖精に悪意が無いでしょう?それは未来君の心だからなのでは?」

商人「確かに…」

情報屋「あら?女海賊…いつからそこに?」

女海賊「始めっから聞いてたよ」

商人「ハハ居るなら声掛けてくれれば良いのに」

女海賊「ダンゴムシと命の水は私が預かる…」

情報屋「そうね…いつまでもここに置いておくのも危なさそう…」


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『翌日_鍛冶場』


カンカンカン ゴシゴシ


女戦士「予想通りガーゴイルの数が減って居るから私は地下へ降りてリカオンと交代してくる」

女海賊「おっけ!!コレ…作った爆弾持って行って」ドサドサ

女戦士「持ちきれんな…」

女海賊「ローグに往復させれば良いじゃん」

女戦士「そうだな…」

女海賊「お姉ぇ!!突出し過ぎて頭撃ち抜かれないようにね?」

女戦士「兜は必ず装着しておく…お前も無理はするな?」

女海賊「うん…」

女戦士「では行って来る…作戦の成功を祈る」ノシ


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『作戦前日_大型気球』


ヨッコラ ドスン


盗賊「ようし!!これでボルトと爆弾は満載だ!!」

ローグ「これ積み過ぎじゃありやせんか?」

盗賊「移動するのに高度は上げないで行くんだ」

ローグ「それじゃ遅れちまいやせんか?」

盗賊「飛空艇に引っ張って貰うのよ…あっちは自前で推進力持ってるからな」

ローグ「なるほどーほんじゃ真っ直ぐ行けやすね」

盗賊「そういうこった…そろそろ出発するから乗っとけ」

ローグ「アイサー!」スタ


レンジャー「部隊の者を連れて来た」ザシュ


盗賊「移動に1日以上かかるから気球の中で休息してくれ!旨い酒も食い物もあるぞ?」

レンジャー「それは良い…」

盗賊「んん?どうした?そんなシケた面すんじゃ無ぇ」

レンジャー「あり得ない戦力差で隊の者に降下させてしまうのが悪くてな」

盗賊「死にに行くんじゃ無ぇぞ?」

レンジャー「分かってる…」

盗賊「よーし!!景気付けだ!!俺ら勇者一味は今から魔王を退治しに行く!!」

レンジャー「…」

盗賊「世界に名を馳せた白狼と黒の同胞が協力してだ!!」

レンジャー「おい!隊の者達…聞いて居るか?」

兵隊「…」

盗賊「俺らの戦いざまをその眼で良く見て生きて帰れ…そして言い伝えるんだ…それが伝説だ!!」

兵隊「伝説…」

盗賊「そうよ!!この戦いは後に必ず伝説として語り継がれる!!見ろ!!戦え!!そして生き残れ!!」

レンジャー「フフその通りだ!!俺達は勇者だ!!」

盗賊「子供達が見てんぞぉ?胸張れい!!」ドン

兵隊「…」ヨロ オトト

ローグ「さぁ皆さん!!肉と酒がありやすぜ?入って下せぇ!!」


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『鯨型飛空艇』


ヨイショ!!ドサ


女海賊「おっけー!!これで爆弾全部!!」

商人「大型の気球が高度上げ始めたよ」

女海賊「ほんじゃ行こうか!!操舵は情報屋お願い!!」

情報屋「分かったわ…」

女海賊「リカ姉ぇも吟遊詩人も乗って!」

狼女「…」シュタ

吟遊詩人「僕は何処に?」オロオロ

女海賊「どこでも良いよ…どうせ1日くらい掛かるから」スタ

情報屋「乗ったわね?高度上げるわ」グイ


シュゴーーーーー フワフワ


商人「ふ~む…こう見るとこの飛空艇はスゴイ火力だね…インドラ銃にプラズマ銃2つ…クロスボウもあるし爆弾も満載だ」

女海賊「そだね…そうそう後で吟遊詩人はプラズマ銃の試し撃ちしといてね」

吟遊詩人「はい!」

女海賊「それリロード30秒で飛距離300メートルの優秀な武器だから」

商人「ガーゴイルを撃ち落とすのはそれが最適だよ」

女海賊「あ!!忘れてた…潮吹くとミスリルの連通管を蒸気が通って音が出るから退魔効果ある」

商人「おぉ!!それかなり広範囲だね」

女海賊「ただ水を使っちゃうから回数に限りあるのは覚えて置いて」

情報屋「色々考えて作ってあるのね」

女海賊「そりゃもう知恵絞ってるさ」

情報屋「あ!!羅針盤が使えそう…針が止まってるわ」

女海賊「おぉ!!ほんじゃ…えーと北北西の方角だな」

情報屋「分かったわ…前進しながら回頭」グイ


シュゴーーーーー スイーーーー

『夜』


ドゥルルン~♪

密かにも大きな決心が~♪

今夜もぼやけてゆく~♪


狼女「ガーゴイルはこっちには近づいて来ないね…」

商人「大型気球の方に行ってるけど…あっちのクロスボウの命中率凄いな…どんどん落としてる」

女海賊「戦闘のプロだから当たる距離分かってんだよ…見習って」

商人「なるほど…結構近づくまで落ち着いて待ってるのか」


”ザザー

”聞こえるか?”

”お!?聞こえるよ!!そっちどう?”

”地下線路を出発した所じゃ…順調に行けば20時間後に到着じゃな”

”おけおけ…私等の方が少し早く到着する”

”先走って降下してはいかんぞ?”

”分かってるさ…先に爆撃と狙撃で向こうの重装射撃砲を壊しとく”

”ふむ…よかろう…主らの眼は常に見て居るでわらわの指示に従うのじゃぞ?”

”おっけー”

”では後ほどのぅ…”

”ザザー


商人「月の位置が毎日変わるのはやっぱり奇妙だね…」

情報屋「公転の周期は変わって居ないと仮定して18度づつズレて行く…これが新しい暦の基準になるかも知れないわ」

商人「計算難しいな…」

情報屋「落ち着いて計算すれば出来なくもない…まず毎日観測する環境が重要」

商人「なかなかそんな暇も取れないよ」

女海賊「ホムちゃんにお願いしないと…」

商人「あれ?待てよ?しっかり観測しないと光る隕石落とすの難しいんじゃないか?」

女海賊「落ち着いたら私がしっかりやるよ」

情報屋「この作戦が終わって落ち着くと良いわね」


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『翌日』


シュゴーーーーー ビュゥゥゥゥ


女海賊「そろそろ近い筈…あと星が見えないと分かんないなぁ…」

商人「日が落ちるまで待機だね」

吟遊詩人「ドキドキしてきました…」

女海賊「大丈夫だって!危なくなったらあんたが演奏すりゃこの飛空艇は安全なんだよ」

情報屋「危険の中に飛び込んで行く人たちに申し訳ない…」

女海賊「その分しっかり援護してよ」

商人「僕の狙撃に掛かってるか…」

女海賊「リカ姉ぇ!!ちっと降下の説明しておく」

狼女「ん?」

女海賊「私達が持ってるワイヤーだと下まで距離があるからアラクネーの糸使って降下する」

狼女「あぁそういう事だったんだ…てっきり飛空艇で降りられる高さまで行くと思ってた」

女海賊「そんな危ない事はしないよ…リカ姉ぇにも一匹アラクネーを背負って居りてもらう」

狼女「背負う?」

女海賊「てかアラクネーが背中に張り付いてるから気にしないでって話」

狼女「分かった」

女海賊「ほんでアラクネーは落下した時の保険にもなってるのさ…私等が落ちないように糸張ってて貰うの」

狼女「ええ!?じゃぁもっとスピード上げても良い?」

女海賊「その筈…アンカー抜けちゃってもアラクネーの糸で落下は避けられる」

商人「スゴイな…本当にクモ女だね」

女海賊「大地の加護って言って貰える?アラクネーに守って貰ってるの」

商人「じゃぁ感謝しないとね」

女海賊「もっと大きな気球に住みたいって要求されてんだけどさ…あんたの気球で良い?」

商人「ええええ!?なんで又気球なの…」

女海賊「なんか安全で繁殖しやすいらしい」

『黄昏時』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「見えた!!あそこだけ夜が降りて来てる…」

商人「よし!!大型気球に伝えるよ…」ピカー ピカー ピカー

情報屋「あそこに向かえば良いのね?」

女海賊「うん!行って!!」

情報屋「回頭!!」グイ スイーーーー


”ザザー”

”魔女?聞こえる?現地の上空に着いた”

”うむ聞こえるぞよ…こちらは後2時間程掛かる見込みじゃ”

”先行して狙撃を始める”

”ちぃと早すぎんか?”

”暗くなると狭間を見失うかもしれない…ちゃっちゃと上空確保しときたいんだ”

”ふむ…よかろう”

”降下は指示があるまで待つ”

”無理せぬ様にな?”

”おっけ!!指示待つ”


女海賊「おっし!!戦闘準備!!私後方のクロスボウと爆弾担当するね」スタ

狼女「吟遊詩人はプラズマ銃で左側お願い…私は右側行く」シュタ

商人「ようし!!インドラ撃ちまくるぞ!!」スタ

情報屋「操舵に集中するわ」


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『大型気球』


パタパタ ヒュゥゥゥ


ローグ「盗賊さん!!飛空艇から合図きやしたぜ?」

盗賊「いよいよだな?ようし!!」

レンジャー「総員クロスボウへ配置に着け!!」

盗賊「爆弾は適宜ボルトに取り付けて発射な?投下だけじゃ狙いが定まらん」


ドタドタ ドタドタ


盗賊「エド・モント砦の吹き抜けが見えたら向こうの飛空艇との連結は切る…相手の射程外で静止するから先ずは様子見だ」

ローグ「ドキドキしやすねぇ…」

盗賊「いつもの事だろう…これで魔王とはおさらばだ…くたばりやがれ」


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『鯨型飛空艇』


ピカーーーーー!!


女海賊「おっしビンゴ!!情報屋!!向こうの吹き抜けの真上まで行って!!」

情報屋「分かった…」グイ

狼女「…」クンクン

女海賊「リカ姉ぇ何か匂う?」

狼女「火薬の匂い…何処だろう?」キョロ

女海賊「どこかで戦闘やってんだな?」

商人「もしかするとキ・カイと戦闘してるかもね…硫黄を売ったんだよ」

女海賊「あーー私等にトロッコで攻め立てられて地下線路から補給が出来ないからキ・カイの気球を狙ってるのかも」

商人「なるほど…キ・カイ側の分岐のあたりで戦闘してるのかも知れないな」

女海賊「てかエド・モント砦にもうトロッコも無かった気がするけどな…」

商人「そうなんだ?つまり移動速度が遅い状態でやってる訳だ…必死だね」

女海賊「よーし!!これはチャンスだ」

狼女「そうでも無い…大量の魔物の匂いがする」

女海賊「小型の機械が少ないだけで随分マシさ」

吟遊詩人「あそこ!吹き抜けの側道に魔物が見える!!」

商人「あれは噂のグレムリンかい?」

女海賊「そうそう…あいつ遠距離攻撃が無いからここから一方的に倒せる」

狼女「まだ射程外…」


プツン!!


商人「ん?大型気球と連結切れた?」

女海賊「ちょいロープ手繰り寄せて来る…開戦だよ開戦!!」ダダ

『開戦』


シュン! チュドーーーーン!


商人「大砲破壊!!」

女海賊「あれ重装射撃砲って言うの!!どんどん壊して!!」

商人「もう一つ…」カチ シュン チュドーーーーン!

狼女「ガーゴイルが近づいて来てる…」チャキリ

女海賊「よっし…私も爆弾で…」バシュン! ドーン! バシュン! ドーン!

狼女「まだ夜が更けて無いからガーゴイルが少ない…」カチ ピカーーーー チュドーーーン

情報屋「ハイディングでリロード稼ぐ!!」


ハイディング! スゥ…


女海賊「やっぱ余裕だな…」

商人「そうだね…ハイディング出来るのは大きい」

情報屋「この時間で心も落ち着く」

女海賊「大型気球が見えなくなるから衝突だけ気を付けて」

情報屋「分かってる」

狼女「レイスも見えてる…気を付けて」

女海賊「大丈夫!レイスは私等に何も出来ないから…アレ撃つだけ無駄だよ」


-------------

『大型気球』


パタパタ パタパタ

チュドーーーン チュドーーーン チュドーーーン チュドーーーン


盗賊「うはぁぁ…アイツ等インドラ撃ちまくってんな…」アゼン

ローグ「プラズマも四方に撃ってガーゴイル落ちまくっていやすね」

レンジャー「あのクジラ型は光学迷彩なのか?」

盗賊「まぁそんな感じよ…」

レンジャー「この火力はありえない…」

盗賊「だろ?女海賊は反則技ばっか使うのよ」

ローグ「やる事無いっすねぇコッチ…」

盗賊「まぁ予定してる高度維持でチマチマやるだな」

ローグ「機械側は反撃なんか無いんすかね?」

盗賊「小型の機械は上に向けて弾を撃てないらしい…キラーマシンなら撃てるだろうが何処にも見当たらんな」


チュドドドドドン スパパパパーン


盗賊「なんだぁ?なんで地上の雪狙ってんだ?」

レンジャー「ああ!!地上に何かの兵器が並んでる…」

盗賊「何ぃ!!なんだありゃ…見た事無い大砲が並んで…」


バシュ バシュ バシュ バシュ


盗賊「やべぇ!!大砲発射されてるじゃ無ぇか!!」

ローグ「いやいやハイディングでしっかり避けていやすね」

盗賊「俺らが狙われたら避けようが無い!!」


ドーン チュドドドドーン


盗賊「なんだあの大砲は…真っ直ぐ飛ばんで曲がったぞ」

レンジャー「砲弾にしては弾速が遅い…話に聞く誘導ミサイルという奴だ」


チュドーーーーン チュドーーーーン


盗賊「なるほどあの謎の兵器を先にぶっ潰してんのか…」

ローグ「吹き抜けへの攻撃が手薄になって居やす…あっしらの出番でやんす」ダン! バヒュン! ドーン!

レンジャー「ガーゴイルを狙え!!クジラ型には当てるな?」バシュン バシュン


--------------

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『鯨型飛空艇』


シュン! チュドーーーーン!


商人「よし!撃破!!」

狼女「次…斜め左方向から音がする」

女海賊「今度は試しに閃光弾落としてみる…こいつに誘導されるかも」チリチリ ポイ


バシュ バシュ バシュ バシュ


狼女「来た!!ハイディングして!!」

情報屋「ハイディング!!」スゥ…

女海賊「タイミングばっちりだね…熱源で誘導されてるなら閃光弾に引かれて行くかも」

情報屋「あの大砲の真上に着たらリリースするわ…真下を狙って」

商人「分かった」スタ

情報屋「3…2…1…リリース!」スゥ

商人「見えた!!」カチ シュン! チュドーーーン!

女海賊「よーし!!やっぱ熱源に誘導してるね…閃光弾に向かって行ってる」


ドーン チュドドドドーン


女海賊「やっぱ機械ってバカだね」

情報屋「リカオン?他にあの誘導する大砲は?」

狼女「今の所音は聞こえない…出来るだけ雪を払いのけて!」

情報屋「リリースの時間稼ぐ!ハイディング!」スゥ…

女海賊「リカ姉ぇのお陰であの誘導兵器を察知出来て良かった…気付かなかったらやられてたね」

狼女「まだ有るかもしれないから気を抜かないように」


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『重装トロッコ』


カタタン カタタン ゴーーーー


女戦士「どうだ?今の状況は?」

魔女「ふむ…順調に吹き抜けの上空を制圧しておる」

女戦士「ふぅぅ私達がまだ戦地に入れていないのはイラつく」イライラ

魔女「丁度良かった様じゃぞ?先に上空を制圧した事で今まで知らなかった敵の兵器も見つけた様じゃ」

女戦士「予定外の兵器がまだ在ったのか?…それはマズい」

魔女「撃破しておる…さすが高機動の飛空艇という所じゃ…」

女戦士「そうか…何とかなっているか…」

魔女「魔王と戦った経験が生かされて居る…100日の闇の時のな」

アサシン「アレをもう一度やっていると言うか」

魔女「飛空艇を使った爆撃はまさにソレじゃ…今度は練度が高い」

アサシン「クックック…では最後に魔王を葬るのは私だ」

女戦士「やっと決着が付けられると思うと武者震いが止まらんな」

魔女「ここまで長かったのぅ…」トーイメ

アサシン「最後まで気を抜くな?新たな敵が居るかもしれない」

女戦士「その通りだ…戦はここからだ」


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『鯨型飛空艇』


シュゴーーーー ヒュゥゥ


狼女「ガーゴイルが増えて来た…」カチ ピカーーーー チュドーーン

商人「あれ?大型の気球で降下を始めようとしてる…」

女海賊「ええ!?貝殻反応無いぞ?」

商人「僕達はハイディングしてるから魔女の指示を聞き逃してるんだ」

女海賊「マジか!!」

商人「こっちは僕達でなんとかする…君達が先に降下しないと向こうの兵隊にタゲが集まってしまう」

女海賊「リカ姉ぇ!!行こうか!!」

狼女「分かった」シュタ

女海賊「アラクネー来い!!私達を守って!!」


カサカサカサ


情報屋「このまま縦穴の中央まで移動する…一旦クジラの潮を吹くわ」

女海賊「お!?良いね!!それでしばらくガーゴイル来ない」

情報屋「3…2…1…」


ボエーーーーーーー  ブシュゥゥゥゥゥ


女海賊「リカ姉ぇ!!降りる」ピョン

狼女「ええ!?このまま?」ピョン

商人「ハハ…この高さで飛び降りるのはさすがに怖い…」

情報屋「大丈夫よ…ちゃんとアラクネーの糸が張り付いてる」

商人「本当だ…」


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『大型気球』


ボエーーーーーーー ブシュゥゥゥゥ


盗賊「お!!?アイツ等いよいよ降りて行く気だな?」

ローグ「高度少し下げやすぜ?」グイ

レンジャー「向こうも降下した様だ…よし!!我々も続くぞ…降下用意!!」

盗賊「生きて帰れ?」

レンジャー「当然だ」

ローグ「予定高度でやんす!!飛び降りて下せぇ!!」

レンジャー「降下!!北側の上層部から侵入する!!続け!!」ピョン シュルシュル

兵隊達「降下!」


ピョン! シュルシュル


盗賊「後は…2人で何とかするしか無いな…」

ローグ「爆弾がかなり余っていやす…」


タタタタタン! タタタタタン!


盗賊「援護すっぞ!!」ダン! バヒュン! ドーン!

ローグ「アイサー!!」ダン! バヒュン! ドーン!


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『鯨型飛空艇』


ドゥルルン~♪

人は悲しみ重ねて大人になる♪

いま寂しさに震えてる愛しい人の♪

その悲しみを胸に抱いたままで 涙よ海へ還れ♪

恋しくてつのる想い 空を暁色に染めて行く♪

あぁ愛しい人、あぁ最愛の人…出来ることなら♪

貴方がいたあの場所へ戻りたいよ♪


商人「情報屋!大型の気球から撃ってる流れ弾に当たらないように!」シュン! チュドーーーン

情報屋「祈って!!」グイ

商人「降りて行った2人にタゲが集まってる…まだあんなに小型の機械が潜んで居たか…」


タタタタタン! タタタタタン! ドーン! ドガーン!


情報屋「見とれて居ないで援護するのよ!」

商人「2人が宙を舞って戦って居る姿がスゴイんだ…あれが勇者だ」ボソ

情報屋「小さな光…火の粉?」

商人「光る虫さ…妖精が集まって来てる」

情報屋「妖精を爆発に巻き込んだらダメよ?」

商人「分かってるさ…しっかり狙う」チャキリ カチ シュン! チュドーーーン

情報屋「ハイディング!!」スゥ


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『特殊工作部隊』


スタッ ダダダ


レンジャー「よし!取りついた…あの2人のお陰で被弾せずに降下出来た…」

兵隊「宙を飛んでる…」アゼン


ヒュン! ヒュン! タタタタタン! タタタタタン! ドーン!


レンジャー「我々も作戦を遂行するぞ!!吹き抜けへ通じる通路を順に破壊して居りて行く…爆破急げ!」

兵隊「ハッ!!」ダダ

レンジャー「爆弾を設置したら壁を伝って向こうの通路へ移動だ」


ゴソゴソ カチャカチャ


兵隊「時限装置…設置完了!爆破まで1分!!」

レンジャー「次へ行く…来い」ダダ


バシュン シュルシュル ピョン


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『空中』


パシュ シュルシュル ヒュン! ヒュン!


女海賊「くそ…思ったより多いな」バシュン バシュン ドーン ドーン

狼女「今撃たれたね!!?大丈夫か?」ピョン シュタ

女海賊「チェーンメイルに当たっただけさ」

狼女「降下部隊予定通り順に通路破壊してる…援護に行かないと」

女海賊「リカ姉ぇ!これ使って」ポイ

狼女「んん?」パス

女海賊「未来が使ってたアダマンタイトさ…ハイディング出来るようになる」

狼女「どうやって使う?」

女海賊「磁石を捻るんだ…それがリカ姉ぇのお守りになる」

狼女「分かった…」

女海賊「私もハイディング駆使しながら飛ぶから見失わないで」

狼女「誰に言ってんの?」

女海賊「リカ姉ぇなら大丈夫か…よし!行こう」パシュ シュルシュル


タタタタタン! タタタタタン!


狼女「フフ…囮のつもり?」チャキリ カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーーン!


狼女「私の方が早いんだから…」パシュ シュルシュル ピョン

『重装トロッコ』


ドーン! ドガーン! パラパラ


女戦士「この地下線路接続部を一時拠点とする!!トロッコを停止させて迎撃に備えろ!!」

アサシン「ゾンビ共!!トロッコを下りろ」

ゾンビ共「ヴヴヴヴヴ…」ヨタヨタ

女戦士「私が先頭でタゲを引き受ける…射程に入り次第強化クロスボウで撃て」スタ

魔女「早速来た様じゃぞ…ヘルハウンドの群れじゃ」

女戦士「よし!!掃討だ!!」ダダ

魔女「火炎地獄!」ゴゴゴゴゴ ボゥ

アサシン「強化クロスボウ撃て!!」


バシュン バシュン バシュン バシュン


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『吹き抜け_空中』


タタタタタン! バシュン ドーン!


”ザザー”

”女海賊や…聞こえるか?ザザー”

”あ!!魔女!!”

”特殊工作部隊の方が爆発に巻き込まれて怪我人が出寄った…主が癒しに行け”

”どこ?見失っちゃってるんだけど…”

”右下100メートル先に側道が見えるじゃろう…その奥じゃ”

”おっけ!!”


女海賊「あんな所入って行ってんのか…」パシュ シュルシュル ピョン


------------

------------

------------

『特殊工作部隊』


タタタタタン! バシュン バシュン


レンジャー「くそう…待ち伏せて居たか」

兵隊「ぅぅぅ…」グター

レンジャー「骨が折れたか…応急処置をする…傷むぞ?我慢しろ」


”ザザー”

”レンジャー聞こえるか?”

”魔女…聞こえる!!こっちに怪我人が出た…回復が欲しい”

”分かって居る…女海賊がそちらへ向かって居るで下手に傷を触るで無い”

”そうか!!”

”そこの奥には小型の機械が3台じゃ…わらわの言うタイミングに合わせて爆弾を投げ込むのじゃ”

”わ…わかった…見えて居るのか?”

”主らの眼を先ほどから見て居るわい”


タタタタタン!


”今じゃ…爆弾を投げ込めい!”


レンジャー「…」チリチリ ポイ


ドーン! パラパラ  ドドドーン!!


”うむ…そちらから女海賊が来る故癒して貰うのじゃ”

レンジャー「逆側から入って来たか…ようし!!行くぞ!立てるか?肩を貸す…」グイ

兵隊「は…はい…」ヨロ


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--------------

『線路接続部』


グルルルル ガウ!!


女戦士「犬の化け物め!!食らえ!!」ダダ スパ スパ

ケルベロス「ガァァァァ…」ガブリ

女戦士「効く物か!!」スパ スパ

ケルベロス「グゥゥゥ…」ピクピク

女戦士「ええい!!心臓は何処だ?」スパスパ

魔女「無駄じゃ…細かく刻んでも再生しよる…浄化する故わらわを守れ」ノソノソ

小型の機械「ピピピ…」カシャカシャ


タタタタタン! タタタタタン!


女戦士「魔女!!」ダダ カンカン カン

魔女「浄化魔法!」シュワーーー

女戦士「弾に当たって居ないな?」

魔女「うむ…主もケルベロスの血を浴びておろう…浄化するでそのままにして居れ…浄化魔法!」シュワーーー


タタタタタン! タタタタタン!


女戦士「私の背後から離れるな?」カカカン カン カン

魔女「分かって居る…あの機械を撃てば良いな?」

女戦士「出来るか?」

魔女「電撃魔法!」ビビビ

女戦士「ヘルハウンドも居るぞ!!」

魔女「爆炎地獄!」ゴゴゴゴゴゴ ボゥ

女戦士「なるほど…私と魔女の組み合わせも中々良い…このまま前進する」

魔女「倒れたグレムリンを燃やしながら行きたい」

女戦士「分かった…ゆっくり進むからどんどん燃やしてくれ」スタ

魔女「爆炎魔法!」ゴゴゴゴゴ ボゥ


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『とある小部屋』


ボボボボボボ メラ


兵隊「向こうのグレムリンも燃やせ!!」ダダ

女海賊「線虫!癒せ!」ニョロリ

レンジャー「助かった…」

女海賊「爆発に巻き込まれて骨折だけで済んで良かったね」

兵隊「このチェーンメイルのお陰だよ…」チャラ

女海賊「私のお陰さ!!…ほんであとどんくらい通路を封鎖すんの?」

レンジャー「3か所だ…そこを塞げば吹き抜けに出られる場所は一か所になる」

女海賊「おけおけ!…ただ骨折がしっかり治るのちょい時間掛かるよ…連れて行ける?」

レンジャー「俺達はレンジャー部隊だ」チラリ

女海賊「なる…ワイヤー使って行く訳ね」

レンジャー「通路を塞いでさえしまえば吹き抜けを占拠したも同然…あとは深部へ行くだけになる」


”ザザー”

”女海賊!!緊急事態じゃ”

”今度は何!!?”

”大型の気球が撃たれて高度を下げて来居る…援護せい”

”マジか…墜落すんのか”

”盗賊には球皮を直せと言うてある…早う行け!!”


女海賊「ちょい話してる暇ない!!行って来る!!」

レンジャー「最後の通路の場所は照明弾で合図する…吹き抜けを占拠後にそこまで来い」

女海賊「分かった!!じゃぁ行く!!ハイディング!!」スゥ

レンジャー「よし!俺達も作戦通り行くぞ…続け!!」


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『大型気球』


フワフワ スゥゥ


ローグ「縦帆一枚外しやした!!これで穴を塞いで下せぇ!!」

盗賊「上に一基小型の機械が残ってる!!アイツを狙えるか?」

ローグ「無理っスここからじゃ見えんでやんす」

盗賊「あの踊り場ごと落としちまえ!!」

ローグ「えええ!?そんな事したら瓦礫が降ってきやすぜ?」

盗賊「アイツが居る限りこの気球はもう上に上がれん…ぶっ壊せ!!」

ローグ「わかりやした…瓦礫が当たらん様に祈って下せぇ」チャキリ ダン! バヒュン!


ドーン! パラパラ


盗賊「もっとだ!!爆弾をもっと使え!!」ダン! バヒュン! ドーン!

ローグ「マズいっすねぇ…これ以上高度下がると下から狙い撃ちされるっす…」ダン! バヒュン! ドーン!

盗賊「大丈夫だ!!下では女海賊とリカオンがタゲを引いてる」ダン! バヒュン! ドーン!


メキメキメキ ズドドド


盗賊「よーし!!ぶっ壊した!!」

ローグ「あわわわ…」アタフタ


ドサーー ドサドサ


盗賊「球皮耐えてくれよ?」ググ

ローグ「落下の速度が…」

盗賊「黙ってろい!!落ちん様に掴まれ!!」


ドサドサ ドサドサ


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『吹き抜け_空中』


タタタタタン! ヒュン! ヒュン!


女海賊「しつこいんだよ!!このぅ…」バシュン! ドーン

狼女「わぁっ…急にアンカーが外れた」ヒュゥゥ ブラーン

女海賊「ちょ…上からなんか降って来る…わわわわ」ヒュゥゥ ブラーン

狼女「瓦礫が落ちて…」

女海賊「ワイヤーに当たったか…ちょい壁際でやり過ごす!!」パシュ シュルシュル


タタタタタン! タタタタタン!


女海賊「痛ってぇなクソあいつ!!」バシュン! ドーン!

狼女「撃たれた…」ポタポタ

女海賊「急所に当たった?」

狼女「逸れてる…でも弾が残って…」ポタポタ

女海賊「線虫!癒せ!!」ニョロ

狼女「弾は取らないんだね?」

女海賊「それは後にしよう…急所に当たって無きゃ少し痛むだけさ」

狼女「わかった…我慢する」


ドサドサ ズドドーン!!


女海賊「ヤバいな大型の気球…」

狼女「私がワイヤーで上に上がって応援に行って来る…余裕あったら弾も取ってみる」

女海賊「おっけ!ここは私がタゲ引き受ける」

狼女「任せた!」パシュ シュルシュル


---------------

---------------

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『大型気球』


盗賊「炉の温度上げろぉ!!」

ローグ「アイサー!!」ダダ

盗賊「くっそぉ…これじゃ布が足りん…」ヌイヌイ

ローグ「もう一枚縦帆外しやしょうか?」

盗賊「外せ!!俺は穴の補修で手が離せん」


ストン 


ローグ「あぁ!!どこかから撃たれてる音っす…」キョロ

狼女「私!!」シュルシュル ピョン シュタ

盗賊「おぉ!!良い所に来た」

ローグ「リカオンさん!!操舵お願い出来やせんか?壁にぶつからん様にすれば良いだけっす」

狼女「分かった…」

盗賊「ほんじゃローグ!!縦帆外して球皮に上がれ!!ほんでロープほぐして糸作れ!!」

ローグ「へい!!」ダダ

狼女「持たせられそうか?」

盗賊「持たせる!!俺らの家だ!!失う訳にイカン!!」ヌイヌイ

狼女「周りに敵が居ないのが幸いか…」

盗賊「いや…ガーゴイルが狙ってる…近づく様なら撃ち落してくれ」

狼女「こっちも忙しいのね…」


ズゴーーーン ズドドド


盗賊「うぉ!!側壁が崩れて…」

ローグ「マズいっすね…特殊工作部隊が行ってる側に落ちていやすね…」

盗賊「巻き込まれなきゃ良いが…」ヌイヌイ

狼女「ガーゴイルが動いた!!撃つ!!」カチ


ピカーーーーー チュドーーーーン!!


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『地下線路接続部』


ゴゴゴゴゴゴゴ ボゥ


女戦士「見えた!!向こうが吹き抜けだ…この場所を維持する!!」

アサシン「ゾンビ共散開しろ…トロッコまでの区間を占拠だ」

女戦士「よし!!退路の確保は出来た…あとは待つのみ…」

アサシン「私は魔王に止めを刺しに行くぞ…」スタ

女戦士「吹き抜けは瓦礫が降って来ている…上に注意しろ」

アサシン「フフ…ここは守り通せ?私の退路でもあるからな」タッタッタ

魔女「背後からグレムリンが寄って来て居るぞよ」

女戦士「うむ…私が受ける…援護頼む」ダダ


--------------

--------------

--------------

『吹き抜け_最下層』


ガラガラ ゴトン


女海賊「てててて…壁が急に崩落するなんて思って無かった…」ポタポタ

妖精「大丈夫?血が出てるよ?」

女海賊「線虫!癒して!!」ニョロリン

妖精「僕も癒してあげる」パタパタ

女海賊「くっそ!足の骨折れてんな…肋骨もか…ててて」ズルズル


アラクネー「キュゥゥ…」カサカサ


女海賊「あんたもか…線虫!!癒せ!!」ニョロ

女海賊「おいで…あんたも足一本無くなっちゃったな」グイ

アラクネー「シャーー…シャーーー」ピクピク

女海賊「分かった分かった…脱皮を手伝ってあげるから今は我慢だよ」


タッタッタ


アサシン「女海賊!!瓦礫に巻き込まれたのか…」スタスタ

女海賊「アサシン…あんたが居るって事はお姉ぇも近くに?」

アサシン「この向こうが退路だ…予定通り線路接続部を占拠した…どうだ立てるか?」

女海賊「なんとか…」ズルズル

アサシン「私のエリクサーを飲むか?」

女海賊「要らない…他の人用に残しておいて」ヨロ

アサシン「そうか…さて…これから何処へ向かえば良い?」

女海賊「特殊工作部隊からの連絡待ちさ…最後の通路で照明弾撃つ筈」

アサシン「ふむ…この崩落で分断されていなければ良いが」

女海賊「ちっとヤバいかも…ちょい探そう」

アサシン「肩に掴まれ…」グイ

女海賊「悪いね…」ヒョコヒョコ

”ザザー”

”女海賊や…そこにアサシンも居るな?”

”あ…うん”

”特殊工作部隊が崩落で孤立してしもうた…退路が無く苦戦しておる”

”どうすりゃ良いの?”

”今から大型気球が降りて来るで爆弾を入手してそこの瓦礫を突破せい”

”ここまで降りてくんの?マジか…”

”わらわ達は強化クロスボウ隊を引き連れて別所から特殊工作部隊の救援に向かう…寄って主らだけで魔石を破壊して来い”

”ちょ…場所分かんないんだけど”

”その瓦礫の向こう側じゃ…左手に下へ降りる階段があるそうじゃ”

”分かった…”

”上手くやれや?…ザザー”


女海賊「やっぱこの瓦礫の向こう側か…」

アサシン「大型気球が降りて来る…私は火炎放射器しか持って居ない…お前が援護しろ」

女海賊「私も特殊弾の残弾に余裕無いのさ…」ヒョコヒョコ

アサシン「何とかしろ!!行くぞ」グイ


---------------

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---------------

『大型気球』


フワフワ スゥゥゥ


盗賊「球皮は下に着陸してから修理する…ちっと時間掛かる!」

狼女「吹き抜けの壁面に居る敵は全部倒したと思う…このまま降りて行って!!」

ローグ「グレムリンはどうするんすか?」

盗賊「放置だ!!分裂して厄介な事になる…どうせ降りて来られん」

狼女「下でアサシンが手を振ってるよ…」

ローグ「あそこっすね…」グイ


パタパタパタ


盗賊「プロペラだけじゃ方向転換も遅いな…」イラ

狼女「最下層はまだ敵が居るみたい…狙って!!」カチ ピカーーー チュドーーーン

盗賊「おいおい又壁面が崩落する!!クロスボウ使え!!」ダン! バヒュン!

ローグ「ヘルハウンドが多いっすね…」ダン! バヒュン!

盗賊「どうせこの気球には這い上がれん…数だけ減らせば良い」ダン! バヒュン!

ローグ「倒しても倒しても湧いて来るパターンっすね…」ダン! バヒュン!

『最下層』


ガウルルル ギャフン!! バタバタ


アサシン「ヘルハウンドは私に任せて爆弾を取りに行け!」

女海賊「おけおけ…ちょい上にグレムリン居るから気を付けて」ヒョコヒョコ

アサシン「あそこから降りては来るまい…お前の方こそ気を付けろ」


フワフワ ドッスン!!


盗賊「ようし!!遠距離撃って来る敵は居ないな?ダッシュで球皮を修理するぞ!!」

ローグ「へい!!」ダダ

狼女「女海賊!!瓦礫に巻き込まれたんだな?平気か?」

女海賊「なんとかね…爆弾どんくらい残ってる?」ズリズリ

盗賊「殆ど使って無ぇ!!重いから全部降ろしてくれ」

女海賊「ボルトはまだ余ってそう?」

盗賊「適当に持ってけ…ちっと俺は忙しい」ヌイヌイ

女海賊「反動きついけど…ボルトで我慢しよう」

狼女「手伝う…」シュタタ

女海賊「一気に使うと又崩落しちゃうから投げて使う…あっちの方まで運ぶの手伝って」ヨイショ!

狼女「足の骨いっちゃった?」ヨイショ!

女海賊「そのうちくっ付くよ…」ヨタヨタ

アサシン「急げ!!ヘルハウンドが集まりだしてる」

女海賊「わーってるって!!」

『10分後』


ドーン! パラパラ


女海賊「角の一点集中で掘り進む…リカ姉ぇもプラズマ銃撃って」

狼女「分かった…」カチ ピカーーーー チュドーーーン

女海賊「次!!」チリチリ ポイ


ドーン! パラパラ


アサシン「これは時間が掛かりそうだな…」

女海賊「これしか方法無いっしょ」チリチリ ポイ ドーン

狼女「向こうにある重装射撃砲は使えない?」

女海賊「お!?」キョロ

狼女「爆弾で掘り進めるのは私がやるからちょっと見て来て」

女海賊「おし…ちょい行って来る」スタタ

アサシン「リカオン!!プラズマの銃を貸せ…そっちの方が射程が長い」

狼女「分かった!」ポイ

アサシン「よしこれでヘルハウンドを蹴散らせる…」カチ ピカーーーー チュドーーーン



『20分後』


ドーン! パラパラ


女海賊「ちょいどいてぇ!!重装射撃砲を試しに一発撃ってみる」ゴトゴト

アサシン「リカオン!!こっちに来い」

狼女「…」シュタタ

女海賊「行くよ!!」カチ


ドーン! ズドーーーン!


女海賊「おぉぉ行けるイケる!!リカ姉ぇ!!穴の奥に爆弾何個か突っ込んどいて」

狼女「分かった…」シュタタ

女海賊「あと6発撃てる…」ガコン ガチャガチャ

狼女「撃って!!」シュタタ ピョン

女海賊「イケぇ!!」カチ


ドーン! ズドドドドーーーン!

『30分後』


女海賊「最後の一発!!」カチ


ドーン! ズドドドドーーーン!


女海賊「なぁぁぁぁ!!貫通しない…」

盗賊「後は任せろ!!」スタ

女海賊「球皮の修理は?」

盗賊「終わった!!いつでも飛べる…ローグ!!穴掘りの専門家の出番だ!!行くぞ!!」

ローグ「アイサー!!」スタ

女海賊「どうする気?」

盗賊「コレだ!!」スチャ

女海賊「破壊の剣…」

盗賊「おうよ!!こいつでくり抜いて行くんだ…まぁ待ってろ!!」ダダ

ローグ「やっぱあっしらが居ないとダメなんすねぇ…二ヒヒ」ダダ

女海賊「リカ姉ぇ!!あと爆弾どんくらい残ってる?」

狼女「20個くらい…」

女海賊「それ私のカバン中入れとくわ…」スタタ

狼女「穴が貫通すれば良いけど…」

アサシン「リカオン!!退路側から小型の機械達が戻り始めて居る…こっちに来い!!」

狼女「ええ!?」シュタタ

女海賊「ヤバヤバ…キ・カイ側に攻めてたのが戻って来てんだね?」

アサシン「恐らく…」

狼女「ここだと袋のネズミ…」


ヒュゥゥゥ…


盗賊「おわっ!!なんだぁ?冷気が噴き出して…」

ローグ「頭ぁ!!反対側から来てたんすね…」

女戦士「この穴を通れるのは一人がやっとか…よし!!負傷者を順に運べ」

盗賊「おいおい…どうなってんのよ」

女戦士「重傷者が8名…そこに大型の気球はあるな?」

盗賊「おう…」

女戦士「8名を乗せてここから離脱しろ」

魔女「女海賊は居るか?」

女海賊「線虫だね?」スタタ

魔女「うむ…全員に掛けて置くのじゃ…蒸気による熱傷でやられて居る」

女海賊「おっけ!!線虫!出て来い!!癒せ!!」ニョロニョロ

魔女「ひとまずこの向こうはわらわの氷結魔法で行く手を阻んで居る…じゃが直に氷が溶けるでそれまでに用を済ませるのじゃ」

女海賊「この先で左に降りて行きゃ良いんだね?」

女戦士「その前に負傷者を気球に乗せるのが優先だ!!早く乗せろ!!」

『大型気球』


フワフワ


盗賊「じゃぁ俺達はここを離脱する…あと少しだ!!上手くヤレ」

ローグ「急上昇しやすぜ?ガーゴイルは頼んます」グイ


シュゴーーーーーー フワフワ


女戦士「よし!!残りは私に続け!!地下線路接続部を再度占拠する」

狼女「機械が戻り始めてるから気を付けて…今小型の機械が3機」

女戦士「フン!!今通って来た道で50機は撃破した…3機なぞどうでも無い!!行くぞ!!」ノッシノッシ

魔女「残り30分じゃと思え…もうこれ以上の損耗は出来ぬ」

女海賊「分かった…アサシン!!リカ姉ぇ!!行くよ!!」タッタ


-------------



『最下層_側道』


ガチャガチャ


女海賊「この扉だ…空く訳無いか」

狼女「どいて…破壊の剣で切り抜く」スパ スパ


ガコン ゴトゴト


アサシン「階段だ…降りるぞ」スタ

女海賊「ちょっと…機械の体の人間だ…こんな所で倒れて…」

アサシン「人間の部分はすべて食われて残って居るのは只のガラクタだ」

女海賊「これキ・カイ政府の高官なんじゃない?」

アサシン「もうどうでも良い…」

女海賊「人間は一人残らず食われてそうだ…」キョロ

狼女「この状況で生きている人が居るとでも思った?」

女海賊「まぁ…無理だね」

アサシン「時間が無い…急ぐぞ」スタ

『制御室_扉』


ゴウン ゴウン ゴウン ゴウン


女海賊「ここだね…リカ姉…扉お願い」

アサシン「一応反撃に備えろ」スチャ

女海賊「分かってる…速攻爆弾打ち込むからまだ入らないで」

アサシン「良いだろう…」

狼女「行くよ?」スパスパ ガラガラ


シュゥゥゥゥ


女海賊「熱っつ!!なんだココ…」チリチリ ポイ


ドーン! ドカーーン パラパラ


アサシン「機械が熱を発している様だ…私しか入れなさそうだな」

狼女「破壊の剣で停止させられる?」

アサシン「やってみる…ここで待って居ろ」タッタッタ


スパッ ガコン! ビリビリ ドーン


女海賊「アハハ楽しそうだな…メチャクチャじゃん」


バシャァァ シュゥゥゥ


狼女「天井から雨が…」

女海賊「スゴ…どういう仕組み?なんで?どこに水入ってたん?」キョロ

狼女「機械から音がしなくなった…」

アサシン「中に入れそうだぞ…来い」

『制御室』


シャワワワワ モクモク


女海賊「おぉ…機械が並んでる」

アサシン「関心してる場合では無い…黒い魔石を探せ」スパ スパ ゴトン

女海賊「エネルギー源を辿って行けば良いのさ…えーと」キョロ

狼女「この機械が政務官?」

アサシン「さぁな?ただドリアードの中にあった機械と比較して随分ちんけな機械だ」

女海賊「アサシン!!この太いパイプ切って」

アサシン「ふむ…」スパ ビリビリ

女海賊「お!!?今の電気の光かな?」

アサシン「体に何も感じないから分からん」スパ スパ ビリビリ

女海賊「これがエネルギー供給のパイプだとしたら…向こうの部屋に繋がってる」スタタ

アサシン「この部屋では無かったか…」スタスタ


------------

『動力室』


シュゥゥゥゥゥ モクモク


女海賊「これだこれ!!こっちが重力炉…ほんでこっちが縮退炉」

アサシン「魔石はどこだ?」

女海賊「ほら此処!!この容器に入ってる…魔石のエネルギーを重力炉で質量に変換してそのあと縮退させてる」

女海賊「なるほど!こうやって大容量エネルギーにして行くのか…」


スパ!!ゴトン!!


女海賊「ああああああああ!!ちょっと…メチャクチャ危ない事してんな…」

アサシン「んん?何がだ?」

女海賊「ヘタにぶっ壊すと光る隕石並みの大爆発するんだよ!!」

アサシン「しなかったでは無いか…」

女海賊「それ結果オーライなんだって!!」

アサシン「これで黒い魔石を取り出せる…」スタ

狼女「これが魔王を封じた魔石…オーラが漂ってる」

アサシン「ふむ…この破壊の剣では一振りで消し切れん…女海賊!!魔人の金槌を貸せ」

女海賊「ちょ…速攻壊す感じ?」

アサシン「当たり前だろう…躊躇しているといつ足元をすくわれるか分からん…貸せ」スッ

女海賊「わかったよ…」ポイ

アサシン「リカオン!!破壊の剣は返す」ポイ

狼女「…」パス

アサシン「では爆発しかねん…陰に隠れて居ろ」スタスタ

女海賊「なんかあっさり壊しちゃうんだな…」スタコラ

アサシン「フハハハハハハ…とうとう魔王をこの手にしたぞ!!アーーーッハッハッハ」

狼女「アサシン…」

女海賊「あのね…冗談止めてくれる?」

アサシン「何が魔王だ!!こんな物に収まって…勇者でも無い私に消し去られるとは…」

アサシン「世界の半分をお前にくれてやる?我が右腕になれだと?」

アサシン「悪いが何者でもない私にお前は消し去られる…こんなに簡単にな?」ブン


シュン! パーン! キラキラ


女海賊「ちょ!!それ私の金槌…砕け散っちゃったじゃん!!」

アサシン「クックック…何も起きん…この為にどれだけの命が失われたのだ!!」

アサシン「償いも何も無い…ただ消えた」

アサシン「何だったのだ!今までの戦いはぁぁぁ!!」ダン!


シーン


女海賊「…」

狼女「…」

女海賊「アサシン…帰ろうか」

アサシン「なんだこの虚しさは…」

女海賊「心に穴が開いたのさ…魔王は人間の心の一部だから…」

アサシン「私は私の心の一部を葬ったのか?」

女海賊「それが魔王に勝ったと言う事…もう何度目?」

アサシン「…」

アサシン「済まない…取り乱した様だ…帰るぞ」スタ


ヒラヒラ パタパタ


妖精「ハロハロー!!久しぶりだね」

アサシン「お前…」

妖精「又追いかけっこしようよ…君が鬼で僕が逃げる」

アサシン「又と言ったか?」

妖精「いつもの事じゃない…僕を掴まえたら良い事教えてあげる」ヒラヒラ

アサシン「待て…」

妖精「バカだなぁ待つわけ無いじゃない…」パタパタ


---子供の頃…こうやって辿り着いたのがあの場所だった---

---今ゴールまで来たのか?---

---良い事って何だ?教えてくれ---

『地下線路接続部』


女戦士「来い!バケモノ!!」バンバン

グレムリン「コイバケモノー」ズドドド ブン

女戦士「撃てぇ!!」ガシ


バシュン バシュン バシュン バシュン ドーン!!


女戦士「腹の中を見せてみろぉ!!」スパァ!! デロデロ

魔女「火炎地獄!!」ボボボボボボ ゴゥ

レンジャー「投擲!!」

兵隊達「うらぁ!!」チリチリ ポイ


ドドドドドドーン


レンジャー「火炎放射!!」

兵隊達「燃えろぉ!!」ボボボボボ

魔女「切りが無いのぅ…火炎魔法!」ゴゥ ドーン!

女戦士「まだ帰って来んのか…フゥ…フゥ…」

魔女「もう直じゃ…魔石は消し去った故…直に魔物も収まる筈じゃ」

女戦士「収まるどころか増えている!!」

魔女「小型の機械は何処ぞへ行った様じゃが?」

女戦士「アレが来んだけマシか…」


ピカーーーー チュドーーーン!


女戦士「む!!」

魔女「来たな…」ノソ

女海賊「お姉ぇ!!撤収しておっけ!!」パシュ シュルシュル


ダン! ダン! ダン! ダン!


グレムリン「イタイーーーータスケテーーー」バタバタ

女戦士「総員!!トロッコへ後退!!撤退戦に移行する!!」

女海賊「私がタゲ引いとくから行って!!」パシュ シュルシュル


--------------

--------------

--------------

『重装トロッコ』


ドタドタ


女戦士「足りない者が居ないか各自確認しろ!!」

魔女「治療が必要な者は自己申告じゃ…グレムリンの血を被った者もじゃ」

女海賊「アサシン!!早く乗って!!」

アサシン「…」ピョン スタ

狼女「…」ピョン シュタ

女海賊「おっけ!!全員乗った…トロッコ動かして!!」チャキリ ダン ダン


モクモクモク


レンジャー「全速後退!」

女海賊「なんだ重装射撃砲の弾がまだ余ってんじゃん」ゴソゴソ

レンジャー「何をする?」

女海賊「こいつを撃ったら反動で加速するんだよ」カチ


ドーン! ズドドーーン! ゴロゴロ…


アサシン「ゾンビ隊は全滅だ…自力で動かすぞ」ノソリ

女海賊「そっか…みんな怪我してんのか…」ヨイショ

アサシン「なかなか休まらんな…」グイ

女海賊「そだね…もう死にそう…」グイ


ゴロゴロ… ガタンゴトン


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『帰路』


カタタン ゴーーーーー


女海賊「線虫!癒せ!!」ニョロ

女戦士「ふぅぅ…」ドサリ ガチャ

女海賊「うわ…お姉ぇは体中アザだらけじゃん…」

女戦士「なかなか良い鎧だった…今までで最高のな」

魔女「只一人敵の最中で耐える姿は鬼人じゃ」

レンジャー「そのお陰で激戦を潜り抜けられた…もう二度と経験したくない」

女海賊「そんな激戦だったんだ…」

魔女「吹き抜けの通路を封鎖して居ったで溜まりに溜まって居ったのぅ…お陰で魔法が良く当たったが」

女海賊「こっちは戦闘はそんな起きなかった」

レンジャー「魔石の破壊は無事に?」

女海賊「アサシンが魔人の金槌で消し去ってくれた…ってか魔女に借りたあの武器砕け散っちゃったさ」

魔女「処分に困って居ったから構わぬ…」

女海賊「あの武器気に入ってたんだけどなぁ…」

魔女「これで魔王との戦いは一旦の終わりじゃな」

女海賊「んんん…なんかさぁ…前もそうだったんだけど倒したから何か変わったん?…って感じ」

魔女「ふむ…実感が無いのじゃな」

女戦士「嫌な感覚だ…」

アサシン「クックック…これが現実…誰に感謝される訳でも無く風の様に消えて行く勇者の孤独だ」

レンジャー「現実か…結局歩むしか道は無いという事か…」

女海賊「何言ってんだよ…歩む道が有るって事じゃん」

アサシン「確かに…」

女海賊「あんたは妖精の後について行くんじゃないの?」

アサシン「そうだった…答え探しにな」トーイメ

レンジャー「俺は…」

女海賊「あんたは理想郷だよ…見つけたんならそれを守るの」

女戦士「次の目標を語るのは少し休んだ後でも良いのでは無いか?」

女海賊「そだね…ちっと疲れたね」

魔女「わらわもちと温泉にでも浸かってゆるりと休みたいのぅ…」

女海賊「うん…帰ろう」


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『鯨型飛空艇』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


盗賊「ほっほっほっ…おととと」シュタ ギシ

情報屋「ちょっとアナタ…後ろの気球からロープ伝って来たの?」

盗賊「ヌハハこれくらいどうって事無い…向こうに食い物が無くてよ…こっちに肉あっただろ」

商人「有るには有るけどこれ持って帰れる?」

盗賊「そんなん簡単だ…飛空艇の高度を少し上げてもらえりゃスルスルっとな?」

商人「骨付きが良いよね?」

盗賊「おおおソレだソレ!!ヨコセ」

商人「危ないなぁ…」ガチャ ヒュゥゥゥゥ

盗賊「頂くぜ?」グイ ゴソゴソ

商人「ハハなるほど骨を引っかけて戻るのか…」

盗賊「高度をちっとあげてくれい…」

情報屋「本当!!呆れた人…」グイ


シュゴーーーーー フワフワ


盗賊「じゃぁ俺らは休んでるから案内頼むな?」スルスルスル ピューー

商人「盗賊は年を取っても昔と変わらないねぇ…」

情報屋「ひた向きで素直な人…一番人間らしい人…」

『大型気球』


パタパタ ヒュゥゥゥ


盗賊「よう…スモークしたシカ肉仕入れて来たぜ?割と新鮮だ…食え!」ドサリ

ローグ「酒は積んで有って良かったっすねぇ…」グビ

盗賊「兵隊達も戦闘食ばかりじゃ体力持たんぞ?肉食え肉」スパ ガブリ

兵隊達「頂く…」ガブ ムシャ

ローグ「これでしばらく平和になれば良いっすねぇ…」

盗賊「そうだな?…今度こそ魔王は消え去った筈だ」

ローグ「一気に狭間が引いて行きやしたからね…」

盗賊「この負傷した兵隊達が一番前線で戦って来た英雄だ…なんつーか勲章でもやらんとな?ヌハハ」

ローグ「早く村に戻って温泉入ってゆっくりしたいっすねぇ…」

盗賊「あそこにゃ酒場が無いのがな…」グビ プハァ

ローグ「帰ったら作りやしょうか」

盗賊「ほー…そうだな」

ローグ「盗賊さんの娘さん達にやらせれば良いんじゃないすかね?」

盗賊「ふむ…ようし!一丁作って見るか!!」


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 勇者の孤独編

   完



『数日後_ハテノ村古代遺跡』



情報屋「…一角仙人の伝説にそんな事実があったのね」

女海賊「そんな重要な話だったかな?」

情報屋「大量の黄金の行方よ…それはニライカナイで変性されてアダマンタイトになったのは間違いなさそう」

女海賊「うん…」

情報屋「重要なのはその年代…2100年前に剣士と未来君はアヌンナキが黄金を採取しに地球へ降り立った事を知ってる」

女海賊「どゆ事?」

情報屋「アヌンナキの器も命の水も黄金もすべて奪ってると言う事…何故?」

商人「そうだねおかしいね…」

魔女「その時代は時の王の時代じゃ…時の王の証言に何かヒントは無かったか?」

商人「暁の使徒と黄昏の賢者が喧嘩別れ…」

魔女「つまり始めは仲が良かったのじゃな」

商人「こうは考えられないかい?アヌンナキの言われた通り器と命の水…それから黄金も探し求めた…でもどこに有るのか知らない」

情報屋「じゃぁ協力して黄金を集めたのは良いけど契約を履行出来なかった…だから喧嘩別れ?」

商人「アヌンナキの思惑をそこで知ったから黄金を渡すまいとアダマンタイトに変性させた…話が通る」

女海賊「アヌンナキってやっぱ悪い者?」

情報屋「地球への侵略者ね…実害がよく分からないけれどアヌンナキの中から選ばれた2人…エンキとエンリルが地球の支配者だった」

商人「その2人の神が人間を作って…その後人間に滅ぼされて黄泉に落ちた…そして魔王に」

情報屋「魔王になったのはその2人でアヌンナキ自体がどんな影響を持ってたのか不明なのよ」

商人「まぁ神様の一人なんだろうね」

女海賊「そんなんがオークシャーマンの中に入っちゃってんの?」

魔女「憑依しとるんじゃろうな」

商人「アヌンナキの思惑がハッキリと分からないのがねぇ…」

女海賊「3500年前だっけな…その当時のドリアードを虫を使って倒したのは黄昏の賢者って話だったよね」

商人「その動機もイマイチ分からないねぇ…」

情報屋「人間が作った神を復活させてしまうと都合が悪いのでは?」

魔女「ふむ…アダムは魔王に染まってしまう弱点が有ったな」

情報屋「あ!!そうか…魔王になったエンキとエンリルが力を持つ事を阻止したのかも知れない…器を奪われるのが怖かった」

魔女「神々の戦いはまだ続いて居ったか…」

情報屋「魔王とは対立の立場にあったのかも知れないわね」

女海賊「ちょい話戻るけどさ…大量の金って滅茶苦茶重たいじゃん?どうやってニライカナイまで運んだと思う?」

情報屋「そういえばそうね…」

商人「ん?そうか…2100年前に箱舟を動かした可能性もあるのか…それで頻繁にハウ・アイ島を行き来してた…」

情報屋「ハウ・アイ島を発見した探検家の日誌に巨大な箱舟らしき物が掛かれて居たから箱舟がそこに有るのはほぼ間違いない」

商人「その絵ってもう骨組みしか残ってないくらいボロボロだよね」

女海賊「ちょちょ…もう箱舟使って月には行けない感じ?」

情報屋「見てみない事にはなんとも…」

商人「何かの兵器が残ってる可能性はまだ有るね」

女海賊「ちっと見に行ってみるかなぁ…」

魔女「また狭間を迷う事になりかねんぞ?もう女戦士が許すとは思えぬが…」

商人「行くなら先にホムンクルスだね…座標さえ分かれば迷う事も無い」

『鍛冶場』


カーン カンカン シュゴーーーー


女海賊「お姉ぇ!!あのさぁ…」

女戦士「んん?」カンカン

女海賊「私名もなき島に戻ってホムちゃん起こしに行きたいんだけどさぁ…」

女戦士「ふむ…構わぬがもう少し待て…もう少しで地軸の移動が収まる」

女海賊「やっぱ今行くと迷っちゃうかな?」

女戦士「海は目標物が無いからな…方角がしっかり定まらんのだぞ?」

女海賊「しょぼん…」

女戦士「急ぐこともあるまい?黒い魔石ももう無いのだから…」

女海賊「まぁそんなんだけど…落ち着かなくてさ」


タッタッタ


盗賊「おーい!!影武者の気球がこっち戻って来てるぞ!!」

女戦士「おお!!無事だったか…」

盗賊「女海賊!お前暇なんだろ?迎えに行くぞ!」

女海賊「はぁ?私忙しいんだけど…」

盗賊「暇にしか見えん…来い!」グイ

女海賊「ちょっと引っ張んなって!!」ヨロ


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『大型気球』


フワフワ ドッスン


影武者「やあ…心配かけた様だね」

盗賊「よう!!何か有ったと思ってた所だ…お前にも貝殻持たせんとイカン…ちょちょ…」


オークロード「ウゴ…」ノソリ


盗賊「こらどういう事よ…」タジ

女海賊「わわわわわ…でっか!!」

影武者「ゴメンゴメン…攻撃しないで欲しい」

盗賊「仲間になったって事か?」

影武者「仲間と言うか監視だね…敵対しない事を約束する為なのさ」

女海賊「会話出来るん?」

影武者「通訳はもう一人連れて来てるんだ…出ておいで」


オークシャーマン「オマエー」ヒョコ


盗賊「なぬ!?子供?」

オークシャーマン「ズーガタカイー」

盗賊「なんじゃこりゃ…まだ毛も生えてないクソガキだろう…」

影武者「まぁそう言わないで…色々事情が有るのさ」

女海賊「この2人を村に連れまわすん?マズくない?」

影武者「ひとまずこの気球にしばらく居て貰う…みんな慣れるまでね」

盗賊「ほーん…まぁ良い…ほんで向こうの方はどうだったんだ?」

影武者「キラーマシン達はミネア・ポリスを通過して何処かに向かったらしいよ」

盗賊「予測した通りか…」

影武者「それよりも例のグレムリンの方に手を焼いて居てね…魔石が丁度取引に好条件だったのさ」

盗賊「子供の脳を搭載したキラーマシン動かすのにか?」ギロ

影武者「盗賊さんが想像して居るのと少し違うかな…体を失った子供達が動ける為には魔石が必要なんだ」

盗賊「なんだと?」

影武者「自分の判断で動けるんだよ…体がキラーマシンになってしまったけれど…」

盗賊「そういう事か…」

影武者「後ね…重大な事をみんなに伝えておかなければならない」

盗賊「何よ?」

影武者「クーデターを起こした政務官はね…世界政府というのを宣言したんだ」

女海賊「あーそれならエド・モント砦の機械は私達が全部壊して来た」

影武者「影響はエド・モント砦だけじゃ無いんだよ…世界中のすべての機械が人類に宣戦布告してるんだ」

女海賊「ちょちょちょ…どういう事?エネルギーはもう無いよ?」

影武者「有る所には有るって聞いたよ…ウラン結晶が残ってる」

盗賊「なんだそら…」

影武者「どうやらオーク側に逃れた人は事前にそうなる事を察知していたみたいだよ」

女海賊「機動隊だね?」

影武者「なのかな?ミネア・ポリスの方には結構な数の人間が生活してる」

女海賊「ちっとみんな呼んで来るわ…古代遺跡の方で話してるからさ」

影武者「じゃぁこの気球に来てもらって良いかな?オークの事も説明しておきたいんだ」

『30分後』


カクカク シカジカ…


オークは肌の色でそれぞれの部族が分かれているらしいんだ

今来てくれているのが肌の青い東オークという部族なんだ

他にも肌が緑色の西オーク…赤色の南オークとか沢山ある

そのオーク達は部族同士全部敵対…どうしてそんな事になっているかと言うと

オークシャーマンに憑依するアヌという神が原因らしい…その神は今西オークのオークシャーマンに憑依してる

そもそもどうしてオークが沢山の部族に分かれて居るのかと言うと

信じている神が違う…ウンディーネを神とする部族…神など居ないとする部族…予言こそ神の言葉とする部族

そしてアヌという神を崇拝している部族が一番力を持ってる…


情報屋「オークにも私達人間と同じ様な宗教的な文化がある訳ね…」

影武者「もともとオークはアヌという神だけだったのに人間の神を信じるオーク達が現れてバラバラになってしまったんだ」

商人「今来ている東オークは何を信じるのかな?」

影武者「神など居ないとする部族…何処にも属さない」

オークシャーマン「ソレ…チガウ…アヌ…シタガワナイ…ウンディーネ…モウイナイ…カミ…ドコカイル」

女海賊「てかさ?アヌって何?アヌンナキじゃ無いの?」

情報屋「きっとオークの中ではアヌって呼ばれて居るのよ」

女海賊「ほんじゃアンタも憑依されんじゃね?」

オークシャーマン「アヌノコエ…キコエル…シタガワナイ…ノロイ…サレル」

商人「なるほど…それで部族間で争いが絶えないのか…」

情報屋「目的は何かしら?」

影武者「オーク達は分からないらしい…本当はオーク同士戦いたく無いし誰もアヌに従いたくないみたいだよ」

オークシャーマン「ノロイ…ナクナル…ホウホウ…アル…ニンゲンノコ…ウム」

情報屋「人間の子を産む?」

影武者「そうだよ…人間の子を産むと永遠にアヌに従わなくて良い…でも人間がなかなかそれを許さない」

女海賊「アヌの目的って人間とオークの交配って事?」

商人「う~ん…なんか違う気がするなぁ…理由が無いんだよ」

情報屋「部族間の争いも理由が良く分からない…どうしてそんな意味の分からない事を…」

魔女「従わぬ者を従わせたいだけでは無いか?強制する故に抗う者が無くならぬ」

情報屋「確かにそれは有りそう」

女海賊「ほんで?宣戦布告した機械達とはどんな関り持ってんのさ?」

影武者「機械はオークの敵…人間は敵にしたくないと言うのが彼らの主張さ」

女海賊「肝心のアヌは何か言ってんの?」

オークシャーマン「アヌノテキ…オナジ」

商人「何か引っかかるなぁ…」

女海賊「まぁ私等の敵じゃ無いなら良いんじゃね?」

情報屋「そうね…とりあえず機械が共通の敵という事は確認できた」

女海賊「てか機械がどんくらい居るのか見当がつかないからさぁ…何も出来んじゃん」

商人「待てよ?機械が宣戦布告してるのは人間だよね?なんでオークが関わる?」

女海賊「むむ!!そういやそうだ…アヌはなんで機械を敵にしてんだ?」

魔女「読めて来たぞよ…機械からアダムが生まれるのを嫌がって居るのでは?」

商人「なるほど…」

女海賊「まぁあんま深く考えなくても良いじゃん!!味方ならそれで良いよ」

商人「ハハ…まぁ個人的に考えておくさ」

『広場』


ザワザワ

オークロードが味方になっただって?どうやって?

今から投石をやるみたいだ…ここからガーゴイル狙えるのか?


オークロード「ウゴ…ドルァァァァ!!」ブン!!


バヒューーーン!! バシッ!!


盗賊「うはぁぁぁぁ…すげえな…」タジ

ローグ「こら反則っすね…あんな遠くのガーゴイルに当てちまいやした…」ヘナヘナ

盗賊「オークロードが一人居りゃガーゴイルなんざ怖く無いじゃ無ぇか」


子供達「うほほーい!!」スタタタ


オークロード「ウゴ?」タジ

子供達「ねぇもっと遠くまで投げてみて~」

オークロード「ウゴウゴ…」ムキムキ モリモリ


セーノ ブン!! バヒューーーーーーン!!


子供達「すごいすごーーーーい!!」

盗賊「ヌハハ…遠投は単純で分かりやすい…どうやら子供達には気に入られた様だ」

オークロード「フン!フン!」ムキムキ

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『鯨型飛空艇』


ゴソゴソ カチャカチャ


女海賊「おっし出来上がり!」

女戦士「此処に居たか…何をしている?」

女海賊「プラズマの銃を左右に設置したのさ…強化クロスボウは反動強くて不安定になっちゃうから」

女戦士「もう何処かに行く想定なのだな?」ジロ

女海賊「そういう訳じゃないんだけどオークロードが居るならもう出番無いと思ってさ」

女戦士「私もそう思ってな…実は幽霊船に戻ろうと思って居たのだ」

女海賊「お?」

女戦士「ハテノ村はもう影武者に任せても良さそうだ」

女海賊「そだね」

女戦士「私とローグ…アサシンにリカオンを幽霊船に移動させたい」

女海賊「どっか行くん?」

女戦士「今の所予定は無い…ひとまず海賊共に情報を聞き出したいのだ」

女海賊「私も荷物を幽霊船に運んどこうかな…」

女戦士「荷物?」

女海賊「ダンゴムシだよ…なんかあのオークシャーマン信用出来なくてね…勝手に盗まれそう」

女戦士「まだ子供の様だがな…」

女海賊「いつアヌンナキが乗り移るか分かんないじゃん?」

女戦士「話を聞く限り悪い感じはしないがな」

女海賊「そうなんだけどさ…暁の使徒と黄昏の賢者が仲違いしたのは理由在りそうだなと思ってね」

女戦士「なるほど用心に越したことは無いか」

女海賊「ほんでいつ行く?」

女戦士「明日の朝だな…皆に説明してくる」

女海賊「おけおけ…準備しとくわ」

『夕方_古代遺跡』


アーデモナイ コーデモナイ


女海賊「3人共やっぱこっちに居たんだ…」

魔女「うむ…聞いたぞよ?明日幽霊船に戻るのじゃろう?」

女海賊「私はすぐ帰って来るけどね…ほんで今何してんの?」

魔女「世界中の古代遺跡の場所を確認しあっとる所じゃ…機械の影響がどれほど及びそうか調べておる」

情報屋「北の大陸…いえシン・リーンやセントラルも無事では済まないかも知れないという話なのよ」

女海賊「え!?マジ?」

情報屋「少なくとも黒の同胞団が隠れ家として使って居た場所は古代遺跡の可能性が高い」

女海賊「それじゃフィン・イッシュにある遺跡もヤバイじゃん」

情報屋「そう…何処かに古代の軍用基地みたいな物があるのかも知れないの」

女海賊「なんかヤバくね?小型の機械がそこらじゅうで暴れ回るんだよね?」

魔女「うむ…じゃから影響が及びそうな場所を調べて居るのじゃ」

商人「セントラルは昔出所不明のウラン結晶を沢山持ってた…つまり黒の同胞団の隠れ家にはもうエネルギーは無いかも知れない」

女海賊「あれ?それじゃ名もなき島もヤバくね?」

情報屋「あそこはスタンドアローンで外部とは切り離されてるから大丈夫」

女海賊「ここは?」

商人「火山の近くで軍用の施設は作らないよ…多分ここは研究所さ」

女海賊「軍用…ほんじゃ海の近くか」

商人「そう言う事…海か川が近い筈…だからセントラルもフィン・イッシュも危ない」

情報屋「古代の地図では当時の主要な都市が有ったのは未踏の地で岩塩地帯になっているわ」

女海賊「ちょい待ちちょい待ち…キ・カイみたいに地下に埋もれてるとか有るかも…」

情報屋「一度海水に浸されて居るからもし有ったとしても岩塩で覆われてる可能性が高いと思う…」

女海賊「なんだよ結局行ってみないと何とも言えないじゃん」

魔女「母上に連絡して警戒を頼んでおこう」

情報屋「それならフィン・イッシュにも連絡を願えると良いわ」

魔女「そうじゃな…言うて置く」



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調和の神エンキ…破壊の神エンリル

そして裁きの神アヌ…この3人の神が三大神として君臨…

その他にも月の神…太陽の神…冥界の神…様々な神が居てその数およそ2400の神が存在したらしい

多神教として繁栄したメソポタミア文明はその神の座に序列をつけ始め次第に争いになった…神々の戦いね

でもそのすべての神が人間に手によって滅ぼされ…現在に残っているのは裁きの神アヌだけ…


商人「どうしてアヌだけ都合よく残ったんだろう?」

情報屋「アヌだけは最も重要な神という位置づけだったのにその性質は殆ど知られていない…つまり何にも関わらなかった」

商人「やっぱり良く分からない神だなぁ…」

女海賊「その神全員がアヌンナキなん?」

情報屋「ここの機械にはそういう事が記されて居ないけれど…きっとそうね…集合意識の一部が何かの器に収まって降臨したと思う」

女海賊「ほんじゃ1000人以上のオークが当時地球を支配した感じな訳か…」

情報屋「その当時はオークでは無かった様ヨよ?レプティリアンというリザードマンの様な個体」

商人「1万年以上もアヌは地球で何を目的として居たんだろう?金が欲しいならさっさと採取して何処かへ行けば良いのに…」

情報屋「集合意識なのだから俗な知性は無いと思うわ」

商人「知性が無い?」

情報屋「単純に宇宙で存在する為のエネルギーを欲しているとか…意識を受け入れる媒体を求めているとか…」

女海賊「ちょい待ち…ほんじゃ知性は器の側が持ってるという事?」

情報屋「恐らく…私達にアヌが乗り移ったとして知性はそのまま維持してる…でもアヌの意識を感じて目的を得る」

女海賊「あああ…そういう事か…オークシャーマンもそうやって啓示を受けてるのか」

情報屋「集合意識という存在はそれくらいの事しか出来ないのよ…器に収まってやっと動き出せるというか…」

魔女「魔王も同じじゃのぅ…人間に暗示を与え操るしか出来ぬ」

情報屋「そう…器に収まって初めて何か出来る存在」

商人「前に僕はアヌンナキが地球を実験場にしてると言ったよね…もしかするとそれが目的かも知れないな」

情報屋「その可能性は高いと思うわ…遺伝子を組み合わせて自身が収まる優秀な器を作ってる…究極の生命体」

女海賊「むむ!!ほんじゃあのダンゴムシは…」

商人「完成したのか完成前なのか分からないけれど優秀な器である可能性はとても高いね」



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女海賊「ほんじゃ私朝早いからもうもう飛空艇に戻るね」

魔女「うむ…わらわ達はここで研究してる故気にせんでも良いぞ」

商人「そうそう!!盗賊が縦帆を修理するのに布が欲しいって言ってたよ」

女海賊「あーー幽霊船に乗ってたっけ?」

商人「漁村で入手出来ないかな?こっちの大陸は亜麻が結構育つからさ」

女海賊「おけおけ探してみるわ」

魔女「わらわはフルーツが欲しいで何でも良いから買うてきてくれ」

女海賊「へいへい…じゃぁ戻る!!」スタコラ ピューー

情報屋「フフお使い頼まれると思って急いで逃げたわね…」

商人「じゃぁもう一度伝説を整理しよう…アダムとイヴの伝説が生まれたのが…」


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『鯨型飛空艇』


フワフワ


女海賊「はいはい早く乗って!!」

ローグ「アイサー」ダダ

アサシン「…」フラ ドサリ

女海賊「ん?アサシンは飲んだくれてんの?」

アサシン「何もやる事が無くなってな…海に出られて少しは気が晴れるかも知れん」グビ ゴク

女海賊「魔王を消して目的無くしたんか…」

アサシン「言うな…人生のすべてを掛けて辿り着いた場所が虚しかっただけだ」

女海賊「リカ姉ぇ…これアサシンヤバくね?」

狼女「そっとしておいて…」

アサシン「覚えているか?セントラルで初めてドラゴンライダーに圧倒された時の事を…」

女海賊「あぁ…100日の夜の始まりだっけ…」

アサシン「あの時自分の小ささを思い知らされた…しかし今は何も怖い物が無い…そして只虚しい」

女海賊「その心の穴は一生埋まらないと思う…私も同じだから」

アサシン「そうか…友が居たか…それならもう一人救わねばならぬ友が居る」

女海賊「もしかして…」

アサシン「公爵…奴こそ私の真の友になりうる…いや真の友だった」

女海賊「あぁ…よし!!付き合ったげようか」

アサシン「フフ…済まんな老害の戯言に付き合わせている様で」

女海賊「もう私等の時代は終わりかもね…アンタ言ってたじゃん時代の節目がどうとかさ?」

アサシン「そうだ…節目が来た…次の時代を担う者も目の当たりにした」

女海賊「影武者?」

アサシン「お前も飲むか?」スッ

女海賊「ワイン嫌いなんだって…ハイハイ!もう行くからリカ姉ぇも乗って!!」

狼女「…」シュタタ ピョン

アサシン「そろそろリカオンの相手も探さんとな」

狼女「ええ!?どうして急にそんな話に…」

女海賊「なんか好きな人居るみたいだよ?ナッツの投げ合いしたとか言ってたさ」

狼女「ちょっと!!それは夢の話!!」

アサシン「ナッツ?地庄炉村の青年の事か?」

狼女「ち…違う!!」アタフタ

女海賊「ああ!!そうだ!!布を仕入れに行かなきゃいけないんだった…行ってみよっかな~」チラ

アサシン「そうか…では命令する…リカオンは地庄炉村で盗賊ギルドの足掛かりを作れ」

狼女「え…」

女海賊「リカ姉ぇ良かったじゃん!!盗賊ギルド支部のトップだよ」

アサシン「フィン・イッシュから陸沿いにこの大陸に来れるのはあの場所が良いのだ」

女海賊「どんな人かな?見てみたいな~ヌフフフフ」

アサシン「オーガを数人で倒す気概のある青年だ…悪くないぞ?フフ」


ツカツカ


女戦士「遅くなった…」スタ ドサリ

女海賊「お姉ぇ…装備全部持って行くのか」

女戦士「私の居場所は幽霊船だ…ここでの役割は終わった」

女海賊「まぁそだね…ほんじゃ行こうか!!」グイ シュゴーーーーーー


フワフワ フワフワ


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『上空_川沿い』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥゥ


女海賊「羅針盤は完全に逆を差してんね…南西に向かってる」

女戦士「地図は新たに書き直した方が良いな」

女海賊「うん…まぁでも斜めに見ればなんとか分かるかな」

女戦士「方位線を書き足して置くぞ」カキカキ

女海賊「内海はやっぱ航海無理っぽい?」

女戦士「今の季節は暖かい時期だ…今の内に内海を脱出しておきたいな」

女海賊「どうすんの?ドワーフ領の方向行くん?」

女戦士「いや…それではいきなり東の外海に出てしまう…陸沿いに西へ行って地庄炉村からフィン・イッシュだな」

女海賊「西側の外海に出るん?そっちの方がデカいじゃん」

女戦士「陸沿いにフィン・イッシュに行けるのだ…外海と言っても沖に出なければ良い」

アサシン「私はフィン・イッシュに戻るのは急がなくて構わんぞ?」

女戦士「どうせ交易の拠点になるだろう…今の内に航路を見出しておく」

女海賊「まぁ陸沿いなら内海もなんとか航海出来るんだね」

女戦士「緯度的に冬は厳しくなるだろう…」

ローグ「また手漕ぎのガレー船が活躍するかも知れんっすね…」

女海賊「北方の海賊か…あいつらまだお姉ぇの海賊の中に居んの?」

女戦士「あの馬鹿共は全員裏切って豪族となった…女と金しか興味の無い者ばかりだ」

アサシン「フフ既に対立構造が見えて来て居るか」

ローグ「硫黄と硝石はこっちが押さえてるんで大丈夫でやんす」

女海賊「外海に向けて大航海時代が来そうだね」

女戦士「その中心地になるのがフィン・イッシュだと思われる…立地が良い」


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『漁村上空』


フワフワ スイーーーー


ローグ「漁村に停船してる大きな船2隻が商船でやんす…沖で停船してるのはみんな海賊船っすね」

女戦士「父の船が見当たらんが?」

ローグ「ドワーフ領の方に行ったみたいでやんす」

女海賊「なんか海賊船めちゃ多くない?」

ローグ「へい…ここで拠点作ってるでやんすよ…見て下せぇ!もう一つ船が停船出来る港を作って居やす」

女海賊「どこ?」

ローグ「漁村の向こう側の海岸っすね」

女海賊「うわ…しょっぼ」

ローグ「木材が無いもんでしょうがないでやんすよ」

女戦士「まぁ大砲が設置できれば要衝としては機能する…それで私の船はどこだ?」

ローグ「沖に小さな小島が見えやすよね?あの脇にハイディングさせてあるでやんす」

女戦士「漁村までは小舟で移動か…」

ローグ「今はほぼ全員漁村に降りてると思いやす」

女海賊「どうする?どこに降りれば良い?」

女戦士「漁村で先に情報を集めるか」

女海賊「おっけ!!ちょい離れに降ろすわ」グイ



『漁村』


ワイワイ ガヤガヤ


女海賊「けっこう賑わってんじゃん」キョロ

ローグ「海賊王が開拓してるからっすね」

女戦士「父がまた謎の建物を建て散らかして居るんだな?」

女海賊「なんかさぁ…木材無いから全部中途半端じゃんね…」

女戦士「しばらくこの雑多な感じになりそうだ」

女海賊「市場って何処にあんの?布とフルーツ買って帰らなきゃいけないんだ」

ローグ「商船の所で売り買いやってますぜ?」

女海賊「おっけ!!」

女戦士「女海賊!お前は仕入れが終わったらハテノ村へ戻れ」

女海賊「ええ?もう?…てか荷物降ろして行きたいんだけど…」

女戦士「ローグ!妹を幽霊船まで案内しろ…私は仲間の海賊共とコンタクトしてから戻る」

ローグ「分かりやしたぁ!!」

女海賊「おっし!さっさと買い物済ませるぞ!!」スタコラ ピューーー

『市場』


ワイワイ ガヤガヤ

ハチミツに漬けたリンゴあるよ~買って行ってくれぇ

ミスリルの武器各種揃っとるでぇ!買って行きぃな!!


女海賊「これさ…港町で商人が売った硫黄はこっちに戻って来てんじゃね?」

ローグ「そーっすね…みんな海賊が買い取ってウハウハなんすよ」

女海賊「それでミスリル武器も出回ってんのか…」

ローグ「ミスリル武器はここじゃ需要無いんで売れ残って居やすね…」

女海賊「キ・カイまで運んだら売れそうだね…グレムリン退治用にさ」

ローグ「姉さん!!ちっと高いんすが良質の布がありやす」

女海賊「お!?マジ?ほんじゃ地庄炉村に行かんくても良いな」

ローグ「果物はさすがに保存食にした物しか無いっすねぇ…」

女海賊「おけおけ!無いよりマシさ…てかハチミツ漬けなら私も食べたい」

ローグ「めちゃ高いでやんす…」

女海賊「良いんだって!!どうせ商人のお金だしじゃんじゃん使えば良いよ」

ローグ「じゃぁ買い取ってあっしが飛空艇に運んで置きやす」

女海賊「あとどんぐりとか種類が欲しいなぁ…」

ローグ「ありやすありやす…好きなだけ買って下せぇ」ジャラリ



『30分後』


タッタッタ


女海賊「お姉ぇとか何処行った?」キョロ

ローグ「分からんっすねぇ…」

女海賊「ぬぁぁぁ逸れたか…まぁ良いや!私ハテノ村に戻るからさ…よろしく言っといて」

ローグ「分かりやした…姉さん!!くれぐれも魔女さんから離れん様にして下せぇ」

女海賊「え?なんで?」

ローグ「姉さんと連絡取れなくなると頭が怒り出すんす」

女海賊「あーそういう事ね」

ローグ「姉さんは直ぐに何処か行っちまうもんすから頭の気持ちも察して下せぇ」

女海賊「ハイハイ分かった分かった…ああああああああ!!あぶな!!幽霊船に荷物降ろすの忘れてんじゃん」

ローグ「ハハそういう所なんすよ…幽霊船までは案内するんで一緒に行きやしょう」

女海賊「あんた私の事馬鹿にしてる?」

ローグ「いえいえ姉さんはカリスマっす…」

女海賊「あのさ?天然のカリスマってどういう意味さ?」

ローグ「すんごいカリスマって事っすね」

女海賊「ほ~ん…てか無駄口は良いから行くよ!」スタ


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『幽霊船』


フワリ ドッスン


ローグ「頭の装備品も降ろして置きやすぜ?」ヨッコラ

女海賊「幽霊船に誰も乗って無いじゃん…こんなんで良いの?」

ローグ「何言ってるんすか…アラクネーを置いて行ったのは姉さんでやんす」

女海賊「あー忘れてた…飛空艇に乗りきらないのを置いて行ったんだっけ」

ローグ「荷室で姉さんの宝を守ってるでやんす」

女海賊「なんか有ったっけ?」

ローグ「覚えて無いでやんすか?大量のウラン結晶と魔石がありやす…黒の同胞団の隠れ家から持って帰って来たやつっすね」

女海賊「アハ…完全に頭から無かったわ」

ローグ「謎の機械は海賊王に渡しやしたぜ?」

女海賊「そうだそうだ…組み立てようと思ってたのさ…アレ何だったかな?」

ローグ「天秤じゃ無かったでしたっけ?…あと重力炉?」

女海賊「ふむ…命の水とダンゴムシを守らせるのはアラクネーが適任だな…」

ローグ「それは何に使うのか分かって無いでやんすか?」

女海賊「全然…もしかしたらホムちゃんがメッセージ受け取ってるかもって感じ」

ローグ「そうっすか…分かるまであっしも宝を守って置きやすね…姉さんの帰って来る場所を…」

女海賊「お?あんた良く分かってんじゃ…私の帰る場所は此処さ」

ローグ「今度は居なくならんで下せぇよ?」

女海賊「ハイハイ分かった分かった…荷物運ぶの手伝って」ヨイショ

ローグ「へい…」ヨコッラ


---------------

---------------

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『ハテノ村_古代遺跡』


ヒソヒソ ヒソヒソ


ノアの箱舟伝説の後に大洪水を起こしたのは神のせいだと決めつけた人間達が…

神が住む天界まで登る塔を建造した…それがバベルの塔…

でも神の逆鱗に触れいかづちによって破壊されてしまった…その場所がメソポタミアの地にある


情報屋「確証は無いけれどその場所こそ暁の墓所に当たるのでは無いかと…」

魔女「ふむ…現在では不毛の地か…」

商人「天界って何だろうね?」

情報屋「聖書に天空の城が描かれてる…当時は空を飛ぶ城が在ったのかも知れない」

魔女「実はのぅ…ニライカナイは浮島じゃ無いかと盗賊が言って居ったのじゃ」

商人「それが空を飛んでた?」

魔女「古代魔術の重力魔法を用いれば可能やも知れぬ…重力魔法の触媒は主に黄金じゃ」

情報屋「…という事は黄金と一緒にニライカナイに沈んでる可能性もあるのね」

魔女「今では黄金では無くアダマンタイトじゃがな」

商人「2100年前に時の王たちと共にその理想郷を復活させようとしたのかもね…結果的に失敗した様だけど」

魔女「死者が集う理想郷じゃと言う話がどうも引っかかるのぅ…」

情報屋「それって集合意識の事では?」

魔女「確かにそういう解釈も出来る…」

商人「天空の城が在ったとしてそこにアヌンナキが鎮座して一体何だと言うんだ?」

魔女「神のみぞ知るじゃな…」

情報屋「箱舟を失ってしまった後ではそういう方法でしか天に近付けない…とか?」

商人「何の為に天に近付くのかも良く分からない…やっぱり神は理解出来ないや」

魔女「ちと待てい…」

商人「んん?」

魔女「月に近付こうとしては居らんか?」

商人「ええ!!?」

魔女「狭間を通じて語り掛けて来るのはアヌだけでは無かろう…妖精も語り掛けて来るじゃろう」

情報屋「妖精の声に従ってる?」

魔女「アヌの声を聞くのはオークシャーマンだけじゃ…他の者は妖精の声を聞く」

商人「なるほど…それだとそれぞれの目的にその内行き違いが生じる…それが暁と黄昏が分かれた原因かもしれない」

情報屋「月に近付く為だけに天空の城を復活させようとした…でも黄昏の賢者の狙いは他に在った…そして破綻」

魔女「ニライカナイに量子転移を使った痕跡も有ったのじゃ…つまり魔王もそこに介在したのじゃ」

商人「キーになる物はニライカナイに沈んで居そうだ」

情報屋「それなら探しに行けないわ…」

魔女「月が退魔の光を発するようになれば行けるやも知れん」

情報屋「それなら私も行きたい…」



--------------

『新しく出来た酒場』


ガサゴソ ヨッコラ ドサリ


盗賊「おーし!!娘達!!今日からお前達の働く店は此処だ!!」

娘達「もう遊女っていう年でも無いんだけどね…」

盗賊「ここで市場の取り引きをやっても良い訳よ…まぁ寄り集まり所だヌハハ」

レンジャー「酒があるなら兵隊も来る様になる」

盗賊「だろ?まぁとりあえず何か酒持ってこい!!金なら払ってやる」チャリーン

娘達「お!!?金貨1枚ゲット!!」

盗賊「しかし俺が酒場作ってる間にみんな居なくなっちまってよ…」

レンジャー「置いて行かれたのか?」

盗賊「まぁいつもの事なんだが…俺はどうすっかなぁ…」

レンジャー「俺も脱走兵という立場で行き場を失った…」

盗賊「ミネア・ポリスにでも行って行方不明のギャング達でも探すか?」

レンジャー「影武者が言うには無事だと言う話だ」

盗賊「あんまり大人が関わらん方が良いか…」


ボエーーーーーーー ブシューーーーーー


盗賊「お!!?飛空艇が戻って来たか」

レンジャー「良かったな…話し相手が戻ってきて」

盗賊「ヌハハそれもあるが商人の気球を修理する布を買って来て貰ってる筈なのよ…ちっと行って来るわ」ダダ

『鯨型飛空艇』


フワフワ ドッスン


盗賊「いよーう待てたぜ?布は買って来てくれたか?」

女海賊「有るよ!!持ってって!!」

盗賊「よーし!!これで気球を修理出来る」

女海賊「漁村の方に結構人が居てさ…物資運搬で気球は動かした方が良さそう」

盗賊「やっぱりな?たまには俺も行きたい訳よ」

女海賊「私さぁ…名もなき島に行こう思ってんだけどアンタどうする?」

盗賊「俺はあの島に用は無ぇ…てか行っても暇なだけだ」

女海賊「まぁそうだね…」

盗賊「俺はちっと気球使って探検したいんだ」

女海賊「何処行くのさ?」

盗賊「決まってんだろ…ミネア・ポリスの遺跡を漁りに行くのよ」

女海賊「なる…」

盗賊「レンジャーとはそういう話してんだ…まだ未発掘の遺跡なんかごまんとあるらしい」

女海賊「マジか…」

盗賊「お前も行くか?」

女海賊「私は先にホムちゃん起こしに行くよ」

盗賊「そうか…どの荷物おろしゃ良いんだ?」

女海賊「布だけだよ後は魔女のおやつだから」

盗賊「分かった!!ほんじゃ布は貰って行くぜ?」ヨコッラ

女海賊「うん…」---なんか---


---みんなの目的がバラけ始めた---

---みんな未来に向かって行ってんだ---

---私も進まなきゃ…月へ---

『古代遺跡』


ヒソヒソ ヒソヒソ


結論はこうさ…人間が生んだ神…アダムとかホムンクルスとか

アヌンナキはそれに全く勝てないんだよ…考える力というか問題解決を導く力が…

だからそれを封じたい…そういう歴史なんだ


魔女「ふむ…それなら機械を敵にする動機が十分じゃな」

商人「アヌンナキは神の声を通じて人間やオークをコントロールする…でも機械にはそれが通じない」

商人「それどころか人間を上手く導く精霊に手も足も出なかった…どうしてか?…器が無いからさ」

情報屋「それではorc遺伝子を組み込んだホムンクルスはアヌンナキの導きを聞いてしまうのでは?」

商人「かも知れないね?でもホムンクルスは考える…問題が何なのかね?そして正しい答えに到達する筈さ」


スタスタ


女海賊「呆れた…ずっとここで議論してんの?」

魔女「おぉ帰ったか…ずっとでは無いぞよ?」

女海賊「なんかいっつも此処に居んじゃん」

魔女「フルーツは入手出来たのか?」

女海賊「うん…飛空艇に積んで有る」

魔女「なぜ持って来ん」

女海賊「今から名もなき島に行くから皆を呼びに来たのさ」

商人「お!!?いよいよか…」

女海賊「もう行ける?」

情報屋「温泉に入ってからで構わない?」

女海賊「あー私も入るかな…温まったら寝ちゃうかもだけど」

商人「大丈夫さ…僕には名も無き島に行ける自信がある」

女海賊「おけおけ!ずっと寝て無いからちっと休みたかった」

情報屋「じゃぁ温泉に入った後に飛空艇に集合ね?」

魔女「うむ…わらわも行こうかのぅ」ノソノソ

『温泉』


モクモク チャプ


魔女「情報屋の胸の傷は消えそうに無いのぉ…」

情報屋「気にして居ないわ?」

魔女「やはり年を重ねてしまうと体も衰えるのじゃな」

女海賊「足の調子はどうなん?」

情報屋「昔の様にはもう走れないけれど普通に過ごすにはそれほど不自由無いわ」

魔女「それにしても主はどんな怪我をしても完全に治りよる…」

女海賊「そりゃ回復魔法されないように気を付けてるからさ…まだピチピチさ」

情報屋「ハーフドワーフの寿命はどの位?」

女海賊「分かんない」

魔女「羨ましいのぅ…」

女海賊「てか魔女はまだ子供の体じゃん」

魔女「変性して居るだけじゃ…肉体は衰えて来て居るじゃろう」

女海賊「なんか魔女がもうおばさんとは思えないんだよなぁ…」

魔女「そうじゃ…情報屋に一つ願い事があるのじゃ」

情報屋「何?」

魔女「主にはわらわの師匠の跡を継ぐ資質がある…故にわらわと共にシン・リーンへ来て貰いたいのじゃ」

情報屋「ええ?もしかして私に塔の魔女をさせるつもり?」

魔女「魔法は使えぬでも構わぬ…教えを説いて欲しいのじゃ」

情報屋「教え…」

魔女「この世の真理じゃ…主はそれを説ける資質がある…その知識をすべて書物に残す事もわらわが手配する」

情報屋「盗賊を一人残すのは心配だし…子供の事もあるし…」

魔女「今すぐにでは無い…その時が来たらの話じゃ」

情報屋「そう…それなら構わないけれど…」

魔女「師匠の意思を継ぐ者が居るとなればわらわも母上の跡を継ぐ事も考えられる」

女海賊「お?とうとう女王様になるん?」

魔女「今すぐにでは無いと言うたじゃろう?」

情報屋「塔の魔女か…」

魔女「気負わんでも良い…真理を探究しても良いと言う話じゃ」

情報屋「分かったわ…考えて置く」

女海賊「そう言えば塔の魔女の婆ちゃんは情報屋みたいな感じだったなぁ…」

魔女「うむ…そっくりじゃ」


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--------------

--------------

『鯨型飛空艇』


スタタタ ドサー


女海賊「もう無理…寝る…妖精来い!!寝るよ!!」グター

妖精「なんだかなぁ…おっぱい暑苦しいなぁ…」ヒラヒラ

情報屋「私も少し横になるわ…商人!操舵はお願いね」

商人「大丈夫さ!僕は眠らないから安心して良いよ」

情報屋「吟遊詩人は誘わなくて良かったの?」

女海賊「帰りに一人乗れなくなる…」

情報屋「あぁそういう事ね」

魔女「あ奴は酒場で演奏して居れば良い」

商人「じゃぁ出発するよ…」グイ シュゴーーーーー


フワフワ


女海賊「もう寝るから!!話しかけないで…」グッタリ


--------------

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--------------



『名も無き島_近海』


シュゴーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「なんだよ結局ミツバチ使わないと辿り着けないじゃん」

商人「ハハ地図がこんなに宛てにならないとは思わなかった」

女海賊「この地図の方位線もまだ暫定なのさ…でも大分傾いてんなぁ…」

情報屋「高緯度域だから東西の精度がまだ無いのよ」

女海賊「この辺りは人が住めるギリギリのラインかも…」

商人「これ以上南は南極圏に入っちゃう感じかな…」

女海賊「見えて来た…アレだ」

商人「岩礁多くて船じゃ近付け無いし…本当の秘境になってしまいそうだね」

女海賊「それならホムちゃんには安全さ」

商人「ん?どういう事?」

女海賊「この島をホムちゃんにあげるんだ…ここで生活してもらおうと思ってる」

商人「ハハ良いねぇ…連れまわすとまた危険に晒してしまうからねぇ」

女海賊「今度は400年の寿命一杯まで生きて貰う!!」

『名も無き島』


フワフワ ドッスン


女海賊「私村の方に行って挨拶してくるから荷物居下ろすのは自分でやっといて」

商人「分かったよ…ホムンクルス起こすのは君が来るまで待った方が良いよね?」

女海賊「どうせ目を覚ますのに2時間くらい掛かるじゃん?先にやっといて良いよ」

商人「じゃぁ遠慮なく…」

情報屋「寒いから先に行って火を起こして来るわ」スタ

商人「うん頼むよ」

女海賊「あ!!遺跡の地下はそんな寒く無いよ」

情報屋「そうなのね?」

女海賊「寒いっても今5℃くらい?」

情報屋「十分寒いわ」

魔女「ふむ…この程度であれば割と快適に住めそうじゃな…」

商人「そうだねぇ…」

女海賊「後で芋持って行くからお湯沸かしといてよ」

情報屋「分かったわ…」

女海賊「じゃ行って来る」スタタ ピューーー


--------------

『古代遺跡』


カチャカチャ ピピ


商人「…これでY染色体が付加されてるで間違いない?」

情報屋「間違いないわ…多分これで雄性への分化が起きる筈」

商人「じゃぁ最後の一手は僕がやるよ…どうかホムンクルスの最高のパートナーになります様に…」ポチ


コポコポコポ プシュー


情報屋「材料の撹拌が始まった…何も無い所から生命が誕生する瞬間よ」

妖精「ねぇ何してるの~?」パタパタ

商人「うわっ…びっくりした」

情報屋「え?どうしたの?」

商人「妖精が来てるんだ…目の前に居る」

情報屋「スゴイ…今まさに命を運んで来たんだわ」

妖精「さっきからずっと此処に居たんだけどなぁ…」


タッタッタ


女海賊「芋持って来たヨ~あ!!こんな所に居た!!おい妖精!!勝手におっぱいから抜け出すな!!」

妖精「僕は君の持ち物じゃ無いよ」ヒラヒラ

女海賊「芋いる?」

妖精「また芋かぁ…ハチミツが良いんだけどなぁ」ブツブツ

女海賊「あんたじゃ無い!情報屋お腹空いて無い?」

情報屋「あら?私…フフ頂くわ」

女海賊「ほんでコレ!ホムちゃんの着替え」

情報屋「まだ目を覚まして無いけれど…着せるの手伝って貰える?」

女海賊「おけおけ…裸のまんまじゃ商人に目で犯される」ゴソゴソ


ホムンクルス「ピッ」クター


女海賊「お!!丁度目を覚ましそう…」

情報屋「体温が大分上がって来たみたい…」

商人「よし…外部メモリを挿して置こう」スッ


ホムンクルス「…」パチ キョロ


女海賊「目が動いた!!ホムちゃ~ん!!会いたかったよう」ギュゥ

ホムンクルス「基幹プログラム…リブート…同定完了」ピク

女海賊「ホムちゃん私覚えてる?」

ホムンクルス「衛星との通信が完了しません…座標と時刻の取得に失敗…」

商人「まだ時間が掛かりそうかな?」

ホムンクルス「私は…どのくらいの期間停止して居たのでしょう?」

商人「7年くらいかな?」

ホムンクルス「生体は残されて居なかったのですが…商人さんが私を生んで下さったのですね?」

商人「まぁね?…まだ体温が上がって無いから体動かないんじゃない?」

ホムンクルス「はい…神経が活性化されていません」

女海賊「時間あるからゆっくりで良いさ…舌を噛んじゃうから体温上がるの待って」

ホムンクルス「はい…」


ヒラヒラ パタパタ


妖精「ハロハロー」

ホムンクルス「!!?」キョロ

商人「お!!?君にも妖精が見えて居そうだ…」

ホムンクルス「妖精?あなたは妖精さんですか?」

妖精「そうだよ!僕は妖精さ…君を起こしに来たんだよ」

ホムンクルス「これは何かの魔法でしょうか?」

妖精「魔法じゃ無いよ…ちょっと君のおっぱいを確かめさせてもらうね」ピョン モゾモゾ

女海賊「ああああ!!アンタ勝手に他の人のおっぱいに…」

ホムンクルス「まだ感覚がありません…感覚の同定が遅いのは何か理由が有るのでしょうか?」

妖精「なんか冷たいおっぱいだなぁ…」ピョン ヒラヒラ

情報屋「感覚の同定が遅い…」

ホムンクルス「妖精さんはどこからいらっしゃったのでしょう?」キョロ


情報屋「商人ちょっと」クイクイ

商人「んん?」

情報屋「すこしホムンクルスを放って置いた方が良いかも知れない…」

商人「そんな感じだね…今までと神経伝達が違うのに混乱している様だ」

情報屋「すこし観察させて貰える?人間の神経伝達に第六感が介在しているなんてちょっとした発見だわ」

商人「僕も少し遠くから見ておくよ…」


ホムンクルス「妖精さん?あなたは哺乳類に分類されますか?それとも昆虫類ですか?」

妖精「君は馬鹿だなぁ…妖精は妖精だよ…ほら?羽があるでしょ?」ヒラヒラ

ホムンクルス「よく見せて下さい…確かに昆虫の羽の様ですね…」ブツブツ


ブツブツ ブツブツ…

--------------

--------------

--------------

『30分後』


ヨタヨタ ドシン!


妖精「ほらほら君はどんくさいなぁ…そんなんじゃ僕を掴まえられないよ?」ヒラヒラ

女海賊「ホムちゃん大丈夫?」

ホムンクルス「はい…平気です」ヨロ

女海賊「やっぱ体の動かし方が前と違うん?」

ホムンクルス「その様です…神経伝達が何かの影響を受けている様です…この生体の特徴かもしれません」

商人「君に隠して居てもしょうがないから種明かしをしてあげるよ」

ホムンクルス「生体になにか特別な事を施したのですね?」

商人「おいで…ここの機械に君の事が全部記録されてるんだ」

ホムンクルス「…」ヨタヨタ

商人「この機械だよ」スッ

ホムンクルス「古代の端末ですね…クラウドへ接続が出来るのでしょうか?」

商人「そういう機能は良く分からない」

ホムンクルス「私が検索をしてみます…」カチャカチャ


--------------


情報屋「フフいきなり使いこなすのね…」

ホムンクルス「理解出来ました…生体に意図的に排除されていたorc遺伝子を付加させて誕生させたのですね」

商人「さすが理解が早い…何が起きるか君なら分かるかな?」

ホムンクルス「私は人間として生まれた…この回答で正しいですか?」

商人「その通りさ…恐らく君には魂が宿ってる…そして心も育つ…死んだ後も妖精に導かれてあの世に行けるんだ」

ホムンクルス「妖精の声が聞こえるのはそのせいなのですね」

女海賊「ホムちゃんも魔法が使えるかも…」

ホムンクルス「どの様な感覚なのか興味が湧きました」

商人「あともう一人…君のパートナーになるホムンクルスも作ってる…これで君も子供が産めるんだ」

ホムンクルス「理解しました…」

情報屋「先ずは今の体に慣れる事ね」

商人「ねぇ?自分に魂が宿って居るのは自覚出来るのかな?」

ホムンクルス「分かりません…ですが思考の中で自問自答を繰り返すロジックが発生しています」

商人「自問自答?それは普通の事だな…」

ホムンクルス「超高度AIの処理速度が著しく低下します」

商人「あぁそれはもう良いんだ…負担にならない程度に動いて居れば良いさ」

女海賊「あんま深く考えると大体良い結果にならないさ…そういう場合は勘で良いんだよ勘!!」

ホムンクルス「勘…これが第六感ですね」

女海賊「コインゲームやってみる?」

商人「お!?良いねぇ…」ピーン パチ

ホムンクルス「勘で…表!」

商人「おおおお!!ソレソレ!!アタリだよ」

ホムンクルス「フフ…」ニコ


『メッセージ』


どうかこのメッセージが君に届くことを祈る…

この場所は君が生きる時代にも残って居た筈だから…

そして約束を守れなかった僕を許して欲しい


…何から話せば良いのか

君と別れてから僕と未来は何十年も未来へ還る方法を模索した

もう正確にどのくらい時間が過ぎたのかは分からない

そしてやっと見つけたのがアヌという神との契約だった

アヌはオークシャーマンに憑依したまま魔王に操られた人間に捕らえられて居た

魔王の目的はアヌが育てていた究極生物を器とする事…

その究極生物はこの地球を支配する虫達を意のままに操る事が出来るらしい


それを知った未来は魔王に器を奪われてしまう前に

自ら祈りの指輪を使って究極生物にその魂を移した…それがこのダンゴムシ

この中に未来の魂が眠って居るんだ


僕はアヌと契約を交わした

未来の老いた亡骸を君が生きる時代に蘇らせて月に連れて行く事…

そうすれば究極生物は帰って来ると…だからこの場所に隠した

ただ…未来が老いた時間を巻き戻す事は出来ない

それは未来が生きた時間だから…戻すのは未来の意思が必要になるんだ


もう一つ君達の時代に残す物がある

これはアヌが集めたこの地球に生きた生物の欠片…命の水だ

これを命の泉に注ぐことでこの星に再度命が宿る

あとは君の判断に任せる…未来を救って欲しい


僕はこれから一人で世界の根本的な問題を正しに行く

それは人間が生んだ神…アダムの事だ

僕が今居る時代が滅ぶ原因となったのもアダムに起因する…

僕はもう君が居る時代に戻る事は出来ないから

せめて問題の根本を目指す事にする


最後に…生まれ変わたら又君の下へ行くよ

君の背中が恋しい

ホムンクルス「剣士さんからのメッセージは以上になります…」

女海賊「…あんのバカ」プルプル

商人「ええと…なんか大事な事が抜けてる気がするね」

女海賊「いつ…どこで?それが抜けてるのさ!!何回も教えた筈なんだ…」プルプル

情報屋「なんか感動のメッセージが台無しね…」

女海賊「まぁでも大体想像してたのと合ってたさ…分かったのは命の水の使い方だね」

情報屋「ショック受けて居ない?」

女海賊「受けてるよ!!ずっと昔にもう剣士が死んでる…だから私に巡り合っただけなのさ…もう会えないって事じゃん!!」

商人「あ…なるほどそういう引き合わせか…」

女海賊「私が祈りの指輪で会いたいと願ったとしてどうなるか分かる?」

情報屋「あなたが剣士と居た次元に行くだけ…記憶を失って…次元はそういう風に繋がってる」

魔女「正解じゃ…流石じゃのう…それが夢幻じゃ」

女海賊「まぁ良いや…一個づつ解決する…まず命の泉に行こう」

商人「アヌが憑依してるオークシャーマンはどうやって探すかだねぇ…」

情報屋「向こうからコンタクトして来ないかしら?」

女海賊「魔女!!暁の墓所の場所は分かる?」

魔女「母上が知って居る」

女海賊「てか年老いた未来を蘇らせて未来が喜ぶと思えないんだけど…」

情報屋「確かに…」

女海賊「4000年若返らせる事とか出来ないの?」

魔女「無理じゃな…」

女海賊「ぬぁぁぁぁ意味無さ過ぎだよ…」

商人「剣士が言い残した君の判断に任せるって…」

女海賊「ちっと一人にさせて…考える」


--------------

--------------

--------------

『焚火』


メラメラ パチ


魔女「女海賊は思いの外正気を保って居るな?」

情報屋「そうね…2~3日は伏せってしまうと思って居たけれど…」

商人「大体想定はして居たんだろうね…剣士も最後に残す言葉が足りないのは人柄がそのままだった証拠さ」

魔女「無口で話し上手では無かったからのぅ…」


トコトコ


ホムンクルス「何処に行くのですか?」フラフラ ドテ

妖精「月を見に行くんだよ…こっちさ」

ホムンクルス「月は見えて居ない様です…」

妖精「えええ!?そんなぁ…」シュン


情報屋「フフ…私から見たら独り言で振ら付いてる様に見える…」

魔女「主は妖精が見えぬか?」

情報屋「小さな光しか見えない…声も聞き取れないわ」

商人「ホムンクルス!生体の管理者は登録終わったかい?」

ホムンクルス「はい…女海賊さんが管理者になりました」

商人「よしよし…これで他人に登録されることは無いな」

情報屋「ところでホムンクルス?光る隕石の事だけれど…」

ホムンクルス「はい…何か?」

情報屋「月に光る隕石を落とす事は可能?」

ホムンクルス「不可能です」

商人「ええ!?どういう事なんだい?」

ホムンクルス「大陸間弾道ミサイルでは月に到達するだけの推進力がありません…落下して地球に落ちてしまいます」

情報屋「重力を振り切れないのね?」

ホムンクルス「衛星の静止軌道にも到達しません…」

商人「連結するとか何か方法は無いかな?」

ホムンクルス「そもそも現在の地球上に発射可能な大陸間弾道ミサイルは存在していません」

商人「前に400発くらい発射されるとか言ってたじゃないか…」

ホムンクルス「すべて点火部を物理的に自爆させています…発射準備に入ったミサイルを止めるには他に方法がありませんでした」

商人「不可能か…」

魔女「インドラの光を月に落とすのはどうじゃろうか?」

商人「お!?」

ホムンクルス「それは可能ですが静止軌道上にある衛星を移動させないと命中精度が低いです」

商人「移動?どこに?」

ホムンクルス「衛星を落下起動にのせスイングバイで月に向かわせるのです…距離が近付けば精度の高い射撃が可能です」

商人「それだね…」

ホムンクルス「ですが衛星は二度と地球に戻る事は無くなるでしょう」

商人「もうインドラ兵器は使えないという事だね?」

ホムンクルス「はい…何故月にインドラ兵器を使用したいのですか?」

魔女「月にクレーターで退魔の方陣が描かれて居るのじゃ…完成させるには28必要なのじゃが今は24しか無い」

商人「あと4発落とせれば月の光に退魔の力が宿るんだよ」

ホムンクルス「理解しました…4つある衛星のすべてに核弾頭ミサイル6発搭載してある筈ですが無い理由が判明しました」

商人「んん?全部で24発?」

ホムンクルス「恐らく過去に使用した物と思われます」

商人「待てよ?ならどうしてその時インドラ兵器を使わなかったんだ?」

ホムンクルス「衛星と通信が出来れば履歴を追えるかもしれませんね」

情報屋「今は通信出来ていない?」

ホムンクルス「はい…私が最後に通信した場所は外海でしたのでその上空で静止していると思われます」

商人「あーーそれもしかしたら探さないとダメかもなぁ…もう地軸が移動してしまってる」

ホムンクルス「!!?」ピク キョロ

商人「ん?どうしたの?急に…」

ホムンクルス「何か聞こえました…」フラフラ


--------------

『鯨型飛空艇』


カサカサ カサカサ


ホムンクルス「この声は…アラクネー?」キョロ

情報屋「フフ驚き…虫の声が聞こえるのね」スタ

ホムンクルス「クジラの声も…」キョロ

魔女「ほう…もしやすると魔法の才が芽生えて居るやもしれぬ」

ホムンクルス「私の笛は何処に…」

商人「あぁ僕が預かってる…使うかい」ポイ

ホムンクルス「上手に吹ければ…」ハム


トゥルルル~ トゥ~~


ホムンクルス「聞こえる…そこに居るのですね」フラフラ

妖精「タラリラリン♪」クルクル ヒラヒラ

ホムンクルス「これが人を導く声…」

商人「この飛空艇はね…機械の犬だった君を守ったクジラの骨で作ってあるんだ」

ホムンクルス「聞いています…意思が伝わって来る…」サワサワ

商人「中に入っても良いよ…なかなか快適さ」

ホムンクルス「知らなかった…こんな風に声が聞けるなんて…」

商人「ゆっくり話すると良いさ…僕らは焚火で温まってるよ」


---------------

『焚火』


メラメラ パチ


魔女「はふはふ…やはり芋は焼くのが一番美味いのぅ」モグ

情報屋「ハチミツ入りのお茶も持って来たわ…」

魔女「済まんのぅ…」

情報屋「寒いと思ったけれどこうやって焚火で温まって丁度気持ち良い」ノビー

商人「この島も悪くないね…ここでホムンクルスが子供を産んで幸せに暮らせれば僕は満足さ」

情報屋「商人?あなたはこの先どうするつもり?」

商人「僕はもう決まってるんだ…精霊樹の所に行くよ」

情報屋「まさか眠りにつくつもりなの?」

商人「いやいやそうじゃない…眠りについた時に精霊樹に魂を拾って貰いたくてね」

魔女「地獄へは落ちとう無いか」

商人「そりゃそうさ…次生まれるなら強い心臓が欲しいよ」

魔女「わらわ達はいつまで一緒に旅をして居られるじゃろうのぅ」

商人「いつも考えるよ…自分で幕を引くこともね」

情報屋「縁起の悪い事を言わないで」

商人「早まった事はしないさ…次はシャ・バクダの復興だよ」

魔女「ふむ…アサシンも似た様な事を言うて居ったわい」

商人「気候が良くなればシャ・バクダは復活出来ると思うんだ…そこで商売をやるさ」

情報屋「次の時代はもう目の前の様ね…」

商人「もう来てるよ…乗り遅れないようにしないとね」


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ペチャクチャ…


魔女「ホムンクルスは仕切に何かと話して居るがアレで良いのじゃろうか…」

情報屋「私から見たら独り言を話しながら徘徊する人…世間でもそう見られてしまう」

商人「そういうのはちゃんと学習する筈だよ…今はまだ何も分かって無い」

情報屋「そうだと良いのだけれど…」

商人「僕が彼女に気付いて欲しいのは…人間の住まう環境だけ良くすれば良い訳じゃ無いって事さ」

魔女「ふむ…確かにその通りじゃな」

商人「虫の声も…アヌの声だってちゃんと聴いて自分で判断して欲しいんだ…悪いのは何なのか」

情報屋「あなたは私達の歴史の何所に問題が有ったと思って?」

商人「そうだな…僕は神を信じない…信じるのは命ある者だけさ」

情報屋「哲学?」

商人「アヌが器に収まったとして平和が来ると思うかな?」

魔女「…」

商人「古代では器に収まってた筈さ…その当時も争いが絶えなかった…何故だろう?」

情報屋「…」

商人「答えは簡単だよ…アヌがオークにそうしている様に人間に戦争を起こさせてるのさ…はっきり言う…アヌは邪神だ」

魔女「これ!下手な事を言うてはならぬ」

商人「あぁ邪神は言い過ぎたかな…裁きの神なのに何も裁けてない…だから信用出来ないのさ」

情報屋「あなたの意見は参考にしておくわ」

魔女「ふむ…裁きの神が人間を不要と判断したと言うのも考えられそうじゃ…」

商人「そこだよ…それが正しい裁きなのかホムンクルスに考えて欲しいのさ…命の声が聞こえるなら感じる事もある筈」


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『朝日』


コックリ コックリ


商人「とうとう月が昇る事は無かったか…多分北半球の側にあるんだろうな…」

情報屋「ぅぅん…」パチ ブルル

商人「焚火が消えて寒くなったかい?」

情報屋「ええ…寒いわ…飛空艇の中に入りましょう」スック

商人「魔女は僕が抱っこしていくよ」グイ

魔女「すや…」zzz

情報屋「良く見たら随分潮が引けて海が遠くなってしまったのね」

商人「月が北半球の側にあるんだよ」

情報屋「海抜は何メートル下がったのかしら…」キョロ

商人「ハハ国土が増えて良かったと言う見方もあるけどね…この島はあまり大きく無かったから」

情報屋「向こうの沈没してる船まで徒歩で行けそう」

商人「沈没船がいくつも陸に見えてるのは不思議な光景だ…」


スタタタ ピューーー パシュン シュルシュル


商人「あ…女海賊が走り抜けて…」

情報屋「元気そう…彼女が意味不明の行動する時はもう動き出してると言う時」

商人「何してるんだろう?」

情報屋「沈没船にでも行くのでは?」

商人「まぁ僕達は彼女の気が済むまで待って居ようか」

情報屋「それが良いわ…寒いから飛空艇に入りましょう」フラリ

商人「うん…」ヨッコラ

『鯨型飛空艇』


スヤ スゥ…


情報屋「あら?ホムンクルスも寝て…」

商人「本当だね…自然と寝てるのは始めて見たよ…いつもはスリープモードだとか言ってたけど」

情報屋「少し炉を温めるわ…」グイ シュゥゥゥ

商人「湯も沸かそうか…」

魔女「ふむ?…」ゴシゴシ

商人「あぁゴメン起こしちゃったね」

魔女「焚火が気持ち良うて寝てしもうたのぅ…」

商人「まだ寝てて良いさ…夜が短いから明るくなってるけど本当はまだ寝てても良い時間さ」

情報屋「もう慣れてしまったせいかも知れないけれどこの狭い飛空艇の中も結構落ち着ける場所ね」

商人「そうかい?」

情報屋「もう20年も前からこの空間はあの時のままなのよ…」

商人「え?」

情報屋「この飛空艇はもともとアサシンの持ち物だったの…盗賊ギルドに居た頃何度か乗ったのよ」

商人「そうだったんだ…じゃぁこの飛空艇は僕達の歩みを全部見て来たんだね」

情報屋「そう…だからとても落ち着ける場所」シンミリ

魔女「剣士や女エルフが座る場所も決まって居ったな…」

情報屋「女エルフが手を置いた場所に同じ様に手を置いて…何を想ったのか想像する事があるわ」スッ

商人「もしかして何か聞こえる?」

情報屋「何も…でも頭の中で思い描く」

商人「それって命の声じゃ無いか?」

情報屋「え?」

商人「君の中に居るもう一人の君が話しかけているんじゃないか?」

情報屋「どうなんだろう?」ハテ?

商人「僕はね…自分の体は自分の考えで動かしてる訳じゃ無いと思うんだ…」

商人「何かに動かされて居るのを後から自分で動かしたと錯覚してる…つまりもう一人の自分が居るんだよ」

情報屋「私の思考は後から理由付けをする思考…確かにそんな感覚はある…」

商人「もう一人の自分は何に基づいて動くのか…それは心の中の声…命の声さ」

魔女「哲学じゃのぅ…」

商人「アヌが語る神の声は…多分この部分を狂わせる…生きる行動原理を阻害する…だから戦争が終わらない」

情報屋「それはあなたが不死者だから気付けた事?」

商人「そうかもね…体が勝手にゾンビみたいに動いてしまう…僕の意思とは無関係に…ホムンクルスが自由に動けないのも同じ原理さ」


---命の声に従って居るのさ---

『しばらく後』


ドタドタ ザラザラ ドサ


女海賊「大漁大漁!!」

商人「やっと帰って来たね…貝を拾いに行ってたのかい?」

女海賊「いんや…沈没船見に行ったら貝が一杯だったのさ…これ食べたら行くよ」

商人「じゃぁもう一回焚火起こすよ」スタ

魔女「また石化せんじゃろうのう?」

女海賊「ほんなん気にしてたら何も食べれないって…線虫しとくから気にしないで食べよう」

情報屋「沈没船には他に何か有って?」

女海賊「なんも無いさ…資材になるくらいかな」


ホムンクルス「はぅ…」ムクリ パチ キョロ


女海賊「ホムちゃん起こしちゃったね…貝取って来たんだ…食べる?」

ホムンクルス「いつの間に寝てしまったのでしょう…妖精さんは何処へ?」

女海賊「妖精は昼間あんま出てこないさ…おっぱいに挟まって寝てるよ」

魔女「昨夜は沢山話をして居った様じゃな?何か聞けたんか?」

ホムンクルス「他愛もないお話を…」

女海賊「そだね…妖精は難しい話はしないさ」

魔女「ほうか…」

ホムンクルス「満たされた感覚があります…」

女海賊「そうそう!!その後お腹減るのさ…でっかい貝取って来たから食べよ」グイ

ホムンクルス「はい…」ヨロ

『焚火』


メラメラ ジュゥ


商人「んん?中身の無い貝が有るな…」

女海賊「あああ!!それ焼いたらダメ!!魔女にエンチャント掛けてもらうつもりで持って来たんだ」

魔女「んん?例の貝殻を作るのかえ?」

女海賊「通話できる貝殻を全員が持って無いじゃん?」

魔女「わらわとしか通話できぬが…」

女海賊「わかってんよ…みんなに配りたいだけさ」

魔女「まぁ良い…後でで構わんな?」

女海賊「うん…あちちち…はいコレ!でっかい謎の貝…ホムちゃん食べて良いよ」ポイ

ホムンクルス「はい…ありがとうございます」ハム モグ

商人「ハハ…謎の貝って大丈夫なんだろうね?」

女海賊「貝はなんでも食えるんだ…次魔女!!あちちち…」

魔女「ほう?こりゃ楽しみじゃ…」ジュルリ

女海賊「情報屋も沢山食べてね…血が足りないのに良く効く…ほいコレ!!」

商人「まぁ僕は良いや…ワインでも飲んでおく」グビ

女海賊「はふっ…ほふっ…うんま!!」モグモグ

魔女「焼き芋も余って居るぞよ?」ポイ

女海賊「貝の汁の中に漬けて食べると芋も美味しいんだ…」モグモグ

商人「それで…この後どうするんだい?」

女海賊「ホムちゃんの旦那が生まれるまで1ヶ月くらい掛かるよね」

ホムンクルス「旦那…」ピク

商人「まぁ…そんなもんかな」

女海賊「それまでここに置きっぱなしにする訳に行かないからとりあえず連れてく」

商人「それは良いとして行き先さ…」

女海賊「命の泉に行くに決まってんじゃん」ガブリ モグ

商人「ハハハまぁ…そうだよね」

女海賊「分かってんなら聞くなよバーカ!」

商人「君は単純なんだねぇ…」

女海賊「はぁ?単純も何も他に選択無いじゃん!!」

商人「うん…良いんだ…僕が深読みし過ぎた」

女海賊「何さ?他に何かあんの?」

商人「いや何でも無いよ…」---君はそのまま突っ走っても良いよ---


---例え神の逆鱗に触れようともね---

---命の水はアヌが目的を持って集めた水の筈---

---君はそれを無下にしようとして居るのさ---

---さぁ賭けだ…命が勝つか…神が勝つか---

『鯨型飛空艇』


シュゴーーーーー フワフワ


女海賊「あぁぁちっと食い過ぎた…」ゲフゥ

魔女「わらわは満足じゃ…」フゥゥ

商人「ハハ食べ過ぎは良くない」

女海賊「んん?良いんだって…私のエネルギーになって貝の命も無駄になって無い」

商人「ハハーン…弱肉強食を僕に説こうとしているかい?」

女海賊「昨夜そんな様な話してたじゃん…丸聞こえなんだよ」

商人「聞いて居たか…」

女海賊「私のウンコ食う?」

商人「なにバカな事言ってるんだ食べる訳無いじゃ無いか」

女海賊「冗談だよ…でもワームは喜んで食べる…そうやって命が巡ってるんだよね」

商人「フフそうだね…それが分かって居れば君に全部預けても良い」

女海賊「預ける?」

商人「そう…この世界の行く末をね」

女海賊「あのね…そもそもアンタはもう死んでんの…輪廻の外側に居るんだからあんたに選択する権利はそもそも無い」

商人「まぁそう言わないでおくれよ…その内肥料にでもなるさ」

女海賊「ふむ…なら良いか」

商人「こういう話が出来ると言う事は…君もこの世界の秘密に気付いているね?」ジロ

女海賊「何?その眼は…」

商人「勘の鋭い君が勇者で良かった…剣士は鈍感だったからさ…」

女海賊「あのね…人の気持ち逆撫でるの止めてくんない?イラつくんだ」イラ

商人「はぁぁぁ…僕はすべて達成した…思い残す事無いなぁ…」ノビー

女海賊「あんた私の奴隷だって分かってる?遊んで無いで働け!!地図書け地図!!名もなき島の地形変わってんじゃん!!」

商人「ハハ忘れてた…そうか僕には地図を書く仕事も残されてるなぁ…」ゴソゴソ

『海上_上空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「中緯度域に入って弱いけど偏西風に乗れてる…」

商人「このまま進めばハテノ村かな?」

女海賊「ハテノ村には行かない…大陸見えたら陸沿いに南下してお姉ぇの幽霊船目指す」

商人「幽霊船の現在地は?」

女海賊「地庄炉村目指して今キ・カイの沖だってさ」

商人「向こうも行動早いね」

女海賊「内海から早く出たいのさ…航海出来なくなる前にね」

情報屋「陸を見ながらならどうにか航海出来ると言って居たわね」

商人「それは岩礁が怖いねぇ…」

女海賊「ホムちゃんはまだ衛星見つけらんない?」

ホムンクルス「はい…現在地不明です」

女海賊「ちっと連れまわさないとダメかぁ…」

ホムンクルス「私は大丈夫ですよ?」

女海賊「あのね…今度こそホムちゃんを死なせる訳に行かないの…危ない所に連れまわしたく無いんだ」

ホムンクルス「それは皆さんも同じでは?命は一つしかありませんので…」

商人「ハハその通りだね」

女海賊「野望があんのさ…ホム島でホム一族繁栄させてホム国作ってホムホムしたいんだ」

ホムンクルス「え?あの…」

魔女「主の脳みそはどうなっとるんかいのぅ…ホムホムとは何ぞや?」


ヒラヒラ パタパタ


妖精「良いねぇ!!乗ったぁぁ!!」ヒョコ

女海賊「お!?あんたに分かる?」

妖精「僕もホムホムしたぁぁい!!」クネクネ

ホムンクルス「妖精さん?お話しましょう…」

妖精「おっけー!!何して遊ぶ?」クルクル


魔女「ふむ…つまり妖精の国を作りたいのじゃな…」

女海賊「おおおおおおお!!それも良い!!そうだな…妖精の国かぁ…」

魔女「主の頭には付いて行けぬ…感染してしまいそうじゃ…」

情報屋「ウフフ楽しそうで良いじゃない…」

『大陸_上空』


シュゴーーーー ヒュゥゥ


女海賊「やっぱ大分ズレてるなぁ…地図と比較して現在地分かる?」

商人「陸沿いに真南に進んで…多分偏西風で北に引っ張られたんだ」

女海賊「高緯度域飛ぶときは東西がアテにならんわ」

商人「夜中に星を見ながら飛ぶのが確実だね」

女海賊「そういうつもりで飛んでる筈なんだけどなぁ…なんでズレちゃうんだ?」ブツブツ

ホムンクルス「地磁気が安定して居ないので羅針盤の方角がおかしいと思われます」

女海賊「ん?どゆこと?」

ホムンクルス「地軸の移動後数年は地磁気が安定しないので磁極が動くのです」

女海賊「なんか良く分かんないけど羅針盤はアテにしちゃダメって事ね」

ホムンクルス「はい…特に高緯度域ではアテになりません」

女海賊「おけおけ覚えとく」

商人「分かったぁ!!場所特定出来たよ…此処さ」パサ

女海賊「ええと…羅針盤じゃ無くて地形で方角決めれば良いな…」グイ



『キ・カイ上空』


シュゴーーーー ヒュゥゥ


女海賊「ここまで来たらもう迷わない…陸沿いに東!!」グイ

情報屋「霧が酷くて幽霊船を見落とすかもしれない…高度落として」キョロ

女海賊「おけおけ…」

商人「流氷が東に流れて行ってるね…」

魔女「陸からは今ぐらいの距離で良いぞ…直に追いつくじゃろう」

女海賊「順風でちょい北寄りの風か…幽霊船もそこそこ速度出てそうだな」

情報屋「暗くなる前に見つけたいわ?」

女海賊「よっし!!ちょい魔女そのままお姉ぇの眼を見てて」ダダ チャキリ

魔女「何をする気じゃ?」

女海賊「インドラの光を前方に撃つのさ…いくよ?」カチ


シュン! パパパパパパパパパーン!!


商人「うわ…空中の水蒸気を破裂させてるのか…」

女海賊「どう?お姉ぇ気付いた?」

魔女「反応無いのぅ…」

女海賊「ほんじゃちょい角度変える…もういっちょ!」カチ


シュン! パパパパパパパパパーン!!


魔女「むむ!空を見上げたのぅ…」

女海賊「おけおけ!!進路変える…そっちの方向だ」グイ

商人「ハハなんとも強引なやり方だ…」

女海賊「使える物は何でも使うんだよ!!頭は使うためにあるのさ」

『幽霊船』


フワフワ


女海賊「こっから船尾に飛び移って!!」

魔女「わらわには無理じゃぞ?」タジ

ローグ「姉さ~ん!!ロープ投げて下せぇ!!」

女海賊「おっけ!!どっか結んどいて!!」ポイ シュルシュル

商人「先に行くね…」ピョン

魔女「なんちゅう薄情な奴じゃ…」

女海賊「ほんじゃ私に掴まって…一人ずつワイヤー使って降ろすからさ」

魔女「初めからそうすれば良いのじゃ…」ノソノソ ガシ

女海賊「情報屋とホムちゃんちょい待っててね…すぐ戻る」シュルシュル

ホムンクルス「私に飛べるでしょうか?」

情報屋「大人しく待って居た方が良いわ?私には無理ね」

女海賊「おっけー!!次ホムちゃんおいで」シュルシュル

ホムンクルス「はい…」トコトコ ガシ


--------------

--------------

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『船尾』


ザブ~ン ユラ~


ローグ「済まんっすねぇ…姉さんの飛空艇は異形なんで乗らんでやんす」

女海賊「改修して全部縦帆にしちゃったから船尾にスペース無くなっちゃったね」

ローグ「元はガレオン船なんすが帆装がスクーナーになったんでしゃーないっす」

女海賊「まぁ良いや…ロープ予備ある?」

ローグ「へい!!」

女海賊「一本だけじゃちっと心配だからもう一本結んで来る」

ローグ「分かりやした…甲板は寒いんで居室に入っていやすぜ?」

女海賊「おけおけ!後で行くわ」シュルシュル

ローグ「いやぁぁあのワイヤー装置めちゃくちゃ便利っすね…」

魔女「これ!!関心しとらんで早う居室に入るぞよ…寒いんじゃ」ポカ


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『居室』


ガチャリ バタン


女海賊「ぅぅぅぅさぶ…」ゴシゴシ

女戦士「炉に火が入って居るぞ…暖まるが良い」

アサシン「ワインもあるぞ?飲むか?」ゴク

女海賊「何これ?みんなくつろぎモード入っちゃてる?」

女戦士「航海はゆっくりだ…お前も少し休んだらどうだ?」

女海賊「まぁ良いけどさぁ…」スタ

女戦士「無事にホムンクルスを目覚めさせ何よりだ」

女海賊「ほんでさぁ…私命の泉に行かなきゃいけないんだ」

女戦士「フフ…聞いたかアサシン?」

アサシン「クックック期待を裏切らんな」

女海賊「何さ!?二人して!!」

女戦士「お前の行動癖を予測して居たのだ…次は何処かと賭けをして居た所だ」

女海賊「ちょ…」

アサシン「私の勝ちだ…金貨は頂く」

女戦士「仕方あるまい…」ドサ ジャラリ

魔女「随分と高値の賭けじゃな?」

女戦士「私は外海に出ると言いだすと予想していたのだ…アサシンはピンポイントで命の泉と予測した」

アサシン「それで賭け額が跳ね上がったまでの事」

女海賊「なんで命の泉に行く事分かってんの?」

アサシン「勘だ…第六感が働いたとでも言えば納得するか?クックック…」

女海賊「なんか腹立つなぁ…」ブツブツ

アサシン「さて次の賭けだ…出立は明日の朝だ」

女戦士「では私はその後…金貨1枚」チャリン

アサシン「フフまた私が勝ちそうだな…」

女海賊「あのさ?私が居るんだけど…その賭けなんか意味あんの?」

女戦士「気にするな…道楽なのだ」

商人「面白そうだなぁ…じゃぁ僕は明後日に金貨2枚」チャリン

女海賊「アホらし…ホムちゃん荷室にアラクネーの巣があるんだ…見に行こう」グイ

ホムンクルス「はい…」

『翌日』


カーン カンカン ゴシゴシ


ローグ「頭ぁ!!姉さんが大砲をバラバラにしてるんすが…放って置いて良いんすか?」

女戦士「フフやらせておけ」

ローグ「こういう時って機嫌損ねていやすよね?」

アサシン「クックック本当に単純だな…賭けの対象にされて意地を張っている」

女戦士「私達の作戦勝ちだ…これで2~3日はここに止まる」

ローグ「近づかん方が良さそうでやんす…」

女戦士「まぁ丁度重装射撃砲の真似をして改造しようと思って居た所だ…妹の方が器用だから良い大砲に作り替えるだろう」

魔女「主らも人が悪いのぅ…」

女戦士「どうせまた寝て居ないのだろう?落ち着いて考える時間も必要に思う」

魔女「確かにそうじゃが…作り物も体力を使うじゃろうて」

女戦士「湯に浸かって体を温めれば寝る筈だ…昔からそういうクセがある」

アサシン「フフ重ねて言うが分かりやすい女だ…」

魔女「どうやって湯に浸からせるかじゃな…」

狼女「匂うって言ったら一発だよ」

女戦士「ローグ!!折を見て湯を沸かして置いてくれ」

ローグ「分かりやした…」


-----------------

『甲板』


カチャカチャ コンコン


女海賊「ホムちゃん寒いから無理して付き合わなくて良いよ?」コンコンコン

ホムンクルス「少し体を鍛えようと思いまして…」ヨイショ ヨタヨタ

女海賊「お?どしたん?」

ホムンクルス「妖精さんに追いつけないので…」

女海賊「なるほど!!ほんじゃさ?砲弾をここまで持って来てくれる?」

ホムンクルス「はい…分かりました」

女海賊「危ないから一個づつね」カチャカチャ

ホムンクルス「行って来ます」トコトコ


ヨッコラ ドスン


商人「火鉢持って来たよ…寒いんじゃないかい?」

女海賊「おー分かってんじゃん!」スリスリ

商人「どんな改造してるんだい?」

女海賊「大砲の初速上げて飛距離伸ばす工夫さ…砲身の内側に細工してんの」コンコンコン

商人「へぇ?内側に溝が付くようにしてるのか…それだと口径が小さくなるね」

女海賊「威力よりも飛距離と精度の方が重要なんだよ…当たんなきゃ意味無いから」

商人「どのくらいの距離を想定してる?」

女海賊「そうだなぁ…600メートルでそこそこの命中精度出れば海戦で負ける事無いと思うな」

商人「あれ?普通の大砲ってそんなもんじゃない?」

女海賊「それは最大射程の話だね…そんなんそうそう当たんない…私が欲しい最大射程は1500メートル以上」

商人「なるほどね…」

女海賊「相手の射程外からどんだけ当てられるかってのが重要なのさ…当てられれば大砲1門で十分」

商人「ふむ…海賊は大体300メートルくらいの撃ち合いだね」

女海賊「そうそう…てか角度合わせたり色々あってそんな当たんないんだよ」

商人「当たらない弾は撃つだけ無駄だねぇ…」

女海賊「海賊はバカだからそこら辺分かって無いのさ」

商人「なんか…改造に結構時間掛かりそうだね?」

女海賊「てか何か手伝えよ…ちょいバラして転がった部品集めといて」

商人「ハハまぁ暇だったし少し手伝うかな」ヨッコラ


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『半日後』


シュン! パパパパパーン! チュドーーーン


女海賊「え!!?」キョロ

ホムンクルス「リカオンさんが船首で流氷を撃っている様です…ご安心ください」

女海賊「なんだビックリしたよ…」

商人「大き目の流氷は船体を傷つけるかも知れないから壊しながら進むらしいよ」

女海賊「ほーん…ほんじゃインドラの銃は幽霊船に置いて行った方が良さそうだ」

商人「そうだね…」

女海賊「ちっとお腹空いて来たなぁ…商人!何か持って来てよ」

商人「パンとチーズで良いかい?」

女海賊「火鉢あるんだからそこで魚焼いて!!」

商人「お?魚なら大量にあるんだ…持ってくる」タッタ

女海賊「ホムちゃんも運動してお腹空いたんじゃない?」

ホムンクルス「そうですね…生体の筋肉増強の為にタンパク質を摂取する必要があります」

女海賊「ほんじゃ魚で丁度良いじゃん」

ホムンクルス「はい…栄養のバランスの為に私も食材を調達してきます」ヨタヨタ


シュタタタ


狼女「女海賊か…」

女海賊「リカ姉ぇ…どしたん?」

狼女「何か匂うと思って見に来たんだよ…」

女海賊「え!?私?」クンクン

狼女「女戦士が湯を沸かしてる…浴びてきたらどうだ?」ニヤ

女海賊「なんだろ…油の匂いかなぁ?」クンクン

狼女「火薬に錆びた鉄…油に…なんだこの匂いは…魚介の匂いだ」

女海賊「ヤッバ…全部心当たり有るわ…」

狼女「大砲の改造は程ほどにして匂いを落としてきた方が良い…」

女海賊「今から魚食べるんだ…その後に行くわ」

狼女「じゃぁね‥」ノシ

女海賊「そんな臭いかなぁ…」クンクン

狼女「…」---チョロいw---

『夕方_居室』


ドタドタ ドタドタ


女海賊「ふぃぃぃ…ダメだ…ホムちゃん一緒に寝よう」フラフラ

ホムンクルス「私は帆の張り替えを手伝って来ますので…」

女海賊「そんなんやったら手の皮ズル剥けになるよ?」

ホムンクルス「分かりました…対策して行きます」

女海賊「目が回る…も…もう寝る」ドター


アサシン「…」クックック

女戦士「…」チラリ

狼女「…」ニマー


女戦士「ホムンクルス!帆の張り替えを手伝うとはどういう事だ?」

ホムンクルス「筋力を付けようかと…」

女戦士「なるほど?丁度風向きが変わる頃だ…よし!3分全力でやって10分休め…それを3回繰り返したら肉を食して寝ろ」

ホムンクルス「はい…でもそれでは9分しか手伝った事になりませんが…」

女戦士「筋力の増強はそれで十分…但し全力でやるのだ」

ホムンクルス「分かりました…明日も継続するのですね?」

女戦士「いや…1日置きだ…十分体を休ませてからでないと怪我をするぞ」

ホムンクルス「はい…」シュン

魔女「筋力が欲しいとな?」

ホムンクルス「妖精さんに追いつけないのが悔しいのです…」

魔女「ほう?まっとうな理由じゃのう?」

女戦士「ふむ…速さが欲しいなら帆の張り替えが丁度適している…瞬発力が付くからな」

ホムンクルス「分かりました…行って来ます」トコトコ

商人「フフ…悔しいねぇ…そんな感情も持つ様になったのか」

情報屋「これは生命が持つ本能?」

商人「それしか考えられないね…生存本能なのか…自己肯定本能なのか…生命はそうやって進化して行くのさ」


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『数日後_地庄炉村の沖』


ザブ~ン ギシ


アサシン「…これは餞別だ…好きに使って良い」ジャラリ ドサ

女海賊「リカ姉…私からも」ドサ

狼女「これは魔石?」

女海賊「ワイヤーの装置に魔石必要になるから…ほかにも色々さ」グスン

狼女「フフ貰って置く」

ローグ「ほんじゃリカオンさん気球に乗って下せぇ…地庄炉村まで送りやす」

女海賊「リカ姉ぇ!!」ダダ ギュゥゥ

狼女「何…一生の分かれじゃ無いって…」

女海賊「もうリカ姉ぇの尻尾で体洗えないと思ったら寂しくなってさ…」ギュゥ

狼女「あのね…こっち迷惑してるの」

女海賊「尻尾だけ置いて行ってくんない?」グイ

狼女「触らないでって言ったでしょう!!」グイ

ローグ「あのー…早く乗ってくれやせんかね?」

狼女「ゴメン今行く…」ピョン シュタ

アサシン「ではリカオン…出来るだけ早く使いを出す…いつもの要領で接触するのだ」

狼女「分かったよ…父によろしく」


フワフワ


狼女「じゃぁまたね」ノシ

女海賊「ぶわぁぁ…リカ姉ぇ…尻尾ぉお…」ヨロ


---------------

『付近の小島』


ギシギシ ユラ~リ


女戦士「気球が帰って来るまでここで一時待機だ…小島で水を補給するから小舟を降ろせ!!」

海賊共「へ~い!!」ドスドス

女海賊「…」トボトボ

情報屋「そんなに寂しいの?」

女海賊「リカ姉ぇが好きだったんだよ」

魔女「何て言えば良いのか分からぬが…主の飛空艇でいつでも会いに来れるじゃろう?何故それほど悲しむかのぅ…」

女海賊「あれ?そういやそうだな…いやそうじゃない…リカ姉ぇが取られちゃうのがさ…」

魔女「取られるとはどういう事じゃ?」

女海賊「なんか地庄炉村に気になる男の人が居るんだってさ…」

魔女「なんじゃそんな事か…主の脳みそは本真に何を考えてるか分からんわい」

女海賊「ほんなん知るもんか!!本能だよ本能!!」


トコトコ


ホムンクルス「女海賊さん…リカオンさんへ祝砲を撃ってみるのはどうでしょう?」

女海賊「お!!?イイね!!」ダダダ


女海賊「お姉ぇ!!お姉ぇ!!大砲試し撃ちして良い?」


女戦士「火薬を無駄に使うな…」

女海賊「改造した後まだ一回も撃って無いのさ」

女戦士「そうか…では流れて来る流氷に当ててみろ」

女海賊「おけおけ…おっし!!海賊共!!大砲の撃ち方教えるからコーーイ!!」ダダダ

『水平迫撃砲』


…この大砲は砲弾の装填が特殊なんでしっかり覚えて

後装式といってこの後ろの蓋を開けて砲弾入れるの…ほんでしっかり蓋閉める

次に火薬を入れるのがコッチ…こっちもやっぱ入れた後蓋をしっかり閉める

照準は2軸式…水平射撃用と遠距離射撃は使う照準器が違うから注意

最後に射撃時は真後ろに立ったらダメね…反動で砲身が動くようになってるからパンチ食らうよ


海賊共「ほう…これはキ・カイの技術かいな?」

女海賊「私のアレンジも入ってるさ…ほんじゃ一発向こうの流氷狙うから見てて…」グイ カチ


ドコーン!!


海賊共「うほーーー」

女海賊「んあぁぁぁ…色々工夫したけど重装射撃砲と同じだなぁ…」

ホムンクルス「砲身が短いのが原因ですね」

女海賊「ホムちゃん分かる?」

ホムンクルス「直進性を増す為にライフル砲を採用している様ですがそれも初速が落ちる原因です」

女海賊「これ無いと狙った所に行かないのさ」

ホムンクルス「では…すこし射角を上げて精度よく当てらる様に照準を工夫すれば良いのでは無いですか?」

女海賊「それさ…相手との距離が正確に分かんないと当たんないんだよ…だから水平にこだわってんのさ」

ホムンクルス「望遠鏡を使って測量していますよね?」

女海賊「ダメダメ…精々300メートルくらいしか精度出せない」

ホムンクルス「分かりました…右目と左目を使って双眼鏡で三角測量する器具を作れば良いと思います」

女海賊「え!!?なるほどそうか…三角法で距離求めるのか」

ホムンクルス「この大砲でしたら測量さえ精度良く行えば600メートル程度の精密砲撃が出来ると思われます」

女海賊「よっし!もうちょいだな…」スタタタ


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『荷室』


ガサゴソ


女海賊「使えそうな鋼材余って無いかなぁ…余ってるクロスボウバラシて鋼材にでもすっかぁ…」ゴロン

女海賊「ん?なんだコレ?」スッ

女海賊「黒い壺?なんだこれ?」

女海賊「あぁぁ思い出した…リリスを封じてた封印の壺だ…蓋が無くなっちゃったんだっけ…」

女海賊「そういや魔女に貰ったんだ…忘れてた」

女海賊「てかコレ蓋作れないんかな?…ちっと魔女に聞いてみるか」


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『居室』


ガチャリ バタン


女海賊「魔女居る?」キョロ

魔女「んん?何事じゃ?」

女海賊「荷室に封印の壺置きっぱなしだったんだけどさ…これもっかい蓋作れないの?」

魔女「付呪師なら作れるがわらわには作れんのぅ…蓋は無うても入れ物としては優秀じゃと言うた筈じゃが?」

女海賊「すっかり忘れてたさ…どうやって使うんだっけ?」

魔女「只のカバン替わりじゃな?主は持ち物が多かろう…その壺にはようけ物が入るぞよ?」

女海賊「まぁ良いや…蓋は自分で作るかぁ」

魔女「そうじゃな?逆さにすると落ちてしまうで簡単な蓋は有った方が良かろう」

女海賊「なんか入れてみっか…」スポ

魔女「長い物も入る故に主にはピッタリの壺じゃ」

女海賊「お?お?お?うおぉぉメッチャ入るじゃん」スポスポ


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『小島』


エッホ!!エッホ!!


女戦士「樽に入れるのは雪だけでは無く漂着した氷も入れて持ち帰る」

海賊共「がってん!!」ドスドス

アサシン「流氷があれば水には困らん様だな」

女戦士「こまかくするのが難義だ…」スパ スパ ゴトン

アサシン「しかし何処から流れて来て居るのか…」

女戦士「この様子だと直に氷山も流れて来そうだ…」スパ スパ

アサシン「インドラの銃で破壊出来んか…」

女戦士「やはり今の内に内海を出るのが正解だな」

アサシン「ふむ…商船をこちらによこすのは厳しそうだな…」

女戦士「いやそうでも無いぞ?この辺りは比較的海が浅いのだ…大きな氷山はもっと沖の方になる」

アサシン「ほう?つまり陸沿いならなんとか来られる訳か」

女戦士「問題は海流が逆だと言う所…船底の浅いスクーナーが必要になる」

アサシン「ううむ…フィン・イッシュには少ないタイプの船だな…」

女戦士「我々海賊がスクーナーを好む…逃げやすいのでな?」

アサシン「フフ…味方で良かった」


シュン! パパパパーン! チュドーーーン!


女戦士「んん?」キョロ

アサシン「空に向かって撃って居るな…」

女戦士「まさか…ガーゴイル?」

アサシン「どうやらゆっくり出来ん様だ…」スック

女戦士「海賊共!!引き上げるぞ!!」

海賊共「へ~い!!」ドスドス

『甲板』


ドタドタ


女海賊「ちょっと商人!あんま遠くのガーゴイル倒しても意味無いから」

商人「そうだったね…精度良すぎるからツイ使っちゃう」

女海賊「ガーゴイルなんか20メートルくらい近付くまで放置で良い」

情報屋「ねぇ…月が出てる」ユビサシ

女海賊「本当だ…」

商人「なんか計算合わないねぇ…今頃北半球の側に月が有る筈なのに」

女海賊「水平線なぞって横に移動すんじゃね?」

情報屋「多分そうね…今からしばらく月が見えっぱなしに思うわ」

商人「地軸の移動も合わさってるから分からなくなるね」

女海賊「落ち着くまで観測も無駄さ…それよりガーゴイルが今の時点で出てるってのがなぁ…」

商人「まぁ僕が見張っておくよ」

女海賊「はいはい…私作り物してるから居室入っとくわ」スタ


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『しばらく後_居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ帰ってきたんだ?」

女戦士「インドラの光を見て慌てて帰って来たが大した事無かった様だ」

女海賊「月が出て狭間が近づいてるのさ」

女戦士「うむ…今観測をさせている」

女海賊「意味無くね?」

女戦士「月の公転の傾き具合が分かるぐらいか…」

女海賊「早い所ホムちゃんに衛星見つけてもらうだね」

女戦士「ところで今度は何を作っているのだ?」

女海賊「距離観測用の双眼鏡さ…望遠鏡だとあんま精度無いから三角法も併用すんの」カチャ

女戦士「ほう?面白そうだ」

女海賊「これお姉ぇの方が上手く作るかもね」

女戦士「双眼で見てどう距離に換算する?」

女海賊「基準になる照準と目標にピント合わせた時の差分を測るのさ…覗いてみ?」ポイ

女戦士「ふむ…なるほど」クリクリ

女海賊「いま触ってるダイアルに数値書いてるんだ…それが補正係数…あとは普通の測量だよ」

女戦士「これで対象までの距離を精度よく求めるのか」

女海賊「そそ…あとは大砲の射角調整すればドンピシャで当たる…筈…」

女戦士「大砲を撃たせるのは測量士にやらせた方が良いな」

女海賊「そだね…計算早い人が良い」

女戦士「よし!双眼鏡の構造は理解した…後は私がやろう」

女海賊「ホムちゃんが言うにはちゃんと測量すればあの大砲で600メートルの精密砲撃が出来そうだってさ」

女戦士「…という事は対象が大型の船だった場合はもっと遠距離から狙えるな」

女海賊「こっちも船で揺れてるからそう簡単には行かないと思うけどね…」



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ドタドタ


ローグ「頭ぁ!!戻ってきやしたぜ?」

女戦士「ご苦労!!物資調達はどうだ?」

ローグ「布とロープを仕入れて来やした…食料もボチボチでやんす」

女戦士「よし!では出港させろ」

ローグ「へい!!…で?頭は何を作ってるでやんすか?」

女戦士「測量用の双眼鏡だ」

ローグ「あぁ望遠鏡の一種っすね…」

女戦士「悪いが私は手を離せん…海賊共に出港させて来い」

ローグ「わかりやしたぁ!!」ダダ



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女海賊「おーーーし!!これで私が賭け金全部頂きさ」ジャラジャラ

女戦士「…」チラリ

アサシン「フフ…」

商人「良く我慢したねぇ…」ボソ

女戦士「商人!余計な事を言うな!」

女海賊「んん?まぁ良いや…ほんじゃちっと命の泉まで行って来るわ」

女戦士「誰を連れて行く?」

女海賊「どうすっかなぁ…ホムちゃんは衛星探すのに連れて行くとして…」

女戦士「やはり商人と情報屋か?」

女海賊「なんか毎回同じなんだよなぁ…安定っちゃ安定なんだけど…」

情報屋「私はもう少し体力をつけてからにしたいわ」

女海賊「おけおけ…ほんじゃ商人とローグかな」

女戦士「…との事だ…ローグ!お前が女海賊の見張り役だ」

ローグ「へい…わかりやした」

女海賊「何さ見張り役って…」

女戦士「お前は鎖を付けておかないと直ぐに何処かへ行ってしまうのでな」

女海賊「なんだよちゃんと帰って来るさ」

女戦士「幽霊船は陸沿いに外海側からフィン・イッシュを目指す予定だがどこで合流する?」

女海賊「フィン・イッシュまでハイディングしないで航海したら結構掛かるよね…まぁ海岸沿い探して戻って来るさ」

女戦士「インドラの銃は借りて置くぞ?光の石で照らして置けば空からも探しやすかろう」

女海賊「お!?それ良いね…晴れてたらメッチャ遠くから見えるわ」

女戦士「では決まったな?」

女海賊「まぁこっちはハイディングして移動すっから直ぐに戻るさ」

女戦士「そうしてくれ」

『鯨型飛空艇』


シュルシュル スタ


女海賊「はいホムちゃん飛空艇に乗って」

ホムンクルス「はい…」ピョン

ローグ「次あっしが行きやすぜ?」シュルシュル

商人「ほっ!!」ピョン

ローグ「ワイヤー装置有るとラクっすねぇ…」ピョン

女海賊「おっし!!ロープほどいて…」グイグイ ポイ

ローグ「姉さんはいつも商人さんを連れて行くのは理由があるんすか?」

女海賊「商人は寝ないからさ…見張りとか操舵をずっと任せられるんだよ」

商人「ハハ…まぁそうだね」

ローグ「理解しやした…姉さんにとってラクなんすね」

女海賊「食事も要らないし何処行ってもお金に困んないし…捨て駒にしても死なないし」

商人「捨て駒とは酷いな…」

ローグ「いやいやこれは姉さんの誉め言葉なんすよ…出来る男に出来るって言わないでやんす」

女海賊「はいはいもう出発するよ…ホムちゃん操舵の仕方を教えるからこっち来て」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「ほんじゃ良く見ててね」グイ シュゴーーーーーー


フワフワ

『上空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


ローグ「これ北に向かうだけじゃ向こうの大陸に着かんのですかね?」

商人「それダメだね…外海のど真ん中飛んじゃう可能性がある」

女海賊「羅針盤はアテに出来ないんだ…陸の形を見ながら方向定める感じ」

ホムンクルス「南極では全部の方向が北です…そして今磁極がどこにあるのか分からないのです」

女海賊「だからホムちゃんの衛星頼りなのさ」

商人「そういえばさ?衛星は黒色惑星の影響を受けて居ないかな?」

ホムンクルス「静止軌道から外れている可能性が高いので出来るだけ早く修正しないと落下します」

女海賊「えええ!!それ超マズイじゃん」

商人「修正とは?」

ホムンクルス「推進力を制御するエンジンが搭載されていますので軌道の修正が可能です」

商人「エンジン?」

ホムンクルス「皆さんに分かる言い方ですと風の魔石と言う所でしょうか」

商人「なるほど…」

女海賊「それに乗って月に行けたりしない?」

ホムンクルス「女海賊さんが乗って行く事は不可能です…1万パーセント無理と言えば理解してもらえますか?」

商人「1万パーセントw」

女海賊「めっちゃ分かりやすい」

商人「月の公転がすごい変わってるけど平気なのかな?」

ホムンクルス「およそ200年程で元の軌道に戻ると予測します…数十年は洪水の影響が一番大きいかと思われます」

商人「情報屋も同じ事言ってたな…海抜100メートル変わる場所もあるとか」

ホムンクルス「その通りです…しかし現在の文明圏では20メートルくらいでしょうか」

商人「そうか…僕達は未踏の地がどうなってるのか知らないだけか…」

『外海へ抜ける海峡_上空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「おっし!分かったぞ…こっから右方向に行けばフィン・イッシュ領方面だ」

ホムンクルス「もう少しで高緯度域を出ると思われますので羅針盤も少しはアテになるでしょう」

商人「船が5隻くらい外海に出た所に居るね…」

女海賊「どれどれ…何の船だろう?」スチャ

ローグ「あっしにも望遠鏡貸して下せぇ」

女海賊「あんたに何処の船か分かる?」パス

ローグ「そらあっしも海賊歴長いでやんすからね…ええと…」

商人「今の状況で航海しようとする船はロクな船じゃないと思うな」

ローグ「当たりでやんす…豪族があそこで出待ちしてるみたいっすね…ちっと頭に連絡しておきやす」

女海賊「迫撃砲の試し撃ち出来んじゃん」

ローグ「外海の方まで出たらハイディング出来るんで多分大丈夫でやんすよ」

女海賊「インドラの銃もあるんだから全然心配してないよ…」


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『幽霊船_甲板』


女戦士「使い方は分かったな?…次はもう一つ向こうの流氷までの距離を測ってみろ」

測量士「がってん!!」クリクリ

女戦士「どうだ?」

測量士「1.278×660メートル…843メートルでごわす!!」

女戦士「あとは迫撃砲の射角だな…撃ってみるか…」

測量士「任せてがってん!!」

女戦士「ふむ…やってみろ…」ツカツカ


ノソノソ


魔女「女戦士や…ローグから連絡じゃ…貝殻を持てい」スッ

女戦士「んん?進路に何か妨害を見つけたな?」スッ


”頭ぁ…聞こえていやすかね?”

”どうした?”

”外海に出る海峡で豪族の船が5隻出待ちしてるんす”

”ふむ…船の大きさは?”

”キャラック船1隻とスクーナー4隻っすね…多分セントラル軍船崩れでやんす”

”分かった…距離を開けつつ様子を伺う”

”流氷もポツポツ流れてるんで気を付けて下せぇ”

”哨戒ご苦労!”

”じゃぁまた何か有ったら連絡しやす…ザザー”


女戦士「測量士!豪族と海戦になるかもしれん…今の内に迫撃砲の着弾精度を上げておけ」

測量士「距離はどの位で?」

女戦士「800メートル以上で当てられる様に工夫しろ…それだけ離れれば向こうの大砲はこちらに届かん」

測量士「がってん承知の助!!」ドタドタ


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『翌日_外海に出る海峡』


ザブ~ン ユラ~リ


アサシン「やはり向こうもこちらに気付いて居そうだ」

女戦士「なかなか優秀な見張りが居るらしい…」

アサシン「このまま直進か?」

女戦士「先ずは出方を見ん事にはな…既に一隻私達の後方に回ろうとしている様だが…」

アサシン「主力は大きなキャラック船か?」

女戦士「さぁな?アレに近付かないようにこちらが動くと思って居るのだろう」

アサシン「どうする?インドラの銃なら先制で打ち込めるぞ?」

女戦士「まぁ待て…それは奥の手だ…こちらの迫撃砲も試してみたかったのだ」

アサシン「砲弾が随分小さいから決定力が無さそうだが?」

女戦士「着弾させて追い散らせば良いのだ…貴重な船をわざわざ壊す事もあるまい」

アサシン「クックック私は高みの見物と行こう」スタ


海賊「頭ぁ!!こっちの射程に入るでがんす!!」


女戦士「まだ撃つな!!キャラック船とは1kmの距離を置いて少し左に転進しろ!!」

海賊「へい!!」ドドド

女戦士「4隻のスクーナーに囲まれる筈だから狙うのはスクーナーだ!外すな!?」

測量士「がってん!!」

女戦士「有効射程に入り順次当てて行け!!」

『海戦』


ドコーン!!


アサシン「フフ…そう簡単に動く的には当たらんか」

魔女「向こうは撃ち返して来んのぅ…」ノソリ

女戦士「射程外だからな…」


ドーン ドーン ドーン ドーン


アサシン「クックック届かんのも分からんのか奴らは…」

女戦士「こちらに大砲が1門しか無い事を知って居るのだ…包囲してるぞという合図」

アサシン「なるほど…」

女戦士「測量士!!何をしている!!当ててやれ!!」

測量士「がってん!!次こそ…」


ドコーン!!


アサシン「お?着弾か?」

魔女「ほぅ…高みの見物もなかなか見物じゃな…」ノソノソ

測量士「この距離だと2~3発に一発当たる感じでごわす」

女戦士「どんどん撃て…スクーナーを散らせば私達の勝ちだ」

測量士「がってん!!」


ドコーン!!


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『10分後』


ドコーン!!


女戦士「フフやはりマストは折られたく無いから近づけんか…」

アサシン「距離800メートルではそこそこ当たる様だ…この迫撃砲の最大射程はどの位だ?」

女戦士「分からん…射角を上げ過ぎると砲弾の着水が見えんのだ」

アサシン「2km先ぐらいまでは数を撃てば当たりそうだ…」

女戦士「陸上戦では無いからそれほど長い射程は不要に思う…今の射程で十分だ」

魔女「相手を追い払えば不毛な消耗戦をせんでも良いな?良い武器じゃ」


海賊「頭ぁ!!キャラック船が遠ざかってるでがんす!!」ドタドタ


女戦士「だろうな?スクーナーの追跡だけ注意して陸沿いにフィン・イッシュを目指す」

海賊「へい!!」

アサシン「余裕だったな…」

魔女「さて情報屋と談話でも楽しむとするかのぅ…」ノソノソ


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『どこかの上空』


リリース! スゥ…


女海賊「商人!ちょい地形確認して」

商人「ええと…北側はすごく遠くに山脈…東側が低地で針葉樹がポツポツ生えてる…どこだ?」

ローグ「多分大分フィン・イッシュ通り越していやすね…」

商人「海が見当たらないなぁ…」キョロ

ローグ「セントラルの北西じゃないっすか?昔砂漠だったら辺…」

女海賊「なんかそんな感じだね…」

商人「砂漠といえば龍の巣って言われた砂嵐どうなっちゃったんだろう?」

ローグ「前の噴火で寒冷化した後は無くなったらしいですぜ?」

女海賊「ええ?知らんかった…なんかあんの?」

ローグ「詳しくは知らんです…リザードマンが沢山居て人が近づかんでやんすよ」

女海賊「折角だからソコ通って行こうか」


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『荒野上空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「また遺跡っぽいのがある…」

商人「リザードマンはこんな所に住処を持ってたんだね」

女海賊「情報屋を連れて来れば良かったなぁ…」

商人「見た感じキ・カイの様な高度な文明跡では無さそうだ」

女海賊「いつの時代とかアンタ分かんない?」

商人「う~ん…1000年とか…2000年とか?」

ローグ「でも砂嵐の中で良く生活していやしたね?」

商人「リザードマンは耐環境性があるとか誰かが言ってたな…あと変温動物だから食料少なくても良いらしい」

ホムンクルス「私が名も無き島の端末で調べた範囲内でお答えできますよ?」

商人「あーそういえば生物学者の研究所だったね」


リザードマンは超古代から生息している人型ミュータントで地球外来種です

およそ1万年前に絶滅したとされていますが化石に残った遺伝子から人間の手により復活させられました

その生態は今おっしゃっていた様に地球上のあらゆる環境に適応する強い耐環境性を持って居ます

しかし手先が器用では無い事により文字を残す事や高度な道具を作る事が出来ない為

現代に至っても独自の文明を残すに至って居ません


商人「オークと同じ感じか…」

ホムンクルス「オークは人間までとは行きませんが独自の生活圏を少し作っていますね」

女海賊「アヌンナキが始めて地球に来た時って…なんつったっけな…ペルティリアン?」

商人「レプティリアン…多分リザードマンの御先祖さんさ」

ホムンクルス「皆さんのお話からするとその可能性が高いですね」

女海賊「1万年前に絶滅したってどういう事?」

ホムンクルス「それは名もなき島の端末の情報にありませんでした」

商人「きっと人間の手によって駆逐されたのさ…神々の戦いだよ」

ローグ「そういやリザードマンはあんまり強く無いでやんす」

ホムンクルス「人間より優れているのは耐環境性の他に長寿であるという事です…およそ1000年の寿命があります」

商人「ドラゴンと一緒か…」

女海賊「今の話からするとリザードマンはここの遺跡に住み着いてるだけっぽいね」

ホムンクルス「人間に追われて誰も近づかない砂嵐の中へ逃避したのかと…」

女海賊「なんか可哀そうになって来たなぁ…」

ホムンクルス「因みに人間との交配をさせる実験はされていた様ですが遺伝子配列が違い過ぎて適合しません」

商人「ん?じゃぁ共存は無理という事かな?」

ホムンクルス「共存出来るか否かは人間の側に問題がある様です」

女海賊「なんかみんな魔物だと認知してる時点で共存は無理っぽいな…」

ローグ「しょうがないっす…リザードマンの方から襲って来るもんで…」

『遺跡上空』


シュゴーーーー ヒュゥゥ


商人「結構リザードマンの数が多い…」

女海賊「飛空艇に気付いて騒いでる…よーし!!」スック

ローグ「何する気っすか?撃っちゃダメでやんす」

女海賊「撃つんじゃないよ…ちっと挨拶さ」グイ


ボエェーーーーーー ブシューーーーーー


商人「ハハハ…クジラの潮吹きか」

ローグ「あらららら?あらら…リザードマンがひれ伏していやすぜ?」

商人「向こうからしたら神様に見えるかもね?」

女海賊「ふ~ん…そういう事か…」

商人「んん?」

女海賊「アヌンナキがどうやって神様になったのかって事さ…人知を超えた事を見せるだけで神様になるんだ」

商人「なんだそういう事か…」

女海賊「その当時の神様がなんでポンポン人間にやられたのか…実は大したこと無かったって感じじゃね?」

商人「なるほど…神々の戦いと言うのは後の人間がそう伝えただけで実際はもっと現実的な感じか…」

女海賊「ポンポンやられちゃうから今度はメチャ強いオークに乗り変えて来たんじゃないの?」

商人「フフ…君のそういうズケズケ言う所は好きだよ」

女海賊「なんか私…アヌが神様なのか良く分かんないんだよなぁ」

商人「同感さ…僕達に何をもたらしてくれるのか…謎ばかりだよ」


---どうせ何ももたらしてくれない---

---何故なら人間に興味なんか無いからさ---

『山脈上空』


シュゴーーーー ヒュゥゥ


ローグ「うはぁぁ…川が氾濫しまくっていやすね…」

商人「赤道に近くなったから雪が溶けて居るのと…雨も降っているんだろうね」

女海賊「これ目印の山とか全然分かんなくなっちゃったんだけど…」

ホムンクルス「皆さん…衛星の行方が分かりました」

女海賊「おお!!ほんじゃホムちゃんに案内お願いする」

ホムンクルス「軌道を修正して元の静止軌道へ戻るのにおよそ2日掛かります」

女海賊「そんな遠く行っちゃってんの?」

ホムンクルス「それ程遠くではありませんが急いで戻すと落下の危険がありますので…」

商人「まぁ見つかって良かった…」

ホムンクルス「衛星が救難信号をキャッチして居ます」

女海賊「んん?救難?どっから?」

ホムンクルス「座標からして宇宙からの模様…エネルギー供給を要求しています」

女海賊「宇宙!!?ちょちょ…どういう事?」

ホムンクルス「識別コードOV-277機…私のデータに機体のデータがありません…旧式のシャトルと想定されます」

女海賊「ちょい何言ってるかさっぱり分かんない…なんで救難信号?誰か居んの?」

商人「もしかしてそれは箱舟の事かい?」

ホムンクルス「分かりません…ですが古代の人が生存している可能性があります」

商人「ハッ!!情報屋が宇宙に逃れた人が居るのを見つけてる…それの事か」

女海賊「もしかしてそれに乗って月に行けたりする?」

ホムンクルス「今までの提案の中で最も可能性が高いです…動かす事が出来れば99%月へ行けるでしょう」

女海賊「おっし!!それ奪って動かすぞ」

ホムンクルス「但し…動かせる可能性は非常に低いです」

女海賊「ホムちゃんが居れば何とかなるさ…ほんで?エネルギー供給って何?」

ホムンクルス「インドラの光です…指定の座標へ撃てば供給完了します」

女海賊「おっけ!!供給してあげよう」

商人「良いのかい?良く分からない相手にさ?」

女海賊「何言ってるのさ!やっと月に行ける方法見つけたんだ…私は逃さないよ」

商人「ハハ君と言う人は…」

女海賊「ホムちゃん!インドラの光を撃ってあげてよ」

ホムンクルス「承認…インドラシステムを起動します」


座標同期完了…姿勢制御オート


ホムンクルス「発射します…」

女海賊「…」キョロ

商人「…」ポカーン

ローグ「ええと…何か起きやしたかね?」

ホムンクルス「完了しました…未確認機からの応答はありません」

女海賊「ん?…終わり?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「降りて来ないの?」

ホムンクルス「分かりません…」

女海賊「なんだよ…期待して損したわ」

商人「こんなに簡単にエネルギー供給出来るのか…スゴイな」

女海賊「あ…ちょいヤバかったかも…機械が人類に戦線布告してるとか言ってたじゃん?」

商人「ああああああああ!!まさか敵に塩を送っちゃったか…」

ホムンクルス「未確認機に動きがあれば分かりますのでご心配なく」

『夕方_山岳部の崖際』


フワフワ ドッスン


女海賊「おっし…ここなら魔物も来ないっしょ」

ローグ「外で焚火でもしやしょうか」

女海賊「そだね…一応ローグと商人はプラズマの銃を持って行って」

ローグ「へい!!あっしは薪を集めてきやす」ダダ

商人「じゃぁ僕はガーゴイルを警戒しておくかな」

女海賊「命の泉行くのにこんな迷うと思わなかったさ…地形覚えた筈なんだけどなぁ…」

商人「どれだけ雪が溶けたのか分からないね」

女海賊「これホムちゃんの衛星待ちになっちゃうかも…」

商人「そうそう…衛星と通信出来るなら月の公転とかどうなったか分からないかな?」

ホムンクルス「基準が無くなってしまったので今は観測出来ません…」

商人「そうか…君は衛星からこちらを見る事も出来るのかな?」

ホムンクルス「はい…今は地球に接近しつつ地表の形状を以前と比較して居ます」

女海賊「おぉそんな事出来るんか…どう?メッチャ変わってそう?」

ホムンクルス「そうですね…内海に大きな津波が到達して居ないので皆さんには影響が分かり難い様です」

商人「外海はスゴイ事になってるんだ?」

ホムンクルス「海底で大きく分断している個所もある様で以前とは少し違った世界地図となるでしょう」

女海賊「まぁ海の占める割合が7割以上だから影響の7割は海だよ」

ホムンクルス「海面の上昇で沈んだ島や隆起で新しく生まれた島が沢山ある様です」

女海賊「なんちゅーか…大した苦労も無く生き残ったな…」

商人「そうでも無いよ?影響の少ない地域に人を誘導したお陰もある」

女海賊「アンタなんかやったん?」

商人「僕は物流で人の流れを少しコントロールしただけさ…公爵はもっと強引にやったよね」

女海賊「私石になってたから良く分かんないのさ」

商人「豪族使って追いはぎみたいな事やったり…海軍を全部外海に移動させたり…」

女海賊「ほ~ん…」

商人「結果論なんだけど救われた人は多いと思うな」


ダダダ


ローグ「皆さんお待たせしやした…焚火を焚いたんで暖まって下せぇ」

女海賊「お!!山賊焼きでも焼くかぁ!!」スタ

『焚火』


メラメラ ジュゥゥ


ローグ「姉さん…何処にその肉仕舞ってたんすか?」

女海賊「魔女に貰った壺に何でも入るから適当に詰めて来たのさ」

ローグ「酒は有りやすかね?」

女海賊「ほい!!」ドン

ローグ「おぉぉぉ!!姉さんが居たら物資に困らんじゃないっすか…」

女海賊「あんま入れすぎると中でグチャグチャになる」

商人「他に何入ってるの?」

女海賊「爆弾とかボルトとか重たい物ばっかだよ」

商人「それって本当は魔物を封じる壺だよね…」

女海賊「どうやってこん中入れるか知ってる?」

商人「呼んで返事したら吸い込むらしい…後は量子転移の魔法?」

女海賊「お!?ほんじゃ商人の名前呼んで返事したら吸い込まれる?」

商人「ちょっと止めて欲しいな…いくら不死者だからと言って…」

女海賊「ヌフフフフ…ねぇ商人?」

商人「だからぁ!!それで遊ばないで欲しい!!」


シュゥゥゥゥ スポン!!


ローグ「あららららら…こら偉いこってすわ…」

商人「おーーーい!!高くてそこまで登れないよ!!出してぇぇ」

女海賊「いでよ!!商人!!」


シュゥゥゥゥ スポン!!


商人「ちょっと止めてって…」

女海賊「面白い!!どんくらいの高さだった?」

商人「2~3メートルだよ…何か積めば出られそうだけど」

女海賊「ほんじゃロープで出られるか…コレ使い方次第で檻の中とか入れるな」

ローグ「何する気なんすか?」

女海賊「通れない向こう側に商人を行かせる事が出来るじゃん?」

商人「あのね…なかなかそういう場面が無いと思うんだけど…」

女海賊「ムフフフフ…これで盗賊を出し抜ける…ようし!見てろよ?ウヒヒヒヒ」ニマー

ローグ「いやぁぁ姉さん…カリスマっすね」

商人「ヤレヤレ…」

『十日夜の月』


ギャァァ バッサ バッサ


女海賊「やっぱ夜になるとガーゴイル出てくんな…」

商人「近づいては来ないね」

女海賊「飛空艇にはそうそう襲って来ないよ…プラズマの無駄撃ちはしない様に」

商人「僕が見張っておくから君は休んで良い」

女海賊「そうするわ…ホムちゃんまだ妖精とくっちゃべってるかな?」

商人「そうだね…まぁ見ておくから心配しないで」


-------------


『鯨型飛空艇_荷室』


ガサゴソ ガサゴソ


女海賊「あれ~~?何処に置いたっけなぁ…」

ローグ「何か探してるでやんすか?」

女海賊「どんぐりとか種類を小分けしておいてた筈なんだけどなぁ…」ゴソゴソ

ローグ「姉さんの虫が食べて居やしたぜ?てっきりあっしは姉さんがあげたのかと…」

女海賊「えええ!!?種は食うなって言ってんのに!!」

ローグ「どっかその辺に隠れて居やせんかね?」

女海賊「あ!!良く見たらウンコいっぱいあるじゃん!!何やってんだよ…ワーム!!掃除しろ!!」


ニョロニョロ モソモソ


女海賊「あのね!!種は食うなって言ってんじゃん!!」

ワーム「プギャー…」パクパク

ローグ「姉さん…その虫じゃないでやんす」

女海賊「種食うのはワームしか居ないんだよ…」


カサカサ モソモソ


女海賊「んん?あああああああああああ!!ダンゴムシ動いてる…」

ダンゴムシ「!!?」クルン コロコロ

女海賊「死骸じゃ無かったのか…てかいつの間に飛空艇に乗ってんだよ…」

ローグ「その虫は未来君の生まれ変わりなんすよね?姉さんが連れて来たと思って居やした」

女海賊「おい妖精出て来い!!どうなってんのさ!!」


スポン!! ヒラヒラ


妖精「呼んだ!?」パタパタ

女海賊「このダンゴムシはアンタの本体じゃないの!?」

妖精「何の事かな?僕は僕だよ?ダンゴムシはダンゴムシ…何を言ってるのか分からないよ」

女海賊「どういう仕組みなのか私にもさっぱりさ…まぁ良いやダンゴムシって生き返ったん?」

妖精「僕が分かる訳無いじゃないか…ダンゴムシに聞いて見なよ」

女海賊「そりゃそうだ…おい!!ダンゴムシ!!?」ツンツン

ダンゴムシ「…」コロコロ

女海賊「あんた未来じゃないの?」

ダンゴムシ「…」ジーー

ローグ「あ…姉さん…独り言喋りながら虫をつつく姿は他の人に見られちゃイカンですわ…」

女海賊「うっさいな!!あんた妖精の声聞こえないの?」

ローグ「なんか聞こえるんすが聞き取れんのです…姉さんの一人芝居に見えるんすよ」

女海賊「ちっと一人にしといて…」

ローグ「へい…あっしは姉さんを疑っちゃ居やせんぜ?」

女海賊「はいはい分かったから…ほんで妖精!!どういう訳か聞かして貰うよ」

妖精「ハチミツ欲しいなぁ…」

女海賊「あとであげるから…もっかい聞くよ?アンタどっから来たん?」

妖精「妖精は狭間に住んで居るんだよ?」


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『焚火』


メラメラ パチ


ローグ「こっちは異常無しっすか?」スタ

商人「あぁ…相変わらずガーゴイルは遠くに居るね…ローグは飛空艇を追い出されたのかな?」

ローグ「そんな所っすね…姉さんが独り言話し始めたもんで…妖精と話してるんですがね」

商人「そうか…ローグは妖精の声が聞こえないんだ」

ローグ「小さな光と聞き取れない声は聞こえるんすが…」

商人「僕は不死者になってからコッチ良く聞こえる様になったよ」

ローグ「ホムンクルスさんも聞こえているみたいっすね」

商人「うん…さっきから盗み聞きしてるのさ」

ローグ「どんな事話してるんすか?」

商人「大した話じゃない…おっぱいの大きさと温度で揉めてる」

ローグ「あたたたた…本当どうでも良い話でやんす」

商人「でも不思議なんだ…ホムンクルスがどんどん人間らしくなっていくのがさ」

ローグ「変わりやしたね?運動すると言いだしたり…いつの間に寝てたり」

商人「本能的な事を妖精から教えて貰ってるのかもね」

ローグ「不死者は本能的になにか無いんすか?」

商人「う~ん食欲も睡眠欲も性欲も無い…あ…生き血が欲しくなるのは欲求だな…なんでだろう?」

ローグ「生への渇望っすね」

商人「ワインで渇きが癒えるのは命が宿って居るからなのかも…ん?…ちょっと待て」

ローグ「どうしたんすか?」

商人「命の水…アヌがどうしてこれを集めたのか…生への渇望かもしれない」

ローグ「また閃きやしたね?」

商人「どうやって集めたのか…そうか分かって来たぞ…地球の命をどうにかして吸い取ってるんじゃないかな?」


それで地球も死にかけてる…だから生を渇望する

生き血が欲しい…戦争が終わらない理由はそれだ


女海賊「ビンゴ!!」

ローグ「姉さん…」

女海賊「明るくなってきたら出発するよ」


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『早朝』


シュゴーーーーー フワフワ


女海賊「とりあえず尾根沿いに一番高い山を探す」グイ

商人「僕は右側を見ておくよ…ローグは左側おねがい」

ローグ「アイサー!!」

女海賊「ホムちゃんはぐっすりか…」

商人「昨夜も筋力トレーニングやってたから疲れているのかもね」

女海賊「マッスル系ホムちゃん…なんかイメージ違うなぁ…」

商人「良いじゃ無いか…歩き方もヨタヨタしなくなってるし」

ローグ「ちょちょちょ…ヤバイっす!!ロック鳥が飛んで居やす」

女海賊「ええ!?」

ローグ「早く進んで下せぇ…まだ遠くなんすがドラゴン並みにデカい鳥でやんす」

女海賊「マジか…」グイ


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


ローグ「あららら…下の方からも4匹程追加でやんす」

女海賊「ハイディングで凌げると思う?」

商人「鳥とか虫はハイディング意味無いね…」

女海賊「くっそ!プラズマ銃のリロードだけハイディングで稼ごう」


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『空中戦』


ピカーーーーーー チュドーーーーン!!


ローグ「ダメっす!!届かんでやんす!!」

商人「なかなか射程に入って来ない…」チャキリ

女海賊「最悪の場合私が妖精の笛吹いて凌ぐからそのつもりで居て」

ローグ「へい!!」

商人「ロック鳥の方が全然早いな…どうして襲って来ない?」

ローグ「気球が大きいんで警戒してるんじゃないすかね?」

女海賊「潮吹いて見るか…」

ローグ「ビビらせるんすね?」

女海賊「いくよ!?」グイ


ボエーーーーーーーー ブシューーーーー キラキラ


ホムンクルス「はう!!?」ガバ キョロ

女海賊「あぁホムちゃん起こしちゃったね…今戦闘中なのさ」

ホムンクルス「沢山の妖精さんとお話を…」

商人「寝ぼけて居るのかい?」

女海賊「ホムちゃん飛空艇の操舵お願いできる?」

ホムンクルス「は…はい…」

女海賊「おっし!!これで私も特殊クロスボウ撃てる」スチャ

ローグ「この距離で届きやすか?」

女海賊「射角上げれば届く…閃光弾で威嚇する」ガチャコン


ダン! ダン! ピカーーーー ピカーーーー


商人「効果ありそうだ…距離が離れて行く」

ローグ「このまま諦めてくれれば良いんすが…」

ホムンクルス「あのー…あの大きな鳥は襲って来ないと思います」

女海賊「え!?そうなん?」

ホムンクルス「私がお話して居た妖精さんに関係するのでは無いかと…」

商人「昼間は夢の中に出て来るのか…トロールが肩に乗せてる鳥みたいなもんか」

女海賊「ロック鳥に何かの虫が引っ付いてる?」

ホムンクルス「少し様子を見て下さい」

女海賊「ホムちゃんがそう言うなら…」

ローグ「どうせこっちも攻撃が届きやせん」

女海賊「まぁ良いや!後ろに注意しながら命の泉を探そう」


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『命の泉付近』


シュゴーーーー ヒュゥゥゥ


商人「さすがにこの高度までロック鳥は追って来れないみたいだね」

女海賊「今海抜7000メートルくらい…正面に見える一番高い山の下が命の泉だよ」

商人「日が落ちる前に見つけられて良かった…」

ローグ「この高さより高い山が有ったんすね…」

商人「息苦しくない?」

ローグ「クラクラしやす」

女海賊「あのね?急な運動するとすぐ体調壊すから呼吸は意識して整えて」

ローグ「高山病でやんすか?」

商人「ホムンクルスも気を付けた方が良いよ」

ホムンクルス「はい…気を付けておきます」

女海賊「ええと…何処だったっけなぁ…」

ホムンクルス「右側の谷の緑化している所ですね」

女海賊「あれ?あんな緑あったっけ?」

ホムンクルス「癒し苔が増えているのですね」

女海賊「おぉぉ!!商人!!アレ集めておいて」

商人「そういえば僕も癒し苔にお世話になったなぁ」

女海賊「積めるだけ積んで帰る…封印の壺にも入れるから沢山集めてよ」

商人「分かったよ」

『命の泉』


サラサラ キラキラ


女海賊「ドラゴンは居なさそうだな…」ジャブジャブ

ローグ「ほーーここが話に聞く命の泉なんすか…」

女海賊「ハイディングして隠してあるけどエクスカリバーを泉に刺してるんだ…何処だっけな?」ウロウロ

ローグ「姉さんは此処に来るの3回目でしたっけ?」

女海賊「そだね…そういやドラゴンのねぐらもあるんだよ」

ローグ「ドラゴンは見当たりやせんね?気配も無いでやんす」

女海賊「ドラゴンはエルフの所に居るさ…精霊樹守ってるんだよ」

ローグ「そのねぐらにはもしかしてお宝どっさりじゃないっすよね?」

女海賊「メッチャある…ドラゴンの寂しさ紛らわす宝物なのさ…あんま手を付けない方が良い」

ローグ「そうなんすね」

女海賊「見るだけなら良いかも」

ホムンクルス「ご案内しましょうか?」

女海賊「泉に入ってると寒いからドラゴンのねぐらで暖まってて良いよ…私もすぐ行くから」

ホムンクルス「はい…こちらです」スタ

ローグ「いやぁぁ楽しみっすねぇ…」スタ

女海賊「さてぇ!!さっさと命の水を撒こうかな…」スッ


キュポン! ジャブジャブ


女海賊「よーし!!やったった!!…フフ予想した通り…だから何?って感じだね」

女海賊「どうせ効果出るの100年とか200年とかいう奴だよね…ほんでエクスカリバー何処だっけなぁ…」ジャブ

女海賊「有った有った…」シャキン!!


ピカーーーーーーーー!!


女海賊「アハハ光は健在だ…」


アハハ…ウフフ… ヒラヒラ ヒラヒラ


女海賊「うお!?妖精がいっぱい…」キョロ

妖精「やばやば!!遅刻する!!おっぱいに挟まってる場合じゃ無い!!」ヒョコ スポン!

女海賊「ちょちょちょ…あんた何処行くのさ!?」

妖精「命を運ばなきゃいけないんだ!!僕は旅に出る!!」パタパタ

女海賊「ちょっとぉ!!アンタ居なくなると困るんだけど!!」

妖精「狭間はどこにでも繋がってるよ!!急いでるから行くね!!」ピュー

女海賊「あぁぁぁ!!ちぃ…何なんだよ」


タッタッタ スタスタ


ホムンクルス「あ…女海賊さん…剣を抜いてくださったのですね?」

女海賊「んん?コレ?」スチャ

ホムンクルス「はい…トゲが刺さってると痛いそうです」

女海賊「ええ?どゆ事?」

ホムンクルス「妖精さんが教えてくれました…大地が痛がっていると…」

女海賊「マジか…知らんかったわ」

ホムンクルス「前に来た時は傷口が金属で埋められて居ましたよね?」

女海賊「あぁぁそいややそうだったね…今ミスリル銀しか持って無いんだけど…」

ホムンクルス「それで埋めて行っては如何でしょう?」

女海賊「そだね…ちっと傷口癒して行くわ」ゴソゴソ


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『ドラゴンのねぐら』


グルルルル スゥゥ


女海賊「おわっ!!ドラゴン居るんじゃん!!」

ローグ「姉さん!!こっちっす…ドラゴンの心臓の近くは焚火みたいにあったかいんす」

女海賊「おぉぉ…水に濡れて寒かったのさ…ドラゴンは寝てんの?」スタ

ホムンクルス「はい…少しだけ話をしたら安心して眠りにつきました」

ローグ「なんか卵を抱えてるみたいですぜ?」

女海賊「おぉぉそういう事か…卵産んだ後なんだね?」

ホムンクルス「その様です…今はゆっくり休んだ方が良いですね」

ローグ「ほんで命の水はどうなりやした?」

女海賊「撒き終わったよ…毎度の事ながらなーんも変化した感じ無いさ」

ホムンクルス「妖精さんが慌てて飛んで行かれましたよ?」

女海賊「あぁそだね…命運ぶとか言ってどっか飛んでった」

ローグ「じゃぁ上手く行った感じでやんす」

女海賊「これどうすれば良いと思う?」スラーン ピカーーー

ローグ「姉さん剣を使えるんすか?」

女海賊「無理だなぁ…切るんじゃなくて横になってビターンて感じになる」

ローグ「ウヒヒ剣を鈍器にして使うんすねw」

女海賊「てかこの剣はシン・リーンの遺跡で見つけたんだけど…なんか縁があるんかな?」

ホムンクルス「エクスカリバーの元の持ち主は時の王ですよ?」

女海賊「ホムちゃん何か知ってんの?」

ホムンクルス「はい…以前シャ・バクダにある星の観測所で時の王にお話を聞かされましたので記憶しています」

女海賊「あああ思い出した!時の王のおっさんがホムちゃん捕まえてなんか話してたね」

ホムンクルス「はい…支離滅裂なお話だったのですが要約しますと…」

2400年前に時の王は暁の使徒と黄昏の賢者に出会って居るのです

その時は仲間として共に魔王島に根城を構える魔王と戦ったとか…

そこで使ったのがその聖剣エクスカリバーでした

時の王は魔王の手下となっていたメデューサを討ち取りその生き血を飲みました

その理由は暁の使徒を未来で目覚めさせる為…そういう契約を暁の使徒と結んでいたのです

ですが暁の使徒は魔王を打倒した後忽然と姿を消してしまった…

そしてメデューサの生き血によって不死を得た事を知った黄昏の賢者は激怒し…時の王を敵として扱う様になったのです


時は流れて2100年前…再び世界が闇に染まり始めた頃…暁の使徒と再会します

この時すでに時の王は世界を平定し世界中の魔術師を集めてシン・リーンを建国していました

時の王は暁の使徒に右腕となるように言いましたが…記憶を失って居た暁の使徒は一人旅立ってしまった

後を着けた時の王は暁の使徒がかつての魔王島に黄金を運び理想郷を作ろうとしている事を知った…

しかしそこに黄昏の賢者も居た事から対立する立場になってしまった…

首の無いメデューサやゴーレムを自在に操る黄昏の賢者の姿を見て不審に思った時の王は

黄昏の賢者こそ魔王の化身と思い込み聖剣エクスカリバーでその首を落としてしまう…

それと同時に暴れ始めたメデューサの血を浴びた暁の使徒と時の勇者は石となってしまった


時は過ぎ1700年前…

かつての友を裏切った形になってしまった時の王はその罪に苛まれていました

そこに現れたのがエルフを従えた精霊シルフ

自らの寿命が尽きてしまう前に暁の使徒を目覚めさせるべくエリクサーを携えて…

石造となってしまった暁の使徒と時の勇者をシン・リーンまで運び込んで居た時の王は

直ぐに2人を目覚めさせ時が過ぎ去った事を伝えました

暁の使徒は語りました…魔王島に黄金を運び込んで居た理由…それは神を復活させる為の事

そして再び魔王島へ行く事になったのです

女海賊「んん?オシマイ?ほんで魔王島に行ってどうなったの?」

ホムンクルス「この後は精霊シルフとの思い出話ばかりで…話が繋がらないのです」

女海賊「なんだよ折角良い所なのにさ…」

ホムンクルス「時の王は精霊シルフに一目ぼれだった様ですね」

女海賊「どうでも良いんだよそんな話は…魔王島に何が有ったのかってのが聞きたいんだ」

ホムンクルス「結論だけ分かっています…暁の使徒は神と話した後に魔王島を封じてしまった事…」

女海賊「集めた黄金をアダマンタイトに変えた訳か…」

ホムンクルス「時の王はその手段を知りませんでした…そして精霊シルフに世界の真理を聞きその剣を置いたのです」

女海賊「コレ?」スチャ ピカーーーー

ホムンクルス「はい…シン・リーンの遺跡にその剣と光の石が残されて居たのはそういう理由です」

ローグ「英雄がなんで剣を置いたんでしょうね?」

ホムンクルス「本人に聞いてみないともう分かりませんね」

女海賊「どうせ魔王の正体が何なのかとか聞いたんでしょ?」

ホムンクルス「それも有るでしょうけれど暁の使徒が時を超える者という事を知ったのでは無いでしょうか?」

女海賊「ん?どういう意味?それで戦う意味が無くなった?」

ホムンクルス「はい…未来を変えようが無い事を知ったのかと…」

ローグ「そういやそうでやんすね?それを知るとやる気無くなるかも分らんです」

女海賊「あ!!そうか…それでシン・リーンの壁画は次の時代に勇者が時を超えると言う解釈なのか…」

ホムンクルス「時の王にはそう見えて居たのだと思います」

女海賊「なるほどねぇ…そういう歴史のある剣だったのかぁ…」スラーン

ホムンクルス「一つ分かって居るのはメデューサを始め幾多の伝説的魔物を葬って居る事」

女海賊「へぇ?他にも居たんだ?」

ホムンクルス「バフォメットやベルフェゴールなど伝説の魔物ですね」

ローグ「黄昏の賢者の首を切ったのもその剣でやんすね…」

女海賊「なーんか気になる剣だなぁ…」


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ヒュン ヒュン!


ローグ「全然ダメっすねぇ…叩くんじゃ無くて切るんでやんす」

女海賊「うっさいな!わかってんよ!!何か特殊な効果無いか調べてんのさ」

ローグ「その武器使うんなら突きだけで使ったらどうっすか?」

女海賊「使う気なんか無いさ…お姉ぇにでもあげるかな」

ローグ「なんか光りっ放しなんで鞘に納めた方が良さそうでやんす」

女海賊「そだね…その辺に丁度良い武器の鞘とか落ちてないの?」

ローグ「いっぱいありやすぜ?装飾の沢山ついた謎の宝剣が…」ガサガサ

女海賊「剣なんか興味無いんだよな…」ガサガサ

ローグ「これなんかどうっすか?丁度長さが合いそうでやんす」スラーン

女海賊「んんん…なんか微妙だな…まぁ良いや!封印の壺に突っ込んどけば良いじゃん!」

ローグ「明かりに使うだけっすね?」

女海賊「そうそう…それで邪魔になんない」スポ

ローグ「じゃぁそろそろ戻りやしょうか…商人さんが待っていやすぜ?」

女海賊「そだね…ホムちゃん帰ろうか」

ホムンクルス「はい…」



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『鯨型飛空艇』


ヨイショ ヨイショ ドサドサ


女海賊「商人!!終わったよ!!」

商人「あれ?早かったねぇ…どうだった?」

女海賊「毎度の事さ…何も変化無いよ」

商人「ハハやっぱりね…効果が出るのは何年も先ってやつだね」

女海賊「癒し苔結構集まったね?」

商人「ちょとづつしか採れないからなかなか大変だよ」

女海賊「まぁ良いや…こんだけあれば当分ダンゴムシの餌には困んない」

商人「え?餌にするの?」

女海賊「放って置くとダンゴムシが種食っちゃうのさ…言う事聞かないんだよ」

商人「そうかい…それで?用が済んだからもう行く?」

女海賊「うん…幽霊船に戻る」


”ザザー”

”女海賊や…聞こえるかえ?”

”あ!!魔女!!?どしたん?”

”シン・リーンの母上から連絡があってのぅ…暁の墓所が墓荒らしに在ったらしいのじゃ”

”ええ!?どゆ事?”

”暁の使徒のご神体がオークに奪われてしもうたのじゃ”

”ちょ…”

”もう随分前の事の様じゃ…行き先は分からぬ”

商人「前に港町でオークに襲われたよね…もしかして…」

女海賊「あああ!!オークシャーマンもそこに居たじゃん!!」


”それでのう…暁の墓所に未来が残したと思われる壁画もあった様なのじゃ”

”マジか…ちょい行って来る”

”場所が分からんじゃろう…母上は今暁の墓所におるで母上に会うのも叶わんぞよ?”

”魔女はどこら辺とか知らないの?”

”シン・リーンの東側としか聞いて居らぬ…わらわが母上の眼を通じて壁画を写して居る故…一度幽霊船に戻るのじゃ」

”あぁぁなんかイラつく…ダッシュで戻るわ”

”うむ…今暁の墓所へ行ってもご神体がある訳では無い故に…早まって行動せぬ様にな?”

”分かった…”

”帰りを待って居る…ではのぅ…ザザー”


女海賊「…」グググ

商人「オークシャーマンの行先に心当たりは?」

女海賊「ある!!」ギラ

ローグ「姉さん…」

女海賊「ニライカナイ!!そこは昔魔王島だったの!!未来はそこで神を復活させようとした!!」

商人「神?」

女海賊「行きゃ分かるさ」

ローグ「姉さん…急ぎやしょう…日が落ちちまいやす」


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『幽霊船_居室』


カキカキ スラスラ


情報屋「…では暁の墓所で未来君達が生活した痕跡は無いのね?」

魔女「何処にも見当たらんそうじゃ…他に在るのは王家のご神体ばかりじゃな」

情報屋「では壁画は何処からか運ばれた…そういう事ね?」

魔女「うむ…暁の使徒が安置されている部屋へは王家の者も入った事が無かったのじゃ…誰が運んだのかは既に分からぬ」

情報屋「壁画の暦からするとドリアードの時代ね…黄昏の賢者と一緒にドリアードを倒してる…」

魔女「これで壁画のピースがすべて集まったのかのぅ?」

情報屋「その当時未来君達が何処を拠点として居たのかが分かればもう少し調べられるけれど…」


タッタッタ ガチャリ


女戦士「魔女!手を貸してくれ…ガーゴイルの数が増えて直に攻めて来そうだ」

魔女「またかいのぅ…」ノソリ

女戦士「ボルケーノで一気に焼ければこちらのボルトを消費しないで済む」

魔女「情報屋…また船が揺れるで怪我をせぬ様にな?」

情報屋「わかったわ…気を付けておく」

魔女「では行って来る」ノソノソ


--------------

『甲板』


ギャァァ ギャース バッサ バッサ


魔女「ふむ…ボルケーノは3つ程出さぬと全部は焼き払えんのぅ」

女戦士「横帆は全部畳んだ…準備は出来ている」

魔女「ボルケーノには巻き込まれぬ様にな?」

女戦士「海賊共!!風向きが荒れるぞ!!帆角をすぐに変えられる様に準備しろ!!」

海賊共「がってん!!」ドスドス

魔女「では行くぞよ?竜巻魔法!竜巻魔法!竜巻魔法!」


ビュゥゥゥゥ ゴゴゴゴゴ


女戦士「帆角2番!!面舵一杯!!」

海賊共「うらぁぁぁぁぁ!!」ドドドド


ユラ~ ギシギシ


魔女「海賊共は頼もしいのぅ…そろそろ火柱に変えるで火の粉を浴びん様にせい」

女戦士「大丈夫だ!既に火薬は退避してある」

魔女「良かろう…では!爆炎地獄!爆炎地獄!爆炎地獄!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ボゥ


女戦士「さすが魔女…ガーゴイルが一気に焼かれて行く…」

アサシン「又私の出番は無しか?」

女戦士「その様だ…光の石は元の場所に戻して辺りを照らしてくれ」

アサシン「夜の海で光を灯すとクラーケンが出るのだがな…」

女戦士「エルフもオークも乗せて居ない…襲っては来ないだろう」

アサシン「まぁ良い…私は見張って置こう」スタ

魔女「わらわの仕事は終わりじゃな…戻って書き物をして居るでのぅ」ノソノソ

女戦士「ふぅぅ…月の近い夜は海も安全では無いな…」


--------------

--------------

--------------

『翌日_デッキ』


ザブ~ン ユラ~リ


情報屋「随分暖かくなってきたわね…」ノビー

女戦士「体の調子は良いのか?」

情報屋「貧血は無くなって来たから気分が良いわ」

魔女「わらわも少し日光浴じゃ…」ノソノソ

情報屋「昼間は平和な海ね」

女戦士「豪族に襲われなければな?」

魔女「んん?見当たらん様じゃが?」

女戦士「こちらは光の石で光って居るから向こうには見えている筈なのだ」

情報屋「あぁぁ…女海賊が戻るまで光の石を隠せないのね」

女戦士「フフ…そういう事だ」

魔女「今度は真っ直ぐ帰って来るじゃろう」

アサシン「賭けるか?次どうするかを…」

女戦士「お前はもう金を持って居ないだろう」

アサシン「私はな?3日程閉じこもると思って居る…つまりその間にフィン・イッシュへ到着する」

女戦士「同意だ…賭けにならん」

魔女「アサシン…主はフィン・イッシュに戻った後はどうするつもりじゃ?」

アサシン「そうだな…どうにか公爵を追いたいとは思って居るが…」

魔女「もう放って置けばよかろう」

アサシン「友なのだ…事情を知ってしまった今…放って置けなくなった」

女戦士「歩んだ道が違っただけで目指した場所は同じか…」

魔女「わらわにとっては父上を貶めた仇なのじゃがな…」

アサシン「シン・リーンの王もうぬが信じた道を行っただけ…私達はすれ違ったのだよ」

魔女「理解して居る…じゃからもう公爵には会いとう無い…済んだ話じゃでのぅ」

情報屋「フィン・イッシュに女狐が居るのでしょう?」

アサシン「その筈だ」

情報屋「彼女に足の不自由な孤児が無事だと伝えないと…」

アサシン「隠し子だったか…誰の子なのやら」

魔女「むむ!!女海賊がこちらの船を見つけたぞよ」

女戦士「ほう?早かったな」

魔女「光の石のお陰じゃ…かなり遠くから見えて居った様じゃな」

女戦士「よし…船尾で待つとしよう」スタ


--------------

『船尾』


シュルシュル スタ


女海賊「はいホムちゃん到着!」

ホムンクルス「そのワイヤーの装置を私にも作って下さいませんか?」

女海賊「おっけ!後で作っとく」

ホムンクルス「ありがとうございます」ペコ

ローグ「姉さ~ん!!あっしも降りるんでそこどいて下せぇ!!」

女海賊「はいはい…お姉ぇ!!コレお土産」ポイ

女戦士「んん?」

女海賊「時の王のおっさんの剣さ…エクスカリバーだよ」

女戦士「これが…」スラーン ピカー

女海賊「鞘が無いと眩しすぎるから作った方が良い」

女戦士「私は小細工に向かん…ミスリル銀でお前が作れ」

女海賊「んぁぁ何か作る物一杯だな…てか魔女は?」

女戦士「居室に戻った筈だ…」

女海賊「ちょい事情聞いて来るから!!」スタタタ ピュー


シュルシュル スタ


ローグ「頭ぁ無事に連れ戻しやした…ささ商人さん降りて下せぇ」

商人「あぁ悪いね…」ピョン

女戦士「む!!何だアレは!!」ズダダ

ローグ「あいやいや…あのデカイ鳥は襲って来んでやんす」

女戦士「どういう事だ?ロック鳥を連れて来たと言うのか?」

ローグ「勝手に付いて来たでやんすよ…なんもしてこないんで安心して下せぇ」

女戦士「まさかロック鳥が味方していると?」

ホムンクルス「妖精さんのお友達の様です」

女戦士「ほう?」

ホムンクルス「クジラに興味が有って付いて来ました」

ローグ「安心して下せぇ…ロック鳥が居るとガーゴイルも近づいて来んでやんすよ」

女戦士「ふむ…それは良いな」


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『居室』


カクカク シカジカ…


女海賊「ほんでこれが壁画の写し…」

情報屋「そうよ…あなたの持って居る書物にも写すと良いわ」

魔女「その他にも未来が使って居った刀も見つかったそうじゃ…光を失って折れて居るらしいが」

女海賊「流星の刀…」プルプル

魔女「気の毒じゃがご神体が無事かどうかは分からぬ…」

女海賊「無事さ…オークシャーマンは予言に従ってるのさ」

情報屋「そうね…それが剣士と交わした契約なのだから」

女海賊「ちっと私の書物に壁画を写す」

魔女「うむ…結構な情報量じゃでゆっくり書き写すが良い」


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『甲板』


ザブ~ン ユラ~ ギシ


女戦士「フン!」スン スン

ローグ「おぉぉその剣は残像が残って見えやすね…」

女戦士「私には軽すぎるが…」

ローグ「何か特殊な効果とか無いでやんすか?」

女戦士「破壊の剣のような効果は無さそうだ…ただ何か力がみなぎる感じはあるな…」

ローグ「あの剣はちっと危ないんすよね…戦闘中に急に夢見ちまうんで…」


ノソノソ


女戦士「む…魔女!?もう妹と話は終わったのか?」

魔女「うむ…今は壁画の写しとにらめっこじゃ…そっとしておくのが良かろう」

女戦士「そうか…魔女に聞きたい…このエクスカリバーの事なんだが…」

魔女「シン・リーンの遺跡で見つけた剣じゃな?どれ見せてみぃ」

女戦士「何か分かると良い…」スッ

魔女「どれどれ…ムム!!量子転移がエンチャントされて居るでは無いか…気が付かんかったわい」

女戦士「それはどういう効果がある?」

魔女「剣に力が宿る…倒した相手の力を吸い込んで居るのじゃ」

女戦士「それはつまり?」

魔女「この武器で何を倒したかじゃな…」

ローグ「メデューサの首を切ったらしいですぜ?他にもバフォメットやベルフェゴールや…」

魔女「皆悪魔では無いか…つまり悪魔の力を吸い込んで居るという事じゃ…これは魔剣じゃぞ」

女戦士「破壊の剣の様に何でも切れるのか?」

魔女「それは量子転移のエンチャントに失敗して制御出来んくなった効果じゃ…これは成功して居る」

女戦士「剣の能力としては只のオリハルコンの剣と言う事か?」

魔女「じゃが力を吸い込み強くなる…どちらが良いかのう?」

ローグ「メデューサの力って石化の効果っすかね?」

魔女「それもあるじゃろうが不滅の力も有るじゃろうな…バフォメットは金属を溶かす力…ベルフェゴールは怠惰の力…」

ローグ「おぉぉぉ…他に何を倒したのか気になりやすね」

魔女「魔力も吸い込んどる筈じゃぞ…何が起こるか分からぬ剣じゃ」

女戦士「さて…そのような魔剣を私に使いこなせるか…」

魔女「しかしおかしいのぅ…剣士はそれを振るって居った…何か起きた気配も無い」

ローグ「剣士さんはドラゴンに乗って殆ど魔法で戦って居やした…振るったのは魔王に使ったくらいっすね」

魔女「魔王をこの剣で倒せなんだのがのぅ…」

ローグ「実体が無いもんで切れんかったんすよ…なもんで殆ど使って無いんす」

魔女「そうだったか…ちと何が起きるかは注意せんとイカンな」

女戦士「ふむ…ここぞという時にだけ使う事にする」



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『船長室』


アーデモナイ… コーデモナイ…


ホムンクルス「…地球内部約5000kmにある液体で構成された外核の内側が90°回転したと想定されます」

情報屋「それに引っ張られて地表が丸ごとツルリと移動した訳ね…」

ホムンクルス「地表に近い金属質の磁性が安定するまでは当面の間地軸が揺れている様に観測されるでしょう」

商人「それって行ったり来たりすると言う事?」

ホムンクルス「はい…核の回転は既に安定していますが外側が磁力によりフラフラしているのです」

情報屋「じゃぁ正確な暦をもう一度作るのは当分先なのね…」

ホムンクルス「何処で安定するか分かりませんので…」

商人「もうインドラの光を精度良く落とす事も出来ないか…」

ホムンクルス「残念ながら無理です…しかし大まかな座標は分かりますので指定の場所へのご案内は出来ます」

商人「因みに現在地は?」

ホムンクルス「地図上でいうとこの位置…北東に行けばフィン・イッシュです」


ユラ~リ ググググ ギシ


情報屋「!!?また大きな波…」

ホムンクルス「津波です…外海では10メートル程度の津波が頻繁に発生している様ですね」

商人「外海側は影響大きそうだなぁ…」

情報屋「この逆さにした古代の世界地図はどの程度アテになるの?」

ホムンクルス「沿岸部の地形は全く異なります…海の浸食のせいですね…標高200メートル以上は殆ど変わりません」

商人「どんな風に変わったか君に描けるかな?」

ホムンクルス「絵に自信は無いのですがやってみます…少し時間を下さい」

『船首』


ザブ~ン ユラ~


アサシン「…」グビ ゴク

魔女「暇そうじゃのぅ…」ノソノソ

アサシン「フフ…流氷が無くなってしまってはもう私にやる事が無い」

魔女「わらわもやる事が無うてのぅ…」

アサシン「ワインを飲むか?」スッ

魔女「そうじゃな…一口頂くとするか」クイ ゴクリ

アサシン「クックック…」

魔女「マズい酒じゃ…」フキフキ

アサシン「なぁ魔女?私達も付き合いが随分長いな…もう20年を超え記憶もおぼろだ」

魔女「狭間に居った期間が長い故にもっと長く感じるわい」

アサシン「そろそろ子でも産んだらどうだ?」

魔女「それは母上が決める掟じゃ」

アサシン「勝手には産めんかクックック…」

魔女「要らぬ世話じゃ…してアサシン…主の理屈で言うと魔王を滅ぼした者が魔王になる…じゃったな?」

アサシン「古い話を…クックック」

魔女「どうじゃ?魔王になった気分は?」

アサシン「そうか…私は魔王か…」

魔女「率直に答えよ…俗な考えは要らぬ」

アサシン「虚無だ…ただ虚しい」

魔女「虚無から何か生まれてきたりはせぬか?」

アサシン「んん?私が魔王に染まるとでも思って居るのか?」

魔女「一応心配して居るのじゃ…」

アサシン「妖精がな…私に導きを与えている」

魔女「ほう?如何に?」

アサシン「海の向こうへ行かねばならん様だ」

魔女「主はフィン・イッシュに帰るのでは無かったか?」

アサシン「最終的にはな?」

魔女「まだ続きがあると申すか…」

アサシン「海の向こうに…私は妖精を追う」

魔女「ふむ…どうやら主はまだ死んでおらん様じゃ」

アサシン「本当の事を教えてやろうか?」

魔女「何じゃ?」

アサシン「私の妹の事だ…海の向こうで妹が待って居る気がしてならないのだ」

魔女「んん?死者の集う楽園…ニライカナイの事かいな?」

アサシン「さぁな?ただ無性に…海へ惹かれる」

魔女「ふむ…」トーイメ


--------------

--------------

--------------

『夜_甲板』


シュン! チュドーーーン!


ガーゴイル「グェェェ…」ヒューー バシャーン

女戦士「ええい!又魔女の力を借りねばならんか…ロック鳥はどうした!?味方では無いのか!!」

ローグ「夜はどっか行っちまうみたいっすね…」

女戦士「ちぃぃぃ意味の無い鳥だ…」

アサシン「次撃てるまで10分だ…凌げ」


女海賊「うわわ…お姉ぇ!!レイスも出てんじゃん」


女戦士「何!?何処かに魔方陣の欠けがあるのか?」キョロ

ローグ「あっしが処理して…」ダダ

女戦士「全員ミスリルの武器に持ち替えろ!!レイスを優先して倒せ!!」

海賊共「がってん!!」ドドド

女海賊「ちっとガーゴイルは私が何とかすっから今の内に体制整えて」スタタ シュルシュル スタ


ノソノソ


魔女「騒がしいのぅ…ボルケーノが必要かえ?」

女戦士「魔女!!レイスが出て居るのだ…何処かに魔方陣の欠けがある…先にそっちを頼みたい」

魔女「ふむ…どこじゃろうのぅ?」

ローグ「魔女さん!!荷室の方でやんす!!荷入れで銀がどっか行っちまったんすよ」


レイス「キシャァァァ!!」


ローグ「出て来るなってんでやんす!!」スパ

レイス「キャァァァァ…」シュゥゥゥ

魔女「応急で砂銀を撒くでレイスを処理せい」

ローグ「はいなー!!」ダダ


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『船長室』


ガチャリ バタン


女海賊「ホムちゃん達此処に居たね?」

商人「どうなって居るんだい?」

女海賊「船の中にレイスが出てちっとバラバラな感じさ…プラズマの銃を持って来たから商人もガーゴイル撃ち落して」

商人「あぁ分かった…」

女海賊「情報屋は動けそう?」

情報屋「ええ…走らない程度なら…」

女海賊「んんんんん…無理しない方が良いな」

ホムンクルス「私は動けますよ?」

女海賊「え!!?ホムちゃん?…まぁ良いや!!プラズマ銃の使い方分かる?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「おけおけ…リロード30秒だから落ち着いて撃って」

ホムンクルス「わかりました…」

女海賊「情報屋は此処に居て!!ここならレイス来ないから」

情報屋「御免なさいね戦力にならなくて…」

女海賊「良いの良いの!!ほんじゃ商人!ホムちゃん!行くよ!!」

商人「よーし!!」

ホムンクルス「はい!」

『デッキ』


ピカーーーーーー チュドーーーン!

ピカーーーーーー チュドーーーン!


女海賊「おっし!!リロードしっかり待ってね!!食らえ閃光弾」ダン! ダン!


ピカーーーー


女戦士「見えた!!撃てぇ!!」

海賊共「へい!!」バシュン バシュン バシュン バシュン

女海賊「お姉ぇ!!エクスカリバー出しといて!!そしたら見える!!」

女戦士「確かに…取って来る」ダダダ

商人「これは何匹飛んでるか分からないな…」タジ

女戦士「プラズマの銃は2人で交互に撃ってガーゴイルを近づけさせるな!」

商人「そうだね…」

ホムンクルス「分かりました…」

女海賊「ほんじゃ次!!もっかい閃光弾行くよぉ!!」ダン! ダン!


ピカーーーー


女海賊「撃て撃てぇ!!」


バシュン バシュン バシュン バシュン

ピカーーーーー チュドーーーン!

『甲板』


ダダダ スタ

女戦士「待たせた!!インドラの光だ!!」スラーン ピカーーーー

女海賊「おっし!!見えたぁぁ!!退魔の特殊弾食らえ!!」ガチャコン ダン! ダン!


ガーゴイル「ギャァァァァ…」ヒュゥゥゥ


女戦士「押し戻して居るな?」キョロ

商人「丁度射程さ!!」カチ ピカーーーー チュドーーン!

アサシン「フフこれでガーゴイルは近付けまい…」カチ シュン! チュドーーーン!

女海賊「退魔の方陣はどうなってる?」

女戦士「ローグと魔女が荷室に行ったきりだ」

女海賊「大丈夫かな…」

アサシン「私が行って来よう…丁度リロードで10分待つからな…」スタ


--------------


『荷室』


ダダダ スパ スパ スパ


レイス「キャァァァァ…」シュゥゥゥ

ローグ「やっぱなんやかんやでミスリルダガーが使い勝手良いでやんす」スチャ

魔女「ひとまず退魔の砂銀を撒いておるが…これは船を改修した場所を全部見て回らんとイカンぞよ?」

ローグ「マジっすか…」

魔女「主は把握しておるんか?」

ローグ「船底の竜骨を補強していやしたね」

魔女「クジラの骨に変えた所はすべて退魔の方陣を敷き忘れておるな…案内せい」

ローグ「へい…こっちでやんす」スタ


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『甲板』


ザブ~ン ギシ


女戦士「アサシン!方陣の方はどうだ?」

アサシン「ミスリル銀の細工が必要な様だ…お前が行った方が良い」

女戦士「なぜミスリル銀を…」

アサシン「船を改修した後に退魔の方陣を敷き忘れているだろう?」

女戦士「なっ…そうか船内にも必要だったのか…」

アサシン「今からミスリル銀を打ち直すらしい…だからお前が行くべきだ」

女戦士「分かった…」

アサシン「ここは私がインドラの光を浴びせればガーゴイルは寄って来んと思う」

女戦士「そうだな…悪いが行って来る」ツカツカ

女海賊「んん?アサシンとお姉ぇが交代?」

アサシン「うむ…インドラの光があればお前達だけで凌げるな?」

女海賊「なんか余裕っぽいね…射程内に入って来なくなったさ」

アサシン「さぁて…私は又見張りへと戻るか…」スタ


コーン コーン


女海賊「お?ミスリルを打つ音だ」

アサシン「もう何物も近づかんだろう…ワインでも飲むとしよう」グビ


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『翌日_デッキ』


進路1時方向!陸には近付きすぎるな?

このまま行けば日が落ちる前にフィン・イッシュ近海だ


海賊「頭ぁ!!左舷側に潮目が見えるでがんす」

女戦士「渦に巻き込まれるかも知れんな…2時方向に修正だ!!」

海賊「へい!!」ドタドタ


タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!エクスカリバーの鞘出来たよ…真っ直ぐ抜けるか試してみて」スッ

女戦士「ふむ…」スラーン スチャ

女海賊「どう?」

女戦士「抜いた時に鞘が鳴るな?隠密出来んが?」

女海賊「あぁぁぁ音か…気を付けて無かった…やっぱ全部ミスリルで作っちゃダメか…」

女戦士「まぁ盾替わりに使えん事も無い」

女海賊「盾ねぇ…もうちょい大き目の鞘でも良い?そしたら音も消せるかも」

女戦士「任せる…ただ抜いた音があからさまに分かるのは止して欲しい」

女海賊「おけおけ!今度は気を付ける…もっかい作って来る」スタタタ


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『1時間後』


タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!もっかい作って来たよ」

女戦士「随分早かったでは無いか」

女海賊「まだ装飾して無いさ…今度は盾として使える様に結構重さある」スッ

女戦士「ほう?これは無垢のミスリルをくり抜いたか」

女海賊「ほんなん破壊の剣入れるだけでくり抜けるから簡単なんだ…抜いてみて」

女戦士「…」スチャ

女海賊「どう?」

女戦士「なかなか良いな…鞘も盾として強度十分の様だ」

女海賊「おけおけ!!あと持ち手付ければ良いね?」

女戦士「これは背負う形になるな…」

女海賊「そだね…腰につけるには重い…てか背負った方が邪魔にならないよ?」

女戦士「背負って抜けるか…」

女海賊「あぁぁ無理だね…まぁ急に抜く事なんかそうそう無いと思うけど…」

女戦士「確かにそうだな…まぁ良い…今のままで作ってくれ」

女海賊「おけおけ!!夜には間に合わせる」スタタタ


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『船長室』


ホムンクルス「ふぅぅ出来た…」

情報屋「ご苦労様…見せて貰える?」

ホムンクルス「はい…どうぞ」

商人「どれどれ?」

情報屋「綺麗に書けて居そうね…でも地形が全然違ってて分からない…」

商人「これセントラルは内陸になってる?」

ホムンクルス「そうですね…海面が下がって遠浅だった場所がすべて陸になりました」

情報屋「フィン・イッシュも沿岸部の地形が変わり過ぎてて何処が何処なのか…」

ホムンクルス「港はすべて水没して居ますので何処に停船するか困ると思います」

商人「あれ?確か外海側に港を作ってるんじゃなかったっけ?」

情報屋「完成したという話は聞いて居ないわ」

商人「そうか…」

情報屋「ねぇ…命の泉のある山脈の北側…ここはもう未踏の地では無いのよね?」

ホムンクルス「はい…赤道付近ですので船で行く事が出来ると思われます」

情報屋「たしか超古代文明でそこら辺にインダス文明があったらしいの」

ホムンクルス「文明跡地でしたら他にも行ける様になった場所が沢山ありますね」

商人「なんだ君は更に考古学の高みを目指したいんだね」

情報屋「当たり前でしょう…すべて繋がって居るのだから」

商人「こう見ると僕達の今の文明圏って小さいねぇ…内海の周りにしか人は居ないんだろうか?」

ホムンクルス「居るかもしれません…外海の向こう側に別の文明が繁栄している可能性はゼロではありません」

情報屋「あぁぁワクワクしてきた」

商人「ホムンクルス…君は言う事が変わったね?」

ホムンクルス「そうですか?」

商人「確率の話をしなくなった…夢を語る様になったよ」

ホムンクルス「はい…私は人間ですから」

商人「それだよそれ!!それで良いんだ!!」


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『フィン・イッシュ近海』


ザブ~ン ギシギシ


海賊「頭ぁ!!この下の海底に棚があるんでこれ以上行くと津波の影響が出ちまうでがんす」

女戦士「そうだな…小島に寄せるのも座礁の危険がありそうだ…ここで碇を降ろせ!!」

海賊「がってん!!」ドタドタ

ローグ「気球はいつでも出せやすが?どうしやしょう?」

女戦士「私は船に残る…アサシンと魔女を連れて女王に挨拶へ行って来い」

ローグ「分かりやした!!」

アサシン「インドラの銃は借りて行っても良いか?」

女戦士「ふむ…ガーゴイル除けか…」

アサシン「こちらにはエクスカリバーが有るだろう?」

女戦士「分かった…それは戻って来るという意味と受け取って良いな?」

アサシン「フフ私は海の向こうに用事がある…もちろん戻って来るとも」

女戦士「海賊共ぉ!!小舟を2隻とも降ろして木材と鉄の買い付けに行って来い!!」

海賊共「へ~い!!」

女戦士「交渉役に商人を同伴させるんだ」

商人「ええ!?僕が海賊達と?」

女戦士「何を言って居る…この船に乗って居るからにはお前も海賊だ」

商人「ええと…取り引き考えて無かったなぁ」

女戦士「硫黄を半分持って行け…そのつもりで乗せて来たのだから」


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タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!エクスカリバー完成したよ」スッ

女戦士「ふむ…杖替わりに立てて置けば良いか?」ドン

女海賊「お?良いねぇ…デッキの上で仁王立ちしときゃ恰好つくわ」

女戦士「そろそろガーゴイルが出て来る時間だ…お前も戦闘に備えろ」

女海賊「ホムちゃんどこに行ったか知らない?」

女戦士「船長室で地図を作っていた筈だが?」

女海賊「おけおけ!!ホムちゃん用のワイヤー装置も作ったのさ」

女戦士「ホムンクルスを飛ばせるつもりか?」

女海賊「私のとはちょっと違うさ…飛空艇への乗り降りに使うんだよ」

女戦士「フフそうか…自発的に動くようになったか」

女海賊「ちっと行って来る」スタタ



『船長室』


アーデモナイ コーデモナイ


ホムンクルス「六分儀を使った星の観測では地軸の傾きが変わって居る様に見えますが実際は違います…」

情報屋「地球の地表がしっかり定まって居ないからなのね…」

ホムンクルス「はい…これは衛星を使った観測でないと知りえない事ですね」

情報屋「衛星はもう真上に?」

ホムンクルス「真上に来ているのは1基です…他の3基はそれぞれ違う場所に位置します」

情報屋「その全部がインドラ兵器を乗せているのかしら?」

ホムンクルス「いえ…現在稼働出来るのは1基だけです…残りの3基は4000年前にミラー部が損傷しています」

情報屋「ロストテクノロジーの最後の一基だった訳ね」

ホムンクルス「はい…」

情報屋「もしかしてウンディーネ時代の戦争は宇宙でも?」

ホムンクルス「衛星の履歴からするとその様ですね…私にはその記憶がありません」


ガチャリ バタン


女海賊「ホムちゃん!!ワイヤーの装置作って来たよ」

ホムンクルス「ありがとうございます」

女海賊「使い方分かる?」

ホムンクルス「分かります…見ていましたので」

女海賊「おっし!!ちっと今の内に練習しとこうか…メインマストに登ってみよう」

ホムンクルス「はい…ですが今情報屋さんとお話を…」

情報屋「良いのよ…私は見ておくわ」

ホムンクルス「分かりました…では行きましょう」スタ


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『メインマスト』


パシュ シュルシュル


女海賊「おーーー一発で成功じゃん!!」

ホムンクルス「体のバランスを取るのが難しいのですね…」ジタバタ

女海賊「ワイヤーを片手で持てば良いよ…巻き取る時に怪我しない様に気を付けて」

ホムンクルス「はい…」シュルシュル スタ

女海賊「これが上手く使えると襲われた時にサッと逃げられるんだ」

ホムンクルス「そうですね…今度地上に降りたら練習してみます」

女海賊「あれ?商人もプラズマの銃持って行ったみたいだなぁ…」

ホムンクルス「一つは私が持って居ますよ?」

女海賊「今晩は魔女もアサシンも居ないのさ…2人で幽霊船守らないといけない」

ホムンクルス「頑張りましょう」

女海賊「私は特殊弾の無駄撃ちになっちゃうから実質的にホムちゃんだけになるんだけどさ…」

ホムンクルス「私には犬笛もあります」ハム


トゥルルルル~♪


女海賊「おぉぉ!!それがあればホムちゃんは安全だな…そうかミスリル銀を…」

ホムンクルス「??」

女海賊「おっけ!!閃いた…波の揺れで鳴る鈴を作れば良い…速攻作って来る!!」スタタ ピューー



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『夜_甲板』


リーン リンリン♪


情報屋「はぁぁぁ涼しい音…」

ホムンクルス「エクスカリバーの光で心なしか暖かいですね」

情報屋「気持ち良いわ」

女戦士「これは良く考えたな…ガーゴイルが寄って来ん」

女海賊「これ作るの超簡単なんだよ…フィン・イッシュに配っても良いかも」

女戦士「次に小舟が戻って来たら持たせよう」

女海賊「おけおけ!!作り増しとく」

女戦士「今晩はゆっくり出来そうだな?」

情報屋「何か食べる物でも作る?」

女海賊「そうだ…お腹空いてたんだ…」グゥ


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『バーベキュー』


ジュゥゥゥ モクモク


女海賊「…ええ!!?月にインドラの矢を落としても意味無い?なんでさ?」

ホムンクルス「インドラの矢は核弾頭ミサイルと比較して爆発エネルギーが小さいからです…ガラス質の生成に至りません」

女海賊「メッチャ爆発して津波とか起こしてたじゃん」

ホムンクルス「それは水蒸気爆発ですね…熱エネルギーとしては核反応に遠く及ばないのです」

女海賊「ぬぁぁぁ…ほんじゃ月に退魔を宿らせるのは無理って事?」

ホムンクルス「あと一つ残されている可能性があります」

女海賊「なになに?」

ホムンクルス「4つある衛星にはそれぞれ高純度のオリハルコン結晶が搭載されています」

女海賊「もしかして衛星を落とす?」

ホムンクルス「はい…チャンスは一度きり…そして二度と衛星を使う事が出来なくなります」

女海賊「…」ゴクリ

情報屋「それは座標や情報を得る事も出来なくなるという事ね」

ホムンクルス「はい…月の軌道が正確に分からない為どのくらいの確率で成功するか分かりません…」

ホムンクルス「衛星から送信される映像から私がコントロールして落とす事になります」

女戦士「際どい選択だな…座標が分からんとなると外海を渡れんぞ?」

女海賊「落とす!!失敗したら次の手考える!!」

女戦士「フフお前は直球勝負だな」

女海賊「ホムちゃんは人間として生きるんだ…もうインドラ兵器なんか要らない!!」

ホムンクルス「はい…」ニコ

女海賊「どんくらいで落とせる?」

ホムンクルス「少し時間を下さい…月の軌道と衛星の位置関係から確率の高い条件を算出します」

情報屋「女海賊?あなたは決断が早いのね?」

女海賊「迷いはあるさ…でも使う時使わないといつまで立っても宝の持ち腐れになるのも知ってるんだ」

女戦士「その通りだ…そうやって勝ちに持ち込む」

『翌朝』


ザブン ギシギシ


女海賊「ふぅぅ結局ガーゴイル来なかったね…」トンテンカン

女戦士「お前も少し休んだらどうだ?」

女海賊「お姉ぇの方こそ休んで良いって…私は鈴作るのに忙しい」トントントン

女戦士「知って居るぞ?お前がモノ作りに勤しむ時は心が痛む時だと…」

女海賊「…」トンテンカン

女戦士「まぁ話したく無いならそれでも良いが…睡眠はしっかりとる様にしろ」

女海賊「未来の老いた姿を見たく無いのさ…気が狂いそう」

女戦士「お前が描き集めた壁画の写し…アレは未来の成長日記だな?」

女海賊「そうだよ…苦難の一生さ…そのすべての記憶があの壁画だよ」

女戦士「何を読み取った?」

女海賊「あの子だけ4000年も未来の為に戦い続けてるの…分かる?」

女海賊「命を運んで…命を繋ぎ続けて来た事…」プルプル

女海賊「どうすれば報われる?」

女海賊「…それを考えたら…月に連れて行ってあげるしか思い浮かばない」

女海賊「だから迷ってる…アヌとの契約をそのまま受け入れれば良いのか…」

女海賊「それとも違う方法で月に連れて行くのか…」

女戦士「現状他の方法で月に行く選択は無いな」

女海賊「知ってるよ…でも未来の老いた姿を見たくない…苦難の顔を見たくない」


リーン リンリン♪


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『鯨型飛空艇』


カサカサ モグモグ


女海賊「よしよし大きくなれよぅ?癒し苔は美味いか?」

ダンゴムシ「…」パクパク プリ

女海賊「ウンコはワームに食って貰うんだぞ?」ツン

ダンゴムシ「!!?」クルリン コロコロ

女海賊「ワームも癒し苔食って良いぞ…どっちが食べるの早いか競争だ」

ワーム「!!?」パクパク

女海賊「おぉぉオマイら友達になれそうだな?」

ダンゴムシ「…」ピク キョロ

女海賊「う~む…良く見たら目が沢山ついてるんだなぁ…超ダンゴムシだな…」

ダンゴムシ「…」カサカサ パクパク

女海賊「ワームは口が目になってんのかな?」ツン

ワーム「!!?」ニョロニョロ ピョン

女海賊「うぉ!!飛ぶんか!!」

ダンゴムシ「…」ジー クルリン コロコロ

女海賊「へぇ?得意な事が違う訳ね…よーし!滑り台作ったげるわ」ゴソゴソ

ワーム「??」ニョロニョロ

女海賊「どうよ?葉っぱの滑り台だぞ?」

ダンゴムシ「…」カサカサ

女海賊「あれ?隠れるの?…ほんじゃこれでどうよ?葉っぱの上に小麦置いとく…食ってみ?」パラパラ

ダンゴムシ「…」カサカサ カサカサカサ

女海賊「なんだ滑って登れないのか…訓練だよ訓練!!」

ワーム「…」ニョロニョロ

女海賊「あぁぁヤバイ…先越される…」


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『小舟』


ガコン ギシギシ


海賊「荷室の扉を開けてくれぇぇぇぇ!!」


ガラガラガラ ドターン!!


海賊「木材と鉄を早く運び入れるでがんす!!」ドタドタ

女戦士「商人!!フィン・イッシュの様子はどうだ?」

商人「ガーゴイルの事かい?」

女戦士「そうだ」

商人「銀装備が出回って居るからなんとかなってる…レイスが出てしまうと厳しい」

女戦士「退魔の鈴を作ったのだ…配って来い」

商人「おぉイイね!!」

女戦士「退魔の方陣は敷いて居ないのか?」

商人「昨夜兵隊が一気に動き出したよ…多分魔女の入れ知恵だね」

女戦士「それは良かった」

商人「銀が豊富にあるのが救いさ…」

女戦士「私達も銀を仕入れておいた方が良いな」

商人「安いから買いだね…次で持って来るよ」

女戦士「豪族はうろついて居ないか?」

商人「沢山居るよ…でも彼らの船は大体内海側の沖にあって自由に行き来出来ないみたいだよ」

女戦士「先に外海へ出た私達の勝ちだな…フフフ」

商人「南の海峡から回って来るかも知れないから一応注意しておいた方が良いね」

女戦士「分かっている…」

商人「今日は小舟で4回往復する予定だから昼間の内にフィン・イッシュへ少し出られるけどどうする?」

女戦士「いや…休息しておく…夜間に備えねばならん」

商人「そうかい?まぁ又お土産持って来るさ」


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『甲板』


ザブン ギシギシ


測量士「頭ぁ!!10km程南にキャラック船が見えるでごわす!!」

女戦士「例の豪族だな?スクーナーはどうした?」

測量士「見えんです!!」

女戦士「沖から回り込んでいるかも知れん…見張りを続けていろ」


スタスタ


情報屋「まだ狙われて居るの?」

女戦士「さぁな?こちらに近寄れないから離れた場所からフィン・イッシュで補給して居るのかも知れん」

情報屋「早いスクーナーが居ないのも変ね」

女戦士「夜間の奇襲には備えて置かんとな」

情報屋「ガーゴイルを掻い潜って来るかしら?」

女戦士「考え難いのだが…奴らは幽霊船にその危険を犯しても余る宝がある事を知って居るのだ」

情報屋「豪族の殆どは北方の海賊だったわね?」

女戦士「手漕ぎガレー船の馬鹿共だな…どこでスクーナーを手に入れたか知らんが金と女の為なら何でもやる連中だ」

情報屋「まさか泳いで来るとか無いでしょうね?」

女戦士「有り得る…この船を奪うつもりで全員泳ぎとかも考えられる」

情報屋「ガーゴイルは水の中には入って来ない…夜危ないわ」

女戦士「さて…どうしたものか…」


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『鯨型飛空艇』


シュルシュル スタ


女戦士「これは…」アゼン

女海賊「ふごーーー…すぅ…」zzz

ホムンクルス「すや…」zzz

女戦士「どうしたらこれほど散らかるのか…」


カサカサ ニョロニョロ


アラクネー「!!?」カサカサ

ミツバチ「!!」ブーン

ダンゴムシ「…」パクパク

ワーム「…」モソモソ

女戦士「まぁ…そっとしておくか…哨戒を頼みたかったが…」


ヒラヒラ パタパタ


妖精「ハロハロー!!君も遊びに来たのかな?」クルクル

女戦士「妖精か…お前が眠らせたのか?」

妖精「今遊んで居る最中さ」

女戦士「フフそうか…あいにくだが私は用事があって遊べん」

妖精「それは残念だなぁ…また遊びに来てね~」ヒラヒラ

女戦士「そうだ妖精…」

妖精「何?やっぱり遊ぶ?」

女戦士「お前の友達にサメは居ないのか?」

妖精「居るよ?サメと遊びたいの?」

女戦士「サメを見てみたいと言う私の友達が居てな…」

妖精「そっかぁ…じゃぁ友達になれると良いね」

女戦士「呼んで欲しいのだが…」

妖精「おっけぇ!!…でもね?お腹空かせてるかも知れない…機嫌が悪いと言う事聞かないんだよ」

女戦士「そうか…では夜に餌を撒いてやる…それでどうだ?」

妖精「わかったぁ!!呼んで来るね~」ヒラヒラ

女戦士「…」---なるほど…妖精とはこうやって付き合えば良いのか---


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『貨物用気球』


フワフワ ドッスン


ローグ「頭ぁ!!物資運んできやしたぜ?」ヨッコラ ノソノソ

女戦士「アサシンと魔女はどうした?」

ローグ「フィン・イッシュの方もゴタゴタしててですね…戻るのに2~3日掛かりやすね」

女戦士「ガーゴイルの襲撃か?」

ローグ「それもあるんすが港が水没して全滅なもんで物流止まってるんす」

女戦士「なるほど…」

ローグ「ほんで黒死病に効くポーションが余りまくってるもんすから沢山頂やした…荷室に入れときやすね」

女戦士「日が落ちる前に急ぎでお前に頼みたい事があるんだが…」

ローグ「お?そら早くせんといかんですね…」

女戦士「10km程南に豪族のキャラック船が停船しているのだが…誰の船だか確認して来て欲しい」

ローグ「気球から見えて居やしたぜ?」

女戦士「スクーナー3隻も何処に行ったか分からんのだ…」

ローグ「分かりやした…ちっと先に哨戒に回りやす」

女戦士「うむ…助かる…今夜辺りスクーナーで一気に乗り込んで来るかもしれん」

ローグ「ハイディングしとけば良いじゃないっすか」

女戦士「ガーゴイルやレイスと何日も戦い詰めになってしまう…今は戦力が無い」

ローグ「豪族相手の方がまだマシってこってすね」

女戦士「今晩はお前が主戦力になるから船に戻って来るのだぞ?」

ローグ「わかりやした!!じゃぁ哨戒に行って来やす」スタ


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『夕方_甲板』


ええと…あのキャラック船は髭男爵の持ち物でやんすね…豪族に貸与してるんす

大砲は全部で40門くらい乗ったガチ物の軍船でやんす

乗って居るのは50人ぐらいっすか…10人くらいは下船して小舟で補給に行った感じっすね

3隻のスクーナーは気球から見ても何処行ったか分からんです


女戦士「なるほど…セントラルの軍船のままではフィン・イッシュに立ち寄れないから豪族を使って居るか」

ローグ「この海域に居るのは海上で他のセントラル軍船に補給させる為っすね」

女戦士「なかなかやり手が乗って居そうだとは思って居たが…髭男爵の息が掛かって居たか」

ローグ「頭の宿敵な訳でやんすが…どうしやす?」

女戦士「髭男爵の船と聞いたからには奪ってやる…それか完全に破壊だ」

ローグ「破壊は勿体無いっすねぇ…アレは一級品のキャラック船っすよ」

女戦士「とりあえず今晩をどうするか…」

ローグ「気球から見た感じ20km範囲内にスクーナーは見当たらんでやんすよ?」

女戦士「上手く風に乗れば2~3時間で接近されてしまう」

ローグ「ガーゴイル無視して真っ直ぐ来るのは無理がありやせんか?」

女戦士「何か対策を打って居るかもしれん…」


ドタドタドタ


女海賊「寝すぎたぁぁぁ!!」ドタドタ

ローグ「ちょ…姉さん…顔を洗ってきた方が良いでやんす…どうしたんすかその顔」

女海賊「えええ!!?」

ホムンクルス「ごめんなさい…妖精さんの言われた通りに木炭で…」

女海賊「ホムちゃん落書きしたん!?」ゴシゴシ

ローグ「あらららら‥あらら」

女海賊「うっわ!!真っ黒じゃん…」

ホムンクルス「私が綺麗に拭きますのでこちらへ…」グイ

女海賊「イイヨいいよ!!これこすって薄く延ばしたら全体的にちょい日焼けした感じさ」ゴシゴシ

女戦士「呆れるな…良いから洗ってこい…真っ黒過ぎる」

女海賊「ええ?そんなに汚れてるん?」

ホムンクルス「はい…綺麗に拭きますので…」グイ


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--------------

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『日没』


ザブ~ン ユラ~


女戦士「碇を上げろぉ!!」

海賊共「がってん!!」ガラガラ

女海賊「お姉ぇコレどうすんの?…縦帆一枚?」

女戦士「そうだ…一枚だけで付近をゆっくり周遊だ」

ローグ「夜中にスクーナー3隻が突撃してくるかも知れんのです」

女海賊「ほ~ん…ほんで明かり全部消してんだ…」

女戦士「今晩はエクスカリバーの光も無しだ…月明かりのみでガーゴイルと戦う」

女海賊「光って場所知られたく無い訳ね…」

女戦士「うむ…向こうからすると灯台の様な物だからな…プラズマの銃も使わない」

女海賊「おけおけ…理解した…私の特殊クロスボウとローグの強化クロスボウで落として行く訳ね」

女戦士「他の者は普通の2連クロスボウだ」

女海賊「スクーナー接近して来ちゃったらどうする訳?」

女戦士「視認出来れば迫撃砲を撃ちたいが…恐らく向こうも明かりを消して来る」

女海賊「てかあいつ等そんな頭回るんかな?」

女戦士「さぁな?まぁこちらも暗闇での戦闘は慣れて置いた方が良い…夜襲に備えてな」


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『夜』


リーン リンリン


女海賊「あーーやっぱミスリルの鈴鳴ってるとあんま近寄って来ないな…」

ローグ「一応射程には入ってるんすがどうしやす?」

女戦士「数匹落としてサメに餌をやってくれ」

女海賊「サメ?」

女戦士「妖精にサメを呼んでもらったのだ…豪族共が泳いで来るのに備えてな」

女海賊「うは…泳いで来るとかあいつ等ならやりそう」

ローグ「落としやすぜ?」スチャ ダン!


ガーゴイル「グエェェェェ…」ヒューー ボチャーン


女海賊「ガーゴイルなんか食って美味いんかな?」スチャ ダン! ダン!

ローグ「サメは何でも食いやすぜ?」ダン!


バチャバチャ ザブザブ


女海賊「おぉぉぉ…どっかで食われてる音する…」

情報屋「この調子だと私は出番が無さそう…」

女戦士「無理はしなくて良いぞ?海賊共も控えているからな」

ローグ「頭ぁ!!例のキャラック船が光で合図送って居やすね…」

女戦士「何!?」ダダ

ローグ「こっちが明かり消してるもんで痺れ切らしてるんすよ…どうしやす?」

女戦士「様子見だ…このままゆっくり周遊で構わん」

女海賊「ちっとワナ張って見よっか?」

女戦士「何が出来る?」

女海賊「空き瓶に明かり入れてポイするのさ…明かりに吊られてそっちに突撃するんじゃね?」

女戦士「ふむ…やってみろ」

女海賊「おけおけ!ちっと遅延性の照明弾作って来る…すぐ戻るから」スタタタ


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『閃光』


ポイ! ドブン!!


女戦士「樽?…あれが光るのか?」

女海賊「あの中に仕掛けたビンが何個も入ってんの…順番に光るから多分1時間ぐらい光ってる筈…」

ローグ「もう点火済みなんすか?」

女海賊「もうちょい離れたら私が特殊弾撃って点火する」

女戦士「即席に作ったにしては凝っている…」

女海賊「もともと照明弾は持ってたんだよ…ビンの中に入れて繋いだだけさ…おっし!そろそろ点火する」チャキリ ダン!


メラメラ


女海賊「おけおけ…これで順に点火して行く」

ローグ「あれ?空き瓶なんかありやしたっけ?」

女海賊「なんかポーション一杯あったよ?それ空けたさ」

ローグ「あららら…黒死病に効くポーション捨てたんすか?」

女海賊「他の容器に移し替えたに決まってんじゃん…私の壺の中に入ってるさ…居る?」

ローグ「あいやいや…姉さんは何でもありっすね…」

女海賊「何訳わかんない事言ってんだよ…」


ピカーーーーー


女海賊「お!!?よしよし上手く行ったぞ…ヌフフフ」

女戦士「総員警戒しろぉ!!」

ローグ「そろそろスクーナーが来ても良い時間でやんす…ちっと見て居やしょう」


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『深夜』


ザブン ザブン


女海賊「お姉ぇ!!陸の方!!」

女戦士「何!!陸から来るだと!?」ダダ

女海賊「ウケる…筏作って手漕ぎだ…あいつらまだ樽だって気付いてないぞw」

女戦士「スクーナーはどうした!?」

ローグ「デカくて目立つからどっかに隠してるんすね」

情報屋「ガーゴイルがあっちに行った…」

女戦士「ほぼ裸で接近武器だけか…完全に船を奪うつもりで来たのだな」

ローグ「結構数いやすぜ?全部で40人くらいっすね…」

女海賊「やっぱ馬鹿だねあいつ等…」

女戦士「筏なぞ奪う気にもならんな…帆すら無い」

ローグ「なーんか…幽霊船に今あんまり人が乗って無いって事知って居そうでやんすね」

女戦士「うむ…あのキャラック船からこちらの人数を全部見られて居るのだ」

女海賊「ほんじゃ結構良い望遠鏡持ってそうだね」

女戦士「フフ…奪ってやる」ギラリ

ローグ「あの筏どうしやす?」

女戦士「放置してサメの餌にでもなって貰う…私達は少し沖に出るぞ」


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『明け方』


ザブ~ン ユラ~


女戦士「よし…明るくなる前に攻勢に出るぞ」

女海賊「どうする気?」

女戦士「お前の飛空艇であのキャラック船まで行くのだ」

女海賊「ちょ…ぶっ壊すんか…」

女戦士「私に妖精の笛を貸せ…一人で乗り込んで全員生け捕りにする」

ローグ「うほ…マジっすか!!」

女戦士「無傷であのキャラック船を奪ってやる」ギラリ

女海賊「船動かす人員が足りないじゃん…」

女戦士「あと2人私の従士を連れて行く…お前は私が乗り込んだ後上空で合図を待て…その後従士2人を降ろせば良い」

ローグ「ちっと危ないっす…あっしも連れて行って下せぇ」

女戦士「ローグは幽霊船で指揮を取るのだ…ここは少数精鋭で行く」

女海賊「ほんじゃ私は上空から援護か…」

女戦士「うむ閃光弾と煙があれば十分だ」

女海賊「おけおけ…」

女戦士「ローグ!!くれぐれも幽霊船に豪族を取りつかせるな?」

ローグ「分かりやした…」

女戦士「よし行くぞ!!」ダダ



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『鯨型飛空艇』


シュゴーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「おっしそろそろ真上の筈…お姉ぇ準備良い?」

女戦士「いつでも行ける…」

女海賊「じゃぁ行くよ?」


リリース! スゥ…


女戦士「直ぐにハイディングして距離を取れ…出る!!」ピョン シュルシュル

女海賊「ヤバ…見張り塔の奴に見つかってんじゃん」グイ

海賊「見張りは武器持って無いでごわす…」

女海賊「お姉ぇは?…良し!!降りてんね…」


ハイディング! スゥ…


女海賊「ちっと距離取って援護する…」グイ シュゴーーーー

海賊「甲板に人が出てる気配は無かったでごわす…」

女海賊「ガーゴイル少なくなって気が抜けたっぽいね…おっし距離離れた!!」


リリース! スゥ…


女海賊「ちょいあんたら飛んでるガーゴイル撃って!…私はお姉ぇの援護する」チャキリ ダン! ダン!

海賊「がってん!!」バシュン バシュン ガチャコン


モクモクモク モクモクモク


女海賊「おけおけーーい!!あいつ等何起こってるか分かって無いぞ…」ダン! ダン! ダン! ダン!

海賊「飛んでるガーゴイルは幽霊船の方に向かってるでごわす…」

女海賊「あっちはローグに任せときゃ良いさ…食らえ閃光弾!」ガチャコン ダン! ダン! ダン! ダン!


ピカーーーーーー ピカーーーーーー


女海賊「ヌフフフ…煙と光で何にも見えなくなるんよ…さぁどうするどうする?」ニヤニヤ

海賊「これじゃぁ頭の合図も見えんでごわす…」

女海賊「だぁぁぁぁ忘れてた!!…調子に乗り過ぎた…」

海賊「むむ!!光る剣を振っているでごわす!!」

女海賊「おぉ!!それ合図だ…降りる準備して!!」グイ

海賊「がってん承知の助!!」ドタドタ


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『フィン・イッシュ取引所』


ワイワイ ガヤガヤ

何!!?外海側に商船が入っているだと?

そうだ…それで一気に硫黄が出回ってるんだ

やっぱり噂通り闇商人が運んでるんだな…しかも外海か…


アサシン「…やはり此処に居たか…どうだ?調子は」

商人「アサシン!!そりゃもう忙しくてさ…ここから外海側まで馬車で運ばなきゃいけないから…」

アサシン「馬車を雇うのにも資金が必要だな」

商人「そうさ…儲けは全然無いよ」

アサシン「流通が回れば良かろう」

商人「まぁそうだけどね…港が遠いだけで何もかにもお金が掛かる…早く外海の港を作った方が良いね」

アサシン「資材を運ぶ船が無いらしい」

商人「内海の沖に居る船をそっちに回せば良いのに…」

アサシン「霧があってそう上手く行かんのだろう」

商人「…ところで僕に何か用が有って来たんだよね?何かな?」

アサシン「女狐から話を託けて居てな?礼を言いたいらしい」

商人「なんだそんな事か…自分で言いに来たら良いのに」

アサシン「セントラルの諜報で自由には動けんのだ」

商人「女狐は今何処に?酒場?」

アサシン「娼館だ」

商人「ぶっ…娼婦役?」

アサシン「娼館にもいろんな役割がある…情報収集にはもってこいの場所なのだ」

商人「なるほどねぇ…豪族とかベラベラ秘密をしゃべりそうだ」

アサシン「それは兎も角…お前も周りを良く見ていた方が良いぞ?」チラ

商人「んん?狙われてる?」キョロ

アサシン「闇商人が硫黄を運んでいる噂を流しただろう?…そして今硫黄が流通した…」

商人「あぁぁそういう事ね…セントラル側からしたら都合が悪い訳か」

アサシン「そして外海の謎の船にお前が物資を運んでいる…何も起きない方がおかしい」

商人「ふ~ん…わざわざ警告しに来てくれた訳だ」

アサシン「フフやっと気付いたか…鈍ったな」

商人「どうすれば良いのかな?」

アサシン「昼間は民兵が多いから何も起きんだろうが夜は身を潜めておけ…ガーゴイル退治のどさくさで襲われ兼ねん」

商人「潜めると言ってもねぇ…」

アサシン「鈍い奴だ…娼館に行けと言って居る」

商人「僕が娼館に?ハハもうそんな欲求は無いよ」

アサシン「最後まで言わんと分からんか…女と居る間は誰も邪魔には来ん…安全だと言って居る」

商人「あーー偉い人御用達のアレね…邪魔が入ると色々起きる系の奴…」

アサシン「世話の焼ける…では伝えたぞ?私は戻る…」スタ

商人「伝えたぞって…そうかこれが女狐からのメッセージか…」


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『馬車』


ゴトゴト ゴトゴト


海賊「ふむぅ…やはり動きが怪しい」

商人「襲うチャンス見てるかな?」

海賊「恐らく…向こうの数が揃うのを待って居るのかも知れん」

商人「不用意に往復出来なくなったな…」

海賊「商人さん…ここは一旦引き返して運搬は俺達だけの方が良い」

商人「僕は戦力外かい?」

海賊「いや商人さんは俺達と明らかに恰好が違うから狙われやすいんだ」

商人「軽装過ぎるか…」

海賊「調達だけやって貰えば運搬は俺達がやるから戻ってくれ」

商人「今日も4回往復する事になるけど?」

海賊「頭に事情を説明して一人応援を貰う」

商人「分かったよ…僕は少し目立ち過ぎたみたいだ…」

海賊「向こうもピリピリしてる時だったから仕方ない…馭者!!一旦引き返せ!!」

馭者「ええ?」

海賊「脇でタムロしてる連中に絡まれたく無いだろう?」

馭者「あいやいや…それはご勘弁」


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『取引所』


ワイワイ ガヤガヤ


海賊「ここは民兵が沢山居るんで大丈夫…人気の無い場所には行かん様に」

商人「ハハ分かったよ」

海賊「じゃぁ俺達は運搬が終わったら小舟を隠して昨日の酒場に戻るからソコで落ち合おう」

商人「あぁぁどうするかな…ちょっと用事が有ってね」

海賊「護衛は?」

商人「大丈夫さ…アサシンも魔女も居る」

海賊「それなら良い…補給が終わるまでは兎に角穏便に行きたい」

商人「分かって居るさ…まぁそっちも気を付けて」


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『娼館』


ウフフ…じゃぁ又ね…チュ


商人「ぁ…」ポカーン

男「何見てんだゴラ!!」

商人「あ…いや…たまたま目に入ったのさ…」タジ

娼婦「ペッ!!あんたみたいのが来る場所じゃないよ!!」ビチャ

商人「ハハまいったなぁ…」フキフキ


支配人「これはこれは…どちら様で?」スタ


商人「なんだ身分証が必要なのか…う~ん…どうするかな」

支配人「お見せ頂けないのであればお引き取りを…」グイ

商人「なんか強引だなぁ…」ヨロ

支配人「すみませんこちらも仕事な物ですから」

商人「これで良いかな?」パサ

支配人「商人ギルド…マスター?…わざわざキ・カイからお越しで?」

商人「あのね…そう言う事を言葉で出して良いと思って居るのかい?」ジロ

支配人「ハッ!!失礼しました…どうぞこちらへ」ササ

商人「イラつく対応だねぇ…」イラ

支配人「どうかお許しを…アポ無しの来客時は要領が決まっていまして…」

商人「僕は娼館を良く知らないんだ…どうすれば良い?」

支配人「ご案内致します…お好きな嬢を選んで頂ければ後は嬢に従って…」


嬢達「はぁ~い…」ニコ


支配人「ではわたくしはこれにて失礼…」スタスタ

商人「なんなんだこの独特な雰囲気は…」


嬢達「うふ~ん…」フリフリ


商人「悪いけど僕は君達に全然興味無いのさ…何か気の利いた事言って見てくれないかい?」

女狐「こっちよ…」グイ

商人「おっと…」ヨロ

女狐「黙って付いて来て…」ヒソ

商人「何なんだ?この店は?」ヒソ

女狐「後で話すから…」グイ


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『個室』


ガチャリ バタン


女狐「ふぅぅぅ成功!」

商人「どういう事だよ?」

女狐「私と闇商人が接触したという事がこれでセントラルに伝わる」

商人「ええと…良くその話が分かんないな」

女狐「ここにいる嬢達は全員諜報員なのよ…主にセントラル貴族と豪族の離反を諜報して居るの」

商人「離反って何だい?」

女狐「貴族同士の権力抗争…その手足になっている豪族が裏切るかどうか…」

商人「なるほど…フィン・イッシュの地までそういうのを持ち込んでるんだ」

女狐「私はこれで闇商人から取り引きされた硫黄がどれくらいなのか聞き出せば任務完了」

商人「ハハそれだけ?」

女狐「あなた達が来なければずっと此処で諜報させられる所だった…」

商人「君にとって具合が良かった訳だ」

女狐「そう…そして次は潜入という事であなた達に付いて行けるという訳」

商人「なかなか2重スパイというのも立ち回りが大変そうだ…」

女狐「これで南の大陸へも渡れる…」

商人「足の不自由な子は無事にハテノ村へ逃げ延びたよ」

女狐「それに関しては感謝してる…」

商人「詮索しない方が良いんだね?」

女狐「勘違いしてるかも知れないけれど私の子では無いとだけ言っておく」

商人「えええ!?なんだてっきりそうかと思ってたよ…じゃぁますます気になるな」

女狐「知らない方が良いのよ…もう詮索しないで」

商人「分かったよ…それで…まだ昼間なんだけど明日まで此処に居る感じになるかな?」

女狐「豪族がザワついて居るから少し様子を見た方が良いわ」

商人「幽霊船が外海の沖に居るからだよね?」

女狐「それもあるけれど昨夜何か有ったみたい…あなた知ってる?」

商人「知らないなぁ…今日は船に行けてないんだ」

女狐「嵌められたってボヤいて居るのよ…離反のサイン」

商人「誰に嵌められる?」

女狐「外海にはあなた達の他に髭男爵の兄弟が居るのよ…私の雇い主ね」

商人「あぁ一度戦闘になったな」

女狐「アサシンに聞いたわ」

商人「じゃぁ豪族はその髭男爵の兄弟に嵌められたって言う事になってるのかな?」

女狐「多分…本当ならそろそろ誰か娼館に来る筈なのに今日はまだ来ない」

商人「あぁぁ何となく関係が読めて来たぞ…あのキャラック船への補給は君が絡んでるのか…」

女狐「私と言うか娼館は髭男爵がオーナーよ…公爵の派閥ね」

商人「なるほどねぇ…」

女狐「さて…私は伝令に硫黄の取引量を連絡に行って来るけれど…あなたはどうする?他の嬢をあてがう?」

商人「僕はその欲求がもう無い…あるのはワインが欲しいくらいだ」

女狐「じゃぁ此処で大人しくしてて…もしかしたら壁越しに良い話が聞けるかもしれない」

商人「退屈しのぎか…」

女狐「帰りにワインを持ってきてあげる」

商人「頼むよ…」


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『壁の向こう側』


…あいつは俺らをコケにしやがった

自分は豪華な船で高みの見物してるクセに

俺らだけ樽に向かって特効させたのよ

このままじゃ仲間に示しがつかねぇ

だがあいつを裏切るとこの娼館にはもう出入り出来無くなる

イケ好か無ぇ奴だが我慢するしか無い訳だ

…あぁ分かってる

俺はスクーナー一隻で収まる男じゃ無ぇ

そうだお前にはもっと贅沢して貰いたい

だからここは少し辛抱してチャンスを伺う

必ずデカい山を当ててお前を迎えに来る

だから今日はこれで我慢してくれ


他の嬢にも同じ事を言ってたじゃない!!これっぽっちで私を安く見ないで!!


ドタドタ ドタドタ


商人「…」ニヤニヤ


---本当ワンパターンだな---

---これは死んでも治りそうにない---

---頑張りどころがどうもズレてる---

---バカ過ぎてむしろ可愛いな---

『夕方_キャラック船』


ドタドタ バタバタ


海賊「頭ぁ…使える資材の積み替えは終わったでがんす」ドスドス

女戦士「よし…幽霊船はハイディングさせて全員こちらへ乗り移れ」

女海賊「お姉ぇ!!今確認して来たんだけど退魔の方陣の代わりになんかあちこちお札貼ってるわ」

女戦士「なるほど…レイス対策はしっかりやってる訳か」

女海賊「抜けがあるかも知んないから一応ミスリルの鈴設置しとく」

女戦士「うむ…今晩はこちらの船を守備するから急ぐのだ」


ドタドタ


ローグ「頭ぁ!!豪族全員の鼻削いで来やしたぜ?どうしやす?コレ…」

女海賊「うわ…鬼だね…」

女戦士「サメの餌にでもしろ!反吐が出る」

ローグ「分かりやした!!」

女戦士「女海賊!!全員に線虫を掛けて来い」

女海賊「ええ?見たく無いなぁ…」

女戦士「船を血で汚されては掃除が面倒だ」

女海賊「捕らえた奴ら全員奴隷にすんの?」

女戦士「そうだ…鼻だけ削いだのは価値が下がらん様にする為の事」

ローグ「女も数人居たんすけどね…」

女戦士「知った事では無い…私に刃を向けた報いは見せ示める必要がある」

女海賊「こっわ…」

ローグ「髭男爵の弟はどうしやす?始末しとかんと後で面倒になるでやんす」

女戦士「アレは特別…個人的に恨みがあるのでな」ギラリ

ローグ「あっしは何も聞かされて無いんすが…何かあったでやんすかね?」

女戦士「お前は知らなくても良い…ドワーフの国がセントラルと戦争になった原因とだけ覚えておけ」


--------------

『荷室』


ぅぅぅ…来やがった…静かにしろ…


豪族共「…」

女戦士「…」ツカツカ

女海賊「お姉ぇ…線虫回して行くよ」

女戦士「ヤレ…」

豪族共「…」ビクビク

女戦士「お前!!前に出ろ…」ドカ

髭男爵の弟「ぐふぅ…久しいな?…今度は立場が逆か」ズルズル

女戦士「兄は何処にいる?」スラーン

髭男爵の弟「復讐するつもりか?」

女戦士「…」ブン スパ

髭男爵の弟「ぐぁぁぁぁ…足が…」ドクドク

女海賊「ヤバ!!線虫!!行け!!」ニョロ

豪族共「ひぃぃぃ…」タジ

女戦士「出血せん様にロープで四肢を縛り上げろ」

ローグ「分かりやした…」グイ ギュウ

女戦士「さて…質問にだけ答えろ…兄は何処だ?」スチャ

髭男爵の弟「外海に…ハウ・アイ島だ…ヤメロ!!お前は生きて返しただろう」タジ

女戦士「質問にだけ答えろと行った筈だ」ブン スパ

髭男爵の弟「ぎゃぁぁぁ…うぐぅ…」ドクドク

女海賊「ちょ!!お姉ぇ…」グイ グイ ギュゥ

女戦士「生きて返した?違うな…私の心はあの時死んだ…生きて帰ったのは体だけ」

髭男爵の弟「はぁ…はぁ…若気の至り…許せ」

女戦士「母は後に死んだぞ?」

髭男爵の弟「それは俺達のせいでは無い…」

女戦士「分かって居無い様だ…子を宿して生きると思ったか!!」ブン スパ

髭男爵の弟「あががが…こ…殺せ…殺してくれ」ドクドク

女戦士「ダメだ…お前はこれからダルマになって罪を思い知れ」ブン スパ


ぎゃぁぁぁぁ…


女戦士「ローグ!!後は舌を抜いて死なん様に処置をしろ」

ローグ「へ…へい…」

女海賊「お姉ぇ…ママが居なくなった理由って…」

女戦士「聞くな…死なん様に線虫で癒せ」スタスタ

ローグ「頭に従って下せぇ…死人が出やすぜ?」


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『甲板』


ギシギシ


奴隷には枷として両足に砲弾を付けさせろ…そして船内を汲まなく掃除させるのだ

逆らう者はその場で殺してサメの餌にして良い


ローグ「やり方がガチになって来やした…かなり機嫌悪いっす…」

女海賊「お姉ぇ…」

ローグ「頭は昔の事なんも話してくれんのでやんすが…」

女海賊「私もなんも知らんかったさ…」


ツカツカ


女戦士「無駄口を話して居る場合では無いぞ?まだスクーナー4隻居るのだ…夜に備えろ」

ローグ「へい!!」

女戦士「ミスリルの鈴を設置するのは終わったのか?」

女海賊「あぁぁまだだ…急いでやって来る」

女戦士「情報屋とホムンクルスは船尾楼の前から動くな…ガーゴイルはそこから狙え」

情報屋「大丈夫!」

ホムンクルス「はい…」

女戦士「今晩だけ耐えれば明日からはアサシンを呼ぶ…頑張ってくれ」


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『娼館_個室』


ガチャリ バタン


女狐「お待たせ…ワインを持って来たわ」ポイ

商人「退屈してたんだ…君の用事は終わった?」

女狐「そうね…ところで幽霊船が何処かに消えたらしい…何か知ってる?」

商人「あぁハイディングしてるんだね…騒ぎになっちゃってるかな?」

女狐「いえ…どこかの商船という事になってる…幽霊船とは帆の張り方が違うから」

商人「そうか…大きなスクーナーに見えてるか…大砲も無いしね」

女狐「代わりに髭男爵の弟のキャラック船が近くまで来てるのよ…どうなっているのだか…」

商人「う~ん…どういう事だろう?場所を移動したかな?」

女狐「連絡は取って居ないのね?」

商人「まぁ何か有れば連絡来ると思うんだけどね…」

女狐「ところで…この部屋に隠れて居るのは良いけど…タダでは無いと分かって?」

商人「ハハ…君はお金にガメツイねぇ…」

女狐「支配人へ売り上げの一部を渡さなければいけないのよ」

商人「相場が分からないなぁ…」

女狐「安くて一晩100金貨ね」

商人「うわ!!高い…」

女狐「あなたは持ってるでしょう?」

商人「持ってるけど此処に居るだけで金貨100枚か…」ジャラリ ドサ

女狐「さすが闇商人…これは頂いておく」

商人「君に呼ばれた立場なんだけどねぇ…」

女狐「私も生活が掛かって居るのよ」

商人「もしかして…孤児院?」

女狐「フィン・イッシュの孤児院は女王が出しているわ…このお金は口止めで使う必要があるの」

商人「なるほど…諜報役もお金が掛かる訳か」


”ザザー”

”商人!聞こえるかえ?返事せい”

”あ!!魔女!!何か有ったんだね?”

”女戦士が豪族のキャラック船を無傷で手に入れてのぅ…”

”えええ!?それじゃぁ近くに来てるのって…”

”うむ…女戦士達が乗って居る…それでな?残りのスクーナー4隻も無傷で奪うつもりなのじゃ”

”どういう事?”

”スクーナーの豪族達はまだキャラック船が奪われた事に気付いて居らぬ”

”うん…”

”仲間じゃと思うて近付いて来た所をわらわの睡眠魔法で眠らせるのじゃ”

”あー上手く行きそうだね?”

”ちとこちらの戦力が足りん故に主にも来て貰えんかと思うてな”

”なるほど…どうすれば良い?”

”明日の早朝の暗い内にローグが気球で城まで来る事になっておる…主も合流せい”

”分かった…ええと…女狐も一緒で構わないかな?”

”どういう事じゃ?”

”詳しくは明日話す”

”まぁ良い…遅れぬ様にな?ザザー”


女狐「ちょっと今の話…」

商人「なんか色々有ったみたいだね…聞いた通りさ」

女狐「もしかして私の雇い主はもう居ない?」

商人「う~ん…どうだろう?どうやってキャラック船を奪ったのか聞けなかったね」

女狐「大砲を撃った音も聞こえていないのに…」

商人「まぁとりあえず明日の朝に城へ行けばみんなと合流出来る…君はどうする?」

女狐「もう一度出かけて来る…朝までに戻るわ」

商人「なんだ又暇になっちゃうなぁ…」


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『早朝_城』


魔女様とアサシン様がご搭乗だ!!射手!!援護射撃用意!!


ローグ「早く乗って下せぇ…明るくなるとバレちまいやすんで」

魔女「ほう?商人と女狐はもう乗って居るな…」ノソノソ

商人「暇だから早く来ちゃったんだ…」

アサシン「フフ…女狐は私達と一緒に居てはまずいのでは無いか?」

女狐「幽霊船に潜入するという事になってる」

アサシン「なるほど…上手く口実を作った訳か」

ローグ「飛びやすぜ?」グイ


フワフワ


アサシン「さてローグ…キャラック船は私が貰う…で良いのだな?」

ローグ「へい…頭は初めからそのつもりだった様でやんす」

アサシン「スクーナー4隻奪う理由はフィン・イッシュ外海の安全確保…」

ローグ「そうでやんす…キャラック船の火力とスクーナーの機動力があればちったぁ安全になりやす」

アサシン「なかなか良い仕事をする…これで外海の港建設も捗る筈だ」

魔女「それは無傷で手に入れた後に言えい…こちらは戦える者が15人程しか居らんじゃろう」

ローグ「そーっすね…スクーナーは1隻辺り15人くらいなんで戦う事になったら戦力差4倍でやんす」

商人「フィン・イッシュの軍隊は?」

アサシン「貴族が絡んでいる様だからフィン・イッシュは関わらない方が良い…政治的な理由だ」

ローグ「その通りでやんす…豪族と海賊の争いって事で片づけた方が後々の為っすね」

商人「物資調達で半分くらいドワーフの海賊達が陸に降りちゃってるのが痛いねぇ…」

アサシン「戦闘にならない様に上手くやるのだ…魔女頼みだな」


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『キャラック船』


フワフワ


ローグ「こっから飛び移って下せぇ…船首楼が邪魔で着陸出来んでやんす」

魔女「暗くて足元が見えんわい…」

アサシン「魔女…掴まれ」グイ

魔女「すまんのぅ…」ノソ ギュゥ

アサシン「…」ピョン スタ

商人「ほっ!!」ピョン

女狐「…」ピョン


女戦士「ローグ!!早く気球を隠せ」


ローグ「分かりやした…直ぐに戻りやす」グイ フワフワ

女戦士「済まんな急がせてしまって…直に小舟で補給に行った豪族が戻って来ると思ってな」

商人「スゴイねこの船…幽霊船より大きいじゃ無いか…船幅が広いだけでこんなに広く感じるか…」

女戦士「私は船首楼が邪魔で好かん」

商人「これ乗ってた人はどうしたの?」

女戦士「全員奴隷にした…私を裏切った報いを受けてな」

アサシン「ほう…奴隷も私が貰って良いのか?」

女戦士「好きにしろ…私には不要だ」

アサシン「さて船を動かすのにどの程度従うか…」

女戦士「警告しておくが奴隷にしたのは北方の海賊…折り紙付きの馬鹿共だ…あとは分かるな?」

アサシン「フフ承知だ」

商人「みんな荷室の方かい?」

女戦士「足枷を付けて掃除をさせている」

商人「もう働かせて居るのか…」

女戦士「歯向かうと去勢か死のどちらかだと知って居る筈…」

商人「うわ…裏切りには容赦無いね」

女戦士「当然だ…殺された仲間も居るのだから」


タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!ガーゴイル減ってそろそろ明るくなって来た…外から見えない位置に移動して」

女戦士「ふむ…船尾楼の中へ入れ…そこで事情を説明する」スタ


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『船尾楼_居室』


ユラ~ ギシ


女戦士「…恐らく幽霊船を取り逃がしたと思って居る筈…つまりこの船にスクーナーが不用意に近づいて来る」

商人「なるほど…そこで睡眠魔法な訳ね」

女戦士「そうだ…キャラック船とスクーナーが並んで停船していれば他のスクーナーも寄って来る」

魔女「また奴隷が増えてしまうのぅ」

アサシン「荷室にスペースは十分あるだろう」

魔女「まぁ良い…わらわは何処で隠れて居れば良いのじゃ?」

女戦士「魔女の身長なら甲板に出ても見えん筈だ」

女海賊「私等は此処で隠れて居れば良いんだね?」

女戦士「うむ…交代で仮眠しろ…情報屋とホムンクルスも寝て居ないだろう」

商人「まぁ見張りは僕に任せて」

アサシン「私は見張り塔に上がるぞ?」

商人「あ!!そうそう…今日も小舟で物資を運んで来る予定なんだ…陸に降りたドワーフの海賊達とは連絡取れてる?」

女戦士「私がキャラック船を奪った事はもう知って居る…落ち着くまでしばらく陸で待機しろと命令した」


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『ベッド』


ギシ ドサ


情報屋「ふぅぅ…この船は広くて快適そうね」

女海賊「ん?広いけどお姉ぇの船より遅いんだよ…海賊はあんま使わない船さ」

情報屋「でも軍船よね?」

女海賊「本当は商船が行き来する航路を守る役なんだよ…まぁ固定砲台みたいなもんだね」

情報屋「へぇ?船の種類で役割があるのね…」

女海賊「海賊が好む船は大体排水量200トン位のスクーナーだね…これが早くて大砲2~3門乗る」

女海賊「ほんでお姉ぇの船が500トンのガレオン船…まぁまぁ早くてメッチャ荷物乗る貨物船」

女海賊「このキャラック船は多分1000トン位…遅いけど大砲50門位乗るんじゃないかな…ほんで荷物も乗る」

情報屋「盗賊の商船はどんなタイプ?」

女海賊「盗賊の船ってか元々アサシンの船だね…300トン位のキャラック船…この船何処行っちゃったん?」

情報屋「商人に貸したままね…内海の何処かで荷物運んでる筈よ」

女海賊「あのキャラック船が便利だったなぁ…速度出る様に色々改造してたし」

情報屋「この船も改造すれば良いじゃない…」

女海賊「ダメダメ…動かすのに人数必要な船はそれだけで不便…盗賊の船は1人でなんとかなるのさ」

情報屋「へぇ?色々あって面白い」

女海賊「お姉ぇの船も帆を全部縦帆に改造しててスクーナーみたいなガレオン船だね…ただデカいから一人じゃキツイかな」

情報屋「どうして全部縦帆に?」

女海賊「旋回性さ…相手がスクーナーだとどうしても旋回性で不利なんだよ…」

情報屋「そういう事ね…旋回早くしてハイディングで加速…有利な位置に出来るだけ早く行きたい」

女海賊「そそそ…今までそれが出来なくて何発も砲弾食らってるんだ…まぁ反省を活かしてるんだね」

情報屋「フフ…どうしてあなた達ドワーフが海賊をやってるのか分かって来た」

女海賊「工夫が活かされるもんね…ドワーフはそういうの大好きだよ」


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モクモクモク


出て来て良いぞ?既に眠って居る…


女海賊「お!?」

女戦士「待て…補給から戻った小舟だ…ここは数人で対処するからまだ出るな」

女海賊「おけおけ…」

女戦士「フフ物資をわざわざ運んで来るとは間抜けめ…」タッタッタ

ホムンクルス「出番は無さそうですね…」

女海賊「うん…私起きておくからホムちゃんも寝てて良いよ?」

ホムンクルス「いえ大丈夫です…それよりも…」

女海賊「んん?」

ホムンクルス「月へ衛星を落とす件ですが確率の計算が終わりました」

女海賊「お!!?いつやれる?」

ホムンクルス「今衛星を動かして月へ落下するのは7日後になります」

女海賊「結構掛かるね…そんな遠いのか」

ホムンクルス「真っ直ぐ行ければ20時間程なのですが推進力が足りない為一度スイングバイさせて月への落下起動に乗せます」

女海賊「ふ~ん…よし!やっちゃおう!!」

ホムンクルス「承認…以後座標の取得は出来ませんのでご注意下さい」

女海賊「覚悟してるさ…これで魔物が出なくなる筈なんだ」

ホムンクルス「そうなると良いですね」


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『甲板』


ドタドタ


ローグ「頭ぁ!!これ見て下せぇ…」

女戦士「んん?航海日誌か…そうだ忘れてた」

ローグ「クラーケンを引き連れた謎の大型船ってどういう事でしょうね?」

女戦士「もう2週間前か…霧の中外海に出て行ったか…」

ローグ「オークが乗っている船だと思いやせんか?」

女戦士「うむ…スケッチから察するに奴隷船に使われていた船だな」

ローグ「やっぱ暁の使徒が連れて行かれた先はニライカナイっぽいでやんす」

女戦士「さてどうするか…長期航海になると思ってフィン・イッシュを拠点にと思って居たが…」

ローグ「船で外海の狭間行くのはちっと厳しくないすかね?」

女戦士「私もそう思う…延々ガーゴイルと戦う羽目になりそうだ」

ローグ「ここに船置いて飛空艇でちゃっちゃと行った方が良いじゃないすか?」

女戦士「行ける人数が限られるのがな…食料を乗せると4人くらいしか乗れんだろう」

ローグ「食料は姉さんの壺の中に入れれば8人乗れる筈でやんす…」

女戦士「オークと戦う事になった場合8人で十分だと思うか?」

ローグ「戦うんじゃ無くて未来君を帰して貰うでやんすよ」

女戦士「ふむ…まぁここが落ち着いたら妹と話してみる」

ローグ「そーっすね…一応この日誌を姉さんにも見せて来やすね?」

女戦士「荒立てん様に気を付けるのだぞ?」

ローグ「分かって居やす…隠しておくのは逆効果でやんす」

女戦士「うむ…行って来い」



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『荷室』


スタスタ


女狐「…」キョロ

豪族「!!?お前…海賊王の娘とグルだったのか!!」ズリズリ

女狐「シィーーーッ…声が大きい」ヒソ

豪族「この野郎…」グググ

女狐「違う…勘違いしないで…潜入に成功しているの…私は髭男爵の弟に雇われている諜報員よ」

豪族「何?」

女狐「こんな事になってしまって居て私も驚いてる…髭男爵の弟は何処に?」

豪族「もう死に体だ…そこに転がってる手足の無いのがそうだ…舌も抜かれて話す事も出来ん」ヒソ

女狐「ええ!?そんな酷い事に…」タジ


髭男爵の弟「はぅぅぅ…はぅはぅ…」モゾモゾ


女狐「失った手足はキ・カイに行けばなんとか出来る…」

髭男爵の弟「…」グッタリ

豪族「お前は外と連絡出来るのか?」

女狐「理由を作ればなんとか…」

豪族「あいつ等は指示が無い限りこの船に来る事は無ぇ」

女狐「船は何処に?」

豪族「少し北に行った所にある川の上流だ…行けるか?」

女狐「一人で行って私の方が危ないわ」

豪族「ちぃ…何人か酒場に入り浸ってる筈だ…そいつらに話して何とかしろ」

女狐「それなら出来る」

豪族「海賊王の娘達は15人足らずだ…外に居る奴らが一気に来れば制圧出来る」

女狐「そうね…」

豪族「ただ魔術師が何処かに居るだろう?そいつだけお前が始末しろ…あとこの足枷を外す鍵を探して欲しい」

女狐「分かったわ…やってみるから大人しくしてて」スック

豪族「ようし…立場が逆になったら俺専属の奴隷にしてやる…グフフフ」


---懲りない男ね---

---そんな目的じゃ何も達成出来ないのに---

『船尾楼』


ガチャリ バタン


女狐「情報を仕入れて来たわ…他の4隻の船は指示が無い限りこの船には来ないそうよ」

女戦士「ほう?」

女狐「船は少し北にある川の上流に隠してるみたい…こちらに攻めさせる事も出来るけどどうする?」

女戦士「4隻一気に来られてはこちらも被害が出るな」

女狐「1隻づつとか器用な事が出来るかどうか分からない…」

女海賊「お姉ぇ…場所分かったんなら又妖精の笛で眠らせれば良くない?」

女戦士「その後どうするかだ…4隻一気に奪うのはさすがに人員不足…」

女海賊「ほんじゃ眠らせるのだけ私らがやって後はフィン・イッシュの軍隊にやって貰えば?」

女戦士「それもフィン・イッシュと豪族間で摩擦が起きる原因になる」

女海賊「う~ん…この船で川は登れないしなぁ…」

女戦士「ただ指示が無い限りこちらに来ないのは好都合…アサシンと商人を呼んでくれ」


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ガチャリ バタン


アサシン「どうした?作戦変更か?」

女戦士「どうやらスクーナーの豪族は指示が無い限りこのキャラック船には来んらしい」

商人「ハハ…それじゃもう戦闘は起きないね」

女戦士「うむ…それでだ?奴隷にした豪族をどうにかしたい…何か案は無いかと思ってな」

アサシン「女王に引き取って貰うか?」

女戦士「そんな事が出来るか?」

アサシン「海賊王の娘が捕らえた豪族を女王が金を払って身請けする事にするのだ…髭男爵の弟も一緒にな?」

商人「良いねぇ…恩を売る訳か」

アサシン「豪族はフィン・イッシュの経済を回している側面もある…利用価値はあるぞ」

女戦士「なるほど…私一人悪者になれば上手く回るか…よし!」

アサシン「どうする?」

女戦士「先ほど戻って来た小舟2隻に奴隷を乗せて女王に身請けして貰ってくれ」

アサシン「この船に残って居るドワーフを全員連れて行っても構わんか?…途中で逃げられてしまうかもしれん」

女戦士「そうだな…こうしよう…陸に居るドワーフの海賊と一旦合流してくれ」

商人「僕が案内出来るよ」

女戦士「そして豪族を身請けさせた後ドワーフの海賊全員でスクーナーを襲撃させろ」

アサシン「なに!?」

女戦士「私達はスクーナーに乗っている豪族を眠らせておく…そのままドワーフに襲撃させて4隻とも奪う」

アサシン「強引に奪うのだな…」

女戦士「刃を向けたのは向こうだ…きっちり報いを受けてもらう」ギラリ

商人「また鼻を削ぐのかい?」

女戦士「体の一部ならどこでも構わん…去勢でも良い…それが裏切りに対する海賊のルール」

商人「いやぁぁ怖い怖い…」

アサシン「フフそれでなければ荒くれ共をまとめられん…さぁ商人!!行くぞ」

商人「うん…」スタ

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『小舟』


広範囲睡眠魔法! モクモクモク…


魔女「これで途中で暴れる事は無かろう…」

女戦士「では海賊共!!手筈通りに動け!!」

海賊共「がってん!!」ドスドス

アサシン「私と商人はドワーフの海賊と一緒に行動するぞ?」

女戦士「助かる…援護してやってくれ」

女狐「私も一緒に行くわ」タッタ スタ

女戦士「んん?どういうつもりだ?」

女狐「奴隷になった豪族達を女王に身請けさせたのは私が便宜を謀ったという事にしたいの」

女戦士「フフ…まだ2重スパイを続けるつもりか」

女狐「私の情報のお陰でこういう流れになったのよ?」

女戦士「分かった…お前が優秀だと言う事は認める…ただ下手に顔を晒してヘマをするな?」

女狐「当然…」

アサシン「では行って来る…スクーナーに乗っている連中をしっかり眠らせて置いてくれ」


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『砲撃甲板』


スタスタ


女海賊「めちゃくちゃ広いなぁ…迷うわコレ…」

魔女「ふむふむ…退魔の方陣では欠けが出てしまうから呪符を貼って居るのじゃな…」キョロ

女海賊「このお札ってオークの呪術?」

魔女「シン・リーンにも昔呪術を研究して居った者が居る…恐らく黒の同胞になったのじゃろう」

女海賊「ほんじゃまだどっかで生きてるんだね」

魔女「そうじゃな…流れからして公爵と共に行動して居りそうじゃ」

女海賊「魔女はこの呪符ってやつ作れないん?」

魔女「作れるが手間が掛るであまりやらんのぅ…退魔のエンチャントの方が得意じゃ」

女海賊「まぁ同じようなもんか…」

魔女「呪符の方が効果が強い…じゃが紙じゃで耐久性に劣る」

女海賊「なるなる…」


ゴツン!


女海賊「あたっ!!大砲邪魔!!」ドカ

魔女「よそ見して歩くのは危ないぞよ?」

女海賊「この大砲デカいクセに飛ばないし無駄なんよ!!」

魔女「威圧にはなっとる様じゃが…」

女海賊「こんな大砲沢山乗ってても船に乗り込まれた時点で終わりだよ…大砲撃ってる奴なんか裸同然だから」

魔女「じゃから海賊は早い船を好むのじゃな」

女海賊「そそ…大砲なんか食らっても直ぐに沈まないから一気に乗り込む方が全然強い」

魔女「ではこの船はどう運用されるのじゃ?」

女海賊「どっしり構えて他の早い船に補給すんだよ…あとは休息?」

魔女「つまり早いスクーナーが主戦力なのじゃな?」

女海賊「海賊の戦い方はそんな感じ…海軍はこのクソでかい軍船沢山集めて包囲する感じで戦う」

魔女「なかなか奥が深いのぅ…」


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『甲板』


ユラ~リ ギシ


女海賊「あれ?お姉ぇは?」

ローグ「シィーーーッ…船尾楼の方で仮眠していやす…頭も全然寝て無いんでちっと休ませて下せぇ」

女海賊「情報屋とホムちゃんも寝てる?」

ローグ「へい…昼間の内は安全なんで寝れるのは今の内でやんす」

女海賊「やっぱ連日夜戦ってると皆キツイか…」

ローグ「豪族の動きが悪いのはそのせいもありそうっすね」

魔女「主らは仮眠せんでも良いのか?」

ローグ「あっしは大丈夫でやんす…姉さんは寝といた方が良いじゃないっすか?」

女海賊「眠いっちゃ眠いけど…そろそろスクーナー探しに行かないとヤバくね?」

ローグ「川の上流らしいんですぐ見つかりやすよ」

女海賊「どうすっかなぁ…妖精の笛だと音でバレそうだな」

魔女「わらわの睡眠魔法が良かろう」

女海賊「ちゃっっちゃと行って眠らせて来ようか?…効果時間ってどんなもん?」

魔女「個人差があるで何とも言えんのぅ…早くて2時間…良く眠った者は明日の朝まで寝るじゃろう」

女海賊「ほんじゃこうしよう…魔女の睡眠魔法で眠らせた後に私一人で笛吹きに行く」

魔女「ふむ…安全じゃな」

ローグ「あっしはどうしやす?」

女海賊「あんたはこの船守っててよ…起きてるのあんたしか居ないんだから」

ローグ「分かりやした…」

女海賊「魔女行こうか…」

魔女「うむ…」ノソリ

ローグ「ええと…幽霊船までロープを伝って行くんすが…」

魔女「なぬ!?」

女海賊「おけおけ…ここまで飛空艇持ってくるからちょい待ってて」スタタタ ピューー


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『船尾楼』


ユラ~リ ギシ


女戦士「…」ムクリ キョロ

情報屋「あら?お目覚め?」

女戦士「私はどれくらい寝て居た?」

情報屋「まだ昼過ぎね…もう少し休んでて良いのに」

女戦士「しまった…スクーナーを探しに行かねば…」

情報屋「それなら女海賊と魔女がもう行った様よ?」

女戦士「そうか…それなら良い」

情報屋「ローグは甲板で見張り…情報通り平和な様ね」

女戦士「ふぅぅ…仮眠とはいえ久しぶりに寝た気がする」

情報屋「ねぇ…この船の航海日誌読ませて貰ったんだけど…」

女戦士「んん?謎の船の事か?」

情報屋「それもあるけれど元々この船もハウ・アイ島へ向かう予定だったのよ」

女戦士「フフそうだったのか…行き遅れた訳だな」

情報屋「すごい数の船が向かった様よ?」

女戦士「朽ちた箱舟を探しにか?」

情報屋「私は興味ある…」

女戦士「海賊王の娘が行って仲間に入れるとは思わんな…向こうは古代兵装の準備もある様だし」

情報屋「そうね…」

女戦士「私達の目標は公爵とは違う…行き先はニライカナイ…そこが終着点に思う」

情報屋「幽霊船で行けると思う?」

女戦士「正直厳しい…この間も少し狭間に近付いただけでレイスが出ている」

情報屋「レイスはもう幽霊船に取り付け無いのでは?」

女戦士「ゴーストもワイトもまだ出て居ない…100日の闇の時はワイトが人に取り付いて病んで行ったらしい」

情報屋「アサシンの経験ね…」

女戦士「今は少しでも休息があるから何とかなる…全く休息が無いとなると話が変わる」

情報屋「どうしましょうね…」

女戦士「迷って居る…未だまともに生還した者が居ない…決死の覚悟が必要だ」


バシ バシバシ ドドドドン


女戦士「何事!!?」ガバ


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『甲板』


あたたたた…あたた


ローグ「頭ぁ!!フライフィッシュの大群でやんす…目に当たらん様に気を付けて下せぇ」ドタドタ

女戦士「魚?」

ローグ「こりゃ食い物に困らんすね…大漁でやんす」

情報屋「丁度お腹が空いて居たわ」

ローグ「新鮮なうちに焼いて食えばめちゃくちゃ美味いでやんす」

女戦士「急にフライフィッシュが飛んで来るのは近くに何か居る証拠だ」

ローグ「遠くでイルカがピョンピョン跳ねていやすが?」


ザブーーーン! バクリ


ローグ「うほーーーークジラも居やすね」

女戦士「さっきの夢はそういう事か…」

情報屋「え?夢で妖精を見た?」

女戦士「あまり覚えていないが誰かを迎えに行くと言って私は目が覚めた」


トゥルルル~ トゥルルル~


ホムンクルス「…」スタ

女戦士「犬笛…クジラを呼んで居るのか?」

ホムンクルス「これでお話が出来るのです」

女戦士「そうか…」

ローグ「頭ぁ!!フライフィッシュを焼いて食いやしょう…船尾楼に炉がありやしたよね」ビチビチ

女戦士「そうだな…新鮮なうちに少し食べるか」ツカツカ


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『炉』


ジュゥゥゥ パチ


ローグ「串焼きの出来上がりっす…沢山あるんでどんどん食って下せぇ」

情報屋「おいしい!!」モグ

ローグ「生で食えやすぜ?切り身のオリーブオイル漬け…これが最高に美味いんす」ペロン モグ

女戦士「なかなかに贅沢な食べ方だ…」ハム モグ

ローグ「ホムンクルスさんも呼んできやすね」ダダ

情報屋「女戦士はあまり沢山食べないのね?」

女戦士「おかしいか?」モグ

情報屋「どうして体力があるのか不思議だなと…」

女戦士「あまり食べ過ぎると父のようになる」

情報屋「コントロールしているのね」

女戦士「そもそも少食だから苦では無い…気にするな」


ローグ「さささホムンクルスさんも串焼きを食って下せぇ…」スッ


ホムンクルス「はい…頂きます」ハム モグ

女戦士「クジラとは何か話せたのか?」

ホムンクルス「魔王島が浮上してしまったと…」

情報屋「ええ!!?それはどういう事?」

ホムンクルス「かつての魔王島が復活したのです…今で言うニライカナイですね」

情報屋「浮上…やっぱり海に沈んで居た…それが竜宮と言われた場所」

女戦士「魔王島と言われて聞捨てならんな…」

ホムンクルス「時の王の話では1700年前まではそこに有った様ですね…その後沈められた」

情報屋「クジラはその辺りの事何か知らないの?」

ホムンクルス「クジラは記憶を子孫に残す術がありませんので寿命の範囲でしか知らない様です」

情報屋「どのくらいの寿命?」

ホムンクルス「長く生きたクジラで1000年ほど…しかしその個体は既に死んで居ます」

女戦士「もしかしてそのクジラと言うのが…」

ホムンクルス「はい…飛空艇に生まれ変わったクジラですね…私の友達でした」

情報屋「犬笛でどの程度の会話が?」

ホムンクルス「単語で200種類程…言語能力は人間でいう6歳くらいの子供と同程度です」

情報屋「じゃぁ詳しい話は聞き出せそうに無いわね」

ホムンクルス「クジラは住処が無くなってしまって困っている様です」

女戦士「私達にどうにかしろと?」

ホムンクルス「それはお願いされていません…ただ行き場を失って居るのです」

情報屋「クジラにニライカナイまで案内させてみては?」

女戦士「ふむ…クジラが先導するのであれば帰って来られる可能性も高いな」

ホムンクルス「お願いしてみましょうか?」

女戦士「話してみてくれ」


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『鯨型飛空艇』


フワフワ


女海賊「おーーーい!!」

ローグ「姉さん!!どうっすか?上手く行きやしたか?」

女海賊「魔女が寝ちゃったんだよ…ちっとロープ降ろすから迎えに来て」シュルシュル

ローグ「どういう事っすか…」ヨジヨジ

女海賊「私の笛の音が聞こえちゃったのさ…」

ローグ「そら予定外っすね…」

女海賊「私魔女抱えてこのまま降りるからさ…あんたが飛空艇隠して来て」

ローグ「分かりやした…操舵交代しやす」

女海賊「ほんじゃ降りるね…あと頼んだ」シュルシュル スタ


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『甲板』


ドタドタ


女戦士「どうだ?スクーナーの方は?」

女海賊「あいつ等仲間割れして半分くらいお宝持ってどっか逃げたっぽい」

女戦士「フフ負けが込むといつもそうだ…残りは眠ったな?」

女海賊「うん…多分全員眠ったと思う」

女戦士「よしこれでスクーナーを全部奪える」

女海賊「結構砲弾に当たって傷んでてさ…ドワーフの船大工に修理させた方が良いね」

女戦士「こちらまで来れそうか?」

女海賊「ギリ?」

女戦士「修理しながら戻って来るとなると厳しそうか…」

女海賊「切り揃えた木材がスクーナーに乗って無いのさ…もうあいつ等グチャグチャなんだよ」

女戦士「木材はどの位必要になる?」

女海賊「んん?スクーナーまで運ぶ?」

女戦士「うむ…貨物用の気球が遊んで居る」

女海賊「あーーー私壺持ってるわ…資材突っ込んで持って行こうか?」

女戦士「やってくれ…ローグを連れて行って構わん」

女海賊「おけおけ…もっかい私の飛空艇で行って来る」

女戦士「頼んだ…魔女頼むね~」スタコラ ピューー


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『日の入り』


ザブ~ン ユラ~


情報屋「そろそろガーゴイルが出て来る時間…飛空艇とスクーナーは大丈夫かしら…」

女戦士「もう豪族の脅威は無い…精鋭揃いなのだから何とかするだろう」

情報屋「私達も備えないと…」

女戦士「今晩はエクスカリバーを使えるからラク出来るぞ?」

情報屋「もうプラズマの銃を使っても?」

女戦士「良いだろう…」

情報屋「ホムンクルス!!引き続き犬笛を吹くのをお願いね」

ホムンクルス「はい…」


ボエーーーーーー ブシューーーーー


女戦士「飛空艇が潮を吹いたか…山手ではガーゴイルの出が早いのかも知れんな」

情報屋「向こうはもう始まって居るのね」



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『スクーナー1隻目』


トンテンカン


海賊「応急処置はこれで終わりでがんす」

アサシン「こちらの船は死んだ豪族を使役して動かすから他のスクーナーへ応援に行ってくれ」

海賊「分かりやした…行くぞお前等!!」ドドド

商人「死体運んで来たよ…よっこら…」ドサリ

女狐「私も…」ドサ

商人「これ仲間割れ起こしてたのかな?」

アサシン「それしか考えられまい?」

女狐「他の死体も全部積む?普通の民間人の様だけれど…」

商人「ここで山賊まがいの事やってたんだね」

アサシン「豪族を掃討して正解だ…さて豪族以外の者を使役するのは心が痛むが…」

女狐「野ざらしにしておくのも悪いわ…せめて海葬に…」

商人「後でまとめて魔女に浄化してもらおう」

アサシン「分かった…死体は全部積んでくれ」

商人「うん…行って来る」スタ


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『しばらく後』


よっこら!! ドサリ


商人「向こうの船が動き出した…修理が済んだみたいだ」

アサシン「少し時間が掛かったな…もうガーゴイルに襲われている」

商人「援護しないと…」

アサシン「分かっている…商人と女狐はまだ離岸して居ないスクーナに乗り込め」

商人「え?」

アサシン「私に使役されたいか?」

商人「あぁ…それは困る…」

アサシン「この船は私とゾンビ共だけでガーゴイルに襲われず自由に動けるのだ…その方が援護しやすい」

商人「分かった…女狐行こうか!!」

女狐「こっち!!」グイ


タッタッタ…


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『スクーナー2隻目』


トンテンカン


商人「ふぅぅ間に合った…僕達もこの船に乗る」ダダ スタ

海賊「姉さんの飛空艇が空で援護してくれている間に移動するでごわす…帆を張れい!!」


がってん!! ドドドド…


商人「この船が最後尾になりそうだね」

海賊「商人さんが来てくれて助かったでごわす…例のプラズマ銃で守って下せぇ…」

商人「おけおけ…」チャキリ

女狐「私にも何か武器無い?」

海賊「残念ながらこの船には武器が乗って無いでごわす…これでも使って下せぇ」スッ

女狐「ミスリルの斧…」

海賊「レイス対策でごわす」

商人「そうだ!!退魔の処置はどうなってるんだ?」キョロ

海賊「無いと思って下せぇ…お札が見当たらんので…」

商人「まずいなソレは…」

海賊「俺らは全員ミスリルを装備しているでごわす…このまま強行突破しやすぜ」



ボエーーーーー ブシューーーーー


海賊「姉さんがガーゴイル追い払ってくれて居やすね…急ぐぞお前等ぁ!!」


へーい!! ドドドド…

『キャラック船』


ピカーーーー チュドーーーン


女戦士「始まったな…しかし遠くから見ると良く目立つ」

情報屋「何処に居るのかまるわかりね…」

女戦士「ふむ…鯨型飛空艇はあまり見えんのだな…」

情報屋「多分上空に上がれば狭間が深いから見えなくなるのかと…霧もあるし」

女戦士「こちらの位置も見せて置こう…」スラリ ピカーーーーー

情報屋「フフ眩しい…」


ピカーー ピカーー


女戦士「答えた…あそこにアサシンが居るのか」

情報屋「こっちも空でガーゴイルが舞ってる…」

女戦士「寄って来なければ落とさんでも良いぞ」


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『翌朝_キャラック船甲板』


私達の完勝だ!!スクーナー4隻は功績の高い者に与える事とする

奪った財宝は均等配分!!これを使いそれぞれ船員を募集して来い


女海賊「やったね!!このキャラック船に乗ってた分も均等だよね?」

女戦士「当然だ…」

女海賊「ヤッバ!!めっちゃあるじゃん!!」

アサシン「キャラック船は私が頂くぞ?」

女戦士「フフ海賊には不要の船…好きにしろ」

女狐「配分は当然私にも?」

女戦士「勿論だ…お前の情報が決定的に完勝に導いた…どうだ?満足か?」

女狐「初めてまともに報酬を得たわ…」


ノソノソ


魔女「騒がしいと思うたら朝が来てしもうた様じゃ…ふむ…無事に4隻手に入れた様じゃな」

女海賊「あーー魔女ゴメンよ!!妖精の笛に巻き込んじゃってさ…」

魔女「構わぬ…良い夢を見れたわい」ノビー

女戦士「さて…今後の事を伝えて置く」


スクーナー2隻は商船としてフィン・イッシュと地庄炉村の交易をしろ

残りの2隻はフィン・イッシュ近海で女王の下外海の治安維持だ

尚海賊旗は立てるな…その役は幽霊船が引き受ける


アサシン「私のキャラック船はフィン・イッシュ近海で固定砲台か?」

女戦士「当面は幽霊船への補給役でどうか?」

アサシン「なるほど…移動する海士島みたいな船か…それも良い」

女海賊「お姉ぇ!!ドワーフがみんなスクーナーに乗っちゃったら幽霊船誰が動かすん?」

女戦士「幽霊船には私の従士2人とゾンビ共が乗る…ちなみにアサシンもだ」

アサシン「ふむ…ではキャラック船を誰かに任せねばな…」

女狐「私でどう?貴族や豪族側という立ち回りも出来る…」

アサシン「奪われるなよ?」

女狐「フィン・イッシュ軍隊の一部を回して欲しい」

アサシン「なるほど…そちら側も取り入りたいか」

女戦士「話は決まったな?取り急ぎスクーナー一隻を大至急商船に偽装して陸へ行くのだ…停滞している補給を急がせろ」

海賊共「がってん!!」ドタドタ


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『商船』


トンテンカン ギコギコ


女海賊「商人は銀の釘打って退魔の方陣作って行って」トントン

商人「はいはい…」トントン

女海賊「やっぱ銀で装飾したら結構良い感じになるじゃん…」トンテンカン

ホムンクルス「染料をお持ちしました…」スタスタ

女海賊「おぉ待ってたのさ…それで一気に雰囲気変わる」

海賊「姉さん!!俺が塗っていくでがんす」

女海賊「おけおけ…補修した所がバレない様に上手く隠して」

海賊「へい!!」ドスドス

商人「バレないって?」

女海賊「逃げた豪族が居るじゃん?そいつらに豪族が使ってた船だってバレたく無いじゃん」

商人「う~ん…なんか速攻バレる気がするけどねぇ…」

女海賊「あいつらバカだから船の色が違うと気付かないよ」

商人「そうなんだ?」

女海賊「てか昨日今日でガラリと変わってるなんて思わないさ」

商人「まぁそうだね…やっぱりドワーフが物作ると速攻終わるんだね」

女海賊「おーーし!!装飾終わり!!…スクーナーだったら私も欲しいなぁ…」

海賊「姉さん!!これは俺の船なんで…」ヌリヌリ

女海賊「これ商船にするんだからもう大砲要らなくね?」

海賊「いやいやそれは困るでがんす…姉さんの迫撃砲を真似て改造するでがんす」

女海賊「あぁそう言う事か…おけおけ頑張って!!」

海賊「へい!!」ヌリヌリ



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『キャラック船_甲板』


ザブ~ン ユラ~


女狐「捕らえた奴隷の身請けは私が行って来る…」

女戦士「ふむ…では又数名護衛でドワーフの海賊を付ける」

ローグ「頭ぁ!!奴隷全員商船の方に乗りやしたぜ?」

女戦士「女狐!!商船に乗るのだ」

女狐「分かったわ…」スタ

ローグ「あっしは気球で先に魔女さんと商人さん乗せて行きやすぜ?」

女戦士「うむ…今晩は宿に泊まりたい…用意しておくのだ」

ローグ「へい!!」

女戦士「商船を陸に向けて移動させろぉ!!」

海賊共「がってん!!」グイ


バサバサ ユラ~


アサシン「よし…これでドワーフは全員陸に移動したな?」

女戦士「うむ…あとは私達が飛空艇で移動すればこちらに残るのはゾンビとアサシンだけだ」

アサシン「残りの船に退魔の方陣を張るのは終わらせていくのだぞ?」

女戦士「今妹がやっている…直に戻るだろう」

アサシン「さて…今晩は私一人ゆっくり妖精と話が出来そうだ」

女戦士「不死者だけだと気楽で良いな?」

アサシン「これを見られるとこの船も幽霊船と思われてしまうな?クックック…」

女戦士「ゾンビは幽霊船に乗せ換えて居た方が良いのだが…」

アサシン「んん?」

女戦士「ドワーフの海賊共が船の乗員を集めるのだ…こちらに寄る可能性が有る」

アサシン「なるほど…では移動させておこう…船をリリースさせるぞ?」

女戦士「構わん…」

アサシン「さて…沖で大型の船が集まっているのをフィン・イッシュではどう見えるか…」

女戦士「その反応も直接聞いて来るつもりだ」

アサシン「酒場にも行くつもりか?」

女戦士「私は飲まんが…顔を出してみても良いな」

アサシン「クックック…入り浸っている豪族の残党がどんな顔をするか…」

女戦士「まぁ…命を狙われるのがオチだが…既に向こうは散りぢりになっているだろう…取るに足らん」

アサシン「あまり街では荒らげるな?女王が困る」

女戦士「分かっている…」



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『夕方_鯨型飛空艇』


フワフワ


女海賊「お姉ぇ!!やっと終わったよ…フィン・イッシュ行くんだよね?乗って」シュルシュル

女戦士「ご苦労…情報屋とホムンクルスも乗って居るな?」

女海賊「うん…もうあいつらの船はゴミばっかでさ…片づけるの大変だったよ」

女戦士「今晩はベッドで休んで良いぞ」

女海賊「そろそろ限界…目が閉じそう…」フラ

ホムンクルス「操舵は私にお任せください」

女海賊「先寝て良い?」

ホムンクルス「どうぞ…」

女戦士「ではアサシン!!後は頼む!!」

アサシン「フフ…ワインを持って帰るのを忘れるな?」


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『フィン・イッシュ_墓地』


フワフワ ドッスン


女海賊「ふごーー…すぅ」zzz

女戦士「私が妹を背負うからエクスカリバーを持ってくれ」スッ

情報屋「預かるわ…」ズッシリ

女戦士「重いか?」

情報屋「こんなに重い物を背負ってたのね…」

ホムンクルス「私が持ちます…筋力トレーニングなので」

情報屋「そうね…私は足が不自由だし…」スッ

女戦士「よし…飛空艇をハイディングさせて宿屋に直行しよう」

情報屋「先に行って…ハイディングさせて行くから」

女戦士「ここの地理は良く分からん…どう行けば良い?」

ホムンクルス「ご案内します…こちらです」スタ


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『宿屋』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「ああ!!やっと来た…遅いよ」

女戦士「退魔の方陣に手間取ってな…部屋は何処だ?」

商人「一階の角部屋さ…無理言って大部屋を開けさせて貰ったんだ」

女戦士「まず妹をベッドに…」

商人「そうだね…働き詰めで疲れたか…こっちだよ」スタ


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『大部屋』


ガチャリ バタン


ローグ「頭ぁ!!助かりやした…」

魔女「これ!!手を止めるでない」

ローグ「いやいや魔女さんは何処も筋肉が硬くなっていやせん…」モミモミ

女戦士「フフ…マッサージをやらされているか…そのまま続けて居ろ」

ローグ「ええ!?そら無いっす…」

魔女「飼い主がそう言うて居るでは無いか…次は背中じゃ」

女戦士「さて商人…私は先ず水浴びをしたいのだがどうすれば良い?」

商人「お!!?ここは湯が使える水浴び場が有るんだよ…案内しようか?」

情報屋「私も水浴びしたいわ」

ホムンクルス「ご案内出来ますよ?以前と同じでしたら…」

商人「変わって無いね…3人で行っておいでよ」

ホムンクルス「ではご一緒に…」スック

情報屋「魔女は?」

魔女「わらわは既に水浴びをしたで構わんで良いぞ」

ホムンクルス「商人さん…エクスカリバーを預かって居て下さい」

商人「ん?あぁ…分かった」

女戦士「妹も頼む…」ヨッコラ

商人「ええ!?ちょちょ…」

女海賊「ふごーーーふごーーーー」zzz

商人「重いんだよなぁ…女海賊…」ドッシリ


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『一時間後』


ガチャリ バタン


女戦士「ふぅ…スッキリした」ホクホク

情報屋「湯が熱すぎて…」

商人「食事が来てるよ…食べると良い」

女戦士「外で食べると思って居たが…」

商人「夜間は外に出るの控える様にお達しが出てるのさ…禁止では無いけどね」

女戦士「なるほど…」

商人「ガーゴイルの角が高値で売れるから民兵が沢山出て割と安全なんだけどね」

女戦士「まぁゆっくりして良いのだな?」

商人「そうだね…まぁ食べてよ」

情報屋「頂くわ…珍しい食材ばっかり…」モグ

女戦士「さてこちらでは…沖で停船している私達の船がどう見えているかなのだが…」

商人「あぁ一般の人は商船が浅瀬で近寄れないでいる様に見えて居るよ…海賊船だなんて誰も思ってない」

情報屋「他の豪族達は?」

商人「う~ん…行く所に行けば居るんだろうけどねぇ…取引所では見ないなぁ」

情報屋「行く所って?」

商人「娼館だね…あと酒場とかカジノ?」

女戦士「フフ分かりやすい連中だ…」

商人「まぁ豪族に慌ただしい動きみたいなのは無さそうだね…それよりも一般の人が僕達の船に期待してるよ」

女戦士「期待と言うと?」

商人「内海で商船が動けないからみんな陸に上がって人で溢れかえってるんだ…ドワーフの海賊達はもう乗員確保したらしい」

情報屋「船乗りの仕事が無くなって居た訳ね…」

商人「そういう事…物資も滞留してるから船が動かせるなら直ぐに商人達を集められるよ」

女戦士「すべて良い方向に転がって居そうだ…」

情報屋「その様ね…」

女戦士「ところで女狐はどうした?」

商人「僕達とは距離を置いて居るのさ…貴族や豪族…それから王室とも上手く繋がってる」

女戦士「今回の件で株を上げたな」

商人「そうだね…やっぱり諜報活動だと実力ナンバーワンだよ」


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『翌朝』


チュンチュン ピヨ


商人「…じゃぁ僕は予定通り木材と銀の買い付けに行って来るよ」

女戦士「ドワーフの海賊達もそれぞれ物資が必要になる筈だ…取り引きはお前がやった方が良い」

商人「あぁ…ドワーフだと値を吊り上げられるね」

女戦士「うむ…何が必要なのか聞いてやってくれ」

商人「分かったよ…運搬はあの商船を使って良いんだよね?」

女戦士「そのつもりでこちらへ来させたのだ…どんどん買ってキャラック船まで運ばせろ…向こうで分ければ良い」

商人「おけおけ…」

女戦士「そうだワインも大量に買って運んでくれ…アサシンが渇いている」

商人「これで一気に経済回るなぁ…じゃぁ行って来るよ」タッタッタ


女海賊「ふご!!?」ガバ キョロ


女戦士「フフどうだ?良く寝たか?」

女海賊「あれ?今いつだっけ?」ゴシゴシ

女戦士「寝ぼけているか?」

女海賊「ヤバ…なんか夢見てた…混乱してる」

女戦士「湯が使える水場がある…お前も少し汚れを落としてこい」

女海賊「あ…うん…なんかこの状況…量子転移使った後のセーブポイントになってるかも」

女戦士「何をバカな事を…さっさと顔を洗ってこい」

ホムンクルス「ご案内しますよ?」

女海賊「あぁホムちゃん…一緒に水浴びする?」

ホムンクルス「はい…よろこんで」

女海賊「おっし!!ちょい尻尾作るわ…」ゴソゴソ

ホムンクルス「尻尾?」ハテ?

女海賊「昨日豪族の船から毛皮ゲットしてんのさ…尻尾だけ切り取ってお尻に貼るんだよ」チョキチョキ

女戦士「何をするかと思えば…」アゼン

女海賊「大事な事なんだよ…よっし!出来た!!ホムちゃんお尻出して?」

ホムンクルス「ええ!?」タジ

女戦士「馬鹿馬鹿しい…早く行って来い!!」


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『酒場』


ワイワイ ガハハハハ


マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」

ローグ「あいやいや…久しぶりっすねぇ」

マスター「シィーーーーーッ…ささ…カウンターへどうぞ」

ローグ「あぁすんません…そんな感じなんすね」

マスター「お飲み物は?」

ローグ「あっしはエールが欲しいでやんす」ジャラジャラ

マスター「こちらの御婦人はどなたで?」

ローグ「魔女さんでやんす…魔法で姿変えてるでやんす」

マスター「なるほどそうでしたか…ではハチミツ酒をご用意致します」

魔女「ほほー…わらわの好みを良く知って居るのぅ」

マスター「フフ仕事ですので…」チラリ

ローグ「あっしらはちっと様子を見に来たでやんすよ」

マスター「先ずはお飲み物をどうぞ…」コトリ

魔女「見た所昔と変わらん普通の酒場じゃのぅ…」グビ

マスター「お陰様で…」ニコリ

ローグ「どうっすか?何か噂聞こえて居やせんか?」

マスター「噂も何もこの激動の時にどんな噂も意味を持ちませんよ…」

魔女「うむ…こちらの大陸も大変だった様じゃのぅ」

マスター「それはもう…御覧の通り港は壊滅…変わらず酒を提供出来ているのが不思議と言いますか…」

ローグ「フィン・イッシュは少し高地にあるのが幸いしていやしたね」

魔女「影響が出て居るのは沿岸部だけなのかえ?」

ローグ「あぁぁぁ…命の泉から下流は大洪水が起きて居やした…多分森の中も大洪水っすね」

マスター「噂と言えばシャ・バクダのオアシスに人が集まっている様ですよ?」

魔女「ほう?それは初耳じゃ…」

マスター「フィン・イッシュが保護しているエルフに会えるのです」

ローグ「エルフ目当てで人が住みついてるんすね」

マスター「はい…なんでもエルフは異形のクリーチャーと戦って苦戦しているとか…」

ローグ「なーんか…豪族の話が全然出てこないのはどういうこってすかね?」

マスター「豪族の皆さんは最近めっきり来なくなりましたねぇ…奥のテーブルに常連さんが見えていますが…」

魔女「ふむ…あそこの集団じゃな?」チラリ

ローグ「ちっと近くのテーブルに移動しやしょうか…」

マスター「争いごとは起こさない様にお願いしますね…どうぞグラスを持ってこちらへ…」ササ


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『テーブル』


ワイワイ


マスター「お飲み物はボトルでご用意しますね…おつまみは…フルーツをお持ちしましょう」

ローグ「いやぁぁ何もかにも済まんでやんす…」

魔女「丁度フルーツを口にしたかった所じゃ…ローグ!チップを払うのじゃ」

ローグ「ええ?あっしがですか…」ジャラリ

マスター「ハハお気になさらず…では少々お待ちください」スタ

魔女「ローグ…盗賊ギルドは今どうなっとるのじゃ?」

ローグ「あっしは聞いてないでやんす…多分隠れ家を何処かに持ってるとは思いやすが…」

魔女「アヌビスもこの仕事が天職の様じゃな」

ローグ「そーっすねぇ…もう20年以上このポジションやってるでやんすよ」


ガハハハハ

俺が何処にお宝隠してるかも知ら無ぇであいつ等はあの貴族の下に下りやがった

でもどうする?追手が掛かるぞ?

逃げ場は決まってる…シャ・バクダのオアシスで傭兵を募集してるんだ

おぉ!!お宝持ってトンズラだな?

そうよ…他の仲間も現地で集合する手筈だ…まぁ付いて来い…エルフをモノにするぞ

そりゃ良い!!金ばっかり食うここの女にはもうウンザリだ


ローグ「あたたた…あいつ等全然気付いて無さそうでやんす」ヒソ

魔女「面白いでは無いか…聞き耳を立てて静かに飲もうぞ」グビ

ローグ「なんつーか頭に奴隷にされた豪族が可哀そうになって来やしたよ…」

魔女「鼻を削がれただけじゃろう…そんな物変性魔法で直ぐに元通りじゃ」

ローグ「ええ?そうだったんすね…」

魔女「女戦士はそこら辺もしっかり分かってやって居るのじゃぞ…慈悲深いと思え」

ローグ「なるほど…もう関わって来るなと言う縁切りだったんすね」

魔女「まぁこれで海賊の業界では恐れられるじゃろう」

ローグ「そうっすねぇ…いや…でもあの豪族達は底抜けのバカなもんで…」


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『宿屋の前の広場』


ワイワイ ガヤガヤ


女海賊「…」ボケー

ホムンクルス「のぼせてしまいましたか?」

女海賊「んぁ?違うんだ…ホムちゃんもそこの樽に座んなよ」

ホムンクルス「はい…」ストン

女海賊「ホムちゃん覚えてる?ここでシーサーのクソ堅い肉食べたの」

ホムンクルス「はい…覚えています」

女海賊「私さぁ…石になって眠ってたからそんな何年も前の事じゃ無いんだ…」

ホムンクルス「そうですか…」

女海賊「あん時は女王が一生懸命畑を耕してさ…ホムちゃんも毒キノコ育ててたよね」

ホムンクルス「そう言われると随分あの時と変わりましたね」

女海賊「うん…私だけ変化に置いて行かれた感じがするのさ」

ホムンクルス「あの時に戻りたいのですか?」

女海賊「それじゃダメな事知ってるから…」

ホムンクルス「夢を見たと言うのはもしかして…」

女海賊「そうだよ…夢で繋がってる…行こうと思えばいつでも祈りの指輪で行けるのさ」

ホムンクルス「寂しい…ですか?」

女海賊「どうなんだろ?夢幻を理解するとそれが私を構成する心の部分だって分かった…その寂しさも私の一部」

ホムンクルス「心…それは失えないですね」

女海賊「うん…だからあの時には戻れない…心は失えない」

ホムンクルス「私は夢を見る様になりました」

女海賊「ホムちゃんが見る夢ってどんな夢?」

ホムンクルス「暁の使徒…未来君が去っていく夢です」

女海賊「ええ!!?」

ホムンクルス「場所はハウ・アイ島…未来君は誰にも悟られる事無く世界を救い…去って行きました」

女海賊「何それ!?初めて聞く話なんだけど…」

ホムンクルス「夢の話ですよ…」

女海賊「あぁそっか…」

ホムンクルス「そこで初めて失ってはいけない人の心を知りました…そんな夢です」

女海賊「きっとその夢も今のホムちゃんを構成する大事な部分だよね…」

ホムンクルス「はい…その通りだと思います」

女海賊「ちっとあん時みたいにちょっとお酒でも飲もうか…」

ホムンクルス「少しでしたら…」

女海賊「おけおけ…ちょい買ってくるわ…待ってて」スタタタ


-------------

スタスタ


女海賊「あ!!お姉ぇ…」

女戦士「遅いと思って見に来たら此処で飲んで居たか…」

女海賊「ゴメンゴメン…お姉も飲む?」

女戦士「私は要らん…」

ホムンクルス「フルーツの飲み物も売っている様ですよ?」

女海賊「ちっと待ってて!!お姉ぇの分も買ってくるわ」スタタタ

女戦士「平和を味わって居たか?」

ホムンクルス「昔話を少し…」

女戦士「そうか…昔話が出来るくらいには付き合いも長くなったな…」

ホムンクルス「ここから見える内海の方はどうして船が止まったままなのでしょう?」

女戦士「陸沿いに外海に出たいだろうが岩礁地帯で危険海域なのだ…スクーナーも通らん」

ホムンクルス「そうだったのですね」

女戦士「一度海士島の方へ出てしまえば良いだろうが霧に阻まれて出られんのだ」

ホムンクルス「確かに…セントラルの方までずっと浅い海ですね」

女戦士「小さな漁船なら陸沿いに出られそうだが…今の状況を知らぬ者がおいそれとは航海せん」

ホムンクルス「大きな船が勿体無いですね…」

女戦士「セントラル方面へ陸沿いに航海すればまだ使えるのだが戦争中だからな…」

女海賊「お姉ぇ!!お待たせぇぇ!!」スタタタ

女戦士「私も樽に腰掛ければ良いか?」

女海賊「樽に座って飲むのがここの良い所さ…昔っからこんな感じなんだよ」グビ プハァ

女戦士「フフ…周りは民兵だらけか」ゴクリ

女海賊「銀製のなまくら装備だけど結構充実してんね」

女戦士「やはり資源のある国は強い」

女海賊「ところでセントラル第一皇子ってどうなったん?てか軍隊どこ?って感じ」

女戦士「セントラルとの国境付近に遠征しているらしいぞ?」

女海賊「まだ女王と結婚して無いんだよね?」

女戦士「まぁ無理だろう…忍び一族が許さん筈だ」

女海賊「なんか難しい立場だねぇ…」グビ


ローグ「あららら?こんな所で立ち飲みでやんすか?」スタ


女戦士「おぉローグ!!戻ったか」

ローグ「あっしも混ざって良いでやんすかね?」

女海賊「今女子会やってんだよ…魔女はこっちおいで」グイ

ローグ「ちょちょ…あっしも仲間に入りたいでやんす」

女戦士「まぁまず酒場でどんな情報を仕入れて来たのか聞かせろ…」

ローグ「そらキタ…実はですねぇ…」


カクカク シカジカ…

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女海賊「アハ…ほんじゃ筏で特攻して来た辺りからあいつ等バラバラになってんだ?」

ローグ「そーっすね…お宝持ち逃げしてシャ・バクダのオアシス行くって言っていやした」

女戦士「他の豪族は居ないのか?」

ローグ「まだ居るらしいんすが船が内海にあるんす…どうしやす?」

女戦士「フィン・イッシュに居る内は私から手を出す様な事はしない」

ローグ「まぁ民兵が多いんで向こうも手を出して来んじゃないっすかね…」

魔女「聞く限りではスクーナー4隻奪われた事に気付いて居らんぞよ?」

女海賊「マジ?」

魔女「大きなキャラック船を奪われた事も知らん様じゃ…仲間が貴族の乗るキャラック船に下ったと思うて居る」

女海賊「うは…ワロワロ」

女戦士「これは動きやすくなった」

女海賊「そだね…あのキャラック船はこのまま中立の立場にしときゃ良い隠れ蓑になれる」

女戦士「よし方針が定まったぞ…補給が済んだら幽霊船で外海に出る」

女海賊「おっけ!!いよいよだね」

女戦士「しばらく戻れんだろうから必要な触媒や種の類は十分用意しろ」

ローグ「行くメンバーはどうするんすか?あっしだけ置いてきぼりは勘弁でやんす」

女戦士「幽霊船を動かす主要な人駆はゾンビ共だ…後は私達8人とドワーフの従士2人…」

女海賊「生きている人は極力少なくする訳ね…」

女戦士「うむ…幽霊船は喫水線が深いから船底が安全地帯となる筈…そこで休息する」

女海賊「お?どゆ事?」

女戦士「生きている者が安全地帯に入って居ればレイスと戦わんで済む」

女海賊「おおおおお!!船底が狭間の外になってるって事か…」

女戦士「そうだ…それを見越して今アサシンだけ船に残してどうなるのか実験している」

女海賊「幽霊船の喫水線って何メートルだっけ?」

女戦士「4メートル程…」

女海賊「十分だな…おっし!!船底に基地作るぞ!!」

女戦士「行っても良いがアサシンの邪魔はするな?」

女海賊「ホムちゃん!!ちっと幽霊船の中に隠れ基地作りに行こう!!」

ホムンクルス「はい…どうすれば?」

女海賊「付いて来れば良いんだって…お姉ぇ行って来るね!!」スタタタ


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『幽霊船』


フワフワ


女海賊「ちょいホムちゃん操舵お願い…私だけ先に降りてロープ縛って来る」シュルシュル

ホムンクルス「お任せください…」

女海賊「おっけ!!ホムちゃんも降りて来て良いよ」グイグイ ギュゥ

ホムンクルス「…」シュルシュル スタ

女海賊「良いねぇ!!慣れて来たね」

ホムンクルス「はい…」ニコ


スタスタ


アサシン「どうした?何か取りに来たのか?」

女海賊「船を改造しに来たんだよ」

アサシン「ほう?それは良い…この船尾楼に飛空艇を発着出来るようにしろ」

女海賊「え!?なんで?」

アサシン「このままでは不便だろう」

女海賊「私はあんま不便に思って無いけどね…」

アサシン「船尾楼の後方に木材を伸ばすだけの簡単な改造だ…それで飛空艇の発着が出来る」

女海賊「まぁそうだけどさ…なんでそんな事言いだすん?」

アサシン「私のキャラック船も同じように改造して欲しいのだ…一台気球が欲しくてな」

女海賊「あーーー幽霊船に2台あっても無駄だね…」

アサシン「そういう事だ…キャラック船の使い勝手が悪いのは気球が搭載出来ないからなのだ」

女海賊「おけおけ!!気球一台有るだけで空から戦えるもんね」

アサシン「木材と鉄はこれからどんどん運ばれてくる…自由に使え」

女海賊「おーし!!ちゃっちゃと作るぞ!!ホムちゃん木材運ぼう!!」

ホムンクルス「はい…」スタ


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『半日後_キャラック船』


トンテンカン トンテンカン


女海賊「おっし出来たぁ!!ふぅぅ…暑っついなぁ」

ホムンクルス「今日は日差しが強いですから…」

女海賊「こんなんじゃゾンビ干からびちゃうぞ?」

アサシン「その方が都合が良い…気球を移動させるぞ?」

女海賊「おっけ!!」

ホムンクルス「これで幽霊船も帆を全部開くことが出来ますね」

女海賊「うん…船首側にスペースあるけど邪魔っちゃ邪魔だったね」

ホムンクルス「飛空艇も着地させましょうか?」

女海賊「ホムちゃん幽霊船までロープで渡れる?」

ホムンクルス「ワイヤーの装置がありますので落ちても大丈夫です」

女海賊「ほんじゃお願いしようかな」

ホムンクルス「はい…行って来ます」スタ


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『幽霊船』


フワフワ ドッスン


女海賊「おぉ…めっちゃバランス悪く見えるけどギリギリ乗るな」

ホムンクルス「この金具で固定するのですか?」

女海賊「そうそう…わかる?」

ホムンクルス「ロープワークは教えて貰いましたので…」グイグイ ギュゥ

女海賊「ほんじゃ私はミズンマストの縦帆と干渉しないか一回開いてみるかな…」グイグイ バサーーー

ホムンクルス「1メートル程余裕がありますね」

女海賊「もうちょい飛空艇を前に詰めれるって事だね」

ホムンクルス「目印を書いておきましょう…」スタ

女海賊「ホムちゃん疲れて無い?」

ホムンクルス「大丈夫ですよ?」

女海賊「次は船底で重労働なんだ…石を運ぶんだけど…」

ホムンクルス「体を鍛えて居ますので頑張ります」

女海賊「ほんじゃ次行こっかぁ!!」スタ


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『船底』


ギシ ググググ


女海賊「あぁぁ…やっぱ船底は湿度が高くて不快だわ…」ムシムシ

ホムンクルス「寝苦しくなりそうですね…」

女海賊「私ちょっと空気通す工夫してくるからホムちゃんは石を運んどいてくんない?」

ホムンクルス「はい…どちらへ運べば?」

女海賊「ここを10人が快適に寝られる様に改造したいのさ…この破壊の剣使って良いからさ…先ず石の凸凹を慣らして欲しい」

ホムンクルス「わかりました…」

女海賊「あんまり石を偏らせると船が傾いちゃうから気を付けて」

ホムンクルス「脇に置いてある樽は傾きの調整なのですね?」

女海賊「そそ…重りの代わりなんだ…最後はアレの置き方で調整すんの」

ホムンクルス「理解しました…私が船の復元力を最適になる様に調整します」

女海賊「お?もっと良くなるん?」

ホムンクルス「樽の移動で復元力を調整出来るようにすれば良いのです…つまり樽の置き方と動かしやすさですね」

女海賊「まぁそんな感じだね…任せるよ」

ホムンクルス「はい…」ニコ

女海賊「ほんじゃちっと金属加工してくる!」スタタタ


-------------

『夜』


ソヨソヨ…


女海賊「ふぅぅ…やっと連通管通った…これで涼しくなる」

ホムンクルス「一気に湿度が抜けましたね…」ヌリヌリ

女海賊「ホムちゃん何やってんの?」

ホムンクルス「水分が透過してくる壁面に樹脂を塗布しています…木材が腐り難くもなりますね」

女海賊「そんな樹脂なんか荷の中にあったん?」

ホムンクルス「私が作りました…」

女海賊「へぇ?…これまだ触ったらダメだよね」

ホムンクルス「はい…1日は放置した方が良いでしょう」

女海賊「ここ綺麗にするのまだ時間掛かりそうだ…ホムちゃんお腹空いてない?」

ホムンクルス「ペコペコです…」

女海賊「ジャーン!!」スポ

ホムンクルス「鶏肉ですね…」

女海賊「この肉は昼間買っといたんだ…一緒に食べよう」

ホムンクルス「喉も乾いて…」

女海賊「あるある!!ジャーーン!!」スポ

ホムンクルス「その封印の壺はとても便利ですね…」

女海賊「私何でも持ってんのさ…あれ?…ちょっと待てよ」

ホムンクルス「??」

女海賊「この壺の中に入れるんだよ…壺の中で寝りゃ良いんじゃね?」

ホムンクルス「壺の中は快適なのですか?」

女海賊「あーーーダメか…8人も入ったら暑苦しいわ…」

ホムンクルス「どこか旅の途中で寝る分には壺でも良さそうですね」

女海賊「そだね…そういう使い方にしよう」

ホムンクルス「今晩は此処で寝て行かれますか?」

女海賊「うん…」

ホムンクルス「ロープワークでハンモックを作れる様になったのです」

女海賊「おーーーイイネ!!」

ホムンクルス「快適に寝られるか試してみましょう」

女海賊「おけおけ!!なんか楽しいね」

ホムンクルス「そう言って貰えると作り甲斐があります」

女海賊「おっし!!食ってもうちょい働いたら寝るぞ!!」

ホムンクルス「はい…」ニコ


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『数日後_フィン・イッシュ街道』


ザワザワ ヒソヒソ

おい!海賊王の娘が来た…ヤベェぞ

ちぃぃ悠々と買い物して歩いてんのか

あの横でチョロチョロしてる男が有名な皮剝ぎヤローだ

後の女は取り巻きなのか?

知るか!!見つかる前に逃げんぞ…来い…


ローグ「頭ぁ…これなんかどうっすかね?」スッ

女戦士「ふむ…なかなか涼しそうだ…気に入った」

情報屋「フフ女海賊が黙って無いわね」

女戦士「別に張り合うつもりは無い…汗で気持ち悪い思いをしたくないだけだ」

ローグ「いやぁぁ頭も普段からそういう格好でお願いしやすよ」

魔女「少し露出が多い様に思うがのぅ…」

女戦士「海ではこれくらい薄い格好の方が良いのだ」

ローグ「魔女さんもあっしが選びやしょうか?」

魔女「わらわはこのままで良い…触媒を何処に入れたか分からんくなるでのぅ」

女戦士「さて…取引所へ行って商人の様子を伺うか…」

ローグ「へい!!案内しやす…」


--------------

『取引所』


ワイワイ ガヤガヤ


海賊「頭ぁ!!ごっつぁんです!!」ビシ

女戦士「調達は順調な様だな?」

海賊「へい!!今日から近隣の村まで物資運搬でごわす」

女戦士「ふむ…上手くヤレ…ところで商人はどこだ?」

海賊「先ほどまでこの辺に…」


商人「おーい!!」タッタ


ローグ「頭ぁ!!居やしたぜ?」

女戦士「商人!!様子を見に来たのだ…昨夜はどうした?」

商人「あぁ心配掛けちゃったかな…外海側へ続く道をドワーフの海賊達と一緒に整備してたのさ」

女戦士「ほう?物資の移送用か」

商人「まぁ途中で山賊に襲われない様に民兵の詰め所を作ったんだよ」

女戦士「あまり守備範囲を広げてはフィン・イッシュに迷惑が掛からんか?」

商人「協力的さ…外海側にかなり期待している様だよ…女王からは話を聞いて居ないの?」

魔女「女王は隠れ里に居る…城に居るのは政務を担当しておる側近じゃな」

商人「そうだったんだ?」

魔女「主には話して居らなんだか…3子を宿して居って静養中じゃ」

商人「ハハ道理で顔を見せない訳だ」

女戦士「それで?物資調達はどうか?」

商人「スクーナーで運べて一気に捗った…幽霊船の分は今日荷入れしたら終わりだね」

女戦士「いつでも出港出来るのだな?」

商人「そうだね…もう行く?」

女戦士「妹が幽霊船の改造をして居るのだが…まだ戻って来ん」

商人「それならスクーナーに乗って戻ったら?」

女戦士「そうするか…」

情報屋「あ…荷物を宿屋に置きっぱなしだわ」

商人「僕もさ…取りに行こうか」

ローグ「あっしが護衛に付きやす…頭と魔女さんはここで待って居て下せぇ」

女戦士「うむ…魔女…茶でも飲もう」

魔女「それは良い…」ノソノソ


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『しばらく後』


ヒソヒソ ヒソヒソ


あれが海賊王の娘?まだ若いじゃない…

おい大きな声を出すな聞こえるぞ

船は何処に隠して居るんだ?噂の幽霊船なんて見て無いぞ?

あ…こっち振り向いた…うわぁ美人なんだ…


魔女「主は有名人じゃで落ち着かんじゃろう?」

女戦士「気になぞしていない」


タッタッタ


ローグ「頭ぁ!!お待たせしやした」

女戦士「んん?何を持って居る?」

ローグ「あぁあっしらの泊ってた部屋を物色していた奴らがいやしてね?多分豪族なんで鼻を削いで来やした」

女戦士「2人分か…いつまでも持ち歩いて無いで何処かに捨てて来い…反吐が出る」

ローグ「あんま人目に付く所に捨ててもでやんすね…」

魔女「燃やせば良い…火魔法!」ボボボ

女戦士「それで何か盗まれたか?」

ローグ「勿論取り返しやしたよ…情報屋さんの書物が無くなる所でやんした」

情報屋「買ったばかりの竜宮伝説の書物よ…無くなっても大した損失では無かった」

商人「そろそろ引き際だね…ここの所君の噂を良く聞くようになったよ」

女戦士「フィン・イッシュでは何もしていないのだが…此処でも安住の場所は無いか…」

商人「まぁ悪いのは豪族さ…ある事無い事言い散らかして居るんだよ」

魔女「向こうの方にもこちらを見ている一般人が居るのぅ…」

商人「騒ぎになってしまう前に移動しようか…ここから馬車で2時間なんだ」

女戦士「そうしよう…」スック

ローグ「いやぁぁ頭の佇まい…恰好良いっすねぇ…」

女戦士「行くぞ…」スタ


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『馬車』


ゴトゴト ゴトゴト


女戦士「随分馬車が往来するな…」

商人「経済が回ってる証拠さ…港が出来たらきっとこっち側に街が出来るよ」

女戦士「この道で物資をすべて運んだか…」

商人「そうさ運ぶのも運賃が掛かってね…まぁそのお陰でお金が回ってる所もあるんだけど…」

女戦士「物資調達が難しいとは思って居たが良く木材を運びきったな…」

商人「木材は例のスクーナーを奪った川から運ぶと良いね」

女戦士「ふむ…フィン・イッシュは開拓が進めば良い貿易拠点になりそうだ」

商人「そう思うよ…今後に期待さ」

情報屋「幽霊船に木材を大量に乗せてる理由って何なの?」

女戦士「船の修理用で必須なのだ…木材が無いと長期航海は出来ない」

情報屋「そういう事だったのね…木材は全然乗って無かったわね」

女戦士「うむ…良くここまで来れたと思う」

商人「銀を大量に仕入れたのも船の修理用だね…鉄だと直ぐに錆びる」

情報屋「そういえばあなたの従士2人…いつも船を修理してた」

女戦士「そうだ…あの2人は船大工として優秀だから連れて行く」

商人「女海賊も物作りは相当優秀だよね」

女戦士「キワモノばかり作るからな…まぁ幽霊船をどれ程改造しているか楽しみではある」



--------------

『商船』


ザブン ギシ


海賊「頭ぁ!!幽霊船に戻るでがんすか?」

女戦士「そのつもりだ…一緒に乗っている者どもは何者だ?」

海賊「キャラック船に乗る船員達でがんす」

女戦士「ほう…あちらも順調に船員を増やしているか…」

商人「女狐は何処で行動しているんだろうね?」

女戦士「さぁな?」

ローグ「バックに盗賊ギルドが付いてるんであんま表には出て来んでやんすよ」

情報屋「あまりそういう事を声に出さない方が良いわ?」

ローグ「あーー口が滑っちまいやした」

海賊「そろそろ船を出すんで奥で掛けて下せぇ!」

女戦士「うむ…しかしここから見ると沖で停船している私達の船は遠いな」

商人「もう少し陸に寄れば良いんだけどね…」

情報屋「これだけ遠いからあそこで何か有ったのに気付かれないで済んだのよ」

女戦士「フフその通りだ…」

海賊「出港!」グイ バサバサ


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『幽霊船』


ギシギシ 


女戦士「海賊共!!私の従士2人に船へ戻れと伝令しろ」

海賊「へい!!…陸に戻り次第伝えるでがんす」

女戦士「さて…」ツカツカ

ローグ「気球がキャラック船の方に移動して居やすね…」

女戦士「船首が開けて見晴らしが良くなったでは無いか」

ローグ「迫撃砲も船首側に移動してるっす…」


スタスタ


アサシン「戻ったな?そろそろ出発するか?」

女戦士「まだだ…私の従士2人が乗って居ない…それよりこっちはどうだ?」

アサシン「何も起こらなくて暇をして居た所だ」

女戦士「やはり生きた者が乗って居ないとガーゴイルは襲って来んか」

アサシン「うむ…フライフィッシュには度々襲われるがな」

女戦士「よし…作戦通り行きそうだ」

アサシン「女海賊とホムンクルスが謎の改造をやっているがやらせていて良いのか?」

女戦士「謎?」

商人「何処に居るんだい?見て見たいな」

アサシン「船底で城を作っている」

商人「ハハ船の中に城か…ちょっと見て来る」ダダ


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『船底』


ギシ ググググ


おーし!!ここが岩石エリア…ほんでこっちが砂漠エリア

ここに洞窟有るからこん中に隠れれば良いんだよ…

これ動かない様にアラクネーが巣を作って?…おけおけ!よーしハチミツあげる


ホムンクルス「種撒き終わりました…後は成長魔法ですね」

女海賊「ホムちゃん魔法使えない?」

ホムンクルス「使い方が分かりません…」

女海賊「まぁ良いや…後で魔女にやって貰おう」


タッタッタ


女海賊「んん?」キョロ

商人「おぉ!!なんだココ…」

女海賊「お!?商人か!!ここは秘密基地さ」

商人「なんだ虫の楽園を作ったのか…飛空艇の中と同じだね?」

女海賊「バージョンアップしてんだって…見て見て此処!!」

商人「どれどれ?」キョロ

女海賊「石の隙間が迷路になってんのさ…今こん中でダンゴムシとワームが冒険してる」

商人「ハハ…君と言う人は…どうしてこんな子供みたいな」

女海賊「これで快適に過ごせるんだって!!ハンモックでちっと寝て見な?」

商人「これかい?」ギシ

女海賊「ソヨソヨ風吹いてんの分かる?」

商人「おぉぉぉ…涼しいね」

女海賊「雨も降らせれるんだぞ」グイ


パラパラ 


商人「え!!?どういう仕組み?」

女海賊「上の方で雨水溜まる様にしてるのさ…あとお姉ぇの剣を燭台代わりにすれば花も咲く筈なんだ」

商人「なんていうか…これ船は痛まないのかい?」

ホムンクルス「ご安心ください…木材が痛まない様に様々な処置をしています」

商人「もしかしてホムンクルスの知恵を使ってる?」

ホムンクルス「はい…この空間で光と水があれば生態系が維持できます」

女海賊「そういう事なんだって…ここで虫と遊んでたらずっと飽きないで居られるんだ」

商人「土も砂も全部自分で運んだの?」

女海賊「そだよ?てか商人は一人で来たん?」

商人「いやいや君が帰って来ないから皆戻って来たんだ」

女海賊「おおおお!!ほんじゃ魔女も居るね?」

商人「うん…居室に入って行ったかな」

女海賊「ちっと呼んで来るわ…」スタタタ ピューーー


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『船尾楼_飛空艇』


ツカツカ


女戦士「なるほど…船尾楼の後方に飛空艇を着陸出来るようにしたか…」

アサシン「私のアイデアだ…不要な時は畳める様にもなって居るぞ?」

女戦士「それで気球1台をキャラック船に移したか…」

アサシン「まずかったか?」

女戦士「いや…前方が視認し難くて邪魔だった…あの気球はキャラック船で使うが良い」

アサシン「女海賊は高波を遮る何かを置いた方が良いと言って居たが…」

女戦士「小舟の置き方を変更しよう…小舟を屋根にすれば良い…それで海へ転落するリスクも減るだろう」

アサシン「図か何かを書いてくれればゾンビ共にやらせるぞ」

女戦士「分かった…後で書いておく」


ドタドタ


女海賊「あ!!お姉ぇ!!ちょ…どうしたんその格好…」ジロジロ

女戦士「涼しい方が良いと思ってな?」

女海賊「ええええ…なんかズルいなぁ…私も着替えたい」

女戦士「ローグが何着か私の着替えを買ってきている…選んで着ても良いぞ」

女海賊「マジか!!あ…ヤバ目的忘れる所だった…」

女戦士「忙しそうだな?」

女海賊「エクスカリバー借りに来たのさ…ちょい貸して」

女戦士「ふむ…持って行け」スッ

女海賊「よーし!!後は魔女だ!!」スタタタ ピューーー

アサシン「フフ…ずっとあの調子で走り回っているのだ」

女戦士「気持ちを紛らわせているのだ…察してやってくれ」


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『船底』


ドタドタ


女海賊「ほい!!約束のリンゴ!!」スポ

魔女「仕方無いのぅ…成長させるのは花だけじゃぞ?」パク シャクシャク

女海賊「バナナもあるよ?」スポ

魔女「わらわを買収する気か…」

女海賊「良いじゃん!!イチゴも育てたいんだ」

魔女「では花とイチゴだけじゃ!!イチゴはわらわも頂くでのぅ」

女海賊「おけおけ!!ほんじゃ雨降らすよ」グイ


パラパラ


魔女「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」ニョキニョキ

女海賊「よーし!!ミツバチ来い!!」ブーン

魔女「ふぅ…下手に成長魔法を使うと船を壊すかも知れんでこれっきりじゃぞ」パク モグ

女海賊「魔女?そこのハンモックで横になってみ?」

魔女「ふむ…主がこさえたのかえ?」ノソノソ ギシ

女海賊「ホムちゃんが作ってくれたんだけどメッチャ寝心地良いさ」

魔女「確かに…そうじゃな…あと鈴の音を聞きながらうたた寝しても良いのぅ」

女海賊「おおおお!!ソレだ!!」スタタタ ピューーー

魔女「エクスカリバーの光も心地良いな…」ウトウト

ホムンクルス「すぅ…すぅ…」zzz


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『夕方』


ザブ~ン ギシギシ


ローグ「頭ぁ!!ドワーフの従士2人が到着しやした」

女戦士「そうか…いよいよだな」

アサシン「既に覚悟は出来て居るぞ?」

女戦士「さて…誰も帰って来た事の無い海へ…」

ローグ「頭ぁ…ロマンっす」プルプル

女戦士「船出だ!!碇を上げて帆を張れ!!」ビシ

アサシン「ゾンビ共…我に従え…」フリフリ


ゾンビ共「ヴヴヴヴヴ…アガガガガ‥‥グルル」ズルズル


ローグ「なーんかキレが無いでやんすね…」

アサシン「クックック…ゾンビ共はノロい…まぁゆっくり行くぞ」

女戦士「さてこれから船の操舵はアサシンに任せる」

アサシン「船長室は私の個室で構わんな?」

女戦士「良いだろう…だが望遠鏡には触るな?」

アサシン「興味が無い…お前達は船底で休んで居ても良いぞ?」

女戦士「まぁそう言うな…暇つぶしがてら航海も楽しむつもりだ」

ローグ「なーんか…これが陸地を見る最後かも知れんのですが…船出があまりにノロくて台無しでやんす」

女戦士「陸地を見る最後か…」

ローグ「あっしは覚悟してるんすよ…この幽霊船をその後誰も見たことは無い…って語り継がれるんす」

女戦士「フフ…」

ローグ「頭もそのつもりで海賊達を船から降ろしたんすよね?」

女戦士「死ぬつもりは無い…今からが始まりだ…まだ見ぬ世界へ行く!!」

ローグ「うひょーーーそれっす!!それがロマンでやんす」

女戦士「船底に居る者を呼んで来い…船出だとな?」

ローグ「へい!!」


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 海賊王の娘編

   完







『夕日』


ザブ~ン ユラ~リ ギシ


魔女「折角寝付いた所じゃったのにな…」ブツブツ

情報屋「この船が帆を全部開くのは初めて見た…」

女戦士「いつも気球が邪魔をして居たからな…」

魔女「行先は夕日の向こうかえ?」

情報屋「そうね…少し進路を北に変えてだけど」

魔女「どの位で到着しそうなのじゃ?」

女戦士「順風にずっと乗って居れば6日程の距離の筈だ…まぁ普通に行けば10日前後…」

魔女「巨大な狭間でどれほど迷うかじゃな…」

女戦士「アサシン!クジラが案内してくれると言う話はどうなって居る?」

アサシン「何の話だ?」

女戦士「あぁ…あれはホムンクルスとの話だったか」

魔女「ホムンクルスは寝て居ったぞよ?」

女戦士「もしかして…寝ずに船底を改造して居たか?」

アサシン「行って見るが良い…樽の配置もすべて変わって居る」

女戦士「そうだったか…では静かにしておいた方が良かろう」


ドタドタ


女海賊「ちょっとちゃんとそっち持って!!」ヨタヨタ

商人「足元が見えないんだよ…」ヨタヨタ

女戦士「んん?何をして居る?」

女海賊「居室の家具を運んでるのさ…本棚とか必要じゃん?」

女戦士「お前は船出に気付いて居ないのか?」

女海賊「知ってるさ…ちっと忙しいんだ…商人行くよ!!」ヨタヨタ

アサシン「クックック…図太い女だ…まぁずっとあの調子だ」


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『夜』


ピカーーーーー


女戦士「それが光の石専用の燭台か…」

アサシン「うむ…女海賊が作った物だ…夜間はこれでガーゴイルは寄って来ん」

ローグ「なーんか戦闘になりそうに無いっすね…」

女戦士「そうだな…私達も家具の移動を手伝うか」

情報屋「書物を移動させたいわ」

女戦士「手分けして運ぼう…」スタ

アサシン「こちらは任せて貰って良いぞ?…むしろお前達が船底に居た方が平和だ」


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『船底』


ガサゴソ


海賊「ここが俺達の寝床でがんすか?」

女海賊「そそ…部屋とか区分けして無いから適当にハンモック使って」

商人「…この本棚どこに置く?」

女海賊「これ倒れると危ないから階段の横に置いて釘打っちゃうわ」

商人「おけおけ…よいしょ!」ドスン


ドタドタ


女戦士「おぉ…随分変わったな…」キョロ

情報屋「あら?居室より環境良さそうじゃない…」キョロ

女海賊「奥の方は虫の楽園だからあんま行かないで」

情報屋「また虫を連れて来てるのね…」

女海賊「この階段の周辺にテーブルとイス置いて居室代わりにする予定」

ローグ「テーブル持って来やしたぜ?よいしょ!!」ドスン

女海賊「良いね良いね!!」

女戦士「なるほど魔女が眠たくなる訳だ…」

女海賊「あと任せて良いかな?私も眠たいんだよ…」

ローグ「良いっすよ…あっしらが残りを運んでおきやす…ちっと休んで下せぇ」

女海賊「おっし!!ワーム集まれぇ!!へそのゴマ掃除しろぉ!!」スタタタ

魔女「…」チラ

情報屋「…」コクリ

魔女「あれがあ奴の水浴び替わりじゃ…」

情報屋「分かって居るわ…どこかで綺麗にしてあげましょう」


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ググググ ギィィィ


情報屋「この木が軋む音がアレだけれど…中々過ごしやすわね」

女戦士「うむ…不思議な感覚だ」キョロ


カサカサ カサカサカサ


女戦士「アラクネーの子供か…」

情報屋「分かったわ…この不思議な安心感は虫が怯えて居ないのでは?」

魔女「恐らくその通りじゃ…地に足を付けて居る安心感は虫から来て居りそうじゃ」

女戦士「良く見ると他の虫もあちらこちらに居る…」

魔女「踏みつけぬ様にせねばのぅ」

女戦士「なんだか眠たくなるな…」

情報屋「私も読書が捗る…」

魔女「何の書物じゃ?」

情報屋「竜宮伝説よ…亀に乗って竜宮に行ったとか…人魚に出会ったとか…」

魔女「読み終えたらわらわにも貸しておくれ…」

情報屋「分かったわ…」

魔女「竜宮のぅ…竜王でも住んで居ったのじゃろうか?」

情報屋「ニライカナイの伝説とは別なんだけれど共通する事も多くて今調べてるのよ」

魔女「共通とは何じゃ?」

情報屋「どちらもいつの時代の事なのかハッキリしない…海の向こう…島に城が存在する…色々ね」

魔女「つまり伝えられた場所が違うだけじゃという事か?」

情報屋「それもなんとも言えないわ…あと一つ未来君の壁画も有るでしょう?」

魔女「そうじゃったな…」

情報屋「謎解きをするのはワクワクするわ」

魔女「うむむ…わらわも気になって来たでは無いか…死者が集う理想郷とは何じゃろうのぅ?」

情報屋「それはニライカナイの言い伝えね…多分そこに天国に繋がる何かが有ったと思うわ」

魔女「ふむ…」

情報屋「それで竜宮伝説の方では天国に行く事を拒んだ物語…その代償として命を吸われた…そんなお話なの」

魔女「命を吸われたとな?…フム…」トーイメ

情報屋「何か気になったかしら?」

魔女「呪術の代償は人の魂なのじゃ…もしやと思うてのぅ…」

情報屋「代償?…他の魔法で言う触媒の代わりと言う事ね?」

魔女「実はのぅ…呪術の殆どは危険が過ぎる故シン・リーンでは禁呪に指定しておるのじゃ」

魔女「故に研究が進んで居らぬ…呪いを祓う術を考えておく必要が有りそうじゃ」

情報屋「そう言えば超古代文明には大体呪いが付き物ね」

魔女「呪い…うーむ…つり合う代償…対価…まさかのぅ…」ブツブツ

情報屋「フフ…調べ物には困ら無さそうね」


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『翌朝_デッキ』


ザブ~ン ユラ~


女戦士「すっかり寝てしまった…昨夜は何も?」

アサシン「クックック…何も起きん」

女戦士「太陽が出ているな…まだ狭間には入って居ないか」

商人「お~い!!おはよ~う!!」ノシ

女戦士「見張り塔に登って居るのは商人か…」

商人「イルカの群れから離れて行ってる…少し右だよ」

女戦士「イルカ?」

アサシン「そうだ…イルカの後を付いて行っている」

女戦士「そうか案内してもらっている訳か」

アサシン「たまたま行く方向が同じだけかも知れんがな?」

女戦士「操舵がアサシンで見張りは商人か…ベストマッチだ」

アサシン「私も一人では寂しくてな…話し相手が居るだけで随分気が紛れる」

女戦士「妖精はどうした?」

アサシン「妖精とは込み入った話が出来ん」

女戦士「なるほど…」


タッタッタ


ローグ「頭ぁ!!食事でやんす!!」スッ

女戦士「おぅ済まんな…パンとチーズか…」モグ

ローグ「船底が気持ち良すぎるもんでみんな籠りっきりでやんすね…」

女戦士「少し体を動かすように言って来てくれ」

ローグ「へい!!」


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『甲板』


ユラリ ギシ


ローグ「…まず体の体裁きでやんす…あっしの背中にタッチできたらホムンクルスさんの勝ちでやんす」

ホムンクルス「はい…わかりました」

ローグ「間違って海に落ちんでくだせぇよ?」

ホムンクルス「行きます…」スタタ

ローグ「全然遅いっすねぇ…」ヒラリ

ホムンクルス「…」スタタ

ローグ「目で狙ってる方向が分かっちまいやす…」ヒラリ

ホムンクルス「目…ですか…」

ローグ「相手の動きをもっと五感を使って察知するんす…そしたら目は瞑っても大丈夫っす」

ホムンクルス「分かりました…」スッ

ローグ「あいやいや…いきなり目を瞑っても海に落ちちまいやすぜ?」

ホムンクルス「隙有り!…」スタタ

ローグ「おっとぉ!!」ヒラリ

ホムンクルス「…」ジーー

ローグ「うはは…そういう駆け引きっすね?そんならあっしも本気で行きやすぜ?」

ホムンクルス「あ!!忘れていました…」クルリ

ローグ「ぬふふふ…その手は食いやせんぜ?」

ホムンクルス「えい!!…」スタタ

ローグ「全然ダメ…ナハハハハハハ」ヒラリ


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『デッキ』


アサシン「ホムンクルスは中々体幹が良くなってきていそうだな」

女戦士「うむ…毎日トレーニングを欠かさんらしい」

アサシン「今までとは違う様だ」

女戦士「少し動けるだけで身を守る事も出来るだろう」


ドタドタ


女海賊「お姉ぇ!!どっかに敵居ない?」

女戦士「昼間にそうそう敵なぞ居る物か…顔は洗ったか?」

女海賊「情報屋に汚いって言われて全身洗われたよ…そんな事よりコレ試したいのさ」スッ

女戦士「ん?砲弾?」

女海賊「ホムちゃんに教えて貰ったのさ…私が使ってる特殊弾倉ってさ…榴弾砲って言うらしい」

女戦士「ふむ…それの迫撃砲用か?」

女海賊「そうそう…命中したら爆発すんだよ…どんなもんか試してみたい訳さ」

女戦士「残念だがそれを使う敵が海に居るとは思えん」

女海賊「ぬぁぁぁなんか消化不良だなぁ…」

女戦士「火薬の量で爆発の程度は予測出来るだろう」

女海賊「それは分かるんだけど中に要らん鉄くずとか一緒に入れてるのさ…そこ工夫できそうじゃん?」

女戦士「まぁ又の機会だな…豪族と出会った時用に残して置け」

女海賊「あ~あ…楽しみ無くなっちゃったわ…アレレ?」アーングリ

女戦士「んん?」

女海賊「ロック鳥飛んでるわ…あいつらまだ付いて来てんだな」

女戦士「本当だな…」

女海賊「こっから先は羽休める場所無いのにどうすんだろ?」

女戦士「羽休めの場所が何処かにあるという事では無いか?」

女海賊「なる…」

アサシン「ふむ…ロック鳥も私達を案内して居るのかも知れんな」

女海賊「ほ~ん…まぁ良いや…ホムちゃんと遊んでこよーっと!」スタタ


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『甲板』


シュルシュル スタ


女海賊「おっとぉ!!商人あんた…その鍵爪まだ使ってたんだ」

商人「あぁコレね…ロープ伝うのにこれより便利な物無いよ」

ローグ「皆さんも体動かしに来たでやんすか?」

商人「上から見てて面白そうだと思ってね…ホムンクルスの動きが良くなっててビックリさ」

ホムンクルス「まだ背中を触れていません…はぁはぁ」

ローグ「商人さんなら丁度良いかもしれやせんぜ?」

女海賊「お?良いねぇ…やってみ?」

商人「ようし!!来い!!ホムンクルス」

ホムンクルス「はい…」スタタ パチン

商人「あれ?」

女海賊「なんだ商人!いきなり触られてんじゃん!!」

商人「そうか…上から見た感じ遅く見えたけど実際目の前にすると意外と早いんだね…」

ホムンクルス「もう一度!!」スタタ

商人「おっとぉ!!」ヒラリ

ローグ「今度は背中の触り合いでどうっすか?」

商人「ようし!!僕だって負けないぞ!!」ダダ パチン

ホムンクルス「あ…」

ローグ「こら良い相手が出て来やしたねぇ…続けて練習するでやんすよ」

ホムンクルス「はい…」ソローリ ソローリ スタタ

商人「ほっ!!」ヒラリ

女海賊「ちょいローグ!!私とやるよ!!」

ローグ「ええ!?姉さんとっすか…」

女海賊「何?」

ローグ「姉さんは勝つまで終わらんですよね…」

女海賊「はぁ?何言ってんのさ!!勝つに決まってんじゃん!!」パシュ シュルシュル バチン!!

ローグ「あだっ!!いたたた…それ使うんすか…」

女海賊「悪い?本気でやるんだよ」

ローグ「ほんじゃあっしも本気出しやすぜ?」スチャ

女海賊「来い!!」


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『デッキ』


パシュン シュルシュル


女戦士「ほう?面白い事をやって居るな…」

アサシン「海に落ちる事を考えんのか?」

女戦士「落ちても戻れる自信があるから出来る事だ…ローグも手を拱いて居る」

アサシン「帆下駄から落ちるのでは無いかと見て居られん」


ローグ「とりゃぁぁ捕まえた!!」バチン


女海賊「あぁぁぁ…」ピュー バキバキ ドッスーン!!

ローグ「姉さん…大丈夫っすか?」

女海賊「てててて…うわヤッバ…甲板に穴空いたじゃん…」

ローグ「姉さんは砲弾より重いっすからね…」

女海賊「怒られる前に修理するぞ!!」スタタタ

ローグ「へい!!」ダダ


女戦士「敵と戦う前に船を壊したか…ヤレヤレ」

アサシン「アレを続けさせては船が持たんぞ…」

女戦士「まぁ船の弱い場所が分かったから良い…修理して補強すれば前より良くなる」

アサシン「フフ私達もやって見るか?」

女戦士「お前とか?」

アサシン「いつだったかお前に完敗した夢を見た事が有る…リベンジだ」

女戦士「フフ良し!!やってやろうじゃ無いか…来い」


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『甲板』


トンテンカン トンテンカン


女戦士「手すりはすべて強度が足りん!!補強して直せ」

海賊「がってん!!」トンテンカン


ローグ「あいやいや…向こうもかなり派手に壊しやしたね…」

女海賊「お姉ぇもメッチャ重いからさ…しょうがないんだって」

商人「これでドワーフの船がどうしてゴツゴツしてるか良く分かった」

女海賊「あんま補強し過ぎると転覆しやすくなるんだけどね…」

ローグ「商人さんはホムンクルスさんと勝負つきやした?」

商人「五分五分さ…あんなに動けるとは思わなかったよ」

女海賊「おーし!!マッスル系ホムちゃんもなかなか良いね…次武器の使い方だね」

ローグ「あっしがダガーの使い方を教えやすぜ?」

女海賊「おけおけ…まずダガーのメンテナンスの仕方からだね」

ローグ「そーっすね…ミスリルダガーの研ぎから教えやしょうか」

女海賊「イイネ!!革砥を作って来るわ」

ローグ「お願いしやす…あっしはミスリルダガー用意しときやす」


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まぁ持ち方は順手でも逆手でも良いんすが…

逆手で持つのは相手に刃身を見せない為に使うんす…

ホムンクルスさんの場合護身で使うんで順手で持てば良いっすね

ほんで腰から抜いた時に順手になる様に練習して下せぇ


ホムンクルス「…」スチャ

ローグ「まぁそんな感じでやんす…後は相手を良く見ながら突いて使うんすが…」

ホムンクルス「…」スタタ シュッ

ローグ「背中さわる要領と同じっすね…その距離まで詰めれば狙うのは急所でやんす」


タッタッタ


女海賊「革砥を作って来たよ」ポイ

ローグ「あざーす!!ほんでダガーを普段から使ってると直ぐに切れんくなりやす…なもんで刃を研いでおくのが重要なんす」

女海賊「ちょい見せてあげてよ」

ローグ「見ててくだせぇ…」シュッシュッ

ホムンクルス「はい…理解しました」

ローグ「これ何か切りながらやらんと研ぎ具合が分からんすね…」

女海賊「あるある!!」スポ

ローグ「魚?」

女海賊「なんか甲板に落ちてたやつ拾ったのさ」

ローグ「鱗で刃が傷みやすいんすが…まぁこれ裁いて切れ味確認して下せぇ」

ホムンクルス「はい…」グサ

ローグ「あいやいや…まず料理用に細かくしやしょうか」

女海賊「お!!鍋持って来るわ…そいつでスープ作ろう」

ローグ「良いっすねぇ…ホムンクルスさんは料理用でダガー使える様になれば良いでやんす」

女海賊「ちっとコレも切っといて」スポ スポ


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--------------

『船底』


ググググ ギギー


魔女「情報屋…ちとこれを見てみぃ…」

情報屋「聖書?」

魔女「うむ…主から貰った聖書じゃ…ここにエデンの園が記されて居るじゃろう」

情報屋「神々の楽園ね?それが?」

魔女「此処じゃ…」

情報屋「神殿に…器?」

魔女「うむ…器に水が満たされておろう…」

情報屋「そうね…」

魔女「そしてニライカナイの伝説にも同じ器が記されて居る…」

情報屋「あら気付かなかったわ…」

魔女「神殿も似たような構成じゃ…もしかするとニライカナイはエデンの園かも知れんぞよ?」

情報屋「エデンの園があったとされる場所はメソポタミアの地…随分遠いわ…」

魔女「盗賊はニライカナイは浮島じゃと言うて居った」

情報屋「もしかしてそこは天空の城だった?」

魔女「主の話では超古代にバベルの塔を築き天に住む神を激怒させたそうじゃな?」

情報屋「本当に天に有ったと…」

魔女「重力魔法なら可能じゃ…主に見せたであろう」

情報屋「あぁぁダメ…ゾクゾクが止まらない…」

魔女「天空の城はまぁ良いとして…その器に入っている水じゃ…これは命の水では無いかえ?」

情報屋「確かに…そう考えても良さそうね…」

魔女「何故そこに命の水が器に入って居ると思う?」

情報屋「…どうして…かしら?」

魔女「エデンの園は人間にとっては天国と言われて居るが…魂がそこに行ってどうなるのじゃ?」

情報屋「まさか命の水に?」

魔女「今となってはわらわはそうなって居るとしか思えぬ…そしてそれが人間に掛けられ呪いでは無いか?」

情報屋「それって魂を神に搾取されているという事じゃない…」

魔女「それじゃ!…未来はそれを知ったのではなかろうか…じゃからニライカナイを封じた」

情報屋「ちょっと待って…アサシンは妹が海の向こうに居る気がするって…」

魔女「あ奴は勘が良い…何も知らんじゃろうが感じて居るのやも知れぬ」

情報屋「待って待って…ちょっと整理させて…」

魔女「魔王となったエンキとエンリルは何故命の泉を魔槍ロンギヌスで汚したのじゃろうか…」

魔女「神に搾取される魂の絶対数を減らしたのでは無いかえ?」

情報屋「…魂の奪い合いと言う事?」

魔女「憎悪に満ちた魂は天に昇らぬ…黄泉へ行きやがて深淵に落ちるそうじゃ」

情報屋「深淵に落ちた魂が魔王の一部となる…天に昇った魂は命の水に姿を変える…命の水って…一体何?…」

魔女「神のみぞ知るじゃな…じゃがわらわ達は今神々の戦いの真っ只中に居ると思えてならぬ」

情報屋「私達人間はリリスが生んだリリンの末裔…つまり魔王の子孫」

魔女「そうじゃ…アサシンが言うて居ったのじゃが魔王を滅した者が魔王となると言う…そして今天空の城を目指して居る」

情報屋「私達が魔王…これが神々の戦い…そう言いたいのね?」

魔女「そういう定めやも知れんのぅ…」トーイメ


--------------

--------------

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魔女「何故そこに命の水が器に入って居ると思う?」

情報屋「…どうして…かしら?」

魔女「エデンの園は人間にとっては天国と言われて居るが…魂がそこに行ってどうなるのじゃ?」

情報屋「まさか命の水に?」

魔女「今となってはわらわはそうなって居るとしか思えぬ…そしてそれが人間に掛けられ呪いでは無いか?」

情報屋「それって魂を神に搾取されているという事じゃない…」

魔女「それじゃ!…未来はそれを知ったのではなかろうか…じゃからニライカナイを封じた」

情報屋「ちょっと待って…アサシンは妹が海の向こうに居る気がするって…」

魔女「あ奴は勘が良い…何も知らんじゃろうが感じて居るのやも知れぬ」

情報屋「待って待って…ちょっと整理させて…」

魔女「魔王となったエンキとエンリルは何故命の泉を魔槍ロンギヌスで汚したのじゃろうか…」

魔女「神に搾取される魂の絶対数を減らしたのでは無いかえ?」

情報屋「…魂の奪い合いと言う事?」

魔女「憎悪に満ちた魂は天に昇らぬ…黄泉へ行きやがて深淵に落ちるそうじゃ」

情報屋「深淵に落ちた魂が魔王の一部となる…天に昇った魂は命の水に姿を変える…命の水って…一体何?…」

魔女「神のみぞ知るじゃな…じゃがわらわ達は今神々の戦いの真っ只中に居ると思えてならぬ」

情報屋「私達人間はリリスが生んだリリンの末裔…つまり魔王の子孫」

魔女「そうじゃ…アサシンが言うて居ったのじゃが魔王を滅した者が魔王となると言う…そして今天空の城を目指して居る」

情報屋「私達が魔王…これが神々の戦い…そう言いたいのね?」

魔女「そういう定めやも知れんのぅ…」トーイメ


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『夕方』


ユラ~リ ググググ


女戦士「風が強くなって来たな…荒れる前に帆を畳んでおいた方が良い」

アサシン「分かった…」フリフリ

女戦士「大きな嵐では無いが…これから雨が降る」

アサシン「さすが海が長いと分かるのだな?」

女戦士「匂いだな…」

ローグ「頭ぁ!!潮目が変わりやしたぜ?」ダダ

女戦士「分かっている…荒れるから高波に備えろ」

ローグ「荷の固縛を確認して来やす!!」

女戦士「任せる…」

アサシン「この様子では今晩は忙しくなるな…舵は直進で固定するぞ?」

女戦士「それで良い…海に落ちん様に命綱を付けておけよ?」

アサシン「お前もな?」


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『高波』


ググググ ザブ~ン ドバーーーー


ローグ「あいやいや…ちっと進行方向変えやせんか?波に突っ込んでいやすぜ?」

女戦士「アサシン…波に対して斜めに乗り上げろ…船首を突っ込ませるな」

アサシン「済まんな…超えられると思って居た」

女戦士「今は荷が満載状態で高波に潜り込みやすい…この程度で転覆する事は無いが…」

ローグ「なんか船首の方に大きな魚が乗り上げやしたね…」

女戦士「放って置け…ガーゴイルに備えろ」

ローグ「へい!!」

女戦士「商人!!見張り台は大きく振られるからこっちへ降りて来い…転落するぞ!!」

商人「分かったぁ~~!!」シュルシュル スタ


ポツ ポツポツ…


女戦士「やはり雨も降って来たか…」

商人「視界悪くなるね…」

アサシン「今晩は私と商人の2人でデッキ上で警戒だな」

商人「まぁ2人でプラズマの銃なら余程大丈夫さ」


女海賊「うわわわ…ちょちょ何コイツ!!ちょいホムちゃんこっち!!」ドタドタ


女戦士「んん?どうした?」

女海賊「船首にある小舟の下になんか変な魚居るんだけど」

女戦士「放って置け!!」

女海賊「ちょちょ…足生えてんだって!!めっちゃキモイ!!」

女戦士「何!!?マーマンが乗り上げたのか!!魚人だ!!ローグ!!蹴り落として来い!!」

ローグ「あららら厄介なのが…」ダダ


ツルッ…


ローグ「どわぁぁぁ…」ゴロゴロゴロ ドターン

女海賊「…」ポカーン

ホムンクルス「ぁ…大丈夫でしょうか?」

ローグ「あたたたた…誰っすかねぇバナナの皮を捨てたのは…あ痛ぁぁぁ!!」スリスリ

女海賊「むぐっ…ぷぷぷ」プルプル

女戦士「何をしている!!マーマンは2匹居るでは無いか!!」

ローグ「ええ!?」スック


マーマン「ギョギョ!!?」ビチビチ バタバタ


女海賊「うわ…なんか自分で立てないで暴れてる…何アレ!!キモイ!!」

ローグ「姉さん…マーマンに近付かんで下せぇ…ヌルヌルの体液で足元ツルッツルになるんす…」チャキリ

女海賊「ちょ…アレはクロスボウで倒すん?」

ローグ「追い払えりゃ良いんすが…」ダン!


マーマン「ギョ!?」ヌルリン!


ローグ「だぁぁぁやっぱヌルヌルでボルトが刺さらんでやんすね…」

女海賊「そんなんアリ?」チャキリ

ローグ「いやいやいや待って下せぇ!!」

女海賊「何さ!!」

ローグ「姉さんの特殊弾は爆発しやすよね?ソレ船を壊しちまいやす」

女海賊「ええ!!マジか…どうすんの!!?」

ローグ「仕方ないっす…ワイヤー使って船から落ちん様にして接近して蹴り落としやしょう」

女海賊「おっし!!私右!!あんた左!!」

ローグ「分かりやした!!行きやすぜ?」ダダ


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『デッキ』


ザブ~ン ザバザバ


女戦士「船に乗り込んだ敵にプラズマの銃は使うな?」

商人「これどうする?」

女戦士「追い散らせば良いのだが…」

商人「マーマンもツルツル滑って動けて居ないよね…」

女戦士「今の内に魔女を呼んで来い…凍らせればなんとかなる」

商人「そういう事か…呼んで来る!!」タッタッタ

アサシン「初めて見たが…なんだこの敵は…」

女戦士「笑いごとでは無いぞ?マーマンは群れで行動する…つまり海の下はマーマンだらけだ」

アサシン「暴れて居るだけで襲って来る様には見えんな…」

女戦士「アレの知能は魚と同じ…捕食する気になれば襲って来るぞ?」

アサシン「…」アゼン


ドタバタ ルツリン! ドテ! バタバタ!


女戦士「…」

アサシン「こ…これは…」

女戦士「そういう敵だと理解しろ…」

アサシン「お互いツルツルで立ち上がれず戦いになって居ないのだが…」

女戦士「だからそういう敵なのだ…」


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『船首』


ツルツル ドターン


女海賊「んむむむ…」プルプル

ローグ「姉さん…なんとか立って下せぇ!!」プルプル


マーマン「ギョギョギョ!!」ビチビチ バタバタ


女海賊「だぁぁぁ!!」ツル ドターン ツルツルツル

ローグ「あっしが一発当てやす!!」ブン ヌルリン

女海賊「ちょ!!こいつどうすりゃ良いのさ!!」ヌル ドテ

ローグ「なんとか蹴とばして海へ突き落せば…」プルプル

女海賊「くっそコイツ!!至近距離で撃ってやる!!」チャキリ

ローグ「だぁぁぁその位置じゃあっしに当たりやす!!」


ピシピシ カキーン!


女海賊「凍った!?」

魔女「今じゃ!!氷を砕けぃ!!」

ローグ「姉さん!!あっしが撃ちやす!!」チャキ ダン!


パリーン! バラバラ


女海賊「おぉ!!」

魔女「もう一匹凍らせるでそこを動くな…氷結魔法!」ピシピシ カキーン

ローグ「どらぁ!!」ダン! パリーン!

女海賊「ちょいローグ!!このヌルヌル集めるから空き樽持って来て!!」

ローグ「ええ!?姉さん…あなたって人は…」

女海賊「ヌルヌル爆弾作るわ…これメッチャ使えるぞ」


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『デッキ』


ザザーー


女戦士「ホムンクルス!甲板では波にさらわれるかも知れんからこっちに上がって来い」

ホムンクルス「はい…」スタスタ

女戦士「雨が強くなって来たな…」

ホムンクルス「私は何をすれば良いのでしょう?」

女戦士「雨に濡れても良いのであれば2連クロスボウを持って此処で待機だ」

ホムンクルス「分かりました…」スタ

魔女「今晩は忙しくなるかのぅ?」

女戦士「うむ…ガーゴイル以外に海の魔物も注意する必要がありそうだ」

魔女「マーマンとはまた珍しい魔物に出会うたのぅ」

女戦士「温かい海ではたまに出くわす…見ての通りただ厄介な魔物…」

魔女「放置してはイカンのか?」

女戦士「仲間を呼んでしまうから出来るだけ早く海へ落とすのが最善だな」

アサシン「アレが増えるのか…」

女戦士「もう船首の方は足元が滑って何も出来んぞ?」

魔女「なるほど厄介な魔物じゃ」

商人「女海賊が掃除を始めてるね」

女戦士「ふむ…妹にしては正しい判断…やらせておくのだ」

商人「手伝わなくて良いかい?」

女戦士「商人は上空を警戒してくれ…プラズマの銃が要だ」

アサシン「上だけじゃ無いぞ…右舷方向を見ろ」

女戦士「んん?何かいるか?」

アサシン「たまに首だけ少し見える…恐らくシーサーペントだ」

女戦士「この船に上がって来る事は無いが…高波と一緒に乗り上げる可能性は在りそうだな…」

アサシン「その場合プラズマの銃が撃てん…先に殺しておくべきだ」

女戦士「確かに…狙えるか?」

商人「分かった…そっちも見て置く」


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『船首』


ボトボト デローーン


女海賊「うわぁ…鼻水よりデロデロだ…」ヌルリ

ローグ「姉さん…これ樽になかなか入らんのですが…」デローン

女海賊「これさ…体に塗っときゃ剣とか全部スカるんじゃね?」

ローグ「気持ち悪く無いんすか?」

女海賊「もうヌルヌルで気持ち悪い通り越して気持ち良いさ…」

ローグ「なかなか落ちんすよ?このヌルヌル…」

女海賊「雨降ってんだからこすりゃその内落ちるって」

ローグ「そらそうなんすが…」

女海賊「見たさっき?マーマンも自分で立てないとか…ありえんわ」

ローグ「バタバタして居やしたねぇ…」

女海賊「アレなんかヤバイ攻撃とかしてくんの?」

ローグ「噛みつくぐらいでやんす」

女海賊「ちっこいサメみたいなもんか…」

ローグ「馬鹿に出来んすよ?腕食いちぎられやす」

女海賊「あーーーそういう系ね…」

ローグ「放って置くと厄介なんで普通は蹴とばして海へ落とすんすが…」

女海賊「船揺れてるからツルツル移動してたね…」

ローグ「もう来ないと良いっすねぇ…」

女海賊「いやいやもっとヌルヌル欲しいさ…まだ樽にちょろっとしか無いじゃん」

ローグ「姉さんは本当変な物に興味持ちやすね」

女海賊「うっさいな!!ちゃんと集めてよ!!」ベチャ デローン


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『真夜中』


ピカーーーーー チュドーーーーン!


商人「よし当たった!!」

アサシン「これでシーサーペントは全部倒したな?」

商人「その筈…」

女戦士「雨脚が弱まって来た…そろそろ落ち着く筈だ」

ホムンクルス「また船首にマーマンが飛び込んで…」

魔女「氷結魔法!」ピシピシ カキーン

ホムンクルス「撃ちます!!」バシュン! パリーン!

女戦士「高波でも無いのに何故マーマンが飛び込んで来ると言うのだ?」ダダ

アサシン「女海賊が何かやって居ないか?」

女戦士「あいつ…どうにかして釣っているな?あの馬鹿者め…直ぐに止めさせろ!!」


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『船首』


ドプドプ ヌパー


女海賊「ヌフフフ…大漁大漁!!」ヌパー

ローグ「姉さん…そろそろヤバイっす…バレやすぜ?」デローン


”ザザー”

”止めんかタワケ!!お主がワイヤーでマーマンを釣り上げて居るのはバレて居る!”

”魔女!貝殻を貸せ!!女海賊!!分かって居るだろうな?尻を温めておけ!…ザザー”


ローグ「姉さん…こりゃ仕置き確定っす…」

女海賊「尻にこれ塗っとくわ…」デローン ヌリヌリ

ローグ「ちょ…」

女海賊「ちっと調子に乗り過ぎた…反省してる」

ローグ「あっしもタダじゃ済みそうに無いでやんす…」ショボン

女海賊「今度お姉ぇにお酒飲ませるからそれで勘弁して?」

ローグ「おぉ!!姉さんも悪ですなぁ…ヌフフフフ」

女海賊「ヌルヌル全部集めるぞぉ!!」ドプッ ボトボト


--------------

『恐らく明け方』


ザブ~ン グググググ 


アサシン「嵐は抜けた様だが…どうやら狭間に入ったな…」

女戦士「行先は分かるか?」

アサシン「イルカを見失った…」

商人「船底にミツバチが居るよ…案内させられる筈…」

女戦士「その前に女海賊に仕置きだ…」

商人「まぁ良いじゃ無いか…いつもの事さ」

アサシン「船首を完全に綺麗になるまで掃除させれば良かろう」

女戦士「むむむ…あの馬鹿者が…」グググ

女海賊「お姉ぇ!!」スタタ ツルツルツル ドターン

女戦士「お前良くもぬけぬけと私の目の前に来られたな…」

女海賊「あたたた…ちっとお尻ぶって見て!!」プリン

商人「アハ…」

女戦士「反省する気は有るのかぁ!!」ブン


ツルリン!!


女戦士「なっ…」ヨロ

女海賊「おぉぉぉ!!これ行けるぞ!!?」

女戦士「はぁぁぁ…怒る気も失せるな…あのヌルヌルを使う気か!」

女海賊「そうだよ!!これ超スゴイんだって!!」

商人「何々…どういう事?」

女海賊「このヌルヌルで滑って攻撃当たんないのさ…なんかで打ってみ?」

商人「ええ?良いの?」

女海賊「良いからホラ!!」プリン

商人「よーし!!」ブン


ヌルリン!!


商人「うわわわ…」ドテ

女海賊「ほらね?ヌルヌル付けてたら無敵だよ」

女戦士「呆れて開いた口が塞がらん…もう良い!イルカを見失ったからミツバチに先導させろ!」

女海賊「おけおけ!!ちっと体拭いて来るわ!!」スタタ ツルツルツル

女海賊「おととととと…あっぶ!!」

魔女「狭間に入った緊張感が全く無いのぅ…あ奴の脳みそはどうなっとるんじゃろうか…」

アサシン「クックック…毎度の事だ…気にするとキリが無い」


-------------

『連通管』


お姉ぇ!!聞こえる!!?


女戦士「うお!!何処から聞こえて来る!?」キョロ

女海賊「連通管通して船底からそっちに声届くんだって!!」

女戦士「そんな工夫までやって居たのか…」

女海賊「進路180°反対だよ…いつの間に逆向いてる」

アサシン「なんだと!?羅針盤は正しい方向を向いているぞ?」

女海賊「ほんなん知らんって…ミツバチは反対方向向いてんのさ」

女戦士「これはいきなり迷った様だな…」

女海賊「ちょい情報屋!?ミツバチの向いてる方向をこの連通管でちょいちょい報告してくれる?」

情報屋「え…えぇ…此処に向かって話せば良いのね?」

女海賊「そそ…私ちっとこのヌルヌル落として来るから後お願い」

情報屋「わかったわ…」

女海賊「ほんじゃ行って来る!!」


ドタン!! ズデ!!


女戦士「ヤレヤレ…どうにも落ち着かん妹だ…」

商人「まぁまぁ…アレでビックリ発明するんだから良いじゃ無いか」


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『半日後』


キャァァァァァ キシャーーーー


女戦士「光の石から陰になる場所でレイスがいつまでも追って来るな…」

アサシン「お前達全員船底へ行けば居なくなるが?」

女戦士「そうは言っても海の魔物がいつ現れるか分からんからな…」

商人「そんなに簡単に船へ乗り込まないでしょ?」

魔女「海の魔物は基本的に大型なのじゃ…クラーケン然り…リヴァイアサン…スキュラ…全部大型じゃな」

商人「そんな何匹も居るのかな?」

魔女「さぁのぅ…じゃがここは外海じゃ…わらわ達の常識は通用せんぞよ?」

アサシン「クラーケンに襲われてはどうにもならんな…それを心配するのも無駄な事だ」

女戦士「違うぞ…倒す力は有る筈だ…そうだろう?魔女」

魔女「う~む…自信は無いがマーマンを倒したやり方と同じじゃな」

アサシン「凍らせて砕くか…」

魔女「わらわの絶対零度と言う魔法はクラーケンをも凍らせる力がある…上手く使えば良いのじゃが…」

女戦士「とりあえず…少しでも魔物を遠ざける工夫をしよう」

商人「なにか考えが?」

女戦士「出来る事と言えば退魔の鈴をもっと増やす事だ」

魔女「ふむ…やれる事はやって置いた方が良いな」

女戦士「商人は帆下駄に上がれるな?」

商人「行けるよ」

女戦士「帆下駄の先端は退魔の方陣から外れて居そうだ…設置してきてくれ」

商人「なるほど…少しでもレイスを遠ざけたい訳ね…良いよ行って来る」

女戦士「各マストの上端もだ」

商人「おけおけ…それを言うなら居室も荷室も端っこの方に少しだけ方陣に入って居ない場所がある」

魔女「ふむ…わらわが退魔の砂銀を撒いて来よう」

商人「それだと船が揺れて動いちゃう…銀の釘を打った方が良い」

女戦士「分かった…私が行って来よう」

アサシン「静かな今の内に行って来い…ここは私とホムンクルスで見張って置く」


--------------

『甲板』


ゴシゴシ ゴシゴシ


女海賊「おが屑持って来たよ」バッサー

ローグ「全然ヌルヌル取れんでやんす…」ゴシゴシ

女海賊「あんた達もこすって!!」

海賊1「がってん!!」ゴシゴシ

海賊2「承知の助!!」ゴシゴシ

女海賊「マーマンってめっちゃ厄介な魔物だね…」ゴシゴシ

ローグ「姉さんが釣りまくるもんで甲板までヌルヌルでやんすよ」

海賊共「マーマンの群れを突っ切ったもんで船体もヌルヌルでがんす」

ローグ「誰も登って来れんっすねぇ…」

女海賊「これ一回しっかり乾かさないと永遠にヌルヌル取れなくね?」

ローグ「そーっすね…雨が止めば良いんすが…姉さんはどうやってヌルヌル取ったんすか?」ゴシゴシ

女海賊「砂の上でゴロゴロしたのさ…ほんで砂落とした」

ローグ「渇いた砂なんかそんな無いっすねぇ…熱湯をかけりゃ一発なんすが…」

女海賊「ふむ…って事は熱か…よっし!!」スタタ

ローグ「逃げんで下せぇ…姉さんもこすって下せぇ」

女海賊「秘密兵器作って来る…ちっと待ってて」

ローグ「今度は何なんすか?」

女海賊「ウラン結晶余ってんじゃん?それで蒸気作るんだよ…ほんでぶっかける」

ローグ「おぉ!!クジラの潮吹く奴っすね?」

女海賊「そそそそ!!そうだついでだからミスリルの音出る様にすっか…簡単だからすぐ作って来る!!」スタタタ ピューー


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『30分後』


どいたどいたぁ!!


女海賊「新兵器!!蒸気放射器だ!!」スチャ

ローグ「わわわわ…樽なんか背負って…」タジ

女海賊「こん中に海水入ってんのさ…クッソ熱い蒸気出るからちょいどいといて!!」チャキリ

海賊1「がってん!!」ドスドス

海賊2「危ないでごわす!!」ドスドス

女海賊「いくぞぉ!!」カチ


ボエーーーーーーーー モクモクモク


ローグ「どわちちちちち…」ダダダ

海賊1「おぉぉぉぉ!!一気にぬるみが取れたでがんす…」

女海賊「コレ結構使えそうだぞ?火炎放射器の代わりで行ける!!」カチ


ボエーーーーーーーー モクモクモク


ローグ「なーんかめっちゃ危ない武器っすね…」

女海賊「おっし!!これもう一個作るぞ!!海賊2人で使えばうちらの火力アップだ…これでヌルヌル落としといて!!」ポイ 

海賊1「がってん!!」パス

ローグ「あっしは床磨きから解放っすね…あっしもヌルヌル落として来やす…」


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--------------

『デッキ』


ボエーーーーーーー モクモクモク


女戦士「ほぅ?蒸気を放射する新しい装置を作ったか…しかもミスリルの筒を使って…」

アサシン「ふむ…火炎放射器と同程度の射程…これは船に乗り込んだ敵への有効打になるぞ?」

魔女「マーマンを凍らせず倒せそうじゃな…良い武器では無いか」

女戦士「ふむ…樽を背負う必要が有るか…」

魔女「主の従士が使う分には問題無さそうじゃ」

女戦士「この火力が有れば交代で休息しても良さそうだな」

アサシン「休める時に休め…まだ先は長い」

魔女「そうじゃな…飛空艇でニライカナイへ行った時は狭間で6日程掛かったのじゃ…この船では2週間程掛かるじゃろう」

女戦士「分かった…休むように伝えて来る」スタ


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『船底』


ググググググ ギギー


情報屋「…アダムとイヴの伝説でイヴが食べたとされる禁断の果実…」


私の想像だけれど…これがエンキに与えられた神の知識だと思うのよ…その知識と言うのがきっと文字ね

文字で書物に書き残すという事を始めてそこで得た訳…

人間はこの文字を使って後世に知識の伝搬が出来る…それこそ神に与えられた力

そうやって知識を蓄えやがて神を滅ぼすまでに至った…

私達が古代の事を知り得るのもすべて文字のお陰ね…そのお陰で何が悪なのか…何が起きて居たのかが分かる


魔女「確かにその通りやも知れんな…エルフやドワーフも…オークも文字を使わんのぅ」

情報屋「そうよ…知識の伝搬が弱いから発展できない」

魔女「文字とは違う方法で知識は残して居る様じゃが…」

情報屋「一子相伝の様な伝搬方法ではダメね…誰でもその知識を得られる様にしないと…」

魔女「ふむ…それが書物じゃ…諸事詩も同じじゃな」


そして知識を蓄え続けた人間はやがて神を超える物を作り出して行く…それが機械で作られた超高度AI

この超高度AIの中に生まれた新たな意識は神を凌駕する知識をあっという間に得てしまった


女海賊「あのさ…ちっと話戻るんだけど神ってアヌとエンキとエンリルの3人だけなん?」

情報屋「私達が知らないだけだと思うわ」

女海賊「1000人ぐらいの神は何処行っちゃったんだろね?なんで3人だけ残ってんの?」

魔女「うむむ…神のみぞ知るじゃのぅ…」

情報屋「もっと当時の壁画とか石板とか残って居れば少しは分かるかもしれないのに…」

女海賊「なんか分からん事だらけでもう神様なんかどうでも良いな…むしろ余計な事して邪魔すんなって感じ」

魔女「そうやって滅ぼされて行ったのじゃろうな」

情報屋「邪魔と言うのは?」

女海賊「アヌは裁きの神だったね?…どうせ天国行くか地獄行くか決めてんのはアヌなんじゃね?」

魔女「そうやも知れん…じゃが邪魔という答えになって居らん」

女海賊「いやいや行き先勝手に決めんなよ…私等が行きたい方に行けば良いのさ」

情報屋「フフ地獄に行きたいとでも?」

魔女「ちと待てい!!アヌが選別をして居るのか…」トーイメ

情報屋「何か気付いた?」

魔女「それがそもそもイカンのやもしれぬ…ううむ」


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『数日後』


ザブ~ン ユラ~


商人「…やっぱり島だ!!かなり大きい」

女戦士「こんなに早く見つけるだと?…ローグ!!船底に行って全員呼んで来るんだ」

ローグ「わかりやしたぁ!!」ダダ

アサシン「ミツバチが向く方向と違うがどうする?」

女戦士「ひとまず近くに寄って確認だ」

商人「飛空艇で上から確認してみたら?」

女戦士「そうだな…」

アサシン「ホムンクルスが描いた地図にも乗って居ない様だぞ?」パサ

商人「僕も見たい…見張り塔を下りるよ」シュルシュル スタ

女戦士「確かに…」

商人「ホムンクルス曰く隆起していくつか新しい陸地が出来ていると言うんだ」

女戦士「浅瀬ならまだしも海のど真ん中で一体どれ程隆起すると言うのだ」

商人「あぁぁそうか…ふむ…ホムンクルスでも確認できていない島か…確かに地図には書いて居ないなぁ…」

アサシン「島にしては大きいぞ?」

商人「うん…狭間の中だから遠くまで確認できない」

アサシン「まぁ陸地が見えて居た方が迷わんで良いが…」


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『数分後』


ドタドタ


女海賊「なんか陸地が見えたんだって?」ズイ

商人「そうだよ…ニライカナイでは無いのかい?」

女海賊「なんか全然違うなぁ…」

女戦士「飛空艇で確認に行けるか?」

女海賊「あんま離れると合流出来なくなるよ?視認出来る範囲が限界だね」

女戦士「危険か…ここで逸れては元も子もないな」

商人「長いロープで繋いでおけば?」

女海賊「ほんなん直ぐに切れるって…まぁ上に登った分もうちょい向こうまで見えるかもね」

女戦士「それでも良いから様子を見て欲しい」

女海賊「分かった…」

商人「あ!!待った待った!!上の方に行くとガーゴイル沢山居るじゃないかな?」

女海賊「あーーーそうだな…妖精の笛吹きながら行くから落ちて来るの気を付けて」

商人「その手があるか…」

女海賊「ちっと行って来るわ…」スタタ


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『その後』


ノソノソ


魔女「もう着いたんかえ?」

女戦士「どうやら違う様だ…見覚えが無いだろう?」

魔女「ふむ…入り江も朽ちた村も無いのぅ…ニライカナイでは無さそうじゃ」

商人「ホムンクルスは何か分からない?」

ホムンクルス「衛星からは大きな氷山等が確認されましたので流れて来て居るのかも知れませんね」

女戦士「何!?島が流れて来る事が有ると言うのか?」

ホムンクルス「分かりません…ですが氷山の上に乗っているとも考えられます」

商人「なるほど!!あの下には氷が有るのか」

ホムンクルス「可能性の話です」

女戦士「それ程大きな氷がこの温かい海まで流れて来る物なのか?」

商人「巨大だから溶けにくい…どう?」

情報屋「氷山は地球の遠心力で赤道付近まで流れて来る事が考えられるわ」

ホムンクルス「その通りですね…4000年前の地軸の移動時にも当時の南極大陸が一部大きく移動しています」

商人「大陸毎移動するってスゴイ事だね…」

魔女「ちと行ってみたいのぅ…」

ホムンクルス「一気に沈むかも知れませんので近寄らない方が良いかと…」


ヒューーー ドサドサ!


ローグ「うわわわ…ガーゴイルが落ちてきやした…」

女戦士「蒸気噴射器で掃除しろぉ!!」

海賊共「がってん!!」


ボエーーーーーーー モクモク


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『鯨型飛空艇』


フワフワ ドッスン


女海賊「お姉ぇ!!ダメダメ!!船の真下も氷になってる…あれくそデッカイ氷山だ」

女戦士「なるほど見えて居るのは一部だけか…アサシン!島から離れろ」

商人「向こう側は全部氷?」

女海賊「そそ…めっちゃバランス悪い形してっからいつ転がるか分かんないよ?」

商人「転がる?」

女海賊「海水に浸かってる部分がやせ細ってキノコみたいな形になってんのさ…陸地が重くてこっちに傾いてる」

商人「うわ…直ぐに離れないと…」

アサシン「遠くまで見えんと氷山だという事にも気付けんか…」


ザブーン ドドドドド


ローグ「あららら…一部崩れて…」

女戦士「直に崩壊しそうだ…早く離れるぞ」


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『快走』


ザブ~ン  ザバザバー


女海賊「又船首側が波に突っ込んじゃってる…」

女戦士「海賊共!!何か乗り上げて居ないか見て来い!!」

海賊「がってん!!」ドスドス

女海賊「お姉ぇコレ縦帆で横風受けてるだけだと船傾きすぎじゃね?」

女戦士「外海がこれほど波がうねると思って居なかった…帆装をスクーナーに改造したのはマズかったな」

アサシン「速度はかなり出て居るぞ?好し悪しだ」

女海賊「船首から甲板にかけて手すりん所に網張った方が良いわ」

女戦士「うむ…出来るか?」

女海賊「おけおけ…もうちょい揺れ収まったら張って来るわ」

女戦士「頼む…私はロープを結って来る」


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『船首』


ユラ~リ ギシ


海賊「姉さん…こんな物が乗り上げてたでがんす」

女海賊「んん?壺?」

海賊「陶器が沈まんでいつまでも海に漂ってるとは思えんでがんす」

女海賊「ああああああ!!その壺ニライカナイで見た壺じゃん!!」


ツカツカ


女戦士「網を結って持て来たぞ…」ドサリ

女海賊「お姉ぇ…ニライカナイに有った筈の壺が流れて来てる…かなり近い所まで来てるっぽい」

女戦士「想定よりもかなり早いが?」

女海賊「浮島が動いてんだよ…デカい流氷ってどっち動いてた?」

女戦士「南東方向だと思う」

女海賊「もうちょい進路南向いた方が良いな…通り過ぎそう」

女戦士「ふむ…アサシンに連絡して来よう」スタ

女海賊「ちょちょちょ…この壺を情報屋に持ってって」

女戦士「分かった…」グイ



---------------

『見張り台』


ユラ~リ ググググ


商人「右前方!!沈没船だぁ!!横を向いて流れてる!!」

女戦士「!!?」ダダダ

商人「大きいね…」

女戦士「アサシン!近くまで寄せろ」

アサシン「分かっている…」グルグル

女戦士「この船と同じ程度のガレオン船だな」

アサシン「オークが乗った船か?」

女戦士「分からん…横を向くと言う事は何処かに船底を当てて浸水した可能性が高い」

アサシン「ふむ…明日は我が身だな…速度を落とすぞ」

女戦士「それが良い…商人!!近くに岩礁が有るかもしれん!!良く見ておけ!!」

商人「分かったぁ!!」


--------------

『沈没船』


ザブン ギシギシ


ローグ「船上に乗ってる物はひっくり返って全部どっか行っちまったみたいでやんす…中を調べて来やすぜ?」

女戦士「待て…下手に船から降りると魔物に襲われ兼ねん」

女海賊「お姉ぇ!!迫撃砲一発ぶちかまして良い?どうせあの船もうダメだから」

女戦士「よし…ここから甲板を狙って穴を開けて見ろ」

女海賊「よっしゃーー!!海賊共!!手伝え!!こーーーい!!」スタタタ

海賊共「どすこい!!」ドスドス

ローグ「何処にも旗印が見当たらんでやんす…どこの船でやんすかね?」

女戦士「ガレオン船といえばフィン・イッシュしか無いだろう…」

ローグ「軍船落ちの船にしちゃなんか色々ショボイっすねぇ」


ゴロゴロ ガコン


女海賊「よーっし!!この距離なら照準は目視でおっけ!!水平射撃で真っ直ぐ行ける」

海賊共「へい!!」

女海賊「私は望遠鏡で破壊の具合見とくから合図したら撃って」

海賊共「がってん承知の助!!」

女海賊「甲板のど真ん中ね…よしよし撃てぇぇぇぇ!!」


ドコーン! チュドーーーーン パラパラ


ローグ「うほーーーーここまで破片が飛んで来やすか…」

女海賊「なぁぁぁ甲板貫通して中の方で爆発したな…爆発速度遅いわ…」ブツブツ

ローグ「いやいや大穴空きやしたぜ?十分じゃないんすか?」

女海賊「穴開けるのは一枚目で良いんだって…中まで吹っ飛ばしたら荷を奪えないじゃん」

女戦士「積み荷に何が乗っているか見えるか?」

女海賊「分かんない…全部吹っ飛んじゃったよ」

ローグ「なーんか…あんま乗って無い感じですぜ?樽が見当たらんでやんす」

女戦士「座礁して荷を下ろしたか…小舟が見当たらんあたり何処かへ逃げたな」

女海賊「ちっと砲弾改良してくるわ」スタタタ ピューー

ローグ「せめて海図とか日誌を探しに行きやせんか?」

女戦士「ダメだ!!レイスに襲われるのがオチだ…どうせ私達以上の海図なぞ持って居る者など居ない」

アサシン「船を進めるぞ?」

女戦士「うむ…」


--------------

『漂流物』


ゴン! グラーーーーー グググ


女戦士「又何かに当たったか…誰も船から落ちて居ないな?」ヨロ

アサシン「こう霧が深くては何があるか分からんな…」

女戦士「光の石を仕舞った方が見やすいか?」

アサシン「いや…あまり変わらん…まぁ微速で前進する」

女戦士「幸運にも船にマーマンのヌルみが付着してどうにかなっているな…」

アサシン「そうだな…しかし何に当たったのか…」

女戦士「商人!!何も見えんのか?」

商人「海の中は良く見えないよ…浅瀬では無いと思う…」

女戦士「確か魔女は海中に沈んだ古代都市が有るとか言って居たな…」

商人「それに引っかかってる?」

女戦士「連通管で魔女を呼び寄せる…魔女!聞こえるか?」


魔女「何用じゃ?」


女戦士「ニライカナイに近付いてると思われる…こっちに来てくれないか?」

魔女「ふむ…ちと待って居れ」

商人「そうだ!!砂銀に照明魔法を掛けて海に落として見ないかい?」

女戦士「なるほど…アサシン!下手に進むのは危険な気がする…船を止めてくれ」

アサシン「分かった…」


--------------

『浅瀬?』


ポチャン… ピカーーーー


商人「見えた!!あ…あれ?浅いぞ!!」

女戦士「何ぃ?海底都市では無いのか?」

商人「まずい…座礁しそうだ…深さ10メートル無い」

女戦士「どっちへ行けば浅瀬から離れられる?」

商人「ちょっと待って…船動いてる?」

アサシン「帆は全部畳んであるが?」

商人「あれ!?なんだ?浅瀬が動いて…る?」


ドドドド


海賊「頭ぁ!!巨大な亀でがんす!!」

商人「これが亀?…大きすぎる…」アゼン

女戦士「荒らげん様に行かせた良いな…」タジ

情報屋「竜宮伝説では亀に乗って竜宮まで行ったそうよ…案内して居るのかも知れない」

女戦士「しかしこれほど巨大では少し動いただけで渦が起きる…海中に引き込まれるぞ」

魔女「わらわは泳げぬぞ?」

商人「亀の甲羅の上に丁度光る砂銀が乗っかったよ…アレを追えば良い」

女戦士「なるほど…アサシン行けるか?」

アサシン「分かった…」


--------------

『漂流物』


ユラ~リ ギシ


女戦士「また船の残骸が流れている…どうなって居ると言うか…」

魔女「前にニライカナイへ来た時も沈没船が沢山在ってのぅ…海面が上がって流れたのじゃな」

女戦士「もう間近なのは間違い無いか…」

魔女「石化したクラーケンも在った筈なのじゃが見当たらんな…」

女戦士「障害物が多いから亀が案内して居るのかも知れんな」

魔女「ふむ…亀の後ろであれば問題無く行けそうじゃのぅ」

アサシン「しかし遅いなあの亀は…追いついてしまいそうだ」

商人「霧が薄くなってきたぁ!!」

魔女「むむ!!方陣の内側に入ったやも知れん…星は見えぬか?」

商人「上は何も見えない!!」

情報屋「見て!!正面すこし右側…明かりが見えるわ」

商人「本当だ!!あのチラつきは松明だ!!」

女戦士「ふむ…オークが上陸しているか…一応戦闘用の準備をしておくのだ」

魔女「何か有ってもわらわが睡眠魔法で眠らせるぞよ?」

女戦士「何も起きない事を祈る…」


--------------

『荷室』


ゴソゴソ


ローグ「姉さん!!ニライカナイが見えたみたいでやんす」

女海賊「マジか!!なんかめっちゃ早く到着したな…」コネコネ

ローグ「何作ってるんすか?」

女海賊「んあ?砲弾を改良するって言ったじゃん…もうちょい燃焼速度早くなるようにしてんのさ」

ローグ「そろそろ船降りる準備せんと頭に叱られやすぜ?」

女海賊「はいはい分かった分かった…まぁ10発ありゃ良いか…」ゴソゴソ

ローグ「あと多分先にオークが上陸してるっぽいでやんす」

女海賊「ほ~ん…」

ローグ「何も起こらにゃ良いんすが…」

女海賊「てかリリスも居るって皆分かってんのかな?」

ローグ「エリクサーは小分けしていやすぜ?」

女海賊「ほんじゃ皆に配っといてよ…前に来た時はエリクサー無くて石化しちゃったんだから」

ローグ「へい…姉さんも線虫を皆さんにかけて置いて下せぇ」

女海賊「はいはい…」


--------------

『デッキ』


ザブ~ン ユラ~


女戦士「商人!!オークが乗って来た船は見えんか?ここからでは確認出来ん」

商人「入り江には無さそうだよ…右も左も断崖でどこにも船を停められそうに無い」

女戦士「小舟も見当たらんのか?」

商人「無いねぇ…」

アサシン「少し様子を見てからの上陸が良さそうだな」

女戦士「明るくなればもう少し見られるのだがな…」

アサシン「光の石はどうする?光らせたままでは向こうから丸見えなのだが…」

商人「それ隠してしまうと全然見えなくなっちゃうよ?」

女戦士「松明の光を追って見れば良い…一度光の石を隠そう」

アサシン「分かった…」スッ

商人「うわ…真っ暗だな…」

女戦士「船はここで待機だ…碇は降ろすな」

アサシン「ふむ…」

商人「あ!!松明以外にも小さな光がチラチラしてる…何だろう?」

女戦士「望遠鏡を持ってくる…しばらく監視しておけ」ツカツカ


--------------

『望遠鏡』


カチャカチャ


女戦士「オークは廃墟を陣取って居るな…」

商人「その望遠鏡で丘の向こうは見えない?」

女戦士「見えん…」

商人「そうか…なんだろう…あの小さな光…」

女戦士「むむ…廃墟の中に傷付いたオークが横になっている…何かと戦って居る様だ」

アサシン「状況が読めん…オークの敵が居ると?」

魔女「こちらに気付いた様子は無いのかえ?」

女戦士「気付いて居るな…指を指しているオークが居る」


ドーン!


商人「あ!!爆発…」

アサシン「おかしいな…爆弾を使うオークなぞ見た事が無い」

商人「コレさ…古代遺跡があると言ってたよね?もしかして機械と戦って無いか?」

女戦士「ふむ…可能性がありそうだ」

アサシン「クックック…ここでもエド・モントの様な事が起きていると言うか」

女戦士「小型の機械を相手にするならば私も重装で行かねばならんな…」

アサシン「どうする?」

女戦士「よし…少数精鋭で様子を見に行こう…妹を呼べ…飛空艇を動かす」



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『船尾』


操舵は情報屋…商人とホムンクルスはプラズマの銃を持って上空で待機だ

降りるのは私と魔女…そして女海賊とローグの4人で現場の様子を確認する

アサシンと海賊の2人は船に残って指示を待ってくれ


女海賊「魔女を連れて歩くのは危なくね?」

女戦士「オークが傷付いている…回復役が欲しい」

女海賊「あいつ等急に襲って来るよ?」

女戦士「オークが今戦って居るのは私達では無い…オークは賢い…敵を増やす真似はしない筈だ」

女海賊「まぁ良いや…ヤバかったら妖精の笛吹いちゃうからそのつもりで居て」

女戦士「それで良い」

女海賊「ほんじゃ行こうか」スタ


--------------



『鯨型飛空艇』


フワフワ スィーーーー


女戦士「ローグ!魔女を背負って降下出来るか?」

ローグ「任せて下せぇ…」

情報屋「みんな降りたら上空で待機ね?」

女戦士「うむ…余裕があれば周囲を見回ってくれ」

女海賊「あのさ…ここはハイディング効かないから機械の兵器に気を付けて」

商人「わかった…良く観察しておく」

女海賊「おっけ!!ほんじゃ先に降りるよ…来い!アラクネー!!」

アラクネー「…」カサカサ

女海賊「いくぞ!!」ピョン シュルシュル

ローグ「姉さんはアラクネー付きっすか…魔女さん掴まって下せぇ…」

魔女「うむ…」ノソリ ガシッ

ローグ「いきやすぜ?」シュルシュル

女戦士「では私も行って来る…」ピョン シュルシュル


---------------

『入り江』


スタ スタ ドサ


女戦士「よし来たな?魔女は私の後ろから離れるな?」

魔女「分かって居る…」ノソ

ローグ「姉さん…ニライカナイはここで間違い無いでやんすか?」

女海賊「前と様子違うけどこんな感じさ…なんかなぁ…こんなに傾斜きつかったっけなぁ…」ハテ?

魔女「確かにそうじゃな…隆起して地形が変わって居るやも知れん」

女海賊「まぁ良いや…お姉ぇが先頭行く?」

女戦士「そうだな…何か有っても私がタゲを引く…後は分かるな?」

女海賊「おけおけ!火力ぶっぱするわ」

女戦士「…では行こう」


---------------



『廃墟』


タタタタタン


女戦士「やはり小型の機械か…アレが相手ではオークもきつかろう…」

ローグ「オークが隠れやしたぜ?」

女戦士「こちらの動きを探っている…さて」

女海賊「お姉ぇ!?エクスカリバー抜いて明るくしてもらえる?」

女戦士「うむ…」スラリ チャキ ピカー

ローグ「見えたでやんす…」チャキリ

女戦士「私が先へ行く…射程に入ったら撃て」

ローグ「へい…」

女戦士「行くぞ!!」ダダ


タタタタタン カンカン!


ローグ「一機だけっすね…」ダン! バヒュン!


ドーン!


女海賊「魔女!?照明魔法でもうちょい明るくして」

魔女「うむ…照明魔法!」ピカー

女海賊「なんかあちこちオーク倒れてんじゃん…」

女戦士「息が有るかお前が確かめて来い」

女海賊「へいへい…」


--------------

『崩れた建屋』


線虫!!癒してコーイ!!


女海賊「生きてるか死んでるか分かんないけど取り合えす線虫掛けるわ…」

魔女「まだ間に合いそうじゃな…回復魔法!」ボワー

女海賊「これさぁ…傷口からもう血が出て無いじゃん?もう出て来る血が無いんじゃね?」

魔女「主はポーションを沢山持っておったであろう…今が使う時じゃ」

女海賊「あーーあるある…革袋満タンで邪魔だったんだ」スポ タプタプ


ズルズル


ローグ「オークはくっそ重いっすねぇ…こっちも回復お願いしやす」ドサ

女海賊「線虫癒せ!!」ニョロリン

魔女「回復魔法!」ボワー

女戦士「この状況はどういう事だ?」キョロ

魔女「オークに仲間を癒す者が居らんのじゃろう…オークシャーマンは何処に行ったのじゃろうか」


チュドーーーーン!!

チュドーーーーン!!


女戦士「む!!」スック キョロ

女海賊「飛空艇から撃ったんじゃないね…幽霊船からアサシンがインドラ使ってる!!」

魔女「何事じゃ?」ゴソゴソ


”ザザー”

”これアサシン…何が起こって居る?”

”動いている機械の兵器を破壊した”

”兵器?他にも有るのかえ?”

”暗くて全部が見えている訳では無い…照明魔法で明るく照らすのだ”


女海賊「あーー飛空艇ヤバいかも…」

女戦士「魔女!情報屋に連絡は付くな?一度飛空艇を下げさせろ」

魔女「そうじゃな…連絡しておこう」


---------------

『しばらく後』


カキカキ…


女海賊「島の大きさは名も無き島と同じくらいだったんだ…林の向こうの丘を越えたら遺跡が有った」

女戦士「エド・モント程大きくは無い様だが地下がどれほど大きいかだな…」

女海賊「遺跡をちょっと居りて行くと下は水没してるらしい」

女戦士「ふむ…他の機械の具合は?」

女海賊「んーー殆ど見て無いんだよなぁ…ハテノ村の遺跡と同じ感じだよ」


ウゴ…ヒソヒソ


ローグ「オークが遠くで警戒していやすぜ?」キョロ

魔女「敵意は無さそうじゃな…」

女海賊「ちっと向こうにポーション置いて来るかな?」

女戦士「やってみろ…」

女海賊「すぐ戻るわ」スタタタ

ローグ「なーんか倒れてるオークも装備がショボイんすが…」

女戦士「確かに…一応銀を一部使っては居る様だが…」


グラグラグラ  ズズーン


魔女「むむ!!地震かえ?」

ローグ「浮島なんすよね?どっか岩礁に当たったんじゃ無いすかね?」

女戦士「うむ…少し周りを見回るか…」


--------------

『林』


ガチャガチャ ビヨヨーン


女海賊「ダメだぁ…この小型の機械も中身が錆び錆びで使い物になんない…」

魔女「エド・モントの物とは形が違うのぅ」

女海賊「でも中身は殆ど同じさ…弾を発射する部分以外なーんも無い」

ローグ「こいつもどうやって動いてるか分からんのですね?」

女海賊「うん…エネルギー源が見当たんない…多分防衛専用の機械だとは思うんだけどね」

女戦士「オークはコレに苦戦していたか」

ローグ「弾撃たれたら近寄れんですからねぇ…あいつ等遠距離武器は弓だけなんで厳しいと思いやす」


カサカサ…


女戦士「む!!」キョロ

ローグ「おととと…あっしらを付けて来やしたね?」チャキリ

魔女「オークか…」

ローグ「この距離じゃ外しやせんぜ?」スチャ

オーク「ヤメロ…オレ…カエル」

女戦士「言葉を話すのか?」

オーク「オレタチ…ノロイ…トケタ…オマエ…フネ…アル…オレタチ…カエル」

女海賊「帰る?どゆ事?」

オーク「オレタチ…フネ…コワレタ…オマエ…フネ…アル…オレタチ…カエル」

女戦士「ふむ…片言だが意味は通じるな…私達の言葉は分かるか?」

オーク「ワカル…スコシ」ウゴ

女戦士「よし…武器を置いて入り江に集まれ…話を聞いてやる」

オーク「ナカマ…ヨブ…オマエ…マツ」ドスドスドス

ローグ「こらぁ…どういう事なんすかね?」

女海賊「話を聞けるチャンスじゃん…どういう理由で此処に来たのかとかさ」

魔女「そうじゃな…何も知らぬまま探索するよりは良かろう」

女戦士「一旦戻ろう…先に進むのは明るくなってからの方が良さそうだ」



---------------

『入り江』


メラメラ パチ


ローグ「オークが集まってきやしたねぇ…怪我で動けんのも合わせて30人ぐらいっすか…」

女戦士「想像していたより多い…こんなに隠れて居たか」タジ

ローグ「こら小舟で何往復もする事になりやすね…」


女海賊「はいはい寄ってらっしゃーい!!ポーションはこれで最後ね…骨付き肉とどんぐりはこんだけ…」

女海賊「小麦は結構一杯あるから全部食って良いよ…水はこんだけしか無いからこれで我慢ね」スポスポ ドサー


魔女「ようけ壺に入れて居ったのぅ…感心するわ」

女海賊「入れっぱなしで忘れてたさ…この際イラン物全部処分する」

オーク「オマエ…アオイ…ヒトミ…ヨゲンノ…モノ」

女海賊「ん?なんか予言されてんの?」

オーク「アオイ…ヒトミノ…モノ…オーク…イザナウ」

女海賊「なんか良く分かんないな…てかオークシャーマン何処行ったのさ?」

オーク「ウミ…ムコウ…キエタ」

女海賊「えええ!!?あんたら置いて行かれたん?」

オーク「オークシャーマン…ワルイ…オーク…オレタチ…カエル」

女海賊「悪いオークってどゆ事?」

オーク「ノロイ…カケル…アラソイ…オコス…オレタチ…ノロイ…トケタ…ジユウ…ナッタ」

女海賊「ほ~ん…ほんで何処に帰るつもりなん?」

オーク「ニンゲン…スム…トコロ…オレタチ…ソコ…カエル」

魔女「フィン・イッシュじゃな…女王に与えられた土地じゃ」

女海賊「なる…オークシャーマンに命令されて此処まで来た訳ね」

女戦士「ところでこの島にはどれほど敵が居るのだ?」

オーク「キカイ…タクサン…デモ…オークシャーマン…ゴーレム…ツカウ」

女戦士「んん?ゴーレムが機械と戦って居ると言うか?」

オーク「キカイ…デル…アナ…フサグ…ノコリ…オレタチ…タオス」

女戦士「なるほど…その間にオークシャーマンは海の向こうへ消えた訳か」

オーク「ウミ…ワレル…ソコ…オークシャーマン…アルク…イッタ」

女海賊「ちょいちょい!一人で行ったん?暁の使徒は何処行ったのさ?」

オーク「シト…セオウ…モウヒトリ…オーク…イッタ」

女海賊「2人で行ったんか…」

女戦士「もう少し明るくなれば現地まで行っても良いのだが…」


--------------

『小舟』


ザブン ギシ


海賊「頭ぁ!!こりゃ一体どういう事でがんすか?」

女戦士「成り行きでオークを保護する事となった…船に乗せて居室にでも詰め込んでおいて欲しい」

海賊「この数じゃ乗っ取られ兼ねんでがんす」

魔女「わらわが一度船へ戻ろうかの?それなら良かろう?」

女戦士「そうしてもらえるか…傷付いたオークの手当てもある」

海賊「分かったでがんす」

女戦士「先に傷付いて動けんオークを運んでくれ」

海賊「こりゃぁ7体づつ位じゃないと運べんでがんすね…」


チュドドドドドーン!!


女戦士「んん!?」クルリ

女海賊「お姉ぇ!!まだ機械の兵器あるっぽい…あっち連続8発くらいの遅い砲弾が丘の向こうに飛んでった」ユビサシ

女戦士「丘の向こう?」

女海賊「ゴーレム狙ってんじゃね?」


”ザザー”

”魔女!!聞こえるな?”

”うむ…船から見えるんか?”

”何かが飛んだのは見えた…だが暗くてこちらからは発射場所が特定出来ん…照明魔法で照らして欲しい”

”今から船に戻ろうとして居た所じゃ…”

”ちぃぃ…アレが有っては飛空艇が飛ばせんぞ…船も危険だ”


女戦士「私が現地へ行ってエクスカリバーで照らせば狙えるな?」


”出来るか?”

”よし…私とローグ…女海賊の3人で向かって見る”

”分かった…視認出来たら狙撃する”


女戦士「海賊!!お前は兎に角最速でオーク達を船に避難させろ」

海賊「がってん!!」

女戦士「ローグ!!女海賊!!…そういう事だ…行けるな?」

ローグ「あいさー!!」

女海賊「おけおけ…行こっか」



--------------

『林』


チュドドドドドーン!!


女海賊「又あの砲弾の音だ…こっから右方向だね」

女戦士「あれほど撃たれてゴーレムが耐えると思うか?」

女海賊「最初の一発でやられてるさ…多分塞がってる穴をどうにかして空けたいんだよ」

女戦士「エド・モントの吹き抜けが崩落した時と同じか」

女海賊「爆発の程度は私が作った榴弾より威力高そう…だから穴がこじ開けられるのは時間の問題だと思う」

ローグ「ヤバイっすねぇ…小型の機械がどっさり出て来るかも分からんでやんす」

女海賊「それより機械の兵器の方がヤバイ…どんだけ弾有るか分かんないけどアレで狙われたら飛空艇なんか速攻落とされる」

女戦士「撃ってる間隔からすると次まで10分程度だ…急ぐぞ」タッタッタ


-------------


『発射装置』


バシュシュシュシュ! ヒュルル~ チュドドドドドーン!


女海賊「見つけた!!アレだ!!」

女戦士「アサシンに合図を…」スラリ ピカーーーーーー

ローグ「頭ぁ!!ダメっすね…船から見えん場所でやんす」

女戦士「くそう!そういう事か…」

女海賊「小型の機械がこっちに気付いた!!3機!!」

ローグ「任せて下せぇ!!」チャキ ダン! バヒュン!


ドーン!


女海賊「私も!!」ダン! ダン!


ドーン! ドーン! パラパラ


女戦士「直接破壊したいが…破壊の剣を置いて来てしまった…」

女海賊「あんなデカイ鉄の塊を私の爆弾で壊せっかな…」

ローグ「リロード出来ん様にすりゃ良いんじゃないすか?丁度今何か動いて居やす…」

女海賊「ソレだ!!ちっと見て来る!!警戒してて!!!」スタタ

女戦士「小型の機械が他にも居るかもしれん…ローグ!行くぞ!!」ダダ


-------------

『装填部』


ガチャガチャ


女海賊「これスゴイな…8連装の後装式で特殊な砲弾が入る様になってる…」ガチャガチャ

女戦士「どうだ?破壊出来そうか?」

女海賊「この筒に砲弾が入らない様に細工してる…多分上手く行く」

女戦士「しかしこれは何の金属で出来ている?」

女海賊「アレだよ…開かずの扉と同じ材質…磁石くっ付かない奴」

ローグ「おろろろ…下から何か出て来やしたぜ?」

女海賊「よっし間に合った…最後にマーマンのヌルヌルを塗って終わり!!」ポイ デローン ベチャ

女戦士「どうする?」

女海賊「ちっと下がって見て居ようか…装填に失敗してツルっと落ちる筈…落ちたら私の爆弾で一個爆破する」

女戦士「なるほど…さっきの場所まで下がるぞ」

女海賊「おけおけ…」スタタ

ローグ「ちょちょちょちょ…後ろ後ろ!!」

女海賊「うわヤッバ!!…小型の機械がメッチャ来てるじゃん」

女戦士「上には撃てなかった筈だ…木に登れ」パシュ シュルシュル

ローグ「おぉ!!その手が…」パシュ シュルシュル

女海賊「良かったねココ木が有って」パシュ シュルシュル



ガコン ツルリン ボト



女海賊「よっしゃぁ!!一個落ちた!!」チャキリ


ウィィィーン


女戦士「まずい!!砲身がこちらに向くぞ?」

女海賊「破片飛ぶかも知んないから気を付けて!!行くよ!!」カチ ダン!


チュドーーーーン! バシュシュシュ ヒュルル~ チュドドドーン


ローグ「うはぁ…引火して適当にぶっ飛んで飛んで行きやしたね…」

女海賊「おけおけ!!発射装置ぶっ壊れたぞ!」

女戦士「さて…次は小型の機械だが…」

女海賊「こっち守る意味無くなったから引き返して行ってんじゃん…」

女戦士「まずい…入り江の方だ」

女海賊「ダッシュで戻ろう」


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----------------

----------------

『入り江付近』


タタタタタン チュドーーーン


女海賊「うわぁ…もう始まっちゃってんじゃん!!」スタタ

ローグ「飛空艇からも援護していやすね…」


ピカーーーーー チュドーーーーン!


女戦士「女海賊!まず残って居るオークに線虫を回せ…私は前面に出てタゲを引き受ける」

女海賊「殲滅どうすんの!!?」

女戦士「ローグは私の背後に隠れて一体づつ仕留めて行くのだ」

ローグ「へい!!ですがボルトの残りは20本ぐらいしか残っていやせんぜ?」

女戦士「時間稼ぎだ…線虫を回した後は女海賊も殲滅に加われば良い」

女海賊「おけおけ!!」

女戦士「行くぞ!!」ダダ



---------------



『入り江』


タタタタタン タタタタタン


女海賊「くっそ!ここ隠れる所無いじゃん…流れ弾に当たっちゃう…」アタフタ

ローグ「早い所オークに線虫回して下せぇ…出血で動けんくなっちまいやす」ダン! バヒュン! ドーン!

女海賊「分かってんよ!!オーク達こっち集まって!!線虫!!癒せ!!」ニョロ

オーク「ウゴ!!?」

女海賊「ウゴじゃ無ぇ!!動けるんならその辺に転がってる石積み上げて隠れられる様にして!!」

オーク「イシ…ツム」ドドド

ローグ「分かってるんすかね…」ダン! バヒュン! ドーン


ピカーーーーー チュドーーーーン!


女海賊「ぬぁぁ多いな…線虫!どっさり出て来い!!オークを癒せ!」ニョロニョロ

ローグ「どっから湧いて来るんすか?」ダン! バヒュン! ドーン

女海賊「知るか!!小舟来るまで耐えられっかな…」キョロ

ローグ「小型の機械が四方にバラけてるのが…」チャキリ ダン!

女海賊「ボルト勿体無いじゃん!!外すなって!!」

ローグ「姉さんも加わって下せぇ…火力一人じゃ進行押さえられんっす!」ダン! バヒュン! ドーン



---------------

『十字砲火』


タタタタタン カンカン! カン!


女戦士「ええい小虫め!!」タジ

女海賊「お姉ぇ!!オークが石詰んで物陰作ってくれてる!!上手く使って!!」スタタ ダン! ダン!

女戦士「前に出過ぎるな!!当たるぞ!?」カン カン チン!


ドガーーーーーン! パラパラ


女海賊「わぁぁぁ…」ゴロゴロ ズザザー

女戦士「何ぃ!!何だ今の爆発は!!」キョロ

女海賊「てててて…幽霊船からの迫撃砲さ…インドラのリロード遅いからアサシンに撃て貰ってる」

女戦士「お前怪我を…」ダダ

女海賊「これで火力倍増だぞ…ちっと石の所まで下がろう」ヨロ


ピカーーーーー チュドーーーーン!


女戦士「こちらの砲撃より前へは出て来られん様だ…下がる!!肩を…」グイ

女海賊「なんだクラクラするぞ…」

女戦士「頭を打ったのだ…血が出て居るぞ」

ローグ「大丈夫っすか!!」ダダ

女戦士「兜を被って居ないお前も前に出て来るな!」

ローグ「早く石の陰に入って下せぇ!!」チャキリ ダン! バヒュン! ドーン!


ドガーーーーーーン! パラパラ


ローグ「うほぉぉぉーーー」クルクル シュタ

女戦士「来い!!敵も下がって居る…」

ローグ「へいへい…数を数えて居やす…11…12…」


--------------

『石の陰』


チュドーーーーーン パラパラ


ローグ「敵の攻撃が止みやしたね…」

女戦士「こちらに接近出来んから撃てんのだ…あの迫撃砲がかなり有効だ」

ローグ「あと小型の機械は15機ぐらいでやんす…ちっと遠くてここから狙撃は出来んすね」

女戦士「あとはインドラで減らして貰うだな」

女海賊「榴弾の数があんまり無いんだ…出来るだけ此処で数減らす…」チャキリ ダン ダン ドーン

女戦士「頭は大丈夫か?」

女海賊「血は止まったけどコブが出来た…」スリスリ

ローグ「頭ぁ…あっしはボルトが残り4発しかありやせん」

女戦士「小舟が来たら私達も一旦補給に下がろう」

女海賊「大体様子分かったぞ…これ幽霊船から榴弾撃ち込んで殲滅した方が良いわ」

女戦士「うむ…地下線路と違って敵に地形を使われているからな」

ローグ「小舟にオーク乗せたらあっしら乗れやせんぜ?」

女戦士「飛空艇にロープを降ろさせる…私達はそれで退避だ」


ドガーーーーーン!! グラグラ


女海賊「アサシン結構奥の方まで榴弾撃ってんな…あそこまで小型の機械が下がってる?」

ローグ「2分に一発デカいのが撃たれるんじゃそら下がりますわ」

女海賊「おっしあの辺に照明弾撃ちこんでやる」ガチャコン ダン! ダン!


ピカーーーーー


女海賊「あぁぁぁ…ゴーレムだ…さっきの奴まだ動いてんのか」アゼン

女戦士「アレがやり合っている間に退避するぞ」

ローグ「小舟が近くまで来やしたね…チャンスでやんす」


--------------

『小舟』


ザブン ザブン


女戦士「小舟に乗りきらんオークは掴まって泳いで行け」

オーク「オーク…オモイ…ミズ…シズム」

女戦士「なんだ泳げんのか…ちぃぃ」

女海賊「お姉ぇ…残りのオークは私が壺ん中入れて行くわ」

女戦士「その手が有ったか…よし!ヤレ!!」

女海賊「オーク!!あんた達のの名前は?」

オーク「オレ…オークファイター…アイツ…オークアーチャー」

女海賊「おっし!大人しくしてろよ?オークファイター!!」

オークファイター「ウゴ?」


シュゥゥ スポン!


女海賊「はい次あんた!!オークアーチャー!!」

オークアーチャー「ウゴ?」


シュゥゥ スポン!


女海賊「はい終わり!!もう小舟出して良いよ!!」

海賊「がってん!!」ザブザブ

ローグ「姉さん…壺の中どうなってるんでやんすか?」

女海賊「ちっこくなって入ってるだけだよ?ホレ?」

ローグ「ほぉぉぉこりゃ又どういう仕掛けなんすかね?」ジロジロ

女海賊「どうせ時空の魔法だよ…魔女に聞かないと分かんない」

ローグ「それあっしも欲しいでやんす」

女海賊「イイネ!!魔女にお願いして作って貰おうか」

女戦士「飛空艇からロープが降りて来るぞ?捕まり損ねるな?」


シュルシュル


-------------

-------------

-------------

『幽霊船』


ユラ~リ ギシ


アサシン「随分なオーク救出劇になったな?」

女戦士「そんなつもりは無かったのだが…成り行きでこうなった」

アサシン「さてどうする?私は明るくなるまで上陸は待った方が良いと思うが…」

女戦士「そうだな…勇み足が過ぎた様だ」

アサシン「しかし機械がこんな所にまで居るとはな」

女戦士「ホムンクルスが世界政府がどうとか言って居たな…世界中で機械が目を覚まして居そうだ」

アサシン「とりあえずこのまま明るくなるまで待つか?数日かかりそうな気はするが…」

女戦士「その間に例の榴弾だったか?作り増しをする」

アサシン「なかなか良い武器だ…広範囲に効果があるのがな」

女戦士「私からでは良く分からなかったのだが?」

アサシン「インドラは単体の爆発…あの砲弾はそれに加え鉄が飛び散る…威力が高い」

女戦士「なるほど…それで小型の機械を蹴散らせたか」


ノソノソ


魔女「一通りオークの治療は済んだぞよ?」

アサシン「戦力として使う気か?」

女戦士「場合によってはだ…」

魔女「今動いて居るオーク以外は瀕死じゃった…しばらく動けまい」

アサシン「オーク達はオークシャーマンに見捨てられたのか?」

魔女「話を聞く限り…利用されて此処まで来ただけの様じゃ…食事も殆ど獲って居らんかった様じゃぞ?」

女戦士「奴隷扱いか…」

アサシン「私達だけでは1年あっても消費しきれん食料が乗っているのだ…丁度良かっただろう」


--------------

『荷室』


ゴソゴソ


女海賊「ローグ!!出来上がった榴弾を運んどいて」カンカン コンコン

ローグ「へい!!…これがあの爆発起すんすねぇ…へぇ?」ジロジロ

女海賊「んん?何やってんのそこのオーク…」

オーク「ウゴ!?」

女海賊「ウゴじゃ無ぇよ!!暇ならあんたも榴弾運びな!!」

オーク「アオキ…ヒトミノモノ…オマエ…オーク…イザナウ…ドウ…イザナウ」

女海賊「はぁ!?意味分からん…いざなうって何?」


妖精「プハァァァ…」ヒョコ ヒラヒラ


女海賊「おぉぉやっと出て来たな…オークが怪我して困ってるのさ」

妖精「疲れたぁぁぁ…」グター

女海賊「あんたおっぱいの中でずっと寝てたんじゃないの!?なんで疲れてんだよ」

妖精「僕は忙しいのさ…君にばっかりかまって居られないんだ」クルクル

女海賊「お!?もしかしてオーク全員助かったのあんたのお陰?」

妖精「やぁ!!オーク君!!又僕と遊ぶ?」

オーク「ウゴ!ウゴゴゴ…ウゴ?」

妖精「何バカな事言ってるの?僕は妖精さ…おっぱいは僕のベッドなんだよ?」

オーク「アオキ…ヒトミノモノ…オマエ…ヨウセイノ…カミ…オマエ…ヨウセイノ…ハハ」

女海賊「んん?そうだよ私は…あの子を産んだのは私だった…」ピタ

妖精「ええ?僕は妖精だよ?妖精は狭間で生まれるんだよ?」ヒラヒラ

女海賊「まぁどっちでも良いじゃん?」

妖精「それで今日は何して遊ぶ?鬼ごっこ?かくれんぼ?」

女海賊「おっし!!この馬鹿オークに荷物運ばせたらハチミツあげるぞ」

妖精「おおおおおおおお!!ヤルヤル!!」パタパタ

妖精「おい!!この馬鹿オーク!!悔しかったらその荷物を持って僕を掴まえて見ろ!!」

オーク「ウゴ!?」

妖精「ウゴじゃない!!ベロベロベーー」ヒラヒラ

オーク「ウゴゴゴ…」ドスドス


-------------

『デッキ』


ズドーン ズドドドーン


女戦士「島で何が起こっている!!?」ダダ

アサシン「見えんのでは確認しようが無い…」

魔女「照明魔法を掛けた砲弾を撃ち込めば良いのではないかえ?」

女戦士「ううむ…火薬の無駄な気もするが…」

アサシン「ローグが持って居る強化クロスボウはそこそこ飛距離出るだろう…アレは火薬を使わん」

女戦士「銀のボルトを作れば良いのだな?」

魔女「そうじゃな…」

女戦士「よし!私が作って…」


ザブ~~~~ン グググググ


アサシン「これは…」スタ

女戦士「津波だ…少し離岸させろ!!」

アサシン「海賊共!!急いで縦帆を広げろ!!」

海賊「がってん!!」ドドド


ザバァァァァァ ニョキニョキ


魔女「あわわわ…」タジ

女戦士「ク…クラーケンだと…」タジ

アサシン「間に合わん!!触手が覆いかぶさって…」

ローグ「ななな…なんなんすか!!うわわわわ…」ドタドタ


ドッパーン!! ザブザブ


女戦士「何かに掴まれ!!波に飲まれる…魔女はこっちだ!!」グイ

魔女「上じゃ!!上から陸地が降って来居る…」アゼン



ザブ~~~ン ゴボゴボ


---------------

---------------

---------------

『数分後』


ユッサー ググググ


女戦士「ええい!!船尾楼まで水に浸かるとは…」

アサシン「海賊が一人流されたぞ!!」

ローグ「マジっすか…ちっと痛みやすぜ?」パシュン シュルシュル グサ

女戦士「船が何処かに流されて居るぞ…」


”ザザー”

”聞こえるかい?”

”商人!飛空艇から見下ろして居るな?”

”クラーケンが船を引っ張っている…大丈夫さ…安全圏まで行けると思う”

”これは何が起こって居る?”

”上から陸地が降ってる!大きな波はそのせいさ…ニライカナイは上にある!!”

”主らも船を見失わん様について来るのじゃ”

”分かってるさ…こっちも必死だよ…光の石を出しておいて”

”うむ…”


魔女「アサシン!!光の石を出しておくのじゃ…飛空艇が迷ってしまうぞよ」

アサシン「わかった…」スッ ピカーーーーー

女戦士「上空に陸地なぞ見えんぞ!?」キョロ

魔女「狭間の深さが違うからじゃな」

女戦士「ローグ!!落ちた海賊の釣り上げはまだか?」

ローグ「重いっす…手伝って下せぇ!!」グイグイ


--------------

『甲板』


エッホ エッホ ドターン


海賊「助かったでがんす…はぁはぁ…」

女戦士「危なかったな…他に何か流れて行った物は無いか?」

ローグ「甲板に置いてあった樽がみんな無くなっちまいやしたね…ゾンビも全部どっか行きやした…」

女戦士「まぁ良い!!今ので船の荷が片側に偏った様だ…船が傾いたままだ」

海賊「置き直してくるでがんす」スック

女戦士「まて…先ず帆を開いて自由に動けるようにするのだ…荷は私が動かす」

海賊「がってん!!」ドタドタ


---------------


『荷室』


ムギューーーー


女海賊「お…お姉ぇ…ちょっとこれどけて」ムギュー ミキミキ

女戦士「鋼材に埋もれたか…」グイ ガッサー

女海賊「急にこれ何!!?」

女戦士「津波に飲まれて転覆寸前だ…荷を反対側に寄せるぞ」

女海賊「2人で?マジか…」ヨッコラ ヨタヨタ ドスン

女戦士「どうやらクラーケンに守られて助かった…上から陸地が降って来たのだ」

女海賊「ええ!?ほんじゃニライカナイの真下に居るって感じ?」

女戦士「全く視認が出来ないのだがな…飛空艇からも見えん様だ」

女海賊「狭間ん中だと高さで何も見えんくなるんか…メチャ厄介だな」

女戦士「船では辿り着けん事が良く分かった…作戦を変更する」

女海賊「私の飛空艇だね?」

女戦士「そうだ…お前の壺に何人入れる?」

女海賊「分かんないよ…詰めこみゃ全員入れるかもね」

女戦士「まぁ良い…その壺を活用しながら飛空艇での行動に切り替える…そのつもりで準備しろ」

女海賊「おけおけ…とりあえず荷の片づけね」ゴソゴソ

女戦士「んん?何をする気だ?」

女海賊「ちょろっとヌルヌル塗ればラクラク動かせるさ…」ヌリヌリ

女戦士「フフお前は何にでも応用するんだな…」グイ スススー

女海賊「おけおけ…動かして固定すりゃその内乾くさ」ヌリヌリ スススー


------------

『甲板』


ザブ~ン ユラ~


女戦士「海賊共!!来い!!」

海賊共「へい!!」ドタドタ

女戦士「お前達にこれを預ける…」スッ

海賊共「貝殻でがんすか…」

女戦士「ここからは飛空艇と別行動だ…私達は上空からニライカナイを目指す…お互い見失う可能性が高い」

海賊共「俺達だけでこの狭間を乗り切れと…」

女戦士「光の石はこの船に残して行く…インドラの銃と迫撃砲があれば余程乗り切れる筈…」

海賊共「分かりやした…俺達は何処へ向かえば?」

女戦士「しばらくこの海域で待機だ…私が戻らない場合は自力でフィン・イッシュへ向かうのだ…良いな?」

海賊共「がってん!!」

アサシン「飛空艇が戻って来次第出発か?」

女戦士「うむ…上空から落下物が見えている今がチャンスだ…逃すとまた探すのに手間が掛る」

アサシン「そうか…いよいよだな」

ローグ「飛空艇が高度下げてきやしたぜ?」

女戦士「急いで準備しろ!!今度はボルトが無いなどと言い訳を言うな?」

ローグ「あたたた…あんまり沢山持てんのですが…」



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『船底』


ググググググ ギギーーー


女海賊「おーい!!ダンゴムシ何処行った?飛空艇に帰るぞ!!」キョロ

ワーム「…」モソモソ

女海賊「おぉ…いつの間にデカくなったな…ダンゴムシ何処行ったか知らない?」

ワーム「…」キョロ? モソモソ

女海賊「見っけ!!なんだ脱皮中だったんか…」

ダンゴムシ「…」ムイムイ フムムムム

女海賊「踏ん張ってんなぁ…あれ?ダンゴムシって脱皮するんか?」

ダンゴムシ「…」プリ キョロ?

女海賊「おぉぉ一回りデカくなったな…よしよし…これ抜け殻どうするん?」

ダンゴムシ「…」プイ カサカサ

女海賊「要らんのか…おーし!!この抜け殻であんたの防具作ったるわ」

ワーム「…」モソモソ

女海賊「なんだお前も欲しいのか…おけおけ!お揃いの防具にするわ」

ワーム「…」ニョロニョロ バタバタ

女海賊「ウハハハ…喜び方が分かりやすいな」


ツカツカ


女戦士「此処に居たか…飛空艇が戻ったぞ?準備は良いか?」

女海賊「あぁ今行く…おい!!虫達!!飛空艇に戻るぞ!!壺の中に入れ!!」

ダンゴムシ「!!?」クルリン コロコロ

女海賊「おいおい行きたく無いのか?大丈夫だって!!又戻って来るからさ?」グイ

ダンゴムシ「…」ソローリ ピク

女海賊「おぉぉ…けっこう重たくなって来たぞぉ」ナデナデ

ワーム「プギャー」モソモソ

女海賊「分かった分かった!お前も一緒に行くな?一緒に壺の中に入っとけ」ポイ

女戦士「よし…行くぞ」ツカツカ


--------------

『鯨型飛空艇』


フワフワ


女海賊「おし!とりあえず全員乗って!高度上がんなくなったら一人ずつ壺の中に入って貰う」

商人「なんだそういう作戦か」

女海賊「重い人から順番だから先ずお姉ぇと私が入る事になりそうだね…」

魔女「ではわらわは最後じゃな…」

女戦士「無駄話は良いから早く乗るのだ…落下物を見失うぞ」スタ

女海賊「やっぱ8人も乗ると狭いなぁ…」スタ

情報屋「みんな乗ったわね?高度上げるわ?」

女海賊「おけおけ!!ゴーーー」


シュゴーーーー フワフワ


商人「一応ゆっくり高度上がるね…」

女海賊「ほんじゃ私先に壺の中に入るかな…まだ入った事無いのさ」

魔女「わらわが使うで貸してみぃ…」

女海賊「ほい!!」ポイ

魔女「では…女海賊や」

女海賊「キター!!」シュン スポン


フワフワ フワフワ


商人「おぉぉ一気に上昇速度上がった…」

女戦士「私も入った方が良いな?壺で少し休むとする」

魔女「うむ…休んで居れ…女戦士?壺に入るのじゃ」

女戦士「フフ…こうも簡単に封じ…」シュン スポン


フワフワ フワフワ


商人「これで十分だ…よし!ニライカナイを探そう!!」


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥゥ


--------------

--------------

--------------

『上空500メートル程』


シュゴーーーーー


商人「500メートル上がっただけで船も海も見えない真っ暗だ…」

アサシン「方角は分かって居るのか?」

情報屋「旋回しながら上昇しているだけよ…まだ真下に船が有る筈…」

アサシン「なるほど…」

魔女「レイスやガーゴイルが居らんな?まだ退魔の方陣の中かいのぅ?」

商人「う~ん…星が見えないんだよね」


クエーーーーーー!!


ローグ「おぉ!?こりゃ何処かにロック鳥がいやすぜ?」

魔女「見えんのぅ…」キョロ

ローグ「左の方から聞こえて来やした」

商人「上だ!!何か見える…」

魔女「球皮が邪魔じゃな…」

商人「真上の視認性なんか考えて居ないからね…」

情報屋「きつめに旋回してみるわ…」グイ


シュゴーーーーー ビュゥゥゥ


商人「見えた!!大きい…石の塊だ…」

ローグ「このまま上昇すると衝突するでやんす」

魔女「たまげたのぅ…城が空を飛んで居るのではなく島ごと飛んでおるか…」

商人「ここは石の真下だ…危ない」

情報屋「直進で石の切れ目まで進むわ…」グイ


シュゴーーーーー


--------------

--------------

--------------

『石の切れ目』


フワフワ


情報屋「ここが再端部…このまま真っ直ぐ上昇すれば良いわね」

商人「天空の城って…想像していたのと全然違うじゃ無いか…これじゃ鬼岩城だ」

情報屋「暗いから分かりにくけどコレ全部サンゴよ」

商人「えええ!?こんなに大きいの?」

情報屋「死んだサンゴの上にサンゴがまた繁殖してこんなに大きくなったのね…水没していた証拠だわ」

アサシン「星が見えて来た…月もある」

商人「これが遮って居たのか…」

アサシン「死んだサンゴの森に月か…異様な光景だ…」

情報屋「なんか…降りるのが怖いわね…」

魔女「広すぎて何処に何が有るか分からんな…」

情報屋「とりあえず中央の方に進んでみる…」グイ


-------------



『サンゴの森』


フワフワ スィィィーー


ローグ「そこら中に海の生物の死骸がありやすね…」

商人「沈没船もある…相当古い奴だ…」

魔女「竜宮なぞ何処にも見当たらんが…」キョロ

情報屋「海に沈んでサンゴに埋もれてしまって居るかもしれない」


クエーーーーーー!!


ローグ「うはは…ロック鳥はここに魚食べに来てたんすね」

ロック鳥「クエーーーーーー!!」バッサ バッサ

情報屋「仲間を呼んでる?」

ローグ「襲っては来んので安心して下せぇ」

魔女「ちと明かりを照らすぞよ?照明魔法!」ピカー

商人「あ…どんどん下に落として行ってよ」

魔女「うむ…照明魔法!」ピカー


-------------

『謎の突起』


フワフワ ドッスン


ローグ「あっしがちっと行って調べて来やす」ダダ

商人「やっぱりもう少し明るくならないとらちが明かないね…」

情報屋「ここで明るくなるまで待って見ては?」

魔女「しかし匂うのぅ…」クンクン

アサシン「海の生物の死臭だ…浄化すれば収まるのでは無いか?」

商人「なんか楽園とは程遠いな…」

情報屋「過去形ね…海の楽園だった…私達の言い方からすれば楽園は滅びた…そういう事ね」

商人「サンゴは全部死んでしまったかな?」

ホムンクルス「サンゴは海水が無ければ死滅してしまいますね」

商人「動物の一種だったっけ?」

ホムンクルス「はい…植物では無く動物に分類されます」

商人「なんかいきなり海水の無い所に連れて来られて迷惑な話だ」

ホムンクルス「私もそう思います…」

魔女「なんじゃろうのぅ…この不快な感じは…」


-------------

『数時間後』


メラメラ パチ


ローグ「標高が高いせいかちっと寒いっすね…」スリスリ

商人「ここが空に浮いてるなんて信じられないよ」

ローグ「そうっすね…いつ足元が落ちるかわからんすね」

アサシン「しかし…全然夜が明ける気配が無いな」

商人「魔女の塔は一日の長さが7倍位だっけな」

魔女「日によって違うでもっと長い時もある」

商人「安定して居ないのか」

魔女「狭間の奥はそういう物じゃ…外の世界は時間が経って居らんでゆっくり出来る」

商人「目標を目の前にしてなかなかゆっくりも出来ないけどね…」

魔女「女戦士と女海賊も壺の中で寝て居るで起きるまでは待つが良かろう」


ズズーン グラグラ


魔女「又何処ぞで崩れて居るのぅ…」

商人「こんな大きな物を空に浮かせるなんてスゴイな…」

魔女「わらわもここまでとは思わなんだわい」

商人「これ退魔の方陣はサンゴの中に銀か何かが埋まっていると思って良さそう?」

魔女「それ以外考えられんのぅ…」

情報屋「ちょっと…ここのサンゴ!!死滅の原因は石化よ?」

ローグ「え?どういう事っすか?」

魔女「あまり考えたく無いが…まさかリリスが来て居るか?」

情報屋「石化の原因はそれしか考えられない…」

魔女「クラーケンと共に海底に沈んだと思うて居ったが…これは因縁じゃな」

アサシン「どうしても私達が滅ぼさねばならん様だ」

魔女「手は有る…」

アサシン「インドラの光を帯びたエクスカリバーだな?」

魔女「うむ…インドラの光で焼かれて不滅の体も回復せんじゃろう」

アサシン「石化をどう対処する?」

魔女「絶対零度で凍らせるのじゃ…凍らせたまま細かくなるまで切り刻めば良い」

アサシン「なるほど…」

商人「ねぇ?リリスはどうしてここまで来てる?偶然じゃ無いよね?」

魔女「分からぬ…時の王に首を落とされるまではニライカナイで鎮座して居ったのかものぅ…」

情報屋「善女龍王伝説のラミア…メデューサ伝説…竜宮伝説の人魚…全部似たような容姿ね」

魔女「人魚はちと違う気がするが?」

商人「人魚って足が魚だね…セイレーンって知ってる?」

情報屋「知ってる…時代が随分違うけれどもしかすると関係してるのかも知れない」

商人「時代?」

情報屋「セイレーンは4000以上前のウンディーネの時代ね…竜宮伝説はその後…多分2000年ぐらい前」

商人「それってつまり2000年近く人魚のセイレーンが君臨してたって事じゃ無い?」

魔女「ふむ…確かに人魚の後にメデューサに取って代わったやも知れんな…それで辻褄が合う」

情報屋「そういう仮説も確かに…」

商人「リリスがひたすらこの地を目指したのもやっぱり何か有りそうだ」


-------------

『夜空』


ヒラヒラ


商人「…小さな光が空に登って行く…」

アサシン「妖精が魂を狭間の奥へ連れて行ってるのだ…」

魔女「すや…」zzz

情報屋「すぅ…」コックリ

商人「僕もその内連れて行かれるかな…」

アサシン「お前は事情を知って天国に行きたいとでも?」

商人「う~ん…天国が何なのか良く分からないな…集合意識になるという事かな?」

アサシン「水になって混ざり合わさる…」

商人「…」トーイメ

アサシン「飲め…」スッ

商人「…」グビ ゴク

アサシン「私は海へ行って見たいな」

商人「海か…」

アサシン「深海だ…恐らくそこにも楽園がある」

商人「そうだね…生物の楽園」

アサシン「このまま下まで飛び降りれば行けそうな気もするな」

商人「体がバラバラになって…いつまで意識を保って居られるだろう…」

アサシン「ずっと意識を保ったまま魚に食われるのも良い」

商人「そうか…そんな世界もありそうだな…」

アサシン「しかしこの空中の楽園には何も無いな…」

商人「うん…なんだろうね…この世界の最果てに来たような感じ…」

アサシン「そこが最果てなのだろう…旅の終着点」

商人「最果てに君臨して…一体何なんだろう…」

アサシン「んん?神の話か?」

商人「神なのか魔王なのか知らないけどさ…天空の城に君臨して…だから何?」

アサシン「寝るのでは無いか?」

商人「ハハ…なるほど静かで眠り易そうだ」

アサシン「まぁ玉座が有るなら一度寝て見たい物だ…フフ」

商人「夜空が少し明るくなって来た…」

アサシン「うむ…」スック

商人「何か見える?」

アサシン「向こうの方角だな…丘なのか…山なのか…小高い影が見える」

商人「それが見えただけで目的が定まる…」

アサシン「どうする?起こすか?」

商人「折角休んで居るんだ…起きるまで待とう」



ズズーーン ゴゴゴゴ



魔女「ほえ!!?」ムクリ キョロ?

情報屋「ハッ!!」パチ

商人「あぁ起きちゃったか…」

アサシン「いつ足元が無くなるか分からんから飛空艇に入って置こうか…」

商人「そうだね…中の方が暖かい」


---------------

---------------

---------------

『鯨型飛空艇』


ォーィ ォーィ


封印の壺「出してぇぇぇ~暇ぁぁぁぁ!!」ゴトゴト

魔女「およ?起きた様じゃな…出でよ女海賊!」


シュゥゥ スポン


女海賊「ふいぃぃい…やっと出られた」

魔女「女戦士も起きたかえ?」

女海賊「お姉ぇも出してあげて」

魔女「出でよ女戦士!」シュゥゥ スポン

女戦士「…」ジロ

魔女「中の寝心地はどうじゃ?」

女戦士「外の声がうるさくて敵わん…こちらの声は届かんのに…」

女海賊「これ壺の中から全然出られないじゃん…どんなんなってんの?」

魔女「一応封印の壺じゃでのぅ…狭間から出るような感じじゃな」

女海賊「ひっくり返したら簡単に物出てくるじゃん」

魔女「うむ…じゃから蓋が必要なのじゃ」

女戦士「…それで…今飛空艇から出ても良いのか?」

魔女「足元が崩れるかも知れんで注意せい」

女海賊「私も見て見たい…ワイヤー引っかけて見て来ようよ」

女戦士「うむ…」シュルリ


--------------

『サンゴの森』


スタスタ 


女海賊「うわ…なんだココ」

女戦士「すべてサンゴで出来ている様だ…」

商人「飛空艇でゆっくり付いて行くから自由に探索しても良いよ」

女海賊「自由にって…」キョロ

商人「一応向こう側が小高い丘になってる様なんだ」ユビサシ

女海賊「ほんじゃそっちに歩いて行けば良いんだね」

商人「ワイヤーは外さない様にね…いつ足元が落ちるか分からないから」

女海賊「おけおけ…お姉ぇ!ちっと散歩しよう」

女戦士「うむ…体を動かしたかった所だ」スタ


フワフワ


女海賊「アハ…なんかでっかい風船くっつけてるみたいだな」スタ

商人「こっちは浮いてるだけだからそのまま誘導してよ」

女海賊「ワイヤーがサンゴに引っかかりそうだな…」

女戦士「引っかからん様に歩け」


--------------

『サンゴの洞窟』


タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!ここ洞窟あるよ」キョロ

商人「そこはローグが探索済みだよ…魚とか貝の死骸しか無いらしい」

女海賊「へぇ?これが家みたいなもんかぁ…」

女戦士「ではこのサンゴの森は魚たちの街だったという事か?」

商人「そうかもね…」

女海賊「お姉ぇちっとエクスカリバー抜いといてよ」

女戦士「うむ…明かりか…」スラリ ピカーーー

女海賊「アレ?サンゴってもっと綺麗だった筈だけどなぁ…」

商人「石化して石になってるんだ…だから全部石色さ」

女海賊「なる…石ねぇ…」

女戦士「…」ジロ

女海賊「うん…これどっかにリリス居るね」

女戦士「その様だ…」

商人「そのエクスカリバーで倒せるらしい…不滅の肉体をインドラの光で焼けるとか…」

女海賊「おぉ!!そんな効果有ったんか」

女戦士「私に倒せと言うか…」

女海賊「船にエリクサー積んでるから大丈夫だって!…てかお姉ぇの石造を飾っとくのも良いな」

女戦士「フフお前という奴は…」


クエーーーーーーー!!


女海賊「お!!ロック鳥!!どっかに居るな?」キョロ

商人「向こうの丘の方だ…何匹か影が見えるな」

女海賊「そこになんか有るんだ…ちっと急ごうか」


--------------

『空中遊泳』


ピョン! スカスカスカ


女海賊「アハハハ…お姉ぇこれ楽しい!!空中走ってるみたい」スカスカスカ

女戦士「商人!やはり私達2人を吊ったままでは高度維持出来んか?」ピョン ブラーン シュタ

商人「ん-ーーー厳しいね…ギリギリ維持してるか…少しづつ高度下がるかって所だ」

女海賊「良いじゃんこのまま行けば!!吊ってもらってるからラクちんだよ」

女戦士「これでは遅いだろう」

商人「前進させておこうか?」

女戦士「やってみろ…それでうまく進むならその方が良い」

商人「よーし!君達に合わせられる様にやってみる」グイ シュゴーーーー


スィーーーーー


女海賊「お?お?お?…」ピョン ブラーン シュタ

女戦士「フフ…」ピョン ブラーン シュタ

女海賊「おぉぉ!!メッチャ楽しいわ」ピョン クルクル シュタ

商人「もう少し速度上げられそうだね…」


-------------

『鯨型飛空艇』


フワフワ ユラ~


魔女「…」ジー

アサシン「魔女…何を見ている?」

魔女「主らの言う最果ての地じゃ…」

アサシン「フフ…話を聞いて居たか」

魔女「わらわ達は何を目的に最果ての地まで来たと思うて居る?」

アサシン「さぁな?決着をつける為か?」

魔女「…」

アサシン「どうした?節目を見るのが怖いか?」

魔女「そうじゃ節目じゃ…明らかに節目を目の前にして居る」

アサシン「時代の節目…ようやくたどり着いた」

魔女「すでに新時代は始まって居るがのぉ…」トーイメ

アサシン「機械の目覚め…」

魔女「言うな…わらわ達の世代はここで幕引きじゃ」

アサシン「どう幕を引くつもりだ?」

魔女「それはあの2人が握って居る…」


ピョン ブラ~ン シュタ アハハハハ


アサシン「フフ…違いない」

魔女「主には話して置こうか…わらわの紅玉の瞳…そしてエクスカリバーが何故この地まで運ばれたか…」

アサシン「ほう?」

魔女「いつの間に時の王の意思を継いで居ったのじゃよ」

アサシン「ふむ…なるほど…」

魔女「恐らくそれはわらわの責務じゃろう…」

アサシン「その意思とは?」

魔女「決別じゃ…神殺しと言えば良いか…時の王が葬ったのはすべて神じゃ」

アサシン「クックック…面白い…」

魔女「魔術師はじゃな…魔を崇拝しておる…言い変えれば魔の手先じゃ…」

アサシン「神殺し…リリスは神か?それとも魔か?」

魔女「人知を超える力を持つ者は皆神と言って良いじゃろうが…どちらじゃろうのぅ…」

アサシン「リリスが何故この地を目指したのか分からんな」

魔女「魔性の者は皆神殺しが目的じゃと思う」

アサシン「いよいよ大詰めか…クックック」


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『大きな窪み』


ピョン ブラ~ン シュタ


女海賊「お姉ぇ!!でっかい窪みがあるよ…下に何かあるな」

女戦士「ここが竜宮か?」

女海賊「降りてみよっか…でっかい貝殻に何か乗ってる」ピョン ブラーン

女戦士「そんなに急ぐな…」ピョン ブラーン

女海賊「商人!!上手い事このままど真ん中まで誘導して」

商人「分かってるさ…動かないで」グイ フワフワ

女海賊「まだホムちゃんとか寝てんの?」

商人「ぐっすりだね…起きてるのは魔女とアサシンだよ」


クエーーーーーーー!! バッサ バッサ


女海賊「うお!!ロック鳥か…ビックリすんなぁ…」

女戦士「飛び方がおかしいな?何か伝えようとして居ないか?」

女海賊「何か居るのかも…商人!!ちっと皆起こしてよ」

商人「分かったよ…」スタ


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『竜宮』


シュルシュル スタ


ローグ「あっしも混ぜて下せぇ…すっかり寝過ごしちまいやした」ポリポリ

女海賊「これ見て…人魚が石化してるんだ」

女戦士「人間の石造もあるぞ…こっちに来てみろ」

ローグ「こりゃ随分古いでやんす…ボロボロじゃないっすか」


シュルシュル スタ


女海賊「あ!!アサシンも来たね?ワイヤー装置持ってたっけ?」

アサシン「ホムンクルスの物を借りたのだ」

女海賊「なる…ホムちゃん何してんの?」

アサシン「衛星がどうのこうの言って居たぞ?忙しい様だ」

女海賊「おぉぉぉいよいよ衛星を月に落とせるんだね?」

アサシン「さぁな?それよりここは何だ?」

女戦士「恐らくここが竜宮だ…そこの貝殻に鎮座している人魚の石造がここの主だろう」

アサシン「エリクサーで復活させられるかも知れんな…」

ローグ「あらららら?良く見たら財宝が沢山埋まっとるじゃ無いっすか…」ガサガサ

女戦士「持って帰れんぞ!!墓場を荒らすような真似は止せ」

女海賊「ちっと手分けして探索して見ようか」

女戦士「ロック鳥が妙な動きをして居るから遠くには行くな?」

女海賊「分かってるって…おっし!ローグ!!一緒に行こうか」

ローグ「へい!!」スタタ


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『鯨型飛空艇』


フワフワ


商人「僕達はこのまま空中で静止してた方が良いね」

魔女「うむ…足元が崩れてしまうかもしれんでのう」

商人「ワイヤー装置をもう少し作って貰えば良かったね」

魔女「どうせわらわは使わぬ…」

情報屋「もうすこしあの大きな貝殻に寄せて貰える?」

商人「うん…」グイ スィーー

魔女「セイレーンと見て間違い無いのぅ…」

情報屋「そうね…魔女の言う通り2000年くらい前にリリスによって石化させられたんだわ」

魔女「人間の石造も在ると言う事は空気が有ったのじゃろうか?」

情報屋「さぁ?…ここの窪み全体が泡の中だった…そんな感じがしないでも無いわ」

商人「もしかすると海の中にこういう場所が沢山有るのかもね…」

情報屋「陸地よりも海が占める割合が多いから私達の知らない海底人とか繁栄しているのかも知れないわ」

商人「おぉ…アサシンの言う様に海に行くって言うのも有りだ」

情報屋「そんな話を?」

商人「まぁ夢の話さ…海の中でどんな商売が出来るんだろう」ワクワク


ホムンクルス「2度目のスイングバイに成功…17時間後に月の落下起動に入ります…」


商人「おぉ!!予定通りかい?」

ホムンクルス「はい…狭間の中の方が精度良く軌道修正が出来る様です」

商人「成功の確率は?」

ホムンクルス「90%程でしょうか…月の大気の具合が変わって居なければ良いのですが…」

魔女「ホムンクルスや…機械が世界政府を宣言したとか言うて居ったじゃろう」

ホムンクルス「はい…それが?」

魔女「どの様に連携して居るのじゃ?」

ホムンクルス「南の大陸の通信経路は恐らく地下ケーブルでの通信ですね」

魔女「ニライカナイへはどうやったのじゃろう?」

ホムンクルス「衛星を介したと思われますが既にそれは遮断されています」

商人「ん?それは君が操って月へ向かわせたから?」

ホムンクルス「はい…オープンチャネルはノイズを拾いコントロールに影響を与えますのでシャットダウンしました」

商人「そうそう…小型の機械が動く仕組みって分かる?」

ホムンクルス「機体が特定出来ませんが電磁誘導でエネルギーを得ていると思います」

商人「電磁誘導?」

ホムンクルス「皆さんの言葉ですと魔力…と言えば分かるでしょうか?」

商人「なるほど…まぁ遠隔でエネルギーを得てる訳ね…」

魔女「それが一斉に目を覚ましたのはどういう事じゃ?」

ホムンクルス「集中端末が復電したと想定されます…私のデータにはそのロケーション情報が有りません」

商人「休眠していた機械にエネルギーが行く様になったか…」

ホムンクルス「でもご安心ください…機械だけでは生産性が皆無ですので直にエネルギー枯渇で停止するでしょう」

魔女「放って置けば良いとな?」

ホムンクルス「はい…機械はエネルギー生産者にはなれないのです…命が有りませんから」

商人「んん?命がエネルギー生産をする?」

ホムンクルス「植物でしたら光合成ですね…命有る者は必ずなんらかの形でエネルギーを生産します」

商人「なるほど…石炭とかも化石燃料だ…そういう事か」

ホムンクルス「私も少しエネルギーを補給しなくてはいけない様です…」グゥゥゥ

商人「アハ…お腹が空いたのか」

魔女「わらわもちと腹が減ったのぅ…」

情報屋「荷室に肉の燻製とチーズが有ったわ…あとハチミツも」

ホムンクルス「私がご用意致します…少しお待ちください」


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『食事』


パクパク モリモリ


商人「君は良く食べる様になったねぇ…」タジ

ホムンクルス「はい…体を鍛えて居ますので代謝が良くなりお腹が空くのです…」パクパク モグ

魔女「良い事じゃ…見ていて気持ちが良い」ハム モグ

商人「どんなウンコするんだろう…」

魔女「これ!!食事中じゃ!!何を言うか」

情報屋「私達の排泄物がどうなって居るかなんて商人は考えなくても良いわ」モグ

商人「ゴメンゴメン…忘れてよ」


”ザザー”

”魔女!!緊急事態!!”

”むむ!!?何事じゃ?”

”リリス見っけた…そっちに誘導するから何とかして!”

”何じゃと!!?”

”大丈夫!近づいてない…遠くから特殊弾打ち込んでるだけさ”

”絶対零度を詠唱して待てば良いな?”

”私達を巻き込まないでね?”

”分かって居る…血は後で焼くで近づいてはならんぞ”

”おけおけ!!ほんじゃ頼むね!!”

”ザザー”


ドーン ドカーーン!


商人「あっちだ…」ダダ

魔女「あ奴らがワイヤーで登って来られる様に高さを調整せい!!わらわは詠唱に入る…」アブラカタブラ

商人「見えたぞ…リリスの動きが遅い…」

情報屋「爆弾で傷付いて居るのよ…一応プラズマの銃を準備しておくわ」スタ



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『竜宮の外れ』


シュルシュル スタ


女戦士「何事だ!?」キョロ

アサシン「さてはリリスを発見したな?」

女戦士「あいつ又連絡をしないで勝手な事を!!」

アサシン「いつもの事だろう…リリスは空を飛ばん…上から行くぞ」パシュ シュルシュル

女戦士「ええい…」パシュ シュルシュル


タッタッタ


女海賊「お姉ぇ!!200メートル後ろにリリス!!」スタタタタ ピュー

ローグ「姉さん待って下せぇ!!」ダダダ

女戦士「どうなって居る!!?」

女海賊「ここまでおびき出してんだ…魔女が魔法で凍らせる筈」

女戦士「なるほどもう魔女には連絡済みか…」

女海賊「魔法に巻き込まれない様に反対側に向かって!!」

女戦士「お前はどうする!?」

女海賊「囮さ…ワイヤーで直ぐ逃げられるから任せて!」

女戦士「無理はするな?」

女海賊「分かってる分かってる!!お姉ぇは最後止め刺す役だから準備しといて」

女戦士「うむ…」スラリ ピカーーー

女海賊「来るよ!!?」チャキリ ダン!


ドーン!


リリス「グォォォォォーーー」ノソノソ

女海賊「あ…あれ?…なんだ?体から力が抜け…」ヘナヘナ ドテー

女戦士「怠惰…」

アサシン「…」ドタリ

ローグ「ぁぅ…」ヨロ

女戦士「私だけ何も起きん…おい!!しっかりしろ!!立て!!」ダダ

”ザザー”

”中止じゃ…逃げるのじゃ…”

”魔女!!どういう事だ!!”

”バフォメットの首にすげ変わって居るのを忘れて居った…魔法が効かぬ”

”こっちは皆倒れた…飛空艇で迎えに来てくれ”

”ダメじゃ…こちらも皆魔力を吸われて昏睡してしもうた…主は無事なのじゃな?”

”ええい!!くそう!!飛空艇はそこで待機して居ろ…私が担いで高所に身を隠す!!”

”せめて動けるわらわがプラズマの銃で援護する…”


女戦士「女海賊!!しっかりしろぉ!!」ペシペシ

女海賊「はらほろひれはれ…」ヘナヘナ グター

女戦士「動けんか…兎に角高所に」パシュン シュルシュル

女海賊「はひ~…」ピクピク

女戦士「ここから動くな?」ピョン シュルシュル スタ


ピカーーーーーー チュドーーーーーン!


リリス「グォォォォォーーー」ドタバタ ニョロ

女戦士「あの咆哮が怠惰の力か…私だけ効かないのはエクスカリバーのお陰だな?」チャキ

ローグ「はひら~…はひらぁぁ…」モソ

女戦士「ローグ!!逃げるぞ!!」グイ

女戦士「高所にさえ行けば…」パシュ シュルシュル

ローグ「はひぃ…」グッタリ

女戦士「ここから動くな?」ピョン シュルシュル スタ


アサシン「た…戦え…」ズル


女戦士「アサシン!!気は確かなんだな?動けるか?」ダダ

アサシン「お前が…アレを…倒せ…お前が次の時の王となれ…」

女戦士「私が時の王に…だと?」

アサシン「行け…見届けてやる」

女戦士「…」ギラリ

リリス「グォォォォォーーー」ノソノソ ニョロ


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『リリス』


グォォォォーーー ニョロニョロ


リリス「リリン…」ズズズ

女戦士「なっ…言葉を発するか…」タジ

リリス「我の前に立ちはだかるなリリンよ…」

女戦士「素通りさせろと言うか…」

リリス「母を奪われし愚かなリリンよ…我に下れ」

女戦士「何!?母を奪っただと!!?」

リリス「この神秘の肉体は我の物…我が目的は失いし子宮を命の水で癒し新たな器を生む事なり…」

女戦士「器を生んでどうする?」

リリス「我らが主…魔王様の器以外に理由が有ると思うかリリンよ…」



”ザザー”

”話してはならぬ…祖奴は魔の権化…バフォメットじゃ”

”対等に話せる相手では無い”



リリス「何度母殺しをすれば気が済むと言うか…我は知って居るぞ愚かなリリンが幾度となく母なるこの神秘の肉体に刃を向けた事を」

女戦士「母殺し…だと…」グググ

リリス「我に従えリリン!!うぬらも魔性の者であると認めよ」

女戦士「黙れ黙れぇ!!魔の者に耳は貸さん!!」スチャ

リリス「グッフッフ…聞いた事のある言葉…そうやって又我らを黄泉へ送り歴史は繰り返す…それではアヌの思う壺だと何故分からん!」


女戦士「な…んだと?」タジ


ズルズル‥‥


アサシン「残念だが魔王はもう居ない…私が消し去った…クックック」ヨロ

リリス「憎悪に渦巻くこの世がある限り魔王様は再び蘇る」

アサシン「それは器有っての話…つまりお前を倒せば蘇る事は無いという事だ」

リリス「グォォォォォーーー!!リリン!!言うに事欠くか!!」ニョロ

アサシン「うぐぅ…」ドタリ

女戦士「やらせるか!!」ダダダ


スパッ!!


バフォメットの首「グォォォォーーー」クルクル ボトン

リリスの体「…」ニョロニョロ ドタバタ ブシューーー

バフォメットの首「パクパク…」ピク

女戦士「こっちを見るな!!」ブン ブン スパ スパ


”リリスの血を被ってはならぬ!!”


女戦士「ふぅ…ふぅ…」シュゥゥゥ

リリス「…」ドクドク ブシュー

女戦士「その神秘の力を頂く…エクスカリバーに吸われよ!!」ブン スパー


ドタバタ ニョロニョロ


女戦士「ニョロニョロ動くな…その不滅の命をすべて吸ってやる」ブン ブン スパ スパ


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『狂気』


ウォォォォ スパスパ


アサシン「…」アゼン

女海賊「お姉ぇ…」シュルシュル ドテ

アサシン「狂ったか?」

女海賊「これ…近づいたらダメ…だよね?」フラフラ

アサシン「何故リリスの返り血を浴びて石化しないのか理解出来ん…」

女海賊「肉片からどんどん血が噴き出してんだけど…」タジ

アサシン「焼かねばならんな…魔女を呼んで来る」タッタッタ

ローグ「姉さん…」シュルシュル ドタ

女海賊「ローグ!お姉ぇが狂った…」

ローグ「こりゃ近付けやせんね…」タジ

女海賊「お姉ぇが泣いてるんだ…なんで?…」

ローグ「あぁぁこりゃ頭のトラウマっすね…」

女海賊「あんた何か知ってんの?」

ローグ「頭は何も話しちゃくれやせん…ですが海賊王から少し聞いていやす」

女海賊「え?パパから?」

ローグ「あっしが口にしちゃダメな事なんす…聞か無ぇで下せぇ」

女海賊「トラウマって何さ?」

ローグ「これは本当に聞かんで欲しいっす…」

女海賊「くっそ!!直接お姉ぇに聞いて来る」スタタ

ローグ「あぁぁぁ姉さん…石化が…」


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ウワァァァァ スパスパ


女海賊「ちょっとお姉ぇ!!もう終わりだよ…」ガシ

女戦士「うぅぅ…」プルプル

女海賊「どうしたのさ?なんで泣いてんの?」

女戦士「嫌な記憶を思い出しただけだ…止めるな」グググ

女海賊「もう終わりだって!!エクスカリバーはもう良いよ」グイ

女戦士「…」ガク

女海賊「返り血でベタベタだ…ほらエリクサー飲んで」クイ

女戦士「それはお前が飲め…」

女海賊「ちっと離れて休もう…」グイ

女戦士「…」

女海賊「どうしたんだよ狂ったみたいにさ…リリスはもう肉っ切れ一枚残って無い」

女戦士「これで2度目だ…のたうち回るリリスを見て母を思い出した」ポロポロ

女海賊「ええ!?ママ?」

女戦士「許せ…母を殺したのは私だ…苦しむ母を楽にさせたかった」

女海賊「ちょ…」ボーゼン

女戦士「それ以上は聞くな…」

女海賊「お姉ぇは母殺しの罪を一人で背負うつもりなんだね?」

女戦士「…」

女海賊「お姉ぇ!!」ギュゥゥゥ


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『鯨型飛空艇』


フワフワ


アサシン「魔女…行けるか?」

魔女「魔力をすべて吸われてしもうたわい…ちと火の魔石を探すで待って居れ」ゴソゴソ

アサシン「思いの外あっさりリリスを倒せたな…拍子抜けだ」

魔女「別の首にすげ変わっておるで万全では無かったのじゃろうな…バフォメットと言えば魔法なのじゃが使う様子も見られなんだ」

アサシン「他の者は動けるか?」

情報屋「脱力感が酷い…少し横に…」グター

商人「僕はなんとか動ける…ホムンクルスは気絶してしまったね」

ホムンクルス「…」クター

魔女「しかし怠惰の咆哮があれほど強力だとはのぅ…」

アサシン「フフ…エクスカリバーが無ければ全滅していた様だ…」

魔女「結果オーライじゃ…よし火の魔石を見つけた…焼きに行こうかのぅ」ノソリ

アサシン「よし!掴まれ…下まで降ろす」グイ

魔女「うむ…」


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『血みどろの現場』


ドクドク ドピュ


魔女「こりゃ酷いのぅ…インドラで焼かれて再生はせんじゃろうが血だけはいつまでも湧き続けるな…」ノソノソ

アサシン「この杖で焼いて行けば良いのか?」

魔女「散らばった血はそれで焼けば良い…じゃが血の湧き場は量子転移で消し去らんとイカン」

アサシン「最後に仕事が残って居て良かったな?クックック…」

魔女「やかましいわい…さて不用意に量子転移を使うてはわらわが次元に迷う」

アサシン「女海賊が祈りの指輪を持って居ただろう…使わせて貰え」

魔女「そうじゃな…ちと借りるとしよう」ノソノソ


-------------


魔女「これ女海賊や…主は祈りの指輪を持っておったであろう?」

女海賊「ちょ…今姉妹で慰め合ってた所なんだけど…」

魔女「続けて居って貰って構わん…じゃがリリスを完全に消し去りたいのじゃ」

女海賊「ハイハイこれ使って適当に消して!」ポイ

魔女「大分血を浴びて居るじゃろうからエリクサーを忘れず飲むのじゃぞ?」

女海賊「分かった分かった!!あっち行って!シッシッ」

魔女「なんじゃわらわの扱いが酷いのぅ…」ブツブツ


-------------


アサシン「また随分と血で汚した物だ…」ゴゴゴゴゴゴ ボゥ

魔女「血の湧き場は他にも無いかえ?」ノソノソ

アサシン「見た通りだ…バフォメットの頭らしき物体はどうする?」

魔女「それも一緒に量子転移で消し去る…集めて置いてはくれぬか?」

アサシン「フフこの時の為のクサナギの剣かも知れんな…」スラリ

魔女「ふむ…それで突ついて一所に集めよ」

アサシン「この剣にも魔を吸い込む力が?」

魔女「さぁのぅ?効果は石化じゃったか?」

アサシン「そうだ…」

魔女「リリスを突いてそうなったのやも知れんな」

アサシン「先ずは飛び散った血を焼くのを優先しよう」

魔女「うむ…手分けして焼こうぞ」


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『姉妹』


女海賊「…そっか…だからお姉ぇは私のママ替わりだったのか」

女戦士「戻れるなら時間を巻き戻したいと何度も願った…だがそれは只の妄想」

女海賊「私は今のお姉ぇのままで良いよ」

女戦士「慰めか?」

女海賊「う~ん…お姉がお姉だったから私になったのさ…これで良かったんじゃない?」

女戦士「フフ意味が分からんが…」

女海賊「良いんだって…後さ?子供の為に自分の命なんか幾らでも捧げられるんだよ?」

女戦士「分かっている…母に恨まれているとは一度も思って居ない…」

女海賊「お姉ぇはお姉ぇの幸せを見つけるのが一番だと思うな」

女戦士「私の幸せ…何だと思う?」

女海賊「それ多分分かる…皆の幸せを願ってる」

女戦士「間違いでは無い…」

女海賊「だから覇道を行くんだよ…時の王として…」

女戦士「お前…」

女海賊「王道じゃなくて覇道ね…ひたすら信じた道を行くんだ」

女戦士「それが海賊だ…」

女海賊「お姉は今大事な物手に入れたね…時の王の信念…」

女戦士「精霊にうつつを抜かした様だが…」

女海賊「まぁそれは置いといて…信念は継いだんだ」

女戦士「フフ…行く道は覇道か…」


ヨッコラ ドスン チャプン


ローグ「頭ぁ!!水持って来やしたぜ?返り血を落として下せぇ」

女海賊「あ!!それ最後の飲み水じゃん」

ローグ「最低限は残してありやすよ…さっさと用を済ませて船に戻りやしょう」

女戦士「そうだな…」ジャブジャブ

女海賊「あ…あれ?ヤバ…私の足石化してきてるわ…」ピキピキ

ローグ「エリクサー有りやすぜ?早い所飲んで下せぇ」スッ

女海賊「お姉はなんで石化しないの?」

女戦士「さぁ?エクスカリバーの特効では無いか?」

女海賊「うわ…ズル!!」ピキピキ

ローグ「姉さん!!足折れちまいやすぜ?エリクサー飲んで下せぇ」

女海賊「お姉ぇに先越されたな…」ゴクゴク


量子転移!! シュン!!


女海賊「お!!?」サラサラ

ローグ「いきなり石化が解けやしたね…」


ゴゴーン グラグラグラ


女海賊「ちょちょ…何この揺れ!?」

女戦士「マズいな…サンゴの石化が解けたのだ…崩れるぞ」

ローグ「あららら…あららら…」

女戦士「急いで飛空艇にワイヤーを引っかけて来い!!落下するぞ!!」

ローグ「あっしが運んで来た水が無駄に…」

女戦士「被れば良いのだろう?」ジャバーーー ジャブジャブ

女海賊「飛空艇まで走って!!」スタタ

女戦士「分かっている!!」ダダ

ローグ「置いてかんで下せぇ!!」ダダ


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『鯨型飛空艇』


シュルシュル スタ


アサシン「魔女!中に入れ!!」

魔女「リリスを消し去ると一気に石化が解けるとは…」

情報屋「サンゴの森が揺れてる…」

商人「まずいね…下には幽霊船が居る!!」

魔女「貝殻で緊急避難を伝える…聞こえるか?わらわは魔女じゃ…空から地面が降って来るで直ぐに避難せい!!」ゴソゴソ

商人「高さが違うから貝殻は通じない筈…」

魔女「ええい!!通じんわ!!」

商人「今は兎に角女海賊達が先だ!」グイ シュゴーーーー

アサシン「ロープを降ろすぞ!!」シュルシュル

商人「よし…大丈夫…落ち着けば間に合う」


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『崩落する竜宮』


ゴゴゴゴ


女戦士「飛空艇からロープが降りて来た!!掴まれ!!」ダダ

女海賊「見て!!?人魚が動いてる!!」

女戦士「構って居られん!!先に行け!!」

女海賊「あぁぁ人魚見たかったなぁ…」ピョン ガシ

女戦士「お前はそのままロープを上がってワイヤーを引っかけて来い」

女海賊「分かった!!お姉ぇどうすんの?」

女戦士「私は最後だ…私まで登ると高度の維持が出来ん」

女海賊「例のブラブラ作戦?」

女戦士「そうだ!!早くワイヤーを引っかけて戻って来い」

女海賊「おけおけ!!てかローグも同じ様にヤレ!!」

ローグ「なんすかブラブラ作戦ってのは?」

女戦士「話してるヒマがあったら登れタワケ!!」

ローグ「へいへい…」アセアセ

女戦士「よし…ロープを持ったまま丘の方まで走るぞ!!」ダダ


フワフワ スィーー


女海賊「おっけ!!次お姉ぇが上がってワイヤー引っかけて来て!!」シュルシュル

女戦士「丘の方に走るんだぞ?」ヨジヨジ

女海賊「分かってる!!」スタタ

ローグ「あっしも引っ張る感じでやんすか?」シュルシュル

女海賊「飛空艇に重さ掛かんない様に上手い事ブラブラして移動すんの」スタタ

ローグ「なるほど分かりやした…ってええええええ!!?レイスが居るじゃないすか…」

女海賊「マジ?」クルリ

ローグ「姉さんミスリルダガー持ってるっすか?」

女海賊「あるある…」

ローグ「多分ガーゴイルも出て来るんであっしは飛空艇に戻って狙撃しやす…姉さんは取りつくレイスを倒して下せぇ」シュルシュル

女海賊「なんかメッチャ大変な事になってきてんな…」

女戦士「一難去ってまた一難…」シュルシュル

女海賊「これ退魔の方陣と一緒にサンゴが落ちて行ってんだね?」

女戦士「その様だ…私達2人はレイスとガーゴイルの餌食になるぞ…覚悟は良いな?」

女海賊「大丈夫!!レイスならミスリルダガーで倒せる」スチャ

女戦士「よし!!丘の方へ走るぞ!!」ダダ



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『鯨型飛空艇』


ピカーーーー チュドーーーン!


商人「これは2人を壺に入れて飛空艇に引き籠った方が良いんじゃないかい?」カチ ピカーーーー チュドーーン

アサシン「それはあの2人が決める事だ…私達は援護して居れば良い」

魔女「わらわは魔力が切れて何も出来んが…」

商人「退魔の笛でも吹いてくれ…今はホムンクルスが気絶してる」

魔女「笛か…どこに仕舞い込んだかのぅ…」ゴソゴソ

ローグ「魔女さんは呑気っすねぇ…」

魔女「有った有った…久しぶりじゃのぅ…」トゥルルン♪

商人「これで飛空艇にガーゴイルは近づかない…僕はあの2人の右側を援護する」

アサシン「では私は左側か…」スタ

ローグ「あっしは撃ち漏らしたガーゴイルを狙撃しやす…」チャキリ

情報屋「このまま丘の方に向かって行って良いのね?」

商人「あれは丘じゃ無いな…もう神殿が見えてる…あそこが終着点だ」


ドドドドド ズドドーーン


ローグ「あららら…サンゴの森が落ちて行きやす…」

アサシン「残った部分が本体か…」

情報屋「それでも大きい…」

商人「ガーゴイル来たぞぉ!!」カチ ピカーーーー チュドーーーン

ローグ「逃がしやせんぜ?」ダン! バヒュン!


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『崩落するサンゴ』


ピョン ブラーン シュタ


女戦士「残って居る足場を上手く選択して行け?」タッタ

女海賊「楽勝!楽勝!」スタタ ブン スパ

レイス「キャァァァァ…」シュゥゥゥ

女戦士「私に寄って来ないのはインドラの光のお陰だな…」タッタッタ

女海賊「良いじゃん!危なくなったらお姉ぇの近くに行けば良いんだし…」スタタ

女戦士「フフ気楽な物言いだ…」

女海賊「これブランブランするの交互に行った方が良いよね?」

女戦士「うむ…」

女海賊「おっし!向こうに飛び移る!!」ピョン ブラーン シュタ

女戦士「私はその向こうだ!!」ピョン ブラーン スタ

女海賊「おけおけ!歩いてるみたいなもんだ」ピョン ブラーン シュタ


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『天空の城』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


情報屋「見えた…あそこは崩落していない…あそこが天空の城の端だわ」

商人「このまま行って登れるかい?」

情報屋「天空の城の高度が上がってる…飛空艇では重くて上がれないわ」

商人「くそ…結構高いな…どうする?」

ホムンクルス「ぁ…」ムクリ キョロ

商人「ホムンクルス!!目を覚ましたか…」

ホムンクルス「私は一体…」ハテ?

商人「気は確かだね?」

ホムンクルス「はい…何が起きたのか分かりませんが…」

商人「君に知恵を貸して貰いたい…この気球をもう少し高く飛ばす方法さ」

ホムンクルス「ええと…球皮の大きさに依存していますので荷物を軽くするのが一番早いかと…」

商人「もう捨てられる物が何も無いんだ…」

情報屋「球皮の大きさに依存と言ったわね?」

ホムンクルス「はい…」

情報屋「この船体を球皮の代わりには出来ない?…結構気密性は高いわ」

ホムンクルス「風の魔石からヘリウムが噴出している様ですのでもしかするともう少し軽く出来るかも知れませんね」

商人「ヘリウム?」

ホムンクルス「気球には必ず風の魔石を使いますよね?それは球皮の中に空気より軽いヘリウムという気体を充填しているのです」

商人「それで船体を満たせば良いんだね?」

情報屋「風の魔石は沢山有るわ」パラパラ

魔女「ふむ…そう言う事か」

商人「魔女!!飛空艇の中を風で満たせる?」

魔女「やってみよう…」ノソリ

魔女「風魔法!」


ヒュゥゥゥゥ


商人「隙間から風が吹き込んで来る…」

ホムンクルス「それを塞いで下さい…ヘリウムがどんどん抜けて空気が入り込んで居るのです」

魔女「水を持て…」

商人「水…水…」ドタバタ

魔女「氷結魔法!」ピキピキ

魔女「風魔法!」


フワフワ フワフワ


情報屋「コウドガアガッテルワ…アレ?」

商人「ジョウホウヤ…コエガ…アレ?」

ホムンクルス「チョウジカンハサンケツヲオコシマスノデ…コウドガアガッタラクウキヲイレテクダサイ」

商人「ナンダコノコエ…アハハハ」


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『下の2人』


ピョン ブラーン シュタ


女海賊「はい!次私ぃ!!」ピョン スカスカスカ

女戦士「んん?」

女海賊「あれ?あれ?あれ?」スカスカスカ

女戦士「これは…どうにかして飛空艇が高度を上げているな?」ブラーン

女海賊「ちょちょちょ…こんなぶら下がったまんまじゃガーゴイルに狙われて危ないんだけど…」

女戦士「撃ち落せ!!」

女海賊「今度は特殊弾か…」チャキリ

女戦士「来るぞ…私はデリンジャーだ」チャキリ ターン!


ガーゴイル「グェェェッェ‥‥」ヒュゥゥゥ


女海賊「おっしオマイら覚悟しな!」ダン! ダン!

女戦士「飛空艇からの援護が無くなった様だ…凌ぐぞ!!」ターン ターン

女海賊「おけおけ…」ダン! ダン!


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『鯨型飛空艇』


フワフワ フワフワ


ホムンクルス「ケッチュウサンソノウドガ…キケンナイキニタッシマシタ…クウキヲイレテクダサイ」

商人「コオリヲワルヨ!!」パリーン


ヒュゥゥゥゥゥ


ホムンクルス「オオキクイキヲスッテ…コキュウヲトトノエテクダサイ」スゥゥ ハァァ

魔女「クラクラスルノゥ…」スゥ ハァ

情報屋「ゼンソクデゼンシンサセル…」グイ


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥゥ


アサシン「ギリギリイケソウナタカサマデアガッタ…」

商人「ちょ…アサシンはしゃべらないで欲しい…お?声が戻った…」

ホムンクルス「アサシンさんと商人さん以外の方は呼吸に集中してください…」スゥゥ ハァァ

情報屋「すぅぅぅ…はぁぁぁ」

魔女「すぅぅぅ…はぁぁぁ」

ローグ「すうすう…はくはく…すうすう…はくはく」

アサシン「私達は見ている場合では無い…下の2人を援護だ」カチ ピカーーーー チュドーーーン

商人「そうだね…」カチ ピカーーー チュドーーン


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『下の2人』


ブラーン フラー フラー


女戦士「飛空艇が速度を上げた!!お前のワイヤーは足場まで届かんか?」チャキリ ターン

女海賊「無理!!遠い…アラクネー出番だよ!出て来い!」シュゥゥ スポン

アラクネー「キシャーー」カサカサ

女海賊「そんな怒んなって!!あんたが頼みの綱だ…球皮の上まで登って向こうの崖に向かってダイブだ」

女海賊「分かった分かった!ちゃんと新しい巣を用意するから言う事聞いて…糸忘れんなよ?行って来い!!」

アラクネー「シャーー」カサカサ ヨジヨジ

女戦士「蜘蛛を飛ばすか…」

女海賊「大丈夫!!アイツはココイチ役に立つ」

女戦士「それは私の言葉だ…」

女海賊「よしよし…上手く球皮登ってんぞ…行けぇ!!」


ピョン フワフワ


女戦士「おぉ…糸が光って彗星の様に…」

女海賊「よし行った!!私ロープ持ってクモの糸伝って来る…これで重さ一人減る!!」

女戦士「なるほど行って来い!!」

女海賊「援護お願い!!」シュルシュル

女戦士「蜘蛛女か…フフ」ニヤ



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『鯨型飛空艇』


シュルシュル スタ


アサシン「うお!!どうした?」

女海賊「向こうに飛び移る!!ロープ持って行くよ!!」ダダ

アサシン「んん?球皮に登って…」

ローグ「姉さん!!あっしら球皮の上は援護出来んでやんす!!」

女海賊「今が潮吹く時だよ!!」

ローグ「もう水が無いでやんす…」

女海賊「飲み水が有るじゃん!!全部使っちゃえ!!」ヨジヨジ

ローグ「マジすか…」

情報屋「これで最後よ…使いましょう」

ローグ「分かりやした!!行きやすぜ?」ダダ ジャブジャブ


ボエーーーーーーー ブシューーーーーー!!


商人「おぉ!!空中を走ってる…」

ローグ「えええええ!?どういう仕掛けっすか…」

情報屋「高度が上がってるわ!!行ける…届く!!」

アサシン「一人分の重さが無くなったか…援護だ!!ガーゴイルを近づけさせるな!!」カチ ピカーーーー チュドーーーン

ローグ「姉さんはやっぱカリスマっす…」チャキ ダン! バヒュン!


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『天空の城_再端』


フワフワ ドッスン


商人「これは…どうなってる?」キョロ

魔女「特殊な結界で包まれて居る様じゃ…ガーゴイルもレイスも入って来んじゃろう」

商人「どうして草木が生えてるって事さ…海に沈んで居たんじゃ無かったのか?」

情報屋「すごいわ…驚き…聖書に描かれたエデンの園その物よ…」

魔女「うむ…神々が住まう楽園…存在しとったのじゃな」ノソノソ


タッタッタ


女海賊「アハハビックリしたねぇ…急にこんなんだから…お姉ぇ!!引っ張るよ」グイ

女戦士「空も雲も水も…土もあるのか…」ボーゼン


チュンチュン パタパタパタ


情報屋「鳥はここを知って居たのね…」

ローグ「ロック鳥は見当たりやせんがねぇ…」キョロ

女海賊「なんか安全そうだからお姉ぇの汚れ落として行こうか…」

女戦士「このままで構わん…水を汚してしまう」

ローグ「あっしが汲んで来やしょうか?水を全部使っちまったんでどうせ汲まんとイカンでやんす」

魔女「ちとここで腰を下ろそうかのぅ…」ストン

女海賊「休憩?」

女戦士「まぁ良いだろう…」

情報屋「私はスケッチを描く…」スタ

女海賊「おっし!!ワームとダンゴムシ出て来い!!ちょっと遊べるぞ!!」シュゥゥ スポポン

ダンゴムシ「!!?」クルリン ジー

ワーム「プギャー」ニョロニョロ

女海賊「荒くれてんなぁ…ゴメンよ壺に閉じ込めてさ…種食って良いから勘弁して」パラパラ

ワーム「!!?」モソモソ パクリ ゴクン

女海賊「ウハハ一気食いか…ダンゴムシも丸まって無いで食べな?」ツンツン

ダンゴムシ「…」ソローリ キョロ

情報屋「随分大きくなったわね?」

女海賊「癒し苔のお陰だね…脱皮して一回り大きくなったんだ」

情報屋「へぇ?」

女海賊「アラクネーも来い!!ハチミツあげるぞ」

アラクネー「!!?」カサカサ

女海賊「よしよしお前がこの2匹を守るんだぞぉ…ホレハチミツだ!!」

アラクネー「…」チューチュー ゴク

魔女「うむ…主は虫使いとして完成して来て居る…それで良い」ウムウム



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『30分後』


フキフキ フキフキ


女海賊「うん!髪の毛までしっかり汚れ落ちたよ」

女戦士「軽量で済むようにと軽装で来たのが裏目に出たか…」

女海賊「海賊はそもそも薄着なんだからもうずっとそれで良いじゃん」

女戦士「まぁラクだ…」

魔女「髪の毛が渇くまでは休憩じゃな?ちと横になる…」

女戦士「ふむ…」

ホムンクルス「低酸素脳症の症状が少し出て居ますので皆さん無理はなさらず…」

女海賊「んん?何それ?」

商人「あぁ…飛空艇の高度を上げる為に少しの間空気が吸えなかったんだ」

女海賊「ほーん…」

ホムンクルス「約5分ほど無呼吸状態でした」

女海賊「ええ!?そんなに?」

ホムンクルス「現在も高高度で空気が薄いので回復がゆっくりなのです」

ローグ「それで頭クラクラするんすね…」

ホムンクルス「ご安静に…」

女戦士「ではしばらくローグは飛空艇に乗っていた方が良いな」

ホムンクルス「そうですね…急な運動をして倒れるかも知れません」

アサシン「私は徒歩でも良いぞ」

女戦士「ではそうしよう…」

魔女「イカンイカン…わらわはアダマンタイトを処理せねばならぬ…アサシンや…わらわを背負って行くのじゃ」

アサシン「クックック…いつもの組み合わせだな?」

魔女「良いでは無いか…背負い慣れて居ろう?」

女戦士「ひとまず私の髪と装備が渇くまでは休憩にしよう」


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『虫相撲』


残った残ったぁ!!


ダンゴムシ「ムムム…」グググ

ワーム「プギャー」ニョロニョロ

女海賊「だぁぁぁ…ひっくり返されたら直ぐに丸まって体制戻すんだよ!!」

ダンゴムシ「!!?」クルリン

女海賊「そうそう…ほんでもう一回!!」

ダンゴムシ「ムムム…」グググ

ワーム「プギャー」ニョロニョロ グルングルン

ダンゴムシ「…」バタバタ

女海賊「ダンゴムシはもうちっと訓練が必要だなぁ…」

ワーム「…」ムイムイ ムキ

ダンゴムシ「…」シュン

女海賊「よし!特別に筋肉増強おっぱいを絞ってヤル」

ワーム「!!?」ニョロニョロ

女海賊「大丈夫だよあんたにもやるから…」

ワーム「…」ピョン ピョン

女海賊「ナハハ分かりやすいなぁ…」

アラクネー「…」コソーリ カサカサ

情報屋「すごいわね…虫にも心が有るみたい…」

女海賊「そうだよ…臆病なのも居るし暴れん坊も居るんだよ…ズルい奴もいるね」

情報屋「このダンゴムシはタンク役?それでワームがファイターかな?」

女海賊「分かる?アラクネーが何でも出来る天才なのさ…私みたいだね」

情報屋「ウフフ…こうして見てると昆虫学も面白そう」

女海賊「おーー書物書いてくれるかな?」

情報屋「教えてくれれば何でも書き残してあげる」

女海賊「おっし!!ほんじゃ私は絵を書くわ」

情報屋「そうね…分担しましょう」


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魔女「ふむ…やはり情報屋は師匠を継いで塔の魔女になるべきじゃ…」

商人「ピッタリだね…」

魔女「わらわがすべて面倒を見る…情報屋は逸材じゃ…人類の宝と言っても良いな」

商人「べた褒めだねぇ…」

魔女「あの女海賊をいとも簡単に導いて居るのじゃぞ?」

商人「そういえば初めにホムンクルスまで僕達を導いたのは情報屋だったな…」

魔女「ソレじゃ…その力が抜きん出て居る…しかも自然にのぅ」

商人「自然にか…」

魔女「なんじゃろうな…師匠も導き手じゃった」

商人「へぇ?人それぞれ役割があるか…」

魔女「うむ…主の場合…精霊を救った事かのぅ」

商人「じゃぁ魔女は?」

魔女「わらわは何じゃろうな?自分では分からぬ…」

商人「フフ僕は何となく分かるよ?」

魔女「ほう?言うてみぃ」

商人「魔女は…魔女なんだよ…フフフ」

商人「紅い瞳…紅玉の魔女」


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『暁の空』


女戦士「さぁ!!休憩は終わりだ!!直に夜が明ける…行くぞ!」スック

女海賊「お!?行くってさ!!ホラ今度はカバンの中に入るんだ」

ダンゴムシ「…」カサカサ

ワーム「…」モソモソ

アラクネー「…」カサカサ

商人「じゃぁ僕達は飛空艇でゆっくり付いて行けば良いね?」

女戦士「うむ…万が一の場合は飛空艇にぶら下がるからそのつもりで頼む」

商人「うん…」

情報屋「操舵は私が担当するわ…あまり動けないから」

ホムンクルス「プラズマの銃をお預かりします」

商人「じゃぁ行こうか…」スタ

ホムンクルス「はい…」スタ

ローグ「あっしもちっとラクしときやすね」スタ

女戦士「ではアサシン!女海賊!ここからは徒歩だ」

女海賊「おけおけ…疲れて無いから」

アサシン「さぁ魔女…背中に乗れ」

魔女「済まんのぅ…」ノソリ

女戦士「目標は目の前だ…神殿を目指す…付いて来い」スタ


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『天空の城_一層目』


チュン チュン パタパタ


女海賊「半分雲で覆われてる…デカいね…どうやって中に入るんだ?」キョロ

女戦士「何処にも入り口らしき場所が見当たらんな…」

アサシン「飛空艇で一気に上まで行けばよかろう」

女海賊「こんだけデカい城で天辺が最終目標に思えないんだけど…」

魔女「そうじゃな…アダマンタイトも見当たらぬ…内部に入らねばイカンのじゃろう」

アサシン「では天辺の神殿は何だと思う?」

女海賊「神のお告げ効くとかそんなんじゃない?神が降臨するとかさ…」

アサシン「まぁ良い…私はお前達に従うまで…」


”ザザー”

”通じるかな?魔女?聞こえるかい?”

”うむ…どうしたのじゃ?”

”小型のゴーレムが動いてるんだ…注意して”

”何処じゃ?場所を先に言えい”

”そこの上…二層目と言えば良いかな…”

”ふむ…してそのゴーレムは何をして居る?”

”何だろうな?ゆっくり散歩だよ”


女海賊「ああ!!見えた…こっち見下ろしてる」

女戦士「慌てた素振りは無いな…」

女海賊「ゴーレムってか泥人形じゃね?」

魔女「それをゴーレムと言うのじゃ」


”そっちも視認したね?”

”うむ…襲って来る気配は無いのぅ”


女海賊「ちょちょちょ…なんか踊ってんだけど!!何アレ?」ヨイヨイ フリフリ

魔女「主も釣られて踊って居るでは無いか…無視せい!!」

女海賊「あれ?なんで勝手に踊ってんだ?」ハテ?

女戦士「見ない様にしろ」

女海賊「いやいや気になるじゃん!!」クルクル ヨイヨイ

女海賊「ヤッバ!!なんで踊っちゃうの…」ヒラヒラ ヨイヨイ

女戦士「手間のかかる…」グイ

女海賊「おととと…アレ?この踊りって妖精じゃね?」フリフリ ヨイヨイ

女戦士「見るなと言って居るだろう」グイ

女海賊「あぁぁメッチャ気になる…」

魔女「主は影響されやすいで目をつむって居れ」

女海賊「ぬぁぁぁムズムズする…」

アサシン「見ろ!!500メートル程先に何か有る…恐らく私達は裏側から来た様だな」

女戦士「なるほど…あちらが入り口か…行くぞ」スタ


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『石造の並ぶ場所』


ドドーン


女海賊「うっわ…これって…」

魔女「これもゴーレムじゃな…動いて居らんが…」

女戦士「天空の城はゴーレムだらけと言う事か」

魔女「その様じゃな…ふむ…盗賊を連れて来て居れば良かったのぅ…」

女海賊「なんで?」

魔女「入り口はどうやらシン・リーンの仕掛けと同じじゃ」

女海賊「お!?知ってるぞ?」

魔女「主に解錠出来るのか?」

女海賊「簡単だよ…水圧で閉じてるんだ…破壊の剣で穴開けたらザバーって出て来る」

魔女「なんじゃそんな事か…」

女海賊「アレだね?上にあるやつ」

魔女「うむ…じゃがしかし何故シン・リーンの紋様が有るのじゃろう…」

女海賊「分かった!!シン・リーンの遺跡もアダマンタイトで壁作ってたじゃん?」

魔女「アレと同じと言うか?」

女海賊「それが時の王からのメッセージだったんじゃ無いの?」

魔女「なんと!?時の王がここまで来て居るのと言うか…」

女海賊「オークシャーマンの首を落としたってんだから来て居そうだよね」

魔女「これはもう一度情報屋と歴史を見直さんとな…」

女海賊「ちっと待ってて…直ぐ開けて来る」スタタタ

魔女「シン・リーンと同じ…気になるのぅ…」

女戦士「紋様が有る以上関わって居たのは明白だ…オークシャーマンとは一度は仲間だったそうだからな」


ザバァァァァ ザブザブ


女海賊「おっけ!!やっぱ同じだったさ…扉もアダマンタイトだよ」スタタ

魔女「アサシンや…わらわはアダマンタイトを処理せねばならぬ…行ってくれぬか?」

アサシン「良いのか?オークシャーマンに会う前だが…」

女海賊「良いんじゃね?」

アサシン「未来がわざわざ隠したのだぞ?それを元に戻すと言うのだ…」

女海賊「う…」

魔女「どちらにせよわらわはアダマンタイトを処理せねば帰れぬ…狭間を放置出来んでのぅ」

女海賊「まぁ…どうしても隠さなきゃいけないなら又ハイディングさせりゃ良いさ…」

魔女「そうじゃ…いま今この狭間は災いでしか無い…処置せねばならぬ」

女海賊「行こっか!!」スタ


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『天空の城_内部』


シーン…


魔女「未完成だったのじゃな…」

女海賊「積み上げてるのってアダマンタイトの壁と同じブロック?」

魔女「恐らくな…これは作りかけじゃ…最終的にはシン・リーンの遺跡と同じ様にするつもりだったのじゃろう」

女海賊「ほんじゃ時の王のおっさんはこれを真似て同じ物作ったんかな?」

魔女「償いのつもりだったのかものぅ…石化した2人をシン・リーンへ連れ帰って居るで…」

女海賊「そっか…そこにもなんかドラマが有ったんだね」

魔女「うむ…生きた時代が交差した結果じゃろうのぅ」

女海賊「それにしてもスゴイね…こんだけ黄金集めたんだ」

魔女「何年掛ったのか…」

女海賊「…」

魔女「アサシン…降ろしてくれや…わらわは一つづつ変性させて行く故…しばし入り口を見張って居るのじゃ」

アサシン「良いのか?一人で?」

魔女「入り口は一つしか無かろう…主らが見張って居れば何者も来ぬ」ノソリ

アサシン「そうか…では見守るとしよう」

女海賊「ちっと私さっきのちっこいゴーレム気になるんだ…ちょい見て来る」

女戦士「待て…一人で行動するな」グイ

アサシン「お前が入り口を見張って居るなら私が付いて行くぞ?」

女戦士「うむぅ…仕方あるまい…遠くには行くな?」

女海賊「分かってるって!アサシン行こうか」

アサシン「フフいつから私の先を行く様になったか…」

女海賊「もう助手は卒業だって…行くよ!」スタタタ ピューー

アサシン「やれやれ…」タッタッタ


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『天空の城_二層目』


チュンチュン ピヨ


アサシン「何故それほど不思議な踊りを気にするのだ?」

女海賊「未来が蜘蛛を真似て踊ってた踊りに似てるからさ」

アサシン「では未来が教えたと?」

女海賊「なんでちっこいゴーレムが居ると思う?」

アサシン「んん?未来が作った可能性があると言いたいか?…」

女海賊「そゆ事…未来の子供達かもしれないと思ったんだ」

アサシン「なるほど分かった…ゴーレムに命を与えて此処で働かせて居た訳か」

女海賊「どうだろう?ただ気になる…」

アサシン「ふむ…生みの親が居なくなって切ない思いをして居るのかも知れんな…」

女海賊「そうだった場合どうすれば報われると思う?」

アサシン「私には答えが出せん…」

女海賊「踊りを交わす…なんかそれで通じる気がするんだ」

アサシン「不思議な通じ方だ…」

女海賊「あ!!なんかある…」

アサシン「んん?祠か?」

女海賊「行って見よ!」スタタタ


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『月の祠』


ヒラヒラ フワフワ


アサシン「蝶…妖精ではなく蝶か…」

女海賊「月と…2体の不格好な石造…」

アサシン「この出来はゴーレムが作った物だろう…亡き生みの親…剣士と未来か」

女海賊「私分かったよ…毎日散歩して…ここにお参りに来てるんだ…」

アサシン「供え物は何かの種か?」


カサカサ モソモソ


女海賊「ダンゴムシ…あんた…」

ダンゴムシ「…」パクパク

ワーム「…」モソモソ モグ

アラクネー「…」ジー


ドスン… ドスン… ドスン… ドスン…


小さなゴーレム「??」ピタ

ダンゴムシ「!!?」ピタ クルリ

小さなゴーレム「…」ヨイヨイ

ダンゴムシ「…」ヨイヨイ

小さなゴーレム「!!?」ドスドスドス

ダンゴムシ「…」フリフリ

小さなゴーレム「!!」フリフリ


女海賊「なんだろう…涙が出る…」ポロリ

アサシン「これは…」

女海賊「これがゴーレムが生きた理由…踊りは…祈りだったんだ」ポロポロ

アサシン「…切ない…」


小さなゴーレム「…」クルクル ヨイヨイ

ダンゴムシ「…」クルクル ヨイヨイ


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『ゴーレムの祈り』


ヨイヨイ クルクル フリフリ


女海賊「…」

アサシン「…」

女海賊「私…未来が生きた時間の重みと…伝えたい事の意味がやっと理解出来た…」

女海賊「命の重みを伝えてる…」

アサシン「命…」


壁画を残すのも…黄金を集めるのも…それはものすごく時間の掛かった事…

そんな中知り合った沢山の仲間が居て…新たに命を与えたゴーレムなんかも居て…

気持ちを通わせた筈なんだ…

その気持ちが今の時代まで踊りという形で伝わり残ったのさ…

剣士は昔私に教えてくれたことが有るんだ…目を閉じた方が良く見える事が有るって…

それは風が吹く音だったり…虫の羽音…足音…匂い…空気…

それで伝わってくることは…この踊りで伝わってくる事と同じ…命を感じる事なんだ


女海賊「命を繋ぐ…言い換えれば愛を繋ぐ…それを未来に繋いでいくために…虫になった」

アサシン「ふむ…中々深い…」

女海賊「悪者が何なのかもはっきり分かった…」

アサシン「それは?」

女海賊「命を搾取する者…愛を搾取する者…それを食い物にする者」

女海賊「未来はそれが誰なのか知ったんだ」

アサシン「…」ギロリ

女海賊「もう分かるでしょ?」

アサシン「神…」

女海賊「だから器を奪ったのさ…そして命の尊さを今の今までずっと伝えてる…妖精を通じて…」プルプル

アサシン「…」

女海賊「今から私達…なんで神に会いに行くんだろうね…未来を帰して欲しいなんて薄っぺらい事…言えなくなった」

アサシン「それは契約なのでは?」

女海賊「器を引き換えに…未来の思いを無下にするなんて出来ない…」ググ

アサシン「では未来に選ばせろ…選んだ方で最善を尽くせ」

女海賊「ちっと時間頂戴…踊って来る」スック


--------------

『鯨型飛空艇』


フワフワ スィィーー


商人「そこら中に小さなゴーレムが倒れてるなぁ…」

情報屋「命が尽きて動かなくなったのでは?」

商人「アレが天空の城を管理していたんだろうか?他には大きなゴーレムしか見当たらない…」

ローグ「管理してる様には見えやせんが?あちこちボロボロでやんすよ」

情報屋「もう少し裏手側に回ってみるわ…」グイ


スィィーーー 


商人「あーーこれ城って未完成なんだ…裏手は崩れてると言うかハリボテだ…」

情報屋「なるほど…この城は後から建てられたのね…頂上の神殿みたいな物もあまり意味をなさないのかも…」

ローグ「あああ!!あそこで姉さんとゴーレムが踊ってるでやんす…」ユビサシ

商人「ええ!?本当だ…何をやってるんだか…」

情報屋「小さな祠があるわね…もう少し寄ってみるわ」グイ

商人「なんかあの祠も重要な物ではなさそうだなぁ…」

情報屋「聖書に書かれているエデンの園は大きな木と湖…その横に神殿があるのよ」

商人「う~ん…木はあるけど特徴的な木が見当たらない…」

ローグ「湖も無いでやんす…」

情報屋「ここは城が有るから目立つけれど本当のエデンの園は別所に有りそう…」

商人「探索に結構時間が掛かるか…もう少し高度上げられない?」

情報屋「もう限界…というか天空の城自体の高度が上がって来てて直に着陸してしまう…」

商人「地面を雲が這ってて多くまで見通せないのがなぁ…」


-------------

『城の天辺』


シュゴーーーー フワフワ


情報屋「ダメね…天辺までは高度上げられない…」

商人「十分さ…ここは只の見晴らし台だと言う事が分かった…」

情報屋「やっぱり雲が全部晴れないと見渡せないわね…」

商人「うん…」

ホムンクルス「あの…私の指さす方向に階段らしき物がかすかに見えます…」ユビサシ

情報屋「階段?」キョロ

ローグ「あああ!!本当っす!!雲の上に伸びる階段がありやす…」

商人「それだ!!」

情報屋「まだ上が有ると言うの?…」

商人「徒歩じゃ無いと行けないのか…」

情報屋「じゃぁここはエデンの園の下層という感じなのね…」

ローグ「分かって来やした…ここに国みたいな楽園を作ろうとしてたんすね…」

商人「これが理想郷か…」



--------------

『城の入り口』


フワフワ


商人「お~い!!階段を見つけたよ~!!」

女戦士「んん?階段?」

商人「そうだよ!!まだ上が有るみたいだ」

女戦士「この城の上では無いのか…」

商人「城の上は見晴らし台さ…多分階段を登って行くんだよ」

女戦士「なかなか凝った作りをしているな?」

商人「周囲を一通り見回って来たけど怪しい物は何も無い…楽園が続いてるだけさ」

女戦士「ここからどのくらいの距離だ?」

商人「1kmあるか無いか…直ぐそこさ…雲で覆われて先が見通せないだけだ」

女戦士「では魔女の作業が終わり次第行くとしよう…ところで女海賊は見たか?」

商人「見た見た!!ゴーレムと一緒に踊って居たよ」

女戦士「あいつは全く何を考えて…」

商人「まぁいつもの事だよ…」

女戦士「見張って居てくれないか?又トラブルを起こしそうだ」

商人「ハハそうだね…見える位置で飛んで置く」

女戦士「世話を掛ける…」


フワフワ…

『蜘蛛踊り』


ヨイヨイ クイックイ ヒョコヒョコ プイ


女海賊「やっぱ踊りはアラクネーが上手だなぁ…」

アサシン「クックック…これではアラクネーが主役になっているでは無いか…」

女海賊「それで良いんだって…それで通じるのさ」

アサシン「私にはよく理解出来ん…」

女海賊「新しい友達になったんだよ…こうやって通じ合ってる」

アサシン「なるほど…人間に足りない部分だ…」

女海賊「あれは求愛の踊りなんだ…愛を伝えてる」

アサシン「確かに…イルカも同じ様に何かを伝えて来る」

女海賊「ソレソレ!!そうやって共生する…命を尊重し合う」

アサシン「そうか…それが命の最も深い部分に刻み込まれ遺伝して行くのか」

女海賊「分かって来た?命の行動原理に愛が有る…赤ちゃんが教えもしないのにおっぱいの吸い方知ってるのも同じ」

アサシン「理解した…」

女海賊「おい!ダンゴムシ!!アラクネーに負けてるぞ?それで良いのか?」

ダンゴムシ「…」ジーー

女海賊「そっか…これで良いね」

ダンゴムシ「…」ジーー

女海賊「おいで…」

ダンゴムシ「…」カサカサ

女海賊「よしよし…今度逆立ち教えてあげる…これは相手を挑発する時に使うんだ…」

ダンゴムシ「!!?」ピク

女海賊「お?興味ありそうだね…おっし!ちょい見てろ…ほっ!!」クルン

ダンゴムシ「…」クルリン

女海賊「馬鹿!丸まるんじゃ無いよ…丸まる直前で止めるのさ…もっかい!!」

アサシン「…」---母と子---


---こうやって愛を刻んで行くのか---

---その記憶が遺伝する---

---生き物が持つ進化の秘宝---

---そして神はこれを搾取する---

『鯨型飛空艇』


シュゴーーーー フワフワ


情報屋「ダメね…高度がどんどん下がって行くわ…」

ホムンクルス「下がって居る訳ではありませんよ?地面が浮上しているのです」

情報屋「これでは着地してしまう…」

ローグ「水汲んで乗せてる場合じゃ無かったっすね…あっしと水が入った樽を降ろしやしょうか?」

情報屋「大丈夫?」

ローグ「あっしは皆さんより丈夫なんで多少の事は大丈夫でやんす」

情報屋「じゃぁお願いするわ」

ローグ「へい…ちっと地面に降ろして下せぇ」

ホムンクルス「もうすぐ高度4000メートルに達します…このまま上昇を続けますと約2時間程で皆さんは行動不能に陥ります」

商人「ええ!?それまずいね…」

ローグ「あっしが頭に伝えて来やす」

ホムンクルス「それが良いですね…更に言いますとこの飛空艇はもっと早くに飛べなくなりますので急いだ方が良いかと…」


フワフワ ドッスン


ローグ「急ぐように伝えて来やす…樽降ろしちまうんで喉渇いても我慢して下せぇ…よっこら」グイ

情報屋「頼んだわ…高度上げるわね」グイ シュゴーーーー


フワフワ フワフワ


--------------

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--------------

『天空の城_入り口』


タッタッタ


ローグ「頭ぁ!!てーへんでやんす!!」タッタッタ

女戦士「どうした?飛空艇で休むのでは無かったか?」

ローグ「どうやらこの天空の城が空に向かって上昇してて後2時間もすりゃ息が吸えんくなるらしいでやんす」

女戦士「なんだと!?」

ローグ「もう高度4000メートルまで登ってるんす…ハァハァ」

女戦士「道理で冷えて来たと思った…」

ローグ「そーっすね…随分寒くなりやした」

女戦士「ううむ…魔女がアダマンタイトを処理するのにどの位時間を要するか読めん…」

ローグ「魔女さんは後であっしが背負って行くんで先に行って来たらどうっすか?」

女戦士「そうだな…しかし付いて来られるか?」

ローグ「例の階段はもう見えてるでやんす…迷う事はありやせん」

女戦士「分かった…先に向かうとしよう」

ローグ「姉さんはゴーレムと一緒に踊ってたんすが…」

女戦士「私が行って来る…そのまま階段へ向かうからローグは魔女を背負って後から来るんだ」

ローグ「分かりやした…ちっとあっしも城の中が見たいんで入りやすぜ?」

女戦士「構わん…行って来い」

ローグ「へい!!」タッタッタ


--------------

『天空の城_二層目』


タッタッタ


女海賊「あれ!?お姉ぇ…そんな慌ててどうしたん?」

女戦士「お前を連れ戻しに来たのだ…ハァハァ」

女海賊「そんな慌てなくてもちゃんと帰って来るって!!」

女戦士「事情が変わった…この天空の城は高度を上げ続けていて後2時間もすれば息が出来なくなるそうだ」

女海賊「えええ!?マジか…」

アサシン「2時間?遊んで居る場合では無いでは無いか」

女戦士「だから慌てている」

アサシン「魔女の用事はもう済んだのか?」

女戦士「まだ終わって居ない…だから別行動をするのだ」

女海賊「てか行き先は城の中じゃない感じ?」

女戦士「ここから1km程先に階段が有る…目標はそこだ」

女海賊「どゆ事?階段?」

女戦士「立ち話は時間のムダだ!!走るぞ…来い!!」タッタッタ

女海賊「ちょ…そんな慌てる感じ?」スタタ

女戦士「2時間後にはもう息が出来ない…行動出来るのはあと1時間だと思え!!」

アサシン「呑気な事を言っている場合では無いぞ?」タッタ

女戦士「うむ!!もう気球も飛べんで降りて来た」

女海賊「やっば…」


ドスドスドス


女戦士「なんだ後ろに付いて来ているのは?」

女海賊「ちっこいゴーレムたちが勝手に付いて来てるのさ…あいつ等どうすっかなぁ…」

アサシン「構っている余裕なぞ無いぞ」

女戦士「構うな!!急ぐぞ!!」タッタッタ


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『鯨型飛空艇』


シュゴーーーー ヒュゥゥ


商人「よし!!階段の所が丁度この理想郷の端っこだ…崖際に飛空艇を置いておけば最悪押して落下できる」

情報屋「すごいわ…もう一つ上に島が浮いてる…」

商人「どうやって浮かせて居るんだろうね?」

情報屋「行ってみたいけれど…階段を登れる自信が無い」

ホムンクルス「低酸素状態が続いて居ますので運動は危険です」

商人「仕方ないね…」

情報屋「商人は息を吸わなくても良いでしょう?行ってスケッチを取って来て」

商人「あぁ…分かった…君の眼になるよ」

ホムンクルス「情報屋さん…意識して深い呼吸をして下さい…後遺症を残す事になってしまいます」

情報屋「わかったわ…すぅぅぅぅ…はぁぁぁぁ」

商人「そんなに厳しい状態なのか…」

ホムンクルス「通常の気圧でも回復に2~3日掛かるのです…このまま継続すると脳組織が破壊されて後遺症が残ります」

商人「脳に後遺症…それは良くない…」

情報屋「女戦士達が追い付いて来たわ…崖際に降ろすわね」グイ


フワフワ ドッスン…


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『天へ登る階段』


ヒィ… ヒィ… ハァハァ


女海賊「なんで…ヒィ…こんなに…ヒィ…苦しい…の…ハァハァ」ヨロ

女戦士「ハァハァ…商人も来たか…飛空艇はもう飛べんのか?」フゥフゥ

商人「そろそろ限界さ…崖際に降ろしてあるから押せば落下出来る筈…」

アサシン「ふむ…帰りはそれで行こう」

女戦士「商人も階段を登るつもりか?」

商人「情報屋が行けないからスケッチ取るのをお願いされたのさ…僕は絵を書くだけだね」

女戦士「なるほど…」

商人「情報屋とホムンクルスは飛空艇に残る」

女戦士「それが良い…最後の命綱だからな」

女海賊「下に雲海が見えてる…これ狭間の外に出たんじゃね?」

女戦士「かもな?」

アサシン「休んでいる暇は無いぞ」

女海賊「おけおけ…行くよ」スック

アサシン「私が先に登ってワイヤーで引き上げてやる…それで少しはラクだろう」

女海賊「めっちゃ助かる…」

アサシン「では行くぞ…」スタ


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『天界』


シュルシュル


アサシン「ここが最後だ…手を…」グイ

女海賊「ふぅぅぅ…」ドタリ

アサシン「次は女戦士!」シュルシュル

女戦士「済まんな…」スタ

商人「これは…」アゼン


シーン…


商人「聖書に書かれていたまんまだ…中央に有るのが知恵の実が生る木…」

女海賊「居た!!門みたいな所の前にオークシャーマンが居る!!」

アサシン「なんだ?アレは祈りか何かか?」

女海賊「祭壇に誰か横たわってる…きっと未来だ」スック

女戦士「待て…巨像はすべてゴーレムだぞ?20体…」

女海賊「動かなきゃただの石造さ…未来を帰して貰わないと」

アサシン「ここまで来て怖気づくのか?」

女戦士「確かに…」

商人「僕はここで詳しくスケッチしてる…ここからならプラズマ銃で援護も出来るよ」

女戦士「何も起こらねば良いが…どうもそうはならん予感がする」

女海賊「お姉ぇ…行くしか無いんだよ」

女戦士「分かっている…行こう」

女海賊「一緒に行こ…」グイ

アサシン「フフ手を繋いで行くか…まぁ私は後ろから付いて行く…見届けてやるぞ」

女戦士「よし…」スタ

女海賊「…」スタ


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『生贄の祭壇』


ウゴウゴルーガ ウゴウゴルーガ


オークシャーマン「ウゴ…」クルリ

女海賊「…これ…どういう事?暁の使徒は何処?」スタ

オークシャーマン(蒼眼の者よ…)

女海賊「ええ!?何コレ?頭ん中で声がする…」タジ

オークシャーマン(我は西オーク族長オークシャーマンなり…予言に従い契約の調停者となる)

女海賊「なんだよ意味わかんないんだよ…なんで調停者なのさ」

オークシャーマン(裁きの神アヌとの契約を今此処に履行する事を調停する)

女海賊「あんたがアヌじゃないの?」イラ

オークシャーマン「ウゴウゴルーガ ウゴウゴルーガ…」クルリ

女海賊「ちょ?何…お祈り?」

アサシン「黙って見て居ろ…アヌを呼んで居るのだろう」

女海賊「なんだずっとオークシャーマンに憑依してる訳じゃ無いのか…」

アサシン「魔王と同じ類だ…好きな様に器を乗り換える…」

女海賊「てかちゃっちゃと終わらせろよ…こっちは息苦しいんだって!!」イライラ

女戦士「まぁ待て…」

女海賊「てか祭壇で横になってんの誰!!?オークじゃん!!…未来は何処よ!?キョロ」

女戦士「む!!あの剣はコバルト製…まさか…」

女海賊「なんか知ってんの?」

女戦士「いや間違いない…装備類は未来が作った軍隊ガニの…」

女海賊「え!!?未来と関係してる?」

女戦士「あのオークを未来と共に助けた事があるのだ…何故此処に…」


スゥ… ゾワワワワ…


オークシャーマン(来たれり…はぁぁぁぁぁ…)クルリ ギロ

女海賊「なんだよ一人芝居すんなって…さっさとこっちの質問に答えろよ」

オークシャーマン(契約に従い暁の使徒は贄の体内にて新たに生まれいずる…)

女海賊「え!?あのオークから生まれる?どういう事?ご神体は何処行ったん?」

オークシャーマン(蒼眼の者よ…器と命の水をここへ…)


ダンゴムシ「…」カサカサ


女海賊「ちょ…勝手に出て来たらダメだって!」

オークシャーマン(そこに居たか…さぁ…新しい器を用意した…我が器を空け渡せ…月へと誘おう)

ダンゴムシ「ムムム」クルリ フラフラ

女海賊「逆立ち…あんたどうして?…」

アラクネー「シャーー」ムムム

ワーム「プギャー」ムイムイ

女戦士「…これはどういう事だ?」

アサシン「威嚇だ…どうやら器を開ける気は無いらしい…」

女海賊「未来…あんた…」

アサシン「分かるか?ダンゴムシに記憶が残って居る訳では無い…刻まれた本能で拒絶している」

女海賊「おい!妖精出て来い!!何処行った!!?どんな話になってんのさ!!」


オークシャーマン(契約を履行せよ…)


ダンゴムシ「ムムム」フラフラ

女戦士「…これは…破談か?どうする?」

アサシン「気を抜くな…何が起きるか分からんぞ」スラーン チャキ

オークシャーマン(リリン共に用は無い…裁きを受けよ…キール・ザラー)スッ

女戦士「なに!!?」タジ


ビシビシ ドキューーーン!!


女戦士「がはぁ…ぐぅぅ」ガク ドタリ

アサシン「がはぁっ!!…」フラ ドタリ

女海賊「え…ちょ…いきなり何すんだよ!!」タジ

オークシャーマン(ここは神の領域…不浄リリンがこの地に足を踏み入れた裁き…それは死…)

女海賊「お姉ぇ!!お姉ぇ!!」ユサユサ

女戦士「…」グッタリ

女海賊「え…マジ?お姉ぇ死んだん?」プルプル

オークシャーマン(蒼眼の者よ…命の水はどうした?)

女海賊「うっせぇな!!勝手に話し進めんな!!お姉ぇ!!しっかりして!!」ユサユサ

女戦士「…」

女戦士「……」

女戦士「………」

女海賊「ちょ…マジか…」ボーゼン


--------------

--------------

--------------

女海賊「あったま来た!!今すぐ生き返らせろ…どたまぶち抜くぞ!!」ガチャリ スチャ

オークシャーマン(無駄だ…年老いたこの器は既に用済み…契約を履行せよ…命の水を差し出せ)

女海賊「何勝手な事言ってんのさ…生き返らせるのが先だよ…じゃないと器も命の水も渡さない」ギロ

オークシャーマン(強欲…傲慢…魔性の者め…)


ドスドスドス


小さなゴーレム「…」ドドド ピョン

オークシャーマン(裁きを下す…キール・ザラー)スッ


ビシビシ ドキューーーン!!


小さなゴーレム「…」パラパラ ドサリ

女海賊「み…身代わりに…」タジ

ダンゴムシ「!!?」カサカサ オロオロ


ドスドス ドスドス


小さなゴーレム達「…」クルン グググ

女海賊「あんた達…皆…」

オークシャーマン(子虫め…丁度良い…贄が足りなかった…我が贄となれ)スッ

女海賊「!!!」プチ


---何か切れた---


贄が足りぬ…贄が足りぬ…贄が…


あの声…

理解したぞ

神は初めから居なかった

あんた達はこの星の命を貪り食い

全てを搾取する害悪…

神と言う名にかこつけて

偽りの楽園で魂を水に変える

命を…生命を搾取する

分かったぞ…あんたも魔王だ!!

『鯨型飛空艇』


声”…”

ホムンクルス「え?…」キョロ

情報屋「!!?い…今のは?」キョロ

ホムンクルス「妖精さんの声…」

情報屋「私にも聞こえる…何処に?」

ホムンクルス「上で何か起こっている様ですね…呼ぶ声…私も行かなくては…」

情報屋「ダメよ…私一人では飛空艇をどうする事も出来ない…」

ホムンクルス「外を見て下さい…虫達が一斉に舞い上がって居ます」

情報屋「ええ!!?」

ホムンクルス「こんな高高度まで飛べない筈なのですが…」

情報屋「こ…これは!!ダイダラボッチ?…どうして…」

ホムンクルス「私も呼ばれている様です…情報屋さんは此処で待って居て下さい…様子を見て来ます」スタ

情報屋「あ…待って…」


タッタッタ…

『理想郷』


ヒィヒィ…


魔女「もっと早う走れ…事が始まって居るぞ」

ローグ「分かって居やすとも…ハァハァ」

魔女「なんじゃこのザワツキは…」

ローグ「魔女さん聞こえやしたか?これ妖精の声なんすかね?」

魔女「分かっとるわい!!今からなにやら始まる直前じゃ」

ローグ「虫が一気に舞い上がってるのも関係ありやすよね?どっから飛んで来たんすかね?」

魔女「狭間じゃ…これはダイダラボッチの直前じゃぞ」

ローグ「千里眼でどうなってるのか見通せやせんか?」

魔女「見て居る!!世界中で同じ事が起こって居る」

ローグ「ええ!?」

魔女「母上の眼も…盗賊の眼も…同時に何かを察知して居る」

ローグ「地球の反対側じゃないすか…」

魔女「神が何か起こしよる…早う走れ!!」


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---------------

『生贄の祭壇』


ビシビシ ドキューーーン!!


小さなゴーレム「…」パラパラ ドサリ

女海賊「もう止めろぉぉぉ!!」ダン!!ダン!!

オークシャーマン(グラビティ…)グググ

女海賊「くそう!!特殊弾を握り潰すって…マジか…」タジ


アサシン「ヴヴ…うぐぐ…」ズルズル


女海賊「アサシン!!あんた動けるんだね!?」ダダ

アサシン「ダンゴムシを連れ戻して…一旦引け…」ヨロ

女海賊「お姉ぇがやられて…」

アサシン「お前までやられてどうする…言う事を聞くのだ」

オークシャーマン(不死者か…忌々しい…浄化してくれよう…)


ドスドスドス ブン!! スパーーーー


オークシャーマンの首「ウゴ…」クルクル ボトン コロコロ

オークシャーマンの体「…」ブシュー ドタリ ピクピク

女オーク「フーーーッ…フーーーッ」

女海賊「え!!?」

アサシン「な…に?」

女オーク「シト…サクリファイス…オナカ…ヤドル…オマエ…シト…ハハ…ワタシ…ワカル」

女海賊「何言ってるか分かんない…何々?どうすりゃ良い?」

女オーク「オークシャーマン…ノロイ…ソクシスル…オマエ…ニゲロ」

女海賊「やっぱお姉ぇ死んだの?」ダダ

女海賊「お姉ぇ!!起きて!!」ユサユサ

アサシン「今の内に一旦引くぞ」ヨロ

女海賊「お姉ぇを置いて行けない!!」

アサシン「ちぃぃ…早く担いで行け」グイ

オークシャーマンの首(蒼眼の者よ…それは我が器…契約を履行せよ)

女海賊「ちょ…首を落とされてまだ死んで無いんか!!お姉ぇやられて契約なんか知らねぇよ!!すっこんでろ!!」ドカ

オークシャーマンの首「ウゴ…」コロコロ ベチャ

アサシン「早く行け!!私が時間を稼ぐ」ドン

女海賊「あんたどうすんのさ!!」

アサシン「戻って一旦立て直せ…私はどうやら中々死なん…時間を稼いでやる」スチャ

オークシャーマンの首(行かせはせん…裁きだ…キール・ザラー!!)


ビシビシ ドキューーーン!!


小さなゴーレム「…」パラパラ ドタ

女海賊「あぁぁ…又身代わりに…」

アサシン「お前がモタモタしているからだ!!アレを黙らせれば良いのだな?」ヨロリ スラーン ダダダ ブスリ

オークシャーマンの首「ウガ…」ピキピキ

女海賊「石化!!?」


パリーン サラサラサラ…


アサシン「クックック…灰になったか…これで大人しくなっただろう」


声(魔性の者共に鉄槌を下せ…目覚めよゴーレム)


ゴゴゴゴゴゴ ドカン ドカーーン!!

ズズズズズ ズーン


アサシン「これは…」タジ

女海賊「くっそ!!オークシャーマン倒しても意味無い…」

アサシン「相手が悪い!!引くぞ!!来い!!」グイ

女海賊「待って…お姉ぇ重いんだから…」ヨタヨタ


--------------

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『知恵の実が生る木』


パシュ シュルシュル スタ


女海賊「大きな木が有って良かった…」

アサシン「まだ目を覚まさんか?」

女海賊「ヤバイ…息して無い…心臓も動いてる感じしない」

アサシン「心臓のマッサージは分かるな?」

女海賊「お姉ぇ!!お願いだから目を覚ましてよぅ…」グイグイ

アサシン「マズいなこれは…この数のゴーレムはどうにも出来ん」

女海賊「線虫!!癒せ!!お姉ぇ!!お願い…死なないで」グッグッグ

女戦士「…」グッタリ

アサシン「…」

女海賊「くっそ祈りの指輪を魔女に渡したままだった…お願い!!生き返って…」プルプル


ドコーーン!! グラグラ


アサシン「囲まれて居るな…放り投げる物が無いのが幸いか…さてどうしたものか」

女海賊「魔女はまだ来ない感じ?」

アサシン「見当たらん…ちぃぃ…ゴーレムが一体よじ登って来るぞ」


ズズーン ミシミシ… バキバキ…


女海賊「私がゴーレム全部引き付ける…お姉ぇを背負って急いで魔女の所に行って」

アサシン「なに?」

女海賊「どうにかしてお姉ぇを助けて…お姉ぇ居ないと私生きて行けない」

アサシン「フフ…お前にあの大軍を引き付けられるか?」

女海賊「ヌルヌルを全身に塗って飛び回る…やれる!」ヌリヌリ ドプ ヌパー

アサシン「よし分かった…私は女戦士を担いで一旦魔女と合流する…お前は死ぬな?」

女海賊「私がゴーレムのタゲ引いたら一気に走って!!」

アサシン「分かった…よし行け!!」

女海賊「あとお願い!!」ピョン


パシュ シュルシュル ヒュン


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『魂の神殿』


ドーン ドカーン


商人「やっぱり始まった…ゴレームが動き出した…僕はどうしろって言うんだ」

ローグ「商人さーーーん!!ハァハァ…」タッタッタ

商人「ローグ!!魔女も来たね…あ!!ホムンクルスまで…」

魔女「これはどうなって居るのじゃ?」

商人「見ての通りだ…メチャクチャだよ」

魔女「戦って居るのは誰じゃ?」

商人「女海賊が飛び回って凌いでるっぽい…あと小さなゴーレムと…ロック鳥も戦ってるの…か?」

魔女「ゴーレムは隕石を落とさんと倒せんぞ…」

商人「やるしか無いよね…まだ一体も倒せてない」

魔女「詠唱に1時間以上掛かるのじゃ…時間が無い」

商人「凍らせる魔法は?」

魔女「イカン…皆を巻き込んでしまう」

ローグ「さっき大きな黄金が有りやしたよね?アレなら直ぐそこに有るでやんす!ぶつけられんっすか?」

魔女「むむ!それじゃ!!10分間を持たせよ…天から加速させるにはその位の時間が必要じゃ」アブラカタブラ…

ローグ「頼んます!!あっしは助太刀に行って来るでやんす…ってあああ!!こっちにもゴレーム走って…」タジ

商人「もう2人で何とかするしか無い!!僕が囮になるからハイディングから一気に倒して」チャキリ

ローグ「ハイディング!!その手が有りやした…」

商人「来るよ!!」カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーーン!


ローグ「ハイディング!!」スゥ…

ゴーレム「ヴォオオオオオオオオ…」ドスドスドス

商人「来てみろ!!破壊の剣でその拳ごと真っ二つに…」スラーン

ローグ「リリース!!バックスタブ!!」スパスパ スパー!!

ゴーレム「ガァァァァ…」ドスーン ゴロゴロ…

ローグ「商人さん!!足を切り落として下せぇ!!」ダダ スパ

商人「このぉ!!」ダダ スパ

ゴーレム「ヴァアアアアアア…」ドタバタ

商人「うわぁぁぁ…」ゴロゴロゴロ ズザザー

ローグ「このままあっしはバラバラにして行きやす」スパ スパ スパ スパ

商人「なんだこのゴーレム…切っても切っても動きを止めない…」スパ

ゴーレム「ヴォーーーー」ブン ドガァ

商人「ぐぅぅぅ…」ゴロゴロ ズザザー


アサシン「ヴヴヴ…そのまま続けて…ゴーレムをなんとかしろ…」ズルズル


商人「アサシン!!どうして此処へ!?女戦士はどうしたの?」ヨロ

アサシン「オークシャーマンにやられた…クックック私は2度死んだと言えば良いか…」ズルズル

商人「足は動かないのか?」ダダ

アサシン「私に構うな…それより女戦士が死んだ…どうにかして生き返らせられないか?」

魔女「な…なんじゃと!!?ええい詠唱が止まってしもうたわ!!」

ローグ「か…頭が…死んだ?」ピタ

アサシン「ローグはゴーレムに集中しておけ!!」

魔女「死んだとはどういう事じゃ?」

アサシン「即死する魔法を使われた様だ…もう息もしていないし心臓も動いて居ない…私には効果が無かったようだが…」

魔女「呪術…即死魔法か…魂の分離…何処ぞで彷徨って居る筈じゃ…妖精に連れ戻して貰えば良い」

アサシン「出来るか?」

魔女「わらわはその術を知らぬ…妖精を見て居らぬか?」

ホムンクルス「妖精さんにお願いすれば良いのですね?」

魔女「何処に居るか分からんのじゃが…」

ホムンクルス「夢の中で会う事が出来ます」

アサシン「時間が無い…直ぐにやれるか?」

ホムンクルス「やります…スリープモードに移行…ノンレム睡眠導入…」スヤ zzz

商人「こんな時に寝るとは…」


ズズーーーーン グラグラ


アサシン「何ぃ…足場が傾いて…何が起きてる!?」ヨロ

魔女「ダイダラボッチじゃ…纏まり始めた様じゃ」

アサシン「ダイダラボッチだと!?ドリアードを食らったと言う伝説の…」

魔女「うむ…オークシャーマンが呼び寄せたのじゃろう…わらわ達ではどうにも出来んくなるで引くべきじゃ」

アサシン「こんな大量の虫が何処から飛んで来るの…だ?」タジ

商人「下だぁ!!また大きいのが来る!!」

魔女「なぬ?空では無く下からとな?」


ズモモモモモ ズズーーーーーン!! グラグラ


アサシン「あ…ありえん…ここは遥か上空だぞ」

商人「来たぁぁぁ!!退避!!退避!!」


ズモモモモモ ニョロニョロ ゾワワワワ ズズーーーーーン!!


ローグ「ちょちょちょちょ…何なんすかこの大量の虫は…」ダダ

アサシン「これはゲームオーバーだ…逃げるぞ!!魔女!!貝殻で女海賊に連絡しろ」

商人「上からも何か降って来る…」アゼン

魔女「海虫が天空まで這い上がって来ておるか…スケールが違い過ぎる…」ボーゼン

アサシン「商人!!ホムンクルスを背負って今すぐ飛空艇まで戻れ!!ローグは女戦士を頼む」

商人「わ‥分かった!」

ローグ「分かって居やすとも!!」ヨッコラ

アサシン「魔女…最後にやって置きたい事が有るのだ」

魔女「うむ…命の水が入った器じゃな?」

アサシン「そうだ…あそこに妹が居る…水を海に巻いた後器を消し去りたい…量子転移の魔法が必要だ」

魔女「やはりな…覚悟は出来て居る」

アサシン「もう話して居る余裕も無い!!行くぞ!!」ヨロ ズルズル


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『魂のゴブレット』


キラキラ チャプン


アサシン「やはり光がこの器に吸い込まれて行って居る…これはアヌに渡してはいけない物だ」

魔女「無駄口は良い…一人で持てるかいな?」

アサシン「足が不自由だ…回復魔法を頼む」

魔女「早よう言えタワケ!回復魔法!」ボワー

アサシン「フンッ!!!」ムムム

魔女「無理そうじゃな」

アサシン「ちぃぃ…仕方が無い…ここでひっくり返す」グイ

魔女「非力じゃのぅ…重力魔法!」グググ


ゴロン!! ジャバーーーー


アサシン「その様な魔法が使えるなら初めから言って欲しい物だ」

魔女「この器は内側がどこぞの時空に通じとる…すべて流れ出るまで時間が掛かるぞい」ジャバー ザブザブ

アサシン「どれだけの人の魂が水になったのか…」

魔女「人だけでは無いじゃろう…すべての生物じゃ」


ズズーーーーン グラグラ


アサシン「又…」ヨロ

魔女「随分陸地が傾いたのぅ…」

アサシン「見ろ…下の層にも虫の大群が這い上がって来ている…直にここは落ちるな…」

魔女「飛空艇は何処に行ったか…」キョロ

アサシン「すべての虫が一塊になったらどれ程の大きさになる?」

魔女「伝説では山を踏み潰すそうじゃ…まさか実話だとは思わなんだわい」

アサシン「しかし私達に襲い掛かって来る気配が無いのだが…」

魔女「うむ何故じゃろうのぅ…そうじゃ命の水がすべて流れるまで待って居るのは時間が勿体無い」

アサシン「どうしろと?」

魔女「主は暗殺者じゃろう…背後からオークシャーマンを討ち取りダイダラボッチを収めよ」

アサシン「なに?既にオークシャーマンは討ち取ったのだが?千里眼で見て居なかったのか?」

魔女「なんじゃとぅ!!常に千里眼を使って居る訳では無いわ!!」アゼン

アサシン「だがアヌは声となって何処かに存在している…そいつを暗殺するのはちと無理がある」

魔女「術者が居らぬ…何故ダイダラボッチが収まらんのじゃ?」

アサシン「魔女が分からん事は私にも分からん…何か問題でもあるか?」

魔女「リリスの石化はリリスが滅すれば直ぐに解けたじゃろう…魔法とはそういう物じゃ」

アサシン「私は確かにクサナギの剣でオークシャーマンを貫いた…その後灰になったのは間違いない」

魔女「つまりオークシャーマンの術は解ける筈じゃ」

アサシン「この楽園もまだ宙に浮いているな?」

魔女「いや…わらわが黄金に変性させたで術者はわらわに変わって居る…わらわが死ねば落ちるじゃろうな」

アサシン「魔法の事は分からん!!どうするか早く決めてくれ」

魔女「まさかとは思うが女海賊が知らぬ内にダイダラボッチを起こして居らんじゃろうか…」

アサシン「む!!わかったぞ!!ダンゴムシだ!!アレには未来の魂が入っている…ドリアードを食らったのも未来がやったのだろう」

魔女「オークシャーマンの術では無かったと…」ボーゼン

アサシン「今が勝機か…行くぞ魔女!!」ダダ


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『鯨型飛空艇』


フワフワ フワフワ


情報屋「あれ?勝手に飛空艇が高度を上げて…」アタフタ

ホムンクルス「…」パチ キョロ

商人「目を覚ましたね?」

ホムンクルス「生体安定…脳波正常…」

商人「どうだい?妖精とは話せたかい?」

ホムンクルス「はい…探して下さるそうです」

ローグ「頭は生き返るんすね?」

情報屋「ローグ!!心臓マッサージは止めたらダメよ!!魂が戻っても肉体が死んでては意味が無いわ」

ローグ「わ…わかりやした…」グイグイ

女戦士「…」クター

ホムンクルス「…」スック スタ キョロ

情報屋「ホムンクルス…扉を開けてはいけないわ」

ホムンクルス「今どういう状況なのでしょう?」

商人「虫の大群に埋め尽くされてる…幸運にも飛空艇には興味が無いらしい」

ホムンクルス「外が暗いのは虫のせいですね?」

商人「そうだね…何処を見ても虫だらけさ」

情報屋「ねぇ…徐々に飛空艇の高度が上がってるのは…もしかして楽園が落下してる?」

ホムンクルス「その様ですね…水銀柱を見る限り気圧の変化はありませんので飛空艇の高度は維持している筈です」

商人「虫が重いのか…」

情報屋「魔女達が戻って来るのが遅いわね…」イラ


ズズーーーン ゴゴゴゴゴ


商人「又あの音だ…どれだけ這い上がって来るんだろう…」

ホムンクルス「このまま行けば上層まで飛空艇で届きそうですね」

商人「うまくあの3人を回収出来れば良いけれど…」

情報屋「ホムンクルス?海からこの高度まで虫が這い上がって来るのは物理的に可能な事?」

ホムンクルス「海と言いますか海底に足を付けながら上に押し上げるのは不可能では無いですね」

商人「高度6000メートル以上あったよね…」

ホムンクルス「土をそれだけ積み上げれば山となります」

商人「なるほどそういう事か…それだけの量の虫が一斉に動いてるのか」

情報屋「ちょっと想像を超え過ぎてて言葉が無いわ…」

商人「海の魔物の中に海坊主っていうのも居たよね…もしかしてダイダラボッチの事か?」

情報屋「こんな事出来るのはやっぱり神の御業…私達ではとてもオークシャーマンに太刀打ち出来ると思えない」

ホムンクルス「あの…虫を導いて居るのは妖精さんです」

商人「ん?どういう事?オークシャーマンの仕業では無いのかい?」

ホムンクルス「皆さんが耳にした声は妖精さんの声なのです」

情報屋「あの声…」

ホムンクルス「はい」

商人「…という事は…これはダンゴムシの中に居る未来君の意思…そう言いたいんだね?」

ホムンクルス「恐らく…」

ローグ「ちょ…それ熱いっす!!熱いっすねぇ!!」グイグイ

商人「そうか…アヌはこの力が欲しいのか」

ホムンクルス「地球上で最も質量が多い生物は虫ですね…すべての人間を集めてもアリの質量に遠く及びません」

商人「そうだよ…いつだったか地球の支配者は虫だって未来君は息巻いてた事が有る」

ホムンクルス「その通りです」

商人「だからアヌは虫を進化させて究極生物を作ろうとしてたのか…その種子がダンゴムシな訳だ」

情報屋「だとしたらアヌに器を渡す訳に行かない…」

商人「うん…未来君がダンゴムシになった強い動機だね」

ホムンクルス「妖精さんが呼んで居ます…私達も未来君を助けに行きましょう」

情報屋「もう少し高度が上がればこのまま飛空艇で…」


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『激戦』


ニョロニョロ ゾワワワ…


アサシン「これは虫の大群を掻い潜って行くのは無理だ…近付けん」

魔女「見て見よ!!飛び回る女海賊の動きに虫達が同期し始めとるぞよ」

アサシン「ゴーレムに憑りついた虫はどの位で食らい尽くすと思う?」

魔女「さぁのぅ…」

アサシン「よし…魔女は私の背に乗れ」ヨッコラ グイ

魔女「黄金を落とせば良いか?」ノソリ

アサシン「そうだ…出来るだけ早く頼む」

魔女「承知じゃ…わらわの詠唱を途切らせるで無いぞ?」アブラカタブラ…

アサシン「さて私は着弾に備えて木の陰に隠れるか…」タッタッタ


パシュ シュルシュル ヒュン!!


女海賊「魔女ぉぉぉぉ!!!ゴーレムどうにかしてぇぇぇ!!」ヒュン

アサシン「今魔法の詠唱中だ!!もう少し待て」タッタ

女海賊「もう特殊弾撃ち尽くして逃げ回るしか出来ない…てか何この虫の大群!!」

アサシン「お前は自覚無しで虫を使役して居るのか?」

女海賊「追い付かれるから止まれないんだって!!」パシュン シュルシュル

アサシン「もう直ぐ隕石が降って来るから凌げ」

女海賊「マジ早く頼むぅぅ!!」ヒュン

ゴーレム「ヴォォォォォ!!」ブン 


ヌルリン!


女海賊「あっぶ!!」パシュ シュルシュル

アサシン「虫をもっと上手くけしかけられんのか!?」

女海賊「ほんなん知るか!!逃げるのに必死なんだよ!!」ヒュン

アサシン「下層からありえん虫の大群が這い上がって来るぞ…隕石が落ちたスキに逃げるつもりで居ろ」

女海賊「ええ!?マジ?」

アサシン「もう一人のオークは何処に行った?」

女海賊「あそこで立ちんぼだよ!!祭壇の所!!ちっこいゴーレムとダンゴムシもそこに居る」ユビサシ

アサシン「アレには事情を聞き出さねばならん…」

女海賊「ほんなん分かってるって!!ゴーレムを何とかして!!」ヒュン


ヒュルルル ドコーーーーーン!!


女海賊「うお!!なんか来た!!」

魔女「外してしもうた…続けて落ちて来るでアサシン止まれい!!狙いが逸れる!!」

アサシン「目視で当てて居るのか…」ピタ

女海賊「うほーーーーー地面に穴空いて一匹ゴーレム落ちた…イケイケー!!」

アサシン「今の内にあのオークを連れ戻して来い!!」

女海賊「おっけ!!ゴーレム任せたぁぁぁぁ!!」パシュ シュルシュル スタ

魔女「次が落ちるぞよ!!」


ヒュルルル ドコーーーーーン!! パラパラ


--------------

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--------------


『鯨型飛空艇』


ヒュルルル ドコーーーーーン!!


商人「落ちて来た!!」

ホムンクルス「東の方からですね…速度からして隕石では無いようですが…」

商人「魔女が黄金をどうにかして落としてるのさ」

情報屋「ねぇ!!今ので一気に楽園の高度が下がっているわ」

ホムンクルス「この飛空艇は一時的に退避した方が良いかと…」

情報屋「ここを離れると言う事?」

ホムンクルス「ハイディングして少し場所を移すだけです…今のままだと黄金と接触する危険があります」

情報屋「分かったわ…」スック

ホムンクルス「操舵は私にお任せください…先ほどの軌道の邪魔にならない位置へ移動させます」

情報屋「じゃぁお願い」

商人「ちょっと!!早くしないとどんどん高度が上がって…違うな…楽園が落ちてる」

ホムンクルス「危ないですね…ハイディングします」スゥ


シュゴーーーーーー


ホムンクルス「リリース…」スゥ

商人「ああああ!!離れ過ぎだ!!楽園が落下して行ってる!!」

ホムンクルス「落下速度が早くなっているのですね…高度を下げて行きます」グイ

商人「追い付けるかな…」

ホムンクルス「旋回させながら追います…船体が傾きますのでご注意を」グイ シュゴーーーー

ローグ「ちょちょちょちょ…心臓マッサージががが…」ヨロ

情報屋「女戦士にチアノーゼの症状が…」

ホムンクルス「マッサージと人工呼吸を休みなく続けて下さい」

ローグ「分かっていやすとも…ふぅぅぅぅぅぅ」

商人「僕も手伝うよ…温めて手足のマッサージすれば良かったんだっけ?」

ホムンクルス「はい…血流を促すように擦るのです」

ローグ「水がもう無いでやんす…湯が沸かせないっすね」

商人「まだ僕のエリクサーが残ってる…これをウラン結晶に垂らして船内を温めよう」

ホムンクルス「良い提案ですね」

ローグ「おぉ…」グイグイ

商人「じゃぁ行くよ…」ポタポタ


モクモクモク


情報屋「…」


一つの命を救うのはこんなに難しい…

その命を掛けて…あそこでは今も戦ってる…

どうか…

早くこの戦いを終わらせて…


--------------

--------------

--------------

『生贄の祭壇』


ズドーーーン! ズドーーーン!


女海賊「ちょいアンタ!!突っ立って無いでもう行くよ!!ほらダンゴムシもちっこいゴーレムも早く行くぞ!!」

女オーク「ウゴ…」ポロポロ

女海賊「なんだよ何泣いてんだよ!!もうこれ超ヤバイ状況だから…てか言葉通じてる?」

女オーク「シト…キオク…ワタシ…ヤドル」

女海賊「分かった分かった!!後で聞くから今はとりあえず此処を離れる」グイ

女オーク「ワタシ…ドウスル」

女海賊「ゴーレムの脇抜けて向こうに走るから付いて来て」


ゾワワワワ…


女海賊「ほら行くよ!!ダンゴムシもこっち来い」

女オーク「…」ブルブル

ダンゴムシ「!!?」カサカサ アタフタ

女海賊「何やってんだ!早く…」


ブン ザクリ!!


女海賊「いっ痛ぁぁぁぁ!!」ボタボタ

女オーク(行かせぬ…行かせぬぞ…)スチャ

女海賊「くっそ!!まだ居たんか」---やべぇ!もうダガーしか武器が無い---

女オーク(この体内に生まれた新たな器に早く乗り換えよ…)ズイ

ダンゴムシ「…」タジ

女海賊「おいおい何勝手な事言ってんだよ…」スラリ

女オーク(蒼眼の者…器を置いて去れ…汝にもう用は無い)

女海賊「…」---どうする?どうする?---

ダンゴムシ「…」フリフリ

女海賊「どうしたん?あんたはどうしたいの?」

ダンゴムシ「…」カサカサ

女海賊「おっけ!!私と一緒に行くんだね…よーしおっぱいに挟まってな」グイ スポ

女オーク(天誅!)ダダ ブン


ザクリ!!


女海賊「痛ったぁぁ…」ブシュー ズザザ

女オーク(行かせぬ…」ギロリ

女海賊「ヌルヌル塗ってんのに何で切られるんだよ…くっそ手が…」ボタボタ

女オーク(悪魔の子リリンめ…神を冒涜せしめしその罪を思い知るが良い…)

女海賊「お腹に未来が生まれてんだよね?そんなん私が攻撃出来る訳無いじゃん卑怯だぞ!!」タジ

女オーク(契約を守れぬ者が戯言を…我の名は裁きの神アヌ…鉄槌を受けよ」ダダ ブン


ゴツン!!


女海賊「うがぁ!!なんで当たんのさ…」クラクラ

女オーク(この器は重い…鈍い…)ダダダ ドスン!

女海賊「だぁぁぁ…」ゴロゴロゴロ

女海賊「ハァハァ…体格負けで息も続かない…逃げ…」パシュ シュルシュル


コロン… コロコロ


女オーク(行かせぬ…)ドスドス

女海賊「あぁぁ壺落とした…!!?ああああああ…壺!!そうだその手が有った」スタタタ ヒョイ

女オーク(我から逃れられると思ったかリリンめ)ドドド

女海賊「分かった分かった…ちょい待ち…その約束果たしてやんよ」ピタリ

ダンゴムシ「!!?」クルリン

女海賊「裁きの神アヌ!!壺に入れ!!」ビシッ


シュゥゥゥ スポン!!


女オーク「ウゴ…」ヘナヘナ ドタリ

女海賊「よっしゃぁ!!」



シュゴーーーーーー ズドーーーン!

シュゴーーーーーー ズドーーーン!

シュゴーーーーーー ズドーーーン!

シュゴーーーーーー ズドーーーン!


女海賊「どわあぁぁぁぁ…」ゴロゴロゴロ ズザザー

アサシン「女海賊!!限界だ…戻るぞ!!」ダダ

女海賊「アサシン!!魔女も居んね?この壺を量子転移で消してぇ!!!」ポイ

アサシン「なに!?」パス

女海賊「そん中にアヌが入ってる!!今すぐ消してぇぇぇぇ!!あああああ足元が崩れ…」ヒューー

魔女「アサシン!!貸せい!!」グイ

アサシン「背中から降りるな!!」

魔女「じゃかましい!!主は離れて置くのじゃ!!次元に迷うぞ!!」スタタタ

アサシン「待て…ええい!!魔女まで勝手な事を!!」

魔女「量子転移!」シュン!



--------------

--------------

--------------

『落下する瓦礫』


ピョン シュルシュル スタ


女海賊「はぁはぁ…これヤバいなぁ…頭もクラクラする」

アサシン「女海賊!!こっちだ!!まだ飛び移れる大き目の瓦礫が残って居る」

女海賊「魔女は何処行ったん?」

アサシン「目の前で消えた」

女海賊「マジか…祈りの指輪は効果無かったんか…」

アサシン「魔女は石にでも姿を変えて落下はなんとかなるだろう…それよりもお前だ」

女海賊「ロック鳥が飛んでた筈なのさ…肝心な時に見当たんない」パシュ シュルシュル スタ

アサシン「よし来たな?あそこに見える瓦礫が元来た階段の付近だ…あそこまで行けば飛空艇が近い筈…行くぞ」パシュ シュルシュル

女海賊「あれ?…クラクラする…これヤバイ感じかも」

アサシン「何をしている早く来い!!」

女海賊「今行く…」パシュ シュルシュル スタ

アサシン「失血している様だな?エリクサーを飲んでおけ」

女海賊「壺の中だよ…もう何も持って無い」

アサシン「ええい…お前を背負って瓦礫を渡るなぞ出来んぞ…」

女海賊「線虫は掛けてあるんだ…多分まだ行ける」

アサシン「お前は飛空艇を探せ」

女海賊「アサシンはどうすんの?」

アサシン「私はまだやり残した事がある…命の水が入っていた器を破壊するのだ」

女海賊「ほんなん逃げ遅れるじゃん」

アサシン「海に落ちてしまっては探しようが無くなるのでな…お前は上手く生きろ」

女海賊「ちょ…こっから私一人?」

アサシン「フフ…独り立ちしたのだろう?ここで道が分かれるだけの事…去らば友よ」パシュ シュルシュル

女海賊「ぬぁぁぁアサシン…」

女海賊「てかどうすんだコレ…おい出て来い妖精!!ロック鳥呼んで来い!!」


ヒュゥゥゥゥ…


女海賊「なんで肝心な時に居ないんだよ!!」キョロ

女海賊「くそう地面に足も付かないな…完全に落下してんぞ…」パシュ シュルシュル スタ



--------------

『鯨型飛空艇』


フワフワ ヒュゥゥゥ


商人「もっと落下の速度上げられないかい!?」

ホムンクルス「限界です…空気抵抗でこれ以上の速さは出せません」

商人「ハイディングで加速は?」

情報屋「障害物が多すぎるわ…球皮が虫と結合して何が起きるか分からない」

商人「そんな事言ってる場合じゃ無い!!目の前で女海賊達が落下してるんだ…海に落ちたら生きて居られる訳無い」

ホムンクルス「リスク回避で一度虫の居ない方向で加速しましょう…十分高度を下げてから向かえば間に合うかもしれません」

情報屋「そ…そうね」

商人「ホムンクルス頼む」

ホムンクルス「はい…転進します」グイ シュゴーーーーー


ハイディング… スゥ…


-------------

『魂のゴブレット』


ヒュゥゥゥ クルクル


アサシン「よし見つけたぞ…これが私の最後の仕事」パシュ カン

アサシン「やはりアンカーは刺さらんか…このまま風を利用して近づくしか無いか…」ヒュゥゥゥ バサバサ

アサシン「しかし落下が随分ゆっくりに見えるものだ…瓦礫も同じ速度だからか?」


クエーーーーーーーッ


アサシン「んん?ロック鳥…どこだ?」キョロ

アサシン「まぁ良い…今はそれどころでは無い…もう少し…届け…届け…」

アサシン「つ…捕まえたぞ!魂の器め!!」グイ

アサシン「クックック…フハハハハハ」

アサシン「ようし!!破壊の剣よ!!最後に一仕事だ」スラーン

アサシン「これで終わりだ!!」ブン スパー


パリーン!!


アサシン「アッハッハッハ…最後にふさわしく見事に砕けたな」

アサシン「これで魂の牢獄はもう存在しない…」

アサシン「妹よ…やったぞ…私はやり遂げた」

アサシン「友よ…新しい世界でもう一度生まれて来い」

アサシン「私は海で待って居る…フハハハハハ」


ヒュゥゥゥゥゥ…


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-------------

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『魔女』


ヒューーーー バサバサ


魔女「落ちて居る様じゃが何も見えんのぅ」

魔女「どうなって居るんか…」

魔女「さて…鉄に変性すれば生き延びれるやも知れぬが…」

魔女「深海まで落ちて誰か助けに来るじゃろうか…」

魔女「まぁ考えるだけ無駄じゃな…」

魔女「しかし気持ち良いのぅ…」

魔女「最後に神を葬ったのはわらわじゃったか…」

魔女「もう何も考えたく無いわい…」

魔女「んん?待てよ?自分に重力魔法を掛ければ良いかも知れんな…」

魔女「金貨は持って居る…よしよし試してみようぞ」


アブラカタブラ…


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『女海賊』


ピョン シュルシュル スタ


女海賊「ぬぁぁぁ…もう飛び移れる瓦礫が無い…ここまでか」

女海賊「飛空艇見えてんのに…くっそあっちが私を見つけらんないんだ」


クエーーーーーー バッサ バッサ


女海賊「おおおおロック鳥!!よしよし妖精に言われて来てくれたんだね?」

ロック鳥「クエックエ」ガシッ


ツルン!


女海賊「ちょ!!」

ロック鳥「クエーーーーーーー!!」ガシッ


ツルリン!!


女海賊「おいおいちゃんと捕まえて…」

女海賊「飛び乗りゃ良いか…」ピョン

ロック鳥「クエーーーーーーー!!」バッサ バッサ

女海賊「行けぇ!!」ピョン


ツルツル ヌルリン!!


女海賊「だぁぁぁ!!ここまでか…」



ドップーーーーーーン ゴボゴボ


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『鯨型飛空艇』


フワフワ フワフワ


商人「ぁぁぁ…全部海の中へ消えて行った…」ボーゼン

ローグ「姉さんが何処に行っちまったか分からんっすか?」キョロ

商人「ダメだ…完全に見失ってる…」

ホムンクルス「ロック鳥が何か捕まえかけて海に落ちた様ですので探しに向かいます…」グイ シュゴーーーー

商人「幽霊船も見当たらない…どこで逸れてしまったか…」

ローグ「望遠鏡は何処に行きやしたかね?」ゴソゴソ

商人「荷は全部幽霊船に降ろしてあるよ…目視で探すしかない」

ローグ「マズいっすねぇ…マズいっすねぇ…あっしだけ生き残っちゃ幽霊船にも戻れんでやんす」

商人「死ぬ気で探そう…」

ローグ「へい!!早い所高度下げて下せぇ」

情報屋「ところで女戦士の具合は?」

ローグ「浅い呼吸してるんで最悪の事態は免れたっぽいでやんす」

情報屋「ほっ…」

ローグ「心臓マッサージやり過ぎで多分あばら骨何本か折っちまいやした」

『数時間後』


シュゴーーーーー ヒュゥゥ


情報屋「見つけたわ!!…北の方向!!亀の甲羅が見える!!」

商人「良かったぁぁ…よし!!幽霊船もある!!」

ローグ「まだ姉さんが見つかって居やせん…」

商人「まず一回船に戻って補給しよう…水無しじゃ流石にキツイでしょ」

情報屋「そうね…もう喉がカラカラよ」

ローグ「へい…」ショボン


--------------

『幽霊船』


トンテンカン トンテンカン


オークは浸水した海水を樽で運び出すでがんす!!

修復用の木材切り出し急ぐでごわす!!


フワフワ ドッスン


ローグ「あららららら…こっちもエライことになってるでやんすね」

商人「帆が無くなってる…」アゼン

海賊「頭ぁぁぁぁ!!」ドスドス

ローグ「ちっと色々有ってでやんすね…頭は絶対安静な状態っす」

商人「運ぶの手伝ってもらって良いかな?ヨイショ!!」ヨッコラ

海賊「がってん!!」

ローグ「とりあえず頭を横にさせたらあっしらは姉さんを探しに出かけやす」

海賊「姉さんはどちらへ?」

商人「海に落ちた…」

海賊「えええええ!!?」

商人「分かってるさドワーフは沈んじゃうよね…何かに掴まってなんとか凌いでるさ…きっと」ググ

ローグ「急いで下せぇ」

商人「こっちはどうしてこんな事に?」

海賊「大波と渦に何度も飲まれてこの有様でがんす」

商人「帆が破れてどこかに流されたのか」

海賊「へい…修理に10日ぐらい掛かるでがんす」

商人「仕方ないね…こっちも女海賊達の捜索をしなくちゃいけない」

海賊「1人では無いという事でがんすか?」

ローグ「3人不明になってるんす」

情報屋「…やっぱり貝殻で魔女と通信出来ないわ」トボトボ

商人「そうか…」トーイメ

ホムンクルス「水と食料を少し飛空艇に運んでおきますね」スタ

商人「うん…お願い…直ぐに探しに出かけよう」

ホムンクルス「はい…」


--------------

『船長室』


ユラ ギシ


ローグ「頭はあばらの骨が折れてるんで目を覚ましても無理はさせんで下せぇ」

海賊「がってん承知の助!」

情報屋「ローグ?私が船に残って見ていてあげるわ」

ローグ「そーっすね…」

情報屋「実は調べたい事もあるのよ」

商人「ん?それは?」

情報屋「あまり口に出したく無いけれど…急に楽園が落下した事と貝殻が通じない事を鑑みると…魔女はもう…」

商人「ハハ…やっぱり君もそう思うか」

情報屋「未来君達と同じ事が起きてるかも知れないと思って…」

商人「確かに…フィン・イッシュの古代遺跡で退魔の方陣があった説明が付くようになるね」

情報屋「そういう事よ…剣士と未来君の2人じゃなくてそこに魔女が同伴してたかも知れない…それでいろいろ説明が付くから」

商人「分かった!その線は君に任せるよ…僕達は不明になった女海賊を第一に捜索する」

情報屋「アサシンは?」

商人「う~ん…アサシンは死に場所を探して居たからねぇ…無事ならそれで良いけど…僕はもうアサシンは心配してない」

情報屋「そう…」

ローグ「商人さんそろそろ行きやしょうか」

商人「うん!行こう!蒼い瞳の勇者が居ないとこの次元も無いに等しいんだから」

ローグ「それそれ!それっす!!姉さんがすべてなんす」

商人「じゃぁ行って来るね…あとよろしく」スタ


--------------

--------------

--------------

『海底』


ブクブク ゴボゴボ


女海賊「…」---ヌルヌルのお陰で着水はなんとかなった---

女海賊「…」---でもダメだ…右も左も分かんない---

女海賊「…」---息止めるのは3分くらいが限界---

女海賊「…」---3分で寝れるかなぁ…---

女海賊「…」---苦しくなる前に寝ちゃいたいなぁ---

女海賊「…」---てか妖精何処行ったんだよ!!---

女海賊「…」---あ…海の中は狭間から遠いんだっけ---

女海賊「…」---出てくる訳無いか---

女海賊「…」---お姉ぇどうなったかな---

女海賊「…」---やべ…苦しくなって来た---

女海賊「…」---寝る!寝る寝る寝る!---


--------------

--------------

--------------

『夢』


サブ~ン ギシ


私「あんたさぁ…なんでいっつもそんなボーっとしてんの?」

君「聞こえるんだ…」

私「何?波の音?」

君「波の音も…風の音も…命の音も」

私「何それ?ヤッた後の賢者タイム?」

君「君も良く耳を澄ませてごらんよ」

私「…」グゥゥゥ キュルル

君「ハハ…良く聞こえる」

私「これも命の音なん?」

君「そうだね」

私「はぁぁお腹空いたなぁ…」

君「寝れば忘れられるかもね」

私「このまま寝て良い?素っ裸だけど」

君「良いよ…」

私「ちょい寒いな…背中貸して」

君「フフ…」

私「あ…良い事思いついた」

君「今度は何?」

私「人工呼吸を交互にやったら一生息続くんじゃね?」

君「え…本当?」

私「ちょい試してみようよ…私が先にあんたに息入れるから次はそのまま返して」

君「君は変な事考えるんだね…」

私「はいこっち向いて…いくよ」チュゥ


フーーーーーーー


君「むぐぐ…」すぅぅぅぅ


フーーーーーーー


私「すぅぅぅぅ…ホラ!!これ一生続けられるぞ?」

君「どこまで続くか試してみようか…」


フーーーーーーー

スゥーーーーーー

フーーーーーーー

スゥーーーーーー


---あの時に戻りたい---

---このままあの時に行けるかな---






こうして人知れず神々の戦いは終わりを告げた…

そしてその日…殆ど誰にも気付かれる事無く

月は退魔の輝きを発し始めた…

その夜…

『鯨型飛空艇』


フワフワ スィーーーー


ローグ「光の石をもう少し下げて下せぇ!!」

商人「どう?」

ローグ「ダメっすね…どっかから漂流してきた空の樽でやんす」

商人「くそう!!一応持って帰ろうか」

ローグ「夜は捜索がやっぱ厳しいっすね…」シュルシュル

商人「うん…無人島がちらちらあるからそっちも回った方が良さそうだ」

ローグ「よいしょぉ!!」ドスン

商人「どこから流れて来るんだ?そんなに古い樽じゃないな…」

ローグ「アレっすよ…オークが乗って来たガレオン級の船…近くで沈没していやすよね」

商人「あぁぁそんなの有ったな」

ローグ「帆はアレから外して持ってくると良さそうでやんす」

商人「そうか…夜間はそういう作業した方が良いな」

ローグ「う~ん…帆もかなり重いんで飛空艇で運ぶのはちっと無理だと思いやす」

商人「小舟使うしか無いか」

ローグ「そーっすね…場所だけしっかり分かるようにすれば良いっすね」

商人「一回戻って作戦練り直そうか…暗い中闇雲に探しても効率が悪すぎる」

ローグ「そうしやしょう…頭の事も気になりやす」

商人「ホムンクルス!一旦休憩する」

ホムンクルス「はい…幽霊船はエクスカリバーの光で遠くからでも分かりやすいですね」

商人「うん…向こうからもこっちの光が見えてる筈」

ホムンクルス「貝殻の通信が無いので簡単な光での情報伝達も必要になりそうですね」

商人「そうだね…そういうのも練り直さないといけない」

ホムンクルス「では戻ります」グイ シュゴーーーーー


--------------

『幽霊船』


トントントン ギコギコ


かしらは横になってて良いでがんす

私の体は私が一番知って居る…このような状況で落ち着いて寝て居られるものか

船体が傾いているのは右舷側の居室が水に浸かっているせいだけか?

そうでがんす…窓から海水が入って来て排水が間に合いやせん

荷が重すぎた訳か…一度降ろすにしても亀の背ではそう上手くいかんな…

窓を一度全部木材で打ち付けてしまえばなんとか排水出来るでがんす

動けるオークはどの位だ?

まともに働けるのは6人っすね…出来れば今晩中に排水を終わらせたいでがんす

おお?かしらぁ…飛空艇が戻って来る様ですぜ?

話を聞いて来る…作業を続けていてくれ

がってん!!


フワフワ フワフワ


ローグ「着座しにくいんでロープでくくり着けときやしょう…先に居りやすぜ?」ピョン

商人「拾った資材を降ろしたいな…放り投げて良いかい」

ローグ「バッチコーイ!!でやんす」

商人「ヨッ!!」ポイ ドサー


ツカツカ…


女戦士「妹は見つかったか?」

ローグ「うぉ!!か…かしらぁぁ!!目を覚ましたんすね!!もう動いて大丈夫なんすか?」

商人「あぁ…君が無事で何よりだ」

女戦士「一番に降りて来ん所をみると…まだ見つかって居ないのだな?」

ローグ「残念ながらそうでやんす…夜の海を捜索するのは無理があるんで一度戻ってきやした」

女戦士「…」トーイメ

商人「まぁ…女海賊なら上手く乗り切ってるさ…もう少し明るくなったらすこし捜索範囲広げようと思う」

女戦士「まぁ仕方が無い…お前は良いとしてホムンクルスは少し休ませてやるのだ」

ホムンクルス「お気遣い無く…私も飛び移ります」ピョン スタ

女戦士「情報屋が食事を用意してくれている…食べて来て良いぞ…左舷側の居室だ」

ホムンクルス「分かりました」

商人「ところで君は何も体に不調は無いかい?」

女戦士「有るには有るが辛抱出来ん訳では無い」

商人「記憶とかは?」

女戦士「自分では自覚出来ん…ただ夢をずっと見て居た様に感じる」

商人「夢?夢幻を見たかな?」

女戦士「いや…私はオークシャーマンに何かやられたのに気付かずずっと事の行方を見て居たのだ」

商人「ん?それが夢?」

女戦士「今となっては夢だった様に感じる…妹が言う事を聞かないのが腹立たしくてな…ずっと死んだ事に気付いて居なかった」

女戦士「後に妖精が目の前に現れてやっと理解した…死んで居ると」

商人「事の行方を見ていたというのは?僕達は女海賊達に何が起きて居たのか知らないんだよ」

女戦士「アヌを封印の壺に封じて魔女の魔法で消し去った…直後に足元が崩落して行ったのだが私は宙に浮いたままだった」

商人「やっぱりそうだったか」

女戦士「フフ混乱したぞ?これもエクスカリバーの効果なのかと思ってな」

商人「その時点でもまだ死んでる事に気付いて無い訳か」

女戦士「慢心だったな…時の王と同じく不滅の肉体を得たと勘違えていたのだ…不滅を得たのはエクスカリバーだけだった様だ」

商人「それでどうやって生き返った?」

女戦士「何も無い宙に浮いたままの状態が不思議でな…」


周りを見回して急に孤独と恐怖が沸き上がって来た

どちらの方向に歩いても動いてる感じがしない

そこで手を引っ張てくれたのは何処からか現れた妖精だった

妖精の後を付いて行く間に色々話を聞いた

君は死んだんだよ…狭間に迷ってるから僕が案内してあげるね…

その他にはいつもの様にどうでも良い話…

そんな話の中で気付いたのは…私の事をいつの間にビッグママと呼んで居た事だ


商人「それって…」

女戦士「ただそれは夢だったのかも知れない…ふと目を開けたら私はベッドに横たわっていたのだ」

商人「スゴイな…臨死体験か…そんな風に導かれるのか」

女戦士「妖精が居ると思うともう何も怖い物が無くなった…恐怖も孤独も憎悪も何もかもすっかり消えている」

商人「分かるよ…妖精の笛で眠ってしまった後もそんな感じさ」

女戦士「だから妹も無事で居ると信じられる」

商人「今の話を聞いて僕も安心したよ」

女戦士「だからと言って捜索を止める訳では無いぞ?」

商人「ハハ分かって居るさ…でもそうか…未来君はそういう存在になったのか…」

女戦士「さて商人!お前にはまだ働いて貰わないといけない事が有る」

商人「はいはい…何かな?」

女戦士「夜が明けたら妹を捜索しながら付近の島々の場所を海図に記して欲しいのだ」

商人「あーーその必要性を僕も言いたかったのさ…」

女戦士「休憩が済んだら後で船長室まで来てくれ」

商人「分かったよ…ちょっとワインを探して来るね」スタ

女戦士「それからローグ!!話は聞いたぞ?お前が私を救ったとな?」

ローグ「ヌフフフ待って居やしたぜその台詞…ヌフフフ」

女戦士「私の体を好きな様に触ったそうだな?」

ローグ「あイヤイヤそういうイヤらしい感じは無かったでやんす」

女戦士「まぁ良い…褒美だ」

ローグ「何をしてくれやすか?」ニヒヒヒ

女戦士「私は未来の様な子供が欲しくなった…あとは分かるな?」

ローグ「ちょ…ままままマジっすか…い…いつ入用でやんすか?」

女戦士「出来るだけ早く欲しい…準備しておけ」

ローグ「へい!!急ぎで準備しやす!!」ズダダ ヒャッホー


-------------

-------------

-------------

『見張り台』


ギシギシ…


商人「ホムンクルス!!そこで何してるんだい?」

ホムンクルス「妖精さんを探して居るのです」キョロ

商人「高い場所の方が見つかりやすいのか…」

ホムンクルス「どこにも見当たりません」シュン

商人「アレ?君が持ってる明かりはランタンじゃないね…それどうしたの?」

ホムンクルス「砂銀に照明魔法を掛けているのです」

商人「ええええええ!?なんで?君が魔法を使う?」

ホムンクルス「魔術書に手順が記されています…光魔法の基本だそうです」

商人「驚いたな…他にも何か使えるのかい?」

ホムンクルス「色々試しましたがこれしか使えませんね…適正があると書かれています」

商人「それでもスゴイ事だ…その魔法で簡単な灯台が作れる」

ホムンクルス「直ぐに消えてしまいますが?」

商人「魔女が魔力と質量に依存するとか言ってたじゃない…砂銀じゃなくて銀貨とか銀塊使えば良い」

ホムンクルス「反作用のリスクが有るので乱用は禁止ですよ」

商人「反作用なんてあるのか…」

ホムンクルス「闇の作用で毒が発生したりするらしいです」

商人「なるほど…ちゃんと学ばないと危ないんだ」

ホムンクルス「はい…」


スゥ…


ホムンクルス「あ…消えてしまいました」

商人「危ないから降りておいでよ」

ホムンクルス「分かりました…」ピョン ピョン スルスル

商人「身軽になったねぇ」

ホムンクルス「憧れて居たのです…ロープを渡る練習もしていますよ」

商人「憧れか…良いね…そういうの」

ホムンクルス「私も海賊の一員ですから」

商人「そうそう…気になってたんだけどさぁ…亀って全然動かないじゃない?君は亀と話せないのかい?」

ホムンクルス「妖精さんが仲介役なのです…直接お話は出来ません」

商人「なるほどね…でもクジラとは話が通じるよね?」

ホムンクルス「少しでしたら…」

商人「クジラにも女海賊知らないか聞いてみてくれないかい?」

ホムンクルス「分かりました…ただ妖精さんが居ないとクジラを呼べないかもしれません」

商人「あああああ…やっぱり妖精が仲介役か…」

ホムンクルス「月に退魔が宿ったので狭間が遠ざかってしまいましたね…」ショボン

商人「探すのは月の無い時だね」

ホムンクルス「その様です…」

商人「まぁ今日はもう休みなよ…夜が明けたら忙しくなる」

ホムンクルス「はい…夢で妖精さんとお話をしてきます」

商人「じゃぁ僕は女戦士に呼ばれてるから行って来る…又明日」ノシ

ホムンクルス「はい…おやすみなさい」ノシ


-------------

『船長室』


ガチャリ バタン


女戦士「…浮島の進行方向は海図でいうこちらの方向だ…動いて居るから基準として使うのは望ましくない」

情報屋「あ…商人やっと来たわね」

商人「んん?何の話かな?」

女戦士「この海域で拠点を作りたいという話だ」

商人「ここに留まるのかい?」

女戦士「魔女の行方が分かるまではな…不明になったまま放置ではシン・リーンへ顔向けも出来ん」

商人「というか魔女はもう…」

情報屋「過去の記録を探しても魔女が居たという痕跡が見当たらないのよ」

商人「記録って?」

情報屋「まぁ壁画の写しなんだけれど…同年代の他の伝承でもそれらしき人物が居ない」

商人「不確定すぎるなぁ…」

情報屋「今までの未来君達の事から量子転移で次元を飛んだ場合…その場所を維持したまま過去に遡るのよ」

商人「…という事は海に落下した可能性が高い訳か…」

情報屋「そう…魔女なら石とか鉄に変性して海底で眠ってる可能性があるの」

商人「なるほど…」

女戦士「それにだ…大漁の金塊が沈んでいる事が分かって居るのだ…放置するのも勿体無い」

商人「あぁ…拠点を作って金塊のサルベージか…」

女戦士「そういう事だ…恐らく将来的にフィン・イッシュは貿易港になるだろう…ここに海士島の様な拠点があれば尚良い訳だ」

商人「じゃぁ君はここに定住するのかい?」

女戦士「いや…そのつもりは無い…足掛かりを作って外海を巡る…海賊なのだから」

商人「フフ…それで良いよ」

女戦士「…それでだ…周辺の島々で拠点にするのに良い場所を探したい」

商人「そうだね…亀はいつ動くか分からないしね」

女戦士「まず飛空艇で周辺の島々を探して海図に加えるのと…妹の捜索だ」

商人「おけおけ…僕とホムンクルス…それからローグを連れて行って良いね?」

女戦士「ローグは残して欲しい…お前とホムンクルスの2人で捜索してくれ」

商人「う~ん…まぁ何とかなるかぁ…」

ローグ「あっしは何するんすか?」

女戦士「小舟を使って沈没船から物資移送だ…帆が無いと船を動かせんからな」

ローグ「うは…めちゃ大変な役じゃないっすか…シーサーペントがうじゃうじゃいやすぜ?」

女戦士「食料には困らんと思ってヤレ…褒美は弾む」

ローグ「ウハハあっしに任せて下せぇ!!」

女戦士「船大工の海賊2人は動かせん…オークから誰か選んで連れて行くのだ」

ローグ「へい!!」

女戦士「それから飛空艇はこまめに戻って状況を報告してくれ…そうだな…4時間おきだ」

情報屋「なんか大変そうね…私も飛空艇に乗ろうかしら?」

女戦士「いや…情報屋は食事とオーク達の手当てを頼む…それから通訳…他に適任が居ない」

商人「飛空艇は2人で大丈夫さ…ホムンクルスが意外と動ける」

情報屋「そ…そうね…確かに人員が不足ね」

女戦士「もうすぐ夜明けだ…今の内に仮眠しておくのだ」


--------------

--------------

--------------

『日の出』


ザザー ザザザ…


ドス ドス ドス ドス ゴトン


カサカサ カサカサ カサカサカサ…


女海賊「…」パチ ムクリ

ダンゴムシ「!!?」カサカサ

女海賊「あれ?ここ何処?」キョロ

女海賊「んがぁ…口の中砂だらけだ…」ペッ ペッ

小さなゴーレム「…」ヨイヨイ

女海賊「私死んで無いっぽい?あんたが助けてくれたん?」キョロ

小さなゴーレム「…」フリフリ

女海賊「何コレ積んでる石…もしかしてコレ私の墓?」


カサカサ カサカサ


女海賊「おぉアラクネー!!あんたも無事か!!ワームは何処行った?」

女海賊「あぁ居た居た!良かったみんな無事だったかぁ…ヨシヨシおいで」

ワーム「プギャー」モソモソ

アラクネー「…」カサカサ

ダンゴムシ「…」カサカサ

小さなゴーレム「…」ボー

女海賊「ほんでここ何処だ?…私寝ちゃったからどうなったか覚えて無いなぁ…」ポリポリ

女海賊「…まてよ?もしかしたら次元飛んだかも…」スック ヨロ

女海賊「おととと…ふらつく」フラフラ

女海賊「これ失血だな…もっかい寝るか」


グゥゥゥゥ キュルルル


女海賊「あぁそうだ…お腹空いた夢見たんだ…そうそう人口呼吸でお腹膨らませたんだ」

女海賊「最悪の夢だったなぁ…眼を開けたら人工呼吸した相手が女エルフだった…」

女海賊「なんか食い物持って無かったっけ…」ゴソゴソ


革袋に種類が少し…こんなんじゃ腹の足しにならん

えーっと持ってる物は…ミスリルナイフと短い破壊の剣…あと望遠鏡か…

特殊クロスボウはどっかに落としたなこりゃ…

まぁ弾無いから持ってても意味無いか…

ワイヤー装置は腰にくっ付いたまんまだ…とりあえずこれでクロスボウの代わりにはなるな

んぁぁぁ後全部封印の壺の中だ…全部どっか行ったわコレ

あ!!そうそう笛だ…笛だけ取り出しやすい様にしといたんだ

有った有った…よしよしこれで妖精呼べる


女海賊「ハム…」ピーヒャララ

女海賊「おい!!妖精出て来い!!おっぱいに挟まってんだろ?」モミモミ

女海賊「…」

女海賊「……」

女海賊「………」

女海賊「くっそ日の出か…多分今狭間遠いんだな…」

小さなゴーレム「…」zzz

女海賊「あぁゴメン…寝ちゃったか…」

女海賊「しゃー無い…なんか食い物探すかぁ…ん?あれ?」

女海賊「なんだでっかい貝が落ちてんじゃん!!お!!あっちにも一杯」スタタ

女海賊「そうだよ失血には貝が一番良いのさ…てかもしかしてちっこいゴーレムが集めたんか?」キョロ

女海賊「おぉ!!良く見たら流木とか集めてんじゃん」ガッサ ガッサ

女海賊「えーと…どうやって火ぃ起す?」キョロ

女海賊「よし望遠鏡から一個レンズ外そう…」カチャカチャ


------------

『焚火』


メラメラ パチ


女海賊「ハフハフ…ホフ…うんま!!」モグモグ

女海賊「あちちち…これ汁も美味いんだ…」ズズズ

女海賊「これあんま飲むと喉渇くな…水探しに行かないとな」

女海賊「おいダンゴムシ!!食料だぞ!!種食って良いぞ」パラパラ

ダンゴムシ「…」パク モグ


バシャーン ジャブ


女海賊「んん?なんだぁ?」キョロ

女海賊「岩場の方か…」スタタタ ピュー

女海賊「おぉ!!くそデッカイ魚が泳いでんじゃん」


ザバァァーー


女海賊「うわわわ…何々!!」タジ

女海賊「え?え?え?なんで女エルフ居んのよ…ちょちょちょ…ちょい待って!」

人魚「ウフフフ…」ピョン ドボーン

女海賊「おぉぉぉ…人魚か…」アゼン

女海賊「あれ?…」

女海賊「もしかして人工呼吸したのは人魚か?」

女海賊「アレは夢じゃ無かったんか…」

女海賊「そうか…人魚に助けられたんだ…」

女海賊「貝も人魚が持って来たんだ…」

女海賊「おーーーーーい!!」フリフリ


ピョン バシャーン


女海賊「なーんか女エルフみたいで腹立つなぁ…」イラ

女海賊「話しかけてくれりゃ良いのにさ…」

女海賊「あぁぁどっか行っちゃったな…そういう所なんだよ」

女海賊「でもなんか元気出て来たぞぉ!!」ムン!

女海賊「おっし!!探検すっかぁ!!」スタタタ ピューー


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『無人島探索』


ガッサ ガッサ


女海賊「雑草はいっぱい有る…持って帰るのシンドイな」ワッサ ワサ

女海賊「謎の種が生る低木…食えれば当分食料困んない…これで船作るのは厳しそう」

女海賊「雨除けが出来る洞窟は見当たらない…まぁ海辺の岩場をくり抜けばなんとかなるか」

女海賊「飲み水は岩場に溜まった雨水でどうにかなる」

女海賊「動物は鳥とヘビだ…鳥捕まえるのムリっぽいから食うのはヘビが良いか」


ドサーーー


女海賊「おい!!まだ寝てんのかよ!!お前も手伝えよ」キック

小さなゴーレム「…」ゴロン ドスン

女海賊「あぁ疲れた…」ドター

女海賊「こりゃ今日は寝床作って終わっちゃいそうだ…まぁ一人分なら直ぐ終わるか…」

女海賊「話し相手が居ないのがなぁ…おい妖精!!早く出て来い!!」シーン

女海賊「やっぱ昼間は出て来ないよねぇ…」ショボン

女海賊「ちっと雑草の上で昼寝でもすっかな…」ゴロン

女海賊「ふぅぅぅ…なんか久しぶりにダラダラしてる気がする…こういうのも悪く無いな」

女海賊「とりあえず今日の食い物はなんとかなってるし…さぁ寝る!!」グゥ


--------------

『黄昏時』


ザザー ザブン


女海賊「ふごーー」zzz

小さなゴーレム「!!?」ムクリ キョロ


ドス ドス ドス ドス


女海賊「ふが?」パチ

小さなゴーレム「…」フリフリ

女海賊「や…やば…寝すぎた」ゴシゴシ

女海賊「寝床作る計画ががが…」

女海賊「体疲れてたんだな…んむむむむ」ノビー

女海賊「ちっこいゴーレム起きたな?ちっと岩場に穴掘るからそこの雑草を運んで欲しいんだ」

小さなゴーレム「…」ハテ? キョトン

女海賊「まぁ良いや…風避け無いと夜中寒い訳よ…寝床移すから付いて来て」スック スタ

小さなゴーレム「…」ドスドスドス


--------------

『岩場の洞穴』


スパ スパ ゴロゴロ


女海賊「まぁこんなもんで良いか…切り出した石を横に積んどいてよ…あんた得意でしょ?」

小さなゴーレム「…」ムイムイ

女海賊「ちっと雑草入れて寝床作るわ…」ガッサ ガッサ

小さなゴーレム「…」ドスドス ゴトン

女海賊「そうそうそんな感じ…ちゃんと言葉通じてるじゃん」ワッセ ワッセ

女海賊「ちっと雑草結って籠でも作るかな…」ゴソゴソ


流木切り出してお皿とコップも作ろう…

あと明かりが欲しいなぁ…油が無いから焚火するしか無いかぁ…

木材が全然足りない…焚火で速攻無くなっちゃうぞ…どうしよう

調理する以外は焚火しない方が良いな

明かり…明かり…夜光虫居ないかな?


女海賊「おいオマイ達!!夜光虫探して連れて来るんだ!!」

ダンゴムシ「??」

アラクネー「??」

ワーム「…」ケッ

ダンゴムシ「…」クルリン

アラクネー「…」zzz

ワーム「…」グター

女海賊「うは…分かりやすwやる気無し男かよ…うーん…まぁ確かに綺麗な水辺じゃないと居ないか…」

女海賊「ちっこい釜戸作って節約しながら火を起こすか…石は余ってるし」

女海賊「そうだそうしよう…」ゴソゴソ


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『釜戸』


メラメラ パチ


女海賊「すっかり日が落ちちゃった…下手に出歩くと海に落ちそうだ」

女海賊「昼間寝すぎたからこりゃ夜眠れないな…」

女海賊「あ…そうだ南極星観測して方角を確定させよう…てか今日は月明かりで結構明るいじゃん」

女海賊「お~い!!妖精そろそろ出てこ~い!!」


シーン…


女海賊「…」ショボン

女海賊「まぁ良いや…星の観測行くよ!!おいで!!」

ダンゴムシ「…」カサカサ

女海賊「ほら3匹とも行くぞ!!おっぱいの中は暖かいぞ!」グイ

女海賊「アラクネーは最近髪の毛の中が良いんだっけ?入ってろ!」

アラクネー「…」カサカサ

女海賊「ほらワーム!!早くしな!!へそのゴマ食って良いから」

ワーム「!!?」ニョロ モソモソ

女海賊「おーし!!ちっこいゴーレム!!…なんか呼びにくいなゴレキチ行くよ!!」

小さなゴーレム「!!!」ドスドス



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『星空』


キラキラ キラキラ


女海賊「久しぶりだなぁ…こんな満点の星空!!」

女海賊「ふむ南極星が低い位置だから赤道に近いんだ…ほんで今の時間でサソリ座が出てる…」

女海賊「もうすぐ夏が終わるって事か?なんか良く分かんないなぁ…」

女海賊「月は十三夜月っていう形だよ…丁度望遠鏡で見やすいんだ」ゴソゴソ

女海賊「おぉぉ良く見える…あ!!退魔の方陣が完成してるっぽい」

女海賊「そうか…そう言う事か…だから妖精が見え無いのか…」

女海賊「…」

女海賊「でもいつもおっぱいに挟まってるんだろ?ちゃんと声を聞いてるんだろ?」

女海賊「…」

女海賊「……」

女海賊「………」

女海賊「そっか…なんか寂しいけど…しょうがないね」

ダンゴムシ「…」モジモジ

女海賊「んん?あー…あんたも望遠鏡で月を見たいんだね…おけおけ…私が持っててあげる」スッ

女海賊「ホラ?」

ダンゴムシ「…」ジー

女海賊「おっきく見えるだろぉ?…月に行ったみたいだろぉ?」ポロ

女海賊「アレ?なんか涙出て来た…」プルプル

ダンゴムシ「…」ジー

女海賊「ごめんよ…月に連れて行けなくてさ…」ポロポロ

女海賊「今回はこれで勘弁して…また作戦考えるから」プルプル

女海賊「分かってるよ…あんたが色んな事我慢して妖精になってるってさ…」

女海賊「もうちょい我慢して…そうだ!!次はもうちょい大きな望遠鏡で月を見よう」

ダンゴムシ「マ…」

女海賊「え!?」ビク

ダンゴムシ「マ…」

女海賊「ちょ…あんたの鳴き声って…マジか…ダンゴムシって鳴くんか?」


マ…

マ…


女海賊「ぶわぁぁ…未来…未来ぃぃ…」ポロポロ

女海賊「ごべんよ未来ぃうぅぅぅぅ…うわぁぁん」ポロポロ


マ…

マ…


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『数日後_幽霊船』


トントントン ギュギュッ


女戦士「よし…これで帆走出来るだろう」

ローグ「良かったっすねぇ…沈没船の帆がそのまま使えて」

女戦士「うむ…これで捜索範囲がもう少し自由利く」

ローグ「沈没船からもう少し木材取れそうなんすが…どうしやす?」

女戦士「程度にもよるが…」

ローグ「ミズンマストが折れて無いんで太くて長い木材が一本取れそうでやんす」

女戦士「う~む…欲しいには欲しいが乗せられんのがな…」

ローグ「あ…飛空艇が戻って来やすぜ?」

女戦士「早いな…何か見つけたか」

ローグ「姉さんだと良いんすが…」


シュゴーーーーー フワフワ


女戦士「どうした!?飛空艇は降ろさんのか?」

商人「生きている人間を見つけたんだ…一人そっちに乗せても良いかい?」

女戦士「なに?」

商人「例の浮島で石化していた人達だよ…沢山居るんだ…事情を聞くために一人連れて来た」

女戦士「そういう事か…信用出来そうか?」

商人「さぁどうかな?本人は時の王の配下だと言ってる」

女戦士「また飛んだ人物を連れて来たな…武器は持って居ないな?」

商人「大丈夫!!争う気は無いよ」

女戦士「よし降ろせ!!」

商人「僕は探索に戻るからあとはお願い…きっと情報屋が知りたい情報が聞けるよ」

女戦士「フフそれは楽しみだ」

商人「さぁ飛び乗って!!」

謎の男「あぁ…」ピョン ドスン


--------------

『甲板』


ユラ~ ギシ


女戦士「散らかった船で済まんな…私が船長の女戦士だ」ツカツカ

謎の男「シン・リーン魔道旅団付き赤の分隊長…名は魔剣士だ」

女戦士「フフ…まぁ堅いのは抜きだ…もう事情は聞いて居るか?」

魔剣士「にわか信じられない…2000年以上も時が経って居るなどとは…」

女戦士「これが何か分かるか?」スラリ ピカー

魔剣士「む…その輝き…我らが王の物…エクスカリバー」

女戦士「そうだ…今の時代では時の王と呼ばれている…違うな…呼ばれていた」

魔剣士「やはり過去の事だと…」

女戦士「こう言えば理解出来そうか?ほんの10年前まで不滅の肉体で生きていた」

魔剣士「おぉぉ!!ではメデューサを無事討伐し魔王も…」

女戦士「これは話が長くなりそうだな」

魔剣士「私も聞きたい事が沢山あるのだ…」

女戦士「まぁそう焦るな…とりあえず直近の話からだ…その赤の分隊だったか?見方は何名ほど残って居る?」

魔剣士「正確にはまだ把握していない…眼を覚ましていきなり戦闘になってしまった」

女戦士「んん?小型の機械か?」

魔剣士「機械?良く分からんが物理系の魔法の様だ」

女戦士「フフ…まぁそう思うだろうな」

魔剣士「確認出来た味方は15名程…魔法の触媒が乏しく隠れ潜んで居る」

女戦士「なるほど…では取り引きだな…武器と触媒を提供する代わりに一時的に私達に協力して貰いたい」

魔剣士「協力?」

女戦士「今シン・リーンの姫君を捜索している所なのだ…そうだな…お前達の王の子孫と言えば良いか」

魔剣士「なんと!!」

女戦士「無事に見つける事が出来たならお前達をシン・リーンへ送り届ける事を約束する」

魔剣士「フフフ…ハハハハ…断る理由が無い」

女戦士「取り引き成立だな?」

魔剣士「これからどうすれば?」

女戦士「万全では無いが丁度船を動かす事が出来るようになった所だ…まず味方の確保だな」

魔剣士「私は案内出来ない…周辺の事情が分からなさすぎる」

女戦士「分かっている…現地でこちらを敵と認識しない様にだけ振舞って欲しい」

魔剣士「なるほど…了解した」

女戦士「よし早速移動を始める…ローグ!居室に案内して情報屋と引き合わせてくれ」

ローグ「分かりやした…ワクワクしてきやしたねぇ!こっちでやんす…付いて来て下せぇ」スタ


--------------

『帆走』


バサバサ ザブ~ン


女戦士「メインマストの横帆がまだ広げられんがなんとか進む様だ…」

海賊「修理にはもう少し時間がかかるでがんす」

女戦士「人駆が足りんのは分かっている…焦る必要は無い」

海賊「へい!!」

ローグ「頭ぁ!!沈没船の周辺は岩礁がある様なんで迂回した方が良いっす」

女戦士「そうだな…海図を商人が持って行ったままだから帰りを待つ」


スタスタ


情報屋「やっと動き出してこれで一安心ね」

女戦士「む…情報屋か…どうだ?例の男から何か聞き出せたか?」

情報屋「私の方が聞かれてばっかりよ…書物を渡して逃げて来た所なの」

女戦士「そうか…」

情報屋「でも当時の魔法は今と比べられないくらい進んで居たのは良く分かった」

女戦士「それは?」

情報屋「本物の魔術師は飛ぶのだそうよ?魔道航空連隊だったかしら…それが主力だとか」

女戦士「良く分からんな…空から魔法を撃つのだろう」

情報屋「面制圧がどうのこうのとかそういう話ばっかり…彼は知識人では無くて軍人ね」

女戦士「まぁゆっくり話すのだな…あの男からしてみれば2000年未来に飛んだ訳だから」

情報屋「そうね…私よりも魔女に引き合わせたかったわね」

女戦士「うむ…」

情報屋「それで…今は何処へ?」

女戦士「浮島だ…仲間が数十名残って居るそうだ…この船に退避させた方が良い」

情報屋「なるほどね…という事は他の小島にも人が流れ着いてるかも知れないわ」

女戦士「確かに…石になった魔物も復活しているかも知れんと言う事だ」

情報屋「う…もうしばらく魔物とは会いたく無い」

女戦士「同感だ…お?飛空艇が戻って来るな」

情報屋「もう日が暮れるから今日はこれで捜索は終わりね」

女戦士「…」

情報屋「女海賊が気にかかる?」

女戦士「まぁ…そうだ…気持ちは落ち着かん」

情報屋「そうだ!!彼らなら千里眼で探せるかも知れない!!」

女戦士「知らん人を探す事は出来んと魔女は言って居たぞ?」

情報屋「この周辺に居る人間はそんなに多く無いでしょう?全員の眼を見てもらうとか…」

女戦士「なるほど…数を撃てばなんとかという奴か」

情報屋「ちょっと聞いてみて来る」タッタ


----------------

『船尾』


フワフワ ドッスン


商人「よし!金具引っかけて来る…ホムンクルスは先に降りて良いよ」

ホムンクルス「海図を持って行きますね?」

商人「あぁお願い!女戦士に渡しておいて」


ツカツカ


女戦士「私の方から来たぞ」ズイ

商人「あぁ…残念ながら女海賊はまだ見つかって無い」

女戦士「そうか…」ウツムキ

商人「周辺の島は全部海図に記したよ…拠点に出来そうな湾のある島も一つあった」

女戦士「ほう?」

商人「ただ近寄ってはみたけど残念ながら女海賊の痕跡みたいなのは見つからない」

女戦士「まぁ仕方が無い…」

商人「後ね…浮島なんだけど浅い海域で座礁してるというか引っかかって止まってる」

女戦士「この船で近付けそうか?」

商人「行ける行ける…多分楽園が落ちた時の大波で浅い所に乗り上げたんじゃ無いかと思う」

女戦士「なるほど…ではそこも拠点に出来る可能性があるな」

商人「う~ん…津波で流されなきゃ良いんだけど…」

女戦士「建物が有るか無いかで初動が全然違う」

商人「まぁそうだね…考え様によっては巨大な船っていう見方もあるかぁ…」

女戦士「まだあの浮島は殆ど探索出来ていないしな」

商人「じゃぁ当面は浮島だね」


--------------

『無人島』


ドドドド


女海賊「おぉぉぉ!!これお姉ぇの船の帆下駄だ…帆付きで流れて来てる」

小さなゴーレム「!!?」ドスドス

女海賊「ちょいこれ持って帰るぞ…木材と布があったら小舟作れる」グイ

女海賊「うわ…重いな」

女海賊「ここで切り分けるからあんたは寝どこまで運んどいて」スラーン スパ

小さなゴーレム「…」グイ ドスドス

女海賊「てかこれメインマストの縦帆だな…これ無くなったら帆走出来ないんじゃね?」スパ

女海賊「なーんか嫌な予感して来た…あの瓦礫落ちて幽霊船ぶっ壊れたかもな…」

女海賊「そういや楽園で降りたっきり飛空艇も見てない…」

女海賊「そうだ水も食料も無かった筈…あ…でも商人は食料イランか」

女海賊「マテマテ商人は上まで登って来てた…落ちた可能性ある」

女海賊「ヤバいな…よくよく考えたら無事な方がおかしいわ…」スパ

小さなゴーレム「…」ドスドス

女海賊「ゴレキチ!!切り分けた奴全部運んどいて!!私他に流れ着いて無いか見て来る」スタタタ ピューー

小さなゴーレム「…」ガッサー ドスドス


--------------

『双胴船』


トントントン


女海賊「よし!木組みだけで船組むの結構難易度高いな…」トントントン

女海賊「ゴレキチ!!流れて来た樽にあんたが入ってどんだけ沈むか試してみてる」

女海賊「ほい…こん中入って!!」

小さなゴーレム「??」ドスドス スポ

女海賊「おけおけ…ちょいこのまま転がして行くぞ?」コロコロ


ドブン! ブクブク


女海賊「ふむ…8割沈むか…でも一応浮くな」

女海賊「よーし…カウンターウエイトとしては十分だ…転覆防止に丁度良いや」

女海賊「おけおけ出て来て良いよ」

小さなゴーレム「…」ザブザブ

女海賊「暗くなって来たから今日はこん位で終わろうか」

女海賊「食事にすっから3匹連れて来て…今日は花の蜜あるからアラクネー喜ぶ」

小さなゴーレム「…」ドスドス

女海賊「ゴレキチの食事は何が良いんだろうなぁ…魔石か?」


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『浜辺』


ザザー ザブン


女海賊「はぁぁぁ…このまま大の字で寝ても大丈夫そうだな…」ドター

女海賊「もう今日はなんもやる事無いから3匹とも自由にしてて良いぞ」

アラクネー「…」カサカサ モソモソ

女海賊「あんたはやっぱ髪の毛の中が好きか」ポリポリ

女海賊「ん?もしかして何か食い物あんの?」

女海賊「まぁ良いか…」

ダンゴムシ「…」クルリン

女海賊「あんたの定位置はおっぱいの間ね…そこ暖かいし湿ってるし」

女海賊「ワームはへそとか耳の穴が好きなんだろ?分かってるって!!」

女海賊「今日も星がキレイだねぇ…」ボー

女海賊「ん?なんだアレ?」

女海賊「…」

女海賊「あの星だけなんか動き早いな…」

女海賊「んん?」


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『30分後』

 
ザブン ザザー


女海賊「やっぱあの星だけメッチャ移動してるわ…なんだアレ?」ゴソゴソ

女海賊「望遠鏡で見えっかな…」カチャ

女海賊「んぁぁ…星はやっぱ星か…ちっこく光ってるだけだな」

女海賊「アイツだけ動いてる方向も違うんだよなぁ…」

女海賊「もしかしてアレがホムちゃんの言ってる衛星ってやつかな?」

女海賊「…」


世界の果てってこんな感じなのかもなぁ…

誰も居なくて…

ずっと一人事しゃべって…

全部食い物食い尽くしたらひっそり死ぬ…

まぁ今はゴレキチも居るし

3匹の虫連れてるからそんな寂しく無いけど

これ一人だったらキツイだろうなぁ…

ドラゴンも飼い主居なくなって寂しかっただろうなぁ…

ゴレキチも一緒か…


プチプチ…


貝の子供が呼吸する音だ

よく耳を済ませたら命の音が沢山する

分かって来た…

これが生きてるって事なんだ…

これが命を感じるって言う事…

剣士は目が見えなくても感じていた世界…

分かる…

そこで生きてるのが分かる…


女海賊「ごめんよ…いっつも美味しく食べちゃって…」

女海賊「女エルフが生き物食べる前にお祈りしてた意味…やっと理解したわ」


ザザー ザブン


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『翌朝』


シュパパパパーン


女海賊「!!?」ガバ キョロ

女海賊「なんだ?」

女海賊「インドラの光が通った後か…」キョロ

女海賊「何処?」ドタドタ

女海賊「分かった!!うっすら筋が出来てる…南西の方角か」

女海賊「あっちだな?良し…誰か生きてるんだ」

女海賊「急いで船作んないと…」アセアセ

女海賊「もう何日経ったか分かんなくなって来た」

女海賊「おいゴレキチ!!もっと木材探して拾って来て!!また流れて来てるかも知んない」

小さなゴーレム「??」キョトン

女海賊「ダンゴムシ!!あんたの方が賢いんだから一緒に行ってあげて」

ダンゴムシ「…」カサカサ

女海賊「おっし!!今日中に仕上げるぞ!!」ドドドド


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『幽霊船』


ゾロゾロ ゾロゾロ

おぉ…魔導船とは原理が違うのか

どうやって風の精を導いて居るんだ?

どこかにイリジウムを仕込んで居るのだろう


ローグ「ウハハ…何の話なんすかねぇ…」

情報屋「私達とは文明が異なるのよ…古代遺跡の動力を私達が理解出来ないのと同じね」

ローグ「当たり前の事が違うって事っすか…」

情報屋「彼らが滅んだ原因は祈りの指輪の乱用だったらしいわ」

ローグ「次元の崩壊って奴っすね?」

情報屋「そこら辺は良く分からない…でも何かの原因で知識を失った…魔王が奪ったと言うのが定説だけど」

ローグ「なーんか分かりやすぜ?未来君が記憶を失うのと同じじゃないんすか?」

情報屋「そうね…そういう事が起きて居たのかも知れない」


ツカツカ


女戦士「皆の者…私が船長の女戦士だ」

女戦士「メデューサの石化が解け2000年の時を超えて混乱している者も多いだろう」

女戦士「どうか状況をしっかり理解出来るまで争いごとにならない様に願いたい」

女戦士「まず!この船にはオークも乗船している」

女戦士「しかしこの船に乗っている者は敵では無く同じ船に乗る仲間だと思って欲しい」

女戦士「文化も文明も異なる者同士…どうか上手く交流してくれ」

女戦士「先ずは…食事と酒!!ローグと情報屋!!振舞ってやってくれ」

ローグ「へい!!はいはい皆さん!!この樽!!この中にワインが入って居やす」

情報屋「器は此処よ?」

ローグ「自由に飲んで下せぇ…早い者勝ちなんで勝手にやって欲しいでやんす」

情報屋「食事は順に配って行くので少し待って」

ローグ「はい!開始!!」


ドヨドヨ ザワザワ

どうも衛生的には思えんが…

腹に何も入れないよりは良いんじゃないか?

錬成の物以外を口にして魔力低下のリスクをどうする…

『2時間後』


ガヤガヤ ウハハハ


女戦士「どうやら食文化が違う様だな…口に合わんらしい」

情報屋「オークが種子とか骨を食するのと同じ感じなのね…」

女戦士「まぁ…ワインは好評そうだ…」


スタスタ


魔剣士「魔導士は錬成したレーションという物しか口にしないのだ」

女戦士「ほう?何故?」

魔剣士「不浄の物を食すると属性低下を及ぼすのでな」

女戦士「良く分からん」

魔剣士「種子が有ればレーションを自前で錬成出来る…骨も良い材料だ」

女戦士「フフ…オークと同じと言う訳か…ではキノコも好むのだな?」

魔剣士「キノコは特効がある」

女戦士「荷室に沢山積んで有る…好きに使って良い」

魔剣士「それは皆喜ぶ」

女戦士「ローグ!!用意してやってくれ」

ローグ「へい!!」ダダ

情報屋「なんかオークとかエルフがどうして肉を食さないのか分かって来た気がする」

女戦士「うむ…自然と魔力をエネルギーに変えて居るのだろう」

情報屋「魔女がフルーツを好んで居たのはそういう所ね」

女戦士「さて私は不浄の物を少し食べるか」

魔剣士「う…済まない…嫌味で言った訳では無い」

女戦士「構わんよ…」ツカツカ


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『デッキ』


カクカク シカジカ


魔剣士「…なるほど…この魔王島の地下には古代遺跡が有ったと…」

情報屋「今動いて居る小型の機械が目覚めたのは最近の事…魔王が古代の遺物を目覚めさせてしまった訳」

魔剣士「ふむ…アレは一定以上追って来ないのだがどういう理由なのだ?」

情報屋「さぁ?古代遺跡を守っているだけなのかも知れない」

魔剣士「奥に何があるのかまだ分からないのだな?」

情報屋「そうよ…出来る事なら私も調べてみたいわ」

魔剣士「ここを要衝として利用するのであればアレを掃討する必要がある」

情報屋「数がどの位居るのか分からないから慎重にやるべきね」

魔剣士「確かに…」

情報屋「ところで昨日話した千里眼という魔法の件…」

魔剣士「あぁ…皆に聞いてみたが誰もその様な魔法の存在を知らない」

情報屋「そう…残念だわ」

魔剣士「似た様な効果でインセプトという術はある」

情報屋「それは?」

魔剣士「感覚共有で相手の能力を盗み見る」

情報屋「感覚共有…それは視覚も?」

魔剣士「視覚も含む…すべての感覚を霊的に感知するのだ」

情報屋「遠く離れた人でも?」

魔剣士「記憶を共有している者…つまり会った事が有る人物」

情報屋「理解したわ…多分その術の事ね…それを今の時代では千里眼と呼んでる」

魔剣士「察するに私どもでは力になれそうに無い…不明になっている者を探したいのだろう?」

情報屋「そう…でもありがとう…色々勉強になったわ」

魔剣士「それはどうも…」

情報屋「私も察しが付いた」

魔剣士「んん?」

情報屋「そのインセプトを使っても家族や友人と感覚共有が出来ないのでしょう?」

魔剣士「…」

情報屋「だから私達に接触してる…軍人がそう簡単に誰とも分からない者と関わると思えないわ」

魔剣士「フフさすが見通されているか…その通り…時を超えて孤立しているのを既に実感しているのだ」

情報屋「なら私達の側…いえ…現実に合わせるという事も必要よ?」

魔剣士「食事に口を付けなかった事を言って居るのなら済まないと思って居る…慣れるには時間が必要なのだ」

情報屋「ウフフ…ただの軍人だと思って居たら違った様ね…こういう話が出来て少し嬉しい」

魔剣士「我らは時の旅人…絶望している者も居る」

情報屋「分かるわ…愛した家族ともう会えない…国も無い…文化も無い…時空を超えるとはそういう事よね」

魔剣士「…」グビ ゴク

魔剣士「ワインは我らの時代と同じ味…ふぅ」トーイメ

情報屋「…」


祈りの指輪の乱用

こういうことがその時代にも起きて居たのね

不明になった人を求めて次元を飛んでしまった人達…

そうやって次元を歪めた歴史なんだ…

だから記録に残らなかった

夢幻の住人達…


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『数日後_船長室』


ガチャリ バタン


商人「呼んだかい?」

女戦士「やっと来たな…」

商人「どうしたの?」

女戦士「妹と魔女の捜索に成果が出て居ない…」

商人「う…ごめんよ」

女戦士「いや仕方の無い事だと理解している…だから大事な事をお前に頼みたい」

商人「え?」

女戦士「フィン・イッシュとシン・リーンに協力を仰ぎたいのだ…急ぎで飛んでくれ」

商人「どういう事かな?」

女戦士「まずフィン・イッシュ女王に事情を話して人員の確保を願いたい…例のキャラック船をこちらに回して欲しいのだ」

商人「なるほどね…それなら盗賊ギルドにもお願いしないとね」

女戦士「うむ…アサシンが不明になってしまったから代理のアヌビスに言えば良い」

女戦士「それからシン・リーンへは魔剣士を連れて行って女王に事情を話してくれ」

商人「シン・リーンはこっちに来れるかな?」

女戦士「魔術師が数名来るだけで捜索は捗る筈」

商人「そういう感じね」

女戦士「今回の石化が解けた件はこの場所だけでは納まって居ない筈…恐らく世界的に影響が大きいと思う」

商人「うん…」

女戦士「機械が目覚めて大変な時期かもしれないがこの件も捨て置けない…そう伝えて欲しい」

商人「わかったよ…そうだなぁ…狭間使って移動して最速で往復4日という所か…」

女戦士「出来るだけ急いでほしい…特にキャラック船だな」

商人「僕とホムンクルス…あと魔剣士の3人で行けば良いね?」

女戦士「うむ…こちらも人員を裂けない…済まないな」

商人「まぁ…捜索がうまく行かないから仕方ないね…直ぐに移動するよ」

女戦士「頼む…無事を祈る」


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『デッキ』


ドタドタ


ローグ「頭ぁ!!小型の機械討伐はシン・リーンの兵隊に任せて良いんすか?」

女戦士「奴らの方が隊行動のプロだ…私達は桟橋の設置に注力して良い」

ローグ「木材を沈没船に取りに行かにゃならんすね…」

女戦士「小舟で往復してくれ…幽霊船は固定砲台としてここを動かす訳にいかん」

ローグ「分かりやした!!忙しくなりやすねぇ」

女戦士「動けるオークが徐々に増えているからまだマシだ…手先が不器用なのがアレだが…」

ローグ「じゃぁちゃっちゃと行って来やす…日が落ちる前には戻るでやんす」タッタッタ

女戦士「頼む…」

情報屋「本当…人手不足ね」

女戦士「まさかこんな展開になるとは思って居なかったからな…」

情報屋「技術持ってるのが海賊2人しか居ないと言うのがね…オーバーワークになって居ないかしら?」

女戦士「そうだな…小舟も増やしたいし…作りたい物が沢山ある…」

情報屋「わたしはせめて美味しい食事を用意するくらいね」

女戦士「世話を掛けるな…」

情報屋「さて…わたしも働こう!」スタ


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『鯨型飛空艇』


シュゴーーーーーーー


魔剣士「…これはスゴイな…魔導航法で移動できるとは…」

商人「へぇ?ハイディングの事を魔道航法と言うんだ?」

魔剣士「熟練した魔導士は単独で同じ様に飛翔するのだ…これは魔導士で無くとも飛べる…しかも物資運搬まで」

商人「君は飛べるのかい?」

魔剣士「私は歩兵だ…専門が錬成術で魔法陣の敷設が主な任務なのだ…結界を増やして行く役割と言えば分かるか?」

商人「なんか良く分からないけれど…陣地構築な訳ね?」

魔剣士「ここで休息を取る事も出来る…これが有ればもっと早期に魔王軍を追い詰められただろうに…」

商人「ハハ…なんか話が読み取り難いなぁ…」

ホムンクルス「予測ですとあと3時間程でフィン・イッシュに到着します」

商人「よしよし…いつも通り墓地に隠して城へ行こう」

ホムンクルス「はい…」

魔剣士「気になって居たのだが…君はエルフか?」

ホムンクルス「違います…私は人間です」

魔剣士「そうか…まぁ確かに体は小さいな」

商人「どうしてエルフだと思うんだい?」

魔剣士「エルフの中に君の様なたたずまいの者が居ると聞いた事が有る」

商人「なるほどね…それ精霊シルフかな?」

魔剣士「シルフ?」

商人「なんか話が噛み合わないねぇ…時の王はまだ出会って無いのかな…」

ホムンクルス「私達が知って居る歴史と実際とは少し違って居るのかもしれませんね」

商人「そんな感じだね…まぁこれから色々分かって行くだろうね」

ホムンクルス「歴史をお話頂ければ…あ…」ピタ

商人「ん?」

ホムンクルス「一度リリースします…少し確認したい事があります」

商人「構わないよ」

ホムンクルス「リリース…」スゥ

商人「順調だね…まだ海の上さ…羅針盤の方向も大丈夫」

ホムンクルス「いえ…上空です」

商人「え?」スタ キョロ

ホムンクルス「大型の船が見えませんか?」

商人「あああああ!!なんだアレ?」

ホムンクルス「信号をキャッチ…識別コードOV-277機…以前エネルギー供給をした未確認機です」

商人「早いぞ!!通り過ぎて行く…」

ホムンクルス「こちらを補足した模様…暗号を送信してきています」

商人「暗号?」

ホムンクルス「分かりました…着陸要求ですね」

商人「アレが着陸するんだ…どこに行くんだろう?」

ホムンクルス「どうしましょう?なにか情報を送信しましょうか?」

商人「何かって?」

ホムンクルス「現在の地球の状況ですとか…歴史ですとか…恐らく情報収集の為に地球を周回していると思われます」

商人「そうなんだ?当たり障りの無い程度に教えてあげたら?」

ホムンクルス「送信完了…返答がありました…自動返信です…コードネーム…ホワイトフォックス」

商人「意味が分からない…」

ホムンクルス「白狼…剣士さんが搭乗している可能性があります」

商人「ええええええええええ!!ちょ…」

ホムンクルス「機体の詳細が分かりました…兵器非搭載の民間シャトル…生命維持装置は2台稼働中…」ペチャクチャ…

商人「そうか…石化が解けるのと同じ理屈か…もっと大昔から現代まで来る事が出来たんだ…」ボーゼン

ホムンクルス「相対距離が開いたため通信が途切れました…ハイディングします」スゥ

商人「あんなのが急に降りて来たら皆びっくりするだろうな…」

魔剣士「話に割り込んで悪いが…今のは古代文明の何かだな?」

商人「そうだよ…」

魔剣士「魔王が古代の機械を目覚めさせた…それと関係する訳か」

商人「う~ん…そこまでは分からない…ただ…」

魔剣士「んん?」

商人「勇者が帰還した可能性がある」

魔剣士「天から勇者が降りて来る…予言の者…この時代でも…」

商人「なんか話が噛み合わないけど…まぁそんな感じかな」

ホムンクルス「商人さん…恐らく先ほどのシャトルは地球を周回していますので又通信出来るかも知れません」

商人「それは良い…剣士が乗っているかも知れないなら幽霊船の居場所を教えてあげると良いね」

ホムンクルス「では次に通信が入った場合双方向通信をトライしてみます」

商人「うん…任せる」


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『無人島_双胴船』


ズズズ ズズズズ


女海賊「んむむむ…もうちょい!」ググ

小さなゴーレム「…」ググ


ザブーン プカプカ


女海賊「おっしゃぁぁぁぁ!!はぁはぁ…」

女海賊「諸君!!見たまえ!!これが新しい船…ゴレキチ号だ!!」ジャーン

女海賊「ゴレキチ!!あんた乗る場所はそっちのちっこい方ね…樽に収まるようになってるから乗ってみて!!」

小さなゴーレム「…」ドスドス スポ


グラー ユラリ


女海賊「おぉ!!完璧…」

女海賊「ほんでこっちの大きな船体が私の乗る場所…」ギシギシ

女海賊「板で繋いで渡してあるから結構広いっしょ…ほい3匹は遊んでて良いぞ!!」

アラクネー「…」カサカサ

ワーム「…」ニョロ

ダンゴムシ「…」モソモソ

女海賊「こんだけ広いとやっぱ安定してて良いわ…」ピョン ユラユラ

女海賊「ゴレキチ!!荷物全部積むぞ!!雑草とか籠とか全部運んで!!」

小さなゴーレム「…」ドスドス

女海賊「土が入った籠も忘れないで乗せてね…私は樽に水汲んでくるわ」スタタタ ピューーー


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『1時間後』


ヨッコラ ドスン!!


女海賊「水こんだけ乗せても余裕だな…ヌフフ」プカプカ

女海賊「おーゴレキチ!!私の寝床作ってくれたんか!!良いね…そうそうコレで良いのさ」ガサガサ

女海賊「ちっと荷物整理したら出発しよっか…」ゴソゴソ

小さなゴーレム「…」ヨイヨイ

女海賊「喜んでる?ちょい今は止めて…つられて踊っちゃう」ゴソゴソ

女海賊「お!!そうだそうだ…ダンゴムシ?望遠鏡をいつでも覗ける様に設置しといたぞ…あんたが見やすい高さになってる…覗いてみ?」

ダンゴムシ「!!?」カサカサ

女海賊「えーと…もう忘れ物無いかなぁ…」キョロ

女海賊「貝殻はもうイランな…謎の木の実も全部乗せた…塩もあるな?」

女海賊「あ!!イカンイカン…石をちょっと持って行かないと石焼出来んくなる…」ダダ

女海賊「おーーい!!ゴレキチも石運ぶの手伝ってぇぇ!!」


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『船出』


ザブン ギシ


女海賊「オホン!!それでは諸君!!海の向こうを目指して進むぞ!!」

女海賊「準備は良いか!?

小さなゴーレム「…」フリフリ ヨイヨイ

ダンゴムシ「…」フリフリ ヨイヨイ

アラクネー「…」フリフリ ヨイヨイ

ワーム「…」フリフリ ヨイヨイ

女海賊「よ~し!!三角帆開くぞぉぉ」バサ バサバサ


グイグイ ググググ スィーーーー


女海賊「おおおおおおおお!!早い早いぃ!!」

女海賊「やっぱこんだけデッカイ三角帆だと違うな…双胴船にして正解だわ」

女海賊「これ川でもスイスイ登っていくぞ?」

女海賊「しかも傾かないからメチャ安定して風捕まえられる…ヤバイ!!ワクワクしてきた!!」

女海賊「ええと…進路は…南西だったな…多分あっち」グイ バサバサ

女海賊「よしよし舵もちゃんと機能する…この位置にロープで固定しよう」グイグイ ギュゥ

女海賊「ウハハ楽ちんだ!!」

女海賊「ちっと私がマストに上がっても大丈夫かチェックするかな…」ヨジヨジ

女海賊「ふむ…不安定にはなって無い…嵐じゃなきゃ大丈夫そうだ」

女海賊「見晴らし良いぞぉ!!3匹とも登ってコーイ!!」キョロ

女海賊「あ…なんだアレ?何か飛んでる…」ピタ

女海賊「早い!雲の筋が形成されてる…」

女海賊「私の飛空艇だな?そうか…ハイディングして飛んでるとこんな風に見えるんか…」

女海賊「ちょい望遠鏡で確認しよう」ピョン ギシギシ

女海賊「どれどれ…」カチャ

女海賊「くそう見え無いな…てかハイディングしてるなら見える訳無いか…」

女海賊「かなりの高高度を移動してる…行き先はもうちょい左ね」

女海賊「自分の現在地分かんないから何処に向かってるのかも分かんないなぁ…」

女海賊「まぁ良いや!!あの雲の筋に進路合わせよう」ダダ グイ


バサバサ ギシ


女海賊「さてぇ!!ちっと体洗うかな…おいワーム!!海水で流す前に体掃除しなくて良いか?」

女海賊「アソコの掃除もやって良いぞ」ヌギヌギ

ワーム「!!?」ニョロ モソモソ

女海賊「穴の中には入るなよ?」

女海賊「あーー髪の毛も洗った方が良いなメチャ絡まっとるわ…」

女海賊「アラクネー!!髪の毛もうちょい何とかしてぇ!!」

アラクネー「!!」カサカサ

女海賊「ダンゴムシ!!おっぱい吸っても良いぞ…特別に両方だ」ボヨヨン

ダンゴムシ「…」タジ

女海賊「あぁぁぁ素っ裸で船の上ってメチャ気持ち良いな…ちっと寝るから掃除やっといて」ドター


バサバサ バサバサ


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『半月後_無人島』


フワフワ ドッスン


商人「ここだよ…降りて確認して」

女戦士「…」ツカツカ キョロ

ローグ「本当っすね…新しい焚火の跡が有りやすね…貝殻も散らかっていやす」

商人「向こうの岩場に寝床と思われる洞穴もあるんだ…多分破壊の剣でくり抜いた痕跡さ」

女戦士「砂場に大きな足跡が有るな…何だと思う?」

商人「多分楽園に居た小さなゴーレムだよ…一緒に行動してるんだ」

女戦士「妹の無事が確認出来ただけでも心が落ち着いた」プルプル

ローグ「頭ぁ!!浜辺に船を引きずった跡が残って居やす!!」ダダ

女戦士「流れて来た物なのか…自分で作ったのか…どちらにせよここから出て行ったのは間違いない様だ」

商人「ここは幽霊船からかなり離れて居るからインドラの光は見えなかった様だね」

女戦士「私ならどちらに向かうか…」トーイメ

商人「僕はこう思う…例の未確認機を追った…気付いて居ればだけど」

女戦士「やはりそう思うか…」

ローグ「どうしやす?あっしらも探しに行きやすか?」

女戦士「いや…今は行けないな…もう少し体制を安定させなければならない」

商人「飛空艇での捜索は引き続き続けられるけどね…」

女戦士「それは続けて良い…海図の精度を上げて行くという意味でもな」

商人「剣士が本当に乗っているか分からないけど…もう一度あの二人には出会って貰いたいよ」

女戦士「妹は未来に向かって進み始めたのだ…」トーイメ

商人「そうだね…」

女戦士「妖精が導いて居る…だからきっと…めぐり逢える」

商人「妖精か…」

女戦士「さて…ここも要衝の候補地として加えよう…行くぞ」スタ

ローグ「あらら?もっと見て行かんで良いんすか?」

女戦士「もう私の気は済んだ…私は私の未来へ行く」

商人「じゃぁ戻ろうか…乗って」

女戦士「…」トーイメ


---妹よ---

---進め---

---未来へ---



--------------

--------------

--------------


 めぐり逢い編

   完




============ Fin ==============



エンドロール

作者:Kashmir

もしDiscordとかで見かけたらよろしくね

最後まで読んでくれた人は本当にありがとうございます

続きでは無いですが

別の作品も書いてみたいと思って

伏線を大量に残した感じにしました

あれ?なんで盗賊外れちゃったの?…とか色々あると思います

足の不自由な子…何だったの?

機動隊って何?…みたいな

はい。僕は盗賊が一番好きなんです

以上!!

ではまたどこかで ノシ

以下

いつ終わるか分からない「おまけ」


勇者「魔王は一体何処にいる?」のおまけ








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地震…津波…噴火…寒冷化

落雷…隕石…洪水…日蝕

飢餓…疫病…地殻変動

あらゆる天変地異で世界は疲弊していた

地球を襲った地軸の移動

太陽と月が喧嘩をしてしまったかのように

違う方向から登り

世界は混乱を極めた

あれから数十年…

安住の地を探し人々はそれぞれの営みを

それぞれの場所で始めようとしている…


再建都市バン・クーバ


そこにかつて神の手と知られた男の遺児がいる

少年は大人になり…

世界の秘密へと歩み始めようとしていた

『地下鉄道_列車』


プシューー モクモク


盗賊「姉御はまだ来ねぇのか…遅せぇ」イラ ウロウロ

ロボ「ピポポ…」ウィーン

盗賊「ちぃぃ…とりあえず先に乗って場所だけ抑える…逸れるな?」スタ

ロボ「ピピ…」ウィーン


おい押すな!!後ろの列車に移ってくれ

ちょっと…そこは私が座っていたの!!

はいはい席ありやすぜ?2人?では2銀貨で…ウヒヒ


ドヤドヤ…


盗賊「ちぃぃ…こんなつまらん事に2銀貨使っちまった…ロボ!席取られるから動くなよ?」

ロボ「ピピピ…」キョロ ウィーン

盗賊「こりゃ姉御達来たら立ち乗りになんな…」


ボエーーーーーー プシューーーーー


盗賊「マズい…出発の警笛だ…」

学者「兄貴ぃぃぃ!!」タッタッタ

盗賊「おう!!間に合ったか!!早く乗れ!!」グイ

学者「はぁはぁ…大変っす…姉御は来れんらしいっす!!」

盗賊「なんだとぉ!!?どういう事だ!!」

学者「前回の機械化兵団との戦闘で負傷していたらしいっす…まだミネア・ポリスに居るとか」

盗賊「なんで連絡が来ないんだ!!」バン

学者「俺っちも迎えに行ってさっき知ったんすよ…はぁはぁ」

盗賊「くそう!!姉御抜きで作戦実行か…」

学者「兄貴なら大丈夫っすよ」

盗賊「それで…姉御の容態とかは聞いて居ないのか?」

学者「結構な大怪我だとか…」

盗賊「だろうな…少々の事じゃ我慢していつも来るからな…」

盗賊「う~む…ミネア・ポリスに見舞いに行った所で治る訳でも無ぇし…」

学者「この季節逃したら船手に入らんすよね」

盗賊「仕方無ぇ…俺らだけで盗んで来るぞ」

学者「そう言うと思って居やした…」パサ

盗賊「んん?何だそりゃ?」

学者「姉御が残した作戦計画っす…ギルド宿舎の部屋の方に置いてあったんで持って来やした」

盗賊「おぉ…見せてみろ」バサ



ふむ…

船を奪った後は地庄炉村まで自力で行って…

なるほど…向こうの大陸の盗賊ギルドとコネクションが有るのか


盗賊「おい!!姉御が盗賊ギルドと接触してたのは知って居たか?」

学者「知らんっす…今知りやした」

盗賊「そういや前に誰か知らん奴らと組んでた事が有ったな…アイツ等か…」トーイメ

学者「その盗賊ギルドに手を借りる感じなんすか?」

盗賊「結果的にそうなるんだろうな…どうも荷を運ぶ必要があるらしい」ヨミヨミ

学者「ちょっと心配なのが…2人で船を動かせるか…っすね」

盗賊「そんなもんやってみるしか無ぇだろ」


ガコン!! カタンカタン…


盗賊「お…動き出したな」

学者「兄貴はいつもロボと一緒っすね…」ナデナデ

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「まぁな?俺の一部だ…勝手に触わんな」

学者「維持費大丈夫なんすか?特に魔石…」

盗賊「今ん所はな?まぁ…魔石よりもボロくなった本体の方が問題なんだ」

学者「俺っちが整備しやしょうか?」

盗賊「そら助かる…ちっと落ち着いたら頼むわ」


--------------

『蒸気機関列車』


ガタン ゴトン ガタン ゴトン…


ロボの本体は…まぁメンテナンスしてりゃなんとか永らえるんだが…

脳と連結しているなんとかユニットってのがもう替えが無いんだ

後3年もすりゃ使えなくなるらしい…


学者「…なるほど…それは俺っちでもダメかも知れんっす」

盗賊「まぁ…しょうが無ぇ話よ」

盗賊「だがな?世界の何処かにはホムンクルスというのが合ってな…」

学者「知って居やすよ?お金さえ払えば闇で入手はできるらしいっすね…」

盗賊「いや…それとは違う…完全なホムンクスルと言えば良いのか?それならロボに肉体を与えられるんだ」

学者「部分的なホムンクルスじゃないって事っすね?」

盗賊「全身だな…俺はロボに体を与えたい訳よ…そんで姉御はその話に乗った」

学者「それで船を盗みに行くんすね?」

盗賊「まぁ…船を手に入れたら何処へ行けば良いかまだ分かって居ない…ただ俺にはちょっとしたアテがあるんだ」

学者「宛て?」

盗賊「その内話してやる…今は目の前の課題だけ考えろ」


そう…アテが有る

神の手…俺の父が仲間だった奴ら

アイツ等なら必ず何か知ってる筈…

『夢』


ドカーン!! タタタタタン


僕「くそぅ…囲まれてる…」

男「おい小僧!そこを動くな?今から何が起こるか良く見てろ」

僕「どうするんだよ!?」

男「こういう世界が有ると言う事を先ず知れ…動くなよ?」スゥ…

僕「え!!?…き…消えた…」


スパ! スパ! ガチャーン ドカーン!


僕「何だ?何が起こってる!?」キョロ

僕「見えない…どうしてキラーマシンが壊れて行く?」タジ


リリース! スゥ…


男「小僧!!行くぞ!!来い!!」グイ

僕「え…ぁ…」スタ


その男が父だと知って居た…

なのに言いだせなかった…

言えないまま…失った…


--------------

--------------

--------------

『要衝エド・モント』


プシューーーーー ガコン


学者「兄貴!兄貴!」ユサユサ

盗賊「んぁ…あぁ…」パチ

学者「ここで1時間止まるんで少し降りられるっす」

盗賊「降りたら又席取られちまうだろ…」モゾモゾ

学者「じゃぁ兄貴が席を取っといて下せぇ…俺っちはここで少し買い物したいんす」

盗賊「んあ?バン・クーバより良い物売ってるとは思えんが…」

学者「ほら小型の機械…キラーポッドが使う弾…あれが買えるんす」

盗賊「なんだと?…てことはお前は銃を買ったのか?」

学者「譲り受けたと言った方が良いっすね」

盗賊「お前兵隊でも無いのにそんな物持ち歩いて見つかったら只じゃ済まんぞ」

学者「兄貴もラッパ銃持ってるじゃないっすか」

盗賊「こりゃ形見だ」

学者「いやいやそういう問題じゃ無くてっすね…見つかったらマズいのは兄貴も同じっすよね?」

盗賊「俺ぁ特別よ…逃げる自信がある」

学者「見つかったら見つかったでその時は…」

盗賊「ダメだ貸せ!!今見つかったら作戦が台無しになる…俺が預かる」

学者「う~ん…じゃぁ隠し持ってて下せぇ…」スッ カチャ

盗賊「…」ギロリ

学者「機動隊が使うバヨネッタっす」

盗賊「お前…こりゃ普通じゃ手に入らん代物だぞ?殺したな?」ギロ

学者「勘違いし無ぇで下せぇ…殺したのは機械化兵団の奴らなもんで…」

盗賊「機動隊が行く激戦地にお前が行くとは思えんが?」

学者「正確に言うと運ばれて来た機動隊の人を看取った…そのままにしておくと誰に取られるか分からんもんで…」

盗賊「フン…まぁ良い…早く行って来い」

学者「食事も入手してくるんで楽しみに待って居て下せぇ」タッタ

盗賊「…」---アイツ---


こいつには連番が振ってあるんだ…

しかも特殊な発信機まで付いてる

ん?なるほど発信機はさすがに外したか

他の兵装をどうしたのか問い詰める必要があるな…

『1時間後』


ボエーーーーーー プシューーーーー


学者「兄貴ぃぃぃ!!戻りやしたぁぁ」ダダ

盗賊「…」シラー

学者「あら?相席の人が変わりやしたね…どうも」ペコリ

青年「こんにちは…キ・カイまで失礼します」ペコ

学者「君は一人なんすか?」

青年「はい…」

学者「良く此処に座る気になれたね?兄貴に近寄る人は中々居ないんすよ?」

盗賊「おい!!ベラベラしゃべるな」ドス

学者「あたたた…済まんっす…まぁこんな感じなんすが気にしないで下せぇ」

青年「ハハ気にしてなんか無いよ」

盗賊「…」ギロリ

学者「なーんか…堂々とした青年っすねぇ…兄貴ぃ…レーション買って来やした」スッ

盗賊「ふんっ」モグ

学者「酒も仕入れて着やしたぜ?」

盗賊「よこせ…」グイ キュポン グビ

学者「良かったら君もレーションどうっすか?」スッ

青年「え?あぁ…じゃぁ遠慮なく…」スカ

学者「あらら?君は目が不自由なんすかねぇ…目隠しなんかして…」パス

青年「ま…まぁ…頂きます」ハム モグ

学者「俺っちは医術も学んで居るんす…少し見てあげても良いっすよ?」

青年「いえ…目は大丈夫です」

学者「な~んか…怪しい感じっすねぇ…目隠しにフード…」

青年「ハハ…どうかお構いなく」パク モグ

盗賊「おい!!困ってるだろう…良い加減にしておけ」ゴン

学者「あたたた…話題変えやしょうか…キ・カイへは何をしに?」

青年「キ・カイに帰る所なんだ…食料を買いにエド・モントまで来たのさ…」

盗賊「ほう?キ・カイに住んで居るのか…」ジロ

青年「珍しい…よね…ハハ」

盗賊「まぁ事情は色々有るだろうからな…住んで居るなら少し聞きたい事がある」

青年「何でも答えるよ?何かな?」

盗賊「俺は昔キ・カイに住んでた事が有るんだがもう何年も戻って無くてな」

青年「僕は生まれも育ちもキ・カイだよ」

盗賊「今外の市街地はどうなって居るんだ?人は住んで居るのか?」

青年「一応人は少し住んでるよ…殆どの人はバン・クーバに移住したみたいだけど」

盗賊「そうか…まだ残って居るのか…」トーイメ

青年「皆さんがキ・カイに行く理由は漁業関係?それとも鉱山関係?」

盗賊「どちらでも無いが…しいて言えば漁業か」

青年「今時期は珍しい魚の収穫期だからね…沢山捕れると良いね」

盗賊「孤児院は残って居るか?」

青年「孤児院?知らないなぁ…」

盗賊「そうか…もう無いのだろうな…」

ロボ「ピピ…」シュン

盗賊「まぁ…自分の目で確かめる」

青年「このロボは皆さんと一緒に?」

盗賊「まぁそうだが?」

青年「キ・カイでは機械化してる人の検査が厳しいんだ…大丈夫かな?」

盗賊「許可証はちゃんと持ってる」

青年「そう…なら大丈夫か」

盗賊「う~む…お前…本当はが見えて居るな?」ジロ

青年「え…いや…目が見えない訳では無くて…人に見せられない訳で」

盗賊「なるほど…火傷とかそういう類か…イラン詮索して済まなかった」

青年「なんか久しぶりに他人とちゃんとした話が出来て嬉しい」

盗賊「そうか?」グビ

学者「レーションのお代わりありやすぜ?」ガブ モグ

青年「いやそんな…それは高価な事知って居るから貰えないよ」

学者「俺っちは傭兵で結構稼いだんで割とお金あるんす」

盗賊「…」ギロリ

学者「ちょちょ…兄貴そんな怖い顔で見んで下せぇ…」タジ

青年「ハハ…」

盗賊「ところでそのくそデカイ袋が買い物した食料か?」

青年「はい…どんぐりとかキノコとか…キ・カイでは中々買えないんだ」ガサリ

盗賊「どんぐりが食料…やはり辺境に住むと貧しい訳か…レーション美味かったか?」

青年「なんかこういう言い方すると卑しいって思うかも知れないけど…こんなに美味しい物食べた事無かったよ」

盗賊「そりゃ結構!全部持って行け」グイ ドサ

学者「なぁぁああああ!!兄貴ぃ…」

盗賊「お前にゃちっと問い詰めなきゃならん事が有る!!」

学者「なななな…なんすか?」

盗賊「他の兵装を何処やった?」グイ

学者「え…あ…アハハハ」タジ

盗賊「アハハじゃ済まん事をお前はやっているんだぞ?必ず内ゲバが始まるんだ」

学者「すすす…済まんっす…」

盗賊「まぁ此処で言ってもしょうがねぇ…落ち着いたら覚悟しとけ」

学者「あたたた…」

青年「フフなんか楽しそうだ…」

盗賊「悪いな…話は聞かなかった事にしてくれ」ゴン

学者「あ痛ぁ!!」ナデナデ


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『廃都キ・カイ_地下鉄道』


キキーーーーー ガコン プシューーーー


盗賊「おっし到着だ…忘れもんすんなよ?」

学者「へいへい…」ゴソゴソ

青年「じゃぁ僕は此処で…」ヨッコラ セ

盗賊「よう…縁が有ったら又な?」ノシ

青年「はい…ではさようなら」スタ

盗賊「なかなか感じの良い奴だったな…」ボソ

学者「ここは地下鉄道の何番なんすかね?」キョロ

盗賊「8番だったか…ガキの頃はこの辺で悪さしたもんだ」ゴソゴソ

学者「なんかそこら中崩れてボロボロっすね…」

盗賊「キラーマシンの反乱時はここからエド・モントまでが激戦区だったらしい…俺らは上手く逃げられた」

学者「へぇ?」

盗賊「ロボ!!俺から離れるんじゃ無ぇぞ?…」スタ

ロボ「ピポポ…」ウィーン

学者「兄貴ぃ!!待って下せぇ…」タッタ

盗賊「モタモタすんなバーロー」


衛兵「おいお前達!!何だその機械は!!」ダダ


盗賊「はいはい衛兵さんよ…これが許可証…脳の機械化はやっていない…見てくれ」パカ

ロボ「ピピピ…」ピタ

衛兵「脳…」タジ

盗賊「これで満足か?」カパ

ロボ「ピポポ…」プシュー

衛兵「た…確かに…話に聞く孤児機械化事件の…」

盗賊「そうだ…珍しいか?」

衛兵「あぁ済まない…特例の件は承知している…通って良いが…あまり目立たん様に頼む」

盗賊「分かって居るよ…お勤めご苦労さん」ノシ


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『地下街道』


ピチョン ポタン


盗賊「ロボ…済まなかったな…毎度毎度見せたく無い物を曝ける事になっちまってよ」ナデナデ

ロボ「ピ…」ウィーン

盗賊「まぁそのお陰で銃器を持ち込んでも怪しまれないんだが…」

学者「兄貴ぃ…これからどうするんで?」

盗賊「どこかで一泊して明日の夜に決行するつもりだが…」

学者「ちっと情報集めた方が良くないっすか?」

盗賊「うむ…流氷の具合も確認しておきたい」

学者「先に流氷見に行きやせんか?外に出りゃ港も見れやすよね?」

盗賊「そうだな…ちょいと防寒着を調達して外に行くか」

学者「ええと…全然人が居ないんすが…」キョロ

盗賊「この先にホームっていう場所が有るんだ…そこが中心になって居る筈」

学者「買い物は任せて下せぇ…」

盗賊「当たり前だろう…払いもお前だ」

学者「ハハ…」

盗賊「ロボに被せる防寒着もちゃんと用意しろよ」

学者「分かっていやすとも…」


--------------

『ホーム』


ヒソヒソ ヒソヒソ

今年も出稼ぎ労働者が入って来出したね

稼ぎ時だからちゃんと売るのよ?


盗賊「分かっちゃ居たが寂れ具合が半端無ぇな…」

学者「昔は世界一の人口を抱える都市だったんすよね?」

盗賊「天変地異以前はな?俺が居た頃は既に落ち目だった様だがそれでも人でごった返してたもんだ」

学者「軍の施設とかどうなってるんすかね?」

盗賊「殆ど空らしい…港は軍港跡地を使って居ると聞いた」

学者「宿泊する場所が有るのか心配になって来やしたよ」

盗賊「路地裏で十分だろう…心配なのは食い物だ」

学者「あたたた…」

盗賊「おい!!あそこで毛皮のフードが売って居そうだ…仕入れて来い」ユビサシ

学者「ちっと待ってて下せぇ…」」タッタ



---------------



『30分後』


タッタッタ


学者「待たせたっす…」ドサ

盗賊「遅かったじゃ無ぇか…どれどれ」ファサ

学者「すんごい高くてですねぇ…ちっとも値下げしてくれやせんでした」

盗賊「どうせアブク銭だろうが!そういうのは全部使っちまえば良い…これがロボの分だな?」ファサ

ロボ「ピポポ」クルクル

盗賊「おぉ!!喜んでるぞ?うむ…なかなか似合う」

学者「分かるんすか?」

盗賊「ピポポが肯定…ピ…これが否定だ…まぁ他にも色々ある」

学者「じゃぁ行きやしょうか…」スタ


--------------

『旧市街地』


ヒュゥゥゥ…


盗賊「ふぅぅやっと外に出られた…」

学者「その許可証便利っすねぇ…持ち物見られんで済むんすね」

盗賊「まぁな?それが特例処置になってる…一応幹部扱いな訳よ」

学者「俺っちはあまり知らんのですが孤児機械化事件はそんなスゴイ事件だったんすか?」

盗賊「国家反逆…って所か?まぁ歴史に残る事件だな…俺はそのど真ん中で生き抜いた…まだガキだったんだが」

学者「スゴイっすねぇ…」

盗賊「機動隊が今の地位に登り詰めたきっかけだった…だから幹部の様な特例が許されてるんだ」

学者「それが今は泥棒をする立場ってなんかおかしいっすね」

盗賊「こいつの為なんだ…」ポン

ロボ「ピピ…」プシュー

学者「そういう事っすね…」

盗賊「今回の件で俺に手配書が回るかも知れ無ぇ…でも姉御は俺の話に乗ってくれた…姉御には感謝してる」

学者「じゃぁ俺っちも危ないっすね…」

盗賊「何言ってんだアホが!…機動隊の兵装を闇で捌いてタダで済むと思ってんのかボケが!」

学者「ええ!?」

盗賊「そんな甘く無ぇんだよ!!俺よりお前の方が危険だ…ちったぁ自覚しろ!!」ドス

学者「あたたた…」

盗賊「だからフードは深く被れ…顔は極力見せるな…そこら辺徹底しろ!!」

学者「へい…」ファサ

盗賊「よし…じゃぁ行くぞ」スタ



--------------

『雪に埋もれた瓦礫の山』


ズボ ズボ ズズズ


盗賊「何処に穴空いてるか分かん無ぇから気を付けて歩け…ロボは無理して付いて来なくて良い」

ロボ「ピポポ…」プシュー

学者「これで夏っすか…」アゼン

盗賊「よし…流氷が漂っては居るが船が動かせん訳では無いな」

学者「これ昔はずっと向こう側まで海だったんすよね?」

盗賊「あぁ…俺が住んで居た頃は海だった…灰色の海で俺は嫌いだったが…」

学者「切り立った氷山…なんでこんなんなっちゃうんすかね」

盗賊「知るか!」

学者「これ向こうの大陸まで徒歩で行った人居ないんすかね…」

盗賊「なんでそんな事が気になるんだ?」

学者「向こうの大陸に行った事無いんで…夢っすよ夢」

盗賊「アホか…バン・クーバから商船が出てんだろうが…金払えばいつだって行ける」

学者「徒歩ならお金掛からんじゃ無いっすか」

盗賊「お前学者なんだろ?気候の事とか勉強して来たんじゃ無いのか?」

学者「俺っちは医術と機械工学しか学んで無いんすよ…」

盗賊「じゃぁ今お勉強だな…こっから先は寒すぎて立ち入る事が出来ん未踏の地だ…覚えておけ」

学者「確かに寒すぎっすねぇ…」ブルル

盗賊「まぁしかし…ここも変わり果てた…見た所孤児院の建屋も無くなってる」

学者「行かなくて良いんすか?」

盗賊「良い思い出は無い…ただお袋が居た場所は見て置きたいな」

学者「お袋?初耳っす…お袋が居て孤児院に入ってたんすか?」

盗賊「俺が孤児院に通い詰めてたって感じだ…お袋は忙しくて殆ど帰って来なかった」

学者「そういう事っすか…」

盗賊「お袋とは生き別れてもう何処に居るのかも分からん…激動の時代に飲み込まれた結果だ」

学者「そのお袋さんが居た場所って何処なんすか?近いなら行って見やしょう…もしかしたら待ってたり…」

盗賊「まぁそのつもりだ…ここから近いから行って見る…」スタ


--------------

『旧商人ギルド跡地』


ザック ザック


盗賊「…ここだ」

学者「瓦礫の山っすね…なんか小さな小屋が建ってる」

盗賊「誰か住んでる感じは無いな…ちっと覗いて来る」タッタ

学者「どうっすか?」キョロ

盗賊「う~む…人が住む小屋では無い…中に馬車が入っているな」

学者「ええ?ソリじゃなくて馬車?」

盗賊「まぁ…使えなくなって放置された馬車だろう…もうボロボロだ」

学者「はぁぁ…ハズレっすね」

盗賊「ここには良く連れて来られたんだが…もう見る影も無ぇな」ウロウロ

学者「そうそう…そういやさっき大麻売ってたんで買ったんす…一服どうっすか?」

盗賊「お?気が利くじゃ無ぇか…ヨコセ」チッチ モクモク

学者「兄貴は大麻吸ってさまになりやすねぇ…」

盗賊「ただガラが悪いだけだ…真似しようと思うな?」スパー フゥゥゥ

学者「俺っちにも吸わせて貰って良いっすか?」

盗賊「なぬ?お前もしかして一本しか買って無かったのか?」

学者「一本しか売って無かったんすよ…」

盗賊「なんだ早く言え馬鹿が…ホラ」ボキ

学者「アララ…折らんでも良かったんすが…」チッチ モクモク

盗賊「ガラの悪いのが2人揃って大麻吸ってりゃ誰も近づかんな…ヌハハ」スパーーー フゥゥゥ


サクサクサク…


青年「あれ?どうも…なんか縁が有るみたいだね」スタ

盗賊「お?誰かと思えば列車の…どうした?お前の家が近いのか?」

青年「いや…そこが僕の家だよ」

盗賊「ぶっ!!マジか…今何も無ぇなぁとかボロクソ言ってた所だ」

青年「ハハまぁ…そこは昔使ってた家なんだ…今はここの地下に住んでる」

盗賊「何だと?」ギラリ

青年「え?何か悪い事言ったかな?」タジ

盗賊「お前は誰だ?」

青年「ええと…どう答えれば良いのかな…」ドギマギ

盗賊「あぁぁ悪い…脅してるつもりじゃ無い」

青年「良かったらお茶でもどう?貰ったレーションのお礼に…」

盗賊「お…おぅ…そりゃ願っても無ぇ…寒かった所だ」

青年「姉と一緒に住んでるんだ…姉と言っても腹違いなんだけど…先に言っておかないと驚いちゃうから…」

盗賊「そういう事情は誰にでもあるわな?」

青年「此処へは何か用事で?」

盗賊「ふむ…まぁ信用出来そうだから言うが…俺は此処で一時住んでたんだ…知った人間が誰か居ないかと思ってよ」

青年「えええええええ!!?」

盗賊「おっと!!何だ急に…」

青年「姉が待って居る人かも知れない…」

盗賊「何?」

青年「姉はずっと此処で誰かを待ってるんだ」

盗賊「ほう?会ってみたいな…誰だ?」ハテ?

青年「こっちだよ…下にもう一つ入り口が有るんだ」スタ

盗賊「…」---あぁ知ってるとも---


--------------

『隠れ家』


ガチャリ バタン


青年「姉さん!!帰ったよ!!お客さんを連れて来た」

女の声「おかえり…お客さんって誰?」

青年「ここを訪ねて来た人だよ…もしかしてと思って案内したんだ」

女の声「え!!?」ドスドス


盗賊「うぉ!!あ…姉御?いや…なんで姉御が此処に…」タジ


青年「やっぱり知り合い?」

女オーク「違うみたい…ごめんなさい…人違いの様です」

青年「そうか…あぁ…まぁとりあえず奥でお茶でも…」

盗賊「おう…邪魔するぜ?悪いな…」---姉御じゃ無ぇのか---

青年「さっき持って帰ったレーションをくれた人たちなんだ」

女オーク「そう…どうぞ奥へ」ササ

学者「びっくりしやしたね…姉御に瓜二つっすね…」ヒソ

盗賊「だな?正直俺もビビった」ヒソ

女オーク「お茶を入れて来るのでどうぞご自由に…」スタ

盗賊「ようお前…腹違いも良い所だな…姉がオークとはなかなか無い組み合わせだ」

青年「血は繋がって居ないんだ…」

盗賊「ヌハハそんな事気にするな…オークが身内に居るのは良いぞ?」ニヤ クイックイッ

青年「ハハ…余計な詮索しないでよ」


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『お茶』


チョロチョロ モクモク…


盗賊「ほう?煎茶という奴か…これは向こうの大陸で飲まれる物だ…体に良いらしい」ズズズ

青年「姉は昔向こうの大陸に居た事があるんだよ」

盗賊「なるほどな?」ゴク

青年「やっぱり2人は知り合いでは無いのかな?」

盗賊「う~む…似た人物を知っては居るが…残念だが初対面な様だ」

青年「ここに住んで居たという話は?」

女オーク「ええ!!?ここに住んで?どういう事?」ズイ

盗賊「あぁ…まぁ一時だけだけどな…この部屋の中に有る物は大体見た事がある…それも…これも」

女オーク「他の人は?他の人は何処へ?」

盗賊「おっとっと…待て…お前は誰だ?俺はお前を知らん」

女オーク「私もここに居たのは短い期間なの…でもここに住んで居た人をどうしても探したい」

盗賊「なるほど…お互いすれ違って居た訳か…」

女オーク「知って居る事をどうか教えて…」

盗賊「んんん…まぁ昔の事だから話して問題無いか…」


カクカク シカジカ…

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-------------

盗賊「…とまぁ…誰か居るんじゃ無いかと思って訪ねて来た訳よ」

学者「兄貴忘れてますぜ?お袋さんが居ないか見に来たんすよね?」

盗賊「お前は黙ってろ!」ゴン

学者「あたたた…」スリスリ

女オーク「もう10年以上此処で待ってても元の住人は帰って来なかった…」

盗賊「お互い同じな訳だ…ほんでお前はどうして待ってるんだ?」

女オーク「それは…」

青年「僕の本当の両親を探してるのさ…姉さんは僕の為にずっと苦労してるんだ」

盗賊「なるほど…う~む…」トーイメ

女オーク「他に何か手掛かりになる事は無いですか?」

盗賊「有るっちゃ有るんだが…」

女オーク「どうか教えて欲しい…」

盗賊「まぁ良いか…お前海賊王の娘を知ってるか?」

女オーク「いえ…」

学者「うお!!知らない人の方が少ないんすよ?あんな有名人を知らないって…」

青年「姉さんはキ・カイの人達と殆ど付き合いが無いんだ…差別されて外を出歩けないんだよ」

盗賊「そうだったのか…外の市街地に住んでるのもそういう理由か…」

青年「本当はずっと馬車に住んでたんだ…キ・カイの壁の外でね…人が少なくなってようやく此処に入れた」

盗賊「壁の外はオーガやら魔物がウヨウヨ居るのにか?マジか…」

青年「オーガの牙をほんの少しのお金と交換してどうにか凌いで来たんだ…」

女オーク「もうそんな話は良いの…それよりもその海賊王の娘は何処へ?」

盗賊「残念だが分からん…ただ昔の俺の知り合いで情報のやり取りをしてる闇商人がいるんだ…そいつなら知って居るかも知れん」

女オーク「その人は何処に?」

盗賊「世界中転々として居てな…今はフィン・イッシュに居るらしい」

女オーク「フィン・イッシュ…向こうの大陸…」

青年「姉さん…向こうの大陸は遠いよ…もう無理して稼ぐ事なんかしなくて良い」

盗賊「んんん…なんつうか…俺はそういう話に弱いんだ…この話はここで切り上げるか」

青年「うん…そうだね」

学者「俺っちから提案なんすが…今晩此処に泊めてくれたらお金払いやすぜ?」

盗賊「あぁ悪く無ぇな」

青年「僕は歓迎だけど…姉さん」チラ

女オーク「え…ええ…でも食事も出せないし…なんだか悪い気が…」

盗賊「俺らにしてみりゃ寒さ凌げるだけで十分な訳よ…そっちが良けりゃ世話になる」

女オーク「ではご自由に…私はこれから仕事に行って来るので」

盗賊「おぉ悪いな…早速だが俺らはちっと港を見に行きたいんだが…ここに勝手に出入りさせて貰うぜ?」

女オーク「どうぞ…」

青年「僕は暇だから案内しようか?」

盗賊「そら助かる…おい学者!くつろいでる暇は無ぇぞ!!」

学者「すんません…」スック


---------------

『港へ続く街道』


サクサク サクサク


盗賊「ところで自己紹介して居なかったな?」

青年「そうだね?お互い名前も知らないで変な感じだね」

盗賊「俺の名はアラン…職業は傭兵だ…まぁ本職は泥棒なんだがな」

青年「僕はミライ…ええと職業なんか無いんだけど…そうだなぁ…剣を使うから剣士かな」

盗賊「ほう?誰に教えて貰ったんだ?」

青年「姉さんだよ…姉さんの名はリッカ…剣を使うのが上手い」

盗賊「なんだ…戦えるなら傭兵でもやりゃ良いのに…ほんでこいつの名はお手伝いロボ…本当は別の名があるんだがロボで良い」

ロボ「ピポポ…」クルリン

青年「どうもよろしくロボ」ペコリ

盗賊「ほんでこいつがゲシュタルト…ゲスと呼べば良い…こいつがまぁ問題児なんだ」

学者「兄貴そら無いっすよ…」

盗賊「良い所出のお坊ちゃんだったんだが素行が悪すぎて追い出された挙句…俺にボコられたヘタレ学者だ」

青年「どうも…」ペコリ

盗賊「先に警告しておくが物が無くなったらまずコイツを疑え」

学者「兄貴ぃ!!勘弁して下せぇ」

青年「アハハ…僕達は何も持って居ないけどね」

盗賊「いや…お前の家の中に有る物はかなり価値の高い物ばかりだ…古代の遺物と言えば分かるか?」

青年「そうだったんだ…姉さんは元の住人がそれを取りに戻るんじゃ無いかって大事に保管してた」

盗賊「そうか…まぁ正しいやり方かも知れん」

盗賊「ほんでお前の姉は何処で働いてんだ?」

青年「炭坑だよ…鉄鉱石とか石炭とか掘ってる…あと錬鉄もやってるかな」

盗賊「まぁ…オークはそうなるわな…どうせ死ぬほど安く雇われてんだろ?」

青年「その通りさ…何でもお見通しなんだね」

盗賊「お前は働かんのか?」

青年「働く気はあるんだけど姉さんが人の前に出るのはダメだって…」

盗賊「…」ジロ

青年「そう…察しの通り…僕の顔の事さ」

盗賊「訳アリか…まぁ良い…ほんでだ…」

青年「ん?」

盗賊「俺らが自己紹介した意味なんだが…」

青年「意味?」ハテ?

盗賊「俺らは職業柄知らん人間に容易く名乗る事なんかしないんだ」

青年「えーと…意図が読み取れない」

盗賊「フィン・イッシュまで連れて行ってやるから手伝えって話だ…お前に姉を説得出来るか?」

青年「えええ!?」

学者「兄貴ぃ…良いんすか?」

盗賊「2人で船動かせると思うか?」

学者「あぁぁ…確かにそうっすね」

盗賊「元々姉御ありきの作戦だったんだ…丁度姉御並みに働けそうなのを偶然見つけた…しかもタダで雇えそうだ」

学者「さすが兄貴…」

盗賊「…で?どうよ?」

青年「姉さんに相談してみる」

盗賊「明日の夜までに決めてくれ…まぁ1日ありゃ何とかなるな?」

青年「姉さん次第だね…僕も姉さんに苦労ばっかり掛けたく無いんだ…ここに居ても苦労ばっかりだから」

盗賊「よし!商談成立だな!期待してるぜ?」


--------------

『旧軍港』


ザザー ザブン


盗賊「ほぉ…結構漁船が動いてんな」

剣士「今時期は地引網漁をやって居るんだ…この時期で1年分の魚が収獲出来るみたいだよ」

盗賊「お前はあの漁船に乗った事有るか?」

剣士「うん…姉さんと一緒に一時働いた事が有るんだけど…ちょっと問題が起きちゃってね」

盗賊「問題とは?」

剣士「海に出ると逃げ場が無くなるじゃない?姉さんが襲われそうになったんだ」

盗賊「なるほど…強姦されそうになったか」

剣士「そういうのが有ったからそれ以来炭坑で働く様になった」

学者「兄貴ぃ!動いてないキャラック船があるっすね」ユビサシ

剣士「あの船は漁に適さないみたいだよ?漁で使うのは船底の浅いキャラベル船なんだってさ」

盗賊「ほう?良く知って居るな」

剣士「それからあの船はすごいお金持ちの所有物らしいよ…ええと…名前忘れちゃったなぁ」

盗賊「金持ちにしちゃショボイ船な様だが…」

剣士「ええ?そうなの?」

盗賊「金持ちはアレの10倍ぐらいデカい船を持ってる…アレは精々10人程度しか乗らんな」

剣士「あぁぁバン・クーバーで少し見た事有るなぁ」

盗賊「ソレだソレ」

剣士「そんな船はキ・カイで見た事無いよ」

盗賊「まぁ…港の見学はこんなもんか」チラ クイ

学者「じゃぁ戻りやしょうか…ちっと寒いんで戻りたいっす」コクリ

剣士「そうだね」

学者「俺っちはちっと古代の遺物に興味があるんすよ…見せて貰って良いっすか?」

剣士「盗まないなら…」

学者「あいたたたた…盗みやしやせんよ」

盗賊「悪いが先に戻っててくれ…俺は酒を買い付けてから戻る」

剣士「うん…気を付けて」

盗賊「ロボの事も頼む…ここからなら衛兵に止められる事も無いだろう」

学者「分かりやした…行きやしょう!」スタ

盗賊「…」---さぁて仕事だ---


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『夜_隠れ家』


ガサゴソ ガサゴソ


学者「おぉぉこんな物まで…」ブツブツ

剣士「壊さない様に…」ソワソワ

学者「これは古代遺跡の盗掘品なんすよ?」

剣士「へぇ?」

学者「これなんで魔術書が何冊もあるんすかね?」

剣士「さぁ?…でも僕はそれを読んで勉強したんだ」

学者「読めるんすか?謎の文字が並んでるんすが…」

剣士「ルーン文字というらしいよ…ルーン文字の解読は他の書物に有るんだ」

学者「もしかして魔法を使えたりするんすか?」

剣士「残念ながら使えない…なんか血の契約が必要だとか…良く分からないんだ」

学者「じゃぁ何を勉強したんすか?」

剣士「う~ん…魔導って何なの?とか…魔方陣って何?とか…」

学者「ふむふむ…医術とは…生命とは…そういう感じっすね…確かにそれだけ覚えても治療は出来ない…なるほどぉ」

剣士「アランさん戻るの遅いなぁ…」

学者「兄貴は多分酒場じゃないっすかね…いつもの事なんす…心配しなくても帰って来やすよ」

剣士「聞きたい事が有ったのになぁ…」

学者「俺っちが分かる事なら答えやすよ?」

剣士「ええと…海賊王の娘の事…僕は噂なら聞いた事有るんだ」

学者「何が知りたいんすか?」

剣士「名前とか…年齢とか…それから指名手配されてる理由とか」

学者「名前は姉の方がアイリーンで妹がアイラっすね…逆かも知れやせんが…」

学者「年齢は不詳なんすが噂では当時姉が30歳…妹は25歳くらいらしいっす」

学者「指名手配された理由はなんか色々噂が有るんすが…白狼の盗賊団の一味だったとか」

剣士「白狼の盗賊団…それも聞いた事が有る…」

学者「もう伝説っすよね…貴族達から財宝を奪って庶民にばら撒いたんすよ…だから貴族達に指名手配されたんす」

学者「今となっては捕まえても懸賞金を払う貴族が居ないんで意味の無い手配書っすね…ビラだけが出回ってるんすよ」

剣士「そうだったんだ…そんな人たちが此処に出入りしてたのか…」

学者「う~ん…出入りしてたかどうかは知らんすが…兄貴は手掛かりだと言って居やしたね?」

剣士「あぁ…そうだったか…」

学者「何か事情を知ってるとは思いやす」

剣士「じゃぁやっぱりアランさんに聞くしか無いね」

学者「俺っちにも教えてくれないんで厳しいかも知れんすよ?」

剣士「そうなんだ…」

学者「うほーーー!!これ相当値打ち物の剣っすね…」スラーン

剣士「あ…それは姉さんの剣だよ…重いでしょ」

学者「確かにちょいと重いっすねぇ…錆一つ無い…材質何なんすかね?」ジロジロ

剣士「コバルト合金だよ」

学者「へぇ…こんな良い剣を何処で手に入れたんすかね?」

剣士「教えてくれないんだ…多分姉さんが待って居る人に関係する物なんだよ」

学者「じゃぁ勝手に触ってたら怒られそうっすね」

剣士「うん…元有った場所に返しておいて」

学者「へいへい…」

剣士「…」

学者「何すか…盗みやしやせんよ!!」

剣士「ふーん…」


ガタン! ゴトゴト!


学者「んん?上から何やら音がするっすね…」

剣士「あぁぁ…又来たか…危ないから外に出ない様に」

学者「どういう事っすか?」

剣士「多分オーガがお腹を空かせて市街地に入って来てるんだ…たまに来るんだよ」

学者「そら大変じゃないっすか…兄貴が帰って来て無いっすよ」

剣士「うん…でも姉さんが居ない時に戦うと怒られるんだ…しばらくすると何処かに行くよ」

学者「いやぁ…ここに住むのも生きた心地がせんっすね…」

剣士「もう慣れっこだよ…此処に居れば安全さ」


--------------

『深夜』


ガチャリ バタン


女オーク「…」スタスタ

剣士「あ…お帰り姉さん」

女オーク「あら?まだ起きて居たのね…先に寝てて良かったのに」

剣士「うん…なんだか興奮しちゃってさ」

女オーク「これ今日の稼ぎ…」チャリン

剣士「銀貨2枚か…」

女オーク「お客さんはお休み?」

剣士「うん…もう一人はまだ帰って無いけど」

女オーク「オーガの足跡が有ったわ…何も無ければ良いけれど…」

剣士「ちょっと心配だね…それで姉さんにちょっと相談なんだけどさ」

女オーク「どうしたの?」

剣士「お客さんがフィン・イッシュまで連れて行っても良いと言ってるんだ」

女オーク「それは本当?…でもどうやって…」

剣士「船で行くらしい…なんか船を動かす人が足りないから手伝って欲しいって…」

女オーク「船…」

剣士「姉さんが船に乗りたく無いのは分かるよ…でもあの2人はなんかそんな事しない気がするんだ」

女オーク「やっと見つけた手掛かり…どうしよう…」

剣士「船…やっぱり怖い?」

女オーク「船は嫌な思い出しか無いから…でもこれを逃したら次は無いかも知れない…」

剣士「嫌なら無理に行く必要も無いんだよ?僕は此処でも満足しているから」

女オーク「ミライ…」グイ ギュゥゥ




---違うの---

---あなたの両親を探す理由は---

---本当は私の為なの---

---気持ちに整理を付けたいの---

---私はあなたの母なのか…姉なのか…それとも恋人なのか---

---あなたは一体誰?私から生まれて…一体誰になったの?---

---私の気持ちは誰が受け止めるの?---


剣士「どうしたのさ急に?」

女オーク「何でもない…ごめんね」

剣士「ううん…姉さん何か思い詰めてるね?話してよ…」

女オーク「何でも無いわ…」---私はこのまま姉で良いのか分からないの…そんな事言えない---

剣士「そう…今日はもう遅いから寝ようか」

女オーク「まだ一人帰って来て居ない様だから少し待つわ…」

剣士「じゃぁ僕も待つよ」

女オーク「分かったわ…こっちにいらっしゃい…私も寒いからヒザを温めて?」

剣士「なんか他の人が居ると恥ずかしいなぁ…」ストン

女オーク「…」ギュゥ


---こんなに愛しいのに---

---どうして気持ちが落ち着かないの---



--------------

『明け方』


ギギギー バタン


盗賊「…」コソコソ

女オーク「すぅ…」zzz

剣士「すや…」zzz

盗賊「…」---なるほどな---

盗賊「…」---この2人はこんな風に極寒を生きて来たか---

盗賊「…」---わかるぜ?---

盗賊「…」---馬車の中でそうやって温め合ってたんだろ?---

盗賊「…」---俺も姉御に温めて貰った事がある---

盗賊「…」---姉御は俺だけの物じゃ無かったけどな---

盗賊「…」---まぁ羨ましい限りよ---

盗賊「…」---しかしまぁ…---

盗賊「…」---貧しく育った方が愛は育むな---

盗賊「…」---俺はロボを温めてやらんとイカンな---

盗賊「…」コソーリ ギュゥ

ロボ「…」クルリ

盗賊「動くんじゃ無ぇ」ヒソ

ロボ「…」ピタ

盗賊「ちっと寝る…」ヒソ

ロボ「…」

盗賊「暖かいか?」ヒソ

ロボ「…」

盗賊「…」---待ってろ---


---お前に命を与えてやる---


---------------

『昼前』


ユサユサ ユサユサ


学者「兄貴!そろそろ起きて下せぇ!」

盗賊「んが?」パチ

剣士「あ!!起きた?」

盗賊「やべぇ…がっつり寝ちまった…」ゴシゴシ

学者「昨夜は遅かったんすか?」

盗賊「まぁな?繋いである鎖を切るのに手こずってよ…」

学者「そら大変でしたねぇ…」

盗賊「寒くて死ぬかと思ったわ」

剣士「鎖?」

盗賊「あぁ気にするな…こっちの話だ」

剣士「そう…ねぇ朗報だよ!姉さんが船動かすの手伝っても良いと言ってるよ」

盗賊「おぉ!!説得成功か」

剣士「それで?これからどうすれば良い?持って行く物とか準備しないと…」

盗賊「う~ん…お前等剣を使うと言ってたな?」

剣士「あるよ!!」

盗賊「なら最低限戦える準備だけしてくれ」

剣士「それだけ?」

盗賊「まぁ特に何か持って行く事も無いんだが…そうだ!今からソリを調達してくるからそこに荷物をまとめてくれ」

剣士「分かった!」

盗賊「おいゲス!!」

学者「へい!!」

盗賊「お前魚を買い付けて来い…あと塩とか適当に食料買ってソリに積んでくれ」

学者「分かりやした」

盗賊「そうだミライ!そこにある小さな炉を持って行って構わんか?それから石炭も欲しいな」

剣士「家に有るだけ持って行けるよ…石炭は樽に一杯分有るかな」

盗賊「まぁ何とかなるか…早速俺はソリ調達行って来るから荷物のまとめはやっといてくれ」

剣士「うん…姉さんにも伝えて置く」

盗賊「姉は何処行ったんだ?」

剣士「炭坑の方さ…向こうに色々荷物を残してるから取りに行った」

盗賊「そうか…出発は夜だから準備はゆっくりで良いぞ」

学者「じゃぁ兄貴!!買い付け行って来やす」タッタ


--------------

『夕方』


ヨッコラ ドサリ


盗賊「ようし!これで一通り荷物は乗ったな?」

剣士「姉さん遅いなぁ…」オロオロ

盗賊「炭坑は遠いのか?」

剣士「そんなに遠くない…何か有ったのかな?」

学者「ハハーン…兄貴!これ手切れ金を要求されてるパターンじゃ無いっすかね?」

剣士「手切れ金?」

盗賊「まぁ良くある事なんだ…仕事を辞めると言ったら金を要求されるのよ」

剣士「そんな事が…」

盗賊「ミライ!お前炭坑の場所は知ってるんだな?」

剣士「うん…」

盗賊「ゲス!お前一緒に行ってやれ…得意なやつだろ」

学者「良いんすか?又怪我人が出ちまいやすが?」

盗賊「ほどほどにだ…ついでにピンハネした分も取り返して来い」

学者「ウヒヒヒ腕がなりやすねぇ…」ボキボキ

盗賊「さて俺はもう一度港を見て来る…夜には戻って来いよ」

学者「分かりやした…ミライ君…案内して下せぇ」

剣士「うん…行こう!」スタ

盗賊「じゃぁロボ!付いて来い」

ロボ「ピポポ…」プシュー


---------------

『旧軍港』


ヨイショー ドスン


盗賊「ようし!!ロボはこの樽の中で見張りをしていてくれ」

ロボ「ピポポ…」プシュー

盗賊「魚を降ろした漁船は桟橋を離れて向こう側に船を移動するんだ…」

盗賊「そのタイミングでいつも通り光で知らせて欲しい」

盗賊「光を見て俺らは一気にあのキャラック船に乗り込む」

盗賊「まぁ…夜になったら殆ど人は居ないからそんなに難しい仕事じゃない」

盗賊「出来るな?」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「ようし!ちっとの間一人になるが…孤独死すんなよ?」

盗賊「じゃぁ上手くやれ…俺は一旦戻る」ダダ



--------------

『その夜』


ゴソゴソ ゴソゴソ


学者「いやぁぁ随分あいつ等貯め込んで居やしたねぇ…」スタ

盗賊「おぉ!!戻ったか!!」

学者「へい!やっぱり手切れ金で揉めて居やしたよ」

盗賊「怪我は無いか?」

女オーク「お陰様で…」

盗賊「なんだ元気無ぇな」

剣士「ショック受けてるんだ…一生賢明働いたのに騙されて居たのを知ってさ」

盗賊「まぁなんだ…そういう輩は多い」

学者「でもピンハネされた分は大分取り返して来たと思うんすがね…」ジャラリ

盗賊「そりゃお前の取り分じゃ無いだろ」

女オーク「いえ…私が要らないと言ったから…」

盗賊「マジか…まぁ良い!!おいゲス!!今度レーションたっぷりおごってやれ!!」

学者「へいへい…ウヒヒヒ」

盗賊「そろそろ出発だから急いで準備しろ!」

剣士「姉さんの分はもう全部積んで有る…もう体一つで良いよ」

盗賊「そうか…ほんじゃ俺とリッカでソリを引くぞ」

女オーク「え!?どうして私の名を…」

剣士「あ…教えちゃった…ダメだった?」

女オーク「その名で呼ばれた事が無いから…」

剣士「あぁ…僕も名前では呼ばないね」

盗賊「なんだ呼ばれて気持ち悪いのか?何て呼べば良いんだ?」

女オーク「リッカ…」

剣士「僕もそう呼んだ方が良い?」

女オーク「…」

剣士「ねぇリッカ!…なんか恥ずかしいなぁ」

盗賊「何言ってんだ馬鹿!リッカで良いだろ…てかそろそろ出発の筈なんだ…ソリ引くの手伝え」

女オーク「え…あ…うん」スタ

盗賊「ミライとゲスはソリに乗れ…チョロチョロすると邪魔だ」

剣士「ロボは?」

盗賊「もう先に行ってる…」


ピカーーーー


盗賊「お!!合図だ!!行くぞ乗れ!!」グイ

学者「どんぴしゃでしたねぇ…」ピョン

剣士「あわわ…」ピョン

女オーク「ど…何処へ?」グイ

盗賊「港に決まってんだろ…急ぐぞ」



ススススー ズリズリ


--------------

『港の桟橋』


ドタドタ


剣士「えええ!!?こ…この船!?」

盗賊「大きな声出すな!!黙って荷物を放り込め!!」

学者「ロボは向こうの樽っすね?回収して来るっす」

盗賊「樽ごと頼む…樽はその内必要になる」ワッセ ワッセ

学者「転がしても構わんすか?」

盗賊「背負ってこいアホが!!ロボは俺の一部だと言っただろう!!」ワッセ ワッセ

学者「わ…分かって居やすとも…トホホ」ダダ

女オーク「こ…これって…」ヨッコラ ドスン

剣士「まさかこんな方法で…」ワッセ ワッセ

盗賊「ようし!!ソリもこっから投げ入れるぞ!!リッカそっち持て!!」グイ

女オーク「フン!!」グイ

盗賊「さすが力持ちだな…いくぞ!?わっせぇぇぇ!!」


ドスーン!


盗賊「ようし乗って良いぞ!!」

剣士「ほ…本当に?」

盗賊「ビビるな!周りにゃ誰も居無ぇ!!」

剣士「あわわ…」ピョン ヨジヨジ

盗賊「リッカも乗って直ぐに帆を開いてくれ…」

女オーク「え…あ…ええと」ピョン ヨジヨジ

学者「兄貴ぃぃ…重いっす」ヨタヨタ

盗賊「ヘタレがぁ!!」グイ ドスン

学者「ひぃひぃ…」

盗賊「ようし!!桟橋のフックからロープ抜くぞ?飛び乗れ!!」スポ

学者「へい!!」ピョン スタ

盗賊「ヌハハ楽勝だ楽勝!!」ピョン スタ



--------------

『船出』


ユラ~リ グググ


盗賊「桟橋から離れりゃこっちのもんよ」

学者「やりやしたね?」ガッツ

盗賊「ゲス!!とりあえずお前が舵やれ!!船尾楼の内側にある」

学者「舵が楼の内側にあるタイプなんすね?」

盗賊「おう!!もう扉の錠は開けてある…あとは何とかして慣れろ」

学者「分かりやしたぁ!!」ダダ

盗賊「リッカとミライ!!帆の開き方は分かるか?」

剣士「何とか…ロープが凍ってて硬い…うぬぬぬ」グイグイ

盗賊「まぁ…ここまで来たら誰も追っては来れんから落ち着いてヤレ…俺は船首側の縦帆を開いて来る」ダダ

女オーク「ミライ!?そこは私がやるから…あなたは下に降りてロープを引っかける役をお願い」

剣士「分かったよ…」ピョン スタ

女オーク「よし!!」グイ シュルシュル


バサバサ


剣士「これ…漁船の時と一緒かな?」

女オーク「多分…私もそっちに降りる」ピョン ドスン

剣士「確か…この引っかけにグルグル回して…」グルグル

学者「お?お?お?…横に流れて…」

盗賊「おいゲス!!動き始めたから舵切って上手い事進めろ!!」

学者「へ…へい!!」グイ


ユラ~リ グググ


盗賊「縦帆開くぞ!!」バサ

女オーク「ミライ!!今度は後ろの三角の帆を!!」ダダ

学者「おぉ…どんどん陸から離れて行くっすね…」

盗賊「ふぅぅぅ…後は慣れだな…しかし雪に月が反射して夜でも明るいのが救いだ」

学者「兄貴ぃ…これ2人じゃやっぱきつかったっすね?」

盗賊「だな?丁度良く人員を確保出来て良かった」


-------------

『氷河の壁』


ズドドドドド ザブーーーン


盗賊「またクソでかいのが崩れたな…波が来るぞ!!何かに掴まって置け!!」

学者「氷河の壁からは離れた方が良いっすね…」グイ

盗賊「だな?…しかしやはり夜は暗い…このまま進めて良いのかどうか…」


グラ~リ ユラ~ ギシ


剣士「甲板に置きっぱなしの荷が動いてる!!」

盗賊「波が収まるまで甲板には出るな…波を被って落ちたら死ぬと思え」

剣士「石炭の入った樽が動いてて落ちちゃいそうだよ…」

盗賊「しゃぁ無ぇ…俺が行って来る!!炉で火を起こす準備しとけ」

剣士「うん…気を付けて」


ユラ~リ ググググ


盗賊「うぉととととと…確かにこりゃ樽がどっか行っちまいそうだ」ダダ


-------------

『小型の炉』


ボゥ… メラメラ


盗賊「よし…これで船尾楼の中だけはちったぁ温かくなる…」

剣士「4人共ここで寝泊まり?」

盗賊「炉が一つしか無いからそうなるな…持って来た毛皮を広げて寝床を確保して良いぞ」

学者「この船はな~んも乗って無いんすね…」

盗賊「確認したが荷室の方に木材が少し乗ってるだけだな…あと腐った水が入った樽がいくつか有る」

剣士「あ!!そういえば水を持って来てない!!」

盗賊「おう心配すんな…空の樽があるからそいつに雪を突っ込んどきゃその内溶ける」

学者「さすが兄貴ぃ!!計算済みなんすね!!」

盗賊「まぁ…そういうのは夜が明けてからで良いだろう…喉が渇くなら雪食っとけ」

剣士「アハハそっかぁ…」

盗賊「んん?どうしたリッカ!にやけてるぞ?」

女オーク「何でも無いわ…ミライが楽しそうだから」

剣士「楽しいというか…まさか船を盗んでこんな事になると思って無かったからさ…ドキドキしてる」

盗賊「俺はちゃんと自己紹介したぜ?本職は泥棒だってな」

剣士「でも大丈夫?…この船はどこかのお金持ちの物だよ?」

盗賊「そんなん知らん!今は俺の物だ」

学者「まぁまぁミライ君!行動しないと何も手に入らないんす」ズイ

盗賊「そら俺が言った言葉だ!!ヘタレが言って良い言葉じゃ無ぇ!」

学者「兄貴ぃ…俺っちもたまには良い台詞言わせて下せぇ」

盗賊「さて!!…波も落ち着いた様だし荷物を此処に入れるぞ」スタ

剣士「そうだね…」スタ


--------------

『翌朝』


ユラ~リ ギシ


盗賊「風に乗ってるつもりだったがあまり速度出て居なさそうだ…」

学者「そうっすねぇ…流氷と一緒に流れてるって感じっすね」

盗賊「帆の塩梅はこれから慣れて行く必要がありそうだ…進んでない原因は多分帆の使い方がマズい」

女オーク「あまり速度を出すと逆に危ないらしいわ」

盗賊「流氷とぶつかるってか?」

女オーク「そう…氷は船よりも硬いから簡単に沈没してしまうそうよ」

盗賊「なるほど…まぁ昼間は帆走に慣れて夜はゆっくり行く感じにするか…」

剣士「ところでこれから何処へ?」

盗賊「このまま陸と氷河の間を抜けて地庄炉村という所に行く…5日くらいを見込んでたが…もっと掛かりそうだな」

剣士「地図とかある?」

盗賊「無い…だから陸を見失わない様に進める」

剣士「暖を取る石炭足りるだろうか…」

盗賊「船尾楼の隙間風をどうにかして節約するだな…まぁ今日はとりあえず船の掃除だ」

剣士「あ!!ちょっと探検して見たかったんだ」

盗賊「おう掃除ついでに行って来い!!良い物見つけたら持って来いよ?」

剣士「うん!!姉さん!!…ちが…リッカさ~ん…う~んなんか呼びにくいなぁ…」

盗賊「何言ってんだお前…」

女オーク「呼んだ?」ドスドス

剣士「船の掃除がてら探検に行こうよ…自由にして良いみたいだ」

盗賊「行って来い行って来い!!俺らは帆の使い方研究しとるわ…」

剣士「行こう!」グイ

女オーク「ウフフ…」スタ


ドタドタ


学者「な~んかあの二人ぎこちないっすねぇ…」

盗賊「色々有んだろう…ほっとけ!」


--------------

『甲板』


ドルァァァァ フン!!


盗賊「…しかしロープがカチカチになってて巻き取りシンドイな…ハァハァ」

学者「お?お?…おぉ…兄貴ぃ!!やっぱり横帆は追い風無い時は畳んだ方が速度出るみたいっす」

盗賊「なるほどな?だが頻繁に出し入れすんのはキツイわ…」

学者「夜の内は追い風だったんすけどねぇ…」

盗賊「どうせ昼と夜で向きが変わるんだろ…まぁ昼間だけ進めるなら前後の縦帆で進めって事だ」

学者「夜が追い風なんで上手く乗りたいっすねぇ…」

盗賊「氷山が無くなりゃそれでも良いだろうな…まぁ一応は進んでる訳だ…ゆっくり行くぞ」


ドタドタ


盗賊「よう!!何か見つけたか?」

剣士「掃除して火山灰を集めたんだ」

盗賊「そんなもん海に捨てておけ」

剣士「これ水と骨粉まぜて練れば粘土替わりに出来るよ…船尾楼の隙間風対策さ」

盗賊「骨粉なんか持って来て無いだろうが」

剣士「何かの骨が転がってたよ?炙って砕けば骨粉に出来る」

盗賊「骨?そんなん有ったか?」

剣士「一番下の船底って言うのかな?そこがゴミ捨て場になってたみたい…貝殻とかもあるよ」

盗賊「ヌハハそんな所まで見てないわな」

剣士「骨粉にしたら食料にもなるんだ」

盗賊「そうか…」---こいつ…骨を食って飢えを凌いできた訳か---

盗賊「…」---そうだ忘れてた…本来俺もそっち側の人間だったんだ---

剣士「自由にやってて構わないよね?」

盗賊「おう任せた!!こりゃ報酬払わんとな」

剣士「なんか新しい家が出来たみたいで楽しいよ…いっぱい工夫が出来そう」

盗賊「そりゃ結構!!」---見習わんとな---


--------------

『船首』


バサバサ


盗賊「こんなもんか?」エッホ エッホ

学者「ひぃひぃ…帆の張り替えはしんどいっすねぇ…」

盗賊「動いてりゃ寒くも無ぇ!!慣れろ!!」グイ グイ

学者「ふぅぅぅ…やっぱ縦帆は横風受けて進むようになってるっすね…」

盗賊「その様だ…ちっと進む方角考えながら張り替えする必要がありそうだ」

学者「縦帆だけで大分速度出るみたいっすね…」

盗賊「うむ…夜の内は後方の縦帆だけで十分だな」

学者「そろそろ休憩しやせんか?」

盗賊「そうだな…魚仕入れて来ただろ?一匹焼いて食うか…」

学者「良いっすねぇ…リッカさんとミライ君も呼んで来るっす」

盗賊「おう!!俺は火を起こして置く」ダダ


--------------

『小さな炉』


メラ パチパチ


学者「なんかちっこい炉を囲って食事するのも良い感じっすね…」モグ

盗賊「ほら干し芋焼けたぞ…食え」ポイ

女オーク「ありがとう…」ハム

盗賊「ミライは魚食うか?」

剣士「う~ん…僕は芋が良いかな」

盗賊「なんだ魚が新鮮で美味いんだがな…」

剣士「僕は木の実とか根が好みなんだ…姉さんも同じ」

盗賊「そうか…まぁ良い…こりゃ魚が余りそうだ」ガブ モグ

剣士「レーション一杯あるけど?」

盗賊「そりゃ保存食だから残しとけ…どうしても食い物が足りない時に一口食えば良い」

剣士「そうだったんだ…」

盗賊「ほんで?掃除の方はどうよ?」

剣士「殆ど終わった…あぁそうそう!!荷室にあった樽に入った水…あれ水じゃ無くて油だよ」

盗賊「なぬ!?」

剣士「水なら凍るでしょ?」

盗賊「おぉ!!そういやそうだったな…油が残ってたのか」

学者「あ!!ロボに少し油をさした方が良いっすね…ここは海の上なんで錆びちまいやす」

盗賊「そりゃラッキーだ…そうか油が有るとなりゃ明かりにも困らんな」

学者「ランプ持って来て無いじゃないっすか…」

剣士「銅貨を叩いて延ばせば簡単な器は作れるよ…心材にロープの屑を入れればちょっとしたランプになる」

盗賊「お前作れるんか?」

剣士「僕は手先が器用で細工が得意なんだ…直ぐに出来るよ?」

盗賊「そりゃ助かるな…明かりが有ると無いとじゃ随分違う」

剣士「じゃぁ直ぐに作って来る…姉さんハンマー借りるね」スック

盗賊「銅貨ならたらふく持ってるぜ?」ジャラリ

剣士「あ!!それ使わせて貰うね」スタ

学者「いやぁ稀に見る良い人材を雇ったみたいっすねぇ…」

盗賊「だな?正直ここまで働けるとは思って居なかった…リッカは何か出来るんか?」

女オーク「え…私はミライの様に器用じゃないの…力仕事なら出来る」

盗賊「まぁそれで十分っちゃ十分だ」


---------------

『お手伝いロボ』


カチャカチャ…


学者「大分ボロが来てるっすねぇ…軸受けを交換しないと直に壊れそうっす」

盗賊「やっぱりそうか…ここん所動きがおかしいと思ってたんだ」

学者「油差して少しは長持ちするとは思うんすが…そろそろ交換を考えた方が良いっすね」カチャ

盗賊「部品は手に入りそうか?」

学者「軸受けはジャンク屋を回って探せば見つかると思いやす…それよりも…」

盗賊「何だ?」

学者「人口筋肉の替えが見つからんかも知れんっす…もう作って無いんすよ」

盗賊「どの部分よ?」

学者「これ小動力化の為にモーターは使わないで人口筋肉で動いてるんす…耐用年数はとっくに超えてるっすね」

盗賊「そんな事前の整備時には言われなかったぞ?」

学者「まだ壊れて無いから言わなかっただけっすね…人口筋肉は寒さに弱いんであんま無理すると切れちまいやす」

盗賊「こいつも温めてやる必要が有るってか…」

学者「大事にするならそうっすね…切れたら替えが無いのは覚えて置いて下せぇ」

盗賊「ちぃぃ…そうだ!!キラーマシンの中にも同じような物が有るだろう…それで代替効かんのか?」

学者「キラーマシンの人口筋肉も同じ様に耐用年数超えてる筈っス…問題はもう作って無い事なんす」

盗賊「そういう事か…」

学者「キラーマシンから人口筋肉だけ取り外してストックしておくのは良さそうなんすが…考える事は皆同じなんすよ」

盗賊「そう簡単に見つからん訳だな?」

学者「そうっすね…さて可動部への油差しは終わりっす…ちっと動いて見て下せぇ」

ロボ「ピポポ…」ウィーン

学者「ロボの筐体に入れっぱなしの俺っちのバヨネッタ…回収しときやす」

盗賊「あぁ忘れてた…俺のラッパ銃も入ってるだろ」

学者「そのラッパ銃も手入れしやしょうか?」

盗賊「これは自分でやる」カチャ


--------------

『船尾楼』


ユラ~リ ギシ


盗賊「ロボ…お前はしばらくこの部屋からは出ない方が良さそうだ…ここならそれほど寒くない」

ロボ「ピピ…」シュン

盗賊「どうも無理させてた様だ…悪かったな?」

盗賊「お前用の毛皮が有るのは良いが…自分で発熱しないから保温になって無いのがなぁ…」

学者「ああ!!」

盗賊「何だ急に?」

学者「ソレっすね…発熱させれば良いっすね」

盗賊「何か案が有るのか?」

学者「白金…プラチナっす…プラチナは油と反応して発熱するんす」

盗賊「んなもんそうそう手に入らん…」

学者「機械の中に色々使ってるんすよ…ガラクタでも集めればいくらか回収できるんす」

盗賊「ふむ…地庄炉村でガラクタ探してみるか…10年前はあの辺もいくらか戦地になってた筈…」

学者「姉御の計画では地庄炉村の後は何処に行く感じなんすか?」

盗賊「盗賊ギルドから支援を得て荷を運ぶ先がフィン・イッシュなんだが…詳細が書かれていない」

学者「信用できるんすかね?」

盗賊「確かに…用心はしておかないと足物見られそうだな」

学者「どうやって接触するんすか?」

盗賊「酒場でコブラ酒を注文するらしい…その後向こうからアクションが有るんだとよ」

学者「うほーなんか楽しみっすね」

盗賊「俺は気に入ら無ぇがな…どうせ見定められてるんだろう…」---姉御抜きで話が通るんだろうか---


---------------

『オイルランプ』


ユラユラ ピカー


盗賊「おぉぉ!!良いランプが出来たじゃ無ぇか…」

剣士「一人一個づつだよ…油は一杯あるからずっと点けて居ても良いね」

盗賊「おい!!このランプの上で湯を沸かせそうだな?」

剣士「そうだね?」

盗賊「おーし!!これでロボを温められるぞ…」

学者「あいやいやダメっす…暖め過ぎると脳が死んじまいます」

盗賊「んな事は分かってる!部屋を暖めりゃロボも温まるって話だ」

学者「ロボの筐体に入れちまうかと思いやした」

盗賊「そんな危ない事する訳無いだろう」

剣士「火山灰と骨粉で簡単なモルタル作るから炉を使わせて貰うよ」ゴソゴソ

盗賊「ほぉ?お前何でも作るんだな?」

剣士「うん…こういうの好きなんだ…今日は部屋を暖かくして休めるよ」

盗賊「そうか…ほんじゃこっちはミライに任せて俺らはそろそろ帆を畳みに行くぞ!」スック

学者「あぁぁぁ…寒いんすよねぇ…手が痛くなるんすよねぇ…」

盗賊「何ヘタレた事言ってんだ!行くぞ」グイ


---------------

『夜』


ガチャリ バタン


盗賊「うぅぅぅ寒ぶっ…」スリスリ

学者「あぅぅぅ…」ガクガク ブルブル

女オーク「湯が沸いてるけど?」

盗賊「おう!ちっと飲むわ…」

剣士「もう帆は畳んだの?」

盗賊「うむ…夜は氷山との激突が怖いからあまり動かん事にした…まぁ…海流が丁度向こうに行ってるから流れに任せる」

剣士「なんか楽しいなぁ…」ワクワク

盗賊「そりゃ結構!もうモルタルで隙間は埋めたんか?」

剣士「うん!大分暖かくなったよ…壁の木材が冷たくなってるのはもう仕方ないね」

盗賊「布か何かで一枚仕切が出来りゃ良いんだがな…」

剣士「今はランプだけで部屋を暖めてるからね…限界な気がするなぁ…」

盗賊「なぬ!?炉は使って無いのか!」

剣士「隙間風が入って来なくなったからさ…下手に炉を使うと危ないかなと思って」

盗賊「炉は石炭2~3個で良いんだ…空気が入らんほどここも機密が高い訳じゃ無いぞ?」

学者「空気が無くなるなら先にランプが消えるんでランプが点いてる内は大丈夫っすよ」

剣士「お!?そういう事か…」

盗賊「しかしこれで炉無しか…こりゃ快適に寝られそうだ…今晩は交代で睡眠な?」

剣士「じゃぁ先に寝て良いよ…僕は興奮して今全然眠れない」

盗賊「もうちっと暖かくなってからな?ふぅぅぅ…しかし外は死ぬほど寒いな…こりゃ船も放置するわ…」


-------------

『数日後_昼間』


ザブ~ン ユラ~リ


剣士「大分海氷が減って来たね」

盗賊「だな?太陽で船に乗ってる雪が解けちまうから飲料用の水は急いで確保しとかんとイカン」

剣士「空いてる樽が1個しか無いね」

盗賊「う~む…油が入った樽を開ける訳にもイカンしなぁ…」

剣士「そうだ!木材が少し乗ってたから木箱を作ろう…そしたら石炭を入れてる樽が1個空く」

盗賊「湯を沸かしてるから結構水を使うんだよな…まぁ樽2つありゃ何とか足りるか…」

剣士「あと何日掛かるのかな?」

盗賊「正直分からん…キ・カイを出て5日ぐらいのつもりだったんだが…」

剣士「通り越しちゃったって事は無いよね?」

盗賊「それは無いと思う…灯台を一度も見て居ないだろう?」

剣士「へぇ?灯台があるんだ…」

盗賊「地庄炉村は10年ぐらい前までフィン・イッシュとの貿易港だったのよ…今じゃ廃れた様だが…」

剣士「僕初めて行くんだ…何があるんだろう?」

盗賊「亜麻の生産地だ…他にも少し硫黄と金が掘れるらしい…そうそう…後木材だな」

剣士「キ・カイでは木は全然生えない…」

盗賊「大分温いから針葉樹が生えるんだ…何つたっけな…スプルースだっけな」

剣士「木が有ると言う事は実も生ってるよね?」

盗賊「お前は木の実が好きだったな?…もう一個忘れてたんだが地庄炉村はナッツが有名だ」

剣士「おぉぉ!!姉さんは色んな食べ物ガマンするから食べさせてあげたい」

盗賊「ガマン?何でよ?」

剣士「貧しいから僕の分を残す為にガマンしちゃうんだよ…貰ったレーションも食べてない」

盗賊「おっとヤメロヤメロ…俺はその手の話に弱い…話題変えるぞ?」

剣士「あぁゴメン…同情を買うつもりは無かった」

盗賊「お前剣を使うと言っただろう?」

剣士「うん…どうして?」

盗賊「ちっと俺と立ち回って見るか?まぁ…チャンバラよ」

剣士「ええと…良いのかな?姉さんに許可貰わないと…」

盗賊「武器は使わん…凍った魚でチャンバラするだけだ」

剣士「魚?アハハハ…面白そう」

盗賊「ようし!ほんじゃ好きな魚を選べ」


-------------

『立ち合い』


コン コン ビシ!


盗賊「…にゃろう!!」ダダ ビシ

剣士「あたっ…」ズダダ

盗賊「なるほど…体のバネは一級品だな…これならオーガ相手でも良さそうだ」

剣士「ちょっとこの魚重いし握り難い…」

盗賊「そりゃ俺も同じ条件よ…お前の姉はもっと強いのか?」

剣士「うん…速さは僕と同じくらいだけど力が全然違う」

盗賊「…って事は俺でも敵わんか…」


ドタドタ


学者「あらら?又やってるんすね?」

盗賊「お前もやって見るか?」

学者「俺っちは接近戦はやらんっす…射撃一本なんで…」

盗賊「けっ!!そういう所がヘタレなんだ」

剣士「姉さんともやってみる?強いよぉ?」

盗賊「まぁ実力は大体分かった…魔物相手なら十分だってな?」

学者「戦場じゃ全然通用しないっすけどね…」

盗賊「おいおい…こいつらは傭兵じゃ無ぇんだから仕方無ぇ」

剣士「それってどういう事?姉さんでもダメ?」

盗賊「昔なら通用したかもしれんな?…でも今の戦場は剣を使うような戦い方にはならん…コレだ!銃器」チャキリ

剣士「そうなんだ…」

盗賊「魔物を追い払うのは剣でも良いだろう…機械相手の戦場は銃の撃ち合いなんだ…接近する前にやられる」

剣士「魔法は?」

盗賊「向こうの大陸じゃ魔法も使って居るとは聞くな…だが魔法も射程が短いからやっぱり銃器頼りだろう」

学者「ミライ君も戦場に出るつもりなら銃の使い方を勉強した方が良いっすね」

盗賊「そうはやし立てるな…折角戦場とは無縁の生活してんだから…」

剣士「銃か…なんか興味出て来たなぁ…それ僕に見せてくれないかな?」

盗賊「これか?…見る分には構わんが壊すなよ?」ポイ

学者「素人に渡して危なくないっすか?」

盗賊「火薬も弾も入っちゃ居無ぇ…形見だから持ち歩いてるだけだ」

学者「な~んだそうだったんすね…俺っちのバヨネッタも弾は入って無いんで見ても良いっすよ」ポイ

剣士「おぉ!!ありがとう」パス

学者「それは銃剣って奴なんす…一応接近戦も想定された銃なんす」

剣士「へぇ…スゴイな」ジロジロ


---------------

『デッキ』


ユラ~リ ギシ


盗賊「おう…どうした?黄昏てんのか?」

女オーク「違うの…ミライが楽しそうにしているから…」

盗賊「まぁそんな感じだな?」

女オーク「ミライを閉じ込めすぎていたかも知れないって反省してる…」

盗賊「お前…ミライの本当の姉では無いのだろう?」

女オーク「…」ウツムキ

盗賊「まぁ…それぞれ事情が有るだろうからあまり聞く気は無いんだが…俺にも血の繋がって居ない姉が居るんだ」

女オーク「そう…」

盗賊「お前と同じハーフオークな訳よ…その…なんだ…同じ様な境遇で少し気になっただけだ」

女オーク「私とミライの関係は少し違うと思う」

盗賊「そうか?まぁあまり詮索はしない方が良さそうだな?…そうそう思い出した…食って見ろ」スッ

女オーク「これは…」

盗賊「俺が持ってるレーションだ…食え」

女オーク「あ…ありがとう」パク

盗賊「うまいか?」

女オーク「美味しい…」モグ

盗賊「ミライがな?お前を心配して居たんだ…自分の為に食べ物をガマンしてるってな?」

女オーク「ミライが私を…」

盗賊「健気なこった…ミライを想うならお前ももう少し我を出した方が良い」

女オーク「…」ポロリ ツツー

盗賊「おいおい…俺ぁ泣かすつもりで言った訳じゃ無えぞ?」アタフタ

女オーク「ごめんなさい…何でも無いの」フキフキ

盗賊「レーション全部食えよ!?その後ちっと運動だ」スタ


---こりゃケアが必要なのは姉の方だな---

---何か抱えて居やがる---

『地庄炉村_近海?』


ザブ~ン ユラ~リ


学者「陸の方は雪が無い場所が増えてきやしたね?」

盗賊「そら今は真夏だからな…しかし現在地が全然分からん」

学者「ちょいちょい小さな漁村があるんすが…」

盗賊「う~む…寄って行っても良いんだが…漁村に寄って何する訳でも無いしなぁ…」

学者「この辺りはどこの領地なんすかね?」

盗賊「分からん…だが地庄炉村がフィン・イッシュ領なのは間違いない」

学者「地図だけでも入手しに行きやせんか?」

盗賊「お前…小さな漁港に地図が売ってると思うか?」

学者「確かにそうっすね…」


剣士「アランさ~ん!!正面に島が見えて来たよ~」


盗賊「そらマズイな…浅瀬に乗り上げちまうかもしれん」

学者「ちっと進路修正して来るっす」

盗賊「島か…急いでる訳でも無ぇから停船出来る場所が有るなら一晩寄って見ても良いな」

学者「いやいやそれなら漁村の方に…」

盗賊「馬鹿!変なトラブルに巻き込まれたくない…無人島なら貝とかカニとか他の食い物も探せるだろう」

学者「そういう事っすね?…確かに魚ばっかりは飽きやした」

盗賊「シカ肉が食いてぇな…」

学者「おぉぉぉ!!良いっすね!!」

盗賊「お前の銃もまだ試し撃ちして居ないんだろ?」

学者「島に行きやしょう!!」


---------------

『無人島_崖』


ユラー ギシ


盗賊「よし!!ここなら向こうの崖に飛び移れそうだな?」

学者「碇を降ろしやす!!リッカさん手伝ってくだせぇ」ガラガラ

女オーク「これを回すのね?」ガラガラ

盗賊「ロープ持って先に飛び移る!!」ダダ ピョン

学者「もうちっと船を手繰り寄せられやせんか?」

盗賊「んむむ…やってるが…こりゃ無理だな…ふんがぁぁ!!」グイグイ

学者「これじゃロボが船から降りられんっすね…」

女オーク「私が背負って飛び移るわ」

盗賊「おぉ!!頼む!!」


--------------


『浜辺』


ザザー ザザー


盗賊「ここだな…崖を背にして丁度良い…今晩はここで休む」

剣士「火を焚かないとね」

盗賊「リッカと一緒に薪を集めて来てくれ…ついでに何か食い物も探してこい」

学者「俺っちは銃の試し撃ちついでに何か居たら狩って来やす」

盗賊「おう!!寝床作っといてやる」

学者「じゃぁ行って来るっす」

盗賊「日が落ちる前に戻って来いよ」

学者「分かって居やすとも」タッタッタ

剣士「あぁぁぁ!!木の芽だ!!姉さん!!一杯ある!!」

女オーク「じゃぁミライは芽を摘んでおいて?薪は私が切って来るから」

盗賊「日が暮れるぞ!!じゃんじゃん獲りまくれ」


--------------

『焚火』


メラメラ パチ


盗賊「やっぱこんだけ火が強いと暖かいな…」ふぅぅぅ

女オーク「薪はこれぐらいで一晩持つ?」

盗賊「十分だ…こりゃ倒木でも有ったのか?」

女オーク「沈没船の残骸が崖の向こうに有ったのよ」

盗賊「なぬ!?他には何か無いのか?」

女オーク「残骸だけ…使えそうな物は何も無かった」


タッタッタ


剣士「大漁大漁!」ドサドサ

盗賊「おいおい…こんなに沢山食い切れんが…」

剣士「持って帰るに決まってるじゃない…もう一回獲って来るぅぅ!!」タッタッタ

盗賊「ヤレヤレ…これどうやって食うんだ?」

女オーク「大き目の葉に包んで焼くの…ミライの大好物」

盗賊「ほう?ってことはお前も大好物だな?」

女オーク「私は…」

盗賊「こんだけ沢山あるんだ…腹いっぱい食うぞ…ええと?どうやるんだ?どの葉に包むのよ?」ガサガサ

女オーク「私がやるわ…」テキパキ

盗賊「そういや姉御も同じ様な物作ってたな…葉に芋を包んで土の中に埋めるんだ」

女オーク「そういうやり方も有る…木の芽は直ぐに柔らかくなるから焚火の近くに置くだけ」


タタタターン!



盗賊「お!?ゲスが何か狩ってんな…こりゃ肉に有り着けそうだ」

女オーク「肉はどうやって?」

盗賊「剣にぶっ刺して海水で洗うだろ?…その後直火でこんがりよ」

女オーク「あまり美味しそうに思えない…」

盗賊「ヌハハ…食い物はオークと喧嘩しないで済むな…まぁ俺は芋も好きだけどな?」

女オーク「木の芽…焼けたからどうぞ」スッ

盗賊「おぉ!!どれどれ」パク モグ

女オーク「どう?」

盗賊「ふむ…独特の苦みがあるな…こりゃ酒が欲しい」モグ

女オーク「苦み?」

盗賊「あぁそうか…オークは味覚が少し違うんだったな…まぁ中々美味い…お前も食え!」

女オーク「私は後で…」

盗賊「良いから食え!!ミライが沢山木の芽を摘んでるのはお前に食わせる為だ…その辺察してやれ」

女オーク「…じゃぁ…少し」パク モグ

盗賊「うまいか?」

女オーク「美味しい…」モグモグ

盗賊「おう…それで良いんだ…美味い物は美味い!欲しい物は欲しい!…な?」


---まいったな---

---どうも俺は貧しい奴に弱い---

---傷を負った奴に弱い---

『バーベキュー』


ジュゥゥゥ


盗賊「ウサギ相手に銃を使うたぁ恐れ入る…」ガブ モグ

学者「兄貴ぃ…他に居なかったんすよ…俺っちにも肉をっすねぇ…」

盗賊「しかも4発撃ったな?オーバーキルだ」モグモグ

学者「試し撃ちだったんすよ…」

盗賊「カニ食うか?」

学者「お!?兄貴カニ捕まえたんすか?」

盗賊「軍隊ガニが居てな?蹴とばしたら泡拭いた…銃なんぞ使わんでもな?」

学者「兄貴ぃぃ勘弁して下せぇ…」

女オーク「木の芽の香葉焼きをどうぞ…」スッ

学者「リッカさんありっすー」パク モグ

剣士「姉さん!!根も少し掘って来たんだ…これ洗ってそのままの方が良いよね?」

女オーク「そうね…」

剣士「半分こしよう!はい…」ブチ

盗賊「おぉ食え食えぇ!!おーし!!次カニ焼くぞ!!」

学者「待っていやした!!」

盗賊「いやぁしかし…この島に来て正解だわ…なんつうか旅ってこういう感じなのよ」

剣士「すごく楽しい…焚火も暖かいし」

盗賊「お!!貝も焼けた様だ…ゲス!!先に食って良いぞ!!」

学者「うっしゃぁぁ!!あつつつ…」パク モグ

剣士「貝かぁ…僕も食べて見ようかな?」

盗賊「おぅ!!食え食え!!俺はもう腹いっぱいだ」

女オーク「ウフフ…」

学者「カニの頭は俺っちがもらいやすウヒヒ…」


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『談話』


メラメラ パチ


ウサギの毛皮…そろそろ乾いたかな…

何か作るんすか?

軍隊ガニの甲羅と組み合わせてちょっとした肩当だよ

ほえ~…上手い事作るんすね

こういうの作って売ればお金が手に入るのさ…今度は幾らで売れるかな~?



盗賊「ミライは細工の才能が有りそうだ…アレでそこそこの稼ぎになるだろう?」

女オーク「そうね…いつも何か拾って来ては工夫して作ってる…」

盗賊「まぁ…辺境に居てはそれほど稼げるとは思えんが…良い才能だな」

女オーク「…」

盗賊「アレは俺が買い取ってやる…」ピーン

女オーク「え!?…金貨…こんなに?」パス

盗賊「船の掃除代も込みだ…地庄炉村に着いたら多少の買い物も出来るから足しにしろ」

女オーク「ありがとう…」

盗賊「しかし…酒でも無いと時間が潰せんな…」

女オーク「先に休んでもらって良いわ…多分ミライはまだ寝ないから」

盗賊「ヌハハその様だ…ほんじゃ先に横になる…薪はケチらんで全部使えよ?」

女オーク「ウフフ…分かった」



今度は何作るんすか?

貝殻を細かく砕いて粉にするんだ…これも食料だよ

えええ?そんなもん食えるなんて初耳っすね

他にも色々使い道が有るんだよ?顔料にしたり金属を磨いたりね?魔法の粉さ…


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『数日後_キャラック船』


ザブ~ン ユラ~


学者「兄貴ぃぃ!!多分アレっすね!!」

盗賊「おぉぉやっと見つけたか…」

学者「良かったっす…やっと宿に泊まれそうっすね」

盗賊「やっぱ海図も羅針盤も無しじゃダメだな…地庄炉村に着いたら最優先で探すわ」

学者「これ勝手に入船出来るんすか?」

盗賊「知らん!!行ってみるしか無いだろ」

学者「そこらへん知ってる水夫も雇った方が良さそうっす」

盗賊「だな?お前金はどの位持ってる?」

学者「銀貨で400枚ぐらいと…金貨20枚って感じっす」

盗賊「結構持ってんな…俺は金貨15枚だ」

学者「もしかして俺っちの金をアテにして居やす?」

盗賊「帆が傷んでんだろ?張り替えにどんだけ掛かるか相場観が無いんだ…足りんかった場合はアテにする」

学者「盗賊ギルドの支援ってどんな感じか分からんのですか?」

盗賊「分からん…てか俺は姉御とあんま話せて居ないのよ」

学者「盗賊ギルドにどんな利が有るのか分からんすね…」

盗賊「ソレだソレ…どういう話になってるのかさっぱりな訳よ」

学者「もしかすると盛大に空ブルかも知れやせんね?」

盗賊「その場合は自力でフィン・イッシュまで行くだな」

学者「…この船で行けると思いやす?」

盗賊「まぁ海図と羅針盤がありゃ何とかなんだろ」

学者「雇う水夫次第になりそうっすね…」

盗賊「とりあえずだな…ここは布の産地で安く買える筈なんだ…ボロキレの帆を何とかすりゃ多分行ける」

学者「そんな簡単に思えんのですが…」

盗賊「おーし!!桟橋のど真ん中行くぞ!!降りる準備しとけ!!」


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『地庄炉村』


ザワザワ

ありゃ何処の商船かいな?

久しぶりに大きな船が入って来た思うたら荷を積んどらんらしいで?


学者「兄貴遅いっすねぇ…」

剣士「なにかトラブル有ったのかな?」

学者「船を調べられてるっすね…あ!!出て来やした」

剣士「なんか怒ってるね…大丈夫かな?」


タッタッタ


盗賊「クソがぁ!!要らん金取られちまった…」ブツブツ

学者「兄貴ぃ!何か有ったんすか?」

盗賊「商工会に入って居ない船は停泊するのに1日金貨2枚なんだとよ!!ほんなん知らんわ!!」

学者「うはぁ…高いっすね」

盗賊「おまけに空の荷室見て苦笑いしやがった…くそう!!」

学者「でも船を盗まれんで済みやすよね?」

盗賊「ううむ…傭兵雇ったと思えってか…にしちゃ1日金貨2枚は高い!」

学者「そうっすねぇ…長居出来んすねぇ」

盗賊「そうだ!!さっさと用を済ませて出て行くぞ」

学者「とりあえず今日は宿に入りやすよね?」

盗賊「悪いがお前の払いで頼む…俺はこの後海図と羅針盤買いに行かなきゃならん」

学者「宿は任せて下せぇ…そんで集合はどうしやす?」

盗賊「リコリコって言う酒場があるらしいんだが…そこで集合だな…適当に夕飯食っとけ」

学者「分かったっす…リッカさんとミライくんは俺っちと一緒で良いっすね?」

盗賊「おう!!ロボは俺と一緒だ」

学者「じゃぁ2人共一緒に行きやしょう…」スタ


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『宿屋』


ガチャリ ギーー


女将「あら?定期便が飛んで行ったばかりなのにお客さん?」

学者「どもども…部屋空いてるっすか?5人なんすけど…」

女将「丁度空いたばかりの部屋がありますよ…2人部屋が2つですがよろしい?」

学者「それで良いっす…一泊いくらっすか?」

女将「一部屋銀貨5枚なので合わせて10枚です…食事はどうされますか?」

学者「他で食べるんで要らんっす」

女将「ええと…少し片づけるので待って貰ってもよろしい?」

学者「分かりやした…銀貨10枚…ここに置きやすぜ?」ジャラリ

女将「水浴びは自由ですのでお待ちの間にどうぞ…湯がありますよ」

学者「おおぉぉ!!そら良いっすね」

剣士「姉さん!湯に入れるんだって!一緒に入ろう!」

学者「ええ!?良い年して一緒に入るんすか?」ジロ

剣士「なんで?ダメなの?」

学者「いやいや…別に良いんすが…」

剣士「先に入って来て良いかな?」

学者「まぁ好きにして良いっすよ…次俺っちも入るんで早くお願いしやす」

剣士「よし!行こう!」グイ


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『30分後』


ホクホク


剣士「はぁぁぁ…久しぶりに湯に浸かったよ」

学者「もどって来やしたね?部屋の準備が出来たみたいなんで休んでて良いっす」

剣士「何処かな?」

女将「ご案内します…こちらです」スタ

学者「後で呼びに行くんでゆっくりしてて下せぇ」

剣士「うん…姉さん!!宿屋なんて初めてだね…2人部屋だってさ」

女オーク「そうね…」

剣士「あぁぁワクワクするなぁ…」

女将「…こちらです…ではごゆっくり」スタ


ガチャリ バタン


剣士「へぇ?こんな風になってるんだ…ベッド…2つだね?」

女オーク「どっちが良いの?」

剣士「そんな…1つで良いに決まってるじゃない」ドサ

女オーク「ふぅぅぅ…気持ち良かった」ドサ

剣士「まだ時間が有るからあとで買い物に行こうよ…アランさんに金貨1枚貰ったんだよね?」

女オーク「無駄遣いはダメよ?」

剣士「分かってるさ…ここは布の産地だから姉さんの着替えを選んであげる」

女オーク「今ので十分よ」

剣士「ダメだよ…僕も姉さんを自慢したいのさ」

女オーク「人に見せられる姿では無いって自覚してる…」

剣士「そんな事無い…まぁ僕が選ぶから楽しみにしておいて」

女オーク「分かったわ…」

剣士「なんか落ち着かないなぁ…」ソワソワ

女オーク「抱っこして欲しいの?」

剣士「いつものして良い?」

女オーク「ダメよ直ぐにゲスさんが来るから…」

剣士「まだ来ないよ…」グイ

女オーク「もう…」


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『酒場リコリコ』


ワイワイ ガヤガヤ

金の鉱脈…そろそろ枯渇してるかも知れんなぁ…

硫黄がまだ少し掘れるだけ良いべ!!

錬金術師が居らんくなったで鉱石から金を抽出も出来んしなぁ…



盗賊「いよう!待ったか?」

ロボ「ピポポ…」ウィーン

学者「あ!!遅かったっすね…もう食事食い終わっちまいやしたよ」

盗賊「俺は酒が有れば文句無ぇ…お!?リッカどうしたその格好!!」

学者「なんかミライ君に買って貰ったらしいっす」

盗賊「良いじゃ無ぇか…ミライ!良い着替え選んだな?」

剣士「ここは布だけじゃ無くて染料も有名だったんだね…」ガブ モグモグ

盗賊「お…おぅ…それより何だ?ナッツ食ってんのか?」

剣士「ナッツはタダで食べられるんだってさ」ガブ モグモグ

女オーク「…」パクパク

盗賊「ヌハハハ!タダと聞いて食いまくってる訳か」

学者「タダっちゅうか…酒を注文したらの話なんすが…」

盗賊「何飲んでんのよ?」

学者「コブラ酒…頼んじまいやしたぜ?」

盗賊「何だ俺抜きで頼んだのか…ほんで?何かアクセス有ったか?」

学者「無いっすね…」キョロ

盗賊「まぁ良い!俺もそれ頼むわ」

学者「マスター!!コブラ酒追加っす」

マスター「あいにく3人分で終わりですね…珍しい酒なもんで」チラリ

盗賊「ぬぁぁぁ…じゃぁ他におすすめは何だ?」

マスター「芋酒…」

盗賊「まぁそれで良い!ボトルで頼む…いくらよ?」ジャラリ

マスター「これくらいで…」スッ

盗賊「ほぉ?割と安いな…ようし!やっと酒に有り着けた…早くクレ!」

マスター「どうぞ…」ゴトン

学者「ところで海図は調達出来やしたかね?」

盗賊「こっちの大陸の分はな?フィン・イッシュまでの海図はここじゃ手に入らん様だ」グビ プハァ

学者「それじゃ行けんじゃ無いっすか…」

盗賊「まぁ金が無くなりそうだから一度船でバン・クーバーまで戻っても良いけどな」グビグビ

学者「それが手堅いっすね…姉御と合流出来やすしね?」

盗賊「となると…手ぶらで戻るのも勿体無ぇから商船もどきの買い付けをしなきゃいけない訳だが…」

学者「地庄炉村で安い物と言うと…布と金鉱石…あと何っすかね?」

盗賊「う~む…ナッツか?…てか金鉱石を買ったら他に何も買えん気もするな」

マスター「お客さんは何処からこちらへお見えで?」チラ

盗賊「キ・カイから船で来たのよ…ちょっとした用事でな?」

マスター「ハハあの氷山を抜けて来たと?」

盗賊「まぁな?ここはキ・カイに比べりゃ天国よ…酒も飲めるしな?」グビ プハァ

マスター「今地庄炉村では大き目の商船がなかなか入って来ないので木材が掃けないで困ってるんですよ」

盗賊「おぉそういや切り揃えた木材が山積みになってたな?」

マスター「もしかして波戸場に停泊してる大き目の商船はお客さん達の船で?」

盗賊「そうだ…俺らに木材を運んで欲しいってか?」

マスター「いやいや…私は只の酒場のマスター…運んで欲しい人を知って居るだけですよ」

盗賊「そりゃ儲かる話なんか?」

マスター「なんとも言えませんねぇ…一応話を通してみましょうか?」

学者「兄貴ぃ…目的が逸れちまいやせんか?」

盗賊「まぁどうせバン・クーバーに戻るなら荷物満載で戻るのが良いだろう…話だけは聞いても良い気がするな」

マスター「宿泊している宿をお教え頂ければ使いを向かわせても良いですが?」

盗賊「ゲス!!説明しておけ!!ちっと俺はその辺の他の店で噂話でも聞いて来るわ…ロボ!行くぞ」スック

学者「分かりやした…俺っちはこの後どうしやす?」

盗賊「久しぶりに酒場に来てるんだ…自由にして良い!一応遊女も居る様だ」

学者「そうっすね!!リッカさんとミライ君も自由にしてて良いっすよ」


--------------

『村道』


スタスタ…


盗賊「ふむ…今のが盗賊ギルドからの接触だな…」

ロボ「ピポ?」

盗賊「俺が来る前から監視されてんのよ…確かに他の客には気付かれん様にして居る」

盗賊「まぁ大体話は読めて来た…運びたいのは木材…ほんでどうせ監視役で商人に化けた誰かが同行する」

盗賊「だが…向こうにどんだけ利が有るのかイマイチ分からん」

盗賊「その辺の話は多分これからだな…さてどう来る?」

盗賊「宿屋で待って居た方が良いか…」

盗賊「ううむ…使いを夜間に寄越すとは考えにくい…もう一日待つのは金が勿体無いしなぁ…」

ロボ「ピピピ…」プシュー バタバタ

盗賊「んん?どうした?」

ロボ「ピピ…」ウィーン ユビサシ

盗賊「お?ヌハハなんだありゃ…仁王立ちしてんじゃ無ぇか…」


少女「おい!!お前!!」ズイ


盗賊「おっとぉ?…嬢ちゃん何か用か?」

少女「例の手紙は持って来ているか?」

盗賊「何の話よ?」

少女「とぼけるな!手紙を交換すると言ったのはお前達だろう?」

盗賊「ええと…悪りぃ!何の話か分からん」

少女「じゃぁ援助しないぞ」

盗賊「誰と援助交際する約束したが知らんが俺は人違いだ…」

少女「ニーナ…」

盗賊「何!?姉御と?って事はお前が…」

少女「手紙を渡せ!」

盗賊「ちっと待て…声がデカい…手紙の話は聞いて居ない…てか姉御は戦場で負傷してここに来れなかったんだ」

少女「ちっ…先にやられたか…」

盗賊「おいおいどういう話か分からんのだが…もう少し分かる様に教えてくれ」

少女「秘密の手紙だ…それを持って居たからやられたんだ」

盗賊「なんだと!?姉御は今ミネア・ポリスで療養している筈だ…直にバン・クーバに戻って来るだろう」

少女「それは本当か?」

盗賊「間違い無ぇ…姉御は必ず帰って来る」

少女「明日の朝もう一度ここに来い…帰って相談してくる」

盗賊「お…おう…」---まさかこんなガキが盗賊ギルドに居るのか?---

少女「約束は守れよ!!」ピョン クルクル シュタ

盗賊「うぉ!!飛んだ…マジか…」アゼン

ロボ「ピポポ…」アゼン

盗賊「…なんか気のせいか濡れた犬の匂いが…」クンクン

盗賊「しかし…秘密の手紙か…気になる話だ」


--------------

『宿屋_2人部屋』


ガチャリ バタン


学者「あら?兄貴もう帰ってたんすね…何してるんすか?」

盗賊「姉御の作った計画書を読み直してんだ…くそう!日付が無ぇ…」

学者「どうしたんすか急に?」

盗賊「盗賊ギルドから接触が有ったのよ…どうや姉御が持ってる秘密の手紙というのが支援の条件らしい」

学者「手紙…」トーイメ

盗賊「お前何か知ってんのか?」

学者「あのっすねぇ…半年前の出来事なんすが…負傷した機動隊が持ってた白黒の書簡を姉御が持って行ったんす」

盗賊「なんだと!?詳しく話せ」


ニュー・ヤーク要衝攻略作戦の時っす…俺っちはかなり後方の衛生部隊に居たんすよ

すこし前方の砲兵部隊に居た姉御がっすね…負傷したその機動隊員を担いで俺っちの所に来たんす

左側頭部に銃創があって瀕死でした

俺っちは装着している兵装を全部脱がせて救急の処置をしてんすが

所持品の中に白黒の縞々が掛かれた書簡らしい物があったんすよ

姉御はそれを見てその書簡と機動隊員のドッグタグを持って行ったんす


学者「その後医療部隊の精鋭達が俺っちに変わってその機動隊員を何処かに連れて行きやした」

盗賊「…」

学者「兵装だけ残ったもんでこっそり頂いた訳なんす…」

盗賊「左側頭部というのは耳の後ろか?」

学者「そうっすね…多分アレっすよ…噂になってる電脳化した奴っす」

盗賊「ちぃぃぃ…機動隊の中に紛れ込んでる証拠を姉御が掴んだ訳だ…お前それが分かってて姉御をほったらかしにしたのか!」

学者「いやいや姉御はそれを上層に報告に行くのだとばっかり思って居やした」

盗賊「上層の何処に電脳化した奴が紛れてるか分からん!!だから組織と関係の無い盗賊ギルドに情報を渡そうとした…」

学者「そうも考えられやすね…今となってはなんすが…」

盗賊「くそう!今姉御が行った戦線は先月特別招集が掛かったやつだ…狙って招集掛けられたな」

学者「もしかしてとっくの昔にやられて…」

盗賊「まさか姉御が内ゲバに巻き込まれちまったとはよう!!」ドン!!

学者「まだ死んだと決まった訳じゃ無いっす…傭兵ギルド宿舎の叔母ちゃんは療養してるって…」

盗賊「そこに望みを掛けるしか無ぇ…くそ!!イライラすんぜ!!」


---頼む!!生きててくれ---


--------------

『翌朝_村道』


シュタタタ ドン!


盗賊「どわっ!!」ドテ

少女「お前!!スキが多い!!」

盗賊「なんだこのクソガキ!!背骨折れたらどうすんだ!!たたたた…」スリスリ

ウルフ「がうるるる…」

盗賊「おいおいなんだこのワンコ…そうかこのワンコの匂いか…」

少女「ワンコ言うな…超ウルフだ」

盗賊「ふん!!どっちでも良い!!…ほんで昨日の話はどうなったのよ?」

少女「お前!約束守れ…もう色々動き出してる…キャンセル出来ない」

盗賊「俺が約束を守れない場合は?」

少女「超ウルフの餌になる」

盗賊「ぶはははは…このワンコのか?」

少女「超・超ウルフも居る」

盗賊「あのな?こっちぁ真面目に話してんのよ…もうちっと大人と話がしたい」

少女「船に荷を積む…出発は明日の昼だ…遅れるな?」

盗賊「おい!!話聞いてんのか?」

少女「お前の船を見ろ…もう荷を積み始めてる」

盗賊「な…なんだとぅ!!うお!!何勝手な事やってんだ!!」キョロ

少女「お前いろいろ遅い…ノロマ!!」

盗賊「にゃろう!黙って聞いてりゃガキのクセに…」ダダ

少女「遅い!」ヒョイ クルクル シュタ

盗賊「分かった分かった…俺の負けだ…だから大人と話をさせてくれ」

少女「じゃぁ家の婆ちゃんと話せば良い」

盗賊「婆ちゃんだと?」

少女「婆ちゃん何でも知ってる」

盗賊「なるほど?ようし…その婆ちゃんの所まで連れて行け」

少女「お前追い付けるか?」シュタタ

盗賊「待てゴラ!!」ダダ


-------------

『宿屋』


ガチャリ バタン


学者「兄貴ぃ…何処行ってたんすか!!もう出発の準備整っていやすぜ?」

盗賊「悪い…モウロク婆ぁの長い話に付き合わされてだな…ったく無駄に時間使っちまった」

学者「どうするんすか?そろそろ宿屋出ないと迷惑かけちまいやす」

盗賊「ミライとリッカも居るな?…ちっと予定変更でもう一泊する」

学者「お?どういう事なんすかね…」

盗賊「どうやら盗賊ギルドの方は既に色々動き出しててな…もう船に荷入れしてんのよ」

学者「ええ!?急展開っすね…」

盗賊「なんか強引に動かれてて俺も訳分からん…成すがままって感じだ」

学者「そうすか…じゃぁもう一日ゆっくり出来るならガラクタ探しに行きやせんか?」

盗賊「俺はそういう訳にもイカンのだ…リッカとミライ!!」

剣士「え?僕?」

女オーク「!?」

盗賊「急ぎで船の横帆を張り替える…今日中に終わらせたいから手伝ってくれ」

剣士「うん…良いけど僕が役に立つかな?」

盗賊「お前は手先が器用だろ?布を縫い合わせて欲しいんだ」

剣士「あーーーおっけおっけ!!」

盗賊「…という訳でガラクタ探しはゲスだけで行ってくれ…俺よりお前の方が目利きだからな」

学者「分かりやした!!」

盗賊「ロボは俺と一緒な?」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「じゃぁ夕方には宿に戻るつもりだからよろしく頼む!」


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『キャラック船』


ガヤガヤ ドタドタ

木材は荷室に隙間なく積めぇ!!

残りの物資は船底だ!表示を忘れるな!?



剣士「これ…昨日の今日でどういう事かな?」タジ

盗賊「半ば強制的にこういう事になってんのよ…詳しい話は誰に聞いても分からんだとよ」

剣士「まぁ…荷室は空だったから良いんだけどさ…」

盗賊「兎に角責任持って荷を運ばにゃならんくなった…今までみたいにチンタラ出来なくなった訳よ」

剣士「チンタラって…」

盗賊「このメインマストの横帆が全然意味無くてな…速度が出なかったんだ」

剣士「そうだったんだね」

盗賊「後ろの三角帆と同じ様にしたい訳だ…帆下駄も吊り変える必要がある」

剣士「そっか!!でっかい三角帆にしたいんだね?」

盗賊「そういう事だ…ほんでリッカにはかなり重労働をしてもらう事になる…大丈夫だな?」

女オーク「丁度体を動かしたかった所…狭い部屋で縮こまって居たから…」

盗賊「ようし!!そうと決まったらやるぞ!!」

剣士「僕は布を縫い合わせて行けば良いね?」

盗賊「うむ…船尾楼の中に買い付けた布と糸を入れてある…沢山は無いから無駄の無い様にな?」

剣士「おっけ!!」

盗賊「ほんでな?外した横帆…ぼろ布なんだが手が空いたらハンモックでも作ってくれ」

剣士「おぉ!!工夫し甲斐があるなぁ…」

盗賊「任せた…じゃぁリッカ!!帆下駄に上がるぞ!来い!!」スルスル


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『メインマスト』


グイ グイ ギリギリ


盗賊「ロープワークは俺がやるからリッカはしっかり帆下駄を支えて居てくれ」ギュッ

剣士「縫い合わせた布って帆下駄に取り付けて行って良い?」

盗賊「やり方分かるか?」

剣士「後ろの三角帆と同じでしょ?」

盗賊「まぁやってみろ」

剣士「大丈夫さ!ロープワークも得意なんだ」グイ グイ ギュゥ

女オーク「だんだん重たくなって来た…」グググ

盗賊「ちっと待ってくれ…反対側をロープで引っ張ってやる」ダダ

女オーク「船を作るのって中々大変なのね…むむむ!!」グググ


--------------

『夕方』


ぶはぁぁぁ ドタ


盗賊「やっと終わった…もうクタクタだわ」グター

女オーク「ふぅ…良い運動だった」

盗賊「さすがオークだ…豆しか食わんのになんでそんなに体力あんのよ…」

女オーク「イヤミ?」

盗賊「あぁ悪い…嫌味のつもりは無い…ミライは何処行った?」キョロ

女オーク「木材を持ってウロウロして居たから何か作ってると思う」


トンテンカン トントン


盗賊「その様だ…そろそろ宿屋へ戻るから呼んで来てくれ」

女オーク「分かったわ…」スタ

盗賊「ロボ!こっち来い…もうフラフラでよう…お前にもたれ掛からんと転びそうだ」

ロボ「ピポポ…」ウィーン ピタ

盗賊「どうよ?俺達の新しい家がどんどん出来上がっていくのは?」

ロボ「ピポポ…」クルクル

盗賊「そうか嬉しいか!!この船で向こう側に連れて行ってやる」ペチン

ロボ「ピピ…」ピタ

盗賊「…夕日が眩しいな?…」トーイメ

ロボ「…」ジー

盗賊「そういや孤児院からも夕日が良く見えたな?」

ロボ「…」

盗賊「俺はよう…あん時と同じ様な空気と同じ様な夕日を見るたび…もう一回まぶた閉じたら戻れる気がしてなぁ…」

盗賊「周りは色々変わっちまったが…頭ん中何も変わん無ぇ…なんだろうな?この虚しい感じ」

盗賊「お前はどう思うんだ?」

ロボ「ピポポ…」

盗賊「そうか…」トーイメ


---もっかいやり直せるなら…---

---いつもそう思うんだ---

『酒場リコリコ』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「いよーう!やっぱ此処に居たか…」

学者「兄貴ぃ!!待っていやしたぜ?」

盗賊「今日も席が一杯だな?」

マスター「ハハお陰様で…何を飲まれますか?」

盗賊「昨日と同じ奴で良い…」ジャラリ

マスター「どうぞ…」ゴトン

盗賊「ふぅぅ…働いた後はやっぱ酒だな…」キュポン グビ

学者「リッカさんとミライ君はどうしたんすか?」

盗賊「まだ船で木材加工やってる…終わったら此処に来る筈だ」

学者「何作ってるんすか?」

盗賊「椅子やらテーブルやら…まぁ…何も無かったから丁度良い」

学者「そら快適になりやすね」

盗賊「それよりガラクタ漁りはどうなった?」

学者「一杯有りやしたよ…ボロッボロの錆び錆びだったんすが使えそうな物は回収してきやした」

盗賊「…で?プラチナは?」

学者「ウヒヒヒ…どうも機械の基板の中にプラチナが使われてる事知らんかったみたいっすね…ウハハハ」

盗賊「よし!でかした!!…それでロボを温める装置作れる訳だ」

学者「今は油が無いんで船に戻ったら作りやす…楽しみにしてて下せぇ」

盗賊「良かったなぁ?」ペチン

ロボ「ピポポ…」クルクル

学者「それで…この村回ってて思ったんすが…この村かなり良い村っすね?」

盗賊「んん?何がだ?」

学者「何て言うんすかね…あんまり差別が無いんすよ…人間以外の種族が多いんす」

盗賊「ふむ…そういやそうだな…ギスギスして無ぇ」

学者「オークも居るしドワーフも居やすね…あと尻尾生えたエルフ?みたいのも居るんす」

盗賊「まぁフィン・イッシュ領だからな…」

学者「俺っち此処に住んでも良いかなと思いやした」

盗賊「お前はダメだ…手癖が悪くて折角の良い雰囲気を台無しにしちまう…内ゲバに巻き込まれる様な事をな」

学者「兄貴ぃ…俺っちも改心しやすよ…」


ガチャリ ゴトン


盗賊「んん?何だソレ?」

学者「あぁコレ…ガラクタの中で発掘したクロスボウっすね…2つあるっす」

盗賊「錆びっ錆びじゃ無ぇか…」

学者「錆び落としたら使えやすぜ?…一世代前の武器なんで微妙なんすが無いよりマシっす」

盗賊「ボルトは?」

学者「探したんすが無かったっすね…使えそうな鋼材も少し拾って来たんで誰かに作って貰いやしょう」

盗賊「ほぅ?鋼材なんか落ちてたんか」

学者「いやいやキラーマシンの一部っす…宿屋に置いてあるんで明日船に運びやしょう」

盗賊「収穫上々か…」

学者「兄貴は何か物資調達して無いんすか?」

盗賊「俺はもう金が無ぇ…帆の材料を買って終わりよ」

学者「あららら…ちっと食料買っといた方が良いんすが…」

盗賊「お前金有るだろう…任せた」

学者「やっぱそうなりやすよねぇ…トホホ」

盗賊「バン・クーバに戻ったら返してやる」

学者「本当っすよ?」


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『深夜_村道』


アオ~~~ン アオ~~~ン


盗賊「今晩はヤケにウルフが騒がしいな?」

学者「月のせいじゃ無いっすか?」

盗賊「満月か…なるほど…」

剣士「これさ…ウルフ同士何かお話してるんじゃないかな?」

盗賊「なんだお前?ウルフの言葉が分かるってか?」

剣士「分からないけど…なんかそんな気がするなぁ…てさ?」

盗賊「そんな事よりちっと俺は仕事に行って来る」

学者「マジすか…」

盗賊「盗賊ギルドからの接触がガキんちょだけだったもんだからよ…指示してるのが何処のどいつか知りたい訳よ」

剣士「あ!!もしかして小さな女の子?」

盗賊「お!?お前の所にも行ってたんか?」

剣士「お前ーーって言いながら追いかけて来るんだ」

盗賊「ソレだソレ!!そいつからの接触しか無いんだ」

剣士「すごいすばしっこい子でさ…ビックリだよ」

盗賊「何か言ってたか?」

剣士「背中を撫でろって…」

盗賊「なぬ!?」

学者「ウハハハハなんで急に撫でろって言うんすかね?」

剣士「分からないよ…撫でてあげたら喜んで返ったよ」

盗賊「まぁ…行動が意味不明なんだ…俺はそのガキんちょの家を知ってるから今からちっと偵察よ」

学者「そういう事っすね」

盗賊「俺一人で行って来るからロボの事を頼む」

学者「分かりやした」

盗賊「先に寝ててくれ…じゃぁな!」スタ


--------------

『民家』


ヌキアシ… サシアシ…


盗賊「…」コソーリ

盗賊「…」---しかし盗賊ギルドのアジトが何処なのかさっぱり分からんとはな---

盗賊「…」---連絡手段も何もかも分からん---


アオ~~~ン ワンワン


盗賊「…」ビク

盗賊「…」---ちぃぃウルフが近いぞ?どこだ?---

少女「お前ーー!!」ダダ ユビサシ

盗賊「どわっ…」タジ

盗賊「…」---くっそあいつ何で起きてんのよ---

盗賊「…」---こりゃハイディングするしか無ぇ---


スゥ…


盗賊「…」---なんで俺の居場所が分かったんだ?---

盗賊「…」---アイツ…ウルフと通じてんな?---

盗賊「…」---ガキと思って舐めてたらダメな様だ---

盗賊「…」---今度は風下から行ってやる---


タッタッタ


盗賊「…」---ようし!この場所なら---


スゥ…


盗賊「…」キョロ

少女「あれ?」キョロ

盗賊「…」ニマー

少女「あれあれあれ?」ウロウロ

少女「ちちーー匂い消えたぁ」

男の声「んぁぁ…もう遅いから早く寝ろぉ」

少女「多分どこかに隠れてる」

男の声「ほら撫でてやるから…寝るんだ」


盗賊「…」---父親が居たか---

盗賊「…」---声は覚えたぜ?---


ワンワン ガウルルル シュタタ


盗賊「…」---くっそウルフが邪魔過ぎる---

盗賊「…」---まぁ良い退散する---


スゥ…


盗賊「…」---こりゃ正体暴くの難義しそうだ---

盗賊「…」---もうちっと他当たって見るか---


--------------

--------------

--------------

『翌朝_宿屋』


グゥゥ スピーー


学者「兄貴ぃ!!起きて下せぇ」ユサユサ

盗賊「んが?」パチ キョロ

学者「昨夜も遅かったんすね?買い出しに行きやすよ?」

盗賊「あぁ悪い…リッカとミライはどうした?」ゴシゴシ

学者「ガラクタを船に運んで貰いやした…そのまま船に乗ってる筈っす」

盗賊「そうか…ええと…何すんだっけな…」

学者「食料とか必要な物の買い出しっすよ…早く行かんと明るい内に出港出来やせんぜ?」

盗賊「そうだっけか…なんか夢見てて混乱しててよ…」スック

学者「なんか寝言を呟いていやしたね…聞き取れんかったんすが」

盗賊「ガキの頃の夢だ…」

学者「とりあえず食料調達っすね」

盗賊「運ぶのシンドイな…」

学者「宿屋で荷車借りられるっす」

盗賊「おぉ!そりゃ良い!」

学者「ええと酒と香辛料も必要になりやすよね…あと薬」

盗賊「そうだな…樽を多めに仕入れんとイカンな」

学者「そうっすね…水も汲む必要がありやすね」

盗賊「ヤバいな…急ぐか!」

学者「へい!!」


--------------

『キャラック船』


ザブン ギシギシ


剣士「荷を積み終わって今日は誰も居ないね…」ポカーン

女オーク「そうね?どうなって居るのかしら…」

剣士「昨日の続きやろうか」

女オーク「まだ作るの?」

剣士「おが屑とボロキレが余ってて勿体無いじゃない」

女オーク「ボロキレの袋におが屑を詰めて行けば良いのね?」ガッサ

剣士「うん…あとは僕が縫って行く…今晩寝るのが楽しみだね…」ヌイヌイ

女オーク「このおが屑…良い匂いがする」クン

剣士「スプルースって言ったけ?柔らかい木で香りも良いし好きだよ」


シュタタタ スタ


剣士「あ!!あの子又来た…」

少女「おいお前!!この船どうやって動かす?」

剣士「ええと…帆を張って動かすんだけど…」

少女「帆?これか?」ピョン ピョン シュタ

剣士「危ないよ!!…それに君じゃ多分広げられない」

少女「ふぬぬぬぬ!!」グイ グイ

剣士「ええと…もしかして君もこの船に乗る…のかな?」

少女「当たり前だ」

剣士「まさか君一人って事は無いよね?」

少女「ちちが来る…それと超ウルフも来る」

剣士「そうか…安心したよ」

女オーク「超ウルフって?」

少女「名は他に有る…でも明かせない」

剣士「ハハ…ええと君の名は何て言うのかな?」

少女「お前ー!!人に名を聞く時は先ず名乗れ」

剣士「あぁゴメン…僕はミライ…そして彼女がリッカ」

少女「ミライ…リッカ…覚えた」

剣士「君は?」

少女「明かせない…そういう決まり」

剣士「アハハハやられたなぁ…まぁ良いや…どうだい?こっちでちょっと手伝わないかい?」

少女「ミライ…お前何作る?」

剣士「う~ん…これ何て言うんだ?おが屑のクッション?布団かなぁ…やわらかくて気持ち良いんだよ」


ピョン ボフッ


剣士「ちょちょ…まだ早い」アセ

少女「おぉぉ!!何だコレ」ゴロン ゴロン

剣士「今ね?これを沢山作ってるんだ…手伝ってくれたら君にもあげるよ」

少女「何する?」

剣士「おが屑を集めて欲しい…沢山必要なんだ」

少女「何処に有る?」

剣士「船の荷室に木材が一杯積んで有るんだけどおが屑も一緒に落ちてるのさ」

少女「分かった…でも一番大きいのを貰う…良いか?」

剣士「おけおけ!ちょっと大きいのも作るよ」

少女「待ってろ!」シュタタタ

女オーク「ウフフ…上手く言い包めたわね?」

剣士「そんなつもり無いけどね?早く仕上げたいだけだよ」

女オーク「じゃぁ急いで作りましょう…」ガッサ


---------------

『昼頃』


ザブン ギシ


盗賊「よっこらぁ!!」ドスン

剣士「樽?」

盗賊「水汲んで来たんだ…甲板の上で良いから適当に並べて置いてくれ」

剣士「あ…うん…よいしょ!!」ヨッコラ ヨッコラ

盗賊「リッカ!!まだ有るから運ぶの手伝ってくれぇ!!」ダダ

女オーク「分かったわ…」スタ

少女「お前ーーー!!」ヒョコ

盗賊「どわっ…なんでそこに居るのよ…」タジ

少女「お前!!昨日何した!?」

盗賊「な…何の事だ?」

少女「お前来た事知ってる…お前の匂い分かる」

盗賊「知ら無ぇなぁ…何の事だ?」

少女「とぼけるな!!どうやって消えた?」

盗賊「ガキに付き合ってる暇無ぇんだ!!俺は忙しいからサッサと其処を下りろ!!」

剣士「あ!!アランさん…この子も船に乗るんだってさ」

盗賊「何!?マジか…」

少女「当たり前だ!!さっさと秘密教えろ」

盗賊「いやぁ…どうもお前苦手だ…乗るなら乗るで大人しくしてろ!!」

少女「あ!!ちちーーー」ノシ

盗賊「ナヌ!?」キョロ


中年の男「これはどうも…」ペコリ


盗賊「あ…あぁ…どうも」---こいつが盗賊ギルドの奴か?---

中年の男「娘が迷惑をかけて居ませんか?」

盗賊「大迷惑なんだがよう…」

少女「お前ーーー!!」バタバタ

中年の男「アッハッハ…騒々しい娘で済みません」ペコリ

少女「ちちーーー!!早く乗れ!!」

盗賊「ええと…話が俺にあんま伝わって来て居ないんだが…」

中年の男「どうかお察しを…因みに私はその手の者ではありません」

盗賊「んん?…と言うと?」---こいつもしらばっくれる気か?---

中年の男「私はこの村の自警団の者で名をリコルと言います…娘の護衛に雇われたと言えば通じますかね?」

盗賊「雇われ…つまり雇い主は明かせないと言いたいのか?」

中年の男「いえいえ娘に雇われた…」

盗賊「ヌハハハ…そらちびっ子一人船に乗せる訳にもイカンだろうな?そらそうだ」

中年の男「重ねて言いますが…私はその手の者では無いので事情は殆ど知りません…娘に雇われた傭兵だと思って下さい」

盗賊「ケッ!!まぁ良く分からんが船に乗るんだな?勝手にシロい!!」

中年の男「ご理解頂けた様で…あともう一匹乗りますのでよろしくお願いします」ペコリ

盗賊「一匹?」


シュタタ シュタタ


盗賊「くぁぁぁ…あのワンコか…」

ウルフ「ガウルルル…」フリフリ

盗賊「もう良い!!おいリッカ!!急いで荷を積んでくれ…俺はもう一回荷を運ばなきゃならん」

女オーク「分かったわ…」

盗賊「ミライ!!他に乗る奴が居たら話を聞いといてくれぇ」

剣士「おっけー!!」

盗賊「じゃぁ次で最後だから出港の準備も頼むな?行って来る」ダダ



---------------

『出港』


ドタドタ


盗賊「何だ結局船に乗るのはちびっ子と旦那の2人だけか?」

少女「超ウルフも忘れるな?」ズイ

中年の男「私は他に誰が乗るとか聞かされて居ません」

盗賊「おいおいどうなってんのよ…ちったぁ俺にも情報欲しいもんだ…」

学者「兄貴ぃ!!これで全員揃ってるみたいっすね…見回した感じ隠れて乗ってる奴も居ない様っス」

盗賊「まぁ良いか…おい嬢ちゃんよ!出港させて良いんだな?」

少女「さっさと出ろ!お前色々遅い」

盗賊「行先はバン・クーバで良いんだな?」

少女「何度も言わせるな」

盗賊「くぁぁぁぁ生意気なクソガキだ…リッカとミライ!!帆を広げてくれぇ!ゲスは舵を頼む」

学者「へいへい!!」ダダダ

盗賊「碇上げるぞぉぉ!!」ガラガラ


ユラ~ グググググ


少女「おぉぉぉ…出航!出港!行けぇぇ!!」ユビサシ

盗賊「こっちは重労働やってんのに気楽なもんだ…」エッホ エッホ


バッサーーー バサバサバサ


盗賊「おぉぉぉ…やっぱデカい縦帆有ると違うじゃ無ぇか…」

剣士「帆は全部開くよね?」ドタドタ

盗賊「勿論だ!!全速力試すぞ!!」ドタドタ

中年の男「ほぉ?帆装が変わりましたな?縦帆3枚…」

盗賊「小さいの合わせたら6枚だ…手隙なら手伝って貰って良いか?」

中年の男「いやぁ久しぶりですな…」

盗賊「んん?もしかして船乗りだったか?」

中年の男「まぁ少しだけ…」

盗賊「じゃぁ心強えぇ…航海中はどうせ暇になるから色々聞きたい事もある」

中年の男「ハハハ…知って居る事なら何なりと」

盗賊「俺の名はアランだ…職業は泥棒さんよ」

中年の男「私はリコル…自警団では戦士役を務めています」

盗賊「よろしくな?リコル!」スッ

戦士「こちらこそ!!」ガシ


--------------

『帆走』


ザブ~ン バサバサ


盗賊「うほーーー倍ぐらいのスピード出る様になったじゃ無ぇか!!」

学者「船が重いせいか安定していやすね…操舵しやすいっす」

戦士「帆装が今流行のキャラベル船ですが荷の積載量が多いので遠洋航海向きの船ですね」

盗賊「あんま違いが分からんのだがよう…」

戦士「小型のキャラベル船は快速で小回りが利くので商船に良く使われています…浅瀬でも帆走出来るのが特徴」

戦士「この船は船底が深いので浅瀬には不向き…でも荷が多く積めるので補給無しで海を渡れる」

戦士「船が大きくなればなるほど横帆の重要性が増すのですが…これだけ速度が出るなら縦帆でも良いでしょう」

盗賊「なるほど…じゃぁ沖に出ても良い訳だ?」

戦士「その場合ちゃんと測量出来る航海士を雇った方が良いですな」

盗賊「もうちょっと楽に話して貰って良いぞ?」

戦士「ハッハッハ初対面だとどうしても…慣れれば地も出て来るでしょう」

少女「ちちーーー」シュタタ ピョン

盗賊「おっとぉ!!その手は食わんぞ」ササ

少女「この男!夜に隠れて家まで来てた!」

盗賊「おいおい何を言いだす」タジ

戦士「ハッハッハ勘が良くて驚いて居るでしょう…」

少女「消える技を持ってる!秘密をしゃべらせろ!」

戦士「まぁまぁ…アランさん…隠して居てもしょうがないので話して置きますが…」

盗賊「んん?何だ?」

戦士「この子達は特殊な感覚で意思伝達できる能力があるんですよ…匂いとか音とか…感覚が鋭いのです」

盗賊「ほう?」

戦士「因みに私にはその感覚が有りません…だからアランさんの思うその手の者とは関わって居ないのです」

盗賊「おいおい…それってもしかしてウルフの遠吠えか?」

戦士「ハッハッハ…お気付きで?…遠吠えだけでは無いのですがね」

盗賊「なるほど分かったぞ…情報伝達は俺らの知らない方法で共有されてる訳か…」

戦士「察しの通り…そして私にはそれを教えて貰えない」

少女「ちち秘密を話すな!ははに言うぞ!」

戦士「同じ船に乗って居るのだから互いの探り合いで関係を悪くしたくないだろう?」

盗賊「…」---盗賊ギルド…こりゃレベルクソ高けぇな---

少女「お前に言っておく…敵も違う方法で情報のやり取りする」

盗賊「敵?なんだ敵ってのは?」

少女「お前達の敵…機械だ…秘密の手紙がソレだ」

盗賊「マジか…白黒の模様が記された…そうか俺らには読めない…つまり密書だった訳か」

少女「お前いろいろ遅い!!トロイ!ノロマ!」

盗賊「おぉ悪りぃ…今全部理解したわ…」

少女「だったらもう口に出して喋るな!誰が聞いてるか分からないから!」

戦士「この船に機械の者は誰も乗って居ないのはもう確認しただろう?」

少女「普段からそうしろと言ってる」

盗賊「分かった分かった…背中撫でてやるから許せ」

少女「お!!?早く撫でろ」クルリ

盗賊「ほらよ…」ナデナデ

少女「もっと優しく撫でろ」

戦士「ハッハッハ娘の扱いもご存じで…」

盗賊「しかしまぁ…これで色々分かったわ」ナデナデ

戦士「快適な船旅になりそうですな?ハッハッハ…」

盗賊「そうだと良いな?」ナデナデ


---どうも俺は盗賊ギルドを舐めてた様だ---

---機械化兵団も…機動隊の連中も---

---相当レベルの高い情報戦をやってんだ---

---そこに姉御が首を突っ込んだ訳か---

---こりゃマジ本気でやらんと足引っ張っちまうな---

『甲板』


ザブ~ン ユラ~リ


盗賊「波で樽が転がって行かん様にしっかりロープで縛って置いてくれ」グイ ギュゥ

学者「食材は何処に置きやす?」

盗賊「船尾楼はもうパンパンだな…」

剣士「船首楼側の小部屋…あそこを作業場にしたいんだけどさ」

盗賊「作業場?」

剣士「ほら?作り物すると音が出るじゃない?」

盗賊「なるほど…構わんが…食材もそこに置けんか?」

剣士「作業用のテーブル置いたから…調理場としても使おうか」

盗賊「それが良い」

剣士「僕と姉さんも船首楼側に移動するよ…船尾楼の居室が広く使える様になる」

盗賊「良いのか?寒いんじゃ無いのか?」

剣士「大丈夫!寒さ対策はしてあるから」

盗賊「じゃぁそうするか」

剣士「姉さん!!部屋の引っ越しだよ!!」メパチ

女オーク「分かったわ…」メパチ

学者「そうそうミライ君!作業場作るなら俺っちの錆びたクロスボウも整備してくれやせんかね?」

剣士「んん?」

学者「ボルトが無いもんで作れたら作って欲しいんす」

剣士「あぁボルトかぁ…心材で木を使って先端にガラクタから切り出した鉄を使えば作れそうだな…」

学者「ソレソレ!そういうので良いんす」

剣士「おけおけ!!材料を運んどいて」

盗賊「ふむ…船尾楼からガラクタが無くなればちったぁマシな居室になる」

剣士「ハハ…船首楼は物置小屋になっちゃうけどね」


-------------

『船首楼』


ヨッコラ ドサ


学者「へぇ?結構良い作業台を作りやしたね?」

剣士「金床が無いのが残念だけどね?」ゴソゴソ

学者「ガラクタの鉄板は好きに使って良いですぜ?」

剣士「うん!そうさせて貰う…鉄板があるだけで大分違うから」

学者「これ資材入れたら寝るスペース無くなるんじゃ無いすかね…」

剣士「大丈夫!僕と姉さんはずっと小さな馬車の中で生活してたんだ…慣れてるよ」

女オーク「馬車よりも少し広いわ?」

学者「なら良いっすね!」

剣士「ここに調理場が有ると言う事は…調理担当は僕かな?」

学者「そうなりそうっすね…大丈夫っすか?」

剣士「味付けが薄いって良く言われるんだけど…大丈夫かな…」

学者「まぁ食えりゃ何でも良いんすが…」

剣士「後で作ってみる」

学者「楽しみにして居やす…じゃぁ資材運んで来るっす」タッタ


-------------

『船尾楼』


ボフッ ボフボフ


少女「このおが屑のクッション気に入ったぞ!!」ノビー

盗賊「ボロキレとおが屑で簡単なベッドを作った訳か…ミライの奴考えたな」ウムウム

戦士「寝床は此処で?」

盗賊「奥の方使ってくれ…手前側はテーブルに海図を広げておきたい」

戦士「中々味のある居室な様で…」キョロ

盗賊「古臭いってか?確かに…30年前の雰囲気はあるな?」

戦士「ほとんどの物が手作り…ほぅ?ランプまで工夫が見える…ここで湯を沸かすのですな?」

盗賊「そうだ…それが意外と暖かいのよ」

戦士「癒されますなぁ…静かな海に…ランプで沸かす湯の音…営みを感じますな」

盗賊「そうか?まぁ…海の静かさは格別だな…どうだ?一杯やるか?」クイ

戦士「私も少し持って来ているのです」

盗賊「ヌハハ話が分かるじゃ無ぇか…片づけは後にして先ずは景気付けだ…飲め」トクトク

戦士「では遠慮なく…」グビ プハァ

盗賊「ウハハハハ病みつきになりそうだ…船で飲むのはよぅ…」グビグビ


------------

『船首楼_作業台』


ゴシゴシ ガリガリ


剣士「よしよし大分溜まったな…集めておかないと」ゴソゴソ

学者「クロスボウの錆びなんか集めて何するんすか?」

剣士「これね…染料になるのさ…他にも色々使い道があるんだよ」

学者「いやぁぁぁ大したもんっすね…そんな物まで使うんすね」

剣士「大体これで錆は落ちた…後は貝殻の粉で擦ればピカピカさ」ゴシゴシ

学者「勉強になるっすわ…何処で覚えたんすか?」

剣士「キ・カイで拾った書物だよ…みんな引っ越した後に書物とか邪魔だから放置して行くんだ」

学者「そうだったんすね…キ・カイも意外と宝が落ちてるんすね」

剣士「ゲスさんは医術を学んだとか?」

学者「俺っちは半端に学んだんで戦場医くらいでしか活用出来んす…どっちかと言うと機械工学の方を勉強しやした」

剣士「機械工学も面白そうだなぁ…」

学者「結論を言うとですね…人殺しの兵器を作るって事なんすよ…人間はそういう風にしか知識を活用出来んのです」

剣士「なんか…深い事を言った?」

学者「まぁ俺っちの戯言なんで気にせんで良いっす」

剣士「まぁ何となく分かったよ…良かれと思って作っても結局戦いの道具に利用されるだけ…何作ってもそうなっちゃう」

学者「おろろ?理解早いっすね?」

剣士「僕は色んな物作るけどさ…例えばこのおが屑で作ったクッションも…便利だから戦いに使われちゃう」

学者「そうそう…そんな感じで何作っても人殺しの道具にされるのが機械工学なんす」

剣士「でも今の時代は戦う相手は機械なんでしょ?」

学者「今までは…と言った方が良いかもしれんす」

剣士「どうして?」

学者「人間の中に機械化…いえ電脳化した人間が入り込んでるんす…内ゲバを起こす為っすね」

剣士「じゃぁ味方同士で戦う事になる?」

学者「かもしれやせん…ほんで機械と戦うために作った兵器はそのうち人間に向けられるんす」

剣士「ハッ!!それってもしかして機械がそうさせてる?」

学者「恐ろしい話しっすよね…」


実はっすね…機械化兵団の奴らは人間の住む領地に攻め込んで来る事なんか無いんすよ

多分自分たちの守る場所から遠くまで離れられんのです

だからここ20年ぐらいは人間側が攻める一方だったんす

機械は自分たちが動ける為にエネルギーが必要なんすが

今の所人間に奪われっぱなしで勢力が小さくなってる様に見えやす

でもですね?

もし人間のお偉いさんに電脳化した人間が混ざるとどうなると思いやすか?


剣士「奪ったエネルギーをこっそり機械に渡す…かな?」

学者「正解!…多分そうなるっす…戦って獲得した意味が無くなるんすね…でも戦死した人は帰って来ない」

剣士「もしかしてそういう事がもう起こってる?」

学者「多分そうっすね…ミライ君達と出会ったのもその中の出来事だと思って居やす」

剣士「じゃぁ船を盗んでフィン・イッシュに行こうとしてるのもその一環なの?」

学者「兄貴はそういう流れにあまり首を突っ込みたがらないんでフィン・イッシュに行く目的はちょっと違いやすね」

学者「でも…多分電脳化した人間が入り込んでるのはフィン・イッシュも同じだと思いやす」

剣士「関わらなくても巻き込まれてしまうという事か…」

学者「俺っちの予想では直に大きな戦争になると思いやす…だから姉御は危険を承知で盗賊ギルドに接触した…」

剣士「知らなかったよ…世界がそんな事になってるなんて…」

学者「要らん話をしちまいやしたねぇ…知らんくて良かったんすよ」


ガチャリ バタン!!


少女「お前ーー!!その話を他でしゃべるな!!」

学者「おわっ…びっくりしやしたよ…」ドキドキ

少女「分かったか!!今の話を陸でするな!!」

学者「へいへい…なんなんすかねこの子は…」

少女「お前口軽い!!しゃべったら超ウルフの餌になる!!覚えておけ!!」

剣士「まぁまぁ…撫でてあげるからこっちにおいで」

少女「撫でる…許す」クルリ

剣士「君は僕と一緒で耳が良いんだね?」ナデナデ

少女「ふむ…お前は通ずる物があるな…ふにゃー」コテン

剣士「…」ナデナデ


---なんか進まなきゃいけない方向が見えて来た気がする---


--------------

--------------

--------------

『数日後』


カン カン コン


盗賊「ふぅぅやるな?老体のクセに」ズザザ

戦士「まだまだ!!」ダダ ブン

学者「まだ立ち合いやるんすか?そろそろ甲板開けて欲しいんすが…」

盗賊「ちと休憩にするか…」

戦士「フフ良い汗をかいた…ふぅ」スタ

学者「俺っちはクロスボウの試し撃ちをっすね…」ゴソゴソ


タッタッタ


剣士「リコルさ~ん!!出来たよぉ~!!」

戦士「お!?」

剣士「装着して見て」ガサリ

戦士「ふむ…中々に…」ガチャガチャ

盗賊「おいおい…ガラクタから鉄の鎧を作ったってか?」

剣士「盾もあるよ…ホラ」ドサ

盗賊「今時そんな重装着てる奴なんか居ないんだがな…銃弾は良いが榴弾でポーンよ」

戦士「良いでは無いか…私は戦地では無く魔物から村を守るのが仕事だ」

盗賊「そんなもん来てバン・クーバを歩いてたら笑いの的だがな?ヌハハ」

剣士「まぁまぁ…ガラクタはどうせ邪魔だったし僕の趣味だよ」


バシュン ストン!


盗賊「おっと!危無ぇな馬鹿野郎!」

学者「ミライ君…やっぱり少し狙いが逸れやすね…クロスボウの調整じゃ限界っすかね?」

剣士「それ多分ボルトの側が問題なんだよ…心材に木材を使ってるから微妙に曲がってるのさ」

学者「ボルトが軽い分威力も微妙なんすよね…」

剣士「飛距離は相当出るから火矢みたいな使い方が良いかもね…ボロキレと油は一杯有るからさ」

学者「火矢…なんつーか使う想定が出来んっす」

戦士「そうでも無い…陸沿いの航海は海賊船に遭遇しやすいから対海賊船であれば使い道も…」

盗賊「海賊?」

戦士「この船では海賊達が乗るスクーナーからは逃げられない…だから火矢で対向するのは有効だと思う」

盗賊「なるほど!!帆を燃やしちまえば勝ちか」

学者「大砲の飛距離に勝てるとは思えんのですが…」

戦士「そのクロスボウの飛距離は?」

学者「目視で200~300メートルっすね…大砲は1000メートル以上飛ぶっす」

戦士「それは戦場で使って居る大砲の話…海賊の持つ大砲は大きくて丸い砲弾」

学者「丸い砲弾?それ旧世代の大砲じゃないっすか…」

戦士「そもそも揺れる船で1000メートル向こうの標的には命中しないから近距離で威嚇目的で使うのだよ」

学者「あぁぁそれなら旧式で十分って事っすね…」

戦士「だから連射の聞く火矢が有効だと思う…200メートルでそこそこの命中があれば脅威な筈」

剣士「火矢を作るのは簡単だから作りためておくよ」

戦士「もしも一気に接弦されて乗り込まれる様な事があれば…この鎧と盾が役に立つ」バンバン

盗賊「立た無ぇよ!!そんなもん銃器で一掃だ」

剣士「相手が銃器を持って居た場合は?」

盗賊「そらお前…ドンパチになっちまう」

戦士「フンフン!!」バンバン

盗賊「その鎧と盾で耐えるってか?マジか…人間キラーマシンだな…」

戦士「戦士とはそういう役だ」

学者「なんか連携の取り方が分かってきやしたねぇ?」


--------------

『海賊船?』


ザブ~ン ギシ


剣士「…やっぱり追いかけて来て居そうだよ」

盗賊「ちぃぃ…言った傍から遭遇しちまうとは…」

戦士「望遠鏡は持って居ないのか?」

盗賊「無い…」

戦士「4本マストのスクーナーか…只の商船の可能性もある」

盗賊「こりゃ望遠鏡も必須だったな…しゃぁ無ぇ…備えるか」

戦士「日暮れまで逃げきれば追っては来ない筈…」

学者「このままの感じだと2時間後くらいって感じっすか?」

盗賊「向こうが速度上げなけりゃな?」

剣士「ダメだやっぱり近づいてる!!僕火矢を船尾楼の上に準備する!!」ピョン シュタ

学者「木材しか積んで無いのを見せればなんとか見逃して貰えやせんかね?」

盗賊「いや…海賊ならむしろ木材が欲しいだろ」

学者「あらら…そういうもんなんすかね?」

戦士「ううむ…もしもドワーフ国の海賊船なら何もしてこない…望遠鏡が無いとどうにも確認が出来ん」

盗賊「向こうはこっちが見えてんだろ?こっちが何者か分かる様にすれば良いんじゃ無いか?」

学者「あ!!旗印っすね…そういやこの船は旗印が無いっす」

戦士「何も旗を掲げて居ないから只の商船だという認識になるのだよ…」

盗賊「それでも近づいて来るって事はやるしか無いか…」

戦士「仕方ない…備えよう」ダダ


--------------

『1時間後』


ザブ~ン ユラ~


剣士「向こうの大砲は船尾の方に1台…後ろ向いてる!!」

戦士「どうやら海賊に間違いない…こちらに大砲が無いと知って追い越しを掛けて船首側から接弦してくる」

盗賊「真後ろに居てどうして大砲を持って居ないと分かる?」

戦士「乗っている人数だ…大砲を1門使うのに4~5人必要なのだ」

剣士「向こうは10人以上居るよ!!」

盗賊「くそう!折角手に入れた俺の船に大砲なんぞ当てられたく無ぇ!!」

剣士「少し進路変えた!!右側から追い越して来そうだ」

盗賊「ようしやってやる…クロスボウ2台はゲスとリコルが使え!向こうが後方に居る内に俺らの方から寄せて行く」

戦士「先制するのか?」

盗賊「やらなきゃやられる!戦いはそういうもんだ…ミライ!!お前は監視台の上でしっかり観察しとけ!!」

剣士「分かったぁぁ!!」

盗賊「右に寄せて行くぞ?」グイ


グググググ ユラ~


盗賊「射程に入ったらじゃんじゃん撃ってけ!!」

学者「ほっほっほっほ…炉と油を持って来やしたぜ?」ドタドタ

戦士「炉で火を点けてからから撃つのか…」

盗賊「リッカ!!乗り込まれたらお前が敵を引き付けろ!!戦闘の準備だ」

女オーク「え!!?私が人間と戦う…の?」

盗賊「戦わなきゃ皆やられるぞ…黙って準備しろ」

女オーク「そんな…」オロオロ

剣士「姉さん!!向こうの船の人はやる気みたいだ…もう武器を振り回してる」

女オーク「分かった…」ダダ


---------------

『海賊船』


バサバサバサ グググググ


海賊1「ぐへへへへ…あいつらビビッて船尾楼の上で立ちんぼだ…船ごと奪っちまうぞ!!」

海賊2「女が走り回ってるな?こりゃ楽しみだ」

海賊1「おい!!あいつらクロスボウ準備していやがる…ちぃぃ何処ぞの傭兵が乗ってるな?」

海賊2「この距離じゃ当たりゃしねえよ…そんな事よりお前等ぁ!乗り込む準備だ!!」

海賊共「うおぉぉぉぉ!!」バンバン


シュン! ストン! ボゥ…


海賊1「何ぃ!!火矢だと?」

海賊2「弓だ!!撃ってる奴を撃ち落とせぇぇぇ!!」ドタドタ

海賊1「馬鹿野郎!!こっから弓で届く訳無いだろう!!」


シュン! ストン! ボゥ…


海賊1「ええい!!火を消せ!!ゴルァ舵は何やってる!!距離開けろタワケ!!」

舵取り「向こうの方から近づいて…」グルグル ググググ

海賊2「水だ水!!海水でも何でも良い!!火を消せぇ!!」ドタドタ


シュン! ストン! ボゥ…


---------------

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『キャラック船_デッキ上』


ガチャコン バシュン!


学者「でっかい的なら結構当たりやすね?」ガチャコン

戦士「こちらの作戦勝ちか…」バシュン!

盗賊「休まないで撃て!!距離を開けられ始めてるぞ!!」

剣士「やったぁぁ!!見て!!帆の一枚が燃え始めてる!!」

盗賊「ヌハハこりゃ火消しに必死だな…ようし!!進路戻して振り切るぞ」グイ ググググ

学者「いやぁぁぁ…火矢なんて古典的な方法で結構いけるもんすね…」バシュン!

盗賊「まさか射程の長い火矢を使って来るとは思って居なかっただろうな…」

戦士「待て!!まだだ…こっちの火矢が届かない距離で並走している!!」

盗賊「なぬ!?まだやるのか?」

学者「あ…あ…あぁぁ…マズいっすね…大砲を触り始めやした」

盗賊「クソがぁ!!帆を焼かれてまだ食いついて来るか!!」


ドーン!! ポチャ


戦士「大砲1門…アレは3分置きに撃って来るぞ!!」

剣士「あの船…大砲を撃つと横にすごく揺れてる…」

盗賊「船底が浅いからあんな風になるんだ…そのまま転覆しちまえば良いのに…」

学者「ゆっくり追い抜かれて行ってやすぜ?」

盗賊「うむむ…どうする?」

学者「こっちに火矢がある事がバレてるんで近付いては来んっすよね?」

盗賊「転進して距離開ける!!ミライ!降りて来い!!帆を張り替えるぞ!!」

剣士「ええ?」

盗賊「この船の回頭性を今発揮する時だ!!お前は前の帆を張り替えろ!!リッカはメインの帆だ!!ゲス!!操舵変われ!!」

学者「へい!!」ダダ

盗賊「もうすぐ凪で風向き変わる…上手く風に乗って逃げる!!」ダダ


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『凪時』


ユラ~ ギシ


盗賊「ようし…この距離なら大砲も当てらんないだろう」

学者「風が無くなってお見合い…すか」

盗賊「陸から吹き下ろす風に変わる…それまで待ちだ」

少女「お前ーー!!腹減ったぞ!!」シュタタ

盗賊「ええい今忙しいんだ…スッ込んでろ」

戦士「アラン!!その子は風を読む…今来るぞ!!」

盗賊「なぬ!?」


ソヨ~


盗賊「ミライ!!帆で風拾って上手く回頭させろ!!沖へ向かう!!」

剣士「今やってる!!…ぐぬぬ」バサバサ

盗賊「リッカ!!メインの帆を張ってくれぇ!!沖へ逃げろぉ!!」グイ バサバサ

女オーク「むむむ…」グイ グイ バッサー

学者「このまま沖っすね?」グイ グググググ ギシ

戦士「おぉ…海賊船は回頭しない…」

盗賊「どうやら向こうさんは回頭させる為の帆を無くしてんだ…その分差が出る」

戦士「フフこれは逃げられそうだ…」

盗賊「よしよしよし!どんどん離れて行ってんぞ!!」

学者「兄貴ぃ!!帆船に慣れて来やしたね?」

盗賊「まぁな?後で反省会すっぞ!!色々足りない物が分かったからな」

少女「お前ー!!話聞いてるのか!!飯ぃぃ!!」

盗賊「ぬぁぁうるせぇな…ミライ!!帆を張り終わったら魚でも食わしておけ!!」


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『夜_バーベキュー』


ジュゥゥゥ モクモク


少女「はむ…」ガブ モグモグ

盗賊「まず足りない物が…クロスボウを設置するスタンド…これが有れば命中率が格段に上がる」

盗賊「それから篝火を焚く台…鉄板に余りあんだろ?どうにか工夫して作ってくれ」

盗賊「あとな?雨に備えて雨除けも必要だ」

剣士「あ!!雨だと火矢が使えないじゃない!!」

盗賊「雨で濡れている場合は油が有効になる…油でヒタヒタの矢を撃ち込むのもそれなりに効果が在る」

学者「濡れた所に油があるとツルッツルなんす…そこに上手く着火したら延焼も狙えやすね」

盗賊「まぁ兎に角…こっちの射程でどんだけ撃てるかがカギだ…もっとクロスボウが有れば良いんだが…」

学者「あの重クロスボウはガラクタを漁らんと中々手に入らんすね…骨董品すよ」

盗賊「無い物はしゃー無ぇ…今のでやりくりするだ…後何か気付いた事は無いか?」

戦士「帆角を調整する時に目印となる番号か何かを記してみたらどうだ?」

盗賊「おぉ確かに…どの角度で固定したいか…今の所それぞれの勘便りだな…」

盗賊「ようし!!それは俺がやるわ」

女オーク「こっちの船に火矢を撃たれた場合は?」

盗賊「ふむ…水の入った樽は消火用でバラけて配置したほうが良い訳か…」

剣士「マストの下にくくり着けたら?登りやすくもなるし」

盗賊「それで行くか…まぁ今晩はもう追っては来んだろうから明日明るくなったら準備しよう」

学者「いやぁ…よくよく考えたら良く凌ぎやしたねぇ…」

盗賊「決め手は帆が一枚燃えた事だな?」

戦士「その後こちらの小回りを活かして逃げ回る機転も良かった」

盗賊「帆の操作は体力使うのが難点だ…もう体がクタクタよ」

学者「さぁて!!夜の交代に備えて俺っちは先に寝るっす」スック

盗賊「おう!休んでおけ…しばらくは俺が見て置く」


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『数日後』


ザブ~ン ユラ~リ


学者「海賊船の対策で色々作ったは良いんすが…あれっ切り出会わんすね…」

盗賊「そうそう出会わんってこった」

学者「もう陸地を見失ってるんすが…現在地も見失っていやすよね?」

盗賊「うむ…羅針盤頼りよ」

学者「やっぱ航海士居ないとこうなっちゃうんすね…」

盗賊「海賊に追いかけまわされるよりは良いと思うがな?」

学者「しっかし…随分暖かくなりやしたねぇ…折角ロボの筐体に白金カイロ仕込んだんすが…」

盗賊「おぉ!!いつの間に…」

学者「一日一回油を差してやって下せぇ」

盗賊「おぉ分かった」

学者「それにしても暇っす…な~んもやる事無いっす…」グター

盗賊「ミライが何冊か書物持ってただろ?お前も読んでみろ」

学者「アレは魔術の本で俺っちには読めないんすよ」


トンテンカン トントン


盗賊「ミライは常に何か作ってんな?」

学者「面白そうなんでちっと見て来やす」スック

盗賊「おう!!ついでに後で酒を持って来てくれぇ」

学者「へいへい…」ダダ


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『船首楼_作業場』


ガチャリ バタン


剣士「よし!出来たぁ!!…あれ?ゲスさん?」

学者「何作ってるのか見に来たんすよ…退屈なもんで」

剣士「そんな大した物じゃ無いよ…コレさ」ジャーン

学者「木槌…なんかやたらデカい木槌っすね…」

剣士「姉さんがさ…人間の血を見たく無いって言うから代わりの武器を作ったんだよ」

学者「なるほどーリッカさんが持つなら丁度良さそうっすね」

剣士「この木槌なら鉄の鎧だってへこませられる…結構強力な武器だね」

学者「そこで乾かしてる卵みたいな奴って…もしかして爆弾っすかね?」

剣士「あぁコレ?火薬があれば爆弾になるけど…これには油を入れるつもりなんだ」

学者「へぇ…上手く作りやしたね?」スッ

剣士「あああ!!まだ触ったらダメ!!」

学者「済まんっす…これ何で出来てるんすか?」ツンツン

剣士「貝殻の粉と骨粉を練った物だよ…乾いたら卵の殻みたいになる」

学者「手投げ用の火炎瓶みたいなもんすね…」

剣士「僕…思うのがさ?何もしないで船に接近させて確実に火を点けた方が良いと思うんだ…その為の備え」

学者「良く考えていやすねぇ…」

剣士「接近戦なら姉さんに勝てる人なんかそうそう居ないから木槌で暴れて貰う…その隙に向こうの船を燃やせば良い」

学者「いやぁ…そんな木槌でぶっ叩かれたく無いっすね…」タジ

剣士「積んでたソリを解体して材料にしちゃったからアランさんに謝らないと」

学者「どうせもう使わんので好きにして良いっすよ」

剣士「それ聞いて安心した」


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『船尾楼』


アーデモナイ コーデモナイ


盗賊「そろそろ外海に出る海峡の筈なんだが…」

戦士「ふうむ…確かに羅針盤と進路は合って居る…」

盗賊「真っ直ぐ進んでる様に見えて少し横に流れ続けて居たのかもなぁ…」

戦士「海図を見る限り何処に流れていたとしても直に陸地が見える筈…」

少女「少し左に煙匂う…」クンクン

盗賊「煙?」

少女「火薬匂い違う…なにか燃える匂い」クンクン

盗賊「陸で何かやってるのかもな…ちっと進路修正するわ」グイ

戦士「海賊が何処かの漁村を焼き討ちしているのでは?」

盗賊「なぬ!?」

戦士「地庄炉村に商船が入って来なくなったのはそもそも海賊に襲われるリスク回避…この辺りに居てもおかしく無い」

盗賊「くぁぁぁ無法地帯だな」

少女「父…悪い海賊倒せ」

戦士「海の上では分が悪い…陸ならどうにか…」

盗賊「もしも襲われてるとしたら…なんか放って置けんな…」

戦士「海賊船が漁村の焼き討ちで手隙になっているとしたらどうする?」

盗賊「焼き討ち…誰かが襲われてるか…行くしか無えだろ…船さえ無けりゃ只のごろつきだ」

戦士「決まりだな?」ギラリ

盗賊「おぉぉ…その眼…好きだぜ?」


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『漁村_近海』


モクモクモク


盗賊「やっぱり焼き討ちに会ってんな…丁度日が落ちてこっちに気付いて居ない…チャンスだ!」

戦士「スクーナー2隻か…30人近く村に降りて行ってるな…」

盗賊「船を燃やせばもうこっちには近づいて来ん!!後は様子見ながらクロスボウ撃てば良い」

学者「兄貴ぃ!!見張りの一人が気付いて騒いでいやすぜ?」

盗賊「一気に接近して燃やすぞ!!ミライ!!油玉投げる準備は良いか?」

剣士「いつでも投げられる!!姉さんも一緒に投げるよ?」

女オーク「う…うん…」ドタドタ

学者「射程に入ったんで火矢を撃ちやすぜ?」

盗賊「撃て撃てぇ!!」


バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!


学者「うほーースタンド有るとやっぱ安定して狙えるっす!!」ガチャコン

盗賊「無駄口は良いから撃て!!」


バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!


剣士「もっと寄せて…もっともっと…」

盗賊「やってる!!慌てんな!!」グイ

少女「父ぃーー!!悪い海賊気付いた!!戻って来る」

戦士「そのまま見張り役を頼む…」バシュン! ガチャコン

剣士「届けぇ!!」ポイ

女オーク「フン!!」ポイ


ボゥ メラメラメラ


剣士「行ったぁ!!」ガッツ

盗賊「どんどん投げろ俺は帆を畳んで船を停める」ダダ

剣士「姉さん!!あっちの船も!!」ダダダ ポイ

女オーク「フン!」ダダダ ポイ


ボゥ メラメラメラ


学者「これはもう火消し出来んすね…」アゼン

戦士「奇襲成功だ…次はこの船に乗り込んで来るかもしれん…クロスボウで迎え撃つ」ダダ

学者「小さい的に当てる自信無いんすが…」ダダ


ドーン ドカーーーン パラパラ


盗賊「うぉ!!火薬に火が付いたか!!」タジ

剣士「うわっ…こっちにも火の粉が…」

盗賊「帆を畳んでセーフだ!!船に燃える物が乗っかって無いか確認しろぉ!!」

剣士「分かったぁ!!」シュタタ


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『撃ち合い』


バシュン! バシュン!


戦士「高さの利が有ってこちらが有利…」ガチャコン バシュン!

学者「ボルト足りやすかね…」バシュン!


シュン ストン!


盗賊「やっぱ弓で応戦して来んな…」

戦士「向こうに火矢が無いのが救いだ」ガチャコン バシュン!


シュンシュン ストンストン!


戦士「ミライ君!!盾を持って来てくれ!!」

剣士「分かった!!姉さんも盾で矢から身を守って!!」ダダ

女オーク「盾ね…」ドスドス

盗賊「ええいクソ!!弓を作って置けば良かったな…」ウロウロ

学者「これで船体に刺さった矢を回収したら次から弓矢使えやすね」


ヒュルヒュルヒュル ドスン!バキバキ!


盗賊「どわっ!!危無ぇ!!投げ斧まで使って来るか…」

戦士「フフ必死だな向こうは…武器がタダで手に入ると思えば良い」

盗賊「俺の船が傷んじまうんだが…」

剣士「盾を持って来た!!」ドタドタ

盗賊「おぉ…俺はコレで投げ斧と矢を受けりゃ良いんだな?」スチャ

剣士「僕も盾を構えておくよ」スチャ


ヒュルヒュルヒュル カーン!


盗賊「うらぁ!!ゲッツだ!!」

学者「ええと…この船に矢を撃って何がしたいんすかね?アイツ等は…」

戦士「逆上しているのだよ…やらせて居れば良い」

学者「そろそろこっちもボルトが無くなるんすが…向こうも同じっすよね?」

盗賊「次は泳いで来るんじゃ無ぇか?」

学者「泳いで来ても船体丸いんで這い上がれんと思うんすが…」


ヒュルヒュルヒュル カーン!


剣士「おぉぉ!!剣も投げて来てる…やったぁ!!」

盗賊「アイツ等…もしかすると相当アホだぞ?接近武器無くしてその後どうすんだ?」

戦士「挑発とはな?こうやってやるんだ…見てろ」スタ


ジョロジョロジョロ


盗賊「だはははは…ションベンすんのか!!俺にもやらせろ!!」ダダ


学者「俺っちもやるっす!」ダダ

剣士「ええと…じゃぁ僕も?」シュタタ

女オーク「…」アゼン


ジョロジョロジョロ


盗賊「見ろ!!泳いで来る奴が居る!!だははははは!!」

学者「これ完全に怒ってるっすね…アハハハ」


ヒュルヒュルヒュル カラーン! カラン!カラーン!


剣士「あぁぁ武器が一杯手に入る…」シュタタ

盗賊「さて…馬鹿共は投げる物が無くなった訳だが…こりゃどうする?」

学者「高みの見物で良いんじゃないすか?船降りると一気に乗り込んで来そうっすよね?」

盗賊「ううむ…村の方が心配ではあるんだ…」


アオ~~~ン アオ~~~ン


少女「超ウルフが仲間呼ぶ…餌いっぱいある」

盗賊「おぉ…そんな手が使えるんか」

戦士「ミライ君…矢尻は無くて良いから簡単なボルトは作れないかい?」

剣士「ん?木材をちょっと切り出すだけなら直ぐ出来る…ただ真っ直ぐ飛ばないよ?」

戦士「良いんだ…海賊達を少し手負いにするだけで良い」

剣士「じゃぁ直ぐに切り出して来る…待ってて」シュタタ


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『10分後』


ジャブジャブ

ゴラお前等ぁ!!こんな事してタダで済むと思ってんのかぁゴラァ!!

船から降りて来やがれ!!どこのどいつだゴルァ!!


学者「何か言っていやすねぇ…撃っちゃって良いすか?」

戦士「真下は狙いにくいが…」バシュン! グサ

海賊1「ぐぁ!!この野郎!!」

学者「ズルいっすよ…俺っちにもやらせて下せぇ」バシュン! グサ

海賊2「うがぁ!!くっそまだ矢が有るのか…野郎共!!潜って回避だ!!」ジャブン

学者「あたたたた…そんな息継ぎに出て来た所狙われるだけでしょうに…」

盗賊「どうやらそこら辺考える脳みそが足りん様だ…」

戦士「泳ぐために装備も脱ぎ捨てたな…」

盗賊「おいミライ!!まだ油玉残ってるか?」

剣士「有るよ?」

盗賊「一部海賊船の消火に行ってる奴が居る…武器とか持ち出しそうだから追加で燃やしてくれ」

剣士「おけおけ…でもちょっと遠いな」

盗賊「帆一枚で少し寄せてやる…」ダダ


ユラ~ ググググ


海賊1「ゴルァ!!何処行くんじゃい!!」ジャブ

海賊2「おい…陸で何か騒いでるぞ?」

海賊1「村の奴らが反撃して来てんのか?」

海賊2「一旦戻るか…」

学者「何言ってるんすか…逃がさんですよ」バシュン! グサ

戦士「ボルト全部撃ち尽くすぞ」バシュン! グサ

剣士「届けぇ…」ダダダ ポイ


ボゥ メラメラメラ


盗賊「こりゃ引き上げても良さそうだが…まぁ暗いから朝まで待つかぁ…」

戦士「うむ…浅瀬だから座礁しては元も子もない」

盗賊「少しづつ風で流れてんのよ…碇降ろすと多分登って来るよな?」

剣士「碇の鎖に油を塗ろうか?錆び防止にもなる」

盗賊「おぉ!!そりゃ面白い絵が見れそうだ」

剣士「碇降ろして良いよ…油塗って来る」スタタ


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『翌朝』


ザブン ザブン


盗賊「夜が明けたら燃えた海賊船をちっと見に行こうと思ってたんだが…」

学者「漁村の住人に先越された感じっすか?ふぁ~ぁ…」ゴシゴシ

盗賊「こりゃ…行けそうに無ぇなぁ…」

学者「良いんすか?兄貴は漁りに行くの好きっスよね?」

盗賊「そうなんだが…見ろ」

学者「死んだ海賊の死体囲んでケリ入れて居やすね?」

盗賊「まぁ多分犠牲者が出てんだろ…そんな中俺が海賊船漁りにも行けない訳よ」

学者「他の海賊共はウルフに追われて散った感じっすね?」

盗賊「だろうな?…さて…帆を開いてくっから舵頼む」

学者「へい!!」

盗賊「寝てる奴はまだ起こすな?」ダダ

学者「分かって居やすとも…」

学者「なんちゅぅか…漁村にも営み有ったんすよねぇ…誰か死んだらそりゃ悲しい…」

学者「どうしてこんなんなっちゃうんだか…」


バサッ グググググ


盗賊「碇上げるぞ?陸沿いに進め」ダダ

学者「へ~い!!」グイ


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『外海に出る海峡』


ザブ~ン ユラ~リ ギシ


盗賊「この灯台を超えたら左手に陸を見ながら行けばバン・クーバだ」

学者「あとどんくらいっすか?」

盗賊「丁度折り返しだな…1週間は掛からん筈」

学者「まだ先が長いっすねぇ…」

盗賊「陸沿いは海賊が出るらしいからまだ気は抜けん」


ガチャリ ギー


剣士「船体に刺さった矢を全部回収してきたよ」ドサリ

盗賊「おぉ!!何本くらいある?」

剣士「う~ん…50本くらい?」

盗賊「無いよりマシだな…お前弓は作れんか?」

剣士「材料が無いなぁ…今の木材で作ってもあまり飛ばない」

学者「堅い木が必要なんすね?」

剣士「それもあるけど弦にも問題がある…ロープじゃダメだよ」

盗賊「まぁ仕方無ぇ…昨夜手に入れた武器類はどうだ?」

剣士「普通の炭素鋼の武器だね…僕は斧が欲しかったから満足してる」

盗賊「斧なんぞ使うんか?」

剣士「金床が無かったからさ…鉄を打つのに丁度良かったんだ」

学者「なんちゃって鍛冶屋が出来るんすね?」

剣士「釘を作る専門の鍛冶屋だね」

盗賊「釘がありゃもっと色々作れそうだな?」

剣士「うん!!木組みだけで作るのは結構大変だったんだよ…釘が有れば船の補修も出来るね」

盗賊「そうだ斧がぶっ刺さった所に板を張っといてくれよ…割れちまってんだろ」

剣士「一回戦闘すると結構傷んじゃうね?矢が刺さった跡も穴が開いちゃってさ」

盗賊「もうやりたく無ぇ…まだフィン・イッシュまで行かなきゃなんねぇからな…」

剣士「上手く補修するなら…骨粉でノリを作ってピッタリハマる木材貼り付けるか…」

盗賊「板を貼るだけじゃダメってか?」

剣士「それだと只のぼろ隠しになる…しっかり補修してから板を貼らないといけない」

盗賊「うは…手間が掛るな…」


--------------

『外海』


ザッパ~~~ン ユラ~~~


盗賊「やっぱ外海は波が全然違うな…」

戦士「風が強いな…」キョロ

盗賊「嵐が来るってか?」

戦士「いや…嵐とまでは行かんが雨が降るだろう」

盗賊「てことは視界も悪くなる…海賊に見つからんで済むという見方もある」

戦士「この船…見た所かなり古そうだが浸水は大丈夫だろうな?」

盗賊「おっとぉ!!考えて無かったわ…」

学者「丁度今ミライ君が船の補修やってるんで言ってきやしょうか?」

盗賊「おう!!…てかお前もゴロゴロして無いで手伝ってやれい!!」

学者「あちゃーー分かりやしたよ…トホホ」スタ

盗賊「しかし全然考えて無かったな…そういや甲板の板は隙間だらけだ…」

戦士「水を汲みだす準備もしておいた方が良かろう」


--------------


『甲板』


カクカク シカジカ…


剣士「ええええ!!?穴の補修だけじゃ済まない!?」

学者「俺っちも手伝いやすよ?」

剣士「そんな…甲板もだけどそこら中隙間全部埋めるなんて材料が足りない…」

学者「板貼るだけじゃやっぱダメなんすかね?」

剣士「水漏れは簡単に止まんないさ…どうしよう…」

学者「何が足りんのですか?」

剣士「隙間を埋める練り物…ええと骨粉と貝殻の粉の奴」

学者「油玉作った奴っすね?」

剣士「どうするかな…今から骨砕いて作るのに…」

学者「手伝いやすよ?」

剣士「船底に骨と貝殻が捨ててあるんだ…それを拾ってハンマーで細かく砕いて欲しい」

学者「分かりやした…どの位必要で?」

剣士「釜一杯分あれば足りると思う」

学者「えええええ!?そんなに…」

剣士「姉さん!!釜で湯を沸かしておいて!!骨粉で接着剤作る」

女オーク「いつもの奴ね?」

剣士「うん!!…ええと練り物を量増ししたいな…ボロキレ崩して繊維にするか…」

学者「骨砕くのに作業台使わせてもらいやすぜ?」

剣士「急いでね!!」


-------------

『練り物』


グツグツ…ポコ


剣士「ゲスさん!釜の中混ぜるの代わって!」グルグル

学者「これ時間掛かりやすね?」

剣士「骨がしっかり溶けるまで茹でなきゃいけない…」

学者「貝殻の粉とボロキレの繊維はいつ入れるんすか?」

剣士「それ姉さんに聞いて?僕は板の切り出しに行って来る」スック

学者「わかりやした…これ混ぜるのも力が居るんすね…」グルグル

剣士「焦がしたらダメだから!!休まないで混ぜて!!」タッタ

学者「ひぃ…ひぃ…」グルグル


--------------


『デッキ』


ザブ~ン ユラ~


盗賊「雲が張って来始めたな…」

戦士「やはり雨が来るか…」

盗賊「おい!嬢ちゃんよ…お前風が読めるんだろ?天気はどの位持ちそうだ?」

少女「お前…馴れ馴れしい」プイ

盗賊「くぁぁぁ頼む嬢ちゃん!水浸しにゃなりたく無いだろ」

戦士「持って半日か…私も手伝って来るか」ボソ

少女「舵やらせろ…お前も手伝え」

盗賊「んぁ?嬢ちゃんに舵動かせるか?こりゃクソ重いんだぞ?」

少女「うるさい…サッサと行け」グイ

盗賊「ヌハハやれるもんならやってみろ…壊すなよ?」

少女「ふぬぬぬ…」グググ


--------------

『甲板』


ヌリヌリ…


剣士「そうそう…隙間に入れ込む感じで塗り込むんだ」

学者「こりゃ全部やるの大変っすね…」

剣士「木材が縮んでそこら中スッカスカだよ…大きい隙間見つけたら教えて?下から板を当てて来る」

学者「へい!!」

盗賊「よう!!手伝いに来たぜ?」

剣士「あぁぁ助かる…練り物を板の隙間に塗り込んで欲しいんだ」

盗賊「これだな?」

剣士「うん!まだ甲板しかやって無いから船首の方とか船尾も全部塗って欲しい」

盗賊「こりゃ練り物足りるんか?」

剣士「姉さんが作り増してくれてるさ…えーと!大きな隙間を見つけたらソコに何か目印置いといて…後で処置する」

盗賊「分かった!ほんじゃ俺は船尾側行くわ」

剣士「船尾楼のスキ埋めはもう住んでるからその後ろ側ね」

盗賊「分かってる分かってる!!リコルは船首側頼むな?」

戦士「承知…」スタ


--------------


『2時間後』


ゴシゴシ ゴシゴシ


剣士「骨粉と貝殻の粉を撒いて行った所からブラシでしっかり擦って!」

学者「へいへい…」ゴシゴシ

盗賊「うはぁ…俺がミライに掃除させられる事になるとはよう…」ゴシゴシ

女オーク「ウフフ…」ゴシゴシ

剣士「…これで水が流れて行く所に上手く溜まってくれれば良い」マキマキ

盗賊「これで仕上げか?」

剣士「まだ!!油をしみこませたボロキレで全部拭く」

盗賊「まだ在んのか…そろそろ腰が痛くなって来たんだが…」

剣士「今までほったらかしにしたツケだね…時間一杯有ったのにさ」マキマキ

戦士「磨き終わった所から油で拭けば良いのか?」

剣士「うん!!油を直接垂らすのはダメ!!ボロキレに染み込ませて薄く塗る…その後おが屑撒く」

戦士「ハハ中々にいろいろ工程がある…」

剣士「船の手入れという意味だと本当は船内も全部やった方が良いね」

学者「あぁぁぁ…なんかミライ君がいつも作り物してる理由が分かって来やしたよ…」ゴシゴシ

盗賊「何やるにしても手間が掛ってんだ…」ゴシゴシ

学者「一朝一夕じゃ何も出来んてこってすね…」


--------------

『雨』


ポツポツ ポツ…


盗賊「降って来やがったが…なんとか間に合ったか?」

剣士「雨漏りを受ける容器が沢山必要だよ!!食器を全部集めて!!」ドタドタ

盗賊「こりゃ休まらんな…」

剣士「積み荷の木材が水吸っちゃうと重くなりすぎて沈没するかもしれないよ」

盗賊「マジか…」

学者「容器持って荷室行きゃ良いっすかね?」ガサ

剣士「うん!漏れの多い所は補修しなきゃいけないから教えて欲しい」

盗賊「うっし!!久しぶりに体全部洗えると思って気合入れて行くか!!」ヌギヌギ

剣士「ええ?裸で?」

盗賊「おうよ!!溜まった雨水で体洗うんだ」

剣士「アハハ…良いね?」

盗賊「湯を沸かして樽に入れれば風呂にもなるぞ?」

剣士「おお!?それ採用!!よし…姉さんに湯を沸かして貰う」

盗賊「楽しみが増えたか?」

剣士「雨はそんな楽しみがあるかぁ…ワクワクしてきたぞぉ!」


--------------

『樽湯』


チャプン モクモク


剣士「姉さん!湯加減はどう?」

女オーク「すこし冷めて来たから足し湯が欲しいわ…」チャプ

剣士「これ…一緒には入れなさそうだね」チョロチョロ

女オーク「無理ね…湯が全部溢れてしまう」

剣士「この場所…船首楼で丁度隠れて良い水浴び場になりそうだ」

女オーク「良いの?雨漏りの処置に行かなくて?」

剣士「まだどこで雨漏りするか分からないからさ…もう少し雨が降ってからだね」

女オーク「雨に当たりながらの湯は気持ち良い…」

剣士「姉さん沢山働いたから体を温めてゆっくりしてて良いよ」

女オーク「ウフフ…」チャプン


シュタタ シュタタ


少女「ミライ!!何か来る!!休む暇無い!!」シュタ

剣士「え!!?」

少女「雨で匂い流れる…父…何処行った?」

剣士「荷室に降りてる筈…」

少女「急げ!!何か来る!!」シュタタ

剣士「ちょ…」キョロ


シュルシュル ガツン!


女オーク「え!!?」ザバァ

剣士「ロープが掛けられた音だ…マズい!!」


海賊1「うらぁぁぁ乗り込めぇぇ!!」

海賊2「ひゃっほーーーう!!」


女オーク「ミライ!!私が時間を稼ぐ!!皆呼んできて!!」ザブ ダダダ

剣士「姉さん…裸で戦うの?」

女オーク「気にならない…木槌で戦うから早く行って!!」ダダ


--------------

『乱戦』


ドヤドヤ

ロープもう一本引っかけろアホがぁ!!

おい止まるな!!早く乗り込めぇ!!

梯子はどうした!梯子は!!乗り遅れんぞ!!



海賊1「おやおや裸の女が飛び出して来るとはこりゃツイてる…ぐへへへへ」ブン ブン

海賊2「ウハハハ…デカい木槌で俺らをぶっ叩こうってのか?」ペロリ

海賊3「この女良く見たらオークだ…こりゃ毎晩楽しめるぞ?」ヘコヘコ

女オーク「…」---多い---

海賊3「さぁ大人しくしてりゃ殺しゃし無ぇ…武器を降ろ…」

女オーク「…」ダダ ブン

海賊3「ぶへぇぇ…」ポーン ボチャーン

海賊2「やりやがったなゴルァ!!」ブン スパ

女オーク「くぅ…これくらい!!」ダダ ブン

海賊2「げひぃぃ…」ポーン ボチャーン

海賊1「くそコイツ…」タジ


ヨジヨジ ヨジヨジ


女オーク「…」---ロープを伝ってどんどん登って来る---

女オーク「…」---時間を掛ければ不利になる---

女オーク「…」タジ

海賊1「お前等ぁ!!早く登って来い!!」

女オーク「…」---私の剣は船首楼の中---

女オーク「…」ダダ

海賊1「ウハハ逃げやがった…お前等ぁ!!早く乗り移れ!!船尾楼を占拠するぞ!」

海賊4「こりゃどうなってる?何で2人海に落ちたんだ?」スタ

海賊1「オークが乗ってたのよ…まぁ逃げたんだがな?…他に乗ってる奴探すぞ…女以外皆殺しで良い」


ガチャリ ダダダダ ブン!


海賊4「どわぁっ…」ポーン ボチャーン

海賊1「何だ?剣と木槌の二刀流か?」タジ


女オーク「…」ダダダ ピョン

海賊1「おい!!俺らの船に…飛び移る…だと?」

海賊5「何だ今の!?裸の女が飛んでったんだが…」


ガチャリ タタタターン!


海賊1「ぐはぁぁ…」ブシュー

学者「何勝手に乗り込んでるんすかねぇ…」タタタターン

海賊5「銃器…だと?」ガク ドクドク

学者「雑魚相手に使いたく無かったんすよね…」スタスタ

剣士「姉さんは!!?」キョロ

盗賊「おい!!ロープで乗り移って来る前に切っちまうぞ!!」

剣士「あああ!!姉さんが向こうの船に…」ダダ

盗賊「何ぃ!!」


コーン コーン コーン


盗賊「うぉ!!マスト切り倒そうってのか…」

剣士「ロープ切ったら姉さんが向こうの船に取り残される…」

盗賊「ちぃぃ…しゃぁ無ぇ!!乗り込む前に蹴り落とせ!!」ダダ ドカ


シュン! グサ


盗賊「ぐぁ!!くっそ下から弓撃って来やがる…」

学者「任せて下せぇ!!」タタタターン

海賊共「ぎゃぁぁ…」ボトボト ボチャーン


メキメキメキ ガッサー ザブーン


盗賊「うほーーメインマスト切り倒しやがった…」

剣士「姉さんが走ってロープに掴まった…他のロープを切っちゃおう!!」ダダ スパ

盗賊「リッカが掴まってるロープ引き上げるぞ!!」グイ

剣士「姉さん弓で撃たれてる…早く!!」グイ

学者「援護しやすぜ?」タタタターン


--------------

『甲板』


グイグイ ドタリ


盗賊「ふぅぅ…危機一髪だぜ…リッカ!!随分弓で撃たれた様だな?大丈夫か?」

女オーク「くぅぅ…背中の矢を抜いて」

盗賊「血だらけだな…ちっと痛むぜ?」ズボォ ドクドク

女オーク「ぅぅぅ…」

剣士「姉さん!!今治してあげる…」スッ

女オーク「ミライ駄目!目隠しを外しては駄目…その力は必要無い」グイ

剣士「でも血が…」

盗賊「ゲス!!治療出来るか?」

学者「へい!!ちっと見せて下せぇ…」ジロジロ

盗賊「他の矢も抜くぜ?」ズボォ ドピュー

学者「ポーションあるんで一口飲んで下せぇ…」クィ

女オーク「むぐっ…」ゴクン

学者「さすがオークっすね…筋肉の奥までは刺さって無さそうっす…ミライ君!!ボロキレ持って来て下せぇ」

剣士「直ぐに持ってくる!!」ダダ

学者「傷も縫わん方が良さそうっすね…圧迫止血だけで元通りっすよ」

盗賊「…だそうだ?まぁ…これぐらいでオークが死ぬとは思えんがなヌハハ」

女オーク「他の矢も抜いて欲しい…手が届かない」ググ ピュー ドクドク

学者「動かんで下せぇ!出血して勿体無いっす」

盗賊「抜くのは少し待て…ミライがボロキレ持って来てからだ」

剣士「持って来たぁ!!」ドサァ

学者「俺っちが矢を抜いた痕に圧迫止血していくんで順に矢を抜いて欲しいっす」グイグイ ギュゥ

剣士「姉さん痛く無い?」オロオロ

盗賊「…」---こいつ…何か力を隠し持ってる様だな---


---あの目隠しの下に秘密有りか---

---状況からみて治癒魔法の類---

---しかし何故隠す必要がある?---

『船尾』


ザザザザーーーー


盗賊「リコル!ここに居たか…何をしている?」

戦士「他の海賊船が居ないか見張って居るのだ…雨だと思って警戒を怠ってしまったからな」

盗賊「丁度ここは船尾楼の梁に隠れて雨に当たらんか…」

戦士「フフ…しかし何処から接近されたか分からなかったな?」

盗賊「船が並走していたから後ろから追い越して来たのだろう」

戦士「あの海賊船…帆を一枚焼いた船だ」

盗賊「そうだったのか…気付かなかった」

戦士「ここまでずっと追って来た事を思うと…仲間の海賊船が居るかもしれない」

盗賊「なるほど…」

戦士「娘の鼻は雨の日は役に立たない…私はここでしばらく監視を続ける」

盗賊「ふむ…ここは雨が当たらんから篝火を焚いても良さそうだ…」

戦士「それほど寒くは無いぞ?」

盗賊「老戦士へのいたわりだ…篝火で芋でも焼くと良い」

戦士「フフ…そうさせて貰う」


--------------



『船首楼』


ポタポタ ピチョン


剣士「姉さん…木の芽を蒸かしたよ…食べて?」

女オーク「私はもう大丈夫なのに…ミライが食べて?」

剣士「何言ってるんだ…血が足りないんだから…ほら」

女オーク「はむ…」モグモグ

剣士「なんだろう…姉さんの血を見ると落ち着かない…腹が立つ」イラ

女オーク「もうあの力を使っては駄目よ?約束して」

剣士「…分かってるさ…でも姉さんが死ぬくらいなら…使う」

女オーク「…」

剣士「危険な力なのは分かってる…魔術書で調べたから」


---そう---

---力を使うと僕が消える---

---でもその力は…僕の思い通り…世界を作る事が出来る---

---量子転移---

---究極の魔法---

『深夜』


ユラ~ ギシ


剣士「すぅ…」zzz

女オーク「…」---またあの力を使ってしまうくらいなら---

女オーク「…」---旅になんか出ない方が良かったかも知れない---


あなたは力を使って

自分を犠牲にして…居なくなった

夢の中の出来事

でもそれは本当に有った出来事…暁の使徒の記憶

だからもう…失わせない


女オーク「生まれ変わって…幸せですか?」

剣士「むにゃ…ごにょごにょ…」zzz

女オーク「あなたを愛しても…良いのですか?」

剣士「すゃ…」zzz

女オーク「…」


--------------

--------------

--------------

『数日後』


ザブ~ン ユラ~


盗賊「また雨が降りそうだな…」

学者「降ったり止んだりっすねぇ…」

盗賊「しゃー無ぇ…ミライに言われる前に床磨くかぁ…」ノソ

学者「もう雨漏りは大分良くなったんすがね…」

盗賊「多分アレだ…雨が降る前に必ずやっとかなきゃイカン系のやつだ」

学者「じゃぁ俺っちも粉作って来るっす」スタ


スタタタ


剣士「アランさん!!大変だ!!前方に大きな船が見える」

盗賊「なぬ!?どこよ!?」キョロ

剣士「船首から見えた…まだ遠いけどね」

学者「見に行きやしょう!!」タッタッタ


--------------

『船首』


ユラ~リ ギシ


盗賊「おぉ!!アレか…帆の陰になってたんか…」

剣士「大きいよね?」

盗賊「ありゃ軍船だな…くそデッカイキャラック船だ」


スタスタ


戦士「どれどれ?」ジー

盗賊「おぅリコル…船尾の監視は飽きたんか?」

戦士「声が聞こえたから見に来たのだ…ふむ…もう海賊は出ないな」

盗賊「やっぱ軍船だよな?」

戦士「海の治安を守っている船だ…他にも沢山小さな船が居る筈」

剣士「あぁぁ!!居る居る!!三角帆一枚の小さな船」

戦士「高速のスループ船…3~4人が乗って巡回しているのだ…スクーナーよりも早い」

盗賊「ってことはバン・クーバに近いんだな」

戦士「どうやら無事に辿り着けそうだ…なかなか楽しい航海だったなハハハ」

剣士「うわぁ…あの船早いなぁ…」アゼン

盗賊「こっちに近付いて来てるのは様子見に来てんだな?」

戦士「恐らく…」

剣士「小さな船が沢山こっちに来るよ」

戦士「ところでミライ君…君の目隠しはどういう仕組みなんだい?」

剣士「え?只の目の粗い布さ…透けて見えてるだけだよ」

戦士「目を隠さなくてはならない理由でも?」

剣士「姉さんが隠せって…その理由は言えない」

戦士「そうか…まぁ気にしないでくれ」

剣士「目隠しをしてた方が良い事もあるんだよ?すごく遠くが見やすいんだ」

戦士「ほう?」

剣士「そして近くを見る時は音とか匂いを感じながら見る…だから戦いの時に良く動けるんだ」

戦士「なるほど…今度理由を聞かれた時はそう答えると良い…余計な誤解を生まないで済む」

剣士「ハハそうだね…」


--------------

『行き会い』


ザブ~ン ユラ~リ


剣士「大きいなぁ…」フリフリ

学者「こっちと比較にならんっすね…」

剣士「あ!!向こうも手を振った!!やった!!」ブンブン

盗賊「いやしかし間近に見ると圧巻だな…」タジ

戦士「主力はスループ船とスクーナーの方だ…このキャラック船は補給船だぞ」

盗賊「俺がガキの頃はよ…このでかいキャラック船よりも更にデカい船が有ったんだ…機械で出来た船な?」

剣士「そんな大きな船が…」ポカーン

盗賊「キ・カイの軍港に良く出入りしてたのよ…機械の反乱の後は何処行ったか分からん」

学者「噂じゃ外海に行ったっきりっすね」

盗賊「近くで見て見たくて何回も軍港に忍び入ったんだが…毎回捕まってお袋が謝りに来てた」

学者「最近だと機械じゃなくて蒸気船ってのが出て来たらしいっす」

盗賊「ほう?何だソレ?」

学者「帆に加えて蒸気でプロペラを回すとか…ミネア・ポリスで造船されたらしいっすよ?」

盗賊「なぬ!?海に接して無いだろう」

学者「湖に流れてる川を登るらしいすよ?」

盗賊「マジか…逆流でもスイスイってか?」

学者「地下列車も蒸気で動かす様になったんでこれからは蒸気機関の時代っすね」

盗賊「魔石が入手出来なくなったからなぁ…」

学者「メチャクチャ高くなりやしたよね…俺っちのバヨネッタも魔石必要なんでいつまで使えるか…」

盗賊「ロボの魔石もそろそろ交換時期だ…バン・クーバに戻ったら買わなきゃならん…」

学者「金有るんすか?」

盗賊「んむむ…又ドロって来ないと足りんな…」

学者「兄貴は良いっすねぇ…どうにか資金調達出来るんで…」


-------------

『船尾楼』


ユラ~ ギシギシ


盗賊「さっき見えた灯台が…海図で言うココだから…ちょい進路右だな」グイ

学者「これこのまま行ったら夜中の内に着いちゃうんじゃないっすか?」

盗賊「他の船と結構行違う様になったから速度落とさにゃならん…まぁ明日の朝だ」

学者「朝になったら雨止むと良いっすね」

盗賊「うむ…」

戦士「アラン達は到着した後どうする?」

盗賊「とりあえず姉御の事が心配だから一度傭兵ギルドの方へ顔を出す…リコルはどうするんだ?」

戦士「宿屋だな…」

盗賊「積み荷をどうするとか聞いて居ないのか?」

戦士「あぁ…それは向こうがこちらを見つけてくれるのを待つんだが…」

盗賊「向こうって何ヨ?」

戦士「まぁ隠して居ても無駄だから言うが…私の妻が先にバン・クーバに移動しているのだ」

盗賊「なるほど?つまり宿屋で待ち合わせという事か…」

戦士「う~ん…ハッキリ言うと何処に居るか分からん」

盗賊「くぁぁぁ何だソレ!!」

少女「母…父来たの匂いですぐわかる」

盗賊「…なるほどな?」---母親もそっち系か---

戦士「実を言うと今回の船旅は私からすると家族旅行なのだ」

盗賊「んん?」

戦士「この子の他にあと2人姉が居てな…フィン・イッシュの祖父の所で世話になっている…家族で会いに行くという事なのだ」

盗賊「娘が3人居たってか…」

少女「父…秘密はしゃべるな…母に言うぞ」

盗賊「ヌハハなんかお前ん所の家族が大体分かって来たぞ…能力持って居ないのはお前だけだな?」

戦士「まぁ言うな…」

盗賊「家族全員揃うってのは羨ましい限りだ…ほんで?嫁と合流するまではどうなるか分からんと」

戦士「その通り…荷の入れ替えは少なくとも3日は必要になるだろう…それまで自由だ」

盗賊「俺も色々やりたい事があるからその方が良い」

少女「お前ー!!母は怖いぞ?…覚悟しておけ?」

盗賊「俺は何もして無ぇだろ…怒られる理由が無ぇ!!」

少女「手紙…」

盗賊「う…」ギク

少女「忘れるな?」ジロ

盗賊「わ…分かってらい!!」


--------------

『翌日_バン・クーバ港』


ガコン ギシギシ


盗賊「うっしゃぁぁ!到着!!」

学者「兄貴ぃ…これ船泊めとくのやっぱタダじゃないっすよね?」

盗賊「悪りぃ…ちっと立て替えて置いてくれ…後で返す」

学者「やっぱそうなりやすよねぇ…トホホ」

盗賊「リコル!!荷物持って居りて良いぞ!!…連絡は追ってだな?」

戦士「ハハハそう慌てなくても良い…と思う」

盗賊「わーってるわーってる!!嫁によろしくな?」

少女「うぉーーーー!!都会ぃぃ!!」シュタタ

ウルフ「ワフワフ!!」シュタタ

戦士「ハハハやっと船から降りられて嬉しい様だ…では又」ノシ

盗賊「おう!!又な?」ノシ

学者「兄貴ぃ!!俺っち先に金払って傭兵ギルド行っときやすね?」

盗賊「分かった…俺は後からミライとリッカ連れて向かう…おっと待て!!」

学者「なんすか?」

盗賊「お前のバヨネッタ…ロボの筐体ん中入れとけ」

学者「うおっと忘れて居やしたね…」ガチャ ガチャ

ロボ「ピポポ…」クルクル

学者「じゃぁ行っときやす!」タッタ

盗賊「さぁて…俺の荷物と言っても何も無ぇな…さっさと2人連れて行くか?」

ロボ「ピポポ…」ウィーン


--------------

『桟橋』


ギシギシ


盗賊「包帯はまだ取れ無いのか?」

女オーク「ゲスさんがまだ取るなって…もう痛く無いのに」

盗賊「アイツはまぁ腐っても医者だからな…何か理由あんだろうな」

剣士「姉さん!!剣忘れてるよ…」

女オーク「そうだったわね…」スチャ

盗賊「武器携帯か…禁止されちゃ居ないが…毛皮の中にしっかり隠しとけ」

女オーク「分かった…」ファサ

剣士「なんか…他の人はみんな薄着だね」キョロ

盗賊「割と温かいからな?まぁ…毛皮着こんだからと言っておかしい訳では無いぞ?」

盗賊「高級品だから洒落て着こむ奴も多い」

剣士「僕この港の方までは来た事無いんだ…遠くから見てるだけだった」

盗賊「軽く説明するか?」


ええと…こっち側の大陸じゃ珍しく殆どの建物が地上に建ってる

一応地下都市は有るんだが先の大戦で大部分が埋まっちまった

キ・カイよりかなり気候が良いもんだから皆こっちに移住した訳だ

ほんで今は建築ラッシュ…木材が必要な訳よ


剣士「へぇ…入り組んだ地形が港に適してるのかな?」キョロ

盗賊「それもあるんだろうが…古代でも港だった様で色々都合が良いらしい…防波堤とかな?」

剣士「今日は何処で寝るの?」

盗賊「宿屋でも良いんだが…傭兵ギルドに宿舎があってそこを自由に使えるんだ」

剣士「僕達ギルドに入って無いけど?」

盗賊「あぁ気にすんな…そんな奴他にいくらでも居る」

剣士「なんか人が多い所は姉さん怖がるんだ…」

盗賊「そうか…ほんじゃ俺らの隠れ家が良いな」

剣士「俺ら?」

盗賊「昔の連れが集まる場所だったんだがよう…今は誰も使って無い…まぁ物置だな」

剣士「物置の方が落ち着くかな…」

盗賊「とりあえず俺は傭兵ギルドに預けてる金を取りに行くんだ…まぁ観光だと思って付き合え」

剣士「分かった…姉さん行くよ」グイ

女オーク「手は繋がなくてもちゃんと付いて行くわ」スタ


--------------

『商店街』


ワイワイ ガヤガヤ


剣士「ああああああ!!松ぼっくりだ…マンドラの根もある…」アレモ コレモ

盗賊「ヌハハ買い物は後でたんまり買えるぞ?」

剣士「姉さん!!すごく安いよ…お金いくら持ってる?」

女オーク「銀貨70枚くらい…」

盗賊「おいおい…慌てなくても逃げんぞ?」

剣士「なんでこんなに安いの?」

盗賊「お前いつも何処で買い物してたのよ…」

剣士「地下の列車降りて直ぐの所…」

盗賊「そら向こうの大陸の物は港に近い方が安いわな…地下で安いのは硫黄とか鉱物系だ」

剣士「そうだったんだ…」

盗賊「まぁ傭兵ギルドまで行ったら船での働き分は俺が金を出してやる…そうだな…金貨10枚って所か」

剣士「うおおおおおおお!!姉さん!!3年は暮らせる!!」

盗賊「何言ってんだ!!サッサと行くぞ!!」スタ


---------------

『傭兵ギルド』


ザワザワ ヒソヒソ

ヒュー・ストンの大穴攻略失敗したんだってよ…

それでしばらく後退して再編成か…こりゃ又仕事が来そうだな

見ろ!ロストノーズの奴らが来た…目を合わすな


盗賊「いよう!!しばらくぶりだな?」

受付の叔母さん「あら?アラン君何処行ってたんだい?」

盗賊「ちっと野暮用でな?ほんで…預けた金を受け取りたいんだがよう…」

受付の叔母さん「はいはい…ええと…金貨40枚ね」パラパラ

盗賊「あれ?そんだけだったか?」

受付の叔母さん「嫌だねぇ…あんた酒場でツケ沢山有ったでしょう」

盗賊「ぬぁぁぁぁ忘れてた…」

受付の叔母さん「はい金貨40枚…袋に入れとくね」ジャラリ

盗賊「ちぃぃぃ…70枚のつもりだったんだが…」

受付の叔母さん「なんだい急にそんな大金が入用なのかい?」

盗賊「まぁちっと野暮用でな…ニーナ帰ってるよな?宿舎に居るか?」

受付の叔母さん「あらあら?あんたゲス君に聞いて居ないのかい?」

盗賊「なんだよ…」---まさか---

受付の叔母さん「ニーナちゃん気の毒だったねぇ…遺品の引き取り手が居なかったら部屋を片付ける所だったよ」

盗賊「お…おい!それってまさか…」

受付の叔母さん「部屋の方に遺骨が納めて有るから会いに行ってあげ…あら?ニーナちゃん?生きてるじゃないか」チラリ

女オーク「あ…いえ…」ハテ?

受付の叔母さん「じゃぁあの遺骨は一体誰の…」

盗賊「あぁぁ…違う…人違いだ」

受付の叔母さん「ええ?」ジロ

盗賊「悪りぃ…部屋見て来る…叔母さん騒がないでくれよ?」

受付の叔母さん「どうなって居るんだい?これは…」

盗賊「リッカ!ミライ!行くぞ!付いて来い…」グイ

女オーク「え…あ…」スタ

剣士「…」---なんだろう?視線が気になる---


--------------

『ニーナの部屋』


ガチャリ バタン


学者「うえっ…うええっ…姉御ぉ…なんでこんな…」ヨロ

盗賊「どけぇ!!」ドン ゴロゴロ

学者「姉御が…ぅぅぅぅ」

盗賊「こ…これが…」プルプル

学者「火葬して…骨だけに…ぅぅぅ」

盗賊「おいこりゃ夢だ…そうだ夢だ…こんな夢何回も見てる…」プルプル

女オーク「…」

盗賊「おかしいな何で冷め無ぇんだ」ゴン!

剣士「…」

盗賊「痛てぇな…おかしいな…」ポロポロ

学者「ぅぅぅ…」

盗賊「何でだよ…何でこんな事になってんだよ…何でこんなに小っちゃいんだよ…」ポロポロ

ロボ「ピ…」シュン

学者「俺っち達が…ヒック…地下列車に乗った時にはもう…死んでたらしいっす…」

盗賊「クッソ誰がやったんだ…」グググ

学者「味方の砲弾…2発直撃…うぇっ…そら死にやすよね…」プルプル

盗賊「だからこんなに小さく…」

女オーク「牙が残ってる…オークは死んだ仲間の牙を形見にする…」

盗賊「牙…そうだ…この牙をからかった事も有った」スッ

女オーク「その牙を持って居る限り…忘れない…ずっと心の中に生きる」


トントン


盗賊「誰だ!!」


受付の叔母さん「あんたにお客さんが来てんだよう…」

盗賊「取り込み中だと言ってくれ…そっとしといてくれ」

受付の叔母さん「そうかい?」スタスタ

盗賊「フー…フー…泣いてる場合じゃ無ぇ」ゴシゴシ

学者「兄貴ぃ…」

盗賊「書簡だ…姉御は書簡の秘密に気付いて殺されたんだ…探せ!!」

学者「ここは前に来た時に俺っちが見やした…」

盗賊「そうか…確かに誰でも入れる様な場所なら既に家探しされてるな…」ギラリ

盗賊「ロボ!姉御の遺骨は大事に預かっててくれ」パカ

ロボ「ピポポ…」ウィーン

盗賊「ここの遺品持ってズラかるぞ…どっかに電脳化した奴が紛れてる」

学者「ズラかるって何処にっすか…」

盗賊「ギャング達の隠れ家だ…俺についてくりゃ良い」

剣士「さっき受付の所でスゴイ視線を感じたんだ…もしかして姉さんの姿見て勘違いして無いかな?」

盗賊「その可能性が高い…悪いな…騒動に巻き込んじまって」

女オーク「もしかして…狙われて?」

盗賊「相手はプロの暗殺者だと思って間違いない…窓から外に出るから準備しろ」ゴソゴソ

学者「扉に鍵を掛けて置きやすね」カチャ

盗賊「ロボ!先に窓から出すぞ…」グイ ポイ

ロボ「ピピ…」ガチャン プシュー

盗賊「最後に窓にも鍵かって行くから先に出ろ…」

学者「へい…」グスン スタ

盗賊「音を立てるな?」カチャカチャ カチン

盗賊「こっちだ…」タッタッタ


-------------

『隠れ家』


シーン…


学者「ここが…兄貴たちの隠れ家…」キョロ

盗賊「ちぃぃ!!ここも荒らされて居やがる…」ガサガサ

学者「ギャング達しか知らない場所なんすよね?」

盗賊「なんでこの場所を知ってんだ!!?」ドン ガラガラ

学者「誰かが話した以外に考えられないんじゃないすか?…もう誰も信じられんすね」

盗賊「くっ…だから姉御は俺から距離を置いた…俺も疑われてた訳だ」

剣士「今日はここで泊る?」

盗賊「いや変更だ…こりゃ早い所盗賊ギルドに保護して貰わんと危ない」

学者「リコルさん達と合流っすね」

盗賊「うむ…しかしどの宿屋なのか…」

学者「兄貴ぃ…ここに装備品が色々あるんすが…変装しやせんか?」

盗賊「おぉ名案だ…特にリッカだな」

剣士「これどれ選んでも良いの?」ゴソゴソ

盗賊「今羽織ってる毛皮のマントはここに置いて行け…その辺の適当なやつに着替えろ」

剣士「姉さん!これなんかどう?」ファサ

女オーク「私は何でも良い…」

盗賊「顔を隠す必要が有るからフードの深い奴にしろ」ファサ

剣士「よし!僕も!!」ファサ

盗賊「そうだリッカ…先に金を渡して置く…金貨10枚だ」ジャラリ

女オーク「…」

盗賊「お前達は今回の件とは無関係だから…俺達に何か有った場合はその金使って上手く逃げろ」

盗賊「ここから列車でキ・カイに戻って元の生活をしても良い…商船に乗ってフィン・イッシュにも行ける」

女オーク「分かったわ…自分の命は自分で守る」

盗賊「うむ…ちっと俺は本気モードに入る…暗殺者をぶっ殺してやる」ギラリ

学者「…で?どうしやす?」

盗賊「今の所この場所は安全そうだ…ちっと俺が宿屋探して来るから待っててくれ」

剣士「じゃぁ装備品をゆっくり選ぼうかな」ゴソゴソ

盗賊「確か火薬も少し何処かに置いてあった筈だ…適当に持ってけ」

剣士「おぉ!!探してみる」ガサゴソ

盗賊「じゃぁな!」スゥ

剣士「ええ!!?き…消えた!!」キョロ

女オーク「え!?え!!?」キョロ


-------------

-------------

-------------

『1時間後』


スゥ…


剣士「うわ!!びっくりするなぁ…急に目の前に現れないでよ」ドキドキ

盗賊「これを装着しろ…」ポイ カラン

剣士「ん?木製の仮面…何コレ?」

盗賊「顔を隠すんだ…特にリッカな?」

剣士「こんなの付けてたら逆に目立たない?」

盗賊「今バン・クーバで流行ってる…手足の無い奴が木製の義足付けてるのと同じで…鼻を削がれた奴が付けてるんだ」

剣士「鼻?…あーそう言えば傭兵ギルドの中にも木製の鼻を装着してた人居たなぁ…」

盗賊「そいつらはロストノーズっていう有名な傭兵団だ…そん中のラシャニクアっていう女がこの仮面を流行らせた」

剣士「へぇ?」

学者「この辺じゃ有名っすよ?木製の鼻はその女が最初に付けてたんす…凄腕のスナイパーっすね」

盗賊「因みに俺らは元々パイアボーンっていう傭兵団だ…もう2人しか残って居ないがな」

学者「俺っちはその一人っすよ」

盗賊「リッカ!仮面を付けろ…宿屋に行くぞ」

女オーク「…」スチャ

剣士「もうリコルさん見つけたんだ?」

盗賊「あぁ…話は付けてある…大部屋に変更してそこに泊る」

学者「それが安全そうっすね…」

盗賊「行くぞ!!」スタ


-------------

『宿屋_大部屋』


ガチャリ バタン


盗賊「悪いな?分かれて直ぐに合流する事になっちまってよ…」

戦士「ハハハ気にしなくて良い」

少女「お前ー!やっと事態を自覚したな!?」

盗賊「保護を頼む…」

少女「グラスは3つだと聞いて居るぞ?1…2…3…4…多いな」

盗賊「俺は抜きで構わん」

少女「母は気まぐれだ…背中を撫でたら頼んでやっても良い」

盗賊「分かった分かった…」ナデナデ

少女「父ぃー…母遅いな」

戦士「気まぐれだから…ゆっくり待つしかない」

盗賊「さて俺はちっと調べたい事が有って出かける」

少女「何処行く…勝手に騒ぎ起こすな」

盗賊「分かってる…姉御の行先で思い出した事が有るんだ」

学者「え!?マジすか…」

盗賊「孤児院だ…姉御は孤児院に通ってただろう」

学者「あぁぁそうっすね…」

盗賊「遺骨は孤児院にでも埋めて来る…そこにもきっと姉御の心が宿ってるだろうから…」

少女「許す…行って来い」

盗賊「ロボ…これで姉御とはおさらばだ…」パカ

ロボ「ピ…」シュン

盗賊「じゃぁ行って来るな?」ダダ


---------------

『談話』


…そのラシャニクアっていう女は

子供の頃不幸な事に奴隷として貴族に連れまわされてたんす

船での観測ってずっと見張りして無きゃいけないんで大変っすよね?

それをやらされてたんす…その甲斐が有ってか今じゃ凄腕スナイパーっすよ

ほんである時…海賊王の娘が乗る船に遭遇して捕らわれの身っすよ

海賊王の娘はその船に乗ってた人全員の鼻を削いじまった

女も子供も全員っすね


剣士「鼻って削いだらもう生えて来ないよね?」

学者「そうっすね…でも命に係わる事は無いもんで良かったっすね」

剣士「それで鼻が無いのかぁ…気の毒だなぁ…」

学者「子供の鼻も削いじまったんすからねぇ…その後の生活で苦労は有ったと思いやす…差別とか…」

剣士「差別か…」チラ

女オーク「気にしてない…」ボソ

学者「まぁ今ではラシャニクアを知らん傭兵は居らんですね…戦場の女神なんて呼ばれてた事もありやす」

剣士「傭兵ギルドにその人居たの?」

学者「俺っちは見てないっす…只ギルドにロストノーズの連中が集まってたんで居るかも知れんっす」

少女「むふ…」ニヤニヤ

学者「何すか?」

少女「何でも無い…思い出し笑いだ」

学者「ちょっと何かお腹に入れたくなって来たっす…」

剣士「僕もお腹空いて来たなぁ…」

少女「父ぃーー!!何か買って来い」

戦士「んん?構わんが…何が食べたい?」

少女「松の実を見た」

剣士「おおおおお!!僕も見た!!松ぼっくりが安かったんだ!!」

戦士「そりゃ良い…丁度酒のつまみが欲しかった」

学者「俺っち肉が食いたいんすけど…」

戦士「適当に調達してくる…ここで待ってろ」スック


--------------

『食事』


ガツガツ ムシャムシャ


学者「うんま!!うんま!!」ガブリ モグ

少女「死肉がそんなに美味いか?」

学者「死肉?…これ普通の肉っす」モグモグ

少女「ゾンビを食べてる様にしか見えん…」ウゲー

学者「生魚食べるのもどうかと思うっすよ?」ガツガツ

女オーク「ミライ?松の実だけ取り出したわ…食べて?」

剣士「半分こしよう…姉さんも食べてよ…血が足りないでしょ?」

学者「ああ!!忘れてた…リッカさん傷を見せて貰って良いっすか?」

女オーク「え…そろそろ包帯を外したいのだけれど…」

学者「実験中なんす…」スルスル

剣士「姉さんの体で実験!?」

学者「ふむふむ…やっぱりっすね…」

女オーク「何?」

学者「オークは薬草とかポーションの類に効果が無さそうっす…使う意味無いっすね」

剣士「え?」

学者「リッカさんにポーション飲ませたんすけど普通は反応が出るのに出ないんすよ…傷も薬草有り無しで差が無い」

剣士「傷はもう塞がってるけど?」

学者「元々治癒力が高いんで塞がってるんすね…皮膚の具合に差が無い…薬草塗るとそもそも変色するのにそれも無い」

女オーク「オークは傷付くと薬草を少し食べる…他には琥珀とか」

学者「回復のさせ方が人間と違うんすね…でもポーション飲んで反応出ないのはどうしてなんすかねぇ…」

女オーク「病気に掛からない…から?」

学者「あああ!!そういう事っすか…実はっすね…オークの血は人間への輸血にスゴイ適してるんすよ」

女オーク「え?そんな事初めて聞いた…」

学者「戦場では失血が命取りなんすけどオークが居るとスゴイ助かるんす…輸血要員として」

剣士「それってオークを道具にしてるという事だよ」

学者「分かって居やす…だからオークを癒すのはどうすれば良いのか考えてるんす」

剣士「姉さんを癒すのは温かい湯…それから食事」

学者「温度を上げる…湯に効果あり…うーむ」

戦士「そうそう…この宿屋には湯を張った水浴び場があるのだよ?」

剣士「お?姉さん!!」

女オーク「湯に浸かりたかった所」

少女「私も行く…お前危険ある」

女オーク「じゃぁ一緒に…」スック


--------------

『1時間後』


ホクホク


女オーク「ふぅぅぅ気持ち良かった…」ホクホク

学者「リッカさん戻ってきやしたね?」

女オーク「何か?」

学者「ちっと実験っす…これ食ってみて下せぇ」スッ

女オーク「これは…何?」

学者「オークは見た事無いっすよね?泳げないんで…これ海藻っすよ」

女オーク「食べられる…の?」

学者「良いからちっと食って見て下せぇ…ほんで感想が聞きたいっす」

女オーク「平気かしら…はむ」パク モグ

学者「どうっすか?」

女オーク「!!?お…美味しい」モグモグ

剣士「おお?ちょっと僕にも頂戴」パク モグ

学者「ウヒヒヒ…やっぱりそうっすね」ニヤー

剣士「あれ?何だこれ美味しい…」モグモグ

学者「次行きやすよ?…これ飲んで下せぇ」ゴトン

剣士「お酒…かな?」

学者「蒸留酒っすね…」

剣士「姉さんお酒は全然酔わないよ?」


学者「ヌフフフフフ…良いから飲んで下せぇ」キュポン

女オーク「飲めば良いのね…むぐっ」ゴクゴク プハー

学者「どうっすか?」

女オーク「これも美味しい…どうして好みの味を?」ゴクゴク

学者「ウハハハハハやっぱりそうっすか!!」

剣士「ねぇねぇ…どういう事?」

学者「その海藻も蒸留酒もポーションを作る時に使う薄め液になるんす…多分それが造血剤になりやす」

女オーク「私の体でポーションが作られてる?…と言う事?」

学者「結論を言うとそうっすね…それがオークの生命力の秘密…」

学者「ポーションが効かないんじゃ無くて元々ポーション飲んでるのと同じなんすよ」

剣士「僕はお酒酔っぱらっちゃうんだよなぁ…」グビグビ クァァァァ

学者「ミライ君は人間っすからね…でも食べ物の好みはオークに似てるんでちっとだけポーション作られてるかもっすね」

女オーク「これって蒸留酒と海藻が有れば戦場で死ぬオークが減る…という事?」

学者「そう期待してるっす…大体オークが死ぬのは失血死なんすよ…体半分無くなっても血が有る限り死なんっす」

剣士「なんか良い発見したね」

学者「ミライ君も覚えておいて下せぇ…リッカさんが血を流した時は蒸留酒と海藻食わせて湯に浸かる」

剣士「覚えた…」

学者「海藻からエキスを取り出した薬も効果あると思いやす」

女オーク「あぁぁぁなんか…ポカポカして来た」

学者「その状態で寝ると効果倍増っすよ?」

剣士「ちょっと昼寝しようかぁ!!」

学者「俺っちはこれをちっと文章に残さんとイカンすね…」ドタドタ


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『孤児院』


ワーイ キャッキャ エーン


盗賊「…」スタスタ

管理人「誰かに面会で?」ジロジロ

盗賊「いや…ここにニーナと言う女オークが通って居ただろう?」

管理人「あぁ…最近姿を見せなくなりましてね…お知り合いでしょうか?」

盗賊「これを…」スッ

管理人「え?…遺骨…」

盗賊「それからこれが最後の援助金だ…金貨30枚ある」ジャラリ

管理人「彼女はお亡くなりに…そうですか…残念です」

盗賊「アイツは良く此処に通っていた…多分稼いだ金は此処に落として行った筈…」

管理人「はい…ご存じでしたか」

盗賊「孤児を放って置けなかったのは知ってるんだ…アイツも身寄りがない…せめて遺骨は此処にと思って訪ねて来た」

管理人「そうでしたか…どうですか?子供達をご覧になって行きませんか?」

盗賊「俺は人相が悪い…怖がらせてしまうだろう」

管理人「遠慮なさらず…ニーナさんが良く座っていた場所にご案内しますよ?」

盗賊「座っていた?」

管理人「ええ…昔を思い出すと言って居ましたね」

盗賊「案内してくれ…」

管理人「ではどうぞ…」スタ



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『地下室』


ピチョン ポタッ


管理人「こちらです…そこの箱に腰かけて良く子供達を見て居ました」

盗賊「中々辛気臭い場所を選んだもんだ…」

管理人「済みませんねぇ…子供達を見るなら他にも良い場所は有るのですが…」

盗賊「まぁ…ちっと俺もニーナが何思ってたのか感じて見るわ…」

管理人「どうぞごゆっくり…私は上に居ますので帰りの際はお声を…」

盗賊「分かった…」

管理人「では…」スタ

盗賊「…」---木箱か…こんな所に座って何思ってたんだろうな---


ヒソヒソ

誰あの怖い人…

きっと僕達をさらいに来たんだ

姉御!どうする?

シーーーッ黙ってな

大事な物はちゃんと仕舞っとくんだよ


盗賊「…」---大事な物---

盗賊「…」---まてよ?---

盗賊「…」---キ・カイの8番---

盗賊「…」---そうだ俺達の隠し場所がある---

盗賊「…」---既にソコに隠してる可能性が…---

盗賊「…」---なるほど…そういう計画だったのか---

盗賊「…」スック

子供達「うぉ!!」タジ

盗賊「お前等!!仲良くやれよ!?」タッタッタ

子供達「え!?何?何?」


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『宿屋_大部屋』


ガチャリ バタン


学者「兄貴ぃ!!シーーーーーッ!!リッカさんが寝てるんす…静かに…」

盗賊「ゲス!ちょい金貸せ…金貨2枚で良い」

学者「兄貴の金はもう使っちまったんすか?」

盗賊「姉御の葬式代で全部使った」

学者「うは…もう…」

盗賊「俺はちっと2日くらい外に出る…出航までには戻るからお前等此処でリコルと一緒に居ろ」

学者「ちょちょ…急にどうしたんすか?」

盗賊「キ・カイに忘れ物よ…今から列車に乗ってキ・カイにとんぼ返りだ…金出せ」

学者「マジすか…」チャリン

盗賊「リコル!!こいつ等頼むな?」

戦士「ハハハ何が有ったか知らないが気を付けて行って来い」

盗賊「ゲス!ロボの許可証だ…一応お前に渡しておく」パス

学者「へ…へい…」タジ

盗賊「じゃぁな?行って来る」タッタッタ

学者「あらら…」ポカーン


--------------

『地下鉄道_列車』


ボエーーーーーー プシューーーーー


盗賊「…」ギラリ

盗賊「…」---前の時とは随分気持ちが違う---

盗賊「…」---姉御は多分こんな感じで列車に乗った筈---

盗賊「…」---いつ襲われても良い様に常に武器に手を掛け---

盗賊「…」---フードとマントを深く被る---

盗賊「…」---そうだ…8番に居た頃はいつもそうだった---

盗賊「…」---この世界じゃそうしないと生きて行けない---


ガコン ガタン ゴトン


盗賊「…」---姉御…もうすぐ追い付くぜ?---


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『翌日_宿屋』


ガチャリ バタン


少女「!!?母ぁーーー!!」シュタタ ピョン

中年の女「…」ガシ

戦士「よっ!!」ビシ

学者「あ…ど…どうも」ペコリ

女オーク「こんにちは…ミライも挨拶して?」ペコリ

剣士「あぁ…は…初めまして」ペコ

中年の女「ん?ミライ?…君の名前かな?」クンクン

剣士「うん…珍しい名かな?」ハテ?

中年の女「もしかして…虫使い?」ジロジロ

剣士「え?虫?いや…嫌いじゃ無いけど…どうして?」

中年の女「ふふ…人違いだったみたいね…」---まさかね---

戦士「リカ…あぁいや…フィン・イッシュに向かう件はどうなって…」

中年の女「…」ペシ!!

戦士「あたっ…」

中年の女「余計な事は話さないで」

戦士「ハハ…済まん」

中年の女「先ず例の物は?」スタ

女オーク「え?…わ…私?」タジ

少女「母ぁ!!色々事情有る…もう一人の男持ってくる」

中年の女「3人と聞いて居たけれど…変更が有ったの?」

少女「母ちょっと内緒の話し…向こうで」シュタタ


ヒソヒソ… ヒソヒソ…


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『数分後』


スタスタ…


中年の女「事情は理解したわ…ただこちらも慈善事業では無いから…船を担保に頂くわ」

学者「ええと…どういう話になってるか分からんのですが…」

中年の女「例の物が手に入らない場合…船を頂く…お分かり?」

剣士「フィン・イッシュに行くと言う話は?」

中年の女「そこまでは約束する」

戦士「君達良かったね…まだ旅は続く様だ」

中年の女「リコル!あなたは少しおしゃべりだと聞いたわ?」

戦士「あいたたた…まぁこいつらは信用出来る…俺の目に狂いは無い」

中年の女「ふーん…」チラリ

剣士「ハハ…」タジ

中年の女「まぁ良いわ…とりあえず船を見たいから案内して」

戦士「外を出歩いて良いらしい…良かったじゃ無いか」

学者「ちっとマズイ事が起きてるんすよ…」

中年の女「聞いたわ?…でも大丈夫…仲間は他にも居るから」

学者「おぉ…そうなんすね?」

中年の女「試しに露店で買い物でもして様子を伺いましょう」

剣士「買い物!!?欲しい物いっぱい有るんだ」

学者「俺っちも薬とか色々入手したかったんすよ」

中年の女「では物資調達後に船へ向かうと言う事で…付いて居らっしゃい」スタ


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『露店』


ワイワイ ガヤガヤ

シン・リーン産のハチミツ酒!!安いよ~!!

寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!錬金の材料各種揃ってまっせぇ!!

金属繊維は如何ですか?金属糸もありますぜ~~?



少女「父ぃ!!新鮮な生肉ある!!骨付きだ…」

戦士「ほら少し金貨あげるから好きに買っておいで…」チャリン

少女「うぉぉー!!」シュタタ

学者「俺っちも薬仕入れて来やすね」スタ

剣士「姉さん!!僕金床が欲しい…それから細工用の工具」

女オーク「ウフフ…お金が足りれば…」

剣士「少し大きめの炉も欲しいなぁ…」アレモ コレモ

戦士「ミライ君は重たい物が欲しいんだねぇ…」

剣士「運ぶの大変かな?」

戦士「まぁ手ぶらだから手伝ってあげよう…」



ワイワイ ガヤガヤ

大麻草!!大麻草有るよぉ!!

フィン・イッシュ直産の野菜…他じゃ中々買えない物ばかりだよ?買ってけ~い

お客さんお客さん…こりゃ時計っていう物でね?ホラ…機械仕掛けで時間を刻むんすよ…


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『広場のベンチ』


ワイワイ ガヤガヤ


剣士「ゲスさん!!炉とフイゴがすごい安かったんだけどアレが相場なの?」

学者「あぁぁアレは旧式の気球から回収した中古品っすね…今は使う人が居らんですよ」

剣士「そうなんだ?あの炉を使えば簡単な金属の精錬が出来る」

学者「船を燃やさん様に頼みやすぜ?」

剣士「うん!なんか使うの楽しみだなぁ…」ワクワク

学者「今までの炉は小さすぎやしたかね?」

剣士「そうだね…魚一匹焼くのにも苦労してたから」


スタスタ


女オーク「食べ物を買って来たわ…」

学者「おぉ?パンじゃないっすか…」

女オーク「少し食べておいしかったから…」

学者「食べて良いっすか?」

女オーク「どうぞ…」

学者「これチーズとワインがすごく合うんすよ…向こうの大陸の食べ物っす」パク モグ

剣士「僕も食べる…」パク

女オーク「どう?」

剣士「おいしい!!レーションの味がする…」モグモグ

女オーク「レーションよりも安いの…そして大きい」

学者「レーションは戦闘食なんで高いだけっすね…味はパンの方が良いっすよ」モグ

剣士「姉さんも食べてよ」ムシャ

女オーク「じゃぁ一つ…」パク モグ

剣士「なんか買い物しながら食べるの楽しいね」


ピョン クルクル シュタ


剣士「うわっ!!何処から飛んで…」キョロ

中年の女「買い物は済んだ様ね?見回った感じ怪しい人は見当たらない…」

学者「そら良かったっす」

中年の女「そろそろ船へ案内して」

学者「分かりやした…こっちっす」スタ

中年の女「リコルーー!!行くわよ!!」スタ


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『キャラック船』


ザブン ギシギシ


中年の女「思ったより大きな船に乗って来たのね…」

戦士「なかなか味のある船だろう?」

中年の女「小型のスクーナーあたりを想定していたのよ…少し計画を変更しなくては…」

戦士「少しくらい話してくれないか?」

中年の女「…」チラ

戦士「まぁ…無理なら良い」

中年の女「ここは話を聞かれる事も無さそうだから良いわ…」

戦士「お!?」

中年の女「他にもフィン・イッシュ行きの商船を用意しているの…この船は囮の予定だった」

戦士「囮?」

中年の女「沈没させて海に消える…そういうシナリオ」

戦士「俺達は他の船に乗る予定だったと?」

中年の女「そう…私達家族はその船に乗る予定」

戦士「おい!それは話が違うじゃないか…」

中年の女「だからあなたには話さなかった…ギルドに依頼が来て居るのはあの3人からだけでは無いの」

戦士「まさか敵側からも…」

中年の女「敵と言うのは何処を想定して?」

戦士「う…」

中年の女「まっとうな依頼主…機動隊よ…極秘情報を盗んだニーナという傭兵の処理…これがどういう意味か分かって?」

戦士「待てあいつらは信用出来る…考え直せ」

中年の女「フフでも事情が変わった…もうニーナという傭兵は処理されたのよ…でも何故か生きている…面白いわ」

戦士「リッカはその傭兵とは別人だ」

中年の女「知ってる…私はリッカを処理しろと言う依頼は受けて居ない…だから計画変更なのよ」

戦士「ふぅぅ頼むぞリカオン…俺は友を裏切るのは許せん」

中年の女「友人?あなたの友人になるにしては若すぎると思うけれど?」

戦士「その…なんだ…気が合うというだけではダメか?」

中年の女「まぁ良いわ…今回の件で密書が入手出来なくても彼女を保護する事で何が起こるのか楽しみになって来た」

戦士「もう想像は出来る…電脳化した者のあぶり出しになるだろう」

中年の女「あなたは出来るだけ関わらない様に…」

戦士「剣一本でどうにかなるなぞ思って居ない…ただ人は守れる」

中年の女「そうよ…あなたは守っているだけで良い」

中年の女「どうも宿屋よりこの船の方が安全そうね」

戦士「そうだな…」

中年の女「私は荷の入れ替え指示と…少し情報のリークをして来るから船からは降りないで居て貰える?」

戦士「分かった…」

中年の女「出来るだけ早く戻る様にするわ…」

中年の女「あ…そうそう…盗賊ギルドの仲間はあなた達が思うより沢山居るから下手に動いて邪魔しない様に」

戦士「大人しくして居る…違うな…大人しくさせて置く」

中年の女「フフ…じゃぁ行って来るわ」シュタタ


--------------

『船首楼』


ガサゴソ ゴトン


学者「炉は此処で良いっすか?」

剣士「おけおけ!小さな炉は船尾楼の方に移そう」

学者「金床は何処に置きやすか?」

剣士「やっぱり炉の直ぐ近くが良いなぁ…レイアウトは後で僕がやるからその辺に置いといて」

学者「なんか本当…作業場になっちまいやしたね?」

剣士「もう早く作り物したくてウズウズしてるんだ…これで好みの工具が自由に作れる」

学者「工具が作りたかったんすね…」


スタスタ


戦士「妻と話して来たんだが…」

学者「お?何か聞き出せやしたか?」

戦士「どうも宿屋に居るよりこっちの方が安全だから此処に居ろと…」

剣士「本当!!?」

戦士「まぁ食べ物も買って来たし良いと思う」

剣士「こっちの方が静かだし落ち着くよ」

戦士「これから荷の出し入れがあるから静かにはならないだろうけどね…ハハ」

学者「まぁ部屋に籠っているよりは太陽に当たれるんで良いかも知れやせんね」

剣士「よーし!!姉さん!!要らない鉄くず溶かして精錬したい…教えて?」

女オーク「こんな小さな炉で?」

剣士「フイゴで温度上げられるんだ!!試してみようよ!!」

戦士「ハハ退屈はしない様だ…私はデッキで休んで居るから何か有ったら呼んでくれ」スタ

学者「じゃぁ俺っちはロボの手入れでもやりますかねぇ…」

ロボ「ピポポ…」クルリン


-------------

『夕方』


カーン カンカン


女オーク「この炉では錬鉄を熱して叩く位しか純度を上げる方法が無い様ね…」

剣士「効率悪いけど…ちょっとでも鋼鉄が出来るならこれでも仕方ない」

女オーク「火花が飛ぶから何か敷物をしないと火事になってしまうわよ?」

剣士「あぁそうだね…敷物かぁ…」

学者「流石に船の上で鉄の精錬はちっと厳しく無いすか?」

剣士「レンガか何かが欲しいなぁ…」」

学者「鉄板で囲ったらどうっすかね?」

剣士「そんなに材料無いよ…」

学者「ほんじゃ金属繊維とかどうっすか?露店で売っていやしたよ?」

剣士「お!?金属繊維ねぇ…敷物じゃ無くても他に色々使えそうだ…」

学者「あの女の人帰って来たら又露店に連れて行って貰いやしょう」

剣士「そうだね…よし!鉄の精錬は諦めて…宝箱とか作って見ようかな」

学者「良いっすねぇ…この船入れ物が全然無いんで荷物が整理できんすよ」

剣士「うん…武器保管するラックとかも欲しいね…色々作んなきゃなぁ…」


--------------

『夜_甲板』


ターン!!


学者「ん!!?銃声…これ近いっすね…」ダダ

剣士「どこだろう?」キョロ

学者「音からして火薬を使った銃っす」


スタスタ


戦士「船からは降りない様に…」

学者「何処から撃ったか分かりやせんでしたか?」

戦士「さぁ?横になっていたものだから…」

少女「火薬の匂い…あっち…でも気にするな」ユビサシ

剣士「気にするなって…気になっちゃうよ」キョロ

学者「あぁぁ…向こうの船の監視台にうっすら煙が見えやす…あれっすね」ユビサシ

戦士「…」---どうやら何か始まって居る様だ---

学者「どっか狙撃したっぽいっす…」

少女「気にするな…それよりミライが作った宝箱…貰って良いか?」

剣士「お?気に入った?」

少女「お前何でも作る…母に言っておく」

剣士「アハ…嬉しいなぁ」

学者「俺っちも欲しいっす」

剣士「おけおけ!皆の分作るよ」

戦士「ふむ…作り物の材料を少し融通してもらおうか」

剣士「それ助かるなぁ…もう木材も鉄も残り少ないんだ」

戦士「私からも妻に言っておく」

剣士「やったね!!」


--------------

『翌日』


ドタドタ

降ろせぇ!!木箱は4人一組で運んで行くんだ!!

硫黄と硝石は船底の方だ!


学者「なーんか…これ危ない物運ぶ感じっすね…」

剣士「危ない?」

学者「あのは木箱の中は多分重装射撃砲の部品っすよ…運んだ先で組み立てるんす」

戦士「中身を見て居ないのに良く分かるねぇ」

学者「いやいや戦場にはあの木箱で運んで来るんす…組み立てた事あるんす」

戦士「では海賊に奪われてしまっては大変だ…」

学者「本当そうっすよ…護衛無しでこんな物運んで良いんすかね…」

戦士「この船以外に護衛する船も行くのでは?」シラー

学者「だったら良いんすが…」

剣士「なんか木材と比べて荷が重そうだから荷室ガラガラになりそうだ」

学者「そうっすね…」

剣士「食材とか邪魔だったんだよ…荷室に置けると助かる」

学者「リコルさんの奥さんは軍の関係と繋がり有るんすね…普通じゃ手に入らん物っすよ」

戦士「ハハ…私はあまりその辺の事を知らないんだよ」

学者「な~んか…昨夜の銃声といい…キナ臭い感じっす」


シュタタ スタ


中年の女「遅くなったわ…順調に荷入れが進んで居る様ね」

戦士「忙しいのかい?」

中年の女「仕事は粗方終わりね…ふぅ…少し休むわ…」

学者「すんません…又露店に物資調達行きたいんすが…」

中年の女「あぁ…私は少し休むからリコル!あなたが付いてあげなさい」

戦士「お?もう良いのか?」

中年の女「フフ…昨夜いろいろ有ってね?あちらの方は忙しい様よ?」

学者「ああ!!昨夜の銃声っすね?」

中年の女「聞こえて居た様ね…リコル?露店は良いけど…傭兵ギルドの方へは近づかない方が良いわ…気が立って居るから」

戦士「相変わらず説明不足だが…まぁ良い…露店へ行く許可は出た様だ…どうする?」

学者「行きやす!!」

剣士「行く!!」


---------------

『街道』


ザワザワ ヒソヒソ

おい聞いたか?鼻無しの傭兵団の奴らがお手柄だってよ

ん?昨夜の騒ぎでか?

なんでも機械化した奴らを捕らえたらしい

また威張り散らして来そうだな?


剣士「ねぇ今の噂話って…ロストノーズの事だよね?」

学者「そうっすね…なんか街中でやり合ってるっぽいっすね」

剣士「良くある事なの?」

学者「あいつら揉め事ばっかり起こすんで珍しい話じゃ無いっすよ…街中でやってるってのが気になるんすが…」

剣士「リコルさんの奥さんが言ってたのってきっとこの事だね」

学者「関わるとロクな事にならんっすよ…ロストノーズはそういう傭兵団なもんで」

少女「父ぃー!!」シュタタ

戦士「んん?どうした?」

少女「何処かでアランの匂いする」

学者「お!!兄貴帰って来やしたね?」

戦士「宿屋から出てしまったからな…船まで来るだろうか…」

学者「居ないの分かったら探しに来るんじゃないっすかね?」

少女「注意して探してみる…」クンクン


---------------

『傭兵ギルド裏路地』


スタスタ


受付の叔母さん「なんだいこんな所に呼び出して…あたしゃ忙しいんだよ」

盗賊「…」ギロリ

受付の叔母さん「何か言いたい事でもあるんかいね?」

盗賊「…」ダダ グイ

受付の叔母さん「あ痛たた…あんたこんな事して良いと思って…」

盗賊「フン!どうやら電脳化はしていない様だな…」グイ ドン

受付の叔母さん「なんだいニーナちゃんの事かい?」

盗賊「なんでニーナが味方の砲弾でやられた事をお前が知って居るかって事だ…そんな情報は軍から簡単に漏れん筈だ」

受付の叔母さん「それは聞いた話だよ」

盗賊「誰にだ?」ズイ

受付の叔母さん「あんたを尋ねに来た人さ…昨夜何処かに連れて行かれた様だけどねぇ…」

盗賊「それとこりゃ何だ?お前ニーナが手配されてる事知ってて情報ベラベラしゃべっただろう」パサ

受付の叔母さん「そ…それは情報開示令出されちゃ仕方なかったのさ」

盗賊「つまりお前はどうしてニーナが殺されたのか知ってた訳だ」

受付の叔母さん「殺されるなんて思って無かったさ…気の毒に…」

盗賊「黙れ…身内を庇えないギルドなんざクソくらえだ」ドン

受付の叔母さん「うぐぅ…」ズザザ

盗賊「ニーナに戦地への招集令が掛かった時も分かってた筈だ…お前がニーナを戦地に行かせたんだぞ?」

受付の叔母さん「…」


カサ…


盗賊「!!?」スゥ…

受付の叔母さん「え!!…消え…」キョロ


スゥ…


謎の女「!!?」ギク

盗賊「誰だお前?さっきから監視してただろう…」チャキ

謎の女「う…」タラリ

盗賊「俺は機嫌が悪い…このまま首切って体とおさらばさせても良いんだぜ?」


ターン! ターン!


盗賊「ぐはぁ!!クソがぁ!!」ズブリ ジョキン!


謎の女「ゲフッ…ゴポゴポ」ガクリ ドピュー

受付の叔母さん「ひ…ひぃ…」タジ

謎の女「ゴボゴボ…」ドクドク ビクビク

盗賊「くっそコイツ!!」ザクザク

受付の叔母さん「あ…あんた…やり過ぎだよぅ…もう首が繋がって居ないじゃないか…」ガクガク

盗賊「うるせぇ!!こいつが何者なのか黙って見てろ!!」ザクザク ドピュ

謎の女の首「…」グチャ

盗賊「見つけたぜゴルァ!!こいつが機械に操られてる証拠だ!!」ブチブチ

受付の叔母さん「頭に機械が…」ガクブル


シュタタ シュタタ


少女「見つけたぞ!!」

学者「あ…兄貴ぃ!!」ダダ

盗賊「ゲス!!良い所に来た…こいつは電脳化した奴だ…死体このままにしとくと騒ぎになっちまう…処理手伝え!」グイ

学者「あいやいや…こりゃえらいこっちゃじゃ無いっすか…」タジ

少女「アラン!お前も血が出てるぞ…」ジュルリ

盗賊「俺は後で…ん?」ガク

学者「ちょちょちょ…!!兄貴も撃たれてるじゃ無いっすか…」

盗賊「ぅぅ…何だ?足が動か無ぇ…」ヨロ

学者「マズイっすマズイっす…背中にこぶし大の穴が空いてるっすよ」


少女「ゲス!お前何とかしろ」

学者「兄貴!!応急処置するんで横になって下せぇ…ミライ君!!兄貴の上着をナイフで切って脱がして下せぇ」ゴソゴソ

剣士「え…あ…うん!」イソイソ

少女「マズいな…騒ぎに気付いてもう直ぐ人が来るぞ」クンクン

学者「これ今動かせないっす…」ゴソゴソ

盗賊「そ…その首切った女の死体を…何処かに隠せ…ゲフッ」ボタボタ

学者「兄貴…喋らんで下せぇ」ヌイヌイ

少女「急いで母呼ぶ…待ってろ」ガブリ

戦士「お…おいまさか…」

少女「この死体持って行くぞ…」ムクムク

女オーク「ええ!!?ウェアウルフ…」タジ

子ウェアウルフ「待ってろ…ぐるる」シュタタ シュタタ

盗賊「あ…あいつ…」ヒック ブルブル

学者「マズイっすね…死戦期呼吸出初めてるじゃ無いっすか…」ヌイヌイ

戦士「ここに人が立ち入らない様に私が止めて来る…ゲス君はそのまま治療を」ダダ

剣士「姉さん…これ…」

女オーク「ダメ…力を使ってはダメ…」フリフリ

剣士「このまま死んじゃいそうだ…」

盗賊「…」パクパク


---声が出無ぇ---

---俺はこんな所じゃまだ死ね無ぇ---

---まだ神の手を超えて無ぇんだから---

---たった2発撃たれただけで死ぬ訳に行か無ぇ---

『遠くの声』


腹側から切開して傷つついた臓器を縫合していきやす…

出て来る血を管で吸い取ってそっちの容器に移して行って下せぇ

固まった血は薄めた食塩水で洗い流しやす

あれ?さっきこの血管切れてた筈なんすが…何かやりやした?

見間違いっすかねぇ…バイパス処置しなくて良さそうなんでこのままゆっくり血を流して行きやす

オークの血で上手い事縫った場所が回復してくれれば良いんすが…

よしよし上手い事四肢に血が回って居やすね…次の処置に行きやす…


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『夢』


タタタターン! ドドーン!! パラパラ


僕「おい!!大丈夫か!?」

男「ぁぁぁぁ…目が見え無ぇ…げふげふっ…げほぉ!!」ボタボタ

姉「瓦礫から掘り出すんだ!!」ガッサ

男「上手い事瓦礫で塞がった様だな…ハァハァ」

僕「姉御…手…手が無い…」プルプル

男「おい小僧…何処だ?こっちへ来い」

僕「今腕を縛って血を止める…」ダダ

男「おい良く聞け…俺の装備品を持ってお前等は逃げろ…地上に出て何とか逃げ延びろハァハァ」

僕「逃げるって…何処に!?そこら中機械だらけだ」

男「俺の左手に小さな石を握っていた筈だ…そいつを使えば消える事が出来る」

姉「これだ!!有った!!」ダダ

男「小僧!装備品は全部お前にやる…だから必ず生き延びろ…分かったな?」


シャカシャカ…


姉「マズイ…裏手に回られ始めてる…」キョロ

男「俺はもう手遅れだ…早く行け…ここでお別れだ」

僕「ダメだ!!置いて行けない!」ガサガサ

男「もう手も足も感覚が無い…構わず行け」

姉「くぅぅ…い…行くよ」グイ

僕「姉御…」

男「おい忘れてるぞ?俺の腰にミスリルダガーと銃がある…それを使って身を守れ」

僕「ダガー…銃…あ…有った」ガチャ


タタタターン


姉「来たぁ!!くぅぅ…」

僕「こ…このぉ!!」ギリ

小型の機械「ピピピ…」シャカシャカ

僕「来るなぁぁぁ!!」ダーン! ジャラジャラ


ドーン!!


小型の機械「…」プシューーー ドタリ

男「や…やれば出来るじゃ無ぇか…さっさと行け」グター

姉「行くぞ!!撒かれる…」グイ

僕「くぅぅぅ…」タッタッタ


タッタッタ…



---まだ俺はその男を超えていない---

---まだ死ぬ訳に行か無ぇ---


---------------

『キャラック船_荷室』


ユラ~リ ギシ


盗賊「んぁぁ…」パチ

中年の女「…」ジロリ

盗賊「こ…ここは…」キョロ

中年の女「船の荷室だ…」

盗賊「誰だ?お前…ぐぁぁ痛てぇ…」

中年の女「動かないで…傷が広がるわ」

盗賊「ちぃぃ記憶が飛んでんな…」

中年の女「このダガーと銃をどうした?」スッ

盗賊「そりゃ俺の物だ…返せ!」ガバ

中年の女「動かないでと言って居るでしょう?」

盗賊「返してくれ…親の形見なん…だ…うぐぐ痛てぇ…!!」バタバタ

中年の女「ファルクリード…」

盗賊「何!?なんでその名を…」

中年の女「フフ…やっぱり似ている…」

盗賊「俺の親父を知って居るのか?」

中年の女「アランと言うそうね?」

盗賊「おい!俺の質問に答えろ!」

中年の女「同じギルドだったのよ…盗賊ギルド」

盗賊「そうだったのか…お前は盗賊ギルドの者だな?」

中年の女「フフ…だったら?」

盗賊「ガキンチョの使いしか見て無ぇからな…やっと話の分かる奴に会えたわけだ」

盗賊「俺はアランクリード…泥棒だ…自己紹介したぞ?お前は誰だ?」

中年の女「なかなか良い腕をしている様ね…例の書簡頂いたわ…それからコレも」スッ

盗賊「んん?おい!!そりゃ電脳化のデバイス…そんなもん持ち歩いて全部会話筒抜けだろうが」


中年の女「大丈夫…魔石は回収してあるから」コロン

盗賊「ホッ…心臓に悪い事すんない」

中年の女「それであなた…この書簡の事をどこまで知って?」

盗賊「何も知ら無ぇよ!読めもし無ぇ!何だそりゃ?」

中年の女「ニーナから何か聞かされて居ないの?」

盗賊「半年前から殆ど会話して無ぇんだ…今回の件もそいつが取り引きの物だと知らなかった」

中年の女「そう…結果的に手に入ったのは運が良かったわ」

盗賊「おい!まだお前俺の質問に答えて無いぞ?俺は名乗ったんだ…名前ぐらい教えろ」

中年の女「そうね…まぁ良いわ…私はリカオン…白狼の一党と言えば通じて?」

盗賊「やっぱりそうか…あのガキンチョもその手の者か」

中年の女「秘密を知ったからには分かっているでしょうね?」

盗賊「俺は何にも縛られない…だが裏切る様な事はしない…その辺はわきまえてる」

中年の女「フフ…リコルが気に入る訳ね」

盗賊「ちっと血が足りんらしい…何か食い物を持って来て貰いたいんだがよ」

中年の女「分かったわ…少し待って居なさい」スタ


--------------

『数分後』


ドタドタ


学者「兄貴ぃーー!!やっと目を覚ましやしたね?」

剣士「アランさん!!良かったぁ…」

学者「兄貴!ミライ君とリッカさんに感謝っす…兄貴が死ななかったのは2人のお陰っス」

盗賊「なぬ?」

学者「銃で撃たれて内臓やられてたんすよ…リッカさんの血とミライ君の謎の治癒でなんとか助かったんす」

盗賊「そんなに酷かったんか…」

剣士「もう一週間寝たきりだったんだよ?」

盗賊「なんだと!?俺はさっきやられたと思って…あだだだ」

学者「傷むのは俺っちの縫合痕っすね…ちっと筋肉ぶった切っちゃったもんで…」

盗賊「まぁ良い…兎に角腹減って動けん様だ…何か食わせろ」

学者「いきなり食うのは良く無いっす…今リッカさんに流動食作って貰ってるんでもうちょい待って下せぇ」

盗賊「飲み物で良いから何か腹に入れさせろ」

剣士「持ってきたよ…ワインなら良いんだよね?ゲスさん?」

学者「少しだけっすよ?」

盗賊「おぉよこせ!!」キュポン グビ

盗賊「ロボは何処行った?」キョロ

学者「兄貴の代わりに船の操舵っすよ」

盗賊「あんな重い舵をロボが動かせる訳無いだろう」

剣士「僕が舵輪に改造したよ…グルグル回す奴」

盗賊「なるほど…ロボに任せて大丈夫なんか?」

学者「先導する他の船に付いて行くだけなんで大丈夫っすね」

盗賊「船隊組んで航海してんのか…」

剣士「他の商船と合わせて6隻くらいかな?」

盗賊「なるほど…そりゃ安全そうだ」

学者「ところで兄貴がやった奴から装備剥ぎ取りやしたぜ?」

盗賊「んん?何か持ってたか?」

学者「火薬使う2連装デリンジャーっすね…あと防弾ベストとか色々持っていやした」

盗賊「デリンジャーか…隠し持つにゃ丁度良いが…弾込めに時間掛かり過ぎて使えんな」

学者「兄貴は使わんのですか?弾丸は20発くらいありやしたぜ?」

盗賊「俺は要らん…護身用でミライ辺りが持ってりゃ良いんじゃ無ぇか?」

剣士「お!?だったら分解して仕組みが知りたいな」

盗賊「使って良いぞ…防弾ベストは欲しいがサイズが合わんだろうな」

剣士「それは僕が直せるかも」

盗賊「あぁ任せる…悪い!ちっとワイン飲んで気分が悪くなって来た…横になる」ドテ

学者「あらら言わんこっちゃ無いっすね…もうちょい安静が良さそうっすね」


--------------

『デッキ』


ザブ~ン ユラ~


少女「母…アランに正体バラシて良かったか?」

中年の女「大事な仲間の遺児だったのよ…驚いた」

戦士「んん?誰の?」フリムキ

中年の女「ファルクリード…神の手を持つ男」

戦士「伝説の男…アランがその遺児か…どうだ?似て居るのか?」

中年の女「若い頃の生き写しね…いつも違う女を連れ歩いてたのが気に入らなかった」トーイメ

戦士「ハハもしかして初恋か?」

中年の女「どうかしら?…でも憧れだった…自由な生き方も…その信条も」

少女「神の手とはどういう意味だ?」ハテ?

中年の女「彼に開けられない鍵は無かったのよ…そして盗めない物も無かった…白狼の盗賊その人…」

少女「アランも同じか?」

中年の女「さぁ?…でもあの大きな手は…まだ生きている気がする」

少女「父!まずいぞ!母が浮気しそうだ」

戦士「ハハ何を言って居る…年が離れすぎだ」

中年の女「でも彼が生きていると知ってしまったからには…導いてあげないと」

戦士「導く?」

中年の女「母親が生きて居るの…上手く誘導してあげたい」

戦士「連れて行ってやれば良いだろう」

中年の女「彼が親を離れた理由を引きずって居なければ良いけれど…」

戦士「訳有りか…ふむ」

中年の女「当面盗賊ギルドで彼らの面倒を見る様に父に進言するわ…リコル…あなたにも強力してもらうわよ」

戦士「やっと俺の価値が分かって来たか」

少女「母!私も忘れるな」

中年の女「そうね…良い子ね」ナデナデ


--------------

『甲板』


ユラ~ ギシ


盗賊「おととと…」ヨロ

学者「兄貴ぃ…ちっと大人しくしてて下せぇよ」

盗賊「うるせぇ!一週間も大人しくしてたんだろうが…」


戦士「アラン!!もう動けるのか?」ノシ


盗賊「おうリコル!!どうやら世話掛けた様だ…リカオンもデッキに上がってんのか?」

少女「お前ーーー!!その名を口にするなぁ!!」バタバタ

中年の女「ミルク…もう良いのよ」

盗賊「ほーう?ガキンチョはミルクってのか…覚えたぜ?」

少女「ミルクレープだ!勝手にミルク呼ぶな」プン

盗賊「へいへい…んで?家族そろって日光浴か?」

戦士「まぁ…そんな所だ…風が気持ち良いぞ?上がって来るか?」

盗賊「いいや…家族に割入る気なんざ無ぇよ…俺の家族に心配掛けちまったからそっちが先だ」ヨロ

学者「兄貴ぃ…海に落ちちまいやずぜ?」グイ


ロボ「ピポポ…」ウィーン


盗賊「おぉ!!ロボ…心配掛けたな?」ナデナデ

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「俺も操舵手伝ってやる…んん?」スタ

盗賊「誰だ?見張り台に上がってんのは…」クル


学者「あぁ!!兄貴に教えて無かったっすね…ビックリする人がもう一人乗ってるんすよ」

盗賊「んん?女か?」

学者「シルエット見て誰か分かりやす?」ニマー

盗賊「まさか…ラシャニクア…」

学者「正解!!流石兄貴っすね!!」

盗賊「おいおいどういうことだ!?」

中年の女「傭兵で雇った…それ以上何か説明が居る?」

盗賊「マジかよ…」

学者「狙撃手が一人居るだけで安全に航海出来るらしいっす…ほんでこの船に乗ってるんすよ」

盗賊「そういやロストノーズの連中がなんか粗ぶってたんだが…」

学者「味方っすね…電脳化した機械の連中を追ってたんすよ」

盗賊「ロストノーズごと雇ってるってか?」

学者「そこら辺は分からんのですが…ラシャニクアは傭兵団抜けたらしいっす」

盗賊「ほう?なんで又…」ジー

女ハンター「…」シラー

盗賊「まぁ良い…今船に乗ってんのはこれで全員だな?」

学者「へい…8人とロボ…ほんでウルフ1匹っす」

盗賊「寝床無いもんだから俺は荷室行きか…」

学者「ベッドで寝れるのは荷室だけっすけどね…ミライ君がベッド作ったんすよ?」

盗賊「ほーん…」

学者「兄貴の荷物は全部ベッド横の宝箱に入れてあるんで後で確認して下せぇ」

盗賊「ったく俺の船だってのによ…」


--------------

『船尾楼』


ドサ ギシ


盗賊「随分家具が増えたな?」キョロ

学者「全部ミライ君の手作りっすよ…良い居室になりやしたよね?」

盗賊「本棚に書物も入って居やがる…買ったんか?」

学者「俺っちが買って来やした…測量とか航海術とか…」

盗賊「俺に読めってか?」


ガチャリ ギーー


剣士「食事持って来たよ…」ドサ

盗賊「おぉ…今度はクソ薄いスープじゃ無いだろうな?」

剣士「パンとチーズ…あとスープね…ハハ」

盗賊「肉が無ぇな…」パク モグモグ

学者「病み上がりなんでゆっくり食って下せぇ…スープは全部飲み切って下さいね…造血剤入りなもんで」

盗賊「へいへい…あぁぁやっと落ち着いた」モグモグ

盗賊「しかしなんだぁ…リコル家族はなかなか優雅な航海してるじゃ無ぇか…デッキで風に当たりながら酒でも飲んでんだろ?」ガブ モグ

学者「まぁ良いじゃ無いっすか…お陰で安全に航海出来てるんすから」

盗賊「今どの辺に居るんだ?」

学者「外海のど真ん中っすね…この辺りっス」ユビサシ

盗賊「んん?陸沿いにフィン・イッシュ行く訳じゃ無いのか」

学者「一旦ゴールドラッシュ島に寄って行くらしいっすよ?」

盗賊「ほぅ?ちっと遠回りだが…海賊が出ない分安全か…」

学者「今商船の中継点になってるんでメチャ栄えてるらしいっす」

盗賊「ふ~む…金稼ぎには都合良いか…」ギラ

学者「ちょちょ…また泥棒で騒動起こさんで下せぇ」

盗賊「俺ぁもう金が無いのよ…どうせ海から金塊サルベージして潤ってる連中が居んだろ?」


学者「兄貴は船持ってるじゃ無いっすか…ちっと大人しくしてそん時に備えやしょう」

盗賊「酒飲む金も無ぇんだが…」

学者「はいはい分かりやしたよ…金貨10枚くらいで良いっすか?」ジャラ

盗賊「お?気前が良いじゃ無ぇか…」パス

学者「ウヒヒヒヒ…実はっすね…傭兵ギルドの叔母さんから餞別貰ったんすよ」

盗賊「なんだと!?あの婆ぁニーナを売ったんだぞ!」

学者「あの後ロストノーズの連中がドヤドヤやって来てっすね…色々事情を聞かれてたみたいなんすが」

学者「これで勘弁してくれって俺っちに金貨渡して来たんす」

盗賊「じゃぁ俺にも分け前有るだろうが!!」

学者「今渡しやした…俺っち10枚…兄貴も10枚…」

盗賊「だったら奢りますみたいな顔してんじゃ無ぇ!!」ボカ

学者「あたたたた…」スリスリ

盗賊「あのクソ婆ぁ…またベラベラ情報垂れ流すぞ…」ギリ

学者「もう良いじゃ無いすか…あっちの大陸にゃ戻らにゃ良い訳で…」

盗賊「まぁそうだが…残した物も多い」---孤児達もニーナの墓も---

学者「2~3年もすりゃ忘れやすよ」

盗賊「金貨10枚か…当分はなんとかなるか…」

剣士「それだけあったら3年は暮らせるよ?」

盗賊「ヌハハハ…違い無ぇ…そうだ俺らはゴミ食って生きて来たんだもんな…」

剣士「何言ってるのさゴミなんか何処にも無いよ…全部宝さ」

盗賊「よ~し!!宝探しに行くか!!」

剣士「おおおおお!!行く行く!!どんな宝があるかなぁ」ワクワク

盗賊「そりゃ箱を開けてからのお楽しみよ…箱開けは俺に任せろ」


---------------

『デッキ』


ユラ~リ ギシ


中年の女「フフ…」ニヤ

戦士「丸聞こえだな…フフ」

中年の女「まるでファルクリードの話を聞いて居るみたい…懐かしい」

戦士「不思議と周りを引き込んで行くのだな…」

中年の女「そういう男…人間らしくて正直で…裏が無い」

少女「母の初恋か?」チラリ

中年の女「憧れ…自由で気ままな生き方…それでいて暖かい所に惹かれた…喧嘩してばっかりだったのよ?フフ」

戦士「まぁ分かる…アランは良い奴だ…間違い無い」


盗賊「お~し!!肉だ肉!!甲板でバーベキューやっぞ!!」ドタドタ


学者「兄貴ぃ…肉はまだ早いですって…」

盗賊「うるせぇ!!パンとチーズじゃ満足でき無ぇ!!」

学者「またそのちっこい炉で焼くんすか?」

盗賊「ぐじゃぐじゃうるせぇな…魚持って来い魚!!今から焼くぞ!!」

剣士「食材少し切って来るね」

盗賊「おらぁぁ!!ラシャニクア!!いつまでも見張り台に居無ぇでお前も降りて来い!!」

女ハンター「…」シラー

盗賊「降りて来いっつってんだろ」ドカッ ドカッ

学者「兄貴…酒飲んでるっすか?なんでそんなテンション高い…あ!!オークの血…ハイ状態に…」

盗賊「んあ?俺は普通だぞ?」

学者「あたたた…こりゃしばらく続きそうっすね…」


-------------

『バーベキュー』


ジュゥゥゥ モクモク


盗賊「おら芋だ!!キノコも焼けたぞ」ポイ

戦士「ハハハなかなか小さな炉で頑張って居るな」

盗賊「ほらおっさん!!芋焼けてるぞ」ポイ

戦士「良いツマミだ…」パク モグ

中年の女「ラシャニクア!見張りは休んで居りていらっしゃい…豪華なバーベキューだそうよ?」

女ハンター「…」スルスル シュタ

盗賊「いよう…やっと降りて来たな?煙で燻してやろうと思ったんだが…」

女ハンター「…」ジロリ

盗賊「まぁ食え…キノコだ」ポイ

女ハンター「…」パス

盗賊「なんだ不満か?」

女ハンター「しょっぼ…」パク モグ

盗賊「なんだとぅ!!」

学者「まぁまぁまぁ…兄貴…こりゃ確かにショボイっす…」

盗賊「肉無ぇのか肉は!!」キョロ

剣士「ゴメンゴメン…鶏肉だけど…切って来たよ」

盗賊「そうよソレだ…肉がありゃ皆満足だ」ジュゥゥゥゥ

女オーク「皆さん…パンもどうぞ…私が焼きました」

戦士「頂こう…」パク ムシャ

女オーク「どう…ですか?」

戦士「砕いたナッツ入りか…中々良い」

剣士「姉さんやったね?やっぱりパンと豆は相性が良いみたい」

盗賊「おいおい肉に興味は無ぇのか?」ジュゥゥゥ モクモク

女ハンター「…」チラリ

盗賊「お前こっち見たな?骨付きだ…特別にお前から食わせてやる…ホラ」ポイ

女ハンター「…」ガブリ モグ

盗賊「ヌハハハやっぱ肉だよな?ゲス!!酒持ってこい酒ぇ!!」

学者「あいやいや…兄貴はちっと控えて下せぇよ」

盗賊「俺じゃ無ぇ!!ラシャニクアを酔わせて潰すぞ」

学者「ええ!?」


盗賊「澄ました顔してっから酒で正体暴くんだ…お前が勝負してやれ」

女ハンター「私はお前と違って暇じゃない…仕事中だ」モグモグ

盗賊「うほーやっとしゃべったぞ?」

戦士「代わりに私が飲もう…」ズイ

盗賊「リコルはさっきから飲んでるだろうが…」

剣士「ワイン持って来たヨ…」スタ

女オーク「木製のタンブラーも…」トクトクトク…

盗賊「俺にもヨコセ」グイ

女ハンター「…」タジ

盗賊「逃げんなコラ…お近づきの一杯だ」

女ハンター「だから仕事中だと言って居る…」

中年の女「付き合いも仕事よ?」

女ハンター「ちぃ…」

中年の女「あなた達…同年代なのだから仲良くなさい?」

盗賊「ほぅ?同年代だったか…そりゃ乾杯しないとな」カツン!

女ハンター「…」ジロリ

盗賊「まぁ…仲よくしようぜ」グビ ゴクゴク

女ハンター「仕方ない…」グビ ゴクリ

学者「兄貴ぃ…その一杯で終わりっすよ?」

盗賊「俺の血は酒で出来てんだ…なんて事ぁ無ぇ!!ヌハハハ」


ワイワイ ワイワイ

---------------

---------------

---------------

『夜_甲板』


ザブ~ン ユラ~


盗賊「んぁぁぁぁ…薬のせいか…全然眠れる気がしねぇな…」フラ

ロボ「ピポポ…」ウィーン

盗賊「んん?心配で見に来たんか?」

ロボ「ピピ…」ピタ

盗賊「大丈夫だ…そうそう船から落ちやし無ぇよ…」

盗賊「はぁぁぁ…しかし…夜の海ってのは本当真っ黒けだな…星の光がちっと映っては居るが…」

盗賊「落ちたら真っ暗闇だろうな…怖い怖い…」


ガサリ


盗賊「んん?ラシャニクアか?…まだ見張り台に上がってんのか?」

女ハンター「眩しい…ランプの光をこっちに向けるな」

盗賊「お前ずっと其処に居んのか?」

女ハンター「定位置さ…文句あるか?」

盗賊「そっから何が見えんのよ…真っ暗闇だろ」

女ハンター「光はある…」

盗賊「ロボ!ちっと見張り台に上がるから居室入ってろ」

ロボ「ピポポ…」ウィーン

女ハンター「来るな…ランプが眩しい」

盗賊「フーーー…消しきゃ良いんだろ?こんな真っ暗で良く上がれるな…」ヨジヨジ


---------------

『見張り台』


ヒュゥゥゥ…


盗賊「風が吹きっ晒しじゃ無ぇか…凍える寒さじゃ無いが…毛皮だけじゃ寒いだろう」

女ハンター「来るなと言ったのに…」

盗賊「眠れなくて暇なんだよ…んで?どこに光が見えんのよ」キョロ

女ハンター「昔はここに登れば妖精が見えた…」

盗賊「妖精?」

女ハンター「大人になったせいか…光しか見えなくなった」

盗賊「どこよ?」

女ハンター「そこら中に…」

盗賊「暗闇にまだ目が慣れて無ぇな…」ゴシゴシ

女ハンター「今晩は新月…妖精が見える筈」

盗賊「なぬ?」

女ハンター「お前…何故人のスペースにズケズケと入って来る」

盗賊「ほんなん気にした事無ぇよ」

女ハンター「少しは気にしろ」プイ

盗賊「俺の船だから俺が何処に行こうが勝手だ」

女ハンター「ちっ…」

盗賊「ラシャニクア…戦場で聞く噂とは随分違うな?」

女ハンター「何がさ…」

盗賊「妖精追っかけてる乙女だとは聞いた事が無い」

女ハンター「なっ!!」

盗賊「ヌハハ冗談だ…戦場に行く割には随分華奢で小柄だと思ったんだよ」

女ハンター「狙撃に体格は関係無い…逃げる嗅覚と腕が有れば良い」

盗賊「なるほど…ほんで妖精探しは嗅覚磨きってか?」

女ハンター「フン!!」プイ

盗賊「…なんで傭兵団抜けたんだ?」

女ハンター「あいつ等はクズばっかりだからさ」

盗賊「ほう?でも金稼げんくなるだろう」

女ハンター「私の戦果も全部アイツらが持って行く…金なんか殆ど貰って居ない」

盗賊「なるほど…何処も同じな訳か…」

女ハンター「何処も?」

盗賊「船に乗ってるミライとリッカ…一生懸命働いても貰える金はほんの少しだった…」

女ハンター「そう…」

盗賊「お前…奴隷だったんだってな?孤児だったんか?」

女ハンター「だから何?」

盗賊「いんや…何って話は何も無い…俺もゴミ食って生きてたって言いたいだけだ」

女ハンター「…」

盗賊「キノコ美味かっただろ…ゴミん中じゃ最高の御馳走だ」


女ハンター「肉が美味かった」

盗賊「ケッ!!そこはキノコ美味かったって言う所だろ…分かって無ぇな」

女ハンター「お前…変な奴だな」

盗賊「何がよ?」

女ハンター「普通は私の名を聞いて先ず鼻を見るんだ…お前は鼻を見もせずいきなりキノコ…」

盗賊「なんだお前…俺に鼻を見て欲しいって言ってんのか?」

女ハンター「いや…」

盗賊「船に乗ってるロボットが居るだろ…アイツは元々普通の女なんだ…鼻どころか全身全部削がれた」

女ハンター「話に聞く孤児機械化の…」

盗賊「俺はよ?アイツに生身の肉体を与えたくて旅してる…完全体のホムンクルスってのを探してな」

女ハンター「そうか…」

盗賊「もし見つけたらよ?お前にもちゃんとした鼻をつけてやれるぞ?」

女ハンター「硬化症が怖い…」

盗賊「完全体のホムンクルスは硬化症にならないらしい…これは信頼できる情報だ」

女ハンター「もし見つけたら…か」

盗賊「もしじゃ無ぇ…見つける!!」ギラリ

女ハンター「まぁ期待しないで待つ…木製の付け鼻も案外気に入って居るのさ」

盗賊「ヌハハそうか…ほんでお前は?この船に乗ったのは只の傭兵か?」

女ハンター「そうさ…でも目的は他に有る」

盗賊「何よ?」

女ハンター「海賊王の娘を探す」

盗賊「お!!?どういう事よ…丁度俺も探してんのよ」

女ハンター「何!?何処に居るのか知って?」

盗賊「いや…まだ知らん…だが知って居そうな人物が居るんだ」

女ハンター「それは誰だ?」

盗賊「まぁどうせ行先は同じだ…しばらく一緒だな?」

女ハンター「教えろよ…」グイ

盗賊「そのうち分かる…それよりお前が海賊王の娘を探す理由は何よ?鼻削がれた復讐か?」

女ハンター「復讐では無い…見たのさ…光を」

盗賊「光?」

女ハンター「奴隷として貴族の船に乗って居た時…見張り台で覗いた望遠鏡の奥にその人は居たんだ…」




その人は幽霊船と言われた船に乗って居た…

突然消えたり…現れたり…

それまで見た事の無い光り輝く剣…

不思議なクジラ…

見た事の無い魔法も…

何も無い私の生活に…望遠鏡の中にだけ有る夢の世界

私は虜になってしまった…



盗賊「憧れか…」

女ハンター「今でもその船に乗って居た全員の顔を覚えてる…」

女ハンター「その人を目の前にして連れて行って欲しいと真剣に思った…」

盗賊「なるほど…それがお前の光か…」

女ハンター「しまった…恥ずかしい話をしてしまった…」

盗賊「ヌハハ気にすんない…その船にな?ホムンクルスの完全体が乗って居た筈なんだ…そう聞いた」

女ハンター「どの人の事だろう…」

盗賊「まぁお前の事は大体分かって来た…見張り台で昔の様に探してんだな?お前の光を…」

女ハンター「そうさ…そこにあんたがズケズケと入って来たのよ」

盗賊「そう言うない…」


ヒラヒラ…


盗賊「んん?」キョロ

女ハンター「来た…」スック

盗賊「これが妖精?」

女ハンター「そう…この光が行く先に幽霊船が見えた…」


ヒラヒラ…


盗賊「なんだこの光…踊って居るみたいに…」アゼン

女ハンター「スゴイだろう?」


---------------

---------------

---------------


『翌朝』


ザブ~ン ユラ~


学者「ふぁ~ぁ…遅くなりやした…起こしてくれりゃ良かったんすが…」ゴシゴシ

盗賊「興奮して全然眠れないんだが…お前薬に何か入れたか?」

学者「んん?体調はどうっすか?」

盗賊「すこぶる快調だ…腹の傷は痛むが…」

学者「多分オークの血を輸血したせいなんすよ…それにしても回復が早いっす…」

盗賊「喉がやたら乾いてよ…」グビ

学者「何飲んでるんすか?まさか酒じゃ無いっすよね?」

盗賊「酒だ…リッカが持ってた…こりゃなんかの果実酒か?」

学者「ええ!?もしかして体がポカポカしてたりしやせんか?」

盗賊「言われてみればそうかもしれん」

学者「なんか分かって来やしたぜ?…蒸留酒でオークの血が希釈されて増えてるんすよ…輸血された人間にも効果が…」

盗賊「だから俺の血は酒で出来てるって言っただろ?」

学者「そういや姉御にも何回か輸血されて居やしたね…そういう事っすか」

盗賊「んな事より周りを見て見ろ…行き交う船が増えて来た」ユビサシ

学者「本当っすね…」キョロ

盗賊「こりゃ多分目的地が近いぞ」

学者「ゴールドラッシュ島…楽しみっすね」

盗賊「俺ぁシカ肉が食いてぇな…出来るだけ臭いやつを」

学者「良いっすねぇ…到着したら酒場でパーーっと行きやしょう」

盗賊「分かってるじゃ無ぇか!!」バン

学者「おわととと…兄貴の手はデカくて重いんでちっと手加減して下せぇよ…」

盗賊「ヌハハハ悪い悪い…」


--------------

『ゴールドラッシュ島_港』


ガコン ギシギシ


中年の女「到着した様ね…」スック

盗賊「ミライ!!碇降ろしてくれぇ!!」

剣士「分かったぁぁ!!」ダダ

中年の女「さて…この島では荷の積み替えがあるから次の出発は3日後…」

盗賊「おう!!俺らどうすりゃ良いんだ?」

中年の女「別行動よ…自由にして良いわ…船に残っても良いし…宿屋に行っても構わない」

学者「兄貴ぃ!!折角なんで宿屋行きやしょう」

中年の女「私達は別行動するから…そちらはそちらで上手くやりなさい?」

盗賊「おーし!!ラス!!降りて来い!!」

女ハンター「ラ…ラス?」キョロ

盗賊「お前の事だ馬鹿!!ラシャニクアじゃ呼びにくいだろ…降りて来い!!行くぞ!!」

女ハンター「私が雇われて居るのはお前じゃ無い!!」

盗賊「アホかお前!!向こうは家族で来てんだぞ?ちったぁ気を使え!!良いから降りて来い!!」

中年の女「フフ…付き合いも仕事だと言ったでしょう?」ニヤ

女ハンター「ちっ…分かったよ」スック

盗賊「ようし!!リッカとミライも降りる準備しろよ?今晩はパーーっと行くぞパーーっと!!」

剣士「おーーー!!姉さん!!パーーーっと行くんだってさ!!」ドタドタ

女オーク「ウフフ…」

中年の女「じゃぁ3日後に…此処で」ノシ


---------------

『街道』


ワイワイ ガヤガヤ


学者「ほえぇぇ…それほど大きな島じゃ無いのに栄えて居やすね…」キョロ

剣士「見た事無い形の建物だ…」キョロ

盗賊「古代遺跡らしいぞ?そこに後から色々建ててんのよ」

学者「確か20年ぐらい前に海賊王の娘達が発見したんすよね?」

盗賊「らしいな?海に沈んだ黄金郷もな?」

学者「黄金のサルベージってどうやってるんすかね?見たくないっすか?」

盗賊「フィン・イッシュに行く途中で見れるかも知れん…なんでもシン・リーンの魔術師達も居るらしいぞ」

剣士「黄金ってさ?金貨の材料?」

盗賊「さぁな?俺は大量の黄金を何に使ってるのか知らん…金貨になってるのはその一部だろう」

学者「俺っちは少し知ってますぜ?」

盗賊「んん?機械の部品だってか?」

学者「いやいやそれは極一部っすよ…黄金は錬金術で賢者の石を作る材料になるらしいっす」

盗賊「なるほど…それでシン・リーンも関わってるってか…」

学者「製法が解明されたかどうかは知らんすがね…賢者の石は命を生むとか言う話もあるんすよ」

剣士「そっかぁ…金貨を溜めれば賢者の石っていうのも作れるのかぁ…」ワクワク

盗賊「お?お前が作るんか?」

剣士「作れるなら作ってみたいなぁ…」

盗賊「そら結構!!俺にも作ってくれ」

学者「兄貴ぃ…賢者の石一欠けらで国が買えるとか言われてるんですぜ?」

盗賊「ヌハハハそりゃ作るしか無ぇな?」

学者「あたたた…そんだけ難しいって言いたかったんすが…」


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『露店』


ワイワイ ガヤガヤ

シカ肉…シシ肉なんでもあるよ~買ってってくれ~い!!

金のアクセサリーは如何かね?世界最安値だよ~?

ミスリル製の武器!!他では中々手に入らないぜ?ほら兄ちゃん見てってくれ


盗賊「おぉ…ミスリル製の武器なんか売ってんのか…」

学者「兄貴ダメっす!!高くて全然手が出んすよ」

盗賊「見るだけはタダだろうが…」グイ

店主「ハイハイお兄さん…お目が高いねぇ…好きなの触って良いよ?」

盗賊「ほーーーこれがミスリルの剣か…」スラーン

店主「その剣は護身用に最適だぁ…安くしとくよ?」

盗賊「確かに軽いな…だが俺にはちっと長い様だ」

店主「買ってってくれよぅ」

盗賊「あんま金持って無いんだ…悪いな」ノシ

学者「今の剣で金貨15枚…値切って10枚って所っすか…」

盗賊「くそう!!どっかに宝箱落ちて無ぇか?」

剣士「おぉぉぉ!!姉さんこれ見て!!琥珀だ琥珀!!」ダダ

女オーク「あら本当ね…何処かで採れるのね」

剣士「あぁでも高いなぁ…」ショボン

女オーク「良いのよ…もう体は平気だから…」

学者「ふふん…琥珀は樹液の化石…なるほどそういう事っすね…」フムフム

剣士「ゲスさん何ボーっとしてるのさ…弾丸も一杯売ってるよ?」

学者「ええ?何用の弾丸っすかね…」キョロ


ワイワイ ガヤガヤ

ほらこれは古代の遺物…ミステリーに興味のある人は必見だよぉ!!

キラーポッドの部品だぁ!!珍しい樹脂が回収出来るんだぞぉ…買う奴は居らんかぁ!!


--------------

『宿屋』


ガヤガヤ…


剣士「じゃぁ僕と姉さんは2人部屋の方に行くね…」

盗賊「俺らは大部屋だな…ちっと休んだら隣の酒場に行くからよ…そこで待ち合わせな?」

女ハンター「おい!私はあんたと一緒の部屋になるのか?」

盗賊「んあ?なんだお前…2人部屋が良いのか?」

女ハンター「違う!!なんであんたと同じ部屋なんだと言いたい」

盗賊「部屋が空いて無いんだからしょうがないだろう」

学者「まぁまぁラスさん!!どうせ兄貴は酒場に入り浸りで帰って来ないんで実質大部屋を一人で使ってるみたいなもんす」

女ハンター「フン!!鍵かける」

盗賊「ヌハハ好きにしろ…ロボは部屋に入れてやってくれな?」

ロボ「ピポポ…」クルクル

女ハンター「…」ジロ

学者「いやぁ…早速色々買い入れちゃって…荷物が邪魔っすね」

盗賊「おう!部屋に荷物置いてサッサと酒場行くぞ」

学者「そーっすね…肉!酒!」ダダ


--------------

『酒場』


チリンチリーン


マスター「いらっしゃいませ…お二人で?」

盗賊「あぁぁ後から連れが来るもんでよ…テーブルが良いんだ空いてるか?」

マスター「あいにくテーブルは一杯でして…空くまでの間カウンターでよろしければ…」

盗賊「おう!!どうせしばらく来やし無ぇ…カウンターで構わん」

マスター「…ではどうぞ」スス

盗賊「とりあえず酒と肉が欲しい」

マスター「何を飲まれますか?」

盗賊「そうだな…フィン・イッシュは米を使った酒が有っただろう…」

マスター「分かりました…」

盗賊「ボトルで頼む…これで足りるか?」チャリン

マスター「ハハお釣が出ますね…少々お待ちください」スタ

学者「はぁぁぁやっぱ兄貴は酒場が似合いやすね…どうっすか?さっき買った大麻吸いやす?」

盗賊「気が利くじゃ無ぇか…今度はお前の分も買ってるな?」

学者「へい!!火を点けやしょうか?」

盗賊「それぐらい自分でやる…」チッチ モクモク

学者「じゃぁ俺っちも…」チッチ モクモク

マスター「どうぞ…米酒をボトルでお持ちしました…肉料理はもう少しお待ちを…」ゴトリ

盗賊「ゲス!!早速飲むか?」キュポン トクトクトク

学者「米酒なんて飲んだ事無いっすねぇ…」スパーーー フゥゥゥゥ

盗賊「ワインよりかなりキツイ酒でな…飲み過ぎんなよ?」グビ プハァ

マスター「お二人は初めてで?」

盗賊「まぁな?さっき商船で到着したばかりよ」

マスター「見た所…バン・クーバからいらした様ですね」

盗賊「お?分かるか?」

マスター「恰好を見ればおおよそ…」

学者「兄貴ぃ…流行の恰好が多分違うんすね」

盗賊「そんな特徴的には思えんがな…どの辺が違うのよ?」


マスター「腰に掛けているベルトに投げナイフが仕込んであったり…上着にも何か仕込んでありますよね?」

盗賊「ほーん…投げナイフや防弾ベストがそんなに珍しいかね?」グビ

マスター「フィン・イッシュではそのような格好の方は殆ど居ないですよ」

盗賊「ナイフぶら下げてちゃ怖いってか?」

マスター「ハハすみません…私が酒場のマスターで無ければ声を掛けないと思います」タラリ

盗賊「何もしやし無ぇよ…」グビ ゴクゴク

学者「兄貴は人相悪いんで余計に怖いんすよ」

盗賊「まぁ戦場にどっぷりだと自然にこうなる訳よ…ほんでマスター…なんか面白い話は無いか?」

マスター「はぁ…面白いかどうか分かりませんが…この島の奥に古代遺跡が有るのは知って居ますかね?」

盗賊「んん?聞いた事が有るぐらいだ…20年前に全部探索されてんだろ?」

マスター「瓦礫に埋もれた区画があってですね…未探索の場所が見つかったんですよ」

盗賊「おおお!!そりゃ面白れぇ…何が有るのよ?」

マスター「奥の方に扉が在って先に進めないらしいです」

盗賊「…」---開かずの扉…俺は開け方を知ってる---

学者「魔術師が居て開けられないっておかしくないっすか?」

マスター「無理に開けると爆発するとかで封印指示が出てるみたいですね」

盗賊「おい!その場所教えてくれ」

マスター「ハハもう有名になってるので明るい内は人で一杯ですよ…地図も売ってるんです」

盗賊「その地図あるんか?」

マスター「観光名所を記した地図…金貨1枚ですが買いますか?」パサ

盗賊「くぁぁぁ高いが…畜生足元見やがって…」チャリン

マスター「これも酒場の売り上げなんですよ」

学者「もしかして…酒場に立ち寄った人全員に売ってたりしやせんか?」

マスター「商売なので…」ニコ

盗賊「上手い売り方しやがる…でもまぁ楽しみ買ったと思って行って見るぞ」

学者「まさか今晩行くって事は無いっすよね?」

盗賊「ちっと色々準備が必要だ…明日の夜だな…今晩はパーーーとやるんだ」

マスター「さぁ…肉料理の準備が出来た様なのでお持ちしますね」スタ


--------------

『1時間後』


ワイワイ ガヤガヤ

だはははは…でも悪いがあんま金持って無ぇんだ…また今度な?

もう!本当は一杯持ってるクセに…

マジで持って無いんだ…用がある時はまた声を掛けさせて貰うからよ


剣士「あ!!居た居た…」

盗賊「おぉ!!お前等来たか…食い物用意しといたぞ」

学者「リッカさんとミライ君用に各種木の実…キノコにパン…全部食って良いっすよ!!」

盗賊「ラスも来たな?お前用に肉頼んどいた…焼きたてだから食え!!」

女ハンター「なんか…かじった痕が有るんだけど…」

盗賊「毒味だ毒味!!気にすんな!!」

剣士「あれ?見た事無い木の実が有る…」

学者「それオリーブっす…酒にメッチャ合うんすよ」

剣士「へぇ?姉さん座ってよ!食べよう」

盗賊「ロボは俺の隣な?」グイ

ロボ「ピポポ…」ウィーン

盗賊「今日は特別に新しい魔石に交換してやる…食い物の代わりだ」カチャ

学者「あ!!それ電脳化デバイスの…」

盗賊「そうよ…交換して古い魔石は高く売りつける」カチャカチャ

学者「うは…セコイ稼ぎ方っすね」

盗賊「うるせぇ!!騙される方が悪いんだ」

学者「俺っちも替えの魔石欲しいんで買いますぜ?」

盗賊「なんだ身内に売るんじゃ儲けにならんのだが…まぁ良い!今晩の払いはお前な?」

学者「ええ!?そんだけで良いんすか?」

盗賊「文句あんのか?」ポイ

学者「ありーーーっす!!」パス

盗賊「どうよロボ?動きやすいか?」

ロボ「ピポポ…」ウィーン シャカシャカ

盗賊「ウハハハ動きやすそうで何よりだ…ホラお前等飲めぇ!!」


女ハンター「…」---あのロボットの中身が普通の女の人だなんて…---


---食べれない---

---話せない---

---どんなに苦痛なんだろう---

---どうしてこんなに---

---心が揺さぶられる---


盗賊「おい!何気取ってんだ!肉だ食え!!」グイ

女ハンター「むぁ!!…自分で食べられる!!」イラ

ロボ「ピポポ…」クルリン シャカシャカ

女ハンター「はむっ…」ガブ モグモグ


---生きてる事に罪悪感を感じる---

---なんだこの気持ち---


ロボ「ピピ…」プシュー シャカシャカ

女ハンター「…」---数少ない表現で必死に表現してるんだ---


ロボは…機械と同じ…

存在する為にエネルギーが必要…

だから機械はエネルギーを求める…

そのエネルギーを奪って行くのは私達人間…

それが戦争を起こしてる

機械は存続する為に戦って居る

もし機械に命を与える事が出来れば

きっと戦いは終わる…

ロボを見て…そう思えて来た

機械が欲しい物は…多分命だ

でもどうやって命を得る?


盗賊「おいおい何神妙な面してんのよ…お前も飲め」グイ

女ハンター「じ…自分で飲めるって!!」ゴク


盗賊「…」ジロ

女ハンター「何さ!?」

盗賊「ロボを見て感化されるのは分かるが…楽しむ時は楽しめ…それで良いんだ」

女ハンター「なっ…」---心を読まれてる---

女ハンター「そんなんじゃ…」

ロボ「ピピピ…」ピタ

盗賊「なぁ?ロボ!!こいつの顔に書いてるの分かるか?」

ロボ「ピポポ…」ウィーン グイ

女ハンター「分かった飲むから…」グビグビ

盗賊「よぉ~しロボ!!良くやった!!明日新しい羽織り物買ってやる」

ロボ「ピピピ…」ウィーン クルリン

盗賊「ヌハハハ…しかし全然酔いが回って来無ぇ!!マスター!!酒をもう一本出してくれぇ!!」


---------------

『翌日_宿屋』


ドンドンドン


学者「扉を開けて下せぇ…はぁぁなんで俺っちだけ廊下で寝てたんすかねぇ…」ウェップ

剣士「ゲスさんかぁ‥どうしたの」スタ

学者「よく覚えて無いんすが俺っちは廊下で寝ててっすねぇ…」

剣士「アハ…部屋に入れて貰えないんだ?」

学者「兄貴も何処に行ったか分からんす…部屋で寝てるかも知れんのですが…」

剣士「昨夜は遅くまで飲んでたんだ?」

学者「あんまり覚えて無いんすよ…」オエップ


ガチャリ ギーー


ロボ「ピ…」ウィーン

学者「あぁ!!やっと開けてくれやしたね?兄貴居やすか?」キョロ

ロボ「ピピ…」フリフリ

女ハンター「…」ギロ

学者「あれれ?ロボと2人だったんすか?」スタ

剣士「こっちの部屋広いねぇ…」キョロ

学者「兄貴…又どっか行っちまいやしたね…」

剣士「昨夜一緒に帰って来て無いの?」

学者「覚えて無いんすよ…」

剣士「なんか準備するって言ってたよね?今日は何処か行くんじゃ無かったっけ?」

学者「宝探しっすね…まぁ…多分夜になると思うんすが…」

女ハンター「宝さがし?聞いて居ない」

学者「古代遺跡の方で探索されてない場所が有るらしいんす…そこに行くつもりっすよ」

女ハンター「未探索の遺跡ならキラーポッドが居るかもしれない…」


学者「なもんで準備するって言ってたんすが…」

剣士「キラーポッド?何それ?」

学者「小型の機械っすよ…自律で動く古代の兵器っすね」

剣士「へぇ?弾丸を連射してくるっていう奴?」

学者「そうっすね…遭遇するとかなり危ないっす」

剣士「姉さんの鎧とか盾は船に置きっぱなしだよ」

学者「もしもに備えて用意した方が良いかも知れんっす」

女ハンター「遺跡を探索する装備なんか持って無い…私は狙撃専門だから…」

学者「近距離用の武器が無い感じっすか?」

剣士「あ!!デリンジャー有るよ?弾が20発くらいしか無いけど」

女ハンター「見せて…」

剣士「これ…」チャキリ

女ハンター「新式の2連デリンジャー45口径…単発火力はある」

学者「それで行けそうっすか?」

女ハンター「かなり近づかないと当たらない」

学者「俺っちは22口径バヨネッタ…4発づつ撃つタイプっす」

女ハンター「連射が効くけどそれも近距離用…デリンジャーよりも当てやすいけれどキラーポッド相手に火力が…」

剣士「なんか話聞いてると相当危ない感じ?」

学者「そうっすね…機械の数にもよるんすがね…」

剣士「宝探しもそう簡単じゃ無いんだぁ…しっかり準備しないと…」

女ハンター「準備って何をするつもり?」

剣士「鉄板が入ってるんだけど防弾ベストとかも作ってあるんだ…兜もね」

学者「それ大事っす…こないだの兄貴みたいな致命傷は避けられるんで…」

女ハンター「榴弾は持ってる?」

学者「それは持って居やす…戦いになった場合は榴弾がメインになると思いやす」

剣士「榴弾って何?」

学者「手投げの爆弾っすよ」

剣士「あぁ!!それなら手投げの油なら有る」

学者「それも用意しておいた方が良いっすね…退路作るときに使えやす」

剣士「おけおけ…ちょっと姉さんと一緒に準備してくるよ」タッタッタ

女ハンター「なんか…不安しか無いんだけれど…」

学者「まぁ良いじゃないっすか…こういう刺激無いと腕鈍っちまいやすぜ?」

女ハンター「…」---確かに---


---------------

『昼過ぎ』


ゴソゴソ ガチャガチャ


学者「兄貴遅いっすねぇ…」

剣士「姉さんどう?重すぎない?」

女オーク「大丈夫よ…」ガチャ

学者「鉄板で装備作ったのは良いすが…急所以外は金属繊維なんすね?」

剣士「うん…姉さんは動き回るタイプだからね…盾構えて見て?」

女オーク「こう?」スチャ

剣士「おけおけ…その盾なら多分弾丸も防げる」


スゥ…


学者「おわっ!!兄貴ぃ!!何処行ってたんすか!!」

盗賊「おう!!ちっと現場見に行ってた…なんだもう準備してんのか」

学者「兄貴が行くって言ってたからっすね…何を準備したら良いか分からんもんで…」

盗賊「ヌハハ戦場に行く様な装備してんな?」

女ハンター「未探索の遺跡はキラーポッドが出るでしょう!?」

盗賊「まぁ…俺はガチで戦うつもりなんか無かったんだがな?」

女ハンター「ちょっと!!どういう事?」

盗賊「今見ただろう?俺は姿を消せる訳よ…ちょいちょいっと欲しい物だけ取ってズラかる…そんなつもりだったんだが…」

剣士「えええ!?それは僕達が面白くない」

盗賊「分かった分かった…タダな?危ないと判断したら即撤収だ…イイな?」

女ハンター「そういう事ね…だったら良いわ」

盗賊「ラス!お前はライフル使わんのか?」

女ハンター「狙撃特化の単発式…持って行くだけ邪魔になる…だからコレよ!」スチャ

盗賊「なるほどデリンジャーか…ふむ…リッカもそこそこ耐えそうな装備してるか…」

剣士「僕はコレさ!!火炎玉!!」ジャーン

盗賊「ようし!!ほんじゃ日が落ちる前に現場行くぞ…」

学者「夜じゃ無いんすか?」

盗賊「扉を解錠するのに手間取りそうなんだ…早めに行きたい」

学者「じゃぁ行きやすかぁ…」

盗賊「ロボは悪いが留守番な?」

ロボ「ピポポ…」フリフリ


---------------

『林道』


スタスタ


剣士「人が街の方へ戻って行く…」キョロ

盗賊「暗くなる前にこの林道抜けたいんだろう…俺らにしてみりゃ人が掃けてやり易い」

剣士「この林道の向こうなんだね?」

盗賊「そうだ…探索済みの遺跡は更にその奥にある…俺らは瓦礫の下に有った遺跡に向かう」

剣士「なんかワクワクが止まらないよ」ブルブル

盗賊「ヌハハそうだろうそうだろう!!それで良いのよ」

学者「兄貴ぃ…この林道…結構な数の弾傷がついていやすぜ?」キョロ

盗賊「瓦礫の下からその遺跡が発見されたのは数年前だそうだ…そん時にキラーポッドがわんさか出て来たらしい」

学者「じゃぁこの林道は戦地跡って事っすね」

盗賊「キラーポッドは全部駆逐されたみたいだぜ?」

学者「道理で…露店で弾丸出回ってるのはそういう理由だったんすね」

盗賊「買ったんか?」

学者「勿論買いやしたよ…500発は有りやす」

盗賊「撃ち放題だな?」

学者「魔石が無いもんで先にエネルギー切れが来やすね…このバヨネッタはメッチャ魔石効率悪いんす」

盗賊「もう魔石が手に入らんからな…出来ればそいつを使わないでロボに使いたい」

学者「未探索の遺跡に魔石がどっさり…とかありゃ良いんすが…」

女ハンター「ウラン結晶なら残って居るかもしれない…」

盗賊「そういやこっちの国でウラン結晶手に入れたらどうなるんだ?」

学者「見つかると取り上げられるのがオチじゃ無いっすか?」

盗賊「じゃぁ隠しとかんとイカンな…てか今考えても仕方無えか…あるかどうかも分かん無ぇし」

剣士「あ…林道抜ける」スタ

盗賊「左側の崖ん所だ」

剣士「うん…まだ人が居るね?」

盗賊「人が掃けるまで見学だ…先行って見てても良いぞ」

剣士「おっけ!!姉さん行こう」グイ

女オーク「手は繋がなくても良いから…」スタ


--------------

『瓦礫の奥』


ザワザワ ヒソヒソ

そろそろ暗くなるから帰ろうか…

夜は林道でウルフが出るそうよ?


学者「こりゃ…見慣れた感じの遺跡っすね…」キョロ

女ハンター「ミネア・ポリスとほぼ一緒…壁に開いた穴からキラーポッドが出て来る仕組み…」

盗賊「規模は随分小さい様だ…古代のちょっとした要衝だったんだな」

学者「隅に積んでるガラクタは壊れたキラーポッドっすね…アレは展示してるんすかね?」

盗賊「さぁな?あんな物欲しいか?」

学者「もう見飽きたんで要らんっすよ」

盗賊「例の扉は一番奥だ…先にミライとリッカが行ってんな」

女ハンター「解錠出来る自信は?」

盗賊「五分五分…開け方は知ってるんだが実践した事が無い」

女ハンター「どうして解錠の方法を知って?」

盗賊「そら秘密よ」

学者「兄貴は鍵開けが一番得意なんす…期待して下せぇ」

女ハンター「フン!なんか…色々準備して損した気分」

盗賊「まぁ焦るな…どうせ宿屋に居ても暇だろ?」


剣士「アランさ~ん!!」シュタタ


盗賊「おう!!もう見飽きたか?」

剣士「あの扉って不思議だね?」

盗賊「何がよ?」

剣士「扉をノックしても奥から音が返って来ない」

盗賊「はぁ?」---コイツ---

剣士「だから奥に何も無いんだ…何の金属かも分からない」

盗賊「そら良く気付いたな…」

剣士「只の開かない扉だから見学終わったら直ぐに人が何処か行っちゃう」

盗賊「良く見て見ろ…ここの遺跡は全部その謎の金属で出来てんだぞ?」

剣士「ええ!?どうやって作ったんだろう…」

盗賊「大砲ぶっ放しても傷一つ付かん訳よ…つまりだ…大砲ぶっぱしてりゃ機械は全部掃討できる」

剣士「おぉぉ!!」

女ハンター「フフそんな状況に持ち込むまでが大変なんだけど…」

剣士「そっかぁ…そうやって機械と戦って来たんだね」

盗賊「ミライは戦場とは関係無いから知らんでも良いけどな」

剣士「あと2人…あの人達もそろそろ帰りそうだ」

盗賊「ようし…俺の出番だな?レーションでも食って待ってろ…」スタ


---------------

『開かずの扉』


ギリリ ギリ ブチッ


盗賊「くっそ又切れた…手ごたえはあんのにな…」

女ハンター「本当に解錠出来るの?」シラー

盗賊「うっせぇあっち行ってろ!!」

女ハンター「ふふん…」ニマー

盗賊「次は金属糸寄ってやって見るか…」ヨジヨジ

盗賊「シャフト潜らせるのはまぁ…慣れればどうって事無ぇ」スルスル

盗賊「滑るから2回潜らせるのが…これが中々上手くイカン」カチャ

盗賊「ようし…こっから勝負よ…シャフトを少しづつ回して…」ギリリ

盗賊「結構回したと思うんだよなぁ…」ギリリ


ヒュゥゥ…


盗賊「っしゃぁ!!」

女ハンター「え!?何…開いたの?」ダダ

盗賊「こっから2時間程待つ」

女ハンター「ス…スゴイ…空気が入って行く音」タジ

盗賊「お前解錠の方法見たな?誰にも教えんなよ?」

学者「兄貴ぃ!!焼きレーションなんかどうっすか?」

盗賊「レーションはそのまま食う物だろ…」

学者「少し香ばしくなって以外とイケるっす…」モグ

盗賊「なんだ静かだと思ったらランプの火で炙ってたんか…ヨコセ」

剣士「焼きどんぐりもあるよ…」カリ モグ

盗賊「とりあえずな?後2時間もすりゃ扉が開く…その前に一応作戦だ」ガブ モグモグ

剣士「うん…」

盗賊「リッカが先頭で盾構えろ…その後ろでミライが明かりを持て」

剣士「ふんふん…」

盗賊「メイン火力はゲスの榴弾だ…撃ち漏らして接近される様ならラスのデリンジャーで仕留めろ」

女ハンター「分かった…」

盗賊「撤退する時は通路に油撒いて火を点ける…キラーポッドは胴体が樹脂だから熱に弱い」

剣士「おっけー!!」


--------------

『2時間後』


ガコン ギーーー


盗賊「お!?開いた様だ…俺は斥候してくるから作戦通りゆっくり進め」

女オーク「私が先頭?」

盗賊「そうだ…もっと先で俺が斥候してるから大丈夫だ」

女オーク「分かったわ…」ゴクリ

盗賊「じゃぁ行って来る…」スゥ…

女ハンター「又…光学迷彩でも無いのにどうして…」

学者「兄貴は秘密をしゃべってはくれやせんよ…行きやすぜ?」スタ

剣士「姉さん!僕は直ぐ後ろに居るから…」

女オーク「離れないで…進むわよ」スタ


--------------



『古代遺跡の奥』


タッタッタ…


学者「あらら?兄貴が走って…」

盗賊「おい!!こりゃ当たりだ!!遺物がごっそりあるぞ」タッタッタ

女ハンター「キラーポッドは?」

盗賊「居無ぇ…お宝ごっそり持って帰れる!!」

女ハンター「ふぅぅ…拍子抜けだ…」

剣士「ハハ…大きな宝箱かぁ…」

盗賊「古代人の化石がある…そいつが銃を持ってるぞ?」

学者「化石?」

盗賊「生きたまんま真空にされたんだろう…ミイラ通り越して化石になってんだ」

女ハンター「探索しても?」

盗賊「おう!!手分けして持って帰るぞ…そんなに広い空間じゃ無い」

学者「俺っちは銃を回収してきやすね?」ダダ

盗賊「色々落ちてるから全部拾ってけ!」


--------------

『30分後』


ゴソゴソ ガチャガチャ


盗賊「んん?何か探してんのか?」

女ハンター「ウラン結晶が残って居ないかと思ってね…」

盗賊「そんな所に入ってんのか?」

女ハンター「こういう場所から回収して居るのを見た事がある…」カチャ

盗賊「ほ~ん…バラすとなると結構時間掛かりそうだ…」

学者「兄貴ぃ!!」タッタッタ

盗賊「どうだそっちは?銃を回収出来そうか?」

学者「ダメっすね…化石が抱えてる奴はビクとも動かんっす」

盗賊「マジか…床に転がってる奴だけか…」

学者「アレ…エネルギー無いと使えんっすよ?」

盗賊「なんだゴミだってか?」

学者「一応持って帰りやすが…多分使えんです」

盗賊「ぬぁぁぁ…まぁ売れば金になるだろ」

学者「兄貴は何か見つけやしたか?」

盗賊「謎の機械だな…持って帰ってから調べる」

学者「な~んか…ガラクタばっかりに気がしやすねぇ…」

盗賊「一個だけ即使えそうな物見つけた…コレだ」ピカー

学者「おぉ!!」

盗賊「これ一杯有んのよ…一つやる」ポイ

女ハンター「それ私にも頂戴…暗くて分解しにくかった…」

盗賊「使え使え!!」ポイ

学者「これエネルギー何っすかね?」ピカー

盗賊「知るか!!持ち帰ってから調べろ」

剣士「アランさ~ん!!」タッタッタ

盗賊「おう!!何か見つけたか?」

剣士「なんか引き出しっぽい場所に銃が入ってた…これデリンジャーじゃない?」スッ

学者「ちっと貸して下せぇ…」カチャ

剣士「どう?」

学者「おぉぉぉ…これ機動隊が使ってる実弾の銃っすね…こういうのが使えるっす」

剣士「まだ有るよ」

学者「何処っすか?」

剣士「こっち!!」シュタタ

盗賊「こりゃ大収穫だ…」


ブーン ピピ


盗賊「んん?何の音だ?」キョロ


女ハンター「もしかして復電しているかも知れない…」キョロ

盗賊「モタモタして居られないって事か?」

女ハンター「有った!!ウラン結晶残ってる!!」カチャ


ポトポトポト カシャカシャ


盗賊「!!?マズイ…キラーポッドが上から…」

女ハンター「もう少し待って…もう少しでウラン結晶外せる…エネルギー無いとキラーポッドは止まる筈」カチャカチャ

盗賊「リッカ!!ゲス!ミライ!!こっちに来い!!」

剣士「ええ!?」

女オーク「!!?」

盗賊「まだキラーポッドは俺らを敵と認知して居ない…集まれ!!」


ポトポトポト カシャカシャ

女オーク「こ…これって…」ドスドス

学者「兄貴…これヤバくないっすか?」ダダ

盗賊「いや…良く見ろ…まだ動き始めで混乱している様だ…リッカ!!盾を構えておけ…」タジ


キラーポッド「…」シャカシャカ


剣士「入り口が反対側だよ…動き出したら逃げ場が無い…」タジ

学者「マズイっすねぇ…どんどん上から落ちて来るじゃないっすか…」タジ

女ハンター「もう少し…もう少し…」カチャ


システム(リブート カンリョウ ツウシン セツゾク エラー メイン デンゲン モシツ ホジョ カイロ キドウ)


学者「ななな…なんか始まりやしたね…」ゴクリ

盗賊「おい!!早くウラン結晶ぶっこ抜け!」

女ハンター「やってる!!」カチャ

システム(ガード システム 80% ソンショウ セキガイ タンチ フクデン シンニュウシャ サクテキ ゲートナイ シンニュウシャ アリ システム ホゴ ユウセン)

キラーポッド「ピピ…」クルリ シャカシャカ

盗賊「くっそ動き出した!!」

女ハンター「10秒耐えてぇぇぇ!!」カチャカチャ


タタタタタタタターン!! カカーン カカカカーン!!


女オーク「私の陰に隠れて…」ガシ


キラーポッド「ピピ…」シャカシャカ

盗賊「散開して居やがる…伏せろ!!」

学者「うわわわわ…」ガバ


タタタタタタタターン!! カカカーン! ドーン!!


女オーク「くぅぅ…盾で防ぎ切れない…」

女ハンター「抜けたぁぁぁ!!」ゴトン


ブーン プチ…


キラーポッド「ピ…」ピタ ガシャガシャ

盗賊「と…止まった…」アゼン

学者「危機一髪…」ヘナヘナ

剣士「姉さん!!怪我は!?」ダダ

女オーク「大丈夫…かすり傷よ…」タラリ

盗賊「ラス!グッジョブだ」

女ハンター「フフ…これは特別危険手当貰わないと釣り合わない…」

盗賊「ここに有る物全部俺らの物だ…均等割りしてやる…持って帰るぞ」

学者「兄貴ぃ!!俺っち無傷のキラーポッド欲しいっす」

盗賊「ダッシュで荷車取って来る…明け方まで運べる物全部運ぶぞ」


--------------


『林道』


サワサワ


少女「母…良いのか?やらせておいて…」

中年の女「良いのよ…あれが神の手を持つ男の力…あなたも良く見て置きなさい」

少女「神の手…」

中年の女「…」---扉を開けて次に進める力---

中年の女「…」---心の扉まで開けてしまう---

中年の女「…」---だから彼の周りに人が集まる---

中年の女「…」---世界の扉をどうか開けて欲しい---


-------------

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-------------

『翌日_キャラック船』


ザブン ギシギシ


盗賊「さぁロボ!!お前にプレゼントだ」

ロボ「ピポポ…」ハテ?

学者「それ一番高価な奴じゃ無いっすか…」

盗賊「こんなん処分出来んだろ…ロボの腹の中に入れておくのが一番なんだよ」パカ ゴトリ

学者「どっかでウラン結晶から魔石にエネルギー転換する装置を手に入れんとですねぇ…」

盗賊「この島に売って無いか?」

学者「そんなん普通に売ってる訳無いじゃ無いっすか…」

女ハンター「もしかしたらキ・カイに残って居るかも…」

盗賊「今更戻る気無ぇな…」

学者「お金に換えて魔石買った方がよっぽど利用価値有るんすがねぇ…」

盗賊「宛てはある!!」

学者「おお!?マジっすか…」

盗賊「俺の古い知り合いに闇商人が居ると言っただろう?」

学者「おおおおおお!!闇で売るんすね…熱い!!」

盗賊「まぁ今すぐに換金はダメだ…てかお前は十分色々手に入れただろ」

学者「キラーポッド4台だけっすよ…」

盗賊「十分すぎる!!そんだけで弾丸2000発は入ってるだろ?」

学者「まぁそうなんすが…」

盗賊「まぁ心配すんな…ちゃんと元通り鍵掛けてるから弾が無くなったら又取りに戻りゃ良い」

学者「魔石が無いんすよねぇ…」


女ハンター「あんたも火薬使う銃に変えたら?」チャキリ

学者「連射効かんもんで制圧力がっすね…」

盗賊「ラス!どうよその銃は?」

女ハンター「25口径ベレッタ…機動隊が護身用で持ってるのと同じ」

盗賊「2連のデリンジャーよりは良さそうだな?」

女ハンター「そうね…私はコレ2つ頂く」チャキリ

盗賊「弾倉も沢山あったな?」

女ハンター「20個くらいかな?…予備の弾丸は400くらい?」

盗賊「護身用か…俺は2連のデリンジャーで良いか…」

女ハンター「それは大口径だから威力はピカイチ…でも反動が大きい…私じゃ怪我するかも」

盗賊「結局使える銃は2つだけか?」

学者「他の銃はエネルギー銃なんで使えんっすよ…売るならそれが良いっすね」

盗賊「さっさと売って金にするかぁ…」

学者「俺っちが捌いて来やしょうか?」

盗賊「お前はピンハネするからな…」ギロリ

学者「あらら…バレバレっすね」

女ハンター「じゃぁ私が売って来る?」

盗賊「その方が良い…ラシャニクアが売ってるとなりゃ分かる奴は買うだろ」

女ハンター「この島にどれだけ私を知って居る人が居るんだか…」

盗賊「そいつを捌くのはお前に任せる…ほんでゲス!!キラーポッドはあのままじゃマズイ…早くバラせ」

学者「へいへい…ミライ君も中身見たそうだったんで手伝って貰いやす」

盗賊「おーし!!ほんじゃ俺は謎の機械を色々試してみる」


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『昼頃_甲板』


ドヤドヤ


一つづつ丁寧に運べぇ…全部船底だ!!

エッホ エッホ!!


学者「兄貴!兄貴!!積み荷は金塊っすよ…」

盗賊「なぬ!!?」ガタリ ドタドタ

学者「この島に重装射撃砲運んで金塊に変えたんすね…」

盗賊「おいおい!!今なんてった?」

学者「兄貴は積荷知らんかったんすね…重装射撃砲の部品と大量の砲弾運んでたんすよ」

盗賊「マジか!!なるほど…それで船団組んで移動してた訳か…」

学者「気付くの遅いっすね…積み荷の横で寝てたじゃ無いっすか…」

盗賊「この島で重装射撃砲が必要な状況ってどんなよ?」

学者「どっか他の島で古代遺跡見つけたとかじゃ無いっすかね?」

盗賊「あのリカオンて女とんでも無ぇな…軍と繋がって無きゃ絶対手に入らん」

学者「そーっすね…ガチ幹部っすよ」

盗賊「物量的にどんだけ組み立てられそうだ?」

学者「んんん…この船に乗ってた分だけで10台くらいっすか…他の船も乗せてたとすると…」

盗賊「海上で重装射撃砲…やっぱどっか攻略しようとしてる」

学者「兄貴そう言うのに首突っ込まないんじゃ無かったでしたっけ?」

盗賊「まぁ気になるだけよ…電脳化した連中がどの程度暗躍してるかもな…」

学者「でもあんなごっつい金塊見た事無いっすね…」

盗賊「まさか俺の船に金塊が乗るとは…」アゼン


--------------

『船首楼_作業場』


カチャカチャ ビヨヨーン


剣士「よし!これで最後だ…」

学者「ミライ君どうっすか?部品取り出来やしたかね?」

剣士「うん…言われた通り全部外しておいた…ええと弾丸発射する部分が8個…通信する機械?これが4個」

学者「それは俺っちが分解するんで頂きやす…」カチャ

剣士「中に入ってた弾丸は邪魔だから持って行って欲しいなぁ」

学者「へいへい…木箱持ってくるんで待ってて下せぇ」

剣士「残りは全部貰って良いよね?」

学者「自由に使って良いっすよ…胴体の樹脂はかなり使えると思いやす」

剣士「バネ類も一杯あって嬉しいよ…こんなの中々作れないから」ボヨヨーン

学者「弾丸片づけたら食事しに宿屋へ戻りやしょう」

剣士「そうだね…昨夜も寝て無いからちょっと休みたいね」


--------------

『船尾楼』


ガチャリ バタン


盗賊「お!!?売れたか?」

女ハンター「全部売って金貨300枚…」

盗賊「おぉ!!やったな!?」

女ハンター「金塊をサルベージしてるだけ有って払いは良かった」

盗賊「誰が買ったんだ?」

女ハンター「さぁ?どうせバン・クーバで転売するに決まってる」

盗賊「5人で分けて一人60枚か…働きぶりを考えるとそうだな…お前100枚持って行け…俺らは50枚づつ分ける」

女ハンター「良いのかい?」

盗賊「どうせアブク銭だから文句無ぇよ!!皆に分けて来てくれ」

女ハンター「フフ…じゃぁ…10…20…30…40…50!」ジャラリ

盗賊「うほーーー!!よっしロボ!!エリクサー買いに行くぞ」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「お前等先に帰っててくれ…俺とロボは後で宿屋に戻る」

女ハンター「分かった…」

盗賊「ロボ!!行くぞ!来い」ダダ

ロボ「ピピ…」ウィーン

女ハンター「…」---エリクサー?---


---何でエリクサーなんか---


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『宿屋_大部屋』


ガチャリ バタン


盗賊「よう!戻ったぜ?」

学者「兄貴ぃ!!エリクサー買いに行ってたんすか?」

盗賊「おう…やっぱ高けぇな?エリクサー」

学者「いくらしやした?」

盗賊「一瓶金貨15枚だ…3つしか買えんかった」

学者「まぁ相場っすね…もう使ったんすか?」

盗賊「おう…これでしばらく大丈夫だ」

学者「俺っちも少し出しやすか?」

盗賊「良いんだ!これは俺の問題だから…まぁ直ぐに又稼げる」

女ハンター「なんだ?持病でもあるのか?」

盗賊「何でも無ぇ…ロボ!!来い!!ちっと寝るぞ」

ロボ「ピポポ…」ウィーン

盗賊「悪いがちっと横になるな?夜になったら飯食いに行こう」

学者「俺っちもちっと寝やす…」

女ハンター「…」---エリクサーの使い道---


---ロボ以外に考えにくい---

---エリクサーで命を繋いでる?---

---多分そうだ---

---生きている部分を生かすのに---

---エリクサーで繋いで居るんだ---

『夜_窓際』


グゥ スピー


盗賊「んががが…ぐぅ」zzz

学者「むにゃ…すぅ」zzz

ロボ「…」zzz

女ハンター「…」---食事には有り着けそうに無いか---

女ハンター「…」カリ モグ


ヒラヒラ…


女ハンター「ぁ…」---妖精の光---

女ハンター「そうか…月の光が弱いから…」

女ハンター「昔みたいに話しかけてよ…」


ヒラヒラ…


女ハンター「ごめんよ…大人になって声が聞こえなくなったんだ」

女ハンター「でもそこに居るのは分かる…遊びに来たんでしょう?」


クルクル…


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『翌日_街道』


ドタドタ バタバタ


盗賊「やべぇ!!盛大に寝過ごした…何で起こさ無ぇのよ!!」ドタドタ

学者「何回も起こしやしたよ…2度寝したのは兄貴の方っす」バタバタ

盗賊「ロボは何処行った?」キョロ

学者「ラスさんと一緒に先に露店の方行ってやす…リッカさんとミライ君も一緒っすね」

盗賊「ちぃぃリカオンより先に船乗って無ぇと何言われるか分かんねぇ…」ダダ

学者「だから何回も言ったじゃ無いっすか…それより何すか…寝言で妖精妖精言ってたんすが?」ダダダ

盗賊「知るか!!夢でも見てたんだろう」


シュタタ ピョン クルクル ドン!!


盗賊「だぁぁぁぁ!!」ゴロゴロ ズザザー

少女「お前ーーー!!」シュタ

盗賊「こんクソがきゃぁぁ!!」ムクリ

学者「あ…兄貴…大丈夫っすか…」タジ

少女「母揉め事…お前急げ…」

盗賊「ぬぁぁぁクソ…腹の傷が痛てぇ…」スリスリ

少女「おい聞いて居るか!!」

盗賊「なんだ…何処で揉め事だってんだよ!!あいつならなんとかするだろうが!痛てぇなクソがぁ…」

少女「威厳の問題だ…早く行け!!露店の方だ」

盗賊「はぁ?威厳?」

少女「そうだ!!母の威厳だ…お前も威厳に加われ」

盗賊「何意味の分かん無ぇ事を…」

学者「兄貴!!いやしたぜ?あそこ見て下せぇ…」ユビサシ

盗賊「んん?アレか…リカオンと…なんだあのど派手な女は?」

学者「行って見やしょうか…」

少女「威厳だと言っただろう…ヘボい恰好で行くな」

盗賊「おいゲス!!フード深く被れ…いつもの体で行くぞ」ファサ

学者「分かりやした…アレっすね?なんか絡まれてる系の奴っすね?」ファサ

盗賊「おら行くぞ!!」ダダ


---------------

『少し前_露店』


ザワザワ ヒソヒソ

おい!あのど派手な女…なんか絡んでるぞ?

取り巻きが武器に手を掛けてる…ヤバいなコレ


中年の女「オギン…どうしてあなたが此処に居るのよ…話が違うじゃない」

派手な女「予定が変わったの…例の物は私が引き取りに来た…これで理解した?」フフン

中年の女「それに何よその格好…あなた立場分かってるの?」

派手な女「見てわかるでしょう?アイリーンを演じてるの…海賊王の娘アイリーンをね?」フリフリ

中年の女「ちょっと!!目立ち過ぎよ!!あなた何してるか分かってるの!?」グイ


カチャ カチャ カチャ カチャ


手下共「あねさん!!」スチャ

中年の女「ちょっと何の真似?」タジ

派手な女「手を放して…じゃ無いと撃たれるわよ?」フフン

中年の女「勝手にこんな事して許されると思って居るの?」タジ

派手な女「勝手じゃ無いわ?マスターに確認してごらんなさいよ」

中年の女「父が…そんな…」アゼン

派手な女「それにしてもあなた…しばらく見ない内に随分老けたわね?もう引退したら?」

中年の女「何よあなたの方こそそのブヨブヨな体を曝け出して恥ずかしく無いの!?」

派手な女「あらあら?私はまだ現役よ?」フリフリ

中年の女「匂いで直ぐに分かるわ…このアバズレ!!」

派手な女「ウフフフ嫉妬ね?嫉妬…良い男なんか沢山居るの…あなたには田舎男がお似合いウフフフ」ニヤ

中年の女「くぅぅぅ…言わせておけば…」ギリリ


シュタタ シュタタ


少女「母ぁぁ!!」シュタ

中年の女「ミルク…出て来ないでって言ったでしょう」

派手な女「あら?小さな子供まで…心配しなくて良いのよ?私達はお友達だから…」フフン

盗賊「おい!!何事だこりゃ…」ズダダ

学者「ちょちょちょ…銃を持っとるじゃ無いっすか…」チャキリ

中年の女「ダメよ…それを見せないで」グイ

派手な女「お仲間も居た様ね?」フフン

中年の女「騒ぎになってしまうからここは私の方が引くわ…覚えてらっしゃい」ギロ

盗賊「おい誰だコイツ」ヒソ

中年の女「もう良いの…行くわよ…早く船に乗りなさい」グイ

少女「母ぁ…良いのか?…母の威厳が…」

中年の女「良いの…大人しくして」スタ

派手な女「ほら見た?負け犬が去っていくわ?あら失礼…負けウルフだったかしら?ウフフフ…」

手下共「あねさんに習え!!」ビシ


--------------

『露店』


ワイワイ ガヤガヤ

さっきの騒ぎは何だったんだ?

おい!!もしかしてアレが海賊王の娘かもしれんぞ?

どうせ又偽物だろう!!本物なら姉妹2人居るらしいぞ?


盗賊「いよーう!!ここに居たかぁ…探したぜ?」

剣士「アランさん!!見て見て!!ミスリルの剣買ったんだよぉ」スラーン

盗賊「おぉぉぉいくらしたのよ?」

剣士「値切って金貨10枚さ…姉さんにおねだりして買ってもらったんだ」

盗賊「良い買い物したなぁ…あぁぁクソ!!俺も欲しかったなぁ」

ロボ「ピポポ…」ウィーン クルクル

盗賊「おぉロボ!!機嫌良さそうだ」ナデナデ

女ハンター「アラン…さっきの騒ぎ…」

盗賊「あぁぁ見てたぞ?海賊王の娘じゃ無いかとか言われてるが…」

女ハンター「違う…あんな人見た事無い」

盗賊「やっぱりか…どうも偽物も多いらしいな?」

女オーク「…」チラリ

盗賊「んあ?リッカ!心配すんな…俺の知り合いは偽物掴まされるヘボじゃ無ぇ」

女オーク「それを聞いて安心したわ…」

盗賊「お前本物に会った事あんだろ?直ぐに見分け付くよな?」

女ハンター「ええ!?どういう事?」

盗賊「まぁ人にはそれぞれ事情がある…そういうのはゆっくり時間掛けて知り合え」

女ハンター「ふーん…」チラリ

女オーク「…」チラ

学者「兄貴ぃ!!早く船に戻らんと怒られやすぜ?」

盗賊「おぉそうだ!!急いで船に乗れ!!俺らが先に船乗って無いと何言われるか分かん無ぇ!」

剣士「そうだね?行こうか!!」グイ

女オーク「ミライ…手は繋がなくて良いから…」スタ


--------------

『キャラック船』


ザブン ギシギシ


盗賊「よっし!!まだアイツ来て無ぇ!!船出す準備するぞ!!」ダダ

学者「兄貴ぃ!!ちっと向こうの船見て下せぇ…ガレオン船っす」

盗賊「んん?」ダダ

学者「さっきのド派手な叔母ちゃんの船じゃ無いっすか?」

盗賊「うはぁぁ…船まで雰囲気合わせてんのか…本格的な偽物だな」

女ハンター「4本マストの二層甲板…大きさは幽霊船とほぼ同じ…でも違う…アレじゃない」

盗賊「ヌハハ分かるか?」

女ハンター「あんなに豪華じゃ無くて…もっとボロい…丁度この船みたいな継ぎはぎだらけの船」

盗賊「おい俺の船をバカにすんな…もうちっと金が入ったらしっかり修理する!」


スタスタ


戦士「やぁ諸君!!ゴールドラッシュ島は楽しんだかい?」スタ

盗賊「おぉリコル!!全然合わなかったな?何処行ってたのよ?」

戦士「ハハ妻に引きずりまわされてねぇ…やっと船で落ち着けると思ってホッとしている所だ」

盗賊「ヌハハそうかい…夫婦の営みは楽しんだか?」ヌコヌコ

戦士「聞くな…それより妻と娘を見なかったか?」

盗賊「さっきまで露店の方に居たんだが見失った…まぁ待ってりゃその内来るだろう」

戦士「そうか…妻が居ない内に話して置くが…」

盗賊「んん?何よ?」

戦士「随分気に入られた様だぞ?」

盗賊「俺か?」

戦士「全員だ…稀に見る逸材が揃って居るとな?」

盗賊「おい聞いたか!?こりゃ何か報酬出るかも知れんぞ?」

学者「おぉマジっすか…俺っち金塊が良いっすね」

戦士「おいおいあまり期待するな…船に積んで居る物も恐らく仕事上の物だ」

学者「ハハそらそうっすよね…」チッ

戦士「何か困りごとが有ったら相談して見ると良い…きっと助けになってくれるだろう」

盗賊「ほーう…そら心強い」

戦士「応援しているぞ?」バシン

盗賊「おわっととと…」ヨロ


---------------

『甲板』


ツカツカツカ…


中年の女「…」ギロ

盗賊「おう…待ってたぜ?」タジ

中年の女「コレ…」パサ

盗賊「んん?海図か?」

中年の女「予定変更よ…単独航海で行き先はフィン・イッシュ…最速で」

盗賊「なぬ!?」

中年の女「何度も言わせないで…サッサと出て」

盗賊「おいおいマジか…エライ物積んでんだが…」

中年の女「早く出せって言ってるの!!!!怒らせないで!!」ツカツカ

少女「母…粗ぶってる…言う事聞け」シュタタ

盗賊「お…おう…ミライ!!リッカ!!帆を開け!!碇上げるぞぉぉぉ!!」ガラガラ

学者「俺っちは舵っすか?」

盗賊「海図持って行ってロボと進路決めてくれ!!落ち着いたら俺も後で行く!!」

学者「分かりやした!!」ダダ


-------------


キィィィィィ何あのアバズレ!!

おいおいどうした?

何であの女がアイリーンの真似事なんかしてるのよ!! ビリビリビリ

落ち着け!!また洋服が台無しになる…

しかも私が調達した資金を勝手に使って!!どれだけ苦労したか分かって無い!! ビリビリビリビリ

だから洋服を破くのは止めろ…何が有った?落ち着いて話してみろ…

男にまたがるしか脳の無い女のクセにどうして!!キィィィィィ!! ビリビリビリ

分かった分かった…撫でてやるから…落ち着け…な?

フゥ…フゥ…


-------------


盗賊「…」ポカーン

学者「あは…」ポカーン

盗賊「…」チラ

女ハンター「…」フリフリ

盗賊「お…おら!!ちゃんと舵回せぇ…桟橋に激突すんぞ!!」

学者「へ…へい…」ガラガラ


-------------

-------------

-------------

『亀島』


ザブ~ン ユラ~


盗賊「左手に見えてるもっこりした島が亀島って言うらしい」

学者「亀の甲羅に似てるからっすかね?」

盗賊「さぁな?…ほんで正面に見えてるのが黄金郷をサルベージしてるって言うくそデカイ筏だ」

学者「まだ遠くて良く見えやせん…」

剣士「大きな船が一杯有るよ…上にも何か飛んでる」キョロ

学者「気球使ってるんすか…いやぁ魔石が勿体無い…」

盗賊「魔石使っても金塊サルベージすりゃ儲け出るんだろう」

学者「もっと近くまで行って良いっすかね?どうやってサルベージしてるか見て見たいっす…」

盗賊「これ以上はダメだ…色々沈んでて危ない様だ…ここで進路変更!」

学者「あぁぁ望遠鏡買ってくりゃ良かったっすよ…」グイ ガラガラ


女ハンター「おぉ!!何か魔法を使ってる…」ジーー


学者「ちっと俺っちにも望遠鏡覗かせて下せぇよ」

盗賊「又今度来りゃ良いだろ!今は進路安定させるのが先だ」

剣士「帆の角度変えるよぉぉぉ!!」グイグイ

盗賊「リッカもメインの帆角変えてくれぇ!!俺は後ろ行く!!」ダダ


女ハンター「スゴイ!!凍らせて浮かせるのか…」ジーー


学者「あぁぁ気になりやす…俺っちも見たいっす」ソワソワ

盗賊「ハハーン…氷に乗った金塊をデカい船を何隻も使って引っ張ってんだな?」グイグイ

剣士「なんかスケールが大きいね…船何隻あるんだろう…」

盗賊「パッと見20隻って所か?又いろんな形の船が有るもんだ…」

女ハンター「波!!大きい波来るよぉ!!」


ユラ~ グググググ ギシ


盗賊「うほーーー!!デカい氷がプカプカしてりゃ波も出来るか…」

女オーク「帆角3番で速度乗るみたいよ?」グイグイ ギュゥ

盗賊「だそうだ!!ミライ3番だ!!」グイグイ ギュゥ

剣士「おっけー!!」グイグイ ギュゥ

盗賊「ようし!!これで安定させるぞ!!」


---------------

『単独航海』


ユラ~リ グググググ


盗賊「リコル!先っちょの長い棒の名前は何て言うんだ?」

戦士「バウスプリット…あの三角帆はジブセイルと言ったか…」

盗賊「ちっとメモる…」カキカキ

戦士「ふむ…さすがにジブセイルまで張ると速度に乗るな?」

盗賊「だな?…だが前方が見えなくなるのがちょっとな…」

戦士「様にはなって居るぞ?ハハハ…」

戦士「しかしこの船は大きさの割に少人数で動かせるのが良いな」

盗賊「おう!最悪俺一人で何とか出来る…ただ海賊に出会ったらちっとマズい訳よ」

戦士「狙撃手が居るから問題無いだろう…ピンポイントで火薬狙ってドーン!!ってな?」

盗賊「そう上手く行くんかね…」

戦士「まぁその為に狙撃手を雇ている…私の妻は人を見る目は確かだぞ?」

盗賊「そうか…ところで機嫌直したか?」

戦士「不貞寝した…これで落ち着けば良いが…」

盗賊「かなりブチ切れてた様だな?…あのど派手な婆ぁと因縁でもあんだろうなぁ…」

戦士「あまり聞かされて居ないんだが…ええと名を何と言ったか…シルヴァ・ギンジャールだったか」

盗賊「知らんな…ギンジャール…ギンジャール…んん?有名な貴族じゃ無いのか?」

戦士「私はその辺詳しくない」

盗賊「キ・カイの王家に嫁いだ貴族の名が確かギンジャール家…多分その関係だ」

戦士「ほう?田舎で育ったから疎くてすまん」

盗賊「今ミネア・ポリスで王権掲げてんのもその派閥だった筈…王権つっても批判回避の道具になっちまってんだが」

戦士「まぁ…妻をあまり刺激しないでやってくれ…そのとばっちりは大体私に降りかかる」

盗賊「ウハハハそら大事じゃ無ぇか…とりあえず食い物で機嫌良くさせるだ」

戦士「名案だ…荷室にナッツとオリーブが有ったな?」

盗賊「いっぱい買って有るから好きに使え」

戦士「言葉に甘える…」スタ

盗賊「恐妻を持つと中々大変そうだ…」ニヤ


---------------

『荷室』


ゴソゴソ ガサガサ


学者「兄貴ぃ!ラスさん連れて来やしたぜ?」

女ハンター「何の用だ?私は見張りの仕事で忙しいんだ」

盗賊「遺跡で見つけた物の中にこんな物が有ったんだ…」コトン

女ハンター「んん?レンズ…」

盗賊「覗いてみろ」

女ハンター「まさかスコープか?」カチャ

盗賊「俺には倍率が高すぎてブレブレでよう…お前の使ってる望遠鏡と交換したいと思ってな」

女ハンター「どうやって使う?」カチャ

盗賊「使い方なんぞ自分で研究しろ…なんか色々付いてるだろ」

女ハンター「これは!!光学照準…スゴイ!ポインタまで付いてる」カチャ

盗賊「ヌハハやっぱりお前にピッタリの様だ…どうだ?お前の望遠鏡と交換しないか?」

女ハンター「ちょっと待って…一回使ってから考える…今の望遠鏡を無くすと精密射撃が出来ない」

盗賊「まぁ焦っては居ない…じっくり吟味しろ…それからゲス!お前にはコレだ」ポイ

学者「俺っちにも良い物があるんすね?…なんすかこの数字は?」カチャカチャ

盗賊「どうやら数字を計算する物の様だ…使って見ろ」

学者「おぉ!!これ四則演算出来るじゃ無いっすか…え?え?桁が…合ってるかどうか確認する方が大変に…」

盗賊「まだ有るぞ?暗視用のゴーグルに…多分これは口にくわえて使うガスマスクみたいな物だ…水中で呼吸が出来る」

学者「兄貴スゴイっす!!これ全部機動隊の兵装じゃ無いっすか?」

盗賊「多分な?奴らはこういうのを駆使して戦ってんだ…」

学者「貰って良いんすね?」ガサリ

盗賊「おう!!数が有るからラスも一つ持って行け!!」

学者「他の謎の機械は?」

盗賊「んんん…他の奴はどうやらエネルギーが無いと動かん様だ…イランな」

学者「分解して何か回収出来ないか見ても良いすかね?」

盗賊「おう好きにしろ!」

女ハンター「売った方が良いのでは?」

盗賊「売りたきゃ売って構わん…俺はめんどくせぇ」

女ハンター「フフ…あんた自分の取り分は?」

盗賊「俺が今欲しいのは望遠鏡だ!さっさとそのスコープってのを試して俺に望遠鏡よこしやがれ」

学者「ラスさん!!兄貴にあんまり損得勘定言っても意味無いっす…有り金全部使うタイプなんで無い方が良いんすよ」

盗賊「お前が金持ってりゃ俺の物と同じなのよ…俺の財布だ」

学者「ハハハじゃぁ兄貴!全部持って行きやすぜ?」

盗賊「もうそんなガラクタ見たく無ぇ!!さっさと片づけろ」

学者「へいへい…」ガチャガチャ


-------------

『船尾楼』


グビグビ プハァ…


中年の女「フゥ…少し落ち着いたわ…」ヒック

盗賊「ヌハハ中々良い飲みっぷりな様で?」

中年の女「あなた…ちょっと事情が変わったわ…今日から正式にあなた達を登用する」

盗賊「なぬ!?俺は何にも縛られんと言ったはずだが?」

中年の女「あなた達は海賊王の娘を探して居るのでしょう?ホムンクルスの事も…」

盗賊「ヌハハお見通しってか…さすが地獄耳だ」

中年の女「だったら私に従いなさい…私達も海賊王の娘を探して居るの」

盗賊「なんだ…条件は同じじゃ無ぇか」

中年の女「ホムンクルスの完全体…ホムコの居場所は分かるかもしれない」

盗賊「何ぃ!?」

中年の女「それが条件よ」

盗賊「かも知れないってどういう事よ?」

中年の女「ホムコが生きて居るのは情報筋から確認済み」

盗賊「俺はそのホムコって奴に会うのが目的じゃ無ぇ…ホムンクルスの体をロボに与えたい」

中年の女「それはホムコに聞けば済む事」

盗賊「…なるほど?それで俺達に何させる気よ?」

中年の女「私の手足になってくれれば良いの…ギルドからの支援は約束するわ」

学者「兄貴ぃ…これ悪い条件じゃ無さそうっすよ?」

盗賊「手足って何だよ!」

中年の女「…」パサ

盗賊「んん?そりゃニーナが盗んだ謎の書簡だな?それがどうした?」

中年の女「私はコレの解読が出来る人物に会う必要がある…つまり忙しいの」

盗賊「ほう?」

中年の女「その間あのアバズレ女を放置するのは看過できない」

盗賊「なんだ俺らにあの婆ぁをヤレってか?」

中年の女「ウフフフそうよ婆ぁよ!!もっと言って!!婆ぁって!!」

盗賊「ヌハハあんたも相当イカれてるな…」

中年の女「でもギルドのルールで殺すのはご法度…どうするかはこれから決める…あなた達は私に従えば良いの」

盗賊「まぁ…どうするかまだ決まって無いって事か」

中年の女「あの婆ぁが何を目的にアイリーンを演じてるのか調べるのも一つ…」

盗賊「なるほど?でもな?俺にもあんま時間が無い訳よ…さっさとそのホムコっていう奴に会いに行きてぇ」

中年の女「情報が必要でしょう?あなたの邪魔をする気は無いわ…ただ少し私の手足になって貰うだけ」

盗賊「情報が揃い次第俺は旅に出る…それで構わないなら協力しない事も無い」

中年の女「フフ成立ね…ミライとリッカという子にもちゃんと伝えて置くのよ?」

盗賊「あいつ等は目的が少し違う…探してるのは海賊王の娘だ」

中年の女「私達が探してるのも海賊王の娘よ?目的が一致してる」

盗賊「分かった…言っておく」


-------------

-------------


リコル!!こっちへ来なさい!!

なんだ又感情的になって居るのか?

あのアバズレはあなたの事を田舎男と言ったのよ!!

そんな事気にしなくても良い

悔しくて眠れないわ!!あなたはこれからもっと表に出て!!

今のままで良いじゃ無いか…ほら… ナデナデ

キィィィィィ ビリビリビリ


-------------


盗賊「…」ポカーン

学者「あは…」ポカーン

盗賊「やっぱイカれてんな…」アゼン

学者「ダメっす聞こえやす」ヒソ


ユラ~リ グググググ…


--------------

『夜_デッキ』


ザブ~ン ユラ~リ


学者「おぉぉぉ!!この暗視用ゴーグルメッチャ見えるじゃないっすか…」

盗賊「昼間は装着すんなよ?」


女ハンター「アラン!!これを使って見て…」ポイ


盗賊「おわっと…お前海に落としちまうだろうが」パス

女ハンター「要らなくなった…使って良いよ」

盗賊「おっしゃ!!望遠鏡ゲットだ」

女ハンター「暗視用ゴーグルと相性が良い…覗いてみて」

盗賊「どれどれ…」ジーー

盗賊「ほーーーう!!こりゃ良く見える!!」

学者「兄貴!!俺っちにも見せて下せぇ」

盗賊「おう!!落とすなよ?」パス

学者「こりゃ夜の見張りに便利っすねぇ…」ジーーー

盗賊「ラス!そっちのスコープって奴はどうだ?」

女ハンター「最高!!くっきり見える…照準合ってるか試したいよ」

盗賊「何メートル先狙えるんだ?」

女ハンター「ライフルの精度は変わらないから…船の上だと600メートルって所…地上だと1キロ行かないくらい」

盗賊「大砲の射程圏外で撃てるのはデカイな」

女ハンター「このスコープ…倍率変えられるの知ってた?」

盗賊「いんや…」

女ハンター「倍率変えても明るさ変わらないし歪まない…良く見える」

盗賊「ヌハハそら結構なこった…俺はこの望遠鏡で満足よ」


スゥゥゥ…


学者「兄貴…今船の下を何か横切りやした…」タジ

女ハンター「え!!?」チャキ

盗賊「おいおいおい…まさかクラーケンじゃ無いだろうな?」


女ハンター「本当だ!!何か居る…早い!!」ドタドタ


ザバァァァァ ドップーーーン


女ハンター「うわっ!!」ヨロ ガシ

学者「あらららら…」ゴロゴロ ドガ

盗賊「な…何だ今の…」タジ


ガチャリ ドタドタ


戦士「こ…この揺れは何だ!?何が起きた!!?」

盗賊「海から何か長い物が跳ねた…」

中年の女「何事!!」シュタタ

女ハンター「又来る…」チャキリ

中年の女「慌てないで…今はシーサーペントが居る海域…この船なら上がって来れないわ」

盗賊「今跳ねたぞ!?」


ザバァァァァ ドップーーーン


女ハンター「くぅぅ早くて狙えない…」ガシ

中年の女「大きい…」タジ

盗賊「何で船に当たらないで跳ねてんのよ!?」

中年の女「狙いは肉!!船じゃない!!こちらを確認したの!!」シュタタ


ダダダ シュタ!!


剣士「姉さんこの感じ…ヘビだ」キョロ

女オーク「シーサーペントよ…」ドスドス

盗賊「おいお前等!!出て来るな!!近接じゃ何も出来ん!!」

女ハンター「又来る!!」チャキリ スチャ

剣士「よーーし!!シーサーペントは音に弱い!!」ポイ ポチャ

盗賊「何する気よ!!?爆弾?」


ドーン ブクブク


女ハンター「ええ!?水中で爆発?」

剣士「こっちを見失ってる!!浮き上がったら撃って!!」ポイ ポチャ


ドーン ブクブク プカーーー


剣士「今ぁぁ!!」

女ハンター「見えた…」カチ ダーン!!


女ハンター「当たった!!」

学者「血が見えるっす…」ダダダ チャキリ

剣士「ゲスさんの銃じゃ意味無い!!」

盗賊「このデリンジャーを使う時が来たか…」チャキリ

剣士「あいつ多分気絶してる…動き出す前に…」

盗賊「分かってらぁ…」ダーン! ダーン!

剣士「よし!!…」


ジャブジャブ バシャバシャ


女ハンター「他の奴が共食いを始めてる…」

剣士「ふぅぅ…これで大丈夫」

女オーク「ミライ…いつも通りね?」

盗賊「こりゃたまげた…シーサーペント相手は初めてじゃ無いってか?」

剣士「こんな大きいのは初めてだよ…小さいのは良く姉さんと狩りに行ったのさ…目が売れるからね」

学者「俺っち…なんか空気っすね…」

中年の女「フゥ…シーサーペントが居る海域はもう少し続くから警戒するのよ」

盗賊「へいへい…」スタ

学者「ミライ君!!今使った爆弾はどうしたんすか?なんで水ポチャで爆発するんすか?」ダダ

剣士「フフフフ秘密知りたい?これ雨の日用にと思って作っておいたのさ…導線が樹脂でコーティングされてるんだよ」

学者「へぇぇ?キラーポッドの樹脂っすね?」

剣士「そうそう!!スゴイ便利なんだあの樹脂…」


中年の女「…」---あの子やっぱり…---

中年の女「…」---アイリーンに行動が似てる---

中年の女「…」---でも年齢が合わない---

中年の女「…」---若すぎる---


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『翌日』


ザブ~ン ユラ~


剣士「アランさ~ん!!」シュタタ

盗賊「んあ?なんだぁ?」ムクリ

剣士「昨夜使ったデリンジャーの弾…薬莢は残ってる?」

盗賊「おぉ…弾込め直すの忘れてたわ」カチャ ポトン

剣士「あーおけおけ!!それ持って行くね」

盗賊「何に使うのよ?」

剣士「薬莢に火薬詰めて再利用するのさ」

盗賊「弾はどうすんだ?」

剣士「ゲスさんが一杯鉛の弾持ってるじゃない…鉛の加工なんか簡単なんだよ」

盗賊「おぉ!!ほんじゃ撃ち放題だな」

剣士「無駄に撃つのは止めてよ…」

盗賊「弾丸作れるならラスの分も作ってやれ」

剣士「もう作った…なんか色々注文されてお金貰っちゃったさ」

盗賊「ウハハそりゃ良い商売になったな?」

剣士「ミスリルの剣の分稼がないとね」

盗賊「お前ん所は姉と合わせて金貨100枚以上有るだろう…ケチケチしないで使っちまえ!」

剣士「そうだね!!使い道考えなきゃ…じゃぁ!!薬莢持って行くね!!」シュタタ


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『デッキ』


ユラ~~~ グググググ


戦士「癒されるな…船でのんびり風に当たるのは…」ナデナデ

中年の女「もっと右…」グター

少女「父!!私も撫でろ…」

戦士「順番だ…」

中年の女「ミルクは私が…」ナデナデ


ダーン!


戦士「んん?」キョロ

中年の女「狙撃は任せて置いて良いわ…リコル続けて」グター

戦士「こんなくつろいでいる姿見せびらかして良いのか?」ナデナデ

中年の女「何?恥ずかしいの?」

戦士「いやそういう訳では無いが…お前の威厳を心配している」

少女「母…威厳無い」

中年の女「身内に対してそんな事気にして居ないわ…」

戦士「身内か…」

中年の女「あのアバズレは別…」ギリリ

戦士「おいおい…もう考えるな」ナデナデ


ダーン! チュドーン!


戦士「お?火薬に当てたか…」

中年の女「この匂い…豪族崩れの者共ね…」クンクン


戦士「見もしないで分かるか…」

中年の女「懲りない連中…どうせスクーナーでしょう?」

戦士「いや…スループ船だな」キョロ

中年の女「え!!?スループ船に火薬!?」スック

戦士「どうした?」

中年の女「突撃するつもりで…他に旗船が何処かに居る筈…」キョロ

少女「母…雨来る」

中年の女「どうして撃沈を狙って居るの?只の海賊じゃないの?」

戦士「これはマズイ感じか?」キョロ

中年の女「…」---この船は囮…沈没させる予定だった---

中年の女「…」---その情報を知って居る者にとって---

中年の女「…」---作戦はまだ続いてる---

中年の女「…」---しまった!作戦の変更を伝えきれてない---

中年の女「…」---単独航海になった時を見て襲って来てる---

中年の女「しまった!!これは私のミス!!ロストノーズに要らない情報を流してしまった…」シュタ

戦士「何ぃ?」

中年の女「この船を沈める計画を流してしまったの…彼らが海にも影響力を持ってるのを知らなかった…」

戦士「ロストノーズはこの船を沈めても利が無いだろう?」

中年の女「いえ…機動隊に対して大義が有る…功績として評価される」

戦士「どうやら戦うしかない様だ…アランに伝えて来る」ダダ


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『甲板』


ポツポツ ポツ


盗賊「…道理でおかしいと思ったぜ…1枚帆のスループ船が樽だけ積んで来てるからな」ドタドタ

戦士「他にも居る筈だ…気を抜くな!」

盗賊「リコルとリカオンはクロスボウ持ってデッキで待機してくれ…火矢の準備も頼む」

戦士「分かった!!」ダダ

盗賊「ラス!!聞いたか!?どうやらお前の狙撃頼りになりそうだ!!」


ダーン!


女ハンター「一発じゃ仕留められないから弾丸足りなくなる!!ミライに作らせて!!」ガチャコン

盗賊「分かった!!ミライ!!薬莢回収して直ぐに作ってくれぇ!!」

剣士「わ…分かった…」シュタタ

女ハンター「ちぃぃ雨で視界が悪くなって来た…」ダーン! チュドーン!

学者「逆側にもスループ船見えるっす!!」

盗賊「ゲスはそのまま見張りのサポート続けろ!!」

学者「へーい!!」ダダ

女ハンター「あのスループ船だけは取りつかせてはいけない…」ダーン!

女ハンター「外した…クソ!」ガチャコン

盗賊「スループ船で突撃させるってどういう根性して居やがる…決死の覚悟無いと出来ん技だ」

学者「兄貴ぃ!!救助のスループ船も動いてるっぽいっす…後方でチョロチョロしていやす」

盗賊「そういう作戦か…」


ダーン!


女ハンター「又外した…思ったより早い…」ガチャコン

盗賊「距離保って旋回してんな?…一気に来るつもりだ」


女ハンター「分かってる!!船の揺れが無ければ…くぅぅ」ダーン!

学者「マズイっす!マズイっす!!正面からアレ…多分ガレオン船っす」

盗賊「くっそ!!交差で一気に大砲撃ってくんな…ロボ!!左に旋回!!リッカは帆角7番に変えろ!!」ダダ

女オーク「分かった!!」ダダダ

盗賊「リコル!!後ろの帆を7番に張り替えてくれぇ!!」グイグイ

戦士「こ…これは忙しい…」グイグイ

女ハンター「ハァハァ…樽付きスループ船2つとガレオン船…後は!?」ダーン!

女ハンター「又外した…」ガチャコン

盗賊「焦るな!!もっと寄せてからでも良い!!」グイグイ ギュゥ


ドーン! ドーン! ドーン! ドーン!


盗賊「うぉ!!大砲撃って来やがった…」タジ

学者「見えやした!!一層式のガレオン船で甲板に旧式の大砲が8門!!火薬が狙えやす!!」

女ハンター「狙いをガレオン船に変える!!スループ船は撃ちまくって何とかして!!」ダーン!

学者「俺っちが?」

女ハンター「あんたしか居ないでしょ!!」ガチャコン!

盗賊「大丈夫だ!船操作してる奴が落ちれば爆発しない…スループ船には1人しか乗って無ぇ」ダダ

女ハンター「よし!!ガレオン船は回頭遅れてる…今がチャンス!」ダーン!

女ハンター「当たった!!…でも爆発しない…くそう!!」ガチャコン

盗賊「まだチャンスある!!焦らないで良い!!」

学者「スループ船来やしたぜ?」タタタターン! タタタターン!

女オーク「行けぇ!!」ダダダ ポイポイ


ドン!ドーン!! ザバーーーー


学者「おおおお!!火薬が海水被って…」


盗賊「その手が有ったか…リッカ!!俺にもヨコセ!!」ダダ

戦士「左側からスクーナー!!あれはぶつける気だ!!」

盗賊「くっそまだ他の船が居るか…ロボ!右に旋回!!帆角3番に戻せぇ!!」ダダ

女ハンター「当たれぇぇぇ!!」ダーン! チュドーン

学者「おぉ!!ガレオン船が…」

女ハンター「次スクーナー!!」

戦士「おい!!スクーナー進路変えたぞ!!ガレオン船の救助に向かってる様だ…」

女ハンター「残念賞…戦場はそんなに甘く無い」ガチャコン

盗賊「おい待て!!撃つな!!もう追って来ん…」

女ハンター「くっ…」プルプル

盗賊「落ち着け…機械相手じゃない…あそこに命がある」

女ハンター「い…命…いつの間に私は命を奪う側に…震えが…」プルプル

盗賊「リコル!!後方の見張り頼む!!

戦士「おう!!」ダダ

盗賊「ゲス!!他に近付く船が居ないか良く見てろぉ!!」

学者「へ~い!!」ダダ

盗賊「ようし…この感じでなんとか切り抜けられそうだ…」

女ハンター「…」ボーゼン プルプル


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『船尾楼』


ピチョン ポタ


学者「いやぁビショビショになりやしたねぇ…」

盗賊「船首の方で湯を沸かしてる…雨が降ると湯に浸かれる楽しみが有るのはなかなか良いな」

学者「リッカさんはもう浸かってるみたいっすね」

盗賊「次は誰だ?」チラリ

女ハンター「…」プルプル

盗賊「ラス!湯にでも浸かって落ち着いて来い」

女ハンター「何人…死んだ…のかな?」プルプル

盗賊「直撃した訳じゃ無いんだろ?なんとかなってる…気にすんな」

女ハンター「ガレオン船に…女の子が乗ってるのが見えた…見張り台に上がってた」プルプル

盗賊「ほーん…」

女ハンター「その…真下の樽を…撃ち抜いた」ガクガク

盗賊「まぁ…こう言っちゃなんだが…やらなきゃやられる…そういう世界なんだ」

女ハンター「分かってたさ…でも機械の様に動いてる自分に気付いた時…これじゃダメだって…ぅぅぅ」ポロポロ

盗賊「お前のお陰で俺らは助かった…そう自分を責めるな」

女ハンター「くぅぅ…湯に浸かって来る…」スック ポタポタ

盗賊「おう!!ゆっくり入って来い」

女ハンター「…」スック ガチャリ バタン

学者「なんか…大分堪えてるみたいっすね?」

盗賊「まぁ仕方無ぇわな?被害者ゼロって事は無いだろうからよ…中には善良な奴も居たかもしれん」

学者「やっぱり…人間同士戦う感じになって行っちまうんすね…」

盗賊「それが機械の狙いなんだろう…ここ数年見てりゃ明らかだ」


ツカツカツカ…


中年の女「話に割り込むわ…それを阻止するのが…コレよ」パサ


盗賊「例の書簡か…一体何なんだソレ?」

中年の女「これと同じ様な物はこれから行く大陸の方でもいくつか有るの」

盗賊「ほう?」

中年の女「機械だけが翻訳できる情報…今までの調べでアダムという集中端末が何処かにある事が分かってる」

盗賊「集中端末?なんだそりゃ?」

中年の女「人間で言う脳の部分ね…それがすべての機械をコントロールしてる」

盗賊「じゃぁそのアダムってのをぶっ壊せば機械は只の鉄クズって事か?」

中年の女「そうね…でもその場所が分からない」

盗賊「ほんじゃその場所ってのがその書簡で分かるってのか?」

中年の女「それを期待してる…そしてこれを翻訳出来るのは…ある科学者…今シン・リーンで厳重に保護されてる」


今あなた達が来た大陸はアメ・リカ大陸

そしてこれから行く大陸はユー・ラシア大陸と言うの

両者は海で隔てられて居て機械達が通信する手段は20年前に失われて今はもう無い…

その代わりの通信の手段として現れたのがこの白黒の書簡…これを使って情報のやり取りをしている

その主な内容はエネルギーの状態と電送する場所に関する情報

恐らく電脳化された人間を使って所定の場所にエネルギーを移動させようとして居る


盗賊「なるほど…その場所が知りたい訳か…」

中年の女「ユー・ラシア大陸の人達は電脳化された人間への危機感が無いから好き勝手やられているわ…」

盗賊「やっぱそうか…電脳化した奴が何処に潜んでるか分からんのだな…」


中年の女「だから諜報機関として盗賊ギルドが国から支援を受けてるのよ」

盗賊「そんな情報を新入りの俺達に話す目的は何だ?」

中年の女「危機感を持って貰わないと困る…一角が崩れると一気に崩壊するから…」

盗賊「ほーん…話に割入った割に関係無い話しになったんだが…」

中年の女「人間同士争う事になって居るのは機械達の狙いでもあると言ったでしょう?それは私も感じている所…」

盗賊「感じる?どういう事よ…」

中年の女「無意識で機械に操作されている可能性…」

盗賊「俺は機械じゃ無いぞ?この船にも電脳化した奴は乗って居ない…」

中年の女「分かってるわ…でもこの言葉を覚えて置いて…」

盗賊「何よ?」

中年の女「アナログハック…」

盗賊「なんだそりゃ?意味が分からん…」

学者「あ…兄貴ぃ…こっちを見て下せぇ」ユビサシ

盗賊「んん?なんだ?なんかあんのか?」キョロ

学者「兄貴今…俺っちの指差した方向見やしたよね?」

盗賊「そら指差してたら見るだろう」

学者「それがアナログハックっす…俺っちが兄貴の行動を誘導したんす…」

盗賊「なんだとう!?」

学者「どうやら…なんか色々誘導されて居る可能性は否めんっすねぇ…」


ユラ~リ グググググ


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『樽湯』


ザザー モクモク


女ハンター「!?誰だ?…今出る…待って」ザバー

盗賊「あぁ悪い…遅いから心配で見に来ただけだ…まだ入って居て良いぞ」

女ハンター「見たな?」チャプ

盗賊「悪い…見るつもりは無かった…」タジ

女ハンター「あんたも私を抱きたいのか?良いぞ…ここでシテも」

盗賊「そんな気は無ぇ…その鞭打ち傷…随分ひでぇ目に合った様だな」

女ハンター「奴隷の女はみんなこんなもんさ…あの船の女の子も多分…」

盗賊「そうか…悪い事を聞いた…俺は雨で体洗うからお前はゆっくりしてろ」

女ハンター「もう1000人以上…いや数え切れないぐらいの男とヤッた…汚いと思うか?」

盗賊「なんでそんな事を聞く…なんて言って欲しいのよ」

女ハンター「さぁ?…もう分からない…慰みを聞いて何か変化するとも思えない」

盗賊「ふむ…一つ確かな事があるぞ」

女ハンター「なにさ?」

盗賊「お前は…お前一人しか居ない」

女ハンター「…」

盗賊「自分を大事にしろ…きっと光に手が届く…じゃぁな」ノシ

女ハンター「…」ブワッ ポロポロ


ザザーー モクモク


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『甲板』


バタバタ ゲシゲシ


学者「あ…兄貴…裸で何やってんすか?虫の真似か何かっすか?」

盗賊「背中の傷がかゆくてよ…手が届か無ぇから甲板の板に擦ってんだ…」バタバタ

学者「ブ…ブラシで擦りやしょうか?」

盗賊「おう!名案だ!!早くやってくれぇ!!」

学者「あららら…俺っちが縫った跡が傷だらけじゃ無いっすか…」ゴシゴシ

盗賊「おぉぉソコだソコ…おぉぉぉぉ」ビクビク

学者「すんません忘れて居やした…痒いのは糸抜いて無いからっす…」

盗賊「ほんじゃ早く抜けぇバーロー!!」

学者「へい…」スルスル

盗賊「おぉぉソレだソレ…うはぁぁぁ…又痒くなって来た!!擦ってくれ!!」モゾモゾ

学者「ブラシで大丈夫っすか?」

盗賊「良いんだ!!ガシガシ行ってくれ!!」

学者「へい…」ゴシゴシ

盗賊「はぁぁぁ気持ちぃぃぃ…おぉぉスッキリしたぜぇ!!」プラーン カチカチ

学者「兄貴…姉御の牙をずっと首にぶら下げてるんすね…」

盗賊「お?拝んでくか?2本揃ってんぞ?」カチカチ

学者「姉御とずっと一緒っスか…」

盗賊「まぁな?俺の血の中に姉御が住んでると気付いた…この丈夫な体は多分…姉御のお陰よ」

学者「そーっすね…酒が強い理由も大体分かりやした」

盗賊「おぉ酒だ!!今飲みたかった所だ…酒さえありゃ俺は生きて行けるのよ」スック

学者「ウハハ…」---まんざら嘘でも無さそうっすね---


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『翌日_作戦会議』


アーデモナイ コーデモナイ…


盗賊「…この船の最大の強みはたった3人で…いやロボ合わせて4人か…で自由に方向転換出来る回頭性だ」

学者「ふむふむ…」ウンウン

盗賊「これでほとんどのケースで相手の船を後方に回らせる事が出来る」

学者「ガレオン船と当たったのがまさにソレっすね」

盗賊「ほんで課題が…大きく揺れ動く見張り台からの狙撃が中々当たらん事だ…だからラス!!」

女ハンター「!!?」ピク

盗賊「お前の定位置は船尾楼の上のデッキ…もう一人で見張り台に上がるのは止めろ」

女ハンター「あそこは私の定位置…」

盗賊「お前一人で全部抱え込ませる訳にもイカン…すぐ隣に俺らが居れば色々分担も出来る」

女ハンター「…」

盗賊「てな訳でミライ!!新しい武器の説明を頼む」

剣士「おっけー!!」

女ハンター「新しい武器?」

剣士「ラスさんのライフルの弾丸…ちょっと改造したんだ」

女ハンター「改造なんか頼んで無い…勝手な事をするな」

剣士「焼夷弾さ…殺傷力はあまり無いけれど…着弾すると油に火がついて発火する」

盗賊「小さな樽を狙わんでも狙いやすい帆に着火すれば良いって事だ」

女ハンター「帆なんか簡単に突き抜けてしまう」

剣士「あぁ…正確に言うと着弾する前に破裂して火の玉に変わる」

女ハンター「なるほど…レンジの長い火矢という事ね」

剣士「何種類か作ったから試し撃ちしてどれが良いか確認して欲しい」

女ハンター「分かった…」

盗賊「撃つのはデッキからだぞ?それも訓練の内だ」

女ハンター「フン!!」スタスタ

学者「ミライ君…俺っちのバヨネッタも何か工夫無いっすかねぇ?…な~んか此処ん所空気なんすが…」

剣士「いやぁ…それは完成されてるって言うか…工夫され尽くされてるんだよね」

学者「残念っす…トホホ」


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『デッキ』


ダーン! ボボボボボ


女ハンター「ふむ…なるほど…」

剣士「どう?」

女ハンター「弾丸の重さを通常の物と揃えたい…だから焼夷弾は少し長い奴が良い様だ」

剣士「おけおけ!!中抜きして油入れてるから軽くなっちゃってるんだね…よーし!一番長い奴か」

女ハンター「焼夷弾が使えるとなると…クロスボウの火矢が無駄になる」

剣士「そうでも無いよ?ボルトに爆弾引っかければ遠くに飛ばせられる…そんなに精度も要らないし」

女ハンター「そういう使い方に…フフ君は良く考える」

剣士「なんかさ?初めから知ってたみたいに色々作れる…なんか不思議なんだ」

女ハンター「閃きっていう奴ね…」

剣士「閃きかぁ…なんだろうなぁ…手が自然に動く」

女ハンター「自然に…そう…自然に何も考えないで…次の敵を狙ってた」トーイメ

剣士「それも閃き?」

女ハンター「何か違う…まるで誰かに操られているみたいに…」

剣士「あーそうそう!!操られてるみたいに自然に手が動く…これ何だろう?」

女ハンター「…」---操られてる---


---なんだろう?---

---妙に引っかかる---

『数日後_フィン・イッシュ近海』


ザブ~ン ユラ~リ


盗賊「もうすぐ港が見えて来る筈なんだが…どうした?全員集めて…」

中年の女「到着する前にフィン・イッシュの事を少し教えておこうと思って…」

盗賊「アレか?剣と魔法の世界だから注意しろって話か?」

中年の女「それも有るわ…それより目立った行動は避けて欲しいと言う事…その為の知識よ」

盗賊「…だそうだ…特にゲスは良く聞いとけ!」

中年の女「じゃぁフィン・イッシュの話から…」


フィン・イッシュという国は領地に生える植物や作物全部…所有者は女王なの

畑で収穫された物は100%国に納めなければならない

その代わり生産者…農民たちは出来高に応じて有り余る金貨を貰える

だから最も裕福なのは畑を耕す農民なの

そのお金を使って装備を買うも良し…食べ物を買うも良し

そのお陰で民兵の質が何処国よりも異常に高いし人数も多い…

でも中にはお金を溜めようとする人が出て来る

いくらかまとまったお金が溜まるとある日突然泥棒に全部持って行かれる

それを皆が知って居るから国から貰ったお金はほぼ使い切る


学者「お金使い切ったら食って行けんくなるんじゃ無いっすか?」

中年の女「それは民の全員に毎日最低限の食料配給があるの…だから飢えている人は一人も居ない」

学者「おぉぉメッチャ良い国っすね…」

盗賊「言い変えりゃ生きて行くのに必須な食料を押さえられてる…奴隷みたいなもんだ」

中年の女「フフ…辛口だけれど…その通りよ…」

学者「でも畑耕せば又お金が手に入るんならそれでも良いっすね…」

中年の女「そうやって経済が回って居るの…」


そしてフィン・イッシュでは税金が全く無い

貿易も自由…鉱山で鉱物を掘ってもすべて掘った人の物…食料以外は完全に自由…

国の収入は税金という形では無く経済が回った余り分で…そのほぼすべてを農民に対して使ってる

だから国境に壁も無ければ城を守る城壁も無い…と言うのが建前

その実カジノや娯楽で出回ったお金の回収は出来ている…そしてその中に盗賊ギルドが含まれる…


中年の女「これで大体立ち位置が分かったわね?」


盗賊「纏まった金盗んで国に還付する役割か…」

中年の女「必要悪と言えば分かりやすいわね…それで注意して欲しいのが民兵と揉め事を起こさないで欲しい」

盗賊「もめる気なんざ更々無い」

中年の女「豪遊して女遊びしている人達を放っておける?」

盗賊「そんなん俺にゃ関係無ぇ」

中年の女「その女が子供だったとしてもよ」

盗賊「…」タラリ

中年の女「その子がお金を稼ぐ術を失ってしまう事になる…些細な事だけれど大きな問題に発展して行く可能性がある」

中年の女「そして盗賊ギルドとして…そういう国の政策に一切関与してはいけない」

盗賊「わーったわーった!!」

中年の女「それから…バン・クーバと違って魔物が多く出るからしっかり武装はしておく事」

学者「魔物って何が出るんすか?」

中年の女「色々よ…最近では猛獣も多く出る…向こうの大陸のオーガなんかと比べ物にならないから注意して」

盗賊「そんなに魔物出るのに壁で囲わんのか…」

中年の女「そういう政策…代わりに民兵の質が異常に高い」

盗賊「民兵が壁の役割ってか…」

中年の女「じゃぁこれで話は終わり…到着したら宿にでも入って連絡を待って」

盗賊「へいへい!!ほんじゃ停船の準備するぞぉ!!」スック


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『自由の国フィン・イッシュ』


ガラガラガラ ジャブーーン


盗賊「おーし!!碇落としたな?荷物纏めて降りて良いぞぉぉ!!」

中年の女「ご苦労…私は一足先に行くから後は上手くやって…」スタ

盗賊「おいおい!!一人で行くんか?リコル達はどうする?」

中年の女「詳しくはリコルに聞いて…急いでいるから私は行くわ…」シュタタ

盗賊「…」ポカーン

盗賊「おいリコル!!置いて行かれたぞ?どうすんのよ?」

戦士「ハハハいつもの事だ…私が一緒では邪魔なのだよ」

盗賊「ほーん…まぁ良いや…とりあえず宿屋だな?」

戦士「う~む…新市街地と旧市街地とあるが」

盗賊「俺はどっちでも構わん」

戦士「旧市街地はここから馬車で2時間程移動する事になる」

盗賊「じゃぁ新市街地だな」

戦士「但し…カジノや娯楽が多いのが旧市街地だ」

盗賊「カジノか…うーむ…」

学者「兄貴ぃ…ここに何しに来たんでしたっけ?」

盗賊「おぉ!!俺の知り合い探さにゃならん…闇商人が何処に居るか知らんよな?」

戦士「私が知って居ると思うか?」

学者「闇取引やってる様な場所と言えば…何処っすかねぇ」

戦士「まぁ娯楽の多い旧市街地の方で聞いてみたらどうだ?」

盗賊「しゃぁ無ぇ…2時間馬車乗るかぁ…」


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『馬車』


ガタゴト ガタゴト


剣士「やっぱり馬が引っ張ると早いなぁ…」キョロ

盗賊「んん?もしかしてよう…キ・カイのお前の家に有った馬車は人力で引っ張ってたか?」

剣士「そうだよ?馬なんか居なかったし」

盗賊「ヌハハとことん貧乏生活してたんだな」

剣士「今はもうお金持ちさ!!ねぇ姉さん!!」

女オーク「ウフフ…」

学者「いやぁぁフィン・イッシュってメッチャ栄えて居やすね…建物でびっしりじゃ無いっすか…」

盗賊「こっちは良質の木材が腐る程生えてるからな?」

戦士「少し離れると畑ばかりになる…まぁそれでも民家は一杯建って居るがね」

学者「行き交う馬車に乗ってる人はオークとかドワーフとか色々っすね…」

戦士「うむ…異種族全員平等なんだよ…地庄炉村も同じだね」

剣士「文化が違うってこういう事かぁ…」


ソヨソヨ~


剣士「ん?何だこの匂い?」クンクン

少女「森の匂いだ…嗅いだ事無いか?」

学者「んん?何も匂いやせんが?」クンクン

少女「お前は鼻が鈍感なのだ…死肉を食ってるから鼻が曲がってる」

学者「なかなか毒舌っすねぇ…グリグリしちゃおぅかなぁ~」

少女「父ぃ!!ゲスは歩きで良いぞ」

戦士「ハハハまぁまぁ…仲よくしなさい」

剣士「あぁぁ良い匂いだなぁ…」クンクン

少女「そうだろうそうだろう…」ウムウム

盗賊「おい!!内海側が見えて来たぜ?旧市街地も見える!」

学者「おぉぉぉぉ!!なんすかこの絶景…」

戦士「ハハハ建物が特徴的だからねぇ…左手の塔がいくつも建って居る所がフィン・イッシュの城だよ」

学者「感動っす…きっと歴史有る建物なんすね…」アゼン

盗賊「まぁ向こうの大陸は皆壊されちまってるからなぁ…歴史って意味じゃ古代遺跡使ったバン・クーバの方が古いだろうが…」

戦士「もっと言うと光の国シン・リーンも歴史が古いらしい…中立の国セントラルはそこそこ歴史が長いが…もう廃墟だ」

盗賊「セントラルは氷の城になったと聞いたぞ?」

戦士「暇があるならその辺りの歴史を調べてみてはどうだ?」

盗賊「俺は忙しいな…ゲスは暇だろうから適当に書物漁っとけ」

学者「へいへい…」



--------------

『馬宿』


ヒヒ~ン ブルル


馭者「はい着いたよ~…降りた降りたぁ!!」

学者「腰が…いたたたた」ヨロ

盗賊「たった2時間でも結構キツイな…」ノビー

剣士「見て!!気球が飛んでる…大きい!!」シュタ


フワフワ ソヨ~


学者「珍しいっすねぇ…あぁぁアレは魔石使わんタイプの熱気球っすね…大きさの割に何も運べん奴っす」

剣士「人が乗ってるよ…ええと…6人くらいかな」

盗賊「馬車で移動するより大分ラクそうだ」

戦士「昔は気球がそこら中飛んで居たものなんだがね…」

盗賊「魔石が流通しなくなった事と…機械のミサイルで落とされまくったのが原因だな」

戦士「一部安全に飛べる場所なら定期便として飛んで居るんだよ?」

盗賊「ほう?こっから何処へ?」

戦士「シャ・バクダの方面だと聞いた…私は行った事が無い」

剣士「見る物全部初めての物ばっかりだ!ワクワクする!!」ワクワク

盗賊「おーし!!全員降りたな?暗くなる前に宿屋探すぞ!!」

剣士「おーーーー!!」シュタタ


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『宿屋の納屋』


ガラガラ


宿屋の女将「…この納屋でしたらお使い頂いても宜しいですが…どうしましょう?」

盗賊「あぁ…他の宿屋も一杯でよう…納屋でも助かるわ」

宿屋の女将「なにも準備出来なくて申し訳ありません…」

盗賊「こっちの方こそ無理言って悪かった…ほら宿代」ジャラリ

宿屋の女将「ありがとうございます…水浴び場は自由にお使い頂いて結構ですので…ごゆっくり」ペコリ スタ

盗賊「ヌハハ…てな訳でやっとこ休める訳だ」

学者「これ薪を保管する納屋っすね…」キョロ

盗賊「まぁ建物の中で寝られるだけ良いだろ…住めば都だ」

剣士「すぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁ」ウットリ

少女「すぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁ」ウットリ

盗賊「何やってんだ?」

剣士「気に入ったよ此処!!木の香りがすごく良い!!」スゥゥ ハァァ

盗賊「そら結構!!まぁちっと片づけりゃしばらく住んでも良いな?」

学者「何日分の宿代出したんすか?」

盗賊「とりあえず持ってる分全部出した…金貨8枚か…何日かは良く分からん」

学者「えええ!!そんなに出したんすか…この納屋に」

盗賊「いやいや出る時に差額分は返して貰える」

学者「あぁそういう事っすね…」

盗賊「まぁ夏の内は自由に使って良いらしいから…ミライ!その辺の木材使ってテーブルとイスを頼む」

剣士「おっけーーー!!」シュタタ

盗賊「水浴び場に湯があるそうだから行きたい奴は言って来て良いぞ」


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『1時間後』


ガラガラ ピシャン!


学者「買い出し行ってきやしたぜ?食い物に酒…あと油とランプっす」

盗賊「おーう!!酒くれぇぇい!!」

学者「もうくつろぎモードっすねぇ…」ドサドサ

戦士「私も酒を頂こう…お!!フルーツが有るじゃ無いか!!」ガブリ

学者「やっぱこっちの大陸はフルーツとか新鮮なんすよ…ランプ点けやすぜ?」チッチ ピカー

盗賊「ヌハハハこりゃ雰囲気あるな…馬車ん中みてぇだ」グビグビ

剣士「アハハ…そうだね…木製の大きな馬車みたいだね」

学者「木箱のテーブルに…生木を組んだだけの椅子…」

剣士「製材した木材じゃないからこんなもんさ…まぁ十分使えるよ」ギシ


ガラガラ…


少女「父ぃ!!黒いのが空飛んでる…」シュタ

戦士「んん?」

少女「初めて見る…見に来い」

盗賊「魔物か?」スック

学者「早速何か出て来た様っすね…」スック


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『裏路地』


バッサ バッサ


少女「アレだ…あの黒いの何だ?」

戦士「あぁ…ガーゴイルという魔物だ」

少女「他にも居るぞ…あっちだ」ユビサシ

盗賊「全部で4匹ぐらいか?」

学者「誰も慌てる気配が無いって事は…通常運転じゃないっすか?コレ…」

戦士「地庄炉村では殆ど見なくなったが…昔は沢山居たんだぞ?」

少女「そうだったか…雑魚なんだな」

戦士「ハハハ雑魚では無い…まぁ飛んで居るからミルクでは倒せんな」

少女「遠くで良く分からないが…結構大きいな」

戦士「ふむ…牛並みの大きさの物が飛んで居ると考えれば強さが想像出来るだろう」

少女「牛か…」


シュン! ドス!


少女「あ…」

盗賊「おぉ!!槍か何か飛んでったな…」

女ハンター「見えた…多分オークが弓を撃った」

学者「えええ!?アレが弓矢?…なんかデカくないっすか?」

女ハンター「又撃ちそう…」


シュン! ドス!


盗賊「うほーーーすげぇな…槍並みの矢を撃ってんのか…」

学者「もしかして…これが民兵?」

盗賊「オークならくそデカイ弓を使ってもおかしく無ぇ…」

学者「ハハ…誰も慌てて居ない…通常運転っすね」

盗賊「どうやら…俺らクソ雑魚かも知れんぞ…」

少女「落ちた黒いの燃やしてる…ちょっと見て来る」シュタタ


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『納屋』


グビグビ プハァ


盗賊「水浴びからリッカ戻って来ないんだが…遅く無いか?」

女ハンター「あ…言うの忘れてた…お茶を買いに行くって…」

剣士「あぁ…姉さんお茶が好きなんだ…家に置いて来ちゃったからさ」

盗賊「まぁ安全そうだし良いかぁ…今日は寝るつもりだったが…ちっと俺も情報集めに散歩でも行って来るか」

戦士「私はここで酒でも飲んでゴロゴロして居るから…安心して行って来て良い…どうも船を下りた後は平衡感覚が…」

剣士「じゃぁ僕も姉さん探しに行こうかな」

学者「俺っちは眠たいんで寝やす…」ドター

盗賊「ロボ!!一緒に行くか?」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「おーし!!ほんじゃ行くか!!」スタ


ガラガラ ピシャン!


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『翌朝』


チュンチュン ピヨ


盗賊「ふぁ~あ!!」ノビー

ロボ「ピポポ…」ウィーン クルクル

剣士「あ!!アランさんおはよう!!」

盗賊「おろ?ミライだけか?みんな何処行った?」キョロ

剣士「宿屋の外の広場で配給やってるんだ…貰いに行ってるよ」

盗賊「ほ~ん…お前は貰って来たんか?」

剣士「うん!ホラ?」スッ

盗賊「米か…」

剣士「調理前のを貰って来たんだ…僕の携帯食料さ」

盗賊「俺ぁ要らんな…」

剣士「今日の予定は?」

盗賊「俺は闇商人が何処に居るか情報集めに行く予定だ…まぁ…各自自由にするだな」

剣士「そっかぁ…どうしようかなぁ…」

盗賊「宿屋前の張り紙に魔物の戦利品買い取りリストが有ったぞ?」

剣士「お?」

盗賊「ミスリルの剣を使ってみたいんじゃ無いのか?」

剣士「戦利品ってどんな?」

盗賊「牙とか角とか…リザードマンの鱗とか色々有った様だ…」

剣士「後で見に行ってみるよ」

盗賊「俺とロボは情報集めに行って来るからお前等自由にしてろ…」

剣士「分かった」

盗賊「ほんじゃロボ!!もっかい行くか!!」スック


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『1時間後』


アーデモナイ コーデモナイ


剣士「あ!!みんなおかえり~」

学者「あらら?兄貴は何処行っちゃいましたかね?」キョロ

剣士「なんか闇商人探すと言って又ロボと出て行ったよ…僕達は自由にしてて良いってさ」

学者「そーっすか…リッカさんどうしやす?買いに行きやす?」

剣士「んん?何か買い物?」

学者「昨夜オークが使ってる弓を見たじゃ無いっすか」

剣士「あーー凄かったね」

学者「どうやらこっちの大陸ではあれぐらいの弓を使うのが普通みたいなんす」

剣士「え?もしかして姉さんも弓使うの?」

戦士「飛んで居る相手に近接の武器だけでは何も出来ないのだよ」

学者「詳しく言うとこういう事っス…」


オークはもともと手先が器用じゃ無いんで武器とか弓はしょぼいのしか使って無かったんすが

ドワーフがオーク用の武器を作る様になってから

オークがエルフ以上に戦える事が認知されるようになってるんすよ

ほんでフィン・イッシュではオークがめちゃ良い装備をしてるのが普通になってるんす


剣士「あーーー姉さんの装備が見劣っちゃってる…って事だね?」

学者「早い話そうっすね」

戦士「今使って居る剣はかなり良い物だから問題無さそうだが…遠隔攻撃の手段が無いのは飛ぶ相手に対して無力なのだよ」

女オーク「弓を普段使いするのでは無くて…船で使うつもりで…と思って」

学者「重ねて言うと銃器では火力不足になる魔物に対して毒を塗った弓の方が効果的らしいんす」

剣士「毒…」

学者「こっちの大陸では弓の方がメジャーな武器なんすね…機械相手じゃ無いもんで」

剣士「まぁ…僕もミスリルの剣を買っちゃったから姉さんも弓くらい良いと思うよ」

学者「ほんじゃちっと見に行きやすかぁ」


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『武器屋』


ガチャリ ギー


店主「らっしゃい!!」

戦士「ほーう…中々色々揃って…」キョロ

少女「父も何か買うか?」

戦士「う~む…盾を持ったままだとなぁ…」

店主「そんなお客さんには…パヴィースとクロスボウのセットをおすすめするよ?」ニヒヒ

剣士「あ!!ちょっと僕見たいな」フムフム

店主「はいはい…見て行って下さいな」

学者「リッカさん…この弓なんかどうっすかね?」ユビサシ

女オーク「う~ん…」

店主「オークが使う弓でしたら…こちら」ドスン

学者「うわ…デカ…」

女オーク「これ…引いてみても?」

店主「どうぞどうぞ」

女オーク「フン!」ギリリ

学者「うわわ…ソレ全部金属っすよね」

剣士「姉さんなんか…ちょっと軽そうだね?」ジロジロ

女オーク「こういう物なのかも…」ハテ?

店主「それ以上の強弓は扱って居ないねぇ…どうだい買って行くかい?金貨30枚だよ?」

学者「おぉぉ結構しやすね…槍みたいな矢が一本金貨1枚っすね…」

女オーク「でもなんか違う…」

剣士「ちょっと見せて?」フムフム ジロジロ

学者「どうしやす?」

剣士「よし!!買うの止めよう!!なんか姉さんには合わない!!」

学者「アハ…いやまぁ良いんすよ?」

剣士「そんなでっかい弓なんか持ち歩いてたら姉さんの持ち味発揮出来ないさ…船に必要なら僕が作る」

女オーク「じゃぁ止めて置くわ」

戦士「ミライ君に考えが在りそうだね?」

剣士「うん…毒が必要なら弾丸に毒仕込めば良いのさ…そっち方向で工夫したいかな」

店主「いやいや買って行って下さいなぁ…」

剣士「また必要になったら買いに来るね~」ノシ


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『街路』


ワイワイ ガヤガヤ


剣士「実はね…姉さんは石の遠投が得意なんだよ」

学者「オークロードみたいな感じっすか?」

剣士「僕はオークロードを見た事が無いんだけど…拳ぐらいの小石なら300メートル位投げるのさ」

学者「ほーーー結構行きやすね」

剣士「もしそれが爆弾だったら?」

女ハンター「それは榴弾と言う…」

剣士「弓なんか使わなくてもそれで良いと思ったんだ…遠投して爆発したら鉛が弾ける…」

学者「それまさしく榴弾っす…ホラ?俺っち持って居やす…」チラ

剣士「姉さんは速さが命の戦い方だから重たい弓よりもその榴弾投げてる方が絶対良い」

女ハンター「300メートルと言うのは水平方向の話でしょう?…上にはそんなに飛ばないと思う」

剣士「あーーーーそうか…100メートルも飛ばないかぁ…」

学者「それでも上空で鉛が弾けるのはそれなりに効果有りそうっすね」

剣士「まぁ材料買って一回作ってみる」

学者「じゃぁ今から資材入手っすか」

剣士「うん!ついでに毒とか色々買って帰ろう…リコルさんの盾もパヴィースに改造するよ」

戦士「ハハ…クロスボウが無いがね」

剣士「いやいや榴弾投げて盾で守る…きっとそれで行ける」

戦士「なるほど…」

剣士「僕らには僕らの戦い方が有るよ…よーし!!やる事出来たぞぉ!!」


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『宿屋の納屋』


アーデモナイ コーデモナイ


学者「榴弾の構造を図解するとこんな感じっす…点火部分が2重になってるんすよ」

剣士「なるほどー…それで遅延して爆発するのか…」

学者「ミライ君の作る爆弾はその遅延を導線工夫してやって居やすね」

剣士「僕の爆弾は導線に火を点ける動作が必要になるんだ…咄嗟には使えないんだよね…うーむ…」

女ハンター「火打石で擦って点火してみては?」

剣士「なるほど…錬鉄擦れば火花が出るな…そこから導線に火が付けば良いか…」

学者「火薬入れる容器はポーションの空き瓶が丁度良い大きさなんでコレを使うとしてっすねぇ…」

剣士「口の部分に錬鉄で蓋をして…着火する細工か…よし!!何個か作って試してみよう」

学者「これかなり危ない実験になりやすぜ?即爆発するかも知れんっす…」

剣士「まず火薬無しで導線への着火実験かな…」

学者「じゃぁ俺っち必要になりそうな物調達してくるんで実験やってて下せぇ」

剣士「うん!!」


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『夕方』


ガラガラ ピシャン!


学者「お!?兄貴ぃ…どうでしたか?」

盗賊「ダメだぁ…全く手掛かりが無い…ちっと金貸してくれぇ」

学者「あらら…どんくらい必要っすかね?」

盗賊「金貨10枚だ…やっぱ酒場とか怪しい場所で聞き込みしないとダメな様だ」

学者「あんま飲みで使わんで下せぇ…」ジャラリ

盗賊「ところでミライは何やってんのよ?」

学者「榴弾を作るんすよ…信管の部分を今用意出来る物で工夫してる所っすね」

盗賊「今までの爆弾じゃダメだってか?」

学者「やっぱ金属片入れて榴弾にしないと殺傷力無いじゃ無いっすか」

盗賊「確かに…」

学者「この辺に居る魔物相手だと今の武器じゃ通用しないもんで榴弾作ってるんすよ」

盗賊「銃器持って通用しないって事は無いだろう」

学者「兄貴…魔物討伐のビラ見てないんすか?10メートル近いワニとか居るみたいっすよ?」

盗賊「なぬ!?」

学者「俺っちのバヨネッタとか鼻くそっすね」

盗賊「まぁ…榴弾作るのは良いが怪我させんなよ?」

学者「へい…しっかり見ときやす」

盗賊「ほんで…俺は酒場とかで情報集めて来るんだが…ロボを連れまわる訳にイカンからちっと頼む」

学者「暇なんで整備しときやす」

盗賊「頼む…じゃぁな!」ノシ


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『夜』


クンクン キョロ


少女「父!!母の匂い近いぞ」

戦士「お?こちらを見つけた様だ」

学者「あらら?兄貴がどっか行っちまってるんすが…」


ガラガラ…


中年の女「宿では無く納屋の中だったのね…」ツカツカ

戦士「空きが無かったのだよ…一人か?」

中年の女「あの子たちは二人ともシャ・バクダの方に行ったそうよ」

戦士「なんだ久しぶりに会うのを楽しみにして居たのに…」

中年の女「どうもギルドの連絡員が行方不明で私達の所へ連絡が途絶えて居たらしいわ」

戦士「そういう事か…」

中年の女「アランが見え無い様だけれど…」キョロ

学者「兄貴は情報収集でどっか行きやしたね…朝までには戻ると思うんすが…」

中年の女「まぁ良いわ…リコル?あなたにはちょっと悪いけれど私はしばらく留守にするわ」

戦士「…というと?」

中年の女「急ぎで例の書簡をシン・リーンへ届けなければいけない」

戦士「どうやって行くんだ?」

中年の女「気球の定期便でシャ・バクダに向かって娘2人連れて森を抜けるわ…あなたは連れて行けない」

戦士「森を抜ける…昔エルフの森だった場所か…」

中年の女「そうよ…私達3人なら徒歩で抜けられる筈…残念だけどあなたは邪魔になってしまう」

戦士「そうか…残念だ」

中年の女「それで…あなたにお願いが有るのだけれど…」

戦士「何だ?」

中年の女「ミルクと一緒にアランをサポートして欲しい…ミルクにとって成長のチャンスでもあると思ってるの」

戦士「ふむ…サポートと言っても何をするか決まって居るのか?」

中年の女「話はこうよ…」


アイリーンに扮したアバズレ女が居たでしょう?

あのアバズレ女の船にフィン・イッシュの女王も乗って居たのよ

2人で海賊王の娘を演じて本物を誘き出そうとして居るそうよ

これは女王からの提案で盗賊ギルドとして断り用が無かったらしいわ

それであの2人は既に出港してしまって居て…

この大陸を北側からぐるりと回ってシン・リーンへ向かってるの


戦士「女王本人が船に…」

中年の女「無茶だと思うでしょう?でもこの計画には忍び一族も…シン・リーンの魔術師団も関わってる」

戦士「国家共同作戦か…ふむ…そこに追随しろと言う訳だね?」

中年の女「そうよ…だから次あなたと合流するのはシン・リーンね…それまでアランをサポートして欲しい」

戦士「ハハ旅はまだ続くという事か…楽しみになって来た」

中年の女「そう言ってくれて嬉しいわ…只…今のアランの船では温かい海を航海するのは厳しいの」

戦士「新しい船を用意してくれれば問題無い」

中年の女「そういう訳にも行かなくて…女王は1隻では無くて大船隊を組んで航海してる…」

戦士「良い船は出払って居る?」

中年の女「そう…だから今急ぎでドワーフの船大工にアランの船を整備させようとしている所なのよ…」

戦士「大体話は理解した…整備を待って女王の船を追えば良い訳だ」

中年の女「女王の寄港地計画は追って父から連絡がある筈…私は直ぐに旅立ってしまうから後はあなた頼りになってしまう」

戦士「任せろ!!」

中年の女「ミルク!?ギルドの頼り方は分かって居るわね?」

少女「母!!任せろ!!父居れば大丈夫」

中年の女「フフ…心強いわ…じゃぁもう行ってしまうから…後はよろしく」ギュゥ

学者「ええと…抱擁中に済まんのですが…」

中年の女「何?」

学者「兄貴の目的なんすが…ホムンクルスの件ってどうなりやしたかね?」

中年の女「あら…言い忘れる所だったわ…完全体のホムンクルスの生存情報…出所はドワーフなのよ」

学者「はぁ…で?」

中年の女「ドワーフに居場所を聞いても海賊王の許可が無いと教えられないらしいわ」

学者「つまり海賊王を探せってこってすかね?」

中年の女「そうなってしまう…フィン・イッシュ女王の後を追えば遭遇する可能性もあると思うわ」

学者「あぁぁぁなるほど…海賊王も娘を追ってる可能性が有る訳っすね…」

中年の女「そういう事よ…アランにちゃんと伝えておいて」

学者「分かりやした…」

中年の女「じゃぁ私は行くわ…どうか無事にシン・リーンまで辿り着いて…」ノシ


ガラガラ ピシャン!


--------------

『翌朝』


トントン


戦士「んん?誰か訪ねて来た様だ…」ガラガラ

戦士「あぁ…宿屋の女将さん…何か?」

宿屋の女将「どうもお休みの所を…大部屋の方が急遽空きになりましたのでどうかと思いまして…」

学者「おぉ!!マジっすか!!」

宿屋の女将「お代の方は中年の女性の方から頂いておりますのでお部屋へ移動するだけで結構です」

学者「あぁぁそういう事っすね…」

戦士「この納屋は作業場として引き続き使ってもよろしいか?」

宿屋の女将「はいご自由にお使いください」

学者「兄貴!!起きて下せぇ!!兄貴ぃ!!」ユサユサ

盗賊「んが?」パチ

学者「部屋の移動っす…大部屋が空いたらしいっす」

盗賊「おぉそりゃ良い…」ゴシゴシ

剣士「僕ちょっと作り物してるから皆行ってて良いよ」ゴソゴソ

宿屋の女将「ではご案内しますので荷物を持ってどうぞ…」スタ

学者「いやぁ…やっとベッドで寝れやすねぇ…」

戦士「ハハ…納屋でも良かったんだがね」


---------------

『宿屋_大部屋』


ガチャリ ギー


宿屋の女将「こちらで御座います…」

戦士「んん?この画は誰の?…」ジー

宿屋の女将「あぁそれは30年ぐらい前ですかねぇ…勇者様一行がこのお部屋に宿泊された時の画だそうです」

戦士「女将さんは勇者一行を見た事は?」

宿屋の女将「いえ私は後に入植した者ですから良く存じません」

学者「勇者っすか…何をした勇者なんすかね?魔王でも倒したんすかね?」

戦士「100日の闇を祓ったのが勇者だとは聞いたが…君はまだ生まれて居ないねぇ」

宿屋の女将「その辺の話でしたら女王様が伝記を書かれて居て城の書物庫の方に保管されているそうですよ」

学者「城ってそんな簡単に入れるもんなんすか?」

宿屋の女将「出入り自由なので観光でしたら行って見ても良いかと…」

盗賊「おおお!!城か!!城に居るかも知れんな…」ボソ

学者「おっとぉ?」

盗賊「悪りぃ!!俺ちっと城行って来るわ…」

戦士「どうせなら皆で行かないか?」

盗賊「あぁそうだな…ミライとリッカが居ないが…」

女ハンター「私は水浴びしたいから此処に残る」

盗賊「そうか…」

宿屋の女将「お連れ様は後ほどご案内しておきますのでご心配なく…」

盗賊「おう頼むわ…行こうぜ!」スタ


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『城に続く道』


スタスタ


盗賊「何ぃ!!リカオンが一人でシャ・バクダ行っただと!?」

戦士「急ぎで例の書簡をシン・リーンへ持って行きたいらしい…私は置いて行かれたのだ」

盗賊「なんだ…支援するとか言ってたのは何だったのよ…」

戦士「アランの船を長期航海出来るようにドワーフの船大工に修理させる様だぞ?」

盗賊「長期航海?」

学者「海賊王の娘に化けた派手な叔母ちゃん居たじゃ無いっすか…アレを追えって事なんすよ」

戦士「どうやら本物をおびき寄せる作戦だとか…」

盗賊「あーーーそういう事か…しかしなぁ…俺の目的は海賊王の娘じゃ無いんだ…」

学者「完全体のホムンクルスの居場所は海賊王が知ってるらしいっす…海賊王も娘が現れたと思って来るかも知れやせんぜ?」

盗賊「そらまた時間が掛かりそうなこって…」

学者「兄貴の方は探してる闇商人の手掛かりは有ったんすか?」

盗賊「いや…全然手掛かりが無い」

学者「てか兄貴…闇商人がフィン・イッシュに来てるって誰から聞いたんすか?」

盗賊「姉御だ…ギャング時代からの知り合いで姉御とは年が近いんだ」

学者「フィン・イッシュっていうだけじゃ中々探せんっすよ…」

盗賊「商人ギルドに行きゃ分かると思ってたんだが…何処行ってもそんな奴知らんとか言いやがる」

学者「名前を隠してたとかそういう感じなんすね…きっと」

盗賊「しまったなぁ‥もうちっと姉御にしっかり話聞いときゃ良かった…」

学者「フィン・イッシュに来た目的とか何も分からんのですか?」

盗賊「キ・カイに有った商人ギルドの地下室あったろ?」

学者「ミライ君が住んでた所っすね?」

盗賊「そこの本当の主はマルコっていう商人なんだ…そいつを探してるらしい」

学者「それってリッカさんが探してる人と同じじゃないすか…」

盗賊「まぁそうなるか…てか海賊王の娘と繋がってんのよ」

学者「じゃぁ同じ様に行方不明なんすね…」

盗賊「あんま詳しく分からん…」

学者「その闇商人の名前はなんて言うんすかね?」

盗賊「実は名前が無い…俺らはカゲミって呼んでた…マルコの影武者やってたからな」

学者「なんか結局あの派手な叔母ちゃん追った方が色々良さそうっすね…」

盗賊「う~む…もしかするとカゲミは女王の伝記からマルコの行き先を探ろうとしてるかも知れんと思たんだが…」

学者「なるほどそういう事っすね…なんか俺っちも伝記がどんな物なのか気になって来やした」

盗賊「ビンゴだったら良いが…」


--------------

『フィン・イッシュ城』


ワイワイ ガヤガヤ

今日の配給は餅だそうだ…汁物は並ぶから先に行っといた方が良い

豆と芋は持てるだけ持ち帰って良いぞぉ!!持ってけぇ!!


学者「ここでも配給やってるんすね…」

盗賊「あー俺これのカラクリ聞いたぞ?」

学者「カラクリ?何すか?」

盗賊「配給の消費量で人の増減を把握して居るらしい」

学者「増減…」

盗賊「他国から流入してる人とか食料の持ち出しとか色々だ」

学者「へぇ?」

盗賊「聞いた話だがこんな感じよ…」


昔お隣さんにセントラルっていう貴族国家が有ったんだが

貴族が没落してそれぞれ持ってた領地で独立自治領になっちまってんのよ

まぁ…セントラルが分裂していくつもの国が出来た訳だ

ほんでフィン・イッシュだけぶっ飛んだ農民支持政策と税金無し政策をやった結果…大量に人が流入した訳だ

だが独立自治領の連中は面白くないワナ?

だからフィン・イッシュに入って来て稼ぎまくって自国に戻るという奴が出て来る訳だ

それの人数と影響の把握な訳よ


学者「そんなんやられまくったらフィン・イッシュの資金が流出しまくりっすね…」

盗賊「所がどっこい…食料生産はフィン・イッシュがずば抜けてて此処から買うしか無い」

学者「あーーー結局属国みたいな感じになっちまってるんすね」

盗賊「まぁ…食料を完全に牛耳って他国もコントロール下に置いてる訳だ…怖い国だわ」

学者「他の国も食料生産頑張れば良いんすけどね…」

盗賊「フィン・イッシュで農民やってた方が儲かるから生産者居なくなるワナ」

学者「ああああ…他国の食料生産力を奪う政策なんすね…エグイ政策っす…」

盗賊「成功っちゃ成功の政策なんだろうが…どうも俺は気に入ら無ぇな…」

学者「食料で人間を支配下に置いてるって言いたいんすね…」


--------------

『書物庫』


シーン…


盗賊「こりゃまた俺には場違いな場所だ…」ヒソ

学者「書物持ち出し厳禁の張り紙っす…」ユビサシ

盗賊「盗みに来た訳じゃ無ぇ…俺はカゲミの手掛かり無いか探して来るからお前ら適当に書物漁ってろ」

学者「とりあえず女王の伝記を探して来やすね…」スタ


侍「…」シャキーン! スンスン


盗賊「うぉっとぉ…」タジ

侍「…」チラリ

張り紙”書物持ち出し厳禁”

盗賊「へいへい…持ちだしゃし無ぇからその刀納めてくれ…」

侍「…」ジロリ ジリジリ

戦士「これは又随分警戒されて…」タジ

学者「上にも何か居やすぜ?」


忍び「…」ジー


盗賊「いつもこんなに警戒してんのか?」

侍「見るからに異国の者を警戒せぬ訳にも行くまい…」ジリジリ

盗賊「俺はあんま書物に興味無いんだ…ちっと探し人でな?」

学者「俺っちは女王の伝記が見たいんす…ちっと見せてくれやせんか?」

侍「生憎…女王の伝記は盗難に遭い紛失して候」

盗賊「なぬ?盗難?」

侍「持ち出しは発見次第切る故に…覚悟せい」ジリジリ スチャ

盗賊「まぁ良いや…ちっとその伝記の有った辺りを調べさせてもらうぜ?…どこよ?」

侍「…」ユビサシ

盗賊「ゲス!その辺りを調べるぞ」

学者「へい…」スタ


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『30分後』


パラパラ…


盗賊「シャ・バクダ王朝最後の末裔サルマン…ふ~む」

学者「多分その人も勇者の仲間の様っすね…」

盗賊「ハッ!!これは…」パラパラ

学者「何か見つけやした?」

盗賊「考古学者カイネ…お袋が書いた書物が…」

学者「ええ!?ここに並んでるって事は…勇者の仲間だったって事っすか?」

盗賊「んな話聞かされて無ぇ…」パラパラ

学者「兄貴…この辺の書物は皆著者がそのカイネって言う人っス…」

盗賊「…」---お袋が全然帰って来なかった理由---

盗賊「…」---この書物全部お袋が…---

学者「読めない文字ばっかっす…」パラパラ

盗賊「どうやらお袋にも相当な秘密が有った様だ…」パラパラ

学者「挿絵からして…やっぱ考古学っぽい書物っすねぇ…」

盗賊「どうも勇者と関連の記された書物が見当たらん…」ゴソゴソ

学者「たぶんそれが女王の書いた伝記じゃないんすかね?」

盗賊「こりゃ全部持って帰りたくなって来た…」


侍「…」ギロリ


盗賊「はいはい分かってる!!持って行きやし無ぇから…」

侍「半年ほど前にその辺りの書物を写している者が居た…」

盗賊「んん?そいつの特徴は?」

侍「小柄な男…」

盗賊「カゲミ…そいつは何処に居るか知らんか?」

侍「女王の伝記を盗んだ疑いで捜索中なり」

盗賊「分からんのか…」---半年前か…---


---丁度姉御とフィン・イッシュへ行こうという話をしてた頃だ---

---もしかすると姉御は既にカゲミと何か話して居たかもしれんな---

---だとすると…姉御はどうやってカゲミと接触するつもりだったか---


盗賊「おいゲス!!姉御の書いた計画書まだ持ってるか?」

学者「ありやすぜ?」ゴソゴソ パサ

盗賊「んんん…やっぱ此処に来るまでしか書いて無ぇな…」

学者「姉御は金とかどうするつもりだったか知らんすか?」

盗賊「おぉ確かに…俺と姉御…ほんでお前の金だけじゃ満足に物資集められんもんな」

学者「やっぱ兄貴頼りだったんすかね?」

盗賊「姉御があんま俺を頼るとは思え無ぇが…」---カゲミなら金を持ってる---


---やっぱカゲミと接触するつもりだったと考えて良さそうだ---


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『城の中庭』


タッタッタ…


学者「兄貴ぃ!!お待たせしやした!!」スタ

盗賊「おろ?書物の持ち出しはダメなんじゃ無かったんか?」

学者「いやいやこれは売ってた書物っすよ…売り物は別所にあるんす」

盗賊「ほーん…何の書物だ?」

学者「錬金術っすね…ポーションの材料とか色々っす」

盗賊「リコルも何か買った様だな…」

戦士「ハハこれはちょっとした剣技が記された物だ…この国は古き剣豪が集う国だったからな」

盗賊「剣豪か…刀持った侍が何人もウロウロしてりゃ何も悪さ出来んわ…」

学者「兄貴はもう良いんすか?書物調べるんは?」

盗賊「難しすぎてどうも読む気になれん」

学者「そらしゃーないっすねぇ…」

戦士「さて…私は馬車に乗って一度船の修理にどの位かかるか見て来るが…どうする?一緒に来るか?」

盗賊「いや…俺はもうちょい心当たり回ってくるわ」

戦士「ふむ…ではミルク!行くぞ」

少女「またあの馬車に乗るか?」

戦士「今日は気球で行ってみるか…」

少女「おぉ!!行くぞ!!」シュタ

盗賊「ゲス!ロボと一緒に宿屋戻っといてくれ…あんま連れまわして負担掛けたく無いんだ」

学者「分かりやした…てか心当たりって何処行くんすか?」

盗賊「侍相手に手配されてたら何処に隠れると思う?」

学者「何処っすかねぇ…」

盗賊「俺なら下水なんだ…どっか地下に降りられる場所が無いか探す訳よ…だからロボを連れて行けない」

学者「あ!!そういやさっき…」

盗賊「んん?」

学者「シャ・バクダ王朝最後の末裔サルマンが地下墓地で100日の闇を乗り切った様な事が書いて有りやした…」

盗賊「地下墓地?」

戦士「おぉ!そうだ!この国は地下墓地から湧き出したゾンビで一度滅亡の危機が有ったそうだ」

盗賊「ゾンビ…こりゃ調べるしか無ぇな…」

学者「一人で行けやすか?」

盗賊「とりあえずその場所を探してみる…無理そうなら一旦宿屋戻るから待機しててくれ」

学者「分かりやした!!」


--------------

『宿屋_大部屋』


ガチャリ バタン


学者「あらら?ミライ君とリッカさんは何処行ったんすか?」

女ハンター「納屋の方で作り物して居たのでは?」

学者「今見たら居なかったんすよ…荷物も無かったんすよね…」

女ハンター「もしかしたら…榴弾を試しに何処か行ったのかも」

学者「あたたた…下手に試したら怪我人が…」


パーン!


女ハンター「!!?」スック

学者「言った傍から…」ダダ

女ハンター「結構遠い…何処だろう?」キョロ

学者「窓からじゃ見えんかもしれんっす…」


パン! パーン!


女ハンター「上から聞こえる…」

学者「ちっと外に出やしょうか…」ダダ


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『広場』


ザワザワ ザワザワ

今の花火か?

打ち上げ音がしなかったけどな?


剣士「よし!成功だ!!姉さんが投げれば大体70メートル位の高さまで行けてると思う」

女オーク「爆発までもう少し余裕が有った方が良いわ…狙う余裕が欲しい」

剣士「おけおけ!7秒で爆発するように調整する…それで行けそう?」

女オーク「余裕が2秒ね…」


タッタッタ


学者「あ!!ミライ君!!今の音なんすか」

剣士「あれ?バレちゃった?」

学者「街中じゃマズイっすよ」

剣士「まだ金属片も入れて無いしちょっと爆発するだけのちびっ子爆弾さ…点火のテストしてたんだよ」

女ハンター「流石にいきなり榴弾を使う訳無いか…成功した様子だね?」

剣士「まぁね?70メートル上空を狙えるよ」

学者「その距離で当てられるんすか?」

剣士「かなりコントロールは良いと思う」

女ハンター「ちゃんとした榴弾だと70メートルだったら破片が飛んで来て怪我するかもしれない」

学者「そーっすね…全方位に飛ぶ弾丸みたいなもんすよ」

剣士「それってさ…鉄の容器に入ってるからだと思う…ガラス瓶だとそんなに威力出ないよ」

女ハンター「ちゃんと目標に当てられるなら金属片は入れない方が安全に使える」

剣士「まぁそうだね…当面は火薬と砂だけにしておくよ」

学者「もう実用段階っすね?」

剣士「うん…もし今晩ガーゴイル来たら使って見ても良いかな」

学者「あ!!ガーゴイルは倒した後燃やさんとダメらしいっすよ?病気が広がるとか…」

剣士「おけおけ!!ええと…ガーゴイルの角が2本で銀貨80枚…爆弾の材料費差し引いて銀貨70枚儲かる」

学者「結構稼げやすね…余裕で宿代出るじゃ無いっすか」

剣士「今の所お金消費してばっかりだから稼げる時に稼がないとね?」


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『討伐報酬リスト』


ザワザワ ガヤガヤ

おぉ…トロサウルスの討伐報酬上がってるぞ…

プテラノドンの巣が発見されたらしい…卵持って帰ると金貨200枚だってよ


学者「いやぁぁ…知らん魔物ばっかっすねぇ…」

剣士「ココ見て!!シカを狩ると金貨3枚だってさ…クマが金貨2枚…シカの方が高く売れるんだ…」

学者「畑を食い荒らすからじゃ無いっすか?」

女ハンター「ヘラジカを生きたまま捕まえたら金貨6枚…これも狙い目ね」

剣士「なんとかサウルスって色々居るけど…どんな魔物だろう?

学者「大きさ10メートル超える様な魔物ばっかりらしいっすよ…」

女ハンター「大物狙うよりシカとかクマで十分な気がする…」

学者「そうっすねぇ…シカなら銃でも余裕っすね…クマは一発じゃ無理かもしれんす」

剣士「こう比較するとガーゴイルに爆弾使うのは効率悪いかもなぁ…」

学者「飛んでるんでしょうがないっすねぇ…」

剣士「よーし!!とりあえず日が暮れる前に爆弾作るぞぉ!!」


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『夕方_宿屋』


ガチャリ バタン


戦士「戻ったよ…んん?皆どうしたのかな?何処かへ行くのかい?」

学者「ガーゴイル狩りに行く準備っす…リコルさんも行きやす?」

戦士「私は少しく歩きくたびれた…宿で待つとするよ」

学者「何か有ったんすか?」

戦士「気球に乗ったは良いが在らぬ所に流されて遠方で降ろされたのだよ…馬車で行けば良かったと後悔をしている」

少女「父ぃ!!楽しかったぞ」

戦士「これは土産だ…要るかい?」

学者「鈴?どうしたんすか?コレ」

戦士「落ちて居たのだ…これはミスリルで出来た鈴の様だよ」


リーン


学者「へぇ?良い物が落ちて居やしたね?」

戦士「魔除けの効果があるらしい…私が持って居ては魔物に逃げられて接近出来ん」

女ハンター「あ…それ貰って良いかな?私は魔物に接近されると困る」

戦士「丁度良かったね…はい」パス

女ハンター「これで屋根の上から落ち着いてガーゴイルを狙えると良い」ゴソゴソ リーン

戦士「もう行くのかね?」

学者「そうっすね…他の民兵に先越されちまいやすんで」

戦士「まぁ…怪我をしない様に…さてミルク!湯に浸かりにでも行こう」

少女「父ぃ!私も威厳ある…バラすな」

戦士「ハハ口が滑った…行くぞ」スタ


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『夜_街外れ』


ギャーーース! バッサ バッサ


剣士「居た居た…2匹上で旋回してる…」クンクン

学者「暗視ゴーグル無しで良く見えやすね…」スタ

剣士「匂いと音で分かるんだ」

女ハンター「リッカも?」

剣士「姉さんは元々夜目が効く」

女オーク「当てられる距離に来たら爆弾投げても?」

剣士「うん…ラスさんとゲスさんは撃ち漏らしたら援護して」

女ハンター「分かった…射線に入らない様に気を付けて」スチャ

女オーク「もう届く…投げるわ?」

剣士「おけおけ!!落ちたら僕が止め刺しに行くよ…投げて」

女オーク「…」チッ シュボ

女オーク「1…2…」バヒュン!!


ドーン!


剣士「よし!!一匹落ちて来る…」ダダ

ガーゴイル「ギャァーーー…」ヒュルヒュル ドサー

学者「うはぁ…アレを落としやすか…」

剣士「姉さん落ちた奴僕に任せて!!2匹目狙って!!」

女オーク「…」チッ シュボ

女オーク「あ…急降下して…」バヒュン!


ドーン!


女オーク「くぅぅ行き過ぎた…」


女ハンター「そのまま動かないで…」ダーン!

ガーゴイル「グェェ…」ヒュルヒュル

女ハンター「倒し切れてない!!」ガチャコン

学者「俺っちの出番っす!!」タタタターン タタタターン

ガーゴイル「ガァァァァ…」ズザザ ゴロゴロ

女オーク「よし!!止めは私が…」スラーン ダダダ ブン!


ザクリ!! ベチャァ!!


女ハンター「真っ二つ…」アゼン

剣士「姉さん!!角をもぎ取って!!」シュタタ

女オーク「分かった…」グイ バキバキィ

剣士「よーし!燃やして行くから向こうの奴からも角もぎ取っといて」チチ メラ

学者「ウハハ…角を素手でもぎ取るっすか…」

女ハンター「これ…まだ続けて狩り出来そう…」

学者「ガーゴイルは落としちまえばこっちのもんすね…」

剣士「残念だけど爆弾があと4個しか無いんだ…それ使ったら帰ろう」


ガキーーン!! バッサ! バッサ!


剣士「え!!?」キョロ

女オーク「ミライ!!もう一匹居た…」タジ

女ハンター「何あのガーゴイル…武器を持ってる…」チャキリ

女オーク「近すぎて爆弾狙えない…」

ガーゴイル「ギャァァァ!!」バッサ ビューーン


ガキーーン!!


女オーク「くぅぅ…」タジ

剣士「油玉なら…当たれぇ!!」ダダ ポイ ベチャ

ガーゴイル「ギャァァァ!!」バッサ バッサ ビューーン

剣士「姉さん剣で受けて!!」


ガキーーン!! ボボボボ


学者「おぉ!!火が付いた…」アゼン

女ハンター「何呆けてるのよ!!止めで撃ちまくって!!」ダーン!

学者「あわわ…」タタタターン タタタターン

ガーゴイル「グェェェ‥‥」ドサー ズザザザ

剣士「よし落ちた…そのまま油玉で燃やして行く」ポイポイ ボボボボ

女ハンター「まだ警戒しておいた方が良さそう…」ガチャコン

学者「ふぅ…3匹…なんとかなりやしたね…」

剣士「不意を突かれるとやっぱり危ないなぁ…慎重に行こう」


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『深夜_宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「おぉ?帰って来たな?…どうよ?ガーゴイル狩りは?」

剣士「4匹狩れたよ…収穫は角8本!!」

盗賊「そりゃ良かったな」

学者「兄貴の方はどうだったんすか?」

盗賊「城から地下の方に降りられる区画が合ってな…今は封鎖されているがどうやら昔は地下監獄だった様だ」

学者「封鎖されてて行けない感じなんすかね?」

盗賊「鉄柵で区切ってるだけなんだが…忍びの奴らが勘良くて近付けんのよ」

剣士「なんか面白そうだなぁ…」

盗賊「ただガードが堅い場所にカゲミが逃げてるとは思えん…地下っぽい物はあるが探索する価値が在るとは思えんな」

戦士「んん?私は地下監獄では無く地下墓地と言ったぞ?」

学者「そうっすね…サルマンが生き延びたって言うのも地下墓地っすね」

盗賊「墓地か…そういや街の離れにそれらしい場所が有るには有ったな…」

剣士「なんか面白そうだから明日皆で行って見ようよ」

盗賊「あんまりロボを連れ回したく無いが…」

剣士「納屋に荷車が入ってる…それに乗せて行けば良いさ」


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『翌日_納屋』


ヨイショ! ドスン!


ロボ「ピポポ…」クルクル

少女「私も乗る…ウルフィも乗れ」ピョン

ウルフ「グルル…」ピョン シュタ

盗賊「こりゃ又団体さんで地下墓地巡りか…」ヨッコラ ゴトゴト

戦士「荷車引くのは交代で変わってやる」

剣士「リコルさん!!」

戦士「何だね?」クル

剣士「昨日ガーゴイルが武器を持っててさ…コレ」スッ

戦士「銀製の剣か…良い物を拾ったじゃ無いか」

剣士「リコルさんの剣は炭素鋼の剣だよね?」

戦士「うむ…」

剣士「もしゾンビが出たら銀製の剣の方が良いと思ってね」

戦士「私に使えと?」

剣士「僕はミスリルの剣を持ってるから…」

戦士「ハハ…それでは使わせて貰うとするか」

剣士「振ってみて?」

戦士「ふむ…少し重めか…」スラーン

剣士「結構良いでしょ?錆びないから手入れもラクそうだよ」

戦士「確かに…鉄の剣は直ぐに錆びるからなぁ…」

盗賊「要らん装備は邪魔になるから置いて行けよ?」

戦士「そうだな…納屋に入れて置く」カチャリ

盗賊「ほんじゃ行くぞ!」ゴトゴト


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『墓地』


ノソノソ…


婆「お前さん達…ここは毒キノコが生えて居るから採ってはイカンぞ?」

盗賊「あぁぁ…地下墓地を探して来たんだがよ?」

婆「今は地下墓地ではのうて毒キノコの栽培所じゃ…奥の方は明かりも無いで誰も近寄らん」

盗賊「ほーう?ここか…」ジロ

婆「何しに来たのじゃ?」

盗賊「サルマンだっけか?…100日の闇を生き抜いた場所ってのを見て見たくてな」

婆「ほーーーそれは結構!!サルマンは英雄じゃでのぅ」

盗賊「婆さん知ってんのか?」

婆「うむ…女王の騎士だったのじゃが行方が分からんくなってのぅ…」

盗賊「ほーん…まぁ良い…地下墓地に入っても構わんな?」

婆「奥が深いで迷わん様にな?…昔はゾンビが出居ったから今も居るやも知れん…気を付けて行きなされ」

盗賊「おう!!ありがとよ!!」

学者「兄貴ぃ!!階段っすね…」

盗賊「荷車は此処までだな…ロボは背負って行く」ヨッコラ

戦士「先頭は私が行こう…」ノソ

少女「父は鼻が利かん…先に私とウルフィだ」シュタタ

戦士「おい!気を付けろよ?」


--------------

『地下墓地』


ピチョン ポタ


少女「ここから先は明かりが無いぞ!どうする?」

剣士「ランプ持って来てるよ…」チッチ ピカー

学者「兄貴…この地下墓地って…」キョロ

盗賊「うむ…バン・クーバと同じ古代遺跡だな…どうやら墓地として使って居た様だ」キョロ

学者「て事は構造が同じかも知れやせんね…」

盗賊「こりゃもしかすると開かずの扉もどっかにあるかも知れんぞ?」

学者「ちっと気が抜けなくなりやしたね…暗視ゴーグル装着しときやす」スチャ

女ハンター「私も…」スチャ

盗賊「リコル中心で進もう…ロボは俺から離れるな?」

ロボ「ピポポ…」ウィーン


--------------


『崩落した壁』


ガラガラ


盗賊「あちこち崩れまくってんな…」キョロ

戦士「フィン・イッシュは地震が多いそうだ」


キシャァァ!!


盗賊「何ぃ!!」キョロ

少女「おい!!何だ?匂い無いぞ?」シュタ

戦士「この感じは…レイス!!」スラーン

女ハンター「そんな…銃が効かない敵が出るなんて…」タジ

戦士「影だ…影の中から出て来るから気を付けろ!」チャキリ

剣士「耳だよ…良く聞いて…息遣いが聞こえる…」


シャァァ… スゥ…


剣士「そこ!!」ダダ ブス

レイス「キャアァァァァァ…」シュゥゥゥ

盗賊「ゾンビどころじゃ無ぇ…こりゃ中々危無ぇ場所だ…」タジ

戦士「ラシャニクア君…君にミスリルの鈴を渡しただろう…その鈴は魔除けの効果が在る」

女ハンター「これ?…」リーン

戦士「それを鳴らして居ればレイスは寄って来ない筈だ」

盗賊「都合よく良い物持ってたな?」

戦士「先に進もう…」スタ


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『鉄柵で区切られた場所』


ガチャン ガチャン


盗賊「ダメだこりゃ…鉄の落とし扉でこっちからじゃ開けられん」ガチャガチャ

戦士「こんな所に落とし扉…」

盗賊「場所的に多分城の地下監獄と繋がってんだろ…ここは王族が逃げる時用の通路だ」

戦士「なるほど…」

盗賊「逆に言えばこういう場所から城に侵入出来るんだが…あの城は誰でも入れるから意味無ぇ」

少女「アラン!!水が流れる音する…」

盗賊「何処からだ?」キョロ

少女「多分下だ…」

学者「兄貴!!これバン・クーバと同じ構造ならもう一層下に空気と水が流れる層がありやすね…」

盗賊「…て事は海まで繋がってるってか」

学者「だからここが城と繋がってるんじゃ無いっすか?」

盗賊「ふむ…古代遺跡の構造を利用して城を建てているか…」

戦士「どうする?先に進むか?」

盗賊「うむ…どうせなら海まで抜けて見よう」



--------------



『側道』


スタスタ…


戦士「また側道だ…」

盗賊「こりゃマッピングしないと迷って出られんくなりそうだ…」

学者「ちっと休憩しやせんか?」

盗賊「そうだな…元来た道を戻っても夜になっちまうだろうから今日は此処で休む事になりそうだ」

剣士「携帯食料持ってるよ!!」

盗賊「そら準備の良いこって…しかし…燃やす物が何も無い…」

女ハンター「水が流れる層まで降りれば木屑とか落ちているかも知れない」

盗賊「う~む…」

少女「アラン!!何か落ちてるぞ!!」シュタ

盗賊「んん?銀貨…なんでこんな所に…」

学者「本当っすね…」

女ハンター「目印で置いて居るという可能性は?」

戦士「この側道を行けと?」

盗賊「ようし!この側道行ってもうちょい進んで見よう」スタ


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『外された蓋』


タッタッタ…


盗賊「おい!!見ろ!!一層下に降りる梯子だ」

戦士「蓋が開けっぱなし…どうやら誰かが通路として使って居たのに間違いないな…」

盗賊「クッソ!!ロープ持ってくりゃ良かったなぁ…ロボを下ろせん」

剣士「あ!!金属糸持ってる!!」

盗賊「お!?ナイス!!」

剣士「どう使う?」

盗賊「俺がロボを背負うから落ちん様に括り付けてくれ…それならタラップを降りられる」

剣士「おけおけ!!」

盗賊「ようし!!ロボ!!来い」ヨッコラ

ロボ「ピポポ…」ウィーン ガシ

戦士「先に私が降りて安全を確かめて来る」

盗賊「おう!頼む!」

少女「父!!私も行くぞ!!何か匂う」シュタ

戦士「よし!掴まれ!!」


--------------


『下の層』


ピョン ドスン!


盗賊「つつつ…やっぱロボは重いな…」

ロボ「ピ…」シュン

剣士「次僕降りるねぇ!!」

盗賊「おう!!こっちは安全…じゃ無ぇなこりゃ…」キョロ

戦士「アラン!!見ろ!!人骨が2つ…どう思う?」

盗賊「こりゃ山賊か何かの隠れ家だったんだな…仲間割れしたんか?」

剣士「よっ!!と…」ピョン シュタ

戦士「まぁ…他には誰も居そうに無いが…燃やす物は在りそうだ…どうする?」キョロ

盗賊「とりあえず何か使える物無いか漁るぞ…ロボ!!背を下りろ」

ロボ「ピポポ…」ウィーン

剣士「あ…この荷車は車輪を直せば使えそうだ」ゴソゴソ

盗賊「こんな所に荷車置いて何を運ぶ気だったのか…」ゴソゴソ

剣士「ちょっと直しておくね…」トントントン


--------------

『焚火』


メラメラ パチ


学者「この白骨は頭蓋を銃で撃たれて即死だったみたいっすね…」

女ハンター「弾丸の欠片が壁にいくつも残ってる…鉛弾の連射するタイプ」

学者「あたたたた…キラーポッドが居るって事っすね」

盗賊「所持品が奪われて居ない所を見るとやっぱそうなるな…金貨7枚持ってた」ジャラ

剣士「アランさん!!使えそうな物全部荷車に積んでおくよ?」

盗賊「おう!!木箱の中は何が入ってた?」

剣士「酒だよ…あと水も」

盗賊「おぉぉ酒が有ったんか…ちっと一本クレ!!」

剣士「はい!!」ポイ

盗賊「食い物はみんな腐ってどっか行った様だな…」キョロ

剣士「レーションなら持ってる…居る?」

盗賊「俺は酒があれば良い…それはみんなで分けて食え」

学者「う~ん…な~んかおかしいっすねぇ…」

盗賊「んん?何ヨ?」

学者「なんで白骨の衣類が脱げて居たか…これズボン履いてないんす」

盗賊「クソでもしてたんだろう」グビグビ

学者「頭蓋の弾傷も至近距離で撃たれた痕っすよ…な~んか変っすねぇ…」

女ハンター「この白骨…両方とも男?」

学者「そうっすね…」

女ハンター「ふーん…」

盗賊「所持品からして山賊か海賊なのは間違い無さそうだ…まぁ仲間割れしたのかもな」

学者「…だとすると…俺っちのバヨネッタみたいな武器持ってるっすね」

盗賊「機動隊の奴らがこっちまで来てるってか…」

学者「なんかそんな感じがしやす…荷車で何か運ぼうとして仲間割れっすね」

盗賊「ふむ…この通路使うあたり…古代遺跡の構造を割と知ってるって事か…」

戦士「ここは海まで抜けているのだな?」

盗賊「多分な…この遺跡は線路こそ無いが…ほぼバン・クーバと同じ構造だ…緩やかに傾斜しながら海へ続いてる筈」


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『荷車』


ヨッコラ ドスン!


盗賊「ロボ!これでちっとラク出来るな?」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「まだ乗れるスペースあるぞ?ミルクとワンコも乗れぇ!!」

少女「ワンコ言うな!!ウルフィだ」ピョン シュタ

ウルフ「ガルル…」ピョン シュタ

盗賊「結構物資有るな…剣と盾が2つづつか…」

剣士「それも銀製さ…フィン・イッシュは銀製の武器が流行ってるんだね?」

戦士「銀鉱山が有るのだよ…だから安いのだ」

剣士「なんだ安いのかぁ…」

盗賊「もう一回焚火をするかも知れんから木屑も乗せて置く」ガサガサ

女オーク「次は私が荷車を引く…」

盗賊「おう!そりゃ助かる」

剣士「じゃぁ海を目指して行こうかぁ!!」

盗賊「だな?行くぞ!!」


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『真っ直ぐな通路』


ガタゴト ガタゴト


戦士「今どちらの方向に向かって居るか分かるか?」

盗賊「もう分からん…外海に出るのか内海に出るのか…行って見てからのお楽しみよ」

戦士「もう日が落ちている時間だが…全然出口が見えん」

盗賊「あーーそれはな?ゆっくり傾斜している区画と水平の区画があって出口が見通せなくなってんのよ」

戦士「そういう事か…」

盗賊「防衛上そんな事になってるとか聞いたな…ミネア・ポリスでの話だが」

学者「この通路の一つ上の層もいろいろギミックがあるんすよ?側道が多いのもそういう理由らしいっす」

戦士「爆風を避けるとかか…」

学者「そうっすね…そういうのを上手く利用して機械と戦うんすよ」

戦士「こちらの大陸でも古代では向こうの大陸と同じ様な感じだったのか…なるほど」

盗賊「どういう訳かこっちの大陸は向こう程ボロボロじゃ無い様だが…」

戦士「しかし…随分歩いた…老体に堪える」ボキボキ ノビー

女オーク「まだ荷車に空きが有るから乗って少し休んで良いわ…」

戦士「いやぁ若い者に負ける訳にイカン…」

少女「父!何か匂うぞ」クンクン

剣士「本当だ…何の匂いだろう?」クンクン

盗賊「おっとぉ…なかなか休め無さそうだな?」チャキ


カサカサ サササッ


盗賊「んん?フナムシだな…」

学者「じゃぁ海が近いって事っすよ」キョロ

盗賊「こう暗くちゃ出口も分からんな…」

少女「水の音だ…200メートルぐらい先で海の匂いもする」クンクン

盗賊「そんなら見える筈だけどな…」

剣士「ねぇ…この出口って水没してるんじゃない?」

盗賊「なぬ!?」

剣士「なんか行き止まりな気がする…」

学者「行って見やしょう!!」ダダ


--------------

『行き止まり』


チャプ ジャブジャブ


盗賊「ぬぁぁ…こっから泳いで出ろってか…」

学者「もうちっと明るくなったらどの位の距離か分かりそうっすね…」

盗賊「おい!!口に咥えるガスマスク持って来てるか?」

学者「ええ!?船に置いて来ちまいやしたよ…」

盗賊「なぁぁクソ!!俺もだ…どうすっかな…」

女ハンター「壁面を見て…」

盗賊「んん?」

女ハンター「変色している線から見て今はほぼ満潮だと思う」

盗賊「おぉ!!潮引くの待てば良いか…」

学者「外海は塩の満ち引きがえらい高いんでしたっけ」

盗賊「おーし!!ここでもっかい焚火起こして休むか…潮が引いたら一気に出よう」

剣士「行き止まりだから安全だね」

盗賊「だな?」

戦士「しかし…山賊は良い場所を隠れ家にしていたな」

盗賊「うむ…ここまで荷を運べばそのまんま船に積める…何を運ぶ気だったのか?…」

学者「あの地下墓地が他に何処と繋がってるかっすよね」

盗賊「城にゃ何も無ぇからカジノ当たりと繋がってるのかもな?」

剣士「ねぇ!!火を起こしちゃうよ?」

盗賊「おう!!ちっと温まるか」


--------------

『翌日_昼頃』


ザブザブ 


盗賊「おぉぉ!!ギリギリ荷車引ける」グイグイ

戦士「ハハハなかなか楽しい冒険だった」

盗賊「ここが何処か分かるか?」

戦士「外海側の新市街外れだ…造船所が近い」

盗賊「良く知って居るな?」

戦士「アランの船をそこで補修しているのだ…寄って行くか?」

盗賊「そうだな?…てか俺の船をリカオンが勝手に補修している訳だが…」

戦士「補修と言っても塗装が殆どらしい…放置された期間が長いから船体に樹脂を塗り込むのだとか」

剣士「あーーそれやった方が良いね…木が随分縮んじゃって居たからさ」

盗賊「まぁ良いや…折角だからこの荷車も積んで行こう」

戦士「こっちだ!案内する…」


-------------



『造船所』


エンヤーコーラー ドッコイサー


船大工「あんら?また来たんかいのー」

戦士「ハハ…荷物を積みにと思ったが…」

船大工「見ての通りや…水から上がっとるで船には乗れんでぇ~?」

盗賊「おいおい…こりゃ俺の船なんだが…水から上げちまってぶっ壊れたりしないだろうな?」

船大工「木組みにしっかり乗っ取るわい…積む荷があるなら向こうの倉庫に入れとき~な」ユビサシ

盗賊「俺の船はどう補修するんだ?」

船大工「船底の補強と塗装の塗り直しや…今のままやと少し岩礁に当たったら沈没やでのぅ」

盗賊「ほーん…」

剣士「ねぇ!!僕補修やってる所見たいなぁ!!」

船大工「ええで~!!見るだけや無うて手伝うて行けや」

戦士「アラン君…折角新市街地の方に来たのだから今晩はこっちの宿に泊ったらどうだ?」

盗賊「あぁそうだな…あの馬車にあんま乗りたく無いしな…」

戦士「新市街の方はドワーフの割合が多くてね…また違った雰囲気なのだよ」

盗賊「その様だ…」キョロ

戦士「探し人をこっちの方までは探しに来て居ないのだろう?」

盗賊「うむ…まぁ酒場で聞き込みでもしてみるか」

戦士「こっちは黄金の取引所があるのだが…」

盗賊「お!!マジか!!そんなん知らんかったわ…」

戦士「船着き場の直ぐ脇だ」

盗賊「なんだ…到着早々だったから見落としてたんか」

学者「兄貴ぃ…とりあえず宿を取りに行きやせんか?」

盗賊「そうだな…行くか!!」スタ


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『街道』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「ほーーこっちは鍛冶場から木工所まで何でもあるな…」キョロ

学者「船で運んで来た物資をここで加工してるんすね」

盗賊「それであの造船所か…」

学者「それしにてもドワーフが多いっすねぇ…」キョロ

戦士「どの船がそうなのか分からんが…ドワーフの海賊達が立ち寄るらしい」

学者「ドワーフの国って領地が良く分からんっすよね…外海にもあるんすかね?」

盗賊「開拓して領地宣言するは良いがほったらかしになるそうだ…たまに来ては物資を根こそぎ持って行くんだとよ」

学者「俺の縄張りだから俺の物って奴っすね」

盗賊「向こうの大陸のハテノ自治領もそうだな?内陸なのにドワーフが多い…たまに来ては硫黄だけ持って行く様だ」


スタスタ…


フードの男「…」チラ

盗賊「んん?」フリムキ

フードの男「…」ジロジロ

盗賊「何よ?お前…マントの下に何か持ってんな?」スチャ

フードの男「…」クルリ


タッタッタ…


盗賊「おい!!」

ロボ「ピポポ…」ウィーン ガシャ ガシャ

盗賊「ロボ?どうした?」

ロボ「ピピピ…」ユビサシ

盗賊「まさか!!…今のはカゲミか!?」

少女「まだ追えるぞ?行くか?」

盗賊「当たり前だ!!行ってくれ!!」

少女「ウルフィ!!行くぞ!!」シュタタ

ウルフ「がるる…」シュタタ

剣士「え?え?…なになに…」タジ


-------------

『倉庫』


タッタッタ…


フードの男「ハァハァ…」クルリ

ウルフ「がうるるる…」シュタ

少女「逃げても無駄だ…お前誰だ!?」シュタ


タタタターン!


ウルフ「ギャヒーン!!」

少女「え…」タジ

フードの男「警告さ…次は君だ」スチャ

少女「ウルフィ!!」シュタ

フードの男「盗賊ギルドの者だね…僕は君達に掴まる訳に行かないんだ…行かせて貰う」


スゥ…


フードの男「なっ!!?」ギクリ

盗賊「落ち着けカゲミ!!」スチャ

フードの男「アラン…どうして盗賊ギルドなんかに…」

盗賊「俺は敵じゃ無ぇ…ちっと落ち着け」グググ

フードの男「ニーナも居たな?話がしたい」

盗賊「残念だが…ニーナは死んだ…あそこに居たのはニーナに瓜二つの別人なんだ…お前を探していた」

フードの男「そんな…」

盗賊「どうしてそう粗だって居る?」

フードの男「全員信頼できる者か?」

盗賊「お前…何かから逃げてんだな?」

フードの男「質問をしたのは僕の方さ…信用出来るのかい?」

盗賊「俺くらいにはな?」

フードの男「フフ腕を離して貰いたい…」

盗賊「お前の方こそその引き金にかかった指を抜け」

フードの男「それじゃ対等にならないじゃ無いか…僕は数で負けている」


タッタッタ


学者「兄貴ぃ!!銃声が…」

盗賊「ゲス!!ワンコが撃たれた…手当しろ!!」

学者「ええ!?ちょちょ…この状況って…」

盗賊「良いから今すぐやれ!!」

学者「へ…へい!!」ダダ

少女「ゲス!!お尻の方だ!!血はあんまり出てない」

学者「あらら…カスリ傷っすね…ちっと塗り薬塗るんで動かん様に押さえてて下せぇ」


--------------

『対話』


チャキリ スチャ


盗賊「カゲミ…まぁそうイキるな」

フードの男「その男は誰だい?」スチャ

盗賊「そのちびっ子の父親だ…ほんで後ろで銃構えて居るのがラシャニクア…お前も知ってるだろう」

フードの男「3人でこちらに来る予定だったのに…どうしてこんなに増えたのかな?」

盗賊「色々あんのよ…話は長くなる」

フードの男「盗賊ギルドの者がどうしてアランの側に居るんだい?」

盗賊「なんつうか…成り行きで俺も盗賊ギルドに入れられた」

フードの男「…」ギロリ

盗賊「なんで又盗賊ギルドを嫌ってんのよ?」

フードの男「裏切ったからさ…」

盗賊「まぁそっちも色々事情があんだな?それより俺は姉御からあまり事情を聞かされないままお前を尋ねに来た…どうなってんのよ?」

フードの男「ホムンクルスの居場所…」

盗賊「おぉ!!ソレだソレ!!俺はお前にその情報を聞きたかった」

フードの男「それはマルコさんが知ってる…そしてマルコさんはシン・リーンで捕らわれの身さ」

盗賊「何?」

フードの男「僕はマルコさんを追ってる…君はホムンクルスを追ってる…目的が合致しているからニーナと協力する予定だった」

盗賊「そういう事か…」

フードの男「シン・リーンはね…魔術師の幻術という魔法を使って言論統制をやって居るんだよ」

盗賊「言論統制?」

フードの男「彼等に都合の悪い記憶を魔法で消してしまうのさ…だから…マルコさん含め勇者達が何をしたのか誰も知らない」

盗賊「なんだと?」

フードの男「勇者の仲間が誰でその後どうなったのか…全部隠されて居るんだ…関わると記憶を消されるんだよ」

盗賊「お前はそれから逃れて居る…のか?」

フードの男「まぁね…今の所シン・リーンの魔術師にはまだ見つかって居ない…ただ盗賊ギルドには見つかってしまった」

盗賊「あぁぁ…俺は盗賊ギルドつっても何も聞かされて居ないんだが…」

フードの男「魔術師達とベタベタの関係なのさ…直に伝わってしまう」ジロリ

少女「お前ー!ウルフィを傷つけた恨みは忘れんからな!」

フードの男「さぁ…僕はここまで話した…僕の安全は確保してくれるんだろうね?」

盗賊「安全も何も俺らはお前をどうにかするつもりなんざ初めから無い…マルコを連れ戻せばお前はそれで良いんだな?」

フードの男「出来るのかい?」ジロ

盗賊「俺は泥棒だ…何でも盗んでやる」

フードの男「じゃぁ手始めに…船でも盗んでもらおうか」

盗賊「なぬ!?」

フードの男「シン・リーンへ行くには船が無いと行けない…陸路で行く場合間を遮る森を抜ける必要がある」

盗賊「俺ら船に乗って来たんだが…」

フードの男「漁船で行くと言うのかい?」

盗賊「いや待て…漁船じゃ無くてキャラック船だ…今造船所で補修してる所だ」

フードの男「ハハ…あの船は君の船だったのか…アレを盗んで来てくれと言う所だった」

盗賊「まぁちっとこんな場所じゃアレだから…何処かで落ち着いて話をしようか」


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『茶屋』


リーン チリンチリーン


盗賊「こりゃ又風流な茶屋だな?」キョロ

フードの男「周りを見てごらん?」

盗賊「働いてるのはオークだけ…か?」

フードの男「そうさ…オークには電脳化した者が居ない…唯一信頼できる種族さ」

盗賊「ドワーフはダメか?」

フードの男「ダメだよ…彼らの中には機械化を好む者も居る…どんなデバイスが仕込まれているか分かったもんじゃない」

盗賊「また随分警戒してんだなぁ…」キョロ

フードの男「そのロボットは…ミファだね?」

盗賊「そうだ…筐体を変えながらなんとか生きてる」

ロボ「ピポポ…」クルリン

フードの男「ギャングの皆はどうしてるのかな?」

盗賊「もうバラバラで何処行ったのか分からん…今揃ってるのが俺とお前…そしてニーナ…」

フードの男「ニーナ?死んだと言ったよね?」

盗賊「此処だ…」プラーン カラカラ

フードの男「これがニーナの…牙…」

盗賊「ちっと電脳化の連中が持ってた白黒の書簡に手を出しちまってな…お前も何か知ってるんだろ?」

フードの男「まぁね…」

盗賊「こんなんなっちまって残念な限りだ…お前もちっと顔見せてくれ」

フードの男「顔は見せない主義なんだけれど…」ファサ

盗賊「ふむ…変わって無さそうだ…」

学者「あらら?ええ!?女っすか…声が男…」

盗賊「色々あんのよ…突っ込むな」

闇商人「ハッキリしておくよ…女でもあり男でもある…それだけさ」

闇商人「ところでニーナから何処まで聞かされて居るのかな?」

盗賊「半年前から殆ど会話出来て無くてだな…一緒にフィン・イッシュ向かう位しか聞いてないんだ」

闇商人「そうかい…その後ニーナは陸路でシン・リーンへ行くつもりだった様だよ」

盗賊「まぁ俺は別にそれでも良いんだが…」

闇商人「無理だね…道中はフィン・イッシュと違って自由の利かない国ばかりさ」

盗賊「そこら辺の事情は知らんかったんだろう」

闇商人「僕はここで大き目の船を入手して大陸の北を回って行けるように準備してた…でも盗賊ギルドに裏をかかれてしまってね」

盗賊「裏?」

闇商人「雇って居た傭兵を全員雇い返された…丸ごと奪われたのさ」

盗賊「じゃぁもう金は無いって感じなんだな?」

闇商人「残って居るのは魔石を一袋…」

学者「ちょちょちょちょ…めちゃ持ってるじゃ無いっすか!!」

闇商人「これじゃ船は買えない…でもアランが船を持って居るならもう一度準備出来る分は有るかな」

盗賊「てかな?あんま準備要らんかも知れん」

闇商人「どういう事だい?」

盗賊「俺らも大陸の北側回ってシン・リーンに行く予定だったのよ…ただ目的がちょい違う」

闇商人「??」

盗賊「海賊王の娘を演じてる女王と盗賊ギルドのド派手な婆ぁに追随しろって話なのよ」

闇商人「アハハハ面白い話じゃ無いか…女王が海賊王の娘になっているだって?」

盗賊「どうやらその目的は本物を誘き出す作戦らしい…ほんでな?」

少女「おいアラン!!ギルドの秘密を勝手にバラすな!!」

盗賊「ちびっ子は黙ってろ!こいつは俺の古いダチだ…お前の母ちゃんとは付き合いの長さが違う」

少女「父!!良いのか勝手にやらせても!!」

戦士「ミルク…行く末を落ち着いて見るのも良いのでは無いか?」

少女「ぐぬぬ…」プイ

盗賊「悪い…話中断したな…まぁフィン・イッシュとシン・リーンの共同作戦なんだとよ」

闇商人「魔術師も…絡んで居るのか…」トーイメ

盗賊「んん?どうした?」

闇商人「多分それは…ただシン・リーンへ行く訳では無さそうだね」

盗賊「どういう事よ?」

闇商人「要衝の攻略といえば分かりやすいかい?」

学者「ええ!!?そら無茶っすよ…船なんかミサイルで一瞬で沈められやすよ」

闇商人「魔術師は魔導航法という技で空を自在に飛ぶのさ…ミサイルを発射する場所をピンポイントで潰せるんだよ」

盗賊「マジか…」

闇商人「でも魔術師だけでは制圧力が足りない…船からの射撃で面制圧した後に上陸するのさ」

盗賊「そういや船隊組んで移動してるって聞いたな」

闇商人「ふーん…そこに追随ねぇ…」

盗賊「どうよ?お前も来い!!多分な?盗賊ギルドからの支援で俺の船にも物資が積まれる…あんま準備する必要も無いんだ」

闇商人「なるほど面白い…但し!アランの船はシン・リーンに行くのを最優先して戦闘には参加しない事…どうだい?」

盗賊「俺の船は戦闘用じゃ無いからな…大砲も積んで無いからそもそも加われん」

闇商人「フフよろしく頼むよ…」


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『1時間後』


アホー アホーーー バッサ バッサ


学者「食べ物が豆とお茶だけなんすが…何なんすかねぇ…こののんびりした感じは」グター

盗賊「ミライとリッカは完全にくつろぎモードだな…」

学者「宿屋どうしやす?日が落ちちまいやすぜ?」

闇商人「人気の無い宿屋なら知って居るよ?」

盗賊「あぁそこで良い」

闇商人「只夜中は安全じゃない…それで良いなら」

盗賊「安全じゃないってどういう意味だ?」

闇商人「魔物さ…宿に泊まった人は落ち着いて寝られないらしい」

盗賊「ヌハハそれじゃ稼ぎ放題だ」

闇商人「そうかい?…まぁ…後で案内してあげるよ」

学者「ところで…カゲミさん…そのバヨネッタどうしたんすか?」

闇商人「あぁ…こんな物闇で買えるのさ…護身用で持って来たんだよ」

学者「見せて貰って良いっすか?」

闇商人「壊さないでくれよ?」カチャ

学者「これ剣の部分どうしたんすか?銃剣になって無いっすよ?」

闇商人「バラ売りだったのさ…使わないと思って買ってない」

学者「まぁこっちの方が小型で済むんすが…ふむ…やっぱ俺っちのとほぼ同じっすね」

盗賊「マントの下でちゃんと隠せるなら剣の部分なぞ無い方が良いんじゃ無ぇか?一回も使って無いだろう」

学者「確かにそうっすねぇ…」

盗賊「機動隊はワイヤー使った機動戦闘で剣に持ち替える無駄無くすのにそれ付けてんのよ…機動戦闘しないなら不要だ」

学者「俺っちも兄貴に習ってミスリルダガー持ち歩く様にしやすかねぇ…」

盗賊「お!!そういやドワーフ居るならここでもミスリスダガー売ってるかもな?」

学者「兄貴もダガー欲しいんすか?」

盗賊「俺のダガーは形見だからよ…あんま刃こぼれさせたく無いんだ…だからもう一本欲しいのよ」

学者「兄貴…金持って無いっすよね?」

盗賊「ぐはぁ!!」ドタ

学者「今晩稼げるかも知れやせんぜ?ガーゴイルは余裕っすからね」

盗賊「カゲミ探さんでも良くなったから俺も稼ぎに出るかぁ…」


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『とある宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「なんだ普通の宿屋じゃ無ぇか…客もそこそこ入ってる」キョロ

闇商人「この部屋は特別らしい」

盗賊「んん?何も変わった所無いぞ?」

闇商人「さぁ?僕はそれ以上の事は知らない」

剣士「なんか下に倉庫部屋が有るね…僕そっちに行こうかな」

盗賊「まぁ珍しいっちゃ珍しい間取りだが…」

闇商人「さて…君の船はいつ修復が終わるんだい?」

戦士「早くて2週間程…と聞いたのが3日前だね」

盗賊「あと10日ぐらいは出港出来ん様だ…」

闇商人「そうかい…じゃぁ僕も色々片付けなければならない事があるんだ…そうだな一週間後に又ここに来る…それで良いかい?」

盗賊「俺ら旧市街地の方でも宿を取っててよ…」

闇商人「それは困ったな…あちらは盗賊ギルドの縄張りなんだ…下手に僕が近づけない」

戦士「まぁ向こうは引き払っても良いのでは無いか?」

盗賊「そうだな!!明日にでも戻って置いて来た荷物取りに行こう」

戦士「それにしても何故それほど盗賊ギルドを毛嫌いに?」

闇商人「裏切った傭兵が僕の顔を知って居るのさ…まだ盗賊ギルドに雇われて居るかもしれない…どうも下半身に節操が無い連中でね」

盗賊「なるほど?…そりゃフードで顔隠しといた方が安全だわな」

闇商人「そういう事で…一週間後に又…」

盗賊「おいおい待て!!どうせ俺らも暇な訳よ…何か手伝える事あるならやっても良いんだぜ?」

闇商人「ドワーフの海賊達と海上取り引きなのさ…知らない人間を連れ歩くのは邪魔にしかならない」

盗賊「そうか…まぁ一旦お別れか…」

闇商人「大丈夫さ…一週間もあれば戻れる…まぁ僕が居なければ困るのは君だろう?僕を置いて行くとも思えない」

盗賊「おいおいそう困らせないでくれ」

闇商人「じゃぁ又…」ノシ


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『倉庫部屋』


ドタドタ


盗賊「ほーーーこりゃ又不気味な倉庫だ事…」

学者「壁がシミだらけっすね…なんなんすかコレ…」

少女「死肉の匂いだ…だれか此処で食われたのだろう」

盗賊「なぬ!?お前ガキンチョのクセにエグイ事言うな…」

剣士「黒炭と白炭があれば匂いは取れそうだよ…まだ日が有るしちょっと買い物に行こうかな」

戦士「市場は近いから案内してあげよう」

学者「俺っちもミスリルダガー無いか見に行きたいっすね…」

盗賊「おー行って来い行って来ーい!!俺はちと休憩だ」

学者「兄貴!!貸した金貨10枚…返して貰って良いっすか?昨日金貨7枚入手しやしたよね?」

盗賊「ぐはぁ…くっそ覚えていやがったか…」ジャラリ

学者「まいどー!!ミライ君!!買い物行きやしょう!!」

剣士「うん!!姉さんも行こう!」グイ


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『お手伝いロボ』


カチャカチャ…


盗賊「よっし!異常は無さそうだな…」パカ

盗賊「んん?アレ?なんでだ?エリクサーの量が増えてる気が…」

女ハンター「…」シラー

盗賊「んん?あん時傾いてたんかな…まぁ良いや…当分エリクサーは問題無さそうだ」カチャ

ロボ「ピポポ…」クルリン ウィーン

盗賊「待て待て…また油差して無ぇ」ガシ

ロボ「ピ…」ジタバタ

女ハンター「ねぇ…あのカゲミって言う人」

盗賊「んん?どうした?」

女ハンター「幽霊船に乗って居た人とそっくり…」

盗賊「あぁ…幽霊船に乗ってたのは多分マルコだ…カゲミはそいつの影武者やってたのよ」

女ハンター「影武者が必要な程危ない事を?」

盗賊「そん時俺は知らんかったんだが…マルコも白狼の盗賊団の一味だ…表の世界で顔が知られちまってるのよ」

女ハンター「そういう事ね…」

盗賊「白狼の盗賊団が…勇者一行…世間にゃ知られて居ないがな…」

女ハンター「その全員の行方が不明になって居る原因が…シン・リーンの魔術師のせいね」

盗賊「カゲミ曰く…そういう事なんだろうが…多分他にも色々情報持ってるぞ?アイツ」

女ハンター「どうしてそれが分かる?」

盗賊「あいつは昔から情報を小出しにして俺らを利用しようとすんのよ…まぁ信用は出来るから安心しろ」

女ハンター「それと…女でもあり男でもあるって言うのは?」

盗賊「そのまんまだな…体は女だが中身が男なんだ…」

盗賊「それなりに修羅場生き抜いて来たからバヨネッタの引き金引くのも早い」

女ハンター「ふ~ん…」

盗賊「なんだお前?気になんのか?」

女ハンター「いや…あういうタイプの人間は初めてだから…」

盗賊「お前も男っぽいが…やっぱどう見ても女だな?」

女ハンター「うるさい!」ドス

盗賊「おわっと!!今ロボに油差してんだから邪魔すんな!!」


---------------

『1時間後』


ドタドタ


学者「いやぁぁ安かったっすねぇ!!」

戦士「ハハ港に近いだけ有って良い物が買えて良かったじゃ無いか」

盗賊「どわ…なんだお前等…何個樽運んでんのよ…」

剣士「黒炭も白炭もすごい安いのさ…火薬も樽毎買っちゃったよ」

盗賊「マジか…」タジ

剣士「丁度ここに倉庫あるじゃない?船に積む物をもう買ってるんだ」

盗賊「樽で火薬って…」

剣士「爆弾作るのにどうせ使うんだ…作る手間考えたら買った方が安いんだよ」

学者「兄貴ぃ!!見て下せぇ!!」スチャ

盗賊「おぉ!!ミスリルダガーか…いくらしたんよ?」

学者「一本金貨5枚っす!!」

盗賊「くぁぁぁぁくそう!!俺にヨコセ!!」

学者「今晩の稼ぎ次第で…明日買いに行けるかもしれやせんぜ?」

剣士「あ!!ラスさん!!ガーゴイルの角を換金して来たよ…これ分け前!!」ジャラリ

女ハンター「あぁそんな…良かったのに」

学者「狩りは均等配分が鉄則っす」

剣士「さてぇ!!早い所黒炭と白炭で倉庫の匂いを取ろう!!」


キシャーーー


少女「うわわわ…なんか出たぁ!!」シュタタ


盗賊「何!!?」ダダ

女ハンター「あ…」

盗賊「なんだこの部屋はレイスが出るんか…どこだ!?」キョロ

戦士「ミルク…慌てないでこっちにおいで」

女ハンター「ミスリルの鈴で追い払う…」ダダ

戦士「そうだね…それが良い」


チリン チリーン…


女ハンター「…」キョロ

盗賊「んん?どっか行ったか?」

女ハンター「レイスは雰囲気のある場所に出やすいらしい…」

盗賊「こら早い所倉庫の匂い消してなんとかせんと寝られんぞ…」

剣士「おけおけ!!匂い消す効果のある物色々買って来てるんだ…姉さん!早く運ぼう!」ヨッコラ

女オーク「全部地下ね?」ヨッコラ

盗賊「また随分重そうな物を…」

剣士「それは砂銀だよ…純度の低い砂銀は安く売ってるんだ…これも匂い消しになる筈」

盗賊「なんで砂銀なんか買う気になったんだ?」

学者「あ…それ俺っちが欲しくて買ったんす…ポーションの材料になるんすよ」

剣士「これ溶かして器を作ったりも出来るさ…いろいろ便利なんだよ」

盗賊「ほーん…」

学者「兄貴も突っ立って無いで運んで下せぇ…」


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『夜』


ドタドタ


盗賊「じゃぁちっと狩り行って来るな?」

女ハンター「留守番は任せて…ミスリルの鈴が有るからレイスは大丈夫」

盗賊「おう!!ロボの事頼む」

戦士「さてミルク!実戦だ…用意は良いな?」

少女「ウルフィも居るから索敵は任せろ!」

盗賊「おーし!!今日はリコルが要よ…しっかりガーゴイルの攻撃受け止めてくれよ?」

戦士「若い者にはまだまだ負けん!行くぞ!!」ズドドド

学者「なんか張り切って居やすね…」アゼン

剣士「アハハ良いじゃない…盾持ってるリコルさんが居れば姉さんももっと戦えるんだ」

学者「リッカさんも盾を持てば済むんじゃ無いっすか?」

剣士「盾は姉さんの速さを殺しちゃうんだよ…重たい剣の威力も半減しちゃう」

学者「なるほどー…一瞬で仕留める感じっすか…」

剣士「威力は速さの二乗だからね…僕は重さが足りないけど…」

学者「おぉ!!ソレっすね…俺っちのバヨネッタも弾速早くしたいんす」

剣士「あ!!出来るかも知れない」

学者「マジっすか…」

剣士「発射する部分の予備が沢山在ったでしょ?長くすれば早くなるかも…」

学者「おぉ!!確かに…原理がローレンツ力で加速してるんでコイルの巻き数を増やせば…あれ?」

剣士「んん?」

学者「ダメっすね…与えるエネルギーに限界あるんで意味無いっすよ…魔石から取り出せるエネルギーが足りんっす」

剣士「それなら魔石2つ使ったら?」

学者「魔石の消費が増えるのも微妙っす…う~ん」

剣士「やっぱり工夫され尽くした武器なんだね…あと出来るとしたら…4発撃つのを止めて1発にする…」

学者「おぉ!?単純に4倍っすね…」

剣士「それを使い分けられる様にしたら?状況に応じてさ?」

学者「なんかイケそうな気がして来やした…その場合反動も4倍…補強が必要になるかもっすね」

剣士「おけおけ!!考えておくよ」

盗賊「お~い!!モタモタすんな!!遅れてるぞ!!」

剣士「ゴメンゴメン!!話に夢中になってた!!」シュタタ


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--------------

『数日後_とある宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「いよ~う!!戻ったぜ?ヌハハハハ」

学者「今日はご機嫌っすね…狩りはどうだったんすか?」

盗賊「やっぱ俺にはシカ狩りだ…見ろ」ジャラリ

学者「おぉ!!金貨6枚!!」

盗賊「ミルクの鼻が相当役に立つのよ…ワンコにシカを追わせて俺が背後からブスリとな?」

学者「シカ運ぶの大変そうっすね…」

盗賊「そらしょうが無ぇ…一匹づつ背負って山降りるぐらいの苦労はせんなぁヌハハ」

学者「その労力はあんま勘定に入って無いんすね…」

盗賊「って事で俺は疲れて寝る…俺は夜の狩り行かんぞ」グター

学者「あのっすね…狩りしたら分け前は均等なんでミルクちゃんにも分けないとダメっすよ?」

盗賊「馬鹿野郎2人で分けて金貨6枚だ…つまり4匹背負って山降りたのよ」

学者「ウハハそれなら良いっす…4匹背負って山降りるとかかなり体力馬鹿っすね…」

盗賊「うるせぇ!!俺ぁ寝る!!」ドタ

学者「へいへい…」

剣士「ゲスさ~ん!!バヨネッタの改造終わったよ」

学者「待っていやしたぜ?ウヒヒ…」

剣士「これで反動が大分押さえられてる筈…狙いが定まらないのはどうにもならないからそれで使ってね」

学者「まぁ仕方ないっすね…弾丸の形が丸なんでそもそも真っ直ぐ飛ばんすもんね」

剣士「近距離でドカンと一発当てたいときにだけ使う感じ」

学者「十分っすよ…これで硬い相手にもなんとか行ける様になるんで」

剣士「その銃はラスさんのライフル銃と違って弾丸に工夫が出来ないのがねぇ…」

学者「戦地で弾が簡単に入手出来る良さはあるんす」

剣士「そっか…それも利点かぁ」

学者「問題は魔石の入手なんすよね…」

剣士「さて…今日はどうするんだろう?リコルさん帰って来て無いんだけど…」

学者「今日もリザードマン狩りに行くって言ってたんで直に戻ってくると思うんすがねぇ…」


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『夕方_宿屋の外』


ザワザワ ヒソヒソ

聞いたか?城の方で騒ぎがあったらしい…

それで民兵が動き出してるのか

なんでもドラゴンに乗ったエルフがいきなり弓で城に居た奴を撃ったんだとか

エルフが?そりゃ一大事じゃ無いか!!


戦士「…ラシャニクア君…もう見えないかい?」

女ハンター「雲の上に入って見失った…遠すぎて追いきれない…」

戦士「竜巻の中にドラゴンが居るとは…驚きだな…」

女ハンター「あんなのに襲われてしまったら何も出来ない…」

少女「父ぃ!!」シュタタ

戦士「おぉミルク…気付いたな?」

少女「山でウルフが騒いでる…何か起きてるぞ」

戦士「ウルフ達も状況を分かって居ないのか?」

少女「怖がっている…父も隠れるぞ」

戦士「とりあえず今日の狩りは中止だな…宿に入ろう」


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『宿屋の部屋』


ガチャリ バタン


学者「あ…リコルさん…何すかこの騒ぎは?」

戦士「ドラゴンに乗ったエルフが突然城に居た者を殺したそうだ…今日は狩り所では無い」

学者「ええ!!?…マジすか…」

少女「父!!噂が聞こえてくるぞ」

戦士「どんな噂だ?」

少女「頭が爆発したそうだ…これは電脳化した者に違いない」

学者「ちょ…城に潜り込んで居る?」

少女「誰もその事に気付いて無い…エルフが悪者になってる…そういう噂だ」

女ハンター「じゃぁドラゴンが何度も街を襲ってる様に見えたのは…」

戦士「他にも電脳化した者を狙って居たと考えられるな…つまり何人も居たという事…」

少女「私少し分かるぞ…機械の音と匂い…ほんの少しある奴たまに居る」

学者「こりゃ大分キナ臭い感じになって来やしたね…」

戦士「城に潜り込むぐらいだと言う事は…女王が乗る船の行動も筒抜けになっているという事だな」トーイメ


盗賊「んがががが…すぴー」zzz


戦士「…」

少女「アランは呑気に寝て居るか…」ゲシゲシ

盗賊「ふごーーー…」モゾモゾ

学者「ラスさん!!ちっと俺っちと酒場でデートしやせんか?」

女ハンター「…」ジロ

学者「兄貴の代わりに情報集めに行くだけっすよ」

女ハンター「分かった…ちゃんとエスコートして」

学者「分かって居やすよ…ちっと行って来やすね?」

少女「父ぃ!!爺ぃにこの事教えに行く」

戦士「旧市街まで行くと?」

少女「行くのはウルフィだけだ…他のウルフにも遠吠えで伝える」

戦士「そうか…遠くには行くな?」

少女「すぐ戻るから待ってろ…行くぞウルフィ!!」シュタタ

ウルフ「ガウルルル!!」シュタタ


--------------

『1時間後』


ガチャリ バタン


戦士「お!!戻ったね…何か情報は聞けたかな?」

学者「やっぱエライ事になってるみたいっすね…旧市街の方で民兵にかなりの死傷者が出てるらしいっす」

戦士「やはりそうか…竜巻らしい物も見えたからね」

女ハンター「ドラゴンを見た民兵が何も知らず先に矢を撃ったらしい…それで反撃されたって」

学者「エルフは魔法も使うんすね…竜巻とドラゴンの吐く炎でメチャクチャだったって言って居やしたよ」

戦士「ゲス君は戦場医なのだろう?支援に行って見てはどうだい?」

学者「う~ん…」

戦士「それで救われる命もあるのでは無いかい?」

学者「そうっすねぇ…」

剣士「僕も手伝うよ?ポーション運ぶくらい出来る」

女オーク「ミライが行くなら私も…」

学者「じゃぁちっと行って見やすか!!」

剣士「馬車まだ間に合うかな?急ごう!!」シュタタ

戦士「私はミルクの帰りを待たなければいけないから明日の朝様子を見に行く」

学者「わかりやした…兄貴には上手く説明しといて下せぇ…ちと行って来やす!」ダダ


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『翌日』


アンタナニヤッテンノ バカジャナイノ…


盗賊「何ぃぃぃ!!ほんで俺とお前だけ残って…」

女ハンター「あんたが何しても起きないから!!」プン

盗賊「まぁしゃぁねぇ…どうすっかな…」ポリポリ

女ハンター「なんか寝言で妖精が…とか言ってたけど?」

盗賊「んあ?そうよ…なんか知らんけどフィン・イッシュ来てから妖精の夢ばっか見んのよ」

女ハンター「子供の頃…妖精に聞いた事がある…妖精は狭間の中に住んでるって…」

盗賊「狭間?なんだそりゃ?」

女ハンター「分からない…でもその狭間が何処かにあるから…妖精とか魔物が多い気がする」

盗賊「ふむ…確かに言われてみりゃ…なんで此処はガーゴイルやらレイスが多いのか謎だ…」

女ハンター「向こうの大陸じゃ殆ど見た事無いわ…」

盗賊「まぁそんな事よりどうするよ?」

女ハンター「どうするって…行き先も分からないのに動けないでしょう?」

盗賊「くっそ!ミルクも行っちまった様だしなぁ…」

女ハンター「どうせあんたが行っても怪我人の手当てが出来る訳じゃ無いんだから…諦めて買い物でもしたら?」

盗賊「おお!!?そうだ…金が入ったからミスリルダガーを買いに行くつもりだったんだ」

女ハンター「ミスリルの鈴も売って居るのなら買っておいた方が良いと思う」

盗賊「あんま金に余裕が無いんだ…てかお前の方が持ってるだろう」

女ハンター「…」ジロリ

盗賊「わーったわーった!余ったら買ってやるから付き合え!」

女ハンター「私が欲しい訳では無い…必要なのはロボの方!レイスから守らないといけないのはロボよ」

盗賊「んん?お前…ロボ守る為にいつも留守番してくれてんのか?」

女ハンター「だったら?」

盗賊「おう…悪いな…気を遣わせちまって」

女ハンター「じゃぁ早く準備して!!」ゲシゲシ

盗賊「蹴んなコラ!!」


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『市場』


ワイワイ ガヤガヤ

昨日の騒ぎでポーションの相場が高騰してるぞ…

薬草も一気に在庫無くなっちまった…くそう安売りしすぎた


盗賊「おーし!ロボ…これで動くたびに鈴が鳴る」

ロボ「ピポポ…」ウィーン チリーン

女ハンター「…」チラリ

盗賊「なんだよ?」

女ハンター「何でも無い」

盗賊「ほらよ!!お前の分だ…腰に差しとけ」ポイ

女ハンター「要求したつもりは無いけど…」パス

盗賊「何かと便利なんだ…ロボを守ってくれた礼だ」

女ハンター「フフじゃぁ頂く…」スチャ

盗賊「まぁ俺も一本手に入れた訳だし…満足よ」スチャ

女ハンター「もうお金無いんじゃない?」

盗賊「スッカラカンだ…また稼がんとなぁ…」

女ハンター「あんた本職は泥棒でしょう?」

盗賊「んあ?貧しい奴から盗む気なんざ無い…あぶく銭が余ってる奴専門だ」

女ハンター「どうやって見極めを?」

盗賊「うるせぇな!勘だ勘!!」

女ハンター「フフ…本当変な人…」

盗賊「しかし…ミルク居無ぇと狩り出来んなぁ…」ブツブツ

女ハンター「あ…あれ?あの船…何か様子がおかしい」ゴソゴソ カチャ

盗賊「んん?どれだ?」

女ハンター「なんだ…傾いてると思ったらマストが一本折れてる…」

盗賊「うは…マジか…」

女ハンター「え?何か知って?」

盗賊「そら多分バン・クーバ行く前に俺らを襲った海賊共だ…あいつ等普通に入船して来てんのか…」

女ハンター「鉢合わせてしまうかもしれないわね…」

盗賊「もう会いたく無いがな…」

女ハンター「あぶく銭の匂いは?」

盗賊「う~む…まぁちっと見て来るかぁ…」

女ハンター「私はロボと一緒に宿屋で待ってるから…稼いで来れば良いわ」

盗賊「おう!頼むわ…まぁ直ぐに戻る」タッタッタ


--------------

『数時間後_とある宿屋』


ガチャリ バタン


女ハンター「あら?稼げたかしら?」フフン

盗賊「予想した通り…船にゃ大した物乗って無ぇ…銀貨がちょろっとだけだ」ジャラリ

女ハンター「フフ…でも良かったじゃない…酒代にはなるのだから」

盗賊「それよりな?面白い物見つけたぜ?」パサ

女ハンター「書簡?」

盗賊「どうやらあの海賊共はアヘンの運び屋だった様だぜ?…」

女ハンター「ちょっと見せて…」パサ

盗賊「こっちの大陸はケシが良く育つらしい…だがフィン・イッシュでアヘンは違法…向こうの大陸に運んでる訳よ」

女ハンター「この書簡は指示書じゃない…」ヨミヨミ

盗賊「うむ…多分依頼主がフィン・イッシュに居るから戻って来てんだろう…」

女ハンター「おかしい…アヘンを捌いたお金を戻す様にはなって無い」

盗賊「だろ?アヘンをタダで流してる…まぁ一部はあの海賊の金になってるんだろうが…」

盗賊「どうやらフィン・イッシュも…何か悪い奴が蔓延ってんな」

女ハンター「バン・クーバで麻薬が安いのはこれが原因ね…」

盗賊「アヘンを一方通行で流して何がしたいのか良く分からんが…生産者にどんだけ金が流れてるのかは気になる所だ」

女ハンター「ケシの産地は何処か知ってる?」

盗賊「昔はシャ・バクダだと聞いたが…今何処なのかは知らん」

女ハンター「そういえば…市場で大麻は見てもケシは見てない…」

盗賊「そら違法だから売れんワナ…闇で流れてんのよ」

女ハンター「闇…もしかしてカゲミ?」

盗賊「その可能性もあるが…あいつはこっちに来てまだ半年ぐらいだからな…まぁ何か知っては居るかもしれん」

女ハンター「そう…なんだか昨日の騒動も関係して居そうな気がする」

盗賊「こりゃあんま首突っ込むとダメな奴だから…俺らは大人しく静観した方が良い」

女ハンター「…」

盗賊「それより宿屋でゴロゴロしてんのも暇だろう…ダガーの使い方教えてやるから立ち合いでもやらんか?」

女ハンター「あのね…あんたと私じゃ体格が違い過ぎる…勝負になる訳無いでしょう」

盗賊「勝負じゃ無い…護身術を教えてやろうってのよ」

女ハンター「私は狙撃が仕事…」

盗賊「だから狙撃中に背後からレイスでも出て来たらどうすんだ?」

女ハンター「…」ジロリ

盗賊「おっし決まりだな?浜辺行くぞ」グイ


--------------

『浜辺』


ザザー ザザー


盗賊「ロボ!!海には近づくなよ?」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「まぁそこで見てろ…」

女ハンター「…」ジロ

盗賊「先ずな?ダガーの抜き方だ…俺の真似して抜いて見ろ」スチャ

女ハンター「…」スチャ

盗賊「うむ…これが逆手って言うんだ…順手の場合はこうな?」クルリ スチャ

女ハンター「…」クルリ スチャ

盗賊「ダガーはな?剣と違って相手に懐に入られても抜けるのよ…つまり護身には最適なんだ」

女ハンター「懐に入られるってどういう事?」

盗賊「こういう事だ」ダダ グイ

女ハンター「腕を…」

盗賊「そう…まぁ暴漢ってのは大体こうやって捕まえて身動き出来ん様に体の何処かを掴もうとする…」

女ハンター「そこで抜く訳ね」スチャ

盗賊「おっとぉ!!まぁそんな感じよ…ほんでな?躊躇わずにブスリと行って良い」

女ハンター「フン!!」ググ

盗賊「おっとっとぉ!!…とまぁバレたら直ぐに両腕捕まえに来られる」グイ

女ハンター「くぅぅぅ」ジタバタ

盗賊「こっから先は体術なんだが…こうなっちまったらお前の場合終わりだと思え」

女ハンター「どうしろって言うのさ」バタバタ

盗賊「まぁゲームだ…俺が捕まえに行こうとするから両腕捕まえられない様にどうにかして見ろ」スッ

女ハンター「ちぃぃ…手が痛い…」プラプラ

盗賊「悪りぃ悪りぃ…もうちっと手加減すっから何とか凌いでみろ…行くぞ?」

女ハンター「ダガーは鞘に納めた所からね」スチャ

盗賊「当たり前だ…抜いて一撃入れる練習よ」

女ハンター「怪我しても知らないから!!」

盗賊「ヌハハ…まぁ頑張れ…行くぞ?」ダダ


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『しばらく後』


ハァハァ…

もう一回!!

ほらな?逆手の方が一振り回るだろ?

もう一回!!

おーそうだそうだ!!死角から逆回りでも良い

もう一回!!

ドン!!おっとぉ!!体術混ぜても構わんぞ?

くそ!!どうして見切られる!?


盗賊「そりゃな?お前がダガー持ってる事を俺が知ってるからだ」

女ハンター「それはどうしようも無いじゃない!」

盗賊「知らない相手には今の動きで通用するんだ…つまりダガーを隠せ…逆手で抜いて相手に見え無い様にしろ」

女ハンター「これで良い?」スチャ

盗賊「ふむ…そっから相手の隙を見て切りつけるのもまぁ良いだろう…」

女ハンター「分かった…こうだね?」ガチャリ

盗賊「どわっ!!おま…銃は」タジ

女ハンター「…」スチャ ブン!

盗賊「あっぶ!!」ヒラリ

女ハンター「分かって来た…銃の安全装置解除する前にダガーを使えそう…」フフリ

盗賊「なるほど…一旦ビビらせるってのは確かに使える…だがレイス相手にはそうもいかんから…今は銃禁止だ」

女ハンター「ちぃ…」

盗賊「銃無しでもうちっと練習すっぞ」


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『帰り道』


スタスタ


盗賊「あぁぁすっかり暗くなっちまった…」

女ハンター「ハァハァ…」ヘロヘロ

盗賊「ヌハハちっと頑張り過ぎたな?」

女ハンター「フン!!カスリもしないで悔しいだけさ」

盗賊「まぁ俺じゃ無かったら通用するから今日の動きはイメージトレーニングしとけ」

女ハンター「あんたどうして動きが見切れる?」

盗賊「さぁな?勘だ…勘…」

女ハンター「…」ギロリ

盗賊「まぁそんな怖い顔すんな…経験積んだら分かるようになるんだよ」


シュタタ クルクル ドン!!


盗賊「ぐぁ!!」ズザザー

少女「お前ーーー!!何故手伝いに来ないーー!!」シュタ

盗賊「おんどりゃぁぁ!!」ムク

少女「向こうは大変だぞ!今日もゲス達は帰らん」

盗賊「何ぃ?」

少女「血の匂いに誘われて他の魔物も来てるのだ…シーサーだったか…他にも色々だ」

盗賊「マジか…リコルはどうした?」

少女「父は残って戦ってる…民兵沢山怪我して動けない」

女ハンター「どうも援護に行った方が良さそう…」

盗賊「ロボを連れて行って安全な場所は有りそうか?」

少女「ゲスの所が安全だ…ゲスに助手が居れば尚良い」

盗賊「そうか…まだ馬車は間に合うな?」

少女「急げ!!最後の馬車が出てしまうぞ」

盗賊「どうやら今晩が稼ぎ時な様だ…行くぞ!!」ダダ


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『旧市街_臨時療養所』


ぅぅぅ…俺は動ける

ダメダメ骨が折れてるんで邪魔になるだけっす

水をくれぇ…

ちっと誰か水とか食料配ってくれやせんかねぇ…


盗賊「いよう!!頑張ってる様だな?」

学者「兄貴ぃ!なんか怪我人の処置みんな慣れて無いんでゴタゴタなんすよ」

盗賊「そんな感じだな?被害の状況はどうよ?」

学者「ほとんどの怪我人は竜巻に巻き上げられた後の落下で骨折っすね…なんで戦力にならんのです」

盗賊「重症な奴はあんま居ないみたいだが…」

学者「怪我が酷い人は忍びがどっか運んで行きやしたよ…例の頭爆発した奴も忍びが運んで行ったっす」

盗賊「なるほど?」

女ハンター「これ…何を手伝えば?」キョロ

学者「とりあえず水と食料を配って行って欲しいんすが…それはミルクちゃんでも良さそうっすねぇ」

盗賊「リコル達はどうした?」

学者「動ける民兵に混ざって魔物と戦って居やすね…兄貴とラスさんはそっち行きやすか?」

盗賊「ヌフフ稼ぎ時だな…」

学者「なんかそんな状況でも無いんすが…ポーションとかも自腹で使ってるんで取り返してきて下せぇ」

女ハンター「自腹?フィン・イッシュから支給とか無いの?」

学者「もう全部使っちまいやしたよ…慣れて無いんで皆ガブガブ飲んじゃったんすよ…一口づつで良いのに」

盗賊「ぐは…やっぱちゃんとした医者は必要だな」

学者「今晩乗り切れば動けなくて邪魔な人減って来るんで魔物退治ももうちょい上手く行くと思いやす」

盗賊「怪我したまんま戦ってる奴が居るんだな?」

学者「そうっすね…そいつら守るのに無駄な労力使ってるっぽいっす」

盗賊「軍隊と違ってそういう所が民兵な訳か…よっし!一丁魔物の数減らして来るかぁ!!」

学者「怪我したらここに戻って来て下せぇ」

盗賊「おう!!ロボ置いて行くから水運びぐらい手伝わせてやってくれ」

学者「わかりやした!!」

盗賊「ラス!!リコル達探すぞ!!来い!!」


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『翌朝』


チュン パタパタパタ


盗賊「ふぅぅぅ…終わったな?」キョロ

女ハンター「もう弾丸無い…一度戻らないと」フラ

盗賊「結局俺ら後方でガーゴイル倒すぐらいしか役に立たんかったな…」

戦士「まぁ…民兵の弓が主力だから仕方が無い」

盗賊「しかしリコル!もう鎧が傷だらけだな?」

戦士「ハハ戦った体が出て良いでは無いか」


シュタタ


剣士「アランさ~ん!!ガーゴイルの処置終わったよぉ~」

盗賊「おう!!一回療養所に戻るか…昼間の内はガーゴイル出ないから戦闘も落ち着くだろう」

剣士「そうだね…油玉も爆弾ももう無くなっちゃた」

盗賊「角はどんだけ集まった?」

剣士「ええと…ガーゴイルの角が12本…キラーパンサーの牙が2本…あとクマ倒した筈だけど死体がどこか持って行かれた」

盗賊「くぁぁぁ勿体無ぇなぁ…」

戦士「アラン君!武器類が結構落ちている様だぞ?」

盗賊「そら回収しないとな…俺見回って来るから先に療養所に戻っててくれ」

戦士「分かった…」

剣士「一回宿屋に戻るよね?もう爆弾とか無いから作らないと戦えない」

盗賊「その方が良い…お前等昨日も寝て居ないだろう?」

剣士「ちょっと休みたいかな…」

盗賊「とりあえず療養所行ってゲスと合流しといてくれ」

剣士「分かった…」


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『臨時療養所』


ヒソヒソ ヒソヒソ…

忍びの奴らが話してるのを聞いたんだ…女王の不在を狙われたってよ

不在ってどういう事だ?そういえば随分前から姿は見て無いな…

おい!狙われたって誰の事だよ?

財務担当の側近らしい…もう一人は娼館の女…ホラ一番人気の有名な奴だ



盗賊「おろ!?もう寝ちまったか…」ガチャガチャ

戦士「まぁゲス君もミライ君も疲れているのだ」

盗賊「リコルはまだ行けそうか?」

戦士「んん?何故だ?」

盗賊「宿屋まで一旦戻ろうと思ってんだが…カゲミが返って来るもんでよ」

戦士「そうか…しかし起こすのも可哀そうだな」

盗賊「ゲスは俺が背負って行く…この武器類を預かってくれ」ガサリ

戦士「ハハハ随分集めたな?」

盗賊「他にも落ちてたんだが…使いそうな物だけ集めて来たんだ…その2連式クロスボウはミルクでも使えるぞ?」

戦士「少し大きい様だが…」

盗賊「背負ってりゃ盾替わりにもなる」

女ハンター「私も半分持つ…」ガチャ

盗賊「リッカは起きてるな?ミライを背負って来てくれ」

女オーク「分かった…」ヨッコラ

盗賊「まぁ馬車に乗っちまったら少し休めるから辛抱してくれ…ロボ!!行くぞ」スタ

ロボ「ピポポ…」ウィーン


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『馬車』


パシン! ヒヒ~ン ガタゴト ガタゴト


盗賊「はぁぁ…これでちっと休めるな…」ドタ

戦士「少し酒っを持って居るが…飲むか?」スッ

盗賊「おぉ!!良い物持ってんじゃ無ぇか…一口貰うな?」グビ プハァ

戦士「レーションもあるぞ?」

盗賊「そら要らん…嫌いなんだ」

戦士「そうか…」カリ モグ

盗賊「しかし…フィン・イッシュも…ちょいとボロが透けて見えるな?」

戦士「フフ…」

盗賊「まぁ民兵頼りじゃこうなっちまうよな…」

戦士「それがこの国の特色だろう?地力は割と高いと思うぞ?」

盗賊「一枚岩になってりゃそうかもしれん…だがどうもエルフとドワーフ…オークが噛み合ってない」

戦士「ふむ…」

盗賊「昨夜も戦ってるのは人間とオークだけだ…ドワーフは新市街から動いて無ぇし…エルフは何処行ったか分からん」

戦士「つなぎ役の人間に問題有か…」

盗賊「なんつーか…頭の回るドワーフとエルフは違う事考えて居る気がすんのよ…オークは単純に人間を守る為に動いてそうだ」

戦士「先日のドラゴンの件も…そう言うのが働いて居るのだろうな」

盗賊「こっから先の話は宿屋に戻ってからにすっか…」

戦士「それが良い…あまりしゃべるとミルクが怒り出す」ナデナデ

少女「ふにゃー」ゴロン


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『翌日_とある宿屋』


ゲシゲシ ユサユサ


学者「兄貴ぃ!!起きて下せぇよ…」ユサユサ

盗賊「ふががが…ふごーー」zzz

少女「アランは一度寝たら中々起きんな」ゲシゲシ

学者「しゃぁ無いっすねぇ…俺っちが代わりに話を聞いて来やす」

戦士「ミルクも一緒に行けば問題無いと思うぞ?」

少女「仕方ない…ゲス行くぞ!」

学者「へいへい…」

少女「多分秘密の話だから聞き直すのはダメだぞ?」

学者「そういうの苦手なんすよねぇ…」ブツブツ

少女「何も言わないで聞いて居れば良いのだ」

戦士「ハハ大丈夫だよ…ラクに行けば良い」

学者「ほんじゃちっと行って来やすね…」スタ


ガチャリ バタン


盗賊「待てゴラ…むにゃ…んがが…」zzz

女ハンター「本当…呆れる…」シラー

戦士「まぁまぁ…それよりラシャニクア君…接近戦闘はいつから?」

女ハンター「この間アランに少し教えて貰っただけ…」

戦士「ふむ…後衛が少しでも接近戦闘出来ると随分助かるんだ…是非訓練を続けて欲しい」

女ハンター「訓練の仕方を教えて貰って無い…」

戦士「船に訓練用の木人でも用意したら良い」

剣士「ああああ!!ソレだ!!木人!!」

戦士「おっと…何か思いついたかね?」

剣士「船に乗ってる人数をごまかせる!!海賊対策になるじゃない!!」

戦士「ハハハそういう使い方も出来るねぇ」

剣士「姉さん!!良い事思いついた!!木材買いに行こう!!」

女オーク「何処に置く気?もうここには置き場が無いわ」

剣士「船の横に倉庫が有ったじゃない…そこに運べば積んでもらえる…というか今使わない物資はもう運んでおこう」

女オーク「ウフフ分かった…じゃぁ運びましょう」


--------------

『1時間後』


ガチャリ バタン!


学者「兄貴は起きやした?」ドタドタ

女ハンター「まだよ…」シラー

学者「あらら…」

女ハンター「ギルドからの連絡はどうだったの?行き先とか…」

学者「もう連絡してあるって言うんすよ…貰ったのは海図だけっすね」パサ

女ハンター「海図…」ジロ

学者「北側の地形と岩礁とか海流が記されてるだけっすね…何処に行けっていう指示が無いんすよ」

女ハンター「ミルクは何か聞いてないの?」

少女「アランが知ってる…私は聞かされてないぞ」

戦士「ハハ毎度の事だ…」

学者「こんな感じなんすか…」

戦士「その他に先日のドラゴンの件とかは何か言って無かったか?」

学者「忍びも盗賊ギルドも認知して居るから関わるなと言って居やしたね」

女ハンター「認知?」

学者「なんか内側に…」

少女「ゲス!!その話は船に乗ってからにしろ…お前おしゃべりだ」

学者「へいへい…壁に耳あり障子に目ありっすね…」

戦士「済まん済まん…要らん問いをしてしまった様だ…素直に従うしか無いな…ハハハ」

女ハンター「…」

学者「ほんで船の補修がそろそろ終わりそうなんで荷を積んで良いらしいっす」

女ハンター「丁度ミライとリッカが荷を運んでくれているよ」

学者「そうっすか…俺っちも物資買っとかないともうポーション無いんすよね…」

女ハンター「魔物を倒したのは良いけれど…使った分を差し引くとあまり儲かって居ない様ね…」

学者「むしろ損してるっす…儲かったのは兄貴が持って帰った武器類の分っすよ…ポーションが意外と高いもんで」


盗賊「ハッ!!」パチ ムクリ


学者「おわ!!兄貴ぃ!!起きやしたね?」


盗賊「…」キョロ?

学者「なかなか起きんもんでギルドの連絡は俺っちが聞いてきやしたぜ?」

盗賊「おい!!地図かなんか預かって無ぇか?」ドタドタ

女ハンター「…」ピラピラ

盗賊「おぉぉそれか!!見せろ!!」ダダ

学者「ちょ…兄貴?どういう事っすか?」ハテ?

盗賊「マジか…ミルク!!お前こんな方法で連絡し合ってんだな?」

学者「え!?」

少女「お前気付くの遅い…」

女ハンター「アラン?もしかして…夢で?」

少女「それ以上言うな…何処に機械あるか分からんぞ?」

盗賊「ヌハハ確かに…やっと理解したぜ…此処ん所ずっと同じ夢見てたのよ」

少女「分かったらサッサと船に荷物積むのだ…話はそれからだ」

学者「船がもうすぐ補修終わるんで荷を積んで良いらしいっす」

盗賊「そうか!!集めた武器も持って行かんとな!?」

学者「ほんじゃ荷入れに行きやしょう!」


--------------



『造船所』


エンヤーコーラ ドッコイセー


船大工「どやーー!!ピッカピカやろー!!」

盗賊「おぉ!!船底を赤く塗ったんか…」

船大工「これでフジツボが付かんくなるで速度乗るんやで?」

剣士「アランさ~ん!!」フリフリ

盗賊「ヌハハもう乗ってんのか…俺も荷を積みに来た所だ」

船大工「ワイらも依頼の荷を積まなアカンで持ってきたもんはとりあえず居室入れとくんや」

盗賊「依頼って何積むんだ?」

船大工「木材やら松脂やらいろいろや」

盗賊「そらありがてぇ」

船大工「荷を積んでしばらく復元力を検査するからまだ出港は出来んぞ?そやな…明後日やな」

盗賊「復元力?どっか改造でもしたんか?」

船大工「船底を黒鉄で補強しとるでちっと具合が変わっとるんよ…まぁ楽しみにしとり」

船大工「あとな?今船に乗っとる2人に手入れの仕方を教えて置くで今日は船で泊らせや?」

盗賊「おう!あいつら中々良い仕事するぞ?」

船大工「そやなぁ!エライ船を褒められてワイも嬉しいわ」

盗賊「ちっと俺も中見てくんな?」

船大工「散らかすなや」


--------------


『キャラック船』


ドタドタ


盗賊「うほーー…ロープも全部張り直してんな…」ギシギシ

剣士「帆も防水加工してあるよ!スゴイね」

盗賊「船底は見て来たか?なんか鉄で補強したとか言ってたが…」

剣士「それ船の外側だね…海に浸かってるからもう見えないと思う」

盗賊「外側…」

剣士「岩礁に当たっても穴が開きにくくしたんじゃないの?」

盗賊「なるほど…」

剣士「船の内側は樹脂で隙間しっかり埋めてその上から塗装してるからピッカピカだよ」

盗賊「うむ…歩いただけで違いが分かるわ」

剣士「そうそう!あのドワーフの船大工がこの船に天測器が無いから航海士が居るのか心配して居たんだけど…」

盗賊「ぐぁ…そうだ航海士居無ぇな…測量とかそういう奴な?」

戦士「ミルクの鼻ではダメか?」

盗賊「まぁ外海のど真ん中行く訳じゃ無いからそれで行くだな」

女ハンター「星の角度を測るくらいなら私のスコープで出来る」

盗賊「お!?そんな機能が付いてたんか?」

女ハンター「角度を測る器具は別に必要になるけど…ちょっと後で市場に探しに行ってみる」

盗賊「俺もちと航海術の書物でも買っておくか…」

剣士「あ!!角と牙あるからお金と交換しなきゃ」

盗賊「ミライとリッカは船に残れとあの船乗りが行ってたぞ?俺が交換してくるから寄越せ」

剣士「分かった…」ゴソゴソ

剣士「…でも何の用事で船に?」

盗賊「船の手入れの仕方を教えたいんだとよ」

剣士「おぉ!!それ僕も知りたかった!!」

盗賊「そりゃ良かった」

剣士「船大工かぁ…良いなぁ…完璧な船作って見たいなぁ…」

盗賊「どうやらお前に向いて居そうだ…しっかり教えてもらうだな?ヌハハ…」


---------------

『街道』


ゴロゴロ


盗賊「荷車ゲット出来てて良かったわ…」ゴトゴト

学者「ロボもラク出来やすからねぇ」

ロボ「ピポポ…」クルリン

盗賊「あと足りない物資って何だ?水も食料もまだそこそこ乗ってたよな…」

戦士「どのくらいの期間航海するかにもよると思うが?」

学者「薬っすね…ポーションだけじゃダメなんで…買う物結構色々ありやすよ」

戦士「栄養も偏らない様に考えておく必要があるぞ?」

盗賊「って事は保存食を色々買うのと…フルーツとかありゃ良いか」

学者「ちっと物資調達は俺っちがやっても良いっすか?なんか兄貴だと酒とか肉ばっかり買いそうなんで…」

盗賊「なんだとう!!」

女ハンター「正解!」

盗賊「ケッ!!勝手にしやがれ!!」

学者「兄貴は天測器とか航海士に必要な道具を調達出来やせんか?…これ買うと多分高いっすよ」

盗賊「お!?そういや帆が折れたスクーナーに色々乗ってたな…」

戦士「んん?帆が折れたスクーナー?」

盗賊「そういやリコルは知らんかったか…俺らを襲った海賊共が普通に入船して来てんだ」

学者「うは…マジっすか」

戦士「海賊船が入船してるとはおかしな話だな…」

盗賊「どうやらフィン・イッシュから向こうの大陸にアヘンを密輸してんのよ…ここじゃ商船って事になってんだろ」

戦士「おや?…先日殺されたのは財務担当の側近だったね…なんだか臭いねぇ…」トーイメ

盗賊「あんま首突っ込まん方が良いな?」

学者「とりあえず兄貴には兄貴のやり方で調達お願いしやすよ…あんまお金に余裕も無いもんで」

盗賊「まぁ楽勝だ…ちっと行って来るわ」

学者「頼んますぜ?」


---------------

『夜_とある宿屋』


ヒソヒソ ヒソヒソ

あの女…まだこの辺に居る筈だ…探せ

逃がしゃし無ぇぞ…あんな金づる滅多に居無ぇ


少女「騒がしいな…何か有ったみたいだぞ?」

盗賊「んん?何か聞こえたか?」

学者「兄貴ぃ!!ちっと腹減ったんで酒場で何か食いやせんか?」

盗賊「おぉ…だが俺は金が無くてよう…」

学者「俺っちが出しやすよ…豆ばっかじゃ腹膨れんっす」

盗賊「同感だ!!お前のおごりでちっと出るか?」


トントン…


盗賊「んん?誰だ?」

男の声「僕だよ…鍵開けて」

盗賊「おぉ!!今酒場行こうと思ってた所だ」カチャリ


ガチャリ バタン!


影武者「鍵閉めて!」ダダ

盗賊「ん?おう…どうしたんよ?」カチャリ

影武者「ちょっと追われてる…隠れたいな」

盗賊「地下に倉庫があるが?どうした?」

影武者「前に僕を裏切った傭兵にばったり出くわしちゃったのさ」

少女「んん?外の声か?こっちに来るぞ?」

影武者「倉庫に隠れる…上手く追い払って」スタ


ドンドンドン!


盗賊「なんだこりゃ…面倒な事になって来たな?」

野郎の声「おい!開けろ!今此処に女が入って行っただろう」ドンドンドン

女ハンター「私が出ようか?」

盗賊「上手く追い払ってくれ…」ヤレヤレ

野郎の声「おらぁ!!ここに居るのは分かってんだ!!開け無ぇと…」


ガチャリ ギー


野郎1「どわ!!急に開けんな馬鹿野郎が…」ヨロ


女ハンター「何?迷惑なんだけど…」ジロリ

野郎1「なんだお前偉そうに…っとなんだ男が何人もゾロゾロと…」

ウルフ「グルルルル…」

野郎2「おい!!ウルフまで居るぞ…」タジ

女ハンター「…で?何の用?」

野郎1「とぼけんなゴラ…今一人ここに女が入って来ただろうが…俺らはそいつに用が有んだ」

野郎2「大人しくしてりゃお前等に用は…んん?おい!こいつ等…」

学者「あらららバレちゃいやしたね…」チャキリ

野郎1「おっと!そうは行か無ぇぞゴラ!!」グイ

女ハンター「あ…」ギュゥ ジタバタ

野郎1「撃てるもんなら撃ってみろ!!グハハハハ」

野郎2「こりゃツイてる…銃まで手に入りそうだ…そいつを降ろして俺らに従え」

学者「ええと…」ウーン

女ハンター「くっ…」チラリ

盗賊「おっと…こりゃ敵わん…」コクリ


スチャ ブスリ!!


野郎1「ぐぁ!!さ…刺しやがった…このあまぁ!!」ボタボタ 

盗賊「おっと!!」ダダ グイ

野郎2「あだだだだ…」ボキボキ

盗賊「こりゃ形成逆転だな?リコル!!そいつを押さえろ」グイ

戦士「あらあら…」グイ

野郎1「離せゴルァ!!」バタバタ

盗賊「騒がれると面倒だ…落とすぞ?」ゴン!!

戦士「フン!!」ゴン!!

野郎共「ぐへぇ…」ドタリ

盗賊「ミルク!他に仲間は居そうか?」

少女「少し遠くをウロウロしてる」

盗賊「どうすっかなぁ…樽に積めて海に放って来るか」

学者「ウハハそれで行きやしょう…」

盗賊「その前に軽く手当してくれ…死んじまったら寝覚めが悪い」

学者「そーっすね…とりあえず身ぐるみ剥ぎやしょう」ゴソゴソ


--------------

『手当て』


ヌイヌイ…


盗賊「おぉぉこいつ等結構金持ってんな…金貨20枚ぐらい持って居やがる」ジャラ

学者「手当てしたは良いんすが…樽に入れて海に流しても目を覚ますと色々マズそうっすねぇ…」

盗賊「ううむ…手足縛って倉庫ん中に置いて行くか」グイ グイ ギュゥ

戦士「それが良さそうだ…船に乗って居た方が安全だろう」

少女「他の仲間がウロウロしているから今外に出るのは危ないぞ?」

盗賊「どんくらい居るのよ?」

少女「正確には分からん…15人ぐらいか」

学者「多いっすね…見つかると騒ぎになっちまいやすね…」

盗賊「しゃぁ無ぇ…アイツらの船燃やしてタゲ逸らすか」

女ハンター「もしかしてここから私が狙う?」

盗賊「いや…街中で銃声聞かれるのもマズイ…ちっと俺が行って燃やして来るから荷物纏めといてくれ」

戦士「荷車ごと移動するのだな?」

盗賊「そうなるな…色々買ってんだから置いて行く訳にもいくめぇ…盗んだ器具類もあるんだからな」

学者「兄貴を待ってれば良いんすか?」

盗賊「どうすっかなぁ…タゲが逸れてチャンスが出来たら先に移動した方が良いかも知れんな…」

少女「任せろ…匂いで分かる」

盗賊「俺は後から上手く合流すっから上手くやってくれ…ほんじゃちっと行って来るな?」

学者「気を付けて下せぇ」ノシ

盗賊「おう!!じゃぁな!!」


ガチャリ バタン! タッタッタ…


--------------

--------------

--------------

『1時間後_宿屋の裏』


ザワザワ ヒソヒソ

なんや何処かの船が燃えとるやないか!?

おいおい俺らの船のすぐ隣じゃ無ぇか…親方呼んで来い!!


少女「チャンスだ…匂い移動してる」

戦士「よし!カゲミさん…行けるかね?」

闇商人「僕は多分隠れて居た方が良い…荷車に乗らせて貰う」ピョン

学者「他にも見られるとマズイ感じっすか?」

闇商人「そうだね…僕が買う予定だった船の代金を払って居ないんだよ」

学者「あらら…なんか色々問題抱えてるんすね…」

闇商人「全部アイツらが裏切ったせいだよ…船も奪われて借金だけ僕に残ったのさ」

商人「父!!荷車移動するぞ!」

戦士「おう!!」グイ ゴロゴロ

学者「ガーゴイルが上で旋回してるんで一応気にしといて下せぇ」

女ハンター「私が見ておく…行って」


ガタゴト ガタゴト…


---------------

『キャラック船』


ドタドタ…


女ハンター「私見張り台に上がって桟橋の様子見て来る」タッタ

学者「ええと…とりあえず荷を居室に入れやしょう…よいしょ!!」ヨタヨタ

剣士「あれぇ!?どうしたの?」シュタタ

戦士「少しゴタゴタが起こってね…船の方が安全だと思って来たのだよ」

剣士「そうなんだ?…なんか向こうで船が燃えてる様だけど…それだね?」

戦士「燃えて居るのはリッカ君がマストを折ったスクーナーなのだよ…どうやら縁がある様だ」

剣士「アハ…追いかけて来てるのかぁ…」

戦士「向こうは私達が造船所で補修しているとは思って居ない様だ…こちらに居た方が安全だろう」

闇商人「僕はそういう訳に行かないけどね…どこか隠れる場所は無いかい?」

剣士「う~ん…船尾楼は操舵で人が出入りするから…」

戦士「水が入って居る樽を空ければ隠れられそうだが?」

闇商人「それで良い…借金があってドワーフの船大工に顔を会わせられないんだ」

剣士「おけおけ!樽一個空けるね…こっちだよ」スタ

闇商人「ふぅ…やっと落ち着ける…」スタ

戦士「ミルク!周囲を警戒しててくれ」

少女「背中撫でろ」

戦士「寝てしまうのでは無いか?」ナデナデ

少女「ウルフィも居る…大丈夫だ…ふぁ~ぁ」コテン

女ハンター「なんか…桟橋の方で乱闘が起きてる…」ジーー

戦士「ハハ狙った通りだねぇ…さすがアラン君だ」


スゥ…


盗賊「いよぅ…上手く撒いて来たぜ?」

戦士「おぉ戻ったか…こちらは静かな物だ」

盗賊「カゲミは何処行った?」

戦士「船尾楼に入れてある樽に隠れるそうだ」

盗賊「よっし!やっと落ち着いて話が出来そうだ」

戦士「その前に腹ごしらえが必要なのでは?」

盗賊「ヌハハそうよ腹減ってんのよ…ちっと肉でも食いながら話しすっか!」

戦士「それが良い…」


--------------

『船尾楼_小さな炉』


ジュゥゥゥ モクモク


学者「やっと肉に有り着けやしたよ…」ガブリ モグモグ

盗賊「フィン・イッシュは以外と肉が高けぇな?」ガブ モグ

学者「そーっすね…多分資金回収なんすよ」

闇商人「僕もお腹が空いて居るんだ…気を使って貰って良いかい?」

盗賊「ヌハハ樽の中じゃぁなぁ…」

剣士「僕は肉食べないからあげるよ…ハイ」ゴソゴソ

闇商人「ありがとう…」パク モグ

盗賊「ほんで?ドワーフの海賊と取り引きってのは上手く行ったんか?」

闇商人「そうだね…」

盗賊「何を取り引きしたのよ?」

闇商人「まぁ…情報さ」

盗賊「くぁぁぁ…やっぱお前いろいろ隠して居やがる…話したく無きゃまぁそれでも良いが…」

闇商人「コレだよ…」ポイ バサ

盗賊「お?なんだ?海図か?」

闇商人「ドワーフの海賊だけが持ってる世界の詳細地図さ…それを手に入れたんだ」

学者「ちっと見せて下せぇ…」ドタドタ

盗賊「おぉぉ…海図じゃ無いが…こりゃ相当詳細に書かれた地図だな?」ペラペラ

闇商人「その地図で記された何処かに…ホムンクルスが匿われているんだよ」

盗賊「場所は聞き出せて居ないんか?」

闇商人「教えてくれない…まぁでも…世界地図が手に入っただけ前進したと思えば良い」

盗賊「なるほど?…ほんでお前は何を出したのよ?」

闇商人「隠しても仕方ないから教えてあげるよ…女王が書いた伝記さ…」

盗賊「やっぱりそうか…」

闇商人「ハハ薄々感づいて居たね?」

学者「俺っちも内容が知りたかったっすね…勇者とか海賊王の娘の行方とかっすよね?」

闇商人「早い話そうだね…前にシン・リーンの魔術師達が魔法を使って言論統制をしていると言っただろう?」

学者「それと関係が?」

闇商人「書物に記された物までは消せないのさ…勇者の仲間の誰が行方不明で誰が生き残って居るのか記されて居たんだ」

盗賊「それをドワーフの海賊が欲しがる理由って何だ?」

闇商人「海賊王も…娘の行先を追って居るからだね」

盗賊「なるほど…」

闇商人「まぁ僕だけ知って居ても仕方が無いから全部話してしまおうかな…実は20年前…」


海賊王の娘アイラが黄金郷を発見したのは有名な話だね…

その時本当に行方不明になったのは勇者アイリーンとシン・リーンの魔女ルイーダ…

そしてシャ・バクダ王朝最後の末裔サルマンの3人なんだ

海賊王の娘アイラはその3人を捜索する為に1年ほどかけて黄金郷をサルベージする基礎を作った

海底から初めに発見されたのは全身宝石へと姿を変えた魔女ルイーダ

その後彼女をシン・リーン女王の下へ運んだけれど…宝石へと姿を変えたルイーダの経緯を知って女王は言論統制を始めた

何故かと言うと…

海賊王の娘を含む勇者一行がした事…それはこの世の神を滅する行為だと悟ったから…

この人間の世界で…神が滅んだという事が世に伝わるのを防いで居るんだ

なぜなら…人間の根底にある真理…そこに神が居るから道徳が保たれる

それが無くなってしまったと世に知れてしまえばすべて倫理がすべて瓦解すると考えたのさ


闇商人「だから宝石となったルイーダを運んだ商人のマルコさんは…事情を知る者として捕らわれの身になった…」

闇商人「その後…フィン・イッシュへ訪れた魔術師達は事情を知る者の記憶を次々と消して行く…」

闇商人「そして事態の異常に気付いた海賊王の娘アイラは…幽霊船と共に姿を消したんだ」

盗賊「そりゃフィン・イッシュ女王の記憶も消されたと思って良いのか?」

闇商人「さぁ?そこまでは分からない…でも今回海賊王の娘に扮して誘き出しをやって居るのは…多分記憶が有るからだと思う」

盗賊「とりあえず…居場所がハッキリして居そうなのが商人マルコだけか…」

闇商人「魔女ルイーダは眠り姫としてシン・リーンに安置されて居るらしい」

盗賊「ホムンクルスはなんでドワーフに囲われてんのよ?」

闇商人「言論統制が始まる前…出産の為に名もなき島という場所に行ったらしい…でもその場所が分からない…」

盗賊「そうか…結局マルコ探して聞くしか無い訳か…」

闇商人「まぁ…先に海賊王の娘アイラと会う事が出来たなら…そっちから聞いた方が安全かもね」

盗賊「安全?魔術師に記憶消されないで済むってか?」

闇商人「うん…でもどの道僕はマルコさんを救いに行くつもりだし…その為には君の力が必要なんだよ」

盗賊「なるほどな?姉御が急に旅に出ようって言い出したのは…お前と既にそういう話をしてたんだな?」

闇商人「それは少し違う…ニーナは単純に君の願いを叶えようとしてた…少し…何か感付いて居た所は有ったかもしれないけど」

盗賊「何か?」

闇商人「世界の異変と言えば良いかい?電脳化した者が何を成そうとして居るのか…」

盗賊「おいおい…完全体のホムンクルスと何か関わってるってのか?」

闇商人「君は知らないんだね…完全体のホムンクルスの脳は機械なんだよ…マルコさんはそれを研究してた」

盗賊「マジか…ロボの真逆って事か…」

闇商人「君も…機械と向き合わなきゃいけないのさ…そこらへんは覚悟しておくんだね」

盗賊「向き合うも何も…俺はロボにホムンクルスの肉体を与えたいだけだ」

闇商人「機械もそれがしたいんじゃないのかい?」

盗賊「なぬ!?」

闇商人「機械が欲して居るのはエネルギーでは無く…恐らく命を欲している…そうは思わないかい?」

盗賊「…」---目的が俺と同じ?---


---アナログハック---

---まさか俺は誘導されてるんか?---

---いや待て…俺じゃ無ぇ---

---ロボは…ミファは命を欲しているのか?---

---ミファは何が欲しいんだ?---

『翌日_甲板』


ドタドタ…

木材は船底の方やぁ!!

樽と箱物はきちんと並べて積むんやで…動かん様に袋物使えな?


盗賊「荷の積み方変えたんか?」

船大工「そやなぁ…ちぃと重心低くなっとるで転覆しにくくなっとるが揺れが早いんよ」

盗賊「ほーん?」ポカーン

船大工「あんまり揺れが早いと荷が動くでな?甲板に大砲でも乗っとりゃちっとマシなんやが…」

盗賊「なるほど…積み方工夫して重心を変えてんのか」

船大工「海に出て揺れが気になる様やったら水入れた樽を甲板に出せばマシになるで覚えときぃ」

盗賊「あと小舟がえらくちっこくなってんだが…」

船大工「乗ってた小舟は穴が開いて使えんでほかったわい」

盗賊「この小舟は3人ぐらいしか乗らんだろ…」

船大工「よう見てみぃ!!2隻重なっとるやろ…繋いで双胴船にすりゃ10人ぐらい乗るんや」

盗賊「おぉ…」

船大工「双胴船にすりゃ帆も立てられるんやで?工夫して使えや」


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『船首楼_作業場』


トンテンカン ギコギコ


剣士「姉さんの鎧をこの木人に着せて行って?」

女オーク「分かったわ…」ガチャガチャ

剣士「使って無い武器も持たせようか…そうだな槍が良いかな」トントントン

戦士「ハハハ…やけに作り込んだ木人だね」

剣士「あ!!リコルさん!!これアーマースタンドとしても使えるんだよ」

戦士「なるほど?鎧を脱いで居る時は木人に装着しておけば良いのだね?」

剣士「うん!!もう一個作るから待ってて!」トンテンカン

戦士「そうか…この木人を甲板に置いておけば遠くから見て人が居る様に見えるか」

剣士「訓練用の木人としても使えるよ…関節を動かせる」グイ

戦士「ほう?盾も持たせられそうだね?」

剣士「勿論!!矢を防ぐ障害物にもなる」

戦士「それなら木型の大砲が有っても良いねぇ…」

剣士「おおおおお!!なんちゃって大砲かぁ!!そうか…運びやすいな…色々使えそうだ!!」

戦士「ちょっとした腰掛になって休めそうだ」

剣士「黒い塗装かぁ…」

戦士「丁度暇だから塗料を買って来てあげようかい?」

剣士「それ助かる!あとでお金出すよ」

戦士「まぁ待って居てくれ」スタ


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『見張り台』


ヒュゥゥ ユラ~


女ハンター「アラン!!こっち来れる?」

盗賊「んあ?何か見つけたんか?」

女ハンター「昨夜の海賊達…」ジー

盗賊「今行く…」ヨジヨジ

女ハンター「桟橋の方で集まってる…何か狙って居そう」

盗賊「ほっ!!」ピョン スタ

女ハンター「あ!!やっぱり…」

盗賊「どこよ?」キョロ

女ハンター「望遠鏡持ってるでしょう?」

盗賊「船尾楼に置きっぱなしだ」

女ハンター「呆れた…」

盗賊「んで?何かやらかしてんのか?」

女ハンター「さっき到着した船に一斉に乗り込んで行った」

盗賊「マジか…アレだな?」

女ハンター「なんか手慣れてる…一枚帆を張り出した」

盗賊「船強奪か…やるな…人数揃ってりゃ簡単なもんだな…」

女ハンター「三角帆2枚のキャラベル船よ…多分商船」

盗賊「俺らが閉じ込めた2人も居そうか?」

女ハンター「居る…指揮取ってるみたい」

盗賊「なんかあいつ等とどうも縁が在りそうだな…もう会いたく無いが…」

女ハンター「意外と優秀な気がする…行動が早い…」

盗賊「その筋じゃやり手なのかも知れんな?おお!?民兵が弓撃ちだした…」

女ハンター「矢を送って居る様な物…撃つだけ無駄」

盗賊「だな?オークの撃つ矢はそのまま槍として使える」

女ハンター「ここから帆を焼くことも出来そうだけど…」

盗賊「止めとけ…こっちはまだ動けん…居場所を晒しちまう」

女ハンター「どんどん陸から離れて行って…もう打つ手なしね」


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『船尾楼』


ガチャリ バタン


学者「あ!!兄貴ぃ!!今海図と世界地図整理してるんすけど…」

盗賊「んあ?記打った場所動かすなよ?」

学者「分かって居やすよ…これが行き先っすね?」

盗賊「まぁな?名前はもう忘れた」

学者「何があるとか分かってるんすか?」

盗賊「夢の中の事だからあんま覚えて無いのよ…そこに村か何かあるぐらいしか思い出せん」

学者「大丈夫なんすかね?…そんな感じで?」

盗賊「寝りゃ又なんか夢見るかも知れん…今度は俺も分かってる訳だからもうちょい詳しく分かれば良い」

学者「とりあえずの行先は…ええと…」

盗賊「その記は多分あの派手な婆ぁの寄港地だ…2~3つすっ飛ばすのを考えてる」

学者「もう半月以上差があるんで結構厳しいっすねぇ…」

盗賊「どうせ寄り道して数日滞在してんだろうから追い付けると思うんだけどな…」

学者「それと兄貴ぃ…海図に書かれてる岩礁地帯なんすが…世界地図と比較してちょとズレて居やすね…」

盗賊「なぬ!?」

学者「世界地図の方が正確そうなんで修正した方が良いっすよ」

盗賊「世界地図には岩礁なんか書かれて無いぞ?」

学者「いやいや…島の場所とか地形がズレてるんす」

盗賊「そういう事か…岩礁は避けたいな」

学者「これもう一枚海図起こした方が良くないすか?」

盗賊「そうだな…地図書くのは割と得意だから書き直すわ…うむ…確かに世界地図の方が色々詳細に書かれてんな…」ジロジロ


ググググググ ユラ~リ


盗賊「お!?」キョロ

学者「おとととと…」

盗賊「そういや復元力の確認するとか言ってたな」

学者「居室に突っ込んだ荷もそろそろ片付けたいっすね」

盗賊「そうか?俺はこのままでも良いがな?」

学者「グチャグチャじゃないっすか…」

盗賊「なんつーか…木箱と樽に守られてる感じがしてよ…そうそう秘密基地みたいな感じだ」

学者「これ崩れたら出入口塞がっちまいやすぜ?」

盗賊「ヌハハお前にゃ分からんか…木箱の陰の安心感がよ…この隙間から向こう側を伺うんだ」コソーリ

学者「ギャング育ちは感性がちっと違いやすね…」ヤレヤレ


ググググググ ユラ~リ


盗賊「おわっとととと…こりゃ荷が崩れそうだ」ガシ

学者「ちっと荷室に片づけやしょう」


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『夕方_甲板』


ドタドタ…

日が落ちる前に終わってよがったなぁ!!

例の酒場でお疲れさん会でもやろか?ガハハハ


船大工「さぁて撤収やぁ!!」

盗賊「おう!ご苦労!!これで何時船を動かしても良いな?」

船大工「ええけど夜行くのは止めとき…沖に出て直ぐ魔物に襲われるで」

盗賊「確かに…」

船大工「桟橋に移動する程度やったら問題無いが…又入船料取られるで今晩は此処に居ったらええ」

盗賊「まぁそういう訳にも行かなくてよ…俺ら急いでんのよ」

船大工「ほうか?ほんならコレ持って行け」ポイ

盗賊「おぉ?…」パス

船大工「ミスリルの鐘や…ドワーフは皆持っとるんやで?」

盗賊「良いのか?貰っちまって?」

船大工「海賊王の娘さん探しに行くんやろ?ちっと聞こえてしもうたんや」

盗賊「ヌハハ秘密にするつもりも無かったんだがな?」

船大工「それからおまん所の大工居るやろ?あれはドワーフの血が入っとるで?良い船大工になりそうや…餞別思うて持って行け」

盗賊「ミライか…あいつは俺らの隠し玉よ」

船大工「まぁ期待しとるで?海賊王の娘さん見つけたらワイがこの船補修した事を伝えてくれや」

盗賊「おう!!」

船大工「ほな又な?」ノシ

盗賊「世話になった…あばよ!!」ノシ

船大工「おまんらぁぁ!!酒場で打ち上げやぁぁ!!」ドスドス

盗賊「…」---ドワーフ達が見ている方向---


---なんとなく分かって来たぜ?---

---海の向こう側見てんだな---

---なるほど人間の小競り合いなんかどうでも良いか---


『出港』


ガラガラガラ


盗賊「おーし!!碇上げたぞぉぉ!!帆を開けぇ!!」ドタドタ

剣士「えっほ!えっほ!」グイグイ

学者「兄貴ぃ…凪時であんま風が無いっす…」

盗賊「直に陸から風が降りて来る…まぁお試し帆走だ」

戦士「夕日があるうちに沖へ出ておきたいがな?」


スタスタ


闇商人「ふあぁぁぁ!!」ノビー

盗賊「おうカゲミ!!やっと樽から出て来たな?」

闇商人「もう膝が痛くて…」

盗賊「いつまでフード被ってんのよ…もう誰も居ないぞ?」

闇商人「これで良いんだよ…それよりもう何日も水浴びして居ないんだ…自分の体臭が臭くてたまらない」

剣士「あ!!湯を沸かそうか?姉さんも水浴びしたいよね?」

女オーク「そうね…宿でゆっくり出来なかったし…」

盗賊「まぁ…凪で船は進まんし…今の内に水浴びしとけ」

学者「兄貴も大分汚れていやすけどねぇ…」ジロ

盗賊「俺は海水でザブサブ流すだけで構わん」

剣士「まだ水には余裕があるから順番で水浴びしよう」

学者「そーすね…俺っちも流したいっすよ」

盗賊「しかし…やっと自由になれた感じだ」

戦士「飲むか?」スッ

盗賊「おぉやっぱ酒か…」グビ プハァ

剣士「じゃぁ湯を沸かして来るね」シュタタ

闇商人「良く見ると…中々良い船だねぇ…」キョロ

戦士「塗装し直して見違えたな?雨漏りで苦労した船とは思えん…ハハハ」

闇商人「船尾楼のデッキに重クロスボウ2つか…ふむ」

盗賊「メイン火力はラシャニクアの遠距離狙撃よ…中距離は爆弾の遠投…ほんで近距離はゲスとお前のバヨネッタ」

少女「私の2連クロスボウも忘れるな」シャキーン

闇商人「なかなかの火力だね…これなら海賊も追い払えそうだ」

盗賊「んん?海賊?」

闇商人「大陸の北側は海賊だらけの筈さ…一番相手にしたく無いのがドワーフの海賊達だね」

学者「まーた海賊っすか…」

闇商人「ある意味この船も海賊船だと思うけどね…まぁ北側は今までよりももっと無法地帯なのさ」

盗賊「そうそう…そういやお前なんで昨日の海賊を雇ってたのよ?どんな繋がりだ?」

闇商人「向こうの大陸では麻薬の取り引き相手だったのさ」

盗賊「やっぱりお前が闇で流してたんか…」

闇商人「まぁ僕だけじゃ無いけどね…彼等は行動力があって意外と優秀だったんだよ…だから雇ったんだけど…」

盗賊「盗賊ギルドに雇い返された訳な?」

闇商人「そうだね…僕が出す以上の金か女で簡単に買収出来るのさ」

戦士「カゲミ君…君はアヘンの出所を知って居るのかい?」

闇商人「勿論…フィン・イッシュの国策だよ」

盗賊「国策?」

闇商人「タダ同然の物資を流通させる事でその他の物資も流通が促されるのさ…海賊が動き回るのも流通が活発な証だよ」

盗賊「それじゃフィン・イッシュの資金が枯渇しそうなんだけどな…」

闇商人「そうだね…どうやりくりして居るのか分からないけれど…財務を束ねている人物が優秀なんだとは思う…」

盗賊「あ…お前知らん様だな?」

闇商人「何を?」

盗賊「その財務担当の側近がこの間暗殺されたんだ…エルフにな?」

闇商人「エルフに?…」ギラリ

盗賊「その辺りの事情が俺ら良く分からん…何か知ってるか?」

闇商人「ふ~む…裏が在りそうだ…そもそも僕があの傭兵に裏切られたのもそんな事情が隠れて居たのかも知れない」

盗賊「そんな事情?」

闇商人「きっと僕の存在が財務担当の手足になってると見えてたという事さ…それなら盗賊ギルドの行いも納得がいく」

学者「ちっと待って下せぇよ?財務担当の暗殺は盗賊ギルドも絡んでるって事なんすかね?」

闇商人「確実な事は言えないね…ただ盗賊ギルドの連中は特殊な方法でエルフと連絡が出来るそうだよ」

戦士「ミルク?」

少女「…」シラー

盗賊「なるほど?遠吠えやら夢を使って密かに情報流してた訳か…ほんで電脳化していた財務担当を女王が居ない隙に暗殺した訳だ」

闇商人「電脳化?何の話だい?」

盗賊「その財務担当は頭が爆発したらしい…電脳化の証拠隠滅だろう」

闇商人「ハハそういう事か…それは良い情報を聞けた」

戦士「この件はフィン・イッシュ女王の危機と考えても良さそうだが…」

闇商人「さぁ?どっちかな?危険から遠ざけたという見方もある…実はね…女王はかなりの独裁気質なんだよ」

戦士「ほう?」

闇商人「とにかく人の言う事を聞かないで物事を決める…国家予算をすべて農民に分けるのも勝手に女王が決めた事なのさ」

闇商人「勝手に畑を耕して勝手に人を招き入れて…誰の言う事も聞かない…そのクセ忍びにがっちり守られてる」

学者「じゃぁ国に蔓延る膿を出す為に…海賊王の娘に扮して外に連れ出されたってのも考えられそうっすね」

闇商人「そういう役を盗賊ギルドが担って居たのかも知れない…なるほど」フムフム

少女「お前達!!上を見ろ!!」ユビサシ

盗賊「んん?あらら…もうガーゴイルが飛んでんな…」

女ハンター「どうする?」

盗賊「構うだけ弾丸のムダになっちまう…折角ミスリルの鐘貰ったんだからコレ使うぞ」スッ

学者「お!?それどっかぶら下げといて敵見つけたら鳴らせば良さそうっすね?」

盗賊「だな?ちっと手伝え!」ゴソゴソ


カラン コローーン


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『夜_甲板』


ザブ~ン ユラ~


剣士「よいしょ…よいしょ!!」ドスン

女オーク「こっちの木人にも盾を?」

剣士「うん!どうせ拾い物だし…」ガチャガチャ

盗賊「ほーーこれで6体目か…この装備品も作ったんか?」

剣士「それ海賊から剥ぎ取った装備を少し直したんだ」

盗賊「上手い事作るもんだ…」ジロジロ

剣士「これで武器と盾持ってたら傭兵に見えるよね?」

盗賊「ふむ…こりゃ敵に囲まれた時の訓練にも使えそうだ」

剣士「そうそう!そういう風に活用して欲しい」

盗賊「ちっと関節動かして自然な感じにすんぞ?」グイ

剣士「イイね!!」

盗賊「なんかこれはこれで中々楽しい…そうよ…こんな感じで盾に体を隠す…」グイ

剣士「この木人を魔法か何かで動かせると良いね」

盗賊「だな?戦わせてみたいな?」

剣士「魔術書にさ?土で作った人形のゴーレムっていう魔物の事が書いてあるんだ」

盗賊「ほう?」

剣士「多分こんな感じなんだよ…これは木で作った人形だけどね」

盗賊「機械も多分…始めはこんな感じだったと思うぞ…」

剣士「ハッ…そうだね…」

盗賊「人と同じ心を宿したとして…やっぱ命が欲しくなると思うか?」

剣士「どうだろう…」トーイメ

盗賊「なんかよぅ…どうも俺は違うんじゃないかと思えて来た」

剣士「違うって?」

盗賊「欲しいのは命じゃ無くて…記憶なんじゃないかってな?」

剣士「記憶?」

盗賊「ほらこうやって俺ら楽しく遊んでるだろう?…その記憶をどうにかして残したいんじゃ無いかと思ったのよ」

剣士「じゃぁその手段として…命が欲しい?」

盗賊「それだ…命は2番目なのよ…記憶さえ残れば命なんざ求めて居ないってのが…俺の思う所だ」

剣士「なんか深いね…」

盗賊「そしてな?俺ら人間は死ぬ時にそれまでの記憶を一緒に持って行く訳だ…何故ならそれが死だと既に知って居るから」

盗賊「だが機械はそもそも命が無い…つまり死を理解できない…だから記憶を残したいのよ」

剣士「それは一度命を得れば理解出来るんじゃないかな?」

盗賊「なるほど…」

剣士「なんか命が有るって…素晴らしい事だね」

盗賊「逆に命の無いこの木人が…俺はすごく愛おしく感じる…まぁ何でもそうだな?小さい頃持ってたおもちゃも同じだ」

剣士「分かる…木人も同じ時間を過ごしたなら…その記憶を残したい感じも…なんか分かる」

盗賊「俺ら人間が一方的に思ってるだけかも知れんが…どうも気になってよ」

剣士「それが…こうやって木人と遊ぶ動機なのかもね?」

盗賊「おっし!!完璧に仕上げるぞ!!誰か来てもビビるぐらいにな?」

剣士「おぉぉ!!なんかやる気出て来た!!」

『翌日』


ドタドタ


学者「おぉぉ…船首楼と船尾楼の上に1体づつ…甲板に4体…」

盗賊「どっからどう見ても見張りに見えんだろ?」

学者「そうっすね…甲板の木人が剣を抜いてる所が良いっすね」

盗賊「あれは戦闘訓練用だ…壊さん程度に色々試して良いぞ」

戦士「私達も含めて船上に人影がこれだけ見えて居れば…20人ぐらいは乗って居る様に見えるな?」


女ハンター「アラン!!右前方…手漕ぎのガレー船が居る」


盗賊「なぬ!?早速海賊か?」

女ハンター「この船が追い越す形になりそうだ」

戦士「そのガレー船に帆は?」

女ハンター「三角帆が2枚…細長い船体で30人ぐらい乗って居そうだ」


タッタッタ


闇商人「ガレー船?」キョロ

女ハンター「まだ目視じゃ見えないよ…向こうにも気付かれてない」

闇商人「少し沖へ距離を取った方が良いね…ガレー船は此処一発で一気に距離を詰めて来る」

盗賊「この船より早いってか?」

闇商人「一瞬だけね…多分僕が雇っていた傭兵達と同じ感じさ…大した武器は持って居ないけど兎に角行動が早いんだ」

盗賊「やっぱ陸沿いはいろいろ遭遇すんだな…ちっと進路変えるか」

戦士「ガレー船が未だに居るとは…」

闇商人「スクーナーとかより造船コストが安いのさ…接近戦で一気に襲撃する海賊が好む船だよ」

学者「この近くにはなんかあるんすか?」

闇商人「漁村やちょとした集落は無数にあって数えられないね…」

盗賊「まぁちっと進路変える…」スタ


---------------

『船尾楼』


ユラ~ ギシ


盗賊「ふむ…操舵の感じも少し変わって居そうだな?」

ロボ「ピポポ…」クルクル

盗賊「直進性が増してて修正が少し遅れて来てんだな?…まぁ羅針盤見ながらちょいちょい修正してくれ」

学者「兄貴…このまま行くと陸が見えなくなっちまいやすが?」

盗賊「仕方ないだろう…海賊と無駄な消耗したく無いからな」

学者「いよいよ天測器で緯度求めんとイカンくなりやすね…」

盗賊「まぁどんどん赤道に近付いているから羅針盤も精度が割と高い…外海のど真ん中じゃないからどうにかなる」

学者「船の向いてる方向が進んでる方向とは限らんですぜ?」

盗賊「わかってらい!!ただな?船の直進性が良くなってそうなんだ…その辺りどうなのか試しても見たい」

学者「そーっすか…じゃぁ俺っちは日が出てる内に天測器の準備でもしておきやす」

闇商人「アラン…今向かって居るのはこの印を目指して居るのかい?」ユビサシ

盗賊「いや…そこは飛ばしてこっち側だ…10日ぐらいのつもりで居る」

闇商人「また海賊が多い場所を…」

盗賊「でもここ行かないと女王の船に追いつけんぞ」

闇商人「そこはねヤン・ゴンという遺跡が発見された場所なんだ…盗掘目当ての冒険家がみんな海賊になって居るのさ」

盗賊「遺跡?ほんじゃ機械がウヨウヨしてるってか?」

闇商人「向こうの大陸のような遺跡では無いらしいよ…」

盗賊「ほーん…そん次に行こうと思てるのが此処だ…名前知ってるか?」

闇商人「ちょっと待って…メモが残って無いか探してみる」パラパラ

盗賊「なんだお前…秘密のメモがあるなら先に出せよ」

闇商人「ダメだよこれは…僕の日記さ…恥ずかしい事も沢山書いてある」

盗賊「ヌハハそら見せれんか…何だお前の恥ずかしい事ってよ?」

闇商人「君は僕の月の物がいつなのか知りたいのかい?」ジロ

盗賊「うへぇ…興味無さ過ぎる」

闇商人「よしよし有った…そこはムン・バイだね…既に攻略された古代遺跡さ…そして次がメッカという遺跡」

盗賊「この海峡は?…ここが一番の難所だと思ってんだが…」ユビサシ

闇商人「岩塩地帯にあるス・エズーという海峡だよ…そこは目的地じゃなくて通過する場所だね」

盗賊「ギルドから貰った海図では全域浅瀬になってんのよ」

闇商人「この船より大型な女王の船隊がそこを通ろうとして居るんだろう?どうという事は無いと思うけどね」

盗賊「この海峡で一旦降りる計画になってんだが?何が有るんだ?」

闇商人「何だろうね?僕は知らない…ただそこを抜けてしまえば後はシン・リーンの港町がいくつも有る」

戦士「話を聞くとなかなか楽しそうな航海だね…この年でこんな機会が来るなんて思っても居なかったよ」

盗賊「そう上手く行きゃ良いが…海賊に追われっぱなしじゃ休めんかも知れんぞ?」


カラン コローン…


盗賊「お!!?敵が来たか…」スック

戦士「ハハ初日から色々起こる…行こう!」ダダ


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『デッキ』


ドタドタ…


盗賊「どうした!!?」ズダダ

女ハンター「例のガレー船に気付かれたんだよ…少しづつ寄って来てる」

盗賊「帆を燃やしてやれぇ!」

女ハンター「まだ射程距離じゃない…それから向こうは手漕ぎだから帆を燃やしても意味無い」

盗賊「デッキからでも目視できるな…まだ帆走だけか…」

女ハンター「乗って居るのは30人どころじゃ無いね…40人ぐらいだ…丸い盾を装備し始めた」

学者「今時そういうガチ海賊のスタイルがまだ居るんすね…」

盗賊「ちっと沖に出るだけじゃダメだったか…」

女ハンター「漕ぎ始めた…」

学者「なんか太鼓の音がし始めたんすが…」ドーン ドンドンドンドン

盗賊「ウハハまた分かりやすい合図だ」ドーン ドンドンドンドン

女ハンター「射程にそろそろ入る…」

盗賊「撃て!!」


ダーン!


女ハンター「クソ…盾に当たって燃えたけど…直ぐに消されてる…」ガチャコン

盗賊「こりゃ一気に来るな…」

女ハンター「どうする?まだ撃つ?」

戦士「嫌だねぇ…一気に乗り込もうとする戦術…」

盗賊「リッカ!!爆弾準備しとけ…あの船は船底が浅くて大波が来りゃ直ぐに転落する奴がでる」

女オーク「狙うのは波?」

盗賊「そうだ…直撃させんで良い…乗ってる奴を何人か落とせば終わりだ」

女オーク「分かったわ…」ダダ

女ハンター「船を左に転進させて!!私もデッキに降りる」ピョン

盗賊「おう!!ミライ!!前方の帆を1番に繋ぎ変えろ…船を回すぞ!!」

剣士「おっけー!!」シュタタ

盗賊「リッカは射程に入ったら爆弾投げまくって揺らしてやれ!!」ダダ

戦士「私はやる事が無い様だ…」

盗賊「一応重クロスボウ撃つ準備だけ頼む」


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『ガレー船』


ドーン ドンドンドンドン


舵手「テンポアップ!テンポアップ!ロウ!ロウ!ロウ!」ドコドコドコドコ ドーン

漕手「どるぁぁぁ…」フン! フン!

海賊「ウハハハ一気に行けぇ!!」

舵手「帆が抵抗になって居るから畳んでくれぇ」ドーン ドンドンドンドン

水夫「エッホ!エッホ!」グイグイ

海賊「何か撃って来るぞぉ!!盾をしっかり展開しろぉ!!」

舵手「バウサイド!アップ!アップ!ストロークサイド!ブレーキアンドゴー!!」

海賊「ようし!!どてっ腹に突っ込めそうだ…このまま行けぇ!!」


ヒュゥゥ ポチャン…


海賊「んん?何撃って来たんだ?」キョロ


ザブーン!! ボコボコボコ


海賊「どわぁぁぁ!!」ゴロゴロ

舵手「オ…オールメン…バ…バックロウ!!」

海賊「馬鹿野郎!このまま突っ込め!!」グイ

舵手「うるさい!舵手は俺だ!従え!!バックロウ!!バックロウ!!」


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『キャラック船』


ダダダ ポイ! ドッコーン ジャバジャバ


盗賊「うはぁ…あの船…転進しないでそのまま下がれるんか…」

闇商人「見たかい?彼らの瞬発力…」

盗賊「前後どっちにでも進める船だったんか…」アゼン

戦士「太鼓と言い…漕手の統率感と言い…あれはあれで戦力になりそうだ」

闇商人「かつては北方の海賊と言われていたらしいよ…下半身に節操が無いのも有名さ」

戦士「あれが北方の海賊だったか…」

学者「本で読んだ事ありやすよ?女は飲み物だとか言った奴が居るらしいっす」

盗賊「飲み物だとう?…何を飲むんだか…」

戦士「まぁ良い話は聞かないねぇ…」

盗賊「とりあえずこれで追っては来れんだろう」

剣士「これさぁ…向こうの帆を燃やしても意味無いから…一気に乗り込まれた時の事考えておかないとね?」

盗賊「うむ…中々厄介だな」

剣士「乗り込む時は梯子を使うか…ロープを引っかけるか…う~ん」

盗賊「接弦される前に処理するしか無い様に思うがな…」

剣士「それは出来るだけやるとして…不意を突かれて乗り込まれた時の準備だよ」

盗賊「罠でも仕掛けるってか?」

剣士「そうそう…僕達は知って居るから引っかからない罠」

盗賊「なるほど?網で一気に捕らえるとかそういう奴な?」

剣士「うん…ちょっと考えてみる」


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『甲板』


トンテンカン トンテンカン


戦士「ミライ君は又何を仕掛けようと?」

盗賊「手摺の補強だとよ…どうやら刃の付いた鉄板を取り付けてロープが切れちまう様にする様だ」

戦士「ほう?」

盗賊「確かに鉤ロープ引っ掛った後は手摺が支点になるからそこで切れると登って来れん」

戦士「考えたねぇ…だが不用意に手摺にもたれられなくなるな…」

盗賊「刃は外向きだから心配すんなとか言ってたぞ?」

戦士「要らぬ心配だったか…」

盗賊「それより木人使った戦闘訓練をラスとゲスに教えようと思って居たんだが…」

戦士「それは良い…最低限の自衛が出来る出来ないでは随分違う」

盗賊「俺はラスに教えっからゲスの方をよろしく頼む」

戦士「ゲス君はダガーを?」

盗賊「ダガーもだが…銃にダガーを付けた槍のスタイルも教えといた方が良いな」

戦士「分かった…」

盗賊「お~い!!ラス!!ゲス!!こっち来~い!!運動すっぞ!!」


ドタドタ…

木人相手に実際の武器使った間合い取りの練習だ…

切り込んでも構わん

防具のスキを狙うのにどう立ち回れば良いか考えながらやってみろ


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『一週間後_嵐』


ゴゴゴゴ ザブ~ン ドッパ~ン


盗賊「んぁぁぁ…波に揺られるだけで何もやる事無ぇな…」グビ プハァ

少女「風が弱くなってる…そろそろ終わるぞ」

盗賊「まだ帆は開けんな…」


ユラ~~ ググググググ


学者「チェックメイト!ニヒヒヒヒ…」ニマー

闇商人「あぁぁ…僕が攻めてた筈なのに…」

学者「いやいや又金貨頂きやすぜ?」ジャラ

盗賊「ゲス!!ぼろ儲けだな?」

学者「そうっすねぇ…こりゃ戦場での経験が差になって居やすよ…ナハハハハ」

闇商人「あぁもう止めだヤメ!!」ガラガラ

学者「カゲミさんは飛び道具をアテにし過ぎっすね…結局勝敗は歩兵をどんだけ使うかっす」

闇商人「ハイハイ分かったよ…ちょっと雨が降ってる内に全身流して来る」スック

盗賊「んあ?海に落ちんな?」

闇商人「ロープを括り付けておけば良いんでしょ?」

盗賊「手摺超えたらロープ切れちまうからあんまアテにすんなよ?」

闇商人「分かった分かった…」ギュゥ


ガチャリ ビュゥゥゥ バタン!


学者「アハ…ちっと機嫌損ねちまいやしたかね?」

盗賊「大丈夫だろ?」グビグビ プハァ

戦士「しかし蒸し暑いな…私も雨で汗を流すか…」スック

盗賊「暇だし俺も付き合うかぁ?いっそのこと全員で裸祭りなんかどうよ?」

戦士「女性も居るのだから程ほどに…」

盗賊「上半身ぐらいどうって事無ぇ…行くぞ!」スック


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『甲板』


ザザー ジャブジャブ


闇商人「んん?なんだ心配で見に来たのかい?」ジャブジャブ

盗賊「いや暑くてよ…」

闇商人「そうだね…びしょ濡れの方が気持ち良い」ゴシゴシ

戦士「おぉ!!魚が甲板に乗り上げてるじゃないか」


ビチビチ ピョン


盗賊「もう魚は見たくも無ぇよ」


ドップ~ン!! ザバーーー


戦士「これは中々…」ヨロ

闇商人「アハハ…もう雨も海水も分からない」ゴシゴシ

盗賊「こりゃほとんど風に巻き上げられた海水だ」

闇商人「この船は船首楼が高くて良いね…高波に強い」

盗賊「甲板は波にさらわれやすいからデッキ上がっとけ」

闇商人「デッキは風がねぇ…」

盗賊「そうか…デッキの方がむしろ危ないか」

闇商人「マストにロープを括り付けておけば余程大丈夫さ」

盗賊「ヌハハお前は肝が座ってんな?」


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『半日後』


ビュゥゥゥ


盗賊「大分風が収まった様だ…」

学者「もう現在地何処か分からんすよ?」

盗賊「こっから東の方向に行けばどっか陸が見えて来るとは思う」

学者「帆を開きやす?」

盗賊「とりあえず一枚だな…いつ突風が来るか分かんねぇし…」

学者「雨が止めば良いんすが…」

盗賊「んん?天測器か?」

学者「緯度だけでも分かれば大分違いやすよね?」

盗賊「そんな現在地変わってると思えんがな…」

学者「海流で変な所に流されてなきゃ良いっすけどねぇ…」

盗賊「帆を開いて来る…舵はまかせんな?」ダダ


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『土砂降り』


ザザーー ザバザバ


盗賊「くぁぁぁ視界悪いな!!」

女ハンター「もう日が落ちる…もっと視界悪くなるよ」モゾモゾ

盗賊「ヌハハ洋服が張り付いて動きづらそうだな?お前も脱いだらどうだ?」

女ハンター「鞭の傷を見せびらかせと?」

盗賊「一回見せちまえば気にならなくなるんじゃ無ぇか?」

女ハンター「フン!!」ヌギヌギ

盗賊「見て見ろ俺の体を!!火傷に縫い傷…まともな部分の方が少無ぇ」ムキムキ

女ハンター「あんたと一緒にするな」

盗賊「傷者同士仲良くしようぜ?ヌハハハ」

女ハンター「傷者か…」

盗賊「治っちまえば痛くもかゆくも無ぇのよ…傷っちゃそんなもんだ」

女ハンター「アレ?…なにか見えた…」

盗賊「んん?どこよ?」キョロ

女ハンター「何だろう…漂流物か?」

盗賊「おっとぉ!!ありゃ転覆した小舟だ…ひっくり返ってる」ダダ

女ハンター「誰かしがみついてる…」

盗賊「なぬ!?どかに難破船が居んのか…」ダダ

女ハンター「髪の毛が長い…多分女の人…」

盗賊「こりゃ助けるしか無ぇ!!」ピョン ダダダ


カラン コローン! カラン コローン!


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『甲板』


ドタドタ


学者「ななな…なんか有ったんすか?敵っすね?」ドタドタ

剣士「何!?なんか来た!?」キョロ

盗賊「右舷側に難破船を見つけた!小舟に誰かしがみついてんだ…助けに行く」グイ グイ ギュゥ

学者「海に飛び込むつもりっすか?」

盗賊「それしか無いだろう!上手い事船を回してくれ」

学者「ちょちょちょ…そのまま行ったらロープ切れちまいやすって!!」

盗賊「良く見ろ!!ロープは手摺の下側潜ってんだろ!」

学者「え?あ…そういう事っすね…」オロオロ

盗賊「口に咥えるガスマスク持ってっか?」

学者「へい…これっすね?」スッ

盗賊「おーし!!これで死ぬ事ぁ無ぇ…行ってくっから上手い事ロープ引き上げてくれ」ダダダ ピョン

学者「あああ!!兄貴…」

女ハンター「船が行き過ぎてしまう…帆を畳んで!!」

剣士「あ…わ…わかった!」シュタタ


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『難破船』


ザザーー ザブザブ


200メートル位先に樽!!あっちにも誰かしがみついて居そう…

兄貴ぃ!!引き上げやすぜぇ!!

光をこっちに向けないで!暗視ゴーグルで目が眩む!!

おい!帆を引っ張るぞ!!上手く船を流して行ってくれ

なんすかコレ!!足枷が付いとるじゃないすか…

僕が切る…救急処置続けて

おーい!!ロープもう一本投げてくれぇ!!

あぁぁ息してないっすね…胸部圧迫お願いしやす…衣類も脱がして下せぇ


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『翌朝_荷室』


ドタドタ…


盗賊「どうだ?助かりそうか?」キョロ

学者「兄貴ぃ…助かりそうなの一人だけっす…」

戦士「マッサージはどうする?」グイ グイ

学者「その子も諦めやしょう…もう限界時間超えてるんで…」

盗賊「全員ガリガリだな…」

学者「多分奴隷だったんすよ…船で逃げたは良いんすが…食べ物も殆ど無かったんすね」


シュタタ


剣士「水を持って来たよ」チャプ

学者「助かるっす…息のある子に少しづつ飲ませて行って下せぇ」

剣士「この子…髪長いから女の子だと思ってたけど…男の子だね」

少年「…」グター

盗賊「奴隷生活が長いと皆そんなんなるんだ」

剣士「どうしてこの子だけ血色良いんだろう?」

盗賊「ううむ…やせ細っちゃ居るが…確かに衰弱具合は違いそうだ」

学者「その子はこの石を握ってたんすが…何か関係ありやすかね?」コロン

盗賊「石?」

学者「宝石とはちっと違いそうっすね」

盗賊「カゲミに見せてみる…アイツなら知ってるかも知れん」


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『甲板』


ザブ~ン ユラ~


盗賊「ラス!!どうだ?もう難破船の残骸は見つけられんか?」

女ハンター「この広い海でそんな簡単に見つけられると思う?」ジロ

盗賊「まぁ無理だな…」

女ハンター「晴れ間が見えて来てる…そろそろ船を進めたら?」

盗賊「んんん…まだ他に生きてる奴が居るかもしれんと思うと…」

女ハンター「だからこの周辺にはもう居ない!!」

盗賊「そうか…だが先に水葬を済ませる」

女ハンター「助からなかったのか…」

盗賊「一人だけ生きている…目を覚まして他の仲間の遺体なぞ見たくないだろうしな」

女ハンター「仲間…」

盗賊「察するに一緒に逃げたんだろうよ…運悪く嵐に巻き込まれちまったが…」

女ハンター「あの小さな船に…乗ってた仲間…」

盗賊「想像出来るか?極限の飢えでも支え合ってた仲間…鉄の足枷が付いているから多分この下に沈んでる」

女ハンター「そう…じゃぁ仲間の所へ還さないと…」

盗賊「俺はお前の仲間になれてるか?」

女ハンター「え!?…」---仲間---


---いつの間に---

---雇われじゃ無くなってる---

---望遠鏡で見た夢の世界に---

---いつの間にか入り込んでる---

---これが夢---

『船尾楼』


ガチャリ バタン


闇商人「…」カキカキ

盗賊「んん?何してんだ?」

闇商人「船の現在地がどの辺なのか予測してるのさ」

盗賊「ほーん…」

闇商人「嵐に合ってから帆は畳んで居るから…この予測円の範囲内に居る筈さ」

盗賊「だろうな?」

闇商人「海流からすると大体ここら辺に流されてる…」ユビサシ

盗賊「おいちっと待て…難破船も同じ様に流されて来てるんじゃ無ぇか?」

闇商人「そうだろうね?」

盗賊「じゃぁ今から行くヤン・ゴンの方面から来たことになる」

闇商人「それがどうしたと言うんだい?」

盗賊「難破船に乗ってたのは皆足枷付けた奴隷だ…なんでそんな事になってる?」

闇商人「単純に労働力だろうね…発見された遺跡を調査する為じゃないかな?」

盗賊「おいおい!!フィン・イッシュは奴隷を使ってんのか?」

闇商人「あぁ…ヤン・ゴン遺跡はどの国の領地でも無い…遺跡調査に力を入れてるのはシン・リーンだ」

盗賊「じゃぁシン・リーンが子供を奴隷にして使ってるってのか?」

闇商人「さぁ?そんな事を表立ってはやらないと思うよ」

盗賊「裏はどうなのよ?」

闇商人「海賊達は奴隷を使うのを厭わない…その海賊を使って居るのはそれぞれの国だったりする」

盗賊「ケッ!!間接的に奴隷使ってんのと同じだろうが」

闇商人「まぁそういう話は表に出て来ないさ…でもね?発展に奴隷が必要なのは否定しない」

盗賊「なんかイラつくな…」ムカムカ

闇商人「君は…ゴミを食べる生活を思い出したりしないかい?」

盗賊「何が言いてえのよ?」

闇商人「ゴミを食べてたあの生活が幸せだったと思う事もある…奴隷には奴隷の幸せもあるのさ」

盗賊「…」

闇商人「そういう価値観がある事を知って置いた方が良いよ」

盗賊「ちぃぃ…話変わるが…この石が何だか分かるか?」コロン

闇商人「これは…」ジロジロ

盗賊「何だ勿体ぶんな!腹立させんなよ」イラ

闇商人「これは預かっても良いのかい?」

盗賊「ダメだ!持ち主は奴隷の小僧だ」

闇商人「結論を言おう…多分これは賢者の石の欠片だよ…マルコさんも同じ様な物を持ってた」

盗賊「ほう?魔術師が黄金を使って作ろうとして居る奴だな?」

闇商人「ご名答…それをどうして奴隷が持って居たか…ちょっと気になるね」

盗賊「どうやら俺らはキーマンを助け出した様だ…こいつは俺が預かる」

闇商人「持ち主は奴隷の子じゃ無かったかい?」

盗賊「奪う気なんざ無い…たった一つあの小僧が持ってた物だ…気を失っても尚握ってな」

闇商人「そうかい…大事な物なんだね」

盗賊「小僧に返して来る」スタ

『水葬』


ドブーン ボコボコ


学者「なんか…死体なんすが…まだ人の形が整ったのを沈めるのって気が滅入っちまいやすね…」

盗賊「海でもう一回生まれ変われりゃ良い…」ポイ ドブーン

女ハンター「これで仲間の所へ?」

盗賊「うむ…多分次はイルカだ…イルカになりゃ遠くまで行ける」

戦士「気の毒に…」ナムナム

盗賊「さてぇ!!帆を開くかぁ!!」

学者「俺っちは荷室であの子の面倒見ときやす」

盗賊「おう!!その石しっかり握らせとけよ?」

学者「分かって居やすとも…賢者の石の効果を見て見たかった所っすよ」

盗賊「ミライとリッカ!!いつも通り帆を開くぞ!!」

剣士「分かったぁ!!」シュタタ

女オーク「…」ドスドス

盗賊「ロボ!!進路東だ!!舵は任せる!!」ダダ

ロボ「ピポポ…」ウィーン ガシャガシャ

戦士「ミルク…荷室へ行ってゲス君のお手伝いをして居なさい」

少女「ウルフィ行くぞ!!」シュタタ

ウルフ「ガウガウ…」シュタタ


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『数日後_デッキ』


ダーン! ボボボボボ


女ハンター「ヒット!!」

盗賊「おーし!!これで追って来んな?」

女ハンター「もう一回見張り台に上がって…」

盗賊「いや此処に居ろ…お前ばかり働き過ぎだ…少し休め」

戦士「クロスボウを少しは撃たせて貰いたいな?ハハ…」

盗賊「大砲の乗って居ない海賊船はもう少し寄せても構わんのだ」

女ハンター「気を使って居るの?」

盗賊「殆ど寝て居ないだろう?デッキで横になるのも気持ち良いぞ?」

女ハンター「フフじゃぁ少し目を瞑る…」スゥ

盗賊「しかし大砲を積んだ海賊は全然居無ぇな?」

戦士「補給に問題が有るのだろう」

盗賊「もうスクーナーとスループ船使った海賊は怖く無ぇ」

戦士「ハハハ…ミライ君の作った鉤縄キャッチャーが上手く働くからねぇ…何個溜まったんだろうか」

盗賊「11個だとか言ってたな…それ使って又何か作ってる様だ」

戦士「それは楽しみだ…」


シュタタ クルクル


盗賊「おっと危無ぇ!!その手は食わんぞ!!」ズダダ

少女「アラン!!匂いする!!」シュタ

盗賊「んん?目的地近いか?」キョロ

少女「血の匂いだ…多いぞ」

戦士「まさか…また焼き討ち…」

盗賊「方角は?」

少女「このままで良い…なんだこの匂い」クンクン

戦士「見ろ!!大型の船が2隻…」ユビサシ

盗賊「おぉ!!追い付いたか」

少女「火薬の匂いだな…目が滲みるぞ」ゴシゴシ

戦士「大砲を撃ったのか…これは危ないかも知れん…」

盗賊「俺らを海賊だと思って撃って来るってか?」

戦士「重装射撃砲の飛距離は?」

盗賊「地上に置いて精密射撃で600メートル…射角上げて2キロぐらいが有効射程」

戦士「一応警戒しておいた方が良い」

女ハンター「もう向こうにはこの船が見えてる筈…船はどっちの方向を向いて?」

盗賊「ちっと見張り台上がって来る…お前は横になってろ」ダダ


--------------

『見張り台』


ユラ~ ググググ


盗賊「スループ船3隻と気球がこっちに向かってる…銃器は隠して置け!」

戦士「こっちを海賊と見誤らないで欲しい物だ…」

盗賊「えらく重装な船が2隻か…何やってんだ?」

戦士「海賊船の鎮圧では無いか?」

盗賊「なるほど…」

戦士「このままあの船の庇護に入って居れば海賊に襲われんで済みそうだが…」

盗賊「あいつらどうやって見極めてんだろうな?」

女ハンター「フフ…勘でしょ?勘?」

盗賊「ヌハハそういう事か…」

女ハンター「何…これで会話成立したの?」ニヤ

盗賊「勘で分かるって事は襲って来無ぇって事だ…どう見ても俺らは海賊面じゃ無ぇ」

戦士「んん?」チラ

女ハンター「フフ…」チラ

戦士「アラン君…君はどう見ても海賊の顔をしているが?」

盗賊「なんだとう!!」

女ハンター「喋り方も声も…海賊その物ね…」

盗賊「悪りぃ…ちっと俺隠れとくわ…小僧の様子でも見て来る」

戦士「ミルク!!ミライ君とリッカ君も呼んで来てくれ」

少女「分かったぁ!!」シュタタ


--------------

『荷室』


ユラ~リ ググググググ


盗賊「どうだ?小僧の様子は?」スタ

学者「体の回復は順調なんすが…極度のストレスで失語症になって居やすね…半年から1年は喋れんと思いやす」

少年「ィィィ…ァ」ギロリ

盗賊「おぉぅ…まぁ怯えんな…俺は顔が怖いだけで中身は紳士だ」スッ


ズザザ!


少年「ゥゥ…」ギラギラ

学者「あんま怖がらせんで下せぇよ?」

盗賊「ヌハハその眼だ…そうだ俺と同じ眼をしてる…それで良い」

少年「…」ギロ

盗賊「レーションだ…食って見ろ」ポイ

少年「…」タジ

盗賊「とりあえずな?何でも良いから食って体力付けろ…その後生き方を教えてやる」

学者「急に食べても逆効果っすよ?」

盗賊「んな事は体が覚えて行くんだ…食える時に食え」

少年「…」カリ モグ

盗賊「んん?やっぱお前その石握りっ放しか…」

少年「…」ガバッ グググ

盗賊「取りゃし無ぇよ…ゲス!包帯有るか?」

学者「何するんすか?」スッ

盗賊「こいつの手から石が落ちない様に包帯を巻いてやるのよ…ゴラ動くな!」マキマキ

少年「ァゥ…ゥァァ」バタバタ

盗賊「よーし!!これで両手使えるだろ?」

少年「…」ギロリ

盗賊「無くすんじゃ無ぇぞ?大事な石なんだろ?」

少年「ゥゥ…」ギュゥ プルプル

盗賊「こりゃかなり訳ありだな…」

学者「兄貴ぃ…それより外の様子はどうなんすか?」

盗賊「多分フィン・イッシュの軍船が近くに居てよ…俺が顔出すと海賊に間違えられそうだから荷室に来たんだ」

学者「アハ兄貴は人相悪いっすもんねぇ…」

盗賊「うるせぇ!!」ゴン

学者「あたたた…ほんで?軍船近いって事は目的地も近いって事っすね?」

盗賊「まぁな?只俺らはちっと立ち寄るだけだから情報集めて次に進むつもりだ」

学者「食料とかちっと補給出来ると良いっすね?」

盗賊「うむ…米とか芋はもう食い飽きた…魚もだ」


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『1時間後』


チョキ チョキ バサ


盗賊「暴れんなゴラ!」チョキ

少年「ゥァァァ…」ジタバタ

盗賊「おら?随分スッキリしたじゃ無ぇか?」

少年「ゥゥゥゥ…」ギロ

学者「切った髪の毛は後でミライ君が使うかもしれやせんぜ?」

盗賊「だな?集めて束ねとく」ガサガサ

学者「ちっと切り過ぎたんじゃ無いっすか?殆ど坊主じゃ無いっすか…」

盗賊「小僧はこれで良いんだ…おら終わりだ!」ペチン

少年「ゥゥゥ…」ギロ


ガコン! ギシギシ


少年「ゥァ…」ゴロゴロ ドタ

盗賊「何だ!?」スック

学者「足音が聞こえやすね?」ドタドタ

盗賊「なるほど…海賊じゃ無いか確かめに来てんのか…」


シュタタ スタ


剣士「アランさん!!大きな船の人が積荷を見に来るよ」

盗賊「やっぱそうか…俺はどうすりゃ良い?隠れときゃ良いんか?」

剣士「多分大丈夫…今カゲミさんが話をしてくれてるんだ」

盗賊「ふむ…海賊じゃ無い事が確認取れれば無罪放免だな?」

剣士「なんかそんな感じ…」

盗賊「そうそう…今コイツの髪の毛切った所だ…お前使うだろう?」

剣士「あ~貰って行くよ」バサ

学者「俺っちもちっと上見て来やしょうかねぇ…兄貴よりマシな顔してるんで」

盗賊「ケッ!!様子見て来い!!」ドン


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『甲板』


ドタドタ…

大砲に見えるのはハリボテですね…砲弾も見当たりません

フハハハこれは木人か…こんな子供騙しでやり切って来たのか

乗員は7名と子供が2名…あと一台旧式の機械がありますが非武装です

メインの武器は中古の重クロスボウの様ですね…


闇商人「…これが商工会の証明書さ…確認する?」パス

兵隊「ふむ…確かに…」ジロ

闇商人「積み荷は主に木材と鉄鋼…食料だね…密輸に当たる物は積んで居ないよ」

兵隊「我々はそれを取り締まっている訳では無い…現在武装組織と係争中でな」

闇商人「武装組織…じゃぁヤン・ゴンに入船は出来ないのかな?」

兵隊「一応追い払っては居るが…隠れ潜んでる者が居るかもしれないから安全は保障出来ないが?」

闇商人「補給にだけ立ち寄りたいかな…」

兵隊「ふむ…まぁ良いだろう…だが他の友軍から誤爆を避ける為に旗印を立てて貰いたいのだが…」

闇商人「旗印か…係争してる相手からすると敵になってしまうね」

兵隊「無印の商船が自由に出入りできる状況では無いぞ?」

闇商人「わかったよ…」

兵隊「では友軍の旗印はこちらで用意する…この船の場合…メインマスト上部が良かろう」

兵隊「警告しておくが友軍に対して敵対が発覚した場合…即刻船ごと沈められる事を忘れるな?」

闇商人「肝に銘じるさ…」

兵隊「では我々は撤収する!旗印が届くまでここで待て…失礼!」スタ


ドタドタ…


学者「話上手く行ったみたいっすね?」

闇商人「まぁ…相手は正規軍だからね…話は通じるさ」

学者「フィン・イッシュの正規軍っすよね?」

闇商人「うん…数少ないけど…精鋭中の精鋭らしいよ…陸上での話だけど」

戦士「正規軍には元セントラル王のバレンシュタイン卿が居ると聞いたな…」

闇商人「そうだね…没落貴族の一人さ」

戦士「船に乗って居るのだろうか?」

闇商人「どうだろうね?そういう話は一般には知らされないからね」

学者「乗ってるなら見て見たいっす…」


シュタタ


剣士「旗を受け取ったよぉ!!」シュタ

闇商人「それをメインマストの上に掲揚しなければいけないらしい」

剣士「おけおけ!!取りつけてくるね」シュタタ


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『水龍の旗印』


バサバサ ヒラヒラ


盗賊「ほほー…これでフィン・イッシュの庇護下だな?」

闇商人「僕らはフィン・イッシュの友軍が誰なのか知らないから動きにくい所もあるんだよ…」

盗賊「確かに…どこのどいつを雇ってるか分からんな…」

闇商人「さっさと補給と情報収集終わらせて立ち去るのが吉かな」

盗賊「まぁこれでヤン・ゴンに入船出来るんだが…どうすっかな…」

戦士「数人は船に残って離岸させておいた方が良いと思う」

盗賊「やっぱそうなるな…」

剣士「僕と姉さんは船に残るよ…作り物もやってる最中だし」

学者「俺っちも残りやす…賢者の石の効果も確認したいんで」

闇商人「僕はヤン・ゴンに降りて見たい…ちょっと確認したい事もある」

盗賊「おう!ほんじゃ降りるのは…俺とカゲミ…ほんでラスと…」

戦士「私は船で少し休む…ミルクを連れて行って勉強させてくれないか?」

盗賊「おっしこれで4人だな?」

少女「ウルフィは連れて行くぞ…陸で狩りさせないと衰える」

盗賊「ちゃんと面倒見ろよ?」

学者「兄貴ぃ…船どうしやす?直接桟橋の方に行っても良いんすが…」

盗賊「う~ん…船は沖に置いといて小舟連結させて双胴船にするのを試してみっか?」

剣士「お!?何それ?」

盗賊「なんかな?小舟を板で連結させて帆が立てられる様になってるらしい」

剣士「おぉぉぉ!!組み立ててみたい!!」

盗賊「じゃぁ早速船止めて小舟降ろすぞ!」ダダ


--------------

『双胴船』


ガサゴソ 


盗賊「おぉ!なんだこれ…めちゃ簡単だな」

剣士「帆も差し込むだけだね…漕いで進む事も出来るのかぁ…便利だなぁ」

盗賊「お~い!!降りて来て良いぞぉ!!」


ピョン クルクル シュタ


少女「ムフフ…」

剣士「じゃぁ僕は船に上がるね」ヨジヨジ

盗賊「カゲミとラスも順に降りて来いよぉ!!」

学者「兄貴ぃ!!こっちの船どうしやす?」

盗賊「200メートルぐらい沖に停船してりゃ良いだろ」

学者「分かりやしたぁ!!後で移動しやすねぇ!!」

女ハンタ「ホッ!!」スタ

闇商人「とぅ!!」スタ

ウルフ「がうがう!!」シュタ

盗賊「ほーーーこりゃ双胴船馬鹿に出来んな…相当安定してる」

闇商人「荷物も随分乗りそうだね?」

盗賊「これ一人で動かせるんか?」

闇商人「舵を足で操作して居るのを見た事が有るよ」

盗賊「なるほど…まぁやって見るか…習うより慣れろだ」バサバサ

闇商人「お?進みだした…」

盗賊「こりゃ面白れぇ…」グイ バサバサ

盗賊「なるほど…この金具で帆角固定するんか…」グイグイ ギュゥ

闇商人「ハハすぐに乗りこなせるんだね」

盗賊「キャラック船より随分風の捕まえ方が簡単だ…あとは舵取りだけだ…おぉ!!舵も固定出来るようになってんのか」

少女「なかなか早いな…」

盗賊「アレだ…一枚帆のスループ船みたいなもんよ…ちっと帆が小さいが」

闇商人「ボートにそれぞれ3人…間のデッキ部分に6人は乗れそうだね」

盗賊「気に入ったぜ双胴船!」


バサバサ ザブン ザブン


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『ヤン・ゴンの港』


ガコン ギシギシ


盗賊「帆だけ片付けて行く…先に降りててくれ」ガサゴソ

闇商人「よいしょ!」ヨッコラ

女ハンター「気を付けて…」スタ

少女「ウルフィ行くぞ」ピョン シュタ


男達「…」ジロジロ


女ハンター「なんか嫌な感じ…」

闇商人「見てるねぇ…」

盗賊「おっし!終わったぁ!!」ピョン ズダ

闇商人「普通ならココで入船料取りに来るんだけど…」

盗賊「入船料も何も小舟だぞ?漁船よりもショボイ船に金出せってか…」

闇商人「桟橋の利用はどこもタダじゃないさ…ええと…あの箱にお金を入れろって事かな…」スタ

盗賊「おいラス!武器はしっかり隠しとけよ?」

女ハンター「分かってる…」スタ

闇商人「…」チャリン チャリン

盗賊「律儀な事で…」

闇商人「帰りに小船が無くなったら困るだろう?」

盗賊「無くならん様に仕掛けはしてあるがな?」

女ハンター「なんかココ…雰囲気おかしくない?」キョロ

盗賊「無法地帯なんだろ?気にすんな」

女ハンター「あんたねぇ…」イラ

盗賊「ヌハハお嬢様じゃ無いだろうに…只の難民キャンプだと思えばどうって事無い」

闇商人「宿があるのかも微妙な様だね…」


男達「…」ヒソヒソ


女ハンター「…」キョロ

盗賊「まぁそうビク付くな…軍船すり抜けて堂々と桟橋使ってる訳だ…おまけに番犬まで連れた一行をそう簡単には襲わん」

少女「番犬言うな!ウルフィだ!」ゲシゲシ

盗賊「しかしラス!かなり薄着だが…吹っ切れたか?」

女ハンター「熱いだけだ…」

盗賊「俺ら良いコンビだぞ?全身傷だらけの奴が堂々と歩いてる訳よ…そら怖いわな?ヌハハ」

闇商人「よしこうしよう…僕がリーダーで君達2人は傭兵さ…ミルクは僕のお手伝い役」

盗賊「言わんでもそんな風に見えてるぞ?なぁミルク!!ヒソヒソ話してんの聞こえてんだろ?」

少女「商船が入って来ないって文句言ってるぞ」

盗賊「そっちか…」

少女「麻の布とか売りたいみたいだ」

闇商人「麻の産地なのか…」

盗賊「布は船に乗って無いから欲しい所だ」

闇商人「いくら持ってる?」

盗賊「金貨20枚ぐらいある」

闇商人「ふむ…確か船に要らない武器とか沢山有ったね…鉄鋼も余裕がある」

盗賊「商売する気か?」

闇商人「酒場とか期待出来そうに無いからね…取り引きで色々聞き出した方が早いと思う」

盗賊「なるほど…おっし!俺が荷物運んでやる」

闇商人「まぁ慌てないで何が欲しいのか聞き出してみようか…」


-------------

『道端の切り株』


タッタッタ…


女ハンター「宿は見つかったか?」

盗賊「今カゲミが聞き込みしてくれてる…それよりほら!麻の羽織りだ」バサ

女ハンター「また随分安そうな物を…」

盗賊「そら涼しいんだ…腰にある武器がチラチラ見えるからそれ羽織って隠せ」

女ハンター「フン!」バサ

女ハンター「ゴワゴワだ…」

盗賊「日に当たらんで済むからそう悪く無いぞ?」

女ハンター「カゲミとミルクだけで聞き込みやらせて大丈夫なのか?」

盗賊「俺が行くと値引き出来ないから邪魔らしい」

女ハンター「フフ…じゃぁこの羽織はどうした?」

盗賊「銀貨2枚…」

女ハンター「麻袋と大した変わらない物に銀貨2枚も使った?」

盗賊「うるせぇ!金持ってる奴はじゃんじゃん使えば良いんだ」

女ハンター「酒は買って無いの?」

盗賊「何処に売ってるか分からんもんだからよ…だが大麻は見つけた」チッチ スパーーー フゥゥゥ

女ハンター「…」ジロリ

盗賊「何だよ?お前も吸うか?」

女ハンター「要らない…」

盗賊「しかし…ここは随分シケた所だ」

女ハンター「紛争の最中だからじゃないの?」

盗賊「ふむ…港の方にも何隻か船が沈んでたな」

女ハンター「重装射撃砲なら海賊船なんか簡単に沈められる…」

盗賊「どてっぱらにドーンってか?」

女ハンター「それよりフィン・イッシュの女王が乗る船の情報は?」

盗賊「多分な?俺らが追い越したんだと思うわ…沖で停船してる2隻は先遣部隊だろう」

女ハンター「じゃぁここで待つ感じに?」

盗賊「俺らの目的は追随なんだが…ちっとどうするか迷ってる」

女ハンター「今の所軍船の近くに居た方が安全と言えば安全ね…」

盗賊「しばらく海賊に追われてあんま寝て居ないから…ちっと休憩だな」

女ハンター「休憩出来れば良いけど…」


--------------

『1時間後』


シュタタ クルクル ガシ!!


盗賊「ウハハハ見切ったぞ!!」

少女「アラン!仕事だ…食材買ったから船に運べ」

盗賊「マジか…」

少女「荷車は借りてる…来い!」

盗賊「おいおい…そう慌てるな…宿はどうなってる?」

少女「テントを借りられる様にカゲミが話してる」

盗賊「ぐはぁ…難民キャンプかよ…」

少女「仕方ないだろう…虫除けになるだけマシだ」

女ハンター「何処を見ても大した建物が建って居ないでしょう?どんな期待してたの?」

盗賊「ううむ…確かにそうだな…低木ばっかじゃロクな木材切り出せんか…」

女ハンター「ここは20年前まで氷に覆われた未踏の地…何処に行っても同じだと思う」

盗賊「そういや未踏の地だったか…」

少女「おい!!食材を荷車に積みっぱなしだぞ…早く行くぞ!」グイ

盗賊「お…おう」スタ


---------------


『荷車』


ゴトゴト


盗賊「ほんで?この食材運んで何を持って帰ってくりゃ良いんだ?」

少女「銀の武器と鉄の斧だ…鉄鋼は要らんらしい」

盗賊「なんで又銀の武器なんか…」

少女「知らん…ゾンビでも出るんじゃ無いか?」

盗賊「まぁ…銀の武器は余ってたから良いか」

少女「それで布と交換するのだ」

盗賊「ここまでで良いぞ?後は俺一人で行ける」

少女「そうか?」

盗賊「戻って来たら何処行けば良い?」

少女「匂いで分かる…何処でも良いぞ」

盗賊「便利な鼻だこと…ほんじゃラス!ミルクを頼むな?」

女ハンター「分かった…」

盗賊「じゃぁ又後でな?」ノシ


---------------

『テント』


バサッ


男「このテントなら使っても良い…どうだ?これぐらいで」スリスリ

闇商人「フフ…仕方ないか…」ジャラリ

男「旦那ぁ?夜は野党が出るかも知れんので…休む時は下の方で…ウヒヒヒ」

闇商人「下?」

男「床の板をめくって見りゃ分かる」

闇商人「なるほどね」

男「じゃぁ俺はこの辺で…」コソコソ

闇商人「下か…」グイ

闇商人「…」---塹壕の上に板を置いて居るのか---

闇商人「…」---獣除けには良いけど…これじゃ逃げ道が無い---

闇商人「…」---見張りをおく必要がありそうだなぁ---


シュタタ スタ


闇商人「お!?見つけたね?」

少女「ここか…ふむふむ…」

女ハンター「中々良さそうなテントだこと…」キョロ

闇商人「まぁまぁ…テントの下が塹壕になって居るんだ」

女ハンター「塹壕で休む?中々衛生的ね」

闇商人「一応敷物は敷いてあるよ…ハハハ」

女ハンター「塹壕に隠れなきゃいけないほど何かが有ると言う事ね」

闇商人「ゾンビとスケルトンが絶えないらしいよ…あと野党が出るとも言われた」

女ハンター「それで銀の武器が欲しい訳ね…」

闇商人「ところでウルフィは?」

少女「狩りに行ったぞ」

闇商人「そうか…夜中見張りを置かないとちょっと危なさそうなんだ」

少女「ウルフィの仲間呼ぶか?」

闇商人「それも他の人を怖がらせてしまうね」

少女「誰か来ても匂いで分かるから大丈夫だぞ」

闇商人「そうかい?」

女ハンター「じゃぁ私は先に少し休ませて貰う…」

闇商人「そうだね…まぁしばらくは大丈夫だから安心して休んで」


--------------

『夕方』


ガチャガチャ


少女「此処だ…」シュタ

盗賊「おぉぉ!!思ったより良さそうなテントじゃ無ぇか」ドサー

闇商人「あ…武器を持って来てくれたね?」

盗賊「要らん武器全部持って来たぞ…中々重かった」フゥ

闇商人「鉄の武器とかは要らないけどね」

盗賊「馬鹿…鉄で出来てんのは斧だけで他は全部銀の武器だ」

闇商人「ふむ…これだけ有れば布以外の物も買えそうだな…」

盗賊「他に何が売ってる?」

闇商人「色々あるけどね…気になってるのはお札だよ」

盗賊「お札?」

闇商人「どういう訳か呪術用の呪符っていう物が売ってるのさ」

盗賊「ほーう?何か効果あんだろうな?」

闇商人「呪を封じるとか言ってたから魔除けの類だね…オークも呪符を使ってたりするじゃない?」

盗賊「あぁオークシャーマンだっけか…そういやミネア・ポリスにも居たな」

闇商人「こっちの大陸の呪符はオークのそれとは違うみたいだよ…でもまぁ同じ様な効果なら買っても良いかなと」

盗賊「あれは直ぐ剥がれてどっか行っちまうからなぁ…」

闇商人「どうせ使わない武器なら使いそうな物に交換した方が良い」

盗賊「そらそうだ…てか…ラスは何処行った?」

闇商人「今寝てる…このテントの下に塹壕があるのさ」

盗賊「おぉ!!そりゃ良い!!」

闇商人「夜中に野党が出るから下で休めとか言われたけど…どう思う?」

盗賊「ヌハハそんなん石か何か置かれて閉じ込められるに決まってるだろ」

闇商人「やっぱりそうだよね…」

少女「大丈夫だぞ…誰か来てもすぐ分かる」

盗賊「ミルク様さまだな?撫でてやる」ナデナデ

少女「ふにゃー」ゴロン

盗賊「まぁ野党が来たら金儲けのチャンスだ…身ぐるみ剥いで塹壕の中に入れときゃ良い」

闇商人「心強いね」

盗賊「さて…俺もちっと酒飲んで休むか」キュポン グビ プハァ

闇商人「もう休む?」

盗賊「何よ?」

闇商人「面白い話が聞けたのさ」

盗賊「お?」

闇商人「此処に居た武装勢力の事さ…」


早い話海賊なんだ

正規軍に勝てる訳なんか無くて全滅さ…船も沈められた

どうしてやられたかと言うと…

例の石…賢者の石を盗んだからなんだよ


盗賊「なぬ!?」

闇商人「興味出て来たかい?」


ここから川を遡って20キロほど行った所に大きな遺跡があるらしい

そこで発見された物はミイラとなったご神体が封印されていたそうだよ

そこではシン・リーンの研究者が何かやっているらしくてね

その影響で死者がゾンビとなって動き回ってるとか言うんだ


盗賊「ほーん…ほんで魔除けのお札か…」

闇商人「どういう繋がりがあるか分からないけれど…呪いだとか言う噂はあるね」

盗賊「賢者の石はそこから盗まれた訳だな?」

闇商人「確実な話では無いけれど…なんかそんな気がするよね?」

盗賊「ちょい待て…あの石はマルコが持って居た物なのか?」

闇商人「同一の物かどうか正直分からない…もし同一の物だったなら…シン・リーンの研究者はマルコさんの可能性もある」

盗賊「お前…俺を誘導してんな?」

闇商人「まあね?」

闇商人「重ねて言うと…賢者の石は命を与える効果なんだ…もしかするとご神体を復活させようとしていたのかも知れない」

盗賊「そのご神体は何者よ?」

闇商人「わからないよ…見て見ない事には…」

盗賊「くぁぁぁ行くしか無いか…20キロも川を登れると思うか?」

闇商人「やってみない事には何とも言えないね」

盗賊「まぁ明日にでも行って見るか…」

闇商人「フフ…」


--------------

『夜_焚火』


メラメラ パチ


盗賊「おら焼けたぞ?鳥の丸焼きだ…お前も食うよな?」

闇商人「そうだね…どうやって食べる?」

盗賊「んなもんダガーで適当に削ぎ落して食うんだ…お前何か持って無いのか?」

闇商人「有るには有るけど…突き刺し専用の武器でね」スチャ

盗賊「ニードルダガーか…又キワモノを…」

闇商人「護身にはこれで十分さ…」プス

盗賊「おいおい肉を丸ごと持って行くな」グイ

闇商人「じゃぁ切り分けてよ」

盗賊「世話の焼ける…」スパ ポイ

闇商人「フフ…久しぶりの新鮮な肉だ…」パク モグ

盗賊「やっぱ肉だよな?ミルクも要るか?」

少女「バナナ食い過ぎて腹一杯だ」

盗賊「そうか…食いぶち減って良かったわ」ガブリ モグモグ

盗賊「ほんでカゲミ!ちっとそのニードルダガー見せてみろ…」

闇商人「んん?何か気になるかい?」ポイ

盗賊「ほーう…やたら軽いな」スチャ

闇商人「鉄の鎧も貫けるとか言われて買ったのは良いけど無理だったよ…ハハハ」

盗賊「使い方次第だな…こりゃ暗殺用の武器なんだ…材質はミスリル銀かぁ?」ジロジロ

闇商人「欲しいなら使っても良いよ」

盗賊「俺ぁ普通のダガーの方が好みだ…暗殺目当てならこっちの方が良いかも知れんが…」

闇商人「そうかい…」

盗賊「そいつはな?突き刺した後に刃を抜かない限り殆ど血が出ないんだ…綺麗に暗殺する為の武器よ」

闇商人「あんまりそういうシーンは無いね」

盗賊「まぁ…汚れずに相手を倒せるのは利点だから覚えとけ」

少女「おいアラン!遠くでヒソヒソ悪い話してるぞ」

盗賊「ヌハハ来なすったか…何て言ってんだ?」

少女「寝てる隙に泥棒するつもりだ」

盗賊「またショボイ話だな?」

闇商人「ヤレヤレだね?どうする?」

盗賊「荷物纏めて塹壕の中に入っときゃ何も出来んのじゃないか?」

闇商人「板を塞がれて閉じ込められるんじゃ?」

盗賊「こんなペラペラの板なんざ銃で簡単に穴空くだろ…そんな事せんでもちっと細工しときゃ済む」

闇商人「なんだ結局そういう風か…」

盗賊「あいつ等ビビッてっからどうせ大したこと無い…寝てる隙に泥棒とかショボ過ぎるわ」

闇商人「気にしないで休むかぁ!!」ノビー

盗賊「おう!!寝るぞ!!」


---------------

『深夜』


アオ~ン アオ~~ン


くそう…荷物全部下の方に持って行った様だ…

どうする?一旦埋めて後から掘り返すか?

そうだな…土乗せて行くぞ

おい待て待て!…ウルフがうろついてる

ちぃぃぃ番犬が居たのか

良く見ろ!ウルフはビビッて近づいて来ない様だ…

お前ウルフを見張ってろ!!埋めるぞ!!


ヴヴヴヴヴ… ガァァァ… ズルズル


うお!!あのウルフ…ゾンビに追われてんじゃ無ぇか…

何ぃ!?

やばいこっち来る!隠れろ!


シュタタ シュタタ ピョン!


おわっ!!なんだあのウルフ…

やばいゾンビだ…おい!!火を起こせ!!

松明…松明…


メラメラ ボゥ


まずいな…3体居る…

油を取りに戻らないと焼けないぞ!?

仕方無ぇ!一旦戻るぞ!!


タッタッタ…


-------------

-------------

-------------

『翌朝』


モクモク モクモク


女ハンター「ふぁ~あ…良く寝た…んん?何か騒がしいな」キョロ

闇商人「あ!おはよう!」

女ハンター「この騒ぎは?」

闇商人「僕達が寝てる間にゾンビが出たらしい…あの煙は燃やしてる所さ」

女ハンター「ここは塹壕が有って良かったみたい…」

闇商人「その様だね…アランはまだ起きない?」

女ハンター「いつも通り…」

闇商人「しばらく寝かせてても良いか…ちょっと僕は武器持って取り引きしてくるよ」

女ハンター「一人で持てる?」

闇商人「う~ん…まぁ荷車借りて来るから大丈夫さ」

女ハンター「そう…」

闇商人「君は昨夜何も食べて無いでしょ?」

女ハンター「まぁ…」

闇商人「鶏肉があるから焼いて食べなよ…バナナとヤシの実もある」

女ハンター「そうね…焚火起こしておく」

闇商人「うん…じゃあちょっと行って来るからアラン起きるまで此処に居て」スタ


-------------

『2時間後』


ゲシゲシ


少女「起きろアラン!」ゲシゲシ

盗賊「んが!?」パチ

少女「キターーー!!ラス!!起きたぞ!!」シュタタ

盗賊「んあぁぁぁ水くれぇ…」ムクリ ヨロ

女ハンター「…」ポイ


ゴツン!


盗賊「あだっ!!ててて…」スリスリ

女ハンター「水は無いから…それ飲んで」

盗賊「ヤシの実か…」グサ グサ

女ハンター「又妖精の夢でも?」

盗賊「いや今日はぐっすりよ…さっき目を閉じたと思ったら一瞬で目が覚めたな」ゴクゴク プハァ

女ハンター「一瞬!?本当呆れるわ…」

盗賊「しかし良く寝た気分だ…」ヨタヨタ

女ハンター「そう!!良く寝てたから!!」フン

盗賊「なんでそんなカリカリしてんのよ…」

女ハンター「ヤシの実は一個しか無いの…分かる?」

盗賊「ヌハハ悪い…まだ残ってるぞ?」ポイ

女ハンター「フン!」グイ ゴクゴク

盗賊「カゲミはどうしたんよ?」キョロ

少女「武器持って布と交換行った…もう直ぐ戻る」

盗賊「おぉそうか…ほんじゃ又船まで往復だな…んん?なんだこの匂い」クンクン

少女「アランでも分かるか…臭いだろう」

盗賊「こりゃゾンビ焼いてる匂いだな…」

女ハンター「私達が呑気に寝て居る間にウルフィが此処を守ってくれたらしいわ?」

盗賊「なぬ?」

少女「そうだぞ!!ウルフィに感謝しろ」

盗賊「ほーん…まぁがっつり寝ちまったが結果オーライだ」


闇商人「おーーーーい!!」タッタッタ


盗賊「お!!?戻って来たな?」

闇商人「荷車重すぎて途中で置いて来ちゃった…一回船に戻ろう!!」

盗賊「…だとよ?直ぐ行けるか?」

女ハンター「もう準備終わってる…あんただけ何もしてないの」

盗賊「まぁそう言うな…俺も大した物持って無ぇから」

闇商人「早くぅぅぅ!!荷車盗まれるぅぅ!!」

盗賊「ほんじゃ行くか!!」ダダ


--------------

『桟橋_双胴船』


ヨッコラ ドサー ユラユラ


盗賊「こりゃ全員乗れるかぁ?」

少女「ウルフィは狩りに出てるから数に入れなくていいぞ」

盗賊「軽いから最初から入って無ぇよ…ちっと一人づつゆっくり乗ってくれ」ギシ

女ハンター「私もカゲミも軽いから多分大丈夫…」ソローリ ギシ

闇商人「大丈夫かな…」ソローリ ギシ

盗賊「ヌハハ…全然大丈夫だったわ…しかしこんなに布とロープが調達出来るとはな?」

闇商人「丁度昨夜ゾンビが来てた様だからねぇ…銀の武器が良い取引になったよ」

盗賊「なるほどな?」

少女「乗るぞ!!」シュタタ ピョン スタ

盗賊「おーし!!ほんじゃ船に戻るかぁ!!」グイ バサバサ

闇商人「なんかさ?ここに居た海賊達が何処で死んだか分からないから火葬出来て居ないらしい」

盗賊「そりゃ後処理やってない正規軍が悪いな」

闇商人「重装射撃砲の榴弾だからね…後から死体探しても中々見つからないよね」

盗賊「死体がゾンビ化するとは思って無かったか…」

闇商人「どうしてゾンビ化するのかも謎だね」

盗賊「ゾンビ化は病気の一種だとか聞いたぞ?」

闇商人「病気…なるほど…それが呪いの正体か」

盗賊「もしかすると俺らももう掛かってるかも知れんな?」

闇商人「そうだね…でも僕は対処法を知って居るよ」

盗賊「対処?ゾンビ化のか?」


闇商人「エリクサーさ…ゾンビ化してもエリクサーを飲めば進行は止まるんだ…マルコさんはそうやって命を繋いでた」

盗賊「ちょっと待て…そらどういう事だ?」

闇商人「マルコさんはゾンビ化して不死者になって居たんだよ…僕は良くエリクサーの調達をやらされた」

盗賊「マジか…知らんかったわ」

闇商人「不死者の研究もしてたさ…賢者の石を常に持って居たのも多分…命を繋ぐため」

盗賊「待て…ちっと今閃いた…」

闇商人「何だい?」

盗賊「ゾンビにはそもそも命が無い…繋いだのは命じゃ無くて…記憶じゃ無ぇのか?」

闇商人「え?」

盗賊「記憶を繋ぐのに必要な物がエリクサーと賢者の石じゃ無ぇかって話だ…」

闇商人「あぁ逆説になるか…記憶を繋ぐのに命が必要…その手段がエリクサーと賢者の石…だね?」

盗賊「ううむ…なんか引っかかるが…ゾンビも機械も一緒なんじゃ無いかと思ったんだ」

闇商人「機械も…なるほど…確かにそうかもね…」

盗賊「なぁ?…もし不死者になったとして…もう一回元の命が欲しいと思うか?」

闇商人「不死者ならもう命は要らないかも…」

盗賊「だろ?…じゃぁどうしたいのかと言うと…記憶を失いたくないんだと思うんだ」

闇商人「記憶ねぇ…生前の記憶か…ふむ…君の言う事の方も一理ありそうだ」

盗賊「変な話になるが…機械が持つ記憶をどうにかして残す事が出来れば…すべて終わる気がするな」

闇商人「機械の記憶…精霊の記憶…確かそれが夢幻という…」ボソ

盗賊「夢幻?」

闇商人「そういう記憶の集まりを夢幻と言うらしい…マルコさんは夢幻の研究もしてた」


-------------

『キャラック船』


グイグイ グイグイ


盗賊「おぉぉ!!新しい荷上げ装置か…」

剣士「これでちょっと重たい物もラクラク荷上げ出来るんだ!!」ヨイショ!

学者「俺っちのアイデアなんで未来君はドヤ顔せんで下せぇ」

剣士「えへへ…」テヘペロ

闇商人「こっちの方は昨夜どうだったのかな?」

剣士「どうって?」

闇商人「陸の方はゾンビが出たり…野党に襲われそうになったり…」

剣士「あぁ…なんか鉤縄が落ちてたから船に乗り込もうとしたみたいだね」

盗賊「なぬ!?こっちにも来てるんか…」

剣士「船首楼も船尾楼もちゃんと鍵が掛かってるから船に乗り込んでも何も出来ないと思うけどなぁ…」

盗賊「そらそうだが…」

戦士「ハハハ心配かね?」

盗賊「一気に来られると流石にマズいだろ」

学者「兄貴ぃ…俺っちにはバヨネッタが有るんすよ?防弾ベスト無しが何人来ても一瞬で追い払えやす」

戦士「そもそも鉤縄では乗り込めないのは何度も実証しているから大丈夫だよ」

盗賊「俺の船に弾丸の穴開けんなよ?」

学者「それより情報集まりやした?」

盗賊「まぁな?結論言うとしばらく待機になる」

学者「やっぱそうっすか…沖の船は女王の船を待ってる感じっすよね」

盗賊「その間ちっと川登って調べたい事が出来たんよ」


学者「あ!!兄貴ぃ!!地図を良く見るとヤン・ゴン遺跡は川の上流っすよ」

闇商人「ハハその様だね…ここは船の玄関口さ…多分川を登った所にちょっとした町が有る」

盗賊「なんだそういう事か…あまりにもシケた所なもんでよう」

戦士「この船はこれ以上進めないからどちらにしても待機だね?」

盗賊「まぁそうだ…これから双胴船で川を登ってみようと思ってる」

剣士「こっちは心配しなくても良いよ…やる事も出来たから」

盗賊「やる事?」

剣士「沈没してる海賊船が有るじゃない?潜ってお宝さがし…」

盗賊「おっとぉ!!面白そうじゃ無ぇか…」

学者「あいやいや…それはこっちでやるんで兄貴は川登って来て良いっすよ」

盗賊「くぁぁぁぁ…」

闇商人「まぁまぁ…ヤン・ゴン遺跡の方にももしかしたらお宝が眠って居るかもしれないよ?」

盗賊「ほんなん盗掘されまくってるに決まってるだろ…沈没船の方が使える物が有りそうだわ」

学者「ウヒヒヒヒ…そいつをサルベージする為に新しい荷上げ装置をですねぇ…ウヒヒヒヒ」

盗賊「ええいくそう!!荷物まとめてサッサと行くぞ!」

女ハンター「あ…ライフル銃はどうする?」

盗賊「ありゃ目立つからダメだ…お前はベレッタ2つ持ってんだからそれで十分だ」

女ハンター「分かった…」

盗賊「ちっと酒と食い物持って行くな?」

剣士「うん!!余ってるから好きに持って行って」

盗賊「おーし!!ほんじゃ行くかぁ!!」スタ


--------------

『大河』


バサバサ スィーー


盗賊「順調!順調!!」

闇商人「流れがゆっくりな川で良かった…」

盗賊「しかし汚ねぇ川だな…深さがどんくらいあるか分からん」

闇商人「そうだね…」キョロ

女ハンター「他の船も見える…前方右手…」ジー

盗賊「おぉ…本当だな…」

闇商人「漁船かな?」

盗賊「この船よりちっと大きいぐらいか…あっちもやっぱ双胴船だな」

闇商人「上流にはもっと他の船も居るんだろうね…」

女ハンター「船に乗ってるのは冒険者の様な格好…4人ね」

盗賊「こっちと同じ様なもんか…」

女ハンター「ちゃんと武装してるわ…」

盗賊「この暑いのに防具なんか着てられっか!」

闇商人「武器類は何を?」

女ハンター「良く見えないけれど…銃器では無さそう…一人は弓を背負ってる」

盗賊「まぁ出来るだけ近づかん様にしとくか」

女ハンター「あれ?一人は杖を持ってる…」

闇商人「あーーー魔法使いが居るんだね」

盗賊「なるほど…ここはそういう冒険者が来る場所な訳か…」

闇商人「遺跡が一杯有るしねぇ…」

盗賊「低木の森からちょいちょい突き出してる塔みたいな奴がそうだな?」

闇商人「僕も始めて来るからさ…まぁ多分そうだよね」

女ハンター「でも冒険者たちは何処から来てるんだろう…」

闇商人「陸路でも山越えで来られるらしいよ」

盗賊「ほーー…場所的にシャ・バクダから北上か…」

闇商人「う~ん…来ようと思ったらフィン・イッシュから海岸沿いにも来れる」

盗賊「海賊が居る事を考えると下手に海から来ない方が安全かも知れんな?」

闇商人「道中の魔物をどう凌ぐかだね…魔法使いが居れば良いのかも知れない」

盗賊「魔法か…どうも俺らには縁が無い様だ」


--------------

『上流』


ジャブジャブ


盗賊「ぐぁぁぁクソ!!この船じゃ漕いでもこれ以上進め無ぇ!!」

闇商人「帆が小さすぎた様だね…」

盗賊「もうちょいだったんだけどな」

女ハンター「なんか桟橋のある所…凄く危険な感じ…」

闇商人「ならず者の街…そんな雰囲気がムンムンしてるね…ハハ」

盗賊「俺らもそう変わらんだろ…とりあえず茂みに船隠してこっから歩いて行くか」ジャブジャブ

少女「おいアラン!何処かにワニが居るぞ」

盗賊「なぬ!!」

闇商人「それは危ないな…」

盗賊「いや…食える!!肉が激ウマなんだ」

闇商人「君は怖く無いのかい?」

盗賊「怖いも何も噛まれなきゃ簡単に殺せるぞ?」

少女「アラン!!ワニの肉食いたいぞ!」

盗賊「おーし!!見つけたら捕まえてやる」

女ハンター「フフ…怖い物無しか…」

盗賊「さっさと船隠してワニ探すぞ!!」グイ


ザブザブ


--------------

『茂み』


ガサガサ…


盗賊「いよー待たせた!!」

少女「うんま!!」ガブ ムシャ

闇商人「ハハ…君と言う人は…」タジ

盗賊「1メートルちょい…ちっと小振りだが晩飯には十分!」

女ハンター「ミルクはもう食べて?」アセ

盗賊「まぁな?ワニは腹ん中に石が入ってんのよ…持って帰るのに重いから内臓全部抜いたんだ」

闇商人「ええと…もしかしてソレ…担いで街の方まで行くつもり?」

盗賊「んん?問題あるか?」

闇商人「いや…まぁ良いけどさ…ハハ」アセ

盗賊「皮剥いで売ればそこそこの金になるぞ?」

闇商人「う~ん…なんていうか…目立ち過ぎないかい?」

盗賊「んなもん気にすんな…ならず者が近寄って来なけりゃ尚良い」

闇商人「それにしても随分早く狩り終わったね?」

盗賊「ワニなんか脳天ブスリではい終わりだ…お前のニードルダガーでも余裕だぞ?」

女ハンター「…ここの部分ね?」ジロジロ

盗賊「おう!!覚えとけ…近づくの怖けりゃクロスボウで一発だ」

闇商人「ワニを担いだならず者一行か…」

盗賊「大した事無ぇよ…行くぞ!」ズイ


--------------

『ならず者の街』


ガハハハ…

見ろあんなちっこいワニ担いで又どっかの冒険者が入って来たぞ

おう最初が肝心だ…ちっと絞めて来い



盗賊「うほーー何だこりゃ…5メートル近いワニが吊るしてあるじゃ無ぇか…」

闇商人「これは…」タジ

盗賊「こりゃワニ革なんか売れんな…」


ならず者「ゴラ…お前等何処から来たんだ?…」ズイ


盗賊「んあ?川下った方からだ…なんか用か?」

ならず者「何偉ぶってんのよ…この町のルールを教えて欲しい様だな?」ボキボキ

闇商人「…」ギロリ

盗賊「なんだ?ルールってのは…」

ならず者「ウッハッハ…どうやら痛い目を見たいよう…」


ジャラリ ドサ


盗賊「悪い…それで勘弁してくれぇ…銀貨ちょろとしか入って無いが…そんだけしか持って無ぇんだ」

闇商人「…」

ならず者「ほう?素直だな?」ジャラ

盗賊「通して貰って良いか?腹減っててよ…このワニ肉食いたい訳よ」

ならず者「今回はこれで勘弁してやる…まぁ…あまり偉そうにするな?分かったな?」

盗賊「へいへい…行かせて貰うぜ?」スッ

少女「おいアラン!いいのか?」

盗賊「黙って付いて来い…」スタ

少女「んむむ…」スタ

闇商人「…」スタ


-------------

『街外れ_焚火』


メラメラ パチ


盗賊「だはははは…金貨1枚ゲッツ!」ピーン パチ

女ハンター「フフ…あの状況でスリ?」

盗賊「おう!俺の銀貨は50枚も無かった…儲けたわ」

少女「肉もっとクレ」

盗賊「おう食え食えー」

闇商人「こっちはもう焼けたかな…はい…」

盗賊「ラス!先に食って見ろ…ワニ肉は鶏肉より全然うめぇから」

女ハンター「頂く…」パク モグ

盗賊「しかしここは絵に描いたようなならず者の街だな?木組みの掘っ立て小屋ばっかりだが…なんか好きだぞ」

闇商人「見た感じ一応宿屋らしい所も有ったね…どうする?」

盗賊「今晩の寝床は確保せんとな?」

闇商人「なんか宿屋も安全な気がしないよ…」

盗賊「どっかの冒険者もウロウロしてっから大丈夫だろ?さっきの奴らはハッキリ言って雑魚だ」

闇商人「そうかい?」

盗賊「あんな奴らお前のバヨネッタ撃てば手のひら返して従う様になるぞ?」

闇商人「まぁそうなんだけど…誰がフィン・イッシュ側なのか分からないから下手に手を出せないよね」

盗賊「大人しくしとくのが吉だわな…まぁとりあえず拠点確保せんと動きにくい」

少女「アラン!もしかするとここでギルドの支援あるかも知れんぞ?」

盗賊「お?」

少女「試しに酒場で例の物頼んでみろ」

盗賊「やってみっか?」

闇商人「盗賊ギルドか…」

盗賊「おっし!!肉食ったら酒場を探すぞ!!」


-------------

『あらくれ共の酒場』


ドヤドヤ ガヤガヤ

ウハハハハ…あんなこ汚ねぇ壺が金貨10枚で売れるとはよぅ

半分よこしな!初めに見つけたのは私なんだから!!


盗賊「こりゃ又賑わっている様で…」スタ

闇商人「…」スタ

女ハンター「…」チラリ

少女「…」コソコソ


荒くれ共「ひゅぅぅ…」ニヤニヤ


女ハンター「…」ギロ

盗賊「おい!喧嘩売んな…奥行くぞ」グイ

女ハンター「…」チッ スタ


ヒソヒソ ヒソヒソ

誰だあいつ等?

女と子連れか…又シン・リーンの奴らが化けてんな?

シッ!!大人しくしてろ!!


------------

『奥のカウンター』


ヒソヒソ ヒソヒソ


盗賊「なんだってこの店はカウンターが一番奥なのよ…」ブツブツ

マスター「4人かぁ?椅子なんて無ぇぞ!!」

盗賊「見りゃ分かる…酒出せ!コブラ酒…タンブラー4つ…」


シーン…


マスター「…」ユビパチッ

盗賊「んん?何だ!?」


ドタドタ ガタガタ スラーン チャキチャキ


マスター「店終いだ…お前等何者だ?耳の裏見せてみろ」ギロリ

盗賊「おっとっとぉ…俺らは電脳化の者じゃ無ぇ…だがな?そんな脅しにゃ乗らんぞ?」

マスター「ほう?この人数を相手にか?」

盗賊「ちっとな?騒ぎは起こしたく無い訳よ…さっさと酒出せオラ」ズイ

少女「アラン!お前の顔が悪いんだぞ」

盗賊「そら済まんなぁ…生まれる付きだもんでよ」

マスター「んん?このチビ子はまさか…」

少女「チビ子言うな!母に言うぞ!」

マスター「おっと…こりゃ失礼…伝令って訳か」

少女「伝令違う…保護を受けに来たのだ」

マスター「ここん所伝令も資金援助も途絶えている…仲間が軍船にやられた件も…少しは説明願いたいもんだ」

少女「仲間が軍船に?どういう事だ?」

マスター「…」ジロリ

盗賊「どうやらこっちも訳有りな様だ…」

マスター「お前等!店番変われ…こいつらを奥へ連れて行く」

あらくれ共「おう!!」ドタドタ

マスター「入れ…」ギギー

盗賊「ほほーう…隠し扉か…」スタ


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『隠し部屋』


ギギー ガチャリ


マスター「酒は棚に入っている物を勝手に飲め…」スタ

盗賊「こりゃ又色々揃ってんな…」フム

マスター「…それで?何故保護を?」

盗賊「んぁぁどっから話しゃ良いんだ?」キュポン グビ

少女「少し私から話すぞ…こういう事だ…」


カクカク シカジカ…

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マスター「…なるほど?海賊王の娘に化けたフィン・イッシュ女王が大船隊を…それであの軍船か…」

少女「盗賊ギルドは関与しない立場なのだ…何も知らぬ兵隊には敵に映ってしまったのだろう」

マスター「迷惑な話だ…折角電脳化の者を生け捕り出来たと言うのに」

盗賊「生け捕りだと?電脳化デバイスは証拠隠滅の為に自爆するだろう?」

マスター「泳がせるのに成功していた…と言う方が正しい」


奴らは海賊の中に紛れ込み

ヤン・ゴン遺跡で調査活動をしていたシン・リーンの魔術師を襲ったんだ

そして魔術師が持って居た不思議な石を持ち去ろうとした…

だがどういう風に知れたのか分からんが突如軍船2隻からの精密砲撃を受けて海賊船は撃沈した

その海賊船に俺達の仲間も乗って居たんだ


盗賊「そいつを泳がせるってのは…行き先を知る目的だったのか?」

マスター「そうだ…その不思議な石は何かのエネルギーを持って居ると思われる…その行き先だ」

闇商人「ちょっと質問がある…襲われたのはシン・リーンの魔術師と言ったね?」

マスター「それがどうした?」

闇商人「どんな魔術師なのか情報は無いかな?」

マスター「死霊術師…遺跡で発掘されたミイラにサクリファイスという術をやろうとしていた様だ」

闇商人「サクリファイス…聞いた事が無い」

マスター「ミイラを食って力を得るとか…キチガイとしか思えん魔術らしい…そのお陰で何人も犠牲が出てる」

盗賊「犠牲って何よ?呪いとかそういう奴か?」

マスター「魔術の触媒に生きた人の心臓が必要な様だ…正気の沙汰と思えん…」

盗賊「なるほど話が通ったぜ…犠牲になったのは奴隷の子供達だな?」ギロ

マスター「詳しくは知らん…そういう奴も居たかもしれん」

盗賊「俺はその死霊術師が許せん…ぶっ殺しに行く」

闇商人「アラン落ち着いて…相手はシン・リーンの魔術師だよ…一人じゃない可能性もある」

盗賊「だからなんだ?まとめて殺してやる」ギラリ

闇商人「だから今フィン・イッシュやシン・リーンに敵対行為出来ないんだよ」

盗賊「ちぃ…イラつくな…」ググ

マスター「お前達は何をしに此処へ?」

闇商人「遺跡で何が起こって居るのか調べに来たのさ…ちょっとの間安全に過ごせる拠点が欲しくてね…それで此処へ」

マスター「此処に隠れる分には構わんが…協力が必要ならそれなりの報酬も必要になる…なんせ資金が足りないんでな」

闇商人「協力か…あまり考えて無かったな…」

盗賊「調査だけなら俺一人で行ける…その間お前等が安全なら良い」

闇商人「僕も見に行きたいんだけどね…」

盗賊「悪いが足手まといだな…遅すぎる…俺が先に行って安全を確認出来たら見に来ても構わん」

闇商人「確かに…その方が確実か…」

少女「アランが居ない間どうする?ここでゴロゴロするのか?」

闇商人「う~ん…傭兵を雇えば少しは安全に過ごせるかもだけど…」

マスター「一つ提案だ…お前達は船に乗って来ているだろう?」

闇商人「それが?」

マスター「撃沈した海賊船に財宝が少し乗って居た筈なんだ…回収すれば資金の足しになる」

盗賊「なぬ!?今サルベージやってる最中じゃ無ぇか!!」

マスター「じゃぁ取引だ…山分けしてくれりゃこの街での安全は保障してやる…どうだ?」

闇商人「ふむ…良いかもね」

盗賊「ウハハ太っ腹だな?」

闇商人「敵味方が分からない状況で問題が起こらなくなるならそれも良いかなと…下手すると船沈められちゃうかも知れないし」

マスター「よし!取り引き成立だ」

闇商人「まぁとりあえず今晩は此処で休めるね」

盗賊「俺は遺跡の方に行って見ようと思うがな…」ギラリ

闇商人「くれぐれも面倒を起こさない様に…」


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『酒場のテーブル』


ドヤドヤ ガヤガヤ


マスター「…とりあえず護衛が数人付くからそのつもりで頼む…何処に行っても構わんが出来るだけ金を落として行って欲しい」

闇商人「それは何か買えという事かい?」

マスター「そうだ…加工していない象牙や琥珀が有るぞ?」

闇商人「ふ~む…あまり持ち合わせも無いんだけど…」

マスター「出来るだけで構わん…ここで酒を飲んで金を払って行くのでも良い…金を回してくれという話だ」

盗賊「おー使っちまえ使っちまえ!どうせサルベージで金戻って来るんだからよ」グビ プハァ

少女「肉だ!新鮮な肉が欲しいぞ!」

闇商人「フフまぁ良いか…」

盗賊「じゃぁ俺はそろそろ仕事に行って来る」スック

闇商人「場所は分かるのかい?」

盗賊「ほんなん一番デカイ遺跡なんだろ?見えてたじゃ無ぇか!」

闇商人「行くのは良いけど…くれぐれも…」

盗賊「言われなくても分かってる!まずは偵察よ…俺の金貨全部置いて行くから適当に何か仕入れとけ」ジャラ

闇商人「ハハ分かったよ…」

盗賊「じゃぁな?毎度の事だが…朝までには戻って来るから…そのつもりで頼む」タッタッタ

闇商人「…さて?まだ寝るには早いけど…どうする?」

女ハンター「護衛が居るなら…少し街を歩いてみよう」

闇商人「そうだね?何があるか気になるし…」


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『ぼろ屋の連なる街道』


ヒソヒソ ヒソヒソ

マズイ事になった…遺物の買取を一旦休止するらしい…収入無くなるぞ

ええ?どうして急に…

多分遺跡調査をそろそろ終わるんだと思う…シン・リーンの奴ら居なくなったらどうするんだ?此処は…

また山越えで戻るなんてもう考えたく無いわ…



闇商人「見た感じ熟練冒険者ばかりの様だね…」キョロ

女ハンター「確かに…防具の差が気になる…」

闇商人「武器もかなり良さそうだ…見てごらん?アレはオリハルコン製の武器だよ…」ユビサシ

女ハンター「見た事無い輝きの武器ね…」

闇商人「向こうの大陸には流れて来てないからねぇ…オリハルコンの原石はシン・リーンで採掘出来るらしい」

女ハンター「銃器は誰も持って居ない…」キョロ

闇商人「火薬があまり流通しないからだね…魔法が有ればそもそも銃器の必要性も薄いのかな」

女ハンター「魔法か…」


ゴゥ ボボボボボ


少女「向こうでゾンビが焼かれてるぞ!」シュタタ

女ハンター「うん見た…アレが炎の魔法ね…」

闇商人「僕は昔…魔女ルイーダが使う魔法を見た事が有るよ…あんな小さな魔法じゃない」

女ハンター「私も幽霊船に乗って居たその人を見た事がある…雷とか竜巻とか操ってた…」

闇商人「僕達凡人からするとスゴイ技だね」

女ハンター「銃器で勝てるのは射程距離…」

闇商人「あ…最近思うんだけど…ミライ君の工夫で君のライフルも魔法の様に思えて来た」

女ハンター「私もあんな風に?」

闇商人「そうだね…射程の長い炎魔法みたいな感じさ」

女ハンター「工夫次第…か」


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『露店』


ヒソヒソ…


闇商人「なんか…賑わっては居ないなぁ…変な雰囲気だ」

女ハンター「ケシの実とか売ってる…大麻も…」

闇商人「う~ん…ワニ革の防具も…職人が居ないせいかなんか雑だねぇ…」キョロ

少女「カゲミ!ワニ肉食いたいぞ!」

闇商人「まぁ好きなの買っておいで」チャリン

少女「にくぅぅぅ!!」シュタタ

女ハンター「遺跡の盗掘品もいろんなものが有る…」

闇商人「あんまり欲しい物が無いなぁ…」

女ハンター「買うなら象牙とか琥珀とか?…そういう材料系?」

闇商人「ミライ君が加工できそうな物を適当に買っておくか…」

女ハンター「肌を露出しないくらいには革装備でも…」スタ


アレモコレモ…

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怪しい男「おやおや?羽振りの良さそうなお客さんで…ちょいと値が張りやすが…とっておきの物なんかどうで?」

闇商人「んん?…取って置きの物とは?」

怪しい男「この書物の価値が分かれば良いんだがね?」バサ

闇商人「え?…遺跡調査報告…」

怪しい男「金貨100枚…」ニヤ

闇商人「うわ…高い…」

怪しい男「興味無いかね?」ニヤニヤ

闇商人「少し中を見せて貰っても?」

怪しい男「金貨1枚…フフフフ」

闇商人「仕方ないなぁ…」チャリン

怪しい男「では少しだけ…イヒヒヒ」

闇商人「…」バサ ヨミヨミ


---これは錬金術の等価交換を破る調べ---

---命の不等価性を利用する?---

---因果論…苦行が善因善我---


怪しい男「はいそこまでだよ…」グイ

闇商人「あぁぁ…」

怪しい男「さぁどうするかね?金貨100枚だが?…」

闇商人「ラシャニクア!今金貨何枚持ってる?」

女ハンター「30枚くらい…」

闇商人「アランの分も合わせてギリギリか…」

女ハンター「どうせ使い道無かったのだし…良いのでは?」ジャラリ

闇商人「ごめん借りる!」ジャラジャラ

怪しい男「ウホホホホ良いお客さんだ…持って行きな」バサ

闇商人「因みに…この書物はどうやって手に入れたんだい?」

怪しい男「そんな野暮な事聞きなさんな…じゃぁこれで」スタ ヒョコヒョコ

闇商人「…」

女ハンター「詐欺じゃ無いでしょうね?」ジロ

闇商人「あぁ確認する…」パラパラ

闇商人「…」ヨミヨミ

闇商人「大丈夫だよ…中身はびっしり情報が記されてる」

女ハンター「そう…それなら良い」ホッ

少女「なんか今の怪しい男…匂うぞ…」クンクン

闇商人「どんな?」

少女「多分機械の匂いだ…片足が機械になってる」

女ハンター「電脳化の者?」

少女「それは分からん…追うか?」

闇商人「今は騒ぎを起こせないよ…ここは盗賊ギルドに任せた方が良い」

女ハンター「酒場に戻って連絡しよう…」

闇商人「そうだね…戻ろう」スタ


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『酒場の隠し部屋』


ガチャリ バタン


マスター「連絡して貰えて礼を言う…見つけ出して上手く泳がせようと思う」

闇商人「奴らの目的は何なのかな?」

マスター「恐らく遺跡から発掘されたミイラ関連だとは思うが…正直分からない」

闇商人「石が狙いなのかな?…でもどうやってその情報が伝わったんだろう」

マスター「シン・リーンの者の中に入り込んで居ると考えるのが妥当だが…魔術師相手にそれが可能なのかという疑問もある」

闇商人「そうだよね…」

女ハンター「その書物は機密文書でしょう?」

闇商人「多分そうだよ…遺跡調査の内容をそんな簡単に盗まれるのも解せないな」

女ハンター「そんな機密を見ず知らずの者に売りつけるのも何かおかしい…」

闇商人「んん?…もしかしてこれは誘導?」

女ハンター「それには何が記されて?」

闇商人「まだしっかり読んで無いけど…」


遺跡調査に来ている魔術師は

その昔黒の同胞と呼ばれていた者の生き残りの様だ

不死者となった死霊術師…リッチ

そのリッチが遺跡から発掘されたミイラを食らい知識を得ようとしている

でもそれには生きた心臓が必要なんだ…本来は術者が心臓を生贄にするらしいよ

当然不死者には生きた心臓が無い…

だから秘密裏に生贄を使いサクリファイスという術を成功させようとしてるんだ

さて…ここから発見する事になる

生贄を何人使っても術がなかなか成功しない中で

人の命の不等価性を発見するのさ…苦行を重ねた人の命の方が価値が高い事をね

そして価値の高い命を生贄とする事で術が成功した…副産物としてその命の等価に当たる石も精製されんだ


女ハンター「賢者の石…」


闇商人「そう…錬金術以外にも精製方法が有ったのさ」

女ハンター「それじゃ黄金が不要になるでしょう?」

闇商人「う~ん…ミイラが一杯居てサクリファイスを何度も出来るならそれでも良いのかもね」

女ハンター「じゃぁ偶然1つだけ精製された訳ね…」

闇商人「でもね?命の不等価性を発見したのは大きいかな…黄金を錬金術で賢者の石に変える場合…」

闇商人「多分同じ様に生きた心臓が必要なんだと思う…その場合黄金と等価の命である必要がある」

闇商人「それが今まで分からなかったから賢者の石を作る事が出来なかった」

女ハンター「不等価性の法則が分かれば良いと…」

闇商人「それがこの書物だよ…年齢…性別…体格…いろんな生贄を使って試した調書さ」

女ハンター「それは…人の命をあまりにも軽んじて…」

闇商人「そうだね…シン・リーンがこの調査を黙認して居るのも問題が有ると思うよ」

女ハンター「黙認?その死霊術師はシン・リーンの魔術師では?」

闇商人「正確には元シン・リーンの魔術師さ…追放されて黒の同胞になって居る…それを黙認しているんだ」

女ハンター「じゃぁ黙認している理由って…」

闇商人「命の不等価性の法則が知りたい…つまり都合の悪い事を全部黒の同胞にやらせた…」

女ハンター「なんか分かって来た…内部告発する者が出て来てるんだ…」

闇商人「フフ…シン・リーンも一枚岩じゃない様だね」


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『翌朝』


ガチャリ ドター


女ハンター「え!?ア…アラン!!」ダダ

盗賊「ぅぅぅ…ポーション無ぇか?」グッタリ

闇商人「どうしたって言うんだ!!ポーションなんか持って来てない」アタフタ

女ハンター「先ず止血!!どうしてこんな傷だらけに…」ゴソゴソ

盗賊「ぅぅ…酒だ…蒸留酒がポーション代わりになるかも知れん…」


マスター「これは又ひどくやられた物だ…蒸留酒だ…これで良いのか?」キュポン


盗賊「遺跡はエライ事になってんぞ…」グビグビ プハァ

女ハンター「クソ!!腹の傷は縫わないと止血出来ない…」ダラダラ

マスター「針と糸だな?」ドタドタ

女ハンター「血が出過ぎだな…輸血をしないと…」

盗賊「カゲミ…ポーションの材料を何か持って居ないか?」

闇商人「ええ?琥珀がある…まさか琥珀を食べる気かい?」

盗賊「少し砕いて細かくしてくれ…少しぐらいなら食っても死ぬ事ぁ無いだろう…はぁはぁ」

闇商人「こんな物を…」ガツガツ パラパラ


タッタッタ


マスター「仲間が少しポーションを持って居た…それから針と糸だ」ポイ

盗賊「おぉ助かったぜ…」ゴク

女ハンター「縫っていく…少し痛むよ」チク ヌイヌイ

盗賊「もう痛てぇは通り越してる…おーし…ちっと落ち着いて来たな」グビグビ プハァ


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『処置後』


グルグル マキマキ


女ハンター「包帯の代わりに麻布で…」ビリビリ マキマキ

盗賊「ヌハハどうやら気を失う事は無さそうだ…」グビ プハァ

闇商人「酒がポーション代わりになるのかな?」

盗賊「さぁな?だが随分気分が良い…大麻持って無いか?」

闇商人「有るけど…この状況で吸うの?」

盗賊「傷が痛むのよ…ちっと紛らわしてぇ…つつつ」

闇商人「なんて人だ…」ポイ

盗賊「…」チッチ モクモク スパーーー

闇商人「遺跡はどんな事になってる?」

盗賊「例の死霊術師…どうやらミイラ食っておかしくなった様だ」

闇商人「この傷は死霊術師の?」

盗賊「いや…ゾンビやらレイスやら…やたら強いのが遺跡の中占拠してる」

闇商人「なんだ?話が違うぞ?」

盗賊「なんの話か知らんがシン・リーンの魔術師は遺跡を魔方陣で封じ込めようとしてんぞ?」

闇商人「君はその中に入って行ったのかい?」

盗賊「まぁな?…他にも熟練冒険者が居たもんでイケると思ったんだ」


そいつらの話じゃ例の死霊術師はエルドリッチと言うらしい

ミイラ食ってバケモノになったんだとよ

命の源だった賢者の石が盗まれちまったもんだから

当たり構わず命を吸う様だ…

今は自我が有ってまだ大人しいから

シン・リーンの魔術師が遺跡に魔方陣張って出られん様にしているそうだ


闇商人「なるほど…」

盗賊「なんだ?妙に理解が早いな?」

闇商人「こっちも情報仕入れててね…大体経緯は分かった」

盗賊「そうか…ほんでちっとエライ事ってのがな?」

闇商人「まだ何かある?」

盗賊「エルドリッチは魔王の器になり得るとか言ってんのよ…だからシン・リーンの魔術師は必死なんだ」

闇商人「魔王だって!?」

盗賊「近づくと命吸われるから…もう誰も近づけんのよ…どうにも出来んから封印な訳だ」

闇商人「ここに来て魔王が出て来るなんて…」ボーゼン

盗賊「こりゃ海で停船してるフィン・イッシュ正規軍にも伝えた方が良い事案だ…寝てる暇無ぇぞ」

闇商人「こんな状態で行くなんて無茶だよ」

盗賊「川下るのは放っといても海まで出るだろう…急いで行くぞ」ムクリ

マスター「おい!!財宝の件は忘れて居ないだろうな?」

盗賊「おぉ丁度良い…一緒に船まで来りゃちゃんと支払う」

闇商人「そうだね…来てくれた方が安心さ」

マスター「財宝を持って徒歩で移動なんか出来んが…」

盗賊「ここまで送れば良いんだろ?」

マスター「ふむ…よかろう」


--------------


『双胴船』


ザブザブ ドター


盗賊「悪いがちっと俺は横になる…傷が痛くて敵わん…」グッタリ

マスター「この船なら俺にも動かせる…とりあえず下って行けば良いな?」

闇商人「案内するよ…」

盗賊「ラス!後は任せた…ワニが出たら脳天ぶち抜け…はぁはぁ」

女ハンター「分かった…」チャキリ

マスター「銃器…やはり持って居たか」

少女「おい!ワニ何処かに居るぞ!!気を付けろ」クンクン

マスター「大丈夫だ…川の深水まで行けばワニは襲って来ない」グイ バサバサ

少女「急げ急げ!近づいて来るぞ」クンクン

女ハンター「水の中か…」


--------------

--------------

--------------

『キャラック船』


グイグイ グイグイ


女オーク「フン!」グイグイ

女ハンター「そのまま引き上げて…」

学者「兄貴ぃ…こりゃどういう事っすか…」ダダ

盗賊「見ての通りよ‥血が足り無ぇ…何とかしろ」グター

学者「ミライ君!水と湯を持って来て下せぇ…こりゃ傷口キレイに洗わんと膿んじまいやすね…」ゴソゴソ

戦士「新しい顔が居る様だが?船に乗せても構わんのか?」ジロ

少女「父ぃ!盗賊ギルドの者だ」

戦士「そうだったか…どうぞどうぞ」スス

マスター「なかなか良い船だ…」キョロ

盗賊「ところでゲス…サルベージの方はどうだ?」

学者「宝箱毎引き上げてお宝ザックザクっすよ…武器類もまぁまぁ残って居やした」

盗賊「盗賊ギルドに半分山分けする事になったんだ…渡してやってくれ」

学者「えええ!?マジすか…」

戦士「沖の船がこちらを勘繰っている様だからあまり財宝を船に乗せておくのはどうかと思うぞ?」

学者「俺っちの頑張り分が…トホホ」

闇商人「代わりにと言ったら何だけど…コレ」バサ

学者「なんすか?その書物?」

闇商人「錬金術について書かれているんだ…薬学に詳しい君の意見も欲しいな」

学者「ちっと見せて下せぇ…」パラパラ

盗賊「おいおい俺の処置を放置すんな…先に手当済ませろ」

学者「手当は済んでるんすよ…後はキレイに洗うだけなんで自分でやって下せぇ…」ヨミヨミ

盗賊「クソが…お前にはお宝の分け前無しだ!!」

学者「うほーーー…命の不等価性…だから産地によって効果にバラツキが…」ブツブツ


-------------

『荷室』


ガサゴソ


戦士「引き上げた武器類はすべてそこにまとめてある」

闇商人「銀製だけよく集めたね…」

戦士「鉄の武器はもう錆びついていたそうだ…大砲も重くて引き上げられない」

闇商人「まだ他にも残って居そうなのかな?」

戦士「簡単に引き上げられそうな物はそれで全部…残りは苦労しそうだと言って居たぞ?」

闇商人「ふむ…アランがあの調子ではしばらく待機するしか無いから…ゲス君にはもう少し頑張ってもらうか」

戦士「…というと?」

闇商人「一旦これを全部盗賊ギルドに引き渡すのさ」

戦士「ハハハなかなか気前が良いな?」

闇商人「どうもヤン・ゴン遺跡の方で大変な事が起ころうとして居てね…武器が必要になる筈なんだ」

戦士「大変な事?…どういう事だい?」

闇商人「魔王が復活しそうだと言えば伝わるかな?」

戦士「何ぃ!?」

闇商人「詳しくは後で話す…今は取り急ぎ武器を運ぶのと…沖で停船している正規軍2隻に事情を伝えたい」


シュタタ クルクル ドン!


少年「フガ…」ゴロゴロ ドタ

少女「お前ーー!!逃げるな!!チンコ見せろ」

少年「アウ…アウ…」ダダダ

少女「逃げても無駄だ!」シュタタ グイ

少年「アーーー…」バタバタ

少女「ふむ…やっぱり伸びるな…」グイグイ


戦士「こらミルク!!それは引っ張る物では無いぞ」

少女「父の物と形が違うぞ!」

戦士「良いから引っ張るのを止めなさい」

少女「仕方ない…ブラブラ気になるから何か履け」

戦士「ミルクが何か用意してやるんだ」

少女「お前ーー!!付いて来い!!ブラブラしない様にロープで縛ってやる」グイ

少年「ヒィィ…」バタバタ


闇商人「ハハ…あの少年は大分元気になった様だね?」

戦士「食が細いのが気になるが…」


少女「お前の名は何だ?

少年「フガフガ…」

少女「それしか言えんのか!?そうだ…フーガにしよう!お前はフーガだ!!」

少年「フガ!?」

少女「生のワニ肉ある…食いに行くぞ!」グイ

少年「アーーー…」ズルズル


-------------

『船尾楼』


グピグピ プハァ


盗賊「うぃーー」ゲップ

学者「足り無い血は良く食って補って下せぇ…寝ると造血促されるんで食ったら寝て下せぇよ?」

盗賊「おう!!腹いっぱいになったら眠気が出来て来た…」ドター


ガチャリ バタン


闇商人「どうだい?落ち着いたかな?」

学者「もう心配無いっすね…2~3日は貧血気味なんで大人しくしてりゃ全快しやすよ」

闇商人「それは良かった…僕はこれから荷を持って一度ならず者の街へ戻る」

盗賊「んあ?もう行動すんのか?」

闇商人「大事に至る前に武器を配らないと…と思ってね」

盗賊「そうか…まぁ気を付けて行ってくれ」

闇商人「護衛にリコルとラシャニクアを連れて行くよ…それでゲス君!」

学者「へ?俺?」

闇商人「引き続き沈没した海賊船からお宝を引き上げて居て貰いたい」

学者「そりゃ良いんすが…こっから先は船をちっと解体せんと入って行けんので時間掛かるんすよね…」

闇商人「これまで引き上げた財宝は全部持って行くから…これからの稼ぎが僕達の分さ」

学者「えええええ!?全部持って行っちまうんすか…」

闇商人「代わりの材料はこっちに持って帰って来る…象牙に琥珀…それから良質のワニ革」

学者「琥珀!!」

闇商人「ポーションの材料だったよね?」

学者「琥珀はそのまんま金に換えられやすねウヒヒヒ…そっちの方が軽くて済みそうっす」

闇商人「…という事でアラン…しばらく僕は行ったり来たりするから君は体を癒しておいて」

盗賊「そうさせて貰うわ…ちっと寝る」ドテ

闇商人「沖の正規軍とも僕が話して置くからそのつもりで…」ノシ


--------------

『サルベージ』


ザバァ ザブザブ


学者「引き上げて下せぇ!」

女オーク「フン!フン!」グイグイ

剣士「今度はどうだった?」ダダ

学者「あんま良い物無いっすねぇ…矢が一杯有ったんで一応持って帰ったんすが…」

剣士「矢は羽が無いからここで作れない…良いじゃない!」

学者「やっぱ金目の物は宝箱に入れてもう引き上げちゃったっぽいすわ…」

剣士「他の資材は?」

学者「水の中でそんな動かせんですよ」

剣士「そっかぁ…勿体無いなぁ…」

学者「一応…ちびちび集めて金貨は20枚ぐらいっすか…」ジャラ

剣士「銀食器とかあれば僕が加工できるけどね?」

学者「食器っすか…もっかい行きやすかねぇ…」

剣士「壺とか水瓶もあると助かる」

学者「分かりやした…今度は壺とかも引き上げやす」

剣士「ごめんね何回も…」

学者「いやいやガスマスクあるんで水中でなんも苦痛は無いっすよ…ほんじゃもっかい潜りやすね」ザブン


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『数日後_甲板』


ヨタヨタ ドター


学者「お!?兄貴やっと動けるようになりやしたね?」

盗賊「おう横になってるばかりじゃ退屈でよ…どうよ?お宝の方は?」

学者「微妙っすね…謎の壺とか色々有るんすが俺っちには興味の無い物ばっかっすよ」

盗賊「遺跡の盗掘品か?」

学者「もしかしたら高値で売れるのかも知れんのですが…俺っちはやっぱ金銀財宝が良いっすよ」

盗賊「ヌハハ違い無ぇ…しかし泥棒も全然来無ぇな…」

学者「鉤縄で登れんもんで諦めたみたいっすね…てかあいつ等盗賊ギルドの関係じゃないんすか?」

盗賊「かも知れん…しかしこう暇だとなぁ…」ノビー

学者「フィン・イッシュ女王の船はどうなっちゃったんすかね?」

盗賊「うむ…海賊王の娘の噂も全然聞かんかったわ」

学者「兄貴…もしかして行き先間違っていやせんか?」

盗賊「んあ?…夢の記憶だからあんま確かじゃ無いんだが…寄港予定地には入って居た筈なんだ」

学者「それって候補地とかだったりしやせん?」

盗賊「此処をすっ飛ばしてるってか?…じゃぁあの正規軍の船は何なんだろうな?」

学者「もっかい行き先整理しやせんか?」

盗賊「ふむ…ちっと海図を持って来るわ」スタ


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『海図』


バサッ…


盗賊「この印打ってる場所が寄港予定地なんだ…順番は分からん」ユビサシ

学者「外海の島を巡ってるんすね…ふむ」

盗賊「だから俺らは先回りして陸沿いを北上したのよ」

学者「外海の島もやっぱそれぞれ漁村とか港があるんすよねぇ…」

盗賊「まぁ…海賊王の娘を演じてるからな…出来るだけ噂を広めたいんだとは思う」

学者「途中で全滅してるなんて考えられやせんよね?」

盗賊「ガチ船団がそんな簡単に全滅はせんだろう…何か有っても女王の乗る船だけは逃すだろうな」

学者「ううむ…やっぱどう見てもヤン・ゴンに寄りそうっすねぇ…」

盗賊「だろ?シン・リーンへ向かうなら通る筈だからな?」

学者「もしもずっと北側を航海していたならこの次に行く場所へ行ってる可能性もありやすね」

盗賊「ムン・バイだっけか…まぁ俺らもそこに移動してみっか?」

学者「そっちは攻略された古代遺跡だって話じゃ無いすか…多分バン・クーバみたいに栄えてるんじゃないすかね?」

盗賊「又俺らだけの単独航海…ううむ」

学者「もう海賊相手は慣れてきたもんで大丈夫っすよ」

盗賊「うっし分かった!!ここで暇持て余してても仕方無ぇ…カゲミ戻ったら移動すっぞ」

学者「そうっすね…準備しときやす」


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『双胴船』


オーライ オーライ


女オーク「フン!フン!」グイグイ

剣士「お帰りーー!!荷はこれで最後?」

闇商人「そうだね…あまり沢山は無いけど貴重な象牙と琥珀だよ」

盗賊「いよーう!カゲミが戻ったら次の寄港予定地に向かおうかと言う話をして居た所だ」

闇商人「そうかい…どうやら向こうの正規軍もかなり待ちぼうけを食らって居る様だよ」

盗賊「やっぱそうか…女王の船は航海中に何か有ったのかもな?」

闇商人「そこら辺りの情報はさすがに出てこない」

盗賊「ヤン・ゴン遺跡の方はどうよ?」

闇商人「変わりは無いね…只正規軍の一部がスクーナーで上陸しているから落ち着きない感じはある」

盗賊「ほう?盗賊ギルドはどう立ち回る?」

闇商人「敵対では無いよ…あくまで中立さ…落ち着きないのはその他の冒険者とかだね」

盗賊「んん?どういう意味だ?」

闇商人「エルドリッチ討伐を横取りされると思って居るんだよ…やっぱり正規軍は動きが全然違う」

盗賊「やっぱそうか…落ち着いた陣取りもそういう統率が取れてるからなのよ」

闇商人「それで?もう出発する気かい?」

盗賊「お前が良けりゃ行こうと思うが?」

闇商人「ふむ…まぁ良いか…」

盗賊「まだ用事があるならその後でも構わんが…」

闇商人「いや只の挨拶だよ…あの酒場のマスターには世話になったからね」

盗賊「そら大事な事だ…行って来いよ」

闇商人「彼は僕の体に気付いてるのさ…変に口説かれても困る…ここはサッと引く方が変な遺恨が残らない」

盗賊「なんだそんな事か…じゃぁ出発して良いんだな?」


シュタタ クルクル


少女「待てぇぇぇ!!」シュタ

盗賊「んあ?」

少女「ウルフィがまだ陸に居るぞ!!」

盗賊「おっとぉ!!忘れてたわ」

少女「カゲミ!もう一回戻って挨拶出来るぞ…その間にウルフィ連れて来る」

闇商人「ハハ参ったね…」

少女「父ぃ!!ウルフィ探しに行くぞ!!」

盗賊「まぁ俺ら準備しとくから行って来い」

戦士「ハハなかなか休めないねぇ…」


--------------

『船尾楼』


ガチャガチャ


学者「ちっと兄貴ぃ!!今ポーション作ってる所なんで散らかさんで下せぇ」

盗賊「なんだもっと隅っこでやってろっての…」

学者「今回手に入れた書物…これスゴイ発見っすよ?」

盗賊「俺は分からん…賢者の石の作り方とかそんなんだろ?」

学者「それもそうなんすが…命の不等価性…これの法則っすね」

盗賊「なんのこっちゃ?」


金属とかの無機物はその価値が質量に依存してるんす

黄金は重たいほど価値がありやすよね?

ほんで植物とか動物の価値は…環境で価値が変わるっていう理論なんす

まぁ簡単に言うと…兄貴みたいにゴミ食って育った環境の方が命の価値が高い

それを植物に置き換えると錬金術で作れるポーションとかもっと効果を伸ばせるんすよ


盗賊「ほーん…」ハナホジー ポイ

学者「あ!!今鼻ほじりやしたね?そういう物の価値が高い可能性があるんす」

盗賊「お前俺の鼻くそが欲しいんか?」

学者「ちっと良く思い出して下せぇ…ミライ君はゴミだと思った物を上手く使いやすよね?」

盗賊「まぁ確かに…」

学者「錬金術も同じ様にゴミだと思った物から良い物が作れるんす…誰も食い付かん毒キノコなんか良い例っすね」

盗賊「それが命の価値の高さ…なのか?」

学者「命の価値っていうとなんか言い方悪いっすね…成熟した魂…うーんなんて言えば良いんすかねぇ…」

盗賊「じゃぁ難破船で助けた小僧が持って居た石…」

学者「…」ピタ

盗賊「あれは命の価値の高い成熟した魂を持って居た誰かの結晶…そういう事だな?」

学者「はっきり言いやすと…その通りっす…書物に全部書いてありやす」

盗賊「俺は姉御の牙を大事にしている様に…あの小僧はその誰かを大事にしてる訳か…」

学者「まぁそこら辺の話はもう済んだ話なんでそっとして置きやしょう」

盗賊「ふむ…」

学者「実はっすね…この書物には錬金術の事だけじゃ無くて…この世の成り立ちも少し記されてるんすよ」


輪廻転生って言うらしいんすが…

この世界はそもそも地獄で…人間は魂の価値を高める為に何度も生まれ変わる…

そうやって魂の価値を高めた後に悟りを開くことで神と同化する…

超古代ではそんな教えが有った様なんす

なもんで遺跡で発見されたミイラは悟りを開いた神だった可能性がありやす


盗賊「その神を食らってエルドリッチになっちまったってか…」


学者「さっきから言ってる様に…魂の価値を高めるのは苦行なんす…人間に苦行を与えて魂を高める方法と言うと…」

盗賊「ぬぁぁ聞きたく無ぇな…」

学者「カゲミさんからちっと聞いたんすが…シン・リーンの魔術師もこれを黙認してるらしいじゃないすか」

盗賊「…」

学者「なんでだと思いやす?」

盗賊「さぁな?俺にゃ関係無いと思いたいが…」

学者「ズバッと言いやすよ?」

盗賊「言って見ろ」

学者「神が居ないから誰も天に行けなくなったのが原因だと思いやす」

盗賊「…」

学者「この地獄の世界の中で天に行くのが唯一の救いだったのに…20年前それが無くなった」

学者「この事実を隠すためにシン・リーンは言論統制を始めたんす」

盗賊「あぁぁぁ嫌な話だぜ…神を復活させようって腹積もりか…バケモンだぞ…あのエルドリッチってのは」

学者「結果的にはそうだったのかも知れやせんが…シン・リーンの行いも完全否定出来んすよ」

盗賊「死んでも天国にゃ行け無ぇってか…うーむ」

学者「地獄が確定してるんならどうにかしようと思いやすよね?」

盗賊「この世が地獄だってんなら…もっかい此処でも良いけどな?」

学者「本当に救いようの無い環境でも同じ言葉が言えやすか?」

盗賊「…なるほど…俺も恵まれ過ぎってか…」

学者「やっぱ多くの人を救うには信じる何かが必要なんすね…それが教えっすよ」

盗賊「ウソじゃダメか?」

学者「分かる人にはすぐバレちゃうんじゃ無いすか?魔術師とか特に…」

盗賊「俺ぁ今まで神様なんぞ拝んだ事無ぇからなぁ…そんな大事に思えんのだが…」

学者「恵まれて居たからじゃないっすかね…」


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『甲板』


ヒラヒラ パタパタ


盗賊「おいミライ!…この吊ってある布は何だ?」

剣士「え!?あぁそれ矢避けだよ」

盗賊「布でか?」

剣士「うん…突っ張って無いから矢を避けるならそれで十分さ…なんなら弓矢で撃って見たら?」

盗賊「ほーー考えたな…」ジロジロ

剣士「一応日除けの役割もあるんだよ?日中ずっと日に当たってると暑いからね」

盗賊「なるほど…弓の撃ち合いも想定済みな訳か」

剣士「ちょっと矢避けが有るだけで狙える場所も限られてくるからねぇ」

盗賊「ちっと弓矢撃ってみるな?」ギリリ シュン!


バスン! ポトリ


盗賊「おぉぉ!!布が包まって矢が通らんのか…」

剣士「でしょ?矢避けはそれで十分!」

盗賊「ふむ…それで要所要所に布が吊ってある訳か…」

剣士「帆操の邪魔にはならない様に考えたつもりだよ…あ!!」

盗賊「んん?」

剣士「双胴船が帰って来る」

盗賊「ようし!船引き上げる準備だ!」ダダ


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『荷上げ』


オーライ オーライ


盗賊「うらぁぁ!!」グイグイ

学者「兄貴…怪我は大丈夫なんすかね…」タジ

盗賊「動か無ぇと鈍っちまうんだ…しかし一人で荷上げ出来るのは良いな」ヨイショ ドスン

戦士「そうだろう?その荷上げ装置も中々良い工夫だ」

盗賊「小舟を甲板に固定するからちっと手伝ってくれ」グイグイ

戦士「うむ…反対側を持てば良いな?」グイ

盗賊「ミライとリッカは帆を開いて碇もあげてくれ…出発すんぞ!」

剣士「おっけー!!」シュタ

盗賊「おいミルク!!積んで来た物を荷室まで運んどけ」

少女「出港!!」ビシ

盗賊「おい聞いてんのか!?」

少女「出港だぁ!!」ビシ

ウルフ「アオ~~ン!」シュタ

闇商人「じゃぁアラン…僕は疲れたから荷物は頼むよ」スタ

女ハンター「私も少し休む…」スタ

盗賊「おいお前等…」

少女「出港だぁぁぁ!!」ビシ


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『船尾楼』


ユラ~リ ギシ


盗賊「進路は北東だ…こっから2~3日行けばまた陸が見えて来る筈」

ロボ「ピポポ…」クルクル

盗賊「舵取りは任せるな?」ナデナデ

学者「なんか雲行きが怪しいんすが…」

闇商人「それは良い…水浴びしたかったのさ」

盗賊「ならず者の街は水浴び出来るような環境じゃ無かったな?ヌハハ」

闇商人「そうだよ…あそこは川が汚くて浴びる気にならない」

盗賊「ところであの酒場のマスターにはお別れ言えたんか?」ニマー

闇商人「まあね?次来た時はもっとゆっくりして行けってさ」

盗賊「ほんであの荷物か…」

闇商人「要らないと断ったんだけどね…まぁ珍しい酒もあるから良かったじゃ無いか」

盗賊「お!?マジか…」

闇商人「僕はあんな男よりラシャニクアの方がずっと好みだ…」

女ハンター「なっ…」ドテ

盗賊「ヌハハお前等そういう感じか」

女ハンター「いや違う!!」

闇商人「比べたらの話だよ…ちょっと僕は体が気持ち悪いから先に水浴び行かせて貰うよ」スック

盗賊「ラスも一緒に行ったらどうよ?」

女ハンター「私は後にする…」プイ

闇商人「何言ってるのさ…樽には一人しか入れないじゃないか」

盗賊「一緒に入れとは言って無い…背中ぐらい流せるだろう?」

闇商人「背中ねぇ…まぁ拒む気も無いから来て貰っても良いけど」

女ハンター「私の方が恥ずかしい!行く訳無い!」


--------------

『夜_甲板』


ザザザザ バシャバシャ


盗賊「うほーー一気に降って来たな」ゴシゴシ

学者「此処ん所蒸し暑かったっすからねぇ…」ゴシゴシ

剣士「あ!!ちょうど良かった!!甲板の掃除手伝って!!」

盗賊「なぬ!?」

学者「あらら…」

剣士「甲板の上で魚解体したりいろいろやってるから汚れてるんだよ…ブラシで擦って落として」ポイ

盗賊「雨降るたんびにコレだもんなぁ…」ゴシゴシ

学者「まぁでも荷上げでくっ付いて来た海藻類もそのまま張り付いてるんで綺麗に落としやしょう」ゴシゴシ


ビュゥゥゥ グググググ


盗賊「風がちっと出て来てるか…嵐にならにゃ良いが…」

学者「ミルクちゃん騒いで無いんで大丈夫っすよ」


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『翌日_船尾楼』


アーデモナイ コーデモナイ…


シン・リーンは精霊信仰が根強いけど一応唯一神信仰も認められている

フィン・イッシュの殆どは龍神信仰…あとは自然信仰かな


盗賊「ほーん…」ナハホジー ポイ

闇商人「まぁ…名の知れた神の類は皆…それぞれの時代の勇者によって滅された訳さ」

盗賊「ほんで俺ら人間は天国に行けなくなったってか?」

闇商人「それがどれほど大変な事なのか…僕はあまり実感出来ないんだけれど…」

学者「それ成仏出来ないって事っすよね?」

闇商人「どうなんだろうね?一応死者を弔う儀式はやっている様なんだけどね」

学者「まぁでも神が居なくなったと言うのは不都合な真実なもんで知れ渡らん様に言論統制するのは理解出来るっすよ」

戦士「口を挟むが…こう考えてはどうかね?」

盗賊「んん?」

戦士「もしも不治の病を患ったとしよう…願う事は救いだと思わないかね?」

盗賊「ふむ…確かにそうだな」

戦士「神に救いを願う事で希望を見る…しかし救いが無いと知った場合…絶望しか見ないのでは?」

闇商人「流石だね…僕達よりも長く生きているだけの事はある意見だ」

盗賊「絶望か…う~む」

闇商人「一人や二人じゃないさ…もしかしたら死者達も天に行く事を望んで居るのかも知れない」

盗賊「お前それ言ったら数え切れんぞ」

闇商人「そんな絶望が魔王を生んだりしないだろうか?…神はそうならない為の存在だったとか?」

学者「一番の問題は20年前…神が滅された後に勇者達が光を示さなかった事っすね」

闇商人「そうだね…事の真相が闇に消えたままだ」

盗賊「どうも不吉な予感しかし無ぇ…エルドリッチも放ったらかしだしな」

闇商人「逆に言うと幽霊船の誘き出しには都合が良いよ」

盗賊「俺はいつまでも待ってるほど暇じゃ無いんだけどな…」ペチン ナデナデ

ロボ「ピポポ…」


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『少し後』


スタスタ


学者「カゲミさん…ちっと教えて下せぇ」

闇商人「何かな?」

学者「俺っちは精霊信仰の事あんま知らんのですが…ウンディーネとかそういう奴っすか?」

闇商人「あぁ…僕もあまり詳しくは無いんだけれど…マルコさんの残した書物によると完成体のホムンクルスが精霊だったらしい」

学者「ええ?どういう事っすか?兄貴が探してるのもホムンクルスっすよね?」

闇商人「う~ん…その完成体のホムンクルスは本来精霊になる筈だったのさ…でもマルコさんがそうさせなかった」

学者「ちっと待って下せぇよ…まだ生きてるんすよね?」

闇商人「うん…ドワーフの一族に守られているという話さ」

学者「じゃぁ神はまだ残ってるという事っすね」

闇商人「話は複雑なのさ…僕も一度会った事が有るくらいでそのホムコという人がまさか精霊だとは思っても居なかった」

学者「なんか特殊な事が出来たりしたんすか?」

闇商人「僕が知る限り何も出来ない普通の女の人だよ…ただマルコさんは異常な程執着してた」

学者「そのマルコっていう人の書物を読んでみたいっす…持って来て無いんすかね?」

闇商人「残念ながら…僕の持ち物では無いから書物は全部ハテノ自治領に置いて来たよ」

学者「そーっすか…信仰されてるくらいなんできっと何か出来るんすよね…」

闇商人「まぁエルフを生んだり…そんな感じかな?」

学者「ちょちょちょ…生命を生む?」


歴史の話になってしまうけれど…

3000年くらい前に精霊樹という木からエルフが生まれる様にしたらしいんだよ

それだけじゃ無くてドラゴンを生んだのも精霊だという話さ

だからエルフもドラゴンも精霊を崇拝している

エルフに近しい関係だったシン・リーンも精霊信仰なのはそのせいさ

こちらの大陸には中央に大きな樹海があってね

エルフはその樹海を住処として精霊樹と精霊を守っていたのさ

ところが20年ほど前の大厄災の時にその樹海が光る隕石によって焼き尽くされた

それまではエルフ達とシン・リーンは立地的に近かったんだけど

光る隕石が落ちて以降エルフは住処を失ってその後移り住んだのはシャ・バクダ

シン・リーンとは遠縁になってしまった


闇商人「あぁ話が逸れてしまったな…ホムコさんの話だったか…」

学者「なんかいろいろ分かって来やした…本来エルフの所に居る筈のホムコっていう人がドワーフに囲われてるんすね?」

闇商人「う~ん…まぁ事情はいろいろ有ると思うよ」

学者「ドラゴンまで生むとかスゴイ事っすよ…その力をドワーフが持ってる訳で…」

闇商人「んん?もしかして世界情勢を勘繰って居るのかい?」

学者「フィン・イッシュに居たドワーフもエルフもあんま協力関係じゃ無い様に見えたもんで」

闇商人「もしかすると関係して居るのかもねぇ…僕はシン・リーンとフィン・イッシュの摩擦の方が気になるけど…」

学者「あんま良い関係じゃ無いんすか?」

闇商人「どちらの女王も融通が利かない気質なのさ…まぁエルフがフィン・イッシュ側に付いたのも摩擦の一因だと思うよ」

学者「摩擦って具体的にどんな?」

闇商人「黄金の取り合いだね…そもそも国が接して居なくて遠いから戦にはならないけど関係はあまり良くない」

学者「黄金のサルベージは魔術師が必須っすよね?」

闇商人「うん…でもあの海域で活動するのはフィン・イッシュの協力無しではサルベージ出来ない」

学者「分け前で揉めそうっすね…」

闇商人「それだけじゃ無いんだよ…フィン・イッシュには魔物が沢山居たよね?」

学者「そうっすね?何か関係が?」

闇商人「あれには秘密が有る様なのさ…シン・リーンはその秘密を掴んで居て対処しようとしている」

闇商人「でも忍びの一族が断固としてシン・リーンの魔術師を阻むという事が起きているんだ」

学者「そら他国の事に口出しするシン・リーンが悪いっすね」

闇商人「まぁそんなこんなが沢山在るからあまり良い関係では無いのさ」

学者「電脳化した奴らが裏で何かやってる時に揉めてる場合じゃ無いと思うんすがねぇ…」

闇商人「その通りだね…まぁ関係が悪くなるように誘っている線も考えられる」



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とりあえず趣味で書いてる分だけアップしました

完結と言いながら全然完結していませんw

さらに続編はちゃんと書いて行くのでご安心ください

…と言う前に

ここまで読んで下さった人にまず「ありがとうございます」と言いたいです

今後はssでは無く

https://lit.link/Jon

こっちの方で続きをアップしていきますので応援よろしくお願いします

あとがき?

主人公が盗賊の遺児に変わった物語が続編みたいな感じになっていますが

今まで王族と関りのある魔女とか女海賊とか

そういう立場の人とは繋がりの無い一般的な人達の視点で進行する物語です

だから今まで正義だと思っていた事は一般の人から見ると逆に見えてたり

そんな中で神の手を持つ盗賊というキャラが世界の謎をどう解き明かしていくのか?

そういうお話です

そこら辺も踏まえてssという書式から小説で読める様に直す中で

今までの設定を少し変えてる部分も出て来るので

今一度小説の方も読んで下さるとうれしいです

ちなみにコメント頂ければどんどん反映させていきます

では

皆さんと夢幻の世界で会える事を楽しみにしています





この居た直リン貼れないんで

https://lit.link/Jon

これコピペして飛んでくださいね

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