眼鏡友「男!恋愛委員会に入ろう!」男「はあ?」 (32)


 教室

男「何で俺がそんなもん入んないといけないんだよ。恋愛委員会って要は恋愛相談所みたいなもんだろ?」

眼鏡友「うむ。少子高齢化対策の一環として、文部科学省が直々に全国の高等学校に設置を推進している立派な委員会だ。入れば内申も上がるぞ」

男「俺一般入試狙いだからなあ……内申とかどうでもいいんだけど」

眼鏡友「私は推薦狙いだから重要だ。それはそれとして、彼女も作れるかもしれんぞ」

男「は? どういうことだよ。まさか相談しに来た女の子口説けるからってんじゃないだろうな」

眼鏡友「これは他校の友達に聞いた話なのだが……恋愛委員会のメンバーは大体内部でカップルが成立しているらしい」

男「そんなのどこの部活でも委員会でも同じだろ? どこもかしこも恋愛恋愛って、サカリのついた犬じゃあるまいし、マスメディアに踊らされすぎなんだよ」

眼鏡友「……お前の恋愛アンチっぷりは相変わらずだな。まだ引きずってるのか? あの告白のこと」

男「……うるせーな。関係ねーよ」

眼鏡友「なら入らない理由はないな。私も前も高校二年生だ。色恋沙汰に浮かれていられるのも今のうちだぞ?」

男「高校二年生は恋愛しなくちゃいけないなんて決まりでもあるのか? そんなの俺の勝手だろ」


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男「あ? お前みたいな真性童貞野郎に彼女なんかできるわけねーだろ」

眼鏡友「いいや、できるね。少なくとも、怖気づいて何の挑戦もする気がないお前よりかは確率は高いだろうよ」

男「怖気づいてる? 違うな。俺はお前らみたいに『皆が恋愛してるから俺もしないと』なんて薄っぺらい考えで生きてないんだよ。俺は自分の意思で『あえて』恋愛しないことを選んでるだけだ」

眼鏡友「……ふっ」

男「おい、何で笑ったんだよ。何がおかしいんだよ」

眼鏡友「いや何。今の台詞も、お前が彼女いない歴=年齢でなかったらもう少し格好がついたのになあ、と残念に思っただけだ」

男「ほー。つまりあれか? 俺が強がってるだけだって言いたいわけか?」

眼鏡友「そうとしか見えない、というのが客観的な結論だ。恐らく、100人が聞いたら100人は私と同じことを言うだろうな」

男「こ、この野郎……!」

眼鏡友「ああ、すまない。事実とは時に人を傷つけるものだからな……では、お前はさっさと家に帰って右手と愛を確かめ合っているがいい。私はこれから用事があるのでね」

男「ああ行け行け。泣いて帰ってきたら慰めてやるから安心しろ」

眼鏡友「それで激励のつもりか? 私にはお前が希望的観測を述べているようにしか聞こえなかったが……では、行ってくるとしよう。さらばだ」

男「……」


 恋愛委員会室前

男(……来てしまった)

男(しょうがないだろ! あんだけ好き勝手言われて黙って帰れるか!)

男(別に恋愛委員会とやらにはこれっぽっちも興味はないけど……どんな奴がいるのかは気になるな。ちょっと覗いてみよう)

男(くそ、窓に覆いがかけてある。これじゃ中が見えねえ))

男(お、上の窓ならいけそうだな。よいしょっと……)

和風女「…………」

男「……ど、どうも。こんにちは」

男(タイミング悪っ! 何でピンポイントにこんなとこ見てんだよ! 音なんか立ててねえぞ)

和風女「鍵はかかっていないから、普通にドアから入ってくればいいと思うけど」

男「あ、はい。そうさせてもらいますね。ははは……」

男(俺完全に不審者だな……)


和風女「私はこの恋愛委員会の暫定委員長をしている和風女よ」

男(ネクタイの色からして、特進科か。頭いいんだな)

男「俺は男。ていうか、暫定委員長?」

和風女「新設の委員会だから、委員がまだ集まっていないの。だから、暫定的に私が委員長という体裁をとって、ある程度委員が集まったら改めて委員長を選定したいと思っているわ」

男「ああ、なるほど。だから暫定なわけだ」

和風女「それで、あなたはこれからどうしたいの?」

男「どうって、俺は別にただ」

男(つーか、眼鏡友の奴何やってんだ? 俺より先に教室出たのに何でいつまで経っても来ないんだよ)

和風女「生徒指導室に行くか、それとも直で警察に行くかだけど」

男「べ、別に悪いことしてないだろ! ただ教室覗いてただけじゃねーか!」

和風女「もし私が教室で全裸にでもなっていたら、あなたは立派な軽犯罪者だけど」


男「そんな仮定の話で犯罪者にされてたまるか! 大体そんときゃお前も道連れだよ」

和風女「……とまあ、これで緊張はほぐれたかしら? そろそろ本題に入りたいのだけど」

男「お前、今までこんな会話を世間話だと思って生きてきたんじゃないだろうな……」

和風女「単刀直入に聞くけど、あなたは入会希望者? それとも恋愛相談? それによって対応を変えさせてもらうわ」

男「えーと……」

男(ぶっちゃけどっちでもないんだが、この二つじゃなかったら本当に覗き野郎だな……いや本当に覗き野郎なんだけど……)

男(恋愛相談って答えて、あれこれ突っ込んだこと聞かれると面倒くさいしな……)

男「あー、一応入会希望ってことで。今日はちょっと見学させてくれないか?」

和風女「……」

男「そういえば、他の委員はいないのか? 俺たち以外にも入会希望者はいると思ったんだが」

和風女「先に言っておくことにするけど、私が暫定委員長を務めている限り、この委員会では内部恋愛は禁止させてもらうから。もちろん、相談者との恋愛もよ」


男「な……内部恋愛禁止!? 何でだよ。別にいいだろ? 恋愛委員会って、そもそもそういう場所なんじゃないのか?」

和風女「化けの皮が剥がれたわね。大方そういう手合いだと思ったのよ、あなたも」

男「は? 何怒ってんだよ」

和風女「昨今の『カジュアル恋愛』なんて愚かな概念がのさばる日本において、どんな数値の上昇が最も問題になっているかわかるかしら?」

男「そんなもん知るかよ」

和風女「離婚率と中絶率よ。特に後者においては、未成年の割合が十年前の3倍以上にも上がっているわ。これを受けて、WHOから正式に非難声明が出されているくらいよ。まったく、嘆かわしいことこの上ないわね」

男「それと恋愛委員会の内部恋愛禁止と、何の関係があるんだよ」

和風女「恋愛委員会の活動意義は、悩める青少年の健全な恋愛活動を補助し、推進することよ。その委員たちが内輪でくっついたり離れたりの爛れた恋愛ごっこに興じていては、示しがつかないでしょう」

和風女「頭の中を血液の代わりに媚薬が循環しているような恋愛脳の持ち主に、節度を保った恋愛なんて難しいでしょうし、それなら最初から入会をお断りするのが道理だと考えた次第よ」

男「いや、俺も恋愛脳は大概嫌いだけど、すごいこと言うなお前……つまりあれか? 恋愛委員は他の生徒たちの模範になるべきってことか?」

和風女「そういうことよ。見かけによらず飲み込みが早いのね」

男「見かけは関係ないだろ!」

和風女「人は第一印象で他人の評価を9割方決定する、って中学で習わなかったかしら」


男「知らん。『恋愛』の時間はずっと寝てたからな」

和風女「とにかく、そういうわけで、頭空っぽの尻軽女と軽薄な恋愛がしたければ、他の部活や委員会を当たった方が良いと思うわ」

男「…………」

男(喜んでそうしてやる……と言ってやりたいところだが、この女に興味が湧いてしまった)

男(俺と同じような考えを持ってる女に会ったのは初めてだからだ)

男(もう少し、この女と話していたいと思った)

男「あー、俺は別に恋愛したくてここに来たわけじゃなくてだな……」

和風女「なら、どうして来たの?」

男「……恋愛したがる奴の心理が知りたい」

和風女「どういうこと?」

男「恋愛なんて明らかにリスクとリターンが釣り合ってないだろ。大体同じコミュニティにいる異性を好きになるけど、もし振られたらお互い超気まずいのに、何でそんなこと好き好んでしたがるのかって話」

和風女「……リスクとかリターンとか、恋愛はそういうものじゃないと思うけど」


男「へえ、じゃあどういうものなんだよ。俺はずっと、恋愛なんて周りに流されてするか、そうでなけりゃ打算でするもんだと思ってたけどな。将来大人になったときにいい相手を捕まえるための予行演習的な」

和風女「……あなたもなかなかろくでもない恋愛観を持っているようね。早いうちに矯正した方がいいと思うわ」

男「はっ! 大きなお世話だよ。これは俺が考えて導き出した結論だ。そう簡単に曲げたりなんかしねえよ」

和風女「なら、私が直々に矯正してあげるわ」

男「お断りだね。お前は恋愛の神様か何かかよ、偉そうに」

和風女「今なら学習サポートのオプションもつくけど?」

男「いらねーよ!」

和風女「……そう。ならいいわ。もうここに用はないでしょう? 速やかにお引取りいただいてもいいかしら?」

男「ああ、そうさせてもらうよ」

男(くそ、とんでもない自己中女だったな。来るんじゃなかった)

今日の投下はここまでにさせていただきます
読了いただきありがとうございました
また明日の同じ時間に続きを投下します

期待してる

おまたせしました
次レスから投下開始します


 男自宅

男母「ただいまー! もうご飯食べた? 昨日作っといた生姜焼きの残り!」

男「ああ、食べたよ」

男母「ちゃんとチンした? 冷たかったでしょ?」

男「したって」

男(母親って何で俺が食ったものにやたらと関心を持つんだ)

男母「そうそう! 今日ね、知り合いの塾の先生やってるって人に会って聞いてきたの。うちの子来年受験なんですけど、どれくらい成績必要なんですかって」

男「気が早すぎるでしょ。まだ高校二年の四月じゃん」

男母「そしたらね、夜になったら電話するから、本人から直接聞きたいって。模試の点数とか」

男「……いや、最近の模試の点数なんか聞いてどうすんのさ。意味ないでしょ」

男母「でも、国立大学入ろうと思ったらなるべく早いうちから対策しておいたほうがいいって言うし。高校三年間際になってから今までの範囲を復習してたら、三年の範囲なんて頭に入らないでしょ?」


男「大丈夫だって! 自分でなんとかできるよ、そのくらい」

男母「あ、電話かかってきた! きっとこれね……はいもしもし、男母です、お世話になってます~」

男「マジかよ……」

男母「はい、じゃあすぐ代わります……はい、失礼のないようにね」

男「……もしもし、代わりました」

母知り合い『やあ、男君? いつもお母さんにはお世話になってるよ。早速だけど、直近の模試の成績を教えてもらえるかな?」

男「あ、ちょっと待ってください。探してくるんで――」

 
 男自室


男「――っと、大体こんな感じです」

母知り合い『ふむふむ、なるほど……大体わかったよ、ありがとう』

男(なんか含みのある感じでやだなあ……)

母知り合い『で、男君の志望校はどこだい?』

男「いや、まだはっきり絞ってはいないんですけど……一番近い国立のR大とか考えてます」


母知り合い『ははあ、なるほど。中堅国立ってとこだね。学部は?』

男「一応、農学部ならいけそうかなって」

母知り合い『学科は?』

男(めっちゃ聞いてくるな)

男「いや、まだそこまでは」

母知り合い『オーケー。じゃあ率直な意見を言おう。今の君の学力だと、R大は無理だね。私立のT工大も厳しいかもしれない』

男「で、でも……まだ大学二年なったばっかりですし、あと一年でかなり変わるんじゃないですか?」

母知り合い『今男君は学校以外ではどれくらい勉強してる? 塾や家庭教師は使ってないってお母さんから聞いてるけど』


男「えっと……一時間くらい」

母知り合い『最低限、課題だけやってるって感じだね。となると、全くゼロの日もあるわけだ』

男「まあ……」

母知り合い『高校はS高の普通科だったね? となると、周りもほぼ同水準ってことになる。つまり、君が勉強面で刺激を受けられる相手がいない可能性が高いんだよ』

男「……でも、受験シーズンになったら皆勉強し始めると思います」

母知り合い『S高普通科の進学実績は、ここ数年で一番良くてR大だ。つまり、普通科でトップクラスの子でもR大が限界ってわけ。周りに合わせてたら、R大はかなり厳しいと思うよ』

男「…………」


母知り合い『受験に限らず何でもそうだけどね、環境が一番大事なんだ。環境次第で人間はいくらでも変わる。いい方向にも、悪い方向にも』

母知り合い『うちの塾はいつでも体験入学者募集してるから、気が向いたらお母さんを通じて連絡してみてよ。大げさかもしれないけど、君がこの一年をどう過ごすかで、一生が変わるかもしれないと思ってほしい』

男「……分かりました」

男(うちに塾に行く金なんてないし、かと言って私大に通う金なんてもっとない)

男(T工大も無理となると、県外になるけど……その場合毎日電車で片道二時間とかかかる)

男(そんなんじゃ部活もサークルも全然楽しめない……)

男(くそ、どうすりゃいいんだ!)

男「……俺に親父がいればなあ」


 ◆

 学校

眼鏡友「どうした、男。浮かない顔をして」

男「いや、別に何も。それより、何で昨日来なか……行かなかったんだよ、恋愛委員会」

眼鏡友「ああ。旧校舎ではなくこっちの校舎をずっと探していたことに、下校時刻寸前で気がついてな。面倒になって帰ったのだ」

男「バカだなお前……」

眼鏡友「だが、今日こそはリベンジする! そして私は一学期中に彼女を作ってみせる!」

男「そのことなんだが、うちの恋愛委員会、恋愛禁止らしいぞ」

眼鏡友「……何だと? どういうことだ」

男「他のクラスの友達に聞いた話だけどな、今の委員長がえらく委員会活動に熱心で、恋人探しが目的で委員会に入るような不純な輩は門前払い食らわせているらしいぜ。残念だったな」


眼鏡友「いや、ありえない。そんなことはおかしいぞ」

男「おかしいっつってもな。実際そうなんだからしょうがないだろ」

眼鏡友「男に他のクラスの友達などいるわけがないだろう」

男「おかしいってそこかよ! ああそうだよ、悪かったな情報源(ソース)は嘘だよ! でも恋愛禁止の方はマジだからな」

眼鏡友「うーむ、にわかには信じがたいが……」

男「ま、恋人が欲しけりゃそのへんの恋愛塾でも行けよ」

眼鏡友「嫌だ。あんなところへ通う女子高生にまともな女がいるとは思えん。私は可愛い彼女が欲しいんだ」


男「お前理想だけは一丁前だよな本当……そんなだから彼女できねえんだよ」

眼鏡友「……よし、こうしよう、私が代わりに委員長となり、委員の恋愛を全面的に許可する。これで文句は出ないだろう」

男「……は?」

眼鏡友「まずは情報収集をせねばな。男、その委員長とやらは何者なんだ?」

男「何者って、特進の和風女って奴だよ。すぐくっついたり離れたりする最近の若者の恋愛事情が気に食わんらしい」

眼鏡友「ほう、お前と同じだな」

男「一緒にすんな。それで、委員はそんな若者たちに模範的な恋愛の何たるかを示すべき、とか言ってたな」

眼鏡友「なるほど、確固たる主張があるわけか。生理的に不快だから、とかそんな理由だとどうしようもないが、それなら与しやすい」


男「そうか?」

眼鏡友「まあ、私にかかればその手の輩はお茶の子さいさいよ。私が中学時代何と呼ばれていたか、知らないはずはあるまい?」

男「ああ、『ゴマすり眼鏡』だろ。内申欲しさに教師に媚び売りまくってたもんな、お前。旅行の土産を職員室中に配ってたとか聞いたときマジで引いたぞ」

眼鏡友「そのおかげでこのS高に入れたのだから後悔はしていない。では、早速放課後に突撃するとしよう。情報提供感謝するぞ、男」

男「そりゃどーも」

男(そうだったそうだった、あいつ確か特進だったっけな)

男(……待てよ。確か昨日の別れ際なんか言ってたな、あいつ)


和風女『今なら学習サポートもつくけど?』


男「……これだ!」

男「眼鏡友! ちょっと待て、話がある!」

今日の投下はここまでになります
お読みいただきありがとうございました


 恋愛委員会室

男「お邪魔しまーす……」

眼鏡友「頼もう!」

和風女「……騒々しいわね。何の用? 昨日あれだけ啖呵を切って

おいて、おめおめと顔を出せるなんて、なかなかいい面の皮をして

いるようね。私も少しくらい見習った方がいいかもしれないわ」

男「うっ……実は、折り入って頼みがあってだな」

和風女「何かしら? 一応、聞くだけ聞いてあげるけど」

男「俺の恋愛観を矯正したいとか何とかって言ってたよな、昨日」

和風女「ええ、言ったけど、それが何か? あなたの方から丁重に

お断りいただいたはずよね、その件については」

男「ま、まあそうなんだが……」


男(やりづれー……相当根に持ってるな、これ)

眼鏡友「おい、男。昨日ここにお前が来たのは聞いたが、どんな話

をしたのだ、一体。えらく親しげではないか」

男「このやり取りが親しげに見えるのかよ、お前には。……単刀直

入に言うと、俺を恋愛委員会に入れてほしい。それと、こっちの眼

鏡友もだ」

眼鏡友「私は眼鏡友だ。男の友人で、あなたのことはかねがね聞い

ている。昨今の若者の恋愛事情を憂いているそうだな」

和風女「まあ、そんなところね」

眼鏡友「実に素晴らしい! 私もあなたの意見には全面的に賛成だ

! 拙速な少子化対策が生み出した『カジュアル恋愛』などという

忌むべき概念は、我々の世代で根絶やしにしなければならん! 正

しい恋愛こそが、正しい未来を作るのだ!」

和風女「まさしくその通りよ。ごっこ遊びの延長線で結婚するよう

な『ままごと夫婦』がこれ以上発生しないよう、これからの日本を

担っていく私たちが、この風潮を変えていかなくてはならないの。

あなた、なかなか分かっているみたいね」

和風女「どこかの誰かさんに、眼鏡友君の爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいよ」


眼鏡友「おい、男。昨日ここにお前が来たのは聞いたが、どんな話をしたのだ、一体。えらく親しげではないか」

男「このやり取りが親しげに見えるのかよ、お前には。……単刀直入に言うと、俺を恋愛委員会に入れてほしい。それと、こっちの眼鏡友もだ」

眼鏡友「私は眼鏡友だ。男の友人で、あなたのことはかねがね聞いている。昨今の若者の恋愛事情を憂いているそうだな」

和風女「まあ、そんなところね」

眼鏡友「実に素晴らしい! 私もあなたの意見には全面的に賛成だ! 拙速な少子化対策が生み出した『カジュアル恋愛』などという忌むべき概念は、我々の世代で根絶やしにしなければならん! 正しい恋愛こそが、正しい未来を作るのだ!」

和風女「まさしくその通りよ。ごっこ遊びの延長線で結婚するような『ままごと夫婦』がこれ以上発生しないよう、これからの日本を担っていく私たちが、この風潮を変えていかなくてはならないの。あなた、なかなか分かっているみたいね」

和風女「どこかの誰かさんに、眼鏡友君の爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいよ」

眼鏡友「お褒めいただき、光栄至極だ」

男「うるせえなあ……」


男(……ままごと夫婦、ね)

男「で、こいつのおまけとして俺も入れてくれ」

和風女「どうして? 話がつながっていないのだけど」

男「俺と一緒に入れないなら、こいつもここには入らない」

眼鏡友・和風女「「えっ?」」

眼鏡友(おい、聞いていないぞ。何だその話は!)

男(ちょっと話合わせろよ。和風女の情報教えてやっただろ)

眼鏡友(うーむ……それを言われると弱いな……)

眼鏡友「そういうことだ。ここは一つ、譲ってもらえないだろうか」

和風女「なるほど、それなりに考えてきたわけね。いいでしょう、その条件で手を打つわ」

男「よっし! じゃ、今日からよろしく頼むぜ、暫定委員長どの!」

和風女「その呼び方はやめなさい」


男「もう六時か」

和風女「今日はこれで終わりにしましょう」

男「あれから二時間経って相談者ゼロか。この委員会、できてから何日目なんだ?」

和風女「ちょうど一週間ってところね。ちなみに、入会希望者は男女合わせて12人来たけど、相談者はゼロよ」

男「お前が12人も追い返してたことに驚きだよ……一人くらいまともな奴はいなかったのか?」

和風女「いたら私一人で委員なんてやっていないわ」

男「そりゃそうか……」

眼鏡友「そもそも、この委員会の存在が知られていない、という可能性は?」

和風女「ありえるわね。設立初日に担任の先生が帰りのホームルームでちらっと話しただけだから。大半の生徒はまともに聞いていないでしょうね」

男「でも、入会希望者はそこそこ来てるんだろ? ならそれなりに知名度はあるんじゃないのか?」

和風女「この委員会の存在を知ったきっかけを聞いてみたけど、皆人づてか、たまたま職員室の前に置いてあった入会届を見て知ったそうよ」


男「ふーん……ま、恋愛相談なんてそうそうしょっちゅう人にするもんじゃないし、こういう日もあるだろ。さっさと帰ろうぜ」

和風女「いいえ、事の本質を見誤ってはいけないわ。私の調査によると、潜在的に知人以外の人間に恋愛相談をしたいと思っている生徒は、全体の2割近くに及んでいるはずよ」

男「どんな調査だ」

和風女「なのに、ここ一週間で相談者は皆無。これが何を意味するか分かる?」

男「知るかよ。皆玉砕してどうでもよくなったんじゃねえの?」

和風女「真面目に答えなさい」

男「えー……恋愛委員会の存在すら知らない生徒が多い?」

和風女「もちろんそうだけど、もっと重要な問題があるわ。このままだと、いくら知名度が上がっても相談者は一向に来ない、なんてことも起こり得る」

男「来ないなら来ないでよくないか? めんどくさいだろ」

眼鏡友「いや、よくないな。相談者が来なければ委員会の実績が増えない。これは由々しき問題だ」

男(……そういやこいつ、内申も目当てだったっけな)

和風女「恋愛の悩みを抱えている生徒が一人もいない、というのならそれは好ましいことだけど、現実にはそんなことはありえない」


和風女「潜在的な相談者がここに来ることにためらいを感じているのなら、その原因を取り除かなければならないわ」

男「はあ。どうやって?」

和風女「何故彼ら、あるいは彼女たちが相談に来れないのか。それは、ここが自分たちの恋愛にしか興味のない恋愛脳の巣窟だと思われているからよ」

男「……まあ、そういうイメージだもんな、ここ」

眼鏡友「いやはや、何とも嘆かわしい限りだ」

男(よく顔色一つ変えずに言えるもんだな……)

和風女「他校の恋愛委員会はともかく、ここに関しては相談者に親身になり、あわよくば、なんて不届きなことを考える輩のいないクリーンな場所であることをアピールする必要があるわ」

男「なるほど、興味のない奴から鬱陶しいモーションかけられるかも、って思われてたらそりゃ行く気なくすわな」

和風女「そういうことよ。早速行動に移そうと思うのだけど、男君と眼鏡友君はパソコンに強い方かしら?」

男「まあ、人並みには」

眼鏡友「右に同じく」

和風女「なら結構」


 自室

男「……あれ? どうやって画像移動させるんだ、これ? おーい、もしもーし」

眼鏡友『画像を文章よりも後ろに移動させれば、自由に動かせるようになる』

男「ああ、できたできた。しっかし、ビラ配りとはまた古典的な」

眼鏡友『それだけよく使われる手法ということだ。知名度とイメージを同時に向上させられて、しかも短期間で効果が見込めるからな。おまけに金もかからない』

男「そんなに上手くいくもんかね……ああ、そうそう。眼鏡友、お前和風女はどうなんだ?」

眼鏡友『どうとはどういう意味だ?』

男「彼女欲しいっつってたろ。和風女はどうなんだってことだよ」

眼鏡友『それはこちらが聞きたいくらいだな。男が女子と親しげに話しているところなど、生まれて初めて見たぞ』

男「だから、あれのどこが親しげなんだよ。俺が一方的に罵倒されてるだけだろうが」

眼鏡友『ふむ、お前がそう思うのならそうなのかもしれんな。忘れてくれ』

男「何だよ、変な含み持たせるなよな」

眼鏡友『作業に集中しろ。もう11時だぞ』

男「げっ、マジかよ。これで明日遅刻したら、あの女に文句言ってやる」

眼鏡友『言ってやれ。きっと喜ぶぞ』

男「意味が分かんねえよ」

今回はこれで終わりです
ありがとうございました

乙せす

おら早く書けや

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