不思議の国の愛里寿 (14)
ガルパンです。
島田流本家
ドタバタ
千代「ええ、だから大学リーグの日程はやはり春先に合わせるのが妥当かと」
千代「それに試合場の確保も今後の議題になってきますし」
千代「では後程」ガチャ
すたすた
愛里寿「(…)」
愛里寿「(最近お母さまは戦車道の大学リーグのことで忙しそう。)」
愛里寿「(それにあと一週間でお母さまの誕生日…)」
ちら
千代「あら、愛里寿ちゃん!もう帰ってきてたの!」
愛里寿「はい、お母さま。今日は全体練習のオフの日だったので早めに帰ってきたの。」
愛里寿「それに、そろそろボコのテレビ始まるし…」照れ
千代「そうだったわね。ってあらもうそんな時間!?急いで出る準備しないと」
千代「ごめんね愛里寿ちゃん。今日はママ、戦車道の打ち合わせで遅くなるからごはん作っておいたから食べてね。」
愛里寿「はい、お母さま。」
千代「それじゃ、8時までには帰るからね!愛里寿ちゃんもいい子で待っててね!」
千代「何か困ったことがあったらアズミとルミとメグミに言えば私より先に駆け付けられるから、よろしくね~」タッタッ
愛里寿「はい、いってらっしゃいませ、お母さま」手振りー
愛里寿「…」
愛里寿「今日は私一人みたい、ボコ…」ぎゅ
物心ついた時から
気が付けば戦車に乗っていた。
私もそれが普通だと思っていたし、戦車に乗ると
不思議と何をどうすればいいか頭に次々浮かんでくる。
試合が終わって、戦車から降りると彷彿とした笑顔と称賛がいつしか私を待つようになっていた。
お母さまにもたくさん褒めてもらえた。
私のことが書いてある新聞や雑誌を見つけては、切り抜いて嬉しそうに眺めていた。
お母さまの喜ぶ姿を見るのが私は好きだ。
・・・。
・・・でも。
本当は私は、追いかけているだけ。
今だってそう、ただ追いつけない残像をずっと追っかけてる。
愛里寿「…一体どこで…いつになったら帰ってきてくれるの?」
愛里寿「お姉ちゃん…」ぐすっ
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某山中
ホーホー
アキ「もーミカったらまたこんなところに一人で居て~。探すの大変だったんだからね!」
ミカ「…」
アキ「ミカ…?」
ミカ「…今日は風が泣いているようだ。」
アキ「なにそれ。意味わかんない。」プンプン
ミカ「本当に大切なことは、本当に大切な人にしか話さない。アキだってそうだろ?」ポロロン
アキ「もーーだからなによそれー!!」
アキ「それにミカってば、いつも回りくどくって私にだってあんまり自分のこと話してくれないくせに。」
ミカ「それよりそろそろお腹が言うことを聞いてくれそうに無いんだ。晩御飯のほうはできているかい?」ポロロン
アキ「ほんと食い意地だけは張るんだから…。もうできるから早く来てよね。」
ミカ「…」ポロン
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島田家
愛里寿「・・・」テレビぽち
テレビ「おう、おいらボコだぜ!今日も応援してくれよな!」がし
テレビ「今日はボッコボコにされてもこれを食べれば完全復活!必殺のボコハンバーグを作るぜ!」
愛里寿「…今日は料理回だ。」
テレビ「ハハハッ!完成したぜ、これがボコバーグだー!」
テレビ「すっげー美味しいぞ!!」モグモグ
愛里寿「ハンバーグ・・・」
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愛里寿回想
愛里寿幼少期「お母さま、今日も勝ったの!」
千代「あら!愛里寿ちゃんたら凄いわね~!!ママの自慢の娘だわ~。」頭ナデナデ
愛里寿「そ、それでね!!私が一番チームの中で撃破して、MVPに選ばれて…一番最初にお母さまにそれを伝えたくてっっ!!」キラキラ
千代「愛里寿ちゃんにそう言ってもらえて、ママすっごく嬉しいわ!そうだ!今日は愛里寿ちゃんの大好きな、ハンバーグにしましょう!」パン
愛里寿「本当にっ?!やったやった、嬉しい!あの目玉焼きが乗ってるやつが良い!」
夕食
千代「さあ、お待たせ!今日も二人ともよく頑張ったわね。沢山食べてね」
ドン!
愛里寿「わあ~~~!美味しそうな目玉焼きハンバーグだ~~!」ジュル
愛里寿「いただきまーす!」ガツガツ
愛里寿「むしゃむしゃあむあむっ。」
ミカ「余程お腹が空いていたんだね。でも、そんなにガツガツ食べると喉に詰まるよ。」
ミカ「ほら。」サッ
愛里寿「?」
ミカ「急いで食べるから、ほっぺたについてる。」ゴシゴシ
愛里寿「///」照れ
愛里寿「お姉ちゃん、ありがとう。」
ミカ「どういたしまして」ニコ
千代「二人とも、戦車道にはね、人生に大切なすべてのことが詰まっているのよ。」
ミカ「またその話かい?」ポロロン
愛里寿「むしゃむしゃ」
千代「も~お母さんの話もちゃんと聞いて頂戴~!」プリプリ
ミカ・愛里寿「あははははっ」
回想終
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愛里寿「…」ポロポロ
愛里寿「あっ…」
テレビ「おう!そんじゃ、今週はここまで!また来週も見てくれよな!」
愛里寿「..お腹すいちゃった」
愛里寿「ハンバーグ、食べよ…」
愛里寿「(明日は休みだ。またボコミュージアムにでも行こうかな)」モグモグ
愛里寿「!!」ピカーン
愛里寿「そうだ!」
愛里寿「私が料理を作れば…!きっとお母さまも喜んでくれるはず!」
愛里寿「それに…お姉ちゃんも…!」
愛里寿「っっっやってやるやってやるや~~~てやるぜ!!」ワクワク
かくして愛里寿の料理への挑戦が始まった。
愛里寿「材料は挽肉と玉ねぎと、パン粉?」
齢13歳にして大学に飛び級し
愛里寿「ッ痛!包丁が手に…」
大学選抜を率いる天才少女にとって
愛里寿「片面5分ずつ…中までしっかり火を通さないと」ジュワ
簡単なようで大変な、初めての料理だった。
愛里寿「…。やっと出来た。今日までの4日間、私なりに少しは成長したと思う。」
愛里寿「後は本番だけ…。」
愛里寿「手紙も出しといたし、明日の準備しなきゃ。」
次の日
千代「愛里寿ちゃんが今日は私の誕生日ということで祝ってくれるなんて…」
千代「感激…」トロン
千代「ん?」
ポロ―ンポロ―ン。
ミカ「実家に帰るのは久しぶりだからね。どうしても来てほしいと伝達があったからね」
千代「ミカちゃん!?」
千代「まったくどこをほっつき歩いていたのかしら。」
ガチャ
愛里寿「お姉ちゃん…」
愛里寿「やっときてくれたんだね。嬉しい…」
ミカ「・・・」ポロローン
愛里寿「お、お母さま!」
愛里寿「…確かに私たち三人は島田流です。世間一般からしたら西住流と並ぶ由緒正しき流派です。それはしっかりと、百も承知しております!でも…」
愛里寿「その前に家族じゃないですか。たった一つの…。私は昔みたく三人で仲良く過ごす、あの時間が大好きで…。だ、だから今日だけはその、」ポロポロ
愛里寿「っひぐ…ひぐ。私のハンバーグ、食べませんか?」ぐすん
ミカ「愛里寿…。」
ミカ「…これはいけないことをしてしまったようだね。」
ミカ「実の妹をこんなんになるまで放置してしまった私としては、姉を名乗る権利があるか疑問でね。」
ミカ「それで少しこの家には帰りづらくなってしまったというのもあるんだ。」
ミカ「でも今回は完全に私が間違っていたようだ。」
ミカ「…ごめんね、愛里寿。」ぎゅう
千代「ミカちゃん、愛里寿ちゃん…。」ウルウル
千代「(まったく、わたしったらなにをして)」
千代「(自分の娘のことも分かってあげれていなかった)」
千代「本当はね…。全部分かってたのよ。ミカちゃんが継続高校で隊長してるのも。」
千代「大学選抜の時もそう。私はただ見守ることしかできなかった。」
千代「理事長という立場に囚われて、大きく動かなかったのも事実。」
千代「でもね、ミカちゃんのBT-42が、愛里寿ちゃんのセンチュリオンが躍動しているのを見て、本当は凄い嬉しかったの。」
千代「一回も娘の授業参観にも運動会にも忙しくて行けなかった私が、初めて二人の頑張る姿が見れて、本当に幸せだったわ。」
愛里寿「お母さん…。」
愛里寿「今待っててね。今日の為にたくさん練習したの。」
わたしはこの日のことを一生忘れないだろう。
今まで食べたどんなハンバーグよりも美味しくて
楽しいひと時を。
そう
これが私の、
料理道…。
愛里寿「お母さん」
愛里寿「誕生日おめでとうっ」ニコ
つづくぅ?!
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