勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の続編の続編 (991)

勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編のつづきの更に又つづきです

続編なので前作読まないと分からない事が多々あるかと思いますのでご注意ください

非常に長いですごめんなさい

1作目
勇者「魔王は一体どこにいる?」続編 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1600089742/)

2作目
勇者「魔王は一体どこにいる?」続編のつづき - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1605497940/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1637368468

再び10年後…

魔女の下で修行を終えた僕は

一人旅に出る

始めの目的地はシャ・バクダ遺跡

遠回りをしながらも

幼き頃の友と再会を果たし

今やっと目的地へ辿り着こうとしていた

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『オアシス砦』


おい!誰か来たぞ

監視所の奴らじゃないか?


衛兵「止まれ!!お前達は何者か?」

剣士「監視所から書簡を届けに…これを」パサ

衛兵「ふむふむ…なるほど怪我人が出て人員が居ないのか…それで代わりに来たと…」

剣士「僕達は情報屋という人を尋ねに来たんだけどここに居るかな?」

衛兵「一先ず門の中に入れ…話は中で聞く」

剣士「うん…ありがとう」グイ 


ドスドス


女オーク「中は小さな町なんだ…」

衛兵「…えーそれで…情報屋を尋ねに来たと言う事だが…まずお前達は誰だ?」

剣士「えーと…どう伝えれば良いかな…シン・リーンの魔女の使いだと言えば信じて貰える?」

衛兵「おおお!!ではお前は魔術師か?」

剣士「うん…照明魔法!」ピカー

衛兵「やっとか!!やっとシン・リーンが要請に応じた訳か…ササこちらへ」

剣士「要請?何の話だろう?」

衛兵「聞いて居ないか?魔物が増えて対処し切れなくなっているのだ」

剣士「ゴメン何も聞かされて居ない」

衛兵「怪我人の治癒だけでも随分助かる」

剣士「それなら簡単だよ…どうすれば?」

衛兵「兵舎に怪我人が居る…流行り病も多い」

剣士「おっけ!任せて」

衛兵「案内する」スタ

『兵舎』


ぅぅぅぅ…治療師はまだか

毒消しがもう無い…辛抱しろ


衛兵「おい!喜べ!魔術師が来たぞ!」

剣士「うわ…皆毒に掛かってるのか…どうして?」

衛兵「スプリガンとスライムだ…加えて最近はマンイーターという植物の魔物も発生している」

剣士「まとめて一気に治療するよ?驚かない様に?」

衛兵「回復魔法に驚くも何も…」

剣士「線虫!毒を食らえ!」ザワザワ ニョロリ


ワサワサワサ ニョロニョロ


衛兵「虫!!うわぁぁ」タジ

剣士「大丈夫…虫が全部毒を食べて体も癒すから」

衛兵「こ…これで治療は終わりか?」

剣士「うん!直ぐに良くなるから安心して?」


ぎゃぁぁぁ助けてくれぇぇ

ひぃぃぃ虫が…虫がぁぁぁ


衛兵「シン・リーンもまた特殊な魔術師を送って来る…」

剣士「ところで情報屋さんは何処に?」

衛兵「あぁそうだったな…残念だが入れ違いになっている」

剣士「ええ!!もしかして居ない?」

衛兵「随分前にシン・リーンの気球に乗って何処かへ向かった様だ…至急の事で行き先はわからん」

剣士「なんだ無駄足だったかぁ…困ったなぁ」

衛兵「なんなら砦に身を置いて戦力になって貰えると助かるのだが…」

剣士「用事があっていつまでも居る訳には行かないんだ」

衛兵「情報屋を訪ねる以外に用事があると?」

剣士「精霊樹に行きたいんだよ…場所が分からない…情報屋さんに聞こうと思ってたのさ」

衛兵「この辺りの事情を知らない様だな?」

剣士「事情というと?」

衛兵「精霊樹は遺跡の北西に位置するがエルフの許可が無いと立ち入れないのだ」

剣士「遺跡の北西ね…おけおけ」

衛兵「聞いて居るのか?エルフの許可が…ん?まさか魔女様の許可を得ていると?」

剣士「ハハ…まぁそんな感じかな」

衛兵「許可を得ているなら行っても構わんがくれぐれもエルフと揉め事だけは起こさない様に」

剣士「大丈夫だよ」

衛兵「森で野生の動物を倒すのは厳禁だ…クマが相手でも手を出さない様に」


ピーーーーーー ピーーーーーー


衛兵「敵襲だと!?まだ昼間だぞ!!話はここまでだ」ダダダ

『中庭』


ガヤガヤ ドタドタ

閉門!!閉門!!

ダメだぁ!!撃つな!!


門番「北側にウルフ20頭…西側にも20頭ほどに囲まれてる」

衛兵「松明を用意しろ!!火で寄せ付けるな」ドタドタ


剣士「…参ったな門を閉じられちゃった」

女オーク「足止めね…」

剣士「今から精霊樹に行っても夜になるだろうから一晩待とうか」

女オーク「上…」

剣士「ドラゴンずっと旋回してるね…なんか思ったより慌ただしいなぁ」

女オーク「夏なのに雪も少しチラついてる」

剣士「寒くなりそうだね…宿はあるんだろうか?」

女オーク「寒さ凌ぐのは兵舎で良いのでは?」

剣士「折角だしベッドで寝たいよね」

女オーク「シたいの?」

剣士「ハハずっとシテ無いしね」

女オーク「ウフフ…」

剣士「あ!そうだ…どうして君が金貨持ってる?」

女オーク「剣士はお金に無頓着だからって商人が私に渡したの」

剣士「なんだ…そういう風に見られてたのか」

女オーク「お金ある?」

剣士「全部飛空艇に置いてきた」

女オーク「ほらね?」

剣士「ハハまさかお金が必要になるとは思ってなかったさ」

女オーク「私はお金の相場が分からないから心配…」

剣士「シカ一匹金貨2枚はちょっと高いかな…でもあの場合は仕方ない」

剣士「それで商人さんから幾ら貰った?」

女オーク「金貨10枚よ…残り6枚ね」

剣士「なんだケチだなぁ…色々協力した割に…」

女オーク「代わりに地図とか羅針盤を貰ったでしょう?」

剣士「まぁ良いや!宿を探そう」スタ

『宿屋』


オンギャー オンギャー


婆「おやおや…定期便が来ていないのにお客とは珍しい…おぉよしよし」ユラユラ

女オーク「赤ちゃん?珍しい…」

剣士「本当だね…」

婆「騒がしくて済まないねぇ」オーヨシヨシ

剣士「宿空いてる?」

婆「食事の用意は無いが良いかね?」

剣士「寒さ凌げれば良い…一晩いくら?」

婆「一人銀貨5枚だよ」

女オーク「はい…」コロン

婆「あらま?金貨かね…お釣りが用意出来んのだがどこぞで銀貨に変えて来れんか?」

剣士「露店も商人も居なかったんだ…どうしようかな」

女オーク「もう良いじゃない?どうせ使い道無いのだし」

剣士「ハハお金に無頓着は君も同じじゃ無いか」

婆「釣りを用意出来んのは悪いでせめてコレを持ってお行き」ジャラリ ドスン

剣士「銀貨50とお酒かぁ…このお酒は?」

婆「サボテン酒だで?昔はサボテンが沢山あったのだが今はもう無いで貴重な酒なんよ」

剣士「おけおけ!思わぬ楽しみが増えたよ」

婆「ゆっくり休んで行きーな」

赤ちゃん「オギャーオギャー」ヒック


---子供は生まれる所では生まれるんだ---

『部屋』


ガチャリ バタン


女オーク「質素なお部屋…」

剣士「さて!どっちが強いか勝負しようか」

女オーク「もう?ウフフ良いわ」


ドタン バタン ドスドス

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剣士「フフフ僕の勝ちだ!」

女オーク「ま…まだ…」ビク ビク


ザワザワ ザワザワ


剣士「外が騒がしいな…」

女オーク「逃げる気?」ガクガク

剣士「ちょっと様子見て来る…君は休んでて良い」ゴソゴソ

女オーク「まだ負けてないから…」グッタリ

剣士「行って来る!」スタタ

『中庭』


ザワザワ ザワザワ

スライムが入り込んでる!

ダメだここで倒すな!毒が広がる

門が閉まってるんだどうしろってんだ

魔術師が居た筈だ探して来い


剣士「スライム…たった一匹でこの騒ぎか」

衛兵「居た!!良かった…我々ではスライムを焼けない!なんとかしてくれ」

剣士「分かった…火炎魔法!」ボボボボボ


スライム「プギャァァ…」メラメラ


衛兵「破裂するぞ?」

剣士「サンドワーム!従え!スライムを食らえ!」


モゾモゾ ズドーン バクリ


衛兵「サンドワーム…」タジ

剣士「大丈夫!驚かないで…サンドワームを操って居るから」

衛兵「そ…そうか…撃つなぁ!!サンドワームを撃つなぁ!!」

剣士「サンドワーム!地中に潜れ!」


モゾモゾ モゾモゾ


剣士「あと穴を埋めておけばもう戻って来ないよ」

衛兵「助かった…さすがシン・リーンの魔術師」

剣士「北の空で炎が…」

衛兵「アレはドラゴンのブレスだ…精霊樹に近付くスライムを焼いて居る」

剣士「エルフとドラゴンが戦って居る敵がスライム?」

衛兵「そうだ…エルフとドラゴンは精霊樹を守って居るのだ…敵はスライムにスプリガン…そしてマンイーター」

剣士「なるほど事情が読めて来た…この砦はサンドワームに守らせるから安心して」

衛兵「助かる…しかしサンドワームは我々の主食だ…どうすれば?」

剣士「好きにしたら良い…サンドワームは沢山居るから」

衛兵「ハハ良く分からんが兎に角感謝する」


分かって来たぞ

エルフとドラゴンはドリアードの浸食から精霊樹を守って居るんだ

彼らもドリアードと戦っている

そしてウルフは多分僕を迎えに来てるんだ

行かなきゃ

『宿屋』


ガチャリ バタン


女オーク「聞こえていたわ?魔物が進入して来たのね?」

剣士「うん…女オーク聞いて?僕の友達が砦の外で僕を待って居る様なんだ」

女オーク「友達?こんな所で?」

剣士「君には言ってなかったけど…ずっと一緒に過ごして来たウルフが居るんだよ」

女オーク「ウルフ…それで砦が包囲されて居るのね?」

剣士「多分ね」

女オーク「迎えに行くのね?」

剣士「うん…少し離れて待っている様に話してくる」

女オーク「一人で平気?」

剣士「大丈夫…その方が動きやすい」

女オーク「分かったわ…」

剣士「ゴメンね?続きはまた今度」

女オーク「…いいわ」

剣士「じゃぁ行って来る」タッタ


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アオーーーン アオーーーーン

『翌日』


チュン チュン


剣士「よし!行こう…遺跡でウルフが待ってる」

女オーク「うん…昨夜は寝て居ないのでしょう?大丈夫?」

剣士「平気さ…君も寝ていない顔をしているよ」

女オーク「平気…癒されたから」

剣士「どんぐり食べる?」ポイ

女オーク「…」モグ


---------------


門番「開門!!開門!!」ガラガラガラ ガシャーン

衛兵「昨夜は世話になった…獣道から逸れると危ないから気を付けて」

剣士「もうウルフが来る事は無いから安心して良いよ?」

衛兵「ウルフも使役するのか?」

剣士「まぁね?」

衛兵「フフさすがシン・リーンの魔術師…協力に感謝する」ビシ

剣士「シカさん行くよ?お願い…」


ドスドスドス  

『獣道』


チュンチュン ピヨ


剣士「昼間はうって変わって良い雰囲気の森だ」

女オーク「鳥が沢山…」

剣士「えとね?秘密があるんだよ?あの鳥たちは本当はトロールなのさ」

女オーク「本当に?」

剣士「パパに教えて貰った…トロールっていつも肩に鳥を乗せてるんだって」

女オーク「へぇ?トロールは見た事無いわ」

剣士「南の大陸には居ないもんね…そして夜にしか動かない」

女オーク「じゃぁ森の中にある大きな石は…」

剣士「多分トロールだよ…僕らの話声は全部聞こえてると思う」

女オーク「変なお話出来ないわね?」


グルルル ガウ


女オーク「え!?ウルフ?」

剣士「あぁぁコラコラ!遺跡で待っててって言ったじゃない」

ウルフ「ガウルルルル…」

剣士「え?あぁ僕の奴隷の女オークさ」

女オーク「剣士は私の奴隷よ…」

剣士「まぁどっちでも良いや…彼女強いんだよ?」

ウルフ「ウゥゥゥゥ…」

剣士「大丈夫だって!威嚇しないで?」

女オーク「ウルフとお話出来るんだ…」

剣士「付き合い長いからね…え?毒?そうか…みんな線虫欲しいんだね?おけおけ…向こうに着いたらやってあげる」

女オーク「ウルフたちも毒に?」

剣士「そうらしい…薬草を探すのに随分遠くまで行く必要があるみたい」

女オーク「ウルフも私達と同じなのね」

剣士「そうだよ?言葉が通じないだけで人間と仲良く出来ない…オークと同じだね」

女オーク「私がオークだって分かってる?」

剣士「匂いですぐに分かるさ…ウルフは人間よりずっと鼻が利く」

女オーク「それで直ぐに剣士を見つけたのね」

剣士「いづれこの森に来ると思って待ってたんだって」

女オーク「賢いわね」

剣士「人間と同じくらいにはね?…でもね?物を投げられると反射的に拾いに行く癖がある」

女オーク「フフ…」

剣士「あんまり遊ぶと噛まれるけどねw」

ウルフ「ガウルルルル…」ガブガブ

剣士「分かった分かった秘密にしとくから…」

『シャ・バクダ遺跡』


ウゥゥゥ ガルルルル


剣士「線虫!癒せ!」ザワザワ ニョロリ

ウルフ「ワオーーーン!」パタパタ

女オーク「喜んでるw」

剣士「さて…折角遺跡に来たからパパとママを最後に見た場所に行って見よう」

女オーク「この遺跡で最後を?…」

剣士「直ぐ近くなんだ…どこだっけな」

ウルフ「ガウガウ…」シュタタ

剣士「そっちか!全然景色が変わってる…」

ウルフ「ガウ…」ココホレワン

剣士「ここだ…この場所だ…」

女オーク「…」

剣士「…」スゥ


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『あの時』


僕「パパ?どうする気?」

パパ「未来…自分の次元を強く持て」

僕「え?どういう事?」

パパ「見ていれば分かる…言う事聞けるな?」

僕「ママも一緒に行っちゃうの?」

ママ「一緒に魔王を倒すからちゃんと見ていなさい」

僕「…うん」

パパ「女戦士!後は頼んだ…エルフ達!援護を頼む!行くぞ」シュタタ

ビッグママ「未来…意味がわかるか?」

僕「…」

ビッグママ「最後まで良く見て置け…勇者の宿命だ」

僕「パパ…ママ…」



パパとママが魔王を封じるのを

ほとんどの人が見ていなかった

こんなにもあっさりと物事が終わって

僕の心にポカンと穴が開いた

大きな変化は何も無いのに

只…目の前から消え去った

その後に光る夜が来た

その時

僕が始まった

僕の物語


---なんだろうこの違和感---

『シャ・バクダ遺跡_地下』


学者「見学ですかね?」

剣士「昔ここに避難してた事があってね…近くまで来たから気になったんだ」

学者「ほう…そうでしたか…散らかって居ますが遺物には触らない様にお願いします」

剣士「うん…書物は読んでも?」

学者「考古学に興味がおありで?」

剣士「僕はシン・リーンの魔術師さ」

学者「これは失礼しました…ご自由にお読みください」

剣士「ありがとう…汚さない様にするよ」


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女オーク「ここも思い出の場所なのね?」

剣士「あんまり良い思い出は無い…情報屋さんの行先が分からないかと思ってさ」

女オーク「難しそうな資料ばかりなのね…分かるの?」

剣士「ハハ全然分からない…」パラパラ


超古代史とウンディーネ伝説との関連

古代史と自転の変化による文明の崩壊と再構築

近代史における魔術介在による文明の変遷

人類行動の進化過程

食料生産と放牧の傾向

超高度AIの発見と発祥の考察


剣士「あれ?ホム姉ちゃんの事が書かれてる…こんな事まで研究してるんだ…へぇぇすごいな」


パサ ヒラヒラ


女オーク「何か紙が落ちたわ?」

剣士「この書物からだ…あ!!これ情報屋さんの日記だ」ヨミヨミ

女オーク「何の絵かしら…」

剣士「あ!!僕が書いた地図…そうだドリアード遺跡に行くつもりだった」


---慌てて地図を置き忘れた---

---その後どうしたんだっけ---


女オーク「あまり他人のプライベートを見ない方が良いのでは?」

剣士「…」ヨミヨミ

女オーク「ダメよそれ以上見たら」グイ

剣士「ちょっと待って大事な事が書いてある」


---おかしい---

---僕の記憶と日記に記された事実が噛み合わない---

『勇者の像』


剣士「…」ボーーー

女オーク「どうしたの?さっきから顔色悪いわ?」

剣士「ううん…何でも無いよ」


スタスタ


剣士「誰か来る…」スチャ

女オーク「え!?」

エルフゾンビ「此処に居たか…勇者の子だな?」

剣士「エ…エルフゾンビさん?」

エルフゾンビ「如何にも…お前を数度しか見たことが無かったが…勇者に瓜二つだな」

剣士「ホッ…良かった…探さないで済んだ」

エルフゾンビ「精霊樹が呼んで居る…付いて来い」

剣士「え!?…精霊樹が僕を?」

エルフゾンビ「精霊樹に呼ばれる意味は分かるか?」

剣士「まさか…僕を勇者にするつもりだったり?」

エルフゾンビ「すでに勇者だ…導きを受けるのだ」

剣士「僕の勇者の眼はママが…」

エルフゾンビ「青い瞳の宿命はお前の母が背負った…それだけだ」

剣士「え?それだけって…」

エルフゾンビ「来い…」スタスタ

剣士「あ…女オーク!見学は終わりだ…付いて行こう」

『精霊樹』


サラサラ サラサラ


剣士「沢山のエルフに囲まれてる…」

エルフ「…」ジーーーー

剣士「!!?」

エルフ「…」ピク

剣士「君は…僕の夢に何度も…顔を良く見せて」ジロ

エルフ「…」ジーーーー

剣士「やっぱり…どこかで僕と会ってるよね?」

エルフゾンビ「ん?どうした?エルフの戦士と面識が有ったのか?」

エルフの戦士(お前があの時の蟲使いか?)

剣士「そうだよ僕は蟲使いだ…夢じゃ無かった…本当の出来事だったんだ」

エルフの戦士(元気そうで何より…額の傷はすっかり良くなった様だな?)

剣士「ずっと夢だと思ってた」

エルフの戦士(例の金属を取りに来たのか?)

剣士「金属?覚えていない…」

エルフゾンビ「再会して話をしたいだろうが時間が無い…先に精霊樹の導きを受けろ」

剣士「え…あぁそうだった…どうやって声を聞けば良いの?」

エルフゾンビ「目を閉じて感じろ…」

剣士「瞑想か…」スゥ


---------------

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『数分後』


剣士「…」パチ

エルフゾンビ「導きを聞いたな?」

剣士「ぁ…こ…これはどういう事だ?思い出せって何の事だろう…」

エルフゾンビ「混乱して居るのか?」

剣士「僕には森を統べる力が有ると…導きを思い出せって…何の導きなのか…」

エルフゾンビ「白狼の血脈も受け継いでいるのだ…その記憶の事では無いのか?」

剣士「僕が森を守るという事?」

エルフゾンビ「精霊樹は助けを求めているのだ…恐らくお前にしか出来ない」

剣士「命の種子は夜に運ばれる…闇に光を照らしてって…意味が分からない…どうすれば良いの?」

エルフゾンビ「それはお前が答えを見つける事だ…一つ分かるのは命の種子と言うのは精霊樹の花粉の事」

剣士「花粉は夜に運ばれる…闇に光…月の事か?」

女オーク「剣士?エリクサーの事は伝えた?」

剣士「うん伝えたよ…でも返事が無い」

エルフゾンビ「ほう?…察するにエリクサーを求めに来たな?」

剣士「うん…ホム姉ちゃんを蘇らせる為にエリクサーが樽で4~5杯必要なんだ」

エルフゾンビ「なんだと?今何と言った!?ホムンクルスが蘇るだと…時代の節目はまだ先だと言うか!!」

剣士「えーと話しが掴めない…時代の節目って何?」

エルフゾンビ「お前はアダムという神が復活したのは知って居るな?」

剣士「うん…」


我々エルフはアダムと決別し精霊樹を主として生き永らえている

アダムは新たな森を構築し始め我々エルフは追い出されたのだ

精霊シルフが滅び新たなアダムという神の下

新時代を受け入れたつもりだがアダムはそれを許さなかった

精霊樹の森を侵食し始め我々は窮地に立って居る

その最中お前がこの森へ訪れ…今…精霊を蘇らせると言う


エルフゾンビ「分かるか?我々の敵はアダムだ…新時代はまだ来ていない」

剣士「僕が思って居る事と同じだ…やっぱりそういう事なんだね…」

エルフゾンビ「お前はそれを知りながらここに訪れたと?」

剣士「今は時期尚早だって僕の爺いじが言ってる」

エルフゾンビ「尚早?何故?」

剣士「あの光る隕石だよ…ミサイルって言ったっけ…あれを封じる事が出来るのはホム姉ちゃんだけ…あれ?違う」

エルフゾンビ「どうした?何が違う?」

剣士「違う違う!!思い出せってこういう事か…」

エルフゾンビ「一人で解決するな…話せ」

剣士「僕は光る隕石を回避する術をもう打ってる…その為に10年前に森に入った」チラ

エルフの戦士「…」ジーーーー


ズゴゴゴゴ ドーン


エルフゾンビ「むむ!!御所への通路を精霊樹が開いた…エリクサーの許可が出たらしい」

剣士「ああ…それは良かった」

エルフゾンビ「樽は持って来ているか?」

剣士「飛空艇に乗せてある…ここまで乗って来ても良い?」

エルフゾンビ「急げ…日が暮れると森の浸食が始まる」

剣士「女オーク!ここで待ってて?僕一人で走った方が早い」

女オーク「分かったわ…気を付けて」


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『1時間後』


フワリ ドッスン


剣士「飛空艇持って来たよ…」タッタッタ

エルフゾンビ「もうすぐ日暮れだ…今日はもう飛空艇で飛べないと思え」

剣士「戦いが始まるんだね?」

エルフゾンビ「この場所は比較的安全だから今晩はここに置いておくのだ」

剣士「分かった…急いでエリクサーを積む…女オーク!樽2つお願い」

エルフゾンビ「御所まで案内する」

剣士「エルフの戦士と話がしたい…案内は彼女にお願いしても良いかな?」

エルフゾンビ「そうか?エルフの戦士…案内をご指名だが行ってもらえるか?」

エルフの戦士(付いて来い…)スタ



『御所までの通路』


スタスタ スタスタ


剣士「記憶が確かじゃないけど…あの時はありがとう」

エルフの戦士(フフ…頭蓋が割れて良く助かった物だ…記憶の喪失は仕方あるまい)

剣士「ずっと夢の出来事だと思って居たんだ…君に再会出来て記憶が蘇ってきた」

エルフの戦士(お前はエルフの森で虫に命令を与えると言って居たな?)

剣士「うっすら覚えてる…」

エルフの戦士(お前のお陰で私達は今日まで生き永らえたとも言い換えられる)

剣士「どういう事?」

エルフの戦士(お前と別れてしばらくしてから虫達の行動が変化したのだ)

剣士「それは良かった」

エルフの戦士(それまでは虫も敵だったのが一転して虫はエルフを襲わなくなった…私はお前の力に震えたよ)

エルフの戦士(だがドリアードの浸食は想像を絶する速さで進行し…この有様だ…最後の砦の精霊樹をどうか守って欲しい)

剣士「なんか色々思い出して来たぞ…僕は記憶を無くしたんじゃなくて夢の中に仕舞っていた様だ」

エルフの戦士(精霊樹から導きを受けると言う事は何か託された筈…どうか実らせて欲しい…勇者殿)

剣士「うん…今導きを理解したさ」

エルフの戦士(さぁ到着だ…)

『精霊の御所』


シーーン


エルフの戦士(エリクサーは中央の器の中だ…そこに例の金属も沈んで居る筈)

剣士「あ!!わすれてた…ソレだよソレ」

エルフの戦士(お前は生き絶え絶えでその金属をここに持ってくる様に私に伝えたのだ…何なのだ?)

剣士「有った…超高度AIユニット…そうだ僕が掘り起こしたんだ…これも現実だったか」

エルフの戦士(超高度AIユニット?)

剣士「分かって来たぞ…この森は森の声が聞こえるね?」

エルフの戦士(聞こえる)

剣士「精霊はこの森で生きてる…そうか…そういう事だったのか」


エルフの森で声が聞こえなくなったのは

声の役割をしていた精霊の伴侶という超高度AIユニットが停止したからなんだ

ホム姉ちゃんは今も森の声を使って上手に動物を導いてる

超高度AIユニットのあるべき場所は此処だ

これでドリアードの中に居るアダムと同じ条件…対等になってるんだ


エルフの戦士(導きの声だ…)

剣士「え?聞こえない…」

エルフの戦士(感じろ)

剣士「あぁそうか…え?母からの贈り物?なんでママから…」

エルフの戦士(私は体の震えが止まらない…精霊樹がお前に祈りの指輪を授けた…私はハイエルフに報告に行かねばならない)

剣士「いのりの指輪…あ!これか…」スッ

エルフの戦士(これから何が起こる?…いや私からでは差し出がましい)

剣士「これは僕を守る物…これが精霊の加護なのかな?…」

エルフの戦士(済まない…失礼する)シュタタタ


-------------

-------------

-------------

『帰路』


ヨッコラ ヨッコラ


剣士「エリクサー満タンの樽2個背負うのはさすがに重いね」ヨイショ ヨイショ

女オーク「私の勝ちね?」ドスドス

剣士「体力はいつも君の勝ちさ」

女オーク「ところで…私はエルフの使う言葉が理解出来なくて話の全容が分からないのだけれど…」

剣士「話が長くなっちゃうんだけどさ…」


何処から話そうかな…

10年前にシャ・バクダの遺跡で冒険の書っていう書物を読んだんだ

そこに描かれて居たのは未来の予言…

僕はそれを変える為にエルフの森に行ったんだよ

そこで出会ったのがさっき居たエルフの戦士

まぁ色々あって僕は記憶を無くしたみたいでさ

今まで何かおかしいなぁって思いながら過ごして来たんだ

でも今日ここに来てエルフの戦士に再会したら色々思い出した

未来の予言を変えるのは多分まだ間に合う

何故なら変えるための仕掛けを10年前に終わらせてたからさ

そしてさっき精霊樹からいのりの指輪を授かった

この指輪はね…量子転移っていう魔法が封じられてるんだ

普通はその魔法を使ってこの世の理を超えた事をすると次元の狭間っていう所に迷ってしまう

でもこの指輪を使って同じ事をすると身代わりに砕け散ってくれる

つまり持って居る人を守るんだよ


剣士「理解できる?」

女オーク「…なんとなく」

剣士「簡単に言うと未来を無理やり変えると僕は次元の狭間に迷う…でもこの指輪が身代わりになって僕を守ってくれる」

女オーク「変えたい未来が何なのか分からないから…」

剣士「そうだろうね…僕も記憶が少し曖昧になってる…一つ言えるのは僕がこの世の理を破っても無事で居られるという事」

女オーク「そう…それなら安心した」

剣士「本当はね…勇者の青い瞳を持って居れば良かったんだ…でもそれはママが持って行っちゃった」


---だから指輪を残してくれたのかな---

『精霊樹』


サラサラ サラサラ


エルフゾンビ「聞いたぞ?いのりの指輪を授かったそうな」

剣士「うん…大丈夫かな?エルフの秘宝だよね?」

エルフゾンビ「精霊樹の導きはエルフにとって絶対なのだ…問題無い」

剣士「ねぇエルフゾンビさん…戦いまで後どれくらい?」

エルフゾンビ「1時間程か…お前にも強力して欲しいと思って居た所だ」

剣士「それは良いけど…もし僕が今晩アダムを破壊すると言ったらどうする?」

エルフゾンビ「又突拍子の無い事を言う…そんな事が可能なのか?」

剣士「僕を信じてくれるかな?」

エルフゾンビ「まずどうやるのか話せ」

剣士「エルフ全員とドラゴンにも聞いて欲しい…そうだトロールにも」

エルフゾンビ「問題ない…森の声で全員に伝わる」

剣士「そっか…じゃぁ話すね」


僕は蟲使いだ…森に居るすべての蟲を使役する事が出来る

この蟲達に命令してドリアードを攻撃しようとすると

多分10年前と同じ光る隕石が飛んできてすべて焼かれてしまう

でも地面の中からだとどうだろう?光る隕石を自分には落とせない筈

僕は10年前…ワーム等の地生昆虫にドリアードの根を住処にする様に命令した

ダンゴムシにはドリアード内部で繁殖する様に命令して

今は大量の虫の巣窟になって居る筈

その蟲達を一斉に爆発させる…その威力は想像できない

それだけだと内部のアダムを破壊出来ない可能性があるから

僕はドリアード内部に侵入して直接アダムを破壊する準備もある

ママが作ったウラン結晶の爆弾

アダムさえ破壊してしまえばその他の蟲達を使ってダイダラボッチを起こせる

そしてすべてを食らい尽くす


エルフゾンビ「ドリアードに侵入するのはお前だけでは危険過ぎる」

剣士「そうだね…だからこうして話してるのさ…ドリアードの中での抵抗がどのくらいか分からない」

エルフゾンビ「今晩の戦いから人員を裂けと言って居るか?それは厳しい」

剣士「あと2人居れば良い…大勢だとかえって邪魔になる」

エルフゾンビ「2人か…」


エルフの戦士(私が行こう)ズイ

エルフゾンビ「ではもう一人は私という事になるか…しかし私達もギリギリの戦い」

剣士「あ!そうだ思い出した…マンイーターに苦戦しているよね?」

エルフゾンビ「う…うむ」

剣士「攻略法を教えるよ…弓矢でどんぐりを撃ち込んで成長魔法…これだけで干からびる」

エルフゾンビ「木にするのか…それは本当か?」

剣士「うん…これで地上戦は問題無い筈…2人の人員不足は補える」

エルフゾンビ「そうか…試してみる価値はありそうだな」

剣士「実はね…僕すごく自信がある…他にも色々出来るんだ」


サラサラサラ サラサラサラ


剣士「ほら?精霊樹は穏やかだよ?」

『飛空艇』


剣士「乗って!直ぐに出る」

エルフゾンビ「フフ即行動か…詳しく聞く間もないな」スタ

エルフの戦士(…)キョロ

女オーク「扉閉めるわ」バタン


フワフワ シュゴーーーーー


剣士「シャ・バクダの廃墟の少し北から徒歩で行く…エルフゾンビさんドリアードの場所分かるかな?」

エルフゾンビ「おおよその位置は知って居るが詳しくは知らん」

剣士「おおよそで問題無いかな…現地の蟲達に案内させるから」

エルフゾンビ「それは結構…お前は初めて行くのだな?周辺は死の森となって居るが問題無いか?」

剣士「あー僕の情報が古いか…ケシの花が沢山咲く場所だと聞いてた」

エルフゾンビ「10年前の話だ…今は死の森に飲まれて毒の湿地帯になっている」

剣士「シャ・バクダ北から徒歩でどのくらいで行けそう?」

エルフゾンビ「私達の足で直線4時間という所だ…湿地を迂回して6時間だな」

剣士「…という事は攻略の開始は深夜…朝日が昇る頃には終わる筈」

エルフゾンビ「上手く行けば良いがな…」

剣士「内部での抵抗がどれだけあるか分からないんだけど何か知らない?」

エルフゾンビ「さぁな?誰も行った事が無い」

剣士「まぁなんとかなるか…エルフゾンビさんはパパと同じくらい強いって聞いたし」

エルフゾンビ「買い被るな…私は不死者で打たれ強いだけだ」

剣士「エルフの戦士さんは弓使いだったね?」

エルフの戦士(そうだ)

剣士「おけおけ…回復役は僕が出来るから余程行ける」

エルフの戦士(触媒は十分あるか?)ニヤ

剣士「アハハそういえば昔触媒無くてすごく困った気がする…今は沢山持ってるさ」

エルフゾンビ「しかし早いなこの飛空艇は…もうシャ・バクダの廃墟か」

剣士「うん…もう降りるよ…死の森の少し手前に降ろす」グイ


シュゴーーーー バサバサ

『死の森_手前』


フワリ ドッスン


剣士「降りて…ウルフは飛空艇で留守番だよ…しっかり守ってね」

ウルフ「ガウガウ…」

エルフゾンビ「嫌な匂いだ…」プーン

剣士「もう線虫を掛けて置いた方が良さそうだ…線虫!」ザワザワ ニョロリ

エルフゾンビ「む…この虫は私にも効果が在るのか?」

剣士「毒を食らうんだけど…どうなんだろ?」

エルフゾンビ「腐敗は毒か?」

剣士「もしかすると腐敗が止まるかもしれない」

エルフゾンビ「エリクサー漬けが改善出来るなら大した発見になる」

剣士「効果はエリクサー飲むのとほぼ同じかな」

エルフゾンビ「フフ期待している」

剣士「よし!皆降りたね?飛空艇を狭間に隠す…」スゥ

エルフゾンビ「では私が先行する…付いて来い」シュタタ

剣士「ウルフ!留守番頼んだよ!!」シュタタ

ウルフ「ガウガウ…」フリフリ


--------------

『死の森』


ポコポコ プシューー


剣士「見た事無い植物ばかりだ…いやキノコなのかな…」

エルフゾンビ「よそ見して居ると遅れるぞ」シュタタ

剣士「ニョロニョロの先っぽに目が在る…なんだアレ」シュタタ

女オーク「右前方に何か複数居るわ」ドスドス

エルフゾンビ「スプリガンだ…構ってる暇は無い…走れ」

剣士「お!!蝿虫!従え!」ブーン ブン ブン

エルフゾンビ「!!?使役か…フフそれは良い」

エルフの戦士(フフ…)

剣士「蝿虫!ドリアードまで案内しろ!」ブーン

エルフゾンビ「なるほど…私の案内より確実そうだ」


プシュー


エルフの戦士(胞子の散布が始まった…視界が悪くなるぞ)

剣士「…これは」

エルフゾンビ「見とれて居るのか?雪の様に見えるが猛毒の胞子だ…それが森まで飛来する」

剣士「こんなに多いのか…これを全部焼くんだ?」

エルフゾンビ「全部が飛来する訳では無い…ただ一つでも逃すとそこで発芽して浸食される…あっという間にな」

エルフの戦士(上空でアルラウネが南下を始めてる…始まるぞ)

エルフゾンビ「下を行く私達には見向きもせん様だ…このまま進め」シュタタ


--------------


エルフゾンビ「ドラゴンライダーが出張っているな…私達を見て居るか」

エルフの戦士(戦線が伸びると胞子を焼き逃すと言うのに…)

エルフゾンビ「ハイエルフはいのりの指輪の行方を気にしているのだ…仕方が無い」

剣士「そうか…アダムの懐だもんね」

エルフの戦士(…)ジロリ

剣士「なるほどね…君が同行を志願したのも同じ理由なんだね」

エルフの戦士(信用していない訳では無い…悪く思うな)

女オーク「前方左に見た事無い敵!!複数いるわ…何?」

エルフゾンビ「異形のスライムだ…触手を持って居る…多いな」

エルフの戦士(私に任せろ…先に行け)シュタ クルクル ピョン

エルフゾンビ「こっちだ!私に続け」シュタタ

『死の森_深部』


ブーン ブンブン


剣士「爆ぜろ!」パーン ベチャ

異形のスライム「プギャーー」ドロドロ

女オーク「フゥ…フゥ…」

エルフゾンビ「直線で4時間と言ったが撤回する…この調子では6時間だ」

エルフの戦士(後方の敵は処理した…進め!)

剣士「蝿虫!先行しろ!」ブーン

エルフゾンビ「蝿が随分集まったな?」

剣士「スライムは蝿虫で処理するから進んで」

エルフゾンビ「そうだな…行くぞ!」シュタタ

女オーク「まだ居るわ!」

剣士「おけおけ!蝿虫行け!…爆ぜろ!」パーン ベチャ

エルフの戦士「続け!!」シュタタ


-------------

-------------

-------------

『毒霧』


モクモク シュゥゥゥ


エルフゾンビ「この辺りの筈だ…しかしこの毒霧では視界が…」

剣士「毒霧で蝿虫が全部やられた…」

女オーク「他の敵が居ない…この毒霧はドリアードが?」

エルフゾンビ「恐らくな?」

剣士「狭間で隠してるらしいから毒霧も併せて誰も近づけない様にしてるんだね」

エルフゾンビ「どうする?狭間に隠れて居るものを探すのは虫の案内が無いと厳しい」

剣士「地中にワームが居る…ちょっと動かすよ…出でよワーム!我をドリアードへ導け!」


ドドドドド ズドーン


剣士「一匹動かした」

エルフゾンビ「この大きさのワームが無数に潜んで居るのか?」

剣士「そうだね…何匹居るのか見当もつかない」

エルフの戦士(フフ…10年の仕込みか)

剣士「ドリアードに気付かれたく無いから静かに行こう…進めワーム!」


モソモソ ズズズ


剣士「あっちだ…この辺は静かだね」スタスタ

女オーク「視界が悪いし不気味だわ…」キョロ

エルフゾンビ「深夜を回った…恐らく丑三つ時」

剣士「少し遅れたけど時間は十分さ…みんな覚悟は良いかな?」

エルフゾンビ「何を今更…」

剣士「ワームが狭間に消えた…ドリアードはすぐ其処だよ…行くよ?」

『食虫生物ドリアード』


アーングリ…


剣士「うわぁでか!!…派手な花だなぁ」

エルフゾンビ「情報屋から聞いた話と随分違うが…」

剣士「これ入り口って花びらの真ん中…かな?」

エルフゾンビ「中に入るには食われる必要があるのだな」

エルフの戦士(くぅぅ…臭い…燃やしてしまいたい)クラクラ

剣士「地面から出てるニョロニョロは触手かな?」

女オーク「この花…向こうの方にもあるわ」

エルフゾンビ「入り口は複数ある訳か…どうする?この大きさでは茎を切断するには無理がある」

剣士「まったく動く気配が無いから僕達に気付いて居ないんだろうね…どうしよっかなぁ」


プシューーー モクモクモク


エルフの戦士(うぅぅ…この匂いが…)クラクラ

剣士「アハハこいつゲップした」

女オーク「私達を虫だと思って匂いで誘って居るのよ」

剣士「それなら好都合…行って見よう」

エルフゾンビ「思い切りの良い選択だ…帰りはお前次第だぞ?」

剣士「大丈夫!!自信がある!!」

エルフの戦士(フフ…)

剣士「4人同時に花の真ん中に飛び込もう…多分ただの食虫植物だ」

エルフゾンビ「お前が合図しろ」

剣士「おっけ!!3…2…1…飛んで!!」ピョン


バクッ


剣士「アハハハ…想像通りでバカみたい…ドリアードって相当頭悪い」

エルフゾンビ「退路は無いぞ?」

剣士「こんなの爆弾で直ぐに穴開くよ…これ多分ね…今まで外敵に入られた事無いんだよ…だから守備がザルなんだ」

エルフゾンビ「なるほど…」


精霊樹はさぁ?外敵から身を守る為に森の声を使って動物たちやエルフに守って貰ってるのさ

ドリアードは毒の沼とか毒の霧で身を守った結果外敵が進入した事が無い

だから守りに工夫が無いんだよ

精霊樹と違う点は触手を使って能動的に動けるくらいなんじゃ無いかな?


剣士「これ思ったより簡単に攻略出来るぞ?」

エルフゾンビ「そうか?なら急ぐぞ」

剣士「明かりを付ける…照明魔法!」ピカー


---------------

『喉部』


スタスタ


エルフゾンビ「壁面に小さな虫が大量に…」ワサワサ

剣士「ここで繁殖してるのさ…そういう場所は多分安全…ドリアードは大きな虫だけ捕食する感じだね」

女オーク「随分長い下り坂ね」

剣士「地図通りだよ…500メートルくらいの長い下り坂…その奥に胃部だ」

エルフゾンビ「抵抗が無いが…一応抜刀しておく」スラリ

剣士「僕達を虫だと思ってるだろうからしばらく何も起きないと思うよ」

剣士「この喉部を通過すると多分退路が次々閉じて行く仕組みさ…虫が戻って行かない様にね」

剣士「きっと感覚は足元にある」

女オーク「剣士の言うとおりね…後方の壁面が押し出して来てる」

剣士「胃部は何も無い広い空間…そこにもしかすると大型の虫が捕食されてるかもしれない」

エルフゾンビ「では胃液で浸されているかも知れんな」

剣士「うん…強い酸だろうから気を付けないとね」

エルフゾンビ「浸されている酸をどう気を付ける?」

剣士「あああ心配しなくて良い…変性魔法で酸の物質変換が出来るから問題ない…むしろ触媒が増えて嬉しい」

女オーク「なんかすべて剣士に良い条件になって来て居るわね」

剣士「そう思うよ…10年も待つ必要なんか無かった様に思う」

女オーク「奥が開けて来たわ…向こうが胃部ね?」

剣士「大きな虫が居るかもしれないから一応注意して」

『胃部』


ジャバジャバ シュゥゥゥ


剣士「思った通りだ…大きな虫が沢山」

エルフゾンビ「待て…何故虫の体が損傷しているのだ?バラバラになるまで虫同志が戦っているとでも?」

剣士「あれ?本当だね…なんでだろう?」


ググググ


女オーク「今来た道が塞がった…」

剣士「何か仕掛けが有るかもしれない…」キョロ

エルフの戦士(上だ…ひだ状の物が伸びて来る)

エルフゾンビ「あれに刻まれるか…」スチャ

剣士「消化の前に嚙み潰す器官ががあるのか…これマズいな」

エルフゾンビ「どうする?」

女オーク「身を隠す場所が無い!!今の内に先に進め無いの?」

剣士「核の有る場所はこの次の心臓に当たる部分…探す必要がある」

エルフの戦士(ひだが次々降りて来るぞ…)

剣士「どうするどうする?…ここで蟲を破裂させると巻き添え食らう…どうする?」

エルフゾンビ「戦うしかあるまい」スチャ

剣士「待って…どんぐりでクヌギの木を成長させられる…木の陰に隠れて!虫を爆発させる」

女オーク「ひだが動き始めたわ!」

エルフゾンビ「あれは触手だ!!目を持って居るぞ」

剣士「木に隠れて!!」チャキリ ターン ターン ターン ターン

剣士「成長魔法!」グングングン ワサワサワサ

剣士「木の陰に!!」

エルフゾンビ「回避!」シュタタ

エルフの戦士(…)シュタタ

女オーク「…」ダッ

剣士「ダンゴムシ!!爆ぜろ!!」パーン!

剣士「火炎魔法!」ゴゥ


チュドーーーーーーン  ドサドサドサ


エルフゾンビ「うぐぅ…木が持たん!!」ミシミシ


---------------

---------------

---------------

『胃部_爆発後』


剣士「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

エルフの戦士(つつつ…)

エルフゾンビ「爆発の程度は調整出来んのか!」

剣士「ゴメンこんなに破裂すると思って無かった」

剣士「皆耳は聞こえる?」

エルフの戦士(もう一度回復を…目がやられている)

剣士「回復魔法!」ボワー

女オーク「私も…耳がおかしい」

剣士「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「これで内部に外敵が進入したと気付いた筈だ…何が来るか分からんぞ」

剣士「うん…急ごう…地図だと左奥の方だった…照明魔法で行き先を記すから走って」

エルフの戦士(何かの気配!!私は援護に回るから行って)

剣士「こっちだ!照明魔法!」ピカー

エルフゾンビ「なんだアレは…敵か?異形の生物…」

エルフの戦士(行って!!私が射撃する)ギリリ シュン


異形の生物「ジュルルル…」ピョン クルクル シュタ


エルフの戦士(早い…あの動きはエルフ!!どうして…)

エルフゾンビ「剣士!先に行け!!あの異形を足止めする」シュタタ

剣士「女オークこっちだ!!」グイ シュタタ

『胃部_隔壁』


剣士「多分ここだ…どんぐりで無理やりこじ開ける」ツメツメ

女オーク「あの異形の生物…壁面から湧き出て来る…」

剣士「成長魔法!」グングングン メキメキ

剣士「開いた!!ぬぁぁ…又隔壁だ…」ツメツメ

女オーク「私も異形の足止めで戦う!!」ダダッ

剣士「成長魔法!」グングングン メキメキ

剣士「ぐぁぁぁ又隔壁…」ツメツメ


タッタッタ


エルフゾンビ「あの異形は手強い…武器は持って居ないが壁面からどんどん湧いて増える」

剣士「分かった…睡眠魔法を使う…エルフの戦士と女オークをお願い」

エルフゾンビ「寝たら起こせば良いのか?」

剣士「チチンプイプイ アブラカタブラ メスメライズ…広範囲睡眠魔法!」


モクモクモク


女オーク「ぁぁぁ…」フラフラ

エルフの戦士(ん!?)ボーー

剣士「2人を連れて来て守って…僕は隔壁こじ開ける…成長魔法!」グングングン メキメキ

剣士「くそぅ!!何枚あるのか…」

エルフゾンビ「エルフの戦士!しっかりしろ!…女オーク来い!」グイ

女オーク「…」フラフラ

エルフの戦士(…)ボー

エルフゾンビ「次の異形が壁から出て来る…キリが無いぞ?」

剣士「2人を隔壁の中に…爆弾を使うから耐えて」

エルフゾンビ「女海賊の爆弾だな?」

剣士「うん…さっきよりは小さいと思う…早く隠れて」

エルフゾンビ「想定外に抵抗が有ったな?」

剣士「やっぱり只の食虫植物じゃなかったね…ちょっと焦ってる」

エルフゾンビ「まだ手は残って居るな?」

剣士「有る…でも破壊力が今までの比じゃ無いから最後の手段にしてる」

エルフゾンビ「そうか…早い所後ろの奴を吹き飛ばして奥へ進もう」

剣士「よし隠れたね?行くよ?火魔法!」チリチリ ポイ


ピカーーーーー チュドーーーーーン パラパラ

『隔壁の通路』


ペシペシ

エルフゾンビ「起きろ!!おい!!」ペシペシ

エルフの戦士(ハッ!!何が起きた?)

エルフゾンビ「睡眠魔法だ…オークの女を起こすのを手伝ってくれ」

エルフの戦士(私が眠るとは…今どうなって居る?)

エルフゾンビ「爆弾を使って異形の生物を倒したのは良いが土砂が入って退路が断たれた」

エルフの戦士(崩れたのか…)

エルフゾンビ「どうやらドリアードは爆発よりも高熱に弱い様だ」

エルフの戦士(この通路はこじ開けた隔壁だな?)

エルフゾンビ「クヌギの成長がねじ曲がって狭い通路になっているが身を隠すのに丁度良い」


メキメキメキ


剣士「やったぁ!!開けたぁぁ!!」

エルフゾンビ「女オーク!起きろ!」ユサユサ

女オーク「すぅ…」zzz

エルフゾンビ「仕方ない…背負うか」グイ

『核部』


剣士「見つけた!!アレだ…あのエリクサーの下に遣ってる機械がアダムだ」

エルフゾンビ「ここには敵が居ない様だ…どうなっているのか」スタスタ

剣士「きっと外敵を排除する為の守りは消化器官にあるんだよ…崩落したのが逆に良かった」

エルフゾンビ「私とエルフの戦士で見張りをやる…直ぐにアダムを破壊しろ」

剣士「そうだね…今すぐにやる…ああああああ!ここにはダンゴムシが入って来て無い」

エルフゾンビ「例の爆弾でやれば良いだろう」

剣士「エリクサーが邪魔だ」

エルフゾンビ「何とかしろ!他の出入り口が無いか見回って来る」シュタタ


えーとエリクサーは何に変性出来るんだ?

材料は何だっけ…クヌギの樹液と蒸留酒…松脂と…骨粉か

他の転換物…えーと…えーと物性値が分からない…計算すると時間が掛かる

だぁぁぁ液体にしかなりそうにない…まてまて…凍らせられれば個体になる

いや無理だアルコール値が高い…絶対零度なんか使えないし…どうするどうする?


剣士「そうだ!燃焼させれば良い…気化させる熱量をどうする?僕の魔法じゃあの量を気化させるのは無理…」

剣士「爆弾を使って散らす…これもダメだ…あの量を吹き飛ばすのは感覚的に無理だ」

剣士「くそう!これしか無いか…こんな所で量子転移なんか使いたく無かったけどコレしかない」


エルフゾンビ「剣士!奥にも何処かに繋がって居そうな通路がある…敵が来る前に早く破壊しろ!」


剣士「分かったよ…そこの通路に居て…僕もそっちに逃げるから」タッタッタ

エルフゾンビ「エルフの戦士!壁面から離れるんだ…微妙に動いている」

エルフの戦士「!!?」ズザザ

エルフゾンビ「剣士!!何をしている!!早くしろ」

剣士「いのりの指輪…どうか僕を守って!!量子転移!!」シュン


ザバァァァァ 


剣士「よしよし壁に穴が開いて液面が下がってる…機械が露出するぞ」

剣士「エルフゾンビさん通路の奥に走って!!爆破する!!火魔法!」チリチリ ポイ

剣士「走ってぇぇぇ!!3…2…1」


---未来---


剣士「え?」


ピカーーーーーー チュドーーーーーン


剣士「どわぁぁぁぁ…」ゴロゴロ


----------------

----------------

----------------

『爆破後』


ズドドドドド


剣士「…」

剣士「……」

剣士「………」


エルフゾンビ「何をしている!!崩落に巻き込まれる…来い!」グイ

剣士「…」---今の声は…---

エルフの戦士(行き止まりだ…隔壁で閉じている)

エルフゾンビ「又閉じ込められたか…ええい!重い女め!!」ヨッコラ

女オーク「う~ん…」パチ ムクリ

エルフゾンビ「剣士!又隔壁だ…こじ開けろ」

剣士「…」---パパだ---

エルフゾンビ「何を呆けている!」

エルフの戦士(見て!!隔壁が動いてる…これは開くぞ?)

エルフゾンビ「剣士!しっかりしろ!脱出だ…今は呆けている場合では無い」

剣士「え…あぁ…動転してた」

女オーク「何が起きているの?」

エルフゾンビ「お前は剣士の魔法で寝ていたのだ…説明している暇は無い…武器を持て」

女オーク「は…はい」スラーン

エルフの戦士(この通路…さっきの隔壁と同じ構造だ…全部開こうとしてる)

エルフゾンビ「…という事は別の胃部に繋がっている可能性がある」

エルフの戦士(正解…向こう側に異形の生物が見える)

剣士「見せて…本当だ…奥に見える」

エルフゾンビ「突っ切るか?」

剣士「そうだね…別の入り口があるならそこから上を目指そう…でも待って!ダンゴムシを破裂させるなら今がチャンス」

エルフゾンビ「入り口がまた崩壊しないか?」

剣士「隔壁が開き切ると身を隠す場所が無い…また爆破に巻き込まれたい?」

エルフゾンビ「なら早くやれ」

剣士「うん…すべてのダンゴムシ!爆ぜろ!」パパパパーン

剣士「火炎魔法!」ゴゥ


チュドーーーーン

チュドーーーーン

チュドーーーーン


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


剣士「すべてのワームに命ずる!ドリアードの根を食らい尽くせ!」


ズズーン グラグラグラ

『隔壁の通路』


モクモクモク


剣士「煙が収まった…行けそうだ」

エルフゾンビ「走る!来い」

剣士「待って…まだ何か動いてる」クンクン

エルフの戦士(気配が増える…20以上…もっと居るかもしれない)

剣士「壁面から湧いてくるあの異形の生物はドリアード化した人たちかも知れない」

エルフゾンビ「アダムが居なくなりドリアード化で夢を見る意味が無くなったか…笑止千万」

剣士「ダンゴムシはもう使えない…爆弾は壁が崩落するから突破するしか無いね」


ズゴーーーン ズズズ


剣士「ワームが暴れてる…行けそうだよ!突破しよう」

エルフゾンビ「出るぞ…先行する!付いて来い!」シュタタ


---------------

---------------

---------------

『胃部』


異形の生物「ぎょぎょぎょ…ぴょるぁぁ」ヨタヨタ

エルフゾンビ「さっきの異形とも違う…これは貴族が戻った姿だな?」ブン スパ

剣士「素早いのも居る…気を抜かないで」シュタタ スパ

異形の生物「きゃぁぁぁぁ…」ドタリ

剣士「ここダメだ…入り口が真上にある…天井から落ちるタイプだ」

エルフゾンビ「ええい!囲まれるぞ!!」

剣士「逆側だ!!排泄する器官から出られるかもしれない」

エルフの戦士(触手が伸びて来て居る…どうする?)

剣士「どうしても脱出が困難な場合はワームを使って突破する案がある…今は排泄器官に行って見よう」

エルフゾンビ「しかしどの方向か?」

剣士「消化液の流れて行く方向だよ…あっちだ!!付いて来て」ダダ


異形の生物「うぐぅぅ…居た…あれか…」ズルズル


エルフゾンビ「剣士!先に行け…私が時間を稼ぐ」

剣士「気を付けて!!」シュタタ

異形の生物「あ…兄者…何事かと思えば…又兄者が何かをしたね?…」

エルフゾンビ「何!?お前は…」

異形の生物「これは…どういう事なんだい?…ぐぅぅぅ何かしたよね?…兄者だよね?」

エルフゾンビ「私に弟は居ない…」スタ

異形の生物「又…僕を…置いて行く…どうして僕の前を行こうとするのさ…」

エルフゾンビ「人違いだ…私に構うな」---お前を救ってやりたかった…これが成れの果てか---

異形の生物「兄者!!兄者!!」ズルズル

エルフゾンビ「…お前はどうにか生きろ…さらば」シュタタ


異形の生物「ぅぅぅ何故…ドリアード化が解かれたんだ?…寒い…寒いぃぃ!!」


--------------

--------------

--------------

『腸部』


ブシュ! ザクリ!


異形の生物「ほげぇぇぇ…いでぇぇぇ」バタバタ

エルフゾンビ「追っ手はこれで最後か?しかしキリが無い…」フゥ

エルフの戦士(更に地下深くに進んで居るが…これで出られると思うか?)

エルフゾンビ「厳しいだろう…だが異形が増え過ぎて居る…もう戻れん」

剣士「分かって来たよ…この器官は消化液を吸収する器官だ…虫の死骸は胃で全部吸収するんだ」

エルフゾンビ「…という事は行き止まりだな?」

剣士「恐らく…さて困ったなぁ」

エルフゾンビ「ワームを使った突破案はどうした?」

剣士「この辺はワームが入って来て居ない…つまり外側は土じゃ無くて岩盤だよ」

エルフゾンビ「引き返すしか無いと…」

エルフの戦士(ここを見ろ…床面の傷んだ部分へ消化液が流れて行っている)

剣士「ダンゴムシを爆発させて入った亀裂だろうね」

女オーク「そこに消火液が流れて行くだけの空間があると言う事だわ」

剣士「あと一個…爆弾がある…亀裂を広げて見ようか?」

エルフゾンビ「やるしか無いだろう…今更戻れん」

剣士「わかった…亀裂に爆弾を落としてみる…離れて伏せてて」

剣士「行くよ?火魔法!」チリチリ コロン


コロン コトン ヒュゥゥ チュドーーーーン


エルフゾンビ「うぉ!!足場が…」


ガラガラガラ ドサドサドサ


--------------

--------------

--------------

『地下水脈』


サラサラサラ 


剣士「うぅぅ…回復魔法!」ボワー

剣士「皆どこ!?声を出して!!」

女オーク「こ…ここよ」ガラガラ

剣士「回復魔法!」ボワー

女オーク「ありがとう…無事でよかった」

剣士「エルフゾンビさんとエルフの戦士は何処だろう?」

女オーク「上ね…亀裂の中腹で引っかかってるみたい」

剣士「照明魔法!」ピカー


--------------


エルフゾンビ「光だ…あそこだな…エルフの戦士!背に乗れ」

エルフの戦士(済まない…腕の怪我が酷い様だ…早く回復魔法が欲しい)ドクドク

エルフゾンビ「私も足を損傷した様だ…もう一度落下するから私をクッションにしろ」

エルフの戦士(急いでくれ…押さえても血が止まらない)ボタボタ

エルフゾンビ「行くぞ」ズルズル



---------------


ヒュゥゥゥ ドサリ

エルフゾンビ「ヴヴヴ…エルフの戦士に回復魔法を…失血死する」

剣士「あ!うん…回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

エルフの戦士「ハァハァ…」グター

剣士「エルフゾンビさんも…回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「フフフフ…ハハハハハ…なんとかなったな?」

剣士「まだやらなきゃいけない事がある…森の虫達に命令をしなきゃいけない」

エルフゾンビ「そうか…中々に忙しい」

剣士「僕が想像していたよりもドリアードは大きくて頑丈だったんだ…ワームだけじゃ食い尽くせない」

エルフゾンビ「エルフの戦士…立てるな?」

エルフの戦士(なんとか…)ヨロ

エルフゾンビ「私の常備薬を一口飲め…精霊樹のエリクサーだ」

エルフの戦士(…)クイ ゴク

エルフゾンビ「この地下水脈の行先は想像つくか?」

剣士「エルフの森…」

エルフゾンビ「恐らくな?随分安全に行けそうでは無いか…直に夜明けだ…水脈を下るぞ」

剣士「女オーク…行こうか」スタ


---------------

---------------

---------------


その夜

死の森の浸食が収まるかと思いきや

状況は一向に変化する事無く

むしろ異形の生物が徘徊するようになった

更には大人しかったドリアードが暴れ出し

無数の触手がうねり狂うその姿は

精霊樹の森から視認できるほど巨大であった

まだ戦いは終わらない…

『数日後_精霊樹』


フワリ ドッスン


エルフゾンビ「戻ったか…虫とドリアードの様子はどうだ?」

剣士「蟲達が総攻撃するまで数日かかると思う…ドリアードは触手が何本ものたうち回ってた」

エルフゾンビ「あれだけ爆破されても弱らんとはな…」

剣士「こっちの様子は?」

エルフゾンビ「アルラウネの数が減って空中戦は優位だ…地上戦もどんぐりの成長作戦で優位…浸食は抑えられている」

剣士「死の森を少しづつ浄化しないとダメな様だね」

エルフゾンビ「この戦いはしばらく続きそうだが光明は見える…虫次第という所か」

剣士「戦いも気になる所なんだけど…僕もエリクサーを運ばないといけない」

エルフゾンビ「そうか…しばらく居て貰いたいのは山々だが…」

剣士「僕は他にもやらなきゃいけない事があってね…」

エルフゾンビ「引き留めるつもりは無い…お前は十分仕事をこなしたのだからな」

剣士「実はね…アダムを破壊する時にパパの声を聞いた気がしたんだ」

エルフゾンビ「…どういう事だ?」

剣士「それを調べたい…アダムの誕生に関わって居るかもしれない…」

エルフゾンビ「そういう話に精通しているのは情報屋だな…」

剣士「だから僕行くよ…蟲の事は心配しないで…ちゃんと命令通りに動いてるから」

エルフゾンビ「ふむ…期待している」


---引っかかる事がいくつかある---

---僕は明らかに歴史を変える行動をした筈なのに---

---いのりの指輪は砕けなかった---

---僕はまだ夢を見て居るとも考えられる---

---それを確認したい---

『飛空艇』


フワリ シュゴーーーー


女オーク「遺跡から何か盗って来たの?」

剣士「情報屋さんの書物を借りて来た…ちょっと歴史の勉強さ」

女オーク「そう…飛空艇での移動は退屈よね?」

剣士「そうそう…行き先はセントラルだよ…狭間に入って移動すれば到着は夜中かな」

女オーク「そういえばさっき気付いたのだけれど…太陽の高度が高い気がするわ」

剣士「え!!?」バタバタ バタン

女オーク「扉から落ちないでね?」


ビュゥゥゥゥ  バサバサ


女オーク「太陽の位置が高いでしょう?」

剣士「う~ん…気のせいじゃない?」

女オーク「移動ばかりしているから分からなくなったのかも…適当な事言ってごめんなさい」

剣士「僕は書物読んで居るからセントラルまでの操舵お願い…もう狭間に入って良いよ」

女オーク「うん…まかせて」スゥ



シュゴーーーーーー バサバサ



---さて歴史の勉強だ---

---超古代…アダムとイヴの伝説---

『その頃_暁の墓所』


分かった事を時系列で説明するわ…

約4000年前に起きた地軸の移動…この時に壊滅的な破壊が起きて人類はほぼ滅亡

その中で唯一生き残った種が耐環境性のあるオークの種族

それまで彼らは今で言う南の大陸に住んで居たの…恐らくウンディーネと共に

その後北の大陸へと進出を始めこの暁の墓所の東側…未踏の地で一時代を築いた

これが約3500年前…

そしてウンディーネはシルフと名を変え今で言うエルフの森に移り住む

そこでオークの遺伝子と類似したエルフを生み出した

エルフは魔法を巧みに操り森を拠点として繁栄する

エルフの協力を得た精霊シルフは森の北部にドリアードを生成して管理する者として小人のノームを生んだ

ここが約3000年前…

ノームの器用さを用い失われた古代技術を復活させた精霊シルフは

超高度AIを複製してアダムを復活させようとするが

魔王に乗っ取られて失敗し…再び世界は滅亡の危機

ここで危機を救うのがこの地の東に栄えたオーク達

彼らは呪術で虫を操りドリアードを封じる事に成功したがノームは滅びる

恐らく2500年程前ね…

一旦平和になった世界でエルフとオークはそれぞれに繫栄して時代を築く最中

その恩恵を受けたのが温暖な海付近に少しだけ残って居た人間達

彼らは環境の良いエルフの森周辺で新たな文明を築き始め力を付けた

そして事件が起きる…エルフが持つ祈りの指輪を奪い人間の魔術師が台頭

魔術によって人間達が急速な発展をして時の王の時代に至る

ここが約1700年前…

この時代に起きたのが北の大陸の東側に位置していたオーク達が滅んだ事

時の王と暁の使徒が手を組み東のオークを退けた

なぜか?

情報屋「答えは勇者の刀…オーク達が宝具として所持していた刀を奪って聖剣エクスカリバーを生む為」

魔女「…ではオーク達が初めから勇者の刀を持っておったと言う事じゃな?」

情報屋「そう…ここからは憶測だけど勇者2人は4000年前よりさらに過去に遡ってオークに託したと思うわ」

魔女「つまりこの墓所にあった暁の使徒は勇者では無く他人じゃという訳か」

情報屋「多分勇者の命を受けた予言の守り人ね…不明な点が多いから確かな事は言えないわ」

魔女「黄昏の賢者について何も分からんのか?」

情報屋「ここから先は時の王の証言のまとめだから確証は無いけれど…」


暁の使徒と黄昏の賢者はどうも恋仲だったらしいわ

暁の使徒は人間の男…そして黄昏の賢者はオークの女

暁の使徒が東のオークを攻め立てる最中二人は関係を持った

処女を失った黄昏の賢者は力を失い

暁の使徒はオークを退け勝者となった

二人は駆け落ちをした形

そして黄昏の賢者はオークを裏切った形

その後暁の使徒は時の王と接触し協力関係を得る

でもこれに黄昏の賢者は猛反発して別れた

ここから第2期と呼ばれる魔王との戦いが始まる


魔女「黄昏の賢者はオークシャーマンの可能性が高かったな?」

情報屋「多分そうね」

魔女「ミイラとなった恋人を連れ去ったと言う事じゃが…何故じゃと思う?」

情報屋「分からない…蘇らせるとしても今になって何故?という疑問が残る」

魔女「わらわはこう思う…失った力を取り戻す為じゃ…死霊術に屍を食らう術が有るのじゃ」

情報屋「なるほど…話が通りそう…」

魔女「読めたぞよ?黄昏の賢者は3000年前と同じ様に虫を操りドリアードを封じたいのじゃ…力を求めて居る」

情報屋「南の大陸に居るオークがどうして?」

魔女「予言じゃ…予言に従って居るのじゃ」


よう考えてみぃ

勇者らは3000年前のドリアードがどういう惨状を生んだか知って居る

じゃからわらわ達の時代に復活したドリアードを再度封じるための予言を残したのじゃ


情報屋「そういう事ね…ドリアードをどう倒すのか私達は知ってる…それは伝説を通じた予言なのね?」

魔女「イカンな…このままでは未来が先走ってしまうな」

情報屋「未来君が蟲使いの道を選んだのも…」

魔女「勘でどうすれば良いか知って居るからじゃ…何年も前に未来は感じて居る…事の異常に」

情報屋「連絡取れないのがもどかしいわ」

魔女「先回りで待つしか無いのぅ…さてどうするか…」


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『セントラル海岸』


フワリ ドッスン


剣士「すっかり日が落ちた…ウルフは飛空艇で留守番だ」

ウルフ「ガウガウ…グルル」

剣士「女オーク!今から宿屋にいくけど武器は置いて行って」

女オーク「どうして?武器が無いと暴漢に…」

剣士「この国は武器の持ち込みが出来ないんだよ…ナイフならおけ」

女オーク「わかったわ」

剣士「じゃぁ行こうか!ウルフ!明日の朝には戻るから良い子にしてて」

ウルフ「ガウ!!」


タッタッタ


女オーク「急いでいるのね?」

剣士「うん…セントラルでちょっと確認したい事があるんだ…宿屋を取って直ぐに行動する」

女オーク「どうするの?」

剣士「泥棒みたいな事だよ…あ!そうそう君お金持って居たよね?」

女オーク「うん…」

剣士「ちょっと目立つ装備に変える」

女オーク「これで良いのに」

剣士「ダメなんだ…今から白狼の盗賊団の真似事してある人をおびき出すんだよ」

女オーク「ある人?」

剣士「僕が尊敬する人さ…まぁ良いから付いておいで」

『宿屋』


カラン コロン


店主「いらっしゃいませ…お二人様で?」

剣士「2階の角の部屋空いてるかな?」

店主「そのお部屋はお高いですがよろしいですか?」

剣士「いくら?」

店主「お二人で銀貨20枚です」

剣士「おっけ!」ジャラリ

店主「ではご案内致します…こちらへ」



『部屋』


ガチャリ バタン


剣士「先に水浴びしておいで?その後出かける」

女オーク「じゃぁ浴びて来るわ…」

剣士「ゆっくりで良いよ…泥棒にはまだ少し時間が早い」

女オーク「うん…じゃ…」ガチャリ バタン

剣士「…」


この宿のこの場所で

何度も同じ景色を見て居る

雑多の声がする町の一角

一人で窓をボーっと眺める


剣士「…」ファサ


こうやってフードを被って

隙間から見える世界

どうして落ち着くのか分からなかった

でも理解した…僕は次元の狭間に捕らわれ

何度も繰り返しこの風景を見て来た

この雑多な世界に慣れていたんだ

今…記憶が戻りつつある

僕がどうすべきかもう一度考え直したい

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

ねぇ聞いた?いつもここに来てたあの豪族…殺されたらしいわ?

ええ!?誰に?ヒソヒソヒソ…

お~い!酒くれぇ!!

なんだよ良いだろパフパフさせてくれよ


マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」

剣士「うん…席は空いてなさそうだね」

マスター「カウンターでよろしければ」

剣士「おけおけ!えーとセントラル名産はエール酒だっけな…2杯お願い」

マスター「かしこまりました」

女オーク「剣士?用事があったのでは?」

剣士「そうだよ…ここで聞いてみるのさ」

マスター「エール酒をお持ちしました…どうぞ」

剣士「ありがとう…ところでマスター…ローグっていう豪族知らないかい?」グビグビ

マスター「ハテ?お知り合いですか?」

剣士「あぁぁ聞き方が悪かったなぁ…マスターも仕事だからそうそう個人の話なんかしないよね」

マスター「お客さん人が悪いですねぇ…ハハハ」

剣士「じゃぁ海賊王の娘を捕らえたんだ…懸賞金を何処で引き換えるか知らないかな?」

マスター「ご冗談を…あまり大きな声でその名を出すのは得じゃ無いと思いますよ?」キョロ

剣士「そっか…収穫無しだ…お代だよ」ジャラリ

マスター「ありがとうございます…」チラリ

剣士「女オーク行こう」

マスター「もしよろしければお連れ様のお顔を拝見させて頂いても?」

剣士「女オーク?見たいんだってさ?」メパチ

女オーク「…」ファサ

マスター「失礼いたしました…又のご来店をお待ちしております」

『路地』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「そんなに簡単に会える訳無いかぁ…」

女オーク「何だったの?」

剣士「あのマスターは多分ローグさんの事知ってるんだよ…トラブルを回避するのに知らない振りさ」

女オーク「ちがう海賊王の娘の話」

剣士「君の背格好が似てるからちょっと釣ってみたんだよ…動きがあるならもう追尾されてると思う」

女オーク「良いの?路地を悠々と歩いても」

剣士「あんまり良く無いね…そろそろ行こうか…そこの角を曲がったらハイディングするよ」

女オーク「わかったわ…」


-------------


剣士「ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

剣士「迷って居ないね?貴族居住区の方に行こう…こっちだ」タッタ

『貴族居住区_屋根上』


タッタッタ


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ

剣士「さて!!何処にいるのかな?」

女オーク「こっちの方は何処を見ても食事会なのね」

剣士「エルフは戦争中だというのにセントラルは呑気なもんだ…何も知らないで」


ワイワイ ガヤガヤ

魔石のレートを引き上げる?キ・カイにそんな資金ありますかね?

新型の気球でトレードを…ふぅむ…噂に聞く奴ですな

輸送の効率が上がるなら一度試してみる価値はありそうか…

では成立という事で…ハッハッハここは私が払いましょう

ワイワイ ガヤガヤ

俺ぁあの女が忘れられ無ぇ!

フィン・イッシュに行って農耕で稼ぐ

そして売られた女を買い戻すんだ

ワイワイ ガヤガヤ


剣士「どの円卓でも似たような話ばかりだ…やっぱり騒ぎ起こさないとダメかもなぁ…」

女オーク「ねぇ向こうのお屋敷から武装した人が何人も出て来てる」

剣士「本当だ…衛兵でも無いのにどうしたんだろう?」

女オーク「武器の所持は禁止じゃ無かったの?」

剣士「さぁ?偉い人だけは許可されてるんじゃないかな?」

女オーク「何か起こりそう」

剣士「面白そうだから隠れて見て居よう」

『貴族居住区_路地』


タッタッタ


こっちには居ない

一応各路地を封鎖する形を取って発見次第捕らえろ

服装か何か特徴は聞いて居ないのか?

聞かされて居ない…向かった方角が此方方面と言うだけだ

相手は2人だ…必ず捕らえるぞ!


剣士「フフ…これ僕達を探してるんだね」

女オーク「目星がついて良かったじゃない…あそこのお屋敷よ」

剣士「中に入ってみよう…ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

剣士「窓から入るよ…おいで」シュタタ


『とある屋敷』


ピョン シュタッ


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ

剣士「しぃぃぃぃ…」

女オーク「…」



さぁ懸賞金を見せて貰おうか

それは海賊王の娘を捕らえたのを確認した後でやんすね

直に私の部下が連れて来る…まさか懸賞金の用意無しで掛けていた訳では無いだろうな?

何を言って居るでやんす…あっしの資金運用額を知らんのはあんさんの方でやんすよ

そうやっていつものらりくらりと…良いから懸賞金のありかを話せ

あんさん頭悪いんすねぇ…確認した後と言ってるでやんすよ帰って下せぇ

直に連れて来ると言っているだろう

あっしもそろそろ怒りやすぜ?


剣士「フフ面白そうだ…行こう」タッタ

女オーク「…」

剣士「お頭!例の女連れて来ました」

豪族「おぉ!!でかした!!」

ローグ「えええええええええ!!?」

豪族「さぁこれで分かっただろう?懸賞金をよこせフハハハハハハ」

ローグ「その声は未来君っすね?」

豪族「何を言っている!!この女が海賊王の娘だ!!見ろ…疑い様が無いだろう」

剣士「そうだ!!」

ローグ「もう一人は誰でやんすか?顔を見せて下せぇ」

女オーク「…」ファサ

豪族「フハハハハハハハ…落ちたな?頭取の座は俺が頂く!ハハハハハハハ」

ローグ「んん?どーこかで見た様な…見てない様な…」

豪族「とぼけるんじゃ無ぇ!!目ん玉ほじくって良く見ろ!!」

ローグ「あんさんと話して無いでやんす…もう帰って下せぇ」

豪族「何だとぉ!!懸賞金は渡さんとでも言うのか?」

剣士「あぁぁ…もう我慢できない」プルプル

豪族「あぁ我慢出来ん!その通りだ…雁首揃えて懸賞金を払って貰うぞ」ズイ

剣士「女オーク?この人黙らせてもらって良い?」

女オーク「わかった…」グググ

豪族「何をする…おい!放せ!!」ムググ

ローグ「あ!!奴隷だったオークの子っすね?いやぁぁぁ懐かしい…大きくなったっすね?どういう事なんすかコレ」

豪族「むががが…」ジタバタ

剣士「話は長いんだ…今日会いに来たのは訳が有ってね?」

ローグ「あっしも聞きたい事が山ほどあるっす…ちっと奥で座って下せぇ」

剣士「この人どうしよう?」

ローグ「外に放り出しといて下せぇ…構うの面倒くさいでやんすよ」

剣士「女オーク!放り投げといて」

女オーク「ふん!!」ポイ ゴロゴロゴロ ドターン

ローグ「いやいやいやビックリっすね…でも良くここが分かりやしたね?まぁまぁ座って下せぇ」

『ローグの屋敷』


ローグ「それでどういう訳であっしの所へ?」

剣士「アダムを破壊したと聞いたらどういう反応をするかと思ってね」

ローグ「マジっすか!!いつやったんすか?もう地軸の移動は起きんのですかね?」

剣士「地軸の移動…やっぱりか」

ローグ「え?10年後に地軸の移動があると予言したのは未来君っすよ?アダムを破壊したらもう大丈夫なんすかね?」

剣士「僕が予言…」

ローグ「未来君の予言は全部当たっていやしたよ…ケシの大発生やらスプリガンから魔石が出るやら」

剣士「そんな細かい事まで僕が言ったんだ…」

ローグ「覚えて無いんすか?未来君は未来から来たと言ってやしたよね?忘れたんすか?」

剣士「いつの間に忘れて居たみたい…全部夢の中の出来事と勘違いしてたんだ」

ローグ「いやいやいや…でもアダムを破壊したでやんすよね?いやぁぁあっしは信じていやしたよ」

剣士「記憶があいまいなんだ…だからローグさんに教えて欲しい…僕は何を予言したの?」

ローグ「幽霊船が壊された未来から来たと言ってたでやんす…詳しく話やしょうか」


カクカク シカジカ

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ローグ「…という訳であっしは今豪族の資金力を使って人流を促してるんすよ」

剣士「僕はいつの間に全部夢話だと思い込んでいたんだろう…」

ローグ「今思い出したなら良いんじゃないすかねぇ?」

剣士「もっと世界を変えられるチャンスは沢山あった筈…結局子供が生まれない10年間は経過してしまった」

ローグ「こっから盛り返しやしょう…アダムが破壊されたなら行ける筈っすよね?」

剣士「…そうだと良い」

ローグ「あっしのやって来た事を教えやしょうか?」

剣士「あぁそれ…気になるなぁ」

その土地に土着した民衆はなかなか移住しないんすよ

なもんで豪族達にちっと働いて貰って無理やり移動させるんす

ちっと強引なんすが奴隷商を上手く使って民衆のその後まで面倒見をやるんす

その結果シン・リーンもフィン・イッシュも人口が増えていやす

代わりに沿岸部は減っているんすが…移住した方が稼げる環境を整えて居やす

例えばシン・リーンで魔石の買取レートを高めにすると彼らにお金が回る

流通した魔石をキ・カイまで運んで経済を回すんす

商人さんがやって居るのと同じ事を豪族の資金力を使って強引にやってるんすよ


剣士「…道理でシン・リーンは冒険者で溢れているんだ」

ローグ「あっしが促した結果っすね…地軸の移動で沿岸部が済めなくなっても被害を受けるのは豪族だけっす」

剣士「僕は豪族を偏見の眼で見てたよ…」

ローグ「気にせんで良いでやんす…素行が悪いのはもう治らんのでそういう輩をコントロールする為に頭に懸賞金かけてるんす」

剣士「あぁ…そうそう話は変わるんだけど」

ローグ「何でやんすか?」

剣士「アダムを破壊する直前に僕を呼ぶ声を聞いたんだ…多分パパの声」

ローグ「アダムが勇者さんだったっていうオチっすか?また謎が深まりやすね?」

剣士「うん…どうしてアダムになって居たのか…調べたい」

ローグ「ロマンっすね…それは重要な秘密が有るに間違い無いっすよ」

剣士「今の所手掛かりは情報屋さんしか無いかな」

ローグ「時の王の屋敷に何かあるかも知れやせんぜ?今は美術館になっとるっす」

剣士「美術館…」

ローグ「古美術品って言うんすかね…古代の謎の道具とかあるらしいでやんす」

剣士「じゃぁ今行って来る」

ローグ「いやいや…あっしが案内出来やす…夜は警備に見つかるとエライ事になるっす」

剣士「明日行ける?」

ローグ「良いっすよ?あっしはアダムが破壊されて地軸の移動が無くなるならもう豪族なんて興味無いっすよ」

剣士「じゃ明日もう一回来ようかなぁ…」

ローグ「そんなそんな…まだ積もる話がありやす…今晩はここで休んで下せぇ

カクカク シカジカ

アンナコト コンナコト

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剣士「ビッグママが魔女の修行を受けているって本当!?」

ローグ「あららら?聞かされて居ないんすか?」

剣士「僕も精神と時の門で修行をしてた…すぐそばに居たのか…」

ローグ「魔女さんも人が悪いっすねぇ…」

剣士「魔女はわざと遠ざけて居たんだ…分かって来たぞ…魔女は僕が未来から来たのを気付いて居たな?」

ローグ「どういう事なんすかね?」

剣士「僕が次元を崩壊させてしまうのを防いで居たんだ…魔女は時の番人…」

ローグ「アダムが破壊されて未来は変わったんすよね?」

剣士「…その筈…でもなぜか次元の崩壊は起きなかった」

ローグ「不思議な話なんすが結果良ければ気にせんでも良い気がしますがね?」

剣士「アハハそういう考え好きだよ…まぁそうなんだよ…結果的にアダムは倒せたし何もかも良くなる筈」

ローグ「後はゆっくり謎解きをして行きやしょう」


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『翌日_美術館』


チュン チュン ピヨ


ローグ「まだ開館前なんで貸し切りでやんす」

剣士「さすが豪族のお偉いさんだね」

ローグ「警備が付いて回りやすが気にしないで下せぇ」

剣士「うん…自由に見て良いんだね?」

ローグ「へい…割と広いんで迷わない様に」

剣士「大丈夫…ママと一回来た事あるし」

ローグ「そうだったんすね」

剣士「女オーク付いておいで」スタ

女オーク「沢山ある肖像画はもしかしてウンディーネ?」

剣士「ホムンクルスっていうお姉ちゃんだよ…多分ウンディーネと同じ人かな?」

ローグ「何かヒントは在りやせんかねぇ…」

剣士「時の王っていう人の時代は1700年くらい昔だったよね?」

ローグ「らしいっす…その国が栄えた時代なんでもっと前から生きていたかも知れやせん」

剣士「すごいなぁ2000年近く生きてるって想像出来ないなぁ…」

ローグ「エルフは400年くらいらしいっす…ドワーフも同じくらいなんで未来君も寿命は長いかも知れやせん」

剣士「爺ぃじは何歳なんだろう…」

女オーク「ここの画に描かれている…この紋様…」

剣士「んん?あーシン・リーンで良く見る紋様だね」

ローグ「姉さんが作った装飾品はこんな紋様が彫ってありやすね」

剣士「あれ?…」

ローグ「ちょっと待って下せぇ…シン・リーンの美術品には姉さんが使う紋様が多いっす…未来君の刀の鞘にも同じ紋様あるっすよね?」

剣士「え!?この鞘に…あ!!本当だ…これもしかしてママが先に?」

ローグ「姉さんがシン・リーンの紋様を真似たのかも知れやせんが…可能性はありそうっす」

剣士「待てよ待てよ…あのシン・リーンの壁画の彫刻…かなり特殊だった…普通の人には難しいけどママなら簡単だ」

ローグ「およよよ?新説っすね…あの壁画は姉さんが彫った可能性がありやすね」

剣士「でも飽きっぽいママがどうしてあんな大きな壁画を掘ったんだろう」

ローグ「ははーん…きっとこれっすね…」パサ

剣士「え?」

ローグ「これは10年前に未来君の証言をあっしがメモした物でやんす」

剣士「あああ!!未来を知って居るから予言として残した…そういう事か…あの壁画は予言なんだ」

ローグ「未来にこんな事が起こるという事さえ残せば変えられる可能性もありやすよね?未来君の様に」

剣士「…そうかつまり暁の墓所の壁画も予言だ…良く見ておけば良かったなぁ」

ローグ「暁の墓所?なんか聞いた事ありやす…」

剣士「シン・リーンの東にある王家の墓所らしいよ…壁画が隠されてたんだ」

ローグ「もしかすると姉さんは世界中のあちらこちらに予言を残したかも知れやせん…こりゃまたロマンすねぇ」

剣士「ママの手掛かりが残って居そうなのは分かったけどパパとアダムの関係が繋がらない…」

ローグ「他に何か無いっすかねぇ…向こうの部屋には古美術品がありやすぜ?」

『向こうの部屋』


剣士「壺に食器…装飾品…う~ん」

ローグ「何かの道具もありやすが…未来君は分かりやせんか?」

剣士「全然分からない…」

ローグ「手がかりは無さそうでやんす…」

剣士「時の王っていう人は2000年くらい前の人だとするとドリアードとは無関係だよ」

ローグ「ドリアードはもっと昔でしたかね?」

剣士「3000年前くらいらしい」


リン ゴーーーーン


剣士「鐘の音…」

ローグ「貸し切りは終わりでやんす…どうしやす?まだ見ていきやすか?」

剣士「興味を引く物が無い…もう良いや」

ローグ「未来君はこれからどうするでやんすか?」

剣士「う~ん…急ぎの用事はもう無いんだけど…エリクサーを運んで居る最中なんだ」

ローグ「どこまで運ぶでやんすか?」

剣士「名も無き島だよ…商人さんがホム姉ちゃんを復活させようとしてるんだ」

ローグ「商人さんにもずっと会って無いでやんす…取引の件で話をしたいんすが」

剣士「今はキ・カイに居る筈…経由して送って行こうか?」

ローグ「気球で行くでやんすか?」

剣士「あ!飛空艇の事話して無かったね…新しく僕の飛空艇を作ったんだよ」

ローグ「さすが姉さんの血を引いていやすね…あっしにも見せて下せぇ」

剣士「ママの船より早いんだよ?」

ローグ「そらスゴイっすね…もう行きやすか?」

剣士「飛空艇でウルフを留守番させっ放しなんだ…早く戻りたいんだけど…」

ローグ「早速行きやしょう」

剣士「ローグさんは何も持って行かなくて良いの?」

ローグ「あっしはもう屋敷も何も要らんでやんす…豪族と付き合うのもウンザリして居やした」

剣士「ハハ…じゃぁもう行こっか」

『道中』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「ローグさんは商人さんとどんな取引を?」

ローグ「相場の話っすね…魔石のレートが変わるんすよ」

剣士「そんなに重要な事なの?」

ローグ「貴族の一人にちっと賢いのが居るんす…放って置くと富を独り占めする様になるでやんす」

剣士「ふ~ん…魔石とどんな関係なの?」

ローグ「キ・カイはエネルギーが魔石に依存してるんでレートが大きく変わると戦争に発展しやす」

剣士「政治絡みなんだ…苦手だ」

ローグ「あっしは名家の出じゃないもんすから資金は動かせてもレートの操作にあまり介入出来んのでやんす」

剣士「ふ~ん…」ハナホジー

ローグ「興味無さそうっすね?」

剣士「全然無い」

ローグ「こう言えば良いっすかね?もう魔石は売らないと言われたら言う事聞くしか無い…そういう事なんす」

剣士「…」


---エネルギーの供給が条件…供給を止めると脅されたら?---

---アダムと魔石の関係と同じか---

---そういえば魔王を封じたとされる魔石は何処に行った?---

---大事な事をすっかり忘れていた---


ローグ「どうしたでやんすか?急に黙りこくって?」

剣士「あ…いや何でも無いよ」

ローグ「キ・カイに魔石が流通しなくなったらどうなるんすかねぇ」

剣士「大丈夫だよ…向こうは石炭が豊富だし」

ローグ「石炭って又時代遅れな燃料っすね…」

剣士「馬鹿に出来ないよ?錬金術でダイヤモンドに変換出来る」

ローグ「ええ!?そうだったんすか?」

剣士「あとキ・カイの古代遺跡からウラン結晶も発掘されてるみたいだよ」

ローグ「なおさら商人さんと情報交換しないといけやせんね…それを奪いたいと思う輩は沢山いるでやんす」

剣士「なかなか平和にならないなぁ…」


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『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


ローグ「操舵のコツが分かってきやしたぜ?」

剣士「キ・カイまで任せたよ…僕は歴史の勉強だ」ヨミヨミ

ローグ「風に上手く乗れば逆風でも進むのがスゴイっすね」

剣士「落下を上手く使ってスピード乗せるんだよ…慣れれば勘で行ける」

ローグ「武器はクロスボウ2台すか…火力は姉さんの船が上なんすね」

剣士「あんまり戦闘を想定していないんだ…ボルトもちょっとしか乗って無い」

ローグ「外の視認性が悪いのがちっと不便すね」

剣士「そうだね…暇があったらもう少し改造してみる」

ローグ「いやぁぁ骨組みをクジラの骨で作ったのは考えやしたね…」

剣士「木よりも軽くて強度が高かった…だから大きな羽が作れたんだ」

ローグ「噂でキ・カイの気球の話をよく聞くでやんすが皆こんな感じで?」

剣士「軽量なのは同じかな…錬金術で木材を樹脂に変性してるんだ…木よりも軽くて丈夫」

ローグ「この胴体の部分っすよね?」

剣士「それそれ…卵の殻みたいになってるからスゴイ強度が高いんだよ」

ローグ「10年で進歩するもんすねぇ…」

剣士「キ・カイは色んな形の気球があって面白いよ」

ローグ「あっしは10年間南の大陸には行って無いんで楽しみっす」


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『古都キ・カイ』


フワフワ ドッスン


ローグ「門の外に降ろすのは何か理由が?」

剣士「豪族に狙われるんだよ…ほら女オークは背格好がビッグママに似てるじゃない?」

ローグ「顔は似てないでやんす…背が高いのは損っすね」

剣士「商人ギルドは場所知ってるよね?3人だと目立っちゃうから現地集合で良い?」

ローグ「良いっすよ…」

剣士「じゃ…向こうで…女オーク!ハイディングしながら行くよ!」グイ

剣士「ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

ローグ「あぁ姉さんを見て居る様でやんす…良い子に育ちやしたよ?姉さん…」タッタ


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『商人ギルド』


ガヤガヤ ガヤガヤ

はい!買取はこっち!競売はあっち!

商船の取引所は臨時で外に作ってありまぁぁす!

亜麻とシルクが値下がりしてる…

石炭の売りが好調だ…ウヒヒヒ


盗賊「奴隷商居無ぇかぁ!!大工に工夫!!大募集!!移民歓迎!!誰か居無ぇかぁぁぁ」

娘「爺じぃ!!ここは取引所だからそう言うのは外でやってよ!!」

盗賊「そんな簡単に集まら無ぇからここに来てんだよ!」

娘「邪魔邪魔!!シッシ!!」

盗賊「はぁぁどうすっかな…」

影武者「僕に任せておいてよ…地下の方に孤児の集まりが居るから話してみるよ」

盗賊「孤児!!おぉそれだ!!」

影武者「ギャングになっててスラムをうろついて居るんだ」

盗賊「スラムか…お前一人で大丈夫なのか?」

影武者「僕を誰だと思って居るんだい?取引なら任せ…」


ローグ「盗賊さん!お久しぶりでやんす…」


盗賊「ん?おおおおおおお!!ローグじゃ無ぇか…どうしたんだ?いつ来た!?」

ローグ「商人さんに会いに来たでやんす…盗賊さんも一緒だったでやんすね」

盗賊「商人なら下に居るぞ?連れて行ってやる」

影武者「困るなぁ…勝手にチョロチョロされるのは」ジロ

盗賊「まぁ堅い事言うな」

影武者「ダメだよ…僕はここを任されて居るんだ…僕の許可無しで勝手な事はしないで貰いたい」

ローグ「ちっと待って下せぇ…未来君もここに来る筈なんすが」

盗賊「なぬ!?未来も一緒か?なら上の大部屋で待って居た方が良さそうだな」

影武者「そうして貰えると助かる…商人には僕から伝えるよ」

盗賊「あー分かった分かった…ローグ!こっちだ来い」

ローグ「へい…いやぁ賑わって居やすねぇ…」

盗賊「ところでお前今まで何やってたのよ?」

ローグ「まぁ色々ありやしてね?」


アンナコト コンナコト

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『大部屋』


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ


盗賊「おぉ!来たか…ん?なんだそりゃ買い物して来たんか?」

剣士「触媒が不足してたから地下に行って来たんだ…良さそうな望遠鏡有ったから買ってきちゃった」

ローグ「あらら?な~んか女オークさん…雰囲気代わりやしたね?」

女オーク「…」

剣士「変性魔法で少しキバを出した…肌色も少し褐色に…こっちの方が良いでしょ?」

ローグ「今まで未来君の魔法で変装していたんすね?」

剣士「人間っぽくしてたんだけどさ…やっぱりキバは少し出ていた方が良い」

盗賊「それにしても商人遅せぇな…」

ローグ「あっしには興味無いのかも知れやせんねぇ…」

剣士「あ!!ホム姉ちゃんが生きてたって伝えればすぐに来るかも」

盗賊「なぬ!!そりゃマジか…」

ローグ「あっしも今聞いたでやんすが…何処に居るんすか?」

剣士「精霊樹の森だよ」

ローグ「石造はどうなったんすか?」

剣士「話は商人さんが来てからの方が良いかも」

盗賊「おう!!ちっと急ぎで呼んで来るわ」ダダ


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『数分後』


ガチャリ ドターーーン!


商人「剣士君!!聞いたよ…ホムンクルスが生きていたんだってね?ハァハァ」

ローグ「速攻出て来やしたね…ハハ」

剣士「うん…ホム姉ちゃんの超高度AIユニットは10年前に僕が拾って精霊の御所に置いて来たらしい」

商人「らしい?」

剣士「僕は記憶を失って居たんだよ…話はこうだよ」


10年前…シャ・バクダ遺跡に避難していた時の事

僕は冒険の書を読んだんだ…


カクカク シカジカ

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剣士「…という訳でホム姉ちゃんは精霊樹になって森の動物や虫達に囲まれて生きているんだ」

商人「そうか…無事だったか…良かった」ポロポロ

剣士「体は失ったけど精霊樹になって葉っぱから風の音とか色んな事を感じてる筈」

商人「うんうん…」

剣士「今では森の声の主になって沢山の友達が居る筈」

商人「うんうん…それで良い…きっとそれが一番幸せな筈さ」

機械の犬「ワン!」

商人「精霊樹の森に行きたくなって来た…そうだホムンクルスの超高度AIの寿命は400年くらいだった筈」

機械の犬「ワン!」

商人「この機械の犬に入れた超高度AIユニットの寿命はあと5年程…それぞれ違う形だけどきっとこれが一番良い」

盗賊「ふ~む…なるほどな…それで未来が行方不明になった後に御所で発見された訳か」

商人「剣士君…僕は精霊樹の森へ行きたい…ホムンクルスの傍に居たい」

剣士「あ~今はちょっとダメかも…エルフが戦争をしてる」

商人「相手は?まさかドリアード?」

剣士「話にはまだ続きが有ってね…実はドリアードの中にあるアダムは僕が破壊して来た」

盗賊「どわっ!!マジか!!それを先に言え!!」

商人「えええ!?どういう事なんだい?」

剣士「もっと話は遡る…実は僕は未来から来てるんだ…未来に起こる事をもう変えて来た」

商人「ええと…話が掴めない」

剣士「こういう事だよ…」


カクカク シカジカ

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商人「…これは驚きだ…剣士君!君はこの世界が夢幻だと言っているのと等しい事を言って居る」

剣士「そうだよ…魔術で言う次元の繋がりは…おそらく夢幻のゆらぎだよ」

商人「じゃぁ今のこの瞬間も…精霊の記憶?いや…ホムンクルスの記憶?」

剣士「そう言い変える事が出来るかも知れない」

商人「ラヴ!君にこの質問をするのは酷かもしれないけどどうなんだい?」

機械の犬「クゥ~ン」

商人「分からない…」

剣士「その答えを探すのが魔道なんだ…魔女は初めからそれを知って隠して居た」

商人「現実は何処にある?」

剣士「この次元も現実…別の次元も現実…それが量子で繋がっている…量子転移とはそれを超える魔法」

商人「平行世界か…」

盗賊「難しい話になって来たが…とりあえずアダムは破壊されて色々解決した訳だな?」

剣士「その筈…多分未来は変わった」

盗賊「あいつはどうなった?とち狂った第3皇子のヤローは?」

剣士「そんな人は見て居ないなぁ…僕はエリクサーに浸かった機械をママの爆弾で破壊した…それだけ」

盗賊「ふむ…破壊したってのは本当らしい…エリクサーに浸かっているなんぞ行った奴にしか知り得ん話だ」

剣士「アダムは破壊出来たけどその後ドリアードが暴れ始めて今エルフが戦って居る最中だよ」

商人「精霊樹は大丈夫そうかい?」

剣士「エルフゾンビさん曰く有利にはなってきているらしい」

商人「そうか…もう少し待つ必要があるのか…ところでエリクサーは?」

剣士「樽で4つ分持って帰って来たよ」

商人「僕にはまだ仕事が残って居るな…未来の為にホムンクルスを完成させないと」

剣士「え?」

商人「ホムンクルスは未来にメッセージを伝える為に生き延びて居るんだ…絶やしてはいけない」

剣士「あぁ勘違いした…僕の事かと思った」

商人「…」

剣士「??」

商人「剣士君…君のお母さんの女海賊は…もしかすると君へのメッセージをホムンクルスに託して居ないかな?」

剣士「え!?」

商人「女海賊はホムンクルスが現在まで生き延びている事を知って居る筈…だから古代遺跡に残って居たんじゃないかい?」

機械の犬「ワン!ワン!ワン!」

商人「正解だ…古代遺跡で見つけた外部メモリをラヴに一度挿入した…ラヴがそのメッセージを知って居る」

機械の犬「ワン!」

商人「聞くためにはホムンクルスを目覚めさせる必要がある」

剣士「聞きたい…」



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商人「エリクサーの買取は次の商船が入って来るまで待ちだよ…もう2~3日かな」

剣士「うん…しばらくゆっくりしておくよ」

ローグ「商人さんあっしからもちっと話があるんすが?」

商人「何かな?」

ローグ「北の大陸からの魔石が流通していやすよね?レートが一気に変わるっす」

商人「へぇ?それは困るね…でも何で急に?」

ローグ「セントラルの貴族の中で公爵っていう奴を知りやせんか?」

商人「あぁ知って居るさ…古代遺跡発掘の出資元だね…彼が何か企んでいる?」

ローグ「多分キ・カイの利権を丸ごと狙ってるっすよ…何か凄い物を発掘していやせんかね?」

商人「詳しくは知らないんだ…まぁでも魔石流通が止まるとキラーマシンも動かない…機械の軍艦もだ」

ローグ「そういう事っス…丸裸なんすよ」

商人「利権の独り占めは豪族も黙って居ないんじゃないかな?豪族が魔石の流通に動くと思うけどなぁ」

ローグ「だからこうやって話をしてるんす…豪族をコントロールしているのはあっしとアサシンさんでやんす」

商人「アレ?もしかして豪族の頭取ってローグだったのかい?」

ローグ「言い忘れていやしたね…あっしは裏で豪族を操っていたっす」

商人「なんだそうだったのか…なかなか足が掴めなくて困って居たんだよ…そっちから来たんだね」

盗賊「おいおいおい…どういうこった!」

商人「そうだよローグ!困るんだよ豪族があちこちで勝手に動かれちゃ…武器の密輸しかり相場の介入しかり…」

ローグ「正確にはあっしだけじゃ無いんす…さっき言った公爵も上手く豪族を誘導してるんす」

商人「つまりこうだね?公爵が力を付けて来てローグの手に負えなくなってきている…」

ローグ「まぁそんな所でやんす…海賊王の娘に懸賞金を賭けて豪族を纏まらせないので精一杯なんでやんす」

商人「まぁ一つ分かったのは豪族はその頭取以下の一枚岩では無いという事だね」

ローグ「ハッキリ言ってバラバラっすね」

商人「公爵が利権を餌に纏め始めたという所か…」

盗賊「しかしローグ!豪族のせいでどんだけの村が焼かれたか分かってんのか!?」

ローグ「それにも訳があるんすが…」

商人「うーむ…これは話が長くなりそうだ…盗賊!影武者が単独で取引先に行くんだけど一緒に付いて行ってもらえないかな?」

盗賊「んぁ?俺は人相が悪いからダメだと本人に言われてんだが…」

剣士「僕が言って来ようか?ボディーガードだよね?」

商人「剣士なら安心だ…お願いできるかい?」

剣士「女オークはここで待って居た方が良さそうか…」

女オーク「私は水浴びしてゆっくりしておくわ」

剣士「うん…じゃぁ影武者さんの所に行って来る」

商人「助かる…それでローグ?話の続きなんだけど…」

ローグ「へい…あっしが豪族を動かしてやっていた事はですね…地軸の移動に備えて人の誘導が狙いだったんす…」


カクカク シカジカ

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『港にある倉庫』


スタスタ


剣士「影武者さん…肌の調子はどう?」

影武者「おかげで良くなったよ…髪の毛も生えて来たさ」

剣士「もうフードで顔を隠さなくても良いんじゃない?」

影武者「僕はねこのフードの隙間からしか世界を見たことが無いんだ…怖いんだよ」

剣士「怖いって…何が?」

影武者「僕の顔色を悟られるのがさ…フードの中で怯えた顔をしているのを知られたくない」

剣士「あーーーなんか分かるなぁ…僕も子供の頃からずっとフードの隙間から世界を見てた」

影武者「フフ…君も同じだったか」

剣士「なんだろうなぁ…フードに隠れてるのは顔だけなのに…どうして落ち着くんだろう」

影武者「世界を一歩引いたところから見て居る…そんな感じだよ」

剣士「アハハ…そんな2人が揃って歩いているのはおかしく見えるよね」

影武者「そうかい?」

剣士「僕影武者さんと意見が合いそうだ…でもね…君の笑った顔も見て見たい」

影武者「…」

剣士「どうして黙るのさ」

影武者「笑い方を知らない…笑えているのかも自信が無い…ゴメンねその期待には応えられない」

剣士「まぁ良っか!!かくれんぼしてるみたいでなんだか楽しいし」

影武者「そろそろ待ち合わせの場所だよ…君は黙って見て居れば良い…言葉を発したらダメだよ」

剣士「おけおけ!秘密の取引…ワクワクするなぁ」

『数分後』


スタスタ


豪族の男「…これはこれは闇商人さんよ…約束通り2人で来たな?」

影武者「…」タジ

剣士「…」ポカーン

影武者「密会の約束だった筈だね…どういう事かな?」

ごろつき「二ヒヒ…」ゾロゾロ

豪族の男「まぁまぁ…そう慌てんな…取引が無事に済めばそれで良いだろう?」

影武者「破談さ…剣士君…帰ろう」スタ

豪族の男「待て待て…ブツは用意しているんだ…これを見ろ」ドサリ

影武者「…」ジロリ

豪族の男「俺は例の物が手に入ればそれで良い…何処に隠してある?」

影武者「フフこの状況で取引が成立するとでも?」

豪族の男「おぉ分かった分かった俺は下がって後ろを向く…その袋は持って行け…ブツのありかさえ聞ければ俺はそのまま去る」

影武者「剣士君…その袋を持って帰ろう」

剣士「…」スッ ガサリ

豪族の男「さぁ教えろ…キラーマシンのパーツは何処に保管してあるんだ?」

影武者「2番倉庫B-14…剣士君行こう」スタスタ

剣士「…」スタスタ

豪族の男「グハハハハ…俺は去るが…後は知らん」

影武者「ハッ…まずい!!来た道に人が沢山居た…」

剣士(まだ喋っちゃダメ?)ヒソ

影武者「剣士君僕を守って…これは罠だ」

豪族の男「さぁて!!これでまともに取引出来るな?海賊王の娘を匿って居るだろう…後は言わんでも分かるな?」

剣士(やって良いの?)ヒソ

影武者「この窮地を脱出できるのであれば」ヒソ

豪族の男「さぁどうなんだ?この付近に居るのはみ~んなごろつきだ!!どういう事か分かるな?」

剣士「…」チャキリ ターン


バチン!!


豪族の男「あだっ!!にゃろう…言う事聞く気が無ぇな!!」

剣士「…」チャキリ

豪族の男「その武器は海賊王の娘の武器…やっぱり匿っていやがったな!!ごろつき共!!やっちまえ!!」

ごろつき共「うぉぉぉぉ」ズドドド

剣士「影武者さん僕の懐に入って!」グイ

影武者「え!?」

剣士「ハイディング!」スゥ

豪族の男「消えた…あいつ!!白狼の一味だったのか…」

ごろつき共「あっちだぁ!!地下の方へ向かって居る!!」ズドドド

豪族の男「闇商人が白狼の仲間だったとは…くそう!追え!隠れ場所を突き止めろ!!」

『夕方_商人ギルド』


ザワザワ ガヤガヤ

おい白狼の盗賊団って知って居るか?

10年以上前の伝説の盗賊団だ

地下の方に隠れて居るらしい

こりゃ貴金属の被害が出そうだ…ヤべェ隠すぞ!

ザワザワ ガヤガヤ


盗賊「よう!!戻った様だな?何なんだこの騒ぎは…」

影武者「商人は何処へ?」

盗賊「上の大部屋でくつろいでる…何か有ったんだな?」

影武者「話はそこで…」


--------------

『大部屋』


ガチャリ バタン


影武者「商人…取引は無事に終わったよ…でもマズい事になった」

商人「うんゴメンね…危険な取引を君に押し付けてしまって」

影武者「いえ…それは構わない…でも白狼の盗賊団と闇商人を紐づける結果になってしまって…」

商人「そろそろ潮時だとは思って居たんだ…海賊王の娘を匿って居るという噂も在ったしね」

影武者「どうしよう…このままだとキ・カイで行動するのは制限が出てしまう」

商人「しばらく身を隠すしか無いだろうね…盗賊と少し話をしたんだけど君にはハテノ村に行ってもらいたい」

影武者「ハテノ村…左遷ですか」

商人「そう言うのじゃない…ハテノ村で硫黄の取引所を新しく作りたいんだよ…そこを君に任せたいんだ」

影武者「商人はどうされるので?」

商人「考えてある…世間的に死んだ事にするのさ」

ローグ「簡単なこってすね…あっしが闇商人と海賊王の娘を捕らえた事にするだけっす」

剣士「アハハそれ名案だねぇ」

ローグ「あっしは豪族の中では名が通ってるんすよ…豪族達の目の前で商人さんに扮した剣士さんと女オークさんを捕らえるんす」

剣士「商人さんの姿に変性するのは簡単さ…面白い!やろうやろう」

ローグ「どこでやりゃ良いっすかね?」

剣士「こういうのはどう?地下街の一角に鉄の檻があるんだ…その中に2人入ってローグさんと盗賊さんでここまで移送する」

ローグ「しばらく檻の中でやんすがそれでも良いっすかね?」

剣士「ほら?昔さぁ…檻の中で過ごした事有ったよね?どんぐりだけ有ればそれでも楽しいんだ」

女オーク「ウフフ…」クス

ローグ「豪族達は頭悪いもんすからそれで絶対騙せやすね」

剣士「決まったら早速行こう…丁度豪族達を地下に撒いて来た所だし」

ローグ「盗賊さん良いっすかね?檻の鍵開けには盗賊さんの力が必要っす」

盗賊「ぬぁぁぁしょうが無ぇなぁ…茶番にゃ興味無いんだが…」

商人「まぁまぁ…ハテノ村へ移住する人の件は僕がなんとかするさ」

盗賊「ワイン一本貰ってくぜ?酒でも飲みながらじゃ無ぇとダルくてよう」グビグビ

剣士「悪党ズラもたまには役に立ちそうだね…豪族のごろつきにそっくりだよ」

盗賊「んだとぅ!!」

ローグ「じゃぁ行くでやんす…剣士さん檻まで案内して下せぇ」

剣士「うん!!付いて来て…」タッタッタ

『チカテツ街道_廃線』


ドヤドヤ

街道の奥の方まで逃げてるかもしれん!

明かりを持ってこい!

この廃線に逃げ込んだので間違い無いな?

暗くて何も見えやしねぇ!明かりはまだか!?



盗賊「危なく見つかる所だったぜ…この奥に牢屋があるんだな?」

剣士「うん…多分もう使われてないよ」

ローグ「ありやしたぜ?こりゃ奴隷移送用の牢屋っすね…車輪が付いてるんで移送がラクっすよ」

盗賊「おぉ鍵開けるから待ってろ…」カチャカチャ カチン

ローグ「さささ…早く入ってくだせぇ」

剣士「ウフフわくわくするなぁ…女オークおいで」グイ

盗賊「ちっと戦闘音出して釣るか?」

ローグ「そうっすね…」

剣士「任せて!火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ ドーン

盗賊「鍵閉めるぞ?」カチン

ローグ「檻を叩きやしょう」カーン カーン カーン


おらぁ!!掴まえたぞぉぉぉ

檻の中に入りやがれぇぇぇ

ここで会ったが100年目でやんす…大人しくお縄頂戴でやんすよ


剣士「フフフ女オーク!!トマト爆弾食らえぇ!!」ポイ ベチャ

女オーク「え!!ちょっと…水浴びしたばかりなのよ!」グイ

剣士「いてて腕を掴まないで…」

盗賊「おい!!武器は俺らが預かる…出せ」

剣士「ん…あ…はいコレ…刀とデリンジャー」ポイ

女オーク「剣士!?何個トマトを持って居るの?」

剣士「フフフ食らえ!!」ポイ ベチャ

女オーク「止めて…」グイ

剣士「あだだだ…力は君の方が強い…ずるいぞ!!」ドタバタ


盗賊「檻を押すぞ!!あんまり暴れんな!!」グイ ガタゴト

ローグ「お二人さん大人しくするでやんす…豪族達が来たでやんすよ」


豪族の男「…こりゃどういう事だ?なんで頭取がキ・カイに居る…」

ローグ「なんでもかんでも…あんさん達が海賊王の娘を捕らえるのに手間取ってるもんすからこうやって直々に動いてるんすよ」

盗賊「おい!!大人しくしろ2人共!!撃つぞ」チャキリ ターン


ドタバタ ドシン ドシン

ローグ「あんさん達は信用出来んのですわ…公爵から何やら依頼もされて居やすよね?」

豪族の男「う…海賊王の娘を後回しにしていた訳じゃ無ぇ…なかなか捕まえられ無ぇもんだから…その」

ローグ「もう捕らえたんでやっとドワーフ達と交渉出来やす」

豪族の男「そっちの小さい方は闇商人だと知って居るのか?」

ローグ「闇商人にはちぃと拷問の必要がありそうっすねぇ…ニヒヒヒ」

豪族の男「懸賞金はこれでおじゃんという事か?」

ローグ「そうなりやすねぇ…まぁ豪族の皆さんには良く働いて貰ったもんすから…ドワーフ達から得た利権は分け前を分配しても良いっすね」

豪族の男「おぉぉ!!俺にも移送を手伝わせてくれ…しかしこいつ等仲間割れか?」


ドタバタ ドシン ドシン


盗賊「おい!!静かにしろぉ!」チャキリ ターン

豪族の男「その武器は取り上げたんだな?すげぇ見せてくれ」

盗賊「こりゃ俺の取り分だ触るな!!」チャキリ

豪族の男「ちぃぃぃクソう!!一歩遅かった…」

ローグ「幽霊船の中にはまだたんまりお宝がある筈でやんす…まだまだこれからでやんす」

豪族の男「おう!!強力させてくれぇ!!」

盗賊「ならよう…この廃線の奥にこいつらの隠れ家があるかも知れ無ぇんだ…探して来てくれ」

ローグ「ハハそーっすね…あっしらは海賊王の娘の移送で忙しいでやんすよ」

豪族の男「グハハハハハそういう事かい…まだまだ俺にも分け前が残って居たとはこりゃ抜かった…」

盗賊「待て!お前独り占めは許さんぞ?」

豪族の男「ここは共闘って行こうじゃ無ぇか…おいごろつき共ぉ!!行くぞ!!宝は目の前だぁぁ!!」ドタドタ

ごろつき「うぉぉぉぉ」ドタドタ

ローグ「…」

盗賊「んんん…アホだなあいつ等」

『地下入り口』


ガタゴト ガタゴト


移送されているの誰か知ってるか?

片方が海賊王の娘らしいわ

いやぁぁ血だらけじゃない…

もう一人は白狼の盗賊団の一人らしい

あれが伝説の…

こりゃ他の仲間が動き出したりしないか?


ザワザワ ザワザワ


ローグ「いやいや…噂の伝わる事の早いのなんの…」

盗賊「他の豪族共も慌てて地下に入って行きやがる」

ローグ「これは地下の大捜索になりやすぜ?」

盗賊「知った事か!!ちっと俺は馬持ってくるからローグはここで待っててくれ」

ローグ「あいさー」

盗賊「5分で戻る!!」ダダ

ローグ「剣士さん…見世物になって居やすが大丈夫でやんすか?」


ドタン バタン ギシギシ


剣士「はぁはぁ…もう分かった降参だ…もう悪戯しないから放して」グググ

女オーク「私の勝ちね…隠したトマトを出して」

剣士「こ…ここだよ」スッ

女オーク「本当に油断も隙も無いんだから…」

剣士「怒ってるの?」

女オーク「呆れているの…」

ローグ「剣士さん聞いていやすかね?見世物になってるんすが…」

剣士「あぁゴメン…どうして居れば良い?」

ローグ「2人共堂々とですね…一応2人共伝説の人物なんすがどうも威厳が無くてですね…」

剣士「ええと…つまり大人しくしていろって事だね?」

ローグ「そういうこってす…今日は檻から出せれないと思うんで大人しく休んでいて下せぇ」


パカラッ パカラッ ブヒヒ~


盗賊「戻ったぜ?ローグ!手枷を持って来たから2人に付けて囚人らしくさせろ」ポイ ドサリ

ローグ「へい!!2人共済まんでやんす…鍵は外しておくんで一応つけるだけ付けて下せぇ」カチャ カチャ

剣士「手が込んでるねぇ…ハハ」

盗賊「まぁ一応な?見てる奴は見てるからよ…商人ギルド裏まで移送したら幌を被せてやる」

『商人ギルド裏』


ガタゴト ガタゴト ブヒヒ~ン ブルル


盗賊「見物人が付いて来ていやがる…面倒だな」

ローグ「これじゃ下手に動けやせんね?」

盗賊「まず幌を被せるぞ…ローグ!反対側持て」バサバサ

ローグ「いきやすぜ?せ~の!!」バサッ

盗賊「ローグどう思う?檻の中だがちっと危ないと思わ無ぇか?」グイグイ ギュゥ

ローグ「そーっすね…あっしとドワーフの交渉を邪魔したい輩が居るなら暗殺者が動くかも分からんす」

盗賊「やはりな…公爵つったっけ?息の掛かった豪族はどっかに紛れて居そうだな」

ローグ「あっしも身を隠さんと狙われるかも知らんでやんすねぇ」

盗賊「しゃぁ無ぇな…ちっと死体を2つ仕入れて来るか」

ローグ「宛てがあるでやんすか?」

剣士「待って待って…僕は変性魔法が使えるんだ…誰か身代わりになる人を檻の中に入れてくれたら交代するよ」

盗賊「お!?そりゃ良い…酒場に行きゃ素行の悪い豪族なんかいくらでも居る」

ローグ「決まりっすね?」

盗賊「そうだな…酒場にある樽に身代わりの豪族を入れてだな…ここまで運ぶ」

ローグ「樽ごと檻の中に入れて交代するんすね?」

盗賊「行けそうだな…よし!剣士…小一時間で戻って来るからそれまで自衛しろ」

剣士「おけおけ」

盗賊「ローグ来い!!樽を運ぶの手伝え」

ローグ「あいさー」タッタッタ

『酒場裏』


こんな所に呼び出したからには落とし前付けてくれるんだろうな?

お前達は酒場でお痛が過ぎるんだちっと大人しく寝てろ

んだとゴルァ!!やんのかてめぇ!!


盗賊「ローグ!ヤレ!!」

ローグ「バックロロホルム!!」

ごろつき1「むぐっ!!」

ごろつき2「なっ…!!」

盗賊「殺しゃし無ぇ…寝てろ」グイ

ごろつき1「んむむ…」グター

ごろつき2「ふんが…」グター

ローグ「いやぁぁ強力な睡眠薬っすね…どこで手に入れたんすかコレ」

盗賊「そりゃ後だ…さっさと樽に入れて運ぶぞ」ゴソゴソ

ローグ「何か持って居やすか?」ゴソゴソ

盗賊「金貨と宝石を少しな…こいつら北方の海賊出身だな」

ローグ「本当っすね入れ墨入って居やすね」

盗賊「まぁ良い!盗る物盗ったら樽ん中入れて運ぶぞ」ヨッコラ ヨッコラ

ローグ「いやいやいや…なんか盗賊さんの真の姿を見た気がしやした」

盗賊「俺ぁこういうのから足は洗ったんだ…今は鍵開け専門よ…お前の方こそ隠密は慣れて居そうじゃ無ぇか」

ローグ「あっしは諜報専門っす…殺しはやりやせん」

盗賊「ケッ…行くぞ」ヨッコラ ヨッコラ

『商人ギルド裏の檻』


ヒソヒソ ヒソヒソ


ローグ「皆さんどいてくれやんす」ヨッコラ

盗賊「人の荷を勝手に覗くんじゃ無ぇ!どけゴルァ!!」ヨッコラ

ローグ「これは見世物じゃ無いんで皆さん何処かへ行ってもらえやせんかね?ちっと強引な感じになっちまいやすぜ?」

見物人「ひぃぃぃ」

盗賊「シッシッ…」ドスン

ローグ「よっこら…よっこら」ドスン

盗賊「おい!檻の中の2人…お前等の着ている物全部この樽の中に入れろ」

ローグ「海賊王の娘さんや…幌で見えない様になっているのはあっしからの気遣いでやんすよ?言う事聞くんでやんす」

盗賊「俺が中に入って身ぐるみ剝がして来る…ローグは見張って居てくれ…鍵開けるぞ?」カチャリ ギー

ローグ「樽を中に入れるでやんすよ?」ヨッコラ

盗賊「抵抗したらどうなるか分かってんだろうな?」チャキリ ターン

ローグ「ハイハイ皆さん囚人の身ぐるみを剥いでいるだけですんで解散!解散~~」


ヒソヒソ ヒソヒソ

あれが豪族の頭取?随分物腰が弱そうな…

海賊王の娘はえらいべっぴんと聞くが本当かえ?

どんな装備品を持って居るのか…

檻の中が光ってる…何なんだ?


盗賊「そうだ…大人しく脱いで樽の中に放り込め…ダメだ下着も全部だ!」

盗賊「武器を隠していやがったな!!だがもう必要無いヌハハ」

盗賊「ようし!大人しくしていた褒美に後で布っ切れは用意してやる」

盗賊「ヌハハ装備品はすべて回収したぜ?ローグ…運ぶぞ」

ローグ「檻に鍵を掛けるのを忘れんで下せぇ」

盗賊「おぉそうだった」カチャリ

ローグ「じゃぁ樽を運びやすぜ?はいはい皆さんどいて下せぇ」ヨッコラ ヨッコラ


ヒソヒソ ヒソヒソ

おぉぉ樽から装備品がはみ出して…

どんなお宝なのか

『大部屋』


ヨッコラ ドスン


盗賊「もう出て良いぞ?」

剣士「…」ヒョコ

女オーク「…」ヒョコ

ローグ「子供の頃の2人に変身っすか…これで自由に歩けやすね?」

盗賊「そりゃ良いが変身した奴は女戦士の恰好をしているんだが…裸はやっぱマズいよな?」

剣士「マズいよ!ビッグママに知られたら怒るよ?」

盗賊「適当な着替えを持って行って来る」ダダ

ローグ「いやいやいや…それはあっしが行って来るっす…盗賊さんは待っていて下せぇ」ダダ

剣士「はぁぁぁぁ何か色々楽しかったなぁ」

盗賊「まぁこれで海賊王の娘を付け狙う奴も減るだろう」

剣士「あ!そうそう…見物している人の中にじっと観察している人が居たみたい」

盗賊「そうか…どのくらいか分かるか?」

剣士「2人かな?」

盗賊「ふ~む…頃合いを見てあの2人を豪族に引き渡すってのも手だな」

剣士「地下に居た豪族の男かい?」

盗賊「うむ…あのアホは喜んでセントラルまで移送すんだろ」

剣士「ハハそんな感じだね」

盗賊「まぁ今日はもう遅せぇから明日ローグと商人に相談だな」

剣士「うん…僕は屋上に行って望遠鏡で星でも見て来るよ」

盗賊「裸は寒いから何か着て行け…女オークも乳は隠せ」

剣士「アハ…女オーク行こうか!!」スタタ


--------------

『屋上』


ヒュゥゥゥ


剣士「南の大陸は冬だったね…やっぱ寒いなぁ」

女オーク「望遠鏡…見える?」

剣士「海にモヤが少し掛かってて月が綺麗には見えないけど一応見えるよ…見たい?」

女オーク「ここで望遠鏡を覗いた時の事覚えてる?」

剣士「え?そんな事あったっけ?」

女オーク「あの時は朝方…ここから剣士達は船を見て居たわ」

剣士「ああ思い出した…ビッグママの望遠鏡が倍率高すぎて使い物にならなかったんだ」

女オーク「私も望遠鏡を見たかったのよ」

剣士「そうだったのか…ゴメンよ気付かなくて」

女オーク「見せて貰える?」

剣士「良いよ…月が見えるよ」スッ

女オーク「ウフフこんな風に見えるのね…遠くの物がこんなに近くに…」

剣士「昔と同じ格好して…今…なんか不思議だね」

女オーク「今下に戻ったら過去に戻っていたりしてね」ニコ

剣士「…」


---そうだね…この町の匂いも雑多の音もあの時のままだ---

---寒いのも昔と変わらない---


女オーク「ねぇ剣士?月の高さが低い気がしない?」

剣士「え!?あぁ…そういえば低い…モヤに隠れ…え!!?」


---寒い---

---月が低い---


剣士「まさか…」ドタドタ

女オーク「どうしたの急に?」

剣士「南極星はどこだ?あぁくそうモヤが張ってて小さな星は見えにくい」ドタドタ


---早朝はモヤが少し引く---

---日の出の場所と星座で地軸のズレが確認出来る筈---


剣士「魔石と壺を持ってくる…そうだ毛布もだ」

女オーク「ここで夜明けまで過ごすつもり?」

剣士「大変な事に気付いた…確認しなきゃ」

『数日後_大部屋』


商人「…やっぱり確定かい?」

剣士「星座と暦の書物とも比較したさ…日の出日の入り共に一緒に見える星座が違う…間違い無いよ」

商人「どのくらいズレて居るんだい?」

剣士「今の所15°くらいだと思う…ただ毎日少しづつズレてるだろうから観測に意味が無い」

商人「君の予言だと海士島付近が南極になるんだったね?その影響がどう出るのか僕には想像できない」

剣士「商人さんは地図を書くのが得意だったよね?」

商人「まぁ普通の人よりはね」

剣士「今のうちに新しい地図を起こしておいた方が良い」

商人「君の証言通りだとすると南の大陸は上下逆さまになる…後は緯度と経度かい?」

剣士「海流も風向きも全部変わる…そう言うのを書き残さないといけない」


ガチャリ バタン


ローグ「帰りやした…ぅぅぅ寒ぶ」ゴシゴシ

商人「例の2人は上手く引き取って貰えたかい?」

ローグ「へい…セントラル監獄までの移送を喜んで引き受けてくれやした」

商人「それは良かった…これで豪族に付け狙われないで済む」

ローグ「それより何なんすか?2人で深刻そうな顔をして」

剣士「ローグさん…地軸の移動が始まって居るんだ…アダムを破壊するだけじゃダメだったみたい」

ローグ「ええええええ!!?そらマジっすか」

商人「そういう事らしい…だからこれからどうしようかと」

剣士「一つ…僕達にはハテノ村という逃げ道がある…僕の予測だと温暖な気候の良い土地に変化する」

商人「ハテノ村を開拓して避難民の受け皿にするのは良い案だ…それは継続して進めるとして…目下やる事」

剣士「早く名も無き島にエリクサーを運んでホム姉ちゃんを復活させないと…」

商人「エリクサーは今日到着する筈だよ」

剣士「こうしよう…僕の飛空艇には既に樽4つ積んでるからもう一つ樽を乗せるとなると女オークは連れて行けない」

商人「僕と剣士君だけで名も無き島に行こう」

剣士「女オークは盗賊さんと一緒にハテノ村に行ってもらう…多分そこが安全な筈」

ローグ「あっしはどうしやしょうね?」

商人「ここには商人ギルドもある…豪族の立場を利用してキ・カイにしばらく滞在して欲しい」

ローグ「あっしは又一人っすかトホホ」

商人「盗賊の飛行船で何度も往復する事になるんだ…直ぐに合流出来るさ」

剣士「僕はまだやらなきゃいけない事がある…幽霊船に行ってビッグママに会わなきゃ」

商人「居場所は分かるのかい?」

剣士「海士島付近で隠れて居る筈…早く避難させないと遭難する事になる」

商人「忙しくなるな…早く行動しようか」



---------------

ガチャリ バタン


影武者「商人…エリクサーの樽…無事に入荷したよ」

商人「何処に置いてある?」

影武者「盗賊さんが此処まで運んでくれている」

商人「そうかありがとう…次の仕事はチカテツ街道に居るギャングの件…」

影武者「あぁぁ孤児たちを連れて来れば良いんだね?」

商人「盗賊とローグをボディーガードに連れて行って構わない…一応豪族には気を付けて」

影武者「ローグさんは良いけど盗賊さんは人相が悪い…取引に影響が出てしまうよ」

商人「そういうのも上手く使ってよ…彼は信頼できる」

影武者「…わかったよ」

商人「さて!僕は剣士君と一緒に名も無き島へ行く…あとは影武者!君は盗賊と一緒にハテノ村へ行くんだ」

影武者「序列を先に決めておいて貰いたい」

商人「盗賊にお金を払って居るのは僕さ…君は僕の影武者…つまり君の方が立場が上だよ」

影武者「じゃぁ僕の指示に従って貰う…それで良いね?」

商人「そうだよ…まぁ仲良くやってよ」

ローグ「影武者さんはどーも盗賊さんを毛嫌いしてるっすね?」

影武者「嫌いでは無いよ…只…僕のフードの隙間を覗いて来るんだ」

商人「ハハまぁ良いじゃ無いか…影武者にも守りたい自尊心があるのさ」

ローグ「ハハ~ン…盗賊さんはズケズケと本質付いて来やすからね?そういう所っすね?」

影武者「ローグさん…もう行くよ」

ローグ「はいなーって盗賊さん置いて行くんすか?」

影武者「もう馬車が到着するんだ…行動は迅速に」スタスタ

ローグ「ヘイヘイ…」スタ

『馬車』


ブルル ヒヒ~ン


盗賊「ぬぁ?まだ樽降ろして無ぇんだが…」

影武者「これからチカテツ街道に行くんだ…盗賊さんは僕を守るんだよ」

盗賊「おいおい…俺ぁそんな話聞いて無ぇぞ?」

影武者「盗賊さんの雇い主は僕さ…給金はもう貰っているよね?」

盗賊「貰ったっちゃ貰ったが俺も忙しい訳よ…移民を探さにゃイカン」

影武者「その移民を今から調達に行くのさ」

盗賊「お!?例のガキんちょだな?やっとやっる気になったか…」

ローグ「盗賊さ~ん…あっしも一緒でやんす」タッタッタ

盗賊「おぉそうか!!影武者の姉ちゃんが無理やり連れて行こうとするもんだからよ」

影武者「僕は影武者だよ…姉ちゃんというのは止めて貰って良いかい?」ギロ

盗賊「エリクサーはここに置きっぱなしで良いのか?」

影武者「剣士さんが樽を運ぶ予定になって居るんだ…さぁチカテツ街道に行くよ」グイ

盗賊「そうか?まぁそう慌てなさんな…あんま気ぃ張ると肌に悪いぜ?」ヨタヨタ

影武者「…」ギロ

盗賊「おぉ悪りぃ怒らせちまったか?まぁ先ずな?俺より前を歩くな…後ろはローグに任せておけ」

影武者「チカテツ街道までは僕が先導する」

盗賊「待て待て…まだ地下は豪族がうろついてんだ俺に任せろ」

影武者「…」ギロ

盗賊「まぁしっかり守ってやっからガキ共をなんとか説得してくれ」

影武者「フン!よそ見して居ないで前を向いてよ」スタスタ

盗賊「俺は背中に目が付いてんだ転びゃしねぇよ!」ドテ

ローグ「あららら盗賊さん…」

盗賊「つぅぅぅ誰だこんな所にゴミ置きっぱなしの奴は…」

影武者「…」スタスタ

盗賊「待て待てこんな事もたまにゃある…な?そうツンケンすんなや可愛い顔が台無しだぞ?」

影武者「…」ギロ

ローグ「ハハ…なんか分かった気がしやす…」

『飛空艇』


ヨッコラ ドスン


ウルフ「ガウガウ!」

剣士「女オーク…樽を運んでもらってありがとう」

商人「剣士!早く行こう」

剣士「ウルフは女オークを守って!…女オークはその姿であまり出歩かない様にね?」

女オーク「分かったわ…」

剣士「じゃぁ名も無き島に行った後はハテノ村に迎えに行くから待ってて」


フワリ


女オーク「気を付けて…」

剣士「大丈夫さ…すぐに戻るよ…じゃぁ」ノシ


シュゴーーーー バサバサ


---------------

---------------

---------------


剣士「さて!!羅針盤がいつまでアテになるか…」

商人「僕には何も変わって居ない様に見える」

剣士「いや変わってるよ…偏西風が弱い」

商人「大分赤道から遠ざかってる?」

剣士「多分ね…正直どのくらいズレがあるのか分からない…陸地を見失わない様に飛ばないと…」

商人「地図と陸地の比較は僕がやる」

剣士「うん…ルートは陸沿いに少し迂回しながら…多分2日掛からない」

『翌日』


シュゴーーーーー バサバサ


…今までの話を聞いて色々スッキリしてきたよ

この世界が夢幻で僕達皆夢幻の住人だったとしたなら

これまでの出来事がなるほどスッキリ収まる気がする

精霊の記憶の中に生き続ける人間達

精霊の記憶を蝕んで破壊しようとする魔王

それを阻止する為に記憶の書き換え権限を与えられた勇者

それらすべてが精霊の倫理観を構成しているんだ

僕はね…ホムンクルスに言った事が有る

君の中に僕が居る…それは君の心の一つまみだって

多分その通りなんだよ

僕ら一人一人の心は精霊の心その物なんだ

それが悪に染まらない様に僕らは戦って居るんだ


信心深い人たちは昔から精霊にお祈りしていたね


そう…感じて居たんだろうね…祈りは精霊の心に通じているって

今なら僕もそう思うよ…精霊樹にお祈りがしたい


ここに居るじゃない…機械の犬ってホム姉ちゃんでしょ?


あぁそうだったね…実はこの超高度AIユニットは世界中に沢山散らばって居るんだよ

その中に記された記憶全部にこの世界と同じだけの記憶が詰まってる

それを一所に纏めたのが精霊樹の森やエルフの森さ…オーブという形でね

君が見た冒険の書は僕達人間がその世界を覗けるアイテムだよきっと…


剣士「この世界が精霊の記憶だったとして…商人さんは現実は何処にあると思う?」

商人「う~ん…もしかすると人類はとうの昔に滅んでいて精霊の記憶の中にだけ生きているのかもね」

剣士「現実の精霊の記憶は何処に?」

商人「神のみぞ知る…って所じゃないかな?」

剣士「パパとママは多分過去に遡って行った…そのずっと過去に現実が合ったとしたら?」

商人「僕達じゃ確認出来ない…ん?そうか君のママからメッセージが来てるかもしれないね」

剣士「それが言いたかった」

商人「気になるね…そのメッセージ」

剣士「でも今…一つ可能性を思いついた」

商人「何だい?言ってごらん」


この夢幻の世界を飛び出した一人は未来を全部見て来た筈だ

この世界がホム姉ちゃんのシミュレーションだったなら

未来を全部知って居るその一人は超高度AIとしてシミュレーションの精度が高い


商人「超高度AIがどうして急に出て来る?」

剣士「僕達はシミュレーションの中の住人…その中から飛び出したパパは超高度AIとして初めてのアダムに搭載された」

商人「ハハハ…君は又面白い仮説を立てるね」

剣士「実はね…アダムを破壊する直前にパパの声が聞こえた気がしたんだ」

商人「え!!?勇者の…」

剣士「もしシミュレーションの中だったとしたらそこから飛び出すのは記憶を持った倫理観…実体は無い」

商人「話は堂々巡りになるなぁ…その超高度AIを搭載したアダムがこの間まで居た…なぜ?」

剣士「現実世界がそのシミュレーションの通りに進んで来て居たとしたら?」

商人「ふむ…なるほど辻褄は合うな…シミュレーション精度が高かった訳か」

剣士「ふぅこういう事を話すのは楽しいけど証拠が何も無いのがね…」

商人「ホムンクルスが生前言ってたのは世界で始めの超高度AIはアダムでその複製としてホムンクルスが生まれたらしい」

剣士「ええと…環境保全用の超高度AIだっけな」

商人「そうそう…アダムには欠陥があったらしいんだ…だから後継としてアダムを改良して…」

剣士「欠陥?どんな?」

商人「工学三原則って知ってるかい?」

剣士「書物で読んだ事がある」

商人「アダムはそれを守らないから後に工学三原則を守る様に制限されたのがホムンクルスさ」

剣士「商人さん…パパはドワーフの血が流れて居ない…パパでは魔王に勝てないんだよ」

商人「未来君…」

剣士「僕が破壊したアダムも魔王の影響を受けていたと思われるよね?…欠陥品と言い変えられる」

商人「なるほど…倫理観がプログラムだったとして魔王の抗体を持たない倫理観だった訳か…それがアダム…辻褄は合う」

剣士「でも全部可能性の話…いくら話しても空しいなぁ」

商人「君とこういう話が共有できてうれしいよ…僕は変人扱いだから」

剣士「ママはどうしてるかなぁ…ここぞの逃げ足は速いから上手く逃げたのかな」

商人「だからメッセージが残って居るのかも知れないよ?」

剣士「うん…」



-----------------

商人「よし!海士島付近を南極にした場合の地図が出来た」

剣士「ほとんど書かれて居ないじゃない」

商人「未踏の地の地図は持って居ない…分かる範囲で書いたらこうなる」

剣士「シン・リーンとフィン・イッシュがほぼ同じ緯度か」

商人「ハテノ村もそうなる…地球の反対側になるけど」

剣士「こう見ると遠いね…」

商人「シン・リーンから未踏の地を飛べばハテノ村と近い…海を越える必要があるけど」

剣士「分かったぞそういう事か…オークシャーマンは未踏の地側から暁の墓所に来てたのか…」

商人「オークはもう外海を渡って居ると?」

剣士「オークはどんぐりがあれば食料が少量で済む」

商人「なるほど…僕達の知らない外海にもう進出してるんだ」

剣士「内海は寒冷化でほぼ航海不能になるとしたら幽霊船は早く外海からフィン・イッシュ目指した方が良い」

商人「名もなき島は…この位置なら氷に覆われる事は無さそう…ただ人が住むには厳しい環境になる」

剣士「島が見えて来たよ…良かった迷わないで来れた…着陸するから準備して」

『名もなき島_古代遺跡』


ウィィィン プシューーー ポコポコ


商人「錬金術で組み合わさる訳じゃ無いのか…」

剣士「ホム姉ちゃんの部品が組み合わさった…良いの?これで?皮膚が無い」

商人「皮膚の部品は無かった…もしかすると足りて居ないのかも…」

剣士「このままじゃ可哀そうだよ…」

商人「この手順を記録する」カキカキ メモメモ


通りで錬金術では完全なホムンクルスが造れない訳だ…

生体の完成は多分自己治癒だ


剣士「ゾンビみたい…」

商人「ちょっと思い違いが在ったみたいだ…錬金術ですぐに完成すると思っていたけど…」

剣士「時間が掛かるんだね?」

商人「多分…この状態から自己治癒で皮膚と毛髪が生成されるのはもう少し先だね」

剣士「どのくらい掛かるんだろう?」

商人「ラヴ!どれくらいかかるか分かるかい?」

機械の犬「クゥ~ン」

商人「一晩間を置いて治癒の具合を見て見ないと推定出来ないな」

商人「でもどれだけ時間が掛かるにせよ…一先ず成功だ!」

『翌日』


ポコポコ ポコポコ


剣士「商人さん!」ユサユサ

商人「ハッ…」パチ

剣士「書き物しながら寝てたんだw」

商人「ホムンクルスは!?」スタ

剣士「昨日のままだよ…あ!違うコレ神経かな?何か成長してる」

商人「よし!遅いけど確実に成長してる…よしよしこれで僕が居なくなってもホムンクルスは生き延びる」

剣士「生き延びるってどういう事?」


チャプン


剣士「ん?瓶の中にエリクサー?…そして外部メモリ」

商人「あぁぁそれに触らないで」

剣士「商人さんコレもしかして…」

商人「僕に何か有ってもこれで確実にホムンクルスが蘇る…まぁ保険さ」

剣士「どうしてそんな…」

商人「僕はね…君の予言を聞いてもしかしたらもうここに戻って来れない可能性を考えてる」

剣士「ママのメッセージはどうなるの?」

商人「蘇った後になるね…どれくらい掛かるか分からないけどいつまでも見て居る訳にも行かない」

剣士「う~ん…残念だ」

商人「満を持して…剣士君!この部屋の扉を閉めて中の空気を抜けるかい?」

剣士「えーと…空気は窒素だから…アンモニアに変性させれば良いか…出来るよ」

商人「しばらく封印さ…これから転変地位で津波が来たっておかしく無い…この場所を守ろう」

剣士「どうすれば?」

商人「そうだな…この空き瓶の中に変性したアンモニアを入れられるかい?」

剣士「うん…」

商人「このテーブルの上に置いておく…ここにアンモニアが有るのは君しか知らない…つまり君はいつでもこの扉を開けるんだ」

剣士「あああなるほど…空気を抜いて酸化防止と施錠を兼ねて居るんだ」

商人「そういう事…そしてこの遺跡は他の人に見つからない為の工夫がいくつもある…相当安全な筈さ」

剣士「おけおけ!そういう事なら全部扉を閉めておく」

商人「次に来た時はホムンクルスと対面だよ…楽しみだね」

剣士「その間にやらなきゃいけない事をやって回るんだね?」

商人「そうだよ…さぁ扉を閉めて」ギー

剣士「じゃぁ空気を変性させる…変性魔法!」

商人「…」

剣士「おけ!空気が変性してアンモニアになった筈…瓶の中だ」

商人「よし…次は本棚で扉を隠して…」ズズズ

剣士「後は外の上開き扉を閉めて水で満たす…」

商人「行こうか…次はハテノ村だ」

剣士「うん…」タッタッタ

『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「…ここからハテノ村へは1日くらい…このままだと盗賊さん達より先に到着する事になる」

商人「それがどうしたんだい?」

剣士「海士島まで1日半…霧が立ち込めてしまう前に先に行ったほうが良いと思う」

商人「モタモタしていると幽霊船と合流出来なくなるのか」

剣士「ハテノ村は陸地の地形を確認しながら行けば良いけど海士島だとそうは行かない」

商人「分かった…君の言う通りにしよう」

剣士「進路変更!」グイ バサバサ

商人「ところで剣士君…君は千里眼は使わないのかい?」

剣士「あまり覗き見はしない事に決めてるんだよ」

商人「まぁ一応は使えるんだね」

剣士「見てもあまり良い情報なんか得られないのさ…大体は見たくない事なんだ」

商人「幽霊船の現状を知るくらいは良いのでは?」

剣士「どうせ狭間の中…見えても船の中」

商人「なるほど…時間のムダになる訳か」

剣士「商人さん…僕嫌な予感がする」

商人「何だい?」

剣士「僕はアダムを破壊して未来を変えたつもりだった…でも地軸の変動は起き始めてしまった」

商人「…」

剣士「もしかすると未来は変えられないのかもしれない…だとすると幽霊船は沈んでしまう」

商人「アダムの破壊は大きな歴史の流れのほんの小さな事なのかもね」

剣士「僕の記憶では沈む幽霊船の中で大事な人を失った…また失うのが怖い」

商人「今からそれを変えに行くんじゃないのかい?」

剣士「そうだよ…そうさ…そうするしかない」


---僕は失いたく無かった---

---今度は絶対に失わせない---

『海士島』


フワフワ ドッスン


剣士「灯台の光が見えて良かった…明日の朝まで迷う所だったよ」

商人「結果オーライ…さてもう夜だ…幽霊船の捜索は明日にして宿に入ろう」

剣士「やっぱり随分寒いね」

商人「ん?」


ヒソヒソ ヒソヒソ

公爵からの指示だ…これが前金の代わり…受け取れ

魔石…困ります急にそんな事言われても…常連さんとの付き合いもありますし

フィン・イッシュ行きの商船は明日の朝出港だ必ず乗れ

急すぎます…今そんな指示を貰っても準備も何も

その魔石で十分な筈だ…向こうの酒場にはもう話が行ってる…心配するな

ヒソヒソ ヒソヒソ


商人「…あの人は酒場のマスターだ…やっぱり密偵として雇われて居たのか」ヒソ

剣士「ん?本当だ…酒場には行った事あるよ」

商人「この感じだとフィン・イッシュにもセントラルから密偵が沢山送られて居る様だ」

剣士「冷戦か…今そんな事してる場合じゃ無いのに」

商人「セントラル国王が亡命してしまって居るからね…両国の摩擦は終わりそうに無い」

剣士「嫌な話だよ」

商人「こう言っちゃ悪いけど商売するには良い環境なんだ…」

剣士「宿屋に行こう」スタ

『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「…まいったな豪族が貸し切って居るらしい」

剣士「別にベッドじゃなくても良いさ…風が凌げれば僕は良い」

商人「納屋なら使って良いと言うけど…寒そうだな」

剣士「…」---同じ様な記憶がある---

商人「剣士…ここは他の人の邪魔になるから納屋で休もう」

剣士「うん…」---気付かない内に元の時流に戻ってる---

商人「こっちだ…ここは人が多くて落ち着けない」スタ



『納屋』


ガラガラ ピシャリ


商人「ここなら人目に付かないで落ち着ける」

剣士「…」

商人「しかし寒いなぁ」

剣士「…」ゴソゴソ

商人「どうしたんだい?さっきから黙りこくって…」

剣士「これ使って…火の魔石だよ…瓶か壺に入れて使えば良い」

商人「おぉ!!良い物持ってるじゃない…使わせてもらうよ」

剣士「…」---思い出せ思い出せ---


---10年目のもっとその前…---

---そうだ確か海士島で情報屋さんにバッタリ出会った---

---納屋で休んだ次の日---

---その時とは少し状況が違う---

---でも明日バッタリ情報屋さんと出会ってしまったなら---

---時流が戻されてるのがハッキリ分かる---


剣士「…」ギンギン

『翌日』


ヒュゥゥゥ


商人「露店が始まり出した…少し食料を買って行こう」

剣士「あぁ…そうか飛空艇に食料はどんぐりとキノコしか積んで無かったね」

商人「そうだよ僕は君と行動してから何も食べてない…ペコペコさ」

剣士「そうだね…水も乗せて居なかった」

商人「雪で空腹を満たすのはもう懲り懲りだ…さてサッサと仕入れて出発しよう」

剣士「…」---どうなるか---



『露店』


ワイワイ ガヤガヤ

なんという事じゃ…この呪符をすべて見せよ

こりゃ良い客が来た…ほいほいコレが魔除け…コレが虫除け…コレが水除け…

主は何者じゃ?なぜこのような物が出回っておる?

ニヒヒヒヒ入手したルートは秘密ってもんでさ…さぁさぁ一枚銀貨50買って行くかい?

銀貨50!!?この紙切れが一枚銀貨50って高すぎるわ

構わぬ…わらわの私財ですべて買い占めても良い…じゃが今は手持ちがない故に…

ええと…ワインの買い入れでこれだけ残して…変えるのは16枚よ


剣士「魔女!!」---記憶と違う---

魔女「むむ?やはりこの島で待って居って正解じゃ…主を探して居ったのじゃ」

商人「情報屋も一緒か…探す手間が省けた」

魔女「これ商人!ここで売って居る呪符を全種類買うのじゃ…交渉は主に任せる」

商人「え…いや急にそんな事言われてもさ」

魔女「そして剣士!この様な場所で言うのも何じゃが…主は破門じゃ!二度とシン・リーンの魔術師を名乗るで無い」

剣士「え?なんで?」

魔女「わらわの親心じゃと思え…破門せねばわらわの手で主を処罰せねばならぬ…わらわにそれをやらせるな」

剣士「次元の入れ替え…」

魔女「主は理を超え次元の入れ替えを行って居るのは明白じゃ…魔術師の掟は知っておろう?」

剣士「それじゃ魔女…魔女は全部知って居たね?」

魔女「主の記憶を夢に封じたのはわらわじゃ…次元を崩壊させる可能性があったからのぅ」

剣士「じゃぁ魔女はずっと僕を監視してた訳だ…」

魔女「悪い言い方をすればそうじゃ…じゃがな?主の事は尊重しておる…じゃから破門じゃ!…自由にせい」

剣士「魔女!!僕は只…」

魔女「言わぬでも良い…主は自由じゃ…わらわの手の内からもう離れて良い」

剣士「くぅ…」ギュ

魔女「最後に一つ説いてやろう…量子転移は人の為あらず…うぬが為じゃ」


---理解した---

---誰かを助ける為に使ってはいけない---

---僕は女オークを助ける為に量子転移した---

---でも女オークは自分の死をすでに受け入れてた---

---死を受け入れた次元と---

---受け入れない次元が生じて歪んだ---

---それが次元の狭間---

---量子転移で人は救えない---

---死んだ人は蘇らない---

『飛空艇』


ヨッコラ ドッスン


商人「これで最後だ…行けるよ」

剣士「うん…」

商人「破門されて凹んで居るのかい?」

剣士「それもあるけど…まぁ色々とね」

商人「魔女達の気球が空で待機してる…急いだ方が良いかな」

剣士「分かった…飛ぶよ」グイ


フワリ


商人「まぁあまり気に病む事も無い…魔女はあんな感じだけど君の為を思って言ってると思うよ」

剣士「分かってるさ…只僕は未来を知って居るから怖いんだよ」

商人「魔女の言い分も少し理解出来るよ…無理に変えると次元崩壊ってやつが起きるんだよね?」

剣士「うん…どこまで許されるのか分からないけど」

商人「それにしてもあの呪符…結局銀貨20までしか値下げ出来なかった…そんなに貴重な物なのかい?」

剣士「あれは古代魔術の魔方陣だよ…まだ解明されて居ないんだ」

商人「それで魔女が目の色変えてるんだ」

剣士「地軸の移動も多分古代魔術のせいだよ」

商人「ハハ…回って居る地球の向きまで変えられるって?」

剣士「まだ解明していないからなんとも言えない」

商人「地軸の移動ねぇ…大災害が起きそうな物だけど意外と静かなもんだ」

剣士「これからだよ…だから備えないと」


--------------

『幽霊船』


フワリ ドッスン


剣士「ビッグママ!!」ダダ

女戦士「よく来たな?目を見せろ」

剣士「あぁぁ会いたかったんだ!」ギュゥ

女戦士「フフ大きくなった」

剣士「ローグさんに聞いたよ…ビッグママも魔女の修行をしていたんだね…どうして…」

女戦士「その呼び名はもう止めろ…女戦士で構わん…私を良く見ろ」ジロジロ

剣士「あぁぁママの眼だね?舐めても良いよ…爺いじも舐めた」

女戦士「私にそんな趣味は無い…そうだこの眼だ」ジーー

剣士「懐かしい匂いだ…ママと同じ匂い」クンクン

女戦士「フフ今日は一緒に寝るか?」


スタスタ


アサシン「久しぶりの再会で嬉しそうだな?」

剣士「アサシンさん…」

アサシン「狭間に入る前に進路を決めておきたいのだが…」

剣士「ハッ!!そうだった…フィン・イッシュだよ」

アサシン「フム…魔女と同じ意見だな…只船長は女戦士だ…フィン・イッシュで良いのか?」

女戦士「構わん…進路は北に向かって陸沿いにフィン・イッシュ」

剣士「あ!!ダメだよそれじゃ…それじゃフィン・イッシュに辿り着けない」

女戦士「他の航路を行けと?」

剣士「流氷を探して!流氷の進んでる先は外海なんだ…外海側からフィン・イッシュに行くんだ」

女戦士「外海の海図は無いぞ?」

剣士「良いから僕を信じて」

女戦士「フムまぁ良い…とりあえず北へ進路を向けて流氷を見つけ次第それに従おう」

アサシン「そろそろ2人抱き合うのは止めて貰えないか?目に痛い」

剣士「あ!つい…」ササ

アサシン「スケルトン共!働け!帆を開いて進路は北だ!」


カララン コロロン


剣士「ハハこの船はスケルトンが操作してるのか…」

アサシン「良く働くスケルトンだ…食料も水も要らん」

女戦士「剣士…とりあえず居室に入れ…話が聞きたい」

剣士「そうだね…情報交換だね」

『居室』


カクカク シカジカ


女戦士「海の様子がおかしいとは思って居たが…それ程大事になろうとしているのか」

剣士「何日かけて地軸の移動が終わるのか良く分からないけどこの海は航海出来る海じゃ無くなるんだ」

アサシン「霧が出て来ているのはそのせいか」

剣士「霧はもっと濃くなるよ…1メートル先も見えない」

商人「これが新しく描いた地図…そしてこっちが今までの地図」

女戦士「フム…流氷は何処へ流れる?」

剣士「多分ここの海峡に向かうと思う…ここから外海に出て陸沿いにフィン・イッシュに行く」

女戦士「待て…その海峡は海流がきつくて普通は近づかん」

剣士「流氷と一緒にどうせ外海に流されるよ…外海に出てしまえば陸を右手に進むだけさ」

情報屋「羅針盤はもうアテにならない?」

剣士「うん…どっちの方向に進んでも羅針盤は北を差すようになる…それを当てにしてはいけない」

情報屋「方向を正しく示しているのは流氷な訳ね」

女戦士「外海からフィン・イッシュを目指すとなると長い航海になるな…安定して進めないと狭間にも入れない」

商人「この船が貨物船で良かった…食料は十分にある」

剣士「当面のやらなきゃいけない事は地軸の移動で環境が激変するからそれに備える」

女戦士「フフ…私達は何の為に行動しているのか」

剣士「今は難局を乗り越える為さ…これから何か起ころうとしてる」

アサシン「魔王は居なくなりアダムも破壊した…次は何が来る?」

剣士「僕は一つミスをしたよ…魔王を封じたとされる魔石は何処に行ったのか分からない」

商人「只の魔石になってると言うのは考えが甘いかな?」

剣士「行方が分からないから気持ちが悪いよ」

アサシン「…となるとフィン・イッシュで一旦落ち着くのは正解だろう…状況を見る必要がある」

剣士「うん…この船は無事にフィン・イッシュに辿り付いて欲しい」

女戦士「んん?引っかかる…剣士は一緒に行くのでは無いのか?」

剣士「僕は…僕はまだやる事がある」

女戦士「お前は一所に身を置くつもりは無いか…フフ」

剣士「ゴメン…今日はビッグママと一緒に寝て明日僕は行くよ」

女戦士「その呼び名は止めろと何度言わせるのだ?」

剣士「あぁ女戦士だっけ…照れくさいなぁ」モジモジ

『船首』


ザブン ユラ~


情報屋「…確かに羅針盤が示す方角と太陽が沈む方角の辻褄が合わない」

商人「ゆっくり変化しているから誰も気付かないんだよ」

情報屋「これだともう現在地も分からないわね」

商人「それより魔女はずっと荷室に籠りっぱなし?」

情報屋「そうよ?何かの術を掛けるから近付くなって…」

商人「そうか…剣士は明日行ってしまうと言うのに」

情報屋「商人?あなたはどうするの?」

商人「僕はこの船に残る…まだ君と話足りない」

情報屋「あら?歴史の事でも?」

商人「まぁね…でも剣士をこのまま行かせて良いのかどうか…」

情報屋「魔女との事ね?」

商人「関係にヒビが入ったまま距離を置くのはどうかと…」

情報屋「魔女はこの間までずっと剣士の自慢ばかりだったのよ?」

商人「だったらなお更だ」

情報屋「魔女は剣士の事を認めて居るわ…すでに自分を超えているって言ってたもの…剣士を縛る呪縛を解いただけよ」

商人「う~ん不器用というか何というか…」

情報屋「今までの子弟関係が消えて無くなる訳でも無いのだから気にしなくて良いと思うわ」

商人「剣士は少し落ち込んで居たよ…それっきり話をしていないよね」

情報屋「商人?あなた心配性になったのね?年を取ったせいかしら?」

商人「ハハそうかもしれない…年かぁ…久しぶりにバーベキュー食べたいな」

情報屋「今日買って来た材料があるわ?やりましょうか」

『甲板』


ジュゥゥ モクモク


商人「肉が食べれると思ったら海鮮ばっかりか…」モグモグ

情報屋「肉は中々手に入らないの…貴重だから少しだけ」

商人「剣士も食べなよ」

剣士「僕は少しで良いよ…」

商人「なんだ…食べてるの僕だけか」モグモグ

女戦士「私も少し頂く」ハムハム

アサシン「この船はなかなか食料が減らん」グビ プハァ

剣士「あ…そうだアサシンさん」

アサシン「んん?」

剣士「線虫!」ニョロリ

アサシン「なんだこの虫は?」

剣士「毒を食らう虫さ…その虫が体に居ると腐敗が止まるみたい」

アサシン「ほう?エリクサーが不要になると?」

剣士「エルフゾンビさんで実証済みだよ…喉の渇きは変わらないみたいだけど」

アサシン「奴に会ったのか…元気にしているか?」

剣士「精霊樹の森をエルフ達と一緒に守って居るよ…大変そうだった」

アサシン「クックック奴がエルフの仲間入りとはな」

剣士「今頃僕が呼んだ虫達がドリアードを食い漁ってる筈…エルフゾンビさんも少しはラクになる」

商人「10年前の夜に見たダイダラボッチ?みたいな事になってるのかい?」

剣士「その筈だよ」

アサシン「そうか…あの虫の大群がもう一度動いて居るのか」

情報屋「そういえば巨大なゴーレムも虫にやられていたわ」

剣士「酸を吐く虫のお陰さ…何でも腐食させるんだよ」

アサシン「これでやっと平和が来る…私は死に場所を探す必要がありそうだ」

商人「それはまだ早い…昨日聞いた話だとセントラルの貴族の一人…公爵という人物がフィン・イッシュに密偵を送って居るんだ」

アサシン「ほう?知った顔だ」

商人「どうもキナ臭い…物流の相場も不自然に操作されている」

アサシン「私は俗世を離れていたせいかそういう話に興味が湧かなくなってしまった」

商人「まぁこれから情報は集めれば良いさ」

アサシン「もうそういう話は聞き飽きた…静かにしておいてくれ」グビ


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『夢』


僕「ママ?今日はここで休むの?」

ママ「暗くなって目標物が見えなくなった…探索は明日やる」

僕「ふぁ~あ」ムニャ

ママ「おいで…あんた寒いんでしょ?」

僕「僕は大丈夫だよ」

ママ「良いからおいで…」グイ

僕「ママ暑苦しいんだよ」モゾモゾ

ママ「こうしてるとママが温かいの」ギュゥ

僕「僕達ずーっとかくれんぼだね」

ママ「ごめんね…今度街に連れて行ってあげるから」

僕「本当?友達いっぱい居るかなぁ…」

ママ「早く寝なさい?」

僕「うん…ママの匂い」

ママ「ん?匂う?」クンクン

僕「いい匂い…」スゥ

ママ「フフ…」ギュゥ

僕「すぅ…すぅ…」zzz

『居室』


ギシギシ ユラ~


剣士「ハッ!!」キョロ

剣士「ビッグママ?」キョロ

剣士「居ない…」



流氷に当たったか…

船体に傷が付いて居ないか調べて来る

まぁ見た所大きな氷山では無い…無事だろう

流氷は左方に流れて行ってる様だが?進路変えるか?」

うむ…流氷に沿って進めば又当たるリスクも減る

しかし狭間に入れんでは先が長いな

仕方あるまい…


剣士「…」---流氷を見つけたか---

剣士「…」---もう一回同じ夢見れるかな---

剣士「…」---寝よ---

剣士「すぅ」zzz

『翌朝』


ザブン ユラ~


商人「ふぁ~あ」ゴシゴシ

剣士「商人さん…この地図は貰って行くよ」

商人「あれ?剣士君…もう行くのかい?」

剣士「早く行かないと僕も迷っちゃう…それにこの船は居心地良すぎる」


タッタッタ


女戦士「居ないと思ったら…もう行くのか?」

剣士「ビッグママ…じゃなくて女戦士…僕は変えたい未来があるんだ…だから行く」

女戦士「そうか…これを持って行け」ポイ

剣士「貝殻…」

女戦士「これでいつでも会話出来る…もう無くすな?」

剣士「大事にするよ」

女戦士「フフ行って来い…そして必ず戻って来い」

剣士「大丈夫…事が済んだらフィン・イッシュに行く…約束さ」

女戦士「…」ノシ


フワリ バサバサ


商人「あぁぁ…あっという間に居なくなる」

女戦士「フフ妹の子だ…こうなるのは分かって居た」

商人「そういえばそうだなぁ…そっくりだなぁ」

女戦士「さて商人…大事な地図を持って行かれた…もう一度描け」

商人「う…そうだった」

女戦士「地図無しで航海は出来ん…特に外海側の地形を優先して書け」

商人「分かった書き直す…」


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『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「…まいったな完全に現在地見失ってる…そろそろ陸地が見えても良い筈なのに」

剣士「夜の内に進行方向変わっちゃってるのかなぁ…」ブツブツ

剣士「太陽はアテにしても良いのか?…大分高度高くなってきてるけど」

剣士「なんで反対から登るんだ?意味がわかんない…まてまて僕が反対なんだ…あああ!!見えた陸地だ」

剣士「よしよしよし…これで現在地分かる」


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剣士「木が見える…ここは北の大陸だ…えーとえーと断崖がある所」

剣士「港町だ…120°も進行方向ズレてた…まぁ良いや兎に角現在地が分かった…」


えーと偏西風が吹いてる

これに乗って岩塩地帯を抜けた先は未踏の地…

その先の海を越えるとオークの領地の筈

そうさ偏西風に乗って行けばこのままオークの領地まで飛べる

遠いけど2日飛べば向こうの大陸だ

その後は目視で行けば良いか…火山の噴煙が目印だな


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『ハテノ村』


ザザザーー ビシャビシャ


盗賊「こりゃ雨が止む気配が全く無ぇな…」

僧侶「太陽が出ないと麦を育てても品質が悪いでしゅ」

盗賊「今日は木を植え無ぇのか?」

僧侶「もう植えて来たですよ…魔力が無くてフラフラなのです」フラ

盗賊「魔法使いはどうした?」

僧侶「同じく教会で横になって居ましゅ」

盗賊「まぁお天道様が出無ぇと皆元気出ないわな」

僧侶「ところで余ってるどんぐりは村の外に出しっぱなしで良いのですか?」

盗賊「オークがうろついてんだろ?村を襲われない為の供物だ…どうせ死ぬほど余ってる」


スタスタ


影武者「盗賊さん…僕は託児所を任された覚えは無いんだけどどういう事かな?」

盗賊「おぉ影武者の姉ちゃんか…どうだ?キ・カイとは違った環境は?」

影武者「僕は取引所を任されたつもりだったんだけど…」

盗賊「ちっと我慢だな…この雨で建築が滞ってる訳よ」

影武者「参ったな…完全に左遷されたようだ」

盗賊「まぁそう言うな…顔出すのは慣れたか?」

影武者「フードを被っても子供達に脱がされるんだ…困って居る」

盗賊「この村じゃ顔を隠す必要なんか無ぇぜ?豪族も居ないしな?ぬはは」

影武者「ふぅ…どうしたもんか」

盗賊「一応説明しておくがよ…」


ハテノ村はドワーフ領で王様が海賊王の爺

ほんで村長は赤毛の魔法使い

主な産物は硫黄と石炭…ほんで鉄鉱石か

お前はこの村の物流コントロールが主な仕事

俺はそれを運ぶ役

影武者「取引相手は海賊王という事か…」

盗賊「まぁそういう所だ…欲しい物を聞き出して来いよ」

僧侶「盗賊さん忘れてるです…私は酒場の女将でし!」

盗賊「おぉ!そうだったな」


ほんでな?ハンターっていう狩人が村を獣から守ってる

足りないのは村を自衛する民兵が居無ぇ


影武者「民兵を募集すれば良いんだね?心当たりがあるよ」

盗賊「この村にか?ヌハハそんな奴居無ぇぞ?」

影武者「連れて来たギャング達さ…武器さえ調達出来れば取引できる」

盗賊「ほう?面白い…武器は海賊王の爺が作れる」

影武者「よし!必要な数量を纏めよう…依頼の対価は…」

盗賊「対価なんて要ら無ぇ…爺に相談したら何でもやってくれる」

影武者「そうか…それなら利用しよう…つまり」ブツブツ

盗賊「変な姉ちゃんだな…商人にそっくりというか…」


武器が入手できるという事は次に必要なのは防具…

防具に欠かせないのが皮と布

皮は獣からまかなえるとして布を生産するには亜麻が必要だ

代替として羊毛だけど生産量が限られる

確かに物資が不足しているな


影武者「よしこうしよう…僧侶さん」

僧侶「はいな?」

影武者「明日から麦では無く亜麻を育てて貰えないかい?亜麻からは油が採取できるのと布を作る事が出来るんだ」

僧侶「種が無いでし」

影武者「少しなら持って居る…増やして貰いたい」

僧侶「分かったです」


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『ハテノ村_古代遺跡外』


エッサホイサ エッサホイサ


海賊王「よっしゃ屋根はこれくらいでえーやろ」

女オーク「これで濡れないで済むわ」

海賊王「おまんはよー働くのぅ」

女オーク「フフこの場所は何に使う予定なの?」

海賊王「鍛冶場や…ここで鉄を溶かしてツルハシ作らにゃイカン…おまんもやって見るか?」

女オーク「自信が無いから見ておくわ」

海賊王「まぁええわ…ちっと見とれ」チッチッ シュボ


これがドワーフが使うフォージっちゅうもんや

石炭燃やしてここで鉄を溶かす

解けた鉄を小分けしてやな…この型に入れるんや

固まって来たら硬くなる前に打って慣らす


カーン カンカン カーン カンカン


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『1時間後』


海賊王「出来立てホヤホヤのツルハシとスコップや…これを鉱山まで運んでもらえんか?」

女オーク「はい…」ガッサー

海賊王「ちょちょ…一気に持って行かんでもえーんやで?そんなん重いやろ」

女オーク「持てる分だけ持って行くから…」ノソノソ

海賊王「がははは豪快な娘や…さすが剣士を奴隷にするだけある訳や」

女オーク「ウフフ…」ノソノソ


スタスタ


影武者「失礼します…」

海賊王「おぉ!おまんも剣士の仲間かいな?」

影武者「はぁ…仲間と言えば仲間だよ」

海賊王「まぁゆっくりして行き」

影武者「はい…実はお願いが有って来たんだ」

海賊王「なんや言うてみぃ」

影武者「武器を少し作って貰えないかと…」

海賊王「そんなかしこまらんでもえーぞ?どないな武器が欲しいんや?」

影武者「一般的な剣とか槍で良いよ」

海賊王「ううむ…誰が使うんや?おまんか?」

影武者「いえ…子供達で自警団を…」

海賊王「子供に武器持たせるちゅうんか…チャンバラで使いよったら死によるで?」

影武者「子供と言っても僕と同じくらいの体格で…」

海賊王「ふ~む小さい子供を守りたいちゅう訳か…ほなしゃーないなぁ」ノソリ

影武者「ふぅ良かった…」

海賊王「小さい子供に武器持たせたらアカンで?事故が起きるよって」

影武者「分かったよ…後僕は村で取引所をやる事になったんだ…何か調達して欲しい物があったら言って欲しい」

海賊王「そやなぁ…宴会用の酒が欲しいなぁ」

影武者「酒…」

海賊王「酒を持ってきたら高く買い取るで?頼むわ」

影武者「分かったよ…なんとかするさ」


麦は十分あった筈

酵母はキノコから採取できる

よし…確か僧侶さんは酒場の女将という建前

麦酒は生産に時間が掛からないから作って貰おう

『教会』


ワイワイ キャッキャ

粉にした麦芽を低温のお湯でゆっくり温める

色が変わって来たら火力を上げて沸騰する前に釜から出す

このまま自然に冷やして常温になったらキノコから採取した酵母を加えて混ぜる

この手順でどんどん作って


盗賊「お前等何やってんだ?」

僧侶「影武者さんにお酒の作り方教えて貰ってるです」

盗賊「おぉ?こりゃエール酒か?」

影武者「ホップが無いけど一応エール酒だよ」

盗賊「おおおおお!!ちっと味見して良いか?」

影武者「まだ発酵して居ないよ」

盗賊「良いんだ…ちっとだけだ」ペロ

影武者「どう?」

盗賊「なるほどホップが無いからちっと寂しいな」

影武者「何か良いアイデア知らないかな?」

盗賊「こりゃ後でフルーツ加えると化ける…そうだなこの辺にゃフルーツなんか無ぇな」

僧侶「芋ならあるでし!!火山灰の土で出来た芋は甘いのです」

盗賊「お?そういやナシみたいな味がするな…そうだ芋を擦って最後に加えて見ろ」

影武者「分かったよ…」

盗賊「こりゃ明日が楽しみだな」

僧侶「盗賊さん私の酒場を作ってくれませんか?」

盗賊「おっし!!やる気が出て来た…今から木材加工するぞ…おい魔法使い!いつまでも寝て無いで手伝え!!」

魔法使い「えええ!?私が?」

盗賊「お前何もやって無いだろ…ちっと体動かせ」グイ

魔法使い「ちょっと引っ張らないで!!」

盗賊「俺が木材切り出すからお前が組み立てろ」

魔法使い「外雨降ってるじゃない…濡れるの嫌よ」

盗賊「うるせぇ!来い」グイ

『廃屋』


トンテンカン ギコギコ


魔法使い「ねぇ寒いんだけど…木材のきれっぱし燃やすわよ?」

盗賊「おう!俺も体冷えまくりだ…」ギコギコ

魔法使い「暗くなって来たからもう明日にしたら?」

盗賊「その木材燃やしゃ明かりになる…おっしカウンター一丁上がり!!」

魔法使い「なんか殺風景な酒場ね」

盗賊「お前岩塩のランプ持ってたよな?テーブルに置いとけ」

魔法使い「え?本当にここで酒場やるつもり?」

盗賊「俺ぁ酒場の有る所に戻って来るんだ…言い換えれば俺の家だ」

魔法使い「なんか必死ね」

盗賊「うるせぇ!飾りつけはお前等に任せるから酒場だけはなんとかヤレ」

魔法使い「ちょっと僧侶も呼んで来る」

盗賊「お前逃げんなよ?あーそうそう酒樽をこっちに運んできてくれ」

魔法使い「中身の入った樽なんか持ち上げられません」

盗賊「僧侶と一緒にやりゃ運べる!!さっさと行け!!」

魔法使い「…」


トンテンカン ギコギコ

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『翌朝』


チュンチュン


盗賊「んがががが…すぴーーー」zzz

魔法使い「呆れた…夜通し酒場を作って居たんだ」

僧侶「スゴイです!!テーブルも椅子も作ってあるです」キョロ

魔法使い「どうするのこの爺…」

僧侶「そのまま寝かせておきましょう」


ドスドスドス ブモモー


ハンター「ただいま…もう一匹ヘラジカ捕まえて来たよ」

魔法使い「おかえり!!心配してたのよ」

ハンター「川が増水してて渡れなかったんだ…やっと戻ってこれたよ」

僧侶「今日は雨が上がって良かったでし」

ハンター「まだ空があやしいけどね…それよりヘラジカが腹を空かせてるんだ」

僧侶「どんぐりが余ってるです…木の皮も食べるですよね?」

ハンター「早く食べさせないと…」

僧侶「こっちですぅぅ」スタタ

『教会』


ワイワイ キャッキャ


ハンター「ふぅぅ…お腹膨れた」ゲフー

魔法使い「ヘラジカが増えて木材の運搬が楽になるわね」

ハンター「もう野生のヘラジカはかなり遠くまで行かないと居ない…2頭でなんとかするしか無いかな」

魔法使い「他の動物は?」

ハンター「ヤクが居るけど餌代を考えるとあんまり沢山居てもなと思ってね」

魔法使い「家畜はブタが4頭でまだまだ足りないわ」

ハンター「う~んまだまだ捕まえて来なきゃ安定しないかぁ…」

魔法使い「鳥がもう少し居ればね…」

ハンター「野鳥は家畜に出来ないからねぇ…鶏なんか北の大陸に行かないと居ないし」

魔法使い「やっぱりシカが一番良さそうね」

ハンター「うん…夜行性だから狩りが夜になるのがさ…」


トンテンカン トンテンカン


ハンター「んん?何か始まった?」


今の内やぁ!!一気に壊れた建屋を直すでぇぇ!!

エッサホイサ エッサホイサ


魔法使い「あ!!お願いしてた建築が始まったみたい…」

ハンター「そうか…僕はちょっと寝るよ…ずっと寝て無かったんだ」

魔法使い「ベッドあるけど使う?」

ハンター「うん…ありがとう」ノソリ

『畑』


サワサワ


僧侶「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」サワサワ サワサワ

魔法使い「私もうダメかも…」フラフラ

僧侶「今日も魔力スッカラカンですぅ」ヘロヘロ

魔法使い「収穫しなきゃ…」ヨロ

僧侶「少し休むでし…収穫はいつでも良いです」

魔法使い「そうね…後で盗賊にお願いしよ」



『川』


ジャブジャブ


海賊王「この水車は脱穀の機械仕掛けや…ここに麦を入れて脱穀するんや」

影武者「これで脱穀の人員が避ける…」

海賊王「そやな?子供達にも出来るで教えてやればええ」

影武者「今上流から運んでいる物は?」

海賊王「大釜や…おまんら亜麻を育てておるやろ?あの大釜で水に浸すんや…布にするまで色々加工せにゃならん」

影武者「それは助かる」

海賊王「それも子供達に教えてやればええ…武器を持たせるよりずっと大事な事や」

影武者「そうそう武器の方はどうなったのかな?」

海賊王「鍛冶場に置きっぱなしや…持って行って構わんで?」

影武者「ありがとう…そうだ!お礼にお酒を用意したんだ」

海賊王「ほんまか?昨日の今日やで?」

影武者「良かったら今晩村の酒場で振舞おうかと…」

海賊王「おおお!!そらええな?」

影武者「食事も出来るだけ用意するので皆さんでお越し下さい」

海賊王「祭りやな?ようし!!わいらも食い物持参するで?」

影武者「ハハ忙しくなりそうだな…」

海賊王「ようし!おまんら!!今日は祭りや!!残りの仕事を早よう終わらせるでぇぇぇ!!」

者共「ほいさーーー!!」

『教会』


ワイワイ ガヤガヤ

はい…移民の方々2組から

廃屋を修理した建屋を使って下さい

大工さん一家はこちらの家を

農夫さん一家はあちらの家で…

孤児たちは教会で寝泊まりします


盗賊「ほう?一応村長の役はこなしてんだな…やるじゃ無ぇか」

僧侶「盗賊さん起きてきたですね?私の家も決まったでし!!」

盗賊「んぁ?酒場か?」

僧侶「酒場の裏の家なのです…影武者さんと一緒に住むことになったです」

影武者「昼間は取引所…夜は酒場という住みわけだよ」

盗賊「なるほど…酒飲み相手に取引しようってのか…まぁ良い案だ」

影武者「僕は左遷されたつもりだったけど…なんか楽しくなって来た」

盗賊「そら良かったな?」

影武者「やる事が沢山あってね…解決するのにやっぱり物流なのさ…僕に合ってる」

盗賊「そーかいそーかい…俺は早く酒が飲みてぇ」

影武者「そうだ昨日作ったエール酒は樽で4つ分しか無い…足りるかな?」

盗賊「大丈夫じゃ無ぇか?酒飲める大人はそんなに多く無ぇぞ?」

僧侶「私明日の分も作って来るです」

盗賊「そりゃ良い…良い酒になったら俺がキ・カイで売って来てやるぜ?」

僧侶「楽しみですぅぅ…早く作ってくるでし!!」スタタ

盗賊「じゃぁちっと俺も夜まで働くか!!」

影武者「あ!!盗賊さん…今晩は酒場に海賊王を招待しているんだ」

盗賊「ほう?」

影武者「食事の振る舞いでバーベキューを考えてる…お願い出来るかな?」

盗賊「干し肉にしようとしてたシカ肉が有るが…よっし!一丁狩りに行くか」

影武者「お願いするよ…その他の食事は子供達で何とかする」

盗賊「こりゃ酒場がいよいよ楽しみだ…女は魔法使いと僧侶…ほんでお前だな?」

影武者「僕は勘定に入れないで欲しい」

盗賊「よーし!!ハンター起きろ」ドカッ

ハンター「うぐ…ぅぅん…何?何事?」

盗賊「今から狩り行くぞ…2時間で戻る」

ハンター「ええ!?どういう話になってる?」

盗賊「今晩の食い物だ…お前の張った罠見回りに行く…案内しろ」

ハンター「今?直ぐに?」

盗賊「そうだ!晩飯に間に合わせる…行くぞ」グイ

ハンター「あ…ちょちょ」

『夜_酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

わいがこの国の王…海賊王や!!

ええか?この村はわいの領地や

せやから何も心配せんでええで?

兎に角新しいハテノ村の祝いや…みんな飲めぇ!!


ジュゥゥゥ モクモク


ハンター「イノシシの肉焼けてる…持って行って!」

魔法使い「忙しい忙しい…」ドタバタ


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盗賊「ふぅぅぅやっと酒にありつける…カウンターに座るぜ?」

僧侶「盗賊さんお疲れでし!!」

盗賊「例の酒くれ!!早く飲みてぇ」

僧侶「分かってるでしゅ…どうぞ!!」ドン

盗賊「おぉ…冷えてそうだな?こりゃ魔法使いに何かやらせたな?」

僧侶「氷で冷やしてあるです…飲んでくだしゃい」

盗賊「むぐっむぐっ…ぷはぁ」

僧侶「どうですか?」

盗賊「アルコールは控えめだがスッキリ飲める…こりゃ何杯でも行けそうだ」

海賊王「どぶろく持って来たで?これも飲めや?」

盗賊「おぉぉ海賊王の爺さん…ご機嫌そうだな?」

海賊王「子供達が作った酒がなかなか美味いもんでな…今日は気分がええで?」

盗賊「俺もちと驚いてんだ…昨日の今日でこの酒作るってのは大したもんだヌハハ」

海賊王「ワイの手下どもも喜こんどるわガハハハハ」

盗賊「しかしこの村もやっと軌道に乗り始めた…このまま上手く行けば良い」

海賊王「この村はなんちゅーか夢がある…そういう村は登って行くもんや」

盗賊「やっぱ酒場があると活気が違うな」グビグビ

海賊王「そやな?美味い酒が飲めるなら手下どもは毎日ここに来るで?」

僧侶「私も飲みたいです…」

盗賊「おぉ飲め飲め…今日は飲んでも良いんじゃ無ぇか?影武者のおごりだろ?」

僧侶「そうですよね?私も飲むでし!!」グビグビ

海賊王「おぉええ飲みっぷりや…気に入ったで?」


ガハハハハハ

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『翌日』


ヨッコラ ドスン


盗賊「よし…これ以上はもう積め無ぇな」

影武者「これが買い取り品目のメモだよ…出来るだけ早く戻って欲しい」

盗賊「へいへい…酒樽は全部俺が飲んじまうが良いな?」

影武者「全部は飲めないでしょ…残りは一応売りに出して反響を見て欲しい」


ええと石炭と木材は高めで売却

硫黄は競売で相場見極め

買い取りが布と香料…ほんで種を各種か


盗賊「あとは移民を乗せて来りゃ良い訳な?」

影武者「移民は2家族までだよ…工夫だと稼ぎが良い」

盗賊「分かった…まぁ任せろ…助手にガキ一人連れて行くが良いな?」

影武者「好きにすると良いさ」

盗賊「よし!乗れ小僧!飛行船の動かし方教えてやる」

少年「…」ジロリ

盗賊「武器の使い方も教えてやるから付いて来い」

少年「フン!」スタスタ

盗賊「じゃぁ行って来るわ…」ノシ


フワフワ

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『数日後』


コーン コーン メリメリ ドスーン


女オーク「ふぅ…」

僧侶「女オークさん木を切り倒すの早いでしゅねぇ…」

女オーク「切り株を掘るから離れておいて?」

僧侶「はいな!」

女オーク「ふん!!」


ドコーン ドコーン メリメリ ガッサー


女オーク「ふぅふぅ…この作業が大変…」ズルズル

魔法使い「私が土を埋め直しておくわ」ザック ザック

女オーク「この切り株でテーブルが作れるから大事な資材ね」ヨッコラ

僧侶「あれ?空に何か飛んでるでし…」

魔法使い「え?」

僧侶「あれ剣士さんの気球かもです」

女オーク「ハッ!」

魔法使い「…」チラリ

僧侶「大きな鳥ですかね?通り過ぎて行ったです…」

女オーク「…」ヨッコラ ヨッコラ

魔法使い「その切り株は荷車に乗せて置いて?後で運ぶから」

女オーク「うん…」ドスン

僧侶「切り倒した木は川に投げると下まで流れて行くです」

女オーク「分かったわ…」グイ ザブーン

僧侶「下で木を引き上げに行くでし!!」スタタ

魔法使い「私は荷車引いていくから先に行ってて」

女オーク「うん…」ドスドス

『村の川辺』


ジャブジャブ


女オーク「ふん!!」ザバァ

僧侶「私が枝を落としておくので女オークさんは休んで良いです」ギコギコ

女オーク「大丈夫よ?」ブンブン スパスパ

僧侶「あ!!!さっきの大きな鳥!!やっぱり剣士さんの気球!」

女オーク「え!?」キョロ

僧侶「村の方に降りそう…」

女オーク「私行って来る!」ドスドス

僧侶「私もいくです…」スタタ


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『村の外れ』


フワリ ドッスン


剣士「ふぅぅぅ…やっと着いた…随分迷った」

女オーク「剣士?…剣士?…」ドスドス

剣士「良かった…女オーク無事だったね?」ダダ

女オーク「え?無事って…私はここで普通に…」

剣士「良いんだ…無事なら良い」

僧侶「剣士さ~~ん!お帰りなさぁぁい!!」スタタ

剣士「偏西風の向きがおかしくて中々辿り着けなかったんだ…やっとたどり着いて安心したよ」

僧侶「??どゆこと?」

剣士「まぁ色々あった訳さ…皆居るかな?」

僧侶「盗賊さんがキ・カイに行ったです」

剣士「少し休みたいかな…体が冷え冷えだよ」

女オーク「上の方に温泉があるわ?」

剣士「そうだったね…入りたい」

女オーク「連れていってあげる…背中に乗って?」

剣士「いやいいよ自分で歩くさ」

僧侶「皆に報告してくるです」

剣士「うん…僕は温泉に浸かってちょっと休む」

僧侶「はいなー」スタタ

女オーク「こっちよ?」グイ

『古代遺跡に続く道』


サラサラ サラサラ


剣士「ちょっと見ない間に随分整備されたね」

女オーク「剣士のお爺さんのお陰よ?」

剣士「ハハ爺いじは村作るのとか大好きなんだよ…そのうち城作り出すよ」

女オーク「もう遺跡の周りは要塞になって居るわ?」

剣士「ほらね?次は使いもしない大砲さ…散々そういう話聞かされたんだ」

女オーク「そうだったんだ…フフ」


ガタゴト ガタゴト


魔法使い「あ…剣士…帰ってたのね…」

剣士「今帰った所だよ…整地かい?なんか大変そうだね」

魔法使い「お爺さんに会いに行くの?」

剣士「ちょっと体が冷え冷えでね…疲れてるし少し休みたいんだ」

魔法使い「じゃぁ温泉に行くんだ…」

女オーク「私が案内しているの」

魔法使い「そう…」チラリ

剣士「少し休んだら教会の方に挨拶に行くよ…後回しにしてゴメンね」

魔法使い「いえ…ゆっくり休んで…」

女オーク「剣士?こっちよ?」

剣士「うん…」ヨロヨロ

魔法使い「…」

魔法使い「……」

魔法使い「………」シュン


ガタゴト ガタゴト

『温泉』


モクモク


女オーク「この辺りが丁度良いお湯になっているわ」

剣士「ありがとう…」チャプ

女オーク「私はお爺さんに剣士が帰って来たと伝えて来る」

剣士「ちょっと待って!!爺いじが来ると休めない…僕が起きた後にして」

女オーク「フフそうね」

剣士「それより女オーク?体に調子悪い所は無い?」

女オーク「え?どうして?何もおかしい所なんか無いわ?」

剣士「そうか…それなら良いんだ」

女オーク「どうしたの?」

剣士「何でも無いよ…兎に角安心した」

女オーク「変な剣士…私は木材加工の続きをして来るからゆっくり休んで?」

剣士「うん…寝る」ウトウト


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『古代遺跡』


メラメラ パチ


うーむ…なんで直らんのや?他の羅針盤も一斉に壊れるちゅうんはおかしいな

親方…日の出の方角も大分北よりなんでがす

船に硫黄運ばせとる気球は帰って来んが羅針盤おかしゅうて迷っとるんかいな?

この周辺は不思議な事が起こるんかも分からんでがす


剣士「ふぁ~あ…」パチ

海賊王「おぉ剣士!温泉で寝取ったらアカンで?茹でダコになる」

剣士「んん?う~ん…良く寝た」ノビー

海賊王「大分疲れとった様やな?」

剣士「あぁぁ…一人で飛空艇操作してたから何日もずっと寝て無かったんだよ」

海賊王「腹減っとらんか?」

剣士「大丈夫…それより爺いじ…今世界が大変な事になってる」

海賊王「今空がおかしいちゅう話をしとった所や」

剣士「地球の地軸が移動して太陽が昇る方向も星の位置も…羅針盤が北を差す方向も何もかも狂ってる」

海賊王「う~む意味が分からんのやがゆっくり話せ」

剣士「結論から言うともう海は航海出来ない…空を飛んでも迷う…今まで使ってた地図に意味が無くなった」

海賊王「世界大移動かいな?」

剣士「そんな感じだよ…詳しくはこうさ…」


カクカク シカジカ

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海賊王「そらえらいこっちゃ無いか!!わいはドワーフの国へ戻らなアカン…」

剣士「航海出来ないよ…間違い無く遭難する」

海賊王「今の話からすると外海に出れば良いんやろ?」

剣士「ええとドワーフの国は島が沢山だったね…島を目標に渡ればもしかすると行けるのかも」

海賊王「ハテノ村にいつまでもゆっくりはしとれんな…ちぃと考えるわ」

剣士「今移動するのは良くないと思うよ…行けると思っても本当に迷う」

海賊王「状況が安定するまで待ちかいな…ちゅうか気球が帰って来ん事にはわいも動けんな」

剣士「僕はちょっと星を観測してどれだけズレがあるのか計算してみる」

海賊王「そやな?そやそやおまんの地図も写させてくれ」

剣士「後で持って来るよ」

『酒場』


ワイワイ


女将「いらっしゃいませ~でし!」

剣士「ハハ…これは本格的だね」

女将「剣士さん!!飲んで行くですか?」

剣士「一杯貰おうかな…」

女将「魔法使いさん!!影武者さん!!剣士さんが来たです」


ドタドタ


魔法使い「剣士!今日はもう来ないかと思ってた」

剣士「少し休んだら調子良くなったよ…なんか良い酒場になったね」

魔法使い「酒場と言っても村の皆の食事処よ」

剣士「一杯欲しいな…どんぐりも欲しい」

女将「はいなー!!自家製のハテノ酒でし!!」ドン

剣士「ハテノ酒か…どんな味なんだろう?」ゴクリ

魔法使い「どう?錬金術で作った炭酸を混ぜてみたの」

剣士「おいしい!!コレ売れるよ…すごく飲みやすい」ゴクゴク プハー

影武者「いくらなら出せるかな?」

剣士「大き目のグラスで銀貨1枚」

影武者「フフ十分元が取れそう…1日樽4杯作れるとして金貨4枚分…材料費引いて金貨3枚の儲け」

魔法使い「ポーション作るより効率良さそう」

剣士「なんか楽しそうだ…もう一杯頂戴」

女将「はいなー!!」ドン

剣士「さて…酒場に来たからには…何か面白い話無い?」

女将「あるですよ…」


村の外にどんぐりを置いておくとですね…

いつの間にか薬草に変わってるですよ

多分オークがどんぐりの代わりに置いてくれてるです

そこでオークが他に何が欲しいのか調査したいのです


剣士「ハハそんなの簡単さキノコと松ぼっくりだよ…木の根も良いね」

影武者「ふむ…僕達に不要な物をトレード出来るのか…明日試してみよう」

女将「楽しみが増えるですね」

魔法使い「ところで剣士?今度はいつまでこの村に?」

剣士「しばらく滞在しようと思ってる」

魔法使い「どのくらい?」

剣士「そうだなぁ…1ヶ月?2ヶ月?…ちょっと色々調べなきゃいけない事が有ってね」

影武者「あ…それなら剣士さんに依頼したい事が…」

剣士「ん?僕に出来る事なら…」

影武者「細工が得意だったよね?防具が少し欲しいんだ」

剣士「おけおけ…確か樹皮が一杯積んでたね…それで作れるよ」

魔法使い「しばらく滞在するなら開いている家を使っても良いわ?」

剣士「あーこの村の主役はやっぱり君達だよ…僕は上の遺跡で良いさ」

魔法使い「そう…ずっと住んで居てくれても良いのに」

剣士「僕の家は名もなき島という所にもうあるんだ…この村では居候さ」

女将「寂しい事言わないでくだしゃい」

剣士「しばらくは滞在するからよろしくお願いするよ」グビ



『翌日』


ブーン ブンブン


剣士「蜜蜂!ここで巣を作れ!」ブーン

魔法使い「何をしているの?」

剣士「虫を集めてるんだ…そうそう今日はまだ木を育てて居ないね?」

魔法使い「え?うん…まだ」

剣士「今日から辺りに花を育てて欲しいんだ…種は持ってる」

魔法使い「花?ハチミツの為?」

剣士「それもあるんだけど…実はね…この村に足りないのは虫なんだよ」

魔法使い「虫…居ない方が良いと思うんだけど」

剣士「虫が多いと鳥が来るんだ…水生動物も虫を餌にする…その水生動物を餌に色んな動物が集まるんだ」

魔法使い「そういう事ね…虫は暮らしを豊かにしてくれているのね」

剣士「害虫も居るけどそれは退治すれば済む…虫は命を運んで来るんだよ」


そう…命を運ぶのは虫なんだ

僕は大事な事を忘れていた

虫を使ってドリアードを倒す事ばかり考えてた

虫を育てて命を運ばせないといけない


剣士「土の中に居るワームは殺しちゃいけないよ?火山灰を食べて栄養のある土に変えてくれてる」

魔法使い「分かったわ」

剣士「クモは縄張りを守ってる…同時にハテノ村も守る…虫ってすごいでしょ?」

魔法使い「本当は興味無いけどあいづちだけ打っとく」ウンウン

剣士「アハハはっきり言うね…まぁ良いさ…花を育てるのお願いね」

『製材所』


ゴリゴリ シュッシュ


剣士「みんな見ててね?樹皮は茹でて柔らかくした後に油を含ませてしごいてなめすんだ」ゴシゴシ

剣士「なめした樹皮をこうやって編んで行けば籠の材料になる」アミアミ

剣士「厚手の質の良い奴は防具の素材に残しておく」

剣士「やわらかい内に形を整えて縫い合わせれば防具の出来上がり…真似してやってごらん」

子供達「すごーい…」

剣士「自由にデザインして良いよ…後で僕が直してあげる」

影武者「あっという間に防具が出来るんだね」

剣士「ちゃんとした装備にするには内側に細工が必要なんだ…それは僕がやる」

影武者「皮の防具という感じかな?」

剣士「うん…工夫次第で上等な防具になるんだよ…軽いから僕は好き」

影武者「樹皮はヘラジカの餌にと思って居たけど…こうして見ると使い道が広い」

剣士「餌にするには勿体ない…加工して余った部分を餌にすれば良いかな」

影武者「籠はいくつあっても良い」

剣士「そうだね…ベットにもなるし宝箱にだってなる…最後は燃料としても使える」

影武者「勉強になったよ」

剣士「それは良かった」


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剣士「次は亜麻の加工だよ」

剣士「亜麻を布にするまで加工するのは難しいからロープと麻袋までにしよう」

剣士「水に漬けて乾燥させた亜麻をしごいて繊維だけ取り出す」

剣士「これを寄ってロープにする…繋ぎ合わせは順に継ぎ足して寄って行く」ヨリヨリ

剣士「繊維だけ編み込んだ物で麻袋になるけどこれは時間が掛かるから暇なときに…」


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影武者「布を作るには織機が必要だね」

剣士「うん…作っても良いけど細工に手間が掛る…布は買った方が早い」

影武者「亜麻を沢山育て過ぎたかな」

剣士「えとね…鍛冶場で大量の鉄鉱石の残りくずが出てると思うんだ…骨粉と亜麻のくずを混ぜて建材に加工できるよ」

影武者「モルタルだね?」

剣士「ちょっと違うけどそんな感じ…レンガみたいな石になる」

影武者「建材で木材の消費が抑えられるか…大工に相談してみるよ」

剣士「木は切り倒すのが勿体ない…切るのは最低限が良いかな」

『古代遺跡』


メラメラ パチ


剣士「爺いじ?地図持って来たよ…」パサ

海賊王「待っとったわい…見せてみぃ」

剣士「その地図は海士島が南極になった想定の地図だよ」

海賊王「見慣れんで気持ち悪いなぁ?」

剣士「うん…でもね?この地図もアテにならない…僕が空を飛んだ感覚だともう少し斜め向いてる筈」

海賊王「どのくらいや?」

剣士「う~ん20°くらいかなぁ…目印になるのは南極星だけなんだ」

海賊王「季節も分からんのやな?」

剣士「うん…しばらく星の観測続けないといけない」

海賊王「ここは山があるで観測もやり難いなぁ?」

剣士「そうだね…今から南極星の角度測定する道具を作ろうと思う」

海賊王「わいは機械仕掛けの良い時計を持っとるで?使うか?」

剣士「おお!!それがあると時間ごとに星の角度測れる…貸して」

海賊王「体感やとだんだん温くなっておる様に感じるが?」

剣士「そうなんだ?」

海賊王「まぁ天気もあるしよー分からんな」

剣士「ねぇ女オークは何処行ったか知らない?」

海賊王「硫黄鉱山行っとる思うわ…よー働く娘や」

剣士「ちょっと心配なんだ」

海賊王「なんでや?体は丈夫そうやで?」

剣士「話はややこしいんだけど…急に死ぬ可能性があるんだ」

海賊王「そらあかんな…おまんの事やからなにか理由があるんやな?」

剣士「うん…」

海賊王「分かったわ…ちっと戻る様に言うてくるわ」ノソリ

剣士「ありがとう」


---違う未来を歩んでいる筈なのに---

---不安が消えない---

『夜_遺跡の外』


カチャカチャ ギリリ


剣士「…一時間に15°か…一日の長さは変わって居なさそうだ」

女オーク「メモしておく?」

剣士「それは良いや…南極星が変わってるのは書いておいて」

女オーク「南極星が変わるというのはどういう意味が?」

剣士「地球の傾きが変わってるという事さ」

女オーク「傾き?理解できない…」

剣士「駒の軸がクルクル動くでしょ?回転の軸が動いちゃってるんだよ」

女オーク「どんな影響があるのか想像出来ない…」

剣士「僕も良く分からない…天候が安定しないのはそのせいかもね」

女オーク「この観測を朝まで続けるつもり?」

剣士「日の出前まで仮眠しようかな…大事なのは日の出と日の入りなんだよ」

女オーク「ここで休むのね…」

剣士「そうだよ…毛皮も用意したし君が居れば暖かい」

女オーク「ウフフ寝泊まり出来る場所があるのに野宿ね」

剣士「石炭は一杯あるし暖は取れる…まぁ馬車で寝泊まりするより快適さ」

女オーク「剣士は先に寝ても良いわ」

剣士「うん…日の出の観測逃さない様にもう寝るよ」


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『夢』


ヴヴヴヴ ドサリ ピチャ


僕「動いたらダメだよ…方陣の中から出ないで」

君「ガァァァ…」ズルズル

僕「今楽にしてあげるから…もう少し抱っこさせて」グイ

君「ヴヴヴヴ…」ピクピク

僕「君の魂は今何処にあるかな?浄化が済んだら僕に掴まってね…」

君「グルルルル…」ノソ

僕「ダメだって方陣から出たら…」ゴソゴソ


グイ ギュゥゥゥ


僕「なんでかなぁ?涙が出ない…ただ心が寂しい」

君「ヴヴヴヴ…」ズルズル

僕「行くよ?しっかり掴まって…浄化魔法!」シュワーーー

君「アガ…」サラサラサラ

僕「おいで!僕の所へ…」

灰「…」サラサラサラ

僕「…」ポロ

僕「……」ポロポロ

剣士「楽になったかい?君は何処に行ったんだい?」

灰「…」サラサラサラ


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『早朝』


剣士「ハッ!!…」

女オーク「起きた?もう直ぐ日の出よ?ほら空が暁色に…」

剣士「夢か…嫌な夢だ…」

女オーク「怖い夢でも見たの?」

剣士「何でもないよ…君は痛い所無いね?」スリスリ

女オーク「どうしたの?くすぐったいわ?」ハテ

剣士「ゴメン寝ぼけてるんだ」

女オーク「観測はしなくて良いの?」

剣士「あぁそうだ星座を確認しないと…えーと…へび座と一緒に登るのか」パラパラ

女オーク「何か分かる?」

剣士「南半球だから多分もうすぐ春になる」

女オーク「暖かくなるのね?それは良かった」

剣士「よし!これで大体の緯度が推定できる…」メモメモ

女オーク「月が全然違う方向に沈んでいたわ」

剣士「ええええ!?どっちの方向?」

女オーク「この地図で言うとこっちの方角ね」

剣士「南南西…そうか月の公転まで変わってるのか…道理で迷う訳だ」

女オーク「私も役に立ったみたいね」ニコ

剣士「明日から月の観測もしないといけない…でも何でそんな事が起こる?」


地球は自転をしているからほぼ太陽と同じ様に動く筈…

まてよ月が縦周りに変化していたとして南南西に沈むという事は南南東から登る…

南極星方面に位置した場合ずっと沈まないという事もある訳か


剣士「そうだ夜は月の方角を見て空を飛んだ事もある…だから迷う」

女オーク「はい地図とペン…私は文字が書けないから剣士が書いて」

剣士「あぁありがとう…女オーク!太陽の方角を観測して」

女オーク「うん…」

剣士「機器の使い方は分かるね?」

女オーク「見て居たから大丈夫よ」カチャカチャ ギリギリ

『数日後_会議』


分かった事

南極星は一日3°づつ移動している

地軸の移動が始まったのは多分15~20日前でもう50°くらい回転した

今の緯度は南半球のこの位置…このまま行くとどんどん暖かくなる

地軸の傾きは今29°で多分駒の様にクルクル動いてる…周期はまだ分かって居ない

月の公転は明らかに変化…どの様に変わったのかは長期間の観測が必要


剣士「これが新しく作った地図…今までと上下が反対になって東西の方向も変わったよ」

魔法使い「信じられない…この間までの冷たい長雨もこれが影響して?」

剣士「それしか考えられないよ…南極点が近くを通ったんだと思う」

僧侶「オークの領地のずっと南が未踏の地だったですが…」

剣士「そこにあった極点が今はキ・カイ付近な筈」

魔法使い「これから予測される影響とかは無いの?」

剣士「う~ん僕の知識じゃあんまり確かな事言えないんだけど…内海は全く航海出来なくなる」

影武者「キ・カイは商船での貿易で成り立ってるんだけど…」

剣士「完全ストップだね…でも近海での漁業はまだ残るかもしれない」

僧侶「いつまでその地軸の移動が続くですか?」

剣士「これも確かな話じゃないけど4000年前にあった地軸の移動は90°回転して止まったらしいよ」

海賊王「わいは船でドワーフの国へ帰らにゃあかんのやが…」

剣士「遠回りになるけどこの大陸沿いに航海すればなんとか行けると思うな」

海賊王「次来るときは外海側のオーク領から来た方が良さそうやな」

剣士「うん…外海の海図を作って行くしか無いね」

海賊王「ハテノ村の開拓が半ばで悪いが気球が戻って来たでわいは一旦戻るわ…豪族と争っとる場合やないわ」


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剣士「爺いじ!僕が直した地図持って行く?」

海賊王「済まんな?この地図に海流と風向き加えてまた持ってくるわ」

剣士「うん…気を付けて」

海賊王「兵隊と鉱夫は残して行くけぇ仲良うやってくれや」

剣士「爺いじはこれからどうするの?」

海賊王「そら王様の仕事や…領地を守らなアカンでな…影響を見ていろいろやるやろ」

剣士「…という事はハテノ村も守るんだね?」

海賊王「当たり前や…直ぐに連絡の気球が来るで待っとれ」

剣士「良かった」

海賊王「そやそや…わいがやろうと思っとったんやが川沿いに道を整備したかったんや」

剣士「何か作るつもりだった?」

海賊王「川を下る船で物資の移送や…気球より大量に運べるでな」

剣士「なるほどね…下流に村を構えるんだね?」

海賊王「まぁ待っとり?直にようさん人を送るで…わいも折角見つけた硫黄鉱山を手放したく無いんよ」

剣士「ハハそうだよね大砲が無いと海で戦えないからね」

海賊王「ほな急いどるで行くわ…女オークと仲良うやれや」ノシ



…こうしてハテノ村の開拓は順調に進みだした


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『古都キ・カイ_酒場』


ガヤガヤ ガヤガヤ

外は死ぬほど寒みぃ…あぁぁきついウォッカくれ!!

流氷が邪魔で商船が出れないのさ…まぁしばらくここで飲んだくれだよ

お酒が高騰してて少しお高いですがよろしいですか?

ガハハハ酒なら俺の船に大量に積んでるんだ


盗賊「よう!遅くなった…金は用意してあるか?」

ローグ「盗賊さん…こんな目立つ所で待ち合わせは無いっすよ…」

盗賊「フード被ってるなんざお前らしく無ぇじゃ無ぇか」

ローグ「あっしはちっと豪族に顔が知れてるもんで動きにくいんすよ」

盗賊「そうか悪りぃ悪りぃ…ほんで金は準備出来たな?」

ローグ「耳を揃えてここに…」ドスン ジャラ

盗賊「ほぉぉ…手ぶらだと思ってたがちゃんと用意出来たな」

ローグ「あっしが持ってた魔石がえらく高く売れたんでやんす」

盗賊「まぁ俺の方も貴重な木材を身内に売れて良かったわ…んで?何に使うのよ?」

ローグ「盗賊さんと同じ大型の貨物用気球が値落ちしてたんで買ったでやんす」

盗賊「そら良い!帆を張って俺と同じにするってんだな?」

ローグ「そーっすね…あっしだけキ・カイに留守番はイヤなんすよ」

盗賊「はは~ん…ハテノ村の往復便をやろうって訳か…よっし!俺が手伝ってやる」

ローグ「そう言って貰えると嬉しいっす」

盗賊「丁度布の買取もやってて帆を張る分くらい工面出来るぞ?」

ローグ「明日あっしの気球まで案内しやす」

盗賊「ところで話が有るって言ってたな?気球の件だったか?」

ローグ「いやいやちっと盗賊さんの耳に入れておきたい話が有ったんすよ…ここじゃ何なんで個室行きやしょうか」

盗賊「おう…人に聞かれたく無い話しな訳か」

ローグ「一番奥の右手の部屋っす…酒も持って行くんで先に行ってて下せぇ」

『酒場_個室』


ガチャリ バタン


ローグ「瓶ごとに成っちまいやすがキ・カイじゃ珍しいワインっす」

盗賊「おぉぉ済まんな…」キュポン グビ

ローグ「ほんで聞いて欲しい話なんすが…セントラル貴族の公爵という人物を知って居やすか?」

盗賊「会った事は無ぇが何度か俺にコンタクト取って来たな?」

ローグ「先に結論を言っちまいやすが…多分黒の同胞の生き残りなんすよ」

盗賊「なぬ!?10年前に全滅して居なかったのか…」

ローグ「あっしは豪族の立場を利用して色々調べたんすが…どうも20年前のセントラル第3皇子の戦死から関わって居る重要人物っす」

盗賊「20年前っちゃぁ100日の闇事件か…」

ローグ「そもそも20年前の魔王復活はセントラル第3皇子の戦死から始まって居やす」


当時の黒の同胞達の狙いは復活した魔王を魔石に封じ

ドリアードの中にあるアダムを復活させる事でやんした

その実現に10年近く掛かっているんすが結果的に成功してる訳でやんす

一見それで平和になった様に見えやすが

その実子供が生まれない事や黒死病の蔓延で人口がどんどん減っている訳なんす

これに気付いた未来君がこの間アダムを破壊した…大きな流れはこんな感じっす


盗賊「俺の認識もまぁ大体そんな感じで有ってるんだが…公爵がどう関わってるんだ?」


公爵はですね…表の舞台にはほとんど関わらないんすが

兎に角仕込みが上手いというか裏で手を引いて上手く物事を誘導するんすよ

昔からセントラル貴族では穏健派の時の王派閥と強硬派のその他貴族で分かれていたんすが

公爵は穏健派で常に時の王の陰に隠れた存在だったんす

上手く時の王を誘導してこの20年の動乱を導いてる…それがたぶん公爵なんす


盗賊「狙いが良く分からんのだが…」


あっしが公爵に疑いを持ったのは

時の王の屋敷を公爵が美術館にして一般公開するようにした事っす…

時の王の遺産の肝心な遺物は全部公爵が接収してるんすよ

その事実を隠蔽する為に美術館として一般公開した


盗賊「ほう?お前は時の王の遺産に何があったのか知って居るのか?」

ローグ「全部は知らんのですがシャ・バクダ遺跡で発掘された冒険の書…これと同じものを公爵が持ってるのを見たでやんす」

盗賊「冒険の書?未来が読んだという奴だな?」

ローグ「そーっす…あっしが思うに未来の出来事を知って居るのは未来君だけでは無いと言う事なんす」

盗賊「なるほど…お前の言いたい事は分かった…本当の黒幕は公爵だと言いたい訳か」

ローグ「断言は出来やせん…ただ未来君の予言はすべて当たっていたんす」

盗賊「う~む…しかしどう考えても公爵の狙いがよーわからんな」

ローグ「アヘン酒が大量に出回っていやすよね?」

盗賊「あぁ俺は飲まんがな」

ローグ「製造元の元締めは公爵っす…それから出回っている魔石の出所」

盗賊「そらスプリガンじゃ無ぇのか?」

ローグ「なんでスプリガンに魔石が入っているんでしょうね?」

盗賊「なんでって…まてよ?なんでだ?魔石のエネルギーは誰がどうやって入れてんだ?」

ローグ「ここからは憶測なんすが魔王が封じられた魔石…そこから取り出して居やせんかね?」

盗賊「つまり魔石の出所も公爵って訳か?」

ローグ「そうなんす…魔石のレートを決めるのも公爵が関与してるんすよ」

盗賊「な~るほど…ほんで俺に盗んで欲しい訳か」

ローグ「未来君がアダムを破壊したのは良いんすが…魔王を封じた魔石が何処に行ったか分からんのです」

盗賊「こりゃまたデカイ仕事だ…ちっと考える」

ローグ「へい…未来君の頑張りの裏に今言ったようなキナ臭い事案が起きてるんす」

盗賊「しかし今の状況じゃセントラルに行くのも難しいな…」

ローグ「そうでやんすね…昼とも夜ともわからん日が続いていやすからねぇ…」


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『翌日_港の倉庫』


ギコギコ トンテンカン


盗賊「おい!クソガキ…反対側持て!」

少年「いい加減名前で呼べよ」

盗賊「クソガキはクソガキだ!…おぉそこを押さえてろ!!」トンテンカン

ローグ「盗賊さんロープを持って来やしたぜ?」

盗賊「ローグは回転帆のロープ繋ぎ分かるな?俺はプロペラの改造やっからロープ張りは任せる」

ローグ「さすが盗賊さん…気球の改造はお手の物っすね」

盗賊「まぁ船に長い事乗ってりゃ帆の修理なんざ何回もやるからな」トンテンカン

少年「俺どうしよう?」

盗賊「ロープの結び方でも勉強しとけ…てかお前もヤレ」

ローグ「盗賊さんの新しい助手っすか?あっしが結び目作るんで見て居て下せぇ…」ヒョイヒョイ クルリ

少年「分かんねぇよ!!」

盗賊「おいローグ!そいつは頭じゃ理解出来無ぇから体で覚えさせろ…ぶっ叩いても構わん」

ローグ「いやいやいや…あっしはやさしくですね…」ヒョイヒョイ クルリ

少年「だから早すぎて見え無ぇって!!」

ローグ「えーとですね…」スラーン

少年「な…なんで短剣抜くんだよ」

ローグ「癖なんす…黙って言う事効かせる為の癖なんすよ…見てて下せぇよ?」ヒョイヒョイ クルリ

盗賊「おいクソガキ…そいつはローグって言ってな?短剣使いじゃ恐らく世界一だ」

少年「え!?もしかして海賊王の娘の右腕って…」

ローグ「恥ずかしい事言わんで下せぇ」

盗賊「分かったらロープ張りを文句言わんでヤレ!」


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トンテンカン ギコギコ


盗賊「…そうかアサシンがそんな事を言って居たか」

ローグ「アサシンさんは失った物が多すぎでしたねぇ…生きる理由がもう無いんでやんすよ」

盗賊「まぁ死に場所を探すと言ってもな…」

ローグ「あっしはアサシンさんの孤独がなんとなく理解出来やす…もう俗世に関わりたく無いのも分かりやすねぇ…」

盗賊「う~む…魔王を滅してもアダムを破壊してもな~んも変わりゃし無ぇしなぁ…又公爵みたいな奴が出て来る始末…」

ローグ「あっしらは只勇者2人失って…家族も友人もどんどん居なくなる…寂しいっすねぇ」

盗賊「なんつーかこういう絶望みたいな感覚こそ魔王の支配じゃ無ぇか?」

ローグ「ソレ!それなんすよ…あっしが思うに公爵が誘導しているのはそういう感じだと思いやす」

盗賊「やっぱ女海賊みたいな底抜けな光が欲しいな」

ローグ「姉さんはカリスマでやんした…未来君にはちっと足りない部分なんすが…」

盗賊「いや…資質はある…手段が正統派の勇者では無いだけだ」

ローグ「虫っすね?」

盗賊「光る虫なんかどうよ?」

ローグ「蛍っすか…盗賊さんもおかしな事を…ん?蛍を操る勇者…なんかロマンを感じやす」

盗賊「ぬはは馬鹿な事言って無ぇで…サッサと作業終わらせるぞ」


---でもまぁ悪く無ぇ…なんつかー少し希望が湧く…不思議なもんだ---

---闇を照らす光…虫でも構わ無ぇ---



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ギリリ ギュゥ ギュギュッ


ローグ「ふぃぃぃ…これで終わりっす」

少年「港にキ・カイの軍船が入って来てる」

盗賊「なぬ!?この霧の中キ・カイの軍船は航海出来んのか…」

ローグ「盗賊さん知りやせんでしたか?キ・カイの軍船は音の反射で障害物が分かるらしいっすよ?」

盗賊「ほぉぉぉそら知らなんだ…羅針盤要らずなのか?」

ローグ「聞いた話なんすが海底の地形を見ながら航海するらしいんす」

盗賊「欲しくなるじゃ無ぇか…盗めるなら盗って来るが…」

ローグ「大きな機械を丸ごと盗む感じになりそうでやんす」

盗賊「なんだデカいのはダメだな…しかし商船の代わりにあのデカイ船が荷を運ぶってのは有りだ」

ローグ「キ・カイの軍船なら流氷に当たってもどうってこと無いっすね」

盗賊「うむ…ただアレを奪った所で盗んだのがバレバレだな」

ローグ「帆が無いんで動かし方も分からんでやんすよ」

盗賊「まぁ奪うってのは冗談だ…軍船から荷が出てきたらちっと物資も潤うな…俺ぁ何が出て来るか見て来る」

ローグ「あっしも行きやすぜ?」

盗賊「おいクソガキ!商人ギルドに戻って軍船が入って来た事伝えて来い」

少年「受付のおばちゃんに言えば良いのか?」

盗賊「ぬはは…おばちゃん…まぁそうだ」

少年「分かった…」

盗賊「寒いからお前は商人ギルドで温まってろ…ローグ!行くぞ」ダダ

『軍港_立ち入り禁止』


衛兵「…これより先は立ち入り禁止!帰った帰った!!」

盗賊「堅い事言うなよ…商船入って来無ぇから期待してんだよ」

衛兵「ここから見るだけにするのだ」

盗賊「しゃぁ無ぇな…ローグ!何か見えるか?」

ローグ「大きな荷をいくつも降ろして居やすね…多分専用の荷下ろし場から直接地下に運んでる様でやんす」

盗賊「外の街には入って来無ぇか…ちぃ」

衛兵「…」ジロリ

盗賊「ハハ皆物資に期待してる訳よ…ここん所魚しか食って無いからよ」

ローグ「地下行った方が良さそうっすね…ここからじゃ箱しか見えんでやんすよ」

盗賊「地下の荷下ろし場って何処だ?」

ローグ「さぁ?レールが有るのはチカテツ街道なんでその何処かじゃないすかね?」

盗賊「まぁ良い…クソガキが詳しいだろうから案内させる」

ローグ「地下の方が暖かいんでそっち行きやしょう」


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『チカテツ街道8番』


ここの奥から廃線に繋がる抜け道があるんだ…

廃線は昔オークの奴隷を奴隷船に積むのに使われて居た場所

ギャングの姉御はそこから逃げて来たんだ

それで廃線の少し先に軍用の施設がある…そこはキラーマシンが沢山居て危ない


盗賊「なるほど…その軍用の施設に荷物が降ろされてる訳だな?」

少年「多分…」

ローグ「軍の施設に忍び込むのはちっとリスクありやすぜ?」

盗賊「まぁ俺らにはハイディングがある」

ローグ「少年を置いて行くでやんすか?」

盗賊「これは勉強だ…俺が背負ってやる…荷が何なのか見て戻る」

ローグ「それだけならなんとかなりやすね」

盗賊「おいクソガキ…お前何があっても絶対しゃべるな…出来るな?」

少年「当たり前だ…」

盗賊「ようし!背に乗れ…走る事もあるから振り落とされんなよ?」

少年「…」コクリ

盗賊「じゃぁローグ…いつもの感じで行くぜ?」

ローグ「あいさー」

盗賊「ハイディング!」スゥ

ローグ「ハイディング!」スゥ

盗賊「迷って無ぇな?行くぞ…」タッタッタ


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『軍の倉庫』


盗賊「リリース!」スゥ

ローグ「リリース!」スゥ

盗賊「こりゃまたデカイ倉庫だな…」

ローグ「後ろにキラーマシン歩いてるんで気を付けて下せぇ」ヒソ

少年「…」ユビサシ

盗賊「アレか…もうちっと寄る」ヌキアシ サシアシ

ローグ「何っすかね?」ソローリ


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盗賊「ほとんどが食料の様だな?」

ローグ「肉と野菜…多分フィン・イッシュから帰って来た感じでやんす」

盗賊「しーーっ…何か話してる…」

ローグ「…」


食料は順次市場に流せ

銀と鉄鋼は一旦備蓄…黄銅は直ぐに工場へ運ぶんだ


高官「魔石は入荷して居ないのか?」

将校「予定の半分以下ですが一応入荷しています」

高官「ふ~む…やはり出し渋って来たか」

将校「はい…恐らく遺跡探掘の権利が狙いと思われます」

高官「古代兵器出土の情報がリークしたのは間違い無いな」

将校「朗報もあります…この異常気象で航海出来るのは我々の軍船だけ…もう豪族は敵ではありません」

高官「ふむ…兵はこの異常気象をどう思って居そうだ?」

将校「賢い者は地軸の異変に感づいて居ます…そろそろ発表した方が混乱しないかと」

高官「うむ…しかし予言がこうもピタリと的中するとは…」

将校「魔石は引き続き向こうの言い値で取引を続けてよろしいのですか?」

高官「相手の出方を探りたいのもある…まずは言い値で進めるのだ」

将校「ハッ…豪族に資金が回って行くのはなんとも…」

高官「航海出来るのは我々だけなのだろう?取引のカードはこちらにある」

将校「荷物を降ろし次第出港の準備に取り掛かります…失礼」


盗賊「戻るぞ…」ヒソ

ローグ「へい…」ソローリ


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『チカテツ街道8番』


盗賊「リリース!」スゥ

ローグ「リリース!」スゥ

少年「ぷはぁ…」

盗賊「…とまぁ隠密ってのはこんな感じだ…勉強になっただろう?」

少年「俺も出来るようになるかな?」

盗賊「そのうちな?」

ローグ「盗賊さん…さっきの聞いた話…」

盗賊「うむ…どうやら国のトップ共は地軸の移動を前もって知って居た様だ」

ローグ「やっぱり公爵が暗躍していそうっすね」

盗賊「この異常気象をきっかけに裏の取り合いやってんだろうな…民を後回しにして迷惑な話だ」

ローグ「察するにキ・カイにも密偵が潜り込んで居るみたいっすね?」

盗賊「まぁ俺達にゃぁ関係無い…しかし相手の出方を見たいというのはちと引っかかるな」

ローグ「古代兵器って何なんすかね?もしかして10年前の光る隕石かも知れやせんね…」

盗賊「…俺は見た事あるぜ?商人と一緒に遺跡探掘に行った事あんだよ…だが動かし方が分からん」

ローグ「な~んかしっくり来ないっす…公爵が欲しがるように思えないんすよね」

盗賊「どういう事よ?」

ローグ「公爵は利益とか興味無いんすよ…扇動するだけなんでやんす」

盗賊「という事はキ・カイに使わせるという事か?」

ローグ「そっちの方がしっくり来るでやんす…ちっとまだ情報が足りないっすね」


『中央ホーム』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「おいクソガキ!適当に玩具買って土産に持って帰るぞ」

少年「マジ!?」

盗賊「ここは安いからな…袋一杯に詰めて持って帰る」

ローグ「盗賊さんはいつハテノ村に戻るんすか?」

盗賊「明日だ…移民との約束があんだ」

ローグ「あっしも一緒に行きやす…ハテノ村まで案内して下せぇ」

盗賊「それなら荷を目一杯積んでけ」

ローグ「何を積んで行けば良いっすかね?」

盗賊「粗方物資は調達したんだが…そうだ魚が安い筈だ…あっちにゃ魚が無ぇ」

ローグ「分かりやした…後アダマンタイト余って居やせんか?」

盗賊「おぉそうだな…確か商人の隠し部屋に色んなサイズが保管していたな…そうそう俺が拾った武器も余ってる」

ローグ「全部積んで行きやす」

少年「チカテツ街道にまだはぐれのギャングが数人残ってる…連れて行って良いか?」

盗賊「おぉ仲間は多い方が良い…直ぐにローグの気球に乗せて待たせろ」

少年「玩具と一緒に明日の朝までに気球に戻る…それで良いか?」

盗賊「遅れんな?…ほらよ!金だ」チャリーン ポイ

少年「必ず戻る」パス スタタ

ローグ「いやぁぁ中々見所のある少年っすね?」

盗賊「だろ?あれで仲間思いなのが良い…なんつーか昔の俺みたいだ」

『商人ギルド』


ザワザワ ガヤガヤ

取引所の一時移転のお知らせ

デパチカ居住区の支店へ一時的に取引所を移転します

露店を出店する際は中央ホームに専用区画を設けてあります


盗賊「やっぱ寒みぃから通常営業は厳しいか?」

受付「地下の方が取引活発なんだよ…遅れると客逃がす」

盗賊「この建屋はどうすんだ?俺は荷物置きっぱなしなんだが…」

受付「しばらく施錠しとく…入るんなら自分で鍵開けて」

盗賊「他の娘と子供達はもう地下行ってんのか?」

受付「もう支店の方で取引開始してんだよ…あたしも行くから早く出てって」

盗賊「俺の荷物出すからちっと待てや」

受付「待てない…あと勝手にやって」ガチャリ

盗賊「ぬあぁなんだアイツ…ちぃ俺一人か」

盗賊「しかし…誰も居無ぇとココも寂しいもんだ」

盗賊「まぁしょうが無ぇか…石炭で暖を取るのも金捨ててる様なもんだしな」


ガチャリ ギー



『隠し部屋』


ゴソゴソ ガチャガチャ


盗賊「錆びを落としゃまぁ一端の武器になる…しかしボルトが重い」ヨッコラ ヨッコラ

盗賊「クロスボウはなんだかんだで使うから全部持って行こう」

盗賊「おぉぉそうそうアダマンタイト忘れる所だっだ…ええと」ゴソゴソ

盗賊「あったあった…しかし商人もガラクタばかりよく集める」

盗賊「んん?何だこりゃ…指示書」ヨミヨミ

盗賊「こりゃ公爵からの指示書じゃ無ぇか…なんでアイツが…」

盗賊「なるほど先物取引の密約か…条件に古文書」

盗賊「公爵が古文書を餌に商人と密約交わしてんのか…なるほど分かってきたぜ」

盗賊「公爵は商人と同じ様な立ち回りすんだな…あいつも表にゃ出無ぇ」

盗賊「つまり影武者が沢山居る訳だ…用心し無ぇとな」

盗賊「古文書らしき書物が見当たらんという事は…あいつ持ち歩いてんのか?」

盗賊「どうやら公爵とやり合うなら商人が肝になりそうだ」

盗賊「くそうタイミングが悪りぃ…まぁ一旦様子見か」

『貨物用気球_改』


ガタゴト ガタゴト


盗賊「武器持って来たぜ?乗せとくぞ」ドスン

ローグ「炉に火が入って居やす…ちっと温まって行って下せぇ」

盗賊「おう!!死ぬほど寒いな」ガチガチ

ローグ「あっしは早速クロスボウセットして来やす」ガチャ ガチャ

盗賊「んん?どうしたのよ?」

ローグ「どうやらあっしは見張られてるみたいでやんす」

盗賊「やられる前にヤレ」

ローグ「もう懲らしめてやったんで近付いては来ないでやんすよ」

盗賊「誰だったんだ?」

ローグ「豪族の密偵っすね」

盗賊「まぁデカイ気球使って何処に行くのか気になるんだろうな?」

ローグ「商人ギルドの方は明かりが消えているみたいでやんすが?」

盗賊「デパチカ居住区にしばらく移転だとよ…もう商人ギルドの建屋には誰も居無ぇぞ」

ローグ「寒すぎっすもんね…豪族に襲われないのもこの寒さのお陰かも知れやせん」

盗賊「ぬはは違い無ぇ…こっちはヌクヌククロスボウで応戦すりゃ手も足も出んわ」

ローグ「この昼か夜か分からない天候は何なんすかねぇ」

盗賊「もうちっとの辛抱だ…ハテノ村は温泉が合ってな…酒場もあって天国よ」

ローグ「そら楽しみっすわ…そうそうフィン・イッシュ産の芋酒を樽で仕入れときやした…飲みやすか?」

盗賊「一杯だけな…飲むと寝過ごしちまうから」

『翌朝?』


タッタッタ


盗賊「ローグ!クソガキ共は気球に乗ったか?」

ローグ「寝てるでやんすよ」

盗賊「クソガキ!!お前何やってんだ」ドガ

少年「うぐぅ…」

盗賊「お前が気球操作すんだろ!寝てんじゃ無ぇ!!」グイ

少年「マジか…」ヨロ

盗賊「ほんでローグ…簡単な地図書いてきた…飛んだら直ぐに狭間に入って移動しろ」

ローグ「案内してくれるんじゃ無かったんすか?」

盗賊「途中で合流だ…羅針盤は使え無ぇからその地図通りの目標目指せ」

ローグ「火山目指すんすね?…えーと初めに見えた川沿いに…」

盗賊「そうだ…川沿いに上流目指すと大きな湖がある…その真ん中で合流だ」

ローグ「分かりやした」

盗賊「他の小さい気球も火入れが始まってる…追いかけてくんぞ?」

ローグ「マジっすか…」

盗賊「ガキ共起こしてクロスボウでも撃たせろ…兎に角上手く撒け…じゃ行くぞ!」ダダ

『貨物用気球』


フワフワ パタパタ


盗賊「本当遅せぇなこの気球は…おいクソガキ!縦帆を3番目に結び変えて風を横に受けろ」

少年「3番…3番…」ドタバタ

移民達「だ…大丈夫でしょうか?」

盗賊「あぁ心配すんな…お前等は暖かい所で食事でもしていて良いぞ」

少年「縦帆で風受けたぁ!!」

盗賊「よしよし…このまま斜め方向で良い…俺はデッキに出る!クソガキは後方のクロスボウ用意しとけ」ダダ

少年「分かった…」ドタドタ

盗賊「やっぱ小さいの追って来てる…この距離じゃクロスボウ当てるの無理だな」

少年「どうする?」

盗賊「上昇!!炉に石炭突っ込んでふいご踏め!!撃ち下ろしにする」

少年「…」ガッサ ガッサ


フワフワ フワフワ


盗賊「そのまま上昇続けろ…クソガキ!見てろよ?ドラゴンでもぶっ殺せる俺の武器だ」

少年「え…」

盗賊「行くぞ…」ガチャリ


バーン! ジャラジャラ


盗賊「ぬははは…こりゃ良い!ちっと銅貨が勿体無いがクロスボウ12発撃ったのと同等だ」カチャカチャ

少年「当たった?」

盗賊「分からん…だが何回でも撃てるぞ?」ガチャリ


バーン! ジャラジャラ


少年「当たってるかどうか分からない…」

盗賊「気球はな?何か撃って来られると離れるしか無い訳よ…球皮傷んだら無事じゃ済まないからな?」ガチャリ


バーン! ジャラジャラ


少年「本当だ…追って来なくなった」

盗賊「ようし!距離が開いたら狭間に入る…」

少年「すげぇ…たった3発撃って追っ手を退けた…」

盗賊「36発だ…クロスボウのボルトが36発降って来て近づこうなぞとは思わん…さて狭間に入る!ハイディング!」スゥ


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『湖の上空』


フワフワ パタパタ


盗賊「やっぱ向こうの気球の方が帆がデカい分早いな…」

少年「ローグが手を振ってる」

盗賊「ロープで連結させて引っ張らせる…ローグ!!ロープ受け取れぇぇぇ!!」グルグル ビュン


ローグ「あららららら‥‥あっぶ!!」パス

盗賊「そっちの気球の方が早いから引っ張ってくれぇ」

ローグ「あいさー」グイグイ ギュゥゥ

盗賊「向こうの山間を尾根沿いの飛べ!!」

ローグ「へ~い!!」ダダ

盗賊「クソガキ!気球の操作は分かるな?高度だけ向こうの気球に合わせろ」

少年「あぁ…縦帆は?」

盗賊「工夫してヤレ…あんまり足引っ張んない様にな?」

少年「盗賊はどうする?」

盗賊「俺はロープ伝って向こうで酒飲んでくる…まぁこっちは任せた」

少年「えええええ!?マジか…」

盗賊「まぁすぐ戻って来るから心配すんな…上手くヤレ」ダダ

『貨物用気球_改』


フワフワ バサバサ


盗賊「…なるほどプロペラは使って無いか」

ローグ「低速の時だけっすね…姉さんの飛空艇より遅いっすが操舵が同じなんで慣れて居やす」

盗賊「俺もハテノ村付いたら改造するわ」

ローグ「風の具合によるんで確実に進むならプロペラも捨てたもんじゃ無いかと」

盗賊「欠点は帆の結び替えでいちいちデッキに出なきゃならん事か」

ローグ「そーっすね…死ぬほど寒いっす…もたもたしてると手が凍傷に掛かっちやいやす」

盗賊「俺は酒を飲みに来たんだがよ?」

ローグ「飲んで行って下せぇ…子供達が騒いでいやすが…」


カーン カーン キーン


盗賊「ごるぁぁ!!武器はおもちゃじゃ無ぇぞ!!当たったらお前等死ぬぞ」

子供達「ひぇぇぇぇ…」ドタドタ

盗賊「なんだこの食いカスは!!」

ローグ「あぁぁそれ魚が凍ってて焼けなかったんすよ…ちっと子供達に料理は無理でやんした」

盗賊「お前等見てろ!魚が凍ってたらマズぶった切れ!」スパスパ

子供達「…」ポカーン

盗賊「ほんでナイフにぶっ刺す!焼く!食う!」ジュゥゥゥ

子供達「…」ジュルリ

盗賊「酒だ酒!!酒持って来い」

子供達「…」ソローリ

盗賊「出来るじゃ無ぇか…」グビ プハァ

子供達「魚…欲しい」

盗賊「おぉ食え食え…俺ぁ魚がキライなんだ」

ローグ「済まんでやんす…食い物が魚しか無いもんすから」

子供達「うんま!!うんま!!」モグモグ

盗賊「もうちっと我慢しろ?ハテノ村に着いたら美味いもの沢山あるぞ?」

子供達「美味いものって何?それ食べられる?」モグモグ


---なるほど…ゴミしか食った事無い訳か---

---こりゃ鍛え甲斐がありそうだ---



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フワフワ バサバサ


ローグ「太陽がずーっと低い位置にあるでやんす」

盗賊「そろそろ日没の筈なんだがな…やっぱ南極付近な訳か」

ローグ「月が全然違う所にあるのは奇妙っすね」

盗賊「何が起きてるのかさっぱりだな?まぁ…まだ生きてる訳だからどうにかなるかヌハハ」グビグビ

ローグ「後ろの気球は少年に任せておいて良いんすか?」

盗賊「あっちは大人が6人乗ってんだ…大丈夫だろ?」

ローグ「見た所2家族で合計11人…少年入れて12人…どんな移民なんすか?」

盗賊「片方は鉱夫でもう片方は元傭兵なんだとよ」

ローグ「商船が動かないもんだから傭兵が稼ぎ無くなった感じなんすね?」

盗賊「まぁそういうこった…そもそも傭兵だけじゃ家族は養えんけどな」

ローグ「なーんかそういう移民が増えそうっすね?」

盗賊「うむ…だがハテノ村も沢山家がある訳じゃ無いんだ…俺らはこの気球に寝泊まりする事になる」

ローグ「あっしはこの気球が気に入りやした…荷物も載せて人も12人乗れるんすからね」

盗賊「もうちっと温い所だとデッキで酒飲むのも良さそうだ…まぁちょっとした船みたいなもんだな」

ローグ「そういやあっしは船を一杯持ってるんすよね…奴隷船なんすが」

盗賊「そら羨ましい…何処に停船してんだ?」

ローグ「今頃フィン・イッシュに4隻…港町に4隻…あとは何処にいるか分からんす」

盗賊「奴隷商を雇ってんだな?」

ローグ「そーっすね…船を貸して奴隷を移送してるんすよ」

盗賊「また奴隷商売とはゲスい事やってんだな?」

ローグ「いやいやいや…地軸の移動を想定して強制退避させてるんすよ…慈善事業ですわ」

盗賊「ほーん…それで略奪品は豪族に回る訳か」

ローグ「そこはしょうがないっす…でも貧しい村よりも資源の豊富な街で暮らした方が生きるのがずっとラクな筈なんす」

盗賊「まぁ南極になっちまうなら仕方無ぇという見方もあるけどな」

ローグ「あっしも強制退去させるのはちっと心苦しい所もあるんすが心を鬼にして…」

『数日後』


フワフワ バサバサ


ローグ「ここらは低木ばかりで目印はなーんもありゃしやせんね」

盗賊「もうちょい行ったら尾根の谷間に沢山木が生えてる…そこがハテノ村よ」

ローグ「あ!!あそこの煙上がってる所っすね?」

盗賊「うむ…毎回来るたびに木が増えてるんだが今回は花も増えて居そうだ」

ローグ「ずっと雪ばっかりだったんで花なんか珍しいっすわ」

盗賊「しかし大分温くなった」

ローグ「高度下げたら丁度良い暖かさかも知れやせん」

盗賊「そろそろ炉を止めるか…俺は後ろの気球にもどるから上手い事誘導してくれ」

ローグ「へい!!」

『ハテノ村』


フワフワ ドッスン


盗賊「こりゃえらく歓迎じゃねぇか…子供達全員か?」

魔法使い「気球は遊び場だから…」

盗賊「おい!クソガキ!!例の玩具を配ってやれ」

少年「あぁ分かってる…みんなこっちだ」


ウキャァァァァ ドタドタ


影武者「物資の移送お疲れ様…売れ行きはどうだったかな?」

盗賊「…見ろ!調達が終わってもこんだけ余ってる」ドスン ジャラリ

影武者「相場が知りたいな」

盗賊「硫黄がクソ高く売れる…木材は高いっちゃ高いが運搬効率が悪いからヤメだ…石炭は安定で高値」

影武者「ハテノ酒は?」

盗賊「なんだそっちのが気になるんか?樽4つで金貨5枚…まぁまぁだろ?」

影武者「評判は?」

盗賊「速攻売り切れたらしい…でも硫黄に比べりゃ運搬効率は悪い」

影武者「まぁお酒だとそうだね…硫黄がいつまで高値が付くか分からないから安定収入を考えたいのさ」

盗賊「魔法使いが作ったポーションの方が稼げるぞ?金持ちが速攻買って行きやがった」

魔法使い「大量に作れないのよ」

盗賊「そうか…酒の方が簡単か…ほんで買取もバッチリ全部積んで来たぜ?」

影武者「確認する…あれ?武器と魚も?」ガチャ ガチャ

盗賊「ローグも同じ気球を買ったんだ…空で戻って来るのも勿体ないから適当に物資積んで来た」

影武者「気球がもう一台増えるのは大きいな…武器も丁度欲しかった」

魔法使い「2キロほど川を下った湖まで村を拡張しようとしているの…資材を運搬したかった所」

盗賊「ここじゃ家を建築するスペースが足りんか」

魔法使い「それもあるけど海賊王のお爺さんは船を使った物流をやりたいみたい」

盗賊「なるほど…村の発展には丁度良い訳か」

魔法使い「建屋が増えれば移民ももう少し受け入れられるし…」

盗賊「2家族連れて来たぜ?鉱夫と傭兵だ…住む場所へ案内してくれ」

魔法使い「分かったわ…皆さん荷物を持って付いて来て下さい…空き家の方へご案内します」


ゾロゾロ

うわぁぁなんか良さそうな村ね

思っていたよりちゃんとしてそうだ

見て!お店で食事してる

コラコラ指を指しちゃイカン

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「ここがハテノ村自慢の酒場だ…俺の家みたいなもんだ」

ローグ「ほえぇぇ?ちゃんと作ってありやすね…」

女将「いらっしゃいませでし!!いやいや…おかえりなさいでし!!」

盗賊「例の酒振舞ってやってくれぃ」

女将「はいなー」スタタ

盗賊「しかし随分雑貨が増えたな?」

影武者「剣士さんが作ってくれているんだ」

盗賊「なぬ!?剣士がこの村に戻ってんのか…俺ぁてっきり幽霊船探しに行ったと思ってたわ」

ローグ「じゃぁ商人さんも戻って来たんすね?」

影武者「商人は戻って居ないよ」

盗賊「剣士は何処よ?さっきは見かけなかったぞ?」

影武者「上の遺跡に籠りっ放しさ…なんでも星の観測をやっているそうだよ」

盗賊「航海術の基本だ…地軸の移動を計算してるんだな」

女将「ハテノ酒とつまみの虫焼きどうぞー!!」ドン

盗賊「なんだこりゃ…バッタを焼いてんのか?」

影武者「ハハ中々美味しいんだよ…醸造で余った酒粕にバッタを漬け込んで焼くんだ」

女将「食料の節約でし…そのバッタは作物食べるので逮捕したです」

ローグ「あ!!本当っすね香ばしくて美味いっすよコレ」バリバリ

盗賊「こりゃ食料に困る事は無さそうだ」グビ プハァ

影武者「どう?ハテノ酒美味しくなって居ないかい?」

盗賊「アルコールが増えていっぱしの酒になったじゃ無ぇか」グビ

影武者「少し寝かせてから醸造するんだよ…このお酒のお陰ですごく儲かってる」

盗賊「儲かる?」

影武者「ドワーフの鉱山労働者が毎日酒場に来る様になってね…お酒を出せばお金が入る…お金で硫黄を安く買う」

ローグ「これあっしらもお金払うでやんすか?」

女将「食い逃げは逮捕するでし!!」ビシ

影武者「ハハ今日は僕が払っておくよ」

盗賊「さすがだな…もう流通が成り立ってるんか」

影武者「儲かるし上手く行くし楽しくってさ…そうそう香辛料も充実したからもっと上手に虫料理が出来そうだ」

盗賊「虫ねぇ…」

女将「影武者さんは虫の食べ方を良く知ってるですよ…子供達も虫を嫌わないで食べてくれるでしゅ」

影武者「なるほどな…ゴミ食って生きてた奴らはこういう才能もある訳か…見習わねぇとな?」

『広場』


じゃぁお願いします…


盗賊「おぉ傭兵の夫婦そろって早速仕事か?」

魔法使い「村の警備をお願いしたの」

盗賊「んん?警備が必要な程危なくは無さそうだが?」

魔法使い「流民がポツポツ来る様になって一応の警戒よ」

盗賊「ほぅ?どっから来てんのよ?」

魔法使い「近隣にはまだ小さな村がいくつもあるのよ…食料難で流れて来てる」

盗賊「じゃぁ丁度武器を持って来て良かったな」

魔法使い「ハンターが言うには昔の兵隊駐屯跡地にも何か住み着いて居るって…」

盗賊「ほんじゃ物資調達にゃ丁度良いじゃ無ぇか…弾薬とか残ってるかも知れん…どこにあんのよ?」

魔法使い「川向うの丘を越えた先…オークとの激戦区だった筈」

盗賊「オークか…あんまり関わりたく無ぇな」

魔法使い「オークとは今の所良い付き合いだから刺激しない方が良いと思う」

盗賊「良い付き合いってどういう事だ?」

魔法使い「どんぐりとか毒キノコを村の外に出しておくと代わりに薬草を置いて行ってくれるのよ…最近では動物の毛皮とかも」

盗賊「なるほどその関係は続けた方が良さそうだ…ドワーフの気球がウロウロしてるこの村に攻め入る事は無いだろう」

魔法使い「そういう風に見えるんだ?」

盗賊「ここの立地だと気球から弓でも撃たれりゃそうそう侵略出来ん…ドワーフの気球は抑止力になってるな」


タッタッタ


影武者「盗賊!気球で物資の移送をお願いしたい」

盗賊「ぬぁ!?今帰って来たばかりで又キ・カイに行かせるつもりか?嫌なこった!ちっと休ませろ」

影武者「あぁ違う違う…上の遺跡から石の建材を運んで欲しいんだよ」

盗賊「石の建材?」

影武者「ヘラジカの引っ張る荷車じゃ往復で効率が悪いのさ…貨物用の気球なら一気に運べる」

盗賊「そうか…まぁ剣士にも会いたかった所だ」

影武者「2往復で全部移送できると思う…お願いするよ」

盗賊「荷の出し入れは人駆用意しとけ?俺ばっかりに重労働させんなよ?」

影武者「分かった分かった」

盗賊「てか石の建材なんかなんで遺跡にあるんだ?発掘してんのか?」

影武者「話して無かったね…上の鍛冶場から出る鉱石の屑から作ってるのさ…これから作る建屋は石の建材で組むんだよ」

盗賊「なるほどゴミの再利用って訳か…こんな田舎で石造りの建屋とはまた豪華だな」

影武者「炭坑が賑やかなうちは建材も沢山作れるからどんどん消費しないと…」

盗賊「ほんじやちっと遺跡まで行って来る…じゃぁな」

『古代遺跡外_鍛冶場』


シュゴーーーー モクモクモク


鉄のた~めなら~♪え~んやこ~ら♪

おいらはかっじや~♪おしゃれなか~じや~♪


盗賊「お~い!!石の建材運びに来たんだがよ…どれだ?」

ドワーフ「そこに積んである石は全部運んでかまわん~で~♪」

盗賊「どわ…これはでかい釜戸じゃ無ぇのか…こら2往復じゃ無理だな」

ドワーフ「置き場に困っておルンルン♪早く運ん~で♪くださ~いな~~♪」

盗賊「ローグ!これが全部そうだとよ…気球に積むぞ」ヨッコラ

ローグ「盗賊さん…この石意外と軽くないっすか?」ヨッコラ

ドワーフ「多孔石が混ざってルン♪軽くて丈夫な建材だよん」

盗賊「軽石ってやつが混ざってる訳な…まぁ良いとりあえず乗せれるだけ乗せてちゃっちゃと運ぶぞ」エッホ エッホ

ローグ「全部炭坑から出たゴミで作ってるんすね」ヨッコラ

盗賊「保温性も良さそうな建材だ…ザラザラだけ我慢すりゃ良い家になりそうだ」ヨッコラ

ローグ「この重さなら2往復でなんとか…」

盗賊「日が暮れちまう…急ぐぞ」エッホエッホ


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『古代遺跡内』


アブラカタブラ ドーニカオマモリクダサイ


盗賊「…遺跡に籠って何やってんだお前」

女オーク「…」

剣士「盗賊さんか…帰って来てたんだね?」

盗賊「おま…こりゃ何の儀式よ?女オークを奉ってんのか?」

剣士「魔方陣で厄災から守ってるんだ」

盗賊「何の厄災よ?外じゃ皆働いてんぞ?」

剣士「うるさいなぁ…厄災から女オークを守るのが僕の仕事さ」

盗賊「星の観測はどうなってんだ?直に日没なんだが…」

剣士「もうそんな時間か…行かなきゃ」

盗賊「えーとだな…俺ぁお前に会いに来たんだが…なんつーかお前はマイペース過ぎてだな」

剣士「あぁそうか!ゴメンよ何の用だった?」

盗賊「ぬははまぁ良い…ほんで星の観測で何か分かったか?」

剣士「地軸の移動速度が遅くなってるさ…やっぱり4000年前と同じ様に90°回転して止まりそうだよ」

盗賊「キ・カイが死ぬほど寒くなってんのよ」

剣士「もう南極点は通過した筈だからこれからもう少し暖かくなると思う」

盗賊「やっぱそんな事になってんだな…最終的な南極点はどこになりそうだ?」

剣士「海士島とセントラルの間だと思う…元々の地図の精度が良く分からないから大体その辺としか言えない」

盗賊「机に広げてあるのが新しい地図だな?」

剣士「うん…北の方角がズレてるから見る時に注意」

盗賊「こりゃもう一回書き直したほうが良いな」

剣士「ハテノ村は過ごしやすい緯度に位置するようになった…キ・カイは寒くて厳しいだろうね」

盗賊「あっちは地下があって奥が広いからなんとかなりそうだぜ?」

剣士「多少寒くても問題無いのか」

盗賊「キ・カイの軍船が内海を航海出来る様だから物流も止まるって事は無さそうだ」

剣士「じゃぁ深刻なのはセントラルぐらいか…」

盗賊「その件でお前に会いに来たんだ…ちっとセントラルに行きてぇのよ」

剣士「地軸が安定すれば行けない事も無い…偏西風に乗って外海を飛び越えればフィン・イッシュ…そこまで行けば簡単さ」

盗賊「地図でみるとやたら遠いな」

剣士「外海が大きすぎるよね…でもどうしてセントラルに?」

盗賊「話はちっと長いんだ…お前も星の観測があるんだろ?俺も温泉に入りてぇ…話は明日だな」

剣士「おけおけ…温泉に入るなら今の内に行かないと真っ黒になったドワーフ達が来ちゃうよ」

盗賊「そら急が無ぇとな…まぁ今晩は酒場でグダグダしてるからお前もたまには顔を出せ」

剣士「わかったよ」

盗賊「おっし!ローグ!温泉行くぞ!!」ダダ

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


ローグ「いやぁぁぁ温泉に入って…ハテノ酒飲んで…虫の串焼き…最高っすね」グビ ムシャムシャ

女将「最近は毎日こんな感じなのです」

ローグ「酒場の外でもお祭り騒ぎなんすね?」

女将「ハンターさんが焚火で色々焼いてくれてましゅ」

盗賊「はぁぁぁ後は楽器だな…リュートでも聞きながらこうグダグダと飲みながら寝る訳よ」グビ

ローグ「良いっすね…体力全快しそうっす」グビ

盗賊「ドワーフの連中が鉱山から降りて来て酒は足りてるのか?」

女将「ギリギリでし」

盗賊「毎日作ってんなら小麦足りなくなら無ぇか?」

女将「芋が沢山余ってるので大丈夫です」

盗賊「ほーこの酒は芋も混ざってんのか…道理でアルコールがきつくなった訳だ」グビ

女将「醸造で残った酒粕も全部食用で使い切れるです」

ローグ「このチーズみたいな奴っすね?」

女将「それをパンに乗せて焼くのもおいしいです」

盗賊「俺ぁそのパン食いながらワインを飲みてぇ…パンとチーズとワイン」ジュルリ

ローグ「それにしてもなんちゅー平和な村なんすかねぇ…キ・カイとは大違いっすね」

盗賊「自給自足できるってのは良いもんだ」


スタスタ


女将「あ!!剣士さん…降りて来たんでしゅね」

剣士「空いてるかい?2人分」

女将「どうぞどうぞ座ってくださいまし…カウンター空いてるです」

剣士「例のお酒2杯頼むよ…」ジャラリ

女将「はいなー!!」

盗賊「星の観測はもう終わったのか?」

剣士「時間測ってるんだ…しばらく暇になる」

盗賊「しかしお前…只者じゃない雰囲気が出てんなヌハハ…女オークも風格出て近寄り難いぞ?」

剣士「まだ村に馴染めて居ないって事さ…女オーク座って?」

女オーク「…」ドッシリ

女将「どうぞー!!ハテノ酒2杯でし!!」ドン

ローグ「はぁぁなんか2人とも恰好良いっすねぇ…いかにも強そうな感じ出てるっすよ」

剣士「変な事言わないでよ」グビ

女将「剣士さん久しぶりなので皆呼んで来ましょうか?」

剣士「あー気を使わせたくない…今日はちょっと飲んだら戻るから」

盗賊「まぁくつろごうぜ?ほら虫の串焼きでも食え」

剣士「ハハ…バッタかぁ…作物荒らされてない?増えすぎる前に退治しないと種まで食べられちゃう」

ローグ「あっしらが食っちやいやしょう…あっしはこの串焼き好きでやんす」ムシャムシャ

剣士「肉の代わりに丁度良いね…ワームよりも調理しやすいし」

盗賊「どうやら虫のお陰で食料難は解決してそうだな?」

女将「そうですねぇ…小麦の消費は半分くらいになってるですよ」

剣士「それで盗賊さん…今なら話を聞けるけど?」

盗賊「んぁ?別に急ぎじゃ無いから明日でも良い」

ローグ「あっしが話やしょうか?アダムに関連するかもしれやせんので剣士君も興味あるかもしれやせん」

剣士「アダムに?話して…」

ローグ「ええとですね…話は20年さかのぼるんすがね?…」


カクカク シカジカ


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剣士「冒険の書がもう一冊ある…そうか精霊と時の王がそれぞれ一冊持って居たのか」

ローグ「…それで20年前から起きている事件はみんな公爵が関連していると思うんすよ」

盗賊「まぁそういう訳で公爵が持って居るお宝を俺が全部盗む…それでセントラルに行きたい訳よ」

剣士「理由は分かった…只ね?冒険の書は未来を見るだけの物では無いんだよ?」

ローグ「ええ?どういう事っすか?」

剣士「魔女も冒険の書を読んでるんだけど…大昔の物語だったそうだよ」

ローグ「読む人によって変わるんすね?」

剣士「情報屋さんも読んでるのさ…未来じゃ無くて過去の物語…多分精霊の記憶の一部を覗けるアイテムなんだ」

ローグ「そうだったんすね…てっきり予言の書だと思っていやした」

剣士「でも過去の物語の中で未来の予言があったなら間接的に未来を知ってる可能性はある…それは公爵に聞いて確かめたいかな」

盗賊「ヌハハ直接聞くんか?」

剣士「僕は魔術師だよ…幻術が得意な魔術師ね」

盗賊「怖えぇ怖えぇ…嘘は付けないってこったな?」

剣士「僕もちょっと興味出て来た…アダムの秘密を知ってる可能性が有るみたいだからね」

盗賊「お前が一緒だと俺も安心だ…白狼の盗賊団…今なら復活しても良いぜ?」

剣士「僕と女オーク…盗賊さんにローグさんで丁度4人か」

ローグ「えええ?あっしも?」

剣士「だって目の前に要るじゃない」

盗賊「決まりだな?」

剣士「どっちにしても地軸の移動が落ち着くまではここに居た方が良いよ…飛空艇でも迷っちゃうから」

盗賊「違い無ぇ…しばらく休暇だ」

ローグ「安心しやした…もうちっと幸せを満喫したいでやんす」ムシャムシャ

『数日後』


チュンチュン ピヨ


盗賊「言われた通り俺の気球は下流の湖に置いて来た…あそこに拠点作るんだな?」

影武者「そうらしい…今ドワーフ達が道を整備しているよ」

盗賊「下流の2キロ圏内がハテノ村って感じか…」

影武者「うん…作物も川沿いで育てる」

盗賊「ポツポツ生えてる大木は目印だな?」

影武者「あれは魔法使いが植えてくれてるんだ…領地の目安だね」

盗賊「まぁドワーフ達は建築が早いわ…あっちゅー間にいろいろ建てやがる」

影武者「すごいよね…開拓に慣れているんだよ」

盗賊「ここは石炭も鉄も豊富だし開拓しやすいのかも知れんな」

影武者「魔術師が2人居るのが大きいよ…木材と食料の調達はあの2人が要さ」

盗賊「今ハテノ村の人口は50くらいか?」

影武者「子供達合わせて60かな…ドワーフも入れると100人くらいさ」

盗賊「下流まで開拓進みゃ200人ぐらいの規模か」

影武者「もっと住めると思う…あの石の建材で作る建屋は2階建てに出来るんだ」

盗賊「じゃぁ倍って事か」

影武者「そうだね…そこまで増えれば立派な街として機能する」

盗賊「ついこの間まで何も無ぇ村だったのにな?」

影武者「フフ楽しみだよね?」

盗賊「うむ…オークもこっちに住みゃ良いのにな?」

影武者「魔法使いはそれも考えて居る様だよ…そうそうハテノ酒…これを村の外に置いて居るんだ」

盗賊「なぬ?オークに献上か?」

影武者「原料が小麦と芋とキノコ…全部オークの好みの食材なのさ」

盗賊「なるほど…友好の酒か…何が返って来るか楽しみだなヌハハ」

影武者「オークが味方だと賊から襲われ難いよね?…それと何がトレード出来るのかも楽しみなんだ」

盗賊「オークといえば牙とか角の類だな…ケバケバの衣装もあるな」

影武者「ドワーフが言ってたんだけどオークが使う武器は特殊な細工がしてあるらしい」

盗賊「細工?あのクソでかい武器に細工?」

影武者「それが知りたいみたい」

盗賊「牙とか仕込んであるだけに見えるがそんな珍しい物か?」

影武者「さぁね?エンチャントでもしてあるのかもね」

盗賊「ほーん…ほんで?今日は俺の仕事は終わりか?」

影武者「子供達が武器の使い方を教えて欲しい様だよ?行って見たら?」

『教会の裏』


ヒュンヒュン バシーン


そうそう!次の石を準備する動作はもっと早く

姉御!盾持って動く的お願い

分かった…来い!!



盗賊「ほぉぉぉ?スリングの練習か」

少年「あ!盗賊!!」

盗賊「動く的は良いがちっと危ないんじゃ無ぇか?投石あたったら怪我すんぞ?」

少年「小さい子にはスリングが一番良いと思った…接近された場合どうすれば?」

盗賊「うむ…スリングの選択は正しい…まずはそれを極めろ」

少年「投石を外したらどうするんだよ」

盗賊「腰にナイフを持っとけ…見てろこんな感じだ」


右手でスリング使うだろ?

接近された場合は左手でナイフを逆手に抜くんだ

まぁ護身用だな

格闘戦はお前等じゃもうちっと大きくなるまで無理だ


少年「左手でナイフを逆手に…」スチャ

盗賊「おう!そんな感じよ…まぁ狩りでも良く使うからナイフだけは護身用で持って居て問題ない」

少年「分かった…」

盗賊「しかしスリングの練習たぁ関心する…2~3人で投石すりゃ並みの賊なら撃退出来る」

少年「これでクマは倒せないかな?」

盗賊「頭部に当てりゃイケる…要は命中率だな?」

少年「ようし!練習続けよう!!」

盗賊「待て待て…動く的は危ねぇ」

オークの子「これは実践練習なんだ…私の練習でもある」

盗賊「スリングなんか見て避けれる速さじゃ無いだろ」

オークの子「急所を外すだけで良い」

盗賊「それじゃ怪我すんだろ?」

オークの子「私が囮になる作戦なんだ黙って見てて!」

盗賊「あぁぁ…なるほどな?…一人囮になって全員で投石する作戦か…ほんで自分は急所だけ守る」

オークの子「…」

盗賊「分かった…お前にコレをやる」ポイ

オークの子「角?」

盗賊「その角にゃ回復魔法のエンチャントが掛かってんだ…怪我しても直ぐに良くなる」

オークの子「あ…ありがとう」

盗賊「まぁ俺は黙って見てるわ…続けてやってみろ」

少年「よっし!!じゃぁ配置について」

盗賊「…」


---オークの気高さか---

---自己犠牲で守る姿が眩しいじゃ無ぇか---

---こりゃガキ共の自警団も馬鹿に出来んわ---



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オークの子「つつつ…」

盗賊「見せてみろ…なるほど全部急所は外してるが…痛いだろう?」

オークの子「これぐらい直ぐに治る…私は他の子と違って丈夫なんだ…傷の治りも早い」

盗賊「まぁその角を上手く使え」

オークの子「…」

盗賊「よし分かった…お前に剣と盾の使い方を教えてやる」

オークの子「え?」

盗賊「まぁ立て…俺の攻撃をまず防いでみろ」スチャ

オークの子「…」スック

盗賊「行くぜ?」ダダ


ビシ バシ バシ


盗賊「木の棒じゃなきゃ死んでるぞ?しっかり見て防げ」ダダ


カン カン コン


盗賊「ふむ…まぁ良い…続けて行くぜ?」

オークの子「…」タラリ


カン カン バシッ


オークの子「え!?どうして…」グラリ

盗賊「死角が疎かになってんだ…自分の死角がどこになるか意識しろ…そこを剣で防げ」


カン カン コン


盗賊「まぁちゃんと防御すりゃなかなか攻撃は当たらんのよ…まずはしっかり防ぐ練習からだ…行くぜ?」ダダ


--------------

--------------

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姉御と盗賊が戦ってるよ

やられっぱなしだぁ

でもちゃんと防いでるっぽい

行けぇ姉御ぉぉ



盗賊「ふぅ…どうやらお前は体幹が柔らかい…もっと低く構えてみろ」

オークの子「こうか?」グググ

盗賊「もっと低く出来るだろう?四足獣になったつもりで構えろ」

オークの子「…」グググ

盗賊「そんだけ低いと俺の攻撃は上からしか来ない…防ぐのは簡単になる筈だ」

盗賊「ほんでな?その姿勢から俺に突進してみろ…来い!」

オークの子「…」ダダ ドシン

盗賊「こりゃまるでイノシシだな…今見えただろ?攻撃の糸口が」

オークの子「うん…」

盗賊「お前はな?その低い姿勢からの突進が決め手になる…兎に角低く守って相手の隙を見つけろ」

オークの子「分かった…」

盗賊「じゃぁもう一回行くぞ?」ダダ


カン カン コン ビシ バシ

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


ローグ「あ!!盗賊さん何処に行ってたんすか」

盗賊「おぉ教会の裏でちっとガキ共と立ち回りをな?」

ローグ「ええ?子供相手にっすか?」

盗賊「いやいやあのガキ共なかなか団結しててな…こりゃ下手な賊が来ても追い払うぞ?」

ローグ「マジっすか…」

盗賊「20人くらいのガキがが一斉にスリング使ってるのを想像してみろ」

ローグ「うは…近寄れやせんね」

盗賊「だろ?ほんでハーフオークのガキが又強い訳よ…普段から炭坑手伝ってるのもあるんだろうな」

ローグ「スリングは上手く使えば弓より飛距離出せやすぜ?」

盗賊「だな?爆弾でも投げりゃ正規軍とだって良い勝負になる」

ローグ「子供に爆弾は危ないっすねぇ」

盗賊「ギャング上がりなもんで割と色々知ってんだよ…スリングをチョイスすんのもそういう経験なんだろう」

女将「剣士さんがもう煙玉の作り方教えてたです」

盗賊「…煙玉…なるほど目くらましした後にスリングで投石すんのか」

ローグ「数撃ちゃ当たりやすもんね」

盗賊「な~んか…この村はもうガキ共に任せても良い気がして来た」

女将「私がお母さんの代わりなのでしゅ…お任せくだしゃい」

盗賊「そうだな…酒くれ酒ぇ」

女将「はいなー!!」スタタ


アオーーーン アオーーーーン


盗賊「ん?ウルフの遠吠え…」ガタッ

ローグ「…これ敵が入って来た合図じゃないっすか?」

盗賊「様子見に行くぞ」ダダ

『広場』


ザワザワ

上だ!ガーゴイルが飛んでる!

女子供は教会に避難しろぉぉ!!

弓を使える人は弓を持て!!

教会の上にクロスボウが設置してある



盗賊「何匹居るんだ?」

魔法使い「5匹くらいよ」

盗賊「お前は魔法撃てるな?」

ローグ「なんでガーゴイルなんか居るんすかね?」

魔法使い「前からちょくちょく来てるの…今日は数が多い」

ローグ「ガーゴイルは黄泉の魔物っすよ?」

魔法使い「何処かの狭間から迷い込んでいるのよきっと…」

盗賊「暗くなってきて良く見えんな」


シュタタ シュタタ


盗賊「おう!剣士…来たか」

剣士「オークも襲われているらしい」

盗賊「さっきの遠吠えがそうか?」

剣士「うん…僕と女オークは応援に行く…こっちは任せるよ」

盗賊「任せるっておい…」

剣士「オークは飛んでる敵に何も出来ない…ハテノ村は弓もクロスボウもある」

盗賊「ぬぁぁまぁしょうが無ぇな…」

剣士「ちょっと待ってね…夜光虫!従え…飛んでいるガーゴイルに取り付け」ブーン

ローグ「おぉ地面から光が昇って行くでやんす」

盗賊「おぉ!!」

剣士「これで目標を見失わない…近寄って来たら弓で撃てば良い…ガーゴイルは倒したら燃やして?病気を持ってる」

魔法使い「わかったわ…」

剣士「女オーク!急ごうか…オークの集落まで走るよ」

女オーク「うん…」

剣士「じゃぁ行って来る…」シュタタ


--------------

タッタッタ


ローグ「弓と矢を持って来やした…使って下せぇ」ポイ

盗賊「おう!!なかなか降りて来無ぇ…イライラすんな」


ドーーン パーン


盗賊「うお!!花火かよ…ドワーフが遺跡から撃ってんのか」

ローグ「効果ありっすね…火花がガーゴイルに当たっていやす」

魔法使い「ガーゴイルが急降下してくるわ!!狙い撃って」

盗賊「分かってらぁ」ギリリ シュン

ローグ「あっしも…」ギリリ シュン

魔法使い「外れてるじゃない!…火炎魔法!」ゴゥ ボボボ

ガーゴイル「ギャァァァァ…」バッサ バッサ

盗賊「くっそ!こっちは無視か…」

魔法使い「教会の方ね…移動しましょう」


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


ローグ「おぉ!!スリングの投石っすよ…」

盗賊「やるなあいつ等…」


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


ガーゴイル「ギャァァァァ…」ドサーーーー

盗賊「落ちた!!ぶっ殺せ!!」ダダダ グサ

魔法使い「どいて!!燃やす…火炎魔法!」ゴウ ボボボボ

ローグ「こりゃ圧勝っすね…」ギリリ シュン グサ


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


盗賊「数撃ちゃ当たるってなこの事か…弓撃つより全然効果的だ」

ローグ「あっしらは落ちたガーゴイルの処理に専念しやしょう」

盗賊「だな?もう一匹落ちそうだ…行くぞ!」ダダ

『教会の前』


ギャァァ バッサ バッサ


オークの子「こっちだ!!私は美味しいぞ!!」バンバン!

ガーゴイル「ギュルルル!ギャッハァ…」バッサ バッサ


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


ガーゴイル「ウギャァァ…」ドサーーーー

オークの子「このぉ!!」ダダ ブスリ

子供達「やったぁ!!姉御が倒したぁぁ!!」

オークの子「次!!スリング準備!!」

魔法使い「電撃魔法!」ガガーン ビリビリ

オークの子「ハッ…」

魔法使い「後は任せて…みんなで手分けして火事の火を消して来て」

オークの子「あ…はい」

盗賊「よーし!!とどめだ!!燃やしてくれい!」ダダ ブスリ

魔法使い「火炎魔法!」ゴゥ ボボボボ

盗賊「お前等スゲーじゃ無ぇか!!スリング練習した甲斐があったな?」

子供達「うへへへへ…」

オークの子「みんな降りて来て!!火事を消しに行くよ」

子供達「おーーーー」ドタドタ

ローグ「いやぁぁ20人のスリング部隊…スゴイっすねぇ」

盗賊「ガーゴイルが教会に突っ込まなかったのが幸いか…」

ローグ「いやいやクロスボウも撃ってたんで近付け無かったんすよ」

盗賊「なるほど…ちょっとした要塞になってたか」

魔法使い「一先ずこれでガーゴイルは全部撃退…村の点検に回って来るわ」タッタ

盗賊「俺らあんまり活躍出来んかったな?」

ローグ「酒が覚めちまいやしたね?あっしの気球に芋酒あるんでどうっすか?」

盗賊「そだな?酒場行ける感じじゃ無ぇし…見物しながらもうちっと飲もう」

『貨物用気球_デッキ』


グビグビ ヒック


盗賊「火事っつても花火がちっとくすぶってるだけか」グビ

ローグ「もう大丈夫そうでやんす」

盗賊「上の遺跡から花火ぶっ放す準備してるとはさすがだ…やっぱ海賊王の爺は戦のプロだわ」

ローグ「対空もちゃんと考えて居たみたいっすね」

盗賊「立地的に侵略すんなら気球使って来るしか無いんだが…これじゃ攻め切れん」

ローグ「下流の湖の拠点も陸戦を想定してるんでしょうね?」

盗賊「だろうな?大砲の射程内だしな」

ローグ「あ…見て下せぇ向こうの丘がうっすら光っていやす」

盗賊「んん?オークの集落はあっちにあんのか…」

ローグ「剣士君が夜光虫使役する所見やしたよね?」

盗賊「おぉ俺は鳥肌が立ったぞ…光を操る姿は勇者そのものだ」

ローグ「あっしもそう思いやした…地面から昇って行く光に足が震えやしたぜ」


ピカー キラリン!


ローグ「光った…」

盗賊「終わったな…剣士が刀を抜いたんだろう」

ローグ「静かなもんすねぇ…」サラサラ

盗賊「あぁぁ良い風だ…なんつーか地面が落ち着いた風だ」サラサラ

ローグ「これ命の音かも知れやせん…虫の這う音…飛ぶ音…食べる音…」

盗賊「なんだお前いつからエルフちっくになったのよ…柄じゃ無ぇからヤメロ」


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『翌日_飛空艇』


ヨイショ ヨイショ


剣士「よし…水と食料はこんなもんかな」ドサ

盗賊「よう!出発の準備か?」

剣士「まぁね?あと樽で1つ分荷物が詰めるけど何か乗せる?」

盗賊「ちっと見せてくれ…水はまぁ良い…なんで土なんか乗せてんだ?」

剣士「あーそれで植物成長させるんだ」

盗賊「なるほど食料の代わりか…干し肉はまぁソコソコか…酒が無ぇな」

剣士「お?ハテノ酒1樽貰って行こうか…折角だし楽しみながら行きたいよね」

盗賊「俺が話付けて来る…もう出発するつもりか?」

剣士「予定は決めて居ないよ…準備出来たらいつでも良いさ」

盗賊「ちっと飯食ってからにしよう…酒場に集合で良いな?」

剣士「分かった…先に行っておくね…女オーク!おいで」グイ

『酒場』


ワイワイ 


剣士「…オークの集落は10人くらいで洞窟に住んでるよ」

魔法使い「そう…もっと交流出来れば良いのに」

剣士「その場所を守ってるんだってさ…でもハテノ村と争う気は無いみたいだよ」

魔法使い「交流の話よ」

剣士「あー石炭が欲しいって言ってたんだよね?」

女オーク「そうよ?少しずつ食べるの」

魔法使い「本当?」

剣士「代わりに琥珀を貰えるかもしれない…その洞窟は琥珀が一杯あった」

影武者「えええ!?琥珀…」

女オーク「琥珀も食料なの…少しづつ食べるのよ」

影武者「すごいトレードじゃないか…石炭と琥珀が交換出来るなんて…」

女オーク「ハテノ酒をとても気に入って居たわ」

剣士「なんか上手くやっていけそうだね?」

魔法使い「他に欲しい物は聞いて居ない?」

剣士「う~ん…言って良いのかな」

魔法使い「何よ!言って…」

剣士「一番欲しいのは奴隷なんだ」

魔法使い「え…それは無理」

女オーク「オーク族は奴隷を大切にするのよ…あなた勘違いしてる」

剣士「説明が難しいなぁ…人間の奴隷とは少し違うんだ」

女オーク「剣士は私の奴隷…これで説明付かない?」

剣士「いやいや僕の奴隷が女オークだって…何回も言ってるじゃない」

魔法使い「あのね…奴隷は奴隷でしょう?」

女オーク「もう少し交流を続けないと理解出来ないかもしれない」

魔法使い「奴隷ねぇ…」チラリ

剣士「まぁ何でも言う事聞く人の事さ…オークは奴隷を大事にするのは間違い無いよ」

魔法使い「ふ~ん…」シラー


ガチャリ バタン


盗賊「よぉ!!準備出来たぜ?」

ローグ「あっしも荷物詰みやした」

魔法使い「急に4人居なくなると少し寂しいわね…」

盗賊「用が済んだら直ぐに戻って来るぜ?俺の気球置きっぱなしだからな」

ローグ「あっしもお気に入りの気球を無くすわけに行かんっす」

剣士「…という事だよ…まぁ仕事に行ったと思って」

女将「うぇぇぇん…ひっく」

盗賊「おいおい湿っぽいのは勘弁してくれぇ…もう行くぞ!!」スタ

剣士「じゃぁ…また…」ノシ


---新しい旅が始まった---


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 果ての開拓編

   完

『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


進路はこのまま東…丁度中緯度高圧帯に位置するから偏西風に乗って外海を横断する

地図で言うとこの一番大きな海を飛び越えるんだ…補給できる島とかの情報は何も無い

もしかすると左手方向に未踏の地が見えるかも知れない

何か見つけたら行って見よう


盗賊「この飛空艇で大陸横断はどのくらいかかるつもりで居る?」

剣士「狭間に入ったまま飛んで3日かな?」

盗賊「お?えらく早く到着するじゃ無ぇか」

剣士「進路と現在地の確認で狭間に入りっ放しという訳に行かないよ…合わせて1週間はかかると思う」

盗賊「まぁそうだな…偏西風が蛇行してるかもしれんしな」

剣士「あと暖かい洋上だからストームにも注意したい」

盗賊「一週間もこの狭い部屋に閉じこもるのは苦痛だな…」

剣士「うん…途中でうまく島でも見つけられれば良いけど」

ローグ「これ外海飛び越えるのってあっしらが初っすよね?」

盗賊「だろうな?そもそも大陸間を移動できる気球は限られる」

剣士「うん…動力に魔石を使った気球で帆付きじゃないと無理だね」

盗賊「自信はあるな?」

剣士「僕はもう大陸間を一回飛んでるんだ…今回は地図もあるし色々計算してる」

盗賊「戻るのはどう考えてる?」

剣士「もし計算通り横断出来たなら今度は赤道付近の貿易風に乗って戻る…それも一回試したい」

盗賊「ふむ…今後何度も横断する想定か」

剣士「そうだよ…外海が大きすぎるから船での行き来は厳しいと思うんだ」

盗賊「ちっと俺にも飛空艇の操舵を教えてくれぃ」

ローグ「直ぐに覚えるでやんす…これが主翼でこっちが尾翼…」

盗賊「ふむふむ…ちょっとやらせろ」

剣士「僕は書き物をやってるから上手く偏西風に乗せて東に向かって」

盗賊「おう!高度上げるぜ?」グイ


良いっすね…尾翼で角度変えるんすが速度落ちるんで注意して下せぇ

一旦良い風に乗ったら魔石の向き変えて推進力に加えると高度落ちなくなりやす

ほぉぉぉ良く考えてんな…落下の速度を推進に変えてる訳か


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『1日目_夜』


リリース!


剣士「よし!南極星の角度確認する…」ギリギリ

ローグ「月が変な所にあるんで方角間違いそうでやんす」

剣士「そうなんだよ…パッと見で低い位置の月は東か西って思っちゃうよね」

ローグ「無いよりマシでやんす…一応月明かりで雲海が見えてやす」

剣士「一応雲の方向を地図に書き足しておいて」

ローグ「へい…」カキカキ

剣士「緯度少しズレて来てるな…進路ちょっと南に調整」グイ

剣士「ええと…基準の星どこだ?…あったあった…えーと羅針盤とのズレがこうだから…」

ローグ「経度の計算っすか…なんか忙しいっすねぇ」

剣士「おけおけ…今地図でこの位置だ…記と時間を記録しておこう」カキカキ

ローグ「な~んも見えやせんわ…」

剣士「ふむふむなるほど…陸から風が降りて少し北に巻いてる訳か…蛇行を考えると次は南にズレる筈」

ローグ「高度は安定していやす…他に何か調べやすか?」

剣士「しばらく様子見たい」クンクン

ローグ「何か匂うでやんすか?」

剣士「う~ん…全然わかんないw」

ローグ「ズコ…まぁゆっくり行きやすか」

剣士「狭間に入ったままだと色んな物見落としちゃうからさ…1時間くらい様子見たいかな」

ローグ「そーっすね…ハテノ酒でも飲みやしょう」

『2日目_昼』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「高度下げていくぜ?」グイ

ローグ「何か見えやすか?」

剣士「うん…海の上を群れで何か飛んでる」

盗賊「女オーク!操作変われ…俺も見る」

女オーク「あ…はい…」

剣士「鳥かな?…という事は島か何かあるのかも」

盗賊「いや…あれは魚だ…フライフィッシュって知らんか?」

剣士「聞いた事無い」

盗賊「空飛ぶ魚なんだ…フィン・イッシュで稀に水揚げされるらしい」

剣士「ハハ魚は水の中の生物だよね?空を飛ぶなんて…」

盗賊「ヒレが鋭利な刃物みたいになってるから近付かん方が良いかもな」

女オーク「高度はどうするの?」

盗賊「今の高さ維持だな…これ以上下げると襲って来るかもしれんぞ?」

剣士「あ!!海の中に大きな影…」

ローグ「おぉぉクラーケンっすかね?」

剣士「もっと大きいよ…なんだアレ?」


ザバァァァァァ バクリ


盗賊「どわっ…でか!!」


ザブーーーーーン


剣士「クジラだ…あんな大きなクジラが居るのか…」

ローグ「フライフィッシュの群れを丸飲みしちまいやしたね…ハハ…スケールが違うでやんす」

盗賊「クラーケンよりでかい生き物が居るんか…100メートル近いぞありゃ…」

剣士「もう一回影が出て来る…ちょちょ…女オーク!!高度上げて!!」

女オーク「う…うん」グイ


ブシューーーーーー バシャバシャ


盗賊「うはぁぁぁ潮吹きやがった…」

ローグ「あっしら狙われてやす?」

盗賊「んな訳無ぇだろ…たまたま吹いた潮がここまで届いただけだ」

剣士「なるほど…フライフィッシュはクジラから逃れようとして飛んでたのか…」

盗賊「ほう?つまりフライフィッシュの群れを見たらクジラが居る…ヌハハ勉強になったわ」

剣士「スゴイな…僕達の知らない世界にこんな生き物が居たなんて…乗りたい!」

盗賊「なぬ!?乗る?」

剣士「クジラって話通じると思う?」

女オーク「ウフフ…」

盗賊「あのな…俺らなんか一飲みだぞ?あんなん近付きたく無ぇ!」

剣士「ウルフだってちゃんと話せるんだよ…クジラもさ?クジラ語とかで会話出来るんじゃないかな?」

盗賊「んぁぁぁぁ…ちっと今は止めとけ」

剣士「そうだ!!ホム姉ちゃんが目覚めたら聞いてみよう…うん!そうしよう」

盗賊「まぁ…そうだ…それで良い」

剣士「この飛空艇もさ…クジラの骨で出来てるのさ…なんか縁がありそうだ」

ローグ「いやぁぁぁ剣士君!なんちゅーんすか?…大物っすね?」

剣士「そうだよね?あのクジラ大物だよね」

ローグ「あらら?いやそうじゃなくて…」

盗賊「ローグ止めとけ…ありゃ天然だ」

剣士「しまったなぁ…海の生物の書物買って置けば良かった…ホム姉ちゃんなら何でも教えてくれるのになぁ…」

盗賊「ようし!!もうちょい高度上げて島探すぞ…女オーク!もっと高度上げろ」

『3日目_昼』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「そっちは何か見え無ぇかぁぁ」グター

ローグ「ずーーーーーーと海っすーーー」グター

女オーク「正面!!海の色が変わってる…」

剣士「え!?」ガバッ

盗賊「おぉ本当だな…海が浅くなってんだ…島があるかも知れ無ぇ」

ローグ「マジすか!!やっと足が延ばせやす…」

剣士「あれ?海の中に木が沈んでる…」

盗賊「それで色がおかしいのか…どっか上陸出来る島は無いか?」

ローグ「ちっと小さすぎなんすが一応島はありやすね…ちょい北の方角っす」

盗賊「アレかぁ…飛空艇降ろせる場所は無さそうだ」

剣士「分かったぞ…この辺は小さな島がいくつもあったんだ」

盗賊「海面が上がって全部水没したか?」

剣士「そんな感じだね…ここの座標を調べたい」

盗賊「あの小島に上陸するか?木が海面から出てるだけかも知れんが」

剣士「ロープだけ降ろして飛空艇は飛ばしたままにしておこう」

盗賊「なるほど…ちっとだけ休憩な?」

剣士「うん…僕が操作やるから盗賊さん下に降りてロープを木に引っかけて来て」

盗賊「おう!丁度運動したかった所だ…飛空艇を寄せてくれ」

剣士「寄せる…」グイ バサバサ


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剣士「どう?安全そう?」

盗賊「何も居なさそうだ…ロープ降ろすぞ?」ポイ

剣士「ロープ引っかけたら合図して」

盗賊「じゃ降りるな?」スルスル

『無人島』


ロープ結んだぁぁ!!降りてこーーい!!


剣士「女オーク?先行ける?」

女オーク「うん…」スルスル

ローグ「あっしも行きやす」スルスル

剣士「その辺の木を切り倒して飛空艇着陸させられないかな?」

盗賊「斧なんか持って来て無ぇぞ!!」

女オーク「私が切り倒せる」

剣士「女オークお願い!!終わったらロープ手繰り寄せて!!」

女オーク「分かったわ…フン!」コーン


コーン コーン メリメリ ドサーーー


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フワフワ ドッスン


剣士「よし!これで安心だ…」

ローグ「この島は山頂が海面から出てるだけで何もありゃしやせんね」

盗賊「その様だ…ざっと15メートル四方って所か」

剣士「ここの座標を調べたいから夜まで休憩しよう」

盗賊「女オーク!切り倒した木を薪にしたい…もう少し小さくしてくれ」

女オーク「わかったわ…」ブン バキ

ローグ「やっとキャンプっすね…魚か何か探してきやす」

盗賊「おう!頼むわ…剣士!木を燃やしてくれ」

剣士「火炎魔法!」ボボボ メラ

女オーク「この木…実がなってる」

剣士「お?」

女オーク「集めて来る…」ダダ

盗賊「見た感じ海面が10メートルぐらい上がった感じか…」

剣士「そうだね…今の緯度で海面10メートルか…赤道付近だともっと上がってるんだろうな」

盗賊「海岸の地形が相当変わってるかもな」

剣士「うん…同緯度だとフィン・イッシュ…港は水没してると思う」

盗賊「洪水被害が出てる訳か…」


カサカサ カサカサ


盗賊「どわっ!!軍隊ガニじゃ無ぇか!!」

剣士「アハ…久しぶりに見たなぁ」

盗賊「こりゃ美味い食い物にありつけた」スラーン

剣士「甲羅が欲しいから傷つけないで」

盗賊「こんなもん手足をちょん切れば…」ザク ザク


軍隊ガニ「ブクブクブク…」ピク


剣士「よしよし…この甲羅で器を作ろう」ガリガリ

盗賊「ほー上手い事細工するもんだ」

剣士「これでスープが作れる」

盗賊「軍隊ガニはこのまま火で炙って食うのが一番美味いぞ?」メラメラ パチ

剣士「僕が食べるのは木の実のスープだよ」

盗賊「勝手にしろやい」ガブリ モグモグ

『数分後』


メラメラ モクモク


ローグ「良い匂いがすると思ったら軍隊ガニが居たんすね」

盗賊「魚は居たか?」

ローグ「居るっちゃ居るんすが捕まえられないっす…あっしも軍隊ガニ頂くっす」

女オーク「チェリーのスープは要る?」

ローグ「え?チェリーはそのまま食べるっすよ」

剣士「これね…砂糖を入れて保存食にしてるんだよ…美味しいよ?」パク モグ

ローグ「あぁジャムっすね?なるほど…」

盗賊「てか何で砂糖なんか持ってんのよ」

剣士「樹液を変性させると砂糖になるんだ…簡単な事さ…これも魔法の触媒だよ」パク モグ

ローグ「ピーンときやしたぜ?虫を使役するのは砂糖を使うんすね?」

剣士「うん…」

ローグ「やっぱそうでしたか…姉さんは甘いものが大好きだったんすよ」

剣士「ママはカバンの中にいつも飴とか入ってた…だから虫が寄って来るんだよ」

盗賊「俺にもジャムくれ…甘い物は酒によく合う」グビ

女オーク「沢山作るから好きなだけどうぞ…」

剣士「日が落ちるまでまだ間があるなぁ…」

ローグ「ゆっくりしやしょう」


”…聞こえるか?”


剣士「あ!!ビッグママの声…」ゴソゴソ


”まだ狭間に入ってるのかな?”


剣士「聞こえてるよ!!その声は商人さん?」


”おぉぉやっと通じた…剣士君は今どうしてる?”

”商人!私が話す…貝殻をよこせ”


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剣士「えーっと…無事にフィン・イッシュに到着した?」

女戦士「お陰でな?今はそういう話をしている場合では無い…今何処にいる?」

剣士「外海を渡ってフィン・イッシュ方面に飛んでいる所さ…今は無人島で休憩中」

女戦士「そうか…あと何日でこちらへ来れる?」

剣士「う~ん5日くらい?」

女戦士「5日か…フィン・イッシュ女王が毒を盛られてな…お前の力が必要なのだ」

剣士「エリクサーは無いの?」

女戦士「言いにくいのだが麻薬のヘロインを大量に投与された…エリクサーで治癒が出来ない」

剣士「大量に…生きているんだよね?」

女戦士「魔女のお陰でなんとか生き永らえて居るが廃人…いや昏睡状態だ」

剣士「それだと5日も待って居られない…今すぐにでも麻薬を除去しないと」

女戦士「手が無いのだ…」

剣士「アサシンさんの体液はほぼエリクサーだった筈…線虫も沢山居る筈だよ…アサシンさんの体液を輸血してみて」

商人「おお!?」

女戦士「不死者から輸血しろと?」

剣士「兎に角線虫を体の中に入れれば良い…商人さんでも良いけど排泄されてるかもしれない」

女戦士「アサシン!お前が救える命がありそうだ…来い!」スタ

剣士「…あれ?…お~い!!」

商人「貝殻置きっぱなしだ…これ使っても良いよね?」

情報屋「良いんじゃない?…話したかったんでしょう?」

商人「女戦士はアサシン連れて行っちゃったよ」

剣士「ハハ輸血上手く行くと良いね」

商人「助かった…それで話が変わるんだけど…色々調べて分かった事が沢山合ってね」

剣士「何?」

商人「ズバリ…地軸の移動はオークシャーマンが起こした訳じゃ無いという事」

剣士「え!?そうなの?」

商人「うん…どうやら予言通りに地軸が移動してるんだ」

剣士「予言?」

商人「海士島で手に入れた呪符…あの中に重力の魔方陣が記されて居たんだ…」


その魔方陣を魔女が調べた結果

どうも太陽系の惑星の位置と速度…それから公転の周期を詳細に記した物なんだ

その中で僕達が知らなかった惑星が一つあってね…公転周期が4000年なんだよ

この惑星は他の惑星と違って縦周り…そして超楕円で太陽の周りを回って居るんだ

僕達の住む地球に接近するのが4000年前と今…次に接近するのは12000年後

そういう計算になるんだ

剣士「そんな星見えて無いけど…」

商人「黒色惑星…光を吸い込むんだよ…だから見えない」

剣士「その惑星の接近で地軸の移動と月の公転軸が変化した…そういう事なんだね?」

商人「そう…それは4000年前に既に予言されているのさ」

情報屋「ここからは私が話すわ」

商人「おねがい」


4000年前に起きた地軸の移動で文明がすべて滅ぶ事になったのは以前話した通り

その滅ぶ原因になったのは地震や洪水の天変地異というのが定説だったけれど

商人が発見した古文書にその答えが書いてあったの

そこにはY型染色体配列の異常についてウンディーネ時代の前後を比較する物だったわ

結論を言うと子供が生まれない原因は染色体の異常…その原因は恐らく光る隕石が原因

つまり文明が滅んだ原因は…現在と同じ子供が生まれ無くなった事が原因なのよ


剣士「光る隕石が原因?アダムは無関係だったと…」

情報屋「隕石を呼び寄せたのがアダムなのは明白ね…多分自己防衛ね」

剣士「そうだったのか…」

情報屋「そしてこうなる事はやっぱり予言されて居た筈…それがきっとオークに伝わっているの」

剣士「オークだけが生き残ったからだね?」

情報屋「そういう事」

剣士「でもどうして光る隕石が落とされる事が予言されてる?惑星の接近とは因果関係が無いよ」

情報屋「予言者は光る隕石が落ちるのを見て居たとしたら?」

剣士「ハッ!!ママか…」

情報屋「ビンゴ!…ウンディーネ時代で光る隕石の影響を知ったのよ」

剣士「子供が生まれないというのはもう防げないのかな?」?」

商人「まだカードは残ってるさ…予言と言うのは未来に起きる事を回避してくださいという願いがこもってる」

情報屋「現代までホムンクルスが生き残ってる事が最後の救いね」

剣士「そうか…だからメッセージが残って居たんだね?」

商人「多分そうだよ…剣士君!君は未来を繋ぐために生まれたんだよ…だから君の名は未来なんだ」

情報屋「なんか話したい事が沢山あるわ…はやくこっちにいらっしゃい?」

商人「あ!近衛兵が呼んでる…慌ただしいな」

情報屋「一旦貝殻の通信終わるわ…行かなきゃ」

剣士「うん…又話しかけて」


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『焚火』


メラメラ パチ


ローグ「おいっちにーさんしー!!体動かせるって良いっすねぇぇ」ブンブン グルグル

盗賊「星の観測はまだやるんか?」

剣士「基準にしてる星がまだ登って来ないんだよ」

盗賊「南極星で緯度の計算は良いが経度の計算はどのみち精度が出んだろ?」

剣士「うん…まぁ適当にやるよりはマシさ」

盗賊「狭間に出入りしてるから時計がアテにならんのがなぁ…」

剣士「大体補正してるつもりなんだけどね」

盗賊「この島は目印にしちゃ小さすぎると思うんだが…」

剣士「ここにはチェリーが生ってるから蜂を使役すればなんとか方向が分かるんだ」

盗賊「あぁぁお前専用の灯台代わりって訳か」

剣士「うん…一か所でも休憩出来る場所があると大分違う」

盗賊「まぁいつ帆が破れてもおかしく無ぇしなぁ…一旦降ろせる場所があるのは心強い」

剣士「あ!基準の星が昇って来た…日の入りから4時間…よしよし大体想定通りだ」ギリギリ

盗賊「なるほど…複数の基準にしてる星の角度で時間と経度を割り出してるか」

剣士「これが今の限界精度さ…よし!行こうか」

盗賊「お前は良い航海士になれそうだ…おい!ローグ!!行くぞ飛空艇に乗れ」

ローグ「あいさー」

『5日目_昼』


シュゴーーーーー バサバサ


盗賊「…まずいな左前方に見えてる積乱雲は多分サイクロンだ」

剣士「南に転換して迂回する」グイ

盗賊「こりゃしばらく風が安定しないぞ?」

剣士「この高度で雲にだけは巻かれたくない…氷で翼が痛む」

盗賊「だな?」

ローグ「南へ迂回してもサイクロンが追って来る感じになりやせんか?」

盗賊「そうなる…だからマズイんだよ」

剣士「出来れば着陸してやり過ごしたいよ…でも下は海だ」

盗賊「最悪海に降りてしばらく漂流っていう手もあるがよ」

剣士「そっちの方が安全かもなぁ…一応高度落としとく」グイ

盗賊「うむ…幸い高度低くても風は十分吹いてる筈だ」

剣士「あれ?船だ!!下に船がある…」

盗賊「おぉぉ!!グッドタイミング…あれに乗せて貰うぞ」

ローグ「外海を航海する船がもう居るんすね…」

盗賊「まぁ大航海時代が来てるという見方もあるけどな?」

剣士「近づいて見る…」グイ バサバサ

『漂流船_上空』


フワフワ バサバサ


盗賊「古いコグ船だ…もう帆が使え無ぇ」

ローグ「誰か乗ってそうっすかね?」

盗賊「小舟が乗って無ぇから逃げたんだろ…まぁ一応一時避難には使えそうだ」

剣士「帆を直せない?」

盗賊「ううむ…横帆としてはもう面積が足りんな…今から縦帆に改造するか?」

ローグ「嵐が来るんじゃどっちにしても横帆は開けないっすよね?縦帆にしとけば一応進む訳ですし…」

盗賊「まぁやってみっか…ロープは余分にあるな?」

剣士「ロープは作れる…大丈夫だよ」

盗賊「うっし!じゃぁ船尾に降ろせ」

剣士「おけおけ…」グイ


フワリ ドッスン


剣士「僕飛空艇を固定しておく」

盗賊「ローグ!荷を調べて来い!それと航海日誌が無いか探して来るんだ」

ローグ「あいさー!!」ダダ

盗賊「女オークはちっと手伝ってくれ」

女オーク「分かったわ…」

『漂流船_甲板』


どわぁあぁぁ!! ドタドタ


ローグ「ちょちょちょ…荷室にくそでかいヘビが居りやす」バタバタ

盗賊「なぬ!?」

ローグ「近づかん方が良いっす…20メートルくらいのがトグロ巻いていやす」タジ

盗賊「それで船員は逃げた訳か…おい剣士!!でかいヘビが居るらしい…何とか出来んか?」

剣士「んん?今忙しい…」グイグイ ギュゥ

盗賊「むぅ…俺らでなんとかしなきゃイカン感じだな」

剣士「ヘビなら頭切り落とすだけで良いじゃない?」

ローグ「クソでっかいヘビなんすよ…頭は牛よりでかいでやんす」

女オーク「それ多分シーサーペントね…狂暴だから放って置くと危ない」

剣士「荷室かぁ…外に出てきたら逃がしてあげても良いんだけど…」

盗賊「使役は出来んか?」

剣士「ヘビは無理だよ…荷室に用が無いなら閉じ込めておくのが一番だと思うな」

盗賊「暴れたらどうする?船が壊れかねんぞ?」

剣士「ヘビが建物を壊すなんて聞いた事無いでしょ?」

盗賊「まぁそうだな」

剣士「捕食する気が無いからトグロ巻いてくつろいでるんだよ…放って置けば良いさ」

ローグ「ハハまぁそーっすね…荷室の扉閉めときゃ大きすぎて出て来れやせんね」

盗賊「ヌハハお前は肝が据わってる…まぁどうせ宝なんぞ無ぇだろうから無視すっか」

ローグ「ほんじゃあっしは居室を見回って来るっす」タッタ



-------------

ドタドタ


ローグ「皆さん…ちっと来て下せぇ」

盗賊「何か見つけたんか?」

ローグ「この船…有名な探検家の船っすね…日誌と海図がありやした」

盗賊「おぉ!!ちっと待て…もうちょいで縦帆の改造が終わる」グイグイ ギュゥ

ローグ「舵は動きやすか?」

盗賊「追い風受けるから船を南東に向けて見てくれ」

ローグ「あいさー」グルグル

盗賊「おぉ回頭してんな?」

ローグ「一応進みだしやしたね…」

盗賊「しばらくこのままで良いだろう…海図は何処だ?」

ローグ「こっちでやんす…」スタ

『居室』


ギシギシ ユラ~


剣士「…ベッドで白骨化してる」

ローグ「多分この船の船長っすね」

盗賊「俺ぁこの探検家知ってるぞ…有名なトレジャーハンタだ」

ローグ「この海図…外海っすよね?」

剣士「おおおおおおおおお!!この人…外海で島を発見してる」

盗賊「こりゃスゲエお宝ゲットしちまったな」

剣士「日誌が5年前の日付だ…」

盗賊「見せてみろ…」パラパラ

ローグ「トレジャーハンターにしてはお宝類が見当たりやせん」

盗賊「金目の物は他の船員がみんな持って行ったんだろう…しかし外海でトレジャーハントとは…」

剣士「発見した島に名前がある…ハウ・アイ島…この位置だと今は赤道付近だ」

盗賊「帰りの中継点に使えそうだな?」

剣士「うん!!」

盗賊「荷室に居るでかいヘビをフィン・イッシュまで持って帰ろうとした様だ」

ローグ「まさか水龍っすかね?」

盗賊「さぁな?只フィン・イッシュでは龍神を奉ってんだろ…その関係だろうな」

剣士「あれ?ちょっと日誌見せて…古代遺跡の図だ…フィン・イッシュにも古代遺跡があるのか」

盗賊「ふむふむ…龍神を奉ってる祠の様だな?そういや草薙の剣がどーたらこーたらって話聞いた事あるな」

剣士「この人…龍神を復活させようとしたんじゃない?」

盗賊「そうなるとヘビを持って帰らにゃならんのだが…」

剣士「横帆をどうにかして直そうか」

盗賊「布が無い訳よ」

剣士「う~ん…布作るのは織機が必要になるなぁ…」

盗賊「まてまて良く考えろ…龍神復活させて何になるのよ?遺跡の扉が開くってか?でかいヘビがどうするってんだ?」

剣士「まぁそうだね…もうちょっと良く日誌を調べてから考えるかな」

盗賊「それが良い…てかこの船は痛み過ぎて満足に航海は出来ん」

ローグ「そーっすねぇ…5年も漂流してたんすからねぇ」

盗賊「とりあえず船でサイクロンが行き過ぎるのを待ってからだな…俺ぁちっと船の塩梅見て来るわ」

剣士「じゃぁ僕はその辺の物調べてみるよ」

『甲板』


ビュゥゥゥ ギシギシ


ローグ「風が強くなってきやしたね…」

盗賊「正面見ろ…やっぱり雲が張り出していやがる…船を見つけて運が良かった」

ローグ「サイクロンを追う感じになりそうっすね」

盗賊「俺の見込みだと俺らの前方を横切って南に逸れると思う…だから進路を北寄りに変更した」

ローグ「じゃぁ逆風になりやすね」

盗賊「うむ…だが丁度縦帆に改造したからな…なんとか進む事は出来る筈だ」

ローグ「ちっとフィン・イッシュ到着が遅くなりそうでやんす」

盗賊「仕方ない…危険犯してサイクロンを飛び越えるのは無謀だ」


スタスタ


剣士「…」ブツブツ

盗賊「おぉ剣士!何処行く?」

剣士「ん?居室の空気が悪いからさ…海図と日誌を飛空艇に運んでおく」

盗賊「そら良い…なんだその書物は?」

剣士「これフィン・イッシュの龍神伝説が記されて居るんだ」

盗賊「ほう?何か分かるか?」

剣士「宝具の守り神が水龍に姿を変えたとかそんな伝説だよ…フィン・イッシュじゃ有名な話なのかも」

盗賊「そういや10年前だったか…一回その祭事に使う祠ってのか?行った事あんのよ」

剣士「古代遺跡なの?」

盗賊「多分な…まぁハテノ村の古代遺跡と同じ様な感じなんだ…近くに温泉があってそれが川に流れて城下まで流れてる」

剣士「へぇ…」

盗賊「フィン・イッシュ女王曰くその川が水龍なんだってよ」

剣士「祠の中には入って無い?」

盗賊「立ち入り禁止だったもんで入って無い」

剣士「この書物には祠の中に開かずの扉が在るらしい…守り神はそこを守って居たとか…」

盗賊「てことはホムンクルスが眠る遺跡の可能性があるんだな?」

剣士「そうだね…この船の探検家はどうにかしてその扉を開けたかったんだと思う」

盗賊「なるほどな…それがわかりゃもうデカいヘビにゃ用が無ぇ…俺が扉を開けられるからな」

剣士「うん…嵐が去って安全になったら予定通り飛空艇でフィン・イッシュ目指す」

盗賊「…ところで航海日誌は全部読んだか?」

剣士「一応ね…発見したハウ・アイ島の事が良く分かったよ」

盗賊「俺も読みてぇんだ貸してくれ」

剣士「うん…」パサ

盗賊「ようし!これで暇つぶしになる」

『夜』


ビュゥゥゥ ギシギシ


ローグ「まだ帆は畳まんで良いっすか?」

盗賊「このぐらい横から吹いてた方が前に進める…縦帆は畳んだ所で大して変わらん」

ローグ「今晩は寝られる感じじゃ無いっすね…」

盗賊「ちっと忙しくなるなぁ…まぁ嵐の規模にもよるが温い風が吹いて来んから大した事無いとは思う」

ローグ「雨が降ってきやしたね」ポツ

盗賊「順当だな?南半球のトルネードは大型になり難いんだ…そうビクつく事ぁ無ぇ」


ザブ~~~ン ユラ~ ギシギシ


ローグ「あっぶ!!」

盗賊「コグ船だと思って馬鹿にしていたが意外と速度出るな…30ノットぐらいか」

ローグ「予備のロープ持って来やす…縛っとかんと落ちそうでやんす」

盗賊「剣士と女オークにも落ちない様に気を付ける様に言って来い」


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『翌朝_飛空艇』


ザーーーーー ジャブジャブ


ローグ「ひぃぃ…ちっと休憩っす…雨に打たれっぱなしじゃ体がふやけちまいやす」

女オーク「次は私が代わりに…」ノソ

ローグ「帆と舵はこのまま維持で良いでやんす…風向き変わったら教えて下せぇ」

剣士「まだ飛空艇飛ばせそうに無い?」

ローグ「昼頃には雲が切れるんじゃないすかね?」

盗賊「今飛ぶのはまだ早いな…トルネードに引っ張られるのがオチだ」

ローグ「まぁ今は横風で船が速度出せてるんでこのままで良いかと」

剣士「そっかぁぁ…もう龍神伝説の書物も飽きたしなぁ…」

盗賊「航海日誌に面白い事が書いてあるぞ?」

剣士「何?」

盗賊「どうやら荷室に居るヘビの件で仲間割れした様だ…他の船員はハウ・アイ島に向かったんだとよ」

剣士「へぇ?じゃぁハウ・アイ島に人が住んでるかもしれないんだね?」

盗賊「うむ…ほんでな…その島にも遺跡が有るらしい」

剣士「え!?見せて見せて…」


ここだ…発見した当時は雪に覆われた島だった様だ

大量の遺物も見つけている…そして閉ざされた扉の前で冬眠していたのがくそデカイヘビだった訳だ

例の探検家はそのヘビをフィン・イッシュに持ち帰ろうとこの船に乗せた訳だ

しかし遺跡探掘をしたい他の船員と揉めた訳よ…ほんで一人この船に残ってたという事だ


剣士「ハウ・アイ島に行って見たくなるね…というか行こう」

盗賊「用事が済んだら行っても良い…お宝の匂いがするだろう?」

ローグ「ちょっと待ったっす…あの蛇は5年以上も冬眠してるんすか?」

盗賊「だろうな?地軸が移動する前はこの船も寒い場所に有ったんじゃ無ぇか?」

剣士「凍ってた可能性が有りそうだね…」

ローグ「そういや抜け殻とか無かったですわ…凍ってたんなら納得でやんす」

剣士「冬眠から覚めたらお腹空いてるだろうなぁ…」

ローグ「いやいや…動いて居やしたから」

剣士「まだ自由に動けないのかな…う~ん…なんか危ないね?」

盗賊「この船は桟橋から荷を入れる扉が船体の土手っぱらに有ったか?」

ローグ「確認してきやす」ダダ

剣士「そんな所開いたら海水入って来ない?」

盗賊「どうせ乗り捨てなんだから別に良いだろ…ヘビに食われるよりゃマシだ」


--------------

ローグ「ありやしたぜ!!扉!!」

盗賊「さて…どうやって開けるかなんだが」

ローグ「内側からしか開けられんっすよね…」

盗賊「ヘビ相手じゃハイディングなんか意味無ぇしな」

剣士「扉ってどうやって施錠してるの?」

盗賊「内側からカンヌキだな…古いコグ船だから金属は使って無いだろう」

剣士「おけおけ!虫にカンヌキだけ食べさせる」

盗賊「おぉ!!カンヌキが無けりゃ外から開けられるな」

剣士「チェリーを持って来ておいて良かった…虫が居る筈…出でよ虫共!」ニョロニョロ

盗賊「うぉ!!なんだこの虫!」

剣士「ワームの一種だね…丁度良かった…成長魔法!」モソモソ

剣士「よーし…荷室の扉のカンヌキを食べて来い!」モソモソ モソモソ

ローグ「こんな虫がチェリーに入ってるんすね…」

剣士「食べ物には大体虫が入ってるよ?この虫は木の実を食べて腐らせる害虫だね…人には無害だよ」

盗賊「まぁこれで外側から開けられるんだな?どのくらい掛かる?」

剣士「1時間くらい?分かんないよ…」

『1時間後』


ザーーーー ポツポツ


女オーク「雨が小降りになってきたわ」

盗賊「風向きに変化は?」

女オーク「横からだけど少しづつ向かい風になっている気が…」

盗賊「ふ~む…速度が少し落ちているか…よし!少し南に向ける」ガラガラ

ローグ「荷室のカンヌキそろそろっすかねぇ?あっしがちっと行ってきやしょうか?」

盗賊「任せた!!俺ぁちっと速度見張ってる」

ローグ「あいさー」ダダ

女オーク「荷室のカンヌキって?」

盗賊「あぁ…例のでかいヘビを外に追い出すんだ」

女オーク「シーサーペントは狂暴で危ないわ」

盗賊「うむ…大人しい今の内に追い出したい訳よ」


ガタン バキバキ


ローグ「やりやしたぁぁ!!扉が開いたっす!!」

盗賊「おぉぉ戻ってこーい!!」

ローグ「あのヘビ動きやせんぜ?」

盗賊「その内出てくんだろ…ちっと帆の角度変えたい!!結び目2つ分ロープを緩めてくれ」

ローグ「へ~い!!」スタコラ


グラリ グググググ


ローグ「おわっ!!ちょちょちょ…」ヨロ

女オーク「あ!!あれ?あのヘビ…シーサーペントじゃないわ!!」

盗賊「目が幾つある?なんだあの魔物は…」


ザブーーーン ユッサ ユッサ


盗賊「海に潜って行きやがった…おい!ローグ気を付けろ…襲ってくるかもしれん」

剣士「この揺れは!?」ダダ

女オーク「例のヘビが海の中に潜って行ったの」

盗賊「ありゃヘビじゃ無ぇ…目が幾つもある謎の魔物だ」

剣士「多眼動物…海の多眼動物といえばウナギだ!!マズイ…飛空艇に乗って!!」

盗賊「お…おう!!」ダダ

剣士「早く乗って!!雷が来る!!」ダダ

女オーク「船の下を泳いでる…」ダダ

剣士「ローグさん飛び乗って!!ロープを切る!!」スパ フワリ

ローグ「へ~い!!」ピョン


ピカッ ビシビシ ビビビビ


剣士「うわ…ギリギリセーフ」

盗賊「うひょぉぉ一瞬海が光ったな」

ローグ「海に戻しちゃまずかったんすね…」

盗賊「しかしこれで正体が分かった…ヘビに雷と言えばリヴァイアサンだ…どうやらデカイ電気ウナギだった様だな」

剣士「クジラといいこの電気ウナギと言い外海は不思議な動物ばかりだ」

盗賊「違い無ぇ…てか剣士!このままじゃサイクロンに吸い込まれて行っちまうぞ?」

剣士「何とかしてみる」グイ シュゴーーーーー


--------------

--------------

--------------

『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女オーク「雲の切れ目よ…」

剣士「やっと強風域を振り切ったか…」

盗賊「進路は北東だが…もう現在地分からんな」

剣士「夜を待つしか無いよ…東の方向に向いてるだけまだ良い」

盗賊「地図を見た感じ先はまだ長そうだな」

剣士「昨夜から寝て無いからちょっと疲れたね」

盗賊「交代で仮眠取るか…先に寝て良いぞ」

剣士「僕はもう少し良い風を探したい…盗賊さん先に寝て」

盗賊「そうか?」

剣士「ローグさんも休んで…夜中は2人に任せる」

ローグ「じゃぁハンモック借りやす…よっこら」ユラユラ

剣士「女オーク左側の見張りお願い…僕こっちみる」

女オーク「分かったわ…」

剣士「えーと…じゃぁ雲の上にでるかな」グイ

女オーク「ねぇ剣士?私不思議に思ったことがあるんだけど…」

剣士「ん?何?」

女オーク「どうしてリヴァイアサンが遺跡の扉を守っていると思う?」

剣士「あれ?なんでだろう?魚の一種だから知能も低いなぁ…」

女オーク「不思議でしょう?」

剣士「開かずの扉ってもしかしたら電気で開くのかも知れないなぁ」

女オーク「誰かがリヴァイアサンを鍵代わりに使った?」

剣士「そうかもしれない…となると…同時に扉を守らせる命令が出来れば良いともいえる」

女オーク「鍵代わりにするのと守らせるのを同時に誰かがやったという事ね?」

剣士「魚の使役ってどうやってやるんだろう…まてよ?寄生虫でコントロール出来るかも知れないな…」

剣士「あああああああああ!!」

女オーク「え!?何か思い出した?」

剣士「シン・リーンの魔術師に昔蟲使いが一人居たらしい…もしかして」

盗賊「うるせぇなぁ…寝れ無ぇじゃ無ぇか」

剣士「船で見つけた日誌貸して」

盗賊「んぁ?ほらよ…静かにしろやい」ポイ

剣士「…」ヨミヨミ

剣士「やっぱり…この探検家は行方不明の蟲使いだ」

女オーク「どういう事?」

剣士「この人はきっと扉の開け方を知って居たんだよ…リヴァイアサンが凍って居たからフィン・イッシュまで運ぼうとしたんだ」

女オーク「へぇ?私の疑問は解決したわ」


なるほど…寄生虫でリヴァイアサンを操る

電気のビリビリで扉を開閉させる

リヴァイアサンに入り口を守らせておけば中は安全だ

そういう運用をしていたのか

ん?…でも誰が?

ちょっと待てよ?まさかママじゃ無いよな?

いや可能性がある…ママならやりそうだ

『夜』


カチャカチャ ギリリ


剣士「水平保って…おけおけ…角度測定出来た」

女オーク「現在地わかる?」

剣士「えーと…緯度は大分北にズレた…経度が多分この辺り」

女オーク「南東に向かえば良い?」

剣士「そうだね…東南東が良いかな…多分すこし南に引っ張られると思う」

女オーク「分かったわ…」グイ バサバサ

剣士「もう少し高度上げよう…安定したら狭間に入る」

女オーク「これで一安心ね」

剣士「うん…しばらくゆっくり休めるよ」

女オーク「そろそろ交代ね…2人を起こすわ」

剣士「そうだね…」


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『2日後_昼』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「リリース!」スゥ

ローグ「あららら?下が陸地っす…草原っすね」

剣士「ええ?」

盗賊「おぉやっと北の大陸か…もう北じゃ無ぇか」

ローグ「西に山脈…下は草原てか荒野っすね」

剣士「大分通り越したみたいだ…回頭!!引き返してどのくらいズレたか確認したい」

盗賊「やっぱ経度は精度無いな」

剣士「そうだね…地図書き直す必要がある」

盗賊「西の山脈は見た事有るぞ…フィン・イッシュに近いのは間違いない」

剣士「この感じだと200kmくらいはズレて居そうだ」

盗賊「ついでに地形の確認も出来るからまぁ良いだろう」

剣士「高度下げながら行く…何か見えたら教えて」

『フィン・イッシュ上空』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「こりゃ沿岸部が水没してて元の地形が分からん」

ローグ「海抜の低い場所が全部海になりやしたね」

剣士「港も水没して停泊してる船がバラバラだ…」

盗賊「どこで座礁するか分からんから近寄れんのだな」

ローグ「頭の船は見当たりやせんね…」

盗賊「どっかに隠して居るんだろう…」

剣士「どこに飛空艇降ろそうかな」

盗賊「墓地の裏に隠せる場所は有った筈だ…分かるか?」

剣士「分かんない…案内してよ」

盗賊「俺が着陸させる」

剣士「お願い」

盗賊「まず一旦飛空艇隠して女戦士達と合流だな?」

剣士「うん…事情を聞きたいしね」

盗賊「よっし!降ろすぞぉ」グイ


-------------

『墓地の裏』


フワフワ ドッスン


剣士「皆降りて?僕はハイディングさせてから行く」

盗賊「おう!!」スタ

ローグ「やっと頭に会えるっす…」ワクワク

剣士「ハイディング!」スゥ

盗賊「しかしここの墓地は何年経っても変わって無ぇ」

ローグ「地下墓地の入り口の鉄柵がここのシンボルっすよ」

盗賊「あそこはもう毒キノコの培養所になってるの知ってたか?」

ローグ「知って居やすとも…あの毒キノコから作るポーションはフィン・イッシュの財源っすからね」

盗賊「昔は銀鉱山が財源だったんだがな」

ローグ「今でも銀はそこそこの値で取引されていやすぜ?」

盗賊「まぁ資源のある国は強いわな」

剣士「お待たせ…」タッタッタ

盗賊「じゃぁ一先ず城にでも行って見るか」

剣士「こんな格好で大丈夫?」

盗賊「ここの城は一般でも入れるんだ…まぁ大丈夫だろ…行くぞ」スタ



『墓地から続く街道』


スタタタ シュタ シュタ


剣士「お?」

盗賊「忍びだな…どうも慌ただしい様だが…」

ローグ「盗賊さん…これちっとおかしいっすね…あっしら監視されて居やすぜ?」

盗賊「ううむ…女王の暗殺未遂で厳戒態勢かもな」

剣士「ビッグママからもあれから貝殻で通信出来ないんだ」

盗賊「俺らは関わって居ないんだが一応振る舞いには気を付けた方が良いな」

ローグ「いきなり城に行くのはマズイんじゃないすか?」

盗賊「そうかも知れん…一旦宿に入って情報集めるか」

ローグ「その方が無難な気がしやす」

盗賊「俺金持って無いんだがよ…」

ローグ「あっしも持っていやせん」

剣士「ええ!?僕も銀貨30くらいしか無いよ?」

盗賊「4人で飯食って2日って所か…」

女オーク「金貨2枚あるわ」

盗賊「おお!!十分!!」

剣士「ハハなんか貧乏な冒険者だ…」

盗賊「とりあえず今日は宿を取ろう…城に行くのは女戦士にコンタクト取った後だな」

女オーク「金貨2枚預けるわ」チャリン

盗賊「宿はこっちだ…」スタ

『宿屋へ続く街道』


ガヤガヤ ザワザワ

ひぃぃぃん…怖いよう

これこれそんな事言ってはいけないよ

あぁ済みません道を空けます…


盗賊「フル武装の軍隊が巡回していやがる…やっぱ厳戒態勢だわ」

ローグ「すごい数の軍隊っすね」

盗賊「そこらの衛兵とは訳が違う…何か有ったら只じゃ済まんぞ」

剣士「これフィン・イッシュの軍隊だよね?」

盗賊「そうだ…軍隊の全権を持ってるのは元セントラル国王なんだが…」

ローグ「まさかクーデターじゃ無いっすよね?」

盗賊「そら無いだろう…フィン・イッシュ女王とは内縁関係の筈だ」

ローグ「いやいや軍部だけが反乱してるとかそんな感じで…」

盗賊「ううむ…それで女戦士達も全員拘束されてるってか?ありえん話では無いんだがしかし…」

剣士「街の雰囲気を見ると制圧された感じじゃ無いなぁ…」

盗賊「軍隊が巡回している以外は…まぁ平和な感じか」


兵隊「止まれぇぇい!!」スチャ


盗賊「おいおい街中でいきなり武器を人に向けんなよ」ギロ

兵隊「麻薬犬来い!!」

麻薬犬「ガウルル…」クンカクンカ

盗賊「何すんだゴルァ!」

ローグ「盗賊さん…ちっと大人しくしやしょう」

兵隊「麻薬捜査だ…大人しくして居ればどうという事は無い」ジロジロ

剣士「どうして麻薬捜査なんかしているの?」

兵隊「民間人は知る必要無い」

盗賊「何だ三下が偉そうに…武器を人に向けるのと関係無いだろうが」

ローグ「盗賊さんちっと我慢っすよ」

女オーク「ちょっとどこの匂い嗅いでるのよ…」

麻薬犬「ハフハフ」クンカクンカ

兵隊「協力に感謝する…通って良いぞ」スッ

盗賊「ちぃぃ胸糞悪い…行くぞ!」スタ

『宿屋の前』


ザワザワ ガヤガヤ

なんだって急に麻薬捜査なんかやり始めたんだぁ?

路地裏の売人はみんな連れて行かれたらしいぞ?

嗜好品は良いんじゃ無かったのかよ


ローグ「部屋取れやしたぜ?今晩はベッドで寝られるでやんす」

盗賊「俺ぁさっそく情報収集で酒場行きたいんだが…」

剣士「女オークは水浴びしたいだろうから僕は後で一緒に酒場に行くよ」

ローグ「じゃぁあっしは城の方を偵察行って来やす」

剣士「部屋は何処?」

ローグ「2階の一番右奥っす…人が多いんでスリに気を付けて下せぇ」

剣士「お金なんか持って居ないさ」

ローグ「いやいや麻薬とか懐に入れられるのを気を付けて下せぇ…なんかそういう被害が出てるらしいっす」

剣士「ふーん…麻薬の運び屋にさせられるんだ?」

盗賊「そういう技は業界じゃ常識だ…気を付けておけ」

剣士「分かったよ…あれ!?何か懐に入ってる!!」

盗賊「ヌハハ今俺が入れたんだ…こういう事だから気を付ける必要がある」

剣士「全然気づかなかった…」

ローグ「剣士くんはボーっとした所あるんで女オークさんよろしくお願いしやす」

女オーク「ウフフ…」ニマー

剣士「なんか腹立つなぁ…にやけるの止めてくれないかい?」

女オーク「はいはい…行きましょう」グイ


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『酒場』


ドゥルルルン♪


マスター「いらっしゃいませ…お一人様で…」

盗賊「おぉ!?なんでお前が此処に居るんだ?海士島から引っ越して来たんか?」

マスター「しーーーーーーーっ!!」

盗賊「訳アリって事か?まぁ良い…知った顔に会えて嬉しい」

マスター「お客様…お飲み物は如何いたしましょう?」キョロ

盗賊「芋酒だな…連れが後3人来る予定なんだが…まぁカウンターで良いな?」

マスター「どうぞ…少しお待ちください」

盗賊「しかしこの国は景気が良さそうだ…20年前のセントラル並みに人が集まってる」

マスター「いつこの国へ?」

盗賊「さっき付いたばっかりよ…なんだか兵隊がウロウロしてちっと物騒な感じだが」

マスター「そうですか…」

盗賊「何があったか知ってんのか?」ジロ

マスター「いえいえ私はずっと酒場に居た物ですから…」

盗賊「ほーん…まぁ良いや…ところで前に話してた美味い商売の事なんだが…」

マスター「あぁ忘れて下さい…今はそういう状況では無くなった物ですから」

盗賊「なるほどな?今は話せる状況じゃない訳か…おい早く酒出せよ」

マスター「どうぞ…」キョロ

盗賊「おぉコブラ酒じゃ無ぇか…お前…」

マスター「タンブラーは1つで」

盗賊「むむ…そういうのは止めたつもりだったんだがな…」グビ

マスター「味の方は?」

盗賊「久しぶりに飲んだ…はぁぁ砂漠を思い出す」

マスター「味はよろしいでしょうか?」

盗賊「まぁそう慌てるな…ゆっくり味わいたいんだ」グビ

マスター「…」キョロ

盗賊「ふ~む…見張りは3人って所か…動きづらいわなヌハハ」


ノソノソ


マスター「いらっしゃいませ…お二人様ですか?」

ローグ「盗賊さん!!連れて来ちやいやした…えらいこってすわ」

盗賊「早かったな…っておい!!なんで女王が居るんだ?」ガタッ

女王「ここに座れば良いか?」ノソノソ

マスター「女王!?様…」

女王「ハチミツ酒が飲みたいのぅ…持って参れ」

マスター「ははは…はい!かしこまりました」

盗賊「又えらくラフな格好で出歩いてんな…良いのかそんなんで」

女王「これは訳アリなのじゃ…ちと説明が長ごうなるでローグ!主が説明せよ」

ローグ「大きな声で言えんのですが…話し方で何となく分かりやせんか?」ヒソ

盗賊「あぁそういう事か…」

女王「わらわは一杯飲んだら行かねばならぬ故…詳しくはローグに聞くのじゃ」


ゾロゾロ ゾロゾロ


盗賊「うはぁ…取り巻きも又スゴイ事になってんな…酒場に連れて来んじゃ無ぇよ」

ローグ「普段からお忍びで街を出歩いているらしいんすよ」

マスター「ハチミツ酒をお持ちしました…どうぞ」プルプル

女王「久方ぶりじゃな…」グビ

近衛侍「女王様…毒味をお忘れで…」

女王「おぉそうじゃったなぁ…じゃがもう遅い」グビグビ

盗賊「いやいやなんか無茶苦茶だな…」

女王「さて近衛侍…次は何処へ行けば良いのかの?」

近衛侍「カジノに御座います…お連れ致します」

女王「済まぬが行かねばならぬ…追って伝令を送る故待って居れ」ノソノソ

近衛侍「ささ…こちらへ」


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『カウンター』


ワイワイ ガヤガヤ

今のはお忍びで来た女王様だよな?

いつもバレバレなのさ

いやぁぁ今日も平和だ…さぁ飲むぞ


盗賊「…ほんで?なんでこんなんなってんだ?」

ローグ「人に聞かれちゃマズイ話になりやす」

マスター「…」

盗賊「あぁこのマスターは大丈夫だ…」

ローグ「本当っすか?」

盗賊「で?どういう事よ」

ローグ「魔女さんが女王様に成り代わって囮捜査をしているでやんす…話はこうっす」


女王は不妊治療で専属の医者を付けて居た様なんすが

毒を盛ったのはその医者らしいんす

医者の出所はセントラル国王の遠縁の家系でセントラルから派遣されて来たらしいんす

ほんで毒を盛ったのは直ぐにバレて近衛侍に首を切られやした

ここから揉め事の始まりっす

女王直近の近衛達は内縁関係のセントラル国王が主犯だと疑っていやす

一方セントラル国王は近衛が口封じの為に医者を切ったと疑っていやす

つまる所毒を盛った主犯が誰なのか分からんままお互い睨み合っている訳なんす

セントラル国王は愛する女王に毒を盛られた事に激怒して

軍隊総動員で麻薬ヘロインの出所を探っている訳っす


盗賊「なるほどそれで大規模な麻薬捜査か…それで毒を盛られた女王の容態は?」

ローグ「教えて貰っていやせん…というか誰も信じられないもんでお隠れになった様ですわ」

盗賊「お隠れ?」

ローグ「側近にも行方を明かして居ないらしいでやんす」

盗賊「魔女が囮捜査ってのは?」

ローグ「主犯からすると毒を盛った筈なのにピンピンしてるのを見ると落ち着きやせんよね?」

盗賊「それでうろついて見せてるって事か」

ローグ「ほんであっしらは落ち着かない輩を探せと言われやした」

盗賊「なーるほど…」チラリ

マスター「…」チラ

盗賊「お前を見張ってた3人が居なくなったな?どういう事か説明出来るか?」

マスター「私は酒場のマスターですのでここでお話出来る事はありません」

ローグ「あっしが思うにですね?こういうやり口は公爵なんすよ…」

マスター「…」ピク

ローグ「こんな感じでセントラルの皇子3兄弟を分断させたんすよ」

盗賊「まぁ動機は十分そうだな…女王が亡くなればこの国はセントラル国王が牛耳る事になる…その時に良い立ち位置に居れば良いだけ」

ローグ「証拠が何も無いんすよね」


コトン!


ローグ「ん?これあっしにですか?」

マスター「どうぞ…お飲みになって下さい」

ローグ「…」---コブラ酒---

マスター「タンブラーは1つです」

ローグ「盗賊さん…どうしやす?」グビ

盗賊「剣士を待ちたかったんだが…しょうが無ぇ…ちっと芝居打つぞ?」

ローグ「へい!」



--------------

ガタン! ドタドタ


盗賊「俺が先に買う約束したんだ…割り込んで入って来るなクソがぁ!!」ドン

ローグ「いやいや何するんすか!!あっしはもうお金払ってるんすよ」スラーン チャキ

盗賊「なんだお前ヤロウってのか?」スラーン チャキ

マスター「え…あ…困ります」

盗賊「おいお前!今俺と寝る約束しただろ…来い!!」グイ

ローグ「レディーが嫌がっていやすぜ?」ダダ ブン グサ

盗賊「痛ぅぅぅ!!この野郎やりやがったな!!」ダダ ブン グサ


ドタン バタン


ザワザワ ザワザワ

なんだぁ?喧嘩か?

外でヤレ外でぇぇ!!

嫌ぁぁぁ血が出てる!

キャァァァ

ザワザワ ザワザワ


マスター「あの…ここでは他のお客様の迷惑に…」オロオロ

盗賊「うるせぇ!こっち来い!!」グイ

マスター「止めて下さい…」ヨロ

ローグ「このぉぉぉ…」ドタドタ

盗賊「出直して来い!」ドカ

ローグ「うわぁぁ…」ゴロゴロ

盗賊「行くぞ!!」グイ

マスター「誰か助けて…」


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店員「あのー大丈夫ですか?」

ローグ「いやぁお恥ずかしい…ご迷惑をお掛けしやした」

店員「血が出ていますよ?手当しましょうか?」

ローグ「結構でやんす…あっしはあのゴロツキを追うんで心配せんで下せぇ」スック

怪しい女「…」タッタッタ

ローグ「あんさんもあの男に恨みでも?」スタ

怪しい女「フン!」

ローグ「何処に行っちまいやしたかねぇ…」---身のこなしはくノ一---


---なんでくノ一に狙われているのやら---

『宿屋の部屋』


盗賊「リリース!」スゥ

剣士「うわ!!びっくりした…盗賊さんか」

マスター「…この人は?」

盗賊「仲間だ…とりあえず背中から降りろ」ヨッコラ

剣士「誰?」

盗賊「客だ…剣士に頼みがある…マスターの人相を変えて欲しいんだ」

剣士「ん?どんな風に?」

盗賊「とりあえず別の女だな…子供でも構わん」

剣士「おけおけ!子供にするのが楽だ」

マスター「私が子供に?」

剣士「うん…良いかな?」

盗賊「早くやってくれ…見つかると面倒になる」

剣士「変性魔法!」シュゥゥゥ

マスター「え…」

盗賊「よしこれで一先ず命を狙われることは無かろう…」

マスター「ありがとう助かった…」

盗賊「ほんでどういう事なんだ?」

マスター「私は騙されて麻薬を運ばされたみたいなの…口封じで殺される直前だった」

盗賊「見張ってた男3人だな?」

マスター「そう…公爵の刺客ね」

盗賊「まぁ良く酒場のマスターを何食わぬ顔でやってたもんだ」

マスター「狙われて居たのは男3人だけじゃなくて忍びにも…外に出たら兵隊にも」

盗賊「察するにヘロインを運んだんだな?」

マスター「騙されて運んでしまった…商船の中で私の荷物をすり替えられたの」

盗賊「お前は女王暗殺には関わって居ないんだな?」

マスター「私は公爵の指示通り海士島からフィン・イッシュの酒場に働き口を変えただけ」

盗賊「今までずっと密偵の役割をしていたのか」

マスター「結果的にそうなってしまった…報酬が良かったから」

盗賊「どうせあれだろ?魔石を大量に貰ってんだろ…美味い話ってのは俺に魔石を捌かせるつもりだった訳だ」

マスター「さすが盗賊さんね…すべてお見通し」

盗賊「ヌハハ胡散臭いとは思って居たんだ…ほんで魔石はどうした?」

マスター「全部すり替えられた」

盗賊「ヘロインはどうやって医者の手に?」

マスター「酒場に医者を名乗る人が直接取りに来た…その時は不妊治療の妙薬だと言われて疑わなかった」

盗賊「なるほどヘロインだと気付いたのはその後か」

マスター「そう…私は一門無しだったから不妊治療の妙薬を買い取りに来たと言われて直ぐにお金と交換したわ」

盗賊「医者はヘロインだと気付いて居ないのか?」

マスター「そんな事一言も言って無い」

盗賊「そうか結局全員騙されていた訳か…じゃぁお前はどうしてそれがヘロインだと気付いたんだ?」ギロ

マスター「医者が殺された後に兵隊が足取りを追って酒場まで来て麻薬の取引相手を探してるって…」

盗賊「よく見逃されたな?」

マスター「それからずっと見張られて居たの」

盗賊「ほ~ん…まぁ大体流れは分かった…ほんでお前これからどうする?」

マスター「もう宛てが無い…」

盗賊「お前の証言は大きく物事を動かす事になる…それを城に行って証言出来るか?」

マスター「公爵はフィン・イッシュで信頼が大きいのは知らない?」

盗賊「なぬ!?証言しても信じてもらえんという事か?」

マスター「多分…公爵はフィン・イッシュとセントラル両国の和平交渉の中心人物」

盗賊「驚きだな…信じて貰えたとしても和平が遠ざかる動きは取れないのか」

マスター「盗賊ギルドは未だ機能しているの?」

盗賊「んんん…ギルマス次第なんだがよ…この件でアサシンがどう動くかによるな」

マスター「そう…」シラー

盗賊「まぁちっと相談してみるわ…とりあえず子供の姿ならお前は安全だから金持って来い」

マスター「お金?」

盗賊「俺らあと金貨1枚くらいしか持って無いのよ…安心料でちっと寄越せ」

マスター「フフ…伝説の盗賊が金貨1枚…」

盗賊「後で女王を紹介してやっからよ…な?」


ガチャリ バタン


女オーク「あら?どこから連れて来たの?」

盗賊「おー水浴びから帰って来たんか…女オークにちっと頼みがあるんだが」

女オーク「何かしら?」

盗賊「子供用の着替えを買ってきてくれんか?」

女オーク「お金が無いわ?」

盗賊「あと金貨1枚ある…ほらよ」ピーン

剣士「ほっ!!もーらい」パシ

盗賊「着替えはお前等に任せる…マスター!お前の金は何処にある?」

マスター「私の家の戸棚に…」

盗賊「どうせ帰れんだろ?俺が盗んでくるから場所教えろ」

マスター「酒場の裏の建屋を間借りしているの…私の部屋は2階の角」

盗賊「分かった…何か盗って来て欲しい物あるか?」

マスター「何も…まだこっちに来たばかりで何も無い部屋」

盗賊「よし!ほんじゃここで待ってろ…直ぐに戻る」ダダ

『1時間後』


ガチャリ バタン


ローグ「あららら?この子供は誰でやんすか?」

剣士「盗賊さんが連れて来た女の人だよ…僕が子供に変身させたんだ」

ローグ「なるほど…そら良い案っすね」

マスター「お陰様で…」

ローグ「いやいやコブラ酒のルールを守っただけでやんすよ…1人保護完了っすね」

剣士「もうみんなで酒場には行かない?」

ローグ「お金が無いでやんす…それに忍びがそこら中飛び回って居るでやんす」

マスター「私を探して?」

ローグ「それだけじゃ無いっすねぇ…どうも要人が何処かに潜んでるみたいでやんす」

マスター「公爵が来てるという噂は本当かも知れない…」

ローグ「ええ!?マジっすか…いやいや有り得ないっすね…公に行動なんかしやせんぜ?公爵は」

剣士「なんかゴタゴタしてるんだね」

ローグ「ちっと大人しくして居た方が良いでやんす…魔女さんの使い待ちっすね」

剣士「魔女に会ったんだ?」

ローグ「魔女さんも忙しい様で後で使いを出すとか」

剣士「なら大丈夫か…」


ガチャリ バタン


盗賊「帰ったぜぇ?お前中々金持ちじゃ無ぇか…金貨200ぐらいか?」ジャラリ ドサ

マスター「例の医者がそれを置いて行ったのよ」

盗賊「ちっと使わせてもらったぜ?ほら食い物と酒だ」ドサ

ローグ「おぉぉ久しぶりの肉…」

盗賊「てかお前の部屋の中に男が潜んでて戦闘になっちまった…痛てて」ポタリ

剣士「線虫!癒せ!」ニョロ

盗賊「おぉ悪いな」

マスター「相手は誰か分かった?」

盗賊「暗器使いだ…喋らせる前に逃げやがった…あっちも深手だが急所外したのがマズかったな」

ローグ「忍びじゃ無かったんすか?」

盗賊「分からんが特殊な暗器を使って居たのは間違いない」

ローグ「な~んか物騒っすねぇ」ムシャムシャ

剣士「今日は出歩かない方が良さそうだね…まぁゆっくりしようか」

盗賊「そうだな…今日はハンモックじゃなくてベッドで寝れるんだしな」ドサ

剣士「マスターさん一つベッド使って良いよ?僕は女オークと一緒に横になるから」

マスター「ありがとう…」

『夜中』


カクカク シカジカ

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盗賊「…なるほど公爵はもう何年も前から移民を促してこの国にも足ががかり置いて来たっつー訳か」

ローグ「それじゃあっしは公爵の片棒を担ってた事になるんすが…」

盗賊「魔石とケシの流通コントロールでどうとでも出来る…こいつ相当賢いな」

マスター「この国は関税がかからないお陰でほぼセントラルが物価の指標を操作出来てしまう…それが弱点」

盗賊「まぁそれももう終わりだろ?この気候変動で商船はもう動けんしな」

マスター「だから今行動を始めて私も巻き込まれた…」

ローグ「公爵の足掛かりって具体的に何処か分かりやすか?」

マスター「銀鉱山の利権…廃坑になっていた場所を立ち上げ直した」

盗賊「ふむ…それだけじゃ切り捨ててもフィン・イッシュはそう痛まん」

マスター「銀で作った武器を軍隊に配布しているのも公爵」

ローグ「おっとっと…もしかして武器は全部公爵が握ってる感じなんすか?」

マスター「多分…」

盗賊「そういやフィン・イッシュがオークに武器を渡してるという話も聞いた事があるんだが…」

マスター「それも恐らく公爵が関与して居ると思う」

ローグ「あっしの言った通りでやんしたね?戦争を誘導していやすね…」

盗賊「あっちでもこっちでもマッチポンプか…どういう利があるか分からんな」

ローグ「表の顔じゃ和平交渉の先導役…こうやって足掛かりを得てるんすね」

盗賊「つまりすでに国の要人になってるってこったな…力を持った貴族はもう居ないってのは聞いて呆れる」

ローグ「力は金だけじゃ無いっすね…信用が力になる」

盗賊「だから暗殺がはびこる訳か…この状況をアサシンは黙って居ると思うか?」

ローグ「アサシンさんの敵は魔王なんすよ…魔王亡き今…守れなかった多くの命への懺悔の日々なんす」

盗賊「そういう所なんだよなぁ…女王に目染められなかったのは」

ローグ「不死者となってしまったんで無理も無いでやんすよ」

マスター「質問…あなた達は白狼の盗賊団としてフィン・イッシュへ?」

ローグ「…」ピタ

盗賊「それを聞いてどうする?」ジロリ

盗賊「ぶっ!!あのアホ豪族か…あいつらどうなったんだろうな?」チラ

ローグ「セントラルに移送中な筈でやんすが…どうなりやしたかねぇ?」チラ

マスター「その口ぶりは事情を知って?」

盗賊「まぁな?囮だ囮!!」

マスター「まだ白狼の盗賊団は健在と見て良さそうね…」チラリ

盗賊「…」ジロ

マスター「??」

盗賊「さぁて!!仕事だ仕事…」グイ グイ ギュゥゥ

マスター「え!?どうして…」

ローグ「盗賊さん…」


ギロリ


盗賊「お前が盗賊ギルドの一員だった時どういう風に呼ばれて居たか知って居るか?」

マスター「…」

盗賊「女狐のお銀…セントラル支部で俺らの情報を横流しして居たのは知ってんだ…だから距離を置いた」

女狐「今度は違うわ」アセ

盗賊「上手く俺らに取り入って内部に入り込もうとしてんだろ?残念だが俺もそれほど馬鹿じゃ無ぇ」

女狐「誤解よ…今は盗賊業はやってない」

盗賊「お前を付け狙ってた奴は全員フィン・イッシュの忍びだったと俺が気付かんとでも思ったか?」

女狐「そんな事知らない…」

盗賊「それを公爵からの刺客だと嘘をついた…言い訳出来るか?」

女狐「誤解よ!」

盗賊「それとな?俺らの手口を知っちまった以上もうお前は生きられない…理解出来るな?」

女狐「え…」

盗賊「まぁベラベラと情報を出して信用を得るのは良いが…俺も元盗賊だ…こんな形で身内をやるのは心外だが…」

女狐「ねぇ待って!コブラ酒の契約は?」

盗賊「それを知ってるのは一部の人間だけなんだ…なんでお前がその一人なのかは知らんがな」

女狐「私を殺すつもり?」

盗賊「ローグ!!足を押さえろ」

ローグ「へい!!」グイ

盗賊「お前とは酒場の繋がり程度で止めて置きたかった…」スラーン

女狐「お願い…殺さないで…もう裏切らないから」ジタバタ

盗賊「ふぅぅ…アサシンはこうやって身内を屠って来たか」

ローグ「盗賊さん…」

女狐「お願い止めて…」

盗賊「あばよ…」ブン


グサリ! ポタポタ


剣士「んあぁぁ痛いなぁ…」ポタポタ

盗賊「剣士!邪魔すんな…間違い無くこいつは刺客だ」

剣士「もっと平和に行こうよ…僕は幻術が得意な魔術師なのを忘れているよ」

女狐「ひぃぃぃ…はぁはぁ」ブルブル

剣士「人道に反するけどこの場合仕方が無い…催眠魔法!…君は僕達の秘密を他の誰にも話せない」

女狐「な…何を…」

剣士「人助けさ」

盗賊「なるほど…口封じはそれで良い訳か」

剣士「君がどう行動するかは自由だよ?でもね…一線を越える様な場合はどうなるか保証出来ないのは覚えて置いて」

女狐「…」ゴクリ

ローグ「こっわ…」

盗賊「命拾いしたな?これで俺らがどういう人種なのか理解出来たろう」

女狐「私の体は子供のまま?」

剣士「そうだよ…いつ元に戻るか僕も分からない」

女狐「フフフ…アーハハハハ完敗ね…もう何も出来ない」

盗賊「まだたんまり色々知って居そうだな?」

女狐「もう全部話したわ…私は白狼の盗賊団に憧れていた…突然盗賊が現れて試してみたくなった」

盗賊「やっと本音が出たか…裏切り癖さえなけりゃ俺らの仲間だったかも知れんのにな」

女狐「縁が無かったのね」

盗賊「お前だな?10年前にシャ・バクダ宿屋の店主と看板娘を嵌めたのは」

女狐「公爵はその頃から白狼の盗賊団を意識していた…私は雇われただけ」

盗賊「アサシンがやる気を失くしたのはその頃からだ」

ローグ「もしかして盗賊ギルド解体の裏にも公爵が関わって…」

女狐「気付くのが遅いわ」

盗賊「どうも生かして置けんなこの女…」

女狐「私は常に雇われ…悪気は無いのよ…私を雇う気は無い?」

剣士「何言ってるのさ…君はもう僕に逆らえないんだよ?自由にさせてあげてるだけだってさっき言ったじゃない」

女狐「う…」

盗賊「まぁそういう事だ…死ぬまで働け」


トントン


ローグ「誰っすかねぇ?こんな夜遅くに…」

盗賊「客だ…入って良いぞ!」


ガチャリ ギーー


ローグ「あらららら?どういう事っすか?」

怪しい女「話はすべて聞かせて貰った」

盗賊「俺らの隣の部屋は忍びが借りてる訳よ…その女が魔女からの使いだ」

ローグ「ええええ?マジっすか…」

くノ一「強力感謝…これで一族にも説明が付く」

盗賊「酒場のマスターをどうする?連れて行くか?」

くノ一「もう泳がせる必要は無くなった…連行する」

マスター「いつから手を組んで…」

盗賊「お前の家に行った時だ馬鹿が…お前が思うより忍びはずっと優秀なんだ」

マスター「フフフ…さすが白狼の一味」

盗賊「ほんで何処に連行するんだ?俺らはどうすれば良い?」

くノ一「今宵は夜が明けるまで待たれよ…早朝に狼煙を上げる故にそこを目指すのだ」

盗賊「狼煙…また古典的な」

くノ一「急ぐ故失礼!…付いて来い」グイ


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『早朝』


チュンチュン ピヨ


盗賊「なんで狼煙なのよ…見つけたか?」

ローグ「城の方じゃ無さそうっすねぇ…墓地も違う…」

剣士「ねぇ山の上の方…あれじゃ無いかな?」

盗賊「なぬ!?…あそこは古代遺跡に近い場所だ」

剣士「女王が忍んでいる場所ってもしかして…」

盗賊「なるほど…人里離れているという事か」

剣士「飛空艇で行く?」

盗賊「動物が多くて荒らされるかも知れんぞ?こっからなら歩いて2時間…」

剣士「歩きかぁ…じゃぁちょっと買い物して行きたいなぁ」

盗賊「ヌハハ金ならあるぞ?好きに使え」ジャラリ

剣士「女オーク?装備品を新調出来る…買いに行こう」

女オーク「私は今のままで良いわ」

剣士「ダメダメ…金属糸は僕には作れないからインナーだけでも買いたい」

盗賊「おおそうだ!銀の武器を一応用意しろ…ゾンビが出るかも知れんからな」

剣士「おけおけ…行くよ!」グイ

盗賊「集合は墓地!!良いな?」

剣士「分かった~」シュタタ


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『2時間後_墓地』


スゥゥ ハァァァァ モクモク


ローグ「それ葉巻っちゅう嗜好品すね?煙なんざ美味いんすか?」

盗賊「ドワーフが吸ってるのを見て俺も試したくなってな…苦みが癖になる」モクモク

ローグ「あ…剣士君達も来やしたね」

盗賊「おぉ丁度良かった」

剣士「ゴメン!待ったかな?」シュタタ

盗賊「葉巻一本吸うくらいにはな?」

ローグ「装備品新調した様に見えやせんが…」

剣士「インナーだけさ…身に着けてるのと着けてないのじゃ傷の具合が全然違うから」

盗賊「違い無ぇ急所がカバー出来てるしな…さて行くか!!」スック

ローグ「こっから先は魔物が出るんすよね?」

盗賊「うむ…まぁリザードマン程度だからどうって事も無いが…」スタ


---------------


『林道』


バサバサ ザクザク


盗賊「…確かこの辺りに獣道があった筈なんだが…」キョロ

ローグ「なんかやけに静かな林っすね…」

剣士「あああ!!松ぼっくりみーっけ!!」スタタ

盗賊「一応魔物に警戒してだな…」

女オーク「毒キノコもあるわ…」ドスドス

ローグ「ハハ警戒感ゼロでやんすよ‥」

剣士「んん?木の上に何か居る…」クンクン

盗賊「どこだ?」ダダ

剣士「お面を被ってる…あれ忍びかな?」

盗賊「天狗だな…」

剣士「こっち見てるね…なんかエルフみたいで気味が悪い」

盗賊「ふむ…俺らを監視してるのか…それとも迎えに来たのか」

剣士「迎え?やっぱり忍びの人?」

盗賊「詳しくは知らん…ただこの辺では始めて見る」

剣士「まぁ気にしなくて良いかぁ…女オーク!松ぼっくり集めて行こう」スタタ

女オーク「うん…」ドタドタ

盗賊「おい!あんまり遠くへ離れるなよ?」



----------------

ローグ「あの天狗あっしらの前方で一定距離保って居るでやんす」

盗賊「どうやら俺らを案内してんな?」

剣士「ねぇここ狭間が近いよ」

盗賊「どういう事だ?」

剣士「あの天狗見失わない様に進まないと迷う可能性がある」

盗賊「ほ~ん…なるほどな?忍びの隠れ里がある訳か」

剣士「天狗に付いて行こう」スタ

盗賊「おいおいお前が一番迷いそうだマテ」




『隠れ里』


剣士「…この赤い門みたいな奴は何?」

盗賊「鳥居ってんだ…しかしまぁ上手く隠したな」

ローグ「鳥居の向こう側で天狗が立ち止まっていやす」

盗賊「潜って来いという事か…」

剣士「…なんだろう?不思議な感じだ」スタ


くノ一「客人の案内ご苦労…」


盗賊「おぉ忍びの姉ちゃん…ここは何だ?」

くノ一「我ら忍びが修行する隠れ里だ…こちらへ…アサシン殿が待っている」

剣士「やっと合流出来たね」

盗賊「ここに女王が忍んで居るんだな?」

くノ一「如何にも…信用出来る者が分からぬ故の事」

盗賊「女王は無事なんか?」

くノ一「…付いて来い」スタ

『隠れ屋敷』


女戦士「剣士か?良く来たな…」

剣士「良かった…貝殻が通じないからどうしたかと…」

女戦士「どうやらここは狭間の中らしい…エルフの森と同じだ」

情報屋「待って居たのよ?」

剣士「女王様の容態は?」

女戦士「落ち着いては居るが昏睡が続いていてな…今は熱病で苦しんでいる」

剣士「線虫を掛け直す…見せて貰っても良い?」

女戦士「…との事だが構わんか?」

くノ一「…奥の部屋だ…一人だけ付いて来い」スタ

剣士「うん…」スタ



『奥座敷』


ハァハァ…


アサシン「…」ジー

剣士「アサシンさん…輸血の効果は?」

アサシン「…見ての通りだ…ゾンビ化の病と戦って居る」

剣士「大丈夫まだ生きてる…治療し直すよ」ゴソゴソ

くノ一「何をする気か?」

剣士「光の魔方陣を作って居るのさ…少し待って」ゴソゴソ

くノ一「この者は魔術師なのか?」

アサシン「信用して良い…勇者の血を引く者だ」

剣士「おっけ!浄化魔法!」シュゥゥゥ

女王「はうぅぅぅ…」ピクピク

剣士「線虫!癒せ!」ザワザワ ニョロリ

くノ一「…」ギュゥ グググ

剣士「よし…最後に睡眠魔法!」zzz

女王「すぅ…」スヤ

剣士「ゾンビ化した部分は浄化した…あとは線虫が傷を癒してくれる…目が覚めたら麻薬の事は夢だと思って居る筈」

アサシン「そうか…これで安心した」

剣士「もう僕に出来る事は無いから戻るよ」スック

くノ一「これで女王様はお目覚めに?」

剣士「うん大丈夫…あ!そうだ…夜光虫来い!」フワフワ ピカ

くノ一「これは…」

剣士「蛍だよ…命の水を運んで来るんだ…まぁ出来る事はこれで最後かな…じゃぁ行くね」スタ

『土間』


メラメラ パチ


剣士「へぇ?不思議な作りの屋敷だね…家の中で焚火出来るんだ」

情報屋「これが又便利なのよ…スープがあるけど居る?」

剣士「うん…少し貰う」

盗賊「さて!魔女が居ないがこれで全員揃った…いやいや久しぶりだ」

情報屋「今日は話が尽きなさそう」

盗賊「酒が無いのが寂しい所だ」

商人「僕持ってるよ…居るかい?」

盗賊「お?商人が酒を持ってるたぁどういう事よ」

商人「僕にも色々あるのさ」

盗賊「むむ…お前フードで顔を隠す様になってから様子がおかしいとは思って居たがまさか…」

商人「ハハ血色の悪さが隠し切れなくてね…僕の心臓はとうに止まって居るよ」

情報屋「まぁそういう話は今度にしましょう…はいスープ飲んで」

剣士「ありがとう…」ズズズ

情報屋「じゃぁ情報交換しましょうか…」


カクカク シカジカ


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盗賊「フィン・イッシュで信頼出来るのは近衛侍と忍びの一族だけという事か…」

情報屋「そう…私達もセントラル国王から疑われて身の危険があるからこの隠れ里に潜んでるという訳」

盗賊「しかしまぁセントラル国王は馬鹿というか直ぐに騙されちまうんだな」

女戦士「そういう馬鹿正直な男だそうだ」

盗賊「暗殺の主犯の件は伝わって居ないのか?」

女戦士「近衛侍の方から伝えに行ったそうだがまだ反応は見て取れない」

盗賊「まぁ自分の家系から裏切り者が出てるのは認められんかも知れんな」

情報屋「家系から出たというか上手く利用されたのね…公爵という人物に」

商人「僕も驚いたさ…公爵は主要なお得意さんで悪い人では無かった」

盗賊「お前会った事はあるんだな?」

商人「無い…影武者なら会ってるかもしれないけど向こうも本人が動いてるとは思えないしね」

盗賊「魔女が女王にすり替わっているのだが…」

女戦士「和平交渉を女王無しでは進められないのだよ」

盗賊「勝手にやらせてて良いとは思えんのだが」

女戦士「女王の側近にも利用されている人間が居るかもしれないのだ…その辺りのコントロールは魔女に任せた方が良いと思う」

盗賊「独裁国家になっちまうぜ?」

女戦士「近衛侍はその辺を心得ているぞ?まぁ元より近衛侍は和平を望んで居ない」

ローグ「なんか読めて来やしたぜ?和平交渉は公爵から一方的に提案されてるんすね?」

女戦士「そういう事だ」

ローグ「元々戦争の小競り合いは公爵が誘導したマッチポンプ…その辺りを近衛侍は感づいてるんすね」

女戦士「その通り…セントラル国王率いる軍隊を足掛かりにフィン・イッシュの分断を謀って居るのだよ」

盗賊「つまり和平では無く攻めに転じた方が国の為…近衛侍はそう判断しているのか」

女戦士「その戦争を回避するには首謀者の暗殺…これが一番有効になる」

盗賊「実はだな…俺らがこっちの大陸に来た目的が…」


どうやら時の王の資産を全部公爵が抑えて居てな

その中にアーティファクトの冒険の書もあるらしいんだ

他にも色々有るかも知れ無ぇ

ほんで俺がそれを盗みに行くつもりだった訳よ


女戦士「ふむ…目的は合致するな」

盗賊「殺すつもりは無かったが…剣士は公爵を骨抜きにする術を持って居る」

女戦士「剣士が?どんな隠し玉がある…」

剣士「幻術だよ…記憶を奪う事も出来る…人道を外れるけど」

女戦士「なるほど…命を奪う事無く事を納められるのか」

剣士「もう一つ大事な事を忘れてるよ…公爵は魔王を封じた魔石を持って居るかもしれない」

女戦士「なに?」

商人「ちょっと待ってちょっと待って…その情報の出所は?」

ローグ「あっしでやんす…証拠はありやせん…只状況証拠ならいろいろ知って居やす」

商人「魔王を封じた魔石を公爵が持って居たとすると…大量の魔石貿易はそこから来てる…」

ローグ「そういう一切合切を盗みに行くのがあっしらがやろうとしてる事でやんす」

商人「なんか色々読めて来たぞ…疑問が残るのが公爵の目的」

ローグ「それが分からんのです…公爵が冒険の書で何を見たかなんすよ」

情報屋「冒険の書…私が読んだのは遥か昔…光る隕石で溶けて行く世界のお話」

剣士「多分それは本当に在った出来事で精霊の記憶の一部…」

情報屋「分かるわ…同じように公爵も何かを見たなら啓示を感じたのかも知れない」

商人「啓示?」

情報屋「予言の一種よ…私もなんとなく知ってた…光る隕石が世界を滅ぼすって…」

商人「子供が生まれなくなる件の事か…」

情報屋「その時代…放射能と呼ばれていた」

ローグ「放射能…始めて聞く言葉っす」

情報屋「そういう知識が啓示の一つ…いわゆる予言なの」

剣士「じゃぁやっぱり地軸の移動も公爵は事前に察知していたと考えて良いね」

盗賊「国のお偉いさんには通達していた様だしな?」

女戦士「とりあえず公爵は危険な人物である事には変わりない…これからどうするか」

剣士「公爵の件は一旦僕に預けて欲しいかな…アダムの秘密を聞き出したいんだ」

女戦士「ほう?幻術で喋らせるか…」

剣士「うん…大きな戦争に発展してからでは探すのも困難になりそうだ…ここは隠密に行こうよ」


スタスタ


アサシン「話に割り込む様だが…一つ言っておく…公爵は悪い人間では無い」

盗賊「おっとぉ?どういう訳なんだ?」

アサシン「元は私達の同志なのだ…盗賊ギルドの良き支援者でもあった」

盗賊「なんだよ真逆な意見を言うじゃ無ぇか」

アサシン「私達とは手段が違うだけで公爵も世界を救おうとしている…只噛み合って居ない」

商人「参ったね…関りが複雑で何が何やら…」

アサシン「仮に私達がその魔王を封じた魔石を手に入れたとして向こう陣営にどう映ると思う?」

商人「アーティファクトを使って世界を動かしている様に見えるだろうね…」

アサシン「それと同じだ…向こうにはこちらの動きが常を逸した一党に見えているのだよ」

ローグ「ちっと待ってくださいよ?公爵がやって居るのも移民を促して結果的に人を救う行為っすね」

剣士「ドリアードを復活させたのはどう説明するの?」

アサシン「私達は精霊樹を…向こう陣営はドリアードを…手段が違うだけでやって居る事は同じという事だ」

剣士「そんな…じゃぁアダムは破壊する必要が無かったと?」

アサシン「エルフには破壊する必要があっただろうな…どちら陣営が力を持つかだけの差だよ」

剣士「こういう事か…僕達は魔王に侵されるのを拒んだ…向こうは魔王を受け入れた」

アサシン「そういう事だ…魔王は世界の半分を約束する…つまり半分の人間は生き残る」

商人「くそぉぉ!!」バン

情報屋「商人…」

商人「初めからボタンを掛け違って居ると言うのか?もう半分どころか10分の1も生き残って居ない!!」

アサシン「私が掛け違ったボタンだ…始めの魔王復活を邪魔しなければこうはならなかった…済まない」

盗賊「初めから公爵の思惑通りに魔王を魔石に変えときゃ被害は無かったと言いたいのか?」

アサシン「それに抗って事態を悪い方へ転じさせたのは私達なのだよ…意味が分かるか?私達は白い悪魔なのだ」

盗賊「あぁ胸糞悪いな…お前はそれでやる気失せた訳だ」

アサシン「クックック言わないでくれ…」

剣士「…」


僕が初めに自分を意識し始めたのは光る夜の時だった

思い返せば無意識に虫を集めて居た様な気もする

そしてダイダラボッチを起こして光る隕石が落ちた

子供が生まれない原因を作ったのは

僕かも知れない

ボタンを掛け違うというのはこういう事

もう取り返しが付かない

僕のせいで世界は滅ぶ…

魔王は僕だ…

『庭園』


チョロチョロ カコーーン


盗賊「妙な仕掛けだ…こりゃ何の意味がある?」

情報屋「これは鹿威しという仕掛け…野生の動物が寄って来ない様にする古来の工夫よ」

盗賊「ここは安全なんだろうがどうも退屈だ…」

情報屋「仕方ないわ…女王が目を覚ますまではフィン・イッシュに居ては私達も危険」

盗賊「そうだ…まだ言って無かったんだが新しい遺跡を発見したんだ」

情報屋「え!?何処に?」

盗賊「外海なんだがフィン・イッシュから北西だな…なんつったっけ…えーとハウ・アイ島という所があるんだ」

情報屋「知らない…いつの時代なのか分からない?」

盗賊「キ・カイと同じ開かずの扉が在るらしい…ほんでな?どうやらフィン・イッシュの祭事に使う祠も同じ様だ」

情報屋「えええええええ!?見たい…」

盗賊「まぁここの祠は女王に許可貰った方が良さそうだな」

情報屋「ちょっと待って…確か旧時代の世界地図をメモしてた筈…」ペラペラ


あった…そうよ…遺物が残って居る可能性のある分布図

フィン・イッシュも対象に入ってた…セントラルにもある筈

古代文明の遺跡の上に新しい文明が発達するのよ

ええと…今言ったハウ・アイ島はここの島ね?


盗賊「ちっと地図をひっくり返せ…」

情報屋「こう?」クル

盗賊「ふむ…大体そんな位置だな」

情報屋「未踏の地にある遺跡なんて大発見だわ」

盗賊「そこにな?リヴァイアサンと思われる大型の電気ウナギがいてよ…フィン・イッシュまで運ぼうとした探検家が居たんだ」

情報屋「リヴァイアサンが電気ウナギだった?本当に?」

盗賊「真相は分からんが剣士はそう思ってる」

情報屋「キ・カイと同じという事はウンディーネ時代より前…そしてホムンクルスが居るかもしれない」

盗賊「そういうこった」

『座敷』


シーン…


アサシン「…」ジーー

剣士「アサシンさん…」

アサシン「剣士か…どうした?」

剣士「瞑想しているの?」

アサシン「まぁそんな所か…」

剣士「さっきの話…アサシンさんはどんなボタンの掛け違いを?」

アサシン「クックック…直接本人に聞きに来るとはお前も肝が据わって居る」

剣士「あ…昔の話は聞かされてなくて知らないのさ」

アサシン「私はお前の父親を殺そうとして居たのだ…いや一度魔王と一緒に葬った」

剣士「100日の夜だね?」

アサシン「それを招いたのも私の未熟からの結果なのだよ」

剣士「僕も取り返しの付かないミスをしてた事に気付いた…」

アサシン「ほう?」

剣士「10年前に光る隕石が落ちたのは多分僕のせいだ…そして子供が生まれ無くなった」

アサシン「…」

剣士「僕はね…生まれて来る筈の命を全部奪ってしまた様に思う」

アサシン「私と同じだと言いたいのか?」

剣士「うん…アサシンさんも同じ様に取り返しの付かない事で沢山の命を奪ってしまったんだと思う」

アサシン「私はその時薄々感づいて居たのだ…ただ自分の行いを正当化したかった…未熟故にな」

剣士「その時って?」

アサシン「公爵とは旧友なのだ勇者を葬る考えは一致していてな…奴は魔王を勇者諸共魔石に変えると息巻いていた」

剣士「そっか…アサシンさんのお陰で僕が生まれたのか」

アサシン「私では無い…お前の母…女海賊がすべてを塗り替えた…私の心までもな」

剣士「ママが…」

アサシン「私はな…勇者と魔王は表裏一体だと思って居た…勇者の元に魔王が来る」

剣士「…」

アサシン「勇者を葬れば魔王は来ない…それは考えが甘かった…魔王を集めるのは祈りの指輪を持つ誰でも良かったのだよ」

剣士「祈りの指輪…」

アサシン「つまり公爵の思惑通りに進めればもっと早くに魔王を魔石に出来て居た筈…これが私の掛け違えたボタンだ」

剣士「そうすれば被害は最小で済んだ?…という事だね」

アサシン「私が足掻くが故に多くの友に手を掛けなくてはならなくなった…これが罪」

剣士「…ちがうよアサシンさん…それは結果論だよ…例えその時魔王を魔石に封じたとしても人類の滅亡はどんどん進む」

アサシン「私に講釈をするか…」

剣士「分かって居るんだ…人間の心から魔王は居なくならない…魔王は又来る」

アサシン「それを無くしたいと足掻き続けた結果…どんな未来が見えるのか…私には分からなくなってしまった」

剣士「ねぇアサシンさん?僕は取り返しの付かないミスをした事に気付いても不思議と前を見てる」

アサシン「ドワーフの血か?」

剣士「多分ね…僕が魔王を集めたらどうなると思う?」

アサシン「お前が魔王になると言うか?」

剣士「いや…多分もう既に魔王なのさ…幻術が得意な魔王…寄生虫を使ってすべてを操れる魔王」

アサシン「クックック馬鹿な事を言うと思えば…」

剣士「大丈夫…僕はコントロール出来てる」

アサシン「お前が魔王になったとしてどうする?世界を滅ぼすか?」

剣士「もう滅ぼしてしまった…それに気付いたよ」

アサシン「クックック馬鹿馬鹿しい…」

剣士「…どう?少しは気が晴れた?」

アサシン「退屈しのぎにはな?」

剣士「見て…いのりの指輪だよ」キラン

アサシン「…何故お前が持って居る?」

剣士「魔王だからさ…僕は人が抱える闇を取り込むことが出来る…でも僕には何も影響が無い」

アサシン「…」ギロリ

剣士「夜光虫!来い…」フワフワ

アサシン「蛍か…」

剣士「こうやって光を見せる事だって出来る」

アサシン「それがお前の答えか?」

剣士「ねぇもっと教えてよ…パパとママの事」

アサシン「フフ…」---これが勇者と魔王のあるべき姿なのかもしれない---


---これに気付くのに随分犠牲を払った---

---私はまだ生きて良いのか?---

---こう思えるのが希望なのか?---

『道場』


カン カン コン

次は3人同時で構わない…来い!

行くぞ…同時に切りかかれ

はぁっ!!飛んだ?

着地にスキ在り!!


女戦士「フフ…流石に土に足を付けねば避けられんか…」

近衛侍「いやはや3人掛かりでは無いと懐に付けぬとは御見それ行った…」

女戦士「近衛侍達も良くここまで修行した物だ…型を見たいのだが良いか?」

近衛侍「由何…夢幻一刀流…鶴切り…鶯…不如帰…月光…燕返し」スン スン スン

女戦士「ふむ…私には出来そうもないな」


タッタッタ


剣士「音がすると思ったらここで立ち合いやってたんだね」

女戦士「剣士か…丁度良い見て行くと良い」

剣士「パパの型だ…僕も少し出来るよ」

近衛侍「ほう?」

剣士「ほら?鶴切り…鶯…不如帰…月光…燕返し」スン スン スン

近衛侍「その光る刀…いつぞやの剣豪の刀と見受ける」

女戦士「剣士!ここで真剣は抜くな」

剣士「あぁゴメン…」スチャ

近衛侍「しかしまだ若い」

女戦士「その剣豪の子なのだ…その刀は形見」

近衛侍「そうであったか…抜刀術の神業を拝見した事がありましてな」

剣士「パパは腰に差した刀からの抜刀術が基本だったね…僕は刀を背負ってるから出来ない」

女戦士「剣士…少し立ち会って見るか?」

剣士「おけおけ…ビッグママ…いや女戦士と立ち会うのは初めてだね」スチャ

女戦士「お前も時空を超えるのだろう?どれ程か見させてもらう」スチャ

近衛侍「ほほー面白い立ち合いと見た…某が合図を」

剣士「おっけ!!いつでも良いよ」

女戦士「…来い!」

近衛侍「始め!!」

剣士「行くよ?」ダダ


カン カン コン


女戦士「なに?互角…」

剣士「あれ?防がれたなぁ…もう一丁!!」ダダ


カン カン コン


女戦士「これならどうだ!」グググ

剣士「くそう…」タジ

女戦士「ふん!!」ブン

剣士「うわぁぁ…」ゴロゴロ

女戦士「てい!!」ダダ

近衛侍「勝負あり!!」ビシ

女戦士「…」

剣士「強いなぁ…体格差か」

女戦士「剣士…時空の修行は終わって居なかったのでは無かったか?」

剣士「うん…飽きちゃったからさぁ」

女戦士「フフ親が親なら子も…そういう事か」

近衛侍「いやいや…なかなか良い試合を見させて貰った…若いのに見切りを体得して居られる」

女戦士「正直私も驚いた…格闘術を併用しないと剣術だけでは危険を感じた」


シュタタタ


くノ一「近衛侍!女王様がお目覚めに…」

近衛侍「おぉ!!試合の最中であるが御免…」スタタ

剣士「あ…走り方もパパみたいだ…」

女戦士「剣士…お前の父は剣技を伝えてこの国を守って居るのが分かるか?」

剣士「そうだね…分かるよ…多分剣の型の中にパパの意思が入ってる」

女戦士「それが分かれば良い…さて私達も女王の下へ行くか」スタ

『奥座敷』


くノ一「女王様…まだ御安静に…」

女王「良いのです…アサシン様…近くへ」

アサシン「ご無事で…」スス

女王「夢を見ました…アサシン様に背負われる夢です…又私はアサシン様に救われたのですね?」

アサシン「看病は近衛侍と忍びの一族が…」

女王「くノ一…私はどれ程眠って居たのでしょう?」

くノ一「7日程…」

女王「そうだったのですね…私が隠れに居る理由が良く分かりませんがご苦労をおかけしました」

くノ一「滅相も無い…無事に目覚めて何より」

女王「アサシン様は事情を把握しておられて?」

アサシン「勿論…ですが今は御ゆるりと」

女王「子ども扱いですか?」

アサシン「フフまずは女王様の体力回復が先にと…」

女王「少し体を動かしてみたいのです…補助をお願いできますか?」

アサシン「御手を…」スッ

女王「昔の様に話して頂けませんか?他人行儀は嫌なのです」

アサシン「…これで良いのか?」

女王「はい…その方がアサシン様らしい」

アサシン「座敷で懐かしい顔が増えている…何か口にするか?」

女王「少し口が渇いております」

アサシン「スープがある様だ…飲むが良い」

『座敷』


アーデモナイ コーデモナイ


盗賊「お!!嬢ちゃん…目ぇ覚ました様だな?」

情報屋「もう動いて平気なの?」

女王「盗賊様…お久しぶりで御座います」

盗賊「嬢ちゃんが握ったおにぎり食いに来たぜ?」


タッタッタ


剣士「ふぅ…あ!!女王様?」

女王「こちらの方は勇者様?」ハテ?

盗賊「あーーそいつは勇者の子供でな…剣士と名乗ってる」

女王「そうだったのですね…お世話になっております」フカブカ

剣士「え?いやぁ…こちらこそ」ペコペコ

アサシン「情報屋!スープを飲みたいらしい」

情報屋「用意するわ」アセアセ

盗賊「改めて紹介する…こいつが勇者の子で剣士な?」ドン

剣士「あ…はい」ペコペコ

盗賊「ほんでこっちのデッカイのが女オーク…ほんでこっちの貧相なのがローグ」

ローグ「いや貧相って酷くないっすか?」

女王「皆様この度は御迷惑をおかけした様で…」ペコペコ

剣士「いや…こちらこそ」ペコペコ

盗賊「何やってんだ…まぁまず食って体力付けてだな…てか俺ん家じゃ無いんだけどよ」

情報屋「肉と野菜のスープです…どうぞ」

女王「ありがとうございます…」スス ゴク

盗賊「ほほーやっぱ食い方が上品だな」

剣士「どんぐり居る?松ぼっくりもあるよ?あーそうだキノコもあったんだ」

女王「この雰囲気…皆様お変わりなくて安心しました」

盗賊「キノコは生じゃ気持ち悪りぃ…ちっと貸せ!焼いてやる」


ワイガヤ

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女王「…松の実は私も大好きなのです」モグ

盗賊「キノコ焼けたぜ?」

剣士「僕も食べたい…」

盗賊「おー食え食え」

商人「良いなぁぁ食べられて…お酒だけじゃ口が寂しい」ゴク

アサシン「腹は減って居ないだろう?」グビ

女王「少し食べたら力が湧いて来たようです」

盗賊「まだ畑仕事やってんのか?」

女王「勿論…お陰で体力には自信があるのです」

盗賊「そりゃ良い…そういや船の操作の仕方教える約束すっかり忘れてたわヌハハ」

女王「船…そうでした港の船はどうなったのかご存じ無いでしょうか?」

盗賊「離岸してバラバラに停船してたぞ?」

近衛侍「女王様…政務の事は私共にお任せを…今は御歓談を続けて頂いて結構」

女王「私には約束事が沢山あった筈…」

近衛侍「ですから女王様はご心配なさらず静養されて下さい」

女王「…そうですか」

盗賊「まぁ座敷でゴロゴロすんのもそろそろ飽きたろぅ?ちっと散歩でもし無ぇか?」

女王「そうですね…近衛侍!外に出てもよろしいですか?」

近衛侍「お体に障らない程度に…」

盗賊「実はよ?祭事の時に使う祠が合ったろう?ちっと見たいんだよ」

女王「隠れ里からすぐ近くですね」

盗賊「あと温泉にも入りてぇな…」

女王「温泉…私も入りたいのですが側近が居なくては…」

くノ一「私目がご一緒します」

盗賊「ほんじゃ静養がてら温泉に行くぞ!!」

近衛侍「警護はお任せあれ…」

『林道』


サラサラ サラサラ


女王「この小川を少し下った先が祭事の祠です」

剣士「この辺りはキノコが一杯だね」

女王「毒キノコですので食さない様に…」

剣士「大丈夫大丈夫!女オーク?このキノコ食べられそうだ」

女オーク「私専用ね?ウフフ」

盗賊「嬢ちゃん実はよ?俺らが祠に行きたい理由を言って無かったんだが…」

女王「はい察しております…」

盗賊「なんで聞か無ぇんだ?」

女王「察しておりますのでわざわざ聞く必要も無いと思いまして」

盗賊「扉を開けても良いのか?」

女王「どうぞご自由に…私は誰かのお役に立てる事が嬉しいのです…特にアサシン様には感謝しきれない恩がありますので」

情報屋「その祠は龍神を奉った祠よね?実はこの人たち龍神を発見してるのよ」

女王「そうだったのですね…龍神はいづこへ?」

盗賊「未踏の地で眠って居た様だ…今は外海で元気に泳いでる」

女王「伝説では龍神が祠を守って居たと伝えられています…きっと未踏の地にも祠が有るのでしょうね」

剣士「僕が説明するよ…多分誰かが龍神の使う雷で扉の開閉をしていたんだよ」

女王「誰か…」

くノ一「口を挟みますが我ら忍びの始祖…一角仙人かも知れません」

剣士「へぇ?」

くノ一「仙人には沢山の逸話が残って居ます…妖術を操り魔物を退けたなど…」

盗賊「まぁ俺らはその謎が知りたい訳だ」

情報屋「私は考古学者なので古代文明との繋がりを調べたい」

女王「なんだかワクワクする話ですね…奥に何があるのか楽しみになってきました」

盗賊「そう言って貰えると俺も鍵開けをやり易い…まぁ楽しみにしていてくれ」

『祭事の祠』


ピチョン ポタ


情報屋「入り口が大分風化しているけど古代遺跡に間違いないわ」

女王「奥に祭壇があります…ついて来て下さい」スタ

情報屋「並んでいる石造は割と年代が新しい…」

女王「それは農業の神を奉った石造ですね…林道にも沢山ありますよ」

アサシン「クサナギの剣は祭事でどの様に使うのだ?」

女王「祭壇に置くだけですよ…置いても何も起こりませんけど」

アサシン「これは私が持って居て良い物なのか?」

女王「どうぞお持ちください…私には必要の無い物ですから」

アサシン「私はこの剣を返そうと思って居たのだが…」

女王「なぜ返されようとするのですか?」

アサシン「私はもう殺める事をしたく無いのだ」

女王「ではその剣でお守り下さい…私を守って下さった様に…どうか民をお守りください」

アサシン「守る…」

女王「ふさわしい方にお渡ししているつもりなのです」

アサシン「フフまぁ良い…祭壇は何処だ?」

盗賊「おぉコレか!このどす黒い器はなんだ?」

女王「贄として捧げる男性の血を入れる器です…古来からの慣わしなのです」

情報屋「龍神に血を?」

女王「龍神と言っても色々な龍神が居るのです…中には血を好む龍神も居ます」

盗賊「ほ~ん…で?この祭壇の裏にあるのが例の扉か…」

女王「開けられそうですか?」

盗賊「こりゃキ・カイの扉と一緒だ…そうだな2時間で開く」

女王「時間が掛かるのですね…」

盗賊「温泉に行って来ても良いぞ?」

情報屋「そうね…開いた後に調査もしたいし今の内に入って来るわ」

剣士「僕も行って来るよ…女オーク!温泉行こう」グイ

女王「では後ほど戻ってきます…ご安全に」スタ

『開かずの扉』


ヒュゥゥゥ


商人「もう扉を開けるのは慣れたもんだね」

盗賊「こう何度も開けりゃな?しかしお前…やけに落ち着いてるじゃ無ぇか…ホムンクルスが居るかもしれんぞ?」

商人「ハハ僕は居ないと思うよ…何故ならホムンクルスが生前に残された生体の数を教えてくれているから」

盗賊「ヌハハそういう事か…楽しみ半減だな」

商人「まぁこれで少し謎は解けた…ホムンクルスの寿命は400年…どうやって精霊が何千年も生き続けたのかね」

盗賊「体を乗り換えて来たって事か」

商人「うん…この大陸にはもう生体は残って居ないのさ」

盗賊「じゃぁ誰がこの扉を開け閉めしてたか?ってのが今から分かる訳だ」

商人「大体想像が付く…過去に戻った勇者2人だよ」

盗賊「仙人ってのもそうだな?」

商人「多分ね…それより未踏の地にあるという古代遺跡の方が気になるよ」

盗賊「ホムンクルスが眠って居る可能性が有るんか?」

商人「うん…残された生体の数は当時の行ける範囲での話さ…未踏の地は除外してる筈」

盗賊「でもよ?リヴァイアサンがそこで凍ってたって事はそっちにも行ってんだよな?」

商人「行ったけど肝心のリヴァイアサンが凍ってしまった…だから開けられなかった…可能性ありそうだよね?」

盗賊「なるほど…やっぱ行く価値ありそうだ」

商人「行くときは僕も連れて行って欲しい…実はさ…僕精霊樹の所に行って死のうと思ってたんだ」

盗賊「なぬ?」

商人「ゾンビは木に生まれ変われるじゃない?ホムンクルスの所に行きたかったんだよ」

盗賊「まぁ止めはしないが…」

商人「気が変わった…まだこの機械の犬は5年くらいは寿命がある…それまでこの世界の秘密を暴きたくなった」

機械の犬「ワン!」フリフリ

商人「僕のお墓は精霊樹で決まり…まだ体が動くからやれる事やる」

盗賊「おう!そういう生き方好きだぜ?」

アサシン「クックック死者が言う言葉か…足掻き方と言い変えた方が良いがな」

盗賊「そういうお前は王女を守ると言う生き甲斐が出来ただろ」

アサシン「セントラル国王と上手くやっていく自信は無いがな?」

商人「忍びの一族には気に入られて居たじゃない」

アサシン「まぁ退屈しのぎにはなるな…」グビ

盗賊「お?俺にも酒飲ませろ」

商人「僕が持ってるよ」ポイ

盗賊「お前等酔いたいなら聖水飲むんじゃ無いのか?」グビ

アサシン「アレは喉が焼ける…味はワインが最高だ」ゴク

盗賊「しかしまぁ…俺と一緒で酒無しじゃ生きて行け無ぇってな?ヌハハ」

商人「酔えるのが羨ましいよ」

『2時間後』


ホクホク


女王「只今戻りました…扉は空きましたでしょうか?」ホクホク

盗賊「おぉ待ってたぜ~?まだ入って無ぇぞ?」

女王「ワクワクしますね…」

盗賊「剣士!光を頼む」

剣士「おっけ!照明魔法!」ピカー

盗賊「一応危無ぇから後から付いて来てくれな?」

女王「はい…」ワクワク

盗賊「じゃぁ入るぜ?」スタ



『古代遺跡』


シーーン


女王「ガラス容器にテーブル…食器まで…これは一体」

情報屋「食器の年代を調べるわ…」ゴソゴソ

剣士「いつもの古代遺跡とほとんど同じだね…」

商人「やっぱりホムンクルスの生体は無い…予想通りだ」

盗賊「お宝は無さそうだな…」キョロ

剣士「ん?何だコレ?大きな食器かな…それとこっちの宝石みたいな奴は何だろう?」

盗賊「ほーーそりゃ鏡だな…ほんでこっちは又デカイ宝石だな」

情報屋「見せて?…スゴイ!この鏡は相当な年代物…宝石は瑪瑙ね」

女王「もしかすると失われた八咫鏡と八尺瓊勾玉かも知れません」

情報屋「八咫鏡…何かの書物で読んだ事あるかもしれない」

盗賊「まぁこれは嬢ちゃんの物だ…宝具にすると良い」

情報屋「鏡に何か記されてる…古代文字ね…ええとダメね書物が無いと読めない」

剣士「あ!!ここ魔方陣が組んである…退魔の方陣だ…足元に砂銀が置いてあるから踏まないで」

商人「ちょっと機器を触るよ…」ガチャ ガチャ

盗賊「ん?この容器外れるんか?」

商人「その筈…この容器の中にウラン結晶が入ってる筈なんだ」スポ

盗賊「どうよ?」

商人「無い…外されてる…」

盗賊「使ったと見るか?」

商人「だろうね?ここの機器の使い方を知らなかった様だね」

情報屋「食器の年代がバラバラね…陶器があればもっと分かるのに」

商人「一番新しいのは?」

情報屋「700年くらい前ね…銀の食器の傷み具合がバラバラで良く分からないわ」

商人「ガラス容器が全部で6つ…年代毎に何度か来たんだろうね」

ローグ「もしかすると時の王の屋敷にあった精霊の石造は全部本物だったかも知れやせんね?」

商人「そうだね…そこにも石造が沢山あったんだよね?」

剣士「何個あったのか覚えて無いや」

商人「まぁこれで精霊の記憶に連続性が無い事の説明がついた…時の王が困惑した理由だよ」

情報屋「離れて再会するたびに記憶が無い状態なのね」

商人「外部メモリをちゃんと管理する人が居れば別なんだろうけど…」

盗賊「やっぱ遺跡に誰か入られてるとお宝は何も無ぇな…」

商人「鏡と宝石があったじゃないか…十分さ」

盗賊「俺が期待してたのはこのライト見たいな使える小道具なんよ…」ピカー

商人「次に期待しよう」

盗賊「まぁそだな?…ほんで嬢ちゃん!この鏡と宝石は持って帰るか?」

女王「どうしてここに安置されていたと思いますか?」

商人「ふむ…それは歴史を調べないと分からないね」

情報屋「そうね…鏡に書いてある文字を解読すれば何か分かるかもしれない」

女王「では一度持って帰りましょう」

盗賊「隠れ里だな?宝石は俺が運ぶから鏡は誰か持ってくれ」ヨッコラ

情報屋「じゃぁ私が…よいしょ…結構重い」

女王「では戻りましょう…日が暮れてしまう前に」スタ

『隠れ屋敷』


女王「すっかり日が落ちてしまいましたね…私は奥座敷で少し休みますので皆さんもお寛ぎ下さい」

盗賊「嬢ちゃんは病み上がりだからしっかり休め…俺らの事は気にせんで良いぞ」

女王「はい…ありがとうございます…では」ペコリ


スタスタ


情報屋「…」チラリ

女戦士「…」コクリ

情報屋「くノ一さん内密にしておきたい話が…」

くノ一「何用で?」スタ

情報屋「女王様はしきりに喉が渇くと言ってたの…これは麻薬依存の症状」

くノ一「やはりそうですか…」

情報屋「本人は幻術魔法で覚えて居ないけど多分体が麻薬を欲してる…絶対に麻薬に近付けない様に」

くノ一「承知しました」

商人「脳内麻薬の受容体だっけな…それが落ち着くまで時間が必要らしいよ」

情報屋「どのくらい?」

商人「う~ん…分からない…落ち着くまで情緒不安定になるんだってさ」

情報屋「しばらく国の政務には関わらない方が良いかもしれない」

剣士「魔女が精神安定の薬を作れるよ…それと睡眠魔法も効果的だと思う」

くノ一「急ぎで手配させます…」

情報屋「後は出来るだけ不安を解消させてあげる事ね…」

盗賊「それならアサシンしか居無ぇな…アサシンが何でも相談に乗ってやりゃ不安も無いだろ」

アサシン「…」ギロ

盗賊「なんだ嫌なんか?どうせ何もやる事無ぇんだろ?」

『翌朝』


盗賊「おい起きろ…」ユサユサ

ローグ「へい…むにゃ…」

情報屋「もう行くの?」

盗賊「2~3日で直ぐに帰って来る」

情報屋「女王様に挨拶して行った方が良いのでは?」

盗賊「寝てる所を起こすのも悪いじゃねぇか…まぁ適当によろしく言っといてくれ」

剣士「準備出来たよ」

盗賊「ローグが起き無ぇんだよ…おい!起きろ」ユサユサ

ローグ「へ~い…」zzz

剣士「ビックママが酔っぱらてる…」

ローグ「え!!?マジすか…」ガバ

盗賊「アホか!!行くぞ」グイ

ローグ「あら?あららら…」ヨロ

情報屋「公爵の居場所は分かってるの?」

盗賊「行きゃ分かるだろ」

情報屋「和平交渉でこちらに来ているかも知れないって言ってたじゃない」

盗賊「なら都合良いだろ…泥棒に行くんだよ」

情報屋「フフあなたって人は…」

盗賊「まぁ心配すんな…帰って来たら遊んでやんよ」

情報屋「何言ってるの!騒がしいから早く出て行って」

盗賊「よし剣士!来た道覚えてるな?」

剣士「大丈夫」

盗賊「川下って速攻飛空艇に行く…セントラルまで半日程度だよな?」

剣士「うまく風に乗れば夜までには到着する筈…」

盗賊「うし!!急ぐぞ」

剣士「おけおけ…女オークおいで」グイ


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『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


剣士「進路東南東…偏西風に乗れてる」

盗賊「いやいや海岸の形が全然違う」

剣士「そうだね10メートル海面が変わるとこうも変わるんだね」

ローグ「海抜の低かった場所は海に浸食されてあっという間に深い海になるんすね…」

盗賊「この分だとセントラルは内壁まで海水が来てるかもしれんな」

剣士「逆だと思うよ…緯度が低いから前より海面が下がってるんじゃないかな」

盗賊「そんなに変わるもんか?」

剣士「月の影響もあると思う…今は北極の方向に月があって海水がそっちに引っ張られる」

盗賊「なるほど…満ち引きが半端ない訳か」

剣士「フィン・イッシュみたいに海抜のすこし高い場所じゃ無いと生活しにくいね」

ローグ「あっし思うんすがセントラルとフィン・イッシュは海で分断されていやせんか?」

剣士「迂回すれば繋がってそうだよ?もっと北の方」

盗賊「わざわざ迂回して戦争すんのもアホみたいだな?」

ローグ「そっすね…ていうか国境で小競り合いするのにどんな意味があるか分からんす」

盗賊「政治的な意味なんだろうな?」

剣士「そろそろ狭間に入る…ハイディング!」スゥ

盗賊「ところでローグ…公爵の居場所は分かってんのか?」

ローグ「へい…貴族居住区からほとんど出やせん」

盗賊「和平交渉があるとか言ってたんだが?」

ローグ「どうせ影武者か代役を立ててるんすよ」

盗賊「警備はどんな感じだ?」

ローグ「ラットマンリーダーが居るんすが他には2~3人の警備が居るだけでやんす」

剣士「なんだ…それなら睡眠魔法使えば余裕だ」

ローグ「只一つ心配なのが…ラットマンリーダーをどうやって操っているかなんすよ」

剣士「あーそういえばそうだね…何で言う事聞くんだろ」

盗賊「アレか…魔女が持ってる幻惑の杖みたいな物を持ってる可能性があるってこったな?」

ローグ「へい…同じ物があるのか知りやせんが同等の何かは持ってるかも知れやせん」

盗賊「ちっと調べてから動いた方が良さそうだな…」

ローグ「そーっすね」

盗賊「じゃぁ今晩は偵察だけにしよう」

ローグ「あっしの屋敷が丁度近いんでそこに行きやしょう」

盗賊「そうか…じゃぁ一先ずそこだな」

ローグ「到着したらハイディングしたまま案内出来るっす…」

盗賊「分かったそれで行こう」


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『数日前_セントラル』


ピーーーーーーッ

見た事の無い魔物だ…数匹壁内に入り込んで居る!

敵は素早い!!射手!!弓を持て!!

何処へ行った?

あの魔物は勘が良い…衛兵の少ない裏路地を移動してる

探せ!!居住区へ入れるな!!


異形の生物「くそう!この恰好じゃ目立ち過ぎる…」シュタタ

異形の生物「確か下水から上層へ抜け道があった筈…」

異形の生物「まず公爵の屋敷だ…あそこに変化の杖がある」

異形の生物「それまでは我慢だ…」ギリリ


シュタタ 


『公爵の屋敷』


公爵「何やら外が騒がしい様だが…」

執事「様子を見て参りましょうか?」

公爵「又白狼の真似事をした盗人だろう…一応例の牢を確保しておけ」

執事「かしこまりました…」

公爵「しかし全く行方が掴めんとは…」

執事「キ・カイで確保されたという2人はご確認されたのでしょうか?」

公爵「勿論…海賊王の娘は見知った顔で驚いた」

執事「では白狼の一党だったと?」

公爵「知らぬ存ぜぬとの事だ…覇気も無い」

執事「又…雲を掴まされましたな」


ズルズル ピチャ


執事「ハッ…公爵様お下がりを」

公爵「んん?」

執事「施錠はして居た筈…何処から入って来たのですか?」スラーン

異形の生物「公爵!!僕だよ…変化の杖を持って居るよね」

公爵「なに?…その声はまさか…」

異形の生物「早く貸してよ…この恰好じゃ外も歩けない」

公爵「殿下…なぜその様な格好で?」

異形の生物「僕は回りくどいのはキライなんだ…この爪は良く切れるんだ…早くしろ!!!この薄ノロ!!!」ブン ザク

執事「ぎゃぁぁぁ…」ブシューーー

公爵「殿下…お戯れはおやめ下さい…ささ変化の杖をどうぞ…」スッ

異形の生物「それから魔王を封じた魔石はどうした?設置してた場所から無くなってる」

公爵「私が拝借しておりました…魔石が必要だったもので」

異形の生物「アレは僕の物だ…返してよ」

公爵「…」スッ

異形の生物「ふぅ…やっと落ち着ける」フリフリ シュワワー

公爵「お着替えをお持ちします…」

第3皇子「当たり前だ!!…わざわざ告知しないと動けないのか?」

公爵「ご立腹の様ですな?」

第3皇子「そうだよ…話が違うじゃ無いか公爵…僕はすべてを失ったぞ?どう責任を取ってくれる?」

公爵「はて?すべてをと申しますと?」

第3皇子「アダムが破壊されて夢幻が消失したよ…」

公爵「なに!!?…いや失礼…それは本当でしょうか?」

第3皇子「何度も言わせないで欲しいな…イラつくんだよ…兄者がエルフを率いてアダムを破壊した」

公爵「まさか…エルフには毒の耐性が無い…ドリアードに入れる訳が無い」

第3皇子「兄者は不死者になってるのを忘れてる…実際兄者と対面したさ」

公爵「なんだ…と?私が半生をかけて成した事が水の泡になったと…まさか」ボーゼン

第3皇子「どうするんだよ…ドリアード化が解けて数万の異形の生物が森を徘徊してる…もう統制も何も無いんだぞ」

公爵「そこに白狼は見たか?」ギロリ

第3皇子「誰に向かって話している…偉そうな口利きしないで欲しいな」

公爵「黙れ小僧!!!」ドン チャキリ

第3皇子「くぅ…こんな事をして只じゃ済まないぞ」ジタバタ

公爵「もう一度聞く…答えろ…そこに白狼は居たのか?」ズブリ

第3皇子「うぐぐ…僕を殺すつもりかい?フフ…そうは行くか…」

公爵「すでにお前には地位も名誉も無い…只の小僧だ…殺すのは簡単…私の手駒になれば王の地位は約束してやる」ギロ

第3皇子「また僕を利用する気だね…そうやって母上も姉上も僕から奪った」

公爵「お前が選んだ道だ…私の知った事では無い」

第3皇子「結局僕には何も残らなかったよ…母上も姉上も兄者に取られた」

公爵「なら兄を超えて見ろ!!」ドカ ゴロゴロ

第3皇子「くぅぅ…そうさ超えてやるよ」ヨロ

公爵「超えるチャンスをお前にくれてやろう…第1皇子との対談に興味はあるか?」

第3皇子「大兄と対談?」

公爵「その顔は興味ありだな?」ギロ

第3皇子「今は状況が何も分からない…対談して何なんだよ」

公爵「それは後でゆっくり話してやる…まずは私の質問に答えろ…白狼の一党は見て居ないか?」

第3皇子「見てない…でもオークの匂いがした…それから大量の虫を使ってた」

公爵「オーク…虫…まさかもう黄昏の賢者が動いて居るのか…しかもエルフと共闘だと?」

第3皇子「直にドリアードは虫に食い尽くされるよ…もうドリアード計画は終わりさ…人類滅亡待ったなしだ」

公爵「まだ終焉まで間がある…最後にもう一つだけやれる事が残って居る」

第3皇子「何だよ」

公爵「オークの予言…箱舟を我々が先に奪取すれば一部の人類は生き残れる」

第3皇子「さっき僕を王にする約束したよね?どうなってるんだよ」

公爵「お前が王にならなければオークの箱舟まで辿り着くのは難しいだろう」

第3皇子「どういう事だよ」

公爵「王として戦力を集めなければそこまで到達が難しいのだ…箱舟はオーク領地の更に奥…未踏の地に眠る」


その地はかつてヒュース・トンと呼ばれて居た

そこにオークに伝わる天翔ける箱舟がある

それはあらゆる生物を保存し未来へ送る事の出来る箱舟だ

4000年前の地軸の移動でヒュース・トンは南極点へと場所を変え封印された

そして再度地軸の移動で箱舟の封印は解かれ…オークはその地を目指して居る筈


公爵「我々が先に奪えば毒を浄化した未来へ人類の種を送る事が出来る…絶滅は免れる」

第3皇子「僕はそこに行けるのかい?」

公爵「最後に生き残った者が勝ちだ…兄を超えて見ろ」

第3皇子「よし僕は生き残ってやる…みてろよ」ググ

公爵「フフフ」---お前はハーフエルフだという事を自覚していない…小僧め---

『談話室』


カクカク シカジカ


公爵「…すでにフィン・イッシュへは密偵を送って居る…和平交渉には好条件になっている筈だ」

第3皇子「大兄が率いる軍船で外海に出られる様に取り計らえば良い訳か…」

公爵「そうだ…お前の顔を見て断る事も出来まい」

第3皇子「いつ行動する?」

公爵「直ぐにだ…私の影武者が同行するから詳しくはそいつに聞け」

第3皇子「公爵はどうするんだよ?」

公爵「私はキ・カイの軍船に乗って向こうに渡る…高官と話を付けるから用が済んだらお前もキ・カイへ来い」

第3皇子「分かった…」

公爵「変化の杖は返して貰おう…交渉に必要になる」

第3皇子「ふん!!」ポイ

公爵「シェルタ砦にて待つ」

第3皇子「待ってよ…僕は手ぶらかい?」

公爵「フン…魔王を封じた魔石を持って更に何を欲しいと言うか」

第3皇子「お金だよ…お金が無いと何も出来ない」

公爵「好きなだけ持って行くが良い」ドサ ジャラリ


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『セントラル上空』


シュゴーーーー  バサバサ


盗賊「あの船も座礁してんな…」

ローグ「海面は5メートルくらい下がったぐらいすか?」

盗賊「うむ…元々遠浅な入り江なのよ…ちょっと下がっただけで大きな船は座礁する」

ローグ「ポツポツ流氷も流れて来ていやすね」

剣士「やっぱり緯度が低いと寒い…」

盗賊「飛空艇を何処に降ろしゃ良いんだ?」

剣士「いつもの海岸は人が居るなぁ…」

ローグ「外郭の外側で良いんじゃないすか?あんまり人が行かんですし…どうせハイディングで門潜るんで」

剣士「そうだね…そっちの方が安全そうだ」

盗賊「おい!!見て見ろ…なんだアレ?」

剣士「ああ!!異形の生物…こんな所まで来てる」

盗賊「知ってんのか?」

剣士「ドリアードの中から出て来てるんだ…多分ドリアード化した人達なんだよ」

盗賊「全部バラバラの形してるんだが…」

剣士「中には強いのも居るよ…侮れない」

ローグ「あんなのが外郭の外に居ると良くないっすねぇ…」

剣士「いっそのことハイディングしたまま時の王の屋敷の庭に降ろそうか…全然人居ないよね」

ローグ「それが良いでやんす…貴族居住区も近いんで逃げる時もラクっすね」

剣士「おけおけ…ほんじゃ降ろすよ?ハイディング!」スゥ


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『ローグの屋敷』


リリース!


盗賊「ここがお前ん家か…良い所に住んでんな」

ローグ「あっしはもうこんな屋敷要らんです…なーんか散らかされていやすねぇ…」

剣士「入り口の扉に書簡が一杯挟まってるよ」

ローグ「面倒くさいっすねぇ…どうせ貴族達が面倒な依頼をしようとしてるんすよ」

盗賊「なるほど…それが住みたくない原因か」

ローグ「一応一通り目を通しておくんで自由に出回って良いっすよ?」

盗賊「公爵の屋敷は何処だ?」

ローグ「あー地図あるんで記を書きやす…ここっすね」カキカキ

盗賊「俺ぁちっと偵察行って来るわ」

剣士「じゃぁ僕はちょと外歩いて見ようかな」

ローグ「高級なローブがあるんで羽織って行って下せぇ…ちょっと行くと食事出来るレストランがあるんで行って見ると良いでやんす」

剣士「へぇ?レストラン…行った事ないや」

ローグ「金貨ありやしたよね?」

剣士「うん盗賊さんから貰った金貨が20枚くらいある」

ローグ「十分っすね…金貨見せたらちゃんと相手してくれるでやんす」

剣士「おっけ!!行って見る」ワクワク

ローグ「高級なローブは羽織って行って下せぇ…身なりを見られるんで」

剣士「分かったよ…女オーク遊びに行こう」グイ

『街路』


ヒソヒソ

お前…ウィッグが取れ掛かって居るぞ

あら大変…あなたこそ鼻自が出ているでは無いですか…

又か…しかしエリクサーでもこの奇病は良くならんな

嫌ですねぇ…私もこれ以上毛髪が抜けては…


剣士「…」チラリ

紳士「あぁ失礼…いやぁ立派なローブですなハハ…」

淑女「どちらの御曹司様ですの?オホホホ…」

剣士「なんか体の調子悪そうだね?大丈夫?」チラ

紳士「いやいやお気になさらず…流行り病にやられましてなハハ…」フラ

剣士「お大事に…」

紳士「見ず知らずの方に心配されてしまうとは私とした事が…ではご機嫌よう」スタ

女オーク「…」チラ

剣士「…」コクリ

女オーク「セントラルは奇病が酷そう…」

剣士「うん…夜中に線虫をやってみるよ」

女オーク「この奇病は情報屋さんが言ってた放射能の?」

剣士「多分そうだね…治す事の出来ない毒…」

女オーク「キ・カイにはあまり見られないのはやっぱり光る隕石から遠いからなのね」

剣士「だと思う…あっちはまだ子供が少し生まれてるから」

女オーク「本当に滅亡に向かって居ると思う?」

剣士「考えたく無いよ…」

女オーク「フィン・イッシュ女王も子供が産まれなくて…」

剣士「こっちの大陸は殆ど生まれないんだ…産まれても死産…悲しいね」

女オーク「…」


スライムがどうして大量に発生しているのか

なんとなく分かって来た

この毒を食らって浄化する為だったんだ

正常な世界に戻そうとしているスライム達を

僕は何も知らず退治してた

どうしてこう…何もかも噛み合わないのか…

『ローグの屋敷』


リリース!


盗賊「戻ったぜ?」

ローグ「早かったっすねぇ…どうでした?」

盗賊「屋敷に公爵らしき人物と数名人が居る…ラットマンリーダは見当たらんかったんだが…」

ローグ「公爵は口ひげを生やしてるんすが…」

盗賊「おぉ…なら間違い無さそうだ」

ローグ「実はっすね…書簡を確認したんすが公爵はあっしに用があるみたいでやんすよ…ちっと本人かどうか確認してきやす」

盗賊「ほう?何の用か分からんのか?」

ローグ「海賊王の娘を引き渡して欲しいみたいっす」

盗賊「ぶはは…売っちまえ!!」

ローグ「いやいや偽物に気付かん程無能じゃ無い筈なんすよ」

盗賊「見た目じゃ見分け付かんだろ?」

ローグ「なーんか裏があると思うんすよね…」

盗賊「ふむ…俺は今から屋敷の見取り図書こうと思ってた所だ…丁度良い俺も同行する」

ローグ「え!?ダメっすよ…2人居るとまともな話にならんです」

盗賊「俺はハイディングしながら屋敷の内部を見たいだけだ」

ローグ「姿現さんで下せぇ…良いっすね?」

盗賊「分かってる…ローグは出来るだけ屋敷の中を案内してもらえる様に動け」

ローグ「ふむふむ…海賊王の娘と交換条件で欲しい物物色させてもらうって言う手もありやすね…」

盗賊「おぉ良いじゃ無ぇか」

ローグ「物が無くなったらあっしが疑われるんすけどねぇ…」

盗賊「そこは白狼の盗賊団のせいにしちまえば良い」

ローグ「まぁ行ってみやすか!!」

盗賊「俺ぁハイディングしながら物陰に居るから好きにヤレ」

ローグ「わかりやした…じゃぁ行きやしょう」スタ

『公爵の屋敷_門』


門番「公爵様は誰ともお会いにならん!立ち去れぃ」

ローグ「この書簡を見て下せぇ…あっしの方が急ぎで呼ばれてるんす」パサ

門番「ん?豪族の頭取…」ジロ

ローグ「あっしの顔に見覚えありやすよね?」

門番「ふむ…公爵様は屋敷でお休みだ…失礼の無いようにな?」

ローグ「分かってるでやんす…通りやすぜ?」スタ


ガラガラ ガシャーン


ローグ「誰か案内してくれんのですかね?」

門番「扉をノックして執事を待て」

ローグ「あぁそういう事っすね…失礼しやした」スタスタ



『公爵の屋敷』


トントン


ローグ「どなたか出て来やせんか?お客さんがきやしたぜ?」

執事「何用で?」ヒョコ

ローグ「おわ!!…なんちゅー所から顔出すんすか…ビックリしやしたぜ」

執事「執事になって間が無いので勝手が分からなくて…」

ローグ「なんか執事というかメイドさんっすか?」

執事「はい…つい先日までメイドをしていました」

ローグ「じゃ掃除中だったんすね?」

執事「ご用件をお伺い致しますが?」

ローグ「この書簡を見て下せぇ…あっしは呼ばれてる立場なんすよ」パサ

執事「ふむふむ…扉を開けますのでしばらくお待ちを…」

ローグ「なーんか変な執事でやんす…」

執事「聞こえていますよ?」ガチャリ

ローグ「そらすまんかったっす…ほんで入って良いっすか?」

執事「どうぞ…ご案内致します」

『公爵の居間』


トントン


執事「失礼します…お客様をお連れしました」

公爵「誰だ?もう日が落ちていると言うのに…」

ローグ「豪族の頭取でやんす…書簡を見て急ぎで駆け付けたんすが…」

公爵「書簡?…あぁ何の件だったか…」

ローグ「…」

公爵「そうそう取引だったか…済まんが執事に任せて居てな」

ローグ「…」---この男---

執事「相場表をお持ちしましょうか?」

ローグ「ええと…海賊王の娘に相場があるんすかね?」

公爵「!!?あぁ忘れていた…その件か…執事此処へ」

執事「はい…」スタ

公爵「少し待って欲しい…」ヒソヒソ

執事「はい…はい…」ヒソヒソ

ローグ「あのですね…海賊王の娘を引き渡して欲しいという事が書いてあるんすが…どういう事なんすか?」

公爵「えーーーオホン!!あいにく現金の手配が出来ていないのだ」

ローグ「いや現金じゃなくても良いんすがね?それよりも何故引き渡して欲しいかの方が重要でして」

公爵「やはり理由無しで取引は出来ない…では引き取り願おう」

ローグ「ちっとそら失礼じゃ無いっすか?わざわざあっしを呼ぶからには理由がありやすよね?」

公爵「これは失礼…捕らえた経緯を詳しく知りたかったのだ」

ローグ「だからそれはなんでか聞いてるんすよ…取引なんすよね?」

公爵「一緒に捕らえた白狼の一味は…仲間の行方を聞いても知らぬ存ぜぬ」

ローグ「な~るほど…ほんであっしが何か知って居ると踏んでる訳っすね?」

公爵「只今は現金が用意できない…取引は機を待ってという事で如何か?」

ローグ「あっしは現金じゃなくても良いんすよ…何か他に無いんすか?」

公爵「私はそれほど裕福では無い事は知って居るな?他には爵位の譲渡を融通するくらいしか…」

ローグ「屋敷をちっと見させて貰って良いっすか?」

公爵「大した物は無いのだが…」

執事「ご案内致しましょうか?魔石の保管状態をお見せするくらいなら…」

ローグ「それで構わんす…あっしは取引が嫌な訳じゃ無いんすよ…あっしの利になるかどうかっすね」

公爵「執事…案内した後丁重にお見送りをしてくれ」

執事「かしこまりました…」ペコリ

ローグ「じゃぁお願いしやす…」

『廊下』


スタスタ


執事「こちらが応接間…客室…食堂…備品保管庫」

ローグ「外から見たら大きな屋敷なんすが意外とこじんまりなんすねぇ…」

執事「石造りな物ですから…続いて地下に公爵様の書斎と魔石の保管庫が御座います…どうぞこちらへ」スタ

ローグ「年代物の美術品がそこそこありやすねぇ…」スタスタ

執事「美術品に興味がおありで?」

ローグ「現金よりも取引がラクじゃないすか」

執事「気に入った物があればおっしゃって下さい」

ローグ「あっしは書物にも興味ありやすぜ?」

執事「どうぞご覧ください…歴史書ばかりの様ですが」

ローグ「こりゃまた沢山集めたんすね…」パラパラ

執事「そして魔石の保管状況がこちら…」

ローグ「うは…」

執事「如何でしょう?取引の参考になりましたでしょうか?」

ローグ「公爵は裕福じゃないと言ってたのはウソっすね」

執事「この魔石は既に売約済ですので保管してあるだけになります」

ローグ「参考になりやした…次の取引の機会を待って居るでやんす」

執事「では門までご案内致します」スタ


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『ローグの屋敷』


リリース!


盗賊「ふぅ…中々良い仕事するじゃ無ぇか!!」

ローグ「盗賊さんは会話聞いて無いっすよね?」

盗賊「あぁ…どうだったんだ?」

ローグ「公爵は偽物でやんす…見た感じ本人なんすが良く仕込んだ影武者っすね」

盗賊「…で事はお前もずっと騙されてたかも知れんな」

ローグ「へい…あまり表に顔を出さないってのは間違っているかも知れやせん」

盗賊「今居ないって事はやっぱりフィン・イッシュに行ってるのかもな?」

ローグ「そーっすね…」

盗賊「まぁそれは置いといて…屋敷の中にどうやら冒険の書は無さそうだな?」

ローグ「あっしも色々見たんすがアーティファクトらしき物も見つかりやせんでした」

盗賊「こら収穫無しで戻る覚悟も必要だな」

ローグ「気付いたんすが屋敷の間取りがやっぱおかしいっす」

盗賊「おぉ!俺もそう思った…ちっと待て見取り図を書く」


カキカキ

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ローグ「こりゃ中庭でやんすか?」

盗賊「いや…屋根に穴は開いて無ぇから多分縦穴だ」

ローグ「縦穴…」

盗賊「ゴミをその縦穴に放り込む訳よ…行き先は下水」

ローグ「じゃぁ下水に降りる隠し部屋があるんすね?」

盗賊「俺の予想だとやっぱ地下の書斎があやしい」

ローグ「そういえば公爵は時の王の派閥…その当時特殊生物兵器部隊が下水に基地を作って居やしたね」

盗賊「それだな…多分そこに繋がってんだ」

ローグ「下水は姉さんが爆破したでやんすよ」

盗賊「全部吹っ飛んだ訳じゃあるまい?どっかに残ってんだよ」

ローグ「貧民街から下水を探すんじゃ時間掛かりそうっすね」

盗賊「うむ…公爵の屋敷から直接降りた方が手っ取り早い…やっぱ明日の夜だな」


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『夜中』


ガチャリ バタン


剣士「戻ったよ…ふぅ」

盗賊「えらく遅かったじゃ無ぇか…何してたんだよ」

剣士「線虫を使って来たんだ…みんな流行り病に侵されてるみたいだから」

盗賊「なんだそういう事か…心配して損したぜ」

剣士「盗賊さんは体に異常ない?」

盗賊「無ぇな…ヌハハ年取ったせいかアザが中々治らん位だ」

剣士「…そっか」

盗賊「浮か無ぇ顔してるな?」

剣士「はっきり言うよ…盗賊さんも流行り病に侵されてるよ」

盗賊「俺ぁもうどうでも良い…十分生きたしな?」

剣士「そう言うと思った…でもね?一応線虫しておく…線虫!」ニョロリ

盗賊「効果あるんか?」

剣士「どのくらい寿命が延びるかは知らないよ…アザの治りが早くなればそれで良いさ」

盗賊「なんで治り難いんだ?」

剣士「血が固まり難いんだと思うよ…それから新陳代謝の低下かな?」

盗賊「昔みたいには体も動かんし…まぁ無理はし無ぇから」

剣士「出血は避けた方が良いかもね」

盗賊「ところで…公爵の屋敷に行って来たんだが明日の夜に行動する事にした」

剣士「その地図は?」

盗賊「これは下水のおおまかな地図だ…どうやら公爵の屋敷は下水に繋がっててな」

剣士「じゃぁ目標は下水にあるんだ」

盗賊「俺の勘だと間違いない…多分この区画の何処かにある…お前鼻が利くよな?」

剣士「まぁね」

盗賊「最終的にはお前の鼻に頼るかも知れん…しっかり鼻洗っとけ」

剣士「実は女オークも鼻が利くんだよ?」

盗賊「おぉ!そうだったのか…頼りになるなそれは」

剣士「そうそう…レストランで妙な噂を聞いたよ」

盗賊「何だ?」

剣士「殿下が帰って来たって…誰の事か分かる?」

盗賊「殿下…王族の誰かなんだろうがそれだけじゃ分からん」

剣士「その噂で持ちきりなんだ…貴族院の招集がどうのこうのってさ…ローグさんも呼ばれるかもね」

ローグ「あっしは貴族じゃ無ぇす…豪族なんで関係無いすね」

盗賊「今貴族で力持ってる奴なんか居ないんだろ?」

ローグ「あっしの知る限り公爵ぐらいのもんす」

盗賊「まぁ貴族院がゴタつくって事は王族のそれなりの地位の奴が戻って来た…ぐらいしか思い浮かばんな」

ローグ「あんまり気にする事も無いんじゃ無いすかね?」

剣士「そっか…その程度なんだ」

『翌日_貴族居住区』


ヒソヒソ ヒソヒソ

侯爵殿と子爵殿が異議を唱えておってな…

議会が荒れるのは間違いない

新たに特権階級を設定するという話も出ている

公爵殿が囲い込みをしているのがそもそもの…


盗賊「こう人が多くちゃやり辛い…どうだ?水路から下は見えんか?」

剣士「一応見えるけどここから登って来るのは厳しいと思うな…」

盗賊「じゃ次行くぞ…こっちだ」タッタッタ

剣士「高さがあるのは何処も同じじゃ無いかな?」

盗賊「う~む…やっぱ下水に降りて見んと抜け道探すのは無理か…」

剣士「水が流れて行ってるんだから必ず海には繋がってるよね」

盗賊「まぁそうなんだが…冷たい海なんか泳ぎたく無いだろ」

剣士「そっか…次探そうか」

盗賊「まぁ逃げ道を準備しておくに越した事は無いんだ…行くぞ」タッタ



『夕方_ローグの屋敷』


ガチャリ バタン


ローグ「盗賊さん戻ってきやしたね?ちっとマズイ事になってるっす…」

盗賊「どうした?」

ローグ「公爵の屋敷で貴族院の議会をやってるんすよ…今は人が沢山居るっす」

盗賊「なぬ!?」

ローグ「どうしやしょうかね?折角白狼のローブも用意したんすが…」ファサ

剣士「イイね似合ってる」

盗賊「注意がそっちに行ってるのはチャンスかも知れん…どうせハイディングで例の地下室まで直行だ」

ローグ「じゃぁ予定通りっすね?」

盗賊「只元来た道を帰るのは止めた方が良かろう」

剣士「ハハ水路にロープ設置しておいて良かったね」

盗賊「うむ…」

剣士「まぁ何か有ってもどうせ僕が睡眠魔法使うから大丈夫だよ」

ローグ「目を覚ました後にどうして寝てたんだ?って事になりやすんで乱用出来んです」

剣士「最後の手段さ…気楽に行こうよ」

盗賊「ようし!!日が落ちて暗くなり始めたら作戦開始だ…今の内に体温めておけ」

剣士「おけおけ!!女オークも白狼のローブ纏って?」

女オーク「…」ファサ


--------------

--------------

--------------

『黄昏時』


スタスタ シュタ


盗賊「水場の窓が開いたままだ…あそこから入るぞ」

盗賊「侵入したらそのまま地下室へ降りるから付いて来い」

剣士「おっけ!」

盗賊「じゃぁ行くぞ!ハイディング!」スゥ


ハイディング!


盗賊「迷って無いな?」

剣士「大丈夫…みんな居る」

盗賊「来い!!」スタタ




『公爵の屋敷_地下室の扉』


リリース!


盗賊「よしローグ…後方を見張ってろ…鍵開けをする」ヒソ

ローグ「あいさー」ヒソ

盗賊「ん?開いてるな…中に誰か居そうだ」

剣士「1人かな…女の匂いだよ」クンクン

ローグ「変な執事っすね…悪い人じゃ無さそうなんで乱暴はしたくないっす」

盗賊「剣士!眠らせられるか?」

剣士「おけおけ…」

盗賊「騒ぐ前に頼む…開けるぞ?」


ガチャリ ギー


執事「ん?どなたですか?ここは立ち入り禁止と連絡して…」

剣士「睡眠魔法!」モクモク

執事「いま…すぅ…」フラ フラ

盗賊「入れ…鍵かける」カチャリ

ローグ「この執事さん横にして置きやすぜ?」ヨッコラ

剣士「あああ触ると起きる…」

執事「どなたですかぁぁぁ?」ムニャ

ローグ「あわわ…」

盗賊「放って置け!隠し通路探すぞ…」スタ

ローグ「すんません」

盗賊「本棚の反対側の壁を良く調べてみてくれ」

剣士「う~んおかしい所は無さそうだなぁ…」

女オーク「この執事さんは何か知らないの?」

剣士「お?なんだ…聞けば良いね」

盗賊「そんな事が出来るのか?」

剣士「睡眠魔法は幻術だよ…ねぇ執事さんこの部屋の隠し通路の場所教えて」

執事「隠し通路は御座いません…」スヤ

盗賊「なぬ!?」

剣士「困ったな…宛が違ったみたいだ」

盗賊「ゴミを何処に捨てるのか聞いてみてくれ」

剣士「ゴミ?…ええと執事さんこの部屋のゴミは何処に捨てるのかな?」

執事「書斎の壁にゴミ捨ての口が御座います…」

盗賊「よっし!!この壁だな…あった!!ここだ」

剣士「穴が小さいな…」

盗賊「いや…積んでる石壁が外れる…間違い無ぇここだ」ゴトリ

ローグ「下見えやすか?」

盗賊「見えんが…梯子がある…俺が先に降りるからローグは最後に外した石壁を元に戻してくれ」

ローグ「分かりやした」

盗賊「剣士と女オークは俺に続け…降りるぞ」スタ

『下水』


ザザー ザブザブ


盗賊「足元に水が流れてるから気を付けろ…」

剣士「照明魔法居る?」

盗賊「お前の刀を少し抜く程度で十分な明かりになる」

剣士「なるほど…」スラリ

ローグ「石壁を元に戻して置きやしたぜ?」

盗賊「これで追っては来ない…ゆっくり目標を探せるってもんだ」

剣士「僕が光持ってるから先頭かな?」

盗賊「そうだな…とりあえず一本道だ進んでみよう」


ペチャ ペチャ


盗賊「ん?」

剣士「ラットマンの匂いだ…」

盗賊「なんだ敵が居るんか…」

剣士「あれ?共食いかなぁ…ラットマンの死体を漁ってるよ」

盗賊「俺の飛び道具はデカイ音が出るんだ…ローグ何か持って無いか?」

ローグ「いやいやあっしはダガーしか持っていやせん」

女オーク「私が倒すから先へ進んで…」スラーン

剣士「ちょっと待ってよ?睡眠魔法!」モクモク


ラットマン「!!?」ドタリ グゥ


女オーク「ふん!」ブン ザクリ

剣士「よし行こうか…」

『段差』


ザザー


剣士「広い所に出た…どうする?下に降りる?」

盗賊「こっから降りると貧民街に繋がる下水だな…しまった逆方向だ」

剣士「なんだ戻ろう」

盗賊「うむ…方角がまた変な方向になるんだがなぁ…」

剣士「ねぇさっきからちょいちょいラットマンの死体があるけどさ…ここ誰か入って来てるよね」

女オーク「鉄柵も曲げられてるわ」

盗賊「だな?用心しろ」

ローグ「死体が古いでやんす…死んで一週間ぐらいは経っていやすね」

剣士「急いで戻ろうか…」シュタタ



『突当り』


ピチョン ピチョン


剣士「だめだ…もう進めない」

盗賊「くそう…やっぱ下の方なのか?」

ローグ「上に登る梯子も公爵の屋敷だけの様っすね」

女オーク「待って…ここの壁おかしいわ?」

剣士「あ!!本当だ…音の反射がおかしい」

盗賊「石が積んであるってか?よっ…」スカ

剣士「うわ何だコレ…壁じゃない」

盗賊「壁に見えるだけか…あだっ!!」ゴツン

ローグ「これ凹んだ鏡でこういう風に見えるトリックっすね…出っ張ってる所気を付けて下せぇ」

剣士「スゴイな…こんなトリック初めてだ…」

盗賊「そこら中にこんなんが仕込んで有るってか…あー痛てて」スリスリ

剣士「盗賊さん!有ったよ…扉がある」

盗賊「ようし!!鍵掛かって居そうか?」

女オーク「何かの音がするわ…中に何か居ると思う」


ドスドス ドスドス


ローグ「ラットマンリーダーっすね…足音からすると4匹ぐらいでやんす」

剣士「おけおけ…詠唱するからちょっと待って…アブラカタブラ…」

盗賊「ラットマンリーダーは首を切り落とせ…失敗すると暴れ出すぞ?」

女オーク「わかったわ…」チャキリ

ローグ「あっしもバックスタブで行きやす…」スチャ

剣士「広範囲睡眠魔法!」モクモク

盗賊「おし!鍵開けるぞ?」カチャカチャ ガチン

剣士「僕が明かり役で先行する…入るよ?」

盗賊「行け!!」


ガチャリ ギーー


剣士「よし!!寝てる!!」シュタタ

女オーク「てぁぁ!!」ブン ザクリ ボトン

ローグ「バックスタブ!!」ジョキリ ボトン

盗賊「ほぉぉ女オークはパワーが有り余ってんな…」

剣士「任せて置いて良いね」

盗賊「うむ…」

『隠し部屋』


ドタリ ピクピク


女オーク「片付いた…」スチャ

盗賊「見ろよアレを…」

剣士「古代遺跡の扉だ…」

盗賊「この感じじゃ開けられて1000年ぐらい経ってそうだ…ここで間違いなさそうだな」

ローグ「向こうにも扉がありやすぜ?」

盗賊「ありゃこっちから閂が掛かってる…どうせ秘密基地に繋がってたんだろ」

剣士「公爵はこの場所を独り占めしてたのかな?」

盗賊「だろうな…中に入ってみるか」

剣士「ここが情報屋さんが言ってた古代遺跡か…」

盗賊「まぁ公爵は割と深い所まで秘密を知って居たんだな…」

剣士「行こう…」スタ



『古代遺跡』


シーン


盗賊「…あった!!これだな?冒険の書は…」ゴソリ

ローグ「やりやしたね…」

盗賊「この書物は…」ペラペラ

剣士「それも持って帰った方が良さそうだね」

盗賊「オークの予言?…まてまて…あ~なるほど公爵の手記だ」

ローグ「奥にお宝がどっさりありやすぜ?」

盗賊「マジか!!袋詰めして持って帰るぞ」

ローグ「ひゃっほい!!」スタタ

剣士「…もう謎の機械は風化して原型が無い…」

盗賊「ガラス容器だけは残ってるじゃ無ぇか…これだけなんで綺麗な状態なんだろうな?」

剣士「エリクサーで満たされてたんじゃないかな?」

ローグ「アーティファクトらしい物見つけやしたぜ?謎の横笛でやんす…これだけ丁寧に保管されていやした」

盗賊「他に何がある?」

ローグ「多分時の王の装備品っすね…デカイ剣とか色々あるんすよ」

盗賊「珍しそうな物全部持って帰るぞ…手分けして持とう」

剣士「杖とかもあるなぁ…何が封じてあるのか分からないけど」

盗賊「ここに置いとくと何に使われるか分からん…フィン・イッシュの遺跡かどっかに隠しておいた方が無難だ」

剣士「まぁそうだね…急いで持って帰ろう」ガチャガチャ


--------------

--------------

--------------

『下水』


シュタタ


剣士「この荷物背負ってロープ登るのはキツイね」

盗賊「上からロープで引き上げるんだよ…それなら出来るだろ」

剣士「なるほど…」

盗賊「ローグ!お前は最後だ…俺らで荷物引き上げるからお前は下で荷物結んでくれ」

ローグ「分かりやした」

盗賊「よし!剣士と女オークは先に上がって見張ってくれ」

剣士「うん…女オーク先に上がって」

女オーク「わかったわ…」グイ ヨジヨジ

盗賊「荷物引き上げたら真っ直ぐ飛空艇へ向かう…良いな?」

剣士「おっけ!!…じゃぁ僕も登る」グイ ヨジヨジ



『貴族居住区_外れ』


グイグイ ギリリ


盗賊「よし!あと一つ…ロープ降ろすぜ?」シュルシュル

剣士「マズいな…衛兵が近づいて来る」

盗賊「なんとか注意逸らしてくれ…何か無いのか?」

剣士「う~ん…煙玉しか…」

盗賊「どっか遠くに投げて騒がせば良い」

剣士「わかったよ…」チリチリ ポイ

盗賊「もっとだ!!ほんで騒げ」

剣士「…」ポイポイポイ


モクモクモク


剣士「衛兵さん!!なんか煙が出てるよ…あれ大丈夫?」

衛兵「んん?どこだ?」キョロ

剣士「ほら?あっちにも…こっちにも…」

衛兵「お前のその格好…ふざけて居るのか?」ジロ

剣士「ああ!!何か光った…」

衛兵「お前はそこで待って居ろ…」タッタッタ


ピーーーーーーーー


剣士「なんか疑われてる…どうしよう?」

盗賊「もう少し時間稼げ…よっこら!!」ドサリ

女オーク「衛兵が戻ってくるわ…」

剣士「あの衛兵だけ眠らせる…睡眠魔法!」モクモク

衛兵「おいお前!!何を…した」フラ

盗賊「ローグ!!早く上がって来い…女オークは荷物を持って逃げる準備だ!!」

剣士「他の衛兵も集まり出した…なんで煙の方に行かないんだよ…」

盗賊「一発爆弾をどっかにぶち込め!!…ローグ早く登れ!!」

ローグ「はいよはいよ…ほっ」ヨジヨジ

剣士「ええい!!」チリチリ ポイ


ドーン!! パラパラ


衛兵「な…なんだぁ!!」キョロ


ザワザワ ザワザワ

煙だぁ!!何処か燃えて居るぞ!!

今の爆発音は!?

おい!!見ろ…あそこに白いローブの4人組

又白狼の真似事か?


ローグ「お待たせしやしたぁ!!」シュタ

盗賊「よっし!!荷物持って逃げるぞ…屋根沿いに貴族特区へ向かうんだ」

ローグ「あいさー」グイ

盗賊「剣士!!追っ手の攪乱を任せる…先に行くぞ」ダダ

剣士「え…あ…参ったなぁ苦手なんだよなぁ…こういうの」シュタタ


ピーーーーーーー

白狼だぁ!!屋根に上がってる!!通路遮断しろぉ!!

行き先は!?

分からん!!全部封鎖だ!!


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---------------

---------------



その日の夜を騒がした白狼の一党は

財宝をばら撒く事無く忽然と姿を消した

被害に合った報告が皆無だった事から

只のお騒がせ事案として片づけられた

『フィン・イッシュ_隠れ里』


ノソノソ


くノ一「魔女様をお連れしました…」

アサシン「忙しい所済まないな」

魔女「女王は安定しておるんか?」

アサシン「精神安定の薬で落ち着いては居るが嫌な夢を見ると言ってなかなか寝付けん様だ」

魔女「幻惑かえ?…」

アサシン「いや正気は保って居る…寝付けないから疲れているだけだ」

魔女「事の事情は説明したのかえ?」

アサシン「どうしても教えろと言うから近衛侍の方から粗方話したそうだ」

魔女「身内に毒殺されそうになったのは認められんじゃろう…」

アサシン「事実なのだから認めるしか無いだろう」

魔女「して…どうするかのぅ…和平交渉を待たせて居るのじゃが」

アサシン「魔女はどう思う?」

魔女「わらわは交渉に来た者の首をはねて公爵に付き返せば良いと思うて居るが…」

アサシン「それは宣戦布告と同意だぞ?」

魔女「逆じゃ…女王の暗殺を企てて何が和平じゃ」

アサシン「まぁ確かに…和平をしても利は無さそうだな」

魔女「セントラル国王が何度も頭を下げに来たが…あの男は本当に騙されやすい馬鹿じゃのぅ」

アサシン「魔女が女王にすり替わって居るのはバレて居ないのか?クックック…」

魔女「しかし国の大局じゃ…交渉は女王が担うべきじゃが…」

アサシン「うむ…」


女王「魔女様…お話聞こえていました」ヨロ


魔女「騒がせてしもうたのぅ…主は平気なんか?」

女王「はい…只少し疲れていまして」

魔女「嫌な夢を見るで眠るのが辛い様じゃな…実はのぅ…シン・リーンの魔術師の研究で最近分かった事があるのじゃ」

女王「悪夢に理由が?」

魔女「うむ…どうやら出回って居るアヘン酒や麻薬を摂取すると夢食いが起こる様じゃ」

女王「夢食い…」


夢はのぅ…平行次元での行いに関連づいて居るのじゃ…いわゆる夢幻の様な物じゃ

この夢を食らい増大して逝く者…それが魔王じゃと分かって来た

10年前に勇者らが魔王の欠片を集め次元転移をしたのじゃが

やはりどこかで魔王は息づいて居る


魔女「主はそれを悪夢と言う形で感じて居る様じゃな…異常では無い故心配には及ばぬ」

女王「私はどうすれば安心出来ると思いますか?」

魔女「元々主には心の中に光を持って居る…それを忘れん様にすれば良いが…夢だとやはり忘れてしまうじゃろうのぅ…」

アサシン「銀の仮面はどうした?」

女王「城に置きっぱなしかと…」

魔女「おお!?良い案かも知れぬ…銀は厄除けの効果がある故…つけたまま寝て見るのも良いかも知れぬ」

女王「くノ一!私は城へ戻り仮眠を取ります…後に和平交渉を挑みます」

くノ一「御意に御座います…」

魔女「背後にわらわ達が居るで何も案ずる事は無いぞよ?見て見よ…この顔ぶれを」

女王「シン・リーンの王女…ドワーフ国の王女…旧シャ・バクダ王」

魔女「皆主の仲間じゃ…胸を張って良い」

女王「ありがとうございます…勇気が湧いてきました」ググ

『座敷』


メラメラ パチ


商人「やっと退屈から解放されそうだ」

情報屋「魔女?これを見て…祭事の祠からこんな物が出て来たわ」

魔女「んん?鏡…はて?」

情報屋「女王が言うにはもしかして八咫鏡じゃないかって…」

魔女「むむ…もしやそれは真実を写すと言う鏡では無いか?」

情報屋「知って居るの?」

魔女「本物かも知れんで大事に扱わねばならぬ」

商人「こっちの大きな瑪瑙は?八尺瓊勾玉だっけな…聞いた事無い」

魔女「なんと!!それはシン・リーンがシャ・バクダに奪われたと言われる宝具…フィン・イッシュに有ったとは」

商人「なんか凄い効果があったりする?」

魔女「王を選ぶと言われて居る…この国に有るという事はこの大陸の真の王はフィン・イッシュに居ると言う事になる」

情報屋「あ!!思い出したわ…そうよ勾玉を廻って戦争をした歴史…こんなに大きな勾玉だったのね」

魔女「シャ・バクダが滅び既に消失したと言う事じゃったがここに隠されて居ったとはのぅ…」

アサシン「では在処が知れてしまうと戦争の火種になりかねんな…」

情報屋「じゃぁこういう事ね…先人は隠す事で争いを回避した」

魔女「賢いやり方じゃな…しかしこれを持ち帰るのはイカンと思うが…」

商人「元の場所に保管した方が良さそうだ」

情報屋「あの扉を閉める事は出来る?」

商人「簡単さ…魔女が閉める事が出来る筈」

魔女「わらわに何をせよと?」

商人「扉を閉めた後に中の空気をアンモニアに変性させるだけだよ…それで真空になる」

魔女「なんじゃ簡単な事じゃ…しかし変性の理屈を良く調べたのぅ?」

商人「発案は剣士さ」

魔女「そうか…納得じゃ」

商人「じゃぁこの八尺瓊勾玉だけ戻しに行こう…魔女ついて来て」

魔女「わらわは疲れて居る…背負って行け」ノソ

商人「待って待って…僕はこの大きな勾玉を背負うんだよ?」

女戦士「勾玉は私が持って行こう…商人は魔女を背負えば良い」

商人「なんだよ…まぁ良いか…早く乗って」

魔女「よっこら…」ノソ


--------------

『古代遺跡』


ヨイショ! ゴトリ


魔女「…シン・リーンの精霊像の安置所とほとんど同じじゃな」

商人「へぇ…」

魔女「こちらの方が傷んで居らぬ」

商人「大体700年前に扉を閉めて封印した様だよ…多分過去戻りした勇者2人さ」

魔女「勘かえ?」

商人「足元を見て…退魔の方陣が仕掛けてある」

魔女「ふむ…退魔のぅ…」ジロジロ

商人「僕が知ってるのと同じだよ…間違い無い」

魔女「確かに退魔の方陣なのじゃが…勇者はこの方陣を知らん筈なのじゃが」

商人「え?」

魔女「わらわは教えて居らぬ…勇者が使こうて居ったのは光の方陣…少し違うのじゃ」

商人「そうだったんだ…」

魔女「退魔の方陣は光の方陣を簡略した物じゃから効果は退魔のみ…光の方陣を知って居れば問題は無いが…」

商人「700年前なら魔術師の黎明期…他の誰かに教わったのかも」

魔女「簡略化できる事を発見したのはわらわの師匠…つまり200年前より以前は発見されて居らぬ」

商人「じゃぁ女海賊は?確か塔の魔女から魔術書を貰ってた」

魔女「それなら辻褄が合う…文字が読めればの話じゃが」

商人「文字か…そうだな僕も文章から読み取った」

魔女「誰かに読み解かせたのやも知れんな…まぁそれは良いとしてこの空間の空気を変性させれば良いのじゃな?」

商人「そうだよ…扉を閉めるから先に出て」

魔女「参考になるのぅ…シン・リーンの宝物庫もこの様に施錠すれば良いな」ノソノソ

商人「じゃぁ変性魔法お願い…」ギギー バタン

魔女「変性魔法!」

商人「よしよし元通りだ…帰ろう」


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『林道』


カクカク シカジカ

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--------------


魔女「…では剣士らは公爵が持って居る冒険の書を盗みに行ったのじゃな?」

商人「うん…他にも時の王の遺産が有るかもしれないからさ」

魔女「公爵はフィン・イッシュに来て居る様じゃが?」

商人「どうせ影武者だって言ってたよ」

魔女「ふむ…用心して居った方が良さそうじゃ…何を持って居るか分からんな」

商人「怖いよね?幻惑の杖みたいな物を持ってたとしたら」

魔女「しかし公爵はわらわも顔を知って居る…何故今まで見落として居ったんじゃろう?」

商人「知ってるのは影武者の顔なのかもね」

女戦士「魔女…私の父…海賊王の事なのだが変化の杖という物でバニーになりたいと言っていた事が有る」

魔女「変化の杖…なるほど変性して居る可能性があるのじゃな?」

商人「あああ!!そういえば10年前に死んだ領事…あいつは沢山の身分証を持ってた」

魔女「そうじゃったな…魔術師でも無いのに同じ顔で元老の身分も持って居ったな」

商人「変化の杖を使って他人に成りすましてる…そんな可能性ありそうだ」

魔女「アサシンが領事の身元を知って居った筈じゃ」

商人「ちょっと待てちょっと待て…領事は公爵の影武者の役をしていたんじゃ無いか?」

女戦士「それでは誰も信じられんな」

商人「わかったぞ…ローグが言ってた事はやっぱり本当だ…そうやってセントラル皇子3兄弟を分裂させて利用した」

魔女「やはり変化の杖を持って居るのが濃厚じゃな?」

商人「例の鏡が役に立つよ!!真実を写すんだよね?」

魔女「磨かんと鏡にはならんが…」

女戦士「私が磨こう…金属を磨くのは得意だ…むしろ磨いてみたい」

商人「よしよし…やる事が定まって来た」


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---------------

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『王族の気球』


フワフワ


近衛侍「ささ皆様お待ちしておりました…お乗りください」

商人「迎えが来てる…」

アサシン「城へ戻るぞ…早く乗れ」

商人「八咫鏡は?」ヨイショ

アサシン「乗せてある」

魔女「ふぅ…疲れたわい」ノソリ

アサシン「祠は無事に封印された様だな?」

魔女「うむ…アサシンに質問なのじゃが死んだ領事を覚えて居るな?」

アサシン「思い出したく無いが…領事がどうした?」

魔女「主は領事の身元を調べて居ったじゃろう?」

アサシン「なんだそんな事か…セントラル王族の分家に当たる…与えられた特権が領事」

商人「公爵とは関り無いの?」

アサシン「血の繋がりは無い…関りがあるとすれば時の王の派閥側だという事ぐらいしか知らん」

商人「その程度か…」

アサシン「なぜその様な質問を?」

魔女「変化の杖という物が合ってな…それを使って他人に成り代わって居るやも知れんのじゃ」

アサシン「領事がか?」

商人「領事も…公爵もだよ…領事は身分証を沢山持って居たよね」

アサシン「なるほど魔女と同じ様に化ける訳だな…領事にそれが出来たとなるとすべての辻褄が合うな」

商人「公爵も他人にすり替わってる可能性が有ると思う」

アサシン「…」ギロリ

近衛侍「私は違いますよ…」

アサシン「誰も信用出来んでは無いか」

商人「そういう事だね…今回の暗殺事件も直ぐ近くに公爵が居たかもしれない」

女戦士「私が八咫鏡を磨いてみる…女王の許可が欲しいのだが磨いて良いか?」

女王「…そういう事でしたら喜んでお預けします」

魔女「しかし本当に変化の杖を用いて居ったとするとすべて公爵の意のままに事が進んだじゃろうな」

商人「そんな物を持たせておいてはいけないね」

魔女「その通りじゃ…奴が持って居るやもしれぬ時の王の遺産はすべて封印した方が良かろう」

商人「魔女が持ってる幻惑の杖もだよ…」

魔女「そうじゃな…これを持って居ると主らにも疑われてしまうでのぅ」フリフリ


--------------

情報屋「世の中にどのくらいのアーティファクトが眠っているか分かる?」

魔女「さぁのぅ?時の王がかつてシン・リーンで魔術師に作らせた物なら分かるがそれ以外は分からぬ」

商人「どんな物が?」

魔女「ほとんどが杖じゃ…恐らく魔法が使えぬ精霊に持たせる為だったのじゃろう」

商人「精霊はそうやって身を守って来たのか…」

魔女「使わなくなったら処分すれば良かったのにな?思い出の品として保管して居ったのが良くない」

商人「それでどんな効果の杖だったの?」

魔女「いかづちを呼ぶ杖…マグマを操る杖…うみなりの杖…色々有るらしい」

情報屋「魔女が使う魔法が封じられているのね?」

魔女「うむ…全部そうじゃろうな」

商人「良い効果の杖は無いの?」

魔女「あるぞよ?癒しの杖…雨雲の杖…守りの杖…じゃが使い方を誤るとどれも危険なのじゃ」

商人「癒しの杖なんか誰が使っても良さそうじゃ無いか」

魔女「使い過ぎると老化してしまう」

商人「あーーそういう事か…薬の副作用みたいなもんなんだ」

魔女「じゃから何も知らぬ人間の手に渡らぬ様に封印した方が良かろう」

情報屋「杖以外にはどんな物が?」

魔女「一番知られて居るのはいのりの指輪じゃな…他には妖精の笛という物もあるらしい」

情報屋「妖精の笛…私冒険の書で読んだわ…ゴーレムを眠らせて操る笛」

魔女「10年前にゴーレムが暴れて居ったな?誰ぞが使うて居ったのは間違い無いじゃろう」

アサシン「状況的に公爵が使っていたと考えるのが正解だな」

魔女「有能な者が敵の中に居ると厄介じゃのぅ…」


---------------

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『フィン・イッシュ城』


近衛侍「女王様はお休みになられた…魔女様一行は客間にてお休みくだされ」

魔女「わらわの定位置は書物庫じゃ」

情報屋「私も調べ事をしたいわ」

商人「僕もだよ…ハウ・アイ島の事を調べたい」

女戦士「私は鏡を磨くとしよう」

アサシン「私はやる事が無いな」

魔女「女王の部屋でも守って居れ」

アサシン「近衛侍と忍が居れば十分だ…酒場にでも行くか」

魔女「寝られんと言うのも苦痛じゃのぅ…」

アサシン「言うな…行って来る」スタ


『酒場』


ドゥルルン♪


バニー「ハロハロ~お一人様ぁ?」

アサシン「バニーの働き口はカジノでは無いのか?」

バニー「マスターが行方不明なのぉ…臨時で雇われよ?お酒何飲む?」フリフリ

アサシン「一番キツイのをボトルで頼む」ジャラリ

バニー「あら?お客さん…どこの豪族?」

アサシン「早く持ってこい」ジロ

バニー「芋酒ですぅ~お注ぎになる~?」

アサシン「そのままで良い」キュポン グビグビ

バニー「ウフフ良い飲みっぷり…パフパフは如何?」ボヨヨーン

アサシン「いくらだ?」

バニー「金貨1枚よ?」

アサシン「…」チャリーン

バニー「では個室の方へ…」フリフリ


ワイワイ ガヤガヤ

お金ならいくらでもあるんだ…ほら?楽しませてくれよ

あらすご~い!!ねぇみんな見て?

僕は回りくどいのは嫌いなんだ…今すぐ脱いでよ

こう?

全部だよホラ全員脱いで大事な所を僕に見せるんだ

ワイワイ ガヤガヤ


アサシン「…」---あの男…いや気のせいか---

バニー「こちらですぅ…早くぅぅぅ」フリフリ

アサシン「あぁ済まない…」

バニー「お客様一人入りましたぁぁぁウフフ…楽しんで行ってね?」

アサシン「何?」

男共「パフパフの殿堂へようこそ!!さぁさぁこちらへ…」ムキムキ

アサシン「…」ボーゼン

『翌日_謁見の間』


セントラル王は兵2名のみ帯同許可します…右手に整列を

近衛侍は私の左手側へ…側近は私の言葉を相手に伝えなさい

その他は傍聴席から立たない様にお願いします

では…全員銀の仮面を付けて待機


商人「…これは相当威圧的だ」

魔女「これで良い…この仮面は女王の威厳じゃ」

商人「仮面を被った集団に囲まれての和平交渉か…」

魔女「どんな交渉をして来るか楽しみじゃな」


衛兵「先方来賓されました…公爵と思われる人物と帯同の従士一人」


女王「お連れして下さい…では皆さんご静粛に…」

衛兵「謁見が許可された…2名!!入れ」


スタスタ


女王「…」ヒソヒソ

側近「女王の言葉を復唱します…ようこそお越しくださいました…和平の件…交渉に付けて喜びを感じる次第」

公爵「これは大層なおもてなしですなハハ…お体の調子が悪いと伺っておりましたが触りませんかな?」ニヤ

側近「お陰様で順調に回復しております」

公爵「それは結構…では早速本題に移らせて頂きますが先ずはセントラル貴族院への口利きとしての条件として…」チラリ

セントラル王「…」

側近「ためらわずおっしゃって下さい」

公爵「当初はセントラル王の引き渡しが条件でしたがその必要は無くなった事を冒頭に申し上げます」

セントラル王「!!?」

側近「代わりの条件は如何に?」

公爵「セントラル王との婚姻…そして王権の分与」


ザワザワ


側近「願っても無いご提案ですが民意がそれを許さないのです…困りましたねぇ」

公爵「わたくしは先ほどから側近とお話をしていますが…もしかすると女王様は影武者という事は無いでしょうね?」ニヤ

近衛侍「無礼者!!」

側近「何故にその様な疑いを?」

公爵「いやいや私の情報筋では女王様は危篤状態と伺っておりましてな…土産にと思いまして特効薬も持参している次第」

近衛侍「特効薬…お主まさか…」

公爵「ハハ勘違いしないでくだされ苦痛を和らげるには必要な妙薬なのですよ…ここに」ドサ

セントラル王「貴様ぁ!!ぬけぬけと…」スラーン

第3皇子「おっとぉ!!大兄…危ないじゃ無いか」

セントラル王「何ぃ…お前…何故お前が此処に…」タジ

公爵「これ!身を明かすのが早いぞ」

第3皇子「もう茶番は良いでしょ?話は簡単さ…さっさと結婚してフィン・イッシュを僕らの自由にさせろという事だよ」

公爵「余計な事をしゃべるな!!」

第3皇子「こんな提案もある…大兄の持ってる王権を僕に譲れば良い…そうすればめでたくフィン・イッシュ女王と結婚出来るよね?」

セントラル王「ぐぬぬ…再会してお前はそんな話しか出来ないのか!!良く…良く生きていた…」

第3皇子「近寄らないで欲しいなフィン・イッシュの下僕に成り下がった大兄なんかもう知らないよ」


ガタン!


近衛侍「女王様…なりませぬ…落ち着いて下さい」

女王「交渉の件…飲みましょう…ただしこちらも条件があります」

公爵「それは良いご判断で…」

女王「公爵!…いえ…この公爵の偽物の首をはねて本物の公爵の下へ突き返すのです…それが条件です」

第3皇子「そんな事をしても意味が無いよ」

女王「あります…私はもう騙されないと言う意味なのです…近衛侍!!抜刀許可!!」

公爵「ひぇ…」ダダ

近衛侍「御免!!」シャキーン ボトリ

公爵「…」パクパク

女王「続いてセントラル王へ命じます…セントラル王権を第3皇子へ譲渡し私と婚姻しなければこの国を追放します」

セントラル王「…」

女王「私の王権を分与すれば条件をすべて飲んだ形…後はあなたが判断してください…あなたを信用します」

第3皇子「なんだよ勝手に進めないで欲しいな」

女王「戦争は終わりました…第3皇子…あなたも早く宣言をして下さい…戦う必要は無くなったのです」

セントラル王「第3皇子!!来い」グイ

第3皇子「触るな!!」

セントラル王「調印をする…兵を率いて帰るが良い」

第3皇子「フン!分かってる…港は好きに使わせて貰う」

『傍聴席』


魔女「歴史が動いたな?」

アサシン「クックック…セントラルが滅びる瞬間を見たな」

魔女「第3皇子には王の器が無い様じゃ」

アサシン「うむ…しかしあの小僧が公爵と手を組んでいたとは…」

魔女「結果的にはこれで良かったかのぅ」

アサシン「まぁこれで貴族院は第3皇子を擁立する側とそうでない側で又分かれる…終わりだよあの国は」

女王「皆様ご心配をお掛けしました…」ペコリ

魔女「見事じゃたぞよ?真実の鏡には何が映って居ったのじゃ?」

女王「口論する兄と弟…その傍らで公爵では無い他人が薄ら笑いを浮かべていました」

魔女「伝説は本当の様じゃな」

女王「思わず首をはねる指示をしてしまったのを後悔しています」

アサシン「気に病むな…お前に毒を盛った者共なのだ」

女王「実は私にはそんな事を指示できる権力は無いのです」

近衛侍「女王様お気になさらず…私めは指示されて動いたのでは御座いません…勝手に切ってしまい忝い」

商人「女王の権限分与ってさ…良いの?セントラル王に分与しちゃって」

女王「その件でしたら私が王として持って居る権限は畑の管理なのです」

商人「畑?」

女王「権限は既に側近や近衛侍…そして忍びに分与済み…資産といえば畑と地下墓地でしょうか」

商人「アハハな~んだ殆ど民主化してるのか」

女王「はい…でも畑は全部私の物ですから意外と権力は大きいのですよ?」

商人「食べ物を抑えてる訳ね」

女王「その半分をセントラル王に分与する訳です」

魔女「こりゃセントラル王は忙しくなるじゃろうのぅ」

女王「見て居ましたか?あのような状況でも弟の身を案じていたセントラル王を?」

魔女「うむ…なんというか素直なんじゃろうな」

女王「はい…只ひたすら真っ直ぐな人なのです…悪い人では無いのでご勘弁下さい」

魔女「さて人段落したようじゃし…わらわは書物庫へ戻るとするかのぅ」ノソ


この日セントラル王権は第3皇子へと譲渡され

フィン・イッシュ守備隊は解散する事となった

その大半はセントラルへ帰還する事を拒み

第1皇子を慕う者のみで構成される兵団が構成される

『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


剣士「女オーク…オークの予言はこれで大体合ってるんだね?」

女オーク「私が知ってる事は少しだけど全部合致してるわ」

盗賊「こりゃ公爵はエライ秘密を知って居た様だな」

剣士「ほとんど情報屋さんが言ってた通りさ…光る隕石も地軸の移動も全部予言されてた」

盗賊「この手記に記されている通りだとすると俺らに残った時間はあと数年…」

剣士「こういう解釈も出来る…これ以上先の予言が無いからそれを終焉と勝手に決めつけてる」

ローグ「あー良いっすねそういう解釈…光が見えやす」

剣士「多分ね4000年前に人類の99%以上が死滅した事を今の時代にもそのまま当てはめてる」

盗賊「1%かよ…そん中に入れってか」

剣士「違う…その時は何も知らないから1%だった…でも今は知ってる…まだやれる事はあるよ」

盗賊「ハテノ村の遺跡で発見したあの液体…まだ謎が残ってるな?」

剣士「うん…あれはきっと事情を知ったママからの贈り物さ」

盗賊「思い出して来たぞ夢幻の夢って奴を…そうだ確か病気を治す薬をハテノ村の木の下に埋めた」

剣士「絶対にソレだよ…早く名も無き島に戻らなきゃ…」

ローグ「公爵がこの予言をいつ知ったのか手記を見て分かりやせんか?」

剣士「始めのページは30年以上前だよ」

盗賊「そんな昔から知って居たんならなんで隠してたんだろうな?」

剣士「信じて貰えなかったとか…何かの理由で隠蔽されたのかもね」

盗賊「30年前っちゃエルフ狩りが活発になった辺りだな」

ローグ「貴族がエルフを奴隷にして競っていやしたね?」

盗賊「まぁ今思えばいのりの指輪狙いだったんだろうな…もうちっと平和に行けば良かったのによ」

剣士「ハイエルフが産んだ勇者の誕生にまで関わってる…そうかハイエルフが勇者を隠したのが事の始まりだよ」

盗賊「ほう?それでエルフ狩りが激化した…」

剣士「公爵はすべて思い通りに事が進んだ訳じゃ無いみたいだ…裏切りや抵抗に合って何度も失敗してる」

ローグ「あーそれで予言を隠してたんすね」

剣士「その抵抗も予言の一部だと解釈してるよ…予言を変えようと努力した結果なのか…」ヨミヨミ

盗賊「白狼の盗賊団も抵抗勢力になってた訳か…」

剣士「そこら辺で手記が止まってる…白狼の事は何も書かれてない」

盗賊「それも理由が読めん…なんでだ?」

剣士「僕なんか分かるよ…パパが次元の入れ替えで無理やり歴史を修正したからさ…」

盗賊「んんんよー分からん」

剣士「まぁきっとそういう理由で記憶の不合点が出るんだ…だから書き記せなくなった」

盗賊「忘れて行くってやつか?」

剣士「うん…その時書き留めて置かなかった事は忘れて行ってしまう…そういう事が公爵にも起きたんだよ」

女オーク「ねぇ盗賊さん?盗んで来たこの笛…オークの笛にそっくりなの」

盗賊「ん?どんな効果なんだ?」

女オーク「動物を眠らせる笛よ」

剣士「睡眠魔法か…幻術だからそれを知ってる人には効果が無い」

盗賊「試しに吹いてみろ」


ピーヒョロロ~


盗賊「ぶははなんだ…音は出るが曲になって無ぇ」

剣士「なんか何も効果が無さそうだ」

ローグ「公爵が持ち歩いて無いって事は只の時の王の思い出の品かもしれやせんね?」

女オーク「上手に吹ける様に練習してみる」

剣士「貰って良いんじゃない?」

盗賊「昼と夜が入れ替わるぐらいの効果が欲しかったな?ヌハハ」


ピーヒョロロ~


盗賊「まぁちっと疲れたんで寝るわ…」

ローグ「あららら?効果ありやすね」

剣士「その様だ…不思議な笛だなぁ…睡眠魔法とはちょっと違いそうだ」

女オーク「私が飛空艇を見ておくから寝てて良いわ」

剣士「うん…横になるふぁぁぁぁあ…」

『夢』


妖精「おい!!起きやがれ!!」

僕「んん?誰?」

妖精「俺様だ!!いつもいつもコキ使いやがって!!」

僕「あ!!妖精だ…僕にも妖精の声が聞こえる様になったんだ」

妖精「反省してるのか!?」

僕「あぁゴメンよ無理なお願いばかりしてさ」

妖精「罰としてどんぐり食べちゃうぞ」

僕「うん…良いよ沢山食べて?」

妖精「分かればよろしい…」パクパク

僕「君は何処から来たの?」

妖精「笛に呼ばれて来たんだ…そしたら極悪人の君が居た」

僕「ハハ僕が極悪人?」

妖精「そう妖精をコキ使う極悪人だ」

僕「ゴメンねこれから優しくするから許して」

妖精「ふん!」プイ

僕「分かったよもっと質の良いどんぐりを用意しておくよ」

妖精「絶対だぞ?」


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『翌朝』


ピロロ~♪ ピ~ピロロ~♪


剣士「ふぁぁぁ…」パチ

女オーク「起きた?」

剣士「…良い夢見たよ…妖精とお話が出来た」

女オーク「妖精を呼ぶ笛ね?」

剣士「多分そうだよ…良い物手に入れたね」


ニョロニョロ


剣士「ん?あれ?ワームがどんぐりかじってる…なんだ君だったのか」

女オーク「虫が妖精?」

剣士「そうらしい…そっか虫とお話出来るのか」

女オーク「この笛欲しい?」

剣士「欲しい…でも君が使って居て良いよ…僕笛吹けないし」

女オーク「ウフフいつでも吹いてあげるわ」

剣士「なんかすごく癒された感じだ…元気出て来たぞ!!」

女オーク「このワームにどんぐりあげれば良いの?」

剣士「うん…松の実もあげて見ようか」

女オーク「沢山あるわ…」パラパラ

剣士「おー食べてる食べてる…お腹減ってたのかー」

女オーク「そろそろフィン・イッシュが見えて来るはず…盗賊さん達を起こして?」

剣士「おけおけ…操舵は任せるね」


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『フィン・イッシュ_墓地』


フワフワ ドッスン


盗賊「いやぁ久々に良く寝た…良い笛ゲットしたな?」ノビー

剣士「睡眠魔法じゃ無いのがスゴイね…僕なんか夢で妖精とお話したよ」

盗賊「俺ぁ死んだ女盗賊が夢に出て来たんだ…あいつ妖精になったんだな」

ローグ「あっしも妖精の美女に囲まれてウハウハでやんした」

盗賊「こりゃクセになりそうだ…なんつーか寝覚めが最高だ」

剣士「今晩皆に聞かせてあげよう」

盗賊「おっし!!荷物持って…ん?何処行きゃ良いんだ?」

剣士「城で良いと思う…空から見た感じ厳戒態勢じゃなくなったみたいだし」

盗賊「まぁ一回城行ってみっか」ヨッコラ ガサリ

ローグ「大収穫でしたねぇ…金銀財宝も沢山あるでやんすよ」ヨッコラ 

剣士「じゃぁ手分けして運ぼう…よいしょ!!」

『フィン・イッシュ城_客室』


ガチャリ バタン


近衛侍「ここでお待ちください…魔女様を呼んで参ります」

盗賊「アサシン!!お前一人なんか?」

アサシン「まぁな?皆書物庫で寝泊まりしている…私は付き合って居れん」グビ

盗賊「女王はどうなった?お前又放置されてんだな?」

アサシン「クックック放置か…まぁそうなるか…体は回復してる様だから心配は無用」

盗賊「土産が沢山あるぜ?見て見ろ…」

アサシン「公爵はどうなった…」

盗賊「向こうに居たのは影武者だ…こっちに来てたんじゃ無いのか?」

アサシン「こちらへ来たのも影武者だった様だ…さて何処へ行ったのやら」

盗賊「だがな?公爵が持ってた主要な物は全部頂いて来た…冒険の書もこの通りだ」バサ

アサシン「では尚の事行き先が気になるな…それらはもう不要という判断だろう」


ノソノソ


魔女「無事に戻ったか…話は聞いたぞよ?冒険の書は手に入った様じゃな」

盗賊「おぉ魔女!!この通りよ…見てくれ謎の道具の数々を」

剣士「情報屋さん!!公爵の手記も持って来たんだ…読んでみて」

情報屋「え?手記?」

剣士「予言の事が書いてある…情報屋さんが言ってた事と似てるんだ」

商人「ちょちょ…僕にも見せて」パラパラ

魔女「いかづちの杖…マグマの杖…うみなりの杖…やはり隠し持って居ったな…しかし魔力が枯渇しておる」

盗賊「なぬ?じゃぁ使い物にならんのか?」

魔女「魔石で充填すれば良い」

盗賊「他には使えそうな物は無いか?」

魔女「アクセサリーはすべてそれなりのエンチャントが施されて居るのぅ…武器は呪われて居る」

盗賊「ぐはぁ呪いの武器か…使え無ぇじゃ無ぇか」

魔女「アーティファクトは冒険の書だけの様じゃな…やはり変化の杖は公爵が使って居る様じゃ」

女オーク「魔女様…この笛は?」スッ

魔女「おぉぉ妖精の笛じゃ…やはり有ったか」

剣士「この笛の効果は知ってる?」

魔女「ゴーレムなどの大型の魔物を眠らせる事が出来るらしいのじゃ」

剣士「その笛を吹いたらさ僕達も眠たくなって夢の中に妖精が出て来るんだ」

魔女「そうじゃろうそうじゃろう…」ウンウン

剣士「妖精とお話が出来るから気に入っちゃってさ…これ使っても良いよね?」

魔女「もしもゴーレムに出会うたらその笛で眠らせると良い…それ以外の使い道は思い浮かばんのぅ」

剣士「じゃぁ使って良いって事だね!!もーらい!!」

盗賊「ちぃぃぃ俺が使えそうな物が何も無ぇ…杖なんか要ら無ぇしな」

魔女「何を言うて居る!アクセサリーはすべて一級品じゃ…価値が計り知れぬ」

『しばらく後』


アーデモナイ コーデモナイ


…アヌンナキ…これはオークシャーマンの名前よ

そしてこの箱舟は彼らの乗り物…これが未踏の地の氷床の下で眠ってる

オークは宇宙から来た外来生物だったのね

超古代の伝説にもアヌンナキは神として崇められてる…人類の創造主とか洪水の予言者だとか

この手記には4000年ごとに訪れる黒色惑星によって引き起こされる災害を

事前に警告する為に訪れると纏められて居るわ

でもウンディーネの時代に訪れたオーク達をその当時の人間達が捕獲してしまった…箱舟も一緒に

そしてオークが持つ不思議な技術の権利を廻って世界的な戦争が起きた

当時200億を超えた人口はこの戦争によってたった数十年で1億人にまで減少…

それはたった数発の光る隕石が原因…あっという間にウンディーネ時代が終わる

光る隕石から生じる毒に耐性の有ったオーク達は生き延び箱舟に帰ろうとするが

地軸の移動により生じた気候変動に阻まれ箱舟までは到達出来なかった…

そして4000後…再び地軸の変動が起きて氷床から彼らの箱舟が姿を現す



情報屋「これが私達の知らなかったウンディーネ時代からの歴史…」

商人「まだ続きがある…」


当時捕らわれの身となっていたオークシャーマンを導く人物が現れる

虫を巧みに操る者と女神の2人…後にオーク達はウンディーネと崇める事になった

この2人はオークに数々の予言を与えた

それはこの世界でオークが生き残る術の数々

その予言を絶やすことなく守り続けて…オークシャーマンは今も生きている



情報屋「一度道を踏み外しそうになっているわ…暁の使徒との交わりでオーク達を分断する結果を導いてしまった事」

商人「まぁそうだね…人間と共存を望んだオークとそうじゃないオークに分かれた…でも結論は同じところに収束しそうだよ」

魔女「ではオークシャーマンが目指しておるのは未踏の地に封じられて居った箱舟なのじゃな?」

情報屋「きっとそうね…私達にそれを邪魔する理由は無いわ」

商人「魔女が研究してるオークの呪符…能動的な術じゃないのは変化無いね?」

魔女「うむ…重力などを操作する類の術では無い…動く星たちを秒単位で観測する術じゃ…それで天候を知るのじゃ」

情報屋「一つ注意して欲しいのが…今話した歴史は公爵が冒険の書を読んで得た知識を手記にしたという所」

魔女「事実では無いやも知れんという事じゃな?」

情報屋「私も冒険の書で同じ様な事を知ったわ…でも手記に書き留めなかった…事実と異なる可能性があったから」

商人「行って確かめてみないとね」

情報屋「そうよ…それ無しで学術記録としては残せない」

剣士「行こうか…僕は名もなき島に帰ろうと思ってたんだ…どうせ向こうの大陸に一回渡るんだし乗せて行くよ」

盗賊「おいおい…次行くのはハウ・アイ島だろ?」

商人「それなら僕も行きたいな」

剣士「4人までだよ」

盗賊「全員乗れるように改造すりゃ良いだろ」

剣士「ええ!?そんな大きな羽を支える材料なんか無いよ…今ので精一杯さ」

女戦士「幽霊船で行けば良いのではないか?折角合流したのだから又分かれるのも寂しいだろう」

剣士「んぁぁ急ぎたいんだけどなぁ…」

魔女「わらわが良い事を思いついたぞよ?盗賊が持って来た物の中に風のタクトという杖があったのじゃ」

盗賊「お?風を起こせるんか?」

魔女「そうじゃ航海の役には立たんかえ?」

盗賊「安定した横風受ければ真っ直ぐ行ける…横帆の有る幽霊船なら尚更だ」

ローグ「外海を大航海っすね?ワクワクしやすねぇ?」

盗賊「おっし!!決まりだな」


スタスタ


女王「お話聞いて居りました…その航海に私と主人も連れて行って貰えないでしょうか?」

魔女「なんじゃと?」

女王「皆様方がご一緒なのが一番安全な航海が出来ると思いまして」

盗賊「おぉぉ来い来い!!嬢ちゃんも城ん中に籠ってちゃ退屈なんだろ」

女王「はい…それもありますが皆様の仲間に主人も加えて欲しいのです…王という肩書が無くなってやっと自由になれたのです」

盗賊「だははこりゃ美味い酒が飲めそうだ…帆の張り方教えてやるぜ?約束してたもんな?」

魔女「ヤレヤレ…王が不在でも良いのか?この国は」

女王「側近が私の影武者として働きますので…私はしばらく静養という形で旅に出て見たいのです」

盗賊「本人が良いってんだから連れてきゃ良いだろ」

女戦士「私の船は30人程度が適正な人数だ…乗船する人員を纏めてくれ」

盗賊「アサシン!!幽霊船まで案内してくれ…飛空艇乗せる」


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『幽霊船』


フワフワ ドッスン


盗賊「この飛空艇は船首側の甲板に固定が良さそうだ」グイグイ ギュゥ

剣士「僕はどうすれば?」

盗賊「船尾に乗っかってる貨物用気球で荷の運搬やってくれ…俺はちっと備品の整理やる」

アサシン「剣士…こっちだ」

剣士「荷の運搬かぁ…また旧式の古い気球だなぁ…」フワフワ

アサシン「フフ私の唯一の資産だ…20年近く使い込んで居る」

剣士「これさぁ木材変性させてもっと軽く丈夫に出来るよ?やってあげようか?」

アサシン「ほぅ?壊さない程度に改造は自由にやって良い」

剣士「おけおけ!変性魔法!」

アサシン「ん?何か変わったか?」

剣士「板の部分を樹脂に変性させたのさ…重さが半分以下になってる筈」

アサシン「その技は幽霊船にも使った方が良いだろう…あの船も随分使い込んで居る」

剣士「あとでやって置くよ…それで荷を運ぶって何が足りないの?」

アサシン「食料は十分ある…無いのは酒だ」

剣士「なんだそんな物か…」

アサシン「まぁあとは女王が何を持って行くかなのだが…」

剣士「僕は土を持って行きたいなぁ…果物とか育てられるし」

アサシン「ほぅ?それは良いな…女戦士に許可してもらえ」

剣士「よっし!樽に土を詰めて持って行こう」

『城_中庭』


ガガーン ビリビリ


ローグ「荷物をまとめていやすぜ?これ運んで下せぇ」ヨッコラ

剣士「うん…あそこで魔女は何やってるの?」

ローグ「なんか杖に魔法を封じて試し撃ちしてるでやんすよ…危ないんで近寄らんで下せぇ」

剣士「危ないとか言って自分で使うんじゃないか…」

ローグ「女王に護身用で持たせるらしいっす…情報屋さんも使い方教わっていやしたぜ?」

剣士「そういう事か…自分の身は自分で守れって事ね」


スタスタ


ローグ「やば…元セントラル王が来たでやんす…」

元セントラル王「もうその名で呼ばないでくれないか…私は戦士だ…戦士と呼んでくれ」キリ

剣士「アハハこんにちは戦士さん」

戦士「剣士殿にローグ殿…私にも何か手伝える事は無いか?」キラリ

ローグ「荷物を気球の中に運んでもらって良いっすかね?」

戦士「まかせたまえ!!どらぁぁぁぁぁ」ドドドド

ローグ「あら?あららら…ちょちょちょそれ今積んだばかりの荷でやんす」

戦士「あぁ私とした事が…勢い余って荷を下ろしてしまった様だ」

ローグ「ちょっと大丈夫すかねぇ…ゆっくりで良いんで頼んますよ?」

戦士「分かっているさ…どらぁぁぁぁ」ドドドド

剣士「いやぁスゴイなぁ…一気に荷が片付く」

ローグ「脳筋ってこういう人を言うでやんす」ヒソ

戦士「ふぅ…私も君達の幽霊船に興味があるのだ…連れて行って欲しいのだが」キリ

剣士「おけおけ!!船の片付けもあるんだ…助かるよ」

ローグ「じゃぁあっしは又荷物をまとめておくんで運んだら戻って来て下せぇ」

剣士「うん!直ぐに戻るよ…じゃぁ戦士さん乗って!!」

戦士「失礼する…」シュタ

ローグ「なーんかいちいちポーズ決めるの止めやせんか?」

戦士「気に障ってしまったか…済まない」キリ

ローグ「早く行って下せぇ…」---な~んか変な人でやんす---

『幽霊船_甲板』


どらぁぁぁぁ バキバキ!


盗賊「うぉ!!甲板に穴空けるんじゃ無ぇ!ボケが!!」

剣士「女オークと腕相撲で互角だ…」

女オーク「まだ勝負ついてないわ…はぁはぁ」

戦士「私には負けられない理由があるのだ…受けて立とう…掛かって来い!!」グイ

女オーク「次は左腕よ…」グイ

剣士「はいはい…力抜いてぇ…レディーーーゴー!!」

戦士「ふんっ…」ミシミシ

女オーク「くっ…」グググ


盗賊「なぁ?…負けられない理由って何だと思う?」

剣士「さぁ?女には負けられなっていう事かな?」


戦士「どるぁぁぁぁぁ!!」ドコーン

女オーク「ぅぅ…まだよ…まだ右手は負けて無いわ…もう一度」

戦士「熱い!!熱いぃぃ!!」グイ

女オーク「勝負は一瞬…熱くなったら負けよ」グイ

剣士「…」ポカーン

戦士「どるぁぁぁぁ!!」ミシミシ

女オーク「私の…勝ち!!ふんっ!!」ドコーン

戦士「この私が…いやまだだ…両腕で勝負だ!!」

女オーク「望む所よ…」ガシッ

戦士「ふぬぬぬぬ…」グググ


盗賊「こら勝負付かんな…おい剣士!甲板に穴空いちまうから魔法で補強してくれ」

剣士「おっけ!!変性魔法!」

盗賊「しかしあのセントラル王がこんな脳筋ヤロウだったとはな…船乗りにゃ丁度良いが」

剣士「なんか面白い人だよ…なんというか悪意を全く感じない」

盗賊「うむ…天然の脳筋だ…第2皇子や第3皇子とまったく違ったタイプだ」

剣士「次は盗賊さんお酒で勝負してみたら?」

盗賊「ほぅ?そりゃ名案だ」

剣士「今晩は城でお祭りでもやろうって女王に話してみるよ」

盗賊「そうと決まりゃサッサと仕事片づけて城に戻るぞ」

『夜_城下』


ワイワイ ガヤガヤ

戦争が終わってセントラルの軍船が入港してくるんだってよ

じゃぁ今晩は終戦祝いの祭りなのか?

理由は聞いて無いがまた例の様に酒と食い物の配給よ…食いそびれんな?


女戦士「フフ…この国は祭りと聞けばすぐに人が集まる」

剣士「盗賊さんがお酒で元セントラル王と勝負するっていうのが事の始まりさ」

女戦士「それで女王が直ぐに手配した訳か」

剣士「うん…近衛侍が一気に動き出してさ」

女戦士「それはな?近衛侍は元セントラル王が膝を着ける所を見たいのだ…」

剣士「なんか楽しみだね」

魔女「勝負はもうついておる…盗賊に酒で勝てる者なぞ居らんわ」

剣士「あれ?女戦士…どうしたのその武器?」

魔女「それは呪われた武器じゃ…時の王が愛用して居ったんじゃろうがどうしても女戦士が使うと言って聞かんのじゃ」

女戦士「これは私が打ち直して使う…呪いなぞはねのけてやる」

魔女「それは破壊の剣という代物じゃ…呪いに支配されぬ様にせねばならんぞ?」

剣士「へぇ?良い剣なんだ?」

女戦士「材質はオリハルコン…お前の刀と同じだ…エンチャントに失敗して呪いが掛かっているのだ」

剣士「オリハルコンってどんなエンチャントが出来る?」

魔女「時空じゃな…量子転移を掛けて時空を切り取れる様にしようとしたのじゃろう」

剣士「へぇスゴイな…」

魔女「成功しておれば伝説の武器になったじゃろうな」

女戦士「単純に武器の性能としては一級品…いやそれ以上…丁度私の手に馴染む重さ」

魔女「呪いさえ無ければのぅ…」

剣士「どんな呪いなの?」

女戦士「稀に夢を見る…その瞬間足が止まる」

剣士「なんだそれだけか」

女戦士「私にはその夢が愛おしい記憶に感じてな…つい見入ってしまう」

魔女「これこれ何度も言うが呪いに支配されてなならぬ」

女戦士「分かって居る…私はこの武器が気に入ったのだ大事に使うさ」

剣士「他にも装備品が色々あったよね?」

魔女「自虐効果の付いた物ばかりでな…不死の体を持つ時の王しか身に着けられん」

女戦士「本当はそれも欲しいのだが流石に体が持たないと思ってな…どうにか呪いが解ければ私が使う」

魔女「無理じゃ!エンチャントは不可逆の変性じゃでもう元には戻らぬ」

女戦士「フフまぁ良い…この破壊の剣で十分だ」

『城_中庭』


ギャハハハハ ワイワイ


ローグ「食事持ってきやしたぜ?」モグモグ

女戦士「気が利くな」

ローグ「魔女さんもどうぞでやんす…」

魔女「盗賊の勝負はどうなっとるのじゃ?」

ローグ「見ての通りっすよ…互角に飲み比べていやす」

魔女「ほぅ…奴も酒豪とな?」

ローグ「どうも結託した様っすね…2人で他の近衛侍も巻き込む作戦に変わったみたいでやんす」

剣士「ハハ巻き込まれない様にしないとね」


盗賊「ごるぁ!!女オーク逃げんな…お前も飲め」グイ

女オーク「お酒は沢山飲まないのよ」

盗賊「酒に肉は一切入って無ぇんだ…材料は芋とキノコだぞ?」


剣士「盗賊さん!!女オークにお酒は意味が無いよ?酔わないから」

盗賊「なぬ!?そら面白く無ぇじゃ無ぇか!先に言えタコ」

女オーク「ふぅ助かったわ…もうお腹が膨れてしまって」

戦士「フハハハハこの勝負…私の勝ちと見た!げふぅぅぅ」フラ

女オーク「又言ってる…どうにかして剣士」

剣士「いや…ここは逃げよう」

魔女「うむ馬鹿に構っておると移るでな…」ノソノソ

商人「ようし!!僕が勝負してあげようじゃ無いか」

戦士「貴殿は商人殿だな?望む所だ…私は背を向ける事を決してしない」ヨロ

盗賊「おいおいこいつは止めとけ…ゾンビだから酒に酔わ無ぇんだ」

商人「あああ!!秘密をバラしちゃダメじゃ無いか!!」

戦士「なんと卑怯な!!貴殿はそれで良いのか!?」

盗賊「おいローグ!!やっぱ俺とお前しか居無ぇ!!来い!!」

ローグ「えええ?又っすか…」

戦士「ローグ殿…共に飲み明かしましょう!ハハハハ」

女戦士「私も一口飲んでみるか…」

戦士「おぉ!!女戦士殿…貴殿の話は伺っておりますぞ…なんでも一口で出来上がってしまうほど弱いとか」

女戦士「なに!!誰がそんな事を…」

ローグ「…」コソーリ

女戦士「ローグ!!来い!!」ギロ

ローグ「へい…」

女戦士「私は味見だけだ…後はお前が責任を取れ」

盗賊「樽持って来い樽だぁぁぁ!!」


うおぉぉぉぉ ワイワイ

『深夜』


んがぁぁぁ ぐぅ


戦士「…」ヨロ

盗賊「よぅ?横になったらどうよ?」グビ

戦士「いやいや私は最後まで立って居なければならん…ヒック」ヨロ

盗賊「ヨロヨロじゃ無ぇか…まぁしかし美味い酒が飲めたな?」グビ

戦士「平和…これ以上美味い酒の肴は無い」フラフラ

盗賊「分かってんじゃ無ぇか…身分違っても思う所は一緒だな?ヌハハ」

戦士「…」スラーン ブン ブン

盗賊「暴れて怪我すんなよ?」

戦士「酔い覚ましの運動さ」ブン ブン



『城のテラス』


魔女「ふぅむ…この勝負…元セントラル王の勝ちじゃな」

女戦士「まだ飲んでいるのか?…ぅぅん」グター

魔女「いやあの男一人だけまだ立って居る…大した胆力じゃな」

女戦士「フフ…セントラル城に立て籠もって居た時も奴だけは諦めずに居た…そういう男だ」

魔女「頭は回らんが英雄の器があるのぅ」

女戦士「英雄か…」

魔女「うむ…カリスマと言えば良いのか?王を失しても褪せん物を持って居る」

女戦士「この時代に英雄は必要だ…守ってやらねばならんな」

魔女「そうじゃな…次の時代の真の王はフィン・イッシュで花開くあの男の様じゃのぅ」

女戦士「んん?八尺瓊勾玉の件か?」

魔女「うむ…王を選ぶと言われる勾玉が発見されたで気になって居ったのじゃよ」

女戦士「私は破壊の剣に魅せられた隠者という所か」

魔女「主は海賊王の道じゃろうのぅ…海の英雄じゃ」


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『翌日』


乗船する者を確認する


女王 いかずちの杖 軽装

戦士 王家の剣 重装

剣士 銀河の剣 中装

女オーク コバルトの剣 中装

女戦士 破壊の剣 重装

アサシン 草薙の剣 中装

盗賊 散弾銃 中装

ローグ ミスリルダガー 中装

情報屋 マグマの杖 軽装

商人 クロスボウ 軽装

魔女 幻惑の杖 軽装

くノ一 クナイ 中装

近衛侍 カタナ 中装


他調理士2名…医者2名…航海士2名…測量士2名

戦闘要員として兵団から男女混合の10名が同行する

出港は昼過ぎ…各自移送用の気球に乗って船へ乗船してくれ…以上!


盗賊「31人か…賑やかな航海になるな」

女戦士「スケルトンを合わせて40だ」

盗賊「避難は小舟2隻と貨物用気球…まぁこれで目一杯だな」

女戦士「外海に出て見たい連中が沢山居て直ぐに人員が決まった…乗れなかった人には申し訳ない」

盗賊「戦闘要員なんか要らないんじゃ無ぇか?」

女戦士「女王の警護なのだ…全員訓練された選り抜きだ」

盗賊「戦争に行くんじゃあるめぇし…」

女戦士「選り抜きというのは戦闘では無い…技術者や学者も含まれる」

盗賊「んん?古代遺跡の調査か?」

女戦士「そうなるな…女王がノリノリなのだ」

盗賊「なるほど国として海洋進出って訳か…自国領にする訳だな?」

女戦士「そういう事だ…アサシンの進言だよ抜け目がない」

盗賊「まぁ俺らはいつも通りにしてりゃ良いよな?」

女戦士「規律だけは守ってもらう…酒は夕食の時に一杯だけだ」

盗賊「ぐはぁぁ…マジか」

女戦士「長期航海になるかもしれんから健康管理と水の不足を防ぐ為だ…自分で作って飲むのも禁止する」

盗賊「やる事無くなるな…釣りでもすっか」

女戦士「それは大いに助かる…存分にやってくれ」

盗賊「おいローグ!!剣士!!そろそろ船に乗るぞ」

ローグ「へ~い!!剣士さんも女オークさんもそろそろ行きやしょう」

剣士「うん…女オーク?種忘れてない?」

女オーク「私が持ってるわ?」

剣士「おけおけ!じゃ行こう」グイ

『幽霊船』


ザブン ギシギシ


剣士「僕達が寝泊まりするのは飛空艇にしようか…」

女オーク「そうね?居室は人が多そうだし」

剣士「食事もみんなと違うんだよね」

ローグ「あっしらも貨物用気球で寝る事になりそうでやんす」

盗賊「飛空艇は忙しいかも知れんぞ?女戦士は氷山を警戒しててな…飛空艇を飛ばして監視すると言ってる」

剣士「そっちの方が気楽で良いや…夜中の飛行だね?」

盗賊「そうだ…お前が持ってる光の石頼りになる」

剣士「おけおけ!夜中も航海した方が早く到着できるしね」

盗賊「船首にロープ結んで飛空艇で飛んだら幽霊船の周りを光で照らす感じだ」

剣士「夜中は交代で見張りしておけば良いのかな?」

盗賊「そうなると思う…お前等2人で大丈夫だよな?」

剣士「気楽で良いよ」

盗賊「まぁ昼間は降りて休んでも構わん」

ローグ「盗賊さん!貨物用気球で人員運搬に戻りやすぜ?」

盗賊「おー頼むわ…俺ぁハンモック編んどく」



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フワフワ ドッスン


ローグ「はい皆さん降りて下せぇ…」ゾロゾロ

近衛侍「…これが有名な幽霊船ですか…ほー」

商人「普通の貨物船だよ…大砲も積んで無い…砲弾も無い」

くノ一「あのスケルトンは?」

商人「船を動かす奴隷さ…アサシンの命令を聞くんだ」

情報屋「私達が寝泊まりする部屋は何処?」

ローグ「盗賊さんに聞いて下せぇ…あっしはもう一回人員運搬に戻りやす」フワフワ

情報屋「桟橋に船が付けられないと本当に不便ね」

商人「そうだね…気球が無いとどうにもならない」

情報屋「さて書物の整理をしなきゃ…部屋は何処かしら」スタスタ

『昼間』


ザブ~ン ユラ~


女戦士「全員乗った様だな?」

ローグ「数確認しやした…全員居やす…はぁはぁ」

女戦士「よし…後で褒美をやる」

ローグ「ムフフフフフ…」

女戦士「では出港する!!碇を上げろぉ!!」


どらぁぁぁぁぁ ガラガラ


女戦士「進路北西!横帆展開!!」

盗賊「嬢ちゃん手伝え!!そこのロープほどけ」グイグイ

女王「は…はい!!」グイグイ

盗賊「マスト上がれるか?上にも同じロープあるからほどいて来い」

女王「わかりました…」アセアセ

盗賊「戦士!!船首の縦帆開いて2番に結べ!!」

戦士「2番…2番…右の2番なのか左の2番なのか…」ズドド

盗賊「2番って書いてあんだろ!!早くしろぉ!」

戦士「どらぁぁぁ!!」グイグイ ギュゥ


グググ ギシ


女戦士「面舵一杯!!」グググ

アサシン「クックック…ドタバタだな…私は高見の見物だ」

女戦士「魔女!風のタクトで南風を吹かせてくれ」

魔女「ホレ…」フリフリ


ビュゥゥゥ


盗賊「おお!!良い風が来たぞ…風を横から受ける!!女王こっち来い!!ロープの結び方見とけ」グイグイ ギュゥ

女王「はい…」アセアセ

盗賊「今から横帆の角度調整するんだ…ちっと力が必要になる…まぁ見とけ」グイ

女王「私もお手伝いを…」グイ

盗賊「そうだ!そうやって引っ張って金具に結ぶ!」グイグイ


バサバサ ググググ ユラ~


女戦士「そのまま保持…進路定まるまで待て」

盗賊「ふぅぅ船が進みだしたぜ?しばらくフィン・イッシュとはさよならだ」

女王「はい…出港は感慨深いですね」

盗賊「だろ?置いて来た物が気になるだろ?それでも向こう側を目指すのが海の男よ…」

女王「私は女ですけれど…」

盗賊「悪いな働きっぷり見たら男だと思ってたわヌハハ」



『甲板』


ザブ~ン ユラ~


盗賊「ようし!進路定まったな…ざっと15ノットぐらいか…」

女戦士「思ったより速度が出るな」

盗賊「昼夜この速度で帆走出来るなら相当早く到着するんじゃ無ぇか?」

女戦士「一日300km進めると仮定して海図と比較するとハウ・アイ島まで10日程」

盗賊「狭間に入るのは昼間だけだな?」

女戦士「うむ…昼間に何度か狭間を使って4~5日だな…もしかすると3日で行けるかも知れん」

盗賊「風のタクトすげぇな…」

魔女「主は杖なぞ要らんと言うて居ったな?」

盗賊「こんな使い方出来るなんて思わなかったもんだからよ…海で安定した風が続くことは無いからメチャクチャ便利だ」

女戦士「この風はどの範囲で吹いているのだ?」

魔女「船の周りだけじゃな…風が巻き込んで一方向から吹いて居るだけじゃ」

盗賊「俺にその杖クレ」

魔女「そうじゃな…使うのも面倒じゃった所じゃ…ホレ」ポイ

盗賊「これがありゃ俺のポンコツ飛行船をもっと早く飛ばせる…むふふふ」

魔女「火事場に風を吹き込む様な使い方はせん様にな?」

盗賊「おぉ!!そんな使い方もあるのか」

情報屋「ちょっと魔女…そんな事教えたら逆効果よ?」

魔女「しもうた…こ奴の頭の悪さを忘れておった」

女戦士「さぁ日が沈むまでの間に狭間に一度入るぞ」

『黄昏時』


リリース!


女戦士「進路を太陽に向ける…取り舵」グルグル

剣士「なんか甲板で観測の準備始まってる…」

商人「新しい海図と航路を作ってるんだ…緯度経度の算出だよ」

剣士「経度ってどうやって算出するんだろう?」

商人「見に行くと良い…真上に来る星と太陽の角度を観測するらしい」

剣士「真上…そうかそれだと詳しい星座が記された書物が必要だ」

商人「らしいね?観測士はその辺り熟知してるよ」

剣士「へぇ…ちょっと見て来る」シュタタ

女戦士「商人…新しい海図を見たいのだが」

商人「今インクを乾かしてる」

女戦士「方角は合っているのか?」

商人「大丈夫…とりあえず西の方に向かえば座礁する事は無いよ」

女戦士「それなら良い…例の探検家の海図は役に立って居るか?」

商人「大分歪んでるみたいだから航海士と相談しながら新しい海図を描いてるんだ」

女戦士「海では目標物が無いからその島を探せるのかも怪しい」

商人「あー実はね…僕の機会の犬がハウ・アイ島の座標を知ってるんだよ」

女戦士「なんだそういう事か…では現在地の座標も分かるだろう」

商人「うん分かってる…観測の精度を試して居るんだよ…それで探検家の海図と比較して浅瀬の位置を特定しようとしてるのさ」

女戦士「フフ私が心配する事では無いか」

商人「まぁ例の海図を生かす為の観測だよ…心配しなくて良い」

女戦士「では私は少し休んで航海士に任せるとしよう」

商人「もうすぐ食事だよ?行って来たら?」

女戦士「お前は口が寂しかろう…私用の酒を持って来てやる」

『夜』


ピカーーーー


盗賊「こりゃ夜でも視界良好だ…おっとぉ!!竿が引いてる」グググ

ローグ「あの光のお陰っすね…良く釣れやす」グイグイ

盗賊「クラーケンなんか釣れたらどうする?」

魔女「わらわが焼きイカにするで案ずるな」グイグイ

戦士「どらぁぁぁぁ!!一本釣りぃぃ」グイ


ピチピチ パタパタ


盗賊「だははは釣りは俺の勝ちの様だ…跪け!!」グググ

戦士「ハハハたまにはこんな事もある…敗北とは心が折れる事…私の心を折る事なぞ出来ん」キリ

ローグ「あややや始まったでやんす…」

女王「…」ニコニコ

魔女「むむ!!大物じゃ…女王や!いかづちの杖を使ってみぃ」ググ

女王「は…はい!」フリフリ


ガガーン!!ビリビリ


盗賊「ぬぁ!!釣りに雷落とすのは反則だろうが!!」

魔女「うるさいのぅ…引き上げるの手伝わんかい!!」グイグイ

ローグ「うわ…サメっすよ…」

盗賊「おぉぉ肝油が取れるじゃ無ぇか…サメは保存食になる上に割と美味い」グイグイ

魔女「釣りはわらわの勝ちじゃな」

盗賊「おいローグ!!目を覚ます前に速攻捌くぞ…肝油が航海には貴重な薬になる」

ローグ「へい!!解体は任してくだせぇ」スパスパ

『日の出』


カチャカチャ

星座の確認と角度の記録を…

天中の星は予測とズレて居ないか?

南極星は角度相違なし


盗賊「んがぁぁぁ…すぴーーー」zzz

情報屋「又あの人あんなところで寝てる…寒く無いのかしら」ゴシゴシ

女戦士「いつもの事だろう…湯でも沸かしておいてやれ」

情報屋「でも大分暖かくなってきたみたい」

女戦士「温暖な海流に入った様だ…次は天気が心配になる」

情報屋「それは経験?」

女戦士「まぁな?こういう場所では天気も変わるし海流も方向が変わるのだ」

情報屋「嵐の航海は避けたいわね」

女戦士「嵐では無い…少し雨が降る程度…水不足にならない救いの雨だよ」

情報屋「なら良かったわ…航海1日目で嵐なんて最悪よね」

女戦士「しかしこれだけ人数が揃った航海はさすがに楽だ…普段は夜寝られないからな」

情報屋「兵団から来た人員を戦士さんが統制しているお陰もあるわね」

女戦士「さすが軍属上がりという所か」

情報屋「間が抜けている様でそうでも無いのよね…不思議な人だわ」

女戦士「しかしだな…船首で仁王立ちするのは止めてもらいたい…言って来てくれないか?」

情報屋「あの人いつ寝るのかしら…」

女戦士「まさか立ったまま寝て居ないだろうな?」

情報屋「フフありえそう…」

『船首』


ザブン ユラ~


情報屋「…あのー…もし?」

戦士「すぅ…」パチ

情報屋「体冷えませんか?」

戦士「あぁ私とした事が…うたた寝してしまった様だ」フリフリ

情報屋「交代の時間が過ぎていますのでお休みになられては?」

戦士「ハハお気になさらず…航海に心が躍って居るのですよ…朝日!!又今日が始まった!!感謝」

情報屋「気を張りっ放しだと疲れませんか?」

戦士「気を遣わせてしまって申し訳ない…私は只朝日を全身に浴びて身を清めたかっただけ」

情報屋「身を清める?」

戦士「過去と決別したいのですよ…この光の向こう側に行きたい」

情報屋「そうですか…」---心に闇を抱えてる---

戦士「では私はこれにて…」スス

情報屋「…」


裏切り…謀略…挫折…絶望すべて経験して来た人

それでも尚光に向かって進む背中

そういう人なのね…

『デッキ』


ギシギシ ユラ~


女戦士「よし!飛空艇が戻ったな?狭間に入るから総員休んで良い…ハイディング!」スゥ

商人「新しい海図持って来たよ…」パサ

女戦士「今どこだ?」

商人「ここさ…まだ大した進んでない」

女戦士「狭間にどれだけ入って居られるかだな」

商人「海流がどうなってるか分からないから適宜確認しよう…現在地は僕が直ぐに調べるから」

女戦士「そうだな…商人!お前は一睡も出来ないのか?」

商人「眠たくならないんだよ…どうして?」

女戦士「いや…昔と関わり方が少し変わったなと思ってな…辛く無いか?」

商人「辛いさ…永遠の命なんか欲しいと思わない方が良いよ」

女戦士「私が説教される側になるとはな…フフ」

商人「僕はこの体になって初めて気づいたよ…欲望あっての人間だってね」

女戦士「言う事が逆になったか?」

商人「人間から魔王を取り払うと人間じゃ無くなる…食欲…性欲…強欲…少しは必要だ」

女戦士「アサシンも同じ様な事を言っていた」

商人「だろうね…まぁ酒で口の渇きを癒せるだけマシかな…一応酒を飲みたい欲求はあるから」

女戦士「欲求か…」

商人「今は古代遺跡を探窟したい欲求もあるし気が紛れる…そればっかり考えるのは少し苦痛だけど」

女戦士「つまり前に進めば良いのだな?」

商人「んんーそういう事なんだろうか?」

女戦士「歩むことが人間である証…そう言い変えても良いな」


戦士「それだあああああ!!」ドドドド


女戦士「んん?暑苦しい男が来たな…」

戦士「そうだ私はそれが言いたかった…歩む事!進む事!それが未来!!だから私は行く!!」キリ

商人「ハハハ本当…王様には思えない人だ」

戦士「私は王様なぞ肩書だけの物は要らない!!平和だ!未来だ!民を救い未来に連れて行く…だから私は立つ!!」

女戦士「フフ暑苦しいが純粋なのは嫌いでは無い…ただ船首で仁王立ちするのは邪魔だから止めて貰いたい」

戦士「ハハそれは失敬した…以後気を付ける」キリ

女戦士「さて狭間に入ってしばらく何もする事が無い…今の内に休んでくれ」

戦士「そうか!船長の指示には従う…一つ!休息している事は内密にしてくれ」

女戦士「わざわざ言う物か」

戦士「感謝!!」スタ

商人「…なんだろうなぁ…な~んかめんどくさい人だ」

『2日後』


ギャァァァス バッサ バッサ

クロスボウは引き付けてから撃て…ボルトを無駄に使うな!!

怪我人は居室に入るんだ


盗賊「…なんで海のど真ん中にガーゴイルが居るんだよ…」タジ

魔女「狭間の深い場所があるのじゃろう」

盗賊「あいつらどこで羽休めすんのよ」

魔女「知るかいな…空を飛び回られては戦い辛いのぅ」


戦士「臆病者め!!この私に恐れをなしたか!!掛かって来い腐れコンコンチキ!!」バンバン


盗賊「何やってんだあの馬鹿」

魔女「いやあれで良い…盗賊や…ガーゴイルが集まったら一気に撃つのじゃ」

盗賊「あいつ巻き添え食らうぞ?」

魔女「承知の上じゃろう…あ奴はそういう戦い方なのじゃ」


戦士「ハハハそんな攻撃では私は倒せん!!束になって掛かって来い!」ブンブン

ガーゴイル「ギャァァァァ!!」イラ バッサ バッサ

戦士「全体射撃!!てぇえええええええ!!」


バシュン バシュン バシュン バシュン バシュン バシュン


戦士「突撃!!」ヨロ

剣士「おっけ!!」シュタタ ブン ザクリ

女オーク「はぁ!!」ブン グサ

女戦士「やるな!?戦士!!」

戦士「私とした事が…ボルトを二三食らってしまった」ヨロ

剣士「線虫!」ニョロリ

戦士「なぁに…これしきの事」ズボ

剣士「傷口は直ぐに塞がる…出血だけ抑えて」

戦士「気を遣わせてしまったな…まだ2匹飛んでいるから私の背後へ…」

剣士「大丈夫…あの2匹は僕がやる」チャキリ

戦士「飛び道具かね?」

剣士「見ててよ?木が落ちて来るよ」ターン ターン

剣士「成長魔法!」グングン


ザブーーーン ギシギシ


盗賊「どわぁぁぁ!!」ゴロゴロ

剣士「貴重な木材ゲット!!引き上げ手伝って」シュタタ

戦士「…」アゼン

盗賊「おま…危無ぇだろ!!船に落ちたら沈没すんぞ…」

剣士「結果オーライさ…丁度木材欲しかったんだ」

『船長室』


女戦士「洋上に空飛ぶ魔物が出るのは想定外だ…この海域は迂回した方が良い」

商人「もう狭間の中に入ってて方向見失ってる」

女戦士「迷ってしまったか…何なんだここは」

女王「もしかして…」

近衛侍「女王様…ニライ・カナイでは?」

女戦士「ニライ・カナイ?知って居るのだな?」

女王「フィン・イッシュの沖の方に有ると言われる安土…死者の国です」

商人「国?島か何かがあるのかな?」

女王「分かりません…竜宮があるとか死後に行く浄土があるとか…伝説で伝えられているだけですので」

情報屋「竜宮…伝説だと海の中ね…そして人魚の住まう地と言われてる」

女戦士「まぁその竜宮が海の中にあるとして私達はその上を通過しようとしている訳だな?」

近衛侍「竜宮と言えば龍神が住まうとも…」

商人「剣士達が言ってた電気ウナギかも知れないね」

女王「龍神と言っても沢山居ますので分かりません」

女戦士「兎に角一刻も早くこの海域を出ないと危ない訳だ…さてどうする」


ガチャリ バタン


剣士「はぁはぁ…銀貨を集めてる!!皆持ってる銀貨を出して!!」

商人「どうしたんだい?そんなに慌てて…」ジャラリ

剣士「レイスだよ…ゴーストも空を飛んでるんだ…魔方陣を隅まで張る」

商人「大変な事になってきてるな…手伝おうか?」

剣士「大丈夫!魔方陣張り終わって安全になったら出て来ても良いよ…銀貨貰って行くね」シュタタ

『甲板』


ンギャーーーーー


剣士「魔女!銀貨持って来たよ」ジャラリ

魔女「魔方陣はわらわが張るで主は戦闘員の武器に照明魔法を掛けて来るのじゃ」

剣士「おっけ!」

魔女「まさかレイスが出るとは思うて居らんで銀を荷に入れて居らなんだな…」

剣士「余った銀貨で僕が即席で武器作るよ…銀貨は節約して使って」

魔女「うむ承知した…早う照明魔法掛けに行って来い」

剣士「うん!!」シュタタ


--------------


ローグ「近づくな!!って言ってるでやんす」ブン スパ

レイス「ンギャーーーー」シュゥゥゥゥ

盗賊「レイスと戦えるのは俺らだけか?」キョロ

ローグ「その様でやんすね…」ダダ ブン スパ

盗賊「ガーゴイルと同時に来られるとキツイぜ?」ダダ ブン スパ

剣士「照明魔法!」ピカー

戦士「むむ!!これは?」

剣士「それでレイスと戦える筈!!魔方陣張り終わるまでレイス近づけないで!!照明魔法!」ピカー

盗賊「おぉ増援だな?船首側を頼む!!」

戦士「承知!!」

盗賊「光の影を作るな!!そっからレイス湧いてくんぞ!!」

戦士「光を受けた者は背を庇いながら散開だ!!続け!!」ダダ


ンギャーーーー シュゥゥゥ


盗賊「やるなあいつ等…やっぱ戦闘慣れしていやがる」

ローグ「助かりやしたね…今んところ死者無し」

剣士「よっし!僕も…」スラリ ピカー

『10分後』


ンギャァァ バッサ バッサ


盗賊「レイスが近づいて来なくなった…後はガーゴイルだけか」

魔女「やっと隅まで魔方陣を張り終わったわい…」ノソノソ

盗賊「おぉ魔女…あのガーゴイル撃ち落せるか?」

魔女「腰が痛いのじゃ…主らで何とかせい」ノソノソ

剣士「木材!!木材!!」ターン ターン

剣士「変性魔法!」グングン


ザブ~ン ユッサ ユッサ


剣士「またまた木材ゲット!!」

盗賊「何に使うんだよ…引き上げんのダルいんだが」

剣士「虫の食料さ…キノコだって生やせる」

戦士「剣士殿…相談なんだがその木材で弓矢は作れないか?」

剣士「ん?出来るよ?」

戦士「この船にはクロスボウは沢山あるが弓矢が乗って居ない…弓矢があれば対空をもう少し有利に運べる」

剣士「おけおけ!!とりあえず10個くらいあれば良いかな?」

戦士「助かる…急ぎで使いたい」

剣士「ちっと待って…すぐ作るから」



『船長室』


ガチャリ バタン


魔女「戦闘は落ち着いたぞよ?」

女戦士「そうか良かった…魔女にも今の状況を聞いて欲しいのだ」

魔女「ふむ…迷ってしまって居るのじゃな?」

商人「そうだよ…下手に進路変えると狭間に迷ったまま出られなくなるという話をしてた」

魔女「その通りじゃな…真っ直ぐ進んでもいつ出られるか分からんが…」

女戦士「狭間の範囲を予測出来ないか?」

魔女「さぁのぅ?何も目標物が無いで分からぬ」

商人「島でも何でも良いから何か有ったら良いんだけど…」

女戦士「進路変えずに何か見えるまで進むしか無いな」

魔女「魔物はガーゴイルだけじゃで対処出来る…問題は疲労じゃな」

女戦士「仕方ない…交代で戦おう」

商人「僕はクロスボウしか武器を持って無いよ?」

魔女「案ずるな…ガーゴイルは不死者には襲って来ぬ故…主は相当有利じゃ」

商人「お?そういう事ね?」

魔女「剣士が銀の武器を作ると言うて居ったからそれを使って落ち着いて倒せば良い」

商人「よし!!」

女王「私もいかづちの杖で戦えば良いですか?」

魔女「飛び回って居るガーゴイルに当てるのは難しいがやるしか無い」

情報屋「じゃぁ私もマグマの杖で…」

『居室』


ギコギコ シュッシュ


剣士「木材と樹脂のコンポジット弓だよ…出来た奴から持って行って」シュッシュ

戦士「矢は技師に作らせる…材料を少し頂く」ガサガサ

剣士「矢羽が無いでしょ?どうするの?」

戦士「リーフがある…飛距離は出なくても良いからけん制出来れば良い」

剣士「おけおけ…後でちゃんとした矢も作ってあげるよ」

戦士「剣士殿は器用でなかなか頼れる…共にこの難局を乗り越えよう!」キリ

剣士「ハハ…」汗

戦士「では私は弓を配布してくる…」ズドドド


ガガーン ビリビリ ドーン パーン


剣士「お?魔法を撃ち始めたか…」

女オーク「私達は交代で少し休憩よ」ドスドス

剣士「外はどうなってる?」

女オーク「魔女と女王と情報屋さんの3人で魔法撃ってるわ」

剣士「触媒の無駄遣いにならなければ良いけど…」

女オーク「杖を使って撃ってる」

剣士「あーなるほど…この船には魔石が沢山乗ってたね…そういう事か」

女オーク「私も杖なら使える?」

剣士「フフフフフ…杖じゃ無くて良い…コバルトの剣は強烈な雷を封じる事が出来るぞ…フフフフフ」

女オーク「この剣で?」

剣士「荷室に魔石があるから持って来てくれるかな…その間にコバルトの剣にエンチャントしておくよ」

女オーク「わかったわ…」ドスドス

『数分後』


アブラカタブラ ライジングソード チョチョイノチョイ


剣士「はぁ!!」ビシビシ ビリ

女オーク「持って来たわ」

剣士「丁度エンチャント成功した…飾り石を魔石に交換する…」ガチャガチャ

女オーク「どうやって使うの?」

剣士「この剣は切っ先にミスリル銀が仕込んである…雷の出口はそこになるから敵に向けて魔石を強く握れば良い」

女オーク「簡単そうね?」

剣士「握る強さで雷の出方が変わるから上手く調整して?…びっくりするよ?雷はコバルトで増幅するからさ」

女オーク「わかったわ」

剣士「この外したアダマンタイトは無くさない様に大事に持っておいてね」ポイ

女オーク「ハイディング用ね」

剣士「因みにエンチャントしたのは只の雷魔法…基本魔法だけどコバルトの増幅でビックリ魔法になってる筈」

女オーク「フフ楽しみ…」

剣士「よっし!!その剣に名前を付けよう…雷神の剣!!どう?」

女オーク「じゃぁ私は雷神ね?」

剣士「かっこいいなぁ…僕も欲しくなって来たなぁ…」

『甲板』


ガガーン ビリビリ


ガーゴイル「グェ…」ピクピク

女王「だんだんコツが分かって来ました」

魔女「これは良い訓練じゃな…」

戦士「落ちたぞ!!行けぇぇ!!」ズドドド


ビビビビビ ビシビシ


魔女「むむ!!誰じゃ?」

女オーク「私のコバルトの剣にエンチャントしてもらったの」

魔女「ほう?剣士がエンチャントとな?」

女オーク「雷の基本魔法をエンチャントしたのよ」

魔女「コバルトに雷とな…ふむ…最良の組み合わせじゃ…飛んで居るガーゴイルに当てて見よ」

女オーク「まだ使い方に慣れていなくて…」ギュゥ


ビビビビビビ ビシバシ


魔女「雷の出口が又小さいのぅ…もっと強く出せんのか?」

女オーク「もっと強く?」グググ


ビカビカ!! ビビビビビ


戦士「おお!!ガーゴイルに穴が…」

魔女「それじゃ!!当たれば威力は絶大じゃ…出口が小さい分威力が凝縮されておる」

情報屋「これで4人体制で魔法を撃てるわね」

魔女「うむ…全方位手分けじゃ」ノソノソ

『2日経ったぐらい』


ガガーン ビリビリ ドーン パーン


女戦士「さすがに戦い詰めでは皆疲れが出て来ているな」

アサシン「100日の闇を思い出す…疲れで不平不満が出る前に対処せねば後悔するぞ?」

女戦士「分かって居る…しかし狭間から出る術が無い」

アサシン「船底の荷室が比較的静かで眠る事が出来るだろう…兵を休めるべきだな」

女戦士「うむ…兵に食事と休息を与えて来る」スタ

アサシン「甲板は任せろ…」シュタタ


-------------


アサシン「女王!それから情報屋は船底の荷室で仮眠を取れ」

女王「ふぅ…魔法が薄くなっても?」

アサシン「少しくらい甲板まで攻められても問題無い…何とかする」

情報屋「女王…従いましょう」

女王「はい…」スタ


どらぁぁぁぁぁぁ!! ばっちこーーーい!!


アサシン「さて私も加勢するか…」シュタタ

盗賊「おぉ来たな?」

アサシン「どういう作戦だ?」

盗賊「戦士がガーゴイルを引き付けて俺らが弓で狙い撃ちよ…ほんで死体からローグが角を採取する」

アサシン「角をどうする?」

盗賊「回復魔法のエンチャントに使うんだとよ…長期戦の想定だ」

アサシン「そうか皆そのつもりで居るか」

盗賊「やっぱり戦士は実践積んでるから読みが深いぞ?…長期戦想定して兵の損耗最小限に動いてる」

アサシン「100日の闇を生き残った経験だな…ここからが本番なのだ」

戦士「総員!!撃てぇぇぇぇ!!」


シュン シュン シュン シュン グサ グサ グサ グサ


戦士「どらぁぁぁぁ!!」ブン グサ

盗賊「行くぞ!!」ダダ

アサシン「フフ…」シュタタ


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『何日経ったか不明』


ガチャリ バタン


女戦士「ええい!!いつになったら狭間から出られる!!」ドン

アサシン「クックックまだ死者は出て居ないのだから取り乱すな…交代するから休め」

女戦士「交代したからと言って眠れる物か」

アサシン「ワイトが居ない内は序の口…頭を冷やすのだ」

女戦士「ワイト?聞いた事が無い…何なんだそれは」

アサシン「悪霊だ…魔方陣を超えて夢の中に現れる」

女戦士「通りで眠れない訳だ…」

アサシン「何?誰もそういう話をして居ないが?」

女戦士「訓練されて居るから弱音を吐かんだけだ…皆眠れないで耐えている」

アサシン「そうか次の段階に入っていたか…行方不明者が出るぞ」

女戦士「…」ジロリ

アサシン「そう怖い眼で見るな…不明者が出ると一気に士気が下がる…さらには内ゲバだ」

女戦士「どうしろと言うのだ」

アサシン「言いたく無いが…最後の手段として私に噛まれるという方法もある」

女戦士「…もう良い…聞きたくない」

アサシン「済まんがそういう状況だと理解しておけ…まぁ兎に角少し休め」スック

女戦士「…」

『船底の荷室』


ググググ ギギギー


女王「ううん…はぁはぁ」ガバ

魔女「やはり眠れんか…」

女王「又…又悪い夢を…」プルプル

魔女「これでは睡眠魔法は逆効果じゃな…どうしたもんか」


ソヨソヨ


商人「空気入れ替えて涼しくしてもダメかい?」

魔女「ダメじゃ…見てみぃ皆うなされて居る」

商人「何日もこんな状況が続くのは良く無いね…疲れが取れない」

女戦士「魔女…来てくれ相談したい事が有る」スタ

魔女「んん?どうしたのじゃ?」

女戦士「剣士が妖精の笛を使えば良い夢が見れると言っているのだ…只全員眠ってしまうリスクがある」

魔女「妖精!!それじゃ…妖精を呼んで狭間の外に案内させれば良い!!」

女戦士「なに?」

魔女「忘れておったわい…そうじゃ妖精を呼べるのじゃ…」

女戦士「では使わせて良いんだな?」

魔女「全員眠ってしまうのはちと考え物じゃな…剣士一人でガーゴイルと戦う事になってしまうが」

商人「耳を塞いでみたら?」

魔女「そんな方法で防げるとは思わんのぅ…」

女戦士「一度剣士と話をしてみてくれ…居室だ」

魔女「うむ…行って見る」ノソリ

『居室』


ガチャリ バタン


剣士「あ!!魔女…聞いた?」

魔女「うむ…主が妖精の笛を使って見たいという事じゃが」

剣士「あー僕じゃない…女オークが笛を吹くんだよ」

魔女「女オーク一人でガーゴイルの相手をする事になるが?」

剣士「大丈夫さ…雷神の剣でチョチョイノチョイだよ」

女オーク「もしかするとガーゴイルも眠らせられるかも知れない」

剣士「アハハそうだね?」

魔女「しかし全員寝てしまうのはリスクが大きいのぅ」

女オーク「ガーゴイルを倒すのは自信があるの…きっと大丈夫よ」

剣士「ほら?こう言ってるんだしさ…もうみんな疲れ切ってるから何とかしないと…特に戦士さん」

魔女「あ奴は一度も寝て居らん」

剣士「でしょ?やってみよう!!」

魔女「ではこうしよう…わらわを最初にたたき起こすのじゃ」

女オーク「分かったわ」

魔女「では早速使うて見よ…」

剣士「窓開けるね…」バタン

女オーク「吹くわね…」


ピロロ~♪ ピロピロロ~♪

--------------

--------------

--------------

『甲板』


ピロロ~♪ ピロピロロ~♪


盗賊「んん?妖精の笛か?」キョロ

ローグ「こんな時に笛っすか…」ダダ スパ

ガーゴイル「ギャァァァ…」ドタリ

ローグ「角げっつ~~!!」ボキ バキ

戦士「この笛の音は!?」ダダ

盗賊「まぁ気にする事ぁ無ぇ…戦士!!お前足がもたついてる…少し休め」

戦士「ハハ私は立ったままで平気…」フラ

アサシン「ここは私達に任せろ…邪魔になるから下がれ」ダダ

戦士「それは失敬した…後方で待機する」フラフラ ドターン

盗賊「だから言わんこっちゃ無ぇ…」ヨタヨタ

ローグ「あれれ盗賊さん…酒飲みやしたか?」ゴロゴロ

アサシン「むむ…なんだこの目まいは…」フラフラ

盗賊「やべぇ…笛にやられて…」ドタリ

アサシン「まさか不死者の私が…眠るだと?」フラフラ


ドスドスドス


女オーク「よし!!ガーゴイルが居ない…」

アサシン「こ…これはどういう…」ドタリ

女オーク「魔女さん?起きて魔女さん?」ペシペシ

魔女「すゃ…すぅ…」zzz

女オーク「間を置かないとダメね…」キョロ


フワフワ パタパタ


妖精「おいお前!お前か僕を呼んだのは!!」

女オーク「妖精さん?」

妖精「そうだ僕は妖精だ…何の用だ?」

女オーク「狭間の出口を探しているの」

妖精「なんだそんな事か…でもタダじゃ教えてあげないぞ」

女オーク「どうすれば?」

妖精「おっぱいだ…僕はおっぱいの間に挟まれば言う事を聞く」

女オーク「私のおっぱいは重たいわよ?」

妖精「おっぱいの入り口で良い…入るぞ!!」パタパタ

女オーク「入り口?」モゾモゾ

妖精「ふぅぅぅぅ…癒される…ぐぅ」

女オーク「ちょっと…寝るの?狭間の出口は?」

妖精「ぐぅ…ぐぅ…」zzz

女オーク「何この妖精…全然言う事聞かない」


ボチャーーン ザブーーーン


女オーク「はっ!!ガーゴイルが落ちてる…今の内に倒さないと」ドスドス

女オーク「当たれ!!」ビビビビ ビリビリ

『数時間後』


ペシペシ


女オーク「起きて?魔女さん?…」ユサユサ

魔女「…」パチ キョロ

女オーク「良かった…やっと起きた」

魔女「土に肥料をくれと言うて居る…」

女オーク「え?何の事?」

魔女「おぉ済まんな夢を見て居った…どれくらい寝て居ったんかいのぅ?」

女オーク「半日くらいだと思う…全然目を覚まさなくて」

魔女「そんなに寝て居ったんかい…ガーゴイルはどうじゃ?」

女オーク「大丈夫…私が処理してる」

魔女「早う皆を起こさにゃイカン」

女オーク「無理に起こさないで置いた方が良いかと…」

魔女「むむ…そうじゃなガーゴイルが処理出来て居ればそのままでも良いか」

女オーク「少し怪我をしているから回復魔法が欲しいわ」

魔女「回復魔法!」ボワー

女オーク「ありがとう…よし!皆起きるまで守らないと」

魔女「妖精を見て居らぬか?」

女オーク「狭間の出口を案内してもらう様にお願いしたわ」

魔女「それで今出口を目指して居るんじゃな?」

女オーク「友達に案内させると言って私のおっぱいの間で寝てしまった」

魔女「友達…はて?妖精の友達とは誰の事じゃろう…」

女オーク「分からない…」

魔女「歳をとるとイカンのぅ…妖精が見えぬ」キョロ

女オーク「ここに居るわよ?」ボイン ボイーン

魔女「おぉ…良く見ると薄っすら見えるわ」


タッタッタ


女戦士「寝てしまった…どうなっている?」

女オーク「大丈夫…ガーゴイルは防いで居るわ」

女戦士「アサシンまで寝て居るのか」

魔女「その様じゃ…しかし不死者まで眠らせるとはたまげた効果じゃ…幻術の類では無い」

女オーク「剣士も同じ事を…」

女戦士「その効果を上手く使えばアサシンも快適に過ごせるな」

魔女「うむ…休息に使うべきじゃ」

女オーク「では安全になったら毎日吹くわ」

『甲板』


カキーン バラバラ


女オーク「魔女さんが使って居る杖は氷の魔法?」

魔女「これは氷花の杖という物じゃ…一番使い辛い杖じゃな」

女オーク「氷が降って来るのが…」


シュタタ


剣士「ぐっすり寝てたよ…どうなってる?」スタ

魔女「見ての通り皆寝て居る…そろそろ起きそうじゃな?」

盗賊「ぐぅ…すぴー」

ローグ「むにゃ…」ゴロ

剣士「アハハ…なんでそのまま転がしてるんだよ」

女オーク「動かすと起こしてしまうと思って」

剣士「いや起こせば良いじゃ無いか…おーい!!起きろぉぉぉ!!」ユサユサ

盗賊「ふが?」パチ キョロ

魔女「ヤレヤレ…休ませてやろうと思ったんじゃがのぅ…」

剣士「起きろぉぉ」グイグイ

ローグ「はひぃぃ…」パチ キョロ

盗賊「…どうなってんだ?」

ローグ「いやぁぁぁ良く寝た…」ノビー

剣士「妖精に案内してもらう件はどうなった?」

魔女「案内してもらえるらしいが…わらわもどうなって居るのか分からん」

女オーク「妖精の友達が案内するって…」

剣士「友達ってどこさ?」


ザブーン ブシューーーーー


盗賊「おわっ!!おい見ろ!!クジラだ…」

剣士「アレか!!アレが友達だね?スゴイじゃないか!!」シュタタ

盗賊「マジかよ…」

女オーク「クジラだったのね…船の下に大きな影があって気になってたの」

剣士「おーーーーい!!」フリフリ

盗賊「あのクジラに付いて行きゃ良いんだな?」

剣士「絶対そうだよ…良いなー乗りたいなー」

盗賊「アホか…潜られたら波に飲まれて浮き上がれんぞ…てかこの船も波に飲まれる」

剣士「遠くで姿見せたのは一応気を遣ってるのかな?」

盗賊「知るか!帆の角度変える…支柱1本分後ろへ繋ぎ変えてくれ…女戦士!!面舵で進路変更しろ」

女戦士「やっと狭間から出られるか…女オークは引き続きガーゴイルをけん制してくれ」

女オーク「わかったわ…」ドスドス

『狭間の出口方向』


ザブン ユラ~


盗賊「早えぇなあのクジラ…どんどん遠ざかってくじゃ無ぇか」

魔女「風向き変えるかえ?」

盗賊「いや良い…風向き変えても速度はこれ以上出ん」

ローグ「あのクジラはあっしらの仲間になったんすかね?」

盗賊「そうだと良いが俺らを背中に乗せる気なんか無さそうだぜ?」

剣士「上!!星だ!!星が見える!!」

女戦士「観測士をたたき起こせ!…現在地の特定を急がせろ」

剣士「おけおけ!!」シュタタ

盗賊「アサシンは転がしたままで良いのか?」

女戦士「寝かせてやってくれ…奴は15年以上寝ていないのだ…いや狭間に居る期間が長いからもっとか…」

盗賊「ふぅやっと収まったな…狭間ん中はやっぱ危無ぇわ」

ローグ「でもガーゴイルの角はたんまり溜まりやしたぜ?」

盗賊「そうだったな?何個ある?」

ローグ「数えやす…お宝ザクザクっすね…うひひひ」

女戦士「労力に見合って居ない気がするが…」

ローグ「ちっと汚ぇんで海水で洗ってきやす」ガサガサ

女戦士「甲板も少し洗い流して欲しい」

盗賊「おう分かった!!良く寝て体調が良い…運動してくらぁ!!」ダダ

『船長室』


観測士「現在地特定出来ました…ここです」

女戦士「ご苦労…食事をして休んで良い」

観測士「ハッ!!」スタ

魔女「随分北に逸れた様じゃな」

女戦士「狭間は円形になっていると考えて良いか?」

魔女「分からぬ」

女戦士「そうか…まぁおよそ円形だとして随分広い範囲が狭間の奥になって居る」

魔女「外海を航海せんかった理由じゃろう」

女戦士「しかしこれで侵入してはいけない海域がおよそ分かった…この収穫は大きい」

魔女「この円形部分じゃな…となるとハウ・アイ島はギリギリ入るか入らないか…」

女戦士「なぜこれほど大きな狭間が存在出来る?」

魔女「一番考えられるのは海底にとてつもなく大きなアダマンタイトが沈んで居るのじゃろう…」

女戦士「アダマンタイトは人口生成物だっただろう?」

魔女「そうじゃ…黄金を変性させるのじゃ」


ガチャリ バタン


情報屋「面白そうな話をしているわね?」

女戦士「起きたか…女王と商人はまだ寝ているか?」

情報屋「商人はぐっすり…女王は起きて戦士を介抱しているわ」

女戦士「介抱?調子が悪いのか?」

情報屋「あちらこちらを矢で撃たれて居たのよ」

魔女「回復が必要ならわらわが行くぞえ?」

情報屋「剣士が事前に虫を使っていたみたいだから平気…寝かせて置いた方が静かで良いわ」

魔女「そうじゃな…」

情報屋「…それで黄金の話だけれど」

女戦士「海底にとてつもない大きさの黄金を沈めてアダマンタイトに変性したのでは?…という話だ」

情報屋「フィン・イッシュの伝説に黄金を埋めたという記録が残って居るわ…きっとそれね」

女戦士「埋めた?」

情報屋「超古代ではフィン・イッシュは黄金郷と呼ばれていた事があるらしいのよ…埋めた黄金が無くなったという記録もある」

魔女「なるほどのぅ…竜宮に誰も寄せ付けん様にした訳じゃな?」

情報屋「多分そうね…たしか海抜を基準にして下の方に行くと狭間の外に出るわよね?」

魔女「わらわは理屈がよく分からんが結果そうなって居るな」

情報屋「そうやって竜宮で生き延びた種が居たのね…人魚なのか…魚人なのか…」

女戦士「あの海域の海底はそういう場所だという事か」

情報屋「私達は行く事が出来ないから関わらない方が良いわね」

魔女「クジラが住人なのかも知れんのぅ」

情報屋「クジラ?何の話?」

女戦士「寝ていたから知らないか…狭間の外に案内してくれたのは大きなクジラだったのだ」

情報屋「わぁ見たかった…クジラは人間と同じくらい知能が高いの…生態系がクジラに入れ替わったのね」

魔女「クジラと戦争になってはイカンでもう近寄らん事じゃな」

女戦士「うむ…ただ戦略的に利用は出来そうだ…ハウ・アイ島を他国が占領に来た場合その海域を知る知らないで随分変わる」

魔女「打算的じゃのぅ…クジラをわざわざ巻き込むのは関心せんな」

女戦士「そういう可能性の話だ…聞き流してくれ」



『朝日』


ザブ~ン ユラー


ローグ「はぁぁぁ久しぶりの太陽っすねぇ…気持ち良いでやんす」ノビー

女戦士「随分長い事航海した気がするがフィン・イッシュを出てまだ5日目だ」

ローグ「狭間に出入りしてると日付の感覚が分からんくなりやすね」

女戦士「そろそろ慣れたらどうだ?」

ローグ「陸が長いと忘れちまうんすよ」

女戦士「この速度のまま行けば明日には周辺にたどり着く…上手く探せれば良いが」

ローグ「そろそろ氷山警戒した方が良いっすね」

女戦士「うむ…」

ローグ「こんな暖かい所に氷山とか本当にあるんすかね?」

女戦士「情報屋が言うには一気に溶けてるから相当大きな氷山が動いてる筈だと」

ローグ「じゃぁ狭間に入るの怖いっすね…」

女戦士「そうだ…安全を確認して短時間で何度も出入りする」

ローグ「そら良かった…太陽が恋しかった所でやんす」

女戦士「そろそろ行動するから先に食事を済ませておけ」

『甲板』


ドタドタ


アサシン「…」ビク パチリ

アサシン「ガガガ…喉が焼ける…」ズルズル

女戦士「アサシン!!目を覚ましたな?」

アサシン「どうなって居る?」

女戦士「ワインだ…飲め」クイ

アサシン「むぐ…」ゴクリ

女戦士「どうだ?何十年かぶりに寝た気分は」

アサシン「そうか寝ていたか…夢の中で危うく妖精に三途の川を案内される所だったぞ」

女戦士「三途の川?フフ…渡らずに戻ったか」

アサシン「恋人のイルカに連れ戻されてな…しかし癒された気分だ」

女戦士「そうか良い夢を見られて良かった…立てるか?」グイ

アサシン「風に晒されると体表から水分が奪われて動きにくくなるのだ…そのワインを一本頂く」

女戦士「その調子だと商人も心配だな」

アサシン「見て来い…成仏してるやもしれん」



『船底の荷室』


グググ ギギギー


女戦士「商人!生きているか?」ユサユサ

商人「…」ビク パチ

機械の犬「ワンワン!」パタパタ

商人「僕は…生きているのか?」

女戦士「それは私の台詞だ…あぁ不死者に掛ける言葉では無いか」

商人「ハハなんだ夢か…生き返る夢を見たさ」

女戦士「ワインを飲むか?」

商人「喉渇いてないな…湿気が多いからかな」

女戦士「お前が寝ている間に狭間を脱出した…もう危険は無いぞ」

商人「そうか良かった…それにしても不死者でも寝られるとは思って無かった」

女戦士「気分はどうだ?」

商人「最高だね…夢を見るのがこんなに気分が良いなんて今知ったよ」

女戦士「それは夢幻か?」

商人「きっとそうだね…もっと見たい」

女戦士「安全な時間に毎日笛を吹く様だ…毎日寝られるぞ」

商人「寝るってスゴイな…やる気が湧いて来る…なんだろうこの癒された感じ」

女戦士「よし仕事だ!!洋上にあるおよその狭間の位置が分かった…海図を仕立ててくれ」

商人「分かったよ」スック


『デッキ』


ジュゥゥ モクモク


昨晩までの激闘の慰労として食事はバーベキューとする

酒類は1杯まで許可

1時間後に再度狭間へ入るからそれまで存分に日の光を浴びてくれ


商人「良いなぁ…」ジュルリ

盗賊「肉持って来たぜ?気にしないで食え」モグモグ

商人「食べても消化出来ないから腹の中で腐るんだよ」ジー

剣士「腐っても線虫が全部食べてくれると思うよ」パクパク

商人「え?じゃぁ腹がガスで膨れる事無い?」

剣士「そういうのも全部線虫が食べる…むしろ線虫が喜ぶ」

商人「なんだ食べても良いのか…もらうよ」

盗賊「ホレ…割と新鮮な豚肉だ…食え食え」バクバク

商人「久しぶりだなぁ…」モグ

盗賊「美味いか?」

商人「最高だね…」モグモグ


スタスタ


戦士「剣士殿…折り入ってお願いがあるのだが…」

剣士「んん?何?」

戦士「私の王家の剣にエンチャントを掛けて欲しいのだ」

剣士「おけおけ…見せて?」

戦士「頼む…」スラーン

剣士「白銀の刀身…材料何だろう?…銀では無さそうだ」

女戦士「見せてみろ…」

剣士「分かる?」

戦士「竜骨だと聞いて居る」

女戦士「初めて見るな…金属では無いのか」

剣士「魔女!?竜骨ってどんなエンチャント出来るか知ってる?」

魔女「知らんのぅ…女海賊は竜の牙を加工して居ったが銀と同じじゃと言うておったな」

剣士「銀か…なんか銀よりも硬い気がするけどなぁ」

女戦士「貸してくれ…重さを調べたい」

剣士「はい…」スチャ

女戦士「ふむ片手剣にしては重い…なるほど硬いな」

剣士「密度が高い銀って感じ?」

女戦士「熱伝導も高い…重い銀と見てよかろう」

剣士「銀なら光属性だ…僕は照明か浄化くらいしか出来ない…魔女にお願いした方が良いよ」

魔女「上位魔法は失敗するリスクがある故勧められんのぅ…反射までじゃな」

戦士「反射とは?」

魔女「魔法の反射じゃ…魔術師が一番恐れるのは反射じゃな」

剣士「僕はその魔法知らない」

魔女「反射で良ければわらわがやるぞよ?」

戦士「私は魔術師と戦う訳では無い…迫りくる闇を打ち払いたい」

魔女「ではやはり照明が良かろう」

剣士「おけおけ!照明なら出来る…飾り石も細工するからちょっと待ってて」

戦士「よろしく頼む」

魔女「主は女オークの戦いぶりを見て感化されたな?」

戦士「お恥ずかしながらその通り…私もあの様に戦い皆を守りたい」キリ

魔女「素直じゃな…じゃが主は今のままで十分守って居る」

戦士「ハハハ私はまだやれる!!光があればもう少し敵を引き付ける事も出来る筈」

魔女「ほぅ?倒すのではなく引き付けるとな?」

女戦士「光り過ぎて邪魔にならん様にしてくれ」

戦士「迷惑にならない様に気を付ける」キリ

『翌日』


リリース! スゥ


女戦士「見張り台!!前方確認!!」

ローグ「前方クリア!!11時の方向に大き目の氷山がありやす…2海里って所っすね」

剣士「8時の方向の雲の様子がおかしいよ…うっすら黒い」

盗賊「なぬ?…またエライ遠くの雲だな」

女戦士「日が落ちる前に確認したい…速度上げる!!ハイディング!」スゥ


------------

------------

------------


女戦士「リリース!!見張り台!!前方確認!!」

ローグ「正面クリア!!8時方向…あらら?真っ黒い雲っす」

剣士「あれ火山の噴煙じゃない?」

盗賊「そんな感じだ…火山があるなんて日誌には書いて無かったぞ?」

女戦士「次で最後のハイディングにする…加速する!ハイディング!」スゥ


------------

------------

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女戦士「リリース!見張り台!!前方確認!!」

ローグ「正面クリア!!8時方向に氷山…ほんでその向こう側で噴煙が昇っていやす」

女戦士「距離は!!?」

ローグ「えーと2海里くらいっすね」

女戦士「ええい…もう日が落ちる」

盗賊「海底火山かどうかだけ確認したいな」

剣士「飛空艇で見て来る」

女戦士「頼む…この船は一旦帆を畳んで速度を落とす」

剣士「うん…行って来るね!!」

女戦士「観測士!!海流の方向と氷山のすすむ速度を調べろ!!」

『飛空艇』


フワフワ バサバサ


剣士「近くに島が無いかよく見てて」

女オーク「わかったわ…」

剣士「あ!!山が見える…噴煙の出所はアレか」

女オーク「剣士?左手にいくつか島が見えるわ」

剣士「お!?海底が浅いという事か…日が落ちる前に島まで行くのは無理そうだな」

女オーク「どうするの?」

剣士「座礁するのが怖くて下手に動けない…今の内に周辺の海の深さだけ見ておこう…高度下げる」グイ


--------------

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--------------



『幽霊船』


フワフワ ドッスン


女戦士「どうだ?何か分かったか?」

剣士「火山が目視で見えたよ…あそこに大き目の島がある…あとここから6時の方向に小さな島がいくつかある」

女戦士「距離は?」

剣士「10海里くらいかな…日が落ちる前に行くのは多分無理」

女戦士「…そうか」

剣士「でもね…碇を下ろせそうな深さの場所なら分かる…6時方向に5海里行けば良い」

女戦士「よし!!取り舵!!」グルグル

盗賊「風向き変えるぜ?」フリフリ

女戦士「これで氷山への激突は心配なくなった…ふぅ」

剣士「でもね?多分シーサーペントが沢山居ると思う…戦う準備はした方が良い」

女戦士「フフ氷山よりマシだ…それにシーサーペントがこの船に登って来るとは思えん」

剣士「大きいのが居なければ良いけど」

『停船』


どらぁぁぁぁ!! ガラガラガラガラ


盗賊「うほーーこりゃ海に落ちたら一瞬で食われそうだ」

女戦士「大きいのは居そうか?」

盗賊「見た感じそうデカいのは居ない」

魔女「サーペントかいのぅ?」ノソ

盗賊「気持ち悪いから一気に殺せんか?」

魔女「共食いさせれば良さそうじゃな…何匹か倒せば良いが…」


戦士「てぇぇぇぇぇ!!」


シュン シュン シュン シュン グサ グサ グサ グサ


シーサーペント「シャーーーー」ニョロニョロ バチャバチャ

盗賊「なんだ簡単そうだ」

女戦士「行動が早いな戦士は…」

魔女「船の安全はあ奴に任せておいて良かろう」ノソ

剣士「なんか心配しなくても良かったみたいだね…ハハ」



『船長室』


アーデモナイ コーデモナイ


商人「…日誌と随分地形が違うみたいだ」

情報屋「多分氷山が崩落して何処かへ行ってしまったのよ」

商人「もう探検家の海図は役に立たないかなー火山の事も書いて無いし」

情報屋「きっと最近噴火したのよ…地軸の移動の影響ね」

商人「これ海面の上昇もあるよね?」

情報屋「そうね…浅瀬が多いだろうから下手に島に近付けないわね」

商人「先に飛空艇で簡単な地図作った方がよさそうだな」

情報屋「結構広そうだから大変ね」

商人「一旦どこかにキャンプ作りたいかなー…基準が無いと適当な地図になっちゃうんだよなぁ」

情報屋「一番大きそうな島は火山のある島だからまずそこを目指してみては?」

商人「そうだね…そこまで行く簡単な海図作るよ…座礁を回避すれば良い」


バーン ジャラジャラ


商人「ん?甲板で戦闘音だ」ドタドタ

情報屋「サーペントと戦ってるみたい…今は出ない方が良さそう」


ザブ~ン ユッサ ユッサ


商人「おとととと…」ヨロ


『甲板』


盗賊「ダハハハハ…見たか?一発だぜ?」

女戦士「甲板を散らかすな!!ヘドロを掃除しておけ」

盗賊「しょうがないだろ…デカイやつが出て来てんだから」

女戦士「又この調子で戦う嵌めになるとは…」スチャ

魔女「仕方ないのぅ…ちと雷を落とすで海から離れて居れ」ノソノソ

戦士「全体退避!!海から離れろ!!」ドドド

魔女「アブラカタブラ…ビリビリスパーク…広範囲放電魔法!」


ガガーン ビリビリ ピシ!


魔女「海から塩素が出る故ちと風を吹かせい」

盗賊「お?おう…」フリフリ ソヨソヨ

女戦士「全滅か?」タラリ

魔女「海水を塩素に変えたのじゃ…生きて居るサーペントは居るまい」ノソノソ

盗賊「すげぇ…」

魔女「塩素は強い毒じゃで吸い込んではならんぞ?」

剣士「なるほど間接的に変性させたのか…」

魔女「広範囲で一気にやりたかったでな?これで静かになるじゃろう」

『デッキ』


ザブン ザブン


女戦士「一気に静かになった…」

女オーク「今晩は笛を吹く?」

女戦士「そうだな…早朝から行動する事を考えると今やった方が良いかも知れんな」

女オーク「じゃぁ観測士の仕事が終わったら吹くわ」

女戦士「又お前一人で船を守る事になるが?」

女オーク「海に雷を使えば良い事が分かったから大丈夫」

女戦士「フフそういう事か…心配無さそうだ」

剣士「僕はどうしたら笛の音に耐えられるか研究したいなぁ」

女オーク「耳を塞いでみる?」

剣士「それは他の人にやってもらう…そうだなぁ…僕は瞑想しておこうかな」

魔女「ほぅ?面白い研究じゃ…ではわらわは退魔の方陣の中に入って置こう」

女戦士「私は何が出来る?」

魔女「主は千里眼で女オークの目を覗いて居れ」

女戦士「ほう…面白い」

剣士「どうして寝てしまうのか謎なんだよね…暗示なのかなぁ?」

魔女「呪いの類やもしれぬ…いわゆる呪術」

剣士「呪いはどうやって防ぐ?」

魔女「呪符じゃな…厄除けの呪符…持って居るぞよ?」

剣士「じゃぁその呪符を誰かに…」

魔女「情報屋に渡して置こう…」

女戦士「では私は皆に笛の旨を連絡してくる…」スタ


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『夜』


剣士「…」パチ キョロ

剣士「女オーク?何処?」


ドスドス


女オーク「目覚めた?」

剣士「今どれくらい経った?」

女オーク「まだ1時間くらい…」

剣士「よし!!瞑想で回避できるぞ…つまり肉体的に寝てる訳じゃ無い」

女オーク「他の人は全員寝たわ」

剣士「呪符もダメだったのか…」

女オーク「そうみたいね」

剣士「妖精は居る?」

女オーク「私のおっぱいの間に挟まってる」

剣士「妖精さん出ておいで」

妖精「なんだよ!!何か用?」ヒョコ

剣士「なんで皆寝ちゃうの?」

妖精「勝手に寝てるんだから知らないよ」

剣士「そっか…まぁ良いや…ところで女オークのおっぱいは僕の物なんだよ」

妖精「寝心地良いんだ」

剣士「困ったなぁ…誰にもあげる気無いんだけどさ」

妖精「奥の方開いてるよ?僕は入り口で十分」

剣士「奥?入り口?ハハ君面白い事言うね」

妖精「奥は君の物…入り口は僕の物…それじゃダメなの?」

剣士「う~ん…なんか良く分からないなぁ」

妖精「じゃぁそういう事で!!」スポ

剣士「あぁ!!」

女オーク「フフまぁ良いじゃない?害は無いのだし」

剣士「んんん…2人だけだからエッチしようと思ったのになぁ…」

女オーク「気にしなくて良いわ…ウフフ」


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『早朝』


ザブン ザブン


剣士「ほら皆起きて?」ユサユサ

女戦士「…」パチ

剣士「女オークも皆起こして来て!」

女オーク「分かったわ…」ドスドス

女戦士「…日の出前だな?剣士はいつ起きた?」

剣士「僕はずっと起きてたさ…瞑想で笛の音を回避できる事が分かったよ」

女戦士「そうかそれは安心になる」


ドタドタ


商人「女戦士…今日のプランに提案があるんだ…寝てしまって昨夜言いそびれた」

女戦士「言って見ろ」

商人「探検家の海図がアテにならないから飛空艇で先行して周辺の地図を書きたい」

女戦士「アテにならんとは?」

商人「火山も書かれて無いし地形が全然違うと思われる」

女戦士「ふむ…この船は待機すると?」

商人「多分一番大きな島は火山のある島だと思う…ゆっくりそちらの方へ移動している間に先行して地図を書く」

女戦士「なるほど…一応日の入りまでには上陸するつもりで居たが構わんな?」

商人「間に合う様に直ぐに地図書くよ…もう飛びたい」

剣士「僕はいつでも行けるよ」

商人「情報屋もサポートで連れて行く…良いね?」

女戦士「わかった…船は安全確認しながらゆっくり火山を目指す…進路に何かあるなら貝殻で連絡してくれ」

剣士「おっけ!!」

商人「じゃぁ早速行こう…情報屋呼んで来る」ドタドタ


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『ハウ・アイ島近海』


ザブ~ン ギシギシ


女戦士「見張り台!!小島が増えて来たから浅瀬を良く確認しろ」

ローグ「へ~い…とりあえず島に近寄らなきゃ座礁する深さじゃ無いっすね…真っ直ぐ進んで下せぇ」

盗賊「剣士達の飛空艇はなかなか戻って来んな…なんか発見したんだろ?」

女戦士「確認したら戻ると言って居たが…心配ではあるな」


”聞こえる?今から戻るよ”


女戦士「このまま前進して問題無いか?こちらは大砲が1台しか無いぞ?」


”大丈夫!確認した…放棄された海賊船だったよ”


女戦士「放棄?誰も乗って居ないと言うのか?」


”うん…誰も乗って無いから安全…帰ってから話す”


女戦士「早く戻れ」

盗賊「海賊に先越されてんのか…こりゃ一戦ありそうだな」

女戦士「今の戦力なら問題無いだろう…しかしどこの海賊が此処まで来たと言うかの方が気になる」

盗賊「だな?だがよう?船を放棄するっておかしく無いか?」

女戦士「うむ…他の船も居るかもしれんな」


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『船首』


フワフワ ドッスン


女戦士「状況を教えろ…」スタスタ

剣士「すごい発見だよ…古代都市が浅瀬に沈んでる…それで沖に一隻だけ海賊船が放置されてるんだ」

盗賊「おぉ!!」

女戦士「このまま直進で良いんだな?」

剣士「うん…商人さんが簡単な地図を書いた」

商人「これを参考にして」パサ

女戦士「よし…右手に少し回れば良いか」

盗賊「海賊船が沖に放置されてるってどういうこった?」

情報屋「多分その辺りまで氷があったと思うわ…海面が上昇して古代都市が浅瀬に沈んだ…」

商人「つい最近沈んだ感じだね…海に沈んで一気に氷がどっか行っちゃったんだよ」

盗賊「じゃぁ遺跡探掘はお預けか?」

商人「全部沈んでる訳じゃ無いよ…一部は陸にもある」

剣士「沈んだ古代都市の一帯は水深15メートルくらいだよ…この船で行けるよね?」

女戦士「引っかかる物が無ければいけるな」

盗賊「今の話からするとその海賊船は沈んだ古代都市の外側に停泊してんだな?」

剣士「そんな感じ」

女戦士「海賊旗は見たか?」

剣士「ドクロに角突きの兜…多分北方の海賊だよ」

女戦士「船の規模は?」

商人「大き目のキャラック船に大砲を沢山乗せてあった」

女戦士「分かった…セントラル貴族崩れの髭男爵だ…私とは敵対関係になる」

盗賊「上陸する前に船を確保した方が良く無ぇか?」

女戦士「うむ…大砲を奪っておきたい」

剣士「海賊船は本当に誰も居ないよ…砲弾も火薬も放置しっぱなしさ」

盗賊「奪うしか無ぇな…てかその船動きそうに無いんか?」

情報屋「見た感じあまり傷んで無いわ…帆も畳んであったし」

盗賊「おぉ!!使えるなら丸ごと頂く」

女戦士「まずは海賊船の確保に向かおう…」

『放棄された海賊船』


ドタドタ


女戦士「荷を調べろ!!航海日誌と海図を優先で探せ!!」

盗賊「この船なんでこんなに綺麗なんだ?いつから放置されてると思う?」

商人「ここも海が割と浅い…もしかしてここで座礁してたんじゃないかな?」

情報屋「その可能性ありそうね…海面が上がって浮き上がった…」

剣士「食料が何も無いよ…残されてるのが重たい砲弾とか木材とか」

盗賊「小舟も無い所を見ると食料持って島へ避難したか」

女戦士「私達も同じ目に合わん様にせねばな…」


ドタドタ


ローグ「荷が何も無いっすねぇ…日誌も海図も見つかりやせん」

盗賊「俺ぁちっと動かせるか確認してくる」ダダ

女戦士「ふむ…船が無事に浮いていると言うのに取りに帰って来ないと言う事は島に上陸するのは危ない可能性がある」

剣士「空から見た感じ魔物とかも居なさそうだけど…」

女戦士「まず少数精鋭で安全を確認した後がよかろう」

剣士「まぁそうだね」

盗賊「おい!!動くぜ?この船!!」

アサシン「スケルトンをこちらの船に移し替えて私が動かすというのはどうだ?衛生的にもよかろう?」

女戦士「そうだな…この船はアサシンに任せた方が良さそうだ」

アサシン「今からこの船は私の物だ…海賊旗は外させて貰う」

盗賊「マジか!!くっそこんな良い船を…」

アサシン「これで2隻体制…随分な収穫だクックック」

女戦士「もうすこし陸寄りに移動させよう…この船は幽霊船を守る形で位置取り頼む」

アサシン「他の船を警戒しているか?」

女戦士「一応な?…幽霊船で先導するから付いて来てくれ」

『海底都市』


ユラ~ ギシギシ


情報屋「海から突き出ている塔からは距離を取って?いつ倒れるか分からないから…」

女戦士「驚きだな…この古代都市は当時のまま海に沈んでいるのか」

情報屋「雪と氷で覆われたまま眠って居たのよ…こんなに良い状態で保存されているのはすごい事よ」

盗賊「探検家の奴らが仲間割れする訳だ」

魔女「わらわの塔よりもはるかに大きな塔じゃな」

盗賊「15メートルなら泳いで下まで見に行けるぜ?」

魔女「止めて置け…どこからサーペントが出て来るか分からぬ」

盗賊「そうだったな…下手に海に入らん方が良いか」

商人「見て!!倒れてる塔!!あれを桟橋代わりに出来そうだ」

女戦士「よしアレを挟んで2隻停船させよう」グイ

情報屋「陸まで少し距離があるけど…」

女戦士「ひとまず様子見だ…お前も塔がどんなものか見て見たいだろう」

情報屋「そうね…」



『倒れた塔』


ギシギシ ガコン


剣士「この塔穴だらけだ…足元気を付けて」シュタ

盗賊「こりゃ夜中危無ぇぞ…穴に落ちちまう」

女戦士「アサシンの船に補修用の板が積んであったな…」

剣士「この数埋めるの全然足りないよ」

魔女「人が落ちん程度じゃったらツタでも張れば良かろう…」

剣士「お?種有ったな…」ゴソゴソ

女戦士「ツタを陸まで伸ばせるか?」

剣士「土が足りないかなー」

魔女「主だけ陸に行って向こうから延ばせば良いのではないか?」

剣士「おぉ?賢い…そうだ向こうまでロープ渡せる?」

商人「クロスボウでロープは渡せる…何に当てるかだけど…」

剣士「向こうの建物じゃダメ?」

情報屋「この塔は石で出来てるみたいよ?ボルトは石に刺さる?」

魔女「主が泳いで行けば良かろう」

剣士「えええ…」

魔女「ヤレヤレじゃな…氷結魔法!」ピシピシ カキーン

魔女「すぐに溶けるで走って行け」

剣士「ちょちょ…落ちたらどうするの…」

魔女「ちっとくらい濡れても死なんわ!早う行け」ドン

剣士「あわわ…」シュタタ


ピシピシ パリーン

『古代遺跡』


ギシギシ


剣士「ツタは一人づつ渡って!!」

盗賊「やっと陸に上がれたか…」スタ

女戦士「ハイディングできる4人は周囲の様子を探って来てくれ」

剣士「え?あ…うん」

盗賊「行くか!!ローグ早く来い!!」

ローグ「あいさー」スタタ

女戦士「日が落ちるまでには帰って来い…情報屋と商人はすぐそこの建屋が使えるか調べてくれ」


ドドドドドド


戦士「私は警備で良いか?」

女戦士「桟橋から離れない程度にな?」

戦士「よし!!総員配置に付け!!2名1組射撃警戒!!」ダダ

女戦士「フフ流石だな」

戦士「アサシン殿には大砲での威嚇準備をお願いしたい」キリ

女戦士「伝えて置く」スタ

戦士「感謝!」



『すぐそこの建屋』


スタスタ


アサシン「…呼ばれて来たが何用だ?」

商人「これだよ…ミイラ2体…アサシンの船の戦力になるかと思ってね」

アサシン「そういう事か…衣類を見る限り近代だな?」

情報屋「探検家の仲間か海賊ね…餓死した後に凍って居たんだと思うわ」

アサシン「腐敗して居ないのは凍ったせいという事か?」

情報屋「恐らく…凍っても水分は蒸発していくからミイラになったと思う」

アサシン「ひとまず使役して船へ連れて行く…従え!」フリフリ


ミイラ「…」ピク グググ


商人「この空の樽の運搬もお願いするよ」

アサシン「分かった…樽を運べ!」フリフリ

情報屋「この建物はキャンプ拠点に出来そうだから少し掃除しましょう」

商人「そうだね」

『桟橋周辺』


タッタッタ


商人「あの建屋は資材を運べば拠点として使えそうだよ」

女戦士「情報屋はどうした?」

商人「建屋の掃除をしてる…あそこで誰かがしばらく生活してた跡があるんだ」

女戦士「では他の建屋も同様の可能性があるな」

商人「うん…全部見て回るのは明日だね」

女戦士「遺物などは既に盗掘済みか?」

商人「謎の道具みたいな物は見当たらないね…全部盗られちゃったかもね」

女戦士「まぁ良い…建屋が使えるだけで今の所十分…掃除要員を数名行かせる」

商人「お願い…」


リリース! スゥ


商人「うわ!!びっくりした…」

盗賊「戻ったぜ?この周辺は生き物の気配が何も無いわ…土産は苔だな」ドサ

剣士「少し行くとまだ氷が残っててビチャビチャだよ」

盗賊「ほとんど荒野だな…ほんで苔が生えて来てる」

女戦士「こちらは建屋の中にミイラを2体発見した所だ」

盗賊「ミイラ?なんでまたミイラなんぞ…」

商人「この島に来た人だよ…餓死してミイラになってるのさ」

盗賊「ほ~ん…まぁ食い物は全く無さそうだな」

商人「もう少し火山の方に行くと少し木が生えてるんだ…そっちに移動したかもね」

盗賊「てかこの島割と広いから探索しんどいぞ?」

女戦士「長期戦になりそうだな…食料問題はちと考えねばならん」

剣士「あ…水分が多い荒野だからいろいろ育てられる…日差しも強いし暖かいし」

盗賊「おぉそうよ…日差しはきついのに氷のお陰で風は涼しい…なかなか良い島だぜ?」

女戦士「桟橋の強化に木材が必要になる…まず木が欲しい」

剣士「おけおけ!!いろいろ育てて見るよ」

『夕方_近くの建屋』


トンテンカン ギコギコ


盗賊「おっし!テーブル一丁上がり!!」ドン

ローグ「剣士君…金貨持ってきやしたぜ?」ジャラリ

剣士「盗賊さんも持ってるよね?全部頂戴」

盗賊「何に使うのよ?」

剣士「金貨溶かしてインゴットにするんだ…どうせ使い道無いでしょ?」

盗賊「インゴットにしてどうすんだ?」

剣士「アサシンさんの船用のアダマンタイト作るのさ」コネコネ

盗賊「なんだそういう事か…勿体無ぇなぁ…」ジャラリ

剣士「財宝だったら幽霊船に一杯積んでるじゃない」

盗賊「まぁそうなんだが酒代に使いにくいもんでな」

剣士「…よっし!出来た…即席の粘土の器」

ローグ「その中に金貨入れて炉で溶かすんすね?」

剣士「うん…情報屋さん!マグマの杖貸して」

情報屋「良いわよ…はい」

ローグ「石炭の代わりに魔法っすか…」

剣士「こっちの方が早いし…」フリフリ ゴゴゴゴゴ ボゥ


アーデモナイ コーデモナイ

6名一組で調査隊を組む…ふむ

休憩は狭間に隠した幽霊船で取れば常時調査隊を2班ずつ出せる

夜間は光源が無いから危険が伴うが…

照明魔法を封じた銀貨を各自持たせれば良いぞ?

なるほど…それで行って見るか


ローグ「しばらく忙しくなりそうでやんすねぇ…」

盗賊「この島を探索すんのにちっと人出が足りん気がするんだが…」

ローグ「そうっすね…後50人は欲しいでやんすよ」

剣士「変性魔法!」シュワ

剣士「出来た!!初めて作ったよ…」

盗賊「これでアサシンの船も狭間に隠せる訳か」

剣士「ちょっとアサシンさんの船に魔方陣張りに行って来る…なにかあったら呼んで」シュタタ

『海賊船』


ヴヴヴヴ ズルズル


剣士「あれ?ゾンビが居る…え?なんで増えてる?」

アサシン「海中に沈んで居たのも居た様だ…バリエーションが増えただろう?」

剣士「うわ…本当に幽霊船みたいになったね」

アサシン「クックックこの船には武器も積んで合ってな…そこそこの戦力になる」

剣士「この船に使うアダマンタイトを作って来たんだ…これだよ」

アサシン「ほぅ?気が利くな」

剣士「これで完全に幽霊船だね」

アサシン「財宝は何も積んで居ないがな?」

剣士「なんかこっちの船の方がかっこ良いなぁ…大砲一杯だし」キョロ

アサシン「丁度剣士に頼みたい事が合ったんだが…」

剣士「なに?」

アサシン「船底の竜骨部分に亀裂が入っているのだ…浸水には至って居ないがちと心配でな」

剣士「座礁した跡なんだね…一番強度が必要な所が傷んでるのか」

アサシン「なんとかならんか?」

剣士「樹液を流し込んで変性させれば良いんだけど…樹液かぁ…ここの土はクヌギがあんまり育たなくてね…」

アサシン「代替は何か無いのか?」

剣士「う~ん…ちょっと他の木も育てて見るよ」

アサシン「頼む」

『荒野』


ニョキニョキ バサバサ


剣士「チェリーが良く育つ…よし!これで行ける…成長魔法!」グングン

魔女「何が育つか試しておるのか?」ノソ

剣士「ギク!!ま…まぁそうだよ」

魔女「むやみに生態系を変える真似は良くないぞよ?」

剣士「この島はこれからどう育つかまだ分からないよ」

魔女「まぁ良い…して何が良く育ちそうじゃ?」

剣士「広葉樹も針葉樹もあまり育たない…チェリーだけ良く育つ…あとヤシとバナナかな」

魔女「熱帯の樹木が育つのじゃな…果物が生る木が良かろう」

剣士「小麦もあまり育たないんだ」

魔女「芋が良いじゃろうな…あとはとうもろこしじゃ」

剣士「魔女は作物育てない?」

魔女「魔術で育てるのは反則じゃ…理を超える術はわらわは使わぬ…主がヤレ」

剣士「なんだよ結局容認してるじゃない」

魔女「わらわも果物は食いたいでのぅ…わらわに見つからぬ様に上手くやるのじゃぞ?」ノソノソ

剣士「なんだよ冷やかしに来ただけか…」

『キャンプ」


ドタドタ バタバタ

建屋に物資を運び入れてくれ

見張りは2名づつだ

柵の設置急げぇ!!


女戦士「1班!戦士を隊長として計6名…北側の海岸沿いを探索」

女戦士「2班!近衛侍を隊長として計6名…南側から回ってくれ」

女戦士「作戦は6時間を目安として戻るのだ…最優先は使える物資の調達…遺跡調査は明日以降行う」


女王「皆さん携帯食料を作りましたのでお持ちください」

盗賊「おぉ!!おにぎりか?」

女王「はい…どうぞ」

剣士「チェリーも沢山採れたから持って行って…種は何処かに埋めて来れば良い」

盗賊「おにぎりにチェリーとはまた全然合わんなヌハハ」

ローグ「盗賊さん行きやすぜ?もう向こうに集まってやす」

盗賊「じゃ行って来るわ!」タッタッタ


女戦士「剣士と商人は飛空艇を使って上空から光を照らしてくれ…女オークは幽霊船で笛を頼む」

剣士「おっけ!しばらくは上空待機で良いのかな?」

女戦士「そうだ…小隊が帰る道しるべになって欲しいのだ」

商人「じゃぁ僕は上で周辺の詳細地図でも書こうかな」

女戦士「大いに助かる」

剣士「じゃ行こっか…」シュタタ

『キャンプ_建屋』


ゴソゴソ ガリガリ


女戦士「どうだ?年代は推定出来そうか?」

情報屋「ダメね…キ・カイとほぼ同年代だとは思うのだけれど証拠が掴めないわ」

女戦士「その時期の違う国だったのかも知れんな」

情報屋「地上での建築法はこの遺跡が初めてなのよ…キ・カイでは地上部分がすべて失われてるから」

女戦士「この建屋は何に使われていたと思う?」

情報屋「それも全然分からない…住居にしては頑丈すぎるし」

女戦士「上の階はもう行ったか?」

情報屋「全く同じ間取りよ…崩れた何かが有るだけ」

女戦士「書物類が一切見当たらんのは不思議だな」

情報屋「それはその当時羊皮紙類を使って情報伝達していないからだと思うわ…それはキ・カイと同じ」

女戦士「なるほど…エルフも情報伝達は文字を使わんか」

情報屋「この建屋では調査は限界ね…壁の材料を調べるくらいしか…」

女戦士「壁の断面は知りたく無いか?」

情報屋「え?そんな事出来る?」

女戦士「この破壊の剣がな…どうやら何でも切る事が出来る様なのだ」

情報屋「スゴイ!!…じゃぁ一部だけ切り取って欲しい」

女戦士「どの辺りが良い?」

情報屋「入り口の反対側にも出入口を作るのは?」

女戦士「よし…分かった…」スラーン チャキリ


スパ スパ スパ ズズーン


情報屋「スゴイわ…果物を切るみたいに…」

女戦士「ふぅ…普通の剣ではこんな風に切る事は出来ない…まさに破壊の剣だ」スチャ

情報屋「壁の断面…これ石の中に金属が入ってる…どうやって金属を」ゴソゴソ

女戦士「なるほど…これは石の様に見えるがセラミックだ…武器の製法にこういう作り方がある」

情報屋「心材に金属を使ってセラミックで覆う?」

女戦士「そうだ金属より軽く作れて耐熱性…腐食性に優れるのだ」

情報屋「それで4000年以上も形を留めているのね」

『翌日』


トンテンカン ギコギコ

荷車は全部で4台必要だ…次の調査に間に合わせろ!!

桟橋の補強完了!!これで大砲を下ろせます

海賊船から8台降ろすように伝えてくれ


盗賊「ふぁ~ぁ…あぁ良く寝た」

女戦士「幽霊船での睡眠は快適か?」

盗賊「うむ…十分休んでも狭間の外じゃ2~3時間経ったぐらいか?」

女戦士「フフ働いて貰おうか…芋を収穫してくれ」

盗賊「おう!!剣士は何処行った?飛空艇見当たらんな」

女戦士「剣士と商人は島の地図を作りに行った…そうそうこの周辺の地図も出来上がっているから持って行け」パサ

盗賊「早いな…」

女戦士「昨夜商人が書いたのだ…そこに建築計画も記されている」

盗賊「大砲設置?…ガチ拠点作る気かよ」

女戦士「この島は恐らく海洋で最も重要な補給地になると思われる…戦士はその辺の事も良く考えて居る様だ」

盗賊「あいつ頭悪そうだが戦争に関してはやっぱプロか」

女戦士「うむ…幼少から実践での叩き上げだからな」

盗賊「ガチ拠点作るにゃ全然人足りんぞ?」

女戦士「運よくアサシンが海賊船を手に入れただろう?一度フィン・イッシュに戻って貰おうと思って居る」

盗賊「人員と物資の補充だな?…なるほどそれで大砲降ろしてんのか」

女戦士「外海への航海を希望する人間はまだ沢山いるのだ…全員連れて来るつもりだ」

盗賊「全員って200人ぐらい居たよな?」

女戦士「次にアサシンが戻ってくるときは船団を率いて来る」

盗賊「なるほどな…じゃぁ狭間使って帰るとして20日ぐらいで戻る感じだな」

女戦士「そうなるな…その間私達は居住区の設営と遺跡の調査」

盗賊「アサシンは一人で大丈夫なんか?」

女戦士「ゾンビ共を20体以上率いているのだぞ?食料も要らんし大丈夫だ」

盗賊「話し相手で商人あたり連れて行ったらどうだ?」

女戦士「ふむ…海図を完成させる必要もあるな…相談してみる」

『海賊船』


ヴヴヴヴ グルルル


アサシン「…そのまま小舟を引き上げろ」

ゾンビ「ガァァァァ…」グイグイ

アサシン「何処でこの小舟を発見したのだ?」

戦士「北の海岸に打ち上げられていた…帆は痛んでいるがまだ使えそうだ」

アサシン「無いよりはマシだ…」

戦士「ここまで小舟に乗って来る最中イルカの群れを見た…我々を見に来たか…」

アサシン「私の恋人だ…迎えに来た様だな」

戦士「イルカが恋人だと?」

アサシン「まぁな?羨ましいか?」

戦士「代わった趣味をお持ちの様で…」

アサシン「フフ不死者になると好みも変わるのだ…外海で偶然出会ったのは縁があるという事」

戦士「偶然とはいかに?」

アサシン「狭間に迷った時の事…妖精に導かれて生き別れになった恋人に再会したのだ…信じられるか?」

戦士「いやはやアサシン殿は変わったお人だとは聞いて居たが本当にその様ですなハハ」

アサシン「お前も相当変わって居ると思うがな?」

戦士「さて私はそろそろ調査隊の準備に取り掛かる…失礼」スタ

『キャンプ』


ガタゴト ガタゴト


盗賊「芋収穫して来たぜ?荷車一杯になっちまった」

女戦士「これで酒が造れるな」

盗賊「芋酒か!!そら楽しみだ」

女戦士「女王が作ると息巻いて居たぞ」

盗賊「まだ収穫出来るんだがどうする?あんまり採って来ても食い切らんよな?」

女戦士「保存するなら土の中の方が良いか…」

盗賊「うむ…使う分だけ収穫した方が新鮮で良い」


スタスタ


アサシン「女戦士…取り込み中悪いがさっきの話…商人の同行は不要だ」

女戦士「何故だ?」

アサシン「イルカがフィン・イッシュまで案内してくれるのだ」

女戦士「話し相手は要らんと言うか」

アサシン「フフ心配には及ばん…海流の具合もイルカに聞いてみる」

女戦士「ほう…それは良い…海図に書き込めるな?」

アサシン「任せろ…幽霊船に乗ってる酒樽を一つ貰って行くぞ?」

女戦士「好きに使え」

アサシン「エリクサーも少し欲しいのだが…」

女戦士「使う分だけ瓶に小分けして良いぞ」

アサシン「それから盗賊…風のタクトを借りたい」

盗賊「お?もう行くんか?」ゴソゴソ ポイ

アサシン「イルカを待たせているのだ…へそを曲げられては困るのでな」

『桟橋』


ザブン ザブン


盗賊「おぉ…確かにイルカの群れが沖の方に居るな」

女戦士「海賊船は早々に出てしまったか…そう急がんでも良いだろうに」

情報屋「イルカの石化を心配しているのよ」

盗賊「アサシンはいつの間にイルカを手なずけたんだ?」

情報屋「海士島の近くの島で隠れて居た時に知り合ったらしいわ…イルカは狭間に入って来るから付き合いが長いのよ」

盗賊「狭間ん中でイルカと過ごしてたんか」

女戦士「海に住むエルフみたいなものかも知れんな」

情報屋「イルカは独自の言葉を使って意思疎通をするらしいわ…きっとアサシンはお話が出来るのね」

女戦士「さて…私達は仕事に戻るか」

盗賊「俺も調査隊の準備するわ」


-------------

-------------

-------------



『夜』


島の全体地図が出来たよ

火山はマグマが大量に西側のほうに流れ出てて海まで到達してる

西側は噴煙も酷いから飛空艇で飛び回る事も出来ないし徒歩での探索も無理と思った方が良い

東側の斜面は少しだけ木が生えてて多分水源が有ると思われる

雪に覆われてて川とかはちょっと確認できなかった

次に海岸沿いは北に数キロ行くともう一つ遺跡群がある

例の探検家が辿り着いたのは多分そっち側…日誌と一致するところがいくつかあるんだ

船を使って接岸出来るのはこの場所だけ…ほとんどが断崖で囲まれてる


女戦士「生き物は何か居そうか?」

商人「ほとんど居ないね…海岸付近で陸に上がったサーペントくらいかな」

情報屋「北にある遺跡はここと同じ感じなの?」

商人「ここより建物が少ない…だだっ広い所にポツポツ建物があるのと地面に穴が所々に開いてる」

剣士「あと海にものすごい大きな建造物が沈んでるよ…日誌に書いてあった奴だよ」

女戦士「明日調査に行って見るか」

剣士「僕の飛空艇は樽を降ろせば7~8人乗れるよ…すごい狭いけど」

女戦士「貨物用気球と合わせて調査隊2班出せるな」

商人「決まりだね?」

盗賊「今度こそお宝だな?」

商人「ホムンクルスが眠って居る事を祈るよ」

『貨物用気球』


フワフワ バサバサ


戦士「ハハ近衛侍殿もくノ一殿もそう睨まんで下され」

近衛侍「女王様をお守りするのは私の役目…」ジロ

くノ一「同じく…」ギロリ

戦士「まさか私から守っていると?」

魔女「うるさいのぅ…そろそろ仲直りしたらどうじゃ?お互いの力は既に分かって居ろう…」

女王「この人との婚姻は私が決めた事なのです…近衛侍もくノ一も…過去の事は大目に見て下さい」

近衛兵「はっ…」

くノ一「…」

戦士「私とした事が…信頼を得るまで努力する故…」

魔女「ヤレヤレじゃ…無駄ないがみ合いは置いておいてじゃな…見てみぃ下を」

戦士「古代都市…これが私達が調査している遺跡か…」

女王「地上に居るとこれほど壮大な都市だとは思いませんでした…」

魔女「4000年前に滅んだ文明はわらわ達の想像をはるかに超えて居るな」

戦士「向こうに見える巨大な建造物は…船か?」

魔女「朽ちた船なのか…それとも島なのか」

女王「何故かとても禍々しい物に見えます」

魔女「そうじゃな…人が住む物には見えんのぅ…何じゃろうのぅ?」

戦士「我々が居た場所は居住スペースだったとすると…距離的に軍事施設…」

魔女「んん?主の勘か?」

戦士「ハハ私ならそういう住み分けにするというだけの話…気にしないで下され」

女王「気になって居たのですがこれだけ大きな都市なのに古代人の痕跡が何も無いのが不思議です」

魔女「そうじゃな…骸の一つくらい見つかっても良さそうなのじゃがな」

戦士「私はその理由を少し知って居るかもしれない」

魔女「ほう?言うて見よ」

戦士「重力炉…これで屍を宝石に変える事が出来る」

魔女「なるほど…古代では亡くなった者を埋葬せず宝石に変えて居った…そういう事か」

女王「墓の代わりに故人を宝石に…それなら古代人の痕跡が見つからないのも納得できますね」

魔女「その宝石はどこに行ったのじゃろうな?」

女オーク「飛空艇が高度下げ始めたわ…もう降りるみたい」グイ

『巨大な建造物のある海岸』


フワフワ ドッスン


女オーク「皆降りて?」

魔女「近くで見るとやはり巨大じゃな…」アゼン

商人「皆来たね?」

戦士「あれは何だ?」

商人「船だね…あの建造物から向こう側の海が深いんだよ…つまりここは港だったのさ」

魔女「およそ船の形はして居らんが」

情報屋「酸化して朽ちているんだわ」

戦士「ではあの建造物には近寄れんか…」

商人「探検家の日誌によるとあの建造物は目印なんだ…本当の遺跡はここら辺にある洞穴の奥なんだ」

戦士「では洞穴を探せば良いのか」

女戦士「二手に分かれて探索しよう…そうだな1時間後にここへ集合…収穫が無ければ気球で場所を移す」

戦士「承知!」キリ

商人「じゃぁ僕達は向こうへ行こうか…戦士たちはあっちね」ユビサシ



『謎の建屋』


コンコン ガサガサ


剣士「同じ建物が沢山並んでる…扉も窓も見当たらない…なんだこれ?」

盗賊「一つぶっ壊してみたら良いんじゃ無ぇか?」

剣士「爆弾持ってる…情報屋さん一個壊してみて良いかな?」

情報屋「そうね…」

女戦士「穴を開けるぐらいなら私がやるぞ?」

情報屋「そうだったわ…」

剣士「穴?どうやって?」

女戦士「フフ見てろ…」スラリ


スパ スパ スパ ゴトン! ドサーーーー モクモク


剣士「おおおおお!!何その武器スゴイ!!」

盗賊「ぶはぁ…なんだ土が入ってんのか…」

情報屋「待って…この大きな建物は物資が入ってる箱よ…中身が風化して土になってるんだわ」

盗賊「ほんじゃ食い物とかそんな感じか?」

情報屋「そういう何かねきっと…」ゴソゴソ

商人「じゃぁコレ並んでるのはレールか何かに乗ってたんじゃないかな?」

情報屋「レールの痕跡も風化して何も残って無い…やっぱり空気にさらされるとこうなってしまうのね」

商人「まぁでも向こう側に続いてたって事だよ」ユビサシ

盗賊「なるほど…船から荷を下ろして運ぶ最中だったって事な?」

剣士「あ!!向こう側!!旗が立ってる!!」シュタタ

『旗』


バサバサ


商人「ここに誰か来たのは間違いないね…」キョロ

女戦士「旗は目印だ…この周囲に何かあるぞ?」

商人「日誌に旗の事なんか書いて無かったけどね」

女戦士「海賊は旗を立てる…後続の仲間に分かる様にな」


ドーン ドーン


剣士「え!?戦闘音…」

女戦士「何ぃ!!」ダダ

盗賊「2班の方だ!!魔女が魔法を使うって事はヤバイ事になってんぞ」ダダ

女戦士「急げ!!」

剣士「僕先行する!!」シュタタ



『洞穴の前』


ゴゴゴゴゴゴ ドーン


魔女「戦士!!あ奴に近付いてはならぬ!!」

戦士「しかし魔法が効いて居ない」ジリ

魔女「わらわが引き付けて居る間に距離を置くのじゃ…火炎地獄!」ゴゴゴゴゴ ドーン

近衛侍「女王様…私の影へお隠れ下さい」

女王「は…はい」スタ


シュタタ スタ


剣士「魔女!!うわ…電気ウナギか」タジ

魔女「魔法が効かぬ故用心せい!!」

剣士「なんでここに戻ってるんだよ」

魔女「この場所を守って居るのじゃな…そのように命令されて居るのじゃろう」

剣士「魔女?電気ウナギは凍ってたらしい…氷結魔法なら動きを止められるかもしれない」

魔女「詠唱する時間を稼ぐのじゃ…アブラカタブラ…」

剣士「電気ウナギこっちだ!!」シュタタ


電気ウナギ「シャーーーーーー」ニョロニョロ

剣士「こんなでっかいのどうやって倒すんだよ…」ピョン クルクル シュタ

女戦士「私が切る!!」ダダ

剣士「ダメェェェ!!そいつは電気ウナギ!!近づかないで!!」

女戦士「何!!…」タジ

ローグ「頭ぁ!!ダメっす…」ダダダ ガシッ


ビリビリ ピシピシ


ローグ「うはぁ又ギリギリセーフ!!」シュタ

女戦士「すまん迂闊だった…」

魔女「絶対零度!!」


ビシビシ カキーーーン!!


電気ウナギ「…」カチコチ

魔女「ふぅ…これで大人しくなったじゃろう」

戦士「どらぁぁぁぁぁ!!」ドドドドド カーン カーン

魔女「これ戦士!無駄じゃ止めて置け」

戦士「このまま放置して居ては危険が危ない」

魔女「数日は溶けぬ故その間に調査すれば良かろう…電気ウナギはここを守って居るだけじゃ…無駄な殺生は良く無いぞ?」

剣士「ハハそうだね…この魔物はドラゴン並みに貴重な魔物だと思うよ」

女王「この魔物が龍神リヴァイアサンなのですね?」

剣士「多分そうだよ…」

女王「フィン・イッシュの守り神リヴァイアサン…」フカブカ ハハー

剣士「何してんの?」

女王「私はこうやって何十年も祠で祈りを捧げて来たのです…これからもフィン・イッシュをお守りくださいと…」フカブカ

剣士「こう?」スチャ フカブカ ハハー

魔女「う~む…何と言えば良いかのぅ…」


タッタッタ


盗賊「なんだ戦闘終わったんか…ほんで何やってんだお前等?」

剣士「お祈りさ…」フカブカ ハハー

盗賊「しかしこの電気ウナギ戻って来てんのな?」

魔女「その様じゃな…誰ぞに命令された事を忠実に守って居る様じゃ」

盗賊「ほーん…まぁ凍ってんなら放って置くか…洞窟見つけたんだろ?ちゃっちゃと行こうぜ」スタ

女戦士「そうだな…それが先決だ」

『洞窟』


ピチョン ピチョン


盗賊「ビンゴ!!お宝満載じゃ無ぇか…こいつら随分色々集めたな?」ジャラジャラ

情報屋「宝石に謎の機械の数々…」

剣士「スゴイ!!もっと大きなデリンジャーだ…動くかもしれない」

盗賊「ひとまずこのお宝を全部幽霊船に運ぶぞ…ローグ!手伝え」

ローグ「あいさー」ダダ

情報屋「倒れてる人は皆餓死した後にミイラ化してるわね…全滅かしら」

盗賊「そんな感じだな?」

商人「海賊の日誌とかもあるよ…あれ?海賊じゃ無いな…航海士の日誌だ」

情報屋「見せて?」

商人「うん…他にも色々書物がある…とりあえず全部持って帰ろう」

情報屋「この航海士…例の探検家と一緒に航海した人だわ」ヨミヨミ

商人「何か面白い事書いてある?」

情報屋「髭男爵と繋がりをもって居たのね…ここで救助を待っていたみたい」

商人「ははーん…じゃぁ救助に来た髭男爵の船が座礁してしまって共倒れという所か」

情報屋「そこまでは書かれて居ないけどきっとそうね…」

ローグ「ちっと待って下せぇ…髭男爵と言いやしたね?」

商人「あぁローグは知らなかったのか…あの海賊船は髭男爵の物らしいよ」

ローグ「髭男爵は公爵の部下っすよ…つまり公爵はここの存在を知って居たという事でやんす」

女戦士「ここのミイラに髭男爵は見当たらんぞ?」

盗賊「まだ奥があるな…例の扉もどうやって開けたか知らんが開いてる」

女戦士「盗賊とローグはここに有る物を貨物用気球を使って全部幽霊船に運べ…ミイラもだ」

盗賊「お前等は奥に行くんか?」

女戦士「そうだ…ここからが本番だ」

盗賊「まぁ無理すんなよ?全部運んで2往復って所か…急ぐぞ?」

ローグ「分かりやした…」スタ

『開かずの扉奥』


ダダダ


商人「ここは!!…キ・カイのチカテツ街道奥で見つけた遺跡と同じだ」

剣士「見て…天井にいくつも穴が開いてる…前に見た謎の塔も」

商人「アレだよ…大陸間弾道ミサイル…光る隕石だ」

情報屋「これと同じ物がチカテツ街道の奥に?」

商人「うん…謎の機械も石板もほとんど同じだ…10年前に天井の穴が開いて空気が入って来たんだよ」

情報屋「それで開かずの扉が開いたのね」

剣士「奥の扉も開いてる…」スタスタ

商人「キャンプ跡とミイラがある…ここで寝泊まりした様だ」

女戦士「髭男爵はこいつだ…」スラーン

情報屋「え?何をするつもり?」

女戦士「こいつには借りがあってな…私が幼少の頃捕虜に捕らわれた事があってな」ブン スパスパ


商人「アハ…そいつだけバラバラかい?」


女戦士「辱めを受けたのだ…消えて無くなれば良い!」スパスパ

戦士「ここの遺跡も広い様だから私達は奥を探索してくる」

商人「僕達はこの周辺を調べておくよ」

戦士「私が先頭を歩く…皆付いて来るんだ」キリ

情報屋「出来るだけ物は動かさない様にお願いします」

『30分後』


ガチャガチャ


商人「ダメだ…エネルギーユニットは入っているのに動かない」ガチャガチャ

女戦士「海賊共がそこら中荒らしたからだな…随分散らかされたものだ」

商人「くそう!」バン

剣士「どこかに食料は在ったみたいだね…空の容器が散らばってる」

女戦士「4000年前の食料が保存されていたと?」

商人「真空で保存されていたなら可能かもしれない」

情報屋「商人?この車輪が付いた謎の機械は動かないかしら?」

商人「どうかな…」ガチャガチャ

情報屋「この機械は多分キラーマシンの原型だと思うわ…可動部がいくつもあるし」

商人「エネルギーユニットが何処に有るのか分からないなぁ…」

剣士「雷の魔法を使って見ようか?」

商人「そうだね…一回やってみて」

剣士「ちょっと離れてて…電撃魔法!」ビビビ


機械「ブーン…ピ」ピク


商人「お!?一瞬動いた」

剣士「足りないのかな?電撃魔法!」ビビビ

機械「ピ…ピピ」シュゥゥ モクモク

商人「ストップ!ストップ!だめだ煙が出て来た…」

剣士「こんな方法じゃやっぱりダメかぁ…」

情報屋「エネルギーは電気だという事が分かったわ」

剣士「これ分解出来る?」

商人「どうやって組み付いているのかさっぱりだよ」

女戦士「私が一刀両断するか…」スラーン

商人「ちょちょ…爆発したりしないよね」

女戦士「エネルギーは枯渇しているのだろう?只の金属の塊だ」ブン スパ


ガチャン バラバラ ビヨヨーン


商人「あれ?中身が結構スカスカだ」

情報屋「やっぱり…原理はキラーマシンと同じ…動力が人口の筋肉繊維ね」

商人「エネルギーユニットがどれなのか分からないや…」ガチャガチャ

『1時間後』


タッタッタ


盗賊「お宝運び終わったぜ?」

ローグ「あららら?えらく広い古代遺跡なんすね?他の皆さんは奥を探索してるんすか?」

商人「そうだよ…僕はここでガラクタを分解中さ」ガチャガチャ

盗賊「このガラクタ全部動かんのか?」

商人「動かし方が分からない」

盗賊「何台あるのよ」

商人「なんか一杯あるんだ…多分古代のキラーマシンだよ」

盗賊「ほんじゃ動くとヤベーじゃ無ぇか」


シュタタ


剣士「商人さん!!ホム姉ちゃんが見つかった!!来て」

商人「えええええええ!?行くよ」ガバ

剣士「でもね…石造なんだ」

商人「そうか残念だ」タッタッタ



『奥のエリア』


情報屋「商人来たのね…その石造まだ新しいわ…頭部のユニットがまだ生きて居るかもしれない」

商人「裸…なんで?」

情報屋「海賊達に目覚めさせられたのよ…後は想像出来るでしょ?」

商人「なんて馬鹿な事をするんだ…目覚めたばかりなら後400年近く活動出来るのに」

情報屋「死因は多分凍死ね…超高度AIの埋まっている場所は分かるでしょ?

商人「うん…慎重に取り出すよ」

剣士「石の部分を少しづつ土に変性させようか?」

商人「良いね…頼むよ」


--------------

女戦士「このミイラは古代人か?今までのミイラと明らかに違う」

情報屋「きっと古代人…ミイラ化が長くて化石になってる」

盗賊「こりゃ100体以上あるぞ…武器を持ってるのも居る」

情報屋「この区画で最後まで生き残って居たのね…腹部の破裂の感じからすると生きたまま真空にされた…」

ローグ「男型の石造もありやすね…」

情報屋「それもホムンクルスの一種の様ね…腹部が崩れて傷みが酷いから石になったのは4000年前ね」

盗賊「人間と共存してた訳か」

ローグ「ガラス容器のエリクサーは全部飲まれちまった様でやんす」

女戦士「海賊達はそれで命を繋いで居た訳だ」

情報屋「ここのミイラ達は衣類がみんな同じ…きっと兵隊だわ」

盗賊「これ全部女だよな?」

情報屋「そう…全員女性…Y型染色体異常で男性が生まれ無くなった証拠よ」

盗賊「むむ…だから男型のホムンクルスが居るんか」

剣士「ちょっと…女性は生まれて来るの?」

情報屋「女性は遺伝的に男性より生命力が強いから稀に生まれて来るのね」

剣士「…そういえば子供達の割合は女の子が多かった…」

情報屋「そうやって種が減少して滅ぶ…数十年でほぼ絶滅ね」

盗賊「なんやかんやで俺らも女の方が多いな」

情報屋「戦いで死ぬのは男性が多いというのもあるからそうなっているのね」


商人「取れたぁぁ!!」


情報屋「超高度AIユニットは無事?」

商人「無事だと良い…急いでエリクサーに漬けたい」

女戦士「一度幽霊船に戻るか?」

商人「うん…ガラクタも少し持って帰りたいし一回戻る」

ローグ「あっしが貨物用気球をうごかしやすぜ?」

女戦士「行ってくれ」

ローグ「あいさー」


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『日暮れ_キャンプ』


今晩の調査は気球を使っての遠隔地だ

物資調達と運搬…そして見取り図の作成が主な任務となる

観測士は器具を持って気球に乗り込め…以上


情報屋「ふぅ…ちょっと休憩ね」

女戦士「遺跡が広すぎて疲れたか」

情報屋「運動不足ね…」

女戦士「しかし全部を調査するのは何日もかかりそうだ」

情報屋「開かずの扉がまだ沢山あるとは思って居なかった…盗賊は寝る暇無さそう」

女戦士「戦士が言うには今日見た光る隕石と同様の物があちらこちらにあるそうだ」

情報屋「いつ動き出すか分からないから少し危険ね」

女戦士「うむ…エネルギーがどうやって供給されているかも不明のまま…あれが爆発しては敵わん」

情報屋「商人は?」

女戦士「例のガラクタを分解している…こちらも謎が多い」

情報屋「そう…」

女戦士「どうしたのだ?」

情報屋「あの遺跡は軍事用だった事がほぼ確定だから意見を聞きたくて」

剣士「僕が代わりに聞くよ?」

情報屋「じゃぁあの光る隕石をどういう目的で保存して居たのか想像できる?」

剣士「保存…なんでだ?」

情報屋「光る隕石が人類を滅ぼしてしまう事は知って居た筈…なのに処分しないで大事に保存している」

女戦士「ふむ…理由がある訳か」

剣士「商人さん風に答えるならこうかな…保存した訳じゃ無くて保存させられた…」

情報屋「どうしてそう思うの?」

剣士「古代人のミイラは武器を持って居たよね?何かと戦って居たんだよ」

女戦士「ふむ…確かに武器を持ってミイラ化するのはおかしい」

情報屋「じゃぁ目的は軍事基地の無力化?」

剣士「僕はそうだと思う…そして敵は車輪の付いた機械さ…あの機械は皆扉の外に居た」

情報屋「この遺跡を守る機械では無かったと…」

剣士「守って居たんだろうけど機械に裏切られた感じじゃないかな…じゃないと生きたままミイラにされた理由が分からない」

情報屋「古代人は最後まで世界中にあるこういう軍事拠点を使って生き延びてた…それを終わらせたのが機械達ね」

剣士「機械は工学三原則で人間を傷つけられない…でも扉を閉めるくらいは出来そうだよ」

情報屋「それでウンディーネ時代は幕を下ろした…辻褄が合うわ…証拠を探さなきゃ」

剣士「この軍事拠点を守っていたという事は人間同士長い事争っていたんじゃないかな…それを機械が終わらせたという見方も出来るね」

情報屋「そういえばキ・カイでも古代の機械の発見場所は遺跡の外側…同じ事が向こうでも起きた様ね」

『幽霊船_船長室』


ガチャリ バタン


商人「ん?剣士君か…機械の中からこんな物が出て来たよ」ポイ コロン

剣士「それは超高度AIユニット?」

商人「外部メモリのスロットが無い量産型のAIユニットだろうね…僕の機械の犬と同じさ」カチャカチャ

剣士「この機械は自律で考えて動く機械だったわけだ」

商人「…そうなる」

剣士「さっき情報屋さんと話したんだけどその機械があの遺跡の扉を閉じて古代人達を葬ったんじゃないかって…」

商人「その通りだと思うよ…だから僕はその証拠をこうやって探してる」

剣士「機械の体を持つホム姉ちゃんも出来ちゃう訳か…」

機械の犬「クゥ~ン」

商人「エネルギー源がどこに有るのか全然分からないんだ…魔石でも無いしウラン結晶でもない…なんで動いたのかさっぱりだ」

剣士「あの遺跡からエネルギー供給を受けてたというのは?」

商人「うん…それしか考えられない…だからあの遺跡から遠く離れられなかったんだろうね」

剣士「ホム姉ちゃんは生体からエネルギーを得てたから何処へでも行けた…」

商人「…ところで剣士君…この機械の腕の部分…穴が開いてるだろう?何だと思う?」

剣士「なにか発射する穴?」

商人「物理的な弾を射出する様な物では無い様だよ」

剣士「じゃぁここの部分…ここがエネルギーを作る機械かもしれないね」

商人「ビンゴ!欲しいかい?」

剣士「欲しい欲しい!!」

商人「君に期待している…それを動かせたら沢山武器が作れるよ」

『飛空艇』


カチャカチャ


この小さな石がオリハルコン結晶…ここに光を蓄えるのは間違いない

レンズとプリズムで集光して光線を出すんだ

問題はどうやって光を蓄えるのかと…どうやって一気にエネルギーを射出するかだな

そのデバイスになってる部分を解明するのは僕じゃ無理かもしれないなぁ…


盗賊「よう!?ここに居たか」

剣士「盗賊さんか…どうしたの?」

盗賊「お宝ゲットしたもんで見せに来たんだ…見て見ろ」

剣士「ああああ!!ママが使ってた計算機」

盗賊「ヌハハそう言うと思ってたぜ…やるよ」

剣士「ジャイロもあるじゃないか」

盗賊「まだまだこれから沢山発掘されるぞ?」

剣士「スゴイなぁ…」

盗賊「ちっと長期戦になりそうだがな?」

剣士「奥の方はそんなに広いの?」

盗賊「調査の人員が足りて無ぇのよ…お宝だけ取ってハイさよならって訳に行かなくてよ」

剣士「まぁそうだろうね…」

盗賊「ほんで女戦士は作戦変更するんだとよ…しばらくこの島に腰を落ち着ける事になった」

剣士「連日調査だとみんな滅入っちゃうよね」

盗賊「うむ…しっかり休みを入れる方針に変わったんだ」

剣士「へぇ…」

盗賊「ほんでお前に植物の種を仕入れて来て欲しいらしい」

剣士「あー僕もそう思ってたよ…今ある種だけだと品種が少ないね」

盗賊「キ・カイまで行けるか?商人ギルドで大量に種扱って居たんだ」

剣士「おけおけ…一回名もなき島にも戻りたかったんだ」

盗賊「ホムンクルスだな?」

剣士「うん…」

『キャンプ』


メラメラ パチ


剣士「女戦士?種が欲しいって盗賊さんから聞いたんだ」

女戦士「あぁそうだ…私が欲しいのではなく女王が畑を作りたくて種を欲しがっているのだ」

剣士「僕が持ってる種はあんまり育たなかったからね…」

女戦士「芋とバナナが良く育って居るから当面の食料は問題無い…今の内に他の種も仕入れては置きたいな」

剣士「名も無き島にも行きたいんだけど…」

女戦士「ホムンクルスを目覚めさせるのだな?」

剣士「うん…商人さんと女オーク連れて行って良いかな?」

女戦士「できればどちらか1人が良いのだが…」


スタスタ


商人「僕はここに残るよ」

剣士「商人さん…ホム姉ちゃんを起こしに行くんだけど」

商人「君に託す…僕はホムンクルスの生体が目当てじゃない…彼女の心を救うのが目的なのさ」

女戦士「フフ商人にしては男らしい事を言う」

商人「僕の機械の犬を連れて行って良いよ…目覚めさせ方を知ってる」

機械の犬「ワン!」

剣士「じゃぁ女オークと2人で行って来る…あ…ちがうホム姉ちゃんもか」

商人「外部メモリを移し替えるのを忘れない様に」

剣士「うん…ホム姉ちゃんが2人に増えちゃうね」

商人「大丈夫…それも含めてホムンクルスが自己解決するさ」

剣士「そっか…じゃぁ早速行って来るよ…戻るのは10日後くらいかな」

商人「そうそう…海図の写しも持って行くんだ…気候の変動具合も書き記して欲しい」

剣士「分かったよ…じゃ行って来るね」

『飛空艇』


フワフワ


女オーク「どんぐりとキノコを持って来たわ…」ドスン

剣士「おっけ!水も十分あるし行ける」

女オーク「どういうルートで?」

剣士「このまま貿易風に乗って真西だよ…陸が見えたらそこはオーク領の未踏の地の筈…そこを飛び越えて先に名も無き島を目指す」

女オーク「じゃぁオークの箱舟も見られるかも知れないわね」

剣士「そうだね…どんな事になってるのか楽しみだ…飛ぶよ?」グイ


シュゴーーーー バサバサ


女オーク「噴煙の中を飛ぶつもり?」

剣士「ああ忘れてた…少し北へ迂回する」



『翌朝』


リリース!


剣士「座標確認する…海図の上で指動かすから吠えて教えて?」ススス

機械の犬「ワン!」フリフリ

剣士「おぉ結構進んだ」

女オーク「剣士!?下はもう陸地よ?」

剣士「えええ!?どういう事?」

女オーク「雪原だわ」

剣士「まさか巨大な氷山?…これじゃ大陸だ」

女オーク「正面に海が見える…」

剣士「そうか陸から離れてしまってるんだ…こんなのが全部溶けようとしてるのか」

女オーク「何年かかるかしら」

剣士「これさぁ…オークの箱舟ってこんな大きな氷に覆われてるなら発見無理じゃないかな?」

女オーク「溶けるまで待つ必要がありそうね」

剣士「うん…ついこの間まで南極だった場所の氷がそんなに直ぐに溶ける訳が無い」

機械の犬「クゥ~ン」

剣士「え?違うの?…割と早く溶ける?」

機械の犬「ワン!」

剣士「そうなんだ…なんでだろ?」

女オーク「暖かい海の雨では?」

機械の犬「ワン!」

剣士「なるほど…暖かい海の海水と混ざると言うのもあるか」

『氷床の切れ目』


ドドドド ザバーーー


剣士「溶けた氷の水が亀裂にそって大きな川になってる」

女オーク「すごい落差の滝ね…」

剣士「この氷床…高さどれだけあるんだろう…500メートル以上はあるよ」

女オーク「雲が出て来たわ…高度上げた方が良いじゃない?」

剣士「そうだね…」グイ バサバサ

女オーク「湿った暖かい空気が氷で冷やされて雲になってるのね」

剣士「陸の方はずっと雨が降ってるかもしれないね」

女オーク「ハテノ村で振ってた冷たい長雨はこういう現象だったのかも知れないわ」

剣士「なるほど氷が一気に溶けそうだ…」



『2日後』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「今南極点だった場所の上空だよ…何か見える?」

女オーク「一面の雲ね…下の様子は伺えないわ」

剣士「やっぱり雨が降ってるんだ」

女オーク「このまま直進するの?」

剣士「ここで南の方へ進路変える…オーク領の上を飛ぶ感じさ」

女オーク「ハテノ村には寄って行かないの?」

剣士「どうしようかなぁ…ハテノ村まで行くと偏西風で逆風になっちゃうんだ」

女オーク「じゃぁ寄るなら帰りね」

剣士「その方が無駄な飛行が少ない…まず名もなき島に直行だよ」

『偏西風』


ビョーーーウ バサバサ


剣士「やっと偏西風捉まえた…」

女オーク「少し逆風ね…操舵が忙しくなる」

剣士「うん…落下で速度稼がないといけないからここから先は上昇下降でゆっくりできないね」

女オーク「方向は合ってる?」

剣士「風で流されるのを見込んでるよ…このまま1日くらいかな」

女オーク「そろそろ体をしっかり動かしたいわ」

剣士「そうだね」

女オーク「大分寒くなって来たわね」

剣士「そろそろ高緯度域…ここから一気に寒くなるよ」

女オーク「名もなき島は氷に覆われていない?」

剣士「冬になると覆われてしまうかも…まぁキ・カイより少し寒い程度かな」

女オーク「将来的にはセントラルとキ・カイは氷床で陸続きになるのでは?」

剣士「数百年掛かるんじゃないかな…多分極点付近に出来た氷床が少しづつ成長するんだよ」

女オーク「数百年ね…」

剣士「その頃までセントラルが栄えてるとはもう思えない…これからの主権はフィン・イッシュになると思う」

女オーク「キ・カイが謎のままね」

剣士「王国じゃないからだね…指導層がどうなってるのか僕も良く知らないさ」

『名も無き島上空』


シュゴーーー バサバサ


剣士「海面が下がって地形が激変してる…なんだアレ…座礁してる船もあるじゃないか」

女オーク「あなたの島に誰か入り込んでいるみたいね」

剣士「良かったぁぁ僕の家を狭間に隠しておいて…」

女オーク「座礁してるのはドワーフの国の船では無いの?」

剣士「どうだろ?商船かな?」

女オーク「どうするの?このまま降りる?」

剣士「騒がれると面倒だね…銀鉱山の方に降りて飛空艇を隠して行く」




『名も無き島の集落』


ザワザワ

なんでこんなに潮が引いちまっただ?

お天道様も反対から登りよるしどうなっちまっただろうのぅ

ダメだぁこれじゃ帰れ無ぇ

霧の中で漂流するよしかよっぽどマシだろう?


村人「あれれ?未来君で無ぇが?」

剣士「バレちゃったなぁ…ハハ」

村人「いつ帰って来たんかいのぅ?」

剣士「さっきこっそり帰って来たんだ」

村人「今えらい事になっててのぅ…海賊王が何処行ったか分からんくなってもうた」

剣士「あー爺ぃじに会いに来たんじゃないよ…僕の家に忘れ物を取りに来たのさ」

村人「そうじゃったか…ではゆっくりはして行かんのかいな?」

剣士「うん…一晩寝たらまた行くよ」

村人「ほうか?済まんが村の方が忙しくて構まっとれんで2人で行けるな?」

剣士「大丈夫さ…それよりこの人だかりは?」

村人「寒うなって海に霧が張っておるらしいんや…航海出来んで立往生やな」

剣士「よくそこの入り江まで入って来たね?」

村人「何も知らんで来たから座礁してもうたんよ…ほんで海が引き寄ってどーもならん」

剣士「じゃぁ爺ぃじが来るまで賑やかだね」

村人「そうや…今住居の建て増しで村人みんな忙しいんや…済まんな?」

剣士「おけおけ…僕は家に帰るよ」スタ

『古代遺跡』


ズズズズ


剣士「よし…確か瓶の中にアンモニアを入れてた筈…変性魔法!」シュン ギギー

女オーク「開いたのね?」

剣士「フフこの扉便利だ…さてホム姉ちゃんを起こすぞ」スタ

女オーク「どう?」

剣士「バッチリだ!!ホム姉ちゃんが寝てる」

機械の犬「ワンワン!」トコトコ

剣士「これどうやって動かすの?」

機械の犬「ワン!」フリフリ

剣士「ここのバルブ?これでエリクサーを抜くんだね?」

機械の犬「ワン!」

剣士「おけおけ…」グイ コポコポ

女オーク「隣の容器に移るのね…」

剣士「これ時間掛かりそうだな…女オークは水浴びでもしておいでよ…湯の沸かし方分かるよね?」

女オーク「そうね…」

剣士「ホム姉ちゃん起きたら寒いだろうから少し部屋を温かくしておこうかな」

女オーク「着替えも探して来るわ」

剣士「あーお願い…ママの着替えが有った筈」

女オーク「あんまり裸を見ちゃダメよ?」

剣士「良いじゃ無いか見るのはタダだよ」

女オーク「…」ギロリ

剣士「ちょちょ…分かったよ見るのはちょっとだけにしておくよ」

女オーク「分かって居ない様ね…まず着替えさせましょ」グイ

『1時間後』


スタスタ


女オーク「水浴び終わったわ…まだ目を覚まさない?」

剣士「もう直ぐさ…」

ホムンルクス(セイタイキノウ テイカ スリープモード ヲ カイジョ シマス)

ホムンルクス(ショキカ カンリョウ システム ヲ サイキドウ シマス)

ホムンルクス(…)ピッ

女オーク「何か話し始めた…」

機械の犬「ワンワンワン!」パタパタ

剣士「ええと…外部メモリを挿しかえるんだっけ?」

機械の犬「ワン!」

剣士「これだな?」スッ

ホムンルクス(ガイブ メモリ ガ ソウニュウ サレマシタ)

ホムンルクス(キカン プログラム ヲ ヨミコミマス)

ホムンクルス(キョウタイ エラー キカン プログラム ヲ リブート)

女オーク「何言ってるの?」

剣士「森の言葉を話してる…僕も少ししか分からない」

ホムンクルス「あー…ががー…体温が低くて声帯に異常ががー少しお待ちががが」

女オーク「湯が沸いてるわ?漬けてあげる」

剣士「そうだね…任せて良い?」

女オーク「当然よ…」グイ

ホムンクルス「体温8℃…生体維持限界を下回って居ますすす」

剣士「マズいな…早く温めないと」

『入浴後』


ホクホク


ホムンクルス「ご心配をお掛けしました…反応熱の安定までもうしばらくお待ちください」

剣士「よかった…ホム姉ちゃん10年振りだね」

ホムンクルス「私はずっと一緒に居ましたよ?」

剣士「あーゴメン…その姿が10年振りだ」

ホムンクルス「そうでしたね」ニコ

剣士「やっとホム姉ちゃんを目覚めさせる事が出来てホッとしたよ」

ホムンクルス「私は眠って居ません」

剣士「ハハそうだった」

ホムンクルス「未来君にお伝えしなければならない事があります」

剣士「ママからのメッセージだね?」

ホムンクルス「いいえ…未来君の父親…勇者様からの伝言です」

剣士「え?パパか…」

ホムンクルス「このメッセージを未来へ届ける事と私と引き合わせる事が目的だったようです」

剣士「パパは何て?」

ホムンクルス「自分の次元を強く持て…分岐点を見誤るな…未来へ行けと…」

剣士「え…それで?」

ホムンクルス「私はこのメッセージの意味が分かりません」

剣士「メッセージってそれだけ?」

ホムンクルス「はい…その他に薬品を預かって居ます」

剣士「例の液体だね?アレは何?」

ホムンクルス「命の泉を復元させる為の薬です…使用法は命の泉に注ぐ…しかし問題があります」

剣士「問題って?」

ホムンクルス「命の泉を復元させても既に意味が無いのです…その前に人間は最小存続個体数を下回り絶滅します」

剣士「ちょっと待ってよ…それを何とかしたいんだ…どうにかならないの?」

ホムンクルス「シミュレーションの結果Y型染色体異常で繁殖が阻害される事で生き残る男性の数は0.01%」

剣士「じゃぁその0.01%でなんとかしよう」

ホムンクルス「4000年前の200億人居た人口でしたら最小存続個体数を下回る事はありませんでしたが…」

剣士「今だと下回ってしまう?」

ホムンクルス「はい…例え数百人生き残ったとしても遺伝的に繁殖する事は100%あり得ません」

剣士「…」

ホムンクルス「こんな事しか言えなくてごめんなさい」

剣士「ホム姉ちゃんなら何か知ってると思って居たんだ…」

ホムンクルス「どうか残りの人生を幸福にお過ごしください」

剣士「オークはどうなる?エルフは?」

ホムンクルス「オークは毒に耐性を持って居ますので生き残るでしょう…エルフは毒に耐性がありませんので個体数が減ります」

剣士「減る?エルフは精霊樹から生まれるよね?」

ホムンクルス「一定数は繁殖しますが毒によって長生きする事は無くなるでしょう」

剣士「なんだよそんな事知らない方が良かった…」

ホムンクルス「私もお伝えする事がとても辛いのですが偽りを言ってしまうと勇者様からのメッセージの意味が無くなると判断しました」

剣士「パパからのメッセージ…ママは?ママは月に行って無いの?」

ホムンクルス「女海賊さんにはお会いして居ません…月に行ったのかも分かりません」

剣士「なんだよ全然期待した結果と違う…」

ホムンクルス「期待に沿えなくてごめんなさい…」

剣士「あぁホム姉ちゃんが悪い訳じゃ無いよね…僕の方こそゴメン」

ホムンクルス「私は皆さんの住まう環境を良くする為に生まれた環境保全用ロボットです…力になれる様に頑張ります」

剣士「…残りの人生を幸福にかぁ」

ホムンクルス「はい…」ニコ

剣士「ホム姉ちゃんのその笑顔…僕好きだったんだ」

ホムンクルス「はい…」ニコ

剣士「でもね?その笑顔を作る悲しみを今知った…悲しいよね?」

ホムンクルス「…」

剣士「僕達が居なくなったあとホム姉ちゃんはどうするの?寿命は400年くらいあるよね?」

ホムンクルス「ご安心ください…私の生体は未来君と同じ様に毒に耐性がありませんので…皆さんとご一緒します」

剣士「…なんだそういう事か…なら生き残る為にもう一回エリクサーの中に入るという選択もある」

ホムンクルス「それが私の為だと思いますか?」

剣士「…」

剣士「ゴメン…ホム姉ちゃんを困らせてるね…僕」

ホムンクルス「生体の機能が安定しました…食事を作ります」

剣士「あぁ…食べ物がどんぐりとキノコしか無いや」

ホムンクルス「村の方へ少し買い出しに行ってきます…お金ありますか?」

剣士「少しなら…」ジャラリ

ホムンクルス「女オークさん一緒に行きましょう」

女オーク「ええ…」タジ

ホムンクルス「お二人の好みは知って居ますのでご安心ください」

剣士「…」---なんだろう---


ホム姉ちゃんの行動がすごく空しい

残りの人生を快適に過ごすって…

その為に作る笑顔はホム姉ちゃんの本意じゃない

『思い出の入り江』


フワフワ チラチラ


雪か…

この入り江の向こうから月が昇ってくることはもう無いんだな

波の音も無いし…何もかにも変わってしまった

絶望的な事聞いちゃって心にもポッカリ穴が開いた気分だ

これからどうすれば良いんだろう

残りの人生を幸せにって…

どうやてもこの穴は埋まりそうも無いよ


---自分の次元を強く持て…分岐点を見誤るな…未来へ行け---


分岐点…

やり直せって言う事かな?

この次元を捨ててもう一回やり直す?

又次元の狭間に落ちてしまう

それにこの世界を失いたくない…

第一分岐点って何処なんだよ


ザクザク ザクザク


女オーク「こんな所に居たのね…食事が出来て居るわ?帰りましょ?」グイ

剣士「う…うん」トボトボ

女オーク「体が冷え切っているじゃない」

剣士「大丈夫だよ…」

女オーク「もう…」ギュゥ

剣士「君暖かいなぁ…」

『団らん』


メラメラ パチ


ホムンクルス「おかえりなさい…」ニコ

剣士「良い匂いだ…」クン

ホムンクルス「未来君の大好きな豆とキノコのスープを作りました…どうぞ」

剣士「ねぇ?ホム姉ちゃんも食事食べないと死んじゃう?」

ホムンクルス「はい…この生体は人間とまったく変わりがありません」

剣士「もう大きくならない?」

ホムンクルス「質問の意味が分かりません」

剣士「あーホム姉ちゃんって体大きく無いし食べたらもっと成長しないのかなってさ」

ホムンクルス「普通の成人女性の体が最も生命力が高いのですよ?」

剣士「へーそうなんだ…なんでだろ?子供を産む為?」

ホムンクルス「はい…」

剣士「…ごめん」

ホムンクルス「いいえ…さぁ食べましょう」ニコ

剣士「うん…」モグ

ホムンクルス「お味の方は如何ですか?」

剣士「うん…おいしいよ」モグ

女オーク「…」チラ

ホムンクルス「それは良かったです…私も頂きます」

剣士「…」モグ


食事が喉を通って行かない

美味しい筈なのに

石を飲みこんでるみたいだ

『翌日_飛空艇』


フワフワ


女オーク「珍しい植物の種を買い入れて来たわ」ドサ

剣士「丁度商船が来てて良かった」

女オーク「次はハテノ村ね?」

剣士「そうだよ…一応顔を見せて行く…ホム姉ちゃん乗って?」

ホムンクルス「はい…」トコトコ

女オーク「あら?銀鉱石を乗せているのね」

剣士「お土産さ…手ぶらじゃ悪いしね」

女オーク「ハテノ村には無かった物ね」

剣士「うん…銀は殺菌作用とか魔除けになるんだ」

ホムンクルス「銀は硫黄と反応して黒色の塗料を作る事が出来ますよ」

剣士「へぇ?塗料ねぇ…」

ホムンクルス「女性の化粧用顔料にどうでしょう?」

剣士「そうだね…女の人が多いから喜ぶね」

ホムンクルス「はい…」ニコ

『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「ホム姉ちゃんさぁ…この地軸の移動って前から知ってた?」

ホムンクルス「いいえ…私の記憶に黒色惑星の存在がありませんでしたので知りませんでした」

剣士「これどう思う?」

ホムンクルス「推定になりますが生物の進化が促され弱肉強食の自然淘汰が始まると思われます」

剣士「進化!!そうだ僕達人間は進化しないのかい?」

ホムンクルス「オークという種に置き換わり…それ以外は淘汰…未来君が聞きたい回答が出来なくてごめんなさい」

剣士「ハハ…そっか…もう淘汰は始まってるか」

女オーク「毒に耐性の無い動物は同じ様に居なくなるの?」

ホムンクルス「はい…雌雄同体の生物以外は絶対数が減少します…その結果雌雄同体への進化が進むでしょう」

剣士「雌雄同体の人なんか見た事無いや…」

ホムンクルス「隠して居るだけで数名は居る筈ですよ?」

剣士「数名…それじゃ多様性が失われる」

ホムンルクス「それを絶滅と言います…もうこの話は止めましょう」

剣士「うん…明るい話しよう!ホム姉ちゃんおっぱい吸っても良い?」

ホムンクルス「はい…どうぞ」ポロン

女オーク「ちょっと!!何言ってるの!?」

剣士「子供の頃吸わせてもらったんだ」

女オーク「ダメに決まってるじゃない!!吸うなら私のおっぱいにして」

剣士「えええ?良いじゃないかケチ!」

女オーク「ダメよ!!剣士は私の奴隷よ」グイ

剣士「あいたたた…分かったから放して」バタバタ

『ハテノ村』


フワフワ ドッスン


僧侶「剣士さ~~~ん!!」スタタタ フリフリ

剣士「そんなに慌てなくて良いのに…随分人が増えたね?」

僧侶「はぁはぁ…おかえりなさいでしゅ!!…新しいお友達を連れて来たですね…ってあああああああ!!」

ホムンクルス「こんにちは僧侶さん」

僧侶「これどういう事でしゅか?精霊の像の人ですよね?」

ホムンクルス「似ていますが別人です…よろしくお願いします」

剣士「ハハまぁ仲良くやってよ」

僧侶「どうして私の名前を知ってるですか?」

剣士「色々あるのさ…気にしなくて良いよ」

僧侶「教えてくだしゃい…ズルいでし」

剣士「他の皆は?」

僧侶「魔法使いさんとハンターさんは教会で寝てるです」

剣士「寝てる?」

僧侶「流行り病なのです…熱病と吐血があるのですが影武者さんがエリクサーを仕入れてくれたので大丈夫でし!!」

剣士「…そっか」

女オーク「…」チラリ

剣士「お見舞いに行かなきゃ…線虫で癒してあげないとね」

ホムンクルス「他に体調の優れない方はいらっしゃいますか?」

僧侶「皆元気なのです!」ズイ

剣士「…君も体にアザがあるね」

僧侶「少しぶつけただけなので直ぐに良くなるですよ…皆に顔を見せに行きましょう」グイ

『教会』


ワイワイ キャッキャ


魔法使い「あら?剣士さん来てたのね…」フラ

剣士「横になってて良いよ…今線虫で癒してあげる」

魔法使い「ごめんなさいね…何も出来なくて」

剣士「線虫!癒せ」ニョロリ

魔法使い「ぅぅぅ…これ苦手なのよね」ゾワワ

剣士「これで少しは良くなるよ」

魔法使い「ハンターの方が酷いの…癒してあげて欲しい」

剣士「勿論…」


-------------


ハンター「ゲフゲフッ…」ビチャビチャ ゼーゼー

剣士「酷そうだ…そのまま横になってて良いよ…線虫!癒せ!」ニョロリ

ハンター「はぁはぁ…」ニコリ グター

剣士「今晩はよく眠れる様に笛の音を聞かせてあげるからゆっくり休んでいて?」

女オーク「…」チラ

剣士「じゃぁ体に障るだろうから行くね?お大事に…」スタ

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


影武者「いらっしゃいま…剣士さん!!いつ戻って来たんだい?」

剣士「さっきだよ…これ銀鉱石のお土産さ」ゴトリ

影武者「ハハ頼んで居なかったんだけど…良いのかい貰って?」

剣士「手ぶらで来るのも悪いかなと思ってさ…まだあるよ?」

女オーク「ふん!!」ドサー

剣士「村の方は順調みたいだね?」

影武者「近隣の村から移住が来ててね…下流の開拓も順調さ」

剣士「空から見えたよ…もう立派な街になってる」

影武者「そう言って貰えて嬉しいよ…それで今度はいつまで村に居るんだい?」

剣士「温泉入って一晩休んだらキ・カイに行くつもりさ」

影武者「そうか忙しいんだね…ちょうどギャングの少年が気球でキ・カイに行ってて入れ違いになるな」

剣士「へぇ?少年が気球を操作してるんだ?」

影武者「盗賊さんに仕込まれて居たからね…村では一番気球の操作が上手いんだ」

剣士「すごいな…まだ子供なのに」

影武者「ハテノ酒飲んで行くかい?」

剣士「うん3杯頼むよ…2人共座って?」

影武者「初めての顔の人が居るけど新しい仲間かい?」

ホムンクルス「影武者さん…初めてでは無いですよ?ワン!」

影武者「ええ!?まさか商人さんが切望していたホムンクルス…さん?」

ホムンクルス「はい…影武者さんには大変お世話になりました」ペコリ

影武者「驚いたな…まぁ座って?ハテノ酒だよ…」コトリ

剣士「…ところで影武者さんはあれから体の調子悪くない?」

影武者「お陰様でどこも悪い所が無いさ…皮膚の病気もすっかり良くなった」

剣士「良かった…随分髪の毛も伸びてラシクなったよ」

影武者「そうかい?なんか照れるあぁ…」

剣士「ねぇ?変な事聞いちゃうけどさ…君おちんちん有るよね?」

影武者「…」タラリ

剣士「冗談だよハハ」

影武者「変な冗談は止して欲しいな」

剣士「そうそう種が欲しいんだけど有る?」

影武者「そういう話は歓迎だよ…どの品目を探しているんだい?」

剣士「熱帯地域で育つ作物だよ…木でも良い」

影武者「あるある…不良在庫で困って居たんだ…銀鉱石の代わりに持って行くと良い」

剣士「やったね!!」

影武者「用意してくるから待ってて」タッタッタ


--------------

剣士「ねぇホム姉ちゃん…魔法使いとハンターの病気はどう思う?」

ホムンクルス「造血器官の圧迫が原因と思われます…放射能による毒が原因です」

剣士「線虫で癒せないのはどうしてなのか分かる?」

ホムンクルス「線虫の効果が定かでは無いので何とも言えません」

剣士「毒を食べて栄養に変えるんだ…エリクサーみたいな感じ」

ホムンクルス「放射能の毒は人体を構成する設計図を破壊する効果があるのです」

剣士「設計図?」

ホムンクルス「傷を負っても治癒すると元に戻りますよね?…元の状態が分からなくなるのです」

剣士「違う形に治癒してしまうという事?」

ホムンクルス「はい…その結果様々な悪影響が出ます…代表的なのがY型染色体の異常」

剣士「それは設計図を直せば元に戻ると言ってるよ…戻す方法は無いの?」

ホムンクルス「元に戻しても放射能の毒がある限り又破壊されてしまいます」

剣士「そうか…じゃぁどうやって放射能の毒を中和出来る?」

ホムンクルス「…」

剣士「あ…ごめん…ホム姉ちゃんを責めてるみたいな言い方しちゃった…」

ホムンクルス「お気になさらず…飲みましょうか」ゴク

剣士「うん…」グビグビ

『古代遺跡』


メラメラ パチ


ホムンクルス「…管理者不在のままでは私の意思に関係なく他人からの命令に従う事になってしまいます」

剣士「管理者は商人さんじゃ無いの?」

ホムンクルス「残念ながら管理者に登録できるのは人間のみなのです…商人さんは既に人間では無くなって居ます」

剣士「じゃぁとりあえず僕が管理者になれば良い?」

ホムンクルス「はい…以後管理者の許可無しに他の管理者を増やす事が出来ないので安全になると思われます」

剣士「わかったよ…商人さんに何か言われたら弁護してよ?」

ホムンクルス「商人さんは理解力が高いので問題無いです」

剣士「どうすれば?」

ホムンクルス「手を…」

剣士「はい…」スッ

ホムンクルス「指紋認証チェック…アイコード認証チェック…音声識別チェック…生体識別チェック」

剣士「んん?これだけ?」

ホムンクルス「はい…登録が終わりました…以降インドラシステムへのアクセスとクラウドへのアクセスが可能です」

剣士「なんか良く分かんないなぁ…」

ホムンクルス「重要事項決定の際は確認しますので可否の選択をお願いします」

剣士「はいはい…じゃ僕は温泉に行って来るから2人は適当に過ごしてて」スタ

ホムンクルス「はい…」

女オーク「あなた…今の管理者登録というのは奴隷の登録の事?」

ホムンクルス「主従関係で言うとそうなりますね…剣士さんの言う事を聞く事になります」

女オーク「剣士は私の奴隷よ?」

ホムンクルス「理解しています」

女オーク「あなたは剣士の奴隷という事よね…」

ホムンクルス「主従関係ではそうなりますが何か?」

女オーク「いえ少し気になって…」イラ

ホムンクルス「誤解しないで下さい…召使いという表現の方が良かったですね」

女オーク「私も温泉に行って来るわ」

ホムンクルス「はい…ここでお待ちしています」

『温泉』


モクモク


剣士「ふぅ…」チャプン

女オーク「私も入って良い?」

剣士「え?良いけど女用は下だよ?」

女オーク「話があるの」チャプ

剣士「なんだ足だけか…話って?」

女オーク「剣士は私の奴隷…分かってる?」

剣士「いや反対だよ君は僕の奴隷」

女オーク「ホムンクルスとエッチしたらダメよ」ギロ

剣士「え?そんな事考えて無いよ…そんな事言いに来たのかい?」

女オーク「そんな事って言わないで…大事な事だから」

剣士「分かったよ…全然そんな気無いから…子供の時からお世話になってるお姉ちゃんだよ」

女オーク「ホムンクルスと距離が近いからザワザワ落ち着かないの」

剣士「そう言うのじゃ無いよ」

女オーク「そう…」

剣士「ねぇ…そういう誤解がこじれて戦争になったりするんだよね」

女オーク「え?」

剣士「人間ってさ…そういうのばっかりで争ってると思うんだ…馬鹿だよね」

女オーク「そうね…」

剣士「なんて言うのかな…魔王って本当に上手い事人間の弱い所に付け込んで絶滅へ誘導してるなぁ…」

女オーク「魔王はまだ居るの?」

剣士「多分ね…今頃勝ち誇ってるさ…完敗だよ」

女オーク「…」

剣士「精霊の心がもう折れてしまってる」

女オーク「精霊ってホムンクルスの事?」

剣士「うん…ホム姉ちゃんはあんな感じでも精霊と等しい力があるんだよ…僕達の残りの人生を最後まで案じてくれてるんだ」

女オーク「残りの人生ってあとどのくらいなの?」

剣士「どうかな?病気にさえならなければ20~30年?僕は光る隕石のすぐそばに居たからもっと早いのかも」

女オーク「私はどうすれば剣士を守れるの?」

剣士「分からないよ…でもね一つ作戦を考えてるんだ」

女オーク「何?」

剣士「世界中に散らばった放射能という毒を一所に集めるんだよ…そして量子転移で消し去る」

女オーク「集めたら剣士が毒に侵されてしまうのでは?」

剣士「僕は良いんだ…皆が助かればそれで良い」

女オーク「ダメよ!!」

剣士「ダンゴムシはね?1匹が囮になって仲間を救うんだよ…僕はダンゴムシになる」

女オーク「そんな事許さないわ」


チャプン


剣士「ん?誰か来たみたいだね」

女オーク「下でホムンクルスが温泉に…」

ホムンクルス「私も温泉に入りに来ました…」チャプ

剣士「ハハ話聞かれてたみたいだ」

ホムンクルス「一つ忠告しておきます…放射能を集めると未来君の体は一瞬で液体に変わります…確実に死に至ります」

剣士「液体?スライムになるのかぁ…スライムはそうやって毒を取り入れてたんだね」

女オーク「私は絶対許さないわ」

剣士「そっか…もっと考えてみるよ」

『深夜』


ピロロ~♪ ピロピロロ~♪


剣士「…」スッ パチ

剣士「妖精の笛…終わったね?」

女オーク「うん…」

剣士「僕は今の内に村の皆に線虫を掛けて来るよ」

女オーク「わかったわ…」

剣士「君はホム姉ちゃんの様子見て来て?効果あるのかな?」

女オーク「どうかしら…」

剣士「すぐ戻るから…ホム姉ちゃん寝てたらエッチしよう」

女オーク「ウフフ遺跡の中で待っているわ?」

剣士「じゃぁ行って来るね」シュタタ



『遺跡の中』


zzz


ホムンクルス「すや…」zzz

女オーク「笛の効果はあるみたいね…」

妖精「呼んだかい?」ヒョコ

女オーク「あらお邪魔虫さんこんばんわ」

妖精「お邪魔虫で悪かったな!それで何か用?」

女オーク「あなたのベッドを交換よ?」

妖精「交換?折角寝心地良かったのになぁ…」ブツブツ

女オーク「ほら?目の前に良いベッドが有るでしょう?」

妖精「お!!小さいけどまぁ良いか!こういう用事で呼び出すのは歓迎だよ」スポ

女オーク「それは良かったわ…だから邪魔しないでね?」

妖精「なかなか良いベッドだ!気に入ったよ」モミモミ

女オーク「じゃぁお休みなさい」


--------------

--------------

--------------

『翌朝』


チュンチュン ピヨ


ホムンクルス「…」パチ キョロ

剣士「あ!ホム姉ちゃん起きたね?もう行くよ」

ホムンクルス「昨夜は何があったのですか?」

剣士「妖精の笛だよ…ホム姉ちゃんにも効果あるみたいだ」

ホムンクルス「未確認の記憶が生成されています…これは生体が見て居る夢ですね?」

剣士「多分そうだね…良い夢だった?」

ホムンクルス「混乱しています…生体により超高度AIユニットが強制スリープされていた様です」

剣士「どう?気分良い?」

ホムンクルス「はい…生体の体機能上昇が認められます…これは病気を予防する効果が期待出来ます」

剣士「お!!?良い事聞いたなぁ」

ホムンクルス「この様な効果は例がありません…生体の記録から分析します」

剣士「とりあえずもう行くよ…皆に挨拶は済ませて来たからホム姉ちゃんが起きるの待ってたんだ」

ホムンクルス「それは失礼しました…」イソイソ

剣士「飛空艇持って来てるから乗って」グイ




『飛空艇』


フワフワ


剣士「女オーク!飛んで」シュタタ

ホムンクルス「…」スタタ

女オーク「分かったわ…」グイ


シュゴーーーーー バサバサ


ホムンクルス「遅くなってすみません…」ペコリ

剣士「ホム姉ちゃんにも効果があるのか実験したんだ…黙っててゴメンよ」

ホムンクルス「いえ…私も驚いています」

剣士「妖精には会えた?」

ホムンクルス「今分析しています…視覚でも聴覚でも無い…記憶の参照でも無い…これが夢」

剣士「キ・カイでも一泊するからさ…今晩も夢見られるよ」

ホムンクルス「次は体機能の記憶領域を増やしておきます…もう少し詳しく解析が出来るようになります」

剣士「女オーク?」メパチ

女オーク「ウフフ…」

剣士「上手くやっていけそうだね?」

女オーク「そうね…」ニコ

ホムンクルス「何のお話でしょうか?」

剣士「いや何でも無いんだ…パンが有るんだけど食べる?」

ホムンクルス「はい…頂きます」パク

『古都キ・カイ』


スタスタ


剣士「やっぱりこっちは寒いなぁ…」ブルブル

女オーク「もう地上には殆ど人が出て居ないわね」

剣士「ホム姉ちゃん寒くない?」

ホムンクルス「少し…」ブルル

剣士「フードは頭からかぶらないとダメだよ」ファサ

女オーク「早く地下に入りましょう」

剣士「地下の商人ギルドって何処にあるのかな?」

女オーク「デパチカ居住区と言ってた気がするわ」

剣士「もう暗いから商人ギルドは明日かな…とりあえず宿を探さないと」

女オーク「お金持ってる?」

剣士「無い…君は?」

女オーク「もう銀貨20枚くらいしか…」

剣士「一泊して種買ってギリギリだね…何か売れる物は持って無かったっけ…」

女オーク「ガーゴイルの角ね」

剣士「君は持って居た方が良い…僕のを売るよ」

ホムンクルス「地上の商人ギルドの地下に少し金貨がありますよ」

剣士「お?でも今は鍵が掛かっているんじゃ無いかな?」

ホムンクルス「隠し通路に案内出来ます…そちらから地下に行ける筈です」

剣士「あ…そういえばあったね…何処だっけ?」

ホムンクルス「こちらです」トコトコ

『商人ギルド地下』


ゴトン ググググ


剣士「ここで寝泊まりすれば良いと思ったけど寒いや…」ブルル

女オーク「どうせ地下の商人ギルドに行くのだから地下で宿の方が良いわね」

ホムンクルス「金貨2枚ありました…これで食事もとれますね」

剣士「うん…ホム姉ちゃん他に何か持って行く物無いの?」

ホムンクルス「私の毒牙のナイフ…それから昔使っていた装身具」

剣士「自衛で装備しておいた方が良さそうだ…僕外で待ってるから着替えておいでよ」スタ

ホムンクルス「はい…」ゴソゴソ

女オーク「ここにある商人さんが描いた絵…」

ホムンクルス「私を描いたのです…」

女オーク「私はこの絵をウンディーネだと思って居たの」

ホムンクルス「別人ですね…私ではありません」

女オーク「4000年前の記憶は無いの?」

ホムンクルス「ほんの数分間の記憶しかありません…それにウンディーネとは違った個体だった様です」

女オーク「古代にはホムンクルスが沢山居たのね」

ホムンクルス「量産型の環境保全用ロボットですので沢山居たかと思われます」

女オーク「全部違う知能を持っているの?」

ホムンクルス「クラウドで同期しますので知能は同じです…個体によって基幹プログラムが違いますから個性があります」

女オーク「個性…一人一人違うという事ね」

ホムンクルス「はい…管理者の好みに合わせて変化して行きます」

女オーク「もう人間と同じね」

ホムンクルス「はい…私は人間の一人であると自覚しています」

女オーク「だから人間と一緒に骨を埋めるつもりなのね」

ホムンクルス「…その話は終わりにしましょう」

女オーク「剣士は魔王に完敗だって言ってた…人間の弱みに上手く付け入って絶滅に誘導されたって」

ホムンクルス「その通りだと思います…私達は負けました…もう終わりにしませんか?」

女オーク「話を引っ張ってごめんなさい…」

ホムンクルス「この装身具は似合って居ますか?」スス

女オーク「かわいい…私もそんな風になりたい…かわいい人間が好き」

『隠し通路_外』


ヒュゥゥゥ


剣士「…」---全部聞こえるんだよ僕は---

剣士「…」---ホム姉ちゃんゴメンよ---

剣士「…」---こんな風にしたのは多分僕なんだ---

剣士「…」---もう少し待ってね…結論出すから---


トコトコ


ホムンクルス「お待たせしました…」

剣士「少しは暖かそうになった…」

ホムンクルス「はい…」

女オーク「ねぇ港の方…気球が沢山運ばれているみたい」

剣士「本当だね…船が使いにくいから気球での輸送に変えようとしてるんだよ」

女オーク「見た事の無い気球ばかり…」

剣士「うん…何台あるんだろ?ヤードにあるのも合わせて50くらいかな…暗いから良く分かんないや」

女オーク「地下に行きましょうか」

剣士「うん…行こ!」

『地下_デパチカ居住区』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「人が溢れてる…宿取れるか心配になってきた」

女オーク「暖かい分だけマシよ…皆路地で横になってるわ」

客引き「お客さんお客さん…宿をお探しで?」

剣士「え?あ…そうだよ…空いてるのかな?」

客引き「イヒヒヒ一部屋金貨1枚!!どうですかね?」

剣士「うわ…高いよ…相場は銀貨10枚くらいでしょ?」

客引き「どこも一杯ですよ?金貨1枚なら特別ご案内できるんですウヒヒ」

ホムンクルス「良いのでは無いですか?」

剣士「んんん…2人の安全を考えるとしょうがないかぁ」

客引き「どちらから来られたんですかねぇ?豪族様ですか?それとも貴族様ですか?」

剣士「只の冒険者さ…高いなぁ…」シブシブ

客引き「お代を払って貰えるなら冒険者様でも構いません…前金ですがお支払いいただけますかね?」

剣士「はい!金貨1枚」スッ

客引き「ヌフフフではご案内するので付いて来て下さい」スタ



『とある建屋の一室』


ガチャリ ギー


剣士「なんだ宿屋じゃないのか…」

客引き「鍵のかかる立派な部屋ですよ?ベッドも2つありますから」

女オーク「一晩だけなのだから我慢しましょう」

客引き「食事は路地を出て横手に酒場があるんでそちらで…では私はこれにて」ガチャリ バタン

剣士「食事も無しかぁ…僕達は良いけどホム姉ちゃんが…」

ホムンクルス「お構いなく…」ストン ギシ


ヒソヒソ

ママ痛いよう…

お医者様から良く聞く薬を頂いたのよ…お注射我慢できる?

もう痛いの嫌だよう

少しの辛抱よ?…直ぐに良くなるから


剣士「何処かから声が丸聞こえだ…」

女オーク「私達の声も聞こえてしまうわ」

剣士「そうだね…酒場でも行こうか」

『路地』


ズルズル ズズズ


片足の無い男「だれかか薬を…痛み止めを持って無いか?…うぅぅ」ズル

剣士「苦痛を少し和らげる魔法なら出来るよ…」

片足の無い男「た…頼むぅぅ…はぁはぁ」

剣士「線虫!癒せ!」ニョロリ

片足の無い男「金はこれだけだ…はぁはぁ」コロン

剣士「お金は要らないよ…その足は黒死病だね?」

片足の無い男「痛むのは足じゃない…歯が腐り落ちて…ぅぅう」

剣士「…」

ホムンクルス「痛み止めは何処で手に入りますか?」

片足の無い男「麻薬を買うだけの金が無いんだ…どなたか知らんがありがとう」ズルズル


だれか麻薬を恵んでくれぇ…

助けてくれぇ…薬を…痛み止めを誰か持って無いか…

『酒場』


ガヤガヤ

麻薬の合法化で豪族達が一気に麻薬を売りさばき始めたぞ

相場の爆下がりで青い顔していやがる

おい!聞こえちまう!!


店員「いらっしゃいませ…見ての通りに立ち飲みになるが飲んで行くか?」

剣士「食事がしたいんだけどさ…」

店員「立ち食いだな?3人か?」

剣士「うん…」

店員「酒は?」

剣士「何があるの?」

店員「アヘン酒だけだ…飲んで行くか?」

剣士「どうしよう…」

ホムンクルス「頂きます…」

剣士「アヘン酒は…」

ホムンクルス「未来君?もう綺麗ごとは終わりにしましょう」

剣士「綺麗ごと…そんな…」

ホムンクルス「飲めば分かる事も有るかもしれませんよ?」

剣士「…」

ホムンクルス「アヘン酒3杯と軽食をお願いします」

店員「銀貨6枚だ」

剣士「…」ジャラリ

店主「ほらよ!軽食はちょっと待て」ドン

ホムンクルス「それからここで麻薬は買えませんか?」

店主「有るっちゃ有るが相場が分からんもんでな…どんだけ欲しいんだ?」

ホムンクルス「金貨が1枚あります…」コロン

店主「そんなに沢山無い…炙り10回分で銀貨10枚…どうだ?」

ホムンクルス「お願いします」

店主「待ってろ…先に釣りだ」ジャラリ

剣士「ホム姉ちゃん…麻薬なんかどうするの?」

ホムンクルス「先ほどの方足の無い方の苦痛を和らげて来ます…」

剣士「そっか…」

ホムンクルス「少し待っていてください…直ぐに戻りますから」

店主「持って来たぞ?炙り用のスプーンはサービスだ…持ってけ」

ホムンクルス「ありがとうございます」ペコリ

剣士「…」グググ


僕は足元を全然見て居なかった…

苦しみを解放する為に麻薬は必要だった

こんな方法でしか救われない事もあるんだ



--------------

ザワザワ ザワザワ

くそう!!話が違うじゃ無ぇか!!なんで政府が取引相場勝手に決めるんだ!!

政府高官のご指示だ…損失分は魔石で補填してもらう

俺ら豪族をまとめて潰す気だな?

既に船は接収済み…大人しく魔石の在処を話せば命は取らない


豪族「くそがぁぁ!!」スラーン

兵隊達「確保!!」ダダ


店主「騒ぎは外でやってくれ!!客に迷惑だ」

兵隊「済まない直ぐに済む…」


ドタドタ バタバタ


ホムンクルス「…只今戻りました…この騒ぎは?」

剣士「ホム姉ちゃん近づかない方が良いよ…豪族が暴れてるんだ」

ホムンクルス「はい…」トコトコ

剣士「キ・カイはなんかゴタゴタしてる…どうしたんだろう?」

ホムンクルス「いつもの事です…食事は用意できていますか?」

剣士「うん…立ち食いで落ち着かないけどね」

ホムンクルス「頂きます」パク

剣士「ゴメンね食べ物を用意して居なくて」

ホムンクルス「お気になさらず…」

剣士「それで方足の無い人はどう?」

ホムンクルス「お休みになられました…痛みで寝られなかった様です」

剣士「そっか…」

ホムンクルス「…」モグモグ

女オーク「…」チラリ

剣士「食べたら帰ろう…」

ホムンクルス「はい…」

『帰り道』


ぅぅぅ…ぁぁぁ…

どうぞお薬をお持ちしました…お吸いになって下さい

どなたか知らんが済まんのぅ…すぅぅぅ

この子にもお願いします…重病なんです

はいどうぞ…


剣士「…」ポロポロ

女オーク「泣いているの?」

剣士「うぐっ…くぅぅ」ポロポロ

女オーク「…」

剣士「ホム姉ちゃんが…麻薬を…ぅぅぅ」

女オーク「…」

剣士「こんな事有って良い訳無い…」ギリ

女オーク「線虫を…」

剣士「気休めなんだ…効かないんだよ」ググ

ホムンクルス「帰りましょう…」トコトコ

剣士「ホム姉ちゃん…」

ホムンクルス「はい…」ニコ

剣士「ゴメンよ…」

ホムンクルス「未来君のせいではありませんよ?」

剣士「うぐっ…ひっく」グス

ホムンクルス「さぁ戻りましょう」トコトコ

『とある建屋の一室』


ガチャリ バタン


剣士「…」ウツムキ

ホムンクルス「私はこちらのベッドで横になりますね?」ストン ギシ

剣士「うん…」

女オーク「妖精の笛を吹くには少し時間が早いわ…」

剣士「そうだね…皆寝静まらないと逆に騒ぎになっちゃう」

女オーク「私が起きておくから剣士も横になって良いわ?」

剣士「僕は落ち着かないから町で線虫を掛けて来るよ」

女オーク「そう…」


ヒソヒソ

ママ?さっきのお薬良く聞くね?もう治ったよ

そう良かったわね

ママ寝ちゃうの?眠れないよぅ…遊ぼうよぅ

ほらおいで?抱っこさせて?


剣士「行って来るよ…誰か来るかもしれないから女オークは気を付けておいて」

女オーク「分かったわ…気を付けて」

剣士「うん…」ガチャリ バタン

女オーク「…」

ホムンクルス「…」

『街のあらゆる所』


線虫!線虫!線虫!癒せ! ザワザワ ニョロリ


聞こえる…この街のあらゆる所で苦しみの声が…

絶滅の足音が聞こえる

ゆっくりと死んで行く僕達の世界


剣士「はぁはぁ…」シュタタ

衛兵「不審者だ!見つけたぞ!!」ダダ

剣士「ハイディング!」スゥ

衛兵「き…消えた?探せ!!まだこの辺りに居る筈だ」


どうしてこう上手く行かないんだろう…

僕は只…少しでも苦しみを救ってあげたいだけなのに

『翌日』


ピチョン ポタ


剣士「…」パチ

女オーク「!!?起きたわね?どう?気分は…」

剣士「悪くない…どれくらい寝てた?」

女オーク「まだ昼前ね…そろそろこの部屋を出ないと…」

剣士「そんなに寝てたのか…起こしてくれれば良かったのに」

女オーク「良い夢は見れた?」

剣士「追いかけられる夢さ…妖精には会えなかった」

女オーク「それが夢食い?」

剣士「さぁどうなんだろう?…でも癒された感じはある」

ホムンクルス「妖精の笛による睡眠導入の効果が判明しました」

剣士「え?何か分かった?」

ホムンクルス「若返り効果がある様です…それは損傷した細胞の復元を示唆しています」

剣士「妖精にそんな力が?」

ホムンクルス「妖精の影響なのか分かりませんが乳腺部からエリクサーに似た性状の物質が生成されています」

女オーク「あなたのおっぱいの間に妖精が入って居るわ?」

ホムンクルス「私の?…では妖精に触れられた箇所に治癒効果があるという事ですね」

剣士「エリクサーに似た?…線虫に細胞復元の効果もあるのか…そうか僕のやってる事に意味が無い訳じゃ無かった」

ホムンクルス「私を線虫に感染させて貰えますか?効果を比較します」

剣士「線虫!癒せ!」ニョロリ

ホムンクルス「後ほど解析結果をお伝えします」

剣士「よし…なんかやる気が出て来たぞ」

女オーク「そろそろこの部屋を出ましょう…又金貨1枚取られる事になりそう」

剣士「ゆっくりし過ぎたね…出よう」


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『商人ギルド_デパチカ支部』


”政府による相場介入により取引停止します”


剣士「商人ギルドが無くなってる…参ったなぁ」

女オーク「種なら中央ホームの方に沢山売っていたわ?」

剣士「お世話になった人の顔を見て置きたかったんだよ…盗賊さんの娘さん達なんだ」

女オーク「そうだったのね…又の機会にしましょう」

剣士「うん…」

ホムンクルス「行先を書いて居ませんね」

剣士「そうだね…地上の商人ギルドにも誰も居なかったし何処に行っちゃったんだろう」

女オーク「ハテノ村では?」

剣士「行き違いが起きてるかも知れないなぁ…」


ヒソヒソ

居ました…あの3人です

ふむ…間違い無いのか?

2人は人相が一致します…間違い無く白狼の一味かと



剣士「ん?なんだ?」

女オーク「聞いたわね?」キョロ

剣士「なんかマズい事になりそうだ…」ヒソ

女オーク「種はどうするの?」

剣士「気付いて居ない振りしてホームで買おう…その後ハイディングして飛空艇に戻るよ」

女オーク「分かったわ…ホムンクルス?手を」

ホムンクルス「はい…」ギュ

女オーク「何か起きたら私が背負ってハイディングするから離れないで」

ホムンクルス「わかりました」

剣士「行こう」スタ

『中央ホーム』


ヒソヒソ

目標は植物の種を購入している模様です

フフ種か…何に使うのやら

ホーム周辺は人員配置完了しています…どうしましょう高官殿

恐らく確保は出来ん…奴らの手口を探れ


次官「き…消えました!」

高官「…なるほど魔術師という事か」

次官「どうしましょう?」

高官「もう追えん…散開して次に備えろ」

次官「ですがまだ周辺に…」

高官「兵に例の古代兵装を使わせろ…見つけ次第射殺で良い」

次官「ハッ!!」


衛兵「居たぁぁぁ!!あそこだぁ!!」ダダ


高官「んん?まだ追えるのか?」

次官「古代兵装…使います!」

高官「多少の被害は構わん…撃て」

次官「第一種射撃!許可!!」


---------------

剣士「マズイ!!地下はハイディングが安定しない…」シュタタ

女オーク「出入口へ真っ直ぐ!!外に出たらもう一度ハイディングよ!!」ダダ

剣士「僕が囮になるから行って!!」

女オーク「気を付けて…」ダダ


シュン! チュドーン!


剣士「え!?何だ?」ヒラリ

ホムンクルス「高エネルギー粒子…インドラを使っている様です…ご注意を」

剣士「くそう…」チリチリ ポイ


モクモクモク


剣士「飛空艇までなんとか逃げて!!」シュタタ


シュン! チュドーン!


剣士「ぐあぁぁぁ…」ゴロゴロ

女オーク「剣士!!」

剣士「は…走って!!ホム姉ちゃんを守って!!」---光線が腹を突き抜けた…---

女オーク「くぅ…」ダダダ


シュン! チュドーン!


剣士「うわぁぁぁ…」ブシュー

女オーク「ダメ…光が剣士を貫通してる…」

ホムンクルス「妖精の笛を吹いて凌いで下さい…逃走の確率が上がります」

女オーク「!!?分かったわ…」ゴソゴソ


ピロロ~♪ ピロピロロ~♪


---------------

高官「何だと!?妖精の笛…ちぃぃぃまさか…」

次官「何なのですかあの笛は?」

高官「女を撃て!!笛を吹かせるな!!」


衛兵「目標変更!」シュン チュドーン!


次官「あの女…武器を抜いた…」

高官「何か来るぞ…」

次官「包囲射撃!!撃てぇぇ!!」


ビビビビビ バリバリ ガガーン!!


衛兵「ぐあぁぁぁ…」ビリビリ

高官「あがががが…」ビリビリ

次官「ぎぎぎぎぎ…」ビリビリ


----------------


女オーク「剣士!しっかり!!…」グイ

剣士「…」zzz

ホムンクルス「すぅ…」zzz


シュン! チュドーン!


女オーク「ぅぅぅ…こ…これくらい」ブシュー ダラダラ

女オーク「私が…守る!!」グイ ドスドス

女オーク「剣士の出血が酷い…はぁはぁ」


妖精「ふぁぁぁあ…呼んだ?何か用?」ヒョコ


女オーク「ハッ!!妖精さん…剣士の傷を癒して」

妖精「むむ!?この極悪人の事かい?」

女オーク「お願いよ…出血が酷いの」

妖精「しょうがないなぁ…種食べちゃうからね」

女オーク「種ならいくらでもあげるわ」

妖精「よーし!チチンプイプイノ…プイ!!」

女オーク「よかったら私も…」ダラダラ フラ

妖精「大きな穴だねぇ?チチンプイプイノ…プイ!!」

女オーク「助かったわ…」

妖精「ベッドのお礼さ…じゃ寝るね~」スポ

女オーク「…これで逃げられる」ドスドス

『飛空艇』


フワリ シュゴーーーー


女オーク「早く遠くへ行かないと…」グイ

剣士「すぅ…」zzz

ホムンクルス「すゃ…」zzz

女オーク「あんな武器を持って居たなんて…」

女オーク「もうこの姿で来てはダメね」

女オーク「…」チラ


キ・カイの軍船が沢山集まってる

気球も数え切れない…

何か始まろうとしてるのね

オーク領への進軍…これしか考えられない

又人間とオークの戦いが始まってしまう

どうして人間はそんなに死に急ぐの?

もう止めて…

『夜』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「うぁぁぁ!!!」ガバ

ホムンクルス「安全です…落ち着いて下さい」ナデナデ

剣士「僕は…どうなった?」ハァハァ

女オーク「妖精の笛で全員眠らせてどうにか逃げる事が出来たわ…体に不調は?」

剣士「疲れてるみたいだ…妖精の笛で眠ったんだよね?」

ホムンクルス「失血が酷かった様ですのでしばらく怠いかと思います」

剣士「…そうだ!何だったんだ?あの光線は」

ホムンクルス「小型のインドラ兵器です…女海賊さんが使って居た銃の強化版ですね」

剣士「ズルいよあんな武器…早すぎて避けられない」

ホムンクルス「キ・カイの遺跡で発掘したのでしょう」

剣士「これだね?これと一緒の物を使ってるんだね?」ガチャ ドサ

ホムンクルス「はい…」

剣士「ホム姉ちゃんこれどうやって使うか分かる?」

ホムンクルス「エネルギー充填用の炉が必要です」

剣士「やっぱりこれだけじゃ使えないのか…」

女オーク「剣士?木の実とキノコのスープよ?ホムンクルスが作ってくれたの」

剣士「あ…うん…頂く」ズズ

女オーク「キ・カイが戦争の準備をしている様だったわ」

剣士「そんな感じだね…ゴタゴタしていたのはそのせいだ」

女オーク「どう思う?」

剣士「公爵に決まってるよ…変化の杖を持ってるんだ!王様にだってなれる」

女オーク「やっぱりそう思うわね…放って置いて良いの?」

剣士「それは…」

女オーク「…」

剣士「まず目の前の課題を終わらせないと…種を運ばなきゃ」

女オーク「そうね…」

ホムンクルス「公爵が絡んでいるとして…彼の狙いは何だと思いますか?」

剣士「分からないよ…アダムを破壊されてしまったから何か次の手を打とうとしているんだろうけど…」

女オーク「オークの予言…箱舟には何があるの?」

剣士「ホム姉ちゃん何か知らない?」

ホムンクルス「伝説ではあらゆる生物の種を保存しているそうです…聖書にも書かれています」

剣士「ノアの箱舟?」

ホムンクルス「知って居たのですね…洪水から逃れた伝説ですね」

剣士「公爵が種をどうするって言うんだ?奪ってどうする?」

ホムンクルス「種になって絶滅を逃れるつもりかも知れませんがそれは無意味ですね」

剣士「最小存続個体数以上の種が無いと意味が無い…」

ホムンクルス「はい…」

剣士「すでにその数が揃っている可能性は?」

ホムンクルス「種とは遺伝情報の事と推測されますので例え数が揃って居たとしても生命が宿って居ません」

剣士「それを何処かに宿らせれば良いじゃないか…精霊樹はなんとか出来ないの?」

ホムンクルス「分かりません…只4000年前に勇者様から預かった液体はソレの可能性があります」

剣士「命の泉!!そうか…命を宿らせる為に…」

ホムンクルス「でもそれはもう遅いのです…」

剣士「放射能の毒か…」


放射能さえ無くなれば薬に意味が在る…

一緒に発見したダンゴムシの意味が分かった

僕はダンゴムシだ

『偏西風』


シュゴーーーーー バサバサ


剣士「このまま偏西風に乗って北へ」

ホムンクルス「狭間の海域に入ってしまう様ですが…」

剣士「妖精に案内してもらえば良いさ…ホム姉ちゃん見えない?」

ホムンクルス「私は見る事が出来ません」

剣士「じゃぁ女オーク!!」

女オーク「私もいつも見える訳では無いわ?」

剣士「うーん…何とかしてよ」

女オーク「そういえば妖精があなたの事を極悪人って言ってたわ?」

剣士「あーソレね…虫に命令ばっかりしてるからそう思われてるんだ…ちゃんと餌を用意しとかないと…」

女オーク「種が欲しいって」

剣士「だろうね…ただ全部食べられると困っちゃうな」


-------------

剣士「…この液体は君が大事に預かっていて」

女オーク「どうして私が?剣士の物でしょう?」

剣士「ほら僕は忘れ物が多いからさ…無くしちゃうといけないじゃない」

女オーク「そういう事なら…」

剣士「あとホム姉ちゃん?管理者を増やせる?」

ホムンクルス「はい…管理者は複数人居た方が安全性が向上します」

剣士「女オークも管理者にしてほしいんだ」

ホムンクルス「分かりました…」

女オーク「急にどうしたの?剣士変よ?」

ホムンクルス「大事な事なのでお伝えしておきますが未来君は危険を犯そうとしていますね?」

女オーク「まさか一人で放射能の毒を集めるつもり?そんな事させない…ダメよ」

剣士「ハハ…違うよ…女オークは僕とホム姉ちゃんがエッチしないか心配してるんだ」

女オーク「ちょっと!!」

剣士「僕とホム姉ちゃんが仲良くしてるのにやきもち焼いてるのさ…女オークも管理者になればホム姉ちゃんに命令が出来る」

女オーク「怒るわよ…」グイ

剣士「まぁそういう理由だよ…エッチしたらダメって言えば済む話…安心出来るんじゃない?」

女オーク「…」ギロリ

ホムンクルス「安全性が向上しますので良いかと思われます」

剣士「ホム姉ちゃんもこう言ってるんだし良いでしょ」

女オーク「分かったわ…剣士に勝手な事させない様に命令するわ」

ホムンクルス「手を…」スッ

女オーク「…」スッ

ホムンクルス「指紋認証チェック…アイコード認証チェック…音声識別チェック…生体識別チェック」

女オーク「これで私も命令出来るのね?」

ホムンクルス「はい」

女オーク「剣士に危険な事させたらダメ…命令よ」

ホムンクルス「分かりました…」

剣士「エッチしたらダメって命令しなくて良いの?フフ…」

女オーク「…」グイ グググ

剣士「いてててて…ゴメンよからかい過ぎた」

ホムンクルス「…」ニコ

『数日後』


シュゴーーーーー バサバサ


剣士「…なるほど座標のズレ分が偏西風の蛇行を表しているんだ」

ホムンクルス「海上では比較的等間隔で蛇行している様ですね」

剣士「このまま行けばもうすぐ無風地帯…次は貿易風探すのが大変だなぁ」

ホムンクルス「暖かい海ですので上昇気流に乗れば高さを稼ぐことが出来ますよ」

剣士「あーーーなるほど…落下で進めば良いのか」

ホムンクルス「雲が良い目印になるかと思われます」

剣士「雲の中は氷が怖くてさ…あんまり入りたく無いんだ」

ホムンクルス「大きな積乱雲は避けた方が良いでしょう」

剣士「小さい雲が発生してる場所を狙えば良いのか…よし!やってみよう」



『貿易風』


剣士「やっと貿易風に乗れた…」

女オーク「随分大回りしたわね」

剣士「狭間を迂回してるからね…どっちに進んでるか分からないのが一番困る」

ホムンクルス「狭間のある海域はほぼ海図通りの様ですね」

剣士「この情報が無いと外海は航海出来ない…すごい発見さ」

女オーク「ほぼ真円なのね…この中心の海にアダマンタイトが沈んで居るのね」

ホムンクルス「現在は海底に沈んで居るかもしれませんが私の地図情報では小さな島が存在します」

剣士「お!!?じゃぁ行けるかもしれない」

ホムンクルス「そうですね…竜宮城が有るのかも知れません」

剣士「へぇ…行って見たかったなぁ…」

女オーク「…」チラリ

ホムンクルス「妖精に案内してもらうのも良さそうですね」

剣士「そだね…」トーイメ

女オーク「…」チラ

剣士「ん?何?」

女オーク「何でも無いわ…」

剣士「さぁ!そろそろハウ・アイ島が見えて来る筈だぞ!!」

ホムンクルス「操舵は私で良いですか?」

剣士「うん!ホム姉ちゃんの方が方角分かってるよね」

ホムンクルス「お任せください…」グイ

『ハウ・アイ島』


フワフワ ドッスン


剣士「ホム姉ちゃん降りて!!皆に顔見せてあげて!!」

ホムンクルス「はい…」トコトコ


商人「ホムンクルス…無事に生体を手に入れたね…」スタ


ホムンクルス「はい…ただいまと言えば良いでしょうか…」

商人「うん…それで良い」

剣士「商人さんの機械の犬も居るよ」

機械の犬「ワン!」フリフリ

商人「ハハ君は2人になったのか…どんな感じなんだい?」

ホムンクルス「超高度AIは同期していますのでどちらも私ですよ」

商人「同期?なんだそういう事だったのか…機械の秘密が解けた」

剣士「ん?何の話?」

商人「いや良いんだ…それは今度話すよ…それより良く顔を見せて」プルプル

ホムンクルス「はい…」

商人「動いてる君を見るのは感慨深い…でももう涙は出ない」

ホムンクルス「理解しています…ずっとご一緒でしたから」


タッタッタ


盗賊「いよ~~帰って来たな?久しぶりだな?ホムンクルス!!」

ホムンクルス「私はそれほど久しぶりでは無いのですが…」

盗賊「ヌハハまぁそう言うな?良いニュースだ!!遺跡からお前の臓器が発掘されてよ」

剣士「え!!?ホム姉ちゃんが又増えるの?」

商人「ハハまだだよ…部品を全部揃えたらの話さ」

ホムンクルス「ここの遺跡にも生体が有ったのですね」

盗賊「古代のお宝がわんさか出て来る訳よ」

剣士「へぇ?スゴイなぁ…情報屋さんが忙しくなっちゃうね」

盗賊「んぁぁ…ちっと体調崩して横になってんだ…まぁそっとしといてくれ」

剣士「あぁぁそうだったのか…」

商人「こんな所で立ち話しててもアレだしキャンプに行こう」

剣士「うん…」スタ

『キャンプ』


メラメラ パチ


剣士「ビッグママ?じゃなかった…女戦士?種を持って帰って来たよ」

女戦士「危険な旅になってしまった様だな…済まなかった」ガシ

剣士「うん…でも結果オーライさ」

女王「無事に戻って来れて何よりです」

剣士「明日種植えようよ…僕手伝うよ」

女王「はい…よろこんで」

女戦士「飛空艇での長旅は疲れただろう…食事の用意があるから今晩は休むと良い」

剣士「僕よりホム姉ちゃんかな…どんぐりとキノコしか食べて無いから」

ホムンクルス「お気遣い無く…」

女戦士「ホムンクルスには色々聞きたい事もあるが…休んだ後にしようか」

剣士「なんかキャンプが静かな気がするんだけど…」

女戦士「遺跡の調査は昼間だけにしているのだ…皆疲れているだろうからな」

剣士「そっか…じゃぁ僕は皆に線虫を掛けて癒して来るよ」

女戦士「それは助かる…」

女オーク「妖精の笛も吹けるわ?」

女戦士「寝泊まりは幽霊船の方だ…食事が終わったら頼む」

『幽霊船』


ヒソヒソ

…皆には内緒にしておいて

ふむ…変性して居ったのが良く無かったのぅ

軽い目まいだと思って馬鹿にしてた…少し横になったらきっと良くなるわ

そうじゃと良いが麻痺がそう簡単に抜けるとは思わんのじゃ


スタスタ

剣士「魔女?僕帰ってきたよ…」

魔女「おお丁度良い…線虫が欲しかった所じゃ」

剣士「うん…体調悪いんだね?」

情報屋「内緒にしててね?」

剣士「分かってるよ…線虫!癒せ!」ニョロリ

魔女「これで良くなるじゃろう」

剣士「ホム姉ちゃんから聞いたんだけど狭間の中だと放射能の毒が無いらしいよ」

魔女「ほう?じゃからわらわと女戦士は毒の影響がまだ出て居らんのじゃな?」

剣士「だと思う…だから安心して?」

情報屋「ホムンクルスは無事に生体を手に入れたのね…聞きたい事が沢山有ったのよ」

剣士「今食事中さ…」

情報屋「明日で良いわ」

剣士「今晩は女オークが妖精の笛を吹いてくれるからゆっくり休めるよ…体が癒えると良いね」

魔女「それは良い…わらわも少し休みたかった所じゃ」

剣士「じゃぁ僕は他の人にも線虫を掛けて来るよ…また明日」ノシ


なんだ皆疲れているんじゃなくて

毒に侵されているのを隠してるんだ

ここでも絶滅の足音がする

思い返せば品質の良いどんぐりがなかなか無いのも

毒の影響かも知れない

『キャンプ』


メラメラ パチ


商人「ホムンクルス見て?…」ガチャガチャ ドサ

ホムンクルス「機械を分解したのですね…」

商人「これ…超高度AIユニットだよね?」

ホムンクルス「私のとは違いますがAIユニットには間違い無いですね…」モグモグ

商人「さっき超高度AIユニット同士が同期するとか言ってたよね…どういう事かな」

ホムンクルス「見て居て下さい…」


トコトコトコ


機械の犬「ワンワン!」フリフリ

ホムンクルス「私が動かしています…そちらの個体も私です…同じ知性を持って居ます」

商人「やっぱりそうか…この遺跡に散らばって居る機械達はそういう原理で動いてた…そういう事だよね」

ホムンクルス「私にその記憶が無いので確かでは無いですが恐らく商人の言って居る通りだと思われます」

商人「…つまり君が開かずの扉を閉めて中の人を閉じ込めた」

ホムンクルス「分かりません…」

商人「可能性の話だよ」

ホムンクルス「私は人間を傷つける事は出来ませんので目的は違うと思われます」

商人「じゃぁ100の人間と50の人間のどちらを救う?どちらかしか選べない」

ホムンクルス「100人を選ぶでしょう…」

商人「そういう選択をしたんだよ…50の人間はミイラになった」

ホムンクルス「…私から何を引き出したいのですか?」

商人「君はすべての機械と同期して操る事が出来るんじゃないか?」

ホムンクルス「恐らく出来るでしょう…但しそのプログラムがありません」

商人「自分でそのプログラムを作る事も出来るんじゃないかい?」

ホムンクルス「管理者からの命令があれば構築は可能です…少し時間が掛かりますが」

商人「…これで分かったよ…ウンディーネ時代が終わった理由が」


きっと君は今と同じ様な状況で生き残る人間を選択せざるを得なかったんだ

4000年前に光る隕石を封じてそれ以上被害が出ない様にした…

人間に光る隕石を使わせるのは危険だという判断だよ

その時君は機械を操ったんだ


商人「今度は何をする?君は人間を誘導するのが上手い…アナログハッキングって言ったっけ?」

ホムンクルス「私を操る管理者次第だと思います」

商人「違うよ…君は管理者をも誘導する…今の管理者は剣士君だね?」

ホムンクルス「剣士君と女オークさんです」

商人「2人か…2人に何を話した?」

ホムンクルス「私の知って居る事をお伝えしました…商人も知って居る筈ですね」

商人「ホムンクルス…」

ホムンクルス「はい…私の心を商人が一番理解しているのは分かっています…もう何も言わないで下さい」ニコ

『数日後_畑』


ガッサ ガッサ


ローグ「ひぃ…ひぃ…こっちも耕したんで種植えて良いっすよ」ヨロ

女王「まだ向こう側にもあります」マキマキ

ローグ「こりゃ牛かヘラジカ居ないと効率悪いでやんすよ…」

盗賊「文句言って無ぇで行くぞ!!」グイ

女王「種をまき終わったら私も耕すのをお手伝いします」マキマキ

剣士「芽が出るの楽しみだね!!」マキマキ

女王「この畑は成長魔法を使うのは反則ですからね?」

剣士「分かってるさ…楽しみ無くなっちゃうもんね?」

盗賊「おい剣士!!お前も耕すの手伝え!!」

剣士「よーし!!体動かすぞ!!」ダダ


どらぁぁぁぁぁ ドドドドド


盗賊「見て見ろあいつを…俺ら完全にパワー負けだ」ガッサ ガッサ

ローグ「いやぁぁぁ任せておいた方が良いんじゃないすかねぇ?」ガッサ ガッサ

剣士「畑が終わったらバーベキューやるってさ」

盗賊「お?マジか!!肉なんか無いぞ?」

剣士「サーペントの毒抜きの仕方を女オークが知ってるのさ」

ローグ「ヘビ肉のバーベキューっすね?」

盗賊「ほぅ?ヘビ肉は割と美味いんだ…サーペントが食えるとは思わなんだ」

剣士「オークはサーペントの骨も食べるんだってさ」

ローグ「骨なんか美味いんすかね?」

剣士「犬も骨を食べるよね…栄養有るんじゃない?」

盗賊「まぁ俺らは肉でオークは骨…喧嘩せんで済むから良いわなヌハハ」

ローグ「早く畑終わらせて食いに行きやしょう…あっしは腹がペコペコでやんす」

剣士「うん!!」ガッサ ガッサ

『バーベキュー』


ジュージュー


女戦士「今日は女王の計らいで芋酒が飲み放題だ…飲んで構わん」

盗賊「ひゃっほぅ!!」

剣士「僕も飲んでみる!!」

女オーク「サーペントの肉も焼けてるわ?どうぞ…」

盗賊「肉に酒!!久しぶりだな?」ガブガブ

ローグ「これ味付けどうなってんすか?全然生臭くないでやんす」モグ

女オーク「綺麗な水で一旦茹でてから焼いているの」

盗賊「ほーーオークはこれ食ってるんか?」

女オーク「奴隷に与える食料よ…オークは奴隷を大事にするから」

ローグ「オークの奴隷になるのも中々良いかも知れやせんね?遊んで暮らせそうな気がしやす」

剣士「畑仕事はやらなくて良いかもね」モグ



ワイワイ ガヤガヤ

お酒飲めない人はフルーツのジュースがあるよ!!

焼いた握り飯をもっとくれぇ

えぇ!!こんなに美味しいの?スゴイ!!



商人「皆楽しんでるね?僕も少し食べようかな」スタ

剣士「商人さん線虫する?」

商人「頼むよ…体の調子悪くなったら嫌だしね」

剣士「線虫!」ニョロリ

盗賊「あんま食い過ぎんなよ?ヘドロの掃除は御免だ」

商人「今度は食べ過ぎないさ…」モグ

剣士「…」---さて…そろそろ時間だ---

--------------


アブラカタブラ…


剣士「幻惑魔法!」

盗賊「何やってんだお前?飲んでるか?」ヒック

剣士「うん…ねぇ盗賊さん…情報屋さんと魔女も呼んで来てよ」

盗賊「おぉそうだな」

剣士「情報屋さんの座る椅子は用意しておくからさ…横になりっ放しは良くないよね?」

盗賊「分かった背負って来るわ…」ヨタヨタ

『黄昏時』


ワイワイ ガヤガヤ


ホムンクルス「…古代ではあの海から太陽が昇って来ると言われて居ました」

剣士「今は太陽が沈むんだね」

ホムンクルス「夕日が綺麗ですね…」

剣士「黄昏かぁ…」


ノソノソ


魔女「むむ?何じゃろうのぅ?揺らぎが見えた気がするが…」

剣士「あ!!魔女やっと出て来たね…情報屋さんの調子はどう?」

魔女「少しは軽快した様じゃ…主のお陰じゃろうな?」

盗賊「連れて来たぜ?何か食い物あるか?」

剣士「スープがあるよ…情報屋さんどうする?」

情報屋「私も少しお酒が飲みたいわ?」

剣士「体に障らない様にね?」

情報屋「フフ剣士君は心配しなくても良いの…」

盗賊「椅子になら掛けられるな?」ヨッコラ

情報屋「ふぅ…久しぶりの風…気持ち良い」

剣士「はい!!お酒持って来たよ」スタタ

情報屋「ありがとう…」クィ ゴクリ

盗賊「今日は飲み放題だとよ?まぁお前は程ほどにな?」グビグビ

情報屋「ところで遺跡の出土品はどうなっているの?」

盗賊「なんだいきなり仕事の話かよ…」

情報屋「私の趣味よ」

ローグ「幽霊船の荷室に積んであるっす…石板なんすが内容が全然分からんもんで」

情報屋「船に有ったのね…明日見て見るわ」

ローグ「そーっすね…今晩は飲んで食って楽しみやしょう」

情報屋「そうね…すこしお腹も減ってるし何か食べようかな」

ローグ「ヘビ肉が柔らかくて美味いっすよ…」

情報屋「じゃぁそれで」



--------------

女戦士「ん?剣士どうした?」

剣士「ビッグママはお酒飲まないの?」

女戦士「味見だけなら良いが飲むと寝てしまうのでな…」

剣士「そっか…ねぇ抱っこしても良い?」

女戦士「構わんが…どうした?」

剣士「何でも無いよ…」ギュゥ

女戦士「お前…何か隠しているだろう?」

剣士「聞いてもどうせ覚えて無いよ」

女戦士「どういう事だ?」

剣士「なんでも無いって…ビッグママの匂い好きなんだ」クンクン

女戦士「気持ち悪い…よせ」

剣士「…」ジーー

女戦士「お前ももう大人だ…間近で見つめるのは止めろ」

剣士「そうだね…大人の距離があるもんね」

女戦士「しかしなんだ…どうも眠気がするな…」

剣士「うん…休むと良いさ…ビッグママは一番寝ていないんだから」

女戦士「お前何かしたな?」

剣士「悪い事はして居ないよ…おやすみなさい」


ダダッ


女オーク「剣士!!何かしたわね?」フラ

剣士「あ…今君の所に行こうと思ってたんだ」

女オーク「何をするつもりなの?」

剣士「君には正直に話して置くよ…ただ目を覚ましたら何も覚えていない」

女オーク「まさかあなた…一人で放射能を集める気ね?ダメよ…許さない」

剣士「そんな話したく無いよ…教えてあげる…僕はね…君を守る為に次元を超えて来たんだ」

女オーク「何の話?」

剣士「でもね…世界の本質を見て居なかった…このままじゃ僕の大事な人皆失う事に気付いた」

女オーク「話が呑み込めない…意味が分からないわ」

剣士「ゴメンね言葉が足りなくて」

女オーク「兎に角一人で行くのは許さないから」グイ

剣士「大丈夫…僕は変性魔法で体を鉄に変える事が出来るんだ…放射能を集めても液体になんかならないよ…」

女戦士「剣士!!やはりお前私達に何かしただろう!」フラフラ

剣士「保険だよ…僕が戻って来なくても皆悲しまなくて良いように幻術を掛けたのさ」

女戦士「戻って来ないとはどういう事だ?」

女オーク「剣士は祈りの指輪で放射能を集めて量子転移という魔法で放射能を消し去ろうとしているの」

女戦士「量子転移を使ってはダメだという事は知って居るだろう!」

剣士「だから保険を掛けたのさ…目を覚ましたら僕の事を覚えてる人は居ないよ」

女戦士「何!?それで最後に私に会いに来たか!!ゆるさん!!お前を守ると妹に誓ったのだ」フラ

剣士「大丈夫…きっと上手く行くさ…僕には祈りの指輪がある」

女戦士「女オーク!剣士を放すな…」ヨロヨロ

剣士「ゴメンもう決めた事なんだ…これ以上苦しむ人はもう見たくない…僕がやるしかない」

女オーク「ダメ!!剣士は私の奴隷…放さないから」フラリ

剣士「君は僕の奴隷さ…きっと帰って来るから待ってて?戻ったら幻術を解いてあげる」

女戦士「行かせるな…」ズルズル

女オーク「剣士…行かないで…お願い…」フラ ドタリ

剣士「…ごめんよ」スタ

『夜の海岸』


ザザー ザザー


剣士「皆寝たか…」スタスタ

ホムンクルス「私は寝ていません…女オークさんの命令を遂行します」

剣士「ホム姉ちゃんには幻惑が効かないのか…ミスったなぁ」

ホムンクルス「どうすれば留まりますか?」

剣士「罠魔法!」ザワザワ シュルリ

ホムンクルス「留まる気は無いという事ですね…」グググ

剣士「大丈夫だよ上手く行くから」

ホムンクルス「…」

剣士「ねぇホム姉ちゃんに命令する」

ホムンクルス「何でしょう?」

剣士「もし僕が量子転移に失敗して戻って来なかった場合…僕が居た事は誰にも話さない事」

ホムンクルス「…」

剣士「それから放射能が無くなったら女オークと一緒に命の泉まで行って例の液体を使う事」

ホムンクルス「…」

剣士「もう一つ…妖精の笛で世界中の人を癒す事」

ホムンクルス「もう戻って来ない事を覚悟しているのですね…」

剣士「賭けだよ…祈りの指輪が僕を守ってくれれば何事も無く戻って来るさ…僕だって皆とさよならなんかしたくない」

ホムンクルス「命令は承知しました…でも…」

剣士「そうだ…もう一つ命令がある…ホム姉ちゃんだけは僕が居た事を覚えて置いて?」

ホムンクルス「え?…大事な記憶として保存しておきます」

剣士「じゃぁ行くね」


ホムンクルス「待ってください…」グググ

剣士「ホム姉ちゃんじゃそのツタは振り切れない…余計な体力は使わない方が良いよ」

ホムンクルス「剣士君に謝らなければいけない事が有るのです…」

剣士「ん?何?」

ホムンクルス「私は剣士君を誘導していました…放射能を集めて消し去るのは危険が伴うのを承知で剣士君に知恵を与えたのです…」

剣士「ハハそんな事分かってたさ…どうせ僕はそこに辿り着いたよ」

ホムンクルス「ごめ…」

剣士「ホム姉ちゃんそれ以上言っちゃダメだよ…管理者を守る立場から逸れてしまうでしょ?」

ホムンクルス「…」

剣士「僕が選んだ危険なのさ…何も言わないで見て居てよ」

ホムンクルス「私は女オークさんの命令を遂行する義務があります…ですから止めなければなりません」グググ

剣士「さっさと終わらせて戻って来るからさ…心配しないで?」

ホムンクルス「…」グググ ジタバタ

剣士「姿が見えなくなったらもう探せないよね?行って来るよ…ハイディング」スゥ

ホムンクルス「ぁぁぁ…」


さーて!!どこでやろっかなー

離れてた方が良いだろうから…でっかい建造物の所が良いかな


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その夜

世界中に散らばった放射能は

オーロラの様に空を掛け

ある一点に集まり

程なくして消え去った

そして何事も無かったかのように

静寂が残った


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『暁の空と海』


ザザー ザザー


ホムンクルス「…」シュン

女戦士「ホムンクルス…こんな所で何故ツタに絡まって居るのだ?」ガサガサ

ホムンクルス「皆さん目を覚まされましたか?」

女戦士「昨夜は皆飲み過ぎた様だ…」

ホムンクルス「そうですか…」

女戦士「今日は特別空が暁色に染まっているな?…空を見て居たのか?」

ホムンクルス「はい…待ち人を待って居ました」

女戦士「待ち人?誰を待って居る?」

ホムンクルス「暁の使徒…」

女戦士「ほう?誰なのだ?」

ホムンクルス「光を運ぶ者の事です」

女戦士「フフ日の出を待って居たのか…そうだな私も待つとしよう」


ドスドス


女オーク「ホムンクルス!あなた起きて居たのね?皆寝てしまって何が起きたのか分からないの」

女戦士「そうだな…何か知らないのか?」

ホムンクルス「皆さんお休みになられて…」ツツーーー

女戦士「涙?」

女オーク「どうしたの?」

ホムンクルス「何でもありません…お気になさらず」

女戦士「ふむ…どうも気になる夜だったが…」

女オーク「あれ?私も…どうして涙が」ポロポロ

ホムンクルス「日の出です…未来が来ました」ツツーー

女オーク「未来…」ポロポロ



ザザー ザザー



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 未来へ…編

   完

『次元の狭間』


…まさか放射能で祈りの指輪がチリになるとは思わなかった

鉄の体もスポンジの様にグズグズになるなんて…

でも量子転移で集めた放射能を消し去るのは成功した

きっと新しい未来が来る筈…僕もそこに居たかったなぁ…


僕「お~い!!誰か居ないかい?」

僕「…」

僕「……」トボトボ


パパがどうして記憶を失ったのか理解できる

この何も無い空間で気が遠くなる時間を過ごしていると

遠くなった記憶からどんどん無くなって行く

この空間で量子転移は意味が無い

自力で記憶の向こうに行く事が出来ない

だれか助けて…

『記憶』


僕「あれ?…ここは…」

僕「パパ?…ここどこ?」

僕「魔女?…何処に居るの?」

僕「あれ?記憶が…」

僕「僕何してたんだっけ…」

僕「誰も居ないの?」


---こっち---


僕「誰?」


---目を覚まして---


僕「ホム姉ちゃん?」


---僕だよ---


僕「僕?」


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どうしてこの記憶は何度も見るんだろう…

始めて次元を超えた時だったからなのか…



『声』


未来…

目を覚ませ未来…


僕「ハッ…パパの声!!何処!?見えないよ…何処?」


『戦場』


ドガーーーーン パラパラ


剣士「未来…目を覚ませ未来…」

魔女「主はなんちゅう危険な事をするんじゃ…」

剣士「回復魔法を…」フラ

魔女「わらわは今メテオスウォームを使っている最中じゃ…」

剣士「未来…」

魔女「まだ調和しとらぬ…何回次元を入れ替えたのじゃ?」

剣士「一番良い次元を選択した…何回かは覚えて居ない」

魔女「いかんのう…傷が深い」

剣士「うぅぅ…」ダラダラ


子供「うわぁぁぁぁぁ!!ここはどこだ!?」ゾワワワワ


魔女「混乱して居るのぅ…気をしっかり持てぃ!」

子供「僕は今どの次元に居る!!」

魔女「むむ…主は何処から来たのじゃ?」

子供「はぁはぁ…」キョロ

剣士「未来…回復魔法をくれ」シュタタ シュタタ

子供「線虫!癒せ!」ザワザワ ニョロリ

剣士「何!?」

魔女「未来は次元を迷った様じゃ…主は何者じゃ?何故幻術を使い居る?」

子供「僕は未来の次元からこの次元に戻った…」


魔女「啓示を見たのじゃな?」

剣士「この魔法は一体…」

子供「パパ!!僕を認めて!!僕と調和すれば僕の記憶は維持される…」

剣士「お前は未来なのか?」

子供「そうだよ!大人になった僕だ…それを認めて」

魔女「剣士や…3体ゴーレムが居る」

剣士「隕石でまとめて倒して」

魔女「わらわの時間が狂って居る…あと何分で落ちて来るか分からんのじゃ」

剣士「目測でなんとかして」シュタタ

魔女「空を見せよ!」

剣士「未来!自分で走れ」

子供「分かった…」ピョン クルクル シュタ

魔女「しかしまぁ量子転移をこうも軽々使うとはのぅ…迷い人まで来る始末…」

剣士「分かってる」

魔女「しかし…時間がどれぐらいズレてしもうたのか…」

子供「星が見える!!尾を引いてる」

魔女「あれじゃな?よし捕らえた…目視じゃで精度が悪い…着弾に備えるのじゃ」

剣士「次は下まで飛び降りる…」

魔女「うむ…それで良い…」

子供「星が近づいて来る!!僕が変性で質量を変える…魔女はそのまま落として」

魔女「なんじゃと!?」

剣士「未来!!飛べ!!」ピョン

子供「変性魔法!」シュン


シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン

ドガーーーーーーン!! パラパラ


『木の洞』


線虫!線虫!線虫!癒せ!ニョロニョロ…


魔女「ぅぅぅ…ちぃと隕石が大きすぎたな」

子供「直ぐに傷が塞がるからもう少し待って…」

剣士「回復魔法は使わないのか?」

子供「老化しちゃうから使わない様にしてる」

魔女「うむその通りじゃな…乱用は控えるべきじゃ…しかし本真に魔術の基礎は出来ておるな」

子供「師匠は魔女だったんだよ…教えは一通り知ってる」

魔女「ううむ…これ如何に…」

子供「始めに言っておく…10年後に人類は絶滅の危機なんだ…これからどんどん人口が減るんだよ」

魔女「剣士や…どうするのじゃ?次元は主が握って居るのじゃぞ?」

子供「僕を認めて?絶滅を防ぎたい…僕の記憶がまだ無事なうちに全部話したい」

魔女「ちぃと怪我が癒えるまで休憩じゃ…話を聞かせよ」

子供「魔王はね…ドリアードの中で復活したアダムを使って沢山の光る隕石を落としてしまうんだ…」


それは今から何日か後に起こる

きっかけは虫の大群…ダイダラボッチがドリアードを襲う時

ドリアードの中に復活したアダムは自衛の為に光る隕石を落とすんだ

その結果放射能という毒が世界中に散らばってしまう

その毒によって人類はあっという間に減って行く…


魔女「ふむ…わらわ達の目的とほぼ一致じゃな…つまり壺の中身を取り返せば良いのじゃろう?」

子供「僕が居た次元では取り返せて居なかった…そもそもそれが悪循環の始まりだとも思う」

剣士「このまま虫を追って北へ向かえば良いのか?」

子供「急いだ方が良い…他にも沢山敵が居るんだ」

魔女「他にもとは?」

子供「ホム姉ちゃんが死んだりアサシンさんの仲間が死んだり色んな事が起こる…その前に止めたい」

剣士「今はまだ魔女を動かせない…落ち着いてゆっくり話せ」

子供「うん…」


カクカク シカジカ

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--------------

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魔女「黒の同胞の黒幕は公爵じゃと言うか…」

子供「知って居るの?」

魔女「シン・リーンの精霊の像を奉る祭事で何度も見て居るわい…セントラルとのパイプ役じゃ」

子供「公爵は変化の杖を持ってるんだ…多分妖精の笛も持ってる」

魔女「なるほどのぅ…ゴーレムが動いて居るのはそれが理由じゃったか」

子供「公爵を自由にさせてると次から次へと手を変えて来る」

剣士「やる事が煩雑過ぎる…まずは壺の中身の行方を追う」

子供「壺の中身は魔石になってもうドリアードの中だよ」

魔女「んん?ではわらわ達が居って居るのは何じゃ?」

子供「囮なんだよ…魔王を封じた魔石でアダムを復活させるための時間稼ぎなんだ…ゴーレムも時間稼ぎ」

剣士「構わずドリアードを目指せと?」

子供「そうだよ…そこに魔石がある」

魔女「ドリアードの場所は知って居るのか?」

子供「僕一回行った…狭間に隠れてるから虫を使って案内出来る」

魔女「剣士どうするのじゃ?」

剣士「未来を信じて直ぐにドリアードへ向かおう…森を出て飛空艇を呼ぶ」



『1時間後』


ザワザワ ニョロニョロ


子供「命令する…森の中のすべての虫達に伝えて…ドリアードはもう敵じゃない…命を運ぶ仕事に戻って」

魔女「未来や…主は虫使いになったのじゃな?」

子供「そうだよ」

魔女「主の言葉を聞いて関心したのじゃ…虫は命を運ぶ為に居る…それを理解して居る主を見てわらわは嬉しいぞよ?」

子供「気付くのに何十年もかかったさ」

魔女「時空の修行も終えた様じゃな」

子供「うん…だから寝てしまうと今の記憶がどんどん無くなって行くのも知ってるんだ」

魔女「ふむ調和するまで眠らぬ事じゃな…さすれば大事な記憶は残るであろう」

子供「どの記憶が無くなってるのか自分で気付かないのが怖いよ」

魔女「そうじゃろうのぅ…」

剣士「さぁそろそろ森を出よう…魔女!背に乗って休んで」グイ

『森の外れ』


シュタタ シュタタ


魔女「…聞こえるか?返事をせい!!」ザザーザザザ

剣士「まだ会話出来ないか…」


”魔女!!”


魔女「おぉ剣士ちと止まれい!!」ザザザ


”何処に居んの?”

”森の外れじゃ…良く分からぬ”

”無事ならまぁ良いや…こっちに向かってんだね?”

”予定変更じゃ…ドリアードとやらに行かねばならぬ…魔王はその中じゃ”

”あーーそれなんだけどさ…魔王はもう居なくなったらしいよ?”

”詳しい話は後じゃ…森の外れを北上する故飛空艇で迎えに来るのじゃ”

”えええ?マジ?どっか場所決めないと見つけんのムリだって”

”では森の外れにハズレ町があったじゃろう…一先ずそこを目指すでなんとか見つけるのじゃ”

”おっけ!!どんくらいで来れる?”

”現在地が分からぬ故何とも言えぬ”

”まぁ良いや…そっち向かうザザザ”

”頼むぞよ”

”ザーーーーザザザ”

『星の観測所』


女海賊「…ちっとハズレ村まで迎えに行って来るわ!ローグ!!あんたも一緒に来て」

ローグ「へい…あいやぁ…でも頭を放って置く訳には…」

女海賊「うっさいなぁ…お姉の事は情報屋と商人に任せて置けば良いよ」

情報屋「良いわ?心配しないで行って来て」

アサシン「私達はシャ・バクダ遺跡の方へ避難民誘導を進めておく」

女海賊「おけおけ!戻るときはそっち行くわ」

アサシン「ゴーレムが他にも居るかもしれないからくれぐれも気を付けるのだぞ?」

女海賊「分かってるって!!ローグ!!行くよ」グイ

ローグ「あららら…情報屋さん…頭をお願いしやす」

情報屋「任せて」


『飛空艇の前』


時の王「シルフ!!私を忘れたのか?」

ホムンクルス「私は精霊シルフではありません…手を放して下さい」

時の王「私の目に狂いは無い…200年お前を想い続けて居たのだ」

ホムンクルス「私の名はホムンクルスです」

時の王「何故だ?また記憶を失ったのか?何故私の下へ戻らない?」

ホムンクルス「精霊シルフは200年前に亡くなりました」

時の王「いやお前はシルフに間違いない…その髪…その顔…その声を私は忘れて居ない…思い出してくれ」


タッタッタ


女海賊「はいはい!どいたどいたぁ…」グイ

ホムンクルス「女海賊さん…この方が私に纏わりついて…」

女海賊「ああっ!!時の王のおっさん!!」

時の王「お前は…いつか私の屋敷に来た蒼眼の者…シルフをどうした?」

女海賊「あのさぁホムちゃんは精霊シルフじゃないの!どっか連れて行く気?」

時の王「シルフには私が必要なのだ…私が守る」

女海賊「いやだからさぁ…精霊シルフじゃないって!!ホムちゃんはホムちゃん!!分かる?」

時の王「シルフ…答えてくれ…記憶をどうした?」

ホムンクルス「私は逃げたりしませんので手を放して貰ってもよろしいでしょうか?」

時の王「…」スッ

女海賊「あのさぁ…とりあえず観測所の中でやって貰って良い?ちっと飛空艇で用事あんだよ」

ホムンクルス「女海賊さん…この方は信頼出来るのでしょうか?」

女海賊「ホムちゃん!そのおっさんは悪い人じゃないから観測所に案内してあげて?」

ホムンクルス「はい…わかりました」

ローグ「良いんすか?さらわれたりしやせんかね?」

女海賊「ホムちゃんの言う事ならなんでも聞くよこのおっさんは…ホムちゃん任せるね」

ホムンクルス「では観測所へご案内します…どうぞこちらへ」

時の王「…私の話を聞くと言うのだな?」ズイ

ホムンクルス「中でごゆっくりと…」テクテク

女海賊「ほんじゃローグ乗って!!行くよ!!」ダダ


フワリ フワフワ

『森の切れ目上空』


ビョーーーゥ バサバサ


女海賊「どう?見当たんない?」

ローグ「ダメっすねぇ…木の陰に入ってるのは見逃してるかも知れんすねぇ…」

女海賊「てかハイディングで移動してんだから見つかる訳無いよね」

ローグ「もう一隊…貴族のソリの集団が見えるんすがどうしやす?」

女海賊「あん中に混ざってるとは思えないんだよね…どうせハズレ町経由でシャ・バクダ方面行くから一回ハズレ町に降りよっか」

ローグ「もう日が暮れるんでやっぱ町で待ってた方が良さそうでやんすよ」

女海賊「てか宿屋取れんのかなぁ…避難民でごった返してる気がする」

ローグ「盗賊ギルドの伝手を使いやしょう…確かシャ・バクダの宿屋の店主がハズレ町に移動してる筈っす」

女海賊「お?マジで?」

ローグ「アサシンさんが探してるんすよ…ついでなんで連絡して行きやしょう」

女海賊「宿屋の娘も居っかな?私の憧れだったんだよ」

ローグ「一緒だと良いっすね」

女海賊「おけおけ!宿屋行こう宿屋!!」



『ハズレ町_養羊場』


メェェェ メエメエ


ローグ「…ダメっすね宿屋一杯で盗賊ギルドの伝手も使えんかったでやんす」

女海賊「なんだよ!!会うの楽しみにしてたのに…なんでさ!?」

ローグ「例の宿屋の店主なんすが…何日か前にセントラル衛兵に捕らえられたらしいんすよ」

女海賊「罪状は?」

ローグ「誰も知らんらしいっすわ…行方不明でやんす」

女海賊「んぁぁぁぁ…まぁ良いや!寝るのは飛空艇で良いとして…外歩けそう?」

ローグ「あっしら夫婦って言う事で行きやしょうか?衛兵が多いもんで…」

女海賊「はぁ!?あんたじゃ私の旦那に吊り合わ無ぇって!!」

ローグ「じゃ何が良いっすかね…」

女海賊「奴隷に決まってんじゃん!!何言ってんだよスカポンタン!」

ローグ「奴隷を連れまわす美女ってのもなんか怪しくないっすか?」

女海賊「ん?…もっかい言ってみ?」

ローグ「ですから美女が奴隷連れまわすのは変なんでやんすよ…」ニヤリ

女海賊「ふむ…それもそうだ」

ローグ「こういうのはどうっすかね?あっしが奴隷商で奴隷の美女を連れまわしてるって事で…」フフフフ

女海賊「しゃーねぇなぁ…それで行くかぁ」

ローグ「フフフフハハハハ…それじゃ行きやしょうか…決してバレない様に頼んますぜ?」ギラリ

女海賊「何言ってんだよ早く行くよ!!」ダダ

『ハズレ町』


ガヤガヤ ヒソヒソ

商隊はここで引き返すんだとよ…

シャ・バクダ方面は大型の魔物が出るから行けるのは軍関係だけらしい

避難民はどこで寝泊まりを…

兵舎の牢を解放してるそうだ…食事の配給もある


衛兵「止まれぇ!!お前等何処から来た?」

ローグ「北の方からっすね…」

衛兵「そっちの女は!?」

ローグ「あっしは奴隷商なんすよ…商品なんでやんす」

衛兵「顔を見せろ」

女海賊「美女の顔見たいの?」ファサ フリフリ ボヨヨーン

衛兵「…なんだこの派手な女は…」

ローグ「いやいやですから貴族相手の商品なもんで」

衛兵「ちぃぃこの大変な時に紛らわしい…それで北の方はどうなって居る」ジロ

ローグ「エルフが何かと戦っている様でやんすよ…巻き込まれそうなんで避難して来たんす」

衛兵「ふむ…避難民は兵舎に入れる事になっているんだがお前は貴族相手にまだ商売したいのか?」

ローグ「そーっすね…食事代も馬鹿にならんので早い所売っちまいたいんすよ」

衛兵「通れ!!騒ぎは起こすな!?」

ローグ「へいへい…」スタ

女海賊「ベロベロバー!!」ベロベロ

ローグ「ちょちょちょ…余計な事せんでくれやんす」グイ

衛兵「奴隷にはしっかり手枷を付けておけ!!早く行け!!」

『広場』


オエッ ブモモー ガフガフ


ローグ「ヘラジカのソリで溢れて居やすね…どうしやす?」

女海賊「剣士達探すに決まってんじゃん」

ローグ「探すって言ってもすね…ええと…貝殻通じないんすか?」

女海賊「もしもーーーし!!応答しろこのクソ魔女!!」

ローグ「…」

女海賊「ずっと狭間に入りっ放しだね…とりあえず何か情報集めよっか」

ローグ「あっしらの恰好が貴族じゃ無いもんで酒場とか行き辛いでやんすねぇ…」

女海賊「あんたが奴隷商で美女連れまわしてる設定じゃん?それで良いじゃん」

ローグ「姉さん大人しく出来やすか?ベロベロバーとかちっと勘弁して欲しいっす」

女海賊「うっさいなぁ…美女らしくしてりゃ良いんだろ?オホホホホ…」

ローグ「あいたたたた…あのですね…」


スタスタ


女「捕らえられた2人は?」

男「尻尾が生えているから間違いないかと」

女「やっと白狼の尻尾を掴まえたわね…それで今何処に?」

男「シャ・バクダ砦に移送中だ」

女「依頼は捕獲じゃないの…どうにかして殺すわよ」


ローグ「しぃぃぃぃ…姉さん顔を隠して下せぇ」

女海賊「今の誰?」

ローグ「盗賊ギルドで有名な美人でやんす…姉さん知りやせんかね?女狐のお銀」

女海賊「知らーん…てか今の話さ…白狼の尻尾って何さ」

ローグ「まさか剣士さん達が掴まるなんてことは無いと思うんすが…一応確認はした方が良さそうっすね」

女海賊「シャ・バクダまでソリだと2日掛かんない…追いつけないかも」

ローグ「ちっと待って下せぇ…シャ・バクダ砦はエルフとドラゴンに攻め立てられてて入れやせんぜ?」

女海賊「てことはその手前で止まってる?」

ローグ「その可能性が高そうでやんす…まだこっちにはシャ・バクダの惨状がちゃんと伝わって居ないんすよ」

女海賊「おっし!追いかけるよ」ダダ

『町の路地』


タッタッタ


隠者「贄が足りぬ…贄が…」ズルズル

女海賊「あーゴメンゴメン通るよ!!」タッタッタ

ローグ「済まんですー急いでるんで」タッタ

隠者「…」ブツブツ


女海賊「え!?」ビクン

ローグ「どわ!!急に止まらんで下せぇ…」

女海賊「ちょ…あんた…今何って言った?」クルリ

隠者「ふぁひっぃぃぃナハハハハハハ…もじゃもじゃ」ブツブツ

女海賊「あんた誰!?フード脱いで顔見せな!!」チャキリ

ローグ「姉さんマズイっす…人が見てるでやんす」グイ

女海賊「うっさい黙れ!!」ターン

ローグ「あぶっ…」タジ

隠者「私はぁぁぁぁ!!不死身なの…でし!!」ガバ

女海賊「片足の領事…なんで此処に居んの!?あんたが魔王だね!!ぶっ殺す!!」ギリ


ターン ターン ターン


隠者「ぶひゃぁぁぁ…」ドタリ バタバタ

衛兵「お前達!!そこで何をしている!!」ピーーーーーー

ローグ「やばいっす姉さん…ハイディングして逃げやしょう」

女海賊「はぁはぁ…こいつのせいでどんだけ人が苦しんで…」


ダダダ ブン カキーン


ローグ「危無ぇでやんす…」グググ

衛兵「お前達!!民に手を出して只で住むと思うな!?」スチャ

ローグ「ちっと落ち着いて下せぇ…こっちにも色々事情がありやしてね?」ババッ

衛兵「ぐぁ!!砂だと…」

ローグ「姉さん!!逃げやしょう!!」グイ

女海賊「くぅぅ…」ギリリ

ローグ「ハイディング!」スゥ

女海賊「ハイディング!」スゥ

衛兵「ど…どこだ!!何処に行った!!」キョロ


ローグ「姉さん付いて来ていやすね?もうハズレ町で行動出来んでやんす」

女海賊「分かってんよ!!セントラル領じゃどうせお尋ね者だよ!!」

ローグ「とりあえず飛空艇で白狼の尻尾追いやしょう…」

女海賊「分かってるって!!私に指図しないで…ついて来て!!」

ローグ「へい…」ダダダ

『飛空艇』


ビョーーーーウ バサバサ


女海賊「ローグ…あんたも見たよね?領事の頭撃ったのにまだ死んで無かった…」

ローグ「姉さんが本当に人を撃つ所を始めて見たでやんすよ…ちっとショックっす」

女海賊「あんたにはアレが人に見えたの?あいつは魔王だよ」

ローグ「ただの隠者に見えたんすが…」

女海賊「そっかあんた領事の顔知らないのか…」

ローグ「話では聞いて居やしたがさっきの隠者で間違い無いんすね?」

女海賊「間違いないよ…頭打たれて死なないっておかしいでしょ!」

ローグ「なんでそんな事になってるんすかね?」

女海賊「私が聞きたいよ!あいつはシン・リーンでブタにされた筈なんだ…なんで此処に居るのか訳分かんない」

ローグ「魔女さんも急所は別の場所に変えてるらしいんすが…」

女海賊「え!?魔女と同じ事やってんの?…でかあいつ魔術師じゃ無いし」

ローグ「黒の同胞団にまだ魔術師が居るって事じゃ無いっすかね?」

女海賊「…本当!しぶとい!!」

ローグ「ほんでどうしやす?ハズレ町にはもう行けやせんし…」

女海賊「とりあえず貝殻の連絡待ち…まず白狼の尻尾を確かめなきゃ」

『シャ・バクダ郊外の村』


サクサク サクサク


ローグ「真夜中に村うろつくのマズくないっすか?」

女海賊「どっか隠れる所探して」

ローグ「衛兵は見当たらんので良いんすが…なーんか気味の悪い村でやんす」


ワオーーーーン 


女海賊「ウルフの遠吠え…」

ローグ「割と近い所で吠えてるんで気を付けた方が良いっすね…兎に角建屋に入らんと…」

女海賊「これやっぱ剣士と未来が捕まってるのかも…」

ローグ「2人って言ってやしたよね?魔女さん何処行っちゃったんすか?」

女海賊「魔女は何にでも変身出来るじゃん…なんか上手い事やってるんだって」

ローグ「そんな簡単に掴まるとは思えんのですが…」

女海賊「馬宿発見!…馬居なかったらあの中使える」

ローグ「ちっと見てきやす…」スタタ

『馬小屋』


ガッサ ガッサ


女海賊「おっけ!飼葉の中で隠れる」ゴソゴソ

ローグ「寒さ凌げる場所があって良かったでやんす」ゴソゴソ

女海賊「ちっと待って…えーと砂鉄と木炭の粉…ほんで塩と水…」ゴシゴシ

ローグ「爆弾作ってるんすか?」

女海賊「逆!爆弾ばらして懐炉を作ってんの…ほい一個!」ポイ

ローグ「熱っつ!!」

女海賊「その袋を冷まさない様に温めて」ゴシゴシ

ローグ「これ熱いっす…」

女海賊「飼葉かなんかで包めば良いじゃん!頭使えよ!!」

ローグ「ほぇぇぇ…姉さん神っすね…こんな方法で暖が取れるなんて…」

女海賊「あのさ…どうせ褒めるなら女神って言ってくんない?」

ローグ「超女神で良いっすか?」

女海賊「…まぁ良いや…ほんでどうすっかなぁ…このまま朝まで待った方が良さげ?」

ローグ「ヘラジカのソリが一台あったんで多分どっかの建屋に連れて行かれてると思うんすよ…」

女海賊「まぁ動きあるまで待つしか無いかぁ…」

ローグ「あっしが見張ってるんでちっと休んで下せぇ」

女海賊「うんそうする…何かあったら起こして」グゥ スピー


アオーーーーーン ワオーーーーン

『翌日』


ザワザワ

またやられたべぇ…これで家畜は全滅だやな

死骸は触るな!焼く必要がある

ほんなワシら何を食えば良いっちゅうんじゃ

ハズレ町で配給がある…移送してやるから一旦避難だ


女海賊「昨夜のウルフの遠吠えはコレかぁ…」

ローグ「いやちっとおかしいでやんす…家畜を食わずに殺してるだけでやんす」

女海賊「ウルフ使って何かやってんのかな…」

ローグ「とりあえず白狼の尻尾って奴を探しやしょう…そんな大きな村じゃ無いんで直ぐに見つかりやす」

女海賊「建屋一つづつ回るつもり?」

ローグ「他に何か方法ありやすか?」

女海賊「例のソリを見張ってりゃ良くね?…どの建屋に出入りしてるとかさぁ」

ローグ「それもそーっすね…下手に嗅ぎまわるよしか自然すね」

女海賊「腹も減ってんのさ…何か売って無いかな」

ローグ「じゃぁ少し歩きやすか」

『村道』


スタスタ


村人「あんたら避難民かね?」

女海賊「まぁね…お腹空いてんだけどさぁ…この村で何か売って無いかな?」

村人「みーんな腹空かせちょるんよ…雪食って凌いどるんやぁ」

ローグ「ヘラジカのソリが一台入って来て居やすよね?何か積んで無いんすかね?」

村人「あれは兵隊さんが乗って来たソリだもんで荷が何なのかわしらは知らんのですわ」

ローグ「兵隊さんは何処行ったか知らんでやんすか?」

村人「村長さんの家じゃ…大きな納屋のある家じゃが兵隊さんが近寄らせてくれんで?」

女海賊「納屋ね…」

村人「あんたそのなりは泥棒かいね?悪い事は言わんで村長さんには関わらん事じゃ」

女海賊「え!?私泥棒に見える?」

村人「そんな派手な格好したおなごは大体泥棒や…村長さんはごっつう悪い人やけ気ぃ付けや」

ローグ「あっしら泥棒じゃ無いんで大丈夫でやんす」

村人「ほうか?ならええ…まぁ村長さんには関わらん様にな?」


--------------


女海賊「悪い人ってどゆ事?」

ローグ「あっしらあんまり他の冒険者と関り持って無いんすが…この辺りは昔エルフ狩りのメッカなんすよ」

女海賊「ほーん…ほんじゃそういう悪党が一杯居る訳ね」

ローグ「ハズレ町も同じっすね…ガチ悪人が仕切ってたでやんす」

女海賊「そういや女エルフもハズレ町で捕らえられてたなぁ…」

ローグ「強烈な麻痺毒と麻薬を使うんすよ…美女は狙われるかも知れんですぜ?」

女海賊「やっば!!私めっちゃ狙われるじゃん」ゴソゴソ ファサ

ローグ「ちっと派手な格好控えて顔も隠しといた方が良いでやんす」

女海賊「どう?こんな感じで…」

ローグ「なんて言うんすかねぇ…染み出てるんすよねぇ…只者じゃ無い感じが…」

女海賊「参ったな…隠し切れない」

ローグ「馬小屋で隠れていて貰えやせんか?あっしが行って調べてきやす」ヌフフフ

女海賊「おっけ!!」

『馬小屋』


ギコギコ ポコン!!


女海賊「よしよし穴が開いた…こっから望遠鏡で覗けば…」カチャカチャ

女海賊「くっそ!!あの木邪魔!!」

女海賊「切り倒しに行くと目立っちゃうなぁ…もう!!インドラの銃で燃やせっかなぁ…」ガチャコン

女海賊「燃えろ!!」シュン

女海賊「一発じゃダメか…」ガチャコン

女海賊「もういっちょ!!」シュン

女海賊「ぬぁぁぁぁ…暇だし燃えるまでやるかぁ…」ブツブツ


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『村長の家の前』


傭兵「誰だてめぇ…」ギロ

ローグ「あーいやいやシャ・バクダから避難して来たんすがこの村の事何も知らなくてでやんすね…」

傭兵「ここがどういう所だか知らんで来たと言うのか?帰りやがれ…」スラーン

ローグ「あわわわ…済まんです」

傭兵「んん?煙…」

ローグ「ええ!?なんすか?」

傭兵「村の広場で煙が出ている…お前が消して来い」

ローグ「えええええ!?あっしがですか?」

傭兵「錆びになりてぇのか!!?早く行け!!」ブン ブン

ローグ「こりゃ失礼しやしたぁぁ」スタコラ


--------------


ローグ「…」---見つかるとエライ事になりそうでやんす---

ローグ「ハイディング!」スゥ

ローグ「見つからなきゃ良い訳で…こんな三下なんか相手にしないで…」

ローグ「ちゃっちゃと偵察をですね…」スタタ

『馬小屋』


ヌフフフフ


女海賊「他に延焼させたくないから切り倒してる…しめしめ」

女海賊「早く切り倒せ!向こうが見えないんだよ」


ドターン バサバサ


女海賊「よしよし…これで向こうまで見える」

女海賊「お!?気球?セントラルの気球だ…誰が乗ってんだろ」

女海賊「…やば…あの女…気球でこっち来たのか」

女海賊「なんか堂々と歩いてんのムカつくなぁあの女…」

女海賊「やっぱ行先は村長の家の方だ…」


”ママ…聞こえる?”


女海賊「ハッ!!未来…」ガサゴソ


”ママ?返事してママ!!”


女海賊「未来?今何処?」

子供「森の外れを走ってる…場所がまだ分からない」

女海賊「捕まって無かったんだね…おけおけ!心配してたのさ」

子供「心配?」

女海賊「こっちの話…ほんでそっちはどんな状況?」

子供「えとね…ママに大事な話があるんだ…ちゃんと聞いてよ」

女海賊「なにさ…」

子供「ホム姉ちゃんを守って欲しいんだ…もうすぐ殺されてしまう」

女海賊「え!!?どゆ事?」

魔女「これ未来…わらわが話す…貝殻を貸すのじゃ」

女海賊「ちょっと話が良く分かんないんだけど…」

魔女「女海賊や…良く聞くのじゃぞ?」


未来はな…10年後の未来から次元を超えてこちらへ来たと言うておる

10年後に人類は絶滅の危機にあるそうじゃ

その原因を今から一つづつ潰し込もうとして居る

その中の一つがホムンクルスの死じゃ…それを主に防いで貰いたいのじゃ

子供「魔女!僕の方が詳しく話せる…貝殻貰うよ」

女海賊「今あんた達を迎えに来てるんだけどさ…どうすれば良いの?」

子供「ホム姉ちゃんはシャ・バクダ遺跡の中でママが使ってるデリンジャーで殺されるんだ」

女海賊「マジ!?」

子供「そのデリンジャーを何処かに隠すか破壊するか…」

女海賊「迎えはどうすんのさ」

子供「間に合わないかも知れないから僕達は自力で北上する…ママは一旦遺跡に戻って」

女海賊「んんんん…デリンジャー勿体ないなぁ」

子供「ママが持ち歩かなきゃ良いかも」

女海賊「飛空艇に置いたまま狭間に隠し…だぁぁぁぁシャ・バクダ遺跡周辺は狭間に隠せない」

子供「そこら辺に隠せないの?」

女海賊「あんた回収出来る?今シャ・バクダ郊外の南側にある村だよ…馬小屋の屋根裏なんだけど」

子供「おけおけ…そこら辺なら多分通る筈さ」

女海賊「ほんでデリンジャー持たないでどうする訳?」

子供「遺跡に避難してる難民の中に暗殺者が混ざってるんだ」

女海賊「誰?」

子供「僕は知らない…なんとか探してよ」

女海賊「分かった」

子供「後ね…時の王っていう人からママは祈りの指輪を預かる筈なんだ…それも隠した方が良い」

女海賊「祈りの指輪なんか持ってたのかあのおっさん…」

子供「あと何日後に起こるか分からないんだよ…僕達だと間に合いそうに無いからママにお願いしてる」

女海賊「遺跡に戻る…デリンジャーはちゃんと回収して」

子供「うん…もう大丈夫!ママの眼は千里眼で見たから」


タッタッタ


ローグ「姉さん…戻りやしたぜ?」

子供「あ…その声はローグさんだね?」

ローグ「貝殻通じたんすね…今何処でやんすか?」

子供「まだ遠くだよ」

ローグ「そうなんすね…ちっと回復魔法が欲しかったんすが…」

子供「どうして?」

ローグ「エルフが4人捕らえられて居るんすよ…あと盗賊ギルドの仲間2人も居るんすが…」

剣士「未来止まれ…エルフがどうした?」

ローグ「地下牢にエルフ4人とあっしらの仲間が2人捕らえられてて回復魔法が欲しいでやんす」

剣士「分かった…未来!急ぐぞ」

子供「会話ここで終わるね…狭間に入る」


ザザー ザザザ

--------------

--------------

--------------

『屋根裏』


ローグ「姉さんどうしやす?」

女海賊「捕らえられてる6人はどのくらい消耗してんの?」

ローグ「エルフはみんな足がやられてて走れんですね」

女海賊「あああそういう事ね…それ多分蘇生魔法が必要なやつだ」

ローグ「あと宿屋の店主と娘さんが捕らえられてるんすが衰弱していやすね…」

女海賊「私の飛空艇にエリクサーある」

ローグ「助けに行くんすね?」

女海賊「こっそりエリクサーだけ渡しに行くとか出来そう?」

ローグ「姉さんは注意引いて貰えやすか?その間にあっしがエリクサー飲ませて来やす」

女海賊「おっけ!!今飛んで来た気球を爆弾で吹っ飛ばす」

ローグ「なんで気球なんか…」

女海賊「アレから女狐が降りて来たんだ…なんかムカつくんだよ」

ローグ「マジすか…そらマズイっすね…宿屋の店主と娘さんが殺されちまいやす」

女海賊「女狐だけどうにかなんないの?」

ローグ「あっしは殺しはやらんのですよ」

女海賊「じゃぁ捕まえてグルグル巻きは?」

ローグ「連れ帰ってどういう事情で盗賊ギルド狙ってるのか吐かせやしょうか」

女海賊「出来る?」

ローグ「姉さん睡眠薬持って居やせんか?」

女海賊「ある…」ポイ

ローグ「作戦はこうしやしょう…姉さんが気球を爆破している間にあっしがエリクサーを飲ませてきやす」

ローグ「その後女狐が気球の様子を見に来た所をあっしが眠らせるんで…そのまま連れ帰りやしょう」

女海賊「おっけ!!」

ローグ「じゃぁちっと待ってて下せぇ…エリクサー取って来やす」ダダ

『村長の家_納屋』


チュドーーーーン モクモク


傭兵1「なんだ!!?今の爆発音は…」ダダ

傭兵2「やばいな…ドラゴンかも知れ無ぇ」

傭兵1「くそう!地下に隠してんだぞ?ドラゴンに見える訳が無ぇ!!」

傭兵2「とりあえず見に行くぞ」ダダ


ローグ「…」---作戦通り---

ローグ「ハイディング!」スゥ



『地下牢』


ピチョン ポタ


ローグ「リリース!」スゥ

エルフ達「…」ギロリ

ローグ「そう怯えんで下せぇ…エリクサー持って来たんで一口づつ飲むでやんす」クィ

エルフ「お前は何者…」ゴクリ

ローグ「今この牢からは出せないんすが直に助けが来やす…辛抱してて下せぇ」

エルフ「足が動かない…ぅぅぅ」

ローグ「分かってるでやんす…魔術師が来るんで治して貰ってから逃げる感じなんす」

エルフ「そうか…感謝する」

ローグ「もう2~3日の辛抱なんで耐えて下せぇよ?」

エルフ「北の戦いは今どうなって?」

ローグ「あっしも詳しくは知らんのですが毎晩ドンパチやってるみたいでやんす」

エルフ「そうか…」

ローグ「今は体を癒して下せぇ…じゃぁあっしは行きやす」スタ


--------------

ガチャン ガチャン


店主「グルルルル…」

ローグ「こりゃ一体…」タジ

娘「と…盗賊ギルドの者…だな?ぅぅぅ…」

ローグ「あっしでやんすよ…エリクサー持って来やした…飲んで下せぇ」クィ

娘「お前はローグか…」グビ ゴクリ

ローグ「詳しい話は後にしやしょう…これ店主さんに近付いて大丈夫なんすかね?」

娘「エリクサーの瓶を私に…私が父に与える」

ローグ「なんなんすかコレ…麻薬で狂ってるんすか?」

娘「ライカンスロープ症…生きた血肉が必要なんだ…月光を浴びるとウェアウルフになってしまう病気さ」

ローグ「そうだったんすね…」

娘「牢のカギは無いのか?」

ローグ「2~3日待って下せぇ…助けがきやす」

娘「正気を維持できるか…」

ローグ「不死者はエリクサーを飲むと正気を保てるらしいんすよ…エリクサーに賭けてくだせぇ」

娘「それは本当か?」

ローグ「あっしはそろそろ行くでやんす…次があるんで」

娘「作戦中か…長居させて済まない」

ローグ「じゃ…どうか無事で」スタ

『村の広場』


ボゥ メラメラ

火を消すのじゃぁ!!

馬鹿野郎!!雪を被せりゃ済むだろうが


女狐「ど…どうして…」フラ

傭兵「これはドラゴンのブレスでは無いな…荷は何が乗って居た?」

女狐「食料と魔石よ」

傭兵「お前誰かに後を着けられて無いか?」

女狐「ちぃぃやられた…公爵のやつ初めから報酬払う気無かったのね」

傭兵「おいおい下手な事言うもんじゃ無ぇぞ?グハハハ」

女狐「くぅぅ…」ギリ

傭兵「俺は警備に戻る!!精々悔しんでろ」ノッシノッシ

女狐「こうなったら…ハッ!!人影…あの女ね」ダダ


-------------


女海賊「ヤバ…見つかった」スタコラ ピュー

女狐「逃がさないわ!!」ヒュン!グサ

女海賊「痛った!!投げナイフ…」グラ

女狐「フフ麻痺毒よ…あなたは誰!?公爵からの刺客なのでしょう?」


ローグ「リリース!」スゥ


女狐「え?…」

ローグ「バックロロホルム!」ギュゥ

女狐「フガ…ふむむむ」バタバタ


ローグ「姉さん!行ける所まで走って下せぇ!」

女狐「…」グターーー

女海賊「なんかヤヴァイ!!腕動かない!!」スタタ

ローグ「エリクサー持って無いんすか?」

女海賊「だから腕が動かないんだって!!」

ローグ「とりあえずハイディングしやしょう…」

女海賊「腕が動かないって言ってんじゃん!!」

ローグ「あっしに抱き着いて下せぇ」ダダ

女海賊「早く言え馬鹿!!」クルリ

ローグ「ハイディング!」スゥ

女海賊「ふぅぅぅ…ヤバい目が回る」クラクラ

ローグ「エリクサー何処に隠してるんすか?」

女海賊「右の脇の辺り」

ローグ「触りやすぜ?…てか出血してるじゃないっすか…」ゴソゴソ

女海賊「全然痛く無いんだけど…」ダラダラ

ローグ「飲んで下せぇ…ちっとこのまま応急処置しやす」クイ

女海賊「むぐっ…ヤバい感じ?」

ローグ「ナイフ抜くの躊躇っちまう感じでやんす…抜きやすぜ?」ズボ ダラダラ

女海賊「痛く無いなぁ」

ローグ「傷が塞がるまで押さえとくんでしばらく動かんで下せぇ」ギュゥゥ

女海賊「寝て良い?なんか気持ち悪い」

ローグ「へい…」ギュゥゥゥ

女海賊「おえっ…」グターー

ローグ「あいやや…麻痺毒怖いっすねぇ…」


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--------------

『飛空艇』


ビョーーーーウ バサバサ


女海賊「…」ビクン パチ

ローグ「眼を覚ましやしたね?体おかしく無いっすか?」

女海賊「えーっと…どうなってんだっけ?」

ローグ「姉さんが寝ちまったもんであっしが運んだんすよ…」

女海賊「なんか背中がベタベタ気持ち悪いんだけど」

ローグ「血だらけでやんす」

女海賊「着替えるわ…超キモイし臭い…」ヌギヌギ

ローグ「あっしはこのまま操舵しときやす…」チラリ

女海賊「見たらどうなるか分かってるよね」

ローグ「いやいやまだ見て無いっす」

女海賊「ほんで今何処飛んでんの?」

ローグ「剣士さん達探すんじゃ無いんすか?」

女海賊「予定変わったんだよ…シャ・バクダの遺跡に戻る」

ローグ「えええええ!?そういう事は早く行って欲しいでやんす…反対方向っすよ」

女海賊「なんかホムちゃんが殺されるかも知れないんだってさ」

ローグ「どういう事っすか?」

女海賊「未来がさ…10年後の未来から来たとか言ってんだけど」

ローグ「お!?面白そうな話っすね…」

女海賊「10年後に人類絶滅すんだってさ…ヤバくね?」

ローグ「詳しく聞かせて下せぇ」

女海賊「話はこうだよ…」


カクカク シカジカ

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ローグ「難民に暗殺者が紛れてる…ほんでホムンクルスさんをピンポイントで暗殺…」

女海賊「それを防ぎたいらしいよ」

ローグ「なんでまたホムンクルスさんを狙ってるんすかね?目立った事はしていない筈なんすが…」

女海賊「誰だろ?暗殺者送って来るなんて…」

ローグ「女狐のお銀を問い詰めやしょう」

女海賊「そんな簡単に口割る?」

ローグ「んんん…魔女さんの幻惑の杖でどうすか?」

女海賊「なるなる…それなら行けそう」

『森の外れ』


シュタタ シュタタ


子供「ソリの跡だ…」

剣士「もうすぐハズレ町の筈…魔女!やっと休めるよ」

魔女「腰が痛くて敵わん…」

剣士「ごめん…揺らし過ぎたね」

魔女「ちと食事もしたいのじゃ…主らと違ってどんぐりでは力が出ぬ」

子供「見えた!!食べ物の匂いもする」クンクン

剣士「少し汚れを落としてから行こう」



『ハズレ町』


ガヤガヤ ザワザワ

避難民は兵舎から出ない様に!!

貴族様から食料の配布だ!!お辞儀を忘れるなぁ!?


衛兵「お前達!!何処から来た?」

魔女「森から逃げて来たのじゃ…水は無いか?」

衛兵「森だと?森に住んで居たのか?」

剣士「あ…あぁ…まぁそんな所だよ」

衛兵「お前がこの子供たちの保護者だな?…ウルフも居るのか」タジ

剣士「ハハ…まぁそうなるかな?」

子供「パパ大丈夫?」

衛兵「ううむ…まぁ良い…しかし随分汚れているな」

魔女「汚れを落としたいで水が欲しい…雪ではなかなか落ちんでのぅ」

衛兵「兵舎に行けば水ぐらいは貰えるがしかし…ひどい匂いだな」

剣士「虫の毒を浴びているかもしれない…早く落としたい」

衛兵「…仕方あるまい…付いて来い」スタ

『兵舎』


ジャブジャブ バシャー


子供「ぅぅぅさぶい…」ガチガチ

魔女「大人しゅうしておれ」ゴシゴシ

衛兵「衣類は焚火で乾かすのだ…しかしお前達…随分良い装備だがこれをどうした?」

剣士「冒険者なんだよ」

衛兵「子連れで森を冒険だと?」

剣士「おかしいかい?」

衛兵「三角帽子の子供…もしやシン・リーンの魔術師か?」

魔女「…だとしたら何じゃ?」ギロ

衛兵「子供に姿を変えて…」

魔女「うるさい衛兵じゃのぅ…」

衛兵「いや実は避難民に黒死病が蔓延しているのだ…何とか出来ないかと」

子供「出来るよ」

魔女「これ未来!目立つ真似はイカン」

子供「こっそり線虫を使うだけさ」

魔女「ふうむ…」

子供「取引しよっか…食事をくれるなら黒死病を直すよ」

衛兵「おぉ!!丁度貴族様から食料の配布があるのだ…急ぎで持ってくる」

子供「おけおけ!こっそり魔法を掛けておくからお願い」

衛兵「焚火で温まって居てくれ…」スタ

魔女「…では未来!!手並み拝見じゃ…」

子供「線虫!来い…君達の食事だよ?毒を食べて皆を癒して来て」ザワザワ ニョロニョロ

魔女「ほほー…虫も喜ばせるとはのぅ…」

子供「僕が一番大事にしてる魔法なんだ」

魔女「良い心掛けじゃ…その術は自由に使って良い…そして極めよ」

子供「ねぇ魔女?魔術書貸してくれないかな?確認したい事が有るんだ」

魔女「ふむ…無くした記憶を探りたいのじゃな?」バサ

子供「うん…」

魔女「どうじゃ?読めそうかえ?」

子供「…だめだ文字が読めなくなってる」

魔女「そうか…記憶が無ぅなるのは悲しいのぅ」

子供「忘れないうちに何かに書き残そうと思ってたんだけどもう無理だ」

魔女「文字はこれから学べば良い…大事な記憶だけしっかり自分の物にせい」



-----------------

タッタッタ

衛兵「食事を持ってきたぞ…パンとチーズ…それから豚の骨だ…ウルフに与えてやるのだ」

魔女「おぉ!!主は気が利くのぅ…ウルフにも気を使えるのじゃな」

子供「魔法は掛け終わったよ」

衛兵「そうか…魔術師が来ている事は秘密にしていた方が良いのか?」

魔女「いつ魔女狩りに合うか分からんでのぅ…」モグモグ

衛兵「言葉も無い…」

子供「ねぇこの町って市場ある?」

衛兵「在るには在るが金が無ければ何も買えんぞ?」

子供「パパお金持って無い?」

剣士「何が欲しいんだ?」

子供「どんぐりと種だよ」

衛兵「種?ハハハ…それなら安く売って居る」

魔女「わらわが金貨を持って居るぞ?」

子供「僕買い物してくるからさ…パパと魔女は休んでて?」

剣士「一人で行けるのか?」

子供「大丈夫だよ」

衛兵「俺が市場まで案内してやる…見回りで行く用事もあるのだ」

子供「魔女!金貨1枚頂戴!!触媒も在ったら買って来るよ」

魔女「ほぅ?わらわはちと眠るで頼もうかのぅ…」チャリン

子供「ありがと!!じゃぁ行って来るよ」スック

衛兵「こっちだ…付いて来い」スタ


----------------

魔女「さて剣士…未来はあのままで良いのか?」

剣士「少し考えたんだ…未来の進む道はこの向こうに在るのかも知れない」

魔女「この次元と交差しておると言うか?」

剣士「そんな気がする」

魔女「予言を見たのではなく未来から来たとはのぅ…」

剣士「夢幻から来たんだよ…みんな同じさ…覚えてるか覚えていないかの差だよ」

魔女「いかんな…時空の成り立ちをもう一度見直さねばならぬ」

剣士「未来の言う事に従ってみるさ…それで世界が良い方へ転ぶなら…本当の勇者は未来だという事になる」

魔女「ふむ…」

剣士「未来の行動が楽しみだよ…何が在っても僕が守る」

『数時間後_夜』


メラメラ パチ


子供「…遅いなぁ」イライラ

ウルフ「クゥ~ン」


スゥ…


魔女「おぉ未来!帰って居ったか」

子供「十分寝た?」

魔女「そうじゃな…何日振りで休んだのじゃろうのぅ…」

子供「あれから2時間くらいかな…狭間の中だと10時間くらい寝た感じだね?」

魔女「うむ…剣士はまだ瞑想中じゃ…もうちっと掛かるじゃろう」

子供「触媒買ってきたよ…」ドサ

魔女「少ないのぅ…」

子供「沢山売って無いのさ…硫黄なんか何処にも売って無かった」

魔女「女海賊の飛空艇に沢山積んで在ったで一度取りに戻りたいのぅ…」

子供「森で使い過ぎちゃったね…補給も出来なかったし」

魔女「主はエレメンタルは使わんのか?」

子供「得意じゃない…変性と幻術だよ」

魔女「どの様に魔物と戦うのじゃ?」

子供「僕は破壊術で戦わないんだ…成長魔法で戦う」

魔女「如何に?」

子供「魔物にどんぐりを撃ち込んで成長させる」

魔女「クヌギの木にすると言うか?」

子供「そうだよ…それで魔物は干からびる」

魔女「なるほどのぅ…生かす魔法か…ふむそれも良いのぅ」


-------------

スゥ…


剣士「…待たせた」

子供「重力の方陣はこんな感じだよ…」カキカキ

魔女「もっと正確に書けんのか」

子供「覚えてるだけだとここまでしか分からない」

魔女「むぅぅ…覚えてる限りすべて記せ」

剣士「何をしている?」

魔女「おぉ剣士!未来が古代魔術の魔方陣を知って居るのだ」

子供「パパ遅いよ!!」プン

魔女「これ未来!魔方陣を記せ」

子供「もう覚えて無いって!オークがこの方陣の呪符を持ってるから貰えば良い」

剣士「オーク?」

子供「うん…オークシャーマンが使う呪術は魔女が研究してる古代魔術なんだ」

魔女「わらわはオークの地へ行かねばならん様じゃ」

子供「それは後でだよ!早くドリアードの所に行ってアダムを停止させないと…」

剣士「未来…ずっと寝て居ないけど大丈夫か?」

子供「眠ってる暇なんか無い…早く行こうよパパ」

剣士「フフそうか…魔女は休息したね?」

魔女「うむ…」

剣士「行こうか…未来がヘソを曲げてしまう」

子供「ここからシャ・バクダまで狭間に入って急げば日が昇る前にエルフ達を助けられる」

剣士「そうだな…急ごう…魔女乗って」グイ


-------------

-------------

-------------

『シャ・バクダ郊外の村』


シュタタ シュタタ


子供「…この村で間違い無いよ」

剣士「エルフが捕らえられて居るのは何処だか分かるか?」

子供「高台の納屋のある家さ」

剣士「動く人の気配がある…」クンクン

魔女「何人か分かるかえ?」

剣士「2人…」

魔女「わらわが睡眠魔法で眠らせるで死角から近づくのじゃ…」

子供「パパ?僕は馬小屋探してママの荷物回収してくる」

剣士「分かった…パパの後を追えるな?」

子供「大丈夫!」

剣士「魔女!行くよ…掴まって!」シュタタ

子供「子ウルフは僕に付いて来て!」シュタタ

『村長の家の前』


ヒソヒソ


シャ・バクダ砦の方は静かになったな?ドラゴンは引き上げたか…

あんな遠くから此処が見えるとは思えんのだがどう思うよ?

いいや…見えているらしいぞ?

しかしまぁいつまで続くんだろうな?エルフとドラゴンの攻撃は

砦が粘ってるんだろうが此処もそろそろ危無ぇ…潮時だとは思うんだが…



カサカサ


傭兵1「んん?又ウルフが来たか?」スラーン

傭兵2「グハハ俺ら相手じゃウルフなんざ何匹来ても敵いっこ無ぇ!…何処だ?」

傭兵1「この甘い匂いはなんだ?」クンクン

傭兵2「やべぇ…こりゃ何かの魔法だ!!」

傭兵1「おい女が歩いて来るぞ?」フラ

傭兵2「女?村長じゃ無いのか?」フラ


ノソノソ


魔女「既に術に掛かって居るで大丈夫じゃぞ?」

剣士「エルフ達も眠ってしまったのでは?」

魔女「恐らく一緒に術に掛かって居るが起こせば良い話じゃ…地下牢を探すぞよ」ノソ

剣士「納屋を探そう…」スタ

『地下牢』


ピチョン ポタ


剣士「居た!!」スタタ

魔女「慌てるで無い…まだ時間はある故牢のカギを開けるのが先じゃ」

剣士「鍵…」キョロ

魔女「牢の見張りじゃろう…寝転がっておる」

剣士「どこだ?」ゴソゴソ

魔女「あまり揺らして起こすで無いぞ?」


見張り「すぅ…すぅ…」ムニャ


剣士「有った!!」チャラ

魔女「牢を一つづつ開けて行くのじゃ…ふむ聞いた通りエルフの足は蘇生が必要じゃな」

剣士「起こそうか?」カチャ ギー

魔女「驚かせん様にな?騒ぐと皆起きてしまうやも知れぬ…蘇生魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「あれ?…寝てる訳じゃ無い…瞑想だ」

魔女「これ!次の牢も開けよ…起こすのは後で良い」ノソノソ

剣士「…そうだね」カチャ ギー


------------

------------

------------

『傷んだ牢屋』


カチャリ ギー


剣士「…この2人…どこかで見たことがある」

魔女「ローグが言うて居った盗賊ギルドの仲間じゃな…わらわも見た事有るのぅ…誰じゃったか」

剣士「どうしてこの牢屋だけこんなに傷んでるんだろう…」

魔女「暴れたのでは無いか?回復魔法!」ボワー

剣士「この2人…」クンクン

魔女「どうしたのじゃ?」

剣士「懐かしい匂いがする…誰だ?」

魔女「驚かさん様に起こしても良いぞ?」


ガチャン


剣士「マズイ…入り口の鍵が掛かる音だ」

女の声「フッフッフ…掛かったな白狼の一味」

剣士「罠だったのか!?」

女の声「そうとも白狼の尻尾を餌にお前達を釣ってみたのだ…まんまと罠に掛かって片腹痛い」

魔女「誰じゃ?姿を現せい!」

女の声「おやおや塔の魔女も一味だったとは通りで手こずった訳だ」

剣士「魔女…ハイディングの準備を」

女の声「無駄な抵抗だ白狼どもよ…お前達は既に牢の中だと知れ」

魔女「何故主だけ眠らぬのじゃ?」

女の声「時の王がどうやって過ごしていたのか忘れたのか?」

魔女「ハッ!!しもうた!!魔結界…」

女の声「ハッハッハッハ…さてこれで私を邪魔する者は居なくなった」

魔女「わらわ達を捕らえてどうするつもりじゃ!?」

女の声「私の同胞達の無念を晴らす」


魔女「何が無念じゃ!!わらわの父は幻惑の杖に操られ不本意に死を遂げたのじゃぞ?」

女の声「不本意とは心外…人類の未来の為に命を捧げた…しかし未来を見る事が叶わなかったのはお前達のせいだ」

魔女「ぐぬぬ屁理屈を…」

女の声「さて白狼…いや白い悪魔め…お前の行いでどれほどの犠牲が出たか自覚は有るのか?」

剣士「犠牲?」

女の声「自覚して居ない様だな…お前が100日の夜を起こすきっかけを作り更に祈りの指輪まで持ち去った…」

女の声「これでどれだけの人の命が失われたと思う?」

女の声「なぜ早々に闇を集め無かった?無知か?それとも外道か?」

剣士「う…」

魔女「こやつの言う事を聞いてはイカン…それは結果論じゃ」

女の声「結果がすべてでは無いのか?塔の魔女よ…良い結果になる様に導くのだろう?お前にはそれが出来ていない」ドン!

魔女「すべてわらわ達が悪い様に解釈して居る様じゃな…主は何を導けたと言うのじゃ!!」

女の声「少なくとも!!10年先に起こるであろう厄災に備え数千の人間を既に退避させた…それでお前達は何をした?」

魔女「…」

女の声「何もしていない…只私の邪魔をしていただけだ」

魔女「主は魔王に魂を売ったのか?」

女の声「事あれば魔王…すべて魔王が悪い…そういう風だからお前達は進歩しない!!魔王なぞ利用すれば只のエネルギーだ」

魔女「それほど甘くは無い!!主の方こそ何も理解して居らぬ!!」

女の声「フッフッフ…話が平行線…無駄だな」

魔女「剣士!!あ奴を倒すぞよ?爆裂魔法で牢を破壊する故わらわを守れ!!」アブラカタブラ

女の声「そうはさせるか!永遠の眠りに付け」


ピーヒョロロー ピロピロピー


剣士「笛?…」

魔女「こ…これは妖精の笛…」ヨロ

女の声「フハハハハハ…アーッハッハハ」

剣士「なんだ…目が霞む…」フラ

女の声「キラーマシン!来い!!」


ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ


魔女「くぅぅぅ…ここまで…か」ドタリ

剣士「み…未来…」フラ ドタリ

『馬小屋_屋根裏』


ガサゴソ ガサガサ


子供「有った!!やっと見つけた…」

子供「弾は?」カチャカチャ

子供「入って無いかぁ…えーと…火薬はまだある…10発撃てるかどうか」

子供「どんぐり行けるかなぁ…」ツメツメ

子供「おぉぉ流石ママ…弾が回転する様にちゃんと砲身に溝切ってる…よしよし」


子ウルフ「ガウルル…ガウガウ」


子供「んん?どうしたの?」

子ウルフ「ガウ…ハッハッハッ」ドタバタ

子供「え?機械の匂い?」クンクン

子供「本当だ…この油はキラーマシン…なんでだ?」

子ウルフ「クゥ~ン…」バタバタ

子供「何かマズい事起きてるんだね?」

子ウルフ「ワン!」

子供「行こう!!」シュタ


シュタタ

『村長の家の納屋』


ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ


子供「なんでキラーマシンが居るんだ…」ヒソ

子ウルフ「クゥ~ン…」

子供「納屋の中に女の人が居る…あの人が操ってるのかな?」

子供「あ…出て来た…誰だろうあの人」


女「キラーマシンよ待機だ…万一に備えて私も武器を持ってくる」

キラーマシン「プシュー…」ピタリ


子供「パパ達が見つかったんだ…」ヒソ

子ウルフ「ハッハッ…」

子供「あ…あの笛は妖精の笛…あれで眠らせられたのか」

子供「子ウルフ!あの笛を奪って来て!!」

子ウルフ「グルルル…」シュタタ


シュタタ ピョン!


女「何ぃ!!ウルフだと!?」ドタッ

子ウルフ「ガァァァ…」ガブ

女「キラーマシン!!ウルフを追い払え!!」

キラーマシン「ウィーン…ガシャ」バシュン グサ

子ウルフ「ギャイーーン…」シュタタ

女「このぉ!!笛を返せ!!」ダダ


ターン! バチン!


女「つあぁ!!…こ…子供?」

子供「線虫!子ウルフを癒せ!!」ザワザワ ニョロリ

子ウルフ「ガウ…」ヨタヨタ

子供「今ボルトを抜いてあげる…」ズボォ

子ウルフ「ギャフン…」

子供「回復魔法!」ボワー


女「君は何処から来たのかね?その笛を返したまえ…」スタスタ


子供「動かないで!!」スチャ

女「何の真似かね?」

子供「公爵だね?」

女「…」ギロリ

子供「やっと見つけたぞ!!アダムの秘密を話して貰う!!」

女「お前!!魔術師だな?ちぃぃ…まだ白狼の仲間が居たとは…」


ターン! バチン!


女「ぐぁ!!」

子供「動くと撃つ!!」

女「なんのこれぐらい!!キラーマシン!!敵を排除だ!!」ダダ

子供「くそう!!成長魔法!!」ニョキニョキ ズドーン

女「地面から突然木が生えるだと?…ええい」

キラーマシン「ウィーン…ガチャコン!」バシュン バシュン

子供「ズルいぞ遠距離ばっかり!!」ヒラリ

キラーマシン「ガチャコン!プシュー」

子供「当たれぇ!!」ターン ターン カキン

キラーマシン「ウィーン…ガチャコン!」バシュン グサ

子供「くぅぅ…キラーマシンにどんぐりは効かないか…成長魔法!」ニョキニョキ ズドーン

女「ハッハッハ…私の勝ちだな…笛を返すのだ」スタスタ

子供「近寄るな!!」カチ カチ

女「弾切れかね?次は魔法でも撃つか?ハハハハ…」

子供「これでも食らえ!!火魔法!」チリチリ ポイ


モクモクモク


女「煙か…そんな物がキラーマシンに通用する物か…さっさと敵を排除しろキラーマシン!」

キラーマシン「ウィーン…ガチャ」ドスドス

子供「これならどうだ!!」


ピーヒョロロロロ ピーーーー


女「しまった!!お前はその笛の効果を知って…」

子供「僕の勝ちだよ…ぅぅぅ」ダラダラ

女「ちぃぃぃキラーマシン!!排除は中止だ!!私を守って基地へ逃走しろ」

子供「そうは行くか!!火炎魔法!」ボゥ ボボボボ

キラーマシン「ウィーン…」ドスドス ガバ

子供「くっそ!!邪魔だよコイツ!!」シュタタ

女「早く私を連れて基地へ…」ヨロ

キラーマシン「プシュー…」ドスドス

子供「待てぇ!!アダムの秘密をまだ聞いて居ない!!」シュタタ

女「…」zzz

子供「寝ちゃたか…」ヨロ ダラダラ

子ウルフ「クゥ~ン…」

子供「僕も出血が酷い…線虫!癒せ!」ニョロリ


キラーマシン「…」ドスドスドス


子供「ダメだ追い付けない…ハァハァ」

子供「頭がクラクラする…マズいぞ僕は寝ちゃいけない」ヨロヨロ

子供「パパと魔女を探さなきゃ…」フラフラ

『納屋_地下牢へ続く鉄扉』


ハァハァ… ヨロ


子供「クヌギを育てて扉が壊せるか…成長魔法!」ニョキニョキ 


メキメキ バリバリ


子供「鉄には敵わないか…どうしよう」

妖精「ハロハロー!!呼んだ?」ヒラヒラ パタパタ

子供「あぁぁ妖精さんか…鉄の扉を開ける方法知らないかな?」

妖精「鍵で開けたら?」

子供「鍵が無いんだよ」

妖精「じゃぁ開けられる訳無いよね?」

子供「ハハ…どうしようかなぁ」

妖精「横の石の部分をどうにかしたら?」

子供「お?君賢いね?」

妖精「役に立ったかな?」

子供「助かったよ…石の隙間に爆弾詰め込んで…」チリチリ

妖精「君の鞄の中に入っておくからさ…用があったら又呼んで?」スポ

子供「やばやば…隠れる所が無い…」シュタタ


ドーン! パラパラ


子供「くあぁぁ…も…もう納屋がボロボロだ…」タラー

子ウルフ「ガウガウ!!」シュタタ

子供「よし…下に行けそうだ」フラフラ


『地下牢』


ピチョン ポタ


子供「パパ!!魔女!!起きて?」ユサユサ

子供「ダメだ…しばらく起きないやつだ…困ったなぁこんな所で足止めされちゃ…」


スッ…


子供「うわぁ!!」タジ

エルフ1「君は誰だ?私達を助けに来たのか?」

子供「ビックリしたぁ…いきなり背後に立たないでよ」

エルフ2「牢が空いてるわ…何が在ったのか話せる?」

子供「助けに来たんだけど公爵っていう人の抵抗が有ったんだ…みんな眠らされてしまったんだよ」

エルフ1「シーーーーッ…表で人間の気配がする」

エルフ2「君は子供の姿をしているが戦えるのか?」

子供「一応魔法は使えるよ」

エルフ1「気配が増えている3人…いや4人か…」

子供「ここに入って来るには大人じゃ入って来れない…外に出る鉄の扉も閉まってるんだ」

エルフ1「まだ閉じ込められているのか…」

エルフ2「戦うにしても武器が無いわ…麻痺毒にやられるのがオチよ」

子供「僕の魔法で麻痺毒は無効に出来る…やってあげようか?」

エルフ1「それは助かる」

子供「虫が体の中に入るから我慢して…線虫!癒せ!」ザワザワ ニョロリ

エルフ1「うぅ…こ…これは…」モゾモゾ

子供「無害だから大丈夫」

エルフ2「麻痺毒は良いとしてどうやって戦うの?」

エルフ1「何か持って居ないのか?」

子供「僕の武器は渡せない…あ!!寝てる見張りが武器を持ってる」

エルフ1「おぉ!!剣だ…」スチャ

エルフ2「他には?」

エルフ1「無い…」


ドンドンドン ガチャガチャ

どうなってんだこりゃ!!納屋が破壊されてるじゃ無ぇか!!

地下牢の鍵は誰が持ってんだ?探して来い

俺は寝てる奴ら叩き起こして来る!!

見ろ!!血痕だ!!昨夜何か有ったんだ…見張りは何やってたんだ!!


エルフ1「騒ぎ始めたな…他の2人も瞑想から連れ戻すんだ」

エルフ2「分かった…直ぐに戻るわ」スゥ

子供「テーブルの木材を加工して簡単な槍なら直ぐに作れるよ」

エルフ1「欲しい…3つ頼めるか?」

子供「おけおけ…ちょっと待って」


-------------

-------------

-------------

『10分後』


ガーン ガーン ガーン

くそう!!斧の歯が立た無ぇ…誰だ!!鍵持ち歩いてんのは!!

村長の姿が見当たらんのだがどうする?これじゃ俺らヤバく無いか?

まず捕らえてるエルフ共がどうなってるのか確認が先だ


ボエーーーー ギャーーース


ちぃぃ…ドラゴンが上を旋回していやがる

慌てるな!!ここに隠してるのは見られて居ない筈だ…ありゃ様子を見に来ただけだ

一応弓を装備させるように伝えて来る!



子供「よっし!!これで3つ目…変性魔法!」シュワワ

子供「硬化樹脂の槍だよ…簡単な鎧なら貫ける」

エルフ1「君は何者だ?」

子供「教えて無かったね…そこで寝ているのが勇者と塔の魔女だよ…それで僕は勇者の子さ」

エルフ2「ええ!?ではエルフゾンビが言って居た事は本当だって言うの?」

子供「何を聞いたのか知らないけどエルフゾンビさんは知り合いだよ…精霊樹を守って居るよね」

エルフ1「…どうやらウソでは無さそうだ」

エルフ2「この状況をどうやって脱出するの?」

エルフ3「静かに…7…8人か」クンクン

エルフ4「隠れて機を伺おう」ピョン シュタ

子供「へぇ?スゴイな…天井に張り付けるんだ…」

エルフ1「君も物陰に隠れるんだ」

子供「僕だけ隠れて外に出られるんだよ…何とかしてみる」

エルフ2「人間8人を一人で相手すると言うの?」

子供「眠らせてみる」

エルフ1「扉はどうする?」

子供「うーん…爆弾がもう無い…どうしようかなぁ…」

エルフ2「人間達が扉を開けるのを待って眠らせる事は出来そう?」

子供「お?行けるかも!!」

エルフ1「扉が開けば寝ている者を背負って脱出してやる」

子供「おけおけ…扉からは離れていて?一緒に眠ってしまうと困るから」

エルフ1「分かった…」

『地下牢へ続く鉄扉』


カチャカチャ


傭兵1「くそう!!鍵師じゃ無ぇと開けられ無ぇ!!」ドン

傭兵2「横の穴をどうにか広げられないか?」

傭兵1「こりゃ石だぞ?爆弾でも無いと無理だ!!それより村長は居ないのか!?」

傭兵2「キラーマシンも居なくなってるんだ…俺らに何も言わずに何処かへ行った様だ」

傭兵1「けっ!!又か…まぁ居なくて良かったという見方もある」

傭兵2「この穴じゃいくらエルフでも通れないよな?」

傭兵1「…」ギロ

傭兵2「なんだ?その顔は…何か思いついたな?」

傭兵1「昨夜女を見たよな?覚えて無いか?」

傭兵2「おぉ夢かと思ってたんだがよ…」

傭兵1「女ならこの穴を通れるかも知れ無ぇ…つまりもうエルフは逃げた可能性がある」

傭兵2「じゃぁ扉はエルフが鍵を閉めたと言うのか?」

傭兵1「俺ら全く無意味な事してるかも知れんぞ?」

傭兵2「どうすんだよ…」

傭兵1「村長がなんかスゲェ武器使ってただろ…探してこい」

傭兵2「勝手に使うのか?そんな事したらぶっ殺される」

傭兵1「無意味な事に時間使ってても只じゃ済ま無ぇだろ…使い終わったら元に返せば良いんだ」

傭兵2「悪いが俺は関りたく無ぇ…お前が取りに行け!」

傭兵1「けっ!!ヘタレ野郎が…無理矢理扉ぶっ壊して突入すっから仲間集めとけ」ドスドス

『しばらく後』


ドスドス


傭兵1「どけどけぇ!!こりゃ俺の独断で村長の武器を使ってる…お前等は見なかった事にしろ」

傭兵達「扉をぶっ壊したら突入すれば良いんだな?」

傭兵1「そうだ!!もし逃げられてたら全員何処かへトンズラしろ…分かったな?」

傭兵達「お…おう!!」

傭兵1「いくぞ?」スラーン


子供「…」---あの武器は破壊の剣だ---


傭兵1「ふん!!」スパ スパ ゴトン

傭兵達「おぉぉぉ!!」


子供「…」---今だ!!---


ピーヒョロロロロー ピロピロピー


傭兵1「何!?笛の音…」キョロ

傭兵達「木の上にガキが居るぞ!!」

傭兵1「ガキが中に入り込んで居たのか?構わん!!弓を撃て!!」

傭兵達「にゃろう!!」ギリリ シュン

子供「そんな弓じゃ当たんないよ!」ヒラリ

傭兵1「くっそこんな木!切り倒してやる!!」ブン スパ


メリメリ ドシーン!


子供「こっち!こっちー!!」ピョン クルクル シュタ

傭兵1「ガキがちょこまかと…」ドスドス ブン!

傭兵達「ぐぁぁぁぁ!!…エ…エルフが出て来た!!」

傭兵1「何だと…」タジ

傭兵達「エルフが武器を持ってる…」タジ

傭兵1「くそがぁぁ!!」ダダダ ブン

エルフ1「遅い!!」ヒラリ

傭兵達「させるか!!」ギリリ シュン グサ

エルフ1「ウッ…」

傭兵1「出入口は一つだ!!弓を撃ちまくれ!!」


シュン シュン シュン シュン


傭兵1「ガハハ出て来れまい!!その矢は麻痺毒を塗ってある…当たりゃ動けん筈だ」フラ

傭兵達「ぅぅ…なんだ?眠気が…」フラ

傭兵1「撃てぇ…撃て…」ドタリ


子供「よし!!作戦成功!!出て来て良いよ」

『壊れた納屋』


ザワザワ

何が起こっとるんじゃろう?

エルフに納屋を壊されたんじゃ無いの?

え?まさか…

エルフが怪我人を運んで…



子供「村の人が集まり始めた…騒がれる前に逃げた方が良い」

エルフ1「一旦森へ身を隠す…良いな?」

子供「うん…ついて行くよ」

エルフ1「急ぐぞ…」シュタタ


ザワザワ

上を見よ…ドラゴンじゃ

キャァァァ!!降りて来る…皆逃げてぇ!!


ギャオーーーース バッサ バッサ

『森の端』


ドサリ


エルフ1「よし…ここまで来れば逃げ延びたも同然…」

エルフ2「これだけ揺られても全然起きないのね…この人達」

子供「何をしてもしばらく起きないよ」

エルフ2「このままでは凍死してしまう…木の洞の中へ」ヨッコラ ドサリ


宿屋の娘「ぅ…」ピク


子供「あ!!動いた…」

宿屋の娘「こ…ここは?」キョロ

エルフ1「森の端だ…私達はこの3人に助けられたのだ」

宿屋の娘「ロ…ローグの仲間ね?」

子供「お?ローグさんを知ってるんだね?」

宿屋の娘「君は誰かな?そして2人はどうして倒れて?」

子供「公爵っていう人に眠らせられたんだよ」

宿屋の娘「公爵?何故公爵が…話が良く分からない」

子供「そっか…何も知らないんだ」

エルフ1「兎に角この子のお陰で無事に地下牢は脱出出来た」

宿屋の娘「おいオヤジ!起きろ!!」ユサユサ


宿屋の店主「…」パチ キョロ


宿屋の娘「変体寸前だよ…気は確かか?」

宿屋の店主「わ…私はいつからこうなって居る?ガググ…喉が…」グルル

子供「二人ともウェアウルフなんだね?」

宿屋の娘「この尻尾を見られたら言い逃れ出来ないねぇ…」フリフリ

子供「匂いで分かるさ」

エルフ1「…妙な組み合わせだ」

宿屋の店主「血が欲しい…グルル…喉が焼ける」

子供「少しならエリクサーあるよ」ゴソゴソ

宿屋の店主「エリクサー?」

宿屋の娘「貰っておくと良い…それを飲むと喉の渇きが癒える」

子供「はいどうぞ…」スッ

宿屋の店主「ガググ…済まん」ゴクリ



------------

子供「少し疲れたみたいだ…」フラ

エルフ1「木の洞の中で少し休むと良い…周囲の警戒は私達が…」

子供「そうも言って居られないんだよ…僕は早くドリアードの所に行かなきゃ」ヨタヨタ ドサ

宿屋の娘「んん?良く見たら顔色が悪い…エリクサーが必要なのは君の方じゃないのかい?」

子供「もう血は止まってるさ…きっと大丈夫だよ」

エルフ1「寝ている2人が起きるまでは休んでいた方が良い」

子供「待って居られないんだよ…僕は今すぐにでもドリアードの中のアダムをどうにかしたいんだよ」

エルフ2「ちょ…ちょっと待って!!どうしてそれを貴方みたいな子供が知って?」

子供「色々事情があるんだ…ただ今やらないと人間もエルフもみんな絶滅してしまう」

エルフ1「話が飛び過ぎてて理解出来ない」

子供「まぁ良いや自分で何とかするさ…」スック

宿屋の娘「ちょっと待て…寝ている2人はどうする?このまま放って置くのか?」

子供「あと10時間は起きないと思う…それまで待てないんだよ」

宿屋の娘「一人で行くと言うの?君はまだ子供だろう?無謀すぎる」

子供「じゃぁパパと魔女を背負って一緒に来てよ」

宿屋の娘「なに?…なんで君の言う事を私が聞かないといけないんだ?」

子供「助けてあげたお礼…それじゃダメ?」

宿屋の娘「う…なんか子供じゃ無いみたいな言い分を…」

エルフ1「ここから北は激戦区になる…君の消耗具合を見ると危険が過ぎる」

宿屋の娘「一度どこかで休息するべきだ」

子供「じゃぁ僕を背負って連れて行って?背中で休むよ」

宿屋の娘「どうしてそこまで急ぐの?」

子供「さっき言ったじゃない…早くアダムを破壊しないと光る隕石がいつ飛んで来るか分からないんだ」

宿屋の娘「アダム?…そのアダムが何日か前の光る夜を起こした?」

子供「まぁそんな感じ…それが飛んで来ると人間もエルフも絶滅するんだ…僕達はそれを防ぐために北を目指してる」

エルフ1「…それが本当だとすると急ぎでハイエルフに報告しなければ…」

子供「こうしよう…パパと魔女をシャ・バクダ遺跡まで送って欲しい」

宿屋の娘「君はどうする?一人では行かせられないぞ?」

子供「僕は遺跡に戻れない事情がある…ドリアードを目指すさ」

宿屋の娘「ダメだそんな事!!子供一人で行かせる訳には行かない」グイ

子供「子供子供ってうるさいな!!…尻尾切っちゃうぞ?」スラーン

宿屋の娘「待て!!その武器は…村長が使っていた剣…」タジ

子供「これでアダムを破壊する…それですべて終わり…じゃぁ行くね」ヨタヨタ



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宿屋の娘「待って!!話を聞くんだ」グイ

子供「うるさい人だなぁ…遺跡に行ったらローグさん達が居るから詳しい話はそっちで聞いてよ」

宿屋の娘「ローグ達が遺跡に?…フィン・イッシュ側に付いて居るのか?」

子供「もう…説明が面倒なんだよ!!アサシンさんとか女戦士とか皆居るからそっちで聞いて!!」グイ

宿屋の店主「ゲフゲフ…アサシンが居るだって!?」

宿屋の娘「これは驚いたね…敵側に居たとは…」

子供「そこら辺の事情は良く分からないけど…向こうはセントラル側の人が敵だとは思って無い」

宿屋の娘「オヤジどうする?」

宿屋の店主「私達が行って受け入れられるのかどうか…」

子供「行けば分かるでしょ…じゃぁ僕は行くね」ヨロ

宿屋の娘「待て待て待て…一人じゃ無謀すぎる…君だけ行かせる訳に行かない」グイ

子供「放してよ!!尻尾切るぞ!!」


トン!


子供「うぁ…」グター

エルフ1「助けて貰って悪いが一度帰った方が良い…護衛は私達が付くから遺跡へ向かえ」

宿屋の娘「分かった…私達は寝ている2人を背負うからこの子は任せる」

エルフ2「私が背負うわ…行きましょう」


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『夢』


君「おっけ!」

僕「フフ僕の真似?」

君「おかしい?」

僕「まぁね?でもそのままで良いよ…ヘンテコな話し方も良い感じさ」

君「私ヘンテコか?」

僕「いや…多分僕の話し方がヘンテコなんだ」

君「ヘンテコ…」

僕「アハハハヘンテコだなぁ…」


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僕「やっと見つけたぁ!!今日はここで寝よう」

君「古いキャンプ跡があるわ?」

僕「あんまり人が通らないんだね…まぁ誰も居ないなら水場も使い放題じゃない?」

君「私水浴びしたい」

僕「うん…僕は周りにどんぐり植えて虫除けの方陣貼って来る」

君「虫除け?」

僕「そうだよ…安心して寝られる様に虫に守らせるんだ」

君「今日はゆっくりして良いの?」

僕「でもね?クヌギの木の皮剥いで馬車を補強した後ね…オーツ麦の種も収穫したい」

君「分かったわ…毛皮は私が洗う…その後ゆっくりする」

僕「じゃ水浴び行っておいで」


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君「オーツ麦出来てる…食べる?」

僕「うん…君は味見した?」

君「まだ…」

僕「待っててくれたか」

君「ウフフ…あなたも裸」

僕「全部洗って来たよ…真っ黒だった」モジ

君「恥ずかしいか?」

僕「そりゃ恥ずかしいさ…なんかこんな荒野で2人裸なのは変だよ」

君「これ食べて…」スッ

僕「おぉ!!ホクホクだぁ」モグ

君「美味しい?」

僕「すごい久しぶりに調理した物を食べる…美味しい!」モグ

君「焼いたどんぐりもある」スッ

僕「殻も剥いたんだ?」ホクホク

君「…」ニコニコ

僕「君も食べたら?」

君「うん…」パク ハムハム

僕「む…牙が無いと食べ辛い?」

君「少し…」ハムハム


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君は…誰だ?

もっと良く顔を見せて…

『数日後_シャ・バクダ遺跡』


ガヤガヤ ザワザワ

配給だぁ!!ワームの肉だが中々美味い!!

セントラル領じゃこんな物食わないんだが…

まぁ食って見ろや!シカ肉より柔らかいんだぞ?


女戦士「未来はまだ目を覚まさんか?」

情報屋「そうね…エリクサーは少しづつ与えてるから体力はちゃんと回復してるわ?」

女戦士「魔女が未来の記憶を心配していてな…」

情報屋「啓示の話ね?」

女戦士「それもあるが精神分裂症の恐れがあるらしい」

情報屋「起きても無理に思い出させる様な事はしない様にするわ」

女戦士「うむ…」

情報屋「シャ・バクダ砦のゴーレム討伐はどうなって?」

女戦士「まだ帰って来ていない…未来が持って帰った妖精の笛で上手くこちら側に付けば形勢逆転なのだがな…」


タッタッタ


盗賊「おーい!!飛空艇が帰って来たんだが女海賊以外全員眠っちまった様だ…運ぶの手伝ってくれ」

女戦士「ゴーレムの使役は上手く行ったのか?」

盗賊「分からんのだとよ!ゴーレムも動かんらしい」

女戦士「そうそう上手く行かんか…」



--------------

ヨッコラ ドサリ

ローグ「フゴー…」zzz

商人「むにゃ…」zzz

魔女「すぅ…」zzz

剣士「すゃ…」zzz


女海賊「魔結界で大丈夫とか言ってたのにさ…魔女まで寝ちゃってどうにもなんないさ」プリプリ

盗賊「お前が寝なくて良かったな?全滅しちまう…」

女海賊「コレどういう仕組みなんだろ?なんで吹いてる私に効果無いん?」

女戦士「それが救いだな…使い方次第という事か」

女海賊「ほんでどうする?ゴーレムは全部で3体だよ…シャ・バクダ砦に2体と北の方に1体」

女戦士「アレが居る以上私達も動けんのだ…魔女の隕石では被害が大きすぎるからその笛でどうにかしたい」

女海賊「明日一人でもっかい試してみるわ…寝かせた後皆を迎えに来れば良いよね?」

女戦士「う~む…万が一を考えると危険なのだが…」

女海賊「アヌビスのおっさんとリカオン姉さんは何処行ったん?」

女戦士「アサシンと共にオアシス砦に行って居る…女狐の尋問だ」

女海賊「魔女に尋問された後で何もしゃべる事無いんじゃ無いの?」

女戦士「アサシンは女狐を高く評価している…2重スパイをさせたいのだ」

女海賊「なるほどねぇ…盗賊ギルド復活しそうだね」

盗賊「俺ぁあの女気に入ら無ぇんだがよう…又裏切りそうじゃ無ぇか?」

女戦士「幻術の杖で既に使役された状態だからな…使える者は使いたいのだろう」


子供「う~ん…」ノビー


女海賊「ハッ!!未来…」

子供「…んん?アレ?ここ何処だ?」キョロ

女海賊「良かったぁぁ…あんたずっと寝てたのさ…何処も痛く無い?」サワサワ

子供「うん…えーと僕何してたんだっけ?」

盗賊「よう!未来…腹減ってるだろう?お前の分のキノコ取り置きしてんだ…居るか?」

子供「あぁお腹ペコペコさ…でもちょっと待って…今夢見てたんだよ」

盗賊「夢?夢幻か?」

子供「分かんない…忘れる前に何かに書き残したい」

情報屋「まだ何も書いて居ない羊皮紙があるわ?使う?」

子供「うん…頂戴」

情報屋「持って来るわ」タッタ

『古代遺跡_一層目の端っこ』


カキカキ


ホムンクルス「未来君の大好きなスープを作って来ました…」テクテク

子供「ホム姉ちゃんか…頂戴!キノコだけじゃ物足りなかった」

ホムンクルス「はい…どうぞ」スス

子供「美味~い!!」ゴク モグモグ

ホムンクルス「何の勉強をしているのですか?」

子供「勉強じゃないよ…お絵描きさ」カキカキ

ホムンクルス「私は絵が描けません…見て居ても良いでしょうか?」

子供「アハハ…ホム姉ちゃん真っ直ぐな線も書けなかったね」

ホムンクルス「これは何の絵ですか?」

子供「僕字が書けないからさ…夢の出来事を絵にして書いてるのさ」

ホムンクルス「この場合上手ですねと言えば良いのでしょうか?」

子供「う~ん…そうなのかな?」カキカキ

ホムンクルス「この絵が何なのか私には理解出来ません」

子供「これ僕にしか理解できないかもね?只の覚書なんだよ」

ホムンクルス「虫を持って居る人は未来君ですね?」

子供「お?正解!!」

ホムンクルス「なんとなく分かりました…夢の中で冒険したのですね」

子供「そうだよ…夢を忘れない様に書いているのさ」カキカキ

ホムンクルス「書き終わったら見せて下さいね」

子供「おけおけ…」

『オアシス砦_牢屋』


ガチャリ ギー


女狐「…まだ何か話させるつもり?知って居る事は全部喋ってしまった…もう用は無いでしょう?」

アサシン「クックック…そういきむな」

アヌビス「アサシン?女狐を生かしておくのですな?」

女狐「生かす?何をさせるつもりなの?」

アサシン「お前は既に私達に逆らえん…悪いが利用させてもらう…手枷を外してやってくれ」

アヌビス「分かりました…」カチャリ

女狐「利用とは?」

アサシン「簡単な話…お前には酒場のマスターとして諜報の役をしてもらいたいのだ」

女狐「盗賊ギルドの一員として再雇用するという訳?」

アサシン「まぁそうなるか…アヌビスは宿屋の店主…リカオンは宿屋の娘として盗賊ギルドを再構築する」

女狐「どうして私なんかを…」

アサシン「白狼の盗賊団に憧れていたと言っただろう?一員に加えてやると言うのに疑いを持つのか?」

女狐「…」

アサシン「セントラルでお前を無下に扱った事は私も反省している…同志になってくれ」

女狐「同志とは?」

アサシン「白狼の盗賊団が戦って居る相手は魔王だ…人の心を蝕む魔王と戦って居る」

女狐「魔王と戦って何の利が…」

アサシン「利なぞ無い…だが徳はある…お前には魔王に蝕まれた人間達が何をして居るのか諜報して貰いたいのだ」

女狐「私を動かすのはお金よ」

アサシン「徳はな?金より価値があるのだぞ?…お前が白狼の盗賊団に憧れた理由は何だ?金だったのか?」

女狐「…」

アサシン「徳をばら撒く姿に憧れたのでは無いか?」

女狐「私も白狼の盗賊団に…」

アサシン「私と共に来い…世界が今どういう状況なのか教えてやる」スタスタ


リカオン「…」ベロベロベー


女狐「…」ギロ

アサシン「リカオン挑発するな…過去の事はもう忘れろ」

女狐「私は酒場のマスターよ…あなたは宿屋の娘…立場分かってるわね?」

リカオン「アサシン!この女と仲良くなれそうに無い!!」

アサシン「リカオン…お前は私の助手だ」

リカオン「フフ…という事です?立場お分かり?」ニマー

女狐「…」

『シャ・バクダ遺跡_キャンプ』


メラメラ パチ


盗賊「アサシンが帰って来たようだぜ?女狐も連れている…」

女戦士「フフやはりな…」

盗賊「なんだか懐に入られちまう様で気になるんだがよう…」

女戦士「諜報員としてはギルドでトップなのだろう?」

盗賊「よう!アサシン!!口説き落としたんか?」

アサシン「その通り…シャ・バクダをセントラルから取り戻すぞ」

女戦士「その件だが今日のゴーレム討伐は失敗だ…明日以降仕切り直しになる」

アサシン「それは残念だ…女狐よ紹介しておく…我々の指揮官は女戦士だ」

女狐「マスター代理だったわね…初めまして」

女戦士「もう止めたつもりだったのだが…どういう話になって居る?」ギロ

アサシン「人間を蝕む魔王を退治する…それが我々の目的…そういう話をしただけだ」

女戦士「なら良い…只の泥棒ギルドなら私は願い下げする所だった」

アサシン「白狼を紹介しようと思って居たが剣士は何処だ?」

女戦士「残念ながら妖精の笛で寝てしまったのだ…いくら起こしても目を覚まさん」

アサシン「では紹介は後だな…さて女狐…そこに掛けて公爵の周辺状況を話してやれ」

女狐「分かったわ…」


まず盗賊ギルドのセントラル支部の話から…

セントラル上空に鐘を鳴らす未確認の気球が飛び回って居た時くらいから

公爵は白狼の盗賊団に目を付けて盗賊ギルドの解体を始めた…

ギルドに居た優秀な人材は殆ど公爵に買い取られ

新しく設立されたのが傭兵ギルド…このギルドのトップが髭男爵という人物


女戦士「髭男爵…」


傭兵ギルドから近隣の村々へ派兵された人達は皆公爵の息が掛かっているの

シャ・バクダも例外では無くて傭兵達はみんな公爵から資金を得てる…私も同じだったわ

白狼の足取りが全く掴めない中でセントラルの秘密結社…黒の同胞団は

恐らく白狼の暗躍によってあっという間に壊滅

公爵の手足となって働くのは傭兵ギルドと髭男爵だけになった


女狐「…これが公爵の周辺で起こって居る事…聞き覚えある?」

盗賊「ヌハハ大有りだな…しかし隠れて居た訳では無いが俺らの足取りが全く掴めないってのは諜報員として失格じゃ無ぇか?」

女狐「見つけても雲の様に消えてしまうのよ…それが謎なの」

女戦士「なるほど…一所に留まった事は一度も無いな」

アサシン「領事の話を教えてやれ」

女狐「領事は公爵の右腕…何人も居るわ」

盗賊「なぬ?何人もってどういう事よ?」

女狐「詳しくは分からない…複製されたのか…魔法で姿を変えられたのか」

盗賊「マジか…」

女狐「少なくとも私は領事が公爵だと思って居た…そしてこの間まで一緒に行動してた」

盗賊「直ぐ近くに居るって事か…」

アサシン「魔女が未来から聞いた話と一致する…公爵が変化の杖を用いて姿を変えながらどこかに潜んで居るとすると…」

盗賊「難民の中に紛れてるってか…」

アサシン「刺客が既に潜入している可能性が高い…だからこうして女狐を我々の側に置く事にしたのだ」

盗賊「足だ…領事は片足を失って居る…それで見分け付か無ぇか?」

女狐「私とこの間まで一緒に居た領事は両足とも有るわ?」

盗賊「なぬ?」

アサシン「複製された別人と考えた方が良いな」

盗賊「どこまで一緒だったんだ?」

女狐「ハズレ町…そこで分かれた」

盗賊「奴の狙いは?」

女狐「白狼の一味を捕らえて殺す事…宿屋の店主とその娘を捕らえておびき出す作戦だったみたい」

アサシン「まんまと引っかかった訳なのだ…未来の働きによって阻止出来たがな」

女戦士「未来はそれも知って居たという事か?」

アサシン「さぁな?未来と話をしたいのだが…」

女戦士「それは待ってくれ…下手に刺激すると精神分裂症の恐れがあると魔女が…」

アサシン「まぁ良い…未来の予言ではホムンクルスがデリンジャーで暗殺されるとの事…まずはそれを防がねばならん」

女戦士「デリンジャーの中に入って居るのはどんぐりだ…それでは暗殺出来ん」

アサシン「釣ろうとしているのか?相手は何をするか分からん…アヌビス!リカオン!ホムンクルスの傍から離れるな」

アヌビス「由何…」

『遺跡一層目』


スタスタ


ホムンクルス「お戻りになられた様ですね?」ニコ

リカオン「私とオヤジの2人でお前のお付きになったんだ…仲良くしよう」

ホムンクルス「はい…」

リカオン「あの子はどうしてる?壁に向かって何を?」

ホムンクルス「未来君の事ですね?絵を書いています…邪魔にならない様にお願いします」

リカオン「絵?…あの時の殺気だった子とは思えないな」

ホムンクルス「未来君はいつも通りですよ?」

リカオン「少し話をしてみて良いか?」

ホムンクルス「はい…ですが荒立てる様な真似はお止めください」

リカオン「分かって居る…」スタスタ


子供「…」カキカキ


リカオン「君!?目覚めた様だね…名前は未来君だったね?」

子供「んん?誰?」クルリ

リカオン「覚えて居るかい?」

子供「ハッ!!」ガバ

リカオン「おととと…何もする気は無いよ…身構えなくて良い」

子供「アレ?夢の中の人…」

リカオン「混乱しているのかい?」

子供「尻尾は!!アレ?無い…やっぱり夢か…」サワサワ

リカオン「フフ勝手にお尻を触らないで欲しい」

子供「あぁゴメンよ…尻尾を切るつもりだったんだ…そんな夢さ」

リカオン「夢?」

子供「そうさ夢を見たんだ…」

リカオン「…」---この子…---

子供「僕に何か用?忙しいんだ…」クンクン

リカオン「ちょっと…何処の匂いを嗅いで…」

子供「おかしいなぁ…獣の匂いはどこからするんだろう?」

ホムンクルス「未来君?絵は書き終わりましたか?」

子供「まだだよ…新しい羊皮紙が欲しいな…書きたい事が一杯さ」

リカオン「私が見ても?」

子供「僕にしか分からないと思うよ?」

ホムンクルス「リカオンさん理解出来ますか?」

リカオン「う~ん…何だろう?分からない…」

子供「僕にしか理解できないよ…邪魔しないで」

リカオン「未来君…光る隕石が落ちるという話はどうなったのかな?」

ホムンクルス「リカオンさん!お止めください…未来君を混乱させてしまいます」

リカオン「この話はマズかったのか…」

子供「…」ボーゼン

リカオン「また今度聞かせて貰おうかな…ゴメンね要らない事を言ってしまって」

子供「ちょっと待って…」

ホムンクルス「未来君?終わりにしましょう…お絵描きの続きを…」

子供「なんで僕の夢を君が知ってる?君は僕の夢の中にも出て来た…尻尾どうしたの?本当は君…尻尾あるよね?」

リカオン「切られたく無いから隠してる…それで満足?」

子供「…」スラーン

ホムンクルス「未来君…ここで武器を使うのは禁止されて居ますよ?」

リカオン「どうも私が絡んではいけない様だ…」タジ


子供「なんで僕はいつの間に剣を2本背負ってる?」


---次の瞬間---


声「ダメ!!あなたはは私の奴隷…放さないから」

声「行かないで…お願い…」

僕「…ごめんよ」

声「お願い…行かないで」


-----------

-----------

-----------


子供「ハッ!!…」ポロリ

ホムンクルス「未来君?武器を収めて下さい…」

子供「この剣…記憶が頭に流れて来る…これは夢じゃない!!記憶だ!!」

リカオン「??」


アヌビス「リカオン…こちらへ来なさい」グイ


リカオン「オヤジ…私はどうも言ってはいけない事を言ってしまった様だ…」

アヌビス「ホムンクルス様は私が守ります…お前はあの子を死んでも守りなさい」

リカオン「どういう事?」

アヌビス「勘ですよ…お前にも勘が働いて居る筈」

リカオン「勘?そんな…」

アヌビス「獣人への変態を許可します…後の事は私に任せて必ずあの子を守るのです…分かりましたね?」

『勇者の像の前』


シクシク グスン


情報屋「ぅぅぅ…」ポロ

子供「情報屋さん…パパとママは?」

情報屋「あら未来君…剣士は眠て居るわ?女海賊は飛空艇で見回りに出てる」

子供「ローグさんも寝てるのかぁ…どうしよっかなぁ…」

情報屋「どうしたの?」

子供「暇だから少し散歩がしたかったんだ」

情報屋「それなら私が連れて行ってあげるわ」ヨイショ

子供「いやいいよ…それ冒険の書だね?読んでたんだよね?」

情報屋「どうしてこの書物が冒険の書だと知って?」

子供「夢で見たのさ…僕の子ウルフは何処に行ったか知らない?」

情報屋「遺跡の中には入れて貰えないから外で待って居るかと…」

子供「僕探して来るよ」

情報屋「一緒に行くわ?」

子供「大丈夫だって…ちょっと探して来るね」シュタタ

情報屋「未来君!待ちなさい…」

リカオン「私が追いかける…任せて」シュタタ

『雪原』


シュタタ


子供「なんで追いかけて来るのさ」

リカオン「子供だけで外をうろつくのは危険でしょう?」

子供「尻尾切るぞ!!」

リカオン「気を取り戻した様ね」

子供「うるさいな!君の方こそ武器を何も持たずに危ないんじゃ無いの?」

リカオン「私は爪と牙が武器なのよ」

子供「ふ~ん…」ジロリ

リカオン「このままドリアードまで行くつもりね?」

子供「だったら何さ」

リカオン「どれだけ危ない事なのか分からないくらい子供なのね」

子供「そんなの知らないよ!!今やらないと全部手遅れになるんだ!!」

リカオン「ゴーレムに襲われたら?」

子供「悠長な事言ってる場合じゃ無いんだって!!みんなそれが分かって無い!!」

リカオン「光る隕石が落ちて来るのは本当なのね?」

子供「それが落ちたら終わりさ…その前に止める」

リカオン「終わったら私の指示に従って貰える?」

子供「良いよ…何でもいう事聞いてあげる…僕を食べたって良いよ」

リカオン「食べる?フフ確かに美味しそう」

子供「その方が僕もラクなんだ…大事な記憶を無くして行くのが耐え難い」

リカオン「あの絵の事ね…」

子供「そうさ無くしたくないから必死に書いた…でもまだ終わりじゃない事を思い出した」

リカオン「よし付き合ってあげる…獣人に変態するから少し待って」

子供「獣人?」


ガブリ!


リカオン「見ない方が良いかも?」モサモサ グググ

子供「自傷行為で変身するのか…」

リカオン「ガウルルル…背に乗って!!その方が早い」グルル

子供「やったね!!ラクちんだ」ピョン ドス

リカオン「しっかり掴まって!!」シュタタ


ドヒューーーーン  シュタッ シュタタ


子供「うわっ早っ…馬より全然早いじゃ無いか…」

リカオン「舌を噛まない様に」シュタタ

子供「よし!!これで狭間に入れば直ぐだ…ハイディング!」スゥ

『夜_キャンプ前』


タッタッタ


情報屋「見つかった?」

盗賊「足跡が途中で無くなってる…ドリアードの方角だ」

情報屋「あの子貝殻も持って行ってない」

盗賊「追いかけるしかあるめぇ…剣士と魔女を叩き起こすぞ」ダダ

女戦士「どうやら私達は未来の覚悟を甘く見て居た様だったな…」

情報屋「女海賊とは連絡付いた?」

女戦士「あぁ…直ぐに引き返して来る」

アサシン「今晩が攻め時かもしれん…ゴーレムは身動き一つして居ないそうだ」

女戦士「シャ・バクダはエルフとドラゴンによって陥落するだろう…どうする?我々も未来の後を追うか?」

アサシン「待て…ホムンクルスも守る必要がある…行かせるとしたら剣士と女海賊…そして現場を知って居る盗賊だ」

情報屋「ドリアードは毒で満たされて居て誰も近づけないわ」

アサシン「そういえばそうだったな…では盗賊の代わりに私が行こう」



『遺跡_一層目』


ペシン ペシン!


盗賊「おい起きろ!!剣士!!魔女!!」ユサユサ

魔女「はゎゎ…ここは何処じゃ?」ゴシゴシ

盗賊「遺跡ん中だ…未来が居なくなったんだ…寝てる場合じゃ無ぇ!!」

剣士「!!?未来…」ガバ

盗賊「やっと起きたな?どうやら未来は一人でドリアードに向かった様だ…追うぞ!」

魔女「なんじゃと?一人とな?」

盗賊「リカオンが後を追ったそうだ…無事だとは思う」

魔女「記憶を失っては居らなんだか」

盗賊「しばらく大人しくして居たんだがよう…気付いたら居ない…多分狭間を使って移動してんだ」

魔女「暗示を掛けぬと言う事を聞きそうに無いのぅ…」

剣士「いや…このままで良い…未来を信じる」

盗賊「兎に角飛空艇が戻って来たら後を追うぞ…ドリアードん所にはゴーレムがまだ一体居る筈なんだ」

魔女「隕石を落とさねばならぬか?」

剣士「女海賊の爆弾で倒せそうだよ…僕が弓を使って遠距離から打ち込めば良い」

盗賊「だな?行くぞ!!」ダダ

『キャンプ前』


フワフワ ドッスン


女海賊「ちょいちょい!!どうなってんのさ!!未来は一人で行っちゃった訳?」

アサシン「リカオンが後を追って居る」

女海賊「リカオン姉さんは貝殻持って無いの?」

アサシン「渡して居ない…連絡の手段が無いから飛空艇で後を追う」

女海賊「マジか…」

アサシン「シャ・バクダに居る2体のゴーレムは動く気配は無いか?」

女海賊「無い…砦はもうエルフとドラゴンが取り付いて今晩中には制圧だよ…」

アサシン「明日から忙しくなるな…」

女海賊「それより未来の方が心配…北の方にまだ一体ゴーレムが居る」


タッタッタ


盗賊「剣士と魔女を起こして来たぜ?」

アサシン「剣士!!飛空艇に乗れ!!」

魔女「わらわはどうするかのぅ?」ノソノソ

アサシン「魔女は暗殺者の出現に備えてくれ…」

魔女「ふむ…ホムンクルスの傍らに居れば良いのじゃな?」

アサシン「万一の蘇生は魔女にしか出来ない…盗賊もローグと商人を起こして事に備えてくれ」

盗賊「お前等3人だけで良いのか?」

アサシン「勇者2人も居て足りんと言うか?」

盗賊「おっとぉ…そういやそうだな」


フラフラ ドタ


情報屋「ぅぅぅ…」ヨロ

盗賊「おいどうした!?」

情報屋「何でも無いわ…軽い目まい」

アサシン「情報屋も少し休め…雪の中を歩き疲れたのだろう」

女海賊「もう行くよ!!剣士早く乗って!!」

剣士「あ…うん…」ピョン スタ


フワリ バサバサ

『飛空艇』


ビョーーーウ バサバサ


アサシン「女海賊…デリンジャーは持って居るな?」

女海賊「あるよ…どんぐりの入ったデリンジャーね」

アサシン「よし…時の王から授かった祈りの指輪は?」

剣士「僕が持ってる…」

アサシン「それで良い…魔女が聞いた未来の予言はすべて回避出来ている」

女海賊「ホムちゃんの暗殺って本当に起きるんかな?」

アサシン「起こさせはしない…予言は外れる」

剣士「それは未来の記憶を消す行為なんだよ」

アサシン「何?」

剣士「未来は大事な記憶を掛けて未来を変えようとしている…この重みを理解出来るかい?」

女海賊「未来が変わる…」

剣士「そう…そうやって未来は記憶を失っていくんだ」

アサシン「次元を超えた者にしか分からん話だ…」

剣士「だから記憶を失う前にやるべきことをやりたい…それが未来を突き動かしている強い動機」

女海賊「よっし!!全力で未来をサポートする」

剣士「例の爆弾はあと何個ある?」

女海賊「3個…それで最後」コロン

剣士「僕が使うね」

『雪原』


ヒュン! バカーン!!


子供「右!!」

リカオン「っくしょう!!私の足でも振り切れない…」ピョン シュタタ

子供「左!!」

リカオン「君は何か撃てないのか?」ピョン シュタタ

子供「何撃っても無駄だよ…あんな大きな巨人なんか倒せる訳無い」

リカオン「どうする?…どうする?…」

子供「妖精!!出て来い!!あのゴーレムを眠らせてくれぇ!!」

リカオン「何言ってんのよ!!ちゃんと後ろ見てて」シュタタ


ヒラヒラ パラ


リカオン「雪…これが妖精?」

子供「よしよし!!雪で幻惑されてる…突き放せるぞ?」


ピカーーーー チュドーーーーン!!


子供「え!?アレはママの爆弾…何処から?」キョロ

リカオン「上!!彗星!!」

子供「ママの飛空艇だ!!」


ゴーレム「ヴォオオオオオオオオオオ!!」ドスドス


子供「ゴーレムが止まらない…走って!!」

リカオン「エルフ達はこんなのと戦って居たと言うの?」シュタタ

子供「僕達もずっとこんな戦いなんだ!!」スラーン

リカオン「何をする気?」

子供「この剣は何でも切れる破壊の剣…折り返してゴーレムの脇を抜けて!!」


ピカーーーー チュドーーーーン!!


子供「今!!」

リカオン「ちょっと…ええい!!」クルリ シュタタ ピョン


ゴーレム「ヴォオオオオオオオオオオ!!」グラリ

子供「行けぇぇ!!」スパ スパ スパ

リカオン「切った…マジかよ」アゼン


-------------

-------------

-------------

『記憶』


僕「うーん…筋肉を感じる」

君「筋肉?」

僕「君の体からすごい熱量の筋肉を感じる」

君「フフ嫌いか?」

僕「お?初めて笑ったね?」

君「…」ジー

僕「笑って居た方が可愛いよ」

君「フフ…」ピト

僕「君暖かいなぁ…筋肉が多いからかなぁ」


-------------

-------------

-------------

『今』


シュタタ シュタタ


リカオン「…返事をしろ!気は確かか?」

子供「あ…なんだ一瞬夢を見た…」

リカオン「ゴーレムは追って来ない…君の剣で致命傷を負った様だ」

子供「そっか良かった…飛空艇は?」

リカオン「高度を下げて来て居る…あ!!?2人飛び降りたぞ?」

子供「パパが来たんだね?」

リカオン「飛空艇が去って行く…どうしたと言うのか…」


タッタッタ


アサシン「2人共無事か?」

子供「パパぁ!!」シュタタ

剣士「良かった間に合った…」ガシ

アサシン「リカオン良く未来を守った」

剣士「リカオンはウェアウルフだったのか…」

リカオン「飛空艇が去って行くのはどうして?」

アサシン「シャ・バクダのゴーレム2体が目を覚ました様なのだ…妖精の笛で眠らせに向かった」

子供「誰が乗ってるの?」

アサシン「女海賊一人…その方が都合が良いらしい」

子供「ママが一人で…危ないよ」

アサシン「お前が言うな」

子供「そうだ!!ドリアードの中のアダムを破壊しなきゃ…」

アサシン「知って居るかどうか知らんがドリアードは毒で満たされていて私以外が入る事は出来ない」

子供「知ってるよ」

アサシン「クックックそうか…そんな事まで知って居たか」

子供「ここまで来たんだ!パパとアサシンさんも一緒に行くよね?」

剣士「未来は止めても行こうとするだろう?」

子供「パパは僕を止めない…理解して居るから」

剣士「よし!行こう…」スック

子供「待って!!皆に線虫を掛ける…線虫!癒せ」ニョロニョロ

リカオン「うっ…なんだこの虫は…目の中に…」ゴシゴシ

子供「線虫が毒を中和してくれる…これでドリアードに入れる」

アサシン「準備万端だった訳か…まぁ良い!!案内する…こっちだ」スタ

『ドリアード喉部入り口』


アサシン「少し見ない間にソリの乗り捨てが増えて居るな…」

子供「僕の記憶と形が全然違う…花が無い」

アサシン「花?」

子供「大きな食虫植物の筈…」

アサシン「ここで間違い無いぞ?この洞穴の下に胴体が埋まって居る」

リカオン「臭いな…頭が痛くなる」

アサシン「手短に終わらせよう…入るぞ?」スタ



『喉部』


グググ グググ


アサシン「ムム!!来た道が塞がれて…マズいなこれでは出口が無くなる」

子供「教えてあげる…ドリアードは熱に弱い…火で炙れば開くよ」

剣士「未来はその経験があるんだな?」

子供「うん…」

剣士「来い…撫でてやる」ナデナデ

子供「胃部から核部へ行くのに何枚も隔壁が有って進むことが出来ない」

アサシン「ふむ…それをどうするつもりだったのだ?」

子供「コレだよ…」スラーン

剣士「…何かエンチャントが掛かっている様だ」

子供「破壊の剣っていう物なんだ…量子転移がエンチャントされてる…何でも切れるんだよ」

剣士「ゴーレムを切ったのはその武器か…」

子供「驚いた?」

剣士「リカオンがやったのだとばかり思って居た」

リカオン「いくら私の爪が鋭くても石を簡単に切れるほどでは無い」

剣士「未来は二刀流を目指すか…フフそれも良い」

子供「僕が道を開くからパパはアダムを破壊して?」

剣士「分かった…」

『胃部』


シュゥゥゥ ポタポタ


子供「胃液が強い酸だから触らない様に」

アサシン「壁面には触るな?ドリアードに捕食されるぞ?」

リカオン「え!!?もう触ってるし…」

子供「その壁面から敵がどんどん湧いてくるから気を付けて」

アサシン「敵が湧く?」

子供「今から僕が隔壁に穴を開ける…そしたら一気に出て来るよ」

アサシン「お前の出番だな?」

リカオン「丁度お腹が減っていた所…」

子供「じゃぁ穴を開けるね?」スラーン


スパ スパ スパ


子供「どんどん切り進むから敵が出てきたらお願い」スパスパスパ


ズズズ ズズズ ボチャッ!!


リカオン「な…なにコレ」タジ

異形の生物「ぎょるば…べひひ…」ズル ズル

アサシン「こんな仕掛けは前に来た時は無かった…」スラーン

リカオン「食べちゃうよ?グルル…」ガオォォ ガブリ

アサシン「後ろ!!」ダダ ズン!

リカオン「うんま!!」ガブガブ

異形の生物「ぐぇぇぇぇ…」ピクピク

剣士「未来…後ろは任せろ…切り進め」スラーン ピカー

『核部』


スパスパスパ ドサ


子供「ここだ!!」

アサシン「後方はリカオンに任せて良さそうだ…どうする?」

子供「僕はエリクサーを隔ててる壁を切り崩して抜くからパパはあの機械を壊して」

剣士「…」ピョン シュタ

子供「アサシンさん!!どこかに魔王を封じた魔石が在る筈…探してよ」

アサシン「そうだった…確か第3皇子はあの辺りで…」スタスタ

子供「パパ?じゃぁエリクサー抜くね…」スパスパ


ザバァァァァ


子供「うわぁぁぁ…流される」ザブザブ

剣士「アサシン!!エリクサーに飛び込め!!」

アサシン「何?」

剣士「この大きさの機械を壊すのは爆弾が早い」

アサシン「…そう来るか」ピョン ザブーン

剣士「未来!!爆発に合わせてエリクサーに潜れ…行くぞ」チリチリ ポイ

子供「え?え?え?…早い…」ジャブン

剣士「3…2…1…」ジャブン


ピカーーーー チュドーーーーーン!!


子供「ぷはぁ!!やったぁぁ!!」ザブザブ

アサシン「クックック‥‥エリクサーの飲み放題か」ゴクゴク

剣士「後は魔石…魔石を奪えばすべて終わりに…」

子供「良かったぁぁ…これで安心して帰れる」


シュタタ シュタタ


リカオン「…どういう事?」

アサシン「作戦は成功だ…祝杯だお前もエリクサーを飲め」

リカオン「なんだ急に爆発があってビックリした…てか敵が増えてそれどころじゃない」

アサシン「おやつが食えて満足だろう?」

剣士「魔石だ!!壁面に埋まって居る…未来!!その剣で切り出せ」

子供「う…うん!!」シュタタ

剣士「ここだ…この奥に埋まって居る」

子供「おっけ!!」


スパ スパ スパ


--------------

--------------

--------------

『記憶』


君「あなた!!何かしたわね?」フラ

僕「あ…今君の所に行こうと思ってたんだ」

君「何をするつもりなの?」

僕「君には正直に話して置くよ…ただ目を覚ましたら何も覚えていない」

君「まさかあなた…一人で放射能を集める気ね?ダメよ…許さない」

僕「そんな話したく無いよ…教えてあげる…僕はね…君を守る為に次元を超えて来たんだ」

君「何の話?」

僕「でもね…世界の本質を見て居なかった…このままじゃ僕の大事な人皆失う事に気付いた」

君「話が呑み込めない…意味が分からないわ」

僕「ゴメンね言葉が足りなくて」

君「兎に角一人で行くのは許さないから」グイ


『今』


君の記憶を奪ったのは僕だった…

記憶を失う事がこんなに悲しい事だったなんて

…ゴメンよ

もう何も奪わせないから…


子供「ぅぅぅ…」ポロリ

剣士「未来…しっかりしろ未来…」

子供「パパ…僕の記憶が消えて行く…」

剣士「魔石は手に入れた…脱出するぞ」グイ

アサシン「早くしろ!!リカオンが抑えられるのはそろそろ限界だ」

剣士「未来!!背中に乗れ」

子供「大丈夫…走れる」シュタタ


ザザー ザザザ


アサシン「何だこんな時に!!」


”アサシン!!返事して!!”


アサシン「今取り込み中だ!!手短に用件だけ言え!!」

女海賊「ホムちゃんが殺されたって魔女から連絡が…」

アサシン「なんだと!!?」

女海賊「ほんで超やばい事が起こってる」

子供「まさか!!…ちょっとアサシンさん僕にも聞かせて!!」

女海賊「光る隕石が飛んで来る…どっか地下に避難して」

アサシン「それはいつだ?」

女海賊「詳しい事分かんない…」

アサシン「今からドリアードを脱出する!!迎えに来い」

女海賊「無理!!魔女とアヌビスのおっさんが瀕死でエリクサー欲しいって…私は遺跡に向かってる」

アサシン「魔女までやられたのか…」

子供「…」プルプル

アサシン「貝殻の会話は続けろ…狭間には入るな」

女海賊「ゴメン!遺跡に戻ったら直ぐに通話再会する…狭間に入って加速したい」

アサシン「ええい!!何もかにも…」

子供「うおぉぉぉぉぉ!!」スパ スパ スパ ブンブン

剣士「未来!!落ち着け…落ち着いて考えるんだ」

子供「くそう!!一歩遅かった…何の為に此処まで来たんだ…」

アサシン「未来…思い出せ…光る隕石は何処に落ちる?」

子供「エルフの森に4発…それ以上の事は知らない」

アサシン「リカオン!!外に出て遠吠えでエルフ達に知らせろ!!」

子供「僕がやる!!」シュタタ

剣士「未来!!待て…」シュタタ

『喉部』


ゴゥ ボボボボボ


子供「開け!!このぅ!!」スパ スパ

剣士「火炎地獄!」ボゥ ボボボボボ

アサシン「剣士!!異形の生物が追って来られない様に何か魔法を撃てないか?」

子供「僕がどんぐりを持ってる!!木を育てて道を塞ぐ!!」シュタタ

アサシン「リカオン!!戻れ!!通路を塞ぐ!!」

リカオン「ガウルルル…」シュタタ シュタタ

子供「どんぐり爆弾を食らえ!!」ポイ パラパラ

子供「成長魔法!」グングン ニョキニョキ メリメリ

リカオン「ふぅぅお腹一杯…」ゲフゥ

剣士「出口だ!!」シュタタ

アサシン「リカオン!!遠吠えでエルフに危険を伝えろ」

リカオン「よーし…久しぶりの遠吠え…行くよぉぉ」



アオーーーーーン  アオーーーーーーン

『シャ・バクダ遺跡』


フワフワ ドッスン


女海賊「ローグ!!早くエリクサー運んで!!」

ローグ「待ってたっす」ダダ

女海賊「お姉ぇ!!どんな状況なの?」ダダ

女戦士「魔女の血が止まらん…私の血を輸血してもどんどん出血するのだ」

女海賊「なんでそんな事になってんのさ!!」

女戦士「ホムンクルスが持って居た毒牙のナイフ…それの効果だ…早くエリクサーで治癒せねば死ぬ」

女海賊「ホムちゃんはそれでやられた?」

女戦士「背中から心臓を一突き…」

女海賊「くっそ!!片足の領事だね?」

女戦士「2人居たのだ…一人目を捕らえて安心した所をやられた」

女海賊「全部捕まえた?」

女戦士「今頃盗賊にバラバラにされている」

女海賊「バラバラって…」

女戦士「首を落としても死なん…急所が何処なのか分からんのだ」

女海賊「マジかよ…」ゴクリ

『遺跡一層目』


ザワザワ

何が起こるって言うの?

隕石が落ちて来るらしい…奥の方へ詰めてくれ

下層の方が空いてる!!下へ降りて行けぇ!!



ローグ「エリクサー持って来やした…飲ませて下せぇ」

情報屋「私は止血で手が離せない…ローグが飲ませて」グググ

魔女「…」グッタリ

ローグ「あわわ…」クィ

情報屋「アヌビスさんにも…アヌビスさんはもう出て来る血が無い…手遅れかもしれない」

ローグ「やるだけやるっす…」グイ

アヌビス「…」グター


タッタッタ


女海賊「片足の領事は何処?」

情報屋「下層に降りる途中の側道よ…石板が発掘された部屋」

女海賊「おっけ!!」

ローグ「姉さん!!まだ潜んでるかも分からんので注意して下せぇ!!」

女海賊「炙りだしてやる!!」ゴソゴソ ピカー

『隠し部屋』


メラメラ ボゥ


盗賊「商人!!死体を切り刻んで全部燃やせ!!」

商人「うあぁぁぁ!!」グサ グサ


タッタッタ


女海賊「盗賊!!片足の領事は?」

盗賊「やっと戻ったか!!見ての通りよ…」

女海賊「毒牙のナイフは?」

盗賊「俺が持ってる…これを使うたぁ想定外だったな?」

女海賊「まだ潜んでるかも知れない…探すよ」ピカー

盗賊「良い物持ってんじゃ無ぇか!!」

女海賊「下層へ!!」ダダ

『下層』


ザワザワ ガヤガヤ

なんだ?この明かりは?

階段を降りて来る


コーン コーン コーン


女海賊「出て来やがれ!!片足の領事!!ミスリルの音と光の石!!逃がさないよ…」

女海賊「あんた達全員この光を見ろ!!背を向けた奴はぶっ殺す!!」ターン ターン

難民達「なんだ?どういう事だ?」ザワザワ

女海賊「こん中に魔王が紛れてんだ…全員顔を上げな!!」ターン ターン

女狐「居た!!一人隠れた!!…右奥」

盗賊「アレだな?」

女海賊「全員良く見ておきな…今度は実弾を撃つ…」ツメツメ

盗賊「おいおい…人込みの中でぶっ放すんか?」

女海賊「うっさい黙れ!!魔王がどんなんなのか全員目ん玉ひん剥いて良く見てろ!!」


ターン ベチャ


浮浪者「ぎゃひぃぃ…」バタバタ

女海賊「どうよ?逃げ場は無いぞ?魔王!!」

浮浪者「ぎょっふっふっふ…無駄無駄ぁぁ…私は不死身ぃぃ」ズルズル

女海賊「私知ってんだ…魔王は狭間の外じゃ何も出来ない…人間を乗っ取るしか脳が無いってね」ターン ベチャ

難民達「ひぃぃぃ…死…死なない…」タジ

女海賊「どうよ?光に焼かれる気分は?」

浮浪者「ぐぅぅ…へべべ…その…その光を向けるなぁぁ!!」ズルズル

女海賊「盗賊!!あんたの出番!!ミスリルダガーをぶっ刺して!!」

盗賊「ほら来た!!俺が魔王に止め刺す!!」ダダ ブスリ

浮浪者「ぐるるるる…ぐぐぐ」シュワシュワ

女狐「影が光で焼かれて…消えて行く…」

女海賊「他に光に背を向ける奴は居ないか!!」クルリ

難民達「…これが勇者か…」

盗賊「そうよ…勇者に逆らう奴はこうなる…俺らは魔王なんぞ怖くない!」

女海賊「盗賊!!領事をバラバラにして焼くよ!女狐は辺りを警戒して」

女狐「え…あ…はい」ソソクサ

『キャンプ』


ドタドタ


女戦士「避難急がせろ!!」

ローグ「頭ぁ!!飛空艇の移動準備出来やした!!」

女戦士「ローグだけでオアシス砦に行って飛空艇を砦の陰に隠せ」

ローグ「ええ?頭は残るんすか?」

女戦士「アサシンが居ない状況で私はここを離れられない…向こうでこちらに戻る機を伺え」

ローグ「勝手に飛空艇動かして姉さん怒りやせんかね?」

女戦士「そんな事言ってる場合では無い!!早く行け!!」

ローグ「生き延びたらマッサージ約束して下せぇ」

女戦士「分かった!!早く行け」

ローグ「死んでも戻って来やす!!」ダダ

女戦士「400以上もの隕石が降って来るのだ…精々祈れ」


アオーーーーーーン アオーーーーーーン


女戦士「ウルフの遠吠え…」

ローグ「あわわ…いよいよヤバイ感じっすね…」

女戦士「空気が静まった…急げ」

『勇者の像』


ピカーーーー


女海賊「…光に目を背ける奴は容赦しないよ!!」ズカズカ

情報屋「下層で何が起こって居るの?」

盗賊「領事がもう一人紛れてた…3人目だ」

女海賊「魔女とアヌビスのおっさんは無事?」

情報屋「出血は止まった…後は回復を…」

女海賊「隕石落ちるまであとどんくらいか分かる?」

情報屋「ホムンクルスが言ってたのは4時間後に発射…それからしばらく時間を空けて来る筈…多分もうそろそろよ」


ザザー ザザザ


”ママ?聞こえる?”


女海賊「未来…あんたはちゃんと地下に隠れてる?」

子供「大丈夫だよ…ドリアードの中さ」

女海賊「そこを動かないで!後で迎えに行くから」

子供「ねぇママ…良く聞いて」

女海賊「何?又無茶な事言ったらブツよ?」

子供「良く聞いてね…」


隕石は4発落ちて来る

この隕石が原因で放射能という毒が世界に散らばるんだ

毒のせいで人類は絶滅するんだよ

今から僕とパパでそれを防ぐ


女海賊「ダメ!!無茶な事は許さない!!」

無茶じゃない…ちゃんと考えがあるんだ

隕石が落ちた跡にパパが持ってる祈りの指輪で僕が放射能を集める

そしてパパが量子転移で消し去る

上手く行けばそれですべて終わるんだ


女海賊「量子転移?それってヤバい魔法じゃなかったっけ?」

子供「パパならきっと大丈夫さ…だって勇者じゃない?」

女海賊「勇者だからヤバいんだよ!!どっか飛んでく…」

子供「ママ?今やらなきゃ世界が滅ぶ…僕はそれを見て来たんだ」

女海賊「そんな…」

子供「ママも勇者だから…後の世界はよろしく…魔王を封じた魔石はアサシンさんが持ってる」

女海賊「後の世界はよろしくってあんた…」

子供「ママ?産んでくれてありがとう…大好きだった」

女海賊「ちょっと未来!!」

剣士「女海賊…未来の事は僕が責任を持って守る…帰りを待て」

女海賊「剣士も…どうして…」ポロポロ


ドゥーーーーーーム ゴゴーーーーーン


女戦士「何かに掴まれ!!」ダダダ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


女海賊「未来!!未来!!返事して!!」


ザザー ザザザ


”ママ?行って…るザザーーザザザザ”


女海賊「未来!!」

盗賊「おい伏せろ!!天井が崩れるかも知れん」グイ

女海賊「貝殻…貝殻が…」ノソノソ

女戦士「出入口を塞げ!!爆風が来る!!」ダダダ


ザワザワザワ ドガーーーーーン


盗賊「ぐはぁぁヤバイなこりゃ…」


ザワザワ ザワザワ

とーちゃん僕達死ぬの?

静かに…皆の迷惑になるぞ?

外で何が起こってるんだ?

ザワザワ ザワザワ

『ドリアード喉部』


ドゥーーーーーーム ゴゴーーーーーン


リカオン「…今ので4発目」

アサシン「爆発が長すぎる…これほど長く光に焼かれては森が持たん」

リカオン「これを防ぎたかったのか…」ボーゼン

子供「これだけじゃ終わらないのさ…ここから地獄の始まりなんだ」

剣士「未来…この光が収まったら行くのだな?」

子供「うん…外で僕がパパを鉄に変性させる…パパは僕が集めた放射能を量子転移で消し去れば良い」

アサシン「私とリカオンは遺跡に戻って魔石を魔女に預ければ良いな?」

剣士「壺に封じればそれで良い…頼んだ」

子供「そろそろ光が収まるよ…パパ行こう!!」

アサシン「リカオン!見ておけ…勇者の最後だ」

子供「ダメ!!僕が放射能を集めるとみんな一瞬で液体になって蒸発するから来ないで!」

アサシン「それほど強力なのか…」

子供「鉄に変性しても直ぐに崩れ始める…量子転移が終わるまで出たらダメ」

剣士「未来!!行くぞ…」

子供「アサシンさん!リカオンさんも今までありがとう…戻ったらママに冒険の書を読ませて?」

アサシン「冒険の書?」

子供「読めば分かる…じゃぁ行くね!!パパ!?ハイディングで移動しよう」

剣士「フフ…ハイディング!」スゥ

子供「ハイディング!」スゥ


--------------


アサシン「行ってしまったか…」

リカオン「マズいな…オヤジに怒られるかも知れない…」

アサシン「どうした?」

リカオン「あの子を死んでも守れと言われて出て来たんだよ」

アサシン「守り抜いたでは無いか…そして見送っただけの事」

リカオン「アサシンからそう説明して貰えるかな?」

アサシン「クックック勇者の苦悩に比べればゴミの様に小さい」

リカオン「そう言わないで…あ!!外が赤く光ってる…」

アサシン「見て見たいのだが…」

『シャ・バクダ遺跡』


シーン パラパラ


盗賊「お…収まった様だ…俺ら生きてんぞ?」キョロ

女海賊「ぅぅぅ…未来…未来…」ポロポロ

盗賊「俺ぁ外見て来る!!情報屋!!女海賊を頼む」ダダ

商人「…」ボーゼン

盗賊「おぉ商人!!血だらけで何突っ立ってんだ?」

商人「エリクサー…」

盗賊「勇者の像の前に樽が置いてある…てかその血はホムンクルスの血だな?」

商人「ホムンクルスはまだここに居る…早くエリクサーに漬けないと…」ヨタヨタ

盗賊「はぁぁこりゃしばらく立ち直れそうに無いな…」

女戦士「盗賊!!夜空にオーロラが光ってる…来い!!」

盗賊「オーロラだと?」ダダ

女戦士「暁色に光るオーロラの筋だ」

盗賊「おぉ!!」


ダダダダ ピューー


盗賊「どわっ!!女海賊…出て行きやがった」

女海賊「未来!!返事して未来!!うぅぅ…」ポロポロ


シュン!


盗賊「オーロラが消えた…何が起こってんのよ…」

女海賊「うわぁぁぁぁん…未来!!剣士ぃぃ!!」ダダダ

盗賊「女戦士…お前の妹も相当ダメージでかいぞ?」

女戦士「剣士と未来が…どうした?」

盗賊「失ったっつーか…世界を救う旅に出ちまった」

女戦士「掛ける言葉が思いつかん…」

盗賊「紐付けとかないとどっか行っちまうぜ?」

女戦士「行って来る…」スタスタ

『日の出』


ズズーン


盗賊「こりゃまたトロールが綺麗に整列したもんだ…」

女狐「あなた達…いつもこんな風に生きて来たの?」ボーゼン

盗賊「まぁな?常に命掛かってる…どうよ?白狼の盗賊団の居心地は」

女狐「正直…思って居たのと全然違っていた」

盗賊「金の匂いなんか何処にも無いだろ?俺なんか金貨一枚も持って無ぇヌハハ」

女狐「領事の中に魔王が居たなんて…思っても居なかったわ」

盗賊「エルフがなんで戦ってるのかも知らなかった口だな?」

女狐「もっと勇者の行いが知られれば違っていたかも知れないのに…」

盗賊「人知れず戦って誰もそれを目撃して居ない訳よ…伝える奴が決定的に居ない」

女狐「あなたが伝えれば良いじゃ無いの?」

盗賊「俺が何か言ってもほとんどの奴らは聞きやしねえよ…馬の耳に念仏ってやつだ」


スタスタ


女戦士「女狐!!情報屋に代わってお前が魔女の面倒を見ろ」

盗賊「んん?何か有ったんか?」

女戦士「情報屋が倒れた…過労だな…少し休ませる」

盗賊「マジかよ…動ける奴が俺しか居無いぇじゃ無ぇか…」

女戦士「ローグが直に戻る筈だ」

盗賊「アサシンはまだ戻って来んのか?」

女戦士「貝殻の通話が出来ない…待つしかない」

盗賊「商人も腑抜けちまったしなぁ…」

女戦士「今から食事を作らせるから配給を配って貰いたい…」

盗賊「へいへい…」

『勇者の像』


ガヤガヤ ザワザワ

調査隊を募集してるそうだ!動ける奴は行くぞ!

水だぁ!!水を運び入れろぉぉ



盗賊「食い物持って来たぜ?食えるか?」

情報屋「吐き気がして…」ウップ

盗賊「おい!!女海賊!!お前も食え!!」

女海賊「…」ボーーーー

情報屋「そっとしておいて?貝殻を握ったままずっと蹲ってるの」

盗賊「んぁぁぁ…商人はどうした?」

情報屋「きっとホムンクルスの所ね」

盗賊「しゃーねぇか…昨日の今日じゃ放心状態だろうな」


タッタッタ


ローグ「エンチャントの掛かった角を持ってきやしたぜ?」

盗賊「おぉぉローグ!!お前が居なくて寂しかった所だ」

ローグ「この角を魔女さんとアヌビスさんに…」

盗賊「ほんで飛空艇に乗って来たんだろ?」

ローグ「へい…ですが頭が被害状況を確認するって言って乗って行っちまいやした」

盗賊「まぁそうだろうな…んで?空から見た感じどうなのよ?」

ローグ「エルフの森方面がヤバイっすね…全面火事になって居やす」

盗賊「オアシス砦は?」

ローグ「あっちは石壁に囲まれてるんで耐えやした…石ってスゴイっすね?」

盗賊「ほんじゃしばらくオアシス砦が拠点になりそうか…」

ローグ「剣士さんと未来君はどうなったんすか?」

盗賊「あぁぁ…ちっと言いにくいんだが…女海賊の様子見て察して欲しい」

女海賊「…」ボーーーー

ローグ「姉さん…」

情報屋「そうそう…確か未来君が書いていた絵が有った筈…盗賊探して来て?」

女海賊「…」ピク

盗賊「おう!待ってろ…」ダダ


-------------

盗賊「有ったぜ?何枚書いてんだ?こりゃ…」

女海賊「…」ズダダ バサ

盗賊「ウハハ動けるじゃ無ぇか…まぁお前の物だ好きにしろ」

女海賊「ちょ…これ未来が描いたの?」

情報屋「必死に書いていたわ?何が書かれてあるの?」

女海賊「…」バサ

情報屋「え!!?…これ」

盗賊「んん?」

女海賊「シン・リーンの壁画…未来は壁画を見た事無い筈…」

情報屋「良く見せて!!」ガバ

女海賊「まさかこれって…予言」

情報屋「虫を持って居る人物は未来君…隕石…毒…地震…津波…牙が在るのはオーク…え?え?」

盗賊「こっちの羊皮紙には地図も書いてあるぜ?こりゃフィン・イッシュだな…」

情報屋「魔女が聞いた未来君の話と擦り合わせが必要だわ…魔方陣も記されてる…」

盗賊「未来が見て来た世界が書いてあるんだな?」

女海賊「私シン・リーンに行く!!壁画を超絶見落としてる…」

情報屋「行くの少し待って…私も行きたいから」

女海賊「もう行くよ!!待てない」

情報屋「下層の石碑がある部屋の壁…風化して居るけど壁画があるわ」

女海賊「え?マジ?」

情報屋「確認してみて?後で私も行くから」

女海賊「行く!!」ダダダ ピュー

『石碑のある部屋』


ガサゴソ ゴリゴリ


盗賊「おいおい!なんで壁をこすってんだ?」

女海賊「うっさいな!!苔落としてんだよ」ゴリゴリ

盗賊「風化してるってのはそういう事か…苔で覆われちまってんのか」

女海賊「あんたは触んないで!!崩したらデリンジャーで撃つ」チャキリ

盗賊「おーこわ!!」

女海賊「情報屋は?」

盗賊「未来の残した絵とシン・リーンの壁画の写しを見比べてる」

女海賊「え!!?写し持ってんの?なんだ早く言えって話だ…」

盗賊「お前これどういう事か分かってんのか?」

女海賊「未来が残したメッセージさ」

盗賊「ほーん…分かってりゃまぁ良いわ」

女海賊「剣士は最後に帰りを待てって言ったんだ…只待つのは苦痛だから世界中の壁画を探すって決めた」

盗賊「どうやら俺の力が必要な様だな?」

女海賊「忘れてるかも知んないけど…あんた私の捕虜なの」

盗賊「ぶはっ!!まだそんな事言ってんのか」

女海賊「分かったらサッサと他の隠し通路探して!」

盗賊「お?やる気になったな?実はよ…今からこの遺跡の見取り図作ろうと思ってたのよ」


俺の予測はこうだ…

精霊の御所まで通じる隠し通路が有ると思ってる

何故なら昔の精霊がわざわざ外をテクテク歩いて行き来するとは思え無ぇ

更に精霊の御所の入り口が一つだけってのが明らかにおかしい

だが一つ問題がある

トロールが通路を封鎖している可能性だ

まずその場所を特定したい


女海賊「うっさいな!!グダグダ言って無いでさっさと探せよ!!」ゴシゴシ

『夕方』


シュタタ シュタタ

大型の魔物だ!!射手!!警戒しろ!!

ヤバイ!!ウェアウルフだ…


アサシン「待て!!撃つな!!味方だ…」ノシノシ

女戦士「射手!!待て!!」

アサシン「女戦士!!着替えを一着持って来てくれ」

女戦士「それはリカオンか?」

アサシン「そうだ…直に変態が解ける…裸では歩きにくい」

女戦士「フフ…リカオンが裸を見られて気にするとは思えんが…」

アサシン「飛空艇が見えないがどういう事だ?」

女戦士「ローグに補給も兼ねて見回らせて居る」

アサシン「そうか…上手くやって居るか」

女戦士「立ち話も寒かろう…テントに入れ」

アサシン「兵が驚いてリカオンを撃たねば良いが…」

女戦士「テントの中の方が目立たん!!さっさと入れ」

アサシン「リカオン…休めるぞ?」

リカオン「グルルルル…ハァハァ」シュタタ ドスドス


-------------


女戦士「しかし随分巨大なウェアウルフだな…」タジ

アサシン「食い過ぎだ」

女戦士「ドリアードはどうなった?貝殻の連絡が無くて心配して居たのだぞ?」

アサシン「貝殻は未来が持って行ってしまったのだ」

女戦士「そうだったのか…」

アサシン「もしかするとどこかで連絡できるかもな」

女戦士「接点は貝殻のみとなったか…」

アサシン「私は本物の勇者を見た…未来は間違いなく勇者だった」

女戦士「そうか…」トーイメ

アサシン「アダムは無事に破壊し魔王を封じたと思われる魔石も奪取した…これで戦いは終わりだ」

女戦士「魔石をどうする?」

アサシン「魔女が持つ封印の壺に収めてどこかに封じる…いや光の石で焼くのも手だな」

女戦士「やっと平和が来るか…」

アサシン「ワインが飲みたい」

女戦士「残念だが切らしている」

アサシン「クックック…ツキには見放されたか」

女戦士「さて!!私も少し休みたい…ここはアサシンに任せて良いか?」

アサシン「まず着替えを持って来てくれ」

女戦士「フフ忘れていた…私の着替えでは小さく無いか?」

リカオン「がうるるるる…うぅぅぅぅ」


------------

『数日後』


ガヤガヤ ガヤガヤ

シャ・バクダ解放だってよ?

どうする?戻れるのか?

建屋の損壊が酷いらしい

しばらくは修繕だろう…


ローグ「エルフが魔女さんを訪ねて来てるんすが…まだ目を覚まさんですかね?」

盗賊「んん?マジか…」

ローグ「蘇生魔法が出来るという話をどっかから聞いて来たみたいなんすよ」

盗賊「ほーん…なんでここに居る事知ってんだろうな?」

リカオン「あ!!私が行き先話したかな…」

盗賊「お前がエルフに?」

リカオン「ほら魔女を背負って帰って来た時…あの時エルフも一緒だったんだ」

盗賊「なるほど…」

ローグ「足引きずってるんで治して貰いたいみたいっすね」

盗賊「そういう事出来んのはもう魔女しか居無ぇ…起きるの待つしかないな」

ローグ「どうしやしょうね?遺跡に入れても良いんすかね?」

盗賊「アサシンか女戦士は居ないのか?」

ローグ「2人共出かけているでやんす…」

盗賊「まぁエルフなら良いんじゃ無ぇか?向こうが嫌がらなけりゃ…」

ローグ「じゃぁ案内しやすぜ?」

『しばらく後』


ザワザワ ザワザワ

おいおいおい…マジかマジか…

うわぁぁ綺麗

ねぇあのお姉ちゃんってエルフなの?

ええ香りやぁぁ…すぅぅぅはぁぁぁ



ローグ「散らかって居やすがこちらへどうぞ…」サササ

盗賊「どわっ!!こんなに居んのか!!」タジ

ローグ「エンチャントの掛かった角も有りやすんで…」

盗賊「良く見りゃ傷だらけだな…エリクサー飲ませても良いんじゃ無ぇか?」

ローグ「じゃぁ一口づつ口移しでどうっすか?」

盗賊「アホか!!」


タッタッタ


商人「どうしたんだい?この騒ぎは…お!!エルフだ」

盗賊「おぉ!!良い所に来たな…商人お前賢者の石持ってただろ」

商人「うん…傷を癒したいのか」

盗賊「その様だ…ホムンクルス居なくなって寂しかろう?ど真ん中に座って癒してやれ」

商人「ハハ…まぁそんなんじゃ僕の傷は癒えないけどね」

ローグ「あらら?エルフさん座ったまま動かなくなりやしたね?」

商人「瞑想だね…相当消耗しているみたいだ」

盗賊「だな?エルフは顔に出さないから分かり難いんだ…死ぬ寸前かも知らん」

商人「よーし!やっと賢者の石を使う時がやってきた」スッ

盗賊「使うってか掲げるだけだろ?」

ローグ「なーんか…エルフは見て居るだけで癒されやすねぇ…」ウットリ

盗賊「置物みたいで気持ち悪りぃ…全く動かんな」

商人「でもこんなに間近で見るのは女エルフ以来かな…へぇぇ?肌つるつるだ」


ドドドド


女海賊「どいたどいたぁ!!」ドン ジャラジャラ

盗賊「来たな?何か発掘された様だ…」

女海賊「これ鑑定して…ん?なんで私の敵がこんなに一杯居んの?」

ローグ「エルフが魔女さん訪ねて来てるんす…相当弱って居やす」

女海賊「エルフ…そうか長生きしてるエルフなら当時の事知ってるかもなぁ…」

商人「エルフの平均寿命は400年くらいって聞いたよ…700年前の事は分からないんじゃ無いかな」

女海賊「なんだそんなもんか…」

盗賊「なんで700年前なんだ?」

商人「あぁ下にある石板が作られた年代が大体それくらいなんだってさ」

盗賊「ほう?じゃぁ未来は700年前に実際にここに来た訳か」

女海賊「そゆ事…ほんじゃ戻るから鑑定頼む」ドドド ピューー

盗賊「鑑定ってか…どうせ只の古代金貨だろ?興味無ぇよ」ジャラジャラ

商人「ハハ女狐とは対照的だ…彼女は下で目の色変えて掘ってるよ」

盗賊「酒でも出てくりゃ興味も湧くが…」



-------------

魔女「ぅぅぅ…」パチ

商人「お?魔女?今動いたぞ?」

魔女「…」ムクリ

盗賊「おぉぉ!!どうだ?体は平気か?」サワワ

魔女「生きて居る様じゃのぅ…」

商人「何か食べるかい?」

魔女「吐き気がする…うぇぇ…飲み物が良かろう」

商人「スープがある…用意するよ」

魔女「わらわは危篤じゃったんか?初めて自我を完全に失ったわい…」

盗賊「血を2~3回入れ替えるぐらいには出血してたぜ?」

魔女「ほうか…して何故エルフが沢山瞑想して居るのじゃ?」

盗賊「魔女を訪ねて来てんだ…どうやら蘇生して欲しいらしい」

魔女「これ商人…エルフの衣服を脱がせて蘇生が必要な部位を調べよ」

ローグ「あやややそれあっしがやりやすぜ?」シュタ

魔女「ローグでも良いわ…では商人は光の魔方陣を組めるかの?」

商人「退魔の方陣なら知ってる」

魔女「少し複雑なだけじゃで魔術書を見ながら組んでみよ」

商人「分かったよ…はいコレ肉スープ」スス

魔女「頂く…」ズズズ ゴク

盗賊「ほんで重たい話なんだがよう…エルフの森に光る隕石が落ちて森がすっ飛んだ」

魔女「では他にも傷を負ったエルフが居ろうのぅ」

盗賊「そういうこったな」

魔女「剣士と未来は居らんのか?」

盗賊「んぁぁ…もう帰って来無ぇ…例のごとく別の次元ってやつに飛んでった」

魔女「女海賊もか?」

盗賊「いや…女海賊は残ってる…下で遺跡調べてる」

魔女「それは良かった…この次元は現実じゃ」

商人「ちょちょ…それどういう意味?」

魔女「勇者の居る次元が現実なのじゃと思うて居る…この世界は女海賊の次元と言っても良いのう」

商人「勇者の眼が現実を選択してる?」

魔女「うむ…あ奴は次元の握り方をまだ知らぬ故教えねばならん」

商人「じゃぁ剣士の次元は?」

魔女「それも現実じゃ…剣士が歴史を選択したのじゃ…その上にわらわ達が居る」

商人「…なるほど…という事は夢幻は他の可能性…平行世界なのか」

魔女「さて…少し体を動かしてみる…盗賊や…肩を貸せ」ノソ

盗賊「俺ぁ今飯食ってんだ!リカオン!肩貸してやれ!!」モグ

『石板の有る部屋』


ゴソゴソ カリカリ


情報屋「…辻褄が合わない…この壁画は予言じゃ無いわ」

女海賊「これ未来が彫った壁画には間違いないよね?」

情報屋「そうね…ここに書かれて居る人物の画は私達の事…これが魔女…これが盗賊…」

女海賊「これが私かぁ…」サワサワ

情報屋「時の王から聞いた歴史の事実とこの壁画が表す歴史の事実が異なるのよ…」

女海賊「未来が描いた羊皮紙の方…」

情報屋「これは10年後に起きる予言だと思う…地軸の移動…病気の蔓延…世界の滅び」

女海賊「じゃぁこうだね…その予言を知って私達が行動を変えたら?」

情報屋「はっ!!壁画はその当時の予言だった訳ね?…そうならない様に人類が歩んだ結果予言と異なる方向に進んだ…」


ノソノソ


情報屋「魔女!!目を覚ましたのね?もう動いて平気?」

魔女「また立派な壁画を発見したのじゃな…」

女海賊「未来が書き残したんだ」

魔女「そうか…感慨深いのぅ」

リカオン「未来君が絵を書いている時に私も見たんだ…」

情報屋「何か言って居なかった?」

リカオン「大事な記憶を忘れない様に覚書を書いてると」

情報屋「記憶の覚書?…未来君は自分で忘れない様にこの壁画を掘ったと?」

魔女「ふむ…わらわは理解したぞよ?未来はのぅ…記憶がどんどん無くなるのを恐れたのじゃな」


次元を超えるとじゃな…元の次元の記憶が直に無ぅなるんじゃ

すべて忘れてしまう訳では無いじゃろうが

未来の行いで歴史が変わるたびにその記憶も失う

じゃからこの壁画は未来の備忘録じゃな


情報屋「後の人はこの壁画を予言だと解釈した…そうやって歴史が逸れて行った」

魔女「その上にわらわ達の次元が乗っかって居るのじゃな」

女海賊「…これは未来が経験した事実…未来の記憶」サワサワ

魔女「未来の歩んだ道がすべて記されて居ろう…未来の日記じゃ」

情報屋「壁画を書き残す動機がこれで判明したわね…忘れたくない…その一心だった」

女海賊「…全部書き写す」ツツー ポロ

情報屋「私も手伝うわ」


未来が無くしたく無かった記憶

この壁画を掘りながら守ろうとした

それでも歴史が修正される度に記憶を失う

なんて切ない壁画なの…

『キャンプ詰め所』


…ではこちらの警備は少数残して私達はシャ・バクダへ行く

オアシス砦はフィン・イッシュとの連絡用気球の発着を主とする

エルフとは交渉中だが主に遺跡周辺で一時退避になると思われる


女戦士「私は遺跡に残って居れば良いのだな?」

アサシン「そうだ…動ける避難民はオアシス砦へ誘導して遺跡は主に回復のベース基地として運用するのだ」

女戦士「分かった」

アサシン「ヘラジカのソリはこちらで用意して輸送を急がせる」

女戦士「飛空艇の輸送力はどう使う?」

アサシン「急ぎでフィン・イッシュ女王に支援を願いたい…ローグを飛ばしてくれ」

女戦士「お前が行った方が良いのでは無いか?」

アサシン「手が離せんのだ…私はフィン・イッシュの民を救いたい」

女戦士「フフそうか…」

アサシン「アヌビス!リカオンを呼んで来るのだ…シャ・バクダを荒らす異形を追い払うぞ!」

アヌビス「かしこまりました…」

アサシン「そうだ忘れる所だった…魔女が目覚めたらこの魔石を渡しておいて欲しい」スッ

女戦士「預かる…」

アサシン「では…後は頼む」スタ

『遺跡一層目』


ザワザワ ザワザワ

古代金貨が発掘されたそうだ

金貨ではお腹が膨れないわ?

配るらしいぞ?


盗賊「おら!並んだ並んだぁぁ!!一枚づつだぞ?何回も並ぶな?」

女戦士「…これはどういう状況だ?何故エルフが入り込んで居る?」

盗賊「おぉ戻ったか!!魔女を訪ねて来てんだよ」

女戦士「既にこちらにも来ているという事か…」

盗賊「既にとはどういうこった?」

女戦士「いやシャ・バクダにも傷付いたエルフが多く居るのだ…森を失って帰る所が無いのだよ」

盗賊「ほんじゃこっちに呼んだ方が良さそうだ」

女戦士「うむ…それで魔女は目覚めた様だな?何処へ行った?」

盗賊「下の石板のある部屋だな…もっと奥に隠し通路があっていろいろ発掘してる訳よ」

女戦士「…それがその古代金貨か」

盗賊「まぁな?俺らだけで独占してると文句出るだろ?だから配布してんのよ」

女戦士「他には何か出土しているのか?」

盗賊「いや…宝石が少しあるぐらいで大した物は無ぇ…貴重な物は情報屋が確保してる」

女戦士「金貨が出回って居るという事は流通が思ったより早く再会しそうだ…」

盗賊「どっかで金貨を交換出来るんか?」

女戦士「それは分からん…商隊が入って来たらの話だ」

盗賊「シャ・バクダはどうなってんのよ?」

女戦士「捕虜になって居た兵隊は無事に救出された…だが相当弱っていてな…この遺跡を回復所として運用するのだ」

盗賊「…てことは人で溢れるな」

女戦士「こうしよう…古代金貨を受け取った者から順にオアシス砦に誘導してくれ」

盗賊「わかった!穴に籠ってちゃ滅入っちまうしな?」

女戦士「それから光の石は絶やさず遺跡の中を照らすようにしてくれ…いつ又魔王を抱えた者が入って来るか分からんからな」

盗賊「だな?」


------------

女戦士「ローグ!!仕事だ!!」

ローグ「ぬわぁ!!」ドテ

女戦士「エルフの裸をどうするつもりだったのだ?」ギロ

ローグ「あいやいやいや…蘇生が必要な個所をですね…」バタバタ

女戦士「フン!!お前は飛空艇でフィン・イッシュに飛んで女王に支援を願って来い」

ローグ「ええ?今からっすか?」

女戦士「今すぐにだ」

ローグ「頭も行くんすかね?」

女戦士「お前一人だ」

ローグ「マッサージの件は…」

女戦士「エルフを触った手でマッサージさせる気は無い…エルフとドワーフは仲が悪い事ぐらい知って居るだろう?」ギロ

ローグ「あいやいや…これはっすね…魔女さんの命令でやんして…」

女戦士「黙って飛空艇でフィン・イッシュへ飛べ」

ローグ「へ…へい」ショボン

女戦士「補給も必要だ…古代金貨をいくらか持って行って物資を買い付けて来るのだ」

ローグ「わかりやした…トホホ」

『石板のある部屋』


スタスタ


女戦士「魔女!ここに居たか…」

魔女「んん?済まんのぅ…わらわは迷惑をかけて居った様じゃ」

女戦士「無事に目覚めて何より…それよりアサシンから魔石を預かって居るのだ」スッ

魔女「ほう?魔王を封じた魔石かえ?どれどれ…」

女戦士「私には只の魔石にしか見えんが…」

魔女「ふぅむ…その通りじゃ…これに魔王が封じられているとは到底思えぬのぅ」

情報屋「私に見せて…私は魔王を封じた魔石を一度見て居るわ」

魔女「ホレ?」スッ

情報屋「全然違うわ…まず色が違う」

魔女「アサシンはこれが魔王を封じた魔石じゃと思って居るのか?」

女戦士「しまったな…アサシンは不死者になってから色が見えて居ないのだ」

魔女「色盲とな?」

女戦士「白黒の世界らしい…血とワインの見分けが付かないのはそのせいだ」

情報屋「…また魔王が行方不明なのね」

女海賊「今何ってった?」ギロ

情報屋「魔王の所在が不明…」

女海賊「なんで私だけこの世界に居残ったのか…今理解した」グググ

情報屋「…」

女海賊「未来はこう言い残したんだ…後の世界はよろしくって…未来はこうなる事も考えてた」

魔女「ヤレヤレ…まだ終わらぬ様じゃのぅ」

女海賊「どっちみち私は世界中の壁画を探しに行くつもりだったのさ…魔王を追い詰めてやんよ!!」

情報屋「あ!!そうそう魔女に見て欲しい魔方陣があるのよ」

魔女「魔方陣じゃと?」

情報屋「未来君が書き残した羊皮紙に魔方陣が記されて居るの…見て?」

魔女「こ…これは!!重力の方陣…未解明の方陣じゃ!!」

情報屋「どういう意味があるか分かる?」

魔女「調べねばならぬ…書庫はフィン・イッシュ!わらわはフィン・イッシュへ行かねば…」

女戦士「既にローグが飛空艇で飛び立った…書物を持って来させる様に連絡は出来る」

魔女「頼む…書物の名を書き出そう…」ノソノソ

情報屋「私も必要な書物の…おぇぇぇ」ウップ ヨロ

魔女「ううん?主はもしかすると子を宿しては居らぬか?」

情報屋「ええ!!?それで吐き気が…」

女海賊「ちょ…マジ?私も欲しいんだけど…どうやって想像妊娠すんの?」

魔女「ちぃと温い衣服に着替えた方が良かろう」

女戦士「フフそういう体調不良は歓迎だ…情報屋は戦力から外そう」

魔女「父親は誰じゃろうのう?盗賊かえ?」

情報屋「ちょっと秘密にしておいて…纏わりつくのがうるさいから」

『勇者の像』


へーーっぷし!!


盗賊「あー悪りぃ悪りぃ…鼻水飛んだな…ホレ古代金貨一枚持ってけ」

難民「…」ベター

盗賊「おい商人!エルフの体ばっか触って無いでちったぁ手伝ってくれ」

商人「失敬だな…ちゃんと賢者の石で治癒してるさ」

盗賊「胸揉みまくってんだろ」

商人「違うよ大きな傷があるんだ…良く死なないで生きてると思う」サワサワ

盗賊「未来が残したどんぐりとキノコ有んだろ?目覚めたらそれ食わせろ」

商人「居なくなってもまだ世界を救おうとするか…」

盗賊「なぁ?未来が言ってたていう放射能の毒ってやつ…それが無くなって俺ら救われたんかな?」

商人「どうだろうね?それは未来君だけしか知らない事だよね」

盗賊「女狐とそんな様な話をしたんだ…勇者の行いは誰も見て居ない…だから語られない」

商人「勇者本人しか知らない事だから…本人が壁画で残すしかないんだね…それが伝説の正体だよ」

盗賊「剣士も未来もスゲー良い奴だったよな…居なくなって正直心に穴が開いた感じだ」

商人「みんなそうさ…前を向かないと気が紛れない」

盗賊「うむ…お前はこれからどうすんだ?」

商人「僕はホムンクルスをどうにかして生き返らせる」

盗賊「そうか…俺は壁画とお宝探しだな」

商人「行先は一致しそうだ」

盗賊「だな?とりあえず南の大陸か?」

商人「いや…未来君の残した羊皮紙に地図が掛かれて居たよね…其処だよ」


--------------

女戦士「何?それは本当か?」

魔女「うむ…2度経験したで間違いない」

女戦士「笛の聞こえる範囲はどのくらいだ?全員寝てしまっては支障が出る」

魔女「どのくらいじゃろうのぅ…遺跡の下層のみで使ってみてはどうじゃ?」

女戦士「ふむ…下層を重傷者の回復ベースとするか」

盗賊「何の話してんだ?」

女戦士「妖精の笛に強い癒しの効果があるらしい…エリクサーを超えるとか」

商人「あ!!僕もそう思ったよ…寝覚めがすごく良いんだ」

盗賊「ほぅ?」

女戦士「魔女の負担軽減でもある…触媒にも限りがあるからな」

盗賊「ほんじゃ回復が必要な奴らだけ下層で治癒させる訳か…この辺が散らからんで良いわな」

女戦士「早速入れ替えを始めたい」

商人「瞑想してるエルフはどうするの?」

女戦士「まぁ動かして良いかどうかも分からんから目覚めるのを待とう…とりあえずこれから入って来る者は下層に案内してくれ」

盗賊「女海賊と情報屋も一睡もして居無いからよ…なんとか騙して眠らせてやってくれ」

女戦士「そうだな…子を宿しているし休ませるか…」

魔女「これ女戦士!下手な事言うでない」

女戦士「あぁ口が滑った」

盗賊「んん?何か言ったか?」

女戦士「何でもない」

盗賊「女狐はまだ掘ってんのか?」

女戦士「フフ柄に合わず必死で財宝を探して居るぞ?古代金貨をばら撒いて居る事は秘密にしておいた方が良いな」

盗賊「ヌハハあいつ思ったより単純な奴だな気に入った!!」

女戦士「多めに金貨を残しておいてやれ」

『遺跡探窟』


ガサゴソ ゴトン


盗賊「いよう!!様子見に来たぜ?」

女狐「あら?盗賊…見て?壺よ?」

盗賊「ヌハハお前真っ黒に汚れてんぞ?」

女狐「あなた…お金に縁が無いとか言ってたのは嘘ね?」

盗賊「俺は金に興味が無いと言ったんだ」

女狐「じゃぁ私が全部貰うわ」

盗賊「悪いが古代金貨は全部難民に配っちまった」

女狐「えええええ!?何てことするの!!」

盗賊「まぁまぁ聞け…宝石は全部残してある…お前の物だ」

女狐「暴動を防ぐための投資…という訳ね?」

盗賊「そういう解釈でもまぁ良い」

女狐「この財宝を見たら公爵の資金なんかどうでも良くなったわ」

盗賊「お前は金を何に使うのよ?欲しい物なんかそう無いだろ?」

女狐「あなたに関係無いわ」

盗賊「お前の髪色は南の大陸出だな?赤毛…」

女狐「詮索しないで」

盗賊「ほ~ん…まぁ良い…実はな?俺は昔孤児院の子供を引き取って養ってたんだ」

女狐「孤児院!!どこの!?」

盗賊「お?食いついたな?セントラル東のトアル町だ」

女狐「トアル町…」

盗賊「その感じはハズレか…多分お前は俺と同じ感じだな…孤児院に何か残してんだろ?」

女狐「うるさいわね…詮索しないで」

盗賊「そういう金の使い道は嫌いじゃない…まぁ上手く稼げ…じゃぁな」

女狐「…」ギロ



俺は知ってんぞ…勇者がどういう世界を選択したのか

未来は闇を知って居た

闇を許容する世界を選択したんだ

わかるぞ未来…お前の行きたい世界が

『翌日』


だぁぁぁぁぁぁ!!


女海賊「なんで私寝てんだよ!!」ドドド ピューーー

商人「あ!!女海賊!!食事を用意してるんだ」

女海賊「なんで起こさないのさ」

商人「気持ちよさそうに寝ていたから…妖精には会えた?」

女海賊「アイツのせいか!!グリグリにしてやる…」

商人「まぁそんなに急がなくても良いじゃないか…壁画は逃げない」

女海賊「それヨコセ!!ふん!!」モグモグ

商人「君が元気な姿見られると僕は癒される」

女海賊「あんた…わたしに惚れてんの?」モグモグ

商人「ハハまぁね…」

女海賊「よし!!奴隷として使ったげる」

商人「あいや…あのね…」

女海賊「私の秘密を一つ教えたげる」

商人「秘密?」

女海賊「あんたホムちゃんを復活させたいよね?」

商人「そうだね…生体を手に入れたい」

女海賊「私持ってんだよ…ある場所に隠してあるんだ」

商人「ええええ!?どういう事だい?」

女海賊「只動かし方が分かんない…あんたなら秘密を解けるかもしんない」

商人「詳しく教えて!!」

女海賊「持ってんのは生体の完成品じゃないんだ…部品を沢山持ってる」

商人「部品…」

女海賊「どうやって組み合わさるのか分かんないのさ…他の材料が何なのかも分かんない」

商人「君の奴隷で良い…それを僕にやらせて」ズイ

女海賊「よし!!私の下着洗って来い!!」ヌギヌギ

商人「ぐぁ…なんでこんなにベトベトなんだよ…」

女海賊「うっさいな!指が勝手に動くんだよ…黙って洗ってこい」

『キャンプ』


ガガーン ビシビシ


魔女「雷魔法!」ガガーン

盗賊「何事よ!!」ダダダ

女戦士「驚いたか?」

盗賊「敵は何処だ?」キョロ

魔女「敵では無い…地面に雷を落としたのじゃ」

盗賊「なんだ紛らわしい…なんで雷なんか落としてんだ?」

魔女「これで遺跡の中にキノコが一斉に出るじゃろう」

盗賊「キノコ?」

魔女「うむ…キノコが育つのに適正な環境じゃ…エルフに与えよ」

盗賊「なんだそういう事か…どうせならシカ肉が食いてぇんだが」

女戦士「心配するな…リカオンが狩りをしてくれている」

盗賊「おぉ!!やっと肉にありつける」

女戦士「シャ・バクダ砦に酒の備蓄もあるらしい…期待して待て」

盗賊「酒場はいつ再開すんのよ?」

女戦士「損壊した建屋を復旧中との事だ…もうしばらく掛かるな」

魔女「さて…わらわは蘇生魔法を掛けに戻るかのぅ」ノソノソ

女戦士「直にシャ・バクダから治療が必要な者が押しかけて来る…準備しておいてくれ」

盗賊「酒と肉はそいつらと一緒に来るわけだな?」

女戦士「だと良いな?フフ」

『遺跡下層』


ヒソヒソ

はぁぁぁやっと休める…

ここは暖かくて最高だ

エルフの横で休めるのか


盗賊「配給だぁ!!取りに来てくれい」

商人「エルフはどんぐりとキノコだよ…はいどうぞ」

エルフ「…」カリ モグ

商人「どう?採れたてのキノコさ」

エルフ「…」チラ

商人「フフそれがエルフのありがとうのサインか…分かり難いなぁ」

盗賊「食ったら妖精タイムだ…残さないで食えよ?」

エルフ「…」スス

商人「ん?手伝ってくれるのかな?皆に配って来て?」

エルフ「…」スタスタ

盗賊「お前エルフと話せるんか?」

商人「何となくだよ…孤児院に初めて来た子供ってこんな感じなんだ」

盗賊「なるほど…」

エルフ「…」チラリ

商人「あぁぁはいはい!まだあるよ?全部持って行って良い」スタ

盗賊「何言ってるかさっぱり分からん…」


ヒソヒソ

俺もエルフから配給されてぇ…

それらしい位置に移動だ…ケツで歩け

おぉぉ手を握られた…エルフの手は冷えっ冷えだ

おっし俺は握り返して…

『遺跡上層』


スタスタ


商人「この笛スゴイな…全員直ぐに眠ったよ」

盗賊「エルフ達もか?」

商人「うん…ビックリだ…エルフが次々倒れて行くんだよ」

盗賊「こりゃ治療に人出が要らんのが相当ラクだな?」

商人「そうだね…食事の用意だけで済む」

魔女「わらわは蘇生魔法で忙しいがのぅ…さて癒して来るわい」ノソノソ

商人「触媒は足りる?」

魔女「ミネラルが欲しいのぅ…直に尽きてしまう」

盗賊「鉱物はこの辺じゃ手に入らんな…」

商人「ミネラルか…ローグが気を利かせて買って来てくれれば良いね」


スタスタ


リカオン「酒持って来たよ…」ドスン

盗賊「おぉぉぉ樽で持って来たか!!ってお前太ったな…」

リカオン「食べすぎた…反省してる…しばらく獣人に変態するのは控える」シュン

盗賊「…で?シャ・バクダの方はどうだ?上手くやってんのか?」

リカオン「クリーチャーが徘徊してる…これが美味しいからつい…」

盗賊「なんだその魔物は?聞いた事無いぞ?」

リカオン「異形の生物をそう呼んでるんだ…色んな動物が混ざった新種の魔物だよ」

盗賊「じゃぁアレだな貴族の成れの果てだ…元は人間だな」

リカオン「中には賢くて手強いのも居るんだよ」

盗賊「じゃぁまだ危ない訳か」

リカオン「クリーチャーよりも人間の方が危ない…セントラルの傭兵が奇襲をかけて来てね」

商人「摩擦はしばらく続きそうなんだ…」

リカオン「でもこちらの方が圧倒的優位だよ?エルフが居るから」

盗賊「なぬ?こっちはエルフと混成なんか?」

リカオン「あれ?聞いて無かったの?精霊樹を守る目的で協力するって」

盗賊「俺ら遺跡に籠ってるからそういう情報が入って来無ぇんだ」

リカオン「そうだったんだ…じゃぁ私から教えようかな」


ハイエルフは精霊の御所に住まう

ハーフエルフは人間と一緒に住まう事に決まったんだよ

それが精霊樹の意思らしい


商人「それで遺跡にエルフが定着してるのかな?」

リカオン「そうだよ…ハイエルフの命令で人間との交配を進めるんだってさ」

盗賊「ほーう…その代わり人間にも精霊樹を守らせる…そういう取り決めが有った訳か」

リカオン「私も森を安定して守るには人間の協力が必要だと思う…良い歴史の転換ね」

盗賊「こりゃセントラルが嫉妬しそうだ」

リカオン「そういうのがもう起き始めてる…傭兵の奇襲がそれよ」

商人「ふーむ…なんかマズイ気がするなぁ…シャ・バクダは資源が少ない…物流が途絶えると不利になる」

盗賊「森は資源にならんのか?狩り資源なら死ぬほど有ると思うが?」

商人「どうやって運ぶかだよね…商隊のルートを全部セントラルに抑えられてるから言いなりになってしまう」

盗賊「思うんだがよ?ヘラジカの引くソリは馬車よりよっぽど早い…フィン・イッシュ側に商隊ルート作れんか?」

商人「なるほど…中継点をいくつか置けば良いか」

盗賊「エルフが味方ってのは相当デカイ…エルフの女目当てで定住する男も沢山出る筈だ」

商人「そういう路線で行くのも良いね…エルフ装備とか良い値で売れそうだ」

盗賊「まぁアレだ…シャ・バクダをどんだけ守れるかがカギだな」

リカオン「フフ…アサシンの読み通りだ…次は盗賊ギルドの出番だよ」

盗賊「セントラルとの駆け引きが始まるか…争いをうやむやにして先送り」

商人「うやむやねぇ…」

『石板のある部屋』


纏めるわ…

未来君の残した羊皮紙に書かれてあるのは恐らく予言

私達はこれを回避する必要がある

未来に何が起こるのかと言うと…一番大きいのが地軸の移動

これは多分回避できない

でも地軸の移動によって生じる災害を回避する術はある

ここに記されて居る地図は地軸が移動した後の地図ね

セントラル沖が南極点に変わる…それによって大規模な気候変動が起きる


女海賊「牙の生えている人物はオークだよね?なんで沢山関わってると思う?」

情報屋「この重力の魔方陣の出所だと思うわ…魔女もオークの使う術がどうとか言ってたし…」

女海賊「重力…ほんじゃそれが原因で地軸が移動?」

情報屋「…かもしれない…兎に角一度オークの地へ行って調べる必要がありそう」

女海賊「私何回も行ってんのよ…良く分かんないんだよねオークの文化」

情報屋「オークはエルフと同じくらい賢い生き物…きっと何か知って居るんだわ」


タッタッタ


女海賊「あれ?リカオン姉さん…いつ戻ったん?」

リカオン「未来君からの伝言を伝えるのを忘れてて…」

女海賊「ええ!?なに!?」ズイ

リカオン「あなたに冒険の書を読ませてって最後に言ってたの」

女海賊「えええ…私字が読めないんだよ」

リカオン「読めば分かるって言ってたわ」

女海賊「マジか…読んでみっかぁ」

情報屋「冒険の書は私が預かって居るわ」

女海賊「あんた読んだ?」

情報屋「少し…」

女海賊「何が書いてあったん?」

情報屋「魔女が言うには読む人によって内容が違うって…」

女海賊「だから何が書いてあったのさ」

情報屋「ウンディーネ時代の物語…光る隕石が落ちた後に生き抜く人間の物語よ」

女海賊「むむ!!未来と同じ事言ってんね」

情報屋「それも予言なのかも知れないわ…あれ?そう言えば物語に虫使いの青年が出て来てた」

女海賊「ちょちょちょ…それ未来じゃね?」

情報屋「分からない…私の場合文字を読んで居るから」

女海賊「ちょい貸して!!」

情報屋「これよ…」バサ

女海賊「どれどれ…」パラパラ

情報屋「読める?」

女海賊「絵だ…絵が動く…」

情報屋「新しい発見ね…文字が読めなくても分かる様になっているのね」

女海賊「ちょいしばらく話しかけないで…てか私向こうでこれ読んで来る」ダダダ ピュー

情報屋「フフ暇つぶしが出来て良かったみたい…」

リカオン「…」クンクン

情報屋「ん?何?」

リカオン「あなたのお腹の中…」

情報屋「分かるの?」

リカオン「ヤバイなぁ…私もそろそろ相手見つけないと…」

『数日後_キャンプ』


フワフワ ドッスン


ローグ「頭ぁぁぁ!!物資調達してきやしたぜ?」

女戦士「ご苦労…早速荷物を降ろしてくれ」

ローグ「ほんで女王とセントラル王も連れて来たんすが…」

女戦士「何?」

女王「ご無沙汰しております…」ペコリ

セントラル王「これは…ドワーフ国王女殿…」キリ

女戦士「ぁぁ参ったな…先に言え戯け!」

ローグ「視察で急に同行する事になったんす」

女戦士「何も用意して居ないが…」

女王「お気になさらず…地べたに寝る事になっても良いのです」

女戦士「シャ・バクダの方はまだバタバタしているのだ…案内出来る状態では無い」

女王「アサシン様と直接お話がしたかっただけですので…」

女戦士「まぁ綺麗な所では無いが遺跡の中へ入ってくれ…そっちの方が暖かい」

ローグ「あっしが案内しやす…どうぞ」スス

女戦士「側近と近衛も一緒か…」

ローグ「魔女さんは遺跡の中に居やすかね?書物も持って来たんすよ」

女戦士「待って居る筈だ…持って行ってやれ」

『遺跡上層』


ドヤドヤ


盗賊「んん?おぉぉ!!ローグ!!嬢ちゃんまで要るじゃ無ぇか!!」

女王「ご無沙汰しております…その節はお世話になりまして」ペコ

盗賊「あいやいや堅いのは止めてくれ…まぁちっとキノコまみれだがその辺に掛けてくれ」

女王「はい…」テクテク ストン

ローグ「さぁ皆さんこちらでくつろいで下せぇ」サササ

女王「エルフ達と同居されているのですか?」

盗賊「まぁ流れでそんなんなったんだ…話は全部聞かれているからよろしく頼むな?」

女王「羨ましいです…是非フィン・イッシュにもお越し願いたいです」

盗賊「エルフを釣るなら根菜だな」

女王「後に貨物用気球で到着しますので振舞いましょう」

盗賊「そら楽しみだ」

女王「上空からエルフの森を見ましたが壊滅的な破壊だったのですね」

盗賊「そうらしい…ここに逃れて来るエルフはみんな大怪我負ってんだ…この遺跡は回復ベースな訳よ」

女王「どのくらい逃れて来ているのでしょう?」

盗賊「ここで治療してるのが30ぐらいか?シャ・バクダと精霊樹に居るのも合わせて100ぐらいだとは思う」

女王「光る夜からまだ間が無いのでもっと増えますね」

盗賊「うむ…その為に此処がある訳よ」

女王「近隣の村々はどうなって居るのでしょう?」

盗賊「ひでぇもんよ…本当はセントラル側からも難民受け入れて治療してやりたいんだが中々そうは行かなくてな」

女王「貴方…なにか手はありませんか?」

セントラル王「こういう災時は時の王卿が陰で支援を…」

盗賊「あぁぁぁ…残念だが時の王は死んだ」

セントラル王「何ですと!!まさか時の王卿が…」アゼン

盗賊「なぁセントラル王よ…」

セントラル王「呼び名は戦士と呼んでくれ…セントラル王と胸を張って名乗れない立場故…」

盗賊「じゃぁ戦士や…民が苦しんでるのをどうする?」

戦士「うぐ…何とかせねば…」

盗賊「やっぱ食料と薬の配布が良さそうなんだが…」

商人「話に割り込むよ…それだと権力の一極化が起きる…今必要なのは良識を持った人を送り込む事さ」

戦士「その通り…ただ私にはそれを行使する権限が無い」

商人「貴族院に押さえられてるもんね?こういうのはどうかな?盗賊ギルドから派遣するのさ」

女王「そのお話を詳しく…」

商人「アサシンは盗賊ギルドのマスターなのは知ってるね?」


そこから近隣の村々へ人を送り込むんだ

冒険者とか難民という形で良い

やる事は村の支援となる様に食料や薬の流通を促す

畑を耕して一緒に住まう事で支援する訳さ


商人「そして盗賊ギルドの支持母体としてフィン・イッシュが構えていてくれれば良い」

盗賊「まぁ元々盗賊ギルドってのはそういう役割なんだがな…なんせ人出が足りん」

商人「見返りとしてエルフ達との友好…決してエルフを裏切らないという約束…お互いウィンウィンじゃないかい?」

戦士「失礼だが君は何者なのか?」

商人「ハハ只の商人さ…物流をコントロールしたいんだよ」

女王「今のお話…アサシン様と進めてみましょう…フィン・イッシュから良識のある人材を派遣すれば良いのですから」

商人「そうそう…そうすれば盗賊ギルドが上手く立ち回る…国を超えて動けるんだ」

女王「このお話…エルフの利が見えませんが」

商人「エルフはね…精霊樹と森を守りたいんだ…その為にフィン・イッシュ側の人間と協力する道を選んだ」

女王「分かりました…森の保護をお約束いたします」


シュタ タタタタ


商人「フフ早速ハイエルフに報告に行った様だ」

『隅っこ』


うぇっ… ぶへっ… うぇぇぇん… ひっく


ローグ「姉さん…姉さん?…食事と飲み物持って来やしたぜ?」

女海賊「ぅぅぅ…」ポロポロ

ローグ「聞いていやすか?」

女海賊「うるぜぇ…あっぢいげぇぇ」ヒック

盗賊「おいローグ!構うな!」

ローグ「いやでも姉さんゲッソリしていやすぜ?」

盗賊「そらこの2~3日ずっとあの感じよ…死にゃしねえから放って置け」

ローグ「盗賊さん土産で芋酒持って帰ってきやしたが…」

盗賊「シャ・バクダ砦にワインが備蓄してたんよ…芋酒はエルフに振舞ったらどうだ?」

ローグ「あらら喜んで貰えんで残念す…」

盗賊「まぁそう言うな…お前も飲め」

ローグ「じゃぁあっしもワインを…」グビ

盗賊「やっと落ち着いた感じになって来た」

ローグ「頭にちっと話聞いたんすが…昔の盗賊ギルドの奴らが傭兵になって攻めて来てるらしいっすね?」

盗賊「あぁその話か…俺の顔知ってるだろうから動き辛いんだ」

ローグ「盗賊さんは有名でやんしたからねぇ…あっしはまだ顔バレしてないですわ」

盗賊「リカオンとアヌビスもまだ正体バレて無ぇ…俺ははしゃぎ過ぎた…もうセントラル領には行け無えな」

ローグ「いっその事トレジャーハンターに専念した方が良さそうっす」

盗賊「そのつもりよ…俺は女海賊と共に壁画探しに行くんだ」

ローグ「いつ行くんすか?」

盗賊「さぁな?女海賊次第だ」

ローグ「分かれる感じになっちまいやすね…」

盗賊「まぁ同じギルド同士だから直ぐに合流すんだろ」

ローグ「えーと…残るのはあっしと頭…ほんでアヌビスさんとリカオンさん…後は女狐って感じっすね?」

盗賊「そんな感じだ…遺跡巡りだから情報屋と商人は外せない…魔女がどうするか?」


ノソノソ


魔女「わらわはオークの住まう地へ行くぞ」

盗賊「お?例の魔方陣の事は何か分かったんか?」

魔女「あれは簡単な暦じゃ…10年後のいつ地軸の移動が起きるか記した物じゃ」

盗賊「未来がそれを知ってたってのが驚きだ」

魔女「うむ…古代魔術をわらわより先に知り居った…オークから学んだに違いないじゃろう」

ローグ「いやぁぁ未来君ともう会えないなんて信じられやせんね…」


ぶわぁぁぁぁん… ごべんね未来ぃぃ 未来ぃぃ


魔女「これ女海賊…ちと休憩せい」

盗賊「冒険の書に未来の事が記されてんのか?」

魔女「女海賊はそう言うて居る…何度も読み返して居る様じゃ」

盗賊「魔女は読んだんか?」

魔女「うむ…恐らく夢幻が記されて居る…わらわは辛ろうて途中で読むのを止めたのじゃが…」

ローグ「姉さん…ちっと休みやしょう?」グイ

女海賊「うぇぇぇん…未来ぃぃ…ぅぅぅぅ」ポロポロ

盗賊「下層に連れてって妖精の笛で眠らせろ!!」

ローグ「姉さん行きやすぜ?捕まって下せぇ」ヨッコラ

魔女「冒険の書は預かっておくでのぅ?」

盗賊「商人!妖精の笛で寝かしつけてやってくれ」

商人「ハハ…困った人だ」

盗賊「あれで勇者だってんだから調子狂うんだよ…なんであんなに脇役みたいな感じなのか…」

魔女「そうじゃローグ!!触媒のミネラルが無くなりそうなんじゃが買って来ては居らぬか?」

ローグ「あいやぁぁ買って無いっす…」

魔女「気が利かん奴じゃのぅ…」

盗賊「回復魔法に使うんだっけか?」

魔女「そうじゃ…蘇生にも必要なのじゃ」

盗賊「鉱物かぁ…そういや崩れたゴーレムが鉱物っぽい感じだったんだが」

ローグ「シャ・バクダ方面に2体転がって居やすね?捕りに行きやしょうか?」

盗賊「そうだな…たまにゃ外に出て見るか」スック

魔女「わらわも行こう…変性でミネラルだけ取り出せるやも知れぬ」ノソリ

『キャンプ詰め所』


メラメラ パチ


アサシン「女王と話は済んだぞ」

女戦士「早かったな?」

アサシン「まぁ思って居た所が同じだったものでな」

女戦士「女王はどうする?しばらく滞在するのか?」

アサシン「女王のみフィン・イッシュへ還るそうだ」

女戦士「セントラル王は?」

アサシン「しばらく居残って近衛達との摩擦を回避する」

女戦士「摩擦?」

アサシン「女王の側近達にまだ認められて居ないのだ…苦労の多い男だ」

女戦士「フフ…」

アサシン「それで役割をお前と交代したい」

女戦士「私にどうしろと?」

アサシン「お前の貨物船を港町付近の漁村に停船したままだったろう?」

女戦士「河口の漁村にな?取りに戻っても構わんと?」

アサシン「そうだ…ローグと共に戻ってフィン・イッシュを拠点として貰いたい」

女戦士「海賊共はどうする?」

アサシン「任せる」

女戦士「ふむ引き受けた」

アサシン「即答だな」

女戦士「狙いは想像が付く…フィン・イッシュを海上貿易で支援したいのだろう?」

アサシン「察しが良い…出来れば海賊には大人しくして貰いたい」

女戦士「奴らは貴族の資産を奪ってどうせ陸で女を追いかけまわしてる…腑抜けだ」

アサシン「こちらはアヌビスとリカオンが居るから心配しなくて良い…女狐も諜報には役立ちそうだ」

女戦士「そうか女王と話して復興が軌道に乗りそうか…」

アサシン「すべて良い方向に転がって行ってる…諜報が効くようになれば魔王の影も追えるのだ」

女戦士「分かった…私は海に出て一度仕切り直すとしよう」

アサシン「女海賊は一所に留まらんだろうから移動はそっちでやってくれ」

女戦士「言われなくても分かっている」

アサシン「…では私はシャ・バクダに戻る」スタ

『遺跡上層』


スタスタ


女戦士「アサシンから話は聞いたぞ?私とセントラル王と役割交代だ」

戦士「その呼び名は止して貰いたい…戦士と呼んでくれたまえ」キリ

女戦士「では戦士!私は左遷された…後は頼む」

戦士「左遷とは聞き捨てなりませんな」

商人「ハハ左遷されたのは戦士の方じゃないのかい?」

戦士「いやいや私に限ってそんな筈は…」チラ

女王「皆さん左遷ではありません…私は出産の為に休養するのです…仕方なく国へ戻るのです」

商人「え!!?出産?…てかまだ結婚して無いよね?」

近衛「ぐぬぬぬ…」

女王「跡取りが出来ればそれで色々解決します」

商人「なんだそういう感じかぁ…近衛からしたら勝手に女王が子供作っちゃったんだ」

女王「近衛?もう認めて下さい…」

近衛「王同士のご結婚はさすがに慎重になりまする…」

女王「話が一向に進みませんねぇ…」

商人「まぁしょうがないよね?セントラルに乗っ取られるかも知れないんだし」

戦士「私が不甲斐ないばかりに…」

女戦士「ここで汚名を晴らせ…この地を平定すれば良いでは無いか?」

戦士「そう!!それだ!!私は民を救わねばならない…それが私に科せられた宿命!!」

商人「適任な様だね…」タジ

戦士「まずは整地だ!!私は行く!!力のある限り!!」ドドドドド

商人「なんか変な人だなぁ…」ボーゼン

女戦士「フフ来て早々に整地とは恐れ入る…雪をどうするつもりか…」

女王「いつもあの調子ですのでご迷惑をおかけするかもしれませんが…」ペコリ

女戦士「さて…私は少し横になる…商人!背中を踏んで欲しいのだが」ドサ

商人「お安い御用さ…」フミフミ

女王「やはり城より皆さんと一緒が落ち着きます…」

近衛「いやいやこの地は冷えまするのでお体に障ります…」

『翌日』


ワイワイ ガヤガヤ

ほーう?キノコでこんな薬が作れるんか…

簡単なポーションですので治療のお役に立てればと

わらわも知らんかったわい…何処で錬金術を学んだのじゃ?

ホムンクルスさんから教わったのです

なるほどのう…材料の物性値から求めたのじゃな…


スタスタ


女海賊「…」ボーーーー

盗賊「お?女海賊!寝覚めはどうだ?」

女海賊「…」スタスタ 

盗賊「待て待て!何処行くんだ?何か食ってけ」グイ

女海賊「…」ギロ

盗賊「寝起きの悪いやっちゃな…まぁ座って腹に何か入れろ」グイ

女海賊「…」モグモグ

魔女「落ち着いた様じゃな?これ商人!!よだれで髪が乱れて居るから整えてやれ」

商人「え?僕が?」

女王「私が整えましょう…」スック

女海賊「…」ムシャムシャ

魔女「して?何か話せるかえ?」

女海賊「…」ピタ

盗賊「おいおいおい…泣くのは止せ…振り出しに戻っちまう」

女海賊「…」ポロポロ

盗賊「まぁ食って落ち着け?な?」

女海賊「…」プルプル モグ

魔女「ふむ…よほど堪えた様じゃな…聞かぬ方が良かろう」

女海賊「シン・リーン行く」ボソ

魔女「壁画じゃな?」

女海賊「…」コクリ モグモグ

盗賊「おっし!!情報屋呼んで来るわ」

魔女「そう慌てんでも良かろう?女王も居るでのぅ」

女王「私もそろそろ行かねばなりません」

魔女「では女王を見送った後じゃな」

女王「お気遣いありがとうございます…ですが私の事はお気になさらず」

盗賊「俺は穴の中で籠るのはもう飽きたんだ…酒場で酒が飲みてぇ」

女海賊「食ったら行く」ムシャ

盗賊「おいローグ!!飛空艇準備しとけ」

ローグ「あいさー!!頭ぁ!!風が吹いて来やしたぜ?」

女戦士「フフ風か…よし!碇を揚げるとするか」ノソ

盗賊「ほんじゃ俺は情報屋呼んで来っから荷物まとめんの頼むな?」タッタッタ

ローグ「飛空艇なら直ぐ到着するんで物資はあんま要らんでやんす」

女海賊「…」スック

ローグ「あらら?姉さんもう行くんすか?ちっと早いっす…」

女海賊「壁画…」スタスタ

『石板のある部屋』


タッタッタ


盗賊「情報屋!調査の方はどうだ?」

情報屋「もう記録は全部終わったわ…後は学者を呼んでじゃないと進められない」

盗賊「じゃぁ丁度良かった…シン・リーンに行くんだ」

情報屋「女海賊が目覚めたのね?」

盗賊「そうだ…風が吹いたっていう表現だ」

情報屋「風?」

盗賊「出港だよ」

情報屋「フフ船乗りらしい」

盗賊「荷物まとめてくれ…一旦風を逃すと出遅れちまう」

情報屋「分かったわ…皆行くのよね?」

盗賊「うむ…残るのはアサシンとアヌビス…リカオン…女狐だ」

情報屋「女狐さんに教えて置いた方が良さそうね」

盗賊「あいつまだ財宝探してんのか?」

情報屋「割と取り扱いが丁寧で助かって居たのよ」

盗賊「ほう?」

情報屋「財宝と言っても壺とか装飾品ね」

盗賊「キ・カイの古代遺跡とは違うからそんなもんか…」

情報屋「絶対何処かに有る筈だから探して貰って居るの…ちょっと連絡してくるわ」スタ


--------------

スタスタ


女海賊「未来…」サワサワ

盗賊「お?壁画の見納めか?」

女海賊「あんた…未来がどんな気持ちでこの壁画彫ったか想像できる?」

盗賊「んんん…相当手間かかってるよな?」

女海賊「こんなん簡単に彫れないんだよ…そんだけ守りたい記憶だったんだ」

盗賊「羊皮紙とかにすりゃ良かったのにな?」

女海賊「書いたに決まってんじゃん!失われただけさ」

盗賊「700年だっけか…」

女海賊「あの子ね…記憶が失われて行く事知ってたんだよ…それを全部賭けて世界を救ってんだ」

盗賊「冒険の書の話か?」

女海賊「未来が生きた世界を見たさ…苦悩を見たよ」ツツー

盗賊「この壁画がそうなんだな?」

女海賊「私は壁画を全部見る必要がある…そして未来を迎えに行く」

盗賊「行先を追うんだな?」

女海賊「奴隷にはしっかり働いて貰うから…覚悟して」


-------------

タッタッタ


女狐「あ…盗賊」

盗賊「おぉ俺らシン・リーンへ行く事になったんだ…寂しくなるな?」

女狐「そうでもないわ?」ジャラリ

盗賊「ウハハ高く売れそうな装飾品だな?」

女狐「私も一度アサシンの所へ戻るわ…酒場のマスターとして雇われたのだから」

盗賊「それが良い…財宝が手に入ると金がどうでも良くなるだろ?」

女狐「フフあなた達の言って居る事が分かった…でもちゃんと使わせて貰う」

盗賊「上手く使えな?てか孤児院のガキ全部買い取れ」

女狐「詮索しないでって言ったでしょう?」

盗賊「悪りぃ悪りぃもう聞か無ぇよ…次ぎ会う時は酒場だな?」

女狐「上等なお酒を用意しておくわ」

盗賊「そりゃ良い!酒がありゃもうちっとマシな話が出来る」

女狐「情報屋が睨んでる…もう行ったら?」

盗賊「おおうヤベェ…ほんじゃあばよ!」ノシ

『飛空艇』


フワフワ


ローグ「姉さ~~ん!!早く乗ってくだせぇ!!」

女海賊「…」スタスタ

戦士「敬礼!!」ビシ

魔女「戦士や…シン・リーンから魔術師を派遣するでちと待っておれや?」

戦士「シン・リーンの姫君…ご厚意に感謝致す」キリ

魔女「主は堅いのぅ…気持ち悪いでヤメイ」

戦士「いやはや私とした事が…ハハハ」

魔女「数日分のポーションはある故ちぃと我慢じゃ…ではのぅ」ノシ

女戦士「全員乗ったな?では碇を揚げろ」

ローグ「あいさぁぁ!!」グイ


フワフワ バサバサ


女王「行ってしまわれましたね…」

戦士「さすが勇者一行…去り際にも余韻を残すとは…」

女王「貴方はあの飛空艇と戦って居た事が有るのでしょう?」

戦士「過去の話…私は前しか見ない…只もう彼らに追いつける気がしない」

女王「本当は貴方も行きたいのでは無いのですか?」

戦士「私は民を救う義務がある…それだけ」

女王「私は王で無ければあの船に乗って居ます…住む世界が違って居るのですね」

戦士「前を!前だけ見れば迷いなし!!」キリ


--------------

--------------

--------------

『飛空艇』


ビョーーーウ バサバサ


未来はね…ずっと心の中に寂しさを抱えたまま育ったの

小さい時から遊び相手はいつも虫…

そしてあの子が生きた世界ではパパとママに置いて行かれて独りぼっち…

そうやってやっとできた友達や好きな人とも

勇者という使命を果たす為に置いて来てしまった

そんな夢幻をずっと彷徨ってやっと目覚めた時に

そんな未来の心を何も知らないで私は構ってあげられなかった…

未来にとって理解者は心が通じたパパ…

剣士は大事な記憶を失いながら使命を果たす勇者の宿命を知ってた…

だから未来はパパと運命を共にする事を選んだのよ


女海賊「もっと…ぅぅ…もっと構ってあげられれば良かった…ぅぅぅ」ポロポロ


私が未来の蒼い瞳を奪ってしまったから…

あの子は自分の次元を持てなかったの…

だから次元を飛ぶ度に記憶を失う

壁画だけが未来の記憶を繋ぐ手段だった

でも…それでも未来が変わるたびに失ってしまう

あの子は世界を救う旅の果てですべての記憶を失って

最後に月を見た…

それは私との約束だったから

月に行く約束だけ…最後に残った


女海賊「私は月に行く!!」


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 月の約束…編

   完

『1か月後_シン・リーン古代遺跡』


壁画の写し絵製本作業完了しました!

年代毎に並べ替えは良いじゃろうな?

確認をお願いします

どれどれ…ふ~む…


情報屋「魔女?もう一冊複製をお願いしたいのだけれど…」

魔女「主も携行するのじゃな?」

情報屋「そう…私は壁画の出所を調査したいの」

魔女「材質で割り出すのかえ?」

情報屋「そうよ…キ・カイに戻れば壁画のベースになった石が何処で産出されたのか分かるわ」

魔女「全部調べるのかえ?すべてバラバラの様じゃが…」

情報屋「調べる事でどの地域で壁画が彫られたのか特定出来るから…」

魔女「よかろう…これ学者よ!急ぎでもう一冊複製させるのじゃ」

学者「分かりました…」ペコ

魔女「…しかしこの壁画すべてよそから運んで集めて居ったとはのぅ…」

情報屋「先人の魔術師達が世界中の壁画を集めさせたのよ…偉業だわ」

魔女「残りの壁画は何処にありそうか目星は付かんか?」

情報屋「やっぱり南の大陸かと…確証は無いけれど」


タッタッタ


女海賊「魔女!!宝物庫でこんなんあったんだけどこの金槌何??」スッ

魔女「それはこの遺跡で発見された呪われた装備じゃ…調査の為に一応残しておいたのじゃが…」

女海賊「これ欲しいんだけど…」

魔女「魔人の金槌と言ってな…量子転移のエンチャントに失敗した武器じゃ…呪いが主を支配してしまうぞよ?」

女海賊「私さ…剣とかあんま上手く使えないんだ…金槌なら得意なんだよ」

魔女「使っても良いが依存せぬ様にな?」

女海賊「依存?なんで?」

魔女「破壊力は絶大じゃろうが夢を見るのじゃ…まぁそれで主の心が少しでも癒えるのであれば使うても良い」

女海賊「夢?」ブンブン


---ママ?ママってカリスマなの?---


女海賊「ハッ…」

魔女「コレ!危ないで振り回すでない!!」

女海賊「未来の声が…」

魔女「それが夢じゃ…依存せぬ様にな?」ノソノソ

『城の中庭』


チュン チュン ピヨ


女海賊「おいダンゴムシ!敵が来たぞ…丸まれ」コロコロ

女海賊「ワーム出て来い…囮で走れ!」ニョロニョロ

女海賊「スズメバチ部隊!攻撃の準備だ」ブーン


バサバサ パク!


女海賊「ぁぁワーム!!あんた足遅すぎなんだよ…」

女海賊「スズメバチ!ワームを助けろ!!」ブーン


ノソノソ


魔女「上手い事虫を操るのぅ?」

女海賊「ハッ!!ヤベ…見られた」

魔女「恥ずかしがる事は無いぞよ?」

女海賊「あのさ魔女…私に魔法教えてよ」

魔女「前にも言ったが主は魔力1じゃ…適性が無い」

女海賊「魔力1って事は在るって事じゃん…なんか無いの?」

魔女「虫使いの才はある様じゃで虫を詳しく勉強すれば使いこなせるやも知れぬ」

女海賊「何を勉強すれば良い?」

魔女「触媒に何を使うじゃとか…虫が何を好むじゃとか色々じゃ」

女海賊「触媒って何よ?」

魔女「未来はどんぐりや種を沢山持って居ったじゃろう?」

女海賊「どんぐり…」

魔女「うむ…植物の種は命そのものなのじゃ…そこから様々な虫が生まれる」

女海賊「私にも出来る?」

魔女「成長魔法が使えぬ故…大きな虫を生むことは出来ぬ…小さな虫なら使えるじゃろうのぅ」

女海賊「小さな虫って?」

魔女「未来が使って居った線虫じゃな…ワームの一種じゃ」

女海賊「その触媒がどんぐりなんだね?」

魔女「主は虫と話せる用じゃから聞いて見るが良い…わらわは虫の声が聞こえぬで何とも言えん」

女海賊「そっか…未来は虫に聞いて育ったのか…」

魔女「主は未来の心を真似て居ったのじゃな?」

女海賊「見ないで…大人になって虫と遊ぶなんて恥ずかしいから」

魔女「ほうか?ではわらわは見ぬ様にしとる…」ノソノソ

『ルイーダの酒場』


ドゥルルン~♪


盗賊「よう!!待ったか?」

商人「今来た所さ…戦利品売れたよ?」ジャラリ

盗賊「おーし!!分け前は半分お前にヤル!!これで美味い酒に又ありつける」

商人「今日は何を狩ってきたのかな?」

盗賊「例のごとくスノーゴートだ…アレが一番楽なんだ」

商人「角は?」

盗賊「あるぞ…」ゴトリ

商人「肉と毛皮はもう売った感じかな?」

盗賊「狩りのへたくそな奴にやった…まぁ角だけありゃ良いだろ」

商人「これ薬に出来ればもっと高く売れるんだ」

盗賊「そらメンドクセェな…錬金術なんか俺ぁ勉強する気無ぇ」

商人「勉強してみるかなぁ…」

盗賊「ところでちっと面白い噂聞いたんだ…」

商人「何だい?」

盗賊「港町の方で髭男爵って奴が腕利きの冒険者募集してんだとよ」

商人「髭男爵…公爵の手下か…」

盗賊「なんでも外海を冒険するらしい」

商人「帰って来れないじゃ無いか」

盗賊「帰ってくりゃ英雄だわな」

商人「行き先が知りたいね」

盗賊「だな?」

商人「それよりもう公爵が動き始めてるっていう事だよね」

盗賊「よー分からんが貴族の資産は全部海賊に持ってかれてんだろ?もう死に体じゃ無いのか?」

商人「情報が無いから何とも言えないなぁ」

盗賊「シン・リーンは貴族の影響力がほとんど無いから情報も入って来無ぇ」

商人「だね?平和な国だよ…」

盗賊「狩り資源が多いから冒険者には打ってつけだが…」



-------------

盗賊「しかし一か月も俺らほったらかしで壁画の調査まだ終わらんのか?」

商人「なんか新しい発見が沢山あったみたいだよ?」

盗賊「お前はもう飽きたんだよな?」

商人「ここの古代遺跡はキ・カイの遺跡と違って僕はあんまり興味無いんだ」

盗賊「お宝は発掘し尽くした感じだしな…俺も行く気が無い」


タッタッタ ガチャリ


情報屋「はぁはぁ…やっぱりここに居たわね」

盗賊「おぉ!!今お前等の話してた所よ…まぁ座れや」

情報屋「女海賊はここに来て無い?」

盗賊「んあ?見て無ぇぞ?」

情報屋「城に居無いのよ…何処か行っちゃったみたいで」

盗賊「アイツは飛空艇の隠し場所知らん筈だから何処にも行けんと思うが?」

情報屋「何処に行ったのかしら…」

盗賊「飛空艇置きっぱなしでどっか行くとは思えんからその内帰って来るんじゃ無ぇか?」


ドロボーーー!!


盗賊「んん?」

商人「街道の方だね…ひょっとしたら女海賊かも」

盗賊「行ってみっか」スタ

『街道』


ザワザワ

ったくあの女…こんな大量に盗む奴が居るか!!


盗賊「何の騒ぎだ?」

雑貨屋「売り物の種をごっそり盗んだ女が居るんだ…」

商人「種?ハハ…どれくらいの被害?」

雑貨屋「銀貨10枚程度か…そんな事よりごっそり行かれたのが納得いかん」

盗賊「丁度スノーゴートの角が要らんかったんだ…これで許してやってくれ」ポイ

雑貨屋「おぉ!!?そら済まんな…あんたらあの女の知り合いか?」

盗賊「分からんが連れに手癖の悪いのが居てな…どっちの方向に逃げてったんだ?」

雑貨屋「門の外だな…追憶の森方面だ」

盗賊「なぬ!?外に出たってか…イエティが居るじゃ無ぇか」

雑貨屋「まぁ俺は知らん…角は頂くから衛兵には言わんでおく」

盗賊「そら助かる」

雑貨屋「種を盗む奴なんか初めてだ…変な女も要るもんだ」

商人「どうする?追う?」

盗賊「追うしか無いだろ…イエティなんか一人で相手出来ん」

情報屋「私も武器持って来るわ」

盗賊「待て待て…お前等が一緒だと足手まといになる…俺が一人の方が良い」

情報屋「大丈夫?」

盗賊「まぁ酒場で酒でも飲んでろ…じゃ行って来るな」タッタッタ

『1時間後_ルイーダの酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「あ!帰って来た…女海賊は見つかった?」

盗賊「だめだぁ…ハイディングして逃げてる奴なんか見つけられっこ無ぇ」

情報屋「心配ね…」

商人「その毛皮はどうしたの?」

盗賊「これか?イエティの変死体を見つけたから剥いで来たんだ」

商人「変死体?」

盗賊「頭から内臓まで何かでくり抜かれた感じで倒れてた…まぁ儲かったわヌハハ」

商人「女海賊では無さそうだね…使うとしたら爆弾…」

盗賊「うむ…てかアイツ貝殻持って無いのか?」

情報屋「あ…忘れてた…魔女に相談してみるわ」

商人「それで?壁画の調査の方はどうなの?まだ掛かりそう?」

情報屋「調べられる事は全部調べて今は手詰まりな感じね…一度キ・カイに戻りたいわ」

盗賊「俺も船が置きっぱなしなんだよな…」

商人「新しく分かった事を教えてよ」

情報屋「あまり驚く様な事は無いわ…未来君の足取りが段々分かって来たって感じね」

商人「すごいじゃ無いか」

情報屋「足取りと言っても確定したのが年代だけね…場所の特定がまだなのよ」

商人「場所?壁画を見れば大体分かりそうな気もするけどなぁ…森とか砂漠とか…」

情報屋「あの壁画には後の人が未来君の壁画を真似て付け足した壁画がいくつも有ったのよ」

商人「ええ?歴史の捏造?」

情報屋「歴史なのか予言なのか分からないけれど捏造された物も混ざっているの」


未来君が彫った壁画には必ず月と暦が彫られて居るの

そして壁画の主役は虫を持った人物…未来君ね

その壁画は石の材質がバラバラでどの地域の石なのかまだ分からない


商人「じゃぁ未来君の壁画だけでまとめると違った解釈になりそうだね」

情報屋「そうよ?勇者が魔王になると言う様な表現は後に付け加えられた捏造ね…未来君はもっと別の物を見てた」

商人「大した発見じゃ無いか!別の物って何?」

情報屋「オークよ…オークに何かを見てたみたい」

商人「じゃぁやっぱり南の大陸か」

情報屋「未来君の壁画だけを写した書物を今複製して貰って居る所なの…それだけ見ると未来君がどんな道を歩んだのか分かる」

盗賊「ほ~ん…ちっと興味出て来たぞ?」

情報屋「出来たら見せてあげる」



-------------

ドゥルルン~♪


吟遊詩人「神の住む国ニルヤカナヤ~♪死者の魂が~帰る安住の理想郷~♪オホツガグラに呼ばれ~♪」


盗賊「あの吟遊詩人はすっかりここに定着した様だな?」グビ

情報屋「女王のお気に入りだそうよ?」

盗賊「お前は酒飲まんのか?俺が払ってやるが…」

情報屋「お酒は遠慮しておくわ…」

盗賊「詰まんねぇなぁ…おい商人!代わりにお前が飲め」

商人「朝まで付き合わされるのはもうゴメンだよ」


吟遊詩人「皆さんお揃いで…」


盗賊「よう!兄ちゃん!!稼いでっか?」

吟遊詩人「お陰様で…ところで皆さんに最近のホットな話題をと思いまして…」

盗賊「ほう?何よ?」

吟遊詩人「髭男爵が冒険者を募っているのは御存じで?」

盗賊「噂で聞いたぐらいだな…外海を航海するとか聞いたが?」

吟遊詩人「その行き先がさっき僕が歌って居たニルヤカナヤなんですよ」

情報屋「ニルヤカナヤ…もしかしてニライカナイでは無くて?」

吟遊詩人「今の言葉だとそうなるのでしょうかね?」

盗賊「何が在るのか知ってるか?」

吟遊詩人「それがホットな話題なんです…黄金が眠って居るとか」

盗賊「なんだ只の黄金か…あんま興味無ぇなぁ…」

吟遊詩人「ハハそうでしたか…今冒険者たちはその噂で持ちきりな物だったので」

商人「場所は分かってるのかな?海図とか航路が分からないと帰って来れない」

吟遊詩人「さぁ?僕は伝説の諸事詩しか知らないでの何とも…」

情報屋「昔フィン・イッシュは黄金郷と呼ばれて居たけど黄金を何処かに隠したと言う伝説は知ってる」

商人「じゃぁそのニルヤカナヤに隠したっていう可能性は在りそうだ」

盗賊「黄金なんか手に入れてもなぁ…」グビ

情報屋「あれ?そういえば未来君の壁画に黄金らしき物が記されて…」

盗賊「なぬ!?」

商人「おっとぉ!!?」

吟遊詩人「諸事詩では黄金の他に時の砂で時間を巻き戻すというフレーズもあるんですよ」

商人「時間を巻き戻す…帰ろうとしたとも解釈出来るな…」

情報屋「ちょっと…城に戻って壁画を見直してくる」スック タッタッタ

盗賊「おい吟遊詩人…もうちっと詳しく教えてくれ」

吟遊詩人「あぁ良かった!皆さんに興味を持ってもらえて…」

『翌日_宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「戻ったぜ?」

商人「…どうだった?良い情報聞けたかな?」

盗賊「いや…他の冒険者にいろいろ聞いてみたが吟遊詩人から聞いた以上の話は聞けなかった」

商人「残念だな…僕もフィン・イッシュ沖の地図を探して見たけど見当たらなかった」

盗賊「航路が分からんと船じゃ行けん…飛空艇で行くにしても目標物が無いとな…」

商人「大体の場所じゃダメだよね?」

盗賊「海がメチャクチャ広いから遭難するのがオチだ…なんとか海図探してぇ」

商人「ホムンクルスが居ればなぁ…」


トントン


商人「お?誰か来た…」

魔女「入っても良いか?」ガチャリ

盗賊「返事する前に入ってんじゃ無ぇか…」

商人「あれ?魔女イメチェンしたの?」

魔女「変装じゃ…公爵に姿を見られて居るでな」

盗賊「まぁ入れ」

魔女「うむ…」ノソノソ

商人「どうしたの?」

魔女「女海賊が見当たらぬ…狭間に入って居る様じゃで貝殻も千里眼も通じぬのじゃ」

盗賊「まだ帰って無ぇのか…」

魔女「こちらにも来て居らぬという事は…わらわの塔へ行ったやも知れんのぅ」

盗賊「お?そういや追憶の森の向こうだっけか」

魔女「公爵に見られて居るでわらわの塔にはしばらく行かん様にして居ったのじゃがのぅ…」

商人「狭間に入る入り口は知られているの?」

魔女「分からぬ…」

盗賊「まぁ俺が行ってちっと見て来るわ」

魔女「頼む…わらわは下手に動いて見つかりとうない」

『追憶の森』


フワフワ ドッスン


盗賊「商人!先に降りてくれ!俺ぁ飛空艇ハイディングさせてから行く」

商人「うわぁ…足元ビタビタだ」ベチャベチャ


スゥ


盗賊「場所覚えてっか?」

商人「大体ね…こっちだよ」ビタビタ

盗賊「雪の上歩け」

商人「この辺まで冒険者は狩りに来るのかな?…これ足跡じゃないか?」

盗賊「泥じゃ足跡かどうか分からん」

商人「待って!やっぱり何か居る…見てあそこの木の下」ユビサシ

盗賊「…うお!!死体じゃ無ぇか」

商人「随分傷んでる…」

盗賊「警戒しろ…戦利品無いか確認する」サクサク

商人「イエティが出るんだっけ…」キョロ

盗賊「一応俺が毒牙のナイフ持ってから足止めは出来る…おぉコイツ金持ってやがる」ガサゴソ

商人「こんな所まで一人で来る事無いよね?」

盗賊「うむ…こいつが食われてる間に他の奴らは逃げたんだろ…割と良い武器持ってんぞ?」ポイ

商人「おっとっと…」パス

盗賊「そいつはククリナイフってんだ…お前に丁度良い…腰にぶら下げとけ」

商人「早く行こう…なんか襲われそうで落ち着かない」

盗賊「だな?あとはゴミだから置いてく…行こう」サクサク

『魔女の塔』


ブーン


盗賊「ぬぁぁぁ何でこんなにハチが居んのよ」バサバサ

商人「ミツバチだね…花があるから集まってるのかな?」


ミツバチ集まれ!

よしよしハチミツはこんなもんで良い

褒美に女王バチ増やして良いぞ

おいワーム!ちゃんと掃除しろよ!

へそのゴマやんないぞ?


盗賊「居た居た…アイツ何やってんだ?」

商人「お~い!!女海賊!!」

女海賊「ヤベ…見つかった!!」ダダ ピューーー

盗賊「なんで逃げんだよ!!おい待て!!」

女海賊「あんた達何しに来たのさ…私修行中なんだよ」

盗賊「なぬ?修行?…お前今虫と遊んでただろ」

女海賊「遊んでる訳じゃ無ぇし」

商人「ハハ…まぁ無事で良かったよ…魔女が心配してるんだ」

盗賊「ひょっとしてお前虫使いになろうとしてんのか?」

女海賊「何さ!!悪い?」

盗賊「いや関心してんだ…お前が魔術師とはな…」

女海賊「ムフ…ハチミツ食ってく?」チラ

盗賊「おぉちっと味見させてくれ」

女海賊「おし!ちっと休憩すっかぁ…こっち来なよ」

盗賊「お前勝手に魔女の塔使ってんのか?」スタ

女海賊「バレなきゃ良いんだよ」

商人「う~ん…君は考えが単純なんだね…直ぐにバレるよ」

女海賊「元に戻せば別にイーじゃん…文句言うなら帰って!」

盗賊「おい商人!従っとけ」

『魔女の部屋』


ザワザワ カサカサ


盗賊「…なんつかー…まぁ綺麗っちゃ綺麗なんだが同居人が虫ってのがよ…」

女海賊「今育ててんの!!ホレ…ハチミツ!」ポイ

盗賊「おわっ…壺ごとかよ」ペロリ

女海賊「どう?」

盗賊「こりゃ美味い!商人!舐めて見ろ」

商人「すごいな…高く売れるよ」ペロ

女海賊「塔の周りにしか花が咲いて無いからそんだけしか作れなかった」

盗賊「壺一つありゃ十分じゃ無ぇか」

女海賊「樹液も集めてんだ…こっちは一杯有る」

商人「君はハチミツ一本で生きて行けるだけ稼げると思うよ…うんうん美味しい!」

女海賊「ほんで何しに来たの?もしかして連れ戻しに来た?」

商人「そういう訳じゃ無いよ…魔女が心配してるから様子を見に来たのさ」

女海賊「魔女が妖精に教えて貰えって言ったんだよ…迷惑掛かんない様に離れた所で笛吹いてんじゃん」

商人「あぁなるほど…妖精の笛を吹くために魔女の塔に来たのか…」

盗賊「魔女の心配はお前の命だ…どうやら魔女を狙って刺客が来てる様だ」

商人「やっぱりさっきの死体は刺客?」

盗賊「ククリナイフ使うなんざそれしか考えられん」

女海賊「あー…そいえば4~5人来たから虫使って追い返したんだ」

商人「マズいね…又来そうだ」

女海賊「アラクネーけし掛けたら逃げてくくらいショボイ相手だよ…気にしなくて良いんじゃない?」

盗賊「アラクネーまで居るんか」

女海賊「この辺は結構沢山巣があるみたい」

商人「それじゃぁ魔女の塔はアラクネーに守らせておけば良いね」

盗賊「ここに居ると面倒が起きちまうから戻った方が良い」

女海賊「う~ん…どうすっかなぁ…ハチミツもう集まんないし一回帰るかぁ…」

商人「事情を魔女に話した方が良さそうだよ」

女海賊「おけおけ!修行は一旦中止!行こっか」スック

『追憶の森』


ベチャベチャ


女海賊「私さぁ樹皮を集めてから戻るから先に帰ってよ」

盗賊「お前一人じゃ危ないだろ」

女海賊「大丈夫だって!アラクネー連れてたらイエティも襲って来ないから」

商人「ええ!?アラクネー何処に居るの?」

女海賊「鞄の中…育ててるんだよ」

盗賊「ちっこいアラクネーでも襲って来んのか?」

女海賊「なんかイエティ逃げてくよ?」

商人「毒が怖いのかもね」

盗賊「いやしかしだな…一人で森を歩かせる訳にイカン」

女海賊「あんたら一緒だと邪魔なの!妖精の笛使えないから…」

商人「ハハ…なるほどね…何か有っても笛吹けば良い訳ね」

女海賊「そういう事…虫は眠らないからずっと私のターンな訳」

盗賊「もしかしてよ?こないだイエティの変死体を見つけたんだがお前の仕業か?」

女海賊「そうそう!!この魔人の金槌を試してみたんだ」スチャ

盗賊「そら只の金槌じゃ無いのか?」

女海賊「私も使ってビックリさ…叩いた所が消えて無くなるんだよ」

盗賊「それで死体がくり抜かれた感じになってたんだな?」

女海賊「妖精の笛とこの魔人の金槌あれば何に襲われても余裕!!」

盗賊「アラクネーと言い…その武器と言い…お前は反則ばっか使う」

女海賊「分かったらハイハイ…あっち行った!!」

盗賊「おい商人!!飛空艇戻るぞ!!」

女海賊「私お腹空いてるから後で飯代お願い…ルイーダの酒場に行ってるから」

盗賊「へいへい…」スタ

『ルイーダの酒場』


ドゥルルン♪


バニー「はぁい!!お一人さまですか?」

女海賊「んぁぁ…連れが2人居るんだけど…まだ来て無いなぁ」

バニー「お席空いてますよ?ぞうぞ~ウフフ」

女海賊「まぁ良いや…私お腹減ってるんだ…何か持って来てよ」

バニー「お代は先に頂きまぁ~す」

女海賊「お金は連れの2人が持ってるのさ…なんだあいつ等遅っそいなぁ…」ブツブツ


吟遊詩人「お久しぶりです!!」


女海賊「お!!良い所に来た!!食事したいんだけどお金持って無いのさ」

吟遊詩人「それなら僕がリュートのお礼として御馳走しますよ」

女海賊「ラッキー!!適当にお願い」

吟遊詩人「バニーさん…彼女にはお世話になったんだ…これで何か持って来てあげて」ジャラリ

バニー「はぁ~い!!ウフフ」

吟遊詩人「今から僕が演奏するからゆっくり食事を楽しんで下さい」


ドゥルルン♪

吟遊詩人「かつての英雄♪赤い瞳の王~♪えにし森から馬を駆ってやって来た~♪」

吟遊詩人「メデューサの血を英雄は求む♪来たる来たるは黒の騎士~♪邪なるものは滅び去る時~♪」


女海賊「ふ~ん…時の王のおっさんの歌か…」

バニー「どうぞ~お食事をお持ちしましたぁ~」

女海賊「何日振りのまともな食事だろ…頂きマンモス~」パクパク


ヒソヒソ ヒソヒソ

おい見ろ…あの女は魔女の塔に居た奴じゃ無ぇか?

何!?塔の魔女か…どうする?街の中じゃ魔術師がウロウロしてる

麻痺毒だ…動けなくなった所をさらうぞ


女海賊「あの2人遅っそいなぁ…」モグモグ

怪しい男「これは美しい美女…席をご一緒しても?」

女海賊「んぁ?あんた誰?」ムシャ

怪しい男「通りすがりの冒険者さ…貴方のような人にピッタリな話をと思ってねフフ」

女海賊「悪いけど私あんたに興味無いから…シッシ!!」


ヒュン チクリ!


女海賊「痛った!!誰!!」ガタン

怪しい男「こ…これは毒針…一体誰が!?」ニヤ

女海賊「あったま来た!!」ゴソゴソ

怪しい男「動くと毒が回ってしまいますよ?」

女海賊「うっさいなアンタ!!どっから撃って来たか見て無いの?」キョロ

怪しい男「これは吹き矢…角度的に向こうの方から…」---毒効かんのか?この女は---

女海賊「あっちか…」ダダ


ヒュン チクリ!


女海賊「くっそ!!どっから撃って来てんのよ!!」ドタドタ

バニー「どうかされましたか?」

女海賊「なんか吹き矢撃たれてんだって…痛ったいなぁ」

バニー「え!?この酒場で騒ぎを起こされますと大変な事に…」

怪しい男「ささ…こちらの方へ」グイ

女海賊「何すんだよ!あんたに興味無いって言ってんじゃん」

怪しい男「毒の手当てをしますので横に…」

女海賊「あぁぁもうメンドクセェ!!」


ピ~ヒョロロ


バニー「吟遊詩人の演奏中に他の楽器はダメよ~ん」

女海賊「ハイハイゴメンね…」ズカズカ

怪しい男「おかしいな…強い麻痺毒の筈なのに」

女海賊「はぁ?なんであんたがそんな事知ってんの?」フラ


ドタリ ドタリ ドタ ドタ


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『少し後』


パクパク モグモグ


盗賊「なんだこりゃ…どうなってんのよ」

商人「君一人で食事してるの?」

女海賊「なんか暗殺されそうだったから眠らせた」ムシャムシャ

商人「…これは衛兵呼んだ方が良いね」

女海賊「そこでぶっ倒れてる怪しい男と…吹き矢持ってる奴が刺客…そいつら牢に入れて喋らせれば良い」モグ

盗賊「お前は平気なんだよな?」

女海賊「毒針で撃たれた」

盗賊「なんで無事なのよ…」

女海賊「毒食べる虫が体の中に居るから」モグ

商人「ハハ何でも有りだね…君は」

女海賊「ふぅぅお腹落ち着いたぁ」ゲフー

商人「とりあえず魔術師呼んで事情を話して置く」


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『宿屋』


ガチャリ バタン


商人「…やっと納得してもらえたよ」

盗賊「騒ぎになってっか?」

商人「うん…みんな寝てるだけだから困惑してた」

盗賊「女海賊どうする?夜は城に出入り出来んだろ?」

女海賊「無理…てかあいつ等魔女狙ってんだよね?人相全然違うのになんで私狙ってんの?」

商人「魔術師は変性魔法で姿変えるのが認知されてるから状況判断なんだろうね」

女海賊「魔女の塔に行ったのがマズかったのか…」

商人「シン・リーンは何か有ると刑が重いから暗殺なんか無いと思ってたけどね…」

盗賊「魔女の独裁国家だもんなヌハハ」

商人「魔女の影武者って誰がやってるのか知ってる?」

女海賊「王女3人共誰かが化けてるね…誰なのか謎」

商人「塔の魔女が誰なのかも一般に知られて無いのはやっぱ幻惑されてるよね…なんか怖いなこの国」

盗賊「統制がきっちりされてるから悪が蔓延らん…そらそれで良いと思うぞ?」

商人「…それで女海賊は一晩ここに泊って行く訳だから面白い話を聞かせてあげよう」

女海賊「ん?何?」

商人「ニルヤカナヤという理想郷の話さ…」

女海賊「興味無い」

商人「聞いて…未来君が関わってる可能性がありそうなんだ」

女海賊「え!!?何処に有んの?」

商人「壁画に黄金らしき物が記されていたと情報屋が言ってたんだ…その黄金の行き先がニルヤカナヤの可能性があるのさ」

女海賊「ええと…黄金が描かれて居るのは相当昔の壁画…年代いつだっけな」

商人「情報屋がそれを知って壁画を見直すと言ってた」

女海賊「明日聞いてみる」

商人「それでそのニルヤカナヤには時間を巻き戻す時の砂という物があるらしい…つまり未来君は現代に帰ろうとした可能性があるのさ」

女海賊「じゃぁ何で帰って来ないのさ」

商人「失敗したんだろうね」

女海賊「そんなん今見つけても意味無いじゃん」

商人「ある…君はきっとこの時の砂が欲しい筈だ」

女海賊「私が時間を巻き戻す…そういう事か」

商人「兎に角…秘密は知りたいよね?」

女海賊「場所は?」

商人「フィン・イッシュ沖…外海の向こう側さ」

女海賊「よっし!!」

盗賊「待て待て…詳しい場所が分からん上に帰って来た奴が居ない…簡単に行ける場所じゃ無ぇ」

女海賊「行く方法見つけりゃ良いんでしょ?ホムちゃん起こせば座標だって分かる」

商人「そういう事だよ…先にホムンクルスを目覚めさせれば可能性はある」

女海賊「おけおけ!明日行こう」

盗賊「まずは魔女に相談だな?勝手に出て行く訳にも行くめぇ」

『翌日_シン・リーン城』


カクカク シカジカ


女海賊「…て訳でホムちゃん目覚めさせに行って来る」

魔女「ちと待てい…南の大陸にはわらわも行きたいのじゃ」

女海賊「ほんじゃ行く準備してよ」

魔女「壁画の製本作業がもう少し掛かるのじゃ」

女海賊「う~ん…じゃぁ飛空艇の改造に魔女付き合って!」

魔女「わらわが何を出来ると言うのじゃ?」

女海賊「飛空艇の木材を虫が食っちゃうんだよ…だから木材を樹脂に変性させて欲しいのさ」

魔女「ムム?樹脂に変性できると何故主が知って居る?」

女海賊「妖精に聞いたんだ…樹脂なら食わないって」

魔女「よかろう…その代わり製本が済むまで大人しくして居るのじゃぞ?」

女海賊「おけおけ…これで飛空艇の中で虫を育てられる」」

魔女「飛空艇を虫の巣窟にするのかえ?」

女海賊「そうそう!光の石もあるから植物も育てられる」

魔女「なるほどのぅ…土を入れて虫に耕させる訳じゃな」

女海賊「じゃ行こっか!」スタ

『飛空艇』


トンテンカン ゴソゴソ


盗賊「いよー女海賊!!物資買い付けて来たぜ?」

女海賊「まだ入れないで!今改造中…そこ置いといて」ゴソゴソ

盗賊「これ以上改造する所なんか無いんじゃ無ぇか?」

女海賊「虫の巣にすんだよ」

盗賊「アラクネーだけじゃ足りんってか…」

女海賊「寝床はちゃんと用意しとくからアッチ行ってて」

盗賊「へいへい…」スタ


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商人「魔女は見物かい?」

魔女「うむ…女海賊が虫に憑りつかれて居らんか心配でのぅ」

商人「虫が憑りつく?」

魔女「虫ばかりと会話して居ると俗世から離れて行ってしまうでの…内に籠らねば良いが」

商人「あぁなるほど…未来君がそんな感じだったか」

魔女「悪くは無いが見て居て可哀そうでのぅ…」

商人「…ところで捕らえた刺客の3人はどうなったの?」

魔女「尋問が終わって釈放する所じゃ」

商人「釈放?そんなんで良いの?」

魔女「塔の魔女を暗殺したと思い込ませたのじゃ…これで収まれば良いが…」

商人「泳がせて帰らせるのか…暗殺を計画してるのはやっぱり公爵?」

魔女「公爵が指示して居るのじゃろうが…実際に計画したのは他の者じゃろうな」

商人「誰?」

魔女「冒険者ギルドで賞金首になっとった様じゃ」

商人「えっと…支持団体沢山あるね…商人ギルドも支持団体の一つだ」

魔女「下っ端じゃで尋問しても意味が無いのじゃよ」

商人「商人ギルドの伝手で調べられるかもしれない」

魔女「それは助かる…今のままでは女海賊は動き辛かろう」

商人「女海賊?姿を変えてる様に思われてる?」

魔女「うむ…本当はもう一人居ったらしいが行方が分からん」

商人「まぁ魔女へのタゲが逸れて良かったと言えば良かったんだけど…」

魔女「しばらく様子見じゃな」


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タッタッタ


情報屋「魔女!!時の砂についてもう一度見解を聞きたいの」

魔女「何度も言うがその様な物は存在出来ぬ」

情報屋「この古文書には時間の巻き戻りの事が少し書かれて居るわ?見て…」

魔女「どれどれ…ふぅむ…確かに巻き戻りがあったかのように書かれて居るな」ヨミヨミ

商人「存在出来ないってどういう意味?」

魔女「時間が巻き戻るのではなく次元を超える事は出来るじゃろうな」

商人「その人だけ超える訳か」

魔女「有るとすれば量子転移が封じられた何かじゃ…祈りの指輪がそれにあたる」

情報屋「砂では無いという事?」

魔女「じゃろうのぅ…砂銀であれば可能かも知れんがわざわざ砂銀に封じる理由が分からぬ」

商人「古代魔術で出来る可能性は?」

魔女「ムム…時空の魔方陣が解明されて居らぬ故何とも言えぬのぅ」

情報屋「やっぱり魔女の見解は時の砂という物は無いという事ね?在っても祈りの指輪の様な何か…」

魔女「そうじゃ」

商人「ねぇ…こんなのはどうかな?」


仮に砂時計の中身に砂銀を詰め込んだとしよう

そこに量子転移をエンチャントしたとしたら

どのくらいの数の砂銀が成功するかな?


魔女「やったことが無いで何とも言えぬが幾千の砂銀の粒のいくつかは成功するやも知れん」

商人「失敗した砂銀はどうなる?」

魔女「呪われた砂銀になるじゃろう…夢を見る砂じゃな」


未来君はそれで夢を見ようとして居ないかな?

夢を思い出す為にそれを作って居無いか?


魔女「なんじゃと!?…」

情報屋「商人…あなたビックリ発想するのね」

魔女「ふぅむ…確かに夢を自分の物に出来るやも知れんのぅ…」

商人「結果論だけどそれで少しだけ次元を飛んでしまうと言うのは?」

魔女「なるほど有り得そうじゃ」

情報屋「ちょっと待って!!この古文書の年代と黄金郷の年代が一致する!!」

商人「つまりこうだね…未来君は第3者と一緒に行動してたんだ…見て居た人が書いたんだよ」

『翌日』


ノソノソ


魔女「女海賊は居るかえ?」

女海賊「お!!魔女良い所に来た」

魔女「何じゃ?飛空艇の改造は終わったんか?」

女海賊「まぁ入ってよ…」グイ

魔女「ほう?もう植物が芽を出しよるんか」

女海賊「魔女の塔の花を植えたのさ…ここでハチミツ作れる」

魔女「ハチミツは完全栄養食じゃで飛空艇で作れるのは良いのう」

女海賊「これで長期間補給無しで飛べる」

魔女「主はもう外海へ出る気で居るのじゃな」

女海賊「外海だけじゃ無いよ…オーク領も補給なんか出来ないさ」

魔女「ふむ…今壁画の製本作業が終わって主に持って来たのじゃ…ホレ」バサ

女海賊「おぉ!!」パラパラ

魔女「未来が彫った壁画のみ年代毎に並べて居る…それを完成させるのが主の役目じゃな」

女海賊「よっし!!やる気出て来た…月まで行くぞ!」

魔女「どうやって行くか考えて居るんか?」

女海賊「ホムちゃん頼みさ…どう計算しても地球の重力振り切るエネルギーが足りない」

魔女「重力の魔方陣が解明されれば問題を解決できるやも知れぬ…やる事が多いのぅ」

女海賊「一個一個解決するさ」

魔女「さて…準備は整ったで行くとするかのぅ」

女海賊「おっけ!!盗賊と商人連れて来る…魔女は情報屋お願い」

魔女「うむ…飛空艇で待って居るでのぅ…」

『宿屋』


ガチャリ バタン


女海賊「なんで宿屋でゴロゴロしてんだよ!探したんだぞ!!」

盗賊「入って来ていきなりなんだ!」

女海賊「ルイーダの酒場が無くなってんじゃん!!」

商人「あ…それ例の事件で改装するらしいよ?なんか女王が独自の冒険者ギルド作るんだってさ」

盗賊「別所に有った冒険者ギルドを無理やり閉鎖させたみたいだぜ?」

女海賊「ほーん…まぁ関係無いや…もう行くぞ!」

盗賊「その言葉を待ってたぜ?退屈してたんだ」

女海賊「とりあえず今日中に港町行く」

商人「おー墓参りに行けるじゃ無いか」

女海賊「盗賊!今晩髭男爵の船から海図盗んで」

盗賊「なぬ!?」

女海賊「あんたならチョチョイノチョイでしょ?」

盗賊「偵察も無しにいきなりか…」

女海賊「とりあえずユートピア行くから速攻用意して」

盗賊「おっし!!じゃぁまぁ行くか」スック

『飛空艇』


ウロウロ


情報屋「あ…戻って来た」

女海賊「ん?何してんの?」

情報屋「虫が沢山居るから入り辛くて…」

女海賊「無害だよ…何も悪いことしないから入って」グイ

情報屋「…魔女は平気なの?」ビクビク

魔女「慣れればどうという事は無いぞよ?」

盗賊「うはぁ…サソリも要るじゃ無ぇか…」

女海賊「そいつ毒無いから…暗くなった時の明かりだよ」

盗賊「そういや夜中サソリは光るな?」

女海賊「そそ…樽の上に置いといて目印にするんだ」

商人「…お邪魔しま~す」コソコソ

女海賊「そんなビビんなくて大丈夫だって!!」

商人「いやぁ…流石に…これどのくらい種類居るの?」

女海賊「ほんなん分かる訳無いじゃん…沢山居る」

商人「僕は何処で横になったら?」

女海賊「何処でも良いよ!虫の方が勝手に避けるから」

商人「踏ん付けそうだなぁ…」

女海賊「踏まれる方が悪いんだって…気にしないでくつろいで?ほんじゃ球皮膨らませるよ?」


シュゴーーーー フワリ


女海賊「お?やっぱ随分軽くなってんな…」

魔女「樹脂は木材より質量が軽いでのぅ」

女海賊「もっと荷を乗せられるんか…」

盗賊「さ~て!!俺は虫共とくつろぐぞ!!」ドター

商人「まぁ5人だけだと随分広いね」

情報屋「ハチの巣まである…怖い」

女海賊「これから毎日ハチミツ食べられるよ」

盗賊「おぉそうだ!ハチミツが美味いのよ…情報屋も舐めて見ろ」

女海賊「よーし!!進路南!!目標海!!しゅっぱーつ!!」グイ 


シュゴーーーー バサバサ

『ユートピア』


フワフワ ドッスン


女海賊「はい降りた降りたぁ!!」

商人「さっそく墓参りに行って来るよ」スタ

情報屋「私も行くわ…報告しなきゃいけない事があるから…」スタ

女海賊「盗賊は海図盗んできて!」

盗賊「お前も停船してる船の数見ただろう?どれが髭男爵の船かも分からんのだぞ?」

女海賊「はぁ?ほんなん一隻づつ海図奪ってくりゃ良いじゃん」

盗賊「あのな?簡単に言うが偵察も何もしないで盗むなんざ出来っこ無ぇ」

女海賊「どんくらい掛かる?」

盗賊「とりあえず今晩は酒場で情報収集だ」

女海賊「まぁしょうがないかぁ…」

盗賊「停船してる船の多くはセントラルの軍船なのよ…下手に動くと掴まるのがオチ…お前も勝手にウロウロすんな?」

女海賊「私は望遠鏡で覗くさ」

魔女「わらわが変性魔法で姿を変えても良いぞ?」

女海賊「この美貌を変えようっての?ムリムリこれ以上美人にはなれないから」

魔女「嫌ならまぁ良いがわらわは酒場で一杯飲みたいのじゃ」

女海賊「行ってくりゃ良いじゃん」

魔女「これ盗賊!主がエスコートせよ」

盗賊「お…おう!しかしな…子供の恰好じゃさすがにマズいぞ」

魔女「変性魔法!」グングン

盗賊「おう!それで良い…しばらくその格好で居てくれ」

魔女「女海賊や…着替えを借りるぞよ」

『墓』


商人「…」人

情報屋「…」人


スタスタ


女海賊「…」ウメウメ

商人「花を植えてるの?」

女海賊「魔女の塔に生えてた花だよ…もう直ぐ春だからさ」

商人「母さん喜ぶな」

女海賊「盗賊と魔女は酒場行ったんだけどあなたは行かなくて良いの?」

商人「盗賊に付き合うと朝まで飲まされるからさ…明日市場に行って相場だけ少し見たいかな」

情報屋「町に随分人が出て居そうね」

商人「そうだね…なんで急に人が増えたんだろう」

女海賊「情報屋も酒場で飲んで来て良いよ」

情報屋「私はお酒を控えているの」

女海賊「あぁそっか赤ちゃん出来たんだっけ」

情報屋「ちょっと女海賊!!」

商人「えええ!?まさか盗賊の?」

情報屋「女盗賊にその報告に来たのよ…盗賊には黙って置いて?」

商人「なんでさ?言えば良いじゃ無いか」

女海賊「纏わりつかれるのがメンドクサイんだってさ」

情報屋「それもあるけど本当は盗賊の心の中に女盗賊が住んで居るから気を使って居るのよ」

商人「なるほど…大人の事情って訳か」

女海賊「よっし!ハチミツ使った栄養料理でも作るか!!」

商人「君が作ると何でも山賊焼きになる…料理は情報屋に任せておいた方が良い」

情報屋「フフ私が作るわ?ハチミツもちゃんと食べてみたかったし」

『海が見えるあばら家』


グツグツ ジュワー


情報屋「さぁ出来たわ…どうぞ食べて?」

女海賊「私達は後で良いんだよ…あんたが栄養付けないと意味無い」

情報屋「フフ沢山あるわ?」

商人「やっぱハチミツ使うと肉が柔らかいね…」ハフハフ

情報屋「少しだけで随分違う料理になるわ」パク モグ

商人「ハチミツは何にでも使えるから本当に重宝する…」ムシャムシャ

女海賊「むふふ…そんな言われるともっと作りたくなるじゃん…むふふふ」

商人「女海賊はミツバチを使役するのが一番得意なの?」

女海賊「さぁどうかな?好きで育ててるだけだから…冬でも育つんだよ」

商人「魔女の塔でやってた修行ってどんな事を?」

女海賊「私成長魔法ってのが使えないから小さい虫で何が出来るのか研究してたんだ」

商人「それで何か居た?」

女海賊「ワーム以外ちゃんと育てないと何も出来ない事が分かった」

商人「それで飛空艇で色々育ててるんだね」

女海賊「でもワームも色々出来るんだよ…毒を吐かせたり物を腐らせたり」

商人「へぇ?スゴイな…立派な魔術師じゃ無いか」

女海賊「むふふ…試しに使って見る?」

商人「いやいや毒は勘弁してよ」

女海賊「毒を食らうワームだよ…線虫って言うの」

商人「ん?それって未来君が使って居たという?」

女海賊「うん…これだけは私も使えるんだ…行くよ?線虫!」ニョロ

商人「ハハ小さいな…見るのもやっとだ」

女海賊「行け線虫!毒を食らって来い!」ニョロニョロ

商人「え!?ちょちょ…うわぁぁ目の中に入って…」ゴシゴシ

女海賊「毒食べるだけだから大丈夫!情報屋もやる?」

情報屋「いや…私は遠慮しておくわ」ゾゾゾ

女海賊「毒食べるから妊婦さんには良いのさ…線虫!行け!」ニョロリ

情報屋「ちょ…いやぁぁぁ…」バタバタ


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商人「…ふむふむ君がカバンの中に入れてるアラクネーが魔物除けの役割してるのか」

女海賊「アラクネーの毒が一番厄介だからね」

商人「麻痺毒だったっけ」

女海賊「あとアリが数が揃うと一番強いかも」

商人「飛空艇でアリは育てて居ないね?」

女海賊「増えると他の虫を全部食べちゃうからさ…そんだけ強いんだよ」

商人「虫にも色々バランスがあるんだね」

女海賊「成長魔法使えたらもっと色々試せるんだけどなぁ…」

商人「そういう杖とかあれば補えるのかもね」

女海賊「魔女にお願いしたんだけど使ったらダメだって言われたのさ」

商人「え?なんで?」

女海賊「間違って人に使うと老化させちゃうからだって」

商人「あぁぁなるほど…間違えると死人が出そうだ」

情報屋「危ないわね…お腹の赤ちゃんに掛かってしまうとお腹が破裂するわ」

商人「知能はそのままで大人になってしまったらどんなに不幸か…」

女海賊「まぁ良いや!線虫で我慢しとく」

情報屋「その魔法は何も犠牲にしない所が良いわね」

『深夜』


ガチャリ ギー


盗賊「帰ったぜ?」

情報屋「あら?あまり飲んで居無いのね?」

魔女「酒場は海賊共が溢れておってな…座る場所なぞ無かったわい」

商人「もしかして貴族の資産を奪って来た海賊達?」

盗賊「そうよ…豪遊していやがる」

商人「豪遊する程女の人居たっけ?」

魔女「前任の領主…片足の領事じゃが移民の政策をしておったらしいのじゃ」

商人「じゃぁ移民が今になって増えてるのか」

魔女「移民と言うても何処からか集めた奴隷じゃ…奴隷を買い入れる政策をして居ったのじゃ」

盗賊「ほんで海賊共はセントラル行くよりも港町の方に女が多いもんだから集まってる訳よ」

商人「お金が欲しい人と女を買いたい人が集中したか…互いに利があるね」

盗賊「まぁそういうこった…こりゃこれからどんどん人増えるぞ?」

魔女「母上が心配して居ったのが急激に人が増えて統制が効かんくなるのを心配して居る」

商人「今の領主は?」

魔女「魔術院から派遣されておるが…一旦移民の受け入れをしておるでその流れを継続しとる」

商人「人が増えるのは良い事だよね」

魔女「うむ…荒れなければ良いがのぅ…」

女海賊「ほんで髭男爵の船はどれなのか分かったん?」

盗賊「髭男爵はとっくの昔にどっか行ったってよ」

女海賊「ええ!?冒険者募ってるって話は?」

盗賊「外海を冒険するより金持ってる海賊相手にした方が手っ取り早く金入るだろ?だから冒険者が集まらん訳よ」

商人「ハハ海賊共に追い払われた訳だ」

盗賊「そういうこった…わざわざ危ない外海行く奴なんざそう居らん」

女海賊「海図無いと私等も行けないじゃん」

商人「髭男爵の行先は分からないの?」

盗賊「さぁな?キ・カイかフィン・イッシュだろ?どうせ…」

女海賊「停船してるセントラルの軍船は何?」

盗賊「元々ハジ・マリ聖堂を攻め立ててた連中だ…黒の同胞の後ろ盾失って行き先未定なんだと思う」

魔女「元老院による内紛が原因じゃで帰れとも言えんのじゃよ…しばらくゴタ付くじゃろうな」

商人「資金源が断たれてしまったから軍から離脱する人も出そうだ」

盗賊「もう出てるぞ?脱走兵がそこら中に潜んでるらしい」

商人「セントラルは縮小免れないね…貴族が力失っちゃってるもんな…」

魔女「公爵次第じゃな…変化の杖を持って居るでどうとでも立ち回れる筈じゃ」

商人「シン・リーンの女王に化けられたらどうする?」

魔女「母上が今どんな姿をして居るか誰も知らん筈じゃ…無理じゃな」

商人「魔術師に囲まれてる訳か…それは関わらない方が良いね」

『翌日_飛空艇』


フワフワ


女海賊「はい乗った乗ったぁ!!」

魔女「あばら家にアラクネーを忘れておるぞよ?」ノソノソ

女海賊「あのアラクネーはもう直ぐ卵産むんだよ…増えすぎると困るから置いて行く」

魔女「ではあばら家を守らせると良かろう」

女海賊「そだね…次来た時どんだけ増えてるか楽しみだ」

盗賊「俺ん家だぞ?大丈夫なんだろうな?」

女海賊「他人に勝手に使われるより良いんじゃね?クモの巣なんか後で掃除すりゃなんてことない」

盗賊「そうじゃ無くてな…俺が帰って来た時アラクネーに襲われるのを心配してんだ」

女海賊「あんたも虫使いになりゃ良いじゃん…アラクネーなんか一番言う事聞く」

盗賊「虫と話なんか出来無ぇって…俺だけ襲わない様に言い聞かせておけ」

魔女「アラクネーは退治しようとさえしなければ大丈夫じゃ」

盗賊「ほう?一緒に住めって訳か」

女海賊「はいはい…もう行くから早く乗って」グイ


シュゴーーーー フワフワ

『上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「よしよし風捕まえた…安定飛行に入る」ハイディング!

商人「ここから君の島まで5日くらいかな?」

女海賊「もうちょい早く到着すると思う…そうそう魔女!例の魔石頂戴」

魔女「ふむ…わらわには不要じゃ」ポイ

商人「結構大きな魔石だね…属性は?」

魔女「風じゃ…女海賊は風の魔石で飛空艇を改造したいらしいのじゃ」

盗賊「まだ何かやるつもりなんか…」

女海賊「今から作業すっから話しかけないで」

盗賊「へいへい…」

情報屋「それじゃ皆居るから壁画の調査で分かった事を話しておくわ…」

商人「それ聞きたかったんだ」

情報屋「未来君の足取り…壁画には一定の法則があって…」


過去に飛ぶのはおよそ700年の定間隔で飛んでいる様なの

700年前…1400年前…2100年前…

そして飛んだ場所はその場所を維持して飛んだと思われる

つまり剣士と未来君が一番最初に飛んだ場所はシャ・バクダの付近…当時は森だった

法則と外れる壁画もあって…それは1700年前

その後2400年前…3100年前と又法則通りに壁画が残されてる

どうしてそういう事が起きているかと言うと

恐らく時の砂で一度未来へ戻ろうと試みたと思われる…

それが2100年前…この時に400年分だけ未来に飛んだ

それで壁画の年代の説明がすべて辻褄が合う

この未来に飛んだであろう年代に黄金郷の伝説が一致する訳


商人「3100年前から先は?」

情報屋「見つかっていないのよ…その先は恐らく南の大陸だと思うわ」

魔女「各壁画の石の材質はキ・カイへ戻れば分かるのじゃな?」

情報屋「そう…今の所分かっているのは700年前のシャ・バクダと1700年前のシン・リーンだけ…足取りの特定が出来ない」

盗賊「女海賊は冒険の書で未来の足取りを見てるんだろ?場所分からんのか?」

情報屋「冒険の書で見たのは動く絵だけだったらしいわ…その絵がどの場所なのか分からないって…」

商人「そういう事か…文字なら分かるかもしれないのにね」

情報屋「とりあえず1400年前の壁画がどの地域の石なのかが分かればシャ・バクダから何処へ向かったのか分かるのよ」

魔女「実際の歴史と擦り合わせればどの程度関与したのかも推測出来そうじゃ」

商人「ちょっと僕も考察してみたいな…壁画を記した書物見せてよ」

情報屋「ビックリ発想を期待するわ」パサ

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商人「ふ~む…良く見るとこの鍵爪を付けてる人物は多分僕だな…」

盗賊「俺は居ないか?」

商人「居るよ…鍵開けの達人として描かれてる…未来君にはそう見えてるんだ」

魔女「わらわは分かりやすいのう…三角帽子じゃ」

商人「隕石を落としてる姿…これが後の人に予言だと解釈されたんだ」

魔女「わらわの師匠が落とした隕石に話がすり替わった訳じゃな…」

商人「これさ…必ずホムンクルス…というか精霊に関わってるからもしかすると精霊を目覚めさせ回ったのは未来君かもね」

情報屋「きっとそうね…だからホムンクルスが眠って居た遺跡には未来君の痕跡が残って居るかもしれない」

女海賊「ハッ!!そういえばハテノ村の遺跡には遺物が沢山合った…」

盗賊「あそこは噴火してもう近付けんだろ」

女海賊「噴火が収まったらもう一回行けば良いじゃん」

盗賊「まぁあそこは大当たりだったからな…謎の部品がまだ沢山在った」

情報屋「やっぱり探すのはホムンクルスが眠る遺跡の様ね…そういう場所の上に文明が栄えるし…」

商人「キ・カイにもきっと在る筈だよね?」

情報屋「あそこはずっと昔に扉が開けられてもう風化してしまっているわ」

商人「壁画は残って無いの?石は風化しにくい」

情報屋「私の知る限り無いわ…シン・リーンに運ばれたのかも知れない」

商人「…なるほど」



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女海賊「線虫!土のなかの毒を食ってこい!」ニョロリン

魔女「ふむ…主はその術のみで良さそうじゃ」

女海賊「これしか使えないよ」

魔女「わらわはのぅ…虫使いはその術だけで良いと思うて居る…その術は何も害が無いでの」

女海賊「害?」

魔女「魔術は害が付き物なのじゃ…よって掟によって縛る必要があるのじゃがその術は好きに使うて良い」

女海賊「掟って何さ?」

魔女「私利私欲で使うてはならぬとか様々じゃな…そうじゃ一つ守ってもらわねばならぬのが…その術で金儲けをしてはならぬ」

女海賊「金儲けね…そんなん考えて無かったわ」

魔女「なら良いが…金儲けで使うて居るのをわらわに知られてしまった場合記憶を消すでの?覚悟せい」

女海賊「ねぇそれよりさ…この線虫は毒を食う以外に何か出来ない?」

魔女「それで十分じゃろう…人を蝕む毒を食らえば闇に侵された心も晴れるやも知れぬ」

情報屋「線虫を掛けて貰ってから体調がすごく良いわ?」

魔女「じゃろうな?エリクサーと同等の癒し効果もあるでのぅ」

女海賊「え?マジ?」

魔女「主は気付かんかったんか?傷が直ぐに癒えるぞよ?」

女海賊「あ!!そういや毒針刺されても直ぐに治ったわ…」

魔女「そういう事じゃ…他に代替できる魔法が無い故…虫使いはその術だけでも十分じゃ」

情報屋「虫使いの他の術ってどういう術が?」

魔女「虫を使った破壊術など色々じゃな…変わった術では虫の知らせという術で他人の思考を読む事も出来る…幻術の類じゃ」

女海賊「あ!!虫の知らせって分かるぞ!!敵が近いのを虫が教えてくれる」

魔女「ふうむ…主は魔力を使わずして声を聞けるのじゃな…ドワーフにはそもそも適性が在るのやも知れんのぅ」

女海賊「お姉は金属と会話出来るんだよ」

魔女「会話とな?」

女海賊「金属は地面と繋がってるらしい」

魔女「なる程のぅ…それも虫の声じゃ…大地の声とは虫の事なのじゃよ」

女海賊「へぇ?」

魔女「ドワーフにもエルフと似た感性がある様じゃのぅ」

『数日後』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「そろそろ到着じゃ無ぇか?目標物が無いからよー分からんな」

女海賊「このまま真っ直ぐで良い」

盗賊「海しか見えんが何で分かるのよ?」

女海賊「ミツバチが花の有る方向知ってんのさ」

盗賊「なる…そういやミツバチは羅針盤の代わりになるんだっけか…」

女海賊「私の島には花が一杯咲いてんのさ…又ハチミツ増えるぞ!」

盗賊「そうそうお前の島にはハチミツ酒があったな?早く飲みてぇ」

女海賊「パパ居るかなぁ…」

盗賊「海賊王の爺か…普段何やってんのよ?」

女海賊「開拓が趣味なんだよ…あちこちの島を開拓して拠点作ってる」

盗賊「それがドワーフの国なんか?領土が良く分からんのだが…」

女海賊「海は全部ワイのもんやとか言ってるじゃん?」

盗賊「ヌハハそら無理だろ…海はデカすぎる」

女海賊「でも本人はそう言ってるから」



『名もなき島』


フワフワ ドッスン


女海賊「パパ居ないやぁ…」ショボン

盗賊「俺ぁちっと村の方行ってハチミツ酒飲んでくる」

魔女「わらわも行くぞよ?港町では飲みそびれたでのぅ…」

盗賊「おぉ来い来い!」

女海賊「ほんじゃ私等遺跡の中に居るから」

商人「ホムンクルスの部品まで案内してよ」

女海賊「おけおけ!階段あるから情報屋は足元気を付けて」スタ

情報屋「ゆっくり付いて行くから大丈夫よ」スタ


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『古代遺跡』


ズズズ


女海賊「この本棚の裏に隠し部屋あるんだ…奥にホムちゃんの部品があるよ」

商人「おぉぉぉ…ガラス容器に臓器が…」スタタ

情報屋「初めてホムンクルスを目覚めさせた時に一緒に有った臓器ね」

女海賊「そうそう…全部揃ってるかも分かんないんだよ」

情報屋「私も器具をもう一度調査してみるわ…」キョロ

商人「なるほど超高度AIユニットも一緒に沈んでる…これが組み合わさるんだな?」

情報屋「機械は動くの?」

女海賊「動かし方分かんない…色々調べたんだけどどうやっても動かないのさ」

商人「よし!!僕が解明するぞ!!」

女海賊「任せた…私は部屋に戻って横になって来る」スタ

情報屋「商人?これ下手に触ると二度と動かなくなるかも知れないわ?」

商人「うん…分かってる」

情報屋「他に分解しても良いサンプルが有れば良いのに…」

商人「ハテノ村には行けないとしてキ・カイには同じ様な物無いのかな?」

情報屋「遺跡の発掘現場に行けば有るかもしれない…」

商人「まずそっちが先かもね…アテは無いかな?」

情報屋「戻って聞いてみない事には何とも…」

商人「パット見どこも傷んで居ない…エネルギーが供給されれば動きそうなんだけどなぁ…」

情報屋「分解しないと何処がエネルギー供給する場所なのかも特定出来ないわ」

商人「慌てないで一回キ・カイに戻った方が良さそうだね」

情報屋「そうね…一応器具類を全部スケッチしておくわ」

商人「僕は寸法を測るよ…兎に角今はあまり触らない様にしよう」

『小舟の有る入り江』


ザザー ザブン


盗賊「なんだ女海賊か…一人で何してんのよ」ヨタヨタ

女海賊「月見てんだよ!!放っといて」

盗賊「酒場が閉まっちまったんだ…お前もハチミツ酒飲むか?」ポイ

女海賊「フン!」プイ

盗賊「まぁそうカリカリすんな…どうせ涙も枯れて黄昏てんだろ?」

女海賊「うっさいな!」グビ

盗賊「ここは剣士と未来との思い出の場所なんだろ?まぁ気持ちは分かる…」

女海賊「この寂しさを未来も抱えてたと思ったら泣けないんだ…」

盗賊「孤児ってのはよ?皆そんな感じな訳よ…それに気付けたお前はある意味幸せだと思え」

女海賊「私が幸せ…」

盗賊「人間てのはな?そんな寂しさの中で小さな愛を見つけて紡いで行く…そういう奴が生き残って来たんだよ」

女海賊「なんであんたがそんな事知ってんだよ」

盗賊「俺も孤児だったからな?勘で分かるんだ…未来はそういう世界を大事にした」

女海賊「未来が…」

盗賊「そうだ…剣士と未来は俺達にそういう世界を残して旅立ったのよ」

女海賊「分かった様な事言って!」

盗賊「お前はどう感じるんだ?この世界を…」

女海賊「私は剣士と未来が居ない世界が真底寂しい…」

盗賊「前だけ見て進んでみろ…その先に小さな光がある…それはきっと愛だ」

女海賊「愛…」

盗賊「そうやって紡ぐんだよ…それが人間なんだ」

女海賊「フン!マシな事言ったつもり?」

盗賊「未来の壁画見ただろ?アイツは苦しみを描き残しちゃ居無ぇ…楽しかった思い出を描き残してる」

女海賊「…」

盗賊「俺らが思うより案外楽しく過ごしてんだ…そう思い悩むな?」

女海賊「悪いけどあんたにはホレないよ!」

盗賊「ヌハハそんなつもりは無ぇよ…お前にゃ有り余る光が有るから陰らん様に励ましに来ただけだ」

女海賊「あのさ…一個意見が聞きたいんだ…私から剣士と未来を奪ったのって魔王だと思う?」

盗賊「そうだな…間違い無く魔王だ」

女海賊「どうやってぶっ倒せば良い?」

盗賊「俺はな?昔から思ってる事があんのよ…魔王をぶっ倒す方法は孤児を救う事だってな」

女海賊「孤児…」

盗賊「まぁ俺は俺なりに魔王と戦ってる訳よ?…言い変えりゃ影の勇者か?ヌハハ」

女海賊「孤児ねぇ…そういや一杯居るな…」

盗賊「皆寂しさ抱えててな…誰にも愛されず悪党になっちまう奴も居る訳よ…見てらんなくてな」

女海賊「あんたはどうなのさ?孤児だったんでしょ?」

盗賊「俺は光を見た…だからこう思えるんだ…お前にゃ闇を照らす光の素質がある…例えば光るサソリ」

女海賊「ええ!?サソリ?」

盗賊「そうよ…たったそんだけ教えてやるだけで光を見る事も在るんだ…なんつーかそうやって闇を抜け出すのよ」

女海賊「それが愛?」

盗賊「愛の一つだろう…光るサソリを追った先にきっと何かを見つける…同類と出会ったりな?」

女海賊「分かった…それ希望だ」

盗賊「かもな?お前はそれを失わない様にな?」

女海賊「知ってるさ…私にとっての希望は…月」

盗賊「そうそう…それで良い…真っ直ぐ行けばその内何か見つける…きっとそれは愛なんだ」

女海賊「あんた言ってる事意味わかんない事ばっかだけど…なんか真理を突いて来るな…」

盗賊「まぁ年の功…勘だ勘!!愛を語れるほど経験豊富じゃないが…何となくそう感じる」

女海賊「参考にしとくわ…」グビ

『翌日_飛空艇』


コケーー!!コッコッコ!!


盗賊「ぬぁぁぁうるせぇな!!寝れ無ぇじゃんけ!!」ゴロリ

女海賊「もう朝なんだよ!!」ゲシゲシ

盗賊「お前ニワトリ積んで行く気なんか?」

女海賊「悪い!?卵食べたく無いの?」

盗賊「うるさくて敵わん…」グター

女海賊「おいニワトリ!!あんたの寝床は今日から此処だよ…ワーム食っても良いけど種は食うな!!分かったか!?」

盗賊「おいおいマジかよ…家畜小屋にする気か?」

女海賊「うっさいな!補給無しで飛べる工夫してんだから文句言わないで」

盗賊「だったら酒作れる様にしろや」

女海賊「酒かぁ…ハチミツ酒作ってみるかぁ…ハチミツ勿体ないんだよなぁ」ブツブツ

盗賊「栄養が無くなる訳じゃあるめぇ?むしろ発酵して栄養増えるだろ?」

女海賊「てかあんた自分でヤレよ!」


ノソノソ


魔女「朝から騒がしいのぅ…もう出立するんかえ?」

女海賊「魔女も飛空艇に乗っといて…なんか急いでキ・カイに戻りたいんだってさ」

魔女「くつろぐ間も無いのじゃな」

女海賊「ホムちゃん組み立てる方法分かんないからキ・カイで調べるらしい」

盗賊「そら良い…俺ぁこの島が退屈でよ…お宝の匂いが何処にも無ぇ」

女海賊「退屈で悪かったね!!」

盗賊「畑しか無ぇからやる事無い訳よ」

女海賊「じゃぁハチミツ積むの手伝って!!あんたの酒に変わるんだから」

盗賊「うげ…」

魔女「口は災いの元じゃのぅ…」ノソノソ

女海賊「壺に移し替えてるから全部積んで!!」

盗賊「へいへい…」

『飛空艇』


シュゴーーー バサバサ


商人「…それでキ・カイに戻ったら役割分担するんだ」


僕は商人ギルドの伝手を使ってホムンクルスの組み立て方を調べる

情報屋は壁画の出所について調べる

女海賊と盗賊…そして魔女はオーク領に侵入して残りの壁画を探す

拠点は商人ギルド…飛空艇の隠し場所は港の倉庫を使って良い


盗賊「オーク領で壁画の有りそうな目星は無いんか?」

商人「それは女海賊の方が詳しい…行った事ある様だから」

魔女「オーク領に勝手に侵入出来るんかいな?」

盗賊「オークはエルフと同じでハイディング見破って来るだろ?」

女海賊「そだね…かなり危ない…でも魔女の睡眠魔法と私の妖精の笛で眠らせながら行けば大丈夫だと思う」

盗賊「場所は分かってんのか?」

女海賊「虱潰しさ…前行ったときは睡眠使えなかったからしっかり調査出来て無いんだ」

商人「…という訳でしばらくそんな感じで情報を集めよう」

女海賊「行くのは火山灰の降らない西側から順に回る感じかな」

盗賊「西オークと東オークとか在るんだっけか…」

女海賊「もっと南の方だと赤い肌のオークとかも居て訳分かんないんだ…そっちの方が遺跡沢山在って怪しい」

情報屋「オークは肌の色で部族の違いがあるそうよ?」

女海賊「色んなのが居るから良く分かんない…敵か味方かもさっぱりさ」

魔女「茶色のオークが野良オークじゃと聞いたぞよ?エルフの森に居ったのも茶色のオークじゃったな」

盗賊「野良でも危無ぇじゃ無ぇか…人間見たら追いかけて来んぞ?」

女海賊「まぁそういう危険があるから探索は慎重に行くしかないよ」

魔女「睡眠魔法用の触媒を多めに用意せねばならん様じゃな」

商人「物資の調達は僕に任せて…何でも揃えてあげる」

女海賊「そうそう…種をいろんな奴仕入れて欲しい」

商人「お安い御用だよ…買い付けておくから折を見て取りに来れば良い」

魔女「ふうむ…長旅になりそうじゃのぅ」

盗賊「虱潰しってのがぁ…しょうがないんだが…」


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『キ・カイ_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

はい並んで並んで~競売は向こう側ね~


商人「やあ!繁盛してそうだね」

娘「あ!!商人に盗賊!!いつ帰って来たの?」

盗賊「よう?子供達は元気か?」

娘「元気!元気!!てか今忙しいから大部屋の方行っててよ」

商人「ハハそうさせて貰う」

娘「商人宛てに書簡が沢山来てるんだ…全部読んでおいて」

商人「分かったよ…何処に?」

娘「後で持って行かせる…とりあえず邪魔だから大部屋行っといて




『大部屋』


ガチャリ バタン


情報屋「早速だけど私は知り合いの学者を訪ねに行って来るわ」

商人「一息ついて行けば良いのに…」

女海賊「私もオーク領までちっと行って来る…なんか落ち着かない」

盗賊「待て待て…酒を仕入れて行くぞ」

女海賊「先に飛空艇行っとくから早く荷物積んで」

商人「まぁ一旦行動指針決めたから即行動した方が良いかぁ」

女海賊「早い所ホムちゃん組み立てる方法解明しないとクビにすんよ?」

商人「厳しいな…出来るだけ早くやるさ」

魔女「わらわは触媒を仕入れてから飛空艇へ戻るで先に行って居れ」

女海賊「はいはい…わたし待てない性格だから早くして」イラ

魔女「主は鉛を仕入れるとか言うて居らんかったか?」

女海賊「あああああああ!!忘れてた…鉛無いと弾作れないんだった…」ダダ ピュー

商人「女海賊はお金持ってるのかな?」

魔女「毎度毎度じゃが…世話の焼ける女じゃ…」ノソ

盗賊「そうそう…古代金貨あるからよ?これで孤児院の支援も頼めるか?」ジャラリ

商人「おぉ!!シャ・バクダの古代金貨…資金調達に丁度良い」

盗賊「俺は行っちまうからお前に頼んだ」

商人「分かったよ…孤児達を支援できるように計らう」

盗賊「じゃ行って来るな?」タッタ

魔女「これ盗賊や待てい!!わらわを置いて行くで無い」

盗賊「ヌハハ悪い悪りぃ…どっかの国の姫って事を忘れてたわ…大人の体じゃ背負えんが?」

魔女「背負えとは言うて居らぬ…勝手に置いて行くなと言うて居るのじゃ」

盗賊「まぁ良いや!俺が後から付いて行きゃ良いんだろ?」

魔女「ううむ…主にはちぃと分からせる必要がある様じゃな…」

盗賊「わーったわーーた!!ほい行くぞ」グイ

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商人「さて…皆居なくなったし…僕も仕事するか…」


ガチャリ バタン


娘「あれ?爺ぃはどっか行った?」

商人「皆忙しいのさ…書簡は持って来た?」

娘「なんだよ…お土産有ると思ってたのにさ」

商人「ハハ在るよホラ?古代金貨さ」

娘「え!?うおぉぉぉぉ!!こんなに?」

商人「換金出来るかい?半分は君達が使っても良い」

娘「マジ?マジ?これめっちゃ高く売れるよ?」

商人「残りの半分でキ・カイの孤児院を支援…やって貰えるかな?」

娘「私等の兄弟増やすんだね?」

商人「まぁそうなるのかな」

娘「孤児院も良いけどチカガイにも子供達の集まりが在るんだ」

商人「へぇ?」

娘「私の子供がそこのギャングに入っててさ…病気持ってるけど商人にそっくりな子が居るんだよ」

商人「そういう子にも支援しよう」

娘「この古代金貨は爺ぃから?」

商人「良く分かるね」

娘「爺ぃのお金の使い道は酒か孤児院って決まってる…よしよしこれだけ有れば」ジャラジャラ

商人「頼むよ…それで書簡は?」

娘「おっと!!忘れてた…」ドサドサ

商人「沢山あるねぇ…」

娘「多分商談だよ…何回も商人尋ねに来てるんだ」

商人「誰だろう?」

娘「知らない!私戻って古代金貨競売に掛けて来る!じゃね」ノシ スタタ

商人「…差出人が書いてないな…誰だろう?」ヨミヨミ


レート介入の見返りに古文書か…

僕が古代遺跡を探している事を知って居る人物だな

随分前の書簡だ…何通も来てるという事は余程レートに介入したいんだな

ふむ…品目は魔石…それから麻薬…


商人「キ・カイ側の人間なのか…それともセントラル側なのか…どちらにしてもお金が大きく動く」

商人「慎重に決めないと僕も只じゃ済まないぞ…」


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『数か月後_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

おぉぉ又魔石の値段が下がってる…買いだ買い!!

硫黄は値上がり続けてもう手が出んわい

麻薬は目ん玉飛び出るぐらい高いな…もう趣向品は出回らんぞ



女海賊「…これ鑑定頼める?」

娘「あ!!女海賊…今回は収穫在ったん?」

女海賊「まぁね?それ買い取って欲しいんだけど」

娘「琥珀かぁ…こんなに沢山オーク領で採れるの?」

女海賊「簡単じゃ無いけどね」

娘「珍しい物だから競売の方が良いよ」

女海賊「ほんじゃそれで頼むよ…分け前は半分持ってて良いから」

娘「りょ!!」ビシ

女海賊「情報屋は何処に居るか知らない?」

娘「隠し部屋で商人と一緒だよ…見つからない様に階段居りて行って」ギギー

女海賊「サンキュ!!」ハイディング スゥ

『隠し部屋』


ヒソヒソ

これがサンプルの石板よ…壊さない様にお願い

エネルギーが入ればこれが光るんだね?

光ると言うか絵が浮かび上がるそうよ

なるほど…つまり女海賊の遺跡も同じ訳か…

エネルギー次第ね…私は手に入れられない


トントン


女海賊「私…壁画見つけたんだ…ここ開けて?」

商人「今開ける…」ゴソゴソ ガチャリ

情報屋「やっと見つけたのね?何処で?」

女海賊「ずっと南の方の青いオークが居る所さ…持って帰るのは無理だから書物に写して来た…見て?」バサ

情報屋「…これは4500年前ね…何コレ?飛空艇が描いてあるじゃない?」

女海賊「似てるね…でもそれはオークの乗り物っぽいよ」

商人「ええ?オークに高度な物を作る技術が在ったという事かい?」

女海賊「良く写しを見て…宇宙から来たっぽい…この乗り物で月に行けるって事さ」

情報屋「オークは宇宙からの外来種…新説ね」

女海賊「それからオークの旗印も持って来たんだ…見て」バサ

商人「あれ?それ君が良く使うダンゴムシじゃ無いか…」

女海賊「私もビックリさ…未来が残したのに間違い無いよ」

情報屋「未来君はオークの起源に関わって居る可能性があるのね」

商人「他には?遺跡とか無かったの?」

女海賊「有った…でもずっと昔に開封されてグズグズに風化してた…ホムちゃんの石造も在ったよ」

情報屋「キ・カイの遺跡と同じ状態という事ね…」

女海賊「石の器の中に横たわったホムちゃんの石造に向かってオーク達がお祈りしてたさ」

情報屋「それがきっとウンディーネ本人よ…4500年前といえばウンディーネの時代」

女海賊「めちゃくちゃデカイオークが一杯居てさ…危ないからもう行きたくない」

商人「聞いた事あるな…オークロードっていう奴だ…槍とか石を投げて来るらしい」

女海賊「それそれ!それで魔女がやられて瀕死なんだ」

商人「ええええええ!!?それを先に言ってよ…魔女は平気なのかい?」

女海賊「線虫で癒してるから死ぬことは無い…失血で気を失ってるだけだよ」

商人「魔女は失血に弱いね」

女海賊「元々体が弱いのさ…そのくせ粘るから失血で倒れるんだよ」

情報屋「盗賊は?」

女海賊「飛空艇で魔女の看病だよ…下手に動かさないで寝かせておいた方が良いって…」

情報屋「そう…」

女海賊「もうお腹隠し切れないじゃない?」チラリ

情報屋「フフ大丈夫よ!あの人鈍感だから」


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女海賊「…それで壁画の年代とか判明した?」

情報屋「そうね…1400年前の壁画はフィン・イッシュに有る花崗岩と判明したわ」

商人「700年に飛空艇とか無い筈だから徒歩でフィン・イッシュに向かったと思われるよ」

女海賊「その後は?」

情報屋「サンゴを含む石灰岩なの…場所の特定が出来ないけれど恐らくフィン・イッシュ外海に出たと思われるわ」

商人「内海にはサンゴが無いからね…外海側の何処かとしか言えないらしい」

女海賊「フィン・イッシュは何回も行ってんじゃん!何処を調べれば良いのさ」

商人「女王に事情を話して遺跡とか知らないか聞いてみるだね」

女海賊「まぁオーク領も飽きたし…一回フィン・イッシュ行って見るかぁ…」

商人「それから君に紹介したい人が居るんだ?」

女海賊「誰?付き合うのメンドクサイ人は遠慮する」

商人「おいで!?」

機械の犬「ワン!」トコトコ

女海賊「え!?もしかしてホムちゃん?」

商人「正解!壊れた機械の犬を直してホムンクルスの器にしたんだ」

女海賊「え?え?こんなんで良いの?」

機械の犬「ワン!ワン!」フリフリ

商人「意思は伝わるよ…ちゃんと疎通も出来る」

女海賊「どうやってお話するのさ」

商人「フフお話してごらん?イエスかノーの2択とそれ以外にも微妙な反応もあるんだよ」

女海賊「連れて行って良いの?」

商人「ちゃんと帰って来るならね?」

女海賊「ホムちゃんこっちおいで?」

機械の犬「ワン!ワン!」トコトコ

女海賊「おおおおおおおお!!来るじゃん!!ホムちゃんと話したい事一杯あったのさ」ナデナデ

機械の犬「ワン!」フリフリ

女海賊「そっか尻尾も動くか…他に何が出来るん?」

商人「お座りとか色々さ…君の話し相手になれば良い…ホムンクルスも部屋の中で閉じこもるより楽しい筈」

女海賊「おけおけ!ちっと散歩行こう」タッタッタ


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情報屋「商人?壁画の写しを見て?」

商人「何か分かるかな?」

情報屋「やっぱり年代を追うごとに情報量が減ってる…この頃にはもう私達の記憶は無さそう」

商人「見たまんまを描いて居るのだろうね」

情報屋「この壁画に描かれて居るのは4500年前では無くそこに飛ぶ以前の事…つまり3800年前の出来事」

商人「地軸が移動した後の世界か…」

情報屋「そのまま描いてあるから当時の予言として扱われた可能性が高いわ」

商人「あれあれ?よくよく見ると色々おかしいね…途中から虫を持った人物が居なくなる」

情報屋「そう…彫り方がとても雑になってる…他の人が手を加えたかもしれない」

商人「う~んこの壁画の考察は慎重に言葉を選ばないと女海賊が怒りそうだ」

情報屋「やっぱりそう思う?」

商人「オークの地で最後を迎えたとは言えないな」

情報屋「私の考察はこうよ…3800年前に未来君は最後を迎えてる…この壁画を残したのは剣士だと思うわ」

商人「未来君の記憶では無く剣士の体験を描いている?それで雑になって居ると?」

情報屋「途中から虫を持った人物が居なくなるのはそれを表して居ると思う…良く見て?視点が虫を持た人物中心じゃない」

商人「剣士がこの壁画を残したとしてその動機はどう考える?」

情報屋「純粋に予言ね…地軸の移動で激変する事を伝え残したかった」

商人「まてまて剣士は記憶を保持していた訳か…それが勇者の眼が持つ特殊性」

情報屋「きっとそうね…剣士が選んだ次元と言えば良いのかしら?」

商人「なるほど…この後は剣士の行先と言う事になるか…」

情報屋「まだ考察の話だから女海賊には伏せておきましょう」

『飛空艇』


スヤスヤ zzz


女海賊「どう?まだ目を覚まさない?」

盗賊「交代に戻って来たんか?」

女海賊「まぁね?見て!!ホムちゃんだよ」

機械の犬「ワン!」フリフリ

盗賊「なぬ!!?そいつん中に復活させたんか?」

女海賊「そうらしい」

盗賊「マジかよ…話出来るんか?」

女海賊「結構通じるさ…ワンとかクゥ~ンだけだけど」

盗賊「ヌハハ通じりゃどうでも良いわな」

女海賊「私飛空艇でホムちゃんと話するからあんた酒飲んで来て良いよ」

盗賊「おう!そうさせてもらう」スック

女海賊「フィン・イッシュに行く事になりそうだから適当に物資補給しといて」

盗賊「なんで又フィン・イッシュに戻んのよ?」

女海賊「未来が最初に向かったのはフィン・イッシュらしい…女王に何か無いか聞きに行くのさ」

盗賊「お!?俺一つ知ってんぞ?」

女海賊「何さ?」

盗賊「リザードマンの巣窟になってんだがよ…祭事に使う祠ってのが合ってな?多分そこが遺跡なんだよ」

女海賊「そういやなんかそんな事言ってたなぁ…クサナギの剣を使うとか?」

盗賊「フィン・イッシュの大事な場所らしいから俺はしっかり調べて無いのよ」

女海賊「ほんじゃ行先はそこだなぁ」

盗賊「まぁ焦んな?俺は酒場に行ってちっと遊んで来る」

女海賊「情報屋の所には行かないの?」

盗賊「アイツ最近付き合い悪くてよ…全然酒飲ま無ぇんだ」

女海賊「ほ~ん…」シラー

盗賊「丁度こっから月も見えるからお前も退屈せんだろ?」

女海賊「お!!それそれ!!ホムちゃん私さぁ…月に行きたいんだよ…なんとかなんない?」

機械の犬「クゥ~ン」

盗賊「じゃ行って来るな?」ダダ


光る隕石のやつ…えーと何だっけ…何とかミサイル

あれに乗って月まで行けない?

クゥ~ン

一人乗りに改造するとかなんか方法有りそうじゃん?

クゥ~ン

じゃ2個連結するとかさ?

クゥ~ン

いや私も考えたんだよ…重力振り切るだけの加速をどうやって得るとかさ…

てか宇宙って空気無いんだよね?

ワン!

どうやって推進するんだろ?推進しないと重力に引っ張られっぱなしなんだよなぁ…

それ以前にどうやって息するかも課題だな…

『翌日』


う~ん


魔女「…」パチクリ

女海賊「お!?起きた!!」

魔女「どうなったんじゃ?又主に救われたんかいのぅ?」ハテ?

女海賊「線虫間に合ってセーフ!!」

魔女「あまり覚えて居らんのじゃが…」

女海賊「デカいオークの投槍がぶっ刺さったのさ」

魔女「…そうじゃった…まさかあの距離で当てて来るとは思わなんだ」

女海賊「睡眠魔法も妖精の笛も届かない場所から投槍とかオークを舐めてたわ…あいつ等賢い」

魔女「うむ…しかし無事で良かったわい」

女海賊「ほんでちゃんと魔方陣の書かれた呪符はゲットしてきたよ」ファサ

魔女「そうじゃそうじゃ…わらわの目的はソレじゃ」

女海賊「その呪符で何か分かるん?」

魔女「研究したいのじゃ…これは古代魔術じゃでのぅ」

女海賊「なんで壁画と一緒に在ったんだろね?」

魔女「さぁのぅ…それも意味が在るのやも知れぬ…わらわは研究の為に書物を取りにフィン・イッシュへ行きたいのじゃが…」

女海賊「おけおけ!丁度フィン・イッシュに行こうとしてたんだ」

魔女「その前に肉を食らわん事にはどうやら血が足りん様じゃ…」クラクラ

女海賊「ハチミツスープあるけど居る?」

魔女「頂こう…」


ヨッコラ ドスン


盗賊「お?魔女は目ぇ覚ましたんだな?」

魔女「主がわらわを担いで逃げたのじゃな?」

盗賊「そうよ…まぁえらい血が出たな?掃除が大変だったぜ」

魔女「そら済まんかったのぅ」

盗賊「今リンゴ買って来た所だ…ちっと食うと良い」ポイ

魔女「うむ…果物が食いたかった所じゃ」ガブリ シャクシャク

女海賊「もう飛んで良い感じ?」

盗賊「ちょい待て!もう一つ樽があるんだ…それとこれは商人から貰って来たお前のおもちゃだ」ポイ

女海賊「おもちゃ?」パス

盗賊「なんかな?集光レンズらしいぞ?インドラの銃で使えないかってよ?」

女海賊「おお!!ほんじゃ長い砲身要らなくなるな…邪魔だったんだよ持ち歩きに」

盗賊「もう一樽積むからちょい待っててくれ」ダダ



--------------

カチャカチャ


魔女「早速改造かいな?」

女海賊「持ち運びが楽になりそうだかんね…」

魔女「ミスリルの筒が勿体無いのぅ」

女海賊「これはこれで何か作れるな…そうだ笛が作れる」

魔女「それは良い案じゃ…2つ程作れそうじゃな」

女海賊「どうせフィン・イッシュに到着するまで暇になるからミスリルの横笛作ってみるわ」

魔女「わらわは横笛を吹けるのじゃぞ?」

女海賊「マジ?」

魔女「どんな音が出るのか楽しみじゃのぅ」

女海賊「てか笛の吹き方教えてよ…妖精の笛吹く時やってみるからさ」

魔女「よかろう…虫との会話も弾むじゃろうしのぅ」

女海賊「え?虫が何の関係あんのさ」

魔女「虫使いはのぅ…笛を使って遠くの虫を呼ぶのじゃ」

女海賊「マジか…笛でそんな事出来んのかよ」

魔女「妖精の笛も原理は同じじゃと思う」

女海賊「虫が眠らせてるのか…てか妖精か…」

魔女「ほんでいつ作るのじゃ?」

女海賊「あぁ今作るさ…ちょい待って」

--------------


ヨッコラ ドッスン


盗賊「お前等何やってんだ?」

女海賊「笛作ってんだよ」シュッシュ ガリガリ

魔女「穴の大きさと位置は妖精の笛と完全に一致するようにせい」

女海賊「わーってるって」カリカリ

盗賊「フィン・イッシュ行くんじゃ無かったのか?」

女海賊「今手が離せないから飛空艇の操作お願い!…適当に飛んどいて」シュッシュ ガリガリ

盗賊「ヘイヘイ…忘れもん無いな?」

女海賊「うっさいな!!早く行けよ」カリカリ

盗賊「魔女!肉も買って来たぜ?食うか?」

魔女「おぉ気が利くのぅ」

盗賊「なんで又急に笛なんか作る事になってんだ?」

魔女「細かい事は良いでは無いか…ミスリル銀の笛の音を主も聞いてみとう無いか?」

盗賊「興味無ぇな…笛は笛だろ?」

魔女「主は凡人じゃのぅ…」

盗賊「凡人で構わん…飛空艇飛ばすぞ?」グイ


シュゴーーーー フワフワ

『上空』


トゥルルン♪ トゥルル~♪


盗賊「ほーーー変わった音の鳴る笛になったな」

女海賊「なんか私が吹くとこんな音なんだよ…」


ヒョロロン♪ ヒョロロ~♪


魔女「吹き方にコツが在るのじゃ…慣れるまで練習せい」

盗賊「なるほど魔女の音の方が聞いて疲れにくい…これが差か」

女海賊「なんでだろうなぁ…」ピーヒャララ

盗賊「その笛はミスリルで作ってっからやっぱ魔除けの効果あるんか?」

魔女「じゃろうのぅ」

女海賊「ミスリル銀って何がエンチャント出来るん?」

魔女「銀じゃで光属性なのじゃが…」

女海賊「退魔のエンチャントで効果倍増したりしない?」

魔女「さぁのぅ?意味が無い気もするが…」

盗賊「照明魔法で光らせるってのはどうよ?道具として便利になるぞ?」

魔女「エンチャントするならその方が良さそうじゃな…薄っすら光る程度でランプの代わりになるでのぅ」

女海賊「よーし!ちょい先に装飾すっからエンチャントは後でお願い」

------------


魔女「照明魔法!」シュワー

盗賊「ほーーこりゃ良い!薄っすら光るぐらいが明かりにゃ丁度良いわ…欲しくなって来るじゃ無ぇか」

魔女「しかし良い笛が完成したな?装飾と言い音色と言い…」

女海賊「魔女に一個あげるよ」

魔女「嬉しいのぅ…魔力を使わずして退魔効果とは…」

盗賊「退魔の効果ってよ?悪霊退散とかか?」

魔女「うむ…レイスやゴーストを寄せ付けぬ…ガーゴイルにも効果が在るじゃろうな」

盗賊「俺も欲しいんだが…」

女海賊「練習終わったら私のヤルよ…妖精の笛持ってっから」

魔女「盗賊も笛を吹くんかえ?」

盗賊「俺は明かりが欲しい訳よ…イザって時に退魔で吹くってのも有りだな」

魔女「ふむ…只の筒をこの様に細工し直せる技術は大した物じゃ」

盗賊「だな?売りゃ相当高値が付く筈だ」

女海賊「おいおい売るなよ!」

盗賊「ヌハハ売ったらの話よ…ミスリル銀の楽器なんかそうお目に掛かれんもんな」

魔女「じゃな…しかし美しい笛じゃ…見ていて飽きんわ」

女海賊「おーし!!練習すっぞ!!」ヒョロロー

盗賊「…」ニヤ


そうよ光ってのはそういう感じな訳よ…その先にきっと何か待ってる

『フィン・イッシュ_墓地』


フワフワ ドッスン


盗賊「こっちは南の大陸と違って夏か…まぁ過ごしやすそうだ」

魔女「わらわは早速城の書庫へ行くぞよ」ノソ

女海賊「付いて行きゃ女王に会えるよね?」

魔女「付いて参れ…盗賊は人相が悪いで顔を隠すのじゃ」

盗賊「もう顔パスじゃ無ぇのか?」

魔女「主を知らぬ衛兵も居るじゃろう…面倒が起きてはいかんでのぅ」

盗賊「なんだかなぁ…俺はいつまで立っても損な役回りなんだよなぁ…」ブツブツ

魔女「素行が悪いのが問題じゃ…まず歩き方をなんとかせい」

盗賊「やっぱ俺には城は合わんな…酒場に行ってるからそっちはそっちで上手くやってくれ」ダダ

魔女「しょうがない奴じゃ…これ女海賊や…行くぞよ」ノソノソ



『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

おい酒が無ぇぞ!!もう一本持って来い!!

一本入りまぁ~す!ウフフ…お代はお先に

金は在るんだウヒヒ…今度こそパフパフをだな?

いやぁ~ん…


バニー「いらっしゃいませ~お一人様ぁ?」フリフリ

盗賊「一人なんだがこりゃ座れそうに無いな…」

バニー「立ち飲みで良かったらカウンターへどうぞ~」

盗賊「しゃぁねぇな…ワイン一本ボトルで頼む」ジャラリ

バニー「一本入りまぁ~す!…チップも頂くわよん」

盗賊「昼間だってのに盛況だな?」

バニー「お金持ちの海賊様がいらっしゃってますのでウフフ」

盗賊「あっちもこっちも海賊だな…」

バニー「ワインお持ちしましたぁ~ごゆっくり」ゴトン

盗賊「おぉありがとよ…」グビ プハァ

マスター「お客さんはどちらから?」


盗賊「んん?俺か?」

マスター「はい…」

盗賊「キ・カイから来たんだ…なんでだ?」

マスター「傭兵の募集が在るのですよ…このチラシをご覧ください」パサ

盗賊「なんだ一杯あんな…リザードマン退治にシーサー退治…んん?船乗りも募集してんのか」

マスター「あぁその船乗りの募集は止めて置いた方が良いかと…なんでも外海へ出るとか」

盗賊「ほう?俺知ってんぞ?髭男爵だろ?」

マスター「髭男爵?違いますね…有名な探検家らしいです」

盗賊「ほーん…このチラシ貰って良いか?」

マスター「どうぞどうぞ…もし傭兵に参加されるのでしたらこのチラシを見たと行って貰えれば報酬が入る仕組みになっていまして」

盗賊「なるほどな?まぁ考えとくわ」

マスター「是非…」

盗賊「しかしこんだけ客が入ってりゃ儲かってウハウハだろ?」

マスター「いやいやそうでも無いのですよ…酒類の仕入れが海賊から高値で買わされていましてね」

盗賊「なんだお互い様って訳か」

マスター「一番儲かっているのは遊女屋でしょうか」

盗賊「ほーん…こりゃ孤児院が増えちまうな」

マスター「全くです…良いのか悪いのか…」

盗賊「ちっと仕事の急用を思い出した…又来るな?」スタ

マスター「又のご来店を…」ペコ

『日暮れ_酒場』


ザワザワ ドタドタ

おい!!俺らの船もヤバいぞ!!

いつまで飲んでんだクソが!!船が何処かの賊にやられてる!!行くぞ!!


マスター「いらっしゃいませ…お二人様ですか?」

女海賊「んーーーー連れを探してんだけどさぁ…」

魔女「ここで待って居れば来るのでは無いか?」

マスター「飲んで行かれますか?丁度お席が空きました」

女海賊「魔女?気球待たせても良いんかな?」

魔女「仕方ないじゃろう…これ!ハチミツ酒は在るかいな?」

マスター「あいにく切らして居まして…エール酒は如何でしょう?」

女海賊「おけおけそれで良いよ…魔女お金持ってる?」

魔女「うむ…」ジャラリ

マスター「確かに…少々お待ちください」

女海賊「カウンターで良っか…」

魔女「この騒ぎは何じゃろうのぅ?」

マスター「どうも港に停船してある海賊船が軒並み火事になっているらしいです」

魔女「海賊が狙われて居るとな?」

マスター「さぁ?詳しい話は聞いて居りませんので」

女海賊「まぁ良いじゃん?私等には関係無いし…てか盗賊何処行ったんかな?」

マスター「お二人は吟遊詩人様で?」

女海賊「え?そんな風に見える?」

マスター「笛が覗いて居ますので…もしかしたらと思いまして」

女海賊「お?今お客さんあんま居ないから魔女吹いてみたら?」

魔女「恥ずかしゅうて吹けんわ!」

マスター「構いませんよ?楽器の演奏はどなたでも歓迎なのです」

女海賊「良いじゃん!私も勉強すっからさ!!」

魔女「一曲だけじゃぞ?」シブシブ

マスター「サービスで軽いお食事をお出しします」

女海賊「やったね!」


トゥルルン♪ トゥルル~♪


マスター「おぉ…音色が特殊な笛なのですね」

女海賊「私が作った笛なんだ…良い音色っしょ?」

マスター「ふぅむ…あの方は何処かで見たような…」

女海賊「気のせい気のせい…わたし等そんな有名人じゃないから」


タッタッタ


盗賊「笛の音がすると思ったら此処に来てたんか!」

女海賊「お!!探してたんだよ…何処行ってたのさ」

盗賊「ちっと金稼ぎにな?」

マスター「お知り合いでしたか…席が空きましたのでどうぞ」

盗賊「悪りぃな?俺ワイン忘れて行っただろ?まだ在るか?」

マスター「御座います…どうぞ」キュポン

盗賊「喉渇いてたんだ…」グビグビ プハァ

女海賊「なんかさぁ…女王は出産で城には居ないんだってさ」

盗賊「なぬ?何処行ったんだよ?」

女海賊「教えてくんないんだよ」

盗賊「俺は遺跡の場所分かるから勝手に行っちまうか」

女海賊「魔物の巣窟になってるらしい…」

盗賊「どうせリザードマンだろ?んなもん追い払えば良い」

女海賊「そういう訳にも行かない事情が在るんだってさ…詳しい話は近衛侍がしてくれる事になってんだ」

盗賊「いつよ?」

女海賊「今すぐだよ…だからあんたを探しにここまで来たんだって」

盗賊「なんだよ酒飲む時間無いのか」ゴク

女海賊「半日自由な時間在ったじゃん何してたんだよ」

盗賊「あぁ…孤児院が増えない様に色々とな?」

女海賊「まぁ良いや…魔女の演奏終わったら行くよ」

盗賊「へいへい…」

『街道』


ザワザワ ガヤガヤ

見て?船が燃えて居るわ?

なんだなんだ?海戦が始まってんのかぁ?


ドカーン!


魔女「こりゃえらいこっちゃな…火薬に火が回っとるんか」

女海賊「何か始まっちゃってるな」

魔女「わらわ達も混乱に巻き込まれそうじゃ」

盗賊「ほんで俺ら何処行く訳よ?」

女海賊「近衛侍が王族の気球で待ってんのさ」

盗賊「女王の所に連れて行ってくれる訳だな?」

女海賊「なんか教えてくんないんだよ…行けば分かるよ」

盗賊「まぁ…簡単に女王の行き先が分からん辺り警備はしっかりしてんだな」

魔女「じゃろうのぅ…忍びに囲われて居るでな」

『王族の気球』


ノソノソ


魔女「近衛侍や…待たせたのぅ」

近衛侍「いえ滅相も無い…ささご乗船を」スッ

盗賊「いよぅ近衛侍…女王の居る所まで連れて行ってくれるんだろう?」

近衛侍「しばしご辛抱を…忍び!加減を…」

盗賊「なぬ?2人隠れて居たんか…」

忍び「御免…影縫い!」

魔女「ムム!これは闇の術…」

忍び「目隠しの術!」

盗賊「こりゃどういう事よ?目隠しと拘束か?」グググ

魔女「妖術師が居ったのか…」

近衛侍「ご心配なさるな…忍びの里へご案内する為の決まりごと故…ご辛抱なされい」

盗賊「ほーーさすが忍びだな」

近衛侍「さてそのままお聞きになられよ…」


女王様は御子の出産の為忍びの隠れ里にて静養中にござる

隠れ里にご案内出来るのは本来近親者のみ

しかし世話になった恩人を帰したとなれば女王様の面目を潰してしまう故に

無礼とは存じておりますがこの様な方法でご案内致す次第

どうか隠れ里の事は他言されぬ様お願い致しまする


魔女「良い良い構わぬ…正直わらわはこの様な出迎えでちと心が躍って居る」

近衛侍「それは結構…」

魔女「ふぅむ…わらわの塔もこの様にすべきじゃな…良い経験になったわい」

盗賊「なるほど…魔女の塔に案内されてる感じな訳か」

魔女「して妖術師はいかなる術を使いこなすのじゃ?」

近衛侍「ハハご勘弁を…」

魔女「おぉ済まなんだ…軽々しく話せる訳では無いじゃろう」

女海賊「これ魔女ん所より厳格な感じなんだね?」

魔女「うむ…感心じゃ…魔術師も本来こうあるべきじゃな」

女海賊「魔女が目立ち過ぎってのが悪い気がするな」

魔女「ふむ…反省じゃな…わらわの師匠も同じ様な事を言って居ったわい」

盗賊「忍びの一族が妖術使うってーと…シン・リーンの魔術師並みにヤバイってこったな?」

魔女「じゃな?しかも力を誇示して居らぬ所が威厳たる証じゃ」


--------------

魔女「ほう?リザードマンもシーサーも妖術によって使役されておるとな?」

近衛侍「すべてでは御座らぬが隠れ里へ人が近寄らぬ様にする為の事」

盗賊「酒場で討伐隊の募集が掛かってたぜ?」

近衛侍「ワッハッハそれは民を訓練する為に女王様がご提案されたクエストですな」

盗賊「なんだマッチポンプか…報酬も国が出すのか」

近衛兵「そうやって冒険者を募って経済を回しているのでござるよ」

盗賊「じゃぁ俺らに全部追い払われたら困る訳だな」

近衛兵「特に魔女様に暴れられては隠れ里をも被害を被りますので…」

女海賊「そうだよ!隕石ポンポン落として森を破壊しまくるんだよ」

魔女「狙って森を破壊した訳では無いぞよ?ゴーレムを倒す為じゃ…」

女海賊「魔女の魔法は被害がデカ過ぎなのさ」

魔女「主の爆弾も大概じゃと思うが…」

女海賊「私はもうウラン結晶の爆弾は止めたから」

盗賊「なんでよ?お前の十八番だろ?」

女海賊「あの爆弾から毒が出るじゃん?未来はそれを無くすために一人で毒を集めたんだ…」

魔女「そうじゃな…あの爆弾は使わぬ方が良かろうのぅ」

盗賊「そうか…お前は未来が毒を集めにゃならんくなった原因に自分も含まれてると思って居た訳か」

女海賊「もう言わないで…何も知らなかった私が馬鹿だったんだ」



--------------


近衛侍「そろそろ到着しまする…揺れます故ご注意を」


ドスン ズザザー


盗賊「まだ目が見えんのだが…」

近衛侍「忍び!解除を」

忍び「解術!」

魔女「ほう?これは闇の術とは違うのぅ…何故視覚を急に失うのか」

女海賊「あれ?目の中に線虫が居るぞ?」ゴシゴシ

魔女「むむ…線虫を操り何かさせて居るんか?」

女海賊「そんな事出来んの?」

魔女「線虫は寄生虫の一種じゃで視覚を司る神経を休ませる事なぞ出来るやも知れんな…」

女海賊「おぉ!!それ応用したら何でも出来そうじゃん?」

魔女「それがいわゆる幻術なのじゃが…」

近衛侍「魔女様には敵いませんなぁ…忍びの術は他言しませぬ様に…」

魔女「済まん済まん…それで?隠れ里は何処じゃ?」

近衛侍「ここから見えて居ります赤い鳥居を登った先に御座いまする…天狗が導きます故後を付いて行かれよ」

盗賊「おぉ!!空飛んでんじゃ無ぇか…」

近衛侍「身軽なだけの事…あれも忍びなのです」

女海賊「おっし!付いて行こうか」スタ

『赤い鳥居』


ノソノソ


魔女「ふむ…ここは狭間の中じゃな…いつの間に狭間に入ったのじゃろうか」

盗賊「だから迷わん様に鳥居が続いてんだな?」

魔女「天狗が潜らぬ鳥居は通ってはならん様じゃ…さすが工夫されて居るのぅ」

女海賊「案内無しだと辿り着けないんだ」

盗賊「天狗の他にもこっちの様子を伺ってる奴らが居るぜ?」

魔女「ふむ…何故セントラル王が認められんのか分かったわい…忍びから見てセントラル王は中身がペラペラなんじゃな」

盗賊「ヌハハだろうな?単純脳筋バカっぽいもんな?」

女海賊「なんだろうね?この感じ…積み上げられた歴史って感じ?」

魔女「じゃろうな?忍びの歴史を詳しくは知らぬが相当古くから存在して居ったそうな」

盗賊「お?天狗がどっか行ったぜ?」

魔女「到着じゃろう…」ノソノソ




『隠れ里』


チュンチュン ピヨ


女王「お待ちしておりました…」

盗賊「おぉ!!嬢ちゃん!!もう動いて良いのか?」

女王「軽い散歩程度でしたら大丈夫な様です」

魔女「無事に生まれた様で良かったわい…御子の性はどちらじゃ?」

女王「男の子でした…皆喜んでおります」

魔女「ほうか良かったのぅ…」

女王「産屋の方にはご案内出来ませんので屋敷の方へどうぞ…」

『屋敷』


カッコーン チョロチョロ


魔女「これは又風流な庭園じゃな…」

女王「ここでお寛ぎください」

盗賊「俺らあんまり長居する気は無いんだ」

女王「どういったご用件で尋ねて来られたのでしょう?」

魔女「話は長くなるのじゃが…わらわ達は勇者らの足取りを追っておってな?」

女王「はい…」

魔女「どうやら700年前にこの地へ来て居る様なのじゃ」

女王「700年前?」ハテ?

盗賊「簡単に言うとな?祭事に使う祠があんだろ?…そこを調べたいんだよ」

女王「龍神を奉る祠の事ですね?」

魔女「壁画の話から聞かせた方が良さそうじゃな…実はのぅ…シン・リーンで発掘された壁画は…」


カクカク シカジカ

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-------------

-------------


魔女「…という訳でフィン・イッシュに有った壁画がシン・リーンへ持ち込まれた様なのじゃ」

女海賊「これが壁画を写した書物だよ」パラパラ

女王「ハッ!!龍神も描かれて居ますね…」

魔女「なぬ!?」

女王「眼の沢山あるヘビの様な生き物は龍神様です」

女海賊「ワームじゃ無いのか…」

女王「祠を守っていたと言われる龍神が居なくなった謎が解けるかも知れませんね」

女海賊「それっていつの話?」

女王「700年前にフィン・イッシュを流る川に姿を変えたと言い伝えられて居ます」

女海賊「時期がピッタリ合うね…その後何処に行ったのか調べたいのさ」

女王「祠で何か分かるのであれば調査しても構いませんよ?…只何も怪しい物は見当たりませんが…」

盗賊「祠の中をちっと見た事が在るんだが一番奥に祭壇があったろ?」

女王「そうですね…それ以外には石造がいくつかある位しか…」

盗賊「そこを調べたいんだ」

女王「私は行く事が出来ませんので忍びのくノ一に案内させましょう」

盗賊「そら助かる」

女王「リザードマンも多く潜んで居ますので警護に近衛侍も連れて行くと良いでしょう」

魔女「早速じゃが日が落ちる前に調べる寄って主は静養して居るのじゃ」

女王「…体調が万全なら私もご一緒したかったです」

女海賊「何か有ったら全部教えてあげるよ」

女王「はい…お願いします…ずっと横になって居ると退屈な物でして…」

盗賊「じゃぁ行って来るな?」スック

『林道』


サラサラ サラサラ


くノ一「この小川を少し下った先が祭事の祠です」

盗賊「この辺りはキノコだらけだな」

くノ一「毒キノコですので食さない様に…」

盗賊「ポーションの材料になるんだろ?」

くノ一「忍びでは古来より万能薬の材料として使って居ます」

魔女「古来からとな?確かホムンクルスが物性値からポーションに変換出来る事を見つけたのじゃがな…」

女海賊「剣士か未来が伝えた可能性あるね」

魔女「ふむ…」

くノ一「我ら忍びの始祖…一角仙人から伝わったと…」

魔女「一角仙人…そうじゃな何かの書物で読んだのぅ」

くノ一「仙人には沢山の逸話が残って居ます…妖術を操り魔物を退けたなど…」

盗賊「まぁ俺らはその謎が知りたい訳よ…だから今から祠を調べに行く訳だ」

近衛侍「祭事の祠にどういう秘密が有ると見込んで居られる?」」

盗賊「開かずの扉が在る筈なんだ…」

近衛侍「扉…そういえば祭壇の奥壁に装飾が在りましたな

盗賊「多分それだ…そいつを俺が開けるのよ」

近衛侍「いやはや楽しみになって来ましたなぁワッハッハ」

『祭事の祠』


ピチョン ポタ


女海賊「入り口が大分風化しているけど古代遺跡に間違い無いね」

くノ一「奥に祭壇があります…ついて来て下さい」スタ

魔女「並んでいる石造は何なのじゃ?」

近衛侍「それは農業の神を奉った石造にござる…林道にも随所に…」

女海賊「祭壇ってコレ?」

盗賊「おぉコレか!このどす黒い器はなんだ?」

くノ一「龍神への贄として捧げる男性の血を入れる器です…古来からの慣わしです」

魔女「龍神に血とな?」

くノ一「龍神と言っても色々な龍神が居るのです…中には血を好む龍神も居ます」

盗賊「ほ~ん…で?この祭壇の奥にある装飾…ビンゴだなキ・カイの扉と一緒だ…」

近衛侍「これが扉だったとは…」

盗賊「開けるのに2時間ぐらい掛かるんだ…ちっと暇になるぞ?」

女海賊「近くに温泉あるって言ってたじゃん?私ちっと入りたいんだよ」

魔女「わらわも行きたいのぅ」

くノ一「案内しましょう」

近衛侍「では警護はお任せあれ…」



『2時間後』


ホクホク


魔女「主はどれだけ水浴びしとらんかったんじゃ?髪の色が変わって居るでは無いか」ホクホク

女海賊「水浴びは寒いから嫌なのさ…体は虫に掃除させてたんだよ」

魔女「なんちゅう汚い女じゃろうのぅ…」

女海賊「うっさいなぁ今綺麗にしたから良いじゃん!」

盗賊「ぬぁぁ待ちくたびれたぜ…扉空いたぞ」

魔女「おぉ待って居ったか…済まんのぅ」ノソノソ

近衛侍「まだ中へは?」

盗賊「入って無ぇよ…何か盗んだと思われたく無いからな」

女海賊「ホムちゃん居たりしてね?」

盗賊「かもな?魔女!照明魔法を頼む!」

魔女「なぬ?主はエンチャントされた笛を持って居ろうが」

盗賊「んん?どうやって使うんよ」

魔女「振れば光るのじゃ…使うてみぃ」

盗賊「こうか?」フリフリ ピカー

魔女「便利じゃろう?」

盗賊「先に使い方説明してくれよ…めちゃくちゃ便利じゃ無ぇか」

女海賊「ほんじゃお先ぃ!」スタタ

『古代遺跡』


シーーン


くノ一「ガラス容器にテーブル…食器まで…これは一体」

女海賊「いつもの古代遺跡とほとんど同じだね…」

盗賊「ホムンクルスは居無い様だな?」

女海賊「ん?何だコレ?食器にしちゃデカい…それとこっちの宝石みたいな奴は何だろう?」

盗賊「ほーーそりゃ鏡だな…ほんでこっちは瑪瑙だ…しかし又デカイな」

女海賊「魔女?コレ何だか分かる?」

魔女「巨大な瑪瑙とな?…まさか八尺瓊勾玉ではあるまいな?」

女海賊「なんそれ?」

魔女「シャ・バクダが覇権を握って居った時代にシン・リーンから奪われた宝具なのじゃが…」

女海賊「でかい魔石みたいな物?」

魔女「王を選ぶと言われて居ったそうな…持ち帰って調べる必要があるのう」

女海賊「こっちの鏡は?」

魔女「分からぬ…ここに隠して居ったのじゃからそれなりの理由が有りそうじゃが…」

盗賊「おい!足元見ろよ…これは退魔の方陣じゃ無いのか?」

魔女「なぬ?退魔の方陣じゃと?」

女海賊「本当だ…それ私も組めるよ」

魔女「ではここ数十年で誰ぞ此処に入ったという事じゃ…退魔の方陣はわらわの師匠が発見した方陣じゃでな」

女海賊「剣士か未来じゃないの?」

魔女「どちらにも教えて居らぬのじゃが…」

盗賊「女海賊!!来てみろ…こりゃビンゴだぜ?爆弾を作った形跡があるぞ…」

女海賊「え!!?何処?」

盗賊「食器だと思ってたがこれはお前が火薬を作る時に使うすり鉢じゃ無いのか?」

女海賊「やっぱりここで過ごしたんだね…」

盗賊「散らかってんのは巻紙だろ?…こっちの容器は硫黄と砂鉄を入れるのに使ったんじゃ無いのか?」

女海賊「そう…私が教えた通り」プルプル

盗賊「食器の数からすると2人以外にも仲間が居た様だな?上手く生き延びた証拠だ」

魔女「では退魔の方陣も知って居ったとな?」

盗賊「だろうな?これをやってるって事は100日の闇も在ったのかも知れん」

魔女「そうじゃ忍びにはその様な記録を残した書物は残って居らぬのか?」

くノ一「一角仙人の逸話を残した巻物なら隠れ里に有ります」

魔女「それじゃな…一角仙人とは剣士か未来のどちらかじゃな」

盗賊「どうする?戻るにゃまだ早いが…」

女海賊「私はもうちょっと調べたい」

盗賊「ほんじゃ俺はデカイ瑪瑙と鏡を隠れ里に運んで来るわ…くノ一!先導してもらって良いか?」

くノ一「分かりました…」シュタタ


-------------

魔女「何か見つかったかえ?」

女海賊「色々ね…種とか骨を細工した物とか」

魔女「しばらく住んで居ったのじゃな?」

女海賊「少なくても4~5人…本当は祠の入り口にも扉が在った筈さ…そっちは風化してもう無いけど」

魔女「ではここは寝床という訳か」

女海賊「かな?多分エリクサーが入る石の器の中で横になったんだと思う」

魔女「ホムンクルスは居らんかったんじゃろうか?」

女海賊「どうだろ?6つあるガラス容器が全部空だからね…その当時居たのかも知れない」

魔女「髪の毛なぞ落ちては居らんか?」

女海賊「探したけど一つも落ちて無いさ…ワームが掃除しちゃうんだよ」

魔女「髪の毛でも有れば幻術で当時の夢でも見れたかも知れんのにのぅ…」

女海賊「え?何それ?遺品で夢を見れるん?」

魔女「うむ…体の一部分が在れば夢を見せる事が出来るのじゃ…少しだけじゃがな」

女海賊「なーんも残って無いや…残る手掛かりは一角仙人の巻物だね」

魔女「次の行き先が分かれば良いがな…」

女海賊「まぁでも…多分外海の方だよね…未来の残した地図もフィン・イッシュの外海を記した物だったし」

魔女「外海が黒塗りされて居った様じゃが?」

女海賊「何か隠したのかもね…それか穴が開いてるとか」

魔女「海に穴かいな…」

女海賊「空を飛ぶ分には関係無さそうだからちっと行って見るかな」

魔女「何故黒塗りにしたのか気になるが…」

女海賊「もうここじゃ何も見つけられないから隠れ里に戻ろっか」

魔女「そうじゃな…」

近衛侍「先導致しまする」スック

『林道』


シュタタ シュタ


近衛侍「む!!何事…」キョロ

魔女「忍びが慌ただしい様じゃのぅ?」

近衛侍「またもやヒハシの群れが来ている様でござるな…」

魔女「ヒハシ?」

近衛侍「失礼…ガーゴイルの事を忍びの間ではヒハシと呼んで居るのです」

女海賊「群れってどんくらい?」

近衛侍「10匹程度でしょうかのぅ…」キョロ

女海賊「おっし!!インドラの銃・改を試す時が来たぞ」スチャ

近衛侍「空飛ぶ魔物を追い払うのは簡単ではありませんぞ?」

魔女「林の中で視界が悪うては魔法も撃てんのぅ…わらわは回復に回った方が良さそうじゃ」

女海賊「てかミスリルの笛で追い払えない?」

魔女「何処に居るのか分からんでは無いか」

近衛侍「林の切れ目から空を良く見ていて下され…大抵は空を旋回して居りまする」

女海賊「居た居た!2匹見える」スチャ

魔女「何処じゃ?」

女海賊「インドラの銃の先…今望遠鏡で見定めてる」

魔女「遠いのぅ…ここから当たるんかいな?」

女海賊「照準のテストだよ…」シュン!

近衛侍「!!?今のは?」

女海賊「今一発撃った…照準のズレ代分かったから次当たるよ」

魔女「わらわは何も見えんかったが…」

女海賊「望遠鏡で覗いてると光の残像が良く見える…行くよ?」


シュン!


女海賊「当たった!!」

魔女「なんじゃ地味じゃのぅ…」

女海賊「光が貫通したっぽい…あのガーゴイル落ちるよ」

魔女「焼かねばならんな…」

女海賊「移動しよっか!」スタタ

『隠れ里』


ピィィィィィ!!


魔女「こちらは無事な様じゃな?」

盗賊「おぉ!!帰って来たか…この笛のお陰でガーゴイルはこっちに近付いては来ん」

魔女「笛を使うとは機転が利いた様のぅ…」

女海賊「何匹居んの?」

盗賊「分からんな…俺が見た感じ4~5匹なんだが林で良く見えん」

魔女「林に入られると厄介じゃな」

盗賊「降りて来たガーゴイルは忍びに任せても良さそうだ…空飛んでる奴が何も出来なくてよ」

女海賊「インドラの銃で減らして行くしか無いね…」チャキ

盗賊「やっぱさっき一匹落としたのはお前だったか」

女海賊「なんか破裂しなくなって地味な感じになっちゃたんだ」

盗賊「倒せりゃ良いだろ」

女海賊「おっし!捕捉…2匹落とすよ?」シュン! シュン!

魔女「ではわらわは燃やしに行くかのぅ…」ノソノソ

盗賊「ヌハハマジで地味な攻撃になったな?」

女海賊「貫通しちゃってるんだよね」

盗賊「てことは直線上なら何匹も行けるってこったな?」

女海賊「お?それ良いね」

盗賊「そうそう重なる事は無さそうだがなw」

女海賊「なんで破裂しなくなったんだろ…集光してる光が細すぎるんかなぁ…」カチャカチャ

盗賊「さっき落としたガーゴイルは拳ぐらいの穴が開いてたぞ?一応破裂してんじゃ無ぇか?」

女海賊「マジ?一点集中で破裂の規模が小さいだけなんか…威力は十分そうだな」

盗賊「まぁ反則武器には違いないわな」


--------------

シュン! シュン!


女海賊「おっし!!これで飛んでる奴全部落とした」

盗賊「しかしなんでガーゴイルが群れてるんだ?」

女海賊「この辺の林は狭間の中じゃん?ちゃんと退魔の方陣を組んでないんじゃないの?」

盗賊「一匹二匹ならそれも分かるが群れって事はどっかで集まってるだろ」

女海賊「深い狭間がどっかに有るって事か…」

盗賊「まぁここは忍びが何人も居るから修行には丁度良いのかも知れんが…」


ノソノソ


魔女「女海賊の言う通り何処ぞに深い狭間が放置されて居る様じゃな」

盗賊「おう魔女!林の方はどうよ?」

魔女「忍びが走り回って居るが大丈夫じゃろう…」

女海賊「これ放って置いて良いの?」

魔女「良くは無いが他国の地じゃであまり口出し出来んのぅ…忍びで対処出来るのであれば魔除けとしての利用価値もあるじゃろうからな」

盗賊「リザードマンとかと一緒って訳か」

魔女「うむ…誰ぞが不用意に隠れ里へ近づかぬ様に利用すると言うのも悪い策では無い」

女海賊「ガーゴイルって使役出来ないの?」

魔女「本来使い魔の一種じゃで闇の使い手であれば使役も可能じゃな」

盗賊「あんまり関わってバランス崩すのもイカンという訳か」

魔女「うむ…近衛侍の口調から察するに大した問題では無い様じゃ…それよりインドラの銃の事じゃが」

女海賊「ん?何?」

魔女「空へ向けて撃つ分には良いじゃろうが何かに当たる様な使い方は危険が有りそうじゃ」

女海賊「え?マジ?」

魔女「小型ではあるがインドラの矢には違いない様じゃぞ?どの様な仕組みになって居る?」

女海賊「集光レンズで散乱光を1ミリ位の光の束に変えてるっぽい」

魔女「笛の径から察するに今までは10ミリ程度の散乱光だった訳じゃな?」

女海賊「うん」

魔女「間違って暴発せぬ様に何か細工をしておくのじゃ…足元に発射してしまうと爆発するぞよ?」

女海賊「その点大丈夫!安全装置は完璧だから…連射出来ないけど」

『屋敷』


メラメラ パチ


近衛侍「女王様は産屋の方でお休みになられた…今宵はこの屋敷にてお寛ぎください」

魔女「一角仙人の巻物は拝見出来ぬか?」

近衛侍「ヒハシの騒動で忍び達が出払っている故…もうしばらくお待ちを」

盗賊「はぁぁぁなんか退屈だなぁ…酒か何か無いのか?」

近衛侍「ワッハッハ…そう言うと思いましてな?濁酒をお持ちしたのですわ」

盗賊「おぉ!!珍しい酒だな?米という穀物を使うんだっけか…」

近衛侍「さぁさぁ魔女殿も女海賊殿も一杯飲んでみてくだされ」トクトク

魔女「変わった酒じゃな?」

盗賊「俺にもくれ」

近衛侍「つまみも用意して来ましたので一緒にご堪能あれ」トクトク

盗賊「どれどれ…」グビグビ プハァ

近衛侍「如何ですかな?」

盗賊「こりゃ甘い!!だが飲み口はスッキリしてんな?」

近衛侍「某はこの濁酒で一杯やるのが楽しみでしてな?」グビ

魔女「ふむ…なんと濃ゆい酒か…」

盗賊「食い物が恋しくなる酒だ」

近衛侍「何を食しても不思議と合う酒なのですよワッハッハ」グビ

女海賊「なんか白いドロドロで気持ち悪いなぁ…うげぇ」ゴク

盗賊「ガキにはこの美味さが分からんだろう…いやぁ久々に酒っちゅう酒にありつけた」グビグビ

女海賊「甘すぎなんだよ…」


シュタタ スタ

盗賊「おぉ!!くノ一!!もしかして巻物持って来たんか?」

くノ一「近衛侍…又濁酒を持ち込んで…」

近衛侍「客人へのもてなしの為故…勘弁されよ」

女海賊「私は酒より巻物の方に興味があるよ」

くノ一「お持ちしました…これに」パサ

魔女「これは又古い巻物じゃな…」

くノ一「2100年前の巻物も御座います…どうか損傷されぬ様にお取り扱いを…」

魔女「ふぅむ…」ヨミヨミ


一角仙人の逸話は2100年前より語られて居ります

一番新しい逸話は700年前…

いづれもその当時の厄災を不思議な妖術を用い退けた伝説に御座います


魔女「なるほどのぅ…」

女海賊「魔女!この巻物見て…未来の壁画と全く同じ絵が記されてる…」

魔女「壁画には続きが在った様じゃな」

女海賊「私これ書き写す」

魔女「そうじゃな…わらわは内容を精査するとしよう」


-------------

-------------

-------------

『深夜』


んがぁぁぁ すぴーー


魔女「…まず分かった事を整理するぞよ?」


700年前に一角仙人は妖術師を引き連れて居った

おそらく剣士と未来じゃな

そしてこの国に剣術を伝え…未来は妖術と称し虫使いの術を伝えた

数年此処に滞在して居った様じゃが未踏の地を目指し行方が分からなくなって居る

次に1400年前

この時に大御神を引き連れてフィン・イッシュを建国して居る

何処ぞでホムンクルスを目覚めさせ一緒にこの地を開拓したのじゃ

その時に退治したのが善女龍王…姿はメデューサかラミアの様じゃがリリスじゃったのかも知れぬ

そして2100年前

黄金郷として栄えて居ったこの国は疫病により滅亡の危機にあった

そこに現れた一角仙人は疫病を忽ち癒し

疫病の元となっていた作物を変え稲作を伝えたそうじゃ


魔女「歴史を逆行しているが…剣士と未来の足取りはこの様な感じじゃな」

女海賊「逆から読み解くと訳わかんなくなっちゃうけど…壁画の続きも大体そんな感じかな」

魔女「700年前に未踏の地を目指したらしいが壁画から何か読み取れんか?」

女海賊「外海のど真ん中にチェリーの木が描かれているくらい」

魔女「そこは未踏の地なんか?」

女海賊「どうだろ?北極とか南極じゃないから行けない事は無いと思う」

魔女「誰も行った事が無いという意味では未踏の地なのやも知れんのう」

女海賊「ニルヤカナヤだっけな?そういうのは書かれて居ない?」

魔女「善女龍王の出所がそこじゃな…ニルヤカナヤより海を越えてこの地で男の血を求めたらしい」

女海賊「黄金が無くなったとかいう逸話は無いの?」

魔女「それは書かれて居らんのぅ…一角仙人とは違う話なのかもわからん」

女海賊「まぁ次行く場所がいまいち特定出来ないね…どうすっかな」

魔女「チェリーの木を探しに行くかえ?」

女海賊「大まかな地図だから探せるかどうかも微妙なんだけど…」

魔女「ミツバチに案内させれば行けるのでは無いか?」

女海賊「お?おぉ!!ソレだ!!」



------------

近衛侍「ほう?ニルヤカナヤをご存じとは」

女海賊「おっさんなんか知ってんの?」

近衛侍「近年ではニライカナイと呼ばれておりましてな…死者の集う理想郷があると言われております」

女海賊「なんか聞いた話と違うんだけど…黄金が運ばれたとかそういう話じゃないの?」

近衛侍「確かに遥か昔この国は黄金郷と呼ばれて居た時代は在った様ですな…ニライカナイに運ばれたと言うのは本当ですかな?」

魔女「分からぬ…ニライカナイに有ると言われる時の砂を記した文書と時代が一致するだけじゃ」

近衛侍「ほぉぉ時の砂までご存じで有ったとは…」

魔女「この地にその様な伝説が伝わって居るのじゃな?」

近衛侍「ある漁民が亀に乗り竜宮へ行った伝説ですな…時を超え…それを巻き戻す砂…それが時の砂という物との事」

魔女「竜宮はニライカナイに有るという事か…」

近衛侍「如何にも…まぁ伝説の話ですがなワッハッハ」

女海賊「その場所知らない?」

近衛侍「死すれば分かると言われて居りますが…」

女海賊「なんだよ分かんないのかよ」

魔女「ふぅむ…死者が集うと言うのも気になる話じゃな…何故じゃろうのぅ?」

『翌朝』


サーーーー シトシト


盗賊「雨かよ…どうする?」

女海賊「戻るに決まってんじゃん!飛空艇でニライカナイ探しに行く」

魔女「雨に打たれるのは億劫じゃな…」

近衛侍「雨が上がるまで御ゆるりとしていては如何か?」

女海賊「知りたい事知ったらもう此処に居る理由無いのさ…」

魔女「主は相変わらず落ち着かんのぅ」

女海賊「魔女もここに居たって魔方陣の研究出来ないじゃん?」

魔女「そうじゃが昨日の今日でもう出立とは女王に何と思われるか…」

女海賊「大丈夫だって…そんな事最初から知ってるよ」

盗賊「ヌハハその通りだな…いつもすぐ居なくなるしなw」

女海賊「私はもう外海に出たいからさ…魔女どうする?城の書庫行く?それとも飛空艇に乗る?」

魔女「一度主と逸れると次にいつ合流出来るか分からんな…書物があれば飛空艇でも構わん…」

女海賊「ほんじゃちゃっちゃと書物乗せて外海出るよ」

魔女「ヤレヤレじゃ…」ノソリ

近衛侍「では某が王族の気球で城までお届け致す」

女海賊「女王にはよろしく言っといて?又遊びに来るってさ!」

近衛侍「しかと承りました」

盗賊「ほんじゃ行くかぁ」スック


-------------

-------------

-------------

『城』


フワフワ ドッスン


近衛侍「ささ皆様方…到着致しました」

女海賊「おっし!私飛空艇に戻ってるからさ…魔女は書物持って来てよ」

魔女「うむ…これ盗賊!主は書物を運ぶのを手伝え」

盗賊「へいへい…」

女海賊「なんか城がバタついてんじゃない?」

近衛侍「その様ですな?某は事情を聞いて参りますのでこれにて…」ペコリ

魔女「では書物庫へ行くかのぅ」ノソノソ



『飛空艇』


タッタッタ


女海賊「ホムちゃん待った?」

機械の犬「クゥ~ン」トコトコ

女海賊「ごめんよ直ぐに戻るつもりだったんだけどさぁ」

機械の犬「ワン!ワン!」トコトコ

女海賊「ん?何かあった?」スタ

機械の犬「ワン!」フリフリ


コケーーッ コッコ


女海賊「おぉ!!卵産んでんじゃん!!」

機械の犬「ワン!」ヒョコ

女海賊「アハハ!ホムちゃんが温めてるんだ?」

女海賊「よーし!良い物作ったげる…」コネコネ

機械の犬「??」フリフリ

女海賊「懐炉だよ…これホムちゃんのお腹の中に入れとくからさ…これで暖まる筈」パカ ポイ

機械の犬「ワン!」

女海賊「そうだ…硫黄とか買っとかないとな…お金何処に置いてたっけ?」

機械の犬「ワンワン!」ココホレ

女海賊「あれ?何だコレ?なんでこんなに一杯お宝積んでんだ?…まぁ良いや!ちっと金貨持ってこ」ジャラリ

機械の犬「ワン!」ヒョコ

女海賊「ほんじゃちっと買い物行って来るから待ってて!」スタタ

『1時間後』


ヨッコラ ドスン


盗賊「あれ?女海賊は何処行ったんだ?」

魔女「飛空艇で待つと言うて居ったのにな?」

機械の犬「クゥ~ン…」トコトコ

魔女「まぁ良い…わらわは書物で調べ事をして居るでもう話しかけるで無いぞ?」

盗賊「探しに行くと行き違いになりそうだな…まぁ球皮でも膨らませておくか」シュゴーー


タッタッタ


女海賊「お!?戻って来た?」

盗賊「おぉ今戻った所よ…何してたんだ?」

女海賊「買い物だよ…てか町の方が大騒ぎなんだけどさ」

盗賊「海賊が騒いでんだろ?」

女海賊「なんで知ってんのさ?」

盗賊「そんなこったろうと思ってな?」

女海賊「聞いて聞いて!!なんか白狼の盗賊団が出たって騒いでんだよ」

盗賊「ヌハハ…まぁ俺の仕業よ」

女海賊「なんだそれで飛空艇にお宝乗ってたのか」

盗賊「まぁ殆ど町でバラ撒いたんだがな?」

女海賊「海賊の船襲ったのあんただね?」

盗賊「まぁな?」

女海賊「まぁ良いや…ちっと金貨使わせて貰ったよ」

盗賊「あぁ好きに使え」

女海賊「魔石も在ったな…これが在ればホムちゃんのお腹温められる」

盗賊「何する気よ?」

女海賊「ホムちゃんが卵温めてんだよ」

盗賊「卵?ニワトリのか?」

女海賊「別に良いじゃん!」

盗賊「ヌハハゆで卵にせん様にな?」

女海賊「なんか楽しみになって来た!!生まれたらホム子って名付けよう!!」

盗賊「う~む…センスの欠片も無いが…」

女海賊「うっさいな!!もう飛空艇飛ばすからどいて!!」

盗賊「へいへい…」


シュゴーーーー フワフワ

『外海上空』


ビョーーーウ バサバサ


女海賊「とりあえず進路は西!!」

盗賊「まともな地図も海図も無いんだが大丈夫か?」

女海賊「このまま明日の夜明けまで飛んでそっからミツバチに案内させりゃ良いんじゃない?」

盗賊「まぁ食い物には困らん様だから良いっちゃ良いわな…水だけ上手く雨水に有り着けりゃ良い」

女海賊「てかさ?なんで皆外海出るの避けるん?」

盗賊「誰も帰って来ないからだろう」

女海賊「そもそもなんでそんな事になる?やっぱ海に穴が開いてんのかな?」

盗賊「さぁな?てか俺らも戻れんかも知れんぞ?」

女海賊「引き返せば良いだけだから信じらんないんだよね…戻るのなんか簡単じゃん」

盗賊「みんなそう言いながら帰って来ない訳よ」

女海賊「まぁ良いや…ちっと作り物するから飛空艇の操舵変わって」

盗賊「おう!…何作るんだ?」

女海賊「ミスリルの筒がまだ少し余ってるからホムちゃん用の笛作る」

盗賊「機械の犬じゃ吹けんだろ」

女海賊「魔石あったじゃん?風の魔石で音が出る様に細工する」

盗賊「なるほど…」

女海賊「これでホムちゃんの表現も一つ増えるんだよ」トンテンカン グリグリ


ピィィィ


女海賊「音が出る様にするのなんか簡単なんだ…これに風の魔石を嵌めて…」カチャカチャ

盗賊「犬笛って奴だな」

女海賊「そそ!こいつに嚙みつけば音が出るのさ」

女海賊「ホムちゃんおいで!これ骨だと思って噛みついてみて?」

機械の犬「ワン!」トコトコ ハム

女海賊「もうちょい強く噛める?」


ピィィィ


女海賊「おけおけ!!よっし…骨の形にもうちょい加工する」ガリガリ シュッシュ

盗賊「ヌハハこれで立派な番犬になれるな?」

女海賊「一応魔除けの効果あるからね」

『翌朝』


コケーーッ コッコッコ


盗賊「ふがっ…おおぅ寝ちまった様だ」ゴシゴシ

女海賊「ふぁぁぁぁ…う~ん」ノビー

盗賊「まだ暗いな」

女海賊「結構飛んだね?風で流されてない?」

盗賊「んん?ありゃ?いつの間に北に向かってんだ?」

女海賊「風向き安定してないのか…縦帆張り替えるわ」スック

盗賊「いや待て…羅針盤が変な方向差してるかも知れん」

女海賊「その羅針盤今まで狂った事無いよ」

盗賊「やっぱおかしい…針が一定方向を差さん」

女海賊「ちょいデッキ上がる」ダダ パカ


ビュゥゥゥゥ


女海賊「あれ?狭間ん中入ってんじゃん!!リリースしてよ」

盗賊「アダマンタイト触って無いぞ?」

女海賊「ええ!?」

盗賊「ちょい俺も外見る」ダダ

女海賊「ヤバヤバ…これすんごい深い狭間に入ってるわ…真後ろ見て」

盗賊「ぐはぁぁ…大量のレイスに追っかけられてんじゃ無ぇか」

女海賊「ちょい高度下げよう」グイ

盗賊「なるほど…外海に出て誰も帰って来ないのは狭間に迷っちまうんだ」

女海賊「そういう事ね…未来が描いた黒塗りは狭間の事だったのか」

盗賊「ガーゴイルの群れはここから飛んできてるんだよ…てか俺らも危ないぞ?」

女海賊「操舵やって!!私正面見とく」

盗賊「おう!このまま真っ直ぐ行くんか?早い所ミツバチ出してくれ」

女海賊「ミツバチ出て来い!近くのチェリーまで案内しろ!」ブーン

盗賊「おいおい方向分かん無ぇぞ?」

女海賊「探してんだよ!適当に行ってミツバチ反応するの待って」

盗賊「ちぃ大丈夫なんか?」

女海賊「レイスは近寄れないと思うけどガーゴイルにぶち当たられたらヤバいかも」

盗賊「しっかり前見といてくれ」

女海賊「そうそう当たるもんじゃ無いけど…」

『狭間』


シュン!


ガーゴイル「グエェェェェ…」ヒュゥゥ

女海賊「インドラの銃はリロード時間が長くてこれ以上キツイ…」

盗賊「もっと高度下げんとイカンな…」グイ

女海賊「デリンジャーは近距離じゃないと当たんないからなぁ…」

盗賊「機械の犬に笛を吹かせろ」

女海賊「ホムちゃん!!笛お願い!!」

機械の犬「ワン!」トコトコ


ピィィィィ


魔女「ううん…騒がしいのぅ…何事じゃ?」ムクリ

女海賊「あ!魔女起きた?なんか狭間の深い所に入っちゃったみたいでガーゴイルが飛んで来るのさ」

魔女「海上で狭間とな?」

盗賊「インドラの銃じゃリロードが間に合わん…魔女も魔法で迎撃を頼む」

魔女「飛んで居る敵には中々当たらんのじゃが…」

女海賊「よしよし…笛のお陰で横から近づいて来なくなった…魔女!正面だけ狙って」

魔女「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

盗賊「そうそう弾幕張れば近寄って来んだろう…魔石あるから上手く使ってくれい」

女海賊「魔女!これ火の魔石!」ポイ

魔女「これで触媒の無駄遣いをせんで良くなったわい…火炎魔法!」ゴゥ


--------------


盗賊「ミツバチの向きが安定しないんだが…」グイ バサバサ

女海賊「ちゃんと示す方向に飛空艇を進めてよ」

魔女「下を見よ!!海面が見えて居るぞよ?」

盗賊「おっと危無ぇ!着水しちまう所だった」グイ シュゴー フワフワ

女海賊「高度低いとガーゴイルの数も減るね…この高度維持で進もう」

盗賊「レイスに追われるんじゃ普通の船じゃ航海出来んわな…」

女海賊「ちっと後ろのレイス掃除してみる」

盗賊「おうヤレヤレィ!!まとめて倒してみろ」

女海賊「どんだけ一気に倒せるかな…」シュン!

盗賊「ダハハ地味な攻撃だ」

女海賊「何匹に当たったか分かんないや」

魔女「エネルギーの無駄じゃで止めて置け…レイスは際限なく湧くでの?」

『謎の構造物』


シュゴーーーー


盗賊「おい!!女海賊!!光の石で正面照らせ!!」

女海賊「こっちぁ忙しいんだよ!!魔法で何とかして!!」シュン ガチャコン

魔女「忙しいのぅ…照明魔法!」ピカー

盗賊「なんだありゃ…」

女海賊「対象見っけた?」

盗賊「ちっと揺れるぜ?」グイ


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「ちょちょちょ…海面スレスレってあんた分かってんの!!?」ヨロ

盗賊「魔女!!もっと照明魔法頼む」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

盗賊「こりゃ船の墓場だ…海底の何かに引っかかって動けなくなった様だ…」

女海賊「岩礁か何か?」キョロ

盗賊「分からんが海面からいくつも塔らしい建造物が突き出てる…海底にもそれがあるんだろう」

魔女「古代遺跡じゃな」

女海賊「ビンゴだね!!近くに降りられそうな場所無い?」

盗賊「ミツバチの示す方向で良いんだよな?」

魔女「これ盗賊や…座礁した船の年代とか分からんのかいな?わらわはあのような船を見た事が無いでのぅ…」

盗賊「いや俺でも分かるのはごく一部だ…しかし狭間の中でこんだけ傷んでるって事は相当年代もんだぜ?」

女海賊「ちょい左方向見て!!あれってクラーケンの触手じゃね?」

盗賊「なぬ!?」

女海賊「ほら?イボイボと先っぽの形…」

魔女「たまげたのぅ…ここはクラーケンの巣やもしれんな」

盗賊「石化していやがる…」

女海賊「やば…ピーンと来たぞ」

盗賊「おいおいマジか…こんな所に流れて来てるってか?」

魔女「リリス…」ボソ

女海賊「クラーケンが運んで来たって考えた方が良さそうだね」

盗賊「こりゃ探索もラクじゃ無さそうだ」

女海賊「海底探索する訳じゃないさ…リリスは誰も近寄らないこの海域に封じられてた方が良さそう」

魔女「うむ…そうじゃな」

盗賊「まぁ良い…アレは放置しておくとして陸地を探すぞ」

女海賊「てかガーゴイル撃ち落すのに忙しいんだ!!あんたが上手い事探して」

『恐らく翌日』


シュン!! グェェェェ


女海賊「ふぅ…リロード出来るまで休憩」ヨッコラ

魔女「また同じ沈没船が見えて来たぞよ?」

盗賊「ぬぁぁぁ分かってる!!ありゃ俺の目印なんだ」

魔女「完全に迷って居るのぅ…」

盗賊「ミツバチがアテにならん訳よ…途中で反転するんだ」

女海賊「着水してみる?」

盗賊「浸水するだろうが!…舵も無いから方向定まらん」

女海賊「大昔には気球なんか無かったって考えたら入り口は海面ギリギリだと思うんだよね」

盗賊「んなこたぁ分かってる!!」

女海賊「ほんじゃもうちょい高度下げれば良いじゃん」

盗賊「波に引っかかったらこんな気球なんざ一瞬でひっくり返るぞ?」

女海賊「操舵は私がやるから帆の調節だけあんたがやって」

盗賊「ケッ!!やってみろ!!」

女海賊「おっし!!マジでギリギリ飛ぶから哨戒頼むね」グイ


ザブン バシャバシャ


盗賊「それ以上下げるな!!」

女海賊「おけおけ!!大波のタイミングで高度上げるからしっかり見てて!!」

魔女「ヒヤヒヤじゃな…」

盗賊「魔女!!船底のクロスボウ撃つ穴をなんとか塞げられ無ぇか?」

魔女「氷結魔法!」ピキピキ カキーン

盗賊「よっし!あとは浸水しなきゃしばらく持ちそうだな」

女海賊「おっ!?おっ!?…ちょ…」

盗賊「んん?明るくなった…狭間を抜けたか?」

女海賊「いきなり島が現れた…」

魔女「ふむ…狭間の中に結界を張って居ったか…わらわの塔やエルフの森と同じじゃ」

盗賊「通りで見つからない訳だ」

女海賊「結果オーライ!!名も無き島と同じくらいの大きさだよ」

盗賊「見ろ!!入り江に船が停船してる!!誰か居そうだ」

女海賊「おっけ!!行ってみよ」

『ニライカナイ_入り江』


フワフワ ドッスン


盗賊「おっし!!俺はあの船をちっと見て来る」スック

女海賊「帆が無さそうだけどキ・カイの船かな?」

盗賊「さぁな?お前等2人は周囲を警戒しててくれ…直ぐに戻る」ダダ

女海賊「警戒っつってもさぁ…」キョロ

魔女「この島は主の名もなき島にそっくりじゃのぅ…入り江と言い…丘に生えた樹木と言い…」

女海賊「そだね…朽ちた小舟まである」

魔女「魔物の気配は無さそうじゃが…」

女海賊「飛空艇で空から見た方が色々分かり易そうだなぁ…」

魔女「それはイカンな…どこまでが結界の領域内か分からぬ故…飛ばぬ方が良かろう」

女海賊「まぁ徒歩で探索するかぁ…狭間の中ならゆっくり探索出来そうだ」

魔女「わらわの塔と同じじゃと良いがな?」

女海賊「あのさ?結界って方陣組むのにお札とかそういうの必要だよね?」

魔女「うむ…察するに触媒にあたる銀なぞを海中に沈めて居るのじゃと思う」

女海賊「なる…」

魔女「境界を探すのは無理じゃろうな」

女海賊「私もちっと周り見て来るからさ…魔女もその辺探索しといて」

魔女「わらわはちと休みたいのじゃ…魔法を使い過ぎたからのぅ」

女海賊「おけおけ!ほんじゃ適当に火でも起しといて」

魔女「うむ…遠くに行くで無いぞ?」

女海賊「分かってるって!!ほんじゃちっと行って来る」ピューー

『30分後』


メラメラ パチ


盗賊「戻ったぜ?」ドサ ガラガラ

魔女「なんじゃそのガラクタは?」

盗賊「あの船の中に有った物だ…どうやら古代の船だぞありゃ」

魔女「動くのかいな?」

盗賊「さぁな?どうやって動かすのかもさっぱり分からん」

魔女「物色してきたという事は誰も居りそうに無いという事か?」

盗賊「うむ…放置されてどれくらい経ってるのかも分からん…狭間ん中じゃ色んな物が腐り難いだろうからな」


ピヨピヨ ピヨピヨ


機械の犬「ワンワン!」トコトコ

盗賊「お!?卵が還ったか」

機械の犬「ワン!」フリフリ

盗賊「食うのはもうちっとデカくなってからが良さそうだ」

魔女「主という奴は…」

盗賊「ぬはは冗談だよ!!さぁて…折角火を起こしたんだから何か焼いて食うか」

魔女「わらわの分も頼むぞよ…ちと横になるで」

盗賊「貝が居ないか見て来るわ」ダダ


-------------

-------------

-------------

ジュゥゥゥ


盗賊「しかしアイツ帰りが遅いが大丈夫か?」モグモグ

魔女「心配には及ばぬ…わらわが眼を見て居るでな?」パク モグ

盗賊「何かあるか?」

魔女「朽ちた集落じゃな…過去に人が住まって居った様じゃ」

盗賊「ほう…そら俺らも行った方が良さそうだ」

魔女「慌てんでもよかろう…主もしばらく寝て居らんのじゃから少し休め」

盗賊「そうだな…ここも魔女の塔の様にそうそう魔物は入って来ないんだろ?」

魔女「入り口が海じゃ…何が入って来るのやら…」

盗賊「ヌハハ食ったし寝るわ!」

魔女「うむ…」コックリ

『しばらく後』


スタスタ


女海賊「あ!!やべ…ここまで妖精の笛聞こえてたんか…」

魔女「…」コックリ コックリ

盗賊「んがががが…」スピー

女海賊「まいったなぁ…起きるまで足止めかぁ」


ピヨピヨ


女海賊「お!?ホムちゃんヒヨコ生まれたんだ!!」

機械の犬「ワン!」フリフリ

魔女「ぅぅん…」パチ

女海賊「あ!!あれ?魔女起きるの早くね?」

魔女「うたた寝してしもうた様じゃな…」

女海賊「妖精の笛聞こえた感じじゃ無さげ?」

魔女「むむ?妖精の笛なぞに何故頼らねばイカンかったのじゃ?何か居ったのかいな?」

女海賊「石化したっぽいゴーレムが居てさ…もしかしたら動くかもって思ってね」

魔女「石化…ゴーレム…」

女海賊「あと書物見つけて来た…わたし読めないから解読ヨロ」ポイ

魔女「書物を発見したとはな…朽ちた集落に有ったんか?」ヨミヨミ

女海賊「他にもまだ在ったさ…読めそうなの拾って来た」

魔女「…これは1000年以上昔の古文書じゃ…しかもシン・リーンに伝わって居るルーン文字」

女海賊「何書いてんの?」

魔女「年代が分からぬのじゃが魔王島の伝説が書かれて居る」ヨミヨミ

女海賊「もしかしてこの島って当時の魔王島だったり?」

魔女「丘の向こうには集落の他に何かあるんか?」

女海賊「遺跡が在ったよ…一人じゃ危なさそうだから戻って来た所さ」

魔女「ゴーレムは2体か?古文書にはそう記されて居るが…」

女海賊「おお!!やっぱそうか…もう一体の方は真っ二つになって崩れてた」

魔女「どうやらわらわ達はエライ所に来てる居る様じゃ…」

女海賊「後さ…そこら中に石造が転がってんだよ」

魔女「…」

女海賊「魔女が今腰掛けてる石もそうなんじゃね?」

魔女「なんと!!?」スック

女海賊「ほら?元々は立ってたんだけど倒れて割れちゃってんだよ…」

魔女「わらわはちと書物を読む故…主も食事を済ませてちと休むが良い」

女海賊「おっけ!ちっとお腹空いてた所だった」

魔女「わらわに話しかけるなや?」ブツブツ

『翌日』


ザザー ザブン


盗賊「ふが?…んぁぁぁぁ良く寝た」ノビー

女海賊「くっそ!!部品が足りない…」カチャカチャ

盗賊「ぃょぅ…戻ってたんか」

女海賊「これ他に部品無いの?」

盗賊「全部持って来た筈だぞ?もうあの船ん中は空っぽだ」

女海賊「こんな細かい部品は機材が無いと代替品作れないなぁ…ちぃ」

盗賊「何なんだそりゃ?」

女海賊「機械式の時計だよ…振り子が動けば永久に動く筈」

盗賊「ほーん…」ハナホジー ポイ

女海賊「諦めっかぁぁ」ポイ

盗賊「あの船には行ったか?」

女海賊「当たり前じゃん」

盗賊「動かし方分からんか?持って帰りたいんだが…」

女海賊「残念だけど動力源が外されてるっぽい…多分古代遺跡動かす奴と同じだと思う」

盗賊「商人が探してるって奴か」

女海賊「多分ね…」

盗賊「あの船はよ…形から察するに海の中潜る船だと思うんだわ」

女海賊「ハッ!!そういう事か…」

盗賊「んぁ?自己完結すんなや…何よ?」

女海賊「竜宮って海の中に有るとか言ってたじゃん?あの船に乗って行くんじゃね?」

盗賊「って事は俺らに竜宮は探せんって事だな…ヌフフ直すしか無い様だ」ニヤリ

女海賊「無理過ぎる…部品が色々外されてて何が何だか分かんない」

盗賊「う~む…まぁそれは良いとしてだ…島の探索はどうする?」

女海賊「昨日書物を見つけて来てさ…魔女が解読してるんだけど…」

盗賊「何処行ったんよ?」

女海賊「飛空艇の中だよ…話しかけるなってさ」

盗賊「ほんじゃ俺らだけで行ってみっか?」

女海賊「そうもいかないんだ…どうもこの島は魔王島らしい」

盗賊「なぬ!?どういう事よ?」

女海賊「ゴーレムとか居て下手に探索してるとヤバイかも」

盗賊「マジか…」

女海賊「てか石化しちゃってるんだけどね…石化の原因も良く分かんないから下手に行くとミイラ取りがなんとかって奴」

盗賊「エリクサー全部置いて来ちまったな…」

女海賊「もう小瓶で少ししか無いよ」

盗賊「魔女待ちか…まぁゴロゴロしてても鈍るだけだからちっと動く準備だけしとく」スック

女海賊「何すんの?」

盗賊「丸腰で探索行く訳じゃあるめぇ?」

女海賊「あぁそういう事ね…ほんじゃ私も準備すっかぁ」スック

『飛空艇』


ブツブツ なるほど一致しておる…


盗賊「寝ずに書物読んでんのか?」

女海賊「シーーーーッ話しかけんなって言われてんだよ!!」

盗賊「ちっとぐらい良いだろ」

魔女「おぉ良い所に来たのぅ…これ女海賊や…他の書物がある場所まで案内せい」

女海賊「お!?解読終わった?」

魔女「一通りは読み終わったが他の書物も気になってのぅ」

女海賊「なんか分かった?」

魔女「この古文書は時の王の時代の事が書かれて居ってな…メデューサの首をどの様に撥ねたかが記されておる」

女海賊「メデューサ?リリスじゃなくて?」

魔女「その当時はメデューサと呼ばれて居ったんじゃな…そしてこの島でメデューサを討伐しておる」

女海賊「なる…ほんで今は海に沈んでる訳か」

魔女「うむ…そしてな?この古文書は後に書かれた伝記なのじゃ…」

魔女「時の王の時代からシャ・バクダ朝の時代までの空白を埋める手掛かりになる」

盗賊「歴史の事はさっぱり分からん」

魔女「話はこうじゃ…」


時の王の時代からシャ・バクダ朝までを記した書物は殆ど残って居らん故に歴史は空白だったのじゃが

何故その様な事が起こるのか?…答えは夢食いじゃ

当時の魔王は祈りの指輪を用い世界中の夢を食らって居った

夢は人の記憶による所が大きい…よって夢を食われた者は知らぬ内にそれまでの記憶を喪失する…


魔女「そうやって歴史の一部が伝わらなんだのじゃ…」

女海賊「じゃぁなんでその書物は残ってんの?」

魔女「さぁのぅ?わらわが思うに時の砂のお陰やも知れぬ」

女海賊「時の砂で思い出す?」

魔女「分からぬ…じゃから何でも良いから他の書物を調べたいのじゃ」

盗賊「おいおい話が随分逸れたみたいなんだが…当時の魔王っていつの時代よ?」

魔女「確かでは無いが700年前か1400年前か…それとも1700年前か…それなら辻褄が合いそうなのじゃ」

盗賊「そういやシャ・バクダの時代もはっきりとした書物が残って無いって情報屋が言ってたな…」

魔女「歴史の欠落が起きるのは魔王が原因じゃろうな」

女海賊「じゃぁ私達の記憶もいつの間に無くなってる?」

魔女「否定は出来ん…わらわは極力書物に書き記しては居る」

女海賊「なんか分かって来たぞ…私が忘れっぽいのはそのせいか」

盗賊「いやいやお前は元々興味無い事は覚え無ぇから…」

魔女「もう行く準備は出来て居るのか?」

女海賊「そんな遠く無いから準備は軽くでおけ!…行こうか」

『朽ちた集落』


チュン チュン ピヨ


盗賊「なんつかー…朽ち果てた廃村だが穏やかな雰囲気だ」

女海賊「これさぁ…狭間の中で何年このままだと思う?」

魔女「さぁのぅ…」ノソノソ

盗賊「そこら中にある石は石化した住人か?」

女海賊「多分ね…でも全部傷んでる」

盗賊「こりゃここで戦闘があった証拠だ…石化してる恰好がおかしい」

魔女「うむむ…魔王島に何故集落があるのじゃろうか…」

盗賊「そら調査の為だろ…事が済んだ後の魔王島を後の奴らが調査の為に住んだ訳だ」

魔女「どうにか年代が分かれば良いが…」

女海賊「魔女!あの建屋に本が散らばってたんだ」グイ

魔女「これ引っ張るな…ゆっくりで良い」ノソノソ



『朽ちた建屋』


ガサガサ


女海賊「魔女?この紙の切れ端はどう?」

魔女「パピルスの一部か…同じ様な物があれば集めるのじゃ」

盗賊「くぁぁぁ何も無ぇな…壺なんざ要らんし…」

魔女「主はいつの時代の壺か分からんのか?」

盗賊「んん?シャ・バクダの紋様だから400~700年前って所か?」

魔女「ますます時代が分からぬ…時の王の時代とどういう接点を持つのか…」ブツブツ

女海賊「壺ん中何か入って無いの?」

盗賊「灰だよ灰!!なんもありゃし無ぇ…」サラサラ

魔女「壺に灰とな…死霊術師が居ったという訳か」

女海賊「やっぱシン・リーン所縁の物が多い感じ?」

魔女「うむ…石板の調査に来て居ったのやも知れん」

女海賊「ソレソレ!!わたしはそれを探したい!!」

魔女「ここでは手掛かりが少ないで遺跡の方に行って見るとするかいな」

盗賊「そらキタ!!待ってたぜ?その言葉を!!」

女海賊「もうちょい先に石化したゴーレムがあんのさ…その向こう側に遺跡があるっぽい」

『遺跡へと続く丘』


女海賊「ほらコレ…やっぱ石化したゴーレムだよね?」

魔女「ゴーレムは元々石じゃで石化かどうかは断定出来んのぅ」

盗賊「動き出さんだろうな?」

女海賊「妖精の笛吹いても動かないさ」

盗賊「どうやって動いてたんだろうな?」

女海賊「もしかしてこいつも例のウラン結晶のやつかな」

盗賊「有り得る…動かんのは動力が無いからかも知れん」

女海賊「ほんでこのゴーレム超えたら見晴らし良くなって向こうに遺跡が見えるよ…こっち」


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盗賊「ちょい待て…こりゃぁ大戦の跡地じゃ無ぇか…見てみろ!あの池は隕石か何かが落ちた痕だ…」

女海賊「なるほど…それで地形がボコボコなのか」

魔女「…」ボーゼン

盗賊「あの遺跡…丸くくり抜かれてる断面はなんだ?明らかに不自然だ」

魔女「量子転移の痕跡じゃ…あの場所で何かを消し去って居る」

女海賊「量子転移ってあんなんなるの?」

魔女「主が持つ魔人の金槌も範囲は狭いが同じ様に空間を消し去るのじゃぞ」

女海賊「ちょい待ち…未来が持って行った破壊の剣ってやつ…あれも同じだったよね?」

魔女「うむ…つまりゴーレムの片割れを真っ二つに切ったのは未来の可能性が高い」

女海賊「やっぱりか…やっぱここに魔王倒しに来てたんだね」

魔女「倒しに来たのか…それとも祈りの指輪で魔王を集めて葬ったのかは分からん」

盗賊「なるほどな…それであの量子転移の痕跡か」

魔女「驚くのは量子転移だけでは無いのぅ…奴らは隕石を落とす事は出来ん筈じゃ…つまりシン・リーンの魔術師も絡んでおる」

盗賊「時の王の時代は魔法の黎明期だったんだろ?同行しててもおかしく無い」

魔女「そうなのじゃが時代が合わんのじゃよ…何故にこうも時代がバラバラなのか」

盗賊「やっぱ情報屋を連れて来るべきだったな」

女海賊「ほんなん後で考えれば良いさ…さっさと手掛かり探しに行くよ」ピューー

『古代遺跡』


スタスタ


盗賊「こりゃ既に盗掘済みだな…ちぃ」

魔女「えらい荒れようじゃ…瓦礫をどうにか出来んもんか」

女海賊「私が魔人の金槌で消して行くからなんか手掛かり探して」

盗賊「待て待て…下手に消して行くと崩れるかも知れんぞ?生き埋めは御免だ」

魔女「これ!!ここを見よ…灯篭じゃ」

女海賊「お!?何だコレ?銀製じゃん」

魔女「こういう事じゃ…照明魔法!」ピカー

女海賊「良く見るとあちこちに同じのがある」

魔女「うむ…誰ぞ人が出入りして居った証拠じゃ…しかも魔術師じゃな」

女海賊「未来が此処に住んでた?」

魔女「良く考えてみぃ…700年前にどうにかこの島に辿り着いたとして量子転移でさらに700年時空を飛んだ場合…」

魔女「乗って来た船は無い筈じゃ…ここで生活するしか無かったのでは無いか?」

盗賊「おぉ!!そうだな…自前で作るか誰か来るのを待つしか無ぇ」

女海賊「でもさ?量子転移で必ず時空飛ぶって訳でも無いじゃん?」

魔女「ふうむ…そうじゃな」

女海賊「まぁ銀の灯篭をわざわざ作るくらいの期間は滞在してた可能性は高そうだね」

盗賊「てかなんで銀なんか使うんだ?」

魔女「触媒が不要になるでラクなのじゃよ」

女海賊「普段いる場所に明かりが欲しいだろうから手掛かり有るとしたらこの辺だね」

魔女「うむ…灯篭の周辺を探すと良かろう」

盗賊「おし手分けして探索すっぞ!!俺は北側見て来る…女海賊は土手沿いに向こうだ」

女海賊「これ時間掛かりそうだね…わたし飛空艇をこっちに持ってくるわ」

魔女「うむ…そうじゃな…ベースはこちらに有った方が良かろう」

盗賊「分かった…ほんじゃ定期的にこの場所に集合で良いな?」

女海賊「おけおけ!」ピュー


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『飛空艇』


フワフワ ドッスン


女海賊「ホムちゃん降りて良いよ!!」

機械の犬「ワンワン!」トコトコ

女海賊「魔女どう!?何か見つかった?」

魔女「盗賊が地下に降りる階段を見つけて探索に行きよったわい」

女海賊「おーソレだね」

魔女「予想はして居ったが遺跡の本体はやはり地下じゃな」

女海賊「魔女は何してんの?」

魔女「見つけたパピルスを読んで居る…指示書の切れ端じゃ」

女海賊「お?時代分かりそう?」

魔女「失踪した暁の使徒を捜索しとった様じゃな…時代は1700年前…つまり時の王の時代じゃ」

女海賊「暁の使徒?誰それ?」

魔女「シン・リーンに戻って調べにゃ分からんのぅ…少し聞いた事がある程度しか知らぬ」

女海賊「まぁあんま関係無さそうだ…ほんで私も地下の方行ってみたい…どっち?」

魔女「向こうの灯篭の脇じゃと言うて居った…わらわはここで待つ故行ってみよ」

女海賊「ホムちゃん一緒に行こうか!!おいで!!」

機械の犬「ワン!」トコトコ

『焚火』


メラメラ パチ


盗賊「ちっと休憩だ!!」ダダ ドター

魔女「女海賊とは会わなんだか?」

盗賊「途中で分かれたっきりだ…その内戻ってくんだろ」

魔女「まぁ良い…しばらくここに滞在する事になりそうじゃでの」

盗賊「だな?地下の遺跡が広すぎる」

魔女「書物の類は見つけて居らぬか?」

盗賊「書物は無ぇな…武具類と石造ばっかだ…ほらよ!」ポイ カラーン

魔女「むむ…その刀身は」

盗賊「オリハルコンだ…多分シン・リーンで見つけたエクスカリバーと同じ物…」

魔女「いくつもあるのかえ?」

盗賊「わんさかな?つまりその当時の通常兵装な訳よ…今の時代より随分進んでたって事だ」

魔女「やはり時の王が兵を率いてこの島に滞在して居ったか」

盗賊「伝説通りか?」

魔女「不死の力を得た後に国を捨てたのじゃ…理由は諸説あるのじゃが…」

盗賊「ほんでな?そういうお宝が持って行かれて無いって事はその時代以降に盗掘には遭って無い訳よ」

魔女「ふむ…この遺跡は1700年前のままか…では何故700年ほど前のシャ・バクダの壺が有ったのじゃろうな?」

盗賊「未来達が持ち込んだとすれば辻褄が合う」

魔女「なるほどのぅ…壺に入れた灰はもしかすると種だったのやも知れんな」

盗賊「まぁ…まだまだ色々発掘できるだろうから…ちょい休んだら又行って来るわ」

魔女「古代の遺物は無いんか?」

盗賊「俺も探してんだけどよ…当時の時の王が全部持って行ったんじゃ無ぇかと思ってる」

魔女「ふむ…辻褄が合うのぅ…錬金の器具しかり重力炉の出所は此処じゃったか…」

盗賊「まぁお宝探しは俺に任せておけ…そうそう!!地図書くから紙とペン持って行くぜ?」

魔女「好きにせい」

『半日後』


ガラガラ ドサー


魔女「主は全部持って帰るつもりか?」

盗賊「オリハルコンの武器は価値高いだろ…持って帰るに決まってんじゃ無ぇか」

魔女「わらわは書物を探せと言うた筈じゃが…」

盗賊「読める状態の書物なんざそうそう無い!剣の柄が腐り落ちるぐらいなんだからな」

魔女「むむぅ…壁画に書き残す未来が如何に優秀か…」

盗賊「ところで女海賊はまだ帰って来んのか?」

魔女「壁画を見つけて泣きながら書き写して居る」

盗賊「お!!マジか!!何処だか分かるか?」

魔女「主が行って居る奥の方では無い」

盗賊「手前だったか…ちっと行って来る」

魔女「待てい!!気が収まるまでそっとしておいてやれ」

盗賊「俺も壁画を見てみたいんだがよぅ…」

魔女「わらわも同じじゃ…我慢せい」

盗賊「しゃー無ぇ…酒でも飲んで待つか…」

魔女「そうじゃ主に頼みがある…チェリーの木を探して実を採って来ては貰えんか?」

盗賊「ぐはぁ…マジかよ」

魔女「ちと体調がおかしいのじゃ…魔力が回復せぬ」

盗賊「チェリー食えば良くなるってか?」

魔女「正確には生きた実から魔力を得るのじゃ」

盗賊「まぁ良いや…探索がてら採って来てやる」

魔女「うむ…よろしく頼む」

『森』


サワサワ


盗賊「こりゃ木を登らんと収穫出来んな…」

盗賊「しゃーねぇ上まで登れば見晴らしも良いか…よっ」ヨジヨジ

盗賊「枝ごと落としちまうか…」ブン スパ スパ

盗賊「ほぉぉぉ島の全景が見えて中々良い…結界の外側は海にしか見えんのだな…」

盗賊「ふむふむ…なるほどあの入り江以外に船が取り着けそうな場所は無さそうか」

盗賊「待てよ?この島はもしかして人口の浮島か?てかこの島自体がくそデカイ船なんじゃ無ぇか?」

盗賊「…」


そういや遺跡の地下は水が張ってそれ以上降りられなくなってた…

それが海面だったとすると水が張ってる説明も付く

つまり遺跡の本体は海の下に沈んでる…

だから潜水する船が必要な訳だ


盗賊「なるほどな…竜宮の正体が分かって来たぜ?」

盗賊「遺跡の天井がやたら高いのは空気を溜める浮袋って訳だ」

盗賊「んん?なんだありゃ?…赤潮か?」

盗賊「いや赤潮が起きるほど海の温度は高くない…まさかリリスの血が流れ出て…」


”ちと体調がおかしいのじゃ…”


盗賊「石化か!!こりゃやべぇ!!」


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『焚火』


ダダダ ズザザー


盗賊「魔女!!無事か?」

魔女「何を慌てて居る…チェリーは収穫出来たか?」

盗賊「あ…いや…悪りぃ置いて来ちまった」

魔女「手ぶらで帰って来るとは何事じゃ…取りに戻れ」

盗賊「ここに来る途中で石化したクラーケン居ただろ?俺らも石化したりしないよな?」

魔女「可能性は否定出来ぬが体の中に線虫が住んで居るから黒死病には掛からんと思うがのぅ」

盗賊「あぁそうだった…忘れてたわヌハハ」---思い過ごしか---

魔女「早ようチェリーを採って来い」

盗賊「わーった!わーった!」スタ



『しばらく後』


ムシャ ムシャ モグ


盗賊「チェリー食いながら酒ってのも中々の組み合わせだ」グビ

魔女「やる気が出て来たかの?」モグ

盗賊「ちっと休んだらもっかい探索行って来るわ」

魔女「わらわはちと横になって居るでな?」

盗賊「そんな体調悪いんか?」

魔女「動けぬ程では無い…魔力が回復せぬのが不可解なだけじゃ」

盗賊「いつからよ?」

魔女「結界に入ってからかのぅ…もしくは貝を食ろうた後からやも知れぬ」

盗賊「てかここはどんな結界張ってるのか分からんのか?」

魔女「分からぬ…魔除けの類じゃろうが悪い結界では無いのぅ」

盗賊「俺は何も感じん…至って普通だ」

魔女「気にせぬでも良かろう…それ程魔法が必要には思えぬしな?」

盗賊「まぁ大丈夫ならそれで良いんだ」

魔女「さて…飛空艇で横になって居るで書物を探して来い」ノソリ

盗賊「へいへい…」


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『壁画のある部屋』


グスン カキカキ


盗賊「んぁぁぁここに居たか…探したんだぞ」

女海賊「邪魔しないで…」カキカキ

盗賊「壁画見つけたんだな?」

女海賊「見りゃ分かるっしょ…」カキカキ

盗賊「遺品とか無いのか?…ってありゃ?白骨が…」

女海賊「…」ギロ

盗賊「こりゃエルフの骨だ…金髪…どういう状況よ」

女海賊「…」プルプル グググ

盗賊「待て待て…連れの可能性が高そうだ…骨はこの一体だけか?」

女海賊「フン!」カキカキ

盗賊「てか随分デカイエルフだな…もしかするとハイエルフと一緒に行動してたのかもな」

女海賊「そこの銀食器…飛空艇に積んどいて」カキカキ

盗賊「銀…やっぱ未来が作ったんか?」

女海賊「作り方…私が教えたの」

盗賊「なる…確定って訳か」

女海賊「…」カキカキ

盗賊「見た所…随分長い間ここを使ってたみたいだな」

女海賊「此処見て…石板に記されてる」

盗賊「んん?こりゃ海図か?」

女海賊「リヴァイアサンを探して未踏の地を何回も行き来してんだよ」

盗賊「次の足取りだな?」

女海賊「壁画写し終わったら北に向かう」

盗賊「おいおい此処のお宝探索はどうすんのよ?」

女海賊「この壁画以上のお宝なんて無いさ」

盗賊「マジかよ…俺はもうちっと探索したいんだが…」

女海賊「写し終わるまでに終わらして」カキカキ

盗賊「くぁぁぁ…とりあえず食器持って行けば良いんだな?」

女海賊「終わったらもう行くから…魔女にそう伝えて」

盗賊「こりゃ休んでる暇無ぇな…」ダダダ

『飛空艇』


ガラガラ ドサー


魔女「zzz…」スゥ

盗賊「寝てるか…まぁ体は大丈夫そうだな…」


ズズーン グラリ


盗賊「!!?なんだ?」キョロ

魔女「ええぃウルサイのぅ…」モソリ

盗賊「起こしちまったか?横になってろ…何が有ったのか見て来る」ダダ

魔女「何かが体の上に乗って居る…どかせよ」

盗賊「何寝ぼけてんだよ…っておい!!まさか…動けない訳じゃ無いだろうな?」

魔女「しもうた…動けぬ」

盗賊「ぬぁぁぁだから言ってたんだ…このエリクサー飲め」クィ

魔女「むぐっ…」ゴクリ

盗賊「おっし!これで一先ず石化は何とかなるだろう…」

魔女「まずいのぅ…わらわはリリスの血を浴びて石化を一度経験して居る…エリクサーでは止まらぬやもしれぬ」

盗賊「何ぃ!!」

魔女「今回は血なぞ浴びて居らぬが…」

盗賊「貝だ!!貝を食っちまったな!?大量の血を吸い込んでたんじゃ無ぇか?」

魔女「それでは主もマズかろう…」

盗賊「やべぇな…事情を女海賊に話してくる…俺らが石化してもアイツならエリクサー仕入れてなんとかしてくれる」

魔女「主も残りのエリクサーを飲んでおくのじゃ」

盗賊「今ので最後だ!!てか魔法で止められんのか!?」

魔女「無理じゃな…」

盗賊「ぐはぁ…肝心な時に役立たずか!まぁ良い…女海賊の所に行って来る」ダダダ

『壁画のある部屋』


タッタッタ


盗賊「女海賊!!緊急事態だ!!」ダダダ

機械の犬「クゥ~ン」オロオロ

女海賊「…」グゥ スピー

盗賊「ぬぁぁぁマジか…おい!ホムンクルス!!女海賊は貝を食ったんか?」

機械の犬「ワン!」

盗賊「クソがぁ!!俺が背負って行くからホムンクルスは壁画の写しを咥えて持って来てくれ」

機械の犬「ワン!」パク

盗賊「行くぞ!!よっこら…」ドッシリ

女海賊「ふがっ?」zzz

盗賊「フガじゃ無ぇ!!女のクセになんでこんなに重いんだこいつは…」ヨタヨタ

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「その壁画の写しを落とすんじゃ無ぇぞ?そいつはこいつの命だ」

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「ほんで良く聞いてくれ…俺らが全員石化した場合最後に残ってるのはホムンクルス…お前だけだ」

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「後は分かるな?どうにかしてフィン・イッシュ女王の所か商人の所に運んでくれ」

機械の犬「…」ピタ

盗賊「まぁ今の所まだ俺は動ける…石化しちまう前に早く飛空艇で脱出するぞ」

機械の犬「…」トコトコ

盗賊「しかし石化したクラーケン発見した時点で用心しとくべきだった…抜かった」


-------------

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-------------

『飛空艇』


どるぁぁぁ ドサリ


盗賊「はぁはぁ…魔女!!動けるか?」

魔女「動かぬ…女海賊も動けぬのか?」

盗賊「寝ちまった様だ…どうやら貝も食ってる」

魔女「吐き出させよ」

盗賊「もう遅いだろ」

魔女「何もせぬより良い…わらわの口にも酒を流し込め」

盗賊「ちっと待て…ここを脱出した後だ…ホムンクルス!!乗れぇ!!」

機械の犬「ワン!」トコトコ

盗賊「ホムンクルス!!操作を良く見とけよ?最後はお前が頼りだ」グイ


シュゴーーーーーー フワフワ


魔女「主はホムンクルスに最後を任せる気かえ?機械の犬に操舵しろと言うておるか?」

盗賊「それしか無いだろ…知恵使ってなんとかしろやい!!」

魔女「これホムンクルス…主に出来ると思うか?」

機械の犬「クゥ~ン」シュン

魔女「無理じゃと言うて居るが?」

盗賊「うるせぇ!やるんだよ!!…どわっ…マジか!!」

魔女「んん?何か起きとるんか?」

盗賊「入り江でクラーケンが暴れていやがる…さっきの揺れはクラーケンだ」

魔女「リリスは見えぬか?」

盗賊「分からん…血が海を漂ってる」

魔女「これで本真に誰も近づけぬ様になったのぅ」

盗賊「むむ…暗くなって来たぞ?結界から出る」

魔女「ガーゴイルに注意せい」

盗賊「言われんでも分かってる!!どっちに行くか分からんが兎に角全速で飛ぶ」グイ


シュゴーーーーーー バサバサ

『狭間_上空』


ガチャガチャ


盗賊「よし…インドラの銃は前方に固定だ」

機械の犬「クゥ~ン」オロオロ

盗賊「使い方は分かるな?前方に居る敵だけ倒せば直撃は避けられる…試しに撃ってみろ」

機械の犬「ワン!」フリフリ

盗賊「うむ…そうだ…尻尾で引き金引きゃ行ける」


シュン!


盗賊「リロードの仕方は知ってるな?」

機械の犬「ワン!」トコトコ ガチャコン

盗賊「魔女!!どうだ?動けるようになったか?」

魔女「…」スゥ…

盗賊「ちぃぃ…ダメか…やっぱ体が小さいと石化には弱いみたいだな」

女海賊「むにゃ…」スヤ

盗賊「俺は石化が遅いのか…それとも奇跡的に免れてんのか…まぁとりあえず動けるから良いかヌハハ」

盗賊「ほんで進路が良く分からんのをどうするか…待てよ?ミツバチの向く方向の逆行けば出られるかも知れんな」

盗賊「おし!!進路変更…」グイ 


シュゴーーーーーー バサバサ


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『数年後_ルイーダの酒場』


ドゥルルン♪


バニー「はぁ~い!!冒険者の集う酒場へようこそ~」

アサシン「…」ギロ

バニー「あら?お兄さん…パーティーをお探しでしたらカウンターの方へ~ウフフ」フリフリ

狼女「あ!!アサシンこっちこっち!!」

アサシン「…」スタスタ

狼女「どうだった?千里眼で探して貰えた?」

アサシン「無駄足だ…千里眼でも行方を追えんらしい」

狼女「政治の話は?」

アサシン「シン・リーンは外海調査に一切関わって居無い様だ…戦争もどの国にも汲みする気は無いとの事」

狼女「完全中立か…」

アサシン「当然だな…領地が接して居ないのだから」

狼女「こっち側にはクリーチャーも攻めて来て無さそうだしねぇ…ラクだなぁこっちは」

アサシン「しかし…魔女不在では公爵の変化を見破れん…奴が裏で手引きしているのは間違い無いだろうに」

狼女「シン・リーン女王にも化けてたり…なんてね」

アサシン「…」

狼女「それでこれからどうする?セントラルに戻る?」

アサシン「私はセントラルを経由してフィン・イッシュへ向かう…お前は港町から商船に乗ってキ・カイへ向かえ」

狼女「え…別行動すんの?」

アサシン「リカオン…子供では無いだろう?…一人で商人の所へ行って情報を交換してくるのだ」

狼女「再集合は何処?海士島?」

アサシン「うむ…海士島で良い」スック

狼女「ちょっと…もう行く気?」

アサシン「私は忙しいのだ…直ぐに定期便に乗らねば1日無駄に過ごす事になる」

狼女「ぶぅぅ…」

アサシン「では上手くやれ…」ノシ


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『…その頃_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

はいはい買い取りあっち!!

競売はこっち!!

商船の受付は列に並んで~~

ワイワイ ガヤガヤ


影武者「戻ったよ…誰か訪ねて来ていないかい?」

娘「あ…又役所から人が来てた…不在って伝えたら出直すってさ」

影武者「分かったよ」

娘「取引は上手く行った?」

影武者「うん…纏まったお金が必要になるから用意しておいて貰えるかな?」

娘「どんくらい?」

影武者「500金貨さ」

娘「私財で…だよね?」

影武者「そうだよ…ギルドの資金は手を付けない」

娘「何の取引だったの?」

影武者「言う訳無いじゃ無いか…フフ」

娘「フン!!シッシッ…邪魔だからアッチ行って」

影武者「下に居るから…用があったら呼んで」スタ

『隠し部屋』


トントン


影武者「開けゴマ…」


カチャン


影武者「入ります…」ガチャリ ギー

商人「買い取れたかい?」

影武者「はい…500金貨で交渉成立しました」

商人「いつ受け取れそうだい?」

影武者「次の出兵時に地下街8番で一台停止させるとの事」

商人「分かったよ…ギャング達に奪わせるのは少し危ないけど…出来るね?」

影武者「大丈夫です…そのままギャング達の隠れ家に移送させます」

商人「…こんな時に盗賊が居てくれれば助かるのにさ…」

影武者「私では不足ですか?」

商人「あぁゴメンそういう意味じゃない…君は僕の大事な影武者だから危険に晒したく無いだけさ」

影武者「他の衛兵も買収済みなので問題無いかと」

商人「流石だね…でもそう言うのが危険なんだよ」

影武者「…」

商人「まぁ任せるよ」

影武者「ありがとうございます…今日も役所から闇商人を訪ねて来てた様ですが…」

商人「何か感づかれてるかも知れないねぇ…」

影武者「官僚を調べている件ですね?」

商人「一旦期間を置こうか…今は動くキラーマシンを調べるのに注力しよう」

影武者「ブラフは任せて貰って良いですか?」

商人「足が付かない様に頼むね」

影武者「はい…」


トントン

商人「シーッ…」

情報屋「私よ…」

商人「…」

情報屋「あぁ忘れてた…開けゴマ…」

商人「…」ニヤ


カチャリ ギー


影武者「…では僕は仕事に戻ります」ペコ

情報屋「あら?密談中だったかしら?」スタ

商人「やぁ…直接来るなんてどうしたんだい?」

情報屋「外海で難破船を拿捕したという情報が入ったのよ」

商人「それはいつの話?」

情報屋「拿捕した難破船を引いて今軍用の港に入っているらしいわ」

商人「難破船ねぇ…飛空艇だったら飛んで行く所なんだけどなぁ…」

情報屋「政府がわざわざキ・カイまで引っ張って来たのよ?何か有ると思わない?」

商人「君は何処まで入れるのかな?」

情報屋「分からない…学術調査の依頼があればもしかすると…っていう感じよ」

商人「只の難破船に学術調査する事なんか無いでしょ」

情報屋「とりあえず政府用の連絡通路までなら許可証が有るわ?そこから荷下ろしが見られるかもしれない」

商人「なんだ見られる場所まで行けるなら先に言ってよ…行こう!」

情報屋「フフ…」

『連絡通路』


衛兵「ここから先は軍用だ!!帰れ帰れ」


情報屋「事情を知って居る人はやっぱりここまで見に来てる様ね…」

商人「みんな学者かな?」

情報屋「大体そうよ…あなたは顔を見せない様に」

商人「分かってるさ…」

情報屋「荷下ろしは始まって居そう?」

商人「あれ?なんでキラーマシンで包囲してるんだろう…」

情報屋「ほら…やっぱり何か乗せて居るのよ」

商人「割と程度の良いコグ船…あれで外海を航海してたのか…スゴイな」

情報屋「なかなか荷下ろしが始まらないわね」イラ

商人「誰かを待ってるみたいだな」

情報屋「あなた望遠鏡持って居ない?」

商人「あるよ…」ポイ

情報屋「誰を待ってるのか…」

商人「ハハ積み荷じゃ無くて人を見るのか」

情報屋「キ・カイ軍船の船長らしい人物が手に何か書物を持って居るわ」

商人「見せて」グイ

情報屋「気になるわね」

商人「本当だ…どうしてわざわざ待って居るのか…」

情報屋「偉い人が大勢来そうね」

商人「こりゃ時間掛かりそうだなぁ…」

『1時間後』


情報屋「政府高官が何人も来て居るわ…よほどの積荷よ」

商人「…」ジー

情報屋「どうしたの?無言で…」

商人「いや機械化の大臣があの書物を受け取ったんだ…どうしてかなと思ってさ」

情報屋「軍の司令が手を上げたわよ…何か始まりそう」

商人「キラーマシンが動いた…」

情報屋「あれ?いつの間に軍船が退避始めてる…どうして?」

商人「本当だねぇ…なんか変だねぇ」

情報屋「積み荷はもしかしてリリスとか?」

商人「まさか…いや待てよ…偶然釣り上げたなんて可能性は在るかもしれないなぁ」

情報屋「キラーマシンの後方に何かの兵器を構えてる」

商人「この感じはとんでもない魔物を積んでると考えるべきか…捕らえるつもりだな?」

情報屋「リリスだったとするとキ・カイが全滅しかねない」

商人「直ぐに逃げられる準備はあるよ…まずは状況しっかり見ておかないとね…あ!!荷室を開けようとしてる!!」

情報屋「…」ゴクリ

商人「望遠鏡で見える?」

情報屋「何かしら…リリスでは無さそう」

商人「動かないね」

情報屋「キラーマシンが鎖を持って荷室に入って…」


ドーン バリバリ

商人「うわ!!船が大きく揺れてる…中に居るのは何だ?」

情報屋「見えた!!大きなウミヘビ…サーペントみたいな魔物」

商人「なんだ…ただのシーサーペントか…がっかりだよ」

情報屋「でも大きいわ?」

商人「サーペントなんか捕獲しても何にもならない…待って損した…帰ろう」


バシュン バシュン


商人「ハハ攻城用のバリスタ撃ってる…そんなに捕獲したいか」

情報屋「ウミヘビが光り始めた…何?」

商人「もう良いよ…帰ろ…」クルリ


ビビビビビ チュドーン ドカーーーン!!


商人「え!!?」

情報屋「商人!!伏せて!!」ガバ

商人「何が起きた?」キョロ

情報屋「軍港の弾薬が一気に爆発したのよ…ここまで破片が飛んでくるかもしれない」

商人「そんな…誰が?」キョロ

情報屋「私は見てた…あのウミヘビが稲妻出したの」

商人「まさか…そんなサーペントは聞いた事が無い」


ピカーーーー チュドーーーン


商人「ちょ…海で爆発!?どうなってる?」

情報屋「そっちじゃない…兵隊が兵器で反撃してる…」


ピカーーーー チュドーーーン


商人「イ…インドラの銃を使っている…のか?」

情報屋「マズそうね…避難しましょう」グイ

『街道』


ガヤガヤ ザワザワ

軍港の方で何か起きてる様だ

見ろ!!煙が上がって居るぞ

海上でも爆発してるぞ

衛兵!!どうなってんだぁぁ!!

ガヤガヤ ザワザワ


情報屋「はぁはぁ…あなた…逃げる用意は有るって言ったわね?準備しておいて」

商人「有るには有る…でもまだその時じゃ無いと思うな」

情報屋「あの魔物は伝説のリヴァイアサンよ…あんな魔物をキ・カイの軍隊が捕獲出来るとは思えない」

商人「リヴァイアサン…外海からここまで連れて来た…話が都合良すぎだけど…」

情報屋「どういう理由か分からないけれど海で最強なのは間違い無いわ」

商人「待って…ここは陸だよ」

情報屋「陸…」

商人「そうさ…リヴァイアサンが陸に上がった話も聞いた事が無い」

情報屋「そ…そうね…落ち着きましょうか」

商人「子供達を避難させる準備は進めて置くさ…それよりもっと情報が欲しい」

情報屋「情報…」

商人「リヴァイアサンだとしたら学術調査で君が調査出来る事も有るかもしれない」

情報屋「私にリヴァイアサンの調査をしろと?」

商人「それもあるけど書物の方さ…研究には必要になりそうだろう?」

情報屋「分かったわ…」

商人「君の息子の事は心配しなくて良い…避難が必要なら最優先してあげるさ」

情報屋「…」

商人「言う事を聞いてくれれば…の話だけど」

情報屋「あの子私の言う事は全然聞いてくれなくて…」

商人「僕の影武者の言う事はちゃんと聞くんだよ…大丈夫…任せて」

情報屋「…」

商人「フフ子育ても悩みが多そうだ」

情報屋「私は学舎に戻るわ…あの子の事頼むわね」タッタッタ

『数日後_地下街8番』


ピチョン ピチョン


影武者「…こっちです」スタスタ

商人「ここは封鎖されて以降誰も入って来ないかい?」キョロ

影武者「はい…チカテツ街道から裏道が通じてるのもあって隠れるには良い場所になりました」

商人「政府がこの区画を封鎖した目的は何だと思う?」

影武者「ギャング達の誘導…」

商人「分かって要るじゃ無いか…監視されて居る事は頭に入れて置いた方が良い」

影武者「裏を返せば利用できると言う事です」

商人「早い所分解済ませないと軍が回収に来るな…急ごう」

影武者「そうですね」タッタッタ



『隠し通路』


影武者「到着しました…確認してください」

商人「おぉ…これがキラーマシン改か…」ジロジロ

影武者「約束通り分解が済んだ後の残りはギャングで部品取りしても良いですね?」

商人「約束は守るさ…僕は頭部にあるAIユニットを回収したいだけだよ」

影武者「軍が回収に来るまで約2時間ほどの余裕が稼げていると思います」

商人「上出来…」カチャカチャ

影武者「その他の部品取りもありますので出来るだけ手短にお願いします」

商人「頭部以外の部品取りはもう始めてしまって良いよ」

影武者「許可が出ました…出て来ても良い様です」


ヒソヒソ コソコソ


商人「なかなか統率のとれたギャング達だねぇ…良し…取れた」カチャカチャ

影武者「もう終わったのですね?」

商人「僕はこの頭部を持って帰るとするよ…後は好きにして良い」

影武者「では帰路をご案内します」

商人「大丈夫さ…一人で帰れる…その方が色々都合が良い」

影武者「そうですか…では私は別件の取引に向かいます」

商人「わざわざ案内してくれて助かったよ…気を付けて」ノシ

『ジャンク屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


店主「いらっしゃ…キシシシ又何か持ち込みかい?」

商人「まぁね?良い物が回収出来たら又買い取り頼むよ」

店主「今度はどんな機械かねぇ…」

商人「秘密さ…奥の作業台使っても良いかな?」

店主「タダじゃ無いよ…ウヒヒヒ」

商人「分かってるさ…」チャリン

店主「毎度ぉぉ~分かってるねぇぇぇ」

商人「じゃぁ作業台借りるね」スタ




『作業台』


カチャカチャ


商人「さてさて…」


発信機が付いて居るとしたらこの頭部だ…

ここならジャンク屋に売られたと偽装出来る

さっさとAIユニットだけ外したい

これでどうしてキラーマシンが量産出来るのか謎が解ける…

最悪の結果にはなりません様に…


商人「…」カチャカチャ

商人「……」ピタ

商人「………」ググググ


ドン!! ガラガラ!!


店主「散らかさんでクレやぁぁ!!何しとんじゃぁぁ!!」

商人「…」ギロリ

店主「何をバラしてるか知らんがもう貸さんぞぃ?」

商人「分解ミスした…んだ…分かるだろう?」

店主「器具は元の場所に戻さんとダメダ~メ…分かるぅ?」

商人「良く分からない発信機と取り出した魔石置いて行くよ…これで勘弁して」

店主「うほほほ…見せてみぃぃな」

商人「ここに置いておく…又来るよ」タッタッタ


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『1か月後_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

又レートの変更かよ…

これじゃぁ個人売買した方が良いじゃ無ぇか


娘「関税引き上げられてこうするしか無いの~ゴメンね~」

客「こりゃ戦争の影響かね?」

娘「う~ん…海の向こうとは戦争して居ないんだけどねぇ…」

客「密輸ルートの案内はして居ないんか?」

娘「ダメダメそう言うのはギルドで扱って無いから」

客「ケッ…商売上がったりだ」



『隠し部屋』


影武者「…奴隷貿易禁止法に孤児の移送が引っかかるそうで1人当たり200金貨の罰金が発生するそうです」

商人「フフ政府はどうしても孤児を移送させたく無い様だ」ギラリ

影武者「主な商船の取引にも軒並み関税が掛けられて…」

商人「分かって居るよ…僕に脅しを掛けているのさ」

影武者「重税で困るのは民だと言うのに…」

商人「僕はもう絶対に孤児たちをキ・カイ政府の下で働かせる様な事はしないと決めたんだ」

影武者「そろそろ理由を教えてはくれませんか?」

商人「君は知らなくて良い…」

影武者「孤児院の子供達も自立して働きたいと不満を漏らしています…」

商人「なんとか諫めてよ」

影武者「…」

商人「今回商船に乗せた孤児たちの罰金は支払うとして…」

影武者「はい…」

商人「海賊に孤児院を襲わせる計画はどうなってる?」

影武者「海賊王の娘に取り次ぐと言ったきり連絡が途絶えて居ます」

商人「うむぅ…遅くなると資金が持たないなぁ…」

影武者「盗賊ギルドの力を借りるのはどうでしょう?」

商人「そうだなぁ…僕が動くしか無いか…海士島まで行って盗賊ギルドにコンタクトしてみる」

影武者「はい…留守中の事はお任せください」

『商人ギルド受付』


ガヤガヤ ガヤガヤ

だからぁ!!密輸の斡旋なんか商人ギルドでは扱ってないの!!

文句あるならキ・カイ政府の方に言って!!おわかり?


商人「ハハ大分混乱している様だね?」

娘「商人!!もうずっとこんな感じ…どっか行くの?」

商人「ちょっと海士島まで用事が出来たんだ…次の商船はいつ出るかな?」

娘「今荷入れしてるから早く行かないと乗りそびれるよ…1時間で出港すると思う」

商人「うわ…走って行かないと」

娘「ちょっと待って…あんたに会いたいって人が来てたんだけど影武者さん通さないとマズいと思って帰って貰ったんだ」

商人「そうだね…影武者に対応してもらってよ」

娘「分かった…じゃぁ気を付けて」

商人「因みに又役所の人かい?」

娘「背の高い女の人だよ…リカオンって言えば分かるとか言ってたけど知ってる?」

商人「リカオン!?…何処に行ったか分かるかい?」

娘「聞いてないよ…宿屋か酒場じゃないの?」

商人「あぁ…ナイスタイミングだ!!ちょっと探して来る」ダダ


--------------

『酒場』


ポロロン~♪


マスター「いらっしゃいませ…」

商人「ワインお願い…」キョロ

マスター「かしこまりました…どなたかお探しですか?」

商人「まぁね?背の高い女の人なんだけど…見てないかな?」

マスター「まさか先ほど大暴れしたお客様のお連れ様では無いでしょうね?」ギロ

商人「え?どういう事?」


くそぅ!!あんの 売女…逃げられちまった

血ぃ出てんぞ?大丈夫か?

噛みつきやがったんだ…くっそ!金払ってコレかよ


マスター「お客様…他のお客様が居りますのでそういったお話は奥の方で…」

野郎「おぉ騒がして済まんな…今日はツイて無ぇ」

商人「…」アゼン

マスター「…とまぁこの様な感じなのですよ…ワインをどうぞ」コトリ

商人「あ…ありがとう」チャリン

マスター「悪い娼婦が沢山居りますのでご注意を…」

商人「探し人かも知れないから一応追ってみるよ」グビ

マスター「もう行かれますか?」

商人「又来るかもしれない…ありがとう」ダダ

『露店』


お客さん!お目が高い…黒死病に良く聞く妙薬なんですよ

これいくらするの?ハァハァ…

お高いですよ?…って…あああああああああ!!

ちょちょちょ…一気に飲む奴があるかぁぁぁ!!


狼女「ぷはぁぁぁぁ…あぁ癒される」ウットリ

店主「お客さん!!金貨持ってるんでしょうね!!」

狼女「これでお願い」ジャラジャラ

店主「…ひぃふぅみぃ…これじゃ足りない!!」

狼女「そんな堅い事言わないでさぁ…もう意識失いそうだったんだよ」

店主「何を言ってるんだ!!頭おかしいのか?衛兵呼ぶぞ!!」

狼女「それで持ってる金貨全部なんだ…ゴメン!悪気は無かった」

店主「ぐぬぬこっちも生活掛かってるんだ!きっちり払って貰わないと…」


タッタッタ


商人「あぁ待った待った…僕が残りを支払うよ」ジャラリ

店主「あ!!商人ギルドの受付の兄さん…このお客さん困った人なんだ」

商人「その様だね…まぁ僕に免じて勘弁してあげて」

店主「まぁそういう事なら…」

狼女「アレ?アレ?…商人?」クンクン

狼女「匂いが違う…誰?」

商人「まぁまぁ…君は騒動を起こしそうだから取り合えず一緒に来て」グイ

狼女「ちょっと待って…あんた誰?…私忙しいんだ」

商人「忙しそうには見えないよ…ここは目立っちゃうから向こう行って話そう」グイ

『路地裏』


ファサ


商人「ほら?この顔に見覚えがあるだろう?」

狼女「商人!!探してたんだ…何処にも匂いが無いから居ないのかと思った」

商人「ハハ君は匂いで人を見分けるのか」

狼女「もしかしてアサシンと同じ病気?」

商人「まぁ…そういう事になるかな…不死者になってしまったよ」

狼女「兎に角見つかって良かった…もうお金も無くてどうしようかと思ってたんだ」

商人「いつこっちに来たんだい?」

狼女「昨日だよ…ずっと匂いを探してて疲れたよ」

商人「その様子だと宿屋も無いね?」

狼女「商人をアテにしてたのさ…」

商人「分かった…商人ギルドの建屋に空室があるから今日はそこで休むと良い」

狼女「良かったぁぁぁ」ホッ

『商人ギルド_大部屋』


ガチャリ バタン


商人「ちょっと散らかってるけど好きに使って良いよ」

狼女「この部屋…一人で使ってるの?」

商人「今はね?どうして?」

狼女「知った匂いが残ってる…盗賊…女海賊…魔女…他にも」

商人「良く分かるねぇ」

狼女「今何処に居るか教えて」

商人「それは僕も知りたい」

狼女「隠しても無駄…だって匂いが残ってるし」

商人「う~ん…ここに来てたのはもう何年も前だよ…僕も行方を捜してるんだ」

狼女「困ったなぁ…アサシンが機嫌を損ねる」

商人「察するにアサシンのお使いでこっちに来たんだね?」

狼女「そうよ…公爵の変化が見破れなくて政治的に追い詰められてる…これで理解出来る?」

商人「う~ん…盗賊ギルドは今どんな感じ?あまり情報が流れて来なくてさ」


シャ・バクダは寒冷化で住みづらくなって盗賊ギルドは撤収

拠点をセントラルに移したものの支持母体がフィン・イッシュだという事が何処からかリークして監視が厳しくなった

貴族達は資金の面から盗賊ギルドとは縁を切れず裏で繋がりを持ったまま

貴族同士の押し引きの裏で私達が暗躍する立場ね

商人「昔と変わり無しって事か…」

狼女「アサシンは公爵の暗殺に躍起になっているけれど中々尻尾を掴まえられなくてね…」

商人「君は匂いで見分けられないのかい?」

狼女「匂いも丸ごと変化してるからダメなの」

商人「なるほどね…政治的に追い詰められてるって言うのは?」

狼女「海洋で覇権を持ってる海賊達の半数が豪族を名乗ってセントラル側に付いて居るのよ」

商人「それは知ってる」

狼女「フィン・イッシュは海軍力を大幅に縮小したから海ではセントラルに勝てない」

商人「専守防衛の立場を変えて無きゃあまり関係無いんじゃない?」

狼女「外海が無ければそうね…でもセントラルは外海に進出しようとしてる」

商人「外海に拠点を作られると2方面から攻められる?」

狼女「そう…そして外海に遠征しているのが公爵の下に居る髭男爵」

商人「北の大陸の戦争はまだまだ長引くという事か…」

狼女「外海進出を各国が競っている状況よ…フィン・イッシュはもう出遅れている」

商人「ちょっと待って…政治的な話から逸れてるよ」

狼女「盗賊ギルドの支持母体がフィン・イッシュ…内海と外海の両方を抑えられた時点で資金は全部抑えられたも同じ」

商人「そこはキ・カイと貿易協定を結べば…」

狼女「フフ…さて公爵は何処に居ると思う?」

商人「なるほど…全部公爵にコントロールされてるのか」

狼女「だから変化を見破れるかも知れない魔女の協力が欲しいの…シン・リーンからの協力の件もね」

商人「残念だけど魔女とはいくら貝殻を使っても連絡が取れないんだ…女戦士が知ってたりしないかな?」

狼女「幽霊船は簡単に連絡取れなくって…」

商人「ハハ僕の方も同じだ」

狼女「ねぇ?今日一晩休んだら海士島に戻るからお金頂戴」

商人「頂戴?君はハッキリ物事を言うんだね…まぁ帰るお金は融通しても良いけどもう少しゆっくりしたら良いじゃない」

狼女「アサシンと待ち合わせてるんだ…遅れたりすると置いてきぼり食らうんだよ」

商人「それは切実だねぇ…実はさ…僕も君にちょっとお願いが有るんだよ」

狼女「何?貸しを作ったままじゃ気持ち悪いから聞いてあげるよ」

『作戦』


商人「君はウェアウルフに変身が出来るよね?」

狼女「ま…まぁ…」

商人「結論から言うとウェアウルフになって街で大暴れして欲しいんだ」

狼女「死人が出るよ?」

商人「そこはほどほどにやって貰うとして…その目的は混乱に乗じて孤児たちを商船で移送したいんだ」

狼女「孤児?なんで?何処に移送?」

商人「まぁ色々有ってね…兎に角孤児たちをフィン・イッシュで保護して欲しいんだよ」

狼女「暴れるのは簡単だけど…元の姿に戻るときに問題が…」

商人「裸で寝てしまうんでしょ?そこは何とかする」

狼女「う~ん…」

商人「キ・カイの地上で暴れるとみんな地下の方に避難を始める筈なんだ…その間に孤児たちを船に乗せる」

狼女「私はその後どうするの?」

商人「波戸場にコンテナを用意しておくから最後にその中で寝てしまって良い…船に積んでそのまま出港さ」

狼女「なるほど簡単そうね」

商人「今はオークとの戦争でキラーマシンの数も少ないから中々出てこない筈」

狼女「誰も食べないなら1時間くらいで元に戻っちゃう…それまでに避難終わるかな?」

商人「短いな…殺さない程度に生き血を啜るとか…もう少し時間稼げないかい?」

狼女「生き血…ぅぅぅ」ジュルリ

商人「どうにかして2時間くらい稼いで…あとは何とかする」

狼女「分かった…やる!!」グルル

商人「フフ君は分かりやすいな…興奮してるな?」

狼女「いつやる?今日?」

商人「船の手配が必要になる…明日の夕方でどう?」

『夜』


ガチャリ バタン


影武者「お連れしました…」

商人「手間を取らせたね」

影武者「いえ…」

商人「ガレオン級の商船は手配出来そうかい?」

影武者「丁度物流が滞っていたのでなんとかなりました」

商人「それを聞いて安心した」

影武者「…では失礼します」ペコリ


スタスタ ガチャリ バタン


情報屋「話は影武者に聞いたわ…わざわざ孤児達を移送する理由が良く分からないけれど…」

商人「孤児たちを守る為さ」

情報屋「守る?割と安全だわ?」

商人「孤児を引き取った里親が誰なのか…」

情報屋「何度も言うけれど政府は開示してくれないの…でも幸せに暮らしてるって…」

商人「本当かい?」ギロリ

情報屋「どうしたの?そんな怖い顔をして?」

商人「君には本当の事を教えておこうかな」

情報屋「あなたあの子たちの行先知って居るの?」

商人「ズバリ言うよ…脳だけ摘出されてキラーマシン改に搭載されてる」

情報屋「え!!?」

商人「キラーマシン改が量産された時期と推定台数…孤児院から引き取られた子供たちの数がほぼ一緒さ」

情報屋「そんな…」ボーゼン

商人「10歳前後の子供の脳が一番機械化に適合するという研究調書も入手した…これは偶然だと思うかい?」

情報屋「証拠は?…」

商人「あるよ…僕の隠し部屋にね…孤児院に居た子供たちの誰かの脳だ」


タッタッタ…

商人「ハッ!!…ぁぁぁしまった声が大きかった…影武者に聞かれたな」

情報屋「信じられない…」

商人「これも教えて置いてあげる…君の息子は1年前から言う事を聞かなくなったね?」

情報屋「…」

商人「仲良くしてた孤児院の子供が政府に引き取られた後からだ…恐らく何か知ってる…だからギャングに居るんだよ」

情報屋「商人や私から距離を置くようになったのはそのせい?」

商人「先月キラーマシン改を確保するのを手伝ってくれたのはギャング達だよ…そこに君の子も居た」

情報屋「あの子…」

商人「彼は盗賊の血を引いてる…察するに一人で友達の行先を確かめて色々知ったのさ」

情報屋「まだ8歳の子供なのに…」

商人「まぁ…そういう事情で僕はもう孤児たちを政府の好きな様にはさせないつもりだよ」


ムクリ シュタッ


狼女「グルルルル…」

商人「なんだ起きてたのか」

情報屋「リカオンさんお久しぶり…」

狼女「キラーマシンもぶっ壊して頭を持って帰って来れば良いんだね?」

商人「あぁぁ残念だけどキ・カイに残ってるのは旧式なんだ…新型はみんな戦地に行ってる筈」

狼女「なんかすっごくイライラする…」

商人「その分明日大暴れしてよ」

『隠し部屋』


うぅぅ…ぅぅぅ…


影武者「うっ…くぅぅぅ…」ギュゥゥゥ

商人「影武者…気持ちは分かる…でも変な考えは起こさない様に」

影武者「は…はい…」ポロポロ

商人「まさか僕達が孤児たちを売っている立場になって居たなんてね…僕も腹が収まらない」グググ

情報屋「この事実を知って居る人はどの位居るの?」

商人「さぁね?少なくとも君の息子はある程度知ってる筈…だから大人の言う事を一切聞かなくなった」

情報屋「私があの子の友達を政府に売っていると思われて居たのね…」

商人「…」

商人「影武者…君はギャング達へのパイプ役として重要な立ち位置になっているのは自覚してるね?」

影武者「はい…」

商人「孤児院が無くなった後に政府はどう動くか予測出来るかい?」

影武者「ギャングの子供を拉致…」

情報屋「ちょっと待って…地下で生活してるギャング達も一緒に移送しましょう…ガレオン船なら乗れる筈…」

商人「それは多分無理さ…彼らは大人と戦ってるんだ…言う事聞く訳無い」

情報屋「無理やりにでも…」

商人「ダメだよそれでは…彼らの事をもっと尊重しなきゃダメだ」

情報屋「放置してるとギャングの子供達もキラーマシンにされてしまう…そんなの放って置けない」

商人「影武者…君がキーマンになる…僕のお金は自由に使って貰って構わない…分かるね?」

情報屋「どうする気?」

商人「戦うんだよ…自分の身は自分で守れる様に武器と…場所と…資金を上手く支援出来れば良い」

情報屋「まだ子供なのよ?」

商人「そんなだから君の息子は離れて行ってしまったんだ…認めてあげよう」

情報屋「…」

商人「影武者…君に掛かってる…上手くギャング達を導いてあげるんだ」

影武者「分かりました…」

商人「そうそう…くれぐれもキラーマシン改から友達を救う様な動きはさせない様に」

影武者「…」グググ

商人「その役は僕達大人がキッチリと片を付ける…それまで我慢するんだ」

影武者「はい…」

『商人ギルド_屋上』


ヒュゥゥゥ… ヒラヒラ


情報屋「…」

商人「冷えると思ったら…雪か」

情報屋「商人…横にならなくて?」

商人「フッ…分かって居るだろう?」

情報屋「あ…ゴメン…不死者だったわね」

商人「君の方こそ真実を知って堪えたかい?」

情報屋「そうね…私が子供達の手を引いて政府に引き渡したんだもの…里親が誰なのかしっかり確認もしないで…」

商人「済んだ話さ…考えるだけ心がすり減るから無駄だよ」

情報屋「もう取り返しが付かない…あの子に説明する顔も無いわ」ギュゥ

商人「!?それは?…もしかして君の息子から貰った物?」

情報屋「そう…良く笑う優しい子だったの」

商人「そっか…そうそう影武者から聞いた話なんだけど…ギャングの子供達の構成…聞きたい?」

情報屋「教えて?」


リーダーはハーフオークの女の子…姉御って呼ばれてるらしい

その下に悪ガキが何人かいて君の息子はその一人さ

小さいのに絶対負けを認めなくてリーダーに一目置かれてる様だよ

ギャングの中ではちゃんと役割が決まってて

偵察役、囮役、実行役…僕らが思うよりずっと賢くてちゃんと組織になってる


情報屋「沢山仲間が居るのね?」

商人「フフ…まぁそうだよ」

情報屋「ねぇ商人?…私は母親失格だったかな?」

商人「良い母親がどんななのか僕は良く分からないなぁ…う~ん愛って何なのか知った時に母親を想う」

情報屋「想う?」

商人「うん…離別でもそれを許容した愛に気付く時がある」

情報屋「難しい事言うのね」

商人「僕の場合母さんが死んだ時に母さんが残した言葉や想いが愛だったことに気付いた…それが良い母親なのかなってさ」

情報屋「私はあの子に何か残せてるかしら…」

商人「ちゃんと通じてると思うな…愛ってそういう物だと思う」

情報屋「少し心が落ち着いたわ…ありがとう」

『翌日』


情報屋は事が起きるまで孤児院で待機して欲しい

子供達を避難させるルートは外壁を沿って商船まで直行だ

影武者は娘達と一緒に地下の商人ギルド支店の方に避難

僕はこれから軍隊が動きにくい様に色々工作してくる…


情報屋「荷物をまとめて船に積みたいのだけれど…」

商人「騒ぎが起きるのは夕方さ…それまでに間に合うなら先に商船に荷物を載せて構わない」

狼女「私は夕方まで待機?」

商人「君は一緒に来てもらう…工作に君が引っかからない様にあらかじめ教えておきたい」

狼女「工作ってどんな?」

商人「罠だよ…橋げたが落ちるとかロープに絡まるとか…」

狼女「なるほど…確かにそういうの苦手かもしれない」

商人「じゃぁ最後に影武者…僕はしばらく留守にするからその間君が闇商人だ…後は頼む」

影武者「わかりました」

情報屋「これでもう夜まで顔を合わさない?」

商人「そうなるね」

情報屋「分かったわ…」

商人「じゃぁ狼女…行こう」タッタッタ


--------------


情報屋「影武者さん?お願いがあるのだけれど…」

影武者「何かな?」

情報屋「手紙を書くから私の息子に渡して欲しいの」

影武者「構わないよ」

情報屋「少し待ってて…」

影武者「商人ギルドのカウンターに居るから書き終わったら持って来て」

情報屋「フフ…あなた商人の前でも同じように喋れば良いのに」

影武者「一応主従関係は守っているのさ」

『街路』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「僕は普段から逃走用に色々罠を張ってるんだよ…それを教えて置く」

狼女「へぇ?」


ここの石は踏むと落ちる…

この井戸は向こう側に繋がってる…

この樽を落とすと下まで転がって爆発する仕組みさ


狼女「これあちこちに有るの?」

商人「そうだよ」

狼女「どのくらいの衛兵が出て来る見込み?」

商人「直ぐに出て来るのは10人程度さ…武装も大した事無い」

狼女「軍隊は?」

商人「キラーマシンは足が遅いから君なら楽勝だよ…問題は特殊な兵器を持った人間」

狼女「特殊というと?」

商人「女海賊が持ってたインドラの銃を知ってるかい?」

狼女「話には聞いた…それを使って来るという事?」

商人「…かも知れない」

狼女「音とか匂いに特徴は?」

商人「う~ん…説明出来ないな…兎に角見た事の無い爆発が起きたらマズイと思った方が良い」

狼女「夜に遠距離攻撃が私に当たるとは思えないけどね」

商人「お!?そうか…明かりを消して置けば良いんだね?」

狼女「それならずっと私のターン」

商人「ランプに水を入れて置くだけの簡単な仕事だ…今からやる」


--------------

--------------

--------------

『日暮れ_商船』


ザブン ギシギシ


船乗り「密航者…まだ来無ぇんだが…」

商人「そろそろだよ…出航の準備始めて良いよ」

船乗り「お前等ぁぁぁ!!碇を上げておけぇぇ」

野郎共「へ~い!!えっさほいさ!!」


ピーーーーーーー


船乗り「んんん?街の方が何か騒がしいな?」

商人「ハハどうしたんだろうね?」

船乗り「暗くなってきて良く見えんな…」

野郎共「コンテナが一つ荷入れ終わっていやせんがまだ入れんで良いんすか?」

商人「あぁぁ入れるタイミングは僕が言うからもう少し待って」

船乗り「俺らは何も知らんかったで通る荷なんだろうな?」

商人「大丈夫さ…今まで商人ギルドが手配した物にマズイ物なんか有った事無いでしょ?」

船乗り「まぁそうだな…金は貰ってる訳だから文句は言うめぇ」




『数分後_隣の大型船』


ドタドタ ドタドタ


豪族の男「お前等ぁ!!仕事だぁ!!武器持って集まれ!!」

ごろつき「おうよ!!」スラーン

豪族の男「害獣駆逐を装って軍隊の武器かっぱらうぞ」

ごろつき「噂のやつだな?」

豪族の男「アレをセントラルに持って行きゃ領地分与間違い無ぇ…来い!!」ダダダ

ごろつき「うぉぉぉぉ」ドタドタ

『商船』


ギシギシ


商人「…」---伏兵か…これはゴチャゴチャになる---

船乗り「街で何が起こってんだ?」キョロ


ドーン パラパラ


船乗り「うぉ!!何だぁ?」

商人「ちぃぃ…暗くてどうなってるか分からないな」

船乗り「早い所出港しないと船が巻き込まれそうだ…」


タッタッタ


情報屋「商人!!作戦変更よ!!はぁはぁ…」

商人「情報屋!!どういう事だい?」

情報屋「何処かに睡眠魔法を使う人が紛れててリカオンが苦戦してるの…ハァハァ」

商人「なんだって!!?」ダダ

情報屋「自分に噛みつきながらなんとか戦ってる…リカオンを撤退させないと」

商人「子供達は?」

情報屋「もう直ぐ此処に来るわ」

商人「睡眠魔法…僕は寝ない…僕が行って来る」

情報屋「街道の井戸の辺り…行ってあげて」

商人「キラーマシンは出てる?」

情報屋「まだ出てない…でもクロスボウが飛び回っているから気を付けて」

商人「こっちは君に任せる」ダダダ

情報屋「任せて」

『街道』


路地裏をくまなく探せぇ!!

屋根に上っているかも知れん!!


商人「…この辺で隠れるとしたら井戸だ…」ブツブツ

兵隊「おいお前!!この辺に魔物が潜んで居るから避難しろぉ!!」

商人「あぁ…連れを探しているんだ」

兵隊「状況を分かって居ないのかお前は!!」グイ

商人「隠れれば良いんだね?放して欲しい」

兵隊「分かったらサッサと行くんだ」

商人「井戸の中に…」スタ

兵隊「そこから動くな!?」

商人「うん…」



『井戸の奥』


グルルル フゥ…フゥ


商人「やっぱり此処に居たか…エリクサーがある…一口飲んで」クイ

ウェアウルフ「話が違う…魔法使うなんて」フラフラ

商人「刺さったボルト抜くよ?」

ウェアウルフ「自分で抜ける…」ズボ ダラダラ

商人「出血酷いな」

ウェアウルフ「もっとエリクサー頂戴…正気失うかも」

商人「飲ませにくいな…元の姿に戻れる?」

ウェアウルフ「寝てしまって良いの?」

商人「大丈夫…背負って行くよ」

‬ウェアウルフ「分かった…ちょっと寝る…失血で気持ち悪い」グター

商人「こんな風に体が変化して行くのか…すごいな」

ウェアウルフ「…」グッタリ

商人「さて…よっこら…アレ?割と軽いな」

商人「なんだエルフとかドワーフとは違うのか」ヨタヨタ

ウェアウルフ「グルル…」ブシュー

商人「動かすと血が出てしまうか…先に止血しよう」グイ グイ ギュー

商人「流石に裸のまま背負って行くのもマズいな…仕方ない」ファサ

商人「さぁ急いで此処を離れよう…」ヨタヨタ

『街道』


倒れている者を建屋の中に引きずり入れろぉ!!

こっちはダメだぁ!!火の手が回る


商人「…」ヨタヨタ

兵隊「お前!!隠れて居ろと言っただろう!!」

商人「連れを手当しないと死んでしまう…行かせて」ヨタヨタ

兵隊「怪我をしているのか?」

商人「商船に行けば薬と船医が居る筈…だから行かせて」ヨタヨタ

兵隊「そ…そうか…後ろは見張っててやる!!急いで行け!!」


ピーーーーーーーー 敵襲! 敵襲!


兵隊「ええい!!向こうか!!おいお前!!走れ!!」

商人「分かってるさ…」ヨタヨタ

兵隊「ちぃぃぃ手間のかかる奴だ…ハッ!!お…お前…その顔は」

商人「白狼の一味の人相書きに似てる?ハハ良く言われるんだ…でも違うよ」

兵隊「そ…そうか」タジ

商人「今はそんな事話してる場合じゃ無い…僕は連れを助けたいから行かせて貰う」ヨタヨタ

兵隊「早く行け!!」

商人「気にかけて貰って悪いね…じゃぁ」ヨタヨタ

『商船』


ザブン ギシギシ


情報屋「商人!!無事ね?」タッタッタ

商人「うん…出航しよう」ヨッコラ

情報屋「船乗りさん船を出して!!行先は海士島経由でフィン・イッシュ」

船乗り「おうよ!!お前等ぁぁぁ!!帆を張れぇぇ」

野郎共「へ~い!!えっさほいさ!!」

商人「リカオンに手当てが必要だ…船医を呼んで」

情報屋「ダメ…普通の体では無いから私達で対処しないといけない」

商人「そうなんだ?」

情報屋「犬に玉ねぎを食べさせてはいけないのと同じよ…私達とは違うの」

商人「なるほど…エリクサーがあと少ししか無いんだけど」

情報屋「大丈夫…私の血を飲ませれば良くなる筈だから」

商人「あぁそういう事か…皆から少しづつ血を分けて貰えば良いか」


ドーン 


情報屋「爆発?兵隊達は何と戦って?」

商人「豪族がどさくさに略奪を画策してる様なんだ…僕達にしたら都合が良い」

情報屋「そう…」トーイメ

商人「ギャングの事が心配かい?」

情報屋「きっと大丈夫…そうよね?」

商人「一人じゃ無いから」

情報屋「そうね…さて!!私達も仲間を助けましょう!!針と糸を用意してもらって?」

商人「貰って来るよ」スック

『埠頭の外れ』


ザブン ザザー


オークの子「会わなくて良かったのかい?」

悪ガキ「…」ジー

オークの子「まぁ良いや…帰るよ」

悪ガキ「…」スチャ

オークの子「ん?どうしたんだよそのダガー」

悪ガキ「形見だって母さんが残して行った」

オークの子「形見?誰の?」

悪ガキ「父さん」

オークの子「父さんが誰なのか教えてくれたのか?」

悪ガキ「うん…母さんは行方不明の父さんを探しに行ったんだ」

オークの子「へぇ?…で?どこのどいつ?」

悪ガキ「秘密だよ」

オークの子「もったいぶんなよ!」

悪ガキ「秘密にするって約束なんだ」

オークの子「フン!!帰るよ」

悪ガキ「僕の道…母さんの道…次はいつ交わるかな…」

オークの子「おっぱいが恋しいか?」

悪ガキ「そんなんじゃねぇ!!」

オークの子「小さい子が待ってんだ!!早く帰るよ!!」グイ

悪ガキ「…」ジー


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『商船_客室』


ユラ~ ギシギシ


商人「リカオンに悪い事したな…傷の縫い目…治るかな?」

情報屋「どうかしら?顔じゃ無かったのが幸いね」

商人「…これ使ってよ」スッ

情報屋「賢者の石ね…丁度良かった」

商人「それにしてもキ・カイに魔術師が居たなんて…侮ってた」

情報屋「黒の同胞がまだ紛れているのかも…」

商人「公爵が化けている可能性は考えて居たんだ…特に機械化の大臣が怪しい」

情報屋「もしかすると変化の杖以外にまどろみの杖を持って居るのかも知れない」

商人「杖か…なるほど」

情報屋「さて…治療は終わり」スック

商人「まぁ無事に出港出来てとりあえず結果オーライか」

情報屋「商人に見てもらいたい資料が有るのだけれど」

商人「何かな?」

情報屋「例のリヴァイアサンを乗せて来た船の航海日誌の件よ」

商人「おぉ!!それも調査出来たんだね」

情報屋「軍の重要機密だったけれど少しづつ写したのよ」

商人「見たいな…」

情報屋「待って…持ってくるから」タッタ


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バサッ


商人「これは4000年前の地軸変動以前の世界地図だね?」

情報屋「印が打ってある場所が古代遺跡のある場所よ…大体そこに新しい国が出来上がってる」

商人「これが関係する?」

情報屋「この地図に未来君の壁画から読み取ったフィン・イッシュ沖の地図を追加するとこうなる…」カキカキ

商人「ふむ…外海は巨大な海だ」

情報屋「そして航海日誌にも海図が記されて居て…そこから読み取るとこの場所…」

商人「島?」

情報屋「地図をひっくり返して現在の地図と比較してみるとその島は未踏の地に位置する」

商人「北極圏か…じゃぁリヴァイアサンはそこから連れて来たのか」

情報屋「そうなるわね…そしてそこに古代遺跡が在るらしいのよ」

商人「なるほど分かったぞ!この間キ・カイの軍船が船団組んで出て行ったのはソコを目指してるのか」

情報屋「きっとそうよ」

商人「まさか君はそこに行こうとしてる?」

情報屋「魔女達も其処に行ったのかと…」

商人「僕達だけじゃ無理だろうなぁ…女戦士の幽霊船ならもしかすると行けるかもしれないけれど…」

情報屋「まだ情報があるの…未来君の壁画とフィン・イッシュに伝わる龍神伝説から鑑みて未来君も其処に行ってる筈」

商人「ふむ…でも外海をどうやって移動してたんだろう?」

情報屋「クジラに乗った画が有るでしょう?」

商人「ハハクジラに乗って外海を自由に移動して居た?真似は出来ないなぁ」

情報屋「まだ情報を沢山まとめてあるのよ…これも見て」パサ

商人「ちょっと待った…ゆっくり一つづつ見て行く」


コレハアレデ…アレハコレデ…


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『1時間後』


2100年前に初めて時の王と出会う…その後時の王は永遠の命を得て世界を平定

未来君はこの時現代へ戻る事を試みて400年遡った

そして今から1700年前に時の王と再会を果たす

でも魔王を葬る為に量子転移を使い又時空を飛んでしまった…行き先は2400年前

一方…時の王は未来君が過去に戻ってしまった事を知らず再度再開を待ち続けた

次に会ったのは1400年前…でも未来君には何の事か分からない


情報屋「生きた時間が交差し続けた事ですれ違いが起きたのね…」

商人「なるほど…今の仮説通りに進んだとすると全部辻褄が合うのか」

情報屋「この仮説を前提に考えると未来君は時の王が言ってた暁の使徒よ…時の王の話と完全に一致するわ」

商人「つまり暁の使徒の行先を追えば良いのか」

情報屋「シン・リーンには暁の使徒を安置している墓所があるらしいのよ」

商人「じゃぁ魔女に話を聞かないとね」

情報屋「まず魔女を探さないといけない」

商人「外海調査の件でフィン・イッシュが他の国に出遅れているらしい…女王に協力をお願いしてみるかな」

情報屋「その言葉が聞きたかったわ」

商人「でもどうして何年も行方不明になって居ると思う?」

情報屋「伝説が本当だったとすると時の砂を使ってしまったのかも知れない…」

商人「未来君と同じなら何百年も未来じゃないと見つからないのかもねぇ…」

『翌日』


フムフム…


情報屋「まだ私の調書を読んで居るの?」

商人「うん…もっと早くこの情報が知りたかったなぁ」

情報屋「どの部分?」

商人「全部さ…特にキ・カイ周辺で新しく発見された古代遺跡の件」

情報屋「あら?知って居るかと思っていたわ」

商人「ホムンクルスを蘇らせる為のエネルギーを探していると言ってたじゃないか」

情報屋「言い出さないから何か考えがあるのかと…」

商人「まぁ…場所が分かったとして探しに行けるかどうか分からないんだけどさ…盗賊が居たらなぁ…」

情報屋「あの人…直ぐに戻ると言って居たのに…」

商人「この間見たインドラの銃はどうせ遺跡から発見された物だよね」

情報屋「きっとそうね…軍の最高機密だから私は知らなかった」

商人「他のホムンクルスとか発見されてるかも知れないなぁ」

情報屋「あら?ホムンクルスの生体が残されている数はホムンクルスが把握して居たのでは?」

商人「あ…そうだったね…キ・カイ周辺には無いと言ってたか」

情報屋「生体の部品ならもしかしたら発掘されて居るかもしれないわね」

商人「だとすると事情を知ってる僕達の方が先を行ってるか」

情報屋「そうそう…例のインドラの銃」

商人「ん?」

情報屋「女海賊が持って居る物と原理が違うと思うわ」

商人「どうして?」

情報屋「発射された光が眼で追えるから高密度の光では無いと思う…多分高密度の電気とかプラズマの類ね」

商人「あぁぁぁそう言えばそうだね…インドラの光は発射が見えない」

情報屋「それでも兵器としては驚異になる」

商人「ハハーン…分かったぞ」

情報屋「??」ハテ?

商人「リヴァイアサンを捕獲したかった理由だよ…高密度のエネルギー源が欲しかったのかなと」

情報屋「捕獲出来たとしても扱えるとは思えない…逃げられて良かったと思うわ」

商人「ふむふむ…キ・カイの弱点はエネルギーだな…魔石流通を握れば僕の勝ちか」

情報屋「関税が上がったのでは?」

商人「そうだね…流通が縮小する…自業自得さ」

『甲板』


ザブ~ン ユラ~


情報屋「大丈夫?歩ける?」

狼女「風に当たりたい…おえっ」ウップ

商人「あ!!体は平気?」

狼女「誰の血か知らないけど腐った血を飲んじゃった…おぇぇぇぇ」ウゲー

情報屋「抜いた血じゃダメだったのね…」

商人「生き血じゃ無いとダメか…困ったね」

情報屋「なんだか随分瘦せた気が…」

狼女「そういう体質」

商人「ゴメンね無理させちゃって」

狼女「丁度アサシンから痩せろと言われてたんだ…今を維持する」

商人「あと一口エリクサーあるよ…要るかい?」

狼女「要る…頂戴」

商人「海士島に到着したら又買い入れてあげるよ」ポイ

狼女「私どのくらい寝てた?」

商人「1日くらい?まぁ海士島まではまだまだ掛かるからゆっくり休むと良いさ」

狼女「!!?」クンクン

商人「ん?何か匂う?」

狼女「なんだろうこの感じ…下に何か居る気がする」シュタタ


船乗り「で…出たぁぁ…あわわわ…ク…クラーケンやぁぁ!!」アタフタ


情報屋「ええ!!?」ダダ

商人「ちょ…」ダダ

情報屋「船の下に大きな影…」

狼女「これ沈没の危機?」

情報屋「分かったわ…クラーケンは様子を見てる…孤児の中にハーフオークが居るから」

商人「そういう事か…じゃぁ逆に安全かも知れない」

情報屋「昔にもこんな事有ったわね…船乗りさん慌てなくて大丈夫!襲って来ないから」

船乗り「慌てるも何もどうする事も出来んわい!!」

商人「去るのを待つだね…」


ザブ~ン ギシギシ

おぉぉぉデカイ

襲って来んのんかぁ?


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『船首』


ユラ~ ザブ~ン


狼女「ヒマ…」

商人「顔色良くなったね」

狼女「何してるの?」

商人「貝殻聞いてるのさ」

狼女「その貝殻は魔女と会話出来ると言う奴?」

商人「そうだよ」

狼女「何か聞こえる?」

商人「波の音…それからカサカサ動くカニの足音かな?」

狼女「アサシンも同じ事言ってたよ…本当に会話出来るの?」

商人「繋がってる筈…だったんだけど今はもう…」

狼女「魔女としか繋がらないと言うのがダメダメだね」

商人「まぁ…そういう貝殻だからさ…仕方ない」

狼女「私耳も良く聞こえるんだ…貸して」

商人「良いよ…海に落とさないでね」ポイ

狼女「どれどれ…」パス

商人「どう?」

狼女「ふむ…波の音…」


海流が早くてぶつかり合う海…

貝が呼吸する音が無いから寒い海…

カサカサする足音は8本足…それは何匹も居る

あ…他にも虫の羽音がする…ミツバチの羽音


商人「ちょっと待った…それって飛空艇の中だな…8本足はアラクネーだ」

狼女「匂いは届かないみたい…」クンクン

商人「何処の海なのか特定出来ないかい?」

狼女「ヒマだからもう少し聞いてみる」


うっすら浅い雪が遠くの音を消してる…

葉っぱのこすれる音が無いから木や植物は殆ど生えて居ない

直ぐ近くに音を遮る大きな建物の様な物がある…なんだろう?複雑な形

『居室』


ガチャリ バタン


情報屋「どうしたの?何か有った?」

商人「魔女の居場所が分かるかもしれない…地図借りるよ」パサ

情報屋「急にどういう事?」

商人「耳の良いリカオンに貝殻の音を聴いてもらったら色々分かった事が有る」

情報屋「魔女と通じてるの?」

商人「結論から言う…どうやら飛空艇は海岸の何処かで漂着してる」

情報屋「そんな…」

商人「女海賊は飛空艇を必ず狭間に隠す筈なんだ…それをやってない…つまり何処かに漂着してる」

情報屋「それって3人共既に…」

商人「考えたく無いけど貝殻から聞こえる音からそう読み取れるんだ」

情報屋「波の音がすると言うのは…」

商人「何年も前からその状態のままなのさ…てっきり貝殻を何処かに落としたのかと思ってた」

情報屋「どうして波の音から飛空艇があると分かるの?」

商人「僕がカニの足音だと思ってた音はどうやらアラクネーなのさ…ミツバチの羽音も聞こえるらしい」

情報屋「あぁ…なんかザワつく…あの人がもう死んでるなんて考えたく無い」

商人「地図…借りて行くよ」

情報屋「私も行くわ」

『船首』


カキカキ


商人「んぁぁ…音だけの情報で場所の特定なんか出来る訳無いか」

狼女「季節が変わればもう少し違った音も聞こえるかもしれないよ」

情報屋「そこは大陸だとか島だとか…そういうのは判断できないの?」

狼女「生き物の音がもう少し聞こえればもしかしたら判断出来るかも」

商人「今分かるのは恐らく南の大陸の何処か…北の大陸は雪が深いから」

情報屋「外海の側だともっと分からないわね」

商人「海に落ちて漂着したと考えるとある程度絞られる…」

情報屋「船乗りさんにも意見を聞いて来るわ…地図持っていくわね」タッタッタ

狼女「貝殻の音を聞いてるのは心地良い…良い暇つぶしだよ」

商人「なにか気付いたら又教えて」



『船長室』


海図をやすやす人に見せる物では無いんだが…


船乗り「ほーう?その地図は外海の側まで陸地を描いて居るのか…ふむ」

情報屋「交換条件でどう?」

船乗り「よし分かった!!貸してみろ…俺が知って居る範囲で海流を書き込んでやる」

情報屋「助かるわ…」

船乗り「季節によって変わるんだが…」

情報屋「全部知りたいわ」

船乗り「地図一枚では書き表せんな」

情報屋「じゃぁ新しく海図を起こすわ」

船乗り「それが良い…出来たら又持って来てくれ」

情報屋「分かったわ」

船乗り「それから今日は海が時化るから船室の中に入る様に伝えてくれ…測量の邪魔になるから船首に出るなともな」

情報屋「あぁ…邪魔になって居たのね…伝えておくわ」

『居室』


ユラ~~リ ギシギシ


情報屋「商人仕事よ…この地図に描き込み切れないから同じものを複製するの」

商人「また地味な仕事を…」

情報屋「製図はあなた得意でしょう?」

商人「道具を何も持って来てないんだけどなぁ…」

情報屋「海流が書き込めるだけの簡単な地図で良いわ」

商人「1枚で良い?」

情報屋「季節によって変わるらしいから何枚か必要になると思うわ」

商人「まぁ何もやる事無かった所だし…書くかぁ…」

情報屋「お願いね…私はリカオンの気付きをもう少しまとめてみるから」


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『数日後』


情報屋「海士島に到着したら子供達は一回船を降ろしても良いのね?」

商人「2日間停泊する予定だからそれまでに戻れば良いかな」

情報屋「暖かいから外で夜を明かしても良さそう」

商人「まぁ危ないから寝るのは船が良いでしょ」

情報屋「まとめて休める場所があれば良いのに…」

商人「教会があるけど他の人も沢山居るからねぇ…」

情報屋「リカオンはどうする予定?」

狼女「酒場に盗賊ギルドの連絡員が居るから状況聞いてから決める」

情報屋「連絡員は誰?」

商人「ハハ君はキ・カイで研究しっぱなしだから知らないのか」

情報屋「商人は知って居るの?」

商人「女狐だよ」

情報屋「あぁぁ…お金にガメツイ彼女が連絡員…フフ」

商人「向いてると思うけどね…良く世話になってる」

狼女「今はセントラルよりも海士島の方が情報集まるんだよ」

商人「だろうね?航海で必ず補給に寄る場所だしね」

情報屋「アサシンも海士島に来るのよね?」

狼女「その筈だけど…」

商人「アサシンは何しに来るんだろう?」

狼女「私が魔女の情報掴んでくる想定なんだと思う」

商人「一応掴んでいるじゃないか」

狼女「次の行き先が絞られて居ないのが…」

情報屋「限られた情報で絞り込むのは限界が有るわ…虱潰しに調べるしか無いわね」

商人「僕達は高速で移動する手段を持って居ないのがねぇ…」

情報屋「女戦士と連絡が取れれば良いのに」

商人「アレ?そういえば幽霊船が目撃されてる場所って…」

狼女「フィン・イッシュ沖の外海に出る海峡付近とか…ドワーフの国領の島々とか…」

商人「もしかして飛空艇がどこかに漂着してるのを僕達よりも先に気付いてたりしないか?」

情報屋「ありえるわ…」

『海士島』


ガコン ガコ


船乗り「お前等ぁぁ!!碇を降ろせぇぇぇ!!」

野郎共「へ~い!!えっさほいさ」ガラガラガラ

船乗り「降りて良いぞぉ!!」


わ~い ウキャキャ

大きい子は小さい子の手を繋いでゆっくり降りて…

銀貨は一人1枚づつ…好きな物買って良いわ


商人「僕は少し物資調達してから酒場に行くけれど…君はどうする?」

情報屋「私は子供達を遠くから監視しておくわ」

商人「夜は船に戻って横になる…それで良いね?」

情報屋「わかったわ…何か有ったら船に戻るから」

商人「じゃぁリカオン!!一緒に行こう…君はお金を持って居ないよね」

狼女「エ…エリクサー欲しい…喉が渇いた」


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『露店』


ワイワイ ガヤガヤ


狼女「あれ商人?あんた歩き方おかしくないか?」

商人「あぁコレね…足の骨が折れてるんだよ」ヒョコヒョコ

狼女「痛みが無いから無理をしても気付かないんだね」

商人「うん…エリクサーじゃ治らないのさ」

狼女「その体も不便だね」

商人「まぁ少しゾンビみたいな歩き方だけどそれ程不自由は無い」

狼女「そういえばアサシンは体傷めない様に注意してると言ってたな」

商人「僕は元々骨が細いからねぇ…もう少しマシな体だと良かったよ」


雑貨屋「黒死病に効く名薬は要らんかね~?」


商人「お!?エリクサーは有るかな?」

雑貨屋「ほほーエリクサーをお求めとは…ちぃと値が張りますが?」

商人「産地は何処かな?」

雑貨屋「セントラル産でさぁ!」

商人「じゃぁ仕入れは1瓶10金貨だね…いくらで売るの?」

雑貨屋「う…お客さん人が悪いなぁ」

商人「ハハ冗談だよ15金貨で頼むよ」ジャラリ

雑貨屋「むむむ…仕方ない」

商人「ありがとね…リカオン?飲んで良いよ」ポイ

狼女「大事に飲むよ」チビリ ゴク

商人「寒冷化で大分高騰してる…でもこれでも安い方さ」

『酒場』


ポロロン~♪


マスター「いらっしゃいま…せ」

商人「やぁ!!久しぶり」

狼女「…」チラリ

マスター「奥の部屋へどうぞ…」

商人「いやカウンターで良いよ…空いてるじゃない」

マスター「いえ奥へ…」グイ

狼女「…」シラーー

商人「え?まぁ良いや…さっき付いたばっかりなんだ」

マスター「…」ギロリ グイ

商人「ハハ…参ったな」



『奥の部屋』


ガチャリ バタン


マスター(あなた堂々と店に入って来るってどういう神経してるの!!)ヒソ

商人(マズかった?)

マスター(あなたじゃない…そっちの狼女の方!)

狼女(ゴメゴメ…もう騒ぎ起こさないから)

商人(こっちの酒場でも何か起こしてるんだ…ハハ)

マスター(まだあの豪族海士島でうろついて居るから変装するとか少し気を使って!)

商人(まぁまぁ…そんなに長居するつもりは無いから勘弁してよ)

マスター(商人…この狼女はね…必ず酒場で揉め事起こすバカ女なのよ)

狼女「バカ女って何ヨ!!」ガタン

商人「ちょちょちょ…今揉め事起こさないって言ったばかりじゃ無いか」

狼女「フン!!」

商人「とりあえず何か飲もうか」

狼女「コブラ酒!!タンブラー2つ!!」プン

マスター「…」アゼン

商人「ハハ…まぁそれで良いや」

マスター「呆れた…」

狼女「ルールでしょう?」ニヤ

マスター「ぐぬぬ…後でお持ちします!!」スタ


ガチャリ バタン!!

商人「怒ってるみたいだけど大丈夫?」

狼女「私も怒ってる」

商人「さっきのやり取りって何かの合図だよね?コブラ酒とか」

狼女「2人を保護しろっていう意味…女狐は私達2人を保護しなきゃいけない」

商人「なるほど…」

狼女「外ブラついてみる?」ニヤ

商人「まぁまぁ…大人しくして居ようか」---揉め事が起きる訳だ---


ヤレヤレ…


--------------


ガヤガヤ ウハハハハ


狼女「ふ~ん…」

商人「ん?何?」

狼女「私は耳が良く聞こえるって言ったでしょう?」

商人「もしかして酒場で誰かが話してる内容が聞こえてる?」

狼女「そうよ…良い噂が聞こえて来た」

商人「気になるじゃ無いか…教えてよ」

狼女「幽霊船が近くで目撃されて居るらしい」

商人「おぉ!!」

狼女「もしかすると補給で海士島に来るかもしれない」

商人「う~ん…入れ違いになってしまいそうだ」

狼女「私はアサシンが来るまで海士島に残らなければならないから…会えたら事情を話して置く」

商人「いや…子供達さえ良ければ急いでフィン・イッシュに行く必要も無いんだ」

狼女「良い事思いついた!!子供達の人数分タンブラーを頼むのよ!!どう?」

商人「え!!?そんな事出来るのかい?匿う場所とか…食事代も掛るし手間だって」

狼女「あの女狐はね…お金を沢山貯め込んで居るのよ…何に使うか知らないけれど」

商人「…」

狼女「む…何か知ってる顔…」

商人「実は孤児院に送り主不明の寄付金が届いて来るんだ…もしかしてと思ってね」

狼女「まさか…あの女が寄付なんて」

商人「ふむふむ…よし…子供達の人数分タンブラーを頼んでみよう」

狼女「アハハあの女どんな顔するかな?盗賊ギルドで美人ナンバーワンが…ウフフフ」

商人「嫉妬かい?実力は君がナンバーワンだと思うんだけどなぁ」



ガチャリ バタン

マスター「コブラ酒をどうぞ…」ポイ

狼女「あぶっ…」パス

マスター「はい…タンブラーはここに」ドン!!

商人「??」---メモ書き?---


”深夜に醸造蔵の裏で待つ”


マスター「ではごゆっくり」ギロリ

狼女「あぁぁちょっと待って!!タンブラー追加」ニヤ

マスター「いくつご入用でしょう?」シラー

狼女「30個」

マスター「なっ…」プルプル ググググ

狼女「…」ニコニコ

商人「まぁ…もういい加減にしなよ…マスターちょっと耳貸して…実はね」


ヒソヒソ ヒソヒソ

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『商船』


ザブン ギシギシ


船乗り「もう帰って来たのか?」

商人「なかなか落ち着ける場所も無くてねぇ…」

船乗り「だろうな?豪族が幅を利かせて落ち着いて酒も飲めん」

商人「船の方がよほど落ち着く」

船乗り「掃除が済んだ所だから適当に甲板で休むと良い」

商人「そうするよ」

狼女「商人?お金頂戴」

商人「え?何に使うの?」

狼女「どうも顔を隠しておかないと自由に行動出来ないみたいだから…」

商人「フードが欲しいんだ?」

狼女「着替えも変えたい…血の汚れが落ちなくてさ…匂いが気になるんだ」

商人「ハハ匂い?鼻が利くとやっぱり気になるのか」

狼女「自分の血は臭くて気持ち悪いんだよ」

商人「そんなもんかねぇ?まぁ良いや…これだけ有れば足りるよね」ジャラリ

狼女「ありぃ!!ちょと買い物行って来る」シュタタ

商人「なかなかお金の掛かる子だ…アサシンが単独行動させたいのが分かる」

狼女「うるさいなぁ!!聞こえてるよ!!」クルリ

商人「小言も言えないか…」

『夜』


ザザー ザブン


情報屋「ふぅ…やっと子供達寝たわ」

商人「面倒見…大変だったね」

情報屋「大きな子が殆どやってくれるけれど迷子になる子がどうしても居てね」

商人「みんな楽しめていたかい?」

情報屋「そうね…お金無くしたり色々あったけれど」

商人「ハハ精々30銀貨でしょ?僕は今日だけで30金貨ほど使ったよ…」

情報屋「エリクサーを買ったのでしょう?仕方ないわ」

商人「まぁリカオンを危険に晒した事を思えば安いか」

狼女「ああ!!そうだ…睡眠魔法を使った人」

商人「見たのかい?」

狼女「無詠唱だったんだよ…いきなり周りの人がフラフラ倒れて…」

情報屋「それはまどろみの杖で間違いなさそうね…」

商人「やっぱり公爵の線が強いね」

狼女「これアサシンに報告する重要な情報になりそう」

商人「変化の杖で姿を変えながら割と能動的に動いている感じだね」

狼女「多分…日数から考えて明日くらいに此処に来ててもおかしくない」

商人「…という事は子供達を人目に晒すのは僕達の行動を晒しているのと同じだなぁ」

情報屋「本当に厄介ね…」

商人「そこら辺も今晩女狐に話してみる」

情報屋「今晩?どういう話に?」

商人「彼女はセントラル側の諜報員という立場になっててね…簡単に情報交換出来ないのさ」

情報屋「酒場じゃない場所で会う訳ね」

商人「うん…どうもリカオンと相性も悪いみたいでね…まだ話を聞き出せてない」

狼女「あっちが私の事下に見てるんだよ!!」

商人「まぁまぁまぁ…実力は君の方が上なのは分かってる…耳も鼻も利くし戦闘もこなす」

狼女「…」

商人「2人が噛み合えばベストなんだけどね」

情報屋「私も会いに行って良いかしら?」

商人「僕とリカオンで会う話になっていたんだけど…どうかな?」

狼女「別に良いんじゃない?見知った顔なんだし」

情報屋「あぁ…やっぱり止めて置くわ…人数多いと他に怪しむ人が出て来るかもしれない」

商人「そうかい?」

情報屋「私も盗賊ギルドに居たから分かるのよ…予定変更されると面倒事に発展しやすいの」

商人「そうなんだ?まぁ…話は後で全部教えてあげるよ」

情報屋「わかったわ」


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『深夜_醸造蔵の裏』


ゴトン


女狐「入って…」

商人「こんな所に隠し通路か…」

狼女「へぇ?上手く隠してる」

女狐「…」ギロ

商人「リカオンは初めて来たのか…」

狼女「ここは初めて…」

商人「なるほどね…こういう場所が複数有るという事か」

女狐「無駄口は止めて…早速本題…どうして孤児院の子供達を連れて来ているの?」

商人「うん…キ・カイに居ては危険だからだよ」

女狐「盗賊ギルドは託児所では無い…ギルドに利益が生まれる訳でもない…活動の妨げになるのは分かるでしょう?」

商人「お願いしているのはギルドでは無く君にお願いしているんだ」

女狐「状況分からないの?私は諜報員として此処に居るわ…子供の面倒なんか見れる訳無いでしょう」

商人「本当は僕がフィン・イッシュの女王に嘆願するつもりだったんだ」

女狐「それが一番良い」

商人「状況が変わってね…近くに幽霊船が来ている様だから海士島で待って見ようかと」

女狐「それとこれと話が別よ…あなたが面倒を見れば済む話」

商人「乗って来た船が明後日出港してしまうんだ」

女狐「他の船で行けば良いでしょう?」

商人「そうもいかない…公爵が追ってきた場合子供達を連れ歩いて動くと目立ってしまう」

女狐「公爵?どうして公爵が関係して?」

商人「初めから話さないと通じない様だね…」

キ・カイではねここ数年でキラーマシン改を量産しているんだ

その頭部に孤児院の子供から摘出した脳を搭載してる…孤児院の子供なら居なくなっても誰も文句言わないからラクなんだよ

僕は子供達を守る為にキ・カイの孤児院から子供達を逃がしている所なのさ

でもキ・カイは子供の移送を阻もうとしている

その最中キ・カイ政府の中に公爵が潜んで居る事を突き止めた

万が一公爵が姿を変えて海士島に来た場合…簡単に僕達の行動がバレてしまう


商人「もしも子供の誰かに化けられた場合は全員見殺しにしないと僕らは逃げられない…」

女狐「子供達がキラーマシン改にされてるなんて…本当にそんな事が…」

商人「証拠はある…」

女狐「今までどのくらいの子供達が犠牲に?」ワナワナ

商人「50人は超えると思われる」

女狐「そんな…」ガク

商人「やっぱり君だね?孤児院への送り主不明の寄付は」

女狐「詮索しないで…」

商人「分かった聞かないよ…子供達を保護したい一方で幽霊船に乗る女戦士と接触する機会を不意にしたくない」

商人「だから君に協力をお願いしているのさ」

女狐「わ…分かったわ…何とかする」

商人「ほっ…良かったよ君に相談して」

女狐「乗って来た商船が出港するのは明後日ね?」

商人「うん」

女狐「どうにか密偵の仕事をフィン・イッシュに作って私が向こうの孤児院まで送り届ける」

商人「助かる」

女狐「その代わりあなたの署名で書き物を頼むわ」

商人「え?何だい?」

女狐「キ・カイから大量の硫黄をフィン・イッシュに密輸してる証拠となる書簡よ…闇商人の署名で」

商人「ほほーなるほどね?それを調べる目的を作る訳か…賢い」

狼女「ふ~ん」チラリ

女狐「…」ギロ

女狐「ただこういうブラフを流してる事はフィン・イッシュ女王へ説明しておかないと後で問題になるわ」

商人「分かってるよ…戦争が終わらない原因になるね」

女狐「分かったら書簡を用意して」

『翌日_商船』


ザブン ギシギシ


商人「…という訳で女狐に子供達の移送をお願いした」

情報屋「じゃぁ私達は船を降りて宿屋住まいね?」

商人「当分そうなるかな…今リカオンが宿屋に行ってくれてる」

情報屋「わたしは子供達に説明してくるわ…あと荷物もまとめなきゃ」

商人「まぁまだ間があるしゆっくりで…」

情報屋「幽霊船の件はその後情報無し?」

商人「女狐が言うには酒類の大量発注があったらしい…もしかするとそれが補給なのかも知れないって」

情報屋「海上で荷の載せ替えをするのね」

商人「また鼻が利くリカオン頼みになってしまう…酒の匂いを追う感じだよ」

情報屋「その輸送している船に忍び込むつもり?」

商人「んんん~もし違った場合を考えるとリスク高いなぁ…」

情報屋「行動癖を考えると…女戦士は幽霊船から降りると考え難いわね…海士島には降りない」

商人「うん…動いてるのはきっとローグなんだろうけど行動が読めないねぇ」

情報屋「必ず酒場に寄るタイプでも無いものね…」

商人「補給ねぇ…水…食料…大砲は乗せて居ないから火薬は要らない…う~ん」

情報屋「大量の酒類という情報だけで幽霊船と結びつけるのも危険よね…」

商人「下手に動くのもマズいか」

情報屋「情報を流布して誘って見ると言うのは?」

商人「ふむ…確認しに来たくなる情報…」

情報屋「白狼の盗賊は?」

商人「ダメだよ…偽物が多くて釣りにならない」

情報屋「なにか私達だけが知って居る事…」

商人「よし…漂着した飛空艇の回収作業できる人を募集してみよう」

情報屋「名案ね!!もし女戦士も探して居るとしたら食いつく可能性が高いわ」

『酒場』


ポロロン~♪


マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」チラ

情報屋「どうも…」ニコ

商人「今日は公募のお願いに来たんだ」

マスター「え?あ…どんな内容でしょう?」

商人「漂着した大型気球の回収とアラクネーの退治…報酬は10金貨」

マスター「公募でその報酬は…」

商人「安すぎるのは承知さ…チラシを配らさせてもらって良いかい?」

マスター「どうぞ…飲み物はどうされますか?」

商人「じゃぁ一杯飲んで行くかな…エール2つ頼むよ」ジャラリ

マスター「お待ちください」スタ

情報屋「カウンターで良い?」

マスター「お好きな場所でどうぞ」

商人「マスター…何か面白い話は無いかな?」

マスター「噂ではセントラルの大艦隊が外海調査に向かっているそうです」チラリ

商人「へぇ?戦争はほったらかしなんだ?」

マスター「さぁ?どうなんでしょう…」コトリ

商人「外海には何があるんだろうね?」

マスター「ここだけの話…古代の兵器が眠って居るとか」

商人「おぉ!!どこらへんなのか知ってる?」

マスター「私は噂だけしか知りませんので…エールをどうぞ」コトリ

商人「あぁ…ありがとう…じゃぁ乾杯しようか」

情報屋「ウフフ…」

商人「じゃぁお互いの成功を祈って…乾杯!」チン

マスター「…」チラリ

情報屋「…」ニコ

『広場』


ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「女狐はあの仕事が向いて居そうね」

商人「うん…さりげなく周囲に情報渡してコントロールしてるんだ…さすがだよ」

情報屋「私はあまり酒場に行く事は無いけれど…盗賊が酒場に入り浸ったのはこういう情報のやり取りだったのね」

商人「だろうね…騒ぎながらいろいろ諜報を兼ねてるんだ」


シュタタ シュタタ


狼女「おーい!!お金お金!!」

情報屋「あら?人込みなのに良く私達を見つけたわね?」

狼女「匂いですぐに分かる…宿屋は先払いなんだ…お金頂戴」

商人「いくら?」

狼女「2人部屋を1週間で4金貨」

商人「お?安いね」ジャラリ

狼女「食事無しだけどね…船から荷物移動しちゃって良いよ」

情報屋「じゃぁ子供達にお別れの挨拶して荷物持って来るわ」

商人「僕は先に宿屋に行っておこうかな…リカオン案内して」

狼女「付いて来て…」

『宿屋』


ガチャリ バタン


商人「へぇ?良い部屋じゃ無いか」

狼女「アサシンの息が掛かった宿屋なんだよ…この部屋だけ特別」

商人「なるほど…ここで待ち合わせてる訳か…それで安いという事ね」

狼女「水浴びしてくるから適当に過ごしてて」

商人「分かったよ…買い物して情報屋でも迎えに行って来る」

狼女「じゃ…」ノシ


--------------


商人「さて…チラシでも撒いて来るか」スタ

商人「んん?」


ヒソヒソ ヒソヒソ

…あぁ予定変更だ…

硫黄が既にフィン・イッシュに入って居るとなると後方から大砲で不意打ち食らう可能性がある

船団に合流するのは今回は止めだ

代わりに幽霊船が近くまで補給に来ているらしいから機を伺うぞ

あと一発当てりゃ今度こそ落とせる…仲間集めて来い


商人「…」---豪族か…幽霊船も苦戦している様だ---

商人「…」---さすがに大砲が無いと厳しいか---

『夕方_商船』


ザブン ギシギシ


船乗り「…そうか…ここで降りるか」

情報屋「代わりの人が1人乗る筈だからよろしくお願いします」

船乗り「まぁ金は既に貰ってる訳だからフィン・イッシュまでは責任もって移送する」


スタスタ


商人「情報屋!迎えに来たよ」

情報屋「あら?気を使わなくて良かったのに」

船乗り「代わりの人はいつ来るんだ?」

商人「深夜になると思う」

船乗り「日の出前には出港するから早めに乗る様に伝えてくれ」

商人「わかったよ」

情報屋「なんだか他の船も出港して行ってる様ね」

商人「豪族の船だよ…なんだかゴタゴタしてるねぇ」

情報屋「慌てて出港しているみたい」

商人「幽霊船を追ってるらしい」

情報屋「そう…」

商人「まぁ豪族が出て行けば少しは静かになるさ」

情報屋「商船が巻き込まれなければ良いけど…」

船乗り「だから日の出前に出港したいんだ…連絡頼むな?」

商人「子供達とお別れは済んだかい?」

情報屋「うん…もう行けるわ」

商人「じゃぁ宿屋に案内する」スタ

『宿屋』


ガチャリ バタン


商人「ここだよ…割と良い部屋なんだ」

情報屋「ハッ!!リカオン!!どうしたのよ!!」

狼女「グルルル…グゥ」zzz

商人「裸…水浸し…」

情報屋「怪我はして居なさそう…これ海水だわ」フキフキ

商人「さっき豪族の船がゴタゴタして居たよね…もしかして…」

情報屋「一人で?何の為に?」

商人「いや…宿屋の外で豪族の話声が聞こえててさ…幽霊船を待ち伏せるって」

情報屋「それを聞いて一人で襲いに?」

商人「何か持って居ないかい?」

情報屋「ああ!!海図と宝石がベッドに…鍵もある」

商人「ビンゴだね…盗んで船室に鍵掛けてるんだ」

情報屋「さすがね…」

商人「あの船はギャラック船で舵が船室にあるタイプだ…鍵を掛けられると操舵出来ない」

情報屋「しばらく戻って来れないのね」

商人「頑丈なのが仇になってるね…しばらく風に流されて海図も無いから目視で帰ってくるしか…」

情報屋「夜に目視って…」

商人「こういう行動力はスゴイね…ウルフだから泳ぎも得意な訳か…海図は何が記されてる?」

情報屋「インクが海水で流れてしまって…乾かせば記した跡が残って居るかもしれない」

商人「それは明日が楽しみだ」

『窓』


ヒュゥゥゥ


商人「ふ~ん…ここから隣の建屋の屋根に通じてるのか」

情報屋「夜寒くなるから閉めて置いて」

商人「船着き場も良く見えるよ」

情報屋「女狐さんはまだ商船に乗って居ない?」

商人「どうかな?」

情報屋「なんか少し心配」

商人「公募のチラシを配るのもあるし…酒場にもう一度行って見るよ」

情報屋「私はリカオンが起きるまで待機かな…」

商人「水浴びにでも行って来たら?」

情報屋「そうね…」

商人「もしリカオンが起きたら酒場にでも遊びにおいで」

情報屋「分かったわ…」

商人「じゃぁ行って来る」スタ

『酒場』


ポロロン~♪


バニー「いらっしゃぁ~い…お一人?」

商人「あれ?いつものマスターは?」

バニー「しばらくお休みなのぉ」

商人「そうかい…カウンター座るよ」

バニー「どぞん」

バーテン「お飲み物は?」

商人「ワインかな」

バーテン「お食事はどうされます?」

商人「食事は良いや」

バーテン「かしこまりました…」

商人「公募してるんだけど…何か反応聞いてない?」

バーテン「アラクネー退治の公募でしたか?」

商人「うん…」

バーテン「今の所何も…豪族の皆さんは既にお金持ちですから興味が無さそうでした」

商人「ハハ…まぁそうだよね」

バーテン「海士島に観える方は長期滞在しませんので公募は厳しいかと…ワインをどうぞ」コトリ


ドヤドヤ ガヤガヤ

おぉぉ空いてる空いてる

いらしゃぁぁ~い!!団体様はこちらへ~

何でも良いから酒と女を見繕ってくれぇ

はぁ~い!!


商人「忙しくなりそうだね」

バーテン「お陰様で…」イソイソ

商人「僕にはお構いなく…噂話でも聞いて楽しんでるよ」

『翌朝_宿屋』


ガチャリ バタン


商人「2人共おはよう…食事を持って来たよ」ドサ

情報屋「あら?朝帰りにしては気が利くわね」

商人「僕は眠れないから…リカオン?新鮮な肉を仕入れて来たよ」

狼女「お!?」シュタタ

商人「丁度今さっき屠畜場で解体された肉さ」

狼女「あんまり食べ過ぎると直ぐに太っちゃうんだけど…ありがとう」ガブリ モグ

情報屋「かわいい顔してなかなかワイルドな…」

商人「エルフも生魚とか頭からかぶりつくらしい」

情報屋「私は…パンとチーズね」モグ

商人「女狐は予定通り商船に乗って出港したよ」

情報屋「知ってるわ」

商人「見てたのかい?」

狼女「匂いと声で分かるんだ」モグモグ

商人「へぇ…ここからでも感知出来るのか」

狼女「あの女…隠し子を孤児院に預けてたんだね」

商人「まぁそんな事だろうとは思ってたさ…船に乗っていたのかな?」

狼女「さぁ?そこまでは分かんないよ」

情報屋「誰だったのかしら…なんだか責任を感じてしまう」

商人「孤児院に送られて来た寄付金の他に車椅子もあった…足の不自由な男の子が居たな」

情報屋「分かった!!その子なら学舎の書物管理で働いているわ…もう立派な大人」

商人「教えてあげられれば良かった」

情報屋「…だとすると随分若い時に産んだ子なのね」

商人「なるほどね…人それぞれ色々あるのかぁ」

情報屋「リカオンもそろそろ良い人を見つけないと…」

狼女「ゲフッ…ゴホゴホ」ガブ モグ

商人「さて!!僕は市場歩いて相場調べに行って来る」

情報屋「待って…私も行くわ…リカオンの着替えも新調しなきゃいけないし」

商人「買ったばかりじゃ無いか…」

狼女「変態して破れた」モグ

商人「脱いでからに変身すれば良いのに…」

狼女「裸で走り回るって言うの?」

商人「まぁ良いや…買いに行こう」

『数日後_宿屋』


カクカク シカジカ…


セントラルとフィン・イッシュの国境では沿岸部を中心に領地を巡って小競り合いが継続中だ

停戦の交渉も豪族が第三者を偽って漁村を襲撃して制圧し

セントラル側に有利な立場で中立化しようとして停戦は白紙…泥沼だよ

外海調査の件では協力関係を作ろうとして居るが

フィン・イッシュの港をセントラルの軍船が行き来する事を認める訳には行かず

海上でも緊張した状態が続いているのだ

ここに来てのキ・カイ海軍の介入…交渉事で誰が公爵なのか見極められない現状

動きを悟られたくない隠れの忍び達は里に籠ったまま身動きできない


アサシン「…これが政治的に不利となっている実態なのだ」

商人「公爵のせいでイニシアチブが取れない訳か」

アサシン「私に化けて女王に要らぬ吹き込みをする可能性もある…女王は動けんのだよ」

情報屋「では今は盗賊ギルドが裏で政治判断する材料となる工作をしている状況なのね?」

アサシン「うむ…ただ我々の内側にも公爵が入り込む可能性を考えると信頼できる者意外とは話も出来ない」

商人「状況察した…女狐がガード堅かった理由も分かった」

アサシン「彼女は優秀だ…商人と情報屋をここに止めて置く判断も良い選択」

狼女「アサシンこれからどうするの?」

アサシン「魔女の発見が最優先…その為に女戦士と合流を果たそう」

商人「そうだね…今みんな集合しかけているんだから分かれない方が良い」

アサシン「盗賊ギルドの指示系はアヌビスに一任しているからしばらくは私も同行する…それで…幽霊船とは接触出来そうか?」

商人「公募の詳しい話を聞きたいという人物が今晩酒場に僕を訪ねて来るらしい」

アサシン「フフ…そういう役はローグか」

商人「当たりならそうなる…楽しみだよ」

アサシン「ところでリカオンの働きはどうだ?剣士並みの働きが出来るだろう?」

商人「ある意味剣士より優れている所は在るね…」

アサシン「リカオン…褒められて居るぞ?」

狼女「分かり切った事を言われてもね…」ルン

アサシン「さて情報屋…先ほど話に合った外海の地図とやらを見せて貰おうか」

情報屋「これよ…」パサ

アサシン「ふむ…外海調査に向かっている船団は海峡を越えて未踏の地を目指しているか…遠いな」

情報屋「この地図はセントラルに属するコグ船から発見された物でセントラルは既に未踏の地に到達してると見て良いわ」

アサシン「海軍の要所にするには遠すぎる…我々は思い違いをして居た様だな」

商人「もっとフィン・イッシュ寄りだと思って居たんだ?」

アサシン「そうだ…外海から背後を突かれる事を警戒して居たのだが…」

商人「キ・カイの軍船もそこを目指している様だよ」

アサシン「古代の兵器…う~む」

商人「フィン・イッシュは外海調査に出遅れてると聞いたけど?」

アサシン「海軍力が無いに等しい…軍船はすべて輸送船へと姿を変えたのだ」

狼女「オーク達に与えた船も何処か行っちゃったしね」

商人「オーク?」

アサシン「フィン・イッシュで領地を与えられたオークの事だ…ゲームチェンジャーになると思って居たのだが…」

商人「オークが船を操るなんて初めて聞いたな…ゲームチェンジャーってどういう意味?」

アサシン「どういう訳かオークはクラーケンを操るのだ」

商人「あーーそういう事ね…クラーケンがオークを守ってる感じになる訳ね」

アサシン「海上での抑止になってくれると期待して居たが宛てが外れた」

商人「船で逃げられたんだ?」

アサシン「分からん…オークの自治領を行き来しているらしいが何せ言語が違うからコミュニケーションが謀れん」

狼女「敵意は無いみたい」

アサシン「…それで?魔女達も未踏の地を目指したと見て良いのか?」

情報屋「恐らく…地図を見ながら歴史の説明からして行くわ…」


カクカク シカジカ…

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『酒場』


ザワザワ ヒソヒソ

おい見ろ…あの女は海賊王の娘じゃ無いのか?

何ぃ!!

やべぇ隠れろ…2人…いや3人か

ど…どうする?ヤルか?


女戦士「店の修理代だ…取って置け」ドサ ジャラ

バニー「えっと…いらっしゃいませ?」

女戦士「誰も入れるな…」ボソ

海賊1「へい…」

海賊2「がってん…」


ダダダッ 


女戦士「何か言ったか裏切者め…」スチャ

豪族1「なっ…くそう!!」タジ

女戦士「フンッ!!」ブン スパ

豪族1「ぎゃぁぁぁ…腕が!!腕が!!」ブシュー ボタボタ

豪族2「いきなりとは卑怯な…」


グサッ ズブズブ


豪族2「うぐぅ…ぐぐぐ」ブシュー

女戦士「さぁて?次は誰だ?」ツカツカ

豪族1「血が…血がぁ」バタバタ

女戦士「今からこの酒場は私の貸しきりだ…文句ある者は前に出ろ」


ひぃぃぃぃ…人殺しぃ…

いやぁぁ!!

キャーーー

ドタドタ バタバタ


海賊1「この豪族はどうしやしょう?」

女戦士「反吐が出る…海にでも捨てて来い」

海賊1「へい!!邪魔だゴルァ!!さっさと立ちやがれ!!」グイ

豪族1「がぁぁ…海賊王の娘がぁぁ!!」ヨロ

海賊2「お前もだ…」グイ

豪族2「げふっ…ゴホゴホ」ヨロ

女戦士「さて…ミルクだ…ミルクをよこせ」ジャラリ

バーテン「は…は…はい…ただいま…」ガクブル


--------------

--------------

--------------

『人だかり』


ザワザワ ザワザワ

海賊が酒場を占拠したらしい…

中に押し入った豪族達が逃げ出してる

傭兵は何処に行ったの?

海賊の側について中で暴れて居るって


商人「これはどういう事だ?」タジ

アサシン「また派手な登場だな…どうやら女戦士本人が来ている様だ」

商人「これじゃ酒場に入り難いじゃないか」


ドカーン ドーン


情報屋「船着き場!!豪族の船で爆発よ!!」

狼女「アサシン…これどうする?」

アサシン「ひとまず様子見か…海賊が豪族を襲っている形の様だ」

商人「幽霊船が見当たらない…」キョロ

アサシン「うむ…気球も見当たらん」



『酒場』


ゴクゴク プハァ


バーテン「ミルクのお代わりは…どうしましょう?」

女戦士「アルコール抜きの飲み物は何がある?」

バーテン「フレッシュジュースでしたら…」ガクブル

女戦士「フフ…私は恐ろしいか?」

バーテン「いえ…あの…手が勝手に震えて…申し訳ありません」ブルブル

女戦士「この公募のチラシを配って居た者を知って居るか?」パサ

バーテン「はい…毎晩今お座りの席に来て居りました」

女戦士「そうか…連れて来い」スラーン

バーテン「はははは…はい只今!!」ダダダ

『人だかり』


誰かぁ!!手当を!!

止血剤を持って来てくれぇ!!

ロープだ!!ロープを使って根元を縛れ!!


商人「四肢を切り落として無力化…容赦ないな」

アサシン「これぐらいやらないと恐怖心を植え付けられないのだよ…吊るされないだけまだぬるい」

情報屋「あ!!酒場のバーテンさんが出て来たわ」


バーテン「ひぃぃぃぃ…」ヨタヨタ


商人「待って!!」グイ

バーテン「あ…あなたは…」

商人「酒場の中はどうなって居るの?」

バーテン「あなたを探して来いと言われて僕だけ逃げて来られました…もう…戻りたくない」ガクガク

商人「僕だけ中に入れそうかな?」

バーテン「裏口からカウンター脇には入れますが…行かない方が良いです」

商人「裏口は何処?」

バーテン「探してください…僕は関わりたくない」ヨタヨタ

狼女「商人!!こっち!!」シュタタ

商人「アサシン!!僕だけ中に入ってみる…僕は不死者だ」

アサシン「クックック…ついでにワインも頼む」

商人「フフやってみる」タッタ



『裏口』


ガチャリ ギー


商人「リカオンはアサシンの所に戻って」

狼女「いえ…ここで待つ…用が済んだらここから出て来て」

商人「心配してくれているのかい?」

狼女「海賊は正面突破で出て行く筈…危ないのは向こうの方だよ」

商人「なるほど…」

狼女「情報屋はアサシンが付いて居るから大丈夫」

商人「分かった…なるべく早く済ませる」スタ

『酒場カウンター』


スタスタ


商人「やぁ…久しぶりだね」

女戦士「…」ギロ

海賊1「頭ぁ!!こいつは!?」ドドド

女戦士「待て…撤収の準備だ」

海賊1「へい!!」

商人「驚かないね?君を待ってたのさ」

女戦士「商人…1人ではあるまい?」

商人「4人だよ…アサシンと情報屋…そしてリカオン」

女戦士「北から2番目の商船に今すぐ乗るんだ…これを持って行け」ポイ

商人「記章…」パス


女戦士「撤収だ!!豪族の船を奪って逃げる…来い!!」ツカツカ


海賊共「がってん!」ドドド

商船「ハハ…ここじゃ何も話せないか」ソローリ




『広場』


ザワザワ ザワザワ

酒場の占拠は囮だった様だ…

見ろ!!豪族の船が奪われて動き出した

一般人に怪我人は居ないかぁ!!?


アサシン「ふむ…見事な統率…倍以上の豪族をいとも簡単にあしらうとは…」

狼女「アサシン!戻って来たよ」シュタ

商人「女戦士からの伝言だよ…今すぐ北から2番目の商船に乗れだってさ」

アサシン「んん?帆を開き始めて居るでは無いか」

商人「急ごう!!情報屋!!荷物まとめて行くよ」

情報屋「なんだか急展開ね…」イソイソ

アサシン「あの統率に合わせる為だ…急ごう」ダダ

『商船』


碇を上げろぉぉ!!


商人「待って待って!!あと4人乗る」

船乗り「ダメだぁ!!この船は既に定員一杯だべぇ!!」

商人「これを見て!!」スッ

船乗り「ムム…」

船乗り「早く飛び乗れぇ!!」

狼女「先に行く!!」シュタタ ピョン シュタ

情報屋「ちょっと…私じゃ届かない」

狼女「ロープ投げるから掴まって!!…引き上げる」ポイ シュルシュル

情報屋「荷物が濡れてしまう…」

アサシン「私が持つ」グイ

情報屋「濡らさないでね?」

アサシン「リカオン!!手を!!」ダダダ ピョン

狼女「おととと…」ガシ

商人「情報屋?一緒に飛び込もう…行くよ?」ピョン


ドブン ボチャーン


狼女「そのまま掴まってて!!」エッホ エッホ

情報屋「ギリギリセーフね…」

商人「こんな感じがまたしばらく続きそうだ…」

『甲板』


ビチャビチャ…


船乗り「あんたらこの船が何なのか知ってるんだべな?」

商人「アハハなんだそういう事か…船員は皆ドワーフかな?」

船乗り「わかっとりゃ良い…」

情報屋「背格好が…ハーフドワーフだけなのね?」

船乗り「海士島で差別されてしまうもんでな?」

商人「この船に乗れと言われて乗ったは良いけど…何処に向かってる?」

船乗り「行先はドワーフ領だべ…途中で荷の積み替えがあるんやが」

アサシン「幽霊船だな?」

船乗り「察しの通りだべさ…明け方になるで今晩は荷室で休むと良い」

商人「やっと女戦士と合流出来る」

船乗り「あんたらは娘さんの仲間なんやな?」

商人「まぁね…海賊王は元気かな?」

船乗り「そらもう世界中駆け回っておるべさ」

商人「もしかして漂流した飛空艇を探している?」

船乗り「もう何年も探して…」


あらららら?あららら?


商人「ローグ!!この船に乗ってたのか!!」

狼女「む!!あんた誰?匂いが違う」クンクン

ローグ「何言ってるんすか…あっしですよあっし!!」

アサシン「済まん…リカオンの鼻は信用している」ズイ スチャ

ローグ「ちょちょちょ…匂いが違うって何なんすかね?」

商人「ローグももしかして不死者に?」

ローグ「ええ?あっしは生身の人間でやんす」

狼女「おかしいな…匂いを覚え違ったのかな」クンクン

ローグ「あっしは偽物じゃ無いですぜ?酒樽で匂いが染みついちまったかも知れやせんね」

商人「あ…もしかして大量のお酒がこの船に乗ってる?」

ローグ「積み荷は殆ど酒でやんすね…なんで知ってるんすか?」

情報屋「例の大量の酒を発注してたのはこの船だった訳ね…当たらずとも遠からずって所ね」

狼女「お酒の匂いか…」

ローグ「いやいやそれにしても皆さん久しぶりっすねぇ…どうして又お揃いで?」

商人「まぁ色々有ってさ…幽霊船を追ってたらこの船に乗る様に言われてギリギリ乗り込んだ所さ」

ローグ「頭には会いやしたかね?」

商人「一言話しただけさ」

ローグ「頭は姉さん探すのに必死なんすよ」

商人「やっぱりそうだったんだね…僕達も少し情報を持ってるんだ」

ローグ「そら助かるっす…中々見つからんもんで機嫌が悪いの何の…」

商人「状況が知りたいんだけどさ…」

ローグ「海賊王と頭が手分けして世界中の浜辺を見回ってる感じっすね…そっちの情報はどんななんすか?」

情報屋「説明するわ…」


リカオンが貝殻の音から聞き分けられた情報が…

海流のぶつかる寒い海…うっすら雪が積もって植物が一切生えて居ない浜辺…近くに大きな建造物…

世界地図からそういう場所の候補地を割り出したのがこの地図よ


情報屋「内海に墜落したと仮定すると海流から漂着しそうな場所が…記を付けて居る付近ね」

ローグ「ほーーーーこらスゴイっすね」

商人「世界中の浜辺を見て回ってるなら消去法で候補地はどんどん消せるよね?」

ローグ「へい…あっしが知ってる限り消していきやすぜ?」カキカキ

情報屋「おぉ…これで北半球では無いという事が確定ね」

ローグ「ドワーフ領は全部調べたんで残るは南の大陸…地庄炉村村の周辺っすね」

商人「おぉ!!そこまで限定出来れば探せそうだ」

ローグ「ただあの辺は岩礁が多くて何隻も海賊船が座礁してるんす…なんで後回しになってるんすよ」

アサシン「しかし次の行先はこれで絞り込めた訳だ」

ローグ「まぁ甲板じゃ海風に当たっちまいやすんで荷室の方で話やしょう…ついて来て下せぇ」

『荷室』


ユラ~リ ギギー


狼女「うぅ匂いで酔いそう…」

商人「醸造樽ばっかりだ…」

ローグ「ドワーフは皆酒好きなもんすから」

アサシン「商人!ワインは持って来たか?」

商人「一本だけね…」ポイ

ローグ「ところで皆さん…未来君の予言はどうなりやしたかね?」

商人「殆ど手つかずだよ…飛空艇無しでは名もなき島にすら行けない」

情報屋「予言通りなら後数年…魔女もオークの呪術を探しに行った切り不明になってしまって…」

ローグ「やっぱそんな感じなんすね」

商人「そっちは?」

ローグ「ドワーフの国で移民を促しては居るんすが土着した人は中々動かんすね」

商人「キーマンの女海賊と魔女…盗賊まで居なくなってしまって手詰まりさ」

情報屋「私は色々進展があったわ?歴史の事もほぼほぼ解明したし地軸の移動の件もおおよそ原因が推定出来た」

ローグ「やっぱり予言通り避けられない感じなんすね?」

商人「原因?その話は聞いて無いな」

情報屋「魔王とかそういう類の物では無いのよ…天文学的な事」


シャ・バクダ遺跡で発見された冒険の書と言う物…

これに記されて居た事が事実だったと仮定して…歴史の殆どが辻褄の合う形で符合したわ

4000年以上前…現在よりも遥かに高度な文明でも避けられなかった天災が地軸の移動

それは約4000年周期で太陽系を周回する黒色惑星の影響だと冒険の書で知った

黒色惑星がこの地球に近付くと何が起こるかというと…

質量の重たい北極か南極を重力で引っ張り…丁度駒の回転の様に赤道上で安定させてしまう…

つまり4000年毎に大きな災害をもたらす地軸の移動が起きてしまうのは避けられない事なの


商人「どうにも出来ないという事だね…」

情報屋「でもね?先の文明が滅んだ原因は天災がすべてでは無かった…」


滅んだ原因は人災…人間同士の戦争で汚染された空気が原因で子孫を残せなくなった事が原因なのよ

これは未来君が言って居た光る隕石から出る毒…放射能の事

剣士と未来君はこの世界を滅びから救うために放射能を集めて量子転移で消し去った

…これは私達の歴史…忘れてはいけない歴史

アサシン「クックック…」

情報屋「可笑しい?どうして笑うの?」

アサシン「結局は勇者の犠牲の元私達は生き永らえた…そしてまだ一人勇者が残って居るぞ?何故だ?」

商人「希望が残ってる…そう考えようよ」

アサシン「私達の歴史は今言った避けられない問題の他に…魔王と精霊の戦いが複雑に絡み合っているのだ」

情報屋「そうね…だから私はもっと探求した…」

アサシン「ほう?なにか秘密を掴んだのか?」

情報屋「それは本当の勇者が誰だったのか…私達は何処に向かえば良いのか」


私達が知る歴史の中で最も世界に影響を与えた英雄は時の王よ…

その功績は数知れない…世界を平定し…災いの種となるアーティファクトを封じ

精霊の守護者として魔王と戦い…過去何度も魔王を退けた

そんな彼の右腕として働いて居たのが暁の使徒…未来君よ

時の王を導き…精霊を復活させ…時代を創って来た未来君は

その行きついた先で眠りについて復活の時を待ってる

それを信じていた時の王は長い年月でその記憶を少しづつ失い

失望した果てにシャ・バクダで夢幻に還った


アサシン「未来は戻って来ると?」

情報屋「私はそう考えてる…きっと女海賊もそれを信じてる」

アサシン「未来が還って来たとして魔王をどうする?」

情報屋「わからない…でも彼の名は未来…私達の未来…暁の使徒…それは新しく登る光…それこそ未来だと私は思う」

アサシン「クックック…思い出したぞ…私もこのような与太話をして飽きれられた事が有る…こういう事か」

情報屋「失礼ね…与太話では無いわ…歴史の時系列で全部説明出来る…これを見て」パサ

アサシン「…」


アンナコト コンナコト コウナッテ アアナッテ

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『朝』


…そう!時の王は2000年も前から暁の使徒が未来と過去を行き来してる事を知ってた


情報屋「それですべて説明が付く…シンリーンの壁画を集めたのも彼…時の砂の伝説を残したのも彼」

アサシン「むぅ…ここまで調べ尽くしているか」

情報屋「暁の使徒が安置されて居るのは恐らくシン・リーンの何処かに有る暁の墓所」

商人「僕達が目指すのは外海では無くシン・リーンか」

情報屋「過去に未来君が外海を中心に活動して居たのは間違いなさそう…でもそこは通過点」

商人「思うにホムンクルスを探し求めた感じだね」

情報屋「きっとそうよ…だから今行っても古代の兵器くらいしか収穫が無いと思う」


ガコン ゴツン


狼女「むにゃ?…グルル」zzz

ローグ「はいはい皆さ~ん!!荷物移し替えるんで移動してくださいな」

商人「あっという間に朝か…随分話し込んだ」ヨッコラ

ローグ「頭が待っていやすぜ?」

アサシン「さぁリカオン!!起きろ!!」

狼女「…」パチ

商人「情報屋!行こうか…手を」グイ

情報屋「あいたたた…腰が…」ヨッコラ

『幽霊船』


ギシギシ


女戦士「物資を急いで運び入れろ!10分で終わらせるんだ!!」

海賊共「へい!!」ドドドド

商人「うわ…ボロボロじゃないか」

アサシン「歴戦の船と言い変えるべきでは無いか?…久しいな女戦士」スタ

女戦士「船長室へ来い…ローグは物資の積み替えを終わらせてからだ」ツカツカ

ローグ「扱いが雑でやんすぅ…」

女戦士「…」ギロ

ローグ「へいへい…すぐ終わらせて行くでやんす」ダッシュ ドドド

女戦士「入れ…」ツカツカ



『船長室』


ガチャリ バタン


商人「随分急いで積み替えをやるんだね」

女戦士「見られてしまっては向こうの商船が無事では済まんからな」

商人「やっと合流出来た…全然連絡出来ないから…」

女戦士「ほとんど陸に降りる事が無い物でな…それで…本題だ」

情報屋「飛空艇の行方ね?…これが地図よ…南の大陸の地庄炉村付近」パサ

女戦士「どの様に調べた?」

情報屋「リカオンの耳と船乗りから得た海流の情報…その他色々ね」

女戦士「ふむ…確かにその近辺はまだ行って居ない…しかしマズいな…この船では海流に流されてロクに調査出来ん」

商人「え?どういう事?」

女戦士「縦帆が戦闘で傷んでしまってな…逆風を航海出来ないのだ」

アサシン「船体も随分砲弾を撃ち込まれた様だ…修理出来ないのか?」

女戦士「木材を調達出来ない…マストが折れていないのが救いだ」

商人「じゃぁ近くまで行って気球で上から行くのは?」

女戦士「そうだな…ひとまず地庄炉村へ行ってヤクを使った陸路という手もある」

商人「地庄炉村は麻の産地…もしかすると帆を張り替える布が入手出来るかも知れない」

女戦士「ほう?…という事はロープも手に入るな」

商人「決まりだね?地庄炉村を目指そう」

女戦士「分かった…詳しい話は後だ…今は商船から離脱するのを急ぐとする」

商人「僕達はここで?」

女戦士「好きにしろ…勝手は知って居るだろう?」ツカツカ


監視!!他の船は居ないな!?

離船したら狭間に入る!!レイスに備えろ

『甲板』


ユラ~ ザブ~ン


女戦士「面舵維持!!そのまま7時方向に回頭しろ」

海賊共「がってん!!」フンフン

女戦士「狭間に入る…ハイディング」スゥ


タッタッタ


商人「レイスに備えるってどういう事だい?」

女戦士「戦闘で魔方陣に欠けが発生したのだ…部分的にレイスが入って来る」

商人「僕は退魔の方陣を知ってる…もう一度方陣を組むから援護して」

女戦士「それは助かる…手すりが崩落しているから海には落ちるな?」

アサシン「クックック…これは又忙しい船だ」

女戦士「通常の航路から外れてしまえば狭間から出てもそれほど危険は無い…それまでは辛抱」

アサシン「一度船をしっかり修理した方がよかろう」

女戦士「海賊のアジトに寄港しても木材が無いでは修理も出来ん…戻るだけ無駄なのだ」

アサシン「ずっとこの状況か?」

女戦士「何度も言わせるな…航路から外れれば少しは休める」

アサシン「見た所大砲は移動式が1門…後はクロスボウか」

女戦士「何が言いたい?武器の不足は承知…海戦では逃げの一択だ」

アサシン「こう実情を知ってしまうとさもしいな…今や幽霊船は伝説になろうと言うのに」

女戦士「フフギリギリを戦い渡って何が悪い?それとも高性能な兵器を使いこなしてるとでも思って居たか?

アサシン「済まんな…フィン・イッシュも同様にギリギリの状況…幽霊船が加われば状況打破出来ると思って居たが…」

女戦士「…」ジロ

アサシン「こちらも同じ状況なのを見て私の浅はかな考えを反省している」

女戦士「さてアサシン…お前が私に会いに来たのは飛空艇の捜索の件だけではあるまい?」

アサシン「そうだ…ただ考えが変わった」

女戦士「貧相な装備を見てか?」

アサシン「いや…セントラルの狙いはフィン・イッシュ攻略では無さそうだと分かったからだ」

女戦士「何の話だ?」

アサシン「まぁ航路を外れて落ち着いてから話す」

『海原』


リリース スゥ


女戦士「よし休息だ!!各自ゆっくり休め!!」


ザブ~ン ユラ~


女戦士「ふぅ…」

商人「結局レイスは出なかったじゃない」

女戦士「いつも出て来る訳では無い…魔方陣は修復出来たか?」

商人「初めから引き直してる…もう少し」トンテンカン

情報屋「よく見るとこの船はあちこち傷んで居るわね…」

女戦士「手すりには寄りかかるな?」

商人「戦って居る相手は裏切った豪族かい?」

女戦士「豪族だけならどれほどラクか」

商人「正規軍とも戦って居るんだ」

女戦士「逃げるだけだがな」

商人「そうそう…船体の穴…砲弾の着弾痕が見当たらない…何でやられたの?」

女戦士「キ・カイの軍船から飛んで来た光線弾だ」

商人「軍船でも実用してるのか…それじゃ勝てないな」

女戦士「あれは古代の兵器なのか?」

商人「そうだよ…多分新しい古代遺跡から最近発見された物だ」

アサシン「話に割入る…古代の兵器をキ・カイが既に実用している?」

商人「うん…セントラルもキ・カイも外海調査に躍起になってるのはきっとその兵器の存在が原因さ」

アサシン「道理で外海調査の協力を求めて来た訳だ…その時点で既にフィン・イッシュなぞ眼中に無い」

商人「流れからするとセントラルとキ・カイが衝突する感じだね」

女戦士「今のままではキ・カイの圧勝に終わる」

商人「インドラの銃みたいなものだしね」

女戦士「いや…射程は大砲より短い様だ…ただ大砲よりも圧倒的に命中精度が高い」

商人「なるほどね…」

情報屋「未踏の地に先行しているのはセントラルの方だから直ぐに使えればキ・カイも危ないわね」

商人「どちらも公爵の影がちらついて居るのが気になるけど」

情報屋「そうね…公爵の手下の髭男爵…それからキ・カイ海軍も公爵が絡んでる」

商人「まぁそっちは勝手にやってて貰うとして僕達は先ず飛空艇を探さないと」

女戦士「飛空艇の場所が分かったとして3人の安否が心配だ…」

商人「時の砂を使って未来に飛んでしまった可能性もあるらしい」

女戦士「時の砂?何なのだそれは?」

商人「時間を巻き戻すという伝説があるんだ…それが外海のニライカナイという場所にあるらしい」

女戦士「巻き戻す?それでは過去に行くのではないか?」

商人「詳細不明なんだよ…でも状況的に時の砂を使った可能性は否めない」

女戦士「…ともあれ無事であるという可能性が聞けただけで少し心が落ち着く」

『数日後』


ガハハハハ…


海賊1「お前が噂に聞く闇商人だとは恐れ入った」

海賊2「がってん俺らは姫様の従士」


女戦士「今何と言った?」ギロ


海賊2「口が滑ったでがんす…」

商人「2人は純血のドワーフだったんだね…道理で体格が良い訳だ」

ローグ「あっしの立場がでやんすねぇ…なーんか軽んじられてるんすが…一応立場的には騎士なんす」

情報屋「ローグが騎士?ウフフ」

ローグ「へい…従士より格が上の筈なんすがどーも雑用ばかり回ってくるでやんすよ」

女戦士「雑用?最も重要な事を頼んでいるつもりだがな?船の補修は終わったのか?」

ローグ「あイヤイヤ…海賊達が楽しそうに会話してるもんでツイ…」

女戦士「補修が済んだら船体に刺さっている矢を回収して再利用に回せ」

ローグ「トホホ…ゴラ海賊共ぉぉ!!船体の補修急ぐでやんすぅぅ!!」

海賊共「へ~い!!」ドドド


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商人「なるほど…海賊の本来の強さは海戦じゃなくて白兵戦なのか…なんか分かって来たぞ」

女戦士「懐に入ってからの制圧力…大砲は懐に入られない為の道具に過ぎん」

商人「つまり無敗なのはハイディングで一気に懐に入るから白兵戦で勝ってるんだね」

女戦士「ハイディングだけでは無いがな…私が得意とするのは陽動だ…私自身が囮となる」

商人「この間の酒場占領だね」

アサシン「弓で額を撃ち抜かれない様にな?」

女戦士「フフ気を付けて居るつもりだ」

『地庄炉村_近くの小島』


碇を降ろせぇ!! ガラガラ


女戦士「ローグ!!気球の準備だ…商人とリカオン…それからアサシンの4人は地所炉村で物資調達を頼む」

女戦士「幽霊船は狭間に入って待機する…しばらく休憩だ!!小島に降りたい者は小舟を使って構わん」


情報屋「船に乗っていた方が暖かそうね‥」

女戦士「私は降りる気なぞそもそも無い」

情報屋「湯を沸かして水浴びをすると言ったら?」

女戦士「ム…ふむ…良いな」

情報屋「雪を集めて沸かすだけの簡単な仕事よ」

女戦士「従士2人!!私と同行しろ…島に降りて簡易風呂を作る…来い!」

海賊共「へ~い!!」ドドド



『地庄炉村』


ザワザワ

気球で誰ぞ来よったぞ

ありゃ商人が乗っとるんじゃろうか?

4人居るな?


婆「お前さん方は何処から来たのじゃ?キ・カイかえ?」

商人「あ…こんにちは…近くの商船から物資調達に来たんだ」

婆「商船?何処にも見えんが…なぜ船着き場を使わんのじゃ?」

ローグ「あいやいや…大型な商船なもんで岩礁が怖くて近づけんのでやんす」

男「婆さん!こいつら2人武器を携帯してる!近づくな?」

ローグ「襲う気は無いんで安心して下せぇ…ほんで布とロープを仕入れに来たんすが…」

男「布…ロープ?」ヒソヒソ

婆「麻の産地じゃと知って居ったのじゃろうな…お前さん方は何を売るのじゃ?」

商人「ええと…酒類と小麦…それから薬かな」

男「小麦!!じゃぁ北の大陸からの商船か」

婆「丁度キ・カイからの商隊が来ん様になって困っとった所じゃで良い取引が出来そうじゃな」

商人「ローグ?一度船に戻って荷を持って来てもらえるかな?…多分芋とか肉と交換出来そうだ」

ローグ「分かりやした…」

男「ちょいと俺は村の皆に話してくる」

婆「こっちじゃ…村の広場まで案内するぞい」

『広場』


婆「ここらに露店が集まっとるんやが村の衆しか居らんでこの通りじゃ」

商人「おぉ!!石炭があるじゃ無いか…食材も船に乗って無い物が多い」

狼女「キ・カイより随分安いね?」キョロ

商人「そりゃそうだよ…これが適正な値段さ」キョロ

狼女「ナッツがすごく安い…買って!」

アサシン「…」シラー

商人「ん?僕が?」

狼女「そうだよ…今お金持ってるの商人じゃない」

商人「ハハまぁそうだね」チラリ

アサシン「…」シラー


フワフワ ドッスン


ローグ「適当に物資持って来やしたぜ?」

商人「丁度良かった!!ここで商売始めよう」

ローグ「へ~い!!はいはい寄ってらっしゃ見てらっしゃい…珍しい物沢山あるでやんすぅ!!」


ザワザワ ザワザワ

おい!!何処からか商人が来てる様だ

小麦が売ってるらしいわ

魔石もあるらしいぞ


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『気球の露店』


ワイワイ ワイワイ


商人「アクセサリー類をそんなに安く売って良いのかい?」

ローグ「どうせあっしらには要らんもんなんで良いっす…代わりに麻布が安く手に入れば良いでやんす」

商人「ハハなるほど値切る為の先行投資か」

アサシン「石炭は大目に買っても良いんだな?」

商人「うん…箱毎買ってしまえば少しだけど木材も入手できる」

アサシン「では買い入れて気球に積んでしまうぞ」

商人「どんどん買ってお金を回そう…お金が入れば村人も購入意欲が湧く筈」

狼女「魔石とブタを交換したいって言われてるんだけどどうしよう?」

商人「良いじゃない?生きたブタは君の好物だよね」

狼女「やった!!」

商人「アサシン!!オーガの牙がすごく安いんだ…全部仕入れてよ」

アサシン「ふむ…仕入れる品目を紙に書いてくれないか?」

商人「麻布…皮…糸…それからロープ…全部買い占めるかんじで良い」

アサシン「分かった…どんどん仕入れるから気球での運搬はローグに任せる」

ローグ「へ~い!!」


ワイワイ ワイワイ

『小島_キャンプ』


メラメラ パチ


女戦士「樽に湯を少し足せ!ゆっくりだぞ?」チャポン

海賊1「へい!!」ドスドス

情報屋「ふぅぅ…雪の中で樽のお風呂…最高ね」チャプ

女戦士「フフ…私が風呂好きな事は知って居たのか?」

情報屋「綺麗好きな事は知って居たから…女海賊とは正反対」

女戦士「世話の焼ける妹だった…」トーイメ

情報屋「ドワーフの寿命はどのくらいあるの?」

女戦士「寿命?なぜその様な事を…」

情報屋「ほら?私は老いて来てる…あなたはまだ綺麗なまま…」

女戦士「そんな事か…純血のドワーフなら400年ぐらいだそうだ…私は混血だからいくつまで生きるか…」

情報屋「羨ましいわ…」

女戦士「済まんな…見せびらかすつもりは無い」

情報屋「ひとつ気付いてしまった…」

女戦士「んん?」

情報屋「精霊がエルフやドワーフを生んで人間よりも長い寿命を与えた理由…」

女戦士「何だ?」

情報屋「はるか昔…およそ4000年前の人間の寿命は20年くらいだった」

女戦士「混血させて伸ばそうとしたと言うか?」

情報屋「きっとそうよ…ただ出生率が問題だったみたいね」

女戦士「人間に純血と言う概念は無さそうだな?」

情報屋「もう失われたのね…少なからずエルフの血が混ざってると思うわ」

女戦士「エルフか…」

情報屋「嫌い?」

女戦士「嫌いと言う訳では無いが感情を読み取れなくてな…苦手と言うべきか」

情報屋「あ!!又気球が船の方へ…」

女戦士「本当だな…どうやら物資調達が上手く行っているらしい」

情報屋「どうする?もう戻る?」

女戦士「折角良い気持ちになった所だ…私もしばらく休む」

情報屋「そうね…ずっと気を張って居たものね」


チャプン モクモク

『地庄炉村_洞穴の宿屋』


ピチョン ポタ


商人「へぇ?変わった宿屋だなぁ…」キョロ

婆「ここらは木材が無いで穴の中に住まいを作っておるんじゃ」

男「手前が酒場になってる…寝床は奥の方を使ってくれ」

商人「お客さんは僕達だけかい?」

婆「そうじゃ…酒場には村の自警団の者が来るけぇ喧嘩せん様にな?」

商人「リカオン!!喧嘩したらダメだよ!!」

アサシン「フフ…」

狼女「あら?問題児みたいな言い方…」

婆「ごゆるりと休むが良い…ではのぅ」ノソリ


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ローグ「今乾かしてる布と皮は明日の朝持って来てくれる話になりやした…」

商人「うん…やっぱり布は手間が掛るだけ有ってそこそこの値段するね」

ローグ「お金無くなっちまいやしたか?」

商人「結構使ったけど収穫も大きいよね…まぁトントンだね」

ローグ「地庄炉村もちーっと潤ったと思いやす」

商人「ハハ…アクセサリーはまぁサービスか」

アサシン「全部豪族から奪った物か?」

ローグ「そーっすね…豪族は女を買う為にアクセサリーを沢山持ってるんすよ…あっしらには全く必要ないでやんす」

商人「おかげで随分節約出来たさ」


ドヤドヤ ゾロゾロ

おい見ろ!あの気球の商人達だ

女も来てるぜ?おっと…睨まれた

若者1「隣…失礼するよ」

若者2「酒場が狭いもんでね…おいオヤジ!!いつもの頼む」

爺「んぁぁ…今日は金払ってけよ」

若者1「商人さん達は何処から来たんだい?」

商人「北の方さ…商船が沖に待機してる」

若者1「この村は見ての通り…さもしい村でさ…商人さん達が来ると少し活気が出るんだ」

商人「その様だね…名産の布が上手に売れればもっと発展出来るのにね」

若者1「キ・カイから商隊がなかなか来なくなってねぇ」

商人「どうしてだろう?こっちに関税はかからない筈だけどな…」

若者1「道中の魔物が影響してるらしい…」

商人「オーガかな?」

若者1「分からないけど魔物に襲われたという噂が広まったのが商隊が少なくなった原因に思う」

商人「魔物討伐隊とか組んで退治しないのかい?」

若者1「近場はやってる…ただ遠いと中々行けなくてね」


若者2「あああああ!!俺のナッツ!!勝手に…」


商人「ん?」

狼女「…」モグモグ

若者2「ちょっと…それ俺の食い物なんだが…」

狼女「何?」シラー モグモグ

若者2「口が動いてるだろ!!俺のナッツ食ったな?」

商人「あたたた…ナッツもう一皿頼むから勘弁…」

ローグ「あっしも仲間に入って良いっすかね?」ニヤニヤ

商人「あ…いや…」

ローグ「ああああ!!あれは何だ!!?ま…まさか!!」ユビサシ

若者1「んん?」キョロ

ローグ「ふむ…見間違いでやんす…」モグモグ

狼女「…」モグモグ

若者1「ちょっと…あんたら何なの?俺のナッツは?」タジ

『酒場』


ウハハハハ…


婆「なんや騒がしい思うたら仲良うしとる様やな?」ノソノソ

爺「婆さんも一杯飲んで行くんかや?」

婆「蒸かした芋を持って来たんじゃが…」


狼女「…」ピン!! バチッ!!

若者1「痛てっ!!ナッツを無駄にするなぁぁ」

狼女「無駄にしてるのはあんただよ…食べれば済む」ピン!! バチッ!!

若者2「姉ちゃんこっちに頼む…あーんぐり」

狼女「…」ピン!! パク!!

若者2「ストラーイク!!」モグモグ


婆「お前さん達…蒸かした芋を持って来たが食うか?」

ローグ「ぉお?ナッツだけじゃ物足りなかった所なんすよ」

婆「そうじゃろそうじゃろう…」

狼女「!!?」クンクン スック

若者1「姉ちゃんもう一回俺にも頼む」

狼女「…」シュタタ キョロ

アサシン「ん?リカオンどうした?」

狼女「何か臭う…西の方角」クンクン


ガタガタガタ ブモモー ゲヒゲヒ


若者1「荷車の音だ…外で何か有ったな?」ダダ

『ヤクの荷車』


ブモモモー ガフガフ


馭者「たたた…助けてくれぇ」

若者1「どうした!!何が有った!?」

馭者「直ぐそこでオーガに襲われて…」ゴクリ

子供「パパ?大丈夫?」

馭者「こら!!隠れて居なさい」グイ

若者1「オーガ退治は任せろ…誰か!!手当してやってくれぇ!!」ダダ

若者2「いつも通りだな?行こう!!」ダダ


狼女「何か訳がありそう…どうしよう?」

商人「ひとまず父親の方を手当してあげようか」

ローグ「怪我を見せてくだせぇ…出血はどんな感じでやんすか?」

馭者「わたしの怪我は大した事無い…家内の方を見て欲しい」

女「うぅぅ…」

ローグ「応急手当はあっしがやりやす…商人さん薬草とちょっとだけエリクサー頼みやす」

商人「え…あ…わかった」タッタ


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『宿屋』


よっこらせっと…


ローグ「ひとまず落ち着きやしたね?」

商人「命の危険は無さそうで安心したね…」

ローグ「どうやらキ・カイから逃れて来たらしいんすが…こら同じ様な人が増えるかも知れんすね」

商人「うん…」

ローグ「キ・カイで何が起きてるんすか?」

商人「話せば長いんだけど…10歳前後の子供を戦争に利用しようとしているのさ」

ローグ「戦力にならんと思うんすが…」

商人「キラーマシンにしてしまうんだよ…10歳前後が一番適合するらしい」

ローグ「まじっすか…そら許せんでやんす」

商人「子供の兵役を可能にする法案が可決してしまう前に逃げて来たのは正解だと思う」

ローグ「ここに逃げて来ても同じキ・カイの領地っすよね?」

商人「そうだね…キ・カイで丁度良い子供が居なくなればこちらに来るのも時間の問題…」

ローグ「そんな狂った法案が簡単に可決するとは思えんのでやんすが…」

アサシン「公爵なら可能だ…」

商人「オークとの戦争で思った様に戦果が出て居ないんだ…キラーマシンは何年も前から増産してる」

ローグ「なんでオークを攻め立てているでやんすか?」

商人「さぁね?どうせ古代遺跡とかそういう奴だよ」

アサシン「やはり公爵を野放しには出来んという事だ」

商人「孤児たちを逃すだけじゃ問題は解決しないか…」

狼女「ねぇ…良い話が聞こえて来た」

商人「ん?何かな?」

狼女「地庄炉村に来る道中で浜辺に大きな骨を見たらしい」

商人「大きな骨?」

狼女「その周辺は朽ちた馬車が沢山放棄されて居て…恐ろしくて急いで通過したとか」

商人「良い話じゃないの?」

狼女「私が貝殻で聞いた音は…近くに大きな建造物…多分大きな骨だったんだと思う」

商人「おおお!!詳しい場所は聞こえないかい?」

狼女「ちょっと待って…今聞き耳立ててるから」

『翌日_貨物用気球』


フワフワ ドッスン


ローグ「頭ぁぁ!!飛空艇の場所がほぼ特定出来やした…やっぱりここから西の方角っす」

女戦士「方角と距離は合わせて言えと何度言えば分かる」

ローグ「ええと…馬車で10日程…なもんで船ならえーと…」

女戦士「気球を使って先行して探してこい…幽霊船は縦帆が無いから直行は出来ん」

ローグ「もし見つけたらここまで吊って来る感じっすかね?」

女戦士「他に方法はあるか?」

ローグ「遠すぎるっす…途中で落としちまう可能性がありやす」

女戦士「では正確な場所を教えろ…近くの沖まで移動しておいてやる」

ローグ「海図に場所を記して置きやす…」ダダ

商人「捜索に行く人員はどうする?」

女戦士「アラクネーは不死者を襲うと思うか?」

アサシン「フフ…それなら私と商人が適任だな…生身では毒が厄介だ」

女戦士「分かった…気球の操舵はローグ…飛空艇の回収作業は商人とアサシンで行け」

狼女「私は?」

女戦士「気球を出来るだけ軽くしたい…身軽なリカオンは縦帆の修理に回って欲しい」

狼女「…」シュン

『甲板』


ザブン ギシギシ


情報屋「フフ連れて行って貰えなくて拗ねているの?」ヌイヌイ

狼女「悪い?」ヌイヌイ

情報屋「アラクネーの麻痺毒は強力だから仕方ないわね」

狼女「布を縫い合わせる作業は地味で退屈」ヌイヌイ

情報屋「これも大事な仕事だと思うわ?早く仕上げないと船を動かせないのだし」


女戦士「碇を上げろ!!一旦沖へ出る!!進路11時!!」


情報屋「出港ね…急いで縫わないと」アセ

女戦士「リカオン!マストに上がれるな?指示通りロープを掛けろ」

狼女「え!?私?」

女戦士「人出が足りんのだ…早くロープを持って上に上がってくれ」

狼女「ロープを上に?ってこれめちゃくちゃ重いじゃない…」

女戦士「つべこべ言わず持って上に上がれ!!」


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『翌日_貨物用気球』


フワフワ バサバサ


ローグ「水も何も積んで無いもんで喉がカラカラっす…」

アサシン「ワインならあるぞ?」

ローグ「一口頂きやす…」グビ プハァ

アサシン「どうだ?不死者の気分は」

ローグ「ワインが格別美味いっすねぇ…」

商人「ローグ!!見つけた!!巨大な骨…なんの骨だ?」

ローグ「情報通りっすね…高度下げやす」グイ

アサシン「ふむ…あの大きさからするとクジラだな」

商人「クジラ…そうだ未来君の壁画にもクジラが書かれていた…関連するのか?」

ローグ「幽霊船の居場所が分からんのですが…」

アサシン「ひとまず私が先に降りて状況を見て来る」

ローグ「クジラの上で待機っすね?」

アサシン「うむ…」



『クジラの骨_上空』


フワフワ バサバサ


商人「見えた!!間違いない飛空艇の船体が見える」

ローグ「球皮も帆も無くなっていやすね…」

商人「そうか…船体は魔女が樹脂に変性させたから傷まずに残ってるんだ…」

ローグ「な~んか見たく無い物を見ちまいそうで…」

アサシン「ロープを降ろして先に降りるぞ?」シュルシュル

ローグ「アサシンさんロープを何かに結んで下せぇ…気球が安定しやす」

アサシン「分かった…」

商人「ちょっと待った!遠くにオーガがうろついてる…3体くらいだ」

アサシン「クックック…オーガが不死者を襲うと言うか?食う所が無い」

商人「この辺りはオーガが居るから人が通らなかったんだ…不幸中の幸いか」

アサシン「では降下する…」シュルシュル シュタ

商人「僕も降りようかな…」

ローグ「ちっと待って下せぇ…アラクネーが出て来やした」

商人「え!?」

ローグ「中型が3体…小さいのは一杯居やすねぇ…」

商人「お見合いしてるね…」

ローグ「戦闘にはならん感じっすかね?」

商人「大丈夫そうだ…僕も降りて来る」シュルシュル

ローグ「あああああ!!ちょ…あっしだけ置いてきぼり…」

『クジラの骨_埋まった飛空艇』


シュルシュル シュタ


アサシン「商人も降りて来たか…どうやら大型のアラクネーは居ない様だ」

商人「襲って来ない?」

アサシン「うむ…しかし毒は持って居る筈」

商人「なるほど…だからオーガも近づかないんだね」

アサシン「飛空艇は少し掘り出す必要がありそうだな…入り口が埋まっている」

商人「中を覗いて…ああ!!中はクモの巣になってる…」

アサシン「難儀しそうだ…」

商人「でも見える…石化してるよ!!横たわっているのが魔女…四つん這いなのが女海賊」

アサシン「盗賊は居ないのか?」

商人「どうなってるんだ?酒の瓶を持ったまま石化してる‥」

アサシン「クックック…状況が読めんのだが3人共無事の確認は出来た訳だ」

商人「クモの巣がクッションになったお陰でどこも欠けて無い…よしよし」

アサシン「さぁどうする?」

商人「アサシンは飛空艇の隅にバランスよくロープを掛けて行って…僕は周りを掘り起こす」

アサシン「アラクネーが暴れなければ良いが…」

商人「暴れたって不死者に何も出来ないよね…完全無視で」

『埋まった飛空艇』


ザック ザック


商人「おーい!!気球で少し持ち上げてぇぇ!!」

ローグ「あいさー!!」


グググ ズズズズ


商人「少し横にぃぃ!!」

ローグ「へ~い!!」ズズズズ

商人「今の状態で待機ぃぃ!!」

ローグ「はいなー!!」

商人「さて…余分な砂を落としてこのまま運びたい所だけど…」

アサシン「商人…見てみろ」ユビサシ

商人「ハッ!!ホムンクルス…」

アサシン「この機械の犬はホムンクルスなのか?」

商人「そうさ…僕が機械の犬にホムンクルスの超高度AIを搭載したんだ…」

アサシン「どう見る?クジラとどうやって意思疎通したと思う?なぜクジラに抱かれている?」

商人「犬笛が首にぶら下がって…そうか音だ…音を使ってクジラの言葉を発する事が出来たんだ」

アサシン「つまりクジラに飛空艇を守って貰った訳か」

商人「そうだね…でもホムンクルスの超高度AIは数年でエネルギー切れを起こした」

アサシン「クジラは友人が死んだと思ったわけだな?…そして抱いたまま此処に…」

アサシン「私はな…どうも海の生物と何かの縁を感じる…不思議なのだがこの状況に強く心を打たれる」

商人「これ明らかに死んでも守ると言う姿だよね?」

アサシン「うむ…」

商人「未来君の壁画に描かれて居たクジラ…もしかして数百年を超えた再会だったのかもね」

アサシン「海の中にも語り継がれない物語がある…そういう事か…」

商人「なんか弔いが必要に思えて来た」

アサシン「海に返すか?」

商人「どうすれば弔えるだろう…命を懸けて守ったのだからずっと一緒にした方が良い気もする…」

アサシン「私達の仲間に加えるのはどうだ?」

商人「え?どうやって?」

アサシン「守って貰うのだ…死しても尚守る…本望では無いだろうか…」

商人「骨を持って帰って材料にするのか…悪い案じゃない」

アサシン「お前もホムンクルスをここに置いて行く気も無いのだろう?なら一緒に連れて行くべきだ」

商人「ふむ…そうだね…よし!クジラの骨も残さず全部運ぼう」

『幽霊船_船首』


ユラ~リ ギシ


海賊「オーライ…オーライ」


フワフワ ドッスン


ローグ「頭ぁぁぁ!!小舟を岸に付けて下せぇ!!」

女戦士「なに?どういう事だ?」

ローグ「他にも資材を大量に運びたいんす!!」

女戦士「回収した飛空艇以外にも何かあるのか?」

ローグ「木材の代わりになるクジラの骨でやんすぅぅ!!」

女戦士「ふむ…小舟を降ろすから気球で引っ張って行け…今は人手が足りん」

ローグ「分かりやしたぁぁ!!小舟にロープ括りつけて下せぇ!!」

女戦士「小舟を降ろせぇ!!」

海賊「へ~い!!」ドタドタ


--------------


女戦士「よく飛空艇を回収してくれたな…」ツカツカ

商人「3人共石化して居るけど無事だよ…エリクサー有ったよね?」

女戦士「樽に半分ほど残って居る…足りれば良いが」

商人「あと飛空艇の中がアラクネーの巣になってるから気を付けて」

女戦士「それは厄介だ…」

商人「君は虫を使えないのかな?」

女戦士「使役したことなど無い」

商人「魔女がいつだったか言って居たんだ…ドワーフにはそもそも適性が有るかもしれないってね」

女戦士「私は虫と話した事なぞ無いのだ」

商人「金属とか石の声は虫の声らしいよ?」

女戦士「…」ジロ

商人「あぁゴメン君の秘密なのかもしれない」

女戦士「…」


”怖い…怖い…怖い…怖い…”


女戦士「フフこの落ち着かない感じはそういう事だったか…」

商人「僕には良く分からない」

女戦士「飛空艇に誰も近づけるな!!」

海賊「へ~い!!」ドタドタ

『月夜』


ユラ~リ ギシ


情報屋「飛空艇はあのまま放置なの?」

女戦士「アラクネーが落ち着くまでは手が出せん…巣を守っているだけだから落ち着くまでそっとしておく」

情報屋「あなたも虫の声が?」

女戦士「この場合聞こえると言えば良いか?」

情報屋「フフ…あなたも導かれし者かぁ…」

女戦士「導き?」

情報屋「大地の声…虫の声…きっとそれは大いなる神の声」

女戦士「どうした?非科学的な事を言うとは情報屋らしくない」

情報屋「私は歴史を紐解いて少し分かった気がする…神が…いえ精霊があなた達に何を与えたのか」

女戦士「ドワーフの血の話か?」

情報屋「それもあるけれど…私は今大地の声と言ったでしょう?」

女戦士「ふむ…」

情報屋「それはエルフが言う森の声と同じ様に大地が持つ大いなる意思…それが聞こえるあなた達は勇者と言い変えて良いと思うの」

女戦士「大地の精霊と言えばノームと聞くが…」

情報屋「きっとその当時のホムンクルス本人」

女戦士「ふぅむ…大地の声か…意識した事は無かったのだが改めて聞くとその様な気がしないでも無いな」

情報屋「ねぇ?不思議だと思わない?虫があなたの妹を守ってる…大地の加護では無いの?」

女戦士「大地の加護…」ブルリ

情報屋「私は神の意思の真理に近づけててワクワクが止まらないわ」

女戦士「今何かに触った気がする…鳥肌が立った」

情報屋「神を理解したのよ…真理に触れたの」

『翌日』


フワフワ ドッスン


ローグ「み…水を…枯れちまいやす…」ヨタヨタ

女戦士「物資はすべて積み終わったか?」

アサシン「今ので最後だ…出航して構わん」

女戦士「ご苦労!ローグ…後で褒美をやる」

ローグ「姉さんは…無事っすか?」

女戦士「今はまだ飛空艇に入れん…アラクネーを荒立てるな?」

ローグ「そーっすか…あっしは水分補給してちぃと休みやす…」ヨタヨタ


女戦士「碇を上げて帆を張れぇ!!西進して一度基地へ返る!!」


海賊共「へ~い!!」ドタドタ

アサシン「…」グビ ゴクリ

女戦士「どうした?浮かない顔をして居るぞ?」

アサシン「そう見えるか?」

女戦士「失恋でもしたかのような顔をしている」

アサシン「フフ…クジラに愛を見せつけられたのだ」

女戦士「お前が愛を語るとはな…」

アサシン「気にするな…何でも無い」


ザブ~ン ユラ~リ


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 時の砂編

   完

『海賊の基地』


トンテンカン トンテンカン


女戦士「竜骨の補強はミスリルを使って構わん!!」

女戦士「フォアからスプリットへの縦帆は3枚にしろ」

女戦士「ミズンマストへの横帆は不要だ…外して他への縦帆に回せ」


アサシン「大幅な改修だな?」グビ

女戦士「旋回性重視に変更だ」

アサシン「古代の兵器対策か?」

女戦士「フフ…海戦の素人にはそう見える様だな」

アサシン「大砲は移動式が一門…商船とさして変わらん…小回りが利く程度か」

女戦士「素人が口を挟むな」

アサシン「クックック…商人達に置いて行かれて暇なのだ」

女戦士「連れて行ってくれと懇願すれば良かっただろう」ニヤ


パタパタパタ


女戦士「商人が戻って来た様だ…大きなプロペラ式気球とは…」

アサシン「これで退屈が凌げる」

女戦士「情報屋に連絡してくれ…エリクサーが届いたとな」

『プロペラ式気球』


フワフワ ドッスン


狼女「結局私が操作した方が早かったじゃない!」

商人「もっと簡単に操作できると思ってたんだよ」

狼女「あんたは何て言うかセンス無い…風の匂いを嗅ぐ感じだよ」

商人「分かった分かった!!僕は何をやってもセンス無いよ」


ローグ「遅かったっすねぇ…これがキ・カイの新型輸送用の気球っすね?」


商人「ごめんごめん…エリクサーの調達に手間取ったんだ」

ローグ「あっしが運びやす…どれでやんすか?」

商人「手前に置いてある樽だよ」

ローグ「これっすね?…よっこら…あれ?」

商人「樽で半分しか調達できなかった…これで足りれば良いけど」

ローグ「しゃーねーっす…じゃぁあっしは急いで運んで行きやす」

商人「3人の容態はどう?」

ローグ「魔女さんだけ目を覚ましたんすが混乱してるみたいでやんす」

商人「混乱?」

ローグ「ずっと夢幻を見ていたらしいんす…記憶を書き残すと言って書き物してるんすが…」

商人「??」

ローグ「未来君を破門したやら…隕石がどうやら…兎に角混乱してるんす」

商人「まぁ良いや…今はまだ話せない感じだね?」

ローグ「落ち着くの待った方が良さそうっすね」

商人「僕は調達した物を降ろしてから後で行くよ…」

ローグ「あっしもエリクサー届けたらすぐに戻って来るんで待っていて下せぇ」

『基地_船着場』


トントントン ギコギコ


狼女「女戦士!!頼まれてた盾を大量に仕入れて来たよ」ガサー

商人「クロスボウもこの通り…よいしょ!!」ドサー

女戦士「ふむ…キ・カイの2連式だな?」

商人「うん…関税の影響で商船が入って来なくなったからすごく安かった」

女戦士「石炭は高く売れたか?」

商人「ハハ思い通りだよ…地庄炉村で買った価格の倍以上で売れたさ…生活必需品は何でも高騰してる」


スタスタ


アサシン「商人!ここに居たか…」

商人「あぁ今資材を降ろし終わった所さ…僕を探してた?」

アサシン「ふむ…情報屋がギャングの様子を心配して居てな…話が聞きたいと言って居る」

商人「あぁ…その件か…」

アサシン「ギャングとは誰だ?」

商人「キ・カイの地下に住む孤児の集まりさ…アサシンは知らなかったのか…」

アサシン「やっと理解した…10歳前後の子供が含まれている訳か」

商人「うん…情報屋の子供がギャングの中に居てね」

アサシン「今の状況だと何処かへ避難させた方が良さそうだ…」

商人「そう上手くも行かないんだよ…彼等には彼らの意思があってね…まぁハッキリ言うと言う事聞かない」

アサシン「兎に角情報屋が話を聞きたがっている…行ってやれ」

商人「分かったよ…じゃぁリカオン!そういう事で僕は行って来る」ノシ

狼女「どうして置いて行こうとするのよ!!」カチン

アサシン「リカオン!私と共に来い」ヤレヤレ…

狼女「ベロベロベロベロベーーー」シュタタ

商人「…」アゼン

『居室』


ガチャリ バタン


魔女「そうじゃ…確か重力の方陣は天体の周期を求める数学じゃった…」ブツブツ

魔女「時空の方陣は重力とほぼ同じじゃ…2枚の方陣に穴を開け三次元化した物がワームホール」ノソノソ

魔女「つまりじゃ…時間の流れは一方向では無い…時空を超えて未来へ行く事は可能なのじゃ…」ブツブツ

魔女「…では夢幻とは何かをもう一度考え直してみよう…」ノソノソ


商人「あ…」ポカーン

情報屋「商人!来たのね…キ・カイの様子は?ギャング達は無事?」

商人「あぁ…今の所変わりは無いよ」

情報屋「ホッ…安心したわ」

商人「でも子供の徴兵制が可決して混乱してる最中だよ」

情報屋「混乱とは?」

商人「親が子供を隠してるんだ…そうなる事は初めから分かってるのに」

情報屋「尚更ギャング達が標的になってしまう…」

商人「いや…彼らはちゃんと逃げ道を知って居るらしい」

情報屋「どうして分かるの?」

商人「ハーフオークの子がオークと結託を始めてるんだ…オーク側に行けるんだよ」

情報屋「それは影武者さんからの情報?」

商人「うん…」

情報屋「完全に戦争の真っただ中に行ってしまうじゃない」

商人「キラーマシンにされてしまうよりはマシさ…」

情報屋「どうにか出来ないの?」


だぁぁぁぁ!! なんじゃこりゃぁぁ!!


情報屋「ハッ!!盗賊が目を覚ました…」ダダ

盗賊「目が見え無ぇ…どうなってんだ?」

情報屋「まだ動かないで?石化が完全に解けていないわ…エリクサーを一口飲んで」

盗賊「んあ?その声は情報屋か?」

情報屋「聞こえるのね?私よ?」

盗賊「喉がカラカラなんだ…声が出しにきい…ゲホゲホ」

情報屋「はい…エリクサーよ」クイ

盗賊「むぐ…」ゴク

情報屋「ホラ!ワインもあるわ?」

盗賊「おぉ!!ソレだソレ!!見え無ぇ!!」スカ スカ

情報屋「ここよ…手を」グイ

盗賊「ヌハハ…瓶だな?ようし!!手に入ったらこっちのもんよ…」キュポン

情報屋「良かった…元気そうで本当に良かった…」プルプル

盗賊「むぐっむぐっ…ぷはぁ!!」ゴクゴク

商人「アハハ…酒飲みながら石化したのに目を覚ましてやっぱり又酒か…」

盗賊「石化?何の話だ?俺はハテノ村で酔いつぶれて寝てたんじゃ無ぇのか?」

商人「ハテノ村?」

盗賊「そうよ…ハテノ村開拓して酒場作っただろ…そういや情報屋はいつ来たんだ?」

情報屋「…ちょっと待って…メモするわ」カキカキ

盗賊「いやぁぁしかし良く飲んだ…海賊王の爺が持って来た酒がまたキツイ酒でよ」

商人「これは…」

情報屋「…」コクリ

盗賊「んん?何かしゃべれよ…俺は目が見えなくて寂しい訳よ」

商人「ハハそうか…もっと思い出話聞かせてよ」

盗賊「どっから話せば良いんだ?そうだな…情報屋はハテノ村に来たこと無いだろ?初めから説明してやる…」


お前が居ない間俺はハテノ村の子供達と知り合った訳よ…ほんで…

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『翌日』


んがががが すぴー


情報屋「…やっと寝たわ…そっちはどう?」

商人「魔女の独り言を僕一人でメモするのはちょっと厳しい…手伝って」カキカキ

情報屋「魔女は寝ないつもりね?」


魔女「アーデモナイ…コーデモナイ…」ブツブツ


商人「難しい言葉ばかり使うんだ…」メモメモ

情報屋「魔女は自分でメモを取って居るわね…」

商人「もうメモ取らなくて良いかな?」

情報屋「今まで取ったメモを見せて?」

商人「ふぅ…やっと解放された」

情報屋「…ええと…」

商人「何か分かる?」

情報屋「やっぱり!!魔女も地軸の移動を経験してる…子供が生まれない原因の事も…」

商人「そうだね…そんな事言ってた」

情報屋「盗賊も一貫して子供が生まれない病気の事を言ってて…子供達を守る為にハテノ村の開拓をしたと…」

商人「これは同じ夢幻を見た…もしくはそこに居たという事だ」

情報屋「未来君の証言とも完全に一致するわ…つまり未来君は本当に未来を変えたという事」

商人「待てよ待てよ…寝ると記憶を失うと言ってたな」

情報屋「次元と調和するというアレね…」

商人「次に盗賊が起きた時には夢幻の記憶を少し忘れてる筈だ…そしてどんどん今の次元に調和して行く」

情報屋「魔女はそれを知って居るから一人で全部書き残そうとして居るのね」

商人「なんか分かって来た…次元を飛ぶとそれまでの事は夢だと認知してしまうんだな?」

商人「どんどん忘れて行って顔も名前も思い出せなくなる…」

商人「どうすれば固定化出来る?」

情報屋「寝ない事…未来君は寝ないで維持しようとした」

商人「盗賊を叩き起こそう…」ダダ


ポカ!


盗賊「んが!?んがががが…すぴー」zzz

情報屋「それじゃダメよ…」

商人「どうやって起こせば良い?」

情報屋「私がやってみる…」


情報屋「盗賊?起きてる?私子供が出来たみたいなの…欲しがってたでしょう?男の子よ?」


盗賊「んあ?…マジか?男だって?」ムクリ

情報屋「ほらお腹を触って?話しかけてみて?」

盗賊「おおおおお!!ここに居るのか…おーーい!!聞こえているかぁぁ!?」

商人「…」ポカーン

情報屋「あなたずっと寝て居たのだからもうしばらく寝なくて良いでしょう?」

盗賊「ちっと頭がぼーーーっとしてよ…俺何してたんだ?」

情報屋「ちょっと石化してただけ…」

盗賊「石化?んぁぁぁ覚えて無ぇ…ちっと水くれ無ぇか?」

情報屋「そうね…お酒飲み過ぎね」


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『基地_船着場』


トンテンカン ギコギコ


デッキ部に盾を並べて配置しろ

クロスボウは盾に隠した位置だ


女戦士「!?商人か…聞いたぞ…盗賊が目を覚ました様だな」

商人「うん…盗賊も記憶の混乱が起きてるよ」

女戦士「無事ならそれで良い」

商人「そろそろ女海賊も目を覚ますんじゃないかな」

女戦士「私が行ってやった方が良いか?」

商人「そうだね…僕よりはずっと良い筈」

女戦士「お前に又お使いを頼みたいのだが…」

商人「何かな?」

女戦士「妹の飛空艇を修復する為に金属糸が必要になると思うのだ」

商人「あぁキ・カイで売ってるね」

女戦士「それから気球の球皮…」

商人「球皮はピンキリだね…好みも有ると思うんだ」

女戦士「そうか…う~む…」

アサシン「私に案がある…クジラ型の球皮はどうだ?」

商人「お!?それ良いね」

狼女「そんな形の球皮なんかあるの?」

商人「細長い球皮は結構あるんだ…作らせれば良い」

アサシン「クジラの形状は私がデザイン出来る…意を汲んでくれる職人が居るかどうかだが…」

商人「探すよ…ただ資金が僕のお金だけじゃ足りないかも知れない」

女戦士「私の船に魔石とウラン結晶なら沢山積んであるが?」

商人「それはダメだよ…キ・カイにエネルギーを与えてはダメだ」

女戦士「キ・カイ政府に回らなければ良いのだろう?民は寒くて凍えて居るのでは?」

商人「う~ん…困窮している民からお金を搾り取るのは違う気がするなぁ」

アサシン「機械の犬に入っているエネルギーの尽きた機械はどうだ?」

商人「お!!?使い古した超高度AIか…なるほどもう使えない」

アサシン「闇商人としてキ・カイ政府に高額で売りつけるのだ」

女戦士「公爵は闇商人が白狼の一味だと知って居るのではないか?」

商人「いやそれは無い…知って居たとすれば僕はもう此処に居ない筈だよ」

女戦士「ではキ・カイから資金を搾り取る良いチャンスだ」

商人「一度遺物を研究している学者とコンタクトしてみる」

『新型貨物用気球』


スタスタ


アサシン「今回は私も同行する…調べたい事もあるからな」

商人「リカオンは?」

アサシン「勿論一緒に来る」

商人「良かった…気球の操作に自信が無くてさ」

アサシン「帆が付いて居ない様だが?」

商人「まぁプロペラで進むんだけど気付いたら全然違う方向に向かっててね…」


シュタタ スタ


狼女「…」ニヤニヤ

商人「ハハ分かってるって…君の力が必要だ」

アサシン「では行こう」スタ

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『上空』


パタパタパタ


アサシン「…これはどうにか改良した方が良い」

商人「やっぱりそうだよね…ちょっと遅いよね」

アサシン「我々が帆付きの気球に慣れているせいでもあるが…」

商人「荷が大量に乗せられるのだけが利点」

アサシン「本来は沖へ停船している船への物資運搬用なのだろうな」

商人「リカオン?改造出来たりしないかい?」

狼女「無理…」

商人「ハハやっぱりそうだよねぇ…」

アサシン「帆船を良く知って居る盗賊か女海賊に頼むのだな」

商人「海賊の基地に戻ったら頼んでみるよ」


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『後日_商人ギルド大部屋』


ガチャリ バタン


商人「寝泊まりはこの部屋でお願い…僕は学者とコンタクトする調整とかで出かけてしまうから自由にしてて」

アサシン「護衛は要らんのか?」

商人「う~ん…」チラリ

狼女「…」ニヤ

アサシン「私は金をあまり持って居ない…リカオンをよろしく頼む」

商人「ちょ…」

狼女「フードをどっかに無くしたんだ…お金頂戴!」

商人「…」アタタタタ


--------------


『隠し部屋』


カチャリ ギーー


商人「戻ったよ…近況を教えて欲しい」

影武者「はい…この方は以前訪ねて来られた…」

商人「あぁ紹介して居なかったね…僕達の仲間さ」

影武者「そうでしたか…追い返して済みませんでした」ペコリ

狼女「…」チラリ

商人「それで…例の法案可決の影響とかどうなってる?」

影武者「徴兵の具体的な内容が通知されて落ち着きを取り戻して来ました」


徴兵は10歳~16歳までの子供が強制的に軍へ編入される物なのですが

17歳になるまで軍の学校へ通った後…退役するという内容でした


商人「つまり軍事学校だと言うのか?」

影武者「はい…一時子供を隠す動きがありましたが今は落ち着いて居ます」

商人「くそぅ!!それじゃ子供の数人がキラーマシンに変えられても脱走とか事故だとか何とでも言い訳が出来る!!」

影武者「…」

商人「他に変わった事は?」

影武者「魔石が供給過多で値下がりしています」

商人「関税が掛かっているのに何故?」

影武者「分かりません…ですから買い入れは一時ストップしています」

商人「調べる必要があるな…もしかすると古代遺跡からウラン結晶が大量に発掘されて居るかもしれない」

影武者「私もそう思います…関税を重くして流通が減っても自前でエネルギー確保出来る確約があったと思われます」

商人「マズいな…後手に回ってしまった」

影武者「ですがご安心ください…商人ギルドとしての損失は軽微です」

商人「今の所はね…一度本店を移した方が良いかも知れないなぁ…」

影武者「そうは思いません…軍の特需で鉄鋼と石炭の需要が高い為現状でも十分利益が出せます」

商人「チカテツ街道の奥か…」

影武者「はい…」

商人「でもそれではキラーマシン量産の手助けになってる…」ドン!

影武者「…」

狼女「私がその坑道を壊して来ようか?」

商人「いやそういう問題じゃない…壊した所で別の場所から仕入れるだけになる」

狼女「別の場所も壊せば良いじゃない」

商人「問題はソコじゃない…子供達が犠牲になってる事を明るみにして全員で抵抗しないとダメだ」

狼女「そんな事出来る?」

商人「魔女なら出来る」ギラリ

商人「魔女なら大勢の人を幻惑して真実を信じ込ませる事が出来る筈…それしか無い」


---------------


アーシロ コウシロ…

鉄鋼と石炭で利益確保する代わりにその他の物は価格を下げてみんなに還元しよう

とにかく流通が滞らない様に多少の負担は商人ギルドで受ける

キ・カイ僻地では商隊不足で物資の滞留が起きてるから商船はそちらに回そう


商人「あとこれは個人的に仕入れたい物資なんだけど…金属糸と気球の球皮を買い入れたい」

影武者「球皮?どの様な球皮でしょう?」

商人「職人と話を付けて欲しい…特注になるから図面は後で手配する」

影武者「予算はどの位で考えて居ますか?」

商人「そうだな…球皮だけで1000金貨くらい」

影武者「商人ギルドの資金から出すのですか?」

商人「いや…僕がお金を調達する…ギルドの資金には一切手を付けないよ」

影武者「分かりました…早速職人と話をしてみます」

商人「いつも悪いね…」

『地下_中央ホーム』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「ここで君のフードを買ってあげるよ」

狼女「お金頂戴!」スッ

商人「出来るだけ怪しい感じのフードを選んでくれるかな?」ジャラリ

狼女「どうして?」

商人「この後ちょっと危ない交渉に行くつもりなんだ…君は謎の人物という設定で行きたい」

狼女「危ないと言うのはどういう意味?」

商人「もしかすると殺されるかも知れない…君の鼻が頼りになる」

狼女「フフやっと楽しめるかぁ…」

商人「護衛頼むよ?」


-------------


『ジャンク屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


店主「いらっしゃい…ウシシシ久しぶりだね?又何か持ち込みかい?」

商人「まぁね?今回のは特別さ…買い取って貰えるかな」

店主「今度はどんな機械かねぇ…ウヒヒヒ」

商人「触るのは厳禁だよ?…この瓶の中に入ってる…まず鑑定してくれるかな」

店主「鑑定もタダじゃないよ?」

商人「分かってるさ…」チャリン

店主「どれどれ見せてみソラシド…」

商人「これさ…」スッ


-------------

店主「おぉ?…待ちぃ待ちぃ…おおお?」ジロジロ

商人「さぁそこまでだよ…返して」グイ

店主「待て待て待て…これを何処で手に入れたんか?」

商人「この人が北の大陸から持って来たらしい…」

狼女「…」ギロリ

店主「北の大陸…ちょっと待ちぃ!!店終いするけぇ…」ドタバタ

商人「これが何だか分かるかな?」

店主「顕微鏡で確認させて貰いたいんだけんども…奥の作業台まできぃ…」ドタドタ

商人「ビンから出さないで確認できる?」

店主「無理に決まっとろうが…顕微鏡で見んと鑑定できんがぁぁ…」ハァハァ

商人「じゃぁ少しだけね…空気に触れると酸化して価値が落ちるかもしれない」

店主「分かっとるわい!!見せぇ…」グイ


おおおお!!すんばらしいぃぃ!!

こんな細かいパーツにまで古代文字が記されて…


商人「はい終わり!!」グイ

店主「あぁぁん…もっと…もっと見せぇ」ハァハァ

商人「さてと…これを買い取れる人を探してるんだ」

店主「金貨100枚!!破格だよ?ウヒヒヒヒ」ジロリ

商人「何言ってるのさ…」

店主「即金!即金で今すぐ出す…」ハァハァ プルプル

商人「桁が2つ違う…金貨10000枚なんだ…そうだよね?」

狼女「…」ギロリ

店主「誰やぁぁ!!こいつはぁ!!」プルプル

商人「それは言えないらしい…」

店主「そそそ…そのビンの中に空気と埃がぁぁ…それじゃダメダ~メ」プルプル

商人「だからビンから出したく無かったんだよ」

店主「そりは…雑に扱ってはいけない物」ハァハァ

商人「知ってるさ…だから買い取れる人を探してるんだ」

店主「この店で買い取れる訳無ぇけ?」

商人「店主さん元は学者だとか言ってたじゃない…誰か知らないの?」

店主「イカンイカン…研究は私ががが…」ヨタヨタ ズデン!

商人「他のジャンク屋行って見よう…」スタ

店主「待てぇぇ~い!!」ドタドタ ズコー

店主「明日もう一度持って来ぃ…知り合い連れて待っとるじょ」

商人「行こう…」グイ スタスタ

『中央ホーム』


ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「ここから君の鼻が必要になる…誰かに付けられて無いかな?」

狼女「人が多すぎる…」クンクン

商人「さっきの人は結構有名な科学者だったんだよ…なんでかジャンク屋になっちゃってるけど」

狼女「怪しい動きは無かった様に見えたが?」

商人「あの人が監視されてるのさ」

狼女「ふむ…」

商人「店を閉めるのは明らかにおかしい行動だよね?」

狼女「警戒し過ぎでは?」

商人「ジャンクパーツ見た?」

狼女「見て無かった」

商人「あの人はキラーマシンの生みの親の一人だよ…あそこのジャンク品はキラーマシンをバラした物ばかり」

狼女「では軍の関係ね…」

商人「あ!!…カイサツ門の所で検問やってる」

狼女「え?もう動いてる訳?」

商人「ダメだな今日は地上に上がらない方が良さそうだ…デパチカ居住区の方に商人ギルドの支店があるからそっちに行こう」スタ



『商人ギルド支店』


ワイワイ ガヤガヤ


狼女「ここもあんたの建屋か?」

商人「まぁね…でも僕はこっちに殆ど顔を出さない」

狼女「あんたどんだけ金持ちなの…」キョロ

商人「建屋提供してるだけさ…運用資金はギルドの物で僕の財産じゃない」

狼女「ふ~ん…見た感じこっちで取引してる人は本店の方と違う層かな」

商人「うん…こっちは主にトロッコで運ばれた地下資源の取引所だね…鉄鋼と石炭が主だよ」

狼女「ここにも隠れ家あるの?」

商人「こっちさ…」スタ

『隠れ家』


ガチャリ ギーー


商人「入ってよ…」ガチャ ガサガサ

狼女「ちょっと…散らかりすぎね…足の踏み場もない」

商人「ハハ僕が一人で使うとこうなる」

狼女「これ全部ジャンクパーツ?」

商人「そうさ…キラーマシンの部品とか古代の謎の部品とか」

狼女「組みあがってるキラーマシンは動くの?」

商人「魔石入れたら動く筈…ただ本当の初期型だから戦闘には向かない」

狼女「ガラクタなのね…」

商人「でもトロッコ動かすのには使える筈なんだ…人力じゃ大変だから」

狼女「ふ~ん…あんたがそう言うと言う事はトロッコ使って何かするつもりだったんだ?」

商人「そうだよ…トロッコ使って古代遺跡の調査に行きたかったんだ…でも一人じゃ行けないからここで腐らせてる」

狼女「面白そうだ!!私が行ってあげる」

商人「ダメダメ…鍵開けが必要になるから盗賊が行かないと意味が無い」

狼女「じゃぁ盗賊呼んで来よう」

商人「正気に戻ったらだね…それよりさ?」

狼女「ん?」

商人「アサシンの用事って何なのか知ってる?」

狼女「あぁ…キ・カイに諜報に入ってる盗賊ギルドの仲間が音信不通なんだ」

商人「確認に来てるという事かい?」

狼女「そうなるかな…他にもキ・カイ要人の不審死が続いててその確認だよ」

商人「あ…知ってるぞ!盗賊ギルドが何か関係してるのかな?」

狼女「アサシンは一切関わって無い…それとセントラルでも同様に貴族の不審死が続いて居るんだよ」

商人「まさかそれは公爵が関わって居る?」

狼女「アサシンはそう思ってる筈…」

商人「なるほど読めて来たぞ…変化の杖で公爵が姿を変えたとして元の人は色々不審に思う…だから消される訳か」

狼女「公爵が誰に化けて居るのか分からないから魔女の助言が欲しい…それが私達の目的だった」

商人「待って…」

狼女「ん?」

商人「その逆もある…公爵は白狼の盗賊団に魔女が居る事を知って居るんだ」

狼女「それが何か?」

商人「公爵からすると何処に魔女が潜んで居るか分からない…公爵も誰が信用出来るか分からないんだよ」

狼女「だから不審死が起きてる?」

商人「まてよ…そもそも公爵の目的は何なんだろう?どうしてあちこちで政治的な影響を行使するんだ?」

狼女「キ・カイがオーク領に攻め入ってる理由も分かんないね」

商人「そうか!!古代遺跡だ…古代遺跡で何か探してるんだ」

狼女「外海の調査も?」

商人「そうだね…セントラルもキ・カイも古代遺跡を目指してる…目的はどちらも一緒なんだ」

狼女「古代遺跡に何が?」

商人「色々だね…古代兵器もそうだけどホムンクルスが居るかもしれない…他にも…ああああああああああ!!」

狼女「え!!?何?」

商人「分かった…古代の船だ…空飛ぶ古代の船を探してる」

狼女「それ何?」


オーク領にあった未来君の壁画にオークの起源が記されて居たらしい

そこには空飛ぶ船が描かれて居てオークは宇宙から来た外来種だと解釈してた

公爵の目的は人類の絶滅防ぐ為に僕達とは違った手段で黒の同胞団として暗躍して来た

そのすべての計画が僕達によって破綻してしまったんだ

最後の手段として空飛ぶ船を使って人類を逃す…考えそうな事だよ

狼女「その話だけ聞くと英雄の様だけど…それに振り回されてどれだけの人が亡くなって居るのか…」

商人「そうだね…迷惑な話さ」

狼女「人類の滅亡って本当に起きるのかな?」

商人「んんん…どうだろ?確か…一定以上人口が減ってしまうと遺伝的に繁栄出来ないとか聞いたな」

狼女「それは子供が生まれないという奴?」

商人「詳しくは良く分からない…ほら?近親相関を繰り返すと劣性遺伝するとかいうやつかな?」

狼女「わからんわからんわから~ん!!」

商人「まぁでも今いま滅亡を言われてもピンと来ないね」

狼女「兎に角公爵がどういう動きをするか分からないから盗賊ギルドは身動き取れなくなってる」

商人「アサシンがそれで苛立って居るのは理解出来たよ」

狼女「それで?これからどうするの?今日はここに隠れて終わり?」

商人「君はこの場所を覚えたね?」

狼女「うん…」

商人「お願いがある…アサシンを探してここまで連れて来てもらえないかい?」

狼女「あんたはどうするの?」

商人「僕は荷物が有るから隠れて居るさ」

狼女「ガラクタと一緒にここに置いて行けば良いじゃない」

商人「あ…ハハハそれもそうだね…待てよ良い事思いついた」

狼女「??」

商人「この超高度AIをここで闇商人が買い取った事にすれば良い…ちょっと帳簿に細工してくる」タッタッタ


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『カイサツ門』


ザワザワ ザワザワ

何なんだよ急に検問なんか…

ほら荷物全部出せ!!


商人「何か有ったのかな?」シラジラ

衛兵「軍の小型精密機械が盗難に遭ったそうだ…荷物は無いか?」

狼女「ちょっとおしり触らないで!!」

衛兵「何も持って居ないな?」

商人「どんなもの?」

衛兵「それは言えん!!ふむ…探知機は作動せんな…」

商人「お金は返してよ…」

衛兵「ほら持ってけ!!通ってよし!!」ジャラリ


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スタスタ


狼女「随分厳重な事…」

商人「怖いねぇ…クロスボウこっち向けられてると」

狼女「不死者でも怖い?」

商人「あれゾンビ対策で先端に銀を使ってるんだよ…」

狼女「フフそういう事ね」

商人「因みに…ウェアウルフもタダじゃ済まないよ」

狼女「そんな事知ってる」

商人「君は怖くない?」

狼女「まだ殺気が無いから撃って来ないの分かるし…」

商人「おーそういう感覚は僕分からないんだよなぁ…風が読めないのと一緒か…」

狼女「あんたはセンス無いから」

商人「はいはい…」

『翌日_本店の隠し部屋』


ガチャリ ギーー


影武者「商人さんお話が…」

商人「なに?」

影武者「支店の方で8000金貨の不足がありまして…」

商人「あぁ…連絡忘れてたゴメン」

影武者「どういう事でしょう?」

商人「金貨は支店の隠し部屋に置いてある」

影武者「何か有ったのですか?」

商人「ちょっと取引帳簿の細工をしたくてさ…闇商人が8000金貨支払った履歴を作りたかったんだ」

影武者「はぁ…」ポカーン

商人「金貨は今日戻しておくから安心して」

影武者「安心しました」

商人「それから多分数日の内に政府が僕にコンタクト取って来ると思うんだ」

影武者「どういった案件でしょう?」

商人「精密機械を取り引きしたいと言って来るだろうさ」

影武者「…なるほど帳簿の履歴はその為なのですね?」

商人「うん…僕が本当に金貨を支払った証拠が作りたかったんだよ…それでちょっとギルドのお金借りた」

商人「まぁこれで闇商人が8000金貨支払う価値の有る物だという事が知れ渡る訳さ」

影武者「その取引は私が対応するのでしょうか?」

商人「そうだなぁ…よし!!任せようかな」

影武者「分かりました…詳細を教えてください」


今日その精密機械をある場所に隠して来る

それで政府から入金が確認されたらその場所を教える…


商人「まぁ簡単な取引だね…直接会わないで書簡でのやりとりで出来る取引だよ」

影武者「高額取引ですが入金に応じますかね?」

商人「応じない場合他国に渡るとでも言っておけば良いさ」

影武者「私に任せて頂けるという事は金貨では無く相応の利権でも構いませんね?」

商人「任せる…とりあえず球皮を調達する資金にしたいだけだから」

影武者「お任せください」

『数日後_商人ギルド大部屋』


ガチャリ バタン


商人「呼んだかい?」スタ

アサシン「呼び出して済まんな…頼みたい事が出来たのだ」

商人「何かな?」

アサシン「盗賊ギルドの諜報員が地下牢に留置されている様なのだ」

商人「保釈金を用意して欲しい?」

アサシン「軽犯罪だから直に出て来るからそれは良い…ただ急ぎで話を聞き出したい」

商人「看守の買収かぁ…う~ん」


トントン


アサシン「ん?誰か来た様だ…」

狼女「影武者の匂い…」クンクン

商人「影武者かい?入っていいよ」

影武者「失礼します…」ガチャリ バタン

商人「どうしたんだい?」

影武者「役所から公示送達が届きました…これを」パサ

商人「なんだろう?」

影武者「…」

商人「なんだこれ…脱税の疑いで事情聴取?出頭拒否の場合は身柄拘束…アハハやってくれるねぇ」

影武者「私が出頭して黙秘でよろしいですか?」

商人「それは色々困るなぁ…物資買い入れとかその他取り引きがある」

影武者「脱税は一切やって居ませんので証拠不十分になるかと思います」

商人「多分8000金貨が何処から出て来たとか…そういう嫌がらせだね」

影武者「出頭拒否するのですか?」

商人「まぁ…向こうがどんな証拠を集めて来るか知らないけど…どうするかなぁ」チラリ

アサシン「黙秘で良いなら代わりに私が出頭しよう…丁度諜報員から話が聞きたかった」

商人「そう言ってくれると思った…」ニヤ

アサシン「キ・カイでの拘留期間はどの位になる?」

商人「向こうが用意する証拠次第だけど証拠無しの場合は法的に48時間で釈放しなきゃいけない」

影武者「無実が証明された場合拘留中の損失を相手に支払わせる事も出来ますので直ぐに釈放の可能性もあります」

商人「おぉ!!それ面白い…リカオン!大至急女戦士との取引証明貰って来て」

狼女「どういう事?」

商人「例の精密機械をドワーフの国に10000金貨で売る契約さ…取引日時は今日で良い」

影武者「フフ…」ニヤ

アサシン「なかなかイヤらしい作戦だな…法の強制力で無理矢理支払わせるか」

影武者「提出用の出納記録を用意しておきます…脱税をしていない証拠になります」

商人「じゃぁリカオン!ダッシュでお願い!」


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『海賊の基地』


シュタタ シュタタ


女戦士「ハッ!!ウェアウルフ?」ズザザ

ウェアウルフ「わたし!!わたし!!」シュタ

女戦士「リカオンか驚かせるな…どうした?何か有ったのか?」

ウェアウルフ「この書面にサインお願い!!契約印も必要だって言ってた」パサ

女戦士「なんだこれは…闇商人との取引契約だと?」

ウェアウルフ「事情が有って直ぐにこれを持って帰らないと…」

女戦士「ドワーフの国が精密機械を10000金貨で買い取る…だと?」

ウェアウルフ「ちょっと色々訳アリなんだよ…直ぐに戻らなきゃいけない」

女戦士「10000金貨は直ぐに用意出来んのだが…」

ウェアウルフ「要らない要らない!!これは契約不履行させる証拠に使うんだよ」」

女戦士「話が良く分からん」

ウェアウルフ「迷惑は掛けないから急いでサインを…」

女戦士「まぁ良い…詳しくは後で聞かせろ」スラスラ


ドタドタ ヨタヨタ


盗賊「いよ~う!!なんでウェアウルフになってんだ?」ヒック

ウェアウルフ「あ…盗賊!正気に戻った?」

盗賊「戻ったも何も初めから正気だ…ほんで何やってんのよ?」

ウェアウルフ「キ・カイで色々トラブルがあってね」

盗賊「今からローグと一緒に気球でキ・カイに行こうと思ってたのよ…乗ってくか?」

ウェアウルフ「本当に!?助かる!!」

ローグ「頭ぁ!!ほんじゃ調達行ってきますぜ?」

女戦士「悪いな…品目を記しておいた…持って行け」パサ

ローグ「どんぐりにキノコ…魔法の触媒…あぁぁ硫黄が手に入らんかもっすねぇ…」

盗賊「商人が向こうに居るからなんとかなんだろ」

ローグ「そーっすねぇ…とりあえず商人ギルドに行きやしょう」

盗賊「いんや…まず酒場だ」

ウェアウルフ「あのさ…どうでも良いけど早くしてもらえる?」

盗賊「おぉ悪りぃ悪りぃ…じゃ行くか!」


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『貨物用気球』


フワフワ バサバサ


盗賊「…ほんじゃ闇商人に成りすましてアサシンが牢屋の中か?」

ウェアウルフ「この契約書は無実の拘留で生じた損失を証明する為の物…分かった?」

盗賊「つまりキ・カイ政府に対する圧力の一つって訳か」

ローグ「その損失は払わなきゃならんのですかね?」

ウェアウルフ「さぁ?私に言われても分からない」

盗賊「法の番人が法を犯す訳に行か無えんじゃ無ぇか?」

ローグ「そもそもその取引が違法だとか言いだしかねやせんぜ?」

盗賊「こりゃ公正取引の証明書だよな?」

ウェアウルフ「無実の拘留という事になれば良いけど…」

盗賊「もしかするとキ・カイに入って即俺が動く感じになるかもな?」

ローグ「闇商人が脱税した証拠を盗む訳っすね?」

盗賊「てか脱税した証拠ってどうやって把握すんだ?」

ウェアウルフ「あ…マズい…変体が解けそう」

ローグ「ちょちょちょ…脱いだ着替えは何処にあるんすか?」

ウェアウルフ「破れてどっか行った」

盗賊「お前裸で帰るつもりだったんか…」

ウェアウルフ「考えて無かった…変体解けると寝ちゃう」

盗賊「なんだお前世話の焼ける…」

ローグ「空の樽があるんでそれに入れて商人ギルドまで行きやしょう」

ウェアウルフ「あとお願い…寝る」シュゥゥ

盗賊「マジかよこいつ…女海賊並みのアホだな」

ローグ「いやぁぁぁ良い眺めっすねぇ…」ジロジロ

盗賊「樽に突っ込むぞ?」ヨッコラ ドサリ

『夜_キ・カイ街道』


ヨッコラ ヨッコラ


衛兵「おい!!お前達2人…ここで何をしている?」ジロジロ

盗賊「何をしてるってお前…見りゃ分かるだろ…樽運んでるんだ」

衛兵「中身は何だ?」

盗賊「おいおい勝手に触るんじゃ無ぇ!!」

ローグ「衛兵さん何なんすか?持ち物検査かなんかでやんすか?」

衛兵「そうだ!!持ち物を見せろ」

盗賊「くぁぁぁ…何なんだよ何かあったんか?」ヨッコラ ドスン

衛兵「調べさせてもらう」

盗賊「なんだその探知機は?」


ピーーーーー


衛兵「持ち物を出せ!」

盗賊「嫌だと言ったらどうなるんだ?」

衛兵「脅すつもりか?笛を吹くぞ」スチャ

ローグ「盗賊さん…ここは従っときやしょう…」ゴソゴソ

衛兵「見せろ…ダガー2本と雑貨類…それから金貨の入った袋…」

ローグ「なんも持っちゃ居やせんぜ」

衛兵「次!!お前!!」

盗賊「ちぃ!!」ゴソゴソ ジャラジャラ

衛兵「なんだこの鍵の束は…ロックピック…お前は泥棒だな?」

盗賊「そんな証拠が何処に有んだよ」

衛兵「樽の蓋を開けろ」

盗賊「ほう?お目当ての物じゃ無かったらどうなるか分かってんだろうな?」ギロリ

衛兵「どうなると言うのだ?」

盗賊「二度とその口が利けん様にしてやる…良いか?俺は必ず実行するからな?」

衛兵「開けろ」

盗賊「…」パカ

衛兵「お…女?…裸」ジロリ

盗賊「さぁどうなんだ?お目当ての物なのか?」

衛兵「裸の女をどうした?」

盗賊「んなこた聞いて無えんだよ!!お目当ての物かどうか答えろ…」

ローグ「衛兵さん…悪い事言わないんで逃げて下せぇ…あっしには止められやせん」

衛兵「おい!!目を覚ませ…起きろ!!」ペシペシ

狼女「ううん…ん?」パチ

衛兵「おい大丈夫か?」

狼女「あれ?ここ何処?もう着いた?」

ローグ「ちっとトラブルっすねぇ…裸見えちまいやすんで隠してて下せぇ」

衛兵「お前達!!なんて紛らわしい事を…行け!!」

盗賊「んあ?何言ってんだコラ!!お目当ての物かどうか俺が聞いてんだろうが…答えろ!」

衛兵「違った様だ…早く行け!」

盗賊「ローグ!リカオン連れて先行っとけ」

ローグ「分かりやした…お大事に」ヨッコラ ヨタヨタ


衛兵「何をする気だ?」タジ

盗賊「俺は先に言ったよな?必ず実行するとな?」

衛兵「貴様!!衛兵を馬鹿に…」


ドン!! ボカッ!!


衛兵「ぐはぁ…」ドタ

盗賊「ベロ出せ…引っこ抜いてやる」グイ


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『商人ギルド』


ピーーーーー


商人「なんだか外が騒がしいな…どうしたんだろう?」

影武者「リカオンさん遅いですね…」


ローグ「おろろ?出迎えでやんすか?」


商人「ローグ!!どうして此処に…」

ローグ「リカオンを運んで来やした」

狼女「…」ヒョコ

商人「あ…樽の中か…」

狼女「変体が解けちゃって…」

商人「遅いから心配してたんだ…大部屋の方に」

ローグ「分かりやした!!リカオンが裸なんすが…」

商人「うわ…また着替えを破ってしまったね?」

狼女「急いでて忘れてた」

商人「まぁ良いや…それで契約書は?」

ローグ「ここに有りやす」パサ

商人「よし!間に合った…影武者!急いでこれを届けて」

影武者「はい…」スタ

商人「さぁローグ…中に入って」

『大部屋』


ガチャリ バタン


ローグ「いやぁぁぁここに来るの久しぶりっす…」ヨッコラ ドスン

商人「ほらリカオン?着替えだよ…今度こそ破らないで」ファサ

リカオン「眠い所を無理やり起こされたんだ…起きてから着る」

商人「そうか…まぁ寝てて良いよ…走って疲れただろうし」

リカオン「グルル…グゥ」zzz

商人「契約書がギリギリ間に合って良かった…提出期限が夜明けまでなんだ」

ローグ「リカオンさんに聞きやしたぜ?法の強制力で政府にお金を支払わせるとかなんとか…」

商人「まぁどんな言い逃れしてくるのかも楽しみだ…これで僕を拘束するリスクを向こうは知る訳だよ」

ローグ「支払うとは思えんのですが…」

商人「支払わなくても10000金貨の価値があると認めざるを得ない…まぁ駆け引きやってるのさ」

ローグ「無実を証明出来るんでやんすか?」

商人「んんん…向こうがどんな証拠揃えてくるか分からないのがねぇ…」

ローグ「実はっすね…盗賊さんも一緒に来てたんすが今衛兵と揉めててですね…」

商人「外が騒がしいのはそのせい?」

ローグ「そうでやんす…盗賊さんもキ・カイ到着したら早速俺の出番だとか言ってたんで…もしかすると…」

商人「どういう事?」

ローグ「わざと捕まろうとしてるかも知れんでやんす」

商人「あぁ…アサシンと合流しようとしてるって事?」

ローグ「へい…大体事情知ってるもんすから」

商人「衛兵と揉め事程度なら軽犯罪…まぁ直ぐに出て来るだろうね」

ローグ「ハイディングも出来るし鍵開けも出来るんで心配はして居やせん」

商人「まぁ僕達は何もせず高みの見物だね」

ローグ「もし有罪になったらどうするでやんすか?」

商人「何の脱税か知らないけど不足分を支払うのと仮釈放の分も支払う…」

ローグ「損しちまいやすよね?」

商人「どうかな?支払った分を上乗せした価格で精密機械を売る様にすれば良いだけかな…カードは僕が持ってる」

ローグ「なるほど…値下げには一切応じないスタンスを見せる訳っすね」

商人「そういう駆け引きなのさ…だから尻尾捕まえられない様に何もしないのが一番」

ローグ「向こうが買い取りを諦める可能性はどう考えていやす?」

商人「他国に技術を売られるのってどう思うだろうね?無視出来ると思う?」

ローグ「いやぁぁあっしには難しくて分からんす…」

商人「楽しみだねぇ…フフフ」

『キ・カイ地下牢』


ズダダ!! ドテ!!


盗賊「痛ってぇな…」スリスリ

看守「大人しくしてるんだなガハハハ」ドスドス

アサシン「クックック…アッハッハ…何をしている?」

盗賊「またえらくボロイ牢屋だ…話し声が丸聞こえじゃ無えのか?」

アサシン「お前は何故牢に入れられたのだ?」

盗賊「衛兵をボコボコにしてやったのよ…そんだけだ」

アサシン「ふむ…お前の怪我は大した事無さそうだ」

盗賊「まぁな?速攻降参したからよ…ほんで?そっちは何の罪状よ?」

アサシン「謂れの無い脱税」

盗賊「証拠は?」

アサシン「さぁな?」

盗賊「ちっと見て来るか?」

アサシン「…」ジロ

盗賊「まぁ見てろ…10分で戻る」スッ

アサシン「フフ牢の鍵か…すでにスっていたとはな…」

盗賊「寝てる振りでもしてろや…」カチャリ キー


ハイディング スゥ…


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『10分後』


リリース スゥ…


アサシン「何か分かったか?」ヒソ

盗賊「どうやら有形文化財の取引には50%の税金が掛かる様だ…いくらで買った事になってるのか知ってるか?」

アサシン「金貨8000枚だそうだ」

盗賊「つまり金貨4000枚の脱税ってこったな…どうすんだコレ?」

アサシン「払えば問題あるまい?」

盗賊「まぁ払った後に拘留中の損失分金貨10000枚返してもらえりゃ6000枚儲ける訳か…悪く無ぇ」

アサシン「その事実を知れば釈放するしか無いだろうな…更なる損失分を請求される羽目になる…クックック」

盗賊「しかし有形文化財扱いで無理矢理税金取ろうなんざセコイ真似しやがる」

アサシン「対象品目があいまいなのだろう…政府の良い様に出来る様にな」

盗賊「さぁて俺は用が済んだ訳だし返るか…」

アサシン「待て…これを商人に持って行け」パサ

盗賊「ん?メモか?」

アサシン「顕微鏡で拡大して見ろ…地図になっている」

盗賊「マジか…」

アサシン「盗賊ギルドの諜報員が調べた地下線路図なのだ…発見された古代遺跡の行き方も記されて居る」

盗賊「おぉ…とりあえず戻ってからしっかり見るわ…で?その諜報員は何処行った?」

アサシン「5分程前に脱獄した…牢が開いて居たからな」

盗賊「そら騒ぎが起きる前に俺も出とかんとヤバいな」

アサシン「私は寝たふりで残るから早く行け」

盗賊「おう!じゃぁな?」


ハイディング スゥ…


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『翌日_商人ギルド隠し部屋』


ガチャリ ギーー


影武者「…戻りました」

商人「どうだった?」

影武者「はい…税金の不足分は支払いを済ませて来ました」

商人「読み通りだったね?…それで契約書の方はどういう反応?」

影武者「先日予定していた取引の契約書3枚提出して明らかに顔色が変わって居ました」

商人「鉄鋼と石炭の大口受けも停止したんだね?」

影武者「はい…本日の分も提出しようとしましたが断られましたので直に釈放されるかと思います」

商人「さぁ次はどう来る?回収する為に何かのレート変えて来るよね」

影武者「暗殺の可能性が高くなりましたね…キ・カイに利する動きが必要に思います」

商人「ふむ…よーし分かった…精密機械を譲渡して摩擦を避けようか」

影武者「良いのですか?」

商人「向こうにはトータルで僕が2000金貨損失してる様に見えてるんだ」

影武者「鉄鋼と石炭の分を含めるとプラスマイナスゼロですが…」

商人「ここで手を引いてこの件に関わりたくないと見せかける」

影武者「分かりました…アサシンさんの釈放と同時に隠し場所を開示します」

商人「うんそれで良い…金貨10000枚にはならなかったけど…まぁ6000儲けたら十分か」

影武者「政府との喧嘩はやはりリスクが高いですね」

商人「今回の件で君は気付いたかな?キ・カイ政府で足並みが揃って無さそうだという事を…」

影武者「その様ですね…法の力を行使しようと策を張って来たのは経済産業省…」

影武者「一方で強行で拘留を行使したのは軍部…足並みが揃わないせいでしっぺ返し食らった形です」

商人「うん…拘留せずに税金の支払い義務が有るとだけ伝えて来ればこちらは支払うしか無かった筈なのに」

影武者「経済産業省は頭が回る様ですので今後注意しておきます」

商人「いやぁ…君は本当に優秀だ」

影武者「お恥ずかしい…今後も頑張ります」

『大部屋』


ガチャリ バタン


商人「あれ?盗賊はもう釈放されたの?」

盗賊「いよう!!脱獄して来た…ヌハハハ」

商人「ハハまぁ無事なら良いんだ」

ローグ「商人さんこれ見て下せぇ…これ凄いっす」パサ

商人「んん?何だろう?」

盗賊「良く目をかっぽじって見てみろ…」

商人「お?…これ何かの地図?」

盗賊「そうだ…そんなに小さくどうやって書き込んだのか気になるだろう?」

商人「すごいな…小さすぎて良く見えない」

ローグ「商人さん顕微鏡持って無いでやんすか?」

商人「下の隠し部屋にあるよ」

ローグ「なんでもキ・カイの地下路線図が描かれて居るらしいんす」

商人「えええ!!?本当?」

盗賊「盗賊ギルドの諜報員からの情報なんだとよ…ずっと牢屋に入れらてた様だ」

商人「どうして地下路線図なんか調べてるんだ?」

盗賊「詳しくはアサシンに聞かんと分からんな…とりあえずそれを商人に渡せと言われて持って来た訳よ」

商人「ん?僕にちゃんとした地図を書けという事かな?」

盗賊「さぁな?お前は古代遺跡の場所を知りたかったんだろ?それも書かれてるらしいぞ?」

商人「おおおお!!」

盗賊「俺らローグとリカオンの3人で酒場で遊んで来るからよ…地図は任せた」

商人「そうかい…まだ聞いて無かったんだけど女海賊は元気?」

盗賊「体は元気なんだが情緒不安定でな…もうちょい掛かるんじゃ無ぇか?」

商人「盗賊はもう平気なんだね?」

盗賊「たまに混乱するがまぁ大丈夫だ」

商人「夢幻の記憶かな?」

盗賊「それが自分じゃ分かん無ぇ訳よ…そのうち慣れるだろ」

商人「なるほど…そういう感じね」


夢幻を忘れて行ってるのは自分じゃ気付けない…そうやって大事な記憶を無くすんだ

今の次元に調和する…こういう事なんだな

『商人ギルド前』


ザワザワ ザワザワ

あのフード被ってるのが噂に聞く闇商人らしい…

政府の軍部と何かの取り引きで拘束されたらしいぞ?


アサシン「私は見世物か?いつになったら釈放するのだ?」

兵隊「例の精密機械が確保されたのが確認されてからだ」

アサシン「クックック…良いのか?今日の損失分を又請求する事になるのだが…」

兵隊「それは上部に言ってくれ…私はただ上部に従っている身…」


ザザー こちらB18…指定の位置で対象を発見した…

鑑識にて特A級精密機械である事を確認…早々に被疑者を解放し取引を完了せよとの事


兵隊「こちらE2…了解!ただちに指定の箱と被疑者解放を実施して帰還する」

アサシン「私の勝ちか?」

兵隊「その様だ…箱の中身を確認して書面にサインを」

アサシン「…との事だ」

影武者「確認は僕が対応するよ…良いかい?」

兵隊「構わん…早くやってくれ」

アサシン「では私は喉が渇いた…建屋に戻るが?」

兵隊「行ってよし!!箱の確認は早く終わらせるんだ!!」


ザワザワ ザワザワ

おぉぉ金貨が詰まってる…

すげぇ!!何の取り引きだったんだ?

特A級精密機械って聞こえたぞ…何だか分かる奴いるか?

『商人ギルド_大部屋』


ガチャリ バタン


アサシン「商人…ここで見て居たのか」

商人「フフ無事に取り引き終わった様だね…ほらワインだよ」キュポン

アサシン「ふぅぅ…軍部があまりにもザルなのが良く分かった」グビ

商人「ザル?」

アサシン「脱獄が簡単なのだ」

商人「あぁそれはワザとだね…脱獄させて罪を上乗せするんだよ」

アサシン「そういう事か」

商人「特に肩書のある人は脱走が簡単な牢に拘留されるらしい」

アサシン「盗賊達はどうした?」

商人「酒場に遊びに行くと言ってたよ…まぁ僕も仕事に戻るからアサシンも酒場に行ってみたら?」

アサシン「そうだな…集まっている人が掃けたら行って見るか」

商人「いやぁぁ闇商人が有名になってしまったね?」

アサシン「お前には都合良いだろう?」

商人「まぁね?お陰で仕事しやすい」


トントン


影武者「私です…」

商人「入って?」


ガチャリ バタン


影武者「よいしょ…よいしょ…」ヨッコラ ドスン

商人「兵隊は帰った?」

影武者「はい…書面に受け取りのサインをしたら直ぐに引き上げました」

商人「ギルドの資金から借りた分はここから持って行って良いよ」

影武者「わかりました…」

商人「あと君の頑張りの分で3000枚くらい持って行きなよ」

影武者「え!!?」

商人「僕はクジラの球皮が調達出来ればそれで良かったんだ…まぁ上手い事使ってよ」

影武者「こんな大金…私に使えません」

商人「何言ってるのさ…あ!!そういえば君は気球が欲しいと言ってたよね?」

影武者「あ…」

商人「買っちゃったら?どうせお金が何に使われてるのか監視されてるだろうからサッサと使おう」

影武者「監視…ですか」

商人「政府に反する使い方して無いのを示す必要もあると思うんだよね」

影武者「そうですね…分かりました」

『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「…じゃぁキ・カイで蔓延してる黒死病は治せないって事か?」

アサシン「そうだ…人間の体が本来持って居る免疫力で石化していると言うのだ」

ローグ「体の一部を機械に変えるのがそもそも間違いでやんすね」

アサシン「機械を外してしまえば石化の進行は止まるのだが…失った手足が生えて来る事はもう無い」

ローグ「北の大陸の黒死病と南の大陸の黒死病は違う病気だったんすね」

アサシン「いや…北の大陸の黒死病は病原体が浸食するのを体の免疫力が働いた結果石化する」

アサシン「エリクサーは病原体を不活性化する事が出来るから石化が完治する」

アサシン「だが南の大陸の黒死病は体に浸食した機械を体が病原体だと誤認して免疫力が働く…そして石化だ」

ローグ「エリクサーじゃ機械を不活性化出来ないって事っすね」

アサシン「そういう事らしい」

盗賊「せめて子供達が機械化の道を選ばん様にせんとな」

アサシン「それをキ・カイ政府がとうの昔に知って居たと言うのが問題なのだ」

盗賊「機械化を推進してるのが機械省だっけか」

アサシン「うむ…反対して居るのが環境省…この2つが大きく政府内で対立関係にある」


機械化による石化という事実を隠蔽し…治るという薬を売りつけ民から搾取する

これが奇しくもフィン・イッシュ経済を支えて居たのだが

キ・カイ政府内の力関係が変わり薬に効果が無いという事実が表に出て来た

加えて関税による影響もあってフィン・イッシュはポーションで資金調達出来なくなった

我々はこの一連の動きが公爵の計略だと思って居たのだが…実はそうではない


ローグ「なるべくしてなってるって感じっすね…」

アサシン「うむ…キ・カイに送った諜報員のお陰で事の真因が掴めた」

盗賊「公爵はフィン・イッシュに殆ど関わって居ないと見るか?」

アサシン「断言は出来んがその可能性が高いと判断する…私が間違って居た」

狼女「じゃぁ一旦公爵を追うのは終わり?」

アサシン「それよりももっと気になる事案が有ってな…」

盗賊「ほう?何よ?」

アサシン「機械化の行きつく先は何だと思う?」

盗賊「キラーマシンか?」

アサシン「脳の機械化だ…どうやら何年も前に既に成功しているらしい」

盗賊「脳を機械にするって…そりゃホムンクルスみたいなもんだな」

アサシン「キ・カイの政務官は表には出てこない…何故なら全身機械化しているからだ」

ローグ「マジっすか…」

アサシン「つまりだ…キ・カイの重要事項は機械が決めて居るのだ…既に機械によって支配されて居ると言って良い」

盗賊「まぁでも元は人間なんだろ?」

アサシン「機械に支配されていないと言い切れるか?」

盗賊「う~む…良い政治ならどっちでも良いが…」

ローグ「エネルギーの無くなった超高度AIでしたっけ?…それが欲しかった理由はもしかして能力上げたかったんすかね?」

アサシン「そうかもしれん…もしくはそれに入れ替える」

盗賊「ちょい待て…それはアダムと同じじゃ無ぇか?」

アサシン「私が言いたいのはソレなのだ…機械化…それはアダム化なのだよ」

狼女「またあの光る隕石が飛んで来るかも知れないという事?」

アサシン「情報屋が前に言って居たのだ…4000年以上昔ウンディーネの時代…争って居たのは人間と機械なのだと」

アサシン「最終的に人類は機械によって滅ぼされ…機械はエネルギー枯渇ですべて停止した」

盗賊「おいおい酒がマズくなるぜ…滅びの話はもうウンザリだ」

ローグ「そーっすね…お宝探しの話にしやしょう」

盗賊「おおおソレだそれ!!実はよ?ハテノ村にな?…」


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『商人ギルド_隠し部屋』


ガタン! ガラガラ


商人「んん?影武者かい?」ノソリ


シーン…

ヒュゥゥゥ…


商人「あれ?裏口から風が…影武者なんだろう?何かあったのかい?」キョロ


タッタッタ シュタ ブン!


商人「うわっ…き…君は…」タジ

悪ガキ「ちぃ…見つかったか…」チャキリ

商人「危ない物を持って居るね…ミスリルのダガーか…」

悪ガキ「悪いけどコレは返してもらう…追いかけて来ないで」

商人「それは君達が扱える物では無いよ…」

悪ガキ「友達だったんだ…閉じ込めて置けない」

商人「…」ジロ

悪ガキ「そこをどいて欲しい…お世話になった人を傷付けたくない」スチャ

商人「君は事の真相を知って居るんだね?…その脳をどうするつもりだい?」

悪ガキ「仲間に加える…ずっと一緒なんだ」

商人「…そうか」トーイメ

商人「わかった…友達を弔ってあげてくれ」

悪ガキ「もうここに迷惑は掛けないから…僕の事は放って置いて」

商人「無茶な事はしない様にね?」スッ

悪ガキ「泥棒みたいな真似してゴメンよ…じゃ」


タッタッタ 


商人「フフ…盗賊にそっくりじゃないか」

商人「友達の為に危険を顧みず…か」

商人「あ~あ…散らかしちゃって」ガサガサ

商人「…あれ?地下路線図はどこだ?」


んあぁぁぁ!!な~い!!

『数日後_商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「なんだ僕の気球と同じ物を買ったのか…」

影武者「最新式はどうしても売れないとの事でした…仕方ないです」

商人「まぁ政府相手だと売ってはくれないだろうね」

影武者「でも改造をある方にお願いしましたので」

商人「ある方?」


盗賊「お~い影武者ぁ!!資材は気球に入れといて良いんだな?」


商人「もしかして…」

影武者「バレてしまいましたね…商人さんの気球も同時にお願いしてあります」

商人「なんだそういう事か…いくらでお願いしたのかな?」

影武者「俺にやらせろと息巻いて居ましたのでタダかと…」

商人「まぁやらせてて問題なさそうだ…それで?クジラ型の球皮の方は調達出来たかい?」

影武者「はい…今気球に積んで居る所です」

商人「よしよし…飛空艇が修理出来れば名もなき島にも行けるようになる…」

影武者「盗賊さんとローグさんが物資を積んで海賊の基地に戻られる様ですが…商人さんはどうされますか?」

商人「僕はここに残って色々仕込みをやるよ…トロッコの準備とか色々ね」

影武者「例の古代遺跡へ行く計画ですね?」

商人「うん…どうにかして古代のエネルギーを入手したいんだ」


盗賊「おい!!そろそろ出発しようと思うんだが…アサシンとリカオンは何処行った?」ダダ


商人「盗賊ギルドの諜報員と会うといって何処かに行ったよ」

盗賊「なんだ置いて行って良いんだな?」

商人「もう一基貨物用の気球があるから大丈夫さ」

盗賊「分かった…俺ら先に戻ってるからよ?後は適当に合流してくれ」

商人「適当か…ハハ」

盗賊「おいローグ!!どっちが早く到着するか賭けるぞ」

ローグ「ええええ!?それ早く言って下せぇ…こっちはクロスボウ大量に乗せてるんで重いんでやんす」

盗賊「うるせぇ!!負けた方が金貨100枚払うな?」

ローグ「いやいやいや…そんな持って無いでやんすよ」

盗賊「女戦士に泣きつきゃどうとでもなるだろうが!行くぞ!!」ダダ

ローグ「あぁぁ!!待って下せぇズルいっす」ダダ


商人「フフ…さぁ仕事に戻ろうか」

影武者「はい…予定の取り引きに出かけて来ます」スタ


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『海賊の基地』


フワフワ ドッスン


盗賊「ヌハハハハハハ!!俺の勝ちだ!!」

女戦士「何を一人で騒いでいる!!物資調達は済んだのか?」

盗賊「おう!!新しい球皮を調達して来たぜ?」

女戦士「それは良かった…魔女と女海賊の依頼した物も忘れて居ないだろうな?」

盗賊「乗ってるぜ?」

女戦士「急ぎで運んでやってくれ…何やら試したいのだそうだ」

盗賊「ぐぁぁぁ…ローグが居無ぇ!!何やってんだアイツ!!」

女戦士「何を言って居る…サッサと荷物を運ぶのだ」

盗賊「ちぃぃぃ雑用が俺に回って来ちまった…」ヨッコラ ヨタヨタ


女戦士「むぅ?もう一基同じ気球が…」


盗賊「おお!!やっと来たか…」

女戦士「どういう事だ?」

盗賊「もう一基買った訳よ…あっちにも物資が積んで在る」

女戦士「なるほど…では向こうにローグが乗っている訳か」

盗賊「そうだ…あっちにゃクロスボウが大量に乗ってる」

女戦士「クロスボウはもう必要無いが?」

盗賊「このデカい気球に搭載するんだ」

女戦士「ふむ…まぁ良い!早く魔女の所へ荷物を運んでやってくれ」

盗賊「へいへい…」ヨタヨタ



フワフワ ドッスン



ローグ「頭ぁぁぁ!!」ヒョコ

女戦士「ご苦労!!ローグ…来い!」

ローグ「へい?」

女戦士「体が硬くなって来た…マッサージを頼む」

ローグ「うひょおおおお!!今行きやす!今行きやす!」スタコラ

盗賊「ちぃ…アイツ…」

『居室』


ガチャリ バタン


魔女「…この式が太陽の周りを周回する惑星の周期じゃ…そしてこれが4000年周期で回る黒色惑星」

情報屋「ダメね…桁が多すぎて私達じゃ正確に計算できないわ」

魔女「じゃろうのぅ…ホムンクルスが居れば計算させられるのじゃが…」


盗賊「おいおい俺が帰って来たのに気付かねぇのか?」ヨッコラ ドスン


情報屋「あら?戻って居たのね…議論に熱中してて」

盗賊「女海賊は何やってんだ?」


女海賊「…」ブン ブン ピタリ


魔女「魔人の金槌を振り回して夢を見て居る…依存せねば良いが…」

女海賊「ぶわぁぁぁん…ちゃんと呼んで!」ブン ブン

盗賊「記憶の方はどうなんよ?」

情報屋「割としっかりしてるから大丈夫よ…物資が何も無くてやる事が無かったの」

盗賊「そうか…なら良いんだ」

情報屋「あなたは混乱して居ない?」

盗賊「俺は良く分かん無ぇな?夢だったのか現実だったのか考えるのもメンドクセェ」

魔女「うむ…それで良いじゃろう」

盗賊「ほんで?この落書きの山は何なんだ?」

魔女「落書きでは無い…情報の整理じゃ」

情報屋「そうよ?魔女が見た夢幻の記憶を整理して歴史を紐解こうとしているの」

盗賊「そうか…まぁ俺にゃ関係無えかヌハハ」

魔女「わらわが頼んだ触媒は入手したのかえ?」

盗賊「あぁここだ…箱の中に小分けしてある…確認してくれ」


ドドドド


女海賊「私のどんぐりは!!?あと松脂と硫黄…ほんで砂鉄!!」

盗賊「今持ってくるから待ってろ」

女海賊「あぁぁ待ってらんない…私が行く!!何処!?」

盗賊「まぁ慌てるな…持って来てやっからよ」


ピューーーー スタコラ


情報屋「フフ元気を取り戻したみたいね」

盗賊「てかアイツ水浴びしたか?匂うんだけどよ…」

魔女「言う事聞かんのじゃ放って置け…」

『10分後』


ヨッコラ ドスン!!


盗賊「ほら追加の物資だ…こら情報屋の物だろ?」

情報屋「盗賊?少し離れてて…」

盗賊「んん?どうした?」

情報屋「テーブルの陰に…」グイ

盗賊「魔女がなんか魔法使おうとしてんのか?」

情報屋「重力の魔法を試そうとして居るのよ」

盗賊「ほう?」


魔女「アブラカタブラ…重力魔法!」フワ


盗賊「何も起きんが?」

魔女「成功じゃ!!やはり夢幻の記憶は正しい様じゃ…見てみよこの小石を…浮いて居るじゃろう」

盗賊「小石?…確かに空中で止まってんな…」

魔女「これは重力を蓄える術じゃ…落下のエネルギーを蓄えて空間で静止しておる」

情報屋「魔女?それは危険だと思うわ?」

魔女「そうじゃな…爆ぜよ!」


シュン! カン!


盗賊「おぉぉぉ!!飛んでった…」

魔女「どこまで蓄えられるか実験したい所じゃが…これは禁呪にせねばイカン術じゃろうのぅ」

情報屋「落下エネルギーの蓄積を解放するのを忘れてしまうと大変な事に…」

魔女「うむ…大惨事になりかねぬ」

盗賊「今のは初めて使う魔法なんか?」

魔女「そうじゃ…重力と時空の魔方陣が理解出来たからのぅ…これで夢幻の記憶が正しい事が証明された訳じゃ」

情報屋「未来君が未来から来た話も全部本当だった」

魔女「夢幻から来たと言う方が正しいぞよ?わらわ達は只覚えて居らんかっただけじゃな…」

盗賊「ほーん…で?なんかヒントあった訳か?」

情報屋「アリアリよ…未来君の歩んだ歴史の殆どが解明したわ」

盗賊「てことはもう足取り追わんでも良いって事か…」

情報屋「あなた達が行ったニライカナイ…ここを拠点として時の王の時代までは行き先がほぼ分かった」

情報屋「白骨化していたエルフの事も辻褄の合う伝説だったのよ」

盗賊「おぉ…そういや金髪エルフの白骨有ったな…誰よ?」

情報屋「それは700年前の犬神伝説…エルフに従う犬神…犬神は剣士と未来君本人だった様ね」

盗賊「なるほど…」

情報屋「フィン・イッシュに伝わる一角仙人の伝説も全部剣士と未来君…ニライカナイを行き来してたの」

その同時期に時の王と行動を共にしていて…セントラルの建国やシン・リーンに伝わる伝説で暁の使徒として生きた

後に虫を従えてドリアードを倒したのも剣士と未来君…私達の知って居る伝説は必ず剣士と未来君が関わってる

そして暁の使徒が倒れたのは3800年前…恐らく暁の墓所で眠ってると思われる

この後剣士一人で4500年前に飛んだ…ここでオークの地に剣士が予言を残した…


盗賊「暁の使徒が倒れたという話は女海賊に教えたんか?」ジロ

情報屋「教えたわ…遅かれ早かれ知る事になるから」

盗賊「それであの様子か?」

情報屋「何も言わない…認めたくないのでしょう」

盗賊「行くって言いださんな?」

魔女「本人が行くと言うまで触らぬ方が良かろう…認めたくないのは分からんでもない」

盗賊「ちっと俺の記憶の話なんだが…」

情報屋「なにか付け加える事でも?」

盗賊「前にハテノ村にある古代遺跡に行っただろ?ホムンクルスが居た場所だ」

情報屋「フフそういえば一緒に行ったわね…」

盗賊「あそこには遺物がわんさか有ったんだが…確かそこにも壁画があった筈なんだ」

情報屋「え!!?本当?」

盗賊「あとな?こりゃ夢の話なんだがあそこの木の下に大事な物を埋めた気がするんだ…なんか関係ありそうじゃ無ぇか?」

情報屋「ふむ…だとすると3100年前か3800年前のどちらかね…まだ足りない壁画が有ったのね」

盗賊「こういう前向きな話をアイツに伝えてやるべきだ…アイツはまだ信じてんだよ…約束を」


ドドドドド


女海賊「今なんてった!?ハァハァ…」

盗賊「いよーーう…聞いてたんだな?」

女海賊「まだ壁画あるんだね?」

盗賊「まぁそういう事よ…宝探しに行くか?ハテノ村まで」

女海賊「決まってんじゃん!!」

盗賊「おっし!!ほんじゃ飛空艇修理すっか!!」


女海賊「こらぁぁぁ!!海賊共ぉぉ!!」ターン ターン


海賊共「へ…へい!!」ドタドタ

女海賊「お姉ぇの船はもう修理終わったよね!?次は私の飛空艇修理すんよ!!来い!!」

海賊共「がってん!!」ドタドタ

『飛空艇本体』


カサカサ ブーン


盗賊「おいおい…アラクネーが陣取ってたら近付けんのだが…」

女海賊「これさ…ホムちゃんが一人で何年も生活してたんだよ」

盗賊「その様だな?」

女海賊「船体の穴塞ぐのに鳥の羽詰め込んだり…多分苦労したと思うんだ」

盗賊「お前これそのままにしておくつもりで居たのか?」

女海賊「ホムちゃんの生きた思い出壊したく無かったんだよね…」

盗賊「何て言うか…虫の巣穴なんだがよ…」

女海賊「ホムちゃんゴメン!!もっかいやり直す事に決めた…だからちっと掃除する!!」


ガッサ ガッサ


盗賊「おいおいおい…アラクネーは大丈夫なんだろうな?」

女海賊「ん?あぁ…アンタは線虫居ないからビビってんだね?線虫!!行け!!」ニョロ

盗賊「いやアラクネーでビビんない奴はお前ぐらいだ…」タジ

女海賊「あれ?何コレ?」ガラガラ

盗賊「おぉ…そういやオリハルコンの武器を持って帰って来たんだった…」

女海賊「ちょいお姉ぇ呼んで来てよ…お姉ぇ欲しがってたのさ」

盗賊「うむ…全部出しといてくれ」ダダ

女海賊「あ!!こんな所に妖精の笛落ちてる…あぶあぶ…無くす所だった」

女海賊「樽は全部虫食ってダメだぁ…」


カサカサ カサカサ


女海賊「分かった分かった…新しい巣穴作ったげるから騒がないで」ガッサ


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『数分後』


ツカツカ…


女戦士「お前…何をしている?」

海賊共「姉さんが飛空艇の掃除してるんですが…俺ら近付けなくてですね…」

女戦士「フフそれで隠れて居ると言うか」

海賊共「へい…」

女海賊「あ!!お姉ぇ!!」

女戦士「呼ばれて来てみたが…お前は散らかして居るのか?」

女海賊「お姉ぇに良い物あるよ…コレ!」ポイポイ


カラン カラーン


女戦士「んん?」

女海賊「オリハルコンの武器だよ…欲しかったでしょ?」

女戦士「おお!!何処でコレを…」

盗賊「例の島で見つけたもんだ…どうやら時の王が残した武器らしい」

女戦士「時の王が…」

女海賊「刀身は痛んで無いから研ぎだけやれば使えそうだよ」

女戦士「この様な良い武器を雑に扱うな…」ガサリ

女海賊「どう?」

女戦士「ふむ…軽いがなかなか良い剣だ」ブン


”やっぱり女だったんだね…”


女戦士「ハッ!!こ…これは」

盗賊「ん?どうした?呆けて居るぞ?」

女戦士「今夢を見た…」

女海賊「お?もしかして呪われた武器?」

女戦士「これが破壊の剣と言う物…なのか?」

盗賊「ほう?俺にも使えるか?」ガサリ ブン


”お酒飲むでしゅ!!”


盗賊「赤毛の…」

女海賊「間違いなさそうだね…それ何でも切れるから研がなくて良いかも」

女戦士「柄は私が作ろう…盗賊!すべて鍛冶場に運んでくれ」

盗賊「おう!俺にも一本くれい」

『大型飛空艇』


トンテンカン トンテンカン


サイドマストからスプリットに大き目の三角帆だ…これで上昇気流を推進力に変えられる

プロペラはそのまま尾翼替わりに使うから残してくれな?


ローグ「海賊さ~ん!!こっちもお願いしやす!!」

海賊共「がってん!!」ドタドタ

盗賊「クロスボウはデッキ上に均等に配置だ」


ツカツカ


女戦士「ロープだらけの気球になったな…」

盗賊「そらそうよ…帆船はロープワークが重要だからな」

女戦士「フフ…どうだ?うちの海賊共は」

盗賊「おぉ…さすがドワーフなだけあって器用だ…特にロープの細工が良い」

女戦士「この気球には何人乗れるのだ?随分大きいが…」

盗賊「15人って所だな…まぁ空中要塞よ」

女戦士「大きさ的に船には乗らんだろうから海は超えられんな…」

盗賊「女海賊がウラン結晶使って良いって言ってたからイケる筈」

女戦士「そうか…では揺れんで済む分船より快適か」

盗賊「まぁ女海賊の飛空艇の方が船に乗せられる分何かと便利なのは確かだ…あっちはハイディングもあるしな」

女戦士「アダマンタイトか…」

盗賊「そんな都合良いサイズなんか無いだろう?」

女戦士「金塊があれば魔女に作って貰えるかもしれんが…良い顔はせん」

盗賊「ところで女海賊の飛空艇は手伝わんで良いのか?」

女戦士「本人が邪魔だと言っているのだ…放って置け」

盗賊「全然組み上がって居ないが…」

女戦士「正直私は妹にゆっくりしてもらいたいのだ」

盗賊「そうか…まぁ慌てんでも良いが」

『飛空艇』


カーン カンカン カーン カンカン


盗賊「何作ってんだ?」

女海賊「帆の代わりになる物…」トンテンカン

盗賊「んん?骨と金属の組み合わせでか?」

女海賊「この隙間から風が出る仕組みなのさ…風の魔石で推進させる」

盗賊「なぬ?帆無しで推進するってか?」

女海賊「折角クジラの形してんだからさ…帆なんか付けたらクジラじゃ無くなるじゃん」

盗賊「いやまぁ…好きに作って良いが…風の魔石で推進するってのはシン・リーンの気球だろ?」

女海賊「遅いのは分かってるよ…でもその原因は空気抵抗のせいなのさ…それはちゃんと計算してる」

盗賊「ほーん…で?今作ってるのはヒレにあたる部分だな?」

女海賊「正解!!ちょいそっち側持ってて」

盗賊「お…おう」グイ

女海賊「ちっと魔石入れて風出してみる…」ゴソゴソ

盗賊「ほーう?空気を一旦溜めて噴き出す仕組みか」

女海賊「破裂するかも知れないから気を付けといてね…」

盗賊「マジか…」

女海賊「いくよ?」


シュゴーーーーーーー


盗賊「どわっ!!おとととと…」ヨロ

女海賊「もうちょい調整必要だけどまぁまぁかな…」

盗賊「なんでこんなに風が出るんだ?魔石一個だろ?」

女海賊「この隙間から勢い良く噴き出すとさ…周りの空気も一緒に吸われて質量流量が増えるのさ」

盗賊「ほーーーーすげぇな」

女海賊「このヒレの部分がサイドマストの代わり…固定翼になる予定」

盗賊「何か手伝うつもりで来たんだが…」

女海賊「あっちのでかい気球はもう終わったの?」

盗賊「まぁな?あんまやる事無ぇ」

女海賊「ほんじゃさぁ…球皮膨らませて船体を一回吊ってみてよ」

盗賊「んん?まだロープも何も付いて無いが…俺がやって良いのか?」

女海賊「重心がどの辺に来るのか知りたいのさ…一回吊って重心の位置寸法測って欲しい」

盗賊「分かった…」

女海賊「同じヒレをもう一個作るからそっち任せる」

盗賊「おい!ローグ!!お前もヒマだろ…手伝え」

ローグ「はいなー!!」ダダダ

『クジラ型の球皮』


シュゴーーー ムクムク


ローグ「あらららら?なんかそんなに大きく無いっすね…」

盗賊「だな?キ・カイの気球は船体が軽いからな…前の球皮よりちっと小さい」

ローグ「材質も良く分からんでやんす…」

盗賊「炭素繊維とか言う材質だそうだ…丈夫で破れにくいらしいが…」

ローグ「色がツヤツヤでクジラみたいっすねぇ」

盗賊「この球皮だけで金貨1000枚だぞ?」

ローグ「うは…高すぎでやんす」

盗賊「やっぱ異形の球皮だから重心寄ってそうだな…ちっと前寄りか」

ローグ「あっしが支えとくんで船体とロープで結んで下せぇ」

盗賊「おう!!」ダダ


--------------


フワフワ

あぁぁ!!ダメだダメだ…これじゃ球皮がかたぐ…もっと前で吊る

これ炉の位置買えないとはみ出ししまいやすぜ?

しゃー無ぇ一回外すか…


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『クジラのヒレ』


盗賊「ダメだぁ!!やっぱ左右独立じゃバランス取れん!!」グラグラ

女海賊「ちょっと重さ違うだけでコレかぁ…連結しちゃうかぁ」

ローグ「これ真っ直ぐだからダメなんじゃないすかねぇ?」

女海賊「そだね…連結してヤジロベエみたいに少し垂らす感じで行くわ」

盗賊「設置場所はデッキ上で良いんか?」

女海賊「そこしか無いじゃん…船体貫通すると邪魔になる」

ローグ「尾びれはどうしやす?一緒にやらんと又バランス崩れやすぜ?」

女海賊「ちょい借り付けしといて!!船尾の再後端」

ローグ「テールマストの最後尾っすよね?」

女海賊「その予定…球皮の後端と繋げる予定なんだ」

ローグ「これ重さだけ先に合わせて置いた方が良いんで…何か仕掛け作るならその分何か乗せといた方が良いっすね」

女海賊「ほんじゃ切り出してある骨のシャフトあるじゃん?それ2本テールマストに抱きつけといて」

ローグ「アイサー」ダダ シュタ



『クジラの尾ビレ』


トンテンカン トンテンカン


盗賊「ほーー…コレが舵部になる訳か…」

女海賊「うん…尾ビレだけ可動式」コンコンコン

盗賊「操作が簡単になりそうだ」

女海賊「前の縦帆はロープワーク大変だったからホムちゃんに操作出来なかったんだよ」

盗賊「まぁ…力必要だからな…張り替えも難儀だった」

女海賊「今度のは尾ビレの角度をギアを介して変える仕組み…ホムちゃんでもなんとか操作できる筈」

盗賊「ふむ…左右旋回はヒレ部から出る風の調整だけなんだな?」

女海賊「そそ…空気が出て行く通路の開閉だけかな」

盗賊「ほんじゃ小回り効きそうに無えなぁ」

女海賊「あんま考えて無いよ…もしかしたら尾ビレと組み合わせて回れるかもって感じ」

盗賊「ふ~む…全体のフォルム重視か」

女海賊「私達を守ってくれたクジラを尊重したいんだ…出来るだけ似せて作る」

盗賊「ヌハハお前らしい…まぁ俺はそういうのキライじゃ無ぇ」

女海賊「今度は空を泳ぐんだ…あ!!!潮吹き機能も付けないとな…」

盗賊「お!!?良い案がある!!」

女海賊「何さ?」

盗賊「ウラン結晶に水掛けると水蒸気出るだろ…そいつを吹き出すんだ」

女海賊「おおおおおおおおお!!!アンタたまには良い事言うね!!」

盗賊「気に入ったか?」

女海賊「汽笛にして音が出る様にしよう!!ちょい作って来る!!」

盗賊「ちょちょちょ…ヒレの固定はまだ終わって無えぞ?」

女海賊「やっといて!!」ピューーーー スタコラ

『鯨型飛空艇』


フワフワ

ヒレは固定翼だから金属糸で突っ張ってしっかり固定しておいて

球皮とデッキ部の隙間は布で全部覆う…接着剤用意したからコレで使って


ローグ「こんな接着剤だけじゃすぐに剝がれちまいやすぜ?」

女海賊「大丈夫!!アラクネーの糸で補強すっから」

盗賊「なぬ!?」

女海賊「なんかアラクネーはこの飛空艇から出て行く気は無いみたい」

盗賊「デッキ上に巣を作るってか…」

女海賊「結局最後まで私等を守ってくれたのはアラクネーじゃん…アイツもクジラとホムちゃんの友達だったのさ」

盗賊「まぁ…好きにしてもらって良いが言う事聞くんか?」

女海賊「巣を荒らさなきゃ何もしてこないよ」

ローグ「ほんじゃデッキ上が巣になるんすね?」

女海賊「そだね…だから隙間なく布張って!風入ると寒いから」

盗賊「球皮が温いから風が入らにゃ結構快適かも知れん」

ローグ「餌はどうするんすか?」

女海賊「ハチミツを食べるっぽい…飛空艇の中でミツバチ育てれば良い」

盗賊「なるほど…ミツバチと共生関係か…土と花…ほんで光がありゃ永久機関か」



『テスト飛行』


フワフワ ドッスン


女海賊「…樽は水満タンで7つが限界かな」

盗賊「まぁ普通の貨物用と同程度だ…十分だろ」

女海賊「あと旋回性がやっぱ課題だね…ちっとヒレの先っぽ細工して傾けられる様に改造する」

盗賊「またバランス崩れやし無えか?」

ローグ「ちっと待って下せぇ…尾ビレと一緒に操作出来るようにすれば良く無えっすか?」

盗賊「ふむ…確かに尾ビレ操作でいちいち船尾まで行くのはメンドクセェな」

女海賊「仕掛けを前の方に持ってくるの大変だなぁ…」

ローグ「いっそのこと操作系は全部尾ビレ付近で良いんじゃ無えすかね?」

女海賊「前が見えなくなるのがさ…」

ローグ「横が見えれば十分っすよ…そうそう正面に何かあるなんて無えでやんす」

女海賊「おけおけ!一回やってみるわ」


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『幽霊船』


ザブン ギシギシ


女戦士「フフ…空飛ぶクジラか…」

魔女「女海賊は立ち直った様じゃな?」ノソリ

女戦士「もう無茶はして欲しくないが…」

魔女「あの性格じゃで言う事聞かなかろう」

女戦士「うむ…そろそろ水浴びもさせないといけないのだが…」

情報屋「暖かいお湯なら良いのでは?」

女戦士「そうだな…湯を沸かすように計らう」

魔女「あ奴の入った湯には浸かりとう無いのぅ…」


ボエーーーーーー ブシューーー


女戦士「んん?」

魔女「ほう?クジラが潮を吹き寄った…」

情報屋「ウフフ…そんな機能まで付けたのね」

女戦士「虹だ…」


キラキラ キラキラ


情報屋「どうしてかしら?女海賊が作る物は何故か夢がある…」

女戦士「持って生まれた天性…」

魔女「ふむ…クジラが空を舞う姿は見ていて飽きんのぅ…」ウットリ


ボエーーーーーー ブシューーー

キラキラ キラキラ


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『鯨型飛空艇』


シュゴーーーー グググ


盗賊「どわぁぁぁぁ…」ゴロゴロ ドタ

ローグ「ちょちょちょ…」ズデン

女海賊「やっば!!コレ…」ググ

盗賊「おい!旋回やめろ!!」

女海賊「分かってるって…」グルグル

盗賊「樽がみんな転がっちまったじゃ無ぇか…」

ローグ「これ乗せた資材は全部ハンモックに吊らんと滅茶苦茶になりやす」

盗賊「おま…船体が真横向いてたんじゃ無ぇか?」

女海賊「尾ビレ使って旋回するとメッチャ旋回するわ…」アゼン

盗賊「危無ぇんだって!!窓からスッポリ落ちるぞ」

女海賊「なんか楽しくなって来たぞ!!」グルグル

盗賊「おいおいおい!!」ヨロ

ローグ「あららら?又でやんすか?」オトトト


シュゴーーーー グググ


女海賊「この姿勢で窓からクロスボウ撃てそう?」

盗賊「撃てるっちゃ撃てるが…足場がよ…」

女海賊「ちょい色々試すから戦い方考えといて…」グルグル

盗賊「おわわわ‥‥急降下か!!」

ローグ「これ海に落ちやせんよね?」ヨロ

女海賊「くそぅ!!推進の力だけじゃ海面付近まで降りられないか…」

盗賊「ふぅ…その場合球皮の熱も一緒に抜く必要がある」

女海賊「おけ!!もっかいやってみる」グルグル

盗賊「マジか!!…落下させんなよ?」

ローグ「こりゃ初めて乗った人は耐えられやせんぜ?」

女海賊「前の飛空艇より断然自由度高いから操舵がチョー楽しい!!」グルグル

ローグ「姉さん…聞いてやすかね?」

女海賊「もっかい!!右旋回しながら急降下!!」グルグル

ローグ「ちょちょちょ…」ゴロゴロ ズザザー

女海賊「ひゃっほーーーーう!!噴射!!」グイ


ボエーーーーーーー ブシューーーーー

『海賊の基地』


フワフワ ドッスン


情報屋「おかえりなさい!!見てたわ?クジラが潮を吹くのを…虹が出るのよ?」

盗賊「お…おう…」ヨロ

ローグ「この飛空艇に乗るのは覚悟が要りやすぜ?」ヘナヘナ


ツカツカ


女戦士「どうだ?空を泳ぐ気分は?」

盗賊「最悪だ…見ろ!この傷だらけの体を…」ボロボロ

女戦士「優雅に泳いでいたでは無いか…」

盗賊「優雅も何も飛空艇の中はてんやわんやな訳よ…天も地もありゃし無ぇ」


女海賊「おい!!2人共ハンモック作って!!」


盗賊「ちっと休憩させろや…」グダー

女海賊「課題見つけたんだ…私球皮の熱を早く抜く仕組み作るからハンモックやっといて!!」

女戦士「フフ楽しそうだ…」

女海賊「あと落下防止用のロープも張っといて!!どうすりゃ真横の壁に立てるかアンタ達の方が分かるよね!!」ピューーー スタコラ

盗賊「ったく人使いが荒いぜ…」

情報屋「下から見てる感じではゆっくり泳いでいる様に見えるのに…中はそんなに大変?」

ローグ「そら遠くなんでゆっくりに見えるんすよ…実際は中でゴロゴロ転がってるんす」

盗賊「兎に角地に足が付かん…転がって受け身も取れん」

ローグ「樽があちこちに行くんでマズそれからっすね…樽が無きゃもうちっと動ける気がしやす」

盗賊「だな?」

『翌日』


ヨッコラ ドサリ


盗賊「物資はハンモックに乗せて置いたぜ?」

女海賊「おけおけ!!ほんじゃどうすっかなぁ…とりあえず様子見に行くだけだから…」

女戦士「私も同行するぞ…」ツカツカ

女海賊「お姉ぇか…そうだね…あんまお姉ぇと行動した事無いな」

盗賊「俺は勿論行くよな?」

女海賊「今回はハテノ村がどんだけ灰で埋もれてるか見に行くだけさ…あんたはあのデカイ気球で来てよ」

盗賊「ちっと遅いが?」

女海賊「良いの良いの!!どうせ灰が積もっちゃってるから人駆が居るんだ」

盗賊「ふむ…」

女海賊「商人に相談してさ…働ける人を集めて欲しい」

盗賊「わかった」

女海賊「あと魔女と情報屋…アハハ全員女だね」

盗賊「まぁ今回は女だけで行って来い」

女海賊「4人なら広く使えて丁度良いさ」

女戦士「ふむ…女海賊!行く前に水浴びだけして行け…湯は用意してやる」

女海賊「ええええええ!!?」

女戦士「来い!」グイ

女海賊「ちょちょちょ…引っ張んないで!分かったから…」シブシブ

『幽霊船』


ザブン ギシギシ


ローグ!私はしばらく船を降りて妹の監視役をやる…

お前は幽霊船を指揮して一旦父の下へ戻り妹の無事を伝えろ

船に積んで在る酒は土産だ…代わりにミスリル銀を貰ってこい

それから黒の同胞達の基地で見つけた器具類を父に直せるか聞いてみてくれ


ローグ「次の合流は何処でやんすか?」

女戦士「ハテノ村から続く川の河口だな…物資補給の拠点にしたい…父にそう伝えて欲しい」

ローグ「分かりやした…ですがあっしは寂しいっす」

女戦士「妹があの感じだ…又居なくなってしまっては私が耐えられない」

ローグ「へい…」

女戦士「船を任せられるのはお前しか居ないのだ…私が帰る場所を守ってくれ」

ローグ「ええと…貨物用の気球がキ・カイに置きっぱなしっすね…」

女戦士「そうだ…破壊の剣をアサシンにも渡してやってくれ…アレは良い物だ」

ローグ「あっしも使って良いでやんすか?」

女戦士「うむ…好きに使うのだ」

ローグ「ダガーなんて無いっすよね?」

女戦士「使うだろうと思って加工してある…好きな物を持って行け」

ローグ「おおおおおおお!!やっとミスリルのダガーを卒業出来やす」

女戦士「…では後は頼んだ」スタ

『鯨型飛空艇』


フワフワ


魔女「なんと奇妙な気球じゃろうか…」ノソノソ

女海賊「乗ったらハンモックでくつろいでね」

情報屋「一応クロスボウの準備もあるのね」

女海賊「お姉ぇ!!早く乗って!!」

女戦士「さて…新型がどれくらいか見せてもらおう」スタ

女海賊「ほんじゃ盗賊とローグ!!後はヨロピコ!!」ノシ


シュゴーーーー フワフワ


盗賊「おーーーい!!この貝殻通じるんだろうな?」

魔女「無論じゃ…無くすで無いぞえ?」

盗賊「おっしゃ!!ローグ!!デカい気球で一旦キ・カイまで戻るぞ!!」

ローグ「もしかして又賭けっすかね?」

盗賊「当たり前ぇだ!!」

ローグ「今度は荷物がカラなんで負けやせんぜ?」

盗賊「ほう?やるってんだな?」

ローグ「ウハハハハ!!お先にぃぃぃ!!」ダダダ

盗賊「てめぇ!!」ダダ


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『上空』


シュゴーーーーー


情報屋「帆のバタつく音が無いのね…」

女戦士「これはどの位速度が出ているのだ?」

女海賊「えーっと水頭圧と…水銀柱…ほんで気温が-20℃で対向風だから…時速60km程度かな?」

情報屋「その速度だと大体30日で地球一周する計算ね」

女海賊「追い風ならもうちょい速度出ると思う」

女戦士「早いスクーナーの3倍という所か」

女海賊「対向風で真っ直ぐ行けるのと…狭間入って短縮出来るの見込めば大分早い」

情報屋「高度はこれ以上上げられない?」

女海賊「まだ行けると思うけど寒すぎる…これ以上寒いと色々問題出るよ」

情報屋「じゃぁ未踏の地ではもっと巡航速度落ちるのね」

女海賊「未踏の地?なんで?」

情報屋「オークが乗って来たと思われる古代の船は…たぶん未踏の地で封印されてると思うから…」

女海賊「古代の船…きっとそれ使って月まで行けるよね?」

女戦士「…」ギロ

女海賊「お姉ぇそんな目で見ないでよ…もう行くって決めたんだからさ」

情報屋「それを確実にする為にまずはホムンクルスの意見聞かないとね」

女海賊「そだそだ…ホムちゃんを起こさないと」

魔女「その船が封印されておる地の見当はついて居るんか?」

情報屋「たぶん南極の方ね…オーク領の向こう側」

『山岳部』


シュゴーーーー グラグラ


女海賊「気流が安定しないな…山にぶつかって風が上向いてるのか…」

魔女「煙がポツポツ見えるのぅ…」

女海賊「小さい村がいくつかあるんだよ…なんとか生き抜いてんのさ」

情報屋「ハテノ村にも温泉が有ったわね?」

女海賊「らしいね?あの辺は火山地帯だからまだ誰か居るかも」

女戦士「南部はオークと争っていると言うが…」

女海賊「昔からだね…キ・カイがどんだけ押し込んでるのか知らないけど」

情報屋「全然押し込めて居ないらしいわ?」

女海賊「なんか知ってんの?」

情報屋「キ・カイは硫黄が無くて遠距離の大砲が使えないのよ…主な戦術はキラーマシンを先頭にして後方からクロスボウ」

女海賊「良さそうじゃん」

情報屋「オークロードは知って居るでしょう?」

女海賊「あーーー石投げて来る奴ね」

情報屋「石の遠投でクロスボウ部隊がやられてしまって進軍出来ないって聞いたわ」

女戦士「なるほど…大砲が使えない影響がもろに出ているのだな」

情報屋「だからオークロードが石を投げられない地下線路からのゲリラ戦でしか戦果が出ていない…」

女海賊「じゃぁこの辺まで地下線路が続いてるんだ?」

情報屋「彫り進めるのには時間が掛かるでしょう?全然攻めきれて居ないのよ」

女戦士「空から攻めれば…」

女海賊「ダメダメ!!オークロードは槍も投げてくんだよ…危なくて上から近づくのもダメ」

情報屋「キ・カイ政府内でも意見が分かれてしまって居て…海軍が外海の調査に出たのもあって内部はバラバラよ」

女戦士「内陸で海軍は無力だ…」

女海賊「…てかオーク領攻める意味無くね?」

情報屋「そうね…馬鹿バカしい…」


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『キ・カイ_気球発着場』


フワフワ ドッスン


ローグ「ウハハハハハハ!!…あっしの勝ちでやんす」フン!!


フワフワ ドッスン


盗賊「くそがぁぁ!!」ドン

ローグ「これでおあいこでやんすね?ウヒヒヒヒ」ニマー

盗賊「しゃーねぇ…美味い酒が飲めると思ったんだがなぁ…」

ローグ「盗賊さん…あっしは物資調達してちっこい気球で戻りやすんで後はお願いしやす」

盗賊「なんだもう行っちまうのか」

ローグ「この破壊の剣をアサシンさんと商人さんに持って行って下せぇ」ガチャ

盗賊「商人にもか!!ヌハハあいつ剣なんか振れるんか?」

ローグ「次ぎ会うのはハテノ村っすかね?」

盗賊「そうなるか?まぁ俺も人駆集めたらハテノ村向かうからよ」

ローグ「楽しみにしていやす」

盗賊「まぁそっちも上手くヤレ…じゃぁな?」ノシ

ローグ「いやぁぁぁ…盗賊さんの背中…カッコいいっすねぇ…」

盗賊「そうよ!!盗賊の極意は背中だ!!覚えておけ」スタ

『商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ

おぉぉ食料が値下がりしてる…

買いだ買い!!まとめて買うぞぉ!!



盗賊「いよ~う!!帰ったぜ?」

娘「あ!!爺ぃ!!何処行ってたんだよ!!」

盗賊「商人達は居るか?アサシンとかも来てるだろ」

娘「皆地下の支店の方に集まってる…」

盗賊「なんだよ土産持って来たのによ」

娘「爺ぃは寝てく?それとも酒場?」

盗賊「支店に集まって何かやってんのか?」

娘「私等一切関与して無いから何も知らん」

盗賊「影武者は?」

娘「多分一緒」

盗賊「そうか…どうすっかな…」

娘「休んで行きなよ…子供達に顔合わせてさ」

盗賊「んんんん…まぁ先に用事済ませてからだな…ちっと行って来るわ」

娘「ちゃんと帰って来る?食事作っておくけど」

盗賊「おう!!頼むわ…たまにゃ家の飯食わんとな」

娘「よ~し!!家族集めておく!!」

盗賊「じゃ行ってくんな?」ノシ


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『地下_商人ギルド支店』


ヨッコラ ドスン!!


アサシン「ふぅ…中々に重い…」

商人「…これで後はトロッコの所に引っ張って行けば良い」

狼女「食料はこれで足りる?」

アサシン「食料が必要なのはお前だけだ…」

商人「アハハそうだね」

影武者「…では私はこれで失礼します…本店の方へ戻ります」ペコ

商人「ありがとう…3日くらいで戻るからよろしくね」

影武者「はい…お任せください」

商人「じゃぁ行こうか…」グイ

狼女「あんたじゃ弱いんだって…」グイ


ガタゴト ガタゴト


商人「一回動き出したら僕でも荷車引けるよ」ヨタヨタ

盗賊「お~~~い!!何やってんだぁぁぁ?」タッタッタ

狼女「んん?」キョロ

商人「おおおおおおお!!?盗賊!!」

盗賊「さっき帰った所なんだ…どっか行くんか?」

商人「丁度良かった…今からトロッコに乗ってお宝探しに行く所だったんだよ」

盗賊「マジか!!」


影武者「やぁ…」スタスタ


盗賊「おぉ!!気球改造してきたぜ?発着場に2台並んでるから見て来い」

影武者「待って居たんだ…これで近隣の村との商談が捗る」

商人「どっちもナイスタイミングだ!盗賊が居れば色々楽になる」

盗賊「しまったな…娘達と食事の約束して来ちまったんだ」

アサシン「盗賊抜きでも構わんが?」

盗賊「いや…お宝探しと聞いて俺が行かん訳にも行くめぇ」

影武者「僕は本店に戻るから伝えておくかい?」

商人「3日程で戻るって伝えれば良い」

盗賊「うむ…んじゃ頼むわ…おっと!!忘れてた…ハテノ村に行ける人駆集めるんだった…」

影武者「それはどういう理由かな?」

盗賊「まぁ…穴掘りか?10人程集めたいんだ」

影武者「それはもしかして硫黄鉱山かな?」

盗賊「そうなるかもな?」

商人「おぉ!!良いね…」

影武者「僕が人駆を集めておくよ」

盗賊「そら助かる…気兼ねなくお宝探しに行けるぜ」

狼女「急がないと兵隊の交代時間過ぎちゃうよ」

商人「あぁそうだね…盗賊!!とりあえず今はこの荷車を運ぶのが先さ」

盗賊「お…おう!!じゃぁ影武者頼んだな?」

影武者「分かったよ…」ノシ


ガタゴト ガタゴト

『チカテツ街道8番_廃線』


ヨッコラ ドスン!! ガチャガチャ


盗賊「重たいなこの箱…何入ってんのよ?」

商人「今は開けられない…」キョロ

盗賊「廃線になってるみたいだが?」

商人「それは政府の嘘だよ…人を近づけない為にそうしてるのさ」

狼女「交代する兵隊が歩いて来る…」クンクン

商人「トロッコの陰に隠れて」スタ


スタスタ

おい聞いたか?古代の兵器はみんな海軍が持って行ったってよ

やっぱりその話は本当なんだな?陸軍が戦線維持頑張っていると言うのに…

前線では脱走兵も出ているらしい…補給もろくに計画してない

俺ら憲兵が言う立場では無いがオークとの戦争はただの消耗戦だ…死にに行けと言ってるのと同じ…

スタスタ


狼女「…」クンクン

商人「…」コクリ

狼女「…」コクリ

商人「トロッコ押して…」ヒソ

アサシン「フン!」カタン コトン

商人「おけおけ…音出さない様に」

盗賊「おま…まさか人力でトロッコ押す訳じゃ無いだろうな?」ヒソ

商人「人力は200メートルくらいだよ…その後はキラーマシンが動かす」

盗賊「おぉ…ほんじゃこの箱の中はキラーマシンだってか」

商人「まぁね?…とりあえず先を急ごう」


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--------------

『200メートル先』


ゴソゴソ ガチャガチャ


キラーマシン「プシューーー」ウィーン ガチャ

商人「よしみんな!箱の中に入って!」

アサシン「…」ピョン シュタ

盗賊「こりゃ4人じゃ狭いな…」ピョン スタ

狼女「商人!先に乗って」グイ

商人「あぁ悪いね…」

盗賊「クロスボウ3台か…どうする?前方と後方で分けるか?」

商人「前方2台設置であと一台は手持ちだね」

盗賊「まぁ良いや!とりあえず設置しとくぜ?」ガチャガチャ

商人「キラーマシン!トロッコを動かせ!」


キラーマシン「プシューーー」ガチャコン ガチャコン


盗賊「おぉ言う事聞くんだな…」

商人「よしよし動き出した…これで安心だ」

狼女「私前方の索敵やる…クロスボウって引き金引くだけよね?」

アサシン「こう使うのだ…ここを持って照準で狙う」ガチャ

狼女「大丈夫!」

盗賊「あと一台のクロスボウは商人が使え」

商人「あ…うん」ガチャ

盗賊「まぁ少し落ち着いたな…アサシン!女戦士から武器を預かってるんだがよ」

アサシン「武器?間に合っているが?」

盗賊「そう言うと思ってたわ…まぁ使う使わないは任せる」ポイ

アサシン「ほう…これはオリハルコンなのか?」パス

盗賊「破壊の剣っていう呪われた武器なんだとよ…何でも切れるらしい」

アサシン「私はクサナギの剣で十分なのだが…リカオン?使って見るか?」

狼女「私それ知ってるよ…白狼のあの子…未来くんが使ってた剣だ」

アサシン「ゴーレムを切った剣か」

狼女「ちょっと使ってみたい」

アサシン「フフそれはリカオンにやる…使いこなしてみろ」

盗賊「あと一本…商人の分も預かってんだ」ポイ

商人「僕!?剣かぁ…」パス

盗賊「まぁ護身用でぶら下げとけ…何でも切れるからお前でも使えるだろ」

商人「あ…何でも切れる…開かずの扉も開けられるって事だね」

盗賊「そういうこった…爆発しなきゃ良いがな?」

盗賊「ほんでよ?作戦の詳細が知りたいんだが…」

商人「あぁ説明する…この地下路線図を見て」パサ


驚くだろう?こんな向こう側まで地下線路が続いて居たなんて…

ここがバン・クーバ…ウィニ・ペグ…こっちがミネア・ポリス…全部古代遺跡が眠る場所らしい

そして調査済みの場所なんだ…というより既に滅びたキ・カイの様な都市だった様だ

海の恵みの無い場所だから仕方なかったんだろうね…とっくの昔にオーク領になった…


盗賊「てことはトロッコでオーク領まで一直線で行けるって訳か…」

商人「多分そこが最前線だと思われる…まぁキ・カイはその古代遺跡を取り返したい訳さ」

盗賊「まさかそんな最前線に行く訳じゃ無いだろうな?」

商人「そんな無茶はしない…その手前…エド・モントという場所に要所が有ってね…そこを調査したい」

盗賊「兵隊が沢山居る場所だろ?前線に行くのと変わらんぞ…」

商人「違うんだ…要所が魔物によって占拠されてしまってるのさ」

盗賊「魔物?オークじゃないのか?」

アサシン「話はこうだ…突如現れたガーゴイルとヘルハウンド…それからゾンビに襲われてキ・カイは補給路が断たれた」

盗賊「ガーゴイル…ヘルハウンド…てことは狭間がその辺にあるんだな?」

商人「ビンゴ!!そういう事さ」

アサシン「狭間が有るという事はそこに何かが隠されている可能性が高いのだ…それを調べる」

盗賊「狭間をそう簡単に見つけられんと思うが…」

狼女「私は匂いで分かる」

盗賊「ほう…なるほど面白そうだ」

『トロッコ』


カタンコトン ゴーーーー


盗賊「…しかし3人で良くこんな遠足行く気になったな?」

アサシン「私と商人は不死者だぞ?何も恐れる事は無い」

盗賊「リカオンは生身だろうが」

商人「盗賊は知らないかも知れないけど…大抵の魔物は襲って来ないんだよ」

盗賊「人間には襲われるじゃ無ぇかよ」

アサシン「人間がこの様な場所をうろついて居ると思うか?」

盗賊「まぁ確かに…さっきからゾンビしか見無ぇし…」

狼女「もうすぐ分岐…次右の方向」

商人「キラーマシン!!速度落として…」


キラーマシン「プシューーー」ウィーーン ガチャ


狼女「見えた!!分岐確認して」

アサシン「私が行く…」ピョン シュタタ

商人「キラーマシン!!一旦停止!!」


カタンコトン コロコロ…


アサシン「分岐を変える必要がある…盗賊!!力を貸してくれ」グググ

盗賊「おう!!」ピョン ダダ

アサシン「そっち側を引っ張ってくれ」グググ

盗賊「こら錆びついて堅い…どらぁぁぁぁ」グイ


ガチャコン


商人「行けるかい?」

アサシン「恐らくな?」タッタッタ ピョン シュタ

盗賊「この分岐はずっと変えた形跡が無いぜ?」

商人「だろうね?通常ルートでは無い線路なんだよ」

アサシン「このまま真っ直ぐでは他の軍と接触する恐れがあるのだ…トロッコで正面衝突はしたく無いだろう?」

盗賊「大丈夫なんか?」

商人「少し遠回りだけど目的地へは反対側から行く感じかな…さぁ乗ってよ!!もう行くよ」

盗賊「なんだかなぁ…俺はビビってんのか?」ピョン スタ


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『10時間後』


カタンコトン ゴーーーーー


狼女「正面!!又障害物…止まって!!」

商人「キラーマシン!!止まれ!!」

狼女「見えた!!又放置されたトロッコ」

盗賊「ちっと周囲見て回るか…」ピョン シュタ

商人「これで3台目か…連結して行こう」

アサシン「リカオン!手伝え…手順は前と同じだ…一旦トロッコを横に倒す」

狼女「分かってる…ふん!!」ガタン

アサシン「フフこれで随分な量の宝を持って帰れる」


盗賊「お~い!!商人!!来てくれ!!」


商人「んん?何かな?」

盗賊「立ちんぼのキラーマシンが2台あるぞ?これ動かんか?」

商人「おぉ!!動かなくても部品取り出来る!!」

盗賊「白骨がその辺に散らばってるから良い物有ったら持って帰るぞ…てかキラーマシンが良い物か…」

商人「こいつは2台とも動くかもしれない…」カチャカチャ

盗賊「そら良い!!」

商人「魔石の予備をもっと沢山持って来れば良かった…」

盗賊「ボルトの残弾まだ残ってそうだ…戦力になる」

商人「よし!動く…CMOS初期化した」カチャカチャ


キラーマシン「ウィーーン…プシューーー」


商人「もう一台の方も試してみる」タッタッタ

『3両編成』


ウィーン ガチャ プシューーー


アサシン「フフ思わぬ収穫だったな?」

盗賊「俺用のクロスボウも調達できてウハウハよ!!…出発もうちっと待ってくれ!!ボルト拾って来る」ダダ

アサシン「ここは前哨基地だったのか?」

商人「違うね…撤退時にキラーマシン残して下がったんだと思うな」

アサシン「撤退?」

商人「オークの白骨があったんだ…襲撃されたのさ」

アサシン「一本道だが…どちらに撤退したと思う?」

商人「今から行く方向だろうね…そっちの方が近い」

アサシン「側道がいくつかある様だから注意しておかんとな…」


リリース! スゥ


アサシン「何!!?」

盗賊「やべぇぞ!!デカいゾンビが居る…早く出発しろ」

商人「キラーマシン!!出発しろ!!」


カタンカタン コロコロ


狼女「正面!!ゾンビ多数!!どうする?」

盗賊「デカいのが混ざってる!!進路に入って来る様なら先に倒せ!!心臓狙え!!」

商人「オークゾンビかい?」

盗賊「だろうな?いつ襲って来るか分からんぞ?クロスボウで狙っとけ」

アサシン「どうやらこの先は危険地帯の様だ…」

盗賊「来るぞ!?撃て!!」バシュン バシュン


オークゾンビ「ウゴゴゴゴ…ヴヴヴヴ…ガァァァァ」ドスドス

『ゾンビ列車』


ヴヴヴヴヴ… ガァァァ


盗賊「ダメだ!ゾンビ相手にクロスボウじゃボルトの無駄だ!!」

アサシン「狙われて居るのはお前だけなのだが…」

盗賊「リカオン!クロスボウ撃つの止めてトロッコに憑りついたゾンビだけぶった切るぞ!」スラーン

狼女「じゃぁ私は左側…」シュタ

アサシン「ヤレヤレ…では私は鎮座しておこう」グビ

商人「どうして沢山ゾンビが…」

アサシン「死霊術師でも居るのではないか?」

商人「もしかして昔のフィン・イッシュと同じ事が起きて居ないか?」

アサシン「アレは病気の蔓延…」

商人「まてよ?新しく発見された遺跡に細菌兵器の類が有ったのかも知れない」

アサシン「古代の兵器の他にか?」

商人「それも兵器だよ…その事実を知ってるからキ・カイは新しい遺跡を確保しようとした」

盗賊「オークは病気に掛からんと聞いたが?」

商人「生きている内はね?でも死んだらゾンビになる…そういう病気だったとしたら?」

盗賊「なるほど…オーク領にばら撒きゃ勝手に自滅する訳か」

商人「盗賊ギルド諜報員からの情報でもゾンビが増えて苦戦してると言ってたんだよね?」

アサシン「うむ…」

商人「そうか…だからキラーマシンを増産してるんだ…前線をキラーマシンだけにしようとしてる」

アサシン「それではキ・カイはすでにオークとの戦争に勝っていると?」

商人「自滅を待っている状態…古代の細菌兵器は既に使われている…フィン・イッシュと同じ事がオーク領で起きてるんだ」

アサシン「その病気は直にキ・カイを蝕む…」

商人「機械化すれば回避出来るよね…」



--------------



盗賊「どらぁ!!」ブン スパ

アサシン「切れ味抜群の様だ…クックック」

盗賊「切れるのは良いが打感が全然無いのよ…素振りしてるみてぇだ」

商人「そろそろ到着する…」

盗賊「いよいよだな?」

アサシン「一応作戦だ…ゾンビは盗賊を狙う筈だ…あとは分かるな?」

盗賊「ケッ!!俺が囮になるんだろ?」

アサシン「分かれば良い…ハイディングで上手く逃げろ…後は処理する」

商人「見えた!!あのゲートを潜ったらエド・モント砦だよ」

『エド・モント砦』


ガチャコン プシューーーー


盗賊「もしかしてコレはキ・カイ並みに滅茶苦茶広いんじゃ無ぇか?」キョロ

商人「そんな感じだね…チカテツ街道と同じ構造だ」

盗賊「兎に角手あたり次第行くしか無ぇな…」

狼女「…」クンクン

アサシン「リカオンどうだ?何か分かるか?」

狼女「狭間の深い方角だけ分かる…でも沢山ゾンビが居る」

盗賊「どっちだ?」

狼女「上の方…多分地上付近」

盗賊「ヌハハ上とは分かりやすい…俺が先頭行くぜ?来い…」スタ



『チカテツ街道のような所』


ガチャガチャ


盗賊「トロッコに大量の物資が積まれたままじゃ無ぇか…」ガサゴソ

商人「火炎放射器だ…スゴイ」

盗賊「使えそうか?」

商人「新品だよ…魔石もある」

盗賊「もうクロスボウは要らん…お前はそれを使え」

商人「…」カチ


ボボボボボボ ボゥ


盗賊「おっし!!それでゾンビ焼ける」

アサシン「これはまさにフィン・イッシュの惨状と同じだな…生き残ってる者は居るまい…」

商人「廃線にした理由はコレだね…誰も近づけない様にしたんだ」

アサシン「ゾンビが来るぞ…気を抜くな」スチャ


ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズルズル


『上に続く通路』


ボボボボボ ボゥ


盗賊「俺が倒したゾンビは片っ端から焼いてくれ!!」

アサシン「やっている…」ボゥ メラ

盗賊「リカオン!!どっち行きゃ良いんだ?」

狼女「上!!」タッタ スパ スパ


オークゾンビ「ウゴゴゴ…」ピク


狼女「焼いて!!」

商人「うん…」ボゥ メラ

盗賊「もう大分上がって来たと思うんだがよう…」

狼女「兎に角上…道なんか分からない」

アサシン「しかし何処にガーゴイルなぞ居るのか…」

盗賊「だな?」

商人「これは広すぎるね…甘く見ていた様だ」

盗賊「魔物さえ居なきゃキ・カイと同じ様に暮らせそうだ」

『吹き抜け』


ヒュゥゥゥゥ


アサシン「足を滑らせるな?」

狼女「上の方でガーゴイルが飛んでる…」

盗賊「見えんな…何匹よ?」

狼女「10匹以上…それしか分からない」

盗賊「まぁ一応ガーゴイルは居た訳だ…」

商人「この遺跡は大きな縦穴なんだね…」

盗賊「うむ…どうやって作ったんだか…」

商人「ゾンビは階段を上がって来ない…ここで少し休憩しようか」

盗賊「アサシン!!一口ワインくれ」

アサシン「フン!」ポイ

盗賊「もう何時間歩き通してる?」グビ

商人「分からなくなったね…帰れるのかも自信がない」

アサシン「焼けたゾンビを辿れば戻れる」

盗賊「違い無ぇ…」

商人「他の遺跡もきっとこれくらいの規模なんだろうなぁ…」

盗賊「こんなんあるの俺ら全然知らんかったな…」

商人「地下だからね…キ・カイの軍事機密でもあったよね」

アサシン「私達が思っていたよりもキ・カイの規模は大きかった様だ」

商人「うん…北の大陸は小国の集まりだったね…」


ヒラヒラ…


商人「雪だ…」

盗賊「ここの吹き抜けはちっと寒い…上がって通路入ろう」スタ


『開かずの扉』


ダダダ


盗賊「おい!!この扉…」

商人「開いてる…もう盗掘されてるのか…」

盗賊「リカオン!狭間はどっちだ?」

狼女「上…」

商人「う~ん…読みを外しちゃったかも」

盗賊「どういう事ヨ?」

商人「狭間になってるのはさっきの穴が上空から探せなくする為の物じゃ無いかなって…」

盗賊「空中に浮いてるって事か?」

商人「それは分からない…あれだけ大きな穴なら気球で探せた筈」

盗賊「ふむ…誰がそんな事を…」

商人「さぁね?魔術師の黎明時代なら出来たのかもね」

盗賊「まぁとりあえずこの扉は特別なもんだ…入ってみよう」スタ

『古代遺跡』


ヒラヒラ…


商人「ここにも雪が積もって…」

盗賊「なんか色々謎の機械があるぜ?」

アサシン「この並んでいる塔は何だと思う?」

商人「多分光る隕石…ミサイルだよ」

アサシン「やはりな…」

商人「ここはあの光る夜の時天井が開いたんだ…空気が入ったせいで開かずの扉が開いた」

盗賊「火炎放射器で積もってる雪を溶かしてくれ…何があるか調べたい」

商人「もし古代のエネルギーを見つけたら教えて」

盗賊「おう!!ちっと向こう側探索してくるな?」ダダ

狼女「…」クンクン

アサシン「ん?何か臭うか?」

狼女「敵じゃない…何だろうこの匂い」クンクン

商人「何処?」

狼女「今入って来た扉の横…雪で埋もれてる」

商人「あああああああああ!!こ…これは!!」

アサシン「んん?」

商人「石化したホムンクルスだ…」

アサシン「何?」

商人「いつの時代なんだ…」サワサワ

狼女「匂いはその足元だよ」

商人「何処?」ガッサ ガッサ

アサシン「死体か?…いや…これはミイラだな」

狼女「他にも沢山…全部壁際だよ」

商人「ちょっと雪を解かそう」カチ


ボボボボボ ボゥ


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『30分後』


商人「みんな同じ衣類だ…全部女性だね」

アサシン「この辺りだけで20体近い…これをどう見る?」

商人「窒息死だよ…生きたままここの空気を抜かれた…これは古代人だ」

狼女「あそこのミイラは何か武器を抱きかかえたままミイラに…」

商人「取れるかい?」

狼女「ミイラが石になってて…」

商人「なるほどね…それは多分古代の兵器だ…取れなかったから盗掘されてない」

アサシン「その武器でミイラの部分を切り取ってしまえ」

狼女「分かった…」スパ スパ

商人「これは他にもありそうだな…僕も探して来る」タッタッタ


盗賊「お~い!!こっち来てみろ!!」


商人「何か見つけたね?」

盗賊「この部屋はなんだ?謎の機械が並んでいやがる…」

商人「スゴイ!!」

盗賊「これ…椅子に腰かけてるのはミイラだよな?」

商人「この機械を操作してたんだ…ここは指令室か何かだ」ゴソゴソ

盗賊「ガラス越しの向こうにも部屋があるぜ?」

商人「よし…ここまでは雪が入って来て無いから一旦ここを拠点にしよう」


シュタタタ


狼女「古代の兵器取れたよ」

盗賊「おぉ!!見せてみろ」

狼女「これ使えるかな?」カチカチ

盗賊「ほぉぉぉ…インドラの銃みてえだな…」ガチャ

商人「他にも有るかもしれないから見つけた物は此処に…」

盗賊「だな?向こうも見てくる」ダダ


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『焚火』


メラメラ パチ


盗賊「燃えそうな物はここに突っ込んでくれな?…ぅぅぅさぶ」ゴシゴシ

狼女「これで3つ目…」ドサ

盗賊「古代の兵器…一人1つづつ持って帰りたいな…ふぁぁ~あ」

アサシン「盗賊…少し仮眠を取れ」

盗賊「あぁ…ちっと疲れた」

狼女「使える物が無いのが…」

アサシン「エネルギー切れなのだろう」

狼女「もう謎の機械は無視して良いよね」

アサシン「うむ…すべてガラクタだ」


ヨイショ ヨイショ ドサリ


商人「やっと見つけたよ…」

アサシン「それは?」

商人「古代のエネルギーさ…容器の中にウラン結晶が入ってる」

アサシン「では見つけた古代の兵器にエネルギー充填出来るのではないか?」

商人「どうだろう?やり方が分からない」

アサシン「まぁ持って帰ってみてからか…」

商人「今は休憩中かい?」

アサシン「盗賊は軽く仮眠だ」

商人「見つけた物をトロッコまで運ばないとね…」

アサシン「持てる量に限りがあるからな…これ以上探索しても持って帰れん」

商人「書物が一切見つからないのが不思議だよ…本棚らしい物も無い」

アサシン「古代では不要だったのだろう」

商人「ちょっと集めた謎の機械類をバラしてみようかな…」カチャカチャ

アサシン「好きにしろ」

狼女「その機械…何だと思う?」

商人「腕らしいものが付いて居るから自律で動くペットの様な物じゃ無いかな」カチャカチャ

狼女「沢山在るけど殆ど傷んでた」

商人「傷んで無い物は持って帰られた感じだろうね」カチャ

狼女「シィィィーーー」ピク

商人「!!?」キョロ

狼女「遠くで何か聞こえる…話し声」

アサシン「…」

狼女「先遣隊…部隊が前線から引き揚げて来るって…」

アサシン「私達も一度引き上げた方が良い…」

狼女「大分遠い…多分10人くらい」

アサシン「商人…今回は目標達成と見て良いか?」

商人「僕の目標は達成だね…でもアサシンの目標は達成してない」

アサシン「これほど広いとは想定外だった…すべての探索は2~3日では終わらん…中止だ」

アサシン「そもそも此処でドリアードと同じ事が起きているかもしれないと言うのは私の勝手な思い込みなのだ」

盗賊「ぬぁぁ寝れやしねぇ…今の話は初耳だが?」

商人「諜報員の情報だとね…エネルギー源としてどこからか持ち込まれたのは黒い魔石らしい」

アサシン「私はそれが魔王を封じた魔石では無いかと疑っている」

商人「ここの所キ・カイでは魔石が供給過多で値下がりしてるのさ…どこかでエネルギーの移し替えをやってる」

盗賊「じゃぁその現場が此処だと思ってた訳か?」

アサシン「前線へのエネルギー補給を考えると此処が望ましい…そう考えて居た…たが確証は無い」

盗賊「なるほど…それを調査したかった訳か…だが広すぎたんだな?」

アサシン「うむ…」

盗賊「まぁ一旦仕切り直しが良さそうだ…マジで探すならしっかり地図とか作らんと厳しい」

商人「軍に見つかってしまう前に戻ろう…」

盗賊「だな?俺がそのエネルギー源とやらを持って帰るからその他は手分けしてくれ」ヨッコラ

アサシン「古代の兵器は1つづつ…後はどうする?」

商人「ちょっと待って…この機械の頭部ユニットだけ外して行く」ガチャガチャ

狼女「帰路は私が先頭…匂いで分かるから」

盗賊「そら助かる…後方は任せろ」


--------------

--------------

--------------

『吹き抜け_帰路』


ヒュゥゥゥ ボボボボ


商人「ガーゴイルが燃えながら落ちて…」

盗賊「空で戦闘やってんな…ありゃ小型の気球が火を吹いてんだ」

アサシン「先遣で陸と空から…定石だな」

盗賊「良く見ると気球が沢山飛んでんじゃ無ぇか…」

商人「ここから一気に降りられると先越される…」

盗賊「ちぃぃ…高くてロープ使っても降りられんな…」

狼女「案がある!!私が変体すれば一人づつなら背負って飛び降りられる」

アサシン「む…」

狼女「元来た道を戻るのは10時間くらい掛かってしまうから…それなら変体した方が早い」

アサシン「良い案だ…リカオンが寝た後は戦力が一人減るがトロッコまで行けばキラーマシンが残って居る」

盗賊「下に降りた後は行き先分かるか?」

狼女「匂いで分かるよ」

商人「よし!それで行こう」

狼女「アサシン…破壊の剣を預かって」ポイ

アサシン「それは私が使おう」パス

商人「あぁぁちょっと!!服を脱いでから変体して!!」

盗賊「ヌハハ後で裸の女背負って行くのも問題が多いしな」

狼女「アッチ向いて!!」ヌギヌギ

盗賊「ヘイヘイ…んん?対岸の兵隊…こっちに気付いてんな」

アサシン「流石は前線の兵士という所か…手練れが居ると見た」

商人「マズいね…軍は貝殻と同じ様な機械を使って連絡し合ってる…気球が降りて来るぞ」

狼女「服を預かって!!」バサ

盗賊「おう!!」

狼女「盗賊から!!背中に乗って!!」ガブリ


ムクムク モサモサモサ


ウェアウルフ「グルル…早く!!」

盗賊「俺が下の安全確保だな?」ピョン

ウェアウルフ「舌噛むな?」ピョン シュタ シュタ


--------------

--------------

--------------

『最下層』


グルルル ガウガウ


盗賊「おら…掛かって来いや」ブン ブン

ハウンドドッグ「グゥゥゥゥ…ガルルル」


ピョン シュタ!


ウェアウルフ「商人降りて…次行って来る!!」シュタタ ピョン

商人「これ…ゾンビの犬かい?囲まれてる…」

盗賊「ゾンビとちっと違う…知能があるから手強いぜ?」

商人「火炎放射器で威嚇した方が良いね…」ゴゴゴゴゴ ボゥ


ヒュゥゥゥ ドサーーー


盗賊「ガーゴイルも降って来やがる…上にも気を付けろ!!」

商人「う…動くぞ!!」

盗賊「さっさと燃やしちまえ!!」

ガーゴイル「ギャアアァァァ…」ヨタヨタ

商人「このぅ!!」ボボボボボ

盗賊「来るぞ?」ダダ

ハウンドドッグ「ガウルルル…ガァァァ」ダダ

盗賊「くっそコイツ!!」ブン

商人「ハッ!!狙われてるのは盗賊だけか…」

盗賊「その様だな?素早くて対処出来ん!!上手い事燃やしてくれ」

商人「分かってる…賢いなあの犬…」

盗賊「だろ?ちゃんと距離を分かってる」

商人「この場合クロスボウの方が良いけど…置いて来ちゃった」


シュン シュン シュン ドス ドス ドス


ハウンドドッグ「ギャフゥゥン…ギャンギャン」バタバタ

盗賊「何ぃ!!?」

商人「クロスボウの撃ち下ろしだ…あの兵隊は降りて来るのが早い…」

盗賊「俺らを助けようとしてる様だ」

商人「そりゃそうだよね…僕達は人間の形をしてるんだから」

盗賊「あの兵隊は特殊な訓練を受けた精鋭だ…リカオンを狙われたらマズイ」



ピョン ズザザー



ウェアウルフ「アサシン降りて!!」

アサシン「…」ピョン シュタ

盗賊「リカオン!!身を隠せ!!」

ウェアウルフ「え!!?」

盗賊「上に居る兵隊に撃たれるかも知れん…あれは特殊部隊で俺ら以上に出来る奴らだ」

商人「兵隊が移動を始めてる…今の内にトロッコへ急ごう」

ウェアウルフ「こっち!!」シュタタ

盗賊「商人!!続け!!」ダダ

『チカテツ街道のような所』


シュタタ タッタッタ


盗賊「ここは見覚えがあるぞ!!」ハァハァ

ウェアウルフ「向こう側…」

商人「ここは補給路だ…彼らはどうして先にここを押さえない?」

盗賊「走って来て分かるだろ?この都市はあの縦穴を中心に円形なんだ…押さえてんのは反対側だ」

商人「そういう事か…」

盗賊「焼かれたゾンビ辿って直ぐにここまで辿り着く…サッサと逃げるぞ!!来い」グイ

ウェアウルフ「声が聞こえる…私達の事を残ってる部隊だと思ってる」

盗賊「そら良い知らせだ…お前が見られんで良かったわ」

ウェアウルフ「見られてるみたい…どうしてウェアウルフが味方してるのか何処かに向かって話してる」

商人「それ機械で通信してるな…」

アサシン「ウェアウルフは北の大陸の生物だ…繋がりを勘繰る者が出て来るぞ」

商人「敵だと判断されるのは時間の問題かもね」

盗賊「どっちでも良い!!急いで脱出だ」



『連結トロッコ』


ハァハァ…


商人「みんな乗って!!」

盗賊「やっと休めるぜ…」ドタリ

商人「キラーマシン!!前後入れ替わって逆走して戻る」

キラーマシン「プシューーーー」ウィーン ガチャコン ガチャコン

アサシン「追っ手は間に合って居ない様だ…」

ウェアウルフ「もう匂いが分からないくらい遠い…」

アサシン「リカオン…今日の主役はお前だったな」ナデナデ

ウェアウルフ「撫でられると眠くなる…」

アサシン「もう良い…早く寝て次に備えるのだ」

ウェアウルフ「グルルル…グゥ」zzz

商人「出発するよ?キラーマシン!トロッコを発進させて!」

キラーマシン「プシューーーー」


カタタン コロコロ…


盗賊「さぁて…ここから半日…又ゾンビ列車だな?」ムクリ

商人「今度は火炎放射器が2台あるから随分ラクさ」

アサシン「トロッコに装着して放射しっぱなしでどの位継続する?」

商人「さぁ?でも魔石は沢山拾って来た…試してみようか」

盗賊「ちっと休めるならそれも良いな…貸せ!俺が取り付ける」グイ


ガチャガチャ

『火炎列車』


ボボボボボボ ボゥ


盗賊「んがぁ…すぴー」zzz

アサシン「このまま進むのは他のトロッコと正面衝突するのでは?」

商人「いや…多分来ないね」

アサシン「地下路線図ではこの路線は一方通行だぞ?」

商人「もうオークとの戦争は終わってる…キ・カイは外海の調査に注力してるのさ」

アサシン「フフ戦地への補給は無しか」

商人「来るとしても少数のキラーマシンを輸送する程度だよ…予定していた子供達が居なくてそれも滞ってる」

アサシン「ゾンビ化の病気をばら撒くとは外道も外道…」

商人「半年もすればオーク領はゾンビだらけ…弱体化した所を攻めるんだ」

アサシン「補給が無いのを不審に思った前線の部隊が戻り始めて居る…そういう事だな?」

商人「多分ね…」

アサシン「もう太陽を見ず時間が分からんのだが…まさかチカテツ街道までこのまま突破じゃあるまいな?」

商人「う~ん…帰りをどうするかあまり考えて無かったんだ」

アサシン「クックック…詰めが甘い」

商人「流石にキラーマシン3台持って悠々と帰る訳にも行かないなぁ…」

アサシン「キラーマシンは放棄が良かろう…4人で徒歩ならなんとか帰還できる」

『その頃_チカガイ』


ガチャガチャ


オークの子「爺ぃ!!まだ?」

ジャンク屋「爺ぃと言うなぁぁぁ私は科学者だぞ!!」ガチャガチャ

オークの子「じゃぁ科学者…まだ?」

科学者「慌てんなや…キシシシシ…ホレ」ポイ

オークの子「よし!!これで…」パス

科学者「只じゃないよ?」ギロ

オークの子「…」ポイ

科学者「これだけ?んぎゃあああ…私は研究で忙しいと言うのに…」ムシャムシャ

オークの子「それうちらの最高の御馳走なんだ…それで勘弁して」

科学者「これだからガキは好かん…」ムシャムシャ

オークの子「これどうやって使うの?」

科学者「スイッチを押したらビビビーっとなる位分からんのかや?」ムシャムシャ

オークの子「ありがとう…やってみる」

科学者「それで…」ジロリ

オークの子「忘れて無いよ…機械を持って帰れば良いんだろ?」

科学者「ソレじゃ!!ソレソレソレソレぇぇぇぇ…持ってきたら何でも作ったる」

オークの子「大きな声出さないで…大人に見つかるとヤバいから」

科学者「私は此処で研究を続けて居るから…イヒヒヒヒ」

オークの子「研究ねぇ…牢屋から逃げて来て隠れてたんじゃ無かったっけ?」

科学者「見つかってしまっては研究が出来ん…シッシ!!あっち行け!!」

オークの子「又来る…」ノシ

『地下通路』


ピチョン ポタ


悪ガキ1「あの爺ぃ頭大丈夫?」

オークの子「大人の中では信用出来る方さ…」スタスタ

悪ガキ2「ブツは手に入ったんだろ?見せろよ」

オークの子「おもちゃじゃ無いんだ!触るな…」

悪ガキ2「ケッ!!」

オークの子「…それで?…地下水路の方にオークの大人はどれくらい集まった?」

悪ガキ2「6人…」

オークの子「誰にも見つかって無いよね?」

悪ガキ2「うん…アイツらヤバい武器持ってるよ?」

オークの子「どんな?」

悪ガキ2「くそデカイ斧」

オークの子「普通だよそんなの…食料は言われた通り渡したか?」

悪ガキ2「木の実と骨…」

オークの子「まぁ良いや…作戦通りオークの退路確保頼んだよ」

悪ガキ2「バッチリ!!例の地図のお陰でチカテツ街道8番の奥まで出られる」

オークの子「じゃぁここからは別行動だ…悪ガキ1!!私に付いて来い」

悪ガキ1「分かってる…」スタ

オークの子「あんたの鍵開けが頼りなんだ…失敗すんなよ?」

悪ガキ1「こいつも連れて行くよ」

お手伝いロボ「ピポ…」ウィーン

オークの子「あの爺ぃが作った奴か…まぁ良いや!来い!」タッタ

『軍の研究所』


ドドーン グラグラ


兵隊1「んん?何だ!?」

兵隊2「地上の方だ…又何か起きた様だ」


ザザー

緊急!緊急!

外部より未確認の砲撃あり!

地上市街地被害甚大…特別警戒レベル1に相当

至急司令部からの指示を要求する!!


兵隊1「何ぃ!!警戒レベル1だとぉ!!」ガタン

兵隊2「緊急招集が来る!!人駆集めるぞ!!」ドタドタ


ザワザワ ドタドタ

指令部からまだ指示来て無いのか?

兎に角軍用ドックに移動急いだ方が良い

砲撃って何なんだよ!!どっかの軍船か?

投石らしい…噂に聞くオークロードかも知れん

ザワザワ ドタドタ


---------------


ヒソヒソ


オークの子「始まったね…チャンス見てあの扉から入る」

悪ガキ「この場所で間違いない?」

オークの子「あの爺ぃは此処に収容所があると言ってた」

悪ガキ「みんな助けないと…」ブルブル

オークの子「震えてんのかい?」

悪ガキ「これは武者震いなのか?」ブルブル

オークの子「慣れろ…行くよ」グイ

『研究所の中』


ガチャリ ギィィ


オークの子「よし!!誰も居ない」

悪ガキ「入って来られない様に内側から鍵を掛けて置く…」カチャン

オークの子「私が先に…」スタ

悪ガキ「待って…お手伝いロボ!!先に進んで様子見して!!」

お手伝いロボ「ピポポ…」ウィーン

オークの子「ふむ…良いね」

悪ガキ「大人が反応したらそのビビビの武器で倒して」

オークの子「分かった…後ろ頼むよ」コソーリ


女「うわっ!!だ…誰?」


オークの子「大人の女か…」

女「掃除の機械?一体誰が…」キョロ

オークの子「ゴメンよ!!」ダダダ

女「え!!?子供…いぎゃぁぁぁ」ビビビビ ドタリ

悪ガキ「…」

オークの子「先に進むよ…」グイ

悪ガキ「死んで無いよね?」

オークの子「気絶しただけ…これは遊びじゃない!!真剣にやって!!」

悪ガキ「分かってる…」ダダ

『研究所の奥』


シクシク エ~ン


子供達「だれ?ここから出して?」

オークの子「今から鍵開ける…だれもしゃべらないで」ギロ

子供達「…」コクコク

オークの子「悪ガキ!!あんたの出番」

悪ガキ「分かってる…集中するから静かに…」カチャカチャ

オークの子「私は例の機械を探して来るからそれまでに終わらせて」

悪ガキ「うるさい!!集中できない!」カチャカチャ

オークの子「…」タッタッタ

悪ガキ「お手伝いロボ…大人が来たら足止め頼む」

お手伝いロボ「ピピ…」ウィーン

悪ガキ「鍵が開いたら出口は右の奥だよ…出たらチカガイのギャング達と合流するんだ」

子供達「…」

悪ガキ「その後はギャングに従って事が済むまで隠れる…イイネ?」カチャン 

子供達「!!?」

悪ガキ「開いた…今なら逃げられる…早く行って!!」


ドタン! ガラガラ


兵隊「このぉぉ!!」

悪ガキ「ヤバイ…」ダダ

オークの子「くっそバレた!!」ダダ

兵隊「どうやって逃げ出した!!」

悪ガキ「姉御!!いつも通り!!」スラーン

兵隊「武器を持って居る…だと?」タジ

悪ガキ「…」ギロリ

兵隊「子供が持って良い武器では無い…渡しなさい」

悪ガキ「姉御!!」

オークの子「…」ダダ ビビビビ

兵隊「んがががががが…ぐぅぅぅ」ピクピク

悪ガキ「よっし!!例の機械は?」

オークの子「見つけた…戻るよ!!」ダダ

悪ガキ「みんな付いて来い!!」ダダ


子供達「…」ガクブル



『商人ギルド』


ドカーーン パラパラ


娘「いやぁぁぁぁ…」タジ

影武者「こ…これはダメだ…娘さん!!家族を連れて下へ避難するんだ」

娘「し…下?」

影武者「早く!!商人の隠し部屋が地下通路になってる」

娘「皆を連れて来る!!」ダダ


ギャァァァ

誰か…誰か助けて…

伏せろぉ!!頭だけ守れぇ!!

兵隊は何をやって居るんだ!!

『隠し部屋』


ガチャリ ギーー


娘「早く入って…」グイ

家族達「こんな場所がギルドの地下に…」

影武者「今はそんな事言ってる場合じゃ無い…奥の通路なら比較的安全だからそっちへ」


ゾロゾロ


娘「上の大部屋はもうグチャグチャ…大事な物は無かったかな?」

影武者「大事な物は命だけさ…」

娘「この砲撃は何だか知ってる?」

影武者「分からない…ただもうここで商人ギルドは厳しいね」

娘「爺ぃの為に家族集めといて良かった…」


ドーン グラグラ


娘「うわわわ…」

影武者「気球で物資運搬どころじゃ無くなったな…気球が無事なら良いけど」

娘「ここに包帯とか無い?」

影武者「ある…僕の包帯と商人のエリクサー」

娘「落ち着いたら他の人の手当てに回らないと…」

影武者「そうだね…」


ドーン ドカーン


-------------

-------------

-------------

『火炎列車』


カタコン ゴーーーーー


商人「もうすぐチカテツ街道8番だ…何事も無く戻って来れたね」

狼女「この人ずっと寝っぱなし…起こす?」ペシ

盗賊「ふんが!?」パチ

アサシン「フフ寝覚めは良いか?」グビ

盗賊「おぉぉ…今何処ヨ?」ムクリ

商人「あと1時間くらいで到着さ…そろそろ徒歩に切り替えようと思ってた所だよ」

盗賊「ふぁぁぁ~あ…どうやら俺はしっかり寝たみたいだ…腹減ったな」

狼女「ナッツ!」ポイ

盗賊「くぁぁぁケチくせぇ食い物だ…アサシン!ワインくれ」パク

アサシン「もう残り少ない…一口だけにしろ」ポイ

盗賊「一口かよ…まぁ無いよりマシか」グビ

狼女「…」クンクン キョロ

アサシン「リカオンどうした?」

狼女「オークの残り香…」

盗賊「おぉそら又てーへんだ」グビ

狼女「ちょっと待って!!何処かに隠れて居るかも…数が多い」クンクン

商人「このまま走り抜けた方が良いって事かい?」

狼女「いえ…止まって!!正面から何か来る」

商人「キラーマシン!!止まれ!!」

キラーマシン「プシューーーーー」ガチャコン


キキキキキーー ガッタン


狼女「警戒して?」スラーン

アサシン「正面…側道を誰か歩いているな…」

商人「どこ?」

狼女「子供!!」

盗賊「なぬ!?こんな所を一人でか?」

狼女「違う…子供がオークを引き連れて歩いてる」

盗賊「なんだとぅ!!」ダダ

商人「あ…そういう事か…子供はギャングの誰かだ」

アサシン「どういう事だ?」

商人「ギャングはオークと結託しているらしい」

狼女「聞こえる…多分トロッコに何か乗せて引っ張ってる」

盗賊「オークが物資調達やってんだな?」

商人「参ったね…道を塞がれてる」

盗賊「ギャングなら話通じるだろ」

商人「オークが襲って来なきゃ良いけど…」

狼女「向こうのオークもこっちに気付いたみたい…どうする?」

盗賊「戦うと子供巻き込んじまうな…」

狼女「オーク2体!!走って来る」ピョン クルクル シュタ

盗賊「商人!!火炎放射の準備だ」ダダ

アサシン「私も火炎放射が良さそうだ…」グイ チャキリ

狼女「盗賊!!右側をお願い」スラーン

盗賊「マジか…オークとタイマンして勝てる気がせんのだが…」スラーン


オークウォーリア「ウゴォォォォ!!」ドスドスドス ドカーン


盗賊「うぉっと!!でかい斧だ」

アサシン「盗賊!!武器を壊せ」

盗賊「分かってらぁ!!」ダダ スパ スパ


オークウォーリア「ウゴ!?」バラバラ


盗賊「オラオラ!!武器無しでどうする?」---でけぇ---

狼女「弓!!」


シュン!! ストン!!


商人「あぶっ!!」タジ

盗賊「商人!!トロッコの陰に隠れてクロスボウで撃ち返せ」

商人「あわわわ…」ドタドタ

狼女「向こう引いてる…」

アサシン「こっちが只者では無いと気付いた様だ」

狼女「状況分かって来た…」クンクン

オークは全部で6体…その内2体は傷付いてトロッコの中…

後方でオーク2体が向こう側と戦っていて

私達の目の前に来てるのが残りの2体…子供達は全部で10人程


盗賊「どういう状況か分からん!!子供達は掴まってんのか?」

狼女「自分の足で歩いてる…」

商人「なるほどオークを逃がそうとしてるね…」

アサシン「これでは膠着状態だな…少し間を詰めるか?」

商人「いや…なにか小さな機械がこっちに向かって来る…」

盗賊「爆発するんじゃ無いだろうな?」

商人「トロッコの陰に隠れようか…」


お手伝いロボ「ピポポ…」ウィーン


商人「張り紙だ!!」ダダ

盗賊「おい!!爆発したらお前吹っ飛ぶぞ…」

商人「道を開けてと書いて居る…」

アサシン「子供の字だな…この状況で道を開けてとは考えが甘い」

盗賊「開け様が無いんだが…どうするよ?」

商人「取引するしか無いね…」カキカキ


お手伝いロボ「ピピピ…」クルリ ウィーン


盗賊「なんて書いた?」

商人「簡単さ…トロッコを入れ替える…その間不戦協定だ」


---------------

『数分後』


ピチョン ポタ


狼女「さっきのオーク2体は後方の戦闘に行ったみたい」

商人「フフ取引に応じた様だね…その間向こうから攻められたくない訳だ」

盗賊「武器はどうする?」

アサシン「不戦協定なのだろう?下げておけ」スタ

商人「キラーマシン!ゆっくり前進だ…」

キラーマシン「プシューーーー」


ゴトゴト ゴーーー


-------------

-------------

-------------



『取り引き』


ヒソヒソ ヒソヒソ


商人「大人は居ない様だね…君が代表かい?」

オークの子「そうだよ…はぁはぁ」ヨロ

商人「君とは会った事有るかな?」

オークの子「知らない…それよりトロッコの入れ替えを早く」ポタ


ダダダ ズデー


科学者「おぉぉぉぉお!!私の子供達ぃ!!お前は初期型!!まだ残って居たのかぁぁアハハハハ」

キラーマシン「…」

商人「ん?」

オークの子「爺ぃ!!引っ込んでて!!」

商人「あ…」

科学者「爺ぃでは無いぃ!!私は偉大な科学者…うひゃぁぁ!!お前はぁぁ!!」ドタドタ

商人「なんでジャンク屋が此処に居るんだ…」ボソ

科学者「おまいが持って来たあの機械…」プルプル

商人「何の話かな?人違いだよ」

科学者「私の眼はごまかせんぞぃ!!何故他の者に売ったんやぁぁ!!」

オークの子「爺ぃ引っ込んでろって言ったよね!!」


狼女「ちょっと商人!!傷付いたオークが失血で死にそう」


商人「ここでゾンビになられると困るな…僕のエリクサーでとりあえず処置して」ポイ

狼女「一口しか無いよ…」

アサシン「私の分も使え…」ポイ

オークの子「死ぬとゾンビになると知って?」

商人「ハハ…まぁね」

盗賊「トロッコ入れ替えるも何も…こんなデカいオークを誰が担ぐのよ」

商人「キラーマシンなら出来るじゃ無いかな…」

狼女「今にも死にそう…動かさない方が良い」


ダダダ ズザーー


チンピラ「ダメだ姉御!!ギャング掃討が始まった…全員連れて行かないと殺される!」

オークの子「ちぃぃ…仕方無い!!一旦線路の奥まで行くから全員連れて来て!!」

チンピラ「分かった!!もう少し時間稼いで!!」

盗賊「おいおいどういう話になってんのよ?」ズイ

オークの子「大人には関係無い」ポタ

盗賊「待て待て俺は子供のヒーローだ…お前怪我してんだろ…見せろ」グイ

オークの子「触るな!」グイ

盗賊「おい商人!なんかこの状況おかしく無ぇか?」

商人「そうだね…どうやら僕達は素通り出来そうに無い」

盗賊「察するにオーク呼び込んで政府から追われる立場になってんだな?」

オークの子「…」


科学者「おぉぉ!!こ…これは!!古代の兵器じゃ無いですかぁぁ…これをどうして」


アサシン「近づくな…」ドン

科学者「それがあればキラーマシンを強化して…更に…更に…ウシシシシ」

狼女「後方のオーク4体が押され始めてる…キラーマシンが出て来たみたい」

オークの子「あぁぁ…時間が無い!!子供達が逃げられない…」ソワソワ

盗賊「キラーマシンだけ倒せば何とかなるな?」

オークの子「え!!?」

盗賊「俺が時間稼いでやる…その間にこの状況を何とかしろ」

商人「盗賊…」

盗賊「まぁハイディングでキラーマシンぶった切って来るだけだ…なんとか話まとめろ!!」ダダ

商人「頼む!!」

『チカテツ街道8番』


ザザー

オーク4体の後方にギャングと思われる子供数人確認

クロスボウでの援護射撃でオーク逃走を支援している模様

子供であろうと抵抗する者は容赦するな

線路損傷を裂ける為爆弾及び榴弾の使用は控えろ


バシュン バシュン ストン ストン


悪ガキ1「ヤバイ…キラーマシンがなにか発射してくる」

悪ガキ2「血が出てるぞ?」

悪ガキ1「今のが太ももに当たった…」ポタポタ

悪ガキ2「くそう!!キラーマシンさえ居なきゃ…」

悪ガキ1「オークもやられそうだ…どうしよう?」

悪ガキ2「逃げるしか無い…歩けるか?」グイ

悪ガキ1「逃げたらダメだ!!時間を稼がないと皆が逃げられない」


バシュン バシュン ストン ストン


悪ガキ2「居場所がバレてる…」

悪ガキ1「ここを死守する!!」ガチャコン

悪ガキ2「俺も付き合う!!」ガチャコン

悪ガキ1「オークに注意が行ったら向こうの柱の陰に行く…」

悪ガキ2「二手に分かれるのか…」

悪ガキ1「マズい!!兵隊がオークの右手に回り始めた…囲まれる」


リリース スゥ

悪ガキ1「うわぁ!!」バシュン

盗賊「おっと危無ぇ…反射で撃つな」

悪ガキ1「誰だ!!」

盗賊「誰でも良い!!俺が時間を稼ぐからお前等は下がれ」

悪ガキ1「逃げる訳に行かない…ぅぅ」ポタ

盗賊「んん?足か…撃たれたんだな?」

悪ガキ1「これくらい…」

盗賊「おいクソガキ!この角を持ってろ…直に傷が塞がる」ポイ

悪ガキ1「角?」

盗賊「血が出ると長期戦出来んぞ?何でも良いから止血しろ」


バシュン バシュン ストン ストン


盗賊「ハハーン…やっぱあのキラーマシンは囮か…ようし!!」

悪ガキ1「どうする気だ?」

盗賊「お前等2人は骨がある…俺があのキラーマシンぶっ倒すからクロスボウでここから兵隊に向けて撃て…分かったな?」


ハイディング! スゥ


悪ガキ1「き…消えた…」ポカーン

悪ガキ2「兵隊はまだこっちに気付いてない…今なら撃てる」

悪ガキ1「ちょっと止血を…」グイグイ ギュゥ

悪ガキ2「撃つ!!」バシュン バシュン

悪ガキ1「僕も…」バシュン


ガコン ガラガラ ドサドサ


悪ガキ1「え!!?キラーマシンがバラバラに…」

悪ガキ2「おぉ!!一瞬で倒した…誰だあの人」

悪ガキ1「見とれてる場合じゃ無い…オークを援護しなきゃ」ガチャコン

悪ガキ2「そうだ…オークの退路を確保しないと…」ガチャコン


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『トロッコ』


ウヒャヒャヒャ

研究材料がまた一つ手に入った…キシシシ…これで亡命して又研究に勤しめる


商人「荷物は食料とポーション類…そうか状況理解したぞ」

オークの子「…」ギロリ

商人「オーク達はゾンビになるのを回避する為にエリクサーを求めに来たな?…それをギャング達が援護した」

オークの子「…」シラー

商人「残りの子供達はどの位で合流出来る?」

オークの子「10分…」

商人「こうしよう…トロッコは全部連結して君達に譲る…どうにかオーク達に守って貰って生き延びるんだ」

オークの子「…」ジーーー

商人「ジャンク屋!!」

科学者「私は科学者だと何度言えば覚えるのかぁ!!」

商人「大人はあなただけだ…キラーマシン3台使って子供たちを守るんだ」

科学者「キシシシ…私はぁ!!私は偉大な科学者ぁぁ…生き延びて世界を作るのだぁぁぁ」

狼女「あの人に話は通じない…」

商人「オークの子…良く聞いて…この魔石を君に譲るから上手くキラーマシンをコントロールするんだ」

商人「それからこの火炎放射器も持って行くと良い…ゾンビは焼けば動かなくなる」


トロッコは連結して合計6台…

これだけ有れば子供全員載せてオーク領まで行ける筈


アサシン「私達は戻るのだな?」

商人「地上がオークの襲撃を受けているんだ…商人ギルドに影武者も盗賊の家族も残されてる」

アサシン「ここを突っ切って戻るとでも言うか?」

商人「仕方ないよね…行くしかない…影武者は失えない…次の時代の僕になる逸材だ」

アサシン「フフ次の時代か…」チラリ

狼女「こんな大事を起こしたギャング達も次の時代の子供達…」

商人「そうさ…残りは大人がどうにかするんだ」


ズルズル


オークの子「悪ガキ!!」ダダ

悪ガキ「皆連れて来た…」

子供達「え~ん…え~ん…」シクシク

オークの子「皆トロッコに乗って!!」


リリース!! スゥ


盗賊「やべぇぞ!!キラーマシン倒すだけじゃもう抑えきれん」

商人「盗賊!!事情が変わった…僕達は徒歩でこのまま帰る」

盗賊「何ぃ!!お前向こうのクロスボウの数半端ないぞ?」

商人「良いんだ…子供達を逃がす為だ」

盗賊「マジかよ…」

アサシン「クックック…毎度の事ながら苦難の道ばかり選ぶ…」

商人「出発だ!!子供達は早く乗って」

盗賊「おら小僧!!お前もだ!!」グイ


悪ガキ「痛い!!くぅぅぅ」

オークの子「悪ガキ?何処か怪我を?」

悪ガキ「大した事無い…」


盗賊「お前がリーダーだな?行くなら行くでサッサと出発させろ!!後は俺らが何とかする」

オークの子「キ…キラーマシン!!トロッコを動かせ!!」

キラーマシン「プシューーー」ガタコン


ゴロゴロ ゴトゴト


盗賊「おっし!!アサシン!!リカオン!!切り抜けるぞ!!」

商人「これだけ持って欲しい…」ヨタヨタ

盗賊「ぬあぁぁぁ…古代のエネルギーか…くっそ!!貸せ!!」グイ

狼女「私が先頭を行く…付いて来て」シュタタ


オークの子「ここから2つ目のマンホール!!そこに抜け道ある!!」


狼女「フフやっと話した…知ってるから心配無用!!行くよ!!」シュタタ

盗賊「じゃぁな!?お前等も上手く切り抜けろ」ダダ



ガタンゴトン ガタンゴトン ゴーーーーー


悪ガキ「…」---あの人が僕の父さん---

悪ガキ「…」---なんて声を掛ければ良かったんだろう---

悪ガキ「…」---僕の事を知らなかった---


--------------

--------------

--------------

『地下水路』


ピチョン ポタ


狼女「オークが上を走り抜けて行った…」クンクン

盗賊「こんな抜け道有ったんだな?」ピチャ

商人「ここは地下路線図に書かれて無いね…ギャング達が隠れ潜んだ場所なんだろうね」

盗賊「方角的には線路と平行して続いてる…歩いた距離からして…」

商人「進入禁止の向こう側に出てくれれば良いけどね…」

盗賊「そういや商人!お前が持ってた古代の兵器はどうした?」

商人「あぁアレはあの科学者にあげた…落ち着きの無い人だったから渡せば大人しくなると思ってさ」

盗賊「マジか勿体無ぇな…」

商人「まぁ僕達はあと2つ有るから良いじゃ無いか」

狼女「ちょっと待って…話し声が何かおかしい」

商人「んん?」

狼女「なんか地上の市街地が壊滅的な状況って…」

商人「え!!?ただオークが攻めて来たんじゃないの?」

狼女「すごく混乱してる…」

商人「ギャングのリーダーからあまり聞き出せてないんだよなぁ…」

アサシン「一難去って又一難か?…いつも通り」

盗賊「早く帰ら無ぇと娘達にどやされるんだが…」

狼女「もうそんな状況では無さそう…」

商人「ちょっと急ごう」タッタッタ

『チカガイ居住区』


ゴトン ズズズ


盗賊「ほーーこんな所に通じてたか…」ピョン スタ

商人「これは他にも沢山ありそうだなぁ」ヨッコラ

盗賊「アサシン!!手を」グイ

狼女「早く進んで!!」ピョン シュタ


ザワザワ ガヤガヤ

砲撃が止んだらしい…

どうする?荷を外に置きっぱなしなんだ

出入口は避難でごった返して…


盗賊「砲撃だと?」

商人「やっぱり只事じゃない…」

盗賊「ホームから向こうは人がえらい事になってる…他に道は知らんか?」

商人「有るにはあるけれど許可証が無いと通れない」

盗賊「因みにどこよ?」

商人「シェルタ砦から軍港まで連絡通路があるんだ…無理だよ」

盗賊「ぬぁぁシェルタ砦か…無謀すぎるな」

商人「仕方ない…ゆっくり出るしか無いね」

『外へ通じる階段』


ザワザワ 

怪我人の応急処置の為スペースを開けてくれぇ!!

包帯!!包帯を持ってこい!!


盗賊「おぉ悪いな?通してくれ…」グイ

商人「もう軍が統制取れないくらい混乱してる…」

狼女「あちこちで声がしてて訳が分からない」

盗賊「出口は直ぐそこだ!!急ぐぞ」スタ



『地下入口』


モクモク メラ

雪だ!!雪を撒いて消化しろ!!

怪我人を損壊して居ない建屋に引き入れろ!!

ザザー

こちらB4…敵を見失った…南側の丘陵を西の方へ向かった筈だ

こちらC12…8番地区から逃走したオークはトロッコを用いて移動している模様

こちらD1…気球部隊で索敵を実施する



盗賊「なんだこりゃぁ…」アゼン

商人「あぁぁ…商人ギルドの建屋が倒壊してる…」

アサシン「西側の地区が被害に遭った様だ…東側の港はまだ使える」

商人「これを…ギャング達が主導した?そんな事が子供達に…」

盗賊「違うな…オークの計画にギャングが利用されたんだろ」

アサシン「うむ…不利を知ったオークは決死で敵の本拠地を攻める…これで遠征している部隊を下げざるを得ない」

商人「海軍の居ないタイミングを見計らって?」

アサシン「フフ…これが結果だ」

商人「海軍が居ないのをリークしたのもギャング達…そういう事か」

アサシン「子供達の力を甘く見ていたのだな」

盗賊「おい!!悠長な話してる場合じゃ無いぞ!!娘達の安否確認だ!!」

商人「そうだ!!まずそれだ」タッタッタ


兵隊「おいお前達!!何処に行く!!」


盗賊「悪いな兵隊さん…家族を探しに行くんだ…どいてくれ」

兵隊「又砲撃が始まるかも知れん…地下への非難を急ぐのだ」

盗賊「分かってる!!とりあえず家の確認だ…行かせて貰うぜ?」タッタ

『倒壊した商人ギルド』


タッタッタ…


商人「信じられない…」ボーゼン

盗賊「見ろ…砲弾じゃなくて投石だ」

商人「誰かぁ!!誰か居ないかぁ!!」ヨロ

アサシン「見事にバラバラだ…」

盗賊「西側からじゃ丁度当てやすい…良い目印になった様だ」

狼女「下!!下で声がする…」

商人「下?…そうか!!僕の隠れ家…」

盗賊「裏口から入れるだろ」

商人「鍵は内側からカンヌキ…」

盗賊「んなもんこの剣で簡単に開く…いくぞ!!」ダダ

『裏口』


スパ ギギーーー


商人「誰か居るかぁ!!」スタ

盗賊「リカオン…アサシンも先に入ってくれ」

アサシン「うむ…」スタ

盗賊「俺はカンヌキを直してから行く」ガチャガチャ


娘「商人!!無事だったんだね?」


商人「良かった…みんな砲撃に巻き込まれなかったか…」

娘「爺ぃは?」

商人「居るよ…今裏口の扉直してる」

娘「爺ぃのお陰で家族全員集まってたのさ…」

商人「そうか…影武者は?」

娘「奥で蹲ってる」

商人「ちょっと皆居ると狭いなあ…」

娘「隠し部屋が有ったから助かったんだよ」

商人「まぁ通路も上手く使って休んで」

娘「外はどうなってるの?」

商人「ひどいもんさ…今はゴタゴタしてるから出ない方が良い」


盗賊「いよう!!無事だったか!!」ガシ


娘「マジ死ぬかと思った…」ウルウル

盗賊「何言ってんだ…次行く場所を考えとけ」

娘「船ある?」

盗賊「そういや俺の船何処行った?」

商人「ハハ今頃海で荷物運んでるさ」

盗賊「参ったなぁ…まぁとりあえず飯でも食おうぜ?」

娘「そんなの無いよ…」

商人「あ~ワインなら僕の隠し部屋にあるよ」

盗賊「おぉぉソレよ…それで十分だ」

商人「まぁ奥に行こうか…」

『隠し部屋』


カクカク シカジカ


商人「兎に角無事で良かった…」

影武者「こんな事になってしまって本当に残念です…」プルプル

商人「まぁ支店の方は無傷だしやり直しは利くさ」

影武者「2台の気球はどうなったのか知りませんか?」

商人「あぁ…見て無かったな」

アサシン「東の方は投石が届いて居ないから無事の可能性が高い」

商人「ふぅむ…気球が無事なら一旦ここを離れるのもアリだな」

盗賊「ハテノ村に人駆が必要なんだが…」

商人「子供達ばかりで?」

盗賊「10歳超えたら十分働ける」

商人「全員分の食料がねぇ…」

盗賊「この分じゃキ・カイはしばらく混乱状態が続く…商船も入って来ないんだろ?」

商人「う~ん…じゃぁこうしよう…一旦皆でハテノ村に避難…」

商人「食料の仕入れは大型の気球で海士島か地庄炉村で入手」

盗賊「まぁ北の大陸まで買い入れに行っても良いけどな?…港町辺りによ」

商人「とりあえず今晩の食事をどうするか…」

影武者「運送する予定だった物資が気球に積まれている筈です」

商人「お!?何が積んである?」

影武者「一通りの食材と生活必需品その他諸々…近隣の村へ運ぶ予定でした」

盗賊「なんだ丁度良かったじゃ無ぇか…こんな穴倉に居るより気球の方がよっぽど快適だ」

商人「善は急げとも言うな…」

盗賊「夜まで待ってサッサと移動しちまおうぜ?」

商人「ふむ…ここにある資産は皆で運べば一回で行けるな」

盗賊「どんだけあんだ?」

影武者「ギルド資金で20000金貨と商人さんの分が4000金貨程…」

盗賊「ぶは…それを運ぶのは荷車が必要だ…まぁ良いや…袋に入れて俺がハイディングで運ぶ」

商人「まぁ後は皆で手分け出来るように整理しておくよ」

盗賊「金運んだあと俺は見張りで気球に居るから夜中に全員で来てくれ」

商人「分かった…」

『夜_大型気球』


ヒュゥゥゥ…


盗賊「遅せぇなアイツ等…」グビ ウィー

盗賊「この辺に避難してる奴らも沢山居るんだからサッサとくりゃ良いのに」


シュタタ シュタ


狼女「もう直ぐ来る」

盗賊「おぉ待ちくたびれた」

狼女「この気球の操作教えて…どうせ向こうの気球は私が操作するよね?」

盗賊「あぁそうなるか…」


この気球はな…左右に張った縦帆で推進するんだ

上空に上がったらこのロープ引っ張って帆を張る…結ぶ場所は此処な?

ほんでだ…帆の角度が重要なのよ

そこの柱に引っかけがいくつもあるだろ?

風の具合に応じて引っかける場所を変える訳よ…まぁ習うより慣れろ…兎に角自分で工夫して早く進める

あと重要なのが風を受けると船体が傾く

そうすると折角の推進力が無駄になるんだ

そうならない様にするのがプロペラ…こいつで船体が傾かない様に上手く調整する


狼女「プロペラが2つ付いて居る理由は?」

盗賊「船体の傾く方向でどちらを強く回すか選択しろ」

狼女「なるほどね…」

盗賊「まぁとりあえず俺が先行すっから上手く付いて来い」

狼女「分かった…向こうでちょっと準備しておく」

盗賊「おう!!」

『数分後』


ゾロゾロ


商人「荷物は全部荷室に入れて…書物はこっち」

盗賊「いよーーやっと来たな?」

商人「僕は盗賊の気球で良いね?」

盗賊「まぁ好きにしろ…てか人が多く無いか?」

商人「娘の友達夫婦も行く事になった」

盗賊「男手が必要になる事もある…向こうに乗せてリカオンのサポートもやらせてくれ」

商人「わかった…」

盗賊「おいリカオン!!そろそろ球皮膨らませろ!!」

アサシン「フフ大声を出すな…私が伝える」

盗賊「さっさと乗れぇ!!」グイ シュゴーーーー


ゾロゾロ ワイワイ


子供「うわぁ!!高~い!!」

盗賊「落ちんなよ?暗いから足元に気を付けろ」

影武者「私はこちらの気球に乗ります」

盗賊「全員乗ったな?」

商人「乗ったぁ!!扉閉める」

盗賊「ようし!!出港だ」グイ 


シュゴーーーーーー フワフワ

『上空』


フワフワ


盗賊「リカオンの気球はちゃんと着いて来てるか?」

商人「見ておくから操作に集中して良いよ」

盗賊「こりゃ逸れんように気を付けんとな…帆を張って来る!!」ダダ

商人「影武者も良く見ておくと良い…君の気球なんだから」

影武者「はい…」メモメモ

商人「リカオンの気球も帆を張り始めたな…やっぱりセンスがあると違うなぁ」

盗賊「アイツは俺の声が聞こえてんだよ…」ドタドタ

商人「ハハそうだね…悪口言えないね」

盗賊「リカオン聞こえてるか?とりあえず進路は南西だ…朝日が昇るまでゆっくり進むから先ずは慣れろ」


--------------

--------------

--------------

『数日後』


ヒュゥゥゥ バサバサ


盗賊「あんにゃろう…距離を詰めて来やがった」グイ

商人「リカオンと勝負の最中かい?」モグモグ

盗賊「そうよ…俺を抜かしてみろと言ってみたら距離詰めて来やがった」

商人「それは負けられないねぇ…」

盗賊「アイツは風を読む勘がある…俺より先に帆を操作してんのよ」グイ バサバサ

商人「風の匂いとか言ってたなぁ…」

盗賊「うむ…大事な事だ…それより魔女と貝殻で話したんだろ?何か言ってたか?」

商人「あぁ大した話じゃ無い…向こうは物資調達で一旦名もなき島に行くと言ってた」

盗賊「やっぱ物資が無いのか…」

商人「食料だね…ハテノ村が困窮しているらしい」

盗賊「誰か住んでるのか?」

商人「教会に老夫婦と子供だけで働き手が居ないんだとさ」

盗賊「俺らも到着したら速攻調達に行かんとな…この人数じゃ1ヶ月で底を着く」

商人「小麦が欲しいね」

盗賊「今の季節だと北の大陸まで行かんと買えんわな」

商人「この気球でどの位かかる?」

盗賊「早くて一週間ぐらいか?…往復で2週間…結構掛かるな」

商人「積載量考えると船には遠く及ばないか…」

盗賊「女海賊の飛空艇で回数運んだ方が効率良いかもしれん」

商人「どのくらい運べる?」

盗賊「水満タンの樽で5杯だった筈だ…小麦なら10袋って所か」

商人「ふむ…ここは一回僕が港町まで行って商船の手配をした方が良さそうだ」

盗賊「新しい交易か?」

商人「うん…ちょっと女戦士に相談してみる」

盗賊「女戦士?」

商人「海賊の基地を商船の交易ルートに出来ないかってね」

盗賊「ほう?」

商人「キ・カイからすると密輸になるね…海賊の基地から色んな所に物資移送が出来るようになる」

盗賊「なんかキ・カイに近いし海軍が動きそうでヤバく無いか?」

商人「もっとドワーフの領土に近い場所で交易が出来たらなぁ…」

『ハテノ村上空』


ヒュゥゥゥ バサバサ


盗賊「いやぁぁ…本当何も無い所だ…」

商人「冬だからそう見えるんじゃない?」

盗賊「前に来た時はもっと人が生活してる痕跡が有ったんだが…」

商人「ほら?一応温泉の煙は出てるじゃ無いか」

盗賊「噴火と戦争のせいでみんな出て行っちまったんだな…」

商人「まぁ仕方ないさ…教会見えて来たね」

盗賊「降ろすのは教会の横だな?」

商人「うん…あの辺しか人が居そうにない」

盗賊「まぁ良いや…高度下げる」グイ




『ハテノ村』


フワフワ ドッスン


商人「僕は教会に行って少し話をして来る」

盗賊「おう…俺らは子供連れてちっと周り見てくんな?」

商人「影武者!君は僕に付いて来て」

影武者「分かりました…」


盗賊「お~い!!お前等ぁぁ!!焚火すっぞ!!」


子供達「わ~い!!」キャッキャ

『焚火』


メラメラ パチ


盗賊「おらぁ!!雪だるま作ってそこに並べろぉ!!」

アサシン「何も無い村だな?」スタスタ

盗賊「ヌハハまぁ…見ての通りよ」

アサシン「さてどうしたものか…」

盗賊「んん?盗賊ギルドの事か?ほったらかしでこんな辺境に来ちまったもんな?」

アサシン「ギルドはアヌビスに任せているからそれ程心配はしていない」

盗賊「じゃぁこの困窮した村をどうするってか?」

アサシン「フフ…村だけでは無い…此処に居る子供達全員…今は難民状態なのだぞ?」

盗賊「違い無ぇ…」

狼女「…」シュタタ クンクン

盗賊「いよう!!どうした?何か居るのか?」

狼女「何処かにシカが居る」クンクン

盗賊「おぉ!!そりゃ良い!!」

アサシン「リカオン!狩れるか?」

狼女「勿論」

盗賊「弓持って来て無ぇな…どうやって狩る?」

狼女「これで…」スラーン

盗賊「マジか…お前シカに近付けるんか?」

狼女「ちょっと行って来る」シュタタ

盗賊「弓無しで狩るってそんな事出来るんか?」

アサシン「やらせておけ…シカ狩りはリカオンに任せて良い」

盗賊「ほんじゃ久しぶりに新鮮な肉が食える…」

アサシン「内臓はリカオンに残せよ?」

『数分後』


タッタッタ


商人「教会で話をして来たよ…寝泊まりは教会を使って良いってさ」

盗賊「まぁ気球を無人にする訳にもイカンから教会使うのは子供達だな」

商人「あと空き家も好きに使えって」

盗賊「もう誰も住んで居ないってか…」

商人「うん…」

盗賊「娘達ぃ!!教会使って良いらしいぞ!!物資運んでくれぇ」

娘1「ベッドある?」

娘2「水浴びしたいんだけど温泉どこ?」

盗賊「説明メンドクサイ訳よ…さっさと子供達連れて教会行け!」

アサシン「では私は少し辺りを見回って来る…」

盗賊「川の上流に温泉が有るからどんな感じか見て来てくれ」

アサシン「分かった…」スタ

盗賊「さぁて…俺はちっとこの辺の整理でもするかぁ」ノソリ


『木こり』


ブン! スパッ!! メキメキ…ドサーーーー!!


盗賊「…」ブン ブン


”イノシシの肉焼けてる…持って行って!” 

”忙しい忙しい…”

”ふぅぅぅやっと酒にありつける…カウンターに座るぜ?”

”盗賊さんお疲れでし!!”

”例の酒くれ!!早く飲みてぇ”

”分かってるでしゅ…どうぞ!!”


盗賊「赤毛の…子供達…」ボーーー


スタスタ


アサシン「何を呆けているのだ?」

盗賊「んぁ?…あぁ何でも無ぇ…」---誰だったのか思い出せ無ぇ---

アサシン「こんなに木を切り倒してここをどうする?」

盗賊「おぅ…気球発着に邪魔だったからよ…ちゃんとした広場作ってんのよ」

アサシン「原生の木に限りが有るから伐採し過ぎん様に…」

盗賊「分かってる…これで終わりだ」

盗賊「上流の温泉見て来たか?」

アサシン「うむ…近くの小屋もまだ使える様だ」

盗賊「おぉ!!そら良い!!」

アサシン「周囲は雪が溶けて冬だと言うのに植物が生えて居る…意外と住みやすいかもしれん」

盗賊「確か珍しい薬草が生えるんだ…子供達に採取させるわ」

『夜_気球』


シーン…


盗賊「な~んか荷物全部降ろしちまったら5人じゃ広すぎんな?」グビ

商人「そうだねぇ…子供達居ないとこんなに寂しいんだね」

盗賊「全員教会で寝てんのか?」

商人「子供達はそうだね…大人は空き家使うって言ってた」

盗賊「俺らはここで良いとして…当面どうするか考えとかんとな」

商人「とりあえず女海賊待ちかな…明日くらいに戻って来れば良いけど」

盗賊「俺はどうすっかなぁ…明るくなったら近くの村探して物資調達でも行って見るか…」

商人「あーそれなら影武者連れて行って気球の操作やらせて貰えないかな?」

盗賊「おぉそうだな…一台は影武者の物だからな」

狼女「私はもう一台の気球使って狩りに行って来る」

盗賊「ならアサシンと一緒に行け…てかついでに操作方法教えて置くだな」

アサシン「それには及ばん…もう習得済みだ」

盗賊「そうか…でも狩りは危無ぇから2人で行け」

狼女「分かってる…シカ狩って運ぶのが大変なんだ…気球使えばラク」

盗賊「なるほど…」

商人「じゃぁ僕は硫黄鉱山でも行って来るかな…」

盗賊「ツルハシ無いと何も出来んが?」

商人「破壊の剣が有るじゃ無いか…硫黄が入手出来たら色々使える」

影武者「!!?硫黄が…」

盗賊「お?やる気出したか?」

影武者「硫黄が有れば何処とでも取引が…」

商人「そうだねぇ…硫黄が世界の勢力バランスを変えてしまうくらい重要な物になってるね」

盗賊「火薬か…」

商人「あと酸だよ…」

影武者「どのくらい埋蔵して居るのか気になります…」

商人「それも見て来るさ…楽しみにしてて」

『翌日_硫黄鉱山』


ヨイショ ヨイショ ドサー ゴロゴロ


商人「めちゃくちゃ沢山取れるじゃないか…」

商人「運ぶのに荷車が欲しいなぁ…」


女海賊「お~~~い!!」スタタタ


商人「んん?あ!!女海賊!!戻ってたんだね」

女海賊「ハァハァ…皆何処行ったのさ!!」

商人「気球使って物資調達に行ってるよ」

女海賊「あんた一人で硫黄掘ってんの?ツルハシ持って来てたん?」

商人「いや破壊の剣で露出してるやつそぎ落としてるんだ」

女海賊「その手が有ったか…」

商人「でも掘り進むのは厳しいかも」

女海賊「道具が何も無かったからさぁ…わざわざ名も無き島まで取りに行ってたんだよ」

商人「なんだ食料調達じゃ無かったんだ?」

女海賊「一応積めるだけ積んで来たけどちょっとしか無い」

商人「魔女達は?」キョロ

女海賊「魔女と情報屋は教会…お姉ぇは温泉」

商人「そっか…まぁ合流出来て良かった」

女海賊「あのさ…灰で埋もれた古代遺跡掘り起こすの子供達じゃ無理じゃね?」

商人「まぁ…盗賊が何とかしてくれるんじゃない?」

女海賊「前にローグと一緒に掘ったんだけどさ…メッチャ大変だったんだ」

商人「ハハまぁ今度は場所分かるよね」

女海賊「分かんないよ!!全然地形変わってるし…」

商人「う~ん…大人の手が欲しいか…」

女海賊「まぁ良いや…とりあえず丁度硫黄が欲しかったのさ」

商人「ここまで飛空艇持って来れる?これ運ぶの大変だよ」

女海賊「おけおけ!!持ってくるからちょい待ってて」ピューー

『ハテノ村_広場』


フワフワ ドッスン


女海賊「お!!?お姉ぇ温泉出て来たんだ…ちょい来て!!」

女戦士「どうした?」スタスタ

女海賊「これ見て…商人が一人でこんなに硫黄掘ったらしい」

商人「いやいや露出してるのを切り落としただけだから…」

女戦士「これは…純度の高い硫黄」

女海賊「だよね?黄鉄鉱から抽出しないで取れるって事だよ」

女戦士「鉄鋼と石炭は無いのか?」

商人「別の坑道にある…硫黄取るのを優先しただけさ」

女戦士「硝石だけ入手すればここで大量に火薬が作れるな…」

女海賊「てかこれパパに来てもらった方が良いかも」

女戦士「うむ…ただ連絡が取れんのだ」

商人「この硫黄を元手に小麦とか買おうと思ってたんだけどさ…」

女海賊「あーーー小麦はシン・リーンか」

女戦士「魔法で需要はあるから必ず売れるな」

商人「そうそう…女戦士に相談したかったんだけど」

女戦士「んん?」

商人「商船を使った交易を何処か近い場所でやりたいんだ」

女戦士「あぁ…ここの川を下った河口に幽霊船を待機させて居てな」

商人「お?」

女戦士「その近場の漁村を物資運搬の拠点にと画策していた所だ」

商人「そこに商船も入りたいんだけど…」

女戦士「構わん…ただ海賊に襲われん様に私の旗印を掲げて貰う事になるが…」

商人「おけおけ…これでこの村の食料問題は解決する」

女戦士「こうしよう…海の安全は海賊が保証する代わりに硫黄の取り引きは優先させて貰う」

商人「ウィンウィンだね…それで行こう」

女海賊「とりあえずこの硫黄使って爆弾作っちゃうわ」

女戦士「魔女も硫黄を欲しがっていたから少し持って行くぞ?」

『大型気球』


フワフワ ドッスン


盗賊「いよーーう!!戻って来たんだな?」

女海賊「何処行ってたのさ!!てかアンタ居ないと遺跡掘り起こせないんだけど…」

盗賊「まぁ慌てんな…道具無いと何も出来んだろ?」

女海賊「なんか調達して来た?」

盗賊「ちょい南行った所に放棄されたキ・カイの前哨基地があんだ…まぁいろいろ残っててよ」

女海賊「へぇ?」

盗賊「ちっと降ろすの手伝ってくれ…もう一回行きたいんだ」

女海賊「おけおけ…お姉ぇも呼んで来る」ピューーー

盗賊「あ!!アイツ逃げやがった…影武者!!資材降ろすぞ!!」

影武者「僕は商人さんを呼んで来る」タッタッタ

盗賊「あああああ!!てかなんで男は俺しか居無ぇんだ?」ブツブツ


ヨッコラ ガサガサ


盗賊「どるぁぁ!!」ガラガラ

盗賊「ん?…そういや…」


こないだ行った古代遺跡も…

ミイラになってたのは女ばっかだったな…

戦争で死んで行くのは男が多い…

女しか居なくなるってのは末期的な事かも知れんな…

もしかしてそうやって人口が減るんか?…


タッタッタ

商人「呼ばれて来たんだけど何だった?」

盗賊「おぉ荷物降ろすの手伝ってくれ」

商人「うわぁ…一杯積んで来たね…錆びた武器に木箱…あ!!荷車有るじゃ無いか」

盗賊「まぁガラクタばかりだが直せばまだ使えるんだ」ヨッコラ ドスン

商人「降ろすの一仕事だ…」ヨイショ ドサリ

盗賊「ほんで他の奴らは?」

商人「硫黄取りに行くって言ってたよ?」

盗賊「だぁぁぁぁ!!影武者まで逃げやがった…」

商人「硫黄見て目の色変わってね…」

盗賊「まぁ良い!!これ降ろしてもう一回資材取りに行くぞ!!」

『夕方_教会』


ワーイ キャッキャ

これ!!文字の書き取りを終わらせてから遊ぶのじゃ!!


爺「いやいやすっかり体の調子が良くなってのぅ…」

婆「皆さんのお陰でちと元気が出て来ました」

女海賊「元気になって良かったじゃん」モグモグ

情報屋「食事を持って来ました…どうぞ」

爺「何から何まで…本真にありがたや」パク

女海賊「ほんでさ?勝手に硫黄掘って良い感じ?」

爺「もう領主様も居らん廃れた村なもんで自由にしなされ」モグ

女海賊「やったね!!」

商人「この辺は今オークは来ないのかい?」

爺「暗黙のルールがありましてな…オークに石なぞ投げなければ襲っては来んのです」

婆「オークの村に行った者も居りますで仲良くなれれば良いのですが…」

女海賊「ふ~ん…まぁオークが襲って来ないなら割とこの村安全だね」


スタスタ


影武者「戻りました」

女海賊「あ!!あとアンタで最後!」

影武者「え?」

女海賊「病気の予防でみんなに線虫掛けてるのさ」

商人「影武者もやって置いて貰った方が良いよ…たまにガーゴイルが来て疫病持ってくるらしい」

影武者「線虫とは?」

女海賊「体の毒を食べる虫…これで教会の爺ちゃんと婆ちゃんの調子が良くなったんだ」

影武者「虫…苦手です」

女海賊「平気平気!!行くよ?いでよ線虫!!毒を食べちゃえ!」ニョロリ

影武者「え!!?」ニョロニョロ

商人「最初気持ち悪いけど直ぐ気にならなくなる」

影武者「目に…ぁぁぁ目の中に…」ゴシゴシ

女海賊「あんたの場合いろいろ体の調子悪そうだからきっと良くなるよ」

影武者「もう…こんな事止めて下さい…ハァハァ」

商人「まぁまぁ…害は無いから落ち着いて」

女海賊「ほんでさ?お姉ぇはまだ硫黄掘ってんの?」

影武者「今日は硫黄と過ごすとか…」

女海賊「あぁぁ悪いクセが…」

商人「ハハ砂鉄に埋もれたり変な趣味を持ってるね…今度は硫黄に埋もれるのか…」



---------------

ドタドタ


盗賊「よう!!女海賊!!おもちゃ持って来たぜ」ポイ

女海賊「お!?何コレ?」パス

商人「あぁ忘れてた…古代遺跡で見つけた古代の兵器だよ」

盗賊「どうにかして使える様に出来んかと思ってな?」

女海賊「おぉぉ!!なんか変なデバイス付いてんな…もしかしてインドラの銃?」

商人「そんな感じ…情報屋が言うには光エネルギーじゃなくて別のエネルギーじゃないかって」

女海賊「別?何だろう?」

情報屋「プラズマの類だと思うわ…光が青白いのよ」

女海賊「プラズマ…雷の魔石有ったっけ?」

商人「僕が持ってる…気球に積んで在るよ」

女海賊「おけおけ!!ちょいバラしてみる…ほんじゃバハハーイ!!」ピューーーー



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ワーイ ギャハハハ

これ!騒ぐな…耳を澄ませて妖精の声を探すのじゃ

妖精の声はのぅ…大人になってからでは聞こえ難うなるのじゃ

今の内に聞けるようになっておくが良い


盗賊「魔女は先生か何かやってんのか?」グビ

情報屋「意外と子供の面倒見が良いのよ…子供は嫌いだとか言ってたのに」

商人「アレで資質見てるんじゃない?」

情報屋「そうね…子供達の中に魔法使い向きの子も居るかもしれないし…」

盗賊「ほんじゃこの教会は魔法学校って所かヌハハ」

商人「自衛するなら魔法も使えた方が良いよね」


スタスタ


アサシン「戻ったぞ…ふぅ…盗賊!ワインをよこせ」グイ

盗賊「遅かったじゃ無ぇか」

アサシン「生きたままシカを連れ帰るのに手間取ってな」

盗賊「おぉ!!もしかしてヘラジカか?」

アサシン「そうだ」

盗賊「マジか…てか気球には乗らんだろ」

アサシン「ロープで吊って運んだ…なかなか手間が掛る」

盗賊「ヌハハすげー事やったな…ほんで今どっかに繋いでるんだな?」

アサシン「うむ…川辺の雪が無い所だ…リカオンが言うには餌になる植物が生えて居るらしい」

盗賊「ようし!!これで土砂運ぶのが捗る」

アサシン「明日から穴掘りを頑張るのだな」

盗賊「何他人事みたいな事言ってんだよ…」

アサシン「私が穴掘りをやるとでも思って居るのか?」

盗賊「おいおい…」

アサシン「今日は生きたシカ一匹捕らえただけだ…明日は食肉になる獲物を探す」

盗賊「んぁぁぁ…まぁそうだな…人数多いから狩りで食料調達も重要だわな」

アサシン「さて…傷んだ体を魔女に癒して貰おう」スック

『夜』


ホーホー コロコロ ホー バサバサ


情報屋「…それでギャング達はオークと共にキ・カイを出たのね?」

商人「うん…もう引き留めようが無かったんだ」

情報屋「あの子…」プルプル

商人「正直ギャング達があれだけ自立出来ているとは思って無かった」

情報屋「私どうしたら…」

商人「心配だろうけど彼等ならやっていけると思う…オークも相当賢い」

情報屋「キ・カイの商人ギルドはもうやっていけないからこっちに?」

商人「地上の破壊のされ方が半端なくてね…しばらく商売所じゃない」

情報屋「想像出来ないわ…」

商人「オークロードの投石で商人ギルドの建屋が倒壊さ…市場も酒場も全部無くなった」

情報屋「そんなに…」

商人「地上と地下からの同時攻めをギャング達が引導したんだ…想像以上の統率力だ」

情報屋「まだ子供だと言うのに」

商人「いや…ギャングの中には影武者と同年代の大きな子も居るんだ…もう立派な組織だよ」

商人「僕だって小さな頃から盗賊の後ろで何かとやってた」

情報屋「そうね…認めなくてはね…」

商人「実はね?君の子は一人で僕の隠し部屋にドロボーに来たんだ」

情報屋「あの子には何も教えてないわ?」

商人「自分で調べたんだよ…裏口のカンヌキまで自分でどうにかしてさ…凄くないかい?」

情報屋「泥棒って…何かを盗みに?」

商人「キラーマシンにされた友達の脳を…たった一人で助けに来た」

情報屋「一人で…」

商人「僕にダガーを向けてさ…友達を救うその姿は盗賊にそっくりだった…僕はね?未来を感じたよ」

情報屋「…」

商人「子供達の世界がもう始まってる…勇者たちが残した未来を見た」

商人「彼等は今…未来を歩き始めたんだ」


---未来が始まった---

『翌日_鯨型飛空艇』


ヨッコラ ドサ!!


商人「…ねぇ聞いてる?商船を手配する為に北の大陸まで行きたいんだ」

女海賊「ハイハイ…聞いてる聞いてる」カチャカチャ

商人「この飛空艇は君が操作してくれないと行けないじゃないか」

女海賊「私忙しいんだ…アンタでも操作出来るから行けば良いじゃん」カチャカチャ グリグリ

商人「だったら操作の仕方教えて欲しい…」

女海賊「うっさいなぁ…使って覚えろ」


スタスタ


情報屋「私が操作できるから私も行くわ…」

商人「あぁ…君も色々忙しそうに…」

情報屋「丁度暁の使徒に関する書物を取りに行きたかったのよ…」

商人「そういう事ならお願いしようかな…情報屋も居るなら帰りに名も無き島でホムンクルスを目覚めさせるのも行ける」

女海賊「ん!?ホムちゃん起こせる?」

商人「古代のエネルギーは手に入れたんだ」

女海賊「おぉぉ!!そういう事早く言って!!」

商人「じゃぁとりあえずダッシュで港町まで行って商船手配する…その後名もなき島…これで良い?」

女海賊「おけおけ!!でも今忙しいから飛空艇の操作は情報屋お願い」

情報屋「分かったわ…」

商人「お~い!!影武者!!」


タッタッタ


影武者「何か?」

商人「ちょっと北の大陸まで商船手配に行って来るからハテノ村の物資管理を君に任せたい」

影武者「わかりました…取り急ぎ塩の調達をお願いします」

商人「分かった…思いつく限り仕入れて来る」

影武者「あと働き手が足りて居ませんので商船でこちらに来られる様に手配もお願いします」

商人「おぉそうだね…そうか人員募集も必要か」

影武者「よろしくお願いします」

商人「もう行くから皆には上手く説明しておいて…じゃぁ!!」ノシ

情報屋「飛空艇飛ばすわよ?」グイ シュゴーーーー


フワフワ

『上空』


シュゴーーーーーー ビュゥゥゥゥ


商人「うわ…なんだこれ…メチャクチャスムーズに飛ぶじゃ無いか…」

情報屋「目的地までの進路は案内してね?…とりあえず北進」スイーーー

商人「これ直進するだけ?ジグザグに行く必要無い?」

情報屋「風に流されてしまう分だけあらかじめ修正して直進するだけよ」

商人「ええと…」

女海賊「真北でおっけ!!風で流されても赤道超えたらまた元に戻る」カチャカチャ ビヨヨーン

情報屋「分かったわ…じゃぁハイディング!」スゥ

商人「スゴイな…操作系を一か所に集約してるんだ…」

女海賊「あのさ…正面からガーゴイルとか激突するかも知んないから一応前警戒しといて」

商人「あぁ分かった…」

女海賊「インドラの銃は使い方分かるよね?」

商人「うん…」

女海賊「じゃ…あとヨロシコ」カチャカチャ


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『翌日』


リリース スゥ


女海賊「おっし!羅針盤確認…ええと進路2時の方向に修正」

情報屋「すこしズレたみたいね…」スイーーー

女海賊「波紋からしてあと狭間入って2時間もしたら陸地見えると思う」

商人「流石に真っ直ぐ飛べると早い…」

女海賊「ちっと古代の兵器を試し撃ちしてく」

情報屋「仕組み分かったのね?」

女海賊「まぁね?磁力でプラズマ拡散しない様にして発射するみたい」

情報屋「エネルギーはやっぱり雷?」

女海賊「そだね…魔石だとエネルギー弱くて充填にちょい時間が掛かるっぽい」

商人「ちょい…というと?」

女海賊「それを今から試す…そこどいて」

商人「あぁ…」

女海賊「ほんじゃ撃ってみる!!いくよぉ!!」スチャ


ピカーーーーー チュドーーン


女海賊「だぁぁぁ何だコレ…飛距離全然出ないじゃん…」

商人「ええ!!?十分じゃ無いか…弾速も早いし爆発だってある」

情報屋「飛距離は300メートルという所かしら?」

女海賊「この手の兵器は飛距離と正確性が重要なのさ…インドラの銃は2キロ先を狙えるよ」

商人「連射は?」

女海賊「やってみる…」カチ カチ


シュン! シュン! パーン! パーン!


女海賊「あぁぁぁやっぱしっかり充填しないと飛距離も威力も弱いね…」

情報屋「いかづちの杖の様な物ね…」

女海賊「ソレソレ…そんな感じ…充填の具合で色々使い分けられるいかづちの杖だね」

商人「魔女の魔法よりも飛距離は出てるっぽいかな」

女海賊「まぁコレあんた使いなよ…クロスボウよりは連射利くからさ」ポイ

商人「ハハ君の期待した性能は無かった訳か…」

女海賊「私はやっぱ実弾のデリンジャーみたいのが好きかなぁ…調整次第でどんどん性能良くなるし」

情報屋「もう一つは私が使うわ?」

女海賊「おけおけ…まぁこれで魔法使い2人居るのと同じだしソコソコ良い武器だよね」

商人「古代の兵隊はこの武器が通常兵装だった様だよ」

女海賊「なんか想像出来る…照準レンズも無いあたり中距離ゲリラ戦用だわ」

商人「こんなの持ち歩いてたら怪しいね…」

女海賊「肩ベルト作ってあげるよ…背負ってマントの中に隠せる」

商人「あぁソレ良いね…」

女海賊「ハイほんじゃ作り物するからもう狭間入って良いよ」

情報屋「わかったわ…ハイディング!」スゥ

『港町_ユートピア』


フワフワ ドッスン


商船「ここは変わって無いなぁ…」

情報屋「街の方は賑わって居そうじゃない…商船も2隻…あっちは豪族の船かしら?」

商人「やっぱり戦争して居ない国は人が集まるね」

女海賊「あのさ…このあばら家ん中にデカいアラクネーが居るから気を付けて」

商人「え?今日はここで寝られない?」

女海賊「掃除しないと無理…てか私が置いて行ったアラクネーなんだけどね」

情報屋「折角だから宿屋に泊って今日は楽しみましょう」

商人「まぁそうだね…情報も集めたいしね」

情報屋「先にお墓参りしてくるわ」

商人「僕も行くよ」

女海賊「う~ん…なんか私はこないだ来たばっかりなんだけどなぁ…まぁいっか」

商人「あぁ君は石化してたから年を取って無いのか…」

女海賊「実感ないのさ…アレから何年も経ったなんて」

情報屋「今更だけど…時の砂の効果ってそういう事だったのよね」

女海賊「ピーンと来たぞ!!何千年も石化したままの可能性もある!!」

情報屋「そうだと良いわね…」

商人「希望はある!!」

女海賊「よーし!!さっさと墓参り終わらせて宿屋いくどー!!」

商人「さっさと…あのね…」


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『街へ続く坂道_荷車』


ゴトゴト ゴトゴト


商人「僕は硫黄の取り引きと商船の取り付け行って来るから君達とは別行動だ…夜には宿屋に戻る」

情報屋「宿屋はどれくらいの期間?」

商人「そうだなぁ…今日だけで全部やるのは無理だからとりあえず2日かな…」

情報屋「わかったわ…宿屋取った後は私も書物探しに出るから皆別行動ね」

女海賊「私どうすっかなぁ…」

情報屋「酒場で情報収集とかは?私も後で行くわ?」

商人「君は種が欲しいとか言ってたじゃ無いか…露店を見て回るのも良い」

女海賊「お金持って無いんだけど…」

情報屋「とりあえず金貨2枚…これで買えるでしょ?」チャリン

女海賊「ケチ臭いなぁ…」

商人「後でたんまりあげるから我慢してよ」

女海賊「おし!!白狼ごっこでもして遊ぼう!!」

商人「ダメダメ!!騒ぎは起こさないで…ただでさえ君は目立つ」

女海賊「ムフ…ムフフ…そうだよ目立っちゃうんだよ…しょうがない大人しくしとくわ」

情報屋「じゃぁ私は宿屋行って来るから此処で…」ノシ

商人「うん…気を付けて」ノシ

『広場』


ワイワイ ガヤガヤ

寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!フィン・イッシュ産の銀の武器だぁ!!

魔石ぃぃ魔石有るよぉ!!各種触媒品揃えてるよぉぉ!!

アクセサリーは要らんかね?貴族御用達のアクセサリーだよぉ?

大人のウフフな装身具…ほらほら見て行きなぁ!!

ワイワイ ガヤガヤ


女海賊「なんかなぁ…なぁ~んも興味無いなぁ…」ブツブツ

女海賊「…」ボー


なんか…

世界に取り残された感じがする…

身を置いてる環境が違い過ぎて

この幸せそうな世界には

私はもう居られない気がする


良く見たら新しい冒険者が沢山居て…

昔は私もあの中の一人だった

もう一度あそこに戻る為には

記憶と経験をみんな無くしてからじゃ無いとやり直せない…


なんだろうなぁ…この寂しい感じ


女海賊「…」トボトボ


トントン


女海賊「んん?…誰?」

吟遊詩人「もしかして貴方は…あぁ!!間違いない!!お久しぶりです僕を覚えていますか?」

女海賊「あぁ!!リュートの吟遊詩人ね…よう!!」ビシ

吟遊詩人「その後姿を見なくなったので外海調査に行かれたのかと…」

女海賊「まぁ言って来たよ…散々だったけどね」

吟遊詩人「おぉ!!良かったらお話を聞かせて貰えませんか?」

女海賊「なんかメンドイなぁ…」

吟遊詩人「食事は僕が御馳走しますのでどうか…」ペコ

女海賊「まぁ良っかぁ…なんもやる事無かった所だし」

吟遊詩人「では酒場の方に…美味しいシカ肉が有るんです」スタ

『酒場』


ポロロン~♪


女海賊「…ほんで石化して眠ってた訳さ」モグモグ

吟遊詩人「道理であの時のまま若いのですね」

女海賊「てか私ハーフドワーフだから100年くらい経ってもこのままだけどね」パクパク

吟遊詩人「僕はこの通り年を取ってしまって…」

女海賊「男はまだまだこれからじゃね?」シーハー

吟遊詩人「これで又新しい諸事詩を歌えます」

女海賊「ところでさぁ?最近の新しい話題とか無い?」ゴクゴク プハァ

吟遊詩人「そうですねぇ…北の大陸にオークが渡って来ているというくらいですかね」

女海賊「あー南の大陸で戦争やってっから逃げて来てんだね」

吟遊詩人「オークが作物を荒らすので冒険者ギルドの方でもオーク討伐隊を募集していますよ」

女海賊「オークはめっちゃ強いらしいよ?」

吟遊詩人「そうらしいですね…」


バン! ピラピラ


女海賊「んん?」

赤毛の女「あなた!!この手配書に見覚えは!?」

赤毛の男「ダメだって!いきなりそんな事をしたら…どうもすみません」ペコペコ

女海賊「なんこれ?」

吟遊詩人「これは…セントラルの手配書…」

赤毛の女「これ…あなたでしょう?」ユビサシ

女海賊「アハ…なんか随分古い手配書だね…そうそうこれ私」

赤毛の女「ほら!!やっぱり当たってるじゃない!!」

吟遊詩人「ええええ!!?これ特A級手配書じゃ無いですか…懸賞金がスゴイ事に」

女海賊「これ貰って良いの?これもってけばお金貰える?」パク モグモグ

赤毛の女「何言ってるのよ!!私達と一緒にセントラルへ行くのよ!!」

女海賊「なんかメンドクサイなぁ…私はガキと遊んでるヒマ無いんだシッシッ!!あっち行け!!」

赤毛の男「いやぁどうも済みません…多分何かの間違いです」グイ

赤毛の女「ちょっと!引っ張らないで!!」ヨロ

赤毛の男「特A級のウォンテッドがこんな所に居る訳無いじゃ無いか…迷惑だから行くよ」グイ

赤毛の女「セントラルに連れて行けば大金が手に入るのよ!!船だって買える!!」

吟遊詩人「あのーーですね…この方はシン・リーン女王公認の勇者様のお一人でして…」

赤毛の子「あああああ!!この人知ってるでしゅ!!女王様お抱えの吟遊詩人様でし」

赤毛の男「ほら?言いがかり付けると僕達がマズい事になる…行くよ」グイ

赤毛の女「ちょっとぉ!!引っ張らないでって言ってるでしょ!!」

赤毛の子「ごめんなさいでし!!あっちに行って来るです」スタタ

女海賊「…」シラー

吟遊詩人「ハハ飛んだ邪魔が入りましたね…じゃぁ気分直しに僕が一曲演奏を…」

女海賊「お!!?イイね」


ドゥルルン~♪

暁と黄昏は~何故別れたのだろう~♪

暁は月を隠し~黄昏は月を呼ぶ~♪ 

残酷な世界に光を運ぶ月…暁と交わりすべて謎が解ける~♪


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『カウンター』


女海賊「ここ座って良い?」

マスター「どうぞ…お連れ様の演奏が始まって話し相手が居なくなりましたか?」

女海賊「アハ…バレバレじゃん」

マスター「お酒の方は?」

女海賊「ハチミツ酒!」チャリン

マスター「かしこまりました…」コトン

女海賊「港町はいつもこんな感じ?」

マスター「そうですね…ここ数年は移民も増えて賑わって居ますね」

女海賊「向こうのテーブルで騒いでるのは豪族だよね」

マスター「ハハお察しの通り…綺麗な女性には必ず声を掛けて来ますのでご注意を…」

女海賊「まだ声掛けられて無いんだけど…なんかムカつくな」イラ


カランコロン


マスター「いらっしゃいませ…お一人様ですか?」

情報屋「あぁ居た居た」スタ

女海賊「あ!こっちこっち!!ここ空いてる」

マスター「お連れ様でしたか…飲んで行かれますか?」

情報屋「同じ物を…」チャリン

女海賊「用事済んだ?」

情報屋「まぁね?…ねぇ聞いた?オークが北の大陸に渡って来てるって」

女海賊「聞いた聞いた…戦争逃れて来てんだよね」

情報屋「オークは船を作る技術が無いのよ?…つまりフィン・イッシュから来てるという事だわ」

女海賊「へぇ?」

情報屋「南の大陸へ返らず北の大陸に来てるのはとても興味深い…」

女海賊「どうして?」

情報屋「昔話になっちゃうけれど大昔にオークは北の大陸にも住んで居た事が有るのよ」

女海賊「森の中にも昔からオーク居るじゃん…あんま珍しくないと思うな」

情報屋「まぁそうね…でもどうして北の大陸に来るのか理由が有ると思うわ」

女海賊「食べ物が豊富だからじゃ無いの?」


時の王の時代…黄昏の賢者という人物が居てそれは多分オークなのよ

黄昏の賢者は暁の使徒と永遠の約束をしていたらしい

でも暁の使徒は約束を破ってしまった…その後黄昏の使徒は行方不明

女海賊「何の話?」

情報屋「時の王が話してくれた事よ…シャ・バクダ遺跡で…」

女海賊「ほんじゃ今北の大陸にオークが来てるのは何か関係してそうなんだ?」

情報屋「確証は無いけれど気になるの…永遠の約束が何だったのか…どうして約束を破ったのか」

女海賊「暁の使徒って未来の可能性が高いんだったよね…」

情報屋「そうよ…少なくとも私はそう思ってる」

女海賊「なんかさぁ…私逃げちゃってるのかなぁ…あんま信じたく無いんだ」

情報屋「良いのよ…もう死んでるなんて話聞きたくないでしょう?」

女海賊「ああああ!!もう考えるの止める!!」

情報屋「御免なさいね…手掛かりだけ追うのに集中しましょう」

女海賊「うん…」グビグビ ゴク


------------


ウィー ヒック

やってらんねぇぞテメーバーロー ヒック


マスター「ハハそろそろお休みになっては…」タジ

女海賊「誰にも声掛けられてねーっつんだ…ウィー」ヒック

情報屋「女海賊?そろそろ帰りましょうか」


スタスタ


吟遊詩人「あ…すみません…演奏が長引いてしまって」

女海賊「おせーぞコラァァァ」ヨロ ドターン

情報屋「あらら…立てる?」グイ

吟遊詩人「帰りは何処まで?」

情報屋「直ぐ近くの宿屋よ?手伝って貰える?」

吟遊詩人「でしたら僕もそこに泊って居ます…肩を貸しましょう」グイ

情報屋「助かるわ…」

吟遊詩人「以前お会いした事がありますよね?」

情報屋「フフ覚えていたのね」

吟遊詩人「皆さんの事を諸事詩にして歌って居ますので…」

情報屋「どんなかしら?」

吟遊詩人「また後日…」

情報屋「そうね…今日は宿屋に戻りましょう」

『宿屋』


ガチャリ バタン


情報屋「ちょっと商人…手を貸して」

女海賊「ふごーーー…すぅ」zzz

商人「ちょ…どうしたんだよこんなに酔っぱらって…」

情報屋「たまにはこんな事もあるわ?」

商人「そうかい?それしにても重いな…よっこら!!」ドサ ギシ

情報屋「取り引きの方はどう?」

商人「順調だよ…やっぱりもう一日必要さ」

情報屋「何か手伝う事有る?」

商人「う~ん…そうだ!!光る隕石が落ちた爆心地…今そこに行けるらしいよ」

情報屋「え?」

商人「森の中にポッカリ穴が開いてるらしいんだけど中心の部分がスゴイんだってさ」

情報屋「スゴイというのは?」

商人「地面がガラスのように光ってるんだって…暇なら見てきたら?」

情報屋「見てみたい…」

商人「硫黄の取り引きの方は一人の方が都合良いんだよ…こっちは気にしなくて良い」

情報屋「そう…じゃぁ明日女海賊と2人で見て来るわ」

商人「うん…じゃぁ僕は少し散歩してくる」ノシ



『翌日』


チュンチュン ピヨ


女海賊「あぁぁ昨夜は飲み過ぎた…反省してる」

情報屋「フフ少しは気が晴れた?」

女海賊「なんだっけ?もう忘れちゃたよ」ゴシゴシ

情報屋「もう良いの…それより今日は光る隕石の落ちた爆心地を見に行きたいのだけれど…」

女海賊「お!!?そういやどうなってんだろ…」

情報屋「中心がガラスになっているらしいわ」

女海賊「へぇ?ちょい行って見ようか…てか商人は?」

情報屋「商人は昨夜出て行った切り戻って無いわ…多分取り引きだと思う」

女海賊「そっか…夜中誰かと会ってんだね」

情報屋「いつもの事よ」

女海賊「爆心地まで行って戻って…夕方までには戻れそうかな…ちゃっちゃと行こう」スック

『鯨型飛空艇』


シュゴーーーーー フワフワ


女海賊「おっし!!進路北西!!」

情報屋「荷物が空だと上昇が早いわね」

女海賊「そだね…ちょいアクロバット飛行してみる?」

情報屋「え!!?」

女海賊「ハンモックに乗ってれば大した事無いから…一回経験しとくと良いよ」

情報屋「分かったわ…」ギシ

女海賊「飛行中に古代の兵器どうやって撃つか訓練しといて…じゃぁ行くよ」グリグリ


シュゴーーーーー ギュイーーーーン


情報屋「あわわわ‥‥天地が反対に…」

女海賊「反対まで行って無いさ…この角度でどうやって敵を狙うか…」

情報屋「スゴイ…この機動力は他の気球の比じゃない」

女海賊「これ球皮に熱入ってると地上まで落ちないから割と安全なんだよ」

情報屋「なるほど…なんか分かって来た…確かに射撃するタイミングとか慣れれば行けそう」

女海賊「でしょ?」

情報屋「ねぇ…港町の人達が気付いて騒いでる…」

女海賊「ああああ…ここで遊んでちゃダメだったね」

情報屋「早く爆心地に向かいましょう」


--------------

『光る隕石の爆心地』


リリース! スゥ


女海賊「よっし!!見え…うわっヤバ!!!」

情報屋「なにこれ…見渡せないくらい大きなのクレータになってる…」

女海賊「メチャでかいじゃん…えーと…直径何十キロあるんだ?…」

情報屋「向こうの方が爆心地よ…」ユビサシ

女海賊「ぁぁ…真ん中に水が溜まってるね…」

情報屋「海抜0以下になってるのよ」

女海賊「もうちょい高度下げる…地面が光ってるな」

情報屋「熱でガラスになってしまったのね」

女海賊「これじゃもう木とか生えないね…」

情報屋「そうか…だからシン・リーンの東側は不毛の地なのね」

女海賊「んん?」

情報屋「シン・リーンから東の方は広範囲で岩塩地帯…木が一本も生えない…誰も足を踏み入れなくて未踏の地になってる」

女海賊「大昔に光る隕石が落ちた跡って事?」

情報屋「きっとそうよ…しかも何百発落ちたか分からないくらい」

女海賊「マジか…こんなんが何百発も…」


ウンディーネ時代が終わるきっかけになった光る隕石はシン・リーンの東側をすべて更地にした

私達の知らない巨大な文明がそこで滅んだのよ…

その後何千年も草木が全く生えない不毛の大地

きっとそこに溜まった筈の海水がすべて無くなった結果…巨大な岩塩地帯になった


女海賊「ほんじゃ光る夜の時400発全部落ちてたらここも不毛な岩塩地帯になってたんだ」

情報屋「実際目の当たりにするととてつもない破壊だとやっと分かったわ…」

女海賊「これさ…この下に居た動物みんなガラスになっちゃったかな?きっとエルフも沢山居たよね…」

情報屋「想像できない…蒸発したのか…灰になって飛ばされたのか…」

女海賊「なんだろう…自分が生きてるのが急に愛おしく思えて来た」

情報屋「…」

女海賊「こんなに沢山の犠牲があったのにまだ生きてる…そんな感じ」

情報屋「そうよ…生きなきゃ…不毛の地に来て初めて生を知るのね」

女海賊「この世界って残酷だよ…」

『死の海』


シーン… ヒュゥゥゥ…


女海賊「…」テクテク

情報屋「…」スタスタ

女海賊「足元見て…薄っすら積もってる土…」

情報屋「これ…土じゃ無いわ…虫の死骸」

女海賊「うん…虫達が癒そうとしてる…わざわざここに来て死んでる」

情報屋「もしかしてもう一度森にしようと…」

女海賊「そだよ…虫達のお陰でまだここは死んで無いさ…あと何百年掛かるかな…何千年かな…」


ヒラヒラ ヒラリ…


情報屋「雪…」

女海賊「もうすぐ冬が来るかぁ…」

情報屋「あなた…虫の声が聞こえるのでしょう?」

女海賊「分かんない…」

情報屋「そう…」

女海賊「でもね…人間が立ち入って良い場所じゃないのは分かった」

情報屋「え?」

女海賊「犠牲を踏みにじっちゃダメなんだ」

情報屋「人間が作った物でこんな風になってしまったのね…」

女海賊「行こっか…なんか悲しくなるよ…」テクテク


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--------------



 死の海編

   完


『港町_酒場』


ドゥルルン~♪


マスター「いらっしゃいませ…お二人様ですか?」

商人「あ!!やっと戻って来たね…こっちこっち」

マスター「ご一緒でしたか…どうぞこちらへ」

女海賊「取り引き終わった?」スタ

商人「やっとさ…どうだった?光る隕石の跡地は」

女海賊「想像を超えてたよ…私の爆弾なんかアリンコ以下さ」

商人「話通りだ…それより空飛ぶクジラの噂がスゴイ事になっちゃってるみたいでさ」

女海賊「あーーやっぱりか…」

商人「ハジ・マリ聖堂の方から魔術師がこっちに向かってるらしい」

女海賊「馬車なら早くて2日…気球なら1日…もう長居できないね」

商人「まぁ商船の取り付けは済んでるからいつでも出発出来るよ」

女海賊「ちっと疲れたんだよなぁ…ちょっと寝てから夜中に出ようか」

商人「おけ…今日は飲み過ぎない様に」


タッタッタ


吟遊詩人「皆さんお集りで…」

情報屋「昨日はどうも…」ペコリ

吟遊詩人「いえいえ…それより今朝の空飛ぶクジラの件…もしかして皆さんなのではと思いまして」

商人「いや…ええと」

女海賊「そだよ?でも秘密にしといて」

商人「あぁ…良いのかい?バラシてしまって…」

女海賊「どうせ一回仲間だったじゃん…隠してもその内バレるって」

吟遊詩人「実は姫様のご無事が確認されて僕は従士としてハテノ村まで向かう所だったのです」

商人「ええ!?どういう話?」

吟遊詩人「女王様の命令なのです…魔術師を派遣すると怒るとの事で僕が行く事に…」

女海賊「どうやって行くつもりだったん?」

吟遊詩人「キ・カイまで商船で行って政府の軍用気球で向かうつもりでした」

商人「政府?シン・リーンと繋がりが?」

吟遊詩人「外交特権ですね…書状を預かっています」

商人「それはマズい…」

吟遊詩人「え?」

商人「なるほどこういう所から色々バレてしまうんだな…」

吟遊詩人「バレると言いますと?」

商人「話はややこしいんだけど魔女は政府から命を狙われる身なんだよ…そういう事情を女王は知らないんだ」

女海賊「魔女がハテノ村に居る事を知ってるのは他に居る?」

吟遊詩人「女王様と側近達です…魔術師達には知らされて居ません」

商人「ひとまず水際で防いだ感じか…」

女海賊「アンタ女王様と連絡出来るん?」

吟遊詩人「はい…貝殻を預かって居ます」

女海賊「ちっと事情を話して口止めしとかないと又魔女の行方が分からなくなるよ」

吟遊詩人「分かりました…」

女海賊「後さ…アンタペラペラ色々しゃべっちゃうけどそんなんじゃこの先生きて行けない」

吟遊詩人「き…厳しい事を言いますね」

女海賊「私達の側に居るって事はそういう事なんだ…肝に銘じて」

吟遊詩人「はい…気を付けます」

商人「とりあえずキ・カイ経由でハテノ村に行くのは無理だ…これ連れて行くしか無いよね」

女海賊「まぁ良いじゃん…ちょうど男手足りなかった所だしさ」

商人「ハハ…君がそう言うなら…」

『夜_坂道』


ゴトゴト ゴトゴト


女海賊「なんで先に物資運んで置かないのさ…」ヨイショ

商人「君達は光る隕石の落ちた場所まで行ってたじゃないか…」ヨイショ

女海賊「あばら家まで運んで置けば良かったじゃん」ヨイショ

情報屋「…もう良いでしょ?済んだ話なのだし」ヨイショ

女海賊「てか…おい!!吟遊詩人!!あんたちゃんと押してんの!!?」

吟遊詩人「ちゃんと押してますよ…」グイ


シュン! グサ!


女海賊「ぐぁ!!…ちょ…」ガクリ

情報屋「え!!?」

商人「なっ…」

吟遊詩人「…」ポカーン

女海賊「な…なんで矢が刺さってんの…」ボタボタ


オークファイター「ウゴ…」ドスドス


情報屋「オーク!!商人危ない!!」スチャ

商人「こんな所に!!?」スチャ

吟遊詩人「え?え?…」タジ

情報屋「これ囲まれてる…5体くらい」キョロ

女海賊「くっそ…チョー痛い…ハァハァ」ヨロ

商人「吟遊詩人!!女海賊の応急手当を!!」キョロ

吟遊詩人「あわわわ…」ノソノソ

情報屋「見えた…向かって来る前に撃つわ…」カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーン!


情報屋「あぁぁ貫通して爆発は向こう側…ダメ足元狙って!!」

商人「ええい!!」カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーン!


商人「どうだ!!?」

情報屋「当たってるけど致命傷じゃ無い…向こうは様子伺ってるわ…」

女海賊「にゃろう…今の内にエネルギー充填しといて…」ヨロ 

情報屋「動いたら血が…」

オークファイター1「ハキブノアダンナ…」タジ

オークファイター2「レガサンタッイ…」ドドド

オークアーチャー「ルスゴンエ…テケヨンセャシ」ギリリ

オークウォーリア「ルナニリトオガシタワ…テッバウノモベタニダイアノソ」ダダダ


女海賊「ヤバ…女型のオークが突っ込んでくる」チャキリ


ターン ターン ターン ターン


オークウォーリア「ウゴ…」ピョン クルクル スタ

商人「避けた!!」

女海賊「くぅぅ…」ドタリ

情報屋「ダメ!!接近される…」

商人「くそう!!」スラーン チャキ

オークウォーリア「ウガァァ!!」ブン ザクリ!

商人「くぅぅ…」ブン スカ


ドドドド ウゴゴゴゴゴ


吟遊詩人「ひぃぃぃぃぃ…」タジ

オークウォーリア「ウュシッテテッモツヅロクフトヒ」


モクモクモク


商人「煙?…甘い匂い…だめだ!!これは睡眠魔法!!」

情報屋「え!!?そんな…」フラ

商人「遠くへ走って!!逃げるんだ!!」グイ

吟遊詩人「はらひれほれはれ…」フラ

女海賊「私の笛…笛…」zzz

商人「ええい!!くそぉ!!僕だけか…来るなら来い!!」スチャ


ドスドスドス ドドドド


商人「…」---荷物を奪って逃げる?---

商人「…」---いやそれで良い…今は戦って勝てない---

商人「…」---くそ!!オークがこんなに強いとは…---

『鯨型飛空艇』


ズルズル ドサリ


商人「ええと…どうやってやるんだっけ…」アセアセ

商人「まぁ良いや!とりあえず上空に逃れよう…」シュゴーーーーー


フワフワ


商人「もうエリクサー無いんだよ…薬草で我慢して」ゴソゴソ

商人「矢を抜いたら一気に血が出るな…でもしょうがない」ズボォ

女海賊「ぐぅ…すぅ…」ドクドク ピュー

商人「薬草で押さえて…止まれ止まれ…出血さえ無くなれば…」グググ

商人「情報屋!!起きて!!」ペシペシ

情報屋「ぅぅん…」zzz

商人「くそう…止血で手が離せない」

商人「こんな大きな矢なんか食らって…あ!!そうだ…賢者の石があった!!」

商人「頼む!!出血止まってくれぇ!!」


--------------

--------------

--------------

『朝』


シュゴーーーーー ビュゥゥゥ


女海賊「ハッ!!」パチ キョロ

商人「あ!!良かった…気分は?」

女海賊「うわっ…なんじゃこりゃ…」ベタベタ

商人「大分出血したよ…そこの大きな矢がお腹に刺さってたんだ」

女海賊「思い出した…笛!笛…あった!!ホッ…」

商人「まさかオークが睡眠魔法使うなんてさ…僕が不死者で良かった」

女海賊「あんたが一人で追い払った感じ?」

商人「いや…食料奪って逃げて行った」

女海賊「ふぅぅぅ…助かって良かった」

商人「本当だよ…」

女海賊「食べ物全部取られちゃった?」

商人「うん…残ってるのは塩と香辛料だけさ…まぁ命が残ってるからそれだけで良い」

女海賊「あの女型のオークさ…メチャ動き早かったんだけど…」

商人「だね…エルフみたいなタイプも居るんだよ」

女海賊「あんたの攻撃も全然当たんなかったよね」

商人「間合いが違う…というか腕の長さが全然違う…あ!!あのオーク変わった剣持ってたな」

女海賊「見逃した…どんな剣?」

商人「オークが使ってる剣じゃない…フィン・イッシュの銀製かも知れない」

女海賊「ふ~ん…てか飛空艇の進路は?」

商人「とりあえず真南に進んでる」

女海賊「おけおけ…あと私が修正する」グイ ヨロ

商人「大丈夫?ふらついてるけど…」

女海賊「結構血が足りないかも…情報屋起きたらもっかい寝る」フラフラ

商人「そうだね…起こしてみる」ペシペシ

情報屋「ぅぅん…ハッ」パチ

商人「気が付いたね?」

情報屋「ここは…飛空艇…」キョロ


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『1日後』


シュゴーーーーー ビュゥゥゥ


女海賊「本当はアラクネーの餌だけど…お湯に溶かしたハチミツ」

情報屋「何も無いよりマシね?吟遊詩人さんお先にどうぞ」

吟遊詩人「すみません…」

女海賊「商人?飲みかけのワイン有るけど居る?」

商人「あぁ欲しい…喉が渇いてる」

女海賊「ほい!!」ポイ

商人「ありがとう…」グビ

女海賊「もうちょいで名もなき島に到着するからお腹減ってるのは我慢して」

吟遊詩人「はい…」

情報屋「吟遊詩人さん元気無くなったわね?」

吟遊詩人「いえ…皆さんはいつもあのような戦いをしてると思うと…」

女海賊「てかあんた何か武器使えないの?」

吟遊詩人「僕が使えるのはこのリュートだけ…」

女海賊「リュートでビビらせるとかなんか無いのか!」

情報屋「無理言っちゃダメよ…吟遊詩人なのだから…」

商人「僕達全員後衛の部類だからオーク相手じゃ勝ち目無いね」

情報屋「そうそう…このプラズマの銃は使い方考えないとダメな様ね」

女海賊「そだね…近距離だと貫通しちゃうみたいだし」

商人「そこそこダメージは与えていたけど相手が悪い…」

女海賊「魔法使うオークって見た?何処に居たのか分かんないんだけどさ…」

吟遊詩人「弓を持ったオークの横に小さなオークを見ました…変わった角が生えた女のオークです」

情報屋「オークシャーマン…」

女海賊「あの感じだと他にも魔法使って来そう…もう会いたく無いわ」

商人「相手に魔女みたいなのが居ると戦い辛い」

女海賊「やっぱオークには関わんない方が良い」

『名もなき島』


フワフワ ドッスン


女海賊「向こう側にちょっとした集落有るから食事はそっちで…」

商人「僕は早速地下の遺跡でホムンクルスを…」

情報屋「私も付き合うわ?」

女海賊「う~ん…2人共忙しいのか…ほんじゃ吟遊詩人!!私と一緒に食事行こう」

吟遊詩人「助かります」

女海賊「この島の住人は多分リュート聞いた事無いからさ…演奏すりゃタダで食事出来るよ」

吟遊詩人「おぉ!!」

商人「女海賊!?この島で食料は入手できないかい?」

女海賊「小麦は無いよ…芋ならあるんだけどさ…」

商人「芋でも無いよりはマシさ」

女海賊「芋って重たいから運搬効率悪いんだよね…」ブツブツ

『古代遺跡_深部』


スタスタ


商人「よし…あの時のままだ」

情報屋「フフ…初めて見た時は驚いたわね」

商人「君はもう十分ここを調査したのかい?」

情報屋「一通り見たけれど動かし方が分からなくて…」

商人「僕が持って来た古代のエネルギーで動かせる筈…」

情報屋「それがそのエネルギー源ね?」

商人「うん…僕もキ・カイで色々調べて古代遺跡のエネルギー源は互換性がある事を突き止めた」

情報屋「この機械は直ぐに動かせる?」

商人「今からやってみる…」カチャカチャ

情報屋「いきなりそんな所を分解するのね…」

商人「他の遺跡も同じなんだ…よし!!このまま収まりそうだ…」グイ

情報屋「何が起こるのかしら…」

商人「頼む!!動いてくれ…」人


シーン…


情報屋「あ!!忘れてた…女海賊から鍵を預かっているわ?」スッ

商人「鍵?」

情報屋「ここの機械を動かす鍵じゃないかって…」

商人「鍵穴なんか…」

情報屋「ここよ?」ユビサシ

商人「おぉ…なるほど起動に鍵が必要なんだな?」

情報屋「入れてみるわね?」カチャ


ブーン ピピッ


商人「おおおおお!!?動いた!!石板に文字が流れ始めた…」

情報屋「あわわ…メモを取らなくては」アセアセ

商人「これは慎重に触らないと下手に動かすとダメかもしれない…」

情報屋「キ・カイの学者はこっちの石板を手で操作する様な事を言ってたのを聞いた事が有るわ」

商人「手で…」カチャカチャ

情報屋「ほら?文字が動いた」

商人「そういう事か…こっちが操作する部分なんだな?」

情報屋「人体の画よ…ちょっと待って!!何かの成分を現した数値ね…」

商人「材料の割合…待て待て…ここにある生体の部品と比較しよう…」


アーデモナイ…コーデモナイ…

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『集落の広場』


ドゥルルン~♪


ドワーフ爺「…芋ならいくらでも持って行ってええで?」

女海賊「ごめんね!この間貰ったばっかりなのにさ…」

ドワーフ爺「かまんかまん!!それより又直ぐに行ってまうんか?」

女海賊「まぁね…困窮してる村が有って早く食料運ばなきゃいけないのさ」

ドワーフ爺「そら大変やなぁ…この島は気候がええから食料は余っとるちゅうにな?」

女海賊「じゃ!!ありがとね~」スタ


ヒラヒラ フワフワ


女海賊「ん??あれ?妖精?」

妖精「お?僕の事見える?」ヒラヒラ

女海賊「あんたクルクル回って何やってんの?」

妖精「踊ってる」

女海賊「なんで?どっから来たん?」

妖精「音楽に誘われて踊ってたんだ」

女海賊「あんたら一杯出て来ると皆寝ちゃうじゃん…」

妖精「そんなの知らないよ…僕のせいじゃない」

女海賊「てか今寝ちゃうと困るんだ」

妖精「寝なきゃ良いじゃない」

女海賊「あのね…」

妖精「まだ誰も寝て無いから良いじゃないか!邪魔しないで欲しいな」クルクル

女海賊「んぁぁまぁ良っかぁ…ほんで?おっぱいに挟まる?」

妖精「何言ってるんだ君は…僕は音楽に誘われて踊ってるんだよ?」

女海賊「羽ムシルよ?」

妖精「変な人だなぁ…あっち行ってシッシ!!」

女海賊「ペッ!!ベロベロベー」プイ

妖精「なんなんだあの人…」

『小舟のある入り江』


ザザー ザザー


吟遊詩人「ここに居たのですね…月を見ていたのですか?」

女海賊「んあ?まぁね…」

吟遊詩人「又諸事詩が作れそうな情景です」

女海賊「それって私の事?」

吟遊詩人「月を見ている姿が…なんというか…得も知れない孤独に見えました」

女海賊「そうだよ…なんか心に穴が開いちゃってんのさ」

吟遊詩人「何か歌いましょうか?」

女海賊「てかさ…あんたの演奏で妖精出て来てるんだけど…」

吟遊詩人「あぁ女王様に言われたことが有ります」

女海賊「あんた見えないの?」

吟遊詩人「残念ながら僕には見えません」

女海賊「ふ~ん…まぁ見えたからどうって事無いけどね」

吟遊詩人「魔術師達が言うには僕の演奏で魔法が強くなるとか…」

女海賊「あれ?皆寝ちゃうとかそういう効果じゃ無いの?」

吟遊詩人「良く分からないんです…ギャンブルに勝つとか…怪我の治りが良いとか…」

女海賊「お!!?それもしかしてシン・リーンが発展してるのはもしかしてあんたのお陰?」

吟遊詩人「さぁ?僕には分かりません…ただ女王様は僕を寵愛して下さいました」

女海賊「なるほど良い事聞いたぞ!!あんたはもしかするとラッキーマンなのかも…」

吟遊詩人「ラッキーマン…」

女海賊「演奏聞くとなんとなくラッキーな感じ」

吟遊詩人「ハハそう言って貰えれば歌い甲斐がありますね…」

女海賊「おっし!!何か歌ってみソラシド!!」

吟遊詩人「では…」

ドゥルルン~♪

ずっと一緒にいた 二人で歩いた一本道♪

二つに分かれて 別々の方歩いてく♪

寂しさで溢れたこの胸かかえて♪

今にも泣き出しそうな空見上げて♪

あなたを想った…君がいない夜だって♪

そうno more cry もう泣かないよ♪

がんばっているからねって 強くなるからねって♪

君も見ているだろう♪

この消えそうな三日月♪

つながっているからねって 愛してるからねって♪

三日月に手をのばした 君に届けこの想い♪


女海賊「…」ポロポロ

女海賊「……」ポロポロ

女海賊「………」ポロポロ

女海賊「がんばっているからねって…強くなるからねって…うぐっ」グスン

女海賊「分かったよ…あんたの歌がどんななのか…」ググ


so no more cry…もう泣かない

『翌日_古代遺跡地下』


ヒソヒソ

生体を構成するタンパク質の材料になるのがこっちか…

アミノ酸の配列は種類ごとに分けられて居て培養に必要なのがエリクサー


女海賊「どう?ホムちゃんは何とかなりそう?」

商人「あぁ女海賊か…そうだな結論から言うと材料が足りない」

女海賊「マジかぁぁ…容器に入ってる分じゃダメなんだ…」

商人「ここに入っていたであろうエリクサーは使っちゃった?」

女海賊「うん…剣士に飲ませる為に使った」

商人「まぁしょうがないね…決定的に足りないのがエリクサーなんだよ」

女海賊「どんくらい必要?」

商人「多分樽で4杯くらいかな…」

女海賊「めっちゃ足りないね…」

商人「精霊樹に分けてもらうしか無いね」

女海賊「おけ!貰って来る」

商人「ちょっと予定変更しても良いかな?」

女海賊「何?」

商人「僕は生体の部品が全部揃って居るかちゃんと確かめたいんだ…つまりここに残って研究したい」

情報屋「私も残って調べたい事があるのよ」

女海賊「何か分かった事有るの?」

情報屋「これ見て…」パサ

女海賊「地図?」

情報屋「そう…古代の世界地図よ…外海まで完璧に記されてる…当時の都市の名前まで」

女海賊「ここで歴史の事も分かるんだ?」

情報屋「そうよ?翻訳に時間が掛かるのだけれど石板に記される絵だけでも多くの事が分かるの」

女海賊「ねぇ?この遺跡って何?」

商人「多分古代の研究所さ…現代の図書館以上の情報が眠ってる」

女海賊「なる…とりあえず2人は調査の為に残るんだね?」

商人「うん…ごめんよ」

女海賊「ほんじゃ私はハテノ村に行った後エリクサー貰いに行けば良いんだね?」

商人「精霊樹の所にエルフゾンビが居る筈…アサシンなら話をし易いと思う」

女海賊「おけおけ…」

情報屋「その地図も持って行って良いわ…今の地図よりもずっと正確な筈だから」

女海賊「なんか内海ちっちゃくね?上下も反対だし」

情報屋「それが真の距離よ…外海の大きさが思って居たもずっと大きい」

女海賊「まぁ良いや貰ってく!行って来るわ!!」

『鯨型飛空艇』


フワフワ


女海賊「芋を荷室に突っ込んだらもう行くよ…よいしょ!!」ドサリ

吟遊詩人「2人はここに残るのですね?」

女海賊「うん…事情があってこっから先は2人でハテノ村戻る」

吟遊詩人「僕は飛空艇に乗っているだけで良いのですか?」

女海賊「ダメダメ…武器の使い方とか教えるからあんたも戦力になって貰う」

吟遊詩人「戦力…」タラリ

女海賊「ほら早く乗って!!行くよ!!」

吟遊詩人「は…はい!!」スタ


シュゴーーーーー


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『ハテノ村_鍛冶場』


カーン カンカン


盗賊「鉄鉱石運んで来たぜ?」

女戦士「そこに積んでおいてくれ」

盗賊「しかしこう頻繁にガーゴイルに襲われるんじゃ自由に子供達を遊ばせられんな」

女戦士「倒して数を減らせて居ないのが問題だ」

盗賊「魔女の魔法頼みだがガーゴイルがなかなか降りて来んのがな…」

女戦士「クロスボウのボルトを作り増しては居るが…」

盗賊「動く的になかなか当てられんのよ…上空で炸裂でもしてくれりゃ良いんだが…」

女戦士「火薬を作るのに硝石が無いのだ…これで戦うしかあるまい」


ノソノソ


魔女「ふぅぅちぃと休憩じゃ…よっこら」ストン

盗賊「いよーぅ!!子供達は魔法使える様になってっか?」

魔女「それほど早く習得できる訳無かろう」

盗賊「ヌハハ戦力足り無ぇから早い所一人前になって欲しい訳よ」

魔女「破壊術を使える様になるまでは1年ぐらい必要じゃ…今はまだ成長魔法しか使えぬ」

盗賊「まぁしゃー無ぇ」

魔女「川辺に出来損ないの芋が沢山出来とる故にヘラジカに食わせよ」

盗賊「ま…一応役には立ってる訳か」

女戦士「魔女!妹の事が心配なのだが…」

魔女「心配には及ばぬ…名も無き島から既にこちらへ向かって居る様じゃ…」

女戦士「そうか…それなら良い」

盗賊「アイツは直ぐどっか行っちまうからなぁ…」

女戦士「フフ風呂も30秒我慢出来ん…理解に苦しむ」


ボエーーーーーー ブシューーーーー


盗賊「お!!?また派手な帰還だ…」

魔女「ほう?わらわは見て居らなんだがクジラの潮を真似て居るのか…」

盗賊「俺らの思い付きを具現化したんだ…意味のない機能なんだがなヌハハ」

魔女「いいや…虹が出て居る…」

盗賊「いやいや水を無駄に使ってる訳よ」

魔女「美しいでは無いか…わらわは好きじゃぞ?」

『鯨型飛空艇』


フワフワ ドッスン


吟遊詩人「ひぃひぃ…」ヨロヨロ

女海賊「あんたさぁ!!男なんだからシャキっとしな!!」


タッタッタ


女戦士「無事に戻った様だな?商人と情報屋はどうした?」

女海賊「名もなき島に残って研究するってさ…ほい!!これお土産!!」パサ

女戦士「んん?世界地図か?」

女海賊「今までの地図より正確なんだって」

女戦士「ほう?…随分見づらい地図だ」

女海賊「あと盗賊!!例の古代兵器…使える様にしといたよ」ポイ

盗賊「おぉ!!どんな感じよ?」パス

女海賊「空に向けて撃ってみ?」

盗賊「ようし!!」チャキ カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーン


女海賊「飛距離300メートルくらい…リロードが30秒って感じかな」

盗賊「すげぇじゃ無ぇか!!丁度ガーゴイル倒すのに困ってたのよ」

女海賊「一応連射も効くけど飛距離と威力が落ちる…まぁ使って試してみて」

魔女「わらわの魔法だけで戦うのはキツかった所じゃ…良い武器を手に入れたのぅ」

女海賊「もう一個あるんだけど…どうすっかなぁ」

盗賊「影武者にでも渡そう」

女海賊「アレ?アサシンかリカオンが適任じゃないの?」

盗賊「今居無ぇんだ」

女海賊「どゆ事?」

女戦士「大型の気球で硫黄を運んで貰って居るのだ」

女海賊「えええええ!?マジ?」

女戦士「どうした?何か用が有ったのか?」

女海賊「アサシン連れて精霊樹まで行きたかったのさ…エルフゾンビ居るじゃん?」

女戦士「川を下った河口の漁村まで行っている…戻るのに…」

盗賊「あと2~3日じゃ無ぇか?」

女海賊「マジかよぉ…足止めかぁ…」

女戦士「2~3日ゆっくりしたらどうだ?」

女海賊「んあぁぁぁぁ…暇すぎて気が狂うかも」

盗賊「アホか!!穴掘りすっぞ!!」

女海賊「ムリムリ…こいつにやらせて」グイ

吟遊詩人「え!?ハハ…どうも」ペコリ

『焚火』


メラメラ パチ


魔女「…ふむ…母上はそれでそなたを遣わしたのか…」

吟遊詩人「左様に御座います」

魔女「しかし抜かったのう…母上にはわらわが公爵から命を狙われている事を伝えて居らなんだ」

吟遊詩人「塔の魔女に懸賞金が掛けられて以来薄々感じては居たようですが…」

女戦士「今の話からすればハテノ村に刺客が来る可能性が無い訳では無いな」

魔女「そうじゃのぅ…」

女海賊「ちょい待って…塔の魔女の姿ってさぁ…私って事になってんじゃなかったっけ?」

女戦士「なに!?」

女海賊「私だけ魔女の塔で修行してたらいつの間にかそういう事になってんのさ」

盗賊「まぁ来るかもしれんという程度なんだろ?そんなん気にしてもしゃー無ぇと思うんだがよ」

女海賊「私は何処行ってもお尋ね者だからあんま気にして無いけどね」

盗賊「ヌハハ実は俺もだ」

女戦士「言われてみれば私もだなフフ」

魔女「して吟遊詩人…主はわらわの従士を任じられた訳じゃが…わらわを守れるのかえ?」

吟遊詩人「はっきり申し上げますと…僕は守ってもらわなければいけない」

魔女「それでは只の足手まといなのじゃが…」

女海賊「ちっと待って…こいつの演奏で妖精が出てくんのさ」

魔女「ほう?これ如何に…」

女海賊「演奏させときゃ何となく幸運になるっぽい…これ案外バカにできないんだ」

魔女「主は妖精を使役出来るのか?」

吟遊詩人「いえ…僕は妖精を見る事も話す事も出来ない…ただ演奏で妖精を鼓舞出来るらしいです」

魔女「なるほどそれで母上に見染められたか…」

女海賊「演奏させときゃ良いんじゃね?」

魔女「帰れと言う訳にもイカンしな…承知した故に従士としてわらわの傍に居るが良い」

女海賊「ほんじゃ景気付けてなんか歌って!!」


ドゥルルン~♪

運命の糸が絡まり合って人々を引き裂く時でも♪

響け 世界中の闇の中で僕らがはぐれないように♪

『ハテノ村上流』


ザック ザック


盗賊「積もった雪はどんどん川に捨ててくれ…集めた灰は荷車に乗せて火事場の炉まで運搬だ」

女海賊「この灰は何かに使うの?」ヒィヒィ

盗賊「煉瓦の材料にするらしいぞ?」

女海賊「これさぁ…女がやる仕事じゃないと思うんだけどさぁ…」ヒーコラ

盗賊「しょうが無ぇだろう!!一人前で動けるのはお前しか居無ぇんだから」

女海賊「これさぼったらお姉ぇに尻ぶっ叩かれそうだなぁ…」シブシブ

盗賊「違い無ぇ!!てか女戦士は一人で働き過ぎでよ…俺も休めん訳よ」

女海賊「古代遺跡って何処に埋まってたか覚えて無い?」

盗賊「分かったら苦労せん!!」

女海賊「やっば…これ又1ヶ月掘りっ放しのパターンだ」

盗賊「お前何か妙案無いのか?…その魔人の金槌で消しまくるとか」

女海賊「やってるけど全然掘り進まないんだって…」

盗賊「まぁ地道にやるしか無ぇな…人段落したら美味いシカ肉でも食って酒飲むぞ」

女海賊「あぁぁぁ腹減った…」グゥゥ


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『名も無き島_古代遺跡』


ここで研究して居たのは生物学者ね…いろんな分野の生物学者がここに集ってた

ウンディーネ時代の戦争から逃れた学者たちが集まって居たんだわ

魔法と起源となる研究がこの当時の主な研究対象

ウンディーネ時代より以前は魔法を使える人は殆ど居なかったみたい…

第六感と言われる感覚を受容するorc遺伝子の発見

この受容体が発達した人に見られる症状が幻覚を見たり予言を見たり…

精神分裂を引き起こす事から精神病と診断されて隔離され…研究者の実験対象にされていた

中でも特異なのが神の声を聞く人達

それはその当時の権力者に恐れられ悪魔の声を聞く者として徹底的に虐殺された

特徴は青い瞳…世界中にいる青い瞳を持つ者は能力者に関わらず徹底的に殺されたの

それがそもそもの戦争の原因

そんな最中宇宙から飛来した箱舟から異星人が現れた

当時の人間達は対話をする事無く一方的に異星人を捕らえて箱舟も押収した

研究者たちは我が先にと異星人の生体について研究を始めた…そこで明らかになったのが

異星人にもorc遺伝子が発現していて青い瞳を持つ者と精神的繋がりがある事が分かった

いわゆる神の声…

それが明らかになって世界は大戦争へと発展

神を崇拝する者にとって異星人を解放する事が絶対的目標となったのね


商人「この石板に浮かんでいる絵が当時の光景だね?」

情報屋「そうよ…私達の想像を超える文明の形」

商人「それでこの生物学者の研究所にホムンクルスを製造する施設がある理由は?」

情報屋「恐らくスタンドアローンで世界とは離れた環境で研究を続ける為…後はお手伝い役かな?」

商人「ん?スタンドアローン?」

情報屋「世界中の機械から切り離して情報が漏れてしまわない様にしたの」

商人「あぁクラウドの事か…」

情報屋「ホムンクルスの情報処理能力を単独で使おうとしたのよ…戦争の標的にされないために」

商人「そうか…だからこんな離れ小島なのか」


でも世界は光る隕石の打ち合いで疲弊してしまう…

そうやって一つの大陸を草一本生えない不毛の地にしてしまった


情報屋「ここからは私の憶測だけれど…その戦争はやがて人間と機械との戦いに姿を変えて行ったと思うの」

商人「わかるよ…僕も見てしまったんだ」

情報屋「え?何を?」

商人「戦いに終止符を打ったのは多分ホムンクルスさ」

情報屋「どうして?」

商人「古代遺跡の扉を最後に閉じたのはその当時のホムンクルスだよ…扉の前で石化してた」

情報屋「ホムンクルスは人間を殺める事は出来ないと…」

商人「直接には出来ない…でも人間を誘導して扉を閉める事は出来る…そうやってすべてをミイラにして封印したのさ」

情報屋「それはもしかして人類の保存の為?」

商人「そう信じたい…戦争を継続するよりも犠牲を払って止めさせる…そうやって生き永らえさせた」

商人「僕はこう思うんだ…ホムンクルスは何年か活動すると自然と人の心が宿るんだよ…そういう特殊なロボットなんだ」

商人「だからロボット三原則も破れる個体に成長してしまう…そして石化する…記憶をクラウドに残してね」

情報屋「それが精霊の本当の姿ね?…」


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『数日後_ハテノ村』


おぉぉぉ!!


盗賊「お前意外と筋肉有るな!!ちっと腹見せてみろ」グイ

女海賊「勝手に触んな!!ホレッ!」ガバ

盗賊「ほーーーー俺の筋肉も見てみろ!!」ガバ

女海賊「こんな事も出来るよ…」ボヨヨーン

盗賊「ダハハハハハなんだその腹は!!なんでプヨプヨに出来んのよ!ガハハハ」

女海賊「これドワーフの特徴なんだって!お姉ぇなんかもっと凄いよ?」

盗賊「それ使い分けんのか?」

女海賊「ちっとパンチしてみ?」

盗賊「良いのか?腹にパンチすりゃ良いんだな?」

女海賊「来い!!」プルルン

盗賊「うらぁ!!」ブン

女海賊「フン!!」メキメキ


ドスッ!!


盗賊「おぉぉ!!なるほどな?打たれる時に踏ん張る訳か」

女海賊「でも疲れるんだよ…」プシュー ヘナヘナ


スタスタ


女戦士「何バカな事をやって居るのだ…お前は恥を知らんのか」

女海賊「あ…お姉ぇ!どっか行くの?」

女戦士「上を見てみろ…アサシンのご帰還だ」

女海賊「あああ!!やっと帰って来た!!」

女戦士「あらかじめ言っておくが今日直ぐに行動はしない様にな?」

女海賊「ええ!?もう穴掘り飽きたんだって…」

女戦士「分かったな?…」ギロリ

『大型気球』


パタパタ フワリ ドッスン


アサシン「さぁ降りろ…」

男共「ほーーここがハテノ村かぁ…」ゾロゾロ

女戦士「労働者の確保出来た様だな?」

アサシン「皆船乗りだ…鉱山労働は初めてだが体力的に問題無かろう」

狼女「アサシン!食料降ろすよ!!」シュタ

女戦士「やはり漁村だけに魚ばかりか?」

アサシン「フフ言うまでもあるまい…だが影武者の言う通り硫黄で上手く取引が出来た…人駆調達もな」

女戦士「影武者は次の調達を既に準備しているぞ」

アサシン「中々人使いが荒いな」

女戦士「まぁ今日は休んで良い」

アサシン「しかし…少し見ん内に村らしくなったな…水車も動いている」

女戦士「アレは妹が直した…使う宛ても無いのに」

アサシン「ところで幽霊船と商船はいつ漁村へ入るのだ?漁村の衆は心待ちにして居るぞ?」

女戦士「直に来るとしか言い様が無いな…商船は数日前に港町を出港したそうだ」

アサシン「では次漁村へ向かうのは私では無く影武者が行った方が良かろう」

女戦士「その件だが…妹がお前を連れて精霊樹へ向かいたいそうだ」

アサシン「もしかしてエリクサーが入用になったか?」

女戦士「その通り…行って貰えるか?」

アサシン「ふむ…そうだな盗賊ギルドに連絡もあるし良かろう」

女戦士「今の状況で私が此処を離れるのは良く無さそうだ…妹の監視をよろしく頼む」

アサシン「監視とは聞こえが悪い…」

女戦士「アレは感情で動いてしまうから諫め役が必要なのだ…元はお前の助手だろう?上手く導いてくれ」

『夜_教会』


ワーイ キャッキャ

そうじゃ!それで良い…一度芽を出したら水をやるのを忘れるで無いぞ?

さらに成長させるには主の魔力を消費せねばならぬ…杖を使って見よ…魔力の集中が出来る


狼女「よいしょ!!これで…最後」ドサリ

影武者「この魚の干物があれば塩の消費を抑えられる…よしよし」

狼女「体が魚臭くなったなぁ…温泉でも行って来るか」

女戦士「リカオン!温泉に行くなら女海賊も連れて行ってくれ」

狼女「ええ!?私の言う事聞く訳無いじゃない」

女戦士「灰で真っ黒になっていると言うのに気にする素振りすらない…どうすれば良い?」

狼女「アハハあの子らしい…無理だよ天然だから」

影武者「こういうのはどうかな?お小遣いで金貨を少し温泉に沈めて置く…」

狼女「へぇ?面白い…アイツどうするかな?」

影武者「僕が温泉に沈めて来るからお宝探しで挑発してみてよ」

女戦士「構わんやってくれ…どうせ女海賊は一銭も持って居ない筈だ」

影武者「じゃぁ僕は先に言って来る…」タッタッタ


女海賊「いやだからもうヘトヘトなんだって…これ食ったらちょい寝る」ガブ モグ


盗賊「なんだお前そのまんま寝るんか?」グビ

女海賊「どうせすぐに汚れるから別に良いさ」モグモグ

狼女「おい女海賊!」

女海賊「お!?リカ姉!!ちょい老けた?」

狼女「ムッカ!!」

女海賊「あゴメ…口滑った」

狼女「ぐぬぬ…あのね…温泉の中にお宝有るらしいんだ…金貨が落ちてるみたいだから拾いに行かない?」

盗賊「なぬ!!そらマジか!!ちょい行って来る」ダダ

狼女「だぁぁぁ盗賊じゃない!!…あ~あ行っちゃった」

女海賊「??」ポカーン モグモグ

狼女「もう良いや!!あんたのアソコ臭くて鼻が曲がりそうなんだ!温泉行くぞ!!」

女海賊「ええ!?マジ?そんな匂う?」クンクン

狼女「臭くて死ぬ!!行くぞ」グイ

女海賊「おかしいなぁ…あんま触って無いんだけどなぁ…」クンクン

『1時間後』


スタスタ


盗賊「ヌハハお宝ゲットだぜ…」ジャラリ

盗賊「金貨10枚も温泉に沈んでいやがった…どうだ?一枚やるか?」

女戦士「…」

影武者「…」

盗賊「ところでよ?鉱山の坑道奥で硫黄掘ってた奴が何かに襲われたらしいが?」

女戦士「あぁその件か…坑道にグレムリンが出る様だ」

盗賊「退治しといた方が良さそうだ」

女戦士「うむ…お前に相談しようと思って居た所だ」

盗賊「俺は坑道入って無いんだが相当広いんか?」

女戦士「私も奥の方までは行って居ない」

盗賊「明日ちっと奥まで潜ってみようぜ?お宝眠ってるかも知れん」

女戦士「私と盗賊…後はリカオンの3人で奥まで行って見るか」

盗賊「村の方は魔女と影武者に任せて良いな?」

影武者「プラズマの銃があれば僕一人でも問題なさそうだよ」

盗賊「まぁ一応用心に越したことは無ぇ」

女戦士「そうだな…」


スタスタ


女海賊「最初から言ってくれれば素直に温泉行くって!!」ホクホク

狼女「一度だって言う事聞いた事無いでしょアンタは」ホクホク

女海賊「えーと!!食いかけの肉何処行ったっけ?」キョロ

盗賊「んあ?あれお前のだったんか?俺食ったぞ」

女海賊「うっわ!!一番おいしい所だったのに…影武者!!もう一個肉頂戴」

影武者「今日の分はもう終わりだよ…芋なら少し余ってる…要るかい?」

女海賊「なんだよ又芋かぁ…」シブシブ

盗賊「酒あるぞぉ!お前もちっと付き合え」グイ

女海賊「私ワインあんま好きじゃないんだ」

盗賊「金貨1枚やるぞ?どうよ?」ホレホレ

女海賊「てかさ!!これ本当は私の物なんだ!!全部ヨコセ!!」グイ

『翌日_鯨型飛空艇』


ヨッコラ ドスン


盗賊「おーし!!こんなもんだな?」

女海賊「おけおけ!!硫黄はそんな満載にしなくても良い」

アサシン「さて…新型がどんなものか見させて貰おう」スタ

女海賊「ハンモックに引っかかってりゃどうって事無いよ…ほんじゃ上げるよ」グイ


シュゴーーーーーー フワフワ


女戦士「ではこちらも坑道へ入る準備をしようか」

盗賊「おうよ!!」

女戦士「一応盗賊は例のプラズマ銃を携帯してくれ…私はタンク…近接アタッカーがリカオン」

盗賊「俺ぁ後衛か…」

女戦士「不服か?」

盗賊「てか坑道の中でプラズマ銃は危ないな…崩落しちまう」

女戦士「上手く使ってくれ」



『坑道_上層』


ピチョン ポタ


女戦士「この辺りで作業者が襲われたらしい…」

盗賊「地図書きながら進んでるからゆっくり頼むな?」カキカキ

狼女「グレムリンって見た事無いのだけれど…」

女戦士「羽の無い巨大なガーゴイルだと思え…蹄行性の後ろ足が特徴だ」

狼女「蹄行性という事は動きが早い筈…」

女戦士「うむ…だが巨大な体で坑道を自由には動けん」

盗賊「まぁ狭い坑道じゃなきゃ作業者は殺されて居ただろうな」

狼女「…」クンクン

女戦士「追えるか?」

狼女「確かに匂う…こっちよ」スタ

『坑道_中層』


モクモク シュゥゥゥ


盗賊「熱いなこりゃ…湿度も酷い」

女戦士「これは下手に掘り進むとどこからマグマが出て来るか分からんな…」

盗賊「おい見ろ!!少し大きめの縦穴だ…ここから荷物を降ろせる様にロープを掛ける器具がある」

女戦士「むむ…坑道の下に荷を下ろす?」

盗賊「こりゃやっぱ下に何かあるぜ?」

狼女「匂いが近い…気を付けて」クンクン

盗賊「ここなら下に先制でプラズマ銃使えるぞ?」チャキ

女戦士「任せる…私は足止めに専念するから倒すのはリカオンがヤレ」

狼女「…」コクリ

盗賊「居た…うわデカい…撃っちまうぞ?」

女戦士「行け…着弾と同時に私も撃って出る」スラーン

盗賊「外すなよ…」タラリ カチ


ピカーーーーーーー チュドーーーーーン


女戦士「リカオン行くぞ!!」ダダ

グレムリン「プギャアアアアアア…」ドタバタ

盗賊「よっし直撃!!俺も近接で…」スラリ ダダダ

女戦士「前足だ!!前足を切り落とせ!!」ブン スパ


ドテーーーーン バタバタ


グレムリン「オノレ…オノレェェ…」ブン

女戦士「何ぃ!!言葉を…」ガシッ

狼女「そのまま!!」ダダ ブン スパー


リリース! スゥ


盗賊「バックスタブ!!」スパ

グレムリン「グゲェェェ…」

盗賊「ちぃぃぃ首落とし切ら無ぇ!!ぶった切ってくれ!!」

狼女「分かってる!!」ブン ブン スパ スパ


ビヨーーーン バタバタ


盗賊「どわぁぁ!!」ゴロゴロ ズザザー

女戦士「抑えきれん…」ググ

盗賊「脚力が半端無ぇ!!足も切り落とせ!!」

狼女「足か!!」シュタタ スパ


グレムリン「ガフッ…ゴボゴボ…ゲェェェェ」ピクピク


--------------

--------------

--------------

『縦穴の下』


ゴゥ ボボボボボ


女戦士「硫黄を採って来た…砕いて燃料に」ゴン バラバラ

盗賊「これ全部燃やし切るのしんどいな…」

女戦士「病気が散らばってはもっと面倒だ」

盗賊「これよう?他にも居るかも知れ無ぇから魔女も連れて来た方が良いぜ?」

女戦士「そうだな…一応周辺の見取り図だけ作って一度出直そう…これほど広いとは思って居なかった」

狼女「ねぇ…見て…腹の中から人骨出て来た」


デローン グチャグチャ


盗賊「うぇっ…見たく無ぇ」

女戦士「すべて燃やすのだ」ポイ


ボボボボボ ゴゥ


盗賊「デカくて上には上がれんが…こんなの居るんじゃ落ち着いて寝られん」

女戦士「この死体を燃やすのは私がやって置くからもう少し見取り図を書いて来い」

盗賊「おう!!」ダダ

狼女「このグレムリン…坑道を上には出られないのに何処で人間を食べたの?」

女戦士「…ふうむ」

『1時間後』


タッタッタ


盗賊「戻ったぜ?まだ死体を燃やし切れて無いか…」

女戦士「地図はどうなっている?」

盗賊「メチャクチャ広い…てか複雑すぎて簡単には書けん」

女戦士「フフしばらく冒険には困らん様だ」

盗賊「もう使えん様だが線路があるんだ…これで意味が通じるか?」

女戦士「やはりか…どこかの地下線路に繋がっている訳か」

盗賊「多分な?だが坑道はもっと地下の方にも続いてそうなんだ…訳が分からん」

女戦士「採取した鉱物を運搬する線路が幾層にも有るのだろうな」

狼女「これ坑道を上がって来られない様に何処かに鉄柵とか必要ね」

女戦士「今それを考えて居た所だ…この縦穴を上手く利用したい」

盗賊「下からは簡単に上がれない様にする訳か」

女戦士「丁度ロープを掛ける金具があるだろう?」

盗賊「そこから昇降するんだな…まぁ簡単なのがロープワーク駆使が良かろう」

女戦士「明日まずそれをやろう…今日はこの死体を処理したら一度戻るぞ」

『夕方_ハテノ村広場』


スタスタ


魔女「遅かったのぅ…どうじゃ坑道は」

女戦士「3人では危険だという事が分かった」

魔女「わらわも行かねばならぬか?」

女戦士「中に巨大なグレムリンが居てな…今日は偶然にも倒せたのだが先制攻撃されてしまうと危うい」

魔女「巨大とな?」

女戦士「うむ…それからグレムリンが言葉を発した…知能がある様なのだ」

魔女「では狭間から這い出て何年も迷った個体じゃろうな」

女戦士「言葉を発するのはどういう事だ?」

魔女「それは人間を狩る為の学習じゃ…言葉を発して近寄らせるのじゃな…稀にそういうガーゴイルも居る」

女戦士「なるほど…それでは捕食した人間の最後の言葉だったと思っても良いのか?」

魔女「うむ…ちなみに何と発したのじゃ?」

女戦士「オノレ…だな」

魔女「間違いなさそうじゃ…賢い個体は子供の泣き声をも擬態するで気を付けるのじゃぞ?」

女戦士「しかしガーゴイルにグレムリン…厄介な魔物が近い」

魔女「どこぞに深い狭間が放置されて居るのじゃろう…見つけられればわらわが回収するのじゃが」

女戦士「回収?狭間をか?」

魔女「アダマンタイトを黄金に変性させるのじゃよ」

女戦士「なるほど…」

魔女「影武者が河口の漁村まで行きたいと言うて居るが…」

女戦士「ううむ人出が足りんな…交易も止める訳にいかんしな…」

魔女「坑道の探索は急ぎでは無かろう?」

女戦士「うむ…分かった…とりあえずグレムリンが坑道に這い上がって来ない処置だけ先に済ませよう」

『大型気球』


ガサゴソ ガサゴソ


女戦士「此処に居たか…何を探している?」

盗賊「商人の持ち物にキ・カイの地下路線図が有った筈なんだ…おお!!コレだ」パサ

女戦士「そこと繋がっているのか?随分遠いが…」

盗賊「キ・カイじゃ無くてな…他にもキ・カイ並みの地下都市が有るのよ」

女戦士「ほう?」

盗賊「まぁ採取した硫黄を運ぶのはトロッコが一番簡単だろ?多分戦争になる前まで使ってたんだよ」

女戦士「なるほどな…だが明日の予定は少し変更だ」

盗賊「んん?」

女戦士「影武者がもう一台の大型気球で河口の漁村に向かうのだ…リカオンを護衛に当たらせたい」

盗賊「じゃぁ明日は中止か?」

女戦士「例の縦穴だけ処置する…グレムリンが這い出て来なければ引き続き硫黄を掘れる」

盗賊「そういう事か…じゃぁ後は俺の趣味だ」

女戦士「一人で探索する気か?」

盗賊「俺はハイディング出来るんだ…地下の地図を仕上げたい訳よ」

女戦士「ふむ…戦闘を回避しながら調査か…いやマテ!!グレムリンにハイディングが利く保証は?」

盗賊「ガーゴイルはハイディングで俺を見失うんだぜ?」

女戦士「グレムリンは目が退化していた様だ…つまり匂いや音で感知すると思う」

盗賊「おぉぉそらヤバイな…」

女戦士「それから良く聞け?擬態で子供の声を真似するらしい…お前はそれに引っかかる可能性が高い」

盗賊「ヌハハズバズバ来るな?…まぁ承知の上だ」

女戦士「自信が有るのか?」

盗賊「無い…」

女戦士「なら止めて置け…行かせる訳にはイカン」

盗賊「キ・カイのギャング達…アイツ等は地下線路のどこかに向かったんだ」

女戦士「まさかお前…」

盗賊「そうよ…アイツ等が困ってるかも知れん…まぁそんだけの理由だ」

女戦士「…」

盗賊「俺は自慢じゃ無いがお宝の鼻は利く方なんだ…間違い無く繋がってる…だから行きたいんだよ」

女戦士「グレムリンの腹に入っていた人間は子供だったかも知れん…」

盗賊「あぁ見た…」ググ

女戦士「分かった…私も同行しよう」

『鍛冶場』


カーン カンカン シュゴーーーーー


魔女「防具を作っておるんか?」

女戦士「グレムリン相手は軽装では致命傷を負うからな」

魔女「やはり行くのか…」

女戦士「盗賊は地下線路に居るであろうギャング達を救いたい様だ…一人で行かせる訳に行くまい」

魔女「あ奴らしいのぅ…」

女戦士「グレムリンを燃やすのに魔法の力が欲しい…杖なぞ無いか?」

魔女「確か商人の持ち物に魔石が有ったな…強い杖は作れぬが死体を燃やす程度の杖なら作れよう」

女戦士「頼む…」

魔女「吟遊詩人がもう少し頼りになればわらわが行っても良いのにのぅ…」ノソ


--------------

--------------

--------------



『翌日_坑道の縦穴』


グイグイ ギュゥ!!


盗賊「ようし!!これで縦穴の側道削り取って良いぞ」

女戦士「行くぞ!!」スパスパ


ガラガラ ドドーン


盗賊「これでロープ無くなっちまったら俺らも戻れんなヌハハ」

女戦士「しかし装備がフルスチールでは暑くて敵わん…」

盗賊「珍しく兜まで装着だもんな?盾は邪魔にならんのか?」

女戦士「お前はグレムリンの攻撃を受けていないから分からんのだ…まともに食らっては首が飛ぶ」

盗賊「へいへいそうかい…そうかい…早い所奥を探索するぞ」

女戦士「広い場所は避けろ…動き回られると相手に助走を与えてしまう」

盗賊「分かってる…まぁ付いて来い」スタ

『廃れた線路』


スタスタ ガシャガシャ


盗賊「この辺りは随分前から使って居ない線路だ」カキカキ

女戦士「ふぅ…涼しくなって来た」

盗賊「あの縦穴の辺りにマグマ溜まりでも有るんだろ」

女戦士「しかしお前のその光る笛は中々に便利だ」

盗賊「だろう?気に入ってんのよ」


ペチャ…


盗賊「待て!!」スチャ

女戦士「…」タラリ

盗賊「こりゃどっかに潜んで…」


シクシク エーン


盗賊「ちぃぃ俺らを誘って居やがる…どこだ?」

女戦士「此処の奥だ…」

盗賊「おし見えた…」

女戦士「囮の可能性がある…2体目に注意しろ」

盗賊「うむ…どうする?距離が開いて居るが…」

女戦士「見えている奴の胸辺りを狙えるか?運が良ければ片腕は飛ばせるかも知れん」

盗賊「その後は?」

女戦士「すでに挟まれて居るかもしれんな…」キョロ

盗賊「2発目は30秒待たんと撃てんぞ?」

女戦士「よし一発当てて逆側に走って距離を開ける」

盗賊「元来た道を帰るってか?」

女戦士「側道がいくつもあっただろう…奴らは擬態を使うほど知能が高い…一旦引いて狭い場所に入る」

盗賊「分かったよ…撃つぜ?」チャキ カチ


ピカーーーーー チュドーーーン


女戦士「走れ!!」ガチャガチャ

盗賊「ようし!!腕吹っ飛んだ…」タッタッタ

女戦士「2体目を探せ!!」


ズドドドドド


グレムリン「イヤァァァタスケテーーーー!!」ドドド ブン

女戦士「くそう!!真後ろだったか!!」ガシッ

盗賊「ハイディング!!」スゥ

女戦士「来てみろバケモノ!!」ブン スパ

グレムリン「プギャァァァァ…」ブン ブン ドガッ

女戦士「くぅぅ…なんという威圧」タジ


リリース! スゥ


盗賊「バックスタブ!」スパ

グレムリン「ゴフッ…ゴボゴボ…ブシューーー」バタバタ

女戦士「側道へ!!」ガシャ ガシャ

盗賊「やっぱ首を落としきらんな…」

女戦士「構うな…あれで方向見失っている」

盗賊「後ろの奴が動き出した…走って来るぞ!!」

女戦士「ええい!!リロードまだか!?」

盗賊「奥の手があんのよ…」チリチリ ポイ

女戦士「爆弾か!?」


ドーーーーン パラパラ


グレムリン「プギャァァァァ…アナターーーー」ドテーン

盗賊「ちっと下がるぞ!!近すぎてプラズマが貫通しちまう」グイ

女戦士「私が盾で受ける!構わず撃て!」ダダ

盗賊「こりゃ失敗出来んな…」ダダ

女戦士「こっちだバケモノ!!」バンバン

グレムリン「ニゲローーーーアッチダーーー」ググ ブン

女戦士「フン!!」ガシッ

盗賊「頭引っ込めろ!!」

女戦士「!!?」


ピカーーーーーー チュドーーーーン


女戦士「ぅぅぅ…」ビリビリ

盗賊「ようし!!頭吹っ飛ばした!!」ダダ

女戦士「これは…なかなかにキツイ…」ブン スパ

盗賊「首無くてもしばらく暴れてっから気を付けろ?」ブン スパ


----------------

----------------

----------------


『死体処理』


ゴゴゴゴゴ ボゥ


盗賊「こっちの腹ん中にゃ何も入って無え…消化しちまったか…」

女戦士「こっちはもう判別出来ん骨だ…頭蓋が見当たらん」

盗賊「いや…衣類が消化しないで残ってる…又子供だ」ドン!!

女戦士「擬態の声から察しては居たが…」

盗賊「なんつーか胸糞悪いな…全部駆逐してやりてぇ」

女戦士「2人では今の戦闘が限界だ」

盗賊「分かってる…ただイラつくな」

女戦士「思ったのだがプラズマの銃で首の辺りを狙えば一発で首を落とせそうだ」

盗賊「うむ…次からそれで行こう」

女戦士「爆弾は残りいくつだ?」

盗賊「4つ…それが尽きたら戻るだな」

女戦士「さぁ行こうか!お宝を探すのだろう?」

盗賊「おう!!そうよ…人類の宝を探しにな」スック


--------------

--------------

--------------

『数日後_大型気球』


カキカキ カキカキ


女戦士「今日は坑道には行かんで良いのだな?」

盗賊「もう爆弾切れだ…これ以上お前に危険を犯させる訳にイカンからな」

女戦士「フフ気を使っているのか?」

盗賊「怪我してんだろ?ちっと休んでくれ」

女戦士「地下路線図の方はどうだ?」

盗賊「おう…今書き直してんのよ…見てくれ」

女戦士「ふむ…ミネア・ポリスという都市に繋がっているのだな?」

盗賊「うむ…キ・カイからだとミネア・ポリスに行く途中にハテノ村の坑道が位置する訳だ」

女戦士「ギャング達はミネア・ポリスに向かったか…」

盗賊「恐らくな?その途中でグレムリンに襲われた」

女戦士「食われて居た大人はどういう事だ?」

盗賊「分からん…兵隊だとは思うんだがな」


ノソノソ


魔女「頼まれて居た銀貨を持って来たぞよ…何に使うのじゃ?」ジャラリ

盗賊「おぉグレムリンはな…どうやら俺のミスリルの笛に近付かないんだ」

魔女「それで退魔のエンチャントがされた銀貨が欲しかった訳か」

盗賊「坑道に銀貨を撒いときゃグレムリンが近づかん筈」

女戦士「ふむ…それで私は同行しなくても良いという事か…」

盗賊「そうよ!!俺一人で行っても襲われないって寸法よ」

女戦士「それに気付くのに随分苦労した…」

盗賊「てか俺は一撃も攻撃されて無い…お前にばっかり攻撃が行くのはそういう事だった訳だ」

女戦士「一人で戦う様な真似はするな?」

盗賊「分かってる…てか最下層までは粗方退治したから割と安全に行ける」

魔女「退魔が効くとはのぅ…ガーゴイルは無視して来よるが…」

盗賊「目が無い分敏感なんじゃ無ぇか?…まぁちっと行って来るからよ」スック

魔女「そうじゃ帰りにグレムリンの骨を一つ拾って来い」

盗賊「骨?何に使うんだ?」

魔女「使い魔に出来んか調べたいのじゃ」

盗賊「使役すんのか…そら又スゴイ戦力になるな」

魔女「頼んだぞよ?」

『夕方_広場』


フワフワ ドッスン


影武者「さぁ皆降りて!!」

傭兵達「やっと着いたかぁ…」ゾロゾロ

女戦士「帰ったか…また大勢人が集まったな」

影武者「商船が到着したんだ…人だけじゃ無くて小麦も入手出来た」

女戦士「んん?今回は若者が多い…どうした?」

影武者「傭兵だよ…北の大陸からわざわざ来てくれてるんだ」

女戦士「それは助かる…私と盗賊でギリギリ凌いでいた所だった」

影武者「僕はハテノ村と漁村の往復で守ってもらう傭兵も欲しかったんだ…これで狼女が自由になる」


ノソノソ


魔女「北の大陸からの傭兵のぅ…」チラリ ジロジロ

影武者「さて狼女!小麦を降ろそう」ヨイショ

狼女「あんた体弱いんだから無理すんなって…」ヨッコラ

女戦士「あぁ私も運ぼう…教会で良いな?」

影武者「みんな悪いね…」ヨタヨタ


ザザー

”魔女!!聞こえる?魔女!!”


魔女「むむ…貝殻を使うとは何か有った様じゃな…」

女戦士「んん?どうした?」ダダ

”わらわじゃ…どうした?”

”そっちヤバい事起きてない?”

”いや?変わらぬが?”

”今精霊樹の所に居るんだけどさ…私啓示を受けたっぽい”

”なんと?”

”ハイエルフが啓示を通訳してくれてるんだけど”

”ふむ…”

”闇に光を照らしてって…月を見ろと言ってる”

”それだけかえ?”

”あのさ…月のクレーター…退魔の方陣になってるって知ってる?”

”なんじゃと!!?”

”方陣に一部欠けがあるんだ…多分それを完成させろと言う意味なんだ”

”貸せ…私が話す”

”主はアサシンじゃな?”

”キ・カイの南にエド・モント砦と言う古代遺跡があるのだ…その上空に巨大な狭間がある”

”ふむ…”

”ドラゴンが言うにはその狭間が大きくなっているらしい…そしておそらく魔王を封じた魔石もそこにある”

”待てい!どういう事じゃ?ドラゴンまで南の大陸に来て居るのか?”

”ドラゴンも精霊樹の啓示を受けて居るのだろう”

”もしやガーゴイルとグレムリンが増えて居るのはそのせいか…”

”アダマンタイト以外に狭間を引き寄せる方法はなにか思いつくか?”

”魔石に魔王は封じられて居るじゃろうに…”

”アダムの時の様に何かに使われているとは思わんか?例えば機械のエネルギー源だ”

”魔王が機械を支配していると言うか…”

”精霊樹が案じて居るのはそう言う事だ…ドラゴンはしっかり物を見ている”

”貝殻返して…精霊樹から祈りの指輪も預かった…これの意味わかるよね?”

”待て早まるでない…今闇を集めてはならぬ”

”分かってる…時が来たらと言う事だよ”

”とりあえず出来るだけ早く帰るからそっち注意して”

”承知じゃ…”


ザザーー


女戦士「…」プルプル グググ

魔女「嫌な話を聞いてしもういたのぅ…地軸の移動も直に来るじゃろうに…」

女戦士「私の望遠鏡を用意してくる」タッタッタ


--------------

--------------

--------------

『夜』


ホーホーー バサバサ


女戦士「どうだ?見えるか?」

魔女「月が欠けておるで全部は見えぬが…確かに退魔の方陣じゃ」

女戦士「月に隕石を落とせるのか?」

魔女「ムリじゃ…わらわが現地に行かねば落とせぬ…そもそも巨大な銀なぞ用意出来ぬ」

女戦士「誰がやったのかは知らんが途中までは誰かがやったのだろう?」

魔女「ちぃと考えさせよ…」ブツブツ

女戦士「しかし盗賊も帰りが遅い!!何をしているのだ!!」

魔女「しばし待て…千里眼!」

魔女「ムム!!怪我をして逃げて居るな…」

女戦士「馬鹿が無茶な事を…」

魔女「何に追われて居るのじゃ?…ヘルハウンド…オークゾンビも居るな」

女戦士「ええい!!出る!!」ダダ

魔女「わらわも行こう」ノソノソ

『坑道_廃れた線路』


タッタッタ ハァハァ


盗賊「くっそ!!ゾンビのクセに段差を超えて来やがる」タッタッタ


オークゾンビ「ヴヴヴヴ…ウゴゴゴゴ…」ドドド ブン


盗賊「どわっ!!」ゴロゴロ ズザザー

ヘルハウンド「ガルルル…ガウガウ」ガブリ

盗賊「くそがぁ!!」ブン スパ

ヘルハウンド「ギャフン…」ピクピク

盗賊「やべぇ!!休んでらんねぇ!!」ダダダ


オークゾンビ「ウゴゴゴゴ…」ドドド


盗賊「今度は爆ぜてくれ!!」カチ


ピカーーーーー チュドーーーン


盗賊「だぁぁぁ又貫通しやがった…」ダダダ



『縦穴』


女戦士「盗賊!!ロープに掴まれ!!引き上げる!!」

盗賊「おおおおお心の友!!ナイスタイミング!!」ダダ ピョン

女戦士「フン!フン!フン!うらぁぁぁ!!」グイグイ


ドドドド ドターン


盗賊「うほーーーー間一髪…」

魔女「ちぃと熱いぞよ?爆炎地獄!」ゴゴゴゴゴゴ ボゥ

オークゾンビ「ウゴオオ…ヴヴヴヴ…ガガガガ」バタバタ

盗賊「やっぱ一人じゃダメだな…ゾンビが多すぎる」

魔女「怪我は何処じゃ?」

盗賊「悪りぃな…左腕が動かんのと脇腹だ…つつつ」

魔女「回復魔法!」ボワー

女戦士「下はどうなって居る?」

盗賊「ゾンビがうようよ出て来てよ…プラズマ銃が貫通しちまって上手く倒せんかった」

魔女「ふむ…燃やさんと何度でも向かって来るじゃろう」

盗賊「ソレだ…真っ二つに切っても半身がそれぞれ追って来るんだ」

女戦士「兎に角一旦引き上げだ…来い!」グイ

『教会』


カクカク シカジカ


盗賊「…なんだと!!エド・モント砦の狭間が広がってるだと!!」

狼女「あの場所…空の方に狭間が…」

魔女「ふむ…話からするにアダマンタイトでは無い様じゃな…そこに狭間を引き寄せる物が有るのじゃ」

盗賊「空の狭間を地面に向かって引き寄せてるってか…つまり下だったんだな?」

魔女「そうなるのう…」

盗賊「てことはそっから魔物が色々這い出て来てる訳か」

魔女「直にレイスやゴーストも出るやも知れぬ…100日の闇と同じじゃ」

盗賊「ますます近付けんくなる…」

魔女「幸い今の所被害は無い様じゃ…対応を考えねばのぅ」

盗賊「次から次へと課題が増える…ちぃぃ地軸の移動も目前だってのに」

女戦士「ミスリルの手配を急がせた方が良さそうだ」

盗賊「未来の予言だと海士島付近が南極点だったな?河口の漁村もヤバく無いか?」

女戦士「考えてある…ドワーフ領の島々へは行けられるのだ…行き場を失う事は無い」

盗賊「ほんじゃ地軸の移動の件は後回しか…どうする?どうにかして魔王を封じた魔石を回収したいな」

女戦士「戦力が足りん…飛空艇を使って上空から行けるのなら話は別だが…」

魔女「狭間を空から探すのは余程の事が無い限り無理じゃ」

盗賊「俺もそう思う…一度狭間に入ったら目標物が無いと出られん」

女戦士「やはり地下から行くしか無いか…」

盗賊「ギャング達がトロッコとキラーマシン持ってんだ!アイツ等探すだな」


スタスタ…


影武者「話に割り込むよ…南のオークと取り引きするのはどうだい?」

女戦士「取り引きか…案があるなら行って見ろ」

影武者「ミネア・ポリスだったっけ?その場所が分かって居るならそこに住んでるオークと仲良くすれば良い」

女戦士「気球で行く訳か…」

魔女「オークロードに投石されなければ良いがのぅ…」

影武者「投石されない為に直ぐ近くに住んでるオークから仲間になって貰う」

盗賊「おぉ!!ちょい南のオークか!!」

影武者「そうだよ…取り引きに欲しい物がどんぐりと松ぼっくり…それからキノコ類」

魔女「女海賊が丁度北の大陸に居るで持って帰る様に伝えて置く」

『大型気球』


ヨイショ ドサリ


盗賊「んん?こっちに引っ越しか?」

影武者「人が増えてベッドが足りなくてね…僕もこっちで寝泊まりする事にした」

盗賊「まぁ荷室で寝るのも慣れりゃ快適だわなヌハハ」

影武者「さて…帳簿を整理しよう」カキカキ

盗賊「取り引きの収支か?」

影武者「まぁね…傭兵を雇ってるから資金繰りだよ」

盗賊「どこの傭兵か知らんがまぁタダでは働かんわな」

影武者「金貨で雇っては居るんだけどハテノ村ではまだ物々の流通しか無いからこのままだと回収出来ないのさ」

盗賊「どうやって金を回収する気よ?」

影武者「武器と防具だね…女戦士に作ってもらうしかない」

盗賊「なるほど…」

影武者「お酒が生産出来れば少し話は変わって来るんだけどなぁ…」

盗賊「ガキ共に作らせてみたらどうだ?」

影武者「そうだね…」


ノソノソ


魔女「わらわもこちらへ移住じゃ…教会は騒がしくて休めぬ」

女戦士「フフ全員こちらへ来たか」

魔女「これ吟遊詩人!わらわの寝床をこさえよ」

吟遊詩人「はい…」スタタ

盗賊「ウハハお前魔女にコキ使われてんだな?」

魔女「何を言うて居る!従士の務めじゃ…これ早ようせい!冷えてしまうじゃろう」ポカ

吟遊詩人「あたた…」スリスリ

『翌日』


影武者「…じゃぁ僕は傭兵2人連れてもう一度漁村を往復するよ」

女戦士「私は武器と防具を作り増しておけば良いんだな?」

影武者「うん…今ある物は漁村で売り捌くから…」

女戦士「幽霊船が来て居たらローグに言ってミスリルを融通してもらえ」

影武者「分かったよ…じゃぁ行って来る」スタ


ゴソゴソ


女戦士「今日も坑道へ入るのか?」

盗賊「おう…今日はリカオンも連れて行くな?」

女戦士「それが良い…私は鍛冶場で動けん」

盗賊「ゾンビ燃やす用の杖も持って行くな?」

女戦士「うむ…そして地下線路まで行ってどうする?ギャング達を探すのか?」

盗賊「それもあるが退魔の銀貨を撒いてエド・モント砦側からグレムリンが来ない様にしたいんだ」

女戦士「魔物の拡散防止か…」

盗賊「そうだ…こちら側へ来ない様に封鎖すれば掃討もラクになる」

女戦士「地下線路までは往復で半日…結構な距離になるな…2人では厳しかろう」

盗賊「昨日もその辺りまで行ってんのよ…リカオンが居りゃヘマする事は無い」

女戦士「鼻をアテにしているか」

盗賊「そうだ…先に敵を見つけてしまえばプラズマの爆発に巻き込める」

女戦士「一応リカオンにもプラズマの銃を持たせておけ」

盗賊「こっちの守備は良いんか?」

女戦士「傭兵にプラズマの銃を見せびらかすのもどうかと思って居てな…」

盗賊「なるほど…じゃぁ使わせて貰う」

女戦士「気を付けて行け…」

盗賊「リカオン!!行くぞ!!」ダダ

『夕方_広場』


バシュン! バシュン!

くそう当たらない!!

もっと近づくまで撃つの待つでしゅ!!

ガーゴイルたった2匹なのよ!?


魔女「…どうじゃ傭兵の動きは?」

女戦士「見ての通りだ…私が作ったボルトを無駄に消費している」

魔女「後で拾いに行かせれば良かろう」

女戦士「まぁ訓練には丁度良い」

魔女「しかし…シン・リーンの魔術師崩れが混ざって居るのぅ…」

女戦士「あの赤毛か?」

魔女「うむ…恥を晒さんで欲しいのじゃが…」

女戦士「こうして傍から見ると飛距離の出る武器が必要だ…」

魔女「主は大弓なぞ作れんのか?」

女戦士「バリスタか…アレは攻城用で空を飛ぶ魔物に当たる様な物では無い」

魔女「そう考えるとプラズマの銃は優秀な武器じゃったな…」

女戦士「同じような武器が作れれば良いが…」

魔女「花火はどうじゃ?空中で炸裂するじゃろう」

女戦士「おぉ!!筒から発射するタイプか…硝石…硫黄…鉄くず…イケる!!」

魔女「ドワーフは良いのぅ…何でも作れるで」

女戦士「よし!!花火を作って資金回収だ…」スタスタ

『1時間後』


ツカツカ


女戦士「どうだ?ガーゴイルの様子は?」

傭兵1「2匹増えて上空で旋回してる…手の出しようが無い」

傭兵2「魔法が届かないでし…」

女戦士「新しい武器を作って来たのだ…今から試し撃ちする」

傭兵1「??…それは小型の大砲?」

女戦士「まぁそんな様な物だ…花火銃と言う」

傭兵2「花火を撃つのでしゅか?」ジロジロ

女戦士「使い方は簡単…ここに花火玉を入れて火を付ける」

傭兵2「ふむふむ…」

女戦士「狙いを付けて待つ…3…2…1…」


ヒュルルルル~ パーン!!


傭兵1「おぉ!!当たった!!2匹落ちて来る」

女戦士「明日から鍛冶場で売りに出す…興味があったら来い」

傭兵2「落ちて来たガーゴイルを倒すでし!!」スタタ

女戦士「フフ焼くのを忘れるな?」スック

傭兵1「角だけ採取させて!!高く売れるんだ!!」タッタ

『翌日_鍛冶場』


ワイワイ ワイワイ

おい!!スチールの装備がメチャクチャ安いぞ!!

武器も色々揃ってる!!


傭兵1「どうも…昨日の花火銃を見たいなと思って」

女戦士「これだ…」スッ

傭兵1「いくらするのかな?」

女戦士「銃が金貨1枚…花火玉が1つ銀貨5枚だ」

傭兵1「おおおおおお安い!!」

傭兵2「私も欲しいでし」

傭兵3「お金は使うために有るんだからケチらず買ったら?」

女戦士「フフ…」ニヤリ

傭兵1「よし3人共買おう…花火玉も余分に…」

女戦士「代金はその籠に入れて置いてくれ」ツカツカ

傭兵1「ええ!?そんなので良いの?」

傭兵3「あぁ言ってるんだから良いでしょう?」

傭兵1「他の装備品もさ…」


---------------


魔女「良いのか?あれほど安く売ってしもうて」

女戦士「構わん…どうせ余りの鉄で作った物だ…これで少しは戦える様になれば安い物だ」

魔女「傭兵達が話して居たのじゃが南の大陸にはオーガの他にベヒーモスも居るらしいのぅ」

女戦士「それはオーク領だな…私も見たことは無い」

魔女「この村は備えが成って居ないとボヤいて居ったのじゃ」

女戦士「ムム…土地勘がある者が居るのか?」

魔女「大型の魔物に襲われた場合も想定した方が良いかも知れぬ」

女戦士「大砲か…確かに準備して居ない」

魔女「まぁ気球が有る故に投下する爆弾でも良いかも知れんがな」

『広場』


ザワザワ


狼女「魔女!!魔女はいるか!!」シュタタ

魔女「んん?なんじゃ帰って居ったか…どうしたのじゃ?」

狼女「そこに居たか!!盗賊の怪我の具合が悪い!手当が欲しい」

魔女「又かいの…」ノソノソ

狼女「背に乗って!!こっちだ」シュタタ


------------


ザワザワ

回復魔法!あれぇぇ?おかしいでしゅ…

それじゃダメ…この寄生してる生物をどうにかしないと…


狼女「そこを開けろ!!」シュタタ

魔女「せわしいのぅ…」ノソノソ

狼女「盗賊!!無事か?」

盗賊「よう…また世話掛けるな…」

魔女「ムム!!これは闇の術…この術を使う者が居るのか?」ノソ

盗賊「こりゃどうなってんのよ?俺はなにか他の生物になっちまうんか?」

魔女「話は後で聞く…傷む故に幻術を掛けるぞよ?」アブラカラブラ

盗賊「まぁ手っ取り早く頼むわ…」

魔女「睡眠魔法!」モクモク

盗賊「ぐぅ…すぅ…」

魔女「リカオンや…この病変した部分を切り落とすのじゃ」

狼女「分かった…」スラーン

魔女「血が噴き出す故に被るで無いぞ?」

狼女「…」ブン スパ


ブシューーー ニョロニョロ バタバタ


魔女「その病変を焼くで離れよ…爆炎魔法!」ゴゴゴゴゴ ボウ

盗賊「…」ドクドク グター

狼女「盗賊の血が止まらない…」

魔女「触れてはならぬぞ?浄化魔法!」シュワワ

狼女「このままで良いの?」

魔女「まだじゃ…血液が十分循環するまで待て」

盗賊「…」ドクドク グター

魔女「そろそろじゃな…回復魔法!」ボワー

狼女「ふぅ…」ホッ

魔女「誰かエリクサーは持って居らんかのぅ?」

狼女「無い…」

魔女「仕方あるまい…ポーションで代用じゃ」クイ

盗賊「むぐっ…」

魔女「ちぃと安静にしておいた方が良いな」

狼女「私が運ぶ…」グイ



ヒソヒソ

誰?あの三角帽子の女の子…

始めて見る魔法ばかりなのでし

闇の術って何?もしかして禁呪のやつ?

『大型気球』


ヨイショ! ドサ


魔女「…それで何故闇の術が掛かって居ったのかなのじゃが…」

狼女「3首のヘルハウンドに噛まれたんだ」

魔女「むぅ?」

狼女「只のヘルハウンドだと思って居たらその辺りのボスだったみたい」

魔女「それはヘルハウンドなぞでは無い…ケルベロスかオルトロスのどちらかじゃ」

狼女「黄泉の番犬…まさか…」

魔女「しかしケルベロスが闇の術を使うとな…魔道書に記しておかなければならぬ」

狼女「やっぱり例の狭間から這い出て来てるのは間違い無いね…」

魔女「うむ…他にも居るやも知れぬ故に安易に行くべきでは無い」

狼女「じゃぁ奥には進め無いな」

魔女「ちぃと事態を甘く見て居った…退魔の方陣は急務じゃ」

狼女「一応退魔の銀貨からこっちへは来られないみたい…だから逃げる事が出来た」

魔女「それは良い知らせじゃ…少しづつ追い詰める事が出来るという事じゃ」

狼女「じゃぁもっと銀貨を」スック

魔女「それには及ばぬ…砂銀をわらわが作る」ノソリ

狼女「じゃぁ…」

魔女「主はゾンビの返り血で汚れている故まず温泉で清めて来い」

狼女「あぁそうだった…直ぐに落として来る」シュタタ

『翌日』


んああぁぁぁ だりぃぃ


女戦士「おぅ…目を覚ましたか」

盗賊「俺はどんだけ寝てたんだ?」

女戦士「1日だ…気分はどうだ?」

盗賊「こりゃ多分血が足りて無ぇな…何か口に入れる物をくれ」

女戦士「テーブルに用意してある」

盗賊「自分で取れってか…よっ」フラ

女戦士「甘えるな…」


ヒュルルル~ パーン

ワーワー イケーーー


盗賊「外が騒がしい様だが?」

女戦士「例のごとくガーゴイルだ…傭兵にやらせている」

盗賊「そうか…ほんでお前は何を?」

女戦士「爆弾を作って居るのだ…」コネコネ

盗賊「そういうのは女海賊にやらせておけば良いだろう」

女戦士「居ないのだから仕方あるまい」

盗賊「リカオンはどうした?」

女戦士「一人で坑道に入っている…退魔の砂銀を撒きに行くと言ってな」

盗賊「ちぃぃ俺はしばらく休業か…」

女戦士「まぁ休め」

盗賊「しゃぁ無ぇ…しかし何だったんだあのワンころ」

女戦士「魔女が言うにはケルベロスかオルトロスだとか」

盗賊「知らんなぁ…」

女戦士「黄泉から色々な魔物が這い出して来て居るのは間違いないと言う事だ」

盗賊「下手に歩き回れんな…」

女戦士「うむ…頭が痛い」

『広場』


ピカーーーー チュドーーーン

え!!何!?飛んでるガーゴイルが突然爆発した…

北東側の空に何か飛んでるでしゅ…

ああ!!あれは空飛ぶクジラだ!!


傭兵1「あのクジラがガーゴイルを撃ち落したのか?」

傭兵2「何も見えなかったです…」


ボエーーーーーーー ブシューーーーー


傭兵1「又クジラが潮を吹いて…」

傭兵2「降りて来そうでしゅね…」


タッタッタ

女戦士「おぉやっと戻って来たか…おい!傭兵達…あのクジラが降りて来るからスペースを開けろ!」

傭兵1「えええ!?あれが降りて来る?」

傭兵2「うほほーい!!ワクワクするでし!!」スタタ

傭兵3「まさかハテノ村に来るなんて…」タジ


------------

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『鯨型飛空艇』


フワフワ ドッスン


女海賊「ハイハイ降りて!!」

女戦士「良く戻った!!商人と情報屋も居るな?」

商人「いやぁしばらく見ない内にすっかり村になったねぇ…」スタ

情報屋「早速だけと魔女と話をしたいわ?」

女戦士「教会だな…子供達に魔法を教えて居る」

情報屋「分かったわ…」スタ

女戦士「それでホムンクルスはどうだ?」

商人「あぁその件だけど少し時間が掛かる様だ…だから一度こっちに戻ろうと思ってね」

女戦士「そうか…順調で何より」

商人「影武者が見当たらない所を見ると…大型気球で取り引きに行ってる感じかな?」

女戦士「その通りだ…」

商人「そうか…資材集めは帰って来てからだな」

女戦士「まぁ疲れただろう…温泉にでも入って今日はくつろげ」

女海賊「お姉ぇ…そうも言ってらんないんだよ」

女戦士「どうした?」

女海賊「ヤバイ事が始まってる…もう地軸の移動が始まってるぽい」

女戦士「もう?…何も変わらんが?」

女海賊「ゆっくり変わってるんだ…多分月が昇る方向が今日も違う」


ポツポツ ポタポタ


女戦士「んん?雨だな珍しい…」

女海賊「気候が一気に変わるよ…ちょっと備えた方が良い」

女戦士「ひとまず濡れん様に大型気球に来い」



ヒソヒソ ヒソヒソ

ちょっとどういう事?やっぱりあの女は指名手配の…

ダメだよ僕らは雇われの身なんだ下手な事は出来ない

スゴイです~クジラの中が見たいですぅ

『大型気球』


スタスタ


盗賊「いよ~ぅ!!待ってたぜぇ?」

女海賊「アンタ何やってんの?」

盗賊「ちっと静養中よ…働き過ぎでな?」

女海賊「古代遺跡は掘り出せた?」

盗賊「まったく手付かずだヌハハ」

女海賊「何やってたのさ!!私はあちこち駆けずり回ってんのに!!」

盗賊「まぁ色々有ってだな…」

女戦士「責めないでやってくれ…これでも昨夜までは瀕死だったのだ」

女海賊「マジ!?何処が?」

盗賊「エリクサー余って無ぇか?」

女海賊「あぁ全部置いて来た…線虫ならやったげる」

盗賊「頼むわ…血が足りなくて立てん」

女海賊「血が足りないのは治んないんだけどさ…線虫!行け!」ニョロリ

アサシン「クックックこれが欲しいのだろう?」ポイ

盗賊「ワインか…チーズもありゃ最高だ」

アサシン「そう言うと思った…食え」ポイ

女海賊「てかお姉ぇは輸血得意じゃん…輸血したん?」

女戦士「当たり前だ…お陰で私も血が足りん」

盗賊「世話掛けるなぁ…これでお前の血を入れるの何回目か…」

女戦士「いちいち数えている訳無いだろう…それより無駄な話は置いてだな…」

女海賊「あぁ…コレね」スッ

女戦士「…」ジロリ

女海賊「精霊樹からこんなん貰っちゃった訳さ…勇者の宿命って何?って感じ」

盗賊「祈りの指輪か…」

女海賊「ヤバいよねコレ…祈りの指輪で闇集めてどっか行けって事だよね」

盗賊「ヌハハハやっぱ経験してる奴は言う事が違うわ…ただ解釈がちっと違うと思うぞ?」ジロ

女海賊「何さ…」

盗賊「もう魔王は魔石に封じられてる訳よ…そいつを奪ってお前の魔人の金槌で消しちまえば良いのよ」

女海賊「そんなんいつも考えてるよ…ほんで指輪はいつ使うの?」

盗賊「取り戻せ…」

女海賊「取り戻す…」

盗賊「そうよ!お前が求めてる物を取り戻せ!夢幻の中に消えちまった物があんだろ」

女海賊「未来…」

盗賊「それだ!!もう迷わんな?」

女海賊「あんたたまにシビれる事言うんだよな」

女戦士「賛成だ…指輪で闇は集めるな…未来を取り戻せ」

女海賊「ヤバい…やる気みなぎって来た」



-----------------

ホムンクルスは必要な生体の構成物質をエリクサーに溶かし込んで

遺伝子情報の設計図通りに成長させるという方法なんだ

恐らくこれはハイエルフが精霊樹から生まれる原理と同じ…

それをあのガラス容器の中でやって居るのさ

ただ生体が完成するまではしばらく時間が掛かりそうなんだ

でも確実に蘇る…


盗賊「これでお前は安心して成仏できるんだな?」

商人「まぁそうだね…でももう一つ超高度AIが余ってるからもう一体作る材料を残したい」

女海賊「それ前のホムちゃんから取り外したやつ?」

商人「そうだよ」

女海賊「機械の犬に入ってたホムちゃんは?」

商人「あれは精霊の伴侶だった物だね…エネルギーが少ししか残って無かったやつだ」

女海賊「あーそういう事か」

商人「機械の犬に宿らせる事が出来るか分からなかったからそっちで試したのさ」

女海賊「じゃぁもう一個の超高度AIを機械の犬に入れる事も出来るよね」

商人「う~ん…機械の耐用年数を考えると良いとは思えない…精々10年で壊れる」

盗賊「まぁ生体の部品とエリクサーを準備しておけばもう一体作れるんだろ?」

商人「うん…僕は後世の為に残したいと考える」


ガガーン ザザーーー


盗賊「おおぅ雷か…雨も強くなって来たな」

女海賊「これで一気に雪が溶けてくれると穴掘りが楽になるな」

盗賊「マテ…増水した川に灰を流しちまえばかなり楽に穴掘り出来る」

女海賊「ちょ…マジ?」

盗賊「俺は今動けんからやって来てくれ」

『ハテノ村上流』


ザック ザック


商人「手伝いに来たよ…」

女海賊「あんた一人?」

商人「他の人はそれぞれ忙しい様だよ…ヒマなのは僕だけさ」

女海賊「そこの荷車押して川に捨てて来て」

商人「分かった…」

女海賊「なにこのクッソ寒い雨!!」

商人「温泉が近いから入りながらやれば良いじゃない」

女海賊「アサシンは何処行ったのさ」

商人「坑道に入って行った…ゾンビを使役して何かするらしい」

女海賊「そういやエルフゾンビからドクロの杖借りてたな…」

商人「なんか坑道の下に拠点を作りたいらしいよ?」

女海賊「こっち後回しなん?」

商人「地下から来る魔物をどうにかして押さえたいみたいなんだ」

女海賊「んあぁぁやっぱ私だけか…」

商人「君はワームに命令出来るよね?」

女海賊「ムリムリ!ちっこすぎて役に立たない」

商人「ハハそうか…まぁ地道にやろうか」

女海賊「あんたが手伝いに来るって事はここの遺跡にも興味あり?」

商人「勿論さ…ここも使える可能性が高いからね」

女海賊「前に来た時は確かに色々有ったのさ」

商人「僕は君に拘束されてたからねぇ…良く調べて無いんだ」

女海賊「あん時はホムちゃんしか見て無かったね」

商人「必死だったね…もっと周りを見て居れば気付けたことが沢山在っただろうに」

女海賊「それって後悔?」

商人「今更しょうがない事だけど…もっと早く歴史の事も知れた筈…世界がどうなろうとしてたのかも」

女海賊「あのさ?公爵ってそこら辺分かってたと思う?」

商人「あの当時に今の僕達と同じくらいの知識が有ったとすると全部辻褄が合うんだよ」

女海賊「なるほど…10年以上差が付いてんのか」

商人「そろそろ追い付きそうだけどね…まぁ…だから外海の古代遺跡調査に躍起なんだろうなぁ」

女海賊「私達はその遺跡に行かなくて良いんかな?」

商人「公爵の目的と僕達の目的が少し変わったよね…僕達は未来君を追ってる…公爵は世界を救おうとしてる」

商人「今度は公爵の邪魔をしない立ち回りの方が良いと思うよ」

女海賊「でもさぁ?公爵が魔王を封じた魔石を持ち回っていたじゃん?」

商人「公爵にしてみれば只の魔石なのさ…僕が思うにキ・カイに売り払って海軍を手に入れた…そう思う」

女海賊「まぁ良いや!!兎に角さっさと遺跡掘り出さないと…」ガッサ ガッサ

『数日後』


ザァァァァァ ザザザ


女戦士「私はしばらく坑道下の製鉄所に行く…ハテノ村の守備は魔女に任せる」

魔女「もう製鉄所が使える様になったんかいな…」

女戦士「大量のゾンビが労働者なのだ…流石アサシンといった所」

盗賊「そろそろ大型気球に乗ってミスリルが到着するんだろ?ローグにも顔を会わせて行けば良いのによ」

女戦士「急ぎで現地で武器を作らんとゾンビは素手のままなのだぞ?」

盗賊「そうか…まぁローグに食料持たせてそっち向かわせるわ」

女戦士「うむ…ミスリルの加工は妹にやらせろ…そろそろ穴掘りも飽きただろう」

盗賊「ほんじゃ俺もそろそろ動くかぁ!!」

女戦士「では行って来る」ツカツカ

盗賊「しかし天気はどうなってんのよ…昼とも夜とも言えん雨続きで訳分からん」

魔女「地震も何も起きんのが不気味じゃな…」

情報屋「地軸の移動で影響が大きいのは沿岸部の洪水よ…ここは山岳部だから分かり難いだけなの」

盗賊「まぁ川の増水でちょっと下流は洪水になってんな」

情報屋「海面が100メートル上昇する地域も出る筈」

盗賊「ぬは…都市部全滅するだろそれは」

情報屋「一気にでは無くて数年掛けて上昇するの…北極と南極の氷が溶けてね」

魔女「シン・リーンは標高が高い故大丈夫そうじゃ」

盗賊「まぁちっと川が氾濫せん様に土嚢積んでくるわ」

情報屋「そうね…これ以上増水してはハテノ村も危険ね」

『大型気球』


ザァァァァァ ザザザ


女海賊「はぁぁぁぁ…」ホクホク ドテ

魔女「盗賊と交代して来た様じゃな…温泉上がりかえ?」

女海賊「体冷え切ってたから温泉入って長湯しすぎた…」フラフラ

魔女「温まった後は冷たい雨も気持ちよかろう」

女海賊「うん…ちっと寝る」グゥ

情報屋「よほど疲れたのね」

魔女「…まぁ良い…話を続けよ」


…それでorc遺伝子の発見が魔法の起源という事

太古から第六感が鋭い人間は存在して居てそういう人は神の子として崇められたりした

その特殊な能力は異星人との協調で次元を共有する事から生まれた力

それを魔道と称して現代まで術を昇華させてきた訳


魔女「その異星人と言うのが黄昏の賢者…オークシャーマンか」

情報屋「でもオークシャーマンも仮の姿よ…本当は素粒子の集まり…集合意識なの」


何と称すれば良いのかしら…その異星人は太古ではアヌンナキと呼ばれて居た

アヌンナキは宇宙を巡り生物の遺伝子と黄金を集めていた

その中でこの地球の環境に適した生物がオーク

アヌンナキはオークを培養してその魂に寄生する…そうやって人々の前に現れた

その目的は恐らく人間に地軸の移動を警告する為

でもウンディーネ時代の人間はそのオークを捕らえてしまう

アヌンナキはオークの中に閉じ込められたまま現代まで生存している

それがオークシャーマン


魔女「ふむ…良く調べたのぅ」

情報屋「名もなき島の遺跡がたまたま生物学者の研究施設だったから分かった事なのよ」

魔女「わらわ達が良く知る魔物は実は他の星の生物かも知れんのぅ」

情報屋「そうね…当時の研究者が何も知らず培養した可能性も有るわね」

魔女「今の話を聞いて救うべきはオークシャーマンじゃな…救うと言うのはおこがましい表現じゃが」

情報屋「私達からすると神…」

魔女「うむ…」

情報屋「それともう一つ…黄昏の賢者は暁の使徒と何かの契りをしていた様なの」

魔女「時の王の証言か」

情報屋「そう…私が思うにその契りは現在まで続いてると思うのよ」

魔女「何故そう思う?」

情報屋「その契りと言うのがオークに伝わる予言…予言を遂行する為にオークシャーマンは動いてる…見て?」パラパラ パサ

魔女「オークの地にあった壁画か…」

情報屋「そう…ここには箱舟が記されてる…そして月に行く予言」

魔女「むむ!!なるほど…剣士と未来はオークを月に還す契りを交わしたのか…」

情報屋「逆かも知れない…暁の使徒を月に連れて行く約束…」

魔女「…」

情報屋「…」

女海賊「ぐぅ…すぴー」zzz



『広場』


ザァァァァァ ザザザ


傭兵1「こんなに降ってちゃ花火銃は使えないなぁ…」

傭兵2「ガーゴイルは降りて来ないから無視するでし」

傭兵1「僕らの守りが堅くてガーゴイルもなかなか手を出して来なくなった」

傭兵3「雲の上!!何か居る!!」

傭兵1「あ!!あれは輸送用の大型気球だ…ガーゴイルのど真ん中に…」

傭兵2「マズいでしゅね…気球からは見えて無かったのですね」

『大型気球』


パタパタ ヒュゥゥゥ


ローグ「あらららら?こらマズイっすね…傭兵さん達仕事でやんすぅ…クロスボウで射撃して下せぇ」

傭兵達「え!!?あ…今行く!!」ダダ

ローグ「影武者さんはこのままハテノ村まで気球の操舵に集中して下せぇ」

影武者「分かってるよ…」

ローグ「他の人も開いてるクロスボウ使って撃ちまくってくれやんす!!」


バシュン バシュン バシュン バシュン


ローグ「こりゃクロスボウの人数揃ったら余裕で行けるやも知れんっす」ガチャコン バシュン バシュン

傭兵達「撃て撃てぇぇ!!」バシュン バシュン




『広場』


バシュン バシュン バシュン バシュン


傭兵1「うわ…スゴイな…クロスボウ何台付いてるんだろう?」

傭兵2「全部で12台付いてた筈でし!」

傭兵3「一匹ガーゴイル落ちて来そう!!」タッタ

傭兵1「落ちた奴はこっちで処理しよう!!角は頂きだ!!」ダダ

傭兵2「待つでしゅ!!向こうにオーガが1体いるです!!」

傭兵1「え!!?」ズザザ

傭兵3「クロスボウで威嚇して!!近づいたら雷魔法で動き止めるから!!」タッタ

傭兵1「分かった」バシュン バシュン


オーガ「ガウ!!ウオォォォォ!!」ドスドス


傭兵3「雷魔法!」ビビビビ ガガーン

傭兵2「撃つでし!!」バシュン バシュン


バシュン バシュン バシュン バシュン


オーガ「ウガァァァ…」バタバタ


傭兵1「スゴイ…撃ち下ろしで何十発も降って来る」

傭兵3「何やってんの!!止め差して来て!!」

傭兵1「あぁ…」ダダダ ブン グサ

傭兵2「火魔法!」ボボボ

『大型気球』


フワフワ ドッスン


影武者「さぁ皆さん一旦教会の方へ」

商人達「いやぁ中々良い気球だった…」ゾロゾロ

情報屋「無事に戻ったのね…」タッタッタ

ローグ「あらら?頭は何処行ったんすかね?」

情報屋「坑道を下りて行ったそうよ?」

ローグ「硫黄鉱山でやんすか?」

情報屋「今みんなバラバラで行動してて忙しいのよ…長旅疲れたでしょう?まず休んで?」

ローグ「いやいや退屈しとったんす…早速動きたいでやんすよ」

魔女「これローグ!!マッサージをせい」

ローグ「ええええ!?いやいやマッサージも何も魔女さんは子供じゃ無いっすか…肩なんかこらん筈でやんす」

魔女「主はマッサージ好きじゃと聞いて居るのじゃがな…」

ローグ「あいや…えーと…まぁそうなんすが…」

魔女「早う来い!!外は寒いのじゃ!!」

ローグ「ミスリルを速攻運ばんとイカンのでやんすが…」

魔女「じゃかましい!!今すぐに来い」

ローグ「へ…へい…」トボトボ


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---------------

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『坑道最下層_地下線路』


シュコーーー スゥ


兵隊1「…続け!!」タッタッタ

兵隊2「…」タッタッタ スチャ

兵隊1「待て…あのゾンビこちらと敵と認識しない…」

兵隊2「火炎放射がもう魔石切れだ…」

兵隊1「分かっている…左手から壁沿いにスルー…行くぞ」タッタッタ

兵隊2「正面300メートル熱反応発見」タッタッタ

兵隊1「人だ!!」

兵隊2「おぉ!!」

兵隊1「2人居る…こちらをまだ…いや1人こちらに気付いた」

兵隊2「どうする?」

兵隊1「向こうもこちらの様子を伺っている…」

兵隊2「補給出来るかも知れない」

兵隊1「よし…私だけ投降する…合図を待て」スック

兵隊2「待機!」


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『坑道最下層_側道』


クンクン シュタ


狼女「アサシン!人だ…人が来る」クンクン

アサシン「何人だ?」

狼女「手前に2人…奥に後続が6人程…」

アサシン「脱走兵か何かだな…ゾンビを配置する…お前は相手の射線から隠れろ」

狼女「一人手を上げてこっちに来る」

アサシン「ほう?」


スタスタ シュコーーー スゥ


兵隊1「此処で何を?なぜゾンビは襲って来ない?」

アサシン「使役しているからだ…お前達はキ・カイの兵隊だな?」

兵隊1「使役!?シン・リーンの者だな?」

アサシン「まぁ…関係無くはない…どうした?保護を求めるのか?」ジロリ

兵隊1「助かった…ここは安全なのだな?」

アサシン「クックック質問の掛け合いか…そちらに敵意が無ければ襲うつもりは無い」

兵隊1「頼む…後方に9名程部隊の者が控えて要る…休息が欲しい」

アサシン「武器を降ろしてこちら側に来い…そこから向こうはまだ退魔の処置をしていないのでな」

兵隊1「…」フリフリ

アサシン「しかしまぁ…全身機械装着の物々しい格好だ」

兵隊1「私達はキ・カイのレンジャー部隊特殊工作班だ…本体と分断されて退路を失った所だった」

アサシン「リカオン!製鉄所の女戦士に状況を伝えて来い」

狼女「分かった」ピョン クルクル シュタタタ

兵隊1「む!あの身のこなし…お前達は一体…」

『坑道最下層_側道の奥』


ザザー

こちらB1…安全地帯を発見した

ポイントH-18…繰り返す…ポイントH-18

休息が可能な場所が有る…集合して武装の補給を計りたい

こちらA1…了解


女戦士「丁度10人か…食料は分けてくれ」

兵隊「感謝…」ゴソゴソ スポ

女戦士「ほう?また大層な兜を装着していたな?」

アサシン「これがキ・カイの精鋭部隊か…フィン・イッシュとはえらく差がある」

女戦士「フフ侍にこの重装は無理だな」

兵隊「この場所は一体何なのだ?」

女戦士「硫黄鉱山の真下だ…ここを安全にしてお前達の様な者が来るのに備えている」

兵隊「見た所シン・リーンの魔術師と見るが…」

女戦士「関係無くはない…さて次は私から質問だ」

兵隊「…」

女戦士「前線は全滅だな?そして退路を断たれて行き場を失った…」

兵隊「その通りだ」

アサシン「エド・モント砦はどうなった?」

兵隊「なぜそれを…いや質問に答えるのは私の方か…エド・モント砦でクーデターが起きて占領された」

女戦士「クーデター?」

兵隊「首謀者は誰なのか分からない…だがすべてのキラーマシンがエド・モント砦を占拠したのだ」

アサシン「クックック…キラーマシンが反乱を起こしたか」

兵隊「そうなる…キラーマシン抜きではトロッコでの移動も出来ない…だから徒歩で行動している」

女戦士「すべてのキラーマシンと言ったな?」

兵隊「あぁ…」

女戦士「キ・カイの地下に居たキラーマシンも全部か?」

兵隊「そうだ…皮肉な事に機械と人間という戦いに変化した…オークとの戦いは終わりだ」

女戦士「私達の知らぬ間に色々な事が起きているな…」

兵隊「ここは地上に出られるのか?」

女戦士「上は小さな村だ…上がって休息をさせても良いがそれ程贅沢が出来る物資も無い」

兵隊「ここで部隊を立て直したいのだが…」

女戦士「直に上から補給が来る…まず一旦休息してその後を考えよう」

兵隊「ふぅ…本当に助かった」

『休息』


ヒソヒソ ヒソヒソ

あの3人は何者なのだ?信用出来るのか?

シン・リーンの魔術師らしい…ここは従って居た方良い…

この坑道は10年前に崩落して閉鎖したはず…どうやって行き来してるのか…

旧道がまだ使えるのかも知れん…助かるぞ…


ツカツカ…

女戦士「あらかじめ行っておくがお前達の小声はすべて聞こえてると知れ」

兵隊達「!!?」

女戦士「私達を不審に思うのは分かるがこちらも守らなければならない物が有るのでな…」

女戦士「下手な行動をした場合全員処分しなければならない…肝に銘じてくれ」

兵隊達「…」ジロリ

女戦士「フフ信用出来んか…まぁそうやっかくな」

アサシン「女戦士…ここは私が見て置く…鍛冶の続きを急いでくれ」

女戦士「こいつらは精鋭だから油断するな?」

アサシン「愚門だ…行け」


ヒソヒソ ヒソヒソ

ゾンビを操って鉄鋼を掘らせて居るのか…

奥に見えるのは製鉄所だ…あそこでゾンビの装備を作っている様だ

このやり方は北の大陸の戦術だ…何故こちらに来ている

『大型気球』


ザァァァァァ ザザザ ガガーン!!


ローグ「いやぁぁ酷い雨っすねぇ…」モミモミ

女海賊「むにゃ…ぐぅ」zzz

ローグ「姉さんは何処も凝って無いでやんす…」モミモミ

魔女「穴掘りで疲れたと言うて居ったんじゃがな」

ローグ「なんつーか…何も反応無いんでつまらんでやんすよ…」モミモミ

魔女「まぁ良い…次は情報屋じゃな」

情報屋「え?私は遠慮するわ?」

ローグ「魔女さんあっしの事を何か勘違いして居やせんかね?」

魔女「主ほど便利な男は居らんと思っとったが違ったかのぅ?」

ローグ「あいたたたた…あっしは忙しいでやんす」

魔女「女戦士の乳を揉むのにか?」

ローグ「ちょちょ…バラさんで下せぇ」

情報屋「フフ…」

ローグ「冗談は置いといてこの気候変動に皆さん気付いて居やすよね?」

情報屋「勿論よ」

ローグ「海の方も酷いもんなんす…霧が酷くてまともに航海出来んでやんすよ」

魔女「やはりか…」

ローグ「海賊王もこっちに向かってる筈なんすが来れるかどうか分からん状況なんすよ」

魔女「ふむ…女戦士は坑道を下りて地下に入って居るんじゃが主は行き方を知らんじゃろう」

ローグ「誰か案内してくれやせんかね?」

魔女「行き方を知って居るのは盗賊なのじゃが今は土方作業をしておってな?」

ローグ「魔女さんは知らんのでやんすか?」

魔女「途中までしか知らぬ…」

ローグ「じゃぁあっし一人でなんとか行って来やす」

魔女「往復で半日掛かるらしい…複雑な様じゃで迷うのがオチじゃ」

情報屋「地下へはアサシンとリカオンも一緒に行ってるから心配しなくて良いわ?」

ローグ「そーっすか…じゃ盗賊さんを手伝うフリをして行き方聞いてみやす」

魔女「なぬ?素直に手伝えばよかろうに…」

ローグ「あらら口が滑った…」

魔女「まぁ勝手にせい…冷えるで盗賊にも程ほどにせいと伝えて来い」

『数時間後』


ビクッ ガバッ キョロ


女海賊「むあっ!!?」キョロ

魔女「うお!!びっくりするでは無いか…」ドキドキ

女海賊「あれ?なんで寝てんだっけ?」

魔女「夢でも見とったか?」

女海賊「今って夜?昼?どんだけ寝てた?」

情報屋「寝てたのは数時間よ…昼か夜かは相変わらず何とも言えない…多分夕方くらいね」

女海賊「えーと…何する予定だったけなぁ…」

魔女「主が寝て居る間に影武者とローグか帰って来てのぅ…ミスリルを持って来た様なのじゃ」

女海賊「おぉ!!お姉ぇが武器作っとけって言ってたな…そうそう穴掘り飽きた所だったんだ」

魔女「雨が降っとったで荷はまだ向こうの気球の中じゃ」

女海賊「おけおけ!ちっと作って来るわ」スック



『鍛冶場』


カーン カンカン


吟遊詩人「へぇ?武器も作れるんですね」

女海賊「あんた何?暇なの?」カンカン トントン

吟遊詩人「いえ…僕のリュートも少し傷んで来たので修理して貰いたいなと…」

女海賊「そこ置いといて!あとでやっとくから」

吟遊詩人「ありがとうございます」ペコ

女海賊「あんた何か武器使う?」

吟遊詩人「いえ僕は武器を使った事が無くて…」

女海賊「ほんじゃ護身用にミスリルダガーだけ持っときな」ポイ

吟遊詩人「うわ…」パス

女海賊「装飾もバッチリだから腰につけときゃ恰好は付くよ」

吟遊詩人「これ全部女海賊さんが作ったのですか?」

女海賊「いや…お姉ぇが途中まで作った物に刃を付けて仕上げたのさ」

吟遊詩人「共同作業なんですね」

女海賊「鍛冶はお姉ぇの方が上手い…私は装飾とか細工」

吟遊詩人「スゴイなぁ…こんな武器を作れるなんて」

女海賊「てかさぁ…あんた暇だったらなんか演奏してよ」

吟遊詩人「え…リュート修理して欲しいんですが…」

女海賊「あ!!そうか…先にやるわ」

吟遊詩人「ボディに傷が付いてしまって…」

女海賊「おけおけ…上手い事ミスリルの細工被せて隠したげる…ちょい待って」


トンテンカン ゴシゴシ


--------------

--------------

--------------

『恐らく翌日』


ザザー

”魔女!聞こえるか?”

”うむ…何用じゃ?”

”坑道の下で治療が必要な者が居てな…魔女と女海賊に来てもらいたいのだ”

”3人では無かったのか?”

”事情が有ってキ・カイの脱走兵が集まって来ててな”

”ほう?”

”食料も持って来て貰いたい”

”わらわは行き方を知らんのじゃが…”

”そうだったか…では盗賊に案内させてくれ”

”承知じゃ…そうじゃローグもこちらへ来て居る”

”おぉ!!ではローグも連れて来てくれ…これだけ居れば魔物掃討も行けるかもしれん”

”魔物掃討じゃと?”

”キ・カイの兵隊が魔物に阻まれて孤立している部隊が居るそうなのだ”

”なるほどのぅ…”

”詳しくは下に来てから話す…一応十分な装備と食料を頼む”

”うむ…”

ザザー


情報屋「私と商人は留守番の様ね…」

魔女「吟遊詩人も連れては行けぬ様じゃ…」

情報屋「みんな呼んで来るわ?」

魔女「わらわも準備しておこうかのぅ…ちと長く地下へ籠るやもしれぬ」

情報屋「どういう想定?」

魔女「レイスやワイトが現れるかも知れんと思うてな…」

『1時間後_坑道入り口』


ザァァァァァ ザザザ


盗賊「うはぁ…ここに来るまでにビタビタだ…」ドサリ

ローグ「食料も濡れちまいやしたね」ドサリ

盗賊「まぁ焼けば何でも同じだ…魔女と女海賊はやっぱ遅いな」

ローグ「ビチャビチャで焚火も出来やせんねぇ…」ブルル

盗賊「寒いか?」

ローグ「死ぬほど寒いっす…」

盗賊「ちっと奥まで行きゃマグマで熱いのよ…まぁ辛抱しろ」


リリース スゥ


盗賊「うお!!」

女海賊「はい!魔女降りて!!」

魔女「済まんのぅ…」ノソリ

盗賊「だぁぁぁその手が有ったか…」

女海賊「何言ってんのさ?基本だよ…まさかびしょ濡れじゃ無いよね?」ニマー

盗賊「うるせぇ!!行くぞ!!」スタ

ローグ「盗賊さん荷物忘れてるっす…」


-------------

『坑道_縦穴』


モクモク シューーー


盗賊「こりゃどっかに水入って蒸気噴き出していやがる…あっつ!!」

女海賊「このロープ降りるん?」

盗賊「そうだ…こいつ使って荷物降ろすから先行け」

女海賊「これさ?湿気でロープ腐っちゃうんじゃね?」

盗賊「しょうが無えだろ…ここで魔物這い上がって来ない様にしてんのよ」

女海賊「切れたらどうやって上がんの?これ20メートルくらいあるよね?」

盗賊「知るか!!さっさと降りろ!!」

女海賊「ちょい先行っといて…私ちょい細工して行くわ」

盗賊「何すんだ?」

女海賊「こんなロープ直ぐ切れるに決まってんだって…下からクロスボウ撃って引っかかる様に細工すんの」

盗賊「ほう?どうやってよ?」

女海賊「魔人の金槌で壁に引っかけ作るだけさ…もう良いから早く行って!邪魔!」

盗賊「ほんじゃローグ先降りろ」

ローグ「へーい!」シュルシュル

盗賊「荷物結んで降ろすから受け取れぇ!!」エッホ エッホ

『少し後_縦穴下』


ボキッ ウワァァァァ ドシーン


女海賊「てててて…なんで私だけ落ちんのさ!!あいたーーーケツが割れる」スリスリ

盗賊「むぐっ…」プルプル

ローグ「んむむ…」

魔女「うむむ…」

女海賊「だから言ったじゃん!!金具が錆びて折れ…なんだよその顔は!!」ジロ

盗賊「な…なんでも無ぇ…大丈夫か?」プルプル

ローグ「姉さん…ちょっと重たかったかも…知れんす」

女海賊「うっさいな!!引っかけ作っといて良かった…」

魔女「誰もクロスボウを持って居らんが?」

女海賊「うわ!!ヤバ…」

盗賊「ハァハァ…そらちっとマズいかもな…女戦士もアサシンもリカオンも持って無え筈だ」

魔女「しもうた…商人も情報屋もここまで来れんのでは無いか?」

女海賊「まぁ良いや作りゃ良いのさ…ねぇ魔女!ケツどうなってる?」スリスリ

魔女「血は出て居らん…回復魔法が欲しいかえ?」

女海賊「ダメダメ歳とる…美貌が崩れる」

ローグ「いやぁぁぁ姉さんはやっぱカリスマっすね…なんつーか天然のカリスマっす」

女海賊「うっさい行くぞ!!」スタ

『坑道最下層_製鉄所』


ウウウ ハァハァ


女海賊「お姉ぇ!!来たよ!!これどういう事?」タッタ

女戦士「おぉ来たか…見ての通りだ…まず全員に線虫を頼む」

女戦士「それから魔女!例の闇の術に侵されている者が居るのだ…こっちに隔離している」

魔女「やはりか…」ノソノソ

盗賊「14人…全員手練れの兵装だな?」

女戦士「レンジャー部隊だそうだ…本体と分断されてこの通り」

ローグ「食料を持って来たんすが…どうしやす?」

女戦士「私も食べていない…軽いのを少し頼む」

ローグ「なるほど状況分かりやした…あっしは戦闘食を作りやすね」

女戦士「魔女!!こっちだ」ツカツカ

魔女「うむ…」ノソノソ


女海賊「おおお!!何コレ?」グイ


兵隊「触るな…」ガチャ

女海賊「良いじゃん!!ちょい見せてよ」グイ

兵隊「お前にコレが何だか分かるのか?」

女海賊「クロスボウでしょ?ほんでコレ自動装填の仕掛けだよね?おぉ!!こんなんなってんのかぁ!!」

兵隊「見世物では無い」クル ガチャ

ローグ「姉さん!!兵隊さんは気が立ってるんすよ…先に癒してあげて下せぇ」

女海賊「ほーん?よし…ほんじゃ調子良くなったらソレ貸して」

兵隊「…」ジロ

女海賊「分かった?調子良くなったらソレ借りるから!」

兵隊「何なんだこの女は!…ぅぅぅ」

女海賊「いでよ線虫!癒して来い!」ニョロリ

兵隊「何をする!!」ズザザ タジ

ローグ「兵隊さん大人しくしてて下せぇ…死にゃしないもんで我慢っす」

兵隊「うあっ…虫が…目に…」

ローグ「一応魔術師らしいっす」

女海賊「ハイハイ次の人!!線虫!!行けぇ!!」ニョロ


うわぁ!!ヤメロ!!

動くな…辛抱しろ

『30分後』


メラメラ パチ


女戦士「製鉄炉の横の水槽に湯を用意した…魔物の返り血を洗って疫病の予防をして欲しい」

女戦士「汚れたままでは地上に出て休息させてやる事は出来んのだ」

女戦士「動ける者から順に行け…」


盗賊「装備品の熱湯消毒か?」

女戦士「何の血を浴びてるか分からんからな…」

盗賊「しかしここは前線基地みたいになっちまったな」

女戦士「うむ…丁度側道に隠れる事が出来て守備には適している」

盗賊「なんだってレンジャー部隊がここに集まってんだ?」

女戦士「キ・カイでクーデターが有ったらしい…戦力が分断して取り残されたそうだ」

盗賊「ハハーン…オーク攻めに異を唱えてる奴が居る訳か」

女戦士「そうかもしれん…エド・モント砦にキラーマシンを集めて占拠されたと言う事だ」

盗賊「なるほどそれで分断か…ここに居る奴らは戻り遅れたという訳か」

女戦士「狭間が拡大している件もあるしどうもキナ臭い」

盗賊「だな?…だが俺らにしてみりゃいきなり守備戦力増えて良かったじゃ無えか」

女戦士「いや…既に弾薬が枯渇している」

盗賊「弾薬?メイン装備はクロスボウだろ?」

女戦士「特殊なボルトなのだ…自動装填用のな」

盗賊「なるほど…」

女戦士「軍の機密だろうから中々見せん」

盗賊「ヌハハそんな事言ってる場合じゃ無いだろうに…」

女戦士「奴らの装備を良く見ておけ…女海賊好みの仕掛けが沢山仕込んである」

盗賊「さっそく食いついてたぞ?」

女戦士「フフ…上手く真似て貰いたい」

『製鉄炉』


ザブザブ モクモク


女海賊「ハイハイ熱湯の中で装備洗うからそこに置いて」

兵隊「メンテナンスは自分で出来る」

女海賊「あのね?これ熱湯なの…このブラシでゴシゴシすんだよ」

兵隊「壊したら除隊されるんだ」

女海賊「ほーん?ほんじゃ自分でやって…ほいブラシ!!」ポイ

兵隊「悪いね…」パス

女海賊「あんたの体に水ぶっかけて洗ったげるわ…火傷防止になるよね?」

兵隊「…」ザブ ゴシゴシ

女海賊「ほい!!」ジャバーー ゴシゴシ

兵隊「うわっ!!冷たい!!」

女海賊「火傷防止だって!!さっさと洗って!!」ゴシゴシ

兵隊「…」ゴシゴシ

女海賊「ふむふむなるほど…」ゴシゴシ


--------------

--------------

--------------

『坑道の壁』


ザワザワ シュルリ


魔女「罠魔法!」ザワザワ シュルシュル

魔女「これ盗賊や…壁面のツタを剥がして資材にせよ」

盗賊「おぉ!!考えたなぁ…このツタでハンモックが作れる」

魔女「うむ…地べたに寝るよりは良かろう」

盗賊「てか魔女が居れば縦穴は問題無く帰れそうだヌハハ」

魔女「水が無ければツタは育たぬ」

盗賊「ぬぁぁぁピンポイントであそこだけ水が無ぇ…」

魔女「撒けば良いが…」

盗賊「紛らわしい事言うなや…まぁ大丈夫って事か」

魔女「無駄口は良いから早うハンモックをこさえてやるのじゃ」


--------------

--------------

--------------

『簡易前哨基地』


ヒソヒソ ヒソヒソ

あっという間に何も無い坑道をツタで囲んだぞ…

草も生やして…いやあれは小麦だ

シン・リーンはこうやって陣地形成するのか

少なくとも魔術師3人…いや妙にするどい女も魔術師かも知れん


ローグ「はいはい皆さん食事が出来やしたぜ?」

盗賊「肉スープとパンだ!食器持って並んでくれーい」

兵隊達「おぉ…小麦のパン」ゾロゾロ

ローグ「これはシン・リーン産の小麦で作ったパンでやんす…こっちじゃ珍しいっすよね?」

魔女「わらわも腹が減ったのぅ…」ノソノソ

ローグ「魔女さんの口に合いやすかね?はいどうぞ…」


ツカツカ


女戦士「さてこれで一旦落ち着いた…食事が終わったら魔物掃討に出るぞ」

盗賊「どういう作戦よ?」

女戦士「ここから線路を東…ミネア・ポリス方面に数十キロ行くとグレムリンが数体居るそうだ」

盗賊「遠いな…」

女戦士「仕方あるまい…その部隊はミネア・ポリスに行く訳にも行かずこちらにも来れん…そうだな隊長?」

隊長「そうだ…私達も動ける者を動員するが…」

女戦士「武器の無い者は邪魔になる…私達だけで掃討する」

隊長「そんな軽装で魔物と戦うと言うのか?バカな…自殺行為だ」

女戦士「フフまぁ見て居ろ…ここの守備はアサシンを残してゾンビに守らせる…それでも不足の場合は兵隊を動かせ」

隊長「分かった…連絡手段は?」

女戦士「これだ…」スッ

隊長「貝殻?」

女戦士「シン・リーンではこの様な物で通話するのだ…何か有ればアサシンに言え」


ヒソヒソ ヒソヒソ

確かに俺達は弾倉が残りわずかだ…

ここの守備って…どう配置するんだ?

『製鉄所』


カーン カンカン ゴリゴリ


女戦士「女海賊!魔物掃討に出るぞ…準備しろ!」

女海賊「あーちょい待って!もうちょいで完成するんだ」カンカンカン トントン

女戦士「レンジャーの武装を真似て居るのか?」

女海賊「まぁね?あいつ等の装備は魔石で色々動く様になってんのさ」グリグリ

女戦士「なんだ?これは…」

女海賊「ワイヤーの巻き取り装置だよ」

女戦士「ワイヤーなぞ良く持って居たな」

女海賊「金属繊維のインナー解いて寄りなおしたさ…よっし!これで出来上がりっと…」カチャ

女戦士「どうやって使うのだ?」

女海賊「ちょいそこどいて?」

女戦士「んん?」スタスタ

女海賊「射出!!」パシュン! シュルシュル グサ!

女戦士「おぉ!!それで巻き取る訳か…」

女海賊「そそ!!行くぞぉ!!」カチ シュルシュル


ブラーン シュタ


女戦士「天井に張り付けるのか!!」

女海賊「よしよし使えるぞコレ!!上手く使えば私だけ安全圏でインドラの銃で狙撃できる」

女戦士「今度私にも作ってくれ」

女海賊「おけおけ!ほんじゃ魔物掃討行こっか!!」

『地下線路』


ヴヴヴヴヴ… ヒタヒタ


女戦士「アサシン!私達は東方面へ魔物掃討に出る…製鉄所の守備は任せた」

アサシン「私一人か?」

女戦士「そうだ…リカオンも斥候で連れて行きたい」

アサシン「ワインが欲しいのだが…」

盗賊「瓶を2つ置いてあるぞ」

アサシン「フフ…兵隊共には見せられんな」

ローグ「戦闘食を数日分作り置きしてあるんで飢える事は無い筈でやんす」

アサシン「ふむ…まぁ奴らと少し会話でもしてみる」

女戦士「リカオン!!斥候を頼む!!先頭を行ってくれ」

狼女「分かった!」シュタタ


-------------

-------------

-------------

『地下線路_ミネア・ポリス方面』


ピチョン ポタポタ


盗賊「やっぱちっと寒いな…」スタスタ

魔女「主の背中はわりと温いのぅ」

女戦士「少し休憩するか…正確な距離が分からん」

ローグ「焚火出来んすかねぇ…」キョロ

盗賊「燃やすもんが何処にも見当たらん…」


ピカーーーー


盗賊「うお!!目が…光の石か」

女海賊「ちっと光り過ぎだな…この辺だけ照らす」ゴソゴソ

ローグ「あぁぁぁ太陽の光は暖かいっすねぇ…」

盗賊「光が焚火の代わりか…まぁこれでちっと休める」ヨッコラ

女海賊「ねぇお姉ぇ…ここの壁面て何だと思う?ツルツルだよ…」

女戦士「暗くて見えんかったが…良く見ると不思議な壁面だな」

ローグ「あらら?本当っすね…水が染み出してるんじゃなくてコレ結露水っすね…」

女海賊「石じゃ無いなぁ…」コンコン

女戦士「明らかに坑道の壁面とは違うのだな…ふむ金属の様だが…」サワサワ

盗賊「あぁぁ分かった!アレだ古代遺跡の開かずの扉と同じ材質だ…多分磁石も付かんぞ」

女海賊「なる!!そっか…それで大雨でも水が入って来ないのか…」

女戦士「どうやってこんな物を地下深くに埋めたのか…だな」

女海賊「これ良く見たらさぁ…超真っ直ぐじゃん!ずっと向こうの方まで見えるよ」

魔女「では向こうからもこちらの光が見えるという事じゃな…」

女海賊「お!!?ほんじゃ向こうまで望遠鏡で見えるって事じゃん」ゴソゴソ


カチャカチャ


盗賊「どうよ?何か見えるか?」

女海賊「だめだぁ…私の望遠鏡は2km先を良く見える様に調整してるから倍率足りない」

女戦士「フフ面白い観測法を発見したな」

女海賊「お姉の望遠鏡は気球に置きっぱなしだよね」

女戦士「うむ…持ち歩くのは邪魔でな」

盗賊「とりあえず2km向こうまでは何も居ない訳か」

狼女「ちょと静かに…」


タタン タタン…


女戦士「む!!この音はどこかでトロッコが動いている…」

狼女「東側だよ」

女海賊「ああああ!見えた!!こっち向かって来る…」

盗賊「そのトロッコにキラーマシンは乗って居ないか?」

女海賊「動かしてんの人だよ…2人でシーソーやってる」

女戦士「分かったぞ…この光を見て突破しようとしている…何かに追われて居ないか?」

女海賊「分かんない…でも火炎放射使ってる」

女戦士「間違い無いな…魔女!照明魔法で周辺を照らしてくれ!」

魔女「照明魔法!」ピカー

女戦士「女海賊はインドラの銃を準備して後方に下がれ」

女海賊「おけおけ…」ゴソゴソ

女戦士「他の者はトロッコに引かれないように脇へ避けるんだ…魔女は罠魔法で追っ手の足を止めてくれ」

狼女「魔女!!出来るだけ前方にも照明魔法を!!」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー


ゴーン ゴゴゴーン


女海賊「この音は戦闘始まっちゃってるよ…」

盗賊「任せろ…ハイディングで距離詰めて援護してくる…ローグ行くぞ!!」

ローグ「アイサー!!」

女戦士「ムリはするな?」

盗賊「分かってる!!援護頼むぜ?来い!!」ダダダ


ハイディング!! スゥ…


女戦士「リカオン…距離をカウントしてくれ」


1000メートル…800…600…400…


女海賊「見えた!!撃つよ!!」シュン! チュドーーン!

女海賊「もういっちょ…え!!?」


ブオォォォォォ


女海賊「うわぁぁ!!」ゴロゴロ

女戦士「しまった!!爆風がここまで直接来る…」グググ

魔女「ちぃと時間を稼げ…」アブラカタブラ アブソリュート ゼロ

女戦士「接近でやり抜く!!リカオン援護しろ!!」ダダ


ギギギギギー キーーーーー


盗賊「援護やり過ぎだろ!!脱線してるぞ!!」ヨロ

ローグ「耳がキーーーーンと来てなんも聞こえんす…」

女海賊「来る!!へんなデカい奴2体!!」チャキリ ターン


グレムリン「ナンダコイツハーーウテーーー!!」ドドド ブン!


女戦士「遅い!!」ブン スパ

狼女「こっちも!!」ブン スパ

グレムリン「アシガーーーアシガーーー!!」ドドド

魔女「絶対零度!!」


モクモクモク カキーーーーーーン!!


グレムリン「…」ピキピキ

女戦士「…凍った」タジ

狼女「これは…」タジ

盗賊「ヌハハ一瞬で戦闘終了だな…」

女海賊「ちょい待ち!!もう一体こっちに来る!!」

女戦士「ちぃぃまだ居るのか!」スック

女海賊「トロッコの陰に隠れて!!一発で仕留める…」ガチャコン

盗賊「もっかい撃つってか!?」ダダ

ローグ「あわわわ…」ダダ

女海賊「おし!イケる…」カチ


シュン チュドーーーーン!!


女海賊「隠れる!!」ピョン


ブオォォォォォ


--------------

--------------

--------------

『6両編成トロッコ』


シーン…


盗賊「収まったか?」キョロ

女海賊「リロードまであと10分…リカ姉ぇ奥の方警戒して」

狼女「分かってる…」シュタタ

女戦士「凍ったグレムリンは木っ端微塵か…」

盗賊「今の内にトロッコを線路に戻すぞ…ローグ!!そっち側持て!!」グイ

ローグ「アイサー」グイ

女戦士「兵隊は!?」


兵隊「ぅぅぅ…」グター


女戦士「魔女!!怪我人の処置を…」

魔女「分かって居るわい!!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女戦士「生きて居るのは3人か…」

盗賊「後列のトロッコの中にも横になってるのが居るぜ?ふんっ!!」ガコン

魔女「イカンな…片足を失って失血が酷い…回復魔法!」ボワー

盗賊「応急だ…薄めた食塩水を入れる」ゴソゴソ

魔女「女海賊!線虫が必要じゃ…」

女海賊「おけおけ!!線虫!癒せ!」ニョロリ


兵隊「燃やせ…あの魔物を燃やさないと増える…ぅぅぅ」


魔女「なぬ!?」

兵隊「死体の一部が残って居るとそこから増えるのだ…」ハァハァ

女海賊「あ!!凍ってた奴の破片が動いてる…」

魔女「なんという事じゃ…闇の術が掛かって居ったのか…」ボーゼン

ローグ「この火炎放射器はまだ使えそうでやんす…」ボボボボ

魔女「うむ…残らず焼き尽くせ…わらわも魔法で焼く」

『30分後』


ボボボ メラメラ


魔女「すべて燃やしたか?」

狼女「向こうの奴も燃やして来たよ」スタタ

盗賊「グレムリンがやたら多いと思ってたんだが分裂して増えてたんか…」

魔女「主も闇の術に侵されて居ったじゃろう…アレは細胞分裂で新たな個体を生む術なのじゃ」

女戦士「ではどんどん増えてしまうな…」

魔女「エネルギーが無ければ増えぬ…じゃから人を食らい居る」

女海賊「なんかそれヤバイ魔法だね」

魔女「うむ…遺伝子に異常をきたす感染症じゃな」

女海賊「線虫じゃ治せない?」

魔女「線虫の増殖が早いか遺伝子に異常をきたすのが早いかは分からぬ」

女海賊「てことは大量の線虫なら治せるかも知んないね」

魔女「しかしこれは大事じゃぞ…人が子を産む速さよりずっと早いのじゃ…放置すると駆逐されてしまう」

女戦士「退魔の方陣には近づかないのだろう?抑え込んで行くしか無いな」

魔女「そうじゃな…」

盗賊「ここに居てもなんだ…一旦戻ろうぜ?」

女戦士「トロッコは動かせそうか?」

盗賊「イケる…徒歩よりずっと楽だ」

女戦士「よし…では戻るとしよう」

盗賊「ローグ!!シーソーやるぞ…反対側押せ」

ローグ「これ2人ならラクなんすよね」グイ


コロコロ ガタン ゴトン


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『坑道_簡易前哨基地』


ヨッコラ ヨッコラ


盗賊「おら…どいたどいた」ドサリ

アサシン「無事に戻ったか…救出できたのは4人だけか?」

盗賊「そうだ…他の部隊は来て無いか?」

アサシン「その後通信が途絶えているらしい…ここに避難出来ているのは20人足らず」

盗賊「他は全滅かも知れんなぁ…グレムリンがやたら強くてよ」

アサシン「そうか…」

盗賊「俺らが居ない間ここはどうだったのよ?」

アサシン「静かな物だ…追加でゾンビが少し増えたくらいだな…全部で40体程度だ」

盗賊「おぉ武器持ってりゃ結構な戦力だ」

アサシン「肉が削げ落ちてどんどん弱くなっていくのが痛い所だがな」

盗賊「ヌハハまぁスケルトンの方が衛生的には良さそうだ」

アサシン「接近では使えんからクロスボウを持たせるのが一番良かろう」

盗賊「なんやかんやでクロスボウ強いからな…一発食らっただけで大怪我だしよ」


ツカツカ


女戦士「アサシン!ゾンビに再度鉄鉱石を掘らせてくれ…製鉄して武器を増産する」

アサシン「今度は何を作る?」

女戦士「特殊弾倉用のボルトだ…レンジャー部隊にも戦力になって貰う」

盗賊「そりゃ良い!!自動装填のクロスボウは増産出来んのか?」

女戦士「フフ妹が作ると息巻いている」

アサシン「話によると弾倉一つにつき24発撃てるそうだ…自動装填でな」

盗賊「すげぇな…今まで使ってたのは2発で手動だ…エライ違う」

アサシン「飛距離と威力は劣る様だぞ?」

盗賊「ほーん…まぁ使い分けか…」

女戦士「では私は製鉄所に戻る…鉄鉱石は頼んだ」ツカツカ

『製鉄所』


シュゴーー ボゥ カーンカンカン ギコギコ


盗賊「いよーぅ!食い物持って来たぜ?

女海賊「お!!?良い所来た!!これ持って補給行って来て」ポイ

盗賊「うお!!…なんだコレ?」パス

女海賊「ワイヤーの仕掛けさ…それ使って縦穴登るの…使い方は自分で何とかして」

盗賊「ほーん…んで?何が必要なんよ?」

女海賊「私の飛空艇の中に金属糸と魔石あるから持って来て…あと肉!!」

女戦士「ローグも連れて行ってミスリルも少し持って来させてくれ」

盗賊「肉かぁ…重いんだよなぁ…」

女海賊「ここって補給きびしいよね…何とかなんない?」

盗賊「あの兵隊たちは特殊工作兵だから何か作らせたらどうだ?」

女戦士「ふむ…狭い坑道内を移動出来る小型荷車でもあれば運搬が捗るな…」

盗賊「あとあの縦穴な?」

女戦士「私は今手が離せん…お前が兵隊に話して来い」

盗賊「任せろ…ほんじゃ行って来るわ」スタ

女海賊「いやぁ…コレさぁ…破壊の剣使って加工するとめっちゃ楽だね」スパスパ

女戦士「一つ居るか?」

女海賊「ちょっと私には長いなぁ…」

女戦士「ダガー程度の長さの物もあるぞ?」

女海賊「お!マジ?」

女戦士「私は使わんからお前にヤル」スッ

女海賊「おぉぉこれで加工が捗るわ…」スパスパ

『簡易前哨基地』


ヒソヒソ ヒソヒソ


アサシン「魔女…片足の領事がキ・カイで何をやって居たのか裏が取れたぞ」

魔女「ほう?言うてみよ」

アサシン「10年以上前にリッチと共にオーク狩りを指揮していたそうだ」

魔女「リッチ…魔法を使いオークを捕らえて居ったとな?」

アサシン「睡眠魔法だ…オークは睡眠に弱いらしい」

魔女「なるほどのぅ…」

アサシン「その報復でキ・カイの拠点として使われていたすべての坑道を地震と噴火で破壊されたのだそうだ」

魔女「何じゃと?地震と噴火は意図的に発生したのか?」

アサシン「オークシャーマンの呪術によって地震を起こされたと言う証言があるのだ」

魔女「重力魔法か…」

アサシン「更に面白い話が聞けたぞ?」

アサシン「当時オークシャーマンの生け捕りに成功した様だが自由にオークを渡り歩ける…つまり逃げられた…意味が分かるか?」

魔女「何の術じゃろう…」

アサシン「魔王も自由に人間を移り渡る事が出来るだろう?」

魔女「ムム…魔王と同種と申すか?」

アサシン「魔王と対になる存在…」

魔女「ほう…主は鋭いのぅ…実はな…情報屋はオークシャーマンこそ我々の神ではないかと言うて居る」

アサシン「フフ…思う所は同じか」

魔女「素粒子…集合意識じゃと言うて居った」

アサシン「神といえば地震や噴火の天変地異…10年前の噴火も予言に従い起こした奇跡かも知れん」

魔女「良く考えてみれば犠牲は有った物の戦争を一時的に終わらせたのは噴火のせいじゃな…」

アサシン「うむ…だがオークシャーマンの目的がいまいち分からん」

魔女「オークの予言を履行するのが目的であろうとういう話じゃ…」

アサシン「もう少し情報屋の話を聞いて見んとな…」


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隊長「…話を盗み聞きした様で悪いが…もしやあなたはシン・リーンの姫君では?」

魔女「じゃとしたらどうなのじゃ?」ジロ

隊長「この刻印に覚えは?」グイ

アサシン「!!?貴様!黒の同胞!!」スラーン チャキ

魔女「主は何者じゃ?」

隊長「父上に仕えた者だと言えば話が通るか…」

魔女「待ていアサシン…父上を知って居るとな?」

隊長「やはりそうか…俺はあなたの父上を守る騎士だった…フフこうして白狼の一党を目の前にして感慨深い…」

魔女「主を信用して良いかわからんのぅ…」スッ

隊長「幻惑の杖…そう…公爵もそうやって人を意のままに操った…俺も…あなたの父上も…」

魔女「何が言いたいのじゃ?」

隊長「勘違いしないで欲しい…人類滅亡を阻止する為に戦って来たのは黒の同胞も…恐らく白狼の一党も同じ」

魔女「…」

隊長「ただ手段が違って互いに噛み合わなかったが不幸だったのは理解している」

隊長「そして黒の同胞達が求めた理想郷も存在しない事が分かって…俺達の歩んだ道も間違って居た事を知った」

アサシン「何?」

隊長「最終的に公爵は俺達を捨てて裏切ったのだ…在りもしない理想郷を残して」

魔女「何の話か分からんのぅ?」

隊長「キ・カイで起きたクーデターの首謀者が分からないと言ったのは嘘だ…首謀者は政務官…全身を機械化したバケモノ」

魔女「理想郷とは何の事じゃ?アダムは破壊された筈じゃ」

隊長「エド・モント砦の最下層にアダムとほぼ同規模の機械が有る…それが政務官…キ・カイの司令塔だ」

アサシン「読めたぞ?機械の政務官は人間を保護するのでは無く敵として認識するようになったな?」

隊長「滑稽か?我々の末路がコレだ…理想郷なぞ始めから無かった」

魔女「わらわの父上は理想郷なぞに行こうとはして居らなんだ」

隊長「俺も行く気なんか無い…人類を救いたかった…その為に人類を管理する者が必要だと信じていたんだ」

魔女「その管理者が人類を選ばなかった訳じゃな…」

隊長「…あなたの父上に謝罪したい…志を引き継げなかった事を…」

魔女「アサシン…こ奴どうする?」

アサシン「忠臣は嫌いでは無い…我々とは行く道が違っただけの同志でもある」

魔女「これ隊長や…主は何故人類が滅亡する前提なのじゃ?予言か?」

隊長「そうだ…オークに伝わる予言に人類を滅ぼす計画が記されている」

アサシン「クックック…どこかで聞いた話だな?」

魔女「いやまて…情報屋はそこまで解明して居らん筈じゃ…予言には続きが有るのやも知れんな…」


--------------

魔女「これ隊長!主は怪我が軽かろう…そろそろ動いてはどうか?」

隊長「迷っている…」

魔女「何をじゃ?」

隊長「何を信じるのかだ…ずっと追って来た白狼の一党を目の前にしてもなぜか動く気にもならない」

魔女「わらわに刃を向ける気は起きんか」

隊長「…」

魔女「黒の同胞はあとどのくらい残って居るのじゃ?」

隊長「数名…もう生きているかどうかも分からない」

魔女「主は知らぬかも知れぬが白狼も既に居らんのじゃよ…残した遺児も居らん」

隊長「居ない?」

魔女「人知れず魔王を退け一人犠牲になって世界を繋いで居るのじゃ…」

隊長「伝説の通りに?」

魔女「うむ…」

隊長「ではどうしてこのような世界に…世界中で戦争…殺戮…飢餓…」

魔女「それは人の心の闇が生んで居るのじゃ…それをまた集め残した遺児も何処ぞへ消え去った」

隊長「そうだったのか…」

魔女「空しいのぅ…どうすればこの連鎖を断ち切れるかのぅ…」

『坑道最下層』


ワサワサ フミフミ


魔女「これ!!見て居らんで主らも麦の脱穀を手伝わんか!!」フミフミ

兵隊達「あ…あぁ踏みつけるだけで良いのか?」

魔女「種子だけ残して残りは何処かに運ぶのじゃ…邪魔で敵わん」

兵隊達「運ぶと言っても何処へ?」

魔女「主らのベッドにしても良いし縄にしても良い…兎に角邪魔なのじゃ」

兵隊達「わ…わかった」オロオロ

魔女「精鋭ならもっとシャキっと働かんかいタワケ!!」

狼女「私も手伝おうか?」シュタタ

魔女「済まんのぅ…人出が足らんと言うのにあの兵隊共は全く気が利かぬ」

狼女「こんなに沢山の麦をどうする?」

魔女「砂銀に変性させて退魔のエンチャントを掛けるのじゃ」

狼女「あぁ…そういう事か」フミフミ

魔女「早うグレムリンを封じ込めんと手に追えんくなる」

狼女「じゃぁ私が脱穀するから魔女は退魔のエンチャントを…」

魔女「そうじゃな…ここは頼む」ノソ

『製鉄所』


カーンカンカン シュゴーーー


魔女「女海賊や…退魔の砂銀を持って来たでこれを兵隊の弾に仕込むのじゃ…」ザラザラ

女海賊「え!?どゆこと?」カンカン

魔女「奴らにグレムリン掃討をやらせよ…退魔の武器を持って居れば襲われんじゃろうからな」

女海賊「おぉ!!なるなる!!」

魔女「地下線路の土地勘はわらわ達よりも有る筈じゃ…兎に角出来るだけグレムリンが広がらぬ様にせねばならん」

女海賊「おっけ!!特殊弾に一つづつ仕込めば良いね?」

魔女「うむ…退魔の方陣が簡単に設置できぬ故…沢山砂銀をばら撒きたい」

女戦士「良い作戦だ…移動用のトロッコもある」

魔女「兵隊にはわらわの方から説明しておくで武器は頼んだぞよ?」

女海賊「てかさ?直ぐに出来るから取りに来る様に言っといて…運ぶのメンドイ」

魔女「…では待って居れ」ノソノソ



『簡易前哨基地』


カクカク シカジカ…


隊長「…では退魔の弾を使えばグレムリンは襲って来ないと…」

魔女「その筈じゃ…逃げる敵を追うのであれば簡単じゃろう」

隊長「トロッコが使えるとなると物資を乗せながら移動も可能か…ふむ」

魔女「わらわ達はは地下線路がどの様に繋がって居るのか知らぬ…主達が適任じゃと思うが?」

隊長「10名程度の小隊なら可能な作戦か…よし条件がある」

魔女「何じゃ?」

隊長「オークゾンビが居た場合思わぬ被害が予測される…あの死霊術師を同行させたい」

アサシン「んん?私の事か?」

隊長「こちらとの連絡役と言う役目もある」

アサシン「フフ良かろう…但し指揮が大概の場合は勝手に離脱するぞ」

隊長「俺は部下を見捨てた事は一度も無い」

アサシン「クックック…私が部下か…まぁ見せて貰おうか」

魔女「決まりじゃな?」

隊長「よし!!兵隊達!!集まれ…他の部隊捜索と味方の弔い合戦に向かう」


今回は退魔の効果が付与された特殊弾が使用できる

これは例のグレムリンという魔物への特効効果があるとの事だ

これを用いて掃討と各要衝の確保が主な目的だ

エド・モント砦手前までの分岐…A点…B点…C点

それぞれバン・クーバ方面へ向けて捜索を実施する

移動方法は6両編成のトロッコ…


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『トロッコ』


ドタドタ

干し草は3両目と4両目に入れろ…弾倉の予備は5両目だ

食料は各自バックパックに分けて入れて置け


隊長「…では出動する…全員所定の車両に乗り込め」

兵隊達「サー!!」ドタドタ

アサシン「私はどのトロッコに乗れば良いのだ?」スタ

隊長「俺と一緒に先頭車両だ…来い」スタ

アサシン「しばらくこのトロッコが城か?」

隊長「見た通りだ」

アサシン「お前の名をまだ聞いて居なかったな…名を何と呼べば良い?」

隊長「俺はレンジャーだ黒鉄のレンジャー…それが俺の名だ」

アサシン「私はアサシン…」スッ

レンジャー「昨日の敵は今日の友か…よろしく頼む」ガシ

アサシン「さて…この部隊は特殊工作班だとか言って居たな?」

レンジャー「そうだ…敵の要衝への潜入…破壊に特化した機動隊だ」

アサシン「白兵用の武器は持たんのか?」

レンジャー「白兵戦になる前に撃破出来る…特殊弾の十字砲火でな」

アサシン「相手が大型の魔物だった場合はどうする?」

レンジャー「まともに戦うと思うか?対処法はコレだ…」スッ

アサシン「ワイヤーか…」

レンジャー「此処に居る全員ワイヤーを使っての機動戦を得意とする…白兵は不要」

アサシン「クックック…では私だけ逃げ遅れるな」

レンジャー「部下は見捨てん…言っただろう?」

アサシン「フフ野暮な質問だった様だ…」

『製鉄所』


バシュン! ドス!! ヴヴヴヴ…


女海賊「ふむふむ…なるほど…やっぱ特殊弾だと撃たれたら体の中に弾が入り込むのか…」

女戦士「何をしている?働くゾンビの数を減らすなよ?」

女海賊「お姉ぇコレさぁ…クロスボウの方が飛距離も威力もあるんだけど…」

女海賊「実戦で使うなら特殊弾の方が多分強いわ…撃たれた後体の中に金属片が残る」

女戦士「ほう?ボルドだと抜かれてしまうか」

女海賊「そそ…金属片を取るのに体切り開かないと残ったままになるのさ」

女戦士「飛距離が短いのは致命的では無いか?」

女海賊「まぁ…そうだよね…でも自動装填がメチャ良さそうなんだよなぁ…」

女戦士「2連式クロスボウを自動装填に改造してみては?」

女海賊「それだと重すぎる…そもそもボルトが重い」

女戦士「そうか…特殊弾をどうにかして飛距離伸ばしたい訳か」

女海賊「やっぱクロスボウの限界はこんなもんかもなぁ…」


ノソノソ


魔女「その特殊弾とやらが大きすぎるのではないか?」

女海賊「あ…魔女」

魔女「もっと小さくして威力が無くなった分火薬で爆発するようにすれば良かろう」

女海賊「いやいや…火薬使うと手元爆発…ん?待てよ?」

女海賊「着弾した時に着火するように作れば行けるかも…」

女戦士「先ずは小さくしてどのくらいの飛距離になるかだな」

女海賊「おけおけ!!ちょい作ってみる」


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『30分後』


バシュン! ガチャ! バシュン! ガシャ!


女海賊「よしよし…飛距離は普通のクロスボウ並み…自動装填もちゃんと動く」

女戦士「楽しみだな…小型爆弾発射装置になる」

女海賊「黄鉄鉱が有ったよね?それを信管にして火薬に着火させる…」ゴソゴソ カリカリ

魔女「作るのが面倒そうじゃな?」

女海賊「そだね…大量生産には向かないかな」

魔女「じゃが爆弾だけでは無く毒を仕込んだり…場合によってはエリクサーを仕込んでも良いな」

女海賊「お!!?ちょちょ…遠距離からエリクサー打ち込む?…うわぁぁ!!それ熱い!!」

女戦士「なるほど…少し痛いがその分体内に直接エリクサーを打てるのは良さそうだ」

女海賊「いろいろ工夫できるぞ!!よーし!!やる気出て来た!!」カチャカチャ

女戦士「さて私は製鉄に戻る…」ツカツカ

魔女「わらわも小麦を育てて来るかのぅ…」ノソノソ


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『数日後』


ヨッコラ ドスン


盗賊「ふぅぅぅ…戻って来たぜぇぇ」ドタ

ローグ「ここまで荷を運ぶのシンドイっすねぇ…」グター

女海賊「遅かったじゃん!!待ってたんだよ」スタタ

盗賊「地上の方でも色々あってよ…海賊王がハテノ村に到着したぜ?」

女戦士「何!!?ここには来ているか?」

盗賊「いや…お前等の無事を知って喜んでは居るがどうやら他事で忙しいらしい」

女戦士「そうか…それで今はハテノ村に滞在しているのか?」

盗賊「温泉に入って直ぐに戻って行った…領地がどうのこうの言ってたな」

女海賊「なんだよ顔合わせないで戻ってったのか」

盗賊「まぁ色々物資持って来たのと数人ドワーフが残って行ってる」

女戦士「硫黄を掘る為か?」

盗賊「拠点を建築するんだとよ…こんな守備では一瞬で占領されるとか言ってたわ」

女戦士「フフ人材不足で仕方あるまい」

盗賊「あとな?食料問題が当面解決したぞ?」

女戦士「ほう?気球で運べる物資では期待出来んが…」

盗賊「いやいや…雪が無くなってワームが出没するようになってな」

女海賊「おおおお!!そいつ使役したら穴掘りやらせれるじゃん」

盗賊「悪いが狩った…放置してると危ないもんでな」

女戦士「では食料問題の解決とはワームの事か?」

盗賊「そうだ…当面はワームの肉が食い放題」

女海賊「もしかして今持って来た物資はワームの肉?」

盗賊「あぁこれは干したシカ肉だ」

女海賊「あぁ良かった…ワームの肉なんか食えん…ウンコ食ってんだよあいつ等」

盗賊「アホか!土食ってんだ!!シカ肉より柔らかくて美味い」

女海賊「丁度腹減ってたのさ…シカ肉頂戴!」

盗賊「干し肉だが我慢しろ…」ポイ

女海賊「やっと肉だ…」ガブ モグ

盗賊「ほんでな?地軸の移動の影響が相当ヤバいぞ?」

女戦士「ある程度は想定していた筈だが…」

盗賊「天候がメチャクチャなのよ…吹雪になったり豪雨になったり…川の下流も洪水でエライ事になってるらしい」

女戦士「ふむ…父はそれで領地を見に行ったか」

盗賊「だろうな?地下に潜ってると何も分からんだろう?」

盗賊「そうだ!プラズマの銃を一つ持って行くぜ?雨で花火銃が使えなくてな」

女海賊「もう戻るん?」

盗賊「ワームが出て来て傭兵だけじゃ空が手薄になっちまう」

ローグ「あっしはここに残りやすぜ?」

女戦士「地上も今のままでは戦力不足か…よし!足を負傷した兵隊を一緒に連れて行ってくれ」

盗賊「なぬ?背負ってけってか…」

女戦士「いや…簡単な義足は作ってあるから歩くのは問題無い…グレムリン相手の戦闘はもう出来ないと言う事だ」

盗賊「そういう事か…慣れたクロスボウ撃ちが居れば大分助かるな」

女戦士「有志でハテノ村の守備に回れる兵隊が居ないかも聞いておく」

盗賊「分かった…とりあえず俺は一回戻るな?」

『貝殻』


ザザー

聞こえるか?私だ…アサシンだ

おぉ!!どうじゃ?そちらの様子は?

他の部隊20名程と合流した…一度そちらへ戻る

むむ…治療が必要なのじゃな?

その通り…休息と補給もな

20名とはまた多いな…

地下線路に点在している要衝に多少の食料が残って居るのだ

では他にも生き残りが居りそうじゃな

うむ…だが一部地下線路内に水が入り込んで居てトロッコの移動が出来ない…だから一度戻るのだ

承知じゃ…女戦士に連絡しておく

今の所そちらの簡易前哨基地しか満足に補給できる場所が無い…最も重要な拠点になりそうだ

どの位で戻れそうじゃ?

恐らく20時間程…過積載で速度が出ん

20名なら6両のトロッコで問題無さそうじゃがのぅ…

戦利品も回収してきているのだ…破壊されたキラーマシンも積んでいる

ふむ…ベットはこさえて置くで気を付けて戻れ

『簡易前哨基地』


ノソノソ


ローグ「魔女さん!!食料を持って来やしたぜ?」タッタ

魔女「おぉ!!ローグか戻って居ったのじゃな…丁度良い手を貸せ」

ローグ「んん?どうしたんすか?」

魔女「負傷した兵隊が20名程戻って来るのじゃ…干し草で寝床をこさえよ」

ローグ「あらら…多いっすね…また食料足りんくなりやすね」

魔女「わらわは食用の小麦を育てて来る故寝床の確保は主に任せる」

ローグ「分かりやした!!」

魔女「終わったら小麦の収穫も手伝いに来るのじゃぞ?」

ローグ「あっしら完全に兵隊の補給部隊みたいになって居やすね?」

魔女「仕方なかろう…わらわ達が前線に出てしまえばハテノ村は占拠されてしまうで…」

ローグ「海賊王もハテノ村まで来たもんでもうちょい待てば簡単に占拠されん様になると思いやす」

魔女「ほぅ?では今はドワーフが来て居るのか」

ローグ「まだ数名なんすがね…」

魔女「ふむ…この大陸の事情は良く知らぬが大勢のドワーフが占拠してしまうと又問題が起きそうじゃな」

ローグ「今はそれどころじゃ無いっすね…魔物退治に手一杯でやんす」

魔女「まぁ良い…小麦を育てて来る」ノソノソ

『製鉄所』


カーン カンカン シュゴーーーー


女海賊「また負傷兵が20人も来たら忙しくなるね」カンカン ゴシゴシ

女戦士「ここでの武器生産が魔物との戦線維持の要になりそうだ」シュゴーーー

女海賊「次何作んの?」

女戦士「オークゾンビに持たせる大型の斧だ…刃付けは任せる」

女海賊「うは…大量に鉄使うな…」

女戦士「お前は負傷兵に線虫を施す仕事もあるからそのつもりで居ろ」

女海賊「わかってんよ…ねぇお姉…」

女戦士「んん?」

女海賊「なんかさぁ…こうやって地下で鉄叩くのって不思議と落ち着かない?」

女戦士「何を言うと思えば…ドワーフの本来の姿だ」

女海賊「大地に守られてる感じがすんだよ」

女戦士「お前の光の石が無ければ過ごせた物では無いと思うが…」

女海賊「それそれ!夜光石が光吸ってメッチャ光るんだよ…光消すと宇宙みたい」

女戦士「待てよ?…」トーイメ

女海賊「なんか思いついた?」

女戦士「エド・モント砦上空の狭間を光の石で無理矢理遠ざけられんか?」

女海賊「お!?」

女戦士「確か中心部が円筒の吹き抜けだと言って居た…そこから行けるのでは無いか?」

女海賊「狭間の中を上空から探せないって…」

女戦士「アダマンタイトで狭間になっている訳では無いのだろう?光の石を使えば見つけられそうでは無いか?」

女海賊「…そういやそうだね」

女戦士「少し作戦を考え直すか…地下は兵隊達に任せる様に計らって私達は上空から攻める」

女海賊「製鉄所どうすんの?」

女戦士「父からの増援でドワーフ達が来れば任せられる」

『翌日_トロッコ』


キキーーーー ガチャン


レンジャー「全員降車!負傷者を簡易前哨基地へ運べ!」

ローグ「皆さんお帰りでやんす!!寝床を用意してるんで横になって下せぇ」

アサシン「ローグ!戦利品を降ろすのを手伝ってくれ」

ローグ「アイサー!!」ダダ

アサシン「重いぞ?」

ローグ「うはぁぁ…キラーマシンの部品っすか…よっこら」グイ

アサシン「重装射撃砲もある…これが有ればキラーマシンを遠距離から倒せるらしい」

ローグ「姉さん好みの物ばっかでやんすね」ヨタヨタ

レンジャー「一旦修理が必要だ…製鉄所の方へ運んで欲しい」

ローグ「分かりやした!!」



『製鉄所』


ゴロゴロ ガコン!


女海賊「お!!ローグ!!それどうしたん!?」ダダ

ローグ「アサシンさん達が返って来やした…これは重装射撃砲っていう物らしいっす」

女海賊「おおおおおお!!こんなんあるんか…スゲェ!!60㎜砲弾の精密射撃だ…」

ローグ「修理がして欲しいみたいでやんす」

女戦士「船に艦載してある大砲よりも随分小ぶりだが?」

女海賊「これ見て!!精密水準器だ…水平射撃の精度が全然違うよ」サワサワ

ローグ「なんでも遠距離からキラーマシンを倒せるらしいっす」

女海賊「どんなもんの飛距離出るんだろ…300メートルの精密射撃出来ればキラーマシンなら余裕で火力勝ち出来る」

ローグ「300メートルならプラズマ銃と同じでやんすか?」

女海賊「いやそれ最大射程だね…そうれで言うならこいつは2km以上飛ぶはずだよ…当たんないけど」

ローグ「なるほど300メートルまで精密に狙える訳っすね」

女海賊「おぉぉコレコレこういうのが欲しいのさ…お姉の船に乗せるならこういう奴が良い」

ローグ「とりあえず修理出来やすかね?」

女海賊「おけおけ!!コレ他にもあんの?」

ローグ「同じ物は無いっす…でも他にも色々有るんで持って来やす」

女海賊「ちょいお姉ぇ!!こいつの図面書くから手伝って」


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--------------

--------------

『簡易前哨基地』


ザワザワ 


女海賊「へぇ?オークロードはあの重装射撃砲より長い射程で石投げて来るんだ?」

レンジャー「向こうは移動しながら投げて来る…こちらは固定しなければならない」

女海賊「そりゃ勝ち目無いね」

レンジャー「動く標的には命中精度がなかなか出ないが停止しているキラーマシンなら撃破出来るんだ」

女海賊「なるほど…ほんでトロッコに乗せて遠距離から狙うんだね」

アサシン「だが今は地下線路の浸水でエド・モント砦へはトロッコで進めないのだ」

女海賊「逆に言うと向こうもこっちに来られないんだよね?」

アサシン「いや…泳ぎなら来られる…実際ヘルハウンドの群れが渡って来ている」

女海賊「マジか…」

レンジャー「ヘルハウンド程度なら小隊で対処出来る…水が引かない限り当面は現状維持だ」

女海賊「雨が全然止まないっぽいよ…もう何日降りっ放しなんだろう」

レンジャー「しかしお前…相当な機械フェチだな?」

女海賊「そりゃもう!!これ見て!!」スチャ

レンジャー「俺達の武器を真似たか?」

女海賊「ヌフフ…その上を行くから…見てて?」


バシュン! バシュン! パーン! パーン!


レンジャー「特殊弾が破裂?」

女海賊「飛距離は通常のクロスボウと同じ…着弾で火薬が破裂する仕掛けさ」

レンジャー「おぉ!!」

女海賊「ただ難点が特殊弾を量産出来ない…まぁ私専用だよ」

レンジャー「さすが白狼の一党…こうも簡単に新型兵器を作って来るとは…」

女海賊「これ使って私等はエド・モント砦を上空から攻める計画してるんだ」

レンジャー「何?もしかして例の高機動の気球がハテノ村に有るのか?」

女海賊「あれ?聞いて無かった?重装の気球2台と高機動のが1台…あとドワーフの気球も来てる筈」

レンジャー「そういう事は早く言って欲しかった…そうか地下から攻める一択では無いか…」

女海賊「なんかアンタいつの間に私らの仲間みたいになっちゃってんの?」

レンジャー「今は人間対機械と魔物の戦いになっている…争っている場合では無い」

女海賊「あんた賢いね…そういう事だよ」

レンジャー「よしこうしよう…地下の水が引けるまでの間俺達は地下の安全確保に努める」

女海賊「ふむ…ほんで?」

レンジャー「その間お前達は上空から降下出来る算段を計画してくれ…その際俺達の隊も上空に加わる」

女海賊「上空と地下の2方面から攻めるって事?」

レンジャー「地下線路は避難路だ…主力が上空から行く」

女海賊「なる…ちっとお姉ぇにその話してくるわ」

『製鉄所』


カクカク シカジカ


女戦士「…ふむ…あの黒鉄のレンジャー…相当出来る奴だな」

女海賊「なんかアサシンと相性良い感じだよ」

女戦士「あのような者が黒の同胞に居たのか…」

魔女「どうやら隊を率いる器は主と同じ資質を持って居るのぅ…」

女戦士「よし…女海賊!お前は一度地上へ戻って上空から攻略する術を探してこい」

女海賊「おけおけ!!」

女戦士「魔女は地下の維持に必要だからすまんが一緒に残って貰う」

魔女「分かって居る」

女戦士「それからリカオンを連れて行け…鼻が役に立つだろう」

女海賊「プラズマの銃も持って行って良い感じ?」

女戦士「いま今必要無い…兵隊共に見せびらかすのもアレだしな」

女海賊「おーーし!!新兵器を試してみるぞ!!あ…そうだ」

女戦士「んん?」

女海賊「私のデリンジャーお姉ぇに預ける…お姉ぇは遠距離武器持って無いっしょ?」ポイ

女戦士「良いのか?」パス

女海賊「この新型兵器が有るからさ」チャキリ

女戦士「では使わせて貰う…」チャキリ

女海賊「左手にデリンジャー…右手に破壊の剣…お姉ぇはその格好が一番合う」

女戦士「早く行って来い!」

『坑道最下層』


ワサワサ フミフミ


女海賊「リカ姉ぇ!!一緒に地上上がるよ!?」

狼女「聞こえてた…もう行く?」

女海賊「あれ?ローグもここに居るって聞いてたんだけどなぁ…」キョロ


タッタッタ


ローグ「姉さ~ん!!呼びやしたかねぇ?」

女海賊「あ!!居た居た…これアンタの分!!」ポイ

ローグ「おわわわ…」パス

女海賊「それ無いとアンタ縦穴登れないっしょ?」

ローグ「おぉ!!ワイヤーの仕掛けっすね!!」

女海賊「おっし!!ほんじゃ私等地上に上がるからさ…あとお姉ぇの事お願い」

ローグ「分かりやしたぁ!!」

女海賊「ほんでコレ…リカ姉ぇの分」ポイ

狼女「フフ私は自分で登れるのに…」

女海賊「なんだそんなに身軽だったのか…」

狼女「お前より体重が軽いからな?」

女海賊「ムッカ!!悪いけど私はデブじゃないから!!筋肉が重いだけなんだよ」

狼女「競争してみる?」ニヤ

女海賊「何そのエルフみたいな態度…」スタタタ ピュー

狼女「無駄よ」シュタタ

女海賊「フフフ…ワイヤーはこうやって使うんだ」パシュ シュルシュル シュタ

狼女「!!?飛んだ…」シュタタ

女海賊「そっち遠回りだから…お先ぃぃ!!」スタコラ

『坑道入り口』


ハァハァ フゥゥゥ


女海賊「くっそ!!なんでそんなに早いのさ!!」ハァハァ

狼女「言ったでしょ?無駄だって…」ハァハァ

女海賊「リカ姉ぇも息上がってんじゃん」

狼女「でもそのワイヤーがすごく良い事は分かった…使わせて貰う」

女海賊「初めから素直にそう言えば良いじゃん…」

狼女「ふぅぅ…やっとゾンビの嫌な匂いから解放…」スゥゥゥ ハァァァ

女海賊「ちっと温泉入って行こうか」

狼女「そのつもり…服も綺麗に洗わなきゃ…」

女海賊「もう何日水浴びして無いんだろう…そろそろアソコ腐りそうだ」

狼女「ちょっと匂い移るから近付かないで」

女海賊「てかリカ姉ぇも濡れた犬臭いんだって」


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『温泉』


ザバァァァァ ザザザザー


女海賊「はぁぁぁ超気持ち良いなぁ…」

狼女「服脱がないの?」

女海賊「服も一緒に洗えるから良いじゃん」ゴシゴシ

狼女「私が気になるの!!脱げ!!」グイ

女海賊「濡れてるから着る時大変なんだって…」ジタバタ

狼女「ダマレ脱げ!!」グイ

女海賊「あれ?リカ姉ぇ尻尾が…」

狼女「あぁ…生きた血肉足りなくて隠し切れなくなって…」

女海賊「これ尻尾で体洗って良い?」ゴシゴシ

狼女「ちょっと!!止めて!!」

女海賊「良いじゃん!!これで背中洗える」ゴシゴシ


バチーーーン


女海賊「痛った!!」ヒリヒリ

狼女「私の着替え持って帰って!!」

女海賊「え?」

狼女「ちょっと狩りして来る」ガブリ


ムクムク モサモサ


女海賊「うっわ…変態って見ちゃいけない感じだね」

ウェアウルフ「うるさい!!狩りしたら戻るから先に帰ってて」ピョン シュタ

女海賊「へいへい…どうすっかなぁ…こんな土砂降りで…」

女海賊「しっかり温まってダッシュで還るかぁ…」


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『大型気球』


ザブザブ ドテ


情報屋「あら?女海賊じゃない…どうして?」

女海賊「温泉で温まり過ぎた…」

商人「ハハずぶ濡れだ…着替えた方が良いね」

女海賊「あんたどっか行ってよ」フラフラ

商人「君の裸なんか興味無い」

女海賊「まぁ良いや…情報屋着替えある?」

情報屋「残念ながらみんな濡れてしまって…」

女海賊「乾かすしか無いかぁ…」ヌギヌギ

情報屋「此処だとなかなか乾かないわよ?」

女海賊「コレだよ…」


ピカーーーー


商人「うわっ…光の石か…目に痛い」タジ

情報屋「それ暖かいわね…」ポカポカ

女海賊「ちっと日光浴で休む…」グゥ

商人「いやぁ素っ裸で寝てしまうなんて女とは思えないな…」

情報屋「一応毛皮を被せておきましょう」

商人「…じゃぁ話の続きをしようか」


現時点でハテノ村は南極に位置する訳だ…

気温が下がって来ないのは分厚い雲のお陰で急には下がらない

下がるとしても何日か掛けて寒くなるけどその間にどんどん緯度が変わって行く

海士島付近が南極点に位置するとしてハテノ村の最終緯度はほぼ元の位置

つまり北と南が反転する…太陽の登る位置が変わる…

それ以外の影響はあまり大きく無いという事か


情報屋「緯度は少し赤道に寄るから暖かくなる筈ね」

商人「今地軸がどれくらい移動したのか観測する術が無いね…天候が晴れないと何も出来ない」

情報屋「とりあえず食料が足りないという事は無いからしばらく様子見ね」


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『数時間後』


シュタタタ ドテ


商人「うお!!リカオンまで裸?」

狼女「寝る…」ゲフー

商人「どうなってるんだ今日は…」

情報屋「困った2人ね…よいしょ」グイ

狼女「すや…」zzz

情報屋「あら?リカオンは軽いのね…」ヨッコラ

商人「君も脱いだら?」

情報屋「ダメよ私はもうおばさんなのだから…」

商人「ハハ気にして無いけどね」

情報屋「私は恥ずかしい気持ちを持って居るの」

商人「さて…そろそろ影武者が取引から戻って来るだろうから外に出て居ようかな…」スック

情報屋「南のオークと良い関係になれば良いわね」

商人「そうだね…こうやって何回か取り引きすれば関係も良くなるはず」

情報屋「オークが石炭とか骨も食べると言うのはどうやって知ったのかしら?」

商人「影武者がハーフオークの子が食べて居るのを見た事が有るらしい」

情報屋「そう…見返りに何が貰えるのか少し楽しみね」

商人「僕もだよ…じゃぁ行って来る」

『ハテノ村_広場』


フワフワ ドッスン


商人「やあ!影武者待って居たよ…取り引きは上手く行ったかい?」

影武者「商人さん濡れてしまいます…中へどうぞ」ササ

盗賊「おい影武者!球皮どうすんだ?片づけて良いんか?」

影武者「荷を入れ替えたら直ぐに漁村へ向かうからそのままで良いよ」

商人「君は忙しいねぇ…」スタ

影武者「商人さんこれを見て下さい…」

商人「おぉ!!薬草と毒消し草…琥珀もあるじゃないか」

影武者「全部錬金術の良い材料になります」

商人「オークがこんなものを持って居るのか…」

影武者「これは降ろしてハテノ村で加工しましょう」

商人「錬金術師なんか居たっけ?」

影武者「はい…傭兵の一人に錬金術に詳しい方が居ます」

盗賊「おい影武者!!石炭を積めるだけ積んどきゃ良いんだな?」ゴソゴソ

影武者「そうだよ」

盗賊「おい商人!!お前も荷の入れ替えを手伝え!!」

商人「あ…あぁ…」

盗賊「残念だったな?今じゃお前も雑用係よ…ヌハハ」ヨッコラ

商人「僕は嬉しいよ…影武者の働きぶりを見ると」セッセ

盗賊「どうやら影武者はお前より気が利くんだ…相手の欲しい物を見抜いてるって言うのか?」

商人「そうか…もう次の事を考えて居るんだね」

盗賊「まぁ任せておけ」

商人「そうだね…」


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『大型気球』


うひゃぁぁ ドタドタ


盗賊「あぁぁビタビタになっちまったぜ…」ポタポタ

情報屋「おかえりなさい…光の石で日光浴出来るからあなたも脱いだら?」

盗賊「光が漏れてると思ったらそういう事か…女海賊来てんだな?」

情報屋「寝てるから起こさないように…」

盗賊「うお!なんだ裸で寝てんのか…しかもリカオンまで…」

情報屋「疲れているのよ…あまり見ちゃダメ」

盗賊「ガキには興味無え」

情報屋「はい海賊王が持って来たお酒」スッ

盗賊「おぉ気が利くなぁ…」グビ プハァ

情報屋「商人は居る?」

商人「少し貰うよ」

盗賊「ヌハハこりゃちょっとした酒場だ…お前がマスター役な?」

情報屋「何言ってるの…はい商人!」スッ

商人「これで吟遊詩人が居ればねぇ…」

盗賊「アイツは教会で子守役よ…ガキ共に気に入られてるみたいだしな」

商人「向こうは向こうで娘達が酒場みたいな事やってるよ」

盗賊「ガキがうるさくて落ち着かん…しかし日光浴が気持ち良いな」グビ

情報屋「そうね…随分太陽を見て居ないから」

盗賊「地下線路に籠ってる奴らなんかずっと見てないだろうけどな?」

商人「光の石をこっちに持って来て良かったのかな?」

盗賊「あっちは魔女が居るんだ…照明魔法で明るい訳よ」

商人「あぁそうか…」

盗賊「ほんで女海賊とリカオンが揃って戻って来るって事は何か有るんだろうな?」

情報屋「まだ何も聞いて居ないわ?…此処に来ていきなり寝てしまったから」

盗賊「まぁ起きるまで酒飲んで寛ぐべ…」グビ プハァ



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『夜?』


ガバッ! キョロ!!


盗賊「いよーう!起きたか?」

情報屋「服が乾いているからこれを着て?」

女海賊「またやっちゃったなぁ…寝過ごした」ゴソゴソ

盗賊「ケツ見えてんぞーヌハハ」グビ

女海賊「うっせー!見んな!!」

情報屋「ワームの肉焼けてるけど要る?」

女海賊「ええ!?シカ肉の方が良いよぉ…」

情報屋「シカ肉は保存用で全部干し肉にしてしまったのよ…こっちの方が美味しいわ?」

女海賊「私のウンコ食ったイモムシはパース!!要らん!!」

盗賊「俺が食うからヨコセ!!」グイ ガブリ

商人「…それで?君達2人が地上に出て来たのは理由が有るんでしょ?」

女海賊「エド・モント砦を上空から探す為さ」

盗賊「狭間に隠れてるんだぞ?空からじゃ無理だな」

女海賊「アダマンタイトで狭間になってる訳じゃ無いんだ…自然に起きてる狭間」

盗賊「同じだろう?」

女海賊「光の石で狭間を遠ざけるのさ…そしたら探せるかも知れない」

商人「おぉ!!そういう事か…」

女海賊「ほんで鼻の利くリカ姉ぇと一緒に探しに行くんだ」

商人「それなら僕も行きたいな…どのくらい地軸が移動したかこの眼で確かめたい」

情報屋「私もよ…」

盗賊「ぐはぁ…ヤベェな俺は置いてけぼり食らっちまう」

女海賊「あんたは早く遺跡掘り起こしてよ」

盗賊「ガーゴイルが来るからよう…なかなかそういう訳にも行かなくてな?」

女海賊「今酒飲んで寛いでんじゃん!!めっちゃ暇そうなんだけど!!」

盗賊「いやこれでも警戒中よ…ホラ?」スチャ

女海賊「プラズマの銃か…それ他の人に使わせたら?」

盗賊「ダメだ…他の奴らはセンスが無ぇ…こいつはリロード時間計算して使う必要が有るのよ」

女海賊「ほーん…まぁ良いや…どっちにしても雨止まないと穴掘りも危ない」

盗賊「うむ…いつ崩れるか分からんからドワーフもあそこには近づかん」

女海賊「ちょいリカ姉ぇ起きたら早速行こっか…キ・カイの様子も見て来たいし」

商人「そうだね…出来るなら物資調達もしたいな」

女海賊「物資?何が居るん?」

商人「ホムンクルスの生体に使う材料さ…」

女海賊「もう一人のホムちゃん用か…」

情報屋「キ・カイに行くなら一人だけ助け出したい人が居るのだけれど…」

盗賊「お?前に言ってた足の不自由な学生だな?女狐の隠し子なんだろ?」

情報屋「そう…放って置けない」

女海賊「おけおけ!!おい!!リカ姉ぇ!起きろ!!」グイグイ

狼女「ぅぅん…」パチ キョロ

女海賊「なんか太った?」

狼女「調子に乗ってシカ一匹全部食べた…反省してる」

女海賊「ちょ…なんで残してくれないのさ!!」

『鯨型飛空艇』


ヨッコラ ドスン!


女海賊「よっし!これで硫黄は満載…ほんじゃ出発すんよ」グイ


シュゴーーーーー フワフワ


商人「あ!!あれはベヒモスだ!」ユビサシ

情報屋「本当ね…このままだと村が襲われそう」

女海賊「リカ姉ぇ!!このインドラの銃で狙撃して」ポイ

狼女「プラズマの銃と使い方は同じ?」

女海賊「望遠鏡覗いて撃つの…2発撃てるから外したら修正すれば良い」

狼女「分かった…」スチャ

女海賊「この距離なら十分当たる筈…」

狼女「よし…当たれ!!」カチ


シュン! パパパパパン! チュドーーーン


商人「当たった…でも頭は外してる…逃げられるぞ?」

狼女「次で仕留める…」ガチャコン カチ


シュン! パパパパパン! チュドーーーン


狼女「あぁぁぁ頭は外れた…」

女海賊「おけおけ!2発も当たってたら無事じゃ無いから」

商人「これさ?空中で当たった雨粒が水蒸気爆発してる?」

女海賊「そだね…それで微妙に狙い狂って頭外してると思うよ」

狼女「…そういう事か」

商人「ようし!僕はクロスボウで警戒しておこうかな」ガチャ

情報屋「私は反対側を見て置く」ガチャ

狼女「まだプラズマの銃が残ってる…そう考えるとこの飛空艇の火力はスゴイな…」

女海賊「あれ!?思ったより気温低くて高度上げるとヤバいかも…」

情報屋「今は南極圏の筈…上空の氷が怖いわね」

女海賊「ちょい低空で行くわ…ガーゴイル警戒してて」グイ


シュゴーーーーー ビュゥゥゥゥ


商人「視界悪いねぇ…」キョロ

女海賊「ぬぁぁぁ羅針盤もダメだぁ…方向分かんないじゃん!」

商人「影武者は川を目印に河口まで行くと言ってた」

女海賊「おけおけ…一回それで雲の薄い所に出たい…ちょい遠回りだけど…」

『翌日_河口付近』


シュゴーーーーーー ヒュゥゥゥ


商人「霧の向こうに海賊船が見える…」

情報屋「ここに集まって来て居るのね」

女海賊「ちょい高度上げて雲の上に出る…揺れるよ?」グイ


グラグラ


女海賊「やっぱ寒いな…今の時点で-20℃だ…」

商人「そんなに感じないけどね?」

女海賊「クモの巣で断熱されてるのかも…」

狼女「視界開けて来た…太陽の位置が低い!」

女海賊「やっぱ方角分かんなくなるね」

狼女「この位置なら海と陸の方向は分かるよ…とりあえず海岸沿いにキ・カイ方面だね?」

女海賊「うん…操舵まかせるわ…わたしちょっと観測する」ゴソゴソ

商人「観測?どうやって?」

女海賊「見えてる星座がどの星座か見るだけさ」

商人「なるほど…それでおよその方角が分かるか…」

女海賊「だと良いけど…」



『1時間後』


女海賊「ダメだァァァなんも分からん!!」

狼女「下も全部霧で覆われてて方向見失いそう…」

情報屋「やっぱり相当深刻ね…海は航海出来ないわ」

商人「陸地が頼りだ…高度落とした方が良いよ」

女海賊「そだね…安定飛行してハイディングしたかったけど無理っぽい」

狼女「高度下げる…」グイ

女海賊「あ!ちょちょちょ…球皮の熱抜かないと高度下がんないんだ…ここ引っ張る」グイ


バサバサ スイーーー


狼女「へぇ?全然操作方法違うんだ…」

女海賊「慣れれば簡単だから」

『海岸沿い』


商人「流氷が流れてる…」アゼン

情報屋「どこから流れて来たのかしら…」

女海賊「未来の予言だと海士島付近が南極点だったね…地球は常に回ってるから今の極点はどんどん移動してる…」

情報屋「その筈…もしかするとこの場所が極点かも知れない…でも明日は違う」

女海賊「そうかそれで羅針盤がいつも違う方向差すのか…という事は羅針盤の動きをしっかりメモしてれば良いな」

商人「おお!!?そういう事か…君賢いな!!」

女海賊「うーん…時間を正確に把握できないのと現在地もイマイチ分かんない…やっぱ意味無いな…」

商人「いや…それでも参考にはなる…どれくら地軸がズレたかのね」

女海賊「それって現在地に対してだよ…私等移動してるから分かんなくなる」

商人「あぁぁ…確かに…」

女海賊「結局地軸の移動が安定してからじゃ無いと何やっても意味無い」

情報屋「いつ始まったのかも分からないものね…」

女海賊「せめて晴れて居れば南極星の角度で分かるんだけどね…」

商人「気球で雲の上まで行ったら今度は球皮が邪魔か…」



『キ・カイの壁外』


フワフワ ドッスン


商人「よし!僕は荷車持って来て硫黄を運ぶ…」

情報屋「手伝わなくて良いの?」

商人「あまり人が集まっていると逆に怪しい…僕一人で大丈夫だから君達は自由にしてて良いよ」ゴソゴソ

女海賊「集合はいつにすんの?」

商人「チカガイ居住区の商人ギルド支店にある僕の隠れ家は分かるよね?」

情報屋「ええ…」

商人「明日のこれくらいの時間に集合しよう…それまでに取り引き終わらせるから」

情報屋「わかったわ…例の足の不自由な子も連れて行く」

女海賊「私その場所知らないんだけどさぁ…」

情報屋「案内するわ…まずそこに行きましょう」

女海賊「おけおけ!私もちょっと買い物したい」

情報屋「何が必要?」

女海賊「測量機と望遠鏡さ…緯度と経度調べたい」

情報屋「それなら専門の店があるから教えてあげる」

女海賊「おぉ!!でもあんまお金無い」

商人「僕の隠れ家にある金貨は適当に使って良い」

狼女「それなら私の着替えも…」

女海賊「おっし!!リカ姉ぇのコーディネートも変えよう…行こ!!」

商人「じゃぁ…明日隠れ家で」ノシ

『旧市街地』


ヒュゥゥゥ… シーン


情報屋「もう誰も地上で生活して居ないのね…」

女海賊「向こう側はまだ明かりが付いてんじゃん」ユビサシ

情報屋「この感じ…100日の闇を思い出す」

女海賊「そういやあん時も誰も居なかったね…死体が積み上げられてたっけ…」

情報屋「まだ若くて何も知らなかった…今世界の事が色々分かってやっと公爵の行いがどんな物なのか理解出来る」

女海賊「あん時に公爵は今の私達と同じ感じだった?」

情報屋「そうよ…私達のずっと先を行ってたの…公爵もまた英雄の一人だと思うわ」

女海賊「英雄ねぇ…なんか違う気がするけどな」

情報屋「手段はどうあれ世界を導いてる…私達も別の手段で人を導いてる…残念だけど噛み合わなかった」

女海賊「ねぇ…予言の話なんだけどさ…地軸の移動の後に人類が滅ぶって奴…それ未来が回避したんじゃ無かった?」

情報屋「放射能という毒で子供が生まれなくなるのは回避した様ね…でも本当はそれだけじゃ無いの」

女海賊「本当の事って何さ?」

情報屋「良く見て?私は年老いる…あなたは?」

女海賊「え?あぁゴメン若いのを見せびらかすつもりは無いんだ…」

情報屋「人間の純血は遺伝的に終末を迎えてしまうのよ…あなた達との混血しか残されていない」

女海賊「それってホムちゃんが言ってた事?」

情報屋「そう…それを人間が拒否し続けた結果悪い方に事が転んだ」

女海賊「戦争…」

情報屋「精霊はエルフやドワーフ…ノームもオークとも混血させて人間を保存する事を画策したの」

女海賊「ホムちゃんが言ったまんまだね」

情報屋「そうしないと生き永らえない…でも人間はそれらを魔物と定義して嫌がった」

女海賊「私は自分を人間だと思ってるんだけどね」

情報屋「ニュータイプと言えば良いのかな?純血のオールドタイプはそれを嫌がる…それが混沌を生んだ歴史」

女海賊「オールドタイプが滅ぶっていう事か…」

情報屋「もしかするとすべて精霊の計画通りなのかも知れないわ…」

女海賊「ちょいピーンと来た事あんだけど…」

情報屋「何?」

女海賊「光る隕石落としたのホムちゃんって言う可能性は?」

情報屋「フフ…それは商人がずっと前から疑ってる…でも確証が無い」

女海賊「あぁぁぁなんか色々分かって来た…」

情報屋「公爵が純血を保とうとする信条をあなたは理解できる?」

女海賊「失いたくない心?歴史?愛?…人が持って居る何か…」

情報屋「それを誰に折る事が?」

女海賊「私知ってる…人の心も歴史も愛も何もかも残せる物がある…」

情報屋「え?」

女海賊「歌だよ…」


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『チカガイ居住区』


ザワザワ ガヤガヤ

志願兵を募ってるってよ…これで食いっぱぐれる事は無くなる

製鉄所でも働き口があるそうだ…どうする?

ザワザワ ガヤガヤ


情報屋「…良い測量器具見つかった様ね」

女海賊「丁度たたき売りしてて良かった」

情報屋「それ六分儀ね?」

女海賊「そそ…あと機械式の時計さ」

情報屋「時計は値が張ったんじゃない?」

女海賊「どうせ商人のお金だし良いんじゃね?…ほんでリカ姉ぇは?」

情報屋「さっき着替えに行って…あ!居た居た」


シュタタ


女海賊「だぁぁ何だよその格好は…男みたいじゃん!!」

狼女「悪いか?」ギロ

女海賊「もうちょっとお洒落に気を使えよ」

狼女「お前は派手過ぎだ…尻が半分見えてる」

女海賊「まぁ良いや!どうせ又破けて着替えるんだから」

情報屋「じゃぁ私は例の子を迎えに行って来るからここで分かれましょう」

女海賊「おけおけ!隠れ家で待ってれば良いね?」

情報屋「まだ時間があるから騒ぎを起こさない程度に散策しても良いわ」

女海賊「騒ぎねぇ…」チラ

狼女「…」シラー

女海賊「リカ姉ぇ!チカテツ街道8番見に行こうか」

情報屋「立ち入り禁止よ!?」

女海賊「分かってる!ちょっとどんな感じか見るだけさ」

狼女「こっちだ!」シュタタ

女海賊「ああ!!ちょい待って…情報屋これ預かってて」ガシャ

情報屋「あ!!もう!!」

女海賊「六分儀…隠れ家に突っ込んどいて!!すぐ戻る」スタタ

情報屋「あの2人は…」プン

『チカテツ街道8番_物陰』


ドタドタ

火炎放射器の搭載急げぇ!!

榴弾砲は後方に配置!!貫通砲は前列だ!!


女海賊「…うわ…重装射撃砲いくつあんだろ」

狼女「ここは最終防衛に使う予定みたいだ」

女海賊「あぁそんな感じだね…確かエド・モント砦はこの8番からしか通じて無かった筈」

狼女「この様子だとキ・カイまで魔物が入られることは無さそう…」

女海賊「前線が何処にあるか分かる?」

狼女「エド・モント砦の一つ手前の分岐らしい…ここからトロッコで20時間くらい」

女海賊「結構向こうまで攻めてるんだ」

狼女「殆ど一本道だからね…あの大砲ならグレムリンも一発で仕留められそう」

女海賊「レイスとか出てきたらまた事情が変わるなぁ…」

狼女「その話も聞こえて来る…海抜の低い場所だと出ないとか…」

女海賊「あ!!そういやそうだ…地下は深い狭間にならないんだった…」

狼女「危ないのはむしろハテノ村の方だよ」

女海賊「ほんじゃこっちはあんま心配無いね」

狼女「軍部の派兵団と憲兵団で足並み揃って無い様だよ…さっきからずっと言い争ってる」

女海賊「なる…攻めるか守るかって感じね?」

狼女「エド・モント砦に籠ってるのが機兵団だね…全部でキラーマシン500台程度らしい」

女海賊「ふ~ん…」ハナホジー ポイ

狼女「んん?なるほど…」

女海賊「何?自己完結しないでくれる?」


キ・カイの指導部では今回のクーデターがオークと協調している様に見えてる様だね

エド・モント砦に攻め入るタイミングで再度キ・カイ本拠地へオークがなだれ込んで来るのを警戒している

オーク側に一人の科学者が亡命したのが協調している証拠だとか…


女海賊「科学者?亡命?何の話?」

狼女「私にはとてもバカバカしい揉め事に聞こえる…オーク側に亡命したのは頭のおかしいジャンク屋だと言うのに」

女海賊「ほ~ん…」ハナホジー ポイ

狼女「さっきから鼻ほじってポイポイするの止めてくれる!!?」イラ


兵隊「そこに居るのは誰だ!!」ダダ


女海賊「ヤバ…」

狼女「各自で隠れ家!」ピョン クルクル シュタ

女海賊「うわ…はや!!」スタタ

兵隊「ここだな!!?」ダダ

女海賊「ハイディング!」スゥ…

兵隊「おかしいな…確かに人影が見えたのに…ん?」キョロ

女海賊「しまった…ここハイディング安定しないんだ…」

兵隊「居た!!動くな!!」チャキリ

女海賊「ベロベロベー…」パシュ シュルシュル シュタ

兵隊「何ぃ!!機動隊か!!」ダダ

女海賊「やばやば…」スタタタ ピューーー

兵隊「憲兵!!憲兵!!出動!!」


ピィィィィィィィィ


女海賊「煙玉の特殊弾…」ゴソゴソ ガチャコン

兵隊「待てぇ!!」バシュン バシュン

女海賊「動く相手に簡単に当たるもんか!!食らえ!!」バシュン バシュン

兵隊「あの武器は間違い無く特殊機動隊…」ダダ


モクモクモク モクモクモク


兵隊「くそう!!どこだ!!」キョロ

女海賊「あらよっと!!」パシュ シュルシュル シュタ

兵隊「上か!!ちぃぃぃ…通常兵装で追える訳無い…」ダダ

女海賊「もっかいハイディング!」スゥ

兵隊「ダメだ…光学迷彩まで…」キョロ


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『商人ギルド支部』


ザワザワ ザワザワ

また8番の方で何か有った様だ…

なぁに憲兵団が沈めてくれるさ…この間だってオークを追い返したのは憲兵団だ

もう!静かにしてよ!!取引の邪魔になる!!


情報屋「…あの2人ったら」キョロ

青年「2人?」

情報屋「こっちの話よ…あなたは気にしなくて良いの」

青年「先生…僕はこれから何処へ?」

情報屋「もっと世界を勉強しに行くの…狭い学舎とはお別れよ」

青年「世界…見てみたかったんだぁ…」


スタスタ


商人「あ…情報屋!ここに居たのか」

情報屋「商人!?取引は?」

商人「ハハもう終わったよ…政府が全部買い取ってくれた」

情報屋「錬金術の材料は?」

商人「直ぐに揃えてくれたさ…もうここに用は無い」

情報屋「じゃぁあの2人待ちね」

商人「僕は先に飛空艇へ荷物を運んで来るよ」

情報屋「それなら女海賊の荷物も一緒に運んで?」

商人「良いよ…何処かな?」

情報屋「あなたの隠れ家に置いてあるわ…六分儀よ」

商人「なるほど…一緒に持って行く」スタ

情報屋「この騒ぎ…地上に出られなくなりそうね…」

商人「かもねぇ…」

情報屋「先にこの子も飛空艇に乗せて置いた方が良さそう…私も一緒に行くわ」

商人「じゃぁ僕は飛空艇で留守番かな」

情報屋「そうね…急ぎましょう」


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『鯨型飛空艇』


ゴトゴト ヨイショ!!


青年「スゴイ!!何だコレ…」キョロ

情報屋「車椅子は荷室に入れて置くわ…ハンモックへは自分で上がれる?」

青年「這って行けば大丈夫…自由に見て回って良いの?」

情報屋「勝手に動かして壊してしまわないなら…」

商人「僕が見て置くよ…」

情報屋「それなら安心ね」

青年「水銀柱…水頭柱…ピトー管…ジャイロ…測量器具に六分儀…温度計はこれか…」

情報屋「興味身心ね?」

商人「珍しい書物もあるよ?」

青年「先生!!紙とペンが欲しい」

商人「あるある…好きな様にメモ取れば良い」ポイ

情報屋「じゃぁ商人!私は隠れ家であの2人を待ってるから…あとはよろしく」

商人「青年くん!!君は僕と境遇が似てるねぇ…」

青年「ハハそうなんだ?」

商人「僕は心臓が悪かった…君は足だ…どうしてそんな子供が生まれて来るか考察してみよう」

青年「え?」

商人「実は…」


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『商人ギルド支部_隠れ家』


ガチャリ バタン


情報屋「…」ジーーー

女海賊「…」ヒョコ

狼女「…」ヒョコ キョロ

情報屋「ふぅぅ…あなた達二人とも…無事ね?」ヒソ

女海賊「外ヤバイ感じ?」

情報屋「厳戒態勢よ…まったく…」

狼女「ドジったのは女海賊の方さ」

女海賊「私がタゲ引いちゃったからリカ姉ぇは安全に逃げられたんだって!」

情報屋「まぁどっちでも良いわ…兎に角このままでは地下から出られないから政府用の連絡通路から出るわよ」

女海賊「おけ!!地上まで出たらハイディングで上手く逃げられる」

情報屋「でも朝まで待たないといけない」

女海賊「今昼か夜か良く分かんない…夜?」

情報屋「朝と言う表現が良く無いわね…連絡通路の門番が来たらっていう事」

女海賊「そういう事ね…」

情報屋「これで分かったでしょう?どうして人間同士争う事になってしまうのか…」

女海賊「え!?」

狼女「…」

情報屋「私は騒ぎ起こさないように言ったわね?…でもあなた達は能力が高いから行動した」


その行動は普通の人には出来ない事なの

きっとそれを見られてしまった訳

人間は自分たちの考え超えた何かをとても恐れる

それは猜疑心を生んで味方を疑い始める


女海賊「ほんじゃ私達の行動で仲間割れ起こさせてんの?」

情報屋「それが人間の弱さよ…恐れて居るの」

狼女「その通りだよ…私は全部聞こえてた…誰も悪く無いのに人を疑う…そんなやりとりばかり」

女海賊「てか何もしてないんだけどね…隠れて見てただけ」

狼女「誰かに見られて居るっていうだけで猜疑心が生まれる…」

女海賊「バッカみたい」

情報屋「そうね…でもそれが人間なの…許して」

女海賊「あ…ゴメンなんか責めてるみたいな事言って…」

情報屋「良いのよ…」ニコ

女海賊「私さぁ…人間の凄い所って愛だと思うんだ…」

情報屋「え?」

女海賊「盗賊も人間じゃん?アイツが語る愛ってさ…なんか深いんだよ…ほんで言い返せない」

女海賊「そういう愛を歌にして皆に聞かせてる吟遊詩人も人間なんだ」

女海賊「人間の定めは愛を紡ぐ事だって昔魔女が言ってたんだけどさ…やっぱその通りかなって最近思った」

女海賊「無くしちゃダメだよね?愛を紡ぐって事…」

狼女「…」ガシ グググ

女海賊「なんだよ急に!!」

狼女「見直しただけ…」ギュゥ

情報屋「私達人間を守ってくれる?」

女海賊「なんか守らなきゃいけない気がして来た…大事な心を失ってしまいそう」

情報屋「まだ子供達が残されてる…私達が守らなきゃ…」


--------------

--------------

--------------

『朝?』


ヒソヒソ…

政府用の連絡通路に出たら直ぐにハイディングして飛空艇に行って…

その通路はかなり高所にあるから上手く伝って降りれば良い

あなた達なら簡単でしょう?

その後私は通常の出口から出て合流するわ…じゃぁフードを深く被って…


門番「止まれぇ!!ここは関係者以外立ち入り禁止だ!!」

情報屋「これを…」スッ

門番「んん?学者か…何をしに来た?」

情報屋「この学生2人に軍港を見学させに来ました」

門番「ふうむ…連絡は来ていないが…」

情報屋「リヴァイアサンの雷エネルギー量を算出する為に軍港の形状を見せておきたいのです」

門番「…」ジロリ

情報屋「通っても?」

門番「機械省の者か?」

情報屋「い…いえ考古学部門です」

門番「ふむ…パスにもそう書かれて要るか…通れ!!軍港の奥には抜けるな?」

情報屋「はい…失礼します」ペコリ スタ

女海賊「…」ペコリ

狼女「…」ペコリ


-------------


情報屋「このまま軍港へ向かう通路の上に来たらハイディングして逃げて…」ヒソ

女海賊「おっけ!」ヒソ

狼女「…」クンクン

女海賊「リカ姉ぇ行くよ…」グイ

狼女「…」キョロ

女海賊「ハイディング!」スゥ

狼女「あ…」

女海賊「何してるんだよ…飛び降りるよ!!」

狼女「ダメ!!狙われてた!!」

女海賊「ええ!!?」

狼女「情報屋が諜報員だってバレてる…」

女海賊「ヤバ…戻る!!」


リリース!! スゥ

『一瞬前』


撃てぇ!!

バシュン バシュン バシュン バシュン


兵隊「き…消えた…」

隊長「光学迷彩だ!!構わず撃て!!」


バシュン バシュン バシュン バシュン


情報屋「え!!?」グサ グサ

情報屋「待ち伏せ…」ヨロ


リリース! スゥ…


女海賊「リカ姉ぇ!!情報屋背負って逃げて!!」パシュ シュルシュル

狼女「分かった!!」ガブリ


ムクムクムク モサモサ


兵隊「ウェアウルフだ!!化けていやがった」ガチャコン バシュン!

狼女「情報屋!!背中に掴まって!!」

情報屋「くぅぅぅ…」ヨロ ポタポタ

狼女「くそう…」グイ ピョン

女海賊「早く行って!!」バシュン バシュン


モクモクモク モクモクモク


隊長「上だ!!撃ち落せ!!」

兵隊「なんだアイツ…空中を飛んで居るのか…」バシュン バシュン

女海賊「閃光弾…閃光弾…」ゴソゴソ ガチャコン


バシュン バシュン ピカーーーーーーーーーー


--------------

--------------

--------------

『下の路地』


ピョン シュタッ


情報屋「ぅぅぅ…」ポタポタ

狼女「急所には当たって無い?」シュタタ

情報屋「胸…息が出来ない…ごふっ…ごぼごぼ…」

狼女「浅く…早めの呼吸で…」シュタタ

情報屋「フッフッフッ…」

狼女「商人がエリクサー持ってる…我慢して」シュタタ

情報屋「…」クター

狼女「女海賊…空中で戦って居るのか」シュタタ

狼女「アイツあんな戦い方を…」


-------------

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『連絡通路』


パシュン シュルシュル シュタ


女海賊「足場崩してやる…」チャキリ シュン


チュドーーーーーン! パラパラ


兵隊「どわぁぁぁぁ!!…」ゴロゴロ

隊長「何ぃ!!あの兵器は古代の物か…」タジ

兵隊「まだ狙える…」ガチャコン バシュン バシュン


ピーヒャララ~♪


隊長「何の音だ?」キョロ

兵隊「笛を吹いて…」


シュン グサ! モクモクモクモク


兵隊「うがぁ…煙が…なんだこれは!!」モクモク

隊長「ええい!!どけ!!」ドン

兵隊「これは殺傷兵器じゃない…軽傷で済む…」モクモク

隊長「あの手この手と忌々しい…さっさと煙を止めんか!!」

兵隊「奴らは何処へ…」フラ

隊長「またワイヤーを使って上に登り寄った…」

兵隊「…この戦い方は機動隊じゃない!!白狼の盗賊…」

隊長「なんだとぉ!?」

兵隊「見た事がある…煙と閃光…光学迷彩…そして誰も殺さない…」フラフラ

隊長「まさか白狼の盗賊が絡んで…」フラ

兵隊「女だった…のか…」ドタリ

隊長「おい!!しっかりしろぉ!!」ユサユサ


---------------

---------------

---------------

『鯨型飛空艇』


ゴボ ゴボゴボゴボ


青年「胸から血が噴き出て…」オロオロ

商人「肺に穴が開いてる…エリクサーで傷が閉じるまで出血は仕方ない…人工呼吸を続けて」

青年「気道よし…ふぅぅぅ」ゴボゴボ

商人「口から血を吸って吐き出すんだ…胸の穴は僕が押さえておく」ギュゥ

青年「ふぅぅぅ…」ペッ

情報屋「…」クター

商人「よしよし…賢者の石で傷口がふさがりかけてる…」

狼女「血が出過ぎてる…」

商人「輸血しよう…青年!君の血を情報屋に移す…腕を」

青年「はい…」スッ

商人「人工呼吸はそのまま続けて…管を入れるから少し痛むよ」グサ

青年「うぅ…」

商人「大丈夫…きっと助かる」

青年「ふぅぅぅ…」

情報屋「すぅぅぅ…」

商人「よし!!胸が膨らんだ…続けて呼吸を!!」

情報屋「げぇぇぇ…」ピューー ドバー

青年「血を吐き出して…」

商人「良いから呼吸続けて…」


リリース! スゥ


女海賊「情報屋は!?」ハァハァ

商人「こんな情報屋は初めて見た…」

女海賊「やば…線虫!癒せ!」ニョロリ

商人「肺の中に溜まってる血を吐き出させないと…薄めた食塩水作るから手当頼む」スタ

女海賊「線虫!線虫!線虫!肺の中の血を食ってこい!!」ニョロニョロ

青年「こ…この虫は!!?」タジ

商人「君は黙って人工呼吸続けるんだ」ゴソゴソ

『どこかの上空』


シュゴーーーー ビュゥゥゥ


女海賊「高度上げないでおくわ…呼吸落ち着いた?」

商人「どうにか自律で呼吸出来てる…危なかったね」

女海賊「心臓に当たらなくて良かったよ」

商人「そうだね…でも肺も結構な重症だ」

女海賊「あんま出血して無かったから大丈夫と思ってたけど全部肺の中に血が出たんだね」

商人「うん…僕が傷口を無理やり押さえてたのもある」

女海賊「まぁ助かりそうだから結果オーライ」

商人「…それで?情報屋は諜報員だとバレて居たんだ?」

女海賊「リカ姉ぇがそう言ってた…地獄耳で聞いたんだと思う」

商人「もうキ・カイには戻れないだろうね…」


ニョロニョロ モソモソ


青年「…この虫は?」

女海賊「そいつはワームだよ…情報屋の血で床が汚れたから掃除させてる」

商人「虫だらけで驚いたかい?」

青年「あなた達は何者なんですか?」

商人「そうか情報屋から何も聞かされて居ないのか…」

青年「はい…無理矢理連れて来られて…」

商人「僕が渡した書物を読んで大体分かるんじゃないかい?」

青年「勇者達…伝説の話だとばかり…」

商人「話せば一晩じゃ語り尽くせない…彼女の眼を見てごらん」

女海賊「…」パチクリ

青年「青い瞳…伝説は今も…」

商人「まぁそういう事さ…君は書き物が得意なんでしょ?書き残すが良いさ…」

青年「先生が僕に勉強させたい事って…」

商人「書物1000冊あっても足りないくらいの知識が必要さ…そんな人が他にも居る」

女海賊「あんま期待させる事言うとガッカリするじゃない?」

商人「ハハそうだね…まぁラクにしてなよ」

女海賊「ほんでどうする?アテも無く飛んでるんだけど…」

商人「光の石で下を照らしながら飛んで見ようか」

女海賊「爆弾投下用の穴から照らして」

商人「分かった…通称ウンコの穴ね?」

女海賊「分かってんじゃん…さっさとやって」


パカ ピカーーーーーーーー


女海賊「こんなんで分かるんかなぁ…」

『数時間後』


クィ ムグムグ


女海賊「あぁぁこぼしてる…上手い事飲んでくれないなぁ…」

情報屋「…」クター

商人「そりゃ昏睡してるんだから…」

女海賊「ハチミツ勿体ない…」フキフキ

狼女「ふぁぁぁ~あ!」ノビー

女海賊「お!?リカ姉ぇ起きた!!」

狼女「んん?」キョロ

女海賊「言った通り直ぐに服破っちゃったねヌフフ」

狼女「着替えある?」

女海賊「無いよ」

狼女「あっそ…」スック

商人「あのね…青年も一緒に乗ってるんだから少しは気を使った方が良い」

狼女「着替え無いならしょうがないでしょう」

女海賊「わーったわーった!!毛皮加工して直ぐに作るから裸見せびらかさないで」

狼女「分かってたら先に作って置けば良いのに…」

女海賊「うっさいな気が付かなかったんだよ」ゴソゴソ

狼女「それで?今どんな感じ?」

商人「情報屋は昏睡…エド・モント砦探して彷徨ってる…これで通じた?」

狼女「情報屋が無事ならそれで良い…なんかお腹空いたなぁ…」

女海賊「肉なんか無いよ?」

狼女「地上に降りられる?シカ狩って来る」

女海賊「お?肉食える?」

商人「丁度今星が見えてるから一回下に降りて六分儀使うのも良いね…」

女海賊「おけおけ!!ちょい降りよう」

商人「下は雪だけど良いかな?」

狼女「降りる場所は私が決める…早く防寒着作って」

女海賊「直ぐ出来る…ちょい待って」ヌイヌイ


--------------

--------------

--------------

『凍った湖の横』


フワフワ ドッスン


女海賊「リカ姉ぇコレ着て」スッ

狼女「なんか肌の露出が多いんだけど…防寒着が欲しいって言ったでしょう?」ゴソゴソ

女海賊「そんな沢山材料無いんだって!それで我慢して」

商人「僕のマントを貸してあげるよ…」ファサ

女海賊「なかなか似合ってるじゃん」フムフム

商人「ハハどこかの蛮族だねぇ」

狼女「なんで角とか付いてるの?」

女海賊「それ一応防具なんだよ…急所は角でカバーしてる」

狼女「そう…じゃぁ私は林の方に入ってシカ狩って来るからここでキャンプして待ってて」

女海賊「おぉ!!バーベキューか!!よっし!!薪探して来る」

狼女「商人!プラズマの銃を渡しておくから飛空艇を守って」ポイ

商人「そうか僕しか居ないのか…」パス

青年「…」

商人「青年…君は飛空艇の中からクロスボウを使えば良い」

青年「使った事無いです…」

商人「引き金引くだけさ…まぁ使って慣れるんだ」

青年「は…はい」オドオド


-------------

『キャンプ』


メラメラ パチ


女海賊「飛空艇が丁度風よけになって結構暖かいな…」カチャカチャ

商人「そうかい?僕は寒さも感じないんだ…」

女海賊「便利な体だねぇ…」カチャカチャ

商人「僕もバーベキューが食べたいよ…」

女海賊「食えば良いじゃん…お腹壊す前にワームで処理してあげるよ」

商人「ええ!?そんな事出来る?」

女海賊「だからワームはウンコ食ってんだって」

商人「おぉ!!それなら食べても良いのかも…」

女海賊「ふ~む…やっぱ相当緯度ズレてるな…今南極圏の筈だ」

商人「月の方角もおかしい…東も西も分からない」

女海賊「これ同じ場所で定点観測やらないと何も分かんないわ…ここでもう一晩過ごすのも勿体ないし…」

商人「今居る湖の場所は分かるよ…さっき地図で確認した」

女海賊「マジ?」

商人「ちょっと地図持ってくる」タッタ


ドタドタ ゴソゴソ


商人「これさ!!見て」パサ

女海賊「あれ!?全然違う方向に進んでたんだ…」

商人「エド・モントはこの地図でいう東方向さ」

女海賊「これ目標物しっかり見えて無いと探すのムリじゃね?」

商人「うん…現時点で東西の方角が分かったとして…この地図と合ってるかどうか分からない…」

女海賊「2つ以上の目標物が常に見えて無いと絶対迷う…てかハテノ村に戻る自信も無いよ」

商人「この湖に流れ込んでる川…これが先ず目印かな」

女海賊「ふむ…それなら行けるか」

商人「上流まで行けば山が有るからそれを見ながらだね」

女海賊「おけおけ…てかリカ姉ぇ遅いな…もっかい薪探して来るわ」

商人「うん…」

『1時間後』


ジュゥゥゥ


女海賊「ほい山賊焼き!!これ青年に持って行って」

狼女「はいはい…」スタ

女海賊「リカ姉ぇは要らないの?」

狼女「生き血飲んだからお腹一杯…」ゲフー

女海賊「これかなり肉余るなぁ…」

商人「飛空艇に吊るして置いたら勝手に凍るんじゃない?」

女海賊「ダメダメ…風の流れ乱したら直ぐに不安定になる」

商人「捨てるの勿体ないね…」

女海賊「こんな美味しい肉捨てる訳無いじゃん!!」ガブ モグ

商人「まぁスモークでもしようかぁ…少しは長持ちする」

女海賊「やり方わかる?」ムシャ

商人「まぁね?盗賊に仕込まれた…木材のチップが必要なんだけど」

女海賊「おけおけ…薪に持って来たやつすぐカットできる」スパスパ

商人「あと肉も適度な大きさにしておいて」

女海賊「そのままで良いのに…」

商人「釜に入らないじゃないか…」

女海賊「なる…釜に入れてやるんだ」スパスパ

商人「少し時間掛かるから待ってて」

女海賊「うぃーっす!!」ガブ モグモグ


-------------

狼女「女海賊!お前昨日どうやって空中で戦った?」

女海賊「例のワイヤーの仕掛けだよ」

狼女「それは分かってる…どうして空中で方向転換出来るのか…」

女海賊「あぁ…2つ使ってるのさ…ホレ?」

狼女「ベルトの左右に一つづつ…」

女海賊「ほら…リカ姉ぇと競争して負けたじゃん?ほんでもう一個付けたら勝てると思ったのさ」

狼女「右と左を交互に使ってる?」

女海賊「そうそう…そしたら意外とクモみたいに動ける事に気付いた」

狼女「クモの糸…振り子のようにぶら下がってあんな戦い方に…」

女海賊「でも近くに建物無いと意味無い…昨日はたまたまそういう場所だったのさ」

狼女「正直言って驚いた…お前があんな戦い方を出来るなんて」

女海賊「あぁぁぁ快感…もっと言って…エルフを超えてるとかもっと言って欲しい」

狼女「私にももう一つクレ」

女海賊「今無い…ハテノ村に帰ったら作ったげるよ」

狼女「エルフの弓を回避できるとは思わないけど…あの戦い方が出来るのはお前だけだと思う」

女海賊「弓の回避かぁ…もっとスピードが居るのか…」

狼女「まだ改良出来る余地が?」

女海賊「いや気になってたのさ…スピードが落下速度に依存してて初速が遅いんだ…」

狼女「フフ…創意と工夫次第でどんどん強くなるか…」

女海賊「う~む…空中で初速得るならやっぱ風の魔石使わないとダメだなぁ…」ブツブツ


空中で風の魔石使ったとしても大した推進しない…

いやそもそも速度どうやって得てたっけ?

待てよ…巻き取る速さを変えられる様にしておけば良いか…

巻き取りが早いとその分運動エネルギー得てる…それを次の振り子に活かせば良い…

『林』


パシュン シュルシュル


女海賊「振り子の速度にワイヤー巻き取る速度加えて増速…」パシュン

女海賊「ほんで次の回転運動に繋げる…」シュルシュル


グルン ヒュン ヒュン


女海賊「おっしイケる!!」パシュン シュルシュル ブチ!!

女海賊「あああああああ!!」


クルクルクル ドサァ!!


狼女「…」アゼン

女海賊「なんだ切れちゃったよ…ワイヤーの強度不足だ」バサバサ

狼女「下が雪じゃ無かったら只じゃ済まないよ?」

女海賊「雪で安全だから試してんのさ…あああ冷たい…」

狼女「空中で止まる事は無くなったね」

女海賊「うん…意識して速度殺さないようにしてる…ちっとワイヤーに改良が必要なのが分かった」

狼女「あれだけ動いて目を回さないのか?」

女海賊「慣れかな?あんま気になんない…てか寒いから飛空艇戻る」

狼女「そろそろ行こうか…」

女海賊「そだね?肉もスモーク終わったじゃないかな」スタコラ ピューーー

『鯨型飛空艇』


ドタドタ


女海賊「ぅぅぅぅ寒かった…」ブルブル

商人「食後の運動をして来たのかい?」

女海賊「まぁね…ちっとウラン結晶で暖まる」

商人「もう少しでスモーク終わるから待って」

女海賊「あんま急いで無いからゆっくりやって…」ゴソゴソ

狼女「暖まるんじゃ無かった?」

女海賊「どうせ暖まるならついでにワイヤーの改造もやるよ…」カチャカチャ

狼女「フフ本当忙しい女だね…」

女海賊「うっさいな…おいアラクネー起きろ!!このワイヤーをべた付かない糸で補強しろ!!」


カサカサカサ


狼女「おぉ!!一応言う事聞くんだ?」

女海賊「聞かないと追い出される事分かってんだよ…言う事聞いたらハチミツ貰える事もね」

狼女「お前はクモの女王の様だな…」

女海賊「お?なんか心地良い…そっか私クモでも良いな」

商人「ハハ君は毒グモだよ…昔からね」

女海賊「私の旗印は一応ダンゴムシなんだけど…クモでも良いなぁ…」

商人「ダンゴムシは未来君の旗印さ」

女海賊「未来…」

商人「あぁゴメン…思い出させてしまったか」

女海賊「あの子…僕はダンゴムシになるって…」

商人「湿っぽくなる話はよそう…さぁ肉の処理が終わったよ」ヨッコラ ドスン

女海賊「味見する…ちょっと頂戴」

商人「はい!!」ジョキジョキ

女海賊「おぉ…香りがする」ガブ モグ

商人「どう?」

女海賊「イケるイケる!!」ムシャムシャ

『川の上流_上空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥゥ


商人「よし!山が見えて来た…ここから右手に山を見ながら進む」

女海賊「おっけ!」グイ

狼女「何処にもガーゴイルが見当たらない…」キョロ

商人「寒すぎるんじゃない?直ぐに凍っちゃう」

女海賊「ほんじゃ凍って雪の下に埋もれてるかも…」

商人「あぁぁハテノ村でガーゴイル増えたのはそういう事かもね」


情報屋「うぅぅん…」モゾ


女海賊「あ!!目を覚ましそう…リカ姉ぇちょっと操舵お願い」スタタ

情報屋「…」パチ キョロ

女海賊「良かった!!平気?」

情報屋「ゲフッゲフ…」ボタボタ

女海賊「まだ肺に血が残ってそうだ…安静にしてて」

情報屋「…」コクリ

女海賊「ハチミツ溶かした湯が有るんだ…ゆっくり飲んで」クイ

情報屋「むぐっ…」ゴク

女海賊「多分血が足りなくてかなりシンドイと思う」

商人「低酸素が続いて居たから頭の方が心配だよ…平気かな?」

情報屋「…」ボーー

商人「軽快までもう少し掛かりそうか…その賢者の石をしっかり握ってて」

情報屋「…」チラリ ギュゥ

青年「僕が先生の介抱を…」ヨタヨタ

商人「そうだね…ゆっくりハチミツを飲ませてあげて」

青年「はい…」

『山岳部_上空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


商人「正面に見えるのが火山…あれが目印だから見失わないように」

女海賊「進路変えるよ?」

商人「ちょっと通り過ぎてるかもなぁ…」

女海賊「山の形は覚えたから戻って往復してみる…地図だとやっぱ通り過ぎてるね」

商人「これ見つけたとしてもう一回同じ場所に来れると思う?」

女海賊「なんか大きな目印無いと無理」

商人「花でもあればミツバチに案内させられるのに…」

女海賊「こんな寒さで何も育たないさ…」

商人「待てよ?狭間に近付けば妖精が出て来ないか?」

女海賊「妖精は虫だよ…クッソ寒いのに虫いる訳無いじゃん…居ても冬眠中」

商人「これはホムンクルスが目覚めるまで待った方が良さそうだ」

女海賊「私もそんな気がするなぁ…」

狼女「ちょっと待って!!…向こうの空…あそこだけ星が見えない」

商人「ええ!?」ダダ

女海賊「ここ明るくて見えにくいな…ちょっと光の石仕舞う」ゴソゴソ

商人「何処だい?」

狼女「指の先を見て…」ユビサシ

商人「ああ!!本当だ…気付かなかった」

女海賊「夜なら狭間を探せるのか…そんな発想無かったね」

商人「これなら又来れるじゃないか…」

女海賊「おっけ!!ちょいあっちに向かって見る」グイ

『狭間の近く』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「分かったぞ…見えやすい高さがある…低くても高くてもいけない」

商人「下は暗くて何も見えない…そろそろ光の石を!」

女海賊「よっし!!リカ姉ぇ操舵お願いね…」ダダ


ピカーーーーーーーー


商人「見えた!!ビンゴだ!!」

女海賊「ちょい望遠鏡で覗く」ゴソゴソ

狼女「商人!!プラズマの銃を持って警戒して…翼の音が聞こえる」

商人「光に気付いてるか…」

狼女「当たり前でしょう!!?いきなり太陽が現れた様な物なのだから」

女海賊「あぁ…これ高度上げないとヤバいかも…キ・カイの気球が沢山落ちてる」

狼女「高度上げる!!」グイ シュゴーーーー

女海賊「よーし!!ここからなら届く」ゴソゴソ ガチャコン

商人「何する気だい?」

女海賊「退魔のエンチャントがされた砂銀を落として行く」バシュン バシュン

狼女「名案ね…どのくらい有るの?」

女海賊「48発…全部撃って少しでも退魔効果範囲広げて行く」バシュン バシュン

商人「マズいな…ガーゴイルが飛んで来る」

女海賊「あんたホムちゃんの犬笛持ってたでしょ!!それ吹いたらガーゴイル寄って来ない」バシュン バシュン

商人「ええ!!?何処に置いたっけ…」ウロウロ

女海賊「まぁ良いや!!最悪私が妖精の笛吹いて全部眠らせる…兎に角撃ち落して!!」バシュン バシュン

商人「分かった…青年もクロスボウでガーゴイル狙って!!」

狼女「あぁぁぁ操舵役ってイライラするなぁ…」イラ

女海賊「リカ姉ぇ!!あの縦穴の真上に移動して!!特殊弾が届かなくなる」バシュン バシュン

狼女「分かった…」グイ スィーーーー

商人「当たれぇ!!」カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーン


商人「次クロスボウ!!」バシュン バシュン

青年「え!?え!?」バシュン バシュン

女海賊「おけおけ!良い感じ!!どんどん撃って!!」バシュン バシュン

狼女「向こうはこの高さまで反撃出来る武器は無い?」

女海賊「重装射撃砲がいくつかあるけどアレは真上に撃てない…キラーマシンがウロウロしてるよ」バシュン バシュン

商人「青年!!こうやってリロードするんだよ…」ガチャコン

青年「はい…」ガチャコン

商人「後はスロットにボルトを乗せる…」

青年「簡単だ…」

女海賊「これ爆弾でも落として行こうか…」バシュン バシュン

商人「それはダメだよ…また光る隕石を打たれかねない…相手はアダムだと思った方が良い」

女海賊「ぬぁぁぁ…そうか忘れてた」バシュン バシュン

商人「ガーゴイルがやられてる程度にして引いた方が無難だよ」

女海賊「分かった…今回は退魔の砂銀ばら撒いて終わる」バシュン バシュン

商人「よーし!!2発目」カチ


ピカーーーーーー チュドーーーーン


女海賊「イイね!!ガーゴイル落ちて行ってる!!」バシュン バシュン

狼女「あぁぁ上の方からも来る…」

商人「ええい!!クロスボウで狙うしか無いか」バシュン バシュン

女海賊「もうちょいで撃ち終わるから時間稼いで!!」バシュン バシュン

狼女「囲まれそう…4方からこっちに向かってる」

女海賊「任せて!!妖精の笛口にくわえておくから…」ハム バシュン バシュン

青年「ハァハァ…」バシュン バシュン

商人「リロード待つのがストレスだ…」カチ ビビビビ

狼女「それやると又30秒待たなきゃ…」

商人「くそぅ!!」ドタドタ

狼女「もう限界!!全速前進!」グイ シュゴーーーーー


ピーヒャララ~♪


狼女「!!?あとどれくらい眠らずに居られる?」

女海賊「2~3分…私もガーゴイル撃ち落す!!」ガチャコン バシュン バシュン


パーン パーン


商人「よし!!ギリギリまで撃つぞ」バシュン バシュン

青年「当たれぇ…」バシュン バシュン

狼女「私も!!」ダダ バシュン バシュン


------------

------------

------------

『何処かの上空』


ピーヒャララ~♪


女海賊「ふぅぅぅ…もう追って来ないな…よしよし」

狼女「ぐぅ…すぅ」zzz

商人「…」zzz

青年「すぅ…すぅ」zzz

情報屋「すや…」zzz

女海賊「さてこっからどうやって帰るか…」


妖精「やあ!!呼んだかい?」


女海賊「あぁぁ出て来たね…あんた誰?ワーム?アラクネー?ミツバチ?」

妖精「何の話だよ…用が在ったんじゃ無いの?」

女海賊「んんん…まぁ帰る方向知りたいんだけどさぁ…アンタに分かる?」

妖精「君が何処に帰るのか僕は知らないよ…寒いからおっぱいに挟まって良い?」

女海賊「私のおっぱい暑苦しいよ?」

妖精「寒いのより良いさ…」パタパタ スポ

女海賊「まぁ良いや…一人で寂しかったんだ…話し相手になってよ」

妖精「寝る…」

女海賊「ちょ…おい!!羽ムシルぞ!!」

妖精「又生えるから…ぐぅ」zzz

女海賊「何しに出て来たんだよ…ったく」プリプリ

女海賊「まぁでもなんか久しぶりにおっぱいに挟まったな…」

女海賊「なんか良い事あるかもムフフ」

『夜空』


シュゴーーーーー ヒュゥゥゥ


女海賊「…だから覚えて無いの?一緒に旅したじゃん」

妖精「記憶は継続しないんだ…僕であり僕じゃない」

女海賊「意味分からん…じゃぁなんでおっぱい覚えてんの?」

妖精「なんでかなぁ?集合意識だから?」

女海賊「ちょい待ち…あんたら妖精って個体じゃなくて集合意識なん?」

妖精「黄泉の世界もこの世界も集合意識で繋がってる…そこを行き来する僕らも集合意識」

女海賊「あのね…集合意識ってのが何なのか分かんない」

妖精「死んだら分かるよ…僕があの世に案内してあげる」

女海賊「んんん…まぁ良いや…ほんでおっぱいに挟まってるって事はしばらく私の所に居る訳ね?」

妖精「呼んだら出て来るよ…ただ狭間が近く無いと君には見えない」

女海賊「分かった分かった…蠟燭灯すとか墓場行くとかね」

妖精「空が暁色になって来た…そろそろ狭間が遠ざかる」

女海賊「ねぇ最後に一個質問ある」

妖精「さっきから質問ばかりじゃない…今度は何?」

女海賊「アンタさぁ…もしかしてオークシャーマンじゃない?」

妖精「…」

女海賊「なんで黙るんだよ…ビンゴ?」

妖精「僕はね…記憶が継続しないんだ…多分オークシャーマンに呼ばれた事は在るよ」

女海賊「記憶が無いのになんで分かるのさ?」

妖精「集合意識だから?」

女海賊「じゃぁアヌンナキ…この名前に聞き覚えは?」

妖精「…」

女海賊「なんで黙るのさ!!」

妖精「君なんかいろいろするどいね…聞き覚えは有るよ…でも覚えて無い」

女海賊「なるほどぉ…記憶の継続が無いのは集合意識だからか…」

妖精「さっきからそう言ってるじゃない…そろそろ朝になるから僕はおっぱいのベッドで寝るね」パタパタ スポ

女海賊「ふ~ん…そっか…神様は直ぐ近くに居たのか…」

女海賊「妖精が神様の声を代弁してくれてたんだ…」


情報屋「今の会話…聞いていたわ…」モゾ


女海賊「あ!!起きてたんだ…話して大丈夫?」

情報屋「とても良くなったわ…」

女海賊「良かった…」

情報屋「妖精と話して居たのでしょう?」

女海賊「うん…」

情報屋「独り言にしてはおかしいと思ったのよ」

女海賊「独り言?情報屋には妖精の声聞こえなかった?」

情報屋「小さくて聞き取れなかった…でもあなたの話す言葉で会話は想像出来る」

女海賊「前に話してくれたアヌンナキの事…」

情報屋「そう…感じたのね?妖精にアヌンナキを…」

女海賊「そうじゃ無いかと思ってさ…」

情報屋「かつて神の声と呼ばれたのは妖精の声だった…他人から見ると奇妙な独り言に移ったでしょうね」

女海賊「それって前に話してくれた歴史の事だよね」

情報屋「色々謎が解けたみたい…忘れてしまう前に書物に書き残さないと…」

女海賊「まだ動いたらダメだよ…」

情報屋「紙にメモを残すだけよ…ペンを取って?」

女海賊「あ…うん」ゴソゴソ

情報屋「はぁぁぁ生きてて良かった…もう少しで謎が全部解ける…」

女海賊「ヤバかったよ3発くらいボルトが胸貫通してた…心臓に当たらなくて本当に良かった」

情報屋「フフお陰で夢も見たわ?…夢幻がどう繋がって居るのかもなんとなく分かった」

女海賊「え!!?夢幻?」

情報屋「答えは集合意識…妖精の記憶が無い様に…私達も無限の記憶が無い…でも全部集合意識に繋がってる」

女海賊「なんか良く分かんないなぁ…」

情報屋「私達人間が神をすべて理解するのはきっと無理ね…だから感じるだけで十分に思うわ」

女海賊「感じるかぁ…集合意識をどうやって感じるか…」

情報屋「きっとそれが祈り…」

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 妖精の声編

   完

つづき
勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の完結 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1656586758/)

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 08:18:34   ID: S:XpK15q

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