P「どうだ明るくなったろう?」やよい「」 (34)

やよい「うー……暗くて靴が見えません……」

P「ちょっと待ってろ」万札ボッ

P「どうだ明るくなったろう?」

やよい「」

P「あれからやよいが口を聞いてくれないんだ」

春香「あたりまえですよ!」

真美「さすがの真美もドン引きだよ」

P「うーん、何が問題なんだ? 12人全員トップアイドルなんだし、金は有り余って腐るほどあるだろ?」

響「金銭感覚が完全に狂っちゃってるぞ」

雪歩「そういう問題なのかな?」

千早「高槻さんは純心なんです。目の前で非道徳的なことをすればショックを受けるのは当然です」

貴音「やよいの前でそのような振る舞いを行なうとは、まこと『屑』という言葉がぴたりと当て嵌まる御方ですね」

P「俺ってクズなの?」

美希「そんなことないの! ハニーは型に囚われない凄い人なの! ミキ、惚れ直しちゃったの!」

真「ダメだコイツら」

春香「とにかく、やよいに謝ってください!」

P「でもさ、何が悪いのかもわからないのに謝るって、なんか違くねぇ?」

美希「ミキもそう思うな。『ごめんな、俺は悪いと思ってないけど』って言われたらいくらハニーでも……やっぱり好き!」

雪歩「ちょっとウザいですぅ」

真「言ってることは間違ってないかもだけど……」

春香「だからこそ逆にイラつくね」

P「じゃあ聞くが、金を燃やすことの何が問題なんだ?」

春香「それは……その……えーっと……」

響「たしか法律で禁止されてなかったか?」

貴音「それは硬貨の場合ですね。紙幣は良いようですよ」

真美「へー、まあ普通は燃やさないけどねー」

響「なんだか真美がやさぐれちゃってるぞ……」

千早「失望してるのよ」

P「ほら、問題ないんだろ?」

春香「で、でも、悪いことなんですよう!」

P「例えば春香が帰宅途中に下痢になったりするだろ?」

春香「へっ!?」

P「家は遠くてトイレには間に合いそうにもない。目の前には公園。そうしたら公園のトイレに行くだろ?」

春香「な、何を言ってるんですか!? アイドルはトイレに行きません!」

美希「春香、古臭いの」

春香「く、臭くないもん!」

響「そういう意味じゃないぞ」

P「和式でも洋式でもいいけど、パンツを脱いでしゃがむワケだ。な?」

春香「座りません!」

響「立ってするの?」

P「で、用をたして、いざお尻を拭こうとしたら紙がない!」

春香「おおお、お尻とか言わないでください!」

P「バッグを漁ってもティッシュは切らしてる。財布には諭吉さん(ピン札)×5……。さて、どうする?」

春香「そんなにお財布に入れてません!」

千早「春香、そこはどうでもいいわ」

雪歩(スケジュール表とかくらいはあるんじゃないかな…)

真「それは……だって、さすがにそのまま履くわけにも……」

千早「待って下さい、プロデューサー。それと今回の話、どういう関係があるんですか?」

貴音「そうですね。春香は必要に迫られたから仕方ないと思いますが……」

春香「やってませんからね!?」

P「そもそもだな、俺が万札を燃やしたのはやよいのためだ」

雪歩「やよいちゃんのため?」

P「ああ。やよいの靴が脱げちゃってな」

P「真っ暗なステージ裏でな。全然何も見えなかったんだ。でも時間も押してたしな」

P「つまりだ、俺が万札を燃やすのも、春香が万札で拭うのもしょうがないことなんだよ」

春香「拭ってませんってば!」

美希「しょうがないことなんだから恥ずかしがる必要ないの」

春香「ううー……やってないってばー!」

雪歩(火災報知器大丈夫だったのかな)

真「うーん……でもそれなら……」

響「明かりがなかったなら、しょうがないのか?」

千早「それでも他にやりようはあったと思うけれど……」

P「まあ、携帯持ってたんだけどな」

真美「ライトあるじゃねぇかふざけんな!」バンッ!

春香「ま、真美、落ち付いて!」

貴音「……では、なぜそのような蛮行を?」

P「いや、金を燃やしたときのやよいの反応を見てみたかったんだ」

真「なんでですか?」

P「お、聞いちゃう? それ聞いちゃう?」

雪歩「すごくウザイですぅ」

P「まあ単純な話なんだけど、やよいだったら面白い反応するだろうなって」

千早「……それで終わりですか?」

P「むしろ他に何があるの?」

美希「単純明快なの!」

貴音「まったく明るくて快い話ではありませんけどね」

P「足元は明るくなったぞ」

貴音「まこと、プロデューサーは屑ですね」

P「俺ってクズなの?」

美希「お札は燃やしても犯罪じゃないからクズじゃないの! ミキ覚えてるの!」

貴音「美希、真の屑は罪を犯さないのですよ」

真美「で、どうすんの? こいつ」

真「まずはやよいに謝ってもらわないと」

春香「その前に私に謝ってほしいよ。名誉棄損だよ」

千早「でもプロデューサーは謝る気ないわよ? 悪いことしたつもりないみたいだし」

P「自分、悪いことしてないぞ」

響「やめて」

雪歩「ねえ、響ちゃん家のへび香ちゃんってどんな蛇なの?」

響「ん? 種類か? えっと、オオアナコンダだぞ。いきなりどうしたんだ?」

千早「珍しいのを飼っているのね。今度事務所に連れてきてもらえるかしら?」

P「なんで今そんな話をしてるのかな?」

響「でも10mはあるからみんなビックリするぞ? 黒井社長も気絶するほど驚いてたし」

春香「大丈夫大丈夫! おやつも用意しておいてあげるから!」

響「そっか、へび香もきっと喜ぶぞ!」

P「待って待って、ステイステーイ」

P「いや、さすがに悪いことしたとは思ってるって。さっきまでのは冗談。みんなをからかってただけだよ」

真美「」(#^ω^)ビキビキヒビキ

春香「どうどう……落ち付いて真美」

貴音「冗談にしてはたちが悪いですよ」

雪歩「そ、それじゃあ、ちゃんとやよいちゃんに謝ってくれるんですか?」

P「それとこれとは別だよ」

雪歩「なにコイツ、ウザイですぅ」

真美「はるるん、全身に赤い油性ペンでイタズラ書きするからナイフ持ってきて」

春香「うーん、お菓子を切ったりするときにも使うから、あんまり汚したくないんだよね」

千早「我那覇さん、出来れば今すぐへび香を連れてきてもらえないかしら」

響「今から家に帰って戻ってくると深夜になっちゃうぞ?」

P「こいつらみんなきがくるっとる」

真「誰もプロデューサーには言われたくないと思いますよ」

千早「……反省はしているんですか?」

P「ああ、もちろんだ」

春香「えっ」

貴音「……意外ですね」

P「なにせ真っ暗だったからやよいの顔が見えなかったんだよね。失敗だったわー」

真「これ違う意味での反省だよね?」

美希「じゃあ一万円無駄にしちゃったの?」

P「いや、もちろん火の明かりで見えたぞ。もっとしっかりはっきりくっきり見たかったなって。欲を言えば録画したかった」

真「ダメだこれ」

伊織「アンタたち面白そうな話をしてるじゃない」

春香「あれ? 伊織、お帰り。いつ帰って来たの?」

伊織「今よ」

亜美「亜美もいるよ→!」

律子「ただいま戻りましたー」

あずさ「うふふ、ただいま~」

P「おお、竜宮小町。お帰り」

小鳥「そこで偶然会ったので一緒に帰ってきましたー」

P「小鳥さん出掛けてたんですか」

小鳥「コンビニに行って来るって言いましたよね……?」

伊織「それでアンタ、やよいに酷いことしたんだって?」

P「酷いこととは心外な。可愛い顔だったぞ」

真美「あーあ、どーしてこんな人を慕ってたのかなー。私って馬鹿だなー」ケッ

亜美「ま、真美? どうしたの?」

真「真美は疲れてるんだ。そっとしておいてあげよう」

春香「小鳥さん、よろしくお願いします」

小鳥「え? は、はい……。真美ちゃん、こっちに来てお休みしましょう?」

小鳥(……なんだか体よくハブられた気がするけど気のせいよね?)

伊織「お金を燃やしたとき、やよいはどんな反応をしてたの?」

P「そうだな、まず目を点にして口を少し開いて信じられないモノを見たかのような顔をしてたな」

P「しばらくしたら額に汗が滲んで来て、過呼吸し始めたんだよ」

P「プロデューサーって言おうとしてるんだろうけど、全然言えてなかったな。声もかすれてて『へろ……ぅ……ひゃ……』って感じでさ」ハハハ

P「視線を彷徨わせながら瞳孔が開いたり閉じたりして、頭がゆらゆらして行ったんだ」

P「だんだんと揺れが強くなってきて、それに合わせて身体も震えだして、あのときはちょっと怖かったなー」

P「で、突然ピッタリと静止したかと思うと、直立不動で前に倒れたんだ」

P「いやあ、最期の顔は白目向いて口を大きく開いて、さながらアヘ顔って奴だな! 良いモノを見させてもらったよ!」

春香「うわぁ……ドン引きですよ、ドン引き」

P「ま、そんなこんなで最高だったな」

春香「ね、伊織。酷いよね、プロデューサーさん」

伊織「え? やよいの目の前で札束を燃やすなんて、誰でも一度はやってみたいことでしょ?」

あずさ「そうねぇ、私も見てみたかったわ~」

亜美「亜美もチテキコウキシンがうずくよ→!」

律子「私がやよいの担当だったらもっと早くやってたのに、プロデューサーにはお説教が必要かもしれませんね」

春香「」

響「なにこのユニットこわい」

P「いや、札束は燃やしてないぞ?」

貴音「量の問題ではありませんよ」

・札束風呂に入れる
・札束で頬を叩く
・札束を窓からバラ撒く

伊織「あとこれぐらいの基本は押さえておきたいわね」

P「あー、わかるわかる!」

美希「デコちゃんもハニーも外道なの! そこに痺れるの!」

雪歩「ただの成金ですぅ」

真「それこそ最初からだよ」

P「よし、それじゃあさっそくやってみるか?」

伊織「いいわね。アタッシュケースに詰めて持って来させるわ」

あずさ「あら~、楽しみだわ~」

律子「明日に支障が出ない程度にしなさいよー」

春香「どうしよう、千早ちゃん。碌な大人がいないよ」

小鳥「えっ」

千早「しょうがないわね。一緒に行って高槻さんへのダメージを最小限に留められるように努力しましょう」

雪歩「止めるんじゃないの?」

響「止められる気がしないぞ」

真「何でそんなにやよいをイジメたがるんだろう」

P「イジメてなんかないぞ。愛でてるんだ」

貴音「その汚らわしい口からそのような言葉が出て来るとは微塵も思いませんでした」

P「やよいの顔が歪む様はせんとくんやピーポくんなんか目じゃないほど可愛いんだ」

P「頭を撫でてやるとやよいは可愛くなる。金を燃やしてやるとやよいは可愛くなる。ほら、愛でてるだろう?」

真「まったく意味がわからない……」

春香「なんでその二体を引き合いに出したんだろう」

車でやよい家に移動中(律子、小鳥、真美はおるすばん)


P「さて、札束は伊織に用意してもらったし」

伊織「亜美、カメラはOKかしら?」

亜美「もっちろん! しっかり撮っちゃうYO!」

貴音「姉と妹の反応の違いが著しいですね」

真「どこでこんな差がついてしまったのか……」

P「みんなー、やよいの家に着いたぞー」ブオーンキキッ


みんな「」

みんな(やよいの家が燃えとる……)

真「え、えええっ!? ちょ、ちょっと、やよいは無事なの!?」

貴音「おおおおおおお落ち付きなさいまままこここここ」

あずさ「貴音ちゃんの方が慌ててるわ~」

雪歩「あ、やよいちゃんがあそこにいます!」

千早「高槻さん!?」



やよい「あはははははは! もえろ! もえろー!!」


みんな「」

やよい「私はトップアイドルなんです! こんなボロ家なんか燃やして高層マンションを建てるんですー!」

春香「やよいが地上げ屋みたいなこと言ってるよ!?」

千早「高槻さん……プロデューサーのせいでこんなに精神を病んでしまったのね……」

真「目がまともじゃないよ」

あずさ「やよいちゃん、良い顔してるわ~」ゾクゾク

伊織「さいっこーよ、やよい! 亜美、ちゃんと撮りなさいよ!」

亜美「イエッサ→!」

雪歩「クズですぅ」

響「やよい! しっかりしろ!」

やよい「あっ、響さん! 安心してください、どんなペットでもOKですよ!」

響「えっ、本当か!?」

貴音「響、今は喜ぶところではありませんよ」

響「え、あ、そっか……。でも、今の部屋も結構無理して入れさせてもらってるんだよね……」

春香「いや響ちゃんの事情よりも今は大変なことが目の前で起きてるからね?」

やよい「私、プロデューサーに言われて気が付いたんです! お金がいっぱいあるのにこんな昭和の遺物に住む必要なんかないんです!」

千早「高槻さんの価値観が変わってしまってるわ」

春香「こんなやよい見たくない」

伊織「現実から目を逸らしたらダメよ。どんなやよいも受け入れなきゃいけないわ」

春香「まさか伊織にそんなこと言われるとは思わなかったよ」

真「コレは盲目って言うんだと思うよ」

雪歩「やよいちゃんならなんでもいいって顔ですぅ」

貴音「やよい、古い家には古い家なりの良い所がありますよ」

やよい「貴音さんの家はボットン便所なんですか? ボットン便所が良いんですか? ボットン便所はアラウーノに勝るんですか?」

貴音「…………いえ……その……」

美希「速攻で負けたの」

やよい「お金さえあれば伊織ちゃんの家だって買えるんです!」

真「それはさすがにちょっと難しいんじゃないかな」

伊織「やよいに買われるなら本望だわ」

雪歩「目がマジですぅ」

響「伊織を見てたらなぜかいぬ美を思い出したぞ?」

春香「そんなことよりもやよいの家を早くなんとかしないと……あれ?」

千早「鎮火してるわ……」

P「俺が消し止めた!」

やよい「プロデューサー!? どうして!?」

P「やよい、家を燃やすなんて間違っている!」

真「どんな口したらそんな言葉吐けるんだろう」

P「万札は消費するためにあるものだ。何かを買っても、燃やしても無くなるタダの紙屑だ」

P「だが、その家にはやよいと苦楽を共にしてきた思い出があるはずだ」

P「すぐに手元から離れていく万札となんて比べるのもおこがましい、大事なパートナーじゃないか」

P「万札は燃やしてもまたすぐに手に入れられるが、家は燃やしたらもう戻らないんだよ……」

やよい「プロデューサー……」

響「ううっ……良い話だぞー」

春香「えっ、これ良い話なの?」

貴音「紙幣を燃やした事実が無ければ、あるいは」

雪歩「でもちょっと薄っぺらいよね……」

千早「そうね……我那覇さんは感受性が高いから……」

真「その場のノリで泣ける感じだよね」

やよい「プロデューサー、私、間違ってました!」

やよい「あのときお金を燃やしたのも、私の靴がいちまんえんよりも大事だったからなんですね!」

P「ああいや、それはやよいの反応が見たかっただけで別に燃やす必要はなかったぞ」

やよい「」

P「携帯持ってたからそのライトで探すこともできただろうし」

やよい「」

P「そもそも万札に火を付けたライターがあるわけで」

やよい「」

真「やよいの目が死んだよ」

伊織「ヒェアアアア! 最高よ、やよい! 可愛いわー!!」

亜美「良いよ~、やよいっち! あと3秒そのままで!」

P「伊織、やよいがススだらけだから、さっそくやよいの家の五右衛門風呂に入れてやってくれ」

伊織「わかってるわ! アンタたち! 早く用意しなさい!」

雪歩「ひえぇ……黒服の人たちがアタッシュケースを持ってやよいちゃんの家に入っていってますぅ……」

伊織「さあやよい、早くお風呂に入りましょう! 大丈夫、きっと最高に気持ちいいわ!」

やよい「」

千早「高槻さんが水瀬さんに連れていかれたわ」

春香「ごめん、やよい。私たちには止められそうにないよ」

真「響、明日事務所にへび香連れて来れる?」

響「おやつくれるのか? わかったぞ!」


翌日、事務所から巨大なツチノコが出てきたという噂が流れた。



おわり!

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