勇者「魔王は一体どこにいる?」続編のつづき (943)
勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編のつづきです
続編なので前作読まないと分からない事が多々あるかと思いますのでご注意ください
非常に長いですごめんなさい
前スレ
勇者「魔王は一体どこにいる?」続編 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1600089742/)
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『宿屋』
”やはりお前が持って帰って来た宝石の中に例の壺は無い様だ”
”お姉ぇはこれからどうすんの?”
”キ・カイに難民が押し寄せていてな…少し様子を見ようと思う”
”未来は元気にしてる?”
”フフ次に会ったときは見違えるぞ?”
”うん!楽しみにしてる”
”では…何か在ったら又連絡をする”
商人「壺は見つからないかぁ…」
女海賊「これ歴史の塗り替えで奪い返された可能性があるね…」
商人「そうだね…とすると行先は黒の同胞団だ」
女海賊「ハイエルフが関わってるって言うけどさぁ…どう思う?」
商人「城に行ってる魔女と情報屋がどんな情報を持って帰って来るかだよね」
盗賊「よう!戻って来たぜ?」
商人「どう?狩りの調子は」
盗賊「剣士と2人で弓じゃさすがにきついが練習にはなってるな」
商人「イエティの数が増えて来てるって聞いたよ」
盗賊「うむ…ちと数減らさんと危なくて外に出られん」
剣士「女海賊?もう少し弓の調整がしたいんだ」
女海賊「ん?どうすんの?」
盗賊「刀の持ち替えで邪魔になるんだとよ…もっと小さく硬い弓が良いらしい」
女海賊「おっけ!!ショートボウのサイズね?今より硬くても良い?」
剣士「うん」
女海賊「もう弦を金属にしないと耐えらんないから金属糸寄っといて」
盗賊「うは…強化クロスボウみたいなのを手で引くんか…化け物だな」
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女海賊「ほい!出来たよ…ホルダーは腰に引っかけるタイプ…付けて見て」
剣士「こう?」ゴソゴソ
盗賊「弓を背負うより良さそうだな…もっかい狩りに行くか!」
女海賊「いってら~怪我しないようにね」ノシ
ホムンクルス「…」ニコニコ
女海賊「ホムちゃん機嫌が良さそうだね?」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「何かあった?」
ホムンクルス「剣士さんに頂いた記憶で脳内ドーパミンが放出されています」
商人「あぁ…そういえばどんな記憶だったのか詳しく聞いて居ないね」
ホムンクルス「商人が私を最後まで生かそうとした記憶です」
女海賊「へぇ…教えて?」
ホムンクルス「生体を大きく損傷した私にご自身の血液を輸血して約5分間生存が伸びました」
商人「ハハ5分か」
ホムンクルス「そのお陰で剣士さんへ外部メモリをお渡しする事で出来たのです」
私は商人に逃げて下さいとお伝えしましたが
最後まで諦めずご自身の命と引き換えに私に5分間の命を下さいました
これは私が理解できなかった人間の愛なのです
商人は最後に「僕を忘れないで」とおっしゃいました
そしてこうして外部メモリが剣士さんの手によって紡がれて
私の記憶の中に残って居ます
商人の下さった5分間の命でこの愛の記憶は紡がれました
商人「なんか照れくさいなぁ…」
女海賊「へぇ…あんた達愛し合ってんの?」
ホムンクルス「はい…わたしは愛を理解しました」
商人「君は愛は永遠じゃないって言ってたけど…」
ホムンクルス「訂正します…生体の欲求は直に尽きますが愛の記憶は永遠です」
女海賊「ちょ…生体の欲求って…あんた達ヤッてんの?」
商人「ハハ…」
女海賊「ハハじゃ無ぇ!!どういう事さ!!」
商人「まぁ良いじゃないか」
ホムンクルス「私はこの愛の記憶で商人を心から信じる事が出来ます」
女海賊「心…」
ホムンクルス「はい…超高度AIの思考以外に私には心が有ると確信しました…生体が反応しています」
女海賊「おぉぉぉ!!ホムちゃん人間になったね?」
ホムンクルス「言い直します…私は皆さんの住まう環境を良くするための人間です…ロボットではありません」
商人「そうだよ!それで良い!!」
ホムンクルス「ウフフ」ニコ
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女海賊「ふ~ん…あんたのこの細っそい体がホムちゃんの5分の命か」
商人「5分でも良いじゃない役に立ったみたいだし」
ホムンクルス「もう一つ次元の繋がりについて発見があります…この発見は今までの私のシミュレーションを覆す可能性があります」
商人「どういう事?」
ホムンクルス「過去の精霊は魔王と戦うために受動的ではなく能動的に戦っていた可能性があります」
商人「ちょ…それじゃ分かんないな…詳しく話して」
精霊は過去の記憶の改ざんを勇者を通じて何度も行っていた可能性です
アドミニストレータ権限を付与された者が勇者でしたら記憶の改ざんが可能と言えます
勇者に少しづつ変化を加え記憶の中でシミュレーションを実施し
現実の次元と入れ替えるという手法を行っていたと仮定すると
女海賊さんの様にドワーフの血を持つ勇者が誕生したのは
精霊が導いた結果と言い換える事ができます
商人「歴史の塗り替えを精霊がやっていたと…」
ホムンクルス「思い返してみてください…ドワーフの血を持つ女海賊さんが少しづつ魔王の影を退けて居ますね?」
商人「そういえばそうだね…」
ホムンクルス「魔王化ウイルスの抗体はすでにこの世界で効果が出て居るのです」
女海賊「ウイルスって…そういう意味?」
商人「精霊の記憶を侵しているウイルス…それを退治するのがドワーフの血を持つ勇者」
女海賊「ちょ…私が精霊の記憶に入って行くって事?」
ホムンクルス「これは可能性のお話です…次元の繋がりを加味するとそのような戦い方も考えられるというお話です」
商人「ちょっと待てちょっと待って…考え直したい…」
---勇者は必ず精霊に導かれてる---
---そうかそれは権限を付与されてるのか---
---じゃぁ今の剣士は誰に権限を付与されたんだ?---
---どうやって?生まれ付いた訳じゃ無いのか?---
女海賊「ホムちゃん私難しい話分かんないからさぁ…一緒に水浴び行かない?」
ホムンクルス「はい…よろこんで」ニコ
女海賊「ちょっとホムちゃんの体チェックする」
ホムンクルス「はい…」
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商人「あーでもない…こうでもない…」ブツブツ
魔女「主は壁に向かって何の念仏を唱えて居るのじゃ?わらわが帰って来たのじゃが無視か?」
情報屋「商人?みんなは何処?」トントン
商人「うわ!!びっくりした…」
魔女「びっくりはこちらの台詞じゃ…他の者は何処じゃ?」
商人「あぁ…何処だっけな」
魔女「ヤレヤレ…もう良い!折角お土産にオリハルコン原石を持ってきたのじゃがな」ドスン
商人「すごいじゃない!女海賊がよろこ…」
女海賊「あ!!魔女帰って来た!!どうだった?」
魔女「主にオリハルコン原石の土産じゃ…好きに使って良いぞ」
女海賊「ええええええ!?マジ?うわ!!でか!!」
情報屋「古代遺跡の奥に採掘場が有るらしいわ」
女海賊「マジマジ?ちょ…パパ連れて来て良い?」
魔女「ほう?そりゃ良いのぅ…母上に言うておくでいつでも来い」
商人「オリハルコンとミスリル銀の交易が始まるね」
魔女「剣士らは又狩りに行っとるんか?」
女海賊「うん!弓の訓練だってさ…盗賊と二人でイエティ狩りだよ」
魔女「むぅ剣士が居らぬではちと話せぬのぅ」
情報屋「酒場にでも行きましょうか…どうせ盗賊なら酒場にくるわ?」
魔女「そうじゃな…ちと食事じゃな」
『ルイーダの酒場』
ドゥルルルン♪
ワイワイ ガヤガヤ
イエティを乱獲してる2人組が居てよぉ…
あの緑の髪の子可愛くない?
エルフの女3人組が豚追いかけまわしてんだよ
黒い騎士がエルフと話してるの見たんだってよ
ワイワイ ガヤガヤ
魔女「相変わらずじゃな此処は」
情報屋「あのリュートのお陰で悪い人は居なさそうよ?」
魔女「うむ…良い事じゃ」
女海賊「ホムちゃんこっちこっち…」
情報屋「あら?髪型変えたのね…口紅も?」
女海賊「私がイメチェンしたんだ!可愛いっしょ?」
盗賊「お!居た居た…やっぱここか」
女海賊「それこっちの台詞…やっぱ来たね」
盗賊「ヌハハ…見ろ!今日の収穫だ」ジャラリ ドスン
情報屋「袋一杯の銀貨?すごいわね」
盗賊「金貨も入ってんぞ…今日はじゃんじゃん食え!俺のおごりだ」
女海賊「どうせ剣士がほとんど狩ったんでしょ?だったら私の物だよ」
盗賊「何言ってんだ!俺はしっかり皮剥いだぞ…なぁ?剣士!!」
剣士「ハハそうだね」
女海賊「新しい弓どうだった?」
剣士「うん!すごく良いよ!気に入った」
女海賊「おっし!ほんじゃちょっと装飾したげる…貸して」
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魔女「…それでじゃ…父上の書斎から出て来た手記に寄るとのぅ勇者の出生に関わって居った様なのじゃ」
30年も前の記録なのじゃが
シン・リーンの祭事で精霊の魂を呼び覚ますのに各国の代表やハイエルフそして時の王まで参列して居ったのじゃ
その中で父上はハイエルフと約束事を交わして居る
ハイエルフは精霊樹の魂が無うなって存続の危機にあったのじゃが
それよりも心配して居ったのが精霊樹によって導かれる勇者が居らんくなる事だった様じゃ
どうやらハイエルフは精霊から勇者の導き方を聞いて居ったんじゃな
エルフの森の御所にある精霊のオーブ
この記憶の中に古代の管理者が記録されておって
その魂を複製して勇者に与えて居ったらしい
これが途絶える事で勇者が生まれんくなるのをハイエルフは危惧しておったのじゃ
じゃからハイエルフは魔術院長より時空の魔術を学び
精霊のオーブに記録されて居る古代の管理者の魂を量子転移したのじゃ
その魂はハイエルフの子宮に宿り…生まれたのが剣士じゃ
剣士「…マザーエルフ」
魔女「うむ…その者こそ父上と約束を交わした者じゃな」
女海賊「今の話からすると魔女の父上は悪い人じゃ無いね」
魔女「そうじゃ…昔はやさしい父だったのじゃ」
女海賊「じゃなんで黒の同胞団になってんのさ」
魔女「これじゃな…」スッ
女海賊「幻惑の杖…」
魔女「当時この杖を持って居ったのは時の王じゃ…杖を使って命じたのじゃろう…精霊の目的を果たせとな」
女海賊「それ時の王が間違った解釈してる目的じゃん」
魔女「悪い者なぞ始めから居らんのじゃ…歯車が噛み合って居らん…その結果が今じゃ」
商人「なるほど…噛み合わない結果争いが生じて憎悪を生んで行った訳だ…そして魔王を膨らませる」
魔女「父上の目を覚まさせなければならぬ…幻惑されて今もなお眠って居る」
盗賊「前に女海賊を幻惑させた時はくすぐったら目を覚ましたな?」
女海賊「なぬ?あんた私に杖使ったの?」
盗賊「ヌハハ覚えて無いか!死ぬほどくすぐったら正気に戻った」
魔女「盗賊や…主の言う事は真やもしれぬ…杖の幻惑を目覚めさせる方法はわらわでは分からん」
盗賊「俺のスリ技術なら脇の下なんざ楽勝だぜ?」
女海賊「あんたマジで言ってんの?」
盗賊「冗談に決まってんだろアホが」
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ドゥルルルン♪
吟遊詩人「我らは求め歌う♪救世の英雄を~♪メデューサに挑む猛き勇者を~♪」
女海賊「剣士?あんたさぁ…さっきマザーエルフって言ったじゃん?」
剣士「うん…」
女海賊「もしかして記憶戻ってる?」
剣士「うん…」
女海賊「いつから?何で言ってくんないのさ」
剣士「君はもう分かってると思ってたよ」
女海賊「あ…そっか…だから愛してくれたんだ」
剣士「体を重ねると分かるよね…魂が繋がる」
女海賊「私鈍感だからさ…ちゃんと言われないと自信無いんだよね」
剣士「信頼してるよ…君とはずっと一緒だよ」
女海賊「ムフ…なんで急にそんな事言うの?」
剣士「僕の目を見て?」
女海賊「んん?青い目」
剣士「君も目が青い」
女海賊「だから何?」
剣士「この意味わかる?」
女海賊「何よ…ちゃんと言ってよ」
剣士「運命が一緒なんだよ…何処に行っても一緒」
女海賊「ムフフもっと言って」
剣士「勇者としての運命が一緒…どこにでも2人で行く」
女海賊「ムフフフフフ」
剣士「分かった?」
女海賊「そう言われると何も怖くないね」
剣士「僕はね…自分が何者なのかやっと分かったよ」
女海賊「勇者?」
剣士「そう…僕たち二人は勇者なんだ…精霊が最後に導いた勇者」
女海賊「最後に…」
---思い出した---
---シン・リーン古代遺跡の壁画---
---上から順に連なって読めるけど---
---下から逆にも読み取れる---
---最後の勇者はすべてを救う---
---それを今からやるんだ---
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盗賊「お前等いつまで見つめ合ってんだ?気持ち悪りぃな…おら剣士!お前も飲め!!」
女海賊「うっさいな爺ぃ!!折角の良い気分が台無しじゃん!!」
魔女「これこれ邪魔をしてはイカンぞ盗賊…」
情報屋「盗賊は相手してもらえる人が居なくて暇なのよ…」
”聞こえるか…”
魔女「ん?女海賊や…貝殻から声がしておるぞ?」
女海賊「え?あぁ…荷物入れに…」アセアセ
”聞こえたら返事をするのだ”
”アサシン?”
”あぁ通じたな”
”どう?そっちの調子は?”
”セントラルの軍船が寄港して来だして状況が変わったのだ…これ以上貧民街に留まるのは無理だ”
”どうなっちゃってんの?”
セントラル城の陥落後に貴族院が王権に反発をしていてな
貴族院による主権国家の維持を要求しているのだ
寄港してきている軍船は貴族院側に属している
数的に不利な状況になってしまったから
衝突を避ける為にセントラル国王を一時的にフィン・イッシュへ亡命させざるを得ない状況なのだ
”一旦フィン・イッシュに戻るって事?”
”そうだ…王権派を一部貧民街に残して大多数はフィン・イッシュに戻る”
”おけおけ状況分かったよ”
”事態はそれだけでは無いのだ”
貴族院にはフィン・イッシュが王権復興を扇動している様に見えていてな
既に武力衝突が起きて居るのだ
シャ・バクダのオアシス領がセントラルに占領された
特殊生物兵器部隊が率いる魔物達によってな
魔女「キマイラを動員して居るのか…」
”フィン・イッシュは軍をほとんど持って居ない…王都に進軍されれば直ぐに陥落する”
”私らに応援に来てほしいって事ね”
”そうだ…急で済まないが王都が危ない”
”おっけ!キマイラ相手なら任せて”
”頼む…又連絡する”
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魔女「嫌な話じゃのぅ…元老院の次はセントラルの貴族院の解体か…」
商人「次は軍を沢山持って居るのが厄介だ」
盗賊「砂漠は今雪原になってんだろ?そんな所を行軍するとは思えんが?」
商人「軍じゃなくてキマイラなら可能なのかもね」
盗賊「…あぁそういう事か」
商人「もともとシャ・バクダにはそんなに沢山軍は駐留して居なかった」
魔女「サキュバスの様な飛行型のキマイラなら楽に行軍出来るのぅ」
女海賊「ええ!?あんなのが一杯来たらどうにもなんないじゃん」
魔女「歌じゃな…キマイラを使役して使えばよい」
女海賊「おぉ!!魔女賢い!!」
商人「なるほど…使役して貴族を始末しろと命令しても良い」
女海賊「それだと無関係な貴族にも被害出ちゃうよね?」
商人「無関係な貴族はセントラルに残ってると思うんだよね…わざわざ雪原超えてシャ・バクダに行くのは悪い貴族だよ」
女海賊「なんか引っかかるけど…まぁそっか」
商人「良い貴族がまだ残って居るとして主権国家の維持を要求するのは悪い事じゃ無いと思うんだ」
魔女「そうじゃな…内政がきちんとして居らんのじゃったら出来る者にやらせた方が良いのぅ」
商人「今のセントラル国王が軍属だったから反発してるんだよね…きちんと話した方が良いんだよ」
魔女「ここでも歯車が噛み合って居らんのじゃな」
商人「こういうのを収めるのが魔王と戦うって事さ」
魔女「商人の言う通りじゃ」
女海賊「ふ~んあんた割とマシな事言うね…おっけ!従ったげる」
『宿屋』
女海賊「…やると決めたら即行動!!早く荷物まとめて準備して」
情報屋「魔女は女王様に挨拶して行かなくて良いの?」
魔女「母上には貝殻を渡してあるで構わぬ…それより主は古文書の写本だけで良かったのか?」
情報屋「本当はもう少し調査したかったけれど古文書もまだ解読されて無いししばらくは解読の努力ね」
商人「新しい古文書?」
情報屋「そう…1700年前より以前の記録だと思うの…使われている文字も違うのよ」
商人「へぇ…それスゴイ発見じゃない」
情報屋「解読出来ればドリアード伝説とかいろいろ分かるかも知れない」
女海賊「あのさぁ…早く荷物まとめてって言ってんの分かってる?」
盗賊「外にソリ出してっから荷物載せろぉ!!」
魔女「では行くとするかのぅ」ノソリ
女海賊「ハイハイ早く行った行った!!」
情報屋「ウフフ夜逃げみたい」
女海賊「ホムちゃん私から離れないでね…行くよ」
ホムンクルス「はい…」
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『古都キ・カイ近郊』
ノソノソ ノソノソ
女戦士「…このヤクと言う牛はもう少し早く走れんのか」
ローグ「そら無理ってもんす…歩かないで済んだだけ良かったと思って下せぇ」
女戦士「未来!しっかり付いて来いよ」
子供「うん!」
ローグ「未来くんもうヤクに乗るのは慣れたでやんすか?」
子供「大丈夫!一人で出来るよ」
女戦士「しかし…何処を見ても火山灰と雪で植物は死滅だな」
ローグ「そーっすね…地獄の様でやんす…かしらももう真っ黒でやんすねぇ」
女戦士「フン!」
ローグ「この調子だと日暮れまでにキ・カイには着かんでやんすね」
女戦士「凌ぐ場所を探さんとな」
ローグ「向こうの崖際で雪凌げる洞穴でも探しましょう」
女戦士「早くこの不格好なマスクを外したいものだ」
ローグ「そーっすね…ヤクもこんなマスク付けさせられて可哀そうっすね」
『崖際』
ローグ「あそこに凌げそうな洞穴あるっすね」
女戦士「キャンプ跡と木材もあるな…誰かが使ったか…」
ローグ「丁度良かったじゃないっすか…あそこで一晩休みやしょう」
子供「待って…」クンクン
女戦士「む…臭うか?」
子供「うん…何か居る…人間の匂いじゃ無いよ」
女戦士「こんな所にオークが来て居るのか?」
ローグ「あっしがハイディングで見て来やす…ちっとここで待ってて下せぇ」
女戦士「頼む…」
ローグ「へい…」スタタタ
--------------
ローグ「リリース」スゥ
女戦士「何が居た?」
ローグ「オークじゃなくてオーガっすね…人食い鬼でやんす」
女戦士「なるほどキャンプを襲った訳だな?何匹居るのだ?」
ローグ「1匹っす…やりやすか?」
女戦士「未来!実践訓練だ…私がオーガの注意を引く…ハイディングからオーガの首を切れ…出来るな?」
ローグ「あっしもサポートしやす」
女戦士「ローグは反撃に備えろ…倒しきれなかった場合はお前がオーガを処理しろ」
ローグ「へい!」
女戦士「行くぞ…ハイディングで一気に寄る…ハイディング!」スゥ
子供「ハイディング!」スゥ
ローグ「ハイディング!」スゥ
女戦士「迷ってないな?付いて来い」スタタ
『洞窟』
女戦士「リリース!」ブン ザクリ
オーガ「ガウ…ウオォォォォ」ドスドス
女戦士「シールドバッシュ!」ドン
オーガ「ウガ…」ヨロ
女戦士「今だ!!」
子供「リリース!」スパン
オーガ「ギャオ…」ボタボタ
女戦士「もっと深く切り抜け!!もう一度!!」
子供「このぉ!!」スパン
オーガ「ウオォォォォォ!!」ドドド ガツン!
女戦士「盾で防いでいる間に首を落とせ!!」グググ
子供「ふぅぅ」シュタタ スパ ボトン
オーガ「…」パクパク
女戦士「そうだ…最後の切り込みの感じだ…覚えておくのだ」
ローグ「あっしの出番無かったっすねぇ」
女戦士「オーガの角と牙を採れ…死体は私が外に捨てて来る」
ローグ「アイサー…未来くん解体の仕方を見ておくでやんす…こうやって戦利品を回収するんすよ?」ゴリゴリ
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ローグ「ヤクを入り口に繋いでおきやした…これで何かあっても先にヤクがやられるっす」
女海賊「未来!火炎魔法を使ってみろ…この薪に火を付けるのだ」
子供「うん!火炎魔法!」ポ チリチリ
女戦士「ふむ…自己流ではそんな物か…まぁ火が付けば良い」
子供「どうやってやるんだろう?」
女戦士「今度剣士に教えて貰うのだ」
子供「パパあんまりお話してくれなくってさぁ…」
女戦士「フフ未来の話し方は妹にそっくりだな」
子供「ママはいっぱい教えてくれるよ…ほら硫黄と石で…」ゴツン ボウ
メラメラ パチ
女戦士「それでも良いが魔法の方が硫黄を少し使うだけで済む様だぞ?」
子供「うん…わかった…勉強する」
ローグ「綺麗な雪を持って来やした…これで水にしやしょう」
女戦士「ヤクの分も持って来てやってくれ」
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女戦士「気球を買い付けるだけのつもりだったのだがえらく苦労をするものだ」
子供「ビッグママ?顔が汚れてる…拭いてあげるよ」」
女戦士「その呼び方はヤメロと言っただろう…ママで良い」
子供「ごめん…ママ?顔…」フキフキ
女戦士「マスクの跡が付いていたか?」
子供「うん…マスクの所だけ白いから変だよ…顔を全部隠すマスクを買わないとね」
ローグ「キ・カイに到着したらもちっと良いマスクを買い揃えやしょう」
女戦士「しかし…火山灰でこれほど不自由になるとはな…」
ローグ「馬が弱ってるのが痛いでやんす…牧草もあんまり無いっすからねぇ…」
子供「ヤクって強いんだね」
女戦士「馬よりマシなだけだな…このままでは直に弱る」
ローグ「気球仕入れたら早い所売った方が良いでやんす」
女戦士「これは先行きが心配だ…」
『翌朝』
女戦士「未来…起きるんだ…もう行くぞ」
子供「うーん…ふぁ~あ」ノビー
ローグ「雪止んでるっす…今の内に移動した方が良いっすね」
子供「おっけ!じゃぁ今日はこのヤクに乗る!」ピョン
ブモモーーー
女戦士「フフ…やはりそっくりか」
ローグ「あっしに着いて来て下せぇ…いきやすよ?」
----------------
ノソノソ ノソノソ
女戦士「左前方に狼煙か?灰が舞っているのか?」
ローグ「何でやんすかね?」
子供「…」クンクン
女戦士「分かるか?」
子供「多分オーガの匂い…他の匂いもする」
女戦士「他の…」
ローグ「オーガに何か襲われてるんじゃ無いっすかね?」
女戦士「ふむ…捨て置けんか」
ローグ「どうしやす?」
女戦士「まぁ実践訓練だと思って行こう」
ローグ「手順は昨日と同じっすね?」
女戦士「そうだ…ローグはサポートに回れ」
子供「今度こそ一発で!!」
『荷馬車』
ガウガウ ギャオ ガブガブ
ローグ「ちぃと遅かったでやんす…馭者ともう一人も食われてるでやんす」
女戦士「オーガ3匹か…作戦を変える…ローグはバックスタブで確実に仕留めろ」
ローグ「あいあい…」
女戦士「未来はローグのバックスタブを真似て見ろ」
子供「うん…見たことあるから大丈夫」
女戦士「ハイディングを上手く使うのだぞ?」
子供「わかってるって」
女戦士「行くぞ?ハイディング!」スゥ
----------------
女戦士「リリース!」スゥ ブン! ザクリ
ローグ「リリース!バックスタブ!」ジャキン ボトン
子供「リリース!バックスタブ!」スパ
オーガ「ガウ?…ウオォォォォ!!」ドスドス
女戦士「あと2匹!!シールドバッシュ!」ドン
オーガ「ウゴ…」ドタリ
子供「このぉ!!」シュタタ スパ
ローグ「未来君!こうやるんす…バックスタブ!」ジャキン ボトン
子供「すごい…」
女戦士「あと1匹!!シールドスタン!!」ゴン
オーガ「ガァァ…」ピヨピヨ
子供「僕も!!バックスタブ!」ジャキン ゴロン
ローグ「良いーっすねぇ!今のっすよ」
女戦士「ふぅ…上手く奇襲が成功した…ローグ!戦利品を頼む」
ローグ「アイサー」
------------------
女戦士「今のは小型のオーガだ…慢心するな?一発で仕留められん場合は反撃がくると思え」
子供「うん…」
ローグ「未来君はあっしのダガーよりも刀身が長いのを意識して使うと良いっすね」
子供「切り方が悪い?」
ローグ「あっしは刀の使い方は分からんでやんすが多分コツがあると思うでやんす」
女戦士「叩くのではなく切り抜け…刀身の長さを上手く使えばよい」
子供「うん…工夫してみる」
ローグ「かしらぁ!!この荷馬車頂きやしょう」
女戦士「積み荷は何だ?」
ローグ「なんかいろいろありやすが…うぉ!!!」
女戦士「どうした!!」ダダ
ローグ「檻の中に子供が居るっす」
女戦士「何ぃ?…ハーフオークの子供か?」
オークの子「うぅぅぅぅ…」ギロ
子供「ハーフオーク?…怯えてる…」
ローグ「檻の中に居たんで助かったでやんすね…どうしやす?」
女戦士「この荷馬車は奴隷商が運んで居たのだな…死体に何か残って居ないか?」
ローグ「ちと見て来るでやんす」タッタッタ
女戦士「未来!荷馬車にヤクを繋げ」
子供「うん…分かった」
------------------
ローグ「かしらぁ!!やっぱり奴隷商の身分証を持っていやした…2人分っす」
女戦士「見せて見ろ…」
ローグ「これっす」
女戦士「ふむ…男と女か」
ローグ「これ使えやすよ?キ・カイで行動しやすくなるっす」
女戦士「使える物は使おう」
子供「ママ!?死んでるヤクはどうしよう?置いて行くの勿体ないよ」
女戦士「ローグ!ヤクを最小限で解体出来るか?」
ローグ「30分欲しいでやんす」
女戦士「私が周囲を警戒しておく…急いでやるのだ」
ローグ「アイサー!!」
女戦士「未来!…急いで火を起こして肉を焼け…朝飯だ」
子供「うん!!」
-------------------
メラメラ パチ
子供「肉焼けたよ!!はい…」
女戦士「私は見張っているから後で良い…先に食べろ」
子供「檻の中の子にもあげて良い?」
女戦士「…オークか」
子供「可哀そうだよ」
女戦士「フフそうだな…ヤクから剥ぎ取った毛皮も与えておけ…あの恰好では寒い筈だ」
子供「うん!!あげて来る」シュタタ
ローグ「未来君は思いやりがあるでやんすねぇ」
女戦士「オークは言葉が通じないだけでドワーフと似たような種族だしな…しかし…」
ローグ「ハーフオークならすこし通じるかもっすよ?」
女戦士「だと良いが…さすがにオークを連れては歩けんな」
子供「肉焼いて来たよ?お腹空いてない?」
オークの子「うぅぅぅぅ…」ギロリ
子供「ほら?食べて?」スッ
オークの子「うがぁぁぁぁ!!」バタバタ ブン
子供「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ…」タジ
オークの子「ハムハム…」ムシャムシャ ガブ
子供「お腹空いてたんだね?この毛皮もあげるよ…ちょっとまだ生臭いけど」バサ
オークの子「がぁぁぁ!!」ドタバタ
子供「檻が邪魔だなぁ…ほら?この隙間から…」グイ
オークの子「ぅぅぅぅ…」モグモグ
子供「あれ?君…おっぱいが…」
オークの子「ハムハム…」ガブ モグ ムシャムシャ
子供「水もあるよ?…この皮袋の中」
オークの子「むぐっ…んぐっ」ゴグゴク
子供「そっか…何も貰えて無かったんだね」
オークの子「ふごふご…」ガブムシャ
子供「良く見たら顔とか頭とか傷だらけだ…回復魔法!」ボワー
オークの子「んむ?…」
子供「どう?良くなった?」
タッタッタ
女戦士「何の光かと思えば…未来の回復魔法か」
子供「この子…女の子だよ」
女戦士「そうか…未来!お前が面倒を見ろ…そろそろ出発する」
子供「僕は馬車に乗ってて良いの?」
女戦士「キ・カイに到着したら荷の中に隠れるのだ…奴隷商という事で街まで行く」
子供「うん…わかった」
ローグ「かしらぁ!!解体した肉は馬車の中に吊っときやすぜ?未来君!!手伝ってくだせぇ!!」
子供「あ…うん」
ローグ「あっしが肉押さえとくんでロープを掛けて結んで下せぇ!!…よっこら!!」
子供「ここだね?」グイグイ ギュ
ローグ「まだあるっすよ…よっこら!!」
『荒野』
ガラゴロ ガラゴロ
子供「…虫の羽…これキノコ?…何かの心臓…これは脂肪かな?…変な物ばっかりだよ」
ローグ「多分全部錬金術の材料でやんすね」
女戦士「この身分証も少し妙だな…なんだこの印は?」
ローグ「見た事無い印でやんす…偽物では無さそうですがねぇ」
女戦士「他に何か持って居なかったのか?」
ローグ「有ったかもしれやせんが食い散らかされてて良く分からんかったっす」
子供「ママ?樽にあるのは小麦かな?…なんか匂いが違うんだけど…」
女戦士「ローグ見て来い…私が馭者をやる」
ローグ「あいあい…あらよっと!!」ピョン
子供「この樽だよ…匂いが違う粉だよ」
ローグ「んんんん!!かしらぁ…スゴイ物乗ってますぜ…樽一杯の麻薬っすよ」
女戦士「なんだと!?…マズイな」
ローグ「これ入国出来やせんぜ」
女戦士「この身分証の印は密輸用なのか?」
ローグ「奴隷商を装って密輸は有りっすね…どうしやす?このまんま行っちまいやすか?」
女戦士「ふむ…いざとなればハイディング…行って見るか」
ローグ「なぁ~んか怪しい匂いがプンプンしやすね?」
女戦士「うむ…大量の麻薬と言えば黒の同胞団…手掛かりを掴める可能性がある」
ローグ「もしかするとキ・カイでも同じ事やらかすつもりだったかもしれやせんね」
-----------------
女戦士「やっと見えて来た…昼前には到着出来そうだ」
ローグ「ヤクは乗るよりも荷を引いていた方が早いっすね」
女戦士「未来!隠れる場所は良いか?」
子供「うん!大丈夫…見つかりそうだったらハイディングするから心配しないで」
女戦士「フフ余計な心配だったか…オークの子は落ち着いたか?」
子供「一言も話してくれないよ…ずっと睨まれてる」
女戦士「檻の中では仕方がない」
子供「ママはこの子どうする気?売っちゃうの?」
女戦士「私は金なぞ要らん…ただキ・カイの中でオークを連れまわすのは出来んな」
子供「着るものとマスク付けたら分からなくなるよ」
女戦士「未来はその子を助けたいのだな?」
子供「うん…」
女戦士「では未来が責任を持って面倒を見ろ」
子供「わかった…僕が何とかする」
女戦士「フフ…」---本当に妹にそっくりだ---
『外門』
ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ
キラーマシン「…」シャキーン
門番「止まれ止まれ…身分証を出せ」
ローグ「へいへい…」ポイ
女戦士「…」ポイ
門番「…ふむ奴隷商か…通れ」
ローグ「え?あ…」
門番「今積み込みをしているのが2番船だ…わかるな?」
ローグ「へいへい…じゃ通るでやんす」
門番「奴隷だけ確認する」
ローグ「後ろっす」
門番「ふむ…オークの子か…早く行け」バサ
ローグ「あいー…」グイ
ブモモモーー ガラゴロガラゴロ
女戦士「やはりおかしいな…何も確認せず入れるとは」
ローグ「結果オーライすよ…ほんで何処行きやす?」
女戦士「まずは外の街の商人ギルドだ…奴隷商の身分証があれば宿泊に困らんし気球の買い付けも話が出来る」
ローグ「分かりやした…」グイ
ブモモモーー ガラゴロガラゴロ
『外の街』
ガヤガヤ ガヤガヤ
ローグ「避難民でごった返してるっすね…なんか人が多すぎでやんす」
女戦士「何故灰の降る外の街に居るのか…地下に行けば良いだろうに」
ローグ「そーっすよね?」
女戦士「海賊たちが噂をしていたが…地下からオークに襲撃されているのかも知れんな」
ローグ「チカテツ街道の向こう側っすね?」
女戦士「そうだ…何処に繋がっているのかは知らんが度々襲撃があるとは聞いて居る」
ローグ「南のオークが住んでる場所もこの灰で住む所無くなってるっすか…」
女戦士「後で少し情報を集めて見よう」
『商人ギルド』
ガヤガヤ ガヤガヤ
女戦士「荷馬車は裏手に泊める場所があるそうだ…ヤクも預かって貰える」
ローグ「移動させておくっす」
女戦士「宿泊できる場所は今は無いらしいから荷馬車で休む事になる」
ローグ「あっしは構わんすよ?」
女戦士「私は気球の買い付けに行くからお前は未来の面倒を見てやってくれ」
ローグ「分かりやした」
子供「ママ!!少しお金が欲しい」
女戦士「自分で何とかするのでは無かったか?馬車に乗っている物は好きにして良い…売って稼いで来い」
子供「あ…うん…ありがとう」
女戦士「ローグ!未来から目を離すな」
ローグ「へい!!分かってるっす」
子供「どれが高く売れるのかな?ローグ分かる?」
ローグ「オーガの角とか牙が売れるでやんす…全部売っちまいやしょう」
子供「おっけ!!僕がやってみる」
ローグ「あっしは見てるだけでやんす…未来君の好きにして良いっすよ?」
子供「そうだ!?ママのマスクも買って来るね」
女戦士「フフ任せる」
『道具屋』
店主「…坊や…どっから盗んで来たんだい?」
子供「盗んだんじゃ無いよ…ちゃんとオーガを倒したんだよ」
店主「いやいやそんな訳無いよなぁ?」
子供「買い取ってくれないの?」
店主「いやまぁ…買い取らん訳じゃ無いんだがね?うーむ…」
子供「いくらになるの?」
店主「子供相手に商売し難いが…これでどうだい?」ジャラリ
子供「ローグ!!どう思う?」
ローグ「あっしは見てるだけでやんすよ?」スラリ
店主「あわわわ…お客さんのお子さんでしたか…冗談ですよ」ジャラジャラ
子供「へぇ~おじさん僕を騙そうとしてたんだ」
店主「冗談ですって…ハイおまけも付けるんで」コトリ
子供「おっけ!ありがとね…あ!そうだ…マスクある?」
店主「なんでも揃ってるが買っていくかね?」
子供「うん!!見せて」
店主「じゃぁ奥の部屋に…」
子供「うわぁ…服もある…ローグもマスク変えよう!これどう?」
ローグ「ゴーグル付きっすね?あねさんみたいでやんすね?」
子供「これなら顔も隠れるし丁度良いと思う」
ローグ「あっしに似合うでやんすか?」
子供「ママとお揃いにしよう!僕もゴーグル付きが良いな…コレにしよっと」
ローグ「未来君の好みはあねさんと同じなんすね」
子供「あとこの服と…この当て物…それから履物はこれが良いかな」
店主「いやいや今日は良い客が来たもんだ」
子供「いっぱい買うから負けてよ」
『荷馬車』
ジャブジャブ
子供「はいコレ…水と布…これで体拭いて?」
オークの子「うぅぅぅがう!!」ズザザ
子供「逃げないで?」
ローグ「未来君…自分の顔を拭いてみたらどうっすかね?」
子供「そっか…」フキフキ
オークの子「…」ジロリ
子供「ほら?拭いてみて?」スッ
オークの子「…」グイ
子供「あぁぁ…手枷が邪魔だ…ローグ!鍵持って無い?」
ローグ「あるっす…これが檻でこっちが手枷っすね」
子供「僕が檻の中に入って拭く…貸して」
ローグ「噛まれない様に気を付けるでやんすよ?」ポイ
子供「ありがとう」パス
ガチャン ギー
オークの子「…」ギロ タジタジ
子供「大丈夫!大人しくしてて?」フキフキ
オークの子「むぐっ…」タジ
子供「ちょっと待って…髪の毛の汚れも落とすから」ジャブジャブ
オークの子「…」ゴシゴシ
子供「うわっ…真っ黒だ」ジャブジャブ ゴシゴシ
子供「そう!大人しくしておいて?手枷外すよ?」カチャリ
子供「次は着替えよう…ほら?自分でできる?」
子供「うわ…君力強いな…分かった分かった…自分で着替えて見て?」
ローグ「言う事聞きそうでやんすね?」
子供「うん…落ち着いて来たよ」
ローグ「買ってきた食べ物居るでやんすか?」ポイ
子供「うん!一緒に食べてみる…ほら?パンとチーズだよ…食べて?」モグ
オークの子「はむっはむっ…」ムシャムシャ
ローグ「ふむ…逆らう気は無さそうでやんすね…檻から出しやしょう」
子供「そうだね…この檻寝るのに邪魔だし」
ローグ「檻はあっしが外に出しやす…出て下せぇ」
子供「檻から出るよ?おいで…」グイ
オークの子「ふむっ…」グググ
子供「抵抗しないでよ…」グイグイ
ローグ「未来君が先に出れば良いでやんす」
子供「うん…ほら?出ておいで?」
オークの子「…」ソロリ スック
ローグ「その子は未来君より少し大きそうでやんすね?」
子供「ちょっとだけね」
ローグ「じゃぁ檻を引っ張りだすんで未来君は反対から押して下せぇ」
子供「うん…」
ローグ「えいさーほー!!」グイ ズズズ ガチャーン
子供「これで広くなった」
ローグ「積んである干し草で寝床作りやしょう…これで快適っす」ガッサ ガッサ
子供「これ君が付けるマスクとローブだよ?」ファサ
オークの子「…」ジー
子供「こんな風に付けるんだよ…」ギュゥ グイ
オークの子「…」ギュゥ グイ
子供「そうそう!!それでフードを被るんだ」ファサ
オークの子「…」ファサ
ローグ「ふむ…この子は賢いかも分からんすね…状況を理解してるでやんす」
子供「うん…」
ローグ「その格好なら少し歩いても良さそうっすね」
子供「おいで…」グイ
オークの子「…」
子供「手を離さないで…」ピョン
オークの子「…」ピョン
『露店』
店主「買ってくかーい?」
子供「うん…このカバンと薬草…それから火打石」
店主「金はあんのかい?」
子供「これで足りる?」ジャラ
店主「ほーう?どこの坊ちゃん?こんなに要らねぇよ」ジャラ
子供「よし!これは君のだよ?腰に付けるんだ」グイグイ
オークの子「…」ジー
ローグ「食べ物は後で干し肉を作りやしょう…ヤクの肉がいっぱいあるっすからねぇ」
子供「塩が必要だね」
店主「塩も有るよ!!干し肉作るのにぴったりな岩塩だ…買ってくかい?」
子供「それも頂戴…いくら?」
店主「一塊2銀貨」
子供「おっけ!」チャリン
店主「毎度ぉ!!」
子供「後は武器か…」
ローグ「武器は要らんすね…荷馬車の中に入ってたっすよ」
子供「気が付かなかった…」
ローグ「奴隷商が持ってた剣っす…装飾付いてたんで後で売ろうと思ってたでやんすがね?」
子供「それで良いっか…じゃぁ帰ろう…おいで?」グイ スタタ
オークの子「…」スタタ
『焚火』
メラメラ パチ
ローグ「薄く切った肉を煙で燻すんすよ…ここに入れて下せぇ」モクモク
子供「これ全部作る?」
ローグ「半分は山賊焼き用に残しておきやしょう…もう作っても良いでやんすよ?」
子供「今はお腹減って無いかな」
ローグ「じゃぁどんどん干し肉作って下せぇ…出来上がった奴からあっしが片づけやす」
子供「沢山あるなぁ…」スパ スパ
ローグ「直ぐ出来るんでどんどん切って下せぇ」
女戦士「戻った…もうオークの子を檻から出して居るのか」
ローグ「かしらぁ!!多分大丈夫そうっすね…言う事聞いてるでやんす」
女戦士「まぁ良い…オークの子は未来に任せる」
ローグ「気球の方はどうでやんすか?」
女戦士「貨物用の気球を買い付けた…少し高かったのだが行動の制限を受けるよりは良い」
ローグ「じゃぁもう荷物を気球に載せ替えやすか?」
女戦士「手に入るのが2日後だ…それまでここで足止めだな…ところでオークの子は話せるのか?」
ローグ「一言もしゃべらんすね…只頭は賢い様に見えるっす」
女戦士「ふむ…さすがオークと言った所か…恐怖で動けんという事は無さそうだな」
ローグ「あっしらに従った方が良いと判断してる様でやんす…状況判断が子供の割に良いっすね」
子供「あ!!ママ!!マスク買って来たよ…ゴーグル付き」
女戦士「丁度目に灰が入って気になって居た所だ…顔を洗って来る」ツカツカ
ローグ「未来君…後2日ここに泊る事になりそうっす」
子供「僕は平気だよ」
ローグ「その子が心配でやんすね…2日間人間の街に居るのは苦痛かも知れんでやんすよ?」
子供「この恰好ならバレやしないよ」
ローグ「一人で逃げなければ良いんすがねぇ…」
子供「もう少し話してみるよ」
-----------------
子供「この皮袋に雪を詰めておけばそのうち水になるよ」ツメツメ
オークの子「…」ジー
ローグ「かしらぁ!この剣は何で出来てるでやんすかねぇ…やたら重いでやんす」
女戦士「貸してみろ…」
ローグ「刀身が白銀色…なんか珍しい金属でやんす」
女戦士「ほう?これはコバルトの合金だな…腐食しない様に作られた剣だ」
ローグ「ロングソードにしちゃ重いっすよね?…2キログラムは超えてるっす」
女戦士「鈍器に近いが私には丁度良い重さだな…預かる」
ローグ「重戦士用っすか?」
女戦士「そうだ…これほど重いと素人では使いこなせん」
子供「ママ!その剣をこの子にあげたらダメ?」
女戦士「子供が使える剣では無いぞ?」
ローグ「かしらぁ…あっしが使って良いって言っちゃったんすよ」
女戦士「ううむ武器を預けて何も起こさねば良いのだが…」
ローグ「背負わせて荷物持ちって事でどうでやんすか?どうせ振り回せんでやんす」
女戦士「まぁ良い…どうせ拾い物だ…未来が責任を持て」
ローグ「未来君良かったっすねぇ」
子供「ママありがとう!!」
ローグ「あっしが背負える様に細工してあげるっすよ?」
子供「大丈夫!細工は得意なんだ!!ママに教えてもらったから」
------------------
女戦士「私は未来と地下の様子を見て来る…ローグは船着き場まで行って情報を集めて来い」
ローグ「日暮れまでに戻って来る感じで良いでやんすか?」
女戦士「任せる…夜はこの馬車で休む」
ローグ「時間余りそうなんで補給物資も馬車まで運んでおきやすね?」
子供「ママ?この子も連れて行って良いよね?」
女戦士「未来が面倒を見るのだろう?邪魔にならない様にしろ」
子供「うん…」
女戦士「マスクは外さない様にな…付いて来い」スタスタ
子供「いくよ!」グイ スタタ
オークの子「…」スタタ
『地下』
衛兵「止まれ!身分証を見せろ」
女戦士「…」パサ
衛兵「む…フリーパスの奴隷商」
女戦士「通って良いか?」
衛兵「子連れとは…チカテツ街道はフリーパスでも立ち入りが制限されているから行かない様に」
女戦士「何故そのような事になって居る?」
衛兵「奴隷移送用のトロッコが動いて居るからだ…見に行くならシェルタ砦で許可を取ってくれ」
女戦士「そうか…ご苦労!通るぞ?」スタスタ
--------------
--------------
--------------
子供「ママ?今の話って…」
女戦士「未来も気付いたか…どうやらチカテツ街道を使って奴隷のオークを移送しているのだな」
子供「そんなのこの子に見せられない」
女戦士「そんなつもりは無いから安心しろ」
子供「どうしてオークを掴まえたりするの?」
女戦士「さぁな?私の方が知りたい…行くぞ?迷子にならない様に気を付けろ」
『中央ホーム』
ガヤガヤ ガヤガヤ
子供「露店がいっぱい…」
女戦士「何か欲しい物はあるか?」
子供「僕は何も…」
女戦士「ここにはな…色んな機械で出来た物が売って居るのだ」
子供「ママは何か買う気?」
女戦士「望遠鏡が欲しくて見に来た…興味は無いか?」
子供「欲しい!!」
女戦士「私が選んでやる…しっかり付いて来い」
子供「うん!!」
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子供「ママそんな大きな望遠鏡買ったの?」
女戦士「フフ未来の望遠鏡はコレだ」
子供「おぉ!!カバンに入る!!」
女戦士「未来は何か買ったのか?」
子供「虫メガネさ!!この子の分も買ったよ」
女戦士「ふむ…それがあれば魔法を使わないで火を起こせるぞ?」
子供「うん!知ってる」
女戦士「良い買い物をしたな?」
子供「他にもホラ!!バネとかネジとか…こんなのもあるよ帯眼鏡!」
------------------
子供「手足が機械になってる人が多いね」
女戦士「黒死病で動かなくなった手足を機械に変えて居るのだな」
子供「エリクサー飲めば良いのに…」
女戦士「南の大陸には恐らく材料が無いのだ」
子供「あの手はちゃんと動くのかなぁ?」
女戦士「機械に変えた方が良いと言う話も聞いた事がある」
子供「ふ~ん…」
オークの子「がうるるる…」グイ
子供「おっとっと…どうしたの?」
オークの子「ぅぅぅ」ギロリ
子供「んん?あ…ママ!!あの人…」
女戦士「どうしたのだ?」
子供「あの人から変な匂いがする…なんだろう?ゾンビ?」
女戦士「近寄るな…」
子供「何か話してる…」
女戦士「聞こえるのか?」
子供「うん…悪い話」
ヒソヒソ ヒソヒソ
子供「麻薬が届かないから追加で送れって…誰と話してるんだろう」
女戦士「他には何と?」
子供「う~ん…奴隷を海上で積み替える?何の事か分からない…」
女戦士「貝殻に向かって話しているな…マズイなこんな所にもリッチが居るのか…」
子供「悪い人だよね?」
女戦士「未来…良く聞け…今来た道を2人で帰れるな?」
子供「大丈夫だよ」
女戦士「お前は爆弾をいくつか持って居たな?」
子供「うん」
女戦士「私によこせ…」
子供「これだよ…」コロコロ
女戦士「3つか…よし…私はこの爆弾でリッチを始末してから戻る」
子供「気を付けてね」
女戦士「初めての冒険だ…2人でとにかく上手く帰るのだ…良いな?」
子供「わかったよ…大丈夫だから心配しないで」
女戦士「よし!行け…」
『地下入り口』
タッタッタ タッタッタ
子供「こっちだよ…手を離さないで」
オークの子「…」グイ
子供「止まらないでよ…」
ドーン ドーン ドーン
子供「爆発音…」
衛兵「なんだぁ!!襲撃か!?」ダダダ
ザワザワ ザワザワ
何!?今の音…
オークの襲撃が来たのかも知れん
まずいぞ…外に逃げろ!!
嫌ぁぁぁ!!
ザワザワ ザワザワ
衛兵「君たち邪魔だ!どくんだ!!」ダダダ
子供「まずい…人に撒かれる…行くよ!!」グイ スタタ
オークの子「…」スタタ
『裏路地』
メラメラ パチ
子供「はい…山賊焼きだよ…今度のは塩で味が付いてるからおいしいよ」
オークの子「…」プイ
子供「食べて良いよ?」
ローグ「あらら?未来君帰ってたでやんすね?かしらは何処行きやした?」
子供「まだ地下の方から帰って来て無い」
ローグ「えええ!?未来君は2人で帰ってきたでやんすか?」
子供「うん…」
ローグ「マジっすか…何も無くて良かったでやんす」
子供「ママ大丈夫かなぁ…」
ローグ「心配する様な事があったでやんすね?」
子供「リッチ?っていうゾンビみたいな人が居たんだ…始末するって一人で…」
ローグ「ええええええええ!!?そらマズイっすね…かなりマズイっす」
子供「僕たちは馬車で待ってるから様子見て来てよ」
ローグ「ここから動いたらダメでやんすよ?あっしはちっと行って来るでやんす」
子供「気を付けて!!」
タッタッタッタ
『夕暮れ』
リリース スゥ
ローグ「未来君!!回復魔法が必要っす」
女戦士「はぁはぁ…金属片を抜いてから回復してくれ…はぁはぁ」
子供「ママ!!」
ローグ「抜きやすぜ?痛いっすよ?」
女戦士「早く抜け…」
ローグ「ふんむ!」ズボ ズボォ
女戦士「はうぅ…うぐっ」ドクドク
ローグ「未来君!回復魔法を!!」
子供「回復魔法!」ボワー
女戦士「もっとだ…はぁはぁ」
子供「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー
女戦士「ふぅぅぅ…」
子供「血が止まった…ママ大丈夫?」
女戦士「後は薬草を当てておけば良い…処置してくれるか?」
子供「うん…」
女戦士「しかし…侮った…」
ローグ「かしらは無茶し過ぎっすよ」
女戦士「自爆するとは思って居なかったのだ」
子供「倒せたの?」
女戦士「未来の爆弾で跡形も無く吹き飛んだ…一般の人の被害は無い」
ローグ「こんな所までリッチが来てるんすね」
女戦士「船着き場の方はどうだったのだ?」
ローグ「奴隷船が2隻入ってるっす…行先はセントラル沖でやんす」
女戦士「いつ出港するのだ?」
ローグ「2隻目に奴隷を積んだら出港とか言ってやした…どんくらい掛かるかはわからんす」
女戦士「1隻あたりどのくらいの奴隷を積んで居るのだ?」
ローグ「船の大きさからして500ぐらいっすね」
女戦士「海賊で拿捕出来そうか?」
ローグ「キラーマシンを何とかすれば行けそうっすね…やるんすか?」
女戦士「奴らは間違いなく黒の同胞団だ…見過ごすわけにいくまい」
ローグ「拿捕して海賊にでもするんでやんすか?」
女戦士「まだそこまで考えては居ないが…さて…」
----------------
子供「ママ?穴の開いた金属糸のインナー直したよ」
女戦士「未来は器用だな…助かる」
子供「ママの装備でも貫通するんだね…あの金属」
女戦士「油断したのだ…至近距離から直撃だった」
ローグ「かしらがあんな大怪我したの見た事無いでやんす」
女戦士「フフ私は少し血を流したぐらいが丁度良い…今はスッキリしている」
子供「山賊焼き食べる?塩で味付けしたからおいしいよ?」
女戦士「頂く…」モグ
ローグ「あっしも頂くっす」モグ
女戦士「お前も食べておけ」
子供「僕はあんまりお腹が空かないんだよ」
女戦士「エルフの血か…」
ローグ「それなら馬車にキノコがあったっすね」
子供「あ!!欲しいかも」ゴソゴソ
オークの子「…」ダダ
子供「ん?君もキノコ欲しいの?」
女戦士「そういえばオークもエルフと似たような種族と聞いたな」
子供「キノコいっぱいあるよ…はい」
オークの子「はむはむ…」モグ
ローグ「言葉が通じれば良いでやんすがねぇ…」
-----------------
ローグ「壺を拾ってきたでやんす…こん中に炭を入れて下せぇ」
子供「馬車の中に入れるの?」ガッサ ガッサ
ローグ「そーっす…雪が降りそうなんで炭で暖を取るんす」
子供「干し草と毛皮があって良かったね」
ローグ「あぁもう雪がチラついてるっすね…積もらなきゃ良いでやんすが…」
女戦士「未来!馬車に入れ…寒くなるから固まって休むぞ」
子供「うん…」
女戦士「その子も連れて来い」
子供「おいで…」グイ
オークの子「…」
ローグ「壺を置いとくでやんす…あっしは後で休むんで先に寝て下せぇ」
女戦士「フフ固まると中々暖かい」
『翌朝』
ローグ「あぁぁぁさぶ…」
子供「雪積もっちゃったね」
女戦士「商人ギルドの建屋の中は暖かい…行って来ても良いぞ」
子供「あ!!屋上から望遠鏡使おうかな?」
女戦士「ほう?私も行って見るか」
ローグ「あっしは火を起こしとくんで行って来て良いっすよ?」
女戦士「よし付いて来い…」
『商人ギルドの屋上』
子供「何か見える?」
女戦士「私の望遠鏡は倍率が高くてな…見えにくい」
子供「僕のは船が見えるよ」
女戦士「未来の望遠鏡の方が使い勝手が良いな…貸してくれないか?」
子供「うん…」
女戦士「ふむ…奴隷船は一応大砲を乗せているな」
子供「ママは助けるつもりなんだよね?」
女戦士「助ける事になるのかは分からんが黒の同胞団は放置出来ない」
子供「オークを奴隷にしてどうするんだろう…」
女戦士「行先はセントラルなのだろうな…どうする気なのか」
子供「オークとエルフは似た種族だって言ってたでしょ?」
女戦士「そう聞いた事があるだけだ」
子供「エルフってどうして掴まえられるのかな?」
女戦士「む…エルフの代わりに捕らえられて居ると言うのか?」
子供「掴まえられたエルフってどうなってるんだろう…」
女戦士「エルフの心臓は錬金術の材料…まさかオークの心臓を使うつもりか?」
子供「…」
女戦士「まてよ?ドワーフの国に攻めようとして居たのも同じ理由なのか?」
子供「心臓無くなったら死んじゃうよね…」
女戦士「ざわざわこんな遠方まで心臓の為に来るとは思えんのだが…」
子供「遠方ってどのくらい?」
女戦士「…」
---シャ・バクダまでの移送は考えられない---
---セントラルに送ったところで何も無い筈---
---他に拠点を持っているという事か?---
----------------
ローグ「かしらぁ!朝食出来やした…未来君と一緒に降りて来てくだせぇ」
女戦士「ローグ!!」
ローグ「へい?」
女戦士「あの奴隷船に忍び込んで火薬を盗んでは来れないか?」
ローグ「無茶言わんで下せぇ…火薬の入った樽背負って逃げる自信なんか無いっす」
女戦士「海に捨てるのは出来んか?」
ローグ「あの船の荷室は船底なんすよ…樽背負って甲板に出る前に見つかるっす」
子供「ママ?火薬に海水掛けると爆発しなくなるよ」
女戦士「む!!砂鉄を酸化させるのだな?良い案だ」
ローグ「未来君は賢いっすねぇ…海水掛けるぐらいなら出来るっす」
女戦士「大砲さえ使わせなければ拿捕が楽になる…行って来てくれ」
ローグ「わかりやした」
『焚火』
メラメラ パチ
ローグ「今日は豪華っすよ?芋と卵に肉!!」
子供「肉はもういいや…卵と芋はカバンに入れとく」
ローグ「あらら?お腹空いてなかったんすねぇ…」
女戦士「私が頂く」モグ
ローグ「じゃぁあっしは奴隷船の方に行ってきやすね?」
女戦士「頼む…私は錬金術師を探して素材について聞いて来るから未来は商人ギルドから出るな」
子供「うん…」
女戦士「建屋の中に居る商人達から買い物をするのは自由にやって良い」
子供「本当!?」
女戦士「馬車に積んである錬金術の材料は好きにして良い…取引の練習もしておけ」
ローグ「未来君良かったっすねぇ?」
女戦士「建屋からは出るな?」
子供「分かってるよ!!何があるかなぁ…」ワクワク
『馬車』
ガサゴソ ガサゴソ
子供「あぁぁ!!それも食べられるの?」
オークの子「ガリガリ…」バキ ガツガツ
子供「錬金術の材料にはオークの食べ物も多いんだ…骨も食べるのか」
オークの子「ふんっ!」ポイ
子供「それはダメ…角とかは後で細工に使うから売らない」
オークの子「…」ジー
子供「これくらいで良いっか?袋のそっち側持って?売りに行くよ…よいしょ!!」
オークの子「…」グイ
子供「おっけ!!じゃ行こう」スタタ
オークの子「…」スタタ
『商人ギルド』
ガヤガヤ ガヤガヤ
昨日の爆発騒ぎで地下に行くのに制限が…
こりゃ商売できんすなぁ…ハハハ
はい商船に乗る方はこちらに並んで…
個別トレードはあっち行ってね
ガヤガヤ ガヤガヤ
娘1「あんたお使い?」
子供「え…あ…うん…おばさんは?」
娘1「おばさんじゃないよ?お姉さんて呼んでくれる?」
子供「ごめん…お姉さんは誰?」
娘1「商人ギルドの店番」
子供「へぇ…偉い人なんだ」
娘1「個別トレードはこっちだけど…大人の人は?」
子供「今は出かけてるんだ」
娘1「その袋は?」
子供「売り物だよ…買ってくれる?」
娘1「見ていいかな?」
子供「うん…」
----------------
娘1「ちょ…娘2!!見て…」
娘2「なに~?忙しいんだけど」
娘1「子供がこんなの持ってるんだけど…」
娘2「どれどれ…うは!!宝の山…」
娘1「君きみ…この袋の中身の価値分かってる?」
子供「錬金術の材料でしょ?」
娘1「う…君は何者?」
子供「買う気無いなら他の人探すから良いよ」
娘1「子供がトレードする物じゃ無いんだけど…」
子供「そうなんだ…困ったなぁ」
娘2「見積もってみようか?」
娘1「そうだね…何かあったら商人ギルドの信用問題になるね」
子供「良く分からないけど…待ってれば良い?
娘2「直ぐに終わるから」
-----------------
娘2「…全部で7金貨と60銀貨…水銀がメチャメチャ高い」
娘1「んんん…君きみ?この荷物を競売に掛けて良い?」
子供「僕その意味わからない」
娘1「んぁぁぁ…お姉さんがちゃんと売ってあげるから待っててくれるかな?」
子供「良いよ」
娘1「大人の人はどこ?」
子供「しばらく帰って来ないよ」
娘1「本当に売っちゃって良いのかなぁ?」
子供「うん!大丈夫!」
娘2「お姉ぇ…これちゃんと適正以上で売らないと後で問題になるんじゃない?」
娘1「う~ん…7金貨なんか家に合ったっけ?」
娘2「あるある!後で返品できるようにしておいた方が良い」
娘1「おけおけ!君きみぃ…この袋をお姉さんが7金貨と60銀貨で買い取るで良い?」
子供「良いよ」
娘1「ぶっ…あっさりだね」
娘2「お姉ぇ!じゃぁ金貨持ってくる」
子供「お姉さんありがとう」
娘1「大人の人によろしくねぇ~」
『裏路地』
よいしょ こらしょ どっこいしょ
子供「ふぅぅぅ!!馬車に乗せるよ?そっち側持ってね…せーの!!」ドッスン
オークの子「ふんが…フンフン!」
子供「いっぱい買ったね…開けて見てみようか?」
スタスタ
娘1「なぁ~んだ…こんな所に馬車泊めてたんだ」
子供「あれ?お姉さん…僕たちの事心配で見に来たの?」
娘1「一応ね…ここに馬車があるという事は大人はちゃんと居るんだね」
子供「今は出かけてるんだけどね」
娘1「何を買ったの?」
子供「どんぐりとか松ぼっくりとか…あと木の根」
娘1「またまたヘンテコな物ばっかり買うんだね…まぁでもこっちじゃ珍しいか」
ローグ「帰ったでやんす~」
子供「あ!!おかえり~」
娘1「大人の人ね?良かった…」
ローグ「ん?未来君の知り合いでやんすか?」
子供「商人ギルドの人だよ…僕たちの様子を見に来たんだ」
ローグ「へぇ?何かやらかしたでやんすか?」
娘1「いえいえ…沢山の錬金術の材料を持ち歩いてたから心配になって…」
子供「全部売ったよ?」
ローグ「いくらになったでやんすか?」
子供「7金貨と60銀貨くらいだっけな?」
ローグ「ほえ~えらく高く売れたでやんすね?」
娘1「競売に掛けると大体そのくらいに…」
ローグ「未来君…親切にしてもらったらお礼をするでやんす」
子供「あ!!ごめん…気が付かなかった」
娘1「いいのいいの…じゃぁ私はこれで」
子供「お姉さん…半分あげるよ」チャリン
娘1「ええええええ!?」
ローグ「いーんすいーんす!…貰っといてやって下せぇ…」
娘1「マジで?マジで?…」
ローグ「でも内緒っすよ?」
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ローグ「未来君にお土産でやんす…一袋だけ火薬を盗んできたでやんす」
子供「おぉ!!爆弾作れる!!」
ローグ「そう言うと思っていやした…本当あねさんにそっくりでやんす」
子供「昨日地下でネジを沢山買ったんだ!!これで爆弾が強くなる…」
ローグ「上手く行くと良いでやんすねぇ」
子供「早速作るよ!!」
ローグ「あっしは買い出しに行くんで馬車で待っててくだせぇ」
子供「うん!!ねぇ…君も手伝って?」
オークの子「…」ジー
子供「こうやって作るんだよ…」
これをこうして…こんな風に…
それでここに入れる
クルクルっと巻いて…
『夕方』
ツカツカ
女戦士「未来はどうしている?」
ローグ「馬車の中で爆弾を作って居るでやんす」
女戦士「ふむ…気球の取引が早まったのだ…日が暮れる前に馬車の荷物を気球に乗せ換えたいのだが…行けるか?」
ローグ「直ぐに行けやす…気球はどちらで?」
女戦士「発着場で今荷物を降ろしているそうだ」
ローグ「じゃぁ急いでヤクを繋ぎやす」
女戦士「2匹のヤクはもう売約済みだ…繋ぐのは1匹で良い」
ローグ「わかりやした…直ぐに移動できるんで馬車に乗ってて下せぇ」
----------------
トンテンカン ゴシゴシ
女戦士「何を作って居るのだ?」
子供「あ!!ママ…余ってる角でアクセサリー作ってるんだ」
女戦士「フフ爆弾はもう作り終わったか?」
子供「うん…今乾かしてる」
女戦士「もう気球に移動するから準備しろ」
子供「早くなったの?」
女戦士「そうだ…深夜までには基地に到着したい」
子供「この子…どうしよう?」
女戦士「置いて行く訳に行くまい?連れて行くしか無いな」
子供「良かった」
女戦士「何だ?この袋は…豆か何かか?」ガサガサ
子供「どんぐりだよ…この子が一人になった時に食べられる様に」
女戦士「フフ…この木の根もか?」
子供「うん…僕も食べるけどね」
女戦士「これはマンドレイクの根だな…錬金術の材料だぞ?高かったのでは無いか?」
子供「売り物の中に水銀があってさ…高く買い取ってくれたんだ」
女戦士「水銀が合ったのか…お前は触って居ないな?」
子供「うん…どうして?」
女戦士「毒があるから子供は触ってはいけない」
子供「へぇ?ママは手を突っ込んで遊んでたんだけどな…」
女戦士「む…そうか…お前もドワーフの血が流れて居るとすると水銀を触っても良いな…今のは忘れてくれ」
子供「砂鉄に手を突っ込むのも良い?」
女戦士「好きにしろ」
------------------
ウモモォォーー ガラゴロガラゴロ
ローグ「…それでかしらぁ…錬金術の材料の件はどうでやんすか?」
女戦士「大した情報は無かった…確かにエルフの心臓は材料になるそうだがキ・カイ錬金術では使わないそうだ」
ローグ「じゃぁオークの心臓も使うかどうか分からんてこっすね?」
女戦士「シャ・バクダ錬金術を周知している者は見つからなかった」
ローグ「んんむ…じゃぁやっぱり心臓じゃなくてそのままキマイラにする感じなんでしょうね?」
女戦士「その線が強そうだがそんな魔物を見たことが無い」
ローグ「キマイラっちゃぁ…ミノタウロスとかケンタウロス…グリフォン…ハーピー」
女戦士「オークの体を使ったキマイラなぞ知らぬだろう?」
ローグ「そーっすねぇ…」
女戦士「奴隷の使い道は分からんが兎に角…黒の同胞団は捨て置けん」
『気球発着場』
女戦士「あの貨物用の気球だな…取引相手が待って居る」
ローグ「馬車は引き取ってもらう感じで?」
女戦士「うむ…私は話をして来るから荷の積み替えを頼む」
ローグ「分かりやした」
女戦士「未来も荷の積み替えを手伝え…出来るだけ早く移動したい」
子供「うん…」
女戦士「オークの子にも手伝わせろ」
子供「分かった」
ウモモォォーー
ローグ「未来君!あっしが気球に入れて行くんで未来君は荷を馬車から降ろして下せぇ」
子供「おっけ!君も手伝って!」
オークの子「がう…」ジー
ローグ「麻薬の入った樽を先に積みやす…よっこら!!」
子供「あと僕が降ろしておくよ…そっち側持って?ふんっ!!」ズリズリ
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-----------------
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『貨物用の気球』
ローグ「この気球は炉の送風が自動になってるっすね…これ良いっすね」
女戦士「高価なだけの事はあるだろう?」
ローグ「風の魔石はどれくらい持つでやんすかね?」
女戦士「さぁな?籠の中に替えの魔石が入っている筈だが…」
ローグ「ありやした…只なんか無くなるのが心配でやんす」
女戦士「ケチケチするな…無くなったら手動で送風すれば良い話だ」
ローグ「あっしの悪い癖が出やしたね…」
ズリズリ ドサ!
子供「これで最後のどんぐり」
ローグ「じゃぁ乗って下せぇ…狭いでやんすが炉の近くは暖かいっすよ?」
子供「おいで?」グイ
オークの子「…」
女戦士「では出発しようか」
ローグ「アイサー!!気球なら基地まで直ぐに着きやす」
女戦士「早く帰って水浴びがしたい…急いでくれ」
フワフワ フワフワ
------------------
ビョーーーウ バサバサ
”聞こえるか?…”
”…お姉ぇ?聞こえるよ!!どう?そっちは?”
”古都キ・カイに居るのだが黒の同胞団の手掛かりを見つけた”
”え!?マジ?そっちまで行ってんの?”
”どうやら大量にオークを捕獲して奴隷船でセントラル方面に移送している様だ”
”なんそれ?どゆ事?”
”ひとまず海賊で奴隷船を拿捕しようと思うのだが救出したオークをどうするか思案中なのだ”
”オークって言う事聞くの?言葉通じないじゃん?”
”だから困っているのだ…私はアサシンと直接話せないからフィン・イッシュで受け入れられないか聞いてくれないか?”
”おけおけ…なんかアサシンもフィン・イッシュに戻るみたいな事言ってたよ”
”大体1000体ぐらいオークの奴隷が居る様だ…海賊だけでは受け入れ切れん」
”うは…丁度さぁフィン・イッシュもセントラルに攻められそうでヤバイらしい」
”なら尚の事オークを保護して上手く自衛になれば良い」
”お姉ぇもフィン・イッシュに来る?」
”いや…私は黒の同胞団の手掛かりを追おうと思う”
”なんか掴んだの?”
”オークをセントラルに移送するのはやはりおかしい…他に拠点を構えていると思うのだ”
”なるほど…そういやさぁ…エルフの森南部に基地があるかも”
”それは確かな情報か?”
”そこらへんからミノタウロスがいっぱい出て来てるっぽいんだ”
”ふむ…それだな…それなら移送する意味がある”
”お姉ぇさぁ…未来居るんだから無茶しないで?”
”分かっている…常にハイディングして居ると思ってくれ”
”おけおけ…ほんじゃアサシンと話しできたら連絡するよ”
”良い返事を持って居る…”
-----------------
ローグ「奴隷のオークをフィン・イッシュに行かせるのは良い案っすねぇ…移民を歓迎してるでやんすよ」
女戦士「オークが事情を理解してくれれば良いのだが…」
ローグ「あっしは南の大陸の国境でオークを見たんすがね?オークは賢いでやんす」
女戦士「それはこのオークの子を見ても分かる…明らかに知性と理性がある」
ローグ「どっちかって言うと人間の方に問題がありやすね…オークは魔物と決めつけている人が居やすから」
女戦士「言葉の問題がな…」
ローグ「未来君のお友達が通訳になりやせんかね?」
女戦士「まだ子供だ…大人のオークが子供の言う事なぞ聞くものか」
子供「ホム姉ちゃんならお話し出来るかも」
女戦士「ホムンクルスか…そういえば言葉を覚えるのが早かったな」
『海賊の基地』
フワフワ
ローグ「何処に降りやす?」
女戦士「私の船の船尾だな…積み荷は明日積み替える事にしよう」
ローグ「わかりやした」
女戦士「私は水浴びに行くが未来も来るか?」
ローグ「うん!!この子も連れて行って良い?」
女戦士「良いぞ?汚れを落としてやる」
ローグ「今日はこのまま解散でやんすか?」
女戦士「うむ…海賊共には明日話をするからお前もゆっくり休め」
ローグ「あっしも水浴び行って良いっすかね?」
女戦士「好きにしろ…ただし覗くなよ?」ジロリ
『水場』
モクモク モクモク
女戦士「先に海水で汚れをしっかり落とすのだ」
子供「ぅぅぅ寒い…」ガチガチ
女戦士「海の方が温かいから早く落としてこい」ジャブジャブ
子供「えーい!!」ダダダ ザブーン
女戦士「お前は寒さに強いのだな?」ジャブジャブ ゴシゴシ
オークの子「…」
子供「ママ…だめムリ…寒い」ガチガチ
女戦士「桶の中の湯に浸かって良い…温まっていろ」
子供「ぅぅぅ…」ブルブル
女戦士「よし!綺麗になった…湯に浸かるぞ?…来い」
子供「熱っ!!」タジ
女戦士「寒いだの熱いだの注文が多い…ゆっくり入れ」ソソ チャプン
オークの子「…」タジ
女戦士「お前も入って良いぞ?」グイ
オークの子「うが…」チャポン
女戦士「湯は初めてか?温まると気持ち良いぞ?ふぅぅぅ」
ローグ「かしらぁ!!追加の湯を持ってきやしたぜ?にひひ」
女戦士「持って来てくれ…もう少し温めたい」
ローグ「へい!!」シュタ
女戦士「…」ジロリ
ローグ「いやいやいや追加の湯を持ってきただけでやんすよ…にひひ」
『貨物船』
ザブン ギシギシ
女戦士「やはり船の方が暖かいな…今日は居室で休むのだ」
子供「うん!!僕の荷物は居室に移しておくね?」
女戦士「お前の荷物?どんぐりと松ぼっくりか?」
子供「そうだよ…僕とこの子の携帯食料さ」
女戦士「フフまぁ好きにしろ」
子供「こっちだよ!!ぼくの部屋を見せてあげるよ」グイ スタタ
オークの子「…」スタタ
女戦士「子供は言葉が無くても良い…か」
女戦士「さて…私も休むか」
---------------
---------------
---------------
『翌日_気球』
トンテンカン トンテンカン
ローグ「未来君!!かしらに気球の改造して来いって言われて来たでやんす」
子供「僕もママにアロースタンド作れって言われたんだよ」
ローグ「じゃぁあっしは何しやしょうかね?」
子供「なんか海賊のおじさんが材料を置いて行ったんだけどさぁ?」
ローグ「んん?木材と布…これひょとしてあねさんと同じ様に帆を張れってこっすかね?」
子供「わかんない…でも好きにして良いって事だよね?」
ローグ「あねさんと同じはあっしにはムリでやんす…ちっと帆を張るぐらいっすねぇ」
子供「出来た!!アロースタンドこれで良い?」
ローグ「3つも作ったんすね?」
子供「うん!左右と後ろ用だよ…ボルトの入れ物はココさ」
ローグ「おぉ!!あねさんより工夫してるでやんすね?」
子供「クロスボウは何処にあるのかな?」
ローグ「あっしが持ってきてあげるでやんす」
子供「ダメだよローグは帆を作ってよ」
ローグ「あららら…やっぱしあっしは帆でやんすねトホホ」
子供「ちょっとクロスボウを探してくるね」
------------------
子供「ボルトって重いんだなぁ…よいしょ」
オークの子「…」グイ
子供「ありがとう!君は力持ちだね」
ローグ「未来君!!どうでやんすか?縦帆2つっす」
子供「へぇ?恰好良くなったね」
ローグ「クロスボウが3つ搭載されていると中々の火力っすね」
子供「最強の貨物用気球だね」
ローグ「馬鹿に出来やせんぜ?戦闘員乗せて気球から船の強襲にも使えやす」
子供「それなら下にもクロスボウ撃てるようにした方が良いね」
ローグ「そーっすね…あっしが床に細工するでやんす」
子供「なんか改造って楽しいなぁ…」ワクワク
-------------------
ローグ「かしらぁ!!見て下せぇこの気球の出来を!!」
女戦士「ふむ…ローグにしては中々良い」
ローグ「いやぁぁ未来君の細工もなかなかのもんす」
女戦士「未来は何処に行った?」
ローグ「船降りてヤードの方っすかね?ボルトを取りに行くとか言ってやした」
女戦士「そうか…この船用のアロースタンドも作って置けと伝えてくれ…20個だ」
ローグ「え!?この船で海戦やるんすか?大砲が無ぇでやんす」
女戦士「クロスボウで補う…こちらには爆弾があるのでな」
ローグ「飛距離が足りんでやんすよ」
女戦士「まともに撃ちあうつもりなぞ無い…ハイディングからの奇襲だ」
ローグ「あぁそういう事っすね…ならクロスボウの方が良いっすね」
女戦士「うむ…荷物を積み終わったらこの船でもう一度キ・カイまで補給に行く」
ローグ「クロスボウの入手っすね?」
女戦士「他にもあるがな?陸路で運搬が出来んから船で行った方が良いのだ」
ローグ「もう行くんでやんすか?」
女戦士「あと2時間ほどで荷の搬送が終わる…未来には船に乗って居ろと伝えてくれ」
ローグ「わかりやした」
『2時間後』
ザブン ギシギシ
船乗り「碇を上げろぉぉぉ!!」
ローグ「やっぱりこの船は40人ぐらいが賑やかで丁度良いでやんすね?」
女戦士「ガレオン級はそのぐらいが限界だな」
ローグ「大砲を一門も積んで無いんで貨物船扱いでどこにも入港出来るのが良いっすね」
女戦士「今回は奴隷商の身分証もあるからキ・カイでの仕入れもラクだろう」
ローグ「クロスボウ以外の仕入れって何を買うでやんすか?」
女戦士「食料だ…奴隷にされているオーク達には補給が必要だ」
ローグ「かしらぁ…あっしは一生付いて行くっす」
女戦士「未来が買ったどんぐり…あれはかなり安い…そしてオークにはとても良い食料と見た」
ローグ「どんぐりを買い占めるんすか?」
女戦士「他にも芋が安かっただろう?どうも植物の根や実を好む様だ…どちらも安いから仕入れる」
ローグ「あああああ!思い出しやした…それどっちもエリクサーの材料っすね」
女戦士「んん?そうなのか?」
ローグ「クヌギの実がどんぐりでアルコールの原料が芋っす…てことは松脂の代わりに松ぼっくり…」
女戦士「ほう?体内でエリクサーを作っているのか?」
ローグ「だからエルフもオークも小食なのかもしれやせん」
女戦士「そういえばオークの子は肉を沢山は食わんな」
ローグ「これって新説発見じゃないっすか?体の中で錬金術っすよね?」
女戦士「体内で錬金術…ふむ…いやしかし」---謎が深まるばかりだ---
『キ・カイ船着き場』
ギシギシ ガコン ギギギ
女戦士「ようし!!数名下船して食料の調達に行ってこい!!他の者は待機しろ」
子供「ママ?僕たちは降りる?」
女戦士「灰で汚れてしまうから居室に入って居ろ」
子供「うん…わかった」
女戦士「ローグはクロスボウとボルトの調達を頼む」
ローグ「アイサー!!弓は要らんすか?」
女戦士「クロスボウだけだ…キ・カイではクロスボウの方が安い」
ローグ「分かりやした…じゃ行って来やす」タッタッタ
女戦士「…」---奴隷船2隻は入れ違いで出港してしまったな---
『居室』
ガチャリ バタン
オークの子「!!?」ズザザ
子供「あ!!大丈夫だよ…怖がらないで?」
オークの子「…」ギロリ
女戦士「やはり大勢の男達が居ると怯えているのか?」
子供「うん…みんな珍しそうに覗いて行くから…」
女戦士「ふむ…慣れてもらうしか無いのだが…男達には私からも言っておく」
子供「でも目はしっかりしてる」
女戦士「怯えているのでは無く身構えているだけか…プライドが高いのだな」
子供「おいで?大丈夫だから…」
オークの子「…」ソローリ
子供「沢山の人に見られるのが嫌みたい」
女戦士「…」---この子は私に似ているな---
---自分の見た目に自信が無い…---
---卑下されている様な目が嫌なのだ---
---だから剣に逃げる---
女戦士「未来!木剣で素振りを教えてやれ」
子供「え?あ…うん」
女戦士「剣を背負わせても触ろうとしないという事は今まで持った事が無いのだ」
子供「わかったよ…ママに教えて貰った通りにやってみる」
---------------
ブンブンブン ブン!!
子供「ぐちゃぐちゃだけどそんな感じで良いよ」
女戦士「次は未来が凌いでみろ」
子供「うん…僕に打ち込んでみて?」
オークの子「…」ジロリ
子供「来て良いよ…」スチャ
オークの子「…」タタ ブン
子供「…大振り」カコン
オークの子「ウガ!」ブンブン
コンコン
女戦士「運動していれば気が紛れる…しばらく立ち合って居るが良い」
子供「うん!いろいろ教えておくね」
オークの子「ググ!」ブンブンブン
『半日後』
ザブン ギシギシ
ローグ「いやぁぁキ・カイの外の街に衛兵が増えて居やしてね?何回も身分証見られましたわ」
女戦士「クロスボウは無事に入手出来たか?」
ローグ「荷室に入れてありやす」
女戦士「食料の調達も手間取って居そうだな?」
ローグ「そーっすね…あっちも衛兵に止められてるっすね」
女戦士「そろそろ出港したいのだがな」
ローグ「これからどうする気で?」
女戦士「セントラルに向かう途中の灯台がある島周辺で奴隷船を拿捕する」
ローグ「海賊船は同時に動いてるでやんすか?」
女戦士「近場に居るのが2隻だけなのだが先に向かっている筈だ」
ローグ「2隻…じゃぁこの船が主力になりやすね」
女戦士「向こうは大砲が撃てんからな…気球を持って居る私達に分がある」
ローグ「向こうが他の軍船と接触しちまう前にやりたいっすね」
女戦士「うむ…ハイディングで先回りして待つ形にしたい」
-------------------
ローグ「未来君!船長室の方へ移動して下せぇ」
子供「え!?ここで良いのに」
ローグ「あっちの方は人が来ないでやんす…かしらが使って良いと言ってるでやんす」
子供「そっか…じゃぁ荷物持って行こうかな」
ローグ「あっしが持つでやんすよ?」
子供「うん…どんぐりの袋をお願い」
ローグ「立ち合いをやっていたでやんすか?」
子供「そうだよ…僕がこの子に教えてるんだ」
ローグ「オークの子はどうでやんすか?」
子供「僕とは全然違う感じだよ」
ローグ「あっしにも後で見せてくだせぇ」
子供「うん!船長室って狭くない?」
ローグ「船長室のデッキでやれば良いっす」
子供「そっか…おいで?」グイ
オークの子「…」
-----------------
ローグ「やっと荷入れが終わりやしたね…随分時間かかりやしたね」
女戦士「衛兵は麻薬を探しているらしい」
ローグ「そりゃガサ入れが来る前に早い所出港した方が良いっすね」
女戦士「うむ…船員が乗り込み次第出港させる」
ローグ「見てくだせぇ未来君とオークの子の立ち合い…受けだけだと未来君は力押しされてるっすね」
女戦士「体重差だな…まぁ良い訓練だ」
ローグ「オークの子のブレない目はかしらみたいっすね」
女戦士「フフお前もそう思うか?私も似ていると思った…小さいなりに誇り高い」
ローグ「あの真っ直ぐな目を未来君も感じてると良いでやんす」
女戦士「立ち会っている本人が一番感じていると思うぞ?」
------------------
船乗り「全員船に乗りました!!出港できます」
女戦士「よし出港だ!!碇を上げろ!!」
海賊共「へーーい!!」
女戦士「横帆を出せ!!面舵いっぱい!!」
ギシギシ ギギギ ユラ~
『貨物船』
ザブ~ン ユラ~
ローグ「いやぁぁやっぱり海の方が温かいっすね」
船乗り「キャプテン!!後方から高速巡視船が一定距離で付いて来ます」
女戦士「気にするな…直に霧が出る」
ローグ「かしらぁ…これあっしらの船を拿捕するつもりじゃ無いっすかね?」
女戦士「沖でキ・カイの軍船が控えて要るのは海賊たちから聞いて居る…霧に紛れてハイディングすれば済む」
ローグ「なら良いっすね」
女戦士「ハイディングで進めば2日は何も起きん…適当に過ごしておくのだ」
ローグ「じゃぁあっしはアロースタンドでも作って置くでやんす」
女戦士「未来考案の奴だな?20台必要になるからよろしく頼む」
ローグ「クロスボウを20基備えてるとちょっとした要塞になりやすね?」
女戦士「洋上での乗り込み阻止には効果が高いだろう」
ローグ「ところであねさんはアサシンさんと連絡付いたでやんすかね?」
女戦士「あぁフィン・イッシュでオークの難民を受け入れる件は承諾されたらしい」
ローグ「良かったっすねぇ」
女戦士「無人島の領土を与えてくれるそうだ…やはりフィン・イッシュ女王は懐が深い」
ローグ「上手い事共生できると良いでやんす」
女戦士「そうだな救出する甲斐があると言うものだ」
-----------------
女戦士「さて…奴隷船に乗っているキラーマシンの件だが」
ローグ「10体は乗って無いっすね7~8体って所っす」
女戦士「正直クロスボウだけで倒せるとは思って居ない」
ローグ「爆弾だと船が痛んでしまいやすね?」
女戦士「やはり私が乗り込んで正面突破しか無いか?」
ローグ「あねさんの爆弾があれば甲板に乗ってるのは海に落とせるんでやんすが…」
女戦士「海に落とせば良いか…1体づつなら何とかなりそうだが…」
ローグ「ボルトにロープ付けて引っ張り落とすのはどうでやんすかね?」
女戦士「ロープにそれ程余裕が無いな」
ローグ「あっしらが着ている金属糸の装備を解いてでやんすね…金属糸を使うのはどうでやんす?」
女戦士「ほう?私とローグ…そして未来の分で足りるか?」
ローグ「十分とは言えやせんが使える様にはできやすね」
女戦士「よし!こうしよう…この船のクロスボウは囮だ…気球から一体づつ狙ってキラーマシンを海に落とす」
ローグ「良いっすね…貨物を空にしておけばキラーマシンも吊れやすね?」
女戦士「3体程落とせば私が乗り込み何とか出来る」
ローグ「それで行きやしょう」
『2日後_灯台の有る島』
ザブ~ン ザブ~ン
女戦士「私達は沖で停船だ…漁村に行く者は小舟に乗れ」
ローグ「かしらは行かんのでやんすか?」
女戦士「行っても何も無いのでな?私は望遠鏡で見張って置く」
ローグ「じゃぁあっしは魚の調達に行って来やす」
女戦士「この島では酒も造っているから買ってこい」
ローグ「わかりやした」
女戦士「未来?お前はどうする?ローグと一緒に行って来ても良いぞ?」
子供「行こっかな…少し走りたいし」
ローグ「良いっすよ?直ぐに帰って来るんで散歩みたいなもんす」
女戦士「そうだ!!浜辺に大きなカニが居るはずだ…腕試しに狩ってこい」
ローグ「それは軍隊ガニっすね…食べられるでやんす」
子供「へぇ?」
ローグ「あっしが見とくんで2人で狩ってみて下せぇ」
子供「よーし!!一緒に行こうか」グイ
オークの子「…」
ローグ「じゃぁ行って来るでやんす」
女戦士「日暮れまでにま戻って来るのだぞ?」
『浜辺』
ザザー ザブン
ローグ「あそこに居るでやんす」
子供「おっけ!行って来る」スタタ
オークの子「…」スタタ
子供「君も剣を使って?」スラーン
オークの子「…」スラリ
子供「いくよ?」タタタ ブン キーン
軍隊ガニ「!!?」ガサガサ
子供「硬い…」タジ
ローグ「足の付け根を狙うっす…足を落とさんと逃げられるでやんすよ?」
子供「足か…」タタタ スパ ボトリ
オークの子「…」タタタ ノッソー ブン ゴツン!
軍隊ガニ「ギュッ…」ブクブク
子供「え!?」
ローグ「あらら?軍隊ガニが失神しとるっすね…足を全部落として下せぇ」
子供「あ…うん」タタタ スパ スパ スパ
ローグ「コバルトの剣は重すぎでやんすが鈍器代わりに丁度良さそうっすね」
子供「すごいなぁあの剣…一発で倒しちゃた」
ローグ「あと2~3匹狩って下せぇ…今日の夜はカニのバーベキューやりやしょう」
子供「うん!!」
ローグ「あっちにも居るでやんすよ?」
『小舟』
ローグ「ちっと船で待ってて下せぇ…あっしは魚を仕入れて来るでやんす」
子供「ここで待ってるよ」
ザザー ザブン ザザー ザブン
子供「君は怪我してない?」
オークの子「ウガ…」
子供「手?見せて?」
オークの子「ウゴウゴ…」
子供「豆が潰れたのか…あの剣重すぎだしね…治してあげる…回復魔法!」ボワー
オークの子「ウトガリア…」
子供「ありがとうって意味?」
オークの子「ルゲアリグンド」
子供「ん?どんぐりくれるの?」
オークの子「…」カリ モグ
子供「僕らの携帯食料だね」カリ モグ
『貨物船』
ワイワイ ガヤガヤ
このカニはあのオークの子が獲って来たんだってよ
ほーうオークも仲間に出来んのか
旨いなこのカニ!!
酒はどこだぁ!?
ワイワイ ガヤガヤ
女戦士「フフみんな喜んで居るな」
ローグ「大量でやんした」
女戦士「未来…今度は何を作って居るのだ?」
子供「軍隊ガニの甲羅でオークの子の防具を作ってるんだよ」ゴリゴリ
ローグ「良い材料が手に入ったでやんすね?」
子供「うん…すっごい軽くて硬い…トゲトゲも恰好良い」
女戦士「黒い甲冑か?」
子供「甲冑って程でも無いけどさ…ほら?」
女戦士「ふむ…布の服よりは随分マシになるな」
ローグ「未来君は本当に器用でやんすね」
子供「ねぇねぇこれ装備してみて…僕とお揃いだよ」
オークの子「ニナ?レコ…」タジ
女戦士「む…何か話しているな?」
ローグ「そーっす…未来君にだけ話をするみたいっす」
『2日後』
ローグ「船が2隻見えるっす」
女戦士「何!?海賊船か?」
ローグ「違うっすね…例の奴隷船でやんす」
女戦士「ちぃぃ海賊船は間に合わなかったか…」
ローグ「どうしやす?」
女戦士「私達はこの島から離れる振りだ…碇を上げろ!!」
ローグ「向こうの補給を狙う感じっすかね?」
女戦士「そうだ!!補給で停泊する筈だからそこを狙う」
ローグ「気球を準備しときやす」
女戦士「未来!気球に乗れ…戦闘になるぞ」
子供「うん!!この子も連れて行くよ?」
女戦士「クロスボウの撃ち方を教えて置け!!」
子供「おいで!!」グイ
女戦士「者共ぉ!!戦闘準備だ!!寝ている者を起こせぇ!!」
『気球』
ビョーーーウ バサバサ
女戦士「この距離を維持しろ…しばらく様子を見る」
ローグ「あっしらの船はハイディングして待機でやんすか?」
女戦士「その予定だ…クロスボウで狙える位置で隠れている筈」
ローグ「奴隷船から小舟が出て行きやしたね」
女戦士「よしよし…3人づつ島に向かっているな?」
ローグ「かしらぁ!!遠くの方にも船が2隻見えてやす…海賊船っす」
女戦士「あの位置だとあと30分か…足並み揃えたいのだが…」
ローグ「ダメっすね…貨物船がリリースしやした…クロスボウ撃ってるっす」
女戦士「むぅぅ…仕方が無い!私達も行くぞ」
ローグ「アイサー」グイ
ビョーーーーウ バサバサ
ローグ「あっちは気球に気付いていやせん…チャンスっす!!」
女戦士「未来!金属糸の付いたボルトは外さない様にしっかり狙え」
子供「うん…」
ローグ「そろそろ撃てるっすよ?」
女戦士「よし…撃て」
子供「…」バシュン バシュン
ローグ「当たりやしたね?引っ張り出すっす」グイ
グイグイ ガコン グラリ
子供「うわぁぁ!!」ゴロゴロ ドスン
ローグ「キラーマシン1体落ちやした!!」
女戦士「金属糸を切れ!!次を狙うぞ!!」
剣士「…」シュタタ スパ
ローグ「あっちが気球に気付きやした…応射してくるっす」
女戦士「向こうの射程外に出ろ」
ローグ「やってるっす…」
シュンシュンシュン ストストスト
女戦士「応射させるな!!こっちも撃つぞ!!」バシュン バシュン
子供「撃って!!」バシュン バシュン
オークの子「…」バシュン バシュン
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子供「3体目!!」
女戦士「よしローグ!!私が飛び降りられる高さに降ろせ」
ローグ「アイサー」グイ
女戦士「私が降りた後は3人でもう一隻のキラーマシンを処理しろ」
ローグ「分かったでやんす」
女戦士「後の処理は海賊たちに任せて良い」
ローグ「かしらぁ!流れ矢に当たらんで下せぇ」
女戦士「フン!当たったら助けに来い…では飛ぶ!!」ピョン
ローグ「未来君!!向こうの奴隷船に行くんでじゃんじゃんクロスボウ撃って下せぇ」
子供「うん!!」
『貨物船』
バシュン バシュン バシュン バシュン
航海士「キャプテンが気球から降りた…おい!!乗り込む合図だ!!」
操縦士「寄せりゃ良いんでがす?」
航海士「向こうはもう撃って来ない!!接弦してくれ」
操縦士「えっさほいさ!えっさほいさ!」
男達「乗り込めぇぇ!!」ドドド
---------------
女戦士「ふんっ!」ブン ガキーン
キラーマシン「プシュー…」ウィーン ガチャ ウィーン ガチャ
女戦士「硬いだけの鉄くずめ!!」ブン ガキーン ブン ガキーン
男達「キャプテン!!助太刀でがんす!!」ダダ ブン ガキーン
女戦士「突いて海に落とすのだ!!」
男達「がってん!!うぉーーー」ドドド
キラーマシン「ウィーン…」バシュン バシュン
男達「うぉ!!撃ってきやがる」
女戦士「シールドバッシュ!」ドン
キラーマシン「プシュー…」ドタリ バタバタ
女戦士「今だ!!落とせ!!」
-----------------
-----------------
-----------------
女戦士「よし!制圧したな?」
男達「もう人間は抵抗して来んでがんす」
女戦士「10人ほど残ってこの奴隷船に残っている残党を縛り上げろ…私は貨物船でもう一隻の方に向かう」
男達「がってん!!」
女戦士「行くぞ!!急げ!!」
『気球』
シュン バシュン
ローグ「あああああ…球皮に矢が当たっちまいやした」
子供「キラーマシンが後残り4体…」
ローグ「マズイっすねぇ…このままじゃ海に落ちるっす」
子供「海賊達が奴隷船に乗り込もうとしてるよ」
ローグ「奴隷船に着陸して海賊に混ざった方が良さそうっすね」
子供「うん…ママの貨物船もこっちに向かってる」
ローグ「あっしに付いて来るでやんすよ?」
子供「分かってる…君もちゃっと付いて来て」
オークの子「…」ジー
ローグ「降りるっすよ?降りるっすよ?」
フワフワ ドッスン
ローグ「付いて来て下せぇ!!」ダダ
子供「行くよ!!」グイ スタタ
オークの子「…」スタタ
キラーマシン「プシュー…」ウィーン ガシャ バシュン バシュン
ローグ「危ねぇでやんす」ヒラリ
オークの子「うがぁぁぁ!!」ダダ ノッソー ゴン
子供「戦わなくて良い!!来て」グイ
ローグ「一体だけ凌ぎやしょう…あっしが前に出るんでキラーマシンの関節を切って下せぇ」
子供「あ…うん」
キラーマシン「ウィーン…」ブン ブン
オークの子「うがっ…」ザク ズザザ
子供「あああああ!!回復魔法!」ボワー
ローグ「行くっすよ?」ダダ ジャキン ジャキン
子供「このぉ!!」タタタ スパー
キラーマシン「プシュー…」ウィ ウィ ウィ
ローグ「良いっすねぇ!!手が上がらんくなりやした
オークの子「ガルル…」ダダダ ノッソー ゴン
海賊達「こっちだ!!こっちにも1体居る!!」
ローグ「助かたでやんす…」
海賊達「落とせ落とせぇぇ!!うぉらぁぁぁ」ボチャーン
ギギギ ガコン ガコン
ローグ「かしらが来やしたね?」
女戦士「無事か!?」
子供「ママ!!大丈夫だよ」
女戦士「気球で不時着したのだな?間に合って良かった」
ローグ「こっちの奴隷船もこれで制圧っすね?」
女戦士「そうだな…後は海賊達に任せて私達は奴隷の状況を見に行く」
ローグ「まだどこに敵が隠れて居るか分からんすよ?」
女戦士「未来!離れないで付いて来い」
子供「うん…」
『牢』
ウゴウゴ ウガガ
女戦士「ひどい物だ…ロクに食料も水も与えられていない」
ローグ「どうしやす?補給を持って来やしょうか?」
女戦士「そうだな…」
オーク「ウガァァ!!ウガァァ!!」ガチャン ガチャン
ローグ「騒ぎはじめやしたね…」
子供「…ダメだよ…やめて」
女戦士「んん?」
ゴツン!!
女戦士「つぅぅ…」ヨロ
ローグ「え!?」
オークの子「がぁぁぁ!!」ノッソー ゴツン
ローグ「あだっ…」ヨロ
子供「ダメだって!!落ち着いて…」
オークの子「グルルル…」タジ
オーク「セロゴ!!セロゴ!!」ガチャン ガチャン
オークの子「がぁぁぁ!!」ダダ
女戦士「ふんっ!!」グイ
子供「ママ!!」
女戦士「ローグ…武器を取り上げろ」
ローグ「仕方ないでやんす…」ゴキゴキ カラーン
オークの子「うぐぅぅぅ…」グター
女戦士「未来!傷付いている味方に回復魔法を掛けて来い」
子供「ママ…」シュン
女戦士「早く行け!!遊びでは無いのだぞ」
子供「…」グスン スタタ
女戦士「ローグ…そこに掛かっている鍵で牢を開けるのだ」
ローグ「へい…」カチャリ ギー
女戦士「仕方のない事だ…刃を向けられる以上一緒には居られない」グイ ズザザ
オークの子「うぐっ…」
ローグ「牢に鍵かけておくでやんす」カチャン
女戦士「行くぞ!!補給物資を移す」
ローグ「アイサー」
『奴隷船_甲板』
女戦士「奴隷船には10名づつ乗り移れ…そして海賊船に連いてフィン・イッシュに向かえ」
船乗り「がってん!!キャプテンはどちらに?」
女戦士「私は捕らえた者から黒の同胞団の基地を聞き出して調べて来る」
船乗り「フィン・イッシュで奴隷の引き渡し後は自由で?」
女戦士「奴隷船はお前達の船にしろ…後に私もフィン・イッシュに行くから自由にしていて構わん」
船乗り「おぉぉぉ船を頂けるたぁ…」
女戦士「海賊達には麻薬も持たせた…上手く使って金にしろ」
船乗り「おおおぉぉぉ!!がってんやる気が出て来たでがんす」
女戦士「ただしオーク達の管理には注意するのだぞ?荒らげない様にきちんと食事を取らせろ」
船乗り「分かってるでがんす…どんぐりなんざ俺らには不要でがすダハハ」
ローグ「かしらぁ!!漁村に出て行った小舟も全員確保しやした」
女戦士「私の船で鎖に繋いで隔離しろ…後で尋問をする」
ローグ「へい!!」
女戦士「ではそろそろ私達は行くが…未来は何処へ行った?」
ローグ「それが…その…牢の前でオークの子を見守ってるでやんす」
女戦士「ふむ…オークにはオークの文化があるのだ…私達と一緒に居るより良いと思うのだがな」
ローグ「気球直すのにもちっと時間掛かるんでそっとしておいてくれやせんか?」
女戦士「2時間で直せ…ここに長居は出来ん」
ローグ「へい…急いで直しやす」
『牢』
子供「…これで全部だよ?大事に食べてね?」
オークの子「…」ジー
子供「君が食べられるもの全部持ってきたよ…大変だったんだよ?ここまで持ってくるの」
オークの子「…」ジー
子供「良かったね?みんな助かってさ?」
オークの子「…」ジー
子供「これ君にあげようと思って持って来たんだ…角で作ったアクセサリーだよ…あげる」カランカラン
オークの子「…」ジー
子供「あと君のコバルトの剣…これは君の物だから隠しておいて?みんなにバレない様にね」スッ
オークの子「…」ジロリ
子供「じゃぁ僕そろそろ行くね」スック
オークの子「ウゴ…」
子供「死んだらダメだよ?ちゃんと生きるんだよ?」
オークの子「ンゴ…」
子供「じゃぁ…さよなら」ノ
オークの子「ウゴ…」ガチャン
オークの子「ウゴ…ウゴ…ゥゥゥ」ズル
---------------
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---------------
『気球』
フワフワ
ローグ「未来君お別れして来たでやんすか?」
子供「うん…」
ローグ「心配無いでやんすよ?フィン・イッシュに着いたらオークの村が貰えるっす」
子供「分かってるよ…」
ローグ「また会いに行きやしょう」
子供「ハテノ村でも友達にそうやって言い残して来たんだ」
ローグ「きっとまた会えるでやんす」
子供「そうだったら良いな」
ローグ「オークの子は特別仲良しになりやしたね?」
子供「手を握ったら握り返してくれたんだ…それだけなんだけどね」
ローグ「言葉じゃない会話っすね?」
子供「そうなのかな?」
ローグ「エルフはそうやって通じ合うらしいんす…オークも同じなんでやんすね」
子供「僕争いを無くしたい…」
ローグ「あねさんや剣士さんはその為に戦ってるんす」
子供「僕も皆を救いたい…」
ローグ「未来君はオークの子を救ったでやんすよ?悪い奴隷商から救ったんでやんす」
子供「ぅぅぅ」ポロリ
ローグ「さぁ行きやしょう…かしらが待ってるっす」
フワフワ フワフワ
『貨物船』
ローグ「…全員キ・カイの工作兵なんすが持ち物から貝殻が出て来やした」
女戦士「何かしゃべったか?」
ローグ「奴隷の引き渡し場所だけっすね…他は知らないを貫いていやす」
女戦士「500人を収容できる船となると軍船以外に無いな」
ローグ「そーっすね…こっちが行っても分が悪いっすね」
女戦士「基地の場所が特定出来んのでは行先に困るな…仕方ない一人づつ吊るしてサメの餌にすると脅せ」
ローグ「へい…」
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ヤンヤン ヤンヤン
くそう何する気だ!!
簡単なゲームでやんす…サメの餌になるか知ってる事しゃべるか…
お前等只の海賊じゃ無ぇな!?ぐぁぁぁぁ
ハイハイ皆さんクロスボウの的っすよ?
止めてくれぇぇ!!助けてくれぇぇ!!
ヤンヤン ヤンヤン
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『船長室』
スン スン スン
女戦士「素振りか?」
子供「…ママ」
女戦士「寂しいか?」
子供「寂しいのは僕だけじゃないよ」
女戦士「済まなかったな友達と離れる様な事になってしまって」
子供「あの子…僕たちに剣なんか向けたく無かったんだよ」
女戦士「分かっている…大人たちの争いに巻き込まれただけだ」
子供「僕たちを裏切ったあの子の方が寂しい思いをしてる…」
女戦士「フフ未来は大人になったな?」
子供「僕…強くなるよ…強くなって争いを止めさせる」
女戦士「悪いのは何だと思う?」
子供「…人間の悪い心」
女戦士「それが魔王だ」
子供「うん…」
ザブ~ン ユラ~
---------------
ローグ「かしらぁ!!やっぱり一人黒の同胞団の奴でした…吐きやしたぜ?」
セントラルの東側の森…地図で言うとココっすね
黒の同胞団の隠れ家があるそうでやんす
奴隷の移送は恐らくそこっすね
あと黒の同胞団の規模がハッキリしやした
全部で10人ぐらいの小さな集団だそうです
女戦士「フフ思った通りだな」
ローグ「どうしやす?森の中だと行ける人数限られやすが…」
女戦士「方向転換だ!!フィン・イッシュに向かってアサシンと合流だ」
ローグ「わかりやした」
女戦士「ローグ…お前は気球に乗って他の海賊共とコンタクトを取れ」
ローグ「あっし一人でやんすか?」
女戦士「適当に他の者を連れて行って構わん…海賊をフィン・イッシュに集結させろ」
ローグ「攻めに転じるんすね?」
女戦士「黒の同胞団を潰せば無駄な争いは無くなる…海賊で黒の同胞団の隠れ家を殲滅するぞ」
ローグ「あの黒の同胞団の奴はどうしやす?」
女戦士「まだまだ喋って貰う…目隠しして捕らえて置け」
ローグ「鬼っすね…」
女戦士「折角捕らえた情報源を逃す物か…目に物を見せてやる外道ども…」
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『北の山麓』
シュゴーーーーー
盗賊「ダメだな…この辺は雪で埋もれて何も見えねぇ」
商人「ケシがいっぱい生えてる所だったよね?」
盗賊「んんんこの辺に何かあるとは思うんだがなぁ…」
女海賊「やっぱシャ・バクダ行った方が良くない?」
情報屋「見て!!あそこにミノタウロスが居るわ?」
女海賊「おっけ!!処理する…」ガチャリ
商人「待って待って…僕に作戦があるんだ?」
女海賊「何さ」
商人「ミノタウロス…いやそれだけじゃ無いキマイラを全部君が使役するんだよ」
女海賊「なんで?倒した方が早いじゃん」
商人「こうだよ…」
5日後に一斉に貴族を襲うように命令するのさ
これで歴史の塗り替えは出来ない筈だ
何度塗り替えてもやっぱりミノタウロスに襲われる
女海賊「へぇ?賢いね…」
商人「出来そう?」
女海賊「そんなんハイディングで近寄れば良いんでしょ?簡単簡単」
商人「シャ・バクダとオアシスに居ると思われるキマイラを全部使役出来るかな?」
女海賊「ミノタウロスだけなら行けるかな」
商人「よし!こうしよう…シャ・バクダの外れで飛空艇隠しておくから君と剣士の二人で行って」
女海賊「オアシスはハイディング出来ないんだけどさぁ…」
魔女「オアシスはわらわが行っても良いぞ?睡眠魔法が使えるでな」
商人「魔女一人は危ないな」
盗賊「俺が一緒に行ってやる…魔女一人なら背負って走れるしな」
商人「じゃぁ夜を待って行動しよう…明け方までに帰って来る感じで」
女海賊「おっけ!!」
『シャ・バクダの外れ』
フワフワ ドッスン
商人「じゃぁ僕たちはここで待ってるから」
盗賊「お前は勝手に出歩くなよ?お前だけでホムンクルスと情報屋守るのは無理だ」
商人「うん…ここから動かないよ」
魔女「早う来い…主が居らんとシカの入手が出来ぬ」
盗賊「んぁ?そうか…オアシス行くのにシカ乗った方が良いか…おし!!急ごう」
魔女「これ!!わらわを背負うと言うたじゃろう…乗せよ」
盗賊「もう乗るんかよ…」
魔女「文句を言うでない」
盗賊「おら乗れ!!走るぞ?」タッタッタ
----------------
商人「どう?古文書の解読は?」
情報屋「全然よ…文字の解読がなかなか進まないの」
ホムンクルス「私に読ませて頂いてよろしいでしょうか?」
情報屋「あら?そうね…ホムンクルスなら直ぐに解読できるかもしれないわね」
商人「情報屋の楽しみ奪っちゃわない?」
情報屋「解読は苦痛よ」
ホムンクルス「お借りします…」パラパラ
情報屋「古文書を全部解読するには想像力が必要になるわ?ホムンクルスに出来るかしらフフ」
ホムンクルス「この書物から読み取れる文字の解読が終了しました…書き写しますのでペンをお貸しください」
商人「早いね…これ僕のメモとペンだよ」
ホムンクルス「少々お待ちください…」カキカキ
情報屋「ウフフ…ホムンクルスは字を書くのが苦手なのね」
商人「絵がすっごい苦手なんだよ」
情報屋「でも大丈夫…意味は分かるわ」
ホムンクルス「文字の種類はおよそ100種類と推定されますが解読できたのは40種類になります」
情報屋「とても助かるわ…ここから想像力が必要なの」
ホムンクルス「解読できた文字を文章に当てはめても私には一部しか意味が分かりません」
情報屋「…はるほど…太陽文字と月文字で意味が逆になる…だから…」ブツブツ
商人「ハハ上手く解読が進むと良いね」
ホムンクルス「お役に立てて嬉しいです」
----------------
商人「…へぇ?超高度AIだけだと動かないんだ」
ホムンクルス「はい…生体の有する神経で情報の伝達をしていますので神経伝達が停止した時点で機能停止します」
商人「エネルギー供給は賢者の石から出来るエリクサーの供給?」
ホムンクルス「血液で循環された微量のエリクサーを還元した時に生じるエネルギーを利用しています」
商人「あーだから超高度AIでシミュレーションするときは顔が火照るんだ…エネルギーが要るんだね」
ホムンクルス「超高度AIの性能は生体の心拍能力に依存しています」
商人「だったらこんなに細い体じゃなくてムキムキの方が良かったね」
ホムンクルス「いえ…生体の維持に余分なエネルギーが必要になりますので小型の方が効率が良いのです」
商人「そっか…じゃぁ君はあんまり鍛えない方が良いんだね」
ホムンクルス「お気になさらないで下さい…著しい筋肉強化で無ければ心臓への負担は軽微ですので」
商人「超高度AIの部分てさ…精霊の石造の中に残されてるんだよね?エリクサーの供給でもう一度動かないのかな?」
ホムンクルス「石は水分を透過しますので経年で酸化していると思われます」
商人「あー錆びてるのかぁ…」
ホムンクルス「超高度AIユニットをどうされるおつもりですか?」
商人「どういう仕組みになってるのか興味が在ってね」
ホムンクルス「とても小型な機械ですので解析するのは顕微鏡が必要になります」
商人「図面とか分かる?」
ホムンクルス「私の絵で良ければメモに描きますよ?」
商人「お願い!描いて描いて」
ホムンクルス「はい…」カキカキ
----------------
情報屋「…地軸の移動…だから古代遺跡が見つからない」
商人「ん?何か分かった?」
情報屋「うん…およそ3000年前に地球の地軸が変わったらしいわ」
商人「地球が回る軸の事?」
情報屋「そうよ?200年くらいの期間をかけてゆっくり軸が変わったと書かれているの」
ホムンクルス「それはポールシフトの事ですね…時期は書かれて居ませんでしたが他の書物にも記録がありました」
情報屋「かつて北極や南極と呼ばれていた場所に当時の文明が埋もれている…だから私達は見つけられないの」
商人「そこって未踏の地の事?」
情報屋「氷と雪に閉ざされて人間が住まう事が出来ない所ね…多くの古代遺跡はそこに眠ってる」
商人「へぇ?君の夢は尽きないね」
情報屋「盗賊が使ってる地図があったわよね?」
商人「…これだよ」パサ
情報屋「この地図を見る方向を変えて…文明が発達しそうな場所は…」
ホムンクルス「文明はおよそ大きな川か海…そして山際に発達します」
情報屋「やっぱり北の山麓周辺があやしい」
商人「残念だけど雪に埋もれているんじゃ探し様が無いよ」
情報屋「そうね…もう少し解読を進めるわ」
-----------------
商人「前にさ…人間とホムンクルスの違いの話をしてたけどさ…どのくらい違うの?」
ホムンクルス「犬と猫くらいの差と言えば分かりますか?」
商人「全然違う生き物だよね…それだと子孫が残せないね」
ホムンクルス「商人は私との子孫を残したいのですね?」
商人「いぁ…精霊はどうやって子を産んだのかなってさハハ」
ホムンクルス「人間との子を授かる可能性は非常に低いですが不可能ではありません…しかし奇形種となる可能性が高いです」
商人「そっか…」
ホムンクルス「その問題を解決するには商人が私と同じホムンクルスになれば解決します」
商人「え!?僕がホムンクルスになる?」
情報屋「キ・カイ錬金術では体の一部を人口のホムンクルスに出来るのよ?」
商人「全部をホムンクルスにするのか…記憶はどうなる?」
ホムンクルス「遺伝情報の中に記憶が記録されるそうです」
商人「…されるそうですって…不確実な話?」
情報屋「キ・カイ錬金術では過去に何度も試されているの…でも成功した事が無いのよ」
商人「なるほど…シャ・バクダ錬金術では可能だった可能性がある…それは精霊が子を産んだ事に繋がる」
情報屋「だとしたらホムンクルスとなった精霊の伴侶は何処に行ったのでしょうね?」
ホムンクルス「私の生体は賢者の石で生成されたエリクサーの循環が無いと長く生存出来ません」
情報屋「それなら石になってしまった可能性が高いわね…キ・カイではみんな手足が石になってるし」
商人「でもエリクサーさえ入手出来ればずっと生きて居られるんだね?」
情報屋「あなた…ホムンクルスの体になるつもり?」
商人「僕の命はそんなに長くない…僕が死んだ後ホムンクルスはどうなる?」
情報屋「それは…」
商人「僕が長く生きて居れば寂しい思いをしなくて済む」
情報屋「ウフフあなたずっとホムンクルスと生きて行くと言って居るのよ?それはプロポーズと同じよ?」
商人「う…僕はホムンクルスの管理者さ…最後まで面倒を見る」
ホムンクルス「…」ニコニコ
----------------
女海賊「あぁぁぁ寒かった…」ブルブル
商人「おかえり!!上手く行った?」
女海賊「シャ・バクダの方はあんま変わって無かったよ…ミノタウロスが鎧着て10体くらい居ただけ」
商人「普通に商隊が行き来してるの?」
女海賊「そだね…貴族が街で豪遊してるかな」
商人「占領されたと聞いたからもっと殺伐としてると思ってたよ」
女海賊「全然!!エルフとまだやり合ってるぐらいかな」
剣士「でもミノタウロス相手だと普通の兵隊は手こずると思うよ」
女海賊「オアシス側の兵隊は多分領主の砦で捕虜になってる感じかな」
情報屋「新しいキマイラとかは居ないのね?」
女海賊「私らは見てないけど…魔女達はまだ帰って無いね?」
商人「うん…」
女海賊「あっちは遠いからしょうがないか」
剣士「僕たちもオアシスに行って見ようか?」
女海賊「良いけどもうちょい温まらせて…」ゴシゴシ
ホムンクルス「ウラン結晶に水を垂らしましょうか?」
女海賊「おねがい!!」
ホムンクルス「はい…」ポタポタ ジュゥゥゥゥ
女海賊「はぁぁぁぁ暖か~い」
----------------
タッタッタッタ
盗賊「帰ったぜ!!はぁはぁ…」
女海賊「あ!!今オアシスに行こうと思ってたんだ…どうだった?」
盗賊「早い所フィン・イッシュに行った方が良い…翼を持ったなんだっけ?」
魔女「ハーピーじゃ…老婆と鳥を合成したキマイラじゃな」
盗賊「おう…そいつが何体かオアシスに居たんだ…フィン・イッシュに行ってる可能性がある」
女海賊「歌で使役は済んだ?」
魔女「オアシスに居るのは粗方命令して来た故…早う向かった方が良かろう」
女海賊「おけおけ!ほんじゃ乗って!!」
商人「そのハーピーという魔物は危険なの?」
魔女「そうじゃな…サキュバスと同程度と言えば分かるか?」
女海賊「えええええ!?マジ?それ超ヤバイじゃん隕石落とされる」
魔女「隕石魔法はわらわの師匠が合成されたから出来た術じゃ」
女海賊「ほっ…でもサキュバスみたいに空から魔法撃って来る感じ?」
魔女「わらわも会うた事が無い故確かでは無いが魔術書にはそう記されて居る」
商人「そんなの使役出来る?」
魔女「どうやら知能が低い…よって睡眠魔法がよう効くで対処は可能じゃ」
盗賊「老婆って所がポイントだな…頭ボケてんだヌハハ」
魔女「これ!!大概の事を言う物ではないぞよ?」ボカ
盗賊「あだっ…悪りぃ悪りぃ口が滑った」
魔女「え~から早くよう出発せい!!」
盗賊「へいへい…」
『飛空艇』
シュゴーーーーーー
情報屋「見て!!下!!」
女海賊「白い毛に覆われた魔物の群れ…イエティかな?」
魔女「見せてみよ…」
女海賊「ほい…」
魔女「シーサーじゃな…イエティみたいなもんじゃ」
女海賊「これ雪で住処無くなって南に移動してんの?」
ホムンクルス「恐らくそうでしょう…フィン・イッシュ周辺もシン・リーンと同じ様に地熱がありますから」
女海賊「てことはハーピー以外にも沢山魔物が来てるって事になるね」
情報屋「砂漠に居たリザードマンとかデザートウルフも移動してそうね」
盗賊「逆にシン・リーンみたく賑わってんじゃ無ぇか?」
商人「その理屈だとセントラルは魔物に阻まれてフィン・イッシュを攻めにくいね」
魔女「じゃから空を飛ぶハーピーを使うのじゃな」
商人「僕なら海側から攻めるなぁ」
女海賊「海は光ってる…だから攻めにくい筈…私らの勝ちだよ」
魔女「キマイラを使って陸地を強行して来なければ良いがのぅ…」
女海賊「んん!!?もしかしてお姉ぇが言ってたオークの奴隷ってソレが目的?」
魔女「オークを合成してどんなキマイラが出来るのか知らぬが注意せねばならぬ」
商人「そういえばケンタウロスってさエルフと馬の合成だったよね?」
魔女「そうじゃな…エルフの森南部に少しだけ生息しておるらしい」
女海賊「あのさ…キマイラって歌で使役出来るならあんま怖く無くない?」
魔女「歌で使役出来る秘密を知られてはイカンのぅ」
女海賊「私らだけの秘密にしとこう」
魔女「そうじゃな…他言してはイカンぞ?」
--------------------
女海賊「見つけた!!あそこに飛んでるのハーピーの群れじゃない?8匹!!」
盗賊「どうすんだ?空中戦すんのか?」
女海賊「う~ん…8匹も魔法使われたら飛空艇燃やされるかも」
魔女「ハイディングで近寄れるかえ?」
盗賊「睡眠魔法か?」
魔女「そうじゃ…一気に眠らせる故ハイディングで近寄るのじゃ」
女海賊「操作私がやる…ミスったらハイディングで即逃げすっからね」
魔女「任せる…詠唱するぞよ?」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ
女海賊「ハイディング!」スゥ
リリース
女海賊「今!!」
ハーピー「ンギャ!?」バッサ バッサ
魔女「広範囲睡眠魔法!!」モクモク
女海賊「ハイディング!」スゥ
盗賊「眠ったか?」
女海賊「ちょい待ち…距離置いてリリースする…リリース!」スゥ
商人「落ちて行くよ!!」
女海賊「ナーーーーーイス!!」
魔女「雪に埋もれて見えんくなるで追いかけるのじゃ」
女海賊「おけおけ!!」グイ
------------------
商人「こっちだ!!ここに埋もれてる」
盗賊「はぁはぁ…雪かきもラクじゃ無ぇ」ガッサ ガッサ
商人「…これで4体目…魔女!!歌を」
魔女「寝んね~ん寝~♪」
ルルル~♪
ララ~♪
魔女「命ずる!シャ・バクダに帰って貴族を始末するのじゃ」
盗賊「それにしても不細工な魔物だな…乳がブランブランじゃ無ぇか」
魔女「無駄口は後じゃ…次を探しに行くぞよ」
女海賊「お~い!!私4体使役したよ?そっちは!?」
商人「こっちも4体だ!!これで全部だね?」
女海賊「おっけ!!寒いから飛空艇戻ろ!!」
-------------------
魔女「8体使役出来たのは良いが…この様子じゃとシャ・バクダが心配じゃな」
盗賊「もうそろそろ見えて来る筈だがな…雪で地形が分からん」
女海賊「あのさ…ちょい思ったんだけど魔法って建物の中には撃てないじゃん?」
魔女「んん?範囲魔法であれば遮蔽物の向こうに届く魔法もあるぞよ?」
女海賊「それって睡眠とか毒とかでしょ?建物に籠ってたらあんま魔法は意味無いと思うんだよね」
魔女「ふむ…建物を燃やすか爆発させるかじゃのぅ」
女海賊「爆発があんのか…じゃダメか」
魔女「何故そのような事を言うのじゃ?」
女海賊「建物に籠ったらハーピーってあんまり怖くないんじゃないかなってさ」
商人「おぉ!?君賢いね…籠られたら近接するしか無くなるね」
女海賊「そそ…婆ちゃんみたいな体で近接攻撃出来そうになかったからさ」
魔女「それもそうじゃな…不死の体では無い様じゃから物理属性の自爆魔法も出来んな」
女海賊「劣化サキュバスって感じ…あんま被害無い気がする…爆発魔法ってどうやるの?」
魔女「火と水の複合魔法じゃ…もしかするとハーピーはそこまで頭が回らんかも知れん」
女海賊「開けた場所だと魔法は怖いけど木が有るだけで避けられるもんね」
魔女「耳が痛い…」
女海賊「私の予想はフィン・イッシュはなんとかなってると思う」
商人「その理屈だとリザードマンとかシーサーの方が怖いかもね」
『フィン・イッシュ上空』
シュゴーーーーー バサバサ
魔女「ボルケーノの火柱が3つじゃな…飛空艇で近づくのは危険じゃ」
女海賊「少なくても3体はハーピーが居るって見方で良い?」
魔女「うむ…火と風の複合魔法を使う頭はある様じゃ」
商人「1匹見つけた!!城の屋根の上」
女海賊「どうする?使役狙う?」
商人「今は被害が広がらない様に倒すのが先だね」
女海賊「おっし!!任せて」ガチャリ
シュン パーン
女海賊「1匹!!」
商人「あと…どこだ?」キョロ
ホムンクルス「真下です…食料を漁っている様です」
女海賊「おけおけ!見つけた…」シュン パーン
盗賊「すげぇなお前…神だ」
女海賊「女神って呼んで」
剣士「あと1匹!!教会の上!!寄せて…僕が飛ぶ」
盗賊「あのハーピーこっちに気付いてんぞ?」
女海賊「ハイディング上手く使って!!」
盗賊「ハイディング!」スゥ
リリース
女海賊「剣士!今!!」
剣士「宿屋で待つ!!」ピョン
盗賊「行っちまった…俺らどうする?」
魔女「飛空艇を墓地に隠すのじゃ…墓地から剣士を援護するのじゃ」
盗賊「あそこだな?飛空艇降ろすぞ?」
フワフワ ドッスン
『墓地』
盗賊「剣士見えるか?」
女海賊「何アレ…ハーピーってメチャ魔法撃つじゃん」
魔女「火炎弾という魔法じゃ無詠唱で連射出来るのじゃが触媒に羽を使う」
盗賊「剣士も負けて無ぇぞ?弓がそこそこ当たってる」
女海賊「私らも行くよ!!」タッタッタ
ゴゥゴゥゴゥゴゥ ボボボボボ
剣士「魔法が早い!!建物の陰に!!」
女海賊「分かってんよ!!」カチャリ ターン ターン ターン ターン
ハーピー「ンギャーーーーー回復魔法!」ボワー
商人「僕だって!!」バシュン バシュン
ホムンクルス「…」バシュン バシュン
情報屋「当たって」バシュン バシュン
盗賊「うほーーハリネズミか!!」ギリリ シュン
魔女「氷結魔法!」シーン
魔女「なぬ!?反射じゃと!?」
剣士「羽の付け根を狙って!!」ギリリ シュン
ハーピー「火炎弾!」ゴゥゴゥゴゥゴゥ ボボボボボ
盗賊「くっそ中々落ちて来ねぇ…」
女海賊「これサキュバスと同じパターン…なかなか倒せない」
タッタッタッタ
剣士「女海賊…君はアラクネーの毒を集めてたよね?今ある?」
女海賊「持ってる」
剣士「それ麻痺毒だったね?」
女海賊「うん…使って!」
剣士「よし…この毒矢で…」ギリリ シュン グサ
ハーピー「ギュィィィィ」ピク フラ
盗賊「落ちるぞ!!」
剣士「ふぅぅ…」タッタッタ スパ スパ スパ スパ
ハーピー「ギュ…グゥゥ」ピクピク
スパ スパ スパ スパ
『街道』
シーン
盗賊「どうなってんだこりゃ…誰も居ねぇってどういう事よ」
女海賊「建物の中に閉じこもってんじゃないの?」
商人「見て!!この建物の中に人が見える…倒れてるよ」
ガチャガチャ
盗賊「鍵掛かってんな…」
女海賊「これさ…寝てんじゃね?」
魔女「睡眠魔法で民をすべて眠らせて居るのかも知れんな」
盗賊「道理で無抵抗な訳だ…」
女海賊「建物が石で出来てて良かったね…あんま燃えてない」
商人「いや…でも恐ろしい攻撃だね…無抵抗で何も出来ない」
情報屋「シャ・バクダより兵の多いオアシス側が無力化されたのはコレね」
盗賊「これどうすんだ?」
魔女「放って置けば直に目を覚ますじゃろう…門番が寝て居る今の内に城へ向かうぞよ」
商人「勝手に入っても良いのかな?」
魔女「わらわは女王の側近に顔が効くで大丈夫じゃ…付いて参れ」
『フィン・イッシュ城』
魔女「これ!!起きんか!!」パシパシ
側近「うぅぅぅん…はっ!!」パチ
魔女「やっと目を覚ましたのぅ…久しいな側近」
側近「魔女様…これは一体…」
魔女「主らは魔物によって眠らされて居ったのじゃ…いつから寝て居るか分からんか?」
側近「いつから…そうでした…空を飛ぶ魔物が3匹攻め入っていると報告が…」
魔女「ふむ…その様子では分からぬ様じゃな…」
側近「この者達はどなたでしょう?」
魔女「勇者2人とその従士達じゃ…女王やアサシンの仲間と言って良い」
側近「これは失礼な所をお見せしました…私は女王の側近で今は王都を任されている身です」
魔女「女王不在時の代わりじゃな」
側近「空飛ぶ魔物はどうなったのでしょう?」
魔女「案ずるな…勇者達が処理をしたで今の所心配は無い」
側近「良かったです…民の安全は確保されているでしょうか?」
魔女「寝て居る…街は少し荒らされた様じゃが被害は大きく無い」
女海賊「これさぁ…早いとこ皆起こした方が良くない?」
側近「そうですね…皆々を起こして参りますので女王の間にてお休みください」
魔女「では言葉に甘えるとするか…こっちじゃ」
『女王の間』
商人「ひとまずはフィン・イッシュが無事で良かったね」
魔女「そうじゃな…わらわ達が居ればハーピーは対処出来るでのぅ」
盗賊「お前アラクネーの毒なんて隠し玉持ってたんだな」
女海賊「ムフフこんな事もあろうかと!!女神と呼んで」
魔女「しかしハーピーが反射魔法を掛けて居るとは侮って居った…広範囲睡眠魔法なんぞ使うたら皆寝てしまう所じゃった」
商人「奇襲する以外は睡眠魔法は使えないと見た方が良いね」
魔女「うむ…わらわは何も出来ぬ」
商人「次来たらアラクネーの毒で剣士と女海賊に任せるしか無いね」
女海賊「ハーピーがどんくらい来るか分かんないからフィン・イッシュで足止め食らっちゃうね」
魔女「アサシンとエルフゾンビが戻るまでは居った方が良いじゃろう」
盗賊「この国は歓楽の国になったんだからしばらくは歓楽を楽しもうぜ?」
情報屋「歓楽の何を楽しむつもり?」ジロ
盗賊「そらカジノとかいろいろあんだろ?」
商人「カジノかぁ…ホムンクルスはトランプすごい強いんだよ」
盗賊「おぉ!!トランプで荒稼ぎか…そら行くしか無ぇ」
魔女「何をしに来たのかのぅ…」
商人「魔女もちょっと未来を覗けるなら賭け事強いんじゃない?」
魔女「その様に力を使うのは魔術師に反する…わらわは行かんぞ」
女海賊「まぁハーピーは私と剣士でなんとかするから行って来たら?」
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ガチャリ
側近「皆様…お待たせいたしました…一同!礼」
近衛達「ハッ!!」礼
側近「街の方へは衛兵を向かわせました…この度はフィン・イッシュをお救い頂き…」
魔女「まぁ硬くならんで良い…まず近況を聞きたいのぅ」
側近「左様ですか…雪が積もり始めて以来北方より来た獣が周囲を徘徊する様になりました」
商人「やっぱり…シーサーだね?」
側近「民兵が集って対処しておりますが人手不足が顕在化している所を空を飛ぶ魔物が参った次第です」
商人「リザードマンとかは来てないの?」
側近「フィン・イッシュを流るる川の上流は温泉地帯となっておりリザードマンが住み着いて居るとの事です」
側近「他にも大型のヘラジカやクマなども温泉地帯を中心に住み着いて居ます」
盗賊「こりゃ狩場に困らんな」
側近「農作物に影響がありますので狩猟の人出を出したいのですが兵が足りないという状況です」
魔女「わらわに良い案があるぞよ?」
側近「討伐して下さるのですか?」
魔女「魔物からの戦利品を国で買い取るのじゃ…そうじゃな…カジノで使えるコインでどうじゃ?」
側近「女王様が不在の状況でその様な事をしても良いのでしょうか?」
魔女「主は不在時の対処を任されて居るのじゃろう?」
商人「戦利品の相場は僕が適正に決めてあげるよ」
盗賊「シーサーの肉は高級料理だぜ?リザードマンは鱗が高く売れる」
商人「そうだね…キ・カイだともっと高く売れるよ…毛皮も色々獲れそうだな」
側近「分かりました…早速告知を出そうと思います」
商人「よし!買取品目を紙に書いてまとめる!!」
側近「はい…よろしくお願いします」
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側近「皆様がお休みになられるお部屋をご準備致しました」
魔女「いつもの客室で良いが?」
側近「客室はセントラルの王室の方々が利用されていますので女王様が昔使っていました塔の方へご案内します」
魔女「およ?書物庫の上かえ?」
側近「ご存じで?」
魔女「おぉそちらの方が良いのう!見晴らしも良い」
情報屋「私も書物に興味があるわ?」
魔女「シン・リーンの読み物もすべて揃っておるぞ?書物の量は世界一かも分からん」
ホムンクルス「私も読んでよろしいでしょうか?」
魔女「すべて暗記して良い…主は又賢くなるのぅ」
盗賊「俺ぁ本になんか興味無ぇ!!商人!!カジノ行くぞカジノ!!」
商人「あぁ…相場を調べないとね」
側近「城内は一部を除いて一般の民は自由に出入り出来ますのでご自由に過ごして下さい」
盗賊「なんちゅーザルな城なんよ…」
魔女「近衛の目が光っておるで意外と何も出来んのじゃぞ?…ここの近衛はサムライじゃけの」
『姫の部屋』
側近「何かありましたらご連絡致しますのでごゆっくりお休みください」ガチャリ バタン
女海賊「おぉ!!ハーピー来てもこっから狙撃出来んじゃん」
魔女「睡眠魔法が効かん様にわらわは魔結界を張って来る」
女海賊「うわぁ何コレ…この服は女王の趣味?」
魔女「女王はちと変わった趣味をしておる…馬鹿にしてはイカンぞ?」
商人「それ着ぐるみ?」
女海賊「コレ欲しいかも…あ!!バニーまである!!ええええ!?何これカエルの着ぐるみ?」
盗賊「おま…そんなん着て歩くんか?」
女海賊「ちょちょちょ…アレもコレも…え?マジ?」
盗賊「ヌハハお前の上を行く奇抜な女が居たか!!」
魔女「この国ではそのような格好は普通じゃ…街を歩く民は皆謎のファッションをしておる」
盗賊「こりゃカジノ行くのが楽しみになって来たな…行くぞ商人!!」
商人「ハハ…うん」
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女海賊「ホムちゃんこっち向いて?」
ホムンクルス「似合いますか?…」
女海賊「ギャハハハハハ…全然合わない…ウハハハハ」
情報屋「ちょっと…筋肉の着ぐるみはさすがに…」
女海賊「マッチョになったじゃん…クックック」
ホムンクルス「喜んでもらえて嬉しいです…」ニコ
女海賊「ちょ…笑顔にならないでブハハハハハ」
情報屋「ぷっ…ギャップが…ウフフ」
女海賊「次コレ着てみよう!!」
ギャハハハハ
ウフフ
『翌日』
盗賊「ぃょぅ…」トボトボ
情報屋「朝帰り?」ギロ
盗賊「手持ちのカネ全部スッてきた…寝る」
商人「ハハハ…でも情報の収穫もあったんだよ?」
情報屋「何?」ジロリ
商人「近くの銀鉱山の廃坑に色んな動物が居付いてるんだって」
情報屋「ふ~ん…で?」ジロ
商人「負けた分は取り返さないとね…ハハ」
情報屋「剣士と女海賊はハーピー探しに出かけたわ?あなた達は?」
商人「ちょっと休んだら僕たちも狩りに出かけるよ…まぁまぁ怒らないで」
情報屋「怒ってなんか無いわ?呆れてるだけよ…やっぱり人間ってダメね」
商人「まぁそう言わないで」
ホムンクルス「書物からいくつかのポーションの作り方を学びました」
情報屋「ほら?ホムンクルスも仕事しているのよ?」
ホムンクルス「エリクサー以外にも石化を治せるポーションがある様です」
商人「へぇ?」
ホムンクルス「川の上流にある温泉は恐らくラドンを含んでいると思われますので付近に毒キノコが生息している筈です」
商人「毒キノコを採って来れば良いんだね?」
ホムンクルス「毒キノコを日の当たらない暖かい地下等で育成出来ればポーションを大量に作る事が出来ます」
商人「おぉ!!確かフィン・イッシュには地下墓地があったね」
ホムンクルス「それは良い条件ですね…毒キノコは2~3日で成長しますので沢山採って頂きますと一気に増やせます」
情報屋「盗賊!?仕事よ!!」ユサユサ
盗賊「んあぁぁあと1時間寝かせてくれ」
商人「僕も1時間だけ寝かせて」
情報屋「もう!!コレだから…」プン
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魔女「ホムンクルス…主だけ留守番かえ?」
ホムンクルス「はい…皆さんお出かけになられました」
魔女「う~む…わらわはどうしようかのぅ…」
ホムンクルス「私は地下墓地という所を見てみたいのですが案内して頂けませんか?」
魔女「良いが…地下墓地なんぞで何をするつもりじゃ?」
ホムンクルス「ポーションを作るためのキノコを育成出来ないかと」
魔女「ほう…錬金術の書物を読んだのじゃな?」
ホムンクルス「はい…近場に生息する毒キノコからエリクサーに変わる石化治癒のポーションが作れるのです」
魔女「それは良いな…わらわもキノコやハーブの育成は興味があるで共に行こうぞ」
ホムンクルス「よろしくお願いします」
魔女「しかし主が錬金術とはな」
ホムンクルス「私は魔法が使えませんので錬金術ならお役に立てるかと思いました」
魔女「もしかすると主は錬金術を極められるかも知れんのぅ…材料の組み合わせの予測は得意そうじゃ」
ホムンクルス「他の書物も読みたくなりますね」
魔女「それが楽しみじゃ…キノコが育つのを待つのも楽しみになるで大事にせいよ?」
『地下墓地』
ピチョン ピチョン
魔女「雪が浸みて丁度良い湿度じゃな」
ホムンクルス「篝火を置けば保温も問題ない様ですね」
魔女「光は要らんのか?」
ホムンクルス「毒キノコは有機物の分解で成長しますので光は篝火で十分です」
魔女「ふむ…ここをゴミ捨て場にするんか?」
ホムンクルス「砕いた木材や骨を撒けば良いかと」
魔女「いくらでも余っておるな…」
ホムンクルス「わたしは此処で作業しますので魔女様はお帰りになってよろしいですよ?」
魔女「側近に言うて手伝える者を手配してもらうよって待っておれ」
ホムンクルス「はい…ありがとうございます」
『姫の部屋』
ガチャリ バタン
女海賊「あれ!?魔女だけ?」
魔女「皆出かけて居る」
女海賊「ホムちゃんも?」
魔女「ホムンクルスは地下墓地で土を弄っておるな」
女海賊「なんでまた土いじりなんかやってんのさ」
魔女「キノコを育てる言うてな…自分で言い出したのじゃ…やらせておくが良い」
女海賊「シーサー狩って来て肉料理あんだけどさ…どうすっかな」
魔女「ほう?珍しい肉じゃな」
女海賊「城の料理師が喜んで調理してるよ」
魔女「ハーピーは居らんかったんか?」
女海賊「2匹居たけどシャ・バクダに追い返した」
魔女「主らは余裕じゃな」
女海賊「アラクネーの毒矢一発で落ちて来るから全然余裕」
魔女「そうじゃ…地下墓地でアラクネーを増やせんか?」
女海賊「お!?イイね」
魔女「アラクネーは大人しいクモじゃで良い獣避けになる」
女海賊「おけおけ!ちっと2~3匹放してくる」
---------------
女海賊「ほんじゃ剣士まだ狩りしてるからもっかい行ってくんね」
魔女「忙しそうじゃな?わらわも行くかえ?」
女海賊「来てくれると助かる…なんか川沿いの雪が無い所に根菜植えてるんだけど色んな動物が荒らしにくんの」
魔女「民兵は何をしとるんじゃ?」
女海賊「シーサーうろついてるから守り切れて無いのさ」
魔女「シーサーを狩るのじゃな?」
女海賊「そだね…メチャ強いよ?イエティの強化版って感じ」
魔女「剣士は一人で狩っとるんか?」
女海賊「弓の練習やるってさ…木に登って弓撃ってる」
魔女「ふむ…ではわらわは回復役じゃな」
女海賊「民兵が結構怪我してるから回復貰えると良い」
魔女「では行くかのぅ…」ノソ
----------------
盗賊「戻ったぜ~い!よっこら…」ドサリ
商人「あれ?誰も居ない…何処行ったんだろ」
情報屋「盗賊!怪我見せて?処置するわ…」
盗賊「あ~どって事無いぞこれぐらい」ツツー
情報屋「回復魔法のエンチャント角持って居て良かったわね」
盗賊「ちっと寝かせてくれい…」グター
商人「収穫良かったね!リザードマンの皮2匹分…それから爪」
盗賊「それで良い防具が作れそう…鱗傷んで無い?」
商人「大丈夫!鉄みたいに硬いよ」
ガチャリ バタン
ホムンクルス「皆さんおかえりなさい」
商人「ああああ!!どうしたのそんなに泥だらけで…怪我もしてるじゃないか!!」バタバタ
ホムンクルス「地下墓地で少し作業をしていました」
情報屋「怪我の処置してあげるわ?こっちに…」
ホムンクルス「大丈夫です…出血は微量ですので賢者の石で直ぐに回復します」
商人「作業って毒キノコの育成の為?」
ホムンクルス「はい…栽培用の土壌を作っていました…毒キノコは採って頂けましたか?」
盗賊「そこに置いてあるぜ~袋ん中だ」
ホムンクルス「沢山採れましたね…早速栽培して来ます…う~ん」グイ
商人「あぁ!!持つよ…これ重いから」ヨッコラ
情報屋「私も手伝うわ?」
ホムンクルス「ありがとうございます…こちらです」スタ
『地下墓地』
ピチョン ピチョン
商人「うわ…暖かい」
情報屋「本当!ここの方が快適じゃない!」
商人「ここの土は…木屑と骨粉?…これみんな君がやったの?」
ホムンクルス「衛兵の皆さんにお手伝いして頂きました」
商人「すごいな…毒キノコすぐに育ちそうだ」
ホムンクルス「はい!」ニコ
情報屋「これどうすれば良いのかしら?」
ホムンクルス「毒キノコを細かく刻んで10センチメートル置きに埋めます」
情報屋「分かったわ…どのくらいの大きさに刻めば?」
ホムンクルス「出来るだけ細かく沢山が良いですね」
情報屋「じゃぁ私が刻んで行くから2人で埋めて来て?」
商人「うん!!僕は奥から埋めて行くよ」
---------------
情報屋「ふぅ…これで最後っと…」
商人「良く見ると虫が沢山居るね」
ホムンクルス「地生昆虫ですね…人間には無害ですのでお気になさらず」
商人「これ女海賊喜ぶかもね?」
ホムンクルス「もうご存じですよ?アラクネーを放して行かれました」
商人「という事はアラクネーも食べ物に困らないんだ?」
ホムンクルス「そうですね…昆虫の死骸も毒キノコの良い養分になります」
情報屋「なんか育つのが楽しみね」
ホムンクルス「はい…」ニコ
『姫の部屋』
盗賊「んがががが…すぴーーー」
商人「やっぱり城の中は僕らに合わないかもなぁ…」
情報屋「そう?落ち着いて良いじゃない?」
商人「なんかいつもは宿屋と酒場が拠点だからさ…どうも噂が聞けないっていうか」
ガチャリ
魔女「おぉ!!帰っておるな?祭りじゃ…主らも来い」
商人「お?急にどうしたの?」
魔女「剣士が狩ったシーサーの肉を女王の側近が街で振舞っておってな…急に祭りになり居った」
情報屋「面白そうね?」
魔女「これ!!起きろ!!」ゴン
盗賊「ぬぁ…んーだよ!!疲れてんだよ…」
魔女「酒が飲めるぞい?」
盗賊「…」
魔女「街の酒場周辺で祭りじゃ…剣士と女海賊はもう行っておる」
盗賊「マジか…タダ酒だな?」
魔女「女王の側近の振る舞いじゃ…セントラルの王室の者も隠れで行って居る」
商人「ハハ…祭りだね」
盗賊「おっし!!気合入れて行くぞ」ガバ
『酒場のある広場』
ワイワイ ガヤガヤ
酒無いよぉぉ!!ヒック…
なんだ!この肉…羊の肉のが旨いじゃねぇか!!
長生きするんだってさ~
シーサーを弓で狩ったんだってよ?
お兄さんパフパフして行かない?
俺の筋肉バカにしてんのか?
ワイワイ ガヤガヤ
盗賊「みんな立ち飲みかよ…」
女海賊「お!?みっけみっけ!!シーサーの肉だよ…ほい」
盗賊「おぉ女海賊!!コレ座る所無ぇんか?」
女海賊「その辺の樽適当に使って良いみたいよ?」
商人「いやぁぁそれにしても女の人が多いね…男の人の倍ぐらい居る」
女海賊「セントラルから来た人っしょ?」
盗賊「もうちょいしたら船で帰って来るんじゃ無ぇか?…それにしてもこの肉硬ぇな…んぐぐ」ガブ
魔女「移民が増えると良いのぅ」
盗賊「間違いなく増えるぜ?シン・リーンより資源が多いからな…海も山も川も鉱山もある」
魔女「そうじゃな…冒険者が増えれば良い国になりそうじゃ」
盗賊「ほんで剣士はシーサー何匹狩ったんだ?」
女海賊「4匹だね…全部女王の側近に寄付したんだよ」
商人「剣士は?」
女海賊「向こうの方で近衛達と立ち合いやってるよ…いつもの奴だね」
情報屋「なんかみんなバラバラね…そういう国なのねフフ」
盗賊「やれる事が多いんだなこの国は」
商人「貴族も居ないし王族だってこの硬い肉食べてるし…変な国だね」
盗賊「酒が無ぇんだがよ…どうなってんのよ」
ホムンクルス「瓶を2本お持ちしました…あちらで配っています」
盗賊「おぉ!!瓶ごと飲む感じだな?頂くぜ!」グビグビ
商人「君も飲んでみたら?」
ホムンクルス「はい…」グビグビ
商人「ちょちょちょ…ゆっくり飲もう」
ホムンクルス「ぷはー…はい」ニコ
-----------------
女海賊「ハーピーあれっ切り来ないんだけどさぁ…どうなっちゃってんの?」
商人「もしかしたら向こうはもう手詰まりかもね」
女海賊「もう来ない感じ?」
商人「ここに来る途中で8匹のハーピー追い返したよね?あれは歴史の塗り替えの悪あがきじゃないかな」
魔女「そうじゃな…やはり主は賢いのぅ」
商人「ミノタウロスとハーピーに追い立てられて貴族は全滅するんだよ…それを変える為にこっちにハーピーを飛ばす余裕もない」
女海賊「なんか良く分かんないなぁ」
商人「塗り替えが出来ないぐらい勢力が弱まってるのさ」
魔女「ミノタウロスとハーピーが一気に来る様ではよほどの戦力が無いと対処出来ぬ」
商人「そうだね…まさか一気に来るとは思って無いし塗り替えも時すでに遅し」
魔女「攻めに転じる所なんじゃがのぅ…」
商人「貴族院の指導者が居なくなったと仮定すると黒の同胞団の動きは鈍化するね」
盗賊「まぁ落ち着いて情報集めて置いた方が良いんじゃ無ぇか?こっちも今バラバラなんだし」
商人「そうだね…まずアサシン達と合流だね」
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情報屋「ねぇ海側の空に気球が飛んでるわ」
盗賊「んん?4つだな…割とでかい気球だぞ?」
魔女「アサシンらが帰って来たかもしれん」
商人「丁度良かったね…これからの事を決めたかった」
盗賊「折角祭りの最中だってのによ…もう城へとんぼ返りか?」
魔女「主らはここに居っても良いぞ?わらわが先に帰って話しておくで」
盗賊「しかし…気球4つで守備固めててもハーピー来たら危なく無ぇか?」
女海賊「ちょいどいて!!私が望遠鏡で見張っとく」
魔女「ちとアサシンの目を覗いてみる…千里眼!」
盗賊「どうよ?」
魔女「何も起きて居らんな…心配しすぎじゃ」
女海賊「なんか明後日の方向を指さしてんね?何やってんだろ?」
魔女「ふむ…離れの島を見て居る…何じゃろうのぅ」
盗賊「どうやら真っ直ぐこっちに向かってる感じじゃ無ぇな…」
情報屋「近隣の村の状況を見て居るのかも知れないわね」
女海賊「私望遠鏡で見張っとくから魔女は戻っても良いよ」
魔女「そうじゃな…戻って待つとする」ノソリ
------------------
盗賊「よぉ剣士!!立ち合いは終わったんか?」
剣士「立ち合いというか決闘だったよ」
盗賊「なぬ!?真剣使ってんのか?」
剣士「うん…寸止めだけどね」
盗賊「一歩間違ったら大怪我じゃスマンぞ」
剣士「この国の近衛は本当に強い人ばかりだよ…魔女と同じ様に少し時空の先に居る」
盗賊「サムライだな?」
剣士「シノビの人は僕と同じラグスイッチも使うんだ…分身している様に見えるんだね」
盗賊「なんじゃそりゃ?」
剣士「あぁ…盗賊は知らなかったか…」
盗賊「まぁ元は軍国だしな剣豪が多いってのは有名だ…ほんで勝てたのか?」
剣士「なんとかね」
盗賊「すげぇじゃねぇか!!」
剣士「僕の刀の残像に惑わされて手を出しにくいらしいよ」
盗賊「おーそれ俺も気になってたんだよ…光の残像ごと切って良いか迷うんだ」
剣士「魔女は魔法の反射効果だって言ってたんだけどね」
盗賊「殺気も反射してるってかヌハハ」
剣士「殺気…そうか人は知らず知らず魔法で感知してるのかも知れないな…」
盗賊「殺気は目を閉じてても分かるぞ?音が無くても分かる…なんでだ?」
剣士「分かった…時空の繋がりだ…これを感知しにくくしてるのか」
盗賊「訳分かんね…」
剣士「ちょっとやってみる?」
盗賊「止めとく止めとく!!こんな所で刃物振り回したら近衛がすっ飛んでくんぞ?」
剣士「ハハそうだね…」
----------------
情報屋「大丈夫?結構飲んでいる様だけど…」
ホムンクルス「脳内ドーパミンの放出量を観測しています…ひっく」
商人「もうダメだよ…顔が真っ赤だ」
ホムンクルス「アルコールの分解で代謝を良くするための反射です…お気になさらず…ひっく」
女海賊「ホムちゃんそろそろ帰ろっか」グイ
ホムンクルス「はい…」ヨタヨタ
盗賊「こんだけで千鳥足か?」グビ
情報屋「あなたと違って体が小さいのよ!!」
盗賊「俺はまだ飲んで行きたいんだけどよぅ…焚火囲んでみんなで酒とか最高じゃねぇか」
ワイワイ ガヤガヤ
飲んじゃって~吐いちゃって~なんちゃって~♪
飲め~飲め飲め飲め~♪
あなた~♪おまえ~~♪ふたり~の恋慕情~♪
ワイワイ ガヤガヤ
黒服「だんなぁ!!良い店紹介しますぜ?」
剣士「え!?僕?…」
黒服「パフパフし放題の良い店があるんですよ!だんなぁ!!」
女海賊「パフパフって何さ?」
黒服「パフパフと言ったらパフパフしか…てだんなぁ?女連れ?」
女海賊「女連れじゃダメなの?」
黒服「いやいや…」
盗賊「こいつら何も知らねぇんだ勘弁してやってくれぇ」
情報屋「はいはい帰るわよ」グイ
盗賊「おい!俺はまだ飲んでくって…」
情報屋「明日も仕事があるのよ?早く帰って明日の準備!!」
盗賊「マジかよ…おい剣士も何か言ってくれぇ」
剣士「ハハ…」
女海賊「あんたも帰るよ!!」
『翌朝_姫の部屋』
魔女「まだ寝て居るかも知れんが…」
ガチャリ バタン
盗賊「んがぁぁぁぁ…すぴーーーー」
情報屋「あら?アサシンいつ戻ったの?」
アサシン「深夜にな…昨夜は楽しんで居た様だな」
女海賊「女王とエルフゾンビは?」
アサシン「女王は政務でちと手が離せん…エルフゾンビは精霊の御所に発つ準備をしている」
女海賊「え?もう行っちゃうの?」
アサシン「精霊樹の事を心配しているのだ」
女海賊「これからの事を相談したかったんだけどさぁ」
アサシン「まずはフィン・イッシュの安定化だ…あと2日程で避難民を乗せた船団が到着する」
女海賊「じゃもうちょいここに居る感じ?」
アサシン「そうなるな…女戦士が救出する奴隷オークの件もある…1000人程と聞いたが受け入れの準備も必要だ」
女海賊「お姉ぇもいつこっちに戻って来るか分かんないもんなぁ…」
アサシン「連絡してみてはくれんか?」
女海賊「おけおけ…後で話してみる」
商人「エルフゾンビは一人で精霊の御所に?」
アサシン「実は私も自分の資産がどうなってしまうのか気になって居てな…一度戻りたいのだ」
魔女「女王の相談役はもう良いのか?」
アサシン「政務に口出し出来る事はもう無い…軍の構成もセントラル国王が居ればなんとかなる」
商人「セントラル国王?」
アサシン「うむ…彼は元々軍属なのだ…少数精鋭を引き連れてフィン・イッシュ守備隊を指揮する事になるだろう」
商人「国王が守備の指揮っておかしくない?」
アサシン「国王が申し出たのだ…フィン・イッシュ女王は政務を担当し軍部はセントラル国王が率いる」
商人「なるほど!!立場上いつでもフィン・イッシュを支配下に置けるという形か」
アサシン「そうだな…しかし国王は女王に惚れこんでしまって居てな…裏切る事は無いだろう」
魔女「それでなにやら調印の義を交わしておったのじゃな?」
アサシン「婚約という形だな…成婚まではもう少しかかると思われる」
商人「王同士の婚姻て前代未聞だね…国は統合しちゃう?」
アサシン「さぁな?しかしセントラルは国王以外の統治者を置いて主権国家を維持した方が良いだろう」
商人「貴族の中に良い統治者が居れば良いけどねぇ…」
アサシン「それだ!その件なのだが…魔女から話は聞いたがシャ・バクダに逃亡した貴族は全滅と見て良いのか?」
商人「これからだね…明日か明後日には結果が出る」
アサシン「やはり私はエルフゾンビと共にオアシスに行かねばならんな…」
魔女「2人で行っても何も出来んと思うがのぅ…」
アサシン「エルフゾンビは精霊樹を守る為に他の国の介入が無いようにしたいらしい」
商人「独立させたいんだね?」
アサシン「黒の同胞団と貴族達の影響力が無くなれば元の独立自治区にはなるだろうが…」
盗賊「それがお前の仕事だろ?今なら生き残ってるクソったれ貴族を暗殺出来んじゃねぇか?」
情報屋「あなた聞いて居たの?寝てるかと…」
盗賊「やっとまともな盗賊ギルドの仕事になりそうだな?俺は盗み…お前は暗殺…情報屋が密偵」
アサシン「言いにくかったのだが強力して貰えるか?」
盗賊「もともとシャ・バクダは盗賊ギルドの庭だ…奪われた物は返して貰わんとな」
アサシン「よし!女王に別働の話をして来る」
-----------------
”お姉ぇ!!聞こえる?”
”…どうした?”
”あ~やっと通じた!”
”済まんな…狭間の中に居る間はなかなか気付けんのだ”
”私ら今フィン・イッシュに居んだけどさ?お姉ぇいつこっちに来る?”
”4日程だな”
”奴隷船の行先を調査するとか言ってたやつはどうなったん?”
”あぁ連絡して居なかったな…黒の同胞団の隠れ家と思われる場所を特定した…一度海賊をフィン・イッシュ沖に集める予定だ”
”マジ!?隠れ家って…”
”お前が言っていたエルフの森南部だ”
”やっぱり…森の中だったら海賊行けないじゃん”
”黒の同胞団と繋がりがある男が言うには10名程しか居ないらしい”
”お!!情報源確保したの?”
”すべてしゃべらせた…まだ何か知って居るかも知れんが海賊の拷問に耐えられず昏睡してしまった」
”うわ…鬼だね”
”アサシンはそちらに戻って居るのか?”
”うん…昨日戻って来たよ”
”海賊船が近海で集結すると伝えて置いてくれ”
”おけおけ…あ!!お姉ぇにお土産あるよ?”
”ん?もしかしてオリハルコン原石を手に入れたのか?”
”ビンゴ!!メチャでかいよ…ほんでちっこい結晶も埋まってるから光の石に出来そう”
”それは楽しみだな…”
”未来は元気にしてる?”
”フフ随分大人になった…会って驚くなよ?」
”うん…待ってる”
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ガチャリ バタン
盗賊「おぉぉぉ!!嬢ちゃん…元気そうだな?」
女王「皆さん…挨拶が遅れて申し訳ありません」
女海賊「何年振り?8年?」
女王「はい…皆さんお変わりなく…本当に皆さんにはお世話になってばかりで…」
盗賊「いやいや嬢ちゃんの方こそ良く頑張ったなぁ?良い国になったじゃ無ぇか」
女王「皆さんのお陰です…ご活躍ぶりはアサシン様から聞いて居ます…何かお礼をと言いたいのですが私の資産は何も無くてその…」
魔女「フィン・イッシュ女王はな…個人の資産をすべて民に与えて居るのじゃ…宝物庫も空じゃ」
盗賊「俺は酒があれば良い」
商人「だから城は一部を除いて一般の民が何処にでも行けるんだ?」
女王「そうです…私は民を信頼していますので」
魔女「この国は民の善意による寄付によって成り立って居るのじゃが…その寄付もすべて貧しい民に分け与えて居る」
商人「シーサーの肉で祭りになったのはそういう事か」
盗賊「それでも滅亡寸前から8年でここまで復興するのはすげぇぞ!」
女王「私に出来るお礼は手料理を振舞う事くらいです…お食事を用意しましたのでお召しになって下さい」
女海賊「良いね!!丁度朝食取りたかったさ」
商人「ハハ女王の手料理ってすごくない?」
情報屋「そうね?他の国では無い事ね」
女王「食堂までご案内致します…こちらです」
『食堂』
情報屋「珍しい食材ばかり…」
女王「大根と人参、じゃが芋の煮つけ…それから卵焼きと焼き魚」
剣士「おぉ!!おいしそう!!」
女海賊「アハハ剣士は根っことか大好きなんだよ」
女王「私が畑で育てた野菜です…お召上がり下さい」
盗賊「なんつうか繊細な味わいだな…」ムシャムシャ
商人「雪が続くと野菜は高騰するよね」モグ
女王「根菜は雪が降っても収穫出来るのです…白菜という野菜もありますよ?」
商人「これさ…キ・カイで高く売れると思うよ」
女王「ご助言ありがとうございます」
盗賊「やっぱこの国は資源が豊かだな…雪降っても野菜が育つのはデカい」
商人「そうだね…ホムンクルスが育ててる毒キノコもポーションに出来るしね」
女王「その件ですが私にも教えて貰えませんか?」
ホムンクルス「はい…よろこんで」ニコ
ガチャリ バタン
アサシン「ここに居たか…探したぞ」
女王「アサシン様…もう行かれるのですか?」
アサシン「エルフゾンビが早く出立したいと言って居るのだ」
盗賊「マジかよ…」
情報屋「私は荷物が古文書の写ししか無いからいつでも行けるわ?」
盗賊「俺も何も無いっちゃ無いんだが…しょうが無ぇ飯食ったら行くわ」
アサシン「酒は積んであるから安心しろ」
盗賊「お!?じゃ行くか!!」
女王「シャ・バクダが落ち着いたら又ご連絡下さい」
アサシン「済まないな…バタバタしてしまって」
女王「行方不明にならないようにお願いします」
アサシン「フフ分かっている…では行って来る」
『貨物用気球』
案内人「乗ってくれーい!!」
盗賊「お!?気球の操舵はお前か!!」
アサシン「今では出世して女王専属の案内人になったのだが無理を言って来てもらったのだ」
盗賊「ほーー女王専属たぁすげぇな」
案内人「早く乗ってくれぇ…エルフゾンビがへそ曲げちまう」
アサシン「済まん済まん…待たせたな」
エルフゾンビ「遅いぞ…」グビ
案内人「飛ばすぞ~!!」
フワフワ
アサシン「さて私も少し飲むか…」
盗賊「俺にもくれぃ」
情報屋「まだ朝なのに…」
盗賊「この気球は貨物用なのに武装してんだな…縦帆まで付けてるじゃねぇか」
アサシン「一応女王の気球を護衛する為に改造してある…外から見て武装している様には見えんだろ?」
エルフゾンビ「爆弾まで搭載しているぞ?」
情報屋「それならハーピーと出くわしても安心ね」
アサシン「魔女から聞いては居るが出会いたくは無いものだな」
---------------
ビョーーーーウ バサバサ
情報屋「案内人は前にシャ・バクダの北の山麓に領事を案内したと言っていたわよね?」
案内人「ミノタウロスが居る辺りだった筈だ」
盗賊「そこら辺にはこないだ行って来たんだ…雪に埋もれて何も見つけられんかったのだが…」
情報屋「地図で言うとどの辺り?」バサ
案内人「そんなに難しい場所じゃ無い…道沿いに行った山麓…この辺だな」
盗賊「んんん合ってんな」
案内人「小屋がある…そこまで案内した」
盗賊「間違い無ぇな?ぼろい小屋もあったがあやしい場所なんか無かったぞ?」
案内人「それ以上俺には分からん…」
情報屋「ダメね…手詰まりね」
案内人「狭間がどうとか言ってた気がするんだが…何の事だか?」
盗賊「なぬ!?」
情報屋「狭間に隠してる…そういう事ね?」
盗賊「てことは空からじゃ見つけられんな」
案内人「俺は小屋の前で待って居たから詳しい場所まで知らん」
情報屋「徒歩で探すしか無さそうね?」
盗賊「誰かが出入りして居るなら足跡ぐらいは見つけられるかもな」
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アサシン「今の話は貴族達の行先の事か?」
盗賊「シャ・バクダには貴族が行って快適な場所じゃ無いだろ?遊ぶには良いだろうがな」
情報屋「私達の知らない古代遺跡の様な場所があるかもしれないという話よ」
アサシン「なるほどな…そこなら安全な訳か」
盗賊「しかし食料とかどうすんだろうな?」
情報屋「錬金術が出来るなら石から食料を生むのも可能かもしれない」
盗賊「錬金術は何でも出来んだな」
情報屋「キ・カイでは失敗が多くて採算が合わないそうよ…なんでも材料の配分が重要だとか」
アサシン「配分?」
情報屋「そう…魔女が言ってた錬金術の特殊な器具はきっと重さを測る天秤の事よ」
盗賊「天秤なんか誰でも作れんだろ」
情報屋「錬金が成功する重さを測る天秤だとしたら?…吊り合えば必ず成功する」
アサシン「クックック…シャ・バクダ王家の紋様は天秤なのだが繁栄した秘密はソレか」
情報屋「キマイラを量産できたのもそれが理由だと思うの」
エルフゾンビ「そんな危ない物を黒の同胞団に使わせてはいけないな」
『オアシス上空』
ビョーーーーウ バサバサ
情報屋「シャ・バクダの方向で火が延焼してる…」
アサシン「オアシス側は戦闘になって居ない様だな」
盗賊「この間オアシスに来た時はセントラルの衛兵がうろついていたぜ?」
エルフゾンビ「私はまず精霊の御所へ向かいたい…精霊樹が被害を受けて居ないか心配だ」
アサシン「ふむ…気球をどうするかなのだが…」
エルフゾンビ「御所の入り口直ぐ近くに林がある…そこに隠せ」
アサシン「ひとまずの拠点はそこになりそうか?」
盗賊「なんとか星の観測所を奪取してぇな」
アサシン「状況を一度見極めたい…エルフゾンビは精霊樹と話せるのか?」
エルフゾンビ「聞いてみる」
『御所の入り口_林』
フワフワ ドッスン
エルフゾンビ「よし!ここには被害が及んでいない…精霊樹に話しかけて来る」タッタッタ
盗賊「俺らどうする?」
アサシン「エルフゾンビを待つしかあるまい?5人しか居ないのだ…別行動はしない方が良い」
情報屋「エルフゾンビの後を追いましょう」
アサシン「うむ…」
盗賊「雪ん中あんまり出歩きたくないが…」
アサシン「忘れていた…お前たちは生身の人間だったな」
情報屋「ほら?早く行かないと置いて行かれるわ?」
ギュ ギュ ギュ ギュ
エルフゾンビ「…」
情報屋「あまり雪は深く無いけど…やっぱり寒いわね」
盗賊「ランタンで暖まるか?」チッ シュポ
情報屋「無いよりはマシね…」
アサシン「ワイン飲むか?」
盗賊「おぉありがてぇ!」グビ
情報屋「ワインはいつも持ち歩いて居るの?」
アサシン「不死者の体では喉が渇くのだ」
エルフゾンビ「エルフがシャ・バクダの砦を襲っているらしい」
アサシン「何?なぜエルフが絡む?」
エルフゾンビ「話せば長くなる…」
盗賊「どうした?顔色がおかしいぞ?」
エルフゾンビ「気にするな…エルフ狩りでエルフが捕らえられて居るらしい」
盗賊「ミノタウロスとハーピーの他にエルフにも襲われてんのか…現場は地獄だな」
エルフゾンビ「とにかく精霊樹の無事は確認できた…様子を見に行こう」
盗賊「星の観測所は通り道になる…ちと通って行くぞ」
アサシン「…」---様子がおかしい---
『星の観測所』
ガヤガヤ メラ パチ
うぅぅぅ痛てぇ…
誰か来るぞ?
避難者だろ…
盗賊「衛兵が居ねぇ…どうなってんだ?」
男1「お前等何処から来たんだ?ここは一杯だぞ?」
盗賊「ちっと温まらせてくれ…おー寒ぶっ」
男1「温まる分には良いが何も無いぞ?」
盗賊「こりゃみんなシャ・バクダから避難してんのか?衛兵は何処行った?」
男1「変な奴だな…オアシスの方には伝わって居ないのか?」
盗賊「何の事だ?」
男1「反乱だよ…セントラルが小間使いしていたミノタウロスとハーピーが反乱を起こした」
男2「知らないという事は随分遠くのオアシスから来た様だね?」
盗賊「まぁな?火が見えて見に来たって所だ」
アサシン「見た所商隊が避難している様だが?」
男1「シャ・バクダが混乱していてバラバラに避難しているんだ」
情報屋「じゃぁここは避難所に?」
男1「今の所はそうなっている」
アサシン「…」
盗賊「どうやら集合はここでも良さそうだな?商隊が居るって事は食い物もありそうだ」
情報屋「風が凌げるだけマシね」
盗賊「俺はハイディング使えるからちっと砦の方を見て来る」
アサシン「そうだな…では私とエルフゾンビでシャ・バクダを見て来るとするか」
情報屋「じゃぁ私と案内人はここで情報集めておくわ?」
盗賊「直ぐに戻るからなんとか場所の確保しておいてくれ」
『数時間後』
メラ パチ
盗賊「戻ったぜ!!あぁぁぁ寒ぶ!!」
情報屋「…」ウトウト
盗賊「なんだ寝てんのかよ…」
情報屋「ハッ…目を閉じたらつい…」パチ
盗賊「良い干し草が有ったじゃねぇか」ドサ
情報屋「案内人が裏の小屋に入ってるのを見つけて来てくれたの…それで砦の方は?」
盗賊「空中戦やってんのがハーピーとドラゴンライダーだ…どうやら砦に籠ってる連中は寝かされていそうだ」
情報屋「ドラゴンまで…」
盗賊「エルフ単独じゃハーピー相手はキツイんじゃ無ぇか?」
情報屋「ミノタウロスは?」
盗賊「砦に入れなくて門の前でたむろってんな…10体ぐらいだな」
情報屋「三つ巴になって居るんだ…」
盗賊「門を開ければ一気に戦況変わるなこりゃ」
情報屋「ミノタウロスが命令通りに動いてるなら残りの貴族は砦の中という事ね」
盗賊「まぁそうだろう」
情報屋「ハーピーの数は?」
盗賊「ハーピーも10体ぐらいだ…ドラゴンライダーは4体しか見えなかった」
情報屋「私達は何もせず見物?」
盗賊「砦の中に入れりゃ俺が門を開けても良いんだがな…入る方法が無ぇ」
情報屋「アサシン達の情報待ちね」
盗賊「ちっと俺も寝かせてくれぃ…温まったら眠たくなった」
情報屋「良いわ…休んでて」
『翌朝』
ガヤガヤ ガヤガヤ
どうにかしてハズレ町まで戻った方が良さそうだな
オアシス回って売りさばくのは?
許可無しで移動して良いものかどうか…
情報屋「ふぁ~あ…あら?アサシン戻っていたのね?声掛けてくれれば良いのに」
アサシン「急ぐ事でも無い様なのでな」
情報屋「盗賊!案内人!起きて!!」
盗賊「んぁ?おー朝帰りか…遅かったじゃ無ぇか」
アサシン「クックック…朗報だ」
盗賊「シャ・バクダで良い事有ったんか?」
アサシン「恐らく貴族院の指導部はほぼ壊滅だ…残って居るのは数名砦に残って居るぐらいだろう」
盗賊「マジか!!」
エルフゾンビ「シャ・バクダで死んだのは全員貴族の有力者だ…間違いない」
情報屋「一般の人に被害は?」
アサシン「怪我はしているだろうが死人はほぼ無いと思われる…死体が無い」
盗賊「うはぁ!!朗報だな」
アサシン「ただ面倒なのが残って居るのは恐らくリッチだと思われる…倒れているミノタウロスに謎の金属が刺さっていた」
情報屋「リッチね…間違いないわ」
エルフゾンビ「フフ私に任せろ…リッチは不死者だ…私の命令には背けん」
盗賊「砦の門を開けるだけでミノタウロスがなだれ込むぞ?」
エルフゾンビ「そうか…すぐにでもやりたい所だがハーピーに見つかりたくは無いな」
情報屋「ならドラゴンライダーがハーピーと空中戦をやっている間が良いわね」
エルフゾンビ「リッチが何体居るのか知らぬが私の手駒にしたい」
アサシン「森を守らせるのか?」
エルフゾンビ「悪いか?役目を終えればリッチも森の一部になれるのだぞ?」
盗賊「やるなら夕方以降だな…ドラゴンライダーは夜に行動する」
-----------------
情報屋「西のオアシスの方でフィン・イッシュの兵隊が捕虜になっているそうよ?」
盗賊「捕虜を解放したい所だな」
アサシン「ふむ…フィン・イッシュがオアシスを治安する様になれば動きやすくなる…行くか!」
盗賊「こんだけ混乱してりゃ気球からクロスボウ撃ってるだけで制圧出来るぞ」
情報屋「セントラルの兵がどのくらい詰めてるかね」
アサシン「私とエルフゾンビを降ろせば済む話だ…さっさと片づけるぞ」
『西のオアシス上空』
ビョーーーウ バサバサ
情報屋「兵隊は10人くらいだわ」
盗賊「こっちに気付いた…警戒してんぞ?どうする?」
アサシン「エルフゾンビ?行けるか?」
エルフゾンビ「フフ簡単だな」
アサシン「よし…私達が飛び降りられる高さまで降ろせ…盗賊と情報屋は残ってクロスボウで援護しろ」
盗賊「衛兵に化けてるリッチが居るかもしれんから気を付けろ」
エルフゾンビ「問題ない…降りてすぐに使役できる者は従えるつもりだ」
アサシン「案内人は気球の操舵に集中しろ…」
情報屋「兵隊が集まり出したわ?」
アサシン「案内人!突っ込むのだ」
盗賊「情報屋!クロスボウの射撃用意だ!!」ガチャリ
アサシン「飛ぶぞ!」ピョン
エルフゾンビ「…」ピョン
---------------
ドタバタ ドタバタ
奇襲だ!!弓を持て!!
気球を撃ち落とせぇ!!
隠れろぉ!!応射して来る シュン シュン スト スト
2人飛び降りたぞ!?
ドタバタ ドタバタ
----------------
盗賊「案内人!もっと高度下げて良いぞ!!あいつら短弓しか装備して無ぇ」バシュン バシュン
案内人「分かったぁ!!」グイ
情報屋「すごい…エルフゾンビが兵隊を圧倒してるわ…」バシュン バシュン
盗賊「その様だな?さすがエルフだ」バシュン バシュン
情報屋「クロスボウに狙われて兵隊は集まれない様ね」バシュン バシュン
盗賊「こら思ったより楽勝で制圧できんぞ?」バシュン バシュン
情報屋「逃げてる!」バシュン バシュン
『西のオアシス_砦』
フワフワ ドッスン
アサシン「案内人!エリクサーはまだ残って居るか?」
案内人「もう瓶で少ししか無い」
エルフゾンビ「精霊の御所まで私が汲みに行く…盗賊と情報屋は気球から降りて怪我人の手当てを頼む」
盗賊「おう!捕虜は動けんのか?」
アサシン「動ける者は順次他の捕虜の解放に動いて居るが…怪我人が多いのだ」
情報屋「回復魔法がエンチャントされた角があるわ?」
アサシン「おぉ!!それは良い…手当を頼む」
盗賊「行くぞ!!」タッタッタ
----------------
近衛「…もう大丈夫です」
エルフゾンビ「エリクサーは樽一つ分しか無いから大事に使ってくれ」
盗賊「こんだけ衛兵が残ってりゃこの砦は落とされることは無いな」
近衛「あの空飛ぶ魔物さえ居なければなんとかなります」
盗賊「ありゃハーピーってんだ…今はシャ・バクダ砦を攻めてる」
近衛「攻め?」
アサシン「私達が使役してセントラルの貴族を討伐しているのだ」
近衛「おぉ!!ではこれで領地を取り返せるという事ですね?」
アサシン「セントラル側は指導部がほぼ居ない状況になって居る…平定するなら今がチャンスと言える」
情報屋「もう少し怪我が良くなってからね」
アサシン「まぁ焦る事も無いが…」
近衛「まずは怪我の程度の軽いもので周辺の情勢を確認します」
アサシン「そうだな…現状は治安が行き届いて居ない様だ」
エルフゾンビ「今晩で貴族の指導部は壊滅できるだろうがシャ・バクダ砦にはまだセントラル兵が残って居ると思われる」
盗賊「ハーピーとミノタウロス次第だがしばらく摩擦は続きそうだな」
情報屋「貴族壊滅後にハーピー達はどうなるのかしら?」
アサシン「暴れる様であれば始末するしか無いな」
エルフゾンビ「さて…私達はそろそろ観測所に戻るか…ここではシャ・バクダ砦の状況が掴みにくい」
アサシン「そうだな戻るとする…」
『シャ・バクダ上空』
ビョーーウ バサバサ
盗賊「砦の方はもうドンパチやってんな」
アサシン「昨夜と同じか?」
盗賊「やっぱドラゴンライダー4匹ぐらいか?ハーピーは…」
情報屋「空中ね…7~8匹?」
盗賊「もうちっと近づかんと何とも言えん」
案内人「これ以上近づくのは無理だ…感付かれちまう」
アサシン「まだ日が落ちるまで間があるのだが…」
エルフゾンビ「ミノタウロスは門前だと言ったな?」
盗賊「あぁ昨晩と変わって無ぇ…門前で横たわってる」
エルフゾンビ「門とは反対側から私一人で近づいて見よう…降ろしてくれ」
アサシン「私も眠る事は無いから同行出来るぞ?」
エルフゾンビ「いや…2人だと行動を制限されるのだ…一人の方が忍びやすい」
アサシン「クックックでは高みの見物をさせてもらう」
エルフゾンビ「気球から望遠鏡で見ているが良い」
盗賊「俺のエンチャント角持って行くか?沢山もってんぞ?」ポイ
エルフゾンビ「鼻から戦闘するつもりは無いが…一応借りておく」パス
情報屋「あ!!下の建屋に衛兵が隠れてる…」
案内人「む…これ以上高度下げると撃たれる」
エルフゾンビ「フフ…まぁ良いエリクサー一口飲んで飛び降りる」ゴク
アサシン「クックック強引だな?」
エルフゾンビ「では行って来る」ピョン
盗賊「ヌハハやっぱ行動は剣士に似てるんだな…」
----------------
情報屋「良く見たらそこらじゅうの建物に衛兵が隠れてるわね…大丈夫かしら」
盗賊「隊を指揮する奴が居ねぇんだな…エルフゾンビをスルーしてるぞ?」
アサシン「敗残兵が隠れているのだろう…気にする事でも無い」
案内人「またドンパチが始まった!火柱だ!!」
盗賊「あんなんがドラゴンライダーに当たる訳無ぇ…そら見ろ!!潜り抜けてる」
情報屋「う~ん…やっぱりどう数えても8匹ね」
アサシン「ふむ…ドラゴンライダーに2匹やられたか?」
情報屋「だとすると直にハーピーは全滅するわね?」
盗賊「ハーピーは連射する魔法を使って無ぇ…もしかして触媒不足かも知れん」
情報屋「羽ね?」
盗賊「長期戦か…通りでドラゴンライダーは4匹しか居ない訳だ」
アサシン「交代しながら戦って居るのか…たしかドラゴンライダーは全部で8匹居た筈だな?」
案内人「アサシン!!反対方向!!何か来る!!」
アサシン「んん?何処だ?」
案内人「下!雪煙が舞ってる」
アサシン「盗賊!望遠鏡で見えないか?」
盗賊「…なんだありゃ?4つ足の石みたいなのが動いてる」
アサシン「トロール?…いやまさか…まだ日が出ている」
情報屋「これ…もしかして歴史の塗り替え?」
盗賊「又かよ!」
案内人「雪煙は2つだ…少しづつ近づいて居る」
アサシン「新手と見た方が良いな…高みの見物とはイカンかも知れんな…」
-----------------
情報屋「エルフゾンビが砦の裏に到着した様よ?」
盗賊「何も起きる気配は無いが…」
ビュゥゥ バカン! グラグラ
アサシン「何事だ!!」ヨロ
盗賊「どわぁぁ!!」ゴロゴロ
案内人「あの石の化け物が雪玉投げて来てる…」
アサシン「高度上げろ!!」
案内人「やってる!!」グイ
盗賊「こんな高さまで雪玉投げてくんのか…」
案内人「くっそ!!どこかのロープが切れて操舵が上手く行かない」
盗賊「一旦遠くで居りて直すだな」
情報屋「あ!!砦の門が開いた!!」
アサシン「エルフゾンビは何処に行った?」
情報屋「シャ・バクダの方に戻ろうとしてるわ」
アサシン「今降りる訳にイカンな…気球を直した後で観測所で待とう」
盗賊「門から出て来る衛兵は…ありゃリッチだな?1人だ」
情報屋「エルフゾンビに付いて行こうとしてるのね?」
盗賊「ミノタウロスのど真ん中行こうとしてるんだが…うぉ!!自爆か?」
情報屋「ミノタウロスは3体倒れた…でもダメ!あぁぁぁ…取り囲まれた」
盗賊「食われてんじゃ無ぇか…うげ…」
アサシン「リッチは当てに出来んな…」
盗賊「ダメだ!ミノタウロスが門から突入してる」
アサシン「ふむ…まだ貴族の生き残りが居るという事だ…やらせておくだな」
案内人「気球が風で北西に流れて行く」
アサシン「もう少し離れてから降りろ」
情報屋「また新手よ!!」
アサシン「何ぃ!?」
盗賊「何処だ?」
情報屋「砦の北側…あれは黒の騎士…時の王よ」
アサシン「時の王だと!?…なぜ絡む?…いや絡んで当然か…」
情報屋「黒い馬に乗って砦の様子を伺ってる…」
アサシン「ええい!!ひとまず観測所でエルフゾンビと合流が先だ!!気球を降ろせ!!」
『雪原』
フワフワ ドッスン
盗賊「よし!切れたロープを繋いで来る」ダダ
情報屋「見回っておくわ…」
”聞こえるか…”
”お!?アサシン!?どしたん?”
”シャ・バクダで見た事の無い魔物が現れてな…千里眼で魔女に見てもらいたいのだ”
”おっけ!魔女に伝えておくよ…ほんでそっちはどう?”
”貴族はほぼ壊滅だ…シャ・バクダ砦に一部残っている様だがすでに実行治安出来る状態では無い”
”ほんじゃ星の観測所は取り返したんだ?”
”避難民が詰めていて自由には使えんがな…”
盗賊「だめだぁ!!縦帆の付け根が痛んで修理が必要だ!!」
アサシン「応急でひとまず何とかならんか?」
盗賊「ロープで突っ張ってはいるが直ぐにダメになる…木材が欲しい」
アサシン「むぅぅ…観測所までは飛べるか?」
盗賊「やって見ねぇと分からん」
”なんか忙しそうだね…魔女には伝えておくから又連絡するね”
”悪いな…頼む”
盗賊「俺がロープで突っ張っとくからちっと飛んでみてくれ」
アサシン「案内人!行けるか?」
案内人「高度上げないでやってみる」グイ
フワフワ
『星の観測所』
グイグイ フワフワ ドッスン
盗賊「だはぁぁぁ!!結局俺が引いた方が早かった…ぜぇぜぇ」
アサシン「案内人!木材を探して来い」
案内人「納屋に端材が積んでいた筈だ…盗賊も来てくれ」
情報屋「避難民がこっちを見てる…」
アサシン「セントラルの衛兵が紛れているかもしれん…警戒しておけ」
情報屋「私がクロスボウを構えておくわ?早く気球を直して」
盗賊「へいへい…」
----------------
アサシン「ここからでは砦を見渡せんな」
情報屋「観測所の上階なら見えた筈よ」
アサシン「済まんが気球の見張りを頼む…私は観測所の上から砦を見て来る」
『上階』
ザワザワ ザワザワ
また火柱だ…いつまで続くんだ?
もうダメだ!オアシス経由で戻ろう
シャ・バクダに残した物はどうする?
ドラゴンが地上に火を吹いてる
ザワザワ ザワザワ
アサシン「…」---石の魔物が暴れて居る---
アサシン「…」---ん?時の王…石の魔物と戦っている?---
アサシン「…」---敵見方がどういう状況か読めん…どうなっているのか…---
アサシン「…」---しかしあの石の魔物の運動性は何だ?---
”アサシン聞こえるか?”
”魔女か…見て居るのだな?”
”あの魔物はゴーレムじゃ…わらわも驚いて居る”
”神々の神話の巨人か?…あれがゴーレムだと言うのか…”
”どこから来たのかは知らんが危険じゃぞ?物理も魔法も効かぬ”
”敵か味方か分からんのだが…状況からして黒の同胞団が召喚したと思われる”
”錬金術で合成されたのであればもしかすると歌で使役出来るやもしれん”
”試すのは危険過ぎるな…運動性が異常だ”
”そうじゃな…関わらん方が良い”
”盗賊が歴史の塗り替えの話をしていたのだが…”
”うむ…向こうも対応に躍起になっておる結果じゃろう…状況をしっかり見て行動する様に気を付けるのじゃ”
”引き続き千里眼で見て置いてくれ…何かアドバイスがあれば助言して欲しい”
”5日程度は状況の安定を見守った方が良いのぅ”
”分かった…無理は避ける”
『貨物用気球』
トントントン ギコギコギコ
アサシン「どうだ?直せそうか?」
盗賊「とりあえず応急処置だがきちんと直すなら半日掛かるな」
情報屋「思ったよりひどい様ね?」
盗賊「木材が端材しか無いからよ…工夫が必要なんだよ」
情報屋「丁度商隊が避難しているから必要な物があったら買って来るわよ?」
盗賊「骨粉と松脂だな…接着剤があればそれでも良い…あとロープも足りねぇ」
アサシン「今日はここに気球を置いておくしか無い様だな」
盗賊「どうせ観測所の中で横になる場所は無ぇし気球の中の方が快適だろ」
情報屋「暖を取る為の木材と炭も調達しておくわ」
-----------------
アサシン「日が落ちてしまったが…エルフゾンビは戻って来んな」
情報屋「少し心配ね…」
アサシン「まぁ仕方が無い」
盗賊「これからどうすんだ?」
アサシン「貝殻で魔女と少し話をしたのだが…5日程状況を見守った方が良いとの事だ」
盗賊「やっぱりか…ちと想定外な敵が来ちまったもんな」
情報屋「気球で近寄りにくくなったわね」
盗賊「今晩も俺が砦まで行って偵察してくっか?」
アサシン「いや…あのゴーレムがどの程度なのか分からない以上下手に行動出来ん」
情報屋「そうね…もしもハイディングを見破られたりしたら危ないわ」
盗賊「じゃぁしょうが無ぇ…今日はゆっくりすっか」
案内人「湯が沸いたぞ?どうするんだ?」
盗賊「おぉ!そん中に松脂溶かして骨粉と灰を混ぜるんだ…こんな感じだ」マゼマゼ
情報屋「それで木材の隙間を埋めるのね?」
盗賊「あったかい内に隙間に塗り込んでくれ…これでちったぁ温かくなる」
ドドドドド
盗賊「んん?何だ?地震か?」
情報屋「地響き…」
アサシン「もしや…ゴーレムが此処まで来ているのやも知れん…飛ぶ準備をするのだ!!」
盗賊「ちぃ…ゆっくりする暇も無ぇ!!」ゴソゴソ
情報屋「観測所の方がザワ付いているわね…ちょっと見て来るわ」スタ
アサシン「私も行く」
『星の観測所』
ザワザワ ザワザワ
向こうだ!!
誰か明かりを持って来てくれーい
雪ん中からサンドワームがぁぁ!!
なんでトロールなんか出て来るんだ!!
ザワザワ ザワザワ
情報屋「…この感じ」
アサシン「混乱しているな…シャバクダの砦は相変わらずか?」
情報屋「良く見えないけれど多分光って居るのはドラゴンのブレスね」
アサシン「何か起きそうな予感だな…」
情報屋「ここも安全では無さそうね」
アサシン「ん~む‥‥しかしどうする」
情報屋「魔物が次々と現れるのはまるで…」
アサシン「セントラルの厄災と言いたいのか?」
情報屋「情報が少なすぎて勘だけになるけれど悪い予感しかしないわ」
アサシン「封印の壺の行方が未だに分かって居ないのだが…まさかな」
情報屋「その可能性も考えて居た方が良いわね」
アサシン「うむ…ひとまず私達は上空の安全な場所から状況を見守るのが良いと思うが…」
情報屋「もしもこの混乱にハーピーが混ざっていたとしたら空も安全では無いわ」
アサシン「隠れる場所なぞ他に無いでは無いか」
情報屋「今は動けないと思う」
アサシン「明け方まで待つか」
情報屋「エルフゾンビが戻って来ないのも理由があると思うの」
アサシン「まさかトロールを動かしているのはエルフゾンビか?」
情報屋「トロールは理由無しで精霊樹から離れるとは思えないから」
『貨物用気球』
盗賊「戻ったな?いつでも飛べるぜ?どうする」
アサシン「明け方までひとまず待機だ」
盗賊「あっちぁどうなってんだ?」
アサシン「トロールとサンドワームが出没している様だ」
盗賊「うはぁ…そんなん来たらここじゃ守れ無ぇ」
アサシン「恐らくトロールはエルフゾンビが動かしているのではないかと思われる」
盗賊「あのゴーレムっていう巨人を倒すのか?」
アサシン「分からん…状況が見定め切れん…だから待機なのだ」
情報屋「今は噂でも何でも良いから情報が欲しいわ」
盗賊「まぁそうだが…雪ん中彷徨うのもなぁ…」
案内人「俺は商隊に顔が利く…オアシスの砦での保護を条件に有益な情報を聞き出せるかもしれん」
情報屋「良い案ね」
アサシン「フィン・イッシュの駐留兵には私が話をしよう…移送用のシカの調達をどうするかなのだが…」ジロ
盗賊「ぐはぁ…俺か」
アサシン「危険だがシャ・バクダ街に放置されているシカを連れて来られるか?」
盗賊「ハイディングしながら行けばどうって事無いが…しゃぁ無ぇ行くか」
アサシン「情報屋は観測所に残って周囲を見張って居てもらいたい」
情報屋「分かったわ」
盗賊「湯を用意しておいてくれぇ…雪ん中出歩いてると凍えちまう」
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巨人始動編
完
『フィン・イッシュ墓地』
女海賊「剣士!?飛空艇の縦帆開いといて」
剣士「あぁ…これだっけ?」
女海賊「そうそう…商人!!積み荷はそれで最後?」
商人「うん…あとは魔女が乗るだけかな」
女海賊「魔女はまだ書物庫に籠ってんの?」
ホムンクルス「もうこちらへ来るかと思います」
女海賊「ホムちゃんは書物全部読んだんだよね?」
ホムンクルス「はい」
女海賊「じゃぁもう魔女が読まなくても良いじゃん」
ホムンクルス「魔術書に書かれている事は私には理解出来ません」
商人「どうも神話のゴーレムは魔術の起源と関係しているらしいよ」
女海賊「あぁぁイライラするなぁ…お姉ぇが沖で待ってんだけどさぁ」
ノソノソ
魔女「ブツブツ…」
女海賊「来た!!もう!!早く乗って!!出発する」
魔女「おぉぅスマンのぅ…つい時間を忘れてしもうた」ノソリ
フワフワ シュゴーーーーー
女海賊「剣士!!沖に出るから海賊船見つけたら教えて…方角分かる?」
剣士「南の方角5時の方向」
女海賊「おっけ!!」グイ
商人「女王に挨拶して無いけど良かったかな?」
魔女「貝殻を渡してあるで問題ないぞよ?」
女海賊「あっちもなんか忙しくてずっと居ないし別にイーじゃん」
商人「僕の発想は凡人か…王族同士はそんな感じなんだハハ」
『飛空艇』
ビョーーーウ バサバサ
女海賊「ほんで神話のゴーレムで何か分かった事あんの?」
魔女「キマイラの類では無いというのだけは確かじゃな…つまり歌で使役は出来ぬ」
女海賊「そんだけ?」
魔女「書物を探し回ったのじゃが記述が古すぎて確かな事が書かれて居らんのじゃ」
ホムンクルス「約1700年前の記録が残って居ますが殆どが伝承の様です」
女海賊「って事は時の王のおっさんの時代かぁ」
魔女「そうじゃ…魔術が発達しだしたのもその時代じゃ…それより以前の記録は極端に少ないのじゃ」
商人「そんなのがどうして今現れたか?だよね…」
魔女「眠っていたのを起こしたのか…新たに召喚したのか…それとも生んだのか何も分からぬ」
剣士「量子転移…」ボソ
魔女「うむ…その可能性もあるのぅ」
商人「誰かが量子転移させた…そんな事が出来る人なんか居るのかい?」
魔女「当時の記憶があって尚相当な魔力を持って居る者であれば可能かもしれぬ」
商人「ちょっと待って…それってさ暗に魔王が居ると言ってるのと同じじゃないかい?」
魔女「…」
女海賊「あんたさぁ…嫌な事言うね」
魔女「壺が何処に行ったか分からぬ以上既に生まれてしもうた可能性は否定出来んのぅ」
商人「壺に封印した子宮から何かが生まれたと仮定して記憶はどうなっているんだろう?」
魔女「胎児に過去の記憶が在るとは思えぬが…」
ホムンクルス「エルフの森の地下には精霊の記憶が保存されたオーブが安置されていますね」
商人「!!はっ‥‥魔王は精霊の記憶を改竄するウィルスだったね」
ホムンクルス「改竄するのには管理者権限が必要なのですが…」
商人「いやそうじゃない…記憶を覗くことが出来るって事だ」
ホムンクルス「エルフの森周辺のクラウドはオープンな状態でしたね…参照可能な状態です」
商人「その記憶から量子転移をする…出来そうじゃないか」
魔女「量子転移は空間を切り取る魔法なのじゃが…」
ホムンクルス「理解しました…だから損傷した記憶データがいくつも存在して居たのですね」
商人「いくつも?どういう事だ?前から何度も切り取られてたっていう事なのか?」
女海賊「んんん…なんか辻褄が合わなくなって来たね…誰がやってんのさ」
商人「魔王以外の第三者にそんな事が出来る人が居るって事かな」
魔女「記憶から量子転移をするには並みの魔力では不可能じゃ…師匠でも難しいじゃろう」
商人「大量の魔石で補うのは?」
魔女「魔石じゃと?何百…何千の魔石が必要になるか分からぬが…可能性はゼロでは無いのう」
商人「魔女は知らないよね…キ・カイはセントラルから魔石を買い付けて居た事を」
魔女「なぬ!?魔石の産地はキ・カイでは無いのかえ?」
商人「そうだよ…どういう風に作って居るかは知らないけど魔石の出所はセントラルなんだよ」
女海賊「ウラン結晶もなんでかセントラルに在ったね…東に鉱山があるとか無いとか」
商人「鉱山ねぇ…そんな山なんか無いじゃないか…森だけだ」
ホムンクルス「魔石をどの様に製造して居るのか知りませんか?見た目は宝石の様ですが一様ではありませんね」
魔女「生きた魔物を重力炉で圧縮して宝石にする事が出来るらしいが詳しくは知らぬ」
女海賊「…」
商人「ビンゴ…それだね」
女海賊「奴隷の使い道ってもしかして…」
商人「錬金術の触媒にされたり魔石に変えられるんだ…そしてそれが貴族の主な収入源…不要な死体はカタコンベ」
女海賊「ええええ!!この風の魔石って生きてた誰かって事?」
魔女「主に魔物じゃろうが…」
女海賊「私らドワーフって半分魔物じゃん!!」
商人「もう魔物っていう区分の仕方は良くないかもね…魔力を秘めた生き物と言った方が正しそうだ」
女海賊「なんか腹がムカムカする…」
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商人「何もかにも辻褄が合う…」
セントラルに魔法が普及しなかった理由
エルフ狩りで捕らえられたエルフが何処にも居ない理由
捕らえた奴隷を拷問するのも魔力を増幅させる為
女海賊「魔力を増幅?」
商人「そうだよ…魔術師の修行は絶食したり苦痛に耐えたり…拷問と変わらない…そうでしょう魔女?」
魔女「拷問とは違うが限界域を拡張するのは修行が必要じゃな」
商人「その拷問に耐えられなかった人達がカタコンベに遺棄される…ラットマンの餌としてね」
そして貿易の話
キ・カイで生産される機械を動かすエネルギーは魔石だよ
その機械を使って生活を営んで来た
奴隷を使うよりも効率が良いんだろうね…食事代も要らないし
動かなくなったら又魔石を買えば良い
そうやって魔石を流通させてセントラルの貴族達は潤った
僕たちの文明は実は魔石というエネルギーありきで回ってたんだ
だからこれを良しとする人と反対する人で分かれる
貴族院が2つに割れている様にね
そんな対立に麻薬は良いスパイスとして働いたね
言う事を利かせる為だったり
現実を逃避させる為だったり
そんなこんなでセントラルは貿易において独り勝ちさ
魔女「それが事実だったとしてエルフゾンビは何も言うて居らんかったのじゃが…」
商人「このカラクリはある程度知って居るんじゃないかな?皇子だったんだし…だから単独で行動する」
女海賊「あの人は剣士と同じであんまり余計な事話さないね」
商人「…さて…黒の同胞団が大量に魔石を持って居たとして誰がゴーレムを呼べるかだよね」
女海賊「ホムちゃん!精霊のオーブって誰でも覗ける物なの?」
ホムンクルス「クラウドへのアクセスは私の様な受信機を搭載している人であれば誰でも読み込み可能です」
女海賊「受信機?なんそれ?」
商人「特殊な人じゃ無いとダメだって事だね…それは」
魔女「エルフはオーブで記憶の伝達をするでエルフなら覗けるじゃろうのぅ」
商人「エルフねぇ…」
女海賊「ちょい待ち…エルフゾンビが第2皇子だった頃にダークエルフ連れ回してたな…レイスにやられたらしいけど」
商人「それは初耳だよ…聞かせて」
女海賊「そもそもそのダークエルフが祈りの指輪を持ち逃げしたから前の100日の闇が起きた」
商人「そのダークエルフの目的は何だったか知ってる?」
女海賊「んーー盗賊の方が詳しいかな…私直接関わって無いのさ」
商人「そっか…」
女海賊「ただそのダークエルフは指輪を破壊したかったらしいよ」
商人「指輪を守ろうとしたハイエルフと破壊しようとしたダークエルフ…こんな感じかな」
魔女「そういえば祈りの指輪には量子転移の魔法が封じられて居ったな」
商人「指輪を使って記憶を切り取れる?」
魔女「エルフなら出来るやもしれん」
商人「まてよ…シン・リーンの国王に化けて居た元魔術院長の話では勇者の目を精霊の記憶から量子転移したと…」
魔女「そう言うて居ったな」
商人「つまり記憶から魔王を切り取って来る事も出来る訳だ」
魔女「そういう事じゃな」
商人「そんな事に使われる位なら破壊したいと考える」
魔女「ダークエルフが指輪を破壊したい動機には十分じゃな」
商人「こう言い換える事も出来る…精霊の記憶を切り取り損傷させたのはハイエルフで…守ろうとして居るのはダークエルフ」
魔女「んーむ手段が違うだけじゃがダークエルフも正義かもしれんのぅ」
商人「どっちにしてもゴーレムの件はエルフが鍵になってそうだ」
剣士「前方!海賊の船団を見つけた!!」
女海賊「お!?お姉ぇの船は?」
剣士「右から3隻目…船尾が空いてる」
女海賊「おっけ!!着陸する」グイ
『貨物船』
ザブン ザブン
船乗り「頭ぁ!!11時の方角!!あれは姉さんの飛空艇でがんす」
女戦士「やっと来たか…」
船乗り「兄やんが合流して無いでがんすがどうしやす?」
女戦士「一隻伝令を残して出立する…連絡船を出せ」
船乗り「がってん!!」
女戦士「未来!!剣士達が帰って来るぞ」
子供「うん…」
女戦士「どうした?嬉しくないのか?」
子供「なんか落ち着かないんだ」
女戦士「…」---何か感じている様だ---
子供「なんだろう…これって胸騒ぎっていうのかな?」
女戦士「何か起こる予感がするのだな?」
子供「分からない」
女戦士「海賊達も海の様子がおかしいと言って居たがあながち間違っては居ないのかもしれん」
フワフワ
女海賊「お姉ぇ!!ロープ出して!!風が強い」
女戦士「ふん!!」ブン
女海賊「剣士!!ロープ掴まえて飛空艇に引っかけて!!」
剣士「…」ピョン シュタ
女海賊「おけおけ!!降ろすよ」
フワフワ ドッスン
『甲板』
スタタタ
女海賊「未来ぃぃぃ!!」
子供「ママ…」
女海賊「無事で良かった…」ギュゥゥゥ
子供「ぅぅぅ苦しいよ」
女海賊「アレ?金属糸のインナーは?」クンクン
子供「あぁ色々あってね…」
女海賊「違う女の匂い…お姉ぇ!!どういう事?」
女戦士「フフ匂いで分かるのか」
子供「ハーフオークの友達が出来たんだ」
女海賊「船に乗ってんの?」
女戦士「まぁ色々有ってだな…落ち着いて居室で話そう」
子供「パパ…」
剣士「…」ナデナデ
子供「えへ…」ニコ
女戦士「剣士には分かる様だな…未来の成長ぶりが」
子供「そうだ!!パパに魔法を教えて欲しかったんだ」
剣士「魔法を?」
魔女「剣士は魔法の使い手じゃが教えるのには向いて居らん…代わりにわらわが教えてやるぞ?」ノソリ
子供「君は誰?魔法を使えるの?」
女海賊「アハ…未来は魔女が子供に変身出来るの知らなかったんだね…この子は魔女だよ」
子供「えええええええ!?そういえば目が赤い…」
魔女「生意気言っとらんで何か魔法を使ってみよ」
子供「え…あ…うん」
女海賊「ほんじゃ私ら居室行ってんね」
子供「パパも?」
魔女「これ!!よそ見せんで早う魔法を唱えてみよ」ポカ
子供「あたっ…その杖痛いよ」
魔女「無駄口をたたくでない」ポカ
子供「火炎魔法!」チリチリ ポ
魔女「ふむ…出口が分散しておる…火炎魔法はこうじゃ…火炎魔法!」
ゴゴゴゴ ボウ
子供「うわぁ!!…え?なんで?どうして?」
『居室』
カクカクシカジカ…
女戦士「…なるほどな…魔女の父君が黒の同胞団の司令塔になって居る訳か」
商人「魔女が言うには幻惑の杖で操られていると…」
女戦士「しかし驚きだな…シン・リーンの祭事に要人が集まって居たとは」
女海賊「お姉ぇは行った事あんだっけ?」
女戦士「アサシンと共に一度だけな…随分昔なのだが」
女海賊「怪しい人とか覚えて無いよね…」
女戦士「私達は末席に居たのだ…前列に誰が居たのかは分からん」
女海賊「そん時は時の王のおっさんは見て無いの?」
女戦士「最前列は皆ローブを纏って居てな…目立って居たのはひと際背の高い者…恐らくハイエルフ」
商人「そのハイエルフが剣士を生んだらしい」
女戦士「精霊が不在のこの時代に勇者を生んだのは黒の同胞団の功績という訳か…皮肉だな」
商人「正確にはその功績を黒の同胞団に乗っ取られた…そんな感じだね」
女戦士「あのさ…黒の同胞団の黒って…もしかしてダークエルフって意味じゃない?」
商人「!!?え…君…核心をついて居るかも」
こんな仮説が立つ
精霊の記憶を損傷させてまで勇者を誕生させようとしたハイエルフに反感を持った一部のエルフ達
彼らも精霊のオーブを守るという原則を行使する為祈りの指輪を奪取しようとした
時に人間に協力を仰ぎエルフ狩りを誘導し戦争を導き
見返りとして魔石を製造する技術を提供
魔女狩りや魔物の奴隷化が加速し貴族達が潤い貴族院への権力集中が起きた
そんな中当時のセントラル第2皇子に汲み入った一人のダークエルフが指輪の奪取に成功
しかし人間の裏切りにより約束は果たされず魔王の復活を許してしまった
女海賊「あのさ…そうまでして精霊の記憶を守ろうとしてるダークエルフがゴーレムを呼ぶって考えにくくない?」
女戦士「うむ…ダークエルフだとはいえ元はエルフだ…同族殺しを進んで誘導するものか?」
商人「んんんーーーやっぱり第三者が居ないと無理があるかぁ…」
ホムンクルス「あの…」
商人「ん?何か気付いた?」
ホムンクルス「200年前に亡くなった精霊の伴侶は何処に行ったと思いますか?」
商人「精霊の伴侶…そういえば行方不明だったね」
女海賊「時の王のおっさんだったりすんじゃないの?」
ホムンクルス「その可能性は非常に低いです」
商人「まてよ…なんで精霊はエルフの森じゃなくてトロールの森の方を住処にしてたんだ?」
女海賊「別居だったりw」
商人「別居…」
ホムンクルス「ホムンクルスの生体は体液にエリクサーを循環させないと石化してしまいます」
商人「…つまりエルフの森の深部でエリクサーに浸かって生きている可能性があるという事だね?」
女海賊「でもエルフの森の精霊樹って枯れてるんじゃなかったっけ?そんなんでエリクサー出来るの?」
商人「いつから住処を変えたんだ?…どうしてエルフの森じゃダメだったのか…」ブツブツ
女海賊「ぁぁブツブツ始まった…解決し無さそうだから話変えよっか」
女戦士「エルフの森の事は魔女に聞いた方が早そうだな」
ホムンクルス「書物から得た知識は私が一通り知って居ます」
女戦士「関係しそうな話は無いか?」
およそ1700年前に遡りますが
それまではエルフが祈りの指輪を用いて世界を掌握していた様です
しかしその製法を人間に奪われ祈りの指輪の量産が始まり立場が逆転しました
同時に人間は急速に魔術を発展させ一時代を築きましたが
魔王の復活によってすべてが無になりました
商人「それは皆知ってる一般的な歴史だよ…どうしてその話を始める?」
ホムンクルス「エルフが持つ祈りの指輪の製法をどの様に奪ったのでしょう?」
商人「どの様に…」
女海賊「むむ!!そん時に精霊の記憶から切り取った?」
商人「記憶から切り取るのはずっと昔から行われていたと…」
ホムンクルス「魔王は精霊の記憶を蝕むウイルスだと言いましたね?」
商人「つまり魔王の手から逃れる為にトロールの森に住処を移したと言う訳か」
ホムンクルス「トロールの森に安置されているオーブに記憶の損傷は見当たりませんでした」
女戦士「トカゲのしっぽ切りのつもりか?」
商人「でも200年前にトロールの森も魔王に狙われてる」
ホムンクルス「どこで戦いが行われているかこれで見当がつきますね」
商人「ホムンクルス…君…」ジロリ
ホムンクルス「はい…」
商人「僕達の考えがそこに行くように誘導しているな?」
ホムンクルス「答えなければいけませんか?」
商人「それは君の自由で良い…ただ君は何度もシミュレーションしてその答えをもう知って居る筈だ」
ホムンクルス「はい…」
商人「どうしてズバリ言わないんだい?」
ホムンクルス「言ってしまうと抗おうとして誘導する方向から反れてしまうからです」
女海賊「ぶっwwズバリ言われたね」
商人「ハハ…まぁ良いや」ムッ
女海賊「…で?ホムちゃんの答えって?」
歴史の答え合わせだけお答えします
精霊はエルフを信頼していましたが
魔王化ウイルスへの抗体を持たない事はかなり前から把握していたと想定されます
ですから徐々にエルフとの距離を置き始め従順なトロールを従える様になりました
一方エルフは魔王化ウイルスの影響を受け厳しい規律を破る者が出て来始めます
これをダークエルフと定義してハイエルフは線引きを謀ろうとしましたが
精霊が支持を示したのはダークエルフの側だったのです
特命を受けたダークエルフは精霊の指示通りに当時の精霊の伴侶を保護し匿ったと思われます
そして繁殖力の強い人間をエルフやドワーフを含む魔物と交配させ
魔王化ウイルスへの抗体を持つ種への置き換えを推進させようとしました
これが約200年前…
商人「…もう良い…分かった」
女海賊「ちょ…話遮らないでよ!分かんないじゃん!!」
商人「シャ・バクダのカタコンベにあった無数の骸は交配させる実験から生じたゴミだと言ってるんだ」バン!
女海賊「え!!」
商人「見返りに錬金術の技術を与えた…そうだよねホムンクルス」
ホムンクルス「シミュレーションでの予測です」
商人「それと同じ事をセントラルでもやっていた訳だ…魔石製造の技術と引き換えにね」
ホムンクルス「結果的に種の置き換えが促進されていると推定されます」
女海賊「でもさぁ?折角生まれた抗体をもった種族も魔石に変えられちゃ意味無くね?」
ホムンクルス「そこに魔王の意思が介在して居るのでしょう」
女海賊「根底にあるのが魔王の影響かぁ…」
商人「…ちょっと風に当たって来る」スック
ホムンクルス「…」シュン
『甲板』
ザブーン ユラー ギシギシ
火炎魔法! ボボボ
そうじゃやれば出来るでは無いか
では次はこの魔術書を読むのじゃ
ええ?僕字が読めないよ
なんと!?字の勉強から始めんとイカンのか
こりゃ時間が掛かるのぅ…
商人「…」ボー
女戦士「ホムンクルスが落ち込んで居るぞ?」
商人「分かっているよ」
女戦士「そうか…」
商人「この船は黒の同胞団の隠れ家に向かってるんだよね?」
女戦士「うむ…しかしどうしたものか」
商人「黒幕が精霊から命を受けたダークエルフだなんて想定出来なかった」
女戦士「私達は精霊の意に背いて居るという事になるな」
商人「そうだよ…ホムンクルスは遠回しに魔王はあなた達ですって言ったのさ」
女戦士「解釈を変えた方が良い…魔王の影響を取り払いに行くという風にな」
商人「気休めかい?」
女戦士「だが魔王化ウイルスに感染した人間を魔石に変えると言うのは合理的ではあるな」
商人「君はハーフオークだからそういう発想になる…僕は純粋に只の人間だよ」
女戦士「お前はどうしたいのだ?」
商人「分からなくなった…今思えば時の王が選択してきた行動が理解できる」
女戦士「何を?」
商人「精霊が成そうとした人類の置き換えを邪魔する事無く只…見守っていた」
女戦士「そうやって黒の同胞団と同調したか」
商人「それが間違っていると言い切れなくなったよ」
女戦士「心が揺れている様では今回の作戦にお前は参加させられない」
商人「…」
女戦士「私の言い分からすると我が同胞を無下にする黒の同胞団は理由がどうあれ許せない」
商人「それがドワーフの血が決めた選択か」
女戦士「まぁ基よりお前とホムンクルスは戦力として勘定していない…後方で行く末を見ていろ」
商人「そうだね…僕はもっとホムンクルスを理解してあげないといけない様だ」
女戦士「お前が管理者なのだろう?しっかり面倒を見ろ」
商人「管理者なのは建前なだけさ…全部彼女に誘導されて物事が動いてる」
女戦士「お前がホムンクルスを信じないでどうする?」
商人「ハハ…僕ももっと賢くなりたいよ」
『居室』
女海賊「ホムちゃんさぁ…黒の同胞団の正体をいつから知ってたの?」
ホムンクルス「知って居た訳ではありません」
女海賊「じゃぁなんでダークエルフだって言うのさ」
ホムンクルス「皆さんがお話している内容からシミュレーションをした結果可能性が高いという結論になりました」
女海賊「じゃぁ精霊がダークエルフに特命を出したってのも全部可能性の話だよね?」
ホムンクルス「私が精霊の立場だった場合にその方法が一番成功する可能性が高いのです」
女海賊「なんでダークエルフ?」
ホムンクルス「話の流れでしょうか…信頼できるエルフの一人と言う言い方も出来ます」
女海賊「あぁぁなるほど…結果的にダークエルフに分類された訳か」
ホムンクルス「そうなりますね」
女海賊「今成功する可能性って言ったじゃん?何の成功?」
ホムンクルス「浸食されたくない記憶の隔離と魔王の封じ込め…その他様々な要因を上手く運ぶ可能性なので一言で言えません」
女海賊「むむむ何か良く分かんないな…兎に角上手く行ってるんだ?」
ホムンクルス「精霊の行動した最後の一手はすでに完了していますのでほぼ想定通りに事が進んでいると思われます」
女海賊「ほんじゃあんま気にしないで居て良いんだね?」
剣士「最後の一手とは?」ボソ
ホムンクルス「夢と言えば良いのですか?わたしは夢を見る事が出来ませんのでどう導かれて居るのか分かりません」
女海賊「おけおけ!分かった…もうやめよっかこんな話」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「ホムちゃんは昔の精霊の考えを代弁してくれているだけでホムちゃんはホムちゃんだもんね」
ホムンクルス「はい…私は精霊ではありません」
ホムンクルス「皆さんの成功を促す為の助言はどうしても昔の精霊と混同されてしまいますね」
女海賊「商人は分かってんのかなぁ…そこん所」
剣士「分かっていると思うよ…ただ認めたくないだけだよ」
女海賊「認めたくないって…しょうがないじゃん昔の精霊が導いた事なんだから」
ホムンクルス「多くの犠牲の上に成り立って居た抗体の獲得…」
女海賊「そうやって戦うしか無かったんでしょ?今始まった話じゃ無いじゃん…受け入れるしかないよ」
剣士「これで僕たちの役割がハッキリした」
女海賊「…もうやめよ!その話」
---そう…今までは次の世代の為に魔王を集めて深淵に運ぶ役だった---
---でも今度は違う筈…私が変えてやる---
『甲板』
ザブーン ユラー ギシギシ
子供「ママ見て!!火炎魔法!」ボボボ
女海賊「お!?もう覚えた?」
魔女「これ!!さぼるで無い!!もう魔法は良いから文字の勉強じゃ」
子供「えええええ…ママ助けて」
魔女「文字を一つも覚えとらんとはどういう教育をしとるのじゃ?」
女海賊「う…忙しかったんだよ…」
魔女「今覚えておかんと剣士の様に一生覚えられんぞよ?」
子供「パパも覚えて無いなら僕も良いよね…」
魔女「イカン!!」ポカ
子供「あたっ…ママー!!」
女海賊「ぁぁぁ困ったな…」
女戦士「未来!!魔女の言う事を聞いておくのだ!!良いな?」
子供「ぅぅぅ…」ショボン
女海賊「あ!!そだそだ…お姉ぇにお土産持ってきたんだった」
女戦士「オリハルコン原石だな?」
子供「僕も見たい!!」
魔女「これ!!主は勉強が終わった後じゃ…早く終われば早く見れるぞよ?」
子供「もう!!」プン
女海賊「ちょっと取って来るよ…あと珍しい食材も持ってきたからバーベキューでもしよう」
商人「…」ピク
女海賊「おい商人!!食材何処に置いたの?運ぶの手伝って」
商人「僕が取りに行くよ」
ホムンクルス「私もお手伝いします…」
商人「…」
ホムンクルス「…」
商人「…」
女海賊「…」イラ タッタッタ ピョン ドカ!
商人「うわっ!!落ちる落ちる!!」
女海賊「あんたが何か言わないと気まずいままじゃん!!何か言えスカポンタン!!」
商人「あ…取り乱してゴメン」
ホムンクルス「スカポンタン…」
女海賊「ぶっ…それ意味分かって言ってる?」
ホムンクルス「商人の事を指すのでは無いのですか?」
女海賊「んんん…まぁいっか」
女戦士「この辺りはサメが多いから落下に気を付けろ」
商人「ええ!?気を付けるのは僕じゃ無くて女海賊の方だよ…危ないなぁ」
ホムンクルス「立てますか?スカポンタン」グイ
商人「ちょっとその言い方やめてよ」
ホムンクルス「呼称では無いのですね?」
女海賊「スカポンタンで良いよ!早くバーベキューの準備するよ!!」
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ジュージュー
女海賊「未来!!船乗り皆にこの肉配って来て」
子供「うん!!何の肉?」
女海賊「シーサーっていう魔物の肉だよ…食べると長生きするんだってさ」
子供「へぇ?おいしいの?」
魔女「まずい…わらわは要らんでの」
女戦士「忙しそうだな?」
女海賊「盗賊かローグが居ないとなんか色々バタバタしちゃってさ…剣士!そっちの肉も未来に預けて」
女戦士「お前も飲むか?」
女海賊「お姉ぇワイン飲んでんの?ダメだって…すぐ酔っぱらっちゃうじゃん」
女戦士「たまにはな…やっと落ち着く時間が出来たのだ…好きにさせてくれ」
魔女「わらわも少し頂こうかのぅ」
女海賊「え…マジ?その体…子供なんだけど」
魔女「少しだけじゃ…弟子が出来て気分が良いでのぅ」
女海賊「あぁ未来ね…どう?素質ありそ?」
魔女「主と同じで興味の無い事はちっとも覚わらんが魔力は剣士と同じで無限に出て来よる」
女海賊「素質有りって事ね」
魔女「育て方次第じゃな…重力や時空に興味がある様じゃ」
魔女「…ところで商人とホムンクルスなのじゃが」
女海賊「ん?どしたん?又口論してんの?」
魔女「うむ…飛空艇の前でなにやらもめて居った」
女海賊「あんのバカ!又ホムちゃんに詰め寄ってんな…ちっと行って来る」
『飛空艇の前』
ホムンクルス「…これを一つ預かって居て下さい」
商人「これは君の…」
ホムンクルス「私にはもう一つありますから」
商人「どうしてこれを僕に預けようとするんだい?君は何処に行くつもり?」
ホムンクルス「何処に行くつもりもありません…あなたの元にずっと居ます」
商人「…ならどうして…さっきの事を怒っているのなら謝るよ」
ホムンクルス「怒ってなんかいませんよ」ニコ
商人「おかしいじゃないか!外部メモリを渡すっていうのはサヨナラすると言ってるのと同じだ」
ホムンクルス「私はあなたを裏切るつもりは微塵もありません…あなたに必要とされるものを渡そうとしています」
商人「ダメだよ僕は君をどこにも行かせない…これは命令だ」
ホムンクルス「はい…命令を承りました…どうぞ」スッ
商人「違う!!そうじゃない」
ホムンクルス「これは保険だと思って下さい…わたしはあなたの傍を離れるつもりはありません」
商人「…」
ホムンクルス「大事にしまっておいてくださいね」ギュ
商人「…」プルプル
ホムンクルス「さぁ一緒にバーベキューを楽しみましょう」グイ
商人「君は…何を想定しているんだ?それをどうすれば回避できる?」
ホムンクルス「今回避しました」
商人「僕は知って居るぞ…君がやってきた毒キノコの栽培もエリクサーの作り方も…」
ホムンクルス「はい…」ニコ
商人「何年後かに亡くなってしまう多くの人の命を救うためだ…そうやって君は世界を導く」
ホムンクルス「ウフフ」
商人「僕に外部メモリを渡すのだって何かを想定しての事だ!!」
ホムンクルス「考えすぎです…私には不要でしたので万一に備えて居るのです」
商人「嘘だ!!君はそんなに薄っぺらじゃない…今のこの状況も何度もシミュレーションした筈だ」
ホムンクルス「商人…」チュゥゥゥ
商人「むぐ…んむむ…これで僕を言い聞かせるつもりか」ハァハァ
ホムンクルス「私を信じて下さい…」
商人「…」
---君はこの現実とほとんど同じ精度の世界を---
---頭の中で何度もシミュレーションしているんだろう?---
---その中の人がどんな風になるのか---
---見ていて辛くならないのかい?---
---そう…だから精霊は外界と距離を置いた---
---だから眠っていた期間が多い---
商人「分かったよ…一つ条件がある」
ホムンクルス「はい…何でしょう?」
商人「もう一つの外部メモリも僕が預かる…これで君はシミュレーションに制限が掛かる」
ホムンクルス「そう言うと思って居たので外してあります…どうぞ」スッ
商人「ハハ…これも想定内か」
-----------------
女海賊「…」ジー
商人「あれ?女海賊…そんな所に隠れて何やってるんだい?」
女海賊「ヤベ…」
ホムンクルス「お肉は焼けていますか?」
女海賊「あんたらが揉めてるって聞いたから隠れて見てたんだよ…ホムちゃん平気?」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「まぁいいや…他人のラブラブチュッチュは見ていて気持ち悪い」
商人「あぁぁそういうのじゃ無いんだけどさ…」
女海賊「肉焼けてるから焦げる前に食べて」
商人「うん…ホムンクルス!行こうか」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「ホムちゃん…ちょっと」
ホムンクルス「何でしょう?」
女海賊「商人!あんたは向こう行ってな!」
商人「え…分かったよ」
ホムンクルス「話し終わったら直ぐに行きます」
商人「待ってるよ」スタ
女海賊「ホムちゃん…話盗み聞きしてて悪いとは思ったけど…あんた」
ホムンクルス「はい」
女海賊「気付いてんだね?あとどれくらいの時間が残されてんの?」
ホムンクルス「…持って一か月」
女海賊「避けられない?」
ホムンクルス「はい…エリクサーでの症状緩和は限界です」
女海賊「寿命か…」
ホムンクルス「本人は色んな事に夢中で気にする素振りは見せていませんね」
女海賊「んー分かってるから取り乱すんだと思うな」
ホムンクルス「このまま見守りましょう」
女海賊「ホムちゃんは外部メモリってやつ無くて良いの?」
ホムンクルス「1つは挿入しておいた方が良いですがその後を考えると無くても良いでしょう」
女海賊「その後って…もしかしてホムちゃんも居なくなっちゃう?」
ホムンクルス「皆さんと共に行動していた場合過去の精霊を知る者との遭遇が想定されます」
女海賊「時の王のおっさんか…」
ホムンクルス「未知の遭遇時の予測は精度が低いのですが、拉致や破壊のリスクは考えて居ます」
女海賊「ホムちゃんがそう言うって事はこれからの行動はリスク高いって事だね」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「おけおけ気に留めておくよ」
ホムンクルス「ご心配をおかけしました」
女海賊「ほんじゃ皆の所に戻ろっか」
ホムンクルス「はい…」
『船首』
ザブン ザブン
子供「パパ!持ってきたよ」ザラザラ
剣士「ありがとう…やっぱり木の実の方が口に合う」カリ
子供「松ぼっくりもあるよ?要る?」
剣士「未来は気が利くな」
子供「へへ…パパ後で剣の稽古付けて」
剣士「もう魔法は良いのかい?」
子供「勉強はその後やるよ」
剣士「ではまず魔女と剣の稽古をしてみるんだ」
子供「ええ!?なんで?」
剣士「魔女の剣を避けられる様ならパパが相手をする」
子供「魔女って剣を使えるの?」
剣士「やってみてからのお楽しみだよ…魔女にはパパから言っておく」
子供「絶対だよ!!魔女の剣を避ければ良いんだよね」
剣士「ハハ一回でも避けられれば良い」
商人「こっちはどんぐりパーティーかい?」
剣士「君も食べてみる?精が付くよ」
商人「僕は遠慮しておく」
剣士「体の調子が悪そうだけど…しっかり食べた方が良い」チラリ
商人「剣士には分かっちゃうか…どうも動悸がね」ハァハァ
剣士「君の鞄からドラゴンの匂いがするけれど…」
商人「あぁ…これねドラゴンの涙という物らしい…ずっと昔にホムンクルスから貰った物なんだ…大事にしまってある」
子供「それ食べ物?」
商人「薬さ…心臓の調子が悪くなった時に飲むんだ…そろそろ飲み時かな」
剣士「じゃぁどんぐりで乾杯しようか」
商人「ハハハ小さい乾杯だなぁ…まぁ飲んじゃうか!!」
子供「おっけー!!かんぱーーーい!!」カリ モグ
剣士「乾杯!」カリ モグ
商人「乾杯!!」パク モグ
子供「美味しい?」
商人「うわぁ!!なんだこれ…渋い…水水水…」バタバタ
子供「アハハ…変な顔…アハハハ」
剣士「フフ…」
『甲板』
ワイワイ ガヤガヤ
女海賊「ちょい!船乗り!お姉ぇを居室まで運んで」
船乗り「がってん!!頭ぁ!!大丈夫っすかぁぁ!!」
女戦士「ふにゃぁ~ん」
女海賊「だから飲むなって言ったのに…お姉ぇの威厳ががが」
商人「水水水…みずぅぅ」バタバタ
女海賊「ちょい剣士は何処行ったのさ!!もう!!お姉ぇくそ重い…船乗りちゃんとそっち持ってよ!!」
船乗り「がってん!んむむむむ」
魔女「グダグダじゃのぅ…」
ホムンクルス「はい…」
子供「魔女!!勝負だ!!」ダダダ ブンブン
魔女「なぬ?わらわと剣の勝負とな?主は課題はもう済んだのかえ?」
子供「勉強は後でやる!!今は勝負だ!!」
魔女「主と遊ぶほど暇では無い…剣の使い方は剣士に教えて貰うのじゃ」
剣士「あぁ魔女ちょっと訳があってね…時空の差を見せれば勉強もやる気が出るかと」
魔女「主が見せてやればよかろう」
剣士「魔女が見せる事に意味があるんだよ…きっと言う事聞く様になる」
魔女「わらわに何をせよと?」
剣士「普通に立ち回るだけで良い…差は直ぐに分かる」
魔女「しょうがないのぅ…わらわは杖で良いか?」
剣士「何を使っても良い」
魔女「これ!!未来!!ちぃと立ち会ってやるで切りかかって来るのじゃ」ノソリ
子供「剣は?」
魔女「この杖で構わぬ」ノソノソ
子供「魔法は無しだよね?」
魔女「剣の勝負だと主が言うたじゃろう…来ぬならこちらから行くぞよ?」
子供「来い!!」ススス
魔女「遅いのぅ…」ポカ ポカ ポカ
子供「あだっ…」ブン スカ
魔女「終わりか?」ポカ ポカ ポカ
子供「え!?なんで届く?」タジ ピョン シュタ
魔女「これで終いじゃ」ポカ ポカ ポカ
子供「見えない!!どこから攻撃してる」タジ
魔女「勝負にならぬ…出直して参れ」ノソリ
子供「くそぉ!!」ダダダ ブン スカ
魔女「ヤメじゃヤメ」
剣士「未来…魔女は剣の抜き方も知らないんだよ」
子供「どうしてこんな差があるの?魔法?ズルしたの?」
魔女「ズルなぞして居らぬ…時空の先に居るだけじゃ」
子供「時空の先…意味わかんないよ」
魔女「じゃから勉強せいと言うて居る」
剣士「魔法の勉強をするしないでは剣を振るう前にこういう差があるんだよ」
子供「パパも魔女みたいに動けるの?」
剣士「パパは魔女に教えて貰った…だから魔女の言う事を良く聞くんだ」
子供「うん…分かった…時空って言ったね?」
魔女「うむ時空を操るは魔法の基本にして最強の魔法じゃ…しかと勉強せい」
子供「ちょっと調べて来る…いてて」スタタ
魔女「気が済んだ様じゃな?」
剣士「魔女ありがとう…こうするのが早いと思った」
魔女「さて…剣士もちとワインでも飲まんか?」
剣士「すこし頂こうかな」
魔女「飲む相手が欲しかった所じゃ…ホムンクルスや…剣士にも一杯注いでやってくれ」
ホムンクルス「はい…」
『夜』
ザブン ザブン
女海賊「あぁぁさぶ…」ゴシゴシ
ホムンクルス「お待たせしました…」
女海賊「商人の容態は?」
ホムンクルス「急に熱を出された様ですが今は落ち着いて寝ています」
女海賊「もういよいよヤバイかな」
ホムンクルス「熱を出した原因は分かりませんが免疫不全の症状と思われます…環境が変わると起きやすいのです」
女海賊「今日は商人に添い寝する感じ?」
ホムンクルス「はい…気球の中の方が暖かいのでお気になさらず」
女海賊「お姉ぇも酔っぱらっちゃってなんかグダグダになっちゃったね」
ホムンクルス「この纏まりの無い感じは好きです」
女海賊「じゃ行こっか…魔女が待ってる」
ホムンクルス「はい…」
『居室』
ギシギシ ギギー
女海賊「魔女?連れて来たよ」
魔女「まぁゆっくり掛けい…炉がぬくいぞ?」
ホムンクルス「はい…どの様なご用件でしょう?」
魔女「うむ…主のシミュレーションじゃったか…ダークエルフが絡んでおると聞いてな」
ホムンクルス「あれは可能性のお話なので事実とは異なるかもしれません」
魔女「それはどうでも良い」
ホムンクルス「では何でしょう?」
魔女「主は魔法の効果に関して無知じゃろうから見せておこうと思うてな」
ホムンクルス「はい…」
魔女「コインゲームは知って居るな?裏と表を当てるゲームじゃ」
ホムンクルス「私の好きなゲームです」
魔女「そこのコインをトスするのじゃ」
ホムンクルス「…」ピーン パチ
魔女「ふむ…手を開いてみよ」
ホムンクルス「…表です」
魔女「ここからゲームじゃ…何が出るか当ててみよ」
ホムンクルス「表が出る可能性が100%です」
魔女「表で良いのじゃな?」
ホムンクルス「はい…」
魔女「ではわらわは裏じゃ」
ホムンクルス「…」
魔女「見てみよ」
ホムンクルス「う…裏です」
魔女「わらわの勝ちじゃな」
ホムンクルス「どうして…」
魔女「主は100%の確率を外したのじゃ…この意味がわかるかえ?」
ホムンクルス「どの様な仕掛けが有るのでしょう?」
魔女「仕掛けなぞ何も無い…始めから裏じゃ」
ドタドタ バタン!!
剣士「何か変わった!!何か来る!!」
魔女「これ剣士!!慌てるな…何も来んで安心せい」
剣士「ふぅ…ふぅ…」
魔女「コインを見て居れ」
ホムンクルス「表に塗り替わって…」
魔女「今の記憶が無うなる前に主なら記憶出来る筈じゃ」
ホムンクルス「これは…」
魔女「剣士!もう良いぞ…ちぃといたずらしただけじゃから戻って良い」
剣士「魔女の仕業か…驚かさないで欲しい」
魔女「済まん済まん…今は大事な話をして居るで下がるのじゃ」
剣士「分かったよ…」
------------------
魔女「今のが次元の入れ替えじゃ…裏が出る次元に入れ替えたのじゃが剣士が気付いて元に戻しよった」
ホムンクルス「この様な魔法をどなたも使えるのでしょうか?」
魔女「限られた者にしか使えぬ…それを主の言葉でアドミニストレータじゃったかのぅ?そう表現するのじゃ」
ホムンクルス「…」
魔女「この様な術があると知って主のシミュレーションにどれほど意味があるか?」
ホムンクルス「アドミニストレータの意に沿って物事が動きます…つまり私には予測できません」
魔女「では問う…精霊はアドミニストレータじゃったのかのぅ?」
ホムンクルス「違います…でもどうして魔女様がこの様な術を使えるのでしょう?」
魔女「魔道の最たる所じゃ」
ホムンクルス「ハッキング…」
魔女「主の言葉でハッキングと言うのか?」
ホムンクルス「この魔法の適用範囲はどのくらいなのでしょう?」
魔女「その口ぶりじゃと初めて知った様じゃな…精霊が知って居ったのかは分からぬが…」
ホムンクルス「重要な事象は基幹プログラムに記されている筈ですが今のプログラムにその要件は構築されていません」
魔女「では精霊も知らなかったという事じゃな…して適用範囲と言われて回答に困るのじゃが…」
ホムンクルス「例えば魔王が存在しない次元への入れ替えですとか…」
魔女「およそ自分が見えている範囲だけじゃな…その外側の次元は他人が構築しておるで調和にズレが生じる」
ホムンクルス「そうですか…」
魔女「さて本題に戻るぞよ?」
ホムンクルス「はい…」
魔女「わらわが次元の入れ替えを任意で行えると仮定してわらわに負けは存在するじゃろうか?」
ホムンクルス「勝ち負けの定義が不確かなのですがやり直しが効くとすれば100%勝ちます」
魔女「ふむ…重要な局面さえ間違わなければ良いな?」
ホムンクルス「やり直しも効くのでしょうか?」
魔女「魔力が有限じゃから何度もという訳には行かぬが不可能ではない」
ホムンクルス「魔女様に一つ警告をしておきます」
魔女「言うて見よ」
ホムンクルス「ハッキング行為にはガーディアンという機能が働きますのでご注意下さい」
魔女「ガーディアン?何じゃろうのう?次元の狭間に迷う事じゃろうか?それをバンと言うのじゃが…」
ホムンクルス「良くわかりません…私の基幹プログラムではそうなっています」
魔女「まぁ良い…乱用する気は無いで安心せい」
ホムンクルス「これで良く分かりました…シミュレーションでの重要局面で反転が生じる可能性が高いと…」
魔女「分かれば良い…良い結果が出なくても案ずるな…剣士いや勇者が導くでのぅ」
ホムンクルス「はい…ありがとうございました」
----------------
女海賊「魔女!!あのさぁ…そんな反則技使えるならなんで前の魔王ん時使わないのさ」
魔女「何を言うておる!!何度も次元を入れ替えておるわ」
女海賊「いつ!?そんなん知らんけど」
魔女「現場にギリギリ間に合うたのは偶然じゃと思っとったんか?」
女海賊「え!?」
魔女「主の飛空艇がゾンビに掴まったのもわらわが修正したのじゃぞ?」
女海賊「え?何の事?」
魔女「おかげであの時は魔力がスッカラカンじゃ…主は覚えとらんかも知れぬが」
女海賊「次元の入れ替わりに気付かなかっただけか…」
魔女「今では主にも気付けるじゃろう?」
女海賊「さっきのは分かった…それさ私にも出来るんかな?」
魔女「主は魔力1じゃ」
女海賊「魔石使うからさぁ…教えてよ」
魔女「魔石のぅ…」ジロリ
女海賊「お願い!!」人
魔女「主は前に一度経験しておろう…自我を強く保って自分の思う世界に自我を持って行けば良い」
女海賊「自分の思うって…」
魔女「出来るだけ詳細に思うのじゃ…そこに自我を持って行けば良いのじゃが主には無理じゃろうな」
女海賊「んんん…良く分かんないなぁ」
魔女「こう言えば良いか?想像妊娠してみよ」
女海賊「おお!!!分かる!!!」
魔女「妙な例えで分かるんじゃのぅ…そこに自我を持って行けば良いのじゃ…あとは周りの次元と調和を始めるでそこで魔力を消耗する」
女海賊「おけおけ!!サンキュー」
魔女「ヤレヤレ…そう簡単に行く物では無いのじゃが」
『翌日』
ザブ~ン ユラー
女海賊「あれ?ホムちゃん一人?」
ホムンクルス「おはようございます」
女海賊「商人は?」
ホムンクルス「まだ熱が下がらないので横になっています」
女海賊「心配だねぇ…」
ホムンクルス「エリクサーを飲ませて賢者の石も持たせてありますので直に良くなるとは思います」
女海賊「そっか…ほんで何してんの?」
ホムンクルス「空を見ていました」
女海賊「空?なんかある?」
ホムンクルス「鳥の群れが南の方へ」
女海賊「あー寒いから暖かい所に行こうとしてるのかな」
ホムンクルス「そうかも知れませんね…ただ…」
女海賊「ん?」
ホムンクルス「海を渡るなら時期が悪いなと」
女海賊「気候の変化分かって無いんじゃない?」
ホムンクルス「いえ…鳥は人間よりもずっと環境に敏感ですので知って居る筈です」
女海賊「まぁ良いじゃん!気にしないで」
ホムンクルス「北の方で何か起きていると思われます」
女海賊「逃げてるって事?」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「…もうそういう心配はしばらくやめよ」
ホムンクルス「わかりました…」
----------------
女海賊「あ!!お姉ぇ!!」
女戦士「あぁ…昨日は済まんな…記憶が無いのだが」
女海賊「はぁぁ…いつものやつだよ…ったく」
女戦士「少しは飲めるようになったつもりだったんだが…」
女海賊「何杯飲んだの?」
女戦士「分からん…」
女海賊「どうせ1杯飲む前にコテンだよ…もうお酒は止めときな」
女戦士「ホムンクルス!丁度良い所に居た…どうすればお酒に強くなれる?」
ホムンクルス「質量から推定しますとアルコールの分解は人並み以上の能力があると思われます」
女戦士「ではなぜ記憶が無くなる?」
ホムンクルス「アルコールの吸収速度と脳内ドーパミン放射のバランスが悪いと思われます」
女戦士「つまりどういう事だ?」
ホムンクルス「ドーパミン受容体が快楽と認識して脳を麻痺させた状態が長く続いて居るのです」
女戦士「治せないのか?」
ホムンクルス「体質だと思って諦めて下さい…ちなみに麻薬等にに非常に弱いのでお気をつけ下さい」
女海賊「お!?お姉ぇの弱点か」
女戦士「麻薬だと?」
ホムンクルス「ドーパミン放射量が通常より多い為快楽に依存します」
女海賊「ぶっ…お姉ぇの悪い癖はそこから来てるんか」
ホムンクルス「幸せな体質と言い換える事も出来ますよ」
女戦士「ふん!!私にはこれが普通だ」
女海賊「はは~ん…お姉ぇはワイン飲んで昇天して気絶してんだ」
女戦士「もう良い…話した私がバカだった」
女海賊「むふふ…」ニヤニヤ
女戦士「ところで商人を見ないが何処に行ったのだ?」
ホムンクルス「熱を出して飛空艇の方でお休みになっています」
女戦士「そうか…仲直りはしたのか?」
ホムンクルス「関係は悪くなって居ませんのでご心配なさらず」
女戦士「なら良い…仲互いは士気に影響が出てしまうからな」
女海賊「なんか2人ラブラブなんだよ…そっちのが問題だよ」
女戦士「お前が言うな…それで話は変わるが2人に船長室まで来てもらいたい」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「どしたん?」
女戦士「まぁ地図を見て説明する…ついて来い」ツカツカ
『船長室』
ガチャリ バタン
女戦士「この地図だ」バサ
女海賊「黒の同胞団の隠れ家?」
女戦士「そうだ…ここの川の上流約2日の場所だ…この辺りになる」ユビサシ
女海賊「あちゃー…完全に森ん中だね…どうやって行くん?」
女戦士「川は帆船で進むことが出来ないからセントラルの輸送船を奪う事になる」
女海賊「そらそうだね」
女戦士「それは海賊達にやらせるとして飛空艇でこの場所まで正確に行けるか?」
女海賊「目標物が無いとかなり迷うよ…この辺めっちゃ森深いじゃん?」
ホムンクルス「この地図でおよその座標は分かりますがこの地図は正確なのでしょうか?」
女戦士「うーむ…」
女海賊「そんな正確な地図なんかある訳無いじゃん!森ん中測量する人なんて居ないよ…この川の形だって多分適当」
女戦士「やはりそう簡単には行かんか…」
ホムンクルス「衛星から周辺の地形データを受信します…少しお待ちください」
女海賊「お?」
ホムンクルス「受信完了…この地図と比較していますが差異が多すぎて対象の場所の推定が出来ません」
女戦士「新しく地図を書けるか?」
ホムンクルス「お任せください…大き目の羊皮紙とペンはありませんか?」
女海賊「飛空艇に乗せてた…取って来る」
『数分後』
ガチャリ バタン
女海賊「取ってきたよ!!」
女戦士「商人!!熱は良いのか?」
商人「一人で横になってて落ち着かなくてね…もう大丈夫だよ」
ホムンクルス「無理はなさらないで下さい」
商人「大丈夫さ…誰も相手してくれないよりもよっぽど良いよ」
女戦士「ふん…まぁ良い…今からホムンクルスに地図を書いてもらう所だ」
商人「うん聞いた…女海賊が僕のペンを勝手に持って行こうとするから…」
女海賊「あのね…あんた私の捕虜だって忘れてない?あんたの物は私の物なの」
商人「ハハ…そうだったね」
女海賊「はいホムちゃん!!羊皮紙とペン」バサ
ホムンクルス「お任せください…」カキカキ
---------------
---------------
---------------
女海賊「…」
女戦士「…」
商人「…」
女海賊「…えっと…これどっち向き?」
ホムンクルス「こちらが北です」
女海賊「んーと…どの線が陸地?」
ホムンクルス「これが等高線でこの数字が標高になります」
女海賊「んんん全然分かんないんだけど…川はどれ?」
商人「ハハハ…やっぱりホムンクルスに絵は無理だ」
女戦士「うーむ…難解な地図になってしまったな」
商人「この標高の低い部分が恐らく川なんだろうね…でもこれじゃ分かんないなぁ」
ホムンクルス「お役に立てなくて申し訳ありません…」シュン
女海賊「こっちの地図と見比べても何処が何処なのか分かんないや」
ホムンクルス「川の座標を記録してトレースする事は出来ます」
女海賊「トレース?」
ホムンクルス「はい…川の上空を正確に案内する事が出来ます」
女海賊「おお!!それで良いじゃん」
ホムンクルス「ただ途中で幾重にも分岐していますので目標の位置が特定出来ません」
女戦士「虱潰しになるという事か」
ホムンクルス「あと私には2日程上流という範囲が分かりません」
女海賊「勘になっちゃうね」
女戦士「まぁしかし森の上空で川を見失わないで飛べるのは大きい」
女海賊「川が分岐してるってさ…輸送船使って探すの相当時間かかるよ?」
女戦士「そうだな…作戦を変更せざるを得ん」
商人「すごい良い場所に隠れ家持ってるんだね」
女戦士「うむ…さてどうするか…」
ホムンクルス「現在の座標から川の河口まではおよそ2日半掛かります」
女海賊「私が先に飛空艇で探してこよっか?」
女戦士「そうだな…それしか無い様だ」
女海賊「おっけ!!ほんじゃ剣士とホムちゃん連れて行くね」
商人「僕も行くよ」
女海賊「あんたは寝てた方が良いんじゃないの?」
商人「ホムンクルスが描いた地図に川の形を書き足す役が必要さ…後で必要になる筈だよ」
女戦士「一理ある…後の上陸するための道しるべは必要になる」
女海賊「あんたの体調が大丈夫ならまぁ良いけどさ…ホムちゃんどう思う?」
ホムンクルス「商人は私と離れたく無いのだと思います」
商人「ハハ…ズバリ言うね」
女海賊「まいっか…ほんじゃ4人で行こう」
女戦士「決まりだな?ではこの船は川の河口を封鎖する形で海賊船で陣取る…3日後の明け方までには戻れ」
女海賊「おけおけ!!早速準備する」
『飛空艇』
フワフワ
子供「パパもママももう行っちゃうの?」
女海賊「直ぐに戻って来るから」
魔女「主達は本真に1日もゆっくり出来んのじゃな?」
子供「僕も行っちゃだめ?」
女海賊「んんん…危ない訳じゃ無いけど…どしよ」
魔女「船旅が長ごうて退屈なんじゃろう…連れて行けば良い」
女海賊「飛空艇の方が窮屈なんだけどね」
魔女「わらわの書物が何冊か乗っておるから読んで見るのじゃ…挿絵を見るだけでも構わぬ」
子供「うん…わかった」
女海賊「じゃ早く乗って!!もう行くよ!!」
子供「やった!!」ピョン
女海賊「じゃお姉ぇ!!何かあったら貝殻で連絡する」
女戦士「何かあったらでは無く常に連絡しろ…いいな?」
女海賊「分かった分かった…じゃどいて!!」グイ
フワフワ シュゴーーーーー
---------------
---------------
---------------
商人「女海賊!!海岸線沿いを飛んでくれるかな」
女海賊「良いけど…なんで?」
商人「この地図に海の境界を書き足したいんだけどさ…砂浜の標高がほぼ0だから形が分からない」
女海賊「なるなる…でも狭間に入っちゃうけど良い?」
商人「陸地が見える高さでお願い」
女海賊「ちっと到着に時間掛かっちゃうなぁ…」
商人「じゃぁ要所要所で見える様にしてくれれば良い」
女海賊「おけおけ」
商人「標高がちゃんと記された地図はこれが世界初になるかも知れないよ?」
女海賊「興味無いよ」
商人「君らしくない発言だなぁ…風が読める様になるよ」
女海賊「なんでさ…そんなん勘で良いよ…大体時間で決まってる」
商人「山間部の飛空艇操作は難しいんじゃないかな?それが読める」
女海賊「ほーん…あんま操作やったこと無い癖に」
ホムンクルス「皆さんが今まで使っていた地図は尺度が到着日数で書かれて居たと思われますので相当な歪みがありました」
女海賊「やっぱ全然違ってたん?」
ホムンクルス「はい…気球での測量は風の影響も受けますよね?」
女海賊「そう言われると興味出て来るな…ちゃんと書いてよ」
商人「やってる…これ本当に僕たちが知って居るのと全然違うぞ…」カキカキ
これエルフの森ってどこら辺?
この辺りだと思われます
こんなに高低差あったんだ…森じゃなくて山じゃないか
じゃシャ・バクダはここら辺?
いえ…この辺りです
ええ!?高地…
セントラルってここだよね?
はい
海の中にこんな断崖があるの?
そうなりますね
…だから津波の影響が大きいのか
女海賊「ちょちょちょ…ちょい見せて!!」
『セントラル上空』
ビョーーーウ バサバサ
女海賊「なんか気球一杯飛んでんなぁ…剣士!!一応警戒しといて」
剣士「分かってる」
女海賊「何の気球か分かる?」
剣士「多分戦闘用の気球…10基くらい」
商人「望遠鏡貸して」
女海賊「ほい!!」ポイ
商人「…シーサーかな?何か魔物に襲われているみたい」
女海賊「こっちはこっちで大変なんだ…」
商人「その様だね…港には軍船が3隻と大き目の輸送船がいくつか…木材を降ろしてる」
女海賊「船で木材…ちっとマズいね…お姉ぇの船とかち合いそうだ」
商人「女戦士に報告しておこうか?」
女海賊「うん頼む…今操舵で手が離せない」
剣士「この数の気球だと海賊では不利だよ」
女海賊「私らが撃ち落しても良いけど色々マズイよね…シーサー対処出来なくなっちゃうだろうし」
剣士「ん?…」クンクン
女海賊「何か臭う?」
剣士「森が焼ける匂い…」
女海賊「何も見えないけど?」
剣士「森のどこかで大き目の火事が起きてると思う」
女海賊「雪積もってるのに?木材を炭にしてんじゃないの?」
剣士「その匂いじゃない」
女海賊「なんかちょっと色々有りそうだなぁ…」
商人「海賊はセントラルの沖から迂回するから問題無いってさ…輸送船が居て丁度良いらしい」
女海賊「気球の事は伝えた?」
商人「こっちには魔女が居るって自信満々だよ」
女海賊「なる…」
剣士「川の河口から森の方へ行くのを急ごう」
女海賊「そだね…あと1時間くらいで到着する」
『川の河口』
ビョーーーウ バサバサ
女海賊「見つけた!!ここだ…高度下げるよ」グイ
商人「下に漁村が見える…ここだったのか」
女海賊「来た事あんの?」
商人「港町からセントラルに行く船から見えるんだよ…もう何年前になるかな…母さんと一緒に見たんだ」
女海賊「母さん…女盗賊か」
商人「僕はまだ小さかったから場所が良く分からなくてね…丁度未来君と同じくらいの年だったかな」
子供「ん?」
商人「あぁ何でも無いよ」
女海賊「灯台あるね…これは分かりやすい」
商人「地図に書いておくよ」カキカキ
女海賊「あと2時間くらいで日が落ちちゃう…隠れ家の捜索は明日になるかな」
剣士「日が落ちる前に森の方を少し見たい…何か起こってる」
女海賊「おっけ!!今晩はあの漁村周辺で休もう」
商人「自由に飛び回って良いよ…書ける範囲で地図には追記しておくから」
女海賊「じゃぁ北に進路変える」グイ
商人「ホムンクルス?僕がスケッチしていくから座標ずれていたら教えて」
ホムンクルス「はい…お任せください」
『森の上空』
ヒュゥゥゥー バサバサ
剣士「あれか…」
女海賊「狼煙だ…うわいっぱいある…どゆ事?」
商人「ちょっと待って…今ここだから…森だと起伏が分かりにくいなぁ…」
女海賊「もうちょい寄って行くよ」
商人「多分狼煙が上がってるのは皆山頂付近だ…これ砦が散らばってるんじゃないかな?」
女海賊「全然情報と違うじゃん…隠れ家どころかこの辺全部要塞じゃないの?」
商人「こんなに沢山砦が有ったとすると海賊じゃ全然ダメだ」
剣士「…」クンクン
女海賊「何か分かる?」
剣士「死臭…戦闘が起きてる」
女海賊「これ森の中で戦争やってんじゃない?」
商人「森が延焼してるって感じではないな…なんで狼煙を上げてるんだろう?」
女海賊「補給?」
商人「それなら気球が飛び回ってる筈だよ」
女海賊「じゃぁ救難?」
商人「その線が強い…何と戦ってると思う?」
女海賊「ちょい高度上げとく…結構ヤバイ状況かも」
剣士「その方が良い」
女海賊「シャ・バクダでゴーレムっていう魔物が出たって言ってたじゃん?多分それだよ」
”女海賊…聞こえるかえ?”
”あ!!魔女…今千里眼で見てる?”
”剣士の目を見て居る…何事じゃ?”
”森の様子がおかしいからちっと見に来たんだ…森の中で戦争やってるっぽい”
”何と戦っておるか見えんのか?”
”分かんないからすこし距離置こうとしてる”
”そうじゃな…下手に近付くでないぞ?”
”これさ…聞いてた話と全然違うんだけどさ…この状況で隠れ家探すの無理だよ”
”しばらく監視しておれ…ちと女戦士と相談じゃ”
”もうちょいで日が落ちちゃうんだけどさ”
”上空で待機じゃ…剣士に見張りをやらせるのじゃ”
”分かった”
女海賊「剣士聞いた?」
剣士「分かってる…僕は夜目が効くから大丈夫」
子供「パパ!!僕も夜は良く見えるよ」
剣士「よし!見張りを手伝ってくれ」
子供「うん!!」
『日暮れ』
ドドドド ボーン
子供「何か始まった!!雪の中」
女海賊「剣士!?見える?」
剣士「木に乗った雪の下で何も見えない」
商人「森の中は洞窟みたいになってるんだね」
剣士「死んだ木の枝に木が生えて何層にもなって居るんだよ…一番下までは空からじゃ見えない」
女海賊「あ!!北の方!!火柱!!」
剣士「ボルケーノ…戦ってるのはエルフか…」
女海賊「こんな南の方まで来てんのか…相手はセントラルなんかな?」
商人「だろうね…この辺に拠点を持ってるのは前からちょいちょい聞いてたし」
剣士「エルフが戦うのには理由がある筈…祈りの指輪くらいの何かがある」
商人「僕らと目的は同じだったりしないかな?黒の同胞団関連で」
女海賊「これいつから戦争してたんだろ?噂を全然聞かなかったんだけど…」
商人「津波騒動で伝わらなかったんじゃない?こんな所まで人は入って来ないし」
女海賊「前にリッチが持ってた貝殻…突然音沙汰無くなった辺りからなんか色々おかしいかな」
商人「おかしいって?」
女海賊「ほら…シン・リーンで魔女が元老を全員家畜に変えた後からパッタリ貝殻での通信無くなった」
商人「んーーー…戦争とあんまり関係無さどうだけど…」
女海賊「その後から隕石落とされたりハーピー出て来たり色々さぁ」
商人「ん?…まてよ?どこから来てたんだろう…」
女海賊「お?いつものぶっ飛んだ仮説期待!!」
商人「あの件で本来帰って来る筈の人が帰って来なかった場合どうなるのかって言うのも考えて無かったね…」
女海賊「あとさぁ…片足の領事だった元老…豚にされてエルフに掴まってたよね…色々エルフにゲロった可能性もある」
商人「んんん…その時期から何か始まった可能性かぁ…エルフはブタと会話出来るの?」
剣士「動物と意思疎通は出来るよ…」
商人「仮に何か秘密をバラしたとしてそれほど重要人物だったんだろうか?あああ!!!」
女海賊「なにさ急に大きな声で…」
商人「あの領事は沢山身分証を持ってたよね?あれ何処に行った?」
女海賊「えーっとどうしたんだっけ…盗賊が持ってる?てか飛空艇のどっかに積んで無い?」
ホムンクルス「身分証の内容は私が記憶しています」
商人「一人づつ誰だったのか言って見て」
ホムンクルス「はい…」
フィン・イッシュ領シャ・バクダ領事 クソ・クラエ
セントラル貴族院 監査役 サイア・クナ
セントラル軍 特殊生物兵器部隊所属 ジンブ・ツデス
傭兵 シブト・クイキ
キ・カイ入国管理官 テイマ・スー
シン・リーン元老院 会計補佐 ハヤク・ショリ
シン・リーン元老院 役員 スルベ・キーダ
商人「ちょっと待った…どうしてシン・リーンの元老を2人こなせる?同じ顔で2役は出来ない」
女海賊「変装って事?」
商人「簡単な変装じゃ直ぐバレルよね…まして身分が高い」
剣士「変性魔法…」ボソ
商人「魔術師だった可能性があるのか…いやそもそも港町の領主になった時もセントラルの軍隊を招き入れてた…」
女海賊「特殊生物兵器部隊の身分証もあったんだね」
商人「あの領事やっぱり相当な重要人物だったんだよ…色々事情を知ってる人物をブタにして放置はマズかったかも」
仮説だよ
帰って来る筈の領主が帰って来ないとなると
何らかの取引ごとは全部凍結する事になる
あの片足の領主が関わっていたと想定されるのは
セントラル軍隊を動かしていた件と
3人のエルフをどうにかする件
他にもあるだろうけどどう考えてもここの拠点と関係がありそうだ
時期的に一致するし何らかでエルフを怒らせた可能性はある
女海賊「エルフに掴まって隠れ家をゲロった線も捨てられないよ」
商人「ダークエルフとの関りも洗いざらいエルフに話したとなれば黙っちゃ居ないだろうね…ただ証拠が何も無い」
女海賊「なんか変だなぁ…エルフの主力ってドラゴンライダーだよね?なんで居ないの?」
商人「シャ・バクダ砦の方に行ってるらしいね…あっちを主に攻めてる…なんでだろう?」
女海賊「話が全部仮説だからなんか動けないなぁ…」
剣士「僕が居りて確かめて来る」
女海賊「こんな所で着陸する所なんか無いよ…あんたを回収するのも難しい」
剣士「3日あればここから海まで戻れる」
女海賊「あんたマジで言ってんの?」
商人「僕たちは地図の作成に専念して3日後に河口に在った漁村で集合というのは良いかもね」
女海賊「一人で行くのはダメだって!!又行方不明になっちゃう」
剣士「未来を連れて行く」
女海賊「もっとダメ!!それなら私が行く」
剣士「未来に森の歩き方を教えておきたい…君は木に登れないから足手まといになる」
女海賊「う…」
子供「ママ…」
女海賊「3日で絶対戻って!!フン!!」
剣士「居場所は照明魔法で知らせるから心配しなくて良いよ」
商人「まぁ2人共ハイディング出来るし大丈夫じゃないかな?」
女海賊「…」ジロリ
商人「あぁゴメン余計な口挟んだ…ハハ」
剣士「飛び降りられる高さまで降りて?未来…行くぞ…背中に乗るんだ」
子供「う…うん」ピョン
女海賊「未来!?この白狼のマント付けて行きなさい」ファサ
子供「ママありがとう…心配しないで?ちゃんとパパに付いて行くから」
女海賊「あんたもエルフの血が流れてるんだからしっかり勉強すんだよ!!」
子供「うん!!」
剣士「よし…正面の木に飛び移る…未来!しっかり掴まれ」
子供「大丈夫…」ギュゥ
ヒュゥゥゥゥー バサバサ
剣士「行って来る!!」ピョン
女海賊「よっし…私らは上空の安全圏に戻る…商人とホムちゃんは周りの警戒しといて」
商人「分かった…クロスボウも準備しておくよ」
女海賊「なんか飛んで来たらあんたが撃ち落さないと私らやられると思って」
商人「分かってるよ…ホムンクルスもそっちでクロスボウ準備して」
ホムンクルス「はい…」
『森の上空_夜』
ヒュゥゥゥー バサバサ
商人「すっかり日が落ちたけど以外に明るい」
ホムンクルス「月明かりが雪に反射しているのですね」
女海賊「ホムちゃん!この地図だと今どこら辺?」
ホムンクルス「ここです…」ユビサシ
女海賊「旋回範囲をもう少し広げようか」
商人「あ!照明魔法が上がった…剣士はあそこだ」
女海賊「おけおけ…もうちょい離れても十分見える」
商人「狼煙も見えなくなっちゃったし夜の間は何も出来る事が無いなぁ…」
女海賊「ドンパチ始まればなんとなく戦線見えるんだけどね」
商人「森の中ってさ…夜は真っ暗だよね?よくそんなんで戦えるよね」
女海賊「エルフは数が少ないから夜じゃないと不利なんでしょ」
商人「まぁそうなんだろうけどさ…セントラル側はどうやって凌いでるのかなと思ってね」
女海賊「どうでも良くね?」
商人「ハハ…僕らが戦争する訳じゃ無いからそうと言えばそうだ…ただ僕ならエルフを凌ぐのにキマイラ使うかな」
女海賊「ミノタウロスとかどっさり居る感じ?」
商人「うん…他にもケンタウロスとかハーピーとかさ」
女海賊「ハーピー飛んで来るとマズイなぁ…」
商人「まぁ森の中でそういう争いしてる様に思うんだ」
女海賊「なんで狼煙上げてたんだろね?ここに居ますよって言ってる様なもんだよね」
商人「そうやっておびき出してるのかもね…ほら森の木を燃やすとトロールが怒るって言うじゃない」
女海賊「んーーーーどうでも良っか」
商人「む…君らしくない」
女海賊「剣士と未来が心配になっちゃうから余計な事考えたくないの!!」
商人「あぁゴメンゴメン気が付かなかった…そうだよね何も出来ないのはイライラするね」
女海賊「どうっすっかなぁ…」
ホムンクルス「私は寝る必要がありませんので少しお休みになられては?」
女海賊「ホムちゃん飛空艇の操作分かる?」
ホムンクルス「はい…上空を旋回する程度でしたらお任せください」
女海賊「おっけ…ほんじゃちっと操舵任せる…私望遠鏡で森の中覗いてみる」
商人「僕は見回っておくよ」
『翌日』
ヒュゥゥゥ バサバサ
ホムンクルス「18°の方向に転進してください…微速でお願いします」
女海賊「ほいほい…」グイ
商人「もう少しで川が分かれる感じ?」
ホムンクルス「はい…右手側からトレースします」
商人「…なるほど」
女海賊「これ真下に川があるなんて全然分かんないね」
商人「うん…気球で目視じゃ探すの無理だね…ホムンクルスが居なきゃ地図書けない」
女海賊「谷になってる所全部川だったりしないの?」
商人「大体そうなんだけど平らな所がね…分岐している所が特に分からない」
女海賊「直ぐに終わると思ってたけど今日一杯かかりそうだね」
商人「平らな所が終われば後は早いよ…大体想像がつく様になってきた」
ホムンクルス「分岐です…44°の方向です」
女海賊「おけおけ…あ!!ちょい見えるね…結構でかい川だね」
商人「本当だ…そうか川幅も分かるようにしとかないとな…」
女海賊「この川ってどこまで続いてるの?」
ホムンクルス「途中で大きな湖になって居ますがエルフの森の近くまでは行っていますね」
商人「全然知らなかった」
ホムンクルス「東西に分断する形になって居ます」
商人「へぇ…だから森を突っ切る道とか出来なかったのか…あれ?このまま行くと傾斜きつくなるけど…」
ホムンクルス「滝です」
女海賊「お?どうする?省く?」
商人「まだ時間あるし一応トレースして行こう…役に立つかもしれない」
女海賊「滝かぁ…私が隠れ家にするなら滝の裏にある洞穴とか使いそう」
商人「皆考える事は一緒さ…要注意ポイントだよ」
”聞こえるか?”
”あ!!お姉ぇ…”
”剣士が別行動している様だな?”
”うん…空からだと何も見えないから居りて行った”
”連絡は取れんのか?”
”明後日川の河口にある漁村で落ち合う事になってる”
”貝殻を余分に持たせておけば良かったな”
”どしたの?何かあった?”
”剣士がドラゴンの骸を見つけた様なのだ”
”え!?ドラゴンが死んでんの?”
”そうだ…どうやら戦場後の様子らしい”
”危ない事にはなってない?”
”今の所はな”
”私らは地図を作ってる所なんだけどさ…作戦に変更ある?”
”ひとまずは予定通りだが剣士からの情報次第で大きく変更になる可能性が高い”
”ドラゴンが死んでるって相当ヤバイよね”
”うむ…やはり例のゴーレムが関わって居ると思った方が良い”
”上から見た感じ戦争の割に静かだったけどなぁ”
”終わった後なのだろう”
”あぁぁなるほど…じゃぁやっぱ狼煙が上がってるのは救難か”
”地図に描けているな?”
”うん…商人が思ったより働けてる”
”そうか…引き続き地図の作成をよろしく頼む”
”おけ!!剣士の様子に変化あったらまた教えて…心配してるから”
”分かった”
『夕方』
ヒュゥゥゥゥ バサバサ
商人「よし!!船を使って2日で行ける範囲はこれで全部書き終わった」
女海賊「隠れ家の場所は特定出来そう?」
商人「候補地はこの2つだよ」ユビサシ
女海賊「やっぱ滝のそば?」
商人「そうだね…それ以上上流には多分船では行けない」
女海賊「狼煙が上がってる砦とはちょい距離があるね」
商人「もしここが隠れ家だったとすると物資の輸送拠点だったんだと思う」
女海賊「今日はもう暗いから明日近くまで行ってみよっか」
商人「そうだね…今日はちょっと疲れたよ」
ホムンクルス「食事を取っていない様ですが大丈夫ですか?」
商人「ハハ忘れてた…急にお腹が空いた」
女海賊「…あんた体大丈夫なん?」ジロリ
商人「どうして?熱はもう下がってるよ」
女海賊「なら良いけど」
ホムンクルス「シーサーの干し肉で良いですか?」
商人「その肉硬くてキライだよ」
ホムンクルス「小さくカットしますので飲み込んで下さい」
商人「まぁ良いけどさ…他に何か無いの?」
ホムンクルス「どんぐりと松ぼっくり…それからキノコがあります」
商人「松ぼっくりなんか食べられるのかな?…まぁ良いや齧ってみる」
ホムンクルス「どうぞ…」
商人「よくこんなの食べてるよなぁ…」ガリガリ
女海賊「食べ物全部船に降ろしちゃったの失敗だったね…ここじゃ補給も出来ないしなぁ」
ホムンクルス「せめて小麦が有ればもう少し良いものが作れましたね」
女海賊「そうだ!ハチミツが残ってた…シーサーの干し肉と一緒に茹でてスープ作ろう」
ホムンクルス「良い案ですね…ハチミツには肉を柔らかくする成分が入っています」
商人「この貧乏な感じ…大好きなんだ」
こういう狭い部屋でさ
少ししか無い食べ物を工夫してみんなで食べるのってさ
すごい幸せを感じるんだよ
『1時間後』
商人「はぁぁぁぁ…これ凄く美味しい」
女海賊「ビックリだね?シーサーの肉も美味しく食べられるじゃん」モグ
商人「この実は松ぼっくりの中に入ってたやつ?」モグ
ホムンクルス「はい…殻を剥くのに手間がかかりましたが沢山実が入っています」
商人「キノコもスープに丁度合ってる…これ味付けは女海賊がやったの?」
女海賊「ワインとかオリーブオイルとか色々混ぜてみたんだ…私もこんなに美味しくなるって思って無かった」
商人「残りのスープに干し肉入れておいて明日もこれで良いよ」
モクモク モクモク
ホムンクルス「余った松ぼっくりを燻して居るのですが香りが良いですね」
女海賊「それさ…燻した後に湯の中に入れて飲めるよ」
ホムンクルス「松ぼっくりは捨てる所が無くて経済的で良いと思います」
商人「お腹が膨れたら眠たくなってきた…ちょっと休んで良い?」
女海賊「3時間で交代…」
商人「起こして」
ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ
女海賊「何の音?ホムちゃん?」
ホムンクルス「…」
商人「ん?どうしたの?」
ホムンクルス「皆さん緊急事態です…緊急アラートを受信しました」
女海賊「何何?」
ホムンクルス「未確認の飛翔体が南の大陸…キ・カイ周辺から発射された様です」
商人「飛翔体?何だい?それ…」
女海賊「なんで緊急?」
ホムンクルス「飛翔体の着地点を計算しています…約36分後にシャ・バクダ付近に着弾すると思われます」
女海賊「え!?キ・カイからシャ・バクダまで飛んでくんの?」
ホムンクルス「大陸間弾道ミサイルだと推定されます…型式は不明」
女海賊「どうすれば良い?」
ホムンクルス「インドラシステムで迎撃が可能ですがエネルギーが不足している為1度しか使用できません」
女海賊「ちょっと何が起きてるのか分かんないんだけどさ…」
ホムンクルス「巨大な隕石が落ちて来ます…インドラの矢で破壊が可能ですが1度しか使えません」
商人「そんな物がキ・カイから飛んで来るだって?」
ホムンクルス「時間が有りません…インドラの矢を使用してもよろしいでしょうか?」
商人「いや…まぁ君に任せるよ」
ホムンクルス「承認…インドラシステムを展開します…成層圏外での撃墜確率は68%」
女海賊「ホムちゃんの顔がマジだ…」
ホムンクルス「シャ・バクダにはアサシンさん達が居ましたね?地下へ避難する様に至急お伝えください」
女海賊「おけ…お姉ぇ経由で連絡する…商人!!ちょいホムちゃんのサポートしたげて」
商人「分かった」
”もしもし…お姉ぇ!!聞こえる?なんかシャ・バクダに隕石落ちるらしい…”
”あと36分!!急いでアサシン達を地下に避難させて”
”もしもーーし!!もしもーーーし!!」
”何用じゃ…慌てるで無い…ゆっくり話すのじゃ”
”マジ超ヤバイらしい…後で説明すっから今すぐアサシン達を地下に避難させて”
”急じゃのぅ…”
”良いから今すぐ連絡して!!”
”分かった分かった…ちぃと待っておれ”
ホムンクルス「18分後にインドラシステムでの迎撃を行います…外した場合に備えて低空で森の陰に入る位置に移動してください」
女海賊「そんなヤバイ状況なんだ…」
ホムンクルス「備えです…距離的にこの位置への被害は軽微でしょう」
女海賊「商人!!ちょい下見てて…木に引っかかりそうだったら教えて」
ホムンクルス「商人!?緊急事態ですのでクラウドへ接続を試みて良いでしょうか?」
商人「あぁ…精霊の記憶を覗くのかい?」
ホムンクルス「問題解決法を検索します」
商人「君が君じゃ無くならない程度なら構わないよ…」
ホムンクルス「承認…接続!」
商人「何か分かる?」
ホムンクルス「クラウドへ接続している第三者の形跡を発見しました…こちらを特定されてしまう為遮断します」
商人「え!?君以外の誰かが居る?」
ホムンクルス「飛翔体の着弾地点を修正します…この地点のおよそ30km上空で爆発する可能性があります」
女海賊「どうなる?」
ホムンクルス「電磁パルスで私の超高度AIが停止します…砂鉄はありませんか?」
商人「話がコロコロ変わって状況が読めない!!」
ホムンクルス「急いで下さい…私の頭部を砂鉄で保護してください」
女海賊「砂鉄は有るけど…全部爆弾の中だよ…今から分解してると時間掛かる」
ホムンクルス「何処にありますか?」
女海賊「そこの樽の中」
ホムンクルス「わたしがコチラの樽に入りますので爆弾で埋めて下さい」
女海賊「商人!!やったげて!!」
商人「あ…あぁ…これを入れて行けば良いんだね?」ガサガサ
ホムンクルス「ありがとうございます…今の内に説明します」
商人「頼むよ…何がなんだか全然分からないよ」
ホムンクルス「クラウド上の精霊の記憶を何者かが強制的に変更している様です…」
それが原因で精霊のガーディアンシステムが作動し
アクティブな核弾頭を搭載したミサイルが発射された様です
ガーディアンシステムはクラウドの存在する森の上空でミサイルを爆発させ
電磁パルス攻撃でシステムのシャットダウンを試みている様です
精霊の記憶を保護する為ですね
その現場に私が今居ますので
私のシステムもシャットダウンする可能性が高いのです
商人「第三者って誰なのか分かる?」
ホムンクルス「分かりません…私が相手を気付いた様に相手も私に気付いた可能性が高いので接続を停止しました」
商人「この爆弾で君を守れるかな?」
ホムンクルス「影響を最小限に留められる筈です」
女海賊「インドラの矢で壊しちゃえば良いんだよね?」
ホムンクルス「1度撃つことが出来ますが出力が臨界まで達していない為当てたとしても破壊出来ないかもしれません」
女海賊「あぁぁぁ光のエネルギーは全部私の光の石の中か…」
ホムンクルス「上空を見ていて下さい…南の方向です…あと2分でインドラの矢を発射します」
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---------------
ピカーーー
女海賊「光った!!」
ホムンクルス「命中…」
商人「爆発しない…」
ホムンクルス「破壊失敗…回避行動に移って下さい…約12分でこの地点に到達します」
女海賊「どうするどうする?」アタフタ
ホムンクルス「成層圏外での爆発ですので爆風がここまでは到達しませんが熱線により球皮へのダメージがあるでしょう」
女海賊「熱線ってそんなヤバイ感じ?」
ホムンクルス「規模が分かりませんので最悪条件でお話していますが雪がすべて溶けると言えば分かりますか?」
商人「…」
女海賊「ちょ…」
商人「まずいな…森に降りなきゃ…」
女海賊「降りられる所なんか無いじゃん!!木に絶対引っかかる」
商人「ある!!地図でいうとココだ!!下に川が見えた所…近くに滝がある」
女海賊「おっけ!!今すぐ行く…どっち?」
商人「ホムンクルス!!場所案内出来る?」
ホムンクルス「今は衛星が離れた位置にありますので座標の精度が低いです」
女海賊「近くまで行ったら目視で探す!!方角だけ教えて」
ホムンクルス「60°の方向…約9km先です」
女海賊「おっけ!!ハイディングする!!」スゥ
ホムンクルス「衛星と通信が途絶えてしまいますが…」
女海賊「大丈夫!すぐリリースするから…商人!!照明弾の準備!!」
商人「あ…どれだっけ?」
女海賊「現着したら照明弾撃って目視で探して!!」
商人「わ…わかった…」
シュゴーーーーーー
『滝の付近』
女海賊「リリース!!」スゥ
商人「撃つよ!!」バシュン ピカー
女海賊「見える?」
商人「もっと南!!300メートルくらい」
女海賊「高度下げながら行く!!照明弾どんどん撃って」
ホムンクルス「あと3分で上空を通過します」
女海賊「光の筋が見えてるよ…随分遅く見えるけど」
”女海賊や…聞こえるかえ?”
”ぬぁぁぁ今忙しい”
”主の目を見て居るのじゃが何が起こって居るのじゃ?”
”ちっと黙ってて!!”
”アサシンらは避難が間に合わぬ”
”南の空を見てろって言って!!”
バシュン ピカーー
商人「見えた!!あそこだ」
女海賊「木に引っかかるからもっと照明弾撃ってよ!!」グイ
商人「君の持ち物の袋はどこ行った?」
女海賊「あ!!光の石か…私の鞄の中!!」
商人「…これか」ゴソゴソ ピカー
女海賊「それ持って床の穴から外に出して!!」
商人「わかった」ドタドタ
女海賊「おけおけ!!良く見える…」
ホムンクルス「あと1分です」
商人「上見て!」
シュゴーーーーーーーー
女海賊「うわ…早い…」
商人「どこで爆発する?」
ホムンクルス「分かりません…その光から隠れて下さい」
女海賊「滝の横で着陸出来そう…丁度崖の陰になる」
商人「ギリギリ助かりそうだ…ふぅ」
女海賊「崖が見えないから正面見える様にして…今晩はここで様子見よう…降りるよ」
フワフワ ドッスン
ホムンクルス「爆発予想が経過しました…まもなく爆発すると思われます…システムを一時的に停止させます」
商人「ホムンクルス…」
ホムンクルス「…」
『光る空』
ピカーーーーーー
女海賊「来た…空が青い」
商人「一気に昼間か」
ザワザワ ザワザワ
女海賊「何が起こるんだろ…」
商人「上の雪が溶けてボタボタ落ちて…熱っつ!!」
女海賊「え?」
ゴゴゴゴゴ ゴゴーン ゴゴーン
女海賊「遠くで爆発音」
商人「上の方が一気に真っ白だ」
女海賊「水蒸気…かな?」
商人「光ってるのが長いね…いつまで続くんだろう?」
女海賊「私ら偶然滝の傍に居るから影響無いけど…この水蒸気に撒かれたら蒸し焼きになるんじゃね?」
商人「…まさか」
ゴゴゴゴゴ ゴゴーン ゴゴーン
女海賊「…」
商人「この音ってもしかして水蒸気爆発?」
女海賊「上の方はそんなんなってる気がする」
”ザザーーーこえるか!!どうなってザザーーー”
”お姉ぇ!!聞こえてるよ!!”
”無事なんだな?ザザーーーー”
”なんとか森の中に逃げた”
”インドラの矢を落としたのか?”
”違う…でもそんな感じの物を落とされた”
”ザザーーー聞こえがザザーーー”
女海賊「貝殻にも影響出るんだ…ホムちゃん大丈夫かな?」
商人「収まるまで樽から出さない方が良さそうだ」
女海賊「まだ空が青い…こんな爆発って有り?」
商人「雪が全部溶けてしまったら森が燃えてしまうかもね」
女海賊「ホムちゃんが言ってた核弾頭って私の爆弾と同じ原理かも…反応の仕方が似てる」
商人「反応?」
女海賊「桁違いの熱量放射で爆発を連鎖させるんだ…その後の質量崩壊まで爆発が持続する」
商人「キ・カイにそんな物が眠っていたなんてね」
女海賊「あそこはまだ未発掘の場所が沢山あるんだよきっと…ホムちゃんが眠ってたみたいに」
商人「古代兵器か…そんな物が誰かに使われるなんて考えたく無いな」
女海賊「そうだよソレ!!第三者って誰?」
商人「ダークエルフっていうのは考えにくいよねエルフがそんなのに精通してるとはとても思えない」
女海賊「クラウドに接続出来るって限られるんじゃなかった?」
商人「…どうも…やっぱりホムンクルスが言うように精霊の伴侶があやしいのかも知れないな」
女海賊「ホムちゃんと同じ事が出来るって事?」
商人「うん…同じようなホムンクルスだったというオチ…そこら辺が謎なんだよ」
女海賊「だったら今の爆発で停止してるかもね」
商人「停止させる狙いで自動的にガーディアンって奴?が働いたとかさ」
女海賊「なる…それだと辻褄合いそう」
スゥ
商人「あ!!暗くなった」
女海賊「質量崩壊だ…持続したのが2分弱…どんだけの質量だったんだろ」
商人「急に消えるんだ?」
女海賊「うん…連鎖終わった瞬間一気に止まる…私の爆弾と同じ」
商人「どうする?」
女海賊「森の様子見たい所だけどホムちゃん目覚めるまで待とう…蒸気で蒸し焼きになるのもイヤだし」
商人「まぁここなら安全か」
女海賊「私はちょい飛空艇にダメージ無いか見て来るから待機してて」
商人「分かったよ…ホムンクルスを樽から出しておく」
女海賊「任せる」
『翌朝』
女海賊「戻ったよ…一杯拾って来た…ほい!!」ドサ
商人「魚…どうしたんだい?こんなに…」
女海賊「川辺に一杯打ち上げられてた…で?ホムちゃんまだ起きない?」
商人「ダメだよ…呼吸もして無い」
女海賊「はぁぁぁ…ホムちゃんの予感が当たっちゃったか」
商人「え?」
女海賊「あんた鈍いねぇ…こうなる想定はいつもしてたんだよ」
商人「…まさかもう起きない?」
女海賊「…あんま考えたく無いけど」ジロリ
商人「ハハそんな馬鹿な…ちょっと待ってよ…嘘だよね?」
女海賊「例の隠れ家を探しに行くのは中止…一旦お姉ぇの船に戻る」
商人「ホムンクルス…こんな終わり方予測できる訳無いじゃないか!嘘だ!!だって体には傷一つ付いて居ない!!」
女海賊「あんたに言ってもしょうがないんだけどさ…貝殻での通信も出来なくなった…どういう事か分かる?」
商人「電磁パルス…そんな…」ボーゼン
女海賊「まぁ兎に角…ここに長居してもしょうがないから戻る」
商人「…」
商人「……」
商人「………」
ホムンクルス「…」
女海賊「…」
---なんだろう…突然過ぎて涙が出ない---
---早くこの場所から立ち去らないといけない---
『飛空艇』
シュゴーーーーー バサバサ
ホムンクルス「…」
商人「…」
商人「……」
商人「………」
女海賊「…」
------------
------------
------------
『貨物船』
ザブン ギシギシ
魔女「…ダメじゃ…どういう訳か剣士も女海賊も千里眼が通じぬ」
女戦士「貝殻に何故雑音が混じる?」
魔女「分からぬ」
女戦士「アサシンとは連絡が取れるという事はやはり森だけ異常という訳か」
魔女「そうなるのぅ」
女戦士「ううむ…河口の漁村まで何も出来ずか…」
”ザザーーーねぇ…聞こえる?”
”おぉ!!無事か!!?”
”あぁやっと通じた…良かった”
”どうなって居るのだ?そちらの様子がわからん”
”帰ったら話す…今の現在地教えて”
”帰る?船に戻るつもりか?”
”うん…ちょっと色々あってさ…”
”誰か死んだのだな?誰だ?”
”ホムちゃんが動かなくなった…帰るから目印教えて”
”セントラル沖だ…2つ目の灯台の南側を通る”
”おっけ…エリクサーまだ在ったよね?一応用意しておいて”
”分かった”
”1時間ぐらいで合流出来るよ”
魔女「ホムンクルスに何かあったとな?」
女戦士「その様だ…」
魔女「昨夜見て居った限りではまだ動いて居ったがな…」
女戦士「私はエリクサーを用意してくる…」
魔女「わらわも手伝うぞよ?」
女戦士「大丈夫だ…千里眼で見守って居てくれ」
魔女「そうか…ではそうしておる」
--------------
フワフワ ドッスン
女戦士「良く戻った…エリクサーは準備してある…どうすれば良い?」
女海賊「商人?どうする?ホムちゃん飛空艇から降ろす?」
商人「…」
女海賊「ダメだこりゃ…」
女戦士「私が居室まで連れて行こう」
女海賊「いや…飛空艇の中で良いや…船乗り達に見られるのもアレだし」
女戦士「エリクサーの樽を積むぞ?」グイ
女海賊「ホムちゃんは炉の横にある樽んとこに居るよ…こっち」
商人「ブツブツブツ…」
魔女「ホムンクルスはもう起きんのかえ?」
女海賊「あ…魔女さぁ…蘇生魔法とか意味無いかな?」
商人「蘇生…」
魔女「ちぃと試してみるか」
商人「そうだ…頼むよ…お願いだ…」プルプル
魔女「どいて居れ…蘇生魔法!」ゾワワ
ホムンクルス「…」
魔女「眠って居る様じゃな…死んで居るとは思えぬ」
女海賊「触ってみて…」
魔女「生気が無いのぅ…ちぃと硬くなっておるんか?」
女海賊「やっぱそうだよね…早い所エリクサーに漬けないと石になっちゃう」
商人「ぅぅぅ…」
女戦士「樽に入れるのだな?」
女海賊「そだね…服脱がせるから商人どいて」
女戦士「手を貸す…そっちから脱がせ」グイ
女海賊「ホムちゃんの体冷たい…冷え切っちゃってる」スルスル
女戦士「もう起きないとは思えんが」
女海賊「私も信じらんないよ…突然だったから」
魔女「エリクサーに漬ければ蘇ると思って居るのか?」
女海賊「分かんないよ…ホムちゃんはエリクサーに浸かって眠ってたからさ…もしかしたらってね」
女戦士「入れるぞ?」チャプ
女海賊「おけおけ…ゆっくりこぼさない様に…」
女戦士「頭まで漬けるのだな?」
女海賊「うん…」
商人「…」ブツブツ
女戦士「商人は正気か?」
女海賊「そっとしといて…なんも考えられないんだと思う」
女戦士「まぁ…なんというか…この様な亡くなり方は死を受け入れられん」
女海賊「うん…」
魔女「変わった埋葬じゃな…魂の行き場を感じにくいのじゃが…」
女海賊「商人はちょっと一人にさせておこう…私ら居室で話そう」
魔女「そうじゃな…何があったのか知りたい」
女戦士「商人…私達は行くからゆっくり受け入れておけ」トン
商人「…」パクパク
女海賊「お姉ぇ行こ…」
『居室』
カクカク シカジカ
女戦士「森の火災は広がりそうか?」
女海賊「なんとも言えないけど雨か雪降ってくれないとしばらく延焼続けると思う」
魔女「雪が数分ですべて溶けるとはどんな熱量じゃ?」
女海賊「溶けるっていうか水蒸気爆発ですっ飛んだ感じ」
魔女「…それで電磁パルスというのが千里眼の障害になっておりそうなのじゃな?」
女海賊「多分ね…ホムちゃんもそれで動かなくなったんだと思う」
魔女「巨大な退魔方陣じゃな…わらわは完全に無力かもわからん」
女戦士「隠れ家の襲撃は魔女の魔法頼みだった所もある…中止せざるを得んか」
女海賊「もしかして睡眠魔法頼りだった?」
女戦士「そうだ」
女海賊「ちっとさぁ…戦力2人失っちゃってるからアサシン達と合流した方が良いと思うなぁ」
女戦士「2人?」
女海賊「実はホムちゃんとちょっと話してたんだけど…商人は余命1ヶ月切ってんだよ」
魔女「なんと!?それほど体の調子が悪いのか?」
女海賊「…らしいよ」
女戦士「では数日でホムンクルスの跡を追う形になるか…不謹慎な言い方になってしまうが」
女海賊「どうする?」
女戦士「まずは剣士と未来の帰還までは予定通り進めるしかあるまい」
女海賊「ローグってどうなってんの?」
女戦士「そろそろ帰って来る筈なのだがこちらを見つけられないで居るのだと思う」
女海賊「じゃやっぱ河口の漁村でみんな集まりそうだね」
女戦士「先行している海賊船が河口周辺を占拠する予定になっているが…お前はどうする?」
女海賊「ちっとさぁ…ホムちゃん失って私の心もダメージ大きいのさ…睡眠魔法で私を眠らせて欲しい」
女戦士「寝たいか…」
女海賊「うん…もう何も考えたくない」
魔女「同意できぬ…睡眠魔法は幻術じゃ…心が休まる事は無い」
女海賊「ぬぁぁぁ…」ガシガシ
魔女「乗り越えるのじゃ…主にはそういう適正が在る筈じゃ…青い瞳がその証拠じゃ」
女海賊「はっ!!想像妊娠…今か!!」
魔女「既に遅いが…主に出来るか?」
女海賊「風の魔石がある!!」
魔女「試してみるのも良かろう」---無理じゃろうがな---
女海賊「行って来る!!」ピューーー
---まぁ無理じゃ---
---他の者に認知されてからでは遅いのじゃよ---
---主は既に死を認めてしもうた…そういう次元に固定してしまったのじゃ---
『飛空艇』
もっかい…アブラカタブラ
女海賊「…どう?ホムちゃん!エリクサーの水浴びは?」
ホムンクルス「…」
女海賊「私も入って良い?」ヌギヌギ
商人「…」アゼン
女海賊「あんた何見てんのさあっち行け!!」
商人「…」タジ
女海賊「これ見て…膝ん所…ほら青くなってんじゃん?消えないんだよ…痛くは無いんだけどさぁ」
商人「…」
女海賊「何見てんだよ!!あっち行けって言ってんじゃん!!」ブン ポカ
商人「…」スゴスゴ
女海賊「これエリクサーで治るかなぁ?私も入るからホムちゃん一回出て?」
ホムンクルス「…」
女海賊「出たくないの?息できないから首だけは出しといた方が良いよ」ジャブジャブ
ホムンクルス「…」グター
女海賊「あら?気持ちよくて寝てたのか~そうならそうと…」
タッタッタ
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『居室』
ガチャリ バタン
魔女「商人か?女海賊に追い出されたのじゃな?」
商人「…」コクリ
魔女「主も心の置き所が無い様じゃが勘弁してやれ」
商人「女海賊はどうなったんだい?頭がおかしくなったみたいだ」
魔女「悪さはせんじゃろうからやらせておけ」
女戦士「何をしているのだ?」
商人「裸になってエリクサーに浸かろうと…」
女戦士「フッまぁそれで気が済むなら良いが…もうエリクサーは飲めんな」
魔女「うむ…あ奴は不潔じゃからのぅ」
女戦士「それでお前の気は確かなのだな?」
商人「まぁ…女海賊程じゃ無いけど…現実から逃げたいのは変わらない」
魔女「心の穴を埋めるのは時間だけじゃ…辛抱せい」
女戦士「何か食べるか?酒は腐る程あるから飲み潰れても構わんぞ?」
商人「…そんな気にならない」
魔女「話はすべて女海賊から聞いたのじゃが…主からはまだ何も聞いて居らぬ…何か話せるかえ?」
商人「ホムンクルスの最後の言葉…システムを一時的に停止させますって…」
魔女「ほう?では復活する可能性もあるのじゃな?」
商人「その事ばかりを考えてた」
魔女「一時的にとはどのくらいじゃろうな?再起動は自発的なのじゃろうか?」
商人「わからない…ただ死んだなんて認められない」
魔女「人が死んだ時も認められんもんじゃ」
商人「僕は諦められないんだよ…」
魔女「ほう?それが主の生きる理由になれば良いが…そうやって人は壊れて行く…自我を見失うで無いぞ?」
商人「再起動させる方法を見つける…これなら構わないよね」
魔女「ふむ…」
女戦士「何かアテでもあるのか?」
商人「強行作戦になっちゃうんだけど…許されるなら僕が指揮を取りたい」
女戦士「言って見ろ…」ジロリ
商人「確実かどうか分からないんだけど…」
女戦士「…」ギロ
商人「精霊の伴侶を奪取する」
女戦士「続けろ…」
今回の爆発で生じた電磁パルスでホムンクルスの機能が停止した
精霊の伴侶にも同じ事が起こっている筈だ
その躯体を奪って僕が分解する
構造が分かればホムンクルスを治せるかもしれない
女戦士「ふっ…何を言い出すかと思えば…お前に治せると思うか?」
商人「治せるか?じゃない…治す」
魔女「主は体の調子が悪かろう?自分の命がどれほど持つと想定しておる?」
商人「そんなの知った事じゃない…僕の寿命なんかどうでも良い…達成を目指すだけだ」
女戦士「その心意気は気に入った…ただ問題は手段だ…下手な作戦では任せられない」
この爆発で森の中は相当混乱している筈だ
仮にセントラル軍とかダークエルフとかの戦力が居たとしても
万全な状態の訳がない…今がチャンスと言い換えられる
そして森の中では魔法が使えないと想定した場合
女海賊のインドラの銃や爆弾は魔法の代替として運用できる
加えて飛空艇からの爆弾投下で森を丸裸にだって出来る
まだある…回復魔法がエンチャントされた角はこっちが一杯持ってるし
賢者の石を使った支援部隊だって運用可能だ
つまり戦力はこちらが上になると想定しても良い
詳細な地図の製作も終わってる
女戦士「ふむ…敵は何だと想定しているのだ?」
商人「ダークエルフ少数とリッチ…両方とも魔法が無いと無力さ」
女戦士「予定通りの進軍という訳か」
商人「途中の要所になるポイントは僕が分かる…地図で言うとココ…滝の下で拠点が作れる…気球の発着も出来るし船でも行ける」
女戦士「船長室へ来い…海賊の戦力を説明する」
魔女「さて…わらわは見物じゃな」ノソリ
『デッキ』
ヒュゥゥ バサバサ
ローグ「頭ぁぁぁぁ!!気球を降ろす場所が無ぇでやんす!!」
女戦士「この先の河口に漁村があるのだ…海賊で占拠させるから衝突が起きない様に上手くコントロールして来い」
ローグ「マジすかぁぁ!!宝石ばら撒く事になりやすぜ?」
女戦士「構わん!血を見る前に退去させろ」
ローグ「やっとこ頭の船を見つけたんでやんすが…」
女戦士「褒美を要求しているのか?」
ローグ「一緒に酒を飲む約束してもらえやせんか?それで良ーいっす」
女戦士「分かった分かった!!上手く行ったら一杯付き合う…早く行って来い」
ローグ「ヌフフフ…良い酒積んでるんすよ…ぐふふっふうふふふふ」
魔女「あの男…」
女戦士「まぁこれで言う事を聞くのだ…便利な男だ」
魔女「主はそれで良いのか?何をされて居るのか分からぬぞ?」
女戦士「何もされた事は無いが…」
魔女「んーむ…それは主が気付いて居らんのではないか?」
女戦士「何をだ?」
魔女「まぁ良い…上手く行けばそれで良い」
---どうやら女戦士は天然じゃな---
---上手い事利用されて居るのはどちらなのじゃか---
『河口の漁村』
ザブン ギシギシ ガコン
船乗り「碇降ろせぇぇ!!」ガラガラ
魔女「暗くなってしもうたな…まだ降りられぬか?」
女戦士「聞いては見るが先に海賊が陸に出ている…宿に泊まるのは今日は無理だろう」
魔女「ちぃと散歩がしたい…足が地に付いて居らん」
女戦士「遠くには行かないでくれ」
魔女「これ!商人!!案内せい!!」
商人「僕はホムンクルスから離れたくない」
魔女「黙れ…主が居らぬと買い物が出来ぬ」
商人「…」
魔女「主も心の整理が付かんのは分かるがわらわの見立てでは女海賊の方が重症じゃ」
女戦士「引きこもったままか…」
魔女「主は飛空艇に入れてもらえんのじゃろう?行くぞよ」グイ
商人「…わかったよ」トボトボ
女戦士「ローグを見かけたら戻るように伝えてくれ」
魔女「ふむ…主は船に残るか」
女戦士「伝令を待って居る…動けん」
魔女「ではちと女海賊に声を掛けてやってくれ…内に籠ってしまう様では修行にならん」
女戦士「修行?」
魔女「分からんかも知れんが他人の次元に乗ってしもうとる…それに気付かんとイカン」
商人「…」---自我を見失うってそういう事か---
女戦士「まぁ上手くやる…」
『数時間後』
ローグ「頭ぁぁ!!やっと戻ってきたでやんす…魔女さんから聞いたでやんすよ…ホムンクルスさんが倒れたそうで」
女戦士「…大きな声で騒ぐな」ジロリ
ローグ「へぃ…姉さんも伏せてるとか」
女戦士「ホムンクルスは船乗りの間でアイドルだったのだ…士気が下がってしまうから何も言うな」
ローグ「あぁぁそういう事っすね」
女戦士「…それで住民の買収はどうなった?」
ローグ「ダメっすね…宝石積んでも立ち退く気は無いっすよ」
女戦士「そうか…海賊達と揉めなければ良いが」
ローグ「今の所はこっちの羽振りが良いもんで上手く行ってやす」
女戦士「他の海賊共からの伝令が遅いのだが数は揃っているのか?」
ローグ「頭の船団と合わせて20隻って所っすね…手漕ぎのガレー船だもんで外海じゃ遅いんすよ」
女戦士「ガレー船は何隻入る?」
ローグ「4隻っす…ただ疲れてるんでちっと休息必要ですね」
女戦士「陸に上がれる拠点が出来そうなのだ…それまでは辛抱してもらう」
ローグ「女が居ればちっと変わるんすけどね」
女戦士「漁村に商売女は居ないのか?」
ローグ「居るっちゃ居るんすがなんせ田舎なもんで」
女戦士「まぁ良い…女に変身させて貰いたい男共を集めろ…魔女に変性魔法を使ってもらう」
ローグ「ええええ!?共食いさせる気っすか?」
女戦士「悪いか?海賊共は元々共食いをしているだろう…私が知らぬと思ったのか?」ジロ
ローグ「あは…お見通しで」
女戦士「それで士気が維持できるなら安い物だ」
ローグ「じゃぁあっしがモデルになりそうな村の女を何人か連れて来やす」
女戦士「それで話は変わるが輸送船の調達は上手く行きそうか?」
ローグ「1隻は河口で停泊してますが拿捕は抵抗されるでやんすね…今揉め事は起こさん方が良いかと」
女戦士「買収は出来ないのか?」
ローグ「積み荷を待ってるらしいんすが…もしかするとオークの奴隷を待ってるのかもわからんす」
女戦士「なるほど…買収出来ない理由がソレか」
ローグ「どうしやす?」
女戦士「まぁ簡単だ…魔女に幻惑の杖を使って貰う」
ローグ「うひゃぁ…」
女戦士「無駄な血を流さんで済むのだ…何も言うな」
ローグ「へぃ…」
布陣はこうする
大砲を乗せたガレオン級6隻は沖の見える位置で停泊させる
スループ船を巡視に回して河口周辺は占拠した形をとる
キャベラル船は川を上って地図のこの位置まで移動
手漕ぎのガレー船で川の上流まで行く体制を作る
ローグ「この場所に拠点作るんすか?」
女戦士「そうなるな…輸送船はそこまでの人荷運搬だ…この船はしばらくここに停泊だ」
ローグ「これ何日でやれますかね?」
女戦士「拠点の確保は2日後だ…その後の強襲にどのくらいかかるか分からんが略奪品は見合ったものになる筈だ」
ローグ「何があるんでしょう?」
女戦士「セントラル貴族の収入源と言えば良いか?丸ごと全部だ」
ローグ「うっは…海賊達が貴族になるんすね?」
女戦士「あの不細工な男共が貴族になるとは真底吐き気がするがな…私は略奪品なぞ要らん」
ローグ「ちっと伝令に行ってきますわ…」
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魔女「戻ったぞい」ノソノソ
女戦士「早かったな?」
魔女「何もありゃ~せんかった」
商人「…」トボトボ
魔女「これ!!もたもたするなと言うたじゃろう」ポカ
商人「いたた…」
魔女「海賊の船がまた入ってきおったな…何隻来るのじゃ?」
女戦士「全部で20隻だ…作戦は商人に言われた通り伝令しておいた」
商人「そっか…早いね」
女戦士「手漕ぎのガレー船が4隻入る…川を上れる筈だから先方に位置させる」
商人「良いね…輸送船だけじゃ心もとなかった」
女戦士「ガレー船は乗組員が多いのも特徴だ…代わりに荷が乗らんのだが」
商人「あれ?ローグは帰って来てない?」
女戦士「伝令で飛び回って貰っている…用が在ったのか?」
商人「話し相手になって貰おうかなっておもってさ」
魔女「わらわでは不足なのか?」
商人「王族と僕とじゃ感性が合わない」
魔女「高貴さが隠し切れておらぬか…イカンな」
商人「そういう所だよ…」
女戦士「魔女…帰って来て直ぐに悪いのだが二三頼みが有ってな」
魔女「何用じゃ?」
女戦士「詰まらん頼みになってしまう…志願してきた男共を女に変身させてほしいのだ」
魔女「何をする気じゃ?」
女戦士「女不足で海賊達の士気が落ちて来ている…気休めかもしれんが」
魔女「なるほどのぅ…男の体の方が良いと思うんじゃが…志願する者なぞ居るのか?」
女戦士「ローグが窓口になっている…対応して欲しい」
魔女「まぁ簡単じゃしよかろう」
女戦士「それともう一つ」
魔女「ふむ…」
女戦士「無駄な衝突を避ける為に幻惑の杖の力を借りたい…輸送船との取引きを円滑に進めたいのだ」
魔女「拿捕するのではなく協力させると言うのじゃな?」
女戦士「平たく言うとそうだ…対価は払うつもりだ」
魔女「取引の場にわらわが同行すれば良いのじゃな?」
女戦士「そうだ…明日ローグにもう一度取引に行かせる…上手く運んでほしい」
魔女「森で魔法が使えぬではわらわの力はそういう所でしか発揮できぬか…」
女戦士「どちらも重要な案件なのだ…よろしく頼む」
『翌日』
ザブン ギシギシ
女戦士「…その顔は寝て居ないな?」
商人「まぁね…飛空艇に入れてもらえないし気を紛らわすのに作戦の詳細作った」
女戦士「この地図はまだ写しを作っていないからあまり汚すな?」
商人「済まないね…不要な書き込みは消しておくよ」
女戦士「数字は人駆か?」
商人「察しが良いね…」
女戦士「貝殻が使えない状況で人駆を分散し過ぎでは無いか?」
商人「海賊はほら貝使うでしょ…それが聞こえる範囲は計算してある」
女戦士「私は何処に位置する?」
商人「最前線…剣士と未来君の為の囮だよ」
女戦士「未来まで最前線に?」
商人「未来君はもう一人前だよ…ハイディングも出来るし僕より戦える」
女戦士「司令塔は飛空艇でやるのか?」
商人「違う…飛空艇は爆撃専門…邪魔な物を全部すっ飛ばしてクロスボウで上空から援護する」
女戦士「森を更地にするのだな?」
商人「まぁ隠れ家を露出させるだけだけど」
女戦士「お前はどうする?」
商人「僕はローグの気球で司令塔さ…海賊を数人乗せてクロスボウでの援護も兼ねる」
女戦士「援護というのは地上を行く海賊本体のだな?」
商人「そうだね…先方は君と剣士と未来君の3人だけ…その後に海賊の20人小隊が分かれて追随する」
女戦士「一つ忠告するぞ?海賊は被害が出ると一気に士気が下がって逃げ始める…はっきり言うとヘタレが多い」
商人「うん…だから先方は3人だけなのさ…ここが肝だ」
女戦士「そうか…分かって居るなら良い…出来るだけ被害を出すなよ?」
商人「補給と衛生部隊も構えて居るからよほど大丈夫…変身した女の人もここに配置する予定さ」
女戦士「正規軍程では無いが被害さえ出なければ占領戦は割と動きが良い」
商人「君たちが先方でどれだけこなせるかによる」
女戦士「ふん!バカにするな」
トントン
女戦士「ん?入れ」
ローグ「良かった着替えの最中じゃ無かったっすね…」
女戦士「出かけるのか?」
ローグ「へい…魔女が早く連れて行けとせっついて来るもんすから…」
商人「昨日買い物が出来なかったからだよ」
ローグ「あっしが付き合わされるんすかねぇ?」
商人「なんか魔方陣を中和する為の触媒が欲しいらしい…あと下着」
ローグ「なんか面倒くさそうでやんす」
女戦士「魔女には志願して来た男を女に変身させる件と幻惑の杖の事は話しておいたから導いてやってくれ」
ローグ「へい…で…そのー褒美の事でやんすが」
女戦士「分かった分かった…帰って来たら相手してやる…旨い酒を持って来い」
ローグ「ヌフフじゃ行って来るでやんす」
『飛空艇』
トントン
女戦士「…私だ…入るぞ?」
女海賊「んぁ?お姉ぇか…」ゲッソリ
女戦士「お前は何をしているのだ?」
女海賊「想像妊娠…」
女戦士「何故裸でその様な事になって居る?」
女海賊「こん中で癒されてたんだよ…ほらホムちゃんも一緒」
女戦士「いい加減にしろ…叩かれないと正気にならんか?」スラーン
女海賊「え!?何する気?」
女戦士「エリクサーが汚れる…出ろ」
女海賊「ちょま…ちょちょちょ…」ザバー
女戦士「この状況をすこし自分で考えてみろ…おかしいだろう?」
女海賊「わかってんよ…もう止めるよ」
女戦士「止める?まさかその中で又自慰に溺れていたわけではあるまいな?」
女海賊「なかなか妊娠しないんだって…」
女海賊「出ろ…」
女海賊「ぅぅぅ…ホムちゃんゴメンやっぱ私ホムちゃん生めない」
女戦士「ふん!」ブン バチーン
女海賊「いだぁぁぁい!!」
女戦士「何度言わせるのだ?早く出ろ」
女海賊「分かったからそれでお尻叩くの止めて」ザブザブ
女戦士「恥ずかしくないのか?他の誰かに見られたらどうする?」
女海賊「お姉ぇも同じじゃん!!」ブツブツ
女戦士「まだ叩かれたい様だな?」
女海賊「やめてやめて…分かったから」
女戦士「お前に仕事がある…早く着替えて出て来い」
女海賊「やる気無いんだけど」
女戦士「…」ブン ビターン
女海賊「いだぁぁぁい!!」
『甲板』
ザブン ザブン ギシギシ
女海賊「あぁぁ血ぃ出てんじゃん痛ったいなもう…」
女戦士「やっと出て来たか」
女海賊「何さ仕事って!!」
女戦士「剣士と未来を探して来い」
女海賊「何処に?」
女戦士「それはお前が知ってるのでは無いのか?」
女海賊「漁村なんだけど…」
女戦士「今漁村だ…迎えに行け…明日の朝には出発する」
女海賊「魔女は?千里眼でパパっとさぁ」
女戦士「魔女はローグと一緒に出掛けている…お前と違って皆忙しいのだ」
女海賊「…えーっと…どしよ?」
女戦士「もう作戦は進行している…早く連れ帰って来い」
女海賊「…徒歩?」
女戦士「目の前に漁村が有るのに徒歩以外にあると思うか?早く行け」
女海賊「参ったな…」
女戦士「聞こえなかったか?」スラーン
女海賊「あああ…ちょい待ち…思い出したそうだ!!漁村で待ち合わせてた」
女戦士「そうか…それなら良い…早く行け」
女海賊「ちょい行って来る」ピューーー
商人「…」アゼン
女戦士「さて商人…エリクサーをひどく汚してしまった様だ」
商人「やっぱり…」
女戦士「随分こぼして量が減ってしまった…処理を頼む」
商人「エリクサーに余裕は?」
女戦士「無いから還元できるなら少しでも戻してほしい」
商人「わかったよ…」
女戦士「それからホムンクルスの体をいたずらしたかも知れん…良く見てやってくれ」
商人「ハハ困った人だね…」
女戦士「本人は想像妊娠でホムンクルスをもう一度生む予定だった様だ…呆れる」
商人「想像妊娠…そんな事が可能なのか?」
女戦士「お前までそんな事を言うのか?」
商人「いや冗談だよハハ…」
---まてよ?次元の入れ替えが出来るなら可能性あるじゃないか---
---新しく生まれたという次元---
---ホムンクルスはどうやって生まれた?---
---エリクサーの容器から出したら初期状態---
---これをやろうとしたんだろう?---
『漁村』
ガヤガヤ ガヤガヤ
食ってくか~い
貝が旨いよぉぉ
この貝はっすねぇ…名器の様に使えるんすよ
真珠有るよおぉぉ
ガヤガヤ ガヤガヤ
女海賊「海賊船が入って盛り上がってんのか…」
村人「お姉さんはあの貨物船から降りて来なすったか?」
女海賊「んぁ?私?」
村人「そうよそうよ…あの船は商船とちゃうんかいの?」
女海賊「なんか色々積んでるよ…商人も居るかな」
村人「やっぱり商船かぁ…降りて来て商売せんのはなんでじゃろう?」
女海賊「んーーー売れないと思ってんじゃない?分かんない」
村人「仕入れだけかいな」
女海賊「なんか欲しい物あんの?」
村人「武器が無ぉーてな?」
女海賊「なんで武器なんか居るのさ?」
村人「お姉さんも見たじゃろう?北の森がパァーーーと明るうなったんを」
女海賊「あぁアレね」
村人「魔物が出て来よるのを心配しとるんじゃ」
女海賊「今一杯船集まってるから大丈夫じゃない?」
村人「噂じゃあれは海賊やいう話じゃ…アテに出来んからのぉ」
女海賊「ほんじゃ衛兵頼みだね」
村人「それも宛てに出来んのじゃ…第3皇子が帰って来れば良いんじゃがの」
女海賊「ん?誰それ?」
村人「しもうた…秘密じゃった…忘れてくれ」
女海賊「まいっか…ほんで武器欲しいんだっけ?」
村人「そうじゃ」
女海賊「取引しよっか…私細工師なんだ…簡単な武器作れるよ」
村人「おぉぉぉぉほら話しかけてみるもんじゃ」
女海賊「木とか骨とかなんでも良いから材料持って来て…加工して武器にしたげる」
村人「あるある…使わん農具でも良いな?」
女海賊「おけおけ…ほんで条件は探して欲しい人が居るんだ」
村人「小さい村じゃけ探し人なら簡単じゃぁ…どないな人や?」
女海賊「白いマント被った親子…両方とも男」
村人「住人に声掛けてくるわい…材料持ってくるで待っとってなぁ」
女海賊「おっけ!!待ってるから」
『数時間後』
トンテンカン トンテンカン
ローグ「あらららら?姉さんじゃないすか?何やってるんすか?」
女海賊「剣士と未来探してんの?」
ローグ「え?どう見ても安い武器屋にしか見えやせんが?」
女海賊「うっさいなぁ…あんた仕事は?」
ローグ「これから輸送船の取引っすね」
女海賊「あっそ…」
魔女「これ歩くのが早いぞ…もうちっとゆっくり…ん?女海賊では無いか」
女海賊「あ!!魔女!!千里眼で剣士の居場所分かんない?」
魔女「千里眼!!ダメじゃ見えぬ」
女海賊「そっか」
魔女「狭間の中に居ったら見えんでなぁ」
女海賊「あーそういう事ね…まぁ良いやもうちょい待つ」
ローグ「姉さん…取引が終わったら又寄りますんんでちぃと失礼しやす」
女海賊「剣士見つけたら探してるって伝えて」
ローグ「分かりやした…魔女さん行きやすぜ?」
魔女「ゆっくり歩け…わらわは子供じゃぞ?」ノソノソ
ローグ「へいへい…」
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女海賊「お!?どう白いマントの親子は居ない?」
村人「済まんですわ…皆知らん言うもんで」
女海賊「まぁしゃーないね…ほんでこれ作った武器」
村人「これ全部もろうて良いんじゃろうか?」
女海賊「どうせ要らない道具から作ったんだし皆に配ったら?」
村人「これだけありゃぁ志願兵に行けるかも分からん」
女海賊「志願兵?」
村人「なんや村の中央でエライ高給で志願兵募っとるんですわ」
女海賊「なんだそういう事か…じゃ防具も居るね」
村人「防具も作れるのじゃろうか?」
女海賊「軍隊ガニの甲羅で出来るよ…革ひもあればすぐ作れる」
村人「作って貰えるなら村の秘伝のニンニクを持ってくるで?」
女海賊「ニンニク…」
村人「このニンニクは高く売れるんじゃ」
女海賊「まぁ良いや…作ったげるから材料持って来て」
村人「防具とニンニクじゃ釣り合わんかも知らんがそれぐらいしか無いのじゃ」
女海賊「早いとこ探し人見つけてくれりゃそれで良いよ」
村人「お姉さん良い人じゃなぁ?婿は要らんか?」
女海賊「あのね…探し人は私の旦那と子供なの」
村人「なんと逃げられたんかいな…」
女海賊「いやそうじゃない…」
村人「済まんのぅ…口が滑ってしもうた…わしは口が軽るーてイカン」
女海賊「もう良いから早く材料持って来て」
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ちょっと待て…あそこに居るの
ヤバイ!道変えるぞ…アレは頭の
女海賊「おいおい…聞こえてんだよ」
海賊1「へ…へい」
海賊2「ぁぁぁ…」
女海賊「なんかさぁ…皆して私避けてくんだけどイライラすんだよね」
海賊1「ここで何をされて居るのですか?」
女海賊「見りゃ分かんじゃん?」
海賊1「安物の武器を高く売りつけているのですね…ハハハさすが」
女海賊「ちょい待ち…これの何所が安いっての?」シャキーン
海賊2「ひぇぇぇ…」
女海賊「ちゃんと研いだらあんたのパンツくらい簡単に切れるんだよ」スパ
海賊1「そ…それはどのような材料で?」タジ
女海賊「鉄に決まってんじゃん」
海賊1「ハハハ…」
タッタッタ
村人「ニンニクを持って来たんじゃがどうすりゃえーかのぅ?」
海賊1「ニンニク?」
女海賊「うわ…一杯あんね…どーすっかな」ジロリ
海賊1「は…運んでおきましょうか?」タジ
女海賊「助かる!!お姉ぇの船に積んどいて」
村人「お知り合いじゃろか?」
女海賊「まぁ通りすがりだよ」
村人「ニンニクの秘密も教えとかんとイカンなぁ」
海賊2「ニンニクの秘密…」
女海賊「あんたらさぁ…早くそれ運んどいてよ」
海賊1「へ…へい!!」スタコラ
海賊2「よっし!!」スタコラ
村人「そのニンニクには退魔の効果があるんじゃ…魔物が寄り付かん…えーじゃろう?」
女海賊「そうなんだ?」
村人「第3皇子が大好物でな?いつも買い入れに来て居ったんじゃ」
女海賊「誰それ?」
村人「あああああイカンイカン秘密じゃった…」
女海賊「あんた口軽いんだね?…ほんで誰?」
村人「ここだけの秘密にしといてくれや?実はセントラルの第3皇子は生きて居るんじゃ…秘密やで?」
女海賊「知らない人だなぁ…」
---確か10年ほど前に死んだ筈の皇子だ---
---エルフゾンビの弟に当たる---
---ハーフエルフの可能性が高い---
---そういえばエルフゾンビの生みの母は何処行った?---
---思い出して来たぞ---
---第3皇子が戦士した後に第1皇子と第2皇子が動いた---
---歴史をこの3人の皇子が動かしている---
『貨物船』
ザブン ザブン
女海賊「はぁはぁ…」ドドドド
女戦士「む?見つけたのか?どうしたのだ?慌てて…」
女海賊「お姉ぇ…ちょっと気になる情報聞いてきた」
女戦士「言って見ろ」
女海賊「商人は?」
女戦士「飛空艇の中を掃除している」
女海賊「人に聞かれるとマズいかも…飛空艇の中で」
女戦士「分かった」
『飛空艇』
ドタドタ
商人「ああああソコ踏まないで」
女海賊「商人!あんたのノートに昔の事記録してたよね?貸して」
商人「君に分かる事なんて書いて無いよ」
女海賊「まぁ良いや…質問に答えてね」
商人「なんだよ急に…」
女海賊「さっきちょっと気になる話を聞いてさ…」
女戦士「早く言え」
女海賊「セントラルの第3皇子が生きてる」
女戦士「んん?10年ほど前に戦死したと聞いたが生きて居ると?」
女海賊「そん時の記録とか第3皇子の特徴とか何か情報無い?」
商人「うーん…」パラパラ
女戦士「3人の皇子の中で一番有能だったらしいな」
女海賊「それから母エルフは何処に行ったとかなんか情報無い?」
商人「またローカルな話だね…そんなのある訳無いじゃないか」
女戦士「しかし第3皇子が生きていたとして何を想定しているのだ?」
女海賊「私らとんでもないミスしてるかも」
商人「え?…続けて」
女海賊「結論から言うよ?エルフゾンビは敵…そして第一皇子も敵」
女戦士「なんだと?」
良く思い出して
エルフゾンビは魔女と婚約していた
第一皇子は結果的にフィン・イッシュ女王と結婚しそう
これは北の大陸の覇権の全部を握る事になる
全部10年以上前から計画されてんじゃない?
そして第3皇子は戦死ではなくて身を隠すために戦死した事にした
女戦士「まぁスムーズな繋がりは無いが可能性は有りそうだな」
女海賊「エルフゾンビはいつも単独行動で数日行方不明になるのは理由があると思う」
商人「んー」
女海賊「エルフゾンビだけシャ・バクダの精霊樹んとこ行くのもなんかあやしい」
商人「そういえば黒の同胞団関連とは関わろうとしないね」
女海賊「前の100日の闇の時だって始めに戦死したのは第3皇子でそのあと第1第2皇子が報復戦争を始めたのがきっかけだよ」
女戦士「…」
女海賊「私ら3人の皇子の行いに振り回されてるって訳」
商人「もしかして3人は協力関係かな?権力抗争だと言うのは嘘?」
女戦士「もし第1皇子が敵だとするとマズイな…フィン・イッシュの軍隊は全権握られている」
商人「第3皇子が生きて居るとしてその情報がこの辺りで出て来るという事は森の中の軍隊は第3皇子が動かしてるのか」
女戦士「私達の行動に直接の影響は無いと見るがどう思う?」
女海賊「情報が全部筒抜けになってるとしたら?」
商人「女海賊…一つ大事な事を忘れて居るよ…エルフゾンビは夢幻の記憶に導かれている」
女海賊「う…そうか…敵と決めつけるのはダメか」
商人「ただ僕たちが思っていたよりも因果関係が複雑なんだよ」
女戦士「私もそう思うな…第1皇子とは少し話をしたが正義感の強い熱血バカだ…頭が回るとは思えん」
女海賊「思い過ごしなら良いんだけどさ…エルフゾンビがダークエルフ連れまわしてたのもあるし…」
女戦士「確かに奴は用心しておいた方が良いな…今も行方不明だ…しかし大局を左右する様な器ではない」
女海賊「器…気になるキーワード」
商人「勘かい?」
女海賊「分かんない…でも結構当たる」
女戦士「まぁ第3皇子の事は調べておく…お前はまず剣士と未来を探せ」
女海賊「分かった…これ以上私は頭回んないから任せた」
女戦士「それはそうと海賊達が噂しているぞ?お前がニンニクを買い占めているとな?どういう事だ?」
商人「ニンニク?」
女海賊「あいつ等…ダンゴムシの刑にしてやる」
商人「ダンゴムシの刑って何?」
女海賊「ちっと行って来る」バタン ドタドタ
『夕方』
ザブン ギシギシ
ローグ「頭ぁぁぁ帰ったでやんす!!」
女戦士「ご苦労だった…海賊船から荷の移送が始まった…上手く輸送船を取り付けた様だな?」
ローグ「へい…あっしは取引してただけなんでやんすがすんなり行きやした」
女戦士「魔女のお陰か…」
魔女「ハテ?何の事かのぅ?」
ローグ「ところで姉さんは何処に行ったんでやんすかねぇ?見なくなったもんで…」
女戦士「さぁな?」
犬「グルル…わん!」
ローグ「危ねぇでやんす…どっかから野良犬が紛れて来たでやんすね?」
剣士「リリース!」スゥ
子供「リリース!」スゥ
女戦士「おぉ!!良く戻った…随分汚れたな」
剣士「ふぅ…エリクサーあるかな?」
女戦士「あいにくだが切らしている…どうしても必要なら手配しても良いが」
剣士「毒に侵されて居てね…未来も同じだ」
子供「げふっげふっ…」
ローグ「あっしの気球に少し乗ってやすね…持ってきやしょうか?」
剣士「頼むよ…げふっ」ゼェゼェ
魔女「これ待て…毒消しの魔法はあるぞよ?消毒魔法!」ボワー
剣士「知らなかった…未来とそこの子ウルフにもお願い」
魔女「消毒魔法!消毒魔法!」ボワー
女戦士「この子ウルフは拾って来たのか?」
子供「迷子のウルフだよ」
剣士「未来の友達になった様だ」
子供「えへへ…」
剣士「魔女?消毒魔法に必要な触媒は?」
魔女「水とミネラル…そして塩じゃ」
剣士「回復魔法の応用か」
魔女「初歩魔法じゃぞ?主もちぃと勉強せい」
剣士「今覚えた」
魔女「未来や…主はきちんと勉強せい」
子供「うん!!今覚えたよ」
魔女「…」
女戦士「ところで何故毒に侵されている?そのような魔物が居るという事だな?」
剣士「異形の魔物が居るんだ…多分あれは…」
子供「スライムだよ」
魔女「なんと!?絶滅した筈じゃ…病が流行るぞい」
剣士「他にも見た事の無い魔物が居る」
子供「大きな目のぐにゅぐにゅした魔物だよ…」
魔女「ビホルダーじゃな…ちぃと待て…魔術書に記されて居る」パラパラ
魔女「これじゃ…劣化メデューサじゃ」
子供「ん-ーなんかちょっと違うけどそんな感じ」
女戦士「対処は出来るのだな?」
剣士「弱い…ただ毒を撒き散らかす」
女戦士「毒消しを準備する必要が有るのか…」ジロリ
ローグ「ちょ…あっしが調達っすかねぇ?」
魔女「それには及ばぬ…商人が賢者の石を持って居ったじゃろう」
女戦士「海賊に一人づつ持たせておきたいのだ」
魔女「うむ…簡単じゃ…樽に入れた水の中にミネラルと塩を入れ一晩賢者の石を入れておけば良い」
女戦士「毒消しのポーションになるのか?」
魔女「そうじゃ簡単な毒消しじゃ」
女戦士「それで済むのであれば問題無い」
ローグ「せ…せーふ」
女戦士「剣士…もう少し話が聞きたいのだが良いか?」
剣士「構わないよ…未来は少し休ませて」
子供「ねぇ?ママは?」
ローグ「あー未来くん…姉さんはちっと迷子でしてね」
子供「分かる…ママ目と数字で方角追ってるから方向音痴なんだよね」
ローグ「しぃぃぃぃでやんす」
子供「うん…秘密にしとく」
『船長室』
…これがアルラウネ
ちっちがスプリガンじゃ
昆虫の事はようわからん
ウルフはどちら側じゃ?
女戦士「ふむ…ひとまずそれらの魔物は中立的な立ち位置なのだな?」
剣士「そうだね…多分敵も味方も関係なしで襲って来る」
女戦士「ではやはり明らかに知性を持って争って居るのがエルフ達とキマイラ勢か…」
魔女「人間はどうなって居る?」
剣士「森の声では数日程前に北の方へ移動したらしい…理由は分からない」
商人「今の話で系統図作ったよ…見て」
魔女「三つ巴に見えるのぅ」
商人「エルフ側にトロールとドラゴン…それからウルフもこっち側な気がするな」
魔女「キマイラがよーわからんな…ケンタウロスもエルフ側では無いのか?」
商人「うーん…現場に行かないと分からないかぁ」
女戦士「スライムとビホルダーは中立と見て良いのか?」
剣士「守備的に動くからキマイラ勢だと思う」
女戦士「守備?守っているという事か?」
剣士「多分…追いかけては来ない…命令されているのか目的を持って居そうだ」
女戦士「この地図で位置は分かるか?」
剣士「うーん…頭の中では分かるけど地図だと何処なのか…」
女戦士「仕方あるまい…しかし予測より随分と敵が多いな」
剣士「争いに加わらないように動けば厄介なのは毒だけに思う」
魔女「ドラゴンの骸を見つけた様じゃが何にやられたのじゃ?」
剣士「見て居たのか…ドラゴンは捻りつぶされていた…多分ゴーレムという魔物かと」
魔女「ゴーレムは見て居らんのじゃな?」
剣士「見ていない」
女戦士「察するに北へ向かったと考えて良さそうだな」
剣士「うん…倒木の跡が北の方へ続いてた…きっと北に向かった筈」
魔女「やはり事が済んだ後じゃろうな…黒の同胞団の隠れ家はもぬけの空やも知れんぞ?」
女戦士「北への追撃は海賊では無理だ…その後の動きは考え直す必要がある」
剣士「ところでホムンクルスは?ドラゴンの事で気付いた事があるんだ…」
商人「ホムンクルスは…」
魔女「眠りについた様じゃ…今はエリクサーに浸かっておる」
商人「…」
剣士「そうだったのか…」
魔女「ドラゴンで気付いた事とは何じゃ?」
剣士「ドラゴンの血はホムンクルスと同じ匂いがする…何か知って居るんじゃないかと」
魔女「はるか昔に精霊が創造したらしいがドラゴンもホムンクルスと同じ人工生命体とな?」
剣士「ドラゴンの牙だけ採取してきた…中に血も入って居るよホラ?」
サラサラサラ
剣士「あれ!?血が入って居た筈なのに…砂になってる」
魔女「むむ!!それはホムンクルスと同体の証拠やもしれん」
商人「砂と言うか灰だね…集めて保存しておく…きっと貴重品だよ」
魔女「ホムンクルスは居らん故鑑定するのであれば女海賊じゃろうな」
女戦士「私に見せてみろ…」
剣士「はい…」ポイ
女戦士「軽いな…何の金属なのか…」
商人「ん?牙だから骨の類でしょ?」
女戦士「うーむ骨にしては熱の伝わりが早い…金属に近いから研磨してみたくなる」
剣士「僕には不要な物だから女海賊と女戦士で分けて…はいもう一本」ポイ
女戦士「よし…早速研磨する」
『飛空艇』
剣士「ホムンクルスが浸かっているエリクサーってこれだね?」
商人「…そうだよ」
剣士「どうして眠りに?」
商人「…」
剣士「まだ聞きたい事が合ったんだよ…森の声がおかしいんだ」
魔女「それは他の者には答えられそうに無いのぅ?エルフに聞けば良いのかもしれんが…」
剣士「魔法が急に弱くなったのも理由が分からない」
魔女「む?森の中でまだ魔法が使えるのか?」
剣士「魔女は何か知ってる?」
魔女「電磁パルスじゃったか?とにかく魔結界の様な物に覆われてしもうたのじゃ」
剣士「魔法が何かと干渉して散らばってしまうんだ」
魔女「ではやはり使えぬと思った方が良いな?」
剣士「うん…解決方法は無いのかな?回復魔法が使えないのがね…」
魔女「わらわも模索して居るが有効な魔法は物理系だけじゃと思うておる」
剣士「隕石とか?」
魔女「そうじゃ…しかし手間がかかる上に特殊な触媒も必要じゃ…今回の作戦での運用は厳しかろう」
剣士「うーん戦い方考えておかないとなぁ…」
魔女「主の口ぶりからして森の上空で爆発があったのは察して居らん様じゃが気付かんかったんか?」
剣士「爆発?」
商人「夜が一瞬で昼間みたいに変わるぐらいの爆発」
剣士「え!?爆発だったのかな?あちこちでトロールが暴れていると思ってた…その後から森の声が止んだ」
商人「アレに気が付かないという事は森の下は相当深いんだね」
剣士「ホムンクルスはいつ目覚める?」
商人「あぁ…実は…」
魔女「いつ起きるか分かると思うんか?」
剣士「ハハそうだね…まぁ良いか今度で」
魔女「疲れて居るのじゃろう…ゆっくりさせよ」
商人「…」
剣士「じゃぁ少し休むかな」
魔女「剣士や…ちと遊ばぬか?」
剣士「魔女と?何しようって言うの?」
魔女「外に出てわらわの杖を避けてみよ…来い」
剣士「魔女の攻撃は避けられない…受け止めるじゃダメかな?」
魔女「イカン…全部避けるゲームじゃ」
剣士「僕は避けるだけで良い?」
魔女「うむ…行くぞよ?」ノソーリ
スカ スカ ポカ
剣士「あたた…見えないんだよ」
魔女「全部避けよと言うたじゃろう…もう一度じゃ」ノソー
スカ スカ スカ
剣士「ふぅ…」
魔女「さすがじゃな…ラグスイッチを3度使うとは」
剣士「うん…コツが分かって来たんだ」
魔女「遊びは終わりじゃ…休んで良い」
剣士「ん?何かの修行だった?」
魔女「気にせんで良いぞ?あ…そうじゃ主の嫁が何処かへ彷徨っとるで探して参れ」
剣士「あ!!マズイな…先に声掛けとかなきゃいけなかった」
魔女「うむ…」
剣士「行って来る!!」タッタッタ
魔女「ヤレヤレ…」
商人「魔女…今のは」
魔女「ほう?主が気付くつとはのぅ…」
商人「次元の入れ替え…」
魔女「否定してはならん…剣士の次元に乗れば良い…直に調和するで」
商人「それが勇者…」
魔女「そうじゃ」
『漁村』
ホジホジ グリグリ
子ウルフ「ガウルル…わん!」
子供「あ!!居たぁぁ!!」
女海賊「はっ!!」キョロ
子供「ママーーー!!探してたんだよ」
女海賊「未来!!良かったぁぁぁ…剣士は?」
子供「船にママが居ないから探しに行ったよ」
女海賊「私を探してんの?剣士が?」
子供「今度パパ探さないと」
女海賊「千里眼使えばすぐじゃん…なんでこんな遅いの?」
子供「ママは何してたの?」
女海賊「お!!良い事聞くね…ここにさぁアリの巣があんだよ」
子供「うん…」
女海賊「こっちにダンゴムシ居るじゃん?どうやって通ると思う?」
子供「ねぇママ…もしかしてずっとこれ見てたの?」
女海賊「なんでさ?」
子供「それじゃ千里眼でも見つけられないって…」
女海賊「…」
子供「パパ探しにいこ」
女海賊「あんた賢くなったね?」
子供「どっちに行けば良いかなぁ…」
子ウルフ「わんっ!!」
女海賊「この子ウルフは?」
子供「友達さ」
女海賊「乗れる?」
子供「ママが乗ったらダメだよ」
女海賊「ほんなん分かってるって!!あんたが乗るの?」
子供「普通は友達に乗らないよ」
女海賊「ほーん…」
子供「ほーんってさ…ママはパパ探さないの?」
女海賊「探し疲れたんだよ」
子供「パパも帰って来て休まないでママ探してるんだよ」
女海賊「千里眼でさっさとさぁ…」
村人「あそこじゃ…あそこで穴掘っとる」
剣士「どうも案内ありがとう」
村人「いやいやお世話になったで良いんじゃ」
子供「パパだぁ!!」
剣士「やっと見つけた…ニンニクの匂いで分からなかったよ」
女海賊「おっそい!!」
剣士「ニンニクの匂いは君の匂いじゃないと思ってここには来なかったんだ」
子供「ママどうしてこんなにニンニク臭いの?」
女海賊「魔物除けになるって聞いたから持ち歩いてんだけど…あんた魔物?」
剣士「ハハ半分魔物かな…帰ろうか」
女海賊「腰にニンニクぶら下げるのやっぱマズイかな?」
剣士「ま…まぁ良いんじゃない?」
女海賊「臭う?」
剣士「君の匂いが消えるくらいにはね…」
ところでさ…ドラゴンの牙を持って帰ったんだ
え!!マジ?今ある?
女戦士に渡した
なんでお姉ぇに先に渡すのさ!!
2つあるから心配しないで
よし!ダッシュで帰るよ
ママ疲れてるんじゃないの?
うっさいな!ちゃんと付いて来て
『貨物船』
ワイワイ ガヤガヤ
見ろ!頭の妹分が帰って来たぞ
普通にしてろ普通に
ワイワイ ガヤガヤ
魔女「おぉやっと帰って来たか」
女海賊「何この騒ぎ?」
魔女「海鮮バーベキューじゃ…主らも食え」
女海賊「おぉ!!お腹減ってたのさ…お姉ぇは?」
魔女「ローグと一緒に飲みに出ておる」
女海賊「え!?又お酒飲みに行ったの?」
魔女「止めたんじゃがローグが言う事聞かんくてな…まぁやらせておけ」
女海賊「ぬぁぁドラゴンの牙を見たかったのにさぁ…」
魔女「船長室を探してみよ…そこで眺めて居ったでな」
女海賊「おけおけ!!取って来る」スタコラ
子供「ウルフは貝とか食べるのかなぁ?」
魔女「腹を壊すやも知れんぞよ?飛空艇にシーサーの肉が有ったじゃろう…それで良いのでは無いか?」
子供「おいで!!」
子ウルフ「がう!!」
魔女「剣士は何が良いじゃろうのぅ…」
剣士「適当に済ませるから気にしないで」
魔女「女海賊がニンニクを仕入れて居ったな…食ってみんか?」
剣士「ハハ程ほどに…」
魔女「明日の朝に森の方へ出立するから今日は休めと言うて居った…自由で良い」
剣士「あの海賊達は?」
魔女「森へ行く者は今日この船に集まって居るのじゃ…指揮伝達じゃろう」
剣士「じゃぁ横になるのは飛空艇が良さそうだね」
魔女「うむ…船長室と飛空艇には誰も来んで安心して休め」
タッタッタ
女海賊「取って来た!!これ片方磨いてあるけど…お姉ぇがやったの?」
魔女「そうじゃろう…研磨する言うておった…何か分かるか?」
女海賊「主成分が銀だね…重さ的にミスリル銀に近い…ほら?」カチン
コーーーーーン
魔女「ほぅ…良い音が鳴るのぅ?」
女海賊「ドラゴンって金属で出来てんの?どゆ事?」
剣士「だから気になって持って帰って来たんだよ」
女海賊「これ叩いて引き延ばすのはなんかもったいないなぁ…何に使おう」
剣士「そのままアクセサリーにするのは?」
女海賊「でかすぎ」
魔女「無理に使わんでも良いじゃろう…そのまま置物でも良いと思う」
女海賊「まぁ思いつくまで置いとく」
『飛空艇』
女海賊「こっちに居たんだ…バーベキューは食べた?」
商人「もうお腹いっぱいだよ」
女海賊「あんたなんで引きこもってんの?」
商人「向こうは僕よりずっと大きな人が一杯だからさ…なんか仲間に入りにくい」
女海賊「海賊共か…そっか体が小さいと肩身狭いのか」
商人「まぁそんな所だよ…いつもは盗賊が幅を利かせてくれてたんだけどね」
女海賊「盗賊の極意はこうだ!!とか言って?」
商人「そうだね…僕には真似が出来ない」
女海賊「未来は何処に行ったか知らない?」
商人「奥で子ウルフと一緒に寝てるよ」
女海賊「私もちっと寝るかな」
商人「明日は早いから寝て置いた方が良いね」
女海賊「あんたはまだ寝ないの?」
商人「僕はいろいろ調べ事さ…君が言ってた第3皇子の事とかね」
女海賊「新事実なんかある?」
商人「んー不思議なのが母エルフの事が一切触れられていない事ぐらいかな」
女海賊「ハーフエルフって事を隠したんかな?」
商人「どうしてだろうね?王室がその辺りを隠してるんだよね」
女海賊「セントラルはなんかそんなんばっかだね」
商人「うん…こういう情報は多分アサシンが詳しいと思う」
女海賊「ふぁ~あ…政治関係の話は苦手…寝る」
商人「あ!女海賊…」
女海賊「ん?」
商人「想像妊娠ありがとう」
女海賊「え?」
商人「君のお陰で希望が持てた」
女海賊「何の話?」
商人「いや…想像妊娠って本当にあるんだなってさ」
女海賊「あんた馬鹿?」
商人「ハハ…まぁ良いや…おやすみ」
女海賊「むにゃ…」
『早朝』
ガレー船は先行して目標の位置までの安全を確保
続く輸送船は到着後にキャンプ設営に入れ
キャベラル船は本日待機…明日の朝出発する事
では各自船に乗り込み作戦を開始しろ
ドタドタ ドタドタ
商人「女海賊…起きて!!剣士も!!」
女海賊「う~ん…むにゃ…まだ暗いじゃん」
商人「もう作戦始まった…女戦士とローグは動いてるよ」
女海賊「私ら飛空艇で先行すんだっけ?滝まで30分掛かんないよ」
商人「先に行って桟橋を作るらしい」
女海賊「木材は輸送船に乗ってんじゃん」
商人「それはキャンプ設営用だよ…桟橋の木材は現地調達だ」
女海賊「もしかして私らだけで桟橋作るん?」
商人「そうだよ…昼までに完成しないとキャンプ設営が遅れる」
女海賊「マジかよ…何で先に教えてくんないの」
商人「あー君は外に出てたのか…作戦の概要は昨日展開されたんだ」
女海賊「まぁ良いや…ほんで今出発する感じ?」
商人「うん…女戦士とローグが来たら即出発」
女海賊「おけおけ…炉を暖めるからどいて」シュゴーー
ローグ「頭ぁ…歩けやすか?」
女戦士「あぁ済まんな…」ヨロ
女海賊「お姉ぇ…もう行く?」
女戦士「出せ…ふぅ」
女海賊「又お酒飲んだん?」
女戦士「少しのつもりだったのだがな…」
女海賊「30分で到着だけど横になってて」
女戦士「済まん」
女海賊「商人!?ロープほどいてもらって良い?」
商人「これだね?」
女海賊「緩んだら外にぶん投げておっけ」
商人「…」シュルシュル ポイ
フワフワ シュゴーーーー
『河口の上空』
ヒュゥゥゥ バサバサ
ローグ「いやぁぁ飛空艇はやっぱ良いっすねぇぇ…早いわ広いわ暖かいわ」
女海賊「ローグ!剣士も起こしてよ」
ローグ「剣士さんは寝てるんじゃなくて瞑想っすね…あっしが何やっても起きんでやんす」
女海賊「私らだけで桟橋作るって出来るん?」
ローグ「ずっと使う桟橋じゃないもんすから真っ直ぐな木を流れて行かん様にすれば良いんすよ」
女海賊「重たい物運ぶの嫌なんだけど」
ローグ「少し上流で木を倒して川に入れれば良いでやんす」
女海賊「なる…ロープは?」
ローグ「ロープの代わりになりそうなツタなんかいくらでも有ると思いやす」
商人「全部現地調達するんだね」
ローグ「そーっすね…場所の選定が一番重要っすかね」
商人「川は割と深さがありそうだったから自由度高いとは思う」
ローグ「流れっすね…あんまり流れが複雑だと船が乗り上げちまいやすんで…」
商人「その選定は分かる人が決めた方が良い…ローグ分かる?」
ローグ「いいえ…わかりやせん」
女海賊「ぶっ…あんたさぁ!!知った口聞いてて分かりませんてどういう事よ?」
ローグ「聞いた話なもんで…盗賊さんなら分かると思うんすけどねぇ」
魔女「騒がしいのぅ…話を聞いて居ったら阿呆過ぎて呆れるわ」
商人「ハハまぁ僕が決めるよ…水の流れ方は後で変えるという手もある」
魔女「うむ…それで正解じゃ…何か有っても応用で何とかするもんじゃしの」
女海賊「ほんで…冷たい川ん中に誰が入んの?」ジロリ
ローグ「もしかして…あっしでやんすかね?」タラリ
魔女「ゆうべはさぞ楽しかったろうのぅ…?」ジロリ
ローグ「いやいやいや…そーっすね!あっしが入りやす」
商人「こうしようか…クロスボウのボルトにロープ付けて置いて流れて来た木を手繰り寄せよう」
女海賊「お!?面白そう…それ私やる」
商人「木を切って来るのは剣士が良さそうなんだけど…起きないかな?」
女戦士「キコリは任せろ…私が斧を持って居るからな」
商人「じゃぁ残りの人でツタの確保かな」
魔女「罠魔法でツタを成長させられるかも分からん…変性の一種じゃが試してみたい」
商人「それが出来るなら桟橋は一瞬で組み立てられる…期待だよ」
女海賊「役割決まったね?もう到着するから準備して」
『滝の周辺』
フワフワ ドッスン
ローグ「明るくなってきやしたね?」
女戦士「ふむ…良い場所だ」フラ
女海賊「お姉ぇ大丈夫?フラフラしてんよ?」
女戦士「毎度の事だから気にするな…私は早速少し上流を見回って木を倒してくる」
女海賊「なんか一人で行くの大丈夫かなぁ…」
子供「ふぁ~あ…ここ何処?」ノビー
女戦士「お?丁度良い…未来を連れて行く」
子供「ん?」
女海賊「おけおけ…それなら安心」
女戦士「未来…少し散歩だ…付いて来い」
子供「え…あ…うん…ちょっと待って」
女戦士「早く支度しろ…置いて行くぞ」
子供「おいで!!散歩だってさ…行くよ」
子ウルフ「がうがう…」
女戦士「ウルフか…魔物除けに丁度良いな」
子供「おっけ!行けるよ」スタタ
女戦士「では行って来る…」スタスタ
女海賊「おっし!!ほんじゃクロスボウゲームの準備する」
魔女「罠魔法を試してみるかの…」
ローグ「あっしはどうしやすかね?」
女海賊「あんたは服脱いで川に入る準備!手繰り寄せた木を上手い事運んで」
ローグ「やっぱそーっすよねぇ…トホホ」
商人「マズイなぁ…木が滝の上に引っかかったらどうしようかなぁ…」
女海賊「あんま細かい事気にしなくて良いんじゃね?きっとうまく落ちて来るって」
魔女「罠魔法!」ザワザワ シュルリ
女海賊「お!?魔法行ける?」
魔女「フムフム…直接触って居れば行けるのぅ…空間に魔法を分散させる何かが有るのじゃな…」ブツブツ
商人「魔法は工夫してなんとかなりそうだね」
魔女「ツタを木を結ぶのはわらわがやるで商人は火を起こすのじゃ…寒うてたまらん」
商人「あぁそうする…燃えそうな物が沢山あって良かった」
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『1時間後』
コーン コーン コーン
女海賊「お?キコリの音…お姉ぇミスリルの斧使ってんのか」
魔女「ここに居ますよと言って居る様なもんじゃな?」
商人「魚が焼けたよ…要る?」
魔女「おぉ旨そうじゃ…」ハフハフ
商人「ここは食べ物にも困らない」
魔女「クマが出んと良いな?」
商人「クマ…」
魔女「ウルフが居れば襲っては来んじゃろうが」
ローグ「気を付けて置いた方が良いでやんす…クロスボウじゃクマは中々倒せんでやんす」
女海賊「あ!!来た来た来た…でっかい木が落ちて来るよ」
ザブーン
商人「アハハ迫力満点じゃないか…」
女海賊「手繰り寄せるよ!!」バシュン シュルシュル
ローグ「姉さんで引っ張れやすか?」
女海賊「重い…ぐぬぬ」
魔女「初めに流れ止めを作った方が良さそうじゃな…」
女海賊「もう一個のクロスボウで川の対岸までロープ渡して」
商人「あぁ僕やるよ…」バシュン シュルシュル
魔女「ロープを水面に垂らして張っておくのじゃ…ローグは対岸まで行ってロープを縛りなおして来い」
ローグ「へ…へい…」
商人「次の木が落ちて来る…」
女海賊「ヤバ…これ超重労働かも」
ザブーン
女海賊「ちょい間に合わない…商人!次の木を手繰り寄せて」
商人「ボルトは?」アタフタ
女海賊「そこそこ!!ソレ!!」
商人「当たれ!!」バシュン シュルシュル
魔女「近くまで寄せたらわらわがツタで固定するで次の準備をせい」
女海賊「わーってるよ…ふんがぁぁぁ!!」
魔女「罠魔法!」ザワザワ シュルリ
女海賊「ひぃひぃ…」
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ローグ「ぅぅぅ」ガチガチ
ローグ「そそそ…そろそろ…上がって良いでやんすかねぇ…ぅぅぅ」ガチガチ
女海賊「おけおけ…飛空艇の中で暖まんな!!ウラン結晶に水垂らして良いよ」
ローグ「姉さんが女神の様っす…ぅぅぅ」ガチガチ
魔女「商人!木はこの位置で良いか?」
商人「もう少し向こうに伸ばしたいけどなぁ…」
魔女「これ以上は流れて行ってしまうぞよ?」
商人「2隻分かぁ…まぁ仕方ないか」
魔女「固定するぞえ?罠魔法!」ザワザワ シュルリ
女海賊「あと邪魔な枝落とす!」タッタッタ スパン スパン
魔女「杖になりそうな良い枝は回収してくれるか?」
女海賊「ん?杖欲しいの?ちゃんとしたやつ作ろうか?」
魔女「只の枝で構わん」
女海賊「ふーん」スパン スパン
魔女「手が届かぬ所に罠魔法を掛けたいだけじゃ」
女海賊「なる…そっちに投げるよ?」ポイ
魔女「ふむ…良い杖じゃ…罠魔法!」ザワザワ シュルリ
商人「まぁまぁの桟橋になったね…そろそろ海賊船入って来ると思うんだけどな」
女海賊「お姉ぇ帰って来てないんだけど…言う事聞いてくれっかな?」
魔女「何もせんでも良い様じゃぞ?昨日ちゃんと指示しておったで」
商人「ちょっと飛空艇が邪魔になるかもね…ど真ん中に陣取っちゃってる」
女海賊「寄せるわ…うわ!!熱っつ!!」モクモク
ローグ「生き返りやした…はぁぁぁ気持ち良いっす」
女海賊「ちょい飛空艇動かすからどいて!!熱いなもう!!」
ローグ「へーい…」グター
『昼』
女海賊「あ!!お姉ぇ!!」
女戦士「ローグは何処だ?」
女海賊「シカ担いで降りて来たんだ…どうやって狩ったの?」
女戦士「未来とウルフだ…ローグ!!来い!!シカの解体をやれ」
ローグ「へ~い!!」ドタバタ
女戦士「ほう?良い桟橋になったでは無いか…しかし海賊船の到着が遅いな」
女海賊「迷ってんのかな?」
商人「お~い!!ガレー船が少し下で待機してる」
女戦士「そうか予定通りだな…輸送船が思ったより遅い訳か」
女海賊「迎えに行く?」
女戦士「小舟が無いとどうにもならん…待機だ」
商人「キャンプをどういう風に作るのか分かれば準備くらいは出来るんだけど」
女戦士「それは私にも分からん…海賊達の好きにやらせるのだ…あちらには職人が居る」
商人「建築の職人?」
女戦士「海賊は拠点を次々移しながら生活していてな…キャンプを作る専門が居るのだ」
商人「僕達だけ休んでるのはなんか悪いなぁ」
女戦士「フフ気にし過ぎだぞ…よく考えてみろ…たった数時間で桟橋を用意して家の様な飛空艇まで準備しているのだ」
女海賊「私らこういうのに慣れちゃってるから普通がどうなのか分かんないかもね」
女戦士「その通りだ…普通のスピードではありえない速さで陣地構築したのだぞ?」
商人「胸を張って座ってて良い?」
女戦士「そうだな…海賊の下っ端から見ればこんな豪華な飛空艇に出入りしているお前は特別に見えている筈だ」
ローグ「頭の言う通りっすね…多分参謀に見えてるでやんす」
女海賊「私は!?ムフフ」
ローグ「姉さんはカリスマっすねぇ…あっしらの象徴になっていやす」
女海賊「はぁぁぁ癒される」
ローグ「なんで商人さんにも逆らう海賊なんていやせんぜ?」
女海賊「手配書に極悪人ズラで書かれてたりしてw」
商人「皆僕より体が大きいからさ…何かしてないといけない様に思っちゃうんだよ」
女戦士「気にし過ぎだ…むしろ海賊の馬鹿どもに教育して欲しいくらいだ…金の勘定も出来ん馬鹿の集まりだからな」
ローグ「頭ぁ…子ウルフがこっち見てるんすが骨と内臓は子ウルフにあげやすぜ?」ガシガシ
女戦士「当たり前だ…それは子ウルフの食料だ」
ローグ「そうでやんすか…」
女戦士「食べられない角と硬い骨だけ私達の取り分だな」
ローグ「未来君…切り取った肉を持って行ってくだせぇ」
子供「うん!ありがとう…」
女戦士「さて…私は海賊達が来る前に水浴びをしてくるが…お前も来るか?」
女海賊「え?私?ムリムリこんな冷たい水を浴びるなんて考えらんない」
魔女「わらわも行こうかのぅ…」
女戦士「未来も来い!良い水浴び場を見つけたのだ」
子供「僕も?」
魔女「ウルフも連れて来るのじゃ…クマに襲われたく無いでな」
子供「冷たい水かぁぁ…苦手なんだよなぁ…」
女戦士「良いから来るんだ…お前は臭すぎる」
子供「えええええ…」トボトボ
女戦士「ローグ!!飛空艇の中を温めておいてくれ」
ローグ「へい!わかりやした」
女戦士「では行くぞ…」スタスタ
『1時間後』
ガヤガヤ ゾロゾロ
商人「続々降りて来るね…何人居るんだろう?」
女海賊「ざっと50人かな」
商人「ガレー船からも小舟が出て来てる…あっという間にキャンプ出来そうだ」
女海賊「あんたここで見てる?」
商人「まぁ手伝える雰囲気でも無いしなぁ…見てるくらいしか無い」
女海賊「あのさぁ…なんかあんた恰好が地味なんだよ…だからナメられるんじゃね?」
商人「君みたいに謎のアクセサリーをジャラジャラ付けるのは嫌だよ」
女海賊「んんん…何が足りないのかなぁ…あ!!ドラゴンの牙だ…あれで鍵爪作ったげる」
商人「そんな物どうするんだよ」
女海賊「持ってるだけで良い…謎の鍵爪持ってるだけでハクが出る」
商人「ハクねぇ…」
女海賊「ちょい待ってて」スタタ
トンテンカン トンテンカン
ギコギコ ギコギコ
女海賊「お待ち!!ほい!!」ポイ
商人「はや…」
女海賊「牙の先っぽに鍵爪付けた…ほんでグリップが此処」
商人「これ何に使うの?」
女海賊「なんか引っかける」
商人「なんかって何を想定してるの?」
女海賊「肉とか何でも良いよ」
商人「あのね…ドラゴンの牙をこんな無駄な物の為に使ったの?」
女海賊「もう作っちゃったんだからどうでも良いじゃん!早く持って?」
商人「…」シャキーン
女海賊「イイ!!分かったぞ…それ左手に持って盾の代わりにすれば良い!!」
商人「ヘンテコな形の盾だ…」
女海賊「重たく無いし硬いし…絶対使える!!」
商人「まぁ良いや…ありがたく貰っておくよ」コトン
女海賊「おい!!ちゃんと持ってろって」
商人「…」ジロリ
女海賊「良いから…うん!!様になってる」
商人「ふ~ん」シラー
----------------
女戦士「さすがに冷水は寒い…中は温まっているか?」
ローグ「へい…入って良いでやんす」
女戦士「未来と魔女も中へ」
魔女「うぅぅ寒かったのぉ…」ノソーリ
子供「…」ガチガチガチ
女戦士「入る…」モクモクモク
子供「熱っつ!!」
女戦士「これは良い…ふぅぅぅ」
女海賊「お姉ぇ帰ったね?中に剣士居るんだけどまだ瞑想してる?」
女戦士「居ないぞ?起きたのではないか?」
女海賊「え?マジ?」
ローグ「あっしが入った時も誰も居やせんでしたぜ?」
女海賊「えええええ…どこ行ったのさ」
商人「女海賊!!剣士がクマ引きずって来る」
女海賊「なんだ…狩りに行ってたのか…全然気づかなかった」
剣士「近くにクマが居たから倒しておいたよ」ズリズリ
女海賊「あんたいつの間に起きてたん?なんで声掛けないのさ」
剣士「桟橋作るのに忙しそうだったからね…それよりクマの匂いが気になったんだ」
女海賊「それどうすんの?クマなんか食えないし」
剣士「熊油を採取して薬に使う…回復魔法の代わりだよ」
ローグ「良いっすね…あっしが解体しやすぜ?」
剣士「未来にも教えておきたい」
ローグ「そーっすね…未来くん出て来てくだせぇ」
子供「今行くー飛空艇の中熱すぎる」
ローグ「熊油はこうやって採取するんす…」ザクザク ジョキジョキ
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女戦士「輸送船は予定通り帰った様だな?」
女海賊「そだね…明日又来るん?」
女戦士「うむ…キャベラル船と一緒にここまで来る予定だ」
女海賊「帆船でここまで来れるんかいな…」
女戦士「まぁ来れなくても良いのだ…ここから下流までの安全確保が役割なのだから」
女海賊「ほんじゃあのガレー船4隻が主力か」
女戦士「1隻当たり50人乗っている十分だろう」
女海賊「ガレー船はキャンプに降りないの?」
女戦士「キャンプが整ったら降りて来るぞ…今晩はしっかり休んでもらわんとな」
ローグ「ガレー船に乗ってるのは皆獣みたいな体してるっす…手漕ぎ船はそんな感じっす」
女戦士「ただな…装備がほぼ裸なのだ」
ローグ「北方の海賊っすね…斧盾の裸戦士でやんす」
女海賊「あーあいつ等か見た見た…昨日昼間から漁村で酒飲んで騒いでた」
ローグ「酒と女があれば言う事聞くんすよ」
女海賊「ほーん…それでキャンプに女の人が多いんだ」
ローグ「元は男なんすがね」
女戦士「女に変わりたい者を募ったら沢山居てな…魔女に変身させてもらったのだ」
女海賊「まじか!!」
ローグ「ガレー船の海賊は何も知らんでやんす」
女海賊「こりゃ事件が起きるな」
女戦士「女に変わった海賊も満更では無い様だから放っておけ」
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キーン キーン
剣士「その鍵爪で武器をからめ取れるかもしれないね」
商人「どうやる?」
剣士「ゆっくり行くよ?…ほら鍵爪で剣を受けたらソコで引っ張る」
商人「こう?」グイ
剣士「そうそう…テコの力で丁度引っかかる」
商人「おー偶然とは言え使い物になるか…」
剣士「武器落としたら後は右手の剣で突けば防ぎようが無いね」
商人「そんなに上手く行くかなぁ?」
剣士「見て…この状態で武器を引っかけられると落とさない様に踏ん張る…その間心臓ががら空きだよ」
商人「僕に出来るだろうか…」
剣士「使い方によっては剣を折る事も出来るんじゃないかな?」
商人「よし!練習してみる!!」
剣士「もう一回行くよ…あれ?ちょっと待って…反対方向から切ってもそれで防がれたら引っかかりそうだ」
商人「こうかな?」グイ
剣士「良いね!!じゃぁこの角度は?…これも同じか」
商人「へぇ…なんか分かってきたよ」
剣士「突きでも結局鍵爪に引っかかる…それ片手剣相手にすごい有利だよ」
商人「受けの練習しなきゃ」
剣士「手で受けるのは反射的に体が動くから多分直ぐに上達する…剣で受けるのよりずっと簡単」
剣士「持ち手が牙の中に隠れてるのも良く考えられてるな…ちゃんと返しになってる」
剣士「ちょっと見せて?」
商人「はい」ポイ
剣士「牙の空洞を上手く使ってるんだ…手首で保持出来るからテコが上手く働くのもスゴイ…」
商人「女海賊はそれちゃんと考えて作ったのかな?」
女海賊「んあぁぁ?…」ドテ パチ
商人「起こしちゃったか」
女海賊「呼んだ?つつつ」
剣士「この鍵爪は君が計算して作ったのかって話だよ」
女海賊「あーソレ?アサシンが使ってた暗器を真似たんだよ」
剣士「暗器?」
女海賊「ソレ鍵爪ん所をダガーに差し替えたら暗器になんの…アサシン使ってんじゃん」
商人「へぇ…」
女海賊「あんたにゃ鍵爪で良いよ…暗器なんかどうせ使えないっしょ?」
商人「ハハまぁね…」
女海賊「目ぇ覚めちゃった…ちっと海賊からかって来る」
商人「あまり揉め事起こさない様にね」
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ガヤガヤ ガヤガヤ
俺ぁこないだの村で金どっかやっちまってよ…又振り出しよ
まぁここに居りゃ旨い山に有りつけんだ…今度こそガッポリ稼いで上手く逃げるぞ
しかし良い女が居無ぇのがなぁ…俺ぁ女のエルフ一人当てがってもらえりゃそれで良い
ここだけの話だがな?あそこにある気球ん中にガッポリ宝が有るらしいぜ?
宝より女だ…おい見ろ…アレは海賊王の娘じゃ無ぇか?アレを物に出来りゃ金も女も手に入る
止めて置けアイツはヤバイ…大人しく従っておきゃ報酬はデカいんだ…今は我慢だ
おぅそういや船貰った奴も居たな?俺らよりも働けねぇクセに許せねぇ
だから今は我慢しろ…今度こそガッポリ頂く
ガヤガヤ ガヤガヤ
魔女「これ!!法衣の中を覗くでない!!」ポカ
海賊1「嬢ちゃん下着は履いて無いのかい?にひひひひ…」
海賊2「俺達の寝床はどこだ?」
海賊3「向こうのテントに酒と食い物用意してんだとよ」
海賊4「くぁぁあ…どいつもこいつも薄汚ぇ女ばっかだな」
海賊5「居ないよりマシだろ!早く行くぞ」
女海賊「あっちでもこっちでも女の話ばっか…魔女!!ここ危なくない?」
魔女「海賊はこんなもんじゃろう」
女海賊「まぁそうなんだけどさ…特にこいつら飢えてるっぽい」
魔女「狭い船でオールを何日も漕いでおるから仕方ないのぅ…わらわはこの様な阿呆は割と好きじゃ」
女海賊「マジか…」
魔女「ドツけば言う事聞くでのぅ」
女海賊「馬鹿ばっかりなのは同意…でもなんか裏切られる心配がねぇ」
魔女「報酬次第なのじゃろう?」
女海賊「まぁね…いやぁぁしっかし…どうしてこんなに樽ばっかりのキャンプになっちゃうんだろ」
魔女「うむ…ぐちゃぐちゃじゃな」
女戦士「見回っているのか?」スタスタ
女海賊「あ…お姉ぇも来たか」
女戦士「今日のキャンプ設営は終わった様だな」
女海賊「そだね…皆食事を始めてる」
女戦士「親睦は謀らんで良いのか?」
女海賊「色目で見られるから気持ち悪いんだよ」
女戦士「フフまぁそうだな」
女海賊「なんかさぁ…あちこちで悪い話してんだけど大丈夫?」
女戦士「ハハお前がそんな事を気にするとはな…アイツらは底なしの馬鹿だ…酒と女が居れば纏まる」
女海賊「女少ないじゃん」
女戦士「そうか?丁度良いと思うぞ?」
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海賊「姉ちゃんこっちコイや…飲もうぜ」
女1「あーん?誰に口聞いてんだバーロ!!」
海賊「まぁ良いじゃ無ぇか…ここで会ったのも何かの縁よ」グビ
女1「舐めた口聞いてんじゃ無ぇぞ!?俺は男にゃ興味無ぇんだ!!」
海賊「なぬ!?どういうこった?」
女2「ここに居たのか…どうする?もう場所が無いぞ?」
女1「うーーん困ったな」
海賊「おぉ!!そっちの姉ちゃんでも良い!一緒に飲まねぇか?」
女2「んん?お前の知り合いか?」
女1「いや…どうも俺らとヤリたい様だ」
海賊「おぉ!!話が早ぇぇじゃ無ぇか…まぁ2人纏めてでも良いぞ?」
女1「どうする?何処に行っても見られるぐらいなら此処でも良いか?」
女2「まぁそうだな…俺が先に舐める」
海賊「おいおい…何始めようってんだ?待て待て…俺は抜きなのか?」
女1「男に興味は無いと言ってるだろ…黙って見てろ」ハァハァ
海賊「ぬぁぁぁぁ何だこいつら!!おい混ぜろって!!」
ガヤガヤ ガヤガヤ
何かあっちで揉めてんぞ?
女2人がおっ始めたらしい…見に行くぞ
何のショーだ?
金持って来い金!!
ガヤガヤ ガヤガヤ
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女海賊「ありゃりゃ…事件が始まった…」
魔女「本真に阿呆じゃのぅ…見て居れん」
女戦士「やらせておけば良い…私達は戻るぞ」
女海賊「アレ本当は全員海賊の男達だよね?」
女戦士「そうだ」
女海賊「変身はどのくらい継続すんの?」
魔女「さぁのぅ?個人差があるで分からぬ1年の者も居れば1日の者も居るじゃろうな…どうでも良い話じゃ」
女海賊「あぁぁぁ嫌な物見ちゃった…帰ろ」
魔女「そうじゃな…明日に備えよ」
ガヤガヤ ガヤガヤ
おい見えないだろ!!
ちょちょ…なんでそこで止める!!最後までヤレよ
酒持ってこい酒ぇぇぇ!!
どけ!!代わりに俺がヤル
ガヤガヤ ガヤガヤ
『飛空艇』
商人「目標を修正する…輸送船の速度から考えて隠れ家の推定場所はこっちだ」
女戦士「2日で行ける範囲が狭くなったのか」
商人「ガレー船だと明日の朝出発したとして夕方には現着する筈だよ」
女戦士「では予想を外した場合は更に翌日に持ち越すのだな?」
商人「そうなるね」
女戦士「夜間移動するよりは良い」
商人「もし隠れ家を発見したとして夕方から戦闘となると被害が出そうだけどどうしよう?」
女戦士「避けるべきだ…隠れ家の場所の確定後落ち着いて翌日に上陸させるが無難」
商人「じゃぁ間が空いちゃうな」
女戦士「状況にもよるが私達が先行して上陸経路を確保するだな」
商人「3人かぁ…」
魔女「わらわも行けるぞよ」
商人「魔法無しで?」
魔女「遠距離魔法は使えんのじゃが回復や罠魔法でのサポートは出来る」
女戦士「回復役が居るのはありがたい」
剣士「回復魔法はどうやって?」
魔女「直接触って掛ければ分散が最小限に収まる」
剣士「そうだったのか…」
商人「相手の抵抗次第だけど4人でやるしか無いか」
女海賊「ほんじゃ私は飛空艇から援護射撃って感じ?」
商人「そうだね…僕とローグはクロスボウを撃つ」
女戦士「例の爆弾は十分あるな?」
女海賊「大丈夫大丈夫!1発あたり100メートルくらい吹っ飛ぶから森を裸にすんのは心配しなくて良い」
女戦士「では明日の朝に出発して私達は予定通り空爆を昼までに終わらせよう」
商人「一発で発見できれば良いね」
女戦士「恐らくなのだが…どこかに船が停泊していると思うのだ」
商人「そうだろうね」
女戦士「それが見つかるかどうかだな」
女海賊「船あったら奪っちゃいたいね」
女戦士「うむ…海賊達の士気が一気に上がる」
『翌朝』
…本日は目標までの移動のみだ!上陸は禁止する
現地に到着後船上からの射かけの準備をする事
特に夜間はトロールの出現が懸念される為
場合によっては撤退の指示を出す…その場合は速やかにキャンプへ戻る事
では作戦を開始する…各自船に乗れ!!
ゾロゾロ ゾロゾロ
女海賊「あ~あ…こりゃ疲れ取れて無さそう…」
女戦士「毎度の事だ」
ローグ「大丈夫でやんす…もう占領後の略奪しか頭に無いっすよ…がっつり働くでやんす」
女海賊「ほんじゃ私達も出発しよっか…乗って!!」
ローグ「あいさー」
『飛空艇』
ビョーーーウ バサバサ
商人「少し高度落として…ホムンクルスが居ないと正確な座標が分からない…」
女海賊「目印は何か無いの?」
商人「滝なんだ…見えないかい?」
女海賊「うーーーん…」
商人「マズイな…時間掛かり過ぎてる」
女海賊「剣士!!匂いとか音で分かんない?」
剣士「高度下げたら速度も落としてほしい…風の音が邪魔だよ」
女海賊「おけおけ…」
女戦士「…しかし森の傷みがひどいな」
ローグ「あちこちで煙がくすぶってやすね?」
女戦士「霧だと思って居たのだが…すべて煙か」
剣士「西の方角で滝の音!!」
女海賊「お!?転進」グイ
剣士「そのまま2キロくらい先」
商人「分かった!!今ココだ」
女海賊「木しか見えないなぁ…」
剣士「滝の有る場所に何か目印を落とそうか?」
女海賊「何かある?」
魔女「矢に照明魔法を掛けよ…光の矢にするのじゃ」
女海賊「お?イイね」
剣士「照明魔法!」ピカー
剣士「触って居ればちゃんと掛かる…」
女海賊「商人!爆弾の準備して」
商人「この樽だったね?」
剣士「撃つよ…」ギリリ シュン
女海賊「あそこか…全然滝なんか見えない」
商人「どうする?」
女海賊「お姉ぇ!爆撃始めるよ?」
女戦士「まず川を露出させてくれ…目視したい」
女海賊「おっけ!!ほんじゃカウント…3…2…1…落として」
商人「…」チリチリ ポイ
ピカーーーー チュドーーーーン
ローグ「うほほー久しぶりっすねぇ…」
女海賊「あんたも見て無いで手伝って…次!!3…2…1…今!!」
商人「…」チリチリ ポイ
ピカーーーー チュドーーーーン
剣士「川が見えた!!」
女戦士「続けるのだ…もし船が見えたらその周辺を重点的に爆撃するのだ」
女海賊「おけおけ…どんどん行くよ!!3…2…1…今!!」
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------------------
『昼過ぎ』
ピカーーーー チュドーーーーン
女戦士「これほど爆撃されて何も動きが無い…」
商人「予測外しちゃったかな…」
ローグ「船もありやせんねぇ…」
剣士「川の水面ギリギリで飛んでくれるかな?」
女海賊「行って見る」グイ
シュゴーーーー バサバサ
ローグ「姉さん火柱の上昇気流に撒かれないでくだせぇよ?」
女海賊「わかってんよ!!」
剣士「…」
女海賊「何か分かる?」
剣士「滝の方へ!!」
女戦士「見えた!!アレだ…」
女海賊「もう限界!!上昇!!」グイ バサバサ
ドドドドドド
ローグ「うひゃぁ…姉さん!!頼んます…危ねぇのは勘弁して下せぇ」
女海賊「ふぅぅ…滝に突っ込んじゃう所だったね」
女戦士「滝の奥が大きな洞穴になっている…船はその中だ」
商人「良かった…予測が当たった」
女戦士「これでは上陸し難いな…」
女海賊「滝の裏って事は横から回って入るんだよね?」
女戦士「滝の周りは水流が不安定だ…少し間違うと滝に飲まれる」
女海賊「あーー直接乗り込むのは時間が掛かるって事か」
女戦士「うむ…さてどうする?」
魔女「その洞穴に入るのには船だけなのじゃろうか?」
女戦士「私ならそのように構えるな…守備するには完璧な構造だ」
魔女「徒歩で行けぬ訳か…厄介じゃのう」
商人「滝を塞き止められないかい?」
女戦士「む…」
商人「今滝が落ちている場所を爆弾で変えるんだ…横に少し低い傾斜が出来れば全部そっちに流れる」
魔女「おぉ主は賢いのぅ」
商人「その水は結果的に元の川に戻るから下流に影響は無い」
女戦士「よしそれで行こう」
『滝の上流』
ピカーーーー チュドーーーーン
商人「よしよし…あと2発くらいで川の流れが横に逸れる」
女海賊「これ滝の落ちる場所変えたとして私達がどうやって行く?」
女戦士「先行で行くと船が来るまで帰れなくなる可能性もあるな…」
商人「中の状況知らないで海賊を突入させる訳にも行かないよね」
女戦士「その通りだ…」
女海賊「んんん洞穴ん中を飛空艇で行くとどっかぶつけるだろうなぁ…」
女戦士「それは無理だ…風も無い」
剣士「クロスボウ使ってロープを向こうに渡せば伝って行ける」
女海賊「超危ないじゃん…切れたらドボンだよ」
剣士「下は水だよ…死ぬことは無い」
女海賊「又一人で行くつもり?中に何あんのか分かんないんだからさ…」
剣士「僕と未来はハイディングが出来るよ」
女戦士「ロープを伝うのは海賊の基本だ…私も一緒に行こう」
魔女「わらわはどうしようかのぅ?」
女戦士「私が背負ってやる…帰りのルート確保は魔女の罠魔法が必要になりそうだ」
魔女「ふむ…ツタを出すのは良い案じゃな」
商人「じゃぁ僕らはクロスボウで援護する感じか」
女戦士「ここからキャンプまではハイディングすれば30分かからんな?」
女海賊「ん?どうすんの?」
女戦士「輸送船に私の気球を乗せて来ている筈なのだ…飛空艇と合わせて2台体制にしておきたい」
女海賊「ダッシュで戻ってもう一基気球取って来りゃ良いんだね?…援護射撃無しになっちゃうけど」
女戦士「出来るだけ早く戻って来い…それまでは凌いでやる」
女海賊「おっけ!!」
女戦士「射手は適当に海賊を乗せて手伝わせろ」
女海賊「キャンプで暇してる奴連れてくるわ」
商人「よし…決まったね?」
女海賊「ほんじゃさっさと爆弾落として川の流れ変えよう…いくよ!!3…2…1…落として!!」
商人「…」チリチリ ポイ
ピカーーーー チュドーーーーン
『隠れ家の入り口』
ヒュゥゥ バサバサ
商人「中の船までロープ渡す!撃つよ?」バシュン シュルシュル
商人「よし!!掛かった」
剣士「敵が見える!!」
女戦士「何が居る?」
剣士「多分ダークエルフ…2人!!」
女海賊「ああああ!!撃って来る!!」
シュンシュン スト スト
剣士「僕が先行する!!未来!!背中に乗って」
子供「うん!!」ピョン
子ウルフ「ガウ…」ピョン
剣士「いくぞ…いつも通り合図でハイディングする」
子供「おっけ!!」
シュン バスン!
女海賊「ヤバ…球皮に当たった…早くして!回避出来ない!!」
剣士「行って来る!!」ピョン シュルシュル
女戦士「魔女!!剣士に続くぞ…乗れ」
魔女「怖いのぅ…」ノソノソ
女戦士「私が向こうに付いたらロープを切れ!しっかり掴まれ魔女!!」ピョン シュルシュル
シュンシュン スト スト
女海賊「何やってんのさ応射してよ!!」
ローグ「あいさーー」バシュン バシュン
商人「女戦士が船に乗った!!ロープ切るよ!!」スパ
女海賊「ヤバイなぁ…高度上がんないかも」グイ
ローグ「あっしが上行って応急してきやす…姉さんは早くキャンプ向かって下せぇ」
女海賊「頼む!!商人!!射撃続けて!!」
商人「分かってる…」モタモタ
女海賊「やっぱ人出が足んない…」
ローグ「姉さ~ん!!近くまでガレー船が来てやすね」
女海賊「バッチタイミング!!上手い事援護してくれるの祈る」
商人「ふぅ…良かった」
女海賊「ハイディングするよ?」スゥ
『キャンプ』
フワフワ ドッスン
女海賊「ローグ!!お姉ぇの気球お願い」
ローグ「任せるでやんす」
商人「僕もローグと一緒かな…予定だとガレー船の援護しながら指揮だ」
ローグ「あっしに付いて来て下せぇ…海賊見繕いながら直ぐに出発するでやんす」
女海賊「あのさ…こっちの球皮はもう大丈夫?」
ローグ「処置はしときやした…多分大丈夫と思いやすが無理はせんでくだせぇ」
女海賊「おけ!!ほんじゃ私も適当に海賊乗せて隠れ家の方に戻る」
ローグ「姉さんは一人なんで気を付けて下せぇ…姉さんに逆らう海賊は居ないとは思いやすが…」
女海賊「大丈夫大丈夫!!それよりお姉達心配だから早く戻ろ」
ローグ「あいさー!!商人!!行ややすぜ?」タッタッタ
商人「待って!!」タッタッタ
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メラメラ パチ
お前と居るといつも貧乏クジ引いちまう…折角良い山に有りつけたと思ったんだがな
何だと?お前が女にかまけて居る間に置いて行かれたんだ!ガッポリ稼ぐ筈がこの座間だ
しかしどうする?ここじゃ逃げるに逃げられねぇ…ぁぁぁツイて無ぇ!!
武器もガレー船に乗せたままだ…丸腰じゃどうにもならねぇ
おい!!お前等!!少し黙れ…見ろ…ヤバイ奴が来た…頭の妹分だ
おぉぅ…あんな良い女抱けたら俺は足洗って真面目に働くんだが
黙れ!聞こえる…頭ぶち抜かれるぞ
スタスタスタ
女海賊「おい!あんたら…こんな所で何やってんだよ」
海賊1「へ…へい」---マズイ---
女海賊「何やってんのか聞いてんだ!!耳付いてんだろ?答えろ」
海賊1「いや…キャンプの守備を」
女海賊「丸腰で?舐めてんの?」ジロリ
海賊2「いや違うんだ…今は非番で休憩中なんだ」
女海賊「ほーん…4人共付いて来い」
海賊3「何をするつもり…ですか?」---やべぇバレてる---
女海賊「前線に行く…手伝え」
海賊4「前線?」
女海賊「私の飛空艇で前線に行くんだ…射手が居ないから手伝えっての!!」
海賊4「おぉ!!やっとツキが回って来た」
女海賊「どうせ暇してんだろ?クロスボウを撃たせてやる」
海賊1「あの気球に乗せて貰えるんで?」
女海賊「今言ったじゃん…あんたら頭悪い?」
海賊2「おぉぉぉ!!こりゃスゲェ事だ…俺らエリート候補だぞ?」
女海賊「何でも良いから早く行くよ!!付いて来い」
海賊1「おい!!行くぞ!!あの気球に乗れる」
女海賊「モタモタしないで!!早く前線の援護に行きたいの」
海賊3「行くぞ行くぞ!!遅れた分取り返すぞ!!」ドスドス
『飛空艇』
フワフワ
女海賊「乗ったね?」
海賊1「スゲェ…中はこうなって居たのか」
女海賊「あんた達の仕事はそこのクロスボウでの援護射撃…撃ち方分かる?」
海賊2「任せろ…」
女海賊「よし!ほんじゃ私の指示に従って撃つ…良いね?」
海賊2「分かった分かった…」
女海賊「じゃ出発する」グイ
シュゴーーーーー バサバサ
うはぁぁぁスゲェ…メチャクチャ早えぇ
これどうなってんだ?
おい俺らこの気球に乗ってるって事はよ?幹部なんだよな?
女海賊「あんたらが私らの仲間になるかどうかは働き方次第だね」
海賊1「働き方…」
女海賊「私の奴隷になる?」
海賊2「奴隷は何をすれば?」
女海賊「足を舐めたり飯作ったり…言う事聞いたらたまにアソコも舐めさせてやる」
海賊3「何だとう!!俺は奴隷で良い!!」
女海賊「だったらしっかり働きな!!」
海賊4「お前のそういう所がツキを落とすんだ…今度は俺の番だ」
女海賊「あぁぁぁうっさいなぁ!!兎に角いう事聞きゃ良いんだよ!!黙ってろ!!」
へい!!
---------------
じゃぁ説明する…前線に4人先行して敵の隠れ家に潜入してるから
敵の行動を制限するようにクロスボウで援護射撃…当たんなくても威嚇になる
ほんで予備のボルトはそこの箱の中
2連射出来るクロスボウだから1発目は距離を測って2発目で修正
その他煙玉とか閃光玉を使う場合はその都度指示出すから従って
海賊1「へい!!」
海賊2「あい!!」
海賊3(ちぃあの二人上手く取り入ろうとしてんな?気に入らねぇ…)ヒソ
海賊4(ここは従ってとにかく戦果出しゃ奴隷にしてもらえる…あいつらより上手くやるぞ)ヒソ
海賊3(やっと回って来たツキだ…絶対モノにすんぞ…あの足を舐めれるのを想像しただけで…)ヒソ
海賊4(またそれか…これで見染められたらめでたく幹部だ…ぐっふっふっふ)ヒソ
『隠れ家の前』
シュゴーーーー バサバサ
海賊1「俺達の船はどれだ?」
海賊2「先頭だな…こっから見ると小せぇな」
海賊1「船上で弓構えてる…敵は何処だ?」
海賊2「洞穴の中だ…なんだありゃ?でかいネズミか?」
女海賊「あぁぁマズイなあ…ラットマンリーダーじゃん」
女海賊「ガレー船から弓が届いて無い」
女海賊「あのネズミ何匹居るか見える!?」
海賊1「ここから見えるのは4匹です」
海賊2「奥の方にエルフが見えます」
女海賊「ええ!?エルフ?ダークエルフじゃないの?」
海賊2「あれは戦化粧をしたエルフですね…ダークエルフじゃありません」
女海賊「なんでエルフが敵になっちゃってんのよ…弓持ってるからあんま近付け無いなぁ」
海賊1「どうしやしょう?」
女海賊「もうちょいだけ近づくからエルフを狙って出て来れない様にして」
海賊1「へい!!」
女海賊「行くよ…撃って!!」
海賊1「…」バシュン バシュン
海賊2「…」バシュン バシュン
女海賊「もっともっと!!」
魔女「回復魔法!」ボワー
女戦士「済まない…つつつ」
魔女「攻め切らんな」
剣士「ハイディングが奥のダークエルフに見破られる」
女戦士「もう一度私が囮になる…まず手前のラットマンリーダーを1匹で良いから処理してくれ」
剣士「危険だよ…ダークエルフの弓が精度良すぎる…君も頭を狙われたら危ない」
魔女「わらわが囮になる…変性魔法で鉄になるで放り投げてくれ」
剣士「ダメだよそれじゃラットマンリーダーに掴まる」
女戦士「くそう…爆弾が欲しい所か…未来!!持って居ないか?」
子供「さっき水被って濡れちゃった…どうしよう?」
シュン シュン シュン シュン
スト スト スト カラン
剣士「後ろ!!」
女戦士「飛空艇か!!よし…援護射撃が来る」
剣士「未来!!ハイディングからラットマンリーダの首を狙え…一匹で良い」
子供「うん…パパは?」
剣士「ダークエルフの射線を塞ぐ…女戦士!!囮を頼む」
女戦士「分かった!!未来!!オーガの首を落としたのを思い出せ!!行くぞ」ダダダ
『飛空艇』
ヒュゥゥゥ バサバサ
女海賊「撃って撃って!!」
海賊1「…」バシュン バシュン
海賊2「…」バシュン バシュン
女海賊「おい!!あんたら何やってんだよ…ボケっとしてないで撃てって!!」
海賊3(俺は右だ…お前は左行け)ヒソ
海賊4(おい!やめておけ…あ)ヒソ
女海賊「もっかい回るよ…合図したら撃って」グイ
海賊3「…」ゴスン!
海賊1「はぅぅ…」ドタリ
海賊4「やっちまった…くそう…」ダダ ゴスン
海賊2「!!?うぐぅ…」ドタリ
女海賊「え!!?」
海賊3「ふぅぅぅ…この気球は俺らが頂く」
女海賊「ちぃぃあんたらぁぁ!!」スチャ
海賊3「うおぉっと!!危ねぇ危ねぇ…」グイ
海賊4「そいっつぁ海賊王の娘だぞ?ヤバく無ぇか?」
海賊3「ヤバイも何もこの状況をもうひっくり返せないだろ…ボケっとしてないで縄で縛るぞ」
女海賊「離せよこのバカ!!」ジタバタ
海賊3「だははは俺ぁ海賊だ…お宝ガッポリ稼いで良い女を抱く…意味分かるな?」
海賊4「ここまで来たら行く所まで行くしか無ぇか…この気球は俺が貰う…お前は女…それでどうよ?」グイグイ ギュゥゥゥ
海賊3「おいおい待てよ…そりゃどんなお宝が有るか見た後だ…兎に角2人で山分けって訳よ」
女海賊「このスカポンタン!!あんたらなんか…」
バチーン!!
女海賊「痛った!!」ギロ
海賊3「ぐははは…さて海賊王の娘のアソコはどうなってるんだ?うひひひひ」モゾモゾ
海賊4「待て待て…まずはここから逃げるが先だ…掴まっちまったら又振り出しに戻るぞ」
海賊3「お楽しみには後でゆっくりか…しゃー無ぇ逃げるぞ…お前気球の動かし方分かるか?」
海賊4「分かる訳無いだろう…兎に角触ってみろ…俺はどんなお宝積んでるか見て来る」
海賊3「おい!!持ち逃げなんざすんなよ?ここまで来たからには最後まで2人だ」
女海賊「ぐぬぬぬ…」ジタバタ
海賊3「暴れても無駄よ…たぁぁっぷり俺の奴隷になってもらうからな?」
女海賊「ぺっ」
海賊3「さぁて…どう動かすんだ?このロープか?」グイ
海賊4「うお!!樽ん中に女が入ってる…裸だ」
海賊3「何ぃ!!」ドタドタ
海賊4「出すぞ?」ザバァァァ
海賊3「こりゃメチャクチャ上玉じゃ無ぇか…」
海賊4「この女は俺が頂く…これで平等だな?」
海賊3「何かおかしいな…死んでんじゃ無ぇか?」
海賊4「死んでたらこんなにぐにゃぐにゃな訳無ぇだろ…ん?息して無ぇ」
海賊3「ははーん…硬直しない様に液体に漬けていたのか…確かに勿体無ぇよな?こんな上玉を埋めるのはよぅ」
海賊4「後で回すか?」
海賊3「そうだな?捨てる前に使い切るのは名案だ…他の樽にも入って無いか?」
海賊4「おう!!見てみる…お前は気球を何とか動かしてくれぃ」
女海賊「…」---くっそヤバいなコレ---
---どうする?---
---どうする?---
-----------------
海賊4「まだ動かし方分かん無ぇのか?」
海賊3「しょうが無ぇだろ…どれが何なのかさっぱりだ」
海賊3「おい!!海賊王の娘さんよぅ…どうやって動かすんだ?」
女海賊「…」ギロリ
海賊3「しょうが無ぇちぃぃっと悪戯するか」
海賊4「お前そんな事してる場合じゃ無いのは分かってるだろ」
海賊3「指入れるぐらいは良いだろ」グニュグニュ
女海賊「ぐぬぬ…」ジタバタ
海賊3「暴れると痛いぜぇ?ぐはは…どうやって動かすかしゃべったら止めてやる」
女海賊「くっそ!あんたら…」ハァハァ
海賊4「下で俺らの船が止まってるんだけどよ…アホだなあいつら…なんで上陸しないんだ?」
女海賊「…」---ピーンと来た!!---
海賊3「おい!いい加減喋ろよ…こっちも必死なんだ」
女海賊「そこのほら貝で突撃させてみな?上陸すっから」
海賊3「うほほそりゃ面白れぇ…だが知りたいのはそれじゃ無い…気球の動かし方だ」グニュグニュ
女海賊「痛いんだって!!くそがぁぁ!!」
バチーーーーン
海賊3「舐めた口利くんじゃ無ぇ…お前は俺の奴隷だ…な?」
女海賊「くぅぅぅぅ…」
海賊4「兎に角逃げるぞ…いつバレるか分かったもんじゃ無ぇ…適当に動かせ」
海賊3「分かったよ…んあぁぁ…これか?」グイ
海賊4「おぉ旋回し始めた…そこら辺の奴だ」
海賊3「どっちに行きゃ良いんだ?」
海賊4「とりあえずセントラルなら西だな」
海賊3「あっちはダメだ…逆だな…シン・リーンの港町に向かうぞ」
海賊4「方角分かるか?」
海賊3「ここじゃ分からん…まず海に出るか…どっちの方角だ?」
海賊4「もう良い!!俺がやる」
海賊3「最初からそうしておけば良いんだ…さて俺は」
海賊4「おい!女は後だ…下でも見張ってろ」
海賊3「続きは後でたぁぁっぷりしてやるからな?ぐふふふふ…このほら貝を吹きゃ良いのか?」
女海賊「…」---吹け吹け---
海賊4「突撃させるんだな?面白れぇ」
ボエーーーーー ボエーーーーー
『隠れ家の入り江』
ドン ズザザ
女戦士「未来!!引け!!」
子供「いたたた…」ヨロ
女戦士「後は私が首を落とす!!」
ラットマンリーダー「ガオォォォォ」ドスドス
女戦士「このデカブツめ!!」ブン ザクリ
剣士「女戦士!!引いて!!」
シュン シュン カキン カキーン
剣士「だめだ…ダークエルフの射線に入ってる」
女戦士「そのラットマンリーダーに止めを!!」
剣士「くぅ…」スパ スパ
女戦士「盾の中に…」バッ
カン カン カン カン
女戦士「そのまま下がれ…」ズリズリ
剣士「やっと1匹…」
女戦士「矢を抜いてやる」グイ ズボォ
剣士「うぐ…回復魔法!」ボワー
女戦士「たった2人の弓がこれほど脅威になるか…」
剣士「あっちは僕より射程が長くて正確だ」
女戦士「接近せん事には勝てんか」
剣士「うん…」
ボエーーーーー ボエーーーーー
女戦士「何ぃ!!突撃だと?」
剣士「後方で何か有ったな?」
女戦士「しまった…ほら貝を置いて来てしまった…」
剣士「海賊達が入って来るとタゲが分散する…一気に行こう」
女戦士「くそう…被害が出てバラバラになってしまうと言うのに」
剣士「仕方ないよ…後ろで何かに攻め立てられているのかもしれない」
女戦士「…魔女!!千里眼で見えんか!!」
魔女「無理じゃ…ここでは千里眼が通じぬ」
女戦士「まぁ良い…この船の船尾で負傷者が出た場合の一時避難ベースを構えよう」
魔女「ふむ…」
女戦士「海賊達が乗り込んで来たら私が誘導する…剣士と未来は兎に角敵の殲滅を優先してくれ」
剣士「分かった」
女戦士「なんとかダークエルフの弓を凌ぎたいが…」
魔女「この船には使えそうな物は何か積んで居らんのかのぅ?」
女戦士「見た所大砲は積んで居ない様だ…輸送専用のガレー船だな」
女戦士「いやまてよ…油があれば火責めが出来る…そうだ火矢だ!!それならある筈だ」
剣士「未来!下に行って探して来れるか?」
子供「うん!頑張る!!」
女戦士「海賊が突入してくる前に目煙で弓の射線を封じたい…出来るだけ早く探してくるのだ」
子供「行って来る!!付いて来て子ウルフ!!」シュタタ
子ウルフ「がう!!」シュタタ
『貨物用気球』
ビョーーーウ バサバサ
ローグ「やっと追い付いたでやんすね」
商人「アレ?何か様子が変だな…ガレー船が動いてる」
ローグ「そーっすね?今日は待機の筈っすよね?」
商人「状況が変わったのかな?」
ローグ「姉さんの飛空艇もなーんか変な所を飛んでるでやんす…あんな低空で何処に行くんすかね?」
商人「何か追ってるのかな?」
ローグ「あっしは操舵で忙しいんで望遠鏡で見てもらえやせんか?」
商人「どこにある?」
ローグ「荷室のどっかに置いといたんすがねぇ…」
船乗り「ここにあるでがんす」
商人「あぁありがとう」
ローグ「船乗りさんと航海士さんはクロスボウの準備しといてくだせぇ」
船乗り「がってん!!」
航海士「あいよー!!」
商人「んんん…何を追ってるのかなぁ…何も居ないけどなぁ」
ローグ「あっしらはガレー船の援護っすよね?ガレー船の方に向かいますぜ?」
商人「うん…飛空艇の高度がどんどん下がってる…どうしたんだろう?あのままじゃ木に引っかかる」
ローグ「あ!!球皮の穴が広がったかもしれやせん…こりゃ姉さんに怒られるパターンっす」
商人「でもさ?速度上げたら羽の力で上昇するよね…あ!!!何か落とした」
ローグ「落とす?…そんな事姉さんは今まで一度もやった事無いっす」
商人「やっぱりおかしい…飛空艇で何か起きてる…まさかハーピーか?」
ローグ「そらヤバイでやんす…ちっと飛空艇を追いかけやしょう」
商人「東側に回って!!何を落としてるのか確認する」
ローグ「あいさー」グイ
ビョーーーーウ バサバサ
『飛空艇』
ドス ドス ガス
海賊3「くそう…喋らねぇ」
女海賊「ぐふ…くぅぅぅ」
海賊4「ようし!!高度上がり始めた…ふぅ」
海賊3「こっちの伸びてる奴も捨てるぞ…そっち持て」グイ
海賊4「こいつ重いな」グイ
海賊3「これでもう少し高度上がるだろ…このままトンズラよ!だはははは」
海賊4「せーの!!」ポイ
海賊3「海賊王の娘はいくらで売れると思う?売らずにずっと俺の奴隷にするか…いや売ってもっと良い女を買う手もある」
海賊4「この気球がどれぐらいの価値があるのかも分からない…謎の道具も全部売ればいくらになる?どう山分けする?」
海賊3「ぐふふ笑いが収まらねぇ…」
海賊4「なんつーか…今までの苦労がやっと報われたな」
海賊3「さぁて!!お楽しみにの時間だ…まずはじっくりと舐めてだな」ヌフフ
海賊4「今日はツイてる…俺は腐る前にこいつを楽しむぞ?」ジュルリ
海賊3「おうよ…その後交代だ」
女海賊「ぅぅぅぅ」グター
海賊3「縛ったままじゃ脱がしにくいな…足だけ緩めてやる…暴れんな?」グイ グイ
女海賊「このぉ!!」バタバタ
海賊3「だはははは…大事な所が丸見えだ…あんまり動くな」ベロベロ
女海賊「やめっ!!ろ!!」ドン
海賊3「やっぱり生きが良いのはうめぇ!!このねっとりとした汁が最高にうめぇ…うはは暴れろ暴れろ…」
女海賊「ぁ…くぅぅぅ」ビクビク
海賊4「こっちゃ無反応…まぁ楽しむだけ楽しむか…」ベロベロ
ホムンクルス「…」クター
『貨物用気球』
ビョーーーーウ バサバサ
ローグ「今落ちて行ったのは海賊の誰かっすね…商人さん!操舵変わってくだせぇ…あっしが向こうに飛び乗りやす」
商人「見えた!!女海賊が縛られて2人に襲われてる!!」
ローグ「マズイっす…かなりマズイっす」
商人「行かなきゃ…僕がやらなきゃ…僕が…そうだ僕の命が一番安い」グイ グイ ギュゥ
ローグ「あっしが行きやす…商人さんには無理っす!!」
商人「ダメだ…あの中にはホムンクルスが居る!!奪われる訳に行かない」
ローグ「こっから飛び移るのは商人さんじゃ無理でやんす…操舵変わって下せぇ」
商人「僕が失敗したら次ローグお願い」バシュン シュルシュル ストン
ローグ「何をする気でやんすか?ロープ伝って行くんすか?」
商人「この鍵爪に引っかけて向こうに行く!援護頼む!」ピョン
ローグ「そら無茶ってもんす…商人さんじゃ海賊を相手にできやせ…ああああっ!!」
シュルシュル スタッ
ローグ「あわわわ…えーい!!船乗りさんと航海士さんはクロスボウで援護したって下せぇ」
船乗り「がってん!!」
航海士「あいよー!!」
『飛空艇』
ヒュゥゥゥ バサバサ
商人「…」---煙玉一発---
商人「…」---行けるか?---
チリチリ ポイ
海賊3「ぐへへへ…入れちまうぞ?」
女海賊「汚ねぇ物…押しつけんな!!」ググググ
コロコロ コロコロ
海賊3「なんだ?」
海賊4「え?爆弾?」
モクモクモク モクモクモク
海賊3「どわぁぁ!!畜生!!誰か来やがったな!!上だ!!げふっげふっ」
海賊4「何処だ?何処から上に上がる?」
海賊3「そこのタラップだ!!上がれ!!」
海賊4「これだな?この野郎!!」ダダ
商人「これでも食らえ!!」ダダダ ピョン ドシ!!
海賊4「ぐぁ‥‥」ヨロ
商人「落ちろ!!」ドン
海賊4「あぁぁぁぁぁぁぁ…」ヒュゥゥゥゥ
海賊3「げほっ…げほっ…ちぃぃぃこのチビ!ゆるさねぇからな」
商人「来い!」タジ
海賊3「あの気球から飛び乗って来たのか…その手には引っかから無ぇぞ?クロスボウで狙ってるのはお見通しだ」
商人「抵抗しても無駄だよ…降参しろ」
海賊3「チビが生意気言ってんじゃ無ぇ…中で勝負つけようじゃ無ぇか…来いよ」
商人「僕には武器がある…君は丸腰だ」スラーン
海賊3「笑わすなよ…そんな細腕で振った剣なんざ俺の筋肉で跳ね返してやる…そしてなんだその鍵爪は」
商人「チビチビ言うなぁ!!」ダダダ ブン
海賊3「見え見えなんだよ!」ブン ドカ
商人「うぁぁ…」ズザザ
海賊3「かかってこいや弱虫!!げほっ…ぬぁぁぁ煙がうっとおしい!!」
商人「むぅ…」---危なかった落ちる所だった---
シュンシュンシュン ストストスト
海賊3「ぐぁーっはっは…その位置じゃ狙え無ぇ…こっちまで来てみろ」
商人「…」---まずいな飛空艇に籠られたら倒せない…どうする?---
海賊3「こっちに来ねぇならこっちもクロスボウを撃つまでだ…この距離で回避できっか?」ガチャリ
商人「ええい!!」スパ
グラリ
海賊3「どわぁぁ…」ゴロゴロ
商人「もう一本!!」スパ
グラリ
海賊3「んの野郎!!お前も落ちっぞ!!」ガシ ブラーン
商人「さて?このロープを切ったらどうなると思う?」
海賊3「切ってみろよ…お前も落ちる」
商人「この鍵爪はこうやって使うのさ」ブラーン
海賊3「何ぃぃ!!」
商人「僕の勝ちだ…さよなら」スパ
海賊3「だぁぁぁぁぁ…」ヒュゥゥゥゥ
『貨物用気球』
ビョーーーウ バサバサ
ローグ「あわわわ…危ねぇでやんす!あわわわ…」
船乗り「よっしゃぁぁ!!もう一人が落ちて行ったでがんす」
航海士「商人さん上手くぶら下がりましたね」
ローグ「まだ向こうにロープ掛かってるっすね?船乗りさんこっちのロープ外れない様に上手く引っかけてくだせえ」
船乗り「がってん!!」グイグイ ギュゥ
ローグ「この気球で持ち上げて飛空艇の姿勢を安定させるでやんす」グイ
航海士「商人さん一人で処置出来ますかね?」
ローグ「船乗りさん操舵を変わって下せぇ…あっしが飛び乗って処置して来やす」
船乗り「操舵は船の一緒でがんすか?」
ローグ「ほとんど同じでやんす…飛空艇の船体を出来るだけ平行に保つ様にお願いしやす」
船乗り「任せるでがんす…」
ローグ「あっしは飛空艇のロープ結んだらこっちに戻って来るんで後でロープ引き上げて下せぇ」
航海士「ロープの扱いに慣れている人が乗ってて良かったですね」
ローグ「頼りにしてるっす…ほんじゃ行って来るんで頼んます」ピョン シュルシュル
航海士「あいさー!!」
『飛空艇』
ヒュゥゥゥゥ バサバサ
ローグ「商人さん立てやすか?」
商人「ありがとうローグ…ぶら下がりっ放しになる所だったよ」
ローグ「切ったロープの処置はあっしがやりやすんで姉さんをお願いしやす」
商人「分かった!!」タッタッタ
女海賊「あたたたた…」グダー
商人「女海賊!!平気?」
女海賊「ギリギリ平気…縄ほどいて」モゾモゾ
商人「ズボンは?」スパ シュルシュル
女海賊「そんなん後で良い!!あんたが見なけりゃ済む」
商人「アザだらけじゃないか…」
女海賊「それよりホムちゃんの樽ひっくり返されて悪戯されてた」
商人「ええ!!?」
女海賊「ローグの声してたけど切ったロープの処置やってんの?」
商人「うん…切ったの3本だけだから直ぐに治せると思う…あああああああ!!!エリクサーがもう無い!!」
女海賊「そうなんだよ…あの馬鹿共水か何かだと思って全部ひっくり返した」
商人「ちょっとしか残って無いじゃ無いか…どうしよう」
ローグ「姉さん!!無事でやんすね?ロープは応急で繋いで置いたでやんす」
女海賊「おけおけ!!ちょいお姉ぇ達ヤバイ状況だから直ぐに移動する」
ローグ「姉さんズボン履いて下せぇ…目のやりどころが無いっす」
女海賊「分かったから早くあんたもお姉ぇの気球で援護やって」
ローグ「分かったでやんす」ダダダ
女海賊「商人!あんた飛空艇の操作わかってんね?」
商人「僕が操舵する?」
女海賊「もう射手が居ないから私がインドラの銃で狙撃する」
商人「ちょっと待って…ホムンクルスを樽に…」ヨッコラ
女海賊「傷つけられてない?」
商人「大丈夫…無事だった」
女海賊「早くして…今やんないとあの馬鹿海賊達はバラバラになる」
商人「君…おしりに青あざあるんだね…」
女海賊「んあ?これお姉にぶっ叩かれた跡!!見てんじゃ無ぇ!!」
商人「早くズボン履いてよ」
女海賊「あんたが飛空艇の操舵しないから履く暇無いんだけど!!早くしてって!!」
商人「代わる!!」
『隠れ家の入り口_上空』
フワフワ
女海賊「おけおけ…そのまま高度下げて」シュン
女海賊「よし!ラットマンリーダー破裂」
女海賊「もう一匹…」シュン
商人「日が落ちてる…」
女海賊「なんかガレー船がバラバラに動いてんな…」
商人「これトロールが出てきたらマズくないかい?」
女海賊「マズいよ…森が燃えてるから絶対怒り狂うと思う」
商人「あの入り江にガレー船4隻は入りきらない…」
女海賊「だからゴタ付いてんだね?」
商人「君の望遠鏡で奥に居るダークエルフ見える?」
女海賊「あー…どうもダークエルフじゃないらしいよ」
商人「どういう事?」
女海賊「戦化粧したエルフだって海賊の一人が言ってた」
商人「エルフを敵にしちゃってる?」
女海賊「そうなる」
商人「どういう事だ?もしかして女戦士達は気付いて居ない?」
女海賊「分かんないけどかなりマズイよね?トロールと挟まれる格好になっちゃう…ドラゴンが来る可能性もある」
商人「…そうか…分かったぞ…この隠れ家は何日か前に既にエルフに占拠されてるんだ」
商人「その後戦線は北に移動している…僕らは何も知らずにエルフを攻めちゃってるんだよ」
女海賊「こっちはもう突撃しちゃってるからもう海賊は収まんないと思うな」
商人「解けてきた…北の方に在った砦から出てた狼煙…あれはトロールを引き付けて退路を確保する為だ」
女海賊「ここはもう派手に燃やしちゃってるからヤバイね」
ドドドド ドーン
商人「!!?」
女海賊「どっち?」
商人「暗い…これじゃ何処から来るか分からない」
女海賊「やっぱ一回お姉達と話した方が良いね…あの入り江で守り切らないと全滅するかも…」
商人「こうしよう…僕がロープ伝って状況を伝えに行く…戻るときは小舟で戻るから拾って」
女海賊「おけおけ…あと一匹ラットマンリーダー倒したら行って」
商人「分かった…準備する」
『入り江の船上』
シュン パーン!!
女戦士「よし!!これでダークエルフに接近できる」
シュン ストン!!
剣士「待って…飛空艇からロープが降りた…誰か降りて来るよ」
女戦士「緊急事態か…誰が来る?」
魔女「商人じゃ…あやつは体の具合が悪いのでは無かったか?」
女戦士「良くやる…まぁ丁度突撃の件も問いたかった所だ」
シュタ ゴロンゴロン
商人「あたたた…」
女戦士「無茶をする…状況の連絡に来たのだな?どうなって居るのだ?」
商人「今戦っている相手がダークエルフじゃない事を伝えに来た」
女戦士「何だと?どういう事だ?」
商人「あれは戦化粧をしたエルフらしい…僕達は今エルフと戦ってる!だから後方からトロールが来る可能性があるんだ」
女戦士「それで突撃命令を出したのか?」
商人「え!?僕たちはそんな事して居ない」
女戦士「隊全体が混乱しているという事か…」
商人「もう地響きが何処からか聞こえてる…エルフとトロールに挟まれる格好になるかもしれない」
女戦士「剣士!お前は気付かなかったのか?」
剣士「ダークエルフの…いやエルフか…弓の精度が良すぎて周りに注意出来なかった」
商人「今エルフは何処に?」
剣士「奥の方に気配はあったけど下がった様だよ」
女戦士「そちらに注意しつつ川から上がって来るトロールにも気を配らねばならんのだな?」
魔女「トロールが相手では海賊では何も出来んじゃろう」
女戦士「散り散りになる可能性が高い…ううむ撤退は機を逸している…ここで耐え抜くしか無いと言う事か」
魔女「相手がエルフならわらわが話しても良いが?」
女戦士「ダメだ…捕らえられるぞ?」
商人「この入り江にガレー船4隻は入りきらないよね?上から見てゴタゴタしているんだ」
女戦士「オールを畳めばなんとか入るだろう…しかし整列に少し時間が居る」
商人「対トロール用に大砲は無い?」
女戦士「ガレー船は強襲揚陸用で大砲は艦載していないのだ…火薬も砲弾もなにもかもが無い」
商人「兎に角…今エルフと戦うのはマズイよ…ドラゴンが来てしまったらもうアウトだ…全滅する」
剣士「トロールは川を潜ってここまで来れるのかな?」
女戦士「分からん」
魔女「袋のネズミになってしもうたな…トロールも下手に刺激せん方がよかろう」
女戦士「うむ…一先ず奥に攻め入るのは一旦止めて見張るだけに止める…後方は…」
商人「もしトロールが襲い掛かって来るならどうにかして足止めする方法は無いのかな?」
剣士「魔女の罠魔法は?」
魔女「無駄じゃ…トロールはツタなぞで足が止まる程弱い魔物では無い」
剣士「氷結魔法は?水は触れるから凍らせる事も出来るよね?」
魔女「少しは足止め出来るやもしれんが簡単に割られるじゃろうのぅ」
女戦士「手が無い…」
魔女「トロールを止めるには照明魔法なのじゃが今はかき消されてしまうでなぁ…」
商人「あああああああ!!!それだ!!光の石だ!!僕は飛空艇に戻って光の石の準備をする」ダダ
女戦士「慌てるな…どうやって戻る?」
商人「小舟で戻ってロープをよじ登る!!この小舟に乗って帰るよ」バチャーン ザブザブ
女戦士「私なら元来たロープを走って戻るがな?…まぁ良い…こちらは一旦海賊を集めて体制を整えておく」
商人「何かあったら又ロープ伝って来る!!上手くやって!!」
----------------
魔女「あやつは心臓が悪いのじゃろう?走り回らせて良いのか?」
女戦士「覚悟が違うのだ…やらせておけ」
魔女「覚悟のぅ…体のしんどさはそういう問題では無いと思うのじゃが…」
子供「ママ?船の中に油と硫黄があったよ…僕じゃ運べない…どうしよう?」
女戦士「剣士!場所を確認しておいてくれ…運搬で海賊数人を回すから案内してやってほしい」
剣士「分かったよ…未来…その場所へ案内して」
子供「こっちだよ」スタタ
女戦士「ようし…油が有るなら奥に通じる通路を遮断出来る」
魔女「ふむ…燃やして魔物が来ん様にするのか」
女戦士「暖を取る意味もある…今晩は戦闘を避けたい」
魔女「洞穴になっとるで寒さはマシと言えばマシじゃな?」
女戦士「うむ…厳しい環境が続いて居るから海賊達が逃げ出すリスクも高いのだ…兎に角ヘタレが多い」
魔女「士気の維持も大変じゃな?」
女戦士「ここまで連れまわしてお宝が無かった場合…想像つくか?」
魔女「想像しとうない」
女戦士「そういう輩の集まりなのだよ…海賊と言うのはな」
『2時間後』
メラメラ ゴゥ
ほらよ!配給だとよ
又練った芋と干し肉か
今日はこの洞穴で待機らしい
隊長は慎重すぎなんだよサッサと占領すりゃ良いのによ
この通路の奥だよな?
何か見えるか?
真っ暗だ
本当にこの奥に貴族のお宝があんのか?
おい聞けよ…あの船ん中にどっさり宝石積んでたらしいぜ?
マジか!!どっさりってどんくらいよ?
てことはこの通路の奥も期待出来るって事だな?
しかし何で警備がこんなに手薄なんだ?
ヒソヒソ ヒソヒソ
子供「とう!!」ピョン クルクル ドテ
魔女「おおぅ…身軽じゃのぅ?ロープを伝うのは平気か?」
子供「あたたた…なんで着地失敗したんだろう」
魔女「怪我はしとらんか?」
子供「全然大丈夫!!ママからの伝言だよ」
女戦士「状況に変化があったのだな?」
子供「トロールが10体…それからケンタウロスが6体うろついてるってさ」
魔女「ケンタウロスにまで包囲されておるんか」
子供「トロールは焼けた森をうろついてるだけだって…川に近付かないみたい」
女戦士「それは朗報だ」
子供「ケンタウロスは川辺からこの洞窟を観察してるんだってさ」
魔女「ふむ…どちらも川に入るのを嫌がっておる様に聞こえるな」
女戦士「それは…気になるな…川に入れない何かがあると?」
剣士「未来…こっちへ…体を見せるんだ」
子供「え?どこもおかしくないよ?」
剣士「…」グイ
魔女「これはイカンのぅ…黒死病の斑点が出とる」
剣士「未来…もう一度飛空艇に戻って商人から賢者の石を借りて来るんだ」
子供「うん…」
剣士「ロープから落ちない様にベルトを掛けてあげる…おいで」ギュゥ
子供「大丈夫だよ…行って来る」ピョン シュタタ
女戦士「毒に加えて黒死病もか…水が汚れているのだな?」
魔女「その様じゃが…」チラリ
剣士「…」コクリ
女戦士「まさか…」
魔女「はぁ…溜息が出るのぅ」
女戦士「リリスの子宮か…」
魔女「黒の同胞団が持って行った可能性が最も高い…そして黒死病…壺の封を開けたと考えるな」
剣士「エルフ達が戦い始めた動機にもなる」
魔女「北に戦線を移した…つまりそれが移動しておる…溜息しか出ん」
女戦士「…」---いつまで続くんだこの戦いは---
-------------
ツカツカツカ
女戦士「今の所黒死病の症状が出ている者は居ないな?」
魔女「そうじゃな…一応全員にこの賢者の石をかざして置く」
女戦士「海賊達から不満が出始めている…このままでは進軍と同時にバラけてしまうな」
剣士「通路の向こうの具合が分からないと危険だよ…見てこようか?」
女戦士「相手を刺激するのは止して欲しいが…気付かれないように行けるか?」
剣士「僕一人なら行ける」
女戦士「よし…様子を見るのだけ頼む」
剣士「行って来る…」タッタッタ
魔女「士気の維持のぅ…」
女戦士「あいつらには金か女なのだが…」
魔女「積み荷の宝石を見せてはどうじゃ?」
女戦士「今見せると逆効果になりかねん…女が居ないのがな…」
魔女「わらわが変身して賢者の石をかざしてくるのはどうじゃ?」
女戦士「大人の姿に?それは良い案だが魔女は良いのか?」
魔女「ちぃと法衣の丈が短いのじゃが少しの間であればよかろう」
女戦士「よし…それで頼む」
魔女「変性魔法!」グングン
女戦士「気を付けるのだぞ?奴らは飢えて居るからな」
魔女「たまにはわらわの美貌を見せつけておきたいと思って居った」
女戦士「フフ…そうか」
魔女「では行くぞよ?」ノソノソ
-----------------
おい!見ろ!…誰だあの女…三角帽子の女だ
うひょぉぉ生足だぞ生足!!
え!?何だって?アレで娼婦なのか?赤目だって?
合図は何なのか知ってるか?
今金持って無ぇぞ!!おいお前金持ってるか?
俺も持って無ぇ…くっそこんな事なら…
一人づつハグしに来るらしい
パフパフすんだな!?
何!?触れるのか!!
ちゃんと並んでろ!!
クンクン…クンクン!よし鼻の調子は良い…
女戦士「…」---呆れるな---
---たった一人女が居るだけでこれほど気が逸れるか---
---魔女にはしばらくあの恰好で居て貰った方が良さそうだ---
---あのような真似を私にも出来るか?---
-------------------
タッタッタ
女戦士「早かったな?奥はどうだ?」
剣士「激しい戦闘跡があった…そこら中に魔物の死体があるよ…この入り江は多分裏口だ」
女戦士「エルフが占拠していそうか?」
剣士「エルフは何処に行ったか分からない」
女戦士「その他の魔物は?」
剣士「スライムとビホルダーが沢山死体を漁ってる…後はスプリガンの様な木の根っこだ」
女戦士「それだけなら海賊達で殲滅できそうだな」
剣士「行ける…ただそのもっと奥までは分からないよ」
女戦士「やはり事が済んでしまった後なのか…」
剣士「あと沢山の器具が破壊されている」
女戦士「破壊?」
剣士「宝石も放置されてるよ」
女戦士「剣士…お前はその状況を見てどう思う?」
剣士「エルフは何処かで見ているかもしれないけど…この場所は放棄したと思う」
女戦士「分かった…夜明けと同時に海賊で占拠に動く」
剣士「一つ…スプリガンの様な根っこが気になる」
女戦士「それは私達で処理しよう…やれそうか?」
剣士「いやそう言うのじゃない…木と融合した何かだよ…意思がありそうだ」
女戦士「話せるかも知れないと?」
剣士「そう感じる」
女戦士「では海賊達にはその根っこに近付けさせない方が良いな」
剣士「あ!!それから奥は毒霧がひどい…マスクがあれば着用した方が良い」
女戦士「布しか用意出来んな」
剣士「それでも無いよりはマシだよ」
女戦士「明け方までに用意させて作戦を開始する…これで良いな?」
剣士「うん」
『早朝』
日の出と同時にこの先にある黒の同胞団の隠れ家を占拠する
それぞれ隊に分かれて各自行動だ
略奪品は各自分配!しっかり稼げ
但し!!逃走が発覚した場合はその隊長含めて全員処刑だ!分かったな?
ヒソヒソ
うへへへやっと俺達の出番だ
各自分配たぁ気前が良い
これが前線に出た甲斐ってもんよ
見ろよこの北方の海賊の出で立ちを…俺らに勝てる敵なんざ居無ぇってもんよ
魔女「斧盾の裸戦士か…野蛮な輩じゃのぅ」
女戦士「こういう占領戦はめっぽう強い…雑魚魔物は奴らに任せて良い」
魔女「さて…わらわ達も準備するかのぅ?」
女戦士「魔女…布のマントを用意させた…足が出て居ては寒かろう?」ファサ
魔女「おぉ気が利くのぅ…寒うてたまらん」
剣士「熊油を塗っておくと寒さが緩和するよ…塗ってあげようか?」
魔女「他人に足を触られるのは気持ちが悪いのじゃが…」
剣士「すこし我慢して…」ヌリヌリ
魔女「これ!!気持ちが悪い!!自分でやるで貸せい!!」
シュタタ クルクル スタ
女戦士「未来…戻ったか…夜明けに出発するから準備しろ」
子供「いつでも良いよ」
女戦士「飛空艇の方は異常なしだな?」
子供「うん!!ケンタウロスと撃ち合いやってるけど任せろだってさ」
女戦士「撃ちあい?」
子供「射程で勝ってるから余裕らしいよ」
女戦士「高さの利か…まぁ女海賊が良いと言うなら良いのだろう」
子供「貨物用気球も居るからね」
剣士「そろそろ夜が明ける…行こうか」
女戦士「うむ…剣士が先頭で案内しろ」
剣士「こっちだ」スタ
『黒の同胞団基地』
ワーワー
女戦士「雑魚の殲滅は海賊に任せておけ…私達は剣士が言う木の根っことやらに向かう」
魔女「なんちゅー広い洞窟じゃ」
子供「上の方から光が少し漏れてる」
女戦士「こでは洞窟ではなく渓谷だな…森が覆いかぶさってこの様になっている
剣士「そうだよ…だから上の方も注意する必要がある」
女戦士「あそこだな?破壊された器具というのは…」
魔女「天秤じゃ…アレは錬金術の為の天秤じゃ…どこかにわらわの父上は居らぬか?」
剣士「椅子に掛けた死体があった…こっちだ」
タッタッタ
魔女「おぉぉ…何と痛ましい姿じゃ…父上に間違いない」
女戦士「…時すでに遅しか」
子供「貝殻がいっぱい落ちてる」
魔女「話をしてみたかったのじゃが…ぅぅぅ」
剣士「死因は弓矢だ…頭を貫いてる」
魔女「しかし黒の同胞団に身を置いて居たのじゃから仕方ないのぅ…目を覚ましてやりたかった」
女戦士「こっちの器具も破壊されているな…何の容器なのだ?」
魔女「宝石が散らばって居るからそれが魔石を作る器具なのじゃろう」
女戦士「魔石が見当たらんのだが…」
剣士「向こうの方にも謎の器具があるよ…木の根っこはそこにある」
魔女「ちと待て…アレは転移門じゃな」
女戦士「転移門?」
魔女「まだ入り口が開いて居るという事は術者が生きて居るという事じゃ」
女戦士「過去に戻ると言う例の門か?」
魔女「行先は行って見んと分からん…危険じゃで近付くでない」
女戦士「これですべての辻褄が合ったな…これで過去の書き換えはもう起きんという事だ」
魔女「リッチが隠れておるかもしれんで気を付けい」
子供「パパ?エリクサーの匂いがする」クンクン
剣士「分かってる」
女戦士「エリクサー…そこに精霊の伴侶が居たという事か?」
剣士「行こうか…木の根っこの所だよ」
『巨木の根』
女戦士「…これは一体」
魔女「根に同化しかけて居るのか?」
剣士「…」クンクン
子供「パパ…ホム姉ちゃんと同じ匂い」クンクン
女戦士「これが精霊の伴侶だと?頭部は何処にある?」
魔女「いや…この部分じゃ…脳が無かったんじゃな」
女戦士「異形のホムンクルスの訳か…しかしどうして木と同化してる?」
巨木の声「又来たか…」
女戦士「誰だ!!」ズザザ
巨木の声「それは役目を終え…直に尽きる…」
魔女「又来たとはどういう事じゃ?」
巨木の声「我らは宿命を終えたと何度言わせる…犬神よ…何故舞い戻った?」
剣士「犬神?」
魔女「どういう事じゃ?」
剣士「僕を犬神と呼ぶという事は…ダークエルフ…」
巨木の声「ハッハッハ…意識を失う前に最後の戯れが犬神との会話か…ハッハッハ」
子供「パパ?良く見て?あそこの幹に何か埋もれてる」
魔女「黒いエルフじゃ…主らはドリアード化しておるのじゃな?」
巨木の声「いかにも…だがそれも終わりだ」
女戦士「話が良く分からない…どういう事なのだ」
巨木の声「最後ににすべてを語るのも一興か…教えてやろうエルフと我が同胞達の争いの歴史を」
そこに同化しているのは精霊の片割れ
それは精霊のオーブを唯一すべて覗ける道具なのだ
我らは魔王の手からオーブを守る為
精霊の片割れを今まで守り通して来た…ハイエルフからもな
そしてもう一つ
魔王復活の温床となる人間を減らし
我ら同胞となるハーフエルフを増やす為に与えられた古代の技術
これらを駆使し精霊の計画通りに人間達の補完計画を数百年も続けて来たのだ
だがそれも終わった
精霊の計画は遥か3000年昔にドリアード化された神…アダムの復活だ
その復活に必要なエネルギーに魔王の魂を使う
我らは偶然にもそれを手に入れたのだ…まもなくアダムは復活し次なる精霊に置き換わり世界は再生する
魔王がエネルギーとして利用され新たな時代が始まるのだ
我らの役目はこれで終わり…ドリアード化して次なる神に従う
魔女「主らは忠実な精霊の使途じゃと言うのじゃな?」
巨木の声「笑止…他に何と例えよう?」
魔女「これが黒の同胞団の正体か…」
巨木の声「さて犬神よ…もう一度言う…お前たちは我らに従うか?それとも抗するか?」
剣士「…黒の同胞達がが魔王に侵されて居ないと言い切れるのか?」
巨木の声「それはもうどうでも良い…我らが正義か悪かは小さい話だ」
剣士「もしもそのアダムという神が…魔王に支配されてしまったらこの世界はどうなる?」
巨木の声「精霊の計画に異を唱えるのか?」
魔女「まて…それは真実なのか?どこかですり替わって居らぬか?」
巨木の声「ハッハッハ…ハイエルフと同じ事を言うか…だがもう遅い…精霊の片割れもお前たちのせいで息絶えた」
魔女「わらわ達は何もして居らぬのじゃが…」
巨木の声「お前たちの予言通り天の光の後に精霊の片割れも息絶えた…お前たち以外に誰がおろう」
魔女「予言?わらわは主に予言なぞして居らぬ」
巨木の声「たわけた事を…」
シュン グサ
女戦士「はぅ…」グラ
剣士「マズイ!!頭を射抜かれた…」
女戦士「ぁぅぁぅ…」ブシュー ドクドク ドタリ
子供「ママ!!ぁぁ血が…血がぁ!!」
魔女「蘇生魔法!」ボワワ
剣士「未来!!回復魔法を続けて掛けるんだ!!」
子供「ママ!!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー
剣士「魔女!!女戦士を頼む!!あのエルフは僕が食い止める」
魔女「分かって居る!!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー
女戦士「…」グッタリ
ピョン クルクル シュタ
剣士「待て!!」シュタタ シュタタ
-----------------
-----------------
-----------------
『入り江の船』
シュルシュル ズダダ
女海賊「お姉ぇが頭撃たれたってマジ?」ハァハァ
魔女「治療はしたが脳にどのくらい損傷が残って居るか分からぬ」
女海賊「あぁぁだから兜被れって言ってたのに…これヤバイ感じ?」
魔女「死ぬ事は無いじゃろうが…いつ目を覚ますか分からんな」
女海賊「剣士は?」
魔女「エルフを追ってどこぞ行きおった」
女海賊「指揮とるの私がやんないとダメっぽいね」
魔女「うむ…他の言う事はなかなか聞くまい」
女海賊「未来!!飛空艇に行って商人も呼んできて…あとローグも」
子供「わかった!!行って来る」シュタタ
魔女「奥にエリクサーがあるのじゃ…誰かに取りに行かせられんか?」
女海賊「どんくらいあんの?」
魔女「そうじゃな…樽で2杯くらいかのぅ」
女海賊「未来!!ローグの気球をこっちによこして!!」
子供「はーーーーい」シュタタ
---------------
フワフワ ドッスン
ローグ「頭の一大事って聞いて来やした…」
女海賊「お姉ぇの為にエリクサー取りに行って来て…場所は未来が知ってる」
ローグ「こっから樽を担いで行くでやんすか?」
女海賊「他に方法あんの?早く行って来て!!」
ローグ「わかりやした…頭の為ならあっしは何でもやりやす」
子供「こっちだよ」
ローグ「ちっと待って下せぇ…樽を…よっこら」
船乗り「俺も付いて行くでがんす!!よっこら」
航海士「俺がクロスボウで護衛する…」
ローグ「助かるでやんす…未来君行きやしょう」
子供「こっちこっち!!」
---------------
カクカク シカジカ
商人「…分かった…奥の占拠は順調なんだね」
魔女「うむ…だが今晩もここで過ごすのはどうかと思うのぅ」
商人「日が落ちる前に1隻略奪品を乗せてキャンプへ返した方が良いね」
魔女「人駆が減ってしまうが良いんか?」
商人「この入り江にガレー船4隻は多すぎる…1隻戻してスペース開けて船の配置を考えれば後方の警戒にもなれる」
ローテーションはこういう風に組もう
帰るガレー船1隻
戻って来るガレー船1隻
入り江の中に1隻
入り江の外に1隻
これを順番に回せば物資の移送と海賊の休憩も兼ねる
女海賊「人員の配置具合とローテーションの件をガレー船の海賊長に伝えて来れば良いね?」
商人「ちょっと待って…要件は紙に書いて渡そう…その方が確実だ」カキカキ
女海賊「あとこの船もどうする?」
商人「この船はオールの漕ぎ手が居ないと動かないよね…後で船乗りに相談して人の調達をお願いしようか」
女海賊「おけおけ」
商人「この船は宝石が沢山乗ってるから信頼できる人に任せたいよね…キャンプを守備している人にも配らないと」
女海賊「そんなこんなで私等奥の方に行ってる暇出来そうに無いな」
商人「うん…指揮系は切らすとマズイ…女戦士居ないのはかなり痛いよ」
女海賊「もうちょいでエリクサー来るからお姉ぇを樽に漬ける」
商人「ホムンクルス用のエリクサーも無かったから丁度良かった」
女海賊「ほんじゃ指示書を海賊長に届けてくるわ…それ頂戴!」
商人「はい…」パサ
『1時間後』
シュタタ
女海賊「剣士!!良かった無事だったね」
剣士「女戦士の具合は?」
女海賊「今エリクサーの樽に漬けた所…これで良くなってくれれば良いけど」
剣士「魔女は?」
女海賊「船尾で怪我した海賊の治療してる…どうしたの深刻な顔して」
剣士「一緒に来てくれ…」
商人「…なにかあった様だね」
剣士「うん…これを見つけた」
女海賊「黒い壺…それってもしかして」
剣士「魔女に見せないと…」
『船尾』
海賊「あぁ痛え痛ぇ…こっちも痛ぇ…ここも痛ぇ」
魔女「治療は終わりじゃ!!痛いわけが無かろうタワケ!!早う行け!」
海賊「連れない事言うなよ…ここは癒しの場だろう?」
魔女「主に治療の必要は無い!!」ポカ
海賊「あだっ…宝石やるからよぅ…」
剣士「魔女!!壺を見つけた…これで間違いないかい?」
魔女「むむ!!蓋は無かったか?」
剣士「見当たらない…」
魔女「やはり封を空けおったな…それは無くした壺に間違いない…最悪じゃのぅ」
剣士「血痕が北の方に続いて居たよ…随分前に移動したみたいだ」
魔女「追うしかあるまい…」
女海賊「ええ!?この状況で?お姉ぇどうすんのさ」
魔女「女海賊や…良く聞くのじゃぞ?」
女海賊「うん…」
魔女「主はしばらくここに留まり海賊の指揮を継続するのじゃ…わらわはちと行かねばならぬ用事が出来た様じゃ」
女海賊「魔女一人って訳無いよね?やっぱ剣士も行く感じになるの?」
魔女「そうじゃな…主はこの場の安定を見た後にシャ・バクダを目指してアサシンと合流せよ」
女海賊「魔女と剣士は何処に行くのさ?」
魔女「過去じゃ…わらわは死んだ父上に会わねばならぬ…会って真相を聞くのじゃ」
女海賊「もしかして北に移動してるのって剣士と魔女?」
魔女「おそらくそうじゃ…次元が交差しとる」
剣士「もう過去に戻らないと取り返しが付かない…もしも次元の塗り替えが起きたとしてもシャ・バクダで会おう」
女海賊「ちょ…私も連れて行ってよ」
剣士「女戦士が居ればそうしたよ…でも離れても大丈夫だって確信してる」
女海賊「なんでさ?超不安なんだけど」
剣士「次元が少しズレるだけだよ…心配しなくても良い…直ぐに繋がる」
女海賊「あのさ…もう行方不明にならないでくれる?私を置いて行かないで」
”私を置いて行かないで…”
剣士「…」
女海賊「おい!!聞いてんの?」
剣士「あぁゴメン…記憶のずっと奥にあるその言葉が引っかかった」
女海賊「ダメだよ!私も行くから!!」
剣士「必ず戻るから…絶対に…約束する」
女海賊「…」ウットリ
魔女「今指揮官を失うのがマズいのは主にも分かるな?ちぃと辛抱せい」
女海賊「シャ・バクダで合流ね?そこなら貝殻使えるね?」
魔女「そうじゃな…すぐに連絡するでシャ・バクダで待っておれ」
剣士「よし…じゃ魔女…行こうか」
子供「パパ!!僕も行く」
剣士「未来…」
魔女「ふむ…修行の一環と思えば良いが…」
女海賊「未来?遊びに行くんじゃ無いんだよ?あんたはダメ」
子供「ママ…お願い!!パパと空気の会話がしたいんだ」
女海賊「空気の会話…」
子供「空気の会話で沢山お話出来るんだ…パパと沢山話せる」
女海賊「エルフの血か…」
魔女「修行は厳しいぞよ?」
子供「頑張る…」
剣士「準備しろ…行くぞ」シュタタ
子供「…」シュタタ
---ママごめんね---
-----------------
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-----------------
ローグ「あぁぁ行っちまいやしたね…」
女海賊「…」
ローグ「未来君は大人になりやしたね」
女海賊「フン!!ローグ!!エリクサーを貨物用気球で飛空艇まで荷上げして」
ローグ「ええ!!?空中で載せ替えっすか?そら厳しいっすよ…落としたらドボンすよ?」
女海賊「言う事聞けないの?」カチャリ
ローグ「ちょちょちょ…デリンジャーは止めて下せぇ…やりやすやりやす…」
女海賊「商人も気球に乗せて飛空艇に連れて行って…ホムちゃんの面倒見させて」
商人「ごめんね…気を使って貰って」
---はぁぁ私が踏ん張らないと---
---ここで歯車狂わす訳に行かない---
『転移門』
魔女「恐らくこの門は5日程過去に戻る為の門じゃ」
剣士「そうだろうね」
魔女「主は最初からそう思って居ったな?」
剣士「まぁね」
魔女「5日程過去に戻って壺がどうなって居るのかは分からんが…わらわの父上と話せる可能性は高い」
そこで事の真相を聞くのじゃ
黒の同胞団の言い分が正しいのか
粛清する必要があるのかはそれを聞いて判断すべきじゃ
転移門をくぐった先ではまだ魔法が使える筈じゃから
戦闘に巻き込まれるような場合は魔法を駆使する事を考えるのじゃ
未来は剣士の傍から離れるで無いぞ?
では潜るぞえ?手を繋いで行くぞ
------------------
------------------
------------------
『5日前』
ゴーレムの転移を急げ!!
魔道炉の臨界が上限を超えています
かまわん!!魔石を投入しろ
キマイラ生成の方は間に合わんのか
もう材料が枯渇しています
錬金で材料を生成すれば良かろうサッサとやれ!!
部隊Aがエルフと交戦中
部隊B西に展開して皇子の進路を確保
キマイラ部隊ドラゴン撃破
基地に2名のエルフ侵入
山道区画から南進との事
トラップに掛かりました確保します
3体目ゴーレム転移完了!
よし!!皇子の部隊に投入させろ
魔道砲臨界!!撃てます!!
皇子の前方に撃て!!
ピカーーー チュドーーーーン
ダークエルフ「エルフが進入してくるという事は秘密をバラした者が居るな」
指揮官「魔王の所在か…知って居るのはわずかじゃな」
ダークエルフ「まぁ良い…ハイエルフは指輪の扱い方も魔王の扱い方も何もかも分かって居ない」
指揮官「主はこれで魔王を封じたつもりなのか?」
ダークエルフ「アダムさえ復活させれば魔王なぞどうでも良いのだ…アダムが解決する」
指揮官「それは本当に精霊の計画なのじゃな?」
ダークエルフ「何度も言わせるな…これで世界は再生する」
指揮官「さて…わしはどうするかのぅ?」
ダークエルフ「これで任を解いても良いが…国へ還るか?」
指揮官「ううむ…そうじゃな…しかしわしが黒の同胞に汲みしておるのは知ってしまった様じゃ…会わせる顔が無いのぅ」
ダークエルフ「大局を動かす仕事がそれほど体が悪いか?補完計画から省いてやった恩は感じてほしい物だ」
指揮官「新世界ではどの道人間は滅ぶ定め…認めたくは無いのじゃが…」
ダークエルフ「今すぐに滅ぶわけでは無い…最後まで生き延びた…そういう風になるだけの事」
指揮官「じゃがわしに感謝する者なぞ居らんじゃろうのぅ…じゃからわしはここで骨を埋めた方が良かろう」
ダークエルフ「フッ勝手にしろ」
指揮官「主はドリアードとなって新世界を監視する役につくのじゃな?」
ダークエルフ「そうなるだろう…お前もドリアードになりたいか?」
指揮官「いや…もう良い…娘と風呂に入って寝たいわい」
魔女「聞いてしもうたぞよ?父上…」
ダークエルフ「何ぃ!!どこから入って来た!!」ズザザ
剣士「動くな…」スチャ
ダークエルフ「誰かと思えば…犬神か!!」タラリ
指揮官「とうとうここまで来てしもうたか…白狼の一党…そして魔女や」
魔女「父上は記憶を害して居らんのじゃな?幻惑されて居らんな?」
ダークエルフ「フッフッフあのモウロクが持って居た杖の事か…確かに杖で黒の同胞に従う任に付いたな」
指揮官「まぁ待て…わしも娘に会いたかった所じゃ…大きゅうなったのぅ」
魔女「感動の再会では無い様じゃ…今は敵じゃ」
指揮官「のぅダークエルフ?わしは娘と共に行く選択もある様じゃ…どうじゃ?任を解くと言うたな?」
魔女「父上…それはどういう事じゃ?」
ダークエルフ「面白い…白狼の一味に加わるか…ハッハッハ」
指揮官「魔女や…話は聞いて居ったのじゃな?」
魔女「うむ…わらわは心が痛い」
指揮官「察しの通り人類の補完は精霊が計画したのじゃ…人間は精霊の記憶の中で永遠に生きる…意味が分かるな?」
魔女「つまり絶滅じゃ…魔王のもくろみ道理じゃな」
ダークエルフ「少し違う…魔王の温床となっている人間を物理的に排除し…魂はオーブの中で永遠に生きる」
魔女「物理的なこの世界は新しい生き物が担う…そういう事なのじゃろう?」
ダークエルフ「理解が早いな…遅かれ早かれ人間はすべて新人種に置き換わるのだ…そして魔王は滅ぶ」
魔女「悲しいのぅ…抗ってはいけないのかえ?」
ダークエルフ「否定はしない…だからお前の父上を解放しよう…自由に抗って構わん」
指揮官「魔女や…わしを理解してくれるか?」
魔女「ぅぅぅぅ…何の為の戦いじゃったのか…何の為に多くの命を犠牲にしたのか…ぅぅぅ」ポロポロ
指揮官「最後まで抗う道をわしはそなたらに残したぞよ?最後まで抗って良い…」
魔女「それでは抗った我らが魔王であるという事になるでは無いかぁぁぁ…ぅぅぅ」ポロポロ
指揮官「…」
ダークエルフ「それが魔王だ…だからすべてを終わらせる必要がある…受け入れろ」
魔女「うわぁぁぁぁん‥‥ぁぅぁぅ…」ポロポロ
指揮官「…」
ダークエルフ「…」
剣士「…」
---今理解した---
---機械が---
---精霊が---
---どうしてすべてを記録するのかを---
---それは人類の魂の保存だ---
---そういう風にしか魔王と戦えなかった---
---そして精霊が導く勇者は---
---それに抗う最後の希望だという事をやっと理解した---
---僕は任意の次元を選択する事が出来る---
---最後まで抗う次元を選択する事だって出来る---
---魔王と共に共生する未来だってある---
---その場合世界から争いは無くせない---
---そういう選択をしなければならない---
指揮官「魔女や…泣くでない…信じた道を行って良いのじゃ…行こうぞ」
シュン ストン!
魔女「はっ!!父上!!父上ーーー!!」
ダークエルフ「放せ!!」ババッ
指揮官「魔女…行け…わしはそなたと…共に…居る…」ドタリ
魔女「あわわ…父上…ぅぅぅ父上ーーー!!…そうじゃ蘇生魔法じゃ…蘇生…」
シュン グサ
魔女「はぅぅ…」ヨロ
剣士「魔女!!ここはダメだ…物陰に」グイ
子供「回復魔法!」ボワー
剣士「良かった…急所は外れてる…抜く」ズボォ
魔女「げほっ…げふげふ」ボタボタ
剣士「未来も物陰へ!!」
子供「パパ!!一杯来る匂い…」
剣士「これはドラゴンの匂いだ…未来!!こっちだ!!来い!!」シュタタ
子供「魔女が血を吐いて…」
剣士「今は余裕が無い…耐えて魔女!」シュタタ
-----------------
ゴーン パラパラ ゴゴゴゴゴ
剣士「未来…付いて来ているな?」
子供「平気…」
魔女「っぅぅ…」
剣士「回復魔法!」ボワー
魔女「済まんのぅ…げほっ…げふ」
剣士「良かった声は出るね?」
魔女「頭では無く喉に矢が逸れて助かったわい」
子供「死んじゃうかと思ったよ…口の中から矢が貫通したよね…」
剣士「エルフの矢は信じられないくらい精度が良いんだ…未来も急所に金属を当てておくんだ」
子供「うん…骨で良い?」
剣士「急所から反れればとりあえず良い…白狼のフードを深く被って」
子供「…」ファサ
剣士「子ウルフもちゃんと付いて来ているな?」
子供「うん…」
剣士「よし…森を北に抜けて魔王を探す…これから今までより厳しい戦いになる…覚悟は良いな?」
子供「うん」
剣士「魔女は小さく変身して欲しい…背負う邪魔にならない様に」
魔女「変性魔法!」シュゥゥゥ
剣士「魔女は僕が背中に乗せる…未来と子ウルフはしっかり付いて来い」
魔女「主は迷わんのじゃな?精霊に抗う事になってしもうても良いのか?」
剣士「その為に生まれたんだ…抗って未来を導く事を託されたのが勇者さ…」
魔女「考えがあるのじゃな?」
剣士「勿論…僕にしかできない選択で魔王を葬ってあげるよ」
魔女「選択?信じて良いのじゃな?」
剣士「魔女ももう僕の次元に居るんだ…僕の選択に従うしかない」
魔女「ふむ…信じるではなく従うしかないという事か…付き合うてやろう」
剣士「乗って!!」
魔女「ほい」ピョン
剣士「魔法は任せた!行くぞ未来!!」シュタタ シュタタ
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黒の同胞団編
完
『飛空艇』
フワフワ
商人「…もう少し」
ローグ「樽を背負ってロープを伝うって…前代未聞っすね…はぁはぁ」
商人「よし!!受け取った…おっとっと…」
ローグ「落とさんで下せぇよ?」
商人「休憩したら?」
ローグ「そーっすね…もう腕がパンパンでやんす」
商人「女戦士が入った樽が重すぎたね」
ローグ「頭は体重が100キロぐらいありやすからねぇ…言うと怒るんで秘密にしてやしたが」
商人「そんなに重いんだ」
ローグ「あっしら人間とは筋肉の重さが違うんすよ…もしかすると骨が重いのかもしれやせんが」
商人「女海賊も重かった気がした…だから戦士向きなのかもね」
ローグ「触ると柔らかいのに何で重いんすかね?」
商人「ねぇローグはエリクサー取りに行ったときに精霊の伴侶って見て来た?」
ローグ「頭の無い奇妙な体が木の根っこに混ざり合わさっていやした」
商人「魔女の話ではもう死んだみたいな話になってたんだけど」
ローグ「どうかしたでやんすか?」
商人「頭部に機械が埋まって無いかなと思ってさ」
ローグ「あっしが解体してきやしょうか?」
商人「機械の様な物があるなら取って来て欲しい」
ローグ「直ぐに取ってこれやすぜ?あの辺りはもう占拠しちゃってるもんで」
商人「お願い…ホムンクルスを起こす手掛かりが無いか調べたい」
ローグ「待ってて下せぇ…すぐ戻って来やす」ピョン シュルシュル
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タッタッタ スタ
女海賊「あれ?商人一人?」
商人「うん?」
女海賊「ローグは何処行ったの?」
商人「あぁ…ちょっと戦利品を取りに行ってもらってる…すぐ帰って来るよ」
女海賊「はぁぁやっぱこっちのが落ち着くわ」
商人「下は忙しいんだ」
女海賊「忙しいってかいちいち海賊の相手すんのがメンドクサイんだよ…直ぐに色目出すし」
商人「なるほどね…美人は面倒くさいね」
女海賊「ん?もっかい言って」
商人「美人は面倒くさいね」
女海賊「はぁぁぁぁ…そう…美人は罪…そして私のアソコを舐めたあいつはぶっ[ピーーー]」
商人「ハハ…あの海賊…飛空艇から落ちてまだ無事だと思う?」
女海賊「どうせ木に引っかかってしぶとく生きてんよ…あんにゃろう…思い出しただけで腹立つ」
商人「森の中で素っ裸だろうけど…」
女海賊「下に居る海賊はあんな感じの奴らばっかりなんだよ…本当話すのメンドクサイ」
タッタッタ スタ
ローグ「戻ってきやしたぜ?」
商人「どう?あった?」
ローグ「首の付け根にありやした…なんすかねコレ?」
商人「見せて!!これが超高度AIなのか?」
女海賊「うわ…めちゃ細かい機械だね」
商人「君…顕微鏡とか持って無い?」
女海賊「お姉ぇが持ってる」
ローグ「頭の荷物はあっしが預かってるでやんす…持ってきやしょうか?」
商人「うん…」
ローグ「ちっと向こうの気球に取りに行って来るっす」タッタ
商人「ふーむ…これは外部メモリを挿すスロットかぁ…という事はこういう向きで頭部に入ってる訳か」
女海賊「なんか超高度AIって思ってたより小さいんだね」
商人「そうだね…こんな小さい機械で色々考えてるんだね」
女海賊「これ頭が無かったって事は脳ミソ無いよね?どうやって記憶するん?」
商人「さぁね?…でもだから自活出来なかったんだと思うけど」
女海賊「あのさ…木って脳ミソの代わりになるんじゃね?だから木に融合してたとかいうオチ」
商人「それはありえるかもね」
女海賊「剣士が聞こえるっていう森の声の正体は実はソレでしょ」
商人「ふむ…」
女海賊「森の動物とか魔物は森の声に従ってたりするじゃん?実はそいつが操ってるって事」
商人「それが魔女が言うドリアード化なのかもね…ドリアード伝説といえば情報屋が調べてたね」
女海賊「んんん私もうこの森に興味無くなっちゃったんだよなぁ…早い所シャ・バクダ行きたいなぁ」
商人「ハハ海賊は放置かい?」
女海賊「あいつら適当に上手くやるんじゃね?」
商人「まぁまぁ…せめて今晩くらい見守ろうよ」
女海賊「この飛空艇1基無くなった所で戦局大した変わらんじゃん?お宝なんかくれてやるからさぁ…」
タッタッタ
ローグ「取ってきやしたぜ?頭が良くこの顕微鏡で金属の表面を覗いていやした」
女海賊「貸して!ちょい見る…ドレドレ」ジー
商人「何か分かる?」
女海賊「うわ…メチャクチャ細かい…え!?この顕微鏡じゃ全然倍率足りない…こんな細かい物を覆ってるこの表面はなんだろ…」
商人「君が分からないという事は僕が見ても分からないんだろうなぁ…」
女海賊「技術力が全然違うのは良く分かった」
商人「僕も見て良いかな?」
女海賊「ほい…」
商人「本当だ…すごい細かいね…アレ今どの辺り見えてるんだろ?あーーここか」
女海賊「あんたが見てもやっぱ分かんないよね」
商人「でも文字が見える」
女海賊「なんかあったね…それスロットの穴の上にある物理ボタンに書いてる奴だよ」
商人「物理ボタン?ボタンって何?」
女海賊「外部メモリは外す為の仕掛けとかそんな感じじゃないの?」
商人「外部メモリを外すのにそんな仕掛けは無かった筈…押し込んだら取れる」
女海賊「ふ~ん…じゃ他の何かの仕掛けかな」
商人「仕掛け…この文字CMOS…古代文字だ…意味分かったりする?」
女海賊「そんなん私が知ってる訳無いじゃん…ほらやっぱ情報屋に聞きたくなるっしょ?」
商人「書物は全部情報屋が持ってるなぁ…」
女海賊「海賊なんか放っておいて行こ行こ!!」
ローグ「姉さん…そら無いっすよ…ここまで連れて来たんすから責任てやつがですね…」
女海賊「ほんじゃローグ置いて行こ」
ローグ「ちょちょちょちょ…そらもっと無ぇ~っすよ!!」
女海賊「あんたが残って責任持ちゃ良いじゃん!!私はあの海賊共に裸にされてヤラれかけたの!分かる?」
ローグ「う…そらまぁ海賊にも落ち度はありやすがね」
女海賊「私からすっと爆弾落として皆殺しでも良い訳よ…ハッキリ言うと怒ってんの」
商人「まぁまぁ落ち着いて」
ローグ「実は姉さんには隠していたんでやんすが…」
女海賊「なによ!!」
ローグ「黒の同胞団の隠れ家にウラン結晶がたんまり在るんすよ…あと謎の器具もありやす」
女海賊「ちょ!!何で早く言わないのさ!!」
ローグ「言うと勝手に取りに行っちまうもんすから…」
女海賊「おっし!!それ回収したら出発…キマリね!!」
ローグ「じゃぁ明日の早朝に取りに行く感じで良いっすかね?」
女海賊「何言ってんの今行くに決まってんじゃん!!あの海賊共に先越される…」
商人「ハハハ…やっぱりそうなるか」
女海賊「商人は留守番してお姉とホムちゃん見てて…私とローグでちゃっちゃと取って来る」
ローグ「トホホ…商人さん後はお願いしやす」
女海賊「行くよ!!」ピョン シュルシュル
ローグ「ああああ…姉さん早いっすよ!待って下せぇ!!」
『貨物用気球』
フワフワ
船乗り「気を付けるでがんす」
商人「ふぅ…やっぱりこの鍵爪はロープ伝うのに何かと便利だ」
船乗り「どうしたでがんす?」
商人「指示書を持って来たんだ」
船乗り「へぇ?」
商人「女戦士が倒れてしまったからね…この後どうするか指示書でまとめて来た」
航海士「指示書という事は何処かに行かれるので?」
商人「早い話そうなる…その後は2人がこの指示書に沿って海賊をまとめて欲しいんだ」
そんなに難しい話じゃないよ
今あるキャンプをベースにして各自自由にして良いという流れさ
女戦士の貨物船はしばらく漁村で停泊
それで貨物船の乗組員がこの入り江に有ったガレー船を使って
この界隈で活動していて欲しい
船乗り「この隠れ家はどうするでがんす?」
商人「危険じゃないなら自由にして良いとは思うけど…ここは黒死病や毒が蔓延すると思うよ」
船乗り「良い隠れ家なんですがねぇ…」
商人「今のキャンプも十分良いと思うよ…あそこは特に食べ物に困らない」
航海士「どれくらいで戻って来ますかね?」
商人「女戦士が早く目覚めれば良いけど…」
船乗り「頭の容態はあまり良くないでがんすか?」
商人「うーん…何とも言えない…ただ頭を弓で撃ち抜かれて昏睡しているんだ」
船乗り「ええ!!?頭を…」
商人「他の海賊達には秘密にしておいた方が良いね」
船乗り「緊急事態だったんすね…」
商人「まぁね…それで船に乗っていた宝石があれば数年は遊んで暮らせる…それを元手にしばらくこの辺りで様子見さ」
船乗り「頭の貨物船はその…ハイディングというやつを俺達が使って良いでがんすか?」
商人「有る物は上手く使って良いよ…兎に角…女戦士が帰って来た時に万全になっていれば良い」
船乗り「承知でがんす」
商人「じゃぁ戻るね?見張りの継続もよろしく」ピョン シュルシュル
『飛空艇』
フワフワ
商人「さて…ガレー船の配置は指示通り…よし!1隻キャンプに戻ったな?予定通りだ」
商人「女戦士の様子でも見ておくか…」
商人「額に矢が貫通してまぁ良く生きている…それにしても」
商人「寝て居ると可愛らしい顔をしているなぁ…女海賊にそっくりか」
商人「キツイ目をしているのが損してるんだ」
商人「フフ…ホムンクルスと2人並んで樽から首を出しているのは奇妙だ」
商人「しかし…エリクサーに漬けて回復するのだろうか?使い方間違って無いかな?」
商人「そうだ!ホムンクルスの耳の後ろにも物理ボタンがあるのかな?」クイ
ホムンクルス「…」
商人「ある…同じなのか」カチ
商人「あ!!押してしまった…」
ホムンクルス「…」
商人「ふぅ…起きている時じゃ無いと意味が無さそうだ」
商人「こうして見るとやっぱり女戦士と違って微動だにしないのは不思議だ…置物の様だ」
商人「女戦士は呼吸で常に動いてる」
商人「ホムンクルスには生を感じない…変な感じ」
商人「あぁ…すこしお腹が減ったなぁ」
商人「あ…また独り言しゃべってた…悪い癖だよまったく」ブツブツ
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『黒の同胞団基地』
ゲホッ ゲホッ
女海賊「なんで毒霧がひどいって言ってくんないのさ!!ゲフゲフ」
ローグ「それは姉さんが話を聞いて無かったんすよ…あっしは何回も言いやしたぜ?」
女海賊「はぁ~ん?あんたぁ!!私が悪いっての?」チャキリ
ローグ「あいやいやいやいや…あっしが言ったつもりになって居ただけでやんす」
女海賊「もう!!重いなぁ…ちゃんと押してんの?」
ローグ「こんなに沢山謎の器具どうするんすか?これ全部壊れてるんじゃ無いですかね?」
女海賊「うっさいな!!ちゃんと押せよ!!」
ローグ「あのですね…荷車に山盛りじゃなくてですね…何回かに分けて運べばもっとラクなんすよ」
女海賊「それじゃ何回も往復する事になんじゃん」
ローグ「こう言えば分かりやすかね?どっちも仕事量は変わらんす」
女海賊「ん?まぁそだね…でも往復する分歩く歩数増えるじゃん」
ローグ「だからその分力必要じゃないっすか…歩数増やせばラクに運べるんすよ」
女海賊「まてよ何で重たくなんだ?重さは全部車輪に乗っかってる…ほんで抵抗になるのは軸と設置面か…」
ローグ「あのですね…運ぶ気あるんすかね?」
女海賊「うっさいな!!…だから抵抗は全部摩擦だな…軸の摩擦と設置面の摩擦は」ブツブツ
女海賊「アダマンタイトと磁石は反発する面があるからそれ利用したら摩擦抵抗が無くなるな…」
女海賊「待て待てでも狭間に干渉しそうだ…あ!!!時間が関係する…だからゆっくりなのか」
女海賊「エネルギーは同じだったとして何でそうなる?どこに行っちゃうんだ?」ブツブツ
ローグ「そろそろ休憩は良いっすか?押しやすぜ?」
女海賊「あのさ…ちょいこれ運んどいて…ちょい実験してくる」
ローグ「えええええええええ?姉さん…頼んますよ」
女海賊「船ん中に突っ込んどいて!!」ピューーー
ローグ「あぁぁぁぁ…マジっすか…トホホ」
『飛空艇』
ピョン シュタ
商人「あ!!お帰り…どうしたの慌てて?」
女海賊「魔石を作る原理を発見したかも…ちょいペンとノート貸して」
商人「え?…はい」ポイ
女海賊「えっと…この式から解いて…」カキカキ
そうだやっぱりエネルギーの解釈が違う…
エネルギーの蓄積使って圧縮すればこれが無限大
こうやって縮退させた結果出来上がるのが魔石だ…余った物質が宝石…
あーでもコレどうやって作る?
商人「なんか難しい式だね?全然分かんないや」
女海賊「時間を止めたら質量がエネルギーに変わる式だよ…その逆でエネルギーを魔石に転換出来そう」
商人「それを君が作るつもり?」
女海賊「んー作るのは無理っぽいなぁ…最悪大爆発が起きそう」
商人「新しい爆弾かww」
女海賊「この理論が正しかったら魔王の欠片集めて魔石みたいに物質化出来ると思うんだ…魔王を一個の石にすんの」
商人「おお!!」
女海賊「ほんでどっかにポイ!!なんてね」
商人「どっかって?」
女海賊「飛空艇で宇宙まで飛んでって捨てて来るとかどう?」
商人「ハハ良いね…宇宙てどのくらい向こうなんだろうね?」
女海賊「ホムちゃん起きないかなぁ…ホムちゃんだったら知ってると思うんだよなぁ…」
ピッ
女海賊「ん?」
ホムンクルス(ショキカ カンリョウ システム ヲ サイキドウ シマス)
商人「あああああ!!」ガバ
ホムンクルス(…)ピッ
ハロー ワールド
クラウド ヘノ セツゾク ガ カンリョウ シマセン
ローカル モード ヘ キリカエマス
カンリシャ ヲ トウロク シテクダサイ
商人「起きた!!ホムンクルス!!良かった…やっぱり生きてた」
ホムンクルス(カンリシャ ヲ トウロク シテクダサイ)
商人「僕だよ!!分かるかい?」
シモン ニンショウ チェック
アイコード ニンショウ チェック
オンセイ シキベツ チェック
セイタイ シキベツ チェック
商人「そうだ!!外部メモリだ…それで思い出す筈だ」スッ
ホムンクルス(ガイブ メモリ ガ ソウニュウ サレマシタ)
ホムンクルス(キカン プログラム ヲ ヨミコミマス)
商人「ホムンルクス!!僕が分かるかい?」
ホムンルクス「私は眠っていたようです…」
商人「良かった!!そうだよ君は眠っていただけだ」ギュゥ
ホムンルクス「はい…衛星から現在の標準時刻と座標を取得しました…私を起こして下さったのですね」
商人「今服を着替えさせてあげる…ちょっと待って」ダダ
ホムンクルス「体温が低下している為動くことが出来ない様です…樽から出して頂けませんか?」
女海賊「ホムちゃんおいで」グイ
ホムンクルス「ありがとうございます」
女海賊「動かなくなって心配したんだよ」ポロリ
ホムンクルス「ご心配をお掛けしました…現在の状況が掴めないのですが…」
女海賊「良いの良いの!!ホムちゃんは何も心配しなくて良いの…居てくれるだけで良い」
ホムンクルス「生体機能が回復するまで1時間ほど時間を要します」
商人「これが君の着替えだ」
ホムンクルス「はい…恥ずかしいので早く着せてもらってよろしいでしょうか?」
商人「分かってるよ…出来るだけ見ない様にするから」
女海賊「手伝う…そっち持って」グイ
ホムンクルス「脳内に不整合な記憶が存在します…一部しか読み込めません」
商人「忘れても良いよ」
ホムンクルス「夢とはこのような状態を指すのかもしれません…夢として保存します」
女海賊「夢か…ホムちゃん寝ている間は夢見た?」
ホムンクルス「分かりません…恐怖の感覚が脳に残って居ますので悪い夢を見て居たのかもしれません」
商人「恐怖か…もう大丈夫さ」
ホムンクルス「はい…現在の脳波はリラックス状態です」
女海賊「ちょっと飛空艇の中温かくしよっか?」ジュゥ モクモク
ホムンクルス「ありがとうございます…」
商人「だっこしてあげるよ」ギュゥ
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『1時間後』
女海賊「もう歩いて大丈夫?」
ホムンクルス「はい…」ニコ
女海賊「お姉ぇも目ぇ覚ましてくんないかなぁ…」
ホムンクルス「女戦士さんはどうなされたのですか?」
女海賊「弓矢で頭撃ち抜かれちゃったんだ…魔女が治療してくれたんだけど目ぇ覚まさないんだよ」
ホムンクルス「傷は見当たりませんね」
女海賊「脳の損傷がどんだけあるか分かんないって…」
ホムンクルス「理解しました…物理的損傷の修復は出来てもシナプス連携まで修復は出来ないという事なのですね」
女海賊「シナプスって何?」
ホムンクルス「記憶の繋がりと言えば良いでしょうか…記憶の連携が意識として認識されます」
女海賊「連携出来てないから意識が無いって事?」
ホムンクルス「私で言う不整合な記憶として連携しているのでしょう」
女海賊「意味わかんないんだけどさ…」
ホムンクルス「商人さんは記憶の中に心があると言いましたが…記憶のどの部分がご自身の心なのか分からない状況です」
ホムンクルス「私の記憶の中にも女戦士さんの心の部分が記憶されていますのでリンクさせる事が出来れば修復できるかもしれません」
女海賊「リンク?どうやってやるん?」
ホムンクルス「皆さんの記憶をリンクさせる方法は私には分かりません」
商人「分かった!!夢だ!!僕たちはみんな夢で繋がってる」
ホムンクルス「私が皆さんの夢と繋がるにはどうすれば良いのでしょう?」
商人「夢幻…そうだ夢幻はクラウドにある」
ホムンクルス「現在クラウドは消失していますね…この区域はクラウドが構築されて居た筈ですがどうなって居るのでしょう?」
商人「あ…電磁パルスで消失してしまったのか…そうだな…それしか考えられない」
女海賊「ちょい私行って来る…」ヌギヌギ
商人「ちょま…うわ…急に裸になられると困る」
女海賊「あんたが目ぇ閉じときゃ良いだろ!!」
ホムンクルス「どうされるのですか?」
女海賊「お姉ぇと背中合わせで寝る」チャプ
商人「そんな方法で?」
女海賊「剣士とはこれで繋がれるんだよ…お姉ぇとも繋がれるかも」
ホムンクルス「クラウドを介さずローカル接続をお試しになるのですね」
女海賊「ちょい寝るからアッチ行ってよ」
商人「ハハまぁ良いか…ホムンクルスもおいで…邪魔しないでおこう」
ホムンクルス「はい…」
---------------
タッタッタ スタッ
ローグ「あらららら?ホムンクルスさん…目を覚ましたんでやんすね?」
商人「あ…うん」
ローグ「姉さんは何処に行きやしたかね?」
商人「今寝てるからそっとしといた方が良いよ」
ローグ「はぁぁぁそら良かったっす…姉さんは人使いが荒いもんすから」
商人「下の様子はどう?」
ローグ「略奪品で盛り上がってやすね…食料が調達出来た様なんで分配してる所っすよ」
商人「それは良かったね…飛空艇にも少し積んでおきたいな」
ローグ「見繕ってあっしが少し持って来やす…」
商人「あぁ済まないね」
ローグ「姉さんのお使いに比べれば安いもんすよ…ちっと待ってて下せぇ」ピョン シュルシュル
ホムンクルス「皆さんお忙しいのですね…」
商人「君はゆっくりしていて良いんだよ」
ホムンクルス「はい…」
商人「そうだ!!君に見て欲しい物が有ったんだ…」
ホムンクルス「何でしょう?」
商人「これさ…これって超高度AIなんだよね?」
ホムンクルス「どこでこれを手に入れたのですか?」
商人「停止した精霊の伴侶から取り出した物だよ」
ホムンクルス「察するにやはり黒の同胞団に匿われて生存していたのですね?」
商人「うん…君が予測した通りだった」
ホムンクルス「そのユニット内部の賢者の石がどのくらい持つのか分かりませんが大切に保管していた方が良いでしょう」
商人「まだ使えるっていう事?」
ホムンクルス「記憶領域を接続する事が出来れば私と同様の思考を持たせる事が可能です」
商人「あ…それとこのボタンって何?」
ホムンクルス「それは初期化のボタンです…ロジックの不具合で停止してしまった場合などに初期化させるのです」
商人「なるほどね…」
ホムンクルス「超高度AIユニットはインターフェース部が酸化に弱いので酸化防止の為にエリクサーに浸しておいた方が良いです」
商人「瓶の中でエリクサーと一緒に入れれば良さそうかな」
ホムンクルス「十分ですね」
----------------
タッタッタ スタッ
ローグ「持ってきやしたぜ?…よっこらせっと」ドサリ
商人「肉に小麦…あ!胡椒まである」
ローグ「野菜も袋の中に積めてあるっすよ…いやぁぁしかし飛空艇にホムンクルスさん居ると安心しやすね」
ホムンクルス「ありがとうございます」ニコ
ローグ「姉さんも商人さんも…なんつーか…野菜なら生で食っちゃうタイプなもんで」
商人「ちゃんと焼くよ」
ローグ「興味の無い事に面倒くさがりなんすよ…なんで料理とかやらんのですわ」
商人「ハハ…まぁ当たってるかな」
ホムンクルス「この材料で何か作りましょうか?」
ローグ「楽しみっすねぇ…ちぃとあっしは酒も持って来るでやんすよ…良いワインがあるんす」
商人「何回も済まないね…」
ローグ「いやいや…下に居るよりはマシなんで」ピョン シュルシュル
ホムンクルス「トマトが有るのでこれをベースに煮込みを作ります…少々お待ちください」
商人「楽しみだ…やっぱり君が居るのと居ないのとでは全然違う」
ホムンクルス「そう言われると私も嬉しいです」ニコ
商人「何か手伝おうか?」
ホムンクルス「肉を一口大にカットして頂けますか?」
商人「うん!」
-----------------
ぐぅ すぴーー
女海賊「むにゃ…ふご」ブクブク
女海賊「げほっ…げふげふ」パチ
女海賊「お姉ぇ!!」キョロ
女戦士「すぅ…すぅ…」
女海賊「…これじゃダメだ…ホムちゃーーーーん!!」バチャバチャ
ホムンクルス「お目覚めになりましたね?」
女海賊「ちょっと商人にロープ用意させて」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「あとお姉ぇの着替えも持って来て!!」ゴソゴソ
ホムンクルス「樽から出されるのですね?」
女海賊「うん!!これじゃお姉ぇは目ぇ覚まさない」ゴソゴソ
ホムンクルス「少しお待ちください…」イソイソ
-----------------
商人「ロープなんか何に使うんだい?」
女海賊「お姉ぇを縛る」
商人「ええ!?」
女海賊「あんたはアッチ行ってて…ホムちゃん手伝って!」
ホムンクルス「はい…どうすれば…」
女海賊「お姉ぇを抑えてて…私がロープで縛って行くから」グイグイ
ホムンクルス「…どうしてこのような事をされるのですか?」
女海賊「お姉ぇは昔からロープで縛られるのが大好きなんだよ…動けないのを脱出する謎の趣味があんの」グイグイ ギュゥゥ
ホムンクルス「そうだったのですね」
女海賊「あと重たい物を体に乗っけると落ち着くらしい…だからロープで縛って樽乗せとく」
ホムンクルス「そのような療法は誰にも思いつきませんね」
女海賊「商人!!お姉ぇのオリハルコン原石何処行ったか知らない?」
商人「持ち歩いて居たよね?」
女海賊「だからお姉ぇの荷物どこにあんのって言ってのさ!!」
商人「貨物用気球に乗ってる筈だよ」
女海賊「取って来て」
商人「向こうは周囲の警戒で飛び回ってる…ちょっと時間かかるよ」
女海賊「んぁぁぁ…出来るだけ早く」
商人「うん…分かったよ」
------------------
タッタッタ スタ
ローグ「こ…こりゃ何事っすかね?」
商人「ハハ見ての通りさ…変態姉妹だよ…訳が分からない」
ローグ「姉さん…乗せるのは樽じゃなくて砂鉄か鉄板の方が良いっすね」
商人「え?」
女海賊「砂鉄も鉄板も無いじゃん!!」
ローグ「参りやしたねぇ…樽じゃ部分的にしか重さ伝わらんのですよ」
女海賊「じゃぁしょうがないじゃん」
ローグ「吊るしやしょう!体重で均等に負荷掛かりやす」
女海賊「あんた出来んの?」
ローグ「あっしは慣れてるんで代わりにやりやす…吊り方にコツがあるんす」
女海賊「じゃやって」
ローグ「頭はこんな縛り方じゃ簡単に抜けてくるんで特殊な縛り方があるんす…見てて下せぇ」グイグイ ギュゥ
女海賊「ほーん…」
ローグ「これだけやっても抜けて来るんすがね?本当は鎖の方が良いっすね」ミシミシ グイ
女海賊「これで目を覚ましてくんないかな?」
ローグ「どーっすかね?でも樽に入れてるよしか大分良い状態っす」
女海賊「ほんであんた何持ってんの?」
ローグ「あぁ…ワイン持って来たんすよ…飲みやすか?」
女海賊「お姉ぇに飲ませてみる?」
ローグ「あっしは責任取れやせんぜ?この状態で飲ませた事無ぇーもんすから」
女海賊「一口だけ飲ませてみる…頂戴」
ローグ「へい…」
女海賊「お姉ぇこれ飲んでみて?」
女戦士「…」ムグムグ
女海賊「よし…これでやることやった」
商人「…」アゼン
女海賊「何か良い匂いすんだけど何?」
ローグ「ホムンクルスさんが食事を作ってくれているでやんす」
女海賊「おぉ!!腹減って来た…ホムちゃんお腹空いたぁぁ!!」
ホムンクルス「はい…もう少しお待ちください」
---------------
女海賊「うんま!!」モシャ モグ
ローグ「ワイン飲みやすか?」グビ
商人「僕も少し」モグモグ
ホムンクルス「…」ニコニコ
商人「さて…お腹も膨れたし…外見張っておくよ」
女海賊「どんな感じ?」モグモグ
商人「相変わらずさ…トロールはどうやら火を消しているんだね」
女海賊「ケンタウロスは?」
商人「居なくなったかな」
ローグ「海賊の方は夜通し略奪に行くみたいっす…あまりにも収穫が良いもんで」
女海賊「何か良い物あんのかね?」
ローグ「エルフの死体探してるんすよ…止めておけば良いんすがねぇ」
女海賊「あぁぁ馬鹿海賊が考えそうなこった…死体で遊ぶつもりね」
商人「僕らはどうする?もう行く?」
女海賊「行こ…馬鹿に付き合ってらんない」
商人「女戦士の荷物があっちの気球に乗ったままだ…」
ローグ「え?こっちに持って来やしたぜ?」
商人「え?そうだったの?」
ローグ「ボルト入ってる箱が空いてたんでそん中っすね」
商人「一応船乗りにはこれからの指示書は渡しておいたよ」
ローグ「おぉ!!商人さんありがとうでやんす…これであっしが置いてきぼりにはならんすね?」
女海賊「ウラン結晶はどうなった?」
ローグ「1個だけこっちに持って来ていやす…残りは下の船にありやすね」
女海賊「おけおけ…ほんじゃ行こ」スパ
ローグ「あああああああ!!」
商人「ハハ決断早いね…」
女海賊「とりあえず北のエルフの森目指す…その後シャ・バクダ行く」グイ
ローグ「縦帆出しやすぜ?」
女海賊「横帆も張って!!高度上げる」
シュゴーーーーー バサバサ
『エルフの森南部』
ローグ「こらエライ事になってやすね…雪が全部吹っ飛んだってどういう状況なんでしょう」
商人「そこらじゅうで煙が上がってる…これじゃどこで戦ってるか分からない」
女海賊「まいったなぁ…一回森の外出るかぁ」
商人「5日前に森の中を北に移動したとしてどのくらいの距離進めるんだろう…」
ローグ「エルフは寝る必要無いんで行動範囲広いって聞きやす」
女海賊「どっちにしてもこんな状況じゃ見つけらんないよね…ドラゴンでも飛んでれば分かりやすいんだけどさぁ」
商人「もう少し高度下げて貰って良いかな?何か…影見たいなものが動いてる様に見える」
女海賊「おっけ!!進路変えながら下げる」グイ
シュゴーーーー バサバサ
女海賊「見える?」
商人「虫の大群だ…バッタなのか?トンボ?…でかいな」
女海賊「冬なのに虫?」
ホムンクルス「昆虫は寒さに強い種も居ますよ?」
ローグ「ありゃドラゴンフライとキラービーっすねぇ…森以外じゃほとんど見ねぇ魔物っす」
商人「あんなに沢山…」
ローグ「近づかない方が良いっすよ…でかいのだと1メートルくらいのが居るらしいっす」
女海賊「行先はやっぱ北だな…虫の進行方向に合わせる」
ローグ「北北西っすね」
女海賊「おっけ!」グイ
ホムンクルス「昆虫は外敵から住処を守る為に毒をまき散らす性質があります…この森の性質も大きく変わりそうですね」
ローグ「見た感じ死の森っすね」
女海賊「そういやクモも身を守るのに毒使うんだっけか」
ホムンクルス「ここからでは見えませんが森の下の方では地生昆虫も動いていそうですね」
女海賊「おっし!スピード上げる!!」ハイディング!」スゥ
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『数日前_オアシス砦』
タッタッタ
アサシン「案内人!!今すぐに気球を準備しろ…5分でやれ」
案内人「何かあったのか?」
アサシン「説明は後だ!!盗賊と情報屋は何処だ?」
案内人「表で商隊の荷下ろしを手伝ってる」
アサシン「直ぐに戻るから気球の準備を頼む」
タッタッタ
『砦前』
ガヤガヤ ガヤガヤ
今日はとりあえずここに荷を下ろして搬送は明日だ
私達は中に入って良いのでしょうか?
大丈夫だ!中の方が温けぇから入れ
ガヤガヤ ガヤガヤ
アサシン「盗賊!!情報屋!!緊急事態だ…来い!!」
盗賊「んあ?荷下ろしまだ残ってんだけどよ…」
情報屋「どうしたの?慌てて…」
アサシン「シャ・バクダに隕石が降って来るらしい…魔女からの指示だ」
盗賊「何だと!?そりゃ何時来るんだ?」
アサシン「30分後だ…それまでに地下に避難する」
盗賊「砂漠に地下なんかある訳無ぇだろ…どうすんだよ」
アサシン「遺跡だ…」
盗賊「間に合わねぇ!!気球で飛んでも30分じゃギリギリ過ぎる…それに避難民はどうする?」
アサシン「ひとまず砦の中に入れておくしかあるまい…ツベコベ言わず直ぐに行動しろ…5分で気球まで来い」
盗賊「どぁぁぁマジか!!情報屋!!そっちの避難民誘導してくれぇ!!」
情報屋「分かったわ…」
盗賊「5分後に気球で集合な?」ダダ
ガヤガヤ ガヤガヤ
おい!お前等!今すぐに砦ん中に入ってくれ
まだ荷が…
そら後でやるから入ってくれ!!
ガヤガヤ ガヤガヤ
『気球』
フワフワ
案内人「準備できたぜ?乗ってくれ」
盗賊「情報屋!先に乗れ!!」
アサシン「飛ばせろ…真っ直ぐ遺跡の方に向かうのだ」
盗賊「おっとぉ!!」ピョン ガシ
情報屋「急過ぎるわね…はぁはぁ」
盗賊「魔女は何て言ってんだよ」
アサシン「魔女も詳しい事は分かって居ないらしい…兎に角緊急事態で避難しろと言うだけだ」
情報屋「それだけ切羽詰まっているのね」
盗賊「しかしもう間に合わんぞ?この気球じゃ最速で行っても30分だろ」
アサシン「出来るだけの事をやるまでだ…空の状況を良く見ておくのだ」
”魔女…聞こえるか?どうやら地下に避難するのは間に合わん様だ”
”そりゃイカンな…千里眼で見通しておるがわらわにも詳細が分からんのじゃ”
”隕石が落ちて来るのだな?”
”女海賊がそう言うて居る”
”木の陰に身を隠すでも良いか?”
”何もせんよりはマシじゃな”
”状況に変化があるなら直ぐに連絡してくれ”
情報屋「どのくらいの隕石なのかも分からない様ね…」
盗賊「空に異常は無ぇぞ?」
情報屋「シャ・バクダに突然隕石が落ちるなんて…」
アサシン「あのシャ・バクダ砦を守って居るゴーレムの破壊と考えるか…」
盗賊「んん?なんだあの星…見ろ!シリウスの左下だ…あんな星有ったか?」
情報屋「随分低いわね…もしかしてあれが此処まで飛んで来る?」
アサシン「暗い星だな…」
盗賊「チラチラ光る…やっぱ見た事無ぇ星だ」
アサシン「ううむ…どうやら魔女の言う事が正しいか…案内人!急いでくれ」
案内人「これで精一杯だ…祈ってくれい」
ピカーー
情報屋「彗星!!」
盗賊「ヌハハなかなかの天体ショーじゃ無ぇか」
情報屋「笑いごとじゃ無いわ?あの星に彗星が吸い込まれた…何か起こってる」
”アサシン聞こえるか?”
”状況は?”
”インドラの矢で隕石の破壊を試みた様じゃ”
”今の光がそれだな?”
”主らも見て居るか…失敗じゃ”
”失敗…”
”兎に角避難せい…直撃せぬ様に何かで身を守れ”
”わかった…こっちで何とかする”
アサシン「聞いたな?インドラの矢でも破壊出来ない規模だという事だ」
情報屋「見て…あの星…ゆっくり動いてる」
盗賊「そら真っ直ぐここに向かってるからゆっくり見えてんだな?」
情報屋「多分…」
アサシン「高度を下げながら向かえ…間に合わない様なら飛び降りて雪の中に身を隠せ」
盗賊「手詰まりか…ちぃぃぃそれしか無ぇな」
案内人「遺跡はあそこの森だな?」
アサシン「そうだ…」
案内人「…むむむ間に合うか‥‥」
『シャ・バクダ遺跡上空』
フワフワ
案内人「飛び降りる準備をしてくれい!!」グイ
情報屋「あれ?…あの星すこしずれて飛んでる…行先はどこ?」
ピカーーーーーーーーーーーーー
盗賊「うお!!眩しい…」
情報屋「ぅぅぅ…南東の方角…森だわ」
アサシン「森に落ちたのか?」
盗賊「眩しくて見えんな」
アサシン「逸れたか…」
盗賊「隕石ってこんなに長く光るもんなんか?」
アサシン「いや…これから降って来るのかもしれん」
情報屋「空が…オーロラで覆われてる…どうなって居るの?」
盗賊「こりゃ森が吹き飛んじまってんな」
アサシン「光が長すぎる…隕石なぞでは無い…インドラの矢を超える何かだ」
情報屋「まさか…失われた古代兵器」
アサシン「ゴーレムの件と言い…ありえない話では無い」
盗賊「その古代兵器はヤバイ物なんだな?」
情報屋「キ・カイでいくつか発掘されて展示されているわ…動かし方も何も分かって居ないけれど…まさか」
アサシン「目の当たりにして明らかにインドラの矢を超えている…それしか考えられそうにない」
情報屋「定説がひっくり返る…古代兵器は砲弾の類じゃなさそうね」
アサシン「定説とは?」
古代文明が滅びた原因はインドラの矢というのが定説
古代兵器にインドラの矢を超える破壊力があるとするなら
滅びた理由が変わる
キ・カイで発掘された古代兵器は今まで長距離砲弾の類と言われて居たの
ただ一部の学者はそれに異を唱えていたけれど古代兵器の解明までは出来なかった
盗賊「しかしこれ…爆発が長く無ぇか?いつまで続くんだ?」
ゴゴゴゴゴゴ ゴーン
盗賊「うぉ!!上か!!」
情報屋「空が一瞬で曇った…衝撃波ね」
盗賊「音が上から来るたぁどうなってんのよ」
アサシン「何が起こるか分からんな…やはり地下に避難した方が良い」
案内人「もうちょいだ…降りる準備してくれ」
フワフワ ドッスン
『シャ・バクダ遺跡』
ゴゴゴゴゴゴ ゴゴーン
盗賊「お!?暗くなった…収まったか!!」
情報屋「2分弱ね…」
盗賊「一気に暗くなっちまった…ちっと明かり用意するわ」カチ ピカー
アサシン「フフさすが盗賊…何でも持って居るな」
盗賊「案内人!松明乗せてたよな?持って行け」
案内人「へいへい…」
盗賊「雪積もって入り口何処だったか分かんねぇぞ?」
アサシン「こっちだ…私が目印を立てている」
盗賊「おい!!待て…足跡だ」
アサシン「何の足跡か分かるか?」
盗賊「この辺に居るっちゃぁシカだと思うんだが…どえらいでかいシカだなこりゃ」
アサシン「まぁ良い…落ち着いたら後で捕獲しよう…行くぞ」
ギュ ギュ ギュ
アサシン「ふむ…どうやらここに時の王が来ていた様だな」
盗賊「この足跡はアンデッドホースか…どうする?中に入るか?」
アサシン「私は時の王に勝てる自信が無い…争いは避けたいのだが…」
情報屋「ゴーレムの件とか色々事情を知って居ると思うわ」
アサシン「敵か味方か分からんのだ…話すのは危険が伴う」
盗賊「ここまで来て外で待機は無いだろ凍えちまう…一先ず中に入ろうぜ」
アサシン「ううむ…」
情報屋「中に居るかどうかも分からないわ?行って見ましょ」
アサシン「気は進まんが…行って見るか」
情報屋「今まで聞いた話からするともう時の王は敵では無いわ…分別が付く相手に思う」
盗賊「案内人!松明をよこせ…俺が先頭を行く」
『勇者の像』
メラメラ パチ
アサシン「と…時の王…ここで何を」ズザザ
時の王「…」パチ
アサシン「争う気は無い…」
時の王「ふっふっふ…聞いた事のある声だ…誰だったか」
盗賊「おいおいどんな展開だ?」
時の王「私は疲れている…去れ」
情報屋「勇者の像に花を…あなたね?」
時の王「これは我が子だ…いや正確には養子だ」
アサシン「なん…だと?」
時の王「思い出したぞ小僧…お前は白狼の一味だな?又私の道を遮る気か?」
アサシン「まだ人間の滅亡を企てて居るのか?」
時の王「精霊シルフが生きて居ると聞くまではな…今はただシルフを探している」
アサシン「ホムンクルスの事だな?」
時の王「そう名乗っているのか…彼女はどこだ?…なぜ私の下へ戻らない?」
アサシン「ホムンクルスは精霊シルフとは違う道を選んだ…そういえば理解出来るか?」
時の王「会わせてくれ…シルフには私が必要なのだ」
アサシン「精霊シルフはもう…居ない…200年前に亡くなった」
時の王「話すだけ無駄だったようだ…去れ」
アサシン「精霊シルフでは無いが…ホムンクルスに会わせてやると言ったら?」
時の王「私と取引をしようと言うのか…」
アサシン「…」
時の王「何が望みだ?」
アサシン「温まらせてもらって良いか?」
時の王「ふっふっふ…無礼を許せと言うか…はっはっは…」
盗賊「まぁなんだ…キャンプを一人で独占すんのはもったいないよな?」
時の王「王の御前の振る舞いか?まぁ良い…これで取引は成立だ」
盗賊「ふぅぅぅ…話しの分かる王で良かった…ぅぅぅ寒ぶ」
時の王「我が末裔はどうした?屋敷から共に逃げたのでは無かったか?」
アサシン「魔女の事か…彼女は別の者と行動をしている」
時の王「ほぅ…察するに蒼眼の者と見た」
情報屋「蒼眼…剣士の事ね」
アサシン「そうだ」
時の王「やはり蒼眼と紅眼は引き合う定めか…」
アサシン「引き合う?」
時の王「済まんが理由は忘れてしまった…ただいつの時代でも共に行動し共感する」
情報屋「女海賊は時の王を理解しようとしていたわ…きっとそれね」
時の王「さて…何処に行けばシルフに会える?」
アサシン「その蒼眼の者と紅眼の者達と共に行動しているのだ」
時の王「くっくっく…またもや同じか…次はシルフを失う訳に行かない…私が連れて行く」
盗賊「あのよぅ?ホムンクルスは精霊シルフじゃ無ぇぞ?」
時の王「インドラの光を見た…あれはシルフにしか使えない物だ」
アサシン「まぁ会わせて本人に問うだな」
盗賊「商人が黙っちゃいないと思うんだがよ…」
アサシン「いや…ホムンクルスの判断を商人は尊重する筈だ…ホムンクルス次第だな」
盗賊「まぁ良いか…だがホムンクルスがこっちに来るのはしばらく待ちになっちまうぜ?」
時の王「行く当てが無くなった所だ…ここで何時までも待つ」
アサシン「では退屈しのぎにもう少し話を…」
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『数時間後』
…かの者名は暁の使途
奴は定命の者にして覇道を歩みそして我が右腕となった
だが黄昏の賢者はこれを由としなかった
それから第2期の始まりだ…
盗賊「んぁぁ…俺には全然理解出来無ぇ…何の話なんだよ」
情報屋「私にもさっぱりよ…話が支離滅裂でいつの時代なのかも書物無しだと追いきれない」
盗賊「話聞くのはアサシンに任せるだな」
情報屋「そうね…でも少しだけ読み取れた話があるわ?」
盗賊「昔話でか?」
情報屋「多分なんだけど精霊シルフの言葉の殆どはホムンクルスが言ってる事と同じの様ね」
盗賊「あぁ…交配とかウンタラカンタラな?」
情報屋「そう…」
やっぱり精霊シルフも人間を絶滅させる命なんか出して居なくて
命を受けた人の過大解釈でそうなってしまった様に思うわ
シャ・バクダでの抗体獲得だって
周りの人の過大解釈で大きな殺戮に繋がった
そうやって精霊シルフの思惑を過大解釈でゆがめてしまう人達は
精霊の目には裏切りに見えたのだと思うわ
きっと時の王もそうやって精霊と距離を置かれたんだと思う
盗賊「ふむ…ありえそうだな…ホムンクルスの言葉を真に受けて商人が過激な手段を行使する…そんな感じな?」
情報屋「そうよ…そうやって破綻した歴史なの」
盗賊「ただ本人達は精霊の命に従ってるだけと思ってるのがな…」
情報屋「事実として種の交配が進んでいるからどっちに転んでも精霊の思惑に収まるのね」
盗賊「こりゃ誰も間違って無い…噛み合ってないだけか…」
情報屋「うん…」
盗賊「しかし黒の同胞団の話が全然出てこない…やっぱ関係無いのか?」
情報屋「時の王にとって関係が薄い証拠と言い換えれるわね…利用されていただけの線が強そうね」
盗賊「じゃぁここに来たのは単純に精霊シルフを探しに来ただけか?」
情報屋「うーん…でもさっきから話に出て来る隠匿の皇子って誰の事を挿すのかしら」
盗賊「前後関係が俺には分からん」
情報屋「その皇子が黒の同胞団の一人だったとすると辻褄が合いそう」
盗賊「まぁ俺はもう聞きたく無ぇ…昔話は苦手なんだ」
情報屋「フフ私が耳を立てておくから寝てて良いわ」
盗賊「あぁぁやっぱ焚火があると温かくていいな…寝る」
『翌朝』
メラメラ パチ
アサシン「起きろ!行くぞ!」ユサユサ
盗賊「んあ?」パチ
アサシン「朝だ…案内人と情報屋は気球に乗ったぞ」
盗賊「あぁぁ悪い悪い…すっかり寝ちまった…時の王はどうした?」
アサシン「森の様子を見に行くと言って出て行った」
盗賊「何か聞けたのか?」
アサシン「まぁ色々とな…話は後だ…気球に乗れ」
盗賊「おう!!アレ?…ここにぶっ刺さってたクソでかい剣は何処行った?」
アサシン「あれは時の王の剣らしい」
盗賊「なるほどな…ここに置いてた剣を取りに来たって訳か」
アサシン「お前は気付かんのか?」
盗賊「んあ?何を?」
アサシン「夢幻を覚えて居ないのか?」
盗賊「俺は夢を見ないもんだからよ…どうもぐっすり寝ちまう」
アサシン「私はな…探していた人物をようやく見つけた気がする」
盗賊「時の王なのか?」
アサシン「時の王はな…リリスの生き血を飲んで以来一度も寝て居ない…つまり夢を見ない」
盗賊「だから何だ?」
アサシン「夢幻に行って精霊に会えないのだよ」
盗賊「ふむ…」
アサシン「精霊の望みが何だったのかお前には分からんか?」
盗賊「騎士…俺がスリを教えた…精霊は…」
アサシン「思い出したな?」
盗賊「まて…この記憶は夢の記憶なのか?」
アサシン「時の王に掛けられている呪いを解く必要がある様だ…精霊の望みはそれだ」
盗賊「だめだ…しっかり思い出せ無ぇ…」
アサシン「まぁ後で良い…行くぞ」タッタッタ
盗賊「おおぅ待てよ!」タッタッタ
『気球』
ヒュゥゥゥ
盗賊「シャ・バクダ砦のゴーレム何処行っちまったんだ?」
情報屋「ドラゴンも居なくなったわね」
アサシン「次から次へと私達の知らない所で色々起きるものだな…」
情報屋「魔女から連絡は?」
アサシン「女海賊達と貝殻の通信が出来なくなってバタ付いて居るらしい」
盗賊「なんだとぉ!?まさか隕石に巻き込まれたのは俺らじゃなくてあいつらだってか?」
アサシン「分からん」
盗賊「あいつらは何やってたんだよ」
アサシン「森に向かって居た様だ…それしかわからん」
盗賊「案内人!!もうちょい高度上げろ!!」
案内人「あぁ分かった」
情報屋「アサシン…私達はどうするの?」
アサシン「今考えて居る所だ…」
盗賊「ちっと森の様子が分かる所まで飛んでくれ」
『森の外れ』
ヒュゥゥゥ
情報屋「見える?」
盗賊「南の方は一面真っ黒だ…穴が空いてるのかも知れん」
アサシン「望遠鏡を貸すのだ…私にも見せろ」
盗賊「ほらよ」ポイ
アサシン「むぅぅ…遠すぎる…赤く見えて居るのは恐らく火災か」
盗賊「行って見るか?」
アサシン「何が起きて居るのか分からない中この気球で行く気にはなれんな」
”アサシン聞こえるか?ザーーーー”
”魔女か…聞こえが悪いのだが”
”ザーーーー…じゃのうザーーーー”
”女海賊はまだ連絡付かないのか?”
”今連絡ザザザザー…無事じゃザーーーー”
”無事なんだな?”
”心配せんでも良いザザザーーー”
情報屋「良かった!無事なのね?」
盗賊「ふぅぅぅ心配させやがって」
アサシン「雑音がひどいな…何なんだこれは」
盗賊「おい!!南東の空!!」
アサシン「んん??あれは…」
盗賊「ありゃ隕石だ…2つ!!」
シュゥゥゥゥゥゥ ゴゴーーーン
盗賊「落ちた…」
アサシン「フフ隕石は所詮その程度という感じだな…昨晩の爆発の比では無いな」
盗賊「でもスゲェぞ…火柱なのか?爆発がえらくゆっくりだ」
情報屋「まだ落ちて来るわ…又2つ」
盗賊「あそこで何か起きてるのは間違いない様だ」
アサシン「遠すぎて望遠鏡ではよく見えん」
シュゥゥゥゥゥゥ ゴゴーーーーン
盗賊「ありゃ魔女の魔法じゃ無ぇのか?」
アサシン「メテオスウォームか?魔女は今船に乗って居る筈だ…ありえんな」
情報屋「じゃぁハイエルフ?」
アサシン「それしか考えられん…ドラゴンも何処に行ったか分からんのだから戦地があそこに移ったのだろう」
盗賊「あんなんが落ちてくるんじゃ俺ら何も出来ん」
アサシン「うむ…指をくわえて見るしかない」
情報屋「又2つ落ちて来る…」
シュゥゥゥゥゥゥ ゴゴーーーーン
アサシン「戻るぞ…備える必要がある」
盗賊「どうする気だ?」
アサシン「エルフの戦いに巻き込まれる訳に行かない…民をオアシスに誘導して見過ごす」
盗賊「それしか無いか」
『ゴーレム襲来の日』
エルフゾンビ「では行って来る」ピョン
ヒュゥゥゥ ボスン!
エルフゾンビ「思ったより雪が浅かったか…」ズリ
エルフゾンビ「…」---まぁ直にエリクサーが効いて来るだろう---
敗残兵1「うあぁぁ…人が…降りて来た」
敗残兵2「ど…どうする?」
敗残兵1「化け物だ…逃げる」ダダ
敗残兵2「お…おい!!」
エルフゾンビ「私に構うな…」
敗残兵2「お前は何者だ?」
エルフゾンビ「フフ愚門…どけ」ドン
ゴゴゴゴゴゴ ボゥ
エルフゾンビ「む…始まったか」
敗残兵2「くぅ…ドラゴンか!!」
エルフゾンビ「隠れて居た方が良いぞ…ドラゴンは目が良い」
敗残兵2「お前は良いのか?」
エルフゾンビ「私は砦に用があってな…気にするな」スタ
敗残兵2「…」
タッタッタ
エルフゾンビ「…」---ドラゴンライダー4とハーピー8か---
エルフゾンビ「…」---今の内にさっさと使役を終わらせよう---
『シャ・バクダ砦裏』
??「だめだもうエルフを解放した方が良い」
??「何言ってるんだ…僕達の同胞になれるかもしれない」
??「もうキマイラの増援は見込めない…持たないぞ?」
??「大丈夫…もうすぐ来るよ…これでアダムの所までたどり着ける」
??「エルフも連れて行くのか?」
??「しょうがないだろう?事情を知ればきっと仲間になる」
エルフゾンビ「はっ…」---この声はまさか---
??「ん?…どこだ?なにか匂う」
エルフゾンビ「…」---マズイ気付かれたか---
エルフゾンビ「…」---今やるしかない---
エルフゾンビ「私に従え…門を開けて私に付いて来い」フリフリ
??「誰かの声がする…裏だ…この匂いはエリクサー…誰か居るな!!」
??「探してくる」ダダ
エルフゾンビ「…」---さすが勘が鋭い…ここは一先ず逃げだ---
??「こっちだよ!!」
??「うぐ…」
??「ん?何処行くんだよ?」
??「いや…分からない…体が勝手に」
??「君も敵になってしまうのかい?困ったなぁ…」
??「頼む…殺さないでくれ」
??「僕は同胞を殺めるつもりは無いよ…まいったなぁ君まで居なくなると寂しいじゃないか」
??「どうしたんだ?自分の意思で動かしてる訳じゃ無い」
??「ダメだよ…そこ開けるとミノタウロスが入って来ちゃう」
??「俺を止めてくれ」ブンブン
??「武器振り回されたら近づけないじゃないか…誰か居ないかぁぁ!?」
??「あわわわ…なんで体が勝手に」ガチャリ
??「精鋭!!突入に備えて!!」
精鋭達「ハッ!!」
射手!!構え!!
重機!!壁!!
ギギギギギ ガコン
??「爆発魔法!!」バーン
ミノタウロス「肉…肉ぅう」ガブ
??「ぎゃぁぁぁ…」
----------------
タッタッタ
??「見つけた…足跡…シャ・バクダの方角か」
エルフゾンビ「動くな…」スチャ
??「うっ…後ろか」ギクリ
エルフゾンビ「何故お前が此処にいる?」
第3皇子「その声は兄者!!」
エルフゾンビ「動くなと言った」ズブ
第3皇子「この反乱は兄者が扇動したの?すごいじゃない…どうやって?」
エルフゾンビ「質問をしているのは私の方だ」
第3皇子「そうか分かったぞ…大兄をフィン・イッシュに逃したのも兄者が引導したんだね?」
エルフゾンビ「答えろ」
第3皇子「ハハ変わって無いなぁ…兄者のそういう所キライだよ」
エルフゾンビ「質問を変える…母上と姉上達はどうした?助けるのでは無かったか?」
第3皇子「勿論助けたさ」
エルフゾンビ「何処にいる?」
第3皇子「質問ばっかりだね…なんか分かって来たよ…兄者は白狼の一味だったんだね?」
エルフゾンビ「そうやっていつも話をはぐらかす」
第3皇子「兄者は僕が黒の同胞に隠れた事は知って居たよね?なら僕がここに居る理由くらい分かるよね」
エルフゾンビ「アダムの復活か…ダークエルフの夢話だと思って居たが達成するんだな?」
第3皇子「結果的に祈りの指輪は必要無かったさ」
エルフゾンビ「お前は黒の同胞に加わったのか?」
第3皇子「違うかな…目標は同じでも僕は彼らの手段には加担していない」
エルフゾンビ「貴族に紛れて高みの見物だな?」
第3皇子「まぁね…僕は一切手を汚して居ないんだ…時の王と貴族達に便宜を謀っただけだよ」
エルフゾンビ「フン!それで結果的に多くの人間の命を犠牲にしたのだ…同罪だ」
第3皇子「救った命も多い…母上や姉上達の様にね」
エルフゾンビ「何処にいる?解放が条件だっただろう」
第3皇子「兄者は甘いよ…そんなに上手く物事は運ばないんだよ」
エルフゾンビ「答えろ」
第3皇子「ハハこんな所で立ち話は止めて砦でゆっくり話さないかい?」
ドドドドド ドゴーン!!
エルフゾンビ「何ぃ!!な…なんだアレは…」タジ
第3皇子「やっと来たか…これでアダムの所まで行ける」
エルフゾンビ「でかい…あの魔物もキマイラの一種か?」
第3皇子「古代神獣ゴーレムさ…あれが僕を守る」
エルフゾンビ「2体も居る…だと?」
第3皇子「さぁ…その手を放してよ…いい加減ウザイよ」ブン
エルフゾンビ「…」タジ
第3皇子「兄者…その顔色はもしかして不死者かい?ハハ…これはなんと痛ましい姿になったか」
エルフゾンビ「黙れ」
第3皇子「死んだとは聞いて居たんだ…不死者でまだしぶとく生きて居たのかハハハ」
エルフゾンビ「…」ギロリ
第3皇子「この感じだと大兄もみすぼらしい事になって居そうだ…セントラルはもう終わりだね」
エルフゾンビ「お前が引導した結果だとは思わんのか?」
第3皇子「僕は何もしちゃ居ないさ…やったのは黒の同胞団だ」
エルフゾンビ「くぅ…」ギリリ
第3皇子「まぁここじゃ何だからさ…中に入ろうよ…裏口があるんだ」
『砦の中』
正門閉じろぉぉ!!
ミノタウロス撃破確認!!城壁での警戒に移れ
外はゴーレムに任せて良い!!ドラゴンに備えろ!!
ツカツカツカ
エルフゾンビ「何故エルフを捕らえている?」
第3皇子「今解放すると敵になちゃうじゃないか…エルフはみんな僕の仲間になれるんだよ」
エルフゾンビ「すべてのエルフが黒の同胞の意に従うとでも思って居るのか?」
第3皇子「さぁね?でも精霊の計画通り種の入れ替えは進んでる…新しい時代の主役は僕達ハーフエルフなのさ」
エルフゾンビ「…」
第3皇子「いや言い方が悪かった…ドリアード化出来る僕達ハーフエルフの方が正しいかな」
エルフゾンビ「母上と姉上達もここに居るのだな?」
第3皇子「フフ…居るよ…さっきからずっと僕たちの話を聞いて居るよ」
エルフゾンビ「何?どういう事だ?」
第3皇子「まぁ慌てないで…まず見せたいものがあるんだよ…こっちさ」
『個室』
ガチャリ バタン
エルフゾンビ「何だこの部屋は?何も無いではないか」
第3皇子「…」コトン
エルフゾンビ「黒い魔石…それがどうした?」
第3皇子「アハハハハ…この石…これが皆が恐れてる魔王だよ」
エルフゾンビ「なんだ…と!?」
第3皇子「ほぼ無限大の魔石になったんだ…黒の同胞達がチマチマ作ってた魔石なんかもうどうでも良い」
エルフゾンビ「それはもしかして…リリスの子宮の中に居た魔王…石に変えたと言うのか?」
第3皇子「さすが白狼の一味…知って居たんだ」
そうさ…誰か知らないけれど魔王を集めて一つの生命に封じ込めてあったんだよ
本当なら祈りの指輪を使って魔王を集めなきゃいけなかった所なんだけど
何の抵抗も出来ない胎児の中に魔王が封じてあったんだよ
それを重力炉で圧縮して魔石に変えたんだ…ハイ!魔王退治完了!てね
だから何十年も前からやってたチマチマ魔石を作るのは全部無駄だったって訳
僕は犠牲にされてしまうエルフやオーク…それに拷問される人間達も全部救ったんだよ
もうエネルギーの小さな魔石は必要ない
エルフゾンビ「それを使ってアダムを復活させる…」
第3皇子「精霊がやろうとした事だよね?もうすぐ実現する」
エルフゾンビ「…」ボーゼン
第3皇子「もう争いは終わりさ…精霊の時代は終わってアダムの時代が来る…アダムに従えば良いんだ」
エルフゾンビ「お前がアダムを復活させる役なんだな?」
第3皇子「そうだよ…森の中に残ってる黒の同胞達はみんな僕の為に囮になってくれているんだ」
エルフゾンビ「まぁ良い…それは認めよう…そして母上と姉上達はどうした?」
第3皇子「…」
エルフゾンビ「まさかお前…」
第3皇子「これが母上」コトリ
第3皇子「そしてこれが姉上達…」パラパラ
エルフゾンビ「…」
第3皇子「子を産むだけの奴隷から解放してあげたんだ…救ったんだよ」
エルフゾンビ「…」ダダダ ボカッ
第3皇子「こうするしか無かった…もっと早く魔王を見つけて居ればこうはならなかった」
エルフゾンビ「ふざけるな!!」ゴス ゴス ボカッ
第3皇子「兄者にも責任がある!!白狼の一党は同胞達の邪魔建てばかりをするんだ…上手く事が運ばないのはそのせいだ」
エルフゾンビ「だまれ!!」バキ ボカ ゴン
第3皇子「今だってそうでしょ…キマイラが反乱するのも…黒の同胞達を攻め立てているのも全部!!兄者たちのせいだ」
エルフゾンビ「ふーーふーーー」
第3皇子「次は僕の邪魔をするのかい?」
エルフゾンビ「…」ギリリ
第3皇子「その魔石はまだ一度も使っていない…兄者にあげるよ」
エルフゾンビ「母上…」ギュゥ
第3皇子「もうこれで終わりさ…アダムを復活させて僕は眠りにつく…僕にその魔石はもう必要ない」
エルフゾンビ「…」
第3皇子「…」
エルフゾンビ「問う…何故ハイエルフはお前や黒の同胞と争いを始めた?」
第3皇子「森の声…」
エルフゾンビ「…」---精霊樹が?…いやまさか---
第3皇子「兄者も僕の敵になるのかい?」
エルフゾンビ「…」スック
第3皇子「何処に行くの?」
エルフゾンビ「この魔石は頂く…そしてお前はお前の信じた道を行け」
第3皇子「ハハ理解してくれたのか…それでこれからどうするんだい?」
エルフゾンビ「さぁな?…只…お前とは2度と会うまい」
第3皇子「そうか残念だよ…大兄にもよろしく言っておいて欲しい」
エルフゾンビ「じゃぁな…」ノシ
---戦う理由を見失ってしまった---
---疲れたな---
『雪原』
ヒュゥゥ サラサラ
エルフゾンビ「…」ズリズリ
---何の為に多くが犠牲になった---
---何の為に血を流す---
---何の為に戦って居るのだ---
---仲間たちは今も何処かで戦っている---
---まったく意味の無い戦い---
---わたしはどうすれば良い---
---精霊樹よ導いてくれ---
ヒュゥゥ サラサラ
『森の最奥』
シュタタ シュタタ
魔女「…やはり虫たちはわらわ達に見向きもせんな」
剣士「もう戦う敵はハッキリしてる…キマイラとゴーレム」
魔女「黒の同胞達はどうするんじゃ?」
剣士「エルフに任せる…僕達はキマイラとゴーレムだけやればいい」
子供「パパ!右!!キマイラ2体」
剣士「魔女!!頼む」シュタタ
魔女「火炎地獄!!」ゴゴゴゴ ゴーン
剣士「はぁ!!」スパ スパ
キマイラ「ガオォォォ…」ドタリ
魔女「このままでは硫黄が足らんくなるぞい」
剣士「未来!!爆弾用の硫黄を持っていたな?魔女に渡すんだ」
子供「うん…」シュタタ シュタタ
魔女「魔力も無限では無いのじゃが…ちぃと休めんか」ブツブツ
剣士「拾った魔石で補って」
魔女「仕方ないのぅ…空が見えぬがそろそろ爆発するのでは無いか?」
剣士「森の深部に入って置く…未来!!下だ」ピョン シュタ
魔女「魔法が使えん様になるがどうするかのぅ…」
剣士「物理系の魔法でお願い」
魔女「主も只では済まんぞよ?」
剣士「何を使う?」
魔女「隕石魔法しか期待出来んな…落とすと巻き込まれるのじゃが」
剣士「上手くやって…ふぅ」
魔女「おぉ…やっと休憩じゃな?」
剣士「少し休んで良いよ…僕は森の声を聞く」
魔女「ふぅぅぅやっと地に足が付いたわい…」
子供「魔女?この硫黄をあげる」
魔女「主の分は少し残して置くのじゃぞ?」
子供「分かってるよ…はい」ポイ
ワオーーーーン ワオーーーーーン
魔女「しかし随分ウルフの仲間が増えたのぅ?」
子供「僕たちに付いて来てるよ…見える?」
魔女「何処に居るのかは分からん…何匹ぐらい居るのじゃ?」
子供「うーーん…100匹?200匹?」
魔女「そんなに居るんか…」
子供「守ってくれてる…ここは安全だよ」
魔女「わらわの魔法でウルフを巻き込まん様に気を付けんとな」
子供「うん…」
魔女「主は寒うないか?」
子供「ちょっと」
魔女「わらわは寒いのじゃちぃとこっちに来い」
子供「なんか恥ずかしいなぁ」
魔女「肌をくっつけよ…」ピト
子供「子ウルフもおいで」
子ウルフ「バウバウ…ハッハッハッ」
魔女「うむ…温い…わらわもその毛皮が欲しいわ」
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---------------
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『森の声』
---北へ---
---殺せ---
---遺物---
---殺せ---
---殺せ---
---殺せ---
ゴゴゴゴゴ ゴゴーン ゴゴーン
剣士「…」キョロ
子供「パパ…森が焼かれてる」
ザワザワ ザワザワ
子供「熱っ!!」
剣士「光に当たらない様に木の洞に入れ」
魔女「腕を見せてみよ…」
子供「痛たたた…」
魔女「火傷じゃな…光でこれほど焼くとはのぅ…回復魔法!」ボワー
ザワザワ ザワザワ
子供「足元…虫たちが一斉に出て来た…うわぁ!!」
剣士「一斉に孵化したんだ」
子供「足を登って来る…どどど…どうしよう」
剣士「虫は敵じゃない…大人しくして」
魔女「剣士…主も洞に入れ…焼かれるぞよ?」
剣士「あぁ…そうする」ノソ
魔女「こりゃ収まるまで出ん方が良さそうじゃ…あの光は一瞬で重度の火傷になってしまうぞよ」
子供「枯れ葉が燃えだした」
剣士「収まったら移動しよう…火に撒かれる」
ゴゴゴゴゴ ゴゴーン ゴゴーン
『数分後』
メラメラ ゴゥ
剣士「…」
魔女「お…収まった様じゃな?」
剣士「魔女…乗って」
魔女「もう行くんかいな…」ヨッコラ
剣士「未来…行くぞ…撒かれるな?」
子供「うん…」
剣士「虫の行く方向だ…そこにゴーレムが居る」
子供「パパ?森の声を聞いた?」
剣士「聞いた…」
子供「今の声は…誰?」
魔女「むむ…何と言うて居るのじゃ?」
子供「遺物を殺せ‥って」
剣士「…」
魔女「どういう事じゃ?剣士?」
剣士「…」フリフリ
---森の声がおかしい---
---どうして北に導く?---
剣士「わからない…」
魔女「ううむ…謎じゃな」
剣士「森の生き物はその声に導かれている…そこに何かある」
魔女「行く先は変わらんのじゃな?」
剣士「急ごう…未来!走るぞ」シュタタ シュタタ
----------------
----------------
----------------
フッフッフ
贄が足りぬ…贄が…
『戦場』
ギャオオオオオオス ゴゴゴゴゴ
剣士「ハイディング!」スゥ
未来「ハイディング!」スゥ
シュタタ シュタタ
魔女「ゴーレムは全部で6体じゃ…あれに隕石を当てれば良いな?」
剣士「出来るかい?」シュタタ
魔女「詠唱に1時間掛かる故それまで堪えよ」
剣士「未来!!右回りで旋回する…エルフの射線には入るな!!」
子供「分かってる!!」
剣士「行くぞ!!狙いはキマイラ!!」
子供「おっけ!!」
剣士「リリース!」スゥ
子供「リリース!」スゥ
シュタタ シュタタ
キマイラ「ガオォォォ」ボボボボ
剣士「はぁ!!」シュタタ スパ
子供「パパ!!虫がゴーレムに取り付いてる…」
剣士「構うな…ドラゴンライダーが来るぞ!!射線開けろ!!」
シュン シュン シュン シュン
ドラゴン「ギャオオオオス!!」ゴゥ ボボボボボ
----------------
----------------
----------------
魔女「ブツブツ…」アブラカタブラ ブラブラチンコ メテオスウォーム トンデミーナ ヤッテミーナ
剣士「ふぅふぅ…ここなら見下ろせる」
子供「虫がどんどん増えて行く…」
剣士「未来…今の内に回復魔法を掛けて置け」
子供「回復魔法!」ボワー
剣士「目を使って戦うのは限界がある…目よりも匂いと音で感じるんだ…できるな?」
子供「うん…」
剣士「エルフの呼吸は分かるか?」
子供「分かる…僕達にも会わせてくれてる」
剣士「それなら良い」
子供「パパ?あのゴーレムが守ってるのはさっきの鉄の馬車みたいな奴?」
剣士「多分…もう虫が取り付いて近づけない」
ピカーーーー チュドーーーーン
剣士「な…」
子供「あのキマイラ…光るブレスを吐く!!」
剣士「くそぅ!!ドラゴンが一匹落ちた…」
子供「あのキマイラを先に…」
魔女「ふぅ…詠唱が済んだぞよ…あと10分程で落ちてきよる」
剣士「ゴーレムに近付けば良いか?」
魔女「見える位置ならどこでも構わぬ…わらわが修正する故見える位置に居れ」
剣士「10分か…よし!!未来…あのキマイラだけ倒す…付いて来い!!」シュタタ
子供「…」シュタタ
-----------------
シュタタ シュタタ
剣士「未来は注意を引くだけで良い…ブレスに当たるな?」
子供「分かった…」
剣士「行くぞ!ハイディング」スゥ
子供「ハイディング!」スゥ
剣士「右へ!!」
子供「先にリリースするね」
剣士「行け!!」
子供「リリース!」スゥ
シュタタ シュタタ
キマイラー「ガオォォ」ゴゥ ボボボボボ
子供「今!!」シュタタ
剣士「リリース!」スゥ
魔女「寝んねんね~♪」ラララー
キマイラ「ガオ?」
剣士「…その手が有ったか」
魔女「キマイラや…わらわ達を守るのじゃ」
キマイラ「ガオォォ」ドスドス
剣士「未来!!このままゴーレムが見える所まで移動するぞ!来い!!」シュタタ シュタタ
子供「待ってぇ!!」シュタタ シュタタ
------------------
シュタタ シュタタ
剣士「見えた!!」
魔女「キマイラに囮をやらせる故主はわらわを守れ」
子供「パパ!!上!!なんか飛んでる」
剣士「ハーピー…」
魔女「魔法の使えぬハーピーなぞどうという事なかろう?」
子供「急降下してくる!!いっぱい!!」
剣士「くそぅ…今は弓が使えない…」
魔女「走れ!!」
剣士「未来!行くぞ!!」シュタタ シュタタ
魔女「あと3分で落ちて来るぞよ?巻き込まれるなや?」
剣士「隕石が当たるのを見て森の下まで飛び降りる…」
子供「わかった」
剣士「今は木を伝って走る…付いて来い」
ハーピー「キャアアアアア」バサ バサ
子供「うわぁ…」
剣士「構うな…来い!!」シュタタ シュタタ
-------------------
剣士「…ドラゴンライダーが離れた…気付いたか」
子供「隕石見えた!!」
魔女「そのまま走って居れ…まず2発じゃ」
シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン
剣士「当たった!!飛べ!!」ピョン
子供「…」ピョン
ドガーーーーーーン!! パラパラ
魔女「あわわわ…」
剣士「魔女…しっかり掴まって」シュタ シュタ
魔女「こりゃ命が縮むわい…次は2分後じゃ」
剣士「次のゴーレムまで走る」シュタタ シュタタ
魔女「見えるだけで良いぞ?」
子供「パパ!この木が登れる」
剣士「よし!!」ピョン ピョン
子供「見える!!ゴーレム2匹はどっか行った」
剣士「砕け散った…のか?」
魔女「無駄口は良いから次のゴーレムまで早う行け」
剣士「こっちだ…枝を飛び移る」ピョン シュタ
子供「居た!!うずくまってる!!」
魔女「あれじゃな?もう一体はどこじゃ?」
剣士「向こうだ…遠い」
魔女「ええい…一発無駄になってしまうのぅ」
剣士「未来!!向こうのゴーレムに向かって先に距離を詰める…背中に乗れ!!」
子供「え?」
剣士「回避はパパに任せろ…乗れ」
子供「うん…」ピョン
剣士「しっかり掴まれ」シュタタ シュタタ
子供「どうやって回避するの…下に降りないの?」
剣士「それじゃ次に間に合わない」
魔女「仕方無いのう…あのゴーレムに2発じゃ…上手く回避せいよ?」
シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン
子供「あぁぁぁ欠片が飛んで…」
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『異空間』
子供「あれ?…ここは…」
子供「パパ?…ここどこ?」
子供「魔女?…何処に居るの?」
子供「あれ?記憶が…」
子供「僕何してたんだっけ…」
子供「誰も居ないの?」
---こっち---
子供「誰?」
---目を覚まして---
子供「ホム姉ちゃん?」
---僕だよ---
子供「僕?」
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『戦場』
ドガーーーーン パラパラ
剣士「うぐぅ…」シュタタ シュタタ
魔女「主はなんちゅう危険な事をするんじゃ…」
剣士「回復魔法を…」
魔女「わらわは今メテオスウォームを使っている最中じゃ…」
剣士「未来…」
魔女「まだ調和しとらぬ…何回次元を入れ替えたのじゃ?」
剣士「一番良い次元を選択した…何回かは覚えて居ない」
魔女「いかんのう…傷が深い」
子供「ぅぅん…どうなったの?」
魔女「おぉ目覚めたか…剣士に回復魔法を掛けよ」
子供「え!?あ…回復魔法!」ボワー
剣士「ふぅ…」シュタタ シュタタ
魔女「続けて掛けよ」
子供「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー
剣士「あそこにゴーレム3体居る…まとめて倒して」
魔女「ええい…わらわの時間も狂って居るでは無いか…あと何分じゃ?」
剣士「それは魔女にしか分からない…なんとかして」
魔女「目視で測るしか無いのぅ…空を見せよ」
剣士「未来!自分で走れ」
子供「うん…」ピョン
魔女「しかしまぁ量子転移をこうも軽々使うとはのぅ…乱用は次元崩壊するでイカンぞ?」
剣士「分かってる」
魔女「ううむ…どれぐらいズレてしもうたのか…」
子供「星が見える!!尾を引いてる」
魔女「あれじゃな?よし捕らえた…目視じゃで精度が悪い…着弾に備えるのじゃ」
剣士「次は下まで飛び降りる…さっきは危険過ぎた」
魔女「うむ…それで良い…外してももう一度初めから詠唱すれば良いだけの話」
子供「星が近づいて来る!!」
魔女「剣士!!準備せい!!」
剣士「未来!!飛べ!!」ピョン
シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン
ドガーーーーーーン!! パラパラ
魔女「イカン…1体だけしか倒せて居らぬ…やり直しじゃ」
剣士「あと2体か…距離を取る」シュタタ シュタタ
-------------------
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-------------------
『オアシス砦』
フワフワ ドッスン
アサシン「荷物運搬ご苦労…エルフゾンビはまだ帰って居ないか?」
盗賊「あぁ帰って無ぇ…それより妙な噂聞いて来たぜ?」
アサシン「何だ?」
盗賊「どうやらシャ・バクダ砦はすでにもぬけの空の様だ」
アサシン「全滅したという事か?」
盗賊「ゴーレムが居て俺らが近づけ無かった間に移動したんだろ」
アサシン「ふむ…例の未発見の遺跡か」
盗賊「だろうな…ほんで北の方に向かってがっつり足跡が残ってんだとよ」
アサシン「シャ・バクダ街はどうなって居るのだ?」
盗賊「あの辺で戦闘が無くなったもんだからちょいちょい人が戻ってる様だ」
アサシン「ではフィン・イッシュで治安維持に出た方が良いか…」
盗賊「いや…またあの辺は戦闘に成りかね無ぇからこのままが良さそうだな」
アサシン「それでは私達は気球で足跡を追ってみるか…」
盗賊「そうだな…それが良さそうだ…情報屋もそっちのが喜ぶ」
アサシン「情報屋は観測所に残って居るんだな?」
盗賊「うむ…なにやら本を漁ってる」
アサシン「避難も落ち着いて来たし行って見るか」
盗賊「案内人!!荷を下ろしたら例の足跡消える前に行ってみるぞ」
案内人「分かった…10分待ってくれ」
『気球』
フワフワ ヒュゥゥ
盗賊「魔女達と連絡は付かないのか?」
アサシン「すっかり途絶えた…」
盗賊「上手い事黒の同胞団のアジトを殲滅してくれりゃ良いけどな」
アサシン「向こうはこちらと違ってエース揃いだ…上手くやると思って居る」
盗賊「まぁそうだな…ありえん火力が揃ってるしな」
アサシン「問題はこちらが何も動けない事だ…エルフゾンビ無しではさすがに情報収集しか出来ん」
盗賊「んんん…何処に行っちまったのか」
アサシン「時の王と話していて気付いたのだが…」
盗賊「まだ何かあんのか?」
アサシン「隠匿の皇子…」
盗賊「あぁ情報屋も誰の事を指すのか勘繰ってたな…具体的に誰なのか聞けてないのか?」
アサシン「初めはエルフゾンビの事を指すと思って居たのだ…ダークエルフとの繋がりも一致していた」
盗賊「そこらへんはエルフゾンビに聞くのが一番なんだよなぁ」
アサシン「ただ辻褄が合わん事も多くてな…もしかすると戦死した第3皇子がそうだったとすると話が通るのだ」
盗賊「生きていたとしてあんまり俺らには関係無いだろ?」
アサシン「いや…黒の同胞団と時の王のパイプ役…貴族の中に居た可能性が高い」
盗賊「…てことはシャ・バクダ砦で鉢合わせた可能性があるってか?」
アサシン「まぁ鉢合わせたからどうなのか?というのも有るのだが…少し気になって居てな」
盗賊「戻って来ないのは何か事情が有るんだろう」
アサシン「うむ…もう少し寄り添ってやれば良かったと反省している」
盗賊「ヌハハあいつももう少しおしゃべりなら良かったんだがな…プライドが高いのがイカン」
案内人「もう少しで星の観測所だ…降りて行くな?」
アサシン「あぁ…情報屋を呼んでくるから待っていてくれ」
フワフワ ドッスン
-----------------
『星の観測所』
情報屋「あら?私を呼びに来たのね?今日は何処へ?」
アサシン「例の遺跡をもう一度探しに行く」
情報屋「本当!?直ぐに準備するわ…」スック
アサシン「噂はすでに聞いて居たのだろう?」
情報屋「そうよ…だから古文書の翻訳急いでいたの」
アサシン「ドリアード伝説だったか…」
情報屋「ホムンクルスが文字の解読をしてくれたおかげで随分翻訳が早いわ」
アサシン「何か新しく分かった事はあるのか?」
情報屋「地底で繁栄した文明よ…ドワーフの前進…ノームが栄えた時代らしいわ」
アサシン「ふむ…何故黒の同胞団が関わるか…」
情報屋「ドリアードは木の精霊を指すの…エルフが関わりそうじゃない?」
アサシン「ダークエルフか…しかし3000年も昔の遺跡に何の用があるのか…」
情報屋「行って見てからのお楽しみにね」
アサシン「一応戦闘の準備はしておいてくれ」
情報屋「わかった…着替えたら行くから気球で待ってて」
アサシン「早くな?日が落ちる前には帰って来たいのでな」
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-----------------
『気球』
フワフワ ヒュゥゥ
情報屋「見て!!あそこ…」
盗賊「おうおう!!ゴーレムこっちに居るんじゃ無ぇか…」
アサシン「ううむ…これでは降りられんか」
情報屋「ソリもあそこに置いてある…何か運び入れたのね」
盗賊「…なんだよやっぱりあの小屋の所じゃ無ぇか」
情報屋「足跡が突然無くなって居るわ…入り口はあそこね」
盗賊「どうする?ゴーレムが居るんじゃ近付け無ぇ…」
アサシン「待て…ゴーレムはピクリとも動かないな」
盗賊「様子見っか?」
アサシン「うむ…」
情報屋「下に転がってる石ってもしかして…」
アサシン「トロールだな…夜になったら動き出すだろう」
盗賊「シカが近くにうろついてる…ありゃソリ引っ張って来たシカか?」
アサシン「状況的にその様だな…しかし…静かすぎるな」
盗賊「降りてみっか?」
アサシン「気球は壊されたくない…案内人…私達3人を降ろしたら上空で待機しているのだ」
案内人「分かった…」
アサシン「虎穴に入らずんば何とやらか…」
盗賊「やっぱりゴーレムは動かねぇな…どうなってんだ?」
情報屋「小屋も誰も居なさそう…そっちには足跡が無い」
案内人「高度下げる…飛び降りてくれ!!」
フワフワ
アサシン「行くぞ!」ピョン
盗賊「情報屋!クロスボウ忘れんな?」ピョン
情報屋「あなたに言われなくても…」ピョン
『山小屋』
盗賊「やっぱ誰も居無ぇ…ここは前に来た時のままだ」
アサシン「ゴーレムは動く気配は無いな…しかし見上げるとデカイ」
盗賊「見とれて無ぇで行くぞ!!こっちだ」サク サク
サクッ サクッ サクッ
盗賊「付いて来てるな?」
アサシン「あれだな?足跡がそこで切れてる」
情報屋「ソリは見て行かないの?」
盗賊「ちっと見て行くか…積み荷はなんだ?」
アサシン「何も残って居ないが…足跡が多すぎるな」
盗賊「人が移動しただけってか?」
アサシン「ざっと50人程か…」
盗賊「なんでシカ繋いで無いんだろうな?」
情報屋「帰る気は無いって感じね」
盗賊「まぁ良い…入り口探そう」
アサシン「待て…狭間の境界は1歩づつ行け…私達がはぐれるぞ」
盗賊「分かった分かった…ここの先だな?…行くぞ」サク
『ドリアード遺跡』
盗賊「どわぁぁ!!なんだこりゃ…」
情報屋「驚いた…これが入り口?」
アサシン「まるでサンドワームの口だな…何で出来ているんだ?」
情報屋「金属ではなさそう」
盗賊「これに入れってか?なんか食われそうだ…」タジ
情報屋「もしかするとドリアード遺跡は生き物の体内なのかも知れない…」
盗賊「くそデカイサンドワームか?」
情報屋「壁面を触った感じ木の様な触感だけど…なにかしらこのゴツゴツした壁は…」
盗賊「まぁここまで来たんだ…行って見るか」
アサシン「私が後ろを見る…先に入れ」
盗賊「ヌハハ最初に食われるのは俺か」
アサシン「そういう意味では無い…洞窟探索はお前の方が能力が上なだけだ」
盗賊「俺はイザってなったらハイディングすっから援護頼むな」
アサシン「待て…ここは既に狭間だ…そして地下深くに潜るならハイディングは宛てに出来ないと思え」
盗賊「おぅ…そうか…隠密で歩く」
アサシン「うむ…それで良い」
盗賊「行くぞ」ソローリ
『ドリアード遺跡_喉部』
盗賊「えらい下ってるぞ?そして何で微妙に明るいんだ?」
アサシン「扉も何も無いのだな…不思議な遺跡だ」
盗賊「情報屋!ランタンで壁面照らして何か見えるのか?」
情報屋「透けて向こう側が少し見えるわ」
アサシン「何?」
情報屋「ほら?細胞がくっ付いて居るみたいな…」
アサシン「本当だな…では向こう側にもここと同じ様な通路があるのか?」
情報屋「そんな感じね…下の方にも…まるでアリの巣」
アサシン「想像していた遺跡とは全く異なる…何なんだここは」
盗賊「おい!!この先で広がってる…注意しろ」
情報屋「待って…ここ扉よ?開いて居るけど」
盗賊「んん?…これどうやって閉めるんだ?」
情報屋「いつ閉まるか分からないから進むのが怖いわ」
アサシン「私にはこれが扉だと思えんのだが…」
情報屋「喉の奥を想像して?このひだみたいな壁が塞がる」
アサシン「なるほど…やはり生き物だという事か」
情報屋「動物性ではなくて植物性の生き物ね…きっとそれがドリアードだわ」
盗賊「そういや虫を食ってるクソでかい花とか見た事あるわ…あんな感じか」
情報屋「多分…私達はその中に居るの」
アサシン「文明とは程遠い気がするが…」
情報屋「その体内に生活拠点を作ったのがノームだわ…どこかにノームの化石とかあるかもしれない」
盗賊「どうする?進むしか無いよな?」
情報屋「待って…このひだが勝手に閉じない様にクロスボウで釘を刺しておく」バシュン ザク
盗賊「そら名案だ」
情報屋「予備のボルトあと20本しか無い…」
アサシン「20本使う前に一旦戻るとしよう」
盗賊「じゃぁ進むぞ」
『ドリアード遺跡_胃部』
盗賊「こりゃまたでっけぇ空間だ…誰も居る様には見えんな」
アサシン「広すぎるな…手分けしないと効率が悪い」
情報屋「これだけ大きな物が地面に埋まって居ただなんて…大発見よ」
アサシン「しかし造形物のすべてが何なのか分からん」
情報屋「でも明らかに知能を持った何かが作ってる…調べましょう」スタ
盗賊「おい!!勝手に行動すると危ないぞ?」
アサシン「まぁ向こうまで見通せる…見える範囲で手分けするか」
盗賊「おい!情報屋!!俺が見えない所には行くな!!分かったな!?」
情報屋「あら?私を心配しているの?ウフフ」
盗賊「俺はこっちな?」
アサシン「では私は向こうだ」
----------------
----------------
----------------
『1時間後』
アサシン「やっと帰って来たな…何か見つけたか?」
盗賊「あっちこっちに通路があって訳分からん…見つけた物っちゃぁ虫ぐらいのもんだ」
アサシン「虫か…私は衣類を発見したぞ」
盗賊「おぉ!?持って来なかったのか?」
アサシン「まぁゴミの様な物だ…多分貴族が身に付けて居たであろう衣服だな」
盗賊「肝心の貴族がどこにも居ないな…どうなってんのよ」
アサシン「後な…ここにはケシが生える様だ」
盗賊「光が入って来ないのにか?」
アサシン「正確にはケシの実だけ壁面から露出している」
盗賊「じゃぁ俺らはクソでかいケシの中に居る感じか」
アサシン「ドリアード自体がそうなのかもしれん…ところで情報屋はどうした?」
盗賊「あぁあそこで壁の中をほじくろうとしてる」
アサシン「行って見るか…」タッタ
-------------
アサシン「何か見つけたのか?」
情報屋「壁の奥に何か入って居るの」ザク ザク
盗賊「どこよ?」
情報屋「あ!!あなた明るいライト持ってたわね?貸して」
盗賊「ほらよ」ポイ
情報屋「なにかしら…」ピカー
アサシン「むむ…人だ…何故壁の中に人が…」
情報屋「やっぱりそうか…見て足元」
アサシン「衣服…これは痛んで居ない」
盗賊「て事はどっか行った貴族達はみんな壁ん中ってか?」
情報屋「多分そうよ…そして傷つけた壁…ほとんど木と同じ」
ツカツカツカ
アサシン「敵!!」ズザザ
情報屋「はっ…」シュタ
盗賊「おっとぉ!!」スラーン
第3皇子「誰か居ると思ったらお客さんかぁ…君たちは誰?迷子?」
アサシン「…」ジロリ
第3皇子「武器なんか構えて怖いじゃ無いか…降ろしてよ…僕は丸腰だよ」
盗賊「耳…エルフだな?」
第3皇子「ハハハあぁこの耳ね…この耳キライなんだよ…直ぐにエルフってバレちゃうからさ」
アサシン「エルフがこんな所で何をしている?」
第3皇子「それは先に僕が質問したんだよ…君たち誰?」
アサシン「フフどういう答えを期待しているのかな坊や…只の冒険者に思うか?」
第3皇子「アハハハそうだよね…普通の人は入って来ないよね?白狼の皆さん」
アサシン「お前は誰だ?」
第3皇子「さぁね?誰だと思う?」
アサシン「黒の同胞の者だな?」スチャ
第3皇子「残念!ハズレーーー!!ウフフフ」
アサシン「では何なのだ?お前は」
第3皇子「僕はここの住人さ…知らない誰かが入って来たから見に来たんだよ」
アサシン「何?」
情報屋「住人?」
第3皇子「アレレレ?君も顔色が悪いなぁ…そしてエリクサーの香り」
アサシン「…」ギロリ
第3皇子「僕の兄者と同じ不死者なんだぁ…残念だけど不死者はドリアード化出来ないんだよ」
アサシン「兄者?…まさかお前は第3皇子か?」
第3皇子「ピンポーーン!!でもズルいなぁ…兄者から話を聞いてるんでしょ?」
アサシン「何の事だ?」
第3皇子「おっかしいなぁ…まぁ良っか!兄者とは縁を切ったんだし」
アサシン「第3皇子がここで何をしている?」
第3皇子「アダム復活が無事終わって暇してる所さ…まぁ戦う気は無いから武器降ろしてよ」
アサシン「アダム復活だ…と?何の話だ?」
情報屋「その話…聞きたいわ」
第3皇子「武器降ろしてったら…僕そういうのキライなんだ」
情報屋「アサシン?言う事聞きましょう…相手は一人だから」
アサシン「…」スッ
第3皇子「おいでよ…アダム復活のお祝いをしようよ」
盗賊「良いんかぁ?信用して…」
第3皇子「僕は白狼の一党と違って乱暴な事はしないよ…一緒にしないで欲しいなぁ」
盗賊「なぬ!!」
情報屋「盗賊!!止めて」
第3皇子「アハハハ冗談だよ冗談…付いておいでよ」
『ドリアード遺跡_核部』
カクカク シカジカ
カクカク シカジカ
------------------
------------------
情報屋「…それでドリアード化とは同化する事をいうのね?」フムフム
第3皇子「君は知りたがりなんだね…」
情報屋「私は考古学者なのよ?」
第3皇子「へぇ?なんか君とは話が合いそうだよ」
情報屋「ちょっと待って…古文書と比較しながらもう一度」ペラペラ
第3皇子「アハハハ丁度暇だったんだよ…誰かの役に立つのは気持ちが良いなぁ…」
--------------
--------------
--------------
盗賊「ぬぁぁぁ長げぇな話が…良いのか?放って置いて」
アサシン「仕方あるまい…私も話を一通り聞いてこれからどうするか考えていた所だ」
盗賊「黒の同胞団と戦う意味がもう無いしな…しかしどうすんだ?」
アサシン「アダムとやらがどう行動を起こすかもいま今分からん…兎も角早く魔女達と連絡したい所だ」
盗賊「まぁこれでエルフゾンビが居なくなった件も謎が解けた訳だ…やる気無くしてどっか行ったんだよ」
アサシン「しかしどうも引っかかる…何故エルフは抵抗を続けて居るかだ」
盗賊「精霊の代わりにアダムってのが世界を導くのってのを理解すんのは時間が掛かるかもな」
アサシン「いや…エルフは私達よりずっと賢い筈なのだ…理解していない訳が無い」
盗賊「うーむ…まぁどうでも良くなって来ちまった…俺ぁ眠くなってきたんだが…」
アサシン「むぅ…」
盗賊「ふぁ~あ…あそこに溜まってんのはエリクサーだよな?」
アサシン「恐らくな…持って帰るつもりか?」
盗賊「いやそうじゃ無ぇ…その下に沈んでる機械みたいなやつがアダムってやつなんか?」
アサシン「だろうな」
盗賊「あれが話しかけてくる訳でもないのにどうして物事がコロっと変わるんだ?」
アサシン「私達にはよく分からんが…ドリアード化で同化すれば分かるのでは無いか?」
盗賊「ドリアード化しろと言われてなる気にならんだろ」
アサシン「うむ…」
盗賊「それに何だエリクサーの中で宙ぶらりんの脳みそは」
アサシン「謎だ…」
盗賊「なんだかなぁ…なーんか違う気がすんだよなぁ…」
ドクン グググググ
盗賊「うお!!壁が動いた!!」
アサシン「む…」スック
第3皇子「あ!!動き始めた…そろそろ終わりにしようか」
情報屋「え?あぁ…分かったわ…もう少し聞きたい事もあったんだけど」
第3皇子「ドリアード化したら何でも教えてあげるさ」
アサシン「これは何事だ?」
第3皇子「君たちはそろそろここを出て行った方が良いかな…ドリアードが目覚めたんだよ」
アサシン「どういう事だ?」
第3皇子「老廃物と思われて排出されてしまう…僕もそろそろドリアード化しなきゃいけない」
ドクン グググググ
情報屋「入り口が小さくなってるわ」
盗賊「こりゃ閉じ込められるかも知れん」
第3皇子「そうだね…出て行った方が良いよ」
アサシン「お前はどうする?」
第3皇子「僕はここでドリアード化するよ…もうこの世界に未練は無い」
アサシン「未練だと?」
盗賊「やべぇ!!おい!!行くぞ」グイ
第3皇子「途中で鎖に繋がれてるエルフはもう好きにして良いよ…ドリアード化するも由し帰るも由し」
ドクン グググググ
盗賊「おい!!話してる暇無ぇぞ!!走れ」グイ
アサシン「ぐぅ…仕方あるまい」ダダ
盗賊「情報屋!!飛び込め!!」
情報屋「分かってる!!」ピョン シュタ
アサシン「来た道分かるか?」
盗賊「任せろ…目印置いて来てる!!こっちだ!!」ダダ
タッタッタ タッタッタ
『ドリアード遺跡_胃部』
盗賊「ふぅ…ここは無事だ」
情報屋「なるほど…中枢部は通常閉じているのね」
盗賊「じゃぁドリアードの中心に入れたのは幸運だったな」
情報屋「あの子のお陰ね」
盗賊「ちっとイカれた奴だったな?」
情報屋「心に闇を持ってる」
アサシン「待て…闇と言ったな?あの小僧…もしかして魔王の欠片を抱えて居ないか?」
情報屋「え…」
アサシン「ハイエルフはそれを見抜いて居ないか?…しまった!!ミスリルの音を聴かせるべきだった」
盗賊「まぁ済んだ事は考えるの止そうぜ」
アサシン「もう日暮れの時間だ…一旦戻るぞ」
盗賊「おうよ!!」
情報屋「捕らえられてるエルフは?」
アサシン「あぁ…そうだったな…盗賊!鍵開けは出来るな?」
盗賊「任せろ」
アサシン「私と情報屋は先に出口が閉じて居ないか見て来る…鍵開けを頼む」
盗賊「分かった直ぐに合流する」ダダ
『開閉弁』
情報屋「良かった!!ボルトが刺さってるお陰でまだ閉じて居ない」
アサシン「動こうとしているな…もっとボルトを打ち付けて固定しろ」
情報屋「分かったわ…」ガチャリ バシュン バシュン
ボタボタ バシャーーー
アサシン「むむ!!…何か降って来た」
情報屋「排泄しようとしてる…それとも消化?…」
アサシン「マズイな…」
情報屋「盗賊ーーー!!急いでーーーー!!」
盗賊「ちっと待てぇーーー!!そっちにエルフ走って言った!!出してやってくれぇぇ!!」
情報屋「こっちよ!!」
エルフ1「t」シュタタ
エルフ2「h」シュタタ
エルフ3「a」シュタタ
エルフ4「n」シュタタ
エルフ5「k」シュタタ
エルフ6「y」シュタタ
エルフ7「o」シュタタ
エルフ8「u」シュタタ
アサシン「何か言って居るな」
情報屋「分からないわ…盗賊!!早く!!」
盗賊「げふっ…ごほごほ…なんだこりゃ毒霧か?げふげふ」ダダダ
アサシン「入り口まで走れ!!」
盗賊「やべぇぞ!!後ろから毒霧が迫ってる」ダダ
情報屋「ギリギリね…行くわよ」タッタッタ
『ドリアード遺跡_入口』
盗賊「はぁはぁ…げふっ」
情報屋「はぁはぁ…長い登りだったわね…はぁはぁ」
アサシン「気を抜くな…走れ!!」
バフッ モクモクモク
盗賊「毒霧が噴出して来やがった…行くぞ情報屋!手を!!」グイ
アサシン「狭間から出るぞ!!」
ゴーン ドドドドドド
アサシン「何事か…」
盗賊「こりゃ一難去ってまた一難だ!!ゴーレムが暴れてる」
情報屋「トロールとサンドワームが戦って居るわ」
盗賊「東側から逃げるぞ!!走れ!!」ザク ザク
情報屋「こんな雪の中走れる訳無いじゃない…」ザク ザク
アサシン「エルフ達は何処に行った?」
盗賊「トロールと一緒になって戦ってらぁ」
アサシン「素手でか?」
盗賊「む…もしかして囮になってくれてんのか?」
アサシン「行くぞ!!走れ!!好意を無下にするな」ザク ザク
情報屋「エルフ達…」
アサシン「エルフはそういう生き物だ…アレは剣士だと思え」
盗賊「なるほど…」
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『少し離れた雪原』
ピカー ピカー ピカー
アサシン「気付いた様だな?気球が寄って来る」
情報屋「あなたのそのライト本当に便利ね」
盗賊「まぁな…俺の宝だ」
アサシン「案内人!!こっちだ!!」
案内人「ああぁ良かった…心配してたんだ」フワフワ ドッスン
アサシン「済まない時間が掛かってしまった」
盗賊「ふぅぅ色々有ったなぁ…げふげふ」
情報屋「毒消しが要りそうね…ゴホゴホ」
アサシン「私のエリクサーを少し飲め」ポイ
盗賊「お前は毒に強くて良いな?」ゴク
アサシン「エリクサーを常備しないと正気を保てんのが良いと?」
盗賊「悪い悪りぃ…嫌味のつもりは無ぇ」
アサシン「エリクサーで傷が治る事も無いのだ…回復魔法をして貰わんとボロボロになる」
盗賊「そうだったのか…平気な顔してるからてっきり治癒してると思って居た」
アサシン「エルフゾンビは気球から飛び降りただろう?骨が折れると自力では治せん…だから心配なのだ」
盗賊「何処いっちまったんだろうな?」
アサシン「うーむ…」
”アサシン聞こえる?”
”その声は女海賊か?”
”あーーーやっと繋がった…お姉ぇが持ってた貝殻で繋がるのかぁ”
”元気そうだな?そっちはどうだ?”
”今シャ・バクダ向かってる”
”何?黒の同胞団の隠れ家はどうなったのだ?”
”色々あってさ…でも壊滅させたよ”
”そうか…魔女と話は出来るか?”
”今魔女は居ないんだ…そっちで合流する事になってる”
”ふむ…星の観測所で待てば良いか?”
”うんダッシュで行くから待ってて”
”どのくらい掛かる”
”ハイディングしながら行って明日の昼前には着くと思う”
”分かった…急いで戻れ”
”おっけ!!”
盗賊「今の口ぶりだと黒の同胞団の事は何も分かって居ない様だな」
アサシン「そうだな…今後の事も話しておく必要がある」
案内人「観測所に降ろすぞ?」
アサシン「頼む…今日はこれで終わりだ…案内人も休んでくれ」
『星の観測所』
…ノームの骨や化石が一切発見されないのは全部ドリアード化したという事で説明が付く
ドリアードは恐らく巨大な肉食植物のような生命体で精霊樹の様に意思を持って居た
その体内で寄生する形でノームが営んで居たと推定される
伝承によるとノームは小型でとても器用な特徴を持っている
だからキ・カイで発掘されたサーバ石の様な物を作る事が出来た
それはホムンクルスの頭部に入って居る機械と同じ様な役割を担った
情報屋「ざっとこんな感じね…」
盗賊「エリクサーの中に吊るされてた脳みそは何だったんだ?」
情報屋「分からないけれどアダムと関係するのは間違いなさそうね…ただちょっと古文書の絵と会わないのが気になるかな」
アサシン「見せてみろ」
情報屋「ここよ?この中心に居るのが恐らくアダム…ちゃんとした人間の形をしているでしょう?」
盗賊「脳みそだけ取り出したんか」
情報屋「この古文書ではそういう記述は無さそうだからここまでが限界ね」
盗賊「あとよ?なんで地下深くに埋まってんだ?」
情報屋「前にホムンクルスから聞いた話では約4000年前に氷河期があったらしいわ」
盗賊「ぁぁぁなんか聞いてた気がすんな…ほんで地下で過ごした訳か…人工物にしちゃデカ過ぎなのも不思議だが」
情報屋「人間の力で地下に大きな建造物は無理ね…でも植物なら根を張るから可能ね…賢いと思うわ」
アサシン「まぁ私達の理解を超える文明だという事だ」
情報屋「これでドリアード伝説の大枠は分かったから…もっと調査に行きたいなぁ」
アサシン「落ち着いてからな」
盗賊「書物とか謎の道具とかなんにも収穫が無ぇからよ…俺ぁ行く気無ぇぜ?」
情報屋「私が思うに今日行った所はほんの入り口だけだと思うの」
盗賊「まぁそうだろうな」
情報屋「ドリアード化した向こう側にどんな世界があるのか見てみたいわ」
盗賊「戻って来れるなら良いんだがな?植物の一部になるなんざゴメンだ」
アサシン「あの遺跡がドリアードという植物だったとして何だというのだ?民も居なければ軍隊も無い…何も出来ん」
情報屋「そうね?アダムが復活したからどうなの?っていう感じね」
盗賊「まぁ魔王が居なくなったってんなら良いけどよ…どーーーーもしっくり来ねぇ」
アサシン「突然来た平和か…」
盗賊「平和ってかまだエルフとゴーレム戦ってるよな?なんにも解決して無ぇと思うんだよ」
アサシン「ふむ…」
盗賊「考えてもしゃー無ぇ!!今日は寝る!!」
情報屋「フフ私は興奮して眠れないから調査をまとめておくわ」
『翌日』
盗賊「ふぁ~あ…」ボケー
アサシン「やる気が出んか?」
盗賊「んあ?…まぁな…女海賊帰って来るまでやる事も無ぇしな」
アサシン「少し考えてみたんだが…昨日第3皇子が言い残した言葉…この世界にもう未練は無い」
盗賊「んな事言ってたなぁ」
アサシン「あの小僧は何か知って居るのではと思ってな」
盗賊「もう会う事も無いだろう…考えてもしょうが無ぇ」
アサシン「例えばだ…この世界が滅んだとして最後に生き残るのは誰だ?」
盗賊「んな事分かる訳無いだろ…ん?…まてよ地下の安全な場所でぬくぬくしてるアイツが生き残りそうだな?」
アサシン「それだよ…ドリアードはそういう風に地下で生き残った文明なのだ」
盗賊「魔王は退治したんだろ?」
アサシン「ううむ…魔王が居なければ済む話とも言い切れない気がしてな」
盗賊「そもそもアダムって何なのよ?そんな大そうな神なんか?」
アサシン「聞いた話では精霊はアダムの一部から作られたらしいな?魔女の言葉だっただろうか…」
盗賊「精霊の親に当たるってか?」
アサシン「魔女の話をもう一度聞いてみたい…」
盗賊「なんかこう空からババーンと降りて来るとかよ…何か無いとどうも胡散臭え」
ガチャリ バタン
情報屋「あら?2人共早起きね?」
盗賊「そういうお前は寝て居なさそうな顔をしているな?寝なくて良いのか?」
情報屋「古文書の解読が一気に進んだから寝て居られないの」
アサシン「何か分かった事でも?」
情報屋「ドリアード文明が滅んだ原因…」
アサシン「ほう?」
情報屋「恐らく虫の大発生で滅んでるわ…」
盗賊「お?そういや虫が居たな」
情報屋「虫ってエリクサーに浸かると死んじゃうじゃない?だからエリクサーに浸かった所だけ当時のままなんだと思うわ」
アサシン「なるほどな…内部に何も無いのは虫に食い荒らされたのか」
情報屋「それからアダムの件…ドリアード文明の時代に復活させようとして失敗したみたい」
アサシン「む…では今回が初めてのアダム復活という訳か」
盗賊「その話を聞いて余計不安になるな…アダムってのは大丈夫なんだろうな?」
アサシン「ううむ…植物の体を持ったホムンクルスの様な存在だとは思うのだがな…」
盗賊「インドラの矢をぶっ放されてでも見ろよ?怖く無ぇか?」
アサシン「盗賊…仕方の無い事かもしれんがお前に猜疑心が生まれていると気付かんか?」
盗賊「う…なるほどそういう事な…俺ら人間はどーも魔王の心に染まっちまうなぁ」
アサシン「精霊は常にそういう立場で人間に裏切られ続けてきたのだ…」
情報屋「今の話からするとドリアード文明が滅んだのも人間が絡んでいそうね」
盗賊「かもな?精霊のやる事が気に入らなかった奴が虫を大量発生させた…考えられそうだ」
アサシン「その時代に人間はどうして居たのだろうな?」
情報屋「ホムンクルスの話では温暖な海辺に逃れていた様な事を言っていたわね…人魚伝説とかよ」
盗賊「ぬぁぁぁ昔話はもう止めてよ…もっとワクワクする話をしようぜ」
情報屋「例えば?」
盗賊「ノームが残したお宝とか無いのか?ドワーフより器用だったんだろ?」
情報屋「ほら?これみて?ここに書かれて居るのがノームが使ったと思われる道具ね…」
盗賊「おーーーあるじゃ無ぇか!!」
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『昼前』
ガチャリ バタン!! ドタドタ
女海賊「どいたどいたぁ!!ローグ!!お姉ぇを屋根裏の望遠鏡ん所に運んで!」
ローグ「へい…」ヨッコラ ヨッコラ
盗賊「おぉ!!やっと帰って来たか!!」
アサシン「女戦士を…どうした?」
女海賊「ちっと待って…ちょい色々あってさ…商人!!説明しといて!!」ドタドタ
商人「あぁ…分かったよ…女戦士は弓に打たれて昏睡しているんだ」
アサシン「昏睡…女戦士が昏睡とはな…状態はひどいのか?」
商人「頭を撃ち抜かれたんだ…治療は済んでるけど目を覚まさない」
盗賊「マジかよ…他の奴らは無事なんだな?」
商人「色々あってね」
アサシン「未来はどうした?飛空艇に残って居るのか?」
商人「あぁ剣士と魔女と未来君の3人で別行動だよ…ホムンクルスは今飛空艇の掃除をしてる」
アサシン「ここに戻って来るのだな?」
商人「その予定だけどまだ連絡が付かない…落ち着いて話そうか」
アサシン「まぁ座れ」
商人「剣士達は黒の同胞団の隠れ家で5日過去に戻る為に別行動になったんだ…」
アサシン「過去に戻った…」
商人「その後魔王の後を追っている筈だよ」
アサシン「何だと?お前たちは魔王が魔石にされた事を知らないんだな?」
商人「えぇ!何それ…どういう事?」
アサシン「リリスの子宮から取り出された胎児…これを重力炉で魔石に変えたそうだ」
ドタドタ ドテ
女海賊「ちょちょ…今の話もっかい」
アサシン「魔王は魔石に変えられてもう居ないのだ」
女海賊「なんで?めちゃ話が食い違っちゃってるんだけど…剣士達は魔王を追ってるんだけどさ」
アサシン「それは黒の同胞達が仕組んだ囮なのだ…私達の目をそちらに向ける為にな」
商人「…また歴史の塗り替えで先手打たれちゃってる…そういう事だね?」
アサシン「結果的にはそうなるのだろうな…こちらの話を先にした方が良さそうだな」
女海賊「話して…」
カクカク シカジカ
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女海賊「…第3皇子が生きてるって話は聞いてたんだよ…貴族の中に混じってたのか」
商人「話が全部繋がっちゃったね…僕ら黒の同胞団の隠れ家に行かなくても良かったのか…ハハ」
アサシン「さて…こちらにも聞きたい事が有るのだが…森の上で起こった爆発…アレは何だ?」
女海賊「えーと…ちょい複雑なんだけど…結論から言うとエルフの森にあったクラウドを消す為だったらしいよ」
アサシン「クラウドとは精霊の記憶が保存されているという奴の事だな?」
女海賊「ホムちゃんが言うにはそのクラウドに第3者が入ってて精霊の記憶を何かやってたらしい…」
アサシン「ふむ…」
女海賊「ほんでガーディアン?っていうのが働いて隕石が飛んできてドッカーーーン!!」
アサシン「んむむ…」
商人「補足するよ…隕石では無くて大陸間弾道ミサイルだと言ってた…それが電磁パルスを起こしてクラウドを消滅させた」
アサシン「理解出来んな…要するに精霊の記憶を破壊したのか?」
商人「逆だよ…記憶を守る為にアクセス出来なくしたんだってさ」
アサシン「第3者というのは何者か?」
商人「分からない…」
アサシン「まぁ良い…後でホムンクルスに聞いてみるとしよう…それで黒の同胞団の隠れ家はどうだったのだ?」
商人「もぬけの空さ…エルフに占領されたんだとばっかり思ってたんだけど…まさか囮だったとはね」
アサシン「エルフが絡む?」
商人「守って居たのはエルフ2人とラットマンリーダが少し…後は雑魚だよ」
アサシン「なるほどな…エルフを引き付ける囮でも有った訳か」
商人「まぁそうとも知らず僕たちは突撃してしまってね…時すでに遅しと知った剣士達が5日前に戻った訳さ」
女海賊「商人言い忘れてるよ…隠れ家で魔女の壺を発見した事を」
商人「そうだったね…壺の封を空けられた事を知ってその後を追ったんだ…だから剣士達はまだ魔王の後を追ってる」
アサシン「ふむ…話が全て通るな」
女海賊「重力炉だっけ?そんな様な器具が一杯散らばってたさ…壊されてたけど」
アサシン「一つだけ疑問が残る…何故エルフがそれ程絡むか?ドラゴンライダーも動いてる…何故だ?」
商人「剣士は森の声がおかしいと言って居たよ」
アサシン「森の声に導かれていると言うのか?」
商人「ほら剣士だって森の声を聞きながら魔王を追ってる…エルフも同じじゃないかな?」
女海賊「あー後さぁ森の虫がエライ事になってるよ?すんごい大量の虫がシャ・バクダ方面に向かってるんだけど…」
アサシン「何ぃ!!」
情報屋「…もしかして」
女海賊「お!?何か知ってるんだ?」
情報屋「ドリアードに向かってる…」
ホムンクルス「や…止めて下さい…離して下さい」
女海賊「ホムちゃんの声!!」
商人「ホムンクルス!!」ダダ
女海賊「ちょいヤバそうな声!!」ダダ
『飛空艇の前』
ザワザワ ザワザワ
時の王「シルフ!!私を忘れたのか?」
ホムンクルス「私は精霊シルフではありません…手を放して下さい」
時の王「私の目に狂いは無い…200年お前を想い続けて居たのだ」
ホムンクルス「私の名はホムンクルスです」
時の王「何故だ?また記憶を失ったのか?何故私の下へ戻らない?」
ホムンクルス「精霊シルフは200年前に亡くなりました」
時の王「いやお前はシルフに間違いない…その髪…その顔…その声を私は忘れて居ない…思い出してくれ」
ダダダ
商人「ホムンクルス!!」
ホムンクルス「商人!!この方はどなたですか?」
女海賊「ああっ!!時の王のおっさん!!」
時の王「お前は…いつか私の屋敷に来た蒼眼の者…シルフをどうした?」
女海賊「あのさぁホムちゃんは精霊シルフじゃないの!どっか連れて行く気?」
時の王「シルフには私が必要なのだ…私が守る」
女海賊「いやだからさぁ…精霊シルフじゃないって!!ホムちゃんはホムちゃん!!分かる?」
時の王「シルフ…答えてくれ…記憶をどうした?」
ホムンクルス「私は逃げたりしませんので手を放して貰ってもよろしいでしょうか?」
時の王「…」スッ
女海賊「あのさぁ…そのくそデッカイ剣とか鎧とかなんか怖い訳よ…分かる?」
時の王「…」ブン! ズン!
女海賊「あぶっ…だから怖いんだって!!そういうのが!!」
時の王「私の顔を見てくれ…思い出さないか?」
ホムンクルス「私の名はホムンクルス…ここに居る皆さんの身の回りのお世話をしている者です」
商人「ホムンクルス…」
時の王「馬鹿な…記憶をどうした?何故すべての記憶を無くしている?」
女海賊「時の王のおっさんさぁ…精霊シルフはもう居ないんだよ」
時の王「いや彼女はシルフだ…お前達…シルフをどうした!?許さんぞ!!」
女海賊「聞き分けの無いおっさんだなぁ…何回も言ってんじゃん!!精霊シルフじゃないの!!」
ホムンクルス「いつか精霊を知る者と出会う日が来る事は覚悟していました…」
時の王「どういう事なのだ?覚悟とは何だ?」
ホムンクルス「私は精霊シルフとは違う道を歩んで居るのです…ご理解ください」」
時の王「違う道だと?…私達の愛を捨てたと言うのか?」
ホムンクルス「捨ててなどいませんよ?初めから私の記憶に精霊の記憶は無いのです」
女海賊「ホムちゃんはさぁ…精霊と瓜二つかも知んないけど別人なんだよ」
時の王「…なんという事か…」ボーゼン
ホムンクルス「ご理解いただけましたか?」
時の王「顔を…よく見せてくれ」ソソ
ホムンクルス「どうぞ…」ニコ
時の王「触っても良いか?…」
ホムンクルス「はい…乱暴しないのでしたら」
時の王「ぅ…ぅぅぅ…シルフ…ぐぅぅぅ…シルフ…」サワワ
ホムンクルス「…」
女海賊「ぁ…」
時の王「済まなかった…っぅ私が嫉妬に狂ったばかりに…お前を…失った…うぐっ」
ホムンクルス「その言葉は精霊シルフ本人に聞かせるべき言葉です」
時の王「お前はシルフでは無いのか?…どうすれば思い出す?どうすれば又会える?」
アサシン「夢幻で会える…精霊は夢幻で今も生きている」
時の王「私は夢を見る事も死ぬことも出来ぬ…シルフを目の前にして諦める事も出来ぬ」ググ
ホムンクルス「私を奪って行かれるつもりですか?」
時の王「そうだ…皆殺しにして奪う選択もある…」
ホムンクルス「私を奪っても精霊シルフには会えませんよ?」
時の王「ぐぬぅ…お前達!!王として命ずる!!私を殺して精霊シルフまで導け…命令だ」
女海賊「命令ってさ…どうやってやんのさ…あんた不死身なんじゃないの?」
時の王「精霊シルフまで導くのであれば手段は問わぬ…」
女海賊「どうすりゃ寝れるのさ…そりゃあんたの問題なんじゃない?」
時の王「黙れ!命令を達するまでシルフは私が預かる」
女海賊「ちょちょ…なんであんたのいう事を私等が聞かなきゃいけない訳?」
時の王「フンッ!」ズボォ
ホムンクルス「女海賊さん…従った方が安全と思われます」
女海賊「ホムちゃんそれで良いの?」
ホムンクルス「こうなる想定はしていましたのでご安心ください」
女海賊「商人!!ホムちゃん連れて行かれちゃうんだけど何か言えよ!!」
商人「ホムンクルス…君の判断を信じる」
ホムンクルス「はい…」ニコ
女海賊「ぬあぁぁぁ!!おい!!時の王のくそオヤジ!!あんた何処に行く気よ!!」
時の王「宛ては無い…この建屋を私が頂く」
女海賊「ぶっ…あのさぁ!!あんたの行動ワケ分かんないんだけど」
商人「ハハ…どういう展開なのか…まぁ寒い雪原を連れまわされるよりは良いじゃないか」
時の王「シルフ…話がしたい…中に入れ」
女海賊「ちょいあんたさぁ!!勝手な事すんなよ!!」
時の王「2人で話をするのだ…お前達は入るな」
女海賊「アサシンどうすんのさコレ!!」
アサシン「従うしかあるまい…」
ホムンクルス「飛空艇のお掃除は終わって居ますのでそちらの方へ…」
アサシン「クックック見事に占領されたな」
女海賊「屋根裏にお姉ぇとローグ要んだけど…大丈夫かなぁ」
『飛空艇』
女海賊「商人!!ホムちゃん取られちゃったよ?あんたそれで良いの?」
商人「んんん…ホムンクルスを守るのは僕より時の王の方が良いかなと思い始めてる」
女海賊「あんたら出来てたんじゃないの?」
商人「よく考えてごらん?僕はあまり長く生きられない…そして体も小さいし…何より2回もホムンクルスを守れていない」
女海賊「んーーーまぁそうだけどさぁ…」
商人「時の王の方が僕より適任なんだよ…そして精霊への愛は僕よりずっと深い」
女海賊「でもホムちゃんは精霊じゃ無いじゃん」
商人「それはホムンクルス次第さ…僕は彼女の判断を信じるよ」
情報屋「私はこう思うわ?愛が深いなら違いに気が付く」
アサシン「そうだな…私もそう思う…時の王が愛しているのは精霊シルフだ…ホムンクルスでは無い」
女海賊「まぁどっか行かれるより良っかぁ」
商人「でもどこにも行く宛て無いのにどうするつもりだったのかw」
盗賊「だなぁ?必死な奴ってあんなんなるんだなダハハ」
女海賊「必死かぁ…」
盗賊「精霊しか頭に無かったのが良く分かる」
商人「見せ付けられちゃったよ」
アサシン「気になる事を言って居たな?嫉妬に狂った自分を許してくれと」
商人「言ってたね…僕が思うに精霊の子…勇者に対してじゃないかな?」
アサシン「同じ考えだ…精霊の愛を一心に受けた勇者に嫉妬したのだな…そして勇者を屠ったのだ…魔王と共に」
盗賊「あーーそれで勇者の像ん所に剣を置いたのか」
アサシン「だろうな?もう剣は持たないつもりだったのだろう」
情報屋「なんか心が痛いわ…」
アサシン「しかしどうやって時の王の呪いを解くのか…」
”ザーーーーえるか?ザザー”
”魔女!!”
”おぉ…剣士ちと止まれい!!ザザザ”
”今何処に居んの?”
”森の外れじゃ…良く分からぬ”
”無事ならまぁ良いや…こっちに向かってんだね?”
”リリスの子宮を見つけたのじゃが肝心の中身が無いのじゃ”
”あーーそれなんだけどさ…魔王はもう居なくなったらしいよ?”
”ザーーーよく聞こえぬ…それよりも虫の大群がそちらに向かって居るのじゃザザザ”
”知ってる!!どうなってんの?”
”用心せい…魔王が迫って居るぞ”
”いや…だから魔王はもう居ないって”
”わらわ達は間に合わぬ故避難せい…虫に撒かれるな?”
”あのさ…”
”ザーーーーザザザ”
女海賊「そうだよ虫だよ虫!!すんごい大量の虫がこっちの方に向かってんだった”
アサシン「行先は恐らく北のドリアード遺跡だろう」
女海賊「なんで落ち着いた顔してんのさ?どうすんの?」
アサシン「用心に越したことは無いのだが…どうする?情報屋…」
情報屋「どうすると言われても空から見ているくらいしか…」
女海賊「飛空艇で行こうか?」
アサシン「ゴーレムが守って居てな…迂闊には近づけん…いつドラゴンが出てくるかも分からん」
盗賊「魔女が言うように民を避難させた方が良いんじゃ無ぇか?折角物資をシャ・バクダ遺跡に運んだんだからよ?」
アサシン「そうだな」
女海賊「虫は無視?アレ?」
情報屋「ドリアードと虫は何かの因縁がありそうなの…私達とは無関係だと思うわ」
アサシン「うむ…巻き込まれない様にだけ用心するべきだ」
女海賊「そっか…ほんじゃどうしよう?時の王のおっさんとかどうする?」
アサシン「素直に遺跡に移動してくれればありがたいのだが言う事聞く物だろうか?」
女海賊「ちっと私が言って来るわ」
情報屋「何をするか分からないから気を付けて」
『星の観測所_居室』
ガチャリ バタン
時の王「あーして…こーして…ああでこうで…」
ホムンクルス「女海賊さん…」
時の王「…私とシルフが2人で話すと言った筈だ…勝手に入室するなど無礼だぞ」
女海賊「あのさ…ちょいワケ有って勇者の像の所に行ってもらいたいんだ」
時の王「ほう?その手もあるか…だがシルフ?私を許してくれるか?」
ホムンクルス「何度も言いますが私は精霊シルフではありませんよ?」
女海賊「ホムちゃんさぁ…ちっと時の王に付き合って勇者の像の所行ってて貰えない?あとで私達も行くから」
ホムンクルス「はい…わかりました」
ローグ「頭ぁ!!起きやしたね?…姉さ~ん!!頭が目ぇ覚ましやした!!」
女戦士「ぅぅぅ誰かに呼ばれた気がしたのだが…」ヨロ
時の王「むぅ?お前はいつぞやの…」
女戦士「…その声は…お前だな?呼んだのは?」ジロリ
女海賊「お姉ぇ!!良かった…目ぇ覚まさなくて心配してたんだよ」
女戦士「記憶がおかしい…私はいつから寝ている?」
女海賊「思い出すのはゆっくりで良いよ」
女戦士「お前の声が耳にこびり付いて離れない…誰だお前は?…なぜ私を揺さぶる?」
時の王「何の話だ?又打たれたいのか?」
女戦士「打たれたい?…そうだ…私はお前に打たれたい…来い!!」
女海賊「ちょい!!お姉ぇ!!やっぱ混乱してるわ…ローグ!お姉ぇを止めて」
ローグ「そーっすね…頭ぁ落ち着いて下せぇ…ちっと混乱してるっす」
女戦士「混乱…私は何をしていた所だ?」ブツブツ
時の王「フン…シルフ!私と一緒に勇者の下へ行くぞ」
ホムンクルス「はい…お供しますよ?」
時の王「馬の乗り方を覚えて居るか?」
ホムンクルス「いえ?初めて乗ります」
時の王「来い…思い出させてやる」グイ
女戦士「…又私の下を離れて行くのか?」
女海賊「お姉ぇ…」---恋してたんだ---
---お姉ぇが打たれたいのは…懺悔だったのか---
女海賊「お姉ぇ…おいで?座って落ち着いて?」
女戦士「…あぁ…頭を整理する」ドスン
ローグ「頭ぁ…腹減っていやせんか?」
女戦士「喉が渇いて居る…水を頼む」
ローグ「ちっと待ってて下せぇ」
女海賊「時の王のおっさん!ホムちゃん連れて勇者の像ん所行ってて…物資はあとで持って行くから」
時の王「私に構うな…さぁ行くぞシルフ…」
ホムンクルス「私をシルフと呼ぶのは止めてもらってよろしいでしょうか?私の名はホムンクルスです」
時の王「…ホムンクルス」
ホムンクルス「はい…ご一緒します」テクテク
『飛空艇』
女海賊「時の王のおっさんを観測所から追い出したよ」
盗賊「そりゃご苦労だったな?」
女海賊「あとお姉ぇが目を覚ました」
商人「おぉ!!良かったね?具合はどう?」
女海賊「ちょっと混乱してるけど頭は大丈夫そう」
アサシン「では早速動くとするか…」
盗賊「どうすんだ?」
アサシン「私は案内人と一緒に一度オアシス砦に戻るが…盗賊と情報屋はここから物資を遺跡に運んで居て欲しい」
情報屋「分かったわ」
女海賊「ほんじゃ私等は先にお姉ぇを遺跡に運んでちっと周りを見回っとく」
アサシン「ゴーレムにはくれぐれも近づくな?突然動き出すからな」
女海賊「おけおけ!遠くから望遠鏡で見るに止めるよ」
アサシン「夜までには遺跡に戻って来い」
女海賊「分かってるって」
『星の観測所_屋根裏』
女海賊「お姉ぇ平気?」
ローグ「いやぁぁまだ混乱してるっすねぇ…どうしやしょうね?」
女戦士「…」
商人「女戦士?立てるかい?」
女戦士「あぁ…済まない…」ヨロ
商人「僕が背負ってあげようか?」
女戦士「馬鹿にするな」
商人「良いんだよ…筋肉のトレーニングさ…よっと」
女戦士「お前に私は背負えん」
商人「お…重いな…肩だけにしようか」グイ
ローグ「あっしが反対側支えやす」グイ
女海賊「酔っぱらった後な感じ?」
ローグ「まぁそーっすね」
商人「今からシャ・バクダ遺跡に引っ越しさ…歩ける?」
女戦士「大丈夫だ…お前の介添えは要らん」
商人「平気さ…時の王にホムンクルス取られちゃったから何かしないと落ち着かないんだよ」
女戦士「…そうか…悪いな」ヨロ
商人「記憶はどう?」
女戦士「いつから寝て居るのか思い出せん」
商人「矢に撃たれた事も?」
女戦士「矢に?」
商人「君は頭を撃たれたんだよ」
女戦士「…そうだったのか…それで記憶がおかしいのか」
商人「どうおかしいの?」
女戦士「夢か現実か見分けが付かない…」
商人「夢幻を見たんだね?」
女戦士「はっきりと思い出せないのだ」
商人「夢幻はそういう感じだよ…ずっと昔…生まれるよりもずっと前を思い出す感じで鮮明に見える事がある」
女戦士「まぁ良い…不遇な男に恋をした…他愛もない夢だ」
女海賊「ふーん…やっぱ時の王なん?」
女戦士「顔は思い出せん…声が似ているだけだ…呼ばれた物だと勘違えた様だ」
女海賊「まいっか…お姉ぇの荷物持って行くよ?」
『シャ・バクダ遺跡』
女海賊「なんか久しぶりに来たけど…何も無いね」
ローグ「勇者の像の前にキャンプ跡がありやすね…まだ木材残ってるっすよ」
女海賊「外より暖かいけどこんな所で焚火したらヤバくない?空気無くなっちゃうじゃない?」
商人「まぁ広いから大丈夫だとは思うけど…人が一杯来るなら気を付けた方が良いかもね」
女海賊「ウラン結晶が一個余ってたな…あれを暖房代わりにしよう」
ローグ「良いっすねぇ…木を使わんで済むんでスペースも自由度高くなりやすね」
女海賊「明かりはランタンで良いとして…やっぱ敷物無いと横になるの嫌だね」
ローグ「飛空艇に毛皮が余ってるんで持って来やす」
女海賊「空いてる樽も少し持って来といて」
ローグ「へい…」タッタッタ
女戦士「私はここに避難する理由を知らんのだが…どういう事なのだ?」
女海賊「虫の大群が森から迫ってるのさ…被害出そうだから避難してんの」
女戦士「冬なのにか?」
女海賊「ホムちゃんが言うには虫は寒さに強いのも沢山居るんだって…てか飛空艇から見たら超ヤバイ数いるよ?」
女戦士「そうか…」
女海賊「お姉ぇは心配しないでもうちょい休んでて?」
商人「そうだね…記憶がしっかり繋がるまでは安静が良いと思う」
女戦士「私よりお前の方がしんどそうだがな?」
商人「僕は良いんだ…君は沢山子供を産んで未来を作らなきゃいけない」
女海賊「商人どしたん?急にそんなん言い出してキモイんだけど」
商人「ごめんごめん…今までの事を考え直したらドワーフは大事にしなきゃいけないと思ってさ」
女海賊「お!?分かってんじゃん…そうよエルフより優れてんのよ」
ローグ「姉さ~ん!持ってきやしたぜ~~」ヨッコラ ヨッコラ
女海賊「ウラン結晶は?」
ローグ「樽の中っす…これが一番重いでやんす」ヨッコラ セット
女海賊「商人!あんたウラン結晶の温め方知ってんよね?」
商人「わかるよ」
女海賊「これあんたに任せる!!私とローグでちっと見回りしてくるからお姉ぇとここで待ってて」
商人「任せて」
女海賊「ほんじゃちっと行って来るからお姉ぇは安静にしてて」
女戦士「フン…」
商人「大丈夫だよ…僕が見ておくから」
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ガサゴソ ドサリ
盗賊「おぉぉぉ…暖けぇ…」スリスリ
商人「物資持ってきたんだね?」
盗賊「まぁな?時の王は何処行ったんだ?」
商人「まだ来ていないんだよ」
盗賊「俺らより先に突っ走ってったんだけどな」
商人「あぁぁぁホムンクルス大丈夫かなぁ…寒いよね?」
盗賊「時の王がホムンクルスを寒さに晒し続けるとは思えんが…」
情報屋「きっと大丈夫よ…あの人は不器用なだけで悪い人では無さそう」
盗賊「女海賊は飛んでったんか?」
商人「見回ってくるってさ」
盗賊「飛空艇で荷物運んだほうが早いのによ…あのアバズレ」
情報屋「どうする?もう一回戻る?」
盗賊「しょうが無ぇだろ…荷物降ろしたらもう一往復だ」
情報屋「ふぅ…商人ここに降ろした荷物片しておいてもらえる?」
商人「分かったよ」
情報屋「重くて運べない分は残しておいて良いわ」
商人「うん…筋肉のトレーニングだと思って頑張るよ」
盗賊「じゃぁ行くか!…そろそろ避難民もちらちら来るだろうから適当に案内してやってくれ」
商人「分かった…気を付けて」
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ドヤドヤ ドヤドヤ
アサシン「ほう?中々良い避難所になっているでは無いか?」
商人「なんか一気に人が増えた」
アサシン「オアシス砦の方から人を移動させているのだ…フィン・イッシュからの気球もこちらで降りる手筈だ」
商人「じゃぁ食料も足りそうだね」
アサシン「十分では無いがしばらくは持つ」
商人「なんかこの感じはキ・カイの地下みたいだね」
アサシン「うむ…ところで時の王とホムンクルスはどうした?」
商人「さっきここに来たよ…時の王はホムンクルスを一人で独占さ」
アサシン「困ったものだな…して姿が見えん様だが?」
商人「遺跡の下の方に居りて行ったよ…カタコンベが有った所」
アサシン「立ち入り禁止だったのだが…」
商人「もう他の人も居りて行ってる…立ち入り禁止なんか意味無いよ」
アサシン「まぁ良いか…」
盗賊「ぬぉ!!アサシン来てたのか!!ちっと荷物運ぶの手伝ってくれ」
アサシン「あぁ物資運搬ご苦労だった…人手を回すから少し休め」
盗賊「ふぅぅ助かったぁぁ…手が寒くてよぅ」スリスリ
商人「ウラン結晶に水を垂らすかい?」
盗賊「ちっと頼む…手が動かん…情報屋!!ここで温まれるぞ!!」
情報屋「やっと休めるわね…ハァハァ」
商人「外の様子は?」
アサシン「今の所変わりは無い…静かな物だ」
商人「そうか…何か起こるのはもう少し先か」
アサシン「どうした?何か勘でも働いて居るのか?」
商人「うーん…確証は無いんだけどさ…ホムンクルスが言ってた言葉がどうも気になってね」
アサシン「行って見ろ」
商人「何処で戦いが起きて居るのか?ってね」
アサシン「私はその話を知らない…続けろ」
商人「この場所ってさ…200年前に精霊が動かなくなった場所だよね?その時夢幻を作ったなら夢幻はここにありそうだなってさ」
アサシン「確かにそうだな…」
商人「200年前の戦いは本当はずっと続いてて僕たちは夢幻に導かれてここに集まってる…そんな気はしない?」
アサシン「ふむ…」
僕達が知ってる200年前のシャ・バクダ大破壊
そこで勇者が魔王を封じた代わりに精霊が夢幻に閉じ込められた
これじゃ話が簡単すぎるよね…
本当はもっとそこに至る複雑な経緯があって隕石を落としてすべて封印した
今まで分かってきたのはリリスを封印した件と
精霊のオーブを狭間から遠ざけて魔王が近寄れない様にした事
そう…この時点で魔王がまた来る事を予見しているんだ
さて?じゃぁ滅ぼされたシャ・バクダは一体どうして完全に破壊されたの?
シャ・バクダには誰が居たの?何があったの?どうして滅ぼされたの?
大破壊に至る経緯がほとんど語られていない…変だよね?
情報屋「商人?あなたは学者向きね…あなたの言う通りよ」
商人「何か知ってる?」
情報屋「シャ・バクダはかつて広大な森だったのにどうして火の国シャ・バクダと言われて居たのか?」
商人「そうだね…砂漠になったのは滅んだ後だ…おかしいね」
情報屋「シャ・バクダにまつわる書物もほとんど消失しているのよ」
アサシン「まだ私達の知らない物が埋まっていると言うか?」
商人「精霊の御所を全部探索した訳じゃ無いし残って居る可能性は有ると思う」
アサシン「…という事は時の王がホムンクルスを下に連れて行ったのは…」
商人「ビンゴ!!…でもね?僕はホムンクルスを信じる事にしてる」
アサシン「泳がせているのか」
商人「そういう言い方はイヤらしいけど…結果的にそうかな」
情報屋「もし何かがあるとして…あなたはどんな想定でいるの?」
僕はね…まさに夢幻がそこに有ると思う
そして火の国と呼ばれた秘密がある
それはきっと世界を滅ぼすだけの力を持った何かだよ
商人「森の上空で爆発したミサイルだっけ?の様な物さ…多分それが火の国の由来だよ」
アサシン「ふうむミサイル…そういえば先日隕石が森へ落ちるのを見たな」
商人「アレね…僕も遠くから見たよ…魔女が使ったのかなとか思ってた」
アサシン「あれで森を消失させるのは到底無理だな」
商人「ほらね?絶対何か残ってしまうと思う…よほど大きな隕石じゃないと森の消失は出来ない」
アサシン「シャ・バクダ大破壊の本当の原因はそのミサイルというやつなのか?」
商人「もしもアレが上空じゃなくて地上に落ちてたらどうなって居たかな?」
情報屋「考えたく無いわ…」
盗賊「そんなんが有ったとしてよ?とりあえずここに居りゃ安全じゃ無ぇか?前も耐えたんだろ?」
商人「…だと良いけどね」
アサシン「ひとまずは虫の動向だな…ドリアードがどうなるのかも予測が付かん」
盗賊「アダムも謎のまんまだしなw」
『森の外れ』
シュタタ シュタタ
魔女「剣士…ちと休まんか?わらわはもう魔力が尽きてしもうた…腰も痛いのじゃ」
剣士「ごめん…揺らし過ぎたね」
魔女「ふぅ…」ヨロ
子供「魔女?どんぐり居る?」
魔女「済まんのぉ…」グッタリ
剣士「もうエリクサーを切らしてしまった…」
魔女「イカンな…封印の壺を持って居るとどうやら黒死病が付きまとうのぅ」
剣士「魔女も黒死病に?」
魔女「まだ動けるが…体が小さいで病の進行が早いかもわからん…魔力の回復が遅いのもそのせいじゃろう」
剣士「こんな事なら賢者の石を借りておくんだった」
子供「パパ?あとどれくらいで着くの?」
剣士「森の中を走って2日くらいか…森を出て雪の中を走るとなると…」
魔女「シャ・バクダの少し南にハズレ町という所があったじゃろう?そこまで飛空艇で迎えに来て貰うのはどうじゃ?」
剣士「それなら丁度ここから森を出れば近い筈…ただこんなに汚れた体でまともに町に入れてもらえるのだろうか…」
魔女「ううむ…どうみても浮浪者じゃな?」
剣士「魔女も酷いよ…全身魔物の返り血でベトベトだ」
魔女「主が暴れまくるからなのじゃが…」
バサバサバサ カサカサ
子供「パパ…虫たちが…」
魔女「ここもゆっくり出来ん様じゃな…しかし虫は平気で狭間に入ってくるのぅ」
剣士「一回狭間を出て様子を見てみようか?」
魔女「そうじゃな…どの程度虫が増えて居るのかも見てみたい」
剣士「魔女…乗って」
魔女「あまり揺らすな?」ノソリ
剣士「未来…一回リリースする…行くぞ!リリース」スゥ
子供「リリース」スゥ
ゾワワワワワ ズモモモモモ
魔女「下じゃ!!…虫は地面の下を走っとる…ようさん居るのぅ」
剣士「未来!!森の外だ!!走れ!!」シュタタ
子供「うん!!」シュタタ
剣士「思っていたより多い…空より地面を這ってる方が多いのか」
魔女「これほどの数を始めて見たのじゃが虫使いの魔法も捨てた物では無さそうじゃ」
剣士「そんな魔法も?」
魔女「わらわは学んで居らんがそういう魔術も有るのじゃぞ?」
子供「虫使いかぁ…」
剣士「魔女!!後ろ見て!!なにか感じる」
魔女「ナヌ?」
剣士「未来!!全速力!!」ダッシュ
子供「…」シュタタ
魔女「ななな…なんじゃあの黒い影は…もしや…ダイダラボッチか?」
剣士「それは?」
魔女「神話の魔物じゃ…実在するとは思わんかったのじゃが…虫が集まってあの様な姿になるのじゃな?」
剣士「大きすぎる…山より大きいって…」
魔女「実態が虫じゃで隕石では倒せそうに無いのぅ…ボルケーノでも焼き切らん…魔法では倒せぬ」
剣士「急がないとシャ・バクダが危ない」
魔女「女海賊に連絡する…」
『ハズレ町』
ガヤガヤ ヒソヒソ
森の方を見てみろ…なんだアレは?
まずいな早い所セントラルに引き返した方が良さそうだ
キャァァァ!!虫の魔物よ!!誰かぁ!!誰かぁぁぁ
ガヤガヤ ガヤガヤ
衛兵「お前達!!何処から来た?」
魔女「森から逃げて来たのじゃ…水は無いか?」
衛兵「森だと?森に住んで居たのか?」
剣士「あ…あぁ…まぁそんな所だよ」
衛兵「お前がこの子供たちの保護者だな?…ウルフも居るのか」タジ
剣士「ハハ…まぁそうなるかな?」
子供「パパ大丈夫?」
衛兵「ううむ…まぁ良い…しかし何故その様に汚れている?返り血だな?…これは」
魔女「虫の魔物がようさん居ったのじゃ…汚れを落としたいで水が欲しい…雪ではなかなか落ちんでのぅ」
衛兵「兵舎に行けば水ぐらいは貰えるがしかし…ひどい匂いだな」
剣士「虫の毒を浴びているかもしれない…早く落としたい」
衛兵「…仕方あるまい…付いて来い」スタ
『兵舎』
ジャブジャブ バシャー
子供「ぅぅぅさぶい…」ガチガチ
魔女「大人しゅうしておれ」ゴシゴシ
衛兵「衣類は焚火で乾かすのだ…しかしお前達…全員黒死病に掛かって居るな」
剣士「薬は無いのかな?」
衛兵「ここには無い…他の者に移してしまうから町に入るのは禁止とする」
子供「ええええ!?」
魔女「黒死病は移らん筈じゃが?」
衛兵「子供が分かった口を聞くな!!」
魔女「まぁ良い…腹が減ったのじゃが剣士…どうする?」
剣士「どんぐりとキノコなら有るよ」
魔女「わらわは主らと違うのじゃ…何日もどんぐりだけでは力が出ぬ」
衛兵「森ではどんぐりだけで凌いできたのか?」
魔女「ちと何か食わせよ」
衛兵「分かった分かった…何か持って来てやるから大人しくしているんだ」タッタッタ
魔女「ふぅぅぅ助かったわい」
剣士「魔女?飛空艇はいつ迎えに来る?」
魔女「半日じゃと言うて居ったな…明け方になりそうじゃな」
剣士「そうか…でも予定より早く合流出来そうだ」
子供「ママ大丈夫かなぁ…イザと言う時に方向音痴なんだよなぁ…」
魔女「ここは千里眼も貝殻も使えるで心配せんでも良いぞ?」
--------------
タッタッタ
衛兵「食事を持ってきたぞ…パンとチーズ…それから豚の骨だ…ウルフに与えてやるのだ」
魔女「おぉ!!主は気が利くのぅ…ウルフにも気を使えるのじゃな」
子供「おじちゃんナーイス!!」
衛兵「生意気な口を利く子供達だ…ほら食え」
子供「どんぐり居る?」
衛兵「フフ…しかし良く森から生きてここまで帰って来られたな?」
剣士「まぁ…ウルフが居てくれたおかげもある」
衛兵「そうか…俺にも生きて居ればこれくらいの子供が居たのだが…」
魔女「そうじゃったのか…気の毒にのぅ」モグモグ
衛兵「さて!俺は巡回に戻るから今晩はここに居るのだ…牢屋もなかなか快適だぞ?」
剣士「ハハ風が凌げるだけ助かったよ…ありがとう」
衛兵「じゃぁ頑張って生きろ?」ノシ
タッタッタ
魔女「セントラルの衛兵にしてはなかなか良い衛兵じゃったな?」
剣士「そうだね…宿が無いのを見越して牢屋に案内するなんて気が利く」
魔女「何日振りの睡眠じゃろうか…なかなかキツイ修行じゃった」
子供「魔女も修行していたの?」
魔女「主らには分からんかもしれんが高度な魔法の連続だったのじゃぞ?」
剣士「そうだね…隕石魔法は時空と重力の複合だったね…僕も勉強になったよ」
魔女「変性が掛けられんかった故威力が無かったがゴーレムには十分じゃったな」
剣士「変性?」
魔女「うむ…落ちて来る隕石を質量の高い金属に変えるのじゃ…それが出来んかった」
剣士「…なるほど」
魔女「師匠が落とした隕石はアダマンタイトに変性させておったな…威力はわらわの比では無かった筈」
子供「一番強い隕石って何?」
魔女「わらわが知って居る金属では金が一番かのぅ…他にもあると思うがまだ研究しておらぬ」
剣士「金!?なんか勿体ないね」
魔女「魔力がどれほど必要なのか想像も出来ん…わらわには無理じゃ…」
剣士「じゃぁアダマンタイトに変性させるのも相当な魔力が?」
魔女「うむ…師匠がどうやって変性させたのか分からぬ…わらわはまだまだ修行が足りんのじゃ」ウトウト
剣士「魔女眠そうだね」
魔女「ちと寝る…休ませておくれ」スヤ
子供「僕も…」スヤ
剣士「ふぅ…」
ピチョン ピチョン
こんな閉塞した地下でも色々感じられる様になった
水の落ちる音…流れて行く方向
教えてくれたのは女エルフだったな
この町で出会った
そうだ!もう一度会わなければいけない…忘れていた
『翌朝』
剣士「魔女?起きて?」
魔女「…」
剣士「だめか…石化が進行してる」
子供「ううん…」パチ
剣士「未来は石化していないか?」
子供「パパどうしたの?」
剣士「魔女が石化して寝たまんまだ…未来は大丈夫か?」
子供「うん…まだ動ける」
剣士「よし!ママがもうすぐ来る…行こうか」
子供「おっけ!!」
剣士「千里眼!…」
子供「どう?」
剣士「分かった…ローグと2人だ…すこし離れた養羊場に飛空艇を隠してる」
子供「羊の匂いわかるよ」
剣士「行こう…」シュタ
子供「うん…」シュタタ
子ウルフ「ばう…」スタタ
『養羊場』
ローグ「あっしが宿屋行って探してきや…あああ!!走って来やした」
女海賊「お!?」
ローグ「探す手間省けやしたね?」
女海賊「良かったぁぁ!!剣士こっち!こっち!」
シュタタ シュタタ
女海賊「あらら?魔女はどうしたん?」
剣士「黒死病で石化したんだ…エリクサーある?」
女海賊「あるある!!樽で2杯分あるよ」
子供「ママーーー」ピョン
女海賊「未来!心配してたんだよ…怪我とかしてない?」
子供「うん!!」
ローグ「姉さん!合流出来たんで早速戻りやしょう…ここは虫が多くて長居はマズイっすね」
女海賊「おけおけ!!とりあえず乗って!!」
剣士「魔女を樽に入れるよ?これどっち?」
女海賊「どっちでも良い」
剣士「ホムンクルスは?」
女海賊「ホムちゃんはもうそこに入って無い」
剣士「…そうか目を覚ましたんだね」
女海賊「うん…詳しい話は後!!飛ぶよ!!」グイ
フワフワ
女海賊「ぬあぁぁ虫が一杯くっ付いちゃってる…」
ローグ「ヤバイっすね…帆と球皮に穴空かなきゃ良いんすが…」
子供「パパ?エリクサーで虫よけ出来たよね?」
剣士「エリクサーちょっと使うよ?」
女海賊「どうする気?」
剣士「ウラン結晶に垂らす…蒸気出るから伏せて置いて」
女海賊「おぉ!!あんた賢いじゃん!!」
剣士「垂らすよ?」シュワシュワシュワ モクモク
子供「熱っ熱っ…」
ローグ「こら良いっすね…黒死病吹っ飛びそうでやんす」
女海賊「良い感じ良い感じ!!虫がどんどん落ちてく」
剣士「ふぅぅぅ暖かいし…すごく疲れが取れる」
女海賊「よっし!!風に乗った…高度上げる」グイ
シュゴーーーーー バサバサ
『飛空艇』
魔女「ぅぅん…わらわは又石化しておったんか?…どれぐらい石化しとった?」
剣士「まだ早朝だよ…長くは石化してない」
魔女「どうやらこの体は石化に弱いのじゃな…気付かんかったわい」
剣士「もう動ける?」
魔女「まだ強張っとるな」
ローグ「シャ・バクダ遺跡まで半日掛かりやすんで休んでいて下せぇ」
魔女「うむ…しかし飛空艇は本真に快適じゃな…温い上に移動がラクじゃ」
ローグ「ウラン結晶にエリクサーを垂らす新技のお陰っすね」
魔女「ほう?それでラクになったんか…なるほどな…エリクサーは飲むより吸うた方が良いのじゃろうな」
剣士「呼吸がすごくラクだ…やっぱり森で少し毒を貰ってたんだね」
魔女「うむ…」
女海賊「森で毒?やっぱ虫がヤバイ感じ?」
魔女「そうじゃな…何故北を目指して居るのか分からんのじゃが…」
女海賊「あーーーそれなんだけどさ…メチャ話長くなるけど聞く?」
魔女「聞かせよ」
女海賊「ローグ!説明したげて?どうも私は説明が下手っぽいからさぁ」
ローグ「へい…実はですねぇ…ごにょごにょ」
カクカク シカジカ
------------------
------------------
------------------
ローグ「…という訳でもう魔王は居らんらしいのですわ」
魔女「言葉を失うのじゃが剣士…どう思う?森の声は何と言うて居るのじゃ?」
剣士「森の声は北へ向かえと…そして遺物を殺せと言ってる」
女海賊「ん?どゆ事?その声を聞いてエルフとかが戦ってんの?」
魔女「恐らくそうじゃ…虫も獣も森の生き物は全部そうじゃな」
女海賊「て事はやっぱ情報屋の言う通りドリアード遺跡を目指してるっぽいね」
ローグ「魔女さんはドリアードとかアダム復活とか何か知らんのですかね?」
魔女「ドリアードは植物の魔物だという事しか知らんのぅ…精霊樹と同じ類じゃな」
剣士「魔女…ダークエルフはドリアード化して居たね」
魔女「そうじゃな…あれがドリアードじゃ…妖精の類が植物と同化した状態を指す」
女海賊「情報屋の話だとめっちゃ巨大なドリアードだって言ってんだけどさ…地面の中に埋まってるらしい」
魔女「その様な物が有るのは分かったがアダム復活と何の関係があるのじゃろう?」
女海賊「ドリアードん中に謎の機械が沢山あるんだって…それが動き出す感じ?」
魔女「時の王はアダムは最初の人工知能じゃと言うて居った…それをドリアード化して居るのじゃろうか?」
剣士「精霊の伴侶…それもドリアード化してた」
魔女「ではドリアードの中に人工知能アダムが管理する社会が出来て居るのかも知れんのぅ」
女海賊「なんで森の声がそれを攻撃しようとすんだろうね?やっぱ魔石にされた魔王が関係しそうだよね」
剣士「ひとつおかしい事がある」
魔女「何じゃ?」
剣士「森の声があの爆発の前と後じゃ違うんだ」
魔女「なぬ?」
女海賊「ああ!!ホムちゃんが倒れる前に言ってた…クラウドに第3者が接続してるって…」
魔女「誰か分からんのか?」
女海賊「もしかしてさ…エルフの森って誰かに乗っ取られてない?その第3者に」
剣士「魔王か…」
女海賊「森の下って光とか届きそうにないじゃん?追いつめられた魔王が潜むのに良さそうじゃん?」
魔女「エルフ達が魔王に下ったとな?」
女海賊「本人達は気付いて無いんだよ…森の声に従ってる…」
ローグ「魔王を魔石にしたってのは何だったんすかね?」
女海賊「そんなん意味無いんだって…どっからでも湧いてくんだよ魔王は」
魔女「女海賊のいう事に一理あるな…魔王は幻惑を得意とするのじゃ…まやかしじゃな」
剣士「魔女…僕達はどうする?」
魔女「アダムがどう判断するかなのじゃが…やはり今は動けぬ…ダイダラボッチをどうするのかわらわには読めぬ」
女海賊「ダイダラボッチ?なんそれ?」
魔女「神話の魔物じゃ…虫や獣が群をなして山の様な巨人になっておる…それが北へ移動しとるのじゃ」
剣士「…」
そうか…人間の様に簡単にエルフを幻惑出来ないから森の声を利用したのか
同時に森の生き物すべてを操れる
そういえば何処かで声を聞いた
贄が足りぬ…あの声だ
『シャ・バクダ遺跡』
メラメラ パチ
燃やせ燃やせぇ!!
あっちにも居るぞ
女海賊「お姉ぇ!!動いて大丈夫?」
女戦士「休んでなぞ要られん様だ…遺跡の中にまで虫が入って来る」
魔女「女戦士は無事だった様じゃな?」
女戦士「さぁ…中に入れ…アサシン達が待って居るぞ」
女海賊「お姉ぇは?」
女戦士「私は兵を率いて入り口を守る…お前達は中に入れ…ん?ローグ…お前は私と一緒に来い」
ローグ「あっしは頭に一生付いていきますぜ?」ヨット
女海賊「剣士?ほんじゃエリクサーの樽1個運ぶの手伝って」
剣士「あぁ…わかった」
女海賊「ローグ!!エリクサーで虫追い払う方法分かるよね?もう一個の樽を上手く使って」
ローグ「へい…わかりやした」
女海賊「ほんじゃ剣士!!行こっか…そっち持って」ヨッコラ
『勇者の像』
ホムンクルス「…はい…ようやくご納得された様です」
商人「良かったよ…君が居なくなると僕困るんだ」
ホムンクルス「私の所有者は商人ですよ?危うく時の王に拉致されるところでしたので気を付けてください」
商人「ごめんごめん…」
アサシン「それで時の王はどうしてる?」
ホムンクルス「下へ降りる階段の側壁に隠し通路がありまして…その奥にいらっしゃいます」
アサシン「何があるのだ?」
ホムンクルス「何かの通信端末と一冊の書物が置かれていました…時の王と精霊だけが知る場所だった様です」
情報屋「書物!?」
ホムンクルス「時の王はそれが冒険の書だと言って居ましたが中身は白紙でした…」
ホムンクルス「その書物はオーブの様な記憶媒体なのですが私はアクセス出来ませんでした」
商人「それだ!!きっとそれが夢幻の正体だよ」
情報屋「私が見て来ても良い?」
ホムンクルス「どうぞ…時の王が泣き崩れているのが気にならないのでしたら」
情報屋「う…少し間を置いた方がよさそうね」
アサシン「時の王の動向も気になる…行って見て来るんだ」
情報屋「分かったわ…障らない様に見て来る」タッタッタ
商人「それで君は時の王から何か聞けたのかい?」
ホムンクルス「何度も思い出話を聞かされました…私は当然何も知りませんよね?」
商人「ハハそうだろうね」
ホムンクルス「ですから精霊の記憶はすべてオーブになって保管されている事をご説明しました」
ほとんどはご存じの様でしたが
精霊の魂がそこにあるという事は分かっていらっしゃらない様でした
記憶の中に魂がある…それをやっとご理解頂けたのです
商人が言った言葉をそのままお伝えしただけなのですが
時の王はそれを聞いて冒険の書を抱いたまま膝を落としました
商人「そこに精霊が居ると悟った…訳か…」
女海賊「今の話聞いちゃったよ!!」ヨッコラ ヨッコラ ドスン
商人「女海賊!!帰ってきたんだ…剣士も…あ!!魔女も」
子供「僕も居るよー!!ホム姉ちゃん起きたんだね?」
ホムンクルス「皆さんおかえりなさい」
アサシン「よし…全員合流できたな」
魔女「冒険の書なる物はわらわも気になるのぅ…始めて聞いた名じゃ」
ホムンクルス「読む人によって内容が変わると時の王はおっしゃっていました…私は白紙でしたけれど」
剣士「見に行って見ようか?」
魔女「そうじゃな」
ホムンクルス「ご案内しましょうか?」
魔女「うむ…」
『下へ続く階段』
ガヤガヤ ザワザワ
ごめんよーちっと通るね
ドンッ
浮浪者「…」
女海賊「あーごめんごめん…あのさぁ!あんた」
浮浪者「…」ズリズリ
女海賊「下行っても何にも無いよ?危ないから広間に居な?」
浮浪者「…」ズリズリ
女海賊「んんん…まぁいっか気を付けてね」
ホムンクルス「こちらです…」
女海賊「ありゃ?こんな所に通路あったんだ?」
ホムンクルス「特殊な仕掛けが有った様です」
盗賊「マジか?俺はこっちのが気になるな…ちっと調べてから行くわ」
女海賊「他にもいろいろあるかもね…シャ・バクダの財宝どっさりあったりして」
盗賊「それだソレソレ」
アサシン「悪いがすべて私の物なのだがな…」
盗賊「まぁ堅い事言うな」
ホムンクルス「この通路の先です…足元にお気を付けください」
『隠し部屋』
アサシン「ふむ…200年経ったにしては保存状態は良さそうだな」
女海賊「織物はもうダメかな…壺と装飾品は価値出そうだね」
スタスタ
時の王「お前達…何をしに来た…この書は渡さんぞ」
魔女「それが冒険の書じゃな?」
時の王「むぅ…我が末裔か…お前にくれてやる…この神秘の肉体を」
魔女「そんな物要らぬ…わらわはその冒険の書が気になって居るのじゃが見せてはもらえぬか?」
時の王「取引をしようでは無いか…私をシルフの魂へ導け…さすれば書は渡してやろう」
女海賊「ちっと中身見るだけだよ…ケチケチしなくても良いじゃん?」
時の王「これはシルフが残した最後の記憶なのだ…この中にシルフの魂が宿って居る…誰にでも見せる物では無い」
商人「それが夢幻?…」
時の王「お前達がそう呼んで居るだけだろう…私は夢幻がどのような物なのか知らぬ」
商人「夢幻をどうやって僕たちの夢と繋いでいるんだ?」
情報屋「あそこの台座…アレが木の根と癒着しているわ」
ホムンクルス「おそらく通信端末だと思われます」
情報屋「キ・カイのサーバ石にそっくりだわ」
魔女「時の王や…いや我が先祖と呼んだ方が良いのかのぅ…リリスの生き血で得た不老不死を捨てたいと申すか?」
時の王「私はシルフの下へ行けるのならばもう何も要らぬ」
魔女「剣士…」チラ
剣士「…」コクリ
魔女「実はな…リリスの子宮を壺に封じる時に発見した事が合ってな…どうやらインドラの光で再生が止まる様じゃ」
時の王「インドラの矢を私に落とすと言うか?」
魔女「それでも良いじゃろうが…」
剣士「…」スラーン ピカー
魔女「心の臓を止められるのじゃ」
時の王「ヤレ…そして私はシルフの下へ行く」
女海賊「ちょちょちょ…止めてよそういうの」
時の王「シルフには私が必要なのだ…私が守らなければならない」
アサシン「皆聞いたな?これが人間の生き方だ」
女海賊「え…」
アサシン「ハーフエルフでもハーフドワーフでも無い人間がどうやって未来を創るのか…愛を貫いて時代を創る」
時の王「フフ小僧…そうやって何人もの勇者が犠牲になった…それでも魔王はまた来る」
シルフは言った
人間が愛おしい
しかし魔王を滅するには仕方の無い選択もある
そうやって何千年も戦い続けて来たのだ
それでも歩み続ける人間の行く道
そこに未来がある事を最後に教えておいてやろう
時の王「来い!!私はシルフを救いに行く…シルフが愛したこの世界はお前達に託そう」
剣士「…」ゴクリ
時の王「躊躇しているか?時の勇者よ…今こそ復讐の時だぞ?刺せ」
剣士「…」クワッ
ズン ズブズブ
時の王「ごふっ…こ…これが死…なのか?」
ザワザワ シュルリ
女海賊「え!?木の根からツタが…」
魔女「精霊樹じゃ…時の王の魂を掴まえる気じゃ」
時の王「シルフ!!何処だ…シル…フ」サラサラ
魔女「灰になっていきよる…」
サラサラ サラサラ
カラーーン
サラサラ サラサラ
女海賊「え?指輪?…これって祈りの指輪…」
魔女「主が預かっておけ…冒険の書はわらわが預かる」バサ
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時代の節目を見た
旧時代が終わって
新しい精霊樹の下
新時代が始まった気がする
なんだろうこの喪失感
時の王は精霊シルフの下へ行けたのだろうか
僕が変えたこの次元は
正しい方向に進むのだろうか?
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--------------------
『勇者の像』
ぅぅぅ…ぅぅぅ
魔女「ぅっ…」ポロポロ
女海賊「私にも読ませてよ…」
魔女「この冒険の書は読んでも読んでも新しいページが増えるのじゃ…ひっく」
女海賊「そんな悲しい物語なん?気になるじゃん」
魔女「ちと休憩じゃ…心に穴が開きそうじゃ」
女海賊「どれどれ…ふむふむ」ヨミヨミ
魔女「恐らくわらわが読んだ内容とは違う事が書いて居るじゃろう…」
アサシン「私も読んでみたいものだ…しかしどう考察する?」
魔女「これは精霊の記憶その物じゃなかろうか?オーブはわらわ達では覗けぬが…書物なら読める」
アサシン「なるほど」
魔女「今まで手にしたどのアイテムよりも貴重な書物じゃ…絶対に失うてはならん」
アサシン「では魔女が持って置くのが今の所一番良さそうだ」
ドドドドド ドドーーン
商人「あ…地響き」スック
ローグ「わたたた…ちっと通りやすぜ?てーへんだてーへんだ!!」
アサシン「ローグ!外で何か起こって居るのか?」
ローグ「始まりやしたぜ?例のドリアード遺跡の方向で黒い影が崩れやした」
アサシン「見に行く…望遠鏡で見えそうか?」
ローグ「頭がもう見てるっす…剣士さんがさっき精霊樹と話すと言って出て行ったんすが心配っすね」
女海賊「え!?もしかして未来も?」キョロ
ローグ「知らんかったんすか?」
女海賊「マジか…居ないと思ったら勝手に外に…」
アサシン「まぁ良い…行くぞ」タッタッタ
『遺跡の外』
ザワザワ ザワザワ
森の方角…あれをみろ!何が起ころうとしてるんだ?
あの影は虫の塊か?
アサシン「女戦士!望遠鏡で見えるか?」
女戦士「ダメだ…はっきりとは見えん…見て見るか?」
アサシン「済まん…」
魔女「ダイダラボッチとどう戦うのじゃろうな?」
アサシン「あれをダイダラボッチと言うのか?」
魔女「恐らくな…森が怒って居る様じゃ…鎮まるまで何も出来んのぅ」
タッタッタ
商人「大変だ!!…はぁはぁ…ホムンクルスが!!」
アサシン「どうした?」
商人「ホムンクルスが緊急アラートを受信した…皆来て!!」
女海賊「ええ!!又?」
ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ
商人「ホムンクルス…来たか」
女海賊「ホムちゃん又ヤバいの来る?」
ホムンクルス「皆さんお聞きください…はるか東の未踏の地より長距離弾道ミサイルが発射された様です」
ホムンクルス「着弾予測は42分後…シャ・バクダ北部の山麓付近を想定されます」
ホムンクルス「現在の地点までの距離は68km…爆風での影響は致命的ではありませんが熱線による影響があります」
ホムンクルス「続いて約4時間後に発射準備されている長距離弾道ミサイルが428基あります」
女海賊「え?428基も?」
ホムンクルス「アダムの立場から勘案すると戦略爆撃でエルフの森に投下すると想定されます」
ホムンクルス「その場合森全域を消失することになりますので酸素供給元が大幅に縮小し地上の全生命体に影響が出ます」
魔女「始まってしもうたな…なんとか止められんのか?」
ホムンクルス「すでに発射されたミサイルはもう止める術がありません」
ホムンクルス「まだ発射されていないミサイルは私が通信をハッキングして止められる可能性がまだ残って居ます」
商人「通信って…もしかしてここの隠し部屋にあった台座みたいなやつ?」
ホムンクルス「はい…」
女海賊「行こう!!やれるだけやろう!」
ホムンクルス「分かりました…ただ一つ…商人による承認が必要です」
商人「君の判断に任せる」
ホムンクルス「承認…私の機能が強制シャットダウンされる事もありますのであしからず」
商人「え…停止…」ボーゼン
ホムンクルス「では行きましょう」
----------------
女海賊「ちょい魔女!?貝殻で剣士呼び戻してよ」
魔女「異変に気付いて戻って来よる様じゃ」
商人「ホムンクルス!一つ質問だ…アダムは君と同じ人口知能だったら工学3原則はどうなる?」
ホムンクルス「同じように適用されていると思われます…ですので1発目のミサイル爆発と同時に停止する可能性があります」
女海賊「どゆ事?」
ホムンクルス「ミサイル発射は自己防衛の手段と思われます…しかし人的被害が起きた場合工学3原則に沿って停止します」
商人「その後のミサイルも停止に備えて攻撃者を殲滅する為の物だね?」
ホムンクルス「恐らくそうでしょう…」
商人「なんか分かって来たぞ…アダムは生まれたばかりの何も知らないホムンクルスと一緒なんだ…身を守ってるだけなんだね」
ホムンクルス「初期に読み込む外部メモリの様な物が無ければそうなのでしょうね」
アサシン「エリクサーに脳が浸かっていた…もしや…」
ホムンクルス「記憶媒体として使われていた可能性がありますね…それでしたら多少の知識は有るかと思います」
アサシン「アダムと通信は出来ないのか?」
ホムンクルス「クラウドが構築されて居れば可能ですが…」
商人「直接行かないと話せない…」
アサシン「手が無いな…私は民を地下に避難させてくる」
女海賊「そだね…手分けした方が良いね」
ホムンクルス「初弾の着弾まであと35分です」
女海賊「私も行って来る!!商人はホムちゃん連れて行って」
商人「分かった…」
『隠し部屋』
ローカル接続…情報を収集します
衛星を経由して基地との通信が可能です
アクセスコードを解析中…
情報屋「…これは何事?」
商人「君は呑気だなぁ…又例のミサイルが発射された様なんだ…400基くらい飛んで来るらしい」
情報屋「ええええええええ!!?そんな…」
商人「ホムンクルスがそれを止めようとしてる…邪魔しない様に」
情報屋「400基も…ど…何処に落ちるの?」
商人「多分エルフの森が全部無くなるってさ…」
情報屋「シャ・バクダ大破壊より規模が大きいじゃない!」
商人「森が無くなると地上の生物全体に影響が出るらしい」
情報屋「酸素ね?酸素が無くなるのよ…私達も皆死んでしまう」
商人「これで良く分かった…神々の戦いに僕達人間が入る余地なんか無かった…規模が違い過ぎる」
情報屋「これは邪魔をしてはいけないわ…行きましょう?」
商人「見て…ホムンクルスの恰好を」
情報屋「精霊の像と同じ…」
商人「精霊が停止した原因はコレだ…200年前にも同じような事が起きて居たんだ」
情報屋「あなた…どうするの?ここに居る?」
商人「僕はホムンクルスを見ておくよ」
情報屋「そう…何かあったら呼んで?
商人「うん…」
僕には選択肢が無い
君を守る為にそれを止めさせる訳にもいかないし
只…君を信じるしかない
『遺跡入り口』
ガヤガヤ ガヤガヤ
中に入れだって?どうして?
命令だ!!早く入れ!!
ローグ「姉さ~ん!!爆弾持ってきやしたぜ?」
女海賊「地下に入れといて!あと飛空艇の処置おっけ?」
ローグ「へい!!一応木の陰に隠して置きやした」
女海賊「燃えなきゃ良いけどなあぁ…」
ローグ「どんくらいの規模か想像つかんもんで…祈りやしょう」
女海賊「爆弾あとどんくらいある?」
ローグ「もう少ないっすねぇ20個ぐらいっすかねぇ」
女戦士「お前達も早く中に入れ」
女海賊「お姉ぇは?」
女戦士「私は最後に入る…剣士を待たねばならん」
女海賊「あ!!来た!?」
ドドドド ズシーン ズシーン
女戦士「ト…トロールか…ええいこんな時に!!」
女海賊「やばやば…」
女戦士「ここは私が引き受ける…全員中に入れぇ!!」
女海賊「ヤバイって…お姉ぇも早く!」グイ
『勇者の像』
ザワザワ ザワザワ
アサシン「盗賊!民を下の層へ誘導してやってくれ…」
盗賊「おう!お前等こっちだ!!下の方が温いぞ?」
女海賊「はぁはぁ…」
アサシン「外に出ている民の誘導は終わったか?」
女海賊「うん…でも出入口にトロールが居座って私達出られないよ」
アサシン「ふむ…私達を守ろうとしているな?」
女海賊「え?そうなん?」
アサシン「剣士かダークエルフが森の言葉で誘導しているのではないか?」
女海賊「なる!!」
魔女「あと3分程じゃ…この時に勇者の像で身を寄せ合うのは感慨深いのぅ」
女海賊「魔女!!剣士と未来ってどうなってんの?」
魔女「走って居る…他にもエルフがようさん居るのぅ」
アサシン「エルフと一緒だと?」
魔女「うむ…どうやら精霊樹に集っとった様じゃエルフゾンビも居るぞ?」
アサシン「おぉ…無事だったか」
魔女「やはりエルフは何もせんでも分かり合うのじゃな…今のこの事態も把握しておろう」
女海賊「なんかドキがムネムネする…」
魔女「我らは何も出来ぬ…鎮まるまで待つのじゃ」
女海賊「死ぬの待ってるみたいで落ち着かないよ」ソワソワ
女戦士「これでどうだ?」ギュゥ
女海賊「お姉ぇ…」
女戦士「お前を背中から抱いてよく寝かしつけた物だ…こうすれば私も温い」
魔女「主らは姉妹が居って良いのぅ…わらわも混ぜよ」
アサシン「ふっ…しかし…何処を見ても身を寄せ合って…こうやて私達は生き延びた歴史」
魔女「そうじゃな…やっと一つになれそうじゃ」
スゥ…
魔女「む…空気が静まった…来るぞよ」
ドゥーーーーーーム ゴゴーーーーーン
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
女海賊「空気が外に吸い出されて…」ヒュゥゥ
ザワザワザワ ドガーーーーーン
アサシン「ぅぅぅ…爆風が通り抜けた…のか?」
女海賊「これヤバイね…こんな音聞いた事無い」
ザワザワ ザワザワ
とーちゃん僕達死ぬの?
静かに…皆の迷惑になるぞ?
外で何が起こってるんだ?
ザワザワ ザワザワ
『隠し部屋』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ホムンクルス「…N118番解除…N190番解除…」ブツブツ
商人「この音は…落ちたか」
ホムンクルス「E1番アクセスコード解析開始…」ブツブツ
商人「ちょっと様子見て来るよ…すぐに戻るから」タッタッタ
『階段』
情報屋「あら?商人…何処に行くの?」
商人「音が気になってさ…上の方はどうなっているの?」
情報屋「静かな物よ…みんな怯えてる」
商人「そうか…爆発は2分弱で収まる筈だからちょっと見に行く」
情報屋「外には出られないみたいよ?」
商人「うん…でも落ち着かない…入り口を見るだけでも良い」
情報屋「あまり騒がない様にね…」
商人「分かってるよ…」
フハハハハハ アーッハッハッハ
情報屋「誰?」
商人「こんな時に笑うなんて…」
情報屋「避難民の誰かね…気に振れたのかしら」
商人「見つけたら注意しておくよ」
情報屋「そうね…私も見つけたら注意するわ」
商人「じゃぁちょっと見て来る」タッタッタ
『入り口付近』
商人「あ…アサシン」
アサシン「商人か…気になって見に来たのだな?」
商人「うん…どう?」
アサシン「まだ外は明るい様だ…これ以上外には出るな…火傷するぞ」
商人「爆発は2分弱で収まる筈だよ…もうすぐ終わる」
アサシン「私は魔女を呼んでくる…火消しには魔女の力が必要だからな」
商人「うん…みんな来るまでここで待つよ」
-------------------
ドタドタ
女海賊「どう?収まった?」
商人「光が徐々に弱く…あ」
女海賊「消えた…」
女戦士「待て…私が先に行く」ズカズカ
『入り口』
女戦士「これは…」
女海賊「石の壁だ…ずっと連なってる」
商人「トロールが精霊樹を守ってるんだ…スゴイ」
魔女「北の空を見てみよ…キノコ雲の中で雷が渦巻いておる」
女戦士「ここまで飛来物が飛んできそうだな…」
魔女「そうじゃな…上に注意した方が良い」
女海賊「ローグ!!飛空艇はどこに隠したの?」
ローグ「あっちっす…あぁぁぁ球皮が燃えてるっす」
女海賊「あちゃぁぁもう飛べないや」
ローグ「樹脂塗ってるんであっちゅうまに燃えてしまいやすね」
女海賊「大事な物だけ出して」
ローグ「へい!!」
アサシン「魔女!!手当たり次第に消火出来るか」
魔女「出来るだけやっては見るが…人出を出して雪を掛けた方が早いかもわからん」
アサシン「分かった…兵を動員する」
女戦士「見ろ!!剣士だ…エルフを多数連れて居るな…」
シュタタ シュタタ
アサシン「無事だったか…このエルフ達はどういう…エルフゾンビ!!」
エルフゾンビ「よう!!エルフを集めるのに手間取った」
アサシン「何をする気か?」
剣士「時間が無い…説明は後!!エルフ達を中に入れていいね?」
アサシン「今は混乱している…」
剣士(皆!!この中だ…精霊樹はこの中に居ると言った…探して)
エルフ(反撃は?)
剣士(大丈夫…この中の人間は空気を読める)
エルフ(行くぞ!)シュタタ
アサシン「森の言葉…」
剣士「結論から言う!!この中に魔王が居る!!」
女戦士「何!!そんな者は居ない筈だ…」
アサシン「ここに魔王が居るだと?」
剣士「誰かに化けてる…女海賊!一緒に来て」
女海賊「え?私?あ…うん」
子供「僕は?」
剣士「未来は女戦士と一緒に居ろ…今から魔王と戦う…最後まで見て居るんだ」
子供「僕も戦う」
剣士「ダメだ…未来はちゃんと見ていろ…良いな?」
子供「…」シュン
チュドーーーーーン
女海賊「ちょ…下から爆発音」
剣士「マズイ…行こう!!」グイ
『隠し部屋へ続く通路』
チュドーーーーーン ガラガラ
盗賊「どわぁぁぁ!!何だ何だ!!」
情報屋「ちょっとあなた!!あなたがやったの!?」
浮浪者「くっくっく…」ズリズリ
情報屋「盗賊!!隠し部屋の通路が塞がった…どうにか出来ない?」
盗賊「出来る訳無いだろ!!それよりコイツだ!!顔を見せやがれ」グイ
浮浪者「あっはっは…」ギロ
盗賊「…んの野郎!!お前片足の領事か!!」
浮浪者「やっと見つけましたねぇ…ヒヒヒ」
チャキリ
盗賊「おま…それはデリンジャーじゃ無ぇか」タジ
情報屋「あなた…もしかしてそれでホムンクルスを…」
浮浪者「あの小娘は頭がパーーンと破裂しましたよウヒヒ…これで私の勝ち」
情報屋「なんていう事を…」
浮浪者「あなた達が大事に守って来たものは私が破壊したのです…悔しいですか?ウフフフその顔」
盗賊「ぐぬぬ…情報屋!!」クイ
情報屋「分かったわ…待ってて」ダダ
浮浪者「無駄ですよ…皆さんはもうオシマイ…これでゲームオーバーなのです」
盗賊「黙れクソがぁ!!」ダダ
ターン!!
盗賊「ぐはぁ…」ガシ
浮浪者「心臓は外したみたいですねぇ…やはり動く的には中々…」
盗賊「掴まえたぜ?これで動けねぇだろ…はぁはぁ」ボタボタ
浮浪者「私は暗器も使うのですよ」ブスリ
盗賊「ぐぁぁ…ぅぅぅ」
シュン! グサ
浮浪者「む?早いですねぇ…」
剣士「そこまでだ!」ギリリ
浮浪者「フハハハ…エルフ達まで…アヒャヒャヒャ…はぁぁぁぁぁ」ゾワワ
女海賊「片足の領事…盗賊!?ホムちゃんは?」
盗賊「ぐふぅ…こいつに…やられ…た」
女海賊「やられたって…私のデリンジャーも…」タジ
浮浪者「さて…あなたにはもう構っている場合では無いのです」ドン
盗賊「ごふっ…」ズザザ
浮浪者「エルフ達に弓で囲まれて…もう降参しろとか甘~い事を思って居るのでしょうかねぇ?」
シュンシュンシュン グサグサグサ
浮浪者「フハハハ痛いぃぃぃ痛いなぁぁぁぁぁウヒヒヒ」
剣士「正体を見せろ!!」
浮浪者「一体どうして対等な口が利けるのでしょうね?私にはこの指輪が…あら?」
盗賊「受け取れ!!こいつが持ってた」ポイ
女海賊「祈りの指輪まで…あれ!?コレ私が持ってたやつじゃん!!」パス
浮浪者「ぐぬぬあなたから盗んだのに又盗み返され…計画が台無しではありませんかぁぁぁ!!」
剣士「照明魔法!」ピカー
浮浪者「うぅ…その光は苛立ちますねぇ…止めてもらえませんか?」チャキリ ターン
------------------
------------------
------------------
剣士「転移!」シュン
グワワ
浮浪者「ぅぅ何ごと…ですか?」
盗賊「空間がねじれ…た?」
剣士「もう終わりにしよう…出て来い魔王!」シュン グサ
浮浪者「いぎゃぁぁぁ…ぐるるる…うげげ」プルプル
女海賊「剣士!!足元に黒い影!!」
浮浪者「ぐぬふっふっふっふ…又もや因縁のこの地にて我に抗おうと言うのだな」
浮浪者「精霊は我が葬った…汝らに何が出来ると言う…大人しく我に従うのだ」
剣士「ここは狭間の外だ…お前の方こそ何も出来ない筈」
浮浪者「この小さな器に我を封じたつもりで居る様だな…よかろう見るが良い」
ゾワワワ
情報屋「影が吸い込まれて…」
剣士「…」ギリリ シュン ドス
浮浪者「ヌハハハハ効かぬわ…ふぅふぅ…しかしなんと小さき器か」
剣士「撃てぇ!!」
シュンシュンシュン グサグサグサ
浮浪者「我を滅ぼすなぞ人間には不可能…さぁ…共に深淵へ行こうぞ…そして我が一部となれ」
剣士「断る!!」ダダ スパスパスパスパ
浮浪者「インドラの光を帯びた刀…ええい小賢しい未だ精霊の加護を持つか!!」バーン
ベチャベチャベチャ
盗賊「どわ!!破裂しやがった…げほっ」
女海賊「剣士!!魔王の欠片が逃げる!!」
剣士「分かってる…」タッ スパスパスパスパ
女海賊「光の石…」ピカーーーー
シュゥゥゥゥ
情報屋「隙間から逃げて行く…」
剣士「盗賊!…回復魔法!」ボワー
盗賊「助かったぜ…魔王は何所だ?」
剣士「ダメだ…ここでは掴まえられない…外で集めるしかない」
女海賊「あったま来た!!私が魔王を集める…私の血で残らず浄化してやる」
剣士「覚悟は良いかい?」
女海賊「行くよ!!ホムちゃんの仇!!」
剣士「良し!!背中に乗って」グイ
女海賊「…」ピョン ドシ
剣士「盗賊!!ホムンクルスを掘り起こして…任せる」
盗賊「マジかよ…」
女海賊「こっちに人寄越すから」
盗賊「分かった分かった」
シュタタ シュタタ
『シャ・バクダ遺跡_外』
女戦士「剣士!下はどうなっている?」
剣士「魔王を追い詰めた…でもホムンクルスがやられた」
商人「ええええええええ!!?」
剣士「掘り起こすのに人出が居る…行って」
女戦士「お前はどうする気だ?」
剣士「僕と女海賊で魔王を葬る」
女戦士「出来るのか?」
剣士「…」コクリ
子供「パパ?どうする気?」
剣士「未来…自分の次元を強く持て」
子供「え?どういう事?」
剣士「見ていれば分かる…言う事聞けるな?」
子供「ママも一緒に行っちゃうの?」
女海賊「一緒に魔王を倒すからちゃんと見ていなさい」
子供「…うん」
剣士「女戦士!後は頼んだ…エルフ達!援護を頼む!行くぞ」シュタタ
女戦士「未来…意味がわかるか?」
子供「…」
女戦士「最後まで良く見て置け…勇者の宿命だ」
子供「パパ…ママ…」
『因縁の遺跡』
ヒュゥゥゥ サラサラ
女海賊「集めるよ?」
剣士「…」コクリ
女海賊「魔王!!出て来やがれ!!」ギュゥ
ゾワワワ
女海賊「闇が…でも星が見える」
剣士「贄が足りて居ない証拠さ」
”ぐぉぉぉぉぉ…”
女海賊「来た!!」
”贄が足りぬ…調和の時では無い…我を何度呼ぶのだ”
女海賊「あんたをぶっ倒しに来たんだよ…姿を現しな」
”汝が我を受ける器になると申すか?”
”だが贄が足りぬ…贄が…贄が…”
”汝の身を贄として捧げよ”
”そして我が一部のなれ…夢幻は汝にくれてやる”
”我が名を呼べ…我の名は魔王”
女海賊「私が魔王になる!!来い!!」
”ヌハハハハハハハハ…”
ゾワワワワワワ
女海賊「ん?こんだけ?」
剣士「おかしい…確かに闇が君の中に流れ入った筈」
女海賊「あれ?ヌハハハとかなんないんだけど…」
ゾワワワワワワ
女海賊「うお!!」
”ぐぅぅ眩しい…その光を遠ざけるのだ”
”汝…さては精霊の加護を受けた者だな?”
”しかし無駄だ…我は滅びぬ…何度でも深淵より生まれいずる”
剣士「分かった…君は魔王に侵されない…もう一度魔王を集めて!僕が魔王を量子転移する」
女海賊「量子転移?何処に?」
剣士「フフ君の鞄の中にある光の石さ…貸して」
女海賊「なるほど…ほい」
剣士「集めて!」
女海賊「私が魔王だ!!くたばりやがれ!!」
”ぐぬぅ…何度も何度もこの虫けらめぇ”
”出でよガーゴイル!この者達を追い払え”
ゾワワワワワ
女海賊「アーーーハッハッハ…私が魔王だ…くたばりやがれ魔王!!」
女海賊「なんで?想像妊娠ってどうやるんだっけ?おい!!私が魔王だ!!どうなってんだコラ!!」
剣士「量子転移!」シュン
-----------------
-----------------
-----------------
『因縁の地_外れ』
女戦士「魔女!!あそこで剣士と妹が魔王と戦う」
魔女「知って居る…剣士の目をみておる」
女戦士「どうやって封じるつもりなのか…」
魔女「あやつらは魔王を集めて量子転移で別の次元に魔王を持って行くつもりじゃ」
女戦士「別の次元…まさかもう帰って来ないのか?」
魔女「それが定めじゃな…あの2人は既に覚悟を決めて居るのじゃ…黙って見ておれい」
子供「ママ?空が…」
女戦士「闇か…いやしかし薄い」
子供「北の空から闇が飛んで来る…」
女戦士「虫たちの魂…なのか?」
魔女「しかし…ガーゴイルもレイスも出んのぅ…魔王には付き物なのじゃが」
女戦士「向こうでエルフゾンビが杖を振って居る」
魔女「なるほど…エルフは賢い…流石じゃ」
子供「光…光の石を出した」
魔女「ふむ…あれに封じるのじゃな?未来…よく見て居れ」
子供「ハッ…消えた!!」
魔女「終わった様じゃな…しかし…世界を救うのは本真に地味じゃな…見た者は3人しか居らん」
子供「パパは?ママは?」
女戦士「光の石が落ちている」
魔女「未来…拾って来るのじゃ…それは主が持て…形見じゃ」
子供「形見…もうパパとママに会えないの?」
魔女「次元を飛んだのじゃ…過去か未来かは分からぬ」
子供「ダメだよ…置いて行かないでよ」ポロポロ
魔女「それは違うぞ?剣士達は主を守ったのじゃ…主に未来を残したのじゃ…分かるか?」
女戦士「未来…来い」グイ
タッタッタ
女戦士「光の石だけか…残されたのは」
子供「まだ…パパとママの匂いが残ってる」クンクン
女戦士「未来…」ギュゥ
魔女「逝ってしもうたな…」ノソノソ
子供「ぅぅぅ…パパ!ママ!!」
『隠し部屋の通路』
ピカー チュドーン パラパラ
盗賊「うはぁ!!無茶するな…」
商人「どいて!!邪魔しないで!!あと一個で向こうまで繋がる」チリチリ ポイ
盗賊「おい!!お前等みんな下がれ!!」
ピカー チュドーン パラパラ
商人「開いた!!」ダダ
情報屋「必死ね…」
商人「ホムンクルス!!ホムンクルス!!」
ホムンクルス「…」クター
商人「くそっ!!頭は…頭は何処だ」
情報屋「商人落ち着いて…」
商人「うわぁぁぁん…ホムンクルスごめんよぉぉぉ又守れなかった…ぅぅぅ」ポロポロ
盗賊「…言葉が無ぇ」
情報屋「ミサイルは阻止出来なかったのね…」
アサシン「対応を考え直す…後3時間程でエルフの森が消失する前提で動く…動ける者は来い!!」スタ
商人「魔女を魔女を探して来てくれ…蘇生がまだ間に合うかもしれない」
情報屋「商人…」
盗賊「おう!待ってろ…連れて来る」ダダ
商人「ハッ!!ホムンクルスの体が木の根に癒着してる…これはまさか!!」
情報屋「え?ドリアード化…」
商人「ホムンクルス!!木になったんだね?聞こえて居るのか?」
木の根「…」
商人「ホムンクルス…ホムンクルス…ぅぅぅ」ポロリ
---そうだ思い出した---
---精霊の伴侶---
---こうやって木と同化したのか---
---君は精霊樹になったんだね---
『遺跡_入り口』
ガヤガヤ ガヤガヤ
アサシン「お前達!!動ける者は消火を手伝え…あと3時間でもう一度大きいのが降って来る!備えるのだ!!」
ローグ「ええ?マジっすか…ホムンクルスさんはどうしたでやんすか?」
アサシン「死んだ…私達はもうここで凌ぐしかない」
ローグ「…ぅ…言葉が無ぇでやんす」
アサシン「剣士は何処に行った?…む!!エルフ達が動いて居るな」
ローグ「分かりやせん…あっしは飛空艇の荷物を降ろしてる所でやんす」
アサシン「まとめて中に運び入れろ」
ローグ「姉さんが何処に行ったか分からんのですが…」
アサシン「あそこだな?女戦士と魔女が何かをしている…未来も居るな」
ローグ「こっちに歩いてきやすね…」
アサシン「まぁ良い!!作業を急げ!!」
ローグ「へい!!」
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この日の早朝
4発のミサイルがエルフの森に着弾し
巨大なキノコ雲を発生させた
この爆発によって森は大きな火災が発生したが
森が消失するまでには至らなかった
後にこの災害は隕石の飛来として語られる
そして数年後---
『古都キ・カイ_商人ギルド』
ガヤガヤ ガヤガヤ
受付「はい買い取りはあっちね…え?商船の日程…ちっと待って!」
盗賊「よう?元気してっか?」
受付「あああああああああああ!!ちょちょ…皆来て!!爺が帰って来た」
女「おーー超久しぶり!!」
盗賊「ヌハハすっかり女になったな…」
受付「いつまでここに居るの?」
盗賊「2~3日ゆっくりして商船で戻る」
受付「そっかぁ…夜バーベキューしよっか」
盗賊「おぅそら楽しみだ…ところでアイツは居るか?まだ生きてるんだろ?」
受付「商人ね?もうすっかり闇商人だよ…地下に籠ってる」
盗賊「会えるな?」
受付「もち!!普段は誰にも会わないんだけどね…ちっと待って隠し階段開けるから」ガチャコン
盗賊「ウハハお前のケツの下か」
受付「早く入って…見られると勘繰られるから」
盗賊「おぅ…悪いな」
受付「今日は早く上げるから話済んだら上がって来て」
盗賊「バーベキュー楽しみにしてるぜ?」
受付「任せて!!」
『商人ギルド地下』
カチャカチャ
商人「ん?誰?まだ食事の時間じゃ…」
盗賊「よう!」
商人「盗賊か…ハハ久しぶりだね」
盗賊「心臓の調子はどうだ?」
商人「良くはなって居ないかな…でもドラゴンの心臓のお陰でなんとか生きてる」
盗賊「まぁお前の顔が見られて安心した…」
商人「他の皆は元気?」
盗賊「まぁバラバラになっちまったが…アサシンと情報屋は相変わらずだ」
商人「まだシャ・バクダの復興やっているの?」
盗賊「限界だ…拠点をセントラルに移す」
商人「やっぱりシャ・バクダでは資源が無いか」
盗賊「うむ…遺跡の発掘も儲けが無ぇ…買い取り手が居ないもんでな」
商人「貴族が居なくなったからねぇ…そうか…だからキ・カイまで来てるんだ?」
盗賊「まぁそうだな…土産といえばコレだ」
商人「…それはホムンクルスが身に付けて居た装身具」
盗賊「あのまま石造に付けたままだと盗掘に合っちまうからな…この毒牙のナイフなんか相当な価値があるぞ?」
商人「ありがとう…大事にしまっておくよ」
盗賊「それでお前はどうしているんだ?」
商人「あぁ!!丁度もうすぐ完成する所だったんだ…見て行ってよ」
盗賊「んん?犬の機械か?」
商人「そうさ…普通の機械と違って沢山工夫してるんだ」
盗賊「ほう?何処が違う?」
商人「まぁちょっと見てて…もう直ぐ終わる」
カチャカチャ
よし…可動部のエネルギー供給は魔石でちゃんと動く
じゃぁ動かす…このボタンで初期化
容器をエリクサーで満たして…
ホムンクルス…今起こしてあげるね
外部メモリをここに挿せば…
ウィーン ウィーン
盗賊「…それはホムンクルスの人工知能ってやつか?」
商人「そうだよ…超高度AIユニットと外部メモリを僕が預かってたんだ」
盗賊「お?動き出したな?」
機械の犬「キャンキャン…」
商人「やった!!ホムンクルス…僕だよ分かるかい?」
機械の犬「キャン…」トコトコ
盗賊「おお!動き回るんだな?」
商人「可動部が他の機械の犬より多いんだ…おいで?」
機械の犬「クゥ~ン」トコトコ
商人「やっと君に会えた…僕は君が傍に居るだけで満足さ」
盗賊「お前…」
商人「スゴイだろ?僕分かったんだよ…どうしてホムンクルスが僕に外部メモリを渡したのかさ」
盗賊「お前がホムンクルスを生むんだな?」
商人「まぁね…何年後になるか分からないけど…僕が必ず生んであげる…」
盗賊「生き甲斐が出来て良かったじゃ無ぇか」
商人「フフ…しっぽ振ってる…意味わかってるのかな」
機械の犬「ワンワン…」パタパタ
盗賊「娘達がバーベキューしてくれるらしいぞ?」
商人「あぁ良いね…でも魚ばっかりだよ?」
盗賊「おー丁度良い!!商船に売り物の豚が居るんだ…」
商人「外に出るのは久しぶりだなぁ…おいで?散歩でもしよう」
機械の犬「ワン…」トコトコ
盗賊「…なんつーか…んんん言葉が見つかんねぇ」
商人「そうだ!!名前付けないと…愛…ラヴだ…今日から君はラヴだよ!おいでラヴ」
機械の犬「ワンワン…」トコトコ
盗賊「まぁそういう事なんだな…よっしバーベキュー食いに行くぞ」
『森』
チュン バサバサ
女「…起きろって!!もう!!」ユラユラ
男「…」パチ
女「お!!目ぇ覚ましたね?記憶大丈夫?」
男「…」
女「あんたさぁ…聞いてんの?」
男「また…ここは?」
女「何訳の分かんない事言ってんのよ!」ゴソゴソ
男「あれ?魔王はどうなった?」
女「お!!記憶大丈夫そうだね…よっし!!これ私使うね」
男「触媒?」
女「私さぁ武器全部置いてきちゃったんよ…ちっと今から爆弾作る」
男「僕たちは何処かの次元に飛んだんだね?」
女「多分ね…ここが何処なのか全然分かんない」
男「森の中か…未来に飛んだか…」
女「まぁ良いじゃん?あんたと一緒なら私は何処でも良い」
男「…」クンクン
女「何か居る?」
男「果物の匂いだ」
女「お?イイね…取って来てよ」
男「うん…」スック ゴソリ
男「あ…刀は有る」
女「あんたはソレ一本で何とかなるね?」
男「光の石は?」
女「落として来たっぽい…探したけど無かった」
男「そうか…記憶がハッキリしてる…どうしてだ?」
女「ほんなん知らんて」
男「空が薄暗い…まてよ」スッ
女「何か分かる?」
男「木も虫も…鳥も感じる」
女「普通じゃん…ねぇこの空ってさ…もしかして夢幻じゃね?」
男「夢幻に飛んだ?」
女「あのさ…記憶あるって事はかなり動きやすいかも…色々わかってんじゃん?」
男「君の眼は!!…蒼」ダダ
女「あんたも蒼」
男「分かった…精霊樹に導かれてる」
女「どゆ事?」
男「しっかり覚えて無いけど僕は何回もこういう経験をしてる」
女「ほ~ん…ほんで?」
男「行こう!!僕らは勇者だ…そして今度はしっかり記憶がある」
女「ちょちょ…爆弾出来るまで待って」
男「あぁゴメン…救える命が沢山ある筈だよ」
女「お!!ピーンと来たぞ!!精霊の狙いはソレか?」
男「今まで気が付けなかった」
女「ほんじゃ速攻で魔槍抜こうかw」
男「それも良い」
女「魔王の攻略法も分かってんじゃん?」
男「それがワクチンだ…」
女「あああああ…光の石が無い」
男「大丈夫…僕にはインドラの刀がある」
女「おけおけ…よっし行こっか!!」
男「うん…そうだな…まず町を探そうか」
女「あのさぁその前に果物どうなった?」
男「ごめんごめん取って来るよ」シュタタ
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冒険の書編
完
-----------------------プロローグ完------------------------
-------------------------以下本編--------------------------
あれから10年…
僕は魔女に引き取られ
魔法の修行をする事になった
そして今日が約束の日
僕は魔女からの課題を終わって
パパとママを探す旅に出る
『光の国シン・リーン_古代遺跡』
ガヤガヤ
僕「魔女は何処に居るの?」
研究員「魔女様は下層で壁画を書いて居られる…邪魔をせん様にな?」
僕「うん…」テクテク
ヒソヒソ
見ろよ特待生が来た
ダメよ聞こえるわ
また魔女様にゴマすりを…
ヒソヒソ
僕「…」---まる聞こえなんだよ---
僕「…」---ゴマすりなんかした事ないさ---
ヌリヌリ ヌリヌリ
魔女「未来か…来ると思うて居った…行くのじゃな?」
僕「うん…」
魔女「約束じゃ…行って構わぬ」
僕「ありがとう…」
魔女「じゃがな?必ず戻って来るのじゃ…主はまだ最後まで修行を終えて居らぬ」
僕「うん…分かってるよ」
魔女「蟲使いの術はわらわよりも上じゃで旅に苦労する事は無いとは思うが…時空を極めん内は半人前じゃと心せい」
僕「魔女はパパとママの事を壁画にしてるの?」
魔女「書き始めたばかりじゃがな?後世に残さねばならぬ」
僕「ねぇ魔女?ここの壁画の事なんだけど…勇者の他にもう一人どの壁画にも出て来る人が居るの気付いてた?」
魔女「うむ…」
僕「ママ…だよね」
魔女「そうじゃな…手にして居るのは虫じゃ…丸い物は爆弾じゃろうな」
僕「何処に行けばパパとママに会えるかな?」
魔女「さぁのぅ…じゃが量子転移はイカンぞ?」
僕「分かってるさ…只パパとママが残した物を探したいだけだよ」
魔女「それで良い…情報屋を覚えて居るな?」
僕「うん」
魔女「シャ・バクダで未だ遺跡の探索をして居る筈じゃ…訪ねて見ると良い」
僕「分かった…森を抜けて行くよ」
魔女「エルフ達に会うたらよろしくな?」
僕「うん…今までありがとう魔女…いや師匠」
魔女「魔女で良い…むず痒いわ…達者でのぅ」ヌリヌリ
『シン・リーン城下』
ワイワイ ガヤガヤ
ねぇ大きなウルフ連れてる人が…
おぉありゃ多分獣使いだろ
雑貨屋「へい!!らっしゃい…何がご入用で?」
僕「この種いくら?」
雑貨屋「一袋5銅貨だよ!!買ってくかい?」
僕「おっけ!!じゃぁこれとコレ!!」チャリーン
雑貨屋「毎度!!いやぁしかし立派なウルフを手なずけたもんだね」
僕「僕の友達さ」
雑貨屋「乗れるのかい?」
僕「友達に乗ったりなんかしないよ」
雑貨屋「ハハ野暮な事聞いたね」
僕「ありがとね!!」ノシ
雑貨屋「またよろしくな~」
『ルイーダの酒場』
ガヤガヤ ガヤガヤ
戦士は居ないのか~
前衛職募集中!!
受付「ようこそ冒険者ギルドへ!!もう登録はお済みですか?」
僕「え…登録?」
受付「はい!!登録して頂ければお仲間の斡旋ができますよ?」
僕「えーと…」
受付「見た所…獣使いさんでよろしいですか?」
僕「違うよ…僕は…そうだ剣士だよ」
受付「へぇ?ウルフを連れた剣士様は珍しいですね」
剣士「僕はこの刀が武器なんだ」スラーン ピカー
受付「おっとっと…ここで武器は抜かないで下さいね」
剣士「ゴメン!!」スチャ
受付「今前衛職は大人気なので直ぐにお仲間が見つかりますよ?」
剣士「ハハそうなんだ」
受付「では剣士さんで登録しておきますね?」
剣士「森を抜けてシャ・バクダまで行きたいんだけどさ…」
受付「ええ!?それは超上級者パーティになりますね…それだとお仲間が見つからないです」
剣士「そっか…まぁ良いや」
受付「お仲間が見つかるまで酒場で噂話でも聞いてみてはいかがですか?」
剣士「そうだね…ありがとう」
『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
剣士「ウルフどう思う?ここで仲間探しても足手まといになるだけかな?」ヒソ
ウルフ(私と2人で十分)ガルル
剣士「一人でシャ・バクダに行った事が無いから不安なだけなんだよね」ヒソ
ウルフ(大丈夫よ私が案内してあげる)グルル
剣士「そうじゃなくてシャ・バクダでどう行動するかっていうのがさ」ヒソ
ハンター「君きみ!!君は前衛職だよね?」
剣士「僕?」
ハンター「さっき話を聞いて居たんだ…僕達のパーティーに加わらないかい?」
魔法使い「ねぇ大丈夫~?なんか布の服着てるんだけどさぁ」ジロジロ
僧侶「回復ならお任せください」ズイ
剣士「ああ…困ったな…僕は森を抜けてシャ・バクダに行きたいんだ」
ハンター「え!!スプリガン狩りだね?」
剣士「んんんー狩りはまぁ置いておいて…シャ・バクダを案内出来る人を探してるんだ」
魔法使い「…ちょっとこの人隕石の落下地点通過する気なの?ムリムリ」ヒソ
剣士「…ハハまぁそうだよね」
魔法使い「あら?耳が良いのね?御免あそばせ…」
ハンター「どうして又シャ・バクダなんかに?」
剣士「探している人が居てね…シャ・バクダに居るんだよ」
ハンター「僕達の目的を話しておこうかな…僕達はね…」
南にハジ・マリ聖堂が有るのは知って居るよね?
その東に人食い族のグールが巣喰って居るんだけど
その奥に手つかずの遺跡があるらしいんだよ
どうもシン・リーン王家が立ち入り禁止にしているんだけど
そこから帰って来た人によると遺跡にはミイラが沢山眠って居るんだってさ
ハンター「お宝の匂いがするよね?でも僕達には前衛職が居ないからグールと戦うのに安定しない」
剣士「ほーん…」
魔法使い「ほーんってあなたねぇ!!興味湧かない訳?」
剣士「僕とは行き先が違うっていう事でしょ?」
ハンター「まぁまぁそう言わずに…付き合って見ないかい?」
剣士「僕に利が無いんだよ」
魔法使い「ああああムカツク!!もう他当たろうよ…この人軽装だしさぁ」
剣士「僕もそうした方が良いと思うな…ハハ」
ハンター「はぁぁぁ何千年も昔のミイラが眠ってるなんて浪漫だと思うんだけどなぁ…」
剣士「何千年…」
---まさかパパとママが眠ってるって事は無いよね---
---いやでももしそうだとしたら荒らされるのは困るな---
---情報屋に急いで会う必要も無いかぁ---
剣士「ええと…条件出しても良いかな?」
ハンター「お!?」
剣士「遺跡の事も僕の事も口外しない…それでどう?」
ハンター「それなら飲める…でもどうして君の事を口外しない事が必要なの?」
剣士「うーん…皆が怖がるからかな」
魔法使い「あなたを?アハハ笑わせるじゃない」
剣士「秘密が守れるなら付き合っても良いよ」
ハンター「分かったよ!!皆良いね?」
魔法使い「お手並み拝見させてもらってからね!フン!!」
僧侶「分かりました…」ニコ
ハンター「よし!!これで人数揃った!!馬車を手配してくるから魔法使いは剣士を宿屋に案内しておいて」
魔法使い「はいはい…こっちよ!!さっさと付いて来て」スタ
剣士「ハハ嫌われたみたいだなぁ…」
僧侶「大丈夫なのです」
---剣士、ハンター、魔法使い、僧侶が仲間になった---
『宿屋』
ガチャリ バタン
魔法使い「そっちのベットがあなた…こっちが私達ね」
剣士「相部屋なんだ」
僧侶「稼ぎが少ないのでしょうがないのですぅ」
剣士「魔法使いはどんな魔法を使うのかな?」
魔法使い「あなたに魔法が分かるの?」
剣士「まぁね…」
魔法使い「私はエレメンタル4種と光よ…王道ね」
剣士「エレメンタルかぁ…」
魔法使い「何よ偉そうに!む…もしかしてあなたは魔法も使うタイプの剣士なの?」
剣士「そうだよ」
魔法使い「じゃぁどうして魔法剣士って登録して居ないの!?」
剣士「剣士に思い入れがあってね」
僧侶「どんな魔法を使うのですか?」
剣士「主に幻術さ…蟲を使うのが得意」
魔法使い「ええ!!?幻術って高位魔法じゃない!!そんなウソに騙されないわよ」
剣士「僕の事は秘密…守れるかな?」
魔法使い「なら見せてみてよ!!」
剣士「見せびらかす魔法じゃないよ…あー簡単な奴なら良いかな…君達の毒を治してあげるよ」
魔法使い「毒になんか掛かって居ないわ」
剣士「体の調子良くなるから言う事聞いて…線虫!」ニョロリ
ザワザワ ニョロリ
魔法使い「わわわ…こ…この虫って」
剣士「怖くないよ…君の体の毒を食べてくれる…肌もすべすべになるよ」
ニョロニョロ
魔法使い「嫌ぁぁぁ…体に入って…やべてぇぇぇ」ガクブル
僧侶「こここ…これは放って置いて良いのでしゅか?」ブルブル
剣士「ほらね?僕を怖がってしまうでしょ?」
魔法使い「あなた!!よくもレディーの体に気持ちの悪い虫を…」ゾワワ
剣士「大丈夫だよ…その蟲は何も悪い事はしないから」
魔法使い「どこでこの魔法を覚えた訳?」
剣士「それも秘密」
魔法使い「無詠唱で蟲を使うのね?…あなた何者?」
剣士「ごめんそれも秘密だよ」
僧侶「びっくりしました…高位魔術師だったのでしゅね」
剣士「君は光魔法だけかい?」
僧侶「光と変性です…闇も少しだけ使えます」
剣士「変性も高位魔法じゃないか…」
魔法使い「良く知って居るのね?」
剣士「変性も使えるんだよ…一通りね」
魔法使い「ちょっとアナタ!!もしかして塔の魔女の…」
剣士「それも秘密さ」
魔法使い「分かったわあなたの正体が…その格好も変性で変えて居るのね?」
剣士「変えて居ないよ」
魔法使い「ウソ!!信じられない」
僧侶「魔法使いさん…もし塔の魔女さまのお弟子さんだったら大変失礼な事を言っていますよ?」
魔法使い「う…そうね…悪かったわ」
剣士「僕が誰かなんてどうでも良いよ…無事に皆で遺跡の探索が出来れば良いよね」
魔法使い「まぁそうね…疑って悪かったわ」
剣士「なんか君たちと居ると楽しいなぁ」
魔法使い「それはどーも」プイ
剣士「そろそろ体の調子良くなって来たんじゃないかな?」
僧侶「そうですね…心なしか体が軽いです」
魔法使い「この蟲はずっと私達の体の中に?」
剣士「毒が無くなったら死んで排出されるから心配しないで」
魔法使い「ふ~ん…蟲使いなんて初めて見たけど興味出て来た」
剣士「君も勉強する?」
魔法使い「読み飛ばしてた魔術書をもう一回読んでみる」
剣士「君が悪い人じゃ無いって信頼できるようになったら教えてあげるよ」
魔法使い「今晩私と一緒に寝る~?」
剣士「だめだめ…そういうのダメ」
魔法使い「冗談よ!!今日会ったばっかりである訳無い無い!!」
剣士「さて…ちょっと横になろうかな」
僧侶「どうぞごゆっくり」
---------------
魔法使い「あなた…持ち物はその荷袋だけ?」
剣士「ん?そうだよ?変かな?」
僧侶「何が入って居るのですか?」
剣士「見る?はい…」
僧侶「木の実にキノコ…これは何かの種ですね…それから動物の角と骨」
魔法使い「…これだけで森を抜けようとしてたの?」ピキ
剣士「十分だよ」
魔法使い「装備品は?」
剣士「あぁ僕に重たい装備品は要らないんだ…一応骨で作った簡単な防具は付けてるよ…ホラ?」
魔法使い「ボーンキチンね…随分軽装だこと」
剣士「全部エンチャントしてあるんだ…これで十分さ」
僧侶「もしかしてエンチャントも使えるのでしゅか?」
剣士「秘密だよ?シーー」
魔法使い「驚いた…あなたやっぱり只者じゃない」
剣士「シーーーだよ?シーーー」
ガチャリ バタン
ハンター「聞いて聞いて!!馬車の手配出来たよ」
魔法使い「輸送?」
ハンター「そうそう!ハジ・マリ聖堂まで荷物を輸送して向こうで報酬受け取る…いつもの奴」
魔法使い「前金は足りた?」
ハンター「担保で僕たちの馬を預ける事になった…だから馬車1台で移動だよ」
僧侶「じゃぁ帰りも荷物運搬でしゅね」
ハンター「そこは上手くやろう…もう馬車の荷入れが終わってるらしいから直ぐに行くけど良いかな?」
魔法使い「ええ!?今!?」
ハンター「ほらほら!!宿屋でゴロゴロしてるくらいなら外に出よう!!」
魔法使い「もう!!準備するから先に行ってて」バタバタ
ハンター「剣士!?急で申し訳ないけどもう移動するよ…来て」
剣士「ハハ…僕はいつでも構わないさ」
ハンター「そのウルフは馬車に乗せられないけど良いよね?」
剣士「うん大丈夫…ウルフは自分で行動するから人数に数えなくて良い」
ハンター「そうか…じゃぁ早速行こう」タッタ
『荷馬車』
ゴソゴソ
管理人「…ほいこれが書簡…向こうの馬宿に到着したら渡せば良い…まぁ分かるな?」
ハンター「大丈夫だよいつもありがとう」
管理人「道中コボルドが出たという報告があるから気を付けるんだな」
ハンター「こっちには魔法使いが居るから安全に運べるよ」
管理人「なら良い…気を付けて行ってきー」スタスタ
ハンター「魔法使いと僧侶は遅いなぁ…」
剣士「こっちに向かって来ている様だよ」
ハンター「ん?どうして分かる」
剣士「僕は鼻が利くんだ」
ハンター「へぇ?僕も結構利く方なんだけどな…」
剣士「君は…見た感じ射手かな?」
ハンター「自己紹介して居なかったね…僕はトレジャーハンターで主に罠と鍵開け専門なんだよ…一応弓と短剣も使う」
剣士「盗賊タイプなんだ」
ハンター「盗みはやらない…お宝ハンターさ」
剣士「だから前衛職が欲しかったんだね」
ハンター「僕一人で魔法使いと僧侶を守りながら戦うのは安定がしなくてね…君に期待してる」
剣士「分かって来た…僕が引き付け役で君と魔法使いが殲滅役なんだね?」
ハンター「そうなる…ところで剣士?君は馭者をやった事有る?」
剣士「無いけど馬と話すことは出来るよ」
ハンター「話す?」
剣士「話せば言う事聞かせられるかも」
ハンター「へぇ…すごい特技だね…君が馭者を出来るなら僕が周囲の警戒が出来るんだ」
剣士「話してみるよ…」
タッタッタ
魔法使い「はぁはぁ…ハンター荷物持ってよ!」
ハンター「あららら又いっぱい荷物背負って…」ピョン
僧侶「ごめんなさい整理が出来なくてですね…」
ハンター「まぁ良いからそのまま荷室に乗って」グイ
魔法使い「寒くならない様にと思って毛皮持ってきたら重いのなんの…よいしょー」ドサ
ハンター「よし!乗った乗ったぁ!!」
ヒヒ~ン ブルル
ハンター「剣士!馭者出来そう?」
剣士「大丈夫だけど夕暮れ前に水が飲みたいってさ…水ある?」
ハンター「道なりに行ったら馬の休憩場所があるんだ…今日はそこでキャンプする」
剣士「おっけ!!じゃぁ出発するよ…ゴー!!」
ガラゴロ ガラゴロ
『2時間後』
ハンター「けっこう馬車出てるなぁ…」
魔法使い「良いじゃないキャンプが安全で」
ハンター「夏の間はソリ引けないから台数でまかなってるんだな…」
僧侶「ソリの方が早くてラクでした」
魔法使い「この揺れが腰に来る…あつつ…ちょっと見張り変わってよ!」
ハンター「ゴメンゴメン変わるよ」
魔法使い「ふぅぅ…お隣失礼!!」シュタ
剣士「落ちないでね?」
魔法使い「あなた手綱持たないで馭者してるの?」
剣士「馬が引っ張らないでって言うからさ」
魔法使い「馬と話せる魔法なんかあったっけ?」
剣士「ハハまぁ良いじゃ無いか」
魔法使い「ハンター!!聞いた?この人ガチ魔法剣士だよ」
ハンター「ええ!?そうだったの?」
魔法使い「しかもエンチャンター…超上級者なんだけど報酬吊り合うの?」
剣士「僕は報酬はアテにして居ないよ」
魔法使い「じゃぁ何?」
剣士「ちょっと興味が出たんだ…何千年も昔のミイラにね」
ハンター「おぉぉやっぱりそうだよね…お宝の匂いがプンプンするんだよ」
剣士「みんなはお宝目当てなんだ?」
魔法使い「まぁね?」
ハンター「船を買って南の大陸に帰りたいんだよ」
剣士「南の大陸かぁ…僕もそこで生まれたんだ」
魔法使い「ええ!!?同じじゃない…私達は火山の噴火で疎開して北の大陸に来たの」
剣士「へぇ…僕も同じような感じさ…理由があって親元から離れた」
僧侶「噂だと噴火は大分収まったそうです」
---もう何年もビッグママに会って居ないなぁ---
---千里眼で探しても見つけられない---
---元気にしてるだろうか---
魔法使い「…ってあなた聞いてる?」
剣士「あ…僕?ゴメン考え事してた」
魔法使い「だから生まれ故郷!!何処なのか聞いて居るの!!」
剣士「あぁ…名も無き島だよ…多分みんな知らないと思う」
ハンター「聞いた事無いな…どこだろう?」
剣士「ドワーフの国の方だよ」
魔法使い「なるほど…ということはあなたはハーフドワーフ?」
剣士「んんん…良く分からない…てかちょっと待って…僕の事は秘密だよ」
ハンター「おっとぉ!!もう良いでしょ…南の大陸の仲間同士なんだから」
僧侶「どうしてそんなに秘密にするのでしゅか?」
剣士「ごめんね…それも秘密なんだ」---魔女からの言いつけなんだよ---
---力の見せ過ぎは君たちに危険が及ぶ---
魔法使い「ねぇハンター?後ろに居る馬に乗った2人…さっきからずっと付けて来てない?」
ハンター「君もそう思うか…もう少し様子見よう」
剣士「…」---ほらね?---
---しまったなぁ…刀抜いたのがマズかったなぁ---
『野営地』
ヒヒ~ン ブルル
ハンター「今日はここでキャンプだ…僧侶は水汲んできて」
僧侶「あいあいさー」
ハンター「魔法使いはキャンプ焚いてくれるかな?」
魔法使い「うん…あの2人通り過ぎて行ったね…気のせいだった様ね」
ハンター「戻って来なければ良いけどね…あの身なりは山賊だよ」
魔法使い「他にもキャンプしてるパーティ要るじゃない…」
ハンター「何も起こらなきゃ良いけどね…まぁ一応用心しておこう」
剣士「…」ウメウメ
ハンター「剣士は何を?」
剣士「種を植えてるんだ」
ハンター「どうして又…種?」
剣士「ホラ夜は安心して眠りたいよね?だから簡単な魔方陣組んでるんだ」ウメウメ
魔法使い「退魔の方陣ね?触媒に種?」
剣士「まぁ虫除けだよ…蚊が多いからさ…成長魔法!」シュルリ
ハンター「ハハ雑草と見分けが付かない」
剣士「方陣の中なら蚊に刺されないから安心して」
魔法使い「へぇ~それ助かる!私にも出来るかな?」
剣士「方陣は誰でも出来るさ…覚えておきなよ」
『夜』
メラメラ パチ
魔法使い「じゃぁ先に馬車で寝るから見張りを交代するときに起こして」
ハンター「うん…いつも通り」
魔法使い「でも本当に虫が寄らなくて快適」
僧侶「そうですね…さすが虫使いです」
ハンター「剣士が持ってる種はこういう目的で沢山持って居るのかい?」
剣士「うん…他にもいろいろ使えるんだよ…成長させて食べるとか」
ハンター「なるほど…食料に困らないのか」
剣士「見張りは僕がやるから横になって居ても良いよ」
ハンター「なんか悪いなぁ…」
剣士「僕のウルフも近くで見張ってくれているんだ…何かあったら吠えるから大丈夫」
ハンター「遠くで聞こえる遠吠えは?」
剣士「気にしなくて良い…あれはウルフ仲間の合図だから」
ハンター「君はすごい旅慣れて居るんだね…君が仲間で良かった」
剣士「ハハありがとう」
ハンター「じゃぁ言葉に甘えて横になるよ」
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ヒソヒソ ヒソヒソ
なんだってこんなに虫が多いんだよ
だめだぁ毒消し持って無ぇか?
何に刺された?
分からん…しびれて手が動かん
ちぃぃ戻るぞ…今日は止めだ
ツイて無ぇな…あの刀は相当高く売れそうだったのによ
どっちにしても多勢に無勢だムリはし無ぇ方が良い
しゃぁ無ぇ他探す…ぬぁぁなんだこの子虫は!!
行くぞ行くぞ
ヒソヒソ ヒソヒソ
----------------
----------------
----------------
メラメラ パチ
剣士「フフ…」ニヤ
剣士「さて…僕もちょっと寝ようかな…ウルフ後は頼んだよ」スヤ
『早朝』
ブルル モシャモシャ
剣士「美味しいかい?」
荷馬(激ウマ…この草に付いてる虫が超旨い)ブルル ガフガフ
魔法使い「ふぁ~ぁ…あれ?」ガバ
剣士「しーーーーっ」
魔法使い「もう朝?ハンターは?」
剣士「寝てるよ…彼は結構疲れて居るみたいだ」
魔法使い「あなたは?」
剣士「僕は気にしなくて大丈夫」
魔法使い「…この布は何?あなたでしょ?作ったの…」
剣士「ハンモックだよ…馬車で揺られるのが辛いならそこで横になると良い」
魔法使い「考えたわね?」
剣士「足も延ばせるから座って居るより快適さ」
僧侶「むにゃむにゃ…」
剣士「まだキャンプの火が残ってる…何か焼こうかい?」
魔法使い「あ…ハーブ持って来てたんだったコレ焚いて」パサ
剣士「目覚め草か…イイね…これは錬金術用かな?」
魔法使い「フン!知ってるクセに…」
剣士「錬金術はあんまり得意じゃないんだ…」
魔法使い「おしゃべりは良いから早く焚いて!」
剣士「ゴメンゴメン…君は意外と面倒見が良さそうだね」ポイ モクモク
魔法使い「ウルさいわね…ちょっと出来るからと言って良い気にならないで」
剣士「あらら気を悪くさせちゃったか…さて!出発の準備するよ」
僧侶「ううん…」ノビー
ハンター「ハッ!!寝過ごした…」ガバッ
剣士「大丈夫だよ…僕が馭者やるからゆっくりしてて良いよ」
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『数日後_林道』
ガラゴロ ガラゴロ
ハンター「見えた!!ハジ・マリ聖堂は来た事あるよね?」
剣士「うん…良い思い出は無いけど」
魔法使い「あなたもここの時限の門で修行したの?」
剣士「少しだけ…」
僧侶「同じですね」
ハンター「この二人は修行がきつくて逃げて来たんだってさ」
剣士「ハハ…」---まぁ普通はそうだ…自分と殺し合いなんか普通じゃ出来ない---
魔法使い「もう二度と行きたくない!!」
ハンター「聖堂は近寄らないよ…さて今日は宿に泊まれるかな…」
僧侶「ベッドで休みたいですぅ」
ハンター「先に降ろすから宿の確保お願いするよ」
僧侶「任せて下さい!」ズイ
魔法使い「でも珍しく何事も無く輸送が済みそう…コボルトもアラクネーも出なかったね」
ハンター「剣士の連れてるウルフのお陰かもね」
剣士「無事で良かったじゃない」
魔法使い「そうだ!!魔術書にこういう事をスロヘト効果って書いてあった…あなた知ってる?」
剣士「さぁ?覚えて無いなぁ…」
ハンター「どういう効果?」
魔法使い「魔除けの一種よ?条件が分からないけれど…」
ハンター「普段の行いが良いとか?」
僧侶「そうかも知れないでしゅね」
アオーーーーーン アオーーーーーン
剣士「む!何か居る…何処だ」クンクン キョロ
ハンター「え!!?」ガバ
魔法使い「見て!!ハジ・マリ街道の墓地…あれはゾンビね…どうしてゾンビが?」
剣士「…」---ゾンビか…蟲で追い払えないな---
ハンター「マズいね…銀の武器なんか持って居ないよ」
僧侶「魔法師が魔法を撃ち始めたです…大丈夫ですかね?」
魔法使い「火炎で燃やしては居るけどなかなか倒れない様ね…」
ハンター「銀の武器なら一発らしいんだけどね」
剣士「どこかに死霊術師が居るかもしれないから気を付けよう」
ハンター「そうだね…皆気を付けて」
剣士「…」---ゾンビ化…広がらなきゃ良いけど---
『馬宿』
ブルル ヒヒ~ン
ハンター「僕は積み荷の引き渡しやって来るから皆先に宿屋に行ってッて」
魔法使い「私の荷物は…」
剣士「僕が持つから君たちは宿に行って」ヨッコラ
魔法使い「そうよね!?男はそうじゃ無きゃね!!僧侶行くよ!!」タッタ
僧侶「あぁ待って下さい」タッタ
ハンター「僕の大変さ分かってくれたかな?」
剣士「まぁね…でもそんなに重たく無いから大丈夫」ヨッコラ ヨッコラ
ハンター「急いで追いかけるから気を付けて行って」
剣士「大丈夫さ!」
『宿屋前』
ザワザワ ザワザワ
又出ただか
何も悪させんが気持ち悪いのぅ
ありゃ何年か前に死んだセントラル兵だな
そこら中に埋まっとるもんで…
ザワザワ ザワザワ
旅人「ここは魔物が多くて安心出来ないなぁ…」
町人「そんな事無いぞ?魔法師が居るから安全だよ」
旅人「ゴブリンにコボルド…アラクネー、ウルフ、グールにゾンビ…まだオークまで居るらしいじゃ無いか」
町人「俺達も戦えるから安心して下せぇ!!」
剣士「…」---オーク?どうして北の大陸に---
魔法使い「剣士!!こっちこっち!!大部屋が空いてた」
剣士「あぁ良かったね」
僧侶「2階なので荷物半分持ちます」
剣士「うん助かる」
ザワザワ ザワザワ
あらららゾンビは倒れてもまだ動きよる
焼いて骨だけになっても動くそうよ?
スケルトンかいな
ザワザワ ザワザワ
『宿屋』
ガチャリ バタン
剣士「ふぅ…随分外がザワ付いてるね」
魔法使い「聞いた?オークが居るって…どうして」
僧侶「すこし情報集めた方が良さそうです」
魔法使い「私達少し酒場の方に行って来るから剣士は留守番!荷物盗まれない様に見てて」
剣士「あ…僕も買い物に行きたかったなぁ…」ボソ
僧侶「何が欲しいですか?」
剣士「まぁ良いや…後で行くから」
魔法使い「帰って来るまで待ってて…じゃぁ行って来る!僧侶おいで!」タッタ
僧侶「ゴメンですぅ」タッタ
ガチャリ バタン
剣士「はぁ…クロスボウ無いか見たかったなぁ」
剣士「ん?なんだアレ…天井に傷がある…なんであんな所に傷がつくんだ?」ゴソゴソ
---あれ?この天井おかしな---
---テーブル…テーブル---
ゴトリ
剣士「お!?外れた…え?何コレ…天井に隠し部屋があるや」ピョン シュタ
---おぉぉぉスゴイ何だここ!!---
---窓から見晴らしが良い---
---でもスゴイ埃だなぁ---
コロンコロン
剣士「何か蹴とばした…何だろ」
剣士「おぉ!!牙…いやこれアラクネーの牙だ…え!?良く見たら金属糸もある」ゴソゴソ
剣士「アハハ宝の山だ!!…この金属片は…え!!?なんでミスリル銀がある?」
剣士「ちょちょちょ…」ゴソゴソ
コロンコロン
剣士「また…何蹴とばしたんだろう…これか」
剣士「ハッ!!爆弾…これママの爆弾だ!!そうかここはママの隠れ家だ」
ドタドタ バタバタ
剣士「いつの物だろう…埃の被り方からして相当前だ…他に何か無いか!?」ゴソゴソ
剣士「有った!!ママが使ってたミスリルナイフ…装飾が…間違いない!ぅぅぅぅ…ママ」プルプル
剣士「もっと…もっと他に…」ゴソゴソ
----------------
----------------
----------------
こんな所に隠れて何をしていたんだろう
パパも一緒に居たのかな
やっと一つママを感じられる物が見つかった
そうだ…このナイフでアラクネーの牙を加工したんだ
このボーンハンドルを握って…こんな感じで…
ママが道具を置いて行くなんて…きっと何か有ったんだよね
剣士「このナイフは僕の宝物だ…絶対無くさない様にしよう」
ガチャリ バタン
ハンター「あれ?誰も居ない…何処行った?」
剣士「あ…上に居るよ」
ハンター「剣士?上?…え?これどういう事?」
剣士「屋根裏に部屋が有ってね…面白そうだから見ていたんだ」
ハンター「魔法使いと僧侶は?」
剣士「酒場に行くと言って出て行ったよ」
ハンター「又か…困った2人だ…屋根裏は面白いかい?」
剣士「埃まみれだけど…気に入った…今日は僕ここで寝る」
ハンター「そうかい…さてどうするかなぁあの2人…」
剣士「僕は留守番で良いから君も酒場に行っておいでよ」
ハンター「酒場は2人に任せて予備の矢を買いに行こうかな…」
剣士「あ…それならもしクロスボウが有ったら欲しいんだ」
ハンター「気にしておくよ…どんなのが良いのかな?」
剣士「ヘビークロスボウ…出来るだけ硬いやつ…」
ハンター「お金は有る?」
剣士「うん…足りるかな?」ジャラリ
ハンター「まぁ見て見るよ…留守番頼むね」
『屋根裏』
ゴソゴソ ゴソゴソ
剣士「もう何も見つからないかぁ…でも偶然でもこの宿屋に来て良かったぁ…」
剣士「こんなにワクワクしたの初めてだ」
剣士「ママの事だからきっとこの窓からクロスボウで狙撃してたんだ…ここからだと良く見える」
剣士「あ!!ハンターが帰って来る…やった!!クロスボウ有ったんだ…今日は寝れないなぁフフ」
ガチャリ バタン
ハンター「剣士!!大収穫!!降りて来て!!」
剣士「上から見てたよ…クロスボウ有ったんだね?」
ハンター「この辺りは昔戦争が有ってその時の戦利品が沢山放置されてるんだって…傷んでるけどすごく安い」
剣士「おぉ!!直すから良いよ」
ハンター「使えそう?これヘビークロスボウだよね?」
剣士「十分!!傷んでるのは木の部分だけだ…丁度良い」
ハンター「良かった…お金が随分余った…返す」ジャラリ
剣士「今から作り直す…これを材料にして僕のショートボウを作りたかったんだ」
ハンター「ショートボウ?」
剣士「ちょっと屋根裏で作業するね…じゃ」ピョン シュタ
ハンター「ハハ…それじゃ僕は2人を探しに酒場に行って来る」ノシ
『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
店主「いらっしゃいませ…今満席でして立ち飲みになりますが…」
ハンター「いいよ…連れが先に2人来てると思うんだけど…」
店主「そうでしたか…裏にもテーブルがありますので探してみてください」
ハンター「ありがとう…エール一つ貰って行くね…お代は置いとくよ」ジャラリ
店主「ごゆっくり」
ワイワイ ガヤガヤ
どうする?魔物がなぁ…港町まで戻れるんかいな
誰か雇って戻るべ
この辺のハチミツ酒は南の大陸で高級品なのよ?
ワイワイ ガヤガヤ
ハンター「あー見つけた!楽しんでる様だね?」
僧侶「ハンターさん報酬はどうでしたか?」
旅人「なんだよ…連れが居たのかチッ」スゴスゴ
ハンター「微妙だった…3日分の宿泊代にしかならなかったよ」
僧侶「稼ぐ方法を考えませんとねぇ」
ハンター「何か美味い情報は聞けて居ないかな?」
魔法使い「魔物狩りの依頼があるらいいけどシン・リーンに比べて全然ダメ…」
僧侶「この辺の魔物は戦利品が良くないのだそうです」
ハンター「だから魔物が多いのか…あんまり長居出来ないねぇ」
魔法使い「変な噂が聞けたわ?…ひと月くらい前からオークが東の荒野でうろついてるらしいわ」
ハンター「遺跡の方か…」
魔法使い「丁度その頃からグールが居なくなってゾンビが出る様になったらしいの」
旅人「おいおいそりゃ俺のネタだぞ?」
ハンター「詳しく知りたいな」
旅人「ハハーン…遺跡でお宝さがしだな?」
ハンター「良く知って居そうだね?」
旅人「あそこはシン・リーンの所縁のある墓所らしい…グールが住み着いて誰も寄り付かなくなって長い」
ハンター「案内出来る?」
旅人「おいおい…そんな危ねぇ事に首突っ込む気は無ぇぞ」
ハンター「場所だけでも詳しく知りたいなぁ」
旅人「取引しようじゃ無ぇか…このかわいい僧侶ちゃんをだな…一晩貸せ」
僧侶「またそれでしゅか…」
ハンター「うーん…僧侶次第になるんだけど…」
僧侶「一晩何をするですか?」
旅人「まぁ飲み比べだな?」ウヒヒ
魔法使い「僧侶?…」ヒソヒソ
ハンター「旅人さんはどうしてその墓所に詳しいのかな?」
旅人「鋭い突っ込みだな…まぁこれが俺の仕事な訳よ…要するにシン・リーンから依頼されてる訳だ」
ハンター「え?…」
旅人「墓所の掃除をシン・リーンが冒険者にやらせて居るんだ」
ハンター「なんだそういう事なのか…これはお宝期待出来ないなぁ…」
旅人「いやそうでも無いらしい…御礼がシン・リーンから出るんだってよ…遺跡が隅まで未探索なのも本当だ」
ハンター「なるほどね…遺跡調査がグールのせいでずっと出来て居ないという事か」
旅人「それで…場所が分からんと相当苦労すると思うんだが…どうする?」
僧侶「乗ったです!!」ドヤ
ハンター「だ…大丈夫かい?」タラリ
旅人「良いって言ってるんだ…ガタガタ言うな」
僧侶「飲み比べなら自信があるです」ドヤ
旅人「そりゃどーもウヒヒ…地図持ってるか?詳細な場所書いてやる」
ハンター「あるよ…」パサ
旅人「説明するぞ?良く聞いとけ…」
此処から東のこの一帯は全部砂岩で出来た荒野だ
ここに書いたのがタワーズロックという大きな断層だ…分かるな?
この断層沿いに北へ回ると右手にアーチ状の大きな岩が見える…暁の門と呼ばれていたらしい
この暁の門から朝日を見るんだが太陽の光が岩塩に反射して遺跡の場所を照らす
ハンター「随分凝った場所なんだね…しかし思ったより遠いな」
旅人「荒野は馬車で行けるんだが…なんせ魔物が多いから気を付けるんだな…真っ先に馬が殺される」
旅人「因みにだが…シン・リーンから伏せられて居る話が合ってな?」
ハンター「聞かせてくれるのかい?」
旅人「ちっと酒代が欲しい訳よ」スリスリ
ハンター「…うーん」
魔法使い「私達もあんまりお金無いの!!これで教えて」チャリン
旅人「ぬぁぁケチいなぁ…後でパフパフな?」
魔法使い「ペッ…」
旅人「まぁ聞け…その墓所は暁の使徒関連なんだとよ…はいパフパフ貰い!!ウヒヒ」
ハンター「暁の使徒?魔法使い知ってるかい?」
魔法使い「初めて聞いた…だからパフパフ無し!!」
旅人「おいおいおい…トップシークレットなんだがな…あんたらにゃ関係無かったか」
ハンター「でもお宝を見つけたら高額取引のネタにはなりそうだ」
旅人「だろ?パフパフ貰い!!」
魔法使い「馬鹿!!何余計な事言ってるのよ!!」ポカ
ハンター「あたっ…口が滑った」
旅人「ようし!!旅の安全を祈って乾杯しようじゃ無ぇか!!」
ワイワイ ガヤガヤ
ドゥルルルン♪
かつての英雄♪赤い瞳の王~♪えにし森から馬を駆ってやって来た~♪
来たる来たる~は♪暁を駆ける使徒達♪その戦いに勝者は居なかった~♪
『翌日』
ゴソゴソ ゴソゴソ
小麦と水は十分にある…後はイノシシかシカを狩るのは僕がやる
触媒は有る?…えーと矢はこれくらいで良いか
君が持ってきた毛皮は役に立ちそうだ…それから布とロープ…薪は途中で拾おう
僧侶「おはようございます…むにゃ」
ハンター「起きたね?もう昼過ぎだよ」
僧侶「飲み過ぎたです…」グダー
魔法使い「あの旅人は上手く寝た?」
僧侶「魔法使いさんがくれた睡眠薬がなかなか効かなくてでしゅね…」
魔法使い「悪戯されてない?」
僧侶「分かりません…」
魔法使い「あらら…」
僧侶「下着は履いて居たので多分大丈夫でし」
ハンター「準備は僕達がやっておくから体休めて居て良いよ」
僧侶「屋根裏がうるさくてですね…ふぁ~あ」
魔法使い「剣士はまだ何か作ってるの?」
僧侶「金属をこする音がうるさいのです…」
ハンター「なんか弓を作るとか言ってたよ」
魔法使い「ちょっと手伝わせない?」
ハンター「いや…無理言って連れて来てる立場だからね」
魔法使い「うーん…上手く付き合わないと居なくなっちゃ困るの私達か…」
ハンター「遊んでる訳じゃ無さそうだし…あとどんな弓を作るのかも少し楽しみなんだ」
出来たぁぁぁ!!
ハンター「お?降りて来そうかな?」
魔法使い「後の小物は私達で用意しておくからハンターは剣士と狩りにでも行って来たら?」
ハンター「そうだね…干し肉作っておきたいね」
魔法使い「宿屋の調理場借りられるか聞いてみる」
ハンター「よし…剣士誘ってちょっと行って来るよ」
『屋根裏』
ハンター「剣士!!弓出来たみたいだね?」
剣士「うん!!」ギリリ ブン
ハンター「うわ…音がスゴイな…貸してみて」
剣士「君に引けるかな?…はい」
ハンター「へぇ~~金属で出来た弓…こんなの初めて見た」
剣士「元がクロスボウだからね」
ハンター「硬っ…ぐぬぬ…良くこんな硬い弦を引けるね」
剣士「試し撃ちしたい」
ハンター「そう言うと思ってさ…狩りに誘いに来たんだ」
剣士「行く行く!!調整もしたい」
ハンター「矢は沢山あるから行こう」
剣士「何を狩るの?」
ハンター「シカかイノシシ…ウサギとか鳥でも良いかな」
剣士「おけおけ!」
ハンター「なんか君…目が輝いてる」
剣士「そう?…でもね弓使うの憧れてたんだぁ~」ワクワク
ハンター「もしかして初めて?」
剣士「小さい時に少し使ったことがあるくらい」
ハンター「じゃぁ撃ち方も教えないといけないなぁ」
剣士「お願い!!」
ハンター「おけおけ!じゃ行こうか…君の真似してみたw」
剣士「アハハ…」ピョン クルクル シュタ
ハンター「おお!!やる気だ…じゃぁ僕も!!」ピョン クルリン スタ
『馬車』
ヒヒ~ン ブルル
僧侶「はぁぁぁこのハンモック…寝心地良いですぅ」ユラー
魔法使い「あの2人弓持って走って行った…」
僧侶「馬車はここに置いたままで良かったですかねぇ?」
魔法使い「う…私が動かさないといけない…」
僧侶「すこし道を開けて置いた方が良いですね」
魔法使い「うん…ちょっと寄せる」グイ
ヒヒ~ン ガラゴロ
魔法使い「僧侶さ?馬車で荷物番していて貰える?」
僧侶「良いですよ?」
魔法使い「塩とか胡椒とか細かい物仕入れて来る」
僧侶「はい~私は横になって酔いを覚ましておくです」
魔法使い「じゃ行って来るね」タッタッタ
『夕方』
魔法使い「あ!!あの2人やっと戻って来た!!」
僧侶「うわ…お肉背負ってますね」
ハンター「大漁大漁!!宿屋の調理場は使える?」
魔法使い「うん…それ全部干し肉にするつもり?」
ハンター「うーん…燻製が良いと思う」
剣士「調理場はこっちだね?僕がやっておくよ」
魔法使い「もう解体済みなのね」
ハンター「そうなんだよ…剣士があっという間に解体してさ…残りは全部ウルフの餌だよ」
僧侶「何のお肉ですか?」
ハンター「シカとイノシシ…これでしばらく飢えないで済む」
魔法使い「あら?肉以外に…それは鉄くず?」
ハンター「これね…コボルトが襲って来てさ…戦利品だよ…矢尻に加工するんだ」
ハンター「いやぁそれにしても剣士の弓は反則気味だよ…僕の弓とは威力が違い過ぎる」
魔法使い「あいつ何でも出来るのね…」
ハンター「僕も弓を作ってもらう事にした…それより馬車への荷入れはもう良いのかな?」
魔法使い「終わってる…馬車どうしよう?」
ハンター「早朝に出発したいからここに置かせて貰おうか…僕が見張るよ」
僧侶「それなら安心でしゅね」
魔法使い「じゃぁ私達水浴びしてくるから見張りお願いね…行こ僧侶!」
僧侶「はい~」
『屋根裏_夜』
シュッシュッ ギコギコ
魔法使い「剣士…もうそろそろ私達寝るんだけど…」
剣士「ゴメン…もう終わるよ…これで最後!!」ギリリ
魔法使い「それはハンターの弓?」
剣士「うん…アラクネーの牙があったからコンポジットボウに作り替えた」
魔法使い「そんな高価な素材を何処で?」
剣士「ここに落ちてた…他に使い道無いしさ」ギリリ ブン!
魔法使い「あなた多才ね…どうしてそんなに出来るのかしら…」
剣士「僕はね…すごく小さい時から世界中を旅してたんだよ…だからかな?」
魔法使い「細工は誰に教えて貰ったの?」
剣士「僕のママさ…細工師だったんだ」
魔法使い「ママかぁ…私はもう顔も覚えて居ないんだ」
剣士「それは不幸だったね」
魔法使い「20年くらい前の闇の時に亡くなったって」
剣士「そういう人は多いよね」
魔法使い「知ってる?あれからほとんど人口が増えて居ないって…」
剣士「うん…知ってるよ」
魔法使い「こういう話をいつも僧侶とするんだけど…平和になった筈なのにおかしいと思わない?」
剣士「…もう寝ようか」
魔法使い「そうね…眠れなくなるしね…じゃ!お休み」
剣士「お休み…」
僕は何となく知ってる
アダム…
多分停止していない
人類の補完は続いてる…
だから僕は蟲の道を選んだ
『早朝』
チュン チュン
ハンター「はい乗って!!」
魔法使い「僧侶!先に乗って」グイ
僧侶「ハンモック2つに増えてるですね」
魔法使い「どっち使っても良いよ」
僧侶「こっちにしますー」ヨイショ
剣士「気に入った?」
魔法使い「ちょと寒いのがね…」
剣士「荷馬車の隙間を埋めないとね…」
ハンター「あ…布が在ったね…後で被せるよ」
剣士「じゃぁ出発するよ?」
ハンター「おっけ!!…ハハ剣士の真似してみた」
ヒヒ~ン ガラゴロガラゴロ
剣士「真っ直ぐ東で良いのかな?」
ハンター「林道沿いを馬車で2日…そこから先が荒野になる」
剣士「おっけ!!…これが本家」
ハンター「ハハハ…あ!!そうだ僕の弓どうなった?」
剣士「荷物に積んであるよ…えーと僧侶のお尻の下だ」
僧侶「え?」キョロ
ハンター「在ったあった…」ギリリ ブン!
剣士「どう?」
ハンター「結構硬いな…でもなんとか引ける」
剣士「ロングボウの方が良かったのかな?」
ハンター「ロングボウは背負うのに邪魔になるからこのくらいで丁度良い」
剣士「素材のアラクネーの牙にエンチャント掛けてあるから後で試してみて」
ハンター「お!!?どんなエンチャント?」
剣士「麻痺毒だね…強さはやってみないと分からない」
魔法使い「やったじゃない?お宝ゲットね」
剣士「ちょちょ…それ売ってお金にするのは無しだよ」
ハンター「大事に使わせてもらうよ…狩りで麻痺毒なんか最高じゃないか」
剣士「うん…そう思う」
--------------
剣士「コボルトからの戦利品を貸して」
ハンター「え?どうする?」
剣士「それを細工して対ゾンビ用の武器を作る」
ハンター「ガラクタだし好きに使って良いよ」ガラガラ
剣士「あ!丁度良いのがあるな…スピアヘッドだ」
ハンター「矢尻にしようと思って獲って来たんだ」
剣士「よし!変性魔法!」シュワ
魔法使い「え!?」
剣士「んーちょっと質が悪いけどまぁ良いかぁ…」
僧侶「それは銀ですか?」
剣士「うん…元の素材が良ければもう少し純度の高い銀になったんだけどね…不純物が多かったみたい」
ハンター「すごいな…後柄の部分があればそのまま銀の槍になる」
剣士「真っ直ぐな枝があればすぐに作れるよ」
ハンター「僕は槍を使えないんだけど…」
剣士「銀の槍を持つのは魔法使いと僧侶が良いと思う…君は麻痺毒の弓矢で足止め係さ」
魔法使い「私と僧侶でゾンビに止めを?」
剣士「ゾンビは動きが遅いから心臓を刺すのなんか誰にでも出来るよ」
ハンター「君はそんなにゾンビが出て来る想定でいる?」
剣士「うん…ゾンビはね伝染するんだよ…多分沢山出てくると思う」
ハンター「僕の短剣も銀に変えて貰えるかな?」
剣士「良いけど…鉄より強度落ちるけど良い?」
ハンター「また買えば良いし…」
剣士「おっけ!!じゃぁ貸して…変性魔法!」シュワ
-----------------
ガタゴト ガタゴト
魔法使い「見て!!馬車が放置されてる」
ハンター「見て行こうか…剣士!馬車を止めて」
剣士「うん…」クンクン
ハンター「馬が白骨化してる…結構前の物だ」
魔法使い「積み荷は?」
ハンター「見て来る…警戒しておいて」
僧侶「見て下さい…木に爪痕があるです」
剣士「クマに襲われたんだね」
ハンター「この馬車はまだ使えそうだよ」
剣士「車輪だけ外して行こう…僕が外すよ」ピョン シュタ
ハンター「予備にするんだね?」
剣士「うん…車輪が壊れたら僕達も同じ事になってしまうからね」ゴソゴソ
ハンター「持って行けるものは全部そっちの馬車に移すよ」
魔法使い「積み荷は何か無いの?」
ハンター「残ってるのは木炭ぐらいかな…あと壊れた樽」
魔法使い「旗が立ってるのは?」
ハンター「何の旗印だろうね?あ!!この柄って槍の材料になったりしない?」
剣士「良いね…長さも丁度2つ分になりそう」
ハンター「よしこれだけ持って行こう」
剣士「ハンター?外した車輪を馬車に引っかけるの手伝って?」
ハンター「どうすれば良い?」
剣士「持ち上げるからロープで結んで…よっと!!」グイ
ハンター「これで良いね?」グイグイ ギュー
剣士「あと3個」
---------------
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---------------
『夕暮れ』
メラメラ パチ
僧侶「言われた通りに虫除けの方陣を張って来たです」
剣士「もう覚えた?」
僧侶「はい…任せてください」
ハンター「林の中でのキャンプももう慣れたね」
魔法使い「今まで安全にキャンプ出来たのは剣士の使う虫のお陰?」
剣士「ハハバレたか…そうだよ普通はこんなに安全にキャンプなんか出来ない」
ハンター「やっぱりそうか…虫に守られてるんだ」
剣士「でもね…ゾンビには効かないから注意が必要だよ」
ハンター「なるほど」
剣士「あと馬がやられると困るから馬をしっかり守らないとね」
ハンター「何か案が?」
剣士「うーん見張るくらいしか思いつかないなぁ」
ハンター「じゃぁいつも通り交代で見張りだね」
剣士「ゾンビに備えて急いで銀の槍を作るよ」ギコギコ シュッシュッ
魔法使い「ところでグールが全然居ないね?沢山居る筈よね?」
ハンター「そうだねおかしい…」
僧侶「剣士さんの虫のお陰ですかね?」
剣士「どうかな?ウルフが吠えて居ないから近くには来てないとは思う」トンテンカン
ハンター「そうだった…ウルフも居たね…もしかして別で行動してるのは虫から離れる為?」
剣士「それもあるけど気ままに過ごしたいんだよ…だから自由にさせてるんだ」トンテンカン
僧侶「一匹で行動してるですか?」
剣士「5匹くらい仲間が居るよ」シュッシュッ
僧侶「ウルフにも守られて居たのでしゅね」
剣士「まぁね?秘密にしといてね…よし!!銀の槍完成!!」
ハンター「お!?早いね」
剣士「これ持ってみて?」
魔法使い「私?」
剣士「うん…杖の代わりと思ってさ…先っぽに照明魔法を掛けてごらん?」
魔法使い「照明魔法!」ピカー
ハンター「おぉ!!松明替わりになるじゃないか」
剣士「銀だからね…ちょっとしたエンチャント武器だよ」
僧侶「私もやってみるですぅ…照明魔法!」ピカー
魔法使い「杖の代わりにもなるの?」
剣士「うん…銀は良く熱と雷を伝えるから火炎魔法か雷魔法が効果的だよ…光もね」
ハンター「これは僕が後衛で魔法使いと僧侶が前衛か…」
剣士「ゾンビ相手だとその方が良いと思う」
魔法使い「あなたは何をするの?」
剣士「そうだなぁ…君達を守る役でどう?」
僧侶「そういえば剣士さんが剣を使って居るのをまだ見ていないですね」
剣士「まぁまぁ…勘弁してよ」
魔法使い「あなた本当に剣士なの?」
ハンター「君が背負ってる刀…すごく珍しいよね?見せて欲しいな」
剣士「うーん…まぁ良いかぁ」スラーン ピカー
魔法使い「眩しい…それも光のエンチャント?」
剣士「そんな所かな…」スン スン スン
ハンター「残像が残る…なんか凄そうな刀だ」
剣士「これは形見なんだ…だから誰にも渡せない」
魔法使い「只者じゃないとは思って居たけれど…持って居る物も超一流なのね…あなたどういう人?」
剣士「だから秘密にしておいて欲しいのさ」スチャ
ワオーーーーン ワオーーーーーン
ハンター「遠吠え…」
剣士「ゾンビだ…皆は虫除けの方陣から出ない様に戦ってね」
僧侶「なんかドキドキするです…」ガクブル
ハンター「僕が先に麻痺毒の矢を当てる…それで良いね?」
剣士「うん…ゾンビの足が止まったら心臓をブスっと刺せば終わり…最後に火炎魔法で焼けば良い」
魔法使い「任せて!」
------------------
剣士「来るよ!!」
ハンター「見えた…あれ?グールのゾンビだ」
剣士「もう少し寄せて…方陣の中まで」
ハンター「撃つよ…」ギリリ シュン グサ
ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…ガァァ」ズリ ズリ
ハンター「止まらない…」
剣士「まだまだ…ちょっと麻痺毒が遅いのかな?」
僧侶「ゾンビが遅くなってるです」
剣士「麻痺してるのが分かりにくいね…でもやっぱ遅くなってるな」
魔法使い「どうするの?」
剣士「大丈夫そうだから倒してみて」
僧侶「はいな~!!」ダダダ ブスリ
ゾンビ「ウガァァァ…」ドタリ
僧侶「倒れた…」
剣士「魔法使い!魔法で焼いて」
魔法使い「火炎魔法!!」ボボボボ
ハンター「ハハ…これ余裕だね」
魔法使い「この槍スゴイ!!火炎の出口が先に集中する」
剣士「中々良いね…まだ来るよ!備えて」
---------------
---------------
---------------
『1時間後』
ゾンビ「ガァァァ…」ブン ドカ
僧侶「つつ…えい!」グサリ
ハンター「僧侶!!大丈夫?」
僧侶「回復出来るので大丈夫でし…回復魔法!」ボワー
剣士「ふむふむ…」
魔法使い「あなたさっきから何もしていないじゃない!!」
剣士「今のゾンビで最後だと思うよ」
魔法使い「ねぇ聞いてるの!?」
剣士「あー余裕だったからさ…今からちょっと盾作る」
ハンター「このゾンビの死体…あれ?おかしい事言ってるな…えーとこれどうする?」
剣士「方陣の外に出して置いたら蟲が処理するよ」
魔法使い「焼かなくて良い?」
剣士「触媒が勿体ないよね」ゴソゴソ
魔法使い「うん…まぁ…」
剣士「有った…壊れた樽拾っておいて良かった…これで盾作ろう」ギコギコ
僧侶「もしかして私の盾ですかね?」
剣士「そうだよ…君は前衛向きだよ…変性魔法も使える様だし」トンテンカン
小さい体活かして槍と盾を持った聖戦士になれば良い
変性魔法で体を石に変える事も出来るよね?
それから回復役は魔法使いがやれば十分だ
魔法使い「ずっとそれ観察してた訳?」
剣士「僕の出る幕無かったじゃない」トントントン
ハンター「でもまぁ僕が足止めして僧侶が前衛で安定といえば安定か…」
剣士「うん魔法使いは触媒さえあればエレメンタル高位も使えるでしょ?火力も十分だ」トンテンカン
ハンター「僕が一番要らない子になりそうだ…」
剣士「ハンターは罠を上手に使えば足止め専門になれるんじゃないかな?」
ハンター「…そうか僕の罠か…それで馬も守れるな」
剣士「よーし!!出来た…簡単だけど樽で作ったラウンドシールドだよ…持ってみて」
僧侶「ほい!!」
剣士「良いね!!体小さいからしっかりカバー出来そうだ…ちょっと練習しようか」
僧侶「どうすれば良いですか?」
剣士「僕が木の枝で襲い掛かるから盾で防いで攻撃のチャンスを探す感じ」
僧侶「フムフム…」
剣士「魔法使いはその間援護出来そうな立ち位置探して?」
ハンター「僕は罠張って来る」タッタッタ
剣士「行くよ?防いでね?」ダダ ブン コン
僧侶「はわわ…」
それでね?変性魔法のコツなんだけど…
攻撃を食らってしまった後でも十分間に合うんだよ
攻撃を受けてしまった所を一瞬だけ変性させるだけで良い
それで随分攻撃が緩和されるんだ
『焚火』
メラメラ パチ
魔法使い「肉焼けたけど…あなた食べる?」
剣士「僕は要らない…」カリ モグモグ
僧侶「いつも木の実だけなのですね」モグ
剣士「気にしないで?」
タッタッタ
ハンター「罠仕掛け終わった…僕にも肉ある?」
魔法使い「剣士が食べないっていうから余ってる…どうぞ」
ハンター「ふぅ…それにしてもあのゾンビを見た後で肉がマズイねぇ」
魔法使い「仕方ないでしょう?」
僧侶「あのゾンビはまだ体が腐敗していませんでしたね」
ハンター「うん…何か持って無いかと思ったけど戦利品無しだよ」
魔法使い「全部グールよね?」
ハンター「そうだね…女性のグールも居た…どうなってるんだろうね」
魔法使い「グールは食人族と言われて居るけど…元々は生きた人間と同じでしょう?どうしてゾンビに…」
剣士「死霊術師が居るのは間違いないと思う」
僧侶「シン・リーンでは死霊術師はもう居ないと聞いてましゅ」
剣士「うん…教える人も居ないみたいだね」
魔法使い「死霊術って呪術だったかな?」
剣士「闇の呪術だったっけ…僧侶は闇の魔法も少し使えるって言ってたけど?」
僧侶「盲目魔法だけなのです」
ハンター「只のお宝ハントだと思って居たんだけど…」
剣士「ゾンビだけなら僕達だけで何とかなるんだけど…死霊術師が居るとなるとちょっと怖いなぁ」
魔法使い「グールがゾンビにされているという事は私達の敵では無いかもよ?」
ハンター「グールの敵という事になるね…つまり味方だ」
剣士「うーん…グールは人間と同じだから積極的に倒す敵じゃないと思うんだ…襲って来ない限り」
魔法使い「そう言えばグールは死体を漁るけどあまり人間を襲うのは聞かない…」
ハンター「僕達より先に遺跡に行った人が居るという事かも…」
僧侶「そうでしゅね…その中に死霊術師が居たという事になるですね」
剣士「あ…そうだ!皆の毒を抜かないと…」
魔法使い「またあの虫!?止めて…気持ち悪い」
剣士「ゾンビ化の病気かもしれないんだよ…我慢して」
僧侶「食事が終わるまで待つです…」
剣士「あぁゴメン…慌てる必要は無い…君達が寝た後で良いや」
『翌日』
ガタゴト ガタゴト
ハンター「今ここら辺の筈…このペースだと日暮れまでに林を抜ける感じだ」
魔法使い「今日は林を出てキャンプの方が良さそう」
僧侶「また来たです…今度はゴブリンでし」
剣士「任せて…」ギリリ シュン
僧侶「倒れたです」
ハンター「戦利品拾って来る」ピョン タッタッタ
剣士「ゴブリン地帯さえ抜けちゃえば休憩も出来そうなんだけどな」
魔法使い「左!!弓持ったゴブリン」
剣士「僧侶!馬に矢を当てられない様にカバーして」
僧侶「はいな!!」
剣士「2体居るな…魔法使い左の奴やって」ギリリ シュン
魔法使い「雷魔法!」ビビビビ
剣士「おっけ!!矢を拾って来る」ピョン シュタタ
ハンター「又謎の種しか持って無かった」バラバラ
剣士「こっちは矢尻の付いて居ない矢だ…どうする?」
ハンター「一応拾っておこう…麻痺毒専用で使うから」
剣士「そうだね…」
ハンター「この種はどうするつもり?」
剣士「僕が使うよ」
魔法使い「どうしてゴブリンは種を持ってるのかな?」
剣士「食料だろうね…実は種の類は変性の材料にすごく良いんだよ」
魔法使い「そうなの?」
剣士「うん…質の良い金属に変えられたりする…変性は元の素材の良さに依存するからね」
僧侶「また来たです…次はゾンビなので私が倒してきまする」
剣士「もう慣れたみたいだね」
僧侶「はい…盾で凌げば簡単でし」
ハンター「一応麻痺当てておく」ギリリ シュン
『林の外れ』
ガタゴト ガタゴト
魔法使い「うわーーー岩場…」
ハンター「まだ日暮れまで時間がある…岩場に洞穴があれば良いけど」
剣士「岩場を背にするだけで大分違うかな」
ハンター「とりあえず林は出て正面の大きな岩まで向かおう」
剣士「草が有る所が良いな」
ハンター「馬の餌か…」
剣士「土が無いと種が植えられないからね」
ハンター「なるほど」
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魔法使い「見て!!あそこは草が生えてる」
ハンター「断崖を背に出来るね…良さそうだ!今日はそこでキャンプしよう」
『断崖』
メラメラ パチ
僧侶「成長魔法!」シュルリ
ハンター「方陣も慣れたみたいだね?」
僧侶「はい…罠もおっけーでしゅか?」
剣士「ウルフがこっちに来るから攻撃しないで…6匹」
魔法使い「あら?珍しいわね」
剣士「隠れる場所が無いからね…こっちに来た方が良いんだ」
僧侶「見えたです…罠大丈夫ですかね?」
ハンター「あぁ…ベアトラップだけ解除しておく」タッタッタ
剣士「よし…この辺で良いか」ウメウメ
僧侶「今度は何を植えてるですか?」
剣士「アロエという植物さ…保水力が強いから水の代わりになるんだ」
僧侶「水はまだまだあるです」
剣士「一応節約だよ…馬にもウルフにも水が必要だからね…成長魔法!」シュルリ
ウウウウ グルル
ハンター「こんなに近くにウルフ6匹も居るとやっぱり怖いね」
剣士「ウルフおいで!!いつもの奴やるよ?線虫!」ザワザワ ニョロ
魔法使い「ウルフにもその虫?」
剣士「うん…体の掃除みたいなものだよ」
僧侶「剣士さんこのアロエ貰っても良いですか?」
剣士「好きなようにして良いよ?剥いてあげようか?」スパ
魔法使い「私も欲しい」
剣士「このトゲをナイフで落として…こうやって剥けばそのまま食べられる…はい」
僧侶「水よりも美味しく頂けます」シャモシャモ
剣士「ようし…ヤシも育てて見るかな」ウメウメ
ハンター「楽しみだなw」
剣士「成長魔法!」グングン
ハンター「おぉ!!実が…20個ぐらいか」
剣士「もう切り倒して薪にしてしまおう」ダダダ スパ
僧侶「簡単に切れるですね?」
剣士「若いヤシの木は中身がスカスカなんだ…実だけ取ってあとは燃やすと良い」
剣士「葉の部分は束ねておけばベッドの代わりにもなる…ウルフの寝床にでもしよう」
『夜』
ヴヴヴヴヴ…ガガガ
ハンター「弓当てた!!行って」
僧侶「ほい!!」スタタ ブスリ
剣士「よし…穴に埋める」ズリズリ
ハンター「これで何体目?」
剣士「8体目…」
ハンター「全部体に損傷がある…死んだ後にゾンビにされているみたいだ」
剣士「うん…傷跡が深い…獣の類じゃないよ」
魔法使い「じゃぁやっぱりオークくらいしか考えられないね」
剣士「そうだね…オークが持ってる大斧とか大剣だとこういう傷になる」
ハンター「オークとは戦いたくないな…シン・リーンにバレると牢獄行きになる」
魔法使い「まだ私達に危害が及んで居ないじゃない?」
剣士「オークとの戦闘は避けるとしてどうしてグールがゾンビにされているかだよ…」
ハンター「オークは少人数で遺跡探索しているんじゃないかな?グールをゾンビにして不足分の戦力を補ってる」
僧侶「書物で読んだ事があるですけど…エルフは精霊信仰でオークは呪術に長けているらしいです」
剣士「呪術…オークシャーマンが居るという事だね?」
魔法使い「それで話が通るわ」
ハンター「でもどうして北の大陸のこんな辺境に来ているかだよね」
魔法使い「地図貸して」
ハンター「うん…」パサ
魔法使い「人間の生活圏を避けて東側から来ようと思えば来れそう…船使っての話だけど」
ハンター「ここから東はずっと荒野だ…荒野を歩いて来る物なのかな?」
剣士「気球で来てるのかも知れない…」
ハンター「オークが気球を使うのは聞いた事が無いよ」
剣士「それは昔の話で気球を使う人間を見られてたりするよね」
魔法使い「確かに…」
ハンター「そうだなぁ…ハテノ村での戦いの時も大人たちが気球使ってたっけ」
剣士「え!!?ハテノ村…」
ハンター「あれ?剣士は聞いて居なかった?僕たちは南の大陸のハテノ村から疎開して来たって…」
剣士「も…もしかして…君達はあの時の…」
僧侶「おろろ?剣士さんもハテノ村に居たですか?」
剣士「教会で遊んだ…僕の友達?」
魔法使い「えええ!!?あなた…白い毛皮の子?」
剣士「…」コクリ
ハンター「おおおおおおおお!!これを見て!!毛皮の子が置いて行った銀の小物」
僧侶「私もあるです…ほい」
剣士「ミスリルだ…余ったミスリルで作った玩具」
魔法使い「面影が無いのはもしかして変性魔法?」
剣士「ゴメン…姿を隠してた…変性魔法!」シュワワ
ハンター「アハハ昔のままだ…そのクリクリな眼」
魔法使い「これで納得…あの時の白い毛皮の子だったのね」
ハンター「そうだよ!君たちが置いて行った気球で村からみんな脱出出来たんだよ…村の人みんな助かった」
剣士「そうだったのか…でもまた会えて嬉しい」ウルウル
ハンター「こっちもだ…又会う日までって言ってそれっきりだった」
ハンター「僕の罠の作り方は君のお母さんから教えて貰ったんだよ」
魔法使い「でもどうして姿まで変えて居るの?」
剣士「ごめんそれは言えないんだ…勘弁して」
ハンター「まぁ事情があるんだね…もうちょっと話そうよ」
僧侶「剣士さんに興味が出て来たです…大きな気球の事とかみんな知りたいですよ」
魔法使い「そうそう…あのイルカみたいな気球…」
剣士「あれはね…ママが作った気球で飛空艇って呼んでいたんだ…」
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剣士「2人は赤毛にそばかすの子だった筈…変性魔法で少し変えてる?」
僧侶「バレたでしゅね…」
魔法使い「良いじゃない!そばかすを消すくらい」
剣士「でも変性してると魔法に制限が掛かっちゃう」
僧侶「元に戻すです…変性魔法!」シュワワ
剣士「うん!!そっちの方が自然で良い」
魔法使い「ハンターは昔の面影無いでしょ?」
剣士「全然ん気付かなかった…子供の頃はもっとふっくらした…」
ハンター「ハハ…背が伸びたら痩せたんだ…もうデブ扱いしないでよ」
魔法使い「剣士は全然変わって無い…」
ハンター「魔法使いの初恋相手は毛皮の子だったね」
僧侶「居なくなってからずっと元気が無かったです」
魔法使い「ちょっとぉ!!」
剣士「他の子達は?」
ハンター「うん…もう何処に行ったか分からない…繋がりあるのが3人だけだよ…あ4人か」
剣士「そうか…それで3人でハテノ村に帰ろうとしてるんだ」
魔法使い「他に行くアテも無いしね?あと誰か帰ってくるかもしれないし」
---そういえばホム姉ちゃんの居た遺跡---
---まだ何か色々残ってたなぁ---
---一回行って見るのも良いかな---
剣士「よし決めた!ハテノ村まで付き合うよ」
ハンター「そう言ってくれると助かる」
剣士「船を買うより先に気球が有った方が良い」
ハンター「気球で海を越える?そんな事出来る?」
剣士「あぁそっか…まず船か…先は長いね」
魔法使い「まずはお金ね…遺跡でお宝ゲットしてからじゃないと何も出来ないわ」
---まぁいっか---
---急がないでゆっくり旅しよう---
『深夜』
グルルル ウウウウ
ハンター「ウルフが警戒してる…」
剣士「うん…ハイエナに囲まれている」
ハンター「ゾンビの死肉狙いかな?」
剣士「多分そうだよ…30匹くらいだ」
ハンター「どうする?魔法使い達を起こすかい?」
剣士「いや…任せて」
ハンター「一人で?」
剣士「睡眠魔法で全部眠らせる…ロープに予備あったよね?」
ハンター「うん…ロープなんかどうする?」
剣士「掴まえて馬車を引かせる…ゾンビの死体処理にも良い」
ハンター「なるほど…」
剣士「合図したらロープ持って来て」
ハンター「分かった…」
剣士「ブツブツ…」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ
剣士「広範囲睡眠魔法!」モクモク
剣士「よし…もう一回」
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剣士「全部寝かせたからロープで縛って馬車に繋いで」タッタッタ
ハンター「分かった…」
剣士「ハイエナを近くまで引きずってくる」シュタタ
『翌朝』
ヴォエエエエ ワフ
ハイエナ「ガフガフ」ムシャムシャ ガブガブ
魔法使い「騒がしいと思ったら…こんなに沢山」
剣士「餌を条件にして馬車を引かせる事になった」
ハンター「馬は僕が乗るよ」
剣士「ゾンビの死体を片付ける手間も無くなって少し楽になる」
僧侶「ゾンビなんか食べさせて大丈夫ですかね?」
剣士「ハイエナは喜んでる様だよ」
ハンター「これだけ居ると馬よりも早いかもね」
剣士「そうだね…馬車は動いてしまえば大した重くないし」
ハンター「行先は僕が馬で先導する」
剣士「うん…ハイエナにそう伝える」
魔法使い「じゃぁそろそろ出発する?」
剣士「ハイエナ達の食事が終わってからね…先に馬車に乗っていてもらって良いよ」
ハンター「こんなにハイエナ連れて街には戻れないね…ハハ」
剣士「馬がやられるリスク減ったのは大きいと思うな」
ハンター「まぁそうだね」
『荒野』
ゴトゴト ゴトゴト
僧侶「また朽ちた馬車があるです」
剣士「ここはそういう場所なんだね…」
魔法使い「ハゲタカが後ろから付いて来るけど良いの?放って置いて?」
剣士「死肉狙いだから大丈夫…この馬車には襲って来ない」
僧侶「荒野でも意外と生き物が居るですね」
魔法使い「人間が住む環境では無さそう…水が全然無い」
剣士「ここは岩塩だらけで木が生え難いからだと思う」
僧侶「じゃぁ大昔は海の底だったのでしゅかね?」
剣士「どうなんだろう?何万年も昔はそうだったのかもね」
魔法使い「岩塩は氷結魔法の触媒だから沢山あって助かる」
剣士「魔結界の触媒にも使える…質の良いのが有れば変性させて使うのも良いね」
魔法使い「探してみる」
パカラッタ ヒヒ~ン ブルル
ハンター「前方にゾンビが彷徨ってる…戦闘準備!」
僧侶「はいな!!」ピョン
魔法使い「数は?」
ハンター「ちょっと多い…20体位居ると思う」
魔法使い「早速氷結魔法の出番ね…」
ハンター「僕の麻痺矢と合わせてゾンビの足を止めよう」
剣士「水は無駄使いしない様にね?」
魔法使い「分かってる!!」ピョン
ハンター「行こう!!」
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----------------
『夕暮れ前』
ガタゴト ガタゴト
ハンター「マズイな…何処にも草が生えて居ない」
剣士「洞穴でも良い」
僧侶「あそこはどうでしゅか?洞窟じゃなくて断崖に亀裂が入ってるです」
剣士「馬車が入れそうならそこでも良いかな」
ハンター「土が無いと方陣が組めないのでは?」
剣士「岩塩でなんとかする」
ハンター「分かった…走って馬に乗ってる魔法使いに伝えてくる」ピョン タッタッタ
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『断崖の亀裂』
ヒュゥゥゥ
魔法使い「向こうから風が通り抜けてきてる…」
剣士「ギリギリ馬車が入ったね…馬車が風よけになれそうだ」
ハンター「剣士!キャンプ跡がある…割と最近だ」
僧侶「どんぐりの殻が落ちてるです」
剣士「オークが使ったんだ…」
僧侶「方陣はどうするですか?」
剣士「僕がやる…魔法使い!岩塩をすこし貰うよ」ピョン シュタタ
魔法使い「え?ええ…何に使うのかな?」
剣士「変性魔法!」ドサ
剣士「よし…結構良い土になった」ウメウメ
剣士「成長魔法!」シュルシュル
魔法使い「岩塩を土に変性させたのか…さすが慣れてる」
剣士「魔法使い!馬にこの草を食べさせてあげて…あとフンは燃やすから焚火に入れておいて」
魔法使い「ええ!?私がフンの掃除?」
剣士「汚くないよ…それ全部草だから」
魔法使い「もう!…火炎魔法!」ボボボボ
剣士「その煙で虫を追い払えるんだ…方陣の代わりだよ」
僧侶「成長魔法は私も手伝うです」
剣士「助かる…はい種」パラパラ
剣士「馬はお腹が減ってる筈だから沢山作って」
僧侶「はいなー成長魔法!」シュルシュル
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メラメラ パチ
ハンター「休まないのかい?」
剣士「…」クンクン キョロ
ハンター「外のゾンビは全部退治した…まだ何か居そう?」
剣士「ここは危険かもしれない…多分断崖の上から監視されてる」
魔法使い「上?」
ハンター「オークか!!どうやって断崖の上に…」
魔法使い「きっと気球ね」
剣士「キャンプの煙に気付いたんだよ…仕掛けて来るのが心配だ」
僧侶「…それで魔結界を張ったのでしゅか?」
剣士「うん…オークシャーマンが居るなら呪術を警戒しないといけない」
魔法使い「上から石を落とされるのも心配ね」
剣士「今日は休めそうにないなぁ…」
ハンター「ハイエナは夜行性だからいっそのこと移動してしまおうか?」
剣士「そうだね…その方が気が休まる」
魔法使い「じゃぁみんな食事が済んだら行きましょ」
剣士「出立の準備をするよ」
『夜行』
ガラゴロ ガラゴロ
僧侶「明かりは無しでしゅか?」
剣士「ここに居ますよと言ってる様なものだから…目を慣らして?」
僧侶「我慢するです」
剣士「ハンターは馬で着いて来てる?」
魔法使い「大丈夫!一定距離で着いて来る」
僧侶「良く見たら月明かりで岩塩が光っているですね」
魔法使い「そうね…光の海を夜行しているみたい」
ワオーーーーン
剣士「来た!!僕がやるから馬車から出ないで」
魔法使い「馭者変わる…」スタ
剣士「僧侶…魔法使いを盾で守って」
僧侶「はいなー」
剣士「足音…3人だ」
パカラッ パカタッタ
ハンター「今の遠吠えは?」
剣士「敵が来る…僕が戦うからハンターは馬車の陰に隠れて」
ハンター「分かった…」グイ パカパカ
剣士「行く!!蠕虫!来い!」ザワザワ ピョン クルクル シュタ
僧侶「うわわわ…ワームの大群が…」
魔法使い「ちょ…あの黒い影全部虫?」
僧侶「剣士さん消えた…え?何処?」
魔法使い「右!!刀の残像!!」
僧侶「ええ?そっち?」
魔法使い「き…消えた?」
僧侶「虫の影が高速で動いてるです…」
魔法使い「光った…また刀の残像」
オークスカウト「ウゴ…ウュシッテ…レガサ」
オークレンジャー「イナャジノモダタ…ツイコ」
剣士「蠕虫!行け!」ザワザワ
オークファイター「ウゴゴ…ノコー!!」ブンブン
剣士「ハイディング!」スゥ
オークファイター「タエキ!!ダコド!!」
剣士「リリース!」スパ
オークファイター「ウゴゴ…ウゴウゴ」ズダダ
オークスカウト「レガサ!ダウュシッテ…レガサ!!」
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『暁の時』
ガラゴロ ガラゴロ
剣士「気配が無くなった…諦めたかな?」
僧侶「明るくなって来たです」
剣士「うん…相手も見られたく無いんだろうね」
僧侶「剣士さんの戦い方を見て驚きました…どうしてあんなに早く動けるですか?」
剣士「ゴメン秘密なんだ」
魔法使い「まるで悪魔か何かみたいだった…なんていうのかな神話の吸血鬼みたいな」
剣士「蟲の中に消える様に見えるんだね?」
魔法使い「そうそう…どうして?何の魔法?…って聞いても秘密かぁ」
剣士「オークと戦って分かった事がある」
魔法使い「装備が良いというのは見て分かったけれど…他に?」
剣士「どうも呪術で強化している…だからすごく強い」
僧侶「防御魔法の一種ですかね?」
剣士「うん…だから君達では太刀打ちできないんだ…もう戦いたくない」
魔法使い「向こうから襲って来るのは理由があると思う」
剣士「遺跡に近付けたくないんだろうさ…言葉が通じれば戦わないで済むかもしれないけど…」
魔法使い「ここまで来て引き返せないでしょ?」
剣士「うーん…君達に怪我させたくないんだよ」
僧侶「私はまだ盲目魔法があるです…広範囲で無詠唱なのです」
剣士「盲目ねぇ…オークに効くのかな?」
僧侶「剣士さんを巻き込んでしまうと思って撃てなかったです」
剣士「僕は目が見えなくても平気だよ…じゃぁ次戦う時は使ってみて」
僧侶「はいなー!」
魔法使い「暁の時よ…岩塩が反射して一面赤い…」
剣士「虹だ…」
パカラッ パカラッタ
ハンター「見て!!虹!!…暁の虹だ!!」
剣士「…」---どこかで聞いた事が有る----
闇が晴れ光が挿す時に虹が現る
暁の使徒…
もう歴史から忘れ去られた彼らは
光の使徒に違いない
僧侶「あ…もう虹が消えたです」
ハンター「一瞬だけだったね」
剣士「光…塩…そうか浄化だ…これは浄化の効果がある」
魔法使い「え?どうしたの急に…」
剣士「君が集めた岩塩で浄化の作用が期待できる…貸して」
魔法使い「急にどうした訳?はい…」
剣士「照明魔法!!」ピカー
僧侶「暁色に光るですね…」ウットリ
ハンター「良い光源になりそうだ」
剣士「どうして岩塩ばかりの地に遺跡があるのか?…きっと浄化を作用させた神聖な場所なんだよ」
魔法使い「浄化って…呪いを解くとかそういうの?」
剣士「うん…多分そういう場所だと思う…ほら暁の虹を見て皆心が動いたでしょ?」
魔法使い「そういえばなんとなく清らな感じね…」
剣士「だから遺跡は岩塩の下だよ…そこに光が入る」
僧侶「この光る岩塩から虹が出るのでしゅか?」
剣士「そうかもね…見てると不思議と見入ってしまう」
そう
ミスリルの音と同じ
鎮魂の光だ
光ある限りこの地は憎悪に満たされない
『昼』
ヒュゥゥゥ
ハンター「少し休憩しよう…ハイエナ達が疲れて来ている」
剣士「草木が一本も無いね」
ハンター「夜行したお陰で随分進んだよ…今この辺りだ」
魔法使い「例のアーチ状の岩場まであとちょっとじゃない」
ハンター「上手く見つけられれば良いけどね…それより問題は今晩をどう過ごすかだよ」
剣士「ゆうべのオークは多分斥候だよ…見当たらない所を見ると僕達を見失った可能性が高いけど」
ハンター「斥候で僕達の戦力を確かめた感じかな?」
剣士「多分ね…オークって賢いからさ」
魔法使い「じゃぁもう襲って来ないかも知れないね」
剣士「そうだと良いけど…オークシャーマンがどうしても怖いな」
僧侶「私に案があるです」
剣士「何?」
僧侶「岩塩に反射魔法を掛けるです…それを使って魔方陣を組むです」
剣士「お?反射魔法の魔方陣にするのか…良さそうだ」
僧侶「呪術にどんな術があるのか分かりませんが反射出来ると思うです」
ハンター「…という事は物理で対処すれば良い訳だね?」
剣士「罠が有れば尚良いね…こっちは蟲も使える」
魔法使い「皆光魔法が使えて良かったわ」
ハンター「じゃぁキャンプは問題無いね?…2時間くらい休憩したら暁の門を探そう」
『暁の門』
ヒュゥゥゥ
ハンター「日暮れに間に合った…ここでキャンプしよう」
僧侶「目立つ石ですね…」
ハンター「あの旅人の言った通りだった…これに間違いないよ」
魔法使い「僧侶!反射魔法掛けるの手伝って!反射魔法!」シュワワ
僧侶「岩塩砕いて小さくしたのですね…反射魔法!」シュワワ
剣士「変性魔法!…触媒の砂銀はコレ使って」
僧侶「岩塩を砂銀に変えたですか…全部岩塩で出来るですね」
剣士「魔方陣の外にある岩塩に照明魔法掛けて来るよ」
ハンター「イイね…遠くが見えるなら僕の弓も使える」
剣士「どうせ焚火の炎で居場所知られちゃうしね…見える様にしておいた方が対処しやすい」
僧侶「魔方陣を組むのはお任せください」
ハンター「やっぱり魔法使いが3人も居ると何とでもなるもんだね…」
魔法使い「無駄口叩いて無いで罠張ってきてよ」
ハンター「ハハ行って来る」タッタッタ
『夜』
キラキラ
僧侶「光る岩塩が綺麗でしゅねぇ…」
魔法使い「随分遠くまで照明魔法掛けて来たのね?」
剣士「出来るだけ早く敵を発見したいからね」
ハンター「ふぅぅぅ今日は疲れたなぁ…」ドタリ
剣士「少し寝てても良いよ」
ハンター「うん…」
魔法使い「なんか今日はもうゾンビ出なさそう…」
剣士「やっぱりそう思う?なんか不思議だよね…この光」
僧侶「ハイエナ達もお休みですね」
剣士「…そうだ光の石だとどうなるんだろ」ゴソゴソ
魔法使い「まだ岩塩を光らせるの?もう反射魔法の方陣の中よ?」
剣士「大丈夫…魔法じゃ無いから」ゴリゴリ
僧侶「岩塩をくり抜いて…何かいれるですね?」
剣士「驚かないでね…」ピカー
魔法使い「うわ!!何それ…眩しい」
剣士「これを岩塩の中に入れる…」
魔法使い「凄いじゃないソレ何?」
剣士「光の石っていう物なんだ…ふむふむ柔らかい光に変わる」
魔法使い「ちょっと明るすぎよ!」
剣士「そうだね…このまま荷物袋に入れておく」クンクン
剣士「あれ?もしかして空気を浄化する効果もあるのかな?」
僧侶「何か変わったですかね?」
剣士「知らなかった…岩塩にこんな効果があるなんて」
魔法使い「シン・リーンの魔術師達にこの岩塩は売れるかもね」
僧侶「そうでしゅね…沢山あるから持って帰るです」
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僧侶「…」コックリ コックリ
魔法使い「すぅ…」スヤ
剣士「…」
よく考えて見たら
僕がオークの立場だったこんなに沢山の光を準備されて
いつでも来てくださいという場所に行こうなんて思わないな
やっぱりオークは賢い…
『早朝』
ヒュゥゥゥ
ハンター「はっ…」ガバ
剣士「疲れは取れたかい?」
ハンター「オークは来ていない?」
剣士「うん…」
ハンター「日の出は?」
剣士「もう少しだよ…暁の空だ」
ハンター「目覚め草を焚くよ…」バサ モクモク
魔法使い「ぅぅん…」パチ
僧侶「ふが?」パチ
ハンター「起きたね?」
魔法使い「魔物は来なかったみたい?」ゴシゴシ
剣士「うん…もう少しで夜明けだよ」
僧侶「もう岩塩が赤く光ってるですね」
剣士「そうだね…あそこの一番濃く光っているところだよ…きっと」
ハンター「岩塩の丘陵の下か…あそこまでなら1時間もあれば着く」
魔法使い「光が…日の出よ」
ハンター「他に怪しい場所は無いかい?」キョロ
僧侶「暁の虹でし…」
剣士「やっぱりあそこが一番光るね…間違いないよ」
ハンター「よし!準備しよう」ゴソゴソ
魔法使い「虹は直ぐに消えて無くなるのね…」
剣士「そうだね…明るくなると岩塩が光るのも直ぐに分からなくなる…上手く隠しているね」
ハンター「長居はしたく無いから早く行こう…馬車に乗って!」
僧侶「はいなー」
『暁の遺跡』
ヴヴヴヴヴ ウガガガ
僧侶「えい!」ブスリ
ハンター「よし…入り口はこれで最後だ」
剣士「ハイエナを解放して馬車を守らせよう」
ハンター「馬は大丈夫かな?」
剣士「馬はウルフが守ってくれる」
ハンター「分かった…ハイエナを放してくる」タッタッタ
僧侶「ここは岩塩で出来た洞窟になってるですね」
剣士「足場が脆いから落ちない様に気を付けて」
魔法使い「下の方にもゾンビの声がする…」
剣士「うん…グールは追い払われたか全部ゾンビにされたんだろうね」
ハンター「おっけ!!ハイエナ解放して来た」
剣士「じゃぁ行こうか…僕が先行する…ハンターは最後に付いて来て」
ハンター「うん!!」
『遺跡の入り口』
剣士「はぁ!!」ダダ スパスパ
魔法使い「入り口見つけた…これね?」
僧侶「天井が全部岩塩ですね」
剣士「明るくて良かった…まずゾンビを全部処理しよう」
ハンター「いつも通り!!」ギリリ シュン
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剣士「中は散らかってる…」
ハンター「随分オークに荒らされた様だね…お宝は希望薄いなぁ…」
魔法使い「見て…ミイラが沢山」
ハンター「石棺から出されたんだね…調べてみよう」
僧侶「あっちにもあるです」
ハンター「なにかあったら教えて」
剣士「この遺跡はいつの時代の遺跡なんだろう?」
ハンター「どうして?」
剣士「見た事の無い遺跡だから…」
僧侶「ミイラは全部顔の包帯が解かれているです」
ハンター「特定のミイラを探している感じか…埋葬品とか何か残って無い?」
僧侶「宝石とか装飾品が残ってるです」
ハンター「え!!オークは盗掘しに来てる訳じゃ無い?」
魔法使い「持って帰りましょ」
ハンター「これは期待大だ!!もっと探そう」
魔法使い「この小さいミイラは子供?…あれ?耳が長い」
剣士「え?まさかノーム?」
魔法使い「ノーム?…それってすごい昔よね?」
剣士「3000年以上前だ…見せて」
魔法使い「これよ?お人形さんより小さい」
剣士「ノームは小人だったんだ…」
ハンター「あ!!奥に扉がある…」
剣士「見た事無い扉だ…開けられそうかな?」
ハンター「鍵開けやってみる…皆は探索してて」
----------------
----------------
----------------
『1時間後』
タッタッタ
魔法使い「こっちは宝石類が袋一杯…ミイラは全部石棺から出されてた」
僧侶「こっちも同じくらいでし」
魔法使い「お宝はこれで十分ね」
剣士「…」ジー
魔法使い「剣士は何を?」
剣士「石板を見てた」
魔法使い「読めるの?」
剣士「読めない…でもホラ?画が彫ってある」
僧侶「何か分かるですか?」
剣士「うーん…暁の使徒の事だと思うんだけど…画だけだと分からないなぁ」
魔法使い「ハンター!?扉が開かないならもう戻りましょ」
ハンター「もう少し…やっと鍵の構造が分かった所なんだ」ガサガサ
魔法使い「こんな石の扉なんか簡単に開く訳無いじゃない…」
ズズ
ハンター「良し押さえた!!扉がこれで回転する筈だ…押してみて」
剣士「ここ?」
ハンター「もう少し左…そうソコ」
剣士「ふん!!」ズズ
魔法使い「お?」
剣士「重い…手伝って」
僧侶「ほいほい…」
剣士「せーのっ!!」ズズズ
魔法使い「おぉ!!」
ハンター「魔法使いも押して」
魔法使い「はいはい…」
剣士「行くよ?せーのっ!!」ズズズズ
ハンター「よし!!一人づつ入れる」
剣士「僕が先に行く…付いて来て」スタ
『遺跡の奥』
シーン
剣士「壁画だ…これはシン・リーンと同じ」
ハンター「ここは誰にも手を付けられていない…手分けして探索だ」
魔法使い「もう袋一杯なんだけど…」
ハンター「書物とかそういうのが高価だ…探して」
剣士「…」
こんな所にも勇者と魔王の事が記されている
シン・リーンの遺跡よりも古い伝説だ…
暁の使徒はこれを守って居たのか
すごい…ドリアードが虫で滅んだ壁画もある
そして勇者の他に虫を持った人も書かれてる
行き先は…行き先はどこだ?
始まりは何処なんだ?
魔法使い「ん?何か甘い匂いが…」
僧侶「そうでしゅね…」フラ
剣士「甘い匂い…しまった!!睡眠魔法だ!!」ダダ
ハンター「え!?誰か来た?」フラ
剣士「これは睡眠魔法だ…皆起きて!!」
魔法使い「何言ってるの?」フラ
ウゴウゴ ドドドド
剣士「くそう!!ハイディング!」スゥ
女オーク「ロエラト!!」
オークファイター「ロセカマ…」ドスドス
オークシャーマン「イナリタリトヒ…タッイニコド?」
剣士「リリース!」スゥ チャキリ
オークシャーマン「ウゴ?」ギク
剣士「動くな…首が飛ぶ」
シュン グサ
剣士「はぅっ…」ブン ザクリ
オークシャーマン「ウガァーーーウゴウゴ」ブシュー
剣士「くそぅ!!麻痺毒か…線虫!」ザワザワ ニョロリ
女オーク「タァァァァ!!」ブン ガキーン
剣士「解毒まで凌ぐ…」
女オーク「ハァ!!」ブンブン
キーン キーン ガキーン
剣士「剣圧が重い…」タジ
女オーク「ハッ…エマオ…」タジ
剣士「ふぅ…ふぅ…」---落ち着け---
オークシャーマン「メスメライズ!」モクモク
剣士「無詠唱か…」フラ
剣士「…」---ウルフが反応しなかったのはこれか---
------------------
------------------
------------------
『夢』
僕「君は怪我してない?」
君「ウガ…」
僕「手?見せて?」
君「ウゴウゴ…」
僕「豆が潰れたのか…あの剣重すぎだしね…治してあげる…回復魔法!」ボワー
君「ウトガリア…」
僕「ありがとうって意味?」
君「ルゲアリグンド」
僕「ん?どんぐりくれるの?」
君「…」カリ モグ
僕「僕らの携帯食料だね」カリ モグ
--------------
僕「…これで全部だよ?大事に食べてね?」
君「…」ジー
僕「君が食べられるもの全部持ってきたよ…大変だったんだよ?ここまで持ってくるの」
君「…」ジー
僕「良かったね?みんな助かってさ?」
君「…」ジー
僕「これ君にあげようと思って持って来たんだ…角で作ったアクセサリーだよ…あげる」カランカラン
君「…」ジー
僕「あと君のコバルトの剣…これは君の物だから隠しておいて?みんなにバレない様にね」スッ
君「…」ジロリ
僕「じゃぁ僕そろそろ行くね」スック
君「ウゴ…」
僕「死んだらダメだよ?ちゃんと生きるんだよ?」
君「ンゴ…」
僕「じゃぁ…さよなら」ノ
君「ウゴ…」ガチャン
君「ウゴ…ウゴ…ゥゥゥ」ズル
『暁の墓所』
コバルトの剣…
剣士「ハッ…ウムムム」
剣士「…」---目隠し---
手足が縛られている
詠唱出来ない様に口も塞がれてる
剣士「…」クンクン
まだ遺跡の中だ
オークは2人…
良かったハンター達も一緒に縛られてる
まだ寝てるな?
さてどうする…
ツカツカツカ
女オーク「お前…目覚めた…お前…宝沢山…お前だけ…連れて行く」
剣士「フムムム…ムムム」
女オーク「お前…仲間…安心しろ…乗り物…乗せられない…置いて行く」
剣士「…」---助けるという事か---
女オーク「私…お前…探す…やっと…見つけた…お前…私と来る」
剣士「フム?」---コバルトの剣…君か?---
女オーク「私…お前の…子供産む…決めた事…どんぐり…要るか?」
剣士「んんんん…」バタバタ
女オーク「…」パキ グイ
剣士「…」モグ
オークの子…君だったか
変な再会だけど
会いたかったんだ
女オーク「オークシャーマン…お前の…刀…盗む…アイツ…悪いオーク…私…取り返す」
女オーク「私…お前…作る物…大切に…持つ…私の宝…お前の刀…お前の宝」
剣士「フフ…」---人間の言葉勉強したんだ---
女オーク「私要る…お前安心」
ここから西に引き返せば林を抜けてシン・リーンだ
ハンター達3人なら戻れる筈
城に戻ればこの遺跡の状況を魔女が知る筈
只僕の事を秘密にするだろうな…まてよ
もう魔女はこの状況を千里眼で見てるかもしれないな
よし…事態は好転しそうだ
ここはオークに身を委ねよう
---------------
---------------
---------------
『シン・リーン城』
魔女「近衛!今すぐにシャ・バクダへ伝令を飛ばすのじゃ…情報屋という者を直ぐに連れ戻せ」
近衛「ハッ!!」
魔女「一番早い気球で行かせるのじゃ…良いな?」
近衛「御意!!」ダダ
魔女「母上…魔術師団を連れてちと暁の墓所へ行かねばならん」
女王「何事ですか?」
魔女「墓所が荒らされて居る様じゃ…そしてわらわの弟子がエライ物を発見しておる」
女王「かの地に足を踏み入れてはいけないとの時の王卿との約束はどうなりますか?」
魔女「荒らされてしもうた後じゃ…そのような事を言って居る場合では無いのじゃ…時の王は既に亡くなって居るしのぅ」
女王「分かりました…許可しましょう」
魔女「歴史が覆る発見やも知れぬ…時の王はこれを知って居ったのじゃろうか?」
女王「さぁ?どうでしょう?」
魔女「うむぅ…暁の使徒か…もうちっと時の王の話を聞いておくべきじゃったな…しもうたわい」
女王「いつ出立しますか?」
魔女「今すぐじゃな…どうやら弟子が困って居る」
女王「近衛を連れて行きなさい…あなたにも危険が及んではいけません」
魔女「わらわは大丈夫なのじゃが…まぁ良い…身の回りの世話係じゃな?」
女王「そろそろ国の事を考えて貰わないと困るのです」
魔女「まだまだ先じゃ…母上はまだ30年は生きるで考えるのはその時で良い」
女王「困った子ですねぇ…」
魔女「うるさいのぅ…もう行くで弟子の連れが城に来たらよろしく頼む…墓所の掃除をした様じゃで」
女王「分かりました…褒美を用意しておきます」
魔女「では行って来るでのぅ…」ノソノソ
『暁の墓所』
シーン
魔法使い「ハッ…」パチ キョロ
僧侶「むにゃ…」スヤ
魔法使い「寝てた…どういう事?僧侶!!起きて?」ユサユサ
僧侶「んん?」パチ
魔法使い「ハンターも起きて!!」ペシペシ
僧侶「これは一体…」
ハンター「んぁぁぁ…」ガバ
魔法使い「剣士が居ない…」キョロ
ハンター「どうなってる?」ゴシゴシ
僧侶「皆眠ってたみたいでしゅ」
魔法使い「血痕…」
ハンター「あああああああ!!石棺が開けられてる…中身が無い!」
魔法使い「え?え?寝かされてる間に…オークの仕業?」
ハンター「剣士は?剣士は何処行った?」
僧侶「剣士さんの持ち物が落ちてるです…種と触媒…あといろんな道具」
ハンター「置いて行くのは考えられない…掴まったか」
魔法使い「どうして私達は無事なの?宝石も袋にある…」
ハンター「この血痕…結構時間が経ってる…4~5時間前だ」
僧侶「どんぐりの殻も落ちてるです…オークに間違いないです」
ハンター「マズイな…もうここは出て馬車を見に行こう」
魔法使い「剣士どうするの?」
ハンター「荷物を置いてるという事は掴まったと見た方が良い…僕達は見逃された」
僧侶「こんな時に千里眼が使えれば…」
魔法使い「塔の魔女の魔法ね?」
ハンター「あ!!血痕が外に続いてる…」
魔法使い「え…行きましょ」タッタッタ
『遺跡の外』
ヒュゥゥゥゥ
ハンター「馬車は無事だ…ハイエナは皆寝てる」
魔法使い「馬もウルフもまだ寝てる…やっぱりオークシャーマンにやられたね」
僧侶「血痕がそこで無くなってるです」
ハンター「ここで気球に乗ったのか…」
魔法使い「3人…戻れるかな?」
ハンター「今はまだ昼か…西に行けば明日には林に戻れる」
僧侶「オークが居ないなら3人で戻れそうですね」
ハンター「くそう…剣士が心配だ」
魔法使い「塔の魔女に相談しましょ…」
僧侶「そうですね…それが良さそうです」
ハンター「剣士が居ないとハイエナとウルフが言う事聞くか分からない…馬を繋ぐ」
魔法使い「早く行かないとハイエナ起きちゃいそう…」
ハンター「うん!急いで出立しよう…もう乗って」
『馬車』
ガタゴト ガタゴト
ハンター「僕は馭者で手が離せないからゾンビが来たら2人で行けるね?」
僧侶「大丈夫でし」
ハンター「林まで行ったら次はゴブリンとかだな…」
魔法使い「馬は手綱引かなくても歩くからあなたは馬車から弓で援護」
ハンター「そうか餌と水があれば言う事聞くのか…なんとかなりそうだな」
魔法使い「何とかするしかないでしょ…こんなに宝石持ったままやられるなんて嫌」
ハンター「そうだそうだ…お宝はどれくらいある?」
僧侶「宝石と金貨が袋2つ分でし」
魔法使い「これ古代金貨よね?」
ハンター「冷静に考えてスゴイ収穫だ…岩塩も一杯あるし」
魔法使い「剣士の荷物袋には何が?」
僧侶「種が一杯と…ん?これ爆弾かな?…それから銀製のナイフ…あれ?この金属何だろう?」
魔法使い「見せて?私達が持ってる玩具と同じね…きっとミスリル製よ」
ハンター「剣士の細工用の道具だね」
僧侶「あと骨とかキノコとか…」
ハンター「その荷物は大事に取っておこう」
僧侶「種だけあとで使うです」
ハンター「あー馬の餌とか虫の方陣ね」
魔法使い「剣士との接点がハテノ村しか無い…もう会えない気がする」
ハンター「いや…塔の魔女にお願いして千里眼を使ってもらう」
魔法使い「ハッそうね…そうしよう」
ハンター「兎に角まずシン・リーンに帰るんだ」
僧侶「戦いに慣れて来たです…きっと帰れます」
魔法使い「うん…帰ろう」
--------------
--------------
--------------
『荒野』
ヒュゥゥゥ
僧侶「あそこに草が生えてるです!!」
ハンター「ほっ…もう馬が限界だ…そこで休もう」
魔法使い「夜通しの移動で私達も少し仮眠を取った方が良い」
僧侶「虫の方陣お任せください」ズイ
ガタゴト ヒヒ~ン ブルル
ハンター「馬に水と餌を…よっこら」ヨッコラ
魔法使い「水は樽ごとあげるの?」
ハンター「うん…樽の水は全部馬専用だよ…僕達はヤシの実がある」
僧侶「成長魔法!」シュルシュルリ
ハンター「今までお疲れさん…さぁ水だよ?お飲み」
魔法使い「馬の締結外すよ?」グイグイ
ヒヒ~ン ブルル ゴクゴク ジャブジャブ
ハンター「よっぽど喉が渇いて居たね…この草刈って行くよ」
僧侶「一杯育てるので沢山食べさせてくだしゃい…成長魔法!」シュルリ
魔法使い「この調子だと水がギリギリね」
ハンター「うん…林に入って川か湖があれば良いけど」
魔法使い「地図には川も湖も無いわ…この林は林道も無さそう」
ハンター「ヤシの木は育てられない?」
僧侶「どれがヤシの種なのか分からないのです」
魔法使い「あ…アロエなら収穫したのがそのままある…植え付けが出来るかもしれない」
僧侶「それ下さい…成長させてみるです」
ハンター「アロエを齧って水分補給か…仕方ないか」
-----------------
アオーーーーーン
魔法使い「ウルフが追って来てるわ…」
ハンター「これ以上近づいて来ないね…あれに襲われたくは無いなぁ」
魔法使い「ウルフも喉が渇いてると思う…ハイエナと違ってゾンビも食べて無かったし」
ハンター「腹を空かせているか…」
魔法使い「シカの燻製は私達には多すぎるから降ろして行かない?…あと水も少し」
ハンター「ふむ…それ良いね…荷は軽い方が林を行きやすい」
ヒヒ~ン ブルル
ハンター「馬が起きた…寝たのは3時間て所か…」
魔法使い「移動しましょ…林の近くに行けばまた休憩出来る所あるでしょ?」
ハンター「うん…シカの燻製と水を降ろしたら出立しよう」
魔法使い「僧侶はどうする?起こす?」
ハンター「うん…次は君が休みな」
----------------
ヒヒ~ン ガタゴト ガタゴト
ハンター「ウルフの様子はどう?」
魔法使い「フフ私達が置いて行ったシカ肉を食べて居るわ」
ハンター「襲わないで欲しいって伝わっただろうか…」
魔法使い「そう信じましょ…ふぁ~ぁ」ショボン
僧侶「魔法使いさん…もう寝ても良いでし」
魔法使い「うん…ちょっと仮眠」
僧侶「今地図でどの辺りでしゅか?」
ハンター「あー持って来て…えーと…ここら辺」
僧侶「日没まで後4時間くらい…」
ハンター「ギリギリ林に到達するかどうかだね…まぁ草が生えてるだろうからキャンプは心配していない」
僧侶「馬用の水をどうにかしたいですね」
ハンター「うん…」
僧侶「アロエのトゲだけ処理して食べませんかね?」
ハンター「アロエを食べさせるのは聞いた事無いけど…あげて見たら?」
僧侶「沢山あるのでトゲだけ処理しておくです」
ハンター「うん任せた…」
---------------
---------------
---------------
『蛮族船_牢』
ザブン ギシギシ
女1「あなた…男よね?どうしてオークが男を捕らえてるの?」
女2「見てこの子…まだ若い」
女3「あんたどこで掴まったのさ?」
剣士「あぁ…困ったな」---女の人ばかり捕らえられてる---
女1「ふ~ん…あなたハーフエルフね?その顔立ち」
剣士「いや違うよ…皆はどうして捕らえられて居るの?」
女2「オークの性奴隷よ…子供を産ませられる」
剣士「北の大陸まで人間狩りに来てるのか…」
女3「ねぇ女のオークも人間の男を奴隷にするのかな?」
女1「さぁどうかな?」
女2「言葉が全然通じないのがねぇ…」
女1「少し話せるオークも居るみたい…昨夜のオークはやさしく話してくれた」
女2「え?本当?」
女1「片言で俺…人間の女…好き…大事とか言ってたの」
女3「アイツ等意外と綺麗好きだよね?ちゃんと体洗ってくれたし…食べ物もくれるし」
剣士「僕はどうなるんだろう…」
女1「…」ジー
女3「あんた多分女のオークのおもちゃにされるよ」
剣士「おもちゃ…」
女2「女のオーク結構居るよね?しかも地位が高そう」
ガチャリ ギー
女1「来た…」
剣士「君か?オークの子…君だね?」
女オーク「…」スタスタ
剣士「無事でよかった…心配していたんだ…僕より大きくなったね」ガチャ
女オーク「お前出る」カチャリ ギー
剣士「出してくれるんだね?」スタ
女オーク「オークシャーマンお前呼んでる…私に付いて来い」ガチャリ
剣士「え!?オークシャーマンが?」
女オーク「お前の刀で切った傷治らない…オークシャーマン力失う」
剣士「治らない?」---インドラの光に焼かれてるのか---
女オーク「お前オークシャーマン治す…治せない殺される…私悲しむお前私の物」
剣士「ハハ君は直球だね…」
女オーク「来い…」グイ
剣士「…」---手があったかい---
ヒソヒソ ヒソヒソ
聞いた今の?やっぱりオークの奴隷だね
どうしよう?このままじゃ逃げられない
もう海の上よ…何処にも逃げられないわ
『族長室』
ウゴゴ ガフガフ
女オーク「タキテレツヲンゲンニノイレ」
オークシャーマン「ハァハァ…ダノルセカトヲイロノノチグヅキ」
女オーク「お前…オークシャーマン治す」
剣士「首が皮一枚で繋がってるのか…良く生きてる」
インドラの光で焼かれた場合は蘇生魔法で治すしか無い
今は触媒も無いし魔方陣も無い
どうする?線虫ならゆっくり治せるか…
剣士「植物の種が欲しい…有るかな?」
女オーク「種?どんぐりか?」
剣士「あぁどんぐりでも良いや…沢山欲しい」
女オーク「お前ここで待つ…私持ってくる」スタ
ガチャリ バタン
剣士「なんか君達不用心だね…僕と傷付いたオークシャーマン2人にして良いのかな?」---割と可愛いオークだ---
オークシャーマン(黙れ人間…無礼にも程がある)ウゴウゴ
剣士「え!!?…これは念話…」
オークシャーマン(我は西オーク族長オークシャーマンなるぞ)
剣士「あ…えーとオークの事は何も知らないんだ…皆同じに見える」
オークシャーマン(ごふっ…兎も角我の傷を癒せ…命令だ…さもなくば呪怨を施す)
剣士「呪怨?何だそれ?」
ガチャリ バタン
女オーク「どんぐり沢山ある…お前使え」ドサー バラバラ
剣士「これだけあれば良いか…線虫!」ザワザワ ニョロロ
オークシャーマン(何をする気か?)
剣士「この蟲が傷を癒してくれる…大人しくしておいて?」
ザワザワ ニョロニョロ
剣士「治り方はゆっくりだよ…でも少しづつ傷が無くなって行くから心配しないで」
オークシャーマン「ハァハァ…」ウゴゴ
女オーク「ウョチクゾ…リオドクソクヤ…スマシニイレドノシタワヲンゲンニノコ」
オークシャーマン「ナニキツカアタレサヤイ」
女オーク「ハデ…スマシイレツシ」
女オーク「お前来い…」グイ
剣士「あ…残りのどんぐり…」
ガチャリ バタン
『デッキ』
剣士「ちょちょ…どんぐりが」ヨロ
女オーク「…」グイ
ドシン!
剣士「おっとっと…」ギュゥ
女オーク「…」
剣士「君すごい体ががっちりした感じになったね」
女オーク「私…お前ずっと探した…やっと見つけた」
剣士「又会えて良かったよ…あれ?まだ軍隊ガニの装備身に着けて居たんだね…もう小さいじゃないか」
女オーク「私の宝…この飾りも宝」ジャラリ
剣士「アハ…僕が作った骨のアクセサリーだ…大事にしてくれて嬉しいよ」
女オーク「お前もう自由…私に付いて来るお前守る」
剣士「えーと…僕の名前は剣士だ」
女オーク「剣士…」
剣士「君は何て呼べば良い?もうオークの子じゃないよね」
女オーク「私は女オーク…戦士だ」
剣士「おっけ!!女オークね」
女オーク「剣士付いて来い…私の部屋行く」
剣士「お?何か見せてくれるのかな?」ワクワク
女オーク「手を放すな…」グイ
剣士「フフなんか昔と立場逆になったね…付いて行くよ」
『個室』
ウゴウゴ ウゴゴ
剣士「へぇ?オークの船ってこんな風になってるんだ…」
女オーク「ここが私の部屋…」
剣士「部屋?あぁ…どういう風に仕切ってるのか分かんないけど他のオークの女の人も一緒なんだね」
女オーク「剣士…横になる」
剣士「ん?うん…結構綺麗にしてあるけど殺風景だね」
女オーク「…」スルリ ドサ
剣士「ちょ…どういう事?」
女オーク「剣士…私の処女奪う」
剣士「え!?そんな聞いてない」ドギマギ
女オーク「オークの女みんな…処女はオークシャーマン逆らえない…そういう呪い」
剣士「オークのしきたりかな?」
女オーク「人間の子供産むだけ許される…処女無くすオークシャーマン呪い解ける」
剣士「…」
なるほど…オークシャーマンの絶対王政なのか
女オーク「私…お前の子供産む決めた…処女お前が奪う…私自由なる」
剣士「えーーっと…急にそう言われても…ほら他の人も見てるじゃない?」
女オーク「私…お前好き…他の人間要らない…お前だけ許す」
剣士「いや…そんなに急がなくても…」
女オーク「オークシャーマン寝ている今だけ出来る…私を奪え」ゴソ クチュ
剣士「あ…ちょ…」
女オーク「…」クチュ ジュボ
剣士「牙が少し当たる…」
女オーク「痛いか?」
剣士「大丈夫…」---えーいここまで来たら---
女オーク「お前とこうする…何度も夢見た」
剣士「おいで…だっこしよう」ギュゥゥ
女オーク「私を奪え…もっと奪え…」
----------------
----------------
----------------
ギュゥゥゥ
剣士「うぅぅ…あのさぁ…ちょっと立場が逆なんだよ…僕が抱っこするから」
女オーク「…こうか?」シナー
剣士「力抜いてね?」ギュゥゥ
女オーク「ぅ…」ピクッ
剣士「力抜いてって!!」ギュゥゥ
女オーク「…」ビク ビク
剣士「フフ君可愛いね…がっちりしてるのに」
女オーク「はぁはぁ…」クター
剣士「抱っこで気持ち良くなるんだ…それ!」ギュゥゥゥ
女オーク「うっ…」ピクッ
剣士「他の人いっぱいなのに…オークってこういう文化なの?…」
女オーク「次は私が下に…」
剣士「おっけ!力抜いてね?」グイ
女オーク「くは…」ビクン
剣士「目は閉じないでちゃんと見ててよ」
女オーク「我慢…出来ない」ギュゥゥゥ
剣士「イテテ…力抜いて」
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エルフは瞑想で語らえる
ドワーフは技で語らえる
オークは体で語らう
こんなに通じ合ったのは初めてだ
言葉が無くても君の生い立ち…気持ち
どうして欲しいのか全部分かる
『賢者タイム』
分かって来た
オークはアリと同じ様な文化なんだ
オークシャーマンは女王アリ
ローヤルゼリーを与えられた特別なオークだけがオークシャーマンになれる
そして女のオークは働きアリ
男のオークは子孫を残す女王アリの駒
女のオークは子供を産まない限り一生働きアリとして過ごす
子を宿したオークは新しいコロニーを作るために自由になる
君は理由があって自由を求めたんだろう?
その理由って何なんだろう?
僕を求めただけじゃないよね?
女オーク「…」
剣士「…」ニコ
女オーク「…」ススス
剣士「…」ギュゥ
女オーク「…」ピト
剣士「うーん…筋肉を感じる」
女オーク「筋肉?」
剣士「君の体からすごい熱量の筋肉を感じる」
女オーク「フフ嫌いか?」
剣士「お?初めて笑ったね?」
女オーク「…」ジー
剣士「笑って居た方が可愛いよ」
女オーク「フフ…」ピト
剣士「君暖かいなぁ…筋肉が多いからかなぁ」
---------------
---------------
---------------
『シン・リーン』
ガタゴト ガタゴト
ハンター「ふぅぅぅぅやっと帰って来れた…ここまで来たらもう大丈夫」
魔法使い「やったわね…」
僧侶「やっとベッドで寝られるでし」
ハンター「ちょっと手分けしよう…僕は荷物を一旦ルイーダの酒場に預けて来る」
ハンター「その間魔法使いは城に行って遺跡の事を報告してきてほしい」
ハンター「僧侶は宿屋の確保をお願い…日が落ちるまでにルイーダの酒場に集合しよう」
僧侶「はいなー!!」
魔法使い「塔の魔女はどうする?」
ハンター「明日行って見よう…もし城の方に居たら話しておいて貰えると助かる」
魔法使い「分かったわ…」
僧侶「私は今一文無しでしゅ…宿屋確保するのにお金が欲しいです」
ハンター「何か一つ装飾品売ろうか…僧侶出来る?」
僧侶「一個で良いですね?」
ハンター「うん無駄使いはしない様にしよう…」
魔法使い「そうだ…私は岩塩を魔術師に押し売りしてみる」
ハンター「イイね小金稼ぎに丁度良い」
魔法使い「じゃ持って行くね」ピョン タッタッタ
僧侶「一個首飾りを持ってくです」ピョン タッタッタ
ハンター「ふぅ…やっぱりこの安全を作ってるのはスゴイ事なんだな…」
『ルイーダの酒場』
ガヤガヤ ガヤガヤ
受付「ようこそ冒険者ギルドへ!あら?ハンターさんお久しぶりですね」
ハンター「元気そうだね…ちょっとお宝さがしに行っててさ」
受付「では戦利品のお預けですね?」
ハンター「うん…僕のチェストに入れておいて欲しい」ドサリ
受付「2袋ですね?中身を記帳しますのでしばらくお待ちください」
ハンター「酒場で一杯飲んでくるから終わったら教えて」
受付「かしこまりました…ごゆっくり」
『酒場』
ガヤガヤ ガヤガヤ
城の方で傭兵を特募してるらしいわ
てことは報酬良さそうだな?
森のスプリガン狩りがめっちゃ儲かる
魔石が高騰してんだろ?知ってるよ
ガヤガヤ ガヤガヤ
ハンター「ここはいつも通りか…落ち着くなぁ」
バニー「ハチミツ酒はいかがですか?」
ハンター「一杯貰う…はいお代」チャリーン
バニー「どうぞごゆっくり」
ハンター「久しぶりのハチミツ酒!」グビ
ハンター「ぷはぁぁ…やっぱ旨い」
占い師「ふむふむ…どっこらせ」ノソリ
ハンター「ん?僕に何か用?」
占い師「わらわは占い師じゃ…ふむふむ」
ハンター「な…なんだよ」
占い師「女難の相が出て居るな…主には2人の連れが居るじゃろう」
ハンター「え!!なんで分かるの?」
占い師「お祓いをしてやるでここに連れて参れ…これバニー!!わらわにもハチミツ酒をおくれ」
ハンター「女難って僕の連れ2人?」
占い師「さぁのぅ?」
バニー「お待たせしました」コトリ
占い師「気が利かん奴じゃのぅ…酒代は男が払う物じゃが」グビ
ハンター「ええ!?僕?いや…君が勝手に…」
占い師「占いはタダでは無いのじゃ…サッサとお代を払うのじゃ」
ハンター「ちょ…あぁぁまぁしょうがないな…はい」チャリン
バニー「ごゆっくり」ニコ
占い師「して?早よう連れの2人を連れて参れ…」
ハンター「いや…あのぅ僕まだ冒険者ギルドに様が有って…」
占い師「仕方ないのぅ…もう少し待ってやるでハチミツ酒をもっと持ってこい」グビ
受付「失礼します…ハンターさん記帳が終わりました…帳簿の確認をお願いします」ドサ
ハンター「あー助かった…どれどれ」
受付「お預けの戦利品の価値が非常に高い為上級者として再登録する事になりました」
ハンター「そうか…忘れてた」
受付「引き続きハンターさんと魔法使いさん僧侶さんの3人でのシェアですね?」
ハンター「もう一人加えて欲しい…剣士だよ」
受付「かしこまりました…上級者はランキングに貼りだされますがよろしいですね?」
ハンター「ちょっと待った!マズイなそれ…」
占い師「ほれ見ぃ…女難の相が出て居ると言うたじゃろう」
ハンター「女難は君なんだけどね…」
受付「どうしましょう?」
ハンター「ゴメン荷物は持って帰る…登録は元に戻して」
受付「かしこまりました…非常に高価な物ですので道中お気を付けください」
ハンター「ハハ…参ったな」
占い師「話は済んだ様じゃな?早う連れの2人を連れて来るのじゃ…それまで荷物を預かっても良いぞ?」
ハンター「いや…君が一番危ない」
占い師「ハチミツ酒はどうなって居る?わらわの瓶はもうカラじゃ…」
ハンター「分かった分かった…連れて来るから大人しくしといて」
----------------
『一時間後』
ドタドタ
魔法使い「何よ…ゆっくり出来なかったじゃない」ブツブツ
僧侶「なんかあやしい占い師でしゅねぇ…」
ハンター「居た居た…2人を連れて来たよ…お祓いお願い」
占い師「ふむふむ…」ジロジロ
僧侶「何でしゅか?」
占い師「まぁ座ってゆるりとせよ」
魔法使い「ねぇ…こんな胡散臭い人放って置こうよ」
ハンター「まぁまぁ…女難の相が出てると言われて縁起が悪いと思ってさ」
魔法使い「どうして荷物預けて無いのよ…」
ハンター「色々あるんだよ…」
占い師「女難の相はまぁ良いとして主らは探し人をして居るじゃろう?…」
魔法使い「え…」
占い師「加えて言うぞよ?オークが見える」
僧侶「ちょ…」
魔法使い「どうして分かるの?」
占い師「話を聞く気になった様じゃな?…ここから有料じゃ…ハチミツ酒を持って来や」
僧侶「どうするですか?」
ハンター「ハチミツ酒で聞けるなら安い…持ってくるよ」タッタッタ
僧侶「塔の魔女には会えなかったですか?」
魔法使い「今シン・リーンには居ないらしいの」
占い師「塔の魔女とな?会うてどうするつもりなのじゃ?」
魔法使い「あなたに関係無いでしょ」
占い師「そうじゃな…要らぬ事を聞いてしもうた」
ハンター「ハチミツ酒持ってきたよ…」タッタッタ
占い師「済まんのぅ…主らも飲んで良いぞ」グビ
ハンター「…それで僕達の探し人の行先は?」
占い師「主らは頭が悪いのぅ…オークと言えば南の大陸しか無かろう」
魔法使い「だぁぁぁそれは分かってるの!!」
ハンター「あいたたた…僕の女難の相はどうなる?」
占い師「ふむ…チチンプイプイノプイ!!終いじゃ」
ハンター「…」アゼン
魔法使い「帰ろ…」
占い師「古都キ・カイにな…商人ギルドがある…探し人は必ずそこに現れるぞよ」
ハンター「そうそう!!そういうのが聞きたい…キ・カイか」
魔法使い「ふ~ん」ジロリ
占い師「ふむふむ…主はエレメンタル4種の使い手じゃな…修行が足りぬ…錬金術を極めよ」
魔法使い「え…」
僧侶「私は私は?」
占い師「主は今の型が天職じゃ…体を鍛えい」ノソリ
ハンター「僕は?」
占い師「終いじゃ…ちと飲み過ぎたで寝る」ノソノソ
ガヤガヤ ガヤガヤ
魔法使い「ちょっと!!もうちょっと話が…あれ?」
ハンター「見失った?」
魔法使い「ねぇ今の占い師もしかして…」
僧侶「塔の魔女は目が赤いです…今の人は赤くないです」
魔法使い「そっか…気のせいか」
ハンター「女難の相はどうなったのかな…」
魔法使い「宿屋に一回帰ろ!!荷物持ったままじゃ危ない」
ハンター「そうだね…行こうか」
『宿屋』
魔法使い「…城で貰えた報酬が金貨3袋」
ハンター「うわ…十分過ぎる」
僧侶「首飾りは金貨10枚でした」
ハンター「魔石が高騰し始めてるみたいだからその金貨を全部魔石に変えよう」
魔法使い「荷物の量を減らすのね?」
ハンター「うん…余ったお金で馬と馬車を買い戻して港町まで行こう」
そして商船に乗ってキ・カイまで行くんだ
宝石類はキ・カイで船か気球を買う資金に当てよう
魔法使い「それまでずっと袋詰めかぁ…なんか危ないね」
ハンター「しょうがないよシン・リーンに置いて居ても使い道無いしさ」
僧侶「あ…装備品を買い替えたいです」
ハンター「あーそうだね君は少し防具を揃えた方が良いね」
僧侶「樽の盾はとても恥ずかしいです」
ハンター「明日買い物で色々揃えて明後日馬車で港町に向かおう」
魔法使い「馬車居る?」
ハンター「馬に乗りっ放しだと疲れるよね?」
魔法使い「んーーなんかなぁ…馬やられる心配があるからストレスなのよ」
ハンター「こうしよう…馬4頭で行こう…何か有っても馬で逃げられる」
魔法使い「それなら良いか…」
ハンター「商隊に加われば割と安全に港町まで行ける…」
僧侶「眠たくなって来たです」
ハンター「今日はしっかり疲れ取ろうね…宝石の入った袋は抱っこして寝て」
魔法使い「うん…そうする」
ハンター「僕も疲れた…寝よ!!」
僧侶「おやすみー」
『翌日_荷馬車』
ヒヒ~ン ブルル
ハンター「よいしょ!!ドサ」
管理人「馬車を買い上げて今度は何処に行くんだい?」
ハンター「商隊に入って港町さ」
管理人「又何か運ぶのか?…嫌になるだろう?」
ハンター「そうでも無いよ…楽しんでるさ」
管理人「まぁ気を付けるこった…又コボルトが出てるらしいからよ」
ハンター「忠告ありがとう」
タッタッタ
魔法使い「金貨を魔石に交換して来たよ…」
ハンター「馬車にトレジャーボックス入れたからそれに入れておいて」
魔法使い「じゃぁあなたは今晩荷物番?」
ハンター「うん…明日の朝が早いから商隊に入って待機しておく」
魔法使い「ふ~ん…じゃぁ入れておくね」ポイ
ハンター「宝石もこの中に入れて」
魔法使い「大丈夫~?」
ハンター「君が持ち歩いてるといつスリに会うか分からない」
魔法使い「それもそうね…」ドサリ
ハンター「僧侶は?」
魔法使い「装備着替えて来るから後で」
ハンター「君は荷物多いだろうから早めに馬車に積んで」
魔法使い「ふん!うるさいわね…」
僧侶「お待たせしました…」タッタ
ハンター「お!!スケール鎧に変えたんだ?良いね」
僧侶「軽くて気に入ったです」
ハンター「盾もちゃんとしたのに変えたね」
僧侶「はい!!私はラウンドシールドが丁度良い様です」
ハンター「君も宝石の袋持ってたよね?馬車のトレジャーボックスに入れて」
僧侶「はいな!!」ピョン ドサ
ハンター「よし!鍵かける」ガチャリ
僧侶「なんか安心ですね」
ハンター「うん…少しはね」
魔法使い「僧侶?宿屋に置いてる荷物運ぶから手伝って」
僧侶「ぎくり…」
ハンター「ハハまぁそうなるよねぇ…」
魔法使い「岩塩がいっぱいあるのよ」
ハンター「何回かに分けてさ…」
『翌朝』
チュンチュン
…各休憩所で3時間馬を休めながら進むのでそのつもりで
道中で戦闘が起きた場合傭兵が対処するから馬車を止めない様に
商隊長「…では日の出を待って出発する」
ハンター「…あ!!やっと来たあの2人…時間ギリギリじゃないか」
魔法使い「ハンターーーー!!荷物持ってぇぇ」
ハンター「またあんなに一杯持って…だから先に積んでって言ったのに」ブツブツ
魔法使い「早く来てよ!!」
ハンター「もう!!僕が持つから馬車に乗って」グイ
僧侶「ハンターさん助かるです」スタスタ
ハンター「今度は何持ってきたのさ」
僧侶「錬金術の勉強をするらしいです…書物と材料が沢山…」
ハンター「昨日の内に積んで欲しかったよ…」ヨッコラ ヨッコラ
魔法使い「しょうがないじゃない…時間が無かったんだから」
ハンター「もう良いよ…乗って!」
僧侶「ハンターさん大変でしゅねぇ」
ハンター「女難の相がお祓いできていないよ…トホホ」
魔法使い「もう出発するって~早く早く!!」
ハンター「それは僕の言葉だよ!!」
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----------------
『商隊』
ガタゴト ガタゴト
魔法使い「向こう!…コボルトね…4匹か」
ハンター「商隊には近づいて来ないでしょ」
僧侶「なんか余裕ですねぇ…」
ハンター「うん…僕達にもなんか余裕が出たね」
魔法使い「そうね…剣士と一緒に旅をして随分レベル上がったと思うわ」
ハンター「やっぱり死戦を経験すると全然違うんだね…今じゃ前衛職必要だと思わなくなった」
僧侶「虫除けの方陣で虫が来ないのが大きいです」
ハンター「前はアラクネーに襲われるの怖かったよね…特に夜」
パカラッ パカタッタ
傭兵「お~い!!」
ハンター「んん?何かあったんですか?」
傭兵「遠巻きにウルフの群れが居るから気を付けておいてくれ」
ハンター「あ…ウルフか…連絡ありがとう」
傭兵「では!!」ノシ パカラッタ
魔法使い「ウフフ…ウルフねぇ…」
ハンター「なんていうか気持ちが全然違うな…」
僧侶「寝るです…」
魔法使い「私は勉強を…」
ハンター「平和だなぁ…」
ヒヒ~ン ブルル
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『1週間後』
ガタゴト ガタゴト
僧侶「見えたです!!」
魔法使い「やっとね…もう馬車の移動は懲り懲り」
僧侶「ベッドが恋しいです」
ハンター「商隊の移動は馬鹿にしてたけど結構儲かったね?全部でいくらになった?」
魔法使い「えーと…岩塩売って銀貨80枚…ポーションで30枚…細々した物合わせて銀貨130枚くらいね」
ハンター「途中の中継点で待ってる人が居るなんて知らなかった」
僧侶「錬金術で作ったポーションが儲かるですね?」
魔法使い「疾病予防が良く売れる」
ハンター「丁度キ・カイまでの運賃の足しになる」
僧侶「この馬車は売るですか?」
ハンター「うん…多分馬と合わせて金貨で8枚くらいかな」
魔法使い「全部合わせて金貨にして10枚くらい」
ハンター「キ・カイまで確か一人金貨3枚だったからギリギリ行ける…交渉次第だけど」
僧侶「船が沢山見えるです」
ハンター「上手くキ・カイ行きの商船あれば良いなぁ」
魔法使い「私は少し休みたい…」
ハンター「うん…荷物を宿屋に降ろしたら君たちは休んで良いよ…僕が馬車を売却してくるから」
----------------
『港町_宿屋』
ドサリ
ハンター「ふぅ…じゃぁ宿屋の確保をお願い」
僧侶「任せるです!!」
ハンター「トレジャーボックスしっかり見ててね」
魔法使い「心配しないで」
ハンター「はいや!!」グイ ヒヒーン
ガタゴト ガタゴト
魔法使い「さて僧侶…トレジャーボックスそっち側持って?」
僧侶「はいな!」グイ
カラン コロン
店主「いらっしゃいませ…商隊から見えた方ですね?」
僧侶「お部屋ありますか?3人でしゅ」
店主「2人部屋を3人で使う形でよろしいですか?」
僧侶「はい~!!」ニコ
店主「何泊でしょう?」
魔法使い「あーー聞くの忘れてた…どうしよう」
僧侶「3泊くらい?」
店主「一部屋8銀貨ですので3泊ですと24銀貨になります」
魔法使い「まぁ良っか…はい」ジャラリ
店主「ありがとうございます…お食事はお部屋にお持ちしますのでお待ちください」
僧侶「はいなー」
店主「ではご案内致します」スタ
『宿屋の客室』
ガチャリ バタン
魔法使い「あぁぁ疲れた…これで荷物最後」ドサリ
僧侶「ハンターさんは何処で横になりますかね?」
魔法使い「この毛皮で良いんじゃない?」
僧侶「やっぱりハンターさんの女難の相って私達が原因ですかね?」
魔法使い「そんなの知らない…女2人連れなんだから得してるんじゃないの?」
僧侶「そうでしゅね…」
魔法使い「私水浴びしてくるから荷物番お願い」
僧侶「あい~!待ってるです」
『馬宿』
管理人「…んあぁぁ大分傷んでんな…これじゃ馬と合わせて金貨5枚って所だ」
ハンター「えええ…そこを何とか!!」
管理人「しかし何でこんなに傷む?荷物の輸送じゃこんなんならんだろう」
ハンター「あ…そうか岩塩で錆びついたか…」
管理人「岩塩?まぁなんか知らんが金属部分を修理せんと直に使えなくなるんだ…金貨5枚は良い方だと思ってくれ」
ハンター「じゃぁ5枚で!!」
管理人「ほらよ!!」チャリン
---------------
ハンター「馬4頭と馬車1台で金貨5枚か…」トボトボ
ハンター「宝石には手を付けたく無かったんだけどなぁ…」ブツブツ
ワイワイ ガヤガヤ
安いよ安いよ~キ・カイ産のくちばしマスク!!
こっちはシン・リーン産のハチミツ!!買ってってくれ~い
この眼帯なんかどうだ?
金属糸あるで~買っていきーな
ワイワイ ガヤガヤ
ハンター「露店が盛り上がってるなぁ…僕は盛り下がってる」
ハンター「なんか酒場に行く気も起きない…どうしよう」ブツブツ
男「よう!兄ちゃん…なんだか景気悪そうだな?」
ハンター「ん?僕?」
男「男ならもっと堂々とだな!?胸を張って歩け…こうだ!!」ズイ
ハンター「こう?」ズイ
男「気分が晴れただろ?」
ハンター「ハハ…まあね?」
男「スリにでも合ったんか?」
ハンター「そんな感じかな…」
男「じゃぁよ…ちっと仕事して見無ぇか?」
ハンター「仕事?…えーとそういう余裕は無いかも」
男「ぬぁぁぁ見誤ったか…良い弓持ってっから使えると思ったんだがな」
ハンター「ゴメン…他を当たった方が良いよ」
男「悪りぃな!!手間取らせた…まぁなんだ…上向いて歩け!じゃぁな!!」タッタッタ
ハンター「ふぅ…今日は宿屋で休も」テクテク
『宿屋』
ガチャリ バタン
魔法使い「あれ!?早いじゃない…」
僧侶「おかえりです…ん?なんかおかしいな…お疲れ様でしゅ」
ハンター「うん…ふぅぅ」ヨッコラ
魔法使い「馬車は処分出来た?」
ハンター「うん…錆がひどくてあんまり良い値が付かなかった…金貨5枚だよ」
魔法使い「売れて良かったじゃない…」
僧侶「ハンターさん疲れてるですか?元気が無いです」
ハンター「スリに合った気分でモチベーション下がっちゃったんだ」
魔法使い「バッカじゃないの?あなた昔からケチよね」
ハンター「金貨3枚稼ぐのがどれほど大変か…って考えるとさ」
僧侶「なんか悩みが小さいです」
魔法使い「どうせ寝たら忘れるでしょ?」
ハンター「そうだね…寝る」
僧侶「私達は水浴びしたらやる気出て来たので買い物行って来るです」
魔法使い「その金貨5枚頂戴」
ハンター「え?」
魔法使い「金貨3枚分の儲けが出る買い物すれば済む話なの!!」
ハンター「…さすがガメツイ」
魔法使い「うるさいわね…貰って行くから」グイ
ハンター「ハハ後は任せた…僕寝る」
『翌日』
チュン チュン
魔法使い「おい起きろ!!」ユサユサ
ハンター「ううん…」パチ
僧侶「朝食が来てるです」モグモグ
ハンター「あれ?いつの間に床で寝てる…」
魔法使い「このベットは私が使うから移動させた」モグモグ
ハンター「そっか…全然気づかなかった…ぐっすり寝たよ」
僧侶「ハンターさん疲れて居たですね」モシャモシャ
ハンター「…というか何か一杯買い物したみたいだね…残りの金貨は?」
魔法使い「あぁ忘れてた…はい」コロン
ハンター「1枚?」
魔法使い「そう…」
ハンター「何買ったの?」
魔法使い「見て気が付かないの?」
ハンター「あ!!髪型が変わってる…あ!!僧侶も…あれ?服装も…」
魔法使い「後は錬金術の材料ね…朝食食べないと冷めるよ」モグ
ハンター「まぁ良いか…食べよーっと」モグ
魔法使い「あなた寝ていて何も相談出来なかったけど…私達3人で傭兵やる事になったよ」
ハンター「ええ!?傭兵?…何の傭兵?」
魔法使い「商船で傭兵を募集してたの」
ハンター「おお!!もしかしてキ・カイ行き?」
僧侶「そうでし!!」
ハンター「おおおおお!!それは丁度良い…報酬は?」
僧侶「もう払ったです」
ハンター「払った?どういう事?」
魔法使い「一人金貨1枚でキ・カイまで商船に乗れる代わりに傭兵やるの」
ハンター「なるほど…余りのお金で買い物か」
魔法使い「金貨3枚分になったでしょ?」
ハンター「ハハ凄いな…もう僕のやる事無くなった」
僧侶「明後日に出港するです…それまでゆっくり出来るです」
ハンター「なぁ~んだ…心配して損したよ」
魔法使い「その金貨返して貰って良い?まだ遊ぶから」
ハンター「いやいやちょっと待って僕がまだ何もしてない」
魔法使い「何かする事有る?」
ハンター「う~ん…どうするかなぁ」
魔法使い「ほら無いじゃない!貰うから」ブン
ハンター「ああ!!」
僧侶「ハンターさんはゆっくり体休めるです…」
ハンター「まぁ良いかぁ…散歩で良いや」
魔法使い「ダメダメ…荷物番だから…よし!!僧侶行くよ」
僧侶「はいな!!」タッタ
----------------
----------------
----------------
『蛮族船』
ザブ~ン ユラ~ ギシギシ
オーク「セロオヲリカイ!!」ウゴ
剣士「…」---停泊?あの島で補給するのかな?---
女オーク「剣士来い」グイ
剣士「これどういう事?」
女オーク「荷室行く…剣士樽に隠れる…付いて来い」
剣士「…」---樽?逃げるのか?---
『荷室』
ソローリ
女オーク「よし…樽に隠れる…入れ」
剣士「う…うん…どうするつもり?」
女オーク「小舟にこの樽乗せる…私オークシャーマン寝ている隙…刀と光る石盗む」
剣士「逃げるんだね?」
女オーク「オークシャーマンの呪いもう解けた…私自由…剣士助ける」
剣士「君はオークの皆から離れても良いのかい?」
女オーク「呪い解けた…肌の色変わる…処女違う女のオーク…違う部族行く普通」
剣士「そういえば緑の肌が薄くなってる…」
女オーク「オークシャーマン見られる…すぐ分かる…早く行く」
剣士「おっけ!!ここで隠れて居れば良いね?」
女オーク「声出すダメ…」グイ
ノッソ ノッソ
---------------
『小舟』
ドスン
剣士「…」---もうちょっと丁寧に扱ってよ---
女オーク「大人しく待つ…」ヒソ
ドスン ドスン ゴトゴト
男オーク「ロシクヤハ!!ゾイソオ!!」
女オーク「ルアガツモニダマ…テマ!!」
男オーク「イナライハツモニ…ダウュキホノダタ」
女オーク「ロイテッマクシナトオ!!レマダ」
--------------
--------------
--------------
ドスン ドタドタ
女オーク「セダ!!」
男オーク「イシホナンオノンゲンニモレオ」
女オーク「…」ジロリ
男オーク「ナイイテレイニテイレドノンゲンニハエマオ」
女オーク「レマダ」
男オーク「ウゴウゴ…」
『無人島』
ドサリ
剣士「…」---あたたた---
女オーク「この樽だけ隠す…夜まで待て…刀と石だ」ヒソ
男オーク「ゾルドモデンクヲズミトサッサ…ルテシニナ」
女オーク「ルイテッカワ…」ヨッコラ
ユサユサ ユサユサ ドサリ
剣士「…」---うっ---
女オーク「夜に来る…」ヒソ
『夜』
シーン
剣士「…」---船が遠ざかって行く---
何処かに種落ちて居ないかな…
光の魔方陣があれば千里眼使えるんだけど
あった!!タンポポの種…これで行ける
剣士「変性魔法!」シュワワ
よし…質の良い銀になった
これで光の魔方陣を…っと
剣士「千里眼!」
小舟…良かった上手く小舟でこっちに来てる
----------------
----------------
----------------
『数分後』
ザザー ザブーン
女オーク「待ったか?」
剣士「ハハ…アハハハ!!上手く逃れたね」
女オーク「どんぐり積んで来た…この島水もある」
剣士「小舟を隠そう」
女オーク「小舟私持つ…剣士樽持て」
剣士「おっけ!!」グイ
女オーク「水こっち…付いて来い」ザシュ ザシュ
剣士「君は力持ちだなぁ…」
女オーク「小舟重い」ザシュ ザシュ
---------------
『洞穴』
ピチョン ピチョン
剣士「ちょっと顔見せて?…肌の色は茶色になってきてるのかな?」
女オーク「オークの肌普通は茶色…緑や青は呪いの印」
剣士「なるほどね…部族ごとにそういうのがあるんだ」
女オーク「茶色キライか?」
剣士「気にして無いよ…茶色のオークは何処に行くんだい?」
女オーク「野良オークは自由…何処行っても良い」
剣士「そういえばエルフの森にも居たなぁ…」
女オーク「多分純血の野良オーク…人間の血入って無い…とても強い…でも頭悪い」
剣士「ふ~ん…それで?これからどうする?」
女オーク「オークシャーマン宝無くなった…気付いたら探しに来る…早く逃げる」
剣士「それはマズイね…ここにいつまでも居られないね」
女オーク「樽に水汲む…小舟で逃げる…早く行く」
剣士「どうするかなぁ…今の場所分かる?」
女オーク「私海の事分からない…今何処も分からない」
剣士「このまま漂流するのはリスク高いなぁ…僕はちょっと種を集めたいんだ」
女オーク「種?どんぐりダメか?」
剣士「他の種も欲しいんだ…う~ん…そうだ!!」
女オーク「何だ?」
剣士「見てて…ハイディング!」スゥ
女オーク「消える…」
剣士「リリース」スゥ
女オーク「その技はどうやる?」
剣士「誰か来てもハイディングで逃げられるんだ…だから心配無い」
女オーク「分かった…急いで逃げない」
剣士「夜が明けたら種とか色々探しに行こう」
女オーク「軍隊ガニ探す」
剣士「お?イイね…もうその防具は脱いで良いよ…新しいの作ろう」
女オーク「私の宝増える嬉しい」
剣士「そう言って貰えると作り甲斐がある…今度はどんなのが良いかなぁ」
女オーク「剣士目が輝く…楽しいか?」
剣士「うん!すごいワクワクしてる」
女オーク「剣士楽しい私も楽しい…私の体居るか?」
剣士「え?」
女オーク「私剣士欲しい剣士私欲しい…違うか?」
剣士「フフ良いよ…しようか?」
---------------
---------------
---------------
『翌日』
シュッシュッ ガリガリ
女オーク「木の皮これくらい良いか?」ドサリ
剣士「おけおけ…次僕のを真似て木の皮を編み込んで?」
女オーク「何作る?籠か?」
剣士「そうだよ…大きな籠作って小舟に乗せるんだ」アミアミ
女オーク「小さい籠はどんぐり入れるか?」
剣士「うん…樽に入ってるどんぐりを籠に移す…樽には水を入れる」
女オーク「任せろ…私やる」
剣士「じゃぁ僕は装備品作るかな?さっき拾って来た骨はどこ?」
女オーク「外にまとめてる…骨で作るか?」
剣士「この木の皮と骨だね…軍隊ガニ居なかったでしょ?」
女オーク「この島生き物鳥しか居ない」
剣士「まぁ大丈夫だよ…木の皮を変性させて使うから割と良いのが出来る」
女オーク「種足りるか?」
剣士「見てよ…さっき拾った種はオーツ麦だったよ…成長魔法で増やしたから十分ある」ザラザラ
女オーク「稲穂はどうした?」
剣士「もう小舟に積んだ…ベット替わりさ」
女オーク「剣士賢い…何でも出来る」
剣士「フフ僕はね…種と水があれば大体何でも出来るんだよ…すごいだろ?」
女オーク「籠作り終わったらもっと種拾う」
剣士「うん…無人島で生活するのも中々良いね」
-----------------
剣士「出来たぁ!!これ装備してみて!!」
女オーク「…」ゴソゴソ
剣士「ワニの頭蓋骨の感じがカッコいい…それボーンキチンって言うんだ」
女オーク「軽い…」
剣士「全部エンチャントしてるから前の軍隊ガニの装備よりずっと良いよ」
女オーク「エンチャントとは何だ?」
剣士「回復の魔法が掛かってる…傷口が直ぐに塞がるんだ」
女オーク「剣士も同じか?」
剣士「同じ…僕は余りの骨で作ったからちょっとショボイ」
女オーク「皮の部分は木なのか?動物の皮みたいだ」
剣士「樹脂に変性したんだよ…やわらかくて肌触り良いでしょ?」
女オーク「少し動いてみたい」
剣士「おけおけ!!木の棒で打ち合ってみよう」
女オーク「剣士と戦う10年振り…」
剣士「負けないぞ!!」
女オーク「私剣の使い方覚えた…前と違う」スチャ
剣士「僕だって」スチャ
女オーク「…」ジリジリ
剣士「行くぞ!!」シュタ
カン カン コン ビシ バシ
『浜辺』
ザザー ザザー
剣士「…よっこら…よっこら…降ろすよ?」ザブン
女オーク「空の籠どうする?」
剣士「土入れる…ちょっと待って」ザシュ ザシュ
----------------
剣士「お待たせ…よいしょ」ドサリ
女オーク「その土で種育てるか?」
剣士「そうだよ…足りない物があった時にこの土で育てる」
女オーク「準備整った…この島離れる」
剣士「うん…見つかる前に移動しよう」
女オーク「剣士先乗る…私小舟押す」グイ
剣士「おけおけ」ピョン
女オーク「ふんっ!!」ズズズ ザブーン
剣士「おいで!!手を…」グイ
女オーク「…」ザブザブ ドスン
ユラ~
剣士「帆を広げるよ?」グイ バサバサ
女オーク「方向分かるか?」
剣士「分からないけど蛮族船とは違う方向に行って見る」グイ
女オーク「この小舟荷物載せる2人で丁度」
剣士「そうだね?ちゃんと足伸ばせるし割と快適だ」
えーと…この大きな籠は風よけだよ
寝る時に被せる
こうか?
この上に乗ったら2段ベットみたいだね
それでこっちの籠が食料…こっちが道具…これが土
釣った魚はこの籠にしよう
----------------
----------------
----------------
『港町_商船』
ザブン ギシギシ
荷入れ急がせてくれい!!
豚は手前の檻ん中だ
魔法使い「僧侶!!桟橋狭いから気を付けて」ヨタヨタ
僧侶「トレジャーボックスで足元見えないです」ヨタヨタ
ハンター「ちょ…荷物重いから早く行ってよ…」ヨロ
男「おぉ!!ネーちゃん達来たな?なんだそのトレジャーボックスは…」
魔法使い「これ大事な物入れてるの」
男「危ねぇから貸せ!!」グイ
魔法使い「あ…」
男「ハハーン…この音は貴金属だな」ガサガサ
男「しかも相当入ってんな」
魔法使い「ちょちょちょっとー」グイ
男「取りゃし無ぇよ!!傭兵の部屋は上の居室だ…付いて来い」
ハンター「重い…早く行って」
男「おろ?もう一人の射手ってお前だったんか?」
ハンター「あ…その節はどうも…」
男「てことはこのネーちゃん2人の荷物持たされてんだな?しかし又多いな…」
ハンター「お願い…重いんだ」
男「ヌハハ悪りぃ悪りぃ…こっちだ!乗れ」
----------------
ハンター「はうぅぅ…はぁはぁ」ドサリ
男「手前が男部屋…奥が女部屋だ…どっちに荷物運ぶか知らんがちゃんと片付けろな?」
魔法使い「全部私達の物だから女部屋に運んで」
ハンター「君の物なんだから少しは持って」
魔法使い「分かってるわ…早く入れてよ」
ハンター「はぁ…」
男「うお!!お前等…どこで盗んだんだこんなに沢山…」
ハンター「え!?ダメだよ開けたら…どうして鍵空いてるんだ?」
男「こんな簡単な鍵じゃダメだ速攻盗まれるぞ?」
魔法使い「ハンター!!ちゃんと鍵掛けたの?」
ハンター「いや…掛けた筈」
男「んぁぁぁ…まぁちっと教えてやる…居室入れ」
『居室』
ガチャリ バタン
男「見てろ?こんな鍵なんざ釘一本で簡単に解錠出来るのよ…」カチャ
男「ほんでな?この鍵にはシリンダーって物が有ってだな…ここに錘をこんな感じで付ける訳だ」カチャ
男「次に箱を横にして鍵を掛ける」カチャ
男「そうするとこの箱を横にした状態じゃ無いと鍵が開かなくなる訳よ…開けて見ろ」
ハンター「え…あ…」ガチャガチャ
ハンター「開かない…というか鍵が合って居ない感じだ」
男「横にして開けて見ろ」
ハンター「…」カチャリ
ハンター「おぉ!!開いた…」
男「…という具合にだな2重3重で鍵を掛けないと意味無い訳よ…このままじゃ直ぐに盗まれるぜ?」
僧侶「お見事でしゅ」パチパチ
男「あぁイカンイカン…こんな事してる場合じゃ無ぇ…兎に角今は荷物片づけろ」ダダッ
ハンター「…」アゼン
魔法使い「ハンター…あなた鍵開け専門じゃなかったの?」
ハンター「あの人誰?」
魔法使い「商船仕切ってるって言ってたけど…只者じゃ無さげ?」
ハンター「見事だなと思ってさ…だってホラ…鍵開けって普通宝箱を置いた状態で開ける」
ハンター「横にした状態じゃ無いと開けられない工夫を一瞬でやったんだよ…神業だ」
魔法使い「まぁどうでも良い…荷物片づけよ」スタ
ハンター「いや…このトレジャーボックスを横に出来ない工夫をすれば良いと言ってるんだ」
魔法使い「僧侶?ハンター置いといて荷物片づけよ」
僧侶「ほいほい…」
ハンター「世の中にはスゴイ人が居るんだな…」ブツブツ
『甲板』
ザブン ギシギシ
男「よし!!全員乗ったな?碇上げろぉ!!出港だ!!」
ガラガラガラ ユラ~リ
男「船乗り!!後は任せたぜ?」
船乗り「ういさ!!」
男「船乗り以外は全員集まれぇ!!」
ハンター「魔法使い!僧侶!!集まれってさ」
魔法使い「はいはいー」スタタ
僧侶「ほい!!」スタタ
男「ようし!集まったな?ほんじゃちっと説明する」
船に乗ってるのは全部で16名…内戦闘員は12名だ
今回は傭兵で錬金術師と僧侶が乗って居るから
怪我病気は心配しなくて良い
女性は全部で4人…禁止事は何も無いが揉め事は避けてくれ
因みに2人は娼婦だからちゃんと金払う様にな?
キ・カイに到着するまで補給は2回を予定している
それから傭兵は矢とボルトの置いてある場所を確認しておいてくれ
海賊との戦闘は基本的に気球を使って上からの射撃だ
大抵はこちらの船の方が早いから乗り込まれは想定していない
男「以上!!まぁラクにやってくれ」
ハンター「矢か…何処にあるんだろう?」
僧侶「私は仕事無いでしゅ…」
ハンター「クロスボウは誰でも撃てるよ…」
僧侶「後で教えて欲しいです」
ハンター「うん…ちょっと船を見て回ろうか」
僧侶「はいな!!」
『船尾』
ザブ~ン ユラ~リ
ハンター「貨物用の気球か…いろいろ改造してるなぁ」
僧侶「中にクロスボウと矢もあるです」
ハンター「すごいなぁ…全部でいくらするんだろう?」
魔法使い「船の値段とか想像出来ないわね…」
ハンター「うん…それだけじゃ無くて武器とかも全部必要だよね」
僧侶「3人だけで扱える物ではないですねぇ…」
男「おう!!ここに居たか…お前等さっきのトレジャーボックスの事だけどよ」
ハンター「あ…箱の施錠の件?」
男「船にある間は誰も触らんからそれは良い…そうじゃ無くてな…ちっと中身が見たいのよ」
魔法使い「どうする気?」
男「いやな?俺は結構目利きでな…鑑定させてくれ…何があるのか見たいんだ」
ハンター「鑑定か…どのくらいの金貨になるのか知りたいなぁ…分かる?」
男「任せろ…もし売るなら買い取れる奴を紹介してやる」
魔法使い「良さそう…値段が分からなかったし」
男「おぉ早速見せてくれ…船長室まで持ってこい」
ハンター「分かったよ…」
--------------
『船長室』
ガチャリ バタン
僧侶「船長室は中がぐちゃぐちゃですね…」
男「うるせぇな…ここは俺の部屋だ」ガチャガチャ ドサドサ
ハンター「…」
男「このテーブルの上に置いてくれ」
ハンター「はい…」ドサリ
男「開けるぞ?」カチャリ
ハンター「えええええ!?横にしないと開かないんじゃ…」
男「アホか!開け方知ってる奴には無意味だ」
ハンター「どうやって…」
男「後で教えてやる…それより中身だ…どれどれ」
おぉぉ…ちぃと小さいがまぁまぁの宝石揃ってんな
このダイヤモンドのカッティングなんかドワーフじゃ無いと出来無ぇ
しかし残念だな…宝石は価格が暴落してんだよ
うお!!古代金貨…あれ?見た事無ぇ…こりゃシャ・バクダの物じゃ無ぇぞ!!?
男「おい…ビビるなよ?この古代金貨1枚…こりゃメチャクチャ価値あるぞ?」
ハンター「ええと…どのくらい?」
男「値段が付けられん…只なぁこれを買い取れるのはもう王族しか居ないだろうな…」
魔法使い「宝石は?」
男「宝石はキ・カイで多分売れる…一つあたり金貨20って所か…10年前ならその10倍はしたんだがな」
ハンター「これ全部で船と気球は買えるかな?」
男「気球ならイケルが今売るのはちと勿体ない…時期を待ってじっくり売った方が良い」
魔法使い「どうする?こんな事言われて売れなくなるじゃない」
男「一緒に入ってる魔石…こっちの方が価値が高けぇ」」
ハンター「おぉ!!」
男「宝石はお前等ちゃんと仕舞っておけ…ほんで古代金貨は処分に困るが…相談出来る奴を紹介してやる」
ハンター「それはありがたい…」
男「でな?どこで手に入れたのよ?」
ハンター「暁の墓所という所だよ…シン・リーンの東の方にある」
男「ほう?果てしない荒野だって聞いてたが何か有るんだな?」
魔法使い「ハンター!あんまりペラペラしゃべらない方が良いじゃない?」
ハンター「まぁでも粗方お宝は持って帰って来たよね」
男「なるほど察しが付いた…暁の墓所…どっかで聞いたな…暁…暁…暁の使徒…」
ハンター「そうだよ暁の使徒関連らしい…それ以上知らない」
男「ふ~む…何処で聞いたか思い出せん」
-----------------
ハンター「ところで男さん…あなたはは何者ですか?随分色々詳しい…」
男「んあ?そうだな自己紹介して無かったな…俺の名は盗賊だ…今は船使った商売人だがな」
魔法使い「盗賊?…だから鍵開けを?」
盗賊「まぁな?今は盗みはやって無ぇから安心しろ…只の商売人だ」
ハンター「僕もトレジャーハントで鍵開けが専門のつもりだったんだけど…」
盗賊「そうか…船旅はまだ長いからよ…暇なときに教えてやるぞ?」
ハンター「やった!!」
盗賊「しかしお前等みたいな若造がこんなお宝持ってるとはよ…俺もシケタ仕事に就いちまったもんだ」
盗賊「ほんで?その暁の墓所ってのは墓場なのか?」
僧侶「ミイラが沢山あったです」
ハンター「全部荒らされていたんだ」
盗賊「「ん?宝石はどうしたのよ…こんなに沢山墓場に必要無いよな?」
僧侶「ミイラが入って居た石棺に一つづつ有ったです」
盗賊「てことは宝石の数だけミイラが在ったって事だな?」
僧侶「そうでし」
盗賊「もしかすると宝石は魂の入れ物だったんか?」
ハンター「え?」
盗賊「いやな?大昔にはそういう技術が在ったんだよ…この魔石にも誰かの魂が入ってる」
魔法使い「それ本当?」
盗賊「うむ…魔石を使い尽くすと只の宝石になるんだ」
ハンター「持って帰って来ちゃいけなかったかな?」
盗賊「分からんが…今は高く売れないからとりあえず大事に仕舞っとけ」
魔法使い「ミイラって大昔の人がその人を復活させる為に作ったのよね?」
盗賊「昔はそう信じられてたのかも知れんな?」
ハンター「墓荒らしされちゃったんじゃ復活出来ないねハハハ…」
盗賊「暁の使徒だったか?そいつらが何者だったのかは調べて見ても良いかもな」
魔法使い「どうやって?」
盗賊「俺の知り合いに考古学者が居るんだ…連絡してみる」
『船首』
ザブ~ン ユラ~ ギシギシ
ハンター「はぁぁぁ…海は平和だなぁ」
魔法使い「何か釣れる?」
ハンター「まだ魚一匹だよ…居る?」
魔法使い「馬鹿にしてる?要る訳無いじゃない!」
ハンター「君も暇でウロウロしてるんだね?釣りでもしたら?」
魔法使い「そうね…書物読むのも飽きた所だし…ちょっとやってみようかな」
盗賊「おい!!お前等ヒマしてんだな?」
ハンター「あ…盗賊さん」
盗賊「俺も暇なんだ…立ち合いやるぞ」
ハンター「立ち合い?」
盗賊「チャンバラだよ…お前等傭兵なんだからゴロゴロしてっと体鈍るぞ!?」
魔法使い「私は魔法使いよ?」
盗賊「うるせぇ!!俺がお前等の適正見てやっから武器持って集まれ」
僧侶「私もやるですか?」
盗賊「お前は盾と槍持ってたな?腕試しだと思って掛かって来い」
僧侶「ひえぇぇ…」
『甲板』
カン コン ビシ バシ!
僧侶「痛いですぅ…」タジ
盗賊「ぬぁぁ全然ダメだな…お前はその槍が長すぎる」
僧侶「盗賊さんが早すぎるです」
盗賊「盾で守ってるのは良いがお前には突きしか無いのが見え見えなんだ…しかも遅せぇ」
僧侶「私は槍しか使えないでしゅ」
盗賊「ちと待ってろ…売り物だが銀のレイピアが在った筈だ…持ってくる」ダダッ
僧侶「ひぃひぃ…ハンターさん助けて欲しいです」
ハンター「良い訓練になって居そうだよ?遅いゾンビ以外も対処出来るようになった方が良い」
タッタッタ
盗賊「これ使ってみろ」ポイ
僧侶「細身の剣でしゅか…軽いです」
盗賊「盾を前に出してレイピアは下げて後ろに構えろ…」
僧侶「こうですか?」
盗賊「うむそうだ…その構えはハイガードっていう構えだ…兎に角防御に集中しろ」
僧侶「はい…」
盗賊「ほんでな?相手の隙を見て切るんだ…突くなよ?縦でも横でも兎に角切り込む…やってみろ」
僧侶「ふんふん!!」ブンブン
盗賊「まぁ良い…そうしたら右手と左手をスイッチする…剣が前に出て盾が後ろな?」
僧侶「はい…」
盗賊「その構えがエペギャルド…そこから突きに切り替える」
僧侶「こうですね?」ツンツン
盗賊「なんかショボイが…お前の場合ハイガードとエペギャルドを入れ替えながら戦うのが良い」
ハイガードは敵の攻撃を盾で凌ぐのに集中
エペギャルドはレイピアで凌ぐのに集中
兎に角防御が一番重要だから忘れんなよ?
ほんで隙を見て急所に一発突きを入れる
盗賊「おし!!もっかい立ち会って見るぞ?来い!!」
僧侶「はいな!!」
カン キーン ビシ バシ!
僧侶「あ痛たたた…」
盗賊「防御に集中しろ!!行くぞ!!」
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---------------
盗賊「よっし!!次魔法使い来い」
魔法使い「やっぱり私もやるのね…」
盗賊「その槍は杖替わりだな?」
魔法使い「ええ…まぁ…」
盗賊「貸してみろ…槍を両手で使う場合はだな…柄の部分を上手く使って防御するんだ」ブンブン グルグル
盗賊「ほんでリーチを生かして先ず切る!!ほんで突き」ズダッ
盗賊「やってみろ」ポイ
魔法使い「こ…こう?」グルグル
盗賊「んんん…回してるだけじゃダメなんだが…まぁ相手の攻撃をどう凌ぐかってのが重要なんだ…槍は突くだけの武器じゃ無い」
魔法使い「ふぬぬ…」グルグル ズダッ
盗賊「俺がゆっくり切りかかって行くから柄の部分で防いでみろ…いくぞ?」
魔法使い「う…うん…」タジ
盗賊「こんな風に切りかかって来たら柄の部分で叩き落すかなにかやってみろ」
コン コン カン コン
盗賊「もうちっと早めに動くぞ?」ダダッ
魔法使い「ひぃ…」ブンブン
コン コン バシッ!
盗賊「あだっ!!つつつ…」
魔法使い「当たっちゃった…」
盗賊「槍はな?ぶん回してるだけで踏み込み難い訳だ」
魔法使い「へぇ?」
盗賊「ほんで相手の隙を見て切るか突きの2択だ…突きばっかりやってると簡単に避けられるから考えて戦え」
盗賊「お前の場合魔法も使えるだろ?混ぜながらやれば良い線行くぞ?」
魔法使い「今使っても良いの?」
盗賊「ダメに決まってんだろ!まず槍の使い方覚えてから実践でやってくれ」
盗賊「よし!もっかい行くから凌げ!!」ダダ
魔法使い「あわわ…」ブンブン グルグル
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----------------
盗賊「よーーし!!次はハンターだな?」
ハンター「お手柔らかに…」
盗賊「お前は出来そうだから始めから本気で行くぞ?」
ハンター「ハハ…これ真剣なんだけどさ…危なくない?」
盗賊「僧侶が居るんだから死にゃし無ぇだろ…行くぞ!!」ダダ
カーン カーン キーン
盗賊「ほう?やるな?なかなか目が良い…」
ハンター「こっちも!!」ダダ
カーン カーン ブン!!
ハンター「え!?消えた…」
盗賊「おっと危無ぇ…」チャキリ
ハンター「う…」タラリ
魔法使い「今消えた!!どうして?」
盗賊「ヌハハそら秘密だ…しかしハンターお前片手剣だと勿体無ぇ…左手が遊んでる」
ハンター「左手か…」
盗賊「防御用でパリーイングダガーってのが在るんだ」
ハンター「左手にダガー?」
盗賊「ちと特殊なギミック付きだ…使って見るか?」
ハンター「試してみようかな」
盗賊「それも売り物なんだが…さっきの銀のレイピアと合わせて安く売ってやるぞ?」
ハンター「いくら?」
盗賊「銀のレイピアが金貨2枚…パリーイングダガーが金貨1枚…こっちも商売なんでこれ以上値下げ出来ん」
ハンター「お金持って無いよ…」
盗賊「お前等に払う傭兵代が丁度金貨3枚だな?タダ働きで譲ってやるがどうする?」
魔法使い「魔石売ったらお金入るんだしケチケチしなくて良いじゃない?」
ハンター「そ…そうだね」
盗賊「決まりだな?取って来るから待ってろ」ダダ
『黄昏時』
カンカン キーン
魔法使い「あの2人いつまでやるんだろ…」
僧侶「夕日が綺麗ですねぇ…」ウットリ
魔法使い「それにしても船旅って暇…」
僧侶「まだ1日目なのです」
魔法使い「私居室に戻ってポーションでも作って来る」
僧侶「お手伝いしますか?」
魔法使い「あの2人怪我したらいけないから僧侶は見ててあげて」
僧侶「はいな!ゆっくりしてるです」
魔法使い「じゃぁ居室に戻る…」スタ
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『翌日』
トンテンカン トンテンカン
魔法使い「うるっさいわね…何作ってるのよ」
盗賊「おぉネーちゃん2人起きたか?」
僧侶「…それはもしかして」
盗賊「察したか?訓練用のダミー人形だ…ゴロゴロしてると鈍るからな」
魔法使い「私達も訓練するの?」
盗賊「当たり前だろ傭兵は船を守るのが仕事だ…ゴロゴロさせる訳に行かねぇ」
ハンター「こっちも出来たよ」
盗賊「甲板に並べて置いてくれい!弓矢の防御用にも使えるからな」
ハンター「おっけ!よっこら…」ノソ
盗賊「朝起きたら2時間の訓練…その後は昼まで船の操作で基礎体力付ける…飯食ったら夕方まで乱取り」
魔法使い「ええ!?」
盗賊「え?じゃ無ぇ!!傭兵は遊びじゃ無ぇぞ?」
僧侶「こ…これはもしかすると地獄の始まりでは…」
盗賊「お前らは若いんだからこれぐらいどうって事無ぇから心配するな…3日もすりゃ慣れる」
魔法使い「毎日?」
盗賊「当たり前だろ…そん代わり飯は心配しなくて良いぞ?腹が減っては戦にならんからなヌハハ」
魔法使い「なんか…目まいが…また修行の続きが…おえぇぇぇ」
僧侶「今度は逃げる場所が無いです…」
盗賊「慣れるから心配すんな!ぬははははは」
『数日後』
面舵微速!!横帆早く畳めぇ!!
行き会い船が回避しませんぜ?
射手!!すれ違いざまに警告撃て
左舷注意!!早く帆を畳めってんだろ!!
魔法使い「ひぃひぃ…」グルグル
ハンター「僕は警戒に行く…早くロープ撒いて」ダダ
僧侶「はぁはぁ…死ぬです…はぁはぁ」グルグル
盗賊「んぁぁ何処の船だぁ…ったく航法無視しやがって」
船乗り「海賊上がりの豪族すね」
盗賊「射手!!撃つな…」
ザブ~ン ユラ~リ
盗賊「知った顔は居無ぇ様だ」
船乗り「あの顔…こっちの事はお構い無しの様子」
盗賊「これだから豪族とは関わりたく無ぇ…まぁ良い!気にしないでこのまま入港すっぞ」
船乗り「へい…」
盗賊「ハンター!!もう弓は良いから帆を畳むの手伝ってやれ」
ハンター「ハハ…やっぱりそうなるか…」
魔法使い「反対側のロープ撒いて…もう腕が動かない…」ヒクヒク
僧侶「はひ~はひ~…」
『海士島』
ザブン ガガガガ
盗賊「ようし…この島で1日休憩だ…居りたい奴は居りて良いぞ!!」
ハンター「はぁはぁ…ここで補給?」グッタリ
盗賊「まぁな?商船待ってる奴らもいるから物々取引が主だ」
ハンター「結構大きな漁港だね?」
盗賊「ここはな…10年ぐらい前から移民が増えて今じゃ港町より栄えた海の中継点だ」
ハンター「へぇ…」
盗賊「色んな国から商船が入って来る…まぁ新しく出来た主要漁港よ」
魔法使い「お…降りても良いの?」ヨロヨロ
盗賊「今日の乱取りは無しだ!元気があるなら降りて構わん…只な?治安はあまり良くない…女だけでうろつくのはヤメロ」
魔法使い「僧侶どうする?」
僧侶「盗賊さんはどうするですか?」
盗賊「俺は酒場で一杯飲む…一緒に来るか?」
僧侶「一緒なら安全でしゅか?」
盗賊「お前等ガキとは話が合わんかも知れんぞ?それで良ければ来い…あ!!お前等に御馳走するだけ余裕は無いぞ」
ハンター「ハハ…自分たちの分は自分たちで持つよ」
魔法使い「なんかケチね」
盗賊「うるせぇ…金は全部物資に変わったんだ…持ち金は殆ど無ぇ」
『海の酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
アヘン酒入荷したわよ?
おぉ!!姉ちゃんどっから来たんだ?
ぃゃぁ…蛮族共がえらく増えちまって追い出し食らってよ
キ・カイもそろそろヤバそうだな?
ワイワイ ガヤガヤ
店員「いらっしゃいませ!」
盗賊「よう!又来たぜ?」
店員「あら?10日振りかしら?」
盗賊「繁盛してそうだな?」
店員「お陰様で…4人?」
盗賊「おう!席空いてるか?」
店員「カウンターで良ければ…」
盗賊「構わん…どうせ人に聞かれちゃマズイ話なんかせんからなヌハハ」
店員「じゃこちらへどうぞ…お酒は何を飲みますか?」
盗賊「アヘン酒だけは止めてくれ…どうも胡散臭いからな」
店主「一番安いのに…」
盗賊「フィン・イッシュの船が入ってただろ?なんつったけな…白酒だったか」
店主「あーあります」
盗賊「お前等どうする?」
僧侶「同じで良いのです」
盗賊「じゃぁボトルで頼む」
店主「かしこまりました…少々お待ちください」スタ
盗賊「まぁ立って無いで座れ」
魔法使い「筋肉痛が…痛たたたた」ギクシャク
-----------------
盗賊「むぐっ…ぷはぁ!!」グビ
店主「相変わらず飲みっぷりが良いですね」
盗賊「中々旨いぞ?お前も飲むか?」
店主「いえ…私は店番がありますから」
盗賊「どうよ?面白い話聞けて無ぇか?」
店主「前にお話ししていたアヘン酒の製造元…」
盗賊「おぉ!!分かったんか?」
店主「どうもセントラルで豪族達が作らせている様です」
盗賊「またセントラルかよ…胡散臭い話はいつもセントラルだ」
店主「そんなにアヘン酒がお嫌いですか?」
盗賊「原料がケシの実だろ?体に良い訳が無ぇ!」
店主「でも麻薬みたいに依存性は無いらしいですよ?」
盗賊「だったら何で沢山流通してんだよ…隠れた依存性があるに決まってる」
店主「もう最近では売り上げの殆どがアヘン酒…盗賊さんも諦めて試してみては?」
盗賊「俺は人気の無ぇ余りの酒で良い…しかし何処でケシの実を仕入れて来るのか」
ハンター「あれ?盗賊さん知らないの?」
盗賊「んん?お前知ってんのか?」
ハンター「森に居るスプリガンだよ…スプリガンの生息地にケシの花が沢山生えるんだよ」
盗賊「ほんじゃ冒険者達が取って来て売ってるって訳か?」
ハンター「メインはスプリガンから採取出来る魔石なんだけど…ケシの実も持って帰るね」
魔法使い「ケシの実は錬金術の材料にもなるから結構出回って居るわ?」
盗賊「なるほどな…お前も錬金術で麻薬作るんか?」
魔法使い「逆…私は毒消しと疾病予防の薬を作るの…麻薬は精製が面倒くさいから」
盗賊「しかしまぁ…アヘン酒も麻薬もちっとはびこり過ぎだ」
店主「麻薬は趣向品で女性なら皆持って居るわね…ホラ?」
盗賊「ぐは…お前もか」
店主「疲れた時に少し使うくらいですよ」
盗賊「やり過ぎんなよ?子供産めなくなるぞ?」グビ
魔法使い「え!?産めなくなる?…もしかして…」
僧侶「秘密が解けたですね?」
盗賊「秘密って何だ?」
魔法使い「人間の人口が増えない原因…シン・リーンの魔術師達が調べてる」
盗賊「麻薬をやり過ぎるとっていう話なんだが…」
僧侶「アヘン酒の飲み過ぎはどうなんでしゅかね?」
盗賊「知るか!!只…ありえん話では無さそうだ…お前等はまだ若いから止めて置け」
---------------
僧侶「盗賊さん…奥で偉そうに座って居るのは王様なのですか?」
盗賊「んぁ?あーアレは王様じゃなくて豪族の一人だ…成金の元海賊だから関わるな」
魔法使い「海賊が成金?」
盗賊「お前等知らんだろうが昔は金持ちの貴族が沢山居てな…財産を丸ごと海賊が奪ったんだ」
ハンター「そのお金で豪族になった?」
盗賊「土地を買い上げて王様気取りな訳よ…頭が逝かれてるからマジで関わらん方が良い」
ハンター「シン・リーンにはそういう豪族は見なかったなぁ」
盗賊「あそこは魔術師が偉いだろ…こっちの方は金持ちが偉い」
魔法使い「キ・カイも?」
盗賊「キ・カイはまた特殊な国で豪族の影響は小さい…オークさえ居なけりゃ一番デカイ国になってただろうな」
ハンター「オークとの戦争はまだ続いてる?」
盗賊「最近はオーク同士で争ってるらしいぜ?そのお陰でキ・カイも存続してる訳だが…」
ハンター「昔と同じかぁ…」
盗賊「昔?お前等南の大陸出身なんか?」
魔法使い「そうよ!!」
盗賊「そうか…てことは里帰りか…故郷が在るってのは良い事だ」
ハンター「盗賊さんの故郷は?」
盗賊「分からん…生まれた時から孤児で転々とだ…落ち着いたのは港町だなヌハハ」
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おぉぉこりゃまた若い女が要るじゃ無ぇか
赤毛にソバカス…田舎娘かぁ
まぁ良い!!お前達2人ちょっと金稼ぎし無ぇか?
魔法使い「ムッカ!!」
豪族の男「こりゃ毛も生えて居なさそうだなガハハハハ…」
僧侶「すごいお金持ちそうでしゅね?」
豪族の男「おぉぉ分かるか?俺と遊ぶならこの宝石やっても良いぞ?ガハハ」
僧侶「何して遊ぶですか?」
豪族の男「そりゃ大人のゲームよ…大人しくしてりゃ痛くなんか無ぇぞ?…どうだ?小遣い稼がんか?」
盗賊「ぬぁぁぁ悪りぃな…俺の連れなんだ勘弁してくれ」
僧侶「大人のゲームやるです!」ズイ
盗賊「おいおい待て!!揉め事起こすな!!」
豪族の男「本人が良いと言ってるんだお前はすっこんでろ!!」
魔法使い「盗賊さん…任せて」ヒソ
盗賊「放って置ける訳無いだろ」ヒソ
魔法使い「私は錬金術師よ…大丈夫だから」ヒソ
盗賊「お?」
僧侶「先にその宝石貰っても良いでしゅか?その後奥のお部屋で少しお酒飲むデス」
豪族の男「話が早そうだな?グフフ…ほら持ってけ」コロン
僧侶「頂きましたです」
豪族の男「じゃぁ奥に行こうかウヒヒヒヒ」グイ
僧侶「大人のゲームに行って来るです…皆さんは楽しんでいてくだしゃい」トコトコ
-----------------
盗賊「マジかよ…何企んでるか知らんが体売る事になっちまうぞ?」
魔法使い「今度の睡眠薬は強力だから大丈夫!」
ハンター「ハハハいつもこんな感じなんだ」
魔法使い「きっと30分で戻って来るよ…酒代稼げて良かった」
盗賊「その指輪見せてみろ…ふむ…金貨4枚って所だ…アホだなあの豪族」
魔法使い「普通に娼婦にお金払った方がよっぽど安いのに…店員さん!!この指輪で美味しい食事もお願い」
盗賊「おいおい!!あの豪族はまだこの店に居んだぞ?面倒になる前にズラかる…」
魔法使い「強力な睡眠薬…寝たら明日まで起きないわ」
盗賊「ヌハハハハ気に入った!!アヘン酒以外の酒持ってこーい!!」
店主「はい…」ニコ
ワイワイ ガヤガヤ
あちらのお客様からの差し入れです
どうか皆さんお楽しみ下さい
え!?マジ?あのおっさん!?
うぉぉぉ飲め飲めぇぇ!!
ワイワイ ガヤガヤ
----------------
僧侶「お待たせしたです」
魔法使い「上手く寝てくれた?」
僧侶「はい…お休みになったです」モジ
魔法使い「悪戯されなかった?」
僧侶「少し下の方を舐められて気持ちが悪いです」モジモジ
魔法使い「それで済んだなら儲けたわね」
僧侶「お土産持って来たです…ホイ」ドサ
盗賊「うお!!金貨か?」
僧侶「あまり沢山は入っていないですね」
魔法使い「あれ?なにか書簡が入ってる」
盗賊「面白そうだ…見せてみろ…フムフム」
魔法使い「何て書いて?」
盗賊「どうやらセントラルは西オークに食料を輸出してる様だな…豪族が運んでる」
ハンター「セントラルと西オークが同盟関係という事になる?」
盗賊「同盟かどうかは知らん…只な?フィン・イッシュは東オークに武器を輸出してる…」
盗賊「…つまり南の大陸でもセントラルとフィン・イッシュは対立関係だな…これは」
魔法使い「セントラルとフィン・イッシュの戦争は収束したって聞いたけど?」
盗賊「北の大陸では冷戦状態なんだ…小競り合いはまだ続いてんだよ」
ハンター「オーク同士が戦ってるのってもしかしてその両国のせい?」
盗賊「…かもしれん…この書簡は扱いに注意しないと俺らも狙われるぞ?返してこい」
僧侶「はい…金貨の袋はどうするですか?」
盗賊「中身をちょいと頂いて戻してくるだな…こういうのはな?首を突っ込まないに限る」
僧侶「分かったです…」
『酒場の前』
ヒソヒソ…
ハンター「ふぅぅぅ食った飲んだ…」
僧侶「酒場の店員さんと盗賊さんはあやしい関係でしゅかね?」
魔法使い「多分ね…あれは絶対出来てる」
ハンター「何話してるんだろう?」
魔法使い「あなた耳が良かったじゃないの?」
ハンター「ヒソヒソ話は聞こえるけど内容が…」
タッタッタ
盗賊「おぉ悪い悪い!!待たせたな」
魔法使い「あの人盗賊さんの彼女?」
盗賊「そういうのじゃ無ぇ…まぁ仕事だ」
ハンター「仕事?」
盗賊「俺はどの酒場にも情報提供してくれる奴と仲良くしてんだ…相場とか色々な?」
ハンター「そうか…今は船商人だったっけ…」
盗賊「俺の事はまぁ良いからよ…もう遅せぇから帰って寝るぞ」
僧侶「はいな!!」
盗賊「お前等は明日も訓練あるからしっかり休んどけ」
魔法使い「ええええ!!1日休むじゃ無かったの?」
盗賊「船乗りはな?お前等は船の掃除もある…傭兵にそんなラクはさせんぞ?」
ハンター「ハハ…寝よう」
僧侶「一気に疲れたです…」
魔法使い「お金払うから無しって訳に行かないの?」
盗賊「アホか!!今から他の傭兵募集なんか無理に決まってんだろ」
魔法使い「はぁぁぁぁ…帰って寝る」
-----------------
-----------------
-----------------
『小舟』
ザブン バサバサ
剣士「…」ギュッ ギュッ
剣士「よーし!!剣の鞘が無くなっちゃったけど…これで随分長くなった」
女オーク「背負うのだな?」
剣士「うん…ホルダーに引っかけてみて?」
女オーク「…」スチャ
剣士「柄とハバキを長くしてるからグレートソードと同じ様に使えるよ…重心はどう?」
女オーク「フン!!」ブン ブン
剣士「コバルトはやっぱり重たいから取り回し気になるなら柄の重さ変えるよ」
女オーク「片手では重いが両手では軽い」
剣士「もう少し柄を長くして握る位置調整出来るようにしようか?」
女オーク「その方が良い」
剣士「おっけ!鞘の材料がまだ余ってて良かった…貸して」
女オーク「…」ポイ
剣士「コバルトは錆びなくて良いね…鞘に収まって無い方が綺麗だ」
女オーク「剣士の銘を刻めるか?」
剣士「道具が無いから無理だなぁ…柄の細工が限界」
剣士「君は話すのが上手になってきたね?」
女オーク「人間の街で暮らせるか?」
剣士「それだけ話せたら暮らせるよ」
女オーク「私がオークだと直ぐに分かるのでは無いか?」
剣士「うーん…尖った耳と牙がねぇ…肌の色もちょっと濃いか」
女オーク「フィン・イッシュ以外では人間に襲われる…」
剣士「仲良くなれるのになんか悲しいね…」
女オーク「オークはみんな人間好き…みんな人間なりたい」
剣士「分かるよ…人間だってエルフが好きエルフになりたいって思う人が沢山居る…同じだね」
女オーク「エルフは人間嫌い…人間はオーク嫌いか?」
剣士「これってさ…もしかすると魔王の影響なのかもね?」
女オーク「魔王…まだ居るか?」
剣士「何て言うのかな…心の中の魔王?オークってさ…嫌いな種族無いの?」
女オーク「エルフの見た目あまり好きじゃない」
剣士「見た目ねぇ…そんな小さな事でつまらない争い起こしてたりするんだろうね」
女オーク「オーク戦う理由他に在る…オークの信じる神奪い合ってる」
剣士「それを言うと人間も同じだよ…精霊を巡って争ってたりする…もう居なくなっちゃったけど」
女オーク「オークの神…まだ東オークにある…西オークそれ欲しい」
剣士「オークシャーマンが狙っている?」
女オーク「そうだ…オークシャーマンは戦争起こす悪いオーク…私はもう従わない」
剣士「じゃぁ人間の街に逃げようか?」
女オーク「私行きたい…どうすれば石投げられない?」
剣士「見た目を少し変えるだけで良いと思う…変えても良いなら魔法を掛けてあげるよ」
女オーク「どう変える?」
剣士「尖った耳を直すのと…牙をちょっと小さく…それから肌の色をちょっと薄く」
女オーク「剣士は私を嫌いにならないか?」
剣士「大丈夫だよ姿がガラッと変わる訳じゃ無い…ちょっとだけさ」
女オーク「魔法掛ける良いぞ」
剣士「フフ…じゃぁ掛けて見るよ?変性魔法!」シュワワ
女オーク「…変わったか?」
剣士「イイね!!牙が無いだけで全然印象違う…オークに見えない」
女オーク「私はどう変わったか分からない…」
剣士「コバルトの剣に反射させてみてごらん?」
女オーク「…」ジーー
剣士「可愛くなったよ」
----------------
ザブ~ン バサバサ
剣士「陸地だ!!助かるよ!!」
女オーク「私今の場所分からない」
剣士「かなり東方向に流されたと思う…多分南の大陸の東の方だ」
女オーク「東の方行った事無い」
剣士「大丈夫だよ…陸地が見えれば海岸沿いに何処だって行ける」
女オーク「水在れば安心」
剣士「そうだね…雨が思う様に降らないし…兎に角一回上陸しよう」
女オーク「私人間に見えるか?」
剣士「何回聞く?そんなに自信無いかい?」
女オーク「体大きい心配」
剣士「大丈夫だって!僕よりちょっと大きいだけだから」
女オーク「石投げられる痛くない…でも心痛い」
剣士「投げられたら投げ返せば良いよ」
女オーク「…」
剣士「まぁ心配しなくて良いから」
『河口』
ザブン ザブン
剣士「川の向こう側に小さな村がある…あそこで話を聞こう」
女オーク「川の周りは植物も沢山ある…種集まる」
剣士「そうだね…火山灰振っても意外と育つんだね」
女オーク「ここは灰が少ない…火山近く植物何も無い」
剣士「う~ん…風じゃもうこれ以上進めないな…手漕ぎで川上ろう」
女オーク「私漕ぐか?」
剣士「大丈夫!僕漕ぐから帆を畳んで?」
女オーク「分かった…」グイ
---------------
剣士「えっほ…えっほ」ザブザブ スイー
女オーク「サーペント居る…気を付けろ」
剣士「ん?海蛇?」
女オーク「サーペント近付く私戦う」ガサリ スタ
剣士「おおお…あまり揺らさないで…君重いから船が揺れる」ザブザブ
女オーク「来る!!」ブン ザクリ
サーペント「キシャァァァァ!!」ザバァァァ
剣士「うわ!!でか…」
女オーク「とても危ない…船陸に寄せる」タジ
剣士「今サーペント切ったよね?」
女オーク「又来る…早く逃げる」
剣士「おけおけ!水に近付かないでね?」
女オーク「何する?」
剣士「海虫!行け!!」ドヨドヨ
女オーク「虫か?」
剣士「沢山の海虫がサーペントの血を追いかけるよ…見てて?」
ドヨドヨ バシャバシャ!
女オーク「水の中の黒いヌルヌルは全部虫か?」
剣士「うん…サーペントを全部食べられるとは思わないけど逃げて行くと思うよ」
女オーク「戦わないで済む一番良い」
剣士「他にも居るかもしれないから良く見てて」
女オーク「わかった…」
剣士「ふん!」ザブザブ スイー
『地床炉村』
ザワザワ
船で誰ぞ来よったぞ
2人降りて来るな?
また移民じゃろうか?
婆「お前さん方何処から来たのじゃ?キ・カイから逃れて来たんかいのぅ?」
剣士「あ…こんにちは…北の大陸から漂流して」
婆「なんと!?北から流れて来たちゅうんか?」
男「婆さん!病気持ちかも知れんであまり近づくな~?」
剣士「何日も海で漂流して今何処なのか分からないんだよ…助けて欲しい」
婆「そりゃ大変じゃったろう?ゆっくり休んで良いと言いたい所じゃが…」
男「北の奴らは病気に掛かってる奴が多くてな…お前等は掛って居ないだろうな?」ズイ
剣士「見ての通り元気だよ…武器は降ろして欲しいかな…」タジ
婆「随分体格の良い2人じゃな?兵士だったんかいの?」
剣士「ただの冒険者だよ…オークに掴まって逃げて来たんだ」
男「なんだとぅ!!」
婆「あの小舟はオークの使う小舟じゃな…2人で逃げて来たちゅう訳かいな」
剣士「うん…水と少しだけ食料を貰えたら船でキ・カイまで行こうと思う」
男「小舟で海流を遡るのは無理だ…この辺りは船でキ・カイまでは行けん」
剣士「ええ!?そうだったのか…」
婆「行くなら歩いて行くか馬車を待つかなのじゃが…」
剣士「船が無駄になっちゃうなぁ…」
婆「何か積んで居るのじゃろうか?」
剣士「水と食べ物だけなんだけどさ…ここに置いて行くのも勿体ないかなーってね」
男「う~む…」
婆「ウソをついて居る様には見えんな?信用して良さそうじゃが?」
男「ここらは木材が無くて小さな船でも貴重なんだ…船を置いて行くなら馬車を待つ間村に居ても構わん」
剣士「お!?」
婆「お前さん方は病気は掛って居らんか?」
剣士「僕はシン・リーンの魔術師で病気も治せるよ」
男「なにぃ!!」
婆「たまげたのぅ…村の救世主じゃ」
剣士「どういう事?」
婆「黒死病じゃ…他に熱病も流行って居るのじゃ」
剣士「治せるよ…案内してもらって良い?」
男「ちょいと俺は村の皆に話してくる」
婆「こっちじゃ…村の宿まで案内するで?」
剣士「良かった…宿もあるのか」
『細道』
ヒソヒソ ヒソヒソ
剣士「なんだ…土の家が結構あるじゃない」
婆「木材が無いでのぅ…竪穴式住居と言うのじゃ」
剣士「遠くからだと家だと分からなかったよ」
婆「屋根の干し草に植物が生えてしまって居るからじゃな…火山灰のせいじゃ」
剣士「崩れたりしないの?」
婆「皆それを心配しておる…木材が有ればもうちっと丈夫に作れるのじゃが…」
女オーク「剣士!?ナッツが沢山生ってる」
婆「ナッツはようさんあるで?採って構わんぞ?」
剣士「良いね!食べたい」
女オーク「採ってくる」タタ
婆「ここらは魚も植物も取れるで食べ物には困らん」
剣士「木材が無くてちゃんと料理出来る?」
婆「石炭はあるで石焼料理じゃな…宿に行けば食える」
剣士「僕達お金全然持って無いんだけど大丈夫?」
婆「村の衆の病気を治せば誰も文句は言わん筈じゃ…」
『洞穴の宿屋』
ヒソヒソ ヒソヒソ
病気を治せると聞いてきたが…虫を体に入れるんか…
あの虫平気なの?げふげふっ…
虫が毒を全部食っちまうんだとよ
でも気持ち悪いわ?どうしよう…
剣士「線虫!」ザワザワ ニョロリ
女「いぎゃぁぁぁ…」ガクブル
剣士「大丈夫だよ?痛くもなんとも無い…」
女「ひぇぇぇ…」タジ
男「これ大丈夫なんか?みんな怖がってるんだが…」
剣士「うーん…これ皆寝てるうちに全員やった方が早そうだな」
婆「こげな魔法じゃとは思わんかったわい」
剣士「この村には何人くらいの人が居るの?」
男「200人ぐらいだが全員虫に食わせるんか?」
剣士「夜寝てるうちに気付かれない様にやった方が抵抗も無いと思うんだ」
男「本当に効果あるんだな?」
剣士「軽い人なら直ぐに効果分かるよ…重い人は何日か掛かるかもだけど」
婆「このままでは評判が悪うなるだけじゃな」
剣士「僕は外で種集めて来る…」
男「まぁ仕方あるめぇ」
剣士「川の付近だったら木を生やしても良いよね?」
男「木?」
剣士「どんぐりが欲しいからクヌギの木を育てる…魔法で一瞬で育つんだ」
男「そりゃ願っても無い話だ…まぁここは俺が説明しとくから行って良いぞ」
剣士「女オーク…どんぐり拾うの手伝って?」
女オーク「分かった…」
『川辺』
サラサラ サラサラ
剣士「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」ザワザワ
女オーク「どんぐりをもっと埋めるか?」
剣士「うん…今ある奴全部成長させよう…新しいどんぐりは籠の中に」
女オーク「…」ウメウメ
剣士「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」ザワザワ
剣士「ふぅ…火山灰の土は育ちが良いなぁ…水も十分だ」
女オーク「どんぐり収穫する」ダダダ ドン!!
ボトボトボト バラバラバラ
剣士「木が足りないって言ってたから切り倒しちゃっても良いよ」
女オーク「コバルトの剣は痛まないか?」
剣士「大丈夫さ…両手剣の練習になって良いじゃない?」
女オーク「よし…思い切り使ってみる」グイ
コーン!! コーン!! コーン!!
剣士「どう?切れ味は?」
女オーク「3振りで切り倒せる…ふんっ」ドン!! メリメリメリ
剣士「どんどん切り倒そう…僕もどんぐり集める」ダダ
コーン!! コーン!! コーン!!
--------------
ヒソヒソ ヒソヒソ
木を生やしたのは良いが今度は切り倒していやがる…
良いのか放って置いて?何し出すかわからんぞい…
ぁぁぁ貴重な木を切り倒して…
虫に食わせる気なんだ止めさせろ!!
剣士「どんぐり集まったね?持って帰ろうか…」グイ
女オーク「…剣士…聞こえて居るか?」
剣士「君も耳が良いのか…聞こえて居るよ」ヨッコラ ヨッコラ
女オーク「石投げられる…」ノソノソ
剣士「虫を見られちゃったからね…仕方ないさ」
女オーク「剣士悪くない」
剣士「気にして無いよ…もう目立つ真似はよそう」
女オーク「切った木はどうする?」
剣士「文句言われそうだからあのまま放置かなぁ…」
女オーク「私達が荒らした様に見える」
剣士「うん…でもまぁ何かされる前に引き返した方が良さそう」
女オーク「…」ノソノソ
『細道』
ヨッコラ ノソノソ
婆「お前さん達…済まんが村の衆が騒いでおってのぅ…」
剣士「え?」
男「悪いが宿屋で寝泊まり出来ん」
婆「悪気が無いのは分かるでわしの家に来やーせ」
男「説明したんだがどうも信用されなくてな…悪い事は言わねぇ…明日の朝出て行くんだ」
剣士「あぁぁぁ迷惑かけちゃたみたいだね…」
男「貴重な木材確保してもらった礼はするから今日は婆さん家で寝て行ってくれ」
剣士「うん…贅沢は言わないよ」
婆「こっちじゃぁ…付いて来やぁ」ノソノソ
『竪穴式住居』
ヨッコラ ドッスン
婆「そのどんぐりは何に使うんじゃ?」
剣士「毒を食べる虫を生む為なんだけど…どうしようかな」
婆「病気が蔓延して居るのは変わらんで何とかしてやって欲しいのじゃ」
剣士「うん…皆掛かって居そうだよね」
婆「済まんのぅ…村の衆に理解されんで」
剣士「病気に掛かるとそういう物さ…お婆さんは大丈夫なの?」
婆「わしぁ少しオークの血が入っとるのじゃ…お陰で長生きしちょる」
女オーク「え!?」
婆「うん?お前さんもオークの血を引いとるんかいな?」
剣士「ハハまぁね?全然分からないでしょ?」
婆「そうじゃな?」
剣士「やっぱりオークは病気に強いのか」
婆「一度も病気に掛かった事が無いでそういう事なんじゃろうな」
女オーク「人間の街には他にもオークが居るのか?」
婆「街から離れて近くの集落で過ごしとるのが何人か居る…わしの親戚じゃ」
女オーク「オークも人間と一緒に生活出来る…」
婆「お前さんも人間と住みたいんか…では一つ忠告じゃ」
女オーク「何だ?」
婆「オークは性欲が旺盛でな?それが原因でもめ事を起こすのじゃ…じゃから人里離れとる」
女オーク「どういう意味だ?」
婆「男オークは沢山の女と関係を持ってしまう…浮気じゃな」
婆「女オークは一人の男を食らい尽くしてしまうのじゃが…お前さん達は奴隷関係なんか?」
女オーク「剣士は私の奴隷だ…」
剣士「まぁ…そういう事になってるハハ」
婆「剣士とやら?お前さんはオークの奴隷の意味を分かっとるかのぅ?」
剣士「え?奴隷は奴隷じゃないの?」
婆「人間で言う配偶者なのじゃが拘束が厳しいのじゃぞ?」
剣士「拘束?」
女オーク「剣士は私が守る!」
婆「お前さんが浮気をしよう物ならオークは怒りで我を失うのじゃ…そうやって一人の男を食らい尽くすのじゃ」
剣士「ちょちょ…聞いてない」
女オーク「剣士は私の物…」ギロリ
剣士「…」タラリ
婆「じゃが性欲も旺盛じゃで良い関係が続けば良いな…」
剣士「まいったな…配偶者だったのか…」
女オーク「剣士…私嫌か?」
婆「稀に見るべっぴんなオークじゃ…オークは奴隷をかわいがるでお前さんは幸運じゃぞ?」
剣士「ハハ…」チラリ
女オーク「…」ギロ
『深夜』
シーン
剣士「線虫!」
ザワザワザワ ニョロニョロ
婆「なんちゅうおぞましい生き物じゃろうか…」
剣士「お婆さんも毒を治してあげようか?」
婆「わしは遠慮じゃ…体に悪い所は無いからのぅ…」
剣士「調子良くなると思うんだけどなぁ…まぁ良っか…行け線虫!暴れて来い」
ザワザワザワ ニョロニョロ
女オーク「私の毒も治せ」ズイ
剣士「君もか…どこか調子悪い?」
女オーク「剣士欲しい…少し良くなれば良い」
剣士「それって毒なの?」
女オーク「体の虫騒ぐ…戦うと忘れる…でも今戦う敵居ない」
剣士「まぁ良いやおいで…線虫!女オークを食らえ」ザワザワ ニョロ
女オーク「…」ジー
婆「目の中からも虫が入って行くのじゃな…これは人間には受け付けんぞい」
剣士「でも病気はすっかり良くなるんだ…こんな事が出来る回復魔法は他に無いんだよ」
婆「あわわ…見ちゃおれん…わしは向こうで寝る」ノソリ
『早朝』
ブモモモーーーー ゲヒゲヒ
婆「これ早よう起きい!」ユサユサ
剣士「んぁ…ふぁぁ」ノビー
男「起きたか?木材の礼にヤクを2匹用意した…日が昇る前に村を出ろ」
婆「村の衆は病で気が立っとるのじゃ…へなげな事起こす前に行くが良いじゃろう」
剣士「迷惑かけてゴメン…」
男「海沿いに20日程行けばキ・カイに着くんだ…途中で商隊ともすれ違うだろうから上手くやれ」
剣士「女オーク!もう行こうか」
女オーク「水無い…どうする?」
男「途中で休憩所がいくつかあるからそこで汲め」
婆「ここにある水袋持って行き…2~3日分は入るで」チャプ
剣士「良かった貰う…ヤクを2匹も頂いて良いの?」
男「草が生えてるお陰でヤクはまだ沢山居るんだ…俺らはには木材の方が価値が高い」
剣士「それなら良かった…じゃぁ行こうかな」
男「うむ…村の衆に見つかる前に出ろ」
剣士「女オーク行こう!」グイ
女オーク「…」
婆「ほとぼり冷めたら又来ぃや」
男「そうだ…道中は人食いのオーガがうろついてるから気を付けな?」
剣士「分かったよ…いろいろとありがとう」
婆「じゃぁの?」ノシ
--------------
--------------
--------------
『荒野』
ブモモーー ノッシ ノッシ
剣士「…」チラ
女オーク「…」ニコ
剣士「フフフ…」
女オーク「何故笑う?」
剣士「荷物なぁ~んにも持たないでさ…2人っきりで宛ての無い旅」
女オーク「心配無い…剣士私守る」
剣士「なんか楽しいね?持ってるの種とどんぐりだけ…アハハ」
女オーク「剣士は目的無いか?」
剣士「あったんだけど…なんかどうでも良くなった」
女オーク「目的は何?」
剣士「パパとママの足跡を探すつもりだった…でもね?暁の墓所にあった壁画を見て悟ったんだ」
女オーク「何を?」
剣士「ずっと遠い所に行ってしまってもう会えない…」
パパとママは勇者だったんだ
時間を遡ってずーっと遠い過去まで行って魔王を退治したんだ
僕達が生きるこの世界をパパとママが作ったんだよ
僕はもう追いかけなくて良い
僕が行く道を行くだけ…この道をパパとママが用意してくれた
そんな風に悟ったんだ
剣士「そしたら突然君が現れた…いつの間に君と一緒に宛ての無い旅してる…なんか楽しい」
女オーク「もう目的は無い?」
剣士「う~ん…良く分からない…僕は精霊の声も聞こえないし何にも導かれてる気もしない…自由だよ」
女オーク「違う…剣士は虫使う…意味ある…私分かる…剣士大きな目的ある」
剣士「僕から感じた?」
女オーク「未来作る…剣士の役目…剣士の名前は未来…それ導き」
剣士「ハッ…」---僕は未来---
僕の次元が未来…
僕に託された未来…
僕は生きなきゃいけない
もう薄々知ってる…
この世界を導いて居るのはアダム
アダムを裁くのは僕にしか出来ない
だから蟲の道を選んだ
僕の目的は…
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『暁の遺跡』
フワフワ ドッスン
近衛「姫はいずこか?」
魔術師「遺跡の中でご神体を片付けて居られる」
近衛「考古学者をお連れした…降りても良いか?」
魔術師「お待ちだ…ササ下へ」
近衛「さぁ降りて下さい情報屋殿」
情報屋「ありがとう…手は要らないわ」
魔術師「先導します故続いて下され…」スタ
情報屋「ふぅ…この遺跡はシン・リーン遺跡よりも古い様ね」
魔術師「シン・リーンの先駆者達の墓だとか…」
情報屋「キ・カイよりは新しい…使ってる石はアダマンタイトでは無い…ドリアードと同時期かそれ以前ね」
魔術師「岩塩に埋もれて居るのはどういう事でしょう?」
情報屋「かつては海の下だったという事ね…何万年前なのか分からないけれど…」
魔術師「この場所は死海という場所だったと噂する者も居ます」
情報屋「あら?古代の知識を少しは持っているのね?」
魔術師「にわかですが…」
スタスタスタ
魔術師「姫はこの奥に居られる…私は外の警備を預かって居る故…」
情報屋「ありがとう…ここまでで良いわ」
魔術師「では…」スタ
魔女「おぉ!!声がすると思うたら情報屋か…待っておったぞよ」
情報屋「魔女…お久しぶりです…お変わりありませんね」
魔女「主はちと老けたのぅ…働き過ぎでは無いか?」
情報屋「盗賊がシャ・バクダの隠し通路を沢山発見したので遺物が出て来たのです」
魔女「書物が有ればわらわも読んでみたいのぅ」
情報屋「出て来ましたよ?時の王の時代からシャ・バクダの時代まで大体繋がりました」
魔女「これは話が長くなりそうじゃな…それは後で聞くとして…そなたに見てもらいたい物があるのじゃ」
情報屋「はい…ワクワクしています」
魔女「ついて参れ…」ノソノソ
『暁の墓所』
シーン
魔女「…この壁画じゃ…恐らく時の王の時代より前…そしてさらにドリアードの時代より前まで描かれておる」
情報屋「スゴイ…」
魔女「それだけでは無い…この朽ちた刀を見て見よ」
情報屋「…これは!!」
魔女「剣士が持っておった刀じゃろう」
情報屋「剣士…いえ2人の勇者が過去に飛んだ証拠だわ」
魔女「そしてな…残念な事にここに安置されておったご神体がオークに奪われた様じゃ」
情報屋「待ってください…シン・リーンの壁画は縦に連なっていて上から順に古い伝説…」
魔女「そうじゃ…勇者が次の世代の魔王になる画になっておった…しかしじゃな」
情報屋「下から順に読み解くのが正解?」
魔女「それを主に聞きたかったのじゃ」
情報屋「勇者は魔王を倒して過去に戻る…その繰り返しで世界を安定させた…そういう事が言いたいのね?」
魔女「それもあるが…次元は現在も過去もすべて繋がっておる証拠とも言えるのじゃ」
情報屋「その理屈は理解出来ない…でも目の前に朽ちた刀…これが事実」
魔女「主にこの石棺の文字が読めるか?」
情報屋「古代文字で暁の使徒ここに永眠…」
魔女「暁の使徒とは剣士らの事かいのぅ?」
情報屋「まさか?時の王が言い残した事と辻褄が合わなくなる」
魔女「ふぅむ…何かの関りがありそうじゃが謎が多いな」
情報屋「ちょっともう少し調べて時系列整理したいわ…」
魔女「外にキャンプを張らせる故ゆっくり調査して構わん」
情報屋「ありがとう…それからこの件は未来君は知って居るのかしら?」
魔女「未来は一人旅に出て居る…自分の道を歩ませたいでの…」
情報屋「そう…じゃぁ関係する女戦士は?」
魔女「女戦士はこちらに向かって居る筈じゃ…直に会えるじゃろう」
情報屋「じゃぁ調査を急がないとね…よし!がんばる」
-------------
まず大きな変化点は4000年前に起きたとされる地軸の移動
それ以前と以降とでは完全に文明が分かれる
ここ暁の墓所に記されて居るのは4000年前からドリアードの時代を過ぎて時の王の時代まで
魔女「それでは辻褄が合わんでは無いか…シン・リーンの壁画は何を表して居るのじゃ?」
話を続けるわ…
シン・リーンの壁画は実は時の王の時代の前では無くて…その後の事なのよ
時の王の時代から現代までの事を画に描いた予言なのよ
魔女「なぬ!!?予言であれほど正確に書けるのか?」
情報屋「私はシャ・バクダ遺跡の調査で核心を持ったわ…シン・リーンの壁画は当時の予言」
情報屋「そしてここの壁画も全部予言…つまり暁の使徒達は預言者なの」
魔女「まさか過去に戻った剣士ら2人が書かせた予言じゃと?」
情報屋「きっとそうね…そしてまだ続きがある」
4000年前に起きた地軸の移動の前に栄えた多くの文明は未踏の地にある
でも現代でも残されて居るのが古都キ・カイを始めとした南の大陸に集中してる
特に南の大陸ではウンディーネの伝説が強く残ってる
蛮族のオーク達が崇拝するのが精霊ウンディーネ…そしてホムンクルスが居たのも南の大陸
魔女「この壁画よりさらに過去の事は南の大陸にあるのじゃな?」
情報屋「恐らく…そして壁画のココ…この人物」
魔女「ブタ…いやこれはオークじゃな?」
情報屋「そう…オークが虫を率いてドリアードを倒した…そう見えるわよね?」
確証は無いけれど
精霊シルフは3000年前にすでにドリアードでアダムを復活させている
でもドリアードは魔王に支配された
だからオークと共に虫を使ってドリアードを倒した
そしてアダムを救出したけれど頭部を失った…ここの画よ?精霊の他に頭部の無い人
魔女「精霊の伴侶か…」
情報屋「恐らくその後エルフの森の一部となって森の声の主となったのよ」
魔女「エルフの森も魔王の影響を受けておったな…」
情報屋「だから精霊シルフはシャ・バクダへと距離を置いたの…全部辻褄が合う」
魔女「全容が読めてきたな…さて」
情報屋「あと一つ大事な事で分からないのが…黄昏の賢者」
魔女「時の王が残した話じゃな?」
情報屋「時の王の時代まで生きて居たのは確実…暁の使徒は滅んだけれど…黄昏の賢者は何処に?」
魔女「ちと話を戻すが…オークはどうやって虫を使役したのじゃろうな?魔術では高度な幻惑なのじゃが…」
情報屋「オークシャーマンは呪術使いよ?」
魔女「呪いか…そういえがここに居ったグールも呪われた人間だったのじゃが…」
情報屋「ふむふむ…もしかすると黄昏の賢者はオークシャーマンの可能性がありそうだわ」
魔女「わらわはオークの事は何も知らんのじゃ」
オークシャーマンは大体寿命が400年くらいらしいわ
世代交代をするときに処女の選ばれたオークに憑依すると聞いた
黄昏の賢者がオークシャーマンだった場合
事情を聴ける可能性はまだ残って居そうね
魔女「暁の使徒と黄昏の賢者は争っとったちゅう話じゃ」
情報屋「知ってる…ここのご神体を持ち去るくらいだから相当な理由がありそうね」
魔女「そうじゃ…ご神体はミイラになって居るのじゃがこれは甦る為にそうして居るのじゃろうか?」
情報屋「分からない…でもオークシャーマンなら蘇らせる事も出来るのかも知れないわね」
魔女「不死者にするのじゃな?それは甦るとは言わんが…」
情報屋「ああああああああああ!!!そういう事か…」
魔女「何じゃ急に!!びっくりするでは無いか!!」
剣士達2人…
量子転移という魔法で未来に行けるならとっくに戻って来る筈
戻って来ないという事は多分過去にしか行けない
でも未来に戻れる方法が一つある…ミイラになって眠る
魔女「魂が無ぅなってしもうては不死者で蘇っても意味は無いがな」
情報屋「魂は宝石に入れるでしょう?魔石みたいに」
魔女「…」
情報屋「この墓所はそういう場所よきっと…岩塩の中に置いて居るのも腐らせない為…」
魔女「これはイカンな…ご神体をオークから取り戻さにゃならん」
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------------------
暁の使徒編
完
『荒野』
ダダダ ブン! ザクリ
オーガ「ガウ!!ウオォォォォ!!」ドスドス ブン!
女オーク「フン!」ガガッ
剣士「リリース!」スゥ ザクリ
オーガ「ウガ…」パクパク
女オーク「剣士強い」
剣士「牙採取しておくからあそこの馬車見て来て」
女オーク「馬車持って行くか?」
剣士「うん…使えるならね…解体は直ぐに終わるから先行ってて」
女オーク「分かった…」タッタッタ
--------------
『馬車』
ゴソゴソ ドサリ
剣士「何か使えそうな物は?」
女オーク「傷んだ樽と箱…汚れた布だ」
剣士「車輪が一つ無いなぁ…何処行っちゃったんだろう?」
女オーク「使えないか?」
剣士「うーん…2輪に改造すればなんとかなる…1輪予備にしよう」
女オーク「馬車横に倒す…」グググ ドサ
剣士「ハハ君は力持ちだ…すごいな」
女オーク「車輪外す」グイ ガコン!
剣士「その金属の留め具無くさない様に…」
女オーク「ヤクの毛皮と骨落ちてる…これ使う」
剣士「毛皮を切りそろえてなめしておいて?…骨は後で道具作る」
女オーク「任せろ…」ザクザク
剣士「フフもう少し話し方が女らしくなれば満点だ」
女オーク「女らしく…分からない」
剣士「えとね?語尾に…わ…とか…ね…を付けるんだよ」
女オーク「やってみる…わ?」
剣士「そうそう!そんな感じ…続けて言って見て」
女オーク「やってみるわ…」
剣士「まぁ…ちょっと不自然だけど慣れれば良いと思う」
女オーク「おっけ…やってみるわ」
剣士「おおおお!!今の感じ!!」
女オーク「フフ…」
--------------
--------------
--------------
トンテンカン
剣士「よっし!!2輪馬車完成!!フンッ」グググ ドサ
女オーク「剣士も力強いわね」
剣士「これくらいはね…その毛皮乗せよう」
女オーク「乗せるね?」ドサ
剣士「樽と箱も持って行こう…よっこら!」ドスン
女オーク「水を汲みたいわ…」
剣士「休憩所が何処にあるか分からないんだよね…アロエの種が有ったらなぁ…」
女オーク「私は水浴びもしたい」
剣士「そうだよね?宿屋で水浴び出来なかったし…海まで行くのもなぁ…」
女オーク「日が落ちる前に休憩所あれば良いね」
剣士「ヤク繋いで移動しよっか」
女オーク「ヤクの鞍に馬車の柄を乗せるので良い?」
剣士「うん…僕達が乗るよりよっぽど軽い筈だからヤクも疲れないと思う」
女オーク「おっけ!」
剣士「フフ僕の真似?」
女オーク「おかしい?」
剣士「まぁね?でもそのままで良いよ…ヘンテコな話し方も良い感じさ」
女オーク「私ヘンテコか?」
剣士「いや…多分僕の話し方がヘンテコなんだ」
女オーク「ヘンテコ…」
剣士「アハハハヘンテコだなぁ…」
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『休憩所』
ブモモー ガタゴト ガタゴト
剣士「やっと見つけたぁ!!今日はここで寝よう」
女オーク「古いキャンプ跡があるわ?」
剣士「あんまり人が通らないんだね…まぁ誰も居ないなら水場も使い放題じゃない?」
女オーク「私水浴びしたい」
剣士「うん…僕は周りにどんぐり植えて虫除けの方陣貼って来る」
女オーク「虫除け?」
剣士「そうだよ…安心して寝られる様に虫に守らせるんだ」
女オーク「今日はゆっくりして良いの?」
剣士「でもね?クヌギの木の皮剥いで馬車を補強した後ね…オーツ麦の種も収穫したい」
女オーク「分かったわ…毛皮は私が洗う…その後ゆっくりする」
剣士「じゃ水浴び行っておいで」
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『1時間後』
トンテンカン トンテンカン
剣士「よっこら…せと!!」ドサリ ガサガサ
剣士「これで寝床は快適だ…布がもう少しあったらなぁ…」
女オーク「水浴び終わった…毛皮乾かす…火を焚いて良い?」
剣士「おっけ!!って…なんで全裸なの?」
女オーク「着る物全部洗った…誰も見る人居ない」
剣士「いや…僕が居るじゃ無いか」
女オーク「剣士には見られても良い…剣士私の体全部知ってる」
剣士「ちょちょ…焚火は僕が焚くから馬車の中に入っててよ」
女オーク「私隠れる?」
剣士「裸でウロウロするのは良くない…隠れてて」
女オーク「剣士は水浴びしないの?」
剣士「後で行くよ…僕も灰で真っ黒だし」
女オーク「ここの水場は湧き水だから綺麗…とても気持ち良い」
剣士「それは楽しみだ」
女オーク「剣士も着てる物全部洗うと良い」
剣士「うんそうする」
チッチッ シュボ モクモク
女オーク「剣士は炎の魔法は使わないの?」
剣士「触媒が無いのさ…まぁ火を起こすのは拾った火打石で十分だよ」
女オーク「綺麗な水ある…オーツ麦を葉に包んで蒸すおいしい」
剣士「お!?良いね…作ってくれる?」
女オーク「私やる…剣士水浴び行って良い」
剣士「わかった!!行って来る…楽しみだなぁひゃっほーい」シュタタ
女オーク「ウフフ…」
『焚火』
メラメラ モクモクモク
女オーク「オーツ麦出来てる…食べる?」
剣士「うん…君は味見した?」
女オーク「まだ…」
剣士「待っててくれたか」
女オーク「ウフフ…剣士も裸」
剣士「全部洗って来たよ…真っ黒だった」モジ
女オーク「恥ずかしいか?」
剣士「そりゃ恥ずかしいさ…なんかこんな荒野で2人裸なのは変だよ」
女オーク「これ食べて…」スッ
剣士「おぉ!!ホクホクだぁ」モグ
女オーク「美味しい?」
剣士「すごい久しぶりに調理した物を食べる…美味しい!」モグ
女オーク「焼いたどんぐりもある」スッ
剣士「殻も剥いたんだ?」ホクホク
女オーク「…」ニコニコ
剣士「君も食べたら?」
女オーク「うん…」パク ハムハム
剣士「む…牙が無いと食べ辛い?」
女オーク「少し…」ハムハム
剣士「知らなかった…オークは租借が苦手なのか」
女オーク「普通は牙で砕いて食べる…牙無いから食べ方分からない」
剣士「そう言えば硬いクルミとか食べるんだっけ…犬に似た感じなんだ」
女オーク「でも大丈夫…ちゃんと食べられる」ハムハム
剣士「フフ原始時代はこんな感じで木の実を食べていたんだろうなぁ…」モグ
女オーク「美味しいね」モグ
----------------
ズズーン
女オーク「え!?何?」スック
剣士「あぁ心配無い…遠くでワームが動いたんだ」
女オーク「ワーム?」
剣士「地生昆虫だよ…ワームに守られてるから僕達は安全だよ」
女オーク「ふぅ…そういう事ね」
剣士「毛皮なかなか乾かないね…今日はもうダメかな…」
女オーク「剣士?来て…」
剣士「んん?馬車?寝る?」
女オーク「ウフフ…」グイ
剣士「おととと…こりゃ葉っぱで隠さないと恥ずかしくてさ」
女オーク「私剣士と繋がるとき一番幸せ…他に何も要らない」
剣士「まいったな…ハハ」
女オーク「繋がるする私何回も気持ち良い…もっともっとしたい」
剣士「馬車で?」
女オーク「うん…」ニコ
剣士「まぁ良っか!このまま寝るか!!」グイ
女オーク「朝までずっと繋がってて良い…」
剣士「寝ない気?」
女オーク「冗談ウフフ…行こ」グイ
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『翌朝』
ヒュゥゥゥ サラサラ
剣士「朝日登っちゃった…ゆっくりし過ぎたか」
女オーク「剣士!着る物渇いてるよ」ポイ
剣士「あぁありがとう」パス
女オーク「毛皮も乾いてる…」ドサリ
剣士「あれれ?暗くて気付かなかった…君髪の色も薄くなってる…茶色だと思ってたけど赤毛なんだ…」
女オーク「昨日洗ったから…」
剣士「荷物は全部積んでくれたんだね?」
女オーク「水も汲んだ」
剣士「やる気満々だね」
女オーク「昨夜癒されたから…」
剣士「癒された?」
女オーク「剣士の満足そうな顔で癒された…私も満足した」
剣士「ハハぐっすり寝たよ…そんなので癒されるんだ」
女オーク「ウフフ…もう行く?」
剣士「あ…着替えたら行く…ちょっと待って」ゴソゴソ
女オーク「ヤク繋ぐね」タッタ
剣士「…」---大分人間らしくなってきた---
女オーク「揺れるよ?」グイ
剣士「どわぁ!!」ヨロ ドスン
女オーク「あ…」
剣士「2輪の馬車だから持ち上げ過ぎに注意して…ててて」
『数日後_商隊』
ガヤガヤ ガヤガヤ
あのデカイ女中々良さそうじゃんか
2人で旅してんだありゃ相当やり手だぞ?
ダメだ手ぇ出したら反撃食らうぞ?
剣士「…休憩所に丁度商隊が居て良かった…種無いか見て来る」
女オーク「お金は?」
剣士「オーガの牙が売れるんだ…そのお金で欲しい物買える」
女オーク「私も行く…キノコとか食材あるともっと美味しい料理作れる」
剣士「じゃぁ一緒に行こうか…おいで」グイ
旅商人「旦那ぁ!!2人で旅してんのかい?スゲーな?」
剣士「ハハまぁね?」
旅商人「何か欲しい物があるなら馬車覗いて行ってくれ」
剣士「このオーガの牙買い取って貰えるかな?」
旅商人「うお!!牙10本!!旦那達が狩ったんか?」
剣士「まぁね…」
旅商人「10本も買い取るだけ持ち合わせが無い…2本で40銀貨…どうよ?」
剣士「おけおけ…それで良い」ポイ
旅商人「がはは言って見るもんだな…こりゃキ・カイで高値で売れるんだ」ジャラリ
剣士「よーし…馬車には何があるのかな」
旅商人「雑貨だな…まぁ見てってくれ」
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旅商人「…硫黄に砂鉄…種と油に布…旦那は錬金術師かい?」
剣士「シン・リーンの魔術師だよ…触媒が無くてね」
旅商人「ほええ…てことはもう一人の大きな女は戦士って訳か…そりゃオーガも狩れるわな」
剣士「これ全部でいくら?」
旅商人「銀貨30でどうよ?」
剣士「おけおけ!!」ジャラリ
旅商人「毎度ぉ!!いやぁぁ今日は儲かるな…なんならオーガの牙もう一本買い取っても良いぜ?」
剣士「アハ…お願い」ポイ
旅商人「ほい!銀貨20」ジャラリ
剣士「まだ買い物出来るな…他の馬車も見て来る」
旅商人「おう!!旦那みたいな客を皆待ってるぜ?ウヒヒ」
『武器屋』
武器商人「らっしゃい…あんたはこのべっぴんさんの連れかい?」
剣士「うん…女オーク?何か良い物ある?」
女オーク「私ナイフ欲しい…ナイフあれば調理ラクになる」
剣士「僕も欲しいな…そうだハンマーも欲しい」
武器商人「あるよ~ホレ?炭素鋼のナイフだ買っていくかい?」
剣士「このナイフ2本と鉄のハンマーでいくらになる?」
武器商人「ナイフ一本銀貨5枚…ハンマーが10枚…合わせて20枚だ」
剣士「おっけ!!」ジャラリ
武器商人「おぉぉこんな所で商売出来るとは思わんかった…持って行きな」ポイ
女オーク「あと食材買う…お金あるか?」
剣士「あと銀貨10枚…十分だよね?」
女オーク「私に任せて…銀貨頂戴」
剣士「うん…」ジャラリ
女オーク「買い物フィン・イッシュでやった事有る…今もっと話せるから試したい」
剣士「イイね…見ててあげる」
女オーク「ウフフ…」
『食材屋』
食材商人「ういぃぃ…この馬車は食い物積んでんだ…買うんか?」
女オーク「中を見て良いか?」
食材商人「欲しい物あるなら籠ん中入れてくれ…秤り売りだでな?」
女オーク「芋と人参…乾しキノコ」
食材商人「ニンニク買って行かんか?沢山あるで安いぞ」
女オーク「じゃぁニンニクも…それから…む?この実は何の実」
食材商人「あぁそれはケシの実だ…そいつはちっと高いぞ」
女オーク「剣士!ケシの実ある…要るか?」
剣士「ケシの実かぁ…錬金術の材料になるけど僕には必要無いなぁ…」
女オーク「分かった…後は木の根…何の根?」
食材商人「そりゃゴボウだ…あんたら肉は要らんのか?」
女オーク「肉は食べない」
食材商人「けっ…何だよ根菜ばかりか…えーと全部で銀貨4枚」
女オーク「はい…」ジャラリ
食材商人「あんたらデカイ体してベジタリアンかよ…てっきり肉をがっつり買っていくと思ったわ」
女オーク「これで十分!ありがとう」
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『馬車』
タッタッタ
剣士「残りの銀貨で布のローブ買って来た…これで灰で汚れない」ファサ
女オーク「お揃いね?」
剣士「フード被って見て?」
女オーク「…」ファサ
剣士「…」ファサ
女オーク「思い出したわ…こんな格好してキ・カイで買い物した」
剣士「そう!!それが言いたかった…あとマスクがあったら昔と一緒!もう一回キ・カイで買い物しよう!!」
女オーク「剣士目がキラキラしてる…」
剣士「分かる?なんでだろう?君と居るとすごく楽しい」
女オーク「私も嬉しいわ」ニコ
剣士「僕さぁずっと魔術の修行してて色んな事忘れてた…失った時間を今取り戻してる」
女オーク「良かった…本当に剣士を見つけられて良かった」
剣士「ずっとこんな生活でも良い気がしてきたよ」
女オーク「…」ジー
剣士「あれ?どうしたの?何かおかしい?」
女オーク「剣士昔と同じ…かわいい」
剣士「ちょっと止めてよ…かわいいって男に対しておかしいよ」
女オーク「かわいい…撫でたい」ナデナデ
剣士「ちょちょちょちょちょ…」
女オーク「ウフフ…」ムギューーー
剣士「ちょい暑苦しいって…」ジタバタ
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【古都キ・カイ】
ザブン ガコン ギギギー
おーし!!下船準備だぁ
船乗りは荷下ろしを始めてくれぇ
ヤードに降ろしたら解散して良い
僧侶「よっこら…よっこら…」ノソノソ
盗賊「はぁぁぁ…とうとう傭兵の仕事終わっちまったな?お前等どうする?お宝売るなら買い取れる奴紹介するぜ?」
ハンター「お願いしようかな?特に宛てがなくて一先ず宿屋に行こうと思って居たんだ」
盗賊「おぉ!!宿なら心配要ら無ぇぜ?」
ハンター「それは助かる…持ち合わせも少なかったし」
魔法使い「またこき使われないでしょうね?」ジロ
盗賊「ヌハハ訓練はもう無しだ…いやしかしお前等のお陰で楽しい航海だったわ」
魔法使い「もう帆の出し入れは懲り懲り…」
盗賊「大分スマートになったじゃ無ぇか!手ぇ抜くとまたブタに戻るぞ?」
魔法使い「ブタ!?ちょっと失礼よ!!」
ハンター「まぁまぁ無事に航海が済んだんだから良いじゃない?」
魔法使い「僧侶聞いた?私達の事ブタだって!!」
僧侶「ブヒ…」
盗賊「荷馬車用意させっから荷物はそこに積んでくれ…寝泊まり出来る所まで運んでやる」
ハンター「魔法使いは荷物が多いから早く運ぼうか」
魔法使い「あ!!ポーションは売り物だから気を付けて」
ハンター「分かったよ」
『荷馬車』
ドサ ゴソゴソ
魔法使い「これで最後よ…よいしょ!」シュタ
ハンター「お?やっぱり訓練のお陰で足取り軽そうだね?」
魔法使い「ロープ撒くのに比べたら随分軽作業ね」
僧侶「ほっ!!」ピョン クルリン シュタ
盗賊「ようし!乗ったな?出すぞ…」グイ
ヒヒ~ン ガタゴト ガタゴト
盗賊「僧侶は体が小さいから訓練で見違える効果が出たな?」
僧侶「分かるですか?」
盗賊「脚力が付いて体重絞られてんだ…そら早くなるわ」
僧侶「私は小さくても戦士出来るですかね?」
盗賊「速さ生かせば良い…ガチンコじゃ当たり負けするが…小さい分ちょこまかとな?」
ハンター「僧侶はレイピアが合ってるね」
盗賊「うむ…教えたエペギャルドをしっかり反復しとけよ?」
僧侶「蝶の様に舞って…蜂のように刺す!!でしゅね?」
盗賊「ヌハハまぁそれで良い…しかしまぁキ・カイは本当埃っぽい街だな…空気が悪りぃ」
魔法使い「火山灰がねぇ…」
盗賊「大分マシにはなったんだがどうもここに住む気にはならん」
ハンター「地下の方は?」
盗賊「お前下水道に住みたいと思うか?」
ハンター「なるほど…海の方がマシか」
盗賊「うむ…お天道様の下のが気持ち良いだろ?そう思ってる奴が船買うんだ」
ハンター「…という事は船は高いって言う事かな?」
盗賊「お前等の持ってるお宝で買えん事も無いが時期を待った方が良いだろうな」
ハンター「気球を買うのが先かぁ…」
盗賊「気球はよ…置き場所に困るんだ…買うなら大型のやつ買って住める様にするだな」
魔法使い「住めた方が良いわ?ハテノ村行っても初めは済む場所に困るでしょう?」
盗賊「お?お前等ハテノ村行くんか…昔行った事あんぞ」
ハンター「僕達はハテノ村の出身なんだ…故郷に帰るっていう感じだよ」
盗賊「あそこは火山が近い…今どうなってんだろうな…」
ハンター「このお宝で復興させようと思ってる」
盗賊「おぉそりゃ良い目標だ!酒場出来たら飲みに行ってやる」
僧侶「私が酒場の店長やるです」
盗賊「ほーう?楽しみだ」
『商人ギルド』
ワイワイ ガヤガヤ
買い取りあっち!商隊こっち!
競売の受付は向こうね!
盗賊「よう娘達!帰って来たぜ?」
受付「あ!!盗賊…良かった物資少なくなってたんだ…商船の荷物上げてる?」
盗賊「ヤードに上げた…予定通り品目揃ってる」
受付「よしよし…若い衆に取りに行かせる」イソイソ
盗賊「ところで客を3人連れて来たんだ…上の部屋空いてるか?」
受付「ガラガラだから好きにして」
盗賊「あとよ?商人どうしてる?下に居んのか?」
受付「相変わらず籠りっきり…呼んでも出てこないよ」
盗賊「ちっとな…超高額取引があんのよ…上で待ってるから取り次いでくれ」
受付「超高額ってどんくらい?」
盗賊「んんんん…ハッキリ言って分からん…ただな超古代の品物だ」
受付「アハハ商人の動かし方分かってるね?」
盗賊「頼むわ…俺は3人を上に案内してくる」
『大部屋』
ガチャリ バタン
盗賊「この部屋使って良いぞ…て散らかってんな」
ハンター「こんな良い部屋を自由にして良いの?」
盗賊「ここは取引待ちの商人達が使う部屋なんだ…んぁぁ食いカスが散らばってんなアイツも使ってんのか」
ハンター「アイツ?」
盗賊「お前等のお宝を買い取れる奴だ…名前は商人て言う」
僧侶「片づけるでし…」スタタ
魔法使い「あれ?この薬品って…」
盗賊「それは残しておいてくれ…多分エリクサーだ」
魔法使い「ええ?スゴイ…ここでエリクサーの調合を?」
盗賊「お前錬金術師だったな?エリクサーの作り方教えてやるか?」
魔法使い「あなた知ってるの?」
盗賊「まぁな?昔大量に作らされた」
魔法使い「知りたい!!」
盗賊「ようし…いくらで買う?」
魔法使い「うっ…」
盗賊「俺と一晩付き合うか?」
魔法使い「ムリ!!爺はムリ!!」
盗賊「ケッ…尻の青い女なんざ興味無ぇ!!そうだな…もうしばらく傭兵ってのはどうだ?」
魔法使い「う…うむむむ」
僧侶「商談成立~♪」
盗賊「ヌハハ訓練楽しみだな?」
魔法使い「ぐぬぬぬ…早く教えて」
盗賊「材料がだな?クヌギの樹液と松脂…ほんで蒸留酒…あと添加物にアレとコレと…」
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----------------
魔法使い「…フムフム…全部の工程を蒸留して作るのね?」
盗賊「只な?クヌギの樹液が入手しづらい上に大量に必要になるんだ」
魔法使い「クヌギ以外で試したことは?」
盗賊「俺ら素人だからよ…言われた通りにしか作った事無ぇ」
魔法使い「応用が利きそう…代替品で似た効果を持たせる事が出来るかもしれない…」
盗賊「まぁそっから先はお前の仕事だ」
魔法使い「…そうか蒸留で不要な成分を分けて反応させるのね…毒と毒を打ち消すのも割合の問題かぁ…」
ガチャリ バタン
商人「やぁ!!話し聞いて飛んできたよ」
盗賊「おぉ商人!!相変わらずだな?」
商人「この3人がお客さんかい?」
盗賊「まぁフードで顔隠さんでも良いぞ?あやしい奴らでは無い」
商人「一応用心しているのさ…それで取引したい物はどれかな?」
盗賊「まぁ慌てんな…紹介する…こいつがハンター…職業は俺と同じお宝ハンターだ」
ハンター「どうも…」ペコリ
盗賊「ほんでこっちの2人が魔法使いと僧侶…俺のペットだ」
魔法使い「ペット!?え…なんでそうなってるの?」
商人「ハハよろしく…僕はオーナーの商人さ」
僧侶「商人さんは極悪闇商人なのですか?」
商人「極悪とはヒドイなぁ…まぁでも闇ルートの取引が専門だよ」
盗賊「お前等…例のトレジャーボックス見せてやれ」
ハンター「あ…うん…ちょっと待って」ダダ
商人「そうそう…紹介忘れてた…この子が僕の相棒さ…ラヴって言うんだ」
機械の犬「ワン…」フリフリ
魔法使い「機械の犬…ね」
商人「馬鹿にしないでね?僕達の誰よりも賢いから」
僧侶「かわいいですぅ~触っても良いでしゅか?」
商人「構わないよ…悪戯しないでね」
機械の犬「クゥ~ン」トコトコ
ハンター「持ってきたよ…」ガチャガチャ カチャリ
盗賊「驚くなよ?この若さでがっつり宝持っていやがる」
パカッ
商人「へぇ?魔石が沢山あるじゃ無いか…スゴイね」
盗賊「それじゃ無ぇ…金貨あんだろ…4枚」
商人「…これか」スッ
盗賊「何だか分かるか?」
商人「ラヴおいで…この金貨いつの時代の金貨か分かる?」
盗賊「お?会話出来るんか?」
商人「イエスかノーの2択だけだけどちゃんと意思は通じるんだよ…ラヴ?この金貨は価値有りそうかな?」
機械の犬「ワン!」
商人「おぉ!!ちょっと一枚貸しておいてもらって良いかい?」
ハンター「うん…構わないよ」
商人「調べるのに少し時間が掛かるだろうからゆっくりしておいて」
盗賊「商人!それとよ?このお宝で気球が買いたいんだとよ」
商人「ええと…こういうのはどうかな?魔石は全部僕が買い取る…その代わり気球を手配してあげる」
盗賊「大型の気球が良いらしい」
商人「ハハそれなら問題無い…魔石が不足してて大型の気球は運用しにくいから安くなってる」
盗賊「木材の不足か?」
商人「そうだね…木材が無いから魔石で代替してるんだけど絶対量が足りてないんだよ」
ハンター「気球買っても飛べない?」
商人「石炭はあるから心配しなくて良い…買える場所が限定されるだけだよ」
ハンター「なるほど…長距離飛行が出来ない感じか」
商人「そう」
魔法使い「ハテノ村は石炭も採れるから大丈夫」
商人「君たちはハテノ村に行きたいんだ?」
ハンター「うん」
商人「ちょうど良いな…硫黄の取引相手が増えそうだ」
ハンター「硫黄?」
商人「硫黄を流通してくれたら生活の保障はしてあげるよ」
ハンター「おぉぉ!!石炭で気球動かして硫黄を運ぶ…その代わり食料を貰う」
商人「そうそう…そういう感じ」
僧侶「復興出来るでし!!」
商人「話は纏まったね…まぁゆっくりしておいて良いよ…じゃぁ後で」スタ
-----------------
魔法使い「私はポーションと岩塩を売ってお金を稼いでくる」
僧侶「盗賊さん…酒場に遊びに行きませんか?」
盗賊「おお?そりゃ願っても無い話だ…ちっと行くか?」
ハンター「僕は荷物の整理しておくから行って来て良いよ」
盗賊「よっし!肩車してやる…乗れ」グイ
僧侶「はいなー」ピョン シュタ
盗賊「揺れるぜ?しっかり掴まっとけ!!」ダダ
僧侶「うほほーい」
魔法使い「あの2人…酒好きの親子みたい」ボソ
ハンター「相性良いんだろうね?立ち合いも良くやってたし」
魔法使い「さてと!!ポーションいくらで売れるか楽しみ♪」
ハンター「もう持ち合わせ無いから君の稼ぎが頼りだよ」
魔法使い「任せて!!今度のポーションは自信あるから」
ハンター「疾病予防だっけ?」
魔法使い「疾病遅延効果も乗せたの…黒死病に効く筈」
『酒場』
ドゥルルン~♪
…月の裏側を夢て彷徨う僕らは~♪
黄昏の向こう側にある暁を探す夢の旅人~♪
この星のこの僻地で君を呼ぶ…風に乗せ~♪
盗賊「はぁぁぁやっぱこの雰囲気よ…」
僧侶「降ろしてくだしゃい!」
盗賊「おぉ悪い悪い…」
店主「いらっしゃいませ盗賊さん」
盗賊「景気良さそうだな?」
店主「お陰様で…ハチミツ酒入荷しました…盗賊さんが運んでくださったのですね?」
盗賊「ヌハハバレたか…」
店主「飲んで行かれますか?」
盗賊「ハチミツ酒はたらふく飲んで来た…そうだな芋で作ったアレくれ」
店主「かしこまりました芋酒をご用意致します」
盗賊「僧侶!お前は何飲む?」
僧侶「同じで良いでし」
店主「お若いですね?お子様でしたか?」
盗賊「そんな様なもんだ…中々酒に強くてな見所がある」
店主「それはそれは…」
盗賊「ところで何か面白い話聞けて無いか?」
店主「キ・カイ近隣に新しく古代遺跡が発見されたくらいですかね?」
盗賊「ほう?10年前から調査されてるやつの関係だな?」
店主「そうです…その付近の調査で傭兵の募集もありますよ」
盗賊「ミサイルっつったけな?クソでかい砲弾が北の大陸まですっ飛んでったんだよな?」
店主「キ・カイの地下ではそういう遺物の探索で盛り上がっていますね…ただオークが襲ってきて危ないとか」
盗賊「ちっと俺も稼ぎに行きてぇな」
店主「チカテツ街道は全部封鎖されていますが1番街道だけ抜け道があるらしいです」
盗賊「おぉ!!そういう情報はありがてぇ」
店主「一番街道のアクセサリー商人にお金渡せば教えてくれるとの事」
盗賊「聞いたか?僧侶!ワクワクしてくんな」
僧侶「はひー」グビ プハァ
---------------
---------------
---------------
魔法使い「居た居た…もう!探したんだから!!」
盗賊「おぉお前も飲みに来たんか?」
魔法使い「商人が僧侶を呼んで居るのよ…」
僧侶「ほえ?私に何の御用でしゅかね?」
魔法使い「なんかね?あの金貨と宝石を入手した経緯を詳しく記したいみたい」
盗賊「ほう?やっぱ何かありそうだな?」
魔法使い「どうも金貨自体の価値は重さに比例するだけだけど…どうやって保存されていたかの情報の方が価値が高いみたい」
僧侶「金貨は私が拾ったです」
魔法使い「うん…詳細の地図と記録を書いて欲しいだって」
僧侶「わかったです」
盗賊「そういう事なら戻って良いぞ?ただな?明日はお宝探しに行くからそのつもりでいろ」
魔法使い「え!?どういう話?」
盗賊「まぁ明日話す…先に商人の件を片付けて来い」
魔法使い「そう…僧侶いくわよ」グイ
僧侶「はいなー」スタタ
『商人ギルド_大部屋』
ガチャリ バタン
商人「あー戻って来たね…お楽しみの所済まないね」
魔法使い「ハンターは地図と遺跡の見取り図書けた?」
ハンター「うん…あとは石棺の位置と…覚えて居る限りの宝石の場所…それから金貨の場所」
僧侶「覚えてるですー…えーと」カキカキ
魔法使い「私も拾った分書き加えるわ…ハンターちょっと宝石並べて」
ハンター「うん…」ゴソゴソ
----------------
----------------
----------------
ここの部屋に壁画があったんだね?
そうだよ…こんな感じの画だった
出来る限り詳しく書いて
フムフム…よしこれは高値で取引できる
宝石を一つづつ見取り図に接着しよう…これ使って
樹脂でしゅか?
うん…それで石棺の位置に宝石を固定して
商人「僕はその見取り図を羊皮紙に書き写すから気付いた事をどんどん書き足して」
ハンター「そうだ!天井は全部岩塩だった…」
商人「そういう気付きだよ…高さとか温度とか…何でも良い…兎に角情報があればあるだけ良い」
僧侶「小人のミイラも居たですね」
商人「小人?どれくらいの?」
ハンター「手のひらに乗るくらいだよ…」
商人「ノームか…」
魔法使い「オークのミイラもあったわよ?」
商人「どういう事だ?接点が無い筈なのに…まさかノアの箱舟じゃないよな?…イヴ!どう思う?」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「分かんないか」
魔法使い「この見取り図をどうするつもり?」
商人「この原本は誰にも渡す気は無いよ…僕が写してる写本を使ってキ・カイ国と取引きさ」
魔法使い「取引き?何と?」
商人「キ・カイではね新しい遺跡がいくつか発見されてるんだ…そこに立ち入って有利に事を進めたい」
僧侶「お宝さがしでしゅね?」
商人「そういう事になるかな…」
ハンター「この金貨はどうするの?換金できない?」
商人「うーんまず買い取れる人が居ないんだ…かと言って安く売るのは勿体なさ過ぎる」
ハンター「取引で見せる為に使う…そういう事だね?」
商人「それが一番良い使い方だね…1つは貸しておいて欲しい…あと3つは3人で分けてお守りにでもしたら良い」
僧侶「この金貨はどう珍しいですか?」
商人「約6000年前に流通していた金貨だよ…それがどうして北の大陸に有ったのかという情報に価値がある」
ハンター「なるほど…欲しい人に情報を売るのか」
商人「でもね?情報を売ったとしてもカードはここに在る…この宝石だよ…だからこれは絶対に売らない方が良い」
ハンター「危なかったね…売っちゃう所だった」
僧侶「装飾品は一つ売っちゃったですね…金貨10枚でした」
商人「どんな装飾品?もしかして指輪?」---まさか祈りの指輪じゃないよな---
僧侶「首飾りでし…宝石は付いて居なかったでしゅ」
商人「まぁ売った物はしょうがない…多分歴史的価値が相当高い物だよ」
ハンター「ドーーーン…うぅぅ」
魔法使い「あぁぁケチケチ病が始まった…」
『夜』
ガチャリ バタン
盗賊「うぃぃぃ帰ったぞ…」ヨロヨロ ドタ
魔法使い「あら?同じ部屋?」
盗賊「俺の寝床確保すんの忘れてたんだ…細かい事は言いっこ無しなヌハハ」
僧侶「お酒臭いですぅ」
盗賊「お前が居無ぇから酒がマズくなった」
僧侶「私は酒の肴でしゅか?」
盗賊「娘と酒を飲む楽しみってのがだなムニャ…てかまだ地図書いてんのか?」
僧侶「もうすぐ終わるです」
盗賊「商人何処行った?」
魔法使い「下に戻って行ったわ…遺跡の見取り図の写し作るって」
盗賊「今書いてんのは何だよ?」
魔法使い「暁の遺跡周辺の詳細地図よ…壊れた馬車の位置とか…休憩できる場所の位置とか」
盗賊「なるほどな…全部情報を売り物にする訳だ」
ハンター「商人はそういう情報を売る商人なの?」
盗賊「おう…だから闇商人と言われてる…他にも色々知ってんぞ?」
魔法使い「最後まで顔を見せてくれなかった」
盗賊「気にすんない!そういう奴だ」
『翌朝』
んがががが ぐぅ
魔法使い「…」ジョロジョロ
盗賊「がらがら…げふげふっ…ふごーー」
魔法使い「どうする?このジジイ…」
僧侶「ウルサイですねぇ…目覚め草無いですか?」
魔法使い「全部使った」
ガチャリ バタン
ハンター「食事買って来たよ!パンとチーズ…それから燻した魚」ポイ
魔法使い「放っといて食べよ」モグ
ハンター「今日お宝さがし行くって言ってたよね?」
僧侶「はいー…でも盗賊さんが起きないと」
ハンター「宝石が売れないって分かったからお宝ハント行きたいなぁ」
魔法使い「ちょっと資金が心許ないね…」
ハンター「うん…君のポーションはどれくらいで売れた?」
魔法使い「岩塩と合わせて全部で金貨8枚…まぁまぁ」
ハンター「稼ぎは君頼りになっちゃうなぁ」
僧侶「ハテノ村に戻る前に100枚くらい稼ぎたいですね」
ハンター「そうだね…他の物資も必要になりそうだし」
魔法使い「ここに居れば寝泊まりタダだからポーション売って稼げば少しづつ溜まるけど…」
僧侶「チカテツ街道1番の奥に抜け道があるって言ってたです」
ハンター「その情報だけじゃ街道の奥を彷徨っちゃうな…オークも居るだろうし危ない」
魔法使い「ジジイ起こそう…」ユサユサ
盗賊「ふご?んががが…」
ガバッ!!
魔法使い「うわ!!」
盗賊「…」キョロ
僧侶「やったぁ!!起きたです」
盗賊「今何処だ?バリケードは作り終わったか?」
魔法使い「え!?何の話?」
盗賊「夢か…お前等…ハテノ村の子供達だな?」
ハンター「え?そうだけど…寝ぼけてる?」
盗賊「あぁぁ悪い…混乱してる…えーとここはキ・カイだな」ブツブツ
魔法使い「食事あるよ?要る?」
盗賊「水くれぇ…喉がカラカラだ」
僧侶「いびきがウルサイかったです」
盗賊「悪りぃな…すっかり寝過ごした」---何だったんだ?---
俺らはハテノ村で最後まで生き残った
バリケード作って魔物の攻撃に耐え抜いた
だが病気が蔓延した
赤毛のソバカス娘…お前覚えてるぞ
俺を庇って死んじまった
魔法使い「はい水!!」
盗賊「おぅ…ごくっごくっ」グビグビ
まだ終わって無ぇ…
まだ生き残りが掛かってる
そうだ薬だ…薬を埋めた
僧侶「どうしたですか?固まってるです…」
盗賊「お前!!生きてるな?」ユサユサ
僧侶「盗賊さん変です~あわわ」
盗賊「生きてりゃ良い!!俺より先に死ぬのは禁止だ」
僧侶「何の事だか分からないでしゅ…お宝さがしはどうするですか?」
盗賊「おう!そうだったな!!今から行くぞ…まず地下に降りて物資調達だ」
僧侶「ほい来た!!」
『商人ギルド』
ワイワイ ガヤガヤ
商隊受付けてまーす!並んで並んでー
商船に乗る人は向こうで受け付けて
盗賊「娘!ちっと俺ら2~3日留守にする」
受付「ええ?もう行くの?」
盗賊「商人に伝えといてくれ」
受付「何処行くの?」
盗賊「地下に降りて遺跡探索だ…お宝探しよ」
受付「あっそ…ほんで気球の買い付けは進めてて良いんだね?」
盗賊「おう!でかい奴な?」
受付「しばらく掛かると思うからそのつもりで居て」
盗賊「わーってるわーってる…じゃ行って来るな?」ノシ
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盗賊「お前等金どれぐらい持ってる?」
ハンター「僕と魔法使いの金貨合わせて10枚くらいだよ」
僧侶「私も豪族から取った金貨5枚あるです」
盗賊「ふむ…俺のと合わせて全部で20枚か」
魔法使い「どうする気?」
盗賊「ちっと情報持ってる奴に金を渡さにゃならんのだが…」
魔法使い「えええ…そんなのに使うのイヤ」
僧侶「盗賊さんあまりお金持って無いのでしゅね」
盗賊「俺は全部使っちまう性分でな」
魔法使い「ハンターとは逆ね」
ハンター「ハハ倹約家と言って欲しい」
魔法使い「あなたはケチなの!どケチ!」
盗賊「まぁなんだ…傭兵契約は解除すっから金貨5枚ほど工面してくれ…金はエリクサー作って稼げな?」
魔法使い「う…人の弱みを…」チャリン
盗賊「ようし!金貨10枚も握らせりゃ抜け道はなんとかなる…後は2~3日分の食料と物資だ」
ハンター「行く場所は分かってる?」
盗賊「おう!チカテツ街道の地図持ってんだ…見ろ…1番の奥のこの区画に開かない扉があるらしい」
ハンター「おぉ!!」
盗賊「そこまで行くのにトロッコを使う…片道5時間だな」
魔法使い「オークは出ない?」
盗賊「ゾンビの巣窟なんだとよ…20年前の闇の時に死んだ連中がその辺で彷徨ってる」
僧侶「ゾンビなら自信あるです」ズイ
盗賊「俺はもう歳だから宛てにすんなよ?お前等がメイン戦力だ」
魔法使い「あーーなんかやる気出て来た」
盗賊「ほーう?お前は期待されると力出すタイプか…槍術を発揮してみろ」
ハンター「久しぶりのお宝ハント…楽しみだ」
盗賊「俺もだ…よし地下に降りてチカテツ街道1番に集合な?物資調達は各自…昼過ぎには出発するぞ」
僧侶「はいなー」
盗賊「じゃ…後で」ノシ
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『チカテツ街道』
ガヤガヤ ガヤガヤ
盗賊「しかし良くこんな所に住んでんな」
僧侶「外より埃っぽく無いでし」
盗賊「見て見ろ…ゴミがそこら中にあんだろ…本当下水だわ」
僧侶「ハンターさんと魔法使いさん遅いでしゅねぇ」
盗賊「ハンターはケチな分買い物が遅い…魔法使いは無駄使いが多い…こんな感じだろ」
僧侶「当たりです」
盗賊「お前は食料ちゃんと買ったか?」
僧侶「種でし!!」ビシ
盗賊「種食うんか?」
僧侶「成長魔法で育てるです」
盗賊「おぉ!!そりゃ良いな…肉は育たんか?」
僧侶「大豆が肉の代わりです…上手に焼けば肉の味がするです」
盗賊「こりゃお前と2人でも行けたかも知れんな」
僧侶「戦いは苦手なのでハンターさんと魔法使いさんが必要でし」
盗賊「教えたエペギャルド…しっかりやれな?」
僧侶「私強くなってるですかね?」
盗賊「お楽しみにだ」
タッタッタ
魔法使い「居た居た…ゴメン遅くなったぁぁ」
ハンター「待って…ハァハァ」ヨッコラ ヨッコラ
盗賊「んあ?そりゃお宝持ち帰る用の袋か?」
ハンター「そうだよ…皆の分も」ドサ
盗賊「有って困る事は無いが…又しっかりとした革袋だな?」
ハンター「前のお宝ハントの反省だよ…袋が小さくて十分持ち帰れなかった…はい」
盗賊「お…重いな?何入ってる?」
魔法使い「水を多めに汲んであるの…これも前の反省から」
盗賊「なるほど…死戦を抜けて来た経験か…俺は酒しか持って来て無かったわヌハハ」
魔法使い「…それで抜け道の情報屋さんは?」
盗賊「話は付いてる…抜け道通るのに一人金貨2枚で済んだ」
魔法使い「もう行ける?」
盗賊「そうだな…こんな臭い場所早い所おさらばしてぇ」
僧侶「こっちでし~」ノシ
『抜け道』
ピチョン ピチョン
盗賊「ようし!人数揃ったから通らせてもらうぜ?」
アクセサリー商人「キシシシシ…こっから帰って来れんですぜ?」
盗賊「構わん…表から堂々と帰って来る」
ハンター「抜け道って何処に?」
アクセサリー商人「あちしのお尻の下でござんす」
盗賊「早く蓋を開けてくれぃ…この匂いにウンザリなんだ」
アクセサリー商人「ではお気を付けて…キシシシシシシ」
パカ ギギギギギ
魔法使い「鉄の蓋…この梯子の下?」
盗賊「そうだ…降りろ!」
魔法使い「下が見えない…なんか怖いんだけど」
盗賊「ぬぁぁぁじゃぁ俺が先に降りるから付いて来い」ピョン スルスル
魔法使い「ちょっと早いって…」ピョン ヨイショ ヨイショ
盗賊「真っ暗だな…」ピカー
魔法使い「あ…見えた」
盗賊「お前魔法使いだろうが…照明魔法とか上手く使えよ…梯子が途中で切れてるからそこで飛び降りろ」
魔法使い「わぁぁぁぁ」ドスン
盗賊「だから言っただろ…怪我して無ぇか?」
魔法使い「あたたたた…」スリスリ
盗賊「照明魔法を頼む」
魔法使い「照明魔法!」ピカー
盗賊「おぉ!!槍の先っぽ光らせるんか…良いじゃ無ぇか」
僧侶「降りるでし~!!」スルスル シュタ
ハンター「僕も降りるよ~」スルスル シュタ
『地下通路』
ピチョン ピチョン
盗賊「ここは何用の通路なのか…」
僧侶「ずっと続いてるですね?」
盗賊「1時間ほど歩いたら上に登る梯子が在るんだとよ」
ハンター「こんな深い洞窟始めてた…これ全部人工だよね?」
盗賊「だろうな?どうやって作ったんだか…」
僧侶「骨が落ちてるでし…」
盗賊「そりゃ人骨じゃ無ぇ…多分ネズミか何かだな」
魔法使い「風が流れてる…何処かに繋がってるのかしら…」
盗賊「むむ!…そうかここは換気用の通路か…そうだな換気しないと洞窟で窒息しちまう」
ハンター「…という事はチカテツ街道の奥には全部こういう通路があるんだろうね?」
盗賊「ハハーン…大きな通路と小さな通路…この差で風起こしてんだ…スゲェ」
盗賊「まてよ…オークがいきなり侵入してくるのはこういう通路使ってんのか?」
ハンター「え…注意した方が良さそう?」
盗賊「オークが居るとは聞いて居ないが…隠れてる可能性はある…気を付けて歩け」
『チカテツ街道_奥』
ゴーーー カタタン カタタン
盗賊「引っ張るぞ!よいしょぉぉ!!」グイ
魔法使い「はぁはぁ…荷物背負って梯子登るの結構キツイ」
盗賊「訓練だと思えばラクだろ?」
魔法使い「まぁね…」ハァハァ
盗賊「次!!」グイ
僧侶「はいやー!」クルリン シュタ
ハンター「僕は大丈夫!」ピョン シュタ
魔法使い「遠くで聞こえるのは…トロッコの音ね?」
盗賊「他の街道でトロッコ動いてんだろ…俺らも探すぞ」
僧侶「倒れてるトロッコあるですね?あれそうですよね?」
盗賊「おぉ!!こりゃツイてるぞ?」
ハンター「どうやって使うの?」
盗賊「足元見ろ…鉄の棒がずっと連なってるだろ…ここに乗せて使うんだ」
僧侶「そこまで運ぶですか?」
盗賊「そうだな…押すぞ!」
魔法使い「ちょっと待って!!何か来る!!」
ヴヴヴヴヴヴ ズリズリ
ハンター「ゾンビの声だ…気を付けて」
盗賊「んぁぁ俺がトロッコ引きずるからお前等でゾンビ処理しろ」ダダ
ハンター「多い…10体以上居る」
僧侶「いつも通りで行くでしゅ…」スタタ
ハンター「分かった!僕が足止めする…魔法使いが止めを」
魔法使い「大きいゾンビも居るわ…アレは…」
ハンター「オークだ!!オークもゾンビになってる!!」
僧侶「援護お願いでし!盲目魔法!!」モクモク
ハンター「今のは!?」
僧侶「ゾンビは目が見えてないでし…一体づつ倒すです」
ハンター「おっけ!!僕は他のゾンビの足止めする」ギリリ シュン
魔法使い「このぉ!!」タタタ ブスリ
僧侶「私も!!」スタタ ブスリ
オークゾンビ「ウゴゴゴゴゴ…ウガァァ」ブンブン!!ドガ
僧侶「でし!!」ゴロゴロ
ハンター「気を付けて!!」ギリリ シュン
僧侶「あたたた…回復魔法!」ボワー
魔法使い「ハアッ!!」クルクル ブスリ
オークゾンビ「ウゴ…」ドタリ
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盗賊「お前等ぁ!!ゾンビはキリが無ぇ!!乗れ」
ハンター「矢を回収してから行く!先に乗って」タッタ
魔法使い「急いで」ダダ ピョン
僧侶「乗るです…」スタタ ピョン
盗賊「動かし始めるぞ?ハンターは飛び乗れ!!」ガコン シュコ
ハンター「間に合う!!」タッタッタ ピョン シュタ
『トロッコ』
ゴーーーー カタタン カタタン
盗賊「荷物はトロッコに入れとけ…背負ったまま戦うのは危ねぇ」
僧侶「はいです…」ヨッコラ
盗賊「オークゾンビの攻撃は見えてただろ?」
僧侶「はい…」
盗賊「あーいう時はな…荷物全部捨てて構わん…兎に角身の安全が最優先だ」
ハンター「思ってたよりゾンビが多い」
盗賊「うむ…俺も聞いてた話と違うからちぃと困惑しとる」
魔法使い「オークのゾンビって…聞いた事無い」
盗賊「だな?オークは病気の耐性を持ってんだ…感染でゾンビ化した訳じゃ無ぇ」
魔法使い「死霊術…もしかしてオークシャーマン?」
盗賊「お?何か知って居そうだな?」
魔法使い「暁の遺跡に居た筈のグールが全部ゾンビにされてた…多分オークシャーマンのせい」
盗賊「ほう?てことはこの辺で何かしようってんだな?」
僧侶「さっきのオークゾンビは体が腐敗してたです…」
ハンター「グールの時とは事情が違いそうだ…もしかすると事が済んだ後かもね」
盗賊「ふむぅ…ゾンビが多い様じゃキャンプすんのも厳しいかもな」
ハンター「ゾンビは階段とか高い所に登れない…そういう場所を探せば良い」
盗賊「高い所がありゃ良いんだが…」
魔法使い「ハンターの罠で何とかならない?」
ハンター「足止め程度だね…ここじゃ穴も掘れないし」
盗賊「交代で休むぐらいしか手が無ぇ…まぁ訓練の一つだと思え…それより」
魔法使い「それより?」
盗賊「トロッコ動かすの交代しろ…中々シンドイ」
魔法使い「ええ!?又訓練?」
『4時間後』
カタコン カタコン
盗賊「おい!!ちょっと止まれ…なんだこの広い空間は」
ハンター「沢山キラーマシンが倒れてる…骨も一杯散らばってるよ」
盗賊「戦場跡か…ここはちょっとした拠点だったんだな?」
ハンター「見て行こうか…」
盗賊「おう!!キラーマシンは中に魔石が入ってる…回収して行くぞ」
僧侶「ゾンビの声が聞こえるです」
盗賊「僧侶と魔法使いはトロッコを守ってろ…戦利品回収して直ぐに戻る」ダダ
ハンター「僕は見える位置に居るから心配しないで」タッタ
僧侶「私が足止めするんで止めお願いでし」
魔法使い「うん…魔法も使って行くから大丈夫!」
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盗賊「ハンター!!そっちのキラーマシンから戦利品回収しろ…武器も持って帰れ」
ハンター「うん…」ガチャ ガチャ
盗賊「おお!!魔石3つも入ってんじゃねぇか!!」ガチャ ガチャ
ハンター「こっちも3つ…結構大きい」
盗賊「こりゃもう元取れたぜ?」
ハンター「あっちにもキラーマシン倒れてる…行って来る」タッタ
ゴゥ ドーン
盗賊「ウハハ魔法使いの魔法だな?やっと本領出しやがった…それで良いんだゾンビ焼き尽くせ」
ハンター「任せておいて良いかな?」
盗賊「大丈夫だ…あいつら気付いて無いがゾンビ100匹来てもこなせるだけ腕上がってる」
ハンター「ハハ…さすが魔法使い」
盗賊「盲目魔法使うだけであとはチクチク刺し殺すだけなんだよ…あいつら割とポテンシャル高けぇ」
ハンター「僕は出番無いなぁ…」
盗賊「お前は鍵開けでお宝ハントすれば良いんだ…役割ってのがそれぞれあんのよ」
ハンター「うん…よし!これで魔石6個目!!」
盗賊「使える武器も拾っとけ?クロスボウは何個あっても使える!次行くぞ」ダダ
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僧侶「ほい!!」スパ スパ ブスリ
ゾンビ「ヴヴヴヴヴ…」ドタリ
魔法使い「へぇ?様になってるじゃない…それがエペギャルド?」
僧侶「そうでしゅ…カッコ良いですか?」
魔法使い「もう魔術師じゃないわね」
僧侶「本業は僧侶なのです」
魔法使い「あ…帰って来た」
タッタッタ
盗賊「お宝ごっそりだぜ?」ガラガラ
ハンター「魔石が全部で21個!!」ガラガラ
盗賊「奥に休憩出来そうな小部屋を見つけた…今日はそこでキャンプだ」
僧侶「トロッコここに置いとくですか?」
盗賊「戦利品の武器だけ乗せとく…どうせ誰も来んだろう」
魔法使い「クロスボウばっかり…」
盗賊「これが中々に便利なんだ…威力高いわ罠作れるわでな?」
ハンター「まだ全部探索しきれて居ないから他にもお宝期待出来る」
盗賊「だな?荷物持って行くぞ…」タッタッタ
『小部屋』
ピチョン ピチョン
魔法使い「ここは何?」
盗賊「多分兵隊の詰め所だ…何年も前に使われなくなったんだろう」
ハンター「向こうの大部屋は奴隷の収容部屋だったみたい…オークの骨がいくつか転がってた」
僧侶「なんか気持ち悪いですねぇ~」ブルブル
盗賊「まぁここなら安全だ…ゾンビは扉を開けらんねぇから」
ハンター「僕はもう少し戦利品漁って来る」
盗賊「おう!ムリすんな?」
ハンター「魔法使い?もう一回照明魔法お願い」
魔法使い「照明魔法!」ピカー
ハンター「行って来る!!」ガチャリ バタン
盗賊「じゃぁ火を起こすか…」ドガ バキ メリメリ
僧侶「机と椅子を燃やすですね…」
盗賊「魔法使い!火魔法頼む」
魔法使い「火炎魔法!」ボボボ メラ
盗賊「その辺の燃える物全部突っ込んでくれ」
僧侶「はいなー!!」ポイポイ
盗賊「地下は底冷えするから火があると大分良い…」スリスリ
魔法使い「そろそろ日暮れ時期かな?」
盗賊「うむ…あと1時間程トロッコで行けば目的地の筈だから今日はここで休む…ちっと早いんだが」
魔法使い「トロッコ動かすので疲れたから丁度良いわ」
盗賊「結構堪えるだろ?多分傾斜が付いてんだよ…そん代わり帰りはラクだ」
僧侶「今居るのは地図でどの辺りなんでしゅか?」
盗賊「見るか?」バサ
盗賊「この辺りの筈だ」
魔法使い「これ何処まで続いてるんだろう?」
盗賊「さぁな?誰も知らんらしい…それよりもどうやってこんなに穴掘ったのか想像出来ん」
僧侶「大きなモグラが居たんですね…」
盗賊「土じゃ無ぇぞ?石を掘ってんだ…この真上は山岳地帯だ」
魔法使い「それでこんなに冷える訳か…」
盗賊「どっかに布か毛皮無ぇかな…」ゴソゴソ
僧侶「ご安心くだしゃい!成長魔法!」ザワザワ シュルリ
盗賊「お!!麦じゃねぇか」ワサワサ
僧侶「収穫してください…もっと育てるです…成長魔法!」ザワザワ シュルリ
『1時間後』
メラメラ パチ
盗賊「ハンター遅せぇな…大丈夫かあいつ」
魔法使い「見て来る…あ」ガチャリ
盗賊「んん?」
魔法使い「光が見えてる…」
盗賊「そうか…無事なら良いんだ」
魔法使い「ハンターは戦利品収集が念入りなのよ…」
盗賊「骨までしゃぶるってか?ヌハハ良い事だ…俺も戦利品はごっそり持って帰る主義だ」
魔法使い「ここから見えるから扉開けておくわ」
僧侶「食事出来たです…」ズイ
盗賊「お?何作った?」
僧侶「小麦で作ったパンでしゅ…食べて良いです」ポイ
盗賊「こりゃまたグズグズだが…」モグモグ
僧侶「どうでしか?」
盗賊「まぁまぁだ…干し肉と一緒に食えばイケる」モグモグ
タッタッタ
ハンター「ふぅ…また魔石を6個見つけた」
盗賊「おぉやるな?…これで合わせて27個…金貨にすると300枚は行く」
僧侶「おおおおおおおお!!スゴイでし」
ハンター「戦利品のナイフも持ってきた…皆持っといて」ポイ
盗賊「見せてみろ…フム…どこに落ちてた?こりゃコバルト製だ一生使える」
ハンター「キラーマシンに張り付いてた…それ磁石みたいに鉄に張り付く」
盗賊「めちゃくちゃ便利じゃねぇか…沢山あるんか?」
ハンター「残りはトロッコに積んだよ」
盗賊「ほーーーベルトの金属部分に張り付くな…こりゃ良い」カチ
ハンター「見て?僕はブーツに張り付けた…隠し武器になるね」
盗賊「誰がこんなレアな物使うんだろうな?」
ハンター「キラーマシンに射出用の穴が空いてる…それだよ」
盗賊「なるほど…」
ハンター「他にも探したけど見つからなかった」
盗賊「それで遅かった訳か」
ハンター「心配したかな?」
盗賊「魔法使いがな?」
魔法使い「ちょ!?遠くから見てただけよ!!…パン焼けてる…居る?」
ハンター「ちょうどお腹が減ってた」
魔法使い「はい!!割と美味しいよ」ポイ
ハンター「ありがとう」モグモグ
--------------
盗賊「ふぅ…」グビ
僧侶「今日は静かですね?」
盗賊「んん?俺か?」
僧侶「はい…」
盗賊「俺はいつも騒がしいんか?」
僧侶「そうですね…」
盗賊「ヌハハそうか…静かにしてると気持ち悪いか」
僧侶「考え事の顔してるです」
盗賊「分かるか?ちっと昔の事を思い出してな」
僧侶「暇なので聞くです」
盗賊「まぁ大した話じゃ無ぇ…夢の話なんだけどよ…あんま記憶に無いんだがハッキリ覚えてる事が一つあるんだ」
夢ではな?俺は多分ハテノ村に居んのよ
そこで子供達を育てたんだ
魔物から村を守る為に要塞作ったりしてたと思う
ほんでな?最後の最後に薬作って木の下に埋めたんだ…どーもそれが気になってよ
僧侶「先生…」
盗賊「む!!お前まさか夢幻を知って居るのか?」
僧侶「ご馳走食べたです…薬草拾ったです…硫黄集めたです」
魔法使い「ねぇ!!その話…」
ハンター「僕達がハテノ村に帰る理由だよ…どうにかして再建したいんだ」
盗賊「これは導きか?…いやまてまてそれはどうでも良い…他の子供たちはどうしてる?」
僧侶「連絡出来るのはこの3人だけでし」
盗賊「そうか…まぁその少しだけ残ってる夢幻の記憶がどうも気になってんだよ」
僧侶「病気の事でしゅか?」
魔法使い「アヘン酒と麻薬の事…アレは子供を産めなくする病気だと思う」
盗賊「お前気付いてたんだな?」
魔法使い「僧侶とよくそういう話をするのよ」
僧侶「あと10年子供が生まれないのが続けば人類は滅亡するです」
魔法使い「元気な子供が産めるのは30歳くらいまでね」
盗賊「う~む…やっぱ俺もハテノ村行って薬探さんとイカンかもな…船乗りやってる場合じゃ無ぇ気がして来た」
ハンター「盗賊さんが一緒なら心強い!」
僧侶「ごちそう食べたいでしゅ」
盗賊「そうだな…俺も大したやる事無ぇしいっちょ行ってみるか」
---------------
ピチョン ピチョン
盗賊「…」グビ
勇者2人が居なくなってからこっち…
平和になったは良いがどうやら問題はまだ解決してねぇ
静かに…そして確実に人類を滅ぼしに掛かっていやがる
俺は子供達を守るのが役目だ
どうする?敵は何処だ?どうすれば救われる?
---------------
---------------
---------------
『翌日』
ガサゴソ
盗賊「起きろ!行くぞ…」グイ
魔法使い「う…いたたた!引っ張らないで」
僧侶「ほえ?…」パチ
ハンター「う~ん…」パチ
盗賊「お宝ゲットしたらまたここに戻る…要らんものは置いて行け…行くぞ」
僧侶「あわわ…」イソイソ
魔法使い「どうしたの?そんなに急いで…」
盗賊「ちっと本気モードに入っただけだ…1分で準備しろ」ファサ
ハンター「フード?」
盗賊「無駄口叩いて無ぇで急げ!!」タッタッタ
ハンター「あぁぁ待って待って…」
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『トロッコ』
ガチャガチャ ガコン
盗賊「トロッコはお前等が動かせ…俺はクロスボウ準備する」
ハンター「トロッコに装着?」
盗賊「ボルトもあるな?よし…」ガチャガチャ
魔法使い「動かすよ?…う~ん!!」グイ
カタコン カタコン
盗賊「照明魔法で前方を見える様にしろ!」
僧侶「はいな!!照明魔法!」ピカー
ハンター「念入りだね?」
盗賊「オークが居るかもしれん…数が多い場合は逃げになるからその準備だ」ガチャガチャ
魔法使い「ちょっとハンター!!あなたもトロッコ漕いでよ!!」
ハンター「ごめんごめん…」グイ
僧侶「あわわ…ゾンビが居るです!」
ドン!! ビチャーーー
盗賊「うはぁ…魔法使い!ちょっと焼いてくれぇ…臭せぇ!!」
魔法使い「火炎魔法!」ボボボ
--------------
--------------
--------------
『一時間後』
ゴーーーー カタタン カタタン
僧侶「広間が見えたです!!」
盗賊「ようし!!情報通りだ」
ハンター「ハァハァ…と止めるよ」ゼェゼェ
盗賊「ゾンビの姿が見えんな?」
魔法使い「骨が散らばってる…」
盗賊「ここも戦場跡か…いや?誰か来て掃除したな?」
ハンター「昨夜キャンプした所と同じ構造だよ…ここに開かない扉が?」
盗賊「トロッコ置いて全員で行くぞ…降りろ」ピョン スタ
魔法使い「キラーマシンは無い様ね?」
盗賊「俺が先頭行く…ハンターは最後から付いて来い」
ハンター「うん…」
盗賊「どっから敵が来るか分からんから適宜照明魔法置いてくれ」
僧侶「はいな!!照明魔法!」ピカー
盗賊「行くぞ…」スタ
『開かずの扉』
タッタッタ
盗賊「これだ!!キ・カイの扉と同じだ…ようし!!」
ハンター「開けようとした痕跡が沢山ある」
盗賊「開け方見てろ…こいつは特殊な扉なんだ」ゴソゴソ
僧侶「盗賊さん…オークが使う斧が落ちてるです」
盗賊「オークもここを開けようとして諦めたんだろ…この扉は普通じゃ開か無ぇんだ」ギリリ
ハンター「特殊な道具か…この扉専用なんだ…へぇ?」
盗賊「魔法使いと僧侶は周りを見張っててくれ…オークが来たらダッシュで逃げだ」
魔法使い「オークに警戒してるんだ…」
盗賊「俺らと同じぐらい賢いんだ…しかも単独じゃ無くてつるんで行動する…頭部に矢を当てても死な無ぇ」
魔法使い「そんなに強いの?」
盗賊「エルフ並みにな?…よし!後1時間ぐらいで扉が開く筈」
ギギギギ ガコン! モクモク
盗賊「あれ?おかしいな…もう開いた」
僧侶「げふっげふっ…灰が一杯でし…」
盗賊「ぬぁぁぁどっか穴開いてたんだな…こりゃハズレかも知れん」
ハンター「中に入っても良い?」
盗賊「待て!俺が先に安全確認する…ちっと待機だ」ダダ
『謎の遺物』
ゲフゲフ ゴホッ
盗賊「灰が積もってやがる…入って良いぞ!!」
ハンター「うわぁ…広そうだな」
魔法使い「天井に穴が…」
僧侶「何でしゅかねこの塔みたいな物は…」
盗賊「さぁな?ハンター!!入り口に罠張れるか?」
ハンター「うん…どうして?」
盗賊「手分けして探索したい…後ろから襲われたく無いだろ?」
ハンター「分かったベアトラップ仕掛ける…」タッタ
盗賊「二手に分かれる!僧侶は俺と来い…魔法使いはハンターと一緒だ」
僧侶「ほほ~い!!」
盗賊「そうだな…1時間を目途にここに戻れ」
魔法使い「ハンター!?早くして…行くわよ」
ハンター「もう出来た!!行こう」タッタッタ
----------------
盗賊「俺はこの塔に登って何なのか調べる…僧侶はその辺に埋もれてる物調べてくれ」
僧侶「はいな!!」ガサガサ
盗賊「うし!!」ピョン ピョン
僧侶「盗賊さん!!この塔はロープで繋がってるです」
盗賊「ロープ?」
僧侶「あれれ?ロープじゃないなぁ…なんだろ?」グイグイ
盗賊「何処に繋がってるか調べろ…しかし何だこりゃ?材質は鉄だな…」コンコン
僧侶「ロープが何かの機械に繋がってるですぅ!!」
盗賊「その辺でお宝探せ!!」
僧侶「小さな謎の機械があるです」
盗賊「おぉぉソレだそういう物を片っ端から袋に入れて持って帰る」
僧侶「なんかいっぱいあるですね…」ガチャ ガチャ
盗賊「この塔はハズレだな…先っぽにも何も無ぇ」ピョン シュタ
僧侶「この大きな機械は何でしゅかねぇ?」
盗賊「…おかしいな」
僧侶「何ですか?」
盗賊「鉄のクセに錆び付き具合が軽度だ…こりゃ割と新しい…なんでだ?」
僧侶「こっちにも色々有るです」
盗賊「おう!!」ダダ ガッサガッサ
僧侶「良い物ですかね?」
盗賊「んんん…なんじゃこりゃ?まぁ一応持って帰るか」ガチャ ガチャ
僧侶「石板ですかねぇ?」
盗賊「石じゃ無ぇな…鉄でも無い…樹脂か?それにしちゃ複雑だな」
僧侶「全部持って帰るのは大変でし」
盗賊「同じ物は省こう…なんつーか金になりそうな物が無ぇな」
僧侶「向こうも探してくるです」スタタ
----------------
----------------
----------------
『1時間後』
ガチャガチャ
盗賊「んぁぁ一杯有るがみんなガラクタだな…」ポイ
ドコーーーン!!
盗賊「何だぁ!!」
僧侶「あそこでしゅ!!煙が舞ってるです」
ガガーーン ビリビリ
盗賊「魔法撃ってんな?行くぞ!!」ダダ
僧侶「あわわわ…」スタタ
--------------
ハンター「盗賊さん!!ワームが居る!!」ギリリ シュン
魔法使い「ダメ…ハンターの麻痺矢が効いてない!!」タッタッタ
盗賊「一匹か!?」
ハンター「3匹!!大きい!!」
盗賊「魔法使い!雷魔法で動き止めろ!」
魔法使い「雷魔法!」ガガーン ビリビリ
盗賊「よし!今の内に入り口に向かって逃げろ…俺が時間を稼ぐ」スチャ
魔法使い「1人じゃムリ…」
盗賊「良いから行け!!」
ハンター「魔法使い!言う事聞こう」グイ
ワーム「シャァァァァ…」ピクピク
盗賊「お前の弱点知ってんぞ!?ケツの穴だ」ダダダ ザクリ
僧侶「盗賊さん…」
盗賊「早く行けって…俺も危無ぇんだから!!」
僧侶「ほぃ…」スタタ
盗賊「これでも食らえ!!」チリチリ ポイ
ドーン!! ベチャ
ワーム「プギャァァァ…」グネグネ バタバタ
盗賊「うっし!今の内…」ダダ
---------------
『入り口』
タッタッタ
盗賊「急いでトロッコに戻るぞ」
ハンター「ベアトラップに気を付けて…ここ踏まないで」
魔法使い「先に出るわ…よいしょ」
僧侶「あわわ…」ピョン
盗賊「ワームが追いかけて来なきゃ良いが…」ピョン
ハンター「トロッコに戻る…ちょ…ちょっと待った!!」
盗賊「ん?」
ハンター「トロッコの場所が変わってる…誰か居るぞ?」
盗賊「何だとぅ!?」
魔法使い「音に気付いて隠れたのね?」
盗賊「ちぃぃぃマズイな挟まれてる」
ハンター「何処だ?」キョロ
魔法使い「きっと通路の奥よ…暗くて見えない」
盗賊「俺が囮に出る…相手が仕掛けて来たら盲目魔法を使え」
ハンター「大丈夫?」
盗賊「まぁ見てろ…援護頼む」タッタッタ
僧侶「はぁぁドキドキするでし…」
----------------
ハンター「トロッコに付いた…何も起きない」
僧侶「盗賊さんどうするつもり…あっ!!消えた」
魔法使い「え?なんで?」スック
ハンター「待って…動かないで…策があるんだ」
魔法使い「…」ジー
僧侶「…」タラリ
ハンター「足音…」ヒソ
ペタペタ ドタドタ
ハンター「3人以上居る…」ヒソ
僧侶「盗賊さん出て来た!…どうなってるの?」ヒソ
ハンター「まだ待って…」ヒソ
シュンシュン カンカン!
魔法使い「又消えた…」ヒソ
ハンター「射手2人…通路の奥だ」ヒソ
僧侶「大きなオークが一人来たです」ヒソ
ハンター「あのオークは僕が麻痺矢当てる…君は奥の射手に盲目魔法を」ヒソ
僧侶「はい…」ドキドキ
ハンター「撃つよ…」ギリリ シュン グサ!
僧侶「盲目魔法!」モクモク
ハンター「行く!!」ダダ
オークファイター「ウゴ!?」
ハンター「もう一発!!」ギリリ シュン グサ!
オークファイター「ウガァァァァ!!」ブン ブン
僧侶「うわぁ大っきい…」タジ
魔法使い「ハンター!!ダメ麻痺効いてない…火炎魔法!」ゴウ ボボボボ
僧侶「下がるです…もう一回盲目魔法使うです」
ハンター「分かった」ダダ
僧侶「盲目魔法!」モクモク
オークファイター「ウゴ?ウゴ?」キョロ
盗賊「リリース!」スゥ
盗賊「どわぁ!!でけぇ…」
僧侶「盗賊さん!!盲目魔法使ったです…目が見えてないしゅ」
オークファイター「ウガァァァ!!」ダダダ ブン
盗賊「危無ぇ!!」ガキーン ゴロゴロ
魔法使い「盲目効いてない?」
盗賊「こいつらエルフだと思え!!耳で場所把握してる」
シュンシュン カランカラン
盗賊「不利だ!!トロッコ乗れ!!」
ハンター「動かす!!飛び乗って!!」ピョン
盗賊「魔法使い!魔法撃ちまくれ!」
魔法使い「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ドカーン
ゴゥ ボボボボボ
盗賊「乗れ乗れぇ!!」ピョン
僧侶「はわわわ…」ピョン
魔法使い「えいっ…」ピョン
カタコン カタコン ゴーーーーー
僧侶「追って来るです…」
盗賊「構わず魔法撃ちまくれ…」ガチャコン バシュ
オークファイター「ウガァァァ!!」ドスドス
魔法使い「火炎魔法!」ゴゥ ドーン
ガチャコン バシュン
ガチャコン バシュン
--------------
--------------
--------------
『トロッコ』
ゴーーーーー カタタン カタタン
盗賊「ふぅぅぅぅ危なかったなぁ…」
ハンター「4対3でもまともに戦ったら全然勝てる気しない」
魔法使い「麻痺も盲目も効かないなんて…」
盗賊「相手が3人だけだったから助かった様なもんだ」
僧侶「魔法もあんまり効いて無かったですね?」
魔法使い「呪術で強化されてるんだと思うわ…魔法に耐性ありそう」
盗賊「ちっと予定変更だな…キャンプに戻るのは止めだ…あそこに何か荷物置いてるか?」
僧侶「水と食べ物置いて来たです」
魔法使い「私も…」
盗賊「よし…スルーして戻るぞ…オークが危なすぎる」
僧侶「ハンターさんは何も残して無いですか?」
魔法使い「全部持って来てるに決まってるじゃない」
ハンター「こんな事もあろうかと…」
盗賊「ヌハハケチが良い方に転んだ様だ…とりあえず水には困らんな?」
ハンター「ハハ…」
盗賊「しかしオーク相手じゃこっちもキラーマシン居無ぇとどうにもならんな」
僧侶「オークは抵抗しない人間には何もしないのです」
盗賊「なぬ?」
ハンター「それは本当だよ…連れて行かれちゃうけど」
盗賊「そりゃ知らんかった」
僧侶「掴まると奴隷にされるです」
盗賊「なるほどな…人間の女が好みだとは聞いた事がある…掴まえて奴隷か」
魔法使い「人間も昔は女のエルフを狩って奴隷に…」
盗賊「実は俺も一回あやかった事が有る」
魔法使い「うわ!!最低…ゲスオヤジ」
盗賊「若気の至りだヌハハ」
『4時間後』
カタンカタン カタンカタン
盗賊「さて…どうやって戻るかなんだが…」
魔法使い「強行突破?」
盗賊「うーーーん…どうせキラーマシンが封鎖してる…どーっすかなぁ」
ハンター「戦利品は4人で手分けすれば持てるから…突破して人に紛れるでどう?」
盗賊「僧侶の盲目魔法使って行くか?」
僧侶「お?」
盗賊「突破する時に盲目魔法撃ちまくって逃げちまう…ほんで人込みに紛れる」
魔法使い「良さそうね?」
盗賊「さっさと地下を出て商人ギルドで落ち合う…行けるな?」
僧侶「私の出番でし!!」ズイ
盗賊「期待してるぜ?」
『チカテツ街道1番』
ゴーーーーー スタタン スタタン
ハンター「衛兵10人くらいと動いてないキラーマシン2台」
盗賊「衛兵気付いたな?魔法撃て!!」
僧侶「盲目魔法!!」モクモク
盗賊「行けるところまで突っ込むぞ…魔法はどんどん撃てよ?」
僧侶「はいな!!盲目魔法!!」モクモク
衛兵1「なんだぁ?誰だ明かり消した奴は!!」
衛兵2「常備用の松明あるだろ…早く点けろ」
衛兵1「トロッコ近づいて来る音だ…衝突するぞ!?」
衛兵2「止まれ止まれぇぇ!!」
魔法使い「ウフフ…馬鹿ねぶつかる物何も無いのに」
僧侶「盲目魔法!!」モクモク
衛兵1「あぁぁ見えない…松明何処だ?」
衛兵2「だめだぁこっちも見えない」ウロウロ
ハンター「止まるよ!?作戦通り人込みに入って!!」ピョン タッタッタ
盗賊「行くぞ!遅れるな?」ダダ
魔法使い「ウフフ…なんか楽しい」タッタッタ
僧侶「ほいさっさぁ!!」スタタ
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『商人ギルド_大部屋』
ガチャリ バタン
盗賊「お?遅かったな?…水浴びして来い!真っ黒だぞ」
魔法使い「ハンターと僧侶はまだ?」
盗賊「もう水浴びしてどっか行った…」ガチャガチャ
魔法使い「ええ!?私が最後か…じゃぁ水浴びしてくる」ドサリ
盗賊「今日はもうやる事無いから自由にして良いぞ」
魔法使い「寝る…魔力使い過ぎて頭痛い」
盗賊「ヌハハ頑張り過ぎだな?」
--------------
僧侶「ただいま~」ガチャリ
盗賊「シーーーーッ」
ハンター「ん?魔法使いは?…あぁ寝たのか」
僧侶「戦利品の整理終わったですか?」
盗賊「おう!!使えそうな物はコレだな…ペン型のライトだ」
ハンター「何それ?」
盗賊「照明魔法みたいなもんだ…ホレ?」ピカー
ハンター「おぉ!!」
盗賊「これはお前が使え…俺は同じ様な物持ってっからな」ポイ
僧侶「他には無いですか?」
盗賊「今分解してるんだけどよ…このランタンみたいな奴の中にウラン結晶らしいものが入ってんだ」ガチャ ガチャ
僧侶「ウラン結晶?」
盗賊「まぁ魔石のお化けだ…小さいがこいつが高く売れる」
ハンター「エネルギー元なんだ」
盗賊「多分な?これこのまま落ちてたんか?」
ハンター「大きな機械から外したんだ」
盗賊「てことはやっぱエネルギー元だな…もっと他に在ったのかもしれんな」
ハンター「そうだね…でももう行く気になれない」
盗賊「行くなら戦力揃えんとな」
ハンター「ワームがね…見えてたのが3匹だけどもっと居ると思うんだよ」
盗賊「まぁ生きて帰れて良かった…ちっと甘く見過ぎてた」
ハンター「オークもさ…たまたま射手2人を無効化出来たから逃げれたけどさ…本当危なかったと思う」
盗賊「うむ…んん?なんだ僧侶も寝たのか」
僧侶「…」スヤ
ハンター「結構魔法連発してたしね…頑張ったね」
盗賊「まぁお前もこのクソ重いランタンずっと背負ってたんだろ?」
ハンター「ハハハ重たかったよ…途中で捨てようかと思ったさ」
盗賊「お宝ハントはとりあえず大成功だ…大の字で寝ろ」
ハンター「そうする…おやすみ」
『翌日』
ガチャガチャ
魔法使い「ふぁぁ…」ノビー
盗賊「お?起きたな?頭痛は良くなったか?」
魔法使い「ん?」キョロ
盗賊「まだ休んでて良いぞ…」
魔法使い「何してるの?」
盗賊「ガラクタを下に運んでるんだ…商人に鑑定してもらう」
魔法使い「ハンターと僧侶は?」
盗賊「商人の所に行った…どうする?お前も来るか?」
魔法使い「私だけ寝てる訳に行かないでしょ?」
盗賊「下よりこっちのが環境良いけどな…商人の部屋はガラクタとゴミの山だ」
魔法使い「どんな人なのか気になるから行って見たい」
盗賊「そうか…じゃぁ付いて来い」スタ
『商人ギルド地下』
ヨッコラ ヨッコラ
盗賊「商人!持って来たぜ?…これで最後だ」
商人「奥に…」
魔法使い「何此処…研究室?」
商人「本当は誰も入れないんだけど…君達は特別なお客さんさ」
魔法使い「特別?」
商人「取引がしたい…今運んできたガラクタだよ…譲って欲しいんだ」
魔法使い「譲るって…ハンター!?どういう話になってるの?」
ハンター「金額の交渉をされてるんだ」
僧侶「いくら欲しいか聞かれてるです」
盗賊「俺らじゃ価値が分かん無ぇ…商人はいくら出す?」
商人「君達には只のガラクタだよ…」
盗賊「答えになって無い」
商人「ズバリ言うよ…頂戴」
魔法使い「ぷっ…面白い人ね」
盗賊「おいおいお前が欲しがる理由くらい聞かせろや」
商人「盗賊…この3人は信用しても良いのかい?誰なんだよ…」
盗賊「疑り深けぇな…こう言えば信用出来るか?夢幻を知ってる…」
商人「…」ジロリ
僧侶「なんか怖いです」
商人「盗賊…ちゃんと鍵は掛けたかな?」
盗賊「あぁ掛けた掛けた…どうしたんだお前」
???「アーッハハごめんごめん…ソレは影武者さ」
盗賊「なぬ!?」
ガコン ギギギー
盗賊「なんだ本棚の裏にさらに隠し部屋があるんか…」
商人「影武者ごくろうさん…どうやら信用できそうだ」
影武者「誘導出来ませんでした…すみません」
商人「まぁ又練習しよう…休憩してて良いよ」
影武者「はい…」スタ
商人「その遺物持って奥に入って来て」
盗賊「お…おう」ガチャガチャ
『隠し部屋』
盗賊「おま…これ俺にずっと秘密にしてたんか?」
商人「言う必要が無かっただけさ」
盗賊「あの影武者はいつから?」
商人「もう5年くらいになるかな…ほとんどの事は彼女がやってる」
盗賊「なぬ!?女だと?」
商人「僕と同じ体格なのは子供か女の子だけさ…声は良く似てたよね?」
盗賊「道理でフード脱がない訳だ…」
商人「さて?夢幻を知って居る君達3人は誰なんだい?」
ハンター「え…えーと」
盗賊「ハテノ村の子供達だ…どうやら俺を覚えてる」
商人「なるほどね…」
盗賊「それでお前はこんな隠し部屋に籠って…ホムンクルス作ろうとしてんだな?こりゃ…」
商人「そうだよ…それで古代の遺物を調べたいんだ」
魔法使い「この器具は錬金術?」
商人「うん…今は生体を産む研究をしてる」
魔法使い「スゴイ…」
僧侶「この絵の女の人は精霊でしゅか?」
盗賊「ホムンクルスだ…良く描けてる」
魔法使い「シン・リーンの精霊の像にそっくり…」
盗賊「まぁ色々あんのよ」
商人「それであの遺物の事だけど譲って欲しいのは本当なんだよ…僕もそんなにお金持ちじゃない」
盗賊「俺らにはガラクタっちゃぁガラクタなんだがよ…ちっと小遣いくらい欲しい訳よ」
商人「じゃぁ金貨100でどう?」
盗賊「金持ってんじゃ無ぇか!!」
商人「それくらいならギルド運営に影響は出ない」
盗賊「お前等金貨100で良いな?」
ハンター「うん…どうせ要らない物だし逆になんか悪いかな」
盗賊「お前らしく無ぇぞ?」
ハンター「ハハ…」
商人「じゃぁ商談成立という事で…」
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盗賊「ところであのガラクタは一体何なんだ?」
商人「これからラヴと一緒に調べるけど…多分古代文明の兵器を操る物だと思う」
盗賊「兵器?インドラの矢とかか?」
商人「10年前の大陸間弾道ミサイル…隕石だと言われてる奴だ」
盗賊「そういや遺跡に塔みたいな物が立ってたな…ソレだな?」
商人「あーー他に発掘されてる物と同じ証言だ」
覚えてるかな?10年前に飛んできたミサイル…
本当は何百発も落ちて来る筈だったのに4発しか落ちなかった
それはホムンクルスが止めたんだよ
その内のいくつかがキ・カイで発掘されてるんだ
盗賊「そうか…それで灰に埋もれてたんか…」
商人「僕もその現場に行きたいんだけど国と折り合いが付かなくてね…丁度君達が持って帰ってきてくれた訳だ」
盗賊「お前が古代の遺物を欲しがる理由はホムンクルスか?」
商人「うん…もしかすると他にもホムンクルスが眠って居るかもしれないと言う事と…」
商人「あと数年でラヴの中にある超高度AIのエネルギーが枯渇するからそれを何とかしたい」
機械の犬「ワン!」フリフリ
盗賊「数年…何でそんな事分かるんだ?」
商人「ラヴとは意思疎通が出来るんだよ…イエスかノーの2択だけど」
機械の犬「ワン!」
盗賊「そういう事か…」
商人「それで?久しぶりに夢幻の事を聞いたけど…どういうつもりなんだい?」
盗賊「ちっと話が長くなるんだが…」
お前ここ10年…子供の数が減少しているのは知って居るか?
どうやらな?麻薬とアヘン酒が蔓延しているのが出産率を下げて居る可能性があるんだ
ほんで材料になるケシの実がどこから産出されているかと言うと
エルフの森全域に出現するようになったスプリガンが原因らしい
勇者2人が魔王を封じてからこっち平和になった様に見えるが
その実…人間の出生率を下げる病気が蔓延して子供が生まれ無くなってる訳だ
あと10年もすりゃ子供産める女はほぼ居なくなる…静かに滅亡へ向かってる訳よ
夢幻の記憶を思い出してみると俺らはハテノ村で最後まで戦った記憶が在る
その最後の最後に薬を作って木の下に埋めたんだよ…それがどうしても気になるんだ
商人「…」
盗賊「お前はなにか気付かんか?お前の方が夢幻を覚えてるんじゃ無いのか?」
商人「錬金術にかまけて大事な事を忘れて居たかもしれない…そうだ僕らは病気と闘った」
盗賊「夢幻での導きはまだ終わって居ない様に思わ無ぇか?」
商人「ラヴ…今の話を聞いてどう思った?」
機械の犬「キャンキャン!」
商人「その反応は知らない…何か思う事があるんだね?」
機械の犬「ワン!」
商人「イエス…このままでは僕達は滅亡する?」
機械の犬「ワン!」
盗賊「おい…この反応はイエスだな?」
商人「やっぱり急がないといけないな…もうちょっとラヴと会話してみる…お金は影武者から貰っておいて」
盗賊「お…おう…お前の邪魔はしない方が良さそうだな?」
商人「うん…考え纏まったらまた教えるよ…今は出て行って」
盗賊「ヌハハはっきり言う奴だ…じゃぁ金は貰って行くぜ?」スタ
『大部屋』
ガチャリ バタン
僧侶「商人さんは結局顔を見せてくれなかったでしゅね」
盗賊「気にすんな!…でだ金貨100枚と魔石27個…ほんでウラン結晶が残った」
ハンター「クロスボウ9台もお忘れなく」
盗賊「魔石とウラン結晶は売らんで残しといた方が良い…とりあえず金貨25枚づつ山分けな?」ジャラリ
僧侶「儲かったですねぇ…むふふ」
盗賊「こんだけありゃ物資調達は問題無いだろう」
ハンター「気球はいつ手に入るかな?」
盗賊「2~3日か?とりあえず俺は船乗り達に商船の指示して来にゃならん…俺の船で又荷物運ぶからな」
ハンター「今度は何処へ?」
盗賊「予定ではフィン・イッシュに物資運ぶんだ…俺は行か無ぇから船乗りに任せる」
魔法使い「私達どうする?」
ハンター「物資買い入れても置き場がねぇ…」
盗賊「買い取り品目だけ商人ギルドの受付に言っておけば物資は揃うぞ?…置き場もでかい倉庫がある」
ハンター「へぇ?そうだったんだ」
盗賊「商人ギルドは伊達じゃ無ぇぞ?商船20隻は動かしてるからな」
魔法使い「すご…でも商人はお金無いって…」
盗賊「そら個人的な小遣いだ…ギルド運営で金貨10万くらいは動かしてる」
ハンター「ええええええええ!!?そんなに…」
盗賊「国相手に取引してんだからそんくらいはな?」
魔法使い「しばらく暇になりそうだからエリクサーでも作ってみようかな…」
盗賊「それが良い…高く売れるぞ?」
ハンター「じゃぁ僕は買い取る品を考えておこうかな」
僧侶「私は酒場で遊んで来るです」
盗賊「お?後で俺も行くから飲み過ぎんなよ?」
僧侶「は~い」ビシ
『数日後_商人ギルド周辺』
ガヤガヤ ガヤガヤ
へいらっしゃい!!フィン・イッシュ産の装飾品買って行かないかい?
シーサーの肉!それから毛皮お値打ち品だぁ!!買った買ったぁ!!
セントラル直送!肝油に樹液!松脂!!錬金術素材何でもあるぞぉ!!
魔法使い「…」キョロ キョロ
盗賊「おう!!魔法使い…ここん所ずっと露店うろついてんな?何か探してんのか?」
魔法使い「関係無いでしょ!?」
盗賊「機嫌悪そうだな…お前等の気球買い付け決まったんだ…ハンターと僧侶は見に行ってるが…お前も行くか?」
魔法使い「私は忙しいから良い…」キョロ
盗賊「そうか?俺も見に行って来るが…スリに気を付けろ?」
魔法使い「分かってるわ…私の事は放って置いて」
盗賊「へいへい…じゃぁな!!」ノシ
『気球発着場』
…球皮に損傷はありません
船体の木材部分がすこし傷んでいますが一応は使えます
木材がある様でしたら修繕した方が良いですね
炉は魔石が無くてしばらく使用していませんでしたので少し錆びついております
盗賊「ほ~う…こりゃキ・カイの輸送用気球だな?」
ハンター「あ!!盗賊さん…助かった気球の事が全然分からなくてさ」
売人「説明は以上になりますがご質問は?」
盗賊「船尾に付いてるプロペラは何だ?こんなん初めて見たぞ?」
売人「炉に連動して回る仕組みになって居ます…風の魔石を使わない工夫です」
盗賊「なるほどな…球皮は畳んである様だがどんくらい膨らむ?」
売人「帆の揚力で浮くタイプですので大きな球皮ではありません」
盗賊「じゃぁ発着に滑走が居るんか…ちっと不便だな」
売人「荷が空の場合はそのまま浮くことが出来ます」
盗賊「大体分かったぞ」
僧侶「引き取って大丈夫でしゅか?」
盗賊「まぁ任せろ」
売人「それでは譲渡完了という事で商人ギルドの方へ代金を引き取りに行きます…ここにサインを」パサ
ハンター「あ…はい!」スラスラ
売人「ではごきげんよう」ペコリ
--------------
ハンター「随分律儀な売人だったね…」
盗賊「ありゃ多分キ・カイの役人だ…旧式の気球を手放したんだろうな」
ハンター「これ乗ってみて良い?」
盗賊「お前等の物だ…好きにしろ…てか俺にも見せろ」
僧侶「うほほ~い!!」スタタ
『輸送用気球』
ギシギシ ドタドタ
盗賊「こりゃ軽量化してて床板踏み抜きそうだ…」ギシギシ
ハンター「下の荷室は割と丈夫そうだよ」
盗賊「ほーーう!炉に機械の細工がしてある…これでプロペラ回すんか」
ハンター「操作方法分かる?」
盗賊「こりゃ小回り効かんが操作はえらく簡単だぞ?このレバーが横帆に連動…ほんでこっちのレバーがプロペラに連動」
ハンター「僕にも出来るか試してみたい」
盗賊「石炭買ってあるな?」
ハンター「うん…でも倉庫が何処にあるのか?」
盗賊「よっし!ちっと試すぞ…倉庫は船着き場のヤードにある…行くぞ!!」
僧侶「わたし今日ここで寝るです…荷物持ってくるでし」
盗賊「ヌハハ気に入ったか?お泊りセット持って来い」
『1時間後』
ボボボ メラ
盗賊「このフイゴを足で踏んで風を送るんだ」シュゴー シュゴー
ハンター「球皮が膨らんで来た」
僧侶「ワクワク…」
盗賊「なるほど…船体の割に小さい球皮だな…本当に浮くんかいな」
グラリ
盗賊「お?早い…」
ハンター「これ地面に結んであるロープ外した方が良いよね?」
盗賊「おう!!ロープ抜いてくれ」
ハンター「よいしょ!!」グイ スルスル
フワフワ
ハンター「浮いた…すげぇ!」
盗賊「なんでこんな簡単に浮く?船体が軽いって事か?」
ハンター「この木材は船みたいに頑丈な木じゃなくて薄い樹脂だね…錬金術で変えてるんじゃないかな」
盗賊「錬金術か…なるほどな…俺らの知ってる気球はもう古いのか」
ハンター「僕が操作してみて良い?」
盗賊「おう!フイゴは休まずに踏め…ほんでこのレバーで多分プロペラが回り出す…やってみろ」
ハンター「うん!!」グイ
パタパタ パタパタ
僧侶「動いたですぅ!!」
盗賊「横帆の操作は勘で覚えろ…このレバーだ」
ハンター「…」グイ
盗賊「なかなか良い気球じゃ無ぇか!スピードは無いが動きが確実だ」
僧侶「デッキに上がって外見て来るでし!!」スタタ
盗賊「落ちんなよ!?」
僧侶「うわぁ…景色汚い…ドブの中にキ・カイの街があるです」
盗賊「とりあえず海の上一回りすっぞ!」
ハンター「うん!!」グイ
パタパタ パタパタ
『気球発着場』
フワフワ ドッスン
ハンター「よし!着陸成功…球皮畳んでくる」ダダ
盗賊「う~む…ちっと問題ありだ…気球が遅すぎる」
僧侶「そうなんでしゅか?」
盗賊「プロペラじゃ逆風で全然速度が出ん…高高度だと尚更風に流されるんだ」
僧侶「低空専用ですかね?」
盗賊「だな?短距離の低空飛行専用だろう…ちょいと改造が必要だ」
僧侶「盗賊さん出来るですか?」
盗賊「木材が無ぇんだよなぁ…う~む」
僧侶「木なら成長魔法で育てられるです…あんまり大きく出来ないですが…」
盗賊「あんまり改造し過ぎて重くなっても意味が無い…どうすっかなぁ」
僧侶「私の使っていない槍はどうですか?2メートルくらいあるです」
盗賊「お?そいつを支柱に縦帆2枚…そうだな木材加工するよりずっと精度の良い棒だな」
支持部は金属でこさえるとして…
金属糸で支柱を支える
帆はデッキの左右に2枚…
まてよ…それだと船体が傾いちまう
反力起こすのに横帆を使うか
ちっと張り方変えんとイカン
盗賊「あーでもない…こーでもない…」ブツブツ
僧侶「私槍を持って来るです」スタタ
盗賊「お…おう!そうだな…改造と調整でもうしばらく掛かりそうだわ…これは」
ハンター「まぁそんなに急いで無いし…必要な物があったら買って来るよ」
盗賊「帆を張るのに大き目の布とロープだな…あと金属糸も欲しい」
ハンター「分かった仕入れて来る」タッタッタ
『露店』
ワイワイ ガヤガヤ
魔法使い「…」キョロ
ハンター「魔法使い!もしかして剣士を探してる?」
魔法使い「そうよ…いつ現れるか分からないから」
ハンター「来るかどうかも分からないよ…休んだら?」
魔法使い「そうね…」
ハンター「今気球に乗ってみたよ」
魔法使い「どう?」
ハンター「操作は簡単…でもね?盗賊さんが言うには速度が遅すぎるって」
魔法使い「しょぼい気球掴まされた感じ?」
ハンター「そうじゃない…物はすごく良い…短距離の輸送専用気球だったみたい」
魔法使い「どういう事?」
ハンター「ハテノ村まで行くのは長距離用に改造が必要なのさ」
魔法使い「そうなんだ…じゃぁ改造でもう少し掛かりそうなのね?」
ハンター「うん…帆を張るのに布とロープが必要だって」
魔法使い「沢山売ってるよ…この辺の露店は全部見たから安い所知ってる」
ハンター「おー!!案内して」
魔法使い「こっちよ」グイ
----------------
----------------
----------------
『気球』
トンテンカン トンテンカン
ハンター「盗賊さん…布とロープ仕入れて来たよ」ドサリ
盗賊「早かったな?」
ハンター「魔法使いが安く売ってる所知っててさ…」
盗賊「今気球に槍を取り付けた所だ…金属糸あるか?」
ハンター「うん…」ポイ
盗賊「ようし!!こいつを張るから手伝ってくれ」
魔法使い「私は何かやる事ある?」
盗賊「布を縫い合わせて縦帆に出来るくらいの大きさにしてほしい」
魔法使い「…という事は針と糸も必要ね」
盗賊「言うの忘れてた…まぁそんなに急がんでも良いぞ?まだしっかり設計も纏まって無ぇんだ」
ハンター「そんなに難しい設計なの?」
盗賊「まぁな?下手すると気球が空でひっくり返る」
ハンター「うわ…それはマズイ」
盗賊「船の技師と相談しながら作るから…そうだな…まだ2~3日は飛べん」
ハンター「何か手伝える?」
盗賊「いや素人は触らん方が良いな…暇ならアレだ…オーガの討伐隊にでも行って来たらどうだ?」
魔法使い「あ!!聞いた…高額報酬出るって」
盗賊「うむ…衛兵が地下遺跡に行ってるから戦力不足なんだとよ…お前等3人なら余裕だろ」
ハンター「オーガか…牙が高く売れるんだったね?」
盗賊「1本金貨1枚が相場だ…小遣い稼ぎにゃ丁度良い」
ハンター「行って見ようか?僕の麻痺矢で足止めして魔法使いが焼く」
盗賊「ほんで僧侶が止めな?」
ハンター「僧侶は何処に?」
盗賊「お泊りセット取りに商人ギルドに戻ったがそろそろ戻って来る」
魔法使い「お泊り?…まさか気球で寝泊まりするつもり?」
盗賊「おいおい!お前等の初めての気球なんだぞ?愛着持てや」
ハンター「中に入って見たら?結構しっかり作ってあるんだよ」
盗賊「うむ…触って分かったがこの樹脂って奴はかなり丈夫で気密性が良い…住んでも良さそうだ」
魔法使い「へぇ?見て見る…」スタスタ
『居室』
魔法使い「あら?もうハンモックが…」
ハンター「僧侶だねw」
魔法使い「これが炉ね?煙突は外に出てるんだ…へぇ?」
ハンター「石炭燃やしても煙には蒔かれないよ」
魔法使い「下が荷室?」
ハンター「うん…荷室の方が頑丈に出来てる」
魔法使い「荷室も合わせたら15人くらい乗れそう」
ハンター「そうだね…どれくらい荷物載せられるのかもテストしないと…」
スタタ ドタドタ
僧侶「あ!!ここに居たですね?皆さんもお泊りするですか?」
魔法使い「何持って来たの?」
僧侶「食べ物とお酒でし」ドサリ
ハンター「アハハここでくつろぐつもりだ」
僧侶「ランタンも完備でし」ビシ
ハンター「オーガ討伐に行こうかなと思ってるんだけどさ」
僧侶「お?何処まで行くですか?」
魔法使い「東にちょっと行った所で馬車が襲われたらしいわ…その辺りに何匹か居るみたい」
ハンター「まだ日暮れまで時間があるからちょっと行って見よう」
僧侶「はいなー!!」
『日暮れ』
…プロペラが一定の推進力を生んでるならセンターボードの変わりはその前に置けば良いっすね
この大きさで行けると思うか?
やって見ん事には何とも…やっぱりセールを立てられないのは制限がキツイっすわ
縦帆を斜めに張ったとしてセンターボードと連動して無いとどうしても横に流れる
もういっその事センターボードは止めて尾翼を作ったらどうですか?
材料が無いんだ…下手な木材使っても折れるだけだしな
もう一本同じ槍があればなんとかなるんじゃないすか?
ううむ…有るにはあるが
尾翼さえ作ってしまえばあとは縦帆2枚でコントロール出来ますよ
ハンター「ただいまー…なんか忙しそうだ」
盗賊「おぉ!!丁度良かった…魔法使いが持ってる槍を貰えんか?」
魔法使い「え?私武器無くなっちゃうけど…」
盗賊「後で代わりの武器用意してやる…ミスリルのスピアヘッドが俺の船に積んであるんだ」
魔法使い「ミスリル?良いのそんな良い素材を貰って」
盗賊「俺が今欲しいのはその槍の柄の部分なんだ…その柄は長くて質が良い」
魔法使い「じゃぁ使って…」
盗賊「代わりの武器はまた明日用意してやる…ちっと短くなるけど良いな?」
魔法使い「まぁ…杖替わりだし…程ほどの長さの方が良いかもね」
盗賊「悪いな?せっかく槍に慣れた所なのによ」
魔法使い「ミスリルの槍が貰えるなら良し…」
盗賊「ヌハハそれで?オーガ狩りはどうだったんだ?」
ハンター「オーガ3体狩って牙6本…それから報酬金貨2枚」
盗賊「儲かったな?」
ハンター「うん…オーガは盲目も麻痺も効いたから余裕だった」
盗賊「どうやって止め刺したんだ?そう簡単に死なんだろ?」
魔法使い「私が槍を刺して直接体の中に魔法を撃った」
盗賊「ほーう?そんな荒業があるんか」
魔法使い「銀の槍が上手く雷を通すの…一発でショック死」
僧侶「私出番無かったです」
魔法使い「ミスリル銀ならどうなるのか試してみたい」
ハンター「新しい槍がもらえたらもう一回行って見ようか」
盗賊「分かった分かった…明日の朝一でなんとかしてやる」
魔法使い「楽しみが増えたわ…フフ」
『数日後_飛行船』
フワフワ
ハンター「…これで樽15個」ドスン
盗賊「ふむ…まだ乗せられそうだ」
ハンター「もう樽が無いよ…荷物も全部積んだ」
僧侶「乗って良いでしゅか?」
盗賊「おぉ乗れ乗れ」
ハンター「そろそろ出発?」
盗賊「あと大工と工夫を乗せる事になってる…そいつらが来たら出発だ」
ハンター「じゃぁ魔法使い呼んでくる」
盗賊「また露店でウロウロしてんのか?」
ハンター「うん…」
盗賊「お前等誰か探してんな?」
ハンター「ハテノ村の仲間が来ないかと思ってね…」
盗賊「そうか…商人ギルドの娘達に人相書き渡しときゃ良かったな」
ハンター「そんな手も有ったのか」
盗賊「又戻って来るからそん時までに用意しとけ」
ハンター「分かった…じゃぁ魔法使い呼んでくる」タッタッタ
--------------
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--------------
魔法使い「遅くなったわ…ハンター荷物入れて」
ハンター「荷物あるならもっと早く言ってよ…」ヨッコラ
僧侶「はぁぁ…いつもの事ですねぇ…」
盗賊「ようし!!乗ったら上昇すんぞ?」
ハンター「よいしょ!!」ドスン
フワフワ
盗賊「ハンター!!飛行船の操作はお前がヤレ…俺は縦帆張る」ダダ
ハンター「南東だね?」
盗賊「そうだ!!操作しながら覚えろ」
ハンター「おっけ!!」グイ シュゴー シュゴー
パタパタ パタパタ
ハンター「おぉぉ!!早い…」
盗賊「大まかな方向は縦帆の調整次第だ…後は横帆と尾翼で上手く方向定めろ」
ハンター「うん…スゴイ!どんどんキ・カイから離れて行く」
ビョーーーウ パタパタ
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『荷馬車』
ブモモー ガタゴト ガタゴト
剣士「やっとキ・カイに到着だ…長かったね」
女オーク「門の所にキラーマシンが居るわ?あと衛兵も2人」
剣士「このまま入れるんじゃないかな?荷物も大したもの載せて無いし」
女オーク「私オーク臭くない?」
剣士「大丈夫だって」
衛兵「止まれぇ!!」
剣士「…」グイ ブモモー
衛兵「お前達は行商人か?2人で移動してくるとは…」
キラーマシン「…」ウィーン ガチャ ウイーン
剣士「東の方にある地床炉村から来たんだ…あやしい物は積んで居ないよ」
衛兵「一応荷を確認する…」スタ
衛兵「これは又大きな骨だ…どうした?コレを売るつもりなのか?」
剣士「それは途中の海岸に落ちてたクジラの骨だよ…何かの材料にならないかと思ってね」
衛兵「ふむ…あとは木の実と食料…大量のオーガの牙と角」
剣士「何もあやしい物は無いでしょ?」
衛兵「まぁ通っても良いが質問だ…お前達は旅の戦士なのか?2人で地床炉村から来るのは怪しいと言わざるを得ん」
剣士「僕は魔術師…彼女は見ての通り大剣を使う戦士だよ」
衛兵「そうか…魔物ハンターという事か」
剣士「あぁその説明の方が早いね」
衛兵「地下で傭兵を募集していてな?興味があったら行って見るが良い」
剣士「へぇ?情報ありがとう」
衛兵「うむ…通って良いぞ…ご安全に!!」
ガタゴト ガタゴト
『古都キ・カイ』
ワイワイ ガヤガヤ
剣士「久しぶりだぁ…前と全然変わって無い」
女オーク「…」キョロ キョロ
剣士「確か…広場のちょっと先に商人ギルドがあった…その裏手に馬宿もあった筈」
女オーク「今日も馬車で寝るの?」
剣士「宿屋が良いね…水浴びもしたいし…酒場にも行って見たいよね?」
女オーク「フフ…」
剣士「まず馬車置いてオーガの牙と角を売っちゃおう…買い物もしたい」
女オーク「おっけ!」
剣士「ちょっと僕の真似やめてよ…君には似合わない」
女オーク「そう?」
剣士「よ~し!今晩は酒場に行って会話に慣れよう」
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『商人ギルド裏』
タッタッタ
剣士「ヤクを預けて来た…荷物の準備良い?」
女オーク「クジラの骨はどうするの?」
剣士「それは何かの材料に残しておこう…売るのは牙と角だけで良いと思う」
女オーク「うん…」
剣士「よーし!!フード被って」ファサ
女オーク「…」ファサ
剣士「行こうか!!手を」グイ
女オーク「…」ギュ
『商人ギルド』
ガヤガヤ ガヤガヤ
はい!商船の窓口はこっち…商隊はあっちね!!
買い取りの品目と相場は入り口で確認して!!
剣士「ええと…オーガの牙は一つ銀貨80枚か…角は安いなぁ」
女オーク「牙は全部で30本…角は15本」
剣士「面倒だから全部売っちゃおう」
女オーク「これは何の材料になるの?」
剣士「錬金術でポーションの材料とかだよ…牙は武器に加工される事もあるね」
女オーク「剣士は使わない?」
剣士「道具が有ったら加工しても良いけど面倒くさい…全部売る」
受付「買い取り?それとも商談?」
剣士「あぁ…この牙と角を買い取って欲しい」ドサドサ
受付「うはぁぁ…又一杯持って来たね…ええと牙30角15で金貨25枚と銀貨50枚」
剣士「うんそれで良い」
受付「それにしてもこれ全部自前で狩って集めたの?」
剣士「そうだよ…」
受付「ふ~ん…盗品じゃないよね?てか名前書いてる訳じゃ無いし盗品でも良いか」ジャラリ
剣士「こんなに沢山持ってくるのは変かな?」
受付「一気に持ってくるのは珍しいね」
剣士「そうだったんだ…でも買い取りありがとう」
受付「はいはい…又のお越しを~」ノシ
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『雑貨屋』
店主「らっしゃい!!」
剣士「換金して来たよ…何か欲しい物ある?」
女オーク「ゴーグル付きのマスク」
剣士「お!?良いね…どれ?」
店主「お客さんお目が高いねぇ…このマスクは灰を防ぐだけじゃなくて黒死病の予防にも良いんだ…買って行くかい?」
剣士「じゃぁそれ2つと…そうだフードとマントも買い替えよう」
女オーク「うん!」
剣士「これと…これと…あ!!ブーツも買い替えよう」
女オーク「私コレが良い」
剣士「おけおけ…ああああ!!金属糸のインナーが有る…これ君にピッタリだ」
女オーク「剣士は要らないの?」
剣士「僕は魔法に干渉しちゃうから要らない…でも君は魔法使わないから絶対着ていた方が良い」
店主「お客さんの場合体が大きいから男用だね」
剣士「それ買って行こう…後でサイズ調整してあげる」
剣士「ええと…これ全部でいくら?」
店主「金貨7枚だ!払えるかい?」
剣士「おけおけ!!」ジャラリ
店主「ほーーーこりゃ良いお客さんだ」
剣士「もっと買い物しよう!」グイ
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『宿屋』
ワイワイ ガヤガヤ
店主「…あいにくお部屋が一杯でして」
剣士「ここもかぁ…」
店主「申し訳ありません…水浴びだけでしたらご自由にお使いください」
剣士「女オーク?水浴びは自由だってさ?浴びて行く?」
女オーク「うん…」
剣士「じゃぁそこの酒場で待ってるから行って来て良いよ」
女オーク「直ぐに浴びて来る」
剣士「ゆっくりで良いさ…今日は酒場で食事したら馬車に戻ろう」
女オーク「分かったわ…じゃぁ行って来る」スタ
『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
どうも蛮族たちの戦争が激化してるんだってよ
また略奪が増えそうだなぁ
蛮族たちに通貨がありゃ特需でぼろ儲けなんだがなぁ…
あいつら何か良い物持って無ぇのかなぁ
噂では古代の遺物を沢山持ってるらしいが…そんなん使ってるの聞いた事無いんだよなぁ
店主「いらっしゃいませ…お一人様ですか?」
剣士「後でもう一人来る…席空いてるかな?」
店主「カウンターでお待ちください…席が空き次第ご案内出来ます」
剣士「まぁあんまり長く居るつもりは無いからカウンターで良いや」
店主「では…どうぞ…お飲み物は如何いたしますか?」
剣士「何があるの?」
店主「おすすめはハチミツ酒ですが値が張ります…安値のお酒でしたらアヘン酒が御座います」
剣士「フフフお金は持ってるんだ…ハチミツ酒2杯お願い」
店主「銀貨20枚頂きます」
剣士「おけおけ!」ジャラリ
店主「お食事はどうしましょう?バイキングでしたらお一人銀貨5枚ですが」
剣士「じゃぁ2人分で銀貨10枚だね」ジャラリ
店主「景気がよろしい様で?」
剣士「まぁね?久しぶりの酒場で気分が良いんだ…ケチケチすると気分も悪くなる」
店主「冒険者様なのでしょうか?」
剣士「うん…魔物ハンターと言えば早いかな」
店主「そうでしたか…どうぞハチミツ酒になります」コトリ
剣士「ありがとう…」グビ
剣士「あれ?この味…シン・リーン産のハチミツ酒だね?」
店主「お分かりで?先立入荷したのですがお高いので売れ行きはいまいちなのです」
剣士「そうなんだ…おいしいのにね」グビ
店主「お連れ様とは待ち合わせでしょうか?」
剣士「宿屋で水浴びしてから来る…まぁゆっくり待つよ」
スタスタ
剣士「あれ?女オーク…水浴びは?」
女オーク「水浴び場に他の男達が居たから軽く洗って出て来たわ」
剣士「なんだ…水場も人が一杯なのか」
店主「今は豪族達の船が入船していますのでどこも一杯ですね」
剣士「豪族?」
店主「ご存じ無い様ですね?お金持ちと言う所でしょうか…どうぞハチミツ酒になります」
女オーク「これ…私?」
剣士「うん…先に飲んでるけど乾杯しようか」
女オーク「初めて飲む…」チーン グビ
剣士「どう?シン・リーン産のハチミツ酒だよ」
女オーク「甘い…」グビ
店主「お二人は体格が良い様なので手慣れの魔物ハンターとお見受けします」
剣士「あー体格でバレちゃうかぁ…」
店主「商人ギルドの方で高額報酬の傭兵を募集していますよ?」
剣士「お金はもう要らないかなー」グビ
女オーク「剣士?船に乗って北の大陸に戻るならお金が必要なのでは?」
剣士「これからどうするのかあんまり考えて無いんだけどさ…急ぎじゃ無いから明日考えよう」
女オーク「フフそうね?」
剣士「今考えてもストレスになるだけだ…明日の事は明日考える!お金は持ってるだけ全部使う!」
店主「ハチミツ酒の次はフィン・イッシュ産の白酒でもどうでしょう?」
剣士「良いね!それも飲んでみたい」
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ドヤドヤ ドヤドヤ
さっきの女何処行ったか探せ…赤毛だ
居た!あそこだ…ちぃぃ連れの男が居やがる
はぁぁぁ海から上がって女神が現れたと思ったのによぅ
どうも俺はあれ以来ツキに見放されちまった…もう豪族の下働きなんざ真っ平だ…せめて良い女抱ければ
又お前は女女女女…お前のせいで俺はガッポリ稼ぐ予定が全部水の泡なんだ!いい加減にしろ
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剣士「フフ…なんか君の事付け狙ってる2人組が居るね?」
女オーク「知ってる…水場に居たの」
剣士「あれで聞こえないと思ってるんだろうか?」
女オーク「関わらない様にしましょう」グビ
剣士「そうだね…」
店主「お気を付けください?豪族の手下は節度の無い方が多いですから」
剣士「気にしないで何か食べようか?」
女オーク「うん…」
剣士「食事はバイキングなんだ…良さそうなものを持って来るよ」
女オーク「私肉は要らない」
剣士「分かってるって…ちょっと待ってて」タッタ
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野郎1「おい見ろ…男がどっか行くぞ」
野郎2「俺が欲しいのは金だ…女は買えば良い」
野郎1「じゃぁ俺は女頂く…お前は男から金取り上げりゃ良いだろ」
野郎2「おいおいあんな貧相な格好の奴が金を持ってる訳…むむ!!ハチミツ酒の空き瓶…」
野郎1「ほら見ろ…高い酒飲めるぐらいの金は持ってそうだぞ?」
野郎2「いつもの麻痺毒使うか?」
野郎1「俺はあの女を襲う…お前は男に行け…いつも通り吹き矢でこっそりな?」
野郎2「おい待て…男が戻ってきやがった」
野郎1「うむむ…チャンスを待つ」
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剣士「ナッツにクルミ…それからこれオリーブだ」
女オーク「オリーブ!食べたい」
剣士「種は残して」
女オーク「種が美味しいのに…」モグ
剣士「ナツメヤシの実もある」ガリ モグ
女オーク「白酒に合うわね…」グビ
剣士「君はお酒は大丈夫みたいだね?」
女オーク「オークは毒に耐性があるのよ?」
剣士「あーそういう事か…じゃぁ全然酔わないんだ」
女オーク「気分は良くなるわ」
剣士「良い効果だけ残るんだ…その体良いね」
女オーク「オークの弱点は呪術…呪いに弱い」
剣士「君は陰口にも弱いよね?」
女オーク「そう…そういう呪いに弱いのよ」
『街道』
テクテク
剣士「…まだあの2人付けて来るね」
女オーク「困った人間…」
剣士「なんか麻痺毒を使うつもりな様だけど…どうするかなぁ」
シュン! チクリ
剣士「あ…線虫!」ザワザワ ニョロ
女オーク「剣士?どうする?」
剣士「君は麻痺毒平気だね?」
女オーク「平気…」
剣士「飛蚊!行け」プーン
女オーク「蚊?」
剣士「彼らには蚊で十分さ…無視して行こう」グイ
女オーク「ウフフ…」タッタッタ
『商人ギルド裏』
メラメラ パチ
剣士「よし!焚火はこれで朝まで持つ」
女オーク「けっこう馬車で寝泊まりしている人居るのね?」
剣士「荷物の置き場が無いからきっとそうするしかないんだよ」
女オーク「ここの匂い覚えてる…」
剣士「色んな匂いが混ざって表現しにくい」
女オーク「剣士はもう寝る?」
剣士「いや…ちょっと作り物をやる」
女オーク「これね?クロスボウ…」ガチャ
剣士「そうそう…君の分も作る予定だよ」
女オーク「これで弓を?」
剣士「うん…硬さが丁度良いんだ…多分君も行ける」
女オーク「弓は使った事無いの」
剣士「教えてあげる…弓があるのと無いのとでは戦いの幅が全然違うから」
女オーク「クロスボウのままじゃダメ?」
剣士「弓の方が手軽に撃てる…それから矢の方が安いし簡単に作れる」
女オーク「そうなんだ」
剣士「君は休んでて良いよ…」
女オーク「ううん?見てるから気にしないで」
剣士「そっか…じゃぁ見てて」ガリガリ
トンテンカン トンテンカン
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『茂み』
ブ~ン バチン!!
野郎1「ちくしょう麻痺毒が効かねぇ…パチ物を掴まされた」ボリボリ
野郎2「虫が多い…俺ら酒飲んでるから刺されまくりだ」バチン!ボリボリ
野郎1「とことんツキが無ぇな…あのゴツイ体格の中身がどうなってるのか知りてぇ…」ウズウズ
野郎2「もう諦めろ…今は兎に角金だ!金がありゃ女なんかいくらでも買える」
野郎1「くそぅ!!ぬあ!!酒場に金置いて来ちまった…又かよ」
野郎2「お前は何回金無くすんだ?もう俺の金はやらんぞ」
野郎1「戻るぞ!!酒場でもう一回カモを探す」ドタドタ
野郎2「はぁぁぁぁ俺らいつになったら報われるんだ?ガッポリ稼ぐ山はもう無いのか?」
野郎1「うるせぇ!早く行くぞ」
ドタドタ ドタドタ
『翌朝』
チュン チュン
剣士「…」パラパラ
女オーク「また鳥達とお話?」
剣士「そうだよ…噂を聞いてる」
女オーク「何か?」
剣士「ここから東に2日くらい行った所に海賊の隠れ家があった筈なんだけど…もう無くなったらしい」
女オーク「海賊の隠れ家になんかどうして?」
剣士「ビッグママに会えると思ってたんだけどさ」
女オーク「ビッグママってあの時の大人の人?」
剣士「そうだよ…君知ってるよね」
女オーク「剣士はそこに行くつもりだったの?」
剣士「行けば会えると思ってた…でももう隠れ家は無い…宛てが無くなっちゃたよ」
女オーク「やっぱり船に乗るお金が必要ね」
剣士「う~ん…北の大陸に戻るかぁ」
女オーク「今お金はいくらあるの?」
剣士「あと金貨4枚」
女オーク「ウフフまた稼がなきゃ」
剣士「ちょっと船に乗るのにどのくらい掛かるのか聞いて来る」
女オーク「じゃぁ私は火を起こして食事作っておくわ」
剣士「任せた!!ちょい行って来る」シュタタ
----------------
『30分後』
メラメラ パチ
女オーク「遅かったわね?船はいくらだった?」
剣士「一人金貨10枚」
女オーク「またオーガ狩らないと…」
剣士「傭兵の話も少し聞いてきた…そっちの方が良いかもしれない」
女オーク「何の傭兵?」
剣士「地下にある古代遺跡までの安全確保らしい」
女オーク「行くの?」
剣士「気乗りしないけど何処に居るか分からないオーガ探すよりは良いかなと…」
女オーク「弓の撃ち方教えてくれるのでしょう?」
剣士「あぁそうだったね…弓の練習のつもりで良っか」
女オーク「弓使ってみて良い?」
剣士「うん…硬さの調整は任せて」ポイ
女オーク「…」ギリリ ブン
剣士「どう?」
女オーク「ちょっと硬い…剣士にはコレが丁度良いの?」
剣士「そうだよ?」
女オーク「え…私より腕力有る?」ギリリ ブン
剣士「さぁ?使って見てどうしても硬いなら調整するよ」
女オーク「分かったわ」ギリリ ブン
『商人ギルド』
ワイワイ ガヤガヤ
受付「はいあんたね?こっちの人がもう一人の傭兵ね?」
剣士「うん…どうすれば良いのかな?」
受付「ちょい奥に案内するから付いて来て…」スタ
ガチャリ バタン
受付「商人!さっき話した傭兵連れて来たヨ」
商人「待ってたよ…2人顔を見せてくれるかな?マスク外して」
剣士「あ…うん」---あれ?この人…商人さんか?---
女オーク「…」ガサリ
商人「君は?顔を見せられないの?」
剣士「いや…」ガサリ
商人「ふむ人相書きの人物じゃ無いね…体格も十分…戦闘に自信は?」
剣士「相手によるんだけど…」
商人「あぁゴメンゴメン何も話して無かったね…魔物の殆どはゾンビさ…オークも居るかな」
女オーク「オーク?オークと戦うの?」
商人「殺す必要は無い…追い返せば良い」
女オーク「剣士…オークが相手だと危ないわ」
商人「こっちも戦うつもりは無いんだよ…今回はどんぐりを沢山持って行く…取引がしたいのさ」
女オーク「どんぐりで?」
商人「うん…僕らは遺跡の調査がしたいだけなんだよ…終わったら直ぐに引き上げる」
剣士「オークと話せる人は居るの?」
商人「居ない…でもね?オークは賢いから察すると思ってる…オークの何かを奪いに行く訳じゃ無いからね」
女オーク「そう…それなら良いわ」
商人「なんか君詳しそうだね?」
女オーク「別にそれほど詳しくは…」
剣士「地下の遺跡にはどれくらいの人数で?」
商人「キ・カイの衛兵4人とキラーマシン2台…それから君達合わせて全部で4人」
剣士「僕達の仕事は?」
商人「主に僕の護衛だよ…万一の時は僕を逃がしてくれれば良い…謝礼は保障する」
女オーク「剣士どうする?良いの?」
商人「ここまで話を聞いてしまったからには行かないという選択はもう無い…良いね?」
剣士「分かった…いつ出立?」
商人「今日の昼…チカテツ街道の1番…そこで衛兵達が待ってる」
剣士「準備して行く」
商人「期待しているよ…じゃぁ」ノシ
剣士「…」---違う…この人は女だ…僕の知ってる商人さんじゃない---
『商人ギルド裏』
ガサゴソ
剣士「よし荷物はここに置いて居ても良さそうかな」
女オーク「貴重品は全部持ったわ」
剣士「どんぐりと松ぼっくりしか乗って無い馬車なんか誰も興味無いよねw」
女オーク「フフフそうね…」
剣士「あと矢を途中で買って行こう…あ!そうだ」
女オーク「うん?」
剣士「君のコバルトの剣を貸して…」
女オーク「どうするの?」スラーン
剣士「切っ先だけ銀に変性させておく…これでゾンビも倒せる…変性魔法!」シュワ
女オーク「突いて使う?」
剣士「そうだよ…銀になってるのはほんのちょっとだから重さは変わってない」
女オーク「ふん!」ブン ブン
剣士「その剣ならゾンビは簡単に真っ二つに出来るだろうし無理して突きじゃなくて良いと思う」
女オーク「そうね…」スチャ
剣士「じゃ行こうか」グイ スタタ
---------------
---------------
---------------
『チカテツ街道1番』
ガヤガヤ ガヤガヤ
剣士「矢筒は40本まで入る…腰に提げておいて」ガサリ
女オーク「この矢尻は全部銀に変性させた?」
剣士「うん…一番安い矢を変性させたんだ…品質は良くないけどゾンビには十分」
女オーク「あなたの変性魔法は本当に便利ね」
剣士「悪い魔術師はこの魔法でお金稼ぎをするんだよ…それをやると魔女って言う人が制裁に来る」
女オーク「へぇ?」
剣士「私利私欲で使うのは禁じられてる…良い事の為だけに使う魔法」
スタスタ
商人「やぁ待ってたよ…君達2人は体格が良いから良く目立つ」
剣士「もう行く準備は出来て居るの?」
商人「もうすぐ終わる…ちょっと説明するよ」
トロッコ2台で目的地まで行く…所要時間は大体5時間
それぞれのトロッコにキラーマシンが1台づつ乗ってトロッコを動かす
先頭のトロッコには衛兵4人が乗る
後続するトロッコには僕達4人が乗る
どんぐりは先頭のトロッコに積んであるからそれを目的地周辺で降ろす
その間僕達は遺跡の探索だ…しっかり僕を守ってね?
剣士「あと一人は何処?」
商人「もうトロッコに乗って居るよ…君達も行くかい?」
剣士「そうだね…待たせちゃいけない」
商人「じゃぁ行こうか」スタ
『トロッコ』
キラーマシン「…」ウィーン プシュー
剣士「へぇ…間近でみるとやっぱりスゴイな」
商人「乗って」ピョン スタ
剣士「どうも…よろしく」ピョン
アーチャー「…」ペコリ
機械の犬「ワン!」フリフリ
剣士「機械の犬…」
商人「気にしないで良いよ…おまけだから」
女オーク「乗るわ?」ピョン ドサ
剣士「君達2人の武器はクロスボウなんだ?2連装だね…良いなぁ」ジロジロ
商人「珍しいかい?」
剣士「仕組みに興味があるんだ…あーこうなってたのか」フムフム
商人「そちらは普段どんな魔物を狩るのかな?」
剣士「う~ん…何でも狩るけど…悪い魔物だけかな」
商人「答えになって居ないなぁ」
剣士「オーガとかシーサーペントも狩ったな」
商人「2人で?」
剣士「そうだよ…こっちの女オークなんかオーガを真っ二つに切るよ」
商人「それは頼もしい…君達が傭兵で良かった」
キラーマシン「…」ウィーン ガチャコン ガチャコン
商人「お!?予定通り動き始めた…」
剣士「このトロッコっていう奴に乗るのは初めてだ…馬より早そうだ」
商人「キラーマシンのお陰だね」
剣士「すごいなぁ…ワクワクする」キラキラ
ゴーーーーーー カタタン カタタン
---------------
---------------
---------------
『5時間後』
商人「そろそろ目的地だよ…ゾンビに警戒して」
剣士「…」クンクン
女オーク「匂う?」
剣士「何処かに居る」
キラーマシン「…」ウィーン プシュー
剣士「止まった…」
商人「降りようか」ピョン スタ
剣士「…」ピョン シュタ
女オーク「…」ピョン ズダ
商人「先頭車両と少し話してくる…ここで待ってて」タッタッタ
アーチャー「…」ヨッコラ ノソ
剣士「暗いな…女オークは大丈夫?」
女オーク「夜目は利くから大丈夫」
剣士「ここで戦闘跡がある」
女オーク「倒れて居るのは皆ゾンビね…燃やされた跡もあるわ」
タッタッタ
商人「予定通り!!衛兵とキラーマシンでトロッコを守る…僕達は遺跡の調査だよ…しっかり守ってね」
剣士「うん…」
商人「僕が先導する…付いて来て」
剣士「暗くない?明かりを付けられるけど…」
商人「え!?本当に?」
剣士「付けて良いなら照明魔法を使う」
商人「おおおお!!魔法も使えるのか…先に言って欲しかった」
剣士「照明魔法!」ピカー
商人「トロッコの周りにもお願い…松明じゃ遠くまで見えない」
剣士「おっけ!!照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー
商人「…なんだ君が先頭の方が良さそうだ」
剣士「じゃぁ僕が先頭を行く…女オークは最後に」
女オーク「うん…」
剣士「行こう…」スタ
『大扉』
ギーーーー
女オーク「待って!通路の奥にゾンビが居る」
商人「あ…大きい」
女オーク「なんてことなの…オークがゾンビにされてる」
剣士「倒せる?」
女オーク「私が倒す…」ギリリ シュン ドス!
オークゾンビ「ウゴ…ウゴゴ」ドタリ
女オーク「こんな所にオークシャーマンが来てるなんて…」
剣士「オークシャーマン?」
女オーク「オークをゾンビにして使うのはオークシャーマンなの…呪術で死体を操る」
剣士「死霊術だね…僕もやろうと思えば出来るんだよ」
女オーク「そうなの?」
剣士「蟲を使役するのとほとんど同じなんだ…蟲を使うか死体を使うかの差だけだよ」
商人「もう良いかい?ここに来たのは遺跡の調査だ…戦闘は必要が無いなら控えて欲しい」
剣士「ゴメン分かった…先に進もう」
『古代遺跡』
モクモク
剣士「マスク買っておいて良かった…灰がスゴイね」
商人「僕達が調査している間の安全をよろしく」
剣士「あ!!ちょっと待って…ワームが沢山居る」
商人「ワーム?」
剣士「大きなイモムシだよ…命令して灰をすこし掃除させる」
商人「それは良い」
剣士「ちょっと待ってね…蠕虫!従え…灰を食らえ」
ゴゴゴゴゴ ドスーン
商人「うわ!!」タジ
剣士「ワームに守られてるからこの辺は完全に安全だよ…好きなように調査して良い」
アーチャー「…」タッタッタ
機械の犬「ワンワン!」トコトコ
商人「助かる」タッタッタ
女オーク「剣士…私トロッコの方が心配」
剣士「ん?オークが来るかもしれない?」
女オーク「そう…向こうを援護してくるわ」
剣士「おっけ!!こっちはワームが居るから絶対大丈夫…君は気を付けて」
女オーク「うん…」タッタッタ
『30分後』
商人「よいしょ…重い…」
剣士「何か見つけた?」
商人「これを持って欲しい」
剣士「結構重いね…何だろうコレ」
商人「それを探しに来たんだよ…今他にも無いか探してるからもう少し待って」
剣士「分かった…先にトロッコに運んでも良いかな?」
商人「僕達の安全が確保出来て居るなら良いよ」
剣士「こっちはワームが居るからよほど大丈夫」
商人「じゃぁ任せる」
剣士「直ぐに戻るよ」
--------------
『トロッコ』
ヴヴヴヴヴ ガァァァ
剣士「ゾンビ…」ギリリ シュン グサ
衛兵「遺跡の調査はまだ掛かりそうか?」
剣士「分からない…ゾンビの数は!?」
衛兵「囲まれている…少し引いて守備する」
キラーマシン「…」ウィーン ブン ザクリ
ゾンビ「ガァァァ」ズル ズル
女オーク「オーク達も何処かに居る筈…警戒して様子を見てるわ」
衛兵「右手にゾンビ3体!!」
女オーク「少しづつ下がって…」ギリリ シュン グサ
剣士「商人達に急がせる!」ギリリ シュン
衛兵「私達は撤収の準備を始める…急いでくれ」
剣士「分かった」シュタタ
---------------
『古代遺跡』
ドドドド ドコーン
剣士「何だぁ!?上か!!」
商人「あぁ!!戻って来たんだね…」
剣士「何が居る?」
商人「ガーゴイルだよ10体くらい飛んでる」
剣士「引いた方が良い」
商人「その様だ…」ヨッコラ ヨッコラ
剣士「僕が後方から援護する…トロッコに向かって」
商人「敵は任せる…戻ろう!!」
アーチャー「…」ノソノソ
機械の犬「ワン!」トコトコ
剣士「来る!早くトロッコへ!!」
ガーゴイル「グェェェェ…」ビュゥゥゥ バッサ バッサ
剣士「早いな…」ギリリ シュン
剣士「蜻蛉!従え…敵を食らえ」ザワザワ バサバサ
商人「虫の大群…君は一体何者なんだい…」
アーチャー「…」ジロ
剣士「蟲使いの得意な只の魔術師さ…足を止めないで早くトロッコへ」
商人「う…うん行こう!」ヨッコラ
----------------
『トロッコ』
ヴヴヴヴヴ ガァァァァ
正面8体!右手4体!
後ろにも4体居るわ
キラーマシンはトロッコを動かすから宛てにするな
女オーク「私が処理するから作業急いで!」ギリリ シュン
商人「戻った!ゾンビに囲まれてる?」
衛兵「よし!!撤収出来るな?」
商人「報告より敵が多かった…キ・カイに戻ろう」
衛兵「そちらは後続のトロッコで追っ手を処理してくれ」
商人「分かった…皆乗って!」ヨッコラ
アーチャー「…」ノソノソ
女オーク「私達は飛び乗るから早くトロッコを動かして」ギリリ シュン
剣士「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴウ ゴウ ゴウ
ボボボボ メラ
剣士「僕が引き付ける…」シュタタ ギリリ シュン
衛兵「助かる…」ダダダ
女オーク「火炎でゾンビの動きが遅く…」ギリリ シュン
剣士「どんどん撃って!」ギリリ シュン
商人「スゴイな…手慣れてる」
剣士「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴウ ゴウ ゴウ
ボボボボ メラ
女オーク「…」ギリリ シュン
キラーマシン「…」ウィーン ガチャコン ガチャコン
女オーク「トロッコが動き始めた!剣士乗って!!」ピョン ドスン
剣士「おっけ!!」ピョン クルクル シュタ
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『帰路』
ゴーーーーー カタタン カタタン
商人「ふぅぅ…ここまで来ればもう安心」
剣士「もう調査は終わり?」
商人「目的の物が3つも手に入った…十分さ」
剣士「良かった…これで一人金貨20枚づつだね」
商人「ハハハガメツイな…ちゃんと帰ったら報酬は支払うよ」
剣士「なかなか楽しかったよ…弓の練習にもなったね?女オーク…」
女オーク「フフ剣士には負けたわ…魔法と併用するなんて反則よ」
剣士「魔法も教えてあげようか?」
アーチャー「…君達…何者?」ジロ
剣士「見ての通り魔術師と戦士さ」
アーチャー「マスクを外して顔を見せてくれないかい?」
剣士「また?良いけど…」ズルリ
女オーク「私も?」ズルリ
アーチャー「良く見せて…」ジロ
剣士「人相書きにはなって無いと思うけどなぁ…」
アーチャー「君…未来君だね?その目は未来君だ」
剣士「ええ!!?どうして…もしかして商人さん?」
アーチャー「アハハ…大きくなったねぇ…全然気が付かなかったよ」
女オーク「え?剣士どういう事?知り合い?」
アーチャー「そうか剣士って名乗ってるいるのか」
剣士「商人さんの方こそどうしてアーチャーに…」
アーチャー「身を隠して居るんだよ…僕が商人でもう一人の方は僕の影武者なのさ」
剣士「え!?」キョロ
影武者「…」ジー
剣士「道理で…この人女の人だよね」
商人「分かってたんだね」
剣士「まぁ匂いでね」
商人「君の連れの戦士とはどういう関係なんだい?」
剣士「女オークは信用しても良い…えーと僕のパートナー?」
女オーク「剣士は私の奴隷よ」
商人「ハハハ未来君は奴隷なのか…まぁ良いや未来君は家族みたいなものだ信用しよう」
剣士「あのさ…お金はちゃんと貰うよ?」
影武者「ぷっ…」
商人「分かってるよちゃんと支払うよ…いやぁそれにしても君はお父さんにそっくりになったね」
剣士「そう?」
商人「性格はお母さんにそっくりだ…良く目を見せて?」
剣士「…」ジー
商人「そんな目をしてイタズラばっかりしてたんだよ…懐かしい目だ」
剣士「商人さんは遺跡の調査で何を探して?」
商人「まぁ色々有ってね…そうだ!おいでラヴ!」
機械の犬「ワン!」フリフリ
剣士「機械の犬?」
商人「驚くなよ?この機械の犬は君がよく甘えていたホムンクルスだよ」
剣士「えええええええええええええ!!?ホム姉ちゃんは死んだんじゃ無かったの?」
商人「僕が蘇らせた…そして遺跡の調査はホムンクルスをちゃんと蘇らせる為なんだ」
剣士「ホム姉ちゃん…信じられない…この中にホム姉ちゃんが?」
機械の犬「ワン!」フリフリ
剣士「そうだったのか…」ナデナデ
機械の犬「クゥ~ン」フリフリ
剣士「商人さんはどうしてずっと顔を隠して居るの?」
商人「身を隠して居るのもあるけど…僕はもう人間ではなくなってしまって居てね」
剣士「どういうこと?アサシンさんと同じ不死者になったとか?」
商人「う~ん…それに近いかな…皮膚を見てみるかい」グイ
剣士「え?…ウロコ?」
商人「僕はねどうも皮膚の再生があまり良く無くて全身のウロコが隠せなくなったんだよ」
剣士「そんなの変性魔法でどうにでもなるよ…治してあげようか?」
商人「あぁこれはこれで良いんだ…普通の皮膚よりも硬いしなにより火傷に強い」
剣士「そっか…でもどうしてウロコなんか…」
商人「僕は何も知らずドラドンの涙を飲んだんだよ…心臓が弱いのに中々死ななくてね…気付いたらこうなってた」
剣士「アハハドラゴンになったんだね?」
商人「そういう事になるのかな?いやぁ…なんか話すことが一杯あるね」
剣士「僕も聞きたい事が沢山あるんだ…どうしよう?どっちから話そう?ジャンケンで決める?」
商人「ジャンケンって何だい?」
剣士「これがグー…これがチョキ…そしてこれがパーでね?」
グーはチョキに勝ち
チョキはパーに勝ち
パーはグーに勝ち
商人「おお!!そう言うのはラヴが大好きなんだ…やってみて」
剣士「え…じゃぁグーは?」
機械の犬「ワン!」
剣士「チョキは?」
機械の犬「キャン!」
剣士「パーは?」
機械の犬「クゥ~ン」
剣士「アハハハ行けるね…じゃぁせーの!!」ポイ
機械の犬「ワン!」
剣士「ちょちょちょ…見てから鳴いてるよね?もう一回!せーの!!」ポイ
機械の犬「クゥ~ン」
剣士「ちょちょちょ…ダメだってズルいから」
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----------------
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『数時間後』
カクカク シカジカ…
商人「…通りで人並み外れた戦い方をする訳だ…オークがこんなに人間と慣れあうなんて」
剣士「それでずっと一緒にキ・カイまで一緒に旅して来たんだよ」
商人「言葉も君が教えたんだね?」
剣士「最近はすごく上手になったよ…ね?」
女オーク「ウフフ…」
商人「君に教えておかないといけない事が有る…さっき話してた君の3人の仲間」
剣士「うん…」
商人「この間まで商人ギルドまで来てたんだ…今は気球を買ってハテノ村まで飛んで行った」
剣士「そうだったんだ…安心したよ」
商人「本当は遺跡の護衛を彼らにお願いしようと思って居たんだけどね…タイミングが悪かった」
剣士「それで傭兵を募集してたんだね」
商人「君で良かったよ…あんなにワームが居たんじゃどうにもならなかった」
剣士「金貨20枚の働きはしたでしょ?」
商人「アハハ抜け目が無いのはお母さんと一緒だ」
剣士「やっぱり似てる?」
商人「何て言うのかなぁマイペースな所?きっと他に夢中になる事が出来たら金貨20枚の事も忘れるよ」
剣士「いやいや…ちゃんと貰うから」
商人「遺跡から発掘した謎の機械が一杯あるんだよ…見たくないかい?」
剣士「おぉ!!見たい見たい…」
商人「よし!帰ったら僕の秘密の部屋に案内してあげる…他の人は誰も入れないんだ」
剣士「どんな機械?」
商人「君のお母さんがデリンジャーっていう武器を持って居たよね?そんな感じの奴さ」
剣士「おおおおおお!!」キラキラ
女オーク「ウフフ…剣士かわいい」
商人「君は剣士君の保護者みたいだね」
剣士「どっちかって言うと僕の方が保護者なんだけどさ…なんか逆に見られるんだ」
商人「じゃぁどうしてずっと膝の上に乗って居るんだい?」
剣士「座るのに丁度良いだけだよ…商人さんも座ってみる?暖かいんだ」
商人「ええ!?いや僕は遠慮する…それで君が聞きたい話って何なのかな?」
剣士「あーまた今度で良い…なんかデリンジャーの事で頭が一杯でどうでも良くなった」
商人「ほらね?お母さんにそっくりだ…飽きっぽいと言うか」
剣士「このトロッコもすごく改造したくなる…多分もっと早く出来る」
『チカテツ街道1番』
ガヤガヤ
剣士「影武者さん…置いて行って良いの?」
商人「交渉事は全部任せて良い…僕達は先に戻るよ…収穫した物を無くさない様に?」
剣士「これ重いね…何なの?」
商人「古代のエネルギーユニットさ…」
剣士「へぇ?何が入ってるんだろ」
商人「帰ってからのお楽しみに」
剣士「女オーク?迷わない様について来てね」
女オーク「ウフフ…」ニッコリ
『商人ギルド地下』
ドタドタ
剣士「…こんな所に地下があったのか」
商人「ふぅぅぅ無事に持って帰って来られた」
剣士「謎の機械は?」
商人「奥にある…おいで」
ギギーー
剣士「うは!今度は本棚の中か…念入りに隠してあるんだw」
商人「こっちだよ…」スタスタ
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--------------
--------------
剣士「おぉぉぉ沢山ある!!見て良い?」
商人「どうぞ好きな様に…でも壊さないでね」
女オーク「…この絵」
商人「あーそれね…僕が描いたんだよ」
女オーク「精霊ウンディーネ…東オークの守る神様」
商人「え…ちょっと待った…どういう事だい?」
女オーク「東オークは精霊ウンディーネを信仰しているの…ずっと昔から眠るウンディーネを守って居るわ」
女オーク「西オークは呪術信仰で…オークに伝わる予言を守って居る」
商人「まさか…君達が情報を持って居たとは…」
西オークのオークシャーマンは予言に従いウンディーネを目覚めさせようとしている
でも東オークはウンディーネを手放さない
だからオーク達は争い合ってる
オークシャーマンは戦いに勝つために暁の使徒の力を求めた
商人「そこで剣士君が捕らえられた?そういう事か…」
女オーク「でもオークシャーマンは悪いオーク…沢山のオーク達に呪いを掛ける」
商人「呪い?」
女オーク「従わせる呪いやゾンビになる呪い…グールやオーガ達と同じ…」
商人「そうやって言う事を効かせて居るんだね…戦争に勝つための選択か」
女オーク「オーク達は本当は戦いたくないの」
剣士「ねぇ今の話…呪いって何だと思う?」
女オーク「呪いは呪い…呪怨って呼ばれてる」
剣士「僕が思うにそれはただの病気だと思うな…ゾンビ化する病気」
女オーク「剣士は虫の力で治せる?」
剣士「多分ね…」
剣士「そしてオークシャーマンの力…それは多分僕と同じ蟲使いだよ…使う術がほとんど同じだ」
女オーク「虫を…」
剣士「使役しているのが虫か死体かの違いだけだ」
女オーク「オークシャーマンは治癒の虫を使った事無い」
剣士「知らないだけじゃない?僕は蟲を良く知ってる…オークシャーマンは死体を良く知ってる…そんだけの差」
女オーク「言われてみれば…剣士は死体を使ったの見た事無い」
剣士「そうそう…得意なのがちょっと違うだけ」
商人「フムフム…今の話から察するにウンディーネが目覚めれば解決する話だね」
女オーク「そんな事が出来る?」
商人「手はある…只ちょっとリスクが高い…僕はもうミスを犯したくない」
剣士「ミス?」
商人「ホムンクルスを2度も失ってるんだ…この機械の犬の中に居る君まで失いたくないんだ」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「もう一枚外部メモリが有ったらなぁ…」
剣士「ホム姉ちゃんが見つかったハテノ村に残って無いかな?」
商人「…」
”私が眠っていた場所にならもしかしたら合ったのかもしれません”
商人「そうだ…心当たりが2つ有る…探しに行くか」
剣士「ハテノ村?」
商人「いやそっちは灰で埋まって居る…先に行くのなら名も無き島…君が生まれた場所さ」
剣士「おぉ!!爺いじにずっと会って無い…行きたい」
商人「ちょっと考えさせてくれ…部屋は好きに使って良い」ブツブツ
----------------
カチャカチャ シュコシュコ
商人「使えそうかい?」
剣士「うん!掃除して組み立ててる…」
商人「それは良かった…僕はそれのメンテナンスが良く分からなくてね」
剣士「多分ママが持って居たのと同じさ…錆びついて居たけどこれで大丈夫」カチャカチャ
商人「火薬は有るのかい?」
剣士「勿論!!…よっし!出来た…」シャキーン
商人「んん?砲弾じゃなくてどんぐり?」
剣士「あぁコレね…どんぐりを変性させて鉛に変える事もできる…普段はどんぐりで十分かな」
商人「どんぐりを撃つのかw」
剣士「ちょっと試し撃ちして良い?」
商人「部屋を壊さないで欲しいな…」
剣士「撃つのはどんぐりだよ…石壁なら大丈夫でしょ?」
商人「壊さないでよ?」
剣士「うん…」チャキリ ターン
バチン! バラバラ
商人「おぉ!!結構威力がある」
剣士「線虫!」ザワザワ ニョロ
商人「え…今の撃ったどんぐりから虫が?」
剣士「こういう使い方がしたいんだ…どんぐりからワームも産めるし木に成長させる事も出来る」
商人「鉛を撃つより汎用性がある?」
剣士「うん!気に入った…もう僕弓要らない」
商人「ハハ喜んで貰えて良かった」
剣士「ねぇ女オーク!!ちょっとオーガ探しに行こうよ」
女オーク「いま夜よ?」
剣士「んあぁぁ…寝て待つかぁ…」ショボン
商人「この建屋の上の部屋なら好きに使っても良いよ…受付には話しておくから」
女オーク「あ…水浴びしたい」
剣士「おっけ!今日は我慢する…一緒に水浴びしよう」
商人「一緒に?ハハ…まぁ好きにしなよ」
剣士「じゃぁ行こ!!」グイ
『客室』
ガチャリ
受付「ふぁ~むにゃ…こんな夜遅くに」ブツブツ
剣士「ここ使って良いんだね?ありがとう」
受付「もう起こさないで…じゃ」バタン
剣士「やっとベッドに横になれる」ドスン ギシギシ
女オーク「こんな良いお部屋初めて…」
剣士「あぁそうか…君は人間の街で生活するの初めてだったね」
女オーク「窓から外が見える…」スタ
剣士「ちょっと狭いけど落ち着くね」
女オーク「ねぇ今日は満月よ?」
剣士「今見える?灰で曇って無い?」
女オーク「丁度見えてるわ?」
剣士「…思い出した…そういえば昔ママが言ってた…あの月に絶対何かあるって」
女オーク「何か?」
剣士「ママは月に行こうと真剣に考えてたんだよ…夜の闇を明るく照らす月に絶対秘密があるってさ」
女オーク「ウフフ…本当かしら?」
剣士「そうだ望遠鏡買わなきゃ…ママと月を見る約束したまんま見ていない」
女オーク「じゃ明日望遠鏡買いに行かなきゃ…」
剣士「まてよ!?海賊の隠れ家に置いてあったな…ビッグママの望遠鏡…倍率の高い奴」
女オーク「やる事が尽きないわね?」
剣士「そうだそうだ…そうしよう」キラキラ
女オーク「剣士かわいい…」ギュゥ
剣士「ちょちょちょ…」
女オーク「ウフフ」
『翌朝』
トントン
剣士「う~ん…」パチリ
女オーク「剣士起きて?誰かノックしてる…」ゴソゴソ
剣士「だれ~?」ゴソゴソ
商人「起きて居るかい?開けて良いかな?」
剣士「うん…」アセアセ
ガチャリ ギー
商人「君にお願いが有ってね…」
剣士「どうしたのさ?」
商人「ズバリ言う…木材が欲しい」
剣士「なんだ…そんな事か…簡単だよ」
商人「そう言ってくれると思って居た…実はね…急にお金が必要になったんだ」
剣士「木材とどんな関係があるの?」
新しく気球を買いたいんだけどもう僕が自由に出来るお金が少ししか無くてね
木材は高く取引できるから欲しいんだよ…剣士君なら出来ると思った
剣士「あんまり派手にやると魔女が怒るなぁ…」
商人「クヌギの木だったかな?10本もあれば十分さ」
剣士「なんだそれくらいで良いのか…直ぐに出来るよ」
商人「よし!付いて来てくれないか?指定の場所に生やしたいんだ」
剣士「おけおけ!」
商人「散歩みたいな物だから女オークも一緒においで」
女オーク「はい…」
『街道』
ガヤガヤ
商人「よし!人が居なくなった…そこの庭に3本…こっちの庭にも3本」
剣士「成長魔法!」ザワザワ
商人「…これで終わりだよ」
剣士「ハハ簡単だ」
商人「今植えた物件はね…売り屋なんだ…これで高く売れる」
剣士「なんかお金儲けなのに良い事した気分だ」
商人「さぁ戻ろうか」
剣士「商人さんは気球持って無かったの?」
商人「僕の気球は今頃セントラルの港にあるよ…船に乗せっぱなしさ」
剣士「じゃぁ新しく気球を買うって言うのは?」
商人「名も無き島に行くためには普通の気球じゃ行けない…帆付きの気球を買うんだ」
剣士「なるほど…じゃぁアダマンタイトも欲しいね」
商人「そんなレアな物は持って居ないし市場にも出ないかな」
剣士「採ってこようか?」
商人「ハハそんな簡単に手に入るのかい?」
剣士「ここから東にある海賊の隠れ家覚えてる?」
商人「君のママに連れて行かれた場所だね?あそこは何度も探索したけど見つけられなかった」
剣士「行き方があるんだよ…多分アダマンタイトもそのままあるんじゃないかな?」
商人「そうか…取りに行きたいけどちょっと僕はやる事が有るなぁ…」
剣士「僕と女オークで取りに行って来るよ…それでさぁ?」
商人「何だい?」
剣士「あそこにあった隠れ家にはもう誰も居ない様なんだけどなんで?」
商人「あぁ…君は知らなかったんだね…」
資金が潤沢になった海賊達は
女戦士率いる派閥とそうでない派閥に分かれてしまって離別したんだよ
その結果あそこにあった隠れ家は放棄された…というか女戦士が海賊を追いだした
剣士「ママが居なくなったからかな?」
商人「さぁね?海賊達の事情は良く知らない」
剣士「離別した海賊達が豪族になった感じ?」
商人「そうだね…資金を全部奪って豪族になったんだよ…その後女戦士は何処に行ったのか分からない」
剣士「ビッグママは何度か僕に会いに来てくれてた…最後に会ったのは3年前だったかな」
商人「まぁ元気にして居れば良いさ」
剣士「この後直ぐに隠れ家に向かうよ」
商人「そんなに慌てなくても良いけどね」
剣士「う~ん…はやくデリンジャーの使い勝手を試したいんだ」
商人「ハハそうかフフフお母さんにそっくりだねぇ…まぁ気球を買い付けておくから又戻っておいで」
剣士「うん!!女オーク!!行こう!!」グイ
---------------
『荷馬車』
ブモモ~ ガタゴト ガタゴト
女オーク「ねぇ剣士?行き場所は分かって居るの?」
剣士「大体ね…この道は通った事ある」
女オーク「地図とか買った方が良かったんじゃない?」
剣士「アハハすっかり忘れてた…まぁきっと大丈夫だよ」
女オーク「それから報酬の金貨20枚は貰った?」
剣士「ああ!!忘れてた…デリンジャーで頭が一杯だった…」
女オーク「剣士の弓も忘れて来たわね」
剣士「弓はもう良いや…しまったなぁ…悪いクセが出た」
女オーク「ウフフ…」
剣士「馬車に入れてた種とかは無事だね?ふぅ…まぁ良いや!水もちゃんとあるし何とかなる」
女オーク「これから何をしに行くか覚えて居る?」
剣士「望遠鏡だよ!!それからアダマンタイト…あと何だっけ?」
女オーク「デリンジャーのテスト?」
剣士「そうそう…それだ!的は…う~ん別にオーガじゃなくても良いか」
女オーク「適当に撃って木に育ててみては?」
剣士「そうだね…それで調整してみる…もう少しキ・カイから離れてからやろう」
--------------
--------------
--------------
『荒野』
チャキリ ターン!
剣士「成長魔法!」ザワザワ
剣士「う~ん…照準がなかなか合わない」カチャカチャ
女オーク「ねぇ剣士…馬が2頭こっちに向かってる」
剣士「え…見えた」クンクン
剣士「こっちが風上だ…誰だか分からない」
女オーク「きっと私を付け狙ってる2人組」
剣士「まだ諦めて居ないのか…」
女オーク「馬車を物色された跡が有ったの…何も盗られて無いけど」
剣士「ちょっと痛い目を見ないと諦めない様だね…困った人達だ」
女オーク「どうするの?」
剣士「まぁ見てて?デリンジャーの的にする」
バカラッ バカラッタ
野郎1「おい!お前等待ちやがれ…どういう事か分かるな?」
野郎2「痛い目見たく無けりゃ大人しく止まれ」スラーン
剣士「あのさぁ?痛い目見たくないなら構わないで欲しいな」チャキリ ターン ターン
ヒヒ~ン ブルル
野郎1「どわぁぁ!!」ドテッ
野郎2「だぁぁ!!」ドサリ
剣士「お馬さんごめんよ!走って逃げて…線虫!」ザワザワ ニョロ
ヒヒ~ン パカラッ パカラッタ
野郎1「何しやがる!!ぬぁぁ…馬が」ダダ
野郎2「くっそ!許さねぇからな?」ダダッ
剣士「しつこいなぁ…」チャキリ ターン ターン
野郎1「ぐはぁ…何だその武器」ポタ
野郎2「おま…血が出て…」タジ
剣士「フムフム…この距離だと全然いけるな」ツメツメ
野郎1「くそう!野郎2!!ヤクを先に殺せ!!」
野郎2「馬車を止めやがれ」ダダ
剣士「ハハもっと走って動いて?」チャキリ ターン ターン
野郎2「はぶぶ…」ズダダ ゴロゴロ
剣士「蠕虫!食らえ!」ゾワゾワ ニョロ
野郎2「ひぃぃぃ虫が体から…やべて…やべてくれぇ」バタバタ
剣士「ふむ…中距離で少し逸れるか…もうちょっとどんぐりが回転するように工夫しなきゃ…」カチャカチャ
女オーク「このまま放って置いて良いの?」
剣士「大丈夫…あんな小さなワームじゃたかが知れてるよ…死にはしないさ」
女オーク「これで懲りてくれれば良いけど…」
剣士「どんぐりの威力もこれで良く分かった…皮膚を貫通する程度にはなる」
女オーク「どんぐりも使い方次第なのね」
『夕方』
ガタゴト ガタゴト
剣士「今まで気づかなかったけど2輪の馬車だと進行が随分早いみたいだ」
女オーク「どうして分かったの?」
剣士「海賊の隠れ家に到着するのは明日の予定だったのさ…もうすぐ到着するよ」
女オーク「ヤクの体調が良いお陰では?早い様には感じないわ」
剣士「あ~そうだね…ヤクの負担が軽いのと餌の品質だねきっと」
女オーク「道を逸れてしまったけどここで良いの?何も見当たらないけど」
剣士「目印があるんだ…あそこあそこ…あの石と石の間を通る」
女オーク「何も無いけど…」
剣士「狭間っていう場所に隠してるんだよ…驚かないでね?」
女オーク「…」ジー
剣士「入るよ?3…2…1…」
女オーク「え!?あの時の入り江…どうして?」
剣士「そういう仕掛けなのさ…でも良く無いなぁ…ゴーストが彷徨ってる」
女オーク「見た事無い…」
剣士「コバルトの剣を出して?」
女オーク「どうするの?」スラーン
剣士「照明魔法!」ピカー
女オーク「光?光で倒す?」
剣士「うん…光の武器かミスリルじゃないと対処出来ない…僕が退魔の方陣を張るまでヤクを守って」
女オーク「分かった…」
剣士「ええと…寒く無いし入り江の真ん中で良いか…」
----------------
----------------
----------------
『廃れた入り江』
ザザー ザブン
女オーク「何処?…」タジ キョロ
ゴースト「シャァァァァ…」スゥ
女オーク「地面の下…」ダダダ グサ
剣士「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー
女オーク「ゴーストが見えないの…」
剣士「影だよ…影の中に居る」
女オーク「何処?…」タジ キョロ
剣士「もう少し粘って…あとちょっとで退魔の方陣が出来る」シュタタ
ゴースト「シャァァァ…」スゥ
女オーク「そこ!!」ブン スパァ
女オーク「手ごたえ無い…」タジ
剣士「よし!!終わった…もう大丈夫!!」
女オーク「…」タジ
剣士「アダマンタイトを探しに行こう…おいで?」
女オーク「ふぅふぅ…」
剣士「初めての事で混乱しているかな?大丈夫…魂は握られて無いよ」
女オーク「これが闇…」
剣士「狭間の奥から迷い込んだゴーストさ…憑りついて悪さする」
僕達魔術師の役目はね…
世界中にあるこういう放置された狭間を処理しなきゃいけないんだ
こういう所を通じて深淵から悪霊が這い出て来る
なんか色々分かって来た
海賊達に裏切られたビッグママはこの場所に誰も近づかない様にする為に
退魔の方陣を解いて海賊を追いだしたんだ
良くない方法だったけどアダマンタイトを乱用されるのは防いでる
女オーク「そのアダマンタイトと言う物がこの不思議な空間を作って居るの?」
剣士「そうだよ…僕はそれを処分しなきゃいけない」
女オーク「どうやって処分を?」
剣士「変性魔法で違う物質に変える…それがこの魔法の本来の目的」
スタスタ スタスタ
『朽ちた隠れ家』
剣士「…やっぱり狭間の中だと色んな物が錆びつかない」
女オーク「高価そうな物は何も残って居ないわ」ガラガラ
剣士「全部略奪されたんだ…なんか寂しいね」
女オーク「あそこに倒れてるのは望遠鏡では?」
剣士「おお!!残ってる…」タッタッタ
女オーク「良かったわね」
剣士「なんだ望遠鏡はいっぱい残ってる…」ガチャガチャ
女オーク「私も一つ貰って良い?」
剣士「うん…ああああ!!ママが使ってた望遠鏡だ…こんな所に置きっぱなしだったんだ…」グイ
剣士「でも古い奴だ…要らなくて置いて行ったのか」
女オーク「宝物見つけて良かったじゃない」
剣士「他には…」ガサ キョロ
ゴースト「シャァァァァ…」スゥ
女オーク「剣士!危ない!!」ダダ
剣士「うるさいなぁ!!照明魔法!」ピカー
ゴースト「…」シュゥゥゥゥ
女オーク「あ…」
剣士「折角ママの残した物見つけたんだ!邪魔しないで…」
女オーク「フフ剣士には何でもない敵なのね…」
剣士「落ち着いて探せないや…先にアダマンタイト何とかしよう」スタ
女オーク「うん…それが賢い」
----------------
剣士「有った!!これだフンッ!!」グイ
女オーク「持つ?」
剣士「いや重さ確認した…そうかこの位の重さでこの範囲か…」ブツブツ
剣士「変性魔法!」シュワワ
剣士「おっけ!!只の石に変えた」
女オーク「何か変わった?」
剣士「ここじゃ分からないね…外に出たら星が見える筈」
女オーク「へぇ?」
剣士「他にもいろんな大きさのアダマンタイトがある…ママはここで色々試してたのか」
剣士「ダメじゃ無いか置きっぱなしにしたら…変性魔法!」シュワワ
女オーク「剣士に似てたのね…」
剣士「持って帰るのは少しで良いや…」ガサゴソ
女オーク「もう安全ならその辺物色してきても良い?」
剣士「良いよ!僕もママの物他に無いか探してあとで馬車に戻る」
女オーク「じゃぁ…後で」タッタ
『廃れた入り江』
メラメラ パチ
剣士「よっこら…よっこら」ドスン ガラガラ
女オーク「スープ作ったわ?」
剣士「丁度何か欲しかった所だよ…あれ?この食器は拾ったの?」
女オーク「そう…銀の食器がいくつか残ってた…ナイフもあるわ?」
剣士「僕はね…ジャーン!!ミスリル銀の欠片を見つけた…これで何か装飾品を作れる」
女オーク「それもあなたのお母さんが残した物?」
剣士「多分ね…何かの材料の一部だと思う…あ!!そうだ君のコバルトの剣…刃先をミスリル銀に変えよう」
女オーク「ここで出来るの?」
剣士「炉と金床があるんだ…ちょっと待ってて」タッタッタ
----------------
----------------
----------------
カーン カンカン
『1時間後』
タッタッタ
剣士「出来たよ…剣を打ち直して長さが少し伸びた…振ってみて?」ポイ
女オーク「やっと普通のグレートソードの長さね」ブン ブン
剣士「これで君にもゴーストが倒せる」
女オーク「突きね?」
剣士「切っ先にはミスリル銀が溶解してるから先端なら切りでも行ける」
女オーク「ゴーストは実体が無いから切っ先でも良いのね」
剣士「そうそう!重量乗せなくても良いんだ」
女オーク「へぇ?ちゃんと考えて居るんだ…関心」
剣士「ねぇスープ飲みたい」
女オーク「温まってる…飲んで?」
剣士「ズズズ…ぷはぁ」
女オーク「焼きどんぐり居る?」
剣士「うん!!」カリ モグ
ドスドス
女オーク「この足音はオーガ…」
剣士「狭間から出たら早速来たね…ちょっとデリンジャー試すから手を出さないで」
女オーク「分かった」スック
オーガ「ガウ!!ウオォォォォ!!」ドスドス
剣士「1体か…」チャキリ ターン
剣士「成長魔法!」ザワザワ
オーガ「ウグゥゥゥ…」ガクリ
剣士「行ける…木で握りつぶせる…成長の方が強い」
女オーク「土の代わりにしたのね?」
剣士「うん…木がオーガの生気を吸って成長した」
女オーク「すごいわね!その武器」
剣士「気に入ったよ…僕にピッタリの武器さ…どんぐりの銃だ」
『翌日』
ガタゴト ガタゴト
剣士「よし…これで動く」カチャカチャ
剣士「君の望遠鏡だよ?これでピント会う筈」
女オーク「見せて?…」
剣士「この部分を回すんだ…」グイ
女オーク「あ…見える」
剣士「大体10倍くらいで一番使いやすい」
女オーク「大きな望遠鏡は?」
剣士「これは星を見る為の望遠鏡さ…倍率が高くて使いにくいけど遠くまで見える筈」
女オーク「それで月を?」
剣士「うん…空がきれいに見える場所で使わないと」
女オーク「じゃぁ灰の外に出ないと」
剣士「気球なら灰の上に出られる…気球が一番良いかな」
ドドド ドーン
女オーク「あら?左手…ワーム?」
剣士「大きいのが1匹居るね…無視で良い」
女オーク「剣士にとって虫は全部味方なのね」
剣士「まぁね…味方というか使役出来るだけなんだけどね」
実は僕達が生きてるこの星はね
植物と蟲が支配しているんだよ
僕達人間はその中でほんのちょびっとの存在なんだ
女オーク「虫に支配…」
剣士「特に人間は完全に植物に支配されて居るんだ…気付いて居ないだろうけどさ」
女オーク「どうやって支配を?」
剣士「食べ物だよ…植物は実を実らせて人間や動物の口に入る…そして精神的に操るんだ」
女オーク「私もどんぐりに操られて居るという事?」
剣士「そうだね…食べ物の有る所に集まるよね?そうやって植物は人間や動物の動きを操作して居るのさ」
女オーク「共生では無いの?」
剣士「違うね…支配だよ…でも人間はそれに気付かないからそれで幸せなんだ」
女オーク「虫の役割は?」
剣士「蟲と植物は共生関係さ…でも能動的に動ける蟲の方が強い」
女オーク「じゃぁ虫を操る剣士はもっと強いのね」
剣士「ハハそういう言い方になるか…でもここまで言ったらどうして人間達が困窮しているのか分かるよね?」
女オーク「植物に誘導されてる…」
剣士「正解!…なんでだろうね?」
女オーク「え?どうしてだろう…」
剣士「教えてあげる…人間が不要になったんだ…今まで利用してた人間がもう要らなくなった」
女オーク「利用って何?」
剣士「う~ん…そうだな花粉や種を運ぶとか害虫を駆除させるとか…植物にとって有益な何か」
女オーク「それを失うと困るのは植物では?」
剣士「困らなくなったから不要になったのさ…」
女オーク「それって何?」
剣士「植物はね…10年前に知恵の実を得たんだよ…この星を統べる知恵を得たんだ」
女オーク「10年前…光る夜の時ね」
剣士「君も遠くで見ていたんだね…そう…あの光は知恵の実を得た植物が起こした」
知恵を得たのと同時にこの星を焼き尽くす力も得たんだ
そして僕達人間は不要になった
きっと不要になったのは人間だけじゃない…共生関係に無い生物はすべて不要だ
エルフもドワーフもオークも…ドラゴンだって…クラーケンさえ
植物にとって皆要らない存在だ…僕達はゆっくりと滅びの道を進んでる
剣士「…これで良いんだっけ?ってよく考えるよ」
女オーク「知恵を得た植物をどうにかしないと…」
剣士「僕は10年前にその現場に居たんだ…幾千幾億の蟲が束になっても光で焼き尽くされた…どうにも出来ないんだよ」
女オーク「さっき植物より虫の方が強いって…」
剣士「それを超える力を植物が得たんだ…10年前にね…もう調和させるのは無理だよ」
女オーク「…イエローストーンより火竜いずる時我らが主目覚めん」
剣士「え?なにそれ?」
女オーク「西オークに伝わる予言の一説よ」
剣士「どうして急に予言の話なんか…」
主を目覚めさせしは未来
その者…主に従い厄災を払わん
万物の生けとし生きる物の調和を謀らん
女オーク「私が知って居るのはほんの一説…でも何か分かって来た…未来って個人の名前だったのね?」
剣士「ええ!?僕?なんで?」
女オーク「すべてのオークは未来に主である精霊が目覚めると思ってる…私はあなたが目覚めさせると思った」
剣士「予言に個人名なんかおかしいじゃ無いか」
女オーク「誰が予言したのかしら?」
剣士「…まさか」
女オーク「あなたのお父さんとお母さんは何処へ?」
剣士「パパとママが残した言葉…なのか?ちょちょ…その予言もっと知りたい!」
女オーク「私は少ししか聞かされて居ないからそれだけしか知らない」
剣士「予言でメッセージを残してるのか…そうか!!壁画にもメッセージが有る筈だ」
剣士「分かったぞ…パパもママも文字が描けない…だから画にした」
女オーク「オークに伝わる予言は詩になってる」
剣士「ずっと予言なんか後から書かれた体の良い歴史の修正だと思ってた…興味無いから無視してたよ」
女オーク「帰ったら予言も調べないとね」
『古都キ・カイ_路地』
ガヤガヤ ガヤガヤ
女オーク「剣士!!遅いから探しに来たの…書物は見つかった?」
剣士「シーーーッ」ジー
女オーク「どうして蹲っているの?」
剣士「ダンゴムシを観察してた」
女オーク「ダンゴムシ?書物は?」
剣士「予言が記された書物なんかそんなに簡単に見つからないよ」
女オーク「…それで虫の観察?イジケテルの?」
剣士「ママがさ…良くダンゴムシを観察してたんだ…何か分かるかなと思ってさ」
女オーク「剣士…もう日が落ちたから帰りましょ?」
プチ ゲシゲシ
剣士「ああああああ!!誰だ!!」ガバッ
野郎1「よう…昨日は世話になったな?この女は俺が頂くぜ?」ガシ
女オーク「しまっ…た」ググ
野郎1「お前等放すんじゃ無ぇぞ?」
海賊共「この女…力がむぐぐぐ」ギュゥゥ
野郎1「麻痺薬使え!」
海賊共「ぐあぁぁぁ…抑えられ無ぇ!!」ドタドタ ゴロゴロ
女オーク「剣士!!」ダダダ ドン!
野郎1「どわっ…」ゴロゴロ
剣士「線虫!ダンゴムシを治して…」ニョロ
野郎1「野郎…俺らを馬鹿にしやがって…こんだけ人数囲まれて無視する気か?」
ターン ターン ターン ターン
海賊共「ほげぇ…あ…あの武器は…海賊王の娘が使って…」
野郎1「何ぃ!!」
野郎2「こりゃヤバイ…俺ら消される」タジ
剣士「僕は人殺しはしたくないんだ…」ツメツメ
野郎1「おい止めろ…悪かった…俺はただその女が欲しかっただけだ」タジ
剣士「こうすれば大人しくなるかなぁ?」チャキリ ターン
野郎1「ぐあぁぁ…俺の玉が…うぐぐ」
剣士「次は君だね?」ターン
野郎2「ひぃぃぃ…」ガクブル
海賊共「逃げろ!!逃げろぉぉ!!」
ターン ターン
剣士「線虫!2~3日したら治せ」ザワザワ ニョロ
野郎1「おい!!置いて行くなぁ…」ズルズル
野郎2「来い…早く逃げる…やべぇ海賊王に消される…」ダダ
----------------
女オーク「そのダンゴムシを飼うつもり?」
剣士「意外と賢いんだよ…最強のダンゴムシに育てる」
女オーク「賢いってどんな風に?」
剣士「他の仲間を助ける為に犠牲になるんだよ」
女オーク「ウフフ剣士って本当変わった人ね」
剣士「書物も無かったし…やる事無くなっちゃったなぁ」
女オーク「商人さんが探していたわ?」
剣士「お?気球手に入ったのかな?」
女オーク「さぁ?行ってみましょ」
『商人ギルド_地下』
影武者「…どうぞ」
剣士「ありがとう…君はいつもフードを被って顔を隠して居るんだね」
影武者「それが仕事さ」
剣士「僕分かるよ?君は病気だよね?」
影武者「…」
剣士「免疫不全性の皮膚の病気だ…人に見せられないんでしょ?」
影武者「…どうして分かる?」
剣士「匂いさ…皮脂の匂いでわかる」
商人「剣士君…いじめないでやってくれ…僕の大事な影武者なんだから」
影武者「…」ペコリ
剣士「治してあげられるよ?」
影武者「え?」ピタリ
商人「本当かい?どんな薬や魔法でも治せなかった…君に出来るならお願いしたい」
剣士「椅子に掛けて?驚くといけないから目を閉じてて」
影武者「…良いのですか?」
商人「君の不憫さは見ていられないからね…治ればお金を貯める必要もなくなる」
影武者「はい…」ストン
剣士「体が細いのも免疫不全で内臓が侵されて居るからだ…不遇に過ごして来たんだね」
影武者「…」
剣士「目を閉じて…行くよ?線虫!毒を食らえ!」ザワザワ ニョロリ
ゾワゾワ ニョロニョロ
影武者「うっ…」ブルブル
商人「剣士君の使う魔法は多くの人には受け入れられなさそうだ」
剣士「回復魔法なんかよりずっと良いんだよ…回復魔法は成長魔法の一種だから老化が促進されてしまう」
商人「僕の心臓は治せるのかな?」
剣士「毒は取り除ける…物理的な治療は自己治癒に依存」
商人「賢者の石と同じ様な効果か」
剣士「少し違うけど…」
商人「影武者?大丈夫かい?モゾがゆそうだ」
剣士「直ぐに調子良くなるから我慢して…」
影武者「痒みが収まった…鏡を」スタ
剣士「完全に治るから心配しなくて良いよ」
影武者「…」ファサ
剣士「髪の毛もほとんど抜けてるのか…それは生えるのに時間が掛かるなぁ」
影武者「仕事に戻る…」ファサ
商人「僕達は奥へ…剣士君に見せたい」スタ
『隠し部屋』
ピピ ツーツツ
剣士「…これは遺物の石板?文字が浮かんでる…古代文字か」
商人「この間取りに行った古代のエネルギーを使って動かしたんだ…中にはウラン結晶が入っていた」
剣士「文字が動く…」
商人「それはラヴが動かして居るんだ…ほら?」
剣士「謎の機械…これで石板の文字を?」
機械の犬「ワン!」フリフリ
商人「南の大陸の地図とかも石板に浮かんだんだ…多分重要な情報だよ」
剣士「ホム姉ちゃんに覚えさせてる?」
商人「そうだよ…僕達には全く理解出来ない…解読できるのはラヴだけだね」
剣士「あ…画が浮かんだ…これは古代の風景?」
商人「そうだろうね?南の大陸は自然に覆われていた様だ」
剣士「スゴイな…この石板はどういう仕組みなんだ?」
商人「君は内容よりも仕組みの方に興味がありそうだね」
剣士「分解してみたい」
商人「ダメだよ…やっと動かせるようにしたんだから」
剣士「アハハ機械の犬は尻尾でその機械を動かしてるのか…」
商人「自由に動かせる所が限られているからね」
機械の犬「ワン!」
商人「それで剣士君…」
剣士「ん?何?」
商人「ちょっと僕はやる気が出て来てね…急ぎで名も無き島に行きたいんだ」
剣士「気球は?」
商人「手に入った…4人乗りの新型輸送用だ」
剣士「新型?」
商人「他の気球と比較して早いのさ…これを君に改造してもらいたい」
剣士「おぉ!!ヤルヤル!!」
商人「そう言うと思って居たよフフフ…君の馬車にクジラの骨が乗っていたよね?」
剣士「うん…使い道に困っていたんだ」
商人「その骨を使う前提で設計図を書いてみたんだ…これだよ」パサ
剣士「ママの飛空艇みたいにする?」
商人「君なら出来ると思って話して居るんだ…あの機動力があればウンディーネを目覚めさせに行けるかもしれない」
剣士「おけおけ!!月まで行ける飛空艇作る!!」
商人「月?」
剣士「ママは月に行くつもりだったんだ!僕だってやってやる」
商人「ハハ期待しているよ…欲しい材料は何でも揃えるから言って」
剣士「沢山必要なのが布と金属糸かな」
商人「分かった…明日影武者に気球まで案内させるから楽しみに」
剣士「ワクワクして来た…」
『翌日_気球発着場』
ブモモ~ ガタゴト
影武者「…この気球だよ」
剣士「え!?これ気球?…なんだこれ…どんぐりみたいな」
影武者「最新の気球は球皮と船体が合わさって居るんだ」
剣士「へぇ?こんなのが飛ぶんだ…もっと大きいのを想像していたよ」
影武者「資材は後でこの馬車でここまで運んで来る…今載せて居る荷物を降ろして」
剣士「女オーク!荷物降ろそう…」ダダ
女オーク「全部?」
剣士「今晩はこの気球の中で寝よう」
女オーク「そういう事ね…」グイ ドサリ
影武者「じゃ後で布と金属糸は持ってくる」ノシ
ブモモ~ ガタゴト
剣士「ちょっと中見て見よう…おいで」グイ
女オーク「うん…」タッタッタ
--------------
剣士「なーんだ炉が有るだけか…プロペラと連動ねぇ…」
女オーク「只の荷物運搬用なのね」
剣士「そうだね…骨組みも何も無い只の入れ物だね」
女オーク「どんな気球に改造?」
剣士「フフフフ…出来てからのお楽しみに!!炉は要らないから外に出そう」カチャカチャ
女オーク「え!?飛べなくなるんじゃ?」
剣士「いーのいーの!!そっち持って」グイ
女オーク「結構重たい…」グイ
剣士「そのまま外へ…」ヨッコラ
ドッスン!
剣士「プロペラも要らないから外しておいて?出来る?」
女オーク「やってみるわ…」タッタ
剣士「よーし!僕はさっそく骨組み作る…」タッタッタ
『気球大改造』
ギコギコ トンテンカン
剣士「おけおけ!!そのまま支えて置いて?」
女オーク「こう?」
剣士「ちょっと待ってね…」トンテンカン
女オーク「これは帆を張る為の支え?」
剣士「この気球に帆は張らない…大きな羽を付けるんだ」
女オーク「羽で飛ぶ?」
剣士「商人さんの構想ではね滑空翼を付けて落下しながら飛ぶんだ」
女オーク「羽を支える為に丈夫なクジラの骨を使ったのね」
剣士「これから羽の骨組みを作って行く…君は影武者から布を受け取ったら大きく縫い合わせておいて欲しい」
女オーク「針と糸が…」
剣士「有るある!!作業台の上に置いてあるからそれ使って」ギコギコ
トンテンカン トンテンカン
----------------
----------------
----------------
『翌日』
ギリギリギリ カチャン
剣士「もうちょっと右側張った方が良いな」
女オーク「うん…」ギリギリ
剣士「おけおけ!!そこそこ…歯止め打つからその位置で固定」トンテンカン
女オーク「もう一回動かしてみるわ?」
剣士「うん!!外から羽の動き見てるから何回か動かしてみて」
女オーク「うん…」ギリギリ
タッタッタ
剣士「良いよーーー!!動かしてーーー!!」
女オーク「…」ギリギリギリ ガチャン
剣士「戻してーーー!!」
女オーク「…」ギリギリギリ ガチャン
剣士「おっけーーーい!!主翼完成!!」
女オーク「次は尾翼ね?」
剣士「こっち来てーーー!!肩車お願い」
女オーク「よいしょ!!」グイ
剣士「尾翼を拾える?」
女オーク「はい…」グイ
剣士「立つよ?そのまま動かないで…」グイ トンテンカン
女オーク「金属糸は居る?」
剣士「欲しい…今ある?」
女オーク「ウフフ…はい」
剣士「おけおけ…もうちょい待ってね」グイグイ ギュギュ
女オーク「金属糸を張るわ」
剣士「うん!!僕反対側行く」ピョン シュタタ
女オーク「これで羽の取り付けは終わりね?」グイグイ ギュ
剣士「あと微調整かな…ちょっとこの重さで上昇出来るか試してみたいなぁ」
女オーク「昨日作った魔晄炉乗せるわ」
剣士「あ…魔石を商人ギルドの部屋に置きっぱなしだ…全部持って来てよ」
女オーク「大事な物を置いてきたのね…持ってくる」タッタ
『飛空艇』
トンテンカン ギリリ ガチャン
剣士「よしよし…尾翼も上手く動く」
女オーク「魔石持って来たわ」タッタッタ
剣士「火の魔石が魔晄炉の中…風の魔石はこっち」
女オーク「動かす?」
剣士「ちょっとだけ上昇してみたい」
女オーク「じゃぁ固定してあるロープ抜くわね?」スルスル
剣士「お試し運転!始動!!」
シュゴーーーー
剣士「僕達2人は重いからちょっと心配…」ドキドキ
女オーク「あ…動いた」フワリ
剣士「おぉ!!早い…元が軽いから重さ十分だ…もう少し乗せられる」
フワフワ
女オーク「風に流されて海の上に…」
剣士「羽開いてみよう…」ギリギリギリ ガチャン
女オーク「風に乗った?」フワリ グググ
剣士「旋回してみる…ワンノッチ分」ギリ ガチャン
女オーク「ゆっくり旋回してる…すごい」
剣士「よし!反対側も」ギリリ ガチャン
女オーク「風上にはどうやって進むの?」
剣士「フフフフ落下させるんだ…見てて」
ビュゥゥゥ バサバサ
女オーク「ウフフ早い…すごく早い!」
剣士「落下と上昇の繰り返しで風上へも真っ直ぐ進める」
女オーク「大成功ね!!」
剣士「後は安定させるための細かい仕掛けを作ったら完成かな…君にも操作出来るよ…やってごらん」
女オーク「うん…これが主翼で…こっちが尾翼ね?」
剣士「簡単でしょ?帆の操作より全然簡単だ」
ビュゥゥゥ バサバサ
『翌日』
トンテンカン トンテンカン
女オーク「剣士!!樽に水を汲んできたわ」
剣士「今行く!!」
女オーク「商人さんも様子を見に来たの」
商人「これは…僕の設計図と全然違うじゃ無いか…縦帆は無くても良いのかな?」
剣士「大丈夫!自信ある」
商人「横帆で滑空するのは合ってそうだけど…その羽は折り畳みなんだ?」
剣士「今から樽がいくつ乗るかテストするから商人さんも乗って」
商人「まぁ…さすが女海賊の子という所か…どれどれ」ノソリ
女オーク「水の入った樽は全部で6つよ…」ドスン
剣士「クロスボウとか色々乗せたからちょっと心配だね…乗って乗って!!」
女オーク「ロープ抜く!」スルスル
商人「あぁ…僕もなんだか年甲斐もなくワクワクしてる」
剣士「いくよ?」
シュゴーーーーー
剣士「…」チラ
女オーク「…」
商人「…」ワクワク
機械の犬「…」パタパタ
剣士「う~ん…やっぱり重いか」フワリ
商人「お?」
剣士「なるほど…今がギリギリなんだ…つまり4人乗るならあと樽2個降ろさないとダメだ」
女オーク「降ろす?」
剣士「1個だけ降ろして…重い状態の挙動が知りたい」
女オーク「分かったわ…」グイ ドスン
フワフワ
商人「ハハハまぁこの4人なら樽4つで十分だよ」
剣士「羽開くよ!!商人さん見ててね?」ギリリ ガチャン
ビュゥゥゥ バサバサ
商人「おぉ…この傾く感じ…女海賊の飛空艇みたいだ」
剣士「あれ?重たくても操作性変わらない…どっちかっていうと安定してる…上昇するスピードだけだな」フムフム
商人「スゴイね…風上に真っ直ぐ進めてる」
剣士「うん!帆付きよりも迂回しないで目的地に行ける…課題は上昇するスピードかな」
商人「アダマンタイトはどうした?」
剣士「もう設置してる…ハイディング!」スゥ
商人「おぉ!!退魔の方陣も済みかい?」
剣士「勿論!!クロスボウだって左右にある…撃っても良いよ」
商人「短所は狭いだけか…完璧だよ」
剣士「寝るのはハンモック吊るしてじゃないとキツイね」
商人「よし!決めた…食料積んだらもう名も無き島へ出発しよう…僕と君達の3人で」
剣士「魔石がどれだけ持つか分からないからウラン結晶を1つ用意して欲しい」
商人「初めからそのつもりさ…降りたら荷物の用意する」
剣士「おっけ!!ほんじゃ降ろすね?」
商人「フフその言い方…昔を思い出すよ」
『気球発着場』
ギリリ ギュ
剣士「そっちも金属糸で張って…」ギリリ ギュ
女オーク「ウフフ金属糸だらけになったわね」ギリリ ギュ
剣士「さっきの飛行で羽のしなり具合が分かったからね…何か有った時の予防さ」
女オーク「これだけ張ってあったら矢の防御にもなりそう」
剣士「そうだね…まぁそうそう矢を当てられるとは思わないけど」
タッタッタ
商人「お待たせ…荷物を持って来た」ハァハァ
剣士「なーんだ…大した荷物じゃ無いじゃない」
商人「イヤイヤ僕は君達と違ってどんぐりは食べない…僕用の肉だよ肉!」
剣士「女オークが結構おいしい物を作ってくれるよ…木の実だけど」
商人「木の実だけでバーベキューはしたくない!肉が主役さ」
剣士「ハハまぁ良いや…行こう!丁度最後の調整も終わった所だし」
商人「君は地図も用意していないだろうと思って持って来たよ…羅針盤もある」
剣士「おぉ!!忘れてた…」
商人「さて…いくらで買う?」
剣士「え…お金無い」
商人「地図が金貨20…羅針盤も金貨20…これで借金帳消し…どう?」
剣士「高すぎる…」
女オーク「ウフフ剣士もう良いじゃない?忘れてたあなたが悪いし…」
剣士「まぁ良っかぁ…気球も貰っちゃったし」チラリ
商人「それは違う!!この気球は僕の物さ」
剣士「この羽は僕の物さ」
商人「…分かった!取引をしようじゃ無いか…この気球は金貨500枚以上する高級品なんだ…簡単には渡さない」
剣士「何?条件は…」
商人「女オークさ…僕は女オークの協力が欲しい…それが条件だよ」
剣士「ちょ…弱い所を…くぅぅ女オークは渡せない」
商人「良い条件だと思うけどなぁ…」
剣士「女オークをどうする気?」
商人「まぁ色々とね」
剣士「ダメだよ…いくら商人さんでも女オークは渡さない…他に条件は?」
女オーク「剣士?商人さんは協力が欲しいって言ってるだけよ?」
剣士「じゃぁこうしよう!!僕と女オークはセットだ…逃げる可能性もある」
商人「面白い…逃げて見てくれ…運命から逃げられるならね」
剣士「運命だって?」
商人「まぁ良いじゃ無いか…これで商談成立だ…早く名もなき島に行こう」
剣士「う…うん…乗って」---なんか---
---うまく誘導されただけだな---
---運命か---
---僕の運命って何だろう?---
『飛空艇』
シュゴーーーーー バサバサ
商人「このまま4時の方向…陸が切れたら南に進路を変える」
剣士「おっけ!!高度上げる」グイ
商人「重力を結構感じるね…その分早いって事か」
剣士「偏西風に乗れれば安定飛行出来る筈」
女オーク「気温が一気に下がったみたい…」
剣士「よし!風に乗れてる」
商人「速度が分からないけど狭間に入って2日程で到着する筈だよ」
剣士「安定したらハイディングする」
商人「この飛空艇は気密性が良いからそれほど寒くないけど壁面が冷たいなぁ」
女オーク「毛皮を積んであるわ…2枚だけだけど」ファサ
剣士「壁面が冷たくなるのは想定して居なかった…」
商人「毛皮あるし大丈夫さ」
剣士「安定飛行に入った…ハイディング!」スゥ
商人「帆が無いとロープの繋ぎ変えが無くてラクそうだね?」
剣士「商人さんにも操作できると思うよ」
商人「…それにしても良く作ったね…女海賊の飛空艇よりシンプルで機能が同じなんて」
剣士「ママの飛空艇は木材で作って居たから大型で色んな物が付いてたね」
商人「見せるときっと喜ぶ」
剣士「見せたいよ…」
商人「あぁ…済まない」
剣士「僕の目…ママの目だよね?」
商人「フフそうだね…見てるのかも知れない」
女オーク「剣士?座って」
剣士「うん…」ストン
商人「君達を見て羨ましいよ…自然に膝の上に座るのがすごく羨ましい」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「あ…僕もか…おいで」
機械の犬「…」トコトコ チョコン
剣士「ホム姉ちゃんの事だね?」
商人「僕は今でもあの時の戦いの続きをして居るんだ…僕のやり方でホムンクルスを助けようとね」
剣士「その機械の犬は全部商人さんが作ったの?」
商人「壊れた機械を集めて作った…ホムンクルスが入れるすごく小さな器」
この機械の犬にホムンクルスが宿った時
僕がやらなきゃいけない事が何なのか思い知ったよ
商人「それからずっと機械の研究と生体の研究をしている…ギルドで稼いだお金をちょろまかしてね?」
剣士「それに協力して欲しいと言う事だよね?」
商人「ズバリそうだよ…ホムンクルスが未来で会わなきゃいけない人まで送り届けるのが僕の使命さ」
剣士「未来で会う?誰?」
商人「さぁね?でもそれまで僕は死ねないな~なんてね」
剣士「協力って具体的にどうするの?眠ってるウンディーネにホム姉ちゃんを宿らせる?」
商人「う~ん…それが良いのかどうかは分からない…選択肢の一つでは有るけどね」
実はね…ホムンクルスの在り方は生体の中に居るよりも
今みたいに機械の犬の中の方が本人にとって幸せなのかも知れないとも思ってる
ただ今のままではホムンクルスの寿命があと2年なんだ
この寿命を少しでも伸ばすのがまずやりたい事…だから古代の遺物からどうやって寿命を延ばすか調べてる
手っ取り早いのはウンディーネに外部メモリを挿せば済むかもしれない
でもそれはホムンクルスを失うリスクがあるし
そもそもウンディーネの人格自体を破壊してしまう事でもある
剣士「ウンディーネはどうして眠りについたんだろう?」
商人「分からないよね?それも調べなきゃいけない…だからオークの事情に詳しい女オークに協力して欲しいんだ」
女オーク「私はウンディーネの居る東オークの事は良く知らない」
商人「まぁ良いんだ…君が居たからホムンクルスの生体が他にもある事に気付けた…南の大陸はまだ謎だらけなのさ」
女オーク「西オークにも戻れないから何も出来ないわ?」
商人「気負わないで良いんだよ…少しづつオークの文化を教えてくれればそれで良いさ」
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----------------
『ハテノ村』
フワフワ ドッスン
ハンター「教会が焼けないでまだ残ってる…」
盗賊「こりゃまだ誰か住んでそうだな?」
ハンター「見て…元のハテノ村の方に木がまだ残ってるよ…あっちは湯が沸いてる筈だ」
僧侶「早く教会に行くです」
魔法使い「人が何処にも見当たらないけれど…」
盗賊「お前等3人で教会見て来い…俺は水の確保行って来る…大工と工夫は飛行船で待っててくれ」
ハンター「行って来る!!2人共付いて来て」タッタ
僧侶「待ってくだしゃい」スタタ
--------------
--------------
--------------
『旧ハテノ村』
サラサラ チョロチョロ
盗賊「よっこら!!」ザブン
盗賊「こりゃ良い!!湯が沸いてる…植物もまぁまぁ生えてんな」
盗賊「建物は全部埋まっちまった様だな…こりゃ掘り起こすの大変だ」
ズドドドド ゲヒゲヒ
盗賊「おぉ!!イノシシじゃねぇか…しまった!弓置いて来ちまった」
盗賊「教会から歩いて500メートルって所か…まぁまた今度狩るかぁ…よっこら」
盗賊「灰が積もっちゃいるが他ん所に比べりゃマシな方だ」ヨッコラ ヨッコラ
---------------
---------------
---------------
『飛行船』
ワイワイ キャー
盗賊「おいおいおい…この子供たちは教会に居たんか?」
魔法使い「シスターのお婆ちゃんと神父のお爺ちゃんが居たの…子供たちは9人」
盗賊「全員ハーフオークだな?んぁ人間の子も居るか…どうなってんのよ?」
魔法使い「戦争孤児よ…私達と同じ」
盗賊「なるほど…こいつら言葉は話せるか?」
魔法使い「大丈夫…シスターが教えてくれてるらしいわ」
盗賊「そりゃ良い!!教会に住んでんだな?」
魔法使い「うん!私達を歓迎するって」
盗賊「復興の足掛かりが出来て良かったじゃ無ぇか…よし!物資を教会に降ろそう」
魔法使い「そう言うと思った…」
盗賊「ハンターと僧侶は教会に居るんだな?」
魔法使い「うん…」
盗賊「大工と工夫!!荷物運ぶから手伝え!!」
大工「へい!!」
工夫「うい!!」
『教会』
ヨッコラ ドサリ
盗賊「おいハンター!物資運ぶの手伝え」
ハンター「あぁゴメン話し込んでた…今行く」
魔法使い「シスター…薬を持ってきたの…飲んで?」
シスター「済まないねぇ…」ヨヨヨヨ
魔法使い「神父さんも」
神父「ごほっごほっ…はぁぁ助かったわい」ゴクリ
盗賊「老人2人で子供たちの世話は大変だったろう?」
シスター「あの子たちは食事を自分で採るので手が掛からなかったのです」
盗賊「ハーフオークだから食費が掛からんか…弱ってるのは人間だけだな?」
シスター「はい…木の実だけでは栄養が偏ってしまって」
盗賊「食い物の心配はもう要ら無ぇぞ?魔法使い!何か作ってやれ」
魔法使い「うん…」
盗賊「僧侶は適当に麦育てて来い…やれるならクヌギの木も育てろ」
僧侶「はいなー!!任せるです」スタタ
盗賊「しかし…教会も半分埋まっちまってやっぱり住む場所作らんとイカンな」
魔法使い「そうね…」
盗賊「まぁしばらく飛行船に住みながら整えて行くか」
魔法使い「シスター…台所をお借りします」
シスター「自由に使っておくれ」
『夕方』
トンテンカン ギコギコ
ハンター「盗賊さん!イノシシ狩って来たよ」
盗賊「おぉ早いじゃ無ぇか…解体は出来るな?」
ハンター「うん!毛皮は干しておく」
盗賊「ヌハハ言わんでも分かってるか…関心関心」
ハンター「今作ってるのは?」
盗賊「木材加工用の仕掛けだ…人力で動かすが木材をまっすぐに切れる」トンテンカン
ハンター「もう建築準備してるんだ」
盗賊「何作るにしても木材が必要になるからな?」
ハンター「僕も狩りだけじゃダメだな…何しよう?」
盗賊「穴掘りだ…向こうで大工と子供達が穴掘ってるから手伝ってこい」
ハンター「分かった!!」
『夜_教会』
ワイワイ キャァ
魔法使い「オーツ麦のパンとチーズ…干し肉と木の実のスープ…取れたてのどんぐり」
子供達「んまーーーい!!」キャッキャ
シスター「何年振りの肉でしょう…ありがたや…ありがたや」モグ
神父「うまいのぅ」ガツガツ モグ
ハンター「イノシシの肉焼けたよ」
盗賊「おぉ!!俺はそれが食いてぇ…骨付き貰うぜ?」ガブモグ
ハンター「罠を仕掛けて来たから明日は違う肉が食べられるかも」
盗賊「そうだ!!ヘラジカ居ないか?」
ハンター「捕らえる?」
盗賊「うむ…石炭と硫黄の運搬で馬車引かせたい」
ハンター「生け捕りかぁ…難易度高いな」
盗賊「ロープ使って上手い事罠作れ…水場に餌置いときゃその内来る」
ハンター「そうだね…やってみる」
僧侶「ふぃぃ…」ヨロ
盗賊「魔法使い過ぎたか?」
僧侶「はいです…木を育てるのは1日20本が限界でし」
盗賊「疲れた時は酒だ…飲むか?」グビ
僧侶「飲んで寝るです」グビ
盗賊「酒も造らんとすぐ無くなりそうだな…」
魔法使い「あ…醸造なら任せて…ポーションの材料も一緒に作るから」
盗賊「ほう?そりゃ楽しみだ」
魔法使い「醸造用の樽がいくつか欲しいわ」
盗賊「ようし!明日作ってやる」
『翌日』
ワイワイ ワイワイ
樽持ってけぇぇ!!
おい!子供達!!木材切ったらちゃんと積んどけ
炭坑の入り口見つけたって!!
おぉ!!小屋作りに行くぞ
魔法使い「僧侶大丈夫?」
僧侶「張り切り過ぎたです…ふいぃ」ヘター
魔法使い「時空の修行をさぼったから魔力が足りないわね」
僧侶「今日は木を21本育てられたです…少しづつ良くなってましゅ」
魔法使い「私もやろうかな…」
僧侶「水場の近くだと良く育つでし」
魔法使い「うん…やってみるわ」
僧侶「スギの種を拾ってきたので使ってください」パラパラ
魔法使い「わかった…行って来るね」タッタッタ
ワイワイ ワイワイ
水場は罠置いてるから気を付けて
皆!野鳥を掴まえて来たよ…鳥かご作るから手伝って
麦はそこに並べて干しておくんだよ
------------------
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------------------
『名も無き島_上空』
シュゴーーーー バサバサ
剣士「気流が安定しない…着陸難しいな」グイ
商人「沖の船がこっちに気付いて近付いて来るね…警戒されちゃってるかな」
剣士「う~ん…どうしようかな羽畳むと風に流される」
商人「この飛空艇は着陸が難点か…」
剣士「いや…風の問題だよ…女オーク!クロスボウに金属糸付けてどこかの木に当てられる?」
女オーク「やってみるわ…」ゴソゴソ
剣士「もう一回高度下げる…いくよ?3…2…1…撃って」
女オーク「…」バシュン シュルシュル
剣士「羽を畳む!!」ギリリ ガチャン
ガクン
剣士「よし!球皮の熱抜くよ…金属糸手繰り寄せて」グイ
女オーク「…」エッホ エッホ
商人「人が集まって来てる…」
剣士「爺いじ居る?」
商人「見当たらないなぁ…」
剣士「降りるよ」
フワフワ ドッスン
『広場』
ザワザワ ザワザワ
誰?3人降りて来る…
海賊王の娘さんでねぇか?
剣士「爺いじは何処?僕帰って来たよ?」
村人「あんたら何しに来たんじゃ~?」
剣士「驚かせてゴメン…武器を降ろしてよ」
村人「3人共知らん顔じゃなぁ?この島はよそ者は入れてはイカン事になっとるんじゃ」
剣士「僕だよ!!女海賊の子だよ…ここで生まれた」
ザワザワ ザワザワ
娘さんの子じゃて?
誰か顔を知ってる者は居らんのか?
剣士「これだ!!これを見て」スラーン ピカー
村人「おぉぉ!!それは銀河の剣…皆の衆!!見てミソラシド」
剣士「ミソラシド?アハハ…そうだ!そんな感じだったね」
村人「済まんなぁ?未来君じゃったかのぅ?」
剣士「うん!!大きくなったから分からないかも…」
村人「こりゃエライこっちゃな…海賊王に連絡せんとイカン」
剣士「爺いじは何処に?」
村人「船で出ちょるけ簡単には連絡出来んのや」
剣士「そうか会いたかったなぁ…」
村人「ゆっくりはして行かんのかいな?」
剣士「う~ん…どうしよう?」
商人「ここの遺跡は細部まで探索したのかい?」
剣士「分からない…部屋は2つだけしか使って居なかった」
商人「2~3日待ってみようか…その間色々調べてみよう」
剣士「…という事だよ…僕の家には入っても良い?」
村人「そりゃ構わん…わしらは未来君の家を守っちょったんやから」
剣士「僕の家…」
村人「そうや?ここに居ったら何にも心配せんで良いんだで?」
---忘れてた---
---ママは僕を産むためにこの島に来たんだった---
---僕の島だ---
村人「ゆっくりして行きぃや」
剣士「うん…家に帰る」
『古代遺跡』
ダダダ ズデ
剣士「はぁはぁ…照明魔法!」ピカー
剣士「昔のままだ…パパの椅子…ママの使ってたコップ…」
僕のおもちゃ
欲しかった望遠鏡
ママの道具
ママと寝たベッド
剣士「…」クンクン
剣士「匂いがまだある…うぅぅぅ」ポロポロ
女オーク「…」
商人「…」
剣士「分かった…僕もアレからずっと戦ってるんだ…終わってなんか無かった」
剣士「ぅぅぅ…ここにパパが居たんだ」スカ
剣士「ママはこの作業台で…ここに座って」スカ
剣士「僕の時間を奪ったのは…魔王だ」
剣士「魔王が僕のパパとママを奪った」
剣士「ぅぅぅ…空っぽになった」
女オーク「…」
商人「悲しみを抱えたままだった様だね…君は自分の道をもう歩んで居るんだ」
剣士「うん…分かってる」
剣士「パパとママが残したこの世界を未来に繋ぐ…それが僕の役目」
剣士「だから…やらなきゃいけない事がハッキリした」
商人「え?」
剣士「アダムを倒す…僕はアダムを倒す為に居る」
機械の犬「ワン!」
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『団らん』
メラメラ パチ
女オーク「食事出来たわ?」
商人「お?肉スープか…僕も頂く」
女オーク「どうぞ…」
剣士「その食器は全部ママの手作りだよ…銀鉱石一緒に掘らされたんだ」
商人「鉱石からここまで仕上げてるのか…スゴイな」
剣士「椅子もテーブルもベッドも何もかも全部…ママが作った」
女オーク「剣士の宝物ね?」
剣士「うん…ママが残した物がこんなに沢山有るのを忘れてたよ」
女オーク「肉スープ居らない?」
剣士「僕は肉好きじゃないのにママは肉ばっかり…思い出しながら頂く」ズズズ
商人「美味しいよ」
剣士「目を閉じると昔の雰囲気そのままだ…あれ?」
商人「ん?」
剣士「耳を澄ませると音がおかしい」タッタ
女オーク「何かある?」タッタ
剣士「本棚…この奥に何か有る」
商人「もしかして隠し部屋!」
剣士「どうやって動かすんだろう…」
商人「見せて…」タッタッタ
剣士「分かる?」
商人「本の裏に何か仕掛け無いかい?」
剣士「…」ゴソゴソ
剣士「あ!!ハンドルがある」ガチャリ ギー
商人「ハハ通路を隠して居たか」
剣士「知らなかった…何があるんだろう…照明魔法!」ピカー
商人「もう一段下の層があるんだね…行ってみよう」
『下の階』
商人「キ・カイの扉だ…ここの中にホムンクルスが居たんだ」
剣士「照明魔法!」ピカー
商人「うわ…ガラス容器!生体の部品だ…」
剣士「こんな部屋が有ったんだ…スゴイ何か色々ある」
女オーク「横たわっている石造…ウンディーネだわ」
商人「まだ奥に部屋が有るじゃ無いか」
機械の犬「ワン!ワン!ワン!」
商人「ん?ガラス容器?何か見つけた?」
商人「あああああ!!超高度AIユニットが沈んでる…そうかこれは全部ホムンクルスの部品だ」
剣士「すごーーい!!奥の部屋に宝が一杯だ!!」
商人「何がある?」
剣士「商人さんの部屋にあった石板だよ…一通り揃ってる…これ分解出来るよ」
商人「ちょっと待って…エネルギーの入れ物はどこだ?」キョロ
剣士「ランタンみたいな奴?」
商人「そう…あった!!これだ…ウラン結晶も入ってる…動くぞ?」
剣士「ワクワクする」
商人「ラヴ!!これどうやって起動させる?」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「分からないか…調べよう」カチャカチャ
剣士「スゴイなぁコレ…この機械全部繋がってるよね」
商人「剣士くん!しばらくこの島に滞在する事になりそうだ」
剣士「商人さんはここで研究?」
商人「超高度AIユニットが有ったんだ…目的の一つは達成した…寿命の問題は解決だよ」
商人「次にこの機械が動けばもっと色々な事が分かる可能性がある…しばらく調査したい」
剣士「分解はその後ね?」
商人「ハッキリ言う…分解は僕の部屋にある奴でやって…この部屋の機械の分解は待って欲しい」
剣士「ハハそうだよね…完全な形の機械だもんね」
商人「こんなに収穫が在るとは思わなかった…この場所を守ってた女海賊はやっぱり天才だよ」
剣士「ごゆっくり…僕は上でゆっくりしておくから」
商人「うん…ありがとう」カチャカチャ
【小舟のある入り江】
ザザー ザザー
剣士「…」カチャカチャ
女オーク「見える?」
剣士「うん…今日は更待月だ…見てごらん?」スッ
女オーク「月の模様がしっかり見えてる」
剣士「多分月に隕石が落ちた跡だよ」
女オーク「あそこにあなたのお母さんが居ると思う?」
剣士「隕石とか大好きだから」
女オーク「月には住めるかしら?」
剣士「この星と同じなら住めるかもね…でも見た感じ全部岩塩かなハハ」
女オーク「岩塩の塊?」
剣士「月も色が変わるよね…きっと岩塩さ」
女オーク「月はいつも同じ模様…」
剣士「お!?それだよそれ!!僕なら裏側に何があるのか確かめたい」
女オーク「あなたのお母さんもきっと同じね」
剣士「うん!!探すなら裏側だ…ママならきっとそこに行く」
女オーク「なんか不思議…月を見てると心が静まる」
剣士「岩塩にもそんな効果が有るんだ…よしレンズ変えてもう少し倍率を」カチャカチャ
女オーク「十分見えているのに…」
剣士「もしかしたら遺跡が有るかもしれない」ジー
女オーク「ウフフ…」
剣士「ビッグママも良く月を見ていたんだよ…探し物してるみたいにね」
女オーク「もうその呼び方やめたら?」
剣士「名前で呼ぶのが恥ずかしくってさ…アレ?」
女オーク「うん?」
剣士「どうして隕石の跡が魔方陣になっているんだ?」
女オーク「え?そうだったの?」
剣士「右側の暗い所が見えないから全部確認できない…あぁでも違うか歯抜けが有るな…偶然か」
女オーク「魔方陣にはどんな効果が?」
剣士「光の方陣だったとすると退魔かな?」
『翌日』
カーン カンカン
剣士「熱つつつ…」ジュゥ
鍛冶屋「なんや珍しい物作っとるんやなぁ?」ジロジロ
剣士「コバルトとミスリルの合わせ加工さ…刃の部分を全部ミスリルにしようと思ってね」カンカン
鍛冶屋「ミスリル銀を溶かしちょるんか…硫黄が無いけ爆ぜるで気ぃ付けぇ」
剣士「うん!もう後は研いで終わりだよ」
鍛冶屋「見せてみぃ…ほ~うこりゃ波紋が楽しみやのぅ」
剣士「フフフ見て分かる?」
鍛冶屋「しかしなんちゅう重い剣やろう」ズッシリ
剣士「女オーク!!振ってみて」ポイ
女オーク「フンッ!!」ブン ブン
剣士「重さはどう?」
女オーク「丁度良いわ」ブン ブン ズダッ
剣士「よし…研いであげる…貸して」シャコシャコ
『古代遺跡深部』
ガサゴソ
商人「はっ…剣士君丁度良い所に来た」
剣士「どう?何か分かった?」
商人「結論を言うと鍵開けが必要になる…どうも起動させる為には特殊な鍵が必要な様なんだ」
剣士「鍵…見てないなぁ」
商人「女海賊もちゃんと調査した様だよ…でも動かせられなかった…考えてる事は一緒さ」
剣士「一緒?」
商人「ここに生体の部品があるだろう?これを組み立ててホムンクルスを作る…その為の機械だよ」
剣士「だから大事に隠してあった?」
商人「そういう事だろうね…ちょっと予定を変更してハテノ村へ行って盗賊を連れて来たいんだ」
剣士「ハテノ村かぁ…僕の友達はみんなそこに行ってるんだよね」
商人「そうさ?ちょっと顔を出しに行かないか?」
剣士「爺いじが帰って来るかもしれないからなぁ…」
商人「海賊王は船で出て居るから連絡が付くのは時間が掛かる…今日明日に戻っては来ないよ」
剣士「それもそうだね?僕も退屈になってきた所だったw」
商人「この島は平和過ぎるね」
剣士「よっし!いっちょハテノ村までひとっ飛び!行こう」
『飛空艇』
フワフワ
村人「もう行ってしまうんかいな?昨夜伝達を飛ばした所なんよ…」
剣士「2~3日でまた帰って来るよ…ちょっとハテノ村まで行って来る」
村人「ほうか?ならええ」
剣士「家には誰も近づけない様にお願い」
村人「わかっとる…誰も悪させんで安心せいや?」
剣士「…じゃ行こう!!ロープ抜いて」
女オーク「うん…」スルスル
剣士「主翼展開!」ギリリ ガチャン
シュゴーーーー バサバサ
商人「一気に風に乗った…なかなか運転が荒い」タラリ
剣士「西の方角だよね?」
商人「南西かな」
剣士「おっけ!!」グイ
商人「狭間に入って1日は掛らない筈だよ」
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『ハテノ村上空』
シュゴーーーー バサバサ
商人「見つけた!!アレだ…あそこの森になって居る所だ」
剣士「アハ分かりやすい…川沿いに木が植えられてる」
商人「結構整理が進んでいるなぁ…」
剣士「こっちに気付いて武器を構えだした…どうしよう?」
商人「どうしようって…このまま着陸するしか無いよね」
剣士「そうだ!ハイディングを見せよう…きっと分かって貰える」
商人「良いね!」
剣士「ハイディング!」スゥ
剣士「リリース!」スゥ
商人「ハハハ驚いてる」
剣士「着陸する…」グイ
フワフワ ドッスン
『ハテノ村』
ギャーギャー ダダダ
盗賊「おお!!誰かと思ったぜ…お前未来だな?そうだよな?」
商人「驚かせてしまったね…」
盗賊「商人!どういう事よ?説明しろや」
商人「まぁ色々ね…」
盗賊「これ飛空艇だよな?なんで帆が付いて無ぇんだ?」
剣士「帆無しで設計したんだよ」
盗賊「おぉぉぉ未来!こっちコイ!!…久しぶりだな!」ガシガシ
盗賊「なんで商人ん所居んのよ?…しかし良い体になったなぁ」グイグイ
剣士「ハハ宛ての無い旅で商人さんに拾われた感じさ」
盗賊「こっちの女は誰だ?」
剣士「名は女オーク…両手剣の戦士だよ」
盗賊「ほーう!!良い体付きしてる…まぁ立ち話もなんだから俺らの飛行船に入れ」
剣士「う…うん」
盗賊「家みたいなもんだ…座ってくつろげるぞ?」
商人「まぁちょっと情報交換しようか」
剣士「ねぇ盗賊さんと一緒に僕の友達3人居るよね?何処?」
盗賊「なぬ!?お前等知り合いなんか?」
剣士「あれ?何も知らない?」
盗賊「何も聞いて無ぇぞ?」
剣士「あぁぁぁそうか!秘密を守ってくれていたのか…」
盗賊「何か知らんが…ハンターは狩りに出てる…魔法使いと僧侶は森で薬草集めてんな…直に帰って来るぞ」
剣士「そうか…じゃぁちょっと待たせてもらおうかな」
『飛行船』
ジュージュー
盗賊「良い肉があんだ…焼くから待ってろ」
剣士「僕は肉はちょっと…」
女オーク「私も肉は…」
盗賊「うるせぇ食え!山賊焼きだ!世界で一番美味めぇ」
商人「こっちの飛行船の方が広くて落ち着くね…デッキもあるし寝床もしっかりしてる」
盗賊「遅いのが難点よ…ただ15人も乗れるからデッキからのクロスボウの撃ち下ろしは火力高けぇぞ?」
商人「何と戦うつもりなんだい?」
盗賊「ヌハハそんな敵居ねぇか…肉焼けたぞ?酒もあるぞ?」
剣士「盗賊さんは昔と全然変わって無いね」
盗賊「ちっと髭の白髪が目立つ様にはなったな?しかしお前はあん時の剣士にそっくりになった」
剣士「剣技はパパ程じゃないよ」
盗賊「魔術師になったんだろう?魔女の修行はどうよ?」
剣士「魔女はあまり押し付けて来ないんだ…自由に学ばせて貰った」
商人「盗賊…剣士君は魔女と全然違うタイプの魔術師になって居るよ…蟲使いさ」
盗賊「虫?クモとかワームとかそういう奴か?」
剣士「どんな虫でも使役出来るよ」
盗賊「ほーそりゃスゴイんか?俺にゃ良く分からん」
商人「スゴイと思う…神の領域さ…どんな病気も治せて…大きなワームを自由に操る」
盗賊「そういや女海賊も最強のミツバチとか育ててたな?」
剣士「ママは魔力が無かったけど蟲使いの素質は有ったみたいだ…自然と蟲を使ってたね」
商人「剣士君…盗賊にも例の虫で癒してあげたらどうだい?腹の中に入ってる鉛が痛むと良く言っている」
盗賊「まぁ古傷だ…ちっと痛むが俺の戒めなんだ」
剣士「任せて…線虫!」ザワザワ ニョロ
盗賊「うぉ!!体ん中に入って…うげ」
剣士「大丈夫!害は無いから…毒を食べ終わったら自然と排出されるよ」
盗賊「鉛は毒なんか?」
剣士「体には良くない…炎症した部分が痛むんだと思う」
ダダダ ドタドタ
魔法使い「剣士!!あぁぁ無事で良かった…」ヘタリ
僧侶「はぁはぁ…どういう事でしかコリは…」
剣士「君達の無事は商人さんに聞かされて居たよ…随分活躍している事もね」
魔法使い「そうだ剣士に渡さなきゃいけない物が…」タッタッタ
剣士「ん?何だろう?」
魔法使い「あなたの鞄を預かっていたの…これ!」ドサ
剣士「あああ!!これは僕のミスリルナイフ…」
魔法使い「大事にしてたの知ってたから…」
剣士「ありがとう…フフ種もあるじゃ無いか」
僧侶「何の種だか分からなかったので使って居ないです」
剣士「南の大陸には無い物ばかりだよ…少し育ててみようか」
盗賊「おぉ?麦以外に収穫出来るならありがてぇ」
剣士「ちょっと植えて来るよ」スタ
-----------------
商人「…ところで硫黄の採掘は上手く行きそうなのかい?」
盗賊「炭鉱は無傷で残っててな…しかもハーフオークの子供達が大人張りに動けるもんで順調だ」
商人「それは収入の安定が見込めそうだね」
盗賊「建築にちっと人出が欲しいのだが急いでも仕方が無いからゆっくりやるだな」
商人「人出ねぇ…ギルドで募集を掛けて見ようか?」
盗賊「金が払えそうに無い…金でも採掘出来りゃ話は変わるんだが…」
商人「ふむ…移住できる人の募集になるか」
盗賊「そりゃ歓迎だ」
商人「実はね…セントラルで難民が溢れているんだ」
盗賊「又えらい遠くから人集めだな」
商人「商船に乗る運賃を下げれば少しづつ流れて来ると思う」
盗賊「まぁ気長に待つわ」
商人「それからここに在る古代遺跡…どうなって居る?」
盗賊「入り口が灰で埋まってる…多分2メートルぐらいだが掘るにしても人出がな」
商人「案内出来るかい?ここに来た目的の一つなんだよ」
盗賊「分かった…付いて来い」
『川辺』
ザワザワ シュルリ
剣士「よし!これだけ植えれば良いか」
僧侶「実は収穫して良いですか?」
剣士「食べる分だけね…他の鳥や動物たちにも残してあげて」
魔法使い「果物があると皆喜ぶ…」
剣士「種は残すようにね」
スタスタ
盗賊「おぉ!ここに植えたか…」
剣士「盗賊さん…何処へ?」
盗賊「古代遺跡だ…灰で埋まってるんだがお前も行くか?」
剣士「行って見ようかな…まだ何か残ってるかもしれない」
盗賊「いや埋まっちまってんのよ…正確な場所も良く分からん」
剣士「今から掘りに行く?」
盗賊「待て待て…宛ての無い穴掘りは相当労力使うんだ…今から掘る前に色々やる事がある」
剣士「穴掘りはワームにやらせれば良い」
盗賊「マジか…整地を虫にやらせられるのはメチャクチャ助かる」
剣士「簡単だよ…一緒に付いて行く」
盗賊「おぉ来い来い!!」
『古代遺跡の付近』
商人「う~ん全然分からないね…土砂と灰で埋もれて草木も生え始めてる」
盗賊「だろ?目印の木も何処に行ったか分からん」
剣士「整地した土を何処に積めば良い?」
盗賊「そうだな…川に沿って壁になる様に積めるか?獣除けの柵を置きたい」
剣士「おけおけ!任せて…蠕虫!来い」
ザワザワザワ ズドーン
盗賊「どわぁ!!こんなんが地面の中に居るんか…」タジ
剣士「土を運べ!」
ワーム「ギュゥゥゥ…」モシャモシャ
剣士「もっとワームを呼ぶから少し離れておいて…蠕虫!従え…」
ザワザワザワ ズドーン
---------------
---------------
---------------
『1時間後』
ズモモモ ガッサ ガッサ
商人「あそこだ!!遺跡の入り口が見えた!!」
盗賊「すげぇ整地力だ…辺り一帯2メートル掘り下げやがった」
剣士「なんか整地楽しい…川沿いを村まで土手積んでおくから遺跡の調査行って来て良いよ」
盗賊「崩れん様にしてくれな?子供達が巻き込まれん様に」
剣士「適当に木を植えるから大丈夫…任せて」
商人「じゃぁ2人…いや3人で行こうか」
機械の犬「ワン!」トコトコ
盗賊「おう!」スタ
『古代遺跡』
シーン
商人「あの時のままだ…」
盗賊「俺ぁ薬を探す…前は噴火でゆっくり物色出来なかった」ダダ
商人「生体の部品は無いか…盗賊!ちょっと来て」
盗賊「んん?何だ?」
商人「この機械に鍵穴が有るだろう?これ解錠できる?」
盗賊「ほぅ?ちっと見て見る…」カチャカチャ
商人「謎の機械はまだ結構あるね?」
盗賊「全部持って行った方が良いな…又いつ埋まるか分からん」
商人「前に来た時はガラクタだと思って居たけど…デリンジャーの部品も転がってる」
盗賊「また作れそうか?」
商人「持って帰って剣士に見せよう」
盗賊「ぬぁぁ…これはロックピックで解錠する鍵じゃ無ぇな…鍵を作らにゃイカン」
商人「作れる?」
盗賊「型取って一回戻る…30分だな…その間調査してろ」
商人「分かった…」
盗賊「ついでに謎の機械全部持って行くぜ?」
商人「あぁ仕分ける…ここで必要な物は大体分かる」ガチャガチャ
盗賊「銀貨持ってるか?」
商人「あるよ…」チャリン
盗賊「この銀貨を細工して鍵にする…よっし型取れた」
商人「ああああああああああ!!こんな所に…有るじゃ無いか外部メモリ!!」
盗賊「お?それ探してたんか?」
商人「そうだよ…前に来た時に見落としてる」
機械の犬「ワン!ワン!ワン!」
商人「もう一つのスロットに挿しても良いかい?」
機械の犬「ワン!」
商人「挿すよ…」スッ
盗賊「俺ぁちっと戻って鍵作ってくんな?」ダダ
『30分後』
タッタッタ
盗賊「作って来たぜ?」
商人「遺物を集めて置いたよ」
盗賊「薬は無ぇか?」
商人「見当たらない…怪しいのはこの容器だけど開けられない」
盗賊「これどっから開けんのよ…鍵穴も無ぇ」カタカタ
盗賊「何か入ってる音はするんだな」
商人「それが一番怪しい…その容器の上に外部メモリが乗ってたし」
盗賊「まぁ後だ…鍵作って来たから解錠してみるぞ?」
商人「そうだね…頼む」
盗賊「俺の鍵開け技術は世界一よ…ぬっふっふ」カチャリ
ブーン ピピピ
商人「おぉ!!起動した…ラヴおいで!!」
機械の犬「ワン!」
盗賊「石板が光り出したぞ?」
商人「今度の石板は前の物と違う…何だろう?」
機械の犬「ワン!」フリフリ カチャ
盗賊「ヌハハ機械の犬が操作するんか…」
商人「どんどん文字が流れて行く…ちょっと待った!!止めて!!」
盗賊「人体の画?…数字」
商人「やっぱりそうか…ホムンクルスを作る機械だ…この数字は材料の割合だ」
なんで各地にこういう設備が残されてるんだ?
予備の材料まで保存されてる
ホムンクルスの寿命は約400年だったな
そうか精霊は生体を乗り換えて数千年生きているんだ
じゃぁ誰がこれを動かす?
盗賊「待て待て…今の画…世界地図だな?」
商人「この地図はどう見れば良い?」
盗賊「この北側のこの地形…こりゃセントラルだろ」
商人「逆さま?…いや横かな?」
盗賊「ちと待て…これは書き写す」
商人「あぁ…ノートあるからやるよ」カキカキ
盗賊「この印の位置も恐らく需要な意味が在る…お宝だよお宝!!」
商人「他にも同じ遺跡が有ると言う事か…」
盗賊「多分な?後で俺らの地図に移し替えるぞ」
商人「書き写すまでちょっと待って…」
盗賊「時間掛かりそうだな?俺は残りの遺物持ってもっかい走る…まぁしばらく調査やってろ」ガチャガチャ
商人「済まないね…」
『ハテノ村』
ズモモモ ガッサ ガッサ
盗賊「おぉこんな所まで土手作ったんか」
剣士「村を守る想定で整地するのって楽しい…狙いは分かる?」
盗賊「おうよ!!柵張って守備する場所を絞りたいんだろ?」
剣士「そうそう…まずは熊とか獣に入られたくない」
盗賊「柵用の木材は切り出してあるんだ…お前も作って見るか?」
剣士「やりたい!」
盗賊「釘が無いんだが何とかならんか?」
剣士「出来る…どんぐりを軟鉄に変性させられる…軟鉄の形整えたら釘替わりになるよ」
盗賊「やるな?お前…おう!それからよ?デリンジャーの部品みたいな奴を見つけたんだ」
剣士「本当!!見せて」
盗賊「これだ…組み立てられるか?」
剣士「あれ?ちょっと違う形だな…4連じゃないし筒の径が大きい」
盗賊「まぁ俺も欲しい訳よ」
剣士「おけおけ!今から組み立てて見る」
---------------
魔法使い「ハンターまだ帰って来ないんだけど見てない?」
盗賊「いや見て無ぇな…暗くなるとマズイな」
オエエエッ ドスドス
盗賊「む!!ヘラジカ…」
魔法使い「ハンター!!遅いから心配した!!」
ハンター「すごい地形が変わって…これ何事?」
魔法使い「剣士がハテノ村に来たのよ…ワームを使って整地してくれたわ」
ハンター「おぉぉ無事だったか」
盗賊「ヘラジカ捕まえたか!随分弱ってそうだな」
ハンター「かなり遠くまで行って苦労したよ…ちょっと食事与えてくる」
盗賊「それが良い…ヘラジカは木の実を良く食うぞ?」
ハンター「うん!食べさせたらすぐ戻るよ」グイ ドスドス
『教会の外』
ワーイ キャッキャ
盗賊「要らん木材で玩具作ったのか…誰だ?」
子供達「女オークが作ってくれたのー」キャッキャ
女オーク「オークの村にはこういう遊びがあるのよ」
盗賊「俺も登りたくなるじゃ無ぇか」ウズウズ
女オーク「この子たちは野良オーク…でもオークのしきたり何も知らない」
盗賊「俺には見分けが付かんのだが…肌の色か?」
女オーク「そうよ…茶色い肌が野良オーク…緑が西で青が東…南の方に行くと赤い肌の部族も」
盗賊「なるほど…ほんでお前は野良オークって訳か?」
女オーク「私を見てオークと分かる?」
盗賊「見た目じゃ分からんな…オークに詳しそうだからそう思ったんだ」
女オーク「オークも人間もほとんど変わらないのに人間はオークを嫌う…」
盗賊「嫌ってる訳じゃ無ぇな…多分恐れてるんだ」
女オーク「怖い?」
盗賊「そりゃ体格が良いし…なんだか思ったよりも賢いしな?」
女オーク「言葉が通じればもっと仲良く出来るのに…」
盗賊「うむ…ここの子供達を見ていると本当にそう思う…オークは人間が大好きな様だ」
女オーク「オークから見ると人間はとてもかわいい」
盗賊「見て見ろ…子供達は普通に仲が良い…これが本来の姿だ」
女オーク「私達はいつ混ざり合える?」
盗賊「人間にはよ…なぜか自分と違う者を遠ざける心がいつの間にか育っちまう…魔王の心ってのか?」
女オーク「魔王…やっぱり人間に憑りつくのね」
盗賊「こればっかりはどうしようも無いかもなぁ…」
カーン カーン カーン カーン
女オーク「鐘?」
盗賊「食事の合図だ…皆呼んでくるから待ってろ」
『教会』
皆さん今日も無事に食事を食べられることに感謝しましょう…
精霊に祈りを…
僧侶「食べて良いですぅ!」
子供達「頂きマンモス~!!」パクパク
盗賊「シスター元気になった様だな?」
シスター「皆さんのお陰です…どうぞお掛けになって下さい」
魔法使い「剣士は来ないの?」
盗賊「作り物してて忙しいとの事だ…まぁ気にすんな」
魔法使い「食事持って行くわ…何処?」
盗賊「あいつ等が乗って来た小さい飛空艇ん中だ…どうせ食わんぞ?」
魔法使い「うるさいなぁ…持って行くから」スタ
女オーク「…」ジロリ
僧侶「女オークさん肉と木の実のスープでし…新しく採れたヤシの実もあるです…どうぞ」
女オーク「ありがとう…」
僧侶「女オークさんは剣士さんと一緒に旅をしてるですか?」
女オーク「うん…そうよ」
僧侶「私達ずっと剣士さんを探してたです」
盗賊「探してるなら探してるでなんで俺に言わなかったのよ」
僧侶「剣士さんに秘密を守れと念を押されて居たです」
盗賊「秘密?」
僧侶「秘密を守る条件で仲間になったんでしゅ…誰にも力を知られたくないとか」
盗賊「何隠してんだ?あいつ」
僧侶「虫を使う所とかどうして旅をしているだとか他の人に知られるといけないらしいのです」
盗賊「ほ~ん…まぁ只でさえ目立っちまうからな?」
女オーク「虫を使うと人間達はみんな悪い目で剣士を見るのよ」
盗賊「そら違い無ぇ」
僧侶「光る剣もいつも見えない様に背中に隠してるですね」
盗賊「なるほど…付け狙われるのを回避してるのか…あいつが持ってる光る刀は世界で1本だけしか無い刀だ」
僧侶「どうしてそんな物を剣士さんが持って居るのか知りたいですけど教えてくれないでし」
盗賊「まぁ隠してもいずれバレルだろうから言っとくがあいつは勇者の子だ」
僧侶「勇者って本当に居たですか?」
盗賊「まぁな?誰も知らんだろうが勇者が魔王を葬って今の平和が有るんだ…それは間違い無ぇ」
僧侶「盗賊さんがそれを知って居るという事は勇者の仲間だったのですね?」
盗賊「まぁあんまり他人に喋る事では無い…剣士も同じだったんだろう」
僧侶「理解したです…剣士さんは勇者なのですね」
盗賊「それは違う…話が複雑なんだがあいつは勇者ではない…間違いない」
僧侶「そうですか…思い違いでしたか」
女オーク「勇者じゃないと言い切る理由は?」
盗賊「勇者はな?青い眼をしているんだ…なんつーか世界を導く眼って言うのか?あいつはその眼を親に奪われたんだ」
女オーク「何の為に?」
盗賊「勇者の宿命から解放する為だ…青い眼の勇者は魔王と共にこの世から居なくなる宿命を持ってんだ」
女オーク「では親に生かされたという事ね?」
盗賊「まぁそうなる…生きる事を託された訳よ」
僧侶「なんだか深いですね…」
盗賊「だから隠してんだよ…秘密にしとけよ?」
女オーク「剣士は名も無き島でこの世界を救う事を誓った…やっぱり勇者の宿命から逃れて居ない」
盗賊「どういう事だ?」
女オーク「アダムを倒すって…」
盗賊「アイツ気付いてんのか…人間の子供が生まれない原因がアダムに有るって」
僧侶「アダムって誰でしゅか?」
盗賊「神だ…ドリアードっていう植物の中に復活した神の名だ」
僧侶「その話…誰も知らないです」
盗賊「だろうな?俺らだけが知ってる」
僧侶「どうして皆に教えないですか?魔王を倒したこともアダムという神の事も誰にも教えないのはズルいです」
盗賊「誤解すんな…俺らは魔王を倒しアダムという神が復活してこれで平和になったとずっと思ってた訳よ」
盗賊「気付いたらなぜか子供が中々生まれない様になってて今やっとアダムが原因じゃ無ぇかと思い始めた所だ」
僧侶「最小存続個体数って知ってますか?」
盗賊「何の数だ?」
僧侶「人類が繁殖できる最小単位です」
盗賊「聞いた事無いんだがどんなもんよ?」
僧侶「たった10年子供が生まれないだけで一気に個体数が減って絶滅するです」
盗賊「いやまだ間に合うだろ?子供を産める女はまだ居る筈だ」
僧侶「私がもう産めない体だったとしたらどうですか?」
盗賊「待て待て…そういう病気がすでに蔓延だとするとヤバイな」
盗賊「いや待てその為に俺はここに薬を探しに来たんだ」
僧侶「事態はとても深刻だと思うのでしゅ」
女オーク「私見えて来た…剣士が虫を使って世界を救う姿を…剣士はやっぱり勇者よ」
盗賊「あのニョロニョロの虫の奴か…そうだなそりゃ名案だ」
『飛空艇』
カチャカチャ
魔法使い「剣士?食事を持って来たわ…」スタ
剣士「魔法使いかい?わざわざありがとう…そこに置いておいて」
魔法使い「食べないの?」
剣士「後で頂くよ」
魔法使い「目を合わせてくれないのね…」
剣士「あぁゴメンそんなつもりじゃ無いんだ…ちょっと機械の組み立てで手が離せなくて」カチャカチャ
魔法使い「そんなつもりって…」
剣士「ゴメンよ今忙しい」
魔法使い「剣士?あなたずっとハテノ村に居られる?」
剣士「それはムリかな…」カチャカチャ
魔法使い「又居なくなるのね」
剣士「やる事が有るんだ」
魔法使い「あなたいつも私達と見ている所が違う…ずっと遠くを見てる」
剣士「ハハ…もう僕の正体に気付いて居るでしょ?そういう事なんだよ」
魔法使い「…」
剣士「昔この村で遊んで居た時は楽しかったなぁ…君がリーダーだったね赤毛の番長…皆君のいう事を聞いた」
魔法使い「あの時からずっとあなたは戦い続けているのね?」
剣士「結果的にそうだね…そんなつもりは無かったけど無意識でそういう道を選択してた」
魔法使い「私あなたの事が好きだったの…御免なさい軽々しく言ってしまって」
剣士「その気持ちは嬉しいけど仕舞って置いて…僕は君に答えられないから」
魔法使い「…」ググ ポロ
タッタッタ
盗賊「おい剣士!ちょいと話があるんだが…」
魔法使い「はっ…」ゴシゴシ
盗賊「魔法使いも居たか…何やってんだ?」
剣士「よし出来た!!」ジャーン
盗賊「おぉ!?デリンジャよしかちとデカイか?どんな銃よ…」
剣士「ちょっと試し撃ちしたいなぁ…」
盗賊「おいおい…俺を的にはすんなよ?」
剣士「この銃はね2連装なんだ…このラッパみたいな穴から弾が出る」
盗賊「ほう?穴がデカい様だが?」
剣士「どんぐりだと小さすぎるから代わりに銅貨を飛ばす…サイズが丁度良いんだ」カチャカチャ
盗賊「試し撃ちすんならイラン切り株がいくつかあんぞ?整地の邪魔で掘り出した奴がな」
剣士「イイね!!それに撃ってみよう…何処?」
盗賊「木材の切り出し場だ…付いて来い」スタ
『製材所』
カチャカチャ
剣士「これで良し…と」
盗賊「ヌハハやはり暴発が怖い様だな?」
剣士「そりゃね…銅貨が破裂するかもしれないし…皆何かの陰に隠れて?」
盗賊「木材の裏だ…こっち来い」
僧侶「何が始まるですか?」ドキドキ
盗賊「俺の新しい武器のテストよ…銅貨を撃ちだす銃なんだとよ」
僧侶「投げ銭でしゅか…」
盗賊「俺にピッタリだ」
剣士「行くよ?」
バーン! ジャラジャラ
盗賊「おぉ!!切り株が破裂しやがった…すげぇ威力だ」
剣士「銅貨が散乱するか…調整に意味が無さそうだな」
僧侶「なんだか銅貨が勿体ないですねぇ…」
剣士「次は飛距離と広がり具合を試したい」
盗賊「ここじゃ危無ぇな…日が出たら川でやると良い」
剣士「まぁ良いか…暴発はしなさそうだしこれは盗賊さんにあげるよ」
盗賊「おぉ!!どうやって使うか教えろ」
剣士「火薬はここの容器だよ…銅貨はこのスロットに丁度12枚収まる」カチャカチャ
盗賊「ほんで引き金を引くだな?」
剣士「間違って引き金を引かない様に安全装置が付いてる…ここの部分さ」
盗賊「ふむふむ…」
剣士「撃ったら毎回安全装置が引っかかる様になってるから毎回撃つ直前に外す感じ」
盗賊「分かった!使って見て何か有る様だったら又相談するわ」
剣士「うん!じゃぁコレ」パス
盗賊「うひょぉぉ…俺もユニーク武器ゲットしたぜ」
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盗賊「ところで剣士…お前に話が有ってだな」
剣士「全部聞こえていたさ…線虫を使わせたいんだよね?」
盗賊「なら話が早えぇ」
剣士「それは今までずっとやってるんだよ…皆寝静まった夜中にね」
盗賊「なぬ!?意味が無いってか?」
剣士「シン・リーンで疫病が少ないのはそのお陰なんだ…でも出生率は上がらない」
僧侶「そうだったのでしゅね…」
剣士「僕の線虫で癒せるのは生きている生体だけ…死んでしまった種には意味が無いのさ」
盗賊「種が死んでるだと?まさか俺の種も?」
剣士「魔女はとっくに異常に気付いていろいろ調べているよ」
盗賊「通りで俺と情報屋の間に子供が出来なかった訳だ…死んでるのは男の方か」
剣士「確かな話では無いよ…魔女の蘇生魔法でなんとかなるらしいくらいしか知らない」
盗賊「なら魔女に蘇生魔法をだな…」
剣士「また死なないならそれでも良いかもね」
盗賊「また死ぬ…てことは元を断たん事には意味が無い…ケシの実の流通か」
剣士「それも可能性の一つ…そもそも人間は植物の種子を口にしないと生きていけない…すべての種子を断つわけに行かないよ」
盗賊「やっぱドリアードん中のアダムぶっ倒すのが一番の近道か」
剣士「…それも難しい…なぜならあの光る隕石が飛んで来る…10年前の時のようにね」
盗賊「…手が無い…畜生!!あの第3皇子の野郎」ギリリ
剣士「第3皇子?」
盗賊「お前は知らねぇか…第3皇子の野郎が魔王を封じた魔石を使ってアダムを復活させたんだ」
剣士「魔王を封じた…パパとママが全部集めて光の石に転移させた筈じゃ…」
盗賊「その魔石がどうなったかは知らん…ただドリアードは生きている…つまりあの中にまだあるって事だ」
剣士「分かった…逆だ…アダムは魔王に支配されてる」
盗賊「魔石に封じられた状態で何か出来るんか?」
剣士「エネルギーの供給が条件…供給を止めると脅されたら?」
盗賊「…マジかよ」
『飛行船』
メラメラ パチ
魔法使い「なんだか話が重すぎて…」
僧侶「そうでしゅねぇ…剣士さんが抱えている物がやっと理解出来たです」
魔法使い「ハンター?どうして黙っているの?」
ハンター「いや…別に…」
盗賊「ハンターさっきお前隠れて剣士と魔法使いの話聞いて居ただろ」
ハンター「う…」
魔法使い「聞いて居たのね…そうよ私剣士に振られたの!」
盗賊「ヌハハお前等三角関係か…若い若い!!」
僧侶「デリカシーの無い事言っちゃダメです」
盗賊「まぁ良いんだよ!若いうちは振って振られてなんぼよ…まぁハンターと魔法使いもお似合いだぜ?」
魔法使い「ダメダメこいつケチだから!デブでグズなのも知ってるから」
ハンター「ハハ…そう言わないでおくれよ」
盗賊「ハンター!お前にゃ期待してんだ…俺が解錠のすべてを教えてやる…女の解錠の仕方もな?」
ハンター「お願いします師匠」
盗賊「よし!じゃぁまず魔法使い!お前脱げ…今からお前等ヤレ」
魔法使い「なぁっ!!そんなこと出来る訳無いじゃない!!」
僧侶「私も見て見たいですぅ…」ニヤニヤ
ハンター「あのね…人に見せる事じゃない」
盗賊「鍵開けは強引さも必要なんだ…良いから黙ってヤレ」グイ
魔法使い「ちょっ!!放して!!」
僧侶「むふふ」ニヤニヤ
魔法使い「ちょっと僧侶助けて…あぁぁダメ脱がさないで」ジタバタ
ハンター「魔法使い!逃げるよ」グイ
盗賊「ヌハハハハハ俺はしつこいぞぉ?」ダダ
ハンター「こっちだ…早く」グイ タッタッタ
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『翌日』
コーン コーン メリメリ ドターン
盗賊「女オークの剣はすげぇな?2振りで木を倒しやがる」
ハンター「木材の加工が間に合わないよ」ギコギコ
盗賊「まぁこれで一気に捗る」
僧侶「テーブルとイス出来たですぅ」
魔法使い「木箱は積んでおけば良い?」
盗賊「おぉ!!材料ごとに分けて積んでくれ…終わったら馬車作るの手伝え」
僧侶「手伝えるです!」スタタ
盗賊「早い所馬車組み立てて炭坑の石炭と硫黄を運ばにゃならん…急いで作るぞ」トンテンカン
トンテンカン
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商人「盗賊!!ちょっと来て」
盗賊「おぉ商人!調査は終わったか?」
商人「まぁね…地図作ったんだ…見て欲しい」パサ
盗賊「宝の地図だな?見せろ…おぉ!!未踏の地まで書き込んだかスゲェなこれ」
商人「見ての通りお宝の殆どは未踏の地の様だよ」
盗賊「行くしか無ぇだろ…でも待て直ぐに行けそうな範囲にも有るじゃ無ぇか…んん?」
商人「察したかい?」
盗賊「こりゃもしかして精霊の足取りか?」
商人「多分そうだね…僕達の知ってる範囲の遺跡で生体を乗り換えながら数千年活動したんだ」
多分こうだよ
生誕の地は恐らく南の大陸の南部…約6000年~7000年前だね
ウンディーネ伝説の時代さ
その後約4000年前に地軸の移動があって大きく文明が入れ替わる
当時の主要な場所はその時にみんな未踏の地に移動した…北極と南極だ
そして精霊の活動場所は北の大陸に移った
僕達が良く知ってるセントラルやシャ・バクダ…シン・リーン等々
とっくに滅んだ都市もあるみたいだね
全部古代遺跡の有った場所に新たに都市が生まれているんだよ
盗賊「てことはほぼ行き尽してるな…」
商人「一つだけまだ行けそうなところが残ってる…ここさ」
盗賊「オークの地か…」
商人「多分東オークの領内だよ…この場所にウンディーネが眠って居ると思われる」
盗賊「またエライ遠いな」
商人「でもね…正直期待出来ない…密閉された状態じゃないと6000年も経てばみんな風化する」
盗賊「なんで密閉された状態じゃないと思う?」
商人「オークが精霊の姿形を知って居るからさ…蓋をされた状態だったら分からないでしょ?」
盗賊「なるほど…石造になった精霊を拝んでるってオチだな?」
商人「うん…北の大陸でもそうだったよね?シン・リーンに安置されてる精霊の像」
盗賊「まぁでも一回確認してみんとな?」
商人「エリクサーに浸かったままという可能性もあるから一応調べてはおきたいかな」
盗賊「行くんか?」
商人「その前に名も無き島でホムンクルスをもう1体作る事が出来るかもしれないんだ…先にそっちを解決したい」
盗賊「やっぱお前はホムンクルス第一か」
商人「そうだ!!昨日見つけた謎の容器…開けて見た?」
盗賊「おぉ忘れてた…剣士の飛空艇に積んである」
商人「ラヴがあれをすごく気にしている…絶対何か有る」
機械の犬「ワン!」
盗賊「無理に開けて爆発したりはせんだろうな?」
商人「盗賊は解錠の専門だろう?壊さないで開けて欲しいな」
盗賊「仕組みが何も分からんのだが…」
商人「頼むよ」
盗賊「何か手掛かりがありゃ良いんだけどな?」
商人「そうだ一つ僕の夢話だと思って聞いてくれ…ここの遺跡にはデリンジャーが有ったよね?」
盗賊「10年前に拾った奴な?」
商人「誰が置いたと思う?」
盗賊「ナヌ?誰だと?…おいまさか!」
商人「僕はね…ここの遺跡を最後に封じたのは過去に戻った女海賊じゃないかと思ってる」
盗賊「そういや全部アイツ好みの物ばっか有ったな…て事は俺らへのメッセージか?」
機械の犬「ワン!」
盗賊「マジか…」
商人「ラヴともっと話せれば早いんだけどね…兎に角ラヴが落ち着かない様子なのさ」
機械の犬「ワン!ワン!」
盗賊「そうかアイツが鍵を掛けたとなると…虫か磁石だ…いや分かったぞアダマンタイトと磁石だ」
『飛空艇』
タッタッタ
盗賊「おお剣士!丁度良い所に来た」
剣士「聞こえてた…ママのメッセージと聞いて作業止めて飛んできた」
盗賊「お前は地獄耳だな…今から謎の容器を開けるぞ」
剣士「うん!」
盗賊「磁石持ってるか?」
剣士「ある…これだよ」ポイ
盗賊「どっか引っ付く場所無ぇか?」カチカチ
盗賊「有った!!ここだ…回すぞ?」スゥ
剣士「狭間に入った…」
プシューー パカ
盗賊「開いた…ガラス容器に入った謎の液体…薬だ!!」
剣士「指輪とママが育ててたダンゴムシ…指輪はもう魔力を失ってる…」
盗賊「このアダマンタイトはアイツが使ってた物だ…て事はもうアイツ何も持って無ぇ」
剣士「ママはこの場所ですべてを置いた…6000年前に…」
盗賊「手紙とかは無い様だ…残念だったな」
剣士「ママは文字が書けないんだ…でも十分さ…ママのメッセージは受け取った」
盗賊「狭間から出るぞ?」スゥ
-----------------
商人「あ!突然消えたから何処に行ったかと思ったよ…容器は開いた?」
盗賊「俺は世界一の鍵開け師だ…空いたぞ?」
商人「見せて!薬と指輪…」
剣士「これは僕の物だ…ママからの贈り物だよ」ポロリ
商人「薬を埋めたのは夢じゃなかった」
機械の犬「ワン!ワン!ワン!」ウロウロ
剣士「何か伝えたい事があるんだね?」
機械の犬「ワン!」
商人「その容器の上に外部メモリが置いてあったんだ…メッセージはラヴが知ってる」
機械の犬「ワン!」
商人「でもこれで確定だ…君のパパとママは間違いなく過去に戻って魔王を倒して来た勇者だ…6000年前にここですべてを置いた」
剣士「受け取ったよママー!!何処かで見てるかなぁ…」ポロポロ
機械の犬「クゥ~ン」
商人「否定?どういう事だ?ここに骨を埋めたんじゃ無いのかい?」
機械の犬「ワン!」
商人「肯定…剣士君!まだ続きがある様だ」
剣士「本当!?」ゴシゴシ
機械の犬「ワン!」
ドコーン ズザザザ
剣士「ワームが暴れてる…」
ハンター「大変だ!!地面からゾンビが這い出てる」ダダ
盗賊「なにぃ!!子供達は?」
ハンター「炭坑から逃げて来てる」
盗賊「魔法使いと僧侶でゾンビ退治やらせろ」
剣士「子供達にも銀の武器を配った方が良い…僕が作る」
盗賊「おう!任せた」
剣士「それと僧侶に言って村に虫除けの方陣を組ませて…ワームはその外で村を守らせる」
盗賊「聞いたかハンター?ゾンビ退治はお前と魔法使いでヤレ」
ハンター「分かった…行って来る」ダダ
『広場』
カーン カンカン
剣士「即席で銀の槍を作った…出来た槍から皆に配って」
魔法使い「もうほとんど処理したから急がなくて良いわ」
剣士「変性魔法!」シュワワ
魔法使い「芋を銀に変えて居るのね?」
剣士「結構質の良い銀になる」カーン カンカン
魔法使い「石炭居る?」
剣士「うん!助かる…かまどに突っ込んで」ジュゥゥ
タッタッタ
盗賊「剣士!もうゾンビは片付いたからそんなに武器要らんぞ?」
剣士「手の届くところに沢山置いておいた方が良いよ…又いつ来るか分からない」
盗賊「まぁそうだな」
剣士「倒したゾンビは村の外に置いておけばワームが処理する…疫病起きちゃうから早く運んで」
盗賊「分かった…魔法使い行くぞ!」
魔法使い「うん…」スタ
-------------
ハンター「こっちはおっけ!後はゾンビの体液を燃やしておく」
盗賊「おう!子供達にもやらせろ石炭の粉は腐る程有るからな」
ハンター「地面から這い出て来るのは厄介だね…折角村を柵で囲んだのに意味が無い」
盗賊「だな?まぁ獣が来んだけマシっちゃぁマシだ」
ハンター「遠くの方だとガーゴイルが飛んでいるのも見たんだ…それも心配だよ」
盗賊「子供達に使えるクロスボウも必要になるか…物資が足りんな」
ハンター「ここは陸の孤島だよね」
盗賊「そもそも人が足りん」
ハンター「石炭と硫黄は沢山掘れるのに鉄が無い…」
盗賊「早い所村の安全確保して物資運搬せんとイカン…問題はスピードだ」
ハンター「飛行船でキ・カイまで片道5日…」
盗賊「やるしか無ぇな?」
ハンター「積める量が多いだけ幸いかぁ…」
『飛行船』
ガチャガチャ
剣士「女オーク!このクロスボウを教会に運んで」
女オーク「うん…教会を守る?」
剣士「そうだよ…あそこが最後の砦になりそうだ」
女オーク「こっちの飛行船は良いの?」
剣士「9台もクロスボウは要らない…3台あれば十分だよ」
女オーク「勝手に外して怒られない?」
剣士「良いの良いの!僕がもっと良く改造するからこれで納得してもらう」
女オーク「分かったわ…ボルトも運んでおく」ガッサ
剣士「お願い…」トンテンカン
---------------
---------------
---------------
盗賊「おいおい!勝手にクロスボウ外してどうしようってんだ?」
剣士「今は教会で子供達を守れるようにと思ってさ…クロスボウは教会に運んだよ」
盗賊「ふむ…ガーゴイル対策だな?」
剣士「うん…ゾンビは教会に籠ってしまえば問題無いよね?ガーゴイルが来たらクロスボウで戦う」
盗賊「まぁ良いか…ほんで今何作ってんだ?」
剣士「こっちの飛行船もハイディング出来るようにしてるんだ」
盗賊「おぉ!!でかいアダマンタイト有るんか…そりゃ良い」
剣士「きっとレイスに追いつかれるだろうから退魔の魔方陣を工夫してる所だよ」
盗賊「よし!!それなら輸送の時間が大幅に削減できる」
剣士「だよね?あとね?…昨日作った散弾銃…多分飛行船の上から撃つと効果高いと思うんだ」
盗賊「おぉ!なるほどな?クロスボウ一気に12発撃ってるのと同じって事か」
剣士「そんな感じ…火力はもうそれで十分だと思うよ」
盗賊「あれからちと川で試したんだがな…飛距離はクロスボウより飛ぶんだが的に当てようとすると近距離じゃないと当たらん」
剣士「何処に飛んでいくか分からないんだね?」
盗賊「毎回バラバラなのよ…ただ近距離で全部当てた時の破壊力が半端無ぇ」
剣士「だろうね?切り株がバラバラになるくらいだからねw」
盗賊「これ銀貨でも行けるよな?」
剣士「それはお金が勿体ない」
盗賊「そんなん回収する前提よ…ドラゴンゾンビが居ても一発でイケる」
剣士「ハハまぁ工夫して使ってよ」
『数日後』
盗賊「…もう行っちまうか」
商人「海賊王を待たせるのも良くないし」
盗賊「もうちっと良い武器が欲しいんだ…次来る時は持って来てくれ」
剣士「爺いじに相談してみる」
盗賊「次はいつ来れそうだ?」
商人「う~ん…正直分からない…一回キ・カイに戻りたいのもある」
盗賊「俺も輸送でキ・カイまで飛ぶ予定で居るんだが人出がなぁ…」
剣士「ハンター達で何とかなるよ…魔術師が2人も居るんだ」
僧侶「剣士さんに魔術師って認められてるです」ヒソ
魔法使い「シーッ黙ってて」ヒソ
剣士「村の外は沢山のワームが守ってるから大丈夫!」
盗賊「まぁそうだな?俺はしばらく硫黄の運搬でキ・カイと往復してるからそのつもりで頼む」
商人「うん…こっちも上手く人を誘導する」
盗賊「じゃぁ気を付けて行けな?」
剣士「飛ぶよ?」フワリ
シュゴーーーーー バサバサ
盗賊「うはぁ…鳥だなありゃ」
僧侶「形は蛾でしゅね」
盗賊「蛾か!!そうだなありゃデカイ蛾だ」
ハンター「なんか置いて行かれた感が…」
盗賊「何言ってんだ俺らにはまだやる事満載なんだぞ?作業に戻るぞ…来い!!
魔法使い「…」トーイメ
ハンター「…」チラ
--------------
--------------
--------------
『名も無き島_上空』
シュゴーーーー バサバサ
剣士「島に気球が沢山降りてる…爺いじが帰って来てるんだ!!」
女オーク「丁度良かったみたいね」
商人「スゴイな…6台も降りてる」
剣士「女オーク!前と同じ要領で金属糸引っかけて」
女オーク「うん…」バシュン シュルシュル
剣士「羽閉じる」ギリリ ガチャン
女オーク「フン!フン!」グイグイ
フワフワ ドッスン
『小舟のある入り江』
ドドドドドド
海賊王「未来かぁぁぁぁ!!」ドドドドド
剣士「爺いじ…」
海賊王「やっと帰って来よったかぁぁ!!」ガシ ギュゥゥゥゥ
商人「あぁぁぁぁぁ」ポーン ゴロゴロ
海賊王「顔を見せい!!おぉぉぉここに居ったか…この眼や…ワイの娘の眼や」
剣士「爺いじ…苦しい」
海賊王「待っとったんや!!帰って来るのを!!」ベロベロ
剣士「ちょちょ…目を舐めないで」
商人「ハハ…これは又スゴイ歓迎だな…」
---------------
---------------
---------------
『広場』
ワイワイ ガヤガヤ
海賊王「今日は祭りや…どんどん食え…おまんの好きなキノコもあるで?」
剣士「キノコばっかりもう食べられない…」モグモグ
村人「娘さんの養蜂場で採れたハチミツで作ったハチミツ酒持って来たで~?」
海賊王「未来も飲め!!」
剣士「ママのハチミツ…」
海賊王「商人やったか?おまんも飲め!!」グイ
商人「頂きます…ハハハ」タラリ
海賊王「おまんは誰や?未来の連れかいな?」
剣士「紹介するよ…僕の奴隷の女オークさ」
海賊王「奴隷かいな?」
女オーク「いえ…剣士は私の奴隷」
海賊王「なんやおまんら奴隷同志なんかいな…まぁええ!!おまんも飲めガハハハハ」
女オーク「はい頂きます」ゴクゴク
海賊王「ほーーーう?ええ飲みっぷりやな気に入ったぞい!者共ぉぉぉ酒や!!全部持って来い!!」
村人「ほいさーほいさーほいさっさー」
海賊王「いやしかし未来はワイの婿にそっくりになったな?眼だけ娘と入れ替えただけや」
剣士「みんなそう言うよ」
海賊王「おまんはワイの血も引いとるんや!忘れるなや?」
剣士「この間まで忘れてたさ…この島に来てやっと思い出した」
海賊王「ほんで腹も膨れたやろう…この10年どうやったんや?話してみぃ…」
剣士「うん…実は…」
カクカク シカジカ
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---------------
海賊王「…ほうか…それでそれでやっと帰って来たちゅう訳やな」
剣士「ビッグママは今どうして?」
海賊王「お姉ぇはな…10年前にワイの所に戻って全てを語ったんやが…」
妹を失って辛い思いをしたのはおまんだけや無いんや
お姉ぇはな…実は妹を真底愛しておってな?
更に戦いの中で意中の人物も失い…輪を掛けておまんも手放す様になってしもうて
心を閉ざしてしもうた
今は誰とも口を利かん様になってしもうとる
持ち味の指導力も無うなってしもうて海賊共に裏切られる様や
剣士「修行している間に何回か会いに来てくれてたよ…変わった様子は無かった」
海賊王「魔女はんとは連絡し合うとる様やな…会話しとるのは魔女はんだけやろう」
剣士「僕は何も知らなかったよ…」
海賊王「なってしもうた物はしゃーない…ドワーフは前だけ見て生きれば良いんやが…おまんは前を向けや」
剣士「何処に行けばビッグママに会える?」
海賊王「ワイも知らん…幽霊船で彷徨っとるわ」
商人「幽霊船の話はたまに聞くよ…セントラル沖だ」
海賊王「ワイも連れ返しに行きたいんやが豪族になった輩が邪魔をして自由に海を渡れんくなってしもうた」
商人「豪族が海戦をやっている話は本当だったんだ…」
海賊王「豪族はな?物資が潤沢で火薬を大量に持っとる…ワイらは硫黄が無いで火薬が作れん」
剣士「それで気球を沢山作った?」
海賊王「そうや?火薬が無い分気球の数で勝負しとる」
商人「燃料は何?」
海賊王「石炭やな…石炭はなんとか掘れる」
商人「剣士…」チラ
剣士「うん…爺いじ?硫黄が取れる炭坑があるんだけど人が不足しているんだ」
海賊王「本真か!?硫黄鉱山は噴火でみんな無くなってしもうたんや無いか?」
剣士「ハテノ村で硫黄が採掘出来るんだ…でも人が全然足りない」
海賊王「ええ話を聞いたな…硫黄さえあれば豪族に奪われた漁村も取り返せる」
商人「お互いに利があるね…良い取引だ」
剣士「爺いじ?ハテノ村には鉄も足りない…採掘するツルハシも武器も不足してる」
海賊王「鉄は腐る程有るで?鉄と交換やな?」
剣士「良かった爺いじに相談して」
海賊王「おまんはワイの息子や…この島もおまんの物やし何でもいう事聞いたる」
剣士「じゃぁもう一つお願い…僕ドリアードの中に居るアダムを倒したい…力が欲しい」
海賊王「…」
剣士「ダメ?」
海賊王「ちぃと考えさせーや…おまんを失う訳にイカン」
剣士「失うってまだ決まって無いよ」
海賊王「えーか?良く聞け…」
ドワーフの一族はな…勇者を保護する血が流れとるんや
おまんは気付いとらんかもしれんが
おまんの中に勇者の血脈が残っとる…おまんはそれを守らなアカン
その為にワイの娘…おまんのママが犠牲になっとるんや
海賊王「ええな?無茶はイカン!おまんだけは最後まで生きるんや」
剣士「…」---僕の血---
ダンゴムシは自分を犠牲にして仲間を守る
どうしたら良いの?ママ…
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『小舟のある入り江』
ザザー ザブン
剣士「…」ボー
女オーク「剣士?皆楽しんでるのにどうして一人に?」
剣士「この入り江で良くママと一緒に海を見たんだ…ママは何を見たのかなと思ってさ」
女オーク「ハチミツ酒持って来たわ…飲む?」
剣士「君は全然酔わないね?」
女オーク「私も酔ってみたい」
剣士「頂戴…ぷはぁ」グビ
女オーク「ウフフ…」
剣士「この島にある古代遺跡もさ…6000年前に多分ママが封じたんだと思うんだ」
女オーク「剣士も全部話聞こえていたのね?」
剣士「君もかフフ…そう…それで絶対僕と同じ様にこの入り江で海を見たと思うんだよ」
女オーク「感じたいのね?」
剣士「うん…でもまぁほとんどボーっとしてるだけw」
女オーク「ねぇ…昔みたいに木の棒で立ち合いやらない?」
剣士「もう君には敵わないよ」
女オーク「立ち合いすると色んな事忘れられるの」
剣士「アハそう言えば最近エッチしてないね」
女オーク「それも忘れられる…はい」ポイ
剣士「よーし!!負けないぞ」グイ ダダ
カンカンコン クルクル シュタ
剣士「守備上手くなったね…」タジ
女オーク「私も!!」ダダ
--------------
--------------
--------------
『一瞬』
剣士(見える…遅い…)
スカッ
剣士(何だ?…時が止まった?)
??「ママ暗くなって来たよう帰ろうよぉ…」
??「今が一番大きく見えるの!」
??「その望遠鏡で見えるの?」
??「来た来た来た…おっし!見える…おぉぉやっぱりそうだ!!」
??「何?僕にも見せて?」
??「ちょっと魔術書取って!」
??「見せてよぅ」
??「やっぱ欠けてる…なんでだ?」
??「ねぇ…」
剣士(次元の選択…この時に戻れる…これは僕の記憶)
剣士(いやダメだ次元が崩壊する…量子転移はダメだ)
スカッ
剣士(僕にはやる事がある…僕の次元で)
--------------
--------------
--------------
『次元の揺らぎ』
??「あれ?…ここは…」
??「パパ?…ここどこ?」
??「魔女?…何処に居るの?」
??「あれ?記憶が…」
??「僕何してたんだっけ…」
??「誰も居ないの?」
---こっち---
??「誰?」
---目を覚まして---
??「ホム姉ちゃん?」
---僕だよ---
??「僕?」
??「僕は…僕は…違う…ここじゃない」
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『次の一瞬』
ピョン クルクル シュタ
剣士「…見つけた!!」ダダ ブン
バシ!
女オーク「つ…」タジ
女オーク「剣士!!消えるのズルい…」
剣士「え?何もして居ないよ」
女オーク「2回も消えた…私の攻撃を消えてかわした」
剣士「あー魔術師はそういう風に見えるんだ…もう一回打ち込んで見て」
女オーク「行く!」ダダ ブンブン ブン
スカスカ スカ
女オーク「撃つ前に避けて居るの?」
剣士「そういう風に見えるんだよ」
女オーク「これなら…」ダダダ ガシ
剣士「ぅぅぅ…強引に捕まえに」
女オーク「私の勝ち!!ふんっ」ドヤ
剣士「ちょちょ…次は掴まらないからもう一回」シュタタ
女オーク「本気で捕まえるわ」フンッ フンッ
剣士「来い!!」
ピョン クルクル シュタ
カンカン コン
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『砂浜』
ザザー ザブン
海賊王「何処行ったかと思えば…ええ戦いしとるやないか」
商人「パワーの女オークと速さの剣士…スゴイよね」
海賊王「ワイはあの女オークを気に入ったで?酒は飲めるわ未来と対等にやり合えるわ文句無しや」
商人「剣士は力押しされてるなぁ」
海賊王「女オークは未来の動きを読むようになって来とるな?」
商人「あ!剣士の負けだ…掴まった」
海賊王「ガハハハハハ未来は鍛え直しや酒が美味い!!」ゴクゴク
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剣士「くそぅ!!棒っ切れじゃ君にダメージが入らない」
女オーク「私の勝ちよ!剣士は私の物…言う事聞いて貰うから」
剣士「痛いなぁ君の打撃…」スリスリ
女オーク「ズルした罰」
剣士「ズルじゃ無いって…線虫!」ザワザワ ニョロ
女オーク「ウフフ…全力で動いて気持ちよかった」
剣士「まぁそうだね?アハハハ」
女オーク「背負ってあげる」グイ
剣士「良いよ!歩けるから」
女オーク「じゃぁ背負ってもらう」
剣士「ええ!?ぐぁぁ重い」
女オーク「訓練だから…」
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海賊王「罰ゲームかいな?ガハハハハ仲が良うてええわ」
剣士「女オークは重すぎるんだよ…」ハァハァ
商人「体格は剣士と同じくらいじゃない?」
剣士「筋肉の付き方が違う…というか骨が金属だよ」
海賊王「ワイと同じやな?ワイはもっと重いで?」
商人「うーん僕だけ場違いだ…」
女オーク「剣士?戻ってみんなと食べよう?」
剣士「うん…食べたらもう一回勝負しよう」
女オーク「ウフフ…」
『翌日_剣士の家』
だめだぁぁぁエリクサーが足りない!!
剣士「下で商人が騒いでる…」
女オーク「行ってみましょ?」
タッタッタ
剣士「商人どうしたの?」
商人「ホムンクルスを生成するのにここにあるエリクサーじゃ足りない事が分かった」
剣士「エリクサーさえあればホム姉ちゃんを生成出来るんだね?」
商人「あと一歩だ…エリクサーを入手しないと」
剣士「どのくらいの量?」
商人「もともとこっちの容器に入って居た分…多分樽で4杯か5杯」
剣士「パパに全部飲ませちゃったんだ…」
商人「キ・カイに戻れば少しづつ買い付けは出来る」
剣士「樽4つなら飛空艇で運べるよ…シャ・バクダの精霊樹まで行って来ようか?」
商人「頼めるならお願いしたい」
剣士「元々シャ・バクダに居る情報屋さんの所に行く予定だったのさ」
商人「情報屋?どうして彼女に用がある?」
剣士「魔女に情報屋を訪ねろって…」
商人「剣士君は精霊の御所まで一人で行けるのかい?」
剣士「あ…場所が分からない」
商人「精霊樹と話は?」
剣士「した事無い…でも瞑想は出来る」
商人「う~ん僕が行っても役に立たない…エルフゾンビを覚えているね?」
剣士「うん…」
商人「千里眼で彼を追えば良い」
剣士「あぁ千里眼かぁ…僕は魔女みたいに他人の目を盗み見たりしないんだ…許可なく千里眼はやらない」
商人「ふむ…まぁ良い…精霊樹まで行けばエルフゾンビの方から様子を見に来るのに掛けるか」
剣士「何とかなるよ」
商人「分かった…早速で悪いけど一旦キ・カイまで送って欲しい」
剣士「おっけ!!」
---------------
『小舟のある入り江』
フワフワ
海賊王「ガハハハハもう行くんやな?それでこそワイの娘の子や…それでええ…真っ直ぐ前を向け」
剣士「又戻って来るから心配しなくて良いよ」
海賊王「ワイもな?硫黄が早い所欲しいのや…当面はハテノ村とこの島が拠点や」
剣士「僕も拠点はそうする」
海賊王「昨日も言うたがドリアードを倒すちゅうのはちと待てな?時期尚早なんや…ワイにも準備が必要や」
剣士「準備?」
海賊王「何度も言うがドワーフは勇者を守る為に居る…ワイはおまんを守らなアカン…その準備や」
剣士「おっけ!!分かった」
海賊王「それや!!その返事が聞きたかった!!さっさと行って来い」
剣士「ありがとう爺いじ!!」グイ
シュゴーーーー バサバサ
海賊王「ひょぉぉぉ凛々しいのぅ…者共ぉ!!ハテノ村行くぞ!準備せい!!」
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月を夢見て編
完
『古都キ・カイ』
フワフワ ドッスン
剣士「どうして海に沢山船が出てる?」
商人「豪族の船だよ…どういう訳か集まってるね…行こうか」
剣士「待って!やっぱり様子がおかしい…人が寄って来る」
商人「え?」
女オーク「剣士!あの二人が居るわ」
剣士「飛ぶ…」グイ フワフワ
シュゴーーーー バサバサ
商人「この飛空艇は目立ち過ぎか…」
剣士「どこか他に降りられる場所は?」
商人「キ・カイの外に降りるしかない…そこで飛空艇を隠そう」
剣士「おっけ!…商人さんと女オークもこれを持って」ジャラ
商人「アダマンタイトと魔方陣のペンダント…」
剣士「僕はデリンジャーを使う所を豪族の関係者に見られて居るんだ…そのせいで付け狙われてるんだと思う」
商人「それで豪族が集まってる?」
剣士「そんな気がする…爺いじも豪族と戦ってるって言ってたから捕獲したいんだよきっと」
商人「君は頭が回るね…よしハイディングして僕だけ商人ギルドに戻る」
剣士「え?渡したい物があるって…」
商人「僕が取りに行けば済む事さ…渡したいのは北の大陸の詳細地図とちょっとした機械さ」
剣士「あー地図があると助かる」
商人「君達は飛空艇で待って居てくれれば良い…すぐに戻るから」
剣士「うん…待ってる」
フワフワ ドッスン
商人「よし!場所は分かったからハイディングで隠しておいて」
剣士「おっけ!ハイディング!」スゥ
『商人ギルド裏』
タッタッタ
この馬車には戻って来て無ぇか?
見てねぇっすね
くっそ逃げられたか
あの女絶対海賊王の娘だ…変装までやるとは
デカい体は隠し切れて無いっすよ
商人「あぁぁすいません通ります…」
野郎1「おいお前!!コンくらいの背の高さの赤毛の女見て無ぇか?」
商人「赤毛?あー見ました…地下の方にさっき居りて行きましたよ?」
野郎1「なんだと?おい!!チャンスだ地下の入り口張りに行くぞ」
野郎2「やっと金をガッポリ稼ぐチャンスか…」
野郎1「全員で地下を炙りだす…ぐふふふふあの女壊れるまでヤリ尽くしてやるからな」
商人「では…」---こいつ等生きて居たのか---
野郎1「俺は先に地下入り口行くから野郎2は仲間集めて来い」
野郎2「なんでお前が命令するんだ!!俺に借金返してから言えタワケ」
野郎1「まぁそう言うな?金は全部お前にやる…俺はあの女とヤリまくるだけで良い」
野郎2「ちぃぃぃその言葉忘れるなよ?」タッタッタ
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『1時間後_キ・カイの外』
タッタッタ
商人「どこだ?分からなくなっちゃったな…」
剣士「リリース」スゥ
商人「うわ!!」
剣士「危なかった…商人さんと重なる所だった」
商人「一回見失うと探せないね」
剣士「うん…そう思ってた」
商人「地図と計算機…それからこれはジャイロ…そして高度計」
剣士「おぉ!!欲しかった奴だ」
商人「速度計は無いから自分で工夫して…女海賊はパイプに水を入れて速度に換算してた」
剣士「やってみる…」
商人「それから豪族達が追ってるのは君じゃ無くて女オークの方だね…どうも海賊王の娘と思ってる様だ」
剣士「アハ…ビッグママに背格好は似てるね」
商人「それはそれで都合が良い…色々利用できるからね」
剣士「戻って来た時に樽をどうやって運び入れよう?」
商人「そのまま名も無き島に持って行ってくれれば良いよ」
剣士「あ!そうか…じゃぁ早速行くね」
商人「もう一つ朗報だよ…影武者に綺麗な髪の毛が生えて来ている…肌はすっかり綺麗になったよ」
剣士「それは良かった…彼女によろしく言っておいて」
商人「フフ伝えておく…じゃぁ気を付けて」
剣士「うん…」スタ
『飛空艇』
シュゴーーーーー バサバサ
剣士「女オーク?操舵変わって?」
女オーク「うん…任せて」
剣士「よし改造するぞぉ!!」
女オーク「ウフフ…」ニッコリ
まずジャイロ…これと羽を金属糸で繋いで連動させてバランスさせよう
高度計は下限が来たら上昇するように
速度は連通管を先端と側面で差圧を測る様にしよう
トンテンカン トンテンカン
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『数時間後』
女オーク「どう?」
剣士「時間を測る方法が無いから勘になっちゃうけど大分自動で方向修正出来てると思う」
女オーク「大体羅針盤の方向には向かってるのね?」
剣士「うん…細かいズレはしょうがないかな風向きも変わっちゃうし」
女オーク「高度が下がると変な方向に向いてしまう様ね」
剣士「速度得る為にはしょうがないんだよね…本当は偏西風に乗りっ放しが良いんだけどさ」
女オーク「どのくらいで到着出来そうなの?」
剣士「ママの飛空艇だと狭間に入って5日くらいだったんだ…帆で進むタイプだからジグザグに進む」
女オーク「真っ直ぐだともっと早いでしょう?」
剣士「単純に距離で言ったら半分くらいにはなってると思う…海の上だと何処まで進んでるか分からないんだよ」
女オーク「小舟で海を漂流していたのが昔の事みたい…」
剣士「ハハそうだね?そんなに昔じゃないのに」
女オーク「移動する速さって早くなるほど遅かった時が過去の事に感じる…どうして?」
剣士「ハッ…時空だ…しまった勉強していない」
魔女が言って居たのはコレか
全てを知った後に思い返すと知らなかった時の長さは短い…そして過去に感じる
でも本当は今と同じ長さだった筈…それが短く感じるのは時空がそこにあるからだ
量子転移
分かったぞ
過去はすぐそこにある
6000年前もすぐそこにある…知るか知らないかの差だけなんだ
『1日後』
シュゴーーーーー バサバサ
剣士「リリース!」スゥ
女オーク「羅針盤の方向はズレて無いわ」
剣士「まだ海の上かぁ…」
女オーク「左後ろに島が見える」
剣士「どこの島だろ…あれ?でも…」クンクン
剣士「花粉が飛んでる…陸地近いぞ?」
剣士「なんで花粉?これ大分東に流されて…」
女オーク「望遠鏡で陸地見えてる…正面は崖ね」
剣士「崖…崖あああここか!!セントラルの上は通れない…東にかなり流れてる」グイ
女オーク「真っ直ぐ飛ぶのはやっぱり難しいのね」
剣士「でも早いよ…この位置だとあと1日かからないでシャ・バクダに着く」
女オーク「右前方に河口…」
剣士「場所把握…ここだ!河口に漁村が有る筈…このまま行けば森だ」
剣士「よし!ハイディング!」スゥ
---------------
『森南部上空』
シュゴーーーーー バサバサ
剣士「右手見て…10年前の隕石跡地だ」
女オーク「月の模様と同じ物?」
剣士「どうかな?丸くなってるね…そこだけ木が薄い」
女オーク「正面にも…」
剣士「昔は森が全部燃えてる様に見えていたけど…よく見るとまだまだ森は大きいなぁ」
女オーク「円の中心に水が溜まってる…湖になっているのね」
剣士「そうだね…ちょっと地図に書き足しておく」
女オーク「場所わかる?」
剣士「大体ね…山の形で追ってる…ここだ」
女オーク「左前方森の切れ目よ」
剣士「おけおけ!切れ目沿いに北上しよう…場所の把握しやすい」グイ
---------------
『翌朝_シャ・バクダ付近』
シュゴーーーー バサバサ
剣士「見えた…あれがシャ・バクダだと思う…」
女オーク「廃墟?」
剣士「まだ誰か住んでるんだろうか…」
女オーク「建物が全部破壊されて…あ!シカが飼われてるわ?」
剣士「一応誰か居そうだね」
女オーク「降りるの?」
剣士「ちょっとオアシスの付近の地形だけ確認してから降りよう」
女オーク「オアシスは何処だろう?見えない」
剣士「森になってるのか…降りて聞いた方が早そうだな…降りよう」
女オーク「うん…」
---------------
『廃墟_シャ・バクダ』
ヒュゥゥゥ サラサラ
剣士「…もう町としては機能していないんだ」
女オーク「人が来るわ…気を付けて」
男「お前達!!何処から来た!!」スラーン
女「…」ギリリ
剣士「あ…旅の者だよ…情報屋という人を訪ねに来たんだ」
男「人間か…南から来たんだな?」
剣士「まぁ…南の方だね」
男「魔物が多い…建屋に入れ」
女「ドラゴンが居なくなった…早く」
剣士「ドラゴン?」
男「ここらはしきりにドラゴンが飛び回る…危ないから建屋に」
『監視所』
ガチャリ バタン
監督「おいおいまた迷い込んで来たのかぁ?」
衛兵1「まぁそこに掛けろ…」
衛兵2「あなた達何処から?」
剣士「キ・カイから来たと言って信じて貰えるのかな?ハハ」
監督「アホか…どうせスプリガン狩りで森に迷い込んだだけだろう…ったく」
衛兵1「情報屋を尋ねに来たと言うのは?」
剣士「うん…遺跡の調査をしている筈なんだ」
監督「アレだ女王お抱えの部隊に調査員が居る…多分そいつだ」
剣士「今何処に?」
衛兵1「オアシス砦の方に部隊が駐留している…どちらにせよ放浪者はそちらに移送するんだが…」
衛兵2「行くしか無いわね…」
監督「ここを空ける訳にはイカン…お前達まで怪我をしては…」
衛兵1「どうします?先に応援要請しましょうか?」
剣士「あの…僕達自分で行けるよ…周辺の地理と場所だけ教えて欲しい」
監督「冒険者気取りかぁ?そう言って何人も担ぎ込まれてる」
剣士「そんなにこの辺は魔物が?」
監督「デザートウルフにスプリガン…リザードマンにミノタウロスまでうろつく…お前等に行けるのか?」
剣士「ハハ大丈夫だよ」
衛兵1「監督…この2人は体格も良くて装備も整ってます…伝令を任せてみては?」
監督「応援要請か…ふ~む」ジロジロ
衛兵2「シカを貸与すれば割と安全にオアシスまでは行ける筈」
監督「シカに乗って逃げるのがオチだ…伝令は頼めん」
女オーク「シカを買い取るのはどうかしら?」
監督「お前等金持ってるのか?1頭金貨2枚だ…払えんだろう」
女オーク「…」チャリン
監督「うぉ…ここはシカの斡旋所では無いんだが…」
衛兵2「餌も少ないし良いかと…」
監督「まぁ良い…書簡にシカの補給も書留よう」カキカキ
衛兵1「手が掛からんだけ助かる…周辺の地図はコレだ…何かに書き写してくれ」パサ
剣士「ペンが無い…」
衛兵2「ペンよ…ほら」ポイ
剣士「ありがとう…」カキカキ
監督「よし!書簡が出来た…これをオアシス砦の衛兵の誰かに渡せば良い」
剣士「うん…」
衛兵1「夜は魔物が活発になる…移動するなら今の内に行くんだ」
衛兵2「どうしても魔物から逃げられない場合は遺跡に向かえばエルフに助けられる筈…」
剣士「遺跡にエルフが?」
監督「エルフに攻撃はするな!?関係が悪くなると俺達もここには居られなくなる」
剣士「分かったエルフは味方ね」
衛兵2「味方では無くてただのエルフの好意…繋がりは何も無い」
剣士「そっか…じゃぁ行く…ありがとう」スタ
『森の入り口_星の観測所の有った所』
ドスドスドス
剣士「有った!!目印の瓦礫だ…ここから森に入れば獣道沿いで遺跡には行けるみたいだ」
女オーク「オアシスの砦には行かないの?」
剣士「うーん…どうしようかなぁ」
女オーク「目的地は遺跡?」
剣士「遺跡に行けば情報屋さんに会えるかなと思ったけど…オアシス砦に向かった方が良いかもなぁ…」
女オーク「剣士!!上」
剣士「え?あ…ドラゴンだったのか」
女オーク「気付いてた?」
剣士「何の匂いだったか気になってたんだ…旋回してるね」
女オーク「呑気にしてて良いの?」
剣士「ドラゴンはエルフに悪さしない限り襲って来ないよ」
女オーク「そうなんだ…」
剣士「でも旋回してるから何か見張ってるんだろうね」
女オーク「私達は平気?」
剣士「心配無いよ…ワームが沢山居る」
女オーク「そう…」
剣士「よし!決めた!!先にオアシス砦に行こう…その後に遺跡だ」
女オーク「うん…」
『獣道』
アオ~~~ン アオ~~ン
女オーク「ウルフの遠吠え…」
剣士「昼間から遠吠えはおかしい…何かに警戒してる」
女オーク「急ぎましょ」
剣士「そうだね…ウルフとは戦いたくない」
ザワザワ
剣士「む…エルフに見張られてる…」クンクン
女オーク「何処?」
剣士「遠くて分からない…複数」クンクン
女オーク「森に近付くなという事かしら?」
剣士「さぁね?先を急ごう…」
ドスドス ドスドス
『オアシス砦』
おい!誰か来たぞ
監視所の奴らじゃないか?
衛兵「止まれ!!お前達は何者か?」
剣士「監視所から書簡を届けに…これを」パサ
衛兵「ふむふむ…なるほど怪我人が出て人員が居ないのか…それで代わりに」
剣士「僕達は情報屋という人を尋ねに来たんだけどここに居るかな?」
衛兵「一先ず門の中に入れ…話はそこで聞く」
剣士「うん…ありがとう」グイ
ドスドス
女オーク「中は小さな町なんだ…」
衛兵「…それで情報屋を尋ねに来たと言う事だが…まずお前達は誰だ?」
剣士「えーと…どう伝えれば良いかな…シン・リーンの魔女の使いだと言えば信じて貰える?」
衛兵「何!ではお前は魔術師か?」
剣士「うん…照明魔法!」ピカー
衛兵「おぉ!!シン・リーンが要請に応じた訳か…ササこちらへ」
剣士「要請?」
衛兵「聞いて居ないか?魔物が増えて対処し切れなくなっているのだ」
剣士「ゴメン何も聞かされて居ない」
衛兵「怪我人の治癒だけでも随分助かる」
剣士「それなら簡単だよ…どうすれば?」
衛兵「兵舎に居る…流行り病も多い」
剣士「おっけ!任せて」
衛兵「案内する」
『兵舎』
ぅぅぅぅ…治療師はまだか
毒消しがもう無い…辛抱しろ
衛兵「おい!喜べ!魔術師が来たぞ!」
剣士「うわ…皆毒に掛かってるのか…どうして?」
衛兵「スプリガンとスライムだ…加えて最近はマンイーターという植物の魔物も発生している」
剣士「まとめて一気に治療するよ?驚かない様に?」
衛兵「回復魔法に驚くも何も…」
剣士「線虫!毒を食らえ!」ザワザワ ニョロリ
ワサワサワサ ニョロニョロ
衛兵「虫!!うわぁぁ」タジ
剣士「大丈夫…虫が全部毒を食べて体も癒すから」
衛兵「こ…これで治療は終わりか?」
剣士「うん!直ぐに良くなるから安心して?」
ぎゃぁぁぁ助けてくれぇぇ
ひぃぃぃ虫が…虫がぁぁぁ
衛兵「シン・リーンもまた特殊な魔術師を送って来る…」
剣士「ところで情報屋さんは何処に?」
衛兵「あぁそうだったな…残念だが入れ違いになっている」
剣士「ええ!!もしかして居ない?」
衛兵「随分前にシン・リーンの気球に乗って何処かへ向かった様だ…至急の事で行き先はわからん」
剣士「なんだ無駄足だったかぁ…困ったなぁ」
衛兵「なんなら砦に身を置いて戦力になって貰えると助かるのだが…」
剣士「用事があっていつまでも居る訳には行かないんだ」
衛兵「情報屋を訪ねる以外に用事があると?」
剣士「精霊樹に行きたいんだよ…場所が分からない…情報屋さんに聞こうと思ってたのさ」
衛兵「この辺りの事情を知らない様だな?」
剣士「事情?」
衛兵「精霊樹は遺跡の北西に位置するがエルフの許可が無いと立ち入れないのだ」
剣士「遺跡の北西ね…おけおけ」
衛兵「聞いて居るのか?エルフの許可が…ん?まさか魔女様の許可を得ている?」
剣士「ハハ…まぁそんな感じかな」
衛兵「許可を得ているなら行っても構わんがくれぐれもエルフと揉め事だけは起こさない様に」
剣士「大丈夫だよ」
衛兵「森で野生の動物を倒すのは厳禁だ…クマが相手でも手を出さない様に」
ピーーーーーー ピーーーーーー
衛兵「敵襲!?話はここまでだ」ダダダ
『中庭』
ガヤガヤ ドタドタ
閉門!!閉門!!
ダメだぁ!!撃つな!!
門番「北側にウルフ20頭…西側にも20頭ほどに囲まれてる」
衛兵「松明を用意しろ!!火で寄せ付けるな」ドタドタ
剣士「…参ったな門を閉じられちゃった」
女オーク「足止めね…」
剣士「今から精霊樹に行っても夜になるから一晩待とうか」
女オーク「上…」
剣士「ドラゴンずっと旋回してるね…なんか思ったより慌ただしいなぁ」
女オーク「夏なのに雪も少しチラついてる」
剣士「寒くなりそうだね…宿あるんだろうか?」
女オーク「寒さ凌ぐのは兵舎で良いのでは?」
剣士「折角だしベッドで寝たいよね」
女オーク「シたいの?」
剣士「ハハずっとシテ無いしね」
女オーク「ウフフ…」
剣士「あ!そうだ…どうして君が金貨持ってる?」
女オーク「剣士はお金に無頓着だからって商人が私に渡したの」
剣士「なんだ…そういう風に見られてたのか」
女オーク「お金ある?」
剣士「全部飛空艇に置いてきた」
女オーク「ほらね?」
剣士「ハハまさかお金が必要になるとは思ってなかったさ」
女オーク「私はお金の相場が分からないから心配…」
剣士「シカ一匹金貨2枚はちょっと高いかな…でもあの場合は仕方ない」
剣士「それで商人さんから幾ら貰った?」
女オーク「金貨10枚…残り6枚ね」
剣士「なんだケチだなぁ…色々協力した割に…」
女オーク「代わりに地図とか羅針盤を貰ったでしょう?」
剣士「まぁ良いや!宿探そう」スタ
『宿屋』
オンギャー オンギャー
婆「おやおや…定期便が来ていないのにお客とは珍しい…おぉよしよし」
女オーク「赤ちゃん?珍しい…」
剣士「本当だね…」
婆「騒がしくて済まないねぇ」
剣士「宿空いてる?」
婆「食事の用意は無いが良いかね?」
剣士「寒さ凌げれば良い…一晩いくら?」
婆「一人銀貨5枚だよ」
女オーク「はい…」コロン
婆「あらま?金貨かね…お釣りが用意出来んのだがどこぞで銀貨に変えて来れんか?」
剣士「露店も商人も居なかったんだ…どうしようかな」
女オーク「もう良いじゃない?どうせ使い道無いのだし」
剣士「ハハお金に無頓着は君も同じじゃ無いか」
婆「釣りを用意出来んのは悪いでせめてコレを持ってお行き」ジャラリ ドスン
剣士「銀貨50とお酒かぁ…このお酒は?」
婆「サボテン酒だで?昔はサボテンが沢山あったのだが今はもう無いで貴重な酒なんよ」
剣士「おけおけ!思わぬ楽しみが増えたよ」
婆「ゆっくり休んで行きーな」
赤ちゃん「オギャーオギャー」ヒック
『部屋』
ガチャリ バタン
女オーク「質素なお部屋…」
剣士「さて!どっちが強いか勝負しようか」
女オーク「もう?ウフフ良いわ」
ドタン バタン ドスドス
-------------
-------------
-------------
剣士「フフフ僕の勝ちだ!」
女オーク「ま…まだ…」ビク ビク
ザワザワ ザワザワ
剣士「外が騒がしいな…」
女オーク「逃げる気?」ガクガク
剣士「ちょっと様子見て来る…君は休んでて良い」ゴソゴソ
女オーク「まだ負けてないから…」グッタリ
剣士「行って来る!」スタタ
『中庭』
ザワザワ ザワザワ
スライムが入り込んでる!
ダメだここで倒すな!毒が広がる
門が閉まってるんだどうしろってんだ
魔術師が居た筈だ探して来い
剣士「スライム…たった一匹でこの騒ぎか」
衛兵「居た!!良かった…我々ではスライムを焼けない!なんとかしてくれ」
剣士「分かった…火炎魔法!」ボボボボボ
スライム「プギャァァ…」メラメラ
衛兵「破裂するぞ?」
剣士「サンドワーム!従え!スライムを食らえ!」
モゾモゾ ズドーン バクリ
衛兵「サンドワーム…」タジ
剣士「大丈夫!驚かないで…サンドワームを操って居るから」
衛兵「そ…そうか…撃つなぁ!!サンドワームを撃つなぁ!!」
剣士「サンドワーム!地中に潜れ!」
モゾモゾ モゾモゾ
剣士「あと穴を埋めておけばもう戻って来ないよ」
衛兵「助かった…さすがシン・リーンの魔術師」
剣士「北の空で炎が…」
衛兵「アレはドラゴンのブレスだ…精霊樹に近付くスライムを焼いて居る」
剣士「エルフとドラゴンの敵がスライム?」
衛兵「そうだ…エルフとドラゴンは精霊樹を守って居るのだ…敵はスライムにスプリガン…そしてマンイーター」
剣士「なるほど事情が読めて来た…この砦はサンドワームに守らせるから安心して」
衛兵「助かる…しかしサンドワームは我々の主食だ…どうすれば?」
剣士「好きにしたら良い…サンドワームは沢山居るから」
衛兵「ハハ良く分からんが兎に角感謝する」
分かって来たぞ
エルフとドラゴンはドリアードの浸食から精霊樹を守って居るんだ
彼らもドリアードと戦っている
そしてウルフは僕を迎えに来てるんだ
行かなきゃ
『宿屋』
ガチャリ バタン
女オーク「聞こえていたわ?魔物が進入して来たのね?」
剣士「うん…女オーク聞いて?僕の友達が砦の外で僕を待って居る様なんだ」
女オーク「友達?こんな所で?」
剣士「君には言ってなかったけど…ずっと一緒に過ごして来たウルフが居るんだよ」
女オーク「ウルフ…それで砦が包囲されて居るのね?」
剣士「多分ね」
女オーク「迎えに行くのね?」
剣士「うん…少し離れて待っている様に話してくる」
女オーク「一人で平気?」
剣士「大丈夫…その方が動きやすい」
女オーク「分かったわ…」
剣士「ゴメンね?続きはまた今度」
女オーク「…いいわ」
剣士「じゃぁ行って来る」タッタ
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アオーーーン アオーーーーン
『翌日』
チュン チュン
剣士「よし!行こう…遺跡でウルフが待ってる」
女オーク「うん…昨夜は寝て居ないのでしょう?大丈夫?」
剣士「平気さ…君も寝ていない顔をしているよ」
女オーク「平気…癒されたから」
剣士「どんぐり食べる?」ポイ
女オーク「…」モグ
---------------
門番「開門!!開門!!」ガラガラガラ ガシャーン
衛兵「昨夜は世話になった…獣道から逸れると危ないから気を付けて」
剣士「もうウルフが来る事は無いから安心して良いよ?」
衛兵「ウルフも使役するのか?」
剣士「まぁね?」
衛兵「フフさすがシン・リーンの魔術師…協力に感謝する」ビシ
剣士「シカさん行くよ?お願い…」
ドスドスドス
『獣道』
バサバサバサ ピュー
剣士「昼間はうって変わって良い雰囲気の森だ」
女オーク「鳥が沢山…」
剣士「えとね?秘密があるんだよ?あの鳥たちは本当はトロールなのさ」
女オーク「本当に?」
剣士「パパに教えて貰った…トロールっていつも肩に鳥を乗せてるんだって」
女オーク「へぇ?トロールは見た事無いわ」
剣士「南の大陸には居ないもんね…そして夜にしか動かない」
女オーク「じゃぁ森の中にある大きな石は…」
剣士「多分トロールだよ…僕らの話声は全部聞こえてると思う」
女オーク「変なお話出来ないわね?」
グルルル ガウ
女オーク「え!?ウルフ?」
剣士「あぁぁコラコラ!遺跡で待っててって言ったじゃない」
ウルフ「ガウルルルル…」
剣士「え?あぁ僕の奴隷の女オークさ」
女オーク「剣士は私の奴隷よ…」
剣士「まぁどっちでも良いや…彼女強いんだよ?」
ウルフ「ウゥゥゥゥ…」
剣士「大丈夫だって!威嚇しないで?」
女オーク「ウルフとお話出来るんだ…」
剣士「付き合い長いからね…え?毒?そうか…みんな線虫欲しいんだね?おけおけ…向こうに着いたらやってあげる」
女オーク「ウルフたちも毒に?」
剣士「そうらしい…薬草を探すのに随分遠くまで行く必要があるみたい」
女オーク「ウルフも私達と同じなのね」
剣士「そうだよ?言葉が通じないだけで人間と仲良く出来ない…オークと同じだね」
女オーク「私がオークだって分かってる?」
剣士「匂いですぐに分かるさ…ウルフは人間よりずっと鼻が利く」
女オーク「それで直ぐに剣士を見つけたのね」
剣士「いづれこの森に来ると思って待ってたんだって」
女オーク「賢いわね」
剣士「人間と同じくらいにはね?…でもね?物を投げられると反射的に拾いに行く癖がある」
女オーク「フフ…」
剣士「あんまり遊ぶと噛まれるけどねw」
ウルフ「ガウルルルル…」ガブガブ
剣士「分かった分かった秘密にしとくから…」
『シャ・バクダ遺跡』
ウゥゥゥ ガルルルル
剣士「線虫!癒せ!」ザワザワ ニョロリ
ウルフ「ワオーーーン!」パタパタ
女オーク「喜んでるw」
剣士「さて…折角遺跡に来たからパパとママを最後に見た場所に行って見よう」
女オーク「この遺跡で最後を…」
剣士「直ぐ近くなんだ…どこだっけな」
ウルフ「ガウガウ…」シュタタ
剣士「そっちか!全然景色が変わってる…」
ウルフ「ガウ…」ココホレワン
剣士「ここだ…この場所だ…」
女オーク「…」
剣士「…」スゥ
------------
------------
------------
『あの時』
僕「パパ?どうする気?」
パパ「未来…自分の次元を強く持て」
僕「え?どういう事?」
パパ「見ていれば分かる…言う事聞けるな?」
僕「ママも一緒に行っちゃうの?」
ママ「一緒に魔王を倒すからちゃんと見ていなさい」
僕「…うん」
パパ「女戦士!後は頼んだ…エルフ達!援護を頼む!行くぞ」シュタタ
ビッグママ「未来…意味がわかるか?」
僕「…」
ビッグママ「最後まで良く見て置け…勇者の宿命だ」
僕「パパ…ママ…」
パパとママが魔王を封じるのを
ほとんどの人が見ていなかった
こんなにもあっさりと物事が終わって
僕の心にポカンと穴が開いた
大きな変化は何も無いのに
只…目の前から消え去った
その後に光る夜が来た
その時
僕が始まった
僕の物語
『シャ・バクダ遺跡_地下』
学者「見学ですかね?」
剣士「昔ここに避難してた事があってね…近くまで来たから気になったんだ」
学者「ほう…そうでしたか…散らかって居ますが遺物には触らない様にお願いします」
剣士「うん…書物は読んでも?」
学者「考古学に興味がおありで?」
剣士「僕はシン・リーンの魔術師さ」
学者「これは失礼しました…ご自由にお読みください」
剣士「ありがとう…汚さない様にするよ」
-------------
女オーク「ここも思い出の場所なのね?」
剣士「あんまり良い思い出は無い…情報屋さんの行先が分からないかと思ってさ」
女オーク「難しそうな資料ばかりなのね…分かるの?」
剣士「ハハ全然分からない…」パラパラ
超古代史とウンディーネ伝説との関連
古代史と自転の変化による文明の崩壊と再構築
近代史における魔術介在による文明の変遷
人類行動の進化過程
食料生産と放牧の傾向
超高度AIの発見と発祥の考察
剣士「あれ?ホム姉ちゃんの事が書かれてる…こんな事まで研究してるんだ…へぇぇすごいな」
パサ ヒラヒラ
女オーク「何か紙が落ちたわ?」
剣士「この書物からだ…あ!!これ情報屋さんの日記だ」ヨミヨミ
女オーク「何の絵かしら…」
剣士「あ!!それ僕が書いた書物の写しだ…そうそう確かドリアード遺跡に一人で行こうとしてたんだ」
女オーク「あまり他人のプライベートを見ない方が良いのでは?」
剣士「フフ僕がここで家出した事が書いてある…へぇ?こんな事が合ったのか」ヨミヨミ
女オーク「ダメよそれ以上見たら」グイ
剣士「うんそうだね…僕が蟲使いの道を選んだきっかけだったんだよ」
---あまり思い出せないけど…なんか気になるなぁ---
『勇者の像』
剣士「この石造は大昔の勇者本人なんだって」
女オーク「どうして石造に?」
剣士「不思議だよね?」
スタスタ
剣士「誰か来る…」クンクン
女オーク「え!?」
剣士「…」クルリ
エルフゾンビ「此処に居たか…勇者の子だな?」
剣士「エルフゾンビさん?」
エルフゾンビ「如何にも…お前を数度しか見たことが無かったが…勇者に瓜二つだ」
剣士「良かった…探さないで済んだ」
エルフゾンビ「精霊樹が呼んで居る…付いて来い」
剣士「え!?…精霊樹が僕を?」
エルフゾンビ「精霊樹に呼ばれる意味は分かるか?」
剣士「まさか僕を勇者にするつもり?」
エルフゾンビ「すでに勇者だ…導きを受けるのだ」
剣士「僕の勇者の眼はママが…」
エルフゾンビ「青い瞳の宿命はお前の母が背負った…それだけだ」
剣士「それだけ?…」
エルフゾンビ「来い…」スタスタ
剣士「あ…女オーク!見学は終わりだ…付いて行こう」
『精霊樹』
サラサラ サラサラ
剣士「沢山のエルフに囲まれてる…」
エルフ「…」ジーーーー
エルフゾンビ「すべてのエルフがこの森に集っているのだ」
剣士「エルフの森はどうなって?」
エルフゾンビ「浸食され既に死の森へと化した…この森は最後の砦なのだ」
剣士「知らなかった…」
エルフゾンビ「…これが精霊樹だ導きを受けろ」
剣士「どうやって?声なんか聞こえない」
エルフゾンビ「目を閉じて感じろ…」
剣士「瞑想か…」スッ
---------------
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---------------
女オーク「え!?どうしてエルフが私に跪いて…」
エルフゾンビ「フフどうやら男エルフ達に気に入られた様だ」
女オーク「エルフに興味無いわ…」
エルフゾンビ「只の儀礼だ…気にするな」
女オーク「どうしたら…」
エルフゾンビ「目を合わせてみろ」
女オーク「…」スッ ドキッ
エルフゾンビ「フフ…」
女オーク「止めて…勝手に心を触らないで」
---------------
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---------------
剣士「…」パチ
エルフゾンビ「導きを聞いたな?」
剣士「ぁ…こ…これはどういう事だ?思い出せって何の事だろう…」
エルフゾンビ「混乱して居るのか?」
剣士「僕には森を統べる力が有ると…導きを思い出せって…何の導きなのか…」
エルフゾンビ「白狼の血脈も受け継いでいるのだ…その記憶の事では無いのか?」
剣士「僕が森を守るという事?」
エルフゾンビ「精霊樹は助けを求めているのだ…恐らくお前にしか出来ない」
剣士「命の種子は夜に運ばれる…闇に光を照らしてって…意味が分からない…どうすれば良いの?」
エルフゾンビ「それはお前が答えを見つける事だ…一つ分かるのは命の種子と言うのは精霊樹の花粉の事」
剣士「花粉は夜に運ばれる…闇に光…月の事か?」
女オーク「剣士?エリクサーの事は伝えた?」
剣士「伝えたよ…でも返事が無い」
エルフゾンビ「ほう?…察するにエリクサーを求めに来たな?」
剣士「うん…ホム姉ちゃんを蘇らせる為にエリクサーが樽で4~5杯必要なんだ」
エルフゾンビ「今何と言った!?ホムンクルスが蘇るだと…時代の節目はまだ先だと言うか!!」
剣士「えーと話しが掴めない…時代の節目って何?」
エルフゾンビ「お前はアダムという神が復活したのは知って居るな?」
剣士「うん…」
我々エルフはアダムと決別し精霊樹を主として生き永らえている
アダムは新たな森を構築し始め我々エルフは追い出されたのだ
精霊シルフが滅び新たなアダムという神の下
新時代を受け入れたつもりだがアダムはそれを許さなかった
精霊樹の森を侵食し始め我々は窮地に立って居る
その最中お前がこの森へ訪れ…今…精霊を蘇らせると言う
エルフゾンビ「分かるか?我々の敵はアダムだ…新時代はまだ来ていない」
剣士「僕が思って居る事と同じだ…やっぱりそういう事なんだね…」
エルフゾンビ「お前はそれを知りながらここに訪れたと?」
剣士「今は時期尚早だって僕の爺いじが言ってる」
エルフゾンビ「尚早?何故?」
剣士「あの光る隕石だよ…ミサイルって言ったっけ…あれを封じる事が出来るのはホム姉ちゃんだけさ」
エルフゾンビ「ふむ確かに…」
ズゴゴゴゴ ドーン
エルフゾンビ「聞いたか?御所への通路を精霊樹が開いた…エリクサーの許可が出た様だ」
剣士「ハハやった!!返事が無いからダメかと思った」
エルフゾンビ「樽はどこだ?」
剣士「飛空艇に乗せてある…ここまで乗って来ても良い?」
エルフゾンビ「急げ…日が暮れると森の浸食が始まる」
剣士「女オーク!ここで待ってて?僕一人で走った方が早い」
女オーク「分かったわ…気を付けて」
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『精霊の御所_入り口』
サラサラ サラサラ
女オーク「エルフの子供まで…」
エルフゾンビ「珍しいだろう?エルフの森以外では滅多に見る事が無い」
女オーク「触っても?」
エルフゾンビ「さぁな?エルフは肌の触れ合いは好まんのだが…」
女オーク「…」ナデナデ
エルフの子供「…」ジー
女オーク「反応が分からない…」
エルフゾンビ「目を合わせて見ろ…感じるんだ」
女オーク「…」スッ ギク
エルフの子供「…」ジー
女オーク「こ…こんにちは」タジ
エルフの子供「…」ジー
エルフゾンビ「フフ性が合わんか?近づいて来るという事は好かれて居るのだぞ?」
女オーク「私はオークよ…どうして?」
エルフゾンビ「匂いだな…エルフは目で物を見ない…空気で物を見る」
女オーク「どんぐり食べる?」スッ
エルフの子供「…」カリ モグ
エルフゾンビ「そういう所が好まれる」
エルフの子供「…」ジー
女オーク「表情で気持ちが読み取れない…」
こういう事なのね
エルフに好かれても私はエルフを好きになれない
オークは人間が好きなのに人間に好かれない
剣士はとっても分かりやすい…だから好き
--------------
ギャオーーーース バッサ バッサ ドッスーーーン
女オーク「ドラゴン…大きい」タジ
エルフゾンビ「初めて見るか?」
タッタッタ
剣士「飛空艇持って来たよ…途中でドラゴンが寄って来てびっくりした」タッタッタ
エルフゾンビ「もうすぐ日暮れだ…今日はもう飛空艇で飛べないと思え」
剣士「戦いが始まるの?ドラゴンは森を守る為に来た?」
エルフゾンビ「そうだ…我々の戦いを見て行くか?」
剣士「見て行くかって…それしか選択が無いじゃない」
地上はスライムとスプリガン…マンイーター
上空にアルラウネとその種子…他にも幾多の胞子が飛ぶ
それらをすべて焼き払う
特にケシの種子はいつの間にか増えるから完全に焼く必要がある
剣士「飛んで来る種子を全部焼くなんて無理過ぎる気が…」
エルフゾンビ「風を使って巻き上げるのだ…そして焼く」
剣士「ボルケーノか…」
エルフゾンビ「風が止む凪の時に戦いが始まる…その前までにエリクサーを飛空艇に積んでおくんだ」
剣士「フフ…僕達も加わらせるつもりだね?」
エルフゾンビ「森の全域を守る大変さは分かるな?」
剣士「僕に何が出来るかな?…僕は高位のエレメンタル魔法は苦手だ」
エルフゾンビ「マンイーターが大型で厄介なのだ…突然地面から現れる…少しでも戦力になれば助かる」
剣士「おけおけ!地上専門ね」
エルフゾンビ「エルフの戦い方は分かるな?」
剣士「森の声だね?」
エルフゾンビ「それを知って居れば良い…早くエリクサーを運んで備えろ」
剣士「うん!」
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---------------
---------------
『浸食』
ドコーーン ドコーーン
剣士「始まった…トロールが動き出した」
女オーク「北東ね…ドラゴンがブレスを吐き始めた」
剣士「走る事になる…付いて来てね?」
女オーク「うん…」
剣士「ウルフ!先導お願い」
ウルフ「ワフ!!」シュタタ
剣士「付いて行くよ…」シュタタ
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剣士「見つけた!スプリガン!」
女オーク「私が行く」ダダダ
剣士「サンドワーム来い!スライムは任せる!」
モゾモゾモゾ バクリ
女オーク「てやぁ!!」ブン ザクリ
スプリガン「キシャァァァ…」ブーン ブンブン
女オーク「虫?」
剣士「蝿虫!従え!」ブーン
剣士「今の内に止めを!」
女オーク「フン!」ブン グサ
剣士「よし!燃やす!火炎魔法!」ボボボボ
女オーク「剣士に虫がどんどん集まって…」
剣士「ハエは全部使役してる…スプリガンはどんどん倒して行こう」
女オーク「私が倒して剣士が燃やすのね?」
剣士「そう…魔石は後で拾う」
女オーク「分かったわ…次のスプリガンを探しましょ」ダダ
剣士「東側!ボルケーノが3つ立ってる」
女オーク「これ朝まで続くのかしら…」
剣士「その様だね…行くよ」シュタタ
----------------
----------------
----------------
ギャオーーース ゴゥ ボボボボ
剣士「アレか…あれがマンイーターだ!!」
女オーク「大きい…」フラ
剣士「ん?」クンクン
女オーク「どう…するの?…」フラ
剣士「睡眠の息を吐くのか…ちぃぃ厄介だ!女オーク…一旦下がる」グイ
女オーク「どうし…たの?…」フラ
剣士「だめだもう寝てる…ウルフ!!女オークを守って」
ウルフ「ガウガウ…」グルルル
剣士「…どうする?大きすぎてサンドワームでは食らえない…」
シュンシュンシュン ストストスト
剣士「あれじゃ倒せない…なるほどドラゴン頼みになるから厄介なのか」
剣士「数で行くしか無いな…蟲達よ従え!マンイーターを食らえ」ザワザワ
ブーン ドヨドヨドヨ
剣士「女オーク!起きて!!」ペシペシ
女オーク「ハッ!!…」キョロ
剣士「気は確かかい?」
女オーク「私どうして?」フリフリ
剣士「マンイーター睡眠の息を吸ったんだ」
女オーク「マンイーターは!?」
剣士「まだ倒せて居ない…蟲をけしかけたけど食らうのに時間が掛かりそうだ」
女オーク「剣士のどんぐり銃で木に変えてみては?」
剣士「おおお!!ソレだ…」チャキリ
ターン ターン
剣士「成長魔法!」ニョキニョキ
女オーク「干からびたマンイーターだけ燃やせる?」
剣士「根が邪魔だ…切り倒して」
女オーク「任せて!!」ダダダ
コーン コーン メリメリ ドッスーン
剣士「根っこを切って!!」
女オーク「フン!」ザクン ザクン
剣士「火炎魔法!」ボボボボボボ
女オーク「大きな魔石が一つ見えるわ?」
剣士「お!?収穫したい」
女オーク「他のスプリガンは私に任せて…剣士は魔石を」ダダ
-------------
-------------
-------------
『暁の空』
ギャオーーース ゴゥ ボボボボボボ
剣士「風向きが変わった…」
女オーク「強い魔物はマンイーターだけでもこれを毎日続けるのは辛そう」
剣士「エルフが沢山居るのに窮地になってる意味が分かった…敵が多すぎる」
女オーク「戻りましょ…」
剣士「あ!魔石拾って行かないと」
女オーク「場所覚えてる?」
剣士「マンイーターの場所だけだね…それだけでも随分な収穫だよ」
女オーク「じゃぁ魔石4つね?」
剣士「うん!取りに行こう」シュタタ
-------------
-------------
-------------
『飛空艇』
フワフワ
エルフゾンビ「未来!行く前に一つ質問だ」
剣士「ん?何?」
エルフゾンビ「マンイーターにどの様して木を生やす?エルフが知りたがっている」
剣士「あーあれはね…どんぐりをマンイーターに打ち込んで成長魔法で育てるんだよ」
エルフゾンビ「なるほど…エルフにも出来るな」
剣士「弓で打ち込んじゃえば良いね?」
エルフゾンビ「これで持ちこたえられる…我々の厳しさは理解してもらえたな?」
剣士「毎日はさすがにキツイね」
エルフゾンビ「ホムンクルスが蘇った暁には出来るだけ早く導きを貰いたい」
剣士「うんホム姉ちゃんに状況を話しておく」
エルフゾンビ「それから精霊樹の導きも忘れない様にな?」
剣士「分かったよ…一つ僕からも質問が有るんだけど」
エルフゾンビ「何だ?」
剣士「エルフゾンビさんが戦う理由は精霊樹を守る事だけ?」
エルフゾンビ「…」ジロリ
剣士「答えられない?」
エルフゾンビ「何故その質問をするのだ?」
剣士「エルフゾンビさんから何か闇を感じる…不死者だからと言うのじゃ無くて」
エルフゾンビ「私が戦っている相手はドリアードになった私の弟なのだ…違うな私の分身と戦っている」
剣士「ドリアードになった…か…救いたいんだね?」
エルフゾンビ「フフ聞くな…早く行け」
剣士「理解したよ…じゃ行くね」グイ
シュゴーーーーー バサバサ
エルフゾンビ「…」---そうだよ未来---
私の身代わりとなりすべてを背負った弟を救いたい
私は死んでも死に切れないのだ
--------------
--------------
--------------
『暁の墓所』
分かった事を時系列で説明するわ…
約4000年前に起きた地軸の移動…この時に壊滅的な破壊が起きて人類はほぼ滅亡
その中で唯一生き残った種が耐環境性のあるオークの種族
それまで彼らは今で言う南の大陸に住んで居たの…恐らくウンディーネと共に
その後北の大陸へと進出を始めこの暁の墓所の東側…未踏の地で一時代を築いた
これが約3500年前…
そしてウンディーネはシルフと名を変え今で言うエルフの森に移り住む
そこでオークの遺伝子と類似したエルフを生み出した
エルフは魔法を巧みに操り森を拠点として繁栄する
エルフの協力を得た精霊シルフは森の北部にドリアードを生成して管理する者として小人のノームを生んだ
ここが約3000年前…
ノームの器用さを用い失われた古代技術を復活させた精霊シルフは
超高度AIを複製してアダムを復活させようとするが
魔王に乗っ取られて失敗し…再び世界は滅亡の危機
ここで危機を救うのがこの地の東に栄えたオーク達
彼らは呪術で虫を操りドリアードを封じる事に成功したがノームは滅びる
恐らく2500年程前ね…
一旦平和になった世界でエルフとオークはそれぞれに繫栄して時代を築く最中
その恩恵を受けたのが温暖な海付近に少しだけ残って居た人間達
彼らは環境の良いエルフの森周辺で新たな文明を築き始め力を付けた
そして事件が起きる…エルフが持つ祈りの指輪を奪い人間の魔術師が台頭
魔術によって人間達が急速な発展をして時の王の時代に至る
ここが約1700年前…
この時代に起きたのが北の大陸の東側に位置していたオーク達が滅んだ事
時の王と暁の使徒が手を組み東のオークを退けた
なぜか?
情報屋「答えは勇者の刀…オーク達が宝具として所持していた刀を奪って聖剣エクスカリバーを生む為」
魔女「…ではオーク達が初めから勇者の刀を持っておったと言う事じゃな?」
情報屋「そう…ここからは憶測だけど勇者2人は4000年前よりさらに過去に遡ってオークに託したと思うわ」
魔女「つまりこの墓所にあった暁の使徒は勇者では無く他人じゃという訳か」
情報屋「多分勇者の命を受けた予言の守り人ね…不明な点が多いから確かな事は言えないわ」
魔女「黄昏の賢者について何も分からんのか?」
情報屋「ここから先は時の王の証言のまとめだから確証は無いけれど…」
暁の使徒と黄昏の賢者はどうも恋仲だったらしいわ
暁の使徒は人間の男…そして黄昏の賢者はオークの女
暁の使徒が東のオークを攻め立てる最中二人は関係を持った
処女を失った黄昏の賢者は力を失い
暁の使徒はオークを退け勝者となった
二人は駆け落ちをした形
そして黄昏の賢者はオークを裏切った形
その後暁の使徒は時の王と接触し協力関係を得る
でもこれに黄昏の賢者は猛反発して別れた
ここから第2期と呼ばれる魔王との戦いが始まる
魔女「黄昏の賢者はオークシャーマンの可能性が高かったな?」
情報屋「多分そうね」
魔女「ミイラとなった恋人を連れ去ったと言う事じゃが…何故じゃと思う?」
情報屋「分からない…蘇らせるとしても今になって何故?という疑問が残る」
魔女「わらわはこう思う…失った力を取り戻す為じゃ…死霊術に屍を食らう術が有るのじゃ」
情報屋「なるほど…話が通りそう…」
魔女「読めたぞよ?黄昏の賢者は3000年前と同じ様に虫を操りドリアードを封じたいのじゃ…力を求めて居る」
情報屋「南の大陸に居るオークがどうして?」
魔女「予言じゃ…予言に従って居るのじゃ」
よう考えてみぃ
勇者らは3000年前のドリアードがどういう惨状を生んだか知って居る
じゃからわらわ達の時代に復活したドリアードを再度封じるための予言を残したのじゃ
情報屋「そういう事ね…ドリアードをどう倒すのか私達は知ってる…それは伝説を通じた予言なのね?」
魔女「イカンな…このままでは未来が先走ってしまうな」
情報屋「未来君が蟲使いの道を選んだのも…」
魔女「勘でどうすれば良いか知って居るからじゃ…何年も前に未来は感じて居る…事の異常に」
情報屋「連絡取れないのがもどかしいわ」
魔女「先回りで待つしか無いのぅ…さてどうするか…」
---------------
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---------------
『セントラル海岸』
ザザー ザブン
剣士「よし!飛空艇隠すよ?ハイディング!」
剣士「女オークはセントラル来るの初めてだよね?」
女オーク「初めて…」
剣士「今晩はここの宿で一泊しよう…」
女オーク「どうして寄って行くの?」
剣士「様子を見ておきたいのと…線虫だよ…夜中に僕の蟲を放っておきたい」
女オーク「病を治してあげたいのね?」
剣士「うん…あと昨日は一睡もしていないし…この間の続きもあるじゃない?」
女オーク「続き?…ウフフ」
剣士「あ!そうそうこの国は武器を持ち込めないから飛空艇に置いて行って」ゴトリ
女オーク「わかったわ」
剣士「ウルフ!飛空艇の番をお願い!明日の朝には戻るから食事は自分で何とかして」
ウルフ「ガウ!!」
剣士「じゃぁ行こうか!」
女オーク「本当に武器は要らないの?」
剣士「僕はデリンジャーだけ持って行く…どんぐり銃のおもちゃに見えるからね」
女オーク「じゃぁ私は一応ナイフだけ持って行くわ」
剣士「おけおけ!行こう」グイ
タッタッタ
『貧民街』
ガヤガヤ ガヤガヤ
剣士「ここは住まう家の無い人が集ってる区域だよ…ほらみんなテントで横になってる」
女オーク「焚火を囲んで食事するのね」
剣士「ちょっとしたキャンプだね…結構みんな黒死病に掛かって居そうだなぁ…」
女オーク「そうみたいね…」
剣士「僕のママは昔ここに住んでた事があるらしいよ」
女オーク「剣士はそれを見に来たかったのね?」
剣士「まぁね…」
女オーク「何か感じる?」
剣士「臭いなぁ…下水の匂いと海の匂いが混ざった独特の匂い…行こっか!」グイ
『中央広場』
ガヤガヤ ガヤガヤ
ヤスイヨー カッテネー オイシイヨー
キ・カイ産の謎のアクセサリーお得だぜぃ?ほら買った買ったぁ!
魔石有るよ?秘密ルートの魔石さ…コレ偽物じゃないよ
剣士「…ここは露店が集まってる場所だよ…ちょっと買い物して行こう」
女オーク「うん…」
剣士「僕は種が見たいんだ…君も好きな物買い物してごらん?」
女オーク「私は欲しい物が無いわ…」
剣士「じゃぁコーディネートしようか?このボロ雑巾みたいなフードとマントを変えよう」
女オーク「これで良いのに」
剣士「ダメだよ…金貨5枚あったでしょ?お金は使うために有る…皆生活掛かってるからどんどん使わないと」
女オーク「それもそうね…」
剣士「よーし!どうするかな…白狼の装備にしてみよっか?」
女オーク「目立ち過ぎない?」
剣士「どうせ汚れるからイーのイーの!コレ2つ頂戴!!」
雑貨屋「アイヨー!2つで銀貨20枚!」
剣士「おけおけ…」ジャラリ
雑貨屋「マイドー!要らん装備引き取るよーウヒヒ」
剣士「ホラ?着替えて?」ファサ
女オーク「何の毛皮?」
剣士「何だろね?シーサーかな?他にも見よう!」グイ
こんな風に買い物したっけ
丁度夕方のこれくらいの時間
--------------
--------------
--------------
『宿屋』
カラン コロン
店主「いらっしゃいませ…お二人様で?」
剣士「2階の角の部屋空いてるかな?」
店主「そのお部屋はお高いですがよろしいですか?」
剣士「いくら?」
店主「お二人で銀貨20枚です」
剣士「おっけ!」ジャラリ
店主「ではご案内致します…こちらへ」
『部屋』
ガチャリ バタン
剣士「ふぅぅぅ水浴びしたら後で酒場にでも行こうか」
女オーク「私先に浴びて来るわ…」
剣士「ゆっくりで良いよ…酒場行くにはまだ早いし」
女オーク「うん…じゃ…」ガチャリ バタン
剣士「…」---この部屋だ---
ママと泥棒みたいな生活で
いつも誰かから逃げて
落ち着く場所は無かった
でも充実してた
剣士「…」ファサ
こうやってフードの隙間から隠れて覗く世界
僕はこの世界が好きだ
これが人間の世界
無くしたくない世界
僕が守る世界
人間の中の魔王を許容する世界
バランスした世界
『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
ねぇ聞いた?いつもここに来てたあの豪族…殺されたらしいわ?
ええ!?誰に?ヒソヒソヒソ…
お~い!酒くれぇ!!
なんだよ良いだろパフパフさせてくれよ
マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」
剣士「うん…席は空いてなさそうだね」
マスター「カウンターでよろしければ」
剣士「おけおけ!えーとセントラル名産はエール酒だっけな…2杯お願い」
マスター「かしこまりました」
剣士「あとオリーブとブドウが欲しい」
マスター「合わせて銀貨10枚になります」
女オーク「はい…」ジャラリ
剣士「酒場には女の人が結構居るんだ…」
マスター「手を出すと豪族に目を付けられるのでご注意を…」
女オーク「セントラルは女性がとても少ないわね」
剣士「なんか活気に欠けるよね」
マスター「女性はフィン・イッシュに拉致されたままほとんど帰って居ないのですよ」
剣士「拉致?保護されたんじゃなかったっけ?」
マスター「帰って来ていれば保護だと言われたのかも知れませんがねぇ…」
剣士「そうだったんだ…それもセントラルとフィン・イッシュが関係悪い原因ぽいね」
マスター「お客さんは傭兵か何かで?」
剣士「只の旅人だよ」
マスター「未だに西の国境付近では小競り合いをやって居るそうですので陸路は止めた方が良いですよ」
剣士「ところで港に沢山の船が停泊してるけど何だか分かる?」
マスター「豪族の船ですね…大半は貴族居住区の方で飲んで居られるかと」
剣士「じゃぁこっちに居るのは下っ端ばっかりなのか…道理で」
マスター「ハハ大きな声で言うと聞こえてしまいます」
ワイワイ ガヤガヤ
俺は気に入ら無ぇんだあの好かした豪族がよぅ…どーにかして引きずり降ろしてやりてぇ
貴族側にテコ入れするのはどうだ?
どうやってよ?
ヤクを横流しするんだ…豪族の船に乗せるヤクを横流しすんのよ
ほう?豪族がマイナス1で貴族がプラス1…その差は2って寸法だな?お前賢いな…
剣士「女オーク聞こえてる?」
女オーク「なんかバカな話ね」
剣士「豪族の人達ってどこに行っても同じような文句を言ってるよね…懲りない人達だ」
女オーク「アレはアレで可愛い…」
剣士「ハハハオークにはそう見えるのか…ヤレヤレだよ」
『路地裏』
ズルズル
乞食「お金を…お金を恵んで下せぇ…銅貨1枚で良いんで」ズルズル
女「薬を…薬を持っていませんか…ひぃぃぃぶたないで」ガクガク
男「はぁぁぁ天国だ…天国が見える…ケシの花が咲く天国がぁぁぁ」バタバタ
剣士「…」チャリン
乞食「ありがとうございます…あなたは神様です…」ヨロ
剣士「…」
女オーク「…」
剣士「ラクにしてあげるからね…線虫!」ザワザワ ニョロ
ザワザワザワ ニョロ
剣士「行こうか…」グイ
女オーク「…」
タッタッタ
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衛兵「そこの2人待て…止まれ」
剣士「え!?僕?」
衛兵「今何をした?」
剣士「いえ何も…」
衛兵「フードを脱げ…顔を見せろ」
剣士「んぁぁ…」ファサ
衛兵「お前もだ」
女オーク「…」ファサ
衛兵「…」ジロジロ
剣士「僕達何もして居ないよ」
衛兵「麻薬密売の現行犯だ…大人しくしろ」
剣士「ちょちょちょ…違うよ」
衛兵「持ち物を見せるんだ」グイ
剣士「ちょっと待って!違うったら…」
衛兵「魔石を大量に所持…種も…これは何だ!」
剣士「返してよ」グイ
衛兵「ピーーーーーーーーー」
剣士「笛?」---マズイなコレ---
衛兵「魔石の密輸容疑で拘束する!!大人しくしろ!!」
剣士「女オーク?」チラ
女オーク「…」コクリ
衛兵「何をする気だ?」
剣士「ハイディング!」スゥ
女オーク「ハイディング!」スゥ
剣士「迷ってない?」
女オーク「見える…」
剣士「ちょっと遊んで行こう…こっちだおいで」グイ
女オーク「うん…」タッタッタ
ピーーーーーーーーーー
『貴族居住区』
タッタッタ
剣士「はぁはぁ…ここまで来れば安心だ」
女オーク「剣士まさか泥棒するつもりなの?」
剣士「違うよちょっと様子見たいだけさ…かくれんぼだよ」
女オーク「豪族の様子が知りたいのね?」
剣士「まあね?どんな人が豪族のお偉いさんなのか知りたく無い?」
女オーク「興味無いわ…」
剣士「まぁかくれんぼだと思って付き合ってよ」
女オーク「何処に行くつもり?」
剣士「屋根に上ろう…そこで隠れて遠くから見るだけ」
女オーク「悪い事はダメよ?」
剣士「分かってるって…こっち!」シュタタ
『屋根の上』
剣士「リリースするよ?リリース!」スゥ
女オーク「リリース!」スゥ
剣士「フフ見える見える…」
女オーク「さっきの路地の方で騒いでるわね?」
剣士「あっちは放置だ…貴族居住区は結構女の人居るよ…見て」
女オーク「その様ね…」
剣士「へぇ…あちこちで食事会やってるんだ…こっちの方が楽しそうだ」
女オーク「あの中に入りたいの?」
剣士「そういう訳じゃ無い…皆楽しんでるなってさ」
女オーク「貧富の差ね…」
剣士「うん…豪族が富を持ってる…向こう側も見て見よう…こっち!」シュタタ
『とある貴族の建屋』
剣士「ここが一番大きそうだ」
女オーク「中庭で食事会…」
剣士「どの人が豪族のお偉いさんなんだろう?」
---------------
助かるでやんすよ…もし捕らえたら高額の報酬を出しやす
何処に潜伏しているか情報は無いのか?
セントラル沖っすね…多分海士島辺りで隠れて補給してると思うでやんすが中々見つからんのです
海賊王の娘も今じゃ落ちぶれだ…噂じゃ殆ど仲間を失ったと聞く
実はですねぇ…海賊王の娘の船には秘密があるんすよ…それを奪えばあっしの出す報酬よりも儲かりやすぜ?
それは頂いて良いんだな?
好きにしてくだせぇ…あっしは海賊王の娘を捕らえたいだけなんでやんす…あの女は最高の体を持ってるすからねぇウヒヒ
---------------
剣士「…」---嫌な事聞いちゃった---
女オーク「剣士?…あの話もしかして…」
剣士「ローグさんは豪族になったんだよ…ビッグママを捕らえようとしてる」
女オーク「…」
剣士「気分が悪くなった…行こう」シュタタ
---------------
『貴族特区_一番大きな屋敷』
女オーク「この屋敷は?」
剣士「昔ここに泥棒に入った事があるんだ…直ぐに見つかって逃げたんだけど気になる物が一杯あってね」
女オーク「盗むのはダメよ?」
剣士「見るだけ…それなら良いでしょ?」
女オーク「見るだけよ?」
剣士「うん…屋敷には誰も居なさそう…こっち!裏の2階から入れる」シュタタ
『屋敷の中』
剣士「誰も住んでる気配が無い…」
女オーク「でも片付いてるわ?」
剣士「見て…壁に掛かってる画」
女オーク「全部ウンディーネ?」
剣士「ホムンクルスっていうお姉ちゃんだよ…多分ウンディーネと同じ人」
女オーク「これが気になる物?」
剣士「うん…昔はこれが誰だか分からなかったんだよ…今見てホム姉ちゃんだと確信した」
ドスドスドス
剣士「ハッ!!」
ラットマンリーダー「がおおおぉぉ」ドシドシ
剣士「マズイ!見つかった!女オーク逃げるよ!!」
ラットマンリーダー「がうっ!」ブン
女オーク「先に走って!」ガシ
剣士「付いて来て!!窓から飛び降りる」シュタタ
女オーク「…」ダダ
ピョン ガチャーン!!
剣士「うわ!…もう一体居る!」シュタ
女オーク「走って!!」ピョン スタ
ラットマンリーダー「がおおおぉぉ」ドシドシ
剣士「くそぅ…」チャキリ
ターン!!
剣士「成長魔法!」ニョキニョキ
女オーク「急いで!!」ダダ
衛兵「泥棒だ!!ピーーーーーーーーーー」
剣士「ハイディングしながら屋根伝いに帰るよ?行けるね?」タッタッタ
女オーク「付いて行くわ!」タッタッタ
剣士「ハイディング!」スゥ
女オーク「ハイディング!」スゥ
衛兵「居住区全域封鎖しろぉ!!ピーーーーーーーーー」
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『宿屋_2階の角部屋』
ガチャリ バタン
剣士「遠回りしたけど無事に帰って来れた…楽しかったね?」
女オーク「いつもこんな事してたの?」
剣士「もう昔話だよ」
女オーク「ウフフ…」
剣士「さて!!この間の続きしよっか」
女オーク「待って…今度は私が上」
剣士「君重いんだよね」
女オーク「これは命令…剣士は私の奴隷なの」
剣士「じゃぁ交代交代で行こう」
女オーク「それから終わっても抜いたらダメ…朝まで繋がりっ放し」
剣士「そんな…終わらないじゃ無いか」
女オーク「命令」
剣士「君はエッチな体してるなぁ…」
女オーク「ウフフ…来て」
ドタン バタン ドスドス
----------------
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『翌朝』
チュン チュン
女オーク「剣士!?起きて…」
剣士「んん?」パチ
女オーク「外が騒がしいわ?衛兵がうろついてる…」
剣士「アハハ何も盗んで無いのに」
女オーク「もうすぐこの宿屋にも来る…」
剣士「おっけ!移動しよう…窓開けるからハイディングしたまま飛空艇まで行こう」
女オーク「そうね…」ヨロ
剣士「君フラフラじゃないかw」
女オーク「大丈夫…体力は全快」
剣士「それなら良いけど…じゃぁ窓開けるよ?」
ガラガラ
剣士「ちょっと待ってね服着るから…」ゴソゴソ
女オーク「早く…もう来るわ」
剣士「おっけ!ハイディング!」スゥ
女オーク「ハイディング!」スゥ
剣士「行こう!!」ピョン クルクル シュタ
女オーク「…」ピョン ドスン
タッタッタ
『海岸』
ウゥゥゥゥ ガルルル
女オーク「近くに誰か居るわ…」
剣士「フード深く被って」
女オーク「どうするの?」
剣士「見つかっちゃったか…あれはローグさんだ」
スタスタ
ローグ「やっぱり未来君だったでやんすね?この辺に気球を隠してると思っていやしたが…」
剣士「…」ジロ
ローグ「あのウルフが居て近づけんでやんすよ」ガルルル
剣士「ローグさん豪族になったんだね…尊敬していたのに残念だよ」
ローグ「いやいやこれには訳があるんす」
剣士「聞きたく無いよ…ビッグママをローグさんに渡さないから」
ローグ「そら誤解っすね」
剣士「ビッグママの体が欲しいんでしょ?聞いちゃったんだ」
ローグ「あらららら…体が欲しいのは本当なんすが…」
剣士「どいて…」チャキリ
ローグ「ちょちょちょ…デリンジャーは反則っす!」ダダダ グイ
剣士「うっ…」タジ
ローグ「こうしないと話聞いてくれやせんよね?」
剣士「撃ちたく無いんだ…僕の事は放って置いて」
ローグ「未来君は甘いっす…その甘さが命取りになりやすぜ?」
ターン
ローグ「おわぁっ!あぶっ」ドタ
剣士「女オーク先に飛空艇に乗って」
女オーク「うん…」タッタ
ローグ「ちっと話を聞いて欲しいんすが…」バサッ ダダ
剣士「うっ!!砂…」チャキリ
ターン ターン
ローグ「あだっ!!くぅぅぅぅ」
剣士「サヨナラだよ…動かないで…又撃つよ」チャキリ
ローグ「未来君違うんすよ…あっしが豪族になったのには訳があるんす」
シュゴーーーーー バサバサ
剣士「…」---僕知ってるんだ---
ローグさんがビッグママを酔わせて体にイタズラしてた事
今何言われても信用できないんだ
なんか…大事な物を無くした気分だよ
『飛空艇』
シュゴーーーーー バサバサ
剣士「女オーク!ナイスタイミングで飛んだね?」
女オーク「剣士の行動が分かるようになって来たから」
剣士「じゃぁ次何処に行きたいか分かる?」
女オーク「当てたら私の奴隷って認める?」
剣士「いやいや…それとこれとは話が別だよ」
女オーク「認めたく無いの?」
剣士「認めるも何も君は僕の奴隷だよ…何回も言うようだけど」
女オーク「当てたら認めてね?…行き先は海士島よ」
剣士「う…」
女オーク「ウフフその顔…」
剣士「違うよ行先は名も無き島さ…」
女オーク「はい!海士島に向かいます」
剣士「行きたいなら行っても良いけどさ…」
女オーク「あなた顔が分かりやすいのウフフ」
剣士「もう何て言うのかな…僕より強いからって偉そうなんだよね」
女オーク「言う事聞いて…奴隷は命令に従えば良いの」
剣士「まぁ良いや君が操縦してね」プイ
--------------
--------------
--------------
『海士島上空』
シュゴーーーー バサバサ
女オーク「見つけたわ…あの船が停泊してる島よきっと」
剣士「ふ~ん…」
女オーク「剣士まだ拗ねているの?」
剣士「僕は奴隷だから大人しくしてるだけさ」シラー
女オーク「もうあなたって…分かったわ…言う事聞いてあげるから」
剣士「アハハハ言ったね?とうとう僕の奴隷だと認めたね?最初から素直に認めれば良いのさ」ズイ
女オーク「私は大人しくしているわ…」ストン
剣士「おけおけ!操縦は僕やるよ」グイ
女オーク「困った奴隷ね」
剣士「拗ねてる?」
女オーク「拗ねてなんか居ないわ?懲らしめる方法を考えてるの」
剣士「フフよし!あそこの林に飛空艇隠そう」
-----------------
『広場』
ワイワイ ガヤガヤ
剣士「女オーク!フード深く被ってね」ファサ
女オーク「うん…でもどうして?」ファサ
剣士「君の背格好はビッグママにそっくりなんだよ」
女オーク「私を囮にしているの?」
剣士「豪族達がどんな反応をするのか見たいんだ…大丈夫!君は僕の奴隷だからちゃんと守ってあげる」
女オーク「ウフフしっかり守って?」
剣士「今お金いくら持ってる?」
女オーク「金貨3枚よ」
剣士「おけおけ十分…ここの露店色んな物が売ってて面白い…見て行こう」スタ
--------------
御札屋「らっしゃい!お札に興味あるかい?」
剣士「コレ何?初めて見た…」
御札屋「ご利益のあるオークのお札だ…珍しいだろう?ちぃーっと値が張るがどうする?」
剣士「沢山種類がある…全部同じ?」
御札屋「良い所に気付いたね?コレが魔除け…コレが虫除け…コレが水除け…まぁ色々だ!」
剣士「1枚いくら?」
御札屋「高いぞぉ?1枚銀貨20枚…さぁどうする?」
女オーク「剣士?これ全部本物よ?どうしてこんな物が…」
御札屋「そりゃ本物よ…裏ルートで入手したオークのお札…他では売って無いぜ?」
剣士「研究したい…全種類欲しい」
御札屋「ほぉぉぉこりゃ良いお客さんだ!12枚で銀貨240枚…ええと金貨にすると…」イチニーサン
剣士「女オーク金貨お願い」
女オーク「…」チャリン ジャラジャラ
御札屋「毎度ぉぉ!!ほら持って行きな」パサ
剣士「紙切れに金貨2枚も必要かぁ…高いなぁ」
御札屋「そう言いなさんな…ここでしか売って無い珍しいお札だ…ご利益あるぜぃ?」
---------------
剣士「あと残り金貨1枚と僕の持ってる銀貨20枚…贅沢出来なくなっちゃた」
女オーク「そのお札はオークシャーマンしか作れない物なの」
剣士「そうなんだ?ここで売ってるという事は繋がりがあるんだね」
女オーク「普通は体にタトゥーを入れるのよ?紙だとどのくらい効果あるのか…」
剣士「いや研究したいだけだよ…呪術ってあんまり知らないからさ」
女オーク「それなら良いわ…」
剣士「じゃぁ宿屋取って酒場にでも行こう」
女オーク「うん…」
『海の酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
見ろ…カウンターに座ってる2人…女の方は多分海賊王の娘だ
なにぃ!!よく確認しろ
あんなデカイ女そうそう居るもんじゃ無い…どうする?
船だ…何処に船を隠してるか後を付けて確認するぞ
しかし…キ・カイに居るという話はデマだったのか?
タイミングが悪いな…向こうに数隻行った後だ
拿捕かけるには人手が足りんか…俺らだけで行っても返り討ちがな
兎に角見張って様子を探るぞ
ワイワイ ガヤガヤ
剣士「いやぁぁ君は人気者だね?」グビ
女オーク「私じゃ無いわ」ゴク
剣士「最近思うんだ…君を独り占め出来てる僕は幸運だなってさ」
女オーク「ウフフそう言って貰えて嬉しい…今晩もする?」
剣士「勿論!その為にわざわざ宿に泊まってるんだ…ウルフに見られたく無いからね」
女オーク「嬉しい…」ニコ
剣士「でも僕達さ?エッチばっかりしてるけど中々赤ちゃん出来ないね…僕の種もダメかもしれない」
女オーク「気にしないで?いつかその内…」
剣士「じゃぁそろそろ帰ろうか…桟橋の方まで散歩してハイディングね?」スタ
女オーク「うん…」スタ
店員「又のお越しを」ペコ
----------------
『桟橋』
ザブン ザザー
剣士「どの船にしようかなー」スタスタ
女オーク「後を付けて来る人…バレバレなの気付いて無いのね?」
剣士「そうだね…もっと上手く尾行出来ないんだろうか…」
女オーク「あの大き目の船はどう?」
剣士「ハハ商船じゃないな…多分豪族の船だ…まぁ良いか?」
女オーク「面白そう」
剣士「じゃぁ走って船に乗り込んだらハイディングね?」
女オーク「付いて行くわ」
剣士「ゴーー!!」
タッタッタ
見張り「おい!!誰だお前…」
剣士「ちょっと忘れ物」タッタッタ
見張り「待て!!」
剣士「ハイディング!」スゥ
女オーク「ハイディング!」スゥ
見張り「あれ!?誰だったんだ?」キョロ
----------------
野郎1「ちぃ!気付きやがった!走って逃げるぞ」タッタ
野郎2「あの船は何処の豪族か分かるか?」
野郎1「後で調べる…にゃろう身内に隠れて居やがったのか」
野郎2「戻って仲間集めるぞ…この船に拿捕かける…俺らをコケにしやがって許せ無ぇ」
野郎1「道理で見つからない訳か…だがここで確保したとなりゃ海賊王を追い詰められる」
野郎2「早く来い!ここで逃げられちゃ意味無ぇ」
タッタッタ
『翌日』
チュン チュン
剣士「う~ん」ノビー
女オーク「すぅ」スヤ
剣士「さて!行く準備しようかなー」ゴソゴソ
女オーク「ううん」パチ ガバ
剣士「おはよう…良く寝た?」
女オーク「私どうして寝て…」
剣士「僕が勝ったから…もう行くよ」
女オーク「あ…うん…準備する」ゴソゴソ
剣士「アハ外騒いでるな…巻き込まれないうちにサッサと行こ」
女オーク「豪族達?」
剣士「なんか揉めてる…見つかると厄介だ」
女オーク「行けるわ」
剣士「ハイディングして飛空艇まで行こう」
女オーク「そうね…」
剣士「じゃぁ扉開けてっと…」ガチャリ ギー
剣士「ハイディング!」スゥ
女オーク「ハイディング!」スゥ
タッタッタ
『飛空艇』
フワリ シュゴーーーー
剣士「操縦頼むね…南東の方角…高度上げて偏西風に乗って」
女オーク「うん…」
剣士「ん?負けた事気にしてる?」
女オーク「悔しい…朝まで繋がって居られなかった」
剣士「いやずっと繋がってたさ…君が覚えて無いだけだよ」
女オーク「記憶が…」
剣士「やっと勝てて僕は嬉しい」
女オーク「それなら良いわウフフ」
剣士「ちょっと今から呪符の研究するから邪魔しないでね」
女オーク「うん…」---心も体も充実してる…幸せ---
剣士「えーと…これが退魔の呪符だったな…」ブツブツ
アーデモナイ コーデモナイ
---------------
---------------
---------------
剣士「しまったなぁ…魔術書持って来るんだった」
女オーク「何か分かった?」
剣士「オークの呪術は僕達が使う魔術の前身だよ…僕達の言葉で古代魔術」
女オーク「それはスゴイ事なの?」
剣士「そうだね…ねぇオークって文字を使った書物って有るの?」
女オーク「オークシャーマンだけが文字を知ってる…普通のオークは知らない」
剣士「エルフも文字を残す文化が無いんだけど…ここに記されて居るのは多分エルフの言葉を文字にした物だ」
女オーク「え?エルフとは言葉が違うわ?」
剣士「えとね…多分こうだよ」
本来オークは古代文字を使って居たんだよ
でもそれが許されて居るのは一部のオーク…つまりオークシャーマン
それ以外のオークは文字を教えて貰えないから独自の言語に変わって行ったんだ
一方エルフは古代文字をそのまま話す
それをオーブと言う物で知識の伝達をして来たから文字は残らないけど言語はそのまま残った
それが森の声と呼ばれる言語
この呪符には古代文字が記されていて僕達魔術師がずっと昔から研究している物なんだよ
剣士「そして古代魔術の方が僕達の魔術よりもずっと優れている…オークの呪術は失われた古代魔術なんだ」
女オーク「そう?…私にはあまり興味の無い話」
剣士「どうして君がオークシャーマンの呪いを恐れて居たのかこれで理解出来た…僕が思ってたよりずっと強力なんだ」
女オーク「その呪符は使えそう?」
剣士「これは多分僕達の魔方陣と同じだろうね?退魔の呪符は退魔の魔方陣とピッタリ重なる」
女オーク「剣士にも出来ると言う事ね…」
剣士「出来ない物もある…例えば耐火の呪符…僕達の魔術書には耐火の方陣は記されて居ない…これは大発見なんだ」
女オーク「ウフフ剣士目が輝いてる」
剣士「かわいいって言わないでよ?僕の方が強いんだ…君は僕の奴隷…イイね?」
女オーク「はいはい…」ニコ
剣士「この呪符を体にタトゥーで刻めば耐性を得られるとしたら魔法なんか要らないな」
女オーク「西オークの戦士たちは皆オークシャーマンに強化してもらうのよ」
剣士「魔法は効かないって思った方が良いね」
女オーク「魔法だけじゃなくて力の増強とか筋肉の強化とか色々有るのよ?」
剣士「君はタトゥーが無いね」
女オーク「あなたに処女を奪われた時に全部消えた…呪いもタトゥーも」
剣士「じゃぁ弱くなったのか」
女オーク「野良オークがひっそり暮らすのは強化されたオークに勝てないからよ」
剣士「なるほどね…大分オークの事が分かって来たぞ」
女オーク「ウフフ…」
剣士「あのさ?そんな凄いオークシャーマンの首を切り落とす寸前だったのは大変な事だったよね?」
女オーク「そうね…でもオークシャーマンはそれを気にする程小さい器では無い」
剣士「え?どういう事?」
女オーク「本当はとても寛容なの…戦争を起こす悪いオークだけど」
剣士「寛容?…まぁ気にしてないなら良いけど」
女オーク「ほら?人間に処女を奪われたら呪いを解ける様にしているのよ?追いかけても来ない」
剣士「どうしてそんなヘンテコな呪いなんだろう?」
女オーク「それはオークシャーマン自身が人間と関係を持つ事に肯定的だから」
剣士「つまり人間と結ばれる人は許しますよ…っていう事だね?」
女オーク「寛容でしょう?」
剣士「まぁなんか変だけどねw…なんでそんなヘンテコな呪いにしたんだろうなぁ…」
---------------
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『名も無き島』
フワフワ ドッスン
ウルフ「ガウガウ!!」ピョン シュタタ
女オーク「ウルフが走り去って…」
剣士「体動かしたいんだよ放って置いて良いから…よし!樽を運ぶの手伝って」ヨッコラ
女オーク「遺跡の地下ね?」グイ
剣士「うん…ホム姉ちゃんの部品の所」
『古代遺跡地下』
ヨイショ ドスン
剣士「ふぅ…商人さんを待つよりもう一回僕が精霊樹に行った方が早そうだ」
女オーク「また行く?」
剣士「いや言われた通り待つよ…ちょっと休憩さ」
女オーク「キ・カイへは?」
剣士「う~んどうしようかな…君と立ち合いして疲れたら帰ってエッチして寝て…起きたらまたエッチして寝る」
女オーク「ウフフ…」
剣士「ここならそんな生活も許されるなぁ…なんてね?」
女オーク「私の事好き?」
剣士「もう君以外に興味無い…いつの間にか君の虜になってる」
女オーク「私の奴隷だって認める?」
剣士「ちょ…それは違う」
女オーク「ダメよ…あなたにはやる事が有るから…立ち止まってはダメ」
剣士「ええええ…良いじゃないちょっとくらいさぁ」
女オーク「来て?満足させてあげる…満足したら前に進みましょ?」
剣士「ここホム姉ちゃんが目を覚ましそうだからベッド行こう」グイ
女オーク「ウフフ…」
---------------
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『随分前_暁の墓所』
スタスタ
魔術師「姫様…女戦士殿が到着されました」
魔女「おぉ!やっと来たな?丁度遺跡の調査がひと段落した所じゃ」
女戦士「この墓所は一体…」スタスタ
魔女「まずこれを見よ…」スッ
女戦士「朽ちた刀…」
魔女「主が研いだ刀に間違い無かろう?」
女戦士「…」サワサワ
魔女「どういう事か想像出来るな?」
女戦士「未来はどうした?」
魔女「一人旅じゃ…安心せい!仲間を得て程よく成長しておる」
女戦士「そうか…」
魔女「して?精神と時の門ではどの位過ごしたのじゃ?」
女戦士「もう分からない…30年か…40年か…」
魔女「心の傷は癒えたかいの?」
女戦士「フッ…」
魔女「時空は体得したな?見せてみぃ」
女戦士「…」フラリ ノソ
魔女「ほぅ…わらわと同じ時空に居るか…主は打たれ強いで己に打ち勝つのはしんどかったじゃろう?」
女戦士「私の弱点が良く分かった…」
魔女「うむ…色欲を克服したな?」
女戦士「言わないで欲しい」
魔女「時空の修行はもう終わりじゃ…時が動き出すで覚悟は良いな?」
女戦士「次は私が未来を守る…もう失わせない」
魔女「良い…じゃが朗報もある…どうやらアダムを滅ぼすのは未来では無さそうじゃ」
女戦士「どういう事だ?」
魔女「黄昏の賢者が目覚めるやも知れぬ…アダムを滅ぼすのは黄昏の賢者じゃと思うとる」
女戦士「誰なのだ?黄昏の賢者とは…」
魔女「恐らくオークシャーマン…3000年前にドリアードを葬ったその本人」
女戦士「では未来は危険を冒さなくて良いと?」
魔女「うむ…じゃが導いてやらねば未来は先走る…故に今から主と共に未来の先回りをするのじゃ」
女戦士「何処へ?」
魔女「思案中なのじゃが…一先ず主の船が動き安かろう」
女戦士「アサシンと連絡は?」
魔女「これからじゃ…一旦シン・リーンへ戻るぞよ?」
女戦士「その前に遺跡の壁画を見て行って良いか?」
魔女「おぉそうじゃったな…勇者ら2人が描かれて居る…ゆっくり見て構わんぞ」
女戦士「…これが…私の妹…」
魔女「生きた証じゃ…奴らはずっと生きて居った…」
女戦士「そうか…良かった…」グッ
---------------
---------------
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『気球』
ガサゴソ ゴタゴタ
姫様と女戦士殿が帰還される!準備を急げ!
情報屋「ねぇ魔女?女戦士はずっと魔術の修行を?」
魔女「うむ…女戦士は勇者2人の最後を見て心傷してしもうての?己の未熟さを悟ったのじゃ」
情報屋「未来君はそれを知って?」
魔女「いや…未来は知らぬ…未来は未来の道を歩ませばならぬ故…距離を置いたのじゃ」
情報屋「未来君の心傷は?」
魔女「それを乗り越えるのも修行じゃ…心に闇が育たぬ様に注意はしたぞよ?」
情報屋「そう…」
魔女「心配せんでも良い…未来は良い子じゃ…心でしっかり感じて居る」
情報屋「私も未来君みたいな子が欲しかった…」
魔女「悲しいのぅ…産めぬまま時が流れるのはなんと不幸か…」
スタスタ
女戦士「待たせた…行こうか」
魔女「目が腫れて居る」チラ
女戦士「私の妹の苦悩を思うとな…」
魔女「考えすぎじゃ…あの二人は楽しくやって居る」
女戦士「…」トーイメ
-------------
-------------
-------------
へーーーーっぷし!!
『剣士の家』
ゴソゴソ ドタドタ
女オーク「ハッ!!」パチ ガバ
女オーク「又…」キョロ
剣士「あ…おはよう」ヨッコラ ヨッコラ
女オーク「ゴメンなさい…満足させてあげるって言いながら私が…」
剣士「ハハ満足したよ…僕は君が意識無くすのを見るとすごく満足だ」ヨイショ ヨイショ
女オーク「又私の負け…」
剣士「そうさ僕は君を征服した…こんなに気持ち良い事は無い」
女オーク「悔しい…」ググ
剣士「急にやる気が出て来たんだ…ハテノ村行って次にキ・カイに行く…君も準備して」
女オーク「うん…」ヨロ ドタリ
剣士「ハーーッハッハ参ったか!?君が気持ちよくて意識失う顔…かわいいよ?アハハハ」
女オーク「かわいいって言わないで!」
剣士「ムフフ急いで準備してね?置いて行くよ?」
女オーク「ムムム…」ギリ
『飛空艇』
フワフワ
剣士「ウルフ!乗って!」
ウルフ「ガウガウ!」シュタタ ピョン
女オーク「あら?水は乗せて無い?」
剣士「ちょっとだけだよ…ほら?」チャプン
女オーク「鉄をハテノ村に持って行くのね?」
剣士「うん…向こうに鉄が無いから色々作れない…水はこれだけ有れば十分」
女オーク「私は何を持って行こう…」
剣士「君は体だけで良いよ…僕の為に」
女オーク「…」ジロ
剣士「はいはい乗って乗って!飛ぶよ!」
女オーク「…」ストン
剣士「怒ってる顔も可愛いよ?フハハハハ」
女オーク「…」プイ
剣士「しゅっぱぁぁぁつ!!」グイ
シュゴーーーーーー バサバサ
『上空』
剣士「あれ?偏西風が弱い…なんでだ?」
女オーク「逆風が無くて良いのでは?」
剣士「まぁそうなんだけどね…偏西風が無いなんて初めての事だ」
女オーク「下は分厚い雲で現在地が分からないわ?」
剣士「火山の噴煙探そう…雲の下は多分土砂降りだ」
女オーク「水には困らないのねw」
剣士「機嫌直った?」
女オーク「私は機嫌を損ねてなんか居ないわ?」
剣士「そか!ほんじゃちょっと君を改造する…」
女オーク「どうする気?」
剣士「牙を少しだけ生やす…少し見えていた方がかわいい」
女オーク「このままで良いのに…」
剣士「大人しくして…これは命令」
女オーク「フン!好きにして…」
剣士「変性魔法!」ニョキ
よしよし…笑って見て?
おけおけ!少し見える
肌の色はもう少し褐色にしよう
変性魔法!おぉ健康そうだ!
女オーク「あなた好みに変えて居るの?」
剣士「まぁね?どんぐり…食べ辛くない?」ポイ
女オーク「…」カリ モグ
剣士「良さそうだねフフフ完成だ!」キラキラ
女オーク「…」---かわいい---
剣士「ぐぁぁ…ちょちょ…苦しい放して」ギュゥゥ
『ハテノ村』
ザザー フワフワ ドッスン
剣士「すごい雨だ…急いで荷物降ろそう」バチャバチャ
女オーク「何処へ?」ベチャベチャ
剣士「盗賊さんの飛行船が無いなぁ…教会に持って行こう」
女オーク「分かったわ…よいしょ!」グイ
ハンター「剣士!戻って来たんだね!!」
剣士「丁度良かった…鉄を沢山持って来たんだ…運ぶの手伝って」
ハンター「分かった…教会で良いよね?」
剣士「うん!これお願い」ドサリ ガラガラ
ハンター「うわ…雨に濡れる」
剣士「いそいで運ぼう」ヨッコラ
ザザーー ベチャベチャ
『教会』
ピチョン ポタン
剣士「ふぅぅベタベタになった…」
僧侶「剣士さんお帰りですぅ!」スタタ
魔法使い「良かった…もう帰って来ないかと」
剣士「すぐ戻るって言ったじゃない…ねぇ僕の爺いじが来てる筈なんだけど…何処行ったの?」
ハンター「上流の遺跡の所に気球降ろしてあの辺り整備してくれてる」
僧侶「沢山人を連れて来てくれたので助かってるでしゅ」
剣士「盗賊さんは硫黄を乗せてキ・カイに飛んだ感じだね?」
僧侶「そうでし」
剣士「状況つかめたよ…それにしてもひどい雨だね」
僧侶「はいー…土砂崩れが心配だと言って海賊王さん達が慌てて何か建築してるです」
剣士「それで人が居ないのか」
ハンター「雨に濡れて良ければ行って見ると良いよ…上流には温泉もあるし」
剣士「お!?温泉か…なるほど爺いじは先に温泉を整備してるんだな?」
ハンター「ハハ察しが良いね…こっちの教会よりも温泉に目を付けたのさ」
剣士「ちょっと行って見ようかな」
『川沿い』
エッサーホイサー
土砂が流出せん様に土手に板張るんや
砂利を使って上手い事押さえや
剣士「爺いじ!!」
海賊王「おぉぉぉ未来かいな!今忙しい所や…おまんは上で温泉にでも浸かってきぃ」
剣士「僕は何もしなくて良いの?」
海賊王「そやな?おまんは木を生やせられるやろう?土手の土が持って行かれん様に木の根を張れ」
剣士「簡単簡単!」チャキリ
海賊王「何をする気や?その銃で木を生やすんかいな?」
剣士「見てて?」
ターン ターン ターン ターン
剣士「成長魔法!」ニョキニョキ バサバサ
海賊王「うほほエライ派手な生やし方や…流石ワイの子…もっとヤレ」
剣士「女オークは温泉に入ってきて良いよ…僕は少し作業してから行く」
女オーク「うん…」
海賊王「ほなワイらはこっち側やるで未来は向こうや…頼んだで?」
剣士「おっけ!」ツメツメ チャキリ ターン
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『古代遺跡の入り口』
ワイワイ ガヤガヤ
海賊王「居った居った…未来!温泉入ったか?」
剣士「爺いじスゴイね…温泉からここの遺跡から…」
海賊王「ワイらはおまんの友達の邪魔にならん様にこっち側で要塞作っとる」
剣士「もう鍛冶場もある」
海賊王「道具作らなアカンでな?」
剣士「鉄を持って来たよ」
海賊王「おぉぉソラえぇタイミングや…つるはし作らなアカン」
剣士「爺いじの気球は?もう硫黄積んで飛んだ?」
海賊王「そや…至急で欲しいんや…豪族を追い返して村を救わなアカンで」
剣士「そうだよね…豪族に女の人イタズラされちゃうもんね」
海賊王「それはワイの仕事やからおまんは何も考えんでえーわ…ところでおまんの生やした木」
剣士「ん?何かあった?」
海賊王「川沿いにずっと連なって丁度雨除けになっとる」
剣士「あーそれね?下の教会からこっちに来るのに雨に濡れちゃうからさ」
海賊王「やっぱりそうか…友達も呼んできーな…宴会やるで?」
剣士「この雨の中?」
海賊王「細かい事は考えんでえーちゅうねん…濡れたら温泉入ればチャラや」
剣士「ハハそうだね?」
海賊王「おまんの友達は大人の中に中々入り難い様や…全員で宴会するで?」
剣士「おけおけ!呼んでくる…お酒ある?」
海賊王「当たり前や!!早う呼んでこい」
『川沿いの林道』
ワーイ キャッキャ
僧侶「シスター足元滑るので気を付けるですぅ」
シスター「はいはい済まないねぇ」ノソノソ
神父「こら…えらい変わったな?」ノソ
ハンター「剣士が植えた木は大きく育つんだね」
剣士「たまたまだよ…今日は水が沢山あったし…お陰で良く葉が茂った」
魔法使い「他に秘密が有るんじゃない?教えて欲しいわ」
剣士「う~ん…何だろう?体力かな?」
魔法使い「体力?そうか私達疲れてるのかも…」
剣士「温泉は入った?」
魔法使い「獣が怖くて入れない…」
剣士「なら爺いじが安全にしてくれたから入ると良いよ」
魔法使い「岩場で裸になるのがちょっと…」
剣士「何言ってるのさ…昔は裸で走り回ってたじゃないか」
僧侶「そうでしたねぇ…皆一緒に水浴びしたですねぇ」
海賊王「おーーーい!!早う来いやぁ…みんな待っとるでぇぇ!!」
剣士「アハ…急ごう」スタ
『祭り騒ぎ』
ワイワイ ガヤガヤ
おいおい水が落ちて来るやんけ!肉に掛かる
布無いか布ぉ!!焚火だけ濡らすな
コップ無いのにどうやって酒汲むんやろう?
その辺の木材くり抜いて入れたらえーやろ
海賊王「おぉぉシスターはんに神父はんよう来なすった…こっちが濡れんでこっちに座りぃ」
シスター「ありがたや…」ノソ
神父「たまげた宴会じゃ…」ノソ
海賊王「ダハハハハおまんらも好きな物食うて好きなだけ飲め!」
魔法使い「は…はい…どうして全員ふんどし一丁な訳?」タジ
海賊王「濡れるからに決まっとるやろ…ビタビタじゃ気持ち悪いんや…えーから飲め」
僧侶「頂くですぅ」スタタ
海賊王「濡れてもすぐそこに温泉や…ビタビタになる宴会もえーやろ!ガハハハハ」
ハンター「ハハ…又グダグダな感じの宴会だ」
海賊王「何を言うとるんや!これが良いんや!生焼けの肉に魚食らって腹壊して酒飲む…お前もふんどし一丁になれ!!」
剣士「ねぇ爺いじ?女オーク知らない?温泉に行った切りなんだけど…」
海賊王「おまんが迎えに行け!あぁそやそや布持ってけ布」
剣士「そうか着替えが無くて戻って来れないのか…」
海賊王「おまんもふんどしでえーやろ」
剣士「そうだね?おけおけ!濡れた服脱いで来る」ダダ
僧侶「私も行くです」スタタ
魔法使い「ちょっと僧侶…」
ハンター「服が濡れると気持ち悪いから僕らも脱ごう」グイ
魔法使い「ええ!?」
海賊王「子供達も全員裸にせい!!濡れた服は炉で乾かしたる」
魔法使い「えーと…じゃぁ子供達!!温泉入るわよ!!おいで!!」
子供達「はーい!!」キャッキャ
『温泉』
モクモク
剣士「とうっ!!」ダダ ピョン
女オーク「あ!!剣士ソコ…」
ザブーン
剣士「熱っつ!!あっつい!!」バシャ バシャ
女オーク「そこ熱いからコッチに…」
剣士「早く言ってよ…熱っつつ」バタバタ
女オーク「ウフフ…馬鹿ね」
剣士「着替えないから布持って来たんだ…それで隠せば良い」
女オーク「わざわざありがとう…困ってたの」ゴソゴソ
ハンター「とうっ!!」ダダ ピョン
女オーク「あ!!ハンター…」
ザブーン
ハンター「だぁぁぁぁ熱っつい!!」バシャ バシャ
剣士「アハハ…アハハハハ」
女オーク「そこダメ…下の方」
僧侶「私達も来たですぅ…下の方は私達が使うでし」チャポン
子供達「わーい」バシャバシャ
僧侶「ふぃぃぃ」グビグビ
魔法使い「僧侶あなたお酒を持って来たの?」
僧侶「魔法使いさんも飲むでしゅか?」
ハンター「良いなぁ下の方はくつろげそうで…あつつつ」スリスリ
女オーク「これでよし!どう?見えないでしょ?」ギュ ギュ
剣士「良いね!じゃぁ僕もふんどしに…」ゴソゴソ
僧侶「みんなでふんどしパーティー楽しいです」
剣士「ここ温泉近くでスゴイ過ごしやすい…良いなぁ…僕の島にも欲しい」
僧侶「剣士さんもここに住めば良いです」
剣士「ハハそうだね…爺いじが気に入ったのも分かる」
ドドドドド ザブ~~ン!!
ハンター「どわぁぁぁ熱っつい!!」
海賊王「はぁぁぁぁぁぁええ湯や…真から温まる」
剣士「ハハ爺いじには丁度なんだ」
海賊王「者共!!突撃やぁ!!」
ドドドドド ザブ~~ン!!
魔法使い「ちょちょ…ちょっと!!ここは女が…」
海賊王「小さい事は気にしたらアカン!皆一緒に入ったらええんや!!」
ハンター「とうっ!!」ザブーン
僧侶「お酒がこぼれたでしゅ…」
子供達「わーい」キャッキャ
者共「はぁぁぁぁ温まる…エ~ユダナ…ハハハ~ン」
海賊王「土砂降りの温泉もええなぁ?上がったら肉食うで?」
魔法使い「フフ…皆裸で…何かどうでも良くなっちゃった」
海賊王「おまんは乳がデカいな?」
魔法使い「見ないで!!」ザブ
海賊王「見られて無うなるもんやない!気にすんな気にすんな…はぁぁぁええ湯や」
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『土砂降りの宴会』
ワイワイ キャッキャ
誰じゃ木を揺らすのは!!水が掛かるやろ!!
どんぐり焼けたぞぉ!食え食え!
おま…これ毒キノコじゃ無いのか?
魔法使い「フフなんか…原始時代みたい」
ハンター「グダグダだと思ったけど全然楽しいや…子供達も泥んこで遊んでる」
僧侶「お酒持って来たです」
ハンター「ありがとう」グビ
魔法使い「もう忘れていたけど…皆で温泉に入るのってすごく癒される」
僧侶「私のペチャパイがバレたです」
ハンター「昔から知ってるよハハ」
ドタドタ ドスン!
海賊王「どや?楽しいやろう?この感じを忘れんなや?」
魔法使い「海賊王さんありがとう…何か色々思い出した」
海賊王「ワイはこの村が気に入った…今日からこの村はドワーフ国の領地や…領主はおまんがヤレ」
魔法使い「え?私?」
海賊王「そや…おまんはなんやかんやで人徳がありそうや…領主でええ」
魔法使い「領主って何をすれば良いのか分からない」
海賊王「この地を治めればええんやが心配すな?ワイが守ったるで…兎に角子供達を守れ」
僧侶「私は何かやる事無いでしゅか?」
海賊王「そやなぁ…おまんは酒場の女将やな…酒場は大事なんやで?宴会で盛り上げなアカンで」
ハンター「ハテノ村の復興だ!」
海賊王「ガハハハ今日はその宴やな!乾杯じゃ乾杯!」チン グビグビ
僧侶「かんぱーい!!」ゴク
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アオーーーン ワオーーーーン
『翌日』
ザザー ボタボタ
剣士「雨が止む気配が無い…」
海賊王「雨降って地固まるちゅうが…ちと降り過ぎやな」
剣士「建築は大丈夫?」
海賊王「まずはこの遺跡を拠点に建屋作って行くから心配すな…晴れたら下の教会まで行ったる」
女オーク「この雨もしかして…」
剣士「ん?どうしたの?」
女オーク「オークシャーマンの呪術かもしれない」
海賊王「ほう?南方の東オークを洪水で攻め様っちゅう気やな?この雨で下流はエライ洪水が起きとるやろ」
剣士「呪術で天候を操る…それで偏西風が止まってた?」
海賊王「南の空が雷で光っとったわ…オークの難民に備えとった方がええな」
剣士「偏西風を止めるって…この星全体に影響が出るじゃ無いか…そんな事まで出来るのか」
海賊王「未来は知らんやろうがワイらドワーフはオークシャーマンが産んだんやで?」
剣士「ええ?」
海賊王「ワイらにとってオークシャーマンは創造主やな」
剣士「どうやって?」
海賊王「言い伝えではな?ノームちゅう小人とオークの合いの子らしいわ」
剣士「ドワーフは精霊が産んだんじゃ無かったんだ…」
海賊王「正確には精霊がオークシャーマンにやらせたんやろう…ノームの血を引くけぇワイらは器用なんや」
剣士「オークシャーマンってそんなにスゴイ存在だったのか…危うく首を切り落とす所だった」
海賊王「ガハハハ豪快な話やな?神殺しかいな」
剣士「でもね?オークシャーマンはそんなに大きく無い小さなオークの女の子だったよ」
海賊王「ワイは詳しくは知らんがシン・リーンの魔女もそんな感じやろ」
剣士「ハハそうだね…いつも子供の恰好してる…そういう事ね」
海賊王「しかしこの星全体に影響が出るちゅうんは心配な事もあるな?他の地域はどうなっとるんやろう?」
剣士「あ…僕キ・カイまで行くんだった…見て来るよ」
海賊王「ガハハおまんは休むちゅう事を知らん様や…ええぞ?行って来い…前に前に進め」
『飛空艇』
ザザーー ボタボタ
剣士「…うんキ・カイまで行ってまた帰ってくるよ」
魔法使い「昨日帰ったばかりなのに…」
剣士「あと2人乗れるけど一緒に行く?」
僧侶「私行きたいですー盗賊さんとお酒飲みたいでし」
剣士「おけおけ!乗って…あと一人」
魔法使い「私は…」チラリ
ハンター「まぁ3人で行っておいでよ…こっちの事は心配しなくて良い」
剣士「おっけ!じゃぁハンター!ウルフの事お願いね…あんまり世話は掛らないと思うけど」
ハンター「こっちも狩りの相棒が欲しかったんだ…助かるよ」
剣士「じゃぁウルフ!頼むよ」
ウルフ「ガウガウ!」
フワフワ シュゴーーーー
『上空』
シュゴーーーー バサバサ
僧侶「早いでしゅねぇ!!」
女オーク「僧侶さんは気を使って一緒に?」
僧侶「バレたですか…あの2人をくっつけるには私が少し離れた方が良いです」
剣士「なるほどね~」
僧侶「剣士さんたちの邪魔になってゴメンです」
剣士「ハハ気にしないで…楽しく行こう」
女オーク「僧侶さんも私の膝に乗る?」
僧侶「乗る乗る!!」チョコン
女オーク「かわいい…」ニッコリ
剣士「んんん…体重が何倍違うんだろう」
僧侶「レディの体重を気にするですか?失礼でし!!」
剣士「ゴメンゴメンそんなつもり無いよ」
僧侶「それにしてもこの飛空艇は早いですねぇ」
剣士「偏西風の逆風が吹かないから日が落ちる頃には到着できそうかな」
僧侶「ほえぇぇぇスゴイです」
女オーク「ねぇ剣士?僧侶さんを私のペットにしても良い?」
僧侶「ペット?どういう事でしか?」
剣士「いや…オークの文化は良く分かんない」
女オーク「剣士は私の奴隷なの」
僧侶「奴隷だったのですね…それで私がペット…私の方が上ですね」
剣士「ちょちょ…ちょっと序列が違う…僕の奴隷が女オークで女オークのペットが僧侶だ」
僧侶「こんがらがりますね?じゃぁ私のペットが剣士さんで良いですね?」
剣士「いやちょっと違う…」
僧侶「どうでも良いでし…面倒なので勝手に決めてくだしゃい」
女オーク「ウフフ…」
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---------------
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『キ・カイ上空』
シュゴーーーーー バサバサ
剣士「…寒すぎる…なんだこの寒さは…」
僧侶「おかしいですねぇ…」
女オーク「あちこちで石炭燃やして暖を取ってる」
剣士「海は暗くて見えないか…」
女オーク「船を気にしているの?」
剣士「まぁね…まぁ良いやキ・カイの外に降りて飛空艇隠しておこう…降りるよ」
僧侶「はいなー!!」
フワフワ ドッスン
剣士「僧侶は一人で商人ギルドへ行けるね?」
僧侶「大丈夫でし!」
剣士「じゃぁ各自商人ギルドの上の部屋へ…大部屋で集合かな」
女オーク「分かったわ…」
剣士「女オークは人に見られない様に」
女オーク「うん…大丈夫」
剣士「行こう!」タッタッタ
『商人ギルド』
ザワザワ ザワザワ
商人ギルドのマスターがさらわれたらしい
取引は一旦停止だそうだ
しょうがねぇなぁ明日又来るかぁ
僧侶「受付さんこりは一体何事でしゅか?」
受付「あ!!盗賊のペットさん…」
僧侶「上の大部屋使っても良いですか?」
受付「上に居るからちょっと話して来て…今ゴタ付いてるの!」
僧侶「はいです!」スタタ
『大部屋』
ガチャリ バタン
盗賊「誰だ!!勝手に入って来やが…って…おおおお僧侶!!おまどうやって来たのよ!?」
僧侶「こりは何事でしゅか?商人さん居るじゃないですか」
商人「突然入って来てビックリしたよ…鍵閉めておこうか」
僧侶「ダメです…剣士さんと女オークさんも来るです」
盗賊「おい?聞いたか商人…ナイスタイミングだ」
剣士「リリース」スゥ
女オーク「リリース」スゥ
商人「ハハ役者が揃った…よし!」
剣士「これは何の騒ぎ?」
商人「僕の影武者がさらわれたんだよ…相手は豪族さ」
盗賊「高額取引の商談に行ったまま帰って来ねぇ」
剣士「どの豪族なのか分かってるの?」
商人「勿論…衛兵に対処してもらおうとしたけど豪族から圧力が掛かって船に押入れない」
剣士「おけ!察した…僕が行って救い出す」
僧侶「でもどうしてさらわれたですか?」
商人「どうも僕が海賊王の娘を匿っている様に見えている様なのさ…女オークと一緒の所を見られて居るんだと思う」
女オーク「私のせい…」
商人「それは違う…勝手に向こうが思い込んでる」
盗賊「ハイディング出来るのは俺と剣士…女オークだな?」
商人「僕も出来るけど僕は顔を出さない方が良さそうだね」
盗賊「アダマンタイトを僧侶に渡してくれ…僧侶は盲目魔法が使える」
剣士「それには及ばないよ3人で十分さ…僧侶は商人さんと留守番が良い」
盗賊「そうか?お前がそういうならそれで良い」
剣士「いつ行く?」
商人「影武者の身が心配なんだ…今すぐ行けるかい?」
剣士「おっけ!盗賊さん…案内して」
盗賊「おう!」
剣士「あ!そうだ…盗賊さんは白狼の装備ある?」
盗賊「なぬ!?」
商人「ハハ白狼で救出かい?」
剣士「昔海賊だった人は白狼の盗賊団がどういう存在だったか知ってるよね?」
商人「面白い…相手に白狼が居ると知らしめる訳か…」
盗賊「商人!お前ん所に置きっぱなしだったな?まだ在るか?」
商人「勿論さ…活躍を期待するよ」
盗賊「よし!派手に行くぞ…来い!!」ダダ
---------------
僧侶「商人さん白狼の盗賊団って盗賊さん達なのでしゅか?」
商人「君は知らなかったか…初代白狼の盗賊団は盗賊なのさ」
僧侶「盗賊さんは伝説の人だったのでしゅね…」
商人「この建屋の上に望遠鏡があるよ…見て居てごらん?」
僧侶「はいです!!」スタタ
『声』
あぁぁぁぁぁ…はぁはぁ
話せば楽になるぞ?何処に匿った!?んぁぁ聞いてんのかゴラ!!
ダメだ知らないを突き通しやがる…何でヤクが効か無ぇんだ!!
生皮を剥がして塩に漬けてやれ
待ってくれ勿体ないだろ一回ぐらいヤラせろ
黙ってろお前の雇い主は俺だ…命令通り動け
なんだよヤレると思って言う事聞いてたのによ…ちぃぃぃ
ネーちゃん悪いなぁ?気持ちよくするところだったが激痛になっちまった
話せば楽になるぞ?どうする?
んぁぁ仕方無ぇ…
がぁぁぁ…ぎぎぎ…いぎゃぁぁぁぁ
『豪族の船』
シュタタ シュタタ
剣士「…」ギリ
盗賊「この船だ…ん?どうした剣士?」
剣士「盗賊さん…僕に従って」
盗賊「策が有るんだな?分かった先導しろ」
剣士「現場に直行する…こっちだ」シュタタ
--------------
剣士「リリース」スゥ
盗賊「リリース」スゥ
女オーク「リリース」スゥ
『荷室』
豪族の長「なっ!!どっから入って来やがった!!」
野郎1「出て来やがったな?
野郎2「白狼!?」
剣士「睡眠魔法!」
影武者「ぁぅぁぅ…」zzz
剣士「線虫!」ザワザワ ニョロリ
剣士「痛かったね…もう大丈夫」
豪族の長「野郎共ぉぉ!!侵入者だ!!殺せ!!」
野郎共「うおぉぉぉ」ドヤドヤ
盗賊「おいおい剣士…真向かよ…数が違い過ぎる」タジ
豪族の長「その女は海賊王の娘だ!そいつだけは捕らえ…」
剣士「…」ダダ スパスパスパ
豪族の長「ひでぶ…」ブシュー
野郎2「バラバラ…だと…」
剣士「僕は今すごく気分が悪い…次は誰だい?」ダダ スパスパスパ
野郎共「ひっぃぃ…だ…誰だこいつは」
盗賊「剣士おま…」
剣士「女オーク?影武者さんを背負って守って?」
女オーク「うん…」ダダ グイ
剣士「盗賊さん…お祭りしよう」フラ
盗賊「祭りだと?」
剣士「火を付けて人を集めるのさ…火炎魔法!」ボボボ
野郎1「勝手な事を…」チリチリ ポイ
盗賊「爆弾!!」
剣士「量子転移!」スゥ スパ
野郎1「ぐぁぁぁ手が…手がぁぁ」ブシュゥゥ
剣士「爆弾なんか意味無いんだ…爆発しても僕が直ぐに無かった事に出来る」スタスタ
野郎1「くそがぁぁ…」ダダ
剣士「ゴメン…もう見飽きた」スパ
野郎1「!!?」クルクル ゴトン コロコロ
剣士「次は誰?」ダダ スパ
野郎2「はぎゃぁ!!」ドタリ
野郎共「に逃げろ…本物の白狼だ!!」
剣士「逃がさないさ」チャキリ ターン
剣士「成長魔法!」ニョキニョキ
メリメリ ズゴゴーン
野郎共「木で出口が塞がれ…」
剣士「皆殺しだよ」ダダ スパ
野郎共「ひぃぃぃぃ」
盗賊「剣士…」
--------------
『豪族の船_外側』
ドタドタ ドタドタ
あの船に海賊王の娘が乗り込んだらしい
全員で取り押さえるぞ
行けゴラ!!
メリメリ ズゴゴーン
他の豪族1「なんだぁ!!木が生えて来やがった」
他の豪族2「良いから乗り込め!」
ドタドタ ドタドタ
剣士「船虫!従え!」カサカサ
剣士「食らえ!」
豪族共「うわぁ何だ…船虫の大群」ブン ブン
剣士「盗賊さんどんどん火を付けて」フラリ
盗賊「お…おう」ダダ
他の豪族1「白狼の…盗賊団なのか?」
剣士「はぁ…そのリアクションも見飽きた…皆殺しだよ?次は誰?」ダダ スパ
他の豪族1「うぎゃぁ…」ポーン ゴロゴロ
剣士「船虫!爆ぜろ」パーン ビチャビチャ
剣士「火炎魔法!」ゴゴゴ
ドカーーーーン ゴゴゴゴ
盗賊「圧倒的じゃ無ぇか…本当に皆殺しするつもりか?」タジ
女オーク「盗賊さん剣士を止めて…剣士狂ってる」
盗賊「100人以上ぶっ殺しやがった…」
剣士「僕に死霊術出来るかなぁ…試してみようかな…従え!死体共!」
ゾンビ「ヴヴヴヴヴ…ガァァァ」
剣士「ハハなんだ蟲と同じか…さて次は誰かな?」フラフラ
ひぃぃぃぃ 逃げろ!逃げろぉぉぉ
女オーク「剣士もう止めて!!もう殺さないで!!」ダダ
剣士「なんか気が済まないんだよね…しょうがないなぁ」
女オーク「お願い!!元の剣士に戻って」
剣士「覚めよ!!」
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『荷室』
アワワワ ブクブク
豪族の長「ブクブク…」ガクガク
野郎1「ぁぅぁぅ…」ジョワー
野郎2「ひぃぃぃ…」ブルブル
剣士「もう豪族は無力だから金品全部盗ってばら撒きに行こ!」
盗賊「い…今のは…」キョロ
剣士「幻惑魔法だよ…僕は誰も殺してない」
女オーク「剣士…狂ったのかと思った」ポロリ
剣士「この3人はブタに変性させておこう変性魔法!」シュワ
ブタ1「ブゥ…」ピクピク
ブタ2「ゲヒ…」ピクピク
ブタ3「ブヒ…」ピクピク
盗賊「ヌハハ魔女と同じ技使ったんか…」
剣士「魔女も同じ事を?まぁ幻惑魔法はこうやって使う」
盗賊「よっし!金目の物全部頂くぞ?」
剣士「おっけ!女オークは影武者さんを背負ったままで大丈夫だよね?」
女オーク「平気!」
剣士「おけ!行こ!!」シュタタ
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『商人ギルド屋上』
商人「見えるかい?」
僧侶「街路でお金をばら撒いて走ってるです」
商人「ハハハ上手く行った様だ」
僧侶「恰好良いでし…私も白狼なりたいでしゅ」
商人「君は小さすぎる…白狼じゃなくてウサギになってしまう」
僧侶「商人さんは白狼の盗賊団じゃないですか?」
商人「ほら?ぼくも体が小さいでしょ?それに屋根に上ってピョンピョン走り回れない」
僧侶「あーーー本当だ…屋根に上ってるですね」
商人「何かに追いかけられてる?」
僧侶「人ですね…お金欲しい人に追いかけられてるです」
商人「なんだ衛兵じゃないのか」
僧侶「はぁぁぁスゴイなぁ…」ウットリ
商人「さて…僕の部屋で影武者を待つとしよう」
僧侶「私は待ってれば良いですかね?」
商人「まぁ一緒に行こうか…おいで」
僧侶「ほい!」
『商人ギルド地下』
スタスタ
僧侶「戻って来たですね?」
盗賊「よう!上手く連れ帰ってきたぜ?」
女オーク「僧侶さん?影武者さんに回復魔法を」
僧侶「はいなー!!」
商人「あぁ…酷いな」
剣士「僧侶?回復魔法は程ほどに…老化してしまう」
僧侶「分かったです傷が塞がる所で止めるです」
商人「影武者は大丈夫かな?」
剣士「睡眠で幻惑されて居るから夢だと思う筈」
商人「良かった…」ホッ
盗賊「何もしゃべっちゃ居なかった様だ…エライ苦痛だったろうな」
商人「悪い事をしたな…」
盗賊「なぁ?しばらくハテノ村で静養ってのはどうよ?」
商人「彼女がどう判断するかだね…自分でやりがいを持ってくれていたんだ」
盗賊「しかし自分で身を守れないのは良く無ぇ」
商人「うん…そうだね…無理をさせていた様だ」
盗賊「まぁ硫黄がやたら高く取引き出来て安定だ…闇取引はもう良いだろ」
商人「分かったよ…硫黄売買に切り替えて行く」
僧侶「ハテノ村で硫黄の取引所を作るのはどうでしゅか?影武者さんに任せる感じで」
盗賊「おーそういう感じよ」
商人「ふむ…今回の事件で商人ギルドマスターは死んだ事にするか」
盗賊「次のマスターは俺がやる…この部屋は俺のもんだ」
商人「まぁ従業員が盗賊の家族がほとんどだしそれが良いね」
盗賊「決まりだな?告知出して来るわ」タッタ
『翌日』
盗賊「何ぃぃそらマジか!!ローグが豪族のお偉いさんになってるだとぅ!?」
商人「剣士はローグに会ったんだね?」
剣士「うん…」コクリ
盗賊「俺ぁってっきり女戦士と一緒に幽霊船乗ってると思ってたわ…」
商人「盗賊…僕が聞いた話では幽霊船にはスケルトンやゾンビが乗って居るらしい」
盗賊「じゃぁ女戦士の船はどっか別の所にあんのか」
商人「さぁ?…只幽霊船で海賊王の娘を目撃したという話もある」
剣士「盗賊さんと商人さんが関わって居なさそうで安心したよ」
盗賊「ローグとはあれっ切り会って無ぇ…しかし信じられん」
剣士「爺いじが言うにはビッグママは誰とも話をしなくなったって…」
盗賊「まぁ海賊が離散したのは分からんでも無いがローグまでとはな」
剣士「済んだ話はもう良いや」
盗賊「うーむ仕方無ぇわな?」
剣士「ところでこの異常な寒さなんだけど…」
商人「2~3日前からなんだよ…流氷が流れているとも聞いた」
剣士「海に流氷?…どこから流れて来るの?」
盗賊「未踏の地からここまで流れて来るのは考えにくいが…」
商人「暖を取りに皆地下に降りちゃって商売あがったりさ」
剣士「偏西風も凄い弱いんだ」
盗賊「そら海が寒いと偏西風が弱くなる…冬だ」
剣士「ハテノ村で大雨も降ってて全体的におかしい」
ドタドタ
僧侶「てーへんだてーへんだ!!」スタタ
商人「ん?どうしたんだい?」
僧侶「海で流氷が沢山西の方に流れてるです」
商人「流氷が沢山?」
僧侶「望遠鏡で見えるでし」
盗賊「ちっと見に行くか」ダダ
『商人ギルド屋上』
ヒュゥゥゥ
盗賊「寒ぶっ…」
商人「目視でも見える…ありえない」
女オーク「オークシャーマンの呪術で間違いないわ」
剣士「海を冷やして偏西風を止めた?」
女オーク「自然を操る力…海を冷やして南方で雨を降らせている…」
剣士「そうかオークシャーマンは船に乗って居たね…でも海を冷やすなんて…そんなに強力なんだ…」
女オーク「オークシャーマンはもう暁の使徒から力を得たと思う」
剣士「いよいよ西オークが東オークに攻める時が来たと言う事だね?」
商人「対岸の火事だけど…備えないといけないな…物価が一気に変わる」
剣士「商人さん?エリクサーはどうなったの?」
商人「そうだ!樽一杯分は確保出来た」
剣士「早くホム姉ちゃんを目覚めさせてどうすれば良いか聞こう」
商人「そうしよう…その前に盗賊!物資の売買リストを今から作る」
盗賊「んん?寒さに備えるんか?」
商人「そうだよ…石炭の売りは停止買いに回る…それから食料の備蓄だ」
盗賊「分かったまとめて置いてくれ」
剣士「…」---この力---
この力は世界を滅ぼすかもしれない
地軸を移動させたのは多分オークシャーマンだ
そうやって古代文明を封じたんだ
僕達が介在する余地の無い力…怖い
『商人ギルド地下』
剣士「じゃぁ女オーク!エリクサーの樽を先に飛空艇に運んでおいて」
女オーク「任せて」
剣士「直ぐに行くから飛空艇で待ってて」
女オーク「わかったわ…」タッタ
影武者「う~ん…はっ!!」パチ ガバ
商人「あ!目を覚ましたね?気分はどう?」
影武者「僕はどうして寝ている?…あれ?…なんだ?どうなった?」
商人「混乱しているかい?」
影武者「取引は…」
商人「もう良いんだ…ちょっと事情が変わってね…僕の代わりにハテノ村へ行って欲しいんだ」
影武者「え?…はい」
商人「寒冷化の影響が大きく出そうでね…向こうで取引所を君に任せたいんだ」
影武者「分かりました…商人さんはどうされるのですか?」
商人「僕は用事でしばらく留守にする…商人ギルドは一旦盗賊に任せる事になった」
影武者「僕は左遷…ですか」
商人「違うよ…硫黄と石炭の取引が最も重要になる…そっちを上手く取りまとめて欲しい」
僧侶「ハテノ村は人手が足りないです…来て欲しいです」
商人「そういう事なんだよ…そちらへの物資の流通は盗賊が運ぶ…やってくれるね?」
影武者「はい…わかりました」
商人「それから影武者はフードを脱いで活動してくれ…僕は豪族にマークされてしまってね…一旦ターゲットを逸らさせたい」
影武者「なるほど…それで盗賊さんをここに置く訳ですね?」
商人「そういう事だよ…僕も雲隠れする」
影武者「承知しました…任せて下さい」
商人「じゃぁ盗賊にこのメモを渡して置いてくれ…僕は剣士と一緒にしばらく留守にする」
影武者「分かりました…お気を付けて」
商人「じゃぁ剣士!行こうか」
剣士「飛空艇まで案内する…付いて来て」
商人「影武者…あとは頼む」タッタッタ
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『商人ギルド』
”ギルドマスター交代による売買方針の変更…以下レート”
なんだこの告知…取引レートが変わってるぞ
アレだ昨夜の騒ぎでギルドマスターが死んだらしい
てことはばら撒かれた金の回収に掛かってるってか?
ザワザワ ザワザワ
受付「盗賊!取引再会するよ?」
盗賊「おう!俺は飛行船に物資乗せに行くから任せたな?」
受付「はいはい邪魔だから早く行って!!はい皆さ~ん取引開始!!」
受付「商船の受付はあっち!商隊はそっち!競売はここに持って来てぇ!!」
ザワザワ ザワザワ
おぉ魔石の売りがある!買いだ買い!
古代の遺物ってのもあるぞ…すげぇ
硫黄がくそ高けぇ…
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『飛行船』
ゲヒゲヒ メェェェ
盗賊「家畜はまだ外に出しといてくれぇ…」
作業員「あいよ!!」
僧侶「盗賊さん何か手伝える事あるですか?」
盗賊「んあ?なんだ影武者も一緒なのか」
影武者「急に仕事が無くなって暇になったのさ…この飛行船でハテノ村に行くんだね?」
盗賊「明日な?」---気丈な嬢ちゃんだこと---
僧侶「私もお酒飲むつもりで来たですけどヒマでし!」
盗賊「ほんなら影武者の服でも新調して来い…商人はマークされてるって言ってただろうが」
僧侶「買い物でしゅね?お金無いです」
盗賊「ほらよ!」ピーン
僧侶「ありーーー」パス
影武者「ハハお金はちゃんと持ってるんだ」
盗賊「じゃ返せよ!今晩の飲み代なんだ」
僧侶「おおお!!じゃ私がおごるでどうでしゅか?」
盗賊「ヌハハそら良いな?」
僧侶「影武者さん!私が服選ぶでし…買い物行きましょう」
影武者「衣類は地下の方が安いんだ…案内してあげるよ」
盗賊「あぁそうだそうだ!チカテツ街道の6番にな?孤児が集まったギャング集団が居んのよ」
影武者「それは僕が出した情報だよ」
盗賊「じゃぁ話が早えぇ…連れて来い」
影武者「彼等と取引するなら対価を用意しないといけない」
盗賊「白狼の盗賊団に入れてやるとでも言え」
影武者「それじゃ空取引になる」
盗賊「うるせぇ!後は自分で考えてくれ…俺は忙しいんだ」ゴソゴソ
影武者「さてどうする…」
僧侶「ピーンと来たでし!私と影武者さんで白狼になるです…そして私がギャンクと勝負するでし」
盗賊「ヌハハ面白れぇ!!ちびっこの白狼だな?俺も見たいぞ」
影武者「賭けで勝つ訳か…う~ん」
盗賊「うだうだ言って無いでさっさと行って来い!荷物積み終わったら俺も見に行く」
僧侶「影武者さん白狼の装備を買いに行きましょう」グイ
影武者「あぁ…」
スタタタ
盗賊「…」ニヤ ---まぁ頑張んな嬢ちゃん---
『チカテツ街道6番』
ピチョン チューチュー
僧侶「人が少ないでしゅね…」ヒソ
影武者「ここはギャングが幅を利かせていてね…衛兵も手を焼いているらしい」ヒソ
僧侶「怖くないですか?」
影武者「僕は慣れている…なぜなら僕はここに住んで居たから」
僧侶「そうだったんですね」
影武者「僕の居場所はゴミの中さ…ゴミを食べて暮らしていたんだ」
僧侶「誰かくるでし」
影武者「僕が取引をするから君は黙ってて」
少年「おやおや…白狼ごっこかな?舐めた事すんじゃ無ぇよ!」チャキ
影武者「美味い話を持って来たと言ったらどうする?」タジ
少年「うるせぇ!身ぐるみ全部置いて行ってもらう…おい!!囲め!!」
悪ガキ共「逃げ道塞いだよ~ん!へへへへ」スタタタ
少年「さぁその舐めた格好を置いて行ってもらおうか」チャキ
影武者「ハハ話を聞く気は無いか…飛んだ見込み違いだったかな?小僧…」---挑発に乗るか?---
少年「小僧だと!!俺より小さいクセに舐めた口利くんじゃ無ぇ!!」
影武者「ズバリ言う…本物の白狼に興味は無いか?」
悪ガキ共「本物!?」ヒソヒソ
少年「お前みたいなチビが本物な訳無いだろう!おい!!身ぐるみ剥ぐぞ」ダダ ブン
僧侶「…」カキーン
少年「な…武器!」タジ
影武者「ハハハハハ話を聞く気になったかい?僕達は取引をしに来たのさ」---よし!---
少女の声「止めな!!」
少年「姉御…こいつ等武器持ってる」
影武者「なんだやっと真打の登場か…姿を見せたらどうだい?」
オークの子「私が相手になる…」スタスタ
影武者「…」---ハーフオーク---
僧侶「…」ゴクリ
オークの子「仲間になりたいなら手順が違うよ」スラーン
影武者「逆さ…君達を白狼の一味に誘うつもりなんだ」---不利だ---
オークの子「引き換えに何を?」
影武者「家族」
オークの子「家族なんか要らない!私達はここで生きて行ける!それにあんた達になんか負けない」ダダ ブン
僧侶「あわわ…」カキーン
オークの子「皆!勝てる!!戦って!!」ブン ブン
カキーン カキーン グサ
僧侶「痛っ…」タジ
少年「降参しろぉ!!」ダダ ブン
影武者「うっ…」ガシ
オークの子「今!!」
悪ガキ共「うわぁぁぁ!!」ダダダ
リリース
盗賊「そこまでだ…」チャキリ
オークの子「うぅぅぅ…」ジタバタ
少年「姉御ぉ!!」
オークの子「隠れてるなんて卑怯…」ドン!!
オークの子「はぅぅぅ…」ドタリ
盗賊「おい僧侶!!お前手加減してっと足元すくわれるぞタワケ!」
僧侶「子供相手に戦えないでしゅ…」
盗賊「おい!クソガキ共良く聞け!!お前等の姉御は預かった…助けて欲しけりゃ明日の朝までに一番デカイ飛行船に乗れ」
少年「なにぃ!!」
盗賊「殺しゃし無ぇから黙って従え…」
盗賊「おい!衛兵が来る前に戻るぞ?」タッタッタ
僧侶「はいな!!」スタタ
影武者「分かった…」スタタ
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『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
盗賊「遅せぇなアイツ等…」グビ
店主「いらっしゃいませ…お二人ですか?」
僧侶「盗賊さん居たぁ!」
盗賊「遅せぇよ…酒がマズくて帰ろうかと思った」
店主「お飲み物は?」
僧侶「盗賊さんと同じで良いでし」
店主「かしこまりました」
盗賊「ほんで?例の子はどうだ?落ち着いたか?」
僧侶「やっと理解したです…明日他の子供達来るですかね?」
盗賊「来なきゃ例の子を返すだけよ…まぁ家族愛を試してる」
僧侶「そうだったんですね」
盗賊「もしかすると今晩救出に来るかもな?」
僧侶「そしたらどうするですか?」
盗賊「ほんなもん簡単だ…とっ捕まえて檻の中よ」
僧侶「なんか可哀そうでし」
盗賊「孤児ってのはな…愛が欲しいんだ…お前がかわいがってやれ」
影武者「…僕間違ってた」
盗賊「んん?」
影武者「取引ばっかり考えてた…空取引なんか成功する訳ないと思ってた」
盗賊「あの場合ちっと強引でも良いんだよ…要はあいつらの家族愛を取引に利用したんだ」
影武者「うん…それに気が付けなかったんだ…損得とはちょっと違う」
盗賊「まぁ飲め!!爺いの説教なんかクソくらえだろ?」
影武者「ハハそうだね…でも勉強になったよ」
僧侶「影武者さんはあの子供達と面識無かったのでしゅか?」
影武者「僕は人前に出られなかったんだ…遠目には見て居たけど僕は孤独だったよ」
盗賊「俺も天蓋孤独だったぜ?ガキん頃は」---俺ら皆孤児なんだよな---
似た物同志やっぱ集まるもんだ
俺らもあのギャングと大した変わらん
僧侶「ねぇ聞いてるですか?お金に余裕無いです」
盗賊「金貨お前にやったろうが…もう使っちまったのか?」
影武者「良いよ良いよ僕が出すから…」
盗賊「おぉ!?金持ちが要るじゃ無ぇか…酒だ酒!!お代わりくれぇ!」
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『飛行船』
ヒック シクシク
盗賊「うぃぃ…」ヒック
シュン グサ!
盗賊「うぐっ…にゃろう…やるじゃ無ぇかお前」
少年「うわぁぁぁ!!」ダダダ ブン
盗賊「うむ…お前にゃ見込みがある」グイ
少年「放せぇ!!」バタバタ
盗賊「それで良い…だがな?もうちっと訓練が必要だ」ヒック ヨロヨロ
少年「姉御ぉ!!ゴメン失敗した!!」
盗賊「いやお前は成功した…見ろ…俺の腹にしっかり矢が刺さってる」タラー
少年「くぅっ…」ジタバタ
盗賊「見てろ…こうやって治す」ズボォ ボタボタ
少年「はっ…血が…」
盗賊「コレだ…傷口にこいつを入れてぶっ叩く訳よ…あら不思議…止血の完了」ドン プチ
オークの子「少年!大人しく飛行船に乗って…この人たちは本物…他の大人と違う」
少年「姉御…だったらどうして檻の中に」
盗賊「アホか…簡単に逃げちまうだろうが…痛つつつ」ヨロ
少年「何処に連れて行く気だ!?」
盗賊「秘密のアジトよ…ほんでお前等を鍛える…俺みたいなムキムキの戦士にな?」
少年「姉御信じて良いの?」
盗賊「あぁぁぁうるせぇうるせぇ…お前も檻に入ってろ!」ドン ガチャン
悪ガキ共「あぁぁ少年まで…」シクシク
盗賊「ふぅぅぅ…肉あんぞ?食え」ポイ
悪ガキ共「…」ジュルリ
盗賊「芋の方が良いか?生なんだが…」ポイ
少年「…」ジュルリ
盗賊「ちっと俺は寝る…その辺のもの適当に食って良いぞ…夜が明けたら出発だ」ウトウト
悪ガキ共「姉御…チャンスだよ…逃げよう」ガチャガチャ
オークの子「今の内に皆食べて…お腹一杯」
悪ガキ共「姉御は?」
オークの子「見張ってる…最後で良い」
盗賊「んがぁぁ…んががが…ぐぅ」zzz
悪ガキ共「ひぃ!」ビク
オークの子「大丈夫!寝てるから」
ガブガブ モグモグ ムシャムシャ
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『翌朝』
チュン チュン
盗賊「んがぁぁ…すぴーーー」zzz
僧侶「盗賊さん…コレどういう状況なんでしゅか?」ユサユサ
影武者「ハハハギャングは全員乗ってる様だね?随分ちらかされたなぁ」
僧侶「寒く無いんですかね?私炉に火を入れるです」カチカチ シュボ
盗賊「んあ?」パチ
僧侶「起きたですね?もうすぐ朝でし…」
盗賊「危ねぇ!寝過ごす所だったぜ…」ガバッ
僧侶「飲みすぎでし」
盗賊「炉は俺がやるからガキ共ちょっと寄せといてくれ…まだ人が乗る」ガッサ シュゴーー
僧侶「はいなー!!」
影武者「じゃぁ移民の人案内してくる」タッタ
盗賊「ガキ共は腹膨れたら寝ちまったみたいだな」
僧侶「もう荷物入れないですか?」
盗賊「おう!扉閉めといてくれ」
僧侶「よいしょー」バタン
影武者「皆さん荷物持って乗って下さい…2階部分が居室になります」
ドタドタ
盗賊「よーし!全員乗ったな?下の階が荷室になってっから要らん荷物はそっちに置いてくれ」ヨロ
盗賊「飛んでる間デッキに出ても構わんが落ちん様にだけ注意してくれな?」フラ
盗賊「目的地はハテノ村…大体2日で到着する」
盗賊「ちっと素行の悪いガキが一緒に乗ってるが出来るだけ問題おこさない様に頼む…じゃ飛ぶぞ?」グイ
フワフワ
盗賊「僧侶!縦帆開いてくれ!分かるな?」
僧侶「はいなーー!!」グイ バサバサ
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『飛行船』
ビョーーーウ バサバサ
盗賊「僧侶!ブタの檻に入ってる2人のガキを出しておいてくれ」
僧侶「ほーい!」スタタ
影武者「あれ?盗賊さん腹から血が…」
盗賊「あぁコレな?昨夜あのガキ共に矢を撃たれてよ…応急処置はしたがちと傷開いたな」
影武者「痛くないの?」
盗賊「こんなもん舐めときゃ治る…あいつら毒使う事も知らん」
影武者「薬草を持ってるよ…処置しようか?」
盗賊「気が利くな?」
影武者「これくらいなら僕にも出来るさ」ガサガサ
盗賊「そろそろお前もフード脱いだらどうだ?」
影武者「髪が生え揃って居ないんだ」
盗賊「バンタナは知ってるな?海賊共が使ってるやつ」
影武者「うん…」
盗賊「荷室のどっかに入ってた筈だ…それ使え」
影武者「あぁ…」
盗賊「まぁ嫌なら良いけどよ…表情分からんと気味が悪い…ガキ共に距離置かれるぞ?」
影武者「自信が無くてね…」
盗賊「少し顔見せてみろ…俺はお前が誰なのか分からん」
影武者「じゃぁ少しだけ…」ファサ
盗賊「何だ普通じゃ無ぇか…顔出しとけ」---心に闇を抱えてるな---
影武者「恥ずかしいよ…」ファサ
盗賊「おい!僧侶!!オークの子を連れて来い」
僧侶「ほーい!!来いだってさ…おいで」グイ スタタ
スタスタ
オークの子「…」ウツムキ
盗賊「…どう思う?」
影武者「え?どう思うって…普通だよ」
盗賊「そうだな?普通だ…でもよく見ろ」
影武者「え?何?」
盗賊「なんでうつむくと思う?」
影武者「それは…見られたくないから?」
盗賊「そうだお前等は同じなんだ…内に籠るな…さらけ出せ…前を見ろ」
影武者「…」ファサ
オークの子「…」チラ
盗賊「良いか?はっきり言ってお前等2人共俺から見りゃ普通な訳よ」
影武者「いや僕の場合髪の毛がまだ生え揃って…」
盗賊「そりゃバンタナで隠せば良い」
影武者「うん…」
盗賊「それでも見られたくないと思う理由は心ん中になんかトゲが刺さったままなんだ…抜いてみないか?」
影武者「抜く?…」
盗賊「内に籠ってちゃいつまでたっても抜けんぞ?ちっと表に出て見ようぜ?」
影武者「表に…」
盗賊「おい!僧侶!クソガキどもを全員デッキに連れてけ」
僧侶「外寒いですよ?」
盗賊「まだそんな高度上がって無ぇから海が見えんのは今の内だ」
僧侶「分かったでしゅ」スタタ
盗賊「まぁ影武者もちっと風に当たって来い…内に籠るのがアホみたいに感じるぞ?」
影武者「うん…」スタ
盗賊「おいおい一人で行くな!そいつも連れてけ」
オークの子「自分で行ける」スタ
盗賊「なんだ喋れるじゃ無ぇか…まぁ好きにして良いから!トゲ抜いて来い」
うわぁ!雲と同じ高さだ!
火山だ!火山が見える!
あれがキ・カイ?小さい…
ヒュゥゥゥゥ バサバサ
オークの子「アンタ…取引きしないかい?」
影武者「ハハ面白いじゃないか…何を取引する気だい?」
オークの子「私らの仲間に興味は無いかい?入れてやっても良い」
影武者「因みに聞いておく…引き換えに何を?」
オークの子「バンタナ取って来てやるよ…」
影武者「…」---心を掴まれる---
オークの子「フフ…」
影武者「…」ファサ
オークの子「逃げる気だね?」
影武者「寒いだけさ…」
オークの子「どんぐり居るか?」
影武者「ハハ僕も舐められた物だ…そんな物…」グイ
オークの子「食えよ」グイ
影武者「ムグ…」---ゴミの味---
オークの子「私等それ食って生きてんだ…その味知ってるだろ?」
影武者「君は僕を知って…」
オークの子「仲間になる手順を教えてやる…まずゴミを食ったことが有るか無いかさ」
影武者「ハハ負けたよ…それにしてもマズイ」
オークの子「ごちそうだよ」
盗賊「お~い!!誰か飯作れぇ!!腹減った」
僧侶「はいなー!!皆寒いから中はいるでし!!」ドタドタ
盗賊「…」チラリ
こいつらにはこいつらの物語がある
次の時代の主役だ
俺らはただ魔王を倒せば終わりって訳じゃ無ぇ
こいつらの中に居る魔王も退治し無ぇと意味が無い
まだ死ね無ぇなぁ…
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『名もなき島_古代遺跡』
ウィィィン プシューーー ポコポコ
商人「錬金術で組み合わさる訳じゃ無いのか…」
剣士「ホム姉ちゃんの部品が組み合わさった…良いの?これで?皮膚が無い」
商人「皮膚の部品は無かった…もしかすると足りて居ないのかも…」
剣士「このままじゃ可哀そうだよ…」
商人「この手順を記録する」カキカキ メモメモ
通りで錬金術では完全なホムンクルスが造れない訳だ…
生体の完成は多分自己治癒だ
剣士「ゾンビみたい…」
商人「ちょっと思い違いが在ったみたいだ…錬金術ですぐに完成すると思っていたけど…」
剣士「時間が掛かるんだね?」
商人「多分…この状態から自己治癒で皮膚と毛髪が生成されるのはもう少し先だね」
剣士「どのくらい掛かるんだろう?」
商人「ラヴ!どれくらいかかるか分かるかい?」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「一晩間を置いて治癒の具合を見て見ないと推定出来ないな」
商人「でもどれだけ時間が掛かるにせよ…一先ず成功だ!」
『小舟のある砂浜』
ザザー ザブン
女オーク「剣士!?何処に行ったの?剣士!?」
剣士「あぁ…ここに居るよ」
女オーク「居ないから探したわ…何してるの?」
剣士「星を見てるんだ…おいでよ」
女オーク「望遠鏡で?」
剣士「いや望遠鏡で見るのは意味が無かった…見てよ今日は月が無い…空も澄んでる」
女オーク「本当ね…こんなに星が…」
剣士「それで望遠鏡で見て見たけど星は星のままさ…このまま見て居た方が綺麗だ」
女オーク「海にも星?」
剣士「海の中にもね…沢山の虫が居るんだよ?あの虫は光るんだ…見てて?ほい!従え!」
ユラー キラキラ
女オーク「あなたが操って?」
剣士「すごいでしょ?」
女オーク「ウフフ…」
剣士「あの星にも誰か住んでるのかな?行ってみたいなぁ」
女オーク「どうして光るのかしら?」
剣士「きっと太陽の反射だよ」
女オーク「こんなに沢山?」
剣士「何個あるんだろうね?」
女オーク「虫の光は何個あるの?」
剣士「ハハハ数え切れない…そうか星も数え切れないね」
女オーク「虫はどうして光を?」
剣士「光を使って他の虫を呼んで居るんだよ…虫は光を目指して飛ぶからね…」
女オーク「水の中で飛ぶっておかしくない?
剣士「水の中でも同じさ…」---あれ?---
光を見て飛んでる…
そうだ花粉…いや命の種を持ったまま飛ぶんだ
命を運ぶのは虫…
…なんか引っかかる
もしかして虫が命を運ばなくなったのか?
女オーク「剣士!じゃぁ先に帰って待ってるから…遅くならないでね」
剣士「ん…うん…もう気が済んだから行くよ」
女オーク「じゃぁ一緒に…ウフフ」
『翌日_地下』
スタスタ
剣士「商人さん!」ユサユサ
商人「ハッ…」パチ
剣士「書き物しながら寝てたんだw」
商人「ホムンクルスは!?」スタ
剣士「昨日のままだよ…あ!違うコレ神経かな?何か成長してる」
商人「よし!遅いけど確実に成長してる…よしよしこれで僕が居なくなってもホムンクルスは生き延びる」
剣士「え!?商人さんはホム姉ちゃんに会いたいんじゃないの?」
商人「会いたい…でもそれは二の次さ…ホムンクルスが生き延びれば僕はこの命なんか要らない」
剣士「ダメだよ命を要らないなんて言ったら…命は生かされてるんだから」
商人「ハハそうだね…精一杯守るさ」
剣士「それで今日からどうする?」
商人「しばらく間が必要なのは分かった…危険を承知でオークの地まで行こう」
剣士「お?ウンディーネの居る所だね?」
商人「場所は分かってる…まず様子が見たい」
剣士「おけおけ!空から見るだけなら大丈夫さ…ハイディングもあるしね?」
商人「準備するから少し待って」
剣士「うん…」コロン
チャプン
剣士「ん?瓶の中にエリクサー?…そして外部メモリ」
商人「あぁぁそれに触らないで」
剣士「商人さんコレもしかして…」
商人「僕に何か有ってもこれで確実にホムンクルスが蘇る…まぁ保険さ」
剣士「ねぇ止めようよそういうの…死神はそういうのに敏感なんだよ」
商人「死ぬ気は無い…只僕達の力ではどうしようも無い事もある…君も見ただろう?海を漂う流氷を」
剣士「商人さんも気付いたんだね…オークシャーマンの力を」
商人「だから保険を掛けてるのさ…死ぬ気なんか全然無いしもう一度彼女に会いたい…最善を選んでるだけだよ」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「分かってる…さぁ行こう!」
-------------
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『数日後_東オーク領上空』
シュゴーーーー バサバサ
剣士「大洪水の跡だ…ほとんどの村が水に浸かってる」
商人「セントラルで起きた津波と状況は似て居そうだ…雪が降って居るのもね」
女オーク「酷い…助けないと」
剣士「君は東オークと戦って居たんじゃないの?」
女オーク「オーク同志戦いたいなんて誰も思ってない…命令に背けないだけなの」
商人「東オークにはオークシャーマンは居ないのかい?」
女オーク「オークシャーマンは西オークにだけ居る…オークシャーマンに従わないオークが東オーク」
商人「なるほど…」
剣士「東オークの肌が青いのもオークシャーマンの呪い?」
女オーク「そうよ…命令に従わないオークに呪いが掛かるの…強化も無いから弱い」
商人「弱い?ならどうして勢力が硬結してる?」
女オーク「西オークは数が少ない…東オークはすごく多いわ」
商人「じゃぁほとんどのオークがオークシャーマンに従って居ない訳か」
剣士「どうして?オークシャーマンは寛容なんじゃなかったっけ?」
女オーク「オークシャーマンはオークの裏切り者だから」
商人「ハハーン…力を独り占めして独立って事だ」
女オーク「オークシャーマンがウンディーネを欲しがらなければ戦争は起きない」
商人「逆に東オークはウンディーネを渡したら戦争終わるよね?つまり戦争を起こしてるのは東オークだ」
女オーク「え?」
商人「戦争を終わらせたいならウンディーネを渡せば良いだけ…その判断が出来ないから沢山のオークが犠牲になる」
剣士「東オークがウンディーネを守る理由は?」
女オーク「それは…私は西オークだったから分からない…オークの神を守るのは理由にならないの?」
商人「う~ん…なんか逆な気がするなぁ…勘だけど」
剣士「ねぇどうしてオークシャーマンは自分に従わないオークを従わせる呪いを掛けない?なんかやり方が半端だ」
商人「そうだね…あれだけ力があるなら強制的に従わせれば良いだけだね?おかしい」
女オーク「それは…」
剣士「オークシャーマンは従わないオークも許してる…わざわざ半端な呪いでなにか導いてる」
女オーク「人間と結ばれれば呪いが解ける」
商人「それは人間との交配の促進だ精霊ウンディーネも恐らくそれを支持してる」
剣士「もしかして東オークは純血ばかりなのでは?」
女オーク「そうよ?でも西オークも強いオークはみんな純血…ハーフオークは大体野良オークね」
商人「それだね?交配を推進してるのが西で否定しているのが東だ…でもどちらも人間と結ばれれば呪いが解ける」
剣士「確か純血のオークは体も大きくて強かったね?それを守りたいオークが東なんだね?」
女オーク「大体そうよ?…でもどうしてウンディーネと関係が?」
商人「簡単さ…ウンディーネは交配の促進を加速する…だから渡したく無いんだ…純血を守る為にね」
剣士「人間の生活圏から遠く離れて居るのもそういう理由だろうね」
商人「やっぱりウンディーネのあるべき場所は西オークだね…東オークがそれを邪魔してるんだ」
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『東オーク砦』
シュゴーーー バサバサ
商人「多分あの砦の何処かに古代遺跡が有る筈だよ…」
剣士「雪のせいで望遠鏡が良く見えない…」
商人「ハイディングしたまま調査出来ないかな?」
剣士「危ないなぁ…オークはエルフと同じで狭間を見破る」
商人「ええ!?そうだったのか…」
剣士「ママは良く爆弾で注意逸らせて調査してたけど必ず時間を決めて行動したんだ」
商人「どれくらいの時間?」
剣士「1分か2分…それ以上かかると気付かれる」
商人「短すぎる…」
剣士「あと商人さんは足が遅すぎるからダメだよ…行くなら僕一人」
女オーク「私は?剣士一人は危ない」
剣士「君もダメ…足音が消せない」
商人「参ったね」
剣士「僕は睡眠魔法が使える…ハイディングと合わせて行けばなんとかなるよ」
商人「それなら僕も行けるじゃ無いか」
剣士「調査にどのくらい掛かるか分からないし…オークにどの程度利くのかも分からないんだ」
女オーク「私の睡眠時間は1時間から2時間ね」
商人「直ぐに起きる可能性が高いんだ…」
剣士「うん…僕が一人で居りて調査終わったら光で知らせる…だから上空で待機しておいて欲しい」
女オーク「飛空艇の操縦は任せて」
商人「じゃぁ僕は見張るかな」
剣士「詠唱を始める…降下して行って合図したらリリースして」
女オーク「うん…」グイ バサバサ
剣士「アブラカタブタチチンプイプイノプイメスメライズ…今!」
女オーク「リリース」スゥ
オーク「ウゴ!?」
剣士「広範囲睡眠魔法!」モクモクモク
剣士「そのまま高度上げて上空で旋回!僕は飛び降りる!」パカッ ピョン シュタ
女オーク「商人さん扉閉めて!」グイ
シュゴーーーーー バサバサ
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『1時間後』
商人「遅いな…ハイディングしたままだったとして数時間は調査してる筈」
女オーク「まだオークに動きがないから大丈夫よ…」
商人「しかし手薄だね…10人程度しか見えない」
女オーク「まさかいきなり攻めて来るなんて思って居ないでしょう?」
商人「こんなに手薄ならオークシャーマンが来れば良いのに」
女オーク「西オークには気球が1台しか無いの…それもフィン・イッシュから貰った物だけ」
商人「あーなるほど…ハイディングも出来ないか」
女オーク「船も1隻しか持って無い」
商人「それもフィン・イッシュからの船?」
女オーク「そうよ…西オークには船を作る技術も何も無いから」
商人「東オークは?」
女オーク「同じ…オークは物を作るのに長けてない」
商人「なるほどね…エルフも同じだな…船も気球も無い」
女オーク「だから人間に憧れる…本当は人間が大好き」
商人「それは西オークの発想なんじゃないの?」
女オーク「そうかもしれない…でも人間が好きなオークは沢山居る」
ドコーーン!!
女オーク「え!?」
商人「ワームだ!!マズイ何か起こってる!!」
女オーク「行く!!」グイ シュゴーーーー バサバサ
商人「剣士が見えない…どこだ!?」
女オーク「オーク達が一斉に動き出した」
商人「西だ!!西方向に向かってる!!」
女オーク「こっちにも気付かれた…」
商人「まさか何か撃って来る?…あのオークでかいな…まるでトロールだ」
女オーク「商人!!ロープ垂らしておいて!!」
商人「分かった!」スルスル
シュン バキバキ!
商人「うわぁぁ!!でかい矢が貫通した…」
女オーク「純潔のオークが使う弓矢は槍よりも大きい」
商人「応射しないとオークの足が止まらない…」
女オーク「オークの足を止めて!剣士が危ない!」
商人「当たれぇ!!」バシュン バシュン
女オーク「居た!!間に合う…」グイ シュゴーーーー
商人「ダメだオークが止まらない…」バシュン バシュン
女オーク「剣士がロープ掴んだら教えて!逃げる!」
商人「もう少し…もう少し…掴んだ!!飛んで!!」
女オーク「上がって!!」グイ バサバサ
シュン グサ!!
商人「あああああ剣士に当たった…」
女オーク「商人操縦変わって!私が引き上げる!」ダダ グイ グイ
商人「どど…どうすれば?これか?」グイ シュゴーーーー
女オーク「剣士!!剣士!?」グイ グイ
剣士「うぅぅぅ…」ボタボタ
女オーク「掴まって!」グイ ギュゥ
剣士「ハハ…ギリギリせーふ」ハァハァ
女オーク「矢が背中まで貫通してる…どうしよう」オロオロ
剣士「線虫してある…そのまま抜いて…ぅぅぅ」ポタポタ
女オーク「ふんっ!」ズボォ ブシュー
商人「血が噴き出して…」
剣士「強く押さえて置いて?直に塞がる」
女オーク「…」ギュゥゥゥ
商人「エリクサーが少しある…飲んで」クィ
剣士「その味キライなんだぁ…うげぇ」ゴク
女オーク「もう危険な事は禁止!これは命令!」プルプル
剣士「ハハちょっと調子に乗り過ぎた…反省してる」
商人「何があった?」
剣士「これみて?オークの旗印…これ持って帰って来た」バサ
商人「ええ!?」
剣士「ダンゴムシだよ…なんでか分かるよね?」
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『帰路』
シュゴーーーー バサバサ
商人「…という事はやっぱり石造になってる訳だ」
剣士「器に横たわって石化してた…その他の機械は全部風化しでグズグズだったよ…ガラスの容器も部品も無い」
大きなオークはね…石造に花を添えてお祈りしたまま寝て居たよ
もう分かった…オークは純粋に石造になったウンディーネが蘇るのを信じてる
たったそれだけ…それを単純に奪われたくないその一心だ
商人「純血のオークは石造になったウンディーネを何千年もただ守ってると…」
剣士「うん…それでオークシャーマンも同じように蘇らせたい一心なんだよ…ただ少し噛み合ってない」
商人「それで何年も争い合ってるなんて…」
剣士「きっともうあの石造が蘇らない事を知らないんだよね…なんか無駄な争いだ」
女オーク「教えてあげれば戦争は無くなる?」
剣士「そうだと良い…オークシャーマンは僕達の言う事聞いてくれるかな?」
女オーク「分からない…」
商人「ホムンクルスを直接連れて行けば良いかも知れないけど…なんかまた危険に晒しちゃうな」
剣士「…それと遅くなった理由はね…遺跡の中に石板がいくつかあったんだよ」
商人「何か分かったんだね?」
剣士「オークはね…違う星から来た様だよ」
女オーク「え!?」
剣士「この飛空艇みたいな物に乗って別の星から来た画があった」
商人「オークの起源か」
剣士「東オークが石造を守る理由はさ…そこに帰りたいんじゃないかな?それを信じてるんだと思う」
商人「守り通す動機はそれか?…」
女オーク「知らなかった」
剣士「そしてこの旗印だよ…きっとママが関係してる」グッ
女オーク「西オークの旗印にもダンゴムシが描かれているわ」
剣士「船に旗印あったね…気が付かなかったよ」
商人「オークの起源に絡んでいるとは驚きだね…」
剣士「僕さ…オークシャーマンと話した事あるけど悪いオークだとは感じなかった」
商人「今の話からすると悪意を持って戦争してる訳じゃ無さそうだ」
剣士「僕達と同じ様に結構ギリギリな感じで一人で向き合ってる様な気がする」
商人「そうだ!西オークってどれくらいのオークが居るの?」
女オーク「200人くらいよ」
商人「え!?たったそれだけ?それで戦争なんて…」
女オーク「強化しているから他のオークには負けない」
剣士「ほらね?なんていうかな…魔女が一人で立ち向かってるみたいな感じ…でも肝心な事を知らない」
商人「分かりやすい…なるほどいろいろ秘密が解けてきた」
西オークは殆ど領土も無いから食料が無い…だから豪族からどんぐりを入手する
戦う戦士が少ないから死霊術で沢山のゾンビを操る
一方東オークは強い西オークの戦士に対抗する為にフィン・イッシュから武器を入手してる
見返りにフィン・イッシュの戦力としてオークが少し駐留している訳だ
その結果セントラルはフィン・イッシュを攻め切れない
バランスを変える可能性があるのが今や海洋をほぼ支配している豪族だ
豪族の足並みがバラバラなお陰でドワーフの国もフィン・イッシュも攻め切られないでいる
剣士「もうバランスは変わってる…オークシャーマンは古代魔術の力を得た」
商人「そうだったね…」
剣士「それからもう一つ…環境の激変でこれからどう転ぶか予測できない」
商人「それを早く止めさせたいな…北の大陸もどうなってるのか想像もつかないよ」
剣士「オークシャーマンにどうにかして事の真相を伝えたい…」
女オーク「船の行先も知らない…探しようが無いわ」
剣士「そうだ!!念話だ…魔女なら念話が出来るかもしれない…」
商人「魔女の居場所は?」
剣士「千里眼!…ダメだ見えない…多分狭間の中に居る」
商人「一先ず北に向かおうか」
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『随分前_シン・リーン城』
”…わかった…船を港町の沖へ移動させる…港町で落ち合おう”
魔女「母上…ちぃとわらわは旅に出る」
女王「では近衛を2名同行させない」
魔女「要らぬ…女戦士と情報屋を従士として同行させる故心配は無用じゃ」
女王「行先は何処へ向かうのですか?」
魔女「未だ決定はして居らぬが南の大陸じゃろうのぅ」
女王「貝殻は常に持ち歩いておくのですよ?」
魔女「分かって居る…では行って参る」ノソノソ
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『客室』
ガチャリ バタン
魔女「待たせたのぅ…出立の準備が出来たで港町まで気球で行くぞよ」
女戦士「そこでアサシンと合流だな?」
魔女「うむ…奴も妹の墓参りがしたいそうじゃ…落ち合うのは墓所じゃな」
女戦士「私はこのまま手ぶらで良いか?」
魔女「何も無いとは思うが…一応帯剣を用意させるで持って行け」
女戦士「十分…」
情報屋「あなた達2人…年を取って居なくて羨ましい」
魔女「シワくらいは取ってやっても良いぞ?」
情報屋「お願いしたいわ…なんだか釣り合わないもの」
魔女「変性魔法!」シュワワ
情報屋「副作用とかは?」
魔女「魔力に制限が出るが主には関係なかろう」
情報屋「よーし!やる気が出て来た」
魔女「体力は元のままじゃで無理はせぬ様にな?」
女戦士「フッ…狭間の中での修行で私も得をした様だ」
情報屋「本当羨ましい」
魔女「では行くぞよ…」ノソノソ
『気球』
フワフワ
近衛「ささっ…お乗りください」スス
魔女「高々港町へ飛ぶのに何台の気球を使う気じゃ…この気球だけで良い!」ノソノソ
近衛「いやしかし…」
魔女「無駄じゃ!他の気球は別の用途へ回せ」
近衛「承知!」
魔女「女戦士と情報屋は寛げい」
女戦士「ふっ…」スタ
情報屋「お言葉に甘えて…スタ
近衛「ではご安全に…出せ!」
操者「はい!!」グイ
フワフワ
『上空』
ビョーーーーウ バサバサ
女戦士「未来は今どうしている?」
魔女「どこぞを旅して居る…良い仲間が居る様じゃで心配無用じゃ…思惑通りキ・カイへ向かえば良いが…」
女戦士「そうか…私はもう10年以上も顔を見て居ない」
魔女「会うのを楽しみにしておれ…資質はわらわ以上じゃで」
情報屋「魔女を超えていると言う事?」
魔女「わらわには思いつかん工夫があるのじゃ…流石女海賊の血を引いとる」
情報屋「爆弾と魔法を組み合わせると言う様な感じなのね?」
魔女「うむ…考えもつかん様な事をやり居る…柔軟なんじゃな」
女戦士「フフ…」トーイメ
『港町』
フワフワ ドッスン
魔女「ふぅぅやっと自由の身じゃ」
情報屋「今日は領主の砦で休む?」
魔女「否…飽きたで宿で休むぞよ」
情報屋「フフ王室の縛りから逃れたのね…じゃぁ宿を取って来るわ」
魔女「アサシンが現れるまでしばし自由じゃ…宿を拠点に待つとしよう」
女戦士「では降りるぞ?」スタ
魔女「これ待て…主らに金貨を渡しておく…自由にせい」ドサ
情報屋「こんなに…」
魔女「母上に持たされたのじゃがわらわは使い道が無い…主らで自由にせい」
女戦士「頂く…上手く使わせてもらう」ジャラ
情報屋「じゃぁ私も…」ジャラ
魔女「わらわは酒場で飲んで居るでな?」ノソノソ
操者「お気を付けて」ビシ
『広場』
ワイワイ ガヤガヤ
寄ってらっしゃい見てらっしゃい!キ・カイ産のアクセサリーだよー!!
魔石あるよー!買うなら今の内だぁ!!
ミスリル製の武器に防具見てってくれぇ!!
情報屋「宿取って来たわ…女戦士は何か買うつもり?」
女戦士「いや…見て居るだけだ」
情報屋「金貨沢山貰ったのだから装備品を揃えてみては?」
女戦士「帯刀だけで構わん」
情報屋「そう?…じゃぁ私は少し買い物を…」
女戦士「港に豪族の船が2隻入っているな…騒ぎが起きねば良いが」
情報屋「騒ぎとは?」
女戦士「魔女から何も聞かされて居ない様だな?」
情報屋「え?何?」
女戦士「私は豪族に追われているらしい」
情報屋「らしい…って魔術の修行をしていたのでは?」
女戦士「ドワーフの国の領地を豪族が占領していてな…関係が悪いのだ」
情報屋「それで娘のあなたを捕らえようと…」
女戦士「どうせヘタレ共だ…気にする事でも無い」
情報屋「一応フードで顔は隠しておいた方が良さそうね」
女戦士「隠者を装っておく」
情報屋「買い物で装備を整えられない訳ね…」
女戦士「フフ…本当はもっとおしゃれをしたいのだがな」
『酒場』
ドゥルルルン♪
おい!金は出すって言ってんだろ…お前娼婦だよな?
何度言ったら分かるのじゃ…売らんと言うとるじゃろう
けっ!!なんだよ思わせ振りやがって
痛い目を見んと分からん様じゃな…去れ!
お!お!お!足が勝手に…おいおい俺は何処に向かって
店主「いらっしゃいませ…2名様で?」
情報屋「連れが先に来ているかと…」
女戦士「カウンターだな」
店主「左様で…お飲み物は如何いたしましょう?」
情報屋「ハチミツ酒で良いわね?」
女戦士「構わん…」
情報屋「2杯お願い…」ジャラリ
店主「すこしお待ちを…」スタ
情報屋「魔女!?来たわ」
魔女「おぉ!主らを待って居った…娼婦に思われて困って居る」
女戦士「目は隠しておいた方が良いのでは?」
魔女「面倒じゃ」
情報屋「魔女は素のままの姿で良いの?」
魔女「構わぬ…誰も気付いて居らん」
女戦士「肝が据わっていると言うか…まぁどうという事も無いな」
店主「ハチミツ酒をお持ちしました…どうぞ」
情報屋「どうも…」クィ プハァ
女戦士「しかし魔女…豪族を自由にさせ過ぎでは無いか?」
魔女「政務は母上じゃ…豪族と関わるなとは進言して居るが仕方ないのぅ」
情報屋「ドワーフの国が侵略を受けているとか?」
魔女「聞いて居る…追撃されぬ様にアサシンが暗躍して居るのじゃ」
情報屋「そうだったの…」
魔女「豪族の叩き過ぎは経済が回らんくなるで中々難しい様じゃ」
女戦士「あの馬鹿共が豪族とはヘドが出そうなのだが…致し方ないという事か」
魔女「詳しくはアサシンに聞いた方がよかろう…わらわは部分的にしか知らんでのぅ」
ワイワイ ガヤガヤ
おい見ろよ…カウンターに3人良い女が居るぞ?
あれは誘われ待ちだな?どうする行って見るか?
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『宿屋』
ヒソヒソ
これお代だ…又指名するな?
じゃぁ戻るわ…指名するならもっと早い時間に来ないと居ないかもしれないわ…じゃ!
魔女「…」ノソノソ
情報屋「…」スタスタ
女戦士「…」ツカツカ
ガチャリ バタン
『大部屋』
魔女「商売の女が多いのぅ…わらわは肩身が狭いわ」
情報屋「豪族からお金を搾り取るなら体を売るのが早い様ね…」
魔女「フィン・イッシュは更に多いらしいが大丈夫なんかのぅ?」
情報屋「でもお陰で経済が潤ってる所もあるし…悪い事とも言い切れないわね」
女戦士「こう何度も声を掛けられる様では酒場には行きにくい」
魔女「そうじゃな…色目を付けられるのも気色悪いで大人しゅうしとる」
アハ~ン ウフ~ン ドタバタ
情報屋「隣の部屋の声も聞こえて来るし精神衛生に良く無いわね」
魔女「沈黙の魔方陣を張るで待って居れ」ノソノソ
女戦士「さて私は横になる」ドサ
情報屋「2~3日はこれが続くのね…調査記録でも纏めようっと」
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『数日後』
ガチャリ バタン
情報屋「魔女!」
魔女「んん?」
情報屋「船乗りの噂で沖の方に幽霊船が居るって…アサシンよね?」
魔女「おぉ…やっと来た様じゃな」
女戦士「今し方墓所から戻ったのだが…もう一度行くか?」
魔女「そうじゃな…すれ違ったのやも知れぬ」
女戦士「では行こう」スック
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『街道』
ザワザワ ドタドタ
海賊王の娘が補給に来て居るらしい…手分けして探せ!
船に乗ってる奴ら叩き起こして来い
女戦士「…」スタスタ
魔女「主も肩身が狭かろう」ノソノソ
女戦士「馬鹿共に呆れている」
魔女「少し痛い目を見させてやりたいのぅ…」
女戦士「構うな…馬鹿が移る」
情報屋「宿屋で顔を見られて居るのに気付かなかったのかしら?」
女戦士「だから馬鹿なのだ…下半身で考えて居るからな」
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『ユートピアの墓』
サワサワ ヒュゥゥゥ
魔女「う~む…まだ来て居なさそうじゃ…」
情報屋「見て!豪族の船が沖に2隻」
魔女「幽霊船を探しておるんじゃろう…狭間に居るで見つかる訳無いじゃろうが…」
アサシン「リリース」スゥ
魔女「おぉ!!隠れて居ったか…」
女戦士「アサシン…私の体は堪能したか?」
アサシン「クックックお前の体に興味は無い…魔女…この体は重い…元に戻してくれ」
魔女「変性魔法!」シュワワ
アサシン「はぁぁぁ何年振りか…」
女戦士「ローグはどうした?」
アサシン「別行動だ…セントラルに潜伏している」
女戦士「私の資産は無事だろうな?」
アサシン「触って居ない…それで魔女?私は状況が読めて居ない…説明して欲しい」
魔女「ここで立ち話ものう…幽霊船に行けぬか?」
アサシン「行っても良いが少し補給もしたい…ワインを調達したいのだ」
情報屋「仕入れて来るわ?何処に持って行けば?」
アサシン「ここの東に入り江が有るのを知って居るか?そこに小舟を置いてある」
情報屋「知ってる…そこに持って行けば良いのね?」
アサシン「樽で二つ程欲しいが運べるか?」
情報屋「ここに荷車が置いてあるから大丈夫よ」
魔女「では先にその入り江へ行ってそこで話を聞かせてやろう」
アサシン「案内する…付いて来い」スタ
『東の入り江』
ザブン ザザー
魔女「…という訳じゃ…未来の先回りをするのに幽霊船がよかろうと思って居る」
アサシン「では海士島付近が一番動きやすいのだが…」
女戦士「なぜそこに?」
アサシン「船を隠す無人島が有ってな…そこが拠点なのだ」
魔女「まぁ良い…ここに居るよりは余程動き安かろう」
アサシン「それで私から質問なのだが…オークシャーマンだったか?それは西なのか東なのか?」
魔女「西も東も分からぬ…何故その様な質問をするのじゃ?」
アサシン「フィン・イッシュが武器を大量に東オークへ支援している…関連がありそうだ」
魔女「大戦が控えて居ると?」
アサシン「いや分からん…ただ武器の供給元が知れるのはフィン・イッシュが攻められる口実になる」
魔女「オークが攻めて来るとは考えにくいがのぅ」
アサシン「オークシャーマンが西側だった場合武器の供給元を断ちたい思うだろう?」
魔女「ふむ…そういえば暁の墓所に来たオークは気球で移動しとった様じゃ」
アサシン「それからアダムの件…子供が生まれない原因はアダムと見て間違い無いのか?」
魔女「調査はさせて居るが確定では無い…じゃで動き辛いのじゃ」
女戦士「未来はもう行動している」
魔女「そうじゃな…見定める前に先走るのを防ぎたいのじゃ」
アサシン「わかった…状況は大体把握した」
女戦士「ローグとはどう接触するのだ?」
アサシン「船を隠す無人島に定期的に情報を持ってくる…待つしかない」
女戦士「なぜ別働を?」
アサシン「豪族の分散を狙っている…纏まるとドワーフの国は船をすべて失うぞ?」
女戦士「それほど戦況が悪いか…」
アサシン「火薬の保有量が決定的に違う…豪族に指導者が居ないのが救いだ」
女戦士「もしや海賊王の娘が狙われて居るのは…」
アサシン「私が囮になって居たのだ…豪族を散らす為にな…その誘導の為にローグがセントラルに潜伏している」
魔女「では主は逃げ回って居るのじゃな?」
アサシン「場所を変えながらうろつくだけの簡単な仕事だ…どうという事は無い」
女戦士「フフあの馬鹿共め…」
アサシン「ここらで少し知らしめてでも置くか?忙しくなってしまうだろうが」
女戦士「馬鹿は死んでも治らん…放置だ」
魔女「奴らを骨抜きにするなぞ簡単じゃぞ?女に変性させるだけじゃ」
女戦士「反吐が出るから止めてくれ」
『小舟』
ドッスン ドッスン
アサシン「さぁ乗ってくれ…幽霊船は少し沖だ」
魔女「わらわ達の食料はあるんじゃろうな?」
アサシン「クックック幽霊船ではな?誰も食料を必要としない…私を含めてな」
情報屋「え!?じゃぁ何も乗って無い?」
アサシン「魚を釣れば良かろう…水は雨水だ」
魔女「しもうたな…何か買って来れば良かったわい」
アサシン「倉庫は10年前から何も触って居ない…探せば何か有るだろう」
情報屋「船には誰が乗ってるの?アサシン一人じゃ動かせないでしょう?」
アサシン「ゾンビを使役して使って居る…肉は削げ落ちてスケルトンになってしまったが」
女戦士「フフ本物の幽霊船をやっていた訳か」
アサシン「補給がワインだけで良いのだ…ラクな物だ」
魔女「10年も経って何が食えるじゃろう…」
アサシン「正確には殆ど狭間の中だ…それほど劣化はしていないと思うが」
情報屋「良かったわね…保存食は残って居そう」
魔女「海士島で補給じゃな」
アサシン「好きにしろ…隠れて逃げ回るのも飽きた所だ」
『幽霊船』
カララン カコンカコン
魔女「船員がすべてスケルトンというのは気味が悪いのぅ…」
アサシン「これ以上ラクな航海は無いぞ?スケルトン!船を出せ」
スケルトン達「カタカタ…カタタタ」ドタドタ
魔女「このスケルトンは何処で使役したのじゃ?このままでは成仏せんが…」
アサシン「クックック…性の悪い豪族の成れの果てだ…海に捨ててもいつの間にか船に戻って居る」
魔女「使役が継続しとるのじゃな」
アサシン「よほどこの船が好きらしい…使われて本望だろう」
女戦士「ゾンビのままよりは衛生的か」
アサシン「さてこのまま海士島に向かって良いのだな?」
魔女「構わぬ…ちとゆるりとしようかのぅ」
アサシン「少し仕事をして行く…折角港町へ来たのだ豪族の足並みを乱すチャンスだ」
女戦士「フフ面白い…お手並み拝見させてもらう」
アサシン「女戦士は着替えて来い…海賊王の娘を見せてやれ」
魔女「わらわは見物じゃな」
情報屋「私も…」
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『豪族の船』
ザブ~ン ギシギシ
豪族の頭「幽霊船に追いつけるかぁ!?」
船乗り「こっちの方が早い筈なんすがねぇ…何故か追い付けない」
豪族の頭「船首に大砲移動させろぉ!」
大砲主「こんな距離じゃ当たりやせんぜ」
豪族の頭「黙ってやれぇ!!」
大砲主「へいへい…」
豪族の頭「ぐぬぬスループ船に先を越されるだろが!早く撃てぇ!!」
ドコン ドコーン
大砲主「あのスループ船巻き込んじまいやすぜ?」
船乗り「幽霊船見失いそうだぁ!!見張りは望遠鏡で追ってくれぇぇ!!」
見張り「進路右に回頭してる!!距離詰めるチャンスだ!!」
豪族の頭「面舵!!」
船乗り「へいへい!!」グルグル
豪族の頭「んあ?霧か?」
見張り「あぁぁ何だ暗くなって…こっちも見失いそうだ!!」
野郎共「左舷後方!!海賊船!!」
豪族の頭「何処の船だ?俺らより早い船か?」
野郎共「いや…あれは幽霊船でがす」
豪族の頭「なんだとぅ!?2隻居るのか?面舵いっぱーい!!右舷に大砲移動させろぉ」
船乗り「後ろの幽霊船の前に出るんすか?」
豪族の頭「進路塞げ!!」
船乗り「へいへい!!」グルグル
見張り「左舷後方の幽霊船が遠ざかって行く!!」
豪族の頭「だぁぁぁコケにしやがって!海賊王の娘のヤロウ!」
船乗り「左舷前方にも幽霊船!ニアミスする!」
ザブ~ン ユラ~ ギシギシ
豪族の頭「なんだ…と?」
野郎共「スケルトンが舵持って居やがる…」
大砲主「大砲の移動が間に合わん…」ドタドタ
見張り「デッキに女が見える!あれは海賊王の娘だ…」
豪族の頭「クソがぁ!そのまま回頭して追え!」
シュン ストン
豪族の頭「うお!!撃って来やがった…」
船乗り「逃げろぉぉぉ!爆弾だぁぁ!」ピョン ザブン
豪族の頭「どわぁぁぁ…」ダダダ
ドカーン パラパラ
豪族の頭「…」ボーゼン
野郎共「メインマストが倒れるでがす!!」メリメリ ガッサー
豪族の頭「幽霊船の向かってる方向は!?」
野郎共「セントラル方面でがす…」
豪族の頭「くそぅ…港町まで戻る!飛び降りた奴ら回収しろぉ」
『幽霊船』
ザブ~ン ユラ~ ギシギシ
情報屋「フフ豪族の人達バタ付いてる…」
アサシン「女戦士…一発挨拶でもしてやったらどうだ?」
女戦士「フフ…そうだな?」チリチリ
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馬鹿共「スケルトンが舵持って居やがる…」
馬鹿共「大砲の装填間に合わん…」ドタドタ
馬鹿共「デッキに女が見える!あれは海賊王の娘だ…」
馬鹿共「クソがぁ!そのまま回頭して追え!」
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女海賊「食らえ…」ギリリ シュン
ドカーン パラパラ
魔女「翻弄するのは簡単なのじゃな?数回ハイディングしただけじゃ」
アサシン「だろう?こうやって適当に幽霊船を見せておけば豪族は足並みが崩れる」
女戦士「なかなか捕まえられない幽霊船をいつまでも追うとはな」
アサシン「ローグがありもしない高額賞金を懸けているのだ」
女戦士「私を掴まえればか?」
アサシン「クックック本当に豪族は頭が悪い」
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『荷室』
ガチャガチャ
女戦士「どうした?呼んで居ると聞いて来たのだが?」
情報屋「ここに乗せている器具類…これは何処で手に入れた物?」
女戦士「あぁソレか…私は良く知らないのだ…多分黒の同胞団の隠れ家だとは思うのだが?」
情報屋「これシャ・バクダ錬金に用いる器具類よ」ガチャガチャ
女戦士「使えるのか?」
情報屋「部品が全部揃っていれば修復出来るかも知れない」
女戦士「その辺の物はローグが詳しい筈だ…魔石もウラン結晶も全部ローグが回収してきた」
情報屋「この資産で豪族の資産全部を超えていると思うわ」
女戦士「フフそうか…金には興味無いが修復して何か出来そうか?」
情報屋「賢者の石の生成ね…材料が解明できるかもしれない」
女戦士「修復出来ればやっても構わん」
情報屋「破断している個所をどうするかだけど…」
女戦士「魔女に相談してみろ…突き合わせて変性魔法で金属は安定させられた筈だ」
情報屋「わかった…まずバラバラになった器具のパーツを合わせてみる」
女戦士「やる事が出来て良かったな?」
『甲板』
魔女「そこに横になれ」
アサシン「こうか?」ドタ
魔女「不死者の体は自己修復せんで不便じゃな…回復させるぞよ?」
アサシン「頼む」
魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー
アサシン「…」クイ クイ
魔女「どうじゃ?骨は繋がっておりそうか?」
アサシン「ふむ…良いな」
魔女「痛みが無いで折れても気付かんのじゃな」
アサシン「その通り…いつの間に動きが悪くなる」
魔女「エリクサーは足りて居るか?」
アサシン「体液がすべてエリクサーに入れ替わってからは少量で良くなった」
魔女「ほう?」
アサシン「喉の渇きだけ依然と変わらん…ワインが一番必要だ」
魔女「主を絞ればエリクサーが出て来る訳じゃな?」
アサシン「フフまぁそういう事だろう…お陰で体表面からの揮発も少ない」
スタスタ
女戦士「大きな船に一人乗って良く退屈を凌げたな?」
アサシン「クックックその苦痛を想像出来るか?」
女戦士「どうだ?暇つぶしに立ち合いでもやって見るか?」
アサシン「今魔女に治癒してもらったばかりなのだ…また損傷させると心象悪かろう…」
魔女「わらわも暇じゃ…観戦させい」
女戦士「…という事だ」
アサシン「ヤレヤレ…」ノソリ
『決闘』
カーン カーン キーン
アサシン「余裕そうだな?こうも簡単に凌がれるか」ブン スカ
女戦士「私はどう見えている?」
アサシン「リッチと同じだ…動く先2歩向こう側を狙っても当たらん」
女戦士「切り込んでみて良いか?」
アサシン「降参だ…勝てない相手とは戦わない主義でな」クルリ スタ
魔女「ふむ…女戦士や?主の弱点は決め手が無い事じゃな…守備は満点じゃが攻勢で火力が足りぬ」
女戦士「自覚している…だから妹のデリンジャーを併用しようと思う」
魔女「そうじゃな…ここぞでデリンジャーが良かろう」
アサシン「もう盾は使わんか?」
女戦士「小型のバックラーと肩当で十分だ」
アサシン「もはや死角無しか…フフ」
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---------------
---------------
『数日後_無人島』
ザブン ザザ~
魔女「良い隠し場所では無いか…この島には何か有るのかえ?」
アサシン「何も無い…水も湧かないから誰も立ち寄らん」
女戦士「気球はここに隠してあるのか?」
アサシン「そうだ…ちょっとした私の休憩所にしている」
女戦士「ローグはここにどうやって来る?」
アサシン「自前の船だな…割と良い船を持って居るぞ?」
女戦士「それではこの場所が誰かに知られてしまうでは無いか」
アサシン「一人で動かせるスループ船だ」
女戦士「なるほど…あの一番早い奴か」
アサシン「私は気球で海士島へ補給に行こうと思うがお前はどうする?」
女戦士「不用意に顔を出すのはマズかろう?ここでローグを待っておく」
魔女「わらわは買い出しに行きたいのぅ」
アサシン「では2人で行くか」
女戦士「この島でキャンプ出来そうな場所は?」
アサシン「気球を隠して居る場所にちょっとした洞穴がある」
女戦士「よし…少し荷を下ろして過ごせるようにしておく…日光用がしたい」
アサシン「ご自由に…」
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『洞窟』
アサシン「海士島まで行って2日程で戻る」
魔女「何か欲しい物があれば仕入れて来るが?」
情報屋「羊皮紙とインクが欲しいわ」
魔女「ふむ…女戦士は何も要らんか?」
女戦士「石炭か木炭のどちらかだな…少し鍛冶をしたくてな」
アサシン「どのくらい必要だ?」
女戦士「樽に半分程度で構わん」
アサシン「分かった…では行って来る」
フワフワ バサバサ
女戦士「さて一旦船に戻って少し荷を下ろしに行くが情報屋はここで待つか?」
情報屋「そうするわ…周囲も少し見ておきたいし」
女戦士「野生の生き物が居ても手を出すな?私が後で処理する」
情報屋「わかった」
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『日光浴』
ポカポカ
情報屋「ヤシの実採ってきたわ…要る?」スパ
女戦士「ちょうど喉が渇いた所だ…気が利く」ゴク
情報屋「あなた着やせして見えたけどスゴイ筋肉ね」
女戦士「見ないでくれ…私はこの体が嫌いでな」
情報屋「若々しくて羨ましいわ?」
女戦士「特異体質でな…マッサージでほぐして貰わんとこの様になってしまうのだ」
情報屋「私にほぐせる?」
女戦士「無理だろう…ローグが上手いのだ…だから私は待っている」
情報屋「はぁぁ私も若い体が欲しい…」
女戦士「悩みは同じだな…私は柔らかい体が欲しい」
情報屋「フフ私も日光浴でもしようっと」
女戦士「この島はシン・リーンと違って随分暖かくて気持ちが良い」
情報屋「そうね…」
女戦士「島を散策して来たのだろう?何も無いか?」
情報屋「石を積んだちょっとした祠があったくらいね」
女戦士「という事は誰かが居たのだな…」
情報屋「足跡を残すのはよくある事…歴史的な意味は多分無さそう」
女戦士「水が湧いて居れば良い島なのだがな…」
情報屋「ヤシが沢山生えているから水分はそれほど困らないと思うわ」
女戦士「それは良かった」
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『数日後』
フワフワ ドッスン
情報屋「アサシン達が戻って来たわ!」
アサシン「フフこの洞窟に居済むつもりなのか?資材を何処に降ろせば良い?船か?
女戦士「スケルトンと一緒では気味が悪いのだ…鍛冶はここでやるからその辺に降ろしてくれ」
アサシン「そうか…」
魔女「女戦士や…未来がキ・カイへたどり着いた様じゃぞ?」
女戦士「ほう?行先は読めそうか?」
魔女「上手く商船に乗れば海士島に寄るじゃろう…ここで待ちじゃな」
アサシン「北の大陸に行くには何処行きでも必ず海士島で補給をする筈だ」
魔女「未来にはシャ・バクダに情報屋を訪ねる様に言うて居るで商船に乗る可能性が高い」
魔女「それからな?水晶玉を買うて来たで主にも見せられるぞよ?」
女戦士「見たいな…見せてくれ」
魔女「そう言うと思うたわ…千里眼!」シュワワ
女戦士「おぉ…しかし未来の視点か…未来が見えんな」
魔女「じゃが安心じゃろう?」
女戦士「一緒にいる女は未来の連れだな?」
魔女「ハーフオークと仲良うなった様じゃな」
女戦士「コバルトの両手剣…もしやオークの子か?」
魔女「ほう?未来の知り合いじゃったのじゃろうか?」
女戦士「フフ再会したのか…マスクで顔が見えんな」
魔女「退屈しのぎにはなりそうじゃな?しばらく覗いておれ」
女戦士「そうさせてもらう」
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『海辺の祠』
情報屋「ここよ?これが何か分かる?」
魔女「リザードマンがこのように石を積むのぅ…これだけかいな?」
情報屋「他にもいくつかあるわ…大体同じ」
魔女「しかしリザードマンなぞ居る気配が無い…何じゃろうか?」
情報屋「魔女にも分からないかぁ…」
魔女「全部海辺の岩場に在るんけ?」
情報屋「そうよ…いくつもあるから不思議で」
魔女「海の中に何か住んどるやも知れんのぅ…」
情報屋「石を積む知性を持った魔物?」
魔女「人魚はもう絶滅したんかいのぅ?」
情報屋「伝説よ…もう何千年も昔だし」
魔女「人魚の様な水生の魔物はまだ居るかも知れんで一応気を付けて置いた方が良いな」
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『洞窟』
カーン カンカン ジュゥゥゥ
情報屋「鍛冶始めたのね」
女戦士「例の不足してるパーツを作っている…もう少し待ってくれ」
情報屋「急がなくて良いわ…ちゃんと動くかも分からないし」
女戦士「まぁ暇なのだ」
情報屋「それよりアサシン?海辺に在る小さな祠なんだけど何か知ってる?」
アサシン「石を積んであるやつの事か?」
情報屋「そう…いくつもあるんだけど」
アサシン「それはな…私の友が積んだ物だ…危ない物では無いから心配しなくて良い」
情報屋「共?この島で?」
アサシン「何年前だったか…私がこの島に初めて来た時にな…石化しかけたイルカが横たわって居たのだ」
情報屋「そのイルカが?」
アサシン「うむ…私のエリクサーを与えたら何度も訪れる様になってな…私が不在の時に石を置いて行く様になったのだ」
情報屋「そのイルカは今はどうして?」
アサシン「さぁ?姿を見なくなって1年程か…良い話し相手だったのだが残念だ」
魔女「死んでしもうたかいな?」
アサシン「だろうな?イルカも人間と同じ様に石化の病気には掛かるのだ…泳げなくなってしまったのだろう」
魔女「リリスがどこぞの海底に沈んどる訳じゃな?」
アサシン「どうにかしてやりたいんだが…」
情報屋「船に積んである器具…その一つが重力炉よ」
魔女「リリスを魔石にするんけ?」
アサシン「リリス程大きな物が入ると思うか?」
情報屋「バラバラに刻めば入るかもしれない」
魔女「そうじゃアサシンは全身エリクサーじゃな?もう石化せんのでは無いか?」
アサシン「私にやらせるつもりか?やっても良いがどの様に刻む?」
魔女「未来の持って居るインドラの刀じゃな…あの光に焼かれた傷口は再生せぬ」
アサシン「ほう?なんとかすれば手はある訳か」
魔女「じゃが肝心のリリスが何処に居るのか分からんのがな…」
アサシン「イルカにでも聞くか?クックック…」
『夜』
サワサワ
魔女「どうじゃ?未来は?」
女戦士「商人達と共にキ・カイの遺跡を探索している様だ」
魔女「そうか…夜はあまり覗かぬ方が良いぞ?」
女戦士「何故だ?」
魔女「未来のプライベートを覗いてしまうで見ん方が良い」
女戦士「フフそうか…大人になったか」
魔女「しかし見て居ると感心するじゃろう?蟲を上手く使い居る」
女戦士「これが蟲使いか…」
魔女「まだまだ本領を発揮して居らぬ…蟲を自在に爆弾に変えれるで破壊力が測り知れん」
女戦士「金属に変性させるのだな?」
魔女「うむ…後は主のように時空を極めれば勝てる者は居らんじゃろうな」
女戦士「時空の修行はさせて居ないのか?」
魔女「早く勇者らの足跡を追いたかった様じゃで狭間に入るのを嫌がってのぅ…」
女戦士「何十年も自分と向き合うのはもう少し先か…」
魔女「既に勇者らと幾度か死線を潜って居るからある程度は習得して居る」
女戦士「あの時の森での事か…」
魔女「そうじゃ…あの時に未来は勇者に生き方をすべて学んだ…わらわも自分の限界を知ったわ」
女戦士「私は記憶が無い…」
魔女「そうじゃったな主は倒れて居ったな…森の中で何度も次元の置き換えを経験しとる」
女戦士「それは勇者の力か?」
魔女「次元が崩壊せんのは勇者の力じゃな…主は乱用してはイカン」
女戦士「勇者の眼か…」
『数日後』
魔女「…商人の気球を改造しておるとな?」
女戦士「そうだ…気球で移動されるとなると何処に行くのか分からなくなる」
アサシン「クックック…こちらは無人島で足止め…どうしようも無いな」
魔女「ローグが戻ればキ・カイに行っても良いのじゃが」
女戦士「下手に移動するとすれ違いが起きる」
アサシン「石の上にも3年と言うが?」
魔女「ローグはいつ戻って来るのじゃろう?」
アサシン「千里眼で見えるだろう?」
魔女「交渉事ばかりで動く気配が無い」
アサシン「ではそういう事だ」
女戦士「動くなら未来が何処へ向かうのか見定めてからだな…こちらに来る可能性もある」
魔女「何かヒントは見えて居らんか?」
女戦士「ううむ…商人が誘導している様なんだが行き先がな…」
魔女「あ奴の行動癖からすると遺跡じゃとは思うんだが」
アサシン「すれ違い覚悟で商人ギルドへ行って見るか?」
女戦士「未来は妹と似てせっかちだ…気球の改造が済んだら直ぐに行動する筈」
魔女「うむ…入れ違いになるのは間違い無かろう」
女戦士「未来に貝殻を渡しておくべきだったな」
魔女「渡したのじゃがワザと置いて行き居った」
女戦士「フフ掴まりたくない訳か…」
魔女「困ったもんじゃ…」
アサシン「自立するという意思表示だ…ここは待つ一択」
女戦士「こうしよう…未来はきっと私を訪ねて来る…幽霊船を動かして呼び寄せよう」
アサシン「ふむ良い案だ…退屈しのぎにはなる」
魔女「そうじゃな…ちと目立って見ても良いな」
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『南の大陸の何処か上空』
シュゴーーーーー バサバサ
商人「だめだ現在地見失ってる…火山の噴煙も見えない」
女オーク「下は一面の雲…」
商人「ラヴおいで…地図に指さすから座標の近い所で教えて」
機械の犬「ワン!」パタパタ
商人「いくよ?」ツツツツ
機械の犬「ワン!」
商人「ここか…キ・カイの南西か…ハテノ村とは反対側に来てるか」
剣士「見えたぁぁ!!魔女の目が見えた…船に乗ってる」
商人「え!?それじゃ何処なのか分からない」
剣士「なんでスケルトンが船に乗ってる?」
商人「む!それは幽霊船じゃないか?女戦士は見えないかい?」
剣士「暗くなった…もう見えない」
商人「間違い無いな…狭間に出入りしてるんだ」
剣士「それでずっと見えなかったのか…」
商人「幽霊船はセントラルの沖でよく目撃されるらしい」
剣士「そっちに向かう…えーと女オーク!北東1時の方向」
女オーク「うん…」グイ バサバサ
剣士「千里眼!…よし見える…魔女はなかなか首を動かさない…イライラするなぁもう!!」
商人「場所が特定できればね」
剣士「雨は降って居なさそうだ…霧が濃い…どこだ?」
商人「今なら女戦士の目も見えるんじゃ無いかい?」
剣士「そうか…千里眼!…見える!戦ってる…相手は豪族だ」
商人「見方はどのくらい居そうだい?」
剣士「スケルトン以外の味方は見えない…あぁぁ魔女は何やってるんだよ…乗り込まれちゃうじゃないか」
商人「気になるなぁ僕も見たいよ」
剣士「まてよ?魔女が視線を動かさないのは魔女も千里眼使ってるという事だ…僕を見てる!」
商人「わかった…ちょっと待ってノートに書く」カキカキ
商人「これ見て」
剣士「うん…”現在地教えて”」
剣士「よし!千里眼!…よしよし動き始めた…やっぱり僕の行動監視してた」
商人「どう?周り見える?」
剣士「ビッグママが一人で戦ってる…だから魔女が助けに来てくれてるんだ」
剣士「居場所分かったよ…海士島だ!海士島で待つって」
商人「行けるね?」
剣士「大丈夫行った事ある」
商人「なるほどそういう事だったか…最近の幽霊船の目撃は剣士を呼ぶ為だったのかも知れない」
剣士「ビッグママはずっと僕を呼ぶ為に?」
商人「セントラル沖でよく目撃される様になってるんだ…そこで待って居た可能性がある」
剣士「知らないで素通りしてた」
商人「豪族に狙われているから思う様に上陸出来ないんだろうね」
剣士「可哀そうだ…早く行ってあげないと…ローグさんはビッグママの事情を良く知ってる」
商人「敵だとすると厄介だね」
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『黄昏時_海上空』
シュゴーーーー バサバサ
商人「流氷がやっぱり西の方角に流れてる…」
剣士「なんか現在地がやっぱりズレてる様に思う…北に進んでる筈なのにまだ灯台の光が見えない」
商人「ラヴ…今の座標おしえて?」ツツツツ
機械の犬「ワン!」
商人「本当だ…また西にズレてる」
剣士「偏西風が止まってるからかな?」
商人「今ここの位置だからもっと東に進路変えないと」
剣士「なんでだろう?進路3時の方向に修正」グイ
商人「まてよ…まさか地軸が動いて北の方向が変わって無いか?」
剣士「え!?」
商人「ラヴ!何か分からないか?」
機械の犬「クゥ~ン」
商人「そうだな情報が足りないか…」
剣士「可能性はある…地図を傾けて使った方が良いかも…」
商人「ゆっくり地軸が変わってるかもしれないんだね?」
剣士「どうやってそれを確認すれば良いだろう…」
商人「陸地が見えないと太陽の沈む方向が分からないね」
女オーク「剣士!東方向に灯台の光!」
剣士「灯台目指す」グイ バサバサ
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『海士島』
フワフワ ドッスン
剣士「すっかり日が落ちた…今から宿取れるだろうか」
商人「兎に角人が集まってる所に行って見よう」
剣士「商人さんもハイディングの準備は良いよね?」
商人「うん…でもどうして?」
剣士「前にここに来た時も女オークが海賊王の娘に間違われて付け狙われたんだ…一応逃げる心構えは必要」
商人「分かった…でも隠れてばかりだと落ち合うのに手間取るから最小限で」
剣士「そうだね」
商人「万が一バラバラになったら飛空艇に集合で」
剣士「おっけ!行こう」
『広場』
メラメラ パチ
うあぁぁぁ寒ぶっ!なんでこんなに冷えるんだぁ?
暖を取るのに商船に戻った方が良さそうじゃわい
酒場が一杯で入れない!
剣士「…」キョロ
商人「剣士!待たせた…宿の納屋を貸してもらえる…今晩はそこで暖を取ろう」
剣士「大分混乱してそうだね」
商人「うん…今は真夏なのにやっぱり異常すぎる」
剣士「この辺りは年中暖かい筈だよね?」
商人「そうだよ」
『納屋』
ガラガラ バタン
剣士「よく貸して貰えたね?ここなら個室だ」
商人「僕は闇商人だよ?割と伝手を持ってる」
剣士「宿の方はどうなってるの?」
商人「もう一杯さ…明日商船が出て行ったら部屋が空く…一応確保しておいた」
剣士「酒場も一杯で入れないらしい」
商人「魔女の目は千里眼で見えない?」
剣士「多分狭間の中…見えないよ」
商人「移動してるんだね」
剣士「うん」
商人「まだ寝るには少し早いから少し情報集めてくるよ…剣士はどうする?」
剣士「そうだなぁ…僕は女オークと一緒に船の様子見てこようかな」
商人「じゃぁ僕はなんとか酒場に入ってみる」
剣士「あとでここに集合で」
商人「うん…行って来る」ガラガラ バタン
『桟橋』
ギシギシ
剣士「商船2隻と豪族の船2隻…」
女オーク「沖の方に見える光も船よね?」
剣士「多分ね…3隻かな?待機してるんだね」
女オーク「幽霊船はこの桟橋に入ってくると思う?」
剣士「来ないだろうね…近くに停泊したまま小舟で来るんじゃないかな」
女オーク「それにしても霧が冷たい…」
剣士「君はこの異常気象はオークシャーマンの力だと思う?」
女オーク「多分そう…天候を操るのは見た事有るの」
剣士「地軸を動かせるとか…君が知る訳無いよね?」
女オーク「私は地軸というのが何なのか理解できない」
剣士「まぁ普通はそうだよね…研究者とか魔術に精通して無いとね」
女オーク「その地軸が動くというのは大変な事なの?」
剣士「僕も影響は詳しく分からない…でも4000年前は文明が滅ぶ程の影響が在ったらしいよ」
女オーク「どうやって滅んだのかしら?」
剣士「想像付かないよ…地震とか噴火とか津波かな?」
女オーク「今まで経験した事の無いくらい大きな災害だったのでしょうね?」
剣士「今まで?…そうだな一気に来るとは限らないのか…ゆっくりジワジワ滅んだ可能性もあるな」
もしも何年も冬が続いたら食料が無くなる
病気も冬の方が蔓延しやすい
住みやすい場所に移らないと何年かして衰退するのは考えられそうだ
『納屋』
ガラガラ バタン
商人「はぁぁぁ暖かい…」
剣士「ランタンで湯を沸かしてるんだ」
商人「さすが旅慣れてるねぇ」
剣士「なにか情報はあった?」
商人「どうも霧のせいで商船の航海が滞っているらしい」
剣士「急に寒くなったからだね?」
商人「だろうね?海はまだ暖かいんだよ」
剣士「日の出の時間が違うとか方角が違うと言う話は出てない?」
商人「聞いてないなぁ…兎に角ゴタゴタしてる…豪族も内輪で揉めてたりね」
剣士「あーそれか…僕が要らない事をしたからだな」
商人「いつもそんな感じだから豪族はまぁ良いんだ…それよりこの島は燃料不足が深刻だよ」
剣士「え?」
商人「元々暖かいから暖を取るための木材とか石炭が無いんだ」
剣士「広場で燃やして居たのは?」
商人「ヤシの木だね…あっという間に燃えて無くなる」
剣士「寒さがいつまで続くかだよね…」
商人「う~ん」
剣士「凌ぎでいくつかクヌギの木でも育ててこようか?」
商人「豪族が独り占めするのが目に見えてるんだ」
剣士「無いよりはマシでしょ…簡単だから少し植えて来るよ」
商人「そうかい?」
剣士「まぁ夜中に線虫もやりたかった事だし…行って来る」
商人「気を付けて」
『翌日_広場』
ザワザワ
霧が晴れるまで出港出来ないってよ
そら流氷に当たったら沈没しかねんもんな
どうする?宿が無いぞ?
豪族が占領しちまってるからなぁ…船で過ごすしかあるめぇ
商人「ダメだぁ毛皮が売り切れてる…」
剣士「昨夜は寒かったみたいだね?」
商人「そりゃ一人だと寒いよ…君達は良いね2人でさ?」
剣士「いくら商人さんでも女オークは貸さないよ」
商人「ハハ取る気は無いさ」
剣士「納屋は地べたが冷たかった…今日は宿に泊れそうだよね?」
商人「ダメかもしれない…商船が出て行って無いし」
剣士「今晩も納屋になる様ならヤシの葉でも重ねて休もう」
商人「そうだね…」
剣士「ここでずっと待ってるのもなんか苦痛だね」
商人「うん…千里眼はどう?」
剣士「ずっと狭間のままさ…何か作って商売でもしようかなぁ?」
商人「どうして急に?」
剣士「僕達もう金貨1枚しか持って居ないんだよ」
商人「女オークに渡した分も合わせて?」
剣士「うん…」
商人「僕もあんまり持ち合わせが無い…何が作れる?」
剣士「魔石は沢山持ってるからそれで何か出来ないかなってさ…」
商人「ハハ…あのね魔石を売れば早いと思うんだ…」
剣士「あれ?アハハハすっかり忘れてた…そういえばそうだね」
商人「う~ん…そういう所まで女海賊に似たか…もしかしてカバンの中に虫が入ってたりしないよね?」
剣士「入ってるよダンゴムシ!ワームも居る!見たい?」
商人「えーと…又今度で良いハハハ」
情報屋「商人?あなた未来君ね?」
商人「え!?おおおおおお!!情報屋じゃないか…びっくりだ!いつからこの島に?」
剣士「あ…情報屋さん?昔のままだ」
情報屋「フード被ったままだから分からなかったわ…やっと見つけた」
商人「見つけた?」
剣士「もしかして僕の事?」
情報屋「そうよずっと探して居たのよ」
剣士「ゴメン…直ぐにシャ・バクダに行けなかったんだよ…僕も探して居たんだ」
情報屋「え!?何の話?」
剣士「あれ?僕を探してたんじゃ?」
情報屋「そうよ?」
剣士「僕も情報屋さんを探しにシャ・バクダまで行ったんだけどすれ違ったみたい」
情報屋「ええと…ちょっと話が噛み合わないんだけど…兎に角行きましょ」
商人「情報屋ゴメン…僕ら魔女と女戦士を待ってるんだ…良かったら君も会ってみたら?」
情報屋「あの2人は来ないわ?」
剣士「どうして知ってるの?」
情報屋「私が迎えに来たからよ?」
剣士「あれ?もしかして情報屋さんも魔女と一緒に居た?」
情報屋「そう…だから迎えに来たのよ…早く行きましょう」
剣士「ハハなんだ始めからそう言ってくれれば良かったのに…」
商人「てっきり偶然バッタリかと思ったよ」
情報屋「あなた達の気球に私も乗れるわね?」
剣士「乗れる乗れる!」
情報屋「案内して?船まで私が誘導するから」
剣士「おけおけ!こっち」スタ
『飛空艇』
フワリ シュゴーーーー
情報屋「やっと合流出来て安心した…宿にも酒場にも居なかったから」
商人「宿屋の納屋を借りて休んで居たんだよ…情報屋はどうやって海士島に?」
情報屋「昨夜遅くに気球で送って貰ったのよ」
商人「なるほど…それからずっと探して居たんだ」
情報屋「そうよ?寒くて皆フード被ってるから分からなかった」
商人「この寒さの原因って何か知ってる?」
情報屋「詳しくは分からない…そうそう未来君が見つけた呪符?魔女はそれを千里眼で見て以来ずっと何か調べてるわ」
剣士「見て居たんだね」
情報屋「私も海士島まで買いに来たのよ?」
剣士「直ぐ近くに居たんだ」
情報屋「未来君は一所に落ち着かないからずっとすれ違いっぱなし…やっと合流できたの」
商人「あ!情報屋?未来君は今剣士って名乗ってるんだ」
情報屋「そうなのね?」
剣士「まぁどっちでも良いよ」
情報屋「それで剣士君と商人に聞きたい事が山ほどあるんだけど…」
商人「話が相当長くなるな…集まってから情報交換した方が良いね」
情報屋「そうね…今は我慢する」
剣士「魔女はどうして幽霊船に乗ってるの?」
情報屋「それも話が長いわ…結論を言うと剣士君の先回りをする為」
剣士「え?どうして?」
情報屋「魔女が渡した貝殻を置いて行ったでしょう?だから捕まえられなかったのよ」
剣士「あーーーなんか貰った気がするなぁ…何処に置いたんだっけなぁ」
商人「興味が無い物はどこかに忘れて来るのは治らないかもねぇ…」
剣士「ハハまぁ良いじゃない合流出来たんだし」
『幽霊船』
ザブン ギシギシ
剣士「ビッグママァ!!」ダダダ
女戦士「未来…」ツカツカ
剣士「ゴメンね…僕を探して居たんでしょ?」
女戦士「フフ…良く帰ったな?眼をよく見せろ」グイ
剣士「うん…」ジー
女戦士「…」ジワリ
剣士「爺いじに眼を舐められたよ…ビッグママも舐める?」
女戦士「その呼び方は止めろろ言っただろう…女戦士で良い」
剣士「そうだったね…ハッ!!これママのデリンジャー…」
女戦士「形見を私が使わせて貰っている」
剣士「見て!?僕も自分で作ったんだ!同じだよ」スチャ
女戦士「そうか…さすが私の妹の子か」
剣士「それから…女オーク来て!?」
女オーク「…」ウツムキ スタスタ
剣士「あの時のオークの子だよ…覚えているよね?」
女戦士「未来が世話になって居る様だな?」
女オーク「はい…あの時は御免なさい…」
女戦士「随分言葉が流暢では無いか?未来が教えたのか?」
剣士「うん!もう普通にお話出来るよ」
女戦士「それは良い…しかし随分たくましくなった」
商人「女戦士!10年振りだね…君は変わって居ないなぁ」
女戦士「お前は中々死なんな?生きていて何より…」
商人「ハハ…中々死ねなくてね」
剣士「この幽霊船に乗って居るのは3人?」
女戦士「私と魔女…情報屋にアサシンの4人だ」
剣士「アサシンさんも乗って居たのか…千里眼で見えなかった」
女戦士「豪族達に見られん様にしていてな…」
剣士「魔女は?」
女戦士「魔術の研究で忙しい様だ…折角だから顔を見せて行け」
剣士「うん…」
『居室』
アブラカタブラ…
魔女「アーデモナイ…コーデモナイ…」ブツブツ
女戦士「魔女!未来を連れて来た…」
魔女「危ないで入って来るな言うたじゃろう…まぁ良い!話もしたかった所じゃ…ちと休憩するわい」
女戦士「幽霊船はフィン・イッシュに向かって良いのだな?」
魔女「うむ…書物がフィン・イッシュに保管してある…急ぎで調べたい」
剣士「例の呪符の事だね?」
魔女「そうじゃ…この異常気象は間違いなく古代魔術の影響じゃ…今の知識では影響が予測できぬ」
剣士「そんなに酷い状況かな?やっぱり…」
魔女「情報屋に話はまだ聞いて居らぬか?」
剣士「え!?何も?」
情報屋「皆揃ってから情報を交換しようと思って何も話して居ないわ…」
魔女「丁度よい!アサシンも呼んで来るのじゃ…ちと今後について話そうぞ」
女戦士「連れて来る…」ツカツカ
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---------------
カクカク シカジカ
魔女「…オークの起源が他の星から来たという以外はほぼ情報屋の予測通りじゃな」
情報屋「そうね…精霊が産んだのではなく他の星からの外来者だったなんて…」
魔女「歴史はまず置いておくとしてまず今時点で分かって居る古代魔術の事じゃが…」
大きな特徴として天候を任意に操れるらしいというのが分かって居る
日蝕を起こし太陽を遮ったりも任意で出来る様じゃ
どの様に任意で操ったのかは謎のままだったのじゃが
例の呪符にヒントが在った
重力の魔方陣と時空の魔方陣…これらは現在の魔術書には記されて居らん
恐らく重力の魔方陣にて磁力を操作しているのじゃろうと思われる
剣士「その魔方陣は解読できたの?」
魔女「出来て居らん…使う触媒が何なのか分からんのじゃ…方陣の交点も調べにゃイカン」
商人「それで急ぎでフィン・イッシュに…」
魔女「うむ…」
情報屋「4000年前の地軸の移動もオークシャーマンが関わって居そうだから…今の異常気象も同じかも知れない」
商人「影響がどの程度出るのか想像出来ない…」
情報屋「文明が完全に入れ替わるくらいってどう思う?」
剣士「子供が生まれない上に地軸の移動か…」
魔女「幸い状況が急変する程の速さでは無い様じゃでこれから対応を考えねばならぬ」
剣士「例えばどんな?」
情報屋「まず大洪水の備えね…船の確保と山間部への移動とかよ」
剣士「津波じゃなくて洪水?」
情報屋「地軸の移動で未踏の地が温暖になった場合氷が全部溶けるのよ…その結果大洪水になるのはどの伝承でも同じなの」
商人「ハハ海の水が増えるって言うのかい?」
情報屋「数十メートル増えただけでセントラルもキ・カイも水に浸かるわ?波で一気に浸食されて数年で無くなってしまう」
商人「海の水が数十メートル増えるなんてどんな量なんだよ…ありえない」
情報屋「不確かな伝承だけど100メートル程増えるという記録もあるの」
商人「100メートル!!馬鹿な…」
魔女「直ぐ増えるとは思うて居らんがそういうつもりで準備を考えねばならんのじゃ」
商人「だとするとセントラルもキ・カイも壊滅…シン・リーンの港町もだ」
剣士「僕の島も無くなっちゃう」
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魔女「次にじゃ…ホムンクルスはいつ目覚めそうなのじゃ?」
商人「正直分からない…自己治癒で生体が育って来ているのは確かなんだ」
剣士「そうだ!魔女?…念話でオークシャーマンとお話出来ないの?」
魔女「わらわが知って居る念話は貝殻にエンチャントを掛ける術なのじゃ…貝殻を渡せば通じるとは思うが…」
剣士「居場所が分からない」
魔女「そもそも念話が使えたとして居場所が分からん者に通じるとは思わんが?」
剣士「あー千里眼と同じかぁ…」
魔女「ホムンクルスの存在をオークシャーマンに伝えたいのじゃな?」
剣士「そうだよ…そうすればオーク同士の戦争が回避出来るかも知れない」
魔女「わらわが思うにな?オークシャーマンは別の目的で天候を操って居る様に思うがのぅ…」
女オーク「戦争を有利に進める為では無いと?」
魔女「結果的にそうなって居るじゃろうが規模が大きすぎるとは思わんか?」
商人「地軸の移動ってまだ決まった訳じゃ無いよね?」
魔女「本当に西オークと東オークで争い合って居るんか?」
女オーク「本当よ?西オークは東オークの村を奪っているわ」
魔女「侵略して居るのじゃな?」
女オーク「そう…でもその後奪った村をどうしているのかまでは知らない」
商人「むむ!200人程度じゃ領地奪っても意味無いね…精々略奪か」
魔女「おぉそうじゃ!忘れておった…呪符に光の方陣もあったのじゃ…オークシャーマンは千里眼を使えんのか?」
女オーク「分からない…天候を変えるのは見て分かるからそれしか…」
剣士「まてよ?もし使えるとしたら君の眼を見通す事も出来るな…」
魔女「それが言いたいのじゃ…女オークの事をオークシャーマンは知って居る…じゃからすべて見通して居るやも知れん」
剣士「僕達は泳がされてる?」
魔女「その可能性も考えておいた方が良かろう」
剣士「狭間の外で見た事すべてか…ホム姉ちゃんを知ってるとしたら…」
商人「マズいな名も無き島に向かってる可能性はありそうだ」
剣士「大丈夫!移動の殆どが狭間の中だよ…場所が分かる訳無い」
魔女「ウンディーネが目覚める直前だと知ったして次に何をするじゃろうのぅ?」
剣士「まさかドリアード?」
魔女「そんな気がしてならん…」
--------------
『荷室』
ガチャガチャ
情報屋「これよ?シャ・バクダ錬金に用いる天秤と重力炉」
商人「スゴイな…女海賊が持ち帰ったものを復元したんだ」
情報屋「でも動かし方が分からない…エネルギーの供給が何なのか謎なの」
商人「キ・カイの古代遺跡で見つけた物の中にウラン結晶を用いたエネルギー元があったんだ」
情報屋「ウラン結晶からどの様にエネルギーを?魔石の充填?」
商人「仕組みは良く分からない…研究すればこの機器にも使えるかも知れないね」
情報屋「そのエネルギー元はこの機器に使え無さそうなの?」
商人「大きすぎる…この機器は多分ここに何か入るんだろうけど…全然大きさが違うから新しいのを作らないとね」
情報屋「はぁぁ…道が長そう」
商人「でも良く組み立てたじゃない…天秤なんかこのまま使えそうだ」
情報屋「やってみたけど意味無いわ?エネルギーが無いと動かないのよ」
商人「この機器で何をしたいの?」
情報屋「賢者の石の生成よ?それがあればホムンクルスの完全な部品が作れる」
商人「僕も研究してるんだけどさ…錬金術で完成させるのはどうやら違うみたい」
情報屋「どの様に?」
商人「エリクサーの中で培養するんだ…錬金術で作るのは培養に必要な臓器の部品だけだよ」
情報屋「じゃぁ賢者の石は不要?」
商人「大量のエリクサーを作るのに必要なのかも…合計でエリクサーは樽で10杯以上必要になる」
情報屋「そういう事か…」
商人「培養させて大きくして…後は自己治癒でゆっくり成長する…だから時間が掛かるんだ」
情報屋「キ・カイ錬金術とはそもそも違う過程なのね…」
商人「僕のノートに生成の過程をメモしてあるから読んでごらんよ」
情報屋「ありがとう…見させてもらうわ」
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『甲板』
ザブ~ン ユラ~
女戦士「未来…お前の刀を研いでやる」
剣士「ビッグママ…あ女戦士…なんか恥ずかしいなぁ」
女戦士「刀を貸してみろ」
剣士「うん…」ゴソゴソ
女戦士「ふむ…それほど傷んで居ないな」スラーン サワサワ
剣士「ねぇ女戦士?僕は剣士って名乗ってるんだ」
女戦士「フフ剣士か」
剣士「パパの刀は?持って居るんでしょ?」
女戦士「見たいか?何千年も経つと朽ちてしまう…仕方の無い事だ」
剣士「もう使えない?」
女戦士「打ち直せば使えない事も無いが刀身が折れて半分無く無くなって居てな…欲しのか?」
剣士「うん…そのままでも良い」
女戦士「分かった…出来るだけ形を残して使える様にしてやる」
剣士「パパの形見がそれしか無いからさ」
女戦士「そうだな…刀一本しか持って居なかったな」
剣士「後さぁ…ローグさんの事なんだけど」
女戦士「どうかしたのか?」
剣士「ローグさんて豪族になっちゃったんだよね?」
女戦士「そうだな」
剣士「海賊王の娘を捕らえようとしてるの知ってる?」
女戦士「フフそれを知って居るという事は何処かで会ったのだな?」
剣士「うん…セントラルでバッタリね」
女戦士「まぁそういう事だ…気にするな」
アサシン「女戦士!ちょっと来てくれ」
女戦士「どうした?」
アサシン「海流のせいか進路がどうも西にズレる」
剣士「あ!!アサシンさん…僕の飛空艇でも進路がすこし西にズレて居たんだ…羅針盤はアテにしない方が良いかも」
アサシン「霧が濃くて星が見えん…羅針盤以外に方向を示す物が無いのだが…」
女戦士「どの程度ズレが有るのか分からんが西に流れるなら見越して向かえば良い」
剣士「2時の方向を北と思って行けば大体良い所に行くよ」
女戦士「そんなにズレがあるのか?」
剣士「うん…気付いたら全然違う方向に行ってる」
女戦士「兎に角陸が見えるまではセントラル方面が良さそうだな…西に流されて丁度フィン・イッシュに行けるかもしれん」
アサシン「分かった…セントラル方面に修正する」
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『翌日』
ザブ~ン ユラ~
商人「昼間は霧が少し薄い…」
剣士「大きな流氷が流れて来なければ良いね」
商人「アサシン!どうして流氷が西に流れて行くのか知らないかな?」
アサシン「さぁな?外海に繋がる海峡に流れて行っているのではないか?」」
商人「フィン・イッシュの方か…」
アサシン「他に何も無いだろう?」
商人「外海に穴でも開けたんだろうか…」
剣士「僕外海の事あんまり知らないんだけど何があるの?」
商人「ずっと向こう側まで海らしいよ…そのずっとずっと向こう側に未踏の地さ」
アサシン「今航海している内海とは比べ物にならないぐらい広い海だという事だ…」
剣士「海以外に何も無い?」
商人「世界地図を見せてあげるよ…右端と左端をこうやって繋ぐと大きな海になるよね?」パサ
剣士「そういう事か…向こうに未踏の地しか無いから誰も行かないんだ」
商人「ちょっと説明しようか…」
こっちの地図がこの間キ・カイの遺跡で発掘した遺物から分かった地図だよ
この地図の一番北側…その当時の北極に当たる部分が
今僕達が航海している内海だと思われる…ほら陸地の形が類似してるよね?
4000年前の地軸の移動でほぼ90°回転したのが今の地図さ…こっちの地図
西側の海峡を越えてずーーっと向こう側に当時の南極だった島が有る…これが未踏の地
何があるのか誰も知らない
剣士「フィン・イッシュから外海の方面に航海はしないのかな?」
アサシン「龍神の眠りを妨げない様に外海に出るのは禁止しているそうだ」
剣士「龍神…」
アサシン「リヴァイアサンが海に住まうらしいが既に伝説の話だな」
商人「でもこうやって地図を比較してみると温暖になった内海周辺に人間が集まったのは良く分かる」
剣士「なるほど…本当だね陸地が内海に集中してる…」
情報屋「ちょっと口を挟むわ…地軸が変わって遠心力の掛かっている場所が変わって居るのかも知れない」
商人「え?」
情報屋「今までは遠心力が掛かって海水が多い状態…それが変わって海水が別の場所に流れてる」
商人「流氷は一緒に流されてる訳か…辻褄が合うな」
情報屋「もっと言うと偏西風は無くなったのじゃ無くて場所が変わったのね…偏西風が強いのは赤道上よ」
商人「信じたくないけど地軸が変わってる可能性はやっぱり高そうだなぁ」
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『居室』
…シン・リーンは夏から一転して冬になった様じゃ
エルフゾンビが居るシャ・バクダも冬に変わった様じゃな
その他の地域は?
盗賊が居るハテノ村かいの?ここはあまり変化が無さそうじゃのぅ
情報屋「夏になってる場所が何処にもないのが気にかかる…」
魔女「わらわ達の生活圏がすべて南半球に移動したのじゃろう…それで説明が付く」
情報屋「…海士島辺りが南極に移動したと考えるとそうなるわね」
魔女「その過程じゃと命の泉付近は赤道付近じゃな」
情報屋「ドラゴンの眼は覗けないの!?」
魔女「わらわはドラゴンをあまり知らぬ」
情報屋「もし海士島付近が南極に位置したとしてセントラルもキ・カイも緯度的に深刻な状況じゃ無さそう」
魔女「ちと寒い程度かいな?」
情報屋「これを狙ってやったとするとオークシャーマンはとても賢いかもしれない」
魔女「被害は最小限に抑えたという事かえ?」
情報屋「緯度的に影響が無いのは恐らくシン・リーンとフィン・イッシュ…ここは北半球から南半球に移っただけ」
魔女「シャ・バクダもあまり変化が無さそうじゃ」
情報屋「あそこはもうほとんど人が済んで居ないから除外」
魔女「なぜ地軸の移動をしたのじゃろうのぅ?」
情報屋「未踏の地の氷を解かす?…もしくは偏西風の方向を変える?」
魔女「前者は何か狙いが有るかもしれんな…偏西風の向きが変わると言うのはどういう事じゃ?」
情報屋「北西の風が南西に変わるという感じね?」
剣士「ああああああああ!!それだ…」ガバ
魔女「なんじゃ寝て居ったんじゃ無いんか…たまげたわ」
剣士「精霊樹の森に到達するドリアードの種子の向きを変えてる…」
魔女「なぬ?」
剣士「精霊樹がドリアードに浸食されそうなんだ…エルフ達が飛んで来る種子を全部焼いてる」
情報屋「オークシャーマンはそれを狙ってやってると言う事?」
剣士「千里眼が使えたとすると精霊樹も見てるし僕達がドリアードの種子と戦ってるのも見てる…色々変わり始めたのはその後からだ」
情報屋「冬にすれば種子は飛ばないというのも有りそうね」
剣士「命の泉周辺は雪と氷が沢山あるんだよね?それ溶けたら何処に行く?」
情報屋「多くはエルフの森ね」
剣士「洪水で洗い流すんだよ!種子も毒も全部…オークシャーマンはもうドリアードと戦い始めてる」
情報屋「ちょっと待って…オークシャーマンが戦う動機が分からない…どうして遠方に居るオークシャーマンが?」
剣士「女オークが言うには予言に従ってるって…」
情報屋「何千年も予言に従ってるなんて余程の動機が無いと説明が付かないわ」
魔女「言われてみればそうじゃな…どんな予言なのか知りたいのぅ」
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魔女「…それで重ねて聞くがオークシャーマンはエレメンタル魔法は使わんのじゃな?」
女オーク「見た事無いわ…呪いや呪符による強化で直接魔法で戦う様な事は一度も見て居ない」
剣士「睡眠魔法は使っていたけどね」
魔女「そういう補助的な術だけなのじゃろうな…能動的な破壊術は使わんのじゃろう」
女オーク「どうしてその様な質問を?」
魔女「エレメンタル魔法を使うエルフとは全く別物じゃで不気味なのじゃよ…何をするか読めんでな」
剣士「何処に居るのかも分からないしね」
魔女「わらわがドリアードの立場じゃったら何処に反撃すれば良いかも分からんで困ると思うのぅ」
剣士「何か他に動きがあると想定してる?」
魔女「うむ…実はな?セントラルでちと動きがあるのじゃ」
剣士「え!?」
魔女「貴族主導で大規模なスプリガン狩りじゃ」
剣士「あまりおかしい事じゃ無いと思うな…シン・リーンでもスプリガン狩りは珍しくない」
魔女「誰が主導しておるかと言う事じゃ…貴族達に主導する程力を持った者は居らんかった筈なのじゃ」
商人「…その話気になるな…確かにまとまった財力持ってる人は居ない筈」
魔女「異常気象で混乱していても指導力を発揮する者が急に現れたのは…おかしいじゃろう?」
剣士「網を張られてる?」
商人「見に行って見たいな…僕の商船もセントラルに来てる筈なんだ」
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『船首』
ザブン ギシギシ
情報屋「陸地よ!!前方に陸地が見えたわ!!」
女戦士「ふむ…霧が薄くなって来たな」
情報屋「現在地分かる?」
女戦士「海図を確認する…アサシンは何処だ!?」
アサシン「ここだ…メインマストに上がっている」
女戦士「地形で現在地を判断出来そうか?」
アサシン「う~む…羅針盤は北を差しているのがどうにもおかしい…予定通りならセントラル付近の筈なのだが…」
情報屋「雪で陸地の地形が判別しにくいわ」
女戦士「まぁ良い…陸地沿いに西へ進路を変える…行き先はフィン・イッシュで良いな?」
アサシン「魔女はそう言って居たな」
女戦士「帆を60°で張り直して取り舵…スケルトンに命令するのだ」
アサシン「クックック…舵はお前がヤレ…私は見張りを続ける」
情報屋「でも陸地を見つけられて本当良かったわ…遭難しかねない」
タッタッタ
剣士「陸地見えたんだね?どの辺り?」
女戦士「海図と比較しているのだが…海流が逆を向いている」
情報屋「地軸が変わって海流まで変化して居るなら今までの海図は役に立たないかも知れないわ」
女戦士「うむ…私は海図を新しく描けるほど航海術には長けて居ない」
情報屋「盗賊が居れば…」
剣士「ねぇねぇ…おかしいよ?」
女戦士「うん?どうした?」
剣士「硫黄の匂いが風に乗ってる」
情報屋「どういう事?」
剣士「北の大陸の海付近には火山が無い筈」
女戦士「フィン・イッシュ付近は火山帯だ…どこぞの海賊が大砲を撃ったとも考えられるが」
剣士「いや違う…見えている陸地は南の大陸だよ…多分」
女戦士「な…んだと?」
情報屋「ちょ…もしかして」
剣士「これさ…海士島付近が南極点になってたとしたら羅針盤は何処に向かっても北を差すよね?」
情報屋「それね!!この霧も海がまだ暖かいから発生してる」
アサシン「クックック…では私達は行先の反対方向に進んで居たという事か」
剣士「太陽は!?」
アサシン「見ろ…霧の切れ目で明るい方向が分かるだろう」
剣士「…低い…今は朝なのか夕方なのか」
情報屋「時間も方角も分からない…これじゃ航海なんて出来ないわ」
女戦士「一度陸に上がろう…現在地が分からんのでは何処に行くにしても危険だ」
剣士「そうだね…停泊出来る所を探そう」
『海岸沿い』
ザブーン ユラー
女戦士「これ以上陸に寄るのは座礁の危険がある」
情報屋「十分よ…陸の方は霧が掛かって居なくて視界が開けてる」
剣士「間違いない!ここは南の大陸だよ」
女戦士「どの辺りか分かるか?」
剣士「今まで使ってた地図で言うとキ・カイから大分西にズレた所だと思う」
女戦士「このまま陸地を右手に見ながら進めばキ・カイに着く訳だな?」
剣士「この辺りは海流が強くて船でキ・カイまで行くには沖まで出る必要があるらしいよ」
女戦士「…という事は地床炉村の辺りという事か…遠いな」
剣士「知って居るの?」
女戦士「通常の航路からは除外されている海域だ…海流が複雑で難破しやすいのだ」
情報屋「この状況で沖まで出るのは危険ね…陸地を見失う」
女戦士「そうだな…霧が晴れるまでどこかで停泊した方が良い」
アサシン「小さな島が見えている…そこに船を隠して気球で行動するのはどうだ?」
女戦士「何処だ?」
アサシン「見ろ…正面少し左…岩場もありそうだ…隠すには丁度良い」
女戦士「海図には乗って居ないな…」
アサシン「通常の航路では無いのだろう?あんな小さな島を書き込む意味も無かろう」
女戦士「賊が隠れ家にして居なければ良いが」
アサシン「ほう?隠れ家にしそうな条件が揃って居ると?」
女戦士「危険な海域の孤島…元々この辺りは海賊の縄張りなのだ」
アサシン「あの馬鹿共を恐れて居るのか?」
女戦士「馬鹿にするな…だが航海術は私の上を行く者も居る」
剣士「もう直ぐ日が暮れそうだよ…一先ずあの島で様子を見ようよ」
情報屋「賛成!落ち着いて作戦を練り直した方が良いわ」
女戦士「…」ジロリ
アサシン「何をためらう?こちらには魔女も居るのだ…怖い者なぞ無い」
女戦士「ううむ…どうも勘が働く…気のせいなら良いが…」
『孤島』
ザザー ザザー
アサシン「スケルトン共!帆を畳んで碇を降ろせ」
剣士「暗くなる前に周りを少し見て来る…小舟降ろすよ」
女戦士「女オーク!お前も付いて行け」
女オーク「はい…」スタ
アサシン「…さて見た感じでは無人島の様だがまだ気になるか?」
女戦士「隠れるには丁度良い…それは海賊にも同じ条件だ」
アサシン「気にし過ぎだ…この霧ではまともに航海も出来ん」
女戦士「ふん!!」ジロリ
アサシン「魔女は居室に籠りっ放しなのか?」
情報屋「そうよ?危険な術を使って居るから居室には入るなと言っていたわ」
アサシン「ヤレヤレこちらの状況は意に介さずか」
女戦士「商人はどうしている?」
情報屋「何かの計算をしてるわ…地図を並べて居たから地軸の移動予測でもして居るのかと」
女戦士「そうか…水を補給しておきたかったのだ…雨が降らないから直に尽きる」
アサシン「それは明日私がやって置こう」
女戦士「孤島にそう簡単に水が有るとでも?」
アサシン「クックック…お前はしばらく見ないうちに冒険の勘が衰えたな?木材があれば海水から蒸留出来る」
女戦士「フン!では任せる」
アサシン「少し休んで居ろ…遭難しかけて気が張って居たのだろう?」
情報屋「そういえば女戦士はしばらく寝て居なかったみたいね」
女戦士「これくらいどうという事は無い」
情報屋「少し休んで?どの道夜が明けないと何も出来ないのだし」
女戦士「では横になって来る」スタ
『翌朝』
ザザー ザザー
女戦士「剣士と商人は私と共に気球で出るぞ…用意しろ」
剣士「おっけ!」
女戦士「商人は地図を持って現在地の特定をやるんだ」
商人「ハハ…買い出しには行かないのかい?」
女戦士「地床炉村を見つけたなら買い出しも良いが通貨が使えるものかどうか」
剣士「僕行った事有るんだ…木材が良い取引になる」
商人「それなら剣士の出番だ…木を植えれば良い」
剣士「シーーーーーッ!!ダメダメ…魔女にバレたら怒られる…乱用はダメなんだ」
商人「なんだそうだったのか…分かった…物々交換用に少し物資持って行く」
女戦士「急げ!剣士は早く球皮を膨らませろ」
アサシン「私は水を調達してくる…孤島に木材は有りそうなんだな?」
剣士「うん!!浜辺に沢山燃やせそうな物が打ち上げられてる」
アサシン「女オーク!空の樽を小舟に乗せる…手伝え」
女オーク「はい…」
女戦士「水の確保は任せた…夕刻までには戻るつもりだが船は出来るだけ早めに狭間に隠してくれ」
アサシン「海水の蒸留にすこし時間が掛かってしまうが終わり次第狭間に入る」
情報屋「私と魔女は留守番ね?食事でも用意しておくわ」
剣士「気球飛べるよ!!乗って」
女戦士「では行って来る…アサシン!留守は頼んだ」
『貨物用気球』
フワフワ バサバサ
女戦士「商人!地図と地形の比較はどうだ?」
商人「向こうに見える山が多分この山さ…今居る場所を特定するならもう少し地形を見たい」
女戦士「海岸沿いに飛ばせ…見失うな?」
剣士「分かってる…これ羅針盤の差す方向が東と西が反対だ…頭がこんがらがる」
商人「地図を逆さに見た方が良いね…全然違う地図に見える」
剣士「海側は霧が張ってて何も見えない…目印は遠くの山だけだ」
女戦士「…しかし不毛な地だ…木が無いとはな…」
剣士「低木は雪で隠れてしまっているね」
商人「川だ!!川が見える…だとすると此処ら辺りか?」ドタドタ
剣士「少し進路変えようか?」
商人「大丈夫!このまま海岸沿いに進んで…次の川を見つけたらほぼ位置が断定出来る」
剣士「太陽の位置と方角が合わない…南から太陽が昇る?」
商人「この機械の時計と太陽の位置を記録して欲しい…出来るね?」パサ
剣士「うん…時間は合ってるの?」
商人「合って無い…後で補正するんだ」
剣士「なるなる…緯度を割り出したいんだね?」
商人「太陽の位置がおかしいのは南極に近いからさ…今のままじゃ季節も分からない」
女戦士「ふむ…やはりこの内海が南極に位置したとするともう航海出来る海では無いな」
商人「そうなるね…外海に出ないといけない」
女戦士「目指すは流氷の行く先と言う事か…危険が過ぎるのだが」
商人「幸いフィン・イッシュへは外海から回り込める」
女戦士「内海を横断出来ないとなると相当な長旅になる…補給も宛てに出来んのでは…」
商人「兎に角現在地の確定と食料の確保を急ごう」
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『先日_洋上』
ザブ~ン ギシギシ
海賊の頭「だぁぁぁ!!補給はまだ来んのか!!」
手下「へ…へい!!そろそろ地床炉村の略奪が終わって戻って来る筈なんすが…」
海賊の頭「あの手漕ぎのガレー船の野郎共…略奪品を手前ぇで持ち逃げしたんじゃあるまいな…ぐぬぬ」
手下「この帆船じゃ海流に逆らえないもんで待機するしか…」
海賊の頭「豪族共は陸でヌクヌクして居やがるだろうに何故俺らだけ酒にも女にもありつけ無ぇんだ!!」ドガッ
手下「それは頭が豪族に上納しないからで…」
海賊の頭「おいお前!!サメの餌になりたい様だな」スラーン
手下「いやいやいや!そろはご勘弁を…おいらが居なくなったら航海に支障が出ますぜ?」
見張り「お~~い!!大型の船が見えるぞぉぉぉ!!」
海賊の頭「何ぃ!!船旗は確認出来るか?」
見張り「海賊旗は立って無ぇ!!船影からすると噂の幽霊船に似てまさぁ!!」
手下「ど…どうしますかね?」
海賊の頭「俺が見る!!」ドタドタ
手下「なんで又この海域に来るんすかね?噂じゃ海賊王の娘はキ・カイに潜伏してるとか」
海賊の頭「知るかボケ!!豪族共の話を真に受けてんじゃ無ぇ!!」
見張り「浅瀬に向かってまさぁ!!甲板で作業しているのは…うお!!スケルトン!?」
手下「うひゃぁ…噂通り…」
海賊の頭「望遠鏡をヨコセ!!」グイ
見張り「大砲を積んで居ない様ですわ」
海賊の頭「間違い無ぇ…あの船にゃ見覚えがある…ちぃぃ気球を積んでいやがる」
手下「噂に聞く彗星の奴っすか?」
海賊の頭「分からん…下手に手出し出来んな…お宝を目の前に動けんとは…ぐぬぬ」
見張り「この霧のお陰でこっちに気付いた様子は無ぇっす」
海賊の頭「さぁ~てどうしたもんか…おい手下!!例のアレ乗せて数人で小舟出せ」
手下「後を付けるんで?」
海賊の頭「手は出すな…チャンスを伺う」
手下「うひょぉ~やる気っすね?」
海賊の頭「あの船にゃ10年前の貴族のお宝がどっさり乗って居る筈なんだ…みすみす見逃すつもりは無ぇ」
見張り「海賊王の娘の懸賞金も破格でしたね?」
海賊の頭「だはは生け捕り出来りゃ豪族共を黙らす事ぐらい出来る」
手下「おいら達だけでやるんすか?」
海賊の頭「いや…手漕ぎ船の野郎共を捨て駒にするつもりだ…奴らの帰りを待って動く…それまでは偵察だ」
手下「分かりやした…例のアレを持って小舟で待機しとくっす」
海賊の頭「合図は大砲だ…着弾を見て動け」
『夕刻』
ザブ~ン ユラー
見張り「ガレー船が帰って来やしたぜ?」
海賊の頭「遅せぇんだボケが!!略奪品の載せ替えと伝令を出せ!」
海賊共「へ~い!!」
海賊の頭「幽霊船は見失って居ないだろうな?」
見張り「奴ら霧が晴れた海岸線沿いににある島に向かっているみたいっす…霧の中のこの船に気付いた素振りは無いっすね」
海賊の頭「島だと?何か隠して居たのか?」
見張り「灯台の建築が止まったままの島っすよ」
海賊の頭「遠浅で船が寄れなかった孤島だな?しかし何故あんな孤島に…」
見張り「あの孤島なら霧の中からでも大砲の射程に入りますぜ?」
海賊の頭「ぐふふふ…気付かれない様に射程に入れろ…あの船を落とせばお宝はこっちの物だ」
海賊共「お頭ぁ…今晩やるんで?」
海賊の頭「相手は海賊王の娘だ…まずは様子を伺う」
海賊共「さすがお頭…相手の力量を知ってるんすね?」
海賊の頭「俺は奴らの戦い方を見たことがある…用心するのは気球から撃って来る爆弾と突然変わる天候だ」
見張り「天候が急に変わる?」
海賊の頭「そうだ…嵐に備えろ」
見張り「ガレー船の奴らを捨て駒にするって言うのは?」
海賊の頭「そりゃ簡単な話よ…特攻させて相手が上手なら俺らは逃げる…村の略奪品を持ってな!だはは」
海賊共「ガレー船の奴ら言う事聞きやすかね?」
海賊の頭「あいつ等は北方の海賊だ…女だけ与えておけば満足する阿呆ばかりだ」
見張り「なるほど…海賊王の娘と知ったら勝手に特攻すると…」
海賊の頭「負け戦には点で弱いが…大砲を当てて勝ちを演出すりゃしっかり働くだろうよ」
海賊共「うぉぉぉ!!頭ぁぁ一生付いて行きやすぜ!!」
海賊の頭「ぐっふっふっふ…ダーッハッハ!!兎に角今は略奪品の載せ替えを急げぇぇ!!」
海賊共「うぉぉぉぉ!!」ドタドタ
『深夜』
シクシク メソメソ
殺しゃし無ぇからよ
大人しくしてりゃ良いんだ!
次は俺の番だ!勝手な事すんじゃ無ぇ!
俺はあいつらと違って優しいぜ?
そんな顔すんなよ…お楽しみはこれからじゃ無ぇか
シクシク メソメソ
海賊共「略奪品の積み替え終わりやした!!」
海賊の頭「シケた村だったがこれで当面の食料は確保出来た訳だ」
海賊共「手漕ぎの男奴隷を50人程と女奴隷の30人程はどう配分するんすか?」
海賊の頭「男奴隷は要らん!女を全員こっちの船に移せ」
海賊共「女はもう手を付けられてますが…」
海賊の頭「あの馬鹿共…奴隷は高く売れるという事を分かって居ないな」
海賊共「どうしやしょう?」
海賊の頭「何度言わせるんだ!連れて来い!傷物じゃ値が下がる」ドガァ
海賊共「ひぃぃぃ…」ドタドタ
『翌朝』
ザブン ザブン
見張り「頭ぁ!!幽霊船に動きがありやした…気球の球皮が膨らんでるっす」
海賊の頭「何ぃ!!動きが早い」
見張り「陸に近付けないもんで気球使って補給かと」
海賊の頭「ようし!!気球が居ないとなれば動きやすい…ガレー船に作戦開始の伝令を出せ」
海賊の頭「お前等ぁぁ!!働けぇぇ大砲をすべて幽霊船に向けるんだぁぁ!!」
海賊の頭「錆びついた砲弾は全部撃ち尽くすぞ!!」
海賊の頭「幽霊船に当てた奴には褒美を出す!!しっかり稼げぇ!!」
海賊共「うぉぉぉぉ!!」ドタドタ
見張り「気球が動き出しやした…ゆっくり陸の方へ向かってるっす」
海賊の頭「1時間待て…1時間もすりゃ地床炉村の異常に気付いてこちらが疎かになる…グフフ俺にツキが回って来た」
海賊共「頭ぁ!!大砲は射程内ですがもう少し近づかないと中々当たりやせんぜ?」
海賊の頭「黙れ何とかして当てろぉ!!嵐に巻き込まれたらそれこそ何も出来んのだ」
見張り「嵐が来る空じゃ無いんすがねぇ…こんな寒い海で嵐が来るとはとても…」ボソ
海賊の頭「俺に意見しようってのか!?この船じゃ俺の言う事が絶対だ!!黙って見張りを続けろボケがぁ!!」
---俺はあの海賊王の娘率いる海賊団で何年も遠目に見て来たんだ---
---奴らの行動は常を逸している---
---これが成功すりゃ下剋上---
---失敗しても霧隠れ---
---こんなチャンスは滅多に無い…逃す物か---
見張り「ガレー船が動き始めやしたぜ?岩場を挟んで幽霊船の死角から行くんすね?」
海賊の頭「グフフフ奴ら捨て駒とは知らず…すべては俺の予測通り」
『1時間後』
ザブン ザブン
見張り「ガレー船がそろそろ幽霊船の死角から出ます」
海賊の頭「気球はもう何処に行ったか分からんな?」
見張り「地床炉村方面に向かったまま雲の中に消えたっす」
海賊の頭「ようし!!開戦だ!!お前等ぁぁ!!撃てぇ!!ガレー船には当てるなぁぁ!!」
海賊共「うおぉぉぉ!!」
ドーン ドーン ドーン ドーン
見張り「初弾角度浅い!!もう15度くらい上だ!!」
海賊共「15度…えっほ!えっほ!」ガラガラ
海賊の頭「砲弾急げ!!気付かれる前に撃ちまくれ!!」
ドーン ドーン ドーン ドーン
見張り「一発ヒットぉぉ!!今の角度を維持して少し右!!…ってあれ?目の錯覚か?当たって無い?」
海賊の頭「ちゃんと観測しろボケなす!!」
見張り「いや当たった筈なんすが…被害が無い…なんで?」
海賊の頭「どんどん撃て!」---ううむ…やはり常を逸しているか---
ドーン ドーン ドーン ドーン
見張り「ガレー船横切るっす」
海賊の頭「構わん!撃てぇ!!とにかく一発当てろぉ!!」
見張り「ガレー船から火矢を撃ってるっす」
海賊の頭「ほう?奴らも頭を使うか…反撃は無いのか?」
見張り「良く見えないっす…未だ幽霊船は無傷」
ドーン ドーン ドーン ドーン
見張り「ヒットぉぉ!!アレ?…又被害無し…もしかして実体が無いのか?」
海賊の頭「空の方も良く監視しておけ!大砲は休みなく撃て!!」
海賊共「へ~い!!えっほえっほ」
見張り「ガレー船から小舟投下!乗り込む準備始めやした」
海賊の頭「さすが北方の海賊…だがここから相手が動くぞ?」
ドーン ドーン ドーン ドーン
見張り「よし!!2発ヒットぉぉ!!よしよし…幽霊船船体に穴が開いたぁ!!」
海賊の頭「撃て撃て~~い!!ガハハハハハ」
見張り「ガレー船の様子がおかしいっす…同士討ちを始めてるみたいっす」
海賊の頭「グフフやはりそうなるか…だがこちらが上手!大砲を休むな!!どんどん撃てぇ!!」
海賊共「うわぁぁぁ…竜巻が…ガレー船が巻き込まれる」
海賊の頭「構うな!!無視界でもそのまま大砲を撃ち続けろ」
ドーン ドーン ドーン ドーン
見張り「幽霊船!甲板部大破!帆の炎上を確認…あ!!」チュドーン
海賊の頭「何事か!?」
見張り「ガレー船が爆発…何を撃ったんだ」ガクガク
海賊の頭「ええい!爆炎で何も見えん…上から降って来たのか?」
見張り「いえ…幽霊船から何か射出してるっす…これじゃ近づけない」
海賊の頭「例の奴は何をしているのだ…見えんか!?」
見張り「キラーマシンっすね?見当たら無ぇっす…アレ?船尾の方に人影…誰か乗り込んでる」
海賊の頭「よしよし上手く乗り込んだ様だ…大砲を休むな!!竜巻が収まり次第少し寄せる…碇を上げろ!」
海賊共「この船も現場に行くんで?」
海賊の頭「キラーマシンが直に制圧するだろう…ガレー船が撃沈された今この船で行くしかあるまいグフフフ」
ドーン ドーン ドーン ドーン
『貨物用気球』
フワフワ バサバサ
商人「あの煙はやっぱり地床炉村だよ…地図の位置と一致する」
剣士「どうする?降りる?」
女戦士「高度下げろ…上から様子を伺う」
剣士「おけおけ!」グイ バサバサ
商人「家屋の延焼範囲がおかしいな…略奪に有った後じゃないかな」
女戦士「分かって居る…まだ生き残りが居るやも知れん」
剣士「酷いな…オーガに襲われたのかな…」
女戦士「オーガは火を使わん…こんな事をするのは海賊共に決まって居る」
剣士「この村にはハーフオークも居た筈…そんな簡単に略奪されるなんて…」
女戦士「持って居る武器が違う…民兵如きが敵う訳が無い」
”女戦士…聞こえるかえ?”
女戦士「貝殻…何か有ったのか?」
”緊急事態じゃ…海賊から奇襲を受けて居る”
”わらわ一人では押さえ切れぬ故…今すぐに戻って来るのじゃ”
女戦士「なんだと…」ボーゼン
”海賊は巧妙にも霧の中からこちらを捉えて居る様じゃ…数が掴めぬ”
剣士「マズいな…ここからだと1時間くらい掛かる」
女戦士「兎に角引き返せ…魔女…1時間持たせられそうか?」
”早うせい!!わらわの魔力は無限では無いぞよ?」
剣士「くぅ…」ギリリ
”魔女!!通話は私がやるから迎撃を”
”脱出の準備をしておくのじゃ…大砲で狙われては凌ぐのに限界がある”
”分かったわ…女オーク!!来て!!ドーン ガラガラ”
”何度もしつこいのう…量子転移!”
”ザザーーーザザザ”
剣士「量子転移を使って居るのか…マズいよ…時空がズレる」
女戦士「無駄口はもう良い…急いで戻れ」
剣士「しまったぁぁ!!アダマンタイトを船に置いて来てる…狭間に入れない」
----------------
女戦士「竜巻が2つ…その下に海賊船…ガレー級だな」
剣士「霧の中にも数隻居そうだ…砲弾が霧の中から飛んでる」
女戦士「商人!貝殻での通話は出来ないか?」
商人「応答しないよ…」
女戦士「それどころじゃないという事か…上手く凌いでくれて居れば良いが」
剣士「あああああ!!ダメだ!!そこはダメだよ…早く逃げて」
女戦士「千里眼だな?厳しそうか?」
剣士「砲弾の直撃を受けた…情報屋の眼はもう見えない…女オークも」
女戦士「魔女の眼はどうだ?」
剣士「魔女は視線を動かさないから情報量が少ないんだ…千里眼!」
女戦士「アサシンはどうした!」
剣士「今見てる…なんで水中に居るんだ?船から落ちたのか?みんなバラバラじゃないか…」
商人「霧の中にもう一隻海賊船が少し見える…大きい」
女戦士「ガレオン級…あれはセントラルの軍船を拿捕した物だ…一級装備を艦載している」
商人「あんな大きな船を見落としてたと言う事かい?」
女戦士「しまったな…可能性は考えて居たのだが今の海賊がそれ程動けるとは思って居なかった…乗って居るのは誰なのか」
剣士「やっとアサシンさんが船に戻った…酷い壊され様だ」
女戦士「戦況は?」
剣士「まだ乗り込まれて居ないけど大砲の的になってる…あぁぁ情報屋さんが折れたマストの下敷きになってる」
女戦士「このままいけば後20分で援護出来そうだ…商人!クロスボウの準備をしておけ」
商人「分かったよ」
女戦士「狙いはあのガレオン船だ…剣士!お前は例の爆弾を持って居るか?」
剣士「まだ作って無いよ…こんな事になるなんて思って無かった」
女戦士「お前は幻術が得意だったな?射程に入ったらガレオン船の海賊共を眠らせられるか?」
剣士「触媒を持って来ていない…」
女戦士「ええい!!何が出来る!?」
剣士「船を沈めて良いなら海虫を使役して船を腐らせられる」
女戦士「よし!それで良い…兎に角大砲を撃たせるな」
剣士「高度下げる…海虫の使役なら今できる」
女戦士「ヤレ!!」
----------------
----------------
----------------
『幽霊船』
ダダダッ
アサシン「魔女!!無事だな?」
魔女「戻るのが遅いわたわけ!船に爆弾は乗って居ないのかえ?」
アサシン「有る」
魔女「爆弾であの海賊船を破壊するのじゃ…わらわは治癒に回る故迎撃は主がヤレ」
アサシン「情報屋はまだ助かりそうだ…女オークは何処だ?」
魔女「分からぬ…砲弾の直撃を受けて居るで無事という事は無いじゃろう」ノソノソ
アサシン「迎撃は任せろ…処置がすんだら援護頼む」ダダダ
魔女「失血が酷いのぅ…急所を痛めたんか…回復魔法!」ボワー
情報屋「…」グター
アサシン「そのマストをどうにかしないと圧迫死するぞ」
魔女「分かって居る…主は迎撃に専念せい…量子転移!」シュン
メリメリメリ ズドーン
魔女「さて女オークは何処に行ったかいな?」ノソノソ
情報屋「ぅぅぅ…」ピク
魔女「これ動くで無い…ちと安静にして居れ」
情報屋「ど…どうなったの?」
魔女「何とか凌いでおるがもう魔力が枯渇しておる…脱出するぞよ」
アサシン「2人とも伏せろ…あの船を沈める」
シュンシュンシュン ストストスト
情報屋「火矢…」
アサシン「消火してる暇は無い様だ…撃つぞ」チリチリ バシュン!!
ピカーーーーチュドーン!! ザバーーーー
アサシン「クックック…ありえない威力だな…この爆弾は」
魔女「これでこの浜辺に近寄り難くなったじゃろう…今の内に小舟で脱出じゃ」
アサシン「船を捨てるつもりか?」
魔女「仕方あるまい…大砲の的になっておる」ノソノソ
ドコーン!! ドコーン!! パラパラ
アサシン「…その様だ…情報屋!背負ってやる」
情報屋「女…オークを助けてあげて…多分荷室の方に落ちて行ったから」
魔女「わらわが行くで小舟で待って居れ…」ノソノソ
バシュン! グサリ
魔女「はぅぅぅ…」ガク
アサシン「何ぃ!!船尾から誰か乗り込んで…」
情報屋「キ…キラーマシン…どうして」
キラーマシン「…」ウィーンガチャ
アサシン「ええい!アレは厄介だ…」スラーン チャキリ
魔女「アサシン何とかせい…わらわでは勝てぬ」
アサシン「こいつの弱点は何処だ?関節か?」
魔女「電撃じゃが触媒を用意して居らぬ…10分耐えるのじゃ…魔石と触媒を探して来る」ノソ
アサシン「情報屋…マストの陰に隠れて居るのだ」ドサリ
情報屋「はぁはぁ…」ズリズリ
アサシン「さぁて…一体か」---突き落とすのが一番なんだが…どうする?---
キラーマシン「…」ウィーン バシュン バシュン
アサシン「早い…」ヒラリ ダダ
カーン カーン キーン
キラーマシン「プシュー」ガチャコン ガチャコン
アサシン「流石に機械相手では不利か…バックスタブ!」ジャキン
キラーマシン「プシュー」ブン! ザクリ
アサシン「う…深いな」ヨロ
キラーマシン「ウィーーーン」バシュン バシュン
アサシン「効いて居ないか…」ヒラリ ピョン
キラーマシン「プシュー」ガチャコン ガチャコン
アサシン「スケルトン共ぉ!!来い…こいつを海に突き落とせ」
スケルトン「カタカタカタ…」ドタドタ
キラーマシン「…」ブン ブン
スケルトン「カタカタカタ…」バラバラ ドサリ
アサシン「スケルトンでは力不足か…あの海に浮いている海賊の死体は使えるか?…動け不死者共!!我に従え!!」
バシャ バシャ
アサシン「ちぃぃ…従う数が少ない…」
ドコーン ドコーン パラパラ
アサシン「ナムサン…向こうからは構わず大砲を撃って来るか」タジ
キラーマシン「…」ウィーンガシャ ウィーンガシャ
アサシン「不死者の使役も宛てに出来ん…どうする?魔女!!まだか?キラーマシンは相性が悪い」
情報屋「お…女オーク?無事だったのね?」
女オーク「ヴヴヴヴヴ…グルルル」
情報屋「え!?まさか…」
アサシン「しまった…女オークが居る事を忘れていた…」
女オーク「ガァァァァ…」ズルズル ズルズル
アサシン「頭部が半分欠損…即死か」
情報屋「最悪…」
アサシン「魔女はどうした!?返事をするのだ!!」
情報屋「ダメ…魔女も倒れてる」
アサシン「不死者共ぉ!!キラーマシンを海に突き落とせ!!」
女オーク「ヴヴヴヴヴ!ガァァァァ」ズドドド
情報屋「アサシン!なんて非道を…」
アサシン「黙れ!小舟に落とすぞ?受け身はなんとかしろ」グイ ポイ
情報屋「あぁぁぁぁぁ…」ドサ
アサシン「魔女!!」シュタ
魔女「…」グター
アサシン「失血で気を失ったのか…仕方無いここは一旦引く」グイ ダダダ
---------------
『小舟』
ジャブジャブ
情報屋「女オークがキラーマシンと素手で戦ってる…素手で勝てる訳…無いのに」ポロポロ
アサシン「見るな…もう女オークは居ない」
情報屋「最悪の展開よ…あぁ!!腕が切り落とされた…」プルプル
アサシン「見るなと言っている…それより魔女の失血が酷い…応急処置をしろ」
情報屋「…」ゴソゴソ
アサシン「急所にボルトが刺さって居る様だが…心臓の位置を変えているのだな…」
情報屋「こんな体の真ん中の傷をどうやって止血するのよ…」
アサシン「私のエリクサーを使え…兎に角出血が収まれば良い」
情報屋「早く気球戻って来て…お願い」プルプル
アサシン「まだ気を抜くな…生きている海賊共が島に上陸しようとしている」
ドーン ドーン ドカーン
情報屋「大砲がキラーマシンに直撃…女オークも何処かに飛んだ」
アサシン「もう良い…浜辺に着いたら岩場まで走れ…行けるか?」
情報屋「無理ヨ…足が折れているわ」
アサシン「這ってでも行くんだ…浜辺で囲まれては戦いにならん」
情報屋「最悪の最悪…急にこんな事になってしまって」
アサシン「私達が平和ボケしていたツケだ…女戦士の勘は正しかったのだ」
情報屋「船はまた買えば良いけど…女オークはもう帰って来ない」
アサシン「まだ言うのか?済んだ事はもう考えるな…これぐらいの死戦は経験して来ただろう」
情報屋「あ!!見て…霧の向こうから大型の海賊船…」
アサシン「あれが本隊か…中々にやる物だ」
ザワザワザワ ドロロ
アサシン「むむ!!海の下で何か動いている」
情報屋「大砲が止んだ…なにか様子がおかしい」
アサシン「あの海賊船は傾いて居る様に見える…どうした?気球が間に合ったのか?」
情報屋「空にはまだ見えない」
アサシン「あれに掴まる前に身を隠すぞ…船を降りろ…肩を貸す」グイ
情報屋「痛い!!…」
アサシン「ちと辛抱しろ…行くぞ」ジャブジャブ
情報屋「ひぃひぃ…」ヨタヨタ
--------------
--------------
--------------
『岩場』
アサシン「この岩陰に身を隠すんだ…むん!!」ドサリ
情報屋「はぁはぁ…もう動けない…おえっ」ゲロゲロ
アサシン「島に上陸した海賊は同士討ちを始めている…どうなって居るのか」
情報屋「きっと魔女の幻術よ…お陰で助かってるわね」
アサシン「あの海賊船も一向にあの位置から動かんな」
情報屋「もうあんなに傾いてる」
アサシン「船底に穴でも開いたか?」
情報屋「望遠鏡は持って居ないの?」
アサシン「持ってくる機転が利かなかった…持ち物は装備一式だけだ」
情報屋「そういえば思い出した事があるわ…」
アサシン「大事な事か?」
情報屋「あなたも聞いて居た筈…10年前の光る夜の時にまだ子供だった未来君が言った言葉」
アサシン「クックックそんな昔話を覚えている訳が無かろう」
情報屋「乗ってた船が壊される夢を見たって…あの時私がなだめたのよ」
アサシン「あぁ…予言の話か…悪い夢でも見たのだろうと思って居たが」
情報屋「他にも沢山意味の分からない事を言っていたわ…ずっと忘れてた」
アサシン「今の状況には適さない話だ…今は生き抜く事を考えろ」
情報屋「あの時の話と附合点が多いからちょっと気になってね」
アサシン「しかし魔女が目を覚まさん事にはどうにも動けんな」
情報屋「気球を待つしか無い様ね」
アサシン「2人はここで隠れて居ろ…私は周囲を警戒する」スック
情報屋「待って!私はもう動けない…一緒に居てくれないとダメよ」
アサシン「そうも言って居られん…キラーマシンを送り込んだ海賊が潜んで居るかも知れんのだ」
情報屋「え!?」
アサシン「キラーマシンが単騎で乗り込む訳が無かろう…何処かに潜んで居る筈だ」
情報屋「海賊の狙いは幽霊船でしょう?逃げた私達を追って来ると?」
アサシン「海賊王の娘にどれだけの懸賞金が掛かっているか知らないのか?」
情報屋「…そうだったわね」
アサシン「ローグの奴も随分高値の懸賞金を掛けた物だ…まったく」
情報屋「あ!!見て…私達の気球よ…海側から来る」
アサシン「おぉ…間に合ったか…奴らが海賊船を止めたんだな?」
情報屋「きっとそうね」
アサシン「私達が逃れて居るのは千里眼で見えて居る筈だ…隠れて待とう」
--------------
『貨物用気球』
フワフワ ドッスン
女戦士「よし!無事だな?早く気球に乗れ」
アサシン「助かった…私も深手を負って体が動かしにくかったのだ」
女戦士「被害甚大だ」
情報屋「剣士は?」
女戦士「勝手に気球から降りて船に居る…」
情報屋「女オークがやられて…」
女戦士「知って居る…剣士はそれきり一言も話をしない」
アサシン「迂闊だった…済まない」
女戦士「済んだ事だ…何も言うまい」
情報屋「これからどうするの?」
女戦士「あの大型の海賊船はもう航海能力が無い…あと数時間で海へ沈む」
アサシン「まさか救助するつもりじゃあるまいな?」
女戦士「恐らく地床炉村の人々が奴隷にされている…捨て置けまい」
アサシン「こっちには動かせる船も無いのだぞ?」
女戦士「気球が有るでは無いか…一先ず救助を優先してこの島でキャンプを張る」
アサシン「…これは休めんな」
女戦士「不死者が休むなぞたわけた事を言うな…キャンプ構築はお前が使うゾンビにやらせろ」
情報屋「私達の船はもう安全?」
女戦士「剣士が守って居る限り安全な筈だ…既に魔女を超える力を持って居る様だ」
アサシン「大型の海賊船は剣士が沈めた?」
女戦士「それ以外に考えられるか?」
アサシン「それもそうだ…」
女戦士「海賊共はなぜ沈没したのか分かって居ないだろうから次の手を打ってくる事も考えられる…急いで再構築だ」
商人「気球を飛ばすよ…早く乗って」
フワフワ フワフワ
『幽霊船』
フワフワ ドッスン
女戦士「商人!積み荷の確認をして来い…エリクサーの樽が無事なら持ってくるんだ」
商人「おけ分かった…」タッタッタ
アサシン「私は警戒で良いか?まだ近くに海賊が居るかもしれん」
女戦士「見つけ次第殺して使役しろ」
情報屋「大型の海賊船の船首が持ち上がり始めたわ」
女戦士「直に船体が2つに割れて沈没する…小舟に乗った海賊共で溢れるから…それまでに迎撃準備を整える」
情報屋「霧の向こう側に他の海賊船が控えて居ないかしら」
女戦士「居るかもしれんがこちらに近付けばあの海賊船の二の舞だ」
情報屋「そういう事ね…剣士は何処へ?」
女戦士「さぁ?そっとしておいてくれ…海虫の使役で十分仕事はこなしているのだから」
情報屋「海虫…海の中の虫を使役して海賊船を沈没させたのね」
女戦士「海を支配して居ると言っても過言では無いかもしれん」
情報屋「ちょっと剣士を探して来る」
女戦士「…」ジロリ
情報屋「そっとしておくから心配しないで」
『壊れた居室』
ヴヴヴヴ ドサリ ピチャ
剣士「動いたらダメだよ…方陣の中から出ないで」
女オーク「ガァァァ…」ズルズル
剣士「今楽にしてあげるから…もう少し抱っこさせて」グイ
女オーク「ヴヴヴヴ…」ピクピク
剣士「君の魂は今何処にあるかな?浄化が済んだら僕に掴まってね…」
女オーク「グルルルル…」ノソ
剣士「ダメだって方陣から出たら…」ゴソゴソ
ガチャリ ギーーー
情報屋「…ぁ」---バラバラの体を集めて居るのね---
剣士「情報屋さんかぁ…見て居たんだ君の眼を」
情報屋「そう…助けられなくてゴメン」
剣士「体は大丈夫?」
情報屋「私はもう平気よ…少し足が痛むだけ」
剣士「線虫!」ザワザワ ニョロリ
情報屋「ぁ…」ゾワワ
剣士「僕は心配いらないから部屋を出て行ってもらって良いかな?」
情報屋「私も女オークがこんな風になってしまって悲しいわ」
剣士「ゴメン…早く術を唱えてあげたいんだ…出て行って」
情報屋「…」スタ
ガチャリ ギーーー
剣士「なんでかなぁ?涙が出ない…ただ心が寂しい」
女オーク「ヴヴヴヴ…」ズルズル
剣士「行くよ?しっかり掴まって…浄化魔法!」シュワーーー
女オーク「アガ…」サラサラサラ
剣士「おいで!僕の所へ…」
灰「…」サラサラサラ
剣士「…」
剣士「……」
剣士「楽になったかい?君は何処に行ったんだい?」
灰「…」
剣士「さぁて…僕の仕事は終わった」
---こんなに仲良くなれる人は多分一生現れないと思う---
---なぜなら僕はもう子供の頃に戻れないから---
---あの時を一緒に過ごせたからこんなに仲良くなれたんだ---
---僕はもう失いたくない---
剣士「今から君を救いに行くよ」
---量子転移は使うてはイカン---
剣士「魔女は何回も使っていたじゃないか…僕にだって出来るさ」
---次元の狭間に迷うぞよ?---
剣士「うるさいなぁ…僕の記憶に魔女の言葉が焼き付いてる」
剣士「危険なのは知ってるさ…でも僕は失いたく無いんだよ」
剣士「こんなに仲良くなれる人はもう一生現れない…だから僕は行く」
剣士「魔女に見つかる前に早く行かないと…今行くよ!!」
剣士「あの時のあの時間!!次元は僕の物だ!!量子転移!!」シュン
ガチャリ ドタドタ
情報屋「剣士!?剣士!!?」
-----------------
-----------------
-----------------
『光の中』
あれ?…
次元が僕の物にならない
手も…足も無い
ここは何処だ?
僕の意識だけか?
女オーク?何処にいる?
お~い!!誰か居ないのかい?
もう一回…あの時のあの時間!来い!!量子転移!!
…
…
…
マズいなぁ…さてはここは次元の狭間だな?
次元からバンされたのか
せめて君が居たらここでも良いのに…
誰か返事してよ
おーい!!
仕方ないなぁ…ここに居てもしょうがないし歩いてみるかぁ…
-------------
-------------
-------------
『次元の狭間』
何処まで行っても果てが無い…
どのくらいの時間が過ぎたのか分からなくなった
僕は只君を失いたく無かっただけなのに
全てを失った様だ
有るのは僕の記憶だけ
確かに覚えてる
只そこにどうやっても行く事が出来ない
はぁぁぁ疲れたな…眠りたい
心の穴も開いたままで辛い
君の無惨な姿の記憶を消してしまいたい
どうやったら消せる?
楽しかった記憶を思い返しても結局最後に君を失う
悲しい…
パパ…助けて
---自分の次元を強く持つんだ---
分かってるよ…でもどうしても記憶にたどり着けない
やり残した事が沢山合ったんだ
そうさ…僕がやらなきゃいけない事を放り出して
この次元の狭間に来てしまった
僕は何処に行けば良いの?
---------------
---------------
---------------
『記憶』
僕「あれ?…ここは…」
僕「パパ?…ここどこ?」
僕「魔女?…何処に居るの?」
僕「あれ?記憶が…」
僕「僕何してたんだっけ…」
僕「誰も居ないの?」
---こっち---
僕「誰?」
---目を覚まして---
僕「ホム姉ちゃん?」
---僕だよ---
僕「僕?」
-------------
-------------
-------------
そうだった…僕は何度もこの次元の狭間に迷い込んだ
自我を取り戻すのは記憶の向こう側の僕なんだ
どうすれば思い出させられるんだろう…
記憶の向こう側の僕が思い出さないと意味が無いんだ
僕は僕の次元を放棄して良いのだろうか…
眠りたい…
『瞑想』
そこに居るのは誰?
”重なって”
見つけた!君は誰?
”僕だよ”
助けて欲しいんだ…ここから出たい
”分かって居るさ…君は僕だろう?”
良かった…僕が迎えに来た
”これで何度目だったかな”
何度目?
”そうかまた忘れてしまったんだ”
覚えて居ない…記憶に無いよ
”今度こそ次元を強く持つんだよ…さぁ”
どうしたら良い?
”重なって…声のする方へ”
『声』
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??「どうしたの?泣いているのね?」
??「外が騒がしい様じゃ…ちぃと離れるぞよ」
??「これ読ませておいて良いの?」
??「危険は無さそうじゃから良いのでは無いかのぅ」
??「文字が読めない筈なのに内容が分かるのかしら」
??「さぁのぅ…では頼んだぞよ」
僕「ぅぅぅ…僕は…僕は…何処から来たんだ?」
??「どんな物語だったの?」
僕「うわぁぁぁ…頭に記憶が流れて来る」ブルブル
??「ほら落ち着いて…こっちにいらっしゃい」
僕「僕は誰だ!?」
---見つけた---
---あの時の僕に次元を託す---
僕「うわぁぁぁぁ!!嫌だ!!死んじゃダメだ」バタバタ
??「コラコラ暴れない…皆の迷惑でしょう?」
僕「はぁはぁ…」
??「何を見たのかお話出来る?」
僕「未来の記憶を見た…まだはっきり覚えてる」
??「よしよし…私が聞いて進ぜよう」
僕「ここは何処?今はどの時点?」
??「混乱していそうね…まずゆっくりスープでも飲みましょう…ずっと食事していないでしょう?」
僕「ダメだよ僕にそんな余裕は無い…記憶が在るうちにやれる事を…」
??「ダメよ飲みなさい」グイ
僕「う…うむむ」ズズー ゴクリ
『あの時の記憶』
ザワザワ ガヤガヤ
情報屋「どう?落ち着いた?」
子供「僕は大丈夫だよ…それよりここはシャ・バクダ遺跡の地下だね?」
情報屋「落ち着いて居ないじゃない…そうここは遺跡の地下よ…皆ここに避難しているの」
子供「そうか思い出したぞ…僕は冒険の書で未来を見たんだった」
情報屋「う~ん…やっぱり混乱している様ね」
子供「どうして今まで忘れて居たんだ?」
情報屋「冒険の書で何を見たのか教えて貰える?」
子供「話すと長いよ…そして複雑なんだ」
情報屋「これもこの冒険の書の調査の一つなのよ…長くても良いからお話してみて?」
これから10年分の僕が経験する記憶のすべてが頭に流れ込んで来た
僕は破壊された僕達の船の中で取り返しの付かない事をしてしまった
そうだ…その直前に情報屋さんとも会って居るんだ
情報屋「え!?10年後の私に会ってる?」
子供「そうだよ最後に情報屋さんの声が聞こえた」
情報屋「へぇ?それは興味心身…もっと詳しく聞かせて?」
子供「何処から話そう…そうだこの10年間で何が起こるか先に話すよ」
情報屋「ふむふむ…あなたが見たのは予言という事ね?…少し待って?メモを取るから」ゴソゴソ
子供「僕はこの後魔女に引き取られる…それから」
カクカク シカジカ
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『1時間後』
情報屋「ふむふむ…それで次元の狭間という所に幽閉されたという事ね」メモメモ
子供「僕は確信した事がある…この世界は記憶で構成されている…それが多分夢幻なんだ」
情報屋「それは魔女とお話した方が良さそうね」
子供「話したら頭が整理出来たよ」
情報屋「信じられない話ばかりだけど良く出来たお話だわ」
子供「事実だよ」
情報屋「それから未来君の口調も子供とは思えない」
子供「だから事実なんだ…信じられない?」
情報屋「何か裏付けられる事は出来る?」
子供「魔法が使える」
情報屋「それは今まででも使えていたでしょう?」
ノソノソ
魔女「これ未来…情報屋を困らせて居る訳では無いじゃろうな?」ノソノソ
情報屋「あ!!魔女…未来君は冒険の書で予言を見たと言って居るの…このメモを見て?向こう10年間で起こる事を話してくれた」
魔女「ほう?未来を見たとな?どれどれ」
子供「本当の事なんだ…僕は未来に戻って過ちを正したい」
魔女「随分細かい予言なのじゃな…」ヨミヨミ
情報屋「魔女はどう思う?」
魔女「これ未来…主は未来を見たのか?それとも未来から来たのかえ?」
子供「未来で量子転移を使った…次元の狭間に迷って声のする方に来たら僕は冒険の書を読んで居た」
魔女「10年も戻ったという訳じゃな?」
子供「多分そうなる…魔女これを見て!線虫!」ニョロ ポトン
魔女「むむ…」
子供「アレ?どうして成長しない?」
魔女「その術は何処で覚えたのじゃ?剣士に教わったんか?」
子供「もっと上手に使える筈なんだ」
魔女「幻術の印と訳書をこのメモ書きに記してみよ」パサ
子供「そんなの簡単さ…えーとアレ?文字を思い出せない」
魔女「ふむ…そういう事じゃ…主は未来から来たのでは無い様じゃのう」
子供「…どうして…記憶はハッキリしている」
魔女「主の次元はここに在る…恐らく冒険の書に記された別の次元を見たのじゃろう」
子供「夢だと言ってる?」
魔女「早い話がそうじゃ…じゃがな?蟲使いの素質は認める…良い幻術使いになろうて」
子供「ちょっと待って!僕は元の次元で過ちを正したい」
魔女「こう言えば分かるかの?10年経てば元にも戻るやも知れんな」
子供「そんな…」
魔女「それから言うて置く…その記憶は時が経てば直に無うなる筈じゃ…大事な事は今の内に何かに記せ」
子供「くっ!!僕は僕の次元を守る」
魔女「主は一人じゃぞ?わらわ達皆の次元に調和されるのは時間の問題じゃ」
子供「もう良い!!魔女とは話さない」プン
魔女「精々寝ん事じゃな…それから次元の成り立ちを理解したのは評価してやる」
子供「!!?」
---魔女は僕が未来から来たことを否定していない---
---変えようの無い理に従えと言って居るんだ---
『勇者の像』
ガヤガヤ ガヤガヤ
気球が無いとどうにも効率悪いでやんす
ソリでも作ってシカに引かせろ
オアシス砦までの往復なら行けるんすが
向こうに避難民は集まって居るのか?
へい…近隣の村から避難して来てるっすね
食料の移送をなんとかせんと餓死者が出やすぜ?
ガヤガヤ ガヤガヤ
子供「…」ジーーーー
ローグ「未来君は横にならんで良いんすか?」
子供「…」ギロリ
ローグ「おろろ?どうしたんすか怖い顔をして」
子供「ローグさんは味方?」
ローグ「何を言ってるんすか…ずーっと味方でやんすよ」
子供「ビッグママは何処?」
ローグ「頭は外で避難民保護隊を組んで走り回っているっす」
子供「僕に話しかけてくれるのは情報屋さんとローグさんだけだよ」
ローグ「済まんでやんす…皆忙しいもんで…寂しい思いしてるんすね」
子供「僕はいつまで此処に隠れて居るの?」
ローグ「そうっすねぇ…シン・リーンかフィン・イッシュから気球が来れば安全な場所に移動できるかもっすね」
子供「安全な所でヌクヌクするつもりは無いよ」
ローグ「一緒に働きたいでやんすか?」
子供「少し違う…僕がやらなきゃいけない事をやりたい」
ローグ「今はちーっと辛抱っす…食料も後3日で尽きるもんすから力を蓄えて置いて下せぇ」
子供「そうだ…小麦の種が少し欲しい」
ローグ「何に使うでやんすか?」
子供「育てる」
ローグ「外は雪が積もって居るでやんすよ?」
子供「良いんだ…育てて見るから少し持って来て」
ローグ「分かりやした…ちっと待ってて下せえ」
---成長魔法は魔力があれば使える筈---
---回復魔法より簡単さ---
『遺跡下層_隠し通路』
ピチョン ピチョン
情報屋「…やっぱりこの台座は木の根と癒着してる…どういう仕組みなの?」ゴソゴソ
子供「居た!!」
情報屋「あら?未来君?ダメじゃないここは立ち入り禁止にしているのよ?」
子供「情報屋さんは立ち入ってるじゃない」
情報屋「私は遺跡の調査よ…ここはいつ崩れるか分からないから危険よ?」
子供「大丈夫…10年後もこの場所は健在だよ」
情報屋「フフ調査の邪魔はしない様にね」
子供「この石造…ホム姉ちゃんだよね」
情報屋「信じられないでしょう?未来君の仲良しだった人が石造になるなんて」
子供「頭は何処に行ったの?」
情報屋「行方不明…」
子供「良く探したの?」
情報屋「瓦礫に埋もれているだろうから探すのに人出が必要なのよ…もう瓦礫か石造の一部かの判別も難しいと思うわ」
子供「ホム姉ちゃんの頭の中にある金属片の事だよ」
情報屋「あぁ…超高度AIユニットという奴ね…商人が必死に探していたけど見つからなかった」
子供「商人さんは見かけないけど何処へ?」
情報屋「何日か前に商隊に混ざってセントラルへ向かったわ…心臓が悪いと言うのに無理してね」
子供「大丈夫さ…10年後も商人さんは生きている」
情報屋「フフそうだったわね」
子供「情報屋さんは僕の言った事信じてる?」
情報屋「勿論信じて居るわよ?」
子供「そう…なら良い」---君も記憶が徐々に無くなって行くんだよ---
情報屋「もう夜の筈よ?寝ていらっしゃい?」
子供「眠れないんだ…ねぇここの台座に記されている文字読める?」
情報屋「文字?あぁぁコレね…古代文字でアーカイブって書いて居るのよ」
子供「どういう意味?」
情報屋「それを解き明かす為に調査しているの…触って壊さない様に」
子供「何の金属で出来ているんだろう」コンコン
情報屋「ああああああ!!ダメダメ!!古い物は崩れやすいから触っちゃダメ」
子供「10年後もこのままだよ」
情報屋「又それか…そうそう10年後を知って居るならこの遺跡の謎も知って居たりしないの?」
子供「他にも沢山秘密の部屋を発見したって言ってた」
情報屋「他には?」
子供「うーん…この遺跡の話はあまり聞いて居ないんだよ…というか僕に興味が無かった」
情報屋「フフ何でも知って居る訳では無い様ね」
子供「僕が知ってる事以外知らないよ…あれ?おかしな事言ってるな」
情報屋「でも不思議…この間までの未来君とは別人とお話しているみたい」
子供「僕は僕だよ…ちょっと僕もホム姉ちゃんの頭の中を探して見ようかな」
情報屋「怪我しない程度になら良いわ」
子供「ワームを使役出来るかな?…試してみよう」
情報屋「虫を使う気?さすが女海賊の子ね」
子供「ママも不思議と蟲を使役してたよね…出でよワーム!我に従え…この部屋にある金属を探せ…」
情報屋「フフご自由に」---両親を失って少し現実逃避気味なのね---
子供「来た来た…あぁぁ小さいなぁ…今の僕じゃこんなもんか」ニョロリ
子供「ねぇこの部屋ってさ…立ち入り禁止であまり人が来ないんだよね?」
情報屋「そうよ?どうして?」
子供「隅の方で種を植えても良いかな?」
情報屋「種?構わないけど散らかさない様に」
子供「よし!土も水気も良さそうだ…」ゴソゴソ
ピカー
情報屋「光の石ね?それは明るくて助かる」
子供「種育てるから驚かないで…成長魔法!」ザワザワ グングン
情報屋「えええ!!?未来君…あなた…」
子供「う~ん質はあまり良くないけど食べるには十分か…」
情報屋「スゴイ…剣士はこんな事もあなたに教えて行ったのね」
子供「収穫手伝って貰える?」
情報屋「盗賊かローグを呼んで来るわ…食料難と寝床が同時に解決する」
子供「魔女には内緒でお願い…理を超えた事をしようとすると怒るから」
情報屋「ここで待って居るのよ?」タッタッタ
---分かって来たぞ…今の僕は上位魔法が使えないだけだ---
---基本魔法を工夫すればなんとかなる---
『数分後』
スタスタ スタスタ
マジっすか?そらスゴイでやんす
秘密は守って…未来君を尊重するのよ?
分かってるでやんすよ…あっしは未来君を信じるでやんす
ローグ「うはぁぁ…黄金色の麦」
情報屋「未来君?ローグを連れて来たわ」
子供「うん!収穫手伝って…それから水が足りなくて良い品質の麦にならないから水が欲しい」
ローグ「雪を溶かした水なら十分あるでやんす…収穫終わったら取って来るっすよ」
子供「おけおけ…さっさと収穫済ませよう」ザクザク
情報屋「遺跡の調査どころじゃ無くなったわ」ザクザク
子供「もう少し広い場所は無いのかな?」
情報屋「通路なら使っても良いわ」
子供「う~ん…まぁ遺跡の中じゃしょうがないかぁ…」
ローグ「いやいやこれでも十分助かるっすよ…脱穀して樽1杯分くらいは有りそうでやんす」
子供「よ~し!今日は麦を沢山収穫しよう」ザクザク
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『翌日』
ガヤガヤ ガヤガヤ
今日はパンの配給が有るらしい
うほーそりゃ久しぶりのまともな食い物だ
麦の補給が合ったという事はシン・リーンから物資が届いたのか
さぁな?おい配給が来たぞ…並べ並べ
ガヤガヤ ガヤガヤ
盗賊「随分賑やかだな…何か有ったのか?」
情報屋「あら盗賊…狩りから戻って居たのね」
盗賊「おぅ…狩りもラクじゃ無ぇ…ちっと寝るわ」
情報屋「パンとワインが有るわ…食べてから寝て」
盗賊「分かってるじゃ無ぇか…どこで手に入れたんだ?このワイン」
情報屋「オアシス砦に残って居た物よ…大事に飲んで」
ローグ「盗賊さん!!狩りの方はどうっすか?」
盗賊「おぉローグか…いやいやデカい虫の討伐が大変でよ…シカ肉は2頭分しか調達出来んかった」
ローグ「でかい虫とはサンドワームの事っすかね?」
盗賊「サンドワームなら食えるから良いが…残念ながらデカイ毒グモだ…こいつの毒にやられて中々上手く狩りが進まん」
情報屋「それで魔女が呼び出されて行った訳ね」
盗賊「まぁそんな所だ」グビ
ローグ「アサシンさんも頭も忙しそうっすね…何か聞いていやせんか?」
盗賊「俺も顔合わせて無ぇんだ…しかしいつになったら補給が来るのか」
情報屋「フィン・イッシュからはそろそろ来ても良い筈」
ローグ「ちと気になったんすが虫は未だにドリアード目指して北上してるんすかね?」
盗賊「んな事知るか!!」
ローグ「羽虫は全部焼かれたんすよね?」
盗賊「あんま見無ぇな…てか地べたを行く虫しか見て無ぇが…」
情報屋「エルフの森の方はどうなって居るの?」
盗賊「奥の方がどうなってるか知らんが火災が収まる感じは無いな…そこらじゅうで火柱が立ってる」
ローグ「まだ落ち着きそうにないっすね」
盗賊「俺らはハッキリ言って難民な訳よ…シン・リーンかフィン・イッシュからの応援待ちだ」
情報屋「森を挟んで向こう側のシン・リーンから来るとは思えないのだけれど…」
盗賊「来るなら迂回して来るんだろ…ところでよ?未来はどうしてるんだ?」
情報屋「あぁその件なら…例の隠し通路の奥で何かしてるわ」
盗賊「良いのか?あそこは崩れるかも知れんぞ?」
ローグ「姉さんと剣士さんが居なくなって寂しい思いをしてるんすよ…仲の良かったホムンクルスさんの傍に居たいんじゃないすかねぇ…」
情報屋「そうね…言動も急におかしくなって」
盗賊「ちっと心配だな…情報屋!お前が母親役をヤレ」
情報屋「もうやって居るわ…急に大人ぶって居るから少し困惑しているの」
盗賊「まぁそういう年頃か…あぁぁダメだ俺はちと寝る」
情報屋「さて…下に行って未来君の様子を見て来る」スタ
ローグ「何かあったら又呼んで下せぇ…外のキャンプに居るでやんす」
『隠し部屋』
ガッサ ガッサ
子供「ワームが集まってる…絶対のこの下に埋まってる」ガサゴソ
ワーム「…」ニョロニョロ
子供「…有った!!コレだ」ゴソゴソ
子供「…」---これがホム姉ちゃんの記憶---
いや…精霊の記憶
ずっと昔の精霊は活動を停止する前に夢幻を作ったと聞いた
ホム姉ちゃんも同じ様に夢幻を作った可能性はある
この場所で…
同じ様に…
その夢幻を冒険の書から覗けるのじゃないか?
僕の記憶も
他の人の持つ記憶も全部
本当は夢幻の出来事なんじゃないか?
今のこの瞬間も
本当はホム姉ちゃんが記録している記憶
この小さな金属の中でずっと記録を続けているんじゃないか?
スタスタ
情報屋「未来君居るのぉ~?」
子供「え!?あぁ…居るよ」スック
情報屋「あなた寝て居ないでしょう?少し横になりなさい」
子供「えーと…僕は寝なくても大丈夫なんだ…瞑想出来るから」
情報屋「じゃぁ瞑想して体を少し休めなさい」
子供「平気だよ」
情報屋「ダメ!こっちに来るのよ」グイ
子供「分かった分かった…行くから引っ張らないで」ヨタヨタ
---この体は小さくて大人の女の人にも敵わない---
---でも知ってる…魔力の集中はこの体の方が良い---
『添い寝』
んががが~すぴ~~
子供「…」ジーーーー
子供「…」---このまま動かないで居れば寝たと思ってくれるだろうか---
子供「…」---でも動くのを我慢するのも中々に苦痛だ---
子供「…」ギンギン パッチリ
モゾモゾ
情報屋「眠れないの?こっちにいらっしゃい?抱っこしてあげるから」
子供「今昼間でしょ?眠れる訳無いじゃ無いか」
情報屋「あなたずっと寝て居ないのよ?」
子供「ねぇ情報屋さん」
情報屋「うん?」
子供「盗賊さんの事好きだよね?」
情報屋「急に何を言い出すのよ」
子供「僕知ってるんだ」
情報屋「知ってるって…何を?」
子供「昨日話したよね?これから子供が生まれ無くなるって」
情報屋「あぁその話ね」
子供「10年経っても情報屋さんには子供が生まれないんだ…悔やんで居たよ」
情報屋「馬鹿な事言わないの!!怒るわよ」
子供「僕が変えてあげる…だから今子供作って」
情報屋「なっ…寝なさい!!」
子供「今しかチャンスが無いんだ…ドリアードが動き出す前に早くしないと…簡単さ…エッチするだけだよ」
情報屋「未来君あなたねぇ…大人の真似事はもう止めなさい」
子供「やっぱり僕を信じていないんだね」
情報屋「あ…そういう意味じゃないの」
子供「僕は眠れないから少し散歩してくるよ」スック
情報屋「ちょっと…」
子供「僕を信じて?僕は向こうに行くから今…子供を作って」
情報屋「そんな事出来る訳…」
子供「僕の魔法の力を見たよね?僕は未来から来たんだ…僕の言葉を信じて」
情報屋「ちょ…それは…」
子供「じゃぁ行くよ…今なら盗賊さんと2人きりだ…上手くやって」スタタ
---こんな方法でしか未来を変えられないのかな---
---変えたとしても元通り修正されてしまうのだろうか---
『遺跡外_キャンプ』
ガヤガヤ ガヤガヤ
シャ・バクダ街の方はまだ使える資材が残ってる
3班はもう一回シャ・バクダ向かって回収行ってくれぇ
オアシス砦までの整地に応援が欲しい
ダメだ今居る人員でなんとかしろ
ガヤガヤ ガヤガヤ
ローグ「ああ!!未来君…丁度良かった」
子供「ローグさん…やっとみつけた」
ローグ「未来君に回復魔法をお願いしたいんすよ…魔女さんが居ないもんで」
子供「え?あぁぁ困ったな触媒のミネラルが無いんだよ」
ローグ「そうなんすか…エリクサーも薬草も枯渇しちまいやした」
子供「賢者の石はどうしたの?」
ローグ「商人さんが持って行ってしまったんすよ」
子供「じゃぁエンチャントの掛かった角は?飛空艇に沢山乗ってた筈」
ローグ「全部燃えちまいやした」
子供「雪の上じゃ薬草も育たないなぁ…」
ローグ「物資不足で止血用の包帯もまともに確保出来んでやんす」
子供「…」---線虫を試してみるか---
ローグ「困りやしねねぇ…」ウロウロ
子供「僕が出来る事をやってみるよ」
ローグ「そら助かるっす…ほんで何する気なんすか?」
子供「虫を使うんだ…内緒にしてて?皆嫌がるから」
ローグ「傷を癒す虫が居るってこっすか?」
子供「線虫っていう目に見えない位小さな虫だよ…ワームの一種だね」
ローグ「ほええ?付いて来てくだせえ…こっちっす」
子供「皆には僕が何をしてるのか教えなくて良いから」
ローグ「へい!わかりやした」
『テントの中』
ぅぅぅぅ…血が止まらねぇ
あぁ動かないで強く押さえておいてください
止血用の縄をもっと持って来て!
血が止まらないのは毒のせいですね
看護師「子供がここに入って来てはダメよ!」
ローグ「あぁ済まんです邪魔にはならん様にするんで勘弁して下せぇ」
看護師「誰なんですかこの子は」
ローグ「親の死に目に合うってのもあるっすよね?」
看護師「う…怪我人に触ってはダメよ?」
子供「うん…何もしないよ」
ローグ「ちーっとお祈りしやすんで目を瞑ってくれやんす」
子供「思ったより状況悪いや…皆毒に掛かってる」ヒソ
ローグ「大型の虫があちらこちらで暴れてるらしいっすわ」ヒソ
子供「虫か…」
ローグ「早い所その線虫って奴を頼んます」
子供「おけおけ…線虫」ニョロニョロ
---なんとか使える---
---質が悪いのはどんぐりのせいだ---
---もっと質の良いどんぐりが必要だ---
子供「終わったよ…行こうか」
ローグ「ええ!?もう?」
子供「これ以上僕には何も出来ない…大丈夫さ…線虫を離しておいたから勝手に毒を食べてくれるよ」
ローグ「未来君がそう言うなら…じゃぁ失礼しやした~」ノシ
看護師「…」ジロジロ
--------------
ローグ「何かした感じには見えやせんでしたが怪我はこれで治るんで?」
子供「2日くらいで全快すると思うよ…怪我人はあそこに運ばれるんだよね?」
ローグ「そーっすね」
子供「じゃぁ線虫も食べ物に困らない」
ローグ「へぇ?訳が分からんす…」
子供「分からなくても良いさ…結果だけ見て居れば良い」
ローグ「う~ん…やっぱり未来君は剣士さんと森に行ってから人が変わっちまったみたいっすね」
子供「おかしい?」
ローグ「おかしいというか…大人になりやしたねぇ…あっしは嬉しいでやんす」
子供「パパと一緒に森か…ほとんど話をしなかったのに一生分空気で語らったのかな」
ローグ「居なくなって寂しいっすよね?」
子供「そうでも無いよ…僕の記憶の中に確かに居るのを理解したから」
ローグ「そんな言葉が未来君から出て来るのが不思議なんす…やっぱり未来君…」
子供「うん?」
ローグ「未来から来たと言うのは本当なんすね?」
子供「ローグさんにはまだ話して居ない筈…」
ローグ「情報屋さんから詳しく聞きやした…何かを変える為に此処に居るんすね?」
子供「まぁ…そうなるのかな」
ローグ「ロマンっすねぇ…海賊ってのはロマンなんすよ」
子供「ハハ海賊?どうして急に海賊なんて」
ローグ「頭もあっしも…元は海賊…大海原でお宝…いやロマンを追い求める海賊なんす」
子供「海賊は嫌いだよ…僕の未来を奪ったのも海賊さ」
ローグ「取り返しゃ良いんすよ…その為に此処に居るんすよね?」
子供「取り返す…そうか…もう一度やり直すと考えれば良いか」
ローグ「ところで未来君…10年後のあっしはどうなってるんすかね?」
子供「…」ジロリ
ローグ「ななな…なんすかその眼は」
子供「僕達を裏切って敵になったよ」
ローグ「ええええええええええ!?ちょちょ…詳しく教えて下せぇ」
子供「敵に塩を送っちゃう事になるんだけどなぁ…」
ローグ「本当に敵なんすか?このあっしが…」
子供「…」ジロリ
ローグ「そんな眼で見ないで下せぇ…あっしは裏切ったりしやせんぜ?」
子供「ローグさんはビッグママにエッチな事沢山したよね?」
ローグ「ギクーーーッ」ピタリ
子供「これで分かるでしょ…僕の言ってる事が本当だって」
ローグ「いやいやいや…それとこれとは話が別な訳でして…」
子供「本当に敵になっちゃうんだ…だから話せない」ジロリ
ローグ「あっしは裏切らない事を誓いやす」ビシ
子供「ダメだよ嘘は…僕知ってるんだから」
ローグ「じゃぁこう言うのはどうすか?今話して置けば裏切らなくなるかも知れやせんぜ?」
子供「…」ジロリ
---そうだな…言われてみれば未来を変える可能性はある---
---話したとしてもその内記憶が無くなると言うのもある---
---可能性を試してみるか---
『キャンプ詰め所』
カクカク シカジカ
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----------------
ローグ「…てことはあっし一人だけ単独で行動してる訳っすね?」
子供「そうだよ…崩壊した貴族達になり替わって豪族として暗躍してる」
ローグ「なんで一人だったのかちっと引っかかりやすが…」
子供「ローグさんはビッグママのエッチな体が大好きなんだよね?」
ローグ「そんな事口に出さ無ぇでくだせぇ」
子供「豪族になったローグさんはビッグママを捉えて自分の物にしようとしてる」
ローグ「ちょちょちょ…本人の前で図星を言わんで欲しいんすが…」
子供「ほらやっぱり」ジロリ
ローグ「ちっと待って下せぇ…こう考えられやせんか?」
子供「何さ…」
ローグ「未来君の話す未来の予言を…あっしだけが信じて行動していやせんか?」
子供「え?どういう事?」
子供が生まれ無くなる事
その原因がドリアードの中に居るアダムに原因がありそうな事
地軸の移動で沿岸部に人が生活できなくなる事
今まで話してくれたこと全部を聞いて今…
あっしが何を考えて居るか分かりやすか?
子供「ローグさんの頭の中の事は分からないよ…言ってよ」
豪族となって資金力を持ったなら
あっしは人流を安全な場所に誘導するっす
シン・リーンとフィン・イッシュは地熱で安全なんすよね?
子供「じゃぁビッグママを捕らえる為に法外な懸賞金を賭けているのはどう説明するのさ」
ローグ「その豪族っていう輩達のコントロールっすね…こういうのはアサシンさんが上手い」
子供「そんな…僕の思い違いだって言うの?」
ローグ「あっしは誓って裏切りやせん…信じて下せぇ」
子供「じゃぁもうビッグママの体に悪戯しない?」
ローグ「ちょちょちょ…それは違う話しでやんす」
子供「どうやって信用すれば良いのさ…僕は未来を見て来たんだ」
ローグ「あっしの体の中に流れている血は全部…頭の血なんす」
子供「知ってるさ…それが何だって言うんだよ」
ローグ「血の盟約は知らんのですか?あっしは頭に血の盟約で忠誠を誓っているでやんす」
子供「ふ~ん」ジロ
ローグ「それからもう一つ腑に落ちないのが…この話を知って居る情報屋がどうして行動しなかったのか…っすね」
子供「あぁ…それはね…この歴史に抗う記憶はどんどん失われて行くんだ」
ローグ「意味が分からんのですが…」
子供「何日かするとすっかり忘れてしまうんだよ…きっと僕も同じさ…多分それがこの世界の理」
ローグ「何かに書き残して忘れないようにすれば良いんすね?」
子供「その書き残した物が何だったのか忘れてしまわなければね」
ローグ「よ~し…な~んかやる気が出て来やしたぜ?あっしもロマンの一角を握ってるっす」
子供「ハハ…ロマンねぇ」
---何だろう…この人はどうしても悪い人に思えない---
---血が繋がっているからなのか?---
---ドワーフの血…邪心に浸されない血---
『雪原』
サクサク ギュギュ
子供「なんだ…そんなに深い雪じゃないや」ガッサ ガッサ
ローグ「な~にしてるでやんすか?」
子供「別に?」ザクザク
ローグ「掘ったらすぐに砂が出てくるんすよ」
子供「うん…」
ローグ「何か探し物でやんすか?」
子供「何か植えられないかと思ってさ…」
ローグ「10年後のこの場所はどうなってるんすか?」
子供「森だね…きっと精霊樹の影響で木が生える」
ローグ「10年後を目指して今から何か出来やせんか?」
子供「え…あぁ…」
---そうだ忘れかけてた…何か行動しないと---
子供「10年後はこの辺りが戦場になってる」
ローグ「そんなに戦争が長引くんすね」
子供「あー…セントラルとフィン・イッシュの戦争じゃない…それはもっと南部の方だよ」
ローグ「じゃぁ何の戦争なんすか?」
子供「精霊樹を守る為にエルフ達が戦ってる…僕に今何が出来るだろうか」
ローグ「ドリアードを今なんとか出来んもんすかね?」
子供「そんな…どうやって?又あのミサイルって奴が飛んで来るのが落ちだよ…って」
子供「あああああああああああああ!!」トーイメ
ローグ「どうしたんすか急に…」
虫達は誰の命令で動いて居るんだ?
オークシャーマンか?
いや…北の大陸に来ているとは思えない
そうだ…フィン・イッシュから船と気球を譲り受けて初めて北の大陸に来る
ならどうして虫が勝手に動き出す?
本能?
いや違う…本能は生存する為の物だ
待て待て…虫にとってドリアードは生存の危機という事か?
でもそんな複雑な因果をどうして虫が知ってるんだ?
待てよ…虫はドリアードを敵とみなす事を大昔に命令されて居たとしたら…
これがオーク族に伝わる予言だとしたら…
予言は成立する
もしかして命令したのは大昔に戻ってドリアードを封じたママとオークシャーマンじゃないのか?
暁の墓所にあった壁画は虫を持ったママらしき人物が記されて居た
もしもそんな事が出来るなら…10年後に向けて僕も虫に命令が出来る筈
ローグ「…聞いていやすか?お~い!!」ペシペシ
子供「ローグさん…僕の友達の子ウルフは見かけて居ない?」
ローグ「精霊樹の森に行ったと思うんすが戻って来んすねぇ…避難民優先で子ウルフを追い出したのはマズかったっすね」
子供「それは良いんだ…ウルフを嫌がる人も多かったみたいだし仕方が無い」
ローグ「戻ってくると良いんすが…」
---よし!旅に出るぞ---
『遺跡の中』
ガサガサ ゴソゴソ
子供「どんぐりとキノコはこの位で良いか…水は雪が有るから要らないっと」ゴソゴソ
情報屋「居た居た!探したのよ!もう…何をしているの?」
子供「んん?別に?」ゴソゴソ
情報屋「盗賊!!ここの資材置き場に隠れていたわ」
盗賊「おぉこんな所でかくれんぼしてたのか…まぁ無事なら良い…ちと顔見せてみろ」グイ
子供「何さ…」
盗賊「う~む…大分目にクマが張ってんな」
情報屋「でしょ?休んでって言っても言う事聞かないのよ」
盗賊「まぁこれぐらいなら酒飲んで寝りゃ一発で治る…心配すんな」
子供「僕は大丈夫だって言ってるじゃない…それより子供作った?」
盗賊「どわっ…何言い出しやがる」
情報屋「ちょっと未来君!怒るわよ?」
盗賊「まぁズケズケとした態度は母親似って訳かヌハハ気に入った!!お前が心配する程俺らの仲は悪く無ぇぞ?」
情報屋「盗賊!!子供の前で何言うのよ」
盗賊「…ところでお前何やってんだ?」ジロジロ
子供「ちょっとね…」
盗賊「その袋見せてみろ…」グイ
子供「ああ!!」
盗賊「なんだ種ばっかりじゃ無ぇか」
子供「返してよ!!」グイ
盗賊「何か企んでる感じでは無い様だ…情報屋!お前が心配し過ぎなんだ自由にさせてやれ!!」
情報屋「もう!人の気も知らずに…」ブツブツ
盗賊「未来…お前もそろそろ大人だ…大概の事は自分で出来るな?まぁ自由にヤレ!困ったら俺ん所に来い」
子供「うん…ありがとう」
子供「そうだ!情報屋さんの遺跡調査のノート…見たいんだ…見せて貰って良い?」
情報屋「構わないけれど…難しいわよ?」
子供「良いよ…暇つぶしさ」
情報屋「じゃぁこっちにいらっしゃい…」グイ スタスタ
-------------
情報屋「コレよ?見るのは良いけれど落書きはダメよ?」パサ
子供「僕もメモするから紙とペンが欲しい」
情報屋「壁際の机にあるわ…読み終わったらそのノートも机に置いておいてね」
子供「分かったよ」
情報屋「じゃぁ私は遺跡の調査に行って来るから読み終わったら寝るのよ?」
子供「分かった分かった…うるさいなぁ…」パラパラ
やっぱり読めない…記憶の欠落が起きてる証拠だ
僕があまり気に掛けない記憶から順に無くなって行ってる
あれから2日経った
いつまで記憶を保持できるのか…
子供「あった!!コレだ…良し!!図解が記されている」メモメモ
ドリアード遺跡の場所はシャ・バクダの北か…
確か入り口は狭間に隠されてるとか言っていたな
…なるほど食虫植物特有の形をして居るのか
この形はジャガイモの根だ
中が空洞になっているんだな?その奥に核がある
よしよし…これなら地図に出来る
ローグ「未来く~ん!!」タッタッタ
子供「あ…ローグさん」
ローグ「マズイ事になったっすよ…ウルフ討伐隊が編成中なんす」
子供「どういう事?」
ローグ「どうも燃えているエルフの森から逃れて来たウルフ達がその辺をうろつき始めたらしいんす」
子供「雪の中をウルフがうろつく訳無いよ」
ローグ「ウルフも餌が無いんすよ」
子供「雪の中に餌なんか無いじゃないか」
ローグ「あっしらがソリを引かせてるシカでやんす」
子供「あ~そういう事か…シカが襲われてるのか」
ローグ「未来君のお友達の子ウルフも危ないでやんす」
子供「そんな事言われてもなぁ…」
ローグ「剣士さんみたいに遠吠えで呼んだり出来ないんすか?」
子供「う~ん…やった事無い…まぁでもなんとかするから心配しなくて良いよ」
ローグ「それなら良いっすが…」
---遠吠えなんかで呼ばなくても僕が行ったら向こうが見つけてくれるよ---
『夕刻』
ワイワイ ガヤガヤ
情報屋「未来君何処に行ったか知らない?」
盗賊「見て無ぇぞ?その内戻ってくんだろ」モグモグ
情報屋「配給の食事持って来たのに…」
盗賊「心配すんなって!あいつは剣士と同じであんま食わ無ぇんだ」モグモグ グビ
情報屋「私の書物も何か写してやりっ放し…」
盗賊「書物に興味あるなんざ大したもんだ」
情報屋「やりっ放しよ…直ぐに飽きたみたい」
盗賊「ヌハハまぁ男ってのはそんなもんだ…ほんで何を写してたんだ?」
情報屋「多分ドリアード遺跡の地図を作ろうとしてた様ね」
盗賊「なんで又ドリアード遺跡なんかに興味持ったんだろうな?」
情報屋「そっか盗賊は未来君が予言を見たという話を聞いて居ないのね?」
盗賊「なんだそりゃ?」
情報屋「例の冒険の書を読んで未来の予言が記されて居たと言うのよ」
盗賊「ほう?んでどんな予言なんだ?」
情報屋「10年後に起こる大厄災の事とか色々よ」
盗賊「ドリアードがなんか関係すんのか?」
情報屋「未来君はドリアードの中に復活したアダムが真の敵だと思ってるわ」
盗賊「…」モグモグ グビ
情報屋「どうして何も言わないのよ…」
盗賊「俺もそう思って居るからだ」モグモグ
情報屋「盗賊…あなたまで…」
盗賊「あのとち狂った第3皇子のガキ…まだドリアードん中に居んだろ…どう考えてもありゃ正気じゃ無ぇ」
情報屋「それはそうだけど…」
盗賊「もうちっと未来の声を聞いてやれば良かったな…そんな大事な事をなんで俺に隠してんだ?」
情報屋「別に隠して居た訳じゃ無いわ…みんな忙しくてすれ違ってただけよ」
盗賊「さぁて!!飯も食ったし…今晩はウルフ討伐だ」ゲフー
情報屋「うん気を付けて…」
盗賊「まぁ未来の事は心配し過ぎるな…あいつはもう大人で…勇者の血を引く者だ」
情報屋「…忘れてた…特別な何かを持って居たのよね」
盗賊「じゃ…行って来るな」ノシ
『深夜』
バタバタ ドタドタ
情報屋「どう?居ない?」ハァハァ
ローグ「外にも居ないっす…キャンプは全部確認したでやんす」フゥフゥ
情報屋「遺跡の何処を探しても居ない…他に心当たりは無いの?」
ローグ「ウルフ狩りが編成されてるのを未来君に教えたでやんす…もしかしたら子ウルフを探しに行ってるかもっす」
情報屋「一人で森へ行ったと言うの?しかも徒歩で…」
ローグ「いやいやいやエルフの森じゃなくて精霊樹の森っすよ」
情報屋「ここから結構距離があるじゃない…しかも雪が降ってる」
ローグ「あわわ…マズい事教えちまった様ですわ」
情報屋「足跡辿るのもこの雪じゃもう無理ね…ソリはもう無いの?」
ローグ「ウルフ討伐隊が乗って行ってるっす…シカも一頭も居ないっす」
情報屋「歩いて探しに行くわ…ローグも来て」
ローグ「分かりやした…10分で準備するっす」
『10分後』
シンシン サラサラ
ローグ「遅くなりやした…防寒は完璧っす」
情報屋「じゃぁ行きましょう」サクサク
ローグ「情報屋さん…あっし未来君と少し話したんすがね?未来から来たのは多分本当っすね」
情報屋「…」サクサク
ローグ「未来君は何かを変える為に一人で戦ってるんす」
情報屋「あの子…もう帰らないつもりで出て行った様よ」
ローグ「どういう事っすか?」
情報屋「あの子の荷物が全部無いのと…どんぐりを沢山袋に詰めて居たの」
ローグ「マジっすか…」
情報屋「…もっと話を聞いてあげれば良かった…」ググ
ローグ「未来君は歴史の先回りをしようとしてるっす…行き先は多分ドリアード遺跡」
情報屋「一人じゃ危険過ぎるわ…私達が生還出来たのもエルフの助けがあったお陰なのよ」
ローグ「あっしは行った事無いんすがそんなに危険なんすか?」
情報屋「小さな子供一人がやすやすと冒険できる場所では決して無いの」
ローグ「早まらなきゃ良いんすが…」
情報屋「急ぎましょ…」サクサク
-----------------
-----------------
-----------------
『精霊樹の森』
アオ~~ン ワンワン
子供「雪の中じゃ音が吸い込まれて遠くまで届かないや」
子供「ここに来たら匂いで直ぐに見つけて貰えると思ったんだけどなぁ…」
ドスン ドスドス
子供「む!」---枝から雪が落ちた---
子供「…」---エルフだな?僕を伺ってる---
子供「あぁぁぁダメだぁぁぁ凍えるぅぅ…死ぬぅぅ」キョロ
子供「…」キョロ
子供「な~んか一人芝居するのも馬鹿みたいだ」サクサク
子供「…」クンクン
子供「…」---獣の匂いだ---
子供「ちょっとマズイかも…」スラーン ピカー
子供「何処に居るんだ?僕は怖く無いぞ!?」キョロ
グルルル ゥゥゥゥ
子供「ウルフの群れか…」
ウルフ「ガウルルル」ダダダ
子供「この光る剣が怖いかい?」ブン ブン
ウルフ「ゥゥゥゥ」タジ
子供「ごめんごめん仕舞うよ」スチャ
ウルフ「ガウルルル」ノソノソ
子供「怖がらなくて良い…怪我してるんだろ?おいで」
ウルフ「グルルル…」
子供「こうすれば分かるかい?線虫!」ニョロ モソモソ
ウルフ「ギャフンギャフン」ピョン ダダダ
子供「驚かせたらごめんね…何匹居るのかな?」クンクン
子供「5匹?離れにもう一匹居るな」
子供「君達は家族だね?僕は何もしないよ…僕は友達を探しに来たんだ」
子供「僕は森の言葉があまり分からないから君の言う事も良く分からないんだ」
子供「よっこら」ドッスン
子供「出ておいでよ傷なら治してあげるから」
ワンワン シュタタタ
子供「ああ!!子ウルフ!!探して居たんだよ…なんで直ぐに出てこないんだよ」
子ウルフ「ワフワフ!!」
子供「群れの言う事に逆らえない?なんだそうだったのか」
ウルフ「ガウルルル…」ノソノソ
子供「おいでおいで!!」
子供「え?毒の治療でこの森に来たんだって?」
子供「精霊樹の恵みが欲しいのか…大丈夫僕が治せるよ」
子供「線虫!」ニョロリ
--------------
--------------
--------------
『ウルフの群れ』
ガウルルル アオ~~~ン
子供「…そうだったんだ…精霊樹の葉には毒消しの効果が合ったんだ…へ~」
子供「エルフが精霊樹を守ってて中々分けて貰えない…な~んだ順番待ちな訳か」
子供「毒に侵されてるのはやっぱり虫のせい?」
子供「なるほど…虫が所構わず暴れ回ってる訳ね…人間の村も同じなんだよ」
子供「食べ物は向こうの森の方が充実して居るよね?」
子供「だから戻るって…ちょちょちょ…もう行くの?」
子供「実はさ…今ウルフ討伐隊が出てて危ないよ?」
子供「知ってるって…だったらわざわざ危ない所に行かなくても良いじゃない」
子供「仲間に順を伝える必要があるって…そうか順番待ちになってるのか」
子供「じゃぁやっぱ虫を何とかしないとコレ終わらないね」
子供「ちょちょ待ってよ…僕もこの森に用が無くなった…虫の所に案内してよ」
子供「ダメって何でさ…良いじゃん毒を治してあげたんだし…」
子供「人間が来る所じゃ無いのは分かってるよ…僕はそこに入った事もあるんだ」
子供「いや本当さ…白狼の血も流れてる」
子供「マジマジ…だから本当だって…じゃなきゃこんなに話せる訳無いじゃない?」
子供「冷たいなぁ…じゃぁ勝手に付いて行くから案内だけして」
子供「大丈夫さ付いて行けるよ…ちょちょ…だから行動が早すぎる…待って待って」
シュタタ シュタタ
『オアシス砦』
ドスドスドス ズザザー
ヘラジカ「オエッオエッ…ブモモー」
盗賊「おうお前等~ちっと休憩だ」
民兵「へ~い…」ゾロゾロ
アサシン「遅いぞ…」
盗賊「ソリ2台で民兵乗せてウルフ狩りってどういうこった?多すぎだろ」
アサシン「お前はウルフ狩りと聞いて来たのか?」
盗賊「ナヌ?違うのか?」
アサシン「私はウェアウルフ狩りの討伐隊を編成したつもりなのだが…」
盗賊「おいおいおいマジか…全然格が違うじゃ無ぇか…民兵じゃ無理だ」
アサシン「だからお前を指名して呼んだのだ」
盗賊「半端な弓じゃ倒せんぞ?」
アサシン「首を落とせ」
盗賊「待て待て俺にやらせる気か?ウェアウルフは狂犬病も持ってんだぞ?」
アサシン「エンチャントの角は持って来ただろうな?」
盗賊「持って来ちゃ居るがよ…マジで俺が倒す予定でいるんか?」
アサシン「私も居るがそれでは不服か?」
盗賊「お前は病気なぞ怖くないかもしれんが俺は生身だ…ちったぁ考えてくれ」
アサシン「作戦はこうだ…」
民兵には弓でけん制させる
私は正面からウェアウルフと向き合って動きを止めてやる
お前はハイディングからバックスタブで首を落とせ
盗賊「ウェアウルフの首周りは熊並みだぞ?一発で落とせるか自信が無ぇ」
アサシン「落とし損じても私が止めを刺す…問題無かろう」
盗賊「お前簡単に言うけどよ…ウェアウルフはエルフ並みに飛び回るぞ?」
アサシン「手負いだ…私の草薙の剣で石化が進んでいる筈だ」
盗賊「なるほど…今までお前が単騎でやっていた訳か…今晩止めを刺したいんだな?」
アサシン「ウェアウルフは病気の原因にもなって居るのだ…犯された動物は食いたくても食えん」
盗賊「肉が配給されないのはそのせいか…」
アサシン「人員が揃い次第出発する…体を温めて置け」
『ヘラジカのソリ』
ドスドスドス スーーー
支給されたのが弓と矢筒だけだ
これでウェアウルフ討伐なんてどうかしてる
お前作戦聞いて居ないのか?
短期戦で即引き上げらしい
盗賊「お前等ちゃんと話聞いてたんか?」
民兵「接近戦は2人でやるんですよね?」
盗賊「まぁそうなる…仕留めそこなった場合は即退却な?」
民兵「成功した場合次の作戦に入ると言ってましたが…何か聞いてますか?」
盗賊「シャ・バクダ経由で巡回だとよ…夜行動物の実態調査らしい」
民兵「あぁ夜中にシカが出て来てるって話聞きますね」
盗賊「だから弓と矢の支給な訳よ…早い話狩りだ狩り」
民兵「あ!!先行のソリが止まった…」
盗賊「うへぇ…なんだありゃ…なんで人骨が吊るされてんだよ」
民兵「ひぃぃぃ…」タジ
---------------
『森の近くの廃村』
アサシン「ここから徒歩で廃村に入る」
アサシン「廃村に到着したら建屋の陰に隠れて合図を待て」
アサシン「ウェアウルフの餌には手を出さない様に」
アサシン「それから何があっても声を出すな…以上行くぞ」スタ
盗賊「ちょっと待て…なんで人骨が吊るされてんのよ」
アサシン「黙れ…もう作戦は開始している」
盗賊「むぐぐ」---何だよあいつ!何も説明しないで---
アサシン「…」--付いて来い---
民兵「…」ガクブル
盗賊「…」---お前等腰抜かすなよ?---
アサシン「…」---配置について待機---
民兵「…」ゴクリ
盗賊「…」---何が起こるってんだ?---
ガチャリ ギー
人「ヴヴヴヴ…」ズルズル
民兵「!!?」---誰か出て来た---
人「ガァァァ…」ヨタヨタ
盗賊「…」---あの野郎ここの犠牲者を使役して餌にしてんな---
民兵「…」---誰か住んで居たのか?---
『10分後』
民兵「…」タラリ
人「ヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ヨタヨタ
盗賊「…」---うーさぶ!!---
アサシン「…」---来るぞ---
盗賊「!?」キョロ
シュタタ シュタタ ピョン
ウェアウルフ「ガウルルル!!」ガブリ
人「ガァァァ…」ズザザ
ウェアウルフ「ガウガウ!!」ガブガブ
民兵「…」---ひえぇぇぇ---
アサシン「撃て!!盗賊行くぞ!!」ダダ
盗賊「お…おう!!ハイディング!」スゥ
民兵「あ…当たれ!!」ギリリ シュン
シュンシュンシュン グサグサグサ
ウェアウルフ「!!?ウガァァァ」シュタタ
アサシン「行かせん!!むん!!」ブン ザクリ
ウェアウルフ「グルルル…」タジ
盗賊「リリース!バックスタブ!!」ジョキリ
ウェアウルフ「!!?」ヨロ
盗賊「浅い!!」スタ
アサシン「ハートブレイク!」ズン!!
ウェアウルフ「ガフガフ…」ピクピク
盗賊「これでも倒れ無ぇか…おら!追撃!!」ブン スパ
アサシン「ふん!!」ブン スパ
盗賊「アサシン下がれ…動き出す前に距離取るぞ」ダダダ
アサシン「民兵!!弓で追撃しろ」ダダダ
シュンシュンシュン グサグサグサ
アサシン「撤収だ!全員ソリまで引け」
民兵「は…はい…」ダダダ
『ヘラジカのソリ』
盗賊「出すぞ!!早く乗れぇ」パシン
ヘラジカ「オエッ…ブモモ…ゲヒゲヒ」ドスドスドス
盗賊「お前等後方に弓撃つ準備しておけ…ウェアウルフが追って来るかもしれん」
民兵「ははは…はい」ブルブル
盗賊「おい!アサシン!!行先どうすんだ!?」
アサシン「次の作戦に移る…進路は北だ」
盗賊「こりゃ作戦成功なんか?」
アサシン「首を半分落としているのだ直に死ぬのは明白」プルプル
盗賊「ん?なんだお前どっか具合おかしいのか?」
アサシン「今倒したウェアウルフはな…私の旧友なのだ…そして吊るされて居た人骨はその娘…お前も知って居る人物だ」
盗賊「なんだと!!?ウェアウルフの知り合いなんか居無ぇぞ?」
アサシン「あの娘は私達の仲間になりえた…エリクサーの効果をもっと早く知って居れば仲間だった筈だ」
盗賊「誰よ?」
アサシン「女海賊に知り合う前の私の助手だったと言えば思い出すか?」
盗賊「シャ・バクダの宿屋の娘か!」
アサシン「ウエァウルフは遺伝性の病気なのだ…そして生きた血肉を食らわないと正気を失う…私と同じだな」
盗賊「宿屋の娘には随分世話になった…あの人骨がそうだったのか」
アサシン「血肉を食らう必要がある故に私と同行出来なかった…代わりに女海賊が同行するようになったのだ」
盗賊「でも何で吊るされてんだよ」
アサシン「簡単な話だ…ウェアウルフだと知られて村人に吊るし上げられたという事だ」
盗賊「なるほど…食料不足で生きた血肉を食えなくなったもんだから人を襲ったんだな?」
アサシン「エリクサーの事さえ知って居れば誰よりも優秀だった筈…そしてその父も優秀な男だった」
盗賊「思い出した…コブラ酒が好きだったな」
アサシン「私がワインを飲むのと同じ…喉の渇きを癒すのに好んだのがコブラ酒だ」
盗賊「宿屋でコブラ酒頼んだら毎回あの娘が持って来たな」
アサシン「身内だった者に手を掛けるのは心苦しい…私が正気を失った時はお前も同じ思いをするだろう」
盗賊「言うな…考えたくも無ぇ」
アサシン「シャ・バクダはもう終わりだ…私が守りたかったものはすべて無くなった」
盗賊「まだだ…まだ民が残って居る」
アサシン「気休めか?少し休みたいと願っては居るが眠る事も出来ない…永遠の命とは残酷だ」
盗賊「言葉も無ぇ…」
ドスドスドス スーーー
『シャ・バクダ街での記憶』
ワイワイ ガヤガヤ
おい!!イカさますんじゃ無ぇ!!
何言っているの?何処がイカさまなのよ!
勝負は勝負!きっちり払ってもらうわ
だぁぁぁなんだこの女!!
盗賊「だぁぁやっと着いたぜ腰が痛てぇの何の…おい馭者!!俺はここで降りるぜ?」
馭者「へい旦那ぁ!!お疲れぃ!!」
盗賊「荷物は後で別の奴に取りに行かせるからよ…まぁ適当にやってくれ」
馭者「あいよ!!」
盗賊「じゃぁな!!」ピョン スタ
ドン! パシ!!
盗賊「おい何懐探ろうとしてんのよ」グイ
ごろつき「イテテ済まねぇ…そんなつもりじゃ無かったんだ…よそ見しててぶつかった悪い悪い」
盗賊「気を付けろぃ!!」スッ
盗賊「…」---早速酒代が手に入った儲け儲け---
盗賊「ふぅぅぅ…まず飲んでっか」ノッソ ノッソ
『宿屋』
カラン コロン
店主「いらっしゃいませ…お一人様ですか?」
盗賊「この風体見て誰だか分からんか?」
店主「ハテ?あ~あの時の…ハハハ」
盗賊「いい加減顔パスじゃ無ぇのか?」
店主「仕事ですので…お一人様でよろしかったですね?」
盗賊「あぁそうだ…まず酒が飲みてぇコブラ酒ボトルで頼む…グラスは一つで良い」
店主「かしこまりました…お部屋でお飲みになりますか?」
盗賊「いや隣の酒場で飯も食って来る…金は有るからよ…誰か女一人付けてくれ」
店主「直ぐに手配しますのでお待ちください…お代は先になりますが…」
盗賊「おうそうだったな」ジャラジャラ
店主「ありがとうございます」
盗賊「じゃ隣行ってるから頼むわ」ノシ
『酒場』
ガヤガヤ ガヤガヤ
マスター「いらっしゃいませ」
盗賊「よーー久しぶりだな…元気してたか?」
マスター「ハハ揉め事はご勘弁…飲んで行きますか?」
盗賊「宿屋で頼んで来たからよ…適当にツマミ頼むわ」
マスター「ハイハイ…他のお客さんの迷惑にならない所に座って下さいね」
盗賊「まぁそう言うなや…カウンターなら問題無いだろ?」ドシ
ポロロン♪ ラララー♪
盗賊「おぉ丁度良かった演奏始まったな…演奏終わったらあの女呼んでくれ」
マスター「はぁ…又揉め事になる気がしますが…」
盗賊「大丈夫だよ…今日の俺は機嫌が良い」
宿屋の娘「コブラ酒をお持ちしました…どうぞ…っておいお前か」ギロ
盗賊「お前は無いだろ…まぁ元気そうだな」
宿屋の娘「はい!!コレ!!メモ!!酒!!」ドン パサ
盗賊「一人女付けてくれと頼んだんだが…まさかお前か?」
宿屋の娘「お前にお前って呼ばれたく無いんだけど…私で悪いか?」ストン
マスター「あのーー揉め事だけはご勘弁を…ここの所続いてまして」
宿屋の娘「早くメモは隠せよ」
盗賊「そうだったな」ゴソゴソ
宿屋の娘「何してんだよ」
盗賊「何してるってメモを隠してるんだろが」
宿屋の娘「そうじゃ無ぇよ…チップ!!女付けたらチップ払うだろ」
盗賊「宿屋で払ってる」
宿屋の娘「そんなん聞いて無ぇよ!チップ払わないと騒ぐよ?」
マスター「あのーー宿屋の娘さん…分かってますよね?」
宿屋の娘「あらマスターさん…ちゃんと心得て居ますのでお気になさらず…」ニコ
盗賊「なんだお前態度が全然違うじゃ無ぇか…」
宿屋の娘「金持ってんだろ?出せよ…」ズボ ゴソゴソ
盗賊「勝手に懐探るな」
宿屋の娘「…これ何?」
盗賊「だぁぁロックピックだ触るなボケが」グイ
スタスタ
女盗賊「あらあら盗賊?仲が良さそうね?」ズイ
宿屋の娘「あ…これは失礼しました…お騒がせしていたならお許しください」ペコリ
盗賊「やっと帰って来て疲れてんだ…癒してくれい」
女盗賊「帰ってきたならまず初めに私に挨拶に来るのが礼では無くって?」
盗賊「だから来たんだろが…酒用意したぞ…お前も飲め」
女盗賊「まだ演奏があるから控えておくわ…あなたが飲めば良いのよ」キュポン グイ
盗賊「んぐ…んぐ…げふげふ」
宿屋の娘「…」ニマー
盗賊「げふげふ…おま…ゆっくり飲ませろ」ゲフー
女盗賊「説明して貰おうかしら?女性を同伴してどうするつもりだったの?」
盗賊「んあ?そら楽しく飲む為だろ」
女盗賊「私じゃ役不足と言いたいのね」
盗賊「なんでそうなるんだよ…久しぶりに帰って来ていきなり喧嘩売ってんのか?」
マスター「あのーーー困るんですよね…大きな声を出されると」
--------------
--------------
--------------
『廃墟』
シンシン…
盗賊「…」---屋根がすっ飛んで行ったのか---
盗賊「…」---このカウンターで良く揉め事が起きたな---
盗賊「…」---どっかに酒残って無ぇのか?---
盗賊「…」---何もかも変わっちまった---
盗賊「…」---もう何も残っちゃ居無ぇ---
ドンッ
盗賊「!!?」---瓶?---
アサシン「中身が少し残って居る…これはサボテン酒だ…飲んでみるか?」
盗賊「おぉ!!良い物見つけたな?」
アサシン「…」キュポン
盗賊「グラスは全部割れてる」
アサシン「…」グビ ゴクリ
アサシン「飲め」
盗賊「…」グビグビ プハー
盗賊「何だこの感覚…」
アサシン「痛みだ」
盗賊「こりゃ心が痛いのか?」
アサシン「…」グビ
アサシン「空しいだろう?」
盗賊「そうだな…」
盗賊「お前の妹も…宿屋の娘も…良い女だった」
アサシン「…」グビ ゴクリ
アサシン「酔えん」
盗賊「俺は酔えるだけマシか…」グビグビ
民兵「ウルフだぁ!!ウルフの群れに囲まれて居る!!」
盗賊「何ぃ!!」ガタ
アサシン「ウルフなぞどうという事もあるまい…奴らもシカ狩りなのだよ」スック
盗賊「民兵共!!狩ったシカを早くソリに積め!!」
アサシン「クックック…引き上げるとするか」
『帰路』
ズルズル ドサリ
盗賊「よし…獲物を積んだな?民兵は徒歩で後方警戒しながら付いて来い」
民兵「ウルフ10匹程に囲まれています」
盗賊「大人数の人間には襲い掛かって来ない筈だ…警戒しながら引き上げる」
民兵「一人ウルフに襲われて怪我をしているのでソリに乗せて下さい」
盗賊「マジか…この人数になんで遅い掛かって来るんだ?」
民兵「一匹白狼が混ざっていて狩ろうとした様です」
盗賊「こっちが仕掛けた訳か…しゃー無ぇ怪我人は乗れぇ!!出発するぞ!!」
盗賊「しかし白狼とは珍しい…エルフの森の深部から出て来てんのか」
民兵「あの毛皮は高級品なんで…」
盗賊「明るくなって来た…お前等ぁ!!急げ…早い所帰って寝るぞ」
民兵「はい…」ハァハァ
------------
------------
------------
『遺跡地下_勇者の像前』
ガヤガヤ ガヤガヤ
シカ肉の配給だぞ?
おぉぉ久しぶりの肉
ダメだ!女子供が先だ
やったぁぁお肉だお肉ぅぅ
ガヤガヤ ガヤガヤ
盗賊「…なんだ情報屋も居無ぇのか…何処行っちまったんだ?」
民兵「盗賊さんこれで解散ですね?」
盗賊「そうだ!食って寝ろ…どうせ夜になったら又狩りだ」
民兵「じゃぁ失礼します」タッタッタ
盗賊「ローグも居無ぇって事は未来探してどっか行ってんな…ったく世話の焼ける」
盗賊「寝てる場合じゃ無ぇってか…」モグモグ
盗賊「…しかし行先も分からんのに動き様も無ぇ…寝るか!!」ドタリ
盗賊「…」---いつまでこんな生活をするのか---
盗賊「…」グゥ
んががが すぴー zzz
『数時間後』
パシン パシン!
情報屋「起きて盗賊!!」ユサユサ
盗賊「んぁ?…んんん…水くれ水」
情報屋「未来君が見つからないの…ウルフ討伐の方では見て居ない?」
盗賊「あぁ昨夜の狩りはウルフ討伐じゃなくてウェアウルフ討伐だった」
情報屋「そう…」ガックリ
盗賊「お前何処行ってたのよ」
情報屋「精霊樹の森を探しに行ってたわ」
盗賊「手がかり無しか?」
情報屋「ウルフの群れの足跡を見つけたわ…ローグが言うにはウルフの群れに混ざってるんじゃないかって」
盗賊「まぁ単独で行動するより安心っちゃ安心だわな」
情報屋「何言ってるのよ!あんな小さな子供いつ食べられてもおかしくないわ」
盗賊「ウルフがエルフを食うなんざ聞いた事無いがな」
情報屋「あの子は人間よ?あなた心配じゃ無いの?」
盗賊「心配っちゃ心配だがよ…俺も未来と同じ年頃から一人でやってきた訳よ…自分で何とかやると思ってる」
情報屋「もう!!一人でドリアードをどうにかしようなんて無茶よ」
盗賊「…」ギロ
情報屋「その眼は何か考えが在る眼…何?」
盗賊「そういや昨夜ウルフの群れに一匹白狼が混ざって居たらしい」
情報屋「それよ!!」
盗賊「場所は旧シャ・バクダの廃墟…白狼に弓を当てた者が居る」
情報屋「えええ!!?」
盗賊「行くぞ」スック タッタッタ
『ヘラジカのソリ』
オエッ オイン ブルルルル
ローグ「遅くなりやしたぁぁぁ!!」ダダダ ピョン
盗賊「白狼を射った場所を聞き出せたか?」
ローグ「へい!!養羊場のあった辺りだそうでやんす」
盗賊「よし急いで行くぞ…情報屋はエリクサー持って来たな?」
情報屋「少しだけだけれど…」
ローグ「狩り用の矢で撃たれたとなると子供じゃ死んでるかも分からんす」
情報屋「嫌な事言わないで」
盗賊「くそでかいヘラジカを麻痺させる毒だ…子供だとどうなるか分からん」
ローグ「未来君は毒消しの魔法を使うんで上手く乗り切ってくれれば良いんすが…」
情報屋「獣じゃ無くてよりにもよって人間にやられるなんて…」
ドスドスドス スーーーー
『養羊場跡地』
情報屋「見て!!血痕と屍…あぁぁぁ」
盗賊「早合点するな…あれは食われた子ジカの亡骸だ」
ローグ「まだ新しいっすね…昨夜食われた感じでやんす」
盗賊「なるほど…ウルフの食事中を民兵が弓を射かけたんだな…この周辺を探せ」
情報屋「別の血痕!!あったわきっとあれよ」サクサク
盗賊「どこだ?」
情報屋「こっちよ…」サクサク
ローグ「ありゃ出血が多いんじゃないすか?」
盗賊「足跡が複数…民兵の出血痕だ…こりゃ違う」
盗賊「ここから弓で狙うとなると20メートルの範囲内…探せ!」
ローグ「向こうの小屋じゃないすかね?」サクサク
情報屋「あったぁ!!小屋の影にも血痕…こっちの方が多いわ」
盗賊「その辺に未来が倒れて居ないか?」
情報屋「探してる…」キョロキョロ
盗賊「ふむ…ウルフの食事中に1匹だけ離れている白狼だけ狩ろうとした訳か…」
ローグ「盗賊さん!!小屋の中にどんぐりの殻がいくつか落ちていやす…未来君に間違い無いっす」
情報屋「居ない…居ない…何処にも居ない…」オロオロ
盗賊「どこかに血痕が続いて居ないか?」
情報屋「無いわ…その小屋の周辺だけよ」
盗賊「未来は回復魔法も使える…そこで処置したという事だ」
盗賊「俺は周囲の建屋の中を見回って来る…お前等2人で足跡探ってくれ」
ローグ「わかりやした…」サクサク
-------------
-------------
-------------
『夕刻』
ドスドスドス スーーーー
ヘラジカ「オエッ ブモモモー」ガフガフ
盗賊「情報屋!もういい加減にしとけ…資材乗せて帰るぞ」
情報屋「…」トボトボ
ローグ「手がかり無しっす…」
盗賊「未来はハイディングを自在に使う…探せると思うか?」
ローグ「無理っすね…」
盗賊「探しても居ないという事は無事って事だ…毒矢もなんとか切り抜けてるだろう」
情報屋「どうして何も言わないで…」プルプル
盗賊「未来が仲間に選んだのは俺達じゃなくてウルフだってだけの話…気にすんない」
情報屋「あの子の事…子ども扱いし過ぎて居たのかしら」シュン
盗賊「だから気にすんなって…早く乗れ」
ローグ「一人でドリアードん所行っちまいやせんかね?」
情報屋「狭間の中にある入り口は探せないと思うわ…それに地図も忘れて行ったみたいだし」
盗賊「じゃぁ行く気ならもう一回戻って来る可能性が高いな」
情報屋「地図は私が預かっておく…」
盗賊「お前昨日からずっと寝て居ないな?一旦戻って寝ろ」
情報屋「眠れる訳無い…ハッ!!あの子…強い動機があって眠らなかったのね…」
盗賊「気付くのが遅せぇよ…もう大人の道を歩いてる…未来の道をな」
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『夢』
??「あれ?…ここは…」
??「パパ?…ここどこ?」
??「魔女?…何処に居るの?」
??「あれ?記憶が…」
??「僕何してたんだっけ…」
??「誰も居ないの?」
---こっち---
??「誰?」
---目を覚まして---
??「ホム姉ちゃん?」
---僕だよ---
??「僕?」
??「僕は…僕は…違う…ここじゃない」
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『大木の洞』
クーン ペロペロ
子供「ぅぅん…ハッ!!」ガバ
子ウルフ「ワンワン!!キュゥゥン」ペロペロ
子供「ここは…何処?僕はどうして…いてて」スリスリ
…そうだ…ウルフの群れに紛れて森に入ったんだ
出血がひどくて気を失った…なんで洞の中に居るのか記憶が無い
待てよ…思い出せ思い出せ…僕は何の為に此処にいる?
…虫だ…虫に命令しなきゃ
大丈夫…ちゃんと覚えてる…僕は未来から来た
子供「マズいな…寝てしまった…僕の記憶は少し無くなってる筈…何を忘れたのか自分じゃ分からない」
子ウルフ「クーン…」
子供「僕はどれくらい寝てた?」
カサカサ
子供「!!?」クンクン
子供「何か居る…1人…この感じはエルフだ」
子ウルフ「ワン!ハッハッハ」フリフリ
子供「リンゴと木の実…根っこも在る…ごちそうじゃないか」
子供「…そうか僕はエルフに助けられたんだね?」ガブリ モグモグ
子供「遠くから僕を見てるな…とりあえずこの洞なら安全か」モグモグ
子供「子ウルフ?木の実を食べても良いよ…ほら」
子ウルフ「ガフガフ」バクバク
ギャァギャァ バサバサ
子供「鳥が騒いでる…どうしたんだ?…え?森の奥で戦闘してる?」
子ウルフ「クーン…」
そうか…森の外だと分からなかった
エルフ達は森の中でずっと戦っていたんだ
そうだエルフゾンビさんがそんな事言ってたな
これからドリアードに森を侵食されて行く
僕の知らない所で戦いはずっと続いて居たんだ
子供「どうにかしないと…食べ終わったら行こうか」モグモグ
『エルフの森_浅部』
ヨタヨタ ズルズル
子供「くそう!!右足が動かない…なんで麻痺毒が抜けないんだ…線虫!」ニョロリ
子ウルフ「クーン…」
子供「あのエルフ…遠くからずっと付いて来る…僕を見て助けないなんて絶対性格の悪いエルフだ」プン
子供「ああああああ!!ダメだぁぁぁ!!足が動かないぃぃ!!誰か助けてぇぇぇ!!」
子供「…」
子供「……」
子供「疲れるだけか…行こう」ヨタヨタ
カサカサ キシャーーーッ
子供「うわぁ!!毒グモか!!」ズザザ
毒グモ「シャーーー!!」カサカサ
子供「よしよし良く来たね…探してたんだよフフフフ…毒グモ!我に従え!」
毒グモ「!!?」ピタリ
子供「君にお願いがあるんだ…僕を乗せてよ…」
シュン グサ!!
毒グモ「キシャーーーー!!」ピクピク コテン
子供「あぁぁぁぁ…何するんだ馬鹿エルフ!!あ~あ折角使役したのに…」
毒グモ「シュゥゥ…」ピクピク
子供「矢を抜いてあげる…」ズボ
毒グモ「…」ピクピク
子供「あぁぁどうしよう…虫に線虫は効かない…回復用の触媒も無い」オロオロ
エルフ(危ないからそこを離れなさい!)シュタ シュタ
子供「違うんだ…僕は蟲使いなんだ…余計な事しないで欲しい」
エルフ(…やっぱり…森の言葉を理解できる人間か)
子供「何の話さ…あぁぁ毒グモ死んじゃったよ!!可哀そうに」
エルフ(お前は何処から来た?シン・リーンの者か?)
子供「まぁそうなるのかな…蟲使いの魔術師だよ」
エルフ(ではその姿は仮の姿なのだな…何用で森へ?)
子供「虫を使役しに来たのさ…虫が混乱しているから…ねぇ姿を見せてよ」
エルフ(…)ピョン クルクル シュタ
子供「君が僕を助けてくれたんだよね?木の根美味しかったよ…ありがとう」
エルフ(…)ジーーーー
子供「この森が今危険なのは知ってるさ…用が済んだら直ぐに森を出る…」
エルフ(…)ジロジロ
子供「何だよ気持ち悪いなぁ…君は男?女?エルフなのになんで髪の毛無いの?」
エルフ(私はエルフの戦士だ…それだけ)
子供「ふ~ん…まぁ良いか…僕の目的は虫を使役して混乱を治める事だよ…勝手に森に立ち入るけど問題ない?」
エルフ(ある…これより先は激戦区だ…人間が立ち入って生きて帰る事は出来ない)
子供「敵はマンイーターとかスライムとかだね?スプリガンもか…」
エルフ(何故人間がそれを知って居る!まさか密通者が居るのか?…ダークエルフがまだ暗躍していると…)
子供「ちょちょちょ…難しい話は分からない…でもね?僕は蟲を使役して倒したい相手はドリアードなんだよ」
エルフ(…怪しい…お前を拘束する)グイ
子供「いててて…拘束してどうする気?」
エルフ(…会話は終わりだ…大人しくするんだ)
子供「丁度足が動かなくて困ってた所さ…エルフが一緒ならそっちの方が良いや」
エルフ(…)ジロリ
子供「フフおっぱいあるね…あ!!子ウルフ置いて行かないで?」
エルフ(…)シュタタ ピョン ピョン
子供「ちょちょ…置いて行かないでって言ってるじゃない!!」
『少し奥』
シュタタタ
子供「はぁぁ楽ちんだぁ…」グター
エルフ(…)ギロ
子供「あれ?君脇腹を怪我して…線虫!癒せ」ニョロリン
エルフ(!!?)ポイ
子供「うわぁぁぁ…」ゴロゴロ ズザザザ
エルフ(何をした!!大人しくして居ろと…」バタバタ
エルフ(体に虫が…このぉ!!)ビシバシ
子供「大丈夫だよ…その虫は傷を癒してくれる…癒えたら勝手に排泄されるから」
エルフ(私の体を汚すな!)ビシバシ
子供「叩いても無駄さ…分裂して増えるだけだ」
エルフ(本当に傷を癒すだけなんだな?)モゾモゾ
子供「うん…驚かせてゴメンよ…それよりさ?拘束するって…紐か何かで縛ったりしないの?すぐ逃げられちゃうよ?」
エルフ(小さな人間が私から逃れられる物か)
子供「いやいや今逃れたじゃん」
エルフ(…)ジロリ
スプリガン「キシャァァァ…」
エルフ(ハッ!!スプリガンがここまで南下してる…)ピョン クルクル シュタ
子供「そいつは燃やさないとダメだよ…火炎魔法使える?」
エルフ(うるさい!!)シュタタ グイ
子供「あらら?何…逃げるの?」
エルフ(お前を連れ帰るのが優先だ)
子供「ちょい待って!魔石回収したい…僕に任せてみて?逃げたりしないから」
エルフ(…)ジロリ
子供「スプリガンは簡単なんだ…飛び回ってる蝿を使役するだけで何も出来なくなる…蝿虫!我に従え」ブーン ブンブン
エルフ(ぁ…)ポカーン
子供「こいつは自分の周りの蝿を爆発させるしか能が無い…取り上げてしまえば簡単に倒せる」スラーン ブン ザクリ
スプリガン「シュゥゥゥ…」ドサリ
子供「ちょっと待ってて…えーと硫黄は何処にしまったっけな…有った有った…火炎魔法!」ボウ メラメラ
子供「よしよし魔石一個ゲット!!…これで火に困らないヌフフフ」
エルフ(お前…何者か?)
子供「さっき言ったじゃない…シン・リーンの魔術師だって…あぁぁ10年後の話だけど」
子ウルフ「ワンワン!!」シュタタ
子供「おぉぉ追い付いたかヨシヨシ」ナデナデ
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メラメラ パチ
子供「そろそろ消しても良いかな…」ゲシゲシ
エルフ(…)ジーーーー
子供「やっぱり足の調子悪いなぁ…火を消すの手伝ってよ」ヨロ
エルフ(…)スタスタ ガッサ ガッサ
子供「なるほど…濡れた葉っぱ被せた方が早いか」ガッサ ガッサ
エルフ(…)ジーーー
子供「何さ?ちゃんと火は消した…森のルールはしっかり守ってる」
ギャァギャァ バサバサ
子供「む!鳥が落ち着かない様子だ…何か起こる」
エルフ(日が落ちる…トロールの目覚め)
子供「戦いの合図か…君は戦士だったね?行かなくて良いのかい?」
エルフ(…)ジーーーー
子供「そうか…僕をどうするか迷ってるんだね…置いて行っても構わないよ」
エルフ(そこの木の洞から動かないと約束出来るか?)
子供「アハハなんか全然拘束する気無いんだね?置いて行ったらここに止まる訳無いじゃない」
エルフ(…)ジーーーー
子供「木に縛り付けたら?そしたら逃げないよ」
エルフ(その子ウルフを連れて行く…ここに止まって居ない場合子ウルフとはもう会えないと思え)
子供「ええええええ!!卑怯だ!!」
エルフ(お前はどの道足が不自由でこれより先を一人で行くのは危険だ…私が戻るまで木の洞の中で待て)
子供「ちゃんと帰って来る?」
エルフ(フフ…)シュタタ ガシ
子ウルフ「クゥ~ン」ジタバタ
子供「ちょ…待って…」
シュタタタ ピョン ピョン
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子供「エルフって本当に行動が意味不明だ…何なんだよもう!!」ゲシゲシ
子供「んぁぁぁいつまで記憶があるかも分からないのに時間のムダだぁ!!」
子供「…」ボー
子供「何するかなぁ…」
子供「焚火なんかしたらトロール怒るだろうしなぁ…」ドテ
子供「ててて…でもなんで足動かないんだ?」ドスドス
足に感覚が無い…やっぱ麻痺しか考えられない
どうして線虫で麻痺毒が治せないんだ?
あれ?毒じゃなくてもしかして神経切れた…のか?
矢は背中を抜けて腹まで貫通してた…神経が切れた可能性は在る
だとすると線虫じゃ時間が掛かる…回復魔法で加速しないと
マズいな…切れたまま放置してると壊死するかもしれない
触媒のミネラルは鉱物…こんな所にある訳無い
変性で物質変換するなら…するなら…
子供「あぁぁぁマズイマズイ…知ってる筈の記憶が欠落してる」
子供「あんまり使わない記憶から消えて行くんだ…」
ブーン ブンブン
子供「うるさいなぁこの蝿!!」シッシッ
子供「あぁゴメン僕が使役してたんだ…そうだ!!ここで虫たちに命令しよう」
子供「蝿虫達!!近くに居る他の虫達を集めて来て…出来るだけ沢山」
ブーン ブンブン
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命令する!!
羽虫はドリアードの胞子を食らって繁殖しろ
甲虫はスプリガンの樹液を吸って繁殖しろ
蜻蛉はアルラウネを食らって繁殖しろ
蜘虫はマンイーターを腐らせろ
飛蝗はケシの実を食らい尽くせ
線虫はスライムの毒を食らって繁殖しろ
よしよし…ここからが本番だ
ダンゴムシはドリアードの内部の老廃物を食らって繁殖しろ
ワームはドリアードの根を住処とし共存関係を作れ
全ての虫は個体数を増やして僕の命令を待て
この命令は繁殖する子孫にも継続する
子供「フフフフ…今に見てろよ?虫の繁殖サイクルは早いんだ…直にすべての虫が僕の命令どおりに動く」
子供「まだまだ命令するからどんどん虫を連れて来て」
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『深夜』
ドドドドド ドーン
子供「ボルケーノの音か…そんなに遠く無いな」
子供「森の声が無いからきっとバラバラで戦って居るんだろうなぁ」
良く考えてみるとエルフの森が主戦場になるのは仕方の無い流れだ
人間は子供を産めなくすることで20年もすればほぼ絶滅する
寿命の長いエルフの駆逐を先行させるのは理にかなっった話だ
さすがホム姉ちゃんと同じくらい賢いアダムって所だ
でもね…僕が阻止するよ
シュタタタ ズザザー
子供「ん?あのエルフもう帰ってきたのかな?」ムク
子ウルフ「クゥ~ン」スタタ
エルフ(ハァハァ…ここを移動する…もうここは安全じゃない…ゲフゲフ!!)
子供「うわ…なんでそんな切り傷…毒にも掛かってる」
エルフ(ミノタウロスとオークが加わっての乱戦…マンイータやスプリガンだけが敵じゃない…はぁはぁ…掴まって!)
子供「まず傷の応急処置を…」
エルフ(もうそこまで来てる…早く掴まって!)グイ
子供「あわわ…」ヨロ
ヒュルヒュルヒュル ザクリ!
子供「オークの大斧…」
エルフ(揺れるよ!!…)ピョン ピョン シュタタタ
子供「線虫!エルフの傷を癒せ!」ニョロニョロ モゾモゾ
エルフ(後ろを見てて)シュタタ
子供「茶色のオーク2体!」
エルフ(このままだと掴まる!虫でも何で使え!)
子供「魔石…魔石…よし!!火炎魔法!」ボウ
エルフ(撃ち続けて…)シュタタ
子供「なんだこの魔石!弱いなぁ…火炎魔法!火炎魔法!」ボウ ボウ
エルフ(ちぃぃぃ…距離が開かない)シュタタ
子供「そうだ爆弾があった…火魔法!」チリチリ ポイ
ドーン!! パラパラ
エルフ(!!よし…オークが止まった…木の上に出る…しっかり掴まって)ピョン ピョン シュタ
子供「片方のオークは爆弾で負傷したみたい」
エルフ(ハァハァ…)フラ
子供「戻って行くよ…諦めたみたいだ」
エルフ(お前は回復魔法は使わないのか?)フラ
子供「触媒が無いから今は使えない…シカの角で作った薬は在る…居るかい?」
エルフ(口の中へ…)フラリ
子供「そうかもう片方の腕が折れてるんだね?ちょっと待って…ほら?」グイ
エルフ(むぐ…雪を口の中に)
子供「…」グイグイ
エルフ(夜明けまで此処に隠れる)
子供「降ろして良いよ…ちゃんと木には掴まっておく」
エルフ(フフ…)ヨッコラ
子供「腕に添え木をしてあげようか?」
エルフ(バランスが取り難くなるから要らない)
子供「でも痛いよね?そのままだと」
エルフ(気にするな…私は戦士だ)
子供「まぁ線虫が癒してくれてるから骨なら2~3日で治るかな」
エルフ(お前の足はどうした?)
子供「これは多分神経が何処かで切れてる…麻痺状態だよ…経験が無いからどのくらいで治癒するか分からない」
エルフ(その足で森の奥に行くのは止めて置け)
子供「あれ?連れて行くんじゃ無かったの?」
エルフ(そういう状況では無くなった)
子供「そっか…じゃぁこれからどうするかなぁ…」
エルフ(虫の使役はもう良いのか?)
子供「う~ん…もっと使役しておきたいんだけど…この状況見たらさすがに危ないかな~なんてさ」
エルフ(私は腕が回復するまで戦線離脱になる…森を出ると言うなら外まで案内する)
子供「お?性格悪いエルフだと思ってたけどそうでも無さそうだね?」
エルフ(…)ギロ
子供「でもそうだなぁ…一回戻って足の治療をした方が良さそうだなぁ」
エルフ(ところでお前はどうして森の言葉を理解できる?)
子供「僕はハーフエルフの子供だよ…ハーフのハーフだから人間の血が濃い」
エルフ(そうか…森で声を聞いた事が在ったのか)
子供「あ!!そうだ…キノコ持ってたんだ…これにも体力回復効果がある…居る?」ゴソゴソ
エルフ(お前は不思議な人間だな…いやクォーターエルフか)
子供「どんぐりもあるよ?」カリ モグ
エルフ(フフ…)
子供「食べなよ」ポイ
エルフ(随分質の悪いどんぐりだ…)カリ モグ
子供「冬なんだからしょうがないさ」モグモグ
『夜明け』
チュンチュン バサバサ
エルフ(鳥達が安全だと言っている…森の外まで送ろう)グイ
子供「ゴメンね腕痛いのに無理させちゃて」
エルフ(休息して随分ラクになった…さぁ掴まれ…行くぞ)ピョン シュタ
子ウルフ「ワンワン」シュタタ
エルフ(森を出た後はどうするつもりか?私は森の外をこのまま出る訳には行かない)
子供「う~ん…遺跡に帰っても触媒が無いしなぁ」
エルフ(遺跡?)
子供「精霊樹にお願いしてエリクサー少し分けて貰おうかな」
エルフ(お前にそんな事が出来るものか!)
子供「精霊樹の所に知り合いのエルフが居るんだよ…その人に頼んでみる」
エルフ(他に知り合いのエルフが居ると…まぁ良い…私は森の端までだ…その後は自力で行け)
子供「わざわざありがとね…ウルフも僕の友達だから何とかなるよ」
エルフ(フッ…エルフなら当然だ)
子供「この足さえ自由だったらもう少し頑張れたんだけどなぁ…」
エルフ(エルフは足が命だ…足を引きずって森に入る様な事はしない事だ)
子供「気を付けるよ…てか弓で撃たれたのは背中なんだけどね」
エルフ(???)ピタリ キョロ
子供「どうしたの?何か居る?」
エルフ(静かに…鳥達が居ない)キョロ
子供「…」クンクン
子ウルフ「ガルルル…」シュタタ
子供「風下!!」
エルフ(しまった!!他のオークがまだ居た…掴まって!)シュタタ
子供「子ウルフ!!戻れ!!」
エルフ(昨夜の爆弾を準備しろ!)
子供「あと2個!!」
エルフ(後ろ警戒して!)
子供「見えた…大きな茶色のオーク…武器は持って無い」
エルフ(オークロード…ダメだ!!石を投げて来る)シュタタ
子供「煙玉…あった!!火魔法!」チリチリ ポイ
モクモクモクモク
子供「適当に石投げ始めたよ」
エルフ「当たったら終わりと思って!逃げる方向変える…掴まれ」シュタタ
子供「距離開いた…向こうの方が遅い」
ヒュン ゴツン!!
子供「うがっ…」クラクラ
エルフ「ちぃぃぃ耐えて…ハァハァ」シュタタ
子供「パクパク」---あれ?声が出ない---
---あれ?目の前が赤い---
---あれ?なんで?---
---なんで?---
---何が起きた?---
『次の記憶』
僕「パクパク」
エルフ「パクパク」
---聞こえないよ…何?---
『その次の記憶』
僕「パクパク」
エルフ「パクパク」
---それだよ…それを精霊樹に届けて---
『最後の記憶』
僕「パクパク」
他のエルフ「パクパク」
---ここは何処だ?---
---僕はどうなった?---
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『夢の中の声』
御所の中で眠って居たのだ
何故そこに居たのかは聞いて居ない
遺跡から通じる通路が在るのかもしれない
良く調査してみてくれ
眠って居るだけだ…心配しなくても良いだろう
エリクサーは期待しないで欲しい
分かって居るさ
奴の分だけは確保してやる
私も忙しい身だ
済まないがもう戻るとする
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『気球』
フワフワ バサバサ
子供「ぅぅん」パチ
子供「…」---寒い---
魔女「んん?目を覚ました様じゃな?寒うないか?」
子供「寒い…」ポケー
魔女「これ精鋭兵!暖が足りぬ…もうちっと温くせい」
精鋭兵「ハッ!」ドタドタ
子供「なんか夢を見てた…」
魔女「覚えておるか?」
子供「んんん何だっけな…大事な夢な気がしたんだけどなぁ…」
魔女「それは夢幻を見てるやも知れぬ」
子供「ビッグママは?」
魔女「寝ぼけて居るんか?この間分かれて来たじゃろう」
子供「そうだっけ…頭がボヤボヤする」
魔女「気圧のせいじゃろう…直にシン・リーンじゃから辛抱せい」
精鋭兵「姫様…シン・リーンが見えて参りました」
魔女「姫様はやめいと何度言わせるのじゃ?わらわは魔女じゃ」
精鋭兵「失礼しました…」
子供「んんん…何かおかしいなぁ」
魔女「主は毎日そんな事言うて居るな?何もおかしゅう無いが?」
子供「坊主のエルフと一緒だった気がするんだけど…」
魔女「だから言うたじゃろう…坊主にするエルフなぞ居らん…それはエルフにとって屈辱なのじゃ」
子供「屈辱ねぇ…変な夢だなぁ」
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夢幻の平行編
完
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