【咲-saki-】京太郎「ウルトラマンの力」咲「光よ!」 (999)


◆最初に

※咲-Saki-とウルトラマンシリーズのクロスオーバー

※京太郎もの

※基本平成

※地の文多め、かも

※麻雀関係あるようなないような、これウルトラファイト

>>1以外はsageでお願いします

※“たまに”安価


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1630256552


◆プロローグ

須賀京太郎、15歳、高校一年生

夏、自らの在籍している清澄高校のインターハイでの団体戦優勝を見届けた

もちろん、自らが親友【宮永咲】の個人戦優勝すらも

過ぎゆく平和な日々

そして夏が過ぎ―――光と闇の混沌とした戦いが始まる



     第1話【幻影を継ぐ者】


―――9月7日・夜


彼、須賀京太郎は麻雀をしていた。そのはずだった

“いつも通りの敗北”だったはずだ

だがおかしい


「っ!」


麻雀卓によりかかり、そのまま椅子から転げ落ちる

対面にいた【原村和】が立ち上がり、京太郎を見下ろす

体中に激痛、それと共に薄れ行く意識


「のど、か……」


さらに両面に座っている【染谷まこ】と【南浦数絵】も意識を失っている

立ち上がった和が“メダルのようなもの”を投げると、目の錯覚かそれが二人の身体に入っていった


「な、にを……」


這うように手を伸ばすと、自らの鞄に手が届く

かといってなにかができるわけでもないが……


「外れ、ですか……ここまでの力量の差では持ちませんね」


傍によってきた原村和が口を開いているのは見えるが、それが和の言葉のようには聞こえない


「まぁ結果的には同じです。待っているものは」


頬に和の手が添えられるのを感じ、見上げる

その背後に光り輝くなにかが見えた気がした

掠れた声で、思わず呟く


「天使……?」

「ふふっ、ふふふ……もったいない。でもさよならです。すぐにみんなそちらに」


手が離れていくが、気力だけで起き上がろうと上体を起こした

固定されている椅子を背に、和を見上げる


「人類的な表現であれば……“根源的破滅”ですか、それをお贈りします」


女神のような笑顔を浮かべる和

そんな彼女を視線の先に、京太郎は“お守り”を握りしめたまま、暗闇に意識を鎮める



―――数日前


緑の葉も赤みがかかり始め、季節は秋へと移っていく

夕日に照らされる道も、すっかり夏と違って見える

街中を、二つの影が並んで動く


「そういえば京ちゃん」

「ん?」


彼、須賀京太郎に声をかけるのは宮永咲

同じ麻雀部、今日も今日とて麻雀をやった帰りである


「お母さん、今日からいないんだって?」

「ん、ああ……しばらく外国だって」

「相変わらずだねぇ」

「まぁ楽しそうでなによりだ。慣れたし」


ケラケラと笑う京太郎と、それを見てクスリと笑う咲

二人の様子からして別段珍しいことではないということがわかる

父は京太郎が物心ついてから一度も会ったことがない

たまに送りものが届くぐらいでほぼ母子家庭であったのだが、別段それを憂うこともなく育ってきた


「あ、そういえば親父から珍しくお土産っぽいもの送られてきたなぁ」

「へぇ~珍しいね?」

「ん、たまに送られてくるものもそのまま親父の書斎に入れちゃうからなぁ」

「で、なにもらったの?」

「え~っと、なんでもない……ただその、お、お守り」


少しばかり気恥ずかしさがあるのか、ほんのりと赤い顔でそっぽを向きポケットからそれを取り出す

京太郎の手にあるのはお守り、すこしばかり硬いなにかが入ったそれを手に取って咲に見せる

ニヤニヤと笑う咲、そんな顔を見て京太郎は軽く肘でつついた


「笑うなよ」

「え~だって京ちゃん嬉しそうだし~」


幼馴染二人、影を左右に揺らしながら帰路を行く


―――9月7日・夕方


茜色に染まる校門前、立っているのは二つの影

須賀京太郎と原村和の二人だ

部活が終わってから帰路につこうとしていたのだが、咲と仲間である片岡優希を待つために校門にいる


(和と二人きりとか久しぶりだなぁ……)

「須賀君と二人きりなんて、久しぶりですね」

「あっ、お、おう……」


最近はこうして彼女から話を振られることも多くなってきた

憧れの少女、彼女がいたから麻雀の道に足を踏み入れたぐらいだ。緊張もしよう


「その、和」


ぐっと拳を握りしめる

あくまでナチュラルに自然に、意識しつつうなずく


「俺は次のインターハイ、必ず清澄にふさわしい活躍をしてみせる」

「?」

「そしたら、俺と……」

「和ちゃん、京ちゃん!」

「あっ、咲さん!」


決意を決めて言おうとした“なにか”が言い終わる前に、やってきたのは宮永咲

そちらへと軽く駆けていく和を見て京太郎は少しばかり顔をしかめる

まぁ仕方のないことだとあきらめて息をつくと、京太郎もそちらへと歩いていく


「京ちゃん聞いてよ! 私今度お姉ちゃんと一緒に取材で―――」


景気の良い話である。きっと普段ならばもっと喜べたはずなのだが……

一緒だった友達、いや親友とどんどんと離れていく感覚を覚える

端から違うのだが……それでも感情ではそうもいかずに


「さすが、だな」


笑みを浮かべる京太郎、そんな彼のポケットのケータイが震えた

まだ気づかぬものの、それはそばにいた和からのメッセージ

気づくのは一人になった帰り道で、喜んですぐ肯定の返事を返すことになる提案


『夜、麻雀でもしませんか? まこ先輩のお店で』


―――そしてそれが、彼にとっての始まりの終わり



―――9月7日・深夜


ふと、目を覚ました

雀荘でもなんでもない、そこは―――


京太郎「俺の、家?」


自宅の自室―――ベッドの上


??「おはよう」


その声に、勢いよく上体を起こす

和に倒された後の激痛は余韻もなく、倦怠感すら感じさせない

だが俊敏に起き上がった京太郎は声のした方に視線を移した


??「危なかったね……父親に感謝しときな」

京太郎「あなた、は?」


そこには白髪の老婆―――老婆というには若いかもしれない

なにはともあれそこには女性が座っていた

知らない人間でありなぜ自分の家にいるのか、なぜ自分すらも自宅にいるのか理解が追いつかない


??「原村和がやられてるとはね、意外……でもないか、あれもまた能力を持った者」

京太郎「な、なんの話ですか?」

??「リトルスターの、もっと邪悪なものか……」

京太郎「だからなんの話かって」

??「おいで……きっとあんたの父親が鍵だ。いや、鍵はむしろ―――」


その言葉と共に、女性が立ち上がるので京太郎も立ち上がる

なぜだかその女性の言葉に説得力を感じた


??「私は熊倉トシ……通りすがりの、風来坊ってことにでもしとくかね」

京太郎「は?」



なぜかその熊倉トシを先導に部屋へと入る

父の部屋に入るのは久しぶりで、他の部屋とは違う匂いに違和感を感じながらも足を踏み入れた

妙な感覚を感じる


京太郎「前は、こんな感じ……」

トシ「あんたの中のそれと関係あるのか、とりあえず、ここか?」

京太郎「俺の中って……って、あ」


ポケットになにかが入っているのを感じて出してみればそれは父からのお守り

なんだか軽くなっている気がする。硬さもない


京太郎「……なんで?」

トシ「ほら、やっぱり」

京太郎「って、何勝手に開けてるんですか」


そう言って近づくと、父の机の引き出し

その一番下に金庫のようなものがはめてあった

だが鍵穴が見つからない、ダイヤルも


トシ「開けて」

京太郎「え? 別に閉まって」

トシ「閉まってるよ」


その言葉に、訝しげな表情を浮かべつつなぜか従い金庫の取っ手に手をかけて上に持ち上げるように開く

別段、光が広がるわけでも闇があふれるわけでもない

ただ純粋に、そこにはモノが在った


京太郎「なんだ、これ?」

トシ「ゼットライザー……設計図でもパクッてきたか?」

京太郎「へ? ぜ、ぜっと?」

トシ「いい、あんたのものだ……本来の使い道とはたぶん、違うけど」


そういうと、熊倉トシはその【ゼットライザー】を手に持って、京太郎に渡す

受け取った京太郎は、その重みを感じつつ手を上下させる

さらに中に入っていたものを、トシが京太郎の腰横につけた


トシ「ホルダー……“メダル”を拾ったらそこに入れときな」

京太郎「え、メダル? ゲーセンでも行くんですか? あ! これ太鼓の達人のマイ鉢的な」

トシ「……」

京太郎「あ、違いますよね、はい」


軽く手を返してゼットライザーを見て、触ってみる

両についたブレードのようなものがスライドし、丸い何かをはめる場所もあった

なるほど、とうなずく。メダルとゼットライザーの関係、つまりはそういうことだろう


京太郎「で、なんなんですこれ?」

トシ「運命は動き出した。もう止まらない……いや、既に動き出してたのか」


溜息をつく熊倉トシを見て、京太郎は小首をかしげた


京太郎「一体、なにが起こってるんですか?」

トシ「それは……」


瞬間―――咆哮が聞こえる


野犬やらの声ではない。そんなものわかる

窓が揺れるような咆哮

そんなもの聞いたこともない


京太郎「なっ、なんだよ!?」

トシ「きたか……」


カーテンを開けたトシの視線の先、蠢く影

街が燃えているのか、影に赤い光が当たっている


京太郎「か、怪獣!!?」

トシ「始まりの怪獣―――ベムラー!」


それは怪獣、黒く棘の生えた鱗

二足歩行、短い前足、長い尻尾、口から吐くのは青い炎


京太郎「な、なんだよあれっ……」

トシ「まだ本格的に市街地、ではないか」

京太郎「そ、そんなこと言ってる場合じゃ!」

トシ「行くよ」

京太郎「どこに!? なにしに!?」

トシ「……あんたにしかできないことさ」


数分後、京太郎とトシの二人は【ベムラー】と呼ばれた怪獣が近くに見える丘に来ていた

熊倉トシの、年齢に合わぬ体力と走力についてきた京太郎

だが、中学の頃にハンドボールをやっていたころより走力も体力も上に感じた


京太郎(むしろ、自分でブレーキをしてた気すらする……)

トシ「デビルスプリンター……やっぱり」

京太郎「?」


少し離れた場所に見えるベムラー

いつ自分たちがその炎の餌食になるかわからない


京太郎「あ、危なくないっすか?」

トシ「……京ちゃん」

京太郎「は、はい」

トシ「ごめん、すまないと思ってる……あんたに背負わせて」


意味がわからない。自分にしかできないことがあるというからついてきたが、説明がない


トシ「戦うんだ。あんたが……」

京太郎「いきなりなにを」


街を壊すベムラーが、トシの背後に見えた

人々が走っているのすら見える

ゼットライザーを握った拳に、自然と力がこもる


京太郎「……はい!」

トシ「トリガーを」


ゼットライザーのトリガーを引く

それと共に、目の前に輝く扉が現れた

別空間に通じているであろうその扉を前に、京太郎は迷うことなく走る


トシ「あ、待った」

京太郎「え?」

トシ「最後にもう一回トリガーだよ、忘れないでね」

京太郎「あ……はい」


そう返事をすると、深呼吸

仕切り直しだと言わんばかりに深く息を吐いてから、光る扉-ゲート-に飛び込んだ


真っ白に輝く空間

入り口は既にふさがっており、中にいるのは京太郎のみ

両の足を踏みしめて立つ京太郎の右手にはゼットライザー


京太郎「っ!」


そして左手に現れるのは、京太郎が映った赤いカード

それを見つめる京太郎の赤い瞳


『ジーッと見つめててもどうにもならないぞ』

京太郎「ッ!?」

『気に入らない感覚だ……カードを差し込め!』

京太郎「は、はい!」


威圧感のある声に押される

息をついて、右手のゼットライザーに左手のカードを差し込む


【キョウタロウ・アクセスグランテッド】

京太郎「!」


異様な力を感じる

目の前の怪獣から街を、人々を守る力

自分の内に感じる―――“チカラ”


京太郎「!」


ゼットライザーのブレードを


『叫べ! 俺の名を!』

「ウルトラマン―――」


ゼットライザーを掲げ―――トリガーを引く


「―――ベリアル!!」


―――【街中】


青い炎を吐く宇宙怪獣ベムラー

そんなベムラーが“蹴り飛ばされる”


ベムラー「……!!」


倒れたベムラーがハッキリと視線をそちらに向ける

そこに立つのはベムラーとほぼ同サイズの、光の巨人

白銀と赤の身体を持ち、胸に輝く星-カラータイマー-


京太郎『こ、これは?』

べリアル『ハッ! 腕慣らしには丁度良いが、こっちは素人か……』

京太郎『え、そ、そんなこと言われても』

べリアル『まぁ良い……気に入らん奴は潰す!』


爪を立てた両手で構えを取る京太郎こと、ウルトラマンべリアル


今ここに―――【最恐のウルトラマン】が復活した


京太郎が消えた丘の上で、熊倉トシはベムラーと対峙するべリアルを見やる

その瞳に映るのは喜びでもなんでもなかった

そんな感情は存在しない。彼女は顔をしかめる


トシ「すまないね、京ちゃん……」


謝罪は闘う運命を選ばせたこと

戦いに駆りだしたこと、頼らざるをえなかったこと

そしてその謝罪は、まだ続く


トシ「そしてべリアル……そっとしておいてやりたかったよ。私だって」


その視線の先、ウルトラマンべリアルは【始まりの怪獣-ベムラー-】を前に構えを取った


今回はここまでー
プロローグって感じでとりあえず初変身
結構前から咲とウルトラマンでやりたいなとは思ってたけどようやく

ホントはゴリゴリの安価スレの予定だってけども変更
まぁちょくちょく、ではないけど安価たまに入れてくのでよろしければ是非

明日は22時ぐらいから開始してってもしかしたら第一回目の安価までいく、かも?

そんじゃまたー

和との会話でちゃっかりベリアルしてて大草原

おっし、再開してくよん

>>17
そこに気づくとは、やはり天才か


構えを取るベリアルを前に、ベムラーが威嚇するように咆哮をあげた

京太郎はベリアルの中で自分自身がベリアルになっているという違和感に顔をしかめる


京太郎『な、なんなんだよこれっ!』

ベリアル『チッ、妙な姿で蘇えらされたな』


その言葉に、少しばかりの違和感を感じるも、今すぐに指摘できるほど心の余裕もない


ベリアル『おい小僧、合わせろ!』

京太郎『あ、合わせろっても』


突如、ベムラーへと走り出すベリアル

引っ張られるような感覚に、京太郎は逆らわないように体を動かす

走り出したベリアルが、爪を立てた右腕を振るう


ベリアル「ハァッ!」

ベムラー「―――!!?」


振るわれた右手、それは斬撃へと変わりベムラーの強固な鱗を引き裂き攻撃を通す

その感覚に驚愕する京太郎だが、すぐ左側の動く感覚にあわせて左腕を振るった

左拳をベムラーの胴体に打ちつけて、その巨体を後退させる


ベリアル「ハッ!」


ベリアルに合わせて背後に跳ぶと、青い炎が先ほどまでいた場所を燃やす


京太郎『っぶね~!』

ベリアル『ハ! はじめてにしちゃぁ悪くねぇ……人間と融合なんざ俺も初めてだから普通どんなもんかもわかんねぇがな』

京太郎『ゆ、融合っすか?』

ベリアル『なんも知らねぇみたいだな』


その言葉に、恐る恐る肯定で返す

ベリアルがなにかを話し出そうとするも、ベムラーが接近して尻尾を横薙ぎに振るう

再び、合わせるように跳んでそのままベムラーの背後へと回る


ベリアル「ハァッ!」


素早く手から光弾を撃ち出し、ベムラーを攻撃

倒れるベムラーがビルを破壊する


京太郎『あっ! 街がっ!!』


立ち上がるベムラーがさらに尻尾を振るう

後ろへと下がるベリアルだが、ベムラー周囲のビルが破壊されていく

それを見て、京太郎は歯を噛みしめた


ベリアル『チッ、しぶといな……』

京太郎『え、えっと、ベリアル、さん!』

ベリアル『あぁ? なんだ?』

京太郎『なるべく街を壊さないように戦えませんか!』


ベリアルが、ベムラーを見据えたまま左手を顎に添えて首を左右に振るう

ゴキゴキと関節が鳴るような感覚を感じた

この短い間で、おそらくベリアルがどういう人物(?)かはある程度見えたつもりだ


京太郎『頼みますっ、街を守れなきゃ俺は……ここで戦う意味がない!』


素直に聞いてくれるとは、思っていない

だが自分がやれることは、それでも頼みこむのみ、だ


ベリアル『守るもの、ねぇ……ハッ! ならどうする?』

京太郎『え?』

ベリアル『街に被害が無いようにあいつを仕留めるために、だ』


試すような言葉に、京太郎は頷く

なんとなくだが戦い方も、使える技すらも感覚的に理解してきた

所謂“必殺技”の使用や威力、その他の攻撃もまた然り


京太郎『ベリアルさん! 力、お借りします!』


ベリアルがベムラーに駆ける

口から吐き出される青い炎を、前に転がるように避けて懐に入るとそのまま爪撃を放つと同時に背後へと斬り抜ける

叫びをあげ尻尾を振るうベムラー


ベリアル「ハッ!」

ベムラー「―――!!」


前へと転がって回避するベリアルが、即座に振り返る

京太郎もまったく誤差の無い動きで着いていく


京太郎『そこぉ!』


手の平から光弾を三度放つ

ベムラーがその攻撃に火花を散らしながら下がるも、すぐに怒りに震える姿が見えた

作戦通りと、京太郎が笑みを浮かべる


ベムラー「―――!!」


走り出すベムラー


ベリアル『来るぞ、合わせてやる―――やってみせろ小僧!』

京太郎『オオォォォォ!!!』


それに合わせて走り出すベリアル

◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE



道路を踏みしめて、ベムラーへと駆けだす

二つの巨体がぶつかりあう―――その直前


京太郎『ここだぁっ!』


即座に身体をかがめると、背を地につけた

走る勢いそのままのベムラーの腹を、受け流すように蹴り上げる

空へと勢いよく飛ぶベムラー


京太郎『ベリアルさん!』

ベリアル『ハッ! おもしろい!』


即座に立ち上がったベリアルの右手が赤い稲妻を纏う



ベムラー「―――!!」


空のベムラーが自由落下を始めようとしている

その前に―――


京太郎『やる!』


腰を少し落とすと左手を水平に、その後ろの赤い稲妻を纏う右手を垂直に


数多の宇宙に広がる光の巨人の伝説

この宇宙にこそ、その伝説はない―――今までは


これから後世に続くであろう伝説、その始まり!


京太郎・ベリアル 『デスシウム光線!』


赤い稲妻を纏った光線

その一撃が空のベムラーへと放たれる

真っ直ぐに、夜を照らす輝き―――


ベムラー「―――!!?」


―――そして、爆発



空中で爆散したベムラー

爆煙から輝く何かが落ちる

ベリアルは右手を払うように振るうと、首を再び鳴らす


ベリアル「……ハァッ!」


両手を上に向けて、ベリアルは空へ―――消えた



―――【丘の上】


熊倉トシは、静かに事の良く末を見守っていた

その表情に浮かぶのは混乱か安心か


トシ「……ベリアルが、京ちゃんに合わせた?」


やはり混乱だったのだろうか、熊倉トシは軽く丘の柵を飛び越える

数メートルを落下するも軽く着地して、さらに歩き出す


トシ「相性の問題? それとも―――息子に殺されれば嫌でも変わる、か?」


―――【街中】


走る京太郎、その右手にはゼットライザー

燃え盛る街の中を息を切らしながら走る

体力の消耗は、初めての戦い故か―――


京太郎「ハァッ、ハァッ……」

ベリアル『戻った途端に、せわしない奴だ』

京太郎「な、なんか落ちたんだ……怪獣が、出た原因かもっ!」


その言葉に、ベリアルは興味なさげに息をつく

破壊されたビルの瓦礫を飛び越えて、京太郎は―――見つけた


京太郎「あれっ!」

ベリアル『なんだ?』

京太郎「せ、妹尾さん!?」


妹尾佳織―――鶴賀学園の麻雀部、二年生

一応、部活の繋がりで数言か交わした記憶はある

急いでそちらへと駆け寄るとすぐに抱き上げた


京太郎「妹尾さん!」

佳織「うっ……」カランッ


なにかが落ちた音がして、京太郎はそちらを見やる


京太郎「これ……メダル?」

ベリアル『ほう、こいつがこのメダルの持ち主だったわけだ』

京太郎「っ」


そのメダルに描かれているのは怪獣―――ベムラー



佳織の上体を片手で支えている京太郎は、そのメダルに驚愕しながらもホルダーにしまった

レスキュー隊が近くに来ているのか声が聞こえる

すぐにそちらへ向かって佳織を預けようとも動こうとする


??「待った」

京太郎「っ……トシさん」ハァ

トシ「こっち」


そう言って歩いていくトシ

佳織を抱き上げるとそちらへと歩き出す京太郎

別に大きな怪我などがある様子はないものの、危なければトシが放っておくとも思えないと行く


ベリアル『おい小僧、あれは?』

京太郎『熊倉トシさん、よくわかんないですけど……助けてくれたっていうか、ベリアルさんと会わせてくれた、人?』

ベリアル『きな臭いな』

京太郎『ごもっとも』


瓦礫の少ない道を行き、徐々に破壊されていない街中へと入っていく

野次馬を避けて裏道を行くトシはこの街の立地にかなり詳しく見えた


トシ「さて、ここで良いだろう」

京太郎「?」


ただの道路だった

歩道で立ち止まったトシの後ろで立ち止まる京太郎

佳織をお姫様抱っこで抱えたままで、職質に怯えながら周囲を見渡す


トシ「ほら来た」

京太郎「車?」



◇大変! プロがきた!


1、瑞原はやり

2、野依理沙

3、三尋木咏

4、戒能良子

5、赤土晴絵(プロ?)


◇5分間で↓1からコンマが一番高い人物

(まぁ正直1↓で良いかなって思ってた!


1、瑞原はやり


目の前に勢いよく止まる車

4WDタイプの四輪駆動車両

その窓が開くと、そこにはどこかで見た女性


???「お待たせしました~」

トシ「いや、丁度良い到着だ……京ちゃん、あんたは後ろへ」

京太郎「あ、はい」


トシがドアを開けると、京太郎は少し高くなっている後部座席へと佳織共に乗り込む

少しばかり大きな車なだけあって、中もそこそこに広い

佳織をどうにか座らせると、支えるように京太郎も座る


???「出発しま~す」

トシ「ん」


助手席に座ったトシの返事を機に、車が走り出す


京太郎「えっと……状況が読めないんですけど」

トシ「ああすまないね、それはこのあと……紹介するよ。あたしの協力者」


バックミラー越しに運転席の女性と眼が合う

ニコリ、と聞こえてきそうな笑みを浮かべた女性


???「こんにちは、瑞原はやりです☆」

京太郎「……はやりん!!?」

ベリアル『……誰だ?』


十数分走った車が、施設に入る

敷地に入り、真っ直ぐに走っていくと車庫が開く

自動なのか手動なのか、そこに入ると電気がつきハイテク機器が並ぶ車庫だとわかる


京太郎(すげぇな……なんだここ)

ベリアル『おい、この地球には“そーゆー組織”があるのか?』

京太郎『え、そうゆうって?』


その疑問に、ベリアルは応えることはなかった

小首をかしげる京太郎をよそに運転席のはやりと助手席のトシが降りる

それに続くように京太郎は佳織を支えながらドアを開け、抱えて降りた


京太郎「えっと」

はやり「こっちにきて?」

京太郎「あ、はい」

トシ「余計なとこ行ったり触ったりしないでね」

京太郎「俺は子供ですか」

トシ「子供だよ」

京太郎「……まぁ、はい」

ベリアル『情けねぇ』

京太郎『うっ』


閉まって行くシャッターを横目に、近くのドアから二人の後を追って施設に入る

白い壁、明るい蛍光

研究所とか言葉が脳裏をよぎる


京太郎『ついてきちゃって良かったんですかね?』

ベリアル『今更だ、それにいざとなれば俺がやる』

京太郎『あはは……いざって時が来なきゃいいけど……』



少し歩くと部屋に案内され、自動ドアが開いて二人に続いて中に入る

ベッドが置いてあり、他にも機器が設置してあった

はやりが手でそちらを差す


京太郎「妹尾さんを?」

はやり「うん」


その言葉に従うほかないと、そちらに佳織を寝かした

京太郎が言葉を発そうとした瞬間、自動ドアが再び開く

入ってきたのは、これまた見覚えのある女性


はやり「裕子ちゃん☆」

裕子「妹尾佳織さん……鶴賀の麻雀部、役満を上がっている」

はやり「はやぁ、リサーチが早いねぇ」

裕子「一応メディカルチェックをします。出て行ってください」

はやり「はいはい、いこートシさん、須賀君?」

京太郎「あ、はい!」


彼女がクルッと身体を回して出口へと向く

それと共に揺れる二つの豊満な果実


京太郎(くっ、伸びる! 鼻の下が伸びる!)

はやり「?」


なにかおかしい京太郎を覗き込むはやり

そんな風にかがまれるともちろんシャツの間から谷間が見えるわけで


京太郎『ぐおぉ! ベリアルさんここ不味いっす!』

ベリアル『鼻の下を伸ばすな、ヒッポリト星人か』

京太郎『誰か知らんけどたぶん悪口!』


―――【施設】


二人についていき、一つの部屋に案内された

大きなモニターと大きなテーブル、機器が沢山ある

椅子に座るトシとはやり


はやり「どーぞ☆」

京太郎「し、失礼します」


椅子に座る京太郎、あまりこういう雰囲気には慣れていない

というより、慣れている人の方が珍しいだろう


京太郎「えっと……妹尾さんは?」

トシ「とりあえず検査待ち、まぁ運がいい方だと思うよやっぱり」

京太郎「ど、どこがっすか」

トシ「さぁ、どうとらえるかは自由だけども……」


その言葉に、京太郎は小首をかしげた


はやり「えっと、どこまで説明しましたか?」

トシ「全然さ、その前に……変身してもらったから」

はやり「じゃあ須賀君が?」

トシ「ああ……さっきの“ウルトラマン”だ」


勢いよく立ち上がる


京太郎「ええ!? そういうの言っちゃうんですか!?」

トシ「まぁ、こいつにはね」

はやり「信頼されてるね~☆」

トシ「一応ね」

はやり「はやや、一応って」

京太郎「……俺、なんなんですか?」

トシ「……父親から、いやそれ以外からでもなんかもらった?」

京太郎「え、なんかって……あ! お守り!」

トシ「それだ。それに入ってたんだろうね……ウルトラマンベリアルの力の入った、カードかカプセルか……メダル」

京太郎「メダル……」


おそらくメダルだと、謎の確信があった

父からのお守り、だがそれがなぜ


京太郎「メダルがなんだってんですか?」

トシ「それがベリアルメダルだったんだろうね。あんたが死にかけた時に、同化した」

京太郎「俺が死にかけ……あ!」


確実にあれだ。というより“彼女”が言っていた


京太郎「あのあと、俺はその……ベリアルさんのメダルと?」

トシ「ぶふっ!」


珍しいリアクションに、京太郎が疑問符を浮かべる


トシ「い、いや……ベリアルを、さん付けっ」

京太郎「なにがツボだったんです?」

はやり「さぁ?」

ベリアル『失礼な奴だな』


そんな声に軽く苦笑を返す


トシ「こほん……ともかく、そのあと外に捨てられてた京ちゃんを私が見つけて家に運んだと」

京太郎「俺、運ばれたんだ」

トシ「そういうこと、色々あってあんたの父親が鍵を握ってるんじゃないかって思ったら……」

京太郎「俺の父親知ってるんですか?」

トシ「知ってると言えば知ってる。ただ“ここの京ちゃんの父親”ではないけど」

京太郎「?」

トシ「ウルトラマン好きなんだよ。あんたの父親……なろうと思ってゼットライザーを作っちゃうくらいには」

京太郎「親父、こっち側なんだ……しかも変な感じ」

ベリアル『なにに憧れたんだかな、くだらん』

京太郎『ウルトラマンからの意見ですか?』

ベリアル『さぁな……それとオレはオレをウルトラマンなんざだと思ってねぇ』


なにか、複雑な理由があるのだろうと勝手に解釈して深く聞くのをやめた

今やるべきはそんなことでもない

自分の身の周りで起きたことの詳細、それを聞く方が先決だ


京太郎「それで、親父は一体?」

トシ「それは知らない」

京太郎「え~」

トシ「あとは“怪獣”について、かね」

はやり「ん、それについては私からかな☆」

京太郎「お~」



スーツ姿の瑞原はやり、説明を始めるために立ち上がった

コンピューターのキーボードを軽く叩くとモニターに映るのは怪獣

先ほどのベムラー


はやり「まぁ実際に怪獣が出たのは……今回が初めてだけどね」

京太郎「の割に、瑞原さん落ち着いてますね」

はやり「はやりで良いよ」


そう言うと、さらにキーボードになにかを打ちこむ

怪獣の映像が小さくなり、映るのはメダル

それは沢山の画像があるようで、怪獣が描かれたメダルが複数表示された


はやり「鍵はね、麻雀なの」

京太郎「……は?」

ベリアル『麻雀?』

はやり「ホントだよ?」

京太郎「ああいや、信じてないわけではないです。麻雀でその、殺されかけたんで」

ベリアル『ちょっとおもしろいな』

京太郎『おもしろくないっす』


自分も和と麻雀をして、死にかけたのだ

あの体を突き抜けるような激痛、遠のく意識


トシ「そもそも“この宇宙の麻雀”は……能力ってものが作用する」

京太郎「え、ああまぁ……聞いてはいます」

トシ「ここでは麻雀ってのは、異能を引き出すものでもあるわけだ。そのエネルギーに目を付ける奴がいてもおかしくないだろ?」

京太郎「麻雀の異能で発するエネルギー……ってことですか?」

トシ「そういうこと」


脳裏に浮かぶのはインターハイ

自らの仲間たちが戦った、数多の異能を持つ雀士たち


トシ「で、ちょっと話は変わるけど、どっかにこの星に害をなそうと言う奴がいた」

京太郎「この地球、に?」

トシ「まず人間を掃除するのに怪獣を使おうと思ったわけだ」

京太郎「あの、ベムラー?」

トシ「そういうこと、ただ怪獣を持ってくるよりもっと効率が良いモノがあった。怪獣の力の一部が入れられたメダル」


ベリアル『なるほどな』

京太郎『いや全然わかりませんけど』


トシ「その怪獣の力を持ったメダルと、この世界の雀士の異能を使う力を共振させれば」

はやり「……この通り」


再び大きく映し出されるベムラー

今までは水面下で凌いでいたが、とうとう怪獣が現れてしまったということだろう


京太郎「じゃあ、和は?」

トシ「実際に見ていないけど、たぶんメダルを入れられたんだろう」

京太郎「メダルを?」

トシ「あんたと一緒だ」


自分と一緒、だと説明されてもハッキリとしない

京太郎自身とベリアルは、どちらかが支配している関係、では無いと思う

思いたいのだ、まだ出会ったばかりだが……


京太郎「……」

トシ「まぁメダルにも相性ってもんがあるからなんともだけどね」

京太郎「相性ですか?」

トシ「……まぁその時の感情だったり、相性だったり、状況だったり?」

京太郎「俺と、ベリアルさんは?」

トシ「さて、そこまでは知らないよ」


静かに息をつくトシを前に、京太郎は顔をしかめた


はやり「はやや、私の出番だったんじゃ?」

トシ「ん、すまないね」

京太郎「あ、それで……なんでしたっけ?」

はやり「……麻雀の話」


少し沈んでいるはやり

苦笑しながら眼を逸らす


京太郎「あ~で、なんで今更、負けたぐらい俺は死にかけたんですか?」

はやり「たぶん、その原村和ちゃんに入っていたメダルがかなり強いんだろうね。強いメダルはそのぶん適合しないと弾かれるはずだけど」

京太郎「強い、メダル……あの天使」

はやり「まぁ強いエネルギーを持ったメダルと強い異能、それに負ければ……それも大差なんてただじゃすまないよね」


そう言いながら、そっと京太郎の傍による


はやり「でも、死までいくなんて……こわかったよね?」


やわらかな手が、頭の上に置かれる

妙に気恥ずかしくなって俯く

一方のはやりは暖かな笑みを浮かべて手を離した


はやり「うん、強い子だ……でもそんな君に、頼ることになる」

京太郎「?」


寂しげな声に、京太郎は首をかしげた


はやり「まぁなにはともあれ、メダルを入れた雀士が止まらずに勝ち進むと……エネルギーはどんどんと溜まっていく」

京太郎「……まさか、それで?」

はやり「そう、エネルギーが溜まると……メダルが覚醒する。怪獣が、現れるんだよ」



京太郎「……つまり、雀士を止めれば怪獣は」


見えてきた答えを口にしようとした瞬間、扉が開く

入ってきたのは先ほどの女性

ようやくそこで京太郎は理解した


京太郎『佐藤裕子さん……』

ベリアル『誰だ』

京太郎『あ、え~と……女子アナ?』

ベリアル『なんだそれは』

京太郎『ですよね』


なにかがわかったのか、裕子は三人を前に息をつく


裕子「身体に別状はありません……体内にメダルも、良くないエネルギーもデビルスプリンターも確認されませんでした」

京太郎「デビルスプリンター?」

トシ「ま、そこは良いよ。とりあえず別状はないんだね?」

裕子「はい、精神ダメージがあるのかまだ眠っていますが数値自体は至って正常です」

はやり「だって」

京太郎「良かったぁ」ハァ

トシ「運が良いねぇ……」

京太郎「でも、勝ち続けてしまったから……ベムラーになったんですよね?」


ベムラーメダルが入ったホルダーに手を添える


トシ「……ま、話の続きは明日でいいか」

はやり「夜も遅いですしね☆」

京太郎「あ、いや」

トシ「急いても仕方ないよ。ゆっくりしすぎてもしょうがないけど……」

京太郎「……はい」



はやりに話をしていた部屋こと作戦室から少し離れた部屋に案内される

壁から伸びたテーブル、白いシーツが敷かれたベッド

椅子に小さな冷蔵庫なんかもあった


京太郎「ここは……」

はやり「一応、宿舎……で良いのかな」

京太郎「ありがとうございます」


ペコリ、と頭を下げると、はやりは笑って手を前で振る


はやり「こちらこそ、ありがとう……街と人を守ってくれて」

京太郎「いえ、俺なんてベリアルさんに」

はやり「それでも京太郎くんの、力でもあるんだよ」

京太郎「……はい」コクリ

はやり「それじゃあ、おやすみ」

京太郎「はい、おやすみなさい」


笑顔を浮かべて別れる二人

京太郎はそのまま、ドサッとベッドに倒れ込む

今日一日で色々とありすぎて、思うことが多すぎる


京太郎『ベリアルさん、俺たちどうなっちゃうんでしょう』

ベリアル『ハッ! オレは気に入らないものをぶっ潰す。それだけだ』

京太郎『できれば、それが怪獣であることを願いますよ』


それだけを言って、眼を瞑る

すぐに睡魔が襲い掛かってきた

心につっかえているのは和、彼女はどうなってしまうのだろうということ


京太郎(みんな、無事でいて欲しいけど……)


一抹の不安を抱えつつも、意識は微睡の中に沈んでいく


ゆっくり……ゆっくりと……



   第一話【幻影を継ぐ者】  END


―――次回予告


京太郎:消える雀士! 消える怪獣! もーわけわかんないっすよ!

京太郎:なにがなんだかわかんないけど、この力で人を守れるなら、俺戦います!

京太郎:って麻雀、かと思ったら麻雀じゃないしぃ!


次回【雀士で戦士】


ベリアル:おもしろい、斬ってみるか!

京太郎:あ、おもち


これでエンドマークだ!(ここまで!)

はやりんが登場、まぁ他のプロ勢も別で出番はあるけども

ようやく一話終了、説明多かったのは反省している
次回からはサクサク話が進んでいくといいなぁ
ラブコメ風なこととかしたい

そしてなんとなく次回予告してみたけど次にするかはわからない

次は水曜とかかな?
そんじゃまたー

かおりんの次にモモ(?)ってことは最初の方は鶴賀編って感じか?
それと質問なんだが安価って一話に一回ぐらいのペースである?

よっしやってくー

>>42
安価は大体一話に一回ぐらいかなーって感じっす
多いかなとも思ったけどー



―――【???】


胸を焦がす感情

熱いほどの野心と闘争心

なにかが、心を覆う、邪悪なナニか、深き闇―――


「っ……なんだよ、これ」


呟くように、言う


「ベリアルさんっ!? いないんすか!」


今、最も頼りになる相手、自らの半身

死の淵から救ってくれた“英雄-ヒーロー-”に近き者


「こんな闇っ」


その闇に戸惑いながらも

それでも

胸を焦がすその感情には、憶えがあった


つい最近も抱いた―――狂おしいほどの、憧憬を超えた感情


「嫉妬、妬み……」


―――【???:京太郎の部屋】


京太郎「ッ!!」バッ


勢いよく起き上がった京太郎

純白のシーツに汗のシミを残し、荒々しい呼吸をしながら自分の手を見る

一瞬だけ、自分の手に【漆黒の爪の生えた手】が重なって見えた


京太郎「っ!」ビクッ

ベリアル『なんだ? 起きて早々』

京太郎「あっ……すみません」


肩で呼吸をしながら、ベッドから降りる

着替えもなかったので下着姿で眠っていたので、エアコンからの冷風に少しばかり寒気を感じた

まず、着替えて部屋から出ようと、立ち上がった―――その瞬間


ウィン

はやり「おはよー☆」

京太郎「あ」

はやり「……」

京太郎「……」


沈黙、ただただ沈黙

京太郎とはやり、ただ沈黙

ベリアルは興味はないのか、なにも言わない


京太郎「……あの、とりあえず閉めてもらっても?」

はやり「はやぁっ!!? ごごご、ごめんねっ!!」ボンッ


真っ赤な顔のはやりがすぐさま背を向けて、自動ドアがゆっくりと閉まる


京太郎「……さて、着替えるか」



     第2話【雀士で戦士】


―――【???】


自動ドアが開いて、京太郎が出る

昨日と同じ服なので少しばかり匂いを気にしながらだ

出てすぐ横に、はやりが壁を背に立っていた


京太郎「お待たせしました」

はやり「はやっ!? ぜぜぜ、全然!!?」

京太郎(初心だなぁ


(間違えて途中送信しちゃった

京太郎(初心だなぁ)

はやり「と、とりあえず昨日の話の続きをしようか、とりあえず作戦室に行って」

京太郎(そもそも、ここってなんの施設なんだ? てかこの人らもなんなんだ?)

はやり「まずは」


瞬間、はやりのスーツのポケットから音が響く

着信音なのか、音の元たる端末を取り出してはやりはボタンを押す


はやり「どーしたの?」

裕子『協力な反応を検知しました。おそらくメダルを持った雀士です』

はやり「っ! すぐに行くよ!」

トシ『頼んだ。京ちゃんも……』

京太郎「え、俺もっすか!?」

トシ『頼んだよ。今の内に止めとかないと昨日みたいになる』


頭の中をよぎるのは昨日の街

火がと鉄となにかが焼けるような異臭

破壊された建物


京太郎「っ……」

はやり「私だけでも、まだ間に合うなら」

裕子『いつ“覚醒”してもおかしくありませんよ。この波形』

はやり「だからって戦いたくない子供をっ」

京太郎「行きます」

はやり「っ」

京太郎「……戦います。守りますよ俺が」

トシ『……京ちゃん、頼んだ』

京太郎「はい」


熊倉トシの言葉に、ハッキリと返事を返す

見えないだろうけれどしっかりと頷いて、だ

はやりは複雑そうな表情を浮かべる


京太郎「よくわかんないけど、戦います。街を、人々を守るために!」

ベリアル『……ふん』


おそらく、機嫌がよろしくないのは理解できた

自分の発言故なのかはわからない

しかし、ベリアルの力を借りなくてはならないのも事実だ


京太郎『ベリアルさん、お願いします!』

ベリアル『……』

京太郎『ベリアルさん?』

はやり「行こう、京太郎くん!

京太郎「あ、はい」



昨日と同じ車に乗り込む

今回は運転席にはやり、助手席に京太郎と二人だけ

目的は一つ―――怪獣メダルを持った雀士を止める


京太郎「ところで、俺はなにをすれば?」

はやり「あ~話が途中だったもんね」


その言葉に頷く京太郎

改めてスーツ姿の瑞原はやりに違和感を覚えるが、今はそこに突っ込める雰囲気でもない


はやり「私は良くわかんないんだけどね……トシさんからの情報しか」

京太郎「はぁ」

はやり「……麻雀をしてもらうんだよ。私と一緒にね」

京太郎「……」

はやり「……」

京太郎「はぁ!!?」



田舎道を走る車その車内で、なんとなく事情は説明された

未だに納得はできないが、それでも……やらざるをえないだろう

自分でも、役に立つなら、守れるなら


京太郎『ベリアルさん、俺にできますかね?』

ベリアル『さぁな、オレはまだお前のことを何も知らねぇ』

京太郎『確かに……』

ベリアル『ただこれだけはわかる』

京太郎『な、なんっすか』


おもしろそうに言うベリアルに、小首をかしげる

隣のはやりは車に装備されたカーナビを見ながら走っているようだった


京太郎『聞かせてくれないんですか?』

ベリアル『……さてな』


ケラケラ笑うベリアルに、顔をしかめる京太郎

隣のはやりが京太郎の方を横目で見て、なにかを察したのか苦笑する

―――瞬間、車に通信が入ったのか車内に声が響く


裕子『はやりさん! 雀士の真横を通り過ぎました!』

はやり「はやっ!?」

京太郎「え、今誰かいました?」

裕子『反応だけは確かなんですけどっ……近くに雀荘は!』

はやり「あるけど、と、通り過ぎるなんて」

裕子『歩いてます!』

はやり「はやっ!?」

京太郎「ど、どういう……」

ベリアル『ほぉ』


楽しそうなベリアルの声をよそに、車が止まると京太郎とはやりの二人が後ろの道を見返す

ただの道路、誰もいないように見える

京太郎とはやりは顔を合わせて、困惑に首をかしげた



車を近くのパーキングに止めて二人で歩く

はやりはサングラスをかけていてポニーテール

おそらくバレるのを防ぐためなのだろうけれど……


京太郎(おもちがっ! おもちが凄い!)

はやり「こっちの方のはず……」


通信機にもなっている携帯端末を持って歩くはやり

そのあとをついていく京太郎だが、確かにその先には雀荘が見えた

先ほど、すれ違ったというのがいまだにわからない


京太郎「なんだろ」

はやり「そこの雀荘にいるのは間違いなし、ここまでだよ」


そう言いながら、はやりが中に入る

次いで京太郎も入るのだが、中は普通の雀荘―――と言いたいところだが、雰囲気が異様

この雰囲気を京太郎は知っている。昨日味わっている


京太郎(そういや一日しか経ってないんだよなぁ……)

はやり「いるね。でも……」


卓数は8つ、はやりが端末を左右に振るが、反応が近いためか細かくはわからないようだ


京太郎「……」

はやり「逃げただけでは、ないはずだけど……」

京太郎「あ」

はやり「ん?」

京太郎「わかったかも」

はやり「え、ほんと!?」



憶えはある。あったはずだった

話したことこそないものの、確かに彼女のことは聞いている

消える雀士、それにはあの原村和も崩されかけた


京太郎「……」キョロキョロ

はやり「京太郎くん?」

京太郎「はやりさん、あの三麻の卓」


指差した先の卓、三麻をやっているように見えるが、雀牌はしっかりと置かれていた

意識しだしてようやく違和感を感じたのかはやりも“なるほど”と頷く


京太郎「……消える雀士」


揺れる空気、倒れる牌

決着は着いてしまったのだろう

相手どっていた雀士三人が倒れた


京太郎「っ」

はやり「他の人は気にもならないよ。しばらくしないとね」

京太郎「随分、都合が良い力なようで」

ベリアル『ハッ、おもしろい力だな……』


徐々に、その姿を捉えられるようになってくる


京太郎「鶴賀学園……」

シュゥゥゥッ

京太郎「東横、桃子……」


桃子「……」ニヤッ



倒れた一般人をそっと壁際に寄せる

はやり曰く『病院に連れて行ってどうにかなるものでもない』らしい

京太郎とはやりの二人が東横桃子の座る卓につく


京太郎「素直にやってくれるんですね」

はやり「まぁ強い雀士を倒した方が覚醒が近づくからね……トシさんからの情報だと」


つまり―――


京太郎・ベリアル『飛んで火に入る夏の虫、か』


二人の声が重なる


京太郎「……っていうか、俺にほんとにやれるんですか?」

はやり「メダルを入れた雀士は強くなるからね、ベリアルメダルの入った京太郎くんなら」

京太郎「ベリアルさんのおかげで、ですか……」

はやり「まぁね……それは敵も一緒だけど」


自分も相手も強化をされているらしい

だが、元が弱い自分がベリアルメダルを入れるだけでそれほど強くなれるのか甚だ疑問でもある

それでも、自分は頼られた―――自分は、頼られたのだ


ベリアル『……』

京太郎「役に、たちますか?」

はやり「うん、トシさん曰く京太郎くんとベリアルメダルの相性は、かなりいいらしいから」

京太郎「わかり、ました……」

はやり「それと」

京太郎「はい」

はやり「これもトシさん情報だけど……ビックリしすぎないでね?」

京太郎「は、はい……?」



自動卓のボタンを押すのは、桃子

ガラガラと音を立てて、牌が自動卓の中で移動していく

東横桃子から溢れだすのは、オーラ


京太郎「っ!」

ベリアル『ハッ、くるぞ小僧!』

京太郎『……はい!』


消える東横桃子、だがその淀んだ邪悪な闇が、ハッキリとわかる

手元にせり出てくる雀牌

それに触れて、感覚が妙に鋭くなっていくのがわかる


京太郎(え、てかこれ鋭くなるってか……視界が、細まるって、いうか……)



―――【???】


しっかりと、眼を見開いた

雀卓の前に自分はいた―――はずだ


京太郎「はず、なんだけど……」


街―――だった。

そこは街で、先ほどまでいた雀荘の前

田舎道にある雀荘だ


京太郎「えっと……」

ベリアル『そういうことか』

京太郎「え、わかります?」

ベリアル『ハッ! 別にそれほど珍しいことじゃない』

京太郎「そうなんっすか?」

ベリアル『夢の中に出る怪獣の話を聞いたこともあるしな』

京太郎「え、どうやって倒すんですか?」

ベリアル『寝て戦うに決まってるだろうが』

京太郎「えー」



京太郎「にしても、俺は一体これからどうすれば―――」


瞬間、轟音が響く

ビクッと体を震わせてそちらに目をやれば

少し離れた場所に―――


京太郎「なんもいない……」


しかし建造物は倒れている

次の瞬間、さらなる轟音と共に近場の木々が潰された

焦って走り出す京太郎


京太郎「なんだよぉ!」

ベリアル『怪獣だな、ハッ……あいつは確か』

京太郎「と、ともかく!」


取り出したゼットライザーのトリガーを引くと前方に現れるゲート

背後の道が潰される音が響く

ナニカに潰されるより早く、京太郎はゲートへと飛び込んだ


京太郎「い、命拾いしたっ!」

ベリアル「ハッ! 早くしろ! 暴れたい気分だ!」

京太郎「りょ、了解っす!」

ベリアル「それにここなら、好きなだけ暴れられるしなァ!」


頷いて、京太郎が左手にウルトラアクセスカードを持つ

それを右手のゼットライザーにセットするとブレードを稼働させる


ベリアル「いくぞ小僧!」

京太郎「ベリアァル!」


トリガーを引き、叫ぶ!


空から降りてくるのは白銀の巨人

ウルトラマン、とベリアルは呼ばれたくないとは言っていた

故に呼ばなかったのだが―――ウルトラマン。そう言うにふさわしいと京太郎とて思ってはいる


京太郎『……ベリアルさん、東横さんを助けるために戦いましょう!』

ベリアル『……良いだろう』


意外といえば意外なのだ

粗暴な雰囲気を出すベリアルがここまであっさり自分に協力してくれるのは……

だが、それで助かっているのも事実

そして、まだ変に踏み込んで聞くほどの関係ではないと京太郎とて理解していた


ベリアル『ボケッとしてるな、いくぞ小僧!』

京太郎『はい! ……ってどこに?』

ベリアル『こいつは……』

????「―――!!」


瞬間、咆哮が聞こえた

それと共に衝撃で吹き飛ばされるベリアル

当然変身している京太郎自身も、ダメージを受ける


京太郎『ぐああっ!』

ベリアル『ぐっ……このオレが!』


吹き飛ばされて、身体はそのまま民家を押しつぶして倒れた

顔をしかめる京太郎は、ベリアルの身体を気遣いつつ起き上がる

もちろん京太郎が起き上がればベリアルの身体も起き上がるのだが……


????「―――!」

ベリアル「グアアッ!」


“なにもない空間”から電撃

それを受けてベリアルは黒煙を上げながら、膝をつく

咆哮が聞こえる


京太郎『ベリアルさん! 動きましょう!』

ベリアル『当然だ!』


すぐに横に転がると、先ほどまでいた場所に電撃が直撃していた

京太郎とてなんとなく理解してる

ベリアルの能力は本来ならばもっと高いはずだ


京太郎『すんません、足引っ張って!』

ベリアル『……』

京太郎『でも、それでもっ!』



京太郎『俺は……戦う、東横さんを助ける!』


転がるベリアルがさらに電撃を避ける

京太郎はハッキリとその願望を口にし、闘志を込めた瞳を虚空に向けた

ベリアルの笑い声が聞こえる


京太郎『ベリアルさん?』

ベリアル『フハハハ! 小僧、ちったぁ戦士らしい眼をする』


そう言うと、京太郎と共に構えを取るベリアル

爪を透明な虚空に向け、しっかりと足を踏みしめる

ベリアルの胸のカラータイマーが点滅を始めた


京太郎『これは?』

ベリアル『不安定な状態じゃ、動ける時間に限界があるってことだ』


つまり、見えない敵を相手に、一方的に攻撃してくる相手に、時間制限までついた

頭を回転させる京太郎

先ほどからの電撃攻撃、破壊された建物


京太郎『もしかしたら!』

ベリアル『やってみろ』


両腕を前に構えるベリアル

その瞬間、右側からの電撃が直撃する


ベリアル「グゥッ!」

京太郎『右ぃ!』


そちらへと顔を向けるベリアル


京太郎『デスシウムロアー!』


顔の、口あたりから放たれる破壊音波

それが攻撃するのは地面であり、巻き起こる砂埃


ベリアル『ハッ! おもしれぇ』



◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE


その砂埃は敵の姿を映しだす

静電気により、その怪獣の姿が見えるようになった

形は曖昧だが、おおよそは理解できる


京太郎『四足歩行?』

ベリアル『ネロンガか』

京太郎『……知ってましたね?』


おそらく、自分を試したのだろう


ベリアル『上出来だ。もうしばらくは、お前の身体を使ってやる』

京太郎『あはは、ありがたいことで……』

ベリアル『それにしてもネロンガ、相手をするのは初めてだな』


そう言うと、素早くその場から退く

迸った電撃がベリアルの真横を奔った


ベリアル『おもしろい、斬ってみるか!』

京太郎『はい!』


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


胸の前で両手を水平に振るう

放たれる斬撃が、ネロンガの頭部にあった角を斬り裂いた

咆哮を上げるネロンガの姿が露わになる。今度はハッキリと


ベリアル「デヤァッ!」


跳び上がり、ネロンガを飛び越えるその瞬間、爪撃をくわえる


京太郎『まだまだぁ!』


さらに斬撃、斬撃、打撃

怒涛の攻撃に、ネロンガはひるみ、吹き飛んで倒れる

まだ立ち上がろうとするネロンガを前に、ベリアルは右手に紅い稲妻を纏う


京太郎『東横さんを、返してもらうぞ!』


そして水平に構えた左腕の後ろに、垂直に右腕を構える


京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』




光線の直撃と共に、爆散するネロンガ

その爆煙を前に、ベリアルは静かに立つ

赤いカラータイマーが点滅し、音を鳴らしている


京太郎『……やりましたね』


なにも言わぬベリアル

地を蹴り、上空へと飛び上がり―――精神世界から去る

京太郎は、東横桃子の無事を願いながら



―――【雀荘】


意識がはっきりと戻ってくる

だが突如、京太郎の脳内に溢れる記憶


京太郎「ッ!」

ベリアル『ほう、そういうことか』


ハッキリと、記憶があるのだ

東横桃子、瑞原はやりの二人と―――麻雀をやった


京太郎「これは……」

はやり「京太郎くん?」

京太郎「あ、はやりさん……」


桃子の方に視線をやると、意識を失っているようだった

視線をはやりの方へ移すと、安心したような表情を浮かべている


はやり「話に聞いていたより全然、麻雀強いね」

京太郎「そう、なんですかね……」


手に感触もある。自分が打ったと言う経験すら残っていた

精神世界で戦った自分と麻雀を打った自分、どっちが本当かわからない

あるいは両方が本物だからおかしな感覚なのだろう


京太郎「……」

ベリアル『どうでもいいことだ。お前は……戦うだけだ』

京太郎「雀士として、戦士として……」

はやり「……京太郎くん、東横さん連れて行こう? 今ならまだ、認知されてない」

京太郎「え、あ、はい」


周囲のだれも気にしていないようだった

立ち上がった京太郎

昨日ほどの倦怠感はないものの、疲労は確かにあった

京太郎「よっと」

はやり「行こう」



車に乗り込むはやりと京太郎

後部座席に桃子を横に寝かした状態にする

息をついて座席に身体を預ける京太郎


はやり「ありがとう、京太郎くんが……きっと戦ってくれたんだよね。私の知らないとこで」

京太郎「……いや、はやりさんも麻雀してましたし」

はやり「ううん、勝ったのは京太郎くんだから」


確かに、喜んだ感覚すらも存在するが、自分が自分の力だけでそんな結果生み出せるわけがないのだ


京太郎「……複雑ですけど」

はやり「割り切れると良いね。借りものだとしてもそれは京太郎くんの力だよ」

京太郎「そう簡単に割り切れませんよぉ」


苦笑するはやりが車を動かす

少しの揺れと共に、来た道を引き返していく

今はハッキリと東横桃子の姿が視認できる


京太郎「……」チラッ

桃子「……」ガタンッ タユン

京太郎「あ、おもち」

はやり「おもち?」

京太郎「なんでもないです!」

とりあえず今回はここまでー
次回は第二話後編、安価もある

まだ設定というか世界観説明みたいになってる
もうちょっと明るい話とかもいれられるようどんどん進めてくよー

次はたぶん金曜日になりますー
そんじゃまたー


京太郎はしっかりウルトラマンやりはじめたな
今後も長野で戦ってく感じか?

こんな昼間っからちょっとだけやるー

>>66
全国もいくよー
第一部長野的な


―――【???】


車が昨日と同じく施設内の車庫へと入る

息をつくはやりが隣を見れば、そこには眼を閉じて眠っている京太郎

背後の東横桃子も、眠っているようだ


はやり「こんな子供に、守ってもらっちゃって……」


そっと、京太郎の頬に触れる

脳裏に浮かぶのは、昨日のウルトラマンベリアルの姿


はやり「それは京太郎くんで……」


少しばかりの溜息をつきながらも、自身の頬を二度叩く

やることは一つ、今は目の前の少年のサポートと、街を―――世界を守ること


はやり「さて……起きて京太郎くん」ユサユサ

京太郎「んぁ……え?」

はやり「おはよう」フフッ

京太郎「……すみません!」バッ

はやり「いいよ、お疲れさまだね……東横さんをお願いして良い?」


頷くと、京太郎はすぐに車を降りて桃子を抱える

そんな姿を見て、少しばかり眉をひそめはやりは笑った


―――【???:作戦室】


京太郎は、東横桃子を裕子に預け戻ってくる

佳織の方の精密検査の結果はもう出ていると聞いた

その話を聞くためにも、トシとはやりの二人を眼前に席に着く


京太郎「お待たせしました」

トシ「いいや、こっちも積もる話だらけだからね……」

京太郎「そりゃそうか……ところで」

トシ「妹尾佳織なら心配ない。全ての数値が正常だね」

はやり「後は起きるのを待つだけだね……今までのパターンと一緒」

京太郎「麻雀で倒したパターンとってことですよね?」

トシ「ん、ところで東横のメダルは?」

京太郎「え、麻雀で倒してもメダルって出るんですか?」

トシ「そりゃね、身体から出たメダルを手に入れないと、どうにもならないし」

はやり「元を断たないとってことだね」


そう言って、はやりが取り出すメダル

先ほどの怪獣ネロンガが描かれているところを見れば、やはりそれは昨日のベムラーと同じ


京太郎「……怪獣メダル。こんなもの」

ベリアル『ハッ、地球はどこも狙われるもんだ』

京太郎「地球は、どこも……?」

ベリアル『ともかくだ、気にいらねぇ……怪獣の力はともかく……』

京太郎「ともかくって……?」

トシ「デビルスプリンターは?」

はやり「はや? ああ例の、そっちに関しては……倒した時に同時に、消滅を確認してます」

トシ「なるほどね」


頷くトシに、京太郎は小首をかしげた

ベリアルはなにを言うでもない


少しばかりの沈黙

三人とも考えることは山ほどあるということだろう

そして、京太郎は沈黙を破る


京太郎「そういえば、今日って平日ですよね……俺、学校が」

トシ「そっちは大丈夫、それに妹尾や東横の方も大丈夫にした」

京太郎「した?」

トシ「ああ、した」


その言葉に、京太郎が小首をかしげた


京太郎「した、って……どういうことっすか?」

はやり「そのままの意味だよ。公休扱いでどーにでもできるってこと」


そこにきて、根本的な疑問が浮かぶ

昨日と今日でそれどころでは無かったものの……


京太郎「……ここ、なんなんです?」

トシ「……言ってなかったっけ?」

はやり「なかった?」

京太郎「ないっすよ!」

トシ「……じゃあ改めまして」


そう言ってキーボードを叩くトシ

モニターに表示されるのは逆三角のエンブレム

なにやらしっかりと装飾もされていた


トシ「政府極秘公認、特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……略して特異課」

はやり「まぁ……お金全然ないけどね」

トシ「実際に怪獣も超常現象も起きてるんだ、こっからだよ。経費使い放題」

はやり「お酒飲み放題ですね」

ベリアル『欲望まみれだな、ハッ!』

京太郎「えっと……とりあえず学校のことは特異課にお任せするとして」



もう一つの疑問が思い浮かぶ

京太郎ははやりが置いたネロンガメダルを手に取った

そこに描かれるネロンガ、そしてホルダーのベムラー


京太郎「和は、原村和は……学校に? それにまこ先輩と、南浦数絵とか」

トシ「……秘匿されてるけど、今は珍しくないんだよ」

京太郎「え?」

トシ「雀士の行方不明」

京太郎「……ま、じっす、か」

はやり「うん、メダルを入れられて敵になっているのか……それとも」

京太郎「嘘でしょ。ゆ、優希! 片岡優希と竹井久さんは!」


焦ったように聞く京太郎に、トシは手を前に出す

落ち着けと言いたいのだろうと理解するが、そう簡単にできるものでもない

はやりが横に来てそっと背中に手をそえた


はやり「わかる、私の友達も行方不明だから……」

京太郎「はやりさん……」

はやり「私たちがやらなきゃだから、今は……ね?」

京太郎「っ……はい」コクリ

トシ「正直に話すとだ、行方不明さ。今あげた全員」

京太郎「なら」

トシ「でも必ず動き出す。それは間違いない……」

ベリアル『後手後手だな』

京太郎「……待つしか、ないか」


そう言って肩を落とす京太郎

トシは静かに、背もたれに身体を預けた

京太郎の背中に添えられていた手が、離れる



はやり「ゆっくり、それまでしっかり休まないとだね」

京太郎「……はい」コクリ


二人が部屋から出ていく


トシ「……明確に全国に広がる前に、なんとかしないと、だねぇ」フゥ


―――【特異課施設:京太郎の部屋】


部屋に入った京太郎が、背を伸ばした

徒歩10分の道のりでコンビニまで行って買ってきた紙パックの飲み物にストローを差す


京太郎「みんな、行方不明……きっと、咲も」


幼馴染を思い浮かべる

数々の出来事、この夏での仲間たちとの……

咲と、麻雀部の者達と、あの―――


京太郎「っ」


燻るような感覚


ベリアル『ハッ……』

京太郎「なにがおもしろいんっすか?」

ベリアル『さぁな』


投げやるような言葉に、京太郎は顔をしかめた

ベッドに体を投げて自らの手を真上に向ける

今朝見えたのはなんだったのかと思い出す

ベリアルの白銀の指先でなく、黒い爪


京太郎「俺は、どうすればいいんだ」

ベリアル『振りかかる火の粉全部、吹き飛ばしゃ良いんだよ』

京太郎「爆風消化ってレベルじゃないっすね」ハハッ

ベリアル『ああ、それで見えた火の元を……叩き潰す、だろ?』


その言葉に、頷く

言葉こそ粗暴、しかし言っていることに間違いを感じない

やることは一致している


自分とベリアル、今はまだ、相棒なのだ……



     第2話【雀士で戦士】 END



◆次にやることとは?


1、清澄高校に向かう

2、鶴賀学園に向かう

3、桃子か佳織が起きるまで待つ




一旦ここまでー

再開は本日の21時30分から22時の間ぐらいの予定ー
多少ストーリー変わるけども、ここは多少

そんじゃまたあとでー

帰ってきたー
とりあえず安価から、30分からやってきますー
変化は多少のことなんで気にせずどうぞ


◆次にやることとは?


1、清澄高校に向かう

2、鶴賀学園に向かう

3、桃子か佳織が起きるまで待つ


◇5分間で↓1からコンマが一番高いルート



3、桃子か佳織が起きるまで待つ


あれから五日が経った

京太郎はと言えば、家に帰って荷物を取って来たり寝たり

少し運動したり、ベリアルやはやり、それに裕子と話をしたり

―――戦ったり、の日々である



森林地帯。ここもまた精神世界

二足歩行の怪獣、シルバゴン


京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』


水平に腕を振るえば放たれる斬撃

それが真っ直ぐに―――シルバゴンの首を落とした


ベリアル「……ハッ!」


そして白銀の巨人、ベリアルは空へと消えていく


―――【特異課施設:作戦室】


ドアが開いて、京太郎が入ってくる

肩をぐるぐる回しながら、欠伸を噛み殺す


京太郎「戻りました~」

裕子「あ、お疲れ」

トシ「お疲れさん」

京太郎「うぃっす」


軽く返事をして、ググーッと体を伸ばした


京太郎「あれ、トシさん三日ぶりです……てか怪獣倒した時ぐらいしか来ないじゃないっすか」

トシ「これでも忙しいの」

裕子「今回は風越の麻雀部生徒だったみたいね」

京太郎「はい、詳しくは知りませんけど


そう言う京太郎に裕子も『レギュラーメンバーじゃない』ということを伝える

知っている顔ばかりがこうなるものと思っていた京太郎だったが、三日前の“戦い”でも知らない他校の生徒だったことを思いだす


京太郎「ここ二回とも余裕でしたけどね」

トシ「麻雀の腕も能力も、妹尾や東横と比べれば……だからね」

京太郎「不思議なもんですね。それで怪獣の強さが変わるなんて」


そんな言葉に、裕子は苦笑する


裕子「こっちから見てる分には麻雀してるようにしか見えないけれど」

京太郎「そっすよね……」

トシ「それとメダルとの相性もそれほど良くないんだろう」

京太郎「そういうもんっすか?」

トシ「そういうもんさ」


さらに、ドアが開いて入ってくるのははやり

スーツ姿で、身体を伸ばしながら

見慣れたそんなはやりを前に、京太郎は頷く


京太郎「お疲れさんです」

ベリアル『アイツは麻雀打ってただけだろ』

京太郎「そんなこと言わない」

裕子「え?」

京太郎「ああいやなんでも!」


未だに裕子は、京太郎の中に“ウルトラマン”がいることを知らない


はやり「……お疲れ様だね、京ちゃんも」

京太郎「うっす」フッ

トシ「仲良くて結構」

はやり「まぁバディですし?」

トシ「あんたと京ちゃんでバディ・ゴーと」

京太郎「ボケました?」

トシ「どっちの意味か知らないけど、場合によってはぶつよ」

京太郎「すみません」メソラシ


謝って視線を逸らすと、丁度裕子と眼が合う

裕子がハッとしてポンと手の平を拳で叩く


京太郎「?」

裕子「妹尾さんと東横さんが起きました」

京太郎「……えっ!?」

はやり「はやっ! 早く言ってよ!」

トシ「それじゃ、行くかね」



     第3話【連続車両失踪事件】


―――【特異課施設:休憩所】


丸テーブルがいくつも置かれた場所

その一つのテーブルを囲むようにいる京太郎、はやり、裕子、トシ

そして……


桃子「えっと……」

佳織「そのぉ……」


東横桃子と妹尾佳織の二人

入院患者のような服を着ている二人の前に、京太郎は冷静さを保つのに精いっぱいだ

深くは語るまい……


ベリアル『こいつら、ただの人間だな』

京太郎『そりゃそうですよ、俺の知ってる二人です』

トシ「二人共別状ないようでなにより」

桃子「別状どころか、記憶も曖昧で」

佳織「私なんてほとんどないよぉ」


その方が幸せだとは言うまい、と京太郎は目を伏せる

桃子はともかく佳織はあんまりだ

トシはラッキーだと言っていたがどこがだ、と京太郎は心の中で悪態をつく


トシ「さてと……じゃあ説明を始めようか」

京太郎「どこまで?」

トシ「怪獣のメダルと、身に降りかかったことについてね……」


説明したのは、文字通りおおよそのことだ

最近このあたりで起きたこと、メダルを入れられたこと

それによって、麻雀をしてどういうことがおこったのかということ……


京太郎(さすがに、妹尾さんの怪獣化までは話さなかったけど……)

ベリアル『いずれわかることだろ』

京太郎『それでも、ですよ……今はね』

ベリアル『ふん』


苦笑する京太郎は佳織と桃子の二人に視線を向けた

どういう状況か、飲み込もうとしていはいる。いるのだが……


桃子「か、怪獣メダルで……」

佳織「雀士が大暴れで雀士が大変?」

トシ「まぁ、大体そんな感じ?」

京太郎「そんな感じですか?」

はやり「誰にメダルを入れられたとか、わからない?」

桃子「えーっと」

佳織「どうして、いつ……」


二人が頭を抱えている

それを見て、京太郎はトシの方に視線を移す

言いたいことは理解できたのか、トシは頷く


トシ「まぁ良いよ、その内思い出すだろ……」

はやり「そういうものかなー?」

トシ「そういうもんだよ」

裕子「それじゃ今日は解散で、妹尾さん東横さん、二人もゆっくり休んでね」

桃子「は、はい!」

佳織「え、えっと……お、お願い、します?」


はやりと裕子の二人が笑みを浮かべて頷いた



それからしばらくして、京太郎は先ほどと同じく休憩所

一度、部屋に戻ったもやることもないとそこで麻雀のアプリをしている

はやりが一度通って、世間話をしたが忙しいのか去って行った


京太郎「んー」

ベリアル『おい、テレビを見ろ』

京太郎「あ、またっすか?」


点いていたテレビに映っているのはベリアル

あの日、ベムラーと戦う姿

ここ数日はずっとこうだが、それもまた仕方ないことだ


京太郎「よく雀士が消えてることだけでも隠せてるよなぁ」

ベリアル『ハッ、時間の問題だろ』

京太郎「ですけどね」

??「一人事っすか?」

京太郎「うおっ!?」ビクッ


突然の声に驚きながら首を声のした方へと向ける


京太郎「東横さん……」

桃子「私とかおりん先輩があんなことになってる内に、とんでもないことになってたんっすね」

京太郎「あ~、あはは、らしい」

桃子「怪獣にウルトラマン、なにがなんだか……」

京太郎「……俺もだよ」ハハハ



桃子と二人で話す

そんな機会があるとは京太郎とて夢にも思っていなかった

不思議な感覚を覚えながらも、会話は止まらない


桃子「須賀さんも大変っすねー」

京太郎「まぁお互いだけど……先輩、だっけ?」

桃子「はい、どうやら学校に行ってたり雀荘に行ってたりで、足取りつかめてるって言ってたんで安心ですけど」

京太郎「そりゃなによりです」


ただ、純粋にその言葉を送る

だが桃子の方はというと、少しばかり眉をひそめる


桃子「あ~清澄はその」

京太郎「麻雀部、全員行方不明らしいから……まぁ内、和にやられてっけど」

桃子「じゃあそのかたき討ちのために?」

京太郎「……そんなつもりじゃないけど」


そんなつもりではないはずだ。だが、実際はどうなのだろうか?

街を、人々を守りたいから戦っているのではないのか?

悩む京太郎


京太郎「……」

??「あ、モモちゃんと須賀君」

桃子「かおりん先輩!」

京太郎「妹尾さん、大丈夫そうっすね」

佳織「あ、うん……聞いたよ。須賀君が助けてくれたって、ありがとう」ニコッ タユン

京太郎「あ、はい」

京太郎(めっちゃおっぱい揺れるやんけー!)ヒャッホー


そして悩みが吹き飛ぶ京太郎だった



―――深夜【道路】


長野の地を走る一台の車

真紅のRX-7が風を切って走る

そして、その運転席に座るのが……


はやり「いや~! やっぱ自分の車が一番だなー!」


自分が出した曲を流しながら走る

特異課の4WDとはまったく違う爽快感


はやり「ん~今度は京ちゃんも乗せてあげよー」

ピーピーピー

はやり「はやっ?」


車の速度を落として、改造して装備したカーナビに触れる

モニターに映るのは裕子の顔

眠そうな顔をして眼をこすっている


はやり「どしたの?」

裕子『ふぁ~えっと、その近くにぃ、特異反応がぁ』

はやり「寝てたね」


そう言いながら、カーナビの画面に表示された方へと走る



反応をたどって車でやってきた

砂利道を走り、街灯も民家も少ないそこで止まる

倉庫のようなものがいくつもあるが、それだけだ


はやり「ん~……」


車を降りて、はやりは背を伸ばす

綺麗な空気を肺一杯に入れて深呼吸

そしてケータイを取り出して歩き出す


はやり「ライトつけないと危ないかぁ」


ケータイでライトをつけて車から離れて歩く


はやり(というか、一人って危ない気も……いやいや)


懐から取り出すのはメタリックな銃―――のようなもの

トシ曰く【ガッツハイパー】とかいう名前、円柱型のカートリッジをいくつか左手に持って歩く

ライトを点け目の前を照らしながら……


はやり「ちょっと怖いなぁ……」

ガシャンッ

はやり「はやぁっ!!?」


大きな音に驚いて、ケータイを落とす

少し地面が揺れる感覚を覚えるが、きっと動揺しているからだろう

ケータイを拾って周囲を見渡すが、なにもない


はやり「はやぁ、京ちゃんに来てもらえばよかったぁ」


そこで気づいて、後ろへと振り向く


はやり「え?」


さらに、周囲を見渡す


はやり「え……え?」


おかしい、そんなわけがない



ライトが左右へと振られる

はやりの目もくるくる回っていく


はやり「は、は……は……」


倉庫しかない。そう、なかった

“倉庫しか”なかったのだ


はやり「は、はやりの車アァァァァァァァッ!!!!????」


―――朝【特異課施設:休憩所】


京太郎が作った朝御飯を、桃子と佳織の二人と食べる

昨日の話の流れからそうなったのだが二人共満足そうでなによりと頷く


京太郎「さて、今日は……」

裕子「あら須賀君」

京太郎「ああ裕子さん、どしたんですか?」

裕子「いやぁ、作戦室で寝ちゃって~異常反応があって~」

京太郎「へぇ~」


そう返事をしながらテレビへと視線を向ける

裕子も欠伸をしながらそちらを見て……なにかを思いだそうとしていた


桃子「え~この辺のニュースっすよ」

佳織「結構、この辺のニュースに敏感になってるみたいだね、みんな」

京太郎「車が一晩で何十台も消えた?」

裕子「なんか思い出しそう……」

京太郎「なんかって……あ、はやりさん」

裕子「そうそう! 瑞原さん!」


そう言った瞬間、止まる

京太郎は小首をかしげて裕子の背後の方を見ていた

裕子の脳内に昨夜のことが、鮮明に思い出される


京太郎「ってどうしたんっすか?」

はやり「……」


振り返る裕子

俯いているはやりは、少しばかりボロっとしているようにも見えた

この季節といえど数十キロも歩いたせいか汗もかくだろうし、髪もぼさっとしているし


裕子「ごごご、ごめんなさい」メソラシ

京太郎「はやりさんどうしたんっすか?」


そう言って、近づいていく京太郎

俯いていたはやりが顔を上げると―――その瞳には一杯の涙

ギョッとする京太郎


京太郎「どどど、どうしたんっすか!?」

はやり「は、はやりの車ぁぁぁぁ」ビエーン

京太郎「く、車……車ぁ!!?」


桃子「……なんか大変そうっすね」

佳織「だねー」



―――【特異課施設:作戦室】


集まっているのは京太郎、トシ、はやり、裕子の四人

イツメンというやつである

超常現象だということで色々と情報を整理しようとも思ったのだが……


京太郎「えっと……」

はやり「うぅ~」エグエグ

京太郎「なんつーか、はい」


泣いているはやりの背中を撫でる

昨日キラキラの瞳で出かけて行ったはやりが脳裏を浮かぶ

哀れである


京太郎「えっと……怪獣ですか? リアルに」

トシ「だろうねぇ、想像つくけど」ハァ

京太郎「さすがっすね

裕子「どんな怪獣なんですか? 周囲のものを砂に分解するとか?」

ベリアル『そう言われると波動生命体を思い出す』

京太郎『知ってるんですか?』

ベリアル『まぁ今回は違うと思うがなぁ』

京太郎「?」

トシ「昨日、はやりが行ったとこの地図出せるかい?」

裕子「あ、はい」


キーボードを叩く裕子

モニターに映し出される上空からの映像


京太郎「倉庫が沢山……」

裕子「元、廃車ばかり置いてあった場所らしいけど」

はやり「なかったよ? 視えるのはシャッターばっかで……」

トシ「ん~なるほどね」

京太郎「なるほどって?」

トシ「倉庫かぁ」


手を顎に当てて言うトシに、京太郎が小首をかしげた


京太郎「倉庫がなんかあるんですか?」

トシ「まぁーあくまで予想だけどね」

京太郎「予想? えっと、波動なんとかですか?」


その言葉に、トシが少し眉をひそめる

ベリアルからの知識だと理解したのだろう


トシ「メザードにしちゃ被害が少ないからその可能性は低い」

はやり「少なくないですぅ!」クワッ

トシ「あ~はいはい、そうだね、被害甚大甚大」

はやり「ばかにしてぇ~!」

トシ「京ちゃん、はやくはやり連れて調査! 裕子も!」

裕子「はい」コクリ


すぐに立ち上がった裕子に習って京太郎も立ち上がった

スーツ姿のはやりの背に手を添えて立たせる


京太郎「あ~行きましょうはやりさん」

はやり「ぶっころしてやるぅ~」

京太郎「牌のお姉さんがそんなこと言わない」


―――【廃車場】


トシの指示に従って、京太郎たちは昨日の場所へとやってきた

消えた車の行方を追って、並びに怪獣探しだ

いざとなった時のために京太郎も来たわけなのだが……


京太郎「車ねぇ……」

ベリアル『……』

京太郎『ベリアルさん、心当たりあるんでしょ?』

ベリアル『あるが……まぁ一応周りは見といてやる』


頷く京太郎が、周囲へと視線を向ける

懐からトシから受け取った【ガッツハイパー】を手に、はやり、裕子と共に周囲を探っていく

それでもおかしいところなど見当たらないのだ


京太郎「え~倉庫の中とか、探りたくないんですけど」

はやり「昨日はやりはもっと怖い思いしたんだからねっ!」

裕子「あ~はいはい」

はやり「信じてない! 歩いて帰る羽目になったしぃ!」ナミダメ

京太郎「ま、まぁまぁ……」

はやり「じゃあ探索!」

京太郎「あーはい」コクリ


警戒しつつ移動する京太郎たち

ガッツハイパーの射撃訓練は、京太郎とて一応していた

万が一のために、ではない……直近の“使命のため”だ


京太郎「ところで、なんですけど」

はやり「はや?」

京太郎「車、ですか?」


隣のはやりに聞くと、戸惑い気味に頷く


はやり「え、うん」

京太郎『ベリアルさん、車を消す怪獣っていうか……それに近しいのが、いるんですか?』

ベリアル『……ああ、食う、じゃねぇか、運ぶ怪獣がな』


車を運ぶ怪獣。どこに、など些細な問題だ

一番の問題、今ようやく京太郎が辿りつけそうなその問題

裕子がシャッターを遠隔操作で一つ一つ開いていく


京太郎「妹尾さん、東横さん……間に何人かいたけど、鶴賀は五人、そのうちの二人」


あの五人の仲の良さは咲たちからも聞いている

清澄と同じく人数ギリギリの団体戦出場、基本五人でしていた練習

インターハイが終わってからもだと聞いている


京太郎「……それで、車」


一度だけ、故あって乗せてもらった記憶があった

その答えに辿りつけそうな瞬間、地響きが鳴る


京太郎「蒲原智美?」

はやり「はやぁっ!!?」

裕子「そうきたかぁ」


少し離れた場所にある、倉庫が―――“立ち上がった”


裕子「あ、ああ……あーーーー!!」

はやり「倉庫が、倉庫が建ったーーー!!」

裕子「今うまうこと言った!」

京太郎「言ってる場合ですか!」

ベリアル『クレージーゴンか!』


立ち上がった倉庫ことクレージーゴン

脚はあるが腕が、右が巨大で左が小さい

右は大きなクレーンのようにも見える……というよりクレーンなのだろう


はやり「て、撤退!」

裕子「はやく車へ!」

京太郎「っ」


走りながら、三人がガッツハイパーを撃つ

その攻撃にひるみもせずクレージーゴンは京太郎たちの方を向く


京太郎「二人はそのまま車へ!」

はやり「っ……わかった!」

裕子「え、はやりさん!?」


狼狽える裕子の腕を掴んで、はやりが4WDの車へと走る

京太郎はそんな裕子たちと離れながらガッツハイパーを撃ちつつ倉庫の影に隠れた

一応周囲を見渡してから頷く


京太郎「っし! いきますよベリアルさん!」

ベリアル『ハッ! 久しぶりのシャバだ……暴れさせろ!』


ゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛びこむ


インナースペースと呼ばれる空間

外の世界とは流れる時間が違うそこで、京太郎は静かに息をつく

なにはともあれ、現実で戦うのはまだ二回目


京太郎「……」フゥ

ベリアル『怖気づいたか?』

京太郎「まさか、俺は自分の使命を果たすだけです……!」

ベリアル『使命、か……ハッ!』


笑うベリアルに、少しばかり気になることもある

だが、京太郎がやることとベリアルがやること、目的は違えど手段は同じ


ベリアル『まぁ良い、この不愉快な感覚を全て潰すまでは、付き合ってやる!』

京太郎「ベリアルさん、お願いします!」


頷いてウルトラアクセスカードを差し込む


ベリアル『さぁ、ぶっ潰してやる!』

京太郎「ベリアァル!」

今回はここまでー
色々余裕が出てきた感じの話でしたー

被害者のみんなと仲良くなったり、はやりんと仲良くなったり
そしてはやりの車は犠牲になった

明日も似たような時間からやる予定でござい
そんじゃまたー

よっし再開だじぇ
安価は今回の最後の方になりそうー


ロボット怪獣クレージーゴン

それがはやりと裕子の乗る4WDへと迫る

右腕の大きなクレーンを振りかぶったその瞬間―――


ベリアル「デヤァッ!」

クレージーゴン「―――!!?」


―――現れた白銀の巨人“ベリアル”が蹴りを放つ

後ろに下がって、そのまま倉庫を踏み潰すクレージーゴン

ベリアルは爪を立てた指先を開いたまま、両腕を構える


京太郎『はやりさんたちが逃げるまでの時間かせぎを!』

ベリアル『ハッ! 倒しゃ済む話だろ!』

京太郎『ごもっとも、でぇ!』


勢いよく飛び出したベリアルが腕を振るう

別に鋭い爪があるわけでもないが、斬撃が奔りクレージーゴンに確かなダメージを与える


はやり「うわぁっ!」

裕子「はやく! はやく!」

はやり「わかってるよぉ!」


即座にシフトをリバースに入れ、アクセルを踏み込む

勢いよくタイヤが回転して車が後ろへと下がっていく

その上を、行くベリアルが迫るクレージーゴンに両手で光弾を撃つ


ベリアル「ハァッ!」


その光弾がクレージーゴンに直撃するも、そちらはあまり効いている様子はない

まだ車も離れておらず、突っ込んでくるクレージーゴンを避けるわけにもいかず両手で押さえようとする


ベリアル「グウァ!」


両腕でクレージーゴンの身体を押さえるも、大きな右腕がベリアルの身体を打つ


京太郎『ぐぅ! こっちが大人しくしてりゃ良い気になりやがってぇ!』

ベリアル『気張れよ!』


クレージーゴンへと、勢いよく蹴りを打ち込み素早く爪撃を三度撃ち込んだ

多少よろけるが大したダメージではなさそうだ

車が離れていくのを見て、身体を横へと転がして少しばかりの距離を取った


京太郎『ベリアルさん! ここらへんなら民家もない……存分にやりましょう!』

ベリアル『あろうがなかろうが、オレはどっちでも良いがなぁ!』


勢いよく飛びかかり、素早く爪撃を撃ちこむ

さらに流れるように拳を数度打ち込み、背後へとジャンプした


京太郎『痛って~! 硬っ、パンチはやめときましょ!』

ベリアル『クローで攻撃してもそんなダメージが通りそうにねぇな』

京太郎『くっ、こんな硬いのがいるなんてなぁ……』



クレージーゴンの右腕が振るわれる

それがそのままベリアルの身体に打ち付けられた

吹き飛んだベリアルが倉庫を潰す


ベリアル「ガァアッ!」

京太郎『くっそが!』

ベリアル『クソ、こんな雑魚を相手に!』


融合しているせいか、それとも別の要因か

本来の力で戦えないベリアルが歯がゆさに悪態をつく


京太郎『つえぇ……最近の奴らと格が違うっ!』


膝をつくベリアルの、胸のカラータイマーが赤くなり点滅を始める

離れていく車の中で、はやりがそれを見ている


はやり「ッ!」


素早くガッツハイパーを取り出す

窓を開けると、裕子と目を合わせて頷く

二人で窓から身を乗り出してトリガーを引いた


クレージーゴン「―――ッ!!」


ダメージなど入っていないのだろうが、クレージーゴンはそちらを見る

頭部からビームが放たれた


はやり「ッ!」


車両はなんとかそのビームを回避するも、周囲の爆発の衝撃は凄まじいだろう

それでもクレージーゴンの敵意を釘付けにするためにはやりと裕子の二人は射撃を続ける

クレージーゴンははやりたちの方へと歩き出そうとしていた


はやり「今だよ! ベリアル!」



ベリアルが立ち上がり、再び構えを取る

赤いカラータイマーは動ける限界が近いことを示していた

クレージーゴンは銃撃をするはやりのほうへと向かっていく


ベリアル『ハッ! 余計な真似しやがって』

京太郎『はやりさん! サンキューです!』


◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE


素早くクレージーゴンへと接近していくベリアル

クレージーゴンが、接近するベリアルに気づいて右腕を振るう


ベリアル「ハァッ!」


頭を下げて回避すると、素早くクローで右腕を攻撃する

大したダメージでないのはわかっていた


ベリアル『機械が相手なら良いのがある!』

京太郎『この距離ならなァ!』


右腕をクレージーゴンの身体に近づける

掌底を撃ちこむようにクレージーゴンへと掌を向けた


ベリアル「フハハハッ!」


掌から放たれる赤い雷が、クレージーゴンの全身へと流れる

狂ったように左右へと体を振るうクレージーゴンから、ベリアルが距離を取った

腹のシャッターが勢いよく開閉する


京太郎『これならば!』

ベリアル『ハッ、バンダ星人もお粗末なロボットを作るもんだぜ!』


ベリアルが、両腕を構えた

右腕に赤い稲妻が奔る


ベリアル『こいつで決まりだ!』

京太郎『こいつでハコ割れだ!』


水平に構えた左腕を前に、垂直に構えた右腕を後ろに……

クレージーゴンを見据えて、ベリアルは必殺の光線を放つ


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!!』


放たれた光線が真っ直ぐに、クレージーゴンの開いたシャッターへと奔る

光線はそのままクレージーゴンの背中から突き抜けて空へと消えた


ベリアル「……フンッ!」


光線が消えると、立ったベリアルが右腕を振るう

倒れたクレージーゴンが、その場で大爆発を起こした

それを見据えたベリアルが、両腕を空に、飛び上がる


ベリアル「ハァッ!」


そしてそのまま、ベリアルは空へと消えた



車から降りたはやりと裕子の二人

爆散するクレージーゴンを見るはやりの瞳から、涙が流れる


はやり「……ローン、まだ残ってるのになぁ」ツゥー

裕子(哀れ……)

オーイ

裕子「え……あ、あれは!」


走ってくる姿が見えて、裕子の表情がパァッと明るくなった


京太郎「おーい!」ブンブン

裕子「須賀君……よかったぁ」ホッ

はやり「はやりの……」

京太郎「どこか怪我でも?」

裕子「大丈夫、気にしないであげて」

京太郎「あ、はい」



その後、京太郎とはやりは車を裕子に任せてクレージーゴンの爆散した地点へと向かう

歩いている二人、炎もすっかり消えているようだった


ベリアル『見つけたぞ……』

京太郎「え、やっぱり……蒲原さん!」


倒れている少女を見つけてそちらへと走っていく京太郎

それに続いて、はやりも“蒲原智美”へと駆け寄る


京太郎「蒲原さん!」

ベリアル『嫌な感じが消えたな……おい小僧』

京太郎「あ……クレージーゴンのメダル」


傍に落ちていたその小さなメダルを拾うとホルダーに入れた

すぐに智美を抱き上げると、車の方へと歩き出す


はやり「お疲れ様……二人共」

京太郎「……うっす」フッ

ベリアル『ハッ、造作もなかったな』

京太郎『そうですか? まぁ、これからもそうであることを、願いますよ』



―――【特異課施設:作戦室】


部屋に入るのは京太郎、はやりの二人

裕子は蒲原智美の検査らしい

桃子と佳織の二人も付き添っているそうだ


京太郎「ただいまです」

トシ「おかえり」

はやり「はぁ~」

トシ「……京ちゃん、良い感じだねぇ。戻ってくる時とか完璧」

京太郎「どゆこと?」

はやり「さぁ?」


まぁトシがわけのわからない話なんて、今更だ

ホルダーに入っているメダルを取り出す

ベムラー・ネロンガ・ガギ・シルバゴン、そして今回のクレージーゴン


京太郎「トシさん……次は」

トシ「ああ、行方不明なのは津山睦月だね」

京太郎「津山さん……」

トシ「ってことで、新しい協力者がきたよ」

京太郎「なにが『ってことで』なんですか?」

はやり「まぁまぁ」


扉が開き、誰かが入ってきた


ウィーン


京太郎「ん?」

?「お邪魔しまーす」

トシ「いらっしゃい」


入ってきたのは長い茶髪の女性

どこかおっとりとした雰囲気のようにも見える


はやり「慕ちゃん!」

京太郎「し、の?」

慕「白築慕です……よろしくね?」ニコリ



その後、京太郎と慕は軽く挨拶をしあった

それだけで解散となったのはトシの一声があったからだ

詳しくは後日、ということらしいが……


―――【特異課施設:休憩所】


京太郎「どうなるかなぁ」

ベリアル『ハッ! 俺もお前も、やることは戦うことだけだろ?』

京太郎「……人探しぐらい、しますよ」


苦笑していう京太郎

そんな返しにベリアルはなにを言うでもないが、たぶん笑ってるのだろうと思う

なにはともあれ、ベリアルの言うとおり自分がやれることは戦うことだ


京太郎「ま、なんでも良いけど……人々を守るため、なら」

ベリアル『小僧お前……』

京太郎「ん? なんっすか?」

ベリアル『……さてなぁ』



◆誰か来た

1、東横桃子

2、妹尾佳織

3、佐藤裕子

◇安価1↓から~ 五分間でコンマ最高値の選択肢

(選択肢によってはガギ対シルバゴンがあったりした


1、東横桃子


桃子「あれ、須賀さんじゃないっすか」

京太郎「あ、東横さん……」


別に珍しくもない。最近は特に

京太郎の対面に座ると、テレビへと視線を向ける

やはりやっているのは今日のクレージーゴンとベリアルの戦い


桃子「須賀さんもここいたんっすよね」

京太郎「ああ、銃撃してたぞ一応……囮になったり?」

桃子「なんで、命をかけれるんですか? こわくないんっすか?」


その言葉に、ふと京太郎は考えた

恐いと考えたことが無かった

戦える力があるからだろうか? ベリアルが一緒にいるからだろうか?


京太郎「……人々を、守るためだから」

ベリアル『ハッ、反吐が出る』


頭の中に響く声に、苦笑する


桃子「凄いっすね須賀さんは……私には無理っす」

京太郎「……でも」

桃子「?」

京太郎「死ぬのが……死ぬのが怖くないわけないだろ?」


その言葉に、一瞬目を見開く桃子だったがすぐに微笑して頷く



怪獣を倒す。自分だけにしかできないことだ

それに強制されているつもりはない

だが、戦わなければ後ろの人間の命が危ないのだ


京太郎「……人が好きだから、じゃダメか?」

桃子「……立派っすね」クスッ

京太郎「そんなこと、ないよ」


テレビの方を見て笑う

報道は『敵か味方か、光の巨人』と報道をしていた


京太郎「加治木さんに、会いたくなったりしない?」

桃子「まだ、安全が確実じゃないらしいっすから、私たちの周り」

京太郎「そっか、大変だなお互い」ハハッ


笑う京太郎

少しばかり、頬を赤らめて桃子が視線を逸らす

すぐに意を決したようにうなずいて口を開く


桃子「……京太郎さん、ほどじゃないっす」

京太郎「……そんなことないさ、桃子」

桃子「モモで、良いっすよ」フフッ

京太郎「ん」フッ


他愛のない話が続く

ちょっとした交流だが、こんな事件が起きなければなかった交流なのだろう

不謹慎ながら京太郎は悪くない、と思ってしまった


―――翌朝【特異課施設:休憩所】


京太郎「たぶん、そろそろ津山さん探し、だよな……きっと」

はやり「どしたの?」

京太郎「ああいや、大したことじゃ……」


わざわざはやりに話すことでもない

桃子も佳織も同じ気持ち、いやもっと強い気持ちなのだろうから


京太郎「そういや、車は大丈夫なんっすか?」

はやり「ふふ~ん、実は一台、隣町二丁目の中古車ショップで良いレトロ車が」

ピリリリリリ

裕子「大変です! 隣町二丁目で怪獣が出現! 暴れ出しました!」

京太郎「えー……」チラッ

はやり「」シロメ

京太郎「……えー」



     第3話【連続車両失踪事件】 END




―――【特異課施設:作戦室】


あれから数日が経った

別段変わったことはなく、蒲原智美も未だ眼を覚ましていない

怪獣に覚醒した者は目覚めが遅いのだろうか?


京太郎「ん~」

はやり「智美ちゃんの眼がさめればなにかわかるかなぁ?」

京太郎「そうだと良いけど……」


だが、あの日から手に入れたメダルは二つ

隣町で暴れたアーストロン、そして麻雀で倒した他校の生徒から出たダイゲルン

すっかり戦い慣れもしたものでダイゲルンとの戦いはカラータイマーが鳴る前に決着がついた


京太郎「まぁやっぱり……」

ベリアル『相性の問題だろうな』

京太郎「ですよねぇ」

はやり「またベリアルとお話し?」

ベリアル『様をつけろと言っておけ』

京太郎『言いませんよ』

ウィーン

京太郎「あ、トシさんと……白築さん?」

慕「こんにちは京太郎くん」

トシ「ちょっと困ったことになってね」

京太郎「困ったこと、ですか?」

トシ「……まぁ、二者択一ってやつだ」



京太郎「どういうことっすか?」

トシ「ちょっと鶴賀で妙な反応があってね」

京太郎「鶴賀って、加治木さんがいる!?」


京太郎の言葉に頷くトシ

それと反対に慕の方はというと少し迷った表情をしている

そんな彼女を見てはやりは少しばかり首をかしげた


はやり「どうしたの慕ちゃん?」

慕「えっと、それと同時になんだけど……先日から変な反応が会った場所があって」

はやり「変な反応?」

慕「うん、ちょっとした洞窟の中だったんだけど……巨大な石像があって、それが」

京太郎「どっち行くかって話ですか?」

トシ「そういうこと、片方にはやり片方に京ちゃんだね」


顔をしかめる京太郎ははやりの方を向く

はやりも悩んだような表情をしているが、それもそうだ

どちらかが正解なんていうことでもないように見える


はやり「京ちゃんはどっちに行きたい?」

京太郎「え~」

トシ「まぁなんでも良いけど」

京太郎「投げやりな……」


京太郎(鶴賀も気になるけど、石像の方も気になる)

ベリアル『ハッ、暴れられるならなんでも良いじゃねぇか』

京太郎『えー』



◆どちらに向かう?


1、石像の調査同行

2、鶴賀の異変調査




◆どちらに向かう?


1、石像の調査同行

2、鶴賀の異変調査


◇安価1↓から~ 5分間でコンマ最高値の選択肢

1、石像の調査同行



一つ頷くと、京太郎は慕に視線を向けた


京太郎「白築さんに同行します」

慕「ありがとう……はやりちゃん」

はやり「ん、私は大丈夫。ただの調査だしね、怪獣が出ても……きっとウルトラマンがなんとかしてくれるでしょ」


そんな言葉に、慕は苦笑した

加治木ゆみは学園にいまだに通っていると情報が入っているし問題ないだろう

津山睦月がメダルを入れられて、ゆみを狙っているとかだとしたらむしろはやりでも十分対処可能である


はやり「そっちは任せたよ京ちゃん」

京太郎「ラジャーです。はやりさん」フッ

トシ「さて、それじゃあさっそく行ってきな」

京太郎「行きましょう、白築さん」

慕「うん」フフッ



特異課の基地を慕の運転するジープで出る

助手席には京太郎、後部座席には色々と調査に必要なのか機材が積んであった

はやりに習って、トシが用意したスーツ姿の京太郎


ベリアル『悪くないな』

京太郎『ベリアルさんが褒めてくれるなんて珍しい……』

ベリアル『ハッ、褒めたつもりはねぇがな』

慕「須賀君は」

京太郎「え?」

慕「須賀君はどうして、戦ってるの? まだ学生、子供なのに……」


そんな疑問に、京太郎は視線を慕に向けた

横顔に少しばかりの哀愁を感じるのは大人としての責任か……

似たような表情を、はやりで見た記憶がある


慕「大人に任せておいて良いんだよ?」

京太郎「それを言うために、わざわざ俺を?」

慕「まぁ、半分ね……ただそれでも、きっと須賀君は頼りになるって感じちゃってるんだよね」

京太郎「……そりゃ男冥利に尽きる話です」フッ


そう言って、懐にあるゼットライザーに視線を移す


京太郎(俺にしかできないこと、それがあるから……とは言えないか)


ベリアルのことを知らない者たちからすれば、確かに京太郎がここにいる必要性はないのだ

麻雀で勝つということだけであれば、はやりや白築慕がいる


京太郎「やりたいって、思ったんですよ。ただきっと、白築さんと同じです」

慕「……そっか、それじゃあ頼りにしちゃおうかな」

京太郎「是非」

慕「でも危なくなったら逃げるんだよ?」

京太郎「……了解です」フッ



車はそのまま山中へと入る

雑に手入れされた道を行き、ある程度の場所で止まった

京太郎と慕の二人が車を出て、荷物を持ち歩き出す


慕「でも……怪獣とか、驚きだよね」

京太郎「そうですね」

慕「メダルを撒いた相手、早く見つけないと……」

京太郎「そう、ですね」


山を登って行き、次に下る

洞窟のような道を行く

階段のようになっている通路、壁には電飾がついていた


京太郎「明るいですね」

慕「一応、特異課の研究員の人たちも入ってるからね」

京太郎「なるほど、ちゃんとスタッフの人いたんですね」

慕「あー熊倉さんの基地、立ち寄る人少ないからね」


どんどんと降りていくと、開けた空洞へと出る

そこにたどり着いて、そこにある石像を見上げて、京太郎は固まった

灰色の人型石像


京太郎「これは……っ」

慕「驚いたでしょ?」


京太郎「―――ウルトラマン」


その石像は、ウルトラマンと形容するほかない姿をしていた



そこに立つ石像の、なるべく傍へと近寄る京太郎

周囲には沢山の研究員がおり、計器で色々と調べているようだった

二人は持ってきた機材を研究員たちに渡し、並んで石像を見上げる


慕「京太郎くんは、何度も近くでウルトラマンを見てるんだよね?」

京太郎「まぁ、はい」コクリ

慕「どう、その目から見て……」

京太郎「姿かたちは全然違うけど、それでも……これはウルトラマンです」


その言葉に、慕が頷く

ベリアルのことは、良くは聞いていない

おそらく聞かれたくないのだろうということは、察しているからだ

だが―――


京太郎『ベリアルさんは……一体、どこから来たんですか?』

ベリアル『ハッ、地獄の底だ』

京太郎『真面目に答えてくださいよぉ』

ベリアル『……にしても、ティガの石像か』


そんな言葉に、京太郎はつぶやく


京太郎「“ティガの石像”……?」

慕「え?」

京太郎「あ、いや……そんな言葉が、思い浮かんで」

慕「ティガの石像、か……いいね。さしずめここは、ティガの地だ」


笑う慕の隣で、京太郎は黙って石像を見上げている

ネクタイに指を突っ込んで少し緩めつつ京太郎は腕時計型端末を見て時間を確認した


慕「ちょっと歩けばコンビニあるよ?」

京太郎「こんな山中に?」

慕「まぁ、対した山じゃないから、道に沿って歩いてけば」

京太郎「……まぁとりあえず、向かってみます」

慕「行ってらっしゃい、気を付けてね」

京太郎「はい」



―――【コンビニ】


10分ほど歩いて辿り着いたコンビニ

京太郎は慕に頼まれたものと、自身の昼食を買って出た

店前に置いてあったベンチに座ってパンをかじっている


京太郎『ウルトラマンは、この星にもいるんですか?』

ベリアル『……地球が生んだウルトラマンも確かにいるがなぁ、ティガ、あれはそういうもんとは違う』

京太郎『どういうことですか?』

ベリアル『ティガのガワだ。ありゃな』

京太郎「……ガワ?」


パンをかじってモグモグと口を動かす

9月のほどよく涼しい空気が心地良い

地面を見て考える……ウルトラマン、怪獣、そして仲間たち……


???「須賀君、よね?」

京太郎「へ?」


声がして顔を上げる

噂をすればなんとやら、仲間―――の仲間


京太郎「……福路、さん?」

美穂子「や、やっぱり須賀君!」


彼の数少ない知り合いの一人

そして彼の仲間、竹井久の友人である福路美穂子がそこにはいた

青い右目は、相変わらず閉じられている


京太郎「……お久し、ぶりです」

美穂子「ええ、久しぶり」ニコリ



     第4話【光を継ぐ者】

今回はここまでー

第四話でこんな感じ
まぁまだ序盤も序盤

頑張るゾイ
たぶん明日もやる

よーしのんびりと再開ー
ダークネスヒールズもよろしく!



風越女子麻雀部部長、福路美穂子

かつて憧れていたところもあったが、今の京太郎としてはそう高揚するものでもない

ただ綺麗な少女、そんな彼女が目の前で自分に声をかけてきた


京太郎(……嘘、やっぱちょっとテンション上がる)

美穂子「その、隣良い?」

京太郎「ああどうぞ」

京太郎(嘘、めっちゃテンション上がる)


顔に出さないようにしつつ、京太郎はベンチの座る位置を少しずらす

隣に、そっと腰を下ろす美穂子

その表情は憂いを帯びている


京太郎「……その、風越の」

美穂子「あ、ええ……そうね、そっちも、よね」

京太郎「はい」コクリ


咲、優希、和、まこ、久

誰一人として未だ、見つかっていないのだ

トシから聞いた情報によると、風越はレギュラーメンバーは福路美穂子以外、全員行方不明

京太郎が倒した風越の生徒はレギュラーではない


美穂子「なぜだか、ニュースとかでもやってないし……」

京太郎「福路さん……」

美穂子「華菜、みんなっ……」フルフル

京太郎(なんとか、しないとなぁ……ここも)



俯いていた美穂子が、目元を拭って顔を上げる

なるべく明るく振舞おうと笑顔を浮かべるが、どこかぎこちない


美穂子「ごめんね、須賀君も大変なのに……」

京太郎「いや、俺は全然……」

美穂子「どうして私たちだけ、無事なのかしら」


自分は無事では済まなかったが、それを言うわけにもいかない

しかし、麻雀の力が強い者が襲われている中、どうして美穂子が無事だったのかわからなかった


京太郎「……たまたま、なんですかね」

美穂子「そう、なのかしら……」

京太郎「俺の場合は、仲間と認識されてなかったのかも、なんて」ハハッ

美穂子「そ、そんなことないっ! だって久はっ」

京太郎「じょ、冗談ですよ」

美穂子「あっ……ご、ごめんね?」

京太郎「いや、俺もちょっとここで言うべきことじゃなかったかも」ハハハ


そう言って立ち上がると、背を伸ばす

そろそろ戻らなくては慕も心配するかもしれない

京太郎を見上げる美穂子は、少しばかり驚いた表情を浮かべている


美穂子「……」

京太郎「福路さん?」

美穂子「あ、ごめんね……どうして、スーツなの?」

京太郎「う゛っ……ま、まぁ色々あって」

美穂子「?」



京太郎「と、とりあえず福路さん、その……」


ハッと気づいて、胸ポケットから出したのは名刺ケース

入っているのは無論名刺のようなもの

念のためにとトシに渡されていたが役に立つと思わなかった


京太郎「ど、どうぞ」

美穂子「え、え? 名刺? えっと日本政府公認、特異災害……」

京太郎「見るの名前と電話番号だけで良いんで、はい」


そもそもこんなもの持ち歩いているなんてヤバい奴なのだが、致し方ない

とりあえず連絡先が書いてあるものだけが必要だったのだ


京太郎「……一応、今回の事件解決に協力してるっていうか、協力者として?」

美穂子「え、そうなの? じゃ、じゃあ華菜たちは」

京太郎「そこです。一応、見かけたら話しかけたり近づいたりしないで、連絡をください」

美穂子「一体どういう」

京太郎「お願いです! ね! 約束ってことで!」

美穂子「え、あ……え、ええ……?」


半場強制的に頷かせると、京太郎は立ち上がる


京太郎「それじゃこれで!」

美穂子「え、須賀君っ!」

京太郎「約束しましたからねー!」


自分でも怪しい挙動をしているなと思いつつ、美穂子から遠ざかって慕のいる方へと向かっていく


コンビニからしばらく歩いて、元の山道へと戻ってくる京太郎

森の中に無理矢理作られた駐車場のような場所へとたどり着くと車が何台も止まっている

研究員たちのものだろう


京太郎「えっと、こっちか……」

ベリアル『迷子なんて笑えねぇからな?』

京太郎「わかってますよぉ」


そこからは慕と歩いた道を思いだしつつ、歩く

すぐに洞窟のような場所を見つけて、京太郎は中へと入って行った



物陰から、顔を出すのは福路美穂子

手に持っているのは、ビニール袋

単純に京太郎の忘れものを持って追いかけてきただけなのだが……


美穂子「……悪い子だ、私」


声をかければ良いものを、普通にストーキングしてしまっている

開かれた右目、相手の一挙一動を見逃さないその眼

ガチのストーキング


美穂子「うっ……で、でも、きっと華菜たちに関することが」


自分を納得させて頷くと、ゆっくりと京太郎の後を追い洞窟へと入っていく



京太郎は、洞窟の入り口を通って大きな空洞へと入る

そこには変わらず研究員たち、そしてティガの像

やはり圧倒されるな、と思いつつ慕を見つけて近づいていく


京太郎「戻りましたー」

慕「あ、お帰り……荷物は?」

京太郎「え、あ……忘れた」

慕「なにしに行ったの?」ジト

京太郎「えーっと」メソラシ


戻っても今更、しょうがないだろう

どうするかなぁと思いつつ慕を見るが、クスリと笑った


慕「良いよ別に、ついでだからね……」

京太郎「すみません」

慕「ほんと大丈夫、っていうかなにかあった?」

京太郎「え?」

慕「んー、なんとなくだけど」

京太郎「えー」

慕「あはは」


洞窟の入り口から、一本道

美穂子は隠れる場所も無いのでそのまま進んでいく

足場が悪いものの、電飾に照らされた足場を見てゆっくり


「誰だ!」

美穂子「ひゃっ!?」


そこにいたのは警備員らしく男性

持っているのは―――銃


「何者だ!」


必死に見えるのは、色々な情報を聞いているからだろう

女子高生雀士がおもに怪獣メダルの宿主になっていること、怪獣に覚醒すること


美穂子「わ、私っ……こ、これ!」


バッと出したのは先ほどもらった京太郎の“名刺”である


「こ、これ……須賀京太郎の名刺。あの特権持ちの?」

美穂子「とっけ?」

「ああいえ、協力者の方ですか?」

美穂子「あ、はい……その、か、風越の生徒について」

「なるほど、ではどうぞここから道が分かれていたりするんでご案内します」

美穂子「……お、お願いします」


そのまま、美穂子は警備員の後をついていく


空洞、ティガの像の前に立つ京太郎と慕

慕の持った端末のディスプレイに表示されている映像を横から見る

そんな京太郎に気づき、慕がそっと見やすいように傾けた


京太郎「……つまり?」

慕「なにもわからないって」

京太郎「そっかぁ」

ベリアル『ここより科学が発達した宇宙でも、完全に解析なんてできないだろうな』

京太郎『じゃあ、ここじゃあ……』

ベリアル『10年ぐらい経てばちったぁ変わるんじゃなぇか? それまでこの地球が人間のものだったら、な』

京太郎「嫌なことを……」


そう言って、ティガの像を再び見上げる

瞬間―――警備員の声が響く


「誰だ!」

「なんだこいつ!?」


そちらを見る京太郎

既に、数人の警備員が地面を転がっていた

奔る影が、京太郎の前に現れる


京太郎「ッ!」

ベリアル『小僧!』

京太郎「わかってんよ!」

すぐに拳を振るうが、その影は上に跳ぶ

京太郎の上を飛び越えて、反対側に回った影

素早く回転して脚を後ろへと振るう


京太郎「ッ!」


影は“両腕”でその蹴りを凌ぐも、勢いだけは殺しきれずに吹き飛ぶ

跳んだ影はそのまま、ティガの像、その前に着地する

着地したその影の正体を見て、京太郎は驚愕に眼を見開く


京太郎「なっ!?」

慕「え、あの人って……!」

京太郎「な、なにやってんです!」


わなわなとふるわせた拳を、強く握る


京太郎「部長ォ!」

久「……」



叫ぶ京太郎の視線の先の久が、出ている鼻血を拭った


久「所詮は人間の体か」

京太郎「ッ!」


素早くガッツハイパーを向ける慕と京太郎の二人

トリガーに指をかけるも、その銃身も指もブレる


ベリアル『あいつは人間じゃねぇ!』

京太郎「人の部長の体、勝手に使いやがって!」

久「ふん、ティガの像……人間の体を使ってもダメか」


そう言って息をつく


久「私はレギュラン星人」

京太郎「異星人!!?」

ベリアル『悪質宇宙人か!』

京太郎『通り名最悪っすね』

久「ならば!」


そう言って指を鳴らす久、それと共に周囲の警備員たちの銃が弾き飛ばされる

影が行ったり来たり、そしてそれが京太郎に触れようとした瞬間―――


京太郎「チャアッ!」


―――蹴りを放つ。その直撃により影は吹き飛び久の隣へ


京太郎「なっ!?」

慕「あれは……」

京太郎「池田、華菜……」


久と同じく、身体が着いて行かないのか鼻血を出した華菜が右手で鼻を拭う

さらにダラン、と下がっている左腕を掴み動かすとゴキ、という音がした

左腕を動かして、そのまま京太郎を見る


久「良い知能を持っている。兵器にされていただけあるな……」

京太郎「部長の口で余計なことをっ!」

ベリアル『あいつ、メダルじゃねぇな』

京太郎「メダルじゃないって!」

久「その通り、私は私の技術でこの体を使っている!」

京太郎「汚い技術でうちの部長にっ!」ギリッ



舌打ちをする京太郎だが、ガッツイハイパーのトリガーを引くことなどできない

だが相手もティガの像をどうすることもできないだろう


京太郎(膠着状態、か?)


その瞬間、聞き覚えのある声が響く


???「久、華菜!」

京太郎「福路さんか!」


チラッと後ろを見て言う

それに否定の言葉はなく、走ってくると京太郎の隣に立つ


美穂子「どうして、二人とも! なにがっ!」

京太郎「あれは中身が違う!」

美穂子「えっ」

京太郎「部長と、池田さんを返せ!」

久「……まぁ良い、ならばこの像もろとも消えろォ!」


指を鳴らす久

その瞬間、地が揺れ、咆哮が聞こえた

それは間違いなく“怪獣の声”だ


京太郎「これはっ!」

久「ハハハハハ!」


笑いながら、揺れる地面をもろともせず走り去る久と華菜

その動きは人間を逸している

やはり体を無理矢理使っているようで京太郎が歯ぎしりをするが、どうにかできるレベルでもない


京太郎「怪獣っ、慕さん! みんなを逃がしましょう!」

慕「あ、うん!」

京太郎「福路さんも、手伝ってください!」

美穂子「え……は、はい!」



警備員や研究員たちを立ち上がらせていく慕と美穂子

だが京太郎は素早くガッツハイパーのカートリッジを確認して頷く


京太郎「俺は、たぶん出て来てる怪獣を、囮になって遠ざけます!」

慕「っ! そんな!」

京太郎「お願いします。みんなのこと!」

美穂子「まって須賀君!」

京太郎「……!」


笑みを浮かべて頷くと、京太郎は出口へと走っていく

地面を伝わる振動はどんどんと強くなっていくのがわかる

本当に“怪獣”がいるのだろう


美穂子「須賀くん!」

慕「……やろう。福路さんお願い! あの子のやってることを無駄にできない!」

美穂子「そんなっ」

慕「今はそういう世界なだよ。やらなきゃ!」

美穂子「っ……」


慕の言葉に従う美穂子

しかしその表情には焦り

京太郎を心底心配している証拠


慕(どうしてっ……!)


外へと出た京太郎が、勢いよく森を走っていく

向上した身体能力、それらを駆使して木々の間を縫って道なき道を行き、道路へと出た

何号線かは忘れた国道、そこに飛び出てから足音のする方へと視線を向けた


京太郎「怪獣!」


両手が鎌となっている二足歩行の怪獣


ベリアル『ほう、宇宙戦闘獣コッヴか』

京太郎「……なんでも良い。あいつを倒す!」

ベリアル『ハッ! わかりやすくて良いじゃねぇか!』


トリガーを引いて、目の前のゲートへと飛びこむ

インナースペースに立つ京太郎

ウルトラアクセスカードを差し込んだ


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』


ベリアル「ぶっ潰す!」

京太郎「いきます! ベリアルゥッ!」


ゼットライザーを掲げてトリガーを引く

それと共に、光が広がり―――


ベリアル「ジャアッ!」


―――ベリアルが地上へと現れる

着地と同時に周囲の土を舞い上がらせ、素早く構えを取った



咆哮をあげるコッヴへと接近すると、素早く爪撃をみまう

その攻撃に下がっていくゴッブ

鎌で攻撃をしかけてくるも、ベリアルは素早く後ろへと下がる


京太郎『こいつ、さっさと決着つけましょう!』

ベリアル『ハッ、こんな雑魚相手に戸惑ってられねェからな』


近寄ると、右腕から電撃を放つ

怯むコッヴにさらに爪撃を打ち込み怯ませる

両腕の鎌を振りかぶって攻撃をしかけてくるが、それを爪撃で撃ち返す


コッヴ「―――!!!」

ベリアル「ハァッ!」


コッヴの両腕の鎌がベリアルの爪撃で破壊された

さらに、素早く膝蹴りを放ち、拳を数度打ち込む


コッヴ「―――!」


怯んだコッヴから距離を取ると、コッヴが頭部から光弾を放つ

それをベリアルは両手を前に出して出現させた円状のバリアで弾く

そこに隙を見つける


京太郎『決めます!』

ベリアル『やるぞ!』


両腕を左右に開き、顔を前に出す


京太郎・ベリアル『デスシウム・ロアー!』


放たれた破壊音波の攻撃

それに怯むコッヴにさらに接近、素早く背後に回ってその尻尾を掴むと、勢いよく回す

宙に浮いて回転するコッヴを、離す


コッヴ「―――!!?」


空へと舞いあがるコッヴに、素早く両腕を振るった


京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃が空中のコッヴの体を真っ二つにした

地上へと落ちていくコッヴが、途中で光の粒子へと変わって消える

さらに光がゆっくり落ちていくのが見えた


―――その光の先には、風越の吉留末春がいる


京太郎『やっぱり……』



瞬間、さらに地面が揺れる

驚愕する京太郎が、その震源地らしき方へと顔を向けた

それはティガ石造があった山


京太郎『あれは!』


怪獣が、現れた

頭部が特徴的な、コッヴと同じく二足歩行の怪獣

さらに咆哮が響く、それは空から


京太郎『空にも!!?』

ベリアル『ゴルザにメルバか!』

京太郎『くそっ、だけどこっちはまだ!』


現れた二体の怪獣、ゴルザとメルバ

その二体が山へと攻撃を開始する


京太郎『こいつらティガの石像を狙ってるのか!?』


ゴルザが額から光線を、メルバが口から光弾を放つ

大地を揺るがす怪獣ゴルザ、空を斬り裂く怪獣メルバ


京太郎『やりますベリアルさん! 二体まとめて潰す!』

ベリアル『ハッ、気合入ってるじゃねぇか、上等だ!』


地を蹴り、ベリアルが二体の古代怪獣に飛びだす

今回はここまで
次回はゴルザとメルバとの戦いからだよー
そんじゃまた明日ー

酉間違ったこっち



―――【ティガの地:洞窟内】


凄まじい衝撃と共に、洞窟全体が揺れる

研究員たちを次々に起こして、逃がしていく慕と美穂子の二人

天井からパラパラと落ちてくる


慕「福路美穂子、さんだっけ! 早く逃げて、私一人でいいから!」

美穂子「い、いえ私もっ!」

慕「怪獣が来てるんだよ!? 子供にこんなことっ」


そう言いつつも、慕とて美穂子のおかげで避難が進んでいるのも理解していた

もう最後の研究員が出口へと向かう

数人の研究員たちが出口通路の傍で待っていた


慕「まったくもぉ、福路さん、早く!」

美穂子「は、はいっ!」


走って出口へと向かう二人

揺れるティガの像に視線を移すが、慕は顔をしかめつつ出口に視線を向け直した

いま必要なのはティガの像ではない


慕「なに? 鳴き声が変わった? ううん、増えた?」

「白築さん!」

慕「え……福路さん!」

美穂子「え?」


上から落ちてくる巨大な岩

このまま走って間に合う気がしない

だが―――


美穂子「ごめん、なさいっ!」ガッ

慕「っ!」


勢いよく、美穂子が慕を突き飛ばした

その反動で後ろへと跳ぶ美穂子、前へと転がる慕

その間に、岩が落ちる


慕「福路さぁん!」



起き上がる慕が叫ぶも、その声が届いているようには思えない

洞窟全体が揺れる音もそうだが、その奥

岩の向こう側からさらになにかが落ちる音などが聞こえてくる


慕「なんでっ、また子供ばっかり……!」

「白築さん、早く! ここで死んじゃぁ!」

慕「っ!」


揺れる通路を走って出口へと向かう


慕「っ!」


あふれ出る涙が頬を伝って地へと落ちていく



ベリアルがゴルザの背からその体を掴んで、山から遠ざける

勢いよく引き離されて転がるゴルザをよそに、ベリアルが右手から光弾を出してメルバを撃ち落とす

二体の怪獣が、ベリアルに狙いをさだめた


ベリアル『ハッ、超古代怪獣を超古代竜の二体か……!』

京太郎『こいつら、なんであれを!』

ベリアル『そういうもんだろ―――この世界、アレがあるのか?』

京太郎『え、あれって……』


起き上がった二体を前に、京太郎は言葉を止める

まずは出てくるはずの慕たちを避難させる時間稼ぎをしなくてはならない


ベリアル『気合入れとけよ、二体一だ!』

京太郎『二体二ですよ!』

ベリアル『ハッ、半人前―――いや四分の一人前で言うじゃねぇか』フハハ


ゴルザとメルバへと飛びだすベリアル

まだ余力はある

戦えるはずだ



ティガの像がある洞窟、その真上である山から離れた場所

コッヴが現れたような場所に存在していたのは人間―――ではない

体は人間のようで、スーツまで着ている

だが頭が黒く細長で、亀裂のように黄色い部分に単眼がついていた


????「ウルトラマンベリアル……最凶のウルトラマン」


そう言いながら、メダルを一つ取り出した

そのメダルに描かれているのは『コッヴ』に似たもの


????「なぜこの宇宙に……まぁ良い、早く片付けるか」


そう言いながら、その男(?)は“ゼットライザーのようなもの”を取り出してメダルを差し込んだ

ブレードを、可動させる


『スーパーコッヴ』

????「消えろ、ベリアル!」


そこから放たれる光が真っ直ぐに伸びて、怪獣を出現させた

先ほどベリアルが倒したコッヴ

そこからさらに洗礼された姿、鎌は鋭く胸のクリスタルの形も違う



咆哮と共に、歩き出した超コッヴ

ベリアルは掴みかかってくるゴルザをなんとか投げ飛ばし、メルバの光弾をバリアで弾く


京太郎『ベリアルさん!』

ベリアル『チッ! 超コッヴ……三体相手か!』

京太郎『くそっ!』



ゴルザと超コッヴの二体を、ベリアルは爪撃でひるませる

だが―――


メルバ「―――!」

ベリアル「ガァッ!」


メルバが放った光弾の直撃を受けて、ベリアルが後ろへと下がった

膝をつき、胸のカラータイマーが点滅を始める

さすがに三体一ともなれば苦戦もするだろう


京太郎『はぁっ、はぁっ……あ、あれは慕さんたち』

ベリアル『よそ見できるほど余裕か小僧?』

京太郎『そんなこと……あれ?』


そちらに、慕たちの方に美穂子の姿はない

先に脱出した様子もないはずだ

なのに―――


京太郎『ッ!?』


泣いている。慕が、泣いていた


京太郎『まさか……』

ベリアル『おい小僧!』

京太郎『ッ!』


慕が洞窟の方を振り返り、大粒の涙を流しているのが見える

なぜだか直感した

福路美穂子がどこにいるのか、どうしたのか


京太郎『あ、あ……アアアァァァッ!』

ベリアル『この力は……そういうことか!』


立ち上がったベリアルの目が赤く輝く


―――【ティガの地】


外からの振動が響く

起き上がるのは―――福路美穂子

切り傷や擦り傷、体は砂埃まみれ


美穂子「っ……生きてる」


両足をしっかりと動かして、ティガの像へと近寄る

なぜだか惹かれ、なぜだかそうしていた


美穂子「華菜を、久を……少し前、みたいにっ」


流れる涙、両目を開きその像を見上げる


美穂子「……!」


ティガの像のさらに上、天井が崩れる

山の一部が重力によって降りかかってくる

その瞬間、美穂子は―――


美穂子「―――光?」



赤い瞳のベリアル

空飛ぶメルバに光弾を数発撃ちこむ


ベリアル「ジャア!」


落ちるメルバにさらに追撃を放ち、近寄るゴルザに爪撃

斬撃が奔り、ゴルザが仰け反る


ベリアル「デアッ!」


さらに膝蹴りを打つと、即座にかかと落とし

逆方向から近寄る超ゴッヴに雷を放つとさらに回し蹴り

ゴルザを蹴りで倒すと、コッヴの方へと向きなおす


京太郎『テメエェェェ!』

ベリアル『ハッ! 中々やるじぇねぇか!』


さらに両腕を水平に構える


京太郎・ベリアル『デスシウムリッパー!』


超コッヴの胴体に斬撃が直撃した

だが先ほどのコッヴとは違い切断までに至ることもない

それでも弱ってはいるようでふらつく


京太郎『まだまだァ!』

ベリアル「シャア!」


振り返ると同時に腕を振るう

立ち上がって来ていたゴルザとメルバが後ろへと退く



そして超コッヴに狙いを定めると、ベリアルが走り出す

振るわれる鎌を避けて後ろへと回るとその胴体に腕を回す

尻尾を振るわれるより、早く―――!


京太郎『ダアアアァッ!』

ベリアル「ウオラァッ!」


超コッヴをバックドロップで投げ飛ばす

即座に起き上がるベリアル



超コッヴ「―――!」


ふらつきながらも起き上がる超コッヴ

ベリアルは即座に接近して拳を何度か打ち込む

超コッヴが鎌を振るおうとするも―――


ベリアル「ジャァッ!」


それに合わせるように両手で光弾を放ち、二つの鎌を破壊する


京太郎『まず一体!』

ベリアル『上等だ!』


両腕を構える

右手と左手をクロスし、必殺の光線を放つ


京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』


近距離で放たれた光線は超コッヴを貫き、爆散させた


京太郎『っし!』

ベリアル『油断するな小僧!』


素早く後ろへと下がるベリアル

そのベリアルに、ゴルザが光線を、メルバが光弾を放った

それを避けることもできずに、ベリアルは後ろへと吹き飛ぶ



京太郎『ぐっ! 大丈夫っすかベリアルさん!』

ベリアル『こんな雑魚どもにっ!』


起き上がるベリアルが両腕を構える

咆哮する二体の怪獣にどう立ち回るかを考えていた、その瞬間―――


ベリアル『ッ!』

京太郎『え、光?』


山から立ち上る光

それはおそらくティガの像があったその場所

空へと伸びた光が曲がり、ベリアルの隣に落ちた


京太郎『敵か!?』

ベリアル『この光を見て、敵か疑うたぁお前やっぱ』フッ

京太郎『え、なんっすか!』


隣に落ちた光から、なにかが現れた

片手を真っ直ぐと上に、そしてもう片手をまげて、現れるのは―――


京太郎『光の、戦士……?』


―――その名はティガ。超古代の光の巨人


ベリアル『ティガだと?』

京太郎『復活した……』


ティガが、上げていた腕を下げて腕を構える

前に出した手を平手に、後ろの手を拳に……


ベリアル『声、届くんじゃねぇか?』


その言葉に、京太郎は頷いてティガの方を見る


京太郎『味方で、良いんですか?』

ティガ「……」コクリ


頷くティガ、そしてなぜだか確信した

目の前のウルトラマンティガ……その、此度の―――


京太郎『ッ! ……行きましょうベリアルさん!』

ベリアル『ハッ、やれるみてぇだな』

京太郎『き、気のせいでしょ!』


両腕を構えるベリアルのその瞳は元の色へと戻っていた

ゴルザとメルバが咆哮を上げ、走ってくる

それを迎え撃つのは、ベリアルとティガ


◆BGM:TAKE ME HIGHER【http://www.youtube.com/watch?v=2FzlpZqyuKg


ベリアル「セヤァ!」

ティガ「デァ!」


二人のウルトラマンが走り出す



二人のウルトラマンが飛びだす

ベリアルはメルバへと接近し素早く爪撃で攻撃をしかける

さらに素早く打撃


ベリアル『一体一ならな!』

京太郎『負けねぇ!』


拳を打ち込む、その隣でティガがゴルザへと打撃をしかけていく

ベリアルとはまた違った戦い方であり、チョップからの蹴り、さらに光弾を放つ


ゴルザ「―――!」

ティガ「―――チャァ!」


両腕を眼前でクロスしたティガが、勢いよく両手を振るう

するとティガの姿が赤く変わった


京太郎『あれは!?』

ベリアル『タイプチェンジだな』

京太郎『そりゃうらやましいこって……!』


そう言うと、ベリアルが腕を振るう

斬撃でメルバが怯むがさらにベリアルは前蹴りを撃ちこんで下がらせる


メルバ「―――!」



退いたメルバが素早く顔をベリアルへと向ける

そして、その両目から破壊光線を放つ


京太郎『こいつで!』

ベリアル「ジャア!」


素早く前に出した両手から放たれる光線

それがメルバとベリアルの真ん中で弾ける


ティガ「チャア!」

ゴルザ「――-!」


下がるゴルザがベリアルの真後ろへとやっくると、ベリアルは爪を振るってゴルザを背中から斬る

怯んだゴルザの尻尾を掴み、ベリアルが投げ飛ばそうとするとメルバが再び交戦を放つ

だが前に出たティガがメルバへと光弾を放ち、射線をそらす


ベリアル「デヤァ!」


投げ飛ばされたゴルザが転がる

メルバが、空へと飛び上がった


京太郎『ベリアルさんメルバが!』

ベリアル『あ?』


だがティガが再びタイプチェンジを行った

その身体は紫色に変わる


京太郎『また変わった!』


ティガが素早く空へと飛び上がった

起き上がったゴルザがベリアルへと走る

ベリアルは跳び上がると、突進するゴルザの頭を踏んで、その向こうに着地し回避した



空を飛ぶメルバを追って、ティガスカイタイプが空を行く

後ろへと振り返ってメルバが目から光線を放つ

だが、ティガは軽く体をそらしてそれらを回避


メルバ「―――!」


逃げようと、加速しようとするメルバ

だが、ティガはそれよりも素早く、追い付いてその加速度のままメルバへと蹴りをみまう


ティガ「ゼァ!」

メルバ「―――!!」


その攻撃により高度が落ち、地上へとぶつかりそうになるも、すぐにメルバは体勢を整える

再び破壊光線を放つが、ティガは即座に回避

ティガは両腕を上空へと上げると、左わき腹へと手を構える


ティガ「デァ!」


右手が振るわれると、紫電の如き輝きが伸び、メルバを貫く

紫電の光、ランバルト光弾を受けたメルバが空中で爆散する



地上で、ゴルザを相手に格闘するベリアル

力はゴルザの方が強い

だが素早く爪撃で腕を振り払いつつ、拳を打ち込む


ゴルザ「―――!」

ベリアル「ダリャア!」


さらに回し蹴りを放ってゴルザを後退させる

弱っている様子のゴルザを前に、ベリアルが顎に手を当てて首を鳴らす

隣へと降りてくるティガが、タイプチェンジをして最初のマルチタイプへと戻った


京太郎『いきますよ!』

ベリアル『言われるまでもねぇ!』

ティガ「テァッ!」

ベリアル「ダリャッ!」


ティガが両腕を脇へとやり、すぐに真っ直ぐ伸ばし目の前で交差させる

それを開いていくと紫色の光があふれ出た


京太郎・ベリアル『デスシウム光線!』

ベリアル「ハアァッ!」

ティガ「デァッ!」


ベリアルのクロスされた腕、そしてティガのL字型の腕

放たれた二つの光線がゴルザへと直撃

ゆっくりと倒れていくゴルザが、爆散した


敵意を感じないことを確認して、ベリアルはティガの方を見る

ティガはなにを言うでもなく、静かに頷いた

ベリアルはそれになにを返すこともなく、空へと飛び上がる


ベリアル「デヤッ!」


空へと消えるベリアル

ティガはそれを見送ると、光と共に収束して消えた

そして、光が収まったその場所に立っていたのは―――


「ハァッ……ハァッ……」


―――福路美穂子

肩で呼吸をしながら、森の中で尻もちをつき木によりかかった

その疲労は、あの洞窟の中でのものだけではない


美穂子「華菜、久っ……」

京太郎「福路さん!」

美穂子「す、がくん……?」

京太郎「福路さん、大丈夫ですか?」

美穂子「だ、いじょうぶ……」


そう言って弱々しく笑う美穂子を見て、京太郎は顔をしかめる

抱えて帰るしかあるまいと、美穂子を見る

その手に持っているものを視界に入れて、息をついた


美穂子「ちょっと、疲れた……だけ、だから」

京太郎「……はい、休んでください」コクリ

美穂子「ん、ありが、とぉ」


眼を瞑り、一定の呼吸をする美穂子

安心したように京太郎は頷くと、その手に持っていた“モノ”を自分の手に

不思議な形をしたアイテムだった


ベリアル『スパークレンス、だな……似たようなのを見たことある。気がする』

京太郎「?」

ベリアル『まぁ良い、これで確定だな』

京太郎「はい……美穂子さんが、ティガ」コクリ



山を降りてすぐ、コンビニの駐車場にいるのは慕

スタッフたちも数人が残っているだけでほとんどが熊倉トシの施設へと向かったようだった


慕「京太郎くん、通信に応えて……!」

「白築さんあれ!」

慕「え?」


スタッフの声に慕がスタッフの指差す方を見る

そこには須賀京太郎、それに……


京太郎「おーい!」

慕「福路さんっ!」


流れそうになる涙を拭って、慕が走っていく

京太郎へ、その背中に乗せている美穂子へ―――



森の中、落ちているメダル

ゴルザのメダルを拾う影

赤い髪をなびかせる竹井久が、虚ろな目で拾ったメダルを確認した


久「超古代怪獣……」


それを素早く投げれば、受け取る影

先ほどの宇宙人だった


「ご苦労だ……ゴルザ、メルバ、そして超コッヴ」


三枚のメダルを手に入れて、笑う宇宙人

それを見るのは竹井久、そしてその隣には池田華菜


「中途半端な因子のメダルだが、やはり人間に入れて熟成させると……完璧になるなぁ」

久「それで、これから?」

「レギュラン星人、お前は戦闘向けの生物ではないからな……色々と、私が考えてやろう」

久「……貴様」

「役に立つはずだ。貴様の同族の復讐のためにも」

久「……」


なにを言うでもなく、竹井久―――レギュラン星人は山を下りていく


ベリアルとティガが戦った山近く

カメラを持った男がいた

その近くにはメガネをかけた記者


「どう?」

「ウルトラマンの写真は取れましたけど……」

「上々!」


グッと手を振るう女性、西田順子

そしてカメラマンの男の名は山口大介

二人は『WEEKLY麻雀TODAY』の記者であり、京太郎の所属する清澄高校とも関わりがある二人


大介「でも俺らって、麻雀雑誌の記者ですよね? ウルトラマン撮っても」

順子「いえ、私たちはウルトラマン関係の記者よ」

大介「はぁ?」

順子「編集長には話を通してる……表だって報道されない雀士行方不明とコレ、関係あると思わない?」

大介「根拠は?」

順子「勘よ……だから追うわよ。ウルトラマンを」ニッ

大介「……はい」ハァ


意気揚々と歩き出す順子に、大介はため息を吐きつつ着いていくのだった



     第4話【光を継ぐ者】 END


―――次回予告


京太郎:鶴賀に異変!

はやり:私はさながら囚われのヒロインってわけだ!

トシ:こんな元気な囚われのヒロインはいない

京太郎:強敵ですベリアルさん!

ベリアル:対ウルトラマン用だろうが関係ねぇ! 潰す!


次回【闇の力】


ベリアル:おもしろい、やってみろ!

京太郎:力、お借りします!


今回はここまでー

前の選択肢のもう一個の方っす
明らかに前にやってたら違うなーって話の展開もあったりー

そういえばティガが円谷イマジネーションに来たり
丁度タイムリーな展開だったなーとかー

次は金曜にーそんじゃまたー

そういや今更ながらベムラーとアーストロンのメダルがあるんだよな
ベリアル融合獣にもいつか変身するのだろうか

よーしやってくー

>>180
ベリアル融合獣に関しては、まぁお楽しみってことで!



―――【特異課施設:休憩所】


あれから一日

美穂子は未だに眠っているようで、さらに吉留末春

そして付近で深堀純代、文堂星夏も発見された


京太郎「……」


まだ風越の面々が起きた様子はない

だが……


智美「ワハハ、暇か」

桃子「あ、京さんじゃないっすか」

佳織「今日はお仕事ないんだねぇ」


やってきたのは蒲原智美を筆頭に桃子と佳織

ティガが蘇ったあの日の夜、智美が起きたのだがやはり記憶は曖昧なようだった

津山睦月を見た、とのことは聞いていたのだが……


京太郎「ふむ……」

智美「むっきー、見つかりそーか?」

京太郎「全然」ハァ


息をつく京太郎、その視線の先にはテレビ

映っているのはベリアルこと自分と、ウルトラマンティガだった



京太郎「……」

智美「おーウルトラマン、私の恩人だなーワハハ」

佳織「私も、なんだよね……」

桃子「私はそうじゃないらしいっすけど」


確かに佳織と智美を止めたのはベリアルだ

だが、それも京太郎にとってはやらなくてはならないことだった

人々を守る。それが今の京太郎のやるべきことだ


ベリアル『どぉーせ使命だとか、なんとか思ってんだろ?』

京太郎『うおっ!? なんでわかるんっすか!』

ベリアル『やめとけ、そういうタマじゃねぇよ』

京太郎『……え、どういうことっすか?』

ベリアル『さてな』


それだけ言うとベリアルは返事をしなくなった

小首をかしげる京太郎


佳織「京太郎くん、そういえば瑞原さんは?」

京太郎「ああ、今日も鶴賀だと思うんですけど……」

ピピピピ

京太郎「あれ、通信」


そう言うと、携帯端末を取り出した


京太郎「はいどうも」

裕子『京太郎くん、ちょっと第三医務室までお願いしていい?』

京太郎「っ! はい……」

桃子「仕事っすか?」

京太郎「おう、行ってくる!」

桃子「行ってらっしゃいっす」ニコッ タユン

京太郎(おもち!)



休憩所から離れて、京太郎は佐藤裕子に指定された部屋へとやってくる

インターホンを押すと、ドアが開いて裕子が顔を出す


京太郎「え、ど、どうも?」

裕子「……ん、どうぞ」

京太郎「どうも」


軽く会釈をして中に入ると、そこにはベッドに座っている少女

そうは言っても京太郎よりも年上なのだが……福路美穂子は相変わらず右目を閉じたまま、京太郎を見た

少しも驚いた表情を見せないのは裕子からある程度聞いていたのか……


京太郎「えっと……おはようございます?」

美穂子「えっと、おはよう?」


二人でぎこちなく挨拶をして、笑う

入院服のようなものを着ている美穂子

だが! その胸は豊満であった!


京太郎(いかん、俺としたことが……)ブンブンブン

裕子「あ~」ジト

京太郎「な、なんっすか」

裕子「さてね、まぁそのぐらいの方が健全か」

京太郎「ちょ!」カァッ

美穂子「?」


座っている美穂子の正面に、椅子を出して座る京太郎

裕子はと言うと、頷いて外に出てしまった

知り合い同士でと、気を使ってくれたのだろう


京太郎「……その、福路美穂子さん」

美穂子「あ、その……気絶した私を背負って連れてきてくれたんだよ、ね?」


話を明らかに切ったのだが、理由は予想がつく

美穂子は、ベリアルが京太郎だと気づいていないのだろう


京太郎「……」

美穂子「うっ……む、無理?」

京太郎「はい、俺はわかってますから……」


その言葉に、美穂子がため息をつきつつ頷く


美穂子「光を掴んだの……それで、戦わなくちゃって、あの……べ、ベリアル、さんと」

京太郎「そっか、ティガとして、ウルトラマンとして、か……」

美穂子「……」

京太郎「その……」スッ


服の内側から取り出したのは“スパークレンス”

ベリアル曰く、ティガに変身するためのアイテム


美穂子「あ、これ……」


すぐに理解したのか京太郎の手から受け取って両手でそっと持つ

使い方も心得ているのは文字通り“光を受け継いだ”からか……


京太郎(俺ともまた違うか……)


ベリアルと自分のように同居しているような感じでもない


京太郎「美穂子さんが、その……これを手にすると、また戦うことになります」

美穂子「……」


じっと、美穂子の眼を見つめた

京太郎と美穂子、二人の赤い目が交差する


京太郎「義務感で戦うもんじゃないですよ」

ベリアル『良く言う』

京太郎『え?』

ベリアル『……ていうか、それじゃお前がオレだってバレちまうんじゃねぇか?』

京太郎『う、そこはなんとか……』


目の前の美穂子が、フッと息をついて笑みを浮かべた


美穂子「ううん、戦うわ……私はね、光を継いだ。きっと守るために」

京太郎「……」

美穂子「私自身も守りたいと思う、人が好きだし……なによりも、華菜と久のために」ニコッ

ベリアル『こいつ本心から言ってやがる』

京太郎『えー嫌そうに言いますね』

ベリアル『嫌だからな』

京太郎「……美穂子さん」


美穂子「どうしたの?」

京太郎「お願いします」


そう言って笑うと、美穂子も笑顔を浮かべて頷いた

その後は簡単な話だ

彼女の正体は言わないだとか

自分と同じ立場の方が戦いやすいと、トシには口利きしておくだとかだ


京太郎(まぁ、一緒に麻雀で戦うことはできないだろうけどなぁ)

美穂子「えっと、それじゃあ熊倉さんに話を?」

京太郎「はい、あの人ならなんとかしてくれると……思い、ます」コクリ

美穂子「京太郎くんがそこまで信用してるなら、大丈夫ね」クスッ


笑う美穂子に、京太郎も笑って返す

だがしかし、トシを信用しているのは確かだが謎が多いのも確か

彼女は一体何者なのだろうとも思う


京太郎『しばらく顔出してないけど、あの人……美穂子さんのこと知ってると思います?』

ベリアル『たぶんな、あの感じ……普通じゃねぇだろ』

京太郎『ベリアルさんが言うなら間違いないんでしょうけど』


頭の中でベリアルと会話をしていると、扉が開いた

美穂子は慌てながら入院服の中にスパークレンスを隠す


京太郎(おー……正直、その、いい……)

裕子「さ、福路さん、着替え持ってきたから」

京太郎「それじゃ俺はこれで!」

美穂子「あ、うん」コクリ

京太郎「……それじゃ、また」フッ

美穂子「ええ」ニコリ

裕子「ふ~ん」

京太郎「え、な、なんっすか」

裕子「すーぐ女の子と仲良くなるんだから」

京太郎「えー、別に良いじゃないっすかぁ」

裕子「……別に良いけど」ジト

京太郎「?」



美穂子の部屋から出て、京太郎はすぐに呼び出された作戦室へと向かう

ティガの一件から増えたスタッフたちに軽く会釈しながらトシの待つ部屋へと入った

そこにいたのは、トシの一人


京太郎「来てたんですね」

トシ「まぁね……とりあえず瑞原から連絡もあったし」

京太郎「いつ?」

トシ「さっき」

京太郎「……え、すぐ来たんっすか? ターボババァ?」

ゴッ

トシ「ぶつよ」

京太郎「ぶってるぅ」ヒリヒリ


頭を押さえながら、京太郎がトシの方を見る

ともかく、とドッシリと椅子に座する熊倉トシが端末を叩く

そこに映っているのはウルトラマンティガ


京太郎「……美穂子さんは、戦うって」

トシ「そ、なにより……」

京太郎「あっけからんとしてますね」

トシ「あの子がティガに、光に選ばれた時点でわかってたことさ」

京太郎「……?」

トシ「あの子はシンプルに、人々を愛するタイプだからね。ウルトラマンに向いてる」


その言葉に、京太郎は自分の手を見る

一瞬だけベリアルの手が重なって見えて、その直後黒い手が重なって見えた


京太郎「ッ!」

トシ「悩んで戦って答えを出す。それが人間でありティガ」

京太郎「え?」

トシ「なにはともあれ、京ちゃんとは違うってことさ」

京太郎「なんっすかそれぇ」

トシ「まぁ人それぞれ、あるってことさ」


トシ「とりあえず福路に話は通しておくよ」

京太郎「あの、美穂子さんの正体については」

トシ「わかってるよ。知らないふりする」


そう言って端末を操作して、ティガの画像を小さく

そして鶴賀学園の画像が大きく映し出された

おそらくだがはやりが撮った写真なのだが、そこに映っていたのは


京太郎「……加治木さん?」

トシ「そう、加治木……ただし、こいつ」

京太郎「……メダルを、握ってる?」

トシ「そ、ちなみにこの後、麻雀やったらしい」

京太郎「ッ!」


つまり、そういうことだろう

しかしメダルを入れられた人間がそこまで狡猾に動くのを見たことが無い

そのはずなのだが……


トシ「ちなみにそっから瑞原から連絡がない」

京太郎「一大事じゃないっすか!」

トシ「だから呼んだ。頼んだ……はい、特異課手帳」

京太郎「なんっすかこれ」

トシ「警察手帳みたいなもんさ、見せりゃなんとかなる」

京太郎「えー眉唾」

トシ「いいから行っといで、瑞原があんなことやこんなことになる前に」

京太郎「行ってきます!」ダッ



     第5話【闇の力】


―――【鶴賀学園:一階】


スーツ姿、サングラスをかけた京太郎が歩く

顔を隠せと言うことでもらったがいかんせん、ガラが悪い気もする

手帳を見せたら当然のように入れたがそれも意味が分からない


京太郎(世の中、知らないことばっかだなぁ……案外宇宙人とかも珍しくなかったり?)


そんなことを思いながら歩く京太郎の隣を歩く女子生徒二人

なんだかコソコソと話をしながら去って行った


京太郎(絶対、恐がられてる)


「今の人こわぁ」

「え、カッコ良くない?」

「まぁどっちかってーと?」


歩いていく京太郎のつけているサングラス

その内側、右方向がピコピコと光る


京太郎(こっちか、はやりさんの反応……)


はやりの端末を示しているらしい、とトシから聞いた

内ポケットのガッツハイパーはいつでも手に取れるようにはしている

だが、実際に出てきたとして“加治木ゆみ”を打てる気がしない


京太郎「……いや、なにかあってからじゃ遅いからな」



一階の反応がある教室を覗く

だが、そこにはなにもなかった

サングラスの内側の反応は、上を示していた


京太郎「……もっと上? いや、三年の教室があるのは二階、だよな」


ということは、と京太郎は小走りで上階へと向かっていく

すぐに反応を追って行き京太郎は部屋の前へとたどり着いた

明らかに異常な気配を感じる


京太郎「……っ」

ベリアル『上等じゃねぇか、やっちまえ!』

京太郎「はやりさん!」


扉を勢いよく開けて中へと入る

カーテンが引かれた暗い教室

その中に、少女が1人で立っていた


京太郎「加治木、ゆみ……!」


ガッツハイパーを構えるその手に、震えは無い

彼自身も驚くほどだった


京太郎「……人でなしか、俺は」

ゆみ「そうだな。貴様は人でなしだ……ベリアルの器」フフフ

京太郎「ハッ、まさかこんな風に会話できる敵がいるとは」


負けじと笑ってみせるが、内心では気が気でない

銃口はまっすぐゆみの方を向いている


「京ちゃん!」

京太郎「はやりさん!?」


そこには立てられた十字架にはりつけられているはやり

京太郎がガッツハイパーをそちらに向けた


ゆみ「甘いなベリアルの器!」ガッ

京太郎「っ!」


蹴りでガッツハイパーが弾き飛ばされる

だが、京太郎は体勢を低くして足払いをかけた

跳んで回避したゆみが京太郎と距離を取る


ゆみ「ゼットン星人もこんなものに遅れを取るとは」

京太郎「チィ!」

ベリアル『おい、こいつは一味違うみたいだぞ』

ゆみ「……どうした? ベリアルの器」

京太郎「パンの袋とめるアレみたいに言うんじゃねぇよ」


構える京太郎、次の行動を待ち構えるも―――


ゆみ「それじゃ、これは?」パチンッ


その音共に、カーテンが開かれる

明るい陽射しが教室内に差し込む


ゆみ「さぁ、十分に育ったろう……!」


その向こう、街に現れる影

光りと共に―――巨大なアリジゴクのような怪獣が現れる


京太郎「ッ!」

ベリアル『アリブンタか!』

ゆみ「さぁ、どうする?」

はやり「行って京ちゃん!」

ゆみ「黙れ!」


その瞬間、十字かに電撃が奔る


はやり「がっ、あああっ!!?」

京太郎「はやりさん!」

はやり「っ……アァァッ!」



京太郎「お、お前ッ!!」

ゆみ「フハハハハ!」


外のアリブンタが徐々に迫ってくる

まだ小さく見えるほどの距離ではあるものの、それは確実だ

十字架からの電撃は収まっている


はやり「っぁ……はぁ、はぁ……」

京太郎「っ」

ゆみ「変身しようとすれば」


だが次の瞬間、アリブンタに銃撃が奔った

驚愕に眼を見開くゆみ

京太郎はその顔に笑みを浮かべる


京太郎「頼んだ、美穂子さん!」



―――【街中】


トシの運転で、スーツを着た美穂子は街中へとやってきていた

タイミングよく現れたアリブンタ

二人は避難誘導を始めるも……


美穂子「あっちの避難誘導にいきます!」

トシ「……任せた!」


頷いた美穂子がアリブンタを相手にガッツハイパーを撃ちながら走る

アリブンタが美穂子の方に顔を向けた


美穂子「ちゃんと囮はやれてるわね……」


走って裏路地に入る

やることはただ一つ、決めたことだ


美穂子「人々を守る。そのために私は光を……!」


スーツの内側から、スパークレンスを取り出す

強い瞳で、両目を開き……腕を回す


美穂子「……!」


そして、光が溢れる



―――【鶴賀学園:二階教室】


街中に現れた光の巨人―――ウルトラマンティガ

アリブンタの行く手を遮り、素早く蹴りをみまう

怯み、倒れるアリブンタ


ゆみ「なっ!?」

京太郎「そこだぁっ!」


素早く跳びだした京太郎が、ゆみへと接近して脚を振るう


京太郎「ごめん加治木さんっ!」


ゆみは素早く腕を横に出して凌ぐも、勢いを殺し切れず床を転がる

はやりの拘束を解こうとするが、起き上がったゆみの方が早かった

その瞳がエメラルド色に輝く


ゆみ「ならばァ!」

京太郎「!!」


瞬間、光と共に、校舎が吹き飛ぶ


校舎を拭き飛ばし、現れるのは巨大な影

金色の鎧のようなものを纏った人型ロボット

右手にナイフ、左手に鋭利なカギ爪


『潰れろベリアル!』


だが次の瞬間、光りと共に現れる白銀の巨人―――ベリアル

体を丸めた状態で現れると、手をそっと下げる

その手から、眠っているはやりが地に降ろされた


『らしくないことを!』

ベリアル『オレもそう思うが、やったのは小僧だ』

京太郎『お前ェ!』


立ち上がると、そのまま敵へと掴みかかる

はやりに被害が及ばぬようそのまま転がって離れると、すぐに距離を取った

もちろん、はやりがいる方を背にだ


ベリアル『エースキラーか』

京太郎『エース殺し、加治木さんにはあってる、のか?』

ベリアル『そういうエースじゃねぇけどな』

京太郎『え?』

ベリアル『だが……あれは中身、いやもっと前提、ヤプールの意思か』

京太郎『誰っすか』

ベリアル『雑魚だ、気にすることじゃねぇよ』

エースキラー『ベリアルゥ!』


両腕を開いて怒りを表すと、エースキラーはベリアルへと走り出す

ってことで今回はここまでー

次回はようやっと戦い
五話にしちゃ展開早い気もするけどまぁ最近のウルトラマンなら普通普通
とりあえずエースキラー戦

もしかしたら明日かも?
そんじゃまたー

まあどっかの最後の勇者よりはマシかと
なんせアイツはこの辺りで合体魔王獣やラストジャッジメンターと戦ってるからな

ようし、やってくー
今日までに五話終わるかなー

>>202
魔王獣はジャグジャグの手加減あったんだろけど……ギルバリスはヤベーイ


叫び、吠えたエースキラーがベリアルに向かって走る

振るわれたナイフを左手の爪撃で凌ぎ、右手の爪撃で攻撃

だがその攻撃は右手の鉤爪に止められる


ベリアル「!」

エースキラー『半端な力で復活した貴様が、勝てると思うかァ!』

ベリアル『くっ、テメェだってそうじゃねぇのか?』

エースキラー『侮るな、こちらはメダルの力をこの女の力を使い増幅させ……さらにエースキラーの執念、そして私の執念をも取り込んだ超獣ロボット!』

京太郎『ベリアルさん!? 超獣って!?』

ベリアル『怪獣を超えた怪獣、とかヤプールが勝手に言ってるだけだけどなぁ!』


エースキラーの左腕が振るわれるが、ベリアルはその手首を掴む

さらにナイフが振るわれるがそちらの手首を掴んだ


エースキラー『防戦一方のようだなベリアル!』

ベリアル『チッ! 気合入れろ小僧!』

京太郎『入れてますよさっきからぁっ!』


徐々に、力負けしてベリアルが膝をつく

エースキラーのエメラルド色の眼がジッとベリアルを見下ろす


ベリアル『ヤプールっ、テメェ……メダルに取りついた残留思念風情がっ!』

エースキラー『それは貴様も一緒だろうベリアル! フッハハハハ!』

京太郎『っのぉ!』


頭を振りかぶり、そのままエースキラーの頭部にぶつける

ふらつくエースキラーを相手に、ベリアルは素早く後ろに下がろうとするも、エースキラーは素早くナイフを振るった


ベリアル「グアァッ!」

京太郎『ぐぅっ!』

エースキラー『そらぁっ!』


さらに鉤爪での攻撃で、ベリアルはふらつく


エースキラーが追撃とばかりに蹴りをみまう

ふらついたベリアルが転がるも、すぐに起き上がり手から光弾を放つ


ベリアル「ハァ!」

エースキラー『効くか! そんな情けない攻撃が!』


その光弾を軽く弾くと、エースキラーが額からビームを放つ

素早く転がり、ベリアルは攻撃を回避しさらに左手から雷を放った


京太郎『こいつで!』

エースキラー『そのような半人前の人間と同化した貴様のなにが最凶か!』


雷が当たるかと思われたその瞬間、右腕が前に出されエースキラーが光線を放つ

その光線が、押し負けてベリアルに直撃


ベリアル「ガァッ!」

京太郎『俺が足を引っ張って……またっ』


歯がゆさに顔をしかめて、京太郎は力を込めた


京太郎『俺は、人々を守るために!』

エースキラー『そんな力でウルトラマンのようなことを言う!』

京太郎『今の俺はウルトラマンだ!』

エースキラー『笑わせる! 貴様はウルトラマンではない! その器でもな!』

京太郎『なっ、言わせておけば!』

ベリアル『小僧! さっさと決めるぞ!』

京太郎『はい!』


起き上がるベリアルが、右腕に雷を纏う



ベリアル『チッ! こんな奴に!』

京太郎『負けるかァ! デスシウム光線!』


放たれるデスシウム光線だが、エースキラーは両腕をクロスにする

左手を水平に前、右手を垂直に後ろ―――それはベリアルと同じ構え


エースキラー『スペシウム光線!』

京太郎『同じ!!?』

エースキラー『ハァ!』


ぶつかった光線、だがそれは呆気なく結果が決まる

そのままエースキラーの光線がベリアルの方へと迫った


京太郎『ッ!!?』

ベリアル『クソがァ!』

エースキラー『貴様らのようなウルトラマンのなりそこないが、消えろ!』


真っ直ぐと、ベリアルへとぶつかる光線

そのまま吹き飛んだベリアルは校舎を押しつぶして倒れた

はやりは踏んでいないはずだし、避難は済んでいると思いたいところだが……


京太郎(ベリアルさんは悪くない、でもっ! 俺がッ!)


ベリアルの中にいる京太郎は拳を握りしめる

噛みしめた唇から血が流れる感覚がした


京太郎(俺はっ、人々を救う。救わなきゃなんだよ!)



一方、ティガはアリブンタとの戦いで苦戦していた

ティガである美穂子は知らないだろうが、そのアリブンタもまた“ヤプールの執念の力”で強化されている

スカイタイプとなったティガが素早く連続打撃をするが、効いている様子はない


ティガ「!」

アリブンタ「―――!」


振るわれるアリブンタの腕

ティガが素早く回避するも、そのまま回転したアリブンタの尻尾攻撃を受ける

ひるむティガに、アリブンタは近距離でハサミから炎を撃つ


ティガ「ウアッ!」

アリブンタ「―――!」


炎に包まれるティガだが、素早くパワータイプにチェンジ

その火炎攻撃に耐えながら拳を振るってアリブンタをひるませた


美穂子『このアリさん、強い!』

ティガ「ハアァ!」」

アリブンタ「―――!!」


拳を打ち込まれて、アリブンタが怯んだ

だがそれで少しばかり距離を取ったアリブンタは口から蟻酸を放つ

ティガは両手を前にしてバリアを発生させる


アリブンタ「―――!」

ティガ「―――!」


バリアを解いたティガが、手から光弾を放ってアリブンタを攻撃する


倒れているベリアルへと近づいたエースキラー

ベリアルの胸のカラータイマーが、点滅を始めていた

圧倒的な劣勢―――


京太郎『それでも、それでも俺はっ! 守らなきゃっ!』

ベリアル『おい小僧!』

京太郎『ベリアルさん、俺はッ!』


立ち上がるベリアル

エースキラーは鉤爪でそんなベリアルの首を掴み上げる

両手でその腕を掴むが、ベリアルの体はそのまま徐々に持ち上げられていく


エースキラー『仲間割れとは、ベリアル、貴様らしい!』

ベリアル『黙りやがれっ!』

京太郎『このっ!』


エースキラーがナイフをベリアルへと向ける


ベリアルが倒れている鶴賀学園

その近くのマンションの屋上に、誰かがいた

ローブをまとった真っ黒な人物


「ベリアル様……貴方の力はそんなものじゃない」


そう言うと、ローブに隠れた腕を振るう

それはメダルであり、真っ直ぐに倒れているベリアルへと向かって行った


「だが、その“異物”が余計だ」


足元から消えるローブの人物


「それが早々に消え去ることを期待しています。または、ベリアル様の糧となることを……」


ベリアルの中、インナースペースで首を押さえている京太郎


京太郎「ぐっ!」


浮遊感と首を絞められている感覚

呼吸困難になりながらも、突如目の前に現れたそれを見て顔をしかめる


京太郎「こ、れはっ……」

ベリアル『小僧、気合入れろォ!』

京太郎「こ、こいつ、でっ……!」


目の前に現れたメダルを、右手で掴む


ベリアル『なにやってるっ、小僧!』

京太郎「べ、ベリアルさん! メダルがっ……うわっ!」


右手に持ったメダルが、左手に持ったゼットライザーに引き寄せられていく

それに異様な感覚―――“深い闇”を感じる


京太郎「闇がっ……こ、こんなっ!」

ベリアル『なにしてるっ! 小僧ォ!』

京太郎「や、闇の、力っ……」


京太郎の右手ごと引き寄せるようにメダルがゼットライザーへとハメられた

体が操られるように、ゼットライザーのブレードを動かす

そして、メダルが読み込まれる


『Alien Rayblood』


―――レイブラッド星人


今にもナイフを突き刺されようとしているベリアル

だが次の瞬間、その身体からあふれ出る大量の―――闇


ベリアル「ウオォォォ!」

エースキラー『なっ、なにィ!!?』


勢いよくあふれ出た闇に、吹き飛ばされるエースキラー

その場に、着地するのはベリアル


ベリアル『小僧! この力!』

京太郎『闇っ、この力ッ……!!』

ベリアル「ウオォォォッ!」


そしてその闇はベリアルへと吸収されていく

纏うは闇、全てを飲み込む力

光の相対―――そしてベリアルが“変身”する


エースキラー『そ、その姿は!』

ベリアル『ハッ! よーやく盛り上がってきたじゃねぇか、なぁ小僧?』

京太郎『こ、この力はッ!?』


その身体には黒と赤、先の形態とは正反対の姿

荒々しい表情、そして荒々しい姿、鋭い爪

ベリアルは構えを取ると、狼狽するエースキラーへと走り出す


エースキラーへと接近すると即座に爪を振るう

その一撃は先ほどよりも強力


エースキラー「―――!!?」

ベリアル『戻ってきたじゃねぇか、力がァ!』

京太郎『こんな凄い力!』


高揚する感情

さらに連続で爪撃を放っていけば、エースキラーはなんとか防ごうと両腕の武器を使う

ベリアルの爪をナイフで凌ぐが、即座にもう片手で弾かれる


ベリアル『今のオレに!』

京太郎『勝てるかよォ!』


エースキラーが左手の鉤爪でベリアルの次の攻撃を凌ごうとする

だが、今のベリアルの攻撃はそれでは凌げない

鉤爪ごと、ヅタヅタになるエースキラーの左手


ベリアル『気にくわねぇ類の奴の力だが、力に良いも悪いもねぇ、やるぞ!』

京太郎『でも、これは……』

ベリアル『小僧!』

京太郎『は、はい!』


ティガが、アリブンタの右腕を光弾で吹き飛ばす

さらに左手のハサミをパワータイプの怪力で破壊した


アリブンタ「―――!!」

美穂子『強かった、けど……私は守りたいから、みんなを!』


力強い拳が、アリブンタの胴体を突く

後ろへと仰け反るアリブンタを掴まえると、そのまま回転

凄まじい回転力のまま、アリブンタを上空へと吹き飛ばす


ティガ「ハッ!」


きりもみ回転しながら空へ飛び上がるアリブンタへ、ティガは両手を構える

赤い光が、ティガの両手に集まっていく


ティガ「……ハァ!」


赤い光弾、デラシウム光流が真っ直ぐに伸びていく


アリブンタ「―――!!?」


上空のアリブンタに直撃すると同時に、爆発

爆風と共に、小さな光が地上へと落ちていくのが見えた

それに頷いたティガは、すぐにベリアルの方を見る


美穂子『あれは!!?』



振るわれる腕、爪撃を止める術もなく食らっていくエースキラー

中身、であると思われるヤプールの戸惑う声が聞こえる


エースキラー『なんだ、なぜ闇の力が! レイブラッド星人の力が!』

ベリアル『誰かは知らねェが、力自体はお前らと似たようなもんだろォ!』


上からの爪撃、その勢いのまま回転したベリアルが蹴りを放つ

直撃してエースキラーが倒れる

走って接近したベリアルが倒れたエースキラーに爪を突き立て、上へと振るう


エースキラー「―――!!?」

ベリアル『こいつで決めるぞ小僧!』

京太郎『は、はいっ!』


両腕をいつも通りに構えるベリアル

左手を水平、右手を垂直、そして右手の手の平を目標に向けて


ベリアル『デスシウム光線!』

京太郎『で、デスシウム光線っ』


放たれた光線が、上空のエースキラーを貫き―――爆散


ベリアル『ハッ!』


右手を振るい、左手を顎にそえて首の音を鳴らす



黒きウルトラマン

最凶と言われたベリアルの姿がそこにはあった

京太郎の知らないもう一つの姿


ベリアル『これならしばらくは困らねぇな……相手が対策してこなきゃだが』

京太郎『ッ!」

ベリアル『あ? なんだ小僧、ぐっ!』


瞬間、ふらついて膝をつくベリアル

駆け寄ってくるティガが、ベリアルの傍に寄る


美穂子『京太郎くん!?』



―――【インナースペース】


立っている京太郎は狼狽していた

周囲を見渡すその瞳に映る動揺


京太郎「なんだよっ、これ!」


いつもの白銀の空間とは違う

周囲には闇


京太郎「ま、纏わりつくな! くるな!」

ベリアル『闇を受け入れろ……!』

京太郎「そ、そんなふざけたことっ!」


腕を振るう京太郎が闇を遠ざけようとする

だが迫る闇は―――止まらない

>>216
ミス
×美穂子『京太郎くん!?』
〇美穂子『ベリアルさん!』


インナースペースでの京太郎

そんな彼を知らない美穂子ことティガはベリアルの傍にいた

だが突如、ベリアルの腕が振るわれる


ベリアル「ガァッ!」

ティガ「グァ!」


その腕の直撃を受けて、ティガが倒れる


美穂子『な、なに!? ベリアルさん!?』

ベリアル「ガアァ!」


暴れるベリアルの手から光弾が放たれた

それが瓦礫を吹き飛ばす


美穂子『て、敵なの!? 闇の力に、操られてるとか!?』

ティガ「テァ!」


パワータイプの力で抑えつけようとするが、ベリアルの爪撃をもらう

ティガのカラータイマーが赤く点滅を開始する


ベリアル「ウオォォ!」

美穂子『ベリアルさん! 届かないの!?』


まだまだだと、近づくティガ

爪での攻撃を回避して胴体にタックルをする

そのままベリアルを地面に倒すも、身体を回転させられてマウントポジションを取られた


ベリアル「ウゴアァァ!」


そのまま両手は、ティガの首へと伸びた

グググ、とティガの首がしめられていく


―――【インナースペース】


京太郎「闇がっ!」


紅に輝く瞳の京太郎が、暴れていた

体を振りまわす京太郎は闇から逃れようとしている


京太郎「っ……!」

美穂子『ぐっ……べりある、さんっ』

京太郎「!」

美穂子『あなたはっ、うるとら、まん、人々を守るっ……』


瞬間、京太郎がハッと前を見る

そこに立つのは黒いウルトラマン


ベリアル『……小僧!』

京太郎「ベリアルさん!」



ティガに馬乗りになっていたベリアルの姿が消えていく

そして、立ち上がったティガが上空へと跳び上がった

空へ消えていくティガ


京太郎「……」


そんなティガを見ながら、京太郎は瓦礫の中で倒れている

全身ボロボロで、口の端には血がにじんでいた


京太郎「俺はっ……」


左手にはゼットライザー、そして右手に握られているのはレイブラッド星人メダル

その顔には、悔しさが滲んでいた

なにに対してのものかはわからない。京太郎自身にも……


京太郎「俺はっ……なにをしたって、弱いっ」


勢いよく上げた右手を、地面に叩きつけた



     第5話【闇の力】 END



倒れている京太郎を、高い場所から見下ろすのは熊倉トシ

静かに息を吐きつつ周囲を見渡す


トシ「……誰がレイブラッド星人メダルなんか、って予想はつくけど」


右手でメダルを弾き、右手で撮る


トシ「メダルと執念、厄介だね……」


持っているメダルからあふれ出るのは―――闇


トシ「京ちゃんは弱いんじゃない、不器用なだけだよ」


憂鬱とした表情で別方向を見るトシ

そこには周囲を見回している美穂子、そしてはやり

おそらく京太郎を探しているのだろう


トシ「ベリアル、京ちゃんを……」グッ



―――次回予告


ベリアル:闇を受け入れろ

京太郎:闇!?

ベリアル:オレと、闇と共に!

京太郎:これは、この力はッ!

ベリアル:己の欲望を受け入れろ!


次回【欲望-EGO-】


ベリアル:テメェはウルトラマンになんてなれねェ!

京太郎:俺は、俺はァ!!

今回はここまでー

どっかで見たことあるようなないようなな感じで
ウルトラ特有の主人公迷走回ー
ちょっと早いけど、この手のは早めにね!

ちなみに次回予定の安価
1、妹尾佳織
2、東横桃子
3、蒲原智美
4、福路美穂子
5、瑞原はやり
6、佐藤裕子
7、白築慕

って感じですー
まぁ純粋に迷走イベントがそのキャラメインになるって感じっす

それじゃまた明日ー


レイブラッド星人メダルで強化はおもいしろい
それと展開的にはサンダーブレスターの話思いだすな
安価は好きなキャラでいいならはやりんいってみるかな

考えてみればすごい図だな
京太郎が美穂子に馬乗りになってたんだから

おっし再開してこうかなー
安価は案外すぐにくるはず

>>225
オーブ意識してました
ベリアル回だったしね!

>>226
それはイッチも思った



―――【特異課施設:休憩所】


座って、コーヒーを飲んでいる京太郎

その視線の先には、暴れる黒いベリアル


『このベリアルと呼ばれる巨人はやはり敵なのでしょうか?』

『やっぱり黒くなったってことは今まで正体を隠してたんですかね?』

『最初から信用するべきじゃなかったんだよ! 荒々しいし、悪い宇宙人っぽいと思ってたね俺は!』


ワイドショーのコメンテーターたちが好き勝手を言うが、映っている映像では確かにベリアルが、否自分が暴れている

コーヒーを一口飲むと、深く息をつく

そしてティガに襲い掛かる自分が映った


『あのどこからかティガと呼ばれだした巨人も、襲われたようですね』

『あれもベリアルの仲間で自作自演なんじゃないの?』

『次に現れた時は軍が出撃してアイツらまとめて倒すべきだね!』

京太郎(俺が美穂子さんを……)


自分の手を見ていると、黒い手を幻視する


京太郎「ッ!」

『あれから三日が経ちました。復興はどうなってるのでしょう!』

京太郎「あれから……三日」



     第6話【欲望-EGO-】



     第6話【欲望-EGO-】

(ミスった連投



―――三日前【鶴賀学園跡】


破壊された校舎、破壊された建造物

抉れた大地、瓦礫の中で発見された京太郎は車に乗っていた

特異課の息のかかった救助隊や、事後処理部隊なども集まっている


京太郎「……」

慕「お疲れさま……大丈夫?」

京太郎「ちょっと、疲れました……」

慕「そう、だよね……でも無事で良かった」

京太郎「ありがとう、ございます……」


そう応えながら、外を見る

救急隊に連れて行かれる加治木ゆみ

それを見送る福路美穂子


京太郎「あの人は……ちゃんとウルトラマンなんだな」ボソッ

慕「ん?」

京太郎「ああ、いえ……独り言です」


あはは、と笑って慕にそう返すと再び外を見る

瓦礫撤去や、爆散したエースキラーの破片を拾う事後処理部隊

その中に、指揮している熊倉トシもいた


京太郎『ベリアルさん……』

ベリアル『なんだ?』

京太郎『すみません、足引っ張っちゃって』

ベリアル『あれがオレの本来の姿と言っていい』

京太郎『え?』

ベリアル『闇の力を使い世界を手に入れるために暴れ、最後は殺された。それがオレだ』

京太郎『ッ!』

ベリアル『闇を受け入れろ、そうすれば力が手に入る』

京太郎『そんな、ことは……』

ベリアル『……』

京太郎『……ベリアルさん』

ベリアル『なら良い、今はな』

京太郎「……闇の、力」ググッ



あれから、夢を見る

起きればほとんど憶えていない

だが―――追放と思考誘引、そして復讐心と破滅


ウルトラマンであろうとする京太郎自身と相容れない思想

幾度の復活を経ての……


―――疲れたよね? もう、終わりにしよう……!

―――さよなら……◆◆◆◆


虫食いのような記憶、記録

ただわかるのは、どこか釈然とした感覚


ベリアルの―――追憶



京太郎「……はぁ」


テレビのワイドショーから聞こえる声

だがわざわざ消しに、テレビに近づくのも面倒だった

加治木ゆみは未だに起きない、アリブンタこと―――津山睦月も同じく


京太郎「……」


鶴賀学園の面々が帰ってきたことに喜んでいた桃子たちを思い出す

美穂子の方も風越の生徒たちも起きたようで喜んでいた

清澄の生徒の情報はまだない

それに、エースキラーのメダルは『ゴルザ・メルバ・超コッヴ』のメダルのように、どこかに持ち去られたようだった


『ティガはその翌日、昨日には子供を庇う姿が目撃されてますね』

『まさに自愛の巨人、ですか』


美穂子は昨日、現れた怪獣と戦いがあったそうだ……


京太郎「……」

『ベリアルはやはり敵だとすべきと思う声が多いようですね』


瞬間―――テレビが消された


◆誰かがテレビを消した!

1、妹尾佳織
2、東横桃子
3、蒲原智美
4、福路美穂子
5、瑞原はやり
6、佐藤裕子
7、白築慕

◇5分間でコンマが一番高いキャラクター↓

4、福路美穂子



テレビを消したのは福路美穂子だった

ハッとする京太郎に、美穂子が苦笑を浮かべる


美穂子「そのね、あまり……見てた?」

京太郎「いえ、俺も消そうと」


その言葉に、美穂子はホッと息をついて京太郎の傍に座る


美穂子「……ベリアルさんはね」

京太郎「っ……はい」


次の言葉を待つ


美穂子「きっと、なにかおかしかったの、あんなことするわけない」

京太郎「わかりませんよ、そんなの」

美穂子「私と一緒に戦ってくれたベリアルさんがそんなことするはずない。瑞原さんを助けたあの人なら」

京太郎「気まぐれかもしれない」

美穂子「いえ、一緒に戦った私だから……わかるの」


その言葉に、京太郎は自嘲するような笑みを浮かべる


京太郎「攻撃、されたのに?」

美穂子「ええ、された……闇の力に、飲まれてしまって」


そんな言葉に、京太郎は美穂子に気づかれないようにしながらも拳を握りしめる

相対している美穂子は、持っていたアイスティーを一口


美穂子「私は……それでも、信じたい。人々を助けるという私と同じ願いを持ったウルトラマンを」

京太郎「……」

美穂子「それに最近、夢を見るの」

京太郎「え?」

美穂子「ティガのかつての記憶、別のティガの……闇の巨人の」

京太郎「それって」

美穂子「っ、ごめんね。私のことばかりで」


ごまかすように笑う美穂子を前に、京太郎は小首をかしげた


美穂子「でも京太郎くんも信じてあげて欲しいな、ベリアルさんのこと」

京太郎「俺は……」


信じられないのは、ベリアルではなく自分自身だ


美穂子「信じたい、んだよねきっと」

京太郎「っ」

美穂子「……だから、悩んでる」

京太郎「なんでもわかるんですね」

美穂子「なんでもは、わからないわ」


そう言うと、そっと京太郎の頬に触れる


京太郎「……光の、ウルトラマンですね」

美穂子「いいえ、私は人間よ」


その輝きが、優しさが、今の京太郎には眩しい


そっと、京太郎の手に添えていた手を降ろす美穂子

ふふっ、とほほ笑むその顔をみて京太郎もなんとか笑みを浮かべた


美穂子「……あとこれ、熊倉さんから」

京太郎「え?」

美穂子「昨日、倒した怪獣のメダル」


スッとテーブルの上に置かれたメダルは、昨日ティガが戦った怪獣のもの


京太郎「これは……」

美穂子「熊倉さんに管理は京太郎君だからって」

京太郎「はい、ありがとうございます」コクリ


頷いて、それを受け取る

昨日の戦いはトシから『待機しているように』と言われた

理由はわかっているつもりだ


美穂子「危うく松本城を壊されちゃうところで大変だったのよ……ベリアルさんもいてくれたら良かったんだけど」

京太郎「破壊するかもしれませんよ、むしろ」


ついつい、悪態をついてしまう

良くないなと思いつつ、片手で頭を押さえる


京太郎「こんなんだから待機命令なんて出るんだ」ハァ

美穂子「熊倉さん、京太郎くんが悩んでたから心配してたのよ?」

京太郎「……すみません」

美穂子「ううん、謝らなくて、良いから……その、なにか悩みがあるならしっかりと話して?」

京太郎「……」

美穂子「今じゃなくて、気が向いた時で良いから」

京太郎「……はい」コクリ


そう返事をして、立ち上がる

紙コップの中のコーヒーを飲み干すと、ゴミ箱に入れてそこから立ち去った

残った美穂子が背もたれに体を預ける


美穂子「結構、京太郎くんに助けられてたのかも……」


その表情は僅かに暗かった


―――【作戦室】


トシからの呼び出しで部屋に入る

そこにいたのは熊倉トシ一人だった

はやりもいないが、まだ怪我が完治していない可能性もある


京太郎「えっと、なんですか?」

トシ「……レギュラン星人から挑戦状だ」

京太郎「部長……」

トシ「ほい」


モニターが変わる

映し出されるのは、データなのだが知らない文字

そうしていると聞きなれた声が頭に響く


ベリアル『なるほどな、決闘か』

京太郎「決闘?」

トシ「そういうこと」

京太郎「はぁ? 宇宙人が?」

トシ「エースキラー、ヤプールの尖兵を倒したからこういうこともあるだろうね」

京太郎「一体どうすれば?」


黙って頷く


トシ「悪質宇宙人レギュラン星人……間違いなく罠を張ってくる」

京太郎「……」

トシ「しかも生身で来いとのことだ」

京太郎「……間違いなく罠じゃないですか」

トシ「だからそう言ってる」



深い息を吐くトシを見る京太郎

その瞳には不信感、トシに対するかそれとも―――自分か


トシ「目的はティガだそうだ」

京太郎「……美穂子さん」

トシ「まぁ仲間を連れて来ても良いそうだけど」

京太郎「舐めやがって……」

ベリアル『ハッ! あれを見られりゃな』

京太郎「っ」


顔をしかめた京太郎のことを察したのか、トシは頷く


トシ「……ともかく、待ち合わせは今夜21時」

京太郎「夜ですね」

トシ「福路と一緒に待ち合わせ場所に……三時間前には着いとこう、周囲を調べる」

京太郎「大丈夫なんですか?」

トシ「そんなわかりやすいことするとも思えないけど、一応ね」


そう言って、トシはしっかりと京太郎の瞳を見つめる


トシ「頼んだ……京ちゃん」

京太郎「……はい」


―――そこから数時間後【鶴賀学園跡】


周囲に車両

京太郎は簡易椅子に腰を下ろしてコーヒーを飲んでいた

すると、遠くにスタッフと話している少女を見つける


京太郎「……美穂子さん」

ベリアル『小僧、今回は戦いになるが』

京太郎『俺に、やれますかね』

ベリアル『受け入れろ』

京太郎『なにがですか』

ベリアル『闇を受け入れろ』

京太郎『闇!?』


立ち上がりそうになるも、グッと堪える

思い出すのは這いよって来る黒き闇


京太郎『光の巨人が、闇ですか……過去と関係が?』

ベリアル『過去も未来も関係ねぇよ。ただ今必要なのは、闇だろ?』

京太郎『それで、また暴走して人々を守らなきゃいけない俺がっ』

ベリアル『おいテメェ』

京太郎『ウルトラマンは人々を守らなきゃいけないんですよ!?』

ベリアル『お前はウルトラマンにはなれない』

京太郎「ッ!」

ベリアル『少なからず、お前が考えるようなウルトラマンにはな』

京太郎『才能、ですか?』

ベリアル『ああ』


拳を強く握りしめる

今年、数ヶ月前に既にそれは味わっているのだ

自分は取るに足らぬ存在、外部の人間―――努力はした。ここ最近だってそうだ

だが、どうしたって追い付けない

それに自分より麻雀歴が浅い怪物たちが沢山いることも知った


京太郎「っ……俺は」

美穂子「京太郎くん」

京太郎「美穂子さん……」


隣に座る美穂子

京太郎の視線の先には破壊された鶴賀学園―――瓦礫の山

周囲に人がいないのを確認してから、口を開く


京太郎「美穂子さんは、どうして戦えるんですか?」

美穂子「え?」

京太郎「人間のため、ですか?」

美穂子「ええ、戦えないすべての人々のため……」

京太郎「……」

美穂子「私はその願いのために、ウルトラマンとなって戦える」


遠くの星を見る美穂子

京太郎はそれに習って空を見た

街灯がない故に目に映るのは満点の星々


美穂子「できるなら、この星々すべてを守りたいとさえ思う」

京太郎「……光の巨人、ウルトラマンにふさわしいですね」

美穂子「こんなに欲張りなのに?」

京太郎「欲張り?」

美穂子「うん、欲張りだと思う……私」クスッ

京太郎「……でも、その願いは」

京太郎(俺が思う。俺がなりたいウルトラマンだ)



美穂子「でも、京太郎くんは凄いと思う」


ふと、美穂子が発した言葉に京太郎は小首をかしげる


京太郎「え?」

美穂子「……誰かを守るために、戦ってるでしょ?」


それはそうだ。そうありたいと思っている

ウルトラマンであるならば、そうでなければいけないと思っている


京太郎「でも、美穂子さんみたいな」

美穂子「京太郎くんは、私に言ったよね」

京太郎「え?」

美穂子「義務感で戦うものじゃないって」

京太郎「俺は義務感なんかじゃ!」

美穂子「本当にそう?」


閉じられていた青い目が京太郎を見つめる

硝子のように綺麗な瞳、それが真っ直ぐと京太郎の赤い目を見つめた

交差する視線、そして―――


ピピピピ


京太郎「ッ!」

美穂子「時間よ……行きましょう」

京太郎「……はい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


都内 某駅前



京太郎「…日陰でこの暑さなのはヤバいっすね」パタパタ

菫「…ああ。十日連続で真夏日だとかなんとか」

京太郎「温暖化の影響ですか」

菫「どうだろうな…ん?」ブー

菫「…亦野からだ、席が取れたらしい」

京太郎「こっちも…着いたみたいですよ」

誤爆すみません!やらかした



二人が瓦礫の中を歩く

目的地地点まで数メートル

ガッツハイパーを持つ京太郎と美穂子


京太郎(俺が、義務感で……)

ベリアル『小僧、くるぞ』

京太郎「っ!」

美穂子「久っ!?」


そこに立っているのは竹井久

素早く、京太郎はガッツハイパーのカートリッジをスタン性のものに変える

美穂子は銃口を震えさせていた


久「フフフフ」


竹井久の姿をしたレギュラン星人が手を向ける

敵意を察した瞬間、京太郎は迷わずトリガーを引く

だがその


京太郎「ッ!」

美穂子「京太郎くんっ!?」

ベリアル『ハッ! 悪くねぇ!』

京太郎「実体じゃない……」

美穂子「なんで、あんな迷いなく……」

京太郎「スタンのものですし……」


銃を降ろす京太郎

その隣で、美穂子も同じく銃を降ろした

目の前の幻影に攻撃手段はないだろうと、それ以外の周囲を警戒する


京太郎「それに、美穂子さんが危なかったし」

ベリアル『……』

京太郎「俺が、守るから」


そんな言葉に、美穂子が少しばかり頬を染める

>>248-249
ええんやで(ニッコリ)



美穂子「そ、そのっ……」

久『戯れるな!』

美穂子「え、きゃあっ!?」


瞬間、美穂子を囲むように金色の輪が現れる

京太郎が素早くガッツハイパーを輪に向けるが、なにかをする間もなく消えた

顔をしかめる京太郎が幻影の方を向く


京太郎「美穂子さんをどこにっ!」

久「消えろ雑魚が!」


幻影から、光弾が放たれた


京太郎「ッ!!?」


直撃は回避するが、地面に当たった爆風で吹き飛ぶ

そのまま瓦礫の中に突っ込む京太郎

レギュラン星人の幻影はそのまま消える


京太郎「ぐっ、美穂子さん……!」

ベリアル『よく避けた。いくぞ』

京太郎「……はい」

ベリアル『フッ! この礼はきっちりしてやる』



―――【???】


そこにいるのは、福路美穂子

立ち上がって目の前の竹井久を見る

笑みを浮かべる竹井久が、美穂子の構える銃、その銃口へと近づいていく


久「どうした? 撃ってみろ」

美穂子「っ……」


震える手、銃口の向きは定まらない


久「……ふんっ!」


手から放たれた光弾の直撃を受けて、美穂子は吹き飛び壁にぶつかる


美穂子「っ……あ、カハッ……」


腹を押さえてうずくまる美穂子は、そのまま久を見上げる

ガッツハイパーも離れた場所に落ちていた


久「フフフフ、力は十分溜まった、もう実体を保てるだけのなぁ!」


突如、久が前のめりに倒れる

そして元立っていた場所にいるのは宇宙人―――レギュラン星人

歪なその姿を晒して、高笑いをする


レギュラン星人「フハハハハ! ようやく元の姿へと戻れたぞ!」

美穂子「っ……」

レギュラン星人「この姿なら、撃てたかぁ?」

美穂子「……っ」


スーツの内側からスパークレンスを取り出すが、すぐに手を蹴られる


美穂子「うあっ!」


吹き飛ばされるスパークレンス

レギュラン星人はそれを見てまた身体を揺らして笑った

倒れている久が、僅かに目を開く


久「み、ほこっ……」

美穂子「久っ!?

久「わ、たしっ……」

美穂子「っ!」

レギュラン星人「二人仲良く地獄に行け! 二度とバルタン星人などと間違えさせんぞ!」



久を蹴って転がすレギュラン星人

美穂子が久の体を労りながらも、レギュラン星人を睨む

珍しく、怒りの表情を浮かべている美穂子

だがそれも―――無駄


レギュラン星人「死ねェ!」

久「ご、めんね……みほ、こ……」

美穂子「京太郎くんっ」グッ


瞬間、銃撃がレギュラン星人の背中へと直撃する


レギュラン星人「ぐおっ!?」

「オラァッ!」


さらに、走ってきた“京太郎”はレギュラン星人の背中に蹴りを打ち込む

横に転がるレギュラン星人に、さらに京太郎は片手でガッツハイパーを構えて連射

バタバタと転がるレギュラン星人だが、ほぼ全ての銃弾が直撃


京太郎「!」


素早くカートリッジを排出して別のものを差し込み、連射

立ち上がって走り出すと、京太郎が入ってきた扉から外へと飛びだした


レギュラン星人「うおぉぉぉぉ!?」

ベリアル『クハハハハハ! 無様に逃げてやがる!』

京太郎「……」


静かに、ガッツハイパーを降ろすとすぐに振り返る

美穂子と久の元へと膝を降ろした

久は京太郎の顔を見上げる


久「す、が……く、ん?」

京太郎「はい、助けるのが遅れました……」

久「ん……あり、がとう」

美穂子「っ……!」



急いでスパークレンスを拾いにいく美穂子

京太郎はスーツの上を脱ぎ丸めると、久の頭の裏に枕のように置く

瞬間―――京太郎たちがいたその部屋が幻のように消えた


京太郎「これは、なんつー技術!」

美穂子「あれ!」

京太郎「!」


指差す方に視線を向けると、そこにはレギュラン星人―――しかも、大きい


美穂子「っ!」

京太郎「……」

美穂子「みんなは私が、守るから!」


そして、美穂子がスパークレンスを掲げる

眩い光と共に、光の巨人―――ウルトラマンティガが現れた

それを見ている久が、手を伸ばす


久「ひ、かり……」

京太郎「……」


レギュラン星人へと駆けだすティガ

素早い格闘でどんどんと離れた場所へと行く

入れ替わるように、車が走ってきた


京太郎「トシさん!」

トシ「京ちゃん……竹井か、こっちで保護する」

京太郎「……お願いします!」

今回はここまでー
次回は戦いからっすー

この美穂子のとこほとんど別キャラかもしれなかったって思うと結構話変わるなぁ

とりあえず次回はひと山超える感じで
そっからまたなんやかんやあって
そして全国編もあるよ!

そんじゃまた今夜ー

はっじまっるよー!
迷走イベントはあまり引きずらないスタイルでいかせたい

そして全国編はどこ行くか順番は安価よー



鶴賀の廃墟近く、瓦礫の中をレギュランと星人が走る


レギュラン星人『死ねェ!』

ティガ「フゥッ……ハッ!」


ティガがスカイタイプへと変わると、連続で打撃を打ち込んでいく

連続回し蹴りでひるむレギュラン星人

怒りに震えるレギュラン星人が、素早く光弾を放つ


ティガ「テァ!」

レギュラン星人『将軍さえいれば貴様などォ!』


光弾を弾いたティガを目の前に、地団駄を踏む

そんな戦いを、瓦礫の中で見つめる影

スーツを着た宇宙人……ゼットン星人が、そこにはいた


ゼットン星人「ならば、こういうのはどうだ」


そう言うと、メダルを取り出してゼットライザーへと差し込む

ブレードがスライドする


『Erekingu』


そして、光と共に現れるのは黒い斑点模様のイエローの怪獣

黒い角を回転させながら、その怪獣はティガへと迫る


ティガ「!?」

エレキング「―――!」

レギュラン星人『ゼットン星人か!』


不意を突かれたティガが、エレキングのパンチの直撃を受けて転がる

膝をついて起き上がったその瞬間、エレキングの尻尾が首に巻きつく


美穂子『ぐっ!』

エレキング「―――!」



エレキングが咆哮を上げると、その尻尾に電撃が流れていく

その電撃は、もちろんティガにもだ


ティガ「ウアッ!」

美穂子『ガッ、アアアァッ!!?』

エレキング「―――!」

レギュラン星人『いいぞぉ! 私はここで見ている!』


高笑いするレギュラン星人に銃撃

大したダメージでないものの、痛みはあるのか少しばかり跳ねる

銃撃があった方向を見れば、そこには一人の青年


レギュラン星人『またお前か!』


京太郎「……俺は、戦う」

ベリアル『覚悟は決まってんのか?』

京太郎「決まってませんよそんなもん、とりあえずやります!」

ベリアル『ハッ、まぁ良い……やってみせろ!』


ゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛び込む

白銀の空間に、京太郎は闇を幻視するが頭を振るい意識を戻す

ウルトラアクセスカードを差し込んだ


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

ベリアル『おもしろい、やれるのか?』

京太郎「やれるだけは!」


そして、トリガーを引く


京太郎「ベリアァルッ!」



光と共に現れるベリアルが、エレキングへと爪撃を放つ

ベリアルクローによりエレキングがひるみ、背後へと下がる

それにより、エレキングの尻尾がティガの首から外れた


京太郎『美穂子さん……ベリアルさん、お願いします』

ベリアル『ハッ、しょうがねぇな』

京太郎『ありがとう』コクリ


黙ってティガの方を見るベリアル

ティガは首を押さえながら立ち上がると、ベリアルの方を向いて頷く

それに対して、ベリアルは一瞥するとエレキングの方へと向き、首を鳴らした


ベリアル『いくぞォ!』

美穂子『っ、はい!』


初めて聞いたベリアルの声に、強く返事を返して立ち上がるティガ

ベリアルはエレキングへ、ティガはレギュラン星人へと走った

エレキングが尻尾を振るうも、ベリアルはベリアルクローでその尻尾を弾く


京太郎『ベリアルさん、こいつは!』

ベリアル『こいつの攻撃パターンはよーく知ってるぜ! ピット星人のペット!』


口らしき部分から光線が放たれるが、体を逸らして回避

素早く体勢を戻すと光弾を放ってエレキングをひるませる

さらに接近すると左手で爪撃を放ち、右拳をぶつけた


エレキング「―――!」

京太郎『これなら!』



瓦礫の中、ベリアルとエレキングの戦いを見ているゼットン星人

肩を落とすような動作を見せたゼットン星人が、メダルを取り出した

さらに、ゼットライザーへとメダルを差し込む


ゼットン星人「サービスだ。ベリアル相手には使いたくはないのだが……潰せば問題はない」


ブレードをスライドさせる


『Redking』


そして、暗い光と共に新たな怪獣が現れた

髑髏怪獣レッドキングは、エレキングと戦うベリアルへと拳を打ち込んだ

不意打ちにより、ベリアルが吹き飛んで転がる



転がったベリアルが膝立ちで起き上がり、即座に光弾を放つ

だがそれはエレキングが光線を放ち相殺

ベリアルの前方に並ぶ二体の怪獣


ベリアル『チッ、昔なら一撃だったがなァ……!』

京太郎『くっ、こいつらっ!』


エレキングからの光線を、転がって回避するベリアル

だが次の瞬間に走ってきたレッドキングの蹴りを受けて、後ろに大きく吹き飛ぶ


ベリアル「ウガァッ!」


地上に体が叩きつけられるが、どうにか立ち上がる

レッドキングが投擲した岩を爪撃で粉々にした

だが次にエレキングからの光線、それを両腕で凌ぐ


京太郎『ぐっ……!』

ベリアル『レイブラッド星人メダルを、闇の力を纏え!』

京太郎『あ、あれを使ったらまた!』


光線を凌いでいたも、押し負けて倒れる


ベリアル『ぐっ、オレは同じ話をするのが好きじゃねぇ……だが言ってやる』

京太郎『ッ!』

ベリアル『闇を受け入れろ!』


その言葉に、京太郎は頭を横に振る


京太郎『俺は、人々を守らなきゃいけないんです!』

ベリアル『小僧ォ!』

京太郎『じゃなきゃ……俺は、ウルトラマンにっ!』

ベリアル『何度も言わすんじゃねェ!』

京太郎『!!』

ベリアル『テメェはウルトラマンになんてなれねェ!』

京太郎『ッ!』



迫るレッドキングを、どうにか受け流す

エレキングからの光弾を、レギュラン星人と戦っていたティガが光弾を放ち凌ぐ

ベリアルは爪撃でエレキングを退けた


ベリアル『テメェの本来の望みは、欲望はなんだ!』

京太郎『俺の、欲望……?』


思い出されるのは、美穂子との会話


美穂子(こんなに欲張りなのに?)

京太郎(欲張り?)

美穂子(うん、欲張りだと思う……私)


京太郎『欲と望み、欲望……俺の』

ベリアル『借りものの望みじゃねぇ、テメェがテメェで、望んでるものは!』


美穂子(でも、京太郎くんは凄いと思う)

美穂子(……誰かを守るために、戦ってるでしょ?)


反芻される美穂子の言葉

自分自身がやるべきこと、自分自身がやりたいこと

そしてやってきたことと、自分が見えなくても他人には見えていたもの


ベリアル『なぜ闇を否定する。テメェが否定する理由なんてねぇはずだ』


その通りだ。自分は“ウルトラマン”ではないしなれない

そして“光の巨人”ではない

右手に握ったレイブラッド星人のメダルからあふれ出す闇


京太郎『そうか……これは、この力はッ!』


流れる水に逆らうからこそ、力は行き場を失い暴走する

ベリアルは最初から答えを言っていた


京太郎『俺の、願い、欲望は―――!』


須賀京太郎はただの普通な思考を持った人間だ

そうだったのに、ウルトラマンという力を手にした結果がこれだった

ただ人が良いだけの京太郎は、美穂子のような思考を持てはしない


故に―――


ベリアル『己の欲望を受け入れろ!』


―――人々の、知らない他人を守るなど、心底から思うことなどできるわけがない


京太郎『そうか、そうだったのか!』


右手のレイブラッド星人メダルを弾く

溢れ出る闇、それが京太郎の周囲へと溢れだす

その赤い瞳が、輝きを増した


京太郎『他人なんてどうでもいい! 俺が守りたいのは、俺の守りたいものだけだ!』


落ちてくるメダルを掴むと、ゼットライザーへと差し込んだ


ベリアル『さぁ、戦るぞ小僧!』

京太郎「俺は、俺はァ!!」

ベリアル『オレと、闇と共に!』

京太郎『ウルトラマンにはなれない! 今は!』


勢いよく、ブレードをスライドさせる


京太郎『それでも!』

『Alien Rayblood』

京太郎「たたかぁう!」


暗黒満ちるインナースペースで、京太郎は勢いよくゼットライザーを振り上げた


ベリアル『叫べ!』

京太郎『ベェェリアァァァァルッ!!!』


そして―――トリガーが引かれる



溢れ出るのは、闇の光


エレキング「―――!?」

レッドキング「―――!?」


美穂子『あれは!』

レギュラン星人『べべべ、ベリアル!?』


そこに存在するのは―――暗黒の皇帝

黒いボディに赤いライン

そして、その両手にあるのは鋭い爪


ベリアル「ハアァァ……」


深く、息をするようにそこに立つ姿


ベリアル『いくぞ、小僧ォ!』

京太郎『この力、いけます!』


受け入れた闇の力をその身に纏い、ベリアルが跳びだす

地を蹴り、レッドキングとエレキングへと跳ぶ

放たれるエレキングの光線と、レッドキングが岩を投擲する


ベリアル「ハアァ!」」


岩を爪撃で破壊し、両腕でエレキングの光線を凌ぐ


ベリアル『無駄だァ!』

京太郎『こいつでェ!』


レッドキングとエレキングの間に着地すると同時に、二体に爪撃を与える


エレキング「―――!」

レッドキング「――-!」


さらにベリアルは爪を振るって二体を攻撃しながら、後ろに下がる

手から雷を放ち、レッドキングを攻撃

苦しみ、怯むレッドキングへと接近して膝蹴りを放って倒す


京太郎『闇の力も、良いもんっすね!』

ベリアル『闇だとか光だとか関係ねぇよ! 今回はたまたま闇を受け入れれば強い力が手に入ったにすぎねェ!』

京太郎『え?』

ベリアル『テメェの望みを達成するためならなんだって良い。利用してやれ』


その言葉に、笑みを浮かべながら京太郎は頷く

エレキングの尻尾が伸びてくるがベリアルはそれを左腕で受け止める

その尻尾から、電撃が奔る


ベリアル「グッ……!」

京太郎『がっ、んなもん!』


右腕を振り上げると、勢いよく振り下ろす

赤い斬撃と共に、エレキングの尻尾が勢いよく切断される


エレキング「―――!」

京太郎『まず一ぉつ!』

ベリアル『バラバラにしてやる!』


起き上がってくるレッドキングを音波攻撃で吹き飛ばす

両腕を開いて接近しようとするエレキングにベリアルが腕を振るう


ベリアル「ウォラァ!」

京太郎『斬り刻む!』


何度も腕を振るって斬撃を生み出す

エレキングはその攻撃を受け続ける

トドメと言わんばかりに、ベリアルが両手を水平に振るう


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


最後に放たれた斬撃がエレキングの首を落とす

それを機に、エレキングの体はクローで攻撃された部分からバラバラと崩れていく


レッドキング「―――!」

ベリアル『見えてんだよ!』

京太郎『そこォ!』


背後から襲いかかるレッドキングに、振り返ると同時に斬撃を放つ



レギュラン星人と戦っていたティガ

なぜか風力発電機、鉄製の風車を持って襲い掛かる


ティガ「フッ……ハァ!」


紫色のティガが、赤へと変わる

振るわれたその風車を、左腕で凌ぐと右腕を突きだす


レギュラン星人「ぐおぉ!?」


後ろへと下がるレギュラン星人に接近すると、さらに拳を打ち込む

連続で何十発もの拳を打ちつけられて打ち上げられるレギュラン星人

地面へと激突すると、身体を押さえながら起き上がる


レギュラン星人『おのれ、ティガァ!』

美穂子『許せない。あなたみたいな!』

レギュラン星人『許せないのは私のほっ、のわぁっ!?』


突如とした衝撃に、レギュラン星人が振り返る

そこにはレッドキング

そちらも追いつめられているようで背中合わせて自らの敵を見やる


ベリアル「ハアァァァッ!」

美穂子『ベリアルさん、やりましょう!』


ティガが、両腕を脇にやり手を真っ直ぐに伸ばすと紫色の光が溢れる

ベリアルは右腕に黒い光と紅の雷を纏う

美穂子からの声に、頷く京太郎


京太郎『俺が守りたいもののために―――』

ベリアル『ハッ……守るもの、ねぇ』

京太郎『―――闇の力、お借りします!』


二人の巨人が、同時に腕を組む


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!!』

ティガ「ハァッ!」


レッドキングとレギュラン星人に、光線が直撃


レギュラン星人『光と闇よォ!』


髑髏怪獣と悪質宇宙人が―――爆散する



爆煙が晴れると共に、炎の中にお互いを見やる

二体のウルトラマン

黒きベリアルが、ティガを見据えた


美穂子『ベリアルさん……』

ベリアル『……小娘、貴様はウルトラマンだ』

美穂子『え』


それに、なにを返すわけでもない


ベリアル「ハァッ!」


真上を向いて、飛び上がる


美穂子『ベリアルさん……』

ティガ「ハッ!」


それを見送り、ティガもまた両手を上に上げて飛び去っていく


地上に立つのは須賀京太郎

静かに、息をついて右手にあるレイブラッド星人メダルを見る

そこから僅かに感じる闇の力に、口を綻ばせた


京太郎「闇も光もない、か……ウルトラマンじゃないからこそ」


きっと自分にしかできないことがある

そのメダルをホルダーに入れると、今度は左手のメダルを見た

そこにはレギュラン星人とレッドキング、そしてエレキングのメダル


京太郎「今回は全部頂戴できたな……」

ベリアル『ハッ、おもしろい』

京太郎「そうっすか?」

ベリアル『オレはな』


そんな言葉に苦笑を浮かべながら歩き出す

すぐに熊倉トシと車を見つけて近づいていく


トシ「……おかえり」

京太郎「ただいま、戻りました」

トシ「どうだった?」

京太郎「……わかってるでしょ?」

トシ「ああ、目的のためなら過程と手段をある程度は妥協して戦う。そういうことができる京ちゃんだから、良いんだ」

京太郎「褒めてます?」

トシ「まぁ闇の力を使い戦う。そういうアンタだから……」


そう言って言葉を止める

京太郎が口を出そうとするが、トシが微笑むのでそちらに視線を向けた

そこには金髪を揺らす少女


京太郎「……美穂子さん」フッ

美穂子「京太郎く~ん、熊倉さ~ん!」


駆けてくる元気そうな美穂子

普段であれば“揺れてる”とか思うとこだが、そういう思考でもない

トシが車へと乗り込む


美穂子「はぁっ、はぁっ……」

京太郎「お疲れ様です」

美穂子「うん、京太郎くんも……銃で撃ってくれたでしょ?」

京太郎「あ……はい」フッ

美穂子「ありがとう!」ニコッ



そんな美穂子の頬に、京太郎はそっと手を添える


今朝そんなことがあった気がした

だが美穂子は、顔を真っ赤に染める


京太郎「こちらこそ、ありがとう……」

美穂子「え、あっ……う、うんっ!」ニコッ


その輝く笑顔―――京太郎が守りたかったものの一つ


自分の守りたいものだけを、ただ守りたい


それが須賀京太郎の―――欲望



     第6話【欲望-EGO-】 END




―――次回予告


順子:ウルトラマンを追うわよ!

トシ:特異課に取材だって

京太郎:断ってよ

大介:待ってくださっ

順子:ウルトラマンー!

はやり:婚期、お見合い、ぐふっ

京太郎:はやりさーん!

順子:ウルトラマーン!


次回【THE・パパラッチ】


はやり:ザをジって呼んでいいのはアルフィーだけだって!

京太郎:特異課やめていい?

トシ:ダメ


今回はここまでー
次回は明後日水曜になると思いますー

さらっと終わった迷走パートだけどこんなもんで良い
ちょっとずつ展開も進んできてー

美穂子含めて長野組の出番もあとわずか(小声)

そんじゃまたー


>>美穂子含めて長野組の出番もあとわずか(小声)
もしかしてもんぶちの面々とは長野では遭遇しないのか?

ちょっとだけやるー夜もやるけどー

>>278
もんぶちは後々って感じっすねー


―――【???】


真新しい白い壁、慌ただしくデスクに向かってPCとにらめっこをする社員たち

そんなオフィスの外の廊下に立っているのはカメラマン、山口大介


「お待たせー」

大介「ああ、で、どうっすか?」


やってくるのは西田順子


順子「オッケー取材許可おりた」

大介「ほらーだからダメだって……え?」

順子「特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……通称特異課の取材許可、おりたよ」

大介「なんで!?」

順子「さぁ、でもあの怪獣災害からわずかな時間で設立されて事後処理まで手を出してる課、きなくさいねぇ」

大介「まぁ前々から存在してた説が有力っすよね……にしても許可おりるとは」


顔をしかめる大介相手に、順子はその背中を叩いて笑う


順子「やるわよ。絶対あの人ら……ウルトラマンと関係あるから!」

大介「……いやいや、あれと? まさかぁ」

順子「いえ、絶対怪しいわ! それに私、これに関しては雀士失踪とも関わりあると思ってるし」

大介「そう全部つながるもんですかねぇ」

順子「繋げるのが私たちの仕事でしょ……あ、もちろんちゃんと下調べした上で、だけど」

大介「……嫌な予感するなぁ」

順子「じゃ、いくわよー!」


意気揚々と歩いていく順子の背中を見ながら、大介は重々しい足取りで着いていく


―――【特異課施設:作戦室】


あれから四日、そこにいるのは須賀京太郎のみだ

座っている京太郎が、いつもみんなで囲むテーブルの上にメダルを数枚並べる

先日、美穂子から受け取ったゴモラメダルとレッドキング、エレキング、レギュラン星人


京太郎「さらに……岩石怪獣ガグマのアルファとベータ、深海怪獣グビラ」


合計七枚のメダル、それらを集めてホルダーへと入れる

ガグマのアルファとベータは自分と美穂子が麻雀で倒した他校の生徒から手に入れた

苦戦はさせられたが、別段問題もなく

グビラはベリアルが通常の状態……アーリースタイルで倒した


京太郎「メダル、集まってきたけど黒幕はどこなんだろ」

ベリアル『さてな、だがこの不愉快な感覚が薄れてきてやがる……黒幕も絞れるだろ』

京太郎「だと良いんですけど……」

ウィーン

京太郎「っ!」ビクッ

トシ「どしたんだい……ああ、そういうことか」

美穂子「どういうことですか?」


入ってくる二人に、京太郎は息をつく

派手な“独り言”を見られなくて済んだようだ

美穂子が隣に座り、トシが対面に座る


トシ「さて、京ちゃんと福路に報告」

京太郎「なんすか?」

トシ「取材が来る」

京太郎「どこに?」

トシ「ここに」

美穂子「……えっと、私は」

トシ「あんたは良いけど、東横とかを撮られるとマズい」

京太郎「……いつ?」

トシ「今から」

京太郎「一大事じゃん!」


京太郎「え、はやりさんは!?」

トシ「外に出しといた、こんなこともあろうかと」

京太郎「あろうかと思ったならもっと早く言ってくださいよー!」

トシ「まぁまぁ」


両手を前に出して笑うトシ

そして、熊倉トシは回想を始めた


トシ『特異課に取材が来る気がする。明後日』

はやり『はや!? なんで!?』

トシ『とりあえず、明後日にあんたに予定入れたから』

はやり『はやぁ……任務ですか?』

トシ『婚期やばいからお見合い』

はやり『婚期、お見合い、ぐふっ』


京太郎『はやりさーん!』

トシ『回想に入ってくんじゃないよ』


回想終わりである


トシ「ってことで」

京太郎「なんてひどいことを!?」

美穂子「???」

トシ「まぁそういうことだから」

京太郎「断ってよ」

トシ「……ま、京ちゃんに任せるから、案内とかもろもろ」

京太郎「ファッ!?」

トシ「それじゃ、これマニュアル」

京太郎「なんで!?」

トシ「行くよ福路ー」

美穂子「え、え?」


京太郎「この鬼ババァ!」



     第7話【THE・パパラッチ】

そんじゃ一旦ここまでー

また夜にー

遅くなったけどやってくー


―――【特異課施設:入り口前】


そこに立つのは記者とカメラマン

入る前にセキュリティシステムがあるらしく、待たされることになったということだ

さきほどからスタッフの出入りがあるが、そのスタッフたちの取材は許可されていない


大介「意外ですね、関係なくいくと思ってました」

順子「ここのタイミングで機嫌を損ねるわけにはいかないからね……入ってからよ本番は」

大介「さすがっす」

順子「目先の欲に踊らされるなってね」


そう言って待っていると、中から出てくるのは金髪の青年

年齢は20代だろうか、サングラスの奥の瞳はまだ見えない

なぜだか嫌そうな雰囲気をしているが、記者としてそういう対応は慣れきっている


???「お待たせしました……須賀です」

順子「ああ、これはこれはご丁寧に」

大介「WEEKLY麻雀TODAYの山口です」

???「ご丁寧にどう……も」


名刺を差し出したところで、一端止まる


順子「……あれ、どこかで?」

???「いえいえ、どうも」

大介「まぁよろしくお願いします。須賀京太郎さん」

京太郎「あーはい」メソラシ

京太郎(なんで俺にやらせたんだよトシさぁん!)



―――【特異課施設内:廊下】


スーツを着ている一人の女性スタッフが歩いている

その顔にはサングラスをかけていたが、口元には笑みが浮かんでいた

長い金髪を揺らす女性が、周囲に誰もいないことを確認する


??「……よっし! 潜入完了だ!」


拳を握りしめる


??「ふふふ、ウルトラマンに邪魔されっぱなしの雑魚共め、私はそうはいかん……」


なにか装置を取り出す


??「ここに間違いなく、ウルトラマンに関係したなにかがある。そしてメダルもある……」


正面からやってきたスタッフに軽く会釈して歩き出した


??(やつらには負けん、私が先んじてやる……あいつらに情報も渡してないしな!)

??「ふふふ、このババルウ星人の智謀を見せてくれる!」


女性―――久保貴子はニヤリと口角を上げた



―――【長野:???】


座っているのは瑞原はやり

そして向かいには男性

瑞原はやりの表情は死んでいた


男性「えっと……瑞原、さん?」

はやり「はい、なんでしょう」

男性「……ここのデータなんですが」

はやり「はい、こっちの計算式を持って来れば」

男性「なるほど! さすがです!」


なにがお見合いか、ただの仕事である

トシが勧めてくるきたお見合いだから多少は期待したのである


男性「さすが瑞原さん、頼りになります」

はやり「いいえー」


なにが悲しくてこんな状況になったのか……


はやり(お見合いで京ちゃんが乱入して助け出してくれるとか期待しちゃうのになー)


大きなため息をついて、目の前の男性の後頭部から、椅子を回転させて視線をPCモニターに移す


はやり「……ってなんで京ちゃん!!?」

男性「瑞原さん!?」


―――【特異課施設内:廊下】


気まずい思いをしながら歩く京太郎

そしてその後ろには順子と大介

一応、トシから手渡されたマニュアルは憶えた


京太郎(しかしまぁ、一応知った顔なんだけど)


こんなところで働いているとバレたらどうなるかわかったものではない

一応は『雀士失踪と怪獣出現は関係ない』ということで通っているのだ


京太郎「以上のように、怪獣災害等に迅速かつ最善の対応策をとるために我々特異課は」

順子「怪獣災害から発足が早すぎるとの指摘があるそうですが?」

京太郎「それについては私のような者には……ただそのような“予測”を量子コンピューターがしていたという噂を聞いたことがあります」

順子「それはどこに?」

京太郎「そこまでは……」


そう言って笑う京太郎


大介「にしても、最新技術の塊と聞いてましたけど普通ですね」

京太郎「どこ情報ですか、普通ですよほとんど」

順子「へぇ~……怪獣に対処している銃等は最新技術の塊と聞いてましたが」

京太郎「そこまで厳密に言うなら……怪獣と戦う武器が最新型じゃないわけないでしょう」

順子「まぁごもっともで、じゃあ……」


メガネの奥の瞳がキラリと輝く


順子「ウルトラマンになる技術があるとか?」



京太郎「はぁ? なに言ってんですか」ケラケラ

順子「では、ウルトラマンとどんな関係が?」

京太郎「あるわけないでしょう、そんなもの」ハァ


そう言うと歩き出す

順子を見て、大介は肩をすくめて歩き出した


順子「しかし、長野に現れるウルトラマンは」

京太郎「なんでしょうか、我々と関係があると?」

順子「んーそうだと思ってますよ?」

京太郎「じゃあ俺達は必要ないじゃないですか、ウルトラマンがいるなら」

順子「……ピンチのピンチのピンチの連続にならないと現れないとか?」

大介「ギリギリまで頑張ってみないと現れない、か」


その言葉に京太郎は止まった


京太郎「……そうなんじゃないですか、だから戦う」

順子「……あーあ、私ウルトラマンだったらなぁ!」

大介「えー大変じゃないですか?」

京太郎「だと思いますよ。知りもしない関係ない奴らを守るなんて……」ハッ


そう言って歩き出す京太郎


順子「ところで食堂とかあるんですか?」

京太郎「まぁ、休憩所が……食べ物も自販機にありますし」

順子「へぇー! 気になります私!」

京太郎「普通っすよ?」

順子「ええ! ええ! そういうのがみたい!」

京太郎「そういうもんですか?」

大介「さぁ?」



一方、久保貴子の体を借りたババルウ星人は施設内を歩いていた

バックを片手に周囲を見回しながら歩く


貴子「さて……どこかに、ベリアルやティガの情報があるはず」

「こっちよこっち」

貴子「!!?」ビクッ


転がるように物陰に隠れるババルウ星人

その声の主の方をちらりと見る


順子「怪しい気がする! こっちの方に宇宙的感覚!」

大介「絶対気のせいっすよ」

順子「えーおかし……」


歩いている順子が横を見れば、そこには金髪の女性

もちろんババルウ星人である


貴子「……ご、ゴキゲンうるわしゅう」

順子「……あー!!」

貴子(バレたかぁっ!!?)

順子「久保貴子先生ですよね!? 風越の!」

貴子(セーフ!)

貴子「は、ははは」

大介「ちょ、まずいっす!」

順子「あ……ちょ、ちょっと道に迷っちゃって!」

貴子「あ、はい」

順子「自由に行動しては良いと言われたんですけどね! 一緒に歩いてもらっても!?」

貴子「あ、はい」

貴子(しまったな、ここじゃ……チッ! とりあえず一緒に行動しといてやるか!)

順子(ふふふ、やはり雀士失踪に関係あるのね特異課!)



もろもろ暗躍する施設内

そんな特異課施設の一室に集まっている桃子、智美、佳織

さらにプラスで津山睦月と加治木ゆみの二人


ゆみ「みんなには心配をかけたようだ」

桃子「本当っすよー」

智美「なにはともあれ集まってなによりだなーワハハ」

睦月「プロ雀士カードは? 新弾はどうなってる?」

佳織「いつもそれだね」


和気藹々とした空間、しばらくはその部屋より外出禁止令が出されている

ゆみと睦月の二人は揃って数日前に起きたばかりだ

そんな中、扉が突如開く


京太郎「サーせん!」

桃子「うわぁっ!?」

智美「ワハハ、スケベだなぁ京太郎」

京太郎「いやいや! てかこれあれ、誰か来てないっすか?」

睦月「須賀だけだが」

京太郎「そ、そっすか」ホッ

佳織「どうしたの?」

ゆみ「私たちがしばらく自室待機とされてたことと関係が?」

京太郎「……関係しかないんで、まだしばらく自室待機で!」


それだけ言うと、京太郎は去って行く


桃子「えーあれだけっすか京さん」

ゆみ「京さん、か」

桃子「なんっすか改まって」

ゆみ「……友達が増えてなによりだ」フッ

桃子「なっ、なんか変な勘違いしてないっすか!?」

ゆみ「してないしてない」

桃子「絶対してる!」



医務室にいるのは美穂子と久

竹井久はというと眠っているのだが、美穂子は静かにそんな久の隣にいた

トシから出るなと連絡があって、久を放置するわけにいかないということでここにいる


美穂子「……ちょっと暑いわね」


9月なのだが、と思いつつクーラーの温度を少しばかり下げる

美穂子はネクタイをゆるめてボタンを少し開ける

久も少しばかりを汗をかいているようだった


美穂子「久の汗、拭いた方がいいかしら?」


そう言うと、そっとふとんをめくり久のボタンを外そうとする

別になんの他意もない行為で、あるのだが―――


京太郎「さーせん!」ウィーン


―――こうなると、話が変わってくる


京太郎「」

美穂子「」

久「」zzz


京太郎「そ、その……」

美穂子「待って待って」

京太郎「仲良いとは思ってましたけど」

美穂子「ち、違うの!」

京太郎「ね、寝てる相手というのは」

美穂子「だから!」

京太郎「……えー」

美穂子「疑った目で見ないで!?」


必死の弁明である


美穂子「と、とりあえず部屋が暑いからなんとかしようと、ね?」

京太郎「……」ジトー

美穂子「違うんだってばぁ」ナミダメ

京太郎「いや、まぁ良いと思いますけどね」

美穂子「私が好きなのはっ」

京太郎「?」

美穂子「あっ、あぅ……」カァッ

京太郎「まぁ冗談ですけど……」

美穂子「!!?」


話を変えるために、ポンと手を叩く


京太郎「……誰か来ませんでした?」

美穂子「……京太郎くん」ジト

京太郎「あーすみませんって、からかいすぎました」

美穂子「もぉ、許してあげないからっ」ムゥ

京太郎「それはちょっと、すみません……今度お詫びしますから」

美穂子「……ランチ」

京太郎「はい」フッ

美穂子「約束よ?」

京太郎「はい……そんじゃまたあとで、あとまだ部屋からは」

美穂子「わかてるわ」フフッ

京太郎「それじゃまた!」バッ

ウィーン

美穂子「……まったく、気安くなったんだから」


そう言って、椅子に座る


美穂子「……私もか」クスッ



特異課施設内、順子と大介と貴子ことババルウ星人が歩いている

目的地はない

あえて言うなら全員そろってそれなりに重要な部屋こそが目的地である


順子「ふふふ、ウルトラマンの秘密掴んでやるわよ」

貴子「え、ウルトラマンの秘密がこの基地に?」

大介「やっぱなにも無いんじゃ」


そんな言葉に、順子は大介に近づいて耳打ちする


順子「一般には知らされてないか、本当でも言うわけないでしょ!」

大介「そういうもんですか?」

順子「そういうもんよ……さ! ウルトラマンの秘密を探しに行くわよ!」

貴子「おー!」

大介「なんで乗り気なんですか」

順子「ウルトラマンー!」

貴子「ウルトラマンー!」

大介「待ってくださ」

順子「ウルトラマーン!」

貴子「ウルトラマーン!」

大介「なぁにこれ」



―――【???】


PCとにらめっこから解放されたはやり

スーツの男たちに感謝されながら、会社を出て今は公園のベンチ

平日の昼間から、スーツ姿でベンチに座っているのが牌のお姉さんだとは誰も思うまい


はやり「……なにがお見合いだよぉ、お似合いの人探せオラァ」


弱々しく独り言をつぶやく


はやり「はぁ~あ……取材が来るから出てけってことだよねぇ」


缶コーヒーを傾けて飲む


はやり「人気者の辛いとこね、これ」


「怪獣だって!」

「えー!!?」

「見に行こうぜー!」


はやり「怪獣ぅ!!?」バッ


―――【特異課施設:廊下】


順子「こっちに宇宙の気配!」

貴子「確かに!」

大介(なにが?)


そのまま走り、順子は先に行ってしまう

貴子が駆けてついていこうとするも、その腕を大介が掴む


貴子(こいつ気付いたか!?)

大介「なんかここらへん、人通り少ないしヤバくないっすか?」

貴子「そうか?」

大介「えーそうじゃないっすか?」

貴子「まぁ着いて行ってみよう」

ババルウ星人(確かになんか気配は感じるしな!)

大介「えー」


そしてその間、奥の部屋へと入った順子は―――


順子「あれ、ここは?」


暗い部屋に大きな機械があるようだった

不思議な機械

そしてその前に立っている―――金髪の少女


順子(ぼんやりしてて見えない……てか電気は?)

?「……抱腹絶倒」

順子「え?」


前方にいた少女が、青いクラゲのような生き物の姿になってどこかに消えた

その瞬間、入ってくるのは貴子と大介

貴子はそのまま、真っ直ぐと入って行き機械を見上げた


貴子「これは……」

順子「う、う」

大介「う?」

貴子「う?」

順子「宇宙人だぁあぁぁぁぁぁっ!!」

貴子「な、なにぃぃぃぃ!!?」


―――【???】


公園近くのデパート

はやりはソフトクリーム片手に眼を腐らせていた

もちろん比喩で


はやり「……」


ヒーロー『子供たちを離せ!』

悪の幹部『ええい、いけバギラ!』

怪獣『ギャオー!』


はやり「……ヒーローショーって」ペロペロ


サングラスの奥で死んだ瞳をしているはやり

深いため息をつく

こんなことならばせめてデートぐらいしたかったものだと、空を仰ぐ


「怪獣だー!」

「怪獣だ!?」

「うわー!」


はやり「そういうのもう良いから」


ヒーロー「怪獣だー!」

悪の幹部「怪獣がでたぞー!」

怪獣『ギャオー!!?』


はやり「え?」


振り返ると、手からソフトクリームを落とす


はやり「……怪獣だー!!?」


―――【特異課施設:廊下】


廊下を走る京太郎

いつの間にかいなくなっていた順子と大介の二人を探す

先ほどから走り回っているがまるで見つからない


京太郎「たくどこに……あぁ」


視線を動かして道を見る


京太郎「こっちの方、行ったことな」


―――宇宙人だぁあぁぁぁぁぁっ!!


京太郎「ビンゴだし宇宙人だし!?」

ベリアル『よく隠れてたな、間違いなく敵の気配だ』

京太郎『よくわかりますね!』

ベリアル『余計なカケラが入ってるようでな……』

京太郎『カケラ?』

ベリアル『とりあえずこの場でカードを入れてゼットライザーのトリガーを引け!』

京太郎「へ?」

ベリアル『いいからさっさとしろ!』

京太郎「オッス!」


周囲を確認してから、迷わずトリガーを引き、開いたゲートに走り出す

次の瞬間、ゲートから出てくるのは白銀のベリアル

人型サイズのベリアルはそのまま走って声のした方向へと向かう


―――【久の医務室】


座って本を読んでいる美穂子

すると、呼び出し音のようなものがポケットから響く

焦りながらもそれを取り出す


美穂子「え、えっと……ど、どのボタンで」

ピッ

美穂子「あら?」

トシ『聞こえるかい?』

美穂子「あれ、なんか操作した?」

トシ『強制的に通話した。あんたの端末にだけつけてみた』

美穂子「助かり、ます?」

トシ『この機能にそう言うのはあんただけだよ……まぁなにはともあれ』

美穂子「なにかありました?」

トシ『怪獣が出た。避難誘導等……任せた』

美穂子「は、はい!」


立ち上がると、自室待機を命じられたものの仕方ないと部屋を出る

慌ただしい廊下、ガレージの方へと向かおうとすると白築慕が手を振っているのが見えた

頷き、急いでそちらへと駆けていく


―――【特異課施設内:???部屋】


貴子が驚愕する

順子も驚愕する

大介も驚愕する


もうなにがなんだかわからない空間で、貴子が立ち上がった


貴子「こうなれば仕方あるまい! ふん!」


勢いよく声をかけた貴子の体が、エネルギーを纏う

それと共に現れるのは宇宙人、暗黒星人ババルウ星人


順子「……こっちも宇宙人だー!!?」

ババルウ星人・大介「え、どゆこと!?」


もはや三人いる中、順子しか状況を掴めていない


ババルウ星人「もういい!」


そう言うと、左腕から光弾を放つ


大介「っ!」


跳びだした大介が順子と共にその光弾を回避するも、爆風で転がり二人まとめて気絶してしまう

そしてそんな空間に入ってくるのは―――白銀の戦士


ベリアル「シャアッ!」

ベリアル『見つけたぜ!』

京太郎『この二人こんなとこに、ってかなにこの場所! てかなにあいつ!』

ババルウ星人「ううう、ウルトラマンだぁぁぁぁっ!!?」

ということで今回はここまでー
次回は戦闘、って感じでございます

次は金曜の夜とかになるかもー
そんじゃまたー

夜からやると言ったな、あれは嘘だ
とりあえずちょっとだけやってみるー



―――【街中:デパート近く】


逃げ惑う人々とは反対方向へと走るはやりがガッツハイパーを撃つ

非番とはいえ、特異課なのだ

やることは見失わない


はやり「こっちだよ! このっ、ええっと、恐竜? 戦車?」

トシ『恐竜戦車だね』

はやり「まんま!!?」


恐竜戦車が咆哮を上げながら走る

はやりの方ではなく―――


はやり「デパートにっ!」

トシ『……』

はやり「はやく京ちゃんを!」

トシ『いや、くるよ』

はやり「っ!」


その言葉と共に、恐竜戦車に銃撃が放たれる

そちらを見ればそこには車が一台


はやり「慕ちゃんと、福路ちゃん!?」

美穂子「瑞原さん!」

慕「はやりちゃん!」


走る車が、はやりの前に止まる

出てくる美穂子が素早く銃撃

恐竜戦車が、はやりたちの方を向く


はやり「逃げるよぉ!」

美穂子「分散しましょう!」

慕「えっ、それじゃあ!」

美穂子「か、解散です!」ダッ

はやり「ちょ! もう!」


車から離れながら銃撃する美穂子、慕は車で、はやりは再び走り出す



徐々に怪獣戦車と距離を取っていく美穂子

二つの銃撃も確かに見えた

だが、既に恐竜戦車は気にした様子もない


美穂子「……ならっ!」


物陰に入ると、美穂子はスーツの内側からスパークレンスを取り出す

両腕を組むようにして、ぐるっと回した


美穂子「ティガァ!」


スパークレンスが開き、光が溢れる



一方、デパートの方に向かいそうな恐竜戦車を引きつけようと銃撃を続けるはやり

顔をしかめながら、ガッツハイパーのカートリッジを交換する


はやり「まだまだ!」


だがその瞬間、光と共に巨人が現れる


はやり「……ティガ」ホッ


ティガ「チャァッ!」

恐竜戦車「―――!!」



―――【特異課施設:???】


ベリアルが素早く構えを取り、ババルウ星人へと走る

そんなベリアルを見て、ババルウ星人は素早く武器である刺又を振るう


ベリアル「ハッ!」


その刺又を左手の爪撃で弾くと、右腕での爪撃でババルウ星人を攻撃


ババルウ星人「うぐあっ!」

京太郎『ここで暴れられても厄介です。やりましょう!』

ベリアル『ハッ、暴れるのはオレも一緒だけどなァ』

京太郎『ほどほどに!』


起き上がり、走ってくるババルウ星人

振るわれる刺又を再びベリアルクローで弾くも、ババルウ星人は今度は近距離で光弾を放つ

ベリアルが素早く光弾を放ち相殺させるも―――爆発


ババルウ星人「ぐっ、まだまだぁ!」


次々と光弾を放つババルウ星人

だが、ベリアルはその場に立つのみ



―――【インナースペース】


ベリアル「やるぞ小僧ォ!」

京太郎「はい、ベリアルさん!」


メダルを弾く、宙に浮いたメダルが闇を吐きだし周囲を暗黒に染めていく


京太郎「究極生命体!」バッ


落ちてきたメダルを掴むと、ゼットライザーにメダルをはめこむ


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリァァルッ!」



溢れだす漆黒と共に、現れるのは暗黒の皇帝―――ベリアル

凶悪なその爪を振るい放たれる光弾を一掃する

首をゴキリと鳴らすと、ババルウ星人へと跳ぶ


ベリアル「シャアッ!」

ババルウ星人「うわぁっと!!?」

ベリアル『やっぱこの姿は調子が違ぇな!』

京太郎『違いないっすね!』


接近と同時にクローを振るう

ババルウ星人が刺又でその攻撃を凌ごうとするも―――


ベリアル・京太郎『無駄だァ!』


―――刺又ごと、斬り裂かれる


体にその斬撃を受けるババルウ星人が、倒れそうになるもすかさず蹴りを放つ

吹き飛んだババルウ星人は壁を突き抜けて外へと跳びだした

敷地外に転がるババルウ星人を追って現れるベリアル


ババルウ星人「べ、ベリアル! な、仲間にならないか!?」

ベリアル『つまらん……!』

ババルウ星人「即答ですかぁ!」

ベリアル『いくぞ小僧!』

京太郎『はい!』


右腕に集まる暗黒

そして左腕へと重ねて必殺の光線を放つ


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれたそれは真っ直ぐとババルウ星人へ


ババルウ星人「こんなことなら情報共有しとくんだったぁ!」

ベリアル「ハアァッ!」

ババルウ星人「ぐぅわぁぁっ!」


そして―――爆散


その爆炎の前、ベリアルは右腕を払うように振るうと、空へと飛び立つ

とりあえずここまでー
また夜ー

やってくよー


―――【郊外】


カラータイマーが点滅するティガ

恐竜戦車の三連戦車砲と、目からのレーザーに苦戦していた

デパートを守りながの戦い故、というのもあるのだろう


美穂子『はぁっ、はぁっ……こ、このままじゃ!』


さらに恐竜戦車の攻撃

ティガがバリアを張って攻撃を凌ぐが、やはりその攻撃を前に押されていく

だがその瞬間、恐竜戦車にさらなる銃撃


はやり「こっちだよ!」

美穂子『はやりさん……っ!』


一瞬の隙、恐竜戦車がはやりの方を向いたその瞬間―――


ティガ「テァッ!」


パワータイプへとタイプチェンジをしたティガが、恐竜戦車へと接近

恐竜戦車は素早く回転して尻尾を振るうも、ティガはパワータイプの力でその尻尾を押さえる


ティガ「テヤァッ!」

恐竜戦車「―――!」


そのままのパワーで、ティガは恐竜戦車を持ち上げ―――大地へと叩きつける


恐竜戦車「―――!」

ティガ「タアッ!」


逆さになった恐竜戦車に、光弾を撃つ

起き上がろうと尻尾を動かした恐竜戦車が大きくよろめく

さらに距離を取ると、ティガは両腕を胸の前で構えた


美穂子『これでぇ!』


赤いエネルギーが弾を生成する


美穂子『終わりィ!』

ティガ「テヤァッ!」


放たれたデラシウム光流が恐竜戦車に直撃

一旦止まった恐竜戦車だったが、間を置いて粉々に爆散する

それを見届けると、ティガは空へと去って行く


はやり「また、ティガに助けられた……」

慕「ふぅ……あ、基地の方でもベリアルが宇宙人を倒したって」

はやり「え、どゆこと?」

はやり(京ちゃん、戦ってたんだ……)



―――【???】


黒いスーツの男、いや宇宙人

ゼットン星人が椅子に座っていた

その向かいに現れる影


「ババルウ星人がやられた」

ゼットン星人「あれは―――功を焦ったか」

「……例の場所、やはりあそこには我々とは別の地球外の痕跡があった」

ゼットン星人「やはり……なら次にやることは」


立ち上がったゼットン星人が振り返る

窓ガラスになっていたその向こうに大きな空間、そしてそこに立つのは―――怪獣


ゼットン星人「潰す。そろそろ本気でな」


パチン、と指を鳴らすと、肩を揺らして笑った


―――【特異課施設:正面口】


夕方―――立っているのは西田順子と山口大介

気絶していた二人だったが今しがた眼を覚ました

別状問題もないとのことで止まっているホテルへと帰ることになったのだが……


順子「ほんとに宇宙人が」

京太郎「またまたワハハ」

大介「見たけどなぁ……」

京太郎「勝手に歩いてっすか?」

順子「うっ……」


眼を逸らす順子に、京太郎は軽く溜息をつく


京太郎「二度目の取材許可、下りないと思った方がイイっすよ」

順子「はーい」ハァ

大介「自業自得っすね、とりあえず今回はこれで帰りましょう」

京太郎(今回は、かい!)

順子「お世話になりました」

大介「お騒がせしました」


頭を下げてから帰っていく二人

なんだか長い一日だったと、京太郎は息をつく


美穂子「須賀君」

京太郎「うおっ!」


背後からの声にビクッと体を震わせた

振り返ればそこには福路美穂子


京太郎「あ~……お疲れ様です」

美穂子「京太郎くんこそ」クスッ

はやり「はやぁ~」ズーン

京太郎「お、お疲れさまです?」

はやり「疲れたよぉ~色々~」


そう言うと京太郎の体にもたれかかるはやり

そしてそんなはやりの頭を撫でる


京太郎「おーかわいそうに」

はやり「はやぁ~」グテー



特異課施設から遠ざかり、車に乗り込む順子と大介

少しの振動と共にエンジンがかかり、そのまま走り出す


大介「それにしてもなんにもでしたね」

順子「ふっ、ふふふ」

大介「ぶっこわれました? 宇宙人に襲われて」

順子「黙らっしゃい!」


人差し指が大介の頬にささる

顔をしかめつつ、安全運転を心掛ける大介だが、順子は指を離してからメガネを外す


順子「本日の私のメガネ、探偵ご用達のカメラ付き!」

大介「えっ! さすがにまずいんじゃ!?」

順子「そのままは出せないわね。でも私が個人的に見て、個人的に色々と立証を立てて文字を書いたりはできる!」

大介「……大丈夫っすか、その内なんか」

順子「大丈夫大丈夫! さて、ホテル戻って確認よー!」

大介「……変なもの、映ってなきゃ良いですけど」

順子「変なもの映ってるのがベストでしょ」

大介「……違いない」



―――【特異課施設:休憩所】


テーブルに倒れている京太郎

溜め息をつきつつ、見るのはテレビ

ニュース番組では今日のティガの活躍を映している


『今回もティガがやってくれました!』

『さすが、まさらに光の戦士と言ったところですか』

京太郎「……なんだよ」

ベリアル『オレはああいうんじゃねェからな』

京太郎『確かに』


体を起こして背を伸ばす

すぐに首を慣らし、手に入れたババルウ星人メダルを見る

宿主であった久保貴子は眠っているらしい


京太郎「ん~」

ベリアル『どうした』

京太郎「いや、宇宙人たち……このメダルの宇宙人も、なにが目的なんだろ」

ベリアル『さてな、黒幕を掴まえないことには、だろ』

京太郎「……ごもっともで」


そう言うと、苦笑を浮かべて再びニュースに視線を移した



     第7話【THE・パパラッチ】 END



―――次回予告


京太郎:今回の敵は違う?

ベリアル:今のお前じゃキツいな

ゼットン星人:いでよ―――キングジョー!

美穂子:ロボット怪獣!!?

京太郎:美穂子ォ!

トシ:セブンを追いつめただけある

ゼットン星人:ペダニウムの光で、消し去れ!


次回【いつかの再開へ】


久:あれが光の力

京太郎:闇の力で、消し去る!

今回はここまでー
そして今回は安価無しの話となりましたー

次回はあるよ! 代わりに二個あるよ!

そしてキングジョー、ボス戦って感じっすね
まぁ他にも色々あったり

そんじゃたぶんまた明日やるっすー

そんじゃやってくー



―――【特異課施設:作戦室】


あれから二日、京太郎はトシに呼ばれて作戦室へと着ていた

今日も麻雀を終えて、京太郎は戻ってくる

美穂子は他に向かったようで、付き合ってくれたのははやりだった


トシ「きたね、どうだった?」」

京太郎「ハズレっす」

トシ「フッ、正直に言う」


それは彼にとっての事実だ


トシ「さて、良いニュースと悪いニュースが」

京太郎「そういうのいいっすから」ジト

トシ「はいはい、遊び心がないねぇ」

京太郎「いや、深刻な呼び方するからぁ」

トシ「まぁね」クスッ


軽く、キーボードが叩かれた

モニターに表示される画像


トシ「さ、まずは良いニュースだ。見つかったよ……お目当ての人物の一人」


それは―――


京太郎「和っ!?」


―――原村和だ



     第8話【いつかの再開へ】



作戦室を出た京太郎は休憩所に座ってコーヒーを飲んでいた

静かに、その波紋を見つめる

目的、やるべき道しるべは新たに示された


京太郎「だが……」

ベリアル『ハッ、やるべきことは決まってんだろ?』

京太郎「それでも……」


息をついて天井を見上げる

真っ白な天井と、照明


京太郎「天使……」

ベリアル『根源的破滅だろ? つまりアレだ』

京太郎「知ってるんですか?」

ベリアル『ハッ、この記憶が正しいのかなんて、知らねェしな』

京太郎「それって」


足音が聞こえて、言葉を止める

心の中で会話すれば良いのだが、ついつい普通に話してしまう

咳払いをしつつ、ニュースに目を移す


京太郎『それって、どういうことですか?』

ベリアル『あ? どぉでもいいことだ……』

京太郎「俺はよくないんだけどなぁ」


そう言って息をつくと、近づいてくる影を見つける



◆誰が来た?

1、瑞原はやり

2、妹尾佳織

3、東横桃子

4、蒲原智美

5、福路美穂子

6、加治木ゆみ

7、津山睦月

◇5分間で1↓から集計

間違えた、コンマが高いキャラクターで

1、瑞原はやり



歩いてきたのは見慣れた女性

最近は相棒、と言っても良い間柄でもあるだろう

緊張感皆無で笑みを浮かべる京太郎


はやり「あ、京ちゃん」ニコッ

京太郎「はやりさん」


彼女の方も、笑みを浮かべて京太郎の向かいに座った


はやり「今日も大活躍だったね。麻雀」

京太郎「まぁ……強くなって良かったと言うべきか、俺の力じゃないって言うべきか」

はやり「もー京ちゃんの力だって言ってるのに」

京太郎「……納得いかないなぁ」

はやり「私から見てカッコよく映ってるのはベリアルじゃないよ」

京太郎「え?」

はやり「私がカッコいいって思うのはいつだって京ちゃんだから」


そう言って屈託のない笑みを浮かべるはやりに、京太郎は顔を赤らめてそっぽを向く

こう正面切ってそんなことを言われるのは初めてだった


京太郎「その……あ、ありがとう」

はやり「どういたしまして」


クスリと笑うはやりはやはり自分よりも大人だった

だからこそ“あの日”から一緒にいてくれているはやりだからこそ、話をしても良いかもしれない

故に、口を開く


京太郎「その……」

はやり「ん?」

京太郎「和が……原村和が、見つかったんです」

はやり「!」


淡々と、話を始めていく

一番最初の話、そしてこうなった話

夏のインターハイ


京太郎「……」

はやり「良かったね。それじゃあようやく竹井さんに続いて」

京太郎「その、ただ……」

はやり「?」


言いよどむ京太郎を見て、はやりは小首をかしげた

少しして、眼を逸らすとそっと京太郎の方を向く


はやり「……好きなの? その、原村さんのこと」

京太郎「そのつもり、だったんですけど……わかりません」

はやり「そういうもの、なのかな? はやや、わかんないけど」

京太郎「さぁ、でもまぁ……大事な仲間です」

はやり「じゃあ!」

京太郎「……ここから離れることになります」

はやり「え?」

京太郎「そういうこと、なんですけど」

はやり「……そ、そっかぁ」


さすがに止めることはできない

だが京太郎はこの街を放って行って良いのだろうかと、悩んでいる

それを理解して、はやりは顔をしかめた


はやり「……私は、京ちゃ」

美穂子「ひ、久が起きました!」

はやり「はやぁっ!!?」ビクッ

美穂子「え、ど、どうしたました?」

はやり「なんでもないよ! うん! ほら京ちゃん行っといで!」

京太郎「え、あ、はい」コクリ


それから、京太郎と美穂子の二人は竹井久の部屋へと向かう

検査等も終わらせたそうで、問題はないらしいが……


京太郎「ふぅ」

コンコン

?「どうぞ~」

ガチャッ

京太郎「……」

?「あら、須賀君」

京太郎「ぶ、部長ぉ~」

美穂子「久……」ニコリ

久「あら、珍しい二人……でもない?」


そう言うと、患者衣の久は笑みを浮かべる

少しばかり痩せたように見られた


京太郎「よかったぁ」

美穂子「ほんとに!」

久「色々聞いたけど、二人が宇宙人から私を助けてくれたのよね」


その言葉に、京太郎と美穂子が気づく

美穂子が『ウルトラマンティガ』であると、バレているのかどうか


久「あまり覚えていないんだけど、ね?」

美穂子「じゃあその、宇宙人から解放された後のことは?」

久「んーさぁ?」

美穂子「そう……」ホッ

久「あ、そう言えば須賀君以外の……まこたちは?」

京太郎「え、あ……あーその」


言いよどむ京太郎を見て察したのか、苦笑を浮かべる


久「……そっか」

京太郎「すみません」

久「なんで須賀君が謝るの?」

京太郎「あ、いや……絶対、連れ戻しますから、みんな!」

久「……うん、ありがとう」ニコリ


京太郎「……はい」

美穂子「その、久……私も、頑張るから」

久「……うん」


返事をする久を前に、美穂子と京太郎は向かい合って笑顔を浮かべた

鶴賀のメンバーに加えて久まで

風越はあと華菜だ


美穂子「それじゃあ京太郎、いきましょう」

京太郎「そっすね、部長も疲れてるだろうし」

久「また来てね」

京太郎「ん、必ず」ニッ

美穂子「私も」


二人が並んで、部屋を出ていく

一人で医療室に残った久は、勢いよくベッドに倒れ込んだ

疲労だとかいう雰囲気ではない


久「光、美穂子……あなたが光の巨人、ティガ」


思い出すのはあの光景

スパークレンスをかかげ、光になる美穂子

両手を真上に上げる


久「須賀君とも、ずいぶんと仲良くなっちゃって……うらやましいことで」


グッと手を握りしめる


久「光の巨人、私も……光があれば」


―――【街中】


マンションが立ち並ぶ住宅街

だがその中に異様な人物

スーツを着た、宇宙人


ゼットン星人「平和ボケ、だな」


周囲の人々は眼を向けるが、コスプレとでも思っているのだろう

構わず、ゼットライザーを持ちだした


ゼットン星人「いでよ―――」


メダルをセットしてブレードを可動させる


ゼットン星人「―――キングジョー!」


不可思議な音と共に、現れるのはロボット“キングジョー”



―――【特異課施設:廊下】



久の部屋から出て歩いている京太郎と美穂子の二人

他愛ない話をしつつ、歩いていると警報が鳴り響く

ハッとした京太郎は即座に、端末を開く


『街中にロボット怪獣出現、コード……キングジョー!』

美穂子「ロボット怪獣!!?」

京太郎「トシさん!?」

トシ『裕子はガレージに向かった、あんたと福路も早く』

京太郎「了解っす!」

美穂子「行くわ」コクリ

京太郎「……お願いします!」


頷いて走り出す二人

そんな二人にさらに合流する人物


はやり「はや、私もいくよ!」

京太郎「はい!」

美穂子「……!」グッ



裕子の運転する4WDに乗り込む面々

助手席にははやり、後部座席に京太郎と美穂子の二人だ

中々近場だったようで、ロボット怪獣キングジョーが巻き上げる爆煙が見えた


裕子「あの破壊力……これまでの相手とは違うみたいです」

ベリアル『あの女の言うとおりみてぇだな』

京太郎『今回の敵は違う?』

ベリアル『今のお前じゃキツいな』

京太郎『でも、美穂子さんと一緒なら……』


その言葉に、ベリアルはなにも言わない

あの闇の力を使ってもキツいと言っているのかだとか、詳しいことを聞く気はない

結局、やることは一つ


京太郎「戦って勝つ……」

美穂子「任せて、私がみんなを……貴方を守るから」

京太郎「っ……」コクリ


頷いた京太郎に、美穂子が笑みを浮かべる

バックミラーからちらりとはやりの顔が見えた


はやり「……」

京太郎「……」


アイコンタクトでお互い察する

もうすぐ、キングジョーが見える範囲だ



ミサイル、光線で街を破壊するキングジョー

裕子の運転する車を降りて銃撃する面々

すぐにターゲットが変わった


京太郎「こっちを見た!」

はやり「散開しよう!」

裕子「えっ!」

はやり「行こう!」

美穂子「はい!」


四人がそれぞれ散って行く

キングジョーがそれぞれの方へと体を向けるが、一人に絞り歩き出す

目標は―――


京太郎「俺かよッ!」

ベリアル『おい小僧! 仕方ねぇ、やるぞ!』

京太郎「はい!」


ゼットライザーを取り出したその瞬間、なにかが前に現れ攻撃をしかけてくる

ハッとして回避しようとするも、遅かったのかゼットライザーが弾かれた

舌打ちをして後ろに下がる


ベリアル『チッ! なんだ!』

京太郎「お前っ、池田ァ!」

華菜「……」


両手両足を地につけて、獣のような構えをとる池田華菜が眼を光らせた

素早く両手を構える京太郎

お互いの視線が交差する


ベリアル『さっさとあいつを拾いにいくぞ!』

京太郎「はい、それにキングジョーが……いや、あっちは」


瞬間、現れた光の巨人ウルトラマンティガ

ティガが即座にキングジョーへと攻撃をしかけていく

ならば京太郎が集中すべきは……


京太郎「池田華菜……ッ!」

華菜「……!」ダッ


キングジョーと相対するティガ

格闘戦をしかけるも、その頑強な装甲には通用しない

光弾を放つも、また無駄


ティガ「チャアッ!」


タイプチェンジでパワータイプへと変わる

拳を打ち込めば、確かに怯む


美穂子『これなら!』

キングジョー「―――!」


放たれる破壊光線を、回避してさらに回し蹴り

頑強な体だが、パワータイプならダメージは入る


美穂子『これなら……っ!?』


ふと、視界に映った光景

華菜が京太郎へと襲い掛かっていた

素早い華菜の格闘をさばいていく京太郎


美穂子『華菜っ!?』


だがそちらに意識を飛ばしていた一瞬が、キングジョーの勝機

近くのトラックを掴むと、そのままティガを殴り飛ばす


ティガ「ダアッ!」


吹き飛んで、そのままビルへと倒れ込むティガ

さらに破壊光線を受ける


美穂子『うっ、アアァァァッ!!?』

キングジョー「――-!」


破壊光線を止めて、近づくキングジョーがティガに張り手を打ち込む

真横からの張り手に、吹き飛んで地面に倒れ込むティガ


美穂子『っ、華菜っ……京太郎ぉ!』

キングジョー「―――!」



襲い掛かる華菜の攻撃をなんとかさばいていく

獣のように両手を振るってくる華菜


京太郎「っ!」

ベリアル『殺れ!』

京太郎「美穂子さんが見てるっ、怪我させるわけにはっ!」

ベリアル『テメェがやられちゃ世話ねぇぞ!』

京太郎「わかってる、けど!」


爪が掠り、頬に切り傷

舌打ちをして、ガッツハイパーを懐から取り出すとさらにスタンモードのカートリッジに変えた

麻痺さえさせればどうとでもなる


京太郎「こいつでっ!」

華菜「しゃっ!」


獣の勘か、即座に後ろに跳ねられた

銃弾は地面を穿つのみ


京太郎「くっ!」

ティガ「ダァッ!」


倒れてくるティガ

京太郎は顔をしかめつつ、その場を後ろに跳んだ

一瞬だが華菜も後ろへと跳んだのが見えた


京太郎「美穂子さん!」


倒れるティガに、キングジョーが馬乗りになる

華菜が追撃してくる様子がないのを確認しつつ、ゼットライザーを拾う

今更ここで、など言っていられない

ティガのカラータイマーが点滅している


京太郎「ベリアルさん!」

ベリアル『やるか!』

美穂子『っ、京太郎……?』


取り出したゼットライザーのトリガーを引き、ゲートへと飛び込む



インナースペースで、京太郎はゼットライザーを左手に持つ

背後にベリアルが現れた

キングジョー確かにいつもと違う雰囲気を感じている


京太郎「今の俺じゃキツいって、無理じゃないんですよね」

ベリアル「ああ、余裕じゃあねぇな」

京太郎「上等! 余裕のバトルなんてそうそう無かったですし!」

ベリアル「ハッ、おもしろいやってみろ!」


カードを差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランデット』


ベリアル「小僧、やってみな!」

京太郎「ベリアァルッ!」


ゼットライザーを掲げ、トリガーを引く


現れるのは白銀のベリアル

素早くキングジョーに対して爪撃を見舞う

よろめいたキングジョーを掴まえて、力一杯にティガから引き離す


京太郎『っのぉ!』

ベリアル「ハアッ!」

キングジョー「―――!」


立ち上がったキングジョーがベリアルに頭突きを見舞う

ひるむベリアルに、張り手を放つ

吹き飛んだベリアルが倒れた


京太郎『なんつーパワー!』

ベリアル『ハッ、大したもんだ……だけどなぁ!』


起き上がったベリアルが電撃攻撃を放つ

キングジョーは一時的に動かなくなった


京太郎『ッ!』


倒れているティガが、そのまま光の粒子となって散る

そこには、美穂子が倒れていた


京太郎『このままじゃ、回り込んでっ!』

ベリアル『あぁ?』


素早く場所を移してキングジョーの横に立つ

そのまま、拳を打ち込むも怯む様子もない

電撃に対する攻撃の効果がなくなったのか、キングジョーが動き出そうとする


京太郎『まずい!』



インナースペース内で、京太郎は左手のメダルを弾く

溢れだす闇が周囲を包んでいく

そして、京太郎の赤い瞳が輝いた


京太郎「究極生命体!」


落ちてくるメダルを左手で取って、ゼットライザーへとセット

ブレードを可動させた


『Alien Rayblood』

京太郎「ベェリアルッ!」


トリガーが引かれた



キングジョーを殴りつけるベリアルの姿が黒いものに変わる

その威力に押されてか、キングジョーは仰け反った

さらに素早く蹴りを打ち込んでさらに美穂子から距離を離す



ベリアル「フハァッ!」

キングジョー「―――!」

京太郎『美穂子さんに近づけさせ、るかァッ!』


両腕を振るう


ベリアル・京太郎『デスシウムロアー!』


音波攻撃でさらに後ろへと後退していくキングジョー

さすがのパワーだと、京太郎はどこか高揚する

さらなる攻撃の連打


京太郎『ダアァッ!』

ベリアル「シャアッ!」

ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』

キングジョー「―――!」


放たれた斬撃がキングジョーを両断する―――ことはなかった


京太郎『分裂した!?』


上半身と下半身が分かれる

さらに次々と別れていき四つの飛行船になるキングジョー

それぞれがベリアルへと攻撃をしかける


京太郎『くっ!』

ベリアル「グッ!」


周囲に砂埃が舞い視界を塞ぐが、ベリアルは素早く両腕を振るい砂煙を払う

だがそこには―――


京太郎『逃げられたっ!』


悪態をつく京太郎は、美穂子の方へと視線を向けた

そしてそんなベリアルを、はやりは黙って見上げている



―――【特異課施設:病室】


竹井久はそこでテレビを見ていた

生中継、ベリアルが飛び立つのが見える

破壊された街


『ウルトラマンが怪獣を取り逃がしてしまいました!』

久「……光の、巨人、ティガ」


憧れるような表情


久「私も、光に……」


思い浮かぶのは友


久「美穂子、どうして貴女なの……」

今回はここまでー
キングジョー戦後半ー

そして全国編までもうすぐ
敵の全貌もそろそろ掴め……ればいいなぁー

そんじゃまたー明日か明後日ー

おつ
初敗北かさすがにキングジョー強い
久はまさかマサキケイゴ枠か?


ウルトラマンってティガ以外あまりおぼえてないんだよな
キングジョーそんな強いイメージなかったわ

やってくよー

>>347
久はご察しで

>>348
むしろキングジョーは強いイメージしかないイッチっす
いや個体にもよるかも?



―――【特異課施設:休憩所】


あれから8時間、時刻は夜23時

ニュースでは相も変わらずウルトラマンの話題ばかりだ

やれティガが良いだのベリアルが悪人顔だの、怪獣を逃がしただのウルトラマンが死んだだの


京太郎「頭ぁ痛くなるな……」

ベリアル『あの小娘がやられたが、お前はどうしたい?』

京太郎「……とりあえずキングジョーは倒します」

ベリアル『ハッ、当然だな』


だが考えていることはそれ以外にもある

今後のこと……


京太郎「俺は……」

??「あ、須賀君」

京太郎「吉留さん……」


そこにいたのは三人、吉留末春、文堂星夏、深堀純代

福路美穂子の後輩三人

池田華菜であれば同級生二人、後輩が一人


京太郎「……どしたんすか?」


今日、生で戦った相手の友人たち

思うところがあっても良いのだが


京太郎(思ったより、罪悪感とかないなぁ……酷い奴だ)


末春「えっと、助けてくれたらしいから」

京太郎「まぁウルトラマンと一緒に戦ってましたから……怪我ぐらいしますよ」

星夏「でも、そこまで外傷はなくて良かった」


三人は美穂子の様子を見に行ったのであろう

抱えて車に乗せたのも京太郎だった


純代「私たちも、力になれれば……」

末春「言いはしたんだけどね」

京太郎「美穂子さんが止めたんじゃないですか?」

末春「正解」アハハ


苦笑する末春に、京太郎も苦笑で返す

優しい彼女だからこそだろう

それに瑞原はやりや熊倉トシだって、よほどのことがなければ子供を戦わせようと思うことも無い


京太郎「それに、美穂子さんって優しすぎるからなぁ」

末春「おー、わかってるね須賀君」

京太郎「誰だって、一緒にいればわかるでしょ」フッ

星夏「確かに」

純代「……次、あのロボットが出てきたら須賀君が?」

京太郎「はい、あとはやりさんと」

星夏「……怪我、しないようにね」

京太郎「はい」


そう言って笑うと、ふと通信が入ったことに気づいた

三人に『おやすみ』とだけ言って呼びだされた場所へと向かう



この施設内でもあまり立ち寄らない方へとやってくる

前にババルウ星人が現れた部屋、そこに入った

あの時と同じ機械、壁はすでに修繕されている


京太郎「……どうしたんっすか?」

トシ「きたね」


そう言って振り返るトシ、巨大な機械の前

京太郎はそっとトシの隣に立つ


トシ「……」

京太郎「これは?」

トシ「見よう見まねで作ってみたんだけどね……メダルを生成する機械」

京太郎「え」

トシ「まぁなんかの役に立つと思ったんだけど対して」


溜息をついて京太郎の方を向くトシ


京太郎「……話しってこれじゃないっすよね?」

トシ「そうなんだけど、いざ目の前にこられるとどうもね」

京太郎「珍しく濁しますね」


その言葉に、トシは自嘲するように笑った

なんだか責めるような言葉になってしまったかと、京太郎は心中で反省する

頭を振ってトシは口を開く


トシ「……うちの生徒と連絡が取れなくなった」

京太郎「え」

トシ「おそらく、そういうことだろ」

京太郎「でも岩手!?」

トシ「悪魔の種は思ったより広く速く広がってるらしいね」

京太郎「……それじゃあ岩手に?」

トシ「さて、実際に岩手にいるかもわからないしね。原村がいい例さ」

京太郎「……他県に行っている可能性もある、か」

トシ「そゆこと、情報を掴めるまではね」

京太郎「……」

トシ「可能性はあった。それを放ってこちらに来たのは私だ」

京太郎「絶対、助けますから」グッ

トシ「ん、ありがとね」フッ

ベリアル『ハッ面倒事が増えたな』

京太郎『さぁ、どうでしょう、ね……』



―――翌朝【特異課施設】


廊下を歩く京太郎

そんな廊下に置いてあるベンチに座っている女性が一人

軽く手を上げると、そちらは気づいたようで隣をポンポンと叩いた


京太郎「じゃあお邪魔して」

はやり「どーぞ」


そう言って隣に座った


京太郎「どうしたんっすか?」

はやり「……その、ね」

京太郎「?」

はやり「その……着いて行こうかな」

京太郎「え?」

はやり「あーいや、その……どう、かな?」


お勧めはできない

なぜならば、彼の原動力は彼の欲望だと理解した

自分のために、自分のためだけに、原村和を取り戻す


京太郎「……その、ですね」

ビービー

京太郎「っ!」

はやり「敵!?」

裕子『キングジョーの出現を確認! 戦闘メンバーはただちにガレージへ!』

京太郎「っ……行きましょう!」

はやり「うんっ!」


ガレージへとやってくる京太郎とはやりの二人

いつもの車がそこに止まっているのだが、既に後部座席には一人

ドアを開けると二人で車内へ


京太郎「な、なにやってんですか!」

はやり「そうだよ。安静にしてないと!」

美穂子「いえ、戦います。幸い大した怪我じゃありませんし」

はやり「でもっ、ウルトラマン同士の戦いに巻き込まれ」

美穂子「お願い、します」

京太郎「……行きましょう」

はやり「京太郎くん!?」

裕子「言って引き下がるならもうやってますよ」フッ

はやり「……」

京太郎「美穂子さん、無理せず下がってくださいよ。いざとなったら」

美穂子「……ええ」コクリ

はやり「ああもう……行こう!」

裕子「!」コクリ

美穂子「ありがとう、ございます!」


アクセルをベタ踏みして、裕子は車を発進させる


―――【市街地】


街中を進むキングジョー

なにが目的かなど考える必要もない

ただ暴れているならばやることは一つだけ


裕子「はいどうぞ!」


車が止まると即座に降りる裕子を除いた三人

走り去る車だが、裕子も銃撃をしているようだ


キングジョー「―――!」


機械音を出しながら、車の方を向くキングジョー

三人で同時にガッツハイパーにて銃撃を行うと、次はこちらを見る

動き出そうとする三人


京太郎「……」

美穂子「……京太郎」

京太郎「?」

美穂子「私は、一人で戦う」

はやり「……!」

京太郎「美穂子さん!?」


ハッキリと美穂子は口にした

彼女とて先日の戦いで京太郎がベリアルだということは理解している

だからこそ、なのだろう……


美穂子「私は一人で、大丈夫……戦えるからッ!!」


そう言うと、スパークレンスを掲げる

京太郎とはやりの前で、美穂子は―――ティガ-光-になる

はやりは、京太郎の手を取るとキングジョーと逆方向へと走り出す


ティガが再び、キングジョーへと立ち向かっていく

パワータイプへと変わりキングジョーの胴体に拳を打ち込む

力強い攻撃に怯むキングジョー


はやりに先導されて離れる京太郎


京太郎「なんで知ってんだよ、美穂子さんが……俺が行くって!」

はやり「わかんないけど、でも! あの子は一人で戦うって言った!」

京太郎「っ」

はやり「!?」


瞬間、はやりの前に現れる影

青みがかった黒髪を振り乱して、池田華菜ははやりの腹部を蹴る

京太郎は、はやりを抱えて即座に後ろに跳んで背中から落ちた


華菜「……」

京太郎「っ!」

はやり「げほっ、えほっ……う゛っ」


衝撃を殺すために後ろに跳んだが、完全には殺し切れずに咳き込み嘔吐するはやり

その背を軽く撫でてから、立っている華菜を睨む

特に、彼女とは話したことはない。見たことはあるがそれ以上はない


京太郎「お前……池田さんを操ってんのが誰か知らないけどな」


立ち上がった京太郎の瞳が赤く輝く


京太郎「効くと思うなよ、俺にィ! 人質なんかが!」


麻雀関係の知人が少なかったが故の、自分の強みではある

多少手を出したところで無事であれば問題ないという、どこか他人事のような思考

否、事実そうである。須賀京太郎にとっては


京太郎「多少怪我させてでも連れてくッ!!」

華菜「……!」ダッ

京太郎「ちったぁ勘弁しろよ池田ァ!」


はやり「きょ、きょうちゃっ」ゲホッ



ティガのパンチがキングジョーのボディに叩きこまれる

怯んだキングジョーがすぐに張り手をするも、今回こそティガは受け止めて耐えた

お返しとばかりにさらに拳を打ち込む


美穂子『これなら……京太郎くん、私は大丈夫だから……!』

ティガ「タァッ!」

キングジョー「―――!」


さらに拳を打ち込もうとした瞬間、キングジョーが破壊光線を放つ

即座にティガは回避

その光である美穂子の両の瞳は、はっきりとキングジョーを捉えている


美穂子『もう、同じ手は!』

ティガ「テアッ!」


光弾を放つ―――だが、キングジョーはバリアを張って光弾を凌ぐ


美穂子『知らない技、でも!』


キングジョーがさらに破壊光線を放つ

バリアが解除されるも、回避せねばならないため横に転がった

しかし、すぐにキングジョーが大股で歩くような蹴りをティガに打ち込む


ティガ「グアッ!」



そこから離れた道路、池田華菜が路地裏から吹き飛ばされて転がる

体にいくつかの擦り傷がついているも、表情は変えない

鼻から出てくる鼻血を拭う仕草を見せる


京太郎「……」


路地裏から出てくるのは須賀京太郎

素早くスーツの内側から取り出すのはガッツハイパー


華菜「!」

京太郎「大人しくしとけよじゃじゃ猫っ!」


すぐに目の前まで接近してくる華菜の振るう手を後ろに反って避ける

立てた爪、それが京太郎の前髪を僅かに掠った

背中から地面に倒れる京太郎が、ガッツハイパーを池田華菜に向ける


華菜「!」

京太郎「正体を現せよォ!」

華菜「!!?」


放たれたガッツハイパーのスタン弾

それが華菜の体にぶつかり、その意識を刈り取る

前のめりに倒れる華菜を、即座に起き上がって抱きとめた


京太郎「池田さんっ!」


だが池田がいたその場所に現れるのは、宇宙人


京太郎「ッ!」

ベリアル『ゴドラ星人か!』

ゴドラ星人「巨大化するエネルギーすら収穫できずに……!」



すぐに華菜を寝かせて、両手を地に着くと勢いのままに加速し、ゴドラ星人へと蹴りを打ち込む

放たれたその蹴りを、両手で防ぐゴドラ星人だが勢いにより京太郎から離される

いや、敢えて離れたのか……


京太郎「ッ!」

ゴドラ星人「!」

ベリアル『両手のハサミ! ゴドラガンの光線に気ィつけろよ!』

京太郎「ッ! ……了解っす!」


ガッツハイパーのカートリッジを排出させると、ゴドラ星人に向かって平行に走る

放たれるリング状の光線を回避していく


京太郎「ベリアルさん、俺は……一人じゃないんっすよね。最初から」

ベリアル『アァ?』

京太郎「だからッ!」


カートリッジをはめると、ゴドラ星人の方を向く

加速を殺すために脚を横に出して砂煙をあげて止まる

放たれる光線は、頭部に向けて


ベリアル『ビビんじゃねぇぞ!』

京太郎「当然!」


頭を下げて、光線を真上に加速

驚愕するゴドラ星人がさらに京太郎に光線を放つも、横にステップして回避

ガッツハイパーを撃つ


ゴドラ星人「ぐわっ!」

京太郎「まだッ!」


さらに銃弾を撃ち、ゴドラ星人を怯ませつつ接近

どんどんと距離を詰めていく

3メートル、1メートル、そして―――


ゴドラ星人「ぬおぉ!」

ベリアル『小僧ォ!』

京太郎「今ァッ!」


ゴドラ星人の右手のハサミが振るわれる!



京太郎たちの戦場から離れた場所で戦うティガとキングジョー

一進一退の戦いは繰り広げられている

そんな二体の戦いを見ているのは―――熊倉トシ


トシ「さすがだねぇ……セブンを追いつめただけある」


背後にはトシが乗ってきた車両

そしてその後部座席には……


久「あれが光の力……」


熊倉トシの視線はティガとキングジョーの戦いから逸らされる

視線の先にはビル、その屋上―――そこに立つ、ゼットン星人

だがそのゼットン星人の意識はキングジョーとティガの戦いに向けられていた


ゼットン星人「いいぞキングジョー! ペダニウムの光で、消し去れ!」


両手を広げ、ゼットン星人は高らかに笑う



京太郎とゴドラ星人

振るわれた爪は、京太郎を斬り裂くことなく止まっている

その斬撃を止めているのは―――ゼットライザーのブレード


ベリアル『ハッ、やるじゃねぇか!』

京太郎「……そうだよ。そりゃな!」

ゴドラ星人「なんだとぉ!?


超至近距離、京太郎はガッツハイパーの銃口をゴドラ星人の眼前に突き付けた


京太郎「これで和了ってな―――!」


トリガーが引かれると、ゴドラ星人が真後ろに倒れる


ベリアル『やったか』

京太郎「っ……はぁ」


立ち上がった京太郎

ゴドラ星人が粒子となって消えると、メダルが落ちる

それを拾うと、離れた場所に見えるキングジョーとティガの方に眼を向けた


京太郎「ッ!」ダッ



キングジョーの張り手を受け止めて、ティガが蹴りを打ち込む

怯むキングジョーが再び破壊光線を撃つ

吹き飛んだティガ、そのカラータイマーが点滅する


ティガ「ヴアッ!」

キングジョー「―――!」


さらに放たれる破壊光線を、バリアで防いだ

だが照射される破壊光線を防ぎ続けるのも無理がある


ティガ「グッ!」

美穂子『みんなを、守る! それが私の力の源……だから!』


バリアで破壊光線を防ぎながらも、立ち上がる

一歩一歩進むが、押し込まれて怯む


美穂子『だから、私は一人でもっ!』

キングジョー「―――!」


だが、キングジョーに銃撃が飛ぶ

それに僅かに怯むキングジョー


ティガ「!」バッ

美穂子『京太郎!?』


ガッツハイパーを撃つ京太郎、その横には瑞原はやり

二人で銃撃をしていると、さらに他の方向からも銃撃、おそらく裕子なのだろう

京太郎は、ティガの方をはっきりと見た


美穂子『私は、私は一人でも!』

京太郎「一人でっ……一人で戦えるわけないだろッ!」

美穂子『ッ!!?』



銃撃を続ける京太郎とはやり

それにより僅かに破壊光線の威力が弱まっている

だが、まだだ……


京太郎「ならッ!」

ベリアル『あの小娘は、まだ負けてねェんだろ?』

京太郎「でもっ!」

ベリアル『ここで死ぬような奴はいらねぇだろ』


言いたいことは理解できるが、それでもだ

だがその瞬間、前に差し出される何か

京太郎はそれを差し出した相手、熊倉トシを見る


京太郎「トシさん」

トシ「こいつを使いな」

はやり「……もらうよ」


受け渡されたそのカートリッジを、はやりが受け取る

驚く京太郎に、はやりは笑みを浮かべた


トシ「ライトン30弾、一発きりだよ」

はやり「りょーかいです☆」

京太郎「ちょ、なんではやりさん」

はやり「……大丈夫だよ」

京太郎「へ?」

はやり「福路ちゃんは……一人で戦ってるわけじゃ、ないからね!」


そう言うと、ガッツハイパーをキングジョーへと向ける


はやり「京ちゃん……行ってらっしゃい」

京太郎「……はい!」


京太郎が走り出すと同時に、はやりはトリガーを引いた



放たれたガッツハイパーの新たな弾丸

はやりの照準に狂いはない

ライトン30弾は、キングジョーに直撃―――爆発


キングジョー「―――!」

ティガ「!」

美穂子『そうよ、私は……一人で戦ってるんじゃない!』


◆BGM:TAKE ME HIGHER【http://www.youtube.com/watch?v=2FzlpZqyuKg


エラーしたかのようなキングジョーを前にティガがマルチタイプへと変わる

張り手をするキングジョーの手を弾くと、拳を打ち込む

パワーダウンしているキングジョーは、僅かに怯んだ


ティガ「タァッ!」

キングジョー「!」


はやり「そうだよ! 頑張って、ティガ!」


通常の銃撃だが、キングジョーを怯ませる

裕子も、別の場所から銃撃を放っていた


美穂子『ハアァァッ!』

ティガ「デヤァッ!」


蹴りを打ち込むと、後ろへと下がり―――そして、必殺の構えを取る


美穂子『これで終わり!』

ティガ「タアァッ!」


紫の光と共に、ゼぺリオン光線が放たれた




キングジョー「―――!」


ゼぺリオン光線の直撃を受けて、キングジョーが止まる

ずっと上げていた両手を下に下げ、後ろ向きに倒れた


ティガ「……」


ゼットン星人「私のキングジョーがあぁぁっ!」


そして―――爆散

キングジョーの破片が周囲に散らばる

そしてティガは光となってその場に収束していく


地に立っているのは福路美穂子

膝をついて、その顔に疲労を滲ませた


美穂子「っ……ありがとう。みんなっ」


そして空を見上げる


美穂子「大事なこと、忘れてた……仲間がいる。ありがとう、京太郎っ」


思い出すは、はるか遠くに感じるあの夏

仲間たちとの―――絆



ビルの屋上で、ゼットン星人がガクリと崩れ落ちる

膝をつき、地面を殴った


ゼットン星人「ペダニウムの光おぉっ!」

「なんの光がなんだって?」

ゼットン星人「っ! 貴様!」


そこにいたのは、闇の巨人―――ベリアル


ゼットン星人が後ずさるが、即座に接近するとその首を掴んで投げ飛ばす

吹き飛んだゼットン星人がビルの貯水槽にぶつかり、めりこむ


ベリアル「ハッ! 雑魚は小細工が好きだなァ」

ゼットン星人「ぐっ……卑怯と、言いたいか?」

ベリアル「あぁ? 言わねェよ、卑怯もラッキョウもあるものかとか言われかねねぇからな」

ゼットン星人「メフィラス、そうかいたな……貴様の昔の仲間に」

ベリアル「はっ、オレの仲間っつうには微妙だけどな


そう言うと、ベリアルは両足で地をふみしめる


ベリアル「オレの中の奴も相当ォキレてっからな……生半可な威力じゃねぇぞ」

ゼットン星人「人間風情、がっ」

ベリアル「ハッ、いつもそのたかが人間に苦渋舐めさせられてる奴が言うセリフじゃねぇなぁ」


右腕に集まる闇の力、赤い雷


京太郎『闇の力で、消し去る!』

ベリアル・京太郎「デスシウム光線!」


放たれた光線は、真っ直ぐにゼットン星人を飲み込む


ゼットン星人「オォォォ!!?」


貯水槽を貫き、そのまま光線は空へと―――伸びていく



手を降ろしたベリアルが、右腕を振るう

左手を顎にそえて首を鳴らすと、空を見上げた


ベリアル『行くか? このまま』

京太郎『はい、名残惜しくなりそうなんで』

ベリアル『ハッ、そうか……』

京太郎『どうしたんっすか?』

ベリアル『昔を思い出しただけだ……』

京太郎『昔にそんな仲間が?』

ベリアル『しもべだ、まぁ着いてきたがな』

京太郎『良い、仲間ですね』

ベリアル「オイ! だから下僕だって」

京太郎『じゃあ、これが初めてっすね』


勢いあまって荒々しく喋るベリアル

それと反対に京太郎は優しげな声


京太郎『帰るべき場所に仲間がいるの……』

ベリアル「……」

京太郎『たぶん、きっとそれは……良いもんっすよ』

ベリアル「ハンッ! どーだかな」


そう言うと、ベリアルが飛び立つ

次の目的地は既に決まっている

やるべきことも……


京太郎『きっとまた強敵ばっかですよ』

ベリアル「ハッ、上等だ!」



空を行くベリアル

その小さな影を、福路美穂子と瑞原はやりが見上げる

救護班の車に乗せられている池田華菜

その近くにいた熊倉トシもまた然り


トシ「行ってらっしゃい……」

はやり「……」

美穂子「京太郎……」


グッと、拳を握りしめるはやり


はやり(京ちゃん……待ってるから、君の帰ってくるココで)

美穂子(守るから、京太郎が帰ってくる場所を)


はやりは満面の笑顔を浮かべ、戦士を見送る



     第8話【いつかの再開へ】 END


よーっし第一部完!
展開早い気もするけどこんなもんだって!

次回から第二章全国編!
どこいく的なー


1、奈良(阿知賀・晩成)
2、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)


以上選択肢でございますー
ちなみに明日の10時ぐらいから開始予定ー

そんじゃまたー


ご唱和ください、スレの名を!

てことでやってくー
と言いつつも安価なんで22時からー

どこに行くのかー



◆原村和が発見された場所へ向かう!


1、奈良(阿知賀・晩成)
2、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)


◇5分間でコンマが一番高い選択肢↓

4



1、奈良(阿知賀・晩成)

>>378 こっちのスレに派遣!


―――次回予告


京太郎:吉野についたぞ!

ベリアル:さっそくろくでもねぇ感覚だ

穏乃:須賀君だ!

宥:ゆっくりしていってね

晴絵:特異課奈良支部にようこそ

京太郎:デビルスプリンターっていったい……


次回【大地の光】


京太郎:また、ウルトラマン!?

晴絵:目に見えるものだけを信じるな



あれからそれほど時間はかからなかった

ベリアルとなって奈良の地、吉野までやってきた京太郎

街中を歩き、まずは目的地まで向かう


京太郎「吉野についたぞ!」

ベリアル『デカい独り言だな』

京太郎「良いじゃないっすか……ちょっとテンションあがってるんですよ」


それにしてもだ、原村和が見つかった地

思い入れなどがあったからこそ、なのだろうか


京太郎「まぁまずは」


そのまま真っ直ぐと道路を下って行く


京太郎「……あった」

ベリアル『ああ? 寝床探しか?』

京太郎「まぁ、そんなもんっす」


ベリアルの疑問に軽く返して、その旅館“松実館”へと入って行く



松実館へと入ると、そこに立っていたのは9月にしても厚着の少女

マフラーとセーター、ロングスカート

見間違えるわけがない。一度とはいえ見た時は度胆を抜かれた


京太郎「えっと、松実宥さん……ですよね?」

宥「あ、はい、須賀京太郎君、ですよね?」


お互いに恐る恐ると言った様子で挨拶をする

合流予定があったのは京太郎がしっかりと連絡をしていたからと、トシの根回しのおかげだろう

スーツ姿の京太郎と、私服である宥の二人


京太郎「……えっと、案内をお願いしても?」

宥「あ、はい! ご、ごめんねっ」

京太郎「いえいえ、急にお邪魔しちゃってすみません」

宥「ううん、赤土先生は驚いてたけど」

京太郎「ハハハ、まぁ……色々あって」

宥「そっか、ちょっとボロボロに見えるけど」

京太郎「まぁ色々ありまして」


あの戦いから直接来たのだ

砂埃がスーツを汚している

軽く叩いて払うと、先を行き松実館を出る宥の後を追う



松実館から五分ほど歩いて、宥と京太郎は阿知賀学院近くの5階建ての小さなビルへと入る

ロビーに入ると受付に女性がいて、宥が軽く頭を下げて服の内側から首にかけていた証明章を出した

京太郎もスーツのポケットに入った証明章を出す


「どうぞ、五階へ」


受付の女性の言葉に宥の方を見ると頷かれる

そのまま着いていき、エレベーターへと入った


宥「えっと、久しぶり……だよね?」

京太郎「憶えてます? 話してもないっすよ?」

宥「あ、でも唯一の男子生徒だったから、和ちゃんからもお話聞いたらしいから玄ちゃんが」

京太郎「ああ、松実玄さん」ハハッ


そう笑う京太郎は、僅かに宥の表情が曇るのを見逃さなかった

妙な感覚だが、憶えがある

顔をしかめて上のエレベーターのランプに視界を向けた


京太郎「ん」

宥「あ、ついたね」


扉が開くと廊下、そこを歩き大きな扉の前に立つ

軽くノックをする宥、中から声が聞こえた


??「どうぞー」

宥「入りまーす

ガチャッ


扉を開くと、そこは長野の特異課施設の作戦室を思い出す作り

大きなテーブルと、モニター、そして機材

そのテーブルを前に座っているのは二人


??「須賀君だ!」


声を上げるのは高鴨穏乃

そして、もう一人……赤土晴絵


晴絵「特異課奈良支部へようこそ」フッ



     第9話【大地の光】


テーブルを囲んで座る面々

須賀京太郎、松実宥、高鴨穏乃、赤土晴絵

アンバランスというかなんというか、穏乃のスーツ姿が見慣れない


京太郎「……特異課なんですね」

晴絵「その通り、特異災害及び特異現象及び超常現象対策課……の奈良支部」

京太郎「しかも、いやしかももなにもないか、そりゃ雀士が必要だ」

晴絵「話早くて助かるねーうん」


満足げに頷く晴絵


京太郎「で、さっそく本題なんですけど」

晴絵「和のことだよね」

穏乃「……」

京太郎「はい、場所は掴んでるんですか?」

晴絵「いいや、掴んでたら早かったんだけどね……また行方不明」

京太郎「……そうっすか」


そう返事をして、息をつく


晴絵「悪いね。こっちもこっちで色々あってさ」

京太郎「察しはついてますよ」

穏乃「やっぱり、そっちも同じなんだ」


無言でうなずく


京太郎「……和が相手だから、そっちも油断するわな」

晴絵「そういうこと、憧と玄、そして灼」

宥「それに晩成の小走さんたちも……」

京太郎「長野と一緒か」ハァ



晴絵がキーボードを叩くと、モニターに画像が表示される

それはトシからの見せられたものと別の原村和が映る画像


京太郎「これは……」

穏乃「和……」グッ


映っているのは和、さらに憧と玄

三人の少女、そこから灼も犠牲になったのだろうと想像がつく


京太郎「……しばらく、次の手がかりが見つかるまでこちらにいても?」

穏乃「えっ」

京太郎「協力する……させてもらう」

晴絵「おっ、そりゃ助かる! 噂はかねがね聞いてるからね」

宥「あ、ありがとうっ!」

京太郎「いえ、ただその代わりと言っちゃぁなんですが」


その言葉に、晴絵はウインクで返す


晴絵「させてもらうよ、色々サポートさ!」ニッ

さきほどはすいませんでした。
以後気をつけます



その後、京太郎は代えのスーツをもらい更衣室で着替える

納得したようで頷くと、サングラスを胸ポケットに入れてゼットライザーをしまう


ベリアル『おい、ここにいつくつもりか?』

京太郎「とりあえず次の手がかりをつかむまでは、ですね……なにがあるかわからないし」

ベリアル『ま、オレはこの妙な感覚全部を消し飛ばせれば、どーだって構わねぇ』

京太郎「そりゃなによりです」


自分とベリアルの目的は一致している

そうでなくても、身体の貸し借りをしているのだからある程度譲歩をしてくれるのはわかっている

だからこそ、今までもこれからも上手くやっていける気がしていた


京太郎「……まずは、メダルを回収しつつ和をあぶりだせれば上々ってとこっす」

ベリアル『ハッ、戦士の面構えと思考になってきやがったな』

京太郎「……褒められるとは」

ベリアル『褒めてねぇ、まともになったって言ってるだけだ』


それを褒めているというのでは、と思うがそうでもないのだろう

未だにベリアルは本来の力を出せていないのだろうし……

ドアを開いて廊下へと出る


京太郎「さてと……」

穏乃「お、須賀君!」

京太郎「ん、高鴨さん」

穏乃「これから一緒に戦うわけだから、ね!」


目の前に手が差しだされる



差し出された手をじっと見つめて、京太郎は手を出す

二人の手が合わさり、グッと握手が交わされた


京太郎「っ」


だがその瞬間、京太郎の視界が揺れた

一瞬だけ変わった景色の中に見えた穏乃の胸に宿る“赤い光”

すぐに元に戻ると、京太郎は頭を振って笑みを浮かべる


京太郎「その、よろしく」

穏乃「うん、京太郎!」ニッ

京太郎「……ああ、穏乃」フッ


そうして手を離すと、京太郎はまずやるべきことを頭で整理しようと考える……のだが


穏乃「それじゃあ京太郎には話しておかないとかな」

京太郎「ん?」

穏乃「この街にいる、ウルトラマンのこと!」

京太郎「……え、そんなの聞いたことないぞ」

ベリアル『あのばあさんからも聞いてねぇよな』

穏乃「まぁまだ二回しか出てないし」

京太郎「そ、それでも」

穏乃「あれじゃない、じょ、じょ」

晴絵「情報統制、ね」


廊下の向こうからやってきたのは赤土晴絵


穏乃「あ、それです!」

京太郎「いやにしたって」

晴絵「大概の話題は長野に取られてたし、デマ情報もネットにゃ多かったからね」

京太郎「そういうもんっすか?」

晴絵「そういうもんだよ。それに被害はほとんど出てなかったし余計にね……次からは、どうなるかな」


そう言う晴絵はなにかを含んだような笑みを浮かべる



京太郎「それで、ウルトラマンってどんな?」

ベリアル『ハッ、知ってる奴だったらどうすっかな』

京太郎『なんかマズイんですか……ってそっか』

ベリアル『オレがいて不味くない場合が知りてぇもんだな』


頭の中で、ベリアルの笑い声が聞こえる


晴絵「それは……ん?


瞬間、ビル内に警報が鳴る


京太郎「これはっ!」

晴絵「タイミングが悪いなぁ」ハッ

京太郎「ここってどういう感じっすか!?」

晴絵「そっちと変わらないよ。出撃! 車で!」

穏乃「了解です!」

京太郎「なるほど!」



特異課奈良支部の一階

入口と反対方向にあるガレージから発進する車

運転席には赤土晴絵、助手席に松実宥


京太郎「松実さんもっすか!」

宥「うん、一応……正規隊員じゃないんだけど」

京太郎「なるほど」


後部座席に座っているのは京太郎と穏乃の二人

その手にはガッツハイパーとは別の大型銃DUNKショットがある


晴絵「見えてきた」


車の進行方向、そちらには鉄の塊のようなものがあった

地面に刺さっているようにも見える


晴絵「アーカイブに情報なし……なにあれ」

京太郎「あれは……怪獣?」

穏乃「とりあえず撃ってみます! オーッス!」

晴絵「ちょっ! バカ!」


窓から乗り出した穏乃が大型銃を撃つ

それが真っ直ぐに金属塊へとぶつかると、それが形を変えて巨大な人型怪獣に変わった

しかしそれは……


京太郎「ウルトラマンに、似てる?」


どこか、そんな雰囲気があった


ベリアル『金属生命体アパテーだな』

京太郎『知ってるんですか!?』

ベリアル『名前と容姿だけだがなぁ』

京太郎「なにはともあれ、やるしかないか……!」


車が止まると共に出てくる京太郎、宥、穏乃の三人


京太郎「さて、やるか!」

宥「須賀君、銃似合うねぇ」

京太郎「それ、褒めてます?」

>>388
ええんやで(ニッコリ)



金属生命体アパテーが、勢いよく民家を踏み潰す

次にマンションを破壊しようとするが、銃撃によって怯む

その銃撃は二か所から、片方は京太郎と宥の二人だ


京太郎「穏乃どこいった!」

宥「須賀君っ!」


宥が指差す方向に、穏乃が走って行くのが見えた


京太郎「たくっ、合流し」


瞬間、目の前に建物の残骸が落ちる


京太郎「うおぉっ!!?」

宥「あ、あぶないよ!」


合流するにはいかんせん障害が多い

だが、宥と共にいても変身ができないのは確かだ

とりあえずやるべきことは……


京太郎「……例のウルトラマン、出てこないんっすか?」

宥「わ、わからないから、がんばらないと……!」

京太郎「確かに……速攻でウルトラマン頼りも良くないか」ハァ


そう言って苦笑を浮かべると、銃撃を再開する

宥も反動に耐えながら銃撃をしていく


京太郎「逆になんで穏乃はサクサク撃ててんだ」



宥の手を取って走る京太郎

走りながら銃撃をしつつ、穏乃を確認した

場所は真反対、距離はかなり空いている


京太郎「っ!」

アパテー「―――!」


瞬間、手から光弾を放ったアパテー

それは真っ直ぐ穏乃がいる場所に―――


京太郎『ベリアルさん!』

ベリアル『いや、これで良い!』


その瞬間、赤い光の柱が立つ

隣の宥が立ち止まり、つられて京太郎も止まった

ベリアルの言っていた意味を悟る


京太郎「あれは……」

宥「ウルトラマン、ガイア……」


空中に現れたガイアが、着地

それと共に地面、砂が舞い上がった

ティガとは違う光の巨人


京太郎「ガイア……」

ベリアル『地球が生んだウルトラマンか……』



現れたウルトラマンガイアが、勢いよく構えを取る

ベリアルともティガともまったく違うスタイル

現れたガイアを相手に、アパテーが変わる


アパテー「!」


体に追加装甲を纏い、右腕を槍に変形させた


ガイア「タァッ!」


走り出すガイアがアパテーの胴体に拳をぶつける

ひるみつつ、アパテーが右腕を振るう

ガイアは腕を使ってその槍を凌ぎ、さらに拳を振るった


アパテー「!」


そんな二体の戦いを見守る京太郎

その左手はメダルホルダーに添えられている


京太郎「なんで奈良にまで?」

宥「わからないけど、助けてくれてるよ。私たちを」

ベリアル『脅威に対する抗体みたいなもんか……それか』

京太郎『それか?』

ベリアル『メダルの力かもな、ウルトラメダルの』

京太郎「……」


アパテーを追いこんでいくガイアを見る京太郎

その“変身者”が誰であろうと、おそらくそれなりに戦い慣れしている

ガイアは今まで二回出現したと聞いたが、おそらく“麻雀”を何度もしているのだろう


ベリアル『確かぁ……量子物理学者、とかがガイアだったって聞いたことがある』

京太郎「……たぶん、いや絶対そんな頭良いタイプじゃないよなぁ」

宥「え?」

京太郎「ああいや、なんでもないっす!」



ガイアの拳が、アパテーの胸部を打つ

後ろへと怯むアパテーに、回転蹴りを放った


アパテー「!」

ガイア「テアッ! タァッ! デヤァッ!」


さらに二撃、三撃と回転蹴りを放ち怯ませていく

アパテーが徐々に後退していき、後ろに吹き飛んで倒れる

倒れていたアパテーが、溶解する鉄のように形を崩すと、八本の槍へと姿を変わった


ガイア「!!?」


その槍が持ち上がるとひとりでに回転、切っ先がガイアの方を向く


ガイア「チャッ!」


向かってくる槍を、素早く光弾で落とす

落とし切れなかった槍はバリアで凌いだ


京太郎「やるな……」

ベリアル『ハッ、おもしれぇ』

京太郎『やめてくださいよ、わざと敵にまわったりするの』

ベリアル『やらねぇよ、今はな』

京太郎『一生やめてください』


弾かれた槍が、再び人型のアパテーへと戻る

弱っているのか追加装甲も外れ、ふらついている


ガイア「フンッ!」


ガイアが両腕を前に構えて、足を開き、頭を後ろへと逸らす

赤い光が、その額へと集まり、エネルギーが伸びる


ガイア「……タアアァァァァァッ!」


頭を真っ直ぐに振るうと、そのエネルギーは鞭の如くしなり―――真っ直ぐに伸びていく


アパテー「!!?」


その光線がアパテーに突き刺さり、その体を粉々に―――爆散させる

吹き飛んだアパテー、そしてそこに立つのはウルトラマンガイア

静かに、そこに立つ


京太郎「終わった……のか」

宥「良かったぁ」ホッ



ガイアが例に洩れず飛び立とうとする


京太郎「ッ!」


その瞬間―――青い光がガイアを背中から撃つ


ガイア「グアアァッ!」


吹き飛んだガイアが、地上へと落ちる

そのカラータイマーを赤く点滅させながらも、起き上がり攻撃の飛んできた方向を見た

そこにいるのは……


京太郎「青い、ウルトラマン!?」

ベリアル『アグルか!』


◆BGM:アグル降臨【https://www.youtube.com/watch?v=qTa7XrlYBR4


立っているのは青い巨人、ウルトラマンアグル

青と銀の体を持ったウルトラマンはガイアへと近づいていく

ガイアがなんとか起き上がり、構えを取ろうとするが……蹴りを受けて倒れる


京太郎「くっ!」ダッ

宥「あ、須賀君!!?」


走り、アグルの方へと走る京太郎

宥から離れていき、銃を撃つ

そのレーザーを受けたアグルが少しばかり怯み、京太郎の方を向く


ベリアル『あぁん? 嫌な感じがしやがる……あれは普通じゃねぇ! 小僧ォ!』

京太郎「ベリアルさん!」


ゼットライザーのトリガーを引く

その瞬間、アグルの光弾が京太郎のいた場所を爆破した




―――インナースペース


そこに立つ京太郎が、アクセスカードを右手に取る


京太郎「また、ウルトラマン!?」

ベリアル「アグルねぇ」

京太郎「どんなウルトラマンなんですか?」

ベリアル「詳しくは知らねぇよ」

京太郎「そうっすか……でも、このままじゃガイアが」


ならば、やることは一つだ―――だが


京太郎「っ!」フラッ

ベリアル「一日に二回目、しかも休憩ほとんどしてねぇんだから当然だな」

京太郎「っ……一気に決めます!」

ベリアル「ハッ、良いじゃねぇか! おもしれぇ!」


カードを差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「さらに! 究極生命体!」


弾かれたメダルから闇が溢れだす

赤い瞳が輝く

レイブラッド星人メダルがセットされる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアァルッ!」


トリガーが引かれた



暗い光と共に現れるのは闇の巨人ベリアル

黄色の目でアグルを見る

一方のアグルはベリアルを見据えて構えを取った


ベリアル『時間はそんなねぇぞ!』

京太郎『南入りやきとりって感じっすね! 上等ォ!』


素早く、ベリアルも構えを取って走り出す

膝をついたガイアがその二体の巨人を見ていた


ベリアル「ハアァッ!」

アグル「デヤァッ!」


二人の巨人、蹴りを同時に放ち、ぶつかりあう

即座に体を返して、二人は同時に光弾を放つ

相殺されるが、衝撃波が周囲に広がった


そして一人、その戦いを離れた場所から苦笑交じりに見ている者がいた


晴絵「あ~あ、マズい気がするなぁこれ」

ということで今回はここまでー

全国編第一回は阿知賀でしたー
ちなみに他の場所だと他のウルトラマンいないパターンもあったり
ここから少し阿知賀編、そしてまた別の場所へーって感じになるっす

まぁ先とか後に行ってたら展開変わったかな、とかそこらも感じてもらえればー

そんじゃまた水曜の夜にでもー

そういやベリアルだとやすやすとM78とか絡ませれないしTDGメインになるのか?

珍しめの時間からやってくー
アグルは誰かなーわりかし直球だけど! たぶん!

>>405
TDGがメインというかなんというかー
ダイナは出生とかの関係でたぶん使えない……かも?


ベリアルとアグルの二人の巨人がぶつかりあう

素早い格闘戦、拳と拳、脚と脚、素早い連打をお互いに行う


ベリアル「グッ!」

京太郎『疲労してるっても……こいつっ!』


一瞬組みあうと、すぐに離れる

ベリアルはガイアの前に立って、素早く構えをとった

黒い巨人ベリアルは即座に光弾を放つ


??『べ、ベリアル!? どうして!』

京太郎(……あんま話さない方がイイか?)

アグル「フッ!」


両手を前に出してバリアを張るアグルに対して、ベリアルは地を蹴り接近し宙に浮いた状態で連続蹴りを打ち込む

それらを後ろに下がりながらさばいていくアグルだが、フェイントをかけつつ蹴りを一撃打ち込むことに成功した


アグル「グアッ!」


僅かに吹き飛び後ろに跳ぶアグルだが、無事着地

地上に脚をついたベリアル

だが、ガイアが立ち上がるとベリアルの隣にたった


??『手伝います!』

ベリアル「……」


黙って構えを取るベリアル、そしてガイア

だがアグルは、青い光となって―――消える



消えたアグルに、京太郎は驚愕しながらもガイアに声が通らないようにベリアルに語りかける


京太郎『逃げられましたね』

ベリアル『弱ってるお前とオレとでそれなりにやれるんだ。二体一はそーはいかねぇんだろぉな』ハッ

京太郎『なら、やれますね』


軽く肩を回すと、ベリアルが首を鳴らす

隣のガイアが、赤い光となって消えた

ベリアルはというと、空へと飛び立っていく


京太郎『なんなんっすかね、奈良にきたとたんこんな』

ベリアル『オレたちが来たからトラブルがおきたんじゃねぇ、トラブルのある場所に乗りこだんだから当然だろ?』

京太郎『まぁ、確かに』

ベリアル『例の原村和は潰す、ついでにアグルは潰す、それで良いんだろ?』

京太郎『うっす! わかりやすい!』

ベリアル『ハッ、お前も良い感じになってきたじゃねぇか』

京太郎『ありがとうございます!』


そして一方、地上では誰かが膝ついて上空を見上げる

黒い影が見えなくなっていく……


??「べ、ベリアル……どうしてここに」


そう言うと、高鴨穏乃は倒れて意識を手放した



黒い光と共に、地上へと現れる京太郎

破壊された街、京太郎はその中を歩いて穏乃を探す

おそらく、普通でいないはずだ


京太郎『にしても、さっそく長野とは違うパターンですね。ウルトラマンが敵とは』

ベリアル『まぁ別に珍しいことじゃねぇ、オレはな』

京太郎『俺には凄いことなんっすよ……』


そう言いながら、瓦礫を飛び越えつつ周囲を見回す


京太郎『まぁ、俺の邪魔すんなら……それなりに痛い思いはしてもらいます、けど』

ベリアル『ハッ、良いじゃねぇか』

京太郎『邪魔されないにこしたことないんですけどね』


そう言うと、視線の先に高鴨穏乃を見た

だがそんな穏乃はというと……


京太郎「赤土さん!」

晴絵「ああ、須賀か」

京太郎「穏乃、怪我したんっすか?」

晴絵「まぁ一人で飛び込んで行ったしね」


赤土晴絵が背負っている穏乃は少しばかり怪我をして眠っている

息をついて、車の方へと二人で歩き出す

そうしていると、車の前には少女が一人


京太郎「あ、松実さん」

宥「あ、須賀君」ホッ

京太郎「心配かけました」

宥「ううん……安心した」フフッ


そう言って笑みを浮かべる宥

その豊満な胸が揺れた


京太郎(あー! 好きになる!)


―――【特異課奈良支部:作戦室】


そこにいるのは、京太郎と晴絵と宥の三人

穏乃は医務室に寝かせているらしいが……


京太郎「えっと……」

晴絵「ガイアがなんとかあの金属生命体を倒してくれたわけだけど……」

京太郎「あ、メダルは?」

晴絵「研究班に送った。欲しがってたから」

京太郎「そうっすか」


まぁ集めている理由も無いので別に構わない


晴絵「にしてもあっちのウルトラマンだよね」

京太郎「ああ……青い、ウルトラマンですか」

宥「が、ガイアを攻撃したってことは……」

晴絵「敵かぁ」

京太郎「ですねぇ」

晴絵「問題が増えるなぁ」

京太郎「まぁ俺は和を探すだけっすけど」

晴絵「おー薄情だねぇ」ニヤニヤ

京太郎「……だけなことないですけど、とりあえず和最優先で」

晴絵「好きなのか!」

京太郎「違います!」

宥「えっ、そ、そうなの?」カァッ

京太郎「違うって!」


強く否定してから、咳払いを一つ


京太郎「とりあえず、俺はその……」

晴絵「わかってるわかってる。仲間だもんな、うちもそうだから」

宥(あ、違ったんだ……)

京太郎「たく、からかわないでくださいよぉ」



◆唐突な安価


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、赤土晴絵

4、福路美穂子

5、瑞原はやり

6、東横桃子

7、竹井久


◇↓5分間でコンマが一番高い選択肢

1、松実宥



作戦室、解散ということで京太郎が立ち上がり背を伸ばす

とりあえずは部屋でももらおうかとしていると、降ろした手の裾が引っ張られらた

振り返る京太郎、そこには―――松実宥


京太郎『かわいぃぃぃぃぃ!』

ベリアル『うるせぇ!』


平静を装う京太郎が、フッと笑みを浮かべる


京太郎「どうしました?」

宥「その、泊まるところこまってるなら……うち、くる?」

京太郎(え、なんか始まった?)

宥「松実館、泊まる?」エヘヘ

京太郎「はい」キリッ

ベリアル『お前、女に弱いな』

京太郎『稀に強い場合もあります!』


そのまま、宥と共に松実館に向かう

昼間の時と逆だなと、京太郎は街並みを目に焼き付けつつ歩く

仲間が育った街の一つ


京太郎「……和」

宥「私は、原村和さん、よく知らないからなんとも言えないけど……」

京太郎「俺も、良くわかってないですよ……シンプルに憧だったんですよ。きっと」

宥「だった?」

京太郎「もうわかんないですけどね。色々あって知見も広がって」


そう言いながら、立ち止まって振り返る

見えないが、遠い空にのぼっている黒煙は戦火の痕だ


京太郎「ま、もう終わった話ですから」

宥「……」

京太郎「ん?」


そっと近づいてきた宥が、京太郎にジェスチャー

少し頭をかがめろと言う意味だと理解して、そっと頭を下げた

すると、宥の手が伸びて京太郎の頭に置かれる


宥「……きっと頑張ってるの知ってるよ、和ちゃんは」ナデナデ

京太郎「そうっすか、ね?」

宥「うん、玄ちゃんに須賀君のこと話してるぐらいだから」

京太郎「……」

宥「それに私も今日見たから、須賀君が頑張ってるの」フフッ

京太郎「……ありがとうございます」

宥「ううん、こちらこそ……ありがとう」ニコリ


その後、二人は気恥ずかしさで無言になりながらも歩く

松実館へと着くと、宥について玄関から旅館内に入る

奥から足音が聞こえてきた


???「お、宥おかえ……り?」

宥「あ、お父さん、子の人」

松実父「じ、地上げかっ!!?」

京太郎「人聞き悪りぃ!」

宥「?」

京太郎「と、とりあえず誤解を! 誤解を解いてください!」


どうにか宥に訴えかけると、理解したのか頷く


宥「あ、えっと……お父さん、この人、今日うちに泊まる」

京太郎(なんか嫌な予感)

松実父「まさか! かかか、かか、かかかか、か、かれっ、かれっ」

京太郎「誤解です! 誤解ですから!」

松実父「か、カレピッピ!!?」

京太郎「ちょっと古い!」

宥「……ふぇっ!?」カァッ

京太郎「初心なのはかわいいけど否定してください!」

宥「あ、えっと! ちち、違うよ!?」

松実父「本当っぽい!」

京太郎「とりあえず聞いてください!」

松実父「玄が麻雀合宿行ってる間に大変なことになったぁ!」

京太郎「だから聞けって!」


その後、誤解が解けた京太郎は松実館の一室を借りていた


松実父『なぁんだ、そういうことなら早く言ってくれよ』

京太郎『最初から言ってましたけど』

松実父『はははは!』


ほぼ手ぶらの京太郎は、そのほどほどの広さの部屋で腰を下ろす

最近は旅行客も少ないらしく、一室貸すぐらい問題もないそうだ

松実玄はと言えば、麻雀合宿というていでいなくなっているらしい


京太郎「やっぱ特異課ブランド凄いな……快く受け入れてくれるとは」

コンコン

京太郎「あ、はい」

ガラッ

宥「あ、須賀君」

京太郎「松実さん」

宥「その……改めてこれからよろしくね」

京太郎「こちらこそ」フッ

宥「玄ちゃん、早く見つけてあげないと」

京太郎「ですね。俺も協力します……」

宥「ん、私もなにかあった協力するからね、須賀君に」

京太郎「……もう、してもらってますから」

宥「こんなことで?」

京太郎「自分が戻る場所が必要なんっすよ。人間」

宥「……そっか」フフッ

宥(戻る場所……かぁ)


―――【松実館:温泉】


温泉に胸まで浸かっている京太郎

頭に乗せたタオル、緩みきった表情

深い息をついて、屋根の隙間から空を見上げる


京太郎「長い、一日だったぁ……」

ベリアル『ハッ、ご苦労だったな』

京太郎「ありがとうございます」フッ


労いの言葉を素直に受け取りつつ、京太郎は自らの手を真上に上げた

少しばかり内側のナニカに力を込めると、その手にベリアルの手が重なって見える


ベリアル『妙な感覚は消えてねぇ、まだなんかあるな』

京太郎「それって……」

ベリアル『デビルスプリンター、とか呼ばれてるもんだろぉな』

京太郎「デビルスプリンターっていったい……」

ベリアル『そのうちわかんだろ』


彼がなにかしらの予想がついていることは、なんとなく京太郎とて理解はしている

だがそれを食い下がって聞くほど野暮でもなかった

踏み込まれたくない部分があるだろう……


京太郎「……ふぅ、待ってろよ。みんな」


立ち上がると、星々煌めく空を見上げつつ……手を握りしめた



     第9話【大地の光】 END


―――【特異課奈良支部:医務室】


起きている穏乃の前に赤土晴絵

別に問題はないそうだが、今夜はそこに泊まることとなったようだ

晴絵は軽く穏乃の頭を撫でて頷く


穏乃「すみません、心配かけて」

晴絵「まぁ良いけどさ」

穏乃「でもあのウルトラマン、なんで……」


その言葉に、晴絵は笑みを浮かべた


晴絵「ま、倒すしかないでしょ」

穏乃「同じウルトラマンなのに、なんでガイアと戦うんだろう」


そんな穏乃の肩をポンと叩くと、踵を返す


晴絵「……目に見えるものだけを信じるな」

穏乃「え?」

晴絵「じゃあね」フッ


それだけを言うと、晴絵は部屋を出る

残された穏乃は首をかしげた


部屋を出た晴絵は、暗い廊下の闇に溶けるように去って行く



―――次回予告


京太郎:強くなってきちゃったな

宥:麻雀、強いんだねぇ

ベリアル:麻雀だけじゃねぇがな

穏乃:和!?

京太郎:和!?

晴絵:根源的破滅招来体か!

ベリアル:こいつは!

穏乃:ガイアー!


次回【破滅の使徒】


京太郎:決めたぜ、覚悟!

穏乃:京太郎!?



―――【特異課奈良支部:休憩所】


椅子に座ってコーヒーを飲んでいるのは―――須賀京太郎

すっかり見慣れたスタッフが行き来する

欠伸を噛み殺しつつ、京太郎は立ち上がった


京太郎「見回りでも行くか」

ベリアル『めっきりだな』

京太郎『めっきりっすね』


あれから一週間と少し、10月へと突入したもののまるで状況の変化はない

戦ったのは三度だが、どれも麻雀だった

一度目、無酸素怪獣カンデア

二度目、奇怪生命ディーンツ

三度目、宇宙雷獣パズズ


京太郎(メダル、全部渡しちゃってるけど)

ベリアル『また麻雀か?』

京太郎『さぁ……麻雀のが被害少ないし俺も強くなるしで良いことだらけですけどね』

ベリアル『俺はデビルスプリンターを殲滅できりゃなんでも良いけどな』

京太郎「そりゃなにより」

穏乃「なにが?」

京太郎「うおっ!」


突然の横からの声に驚き、立ち止まって跳ねる


穏乃「あはははは! 京太郎、びっくりしすぎ!」

京太郎「んなビックリするわ」


頭を掻きながら、京太郎は穏乃の方を向く

笑う穏乃は前よりも懐いたような笑みを浮かべていた



穏乃「そういえば一緒に行ったことないよね、パトロール!」

京太郎「あーそういえばそうだ」

京太郎(穏乃がガイアと思えば……どうにもなぁ、美穂子さんときも変身できないから見てるだけになってたし)

穏乃「これでも強いんだよ? 麻雀!」

京太郎「知ってるよ」フッ


夏、自分の目で見ていた

白糸台の大星淡、臨海のネリー・ヴィルサラーゼ、そして宮永咲を追いこんだ

今の自分ではどのくらい食い付けるだろうか……


穏乃「清澄でも打ってたんでしょ? というか怪獣メダル持ちを倒せるって結構凄いよ?」

京太郎「……まぁ鶴賀の人たちとかも打ってたしな」

穏乃「おー加治木さんたちと!? 勝率は!?」

京太郎「……まぁまぁ」

穏乃「すご!」

?「麻雀、強いんだねぇ」

京太郎「うお、宥さん」

宥「えへへ、おはよう」

京太郎「朝会ったじゃないですか」


松実館に泊まっているのも変わりない


宥「それじゃパトロール行っちゃう?」

京太郎「お願いしまーす」

宥「お任せあれっ!」ニコッ

穏乃「おー!」



     第10話【破滅の使徒】



車に揺られる京太郎と穏乃

運転席には松実宥

三人で揺られながら、街を行く


京太郎「ところでこのまま通信待ち?」

穏乃「そうだねー、京太郎はいままで三回だっけ、どうしてたの?」

京太郎「歩いてたら通信入って向かうだけ」

穏乃「へぇ~」


だが、穏乃たちの知り合いも、自分の知り合いもどこにも見つからない

ベリアルは順調のようで、京太郎も戦いでストレス解消程度にはなっているのだが……

やはりこうも時間が過ぎると思うところがある


穏乃「憧も見つからないしなぁ」

京太郎「新子さんか、和の幼馴染の一人だよな。松実玄さんも」

穏乃「うん、憧はね……凄い麻雀に一生懸命で、私のとっても大事な親友で幼馴染で相棒で」

京太郎(幼馴染、か……)

宥「ライバル、でもあるんじゃないかなぁ」

京太郎「ライバル?」

穏乃「え、別に敵対なんて」

宥「そうじゃなくって、なんていうのかなぁ……う~ん」


悩む宥と、不思議なものでなんとなく理解できた穏乃

そんな関係性を、どこかうらやましくも思う


京太郎「……相棒で、ライバルね」フッ

ベリアル『……ハッ、拮抗してるからこそ成り立つ関係だろ』

京太郎「?」



そこから少しばかり車で街を散策していく

ついでに穏乃のガイド付きである

余談が多めではあるが……


ベリアル『おい! 止まれ小僧!』

京太郎「!? と、止めて!」

宥「えっ! ちょ、ちょっと待って!」


すぐに路肩に駐車する宥


京太郎「ありがとうございます!」

ベリアル『あっちだ!』

穏乃「京太郎!!?」

宥「え、二人共!?」


車を跳びだす京太郎と、そのあとを追う穏乃

戸惑いつつ、宥は駐車場を探すために車を走らせた


車を飛び出て、走る京太郎

急ぎ道を戻って、ベリアルの指示通りに狭い道へと飛び込んだ

個人店の居酒屋などの合間を縫って、走る


京太郎「こっちですか!」

ベリアル『ああ、この先だ……間違いねぇ、今は気配が薄れてきやがったが』

京太郎「逃がすかァッ!」


そして、視界に映ったのは―――雀荘


京太郎「!」


その雀荘の扉が、開いた


京太郎「あれはっ!」

ベリアル『出たぞ!』


だが、その雀荘から出てくるのは―――


京太郎「和!?」


原村和だった


ベリアル『この鬱陶しい感覚、間違いねぇ……メダルにくわえて』

京太郎「デビルスプリンターってやつか……!」

和「……」


冷たい目が、京太郎を貫く


和「……ああ、須賀京太郎ですか」

京太郎「貴様ッ! 和をォ!」

和「外れが、よくもここまで……」


表情を変えない原村和、その背後に現れる少女


京太郎「松実玄!」

和「……どうして生きてるかなんて、どうでもいいことですね」


京太郎が口を開こうとした瞬間、走ってきた穏乃が京太郎の前に立つ


穏乃「和!? 玄さんも!?」

和「……高鴨穏乃ですか、メダルの力を集めるのを邪魔してたのは貴女ですか」

穏乃「私たちだ! 京太郎も、私も、和を見つけるために戦った!」

和「……麻雀、強くなったんですね。須賀君」フフッ

ベリアル『麻雀だけじゃねぇがな』

京太郎「その顔でっ! その声でっ!」



拳を握りしめる

全身の血が熱く沸騰するような感覚に陥っていく

瞳が、赤く輝いた


京太郎「オレを呼ぶなァッ!!」ゴゥッ

穏乃「えっ!?」ビクッ

和「……」


なにかが変わったわけでは無いが、穏乃は胸の奥が振るえるような感覚を覚える

怒りに満ちた京太郎の怒気だけを感じる

原村和が、自らの違和感に手を見た


和「震えている……この生命体の?」

京太郎「和、お前を! お前達を!」

和「厄介ですね」


すると、原村和と松実玄の背後から現れるのは、一人の少女


穏乃「巽由華さんッ!? 晩成の二年生がどうして!?」

京太郎「こっちの雀士か!」

和「……では、お願いします」


笑みを浮かべて、巽由華の背中に手をそえる原村和

その背後に浮かぶのは……


京太郎「天使っ!?」


由華の体が黒い光に包まれる

そして黒い光は空へと舞いあがった

その異様な不快感に、京太郎と穏乃は顔をしかめる


和「……」

玄「っ」ググッ

和「……いえ、まだですね」



苦しむような松実玄

和が手をかざすと、輝くゲートが現れた

そしてその中に苦悶の表情を浮かべて入って行く松実玄


京太郎「貴様ッ!」

ベリアル『小僧!』


穏乃の前に跳びだした京太郎

だがその瞬間、上から振ってくる影が目の前に着地した


京太郎「ッ!?」

和「アレの差し金ですか」


なにかを呟いて、和はゲートへと消える

もちろん、ゲートは即座に消滅した

一方、京太郎の前に着地したのは人型だが人でない者


京太郎「こいつはっ!?」

ベリアル『グローザ星系人か!』


銀色の体を持つ宇宙人が、腕のブレードを構えて京太郎へと接近する

素早くゼットライザーを持つが、それより速く目の前に―――“ナニか”が現れた



グローザ星系人「!?」

??「なんだお前……あーどっかに記憶、が?」


目の前で、刀を持った宇宙人―――のようなものがいた

それがグローザ星系人のブレードを受け止めている


穏乃「あれは、トゲトゲ星人!」

京太郎「そんな名前!?」

ベリアル『こいつは!』

トゲトゲ星人「んなわけないから! ったく」


そう言って、目の前のグローザ星系人に蹴りを打ち込む

後ろに吹き飛んだグローザ星系人を、さらに刀で追い打ちをかけようとする

だが、グローザ星系人は氷の壁を作った


トゲトゲ星人「無駄ァ!」


振るわれた刀、氷の壁が斬り裂かれて砕けるも―――グローザ星系人には逃げられていた


トゲトゲ星人「逃げられたか……」

京太郎「っ……」

穏乃「くるっ!」


空を見上げる二人、と一体

上空の黒い光が弾け、中から現れたのは巨大な怪獣

どこか虫を思い出すような姿だがハッキリと手足は存在する


京太郎「ッ!」

トゲトゲ星人「カイザードビシ、なるほどねぇ」

ベリアル『ジャグラス・ジャグラーの姿をしてるこいつはなんだ!』

京太郎「え、じゃぐじゃぐ?」

トゲトゲ星人「ふーん、なるほどね……」


京太郎「お前一体なんな」

トゲトゲ星人「じゃーねー」シュン


即座に消えるトゲトゲ星人

京太郎が真上を向くと、怪獣ことカイザードビシがそらから落ちようとしてきていた

手に持ったゼットライザーを穏乃は気にしていないようだ


京太郎「逃げるぞ!」

穏乃「ッ!」


素早く、穏乃がなにかを取り出す


京太郎「おい穏乃っ!」

穏乃「私は、私は戦う!」

京太郎「ッ!」

ベリアル『見せてもらうとしようじゃねぇか』


その手に持った“エスプレンダー”を掲げる


穏乃「ガイアー!」


そして、高鴨穏乃は赤い光と共に―――ウルトラマンになる



ウルトラマンガイアが、地上へと着地する

土が舞い上がり、それと共にカイザードビシはガイアの方を向く

素早く構えを取るガイアが、両手を広げるカイザードビシに接近していく


ガイア「デヤァッ!」


そして、接近と共に格闘戦を挑む

拳はカイザードビシを怯ませる


ガイア「ッ!」

穏乃『効くならやりようはある!』


さらに格闘戦をしかけようとするも、カイザードビシは腹にある口のようなものを開く

そこから出てきたのは口の付いた触手だった

それが伸びると、ガイアの首に巻きつく


ガイア「グアッ!」


そんなガイアを見上げながら、走る京太郎


京太郎「穏乃っ!」

ベリアル『ハッ、あの程度じゃカイザードビシはキツいだろうな』

京太郎「……なら!」バッ

ベリアル『おい!』

京太郎「!」


視線を感じて、そちらに目を向ける

ビルの屋上、そこから京太郎を見ていたのはトゲトゲ星人


ベリアル『付き纏われるぜ?』

京太郎「……」

ベリアル『覚悟を決めておけよ』


だが即座に、京太郎はゼットライザーのトリガーを押した

目の前に開くゲート


京太郎「……決めたぜ、覚悟!」

ベリアル『!? ハッ、おもしれぇじゃねぇか……!』

京太郎「ウオォッ!」



―――【インナースペース】


深く息を吐く京太郎が、笑みを浮かべる

ようやく見つけた

自らの目的、欲望を満たす。そのために……


京太郎「いくぜ!」


右手にカードを取ると、左手のゼットライザーを差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「究極生命体……!」


弾かれたメダルが周囲を闇に包む

すっかり居心地の良さを感じる空間


京太郎「……!」

『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアルッッ!」


トリガーを引き、その名を叫ぶ



カイザードビシの腹部から伸びたバトル触手に首をしめられているガイア

だが黒い光と共に現れたベリアルがその爪で触手を斬り裂く

勢いによって、後ろに下がるカイザードビシ


カイザードビシ「―――!!?」

ベリアル「ハッ!」

ベリアル『楽しませてもらおうじゃねぇか!』


首を鳴らすベリアル

そしてその背後では、ガイアは首を押さえながら立ち上がった

カイザードビシが、その上半身の目と、膝の目からビームを放つ


ベリアル「フンッ!」


だがバリアを張って、それらを上空へと弾くベリアル


そんなベリアルをビルの上から見るトゲトゲ星人

刀を肩に当てながら、鼻で笑うような仕草を見せた


トゲトゲ星人「ハッ、私の記憶の中のベリアルとは全然違うじゃん」


そう言うと、トゲトゲ星人の姿が変わる

現れたのは―――赤土晴絵

その手に持っているのは、トゲトゲ星人ことジャグラス・ジャグラーが描かれたメダル


晴絵「……ったく、私もわけわかんなくなるなこのメダル使うと」ハァ


視線の先には、ベリアルとガイア



構える二人の巨人

同時に光弾を撃つと、カイザードビシが怯む

即座に、カイザードビシが光線を放つもベリアルが爪撃にて相殺した


ベリアル『ハッ、大したことねけな……これなら一人でもやれたんじゃねぇか?』

京太郎『ベリアルさんっ!』

ベリアル『あぁ?』


焦ったような声に、ベリアルがそちらに意識を向ける

そちらにはガイアがいて、そのガイアは別方向に視線を向けていた

視線の先を辿れば、そこには―――神社


京太郎『あれはっ!』


その境内の鳥居の下、見覚えのある少女がいた


穏乃『憧!』

ガイア「!」


手をそちらに向けるガイアだが、その先に入る“新子憧”は表情を変えることはない

ただ静かに、右腕を前に出し、そのまま拳を真上に向けた

そしてその手首につけられた“アグレイター”が開き、回転する



そして青い輝きと共に、現れるのは―――ウルトラマンアグル

勢いよく地上に降りると、土を舞い上がらせる

そして、静かに構えをとった


穏乃『憧がアグル!? な、ならなんで攻撃なんて!』


◆BGM:アグルの戦い【http://www.youtube.com/watch?v=rh8gv1BGJl8


ベリアル『おい、あれ大丈夫なのか!』

京太郎『わかんないっすよ!』


カイザードビシに向かって走り、爪撃を打ち込む

だがその結果、ガイアとアグルから遠ざかる

さすがにそちらを気にしながら戦えるほど器用でも、余裕でもない


アグル「ハアッ!」


素早くガイアに近づいたアグルが、ガイアに蹴りを放つ

その直撃を受けて倒れるガイアだが、すぐに起き上がった


穏乃『っ……なら、憧なら……私は!』


立ち上がったガイアが拳を握りしめる


穏乃『私は光で、ぶん殴るッ!!』

ガイア「チャアァッ!」

アグル「ハアァッ!」


二体のウルトラマンが組みあう

そちらにカイザードビシを相手にしながら視線を送るベリアル


京太郎『新子だとわかっても……いや、わかったから殴れるか』

ベリアル『フン、オレ達はまずこいつをヤるぞ!』

京太郎『はい!』



そこそこ進んだ気がするしここまでー

まぁ色々と仕込みつつ、阿知賀編の根幹というかなんというか
展開早い気もするけども気のせい気のせい

そんじゃまた明日か明後日ー


アグルは原典通り人類の掃除が目的か?
思ったより色々クロスオーバーしてて先が読めないな

よっしやってくぞい
ちょっと駆け足な気もするけどアグル登場からですぞー
根源的破滅招来体って字体がいいよね

>>441
アグルについては追々ー


ガイアがアグルに走る

アグルは立ち止まったまま右腕を振るう

その右手の青い光が―――剣となる


ガイア「!?」

アグル「ハァッ!」


立ち止まったガイアに、接近したアグルが剣を振るう

だが、それをなんとか開始して蹴りを打ち込むガイア


アグル「グゥッ!」

ガイア「ハアアッ!」

穏乃『憧ォ!』


さらに拳を打ち込もうとするも、アグルは素早く腕を返して剣を振るう

その一撃がガイアに直撃、火花を散らしながら後ろに下がる


穏乃『ぐっ! まだァッ!』

ガイア「チャッ!」


光弾を放つと、アグルは剣を振るってその光弾を斬り裂く、だがその隙をついて接近したガイアは回し蹴りでアグルの手を蹴る

その手から離れて消える青い剣、そこでガイアはアグルに掴みかかると巴投げをかけた


アグル「グアァッ!」

ガイア「ハアァッ!」


さらに、勢いよく立ち上がらせると背負い投げでアグルを投げ飛ばした

離れた場所に倒れるアグルだが、起き上がりガイアと向き合う


ガイア「ッ!」

アグル「……!」



街中、ガイアとアグル、ベリアルとカイザードビシ

二組の戦いから離れて道路の真ん中で立っている赤土晴絵

顔をしかめて、メダルを握り歩く


晴絵「憧が、アグル……どうしてだ?」


彼女もそこがわからないのか、歯がゆい感情を顔に出していた

そしてそんな晴絵の傍に走ってくる車


宥「先生!」

晴絵「宥か、ありがとう」


礼だけを言うと助手席に座る

走り出す車が戦いの場から遠ざかって行くが、サイドミラー越しに後ろの方にある戦いが見えた

ハッとして窓を開けると、身体を乗り出す


宥「せ、先生!?」

晴絵「そうか、そういうことか!」


風の音で宥に晴絵の声は届いていない。逆もまたしかり

そして晴絵の目に映っているウルトラマンアグルは、ピンク色の眼でガイアを睨んでいた


晴絵「根源的破滅招来体か!」

宥「先生っ!」

ガンッ


瞬間、なにかに後頭部をぶつける晴絵


晴絵「いったぁぁぁっ!?」

宥「だから言ったのにぃ……」



カイザードビシと戦っているベリアル

再生したのか再び腹からバトル触手を伸ばされる

即座にそれを回避すると、ベリアルは走りだしカイザードビシへと接近


ベリアル「フハァッ!」


跳び蹴りを喰らわせてひるませると、すぐにクローを使い再びバトル触手を切断

さらにもう片方の手で斬撃を放ってカイザードビシを怯ませた


ベリアル『相手にならねぇな!』

京太郎『さっさと終わらせて穏乃の方に!』


素早い攻撃、さらなる斬撃

だがカイザードビシが飛んで距離を取った

上空へと跳び上がったカイザードビシが目から放つ光線を、飛んで回避する


京太郎『ならっ!』


光線を放つカイザードビシだが、すべて回避していくベリアル

効かないとわかったのか、カイザードビシは次に腹を開いた

バトル触手でなく、出てくるのは小さな虫―――破滅魔虫ドビシの群れを放つ


ベリアル『ハッ、気持ちわりぃやつだな!』

京太郎『あれを喰らうのは遠慮したいんで……!』


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃がドビシを斬り裂き進む


カイザードビシ「―――!!」


上昇して回避しようとするが、もう遅い

その両足を斬り裂くデスシウムリッパー


京太郎『よし!』

ベリアル『まだだ小僧ォ!』


だが、カイザードビシの脚がバラバラになり、小さなドビシが大量に出現した

素早く光弾を放つと、爆発で出現したドビシを消滅させる

両足を失くしたカイザードビシが残った一つの目から光線を放つ



京太郎『これでハコ割れだ!』


ベリアルの右腕に黒い光と赤い雷が奔る

空中で素早く、ベリアルは腕を十字に構えた


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれた一撃はカイザードビシの光線をかき消して真っ直ぐにカイザードビシへと直撃する


カイザードビシ「―――」


そして、空中でカイザードビシは爆散

ベリアルはカイザードビシの殲滅を確認すると、ガイアとアグルの方へと視線を向けた

戦いは佳境のようだった


京太郎『……』

ベリアル『あぁ? なにもしねぇのか?』

京太郎『……はい、まだ』

ベリアル『ハッ、好きにしろ』



ガイアとアグルの二人のウルトラマン

そのカラータイマーが点滅をしているものの、お互いに攻撃の手はゆるめないようだった

アグルが剣でガイアを袈裟切りする


ガイア「グアアッ!」

アグル「フッ!」


その隙を逃さず素早い突きを放つも、ガイアは切っ先を回避するとその腕を掴む


アグル「ッ!」

ガイア「ハァッ!」


掴んだ方とは別の手でその剣を持つ手を攻撃し、剣を手放させると素早く拳を叩き込んだ

怯むアグルに、ガイアは距離を取る


アグル「グゥッ!」

ガイア「ハァァ……」

アグル「! オォォッ!」


ガイアとアグルが、お互いの必殺技の準備に入る

二体のウルトラマンの額から伸びる光刃

そして、ベリアルは静かに地上へと降りた


京太郎『ベリアルさん?』

ベリアル『いや、止めるぞ!』

京太郎『……はい!』


抗議をしようとなんて考えなかった

ベリアルの言葉に頷くと、即座に間に立ってアグルに光弾を放つ

驚愕するアグルだが、その光弾を受けると後ろへと吹き飛んだ


ガイア「!?」

穏乃『ベリアル! どうして!?』


吹き飛んだアグルが、光となって消える

ガイアが驚愕しながらも光刃を消すと、空へと飛びたった


京太郎『どうして?』

ベリアル『妙な予感がしてな……』

京太郎『まぁ、ベリアルさんがそう言うなら反対の意思はありませんけど』

ベリアル『ハッ!』


京太郎の返事に、なにかおもしろかったのか笑うベリアルも、遅れて空へと飛び立つ



地上で、破壊された街中を走る京太郎

自衛隊や特異課の事後処理部隊等も到着するころだろう

宥からの連絡により『巽由華』の保護は確認されたのだが……


京太郎「このへんのはずだ……」


その中でも走る理由は、穏乃だ


京太郎「このへん、ですよね……?」

ベリアル『さてな』

京太郎「うーむ」


アグルが光へと変わった場所、その周囲

探すのは穏乃

新子憧を探す穏乃だ


京太郎「穏乃ー!」

「京太郎?」

京太郎「穏乃、ここって青い巨人が倒れた場所だよな」

穏乃「あ、うん……」


あの青い巨人が新子憧だと、知っているものの知らないふりをする京太郎

とりあえず周囲を見渡すがなにも無いようだった

すでに撤退したのだろう……


京太郎「……帰ろう、たぶん事後処理部隊がそろそろくる」

穏乃「京太郎は、なにも言わないの?」

京太郎「……なにがだ」

穏乃「私が!」

京太郎「別に良いよ……お前が一緒に戦うってのは変わらないだろ?」

穏乃「……ありがと」

京太郎「おう」


歩いていく京太郎のあとを追っていく穏乃

遠くに宥が運転する車が見えた

手を振りながら、そちらへと歩いていく



―――【特異課奈良支部:作戦室】


いつも通り四人が集まる

映し出された画像に、はカイザードビシとウルトラマンアグル

そしてさらに……


晴絵「京太郎、よくあのタイミングで撮ったね」

京太郎「まぁ、サングラスさまさまってことで」


胸ポケットに入れていたサングラスでこっそり撮っていた写真

それに映っていたのは和と玄


晴絵「……灼は、いないか」

宥「玄ちゃん……っ」

京太郎(余計なことしたかなぁ……)


悲しそうな表情をしている宥、顔をしかめる晴絵

京太郎は眉をひそめて穏乃を見た

穏乃は静かに、自らの手を見ている


京太郎「……まだここ、吉野でやることはありそうっすね」

晴絵「頼んだよ京太郎」

京太郎「お任せあれっすよ晴絵さん」フッ



◆唐突な安価


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、赤土晴絵

4、福路美穂子

5、瑞原はやり

6、東横桃子

7、竹井久


◇↓5分間でコンマが一番高い選択肢

2、高鴨穏乃



作戦室での話を終えて、京太郎は休憩所でコーヒーを飲んでいた

そんな彼の視線の先に高鴨穏乃を見つける

目が合うと共に、穏乃は笑みを浮かべて近づいてきた


京太郎「よ、今日はお疲れ」

穏乃「京太郎も……にしても危なかったねぇ」


対面に座る穏乃


京太郎「……ああ、グローザ星系人の時」

穏乃「え、あの宇宙人知ってるの?」

京太郎「あ、いや~長野でみた!」

穏乃「あ~熊倉さんかぁ」

京太郎「そうそう」


京太郎『っぶね~!』

ベリアル『お前、ほんと変なとこで抜けてんなぁ』


咳払いをして、話を再開する


京太郎「あのトゲトゲ星人、なんなんだ?」

穏乃「さぁ、トゲトゲ星人……たまに助けてくれるトゲトゲ」

京太郎「へぇ~トゲトゲかぁ」



晴絵「っくしゅっ!」

宥「風邪ですか?」

晴絵「ははは、まさか~」



周囲に人がいないことを確認して、穏乃が京太郎の隣に移動する

丸テーブルに二人なのに隣同士なのに違和感を感じた

それによって理解はして、京太郎は穏乃の方に耳を傾ける


京太郎「どした」

穏乃「その、黙っててくれて」

京太郎「いいよ。それよりなんだけどさ……」

穏乃「どしたの?」

京太郎「ありがとうな、戦ってくれて」


そんな言葉に、穏乃は驚いたような表情をしてからはにかんで笑う


穏乃「……えっと、こっちこそありがとね!」


逆に面喰って黙る京太郎が、首をかしげる


穏乃「色々!」

京太郎「……お前はさ」

穏乃「ん?」

京太郎「どうして戦うんだ?」


素朴だが、京太郎にとっては大事な質問だった

それに迷走した者として、同じ悩みを持っているのだとしたら……



穏乃「……私はさ、戦いたいからさ」

京太郎「好き、なわけじゃないだろ」


大凡、穏乃のことは理解していたつもりだ

だからこそ、言葉の本質は違うとわかる


穏乃「うん、でも私はこの地球を、そこに住む生き物たちを守るために戦いたいんだ」

京太郎「……」

穏乃「植物や動物とかも含めてさ」

京太郎「そっか……」


そんな本心からの言葉を聞いて、京太郎は穏乃の頭に手を置いて撫でる


穏乃「わっ、な、なにっ!?」カァッ

京太郎「お前は、ウルトラマンだよ……うん、光の巨人ウルトラマン」ニッ

穏乃「……う、うんっ……あ、ありがとっ」


うつむいてそういう穏乃に、京太郎は笑みを浮かべて頷く



―――【東京:???】


とある出版社、その休憩所

そこにいたのは―――西田順子である

もちろん山口大介も一緒だった


順子「奈良よ」

大介「え?」

順子「奈良に行くわ! ベリアルが出た!」

大介「いやティガがいる長野じゃ」

順子「奈良に他の巨人も確認されたし、追加でベリアル……なにかあるでしょ絶対」


そう言うと、ノートパソコンを叩いて大介に画面を向ける

そこに映るのはベリアルとガイア、そしてアグルの画像もあった


順子「やっぱベリアルが一番なにかあると思うのよね」

大介「じゃあ、次は奈良っすか?」

順子「ええ、それにあそこには阿知賀学院があるわ」

大介「麻雀、やっぱ関係あるんですか?」

順子「絶対あるから!」

大介「はぁ……」

順子「絶対、手掛かりを見つけてやるわよ!!」


そう言うと、テーブルを叩いて両腕を上に上げた

溜息をついて大介は頷く



     第10話【破滅の使徒】 END



―――次回予告


京太郎:邪魔ァすんなら!

晴絵:灼!

宥:玄ちゃぁん!

ベリアル:闇も光もねぇ

和:さよならです

晴絵:しょうがないなぁ

ベリアル:逃げるぞ!

穏乃:そのために、ガイアの光を託された!


次回【悪魔】


京太郎:さよならだ、新子憧

穏乃:憧ォ!


今回はここまでー

まぁ駆け足風だけども大丈夫!
とりあえず伏線ばら撒きつつ阿知賀編とかは一回終わるー
全国編は二度あるから!

そんじゃまたー

やってく所存ー
とりま続きからでごぜーます



―――【松実館:廊下】


あれから三日、京太郎は相も変わらず松実館だった

それなりにここでの暮らしも慣れてきた……慣れてきてしまったのだ

これでは良くない。目的と違う


京太郎「……」

ベリアル『良い目をするようになったじゃねぇか』

京太郎『え?』

ベリアル『なんでもねぇよ……とりあえず、また気配があったら教えてやる。潰させろ』

京太郎『是非っすよ』


宥「あ、おはよう京太郎くん」

京太郎「ん、おはようございます宥さん」フッ

松実父「京太郎くーん」

京太郎「おはようございますおとうっ……えっと、松実さん」

松実父「お義父さんで良いって!」バシバシ

京太郎「そういうの普通逆なんじゃ……」

宥「あぅっ」カァッ


赤くなる宥、京太郎は松実父の方に眼をやるが笑いながら去って行くのみ

少し気恥ずかしそうに、京太郎は後頭部を掻きながら宥に笑いかけた


京太郎「……それじゃ、いきます」

宥「あ、うんっ……わ、私もすぐ行くから玄関で待ってて!」

京太郎「はい」フッ


そう返事をして去って行く京太郎の背を見送る宥

少しばかり赤い顔、だが宥は少しばかり心配そうな視線を京太郎の背中に送る


宥「大丈夫かなぁ、恐い目してたけど……」



     第11話【悪魔】



―――【特異課奈良支部:作戦室】


宥と共に、基地へとやってきたが今そこにいるのは京太郎一人である

机の上に並べられているのは京太郎が持っているメダル

中々な枚数になったなと思いながら、一枚一枚を見ながらしまっていく


京太郎「増えたなぁ」

ベリアル『まぁなんの足しにもなんねぇけどな』

京太郎「たしかに」フッ


・ベムラー
・ネロンガ
・ゴモラ
・レッドキング
・グビラ
・エレキング
・ゴドラ星人
・クレージーゴン
・アーストロン
・タッコング
・アリブンタ
・ガギ
・シルバゴン
・レギュラン星人
・ガグマ(α・β)
・レイブラッド星人


京太郎「……しかし」

ベリアル『ああ?』

京太郎「レギュラン星人、こいつってメダルじゃないって言ってませんでした?」

ベリアル『よーやくか』

京太郎「はい……なのにメダルになった」

ベリアル『こいつはかなりのエネルギーを持ってたんだろうな。それこそメダルを必要としないほどにな』

京太郎「元は、メダルなんですよね?」

ベリアル『ああ、だが意思と執念とエネルギー、それで実体化したんだろぉよ』

京太郎「そんなこと、が……」

ベリアル『あるんだろぉな、見た通りな』

京太郎「……」


メダルをすべてしまい終ったその瞬間、扉が開く


京太郎「ん?」

晴絵「よ!」

京太郎「晴絵さん」



入ってきたのは赤土晴絵

そもそも、今ここにいるのは晴絵に呼ばれたからだ

だからこそ待っていましたとばかりに顔をそちらに向けた


京太郎「で、今日はなんですか?」

晴絵「いやぁ~どうかなって」

京太郎「近況報告なんて聞きたいですか? 俺の」

晴絵「なんていうか、進展なさ過ぎてね」

京太郎「まぁ……」


手がかりはあの日から一切ない

顔をしかめる京太郎と、苦笑する晴絵

立ち上がった京太郎はケータイを確認する


京太郎「行ってきますよ?」

晴絵「待った」

京太郎「?」

晴絵「ほい」


投げられたガッツハイパーのカートリッジ、それを受け取る


京太郎「なんで?」

晴絵「さぁ、なんかの役に立つかもだし……って熊倉さんが」

京太郎「……トシさんか、どうもです」


そう言うと、それをポケットに入れて京太郎は部屋を出る

座った晴絵がため息をついて一枚のメダルを取り出した

そこに描かれているのは―――トゲトゲ星人ことジャグラス・ジャグラー


晴絵「私はどーすれば良いのかねぇ」



入ってきたのは赤土晴絵

そもそも、今ここにいるのは晴絵に呼ばれたからだ

だからこそ待っていましたとばかりに顔をそちらに向けた


京太郎「で、今日はなんですか?」

晴絵「いやぁ~どうかなって」

京太郎「近況報告なんて聞きたいですか? 俺の」

晴絵「なんていうか、進展なさ過ぎてね」

京太郎「まぁ……」


手がかりはあの日から一切ない

顔をしかめる京太郎と、苦笑する晴絵

立ち上がった京太郎はケータイを確認する


京太郎「行ってきますよ?」

晴絵「待った」

京太郎「?」

晴絵「ほい」


投げられたガッツハイパーのカートリッジ、それを受け取る


京太郎「なんで?」

晴絵「さぁ、なんかの役に立つかもだし……って熊倉さんが」

京太郎「……トシさんか、どうもです」


そう言うと、それをポケットに入れて京太郎は部屋を出る

座った晴絵がため息をついて一枚のメダルを取り出した

そこに描かれているのは―――トゲトゲ星人ことジャグラス・ジャグラー


晴絵「私はどーすれば良いのかねぇ」



そのまま、ケータイでの連絡通りに京太郎は基地の正面玄関へとやってくる

手を振られてそちらに近づく

立っていたのは穏乃と宥の二人


京太郎「珍しいっすね歩きとは」

穏乃「まぁやることないしねー」

宥「玄ちゃんも、灼ちゃんも、憧ちゃんも……和ちゃんの手がかりもないし」


その言葉に頷く京太郎は、二人と共に歩き出す

基地を出て、街中へと出る

カイザードビシやアグルとの戦いの爪痕はまだ残っているがそれでも復興速度はかなりのものだ


京太郎(特異課ってか、御上のパワー?)

宥「どうしよっかぁ」

穏乃「当てもなく歩いててもしょうがないしなぁ」


そう言いながらも三人で歩く

スーツ姿の穏乃、宥の違和感、そして京太郎の納得感

それでも不思議なものでこう日数が経てばそれなりに慣れているのか街中では挨拶までされる



歩く三人、京太郎はふと立ち止まった

後ろの二人も足を止める


京太郎「もう、いないのかなぁ」

穏乃「……和かぁ、玄さんたち連れてっちゃったかなぁ」

宥「憧ちゃんも……」

穏乃「……はぁ」


手がかりさえ見つかれば、動きようがあるのだ

だが最近ではベリアルですら気配を掴めていない

ともなれば……


京太郎「もう、いないのか?」

ベリアル『っ! おい小僧ォ!』

京太郎「え?」

?「誰がいないんですか?」


三人の、誰の言葉でもなかった。声でなかった

だがしかし、聞き覚えのある。聞きなれた声だ

だからこそ勢いよく振り返った京太郎


京太郎「ッ!?」


その視界に映るのは―――原村和

さらに振り返った穏乃と宥の二人の腕を掴んで、原村和から離して京太郎は自分の後ろにやる

流れるような動きで、京太郎はガッツハイパーを抜いた


京太郎「……なんで」

和「なんでなんて、簡単なことじゃぁありませんか?」

京太郎「……」

和「別れの挨拶です」

京太郎「……は?」



拍子抜けして、止まる

言いたいことは何一つとして思い浮かばない

目の前の和は和では無い。それもそうだ


和「とりあえず、ここはもう用はありません」

穏乃「……あ、あなたたちは一体何が目的で!」

和「?」

京太郎「やめろ穏乃、どうせ根源的破滅招来体なんだ……」

和「その通り」

京太郎「その、紛い物だけどな」

和「……」


殺気を感じて、京太郎は眼を鋭く細めてからガッツハイパーをしっかりと和に向ける

だが、その後ろにさらに現れる影

それは、松実玄と鷺森灼


京太郎「ッ!」

和「さよならです」


そう言う和の前に立つのは鷺森灼

消える和と玄の二人


宥「玄ちゃぁん!」


宥が伸ばそうとする手を下げさせて、京太郎は鷺森灼に銃口を向けた


穏乃「京太郎!?」

京太郎「下がれ!」


灼の中心から溢れるのは―――光


穏乃「光!? 闇!?」

京太郎「いや……!」

ベリアル『闇も光もねぇ』

京太郎「純粋な、破滅の意思……!」


そして舞い上がる光と共に現れるのは―――


ベリアル『宇宙悪魔ベゼルブ!』



空に現れる黒い蟲型怪獣こと宇宙悪魔ベゼルブ

羽音を立てながら一度飛び上がると、勢いよく地面に降り立った

吹き飛ばされそうになる京太郎は宥と穏乃をしっかりと抱えている


京太郎「くそっ!」

穏乃「きょ、京太郎っ!」


暴風がおさまると、二人の手を握って走る

近場の路地裏へと入ると、息をついてガッツハイパーを握り直す

カートリッジは実弾へと変えた


穏乃「ちょっと京太郎!」

宥「京太郎くんっ!」

京太郎「大人しくしとけよ」


路地裏の向こう、大通りの方では暴風が吹いている

瓦礫が飛んでいるのも見えた

穏乃は、グッとスーツの内側にしまってあるそれを握る


穏乃「ダメだよ!」

京太郎「は?」

穏乃「……行くよ私が、でなきゃ一緒に」


その強い瞳を真っ直ぐと見て、言い返すこともできなかった

静かに息をつくと頷いて宥の方を見る

首を横に振る宥の頭を、そっと撫でた


京太郎「いってきます」

宥「だ、ダメだよ! 玄ちゃんも帰ってこないのにっ、京太郎くんと穏乃ちゃんまでっ!」

京太郎「……俺たちは、死なないから」

宥「そ、そんなっ」


頷いた京太郎が、宥の制止を振り切って飛びだす

同じく穏乃も飛びだすので、宥が追いかけようとするが路地裏からの出口を丁度、瓦礫が塞いだ

僅かな隙間から走って行く二人が一瞬だけ見えた


宥「ッ……玄ちゃんっ、私一体どうすればっ」



路地裏から飛び出た京太郎と穏乃の二人がベゼルブへと走る

勿論ガッツハイパーを撃ちながらな京太郎だが、その隣の穏乃は周囲を見回すとエスプレンダーを握った

やることは一つ、なのだろう……


京太郎「……」

穏乃「行ってくる!」


無言でうなずくと、穏乃は笑みを浮かべてベゼルブの方へと走る

宇宙悪魔ベゼルブは爪と口から火炎弾を撃ち出した


穏乃「ガイアァァッ!」


爆発―――だが、赤き光と共に、土を巻き上げてウルトラマンガイアが現れる


ガイア「チャァッ!」

◆BGM:逆転のクァンタムストリーム【http://www.youtube.com/watch?v=LleQVTBhwXQ


素早く構えを取ると、ベゼルブもガイアを警戒しているのか動きを止める

ベゼルブを中心に、円を描くように横に移動するガイア

出方を待っているのだろう……


京太郎「光の巨人、ガイアか……」

ベリアル『ハッ、どうしたい?』

京太郎「まだ、前と同じなら……!」

ベリアル『そういうことか、ちったぁ頭使うじゃねぇか』

京太郎「案外頭脳派っすよ。これでも雀士なんで!」




ベゼルブが尾を伸ばす


穏乃『やばい気がする!』


その尾の先の針に当たらぬよう回避

長いその手のものは先のカイザードビシのバトル触手で学習済みだ

ガイアが素早く光弾を放って尾を破壊する


ベゼルブ「―――!」

ガイア「ハアァッ!」


素早く接近して拳を打ち込み、怯んだところで回し蹴り

仰け反るベゼルブにさらに拳を打ち込んだ

だが、ベゼルブはその一撃を耐えた


ガイア「!」

ベゼルブ「!」


口から、火球が放たれる

その直撃をうけてガイアが後ろへと吹き飛ぶ

倒れるガイアの傍、ビルの屋上に立つ影


ガイア「ッ!」

穏乃『―――憧!?』


そこに立っているのは、新子憧だった

虚ろな瞳で、ガイアを見つめる


穏乃『憧ォ!』


咆哮を上げてから、ゆっくりと近づくベゼルブ

屋上の憧へと手を伸ばすガイア

そして―――


京太郎「ホールドアップだ……ベタ下りを勧めるぜ新子憧」

憧「……」

京太郎「いや、ウルトラマンアグル……根源的、破滅招来体……」


真っ直ぐに、ガッツハイパーの銃口を新子憧に向けていた

よもやよもや今回はここまでー
ここで阿知賀編が一旦一区切りつく、かも? どうなる憧!

またどこ行くか安価って感じでー

そんじゃまたー

よっし、やってくよー



京太郎「……俺は撃つぞ、生身だろうと」

憧「……」


迷いのない京太郎の瞳

ゆっくりと、新子憧が振り返った

その瞳は“アグルと同じくピンク”だ


京太郎「……」

ベリアル『やはりな、あれはアグルじゃねえ!』

京太郎「なら!」


その言葉を聞き、トリガーにそえた指に力を込め引く

ガッツハイパーから銃弾が放たれる。スタン能力が宿ったショック弾

だがその弾丸が憧にぶつかるよりも早く、憧の体から光が溢れる


京太郎「ッ!?」

穏乃『嘘っ!?』


倒れる新子憧だがその光は上空でカタチとなった

起き上がるガイア、そこから少し離れたベゼルブの前に降り立つのは―――アグル

土を舞い上げ、降臨する


京太郎「アグルっ!」

ベリアル『やはりな、あれは本物のアグルじゃねぇ』

京太郎「ガイア! 新子憧はここにいる!」


倒れている憧を抱き上げて叫ぶ京太郎

それに頷いて、ガイアはアグルとその隣に並ぶベゼルブに構えをとった

ビルの中に入る京太郎が、勢いよくかけていく


京太郎「……さっさとやる!」

ベリアル『アグルじゃねぇってもあれは、能力を丸々コピーした代物だ』

京太郎「了解、注意しますよ……」


そう言ってビルから出る京太郎

その背後でガイアが走り出す



大きく腕を振るって、拳を振るうガイア

その一撃がベゼルブを怯ませるが、アグルが素早くガイアの胴体に蹴りを打ち込む

ひるんだガイアを、ベゼルブが火球で攻撃


ガイア「グアァッ!」


吹き飛び、地上へと倒れるガイアだが転がって距離を取り起き上がる

だがその瞬間、目の前へとやってきたアグルが腕を振るう

そしてその腕に出現していた光の剣がガイアを斬り裂いた


穏乃『ぐっ、ああぁっ!』


ガイアが膝をつく

その正面に立つアグルは、ゆっくりと剣を持った右手を振り上げる

アグルの口元が歪に曲がる


穏乃『ぐっ! こいつはぁっ!』

アグル「フッ!」


京太郎「やらせるかよぉ!」


走る京太郎がゲートをくぐる



黒い光が真っ直ぐに飛び、途中で漆黒のベリアルが現れる

その勢いのまま、ベリアルはアグルの体をクローで斬り裂く

吹き飛んだアグルが、ビルを破壊しながら倒れる


ベリアル「ハァッ!」

京太郎『次はァ!』


ベゼルブが放つ火球をクローで斬り裂くと、光弾を放ちベゼルブを怯ませた

素早く、ベゼルブへと近づくと膝蹴り、さらに爪撃を打ち込む


ベゼルブ「―――!」

ベリアル「ハァッ!」

京太郎『鷺森灼だろうと!』


さらなる爪撃で、ベゼルブは吹き飛んで倒れた

右腕を空に振るうベリアル

そこから少し離れた場所で、起き上がるアグル


アグル「グウッ!」

ガイア「……シュワッ!」

穏乃『憧に憑りついてあんなことしてッ!』


アグルが両手を構える

強く握った拳を目の前に構えたガイア


穏乃『……許さんッ!』



ベゼルブを蹴り飛ばして、ベリアルが振り返る


インナースペースの京太郎は握りしめた拳を見つつ、開く

そこにあるのは、一枚のメダル

怪獣メダルとは違う


京太郎「……」


初めて見る―――ウルトラマンのメダル

そこにはアグルが描かれていて、目に色はもちろん白

その本物のアグルのメダルを握りしめて、しっかりと正面のベゼルブを見据える


京太郎「ならっ!」


素早く回し蹴りをすると、外側ではベリアルが蹴りを放つ

ベゼルブが吹き飛んだのを確認して、京太郎はガイアの方を向く

アグル相手に防戦一方のガイア


京太郎「……受け取れよ、ガイア!」


腕を振るい、メダルを投げた

インナースペースで投げられたメダルは、外側のベリアルのカラータイマーから放たれる

そのまま真っ直ぐに、ガイアへと跳ぶアグルメダル


穏乃『ッ!!?』


それは途中で青い光へと変わり、ガイアの胸のカラータイマーへと吸い込まれていく

立ち上がるガイア、その体が輝きを放つ

アグルがその光に怯む



そして、ガイアの姿が変わる

玄が混ざり、その胸には青き光すらも宿していた

ウルトラマンガイアV2―――新たなる光の誕生である


それを見ていたベリアル

その中で、苦笑を浮かべる京太郎


京太郎『……光、か』

ベリアル『あぁん? 憧れたか、今更?』

京太郎『まさか、今は闇の力が強い。だから使うだけっすよ……光が強けりゃそれを使う』

ベリアル『ハッ、上等だ!』


飛び上がったベゼルブを追い、ベリアルも飛び上がる


相対するガイアV2とニセアグル

剣を出現させるアグルと、相成すようにガイアもその手に剣を出現させた

二つのアグルの力、だが本物の光は―――


穏乃『これが、地球から、アグルから受け取った光の力ッ!!』

ガイア「シェアッ!」

アグル「フンッ!」


二つの剣がぶつかりあう



素早い剣戟の応酬、だがガイアのパワーの方が上なのか、アグルは徐々に押されていく

剣を振るう速度を上げるアグルだが、ガイアの剣を止めるのにペースが乱れる

そして―――


ガイア「チャァッ!」

アグル「グアッ!」


斬撃を受けて、吹き飛ぶアグル

立ち上がるアグルが、怒りをあらわにするように両腕を左右に振るう

怒りのままに、アグルは右腕を真上へと上げていく


穏乃『なら!』


アグルの額から伸びる光刃

だが、ガイアも同じように構えを取る

そしてガイアの額からも同じように光刃が出現する

いつものフォトエッジとは違う……光の剣


ガイア「ッ……!」

アグル「……デヤアァッ!」

ガイア「ハアァァッ!」


二つの光刃が、ぶつかり合う



空中でベゼルブがベリアルへと飛ぶ

一方のベリアルはそのまま、真っ直ぐに飛んでいる


京太郎『正面から潰す!』

ベリアル『わかりやすいな!』

ベゼルブ「―――!」


そしてそのまま―――すれ違う

だが、ベゼルブの羽が斬り裂かれて地上へと落ちていく


京太郎『俺達かなり強くなってんじゃないっすか?』

ベリアル『ハッ、本来のオレの半分の力もねぇよ』


アスファルトと土を巻き上げて落下するベゼルブ

その正面に降り立つ、ベリアル

起き上がったベゼルブが、ベリアルへと走り出す


京太郎『いきまァす!』

ベリアル『いくぞォ!』


クロスする腕、右腕の手の平は相手の方に向けている


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


そして、光線が放たれる



ガイアとアグルの二つの光刃がぶつかりあう

だが、ガイアの光刃のパワーは圧倒的だった

そのまま真っ直ぐにアグルにがぶつかり、それと共にアグルは爆散


ガイア「!」


吹き飛んだ破片は金属、それが正体だったのだろう

そして一方、ベゼルブもデスシウム光線を受けて爆散した

右腕を払うように振るベリアルが、振り返ってガイアの方を向く


穏乃『誰、なの? ベリアル……あなたは一体!』

ベリアル「……シャッ!」

穏乃『ベリアル……』


空へと消えるベリアル

それを見送ると、ガイアもまた上空へと飛んでいく


そして地上、ベゼルブがいた場所には―――鷺森灼がいた



地上で横たわる鷺森灼

そしてそこに現れるのは―――アンドロイド兵 バリスレイダー


バリスレイダー「……!」


手を伸ばすその瞬間、バリスレイダーの手が切断されて宙を舞う

バリスレイダーが攻撃があった方向を向く

だが遅い、刀はバリスレイダーを真っ二つにする


晴絵「……」


トゲトゲ星人こと無幻魔人ジャグラス ジャグラーの姿をした赤土晴絵がそこにいた

真っ二つになったバリスレイダーを前に、刀を逆手持ちして膝をつく


晴絵「灼!」

灼「うっ……」

晴絵「……灼」ホッ


息をつく晴絵だが、すぐに立ち上がった

視線の先には、少女―――を抱いた少年


晴絵「お前か」

京太郎「離れろ……」

晴絵「はいはい、なんだよ助けてやったのに」

京太郎「信用ならないだろ。顔も見せない奴」

晴絵「やっぱベリアルと一緒の奴は違うねぇ」


その言葉に返すことなく、京太郎はそのまま灼に近づいて憧を降ろす

上着を脱ぐと、それをまくらにして二人の頭をそっと降ろした


晴絵「優しいねぇ」

京太郎「うるせ」



晴絵「それじゃ私はこれで……」

京太郎「おい、お前一体なにが目的で」

晴絵「さて……じゃあな」


それだけ言うと、黒い閃光となって消えるジャグラス ジャグラー

息を吐いた京太郎

敵意を感じないことに確かな納得を感じつつ、膝をつく


京太郎「怪我は、許してくれよな……鷺森さん」

穏乃「おーい!」

京太郎「穏乃……」


走ってきた穏乃が、憧と灼を見て安心したように息をついた


京太郎「……アグルの光、か」

穏乃「え」

京太郎「……いや」


フッと微笑みつつも憧の方を見る

穏乃には見えていないようだが、京太郎には見えた

暗い場所からだからこそ見える僅かな星の光


京太郎『……まだ、残ってるんですね』

ベリアル『みてぇだな、金属生命体とウルトラメダルを合わせることでウルトラメダルの力を強制的に引き出すたぁ考えたな』

京太郎『でも』

ベリアル『ま、どうなるかはわかんねぇがな』



頭の中でベリアルと話をしていると、声が聞こえる

そちらを見れば―――揺れていた


京太郎「宥さん!」

宥「きょ、京太郎くんっ! 穏乃ちゃんっ!」


勢いよく走ってきた宥を受け止める

ギュッと背中に回された腕に、戸惑うも穏乃は笑みを浮かべていた

後から歩いてくる晴絵


晴絵「私は?」

京太郎「すみません見えませんでした」

晴絵「宥の胸しか見てなかったの間違いじゃ?」

京太郎「う゛!」

宥「あぅっ」カァッ


離れる宥、いたしかたないと汗を浮かべながら頷く京太郎

ともかくだ、今はそんなことをしている場合ではない


晴絵「灼、憧……」

宥「玄ちゃん、は……」

京太郎「和と共に、か」


顔をしかめる京太郎だが、穏乃は頷く


穏乃「やるよ、私は……玄さんも、和も救い出す!」グッ

京太郎「……そうか」フッ

穏乃「そのために、ガイアの光を託された!」

京太郎・晴絵「あ」

宥「え」

穏乃「……え、あ、うわぁっ!!?」

京太郎「お前が驚くな、驚くタイミング逃すから」

宥「え、え!? ど、どういうこと!?」

晴絵「あーなるほどね」

穏乃「どどど、どうしよう!」

京太郎「ま、まぁ二人なら良いだろ、うん」

穏乃「ま、まぁ確かに……?」


無理矢理納得する穏乃、そして京太郎

とりあえず状況説明も必要だろうと、話すことを頭で整理する

まずは―――



「こっち! こっちにウルトラマンの気配ィ!」

「絶対いないですってぇ!」


突然、声が聞こえた

数十メートル離れた場所に人影が見えた


晴絵「ん? マスコミ?」

京太郎「この声……」

ベリアル『逃げるぞ!』

京太郎『ベリアルさんが即座にその判断とは……了解です!』


即座に持ち物を確認して頷くと、宥、晴絵、穏乃の順で顔を合わせる

言いたいことを理解してくれたのか、笑顔を浮かべて頷く晴絵


宥「また来たら、松実館に……お帰りお待ちしてます」ニコッ

京太郎「また帰ってきます。お父さんにもよろしくっす」

穏乃「ありがとう京太郎! また一緒に!」

京太郎「……ああ、また一緒に」コクリ


次に目線は、新子憧―――アグル守られた者に


京太郎(さよならだ、新子憧)


静かに頷くと、京太郎は走り出した



目的地はまだ決まっていない

だが、友と約束した……


京太郎「―――和、玄さん、必ず……!」

ベリアル『いくぞ小僧ォ!』

京太郎「はい!」


返事と共に、京太郎はゼットライザーのトリガーを引いた



     第11話【悪魔】 END




◆どこへ向かう!


×、奈良(阿知賀・晩成)
2、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)
7、東京(白糸台)
8、北海道(有珠山)
9、長野(鶴賀・風越)




今回はここまでー
次回は明日たぶん22時ぐらいからはじめまーす

安価ってことで是非ー

阿知賀編一回目、晩成の出番ほぼなし!
まぁ次回はある次回はー

そんじゃまたー

お待たせしましたー
やってくよー

15分ぐらいから安価投下してくー


◆どこへ向かう!


×、奈良(阿知賀・晩成)
2、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)
7、東京(白糸台)
8、北海道(有珠山)
9、長野(鶴賀・風越)


◇5分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢

2、東京(臨海)



―――次回予告


京太郎:東京……久しぶりだな

ベリアル:余計なもんをさっそく感じんな

京太郎:余計なもの、ですか?

智葉:男?

ネリー:でもカネゴンはどうかな?

京太郎:どこに行ってもこれだな!


次回【東京の風】


京太郎:ヤキトリにしてやらァ!



―――【江東区】


駅を出て、京太郎は背を伸ばす

10月ともなれば空気もずいぶん涼しく夏来た時とはまた違った雰囲気を感じる

腕時計型の端末を開く


京太郎「……和の目撃情報、東京とはな」

ベリアル『にしてもその小娘ばかりだな、他は?』

京太郎「優希、まこ先輩、それに咲……」


誰一人見つかっていない

今は和しか、手掛かりがないのだ


京太郎「……とりあえず合流を待つか」

ベリアル『ハッ、面倒なことだな』

京太郎『走ってくのはナンセンスですよ。今の運動能力だとしたら余計に』


京太郎はロータリーで周囲を見回す

そうしていると、一台の車が目の前に止まった

窓が開いて、運転席に見たことがある顔


??「待たせたな」

京太郎「いえ……いいなぁ車」ボソッ

??「辻垣内智葉だ、よろしく頼む」フッ



辻垣内智葉の運転する車の助手席に乗り込む京太郎

目的地はここからそう遠くはないらしいものの、緊張が隠しきれない

自分の仲間たちと戦った相手……


智葉「君が、熊倉トシさんの秘蔵っ子か」

京太郎「秘蔵っ子って、どういう伝わり方しているんですか」

智葉「言った通りのだ……まぁ尾ひれはついてるだろうが」

京太郎「だと思いますよ」


長野や阿知賀とはまた違った街並みを横目に、京太郎は苦笑する

ただ、ベリアルだから色々と動いているにすぎない


智葉「だが奈良からとは……良く働くみたいだな」

京太郎「まぁ仲間もやられてますからね」

智葉「そうなのか?」

京太郎「はい、清澄高校の」

智葉「清澄に……男?」

京太郎「あ~そうなりますよねぇ」ハハハ


当然のことだという風に京太郎は笑った



―――【特異課東京支部】


ガレージに入った車

出てくるのは京太郎と智葉の二人

体を伸ばして、長野とも阿知賀とも違う雰囲気の基地


ベリアル『余計なもんをさっそく感じんな』

京太郎『余計なもの、ですか?』

ベリアル『基地内だ』

京太郎「え、それってとってもマズイ状況では……」

智葉「どうした?」

京太郎「ああいえ! いいえ!」


ついつい普通にベリアルに応えてしまった京太郎

両手を振りながら頭を振るうと、外はは首をかしげる


智葉「まぁいいか……行くぞ」

京太郎「はい!」


長い髪をなびかせて歩く智葉の後ろを歩いていく

少しばかり警戒しながら……


京太郎(警戒……警戒……)

ガンッ

京太郎「痛ぁ! なんで一斗缶ンンッ!」

智葉「ああ、気を付けろ」

ベリアル『どこが警戒だ』



扉が開く、長野基地と同じつくりの作戦室に入るのは二人

辻垣内智葉と、足を気遣いながら歩く京太郎


智葉「戻ったぞ」

???「おかえりー」

京太郎「痛ぁ……」

智葉「あー……ネリー、こちら」

???「須賀京太郎、でしょ?」


そこに座っていたネリー・ヴィルサラーゼがそう言うと、智葉は意外そうな表情をした

それもそうだ。須賀京太郎を知っている人物なんぞ長野の雀士でも珍しい部類

清澄だからなんとなく知っているという人間がいるぐらいである


京太郎「し、知ってるとは意外……」

ネリー「宮永の彼氏でしょ?」

智葉「そうな」

京太郎「違います」

智葉(だいぶ食い気味……)



作戦室のテーブル

やはり囲むように座るのが正解らしく、モニターに背を向けぬように智葉は座る

既に座っているネリーが、指差すのでそちらに座ろうとするも―――


ガンッ

京太郎「いったぁぁあぁぁっ!」

智葉「次はなんだ!」

ネリー「あー、それねこの間、しおりんが買ったダイエット器具」

智葉「あの人は……」

ネリー「ねー体重増えたって言ってたけど絶対おっぱいにいってるだけだよ」


あまりの激痛に倒れる京太郎


ネリー「うわぁ」

智葉「どんだけ痛いんだ……」

京太郎「ぐおぉ……いてぇ」

チャリンチャリン


立とうとした時、なにかが落ちた音がした


ネリー「お金!」バッ

京太郎「はえーよ、ちげぇし」

ネリー「……ほんとだ怪獣メダルだ」ハァ

京太郎「露骨にガッカリするなぁ」

ネリー「ネリーは許そう……」


瞬間、作戦室の扉が開いてナニカが入ってくる


????「お金!!?」

京太郎「怪獣だぁぁぁっ!!?」

ネリー「でもカネゴンはどうかな?」



入ってきた怪獣カネゴン

京太郎の方を、いや落としたメダルを見る

前に出る智葉


智葉「どうどうどう」

カネゴン「なぁんだメダルかぁ……」

智葉「ほら、今は真面目な話をしてるんだ」


そう言って智葉が京太郎の方を見る

手でメダルをしまえとジェスチャーされるので、京太郎はメダルをホルダーに入れた

カネゴン、と呼ばれた怪獣をマジマジ見る


京太郎「……怪獣だ」

ネリー「カネゴンの怪獣メダル入れられててさぁ」

京太郎「え」

ネリー「最近、ネリーから出てきて……あ、メダルと一緒に」

京太郎「なにそのパターン」


少し気になりもする

ネリーの話ぶりからしておそらく被害などはなかったのだろう


智葉「ほら、小銭は別でやるから」

カネゴン「サトハは優しいねぇー!」

智葉「現金だな」

カネゴン「現金!?」

智葉「そういう意味じゃない」

ネリー「智葉は表に出せないお金一杯あるだろうし、処理に困ったらカネゴンにあげてね」

智葉「あるか!」

京太郎「やっぱり……」

智葉「お前も私をなんだと思ってるんだ!?」



カネゴンが出て行き、京太郎、智葉、ネリーの三人がそこにいた

キーボードを叩く智葉

モニターの表示が切り替わり、画像が出てくる


京太郎「これは……」

智葉「昨日の画像だ。原村和、だろ?」

京太郎「ええ、それに玄さん……」

智葉「ああ、松実玄……覚えている」


その言葉の重み

戦ったからこそわかることもあるのだろう


京太郎「この二人、どこで?」

智葉「案外近場だ……やはり雀荘らしいが」

ネリー「むぅ、麻雀さえできればネリーがメダル吐き出させたるのにぃ!」

京太郎「怪獣メダル入ってる奴は舐めない方が良いぞ」

ネリー「ネリーだって入ってたからわかるよぉ」

京太郎「でも、だよ」


戦ったからこそよくわかる原村和の異常さ

自分はともかく南浦数絵と染谷まこの二人を封殺した強さを……


智葉「まぁともかくだ。まずはこの場所に行ってみるとしようか」

京太郎「はい、ついでにここ最近でここらで起きたこととか教えてもらえれば」

ネリー「ネリーもいく!」

智葉「ああ、監督もまだ戻ってこないし……とりあえず私たちでできることをやろう」



走る車の運転席に座る智葉、助手席に京太郎

そして後部座席にネリー


京太郎「え、神代がスポンサーをしてる?」

智葉「と聞いたが……」

京太郎「なんでまた」


頭に思い浮かぶのは永水女子の雀士たち

石戸霞、神代小蒔、滝見春、石戸霞、石戸霞、狩宿巴、石戸霞、薄墨初美


京太郎(いかん、おもち欠乏症だ)

ベリアル(たぶんアホなこと考えてやがんな)

智葉「それはまぁ、日本の……いや、地球の危機だからな」

ネリー「他の大手企業とかもこぞって特異課にお金出してるらしいよ!」

京太郎「そうか、まぁそうなれば不思議じゃないか」フム

ネリー「やったね須賀! お給料が増えるよ!」

京太郎「おいやめろ」

ネリー「なんで?」

京太郎「なんでも」


そう言って深く頷く


智葉「仲良くてなによりだが……着くぞ」

ネリー「おー禍々しい気配」

京太郎「そうか?」

ネリー「たぶん」



駐車場に車を置いて、三人は雀荘の前に立つ

ネリーが言っていたこともあながち間違いでもないのか、京太郎は顔をしかめる

異様な雰囲気が、漂っていた


京太郎「……電話繋がります?」

智葉「ダメだ、中に電話したがつながらない」

京太郎「こりゃダメだ」

ネリー「えー」


ガッツハイパーを持つ三人

おまけに智葉は、なぜか帯刀している


京太郎「……なんで?」

智葉「……放っておけ」

京太郎「はぁ」


そう言って頷くと、息をつく京太郎が二人を見る

頷く二人に頷いて扉を蹴破るとガッツハイパーを構えながら入った京太郎

そして後から、智葉とネリー


京太郎「……」

智葉「やはり……」


暗い雀荘……その中で雀卓に座っている少女が一人

脚を組んで座っているその少女、原村和は妖艶に笑みを浮かべた

風も無いのにそのピンク色の髪が揺れている


京太郎「和ぁ……」

和「また貴方ですか」ハァ



銃口の先に原村和

動揺の色すら見せず、原村和がため息をついた

松実玄の姿はどこにもないように見える


京太郎「……玄さんは」

和「今回の目的は雀士なので、あまり連れ回したくないんですよね。私の大事な殲滅兵器なので」

京太郎「貴様ッ!」


トリガーを引いてショック弾を放つも、見えないバリアに阻まれた


和「まぁこの辺で怪獣メダル持ちを倒す雀士がいると聞いたので……私が直々に来てみたわけですけど」

智葉「偉そうに……!」スチャッ

和「偉いんですよ実際に人類よりよほど理性的です」

京太郎「だったらさっさと大人しく和の体から出ろ!」


そう言って近づこうとする京太郎

だが和は眉一つ動かさずに、指を鳴らす


ベリアル『小僧ォ!』

京太郎「っ!」


即座に後ろに跳ぶと、一瞬前までいた場所に“光の鞭”が振るわれた

近くの雀卓が真っ二つに斬り裂かれる


京太郎「こいつっ!」

和「さすがですね」フッ


暗闇の影から現れたのは―――宇宙人

青い体、両腕がハサミ

金色のマントをつけた異質な宇宙人


ベリアル『テンペラー星人か!』

ネリー「雀荘は戦う場所じゃないでしょぉ!」

京太郎「まったく同意見だよ!」



テンペラー星人「避けられた!?」

和「まぁ他の方法でいきましょう。勿体ないですし」

テンペラー星人「悠長なことを!」


言い争う和とテンペラー星人

京太郎は素早くガッツハイパーを放つも、やはりバリアで防がれた

ネリーが、テンペラー星人に銃を撃つが、ビームウィップで弾かれる


テンペラー星人「鬱陶しい!」

京太郎「ッ!」


ビームウィップが攻撃のため、ネリーに振るわれた

確実な直撃コースで、京太郎は顔をしかめつつネリーを抱きかかえる


ネリー「須賀っ?!」

京太郎「ッ!」

ベリアル『くるぞ!』

智葉「させるかッ!」


素早い抜刀―――智葉がビームウィップを弾いた


テンペラー星人「なに!?」

智葉「かの錦田小十郎景竜の刀だ、並ではない!」

和「倒してはもったいない……撤退ですよ」


そう言うと、和とテンペラー星人は闇の中に消える



納刀した智葉、京太郎はガッツハイパーを降ろして周囲を見回す

おかしなところはない


京太郎「たぶん俺がいると思わなかったから、ここに誘い込んで二人を倒す気だったっぽいな」

智葉「侮られたものだな」ハァ

ネリー「んーワンチャンあった?」

智葉「宇宙人のみなら……?」


おそらく無理だろう


京太郎「雀荘に、元々いた人たちとかはいないのか?」

智葉「おそらくな……基地から連絡があった」

ネリー「ほんとだ、雀荘の店主と連絡ついたって」

京太郎「そりゃなによりで」フゥ


瞬間、地面が揺れる

驚愕する三人が、急いで外へと飛びだす


すでに街中は混乱しているようで、一般人の叫び声が聞こえる

走って避難していく人々

大きな咆哮が聞こえた


京太郎「ッ!」

智葉「あれは……」

ネリー「鳥怪獣!」


ベリアル『ほう、バードンか』



その火山怪鳥バードンが羽ばたくと、凄まじい突風が巻き起こった

背筋に悪寒が走る京太郎は即座に動く


ベリアル『飛ばされるぞ!』

京太郎「ッ!」


すぐに智葉とネリーを抱き寄せた


智葉「なっ!?」カァッ

ネリー「ひゅえっ!?」カァッ


そのまま、雀荘へと飛び込む

外は凄まじい突風により看板が転がっていた

雀荘の窓ガラスも音を立てている


京太郎「っ!」

智葉「た、助かった……」

ネリー「あ、ありがと」


起き上がった京太郎はガッツハイパーを確認して頷く

二人は小首をかしげたが、京太郎は走る


京太郎「二人共大人しくな!」

智葉「お、おい!」


雀荘から飛びだして走る京太郎

突風は既に止んでいるが、バードンは炎を吐いて街を破壊していた

走る京太郎がガッツハイパーを撃てば、直撃を受けたバードンは京太郎の方を向く


京太郎「どこに行ってもこれだな!」

ベリアル『おもしれぇ!』

京太郎「ですよね! ベリアルさんは!」


ゼットライザーのトリガーを引き、出現したゲートへと飛び込む



―――【インナースペース】


京太郎「いきますよベリアルさん!」

ベリアル「ハッ、上等ォ!」


出現するアクセスカードを右手で取り、挿入した


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』


さらに右手で、メダルを弾く

弾かれたメダルが周囲を闇に包んだ

赤く輝く瞳、落ちてきたメダルを右手で掴みゼットライザーにセット


京太郎「究極生命体!」


ブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアァルッ!」


トリガーを引き、叫んだ



現れるのは漆黒のベリアル

左手を顎にそえて首を鳴らし、バードンの方に視線を向けた

少しばかり腰を落とし、構えを取る


京太郎『炎を吐く鳥、ねぇ……』

ベリアル『クチバシには毒もある怪獣だ。使う分には良さそうなんだがなぁ』

京太郎『使うって……』

ベリアル『レイオニクスだからな』フッ

京太郎『レイオニクス?』


疑問を浮かべて聞くも、バードンが突っ込んでくるのでその質問が止まった

真っ直ぐ突撃してきたバードンのクチバシを回避し、即座に距離をとる

振り返ったバードンが火炎弾を吐きだすが、クローでその火を真っ二つに斬り裂く


ベリアル「ハァッ!」


斬り裂かれた二つの炎がベリアルの左右で爆発する


ベリアル『タロウやゾフィーの小僧共のように無様にやられるなよ』

京太郎『誰っすか、まぁ……ベリアルさんと一緒なら、負けませんよ!』


笑みを浮かべた京太郎

ベリアルは勢いよく、バードンに向かって走り出す


今回はここまでー!

次回、バードン戦ってことで東京編第一話後半
色々と出てきたりしつつ、伏線張りつつ

そんじゃ次は水曜にでもー

本当の戦いはこれからだぜっ!
ってことでやってくよー


迫るベリアルを相手に、バードンが火球を放つ

ベリアルは素早く爪で火球を斬り裂くと、バードンに蹴りを放った


バードン「―――!」


鳴き声をあげてひるむバードンを、さらに爪で攻撃する

だが、バードンはそれを耐えてクチバシを振るう


ベリアル『毒がくるぞッ! そもそもあのクチバシも伊達じゃねぇ!』

京太郎『やべぇじゃないっすかぁっ!』


目の前に迫ったクチバシ

ベリアルは両手でバードンの頭を押さえてそのクチバシを眼前で止めた

がら空きのベリアルの胴体を、バードンは両手で攻撃


バードン「―――!」

ベリアル「グゥッ!」

ベリアル『アレでやるぞ!』

京太郎『はい!』


徐々に押されていくベリアルの黄色い瞳が輝く


ベリアル・京太郎『デスシウムロアー!』


放たれた音波攻撃

吹き飛ぶバードンはビルを破壊しながら倒れる

ベリアルはバードンを見据えつつ首を鳴らす



ベリアル『まずあの毒袋を潰す!』

京太郎『あの頬の袋っすね!』


素早く光弾を放つも、バードンは空へと舞いあがりそれを回避

見上げるベリアルに対し、バードンは空中から火炎弾を放つ


京太郎『このままじゃ街が!』

ベリアル『ならどうする!』

京太郎『全部……弾き返す!』


バリアを張ったベリアル

火炎弾はバリアにぶつかって空へと返って行く


京太郎『難しっ!』

ベリアル『角度を変えろ! 戦いの中で覚えろ!』

京太郎『ッ!』


バリアにぶつかる火炎弾からの衝撃、それに耐えつつ、街に被害が出ないよう……

そこには智葉とネリーがいるのだ


京太郎『んのぉ!』


力を込めて、バリアの角度を変えた

空のバードンからの火球が、跳ね返る


バードン「―――!!?」


その火球にぶつかり、バードンが落ちた



なんとか起き上がるバードンだが、火球が毒袋に直撃したのか頬の袋はボロボロだった

ふらつくバードンが、ベリアルの方に視線を向ける

怒りに震えながら、バードンはベリアルへと走っていく


京太郎『いきまぁす!』


右腕に集まる黒い光と赤い稲妻

水平に構えた左手の後ろに、垂直に構えた右腕をそえた

掌は真っ直ぐ、そしてその腕から―――


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


―――光線が放たれる


バードン「―――!!?」


その光線がバードンへと直撃

直後、硬直したバードンが―――爆散する


ベリアル「ハッ!」


右腕を払うように振るうと、左手を顎にそえて首を鳴らす

そして、上空へと飛んで消えた



地上へと降り立つ京太郎が、腰を叩きながら路地裏から出る


京太郎「きっつぅ」

ベリアル『ハッ、バードン相手によくやった』

京太郎「うっす……にしても、慣れないことはするもんじゃないっすね」


そう言いながら、身体を左右にひねってから背を伸ばす

今までの戦いとはまた違う戦い方だった

いつも通りだったらまた違ったのだろう


京太郎「最近は、そこまでの戦いしてこなかったですからねぇ」

ベリアル『ふたを開けりゃ今回も苦戦もしてねぇしな』

京太郎「たしかに……俺も中々やるようになったんじゃないですか?」

ベリアル『オレの力がほとんどだろうが……四分の一人前がナマ言うんじゃねえよ』

京太郎「うっす」フッ


どこか嬉しそうに返事をする京太郎

すると、声が聞こえてくる

そちらを向けば、走ってくる二つの影


ネリー「京太郎ー!」

智葉「無事か!」

京太郎「ああ、心配かけました……助けてもらいました。ベリアルさんに」

智葉「ベリアル……」

ネリー「さん?」

京太郎「あー……な、長野からの付き合いなんで」

智葉「なるほど」フム

京太郎(なんとかなった!)


―――【特異課東京基地:作戦室】


座っているのは京太郎、智葉、ネリーの三人

あの後、車で戻ってきたというわけで、今は画像を見ていた

表示されているのはバードンとベリアル


智葉「にしてもウルトラマンベリアル、ここに来るとはな」

ネリー「意外だったね。原村を追ってるって聞いたことあるけど」

京太郎「……正確には中身なんでしょうね。根源的破滅招来体」


その言葉に、智葉とネリーが頷く

根源的破滅招来体については熊倉トシが色々なところに話はしているのだと思いたいところだ

瞬間、扉が開く


???「ごめん、遅れた……ああ、貴方が須賀京太郎」

京太郎「あ、はい」

???「今日はありがとう。私はアレクサンドラ・ヴィントハイム……一応ここの責任者」

京太郎「ああ、これはどうも」ペコ

アレク「今日はごめんね」

京太郎「いえいえ、結果的にベリアルさんに助けられましたし、また」


その言葉に、アレクサンドラは笑みを浮かべて頷いた


ネリー「監督おそい」

アレク「だから謝ったでしょう」

智葉「色々終わりましたよ」

アレク「知ってる。例の原村和とは会ったんでしょ?」

ネリー「宇宙人連れてたけどねー」

アレク「今回の件、怪獣メダルの件はまだ不明な点が多いからね……根気強くやってきましょ」


そんな言葉に頷く三人


京太郎(和を、取り戻す方法か……)



―――【特異課東京基地:休憩所】


京太郎「で」

ジャラジャラジャラ

京太郎「どうしてこうなった?」

ネリー「なにが?」

智葉「それはそれとして、だ」

アレク「お手並み拝見」フフッ


現在、麻雀マットを広げて牌を混ぜている四人

目的はもちろん麻雀をするためだ

なぜか自然な流れで麻雀をさせられている


京太郎「えー」

アレク「多少は強いって熊倉さんから聞いたし」

京太郎(ベリアルさんのおかげっていうか今回の事件のおかげっていうか……おかげってのもおかしいか)

智葉「見せてもらおうか、清澄麻雀部男子の実力を」フッ

ネリー「ヤキトリで終わらないでよぉ?」


クスクス笑うネリーに、京太郎は不敵に笑う

牌を手で積んでいく四人

京太郎はカッと目を見開く


京太郎「上等! ヤキトリにしてやらァ!」



◆安価!


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、福路美穂子

4、瑞原はやり

5、東横桃子

6、竹井久

7、辻垣内智葉

8、ネリー・ヴィルサラーゼ


◇5分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢

2、高鴨穏乃



―――【特異課東京基地:自室】


割与えられた部屋で、京太郎はシャワー上がりなのかタオルで髪を拭いている

シャツと短パンのみの姿、ベッドに腰掛けるとケータイに触れた

その瞬間、そのケータイから音が鳴る


京太郎「うおっ!」ビクッ


タイミングの良さに驚きながらも相手の名前を確認して通話ボタンを押す


京太郎「穏乃か、どした?」

穏乃『あ、京太郎! 昨日ぶり!』

京太郎「おう」フッ


元気そうな声に、軽く返す


京太郎「ああ、そういえばあの後大丈夫だったか?」

穏乃『うん、先生も宥さんも驚いてたけど』

京太郎「だろうな」ハハハ

穏乃『でも、これからも一緒に戦ってくれるって!』

京太郎「そりゃそうさ……俺もな」フッ

穏乃『うん!』

京太郎「ウルトラマンの力がなくても、だからな」

穏乃『わかってるよ。京太郎はそういう人だって』

京太郎「そっか」

穏乃『やっぱギリギリまで頑張らないとウルトラマンも力、貸してくれないしね!』

京太郎「……そうだな」フッ


ベリアル『そうか?』

京太郎『そうだと言っといてください』

ベリアル『ウルトラマンじゃねぇからな、オレは』

京太郎『……ですね』フッ



京太郎「そういえば、今日……和と会ったよ」

穏乃『え、さっそく!?』


驚愕する穏乃に、同意で返す


京太郎「ああ……でも、やっぱあれは和じゃないからな」

穏乃『そっか、なんとかできそう?』

京太郎「いや、ヤバそうな宇宙人が一緒にいてどうにもな……玄さんもいなかったし」

穏乃『そっか、でも……きっと熊倉さんがなんか作ってくれるよ!』

京太郎「だと良いけどなぁ」


そう言うと、いつだったか熊倉トシからのものとして受け取ったガッツハイパーのカートリッジを取り出す

手の中で転がしつつ、穏乃に話を続ける


京太郎「まぁ俺もなんとか頑張ってみるよ」

穏乃『私も、憧が起きたら色々聞いてみるね』

京太郎「無理ない範囲で頼んだ」

穏乃『うん!』


元気のいい返事に口元をほころばせる


京太郎「それじゃ、気を付けてな」

穏乃『京太郎こそ! また、電話するねっ』

京太郎「ん、楽しいみにしてる」フッ

穏乃『うん、またね!』


電話が切れる

笑みを浮かべたままの京太郎は、そっとカートリッジとケータイをベッドの枕元に置く

横になった京太郎は、天井を見上げて手を上に持ち上げた


京太郎「俺は……」グッ



     第12話【東京の風】 END



―――次回予告


京太郎:魔王獣?

ベリアル:太平風土記はあるか?

智葉:邪な者ならば斬る!

テンペラー星人:人間か!?

ネリー:この風!!?

京太郎:スカート捲れそう!


次回【風の魔王獣】


京太郎:お借りします!


台風近づいてるせいか頭痛いんでここまでー
次回は魔王獣登場ー

実りがないようである話ー
これでも本筋は進んでるよ!

そんじゃ次は金曜の夜にでもー


今回の雰囲気なんか好きだ
てか魔王獣も出てくるのかこの地球大丈夫か

乙ー
頭燃えなくてなにより

やってくよー

>>538
め、メダルのせいで怪獣が出てくるだけだから(震え声)

>>539
ちなみに一度目の目的地で臨海来てたら燃えてました



―――深夜【江東区:街中】


凄まじい咆哮

車を踏み潰し、肉食地底怪獣ダイゲルンは走る

正面に立っているのは―――ベリアル


ベリアル「ジャアッ!」


勢いよく、放たれる光弾

尻尾を振るったダイゲルンは光弾を相殺


京太郎『予想通り!』

ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃は、振り返ったダイゲルンの首に直撃

そのままダイゲルンの首は落ち、倒れる

ベリアルは右腕を払うと、真上へと飛び上がって去って行く



ダイゲルンが倒れた地上

落ちているダイゲルンの頭部の近くに車が止まった

出てくるのは智葉、探知機のようなものを手に歩くと……


智葉「これか」スッ


拾ったのはメダル

描かれているのはもちろんダイゲルンだった


智葉「さて……いくか」


車に再び乗りこむと、智葉はその場から去って行く



―――【特異課東京基地:作戦室】


開く扉、帰ってくるのは京太郎

先に座っているのは智葉とネリーとアレクサンドラ


京太郎「う~」


欠伸をしながら背を伸ばす京太郎


京太郎「お待たせしゃぁしたぁ」

アレク「まぁ深夜だもんねぇ」

智葉「京太郎」ポイッ

京太郎「どうもっす」


投げ渡されたダイゲルンメダルを受け取る


智葉「にしてもどうしてメダルはお前が回収なんだ?」

アレク「まぁ熊倉さんのことだから考えがあるんだろう、特にこの子は色々なとこいかされてるし」

京太郎「まぁ好きで動いてるんですけどね」

ネリー「お金ならともかくメダルなんてなぁ」

京太郎「ま、なんでも良いじゃないっすか……阿知賀じゃ研究部の方に持ってかれたし」

アレク「へぇ~なにか考えてるんかね」

京太郎「さぁ?」


あれから三日、京太郎はすっかりなじんでいた



ネリー「もー眠いー」

アレク「まぁ今日はこれで解散でいいでしょ」

京太郎「うぃーっす」

智葉「おい京太郎、もう少しだなぁ」


呆れた顔でそういう智葉に、眠気眼のまま頷く京太郎

苦笑するアレクサンドラ


京太郎「すんません」ウトウト

アレク「まぁ、報告書はやっとくからおやすみ」

京太郎「うっす」コクリ


そう応えて部屋を出ようとする京太郎

アレクサンドラがキーボードに触れたモニターにテレビを映した

その画面を見て、全員が眼を点にする


ネリー「……ネリー寝ぼけてる?」

智葉「さぁ……」

京太郎「大型台風同時に七つって……なに?」

ベリアル『こいつぁ……』



     第13話【風の魔王獣】


―――翌朝【特異課東京基地:作戦室】


昨夜と同じくモニターに移されたテレビニュース

そこに映っているニュースがやっているのは突然の大型台風同時発生についてだ

欠伸を噛み殺しつつ、京太郎はその映像を見ている


京太郎「っ……」

アレク「眠そうね」

京太郎「お互いさまっす」

智葉「まったくだ」

ネリー「」zzz


一応の仮眠はとったが、せいぜい3時間程度だ


京太郎「……」

ベリアル『間違いねぇ魔王獣だな』

京太郎『……魔王獣?』

ベリアル『あぁ、こことは別の宇宙で世界を滅ぼすって言われてた怪獣共だ』

京太郎『世界を滅ぼすって……』

ベリアル『ある程度、出現場所が予測できりゃぁ……』

京太郎『予測って』

ベリアル『……この世界に、太平風土記はあるか?』


そんな言葉に、京太郎は小首をかしげた


京太郎「えっと……太平風土記って、知ってます?」

智葉「た、たいへい?」

アレク「ふうど、き?」

京太郎「あーなんかよくわかんないけど」



三者三様、それぞれのリアクション

アレクは調べるためにキーボードを叩く、智葉は思い出そうと頭をひねり、ネリーは……寝ていた

顔をしかめる京太郎


京太郎『やっぱないんですかねぇ』

ベリアル『さてな、あるとこもあればないとこもある』

京太郎『色々博識ですよねベリアルさん』

ベリアル『全宇宙を手に入れようとしてたからな』

京太郎『熱心で』


そんな会話を頭の中でしていると、扉が開く

入ってきたのは一人の少女


?「ただいま帰りました!」

アレク「ん、宇野沢」

ネリー「んー……あ、しおりん」

京太郎「……宇野沢栞、さん?」

栞「あ、須賀京太郎くん、はやりさんから色々聞いてるよ!」

京太郎「色々?」

智葉「ほう、やるじゃないか」フッ

京太郎「なんか勘違いしてません?」



宇野沢栞が、荷物を置いて座る

その豊満な胸がテーブルに置かれた

血眼の京太郎


ネリー「……うわぁ」

京太郎「……睡眠不足のせいだ」

ネリー「絶対嘘」

京太郎「いいから」


話をごまかすが、智葉からの視線も痛い

アレクサンドラの視線はもっと痛い


アレク「巨乳がなんだ……なんなんだ……」ボソボソ

京太郎(こえぇよ)

栞「あ、そうだった! 朝のニュース見ました!?」

アレク「あ、あああれね」

京太郎「台風のジェットストリームアタック?」

ネリー「その二倍ちょい」

智葉「遊ぶな」

栞「それについてなんですけど! 凄いものが見つかったらしくて!」

京太郎「凄いもの?」

栞「その名も、太平風土記!」


京太郎・智葉・アレク「ああー!!」

栞「ええっ!!?」ビクッ

ネリー「……?」



宇野沢栞がモニターを叩く

モニターに表示されるのは古文書『太平風土記』である

見つけたのは瑞原はやりらしいのだが、栞に『必要になる』とのことで預けたらしい


ベリアル『あのイタイ女のダチか』

京太郎『イタイとか言わないであげてくださいよ』


瑞原はやりとの関係はプロ麻雀チーム『ハートビーツ大宮』の仲間である


京太郎「さすがはやりさん」

栞「本当ですよー、さすが」


そう言って、キーボードを叩く

モニターに映ったのは絵、鳥のような怪獣


栞「まだ断片しかないらしいんですけど……」

アレク「十分……で、これは?」

京太郎『なんなんですこれ?』

ベリアル『やはりな、マガバッサー』

栞「禍翼(まがつばさ)……というらしいです」

智葉「今回の台風とこの怪獣に関係が?」

栞「なんか文章を解読したらそうなったとか」

ネリー「雑だなぁ」

栞「でもはやりさんが解読したところ、この文章では禍翼の出現位置から時間まで記されているとか」


そんな言葉に、全員が小首をかしげた


栞「えっと……」

智葉「未来を記した書?」

ネリー「えー全然古文書じゃないじゃん」

京太郎「そういうもんでもないだろ」

ベリアル『禍翼、マガバッサーの出現は間違いねぇ』

京太郎『マジっすか』

ベリアル『ああ、備えとくにこしたことねぇだろうな』

京太郎『……なるほど』



京太郎「……それじゃあ、その予測前提で作戦を立てましょう」

アレク「おお、やる気じゃない」

京太郎「そりゃ怪獣の登場さえ予測できるならそれに越した話ないっすよ」

アレク「確かに、それじゃ……今回は私も現場に出ようか」


立ち上がるアレクサンドラ

ネリーと智葉と京太郎の三人も立ち上がった


栞「それじゃあオペレーターは私が」

智葉「お願いします」

ネリー「よーっし! 早く行こう! そして時間まで寝かせて!」


出口に歩いていくネリーと智葉とアレクサンドラの三人

それを追いかける形で京太郎も歩き出す


栞「あっ、足元!」

京太郎「えっ!?」ガツンッ

ネリー「あ」

京太郎「痛ったぁぁぁぁっ!!?」

栞「あぁっ! ごめんなさぁい!」


倒れた京太郎が転がる


ネリー「なに入ってるのしおりん!?」

栞「ティガの木彫り!」

智葉「!?」



―――【東京都墨田区】


古文書に書かれた場所に待機する京太郎と智葉の二人

離れた場所ではネリーとアレクサンドラがいるはずだ

住民の避難は既に完了している


京太郎「……きますかね」

智葉「ここまでやってこなかったら問題だな」


そう言う智葉は相変わらず刀を引っ提げていた

有名な侍の持っていた刀らしいが……


京太郎「……」

智葉「どうした?」

京太郎「……いえ」

ベリアル『あの刀、妙な感じだな』

京太郎『そうなんっすか?』


普通の刀ではないのは確かなのだろう


智葉「敵の目的はなんだ?」

京太郎「え?」

智葉「なぜ禍翼を出現させる?」

京太郎「……目的」


??「根源的破滅招来体というのは、とある宇宙で便利状、そう呼ばれただけだ」


京太郎「っ!?」

智葉「あなたは……」

京太郎「トシさん!」

トシ「元気そうでなにより」



現れたのは熊倉トシだった

街中、京太郎と智葉の傍に歩いてくる

トシの言葉に、小首をかしげる京太郎と智葉


京太郎「そう呼ばれただけって?」

トシ「所謂怪獣、人類に仇成すものの総称としてそう呼んでた……」

京太郎「総称してって……」

トシ「ただその宇宙で観測されたそれらを、単純に根源的破滅招来体って私らは呼んでるわけだ」


相変わらず、どこか別のことのように話す


智葉「……つまり、私たちにとっては異星人たちを含めてすべてが?」

トシ「まぁそういうことだけど、今のとこ根源的破滅招来体って呼ぶべきは原村和の“中の奴”だけだ」


そう言うと空を見上げるトシ

太陽が隠れ、暗雲が空を覆っていく


トシ「目的としてはシンプル。宇宙に害する地球人の殲滅ってわけだ」

京太郎「害する?」

トシ「地球をこれだけ汚しといて、宇宙まで進出しようとしてるんだから当然ってわけさ」

智葉「しかし人類はそれを乗り越えようと!」

トシ「まぁここでこの話をしてもしようがないけどね……あたしらの宇宙にはほとんど関係ない。それにアレはメダルと怨念の塊さ」

京太郎「……じゃあこの戦いはどうやったら」

トシ「私もそれを今追ってるわけだ……で、結果」

智葉「ここに着いたと」

トシ「そういうこと、なにかあればまた連絡するよ。ただわかることは」

智葉「強大な闇、ですか?」

トシ「さぁてねぇ……」



そんなトシが、しっかりと前を向く

京太郎と智葉も合わせてそちらを見る


智葉「っ!」

京太郎「……雀、明華」


そこにいたのは長い髪とロングスカートを風になびかせる少女

フリルのついた日傘を手に、風神―――そう呼ばれた少女がそこにいた


京太郎「……禍翼」

トシ「風の魔王獣、憑代はその娘か」

智葉「っ!」チャキッ


虚ろな瞳で、京太郎たちを見やる

そして―――突風が吹く


京太郎「ッ!」

智葉「ぐっ!」

トシ「……時間か」


その瞬間、京太郎と智葉の付けている端末が音を鳴らす

マガバッサーが現れるその五分前の合図

京太郎の視界の先の明華


京太郎「まずい!」

智葉「どうした!」

京太郎「スカート捲れそう!」

智葉「言ってる場合か!」

トシ「やれやれ」

智葉(直立不動!!?)



離れた場所で、車の隣で立っているネリーとアレクサンドラ

突如の突風に、ネリーが上空を見上げる

空から離れた場所に伸びる―――竜巻


ネリー「この風!!?」

アレク「そろそろ始まるってわけ、ていうかやっぱあそこ!」

ネリー「智葉、京太郎!!」



京太郎たちの眼前の雀明華が風と共に、少しづつ浮き上がる

京太郎の首根っこを掴んで後ろへと下がる智葉


智葉「見るな!」

京太郎「ちょ、そんなつもりは!」

智葉「今はないだろ!」


本当にその気はないのだが……信じてはくれていないらしい


トシ「今じゃなきゃ見る機会ないからね、許してやりな」

智葉「熊倉さん!?」

京太郎「失敬な!」

智葉「下着ぐらいいくらでも見せてやるから今は下がれ!」カァッ

京太郎「え?」

トシ「え?」

智葉「いいから!」


とりあえず現状をなんとかしようと言った智葉であった

しかし成功はした、京太郎を引っ張って距離を取る

振り返る京太郎と智葉


京太郎「……あれは!」

智葉「覗くな!」

京太郎「覗いてない!」


明華の日傘が風にさらわれ飛んでいく

そして京太郎は、浮いている明華の背後に巨大な翼を見た


京太郎「くるっ!」


勢いよく吹く風

京太郎は片手にガッツハイパーを構える

狙いは雀明華


京太郎「眠れよぉ!」カチッ


放たれた弾丸は、すぐに光の鞭に叩き落された


京太郎「テンペラー星人か!」

テンペラー星人「ご名答!」



強風の中、現れたテンペラー星人

両手のハサミからビームウィップを振るう

京太郎へと伸びたそれを―――刀が弾く


テンペラー星人「!?」

京太郎「智葉さん!?」

智葉「邪な者ならば斬る!」


納刀し駆けだす智葉が、素早く抜刀

テンペラー星人が後ろへと跳びつつ腕を振るう

不規則に智葉に迫る日本のビームウィップだが、智葉は刀でそれらを弾いていく


テンペラー星人「人間か!?」

智葉「もちのロン……ダァッ!」


それを見ている京太郎とトシ


トシ「怪獣を斬る少女ってとこかねぇ」

京太郎「言ってる場合ですか、てか雀明華!」バッ


そちらを見れば、雀明華の姿が風と共に変わる瞬間


京太郎「あれが……」

ベリアル『マガバッサー!』


現れるのは風の魔王獣マガバッサー



智葉とテンペラー星人が攻撃をぶつけあう

見えている京太郎、ゼットライザーがあるしどうにかついてはいける

だが、そんなウルトラマンと同化している故の身体能力を見せるわけには……


智葉「見えている……負けんッ!」

テンペラー星人「ええい、小賢しいィ!」

智葉「ッ!」


素早い剣戟で、光鞭を弾いていく智葉


京太郎(いや、これならやっても大丈夫か?)

トシ「ヤバい、ひとまず退散するよ!」

京太郎「え?」


現出したマガバッサーが、翼を翻す

その瞬間、凄まじい突風が周囲を襲う

トシが素早くその場から走って行く


京太郎「ターボバ……じゃなくて、俺も!」


柱を掴んで踏ん張る京太郎

だが突風は智葉にも


智葉「なっ!!?」

京太郎「智葉さん!!」


だが智葉は風により宙へと浮き上がる

そして―――


テンペラー星人「うぐおぉぉ!!?」


―――空へと飛んでいくテンペラー星人


京太郎「お前もかよ……ってこのままじゃ!」



風が弱まったその瞬間、京太郎は近場の―――証明写真機に走る


ベリアル『おいあそこでか』

京太郎「見られるわけにはいかないんで……智葉さんを助けなきゃ!」


ゼットライザーのトリガーを引き、証明写真機入口に出現したゲートに入った



―――【インナースペース】


インナースペースに、京太郎は立つ

右手にカードを持ち左手のゼットライザーへと差し込んだ


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人……!」


メダルを弾くと、周囲に闇が広がる

落ちるメダルを右手で取ると、赤い瞳が輝く


京太郎「究極生命体!」


ゼットライザーにメダルを差し込むと、ブレードをスライドさせた


『Alien Rayblood』

京太郎「ベェリアァルッ!」


トリガーを引き、叫ぶ


巻き起こる竜巻

既に四つも五つも出現し、ビルが倒壊、小さな建物は宙に飛んでいる

その中、辻垣内智葉もどうにか生きていた


智葉「ッ! こ、このままではっ!」

マガバッサー「―――!」


智葉の眼前に現れるマガバッサー

その巨大な口が開かれる


智葉「ここまでっ……すまないっ」


智葉がが覚悟を決めたその瞬間、マガバッサーが弾き飛ばされる

驚愕する智葉の周囲、風が弱くなっていく


智葉「これはっ!」


そっと、智葉は突然現れた足場に着地する


智葉「っ! ウルトラマン、ベリアル!?」


それは黒き巨人の手の上

鋭い爪が周囲を囲んでいるが―――


智葉「暖かい、これは……」


ベリアルは智葉を手に乗せたまま地上へと降りていく

そして、ベリアルは風の弱い場所に降りた


智葉「ここは……」

ネリー「智葉!」

智葉「ネリー……」


ネリーとアレクサンドラがいる

ベリアルの手から降りる智葉が、真上を向く

そこには“目つきが悪いウルトラマン”


智葉「……ありがとう」

ベリアル「……」コクリ



空を飛ぶベリアル

マガバッサーが再び竜巻を発生させていた

それらに光弾を放つ


ベリアル『なれねェことをさせやがって』

京太郎『ウルトラマンっぽいっすね』

ベリアル『ウルトラマンの埃なんざ何万年も前に死んだっての……』


マガバッサーがベリアルの方を向く

翼を羽ばたかせると、ベリアルを強風が襲う


京太郎『ぐっ!』

ベリアル『さすがに魔王獣かっ!』


突風により吹き飛ばされ、さらに竜巻により浮いているビルなどがぶつかっていく


ベリアル「グゥッ!」

マガバッサー「―――!」


さらに素早く接近するマガバッサーの翼で攻撃を受ける

まるで刃物のようなその翼の攻撃を受けて、落ちるベリアル

そのまま落下してビルを破壊してしまう


ベリアル「ガアァッ!」

マガバッサー「!」


上空から建造物を落としてくるマガバッサー

立ち上がったベリアルがすぐに前に転がってそれを回避、さらに上空へと飛び上がる

ベリアルの胸のカラータイマーが点滅を始める


京太郎『こいつ、今までの比じゃっ!』

ベリアル『チッ、やっぱ今のままの力じゃあな!』

京太郎『それでもッ!』


再び接近してくるマガバッサー

同時にビルなども迫ってくる



ベリアル『位置取りだ!』

京太郎『はい!』


素早く下降する


マガバッサー「!」


そして体を真上へと向けると、両腕を水平に振るった


ベリアル・京太郎『デスシウムリッパー!』


放たれた斬撃が真上へと放たれる

それは真上のマガバッサーとビル群を斬り裂く

片翼に攻撃を受けたマガバッサーが、バランスを崩して落ちていく


ベリアル「シャアッ!」


地上へと着地したベリアル、その背後に体勢を崩したままマガバッサーが落ちてくる

竜巻の数も減って行く

点滅しているベリアルのカラータイマー、予断は許さない


京太郎『これなら……!』

マガバッサー「!」


起き上がったマガバッサーが足を地上にしっかりと着き、翼を振るう

放たれる衝撃波に、ベリアルが吹き飛ぶ

さらに、遅れて跳んでくるビルがベリアルを襲う


ベリアル「グウッ!」

マガバッサー「―――!」



マガバッサーの背後の竜巻がビルの残骸等を巻き上げていく


ベリアル『クッ……もう一回くるぞ!』

京太郎『なら!』


勢いよく起き上がるベリアルが構える

マガバッサーが翼を振るい、衝撃波を放つ

ビルも遅れてベリアルの方へと向かうも


京太郎『今だァ!』


ベリアルは腕を前に出してバリアを出現させる

角度は問題無い。バードンの時の応用だ

衝撃波はバリアに弾き返され、放たれるビル群を破壊する


マガバッサー「!?」

ベリアル「ハアァッ!」


地を蹴り飛び上がるベリアルが、マガバッサーへと接近しクローを振るう

その攻撃により怯むマガバッサーに、さらに電撃攻撃を打ち込む


マガバッサー「!」

ベリアル「シャアッ!」


さらに爪撃からの、蹴りでマガバッサーを弾き飛ばす

怯んだマガバッサーが上空へと飛び上がる

それを追い、ベリアルも飛ぶ


マガバッサー「!」


放たれる衝撃波をバリアで弾いて竜巻で舞い上がった残骸を破壊する


ベリアル『いくぞ小僧ォ!』

京太郎『これでハコ割れだァ!』



右腕に漆黒の光、赤き稲妻

空中でベリアルは腕をクロスさせ、必殺の構えを取る

そして放たれるのは―――


ベリアル・京太郎『デスシウム光線ッ!』


放たれた一撃は―――マガバッサーを直撃


マガバッサー「!!?」


そして、爆散



周囲の竜巻が晴れていく、空に立ち込めていた暗雲すらも

雲の切れ間から光が差しこむ

上空のベリアルは、両手を上に上げて空へと去って行く



地上の智葉、ネリー、アレクサンドラ

飛んで去って行くベリアルを見上げてつつ、智葉は笑みを浮かべ頷く


ネリー「京太郎は?」

智葉「……ベリアルが私しか助けなかったんだ、つまりそういうことだろう」

アレク「……確かに」


そう言ってアレクサンドラが見る方向には、歩いてくる青年

ぼさぼさの金髪を掻きながらスーツにかかった埃を払って笑う



京太郎「ただいまっす」

アレク「……心配かけてー!」

ネリー「はぁ~」


全員が安心したような表情を浮かべる


ネリー「しおりん聞こえる~?」

栞『あ、ようやく繋がりましたー私いりました?』

ネリー「いてもいなくても良かったね」

栞『ストレートに!?』


京太郎がアレクサンドラに背中を叩かれる

少しばかりの痛みに顔をしかめつつ笑う京太郎

近寄ってくる智葉にも、京太郎は笑みを浮かべる


智葉「……おかえり」フッ

京太郎「……そういえばあの約束」

智葉「黙れ!」ガシッ

京太郎「んぅっ!?」


口を塞がれる京太郎、智葉の顔は真っ赤だ


ネリー「え、約束って?」

智葉「違う! 勢いだ! 勢いで言っただけで本気ではない!」

京太郎「うぞってごとでずがぁっ!?」

ネリー「?」

智葉「いいから! 帰るぞ!」

アレク「?」

ネリー「?」

智葉「いいから!」

京太郎「あんまりだぁ」



空から落ちてくる物体

それは、地上に叩きつけられて小さなクレーターを作り出す

物体の正体は―――


テンペラー星人「あんまりだぁ」


ボロボロの体をひきずって、テンペラー星人は帰って行く



―――夜【特異課東京基地:休憩所】


スタッフたちもまばらになった夜の基地

休憩所には京太郎だけで、テレビに映ったベリアルのニュースを見ている


京太郎「まぁなにはともあれ、雀明華は無事か……へへっ、こうしてまたおもちの平和は守られたってわけだ」


遠くを見ながら達成感溢れた笑顔を浮かべる京太郎

その手にはマガバッサーのメダル


京太郎「にしても疲れたけど……」

ネリー「お疲れー」


一本結いの長い髪をなびかせる少女


京太郎「ネリーか」

ネリー「こんな美少女見て“ネリーか”はないでしょー!」

京太郎「あーかわいいかわいい」ポンポン

ネリー「むぅー思ってない!」

京太郎「思ってる思ってる」


笑いながら言う京太郎に、頬を膨らませる


ネリー「……あーあ、せっかく京太郎のために前に行った海の写真見せてあげようと思ったのにー」

京太郎「えー」

ネリー「智葉と明華とかハオとか」

京太郎「なにそれ詳しく!」

ネリー「食い付きかた……」ジト



ジトーっと京太郎を見るネリー

一方の京太郎は静かに頷く


京太郎「……見せて?」

ネリー「やだ!」

京太郎「見せるつもりだったんじゃ!?」

ネリー「えー……ネリーの姿が見たいってならしょうがないけどなぁー」


その言葉に、なるほどとうなずく


京太郎「ネリー超見たい」

ネリー「……ほんとー?」

京太郎「ホント!」

ネリー「ネリーかわいいから?」

京太郎「ああ!」ニコニコ


ふと、影からそんな二人を見つける智葉


ネリー「かわいい?」

京太郎「超かわいいぜ!」

ネリー「すき?」

京太郎「超すき!」

ネリー「そこまで言うならしょうがないかなぁー」エヘヘ

京太郎「やったぁ!」

智葉(あいつらこんな往来でなんて話を!? というよりそんな、進んでいたのか!? いつの間に!? 私に報告は!?)

ネリー「えーでもなー」

京太郎「かわいい! 超かわいいネリー!」

智葉(ぐっ、なんだか納得いかない!)

ネリー「じゃあ……いいよ?」

京太郎「お借りします!」

ネリー「いや借しはしないけど」



ネリーのケータイ画面を食い入るように見る京太郎

しかしネリーもなぜだか楽しそうであった


京太郎「おぉ!!?」

ネリー「凄いでしょー」

京太郎「さすがネリーさん!」

ネリー「……って京太郎」

京太郎「ん?」

ネリー「……」


後ろを向くネリーと同じく、背後を向く京太郎

そこには―――修羅がいた


智葉「お前ら、なにをしてるかと思えば……ネリー!」

ネリー「ひゃいっ!?」

智葉「なにを勝手に人のぉ!」ギリギリ

ネリー「いひゃいいひゃい!」


頬を引っ張られるネリーは涙目になっている

パッと離すと、両手で頬を押さえているネリー

次は自分かと、苦笑いを浮かべる京太郎


智葉「京太郎ぉ……」

京太郎「は、はい?」

智葉「誰だ……」

京太郎「はい?」

智葉「誰が一番よかった」

京太郎(智葉さんと答えたら……殺られる!)

京太郎「ね、ネリーかなっ!?」


瞬間―――空気が凍った



京太郎(なんだこのプレッシャーは!)

ベリアル(なにやってんだこの小僧)


凍った時が、動き出す


ネリー「……ふひゃっ!?」マッカ

智葉「……お前、私の下着を見たいとか言っておきながらぁっ!」

京太郎「う、うぇぃっ!!?」

智葉「……この浮気者がぁっ!」

京太郎「ちょ、誤解です! 誤解ですって!」ダッ


怒る智葉、理由もわからないがなだめる京太郎

そしてネリーは、先ほどとは違う意味で赤くなった頬を両手で押さえていた


ネリー「も、もぉ京太郎ったらぁ」エヘヘ


そんな休憩所に現れるのはアレクサンドラ


アレク「……騒がしいなぁ」


そう言うと背を伸ばして欠伸をする


アレク「……寝よ」



―――【雀荘】


暗い雀荘、倒れている数人の人間

そこにただ一人立っているのは―――原村和


和「……」


その視線の先にはテレビ、ニュースがやっている


『ウルトラマンのおかげで大型台風七つも消滅、やはりベリアルは守護者なのでしょうか』

『結果的にそうなっただけな気も』

『しかし最近ではベリアルが各地で怪獣を倒してくれている人類の味方だという意見も』

『世論もすっかりウルトラマン中心とした』


マガバッサーによる台風も消滅

破壊された街は元通りとはいかないが、これ以上のマガバッサーによる災害はないだろう

今までよりも大規模な怪獣災害ではあったのだが避難も済んでいて死者は奇跡的に出ていない


和「めでたしめでたし―――」


そう言った和が隣の雀卓を叩くと、それは破壊される


和「―――じゃあないんですよ。マガバッサーを出現させるコストもバカにならないのに」


息を吐いて、その黒い瞳をニュース映像のベリアルに向けた


和「本気で潰しますか、須賀京太郎……」


その背後には天使の如く光の輝き

そして口元には笑みが浮かんでいた



     第13話【風の魔王獣】 END



―――次回予告


京太郎:呪術っすか?

ベリアル:いくつか憶えがあるな

智葉:眼、だと?

ネリー:眼ェ!?

和:須賀京太郎を潰します

京太郎:お前は!

アレク:なんなんだあれは!

智葉:魔頭鬼十郎!


次回【呪いの微笑】


京太郎:俺はお前だよ須賀京太郎!


今回はここまでー

もろもろの事情で安価なかったけど次回は二倍で
ちょっとずつ本筋も動いてきた気もする、てか長いなこれ

そんじゃまたー

あ、ちなみに明日か明後日やりますー

結局ガイトさんは見せたいのか見せたくないのか
頼んだら見せてくれるのかどっちなんだ?

ずいぶん遅くなってしもうたけどもやってく所存ー

>>582
複雑な乙女心なんよたぶん
最初のは勢いで言ったけども今の京ちゃんならワンチャンあり
ただし家族にされる



―――【特異課東京基地:休憩所】


あれから四日後

東京にきてからかれこれ一週間の時が過ぎた

10月も半ば、中々好転しない事態


京太郎「なんかなぁ」

??「どうしたんですか、そんな顔して」

京太郎「あぁ、明華さん」

明華「おはようございます」ニコリ


ふわりと笑う彼女は雀明華、先日マガバッサーメダルで敵にされていた少女

どこも異常なしということで今は自由に動いているそうだ

長いロングスカートをなびかせて、少女は京太郎の対面に座る


京太郎「いやぁ、なんか目的とかなくて……」

ベリアル『適当に雀荘でも練り歩きゃ暴れられんだろ』

京太郎『やったじゃないですか、二日ほど』

ベリアル『……たく、つまんねぇな』

京太郎「確かに、つまんないなぁ」

明華「敵を求めてます?」

京太郎「うぇっ、そ、そういうわけじゃないっすよ」


それではまるでベリアルだ

戦闘狂二人では収集がつかない


明華「でも戦わなければ、きっと見つからないんですよね。ホェイちゃんも、メグちゃんも」

京太郎「ま、それはそうですよ」

明華「どうして敵対するんでしょう……」

ベリアル『そんなことどーだって良い、敵がいるからぶっつぶす! それで十分だ!』ハッ

京太郎『……まぁ俺も同感っすけど』


やはり、思考が毒されているかもしれない


京太郎「んー……」


瞬間、基地内に放送がかかる


栞『えーっと、実戦部隊のみなさん集合してくださーい!』

京太郎「ん?」

明華「呼び出しですね」



京太郎は作戦室へとやってくる

その後ろに着いてくる明華


京太郎「え、いいんですか?」

明華「ダメなんですか?」

京太郎「さ、さぁ……」


そう言いながら既に座っている智葉、ネリー、アレクサンドラ、栞を視界にいれる

頷いて座る京太郎と明華の二人

アレクサンドラがキーボードを叩く


京太郎「進展ですか?」

智葉「おそらく」

京太郎「曖昧っすね」

ネリー「私たちもまだ聞いてないから」

京太郎「なるほど」


モニターに表示される画像は前のような古文書


栞「えっと、前みつかった太平風土記の近くから発見されたの」

京太郎「またっすか? 予言のやつ?」

アレク「予言かどうかはまだわかんないけど……っと」


表示されるのは、不思議な絵


京太郎「……これは?」

アレク「古文書……魔頭鬼十郎のね」

京太郎「魔頭、鬼十郎……?」

栞「戦国時代の呪術師だって」

京太郎「呪術っすか?」

ベリアル『いくつか憶えがあるな』

京太郎『まじっすか?』



明華「えっと、呪術っていうと……呪い、ですよね?」

栞「色々と暗躍してたみたいなんだけど、見て欲しいのは……」


映っていた魔頭鬼十郎本人の絵から、別の絵へと変わる

天使のような絵、黒い人型の絵、色々な絵が描かれていた


アレク「それにこれ……今回の事件についても触れてる」

ネリー「えっ!? 太平風土記みたいな!?」

アレク「まぁそれに近いんだろう……もっと邪悪なもののように見えるが」

栞「魔頭さんは呪術を使って数々の戦国武将さんたちを暗殺していったみたいなんですけど……」


掌に眼がついたような絵


栞「……最後は、一人の剣士に追いつめられて自害したって」

京太郎「自害ですか」フム

栞「でも魔頭さんは最後に、色々と布石を打ってたらしくて」

智葉「っ……メダルを使ってでも、世界をものにすると?」

アレク「ん、その通りだが……どうして?」

智葉「邪な者の考えそうなことです」

京太郎「……」

栞「そして魔頭さんの真の姿が、これなんだとか」


映るのは―――巨大な眼の化け物


京太郎「これは……」

ベリアル『ガンQ……』



     第14話【呪いの微笑】



◆安価!


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、福路美穂子

4、瑞原はやり

5、東横桃子

6、竹井久

7、辻垣内智葉

8、ネリー・ヴィルサラーゼ

9、雀明華


◇5分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢

9、雀明華



―――【江東区】


壁に背を預けている京太郎

少しばかりの肌寒さ、京太郎はコンビニで買ったホットコーヒーを飲む

その隣にやってくるのは、同じくホットコーヒーを持っている少女


京太郎「ん」

明華「お待たせしました」

京太郎「いえ、別にいまいち……5キロ圏内までは絞れたっぽいですけど」

明華「中途半端な予言ですね」


そう言いながら、両手でコーヒーのカップを持って飲む明華


京太郎「……」

明華「どうしました京太郎くん?」

京太郎「ああ、いえ」

京太郎(数ヶ月前じゃ考えられなかったなこんなの……)


雀士としても中途半端だった自分

まさかこんな事態になって、こんな状況になるなんて想像もしていなかった


明華「それにしても京太郎くんは凄いですね」

京太郎「?」

明華「人々を守るために、見も知らぬ人々を助けるために、戦ってるんですよね」

京太郎「そんな上等なもんじゃないっすよ」フッ

明華「……え?」

京太郎「俺は顔も知らない人らを助けるタイプじゃないんで」


遠くを見る京太郎に、明華は少しばかり首をかしげる


京太郎「顔を知ってる仲間や、知り合いだけですよ助けたいのは……最初ここに来たのはただ和追って来ただけですし」

明華「……でも、今は違う?」

京太郎「智葉さんとかネリーとか監督さんとか、栞さんも……」

明華「優しいんですね」クスッ

京太郎「え?」

明華「それで守る対象になるんですから、優しいんですよ」

京太郎「……そういうもんっすかね」

明華「そうですよ、私はそう思ってます」フフッ



気恥ずかしそうに、後頭部を掻く京太郎

笑う明華が歩き出すのでその後ろをついていく


京太郎「にしても、なんでついてきたんですか」

明華「私だって麻雀できますから」フフン

京太郎「麻雀だけだとは限りませんよ? 最近は特に」


麻雀を介する力、それを溜めてメダルから怪獣を生み出す

最近は、こちらが後手に出ているせいか力が十分に溜まっている場合が多い

怪獣の出現が増えてきた……


京太郎「……危ないんっすからね」

明華「ふふっ、私も守ってくれます?」

京太郎「もちろんっすよ」


そう言って笑う京太郎に、明華は嬉しそうに笑みで返す


京太郎(ぐおぉぉ! 俺は俺に優しい巨乳のおしとやか系女子に弱い!)

ベリアル『おい』

京太郎『あーベリアルさんご察ししてます!?』

ベリアル『大体わかるようになってきた』

京太郎『さーせん!』

ピピピピ

明華「ん、通信ですか?」

京太郎「あ……栞さんから」



腕時計のような端末を開く

そこに映るのは―――


京太郎『おっぱい』

ベリアル『オレに聞こえるように言うんじゃねぇ』


栞『あれ、あってる? ああ、京太郎君!』

京太郎「どうもっす」キリッ

明華「?」


しっかりと宇野沢栞の顔が映る


栞『京太郎くんたちの近くに妙なエネルギー反応があって……』

京太郎「妙なエネルギー反応って……」

明華「例の、魔頭鬼十郎関係、でしょうか?」

京太郎「さぁ……魔頭鬼十郎、怪獣メダルを使ってでも蘇って世界征服をしようとする輩、か」

栞『気を付けてね。一応他のみんなにも連絡するから』

京太郎「了解です」

明華「……行きますか?」

京太郎「ええ、とりあえず先に向かってから、近くで待って合流しましょう」

明華「はい!」コクリ



反応があったという場所―――から数メートル離れた場所

広い陸橋の上にいる京太郎と明華

目的地、というより反応があった場所を見下ろせる陸橋の上


京太郎「……どう思います?」

明華「え、うーん……特に変な感じはしないと思うんですが」

京太郎「同意です、だから気になるんっすよ」


眼を細める京太郎、その赤い瞳が輝く


明華(むしろ、こちらの方が妙な風を感じる……)

京太郎「……」

明華(いえいえ、京太郎くんになにを考えてるんですかっ)フリフリ


頭を振る明華の方を向く京太郎


京太郎「どうかしました?」

明華「ああいえ……ネリーちゃんたちは?」

京太郎「まだみたいっすけど―――だぁッ!!」

明華「ふぇっ!?」


京太郎が、明華を抱くと大きく跳んで転がる

明華を抱えたまま地面を転がり、起き上がると同時に即座に明華を片手に右手でガッツハイパーを構えた

状況を理解できずに、眼を点にしている明華


京太郎「罠ってわけか!」

明華「え……っ!」


バッとそちらを見る明華の視界の先

ピンク色の髪をなびかす少女……


明華「原村、和……」

京太郎「またお前かよ……」

和「こちらの台詞ですが」


そう言う原村和の体を使うナニカの真上に現れ、浮遊する人影……


京太郎「ッ!」

明華「あれは、あの人は確か……」

京太郎「国広一ッ!!」



浮遊する国広一は笑顔を浮かべたまま、右腕を向ける

京太郎が立ち上がると明華を後ろにガッツハイパーを国広一へと向けた

向けられた一の右掌に描かれている目玉の絵


京太郎「っ……」

和「魔頭鬼十郎、頼みます」

一「……銭の思念ごときが私に指示するな」

和「それは失礼、しかし力はかしてもらいますよ……須賀京太郎を潰します」


その言葉と共に、殺気が京太郎を貫く

顔をしかめつつトリガーを引くと、その弾丸は国広一の前で止まる

結界のようななにかに止められて弾丸が落ちる


京太郎「っ!」

一「破ァ!」


放たれる紫色の弾

避ける余裕もなく、京太郎は手を前にクロスさせて受け止める

吹き飛ぶ京太郎が背中から地面にぶつかった


京太郎「ぐっ!」

ベリアル『なんで避けねぇ!』

京太郎『明華さんに当たるコースだった!』

ベリアル『ハッ、立てんだろうな?』

京太郎「もちろんですよっ……こんなところでっ」

明華「京太郎くんっ」


起き上がる京太郎をささえる明華

妙に違和感のある両腕に顔をしかめる京太郎は、まだマシな左腕でガッツハイパーを持つ

視線の先には和と一……いや、その中には根源的破滅招来体と魔頭鬼十郎だ


京太郎「テメェ、らっ……!」

和「……」

一「良い魔力を感じる。それ手に入れて我がガンQは完璧になる!」

京太郎「人を素材みたいに言いやがって……!」


さらに、一の手に魔力が集まる

紫色の弾が京太郎へと放たれた


京太郎「ッ!」

明華「京太郎くんっ!」バッ

京太郎「明華ッ!?」


前に出て両手を広げる明華

京太郎が顔をしかめてゼットライザーを取り出そうとしたその瞬間―――


「ハァッ!」


紫色の魔力の弾丸が、目の前で斬り裂かれた

呆気にとられている明華

京太郎は安堵に息を吐く


明華「……さ、智葉ちゃんっ」


ガクリと、膝をついて息をつく明華

京太郎は笑みを浮かべながら立ち上がる

智葉は手に持った刀を納刀して、敵を見据えた


一「……貴様、錦田小十郎景竜!」

智葉「の、刀を持っているだけだ……魔頭鬼十郎!」

京太郎「なんなんっすか一体」ハァ

智葉「魔頭鬼十郎を討つならばおあつらい向きということだ」フッ

京太郎「……そりゃなによりっす」

一「消し去れぇ!」

和「私はこれで、ですね」


黒いゲートに消える和

京太郎が追おうとするが、魔頭鬼十郎こと国広一の上空に現れる影

それは―――


智葉「眼、だと?」



離れた場所で、ネリーとアレクサンドラが立っていた

本来目的地である場所、だが離れた陸橋の上……


アレク「なんであそこで起こってんのよ!」

ネリー「わかんないよ!」


二人が陸橋の方に視線を向ける

突如、黒き光


アレク「えーっと、なにあれ?」

ネリー「眼ェ!?」

アレク「眼……魔頭鬼十郎!?」



現れるのは巨大な眼の魔物

国広一に憑りついた魔頭鬼十郎―――ガンQ

現れた不条理の魔物が体を揺らす


ガンQ「―――!」

京太郎「……」


独特の鳴き声をあげるガンQ


京太郎「撤退しますよ!」

智葉「チッ!」

明華「は、はい!」


智葉と明華を逃がす京太郎は、ガンQにガッツハイパーを放つ

放たれた弾丸はガンQをすり抜けていく


ガンQ「―――!」


鳴き声と共に放たれた光弾が、京太郎と智葉、明華の間を寸断する

巻き上がる砂煙、智葉たちの声が聞こえるので無事なのだろうと頷く

スーツの内側からゼットライザーを取り出した


京太郎「ベリアルさん、あいつは……」

ベリアル『魔頭鬼十郎、だったか? おそらくガンQのメダルを触媒に蘇ったんだろうよ』

京太郎「ちょっとわかりませんね」

ベリアル『だろぉな……まぁ良い、やるんだろ?』

京太郎「はい!」


そして、トリガーを引く

真上に開かれたゲートが落ちて京太郎をインナースペースに転送する



インナースペースに、京太郎は立って頷く

右手にカードを持ち左手のゼットライザーへと差し込む


『キョウタロウ・アクセスグランテッド』

京太郎「レイブラッド星人……!」


メダルを弾くと、周囲に闇が広がる

落ちるメダルを右手で取ると、赤い瞳が輝く


京太郎「究極生命体……」


ゼットライザーにメダルを差し込むと、ブレードをスライドさせる


『Alien Rayblood』

京太郎「ベリアルゥッ!」


トリガーを引き、叫ぶ



漆黒の光と共に現れる巨人

闇の巨人―――ベリアル


ベリアル「……!」

ガンQ「!!!」


巨大なその背中を見る智葉と明華の二人

駆けていく明華の後ろを追う智葉の足が、止まる


智葉「……京太郎」


つぶやいてから、明華を追って行く

体を震わすガンQの正面、ベリアルが構えをとった


魔頭鬼十郎「闇の巨人……よいではないか、私と共に」

京太郎『寝言は寝て良いなァ!』

ベリアル『気に入らねぇ……テメェは殺す!』

魔頭鬼十郎「ならば、死ねェ!」


ガンQが魔弾を放った


おっし今回はここまでー!

ガンQ戦ってことで、魔頭鬼十郎周りの話をぼんやり
唐突な龍門渕組登場

ちなみに今回が終わったら新しく場所移動ー

そんじゃまたー

ちなみに今夜やりますー

おっしやってく所存ー



ガンQから放たれた魔弾を、爪で斬り裂くベリアル

肩を回し、首を鳴らしながらガンQへと歩いていく


京太郎『ベリアルさん、こいつ知ってるんですよね?』

ベリアル『ガンQってもひとくくりにできねぇよ。魔頭鬼十郎のガンQはそれこそ不条理の怪獣だとか聞いたことある』


さらにガンQが放つ魔弾を、弾き、斬り裂く


京太郎『不条理ってどういう?』

ベリアル『かつての下僕のその下僕にガンQがいたがな……おそらくこいつとはまた違う』

京太郎『なら、こいつはまた別の怪獣ってことで良いっすか!』

ベリアル『ああ、問題ねぇ……いくぞ!』


歩いていたベリアルが、強く踏み込み―――跳ぶ

一気に距離をつめるようにガンQへと跳ぶベリアルは、そのままクローを振るう


京太郎『もらったァ!』

ベリアル「ジャアァッ!」


振るわれたクローが斬撃を放つ―――だが


ベリアル「!?」


智葉「バカな!」

明華「すり抜けた!?」


ベリアルの斬撃も体もすり抜けて、ガンQの背後に着地する

振り返るベリアルに対してガンQも振り返った

そしてガンQの全身についた眼が輝くと、ベリアルは見えない攻撃を受けて吹き飛ぶ


ベリアル「ガアァッ!」


ビルを破壊して倒れるベリアル


京太郎『なんっ、だと……!』

ベリアル『これが、魔頭鬼十郎のガンQかっ!』



立ち上がったベリアルに、ガンQが魔弾を放つ

バリアを張るベリアルがその魔弾を弾き返す


京太郎『テメェの攻撃ならどうだッ!』


弾き返された魔弾は―――再びガンQをすり抜けた


ベリアル『チッ、これでもダメか!』


ガンQがさらに魔弾を乱射する

数発を弾くも、全てを弾けず直撃を受けて怯む


ベリアル「グァッ!」

京太郎『こ、いつっ……!』


倒れたベリアル、京太郎は顔をしかめる

さらに、ガンQの全身の眼が輝く


京太郎『ウアァッ!!』


その一方的な攻撃、ダメージに胸のカラータイマーが点滅を始めた



そこから離れた場所で、智葉が歯ぎしりをする

蘇った魔頭鬼十郎とガンQ

激しい攻撃でベリアルを追いつめている


ネリー「一方的じゃん!」

アレク「京太郎は!」

明華「わ、わかりません……爆発に巻き込まれてっ」


涙目の明華の肩を掴んで、頭を振る智葉


智葉「あいつは大丈夫だ……」フッ

明華「ほんとですかぁ?」ウルウル

智葉「……たぶん」

明華「ふぇっ」

智葉(私も、私も力になれれば……!)


刀を握りしめる


??(ほう、物の怪か……)

智葉「え、なにか……いや、男の声」

ネリー「へ、どしたの?」

智葉「え、あ、いや……」

??(あの大きさになると拙者の手にはおえんな)

智葉「っ……!」ダッ

ネリー「へ、智葉!?」


走る智葉はアレクサンドラたちから離れる

頭の中に声が聞こえていた


??(あちらの人の形をした巨人も十分に邪な気配を感じるが……)

智葉「あっちは、私の友達だ……!」

??(ほう女子、あの巨大な魔頭鬼十郎をどうするつもりだ? 宿儺鬼しかり、拙者はあの寸法では)

智葉「魔頭鬼十郎さえ、ダメージさえ追わせられればいいんだ……錦田小十郎景竜!」

錦田小十郎景竜(そういうことであれば拙者に一案)



ベリアルが、バリアを使って魔弾を凌ぐ

バリアを解くと、ガンQの眼が輝く


京太郎『こっちなら!』

ベリアル『もう少しだ!』

京太郎『おっす!』


力強く、地を蹴り横に跳ぶ

元いた場所に爆発が起きるが、ベリアルはダメージを受けずに回避した

だが、着地したベリアルが放つ光弾はガンQをすり抜ける


京太郎『このままじゃぁっ!』

ベリアル『焦んじゃねえよ、あっちも決め手に欠けてやがる』

京太郎『でも……!』

魔頭鬼十郎「ええい、小賢しい……!」


ガンQが体を震わせてさらなる魔弾を放とうとする

その瞬間―――


智葉「魔頭鬼十郎ぉ!」

京太郎『智葉っ!?』


叫ぶ辻垣内智葉の方を、ガンQが向く

その中の魔頭鬼十郎もだ


魔頭鬼十郎「錦田小十郎景竜の血統の者めぇ……忌々しい!」

智葉「やらせるか……京太郎をぉ!」


刀を抜いて、右手で逆手に持つ

ガンQが瞳に魔翌力を溜めているが、智葉は即座に刀を―――投擲した


魔頭鬼十郎「ん!?」



なにかの力が宿っているかのように、真っ直ぐに飛ぶ刀

それは真っ直ぐに、ガンQに―――突き刺さる


魔頭鬼十郎「ぬおぉ!!?」


今までダメージが一切通らなかったガンQが、苦しむ

刀が刺さった部分から紫色の液体を撒き散らす


ガンQ「!!?」

京太郎『あれは……!』

ベリアル『いくぞ小僧ォ!』

京太郎『はい!』


ガンQへと接近したベリアルが、腕を振るう

放たれる斬撃は、ガンQを怯ませる


京太郎『当たる!』


さらに爪撃、蹴り


魔頭鬼十郎「ぬおぉ!? おのれ再びぃ!」

京太郎『いきますよォ!』

ベリアル「シャアッ!」


次々と放たれる攻撃にガンQの巨大な目玉はへこみ、体中から液体を撒き散らしていく



バックステップでガンQから距離を取る


魔頭鬼十郎「貴様ァ!」


ガンQが鳴き声を上げながら揺れる

魔力を集めているようだが、もう遅い

ベリアルの右手に赤い稲妻


ベリアル・京太郎『デスシウム光線!』


放たれる必殺光線


魔頭鬼十郎「いずれ! 私はいずれぇ!」

ベリアル『いずれなんて来ねぇよ!』

京太郎『消え去れェ!』


デスシウム光線を受けたガンQが、爆散する

破片が周囲へと撒き散らされるも、すぐに塵と消えていく

右手を振るい首を鳴らすベリアルが、視線を智葉の方へと向ける


智葉「……!」ニッ

ベリアル「……」


何も言わずになにもせず、ベリアルは視線を上空へと向けると空へと去って行く



立っている智葉

そこにやってくるのはネリー、明華、アレクサンドラの三人

笑みを浮かべて頷く智葉


智葉「……終わった」フッ

ネリー「まだでしょ」

明華「ええ、魔頭鬼十郎を倒してもまだ……私たちは」


その通り、この事件の根本は魔頭鬼十郎ではない

頷いた智葉が思い出すのは、原村和とテンペラー星人


アレク「ところで、京太郎は?」

智葉「京太郎なら……」

「おーい!」

智葉「帰ってきた……」

明華「京太郎くんっ……」


歩いてくる京太郎

その手に刀を持って、近づいてくる

スーツ姿、サングラス―――からの刀


アレク「ジャパニーズヤクザ」

ネリー「智葉の家の人?」

智葉「!!?」


明華「……おかえりなさい」ホッ

ネリー「明華の家の人だったらしいよ」

明華「ふぇっ!?」カァッ

ネリー「いや、そういうことじゃないから」



―――【特異課東京基地:休憩所】


座ってコーヒーを飲んでいる京太郎

なんだか妙な日だった

智葉には助けられたものの、京太郎の手にメダルはない


京太郎「テンペラー星人か和に回収されたか……?」

ベリアル『だろうな、ガンQメダルは喉から手が出るほどほしいだろ』

京太郎「……そうなんっすか?」

ベリアル『まぁな』


静かに、京太郎は息をつく

すると突如、通信が入った

手首の端末を開くとそこにはトシ


京太郎「いつの間にどっか行ったんですか」

トシ『こっちは色々忙しいの……いや“こっちも”か』

京太郎「……お互いさまです」


苦笑する京太郎


トシ『フッ、それと……新しい情報だ』

京太郎「なんの?」

トシ『……原村和じゃない』

京太郎「そっすかぁ」

トシ『宮永咲の』

京太郎「!」



―――【特異課東京基地:屋上】


難しい顔をしつつ屋上への扉を開ける京太郎

目の前には―――


京太郎「……誰だ」

ベリアル『あぁ? 嫌な感じだな』

京太郎「……」


―――須賀京太郎が、いた


京太郎「ハッ、なんだよその顔」


二人の須賀京太郎が向きあっている

京太郎は即座にガッツハイパーを抜くが、相手こと京太郎は何をするでもなく笑っていた

迷いなくトリガーを引く


京太郎?「おっと危ねぇ」


軽く体をかたむけて回避する京太郎(?)


京太郎?「ちょっと顔見せにきただけだよ」

京太郎「なに?」

京太郎?「じゃあな、俺はあいつの方に行く―――咲の方にな」

京太郎「お前は一体なんだ!」

京太郎?「わかってるんだろ?」


笑みを浮かべる京太郎(?)


京太郎「俺はお前だよ須賀京太郎!」



―――翌朝【特異課東京基地:作戦室】


京太郎「それじゃ出ます」

アレク「え、なんでまた?」

京太郎「ちょっと次の目的地が決定したんで」


そう言うと財布とケータイをポケットにあるのを確認する

頷いた京太郎が、アレクサンドラの方を見て笑う


アレク「……また戻ってくるの?」

京太郎「まぁ別れの挨拶も済まさず行くつもりですからね」

アレク「……そうか、みんなには話しとくよ」

京太郎「お願いします」フッ

アレク「なにかあったの?」


サングラスをかけた京太郎は、静かに息をつく

その奥の瞳は僅かに歪む


京太郎「……いえ、俺の問題ですから」

アレク「……京太郎」

京太郎「?」

アレク「お前の問題はきっと、私たちの問題でもあるからね」

京太郎「……うっす」ニッ

アレク「行ってらっしゃい」



基地を出る正面玄関から出る京太郎

朝日が照らす道、しかし京太郎の視界は暗い

きっとサングラスだけのせいではない


京太郎「ん……風?」


揺れる日傘、隣に立つ少女


京太郎「明華さん……」

明華「行ってしまうんですか、挨拶もなしで」ムゥ

京太郎「すいません、名残惜しくなるんで」

明華「それは嬉しいことを聞きました」フフッ


そんな少女の笑みに、京太郎は顔をしかめる

涼しく心地の良い10月の空気、風は京太郎の背を押す


明華「しっかり帰ってきてくださいね」

京太郎「……はい」フッ

明華「それでは……行ってらっしゃい」フフッ

京太郎「行ってきます」ニッ



     第14話【呪いの微笑】 END



◆どこへ向かう!


1、奈良(阿知賀・晩成)
×、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)
7、東京(白糸台)
8、北海道(有珠山)
9、長野(鶴賀・風越)




(いや、人いるかわからんけどやっちゃうか


◆どこへ向かう!


1、奈良(阿知賀・晩成)
×、東京(臨海)
3、大阪(千里山→姫松)
4、大阪(姫松→千里山)
5、岩手(宮守)
6、東京(アナ・プロ)
7、東京(白糸台)
8、北海道(有珠山)
9、長野(鶴賀・風越)


◇10分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢

3、大阪(千里山→姫松)


―――次回予告


京太郎:なぜに銭湯?

竜華:水きったな!

京太郎:くっさぁぁぁ!?

セーラ:なんじゃこりゃぁぁぁっ!!

京太郎:あれも魔王獣っすか!?

セーラ:上流からおいださんかい!

洋榎:出番か!

京太郎:愛宕のおっぱいない方!


次回【水ノ魔王獣】


京太郎:お借りしても?

洋榎:むしろお借りしたいんやけど


今回はここまでー

なんか最後の方テンポ悪くなってしもうたー
まぁ気を取り直して大阪編

色々と出てくる出すぎるー

そんじゃまた明日ってか今夜ー

遅くなったけどやってく所存ー



―――【大阪駅】


新幹線に乗って、東京から大阪までやってきた

ザッ、と音を立てて駅を出てあたりを見回す京太郎

スーツ、サングラス、そしてトランク一つ


京太郎「……」


職質されないという奇跡


京太郎「ん」

ピピピピ

京太郎「はい須賀です」

???『おーお前が須賀京太郎か、車見えるやろ』

京太郎「ん?」


窓が開いている車がある

そこから手を振っている―――短髪の少女

新幹線車内での情報通りだと、そちらに近寄る


京太郎「どうも、お迎えありがとうございます」

???「ん、別にええけどな……結構成果あげてるって聞いとるし」

京太郎「尾ひれとかついてなきゃいいですけど」


苦笑しつつ、助手席に座る


京太郎「にしてもよくわかりましたね?」

???「自分、めっちゃ目立っとったで」

京太郎「マジっすか?」

???「大マジ……あ、そういやオレはセーラ、江口セーラや」ニッ

京太郎「よろしくです。須賀京太郎です」フッ



江口セーラの運転する車が新大阪の特異課基地のガレージへと入った

大したことはないただの会話をしていた

ほとんどあの夏と阿知賀の話だ


セーラ「ふぅ……さってと」

京太郎「ここが……」


奈良とはまた違った空気に、京太郎は気を引き締める


セーラ「さて、とりあえず行こか……作戦室」

京太郎「なにかあったんですか?」

セーラ「お前がきた」


指を向けてそういうセーラに、京太郎は小首をかしげた

歩いていくセーラについて歩く


京太郎「俺がきたってだけで?」

セーラ「一番功績上げてる奴やからな、いった場所じゃ必ず成果上げてくるやろ」

京太郎「……偶然ですよ。みんなやウルトラマンのおかげってだけで」

セーラ「その偶然を呼ぶのが勝利につながるんやろ? 麻雀にしろなんにしろ」

京太郎「そういうもんですかね」

セーラ「そういうもんや」

京太郎『ベリアルさん、この基地またなんかあったりします?』

ベリアル『あぁ? いやわかんねぇな……カネゴンみたいなのはいなさそうだ』

京太郎『了解っす』



―――【特異課大阪基地:作戦室】


扉の向こうには、作戦室があった

長野や東京と変わらぬ部屋

座っているのは二人


セーラ「ただいまー」

京太郎「お邪魔します」ペコリ


一人は知っている


京太郎「清水谷竜華さん?」

竜華「お、知ってるんや」エヘヘ

セーラ「さすがうちのエースやな」ニッ

京太郎(おっぱいです。おっぱいだからです!)


須賀京太郎はおっぱいが好きという感情をコントロールできない


??「私のことは、さすがに知らんか」フッ

京太郎「え、あ、すみません」ペコリ

??「まぁええねんけど……愛宕雅枝や」

京太郎「あ、たご……ああ、愛宕って姫松の!」

雅枝「そういうこと」

京太郎「よろしくお願いします」ペコ

雅枝「そんじゃ現状についてお話ししよか」



現状、大阪の雀士で行方不明なのは未だ数十人を超えるとのことだ

最近では各地での雀士行方不明事件も徐々に明るみに出てしまっているらしい

怪獣事件とのつながりが判明される日もそう遠くはないだろう


京太郎「それで……夏のインターハイに出た雀士は」

雅枝「行方不明なのは船久保浩子、二条泉、園城寺怜」

竜華「……」

セーラ「上重漫、真瀬由子、末原恭子、愛宕絹恵……」


そうそうたるメンバーだ

夏で清澄と戦った姫松高校も五人中四名が行方不明

あげく……


ベリアル『同じ姓だな』

京太郎『……愛宕雅枝さんは愛宕絹恵さんのお母さんです』

ベリアル『親、なぁ……』

京太郎『……?』


京太郎「手がかりとかは?」

セーラ「それが見つかってたら苦労せぇへんねんけども……」



京太郎「なるほど、ねぇ……」

雅枝「それで、須賀君はどう思う?」

京太郎「え、なんで俺なんっすか?」


その言葉に、逆に雅枝が首をかしげた


雅枝「そりゃ一番成果をあげてる人やからなぁ……噂はかねがね」

京太郎「えーってもなぁ」

セーラ「今までの共通点とか?」

京太郎「情報がないとどうにも……」


ウィーン


??「情報あるで!」

セーラ「情報でかした!」

京太郎(愛宕のおっぱいない方!)

愛宕のおっぱいない方「愛宕のおっぱいない方って思ったやろ!」

京太郎「めめめめめっそうもございません!」

雅枝「洋榎ぇ、ちったぁ大人しくしい!」

洋榎「そんなおかん!」

雅枝「須賀君、そんなこと思ってへんよな?」タユン

京太郎「はい」

京太郎『おっぱい』

ベリアル『黙れ』



少し状況が落ち着いたのか、雅枝が咳払い


雅枝「で、情報って?」

京太郎「ん、お聞きしたい」コクリ

洋榎「そやそや! あ、そういやうちが愛宕洋榎な!」

京太郎「ご丁寧に、須賀京太郎です」フッ


なるだけクールに、紳士的に笑みを浮かべる


洋榎「おー、まぁ久に聞いたことあるけど」

京太郎「うちの部長から? なんか変なこときいてないっすか?」

洋榎「乳が好きなんやろ」

京太郎「うぉい!」

竜華「えー」ジト

京太郎「部長のお茶目! 部長の!」


必死の言い訳、洋榎が両手で自らの体を抱く


洋榎「いやや! うちの体が目的なんやな!」

京太郎「ハァ?」

竜華「ちょっとなに言うてるかわからんな」

セーラ「地獄に落ちろ」

洋榎「うぉい! 冷たぁ!」


雅枝「ええから早く喋らんかぁい!」



洋榎「それで、や……」


深刻そうな顔をして座っている洋榎の頭部にはたんこぶ

少し涙目だった

そしてご立腹の雅枝


京太郎「……」

洋榎「泉を見つけた……らしい」

セーラ「なんやて!?」

竜華「っ! ら、らしいって?」

洋榎「いやぁ写真とかは撮れなかったらしいからしゃあないねんけど……うちの後輩から情報入ってなぁ」

京太郎「なるほどぉ」


ふむ、と頷く

さっそく情報がまいこんできてくれたおかげで役立たずの汚名は被らずに済みそうだ

戦いは避けられないだろう。麻雀にしろなんにしろだ


雅枝「で、どこで発見したんや?」

洋榎「……銭湯!」

セーラ「銭湯!?」

竜華「銭湯!」

雅枝「銭湯!!」

京太郎「……なぜに銭湯?」


洋榎「銭湯に行くでぇ!」



     第15話【水ノ魔王獣】



―――【銭湯:男湯】


その後、当然のように銭湯に来ていた

両腕を縁に乗せて湯船に入っている京太郎

頭の上にタオルを乗せたまま、天井を見つめる


京太郎「二条泉が見つかったのはともかく……俺、来る必要あった?」


二条泉が見つかった銭湯がここなのは間違いない

だが、間違いなく男湯ではないはずだ


京太郎「俺、必要かなぁ……」

洋榎「おーいガースー聞こえるかー!」

京太郎「……」


周囲に客はいない

それもそうだ、まだ夕方にもなっていない

息を吸うと、京太郎は洋榎に応える


京太郎「なんっすかー!」

洋榎「おー聞こえた」

セーラ「そっちはどうやー?」

京太郎「いたらもっと騒いでますー」

竜華「そらそうやねー」


京太郎(この向こうに清水谷さんが……)

京太郎「くっ、俺としたことが邪念を!」

ベリアル『いつも通りだろが』



それから数十分

京太郎は―――茹蛸だった


京太郎「……しぬ」

ベリアル『そろそろ出ろ』

洋榎「すが~ど~や~うちはまだ入っとるでぇー」

京太郎「……え~」

竜華「うちは入ってへんけど……ていうかずっと入ってる意味ある?」


京太郎「確かに!」ザパーン

洋榎「天才やな竜華!」

セーラ「アホか!」



脱衣所の椅子に座っている京太郎

扇風機を前にしながら、うちわで自らをあおぐ

したたる汗、空いてる片手でコーヒー牛乳を飲む


京太郎「だぁ~!」

ベリアル『何やってんだお前は』

京太郎「すいませんつい」


しかしこういうのも久々な感じがした

松実館での温泉を思い出す


京太郎「ふぃ~」


徐々に人が増えてきている


京太郎「……出るか」

ベリアル『まぁ興味深いもんでもあったな』

京太郎『そうなんっすか?』

ベリアル『ジャグラスジャグラーは気にいってたらしいぞ』

京太郎『トゲトゲ星人が、ですか』



肩にタオルをかけたまま出てくる京太郎

緩められたネクタイ、Yシャツのボタンも上から二つは外している

外に出ると、既に雅枝が立っていた


京太郎「ただいまっす」

雅枝「色っぽ」

京太郎「はじめて言われた」

雅枝「マジか」

京太郎「ところでそちらは、なにか手がかりとか?」

雅枝「あるわけなかった」

京太郎「……ただ銭湯に入っただけでは」

雅枝「勘が良いな、そういうことや」

京太郎「……」

竜華「監督、洋榎が」


やってきた竜華、その後ろにセーラに肩をかされた洋榎


洋榎「……う、うちの勝ちや」

雅枝「捨て置け」

セーラ「ラジャー」パッ

洋榎「ぐへっ! この人でなしども!」

京太郎「……」

竜華「なんとも言えん顔しとるね」

京太郎「なんとも言えないので」

雅枝「違いない」



◆???


1、清水谷竜華
2、江口セーラ
3、愛宕雅枝
4、愛宕洋榎


◇10分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢

1、清水谷竜華


―――夜【特異課大阪基地:休憩所】


晩御飯、コンビニ弁当を食べる京太郎

キッチンなんかもあるらしいが、面倒という立派な理由がある


京太郎「……ん、清水谷さん」

竜華「ん、須賀君、ここええ?」

京太郎「どーぞ」モグモグ


正面に座る竜華、晩御飯はおそらく自分で作ったのだろう料理


京太郎「にしても意外っすね。地元こっちの方でしょう?」

竜華「うん、だけど……家じゃ気ぃ抜けるからなぁ」

京太郎「気を張るためにわざわざここに」

竜華「ん、親友……怜がいつ見つかるかもわからへんから」


その言葉に、京太郎は笑みを浮かべる

ここにもいたのだと安心感すら覚えたためだ


京太郎「みんな、なくしたものを取り戻すために、ですね」

竜華「せやね……須賀君も?」

京太郎「はい、仲間を」


そもそも、ここに来たのも咲と自分の姿をしたなにかがいると聞いたからいる


竜華「そっか、清澄の……」

京太郎「まだ、部長しか見つかってないから」

竜華「そか、お互い頑張らんとやね」フッ

京太郎「はい」フッ

竜華「……下の、名前で呼んでええ?」

京太郎「あ、はい。じゃあこっちも」

竜華「ん、それじゃよろしくな! 京太郎君!」

京太郎「はい、竜華さん」ニッ



それから食事を終えてコーヒーを飲む京太郎

テレビの方を見ているがティガもガイアも戦っている姿が映っていた

ベリアルは―――


竜華「ベリアルの映像っていつも少なない?」

京太郎「目つき悪いから」

ベリアル『ハッ』


苦笑する京太郎


竜華「でもな、情報だと一番色々なとこ行って敵倒してるのはベリアルなんよ?」

京太郎「……そう、ですか」


ベリアル『嬉しそうにしてんじゃねぇよ』

京太郎『嬉しくないっすか?』

ベリアル『オレが暴れれる場所で暴れてるだけだ、そこで他人からどう思われようと関係ねぇよ』

京太郎『……そういうとこ、ほんと好きっす』

ベリアル『どうしたお前』

京太郎『いや、素直に気持ちを』

ベリアル『気持ちわりぃ』

京太郎『ひどい』


ニュースを見ると、ウルトラマンの特集をやるようだった


京太郎「園城寺さん、見つかるといいっすね」

竜華「うん、そしたら京太郎君にも紹介したいな」

京太郎「……是非」フッ


―――翌朝【銭湯】


ガラッ


今日も今日とてやってきた京太郎たち

脱衣所で服を脱ぎ腰にタオルを巻いて扉を開いた、その瞬間―――


竜華「水きったな!」

京太郎「くっさぁぁぁ!? 」

セーラ「なんじゃこりゃぁぁぁっ!!」


番頭のおばあちゃんはおっとりと前を向いている

女湯の方からも響いてくる声


洋榎「ゲロはく! ゲロ!」

雅枝「ゲロゲロ言うんやない!」

竜華「京太郎くん大丈夫かぁ!?」

京太郎「くさぁぁぁい!」


銭湯の見ずというかお湯がおかしい

その異臭に思わず口を押える


京太郎「なんなんだよぉ……」

ベリアル『こいつぁ……』



銭湯の前で立っている四人

異臭騒ぎは銭湯だけでないようだ


「くっさぁ!」

「くさぁい!」

「くさすぎる!」


四人とも鼻をつまんだまま会話をはじめる


京太郎「……これは?」

雅枝「……水源やな」

竜華「水源ですね」

セーラ「いくで水源」

京太郎「洋榎さんは?」

雅枝「なんか水が目に入ったらしくて悶えてた」

京太郎「御愁傷さんです」

雅枝「とりあえず行くで」

京太郎「うっす……水源ってことは、琵琶湖?」

雅枝「いや、もっと手前らしい」

京太郎「なるほど、早くいきましょう……まじやべぇんで」

セーラ「かつてない危機や」


今回はここまでー

大阪編開幕、千里山→姫松は優先度的なやつ
とりあえず次回は15話後編ー

次回は水曜の夜、かな?
そんじゃまたー

また遅くなってしまったけどもやるよー



雅枝の運転する車に揺られる助手席の京太郎

そして後部座席には竜華、セーラ、洋榎の三人

窓を開けて涼しい風を浴びる


京太郎「……はぁ」

雅枝「憂鬱そうやな」

京太郎「いやまぁ、なんていうか……」


顔をしかめつつ、言い淀む


雅枝「?」

竜華「どないしたん?」

京太郎「言って良いのかなんなのか」

セーラ「ん?」

京太郎「臭いません?」

洋榎「うちの目がか!」

京太郎「ちげぇから!」

洋榎「ならな……うっ!」


瞬間、風が異臭を運んでくる

瞬時に窓をしめる面々


京太郎「あぶねぇ……」

雅枝「近いな!」



森の中……鼻をつまんでそこにいる面々

だがしかし、その強烈な臭いはその程度で防ぐこともできない

車から離れて森の中へとやってきたものの、目の前の川に浸かっている怪獣に苦笑を禁じ得ない


京太郎「最悪だ……」

セーラ「確かに、この悪臭」

京太郎「いや、ていうか……」

ベリアル『マガジャッパか』


そのマガジャッパを見ている面々


雅枝「さっきからずいぶん言い淀むやないか、どないしたん?」

京太郎「どないもなにも……」

洋榎「ん、お前の意見は貴重や言うてみい!」

京太郎「たぶん二条さんなんだよなぁあの怪獣……」

セーラ「おい臭いぞ泉ィ!」

洋榎「泉ィ臭いんちゃうかぁ!」

竜華「なんでそんなこと言ったん」ジト

京太郎「だから言わなかったじゃないっすかぁ!」

雅枝「遊んでへんと解決策探さんかい!」



怪獣、マガジャッパを見上げる


京太郎「……どうしますか」

ベリアル『水ノ魔王獣マガジャッパ……まぁやるしかねぇな』

京太郎『あれも魔王獣っすか!?』

ベリアル『ああ、厄介な奴だろうな』

京太郎「戦う、かぁ」


ガッツハイパーを取り出して顔を銃口をマガジャッパへと向ける


雅枝「え、勝てるん?」

京太郎「でもこのままじゃ水が、でしょう……少なからず移動はさせないと」

竜華「せやな、じゃあみんな!」


全員が、ガッツハイパーを取り出した


洋榎「あ、そういやなんやけどこの場合って」

雅枝「あ」


マガジャッパが京太郎たちの方を見る

面々の目とマガジャッパの眼が合う

息を吸うように頭を少し後ろに振るマガジャッパ


京太郎「散開ィ!」


その声と共に“洋榎を除いたメンバー”が散開する

残された洋榎が、遅れて走り出す

だが―――遅い


マガジャッパ「―――!」ブシャァッ

洋榎「ぬにゃあぁぁっ!!!?」



放たれた黄色い水

しかし、洋榎は直撃だけは避けたのか、地面に転がっていた

それでも多少、かかってはいるのだが……


洋榎「くっさあぁぁぁっぁぁっ!」

マガジャッパ「!」


立ち上がったマガジャッパが川の中で暴れる


セーラ「なにやってんのや! 上流からおいださんかい!」

洋榎「鬼か!」

京太郎「鬼と言うか魔王というか」

ベリアル『おい、さっさとやるぞ!』

京太郎『よくあんなのとやる気になりますね!』

ベリアル『耐えれねえからさっさと潰すってんだよ!』

京太郎『納得だけども……!』


雅枝が京太郎の腕を掴む


京太郎「!?」

雅枝「とりあえず避難や! 全員ちゃんと逃げえや!」

竜華「りょ、了解です!」

セーラ「ラジャー!」

洋榎「うおぉぉぉ! くさぁぁっ!」


それぞれが逃げていく



マガジャッパはとうとう川から出ると、なにを感じたのか街のほうへと歩いていく

京太郎と雅枝の二人は銃撃をしながら走るも、マガジャッパの気を引くにいたらない

それにその異臭に気力がゴリゴリ削られていく


京太郎「このままじゃ……」

ベリアル『さっさと離れて変身しろ!』

京太郎『わ、わかってるんですけど!』


別方向からの銃撃が、マガジャッパの目に直撃する

大きく怯んだマガジャッパが、銃撃のあった方向を向く


京太郎「お?」

雅枝「誰や!」



マガジャッパを怯ませた銃撃

それを撃ったのは―――愛宕洋榎だった


洋榎「よっしゃ! みたかうちの超ファインプレー!」


グッと拳を握りしめて舞い上がる


マガジャッパ「!」

洋榎「あ」


目と目が合う


洋榎「……!」ダッ

マガジャッパ「!」


水を放つわけでもなく、シンプルに走り出す

迫るマガジャッパを前に、洋榎が懐からなにかを取り出した


洋榎「やったらぁ!」


そして“それ”を持った右腕を振り上げる


洋榎「ダイナァッ!」



京太郎「光!!?」

雅枝「きたかっ!」

京太郎「!?」


光と共に、現れるのは巨人

どこかティガを思い出す、光の巨人だった

赤と青と銀、その巨人の名は―――


ベリアル『ダイナ……!』

雅枝「ダイナ!」


◆BGM:われらのダイナ【http://www.youtube.com/watch?v=TTQtHBH5hE8&list=PL69534061E9D0C813&index=2


京太郎『さすがベリアルさん、知ってるんすね! 会ったことが?』

ベリアル『ああ、まぁ良い思いはしてねぇけどな』

京太郎『ですよね』ハハハ


雅枝「知らんかったやろ、ガイアとティガに負けんとおるんやでこっちも!」

京太郎「しかしまぁ……奈良の隣にいるとは」

雅枝「三回目やしガイアやと間違えられてそうやし」

京太郎「ところで俺、いりました?」

雅枝「それとこれとは話が別やろ?」

京太郎(まぁ、そりゃそうか……?)



現れたウルトラマンダイナ

すぐにマガジャッパを相手に両手を構えた

ティガやガイアとはまた違った構え―――


京太郎『行った方がイイっすか?』

ベリアル『さてな、状況見てで良いんじゃねぇか?』

京太郎『……まぁやりたくなさそうでしたもんね』


雅枝「逃げるで!」

京太郎「え、あ……はい!」ダッ


ダイナ「デヤァッ!」

マガジャッパ「!!?」


ダイナが接近して拳をぶつける

ひるむマガジャッパにさらに追撃をかけようと―――するも


ダイナ「グアッ!」


その臭さに、怯む


マガジャッパ「!」


放たれる黄色い高圧水流

それを受けて、ダイナは吹き飛んで背中から地面に倒れる

さらにその悪臭からもだえていた


京太郎『大丈夫っすか?』

ベリアル『ああいうもんだ』

京太郎『えー……援護、いかなくて』

ベリアル『さてな』

京太郎『……行きたくないんっすね』

ベリアル『たりめぇだろ』

京太郎『ですよねぇ……』


顔を押さえながら起き上がるダイナに、マガジャッパは蹴りを打ち込む

それを受けたダイナが後ろに吹き飛ぶとさらに水流を放った


ダイナ「グアァッ!」


京太郎『やられてますよ!』

ベリアル『あっちみたくベテランじゃねぇからに……しょうがねぇ、さっさと潰すぞ!』

京太郎「雅枝さん、あっちに!」

雅枝「車あるな!」

京太郎「あっちでしたっけ!?」

雅枝「え、車の方ってこと言いたかったんやろ?」

京太郎「えーあーはい」メソラシ

ベリアル『テメェ……』

京太郎『い、良いタイミングで失踪します!』


とは言え、間に合わなくなってからでは遅いのだ

マガジャッパに射撃をすると、次いで他の二方向からも射撃があった


京太郎「……二つ? もう一人は?」


ダイナ「テヤァッ!」


起き上がったダイナがティガのように腕を振るうと、その体の色が赤く変わった

同時に体にかかっていた水が消えたのか、問題無さそうに立つ

このパターンを京太郎は知っている


京太郎「あれは、パワータイプか?」

雅枝「おー、さすがティガを見てきただけあるなぁ、赤は初めてみたけど」

京太郎「それじゃあ紫が?」

雅枝「青やな、超能力戦士や」

京太郎「へぇー」

ベリアル『呑気に話してる場合か』

京太郎「そうだった!」ダッ

雅枝「そうやった!」



赤いダイナが拳を打ち込んでマガジャッパを倒す

反撃しようと水を放つも、ダイナはバリアを張ってそれを凌ぐ

通常のフォームであれば押し負けていたことだろう


ダイナ「ハァッ!」


水流が止むとすぐに走って蹴りを打ち込む

さらに吹き飛んだマガジャッパだが、今度はすぐに起き上がる


マガジャッパ「!」

ダイナ「!」


接近したダイナが拳を打ち込んだその瞬間、マガジャッパはその一撃に耐えつつ両手でダイナの腕を掴む

振り払おうと両腕を振るうダイナだが……


ダイナ「!」

マガジャッパ「!」


その両腕についた吸盤により振り払うことができない

近距離での異臭に悶えるダイナの、カラータイマーが点滅をはじめる


京太郎『くさくて?』

ベリアル『臭くてだな』



ダイナに、マガジャッパがさらに水流を放つ

その水圧を受けるダイナだが、吸盤の力で吹き飛ぶこともない


ダイナ「グアアァッ!」


悶えているダイナに水流を続けるマガジャッパに―――銃撃


マガジャッパ「!!?」


その一撃がマガジャッパの水流を放つ鼻を撃つ

損傷はしないものの、ダメージは大きいのか悶えてダイナを放す

倒れるダイナ、マガジャッパは銃撃のあった方向へ体を向ける。そこには―――


竜華「ッ!」


マガジャッパが頭を少し後ろにすぐに水流を放つ


竜華「まずっ!」


背後には崖、その下には川……


竜華「怜っ!」


飛び込もうとするも、その余裕すらなく水流を受けるかと思われたその瞬間……

竜華の胸の中心に青い光、それと共にその瞳すらも青く輝く

放たれた水流は、竜華の目の前で―――水に弾かれた


竜華「……」


背後の川から、水が逆巻き水流を弾いている



マガジャッパ「!!?」


驚愕するマガジャッパを前に、竜華は眉一つ動かさずそこにいた

逆巻き、舞い上がる水が形を作る

巨大な水の化身―――


京太郎「あれは!?」

ベリアル『確か、ミズノエノリュウ……か?』

京太郎『あれも知ってるんですか?』

ベリアル『ハンッ、当然だ』

京太郎『にしても、なんで?』


雅枝「水の龍……」


その八本の頭を持つ龍、ミズノエノリュウが咆哮を上げて水の弾丸を放つ

それを受けたマガジャッパが大きくひるんで倒れた

立ち上がったダイナが腕を振るい最初のフォーム『フラッシュタイプ』に変身する


ミズノエノリュウ「―――」


静かに、ミズノエノリュウが消える

それと共に、竜華もゆっくりと地面に倒れた


ダイナ「デァ!」

◆BGM:ウルトラマンダイナ【http://www.youtube.com/watch?v=hwxlUyBzWVE




起き上がったマガジャッパにダイナが斬撃を放つ

放たれたそれがマガジャッパの鼻部を斬り裂いた


マガジャッパ「!」

ダイナ「……デヤァッ!」


そして腕を十字にして―――ソルジェント光線が放たれる


マガジャッパ「!!?」


直撃を受けたマガジャッパが、一端止まるも―――爆散


ダイナ「……」コクリ


輝きと共に、地に落ちるのは二条泉

それを見届けたダイナは両手を上げて空へと去って行った



二条泉の元へと、現れる人影


雅枝「泉ぃ!」


駆け寄って、泉を抱き上げる雅枝

周囲の臭いはマガジャッパを倒した影響か徐々に薄れてきている


京太郎「……ウルトラマン、ダイナね」

ベリアル『本人じゃねぇのは間違いねぇな……メダルの力か?』

京太郎『……ま、やれることをやるだけっすよ』


そう言うと、ふと視界のはしに見知った影を見た

即座に、京太郎はそちらへと走り出す


雅枝「え、須賀!」

京太郎「すみません!」


走り去る京太郎、荒れた足場を跳ぶ


ベリアル『お前の知り合いの女か?』

京太郎『はい……!』

ベリアル『……この気配、右だ!』

京太郎『ざっす!』


即座に地を脚で蹴って方向転換と共にそちらへと走った

木々の間、少し開けたその場所に―――立つ


京太郎「咲っ!!」


視線の先、その少女―――宮永咲はいた


咲「……」



目の前に立つ少女、宮永咲と見合う京太郎

その瞳は真っ暗な闇を彷彿とさせ、その禍々しい気配に京太郎の額に嫌な汗が流れる

ガッツハイパーを即座に抜く


京太郎「貴様誰だ!」

「無礼者が!」


瞬間、光弾がどこからか飛んできて京太郎の手のガッツハイパーを弾く

驚愕しながらそちらを見る京太郎


ベリアル『メフィラス星人か!』

京太郎「メフィラス星人!?」

咲「……ふぅん、やっぱりベリアル」

京太郎「ッ!」


地を蹴ってメフィラス星人から距離を取る

即座にゼットライザーを取り出すも、席が手を前に出す


咲「……ここで消える?」

京太郎「……なに?」

メフィラス「我が皇帝の邪魔をするな!」

ベリアル『まさかアイツは!』

京太郎「ッ!」


さらに放たれた光弾を回避、咲の方を見るが闇の中に消えていく


京太郎「咲ィ!」

メフィラス「消えろ!」

京太郎「ッ!?」

洋榎「やらせるかアホ!」


そう言って銃撃をしたのは洋榎

その一撃を受けたメフィラス星人


メフィラス星人「……さすがに二体が相手では分が悪いな」


そう言うと、メフィラス星人も闇の中に消えた

残された京太郎が隣の木に拳を叩きつける


京太郎「くそっ!」



―――【特異課大阪基地:休憩室】


座ってコーヒーを飲む京太郎の手にあるマガジャッパメダル

二条泉は精密検査の後、異常がないとのことで医務室で寝ているそうだ


京太郎「……咲も和も、か」


咲もすでに和と同じように怪獣メダルに思考を奪われているようだった

メフィラス星人という新たな敵も現れた


京太郎「新たなウルトラマン……ダイナか」


ティガ、ガイアに次ぐ光の巨人

今回はベリアルとして共に戦うことはなかったが、いずれその時がくるだろう

そうしていると、背中に衝撃


洋榎「辛気臭い顔してどしたー!」バシッ

京太郎「痛ぁっ!?」

洋榎「マガジャッパも倒せて、新しい宇宙人も出おったし宮永妹もおったけど」


腕を組んで頷く洋榎


洋榎「まぁなんとかなるやろ! 少なからず敵の姿は見えたんやからな!」ニッ

京太郎「楽観的っすねー」

洋榎「ポジティブシンキングと言ぃや……格調高く!」

京太郎「ま、そういう人いると助かりますけどー」

洋榎「そやろー!」ナデナデ

ベリアル『こいつ……おい小僧、聞いてみろ』

京太郎『え、なにをっすか?』

ベリアル『……』



京太郎「さっきの太平風土記じゃ禍邪波じゃなかったっすか?」

洋榎「あーえっと、そやったっけ!!?」

京太郎『めっちゃ動揺してますね』

ベリアル『ハッ、馬鹿は扱いやすいな』

京太郎『悪口っすよ』


彼女がダイナ、あるいはそれに近しいなにかなのは間違いない

まぁ十中八九ダイナなのだろう

だがなにはともあれ……


京太郎「洋榎さん」

洋榎「ん?」

京太郎「お力、お借りします」フッ

洋榎「へ? ああ……むしろお借りしたいんやけど」



     第15話【水ノ魔王獣】 END



―――次回予告


京太郎:ダイナミックのダイナ?

セーラ:ダイナマイトのダイナでもある!

竜華:怜……?

セーラ:オレたちでダイナを助ける!

ベリアル:いくぞ、四分の一人前!

京太郎:はい、いきましょう!


次回【戦士の戦い】


洋榎:本当の戦いはここからやぁッ!


今回はここまでー

ダイナ登場ってことで出すか出さないか迷ってた時期もあった
まぁ出したのだけどもー

とりあえずはこんな感じでー

次回、またちょっと本筋が進みつつ
明日か明後日やるよー

やってくよー

徐々に進んできて、そろそろ第二章も佳境だったり

(また酉ミスった



―――【特異課大阪基地:休憩室】


あれから五日

その状況にはすっかり慣れて、京太郎はのんびりとそこでコーヒーを飲んでくつろいでいる

あれから咲はめっきり姿を見せない

あの須賀京太郎の姿もだ


京太郎「……」ポケー

雅枝「暇そうやなー」

京太郎「え、ああまぁ……パトロール行ってきますよ」

雅枝「もうちょっとあとでええよ、ついでに……私用頼みたいし」

京太郎「?」

雅枝「このあと会議なもんで忙しくて……」


そう言う雅枝の目元にはクマが見える


京太郎「徹夜ですか?」

雅枝「まぁな~昔は徹マンとかできたんやけどもーむりやな」ハァ

京太郎「……」

雅枝「あ、そや昨日は麻雀で行方不明者二人まとめてやって?」

京太郎「まぁ竜華さんの手伝いしただけっすよ」

雅枝「ん~でもだいぶ強いんやね。怪獣メダル持ち相手に勝つなんて」

京太郎「まぁ、ある程度……」


ベリアル『テメェの力なんだか胸張って言えよ』

京太郎『うぅ~なんかなぁ』

ベリアル『メンドくせぇな』

京太郎『す、すみません』


昨日手に入れたクラブガンとアネモスのメダル

確かに自分の麻雀で倒した記憶がはっきりと存在する

ベリアルとして戦った記憶と共に……


雅枝「まぁなにはともあれこのあと頼むわ」

京太郎「あ、はい……それでなにを?」

雅枝「洋榎のバカを起こしに行って欲しいんや」

京太郎「……ファ!?」



     第16話【戦士の戦い】



◆安価!


1、松実宥

2、高鴨穏乃

3、福路美穂子

4、瑞原はやり

5、東横桃子

6、竹井久

7、辻垣内智葉

8、ネリー・ヴィルサラーゼ

9、雀明華

10、清水谷竜華

11、江口セーラ


◇5分間で1↓から~ コンマが一番高い選択肢

11、江口セーラ



街を行く車、目的地へと走る

その助手席の京太郎、運転席には―――江口セーラ

目的地は、愛宕洋榎の家


京太郎「にしても、基地で寝泊まりすりゃいいのに」

セーラ「まぁ、色々あるんやろ……お、あそこや」

京太郎「おー実家」

セーラ「カギもらったって? どしたー監督とそういう関係かー?」ニヤニヤ

京太郎「なっ、なに言ってんすか!?」

セーラ「いんやぁ~」


狼狽するも、すぐに平静を装う

確かに魅力的な女性ではあるが、娘がいかんせん自分より年上

むしろ向こうがどう思うか……


京太郎「まったく」

セーラ「京太郎ってほら、顔はええやろ?」

京太郎「ハッキリ言いますね……否定はしないっすけど」

セーラ「おー、まぁだからモテるかなー思うたんやけど」

京太郎「……セーラさん的にはありっすか?」

セーラ「は? あぁ、まぁその……か、かっこええと、思うけどぉ……」カァッ

京太郎「え、なに照れてるんっすかかわいい」

セーラ「はあぁっ!!?」


瞬間、車がブレる


京太郎「どわぁっ!?」

セーラ「うわっ!?」



車は真っ直ぐな軌道を取り戻す

耳まで赤くしたセーラが横目で京太郎の方を見る


京太郎「あ、あぶなぃ……」

セーラ「お前が余計なこと言うからやろ!」


その言葉に、京太郎は苦笑

余計なことは言わない方がいいだろうと思いつつも、ついつい口が滑る

スーツ姿のセーラを見てから、ふと思い出した故に口にする


京太郎「泉に見せてもらった夏のインターハイの写真」

セーラ「あいつなにやってんねん!」

京太郎「可愛かったじゃないっすか」

セーラ「事故るぞマジで!」

京太郎「それは怖い」


マジで怖い


セーラ「たくっ……なんでんな」

京太郎「麻雀で俺が勝ったことを黙ってるという約束のもと」

セーラ「お前話しとるやんけ」

京太郎「別いに良いかなって」

セーラ「泉ぇ……麻雀の特訓やな」

京太郎「ほどほどにしてやってください。病み上がりなんで」



着くまでやけに長く感じた止まった車

それから降りる京太郎は軽く手を振ってセーラと別れようとする


セーラ「忘れぇよ絶対」

京太郎「えー凄い可愛かったじゃないっすかぁ」

セーラ「ええから!」マッカ


茹蛸状態のセーラに向けて笑みを浮かべると頷く


京太郎「それじゃあまた」

セーラ「むぅ」


不満そうな表情を浮かべつつ、セーラの車が去って行く

手を振って見送った京太郎は目の前の家を向く


京太郎「女の人の家の鍵開けるってどういう状況よ」

ベリアル『年相応の経験があるようで結構じゃねぇか』ハッ

京太郎「ベリアルさんもそういう経験が?」

ベリアル『……オレは寝る。なにかありゃ起こせ』

京太郎「えー」



鍵をつかって入る京太郎

雅枝は『洋榎にはメッセージ送っとくから大丈夫やろ!』とのことだが動悸は抑えられない

そっと扉をしめると、京太郎は息をつく


京太郎「お邪魔しまーす」


ここで『邪魔すんねやったら帰ってー』とも帰ってこない辺り、やはり……


京太郎「ね、寝ている」


十中八九寝坊とのことだ

京太郎は聞いていた洋榎の部屋である二階へと上って行く

仲良くはなっているが、さすがにこれはどうだろうか


京太郎「……おはようございまーす」


とかなんとか言って、二階の『洋榎』と書いてある部屋前に立つ

軽く握りこぶしを作ってから、扉を叩く


京太郎「はいおはようございます! 須賀京太郎です!」

コンコン

京太郎「……おーい洋榎さーん?」

ガチャッ

京太郎「お?」


後ろに下がる京太郎、扉は開く


京太郎「お、洋榎さ」

洋榎「んぁ?」


出てきた洋榎はパジャマ姿であった

ボタンはいくつか開いていてそれはまぁ……扇情的である


京太郎「oh、こんなイベントがあろうとは……」

洋榎「ふぁ……なあぁっ!!?」ビクッ

京太郎「ああもう」

洋榎「ななな、なにしとんのや!」

バタンッ


扉が閉められる


京太郎「遅刻です」

洋榎「なんでお前そんな冷静やねん!!?」

京太郎「あー……いや、ドキドキしてますよ?」

洋榎「そんな報告いらんわぁっ!」



一階の居間でくつろぐ京太郎

そうしていると、愛宕洋榎がスーツ姿で降りてくる

その顔はほんのりと赤い


京太郎「……照れちゃってぇ」

洋榎「うっさいわアホ!」カァッ


言ったせいなのか余計に赤くなっている

笑う京太郎の腕を掴んで洋榎を立ち上がらせた


洋榎「ほら、行くで!」

京太郎「まぁそっすね……雅枝さんも怒ってましたし」

洋榎「げきおこ?」

京太郎「げきおこ」

洋榎「えぇ……」

京太郎「ま、行きますか」


そう言って歩き出す京太郎

その後を追って、洋榎も歩き出す


洋榎「もっとこう……動揺したりせぇへんの?」

京太郎「なんかこう、思ったより平気でした」

洋榎「それはそれでムカつく」

京太郎「なんで」



―――【大阪市内】


ザッ、と音を立てて立つ女性

見上げるのは大型デパート

後ろに立つ男の手には紙袋が複数


??「よっし、当面はここで調査よ!」


そう言って西川順子は満足気に頷く

一方、背後にいる山口大介は訝しげに表情をしかめた


大介「本当に大阪にいるんっすか?」

順子「ええ、私たちが奈良にいる間に東京に出たらしいけど……大阪にもウルトラマンがいるらしいわ」

大介「奈良のガイアと間違ったんじゃなくて?」

順子「ええ、それに