【モバマスSS】ウサミン星からの物体P (295)

20XX年 年末

菜々「お疲れ様でした~」ペコ

P「お疲れ様です!菜々さん!」スッ

菜々「あ、ありがとうございます」

菜々「....」ゴクゴク

菜々「プハァッ~美味しい!」

菜々「喉が潤いました~」

P「梅昆布茶は疲れに効きますからね」

菜々「謎の味がすると思ったらなんで梅昆布茶なんですか!」

P「え、だって菜々さん大好きじゃないですか」

菜々「いや好きですけど....」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1579704346

菜々「身体を動かした後に飲むものじゃありませんよ!」

P「でもさっき、まるで熱さを感じないかのように淹れたてのヤツをゴクゴク飲んで」

P「終いには『美味しい』って言ってたじゃないですか」

菜々「たたたたまたまですよ!」

菜々「たまたま口の感覚が鈍ってたんです!」

P「はぁ....」

菜々「それはさておき」

菜々「次の仕事はどこでしたっけ?」

P「え?」

菜々「次ですよ次」

P「これで仕事納めですよ」

菜々「....」

菜々「....忘れてました」テヘ

P「もーやる気が有り余ってるのはいいですけど」

P「あんまり働き過ぎてもダメですよ」

菜々「お仕事って楽しいので、ついつい忘れちゃいますねぇ」

P「プロデューサー冥利に尽きますよ....」

P「そういえば」

P「休みの予定はどうするんですか?」

菜々「休み....」

菜々「何日あるんでしたっけ?」

P「えーっと」

P「明日から数えて7日ですね」

菜々「そんなに休んじゃって大丈夫なんでしょうか....」

P「そのために年末働きまくったんじゃないですか」

菜々「あ、そういうことだったんですね」

菜々「てっきりPさんはナナを過労死させたいのかと思ってました」

P「大切なアイドルにそんなことさせるわけないじゃないですか....」

菜々「冗談ですよ冗談」クスクス

菜々「でも7日ですか....」

P「どうかしました?」

菜々「いえ、お休みのことをすっかり忘れていたので何も計画を立ててないんです」

P「自分から過労死しに行ってるんですかあなたは」

菜々「Pさんのこと言えませんね」アハハ

菜々「そうですねぇ....」

菜々「久しぶりに実家にでも帰ろうかなあ」

P「!?」ドンガラガッシャン

菜々「わっ!?」

菜々「ど、どうしたんですか!?」

P「あー、すみません、あまりにも驚いたのでイスから落ちてしまいました」

菜々「えぇ....」

菜々「実家に帰るだけですよ?」

P「いやいや、だってナナさん、全然実家に帰らないじゃないですか」

P「てっきり実家という存在を忘れているのかと思ってました」

菜々「いくらナナの物忘れが激しくても実家は忘れませんよ!」

P「でも俺、菜々さんが実家に帰る所なんて全く見たことないですよ」

P「27年ぶりくらいじゃないですか?」

菜々「なんで産まれた時から一切実家に帰ってないことになってるんですか!」

菜々「非行少女にも程がありますよ!」

P「産まれたてて実家を飛び出すのは非行少女とはまた別の何かですよ....」

菜々「そういえば、暫く実家には帰ってなかったですねぇ」

菜々「前に帰った時もPさんはお仕事で地方に行ってましたし」

菜々「案外本当に、Pさんに言うのは初めてかもしれませんね」

P「えぇっ!?帰ったことあるんですか!?」

菜々「あるにきまってますよ!」

P「....」

P「....つまり菜々さんは本当に帰省するんですね?」

菜々「だから....そう言ってるじゃないですか....」

P「....分かりました」

P「俺も一緒に帰ります」

菜々「....」

菜々「え゛ぇ゛っ!?!!?!?!?」

菜々「いやいやいやいやいやいや」ブンブン

菜々「いいいくらナナとPさんが長い付き合いだからって」

菜々「一緒に帰省はダメですよ!!!」

P「なんでですか?」

菜々「な、なんでって....」

菜々「そりゃあナナはアイドルですし....」

菜々「周りに見られでもしたらあらぬ誤解を生むかもしれませんし....」

P「別にやましいことなんてありませんし大丈夫じゃないですか?」

P「そもそも、俺達普段から2人で移動しまくってますし」

菜々「確かに....」

P「それに」

P「菜々さんを守るのは俺の仕事ですから」

菜々「P、Pさん....///」キュン

P「あと俺もついでに帰省するんでちょうどいいんです」

菜々「それナナを送り届ける方がついでじゃないですか!」

P「いえ、あくまでそっちがメインですよ」

菜々「もー調子がいいんですから」ウフフ

P「じゃ、チケットは俺が用意しとくんで」

P「明日は朝の9時過ぎに東京駅でお願いします」

菜々「チケットって....そのくらいナナでもできますよ~」

P「プロデューサーの仕事くらいさせてくださいよ」

菜々「了解ですっ」

菜々「明日はよろしくお願いしますね♪」

P「はい、まかせてください」

P「それじゃあまた」ペコ

菜々「はーい、お疲れ様でした~」ヒョコヒョコ

菜々「Pさんも大袈裟というか過保護というか....」

菜々「まあ、それだけ大切にされてるってことですね」

菜々「でもPさんが同郷だったなんて知らなかったなぁ....」

菜々「そういうことなら言ってくれればよかったのに」

菜々「....」

菜々「Pさんと2人旅....」

菜々「....」ニコニコ

菜々「旅って長さでもありませんけど」

菜々「ちょっと楽しみかも♪」ジタバタ

翌日 東京駅

菜々「おはようございます~」

P「おはようございます」

P「ん?」

菜々「な、なんですか?」

P「んー....」ジー

菜々「....」ゴクリ

P「昨日周囲の目を気にしていた割には随分派手ですね」

菜々「は、派手じゃなくてオシャレです!」プンスカ

P「いやでも昨日の発言と食い違って

菜々「もう!誰のためにこんな格好してきたと思ってるんですか!」

P「....」

P「....」

P「....?」ポケー

菜々「早く行きますよ!」スタスタ

P「そうですね、そろそろ時間ですし」

菜々「っ....!」

P「えーっとホームは....」

P「総武4....」

P「と16分の6番線ですね」

菜々「へ?」

P「4 6/16番線ですよ」

菜々「なんですかその微妙にキリの悪い数字!」

菜々「某魔法ファンタジー作品の9と3/4番線の絶妙なワクワク感とは大違いですよ!」

菜々「というかせめて約分してください!」

P「ちなみに計算すると4.375になります」

菜々「どこに行っても役に立たなさそう....」

P「さて」

P「どうぞ」スッ

菜々「え?」

菜々「なんの手ですか?」

P「菜々さんをエスコートするための手です」

菜々「!?」

菜々「い、いくらなんでもこんなに人がいる所でそれは

P「....」ギュッ

菜々「あっ....///」

P「行きましょうか」

菜々「....///」

P「よしきた!」ダッ

菜々「ちょっ」

P「行きますよー!」ダダダッ

菜々「P、Pさんっ....はやっ....はやすぎっ....」ゼエゼエ

【壁】

菜々「って壁ぇぇぇぇ!!!!!」

菜々「いたたたたた....」

菜々「くない!?」

P「毎度おなじみ」

P「4 6/16番線です」

菜々「どんな世界線のお馴染みなんですか....」

菜々「いやそれより!」

菜々「さっきの、どうやったんですか!?」

P「さっきの?」

菜々「私テッキリ、壁に激突して脳震盪を起こして病院沙汰だと思いましたよ!」

菜々「すっかり騙されました」クスクス

菜々「すごいイリュージョンですねぇ」

P「は、はぁ」

ガタンゴトン

P「あ、来ましたね」

菜々「そうですね~」ニコニコ

ガタンゴトン

ガタン ゴトン

プシュー

菜々「年の瀬なのに珍しく空いてます」

P「まー利用者数は他の路線と比べてそこまで多くないですから」

菜々「そうですか?」

菜々「ナナが乗る時でこんなにスカスカなことはなかったような....」

ドアガ シマリマス

プシュー

P「へー、俺からするとそっちの方が珍しい気がしますよ」

菜々「Pさんは運がいいのかもしれません」

P「日頃の行いのおかげですね間違いない」

ガタンゴトン

ガタ ゴト

スゥ

菜々「....」

菜々「ん....?」

フワ

菜々「ん゛ん゛っ!??!!!?!?」アセアセ

フワ フワ フワ

菜々「P、Pさん!?!?!」

P「なんですか?」

菜々「で、電車が」

菜々「脱線してます!!!!」

P「してますねぇ」

菜々「伏せて!しゃがんで!防災頭巾で頭を覆いましょう!!!」

菜々「これPさんの分です!!!」

P「菜々さん、どうしたんですか?」

菜々「Pさん何をしているんですか!!一刻を争う事態ですよ!!!」

菜々「衝撃に備えないと!!!」

P「このくらいの揺れいつものことじゃないですか」

P「どちらかというと順調な離陸だと思いますよ?」

菜々「いやだから脱線!!!電車が浮いてるんですよ!?!?」

菜々「....?」

菜々「離陸....?」

車内アナウンス『SR地球をご利用いただきありがとうございます』

車内アナウンス『この電車は中央・太陽系線、各駅停車』

車内アナウンス『ウサミン星行きです』

菜々「」

車内アナウンス『次は、月、月』

車内アナウンス『お出口は右側です』

菜々「」

菜々「」

菜々「」

P「いやーようやく菜々さんと帰れますよ~!」ニッコリ

P「みんな喜ぶだろうな~!」ウキウキ

P「きっと街中お祭り騒ぎ」

P「星がひっくり返しますよ!」

菜々「」

続きます

菜々「」

P「はい、そういうことなんでよろしくお願いします」

菜々「ンハッ!?」パチクリ

P「あ、おはようございます」

菜々「おはようございます」ペコ

P「結構寝てましたね」

菜々「電車の中で寝るのは慣れてますからね~」

菜々「今どのあたりですか?」

P「次がエウロパ前ですね」

菜々「....」

菜々「新小岩?」

P「エウロパ前です」

菜々「....」

菜々「はぁ....」チラ

菜々「うわぁ....」

菜々「まるで宇宙みたい....」

P「宇宙そのものなので」

菜々「ですよねぇ....」

菜々「ドッキリ、ではないんですよね?」

P「俺と菜々さんの帰省を撮るだけじゃ取れ高皆無ですよ」

菜々「ただの帰省だったらこんなこと言ってませんよ....」

P「誰がどう見てもただの帰省じゃないですか」

菜々「....」

菜々「Pさん、なんでそんなに落ち着いているんですか?」

P「帰省するだけで落ち着かなくなるのって小さな子供くらいですよ」ニコニコ

菜々「....」

菜々「そもそもここまでのことも、まるで全部知っているみたいですし....」

菜々「....」

菜々「あなたは一体、」ゴクリ

菜々「何者なんですか....?」ドキドキ

P「....」

P「..........」

P「.............」

P「................」

P「............」

P「...................」

P「......................」

P「...........................」

P「................................」

P「え、ウサミン星人ですけど」

菜々「溜めた割に返事がアッサリ!?」

P「今更なんでそんなことを聞くのかと」

菜々「私にとっては超重大発表なんですけど!?」

P「....?」ハァ?

菜々「なんですかその『何言ってんだコイツ』みたいな顔!」

P「....」

P「!!!」

P「まさか....」

菜々「はい?」

P「....菜々さん」

P「お、覚えていないんですか?」

菜々「???」

P「....」

P「おかしいと思ったんです....」

P「実家に帰ると言った割には」

P「今日は何をするにもやたらリアクションが大袈裟だし」

菜々「私の常識を軽々超えていくことばかりでしたからね!」

菜々「Pさんがイシンバエワに見えましたよ!」

P「突然発狂して取り乱すし」

菜々「あんなのいきなり見せられて取り乱さない人なんていません!」

菜々「自分の乗っている飛行機が墜落しそうになった時に冷静な人がいますか!?」

P「あとなんか格好がいつもより派手だし」

菜々「そ、それは別にいいじゃないですか....」

P「....」

P「本当に忘れているんですね....」

P「いや正しくは」

P「覚えていない」

P「のかもしれません」

菜々「....」

菜々「....ナナはナナです」

菜々「(多少は脳機能が衰えているかもしれませんけど....)」

菜々「....」

P「菜々さん」

P「今から話すことは全て真実です」

P「どうか、落ち着いて聞いてください」

菜々「....」

P「出身地であるウサミン星のこと....」

P「そしてアナタの出自のこと....」

菜々「....」

菜々「....お願いします」コクリ

続きます

P「菜々さんは」

P「ウサミン星人のお父様とお母様の間に」

P「産まれました」

菜々「....」

P「両親から無償の愛を受け」

P「すくすくと育ちます」

P「事件が起こったのは」

P「産まれて数か月後のことです」

菜々「!....」ゴクリ

P「家の庭でお母様とくつろいでいた時のこと」

P「菜々さんがコロンと転がりました」

P「ウサミン星の言葉では『寝返り』と言います」

菜々「地球でもそうですよ」

P「....その時」

P「偶然庭に落ちていた1人用のポッドに入り」

P「偶然発射のスイッチを押してしまったんです....!」

P「自動操縦によって宇宙空間を旅した後」

P「ウサミン星人が最も暮らしやすい惑星」

P「地球へと降り立ったんです....」

菜々「....」

菜々「????」

菜々「すみません、よく意味が分からないんですけど....」

菜々「まずポッドってなんですか?」

P「これです」スッ

菜々「あぁーっ!」

菜々「これ漫画やアニメでちょくちょく出てくる丸型の宇宙船じゃないですか!?」

P「元々はこっちが先で、地球の漫画やアニメにアイデアが輸入されたんですよ」

菜々「しかもこれ!」

菜々「赤ちゃんの時のナナが、これに寝てる写真が実家のアルバムに何枚かありますよ!?」

P「宇宙空間での使用を前提に作られていて」

P「大気圏の突入の衝撃にも余裕で耐えられるものですからね」

P「赤ちゃんを守るには十分すぎるベッドですよ」

菜々「随分奇抜なベビーベッドだと思ってはいましたけど....」

菜々「親がドラゴ○ボールファンだったのでテッキリ趣味だとばかり....」

P「奇妙な偶然ですねぇ....」

P「いや、これもまた必然なのかもしれません....」

菜々「そうですねぇ....」

菜々「アレ!?ちょっと待ってください!?」

菜々「ということは私」

菜々「今の両親とは血が繋がってないってことですか!?」

P「んー」

P「そうすね」

菜々「反応薄すぎですよ!?」

菜々「これ、ナナにとっては超重大な新事実なんですけど!?」

P「ウサミン星人は血縁を重視しないんです」

菜々「絶妙に都合のいい文化を持ってますね!?」

菜々「(ハッ!?そういえばお母さんよく)」

菜々「(『あんたは橋の下で拾ってきた』って言ってたような....)」

菜々「(よくある冗談だと思ってたけどあれ本当だったんだ....)」

菜々「....」

P「....」

P「すみません、いきなりこんな話」

菜々「いえ、いずれは知らなきゃいけないことだったんだと思います」ニコ

P「....」

P「....ショックですか?」

菜々「うーん....」

菜々「驚きはしましたけど、ショックというほどではないかもしれません」

菜々「不思議ですねぇ....」

菜々「さっきの話が事実だとしても」

菜々「お母さんとお父さんに○○年大事に育てられたという事実は揺るぎませんし」

菜々「それに」

菜々「血縁よりももっと強い親子の証をたくさん貰ってきましたから」ニコニコ

P「....そうですね」ニコ

P「ウサミン星人は血縁を重視しませんからね」グッ

菜々「そういう話じゃないんですよ!?」

P「菜々さんの出自の真実はこんなところです」

菜々「もうここ数時間驚きっぱなしで疲れました....」

菜々「....1つ疑問なんですけど」

P「はい」

菜々「なんでナナは、ウサミン星から来たアイドルに辿り着いたんでしょうか」

菜々「私がウサミン星人であることなんてついさっき知りました」

菜々「そもそもウサミン星の存在すら....」

P「....なんででしょうねぇ」

P「俺は菜々さんがあれだけウサミン星やらウサミン星人やら連呼しているので」

P「自分のことを覚えていると思ってたんですよ」

菜々「だから最初から、ウサミン星を知っている前提で話が進んでいたんですね」

P「そりゃウサミン星人要素をアイドルのキャラクターに取り込んでるんですよ?」

P「ウサミン星産まれウサミン星育ちの生粋のウサミン星人でもそんなことしませんよ」

菜々「知らなかったからこそ出来たことでした....」アハハ

P「おそらく」

P「ここまでの完璧な一致は偶然ではないんだと思います」

菜々「やっぱりそうなんでしょうか....」

P「短いとはいっても、数か月はウサミン星で暮らしていたわけですからね」

P「乳児期の記憶なんてほとんどの場合残りませんが」

P「記憶よりもさらに深いところに刻み込まれていたのかもしれません」

菜々「そう言われるとしっくりきます」

菜々「小さい頃」

菜々「どれだけ周りからからかわれても、バカにされても」

菜々「なぜか『ウサミン星はある』って確信は揺らがなかったんです」

菜々「ふふっ....」

菜々「....本能のようなものだったんでしょうか」クスリ

P「今となっては確かめようがありませんね」フッ

菜々「理由はどうあれ」

菜々「アイドルになって、今こうして活動できているのは」

菜々「ウサミン星のおかげなんです」

菜々「早くお礼を言わなきゃいけません!」

P「安心してください」

P「もうそろそろ着きますよ」

菜々「東京駅を出てから、ちょうど1時間....!」

P「東京-ウサミン星間の所要時間知ってる人が」

P「まさかウサミン星の存在すら知らないなんて誰が思いますか?」

菜々「確かにその通りですね~」クスクス

P「菜々さん」

P「見えましたよ」

P「あれがウサミン星です」

菜々「!」

菜々「あれが....!!!」

菜々「....」

菜々「なんだか物凄くウサギの形してません?」

P「そうですね」

菜々「あと色も明るいピンク色に見えるような....」

P「真っピンクですから」

菜々「....」

菜々「あんな惑星現実にあるわけないじゃないですか!?」

菜々「長い耳が2本も生えてますよ!?」

P「いやいや、思いっきり目の前に見えてますし」

P「そもそも今からあそこに上陸するんですから疑いようがありません」

菜々「惑星があんな形と色になるわけないですよ!」

P「....菜々さん、月のクレーターってどうやってできるか知ってますか」

菜々「え?それは隕石の衝突でできるんだったような....」

P「その通りです」

P「例えば」

P「周辺の惑星や引力等、様々な事象が絡み合った結果」

P「隕石が衝突しやすいポイントがあるとしたら」

菜々「!?」

菜々「つ、つまり」

菜々「あれは2本のウサギの耳ではなく」

菜々「耳と耳の間に見える部分に隕石が数え切れないほど衝突し」

菜々「そこが窪んでしまった、ということなんですか!?」

P「あれは前の前の国王が国策として掘らせたくぼみです」

菜々「今の話なんだったんですか!!!」プンスカ

菜々「というか惑星の外見を大幅に変えてしまうレベルの工事っていったい....」

P「不必要な公共事業が経済を回すんです」

菜々「星が違ってもすることは同じなんですねぇ....」ゲンナリ

続きます

プシュー

菜々「....」

菜々「ここが....ウサミン星....」

P「はい....」

P「ここが菜々さんの故郷」

P「そして」

P「追い続けていた場所です」

菜々「....」


菜々「なんというか....」

菜々「地元感が凄い....」

菜々「今までのは全てドッキリで」

菜々「最後は地元の駅に降ろされてネタバラしってわけではないんですよね?」

P「正真正銘ここがウサミン星です」

菜々「あそこにいる黒いマスクをしたお兄さんも?」

P「ウサミン星人の若者です」

菜々「あんな格好を好んでする人が地球人以外にいるわけないですよ!」

P「ここ最近流行っているみたいです」

菜々「えぇ....」

謎の男「ウサミン!」

菜々「はい?」

謎の女「おぉウサミン....よく来たわね....」ウルウル

菜々「あぁ泣かないでください!」アクシュ

菜々「応援ありがとうございます!」

謎の男「会えて嬉しいよ」

菜々「こちらこそ、ありがとうございます!」アクシュ

謎の女「ぅぅ....生きててよかったわ....」グスン

P「いやー熱烈な歓迎ですね」

菜々「アイドル冥利に尽きますよ....」ニッコリ

菜々「....」チラ

【ウサミン饅頭】【ウサミン大福】【ウサミン落花生】

菜々「....」チラ

【ウサミンを探せ!】【ウルトラスーパーウサミンシスターズデラックス】【メルヘンデビュー!】

菜々「....」ジー

【ウサミンの耳】【ウサミンの腰】【ウサミンの湿布】

菜々「駅のお土産屋さんがナナだらけ!?」

P「定番のお菓子から児童書やゲーム、さらには菜々さんの身体の一部を模したアイテムまで」

P「選り取り見取りですね」

菜々「ちょ、ちょっとPさん!」ツンツン

菜々「これ一体どうなっているんですか?」

菜々「ライブの物販の時よりナナグッズが多いんですけど!?」

P「菜々さんはここウサミン星も国民的アイドルですから」

菜々「えぇっ!?」

P「だって、自分の住む星の名を冠したアイドルが」

P「遠く離れたところで頑張っているなんて」

P「そりゃあみんな応援しますよ」

菜々「なるほど....」

菜々「ありがたい話ですねぇ....」

菜々「じゃなくて!」

菜々「そもそもどうして菜々のことが知られているんですか!?」

P「....」

P「ウサミン星では」

P「アンテナを地球の方に向けると電波が拾えるんです」

菜々「どれだけ高性能なアンテナなんですか....」

P「おかげで菜々さんの活躍はウサミン星全域で視聴されていて」

P「今やウサミン星にいる全てのアイドルを凌ぐ人気です」

菜々「なんだかウサミン星で活動する方々から恨みを買いそう....」

P「大丈夫です、その人たちもファンなので」

菜々「平和ですねぇ」

菜々「そういえば菜々のCDもありましたね」

P「あれは密輸入品です」

菜々「え゛」

P「だってウサミン星と地球は国交を樹立してないじゃないですか」

菜々「だ、だからってそれはちょっと....」

P「菜々さんの出演するライブはライブビューイングもされてますよ」

菜々「....」

P「映画泥棒ですけど」

菜々「そうだと思いました!」

菜々「お土産屋さんに会った数多のグッズたちは....」

P「当然事務所を通していません」

菜々「ですよね....」

菜々「応援してもらえるのは嬉しいんですけど」

菜々「その手段が非正規のルートだとナナも複雑ですよぉ....」

P「菜々さん、安心してください!」

菜々「?」

P「地球の法律は地球の法律」

P「ウサミン星では適用されません」

P「よって犯罪ではありません!」

菜々「余計に複雑な気持ちになりました」

P「さらに」

P「ウサミン星人は」

P「知的財産権に対する順守意識が希薄な民族なんです」

菜々「どんな民族なんですか....」

謎の男「ウサミーン!」

謎の女「こっち向いてー!」

菜々「さっきの!」

P「こちらの方々」

謎の男「やぁ」

謎の女「(ニコニコ)」

菜々「第二ウサミン星人発見!の時のお2人ですよね?」

菜々「てっきりもうお帰りになったのかと」

P「菜々さんの実の親です」

菜々「」

菜々「ファンの方では....?」

P「いえ、お父様とお母様です」

P「産まれて数か月で生き別れて以来数十年ぶりの再会に感極まってしまったそうです」

菜々「そんなテンションには見えませんよ....」

父「いつもテレビやライブビューイング、Blu-rayで姿を見ていたが」

父「まさか本当に会うことが出来るなんてな....」

母「あなたがいなくなった時は、もう二度と会えないと思っていたもの....」

菜々「....」

菜々「すみません、ナナ、2人のことはほとんど覚えていなくて....」

父「そんなの当然だ」

父「産まれて数か月で宇宙に放り出すなんて」

父「偶然とはいえ我々の不注意のせいでもある」

父「親失格だ」

菜々「そんなことは....」

父「ウサミンにとっては既に地球が故郷で」

父「そこにいるご両親が本物の親なんだろう」

菜々「....」

父「私はね、ウサミンをここまで育ててくれた今のご両親には感謝しかないんだ」

母「私たちがウサミンの活躍をテレビで見られたのも」

母「こうして実際に会えたのも」

母「ご両親のおかげなんだから....」

菜々「....」

菜々「....そう言ってもらえると、きっと喜ぶと思います」

父「これから、少しだけいい」

父「私たちのことも想ってくれるなら」

父「こんなに嬉しいことはないよ」ニッコリ

母「....」ウンウン

菜々「....」

菜々「ありがとう....ございます....」ペコ

P「ちなみにこのお二方」

P「ウサミン星のトップ」

P「国王と王妃です」

菜々「」

菜々「」

菜々「」

続きます

菜々「事情は大体分かりました」

菜々「俄かには信じがたい話ですし」

菜々「すぐに全て受け入れられるというわけではありませんけど....」

菜々「嘘を言っているとも思っていないので....」

菜々「その、よろしくお願いします」ニコ

国王「!!!」

王妃「ウサミン....」グスン

国王「ウサミン!!!」ガシッ

王妃「ウサミン!!!」ギュッ

菜々「あわわわわわわわわ」アタフタ

国王「よかった....よかった....」ナデナデ

菜々「....」

菜々「....」ギュゥ

P「....」ニッコリ

菜々「あのぅ....」

国王「ん?どうしたんだ?」

菜々「先ほどから気になっていたんですが」

菜々「私、安部菜々という名前でして....」

国王「?」

国王「当然知っているぞ?」

菜々「えーっと....」

菜々「なぜウサミン呼びなのかなぁと....」

国王「....」

国王「我々の娘のために、我々が名付けたんだから当然じゃないか」

国王「なあ?」

王妃「ええ」ニコ

菜々「???」

菜々「いえ、あの、私が使っているウサミンという名前は本名ではなく」

国王「いや、ウサミンが産まれた時に我々が考えたんだぞ?」

菜々「?????」

P「菜々さんが産まれた時にこのお2人がそう名付けたんですよ」

菜々「えぇっ!?」

P「これもまた、脳のどこかが無意識のうちに覚えていたんでしょうね....」

国王「親にとってこんなに嬉しいことはないなぁ」

王妃「そうねぇ」

菜々「ちょっと待ってください!」

菜々「私のウサミン星での本名は本当にウサミンなんですか!?」

P「らしいですよ」

菜々「えぇ....」

菜々「それって地球で言えば」

菜々「自分の子供に『地球ちゃん』ってつけるようなものじゃないですか!?」

P「そういうことになりますね」

菜々「とんでもない名前じゃないですか!?」

P「まあでも最近のキラキラネームならあり得なくはないかもしれませんよ」

菜々「言われてみるとそうかも....」

菜々「いやナナは最近産まれたわけじゃありませんよ!?」

P「確かに」

P「ということで」

菜々「アッサリ仕切り直されても困りますよ....」

P「別に悪いことじゃないからいいじゃないですか」

菜々「良い悪いの話じゃありません!」

菜々「突然重要事項を立て続けに聞かされたので」

菜々「身も心も混乱してるんですよ....」

P「○○年ぶりの帰省ですからね」

P「そうなるのも仕方ないです」

P「まーいつまでも混乱してても仕方ないので」

P「適当に街ブラでもしましょうか」

菜々「国王さんたちもそうするのがいいって言ってましたからねぇ」

P「ウサミン星のことを菜々さんに知ってほしいんだと思いますよ」

菜々「....」スタスタ

菜々「....」スタスタ

P「....」スタスタ

P「どうですか、この星は」

菜々「うーん....」

菜々「なんだかどこもかしこも地球と変わりませんねぇ」

菜々「もっというと私が普段生活している日本とほとんど変わりません」

菜々「こうして歩いていても、ここが異国どころか異星であることを忘れてしまいます」エヘヘ

P「同じ銀河内ですからね」

菜々「ぎ、銀河って....」

P「地球でも近くの国や地域は似た文化を持っていることが多いじゃないですか」

菜々「ナナにはとてもそんな小規模な話と同等には思えません....」

P「宇宙規模で考えたら、地球規模よりさらに小さな話なのかもしれませんよ」

P「分かっている部分だけでも想像すらできないような広さです」

P「分かっていない部分は想像しようと思うだけ無意味ですし」

菜々「私も詳しくは知りませんけどその通りなのかもしれませんねぇ....」

菜々「そういえば」

菜々「地球には私やPさんみたいに」

菜々「ウサミン星の人がたくさん紛れて暮らしているんですか?」

P「いや、そんなことはないですよ」

P「基本的にこの辺りの銀河では」

P「国交を結んでいない星へのむやみやたらな介入は禁止されているんですよ」

菜々「どうしてですか?」

P「星が違えば文化や文明レベルの差も大きく開いている場合があります」

P「星はあくまで自発的な発展をするべきであって」

P「外的要因、つまり他の星がそれを妨げてはならない」

P「という考え方がスペーススタンダードなんです」

菜々「へぇ~」

菜々「だから地球では宇宙人の存在が未だ確認されていないんですねぇ」

菜々「こんなにたくさんいるのに」

菜々「あれ?」

菜々「それじゃあどうしてPさんは地球にいたんですか?」

P「俺ですか?」

P「菜々さんのためですよ」

菜々「なっ....////」カァッ

菜々「何を言ってるんですか突然!」ペシペシ

P「俺、国王の直臣でして」

菜々「はぁ」

P「菜々さんが1人で地球に旅立ったその日に」

P「菜々さんの様子をウサミン星へ報告するため」

P「地球へ派遣されました」

菜々「」

菜々「それじゃあPさんって菜々が小さい頃から....?」

P「見てました」

菜々「」

P「最初は王妃が」

P「『ウサミンが地球へ辿り着く前に惑星ごと消滅させてからポッドの回収に行きます』」

P「って言って聞かなかったんですけど」

菜々「物騒過ぎませんか!?」

P「あの人普段は温厚なんですけど」

P「自分の子供のこととなると周りが見えなくなるんですよ」

P「何を犠牲にしても怖くない、みたいな感じになっちゃって」

菜々「犠牲の規模を考えて欲しいですよ....」

P「さすがに天の川銀河連盟から注意されまして」

菜々「そりゃあさっきの考え方に照らし合わせたらそうなりますよ....」

P「菜々さんを乗せたポッドが地球へ着陸した時点で」

P「こちらからの干渉はできませんからね」

P「そうなった以上俺が行って菜々さんを見ているくらいしかやりようがなかったんです」

菜々「なるほど....そういうことだったんですねぇ....」

菜々「ぁ」

菜々「....」

P「どうしました?」

菜々「....」

菜々「....1つ、質問なんですけど」

P「何でも聞いてください」

菜々「....」

菜々「Pさんが私をスカウトしたのも」

菜々「より自分の近くに置いて」

菜々「動向を把握しやすくするためだったってことですか....?」

P「....」

菜々「あーいえ!別にそれを恨んでいるとか」

菜々「怒っているとか」

菜々「そういうわけではないんですよ!」アタフタ

菜々「きっかけはどうあれ」

菜々「Pさんにスカウトされなければ今の私はいないわけですから!」グッ

P「....」

菜々「....」

菜々「....ただ」

菜々「ほんの少しだけ....」

P「....」

P「....菜々さんは」

P「俺が自分の都合で、打算的にスカウトしたと思ったんですか?」

菜々「....」

P「んなわけないじゃないですかぁ」

菜々「でもっ!」

P「俺の話聞いてました?」

菜々「聞いてましたよ!!!」

P「確かに俺は菜々さんをずっと見守ってきましたし」

P「それが国王から任された役目でもあります」

P「説明したとおりです」

P「でも地球で生活する以上はあくまで地球人として生活をしなきゃいけません」

P「だから事務所に入って、プロデューサーをやっているわけですよ」

P「要するに自分の生活があるわけです」

菜々「....」

P「被雇用者である俺がそんな自己中心的な理由でアイドルをスカウトしてたら」

P「とっくにクビになってますよ」フフッ

菜々「....」

P「俺はずっと菜々さんを見てきて」

P「ステージの上で」

P「シンデレラガールとして輝く未来を確信しました」

菜々「....」

P「今事務所にいるどの子よりも」

P「長い時間をかけた」

P「そして最も自信を持ったスカウティングでしたよ」ニヤリ

菜々「....よかったぁ」ヘナヘナ

菜々「ナナ、Pさんが自分のためにナナをスカウトしたんだって....思っちゃいました....」

菜々「もうそれに気付いた瞬間から」

菜々「ずっと動悸が止まらなくて....」

菜々「どうしようどうしようって....」

P「菜々さん....」

P「....」

P「救心、飲みます?」

菜々「いりません!!!」

続きます

菜々「この辺りは随分人が多いですねぇ」

P「今俺たちがいるのはウサミン星の首都ですけど」

P「その中でもここら辺は一番の繁華街なんですよ」

菜々「へぇ~」

ピ ピ ピ

ポーン

菜々「時報?」

『夢と希望でみんなを癒せ♪』

菜々「!?」

『メイドアイドル戦士ウサミン』

『いっきま~す!』

菜々「!?!?!?!」

菜々「Pさん!」

菜々「ナナの歌ってる『メルヘン∞メタモルフォーゼ!』が」

菜々「街中の至るところのスピーカーやテレビから爆音で聞こえてくるんですけど!?」

P「ミンミンミン!」

菜々「何、口ずさんでるんですか!」

民衆「「「「「みんなの声援!!!!!」」」」」

菜々「!!?!?!?!?!?!?!?!?」

民衆「「「「「「「「「「「「ミンミンミン!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

菜々「....」

菜々「ウサミン星の方々がナナのことを知ってくれているとは聞いてましたけど」

菜々「こ、ここまでとは....」

菜々「しかし....」

老婆「もにょもにょ(みなぎるラブ)」ムチャムチャ

菜々「これは....」

赤ちゃん「バブー(私はウ・サ・ミン!)」バブバブ

菜々「なんというか....」

犬「ワンワン(ピンチの時には)」バウバウ

菜々「....」

菜々「流石に浸透しすぎなんじゃ....」

P「まあウサミン星人にとっては」

P「国民全員、知らない人は皆無ってレベルの曲ですからね」

菜々「....」

菜々「そこまで皆さんに歌ってもらえているなら」

菜々「ナナ、すごくうれしいです....」ウル

P「菜々さん....」

菜々「あぁ、ダメですねぇ」

菜々「この歳になると涙腺が緩んじゃって....」ニコニコ

P「....」

P「この曲が発表されて、確か3日後でしたか」

P「ウサミン星のセイカになりまして」

菜々「せいか?」

菜々「あのかき氷にたっぷりの練乳をかけた物の上に」

菜々「ミカンやパイン、小豆をのせたカップアイスや」

菜々「餅に水あめを練りこんでボンタンの果汁を加えた求肥飴で」

菜々「包み紙はオブラートなのでそのまま食べることのできるボンタン飴等を販売している」

菜々「本社を鹿児島県に置く食品製造メーカーですか?」

P「そっちのセイカじゃないですよ」

P「なんでこの流れで、俺がいきなり日本の食品製造メーカーの話を始めるんですか」

菜々「すみません、ナナにとってせいかと言われるとそれしか思いつかなくて....」

P「固有名詞じゃなくて」

P「一般的に使われる単語でも成果とか青果とか製菓とかいろいろありますよ」

菜々「それもそうですねぇ」

菜々「それで『せいか』ってなんなんですか?」

P「惑星の『星』に『歌』ですよ」

菜々「はい?」

P「意味は読んで字の如くです」

菜々「....」

菜々「星の歌?」

P「分かりやすく言うと」

P「国歌の惑星版ですね」

菜々「!?」

菜々「こ、国歌って国が決めるものでは?」

P「国王が決めました」

P「これは憲法によって規定されています」

菜々「」

菜々「明らかに公権力の私的行使じゃありませんか!?」

P「改憲の際には3歳以上のウサミン星人による国民投票が行われまして」

P「199%の人が賛成票を投じたみたいですよ」

菜々「得票率バグってますよ!?」

菜々「都心の鉄道の混雑率か何かですか!?」

P「混雑率の方もバグみたいなもんですから」

菜々「そういう話ではないですよ....」

P「菜々さん」

P「ある著名な作曲家は国家の条件として」

P「『短い事、エスニックである事、好戦的でない事』の3つを挙げたらしいです」

菜々「なるほど....?」

菜々「そう考えると『メルヘン∞メタモルフォーゼ!』は....」

P「歌詞で度々『ウサミン』が出てくるのでエスニック成分はギリギリ満たしているかもしれませんね」

菜々「でも4分44秒の曲だから全然短くないし....」

菜々「歌詞の中に『おしりぺんぺん』とか『パンチ』とか『キック』とか思いっきり出てくるし....」

菜々「そもそも悪の怪人と戦う歌だし....」

P「全然ダメじゃないですか」アハハ

菜々「結果が分かりきっているのにどうして国家の条件の話をしたんですか!?」

P「ちなみに」

P「この前の国家は『メルヘンデビュー!』でした」

菜々「国歌のフットワークが軽すぎますよ....」

続きます

今週末は忙しく書けませんでした、申し訳ありません
まだ続きます

菜々「というか」

菜々「一般的な国歌について詳しく知らないんですけど」

菜々「こういう音源って国、ウサミン星の場合は星が用意しているんですか?」

P「普通そうなんじゃないですか?」

菜々「やっぱりそうなんですかねぇ....」

P「何か気になることでも?」

菜々「あ、いえ」

菜々「なんというか」

菜々「国が正式に配布している音源にしては音質が悪いように聞こえるんですよ」

菜々「ところどころにノイズが入っているような気がしますし」

菜々「ってすみません、せっかく国歌、じゃなくて星歌に私の歌を使ってもらっているのに失礼なこと言っちゃって!」

P「まあこれこの前のライブ音源ですからねぇ」

菜々「またこのパターンですか....」

P「でも菜々さん」

P「お客さんの歓声をノイズ扱いなんて....」

菜々「菜々がそう思っているわけじゃありません!!!」

菜々「街中にある巨大スピーカーから大音量で流してるから」

菜々「ノイズみたいなよく分からない音になっちゃってるんですよ!!!」プンスカ

P「これは失敬」

菜々「しかし」

菜々「よくこんな音源手に入りますねぇ」

菜々「まだライブBlu-rayすら発売されていないのに」

P「うちの事務所の内部の内部」

P「アイドルにかなり近いところに内通者がいますからね」

菜々「そ、そんな人がいるんですか?」

P「俺です」

菜々「あぁ....」

菜々「確かにPさんならこんな音源用意するなんて楽勝ですもんね....」

P「俺だって本当は辛いんです....」

P「散々お世話になってる事務所を裏切っているみたいで....」

P「でもウサミン星と地球は国交がないし....」

P「それだと正規の手段じゃウサミン星人のみんなに....」

P「ナナさんの声を届けられないんです....!」

菜々「....」

菜々「まあこれを取り締まったところで売り上げが増えるわけではありませんし」

菜々「そもそも治外法権ですからねぇ....」

P「....」

P「なんだかんだ言って」

P「こんなに愛されているのを見てナナさんも嬉しいんじゃないですか」

菜々「....」

菜々「本当はいけないことかもしれませんけど」

菜々「すっごく嬉しいです」ニコニコ

P「ナナさんにこの光景を見せられて俺も嬉しいですよ」ニコ

菜々「ふふっ....」クスリ

P「せっかくですし、記念にウサミン星グッズでも買っていきます?」

菜々「いいですねぇ!」

菜々「あれ、でもこれって密輸になったりしません?」

P「大丈夫なんじゃないですか?」

P「帰りも東京駅着なんですから」

P「空港と違って税関もありませんし見つかり様がないですよ」

菜々「言われてみればそうですね」

P「そもそも見つかっても困る土産物なんてありませんし」

菜々「それなら買っちゃいましょうか!」ウキウキ

P「俺はちょくちょく帰ってますけど」

P「ナナさんは仕事が忙しいですし頻繁には来れませんからね」

菜々「何より」

菜々「人生初の里帰りです!」

菜々「これから何度来ても、人生初はありません!」

P「厳密には2度目ですよ」

菜々「ナナからしたらほぼ1度目みたいなものなので!」

P「何買います~?」

菜々「う~ん....」

菜々「駅で見たようなウサミン饅頭やウサミン大福はちょっと....」

P「自分の顔がでかでかとパッケージに載っているのは嫌ですか?」

菜々「嫌ではないですけど」

菜々「それを自分で買って食べたり」

菜々「人にあげたりする勇気はないです....」

P「ちなみに食べ物系の商品は大体」

P「ウサミン星自慢の科学力によって開発された超高性能食品用プリンタを使って」

P「菜々さんの顔や全身像が鮮明に描かれています」

菜々「えぇ....」

菜々「食欲無くしませんか....」

P「でもこのポップには『売れ筋』って書いてますよ」

菜々「地球とソックリな星ですけど文化は結構違ってますよね....」

菜々「とりあえず」

菜々「ナナ絡みではない物を探してみましょう」

P「そうですね」

【ウサミン星ペナント】

菜々「懐かしい雰囲気の土産物がこんなところに....」

P「今も観光地に行けばあるにはありますよ」

P「誰が買っているのかは知りませんけど」

菜々「よくある三角形ではなくて」

菜々「ウサギの形になっているんですねぇ」

菜々「カ、カワイイ....?」

P「菜々さん、誤魔化されちゃいけません」

P「やたら昭和を感じる太くて躍動感のある暑苦しい書体と」

P「原色をふんだんに使ったデザインが」

P「ポップなウサギの形と強烈にミスマッチです」

菜々「でもこれがペナントに求められているものという可能性も....」

P「じゃあ買います?」

菜々「いやいいです」

P「....」

P「これどうです?」スッ

【ウサミン星提灯】

菜々「....」

菜々「なんというか....」

菜々「『和』の心を感じますね....」

菜々「ウサミン星で感じるものではないような気がしますけど....」

P「赤提灯に勘亭流っぽいフォントで『うさみん星』ですからね」

【ウサミン星の置物】

菜々「これ、ちょっといいですねぇ」

P「なんですかこれ」

菜々「ウサミン星を模した置物みたいです」

P「土台からバネが伸びていて」

P「その上にウサミン星がくっついてるんですか」

P「なぜ無駄にビヨンビヨンするような形にしたんでしょう」

菜々「浮いているからじゃないですか?」

P「それ宇宙の星全部ですよ」

菜々「ただ冷静になって見ると」

菜々「ウサミン星というかただのウサギがバネでくっついているだけにも見えます」

P「ウサギというかウサギの生首ですよ」

【ウサミン星記念メダル】

P「よくあるやつですね」

菜々「よくあるやつです」

P「えーっと」

P「500円」

P「メダルに日付と名前を刻印できるみたいです」

菜々「それ以外に何かあるんですか?」

P「600円のもありますよ」

菜々「それは?」

P「メダルの絵柄がちょっと豪華」

菜々「....」

【木刀】

菜々「ウサミン星関係なくなっちゃいました!」

P「一応関係あるっぽいですよ」

菜々「?」

菜々「木刀の材料がウサミン星の木なんですか?」

P「ウサミン星は一昔前の大規模国家事業で」

P「星中をピンクに塗りまして」

P「その過程で星の全ての木々が刈り取られたのでそれは有り得ないです」

菜々「サラっと怖い話するのやめてくださいよ....」

P「ウサミン星要素はここです」

菜々「?」

菜々「細かい字で何か書いてありますね....」

菜々「えと....」グイッ

菜々「んん....」スーッ

P「老眼始まってます?」

菜々「つ、疲れ目なだけですっ!」

P「ほら、よく見てください」

菜々「....」ジー

P「『うさみん星』って焼き印が押してあります」

菜々「申し訳程度過ぎます....」

菜々「しかもさっきの提灯と同じフォントですし....」

【よく分からない剣のキーホルダー】

菜々「観光地どころかこれもう修学旅行ですね」

P「ウサミン星人の小中学生にも需要があるんでしょう」

菜々「文化が違うのか同じなのかもう分かりませんよ」

【ご当地キティちゃんストラップ(ウサミン星)】

菜々「えぇ....」

P「どこにでもいますね」

菜々「もしかしてこれも無許可ですか....?」

P「えーっと」ジロジロ

P「や、これたぶん公式ですね」

P「それっぽいシールが貼ってます」

菜々「地球との国交は結んでないんじゃ....」

P「流石の仕事の選ばなさ」

菜々「そういう問題ですか!?」

菜々「なんというか」

菜々「全体的にノスタルジックなものが多かったような....」

P「....ナナさん」

菜々「はい?」

P「おそらく若い子たちは」

P「これらのお土産にノスタルジーを感じないのかもしれません」

菜々「確かにそうかもしれませんねぇ」

菜々「ノスタルジーを感じるのは」

菜々「こういう昔の定番お土産を見てきた人ですからねぇ....」ノホホン

菜々「....」

菜々「あ゛っ」

菜々「....」

菜々「ナナナナナナナも全然ノスタルジー感じませんでしたよ!!!?!??」

菜々「もう始めてみる新鮮なものばかりでとっても楽しかったです!!!」

P「とっくに手遅れです」

京セラドームに置いてきた魂が漸く戻ってきたので再開しました
続きます

P「それで結局何を買ったんですか」

菜々「....」

菜々「ウサミンウサ耳です」

P「....」

P「既に何個か持ってるじゃないですか」

菜々「でもせっかくウサミン星に来たので」

菜々「本場のウサ耳も1つは持っておきたいなと....」

P「別にウサミン星人にウサ耳が生えているわけじゃないので、本場とも言えないような」

菜々「記念ですよ記念!」

菜々「こういうのはいくらあっても困りませんし!」

P「ウサ耳に対してそのセリフを言う人始めてみましたよ」

P「まあ菜々さんはライブやらなんやらでウサ耳結構使いますから」

P「強ち間違ってはいませんけど」

菜々「そういうことです!」ビシッ

菜々「あとこれですね」ゴトッ

P「なんですかこれ」

菜々「湯のみです」

P「....何の変哲もない湯のみですね」

P「でっかく『うさみん星』って書いてあるだけ」

菜々「炬燵に入ってあったまりながら」

菜々「これでお茶を飲むんです....」ウフフ

菜々「ウサミン星に思いを馳せながら....」ニコニコ

P「(この人ちょいちょい枯れてるな)」

プルルルルル

P「はいPです」ガチャ

P「あーはい」

P「了解でーす」

P「え?あぁ、大丈夫ですよ」

P「はい、それじゃあ1時間後に行きますんで」

P「はい、はーい、お願いしまーす」

P「....」ガチャリ

菜々「?」

P「国王からだったんですけど」

菜々「直臣なのに随分フランクな喋り方ですねぇ」

P「あの人、そういうのにはあんまりこだわりないんです」

菜々「へぇ~」

P「あぁそれで、国王が」

P「菜々さんの凱旋記者会見をしたいので戻ってきてほしいみたいです」

菜々「が、凱旋記者会見!?」

P「そのあと凱旋パレードもするそうですよ」

菜々「そんなことまで!?」

P「菜々さんが帰ってきたニュースはもう星中に知られていますから」

P「顔見せをしなきゃ国民感情が収まらないんですよ」

菜々「思っていたよりかなり大事になってたんですね....」

P「実は、今まで歩いていたこの一帯も」

P「国王権限で、運営に必要な最低限の人員以外人払いさせられてます」

菜々「大袈裟、ではないみたいですね、話を聞く限り」

P「そういうことです」

ピカッ

菜々「!?」

菜々「Pさん!?空から不思議な光が降りてきてますよ!?」

P「会場へ向かいましょうか」フワフワ

菜々「いやあの」フワフワ

菜々「....」フワフワ

菜々「....浮いてません?」フワフワ

P「王族専用UFOで行くんで」フワフワ

P「今それが俺たちを回収してるところです」フワフワ

菜々「人生初キャトられですねぇ....」フワフワ

P「歴史的瞬間です」フワフワ

菜々「ただ今帰りました~」

国王「おぉ、ウサミン、おかえり」

王妃「おかえりなさい」

菜々「ただいまです」

国王「会見場にもう記者たちが集まっているそうだよ」

菜々「そうですか....」

王妃「緊張してるの?」

菜々「一応してます....」

P「記者会見なんて今までたくさんやってきたのにどうしたんですか?」

菜々「だってここ、日本どころか地球ですらないので....」ゴクリ

P「大丈夫だと思いますよ~」

P「そりゃ普段と環境は違いますが」

P「ウサミン星は紛れもなく菜々さんのホームなんですから」

菜々「それはそうかもしれませんけど....」

国王「あ、ウサミンこれ」スッ

菜々「なんですか?」

国王「記者会見の質問一覧だよ」

菜々「?」

国王「質問は全て事前に用意されているんだ」

国王「つまりここに載っているものしか聞かれないから安心してくれていい」ニッコリ

王妃「そもそも質問をする記者も、王室お抱えの新聞社やテレビ局の人しか指名されないのよ」ニッコリ

王妃「仮にそれ以外の記者が手を挙げても絶対に指名されることはないわ」ニコォ

菜々「えぇ....」

国王「それでも心配なら、回答の方も用意しているがどうする?」

菜々「い、いえ、これくらいなら自分の言葉で答えます」

国王「そうかそうか、それじゃあ頑張ってくれ」

王妃「私たちも袖から見ているわ」オホホ

菜々「よろしくお願いします」ペコ

菜々「....」

菜々「こ、ここまで綿密に準備されているってことは」

菜々「この記者会見ってそんなに重要なものなんですか....?」ビクビク

P「いやぁそんなことないと思いますよ?」

菜々「でもこれじゃあ、まるで政治家の会見じゃないですか....」

P「あのお2人はこの星のトップですから」

P「こういう場では普段から気を遣っているんですよ」

菜々「そういうものですか....」

P「まあ1番は、単純に菜々さんを心配しているんじゃないですか」

P「親ですから」

菜々「な、なるほど....」

菜々「疲れたぁ~」ヒィヒィ

P「めちゃくちゃアットホームな会見でしたね」

菜々「終始和やかで、温かい雰囲気だったので助かりました....」

P「せっかく国王がメディアを統制してくれていたのに」

P「結局菜々さん、自分でぶち壊しちゃうんですもん」

菜々「だ、だって、あんなに手を挙げているのに無視して会見を無理やり終わらせるなんて」

菜々「ナナにはできませんよ....」

P「まあ結果的にトラブルは何も起きず」

P「むしろ菜々さんの積極的な姿勢で好感度はさらに上がったと思います」

菜々「正直、好感度は気になりませんけど」

菜々「この会見で、私を応援してくれている人たちに喜んでもらえるなら」

菜々「やった甲斐がありますねぇ....」ノホホン

P「アイドルの鑑」

P「さて、休む間もなくて申し訳ないんですが」

P「パレードの準備をしましょうか」

菜々「任せてください!」

続きます

P「今回のパレードはこういう感じです」

菜々「全長5キロ、一直線の道ですか....」

菜々「結構長いんですねぇ」

P「この星一番の直線道路ですから」

菜々「パレードにはぴったりの舞台というわけですね」

菜々「....」

菜々「そ、そんなに人集まるんでしょうか....」ゾッ

P「散々言ってるじゃないですか」

P「菜々さんは国民的スターなんですよ」

菜々「それはそうですけど」

菜々「ナナ、その光景を実際に見たわけじゃないし....」

菜々「....盛ってませんよね?」チラ

P「盛るわけないじゃないですか!」

菜々「だって最初に会ったファンは生き別れた実の父親と母親ですし....」

菜々「その後に街の中で爆音のナナの曲が流されていると思ったら」

菜々「実の父と母がその地区に手を回していたって話でしたし....」

P「いやいや、手を回したのは菜々さんにゆっくり買い物や散策をしてもらうためであって」

P「別に菜々さんの曲を爆音上映するためではないですから」

菜々「分かってますけど....」シュン

P「....」

P「....さっきまでの威勢はどうしたんですか」

菜々「直前になるとさすがに心配になってきまして....」アセ

P「はぁ....」

P「売れる前からその歳になるまで何年もそのキツイキャラを貫き通してきた度胸はどうしたんですか」

菜々「」

菜々「ちょっとPさん!?言っていいことと悪いことがありますよ!?」プンスカ

P「気楽にいきましょうよ」

P「どうせバスの上に乗ってゆっくりドライブするだけなんですから」

菜々「....」

菜々「....ナナが行かないと始まりませんね!」

P「その意気です」

ブゥン

P「じゃ、俺はバスの中にいますんで」

P「何かあったら言ってください」

P「インカムですぐに指示を出しますんで」

P「頑張ってください」グッ

菜々「はい!」

菜々「....」ゴクリ

ズズズン

菜々「....?」

ズズズン ズズズン

菜々「(地鳴り....?)」

ブワァッ

ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!

菜々「え?」

菜々「!!?!?!?!?!?!?!??!??!!??!?!?!?!?!?!!?」

菜々「(いや、これ....一体どれだけの人が....)」

P『菜々さーん、聞こえますかー』

菜々「」

P『菜々さーん、ファンの皆さんが待ってますよー』

菜々「....」

菜々「....Pさん」

P『はい』

菜々「出来るだけ、出来る限り」

菜々「車の速度を緩めてもらうように」

菜々「運転手の方に伝えてもらえますか」

P『....了解です』

菜々「あと」

菜々「マイク、のようなものって今から用意できますか」

P『人使いが荒いなぁ』

菜々「....すみません」

P『偶然なんですけど』

P『菜々さんの足元に置いてあるケースの中身』

P『なかなかの性能を誇る拡声器なんですよ』

菜々「!」

P『ウサミン星の科学技術の産物なんで』

P『人体への影響なく』

P『このくらいの喧騒を軽く吹き飛ばせるんじゃないですかね』ニヤリ

菜々「....ありがとうございます!」

菜々「....」

ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!
ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン! ウサミン!

菜々「....」コクリ

菜々「みっなさ~~~~~~~~~ん!!!!!!」

シン

菜々「....」

菜々「ナッナで~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~す!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

菜々「ただいま~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

菜々「ゼェ ハァ」

P「お疲れ様でしたー」

菜々「ゼェ ハァ」

P「菜々さんらしくないですよ」

P「こんなに押しまくるなんて」

菜々「ゼェ ハァ」

P「予定じゃ1時間の予定だったのに3時間半はやりすぎですよ」

P「時速1.6キロってなんですか、歩き以下ですよ」

菜々「ゼェ ハァ」

P「....」

P「まったく、パレードなのに頑張りすぎなんですよ菜々さん」

P「もう若くないんですから」

菜々「ゼェ ハァ」

P「しかしとんでもなかったですねー」

P「あまりにも多すぎたので正確な数は分かりませんけど」

P「推定でも数百万人はいたらしいです」

菜々「ゼェ ハァ」

P「テレビやネット中継の視聴者数も合わせたらどんな数になるのか、想像すらできないですよ」

菜々「ゼェ ハァ」

P「国王がパレードしてもせいぜい数万人ですからねー」

P「菜々さん、やろうと思えば政権を奪取出来るんじゃないですか?」

菜々「ゼェ ハァ」

P「....」

P「ま、他ことは休憩してからにしましょうか」

P「ゆっくり休んでてください」

菜々「....!」ガシッ

P「?」

菜々「....」

菜々「....゛」ゼーハー

P「はい?」

菜々「....ブ」ゼーハー

菜々「....ライブ」ゼーハー

P「!?」

P「な、菜々さん....?」

P「今なんと....???」

菜々「ライブ、しましょう」ゼーハー

P「!?!?!?!?!?!!!?!?!?」

そろそろ佳境です
続きます

P「菜々さん、酸欠と疲労で意識レベルが低下しているんですか?」

菜々「私は正気です」

P「....」

菜々「あんな、あんな光景を見せられて」

菜々「いや、見せてくれたこの星の人たちに対して」

菜々「何もせず、そのまま背を向けるなんてこと」

菜々「私にはできません!」

P「で、でも、いきなりライブって言っても....」

P「菜々さんだって、ライブをやるのにどれだけの時間とお金がかかるかは知ってますよね?」

菜々「それは....そうかもしれませんけど....」

菜々「別に大きな会場でなくてもいいです!」

菜々「ナナは直接、ファンの人たちに

P「それだと尚更問題ですよ」

P「さっきの人の数を見ましたよね」

P「準備不足のまま小さなライブをしても」

P「殺到したお客さんの統制が取れなくなったらどうするんですか」

菜々「っ....」

P「....あれを見せられたアイドルが何を望むか、俺にだってわかります」

P「でも、今日集まってくれた人たちは対価を求めていたわけありません」

P「今まで、ここから遠く離れた地球で頑張ってきた菜々さんから」

P「たくさんのものを貰ったから、来てくれたんです」

菜々「....」

P「....伝え忘れていましたが」

P「地球とウサミン星では時間の流れが異なります」

菜々「えぇっ!?」

P「地球時間では7日間の休暇でしたが」

P「ウサミン星換算だと、明後日の夜までにはここを出発しないといけません」

菜々「そんな....」

P「....」

P「菜々さん」

P「あなたの声を、想いを伝える手段はいくらでもあります」

P「時間も、ライブをするには少ないですが、まだあと2日あります」

P「出来る限りのことを、やり尽す、これでどうにか堪えてくれませんか」

菜々「....」

菜々「....」

菜々「....わ

国王「話は聞かせてもらったよ」ニュッ

王妃「まったく、この星のトップを差し置いて内緒話なんて水臭いわ」ニュニュッ

P「わぁっ!?」

菜々「!!!」

国王「....」

国王「ウサミン」

菜々「....」

菜々「はい」

国王「どうしてもライブがしたいのかい」ジッ

菜々「はい」

菜々「なので、お力を貸していただけませんか」ペコ

国王「わかった」

菜々「ありがとうございます!!!」ペコペコ

P「答えを出すのが早すぎる」

王妃「娘に頭を下げられちゃねぇ」クスクス

P「いやでもですねぇ」

P「ライブってめちゃめちゃお金がかかるんですよ?」

P「それに菜々さん本人の練習だって全然足りてません」

P「会場の当てはあるんですか?」

P「他にもまだまだ考えなきゃいけないことはありますし」

P「それを一番遅くとも明後日までには済ませなきゃいけないんですよ?」

P「いくら国王とはいえとても無理ですよ....」

菜々「....」ショボン

国王「むぅ....」

国王「....」

国王「大臣たちを呼ぼう」

P「!?」

国王「会議を開いてライブの計画を立ててくる」

菜々「!!?!?!?」

国王「方針が決まったらまた連絡するから、それまでゆっくりしておいてくれ」ニコ

王妃「どうなるのかしら♪」ウフフ

スタスタ

P「....」

菜々「....」

P「....どうするんですか」

菜々「ナナ、何が何だか....」

P「国政が絡んできちゃいましたよ」

菜々「....もしかして」

菜々「大事、になってます?」

P「ええもうめちゃくちゃに」

菜々「あわわ」

国王「大臣、そして多数の専門家を呼んだ会議の結果」

国王「無事、ライブを開く算段が付いた」

菜々「!!!」

菜々「ありがとうございます!!!!」ペコペコ

P「....大丈夫なんですか?」

国王「あぁ、専門家のお墨付きだ」

国王「まあ国王特権もほんのちょっとだけ使ったが」ニヤ

P「その内クーデター起こされますよ」

王妃「そりゃ私的なことで権力を濫用したらそうなるかもしれないけど」

王妃「ウサミン絡みならたぶん大丈夫よ」

P「....確かに」

国王「まず会場だが」

国王「この星で一番大きな公園を使い、野外ライブという形で行う」

P「あそこですか」

菜々「規模はどれくらいになりますか?」

国王「うむ、あの公園を使った野外ライブを行ったことはないが」

国王「専門家チームの推定では最大で5000万人の収容を見込めるらしい」

菜々「え゛っ゛」

王妃「当日は我が星自慢の自動警備システムが会場内外の警備と案内・誘導を行うから安心していいのよ」

菜々「い、いえ、そういう意味ではなくて」

国王「最新鋭の設備を使って」

国王「5000万人の観客1人1人にウサミンの姿も声もはっきりと確実に届くようにするから」

国王「そっちも心配しなくていいぞ」アッハッハ

菜々「どういう技術なんですか....」ゾッ

国王「ついでに、希望する世帯すべてに無料で立体映像を生配信するぞ!」

菜々「....ナナが考えていたよりもずっととんでもない所なんでしょうか」ヒソヒソ

P「....その通りです」ヒソヒソ

国王「セットリストだが」

国王「ウサミンの練習時間をあまり確保できないことを踏まえて」

国王「数か月前のライブでウサミンが歌った曲だけで構成しようと思うんだが」

国王「どうだろう」

P「曲数的にはミニライブくらいになっちゃいますけど、仕方ないですね」

菜々「....」

菜々「今、次のライブの方の練習に入っているので」

菜々「そっちの曲も入れちゃいましょう!」

P「」

菜々「ついでに他にも歌える曲を何曲か足しましょうか!」

P「」

P「」

P「」

P「ハッ」パチリ

P「ちょっと菜々さん!?何言ってるんですか!!!」

菜々「だって、せっかくライブをするのにたった数曲じゃ少なすぎますよ!」

P「むしろそうじゃないとあなたが苦しいでしょ!」

P「そもそも、ライブの曲って言ってもほとんどが複数人で歌う前提じゃないですか!」

P「自分のパート以外も、お客さんに見せていいくらい」

P「いや、お客さんを圧倒できるほどに、完璧に歌って踊れるんですか!?」

菜々「....」

菜々「はい」コクリ

P「....」

P「だそうです」

国王「ふっ、君だって分かっていたんだろ?」

P「....」

P[どうでしょうね」

菜々「ナナのことに関しては」

菜々「ナナよりも詳しいですから」ニコニコ

P「....やめてくださいよ」フン

王妃「さすが、敏腕プロデューサーさんは違うわ」クスクス

国王「とはいっても、色々と準備に不安は尽きないだろうから」

国王「特別にあの部屋を使えるようにしておいたよ」

P「?」

菜々「あの部屋とは?」

王妃「とある研究所で起こった事故の際に偶然産まれた部屋のことよ」

王妃「その部屋の中は、なんだかよく分からないけど色々バグっていて」

王妃「中で1週間過ごしても、外では1日しか経過しないの」

国王「通称『精神と時の部屋』だ」

P「まんまじゃないですか」

国王「いくつかの点が未知なうえに、有用すぎるから」

国王「普段は憲法で使用を禁じているんだが」

国王「憲法解釈を変えることで、今回だけ特別に使ってよいことにしたんだ」

P「えぇ....」

P「いやー気持ちはありがたいですけど」

P「そんな危険なところに菜々さんを入れられませんよ」

菜々「行きます!」

P「....もー」

P「何かあったらどうするんですか」

菜々「お2人が、何かあるかもしれないところに私を入れるはずありませんから」

国王「当たり前じゃないか」

王妃「囚人たちを使った人体実験によって」

王妃「今は部屋の安全性が確保されているわ」

P「....」

P「....」

P「菜々さん」

菜々「はい」

P「歳とっちゃいますけど、いいんですか」ジロ

菜々「っ....!!!」ギリッ

菜々「....................」

菜々「........................................」

菜々「........................................................................」

菜々「....................................................................................1週間くらい」

菜々「どうってことありませんよ!!!」バーン!

続きます

~翌日~

P「....」チラ

P「遅いな....」

P「これじゃもう....」

ガシャン

ウィーーーーン

P「!」

プシューーー

モクモク

P「!!!」

菜々「....」

P「菜々さんっ!」ダッ

P「よく無事に戻ってきてくれました!」

菜々「....」

菜々「お待たせしました」ニコ

P「(さすが菜々さん、笑顔を作ってはいる....)」

P「(しかし....)」

菜々「....」ボロボロ

P「(体中に貼られた夥しい数の湿布....)」

P「(腰に巻かれたコルセット)」

P「(膝にはサポーター)」

P「(誰がどう見てもボロボロじゃないか....)」ウッ

菜々「どうかしましたか?」

P「....見ればわかります」

P「菜々さんが並々ならない覚悟を持って」

P「1週間の間、壮絶な特訓を積んで来たこと」

菜々「....」

P「まるで何歳も年を重ねたようです」

菜々「いっ、1週間しか重ねてません!!!!」ペシペシ

P「それはさておき」

菜々「ナナにとってはかなり重要なところなんですよ!?」

P「....」

P「いけますか」

菜々「はい」コクリ

P「了解です」

P「会場の設営や演出等々、全て事前に決めた通りに滞りなく完了しています」

菜々「分かりました」

P「もうそんなに時間はありませんからね」

菜々「すみません、ナナのせいでリハーサルが出来なくなってしまって....」

P「菜々さんがそれで良いって思ったから、この時間まで練習をしてたんでしょ」

菜々「....良い、というわけではありませんよ」

菜々「ファンの方々のために最善を尽くすんだったら」

菜々「時間をかけてパフォーマンスを完璧にして」

菜々「コンディションを整えて」

菜々「当然リハーサルだってして」

菜々「普段のライブのように全ての憂いを無くしてから舞台に立つべきなんです」

P「でも、今回はそうもいかなかったわけですよね」

菜々「はい....」

菜々「でも後悔はしていません」グッ

菜々「そして」

菜々「誰にも後悔はさせません」

P「菜々さん....」

菜々「今、ナナに出来る最上級のパフォーマンス」

菜々「ではありません」

菜々「これまでの中で一番のものを」

P「....」

P「菜々さんは毎回一番を更新してますからね」

P「今回も楽勝ですよ」ブイ

菜々「それじゃあそろそろ準備に行ってきますね」

P「超特急でメイクやらなんやらをしてもらってください」

菜々「は~い」タッタッ

P「....」

P「....声をかけなくても良かったんですか」

国王「相変わらず君は鋭いな」

国王「それでこそ私が選んだ男」

P「....」

P「あなたが今、声をかけても良かったんじゃないかと」

国王「....」

P「というかよくかけなかったなと思いました」

国王「....」

国王「....私も声をかけようとしたんだがね」

国王「あんなにボロボロになっても」

国王「ファンたちのことを考えて健気に笑い」

国王「前に進むウサミンを見たら」

国王「....」

国王「涙が止まらなくなりそうだったからやめた」

P「親バカ」

王妃「というか泣いてたじゃない」

国王「お前っ、それは言うなよ!」プンプン

王妃「こんなところでくだらない見栄張っても仕方ないわよ」

国王「王ってのは見栄張ってナンボなんだよ!」プンスカ

P「(この人達見てると、常にウサミン星への不安が付きまとうんだよなぁ)」

国王「ライブが終わるまでは、私は見守るだけにするよ」

王妃「....」

王妃「....終わったらウサミンに」

王妃「あの話をしなければいけないしね」

国王「....そうだな」

P「....」

菜々「どうでしょう、Pさん」クルクル

P「....」

P「....」

P「うーん....」

菜々「うーん!?」

P「めちゃくちゃ可愛いです」ピース

菜々「////」カァ

P「可愛すぎて適切な言葉がなかなか見つかりませんでした」

菜々「それで、うーん....ですか」

P「さっきまで全身から湿布の臭いを漂わせてた人とは思えません」

菜々「それは言わないでください....」

P「あ、膝と腰は大丈夫ですか?」

菜々「な、なんとか....」

菜々「鎮痛剤も飲みましたしライブの間は持ってくれる....はずです....」

P「ソロで15曲ですか....」

P「こんなにハードなライブ、ありましたっけ」

菜々「内容だけじゃなく、準備が突貫工事だったことも含めると歴代1位かもしれません」

P「ですよねぇ」

菜々「でも不安は皆無です」

P「これは偶然」

菜々「?」

P「俺もそうなんですよ」ニカッ

菜々「....」ニコ

菜々「楽しんできます」スタスタ

P「....」

P「....」フッ

P「ウサミン星の歴史に残る2時間になるかもなぁ」ニヤリ

国王「ん?今日を国民の祝日にする?」ニュン

王妃「名前を考えなくっちゃ♪」

P「そういう話じゃないです」

続きます

パッ

菜々「....」

ヴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

菜々「....」

菜々『ありがとうございます』

ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ

菜々「....」

ザワザワザワザワザワザワザワザワザワ

菜々「....」

ザワザワ........ザワ................

菜々「....」

菜々『今日は、ナナのライブにこんなにもたくさん集まってくれて』

菜々『本当にありがとうございます』ペコ

菜々『またこのライブは、全国で生中継もされているということで』

菜々『テレビの前で見てくれている皆さんも、ありがとうございます』ペコ

菜々「....」

菜々『発表が直前になってしまって、すみませんでした』

菜々『実は、つい昨日まで』

菜々『このライブの計画なんてなかったんです』

菜々『....でも』

菜々『ウサミン星へ帰ってきてようやく』

菜々『この星の皆さんが』

菜々『遠く離れた地球にいるナナを、ずっと応援してくれていたことを知りました』

菜々『そして昨日のパレードで』

菜々『その応援が、声援が、どれだけ力強いものかを知りました』

菜々「....」

菜々『だからナナは、ナナにできる全てをこのライブに乗せて』

菜々『今まで皆さんがくれたものを』

菜々『少しでもお返しできればと思っています』

パチ....パチパチ........

パチパチパチ....パチパチパチパチパチパチ....

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!!!!!!!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

菜々「....」

菜々『....これから2時間』

菜々『着いてきてください』ジッ

シン....

菜々「....」

菜々「....っ」スゥー

菜々『いけんのかお前らあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!』バーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

菜々『それじゃあ1曲目!!!!!』

菜々『いっきま~す!!!!!!!』

イエェエエエェェェェェエエエエエエエエエエエエエェエェェェェェエエエエエエエエエェェギャアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァx!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ピカッ

ピュ----イーー-----ーー♪

『その時空から 不思議な光が降りてきたのです』

アレハダレダアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ダレダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ダレダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ダレナンダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

『それは』

シン............

ゴクリ........................

菜々『ナナでーーーーーーーす!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛
オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛
オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛

国王「そろそろか....」

王妃「....」チラ

王妃「本当にいいの?観に行かなくても」

国王「....」

国王「....それは」

国王「死ぬほど行きたいよ!!!当たり前だろ!!!!!!!」

国王「でもなあ!私がライブを観に行ったら誰がこっちをするんだ!!!!!!!!」

国王「クソー!!!!!今すぐ誰か政権交代してくれぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ジタバタ

王妃「国王は辛いわねぇ」

国王「本当だよ....」ゲンナリ

「陛下!会場周辺の気温が急激に上がり始めています!」

「陛下!会場を震源とする地震が発生しています!」

国王「....来たか」

「まずいです!会場周辺だけではなく、星全体の気温が急激に上昇しています!」

王妃「生中継やってるから当然ねぇ....」

国王「....」

王妃「あなた?」

国王「ウサミンのライブに、星中が喜んでいる....」ウルウル

王妃「感傷に浸っている場合じゃないでしょ!!!」

国王「おぉそうだった」

「陛下!気温の上昇が止まりません!」

「時間を経るごとに揺れも増しています!」

「このままではウサミン星が持ちません!!!!!」

国王「....」

国王「....君たち」

国王「ウサミンのライブを、リアルタイムで見せてあげられなくて」

国王「すまない」ペコ

「陛下っ!?」

「やめてください!?」

国王「この借りは必ず返す」

国王「具体的にはあとで生ウサミンと合わせてあげるつもりだ」

「一生ついていきます!」

「握手はOKですか!?」

「ダメに決まってんだろ馬鹿か!?」

「写真まではセーフですよね!?」

「せめてサインなら....」

王妃「そんな適当な約束して大丈夫なの?」

国王「....」

国王「....」

国王「....改めまして」

国王「君たち」

国王「我が星の科学技術は何のために発展してきたのか」

国王「わかるかね」

「「「「「....................」」」」」

国王「....それは」

国王「今日、この日のためだ!!!!!!!」バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

国王「ウサミン星の人々が、何の心配事もなくライブに酔いしれるために」

国王「我々でこの危機を救うんだ!!!!!!!!!!!!!」グッ

「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

「「「「「「「はいっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」

王妃「珍しくトップらしいことやってるじゃない」クスクス

国王「ふっ....」クスリ

国王「....娘の晴れ舞台の邪魔を許す父親なんて」

国王「宇宙中探し回ってもいないんじゃないかな?」ニヤリ

王妃「....その通りだわ」ニッコリ

続きます

菜々「....」ポケー

P「菜々さん」

菜々「....」ポケー

P「ダメですね」

国王「あれだけのことをやり遂げたんだ」

国王「仕方ないな」

P「誰よりも菜々さん本人が、現実感がないのかもしれません」

P「あ、そういえばそっちは大丈夫でした?」

国王「大丈夫じゃないに決まってるだろうが!」

P「ですよねー」

国王「ウサミン星始まって以来の危機だったんだ」

国王「今までの科学技術の積み重ねがなかったらどうなっていたことか」

王妃「恒星になりかけてたわよ」

P「そうはならないでしょ....」

菜々「ハッ!?」

P「菜々さんが帰ってきた」

菜々「Pさん!?今何時ですか!?」

P「20時半くらいですね」

菜々「えぇっ!?ライブが終わってからもうそんなに....」

P「ずっとボーっとしてましたからねぇ」

P「余韻に浸ってるのを邪魔するわけにもいきませんし」

菜々「余韻、余韻なんでしょうか....?」

P「?」

菜々「なんだか、いくら時間が経っても」

菜々「さっきのライブのことを頭が処理しきれないんです」

菜々「何もかもが初めてで、イレギュラーで、それなのに来てくれた皆さんの歓声は温かくて」

P「もはや温かいってレベルじゃなかったと思いますけどね」

菜々「でもそのおかげで」

菜々「ライブが夢だったなんて思わせてくれないんです」

P「あんなのを目の当りにしたら、現実だと信じるしかないですもん」

菜々「今抱いている感情も全く整理できません」

菜々「こんなのも初めてですねぇ」ウフフ

P「....」

P「菜々さん」

菜々「?」

P「満足できましたか?」

菜々「....ライブが終わった直後にそれ聞いちゃいます?」

P「一応これ聞いとかないと終われませんから」

菜々「もー....」

菜々「....」

菜々「これで満足できなかったなんて言ったら、私一生満たされることがなくなりますよ」クスクス

P「やーでも突然ライブやるとか言い出す菜々さんですから」

菜々「その節はご迷惑をおかけしました!」ペコ

P「『満足できなかったから明日もライブやる!!!』とかなったらたまんないですし」

菜々「そんなことしたらナナの身体どうなっちゃうんでしょう....」

P「今は何ともないんですか?」

菜々「はい、今は」

P「あっ....」

菜々「明日以降のことは....頼みます....」ガクッ

P「気を強く持ってください、出来る限りのサポートはしますから」

菜々「怖い....朝を迎えたくない....」ゲンナリ

P「身体との戦いは1週間くらい続きそうですね....」

菜々「1週間で済むんでしょうか....」ゲッソリ

菜々「そういえば、もう明日には帰るんですよね?」

菜々「出発は何時くらいですか?」

菜々「急いで荷造りをしておかないと」

P「....」

P「その話の前に、国王が話したいことがあるそうです」

菜々「今からですか?」

P「どうしても今日中がいいと」

菜々「分かりました」

P「すみませんこんな時に」

菜々「いえいえ、今回の件では国王さんにも散々お世話になりましたから」

菜々「自分の口で報告するべきですよね!」

P「....そうかもしれません」

菜々「じゃあちょっと行ってきますね」タッ

P「....」

菜々「こんばんは~」

国王「おぉ、ウサミン!

王妃「ライブお疲れ様!」

菜々「こちらこそ、お2人にはもう数えきれないくらいお世話になりました!」ペコペコ

国王「いいんだいいんだ、このくらい親の仕事としては当然さ」ニコ

王妃「そうよ、初めて親らしいことをさせてもらえてむしろこっちが感謝したいくらいだわ」ニッコリ

菜々「そんなこと....」ウル

国王「....」

国王「ぅぅっ....」ウルウル

王妃「あなたが泣く所じゃないでしょ!」

国王「しょうがないだろ....」ウルウル

国王「ウサミンのあんな顔見せられたら涙腺ガバガバおじさんには耐えられないよ....」ウルウル

菜々「ふふっ....」ポロ

菜々「それで、お話というのは?」

国王「うむ....」

国王「単刀直入に言おう」

国王「ウサミン」

菜々「はい」

国王「この星に戻ってくる気はないかね」ジッ

菜々「....戻る?」

王妃「この星の人たちがどれだけあなたのことを慕っているかは」

王妃「僅かな時間でも十分に伝わったと思うの」

菜々「それはもう....本当に....」

国王「もちろん、ウサミンが地球でほとんどの時間を過ごしてきて」

国王「大切なものが全てそこにあることは知っている」

国王「心の故郷がウサミン星ではないことは分かっているんだ」

菜々「....」

国王「だが、この星のことを知ってからの2日間」

国王「たくさんのものに触れて、ウサミン自身、何か感じることがあったかもしれない」

国王「もしそうだったなら、地球へ帰る以外の選択肢も頭の片隅には入れておいてほしかったんだ」

菜々「....」

王妃「親が子を引き留めようとするなんて、みっともないわよねぇ」

菜々「....そんなこと、ナナは思いません」

王妃「ありがとう、そう言ってもらえると私たちも少し報われるわ」ニコ

王妃「....」

王妃「もしもあなたが残ってくれるなら」

王妃「ゆくゆくはこの星を治めて欲しいと思っているの」

菜々「え゛っ!?」

国王「というか、もし残ったなら国民が黙っていないと思う」

王妃「私たちなんてすぐにポイでしょうね」クスクス

菜々「えぇ....」

国王「もちろんウサミンには地球の生活があるから、今すぐにという話じゃないんだ」

王妃「向こうで一区切り付けてから、こっちに戻ってきてくれてもいいの」

菜々「....」

国王「....明日の昼に出発するんだろう?」

国王「そんなに時間はないが、少しだけ考えてみてくれないかい」

菜々「....」

菜々「....いえ」

菜々「今ここで、お答えします」

2人「....」

菜々「....」

菜々「....ごめんなさい」ペコ

菜々「とっても有り難いお話なんですが、ナナはウサミン星には戻れません」

2人「....」

菜々「何があっても、あの星で、あの場所で」

菜々「アイドルを続けます」

国王「....」

国王「....そうか」

国王「まぁ、当たり前だよなぁ」

王妃「ダメ元だったものね」

菜々「本当にすみません....」

国王「いやいや、ウサミンが謝ることじゃないよ」

王妃「こちらこそ、答えづらいことを聞いちゃってごめんなさい」

国王「....」

国王「地球、消しちゃおっかな」ボソ

菜々「!!?!?!?!?!?」

菜々「ナナナナナナナはウサミン星に残りますからそれだけは!!!!」

国王「ごめんごめん!冗談だよ冗談!」

菜々「冗談に聞こえませんよ!?」

国王「....」

国王「娘を奪った地球が憎い....」ボソボソ

菜々「」

王妃「奪ったも何も原因は私たちの不注意じゃない」

国王「それもそうか」

菜々「心臓と腰に悪いのでやめてください....」

続きます

ガチャ

菜々「....」

P「....おかえりなさい」

P「....」

P「まあ色々と思うところはあるでしょうけど」

P「とりあえず明日までゆっくりと考えてみてください」

P「菜々さんが出した答えなら俺はどちらでも....」

菜々「もうお断りしたので大丈夫です」ニコニコ

P「あ、そうですか....へぇ....」

P「....」

P「意外と即決だったんですね」

菜々「そうですねぇ....」

P「....」

P「俺としては」

P「菜々さん、結構この星を気に入ってる感じがしたんで」

P「どっちの選択肢もあり得るのかなって思ってましたよ」

菜々「....」

菜々「私にとっては、今地球で応援してくれている人たちも」

菜々「ウサミン星で応援してくれている人たちも」

菜々「どちらも等しく、大切な存在です」

菜々「もちろん事務所にいる他のアイドルの子たちやスタッフの方々もそうですし」

菜々「地球とウサミン星、どちらにもいる親もそうです」

菜々「完全に同じなんですよ」

菜々「だから私は、今までどおりを選んだ、それだけなんです」

P「....」

菜々「....」

菜々「Pさんは即決って言ってくれましたけど」

菜々「....」

菜々「....決めてなんかいませんよ」

菜々「決められなかったから、地球を選んだ....」

菜々「....」

菜々「これでよかったんでしょうか....」ニコ

P「....」

P「別にどっちでもいいじゃないですか」

P「人間みんなそんなもんですよ」

菜々「....」

菜々「でもナナ、人間じゃありませんし....」

P「え?」

菜々「というか、Pさんだって人間じゃないですよ」

P「俺たち人間じゃないんですか?」

菜々「ナナたちってウサミン星人ですよね」

菜々「人間って地球にいる人のことを言うんじゃないですか?」

P「....」

P「確かに言われてみればそうかもしれませんね」

P「地球にいる人間とウサミン星人はほぼ変わりませんけど」

P「住んでいる場所からして、ホモ・サピエンスとは全く別の種っぽいですし」

P「ウサミン星人の始祖が地球からの移住者だったらホモ・サピエンスと同種になるんですかね」

P「地球に住む人間とはほぼ変わらないとしても」

P「そもそも人間という言葉自体がウサミン星人のような存在の可能性を考えずに作られているような気がするんですよね」

P「地球から見たら我々は当然宇宙人ですし」

菜々「むむむ....」

P「まあ難しい話は置いといて」

P「菜々さんは人間でありウサミン星人でもあるってことでいいじゃないですか」

菜々「....」

P「二重国籍の星版みたいな感じですよ」

菜々「分かりやすい表現」

P「菜々さんの気持ちはわかります」

P「誰もその選択を責める人がいなくても」

P「菜々さん自身の心だけがずっと、責め続けるのかもしれません」

菜々「....」

P「菜々さんはこれまで、地球のファンたちのために頑張ってきました」

P「ウサミン星のことを知ったこれからは」

P「2倍頑張る、これでどうでしょう」

菜々「....」

P「ウサミン星のために!」

菜々「!」

菜々「....そうするしかないですね!」

菜々「いえ、2倍と言わず100倍!1000倍!!10000倍!!!」

菜々「遠く離れたこの星まで、ウサミンパワーを届けます!!!」

P「その意気です!」

P「今回、菜々さん1人で2時間ライブが出来るってことがわかりましたから」

P「今後はそういう仕事もバンバン入れていきます」

菜々「え゛っ!?」

P「次は2時間ライブを昼夜2公演、3会場を1か月で回るツアーでもしましょうか」

菜々「ナ、ナナ、体力が持つのは1時間だって歌の中で言ってるのでそれはちょっと....」

菜々「ファンの方に嘘はつけませんし....」

P「頑張りましょう!オー!」

菜々「....」

菜々「....お、お~」

続きます
次かその次で終わりです

菜々「....」

菜々「Pさんは」

P「?」

菜々「Pさんは、このまま残ったりとか」

菜々「しないんですか?」

P「へ?」

P「なんでそういう話になるんですか」

菜々「だって、ナナが産まれたのはこの星でも」

菜々「育ったのは地球ですし、過ごした時間も地球の方がずっと長いです」

菜々「だけどPさんは違うじゃないですか」

P「まあそれはそうですけど....」

菜々「ナナは地球へ戻ることを選びました」

菜々「じゃあPさんは?」

P「....」

菜々「このままナナのために、Pさんを付き合わせていいのかなって」

P「....どうしてそんなこと」

菜々「今まで、あまりPさんのプライベートなところを見たことがなかったからでしょうか」

菜々「この星で過ごすPさんの表情や、言葉、一つ一つが普段と違って見えました」

菜々「それで思ったんです」

菜々「やっぱりここは、Pさんの故郷なんだって」

P「....」

菜々「....」

菜々「もしPさんにとって、地球よりウサミン星の方が良いなら」

菜々「そっちを選んでもらってかまいません」

P「菜々さん....」

菜々「さっきのライブ見てもらえたので分かりますよね」

菜々「ナナはもう大丈夫だって」ニッコリ

P「....」

P「菜々さんは勘違いしてますよ」

菜々「....?」

P「言わせてもらいますけど」

P「俺が地球にいるのが菜々さんのためなんておこがましいにも程がありますよ」

菜々「!?」

P「そりゃ最初の頃は、生まれ育った故郷から突然見ず知らずの星に飛ばされて」

P「しかも縁もゆかりもない女の子を見守れなんて、ふざけんなって思いましたよ」

P「この時は完全に菜々さんのためでした」

P「でもね、俺だって何年も地球にいて」

P「ずっと生きてきたんです」

P「そしたら」

P「色々と、大事なものができすぎちゃいました」

菜々「....」

P「今、俺が地球にいるのは」

P「紛れもなく自分のためですよ」

菜々「Pさん....」

P「要するに俺はウサミン星に戻る気ゼロです」ペカー

P「というか」

P「めちゃくちゃ気を使ってもらって申し訳ないんですけど」

P「俺この星に帰りたいって思ったことないんで」

菜々「えぇっ!?」

菜々「そ、それはちょっと冷たすぎませんか!?」

P「日本人だって故郷を捨てて東京に一極集中してるじゃないですか」

P「誰だってあんなもんですよ」

菜々「」

菜々「この星に来てからあんなに楽しそうにしてたのに!?」

P「いつもの帰省じゃああはなりませんよ」

P「菜々さんとこの星に帰る」

P「俺の夢が叶ったから嬉しかったし、楽しかったんです」

菜々「ぅ゛ぅ゛............////」ボッ

P「それに、時間がかかるとはいえ交通手段もありますからね」

P「どうしてもウサミン星に残る必要性がありません」

菜々「そうですか....」

P「さ、こんなくだらないことはなしてる暇あったらさっさと寝ましょ」

菜々「くだらないって....」

P「ハードなライブをした上に明日も長旅なんですから、体休めとかないと」

菜々「なんか色々ありすぎて忘れかけてましたけどそうでした....」

P「出発時間までに荷造り済ませといてくださいね!」

P「それじゃ、おやすみなさい!」

菜々「おやすみなさ~い」フリフリ

タッタッ

菜々「....」

菜々「....」

菜々「....よかったぁ」ヘナヘナ

国王「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!」グズグズ

王妃「ちょっとあなた!もっと国王らしくしてください!」

国王「だっで゛....ウ゛サ゛ミ゛ン゛カ゛....」

国王「....」

国王「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!」ズビズバ

王妃「もう....」

P「やばいっすね」

菜々「首長がやっていい顔じゃないですよ....」

国王「ウ゛ッ....ウサミン....」

菜々「はい!」

国王「また、来てくれるかな?」

P「なんでいいともの聞き方なんですか」

菜々「もちろんです!」

王妃「ごめんなさいね、騒々しいお別れになっちゃって」アキレ

菜々「いえ、私のために人目も憚らず泣いて頂けるなんて」

菜々「すごくうれしいです」ニコニコ

王妃「....」

王妃「....」

王妃「っ....」ギュッ

菜々「!?」

王妃「あなたはピンと来ないかもしれないけど」

王妃「私にとっては大切な娘よ」

王妃「応援してるわ」ウルウル

菜々「....」

菜々「....見ていてください」

国王「ヴアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」ドタドタ

国王「ウサミンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!」ギュゥッ

菜々「グェグルジイ」

P「それじゃあ、失礼します」

国王「いつでも帰ってきていいんだよ」

王妃「あなたが帰ってきてほしいだけでしょ」

菜々「絶対にまた来ます」

菜々「....」

菜々「....」

菜々「....その時は」

菜々「お父さん、お母さんと呼べるようになって戻ってきます」ニコッ

国王「」

王妃「....楽しみに待ってる」ウフフ

ドアガ シマリマス

プシュー

ガタンゴトン

ガタ ゴト

スゥ

王妃「....」

王妃「....」ペシペシ

国王「ハッ!?」

国王「気絶してた」

王妃「もう行っちゃったわよ」

国王「ふむ....」

国王「たぶん別れの瞬間を見てたら心が耐えられなかっただろうから丁度良かったよ」

王妃「そう....」

王妃「(さっきの醜態よりさらに下があるのね....)」

国王「....さて」

国王「とりあえずウサミン星-東京間の所要時間を30分短縮するのを目標にするか!」

王妃「そうなったら歌の歌詞も変えなきゃいけなくなるじゃない」

国王「ウサミン星限定バージョンってことにしよう」

王妃「まったく....」

菜々「....」ボー

P「....」

P「名残惜しいですか?」

菜々「いえ....」

菜々「何度見てもウサミン星って酷い見た目だな~って」

P「それは言わないであげてください」

菜々「冗談です」クスクス

菜々「旅行の後って、少なからず喪失感があるものですけど」

菜々「今感じているこれは、また別かもしれません」

P「....」

菜々「....」

菜々「....」ポロ

菜々「....これじゃ国王さんのこと笑えませんね」ポロポロ

P「....」ゴソゴソ

P「....ハンカチ使います?」

菜々「....」ポロポロ

菜々「....いえ」ポロッ

P「....」コクリ

菜々「....」ポロポロ

P「いよいよこれがツアーファイナルですかー」

P「俺もそこそこの間プロデューサー業やってますけど」

P「こんなにデカイ規模をやるのは初めてでしたからねぇ」

P「なんというか、感無量ですよ」

菜々「大変なご迷惑と無茶をさせてしまってすみません」ペコ

P「確かに無茶はしましたけど、迷惑だなんてそんなことないですよ」

P「これが俺の仕事なんで」

菜々「....ありがとうございます」ペコペコ

P「まぁ、47都道府県を全制覇するソロツアーをやるって言いだした時は」

P「ついに脳にも衰えが来たかと思いましたけど」

菜々「『にも』ってなんですか!?」

P「クマノミじゃないですよ?」

菜々「分かってます!!!」

P「菜々さんって、身体の至る所が衰えてるから」

菜々「ぐぐぐ...」

P「とりあえずここまで菜々さんが五体満足で来られてよかったですよ」

菜々「....」

菜々「....それはこの公演が終わってからです」

P「....それもそうですね」

P「菜々さん、スタンバイお願いします」

菜々「....」スゥ

菜々「....」ハァ

菜々「よし!」

P「....」グッ

菜々『皆さん~!こんにちは~』

菜々『ウサミン星からやってきました!歌って踊れる声優アイドル、安部菜々です!』

ワァァァァァァァァァァァァ

菜々『んん?声が小さいですねぇ』

菜々『もう一度行っときましょうか!』

菜々『こんにちは~~~~~~!!!!!!!!』

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!

菜々『おぉ!いいですよ~!』

菜々『それでは、ライブビューイング会場の皆さんも!』

菜々『こんにちは~~~!!!』

菜々『....』

菜々『ありがとうございます~』

菜々『それじゃあ最後に』

菜々『....』

菜々『ウサミン星の皆さん~~~~~!!!!!』

菜々『こんにちは~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

【完】

最後までお付き合いいただきありがとうございました
予定ではもっと短いはずだったんですが、書きたいことが多すぎて時間も分量も増えてしまいました
しかしその分、書きつくすことが出来たので良かったです
長編の割にめちゃくちゃな話になってしまいましたが、とても楽しかったので後悔はありません

過去作次回作ともども、これからもよろしくお願いします

このSSが読者の方の人生の糧に少しでもなれば幸いです

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom