歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」Part2(456)

※ラブライブ×ダンガンロンパ 2スレ目です
※そのため死亡描写あり〼
前スレ:
歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」 - SSまとめ速報
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      【!】
前回の続きからSSを再開致します
よろしいでしょうか?

    前回終了時の状態
  Chapter.5 (非)日常編
 
  〔はい〕   いいえ

モノっちー「いやいや、むしろ逆なんだよネ」

璃奈「逆……(>_<。)?」

モノっちー「ボクはこの部屋を“当時のままにしておいた”。保存資料みたいなものだよ」

モノっちー「以上、それなりに意地悪なヒントでした」

モノっちー「でもさ。この学園に来る前でも、毎日のように事件や事故のニュースはあったでしょ?」

モノっちー「どんなに凄惨な出来事でも、年月が経てば風化していくんだ」

モノっちー「忘れられないように保存していたボクは、むしろ感謝されるべきなのかもネ」

モノっちー「うけけけけ……」

歩夢(当時のままにしておいた……?)

歩夢(モノっちー以外の誰かが、こんなことを……?)

────夜、歩夢の個室

ピンポーン

歩夢「……?」

歩夢(就寝アナウンスのしばらく後。突然、インターホンが鳴った)

歩夢(鞠莉さんの一件から、気を付けろと忠告は受けている)

歩夢(もし千歌ちゃんだとしたら──)ガチャリ

千歌「……」

歩夢「……」バタン

歩夢(扉をすぐに閉めるように。その言いつけ自体は守ったのだが……)

千歌「……危ないなあ。挟んだ衝撃で暴発したら、大変なことになっちゃうよ?」

千歌「歩夢ちゃんを撃ちたくはないからさ。少し、話を聞いてもらえないかな?」

歩夢(……結局、拳銃の脅迫に負けた私は、彼女を部屋に招き入れることになってしまった)

歩夢「……何しに来たの?」

千歌「余計なことをしなければ撃つつもりはないから、あんまり警戒しないでよ」

千歌「余計な発言だったら、幾らでも受け付けるからさ」

歩夢「……ノートパソコンを盗んだのも、あなただよね」

千歌「まあそうなるね。ところで……歩夢ちゃんは見た? 第2多目的室」

歩夢「……っ」

千歌「その様子だと……見てないか、見ても大した発見は出来てないのかな?」

歩夢「そんなことを言いに来たんだったら……」

千歌「出ていけって? むしろ、歩夢ちゃんが出て行って、みんなをインターホンで起こした方が早いんじゃないかな?」

千歌「でないと、これの餌食になっちゃうかもね……と言いたいところだけど、中身は空っぽなんだよ、ほら」カチャリ

歩夢「……」

歩夢(弾倉の中には、弾が一発も入ってない。ただのハッタリだったのか)

千歌「私はただ、手伝いをしてあげたいんだ」

歩夢「どういうこと?」

千歌「ここから脱出するための、だよ。というわけで、ちょっと耳貸してよ。モノっちーに聞かれたら不味いでしょ?」

歩夢「……」

歩夢(言われるがまま、彼女の話に耳を傾ける)

千歌「第2多目的室にも、小窓とそれを覆う鉄板があった。それくらいは知ってるよね?」

千歌「実はあの部屋の鉄板、少し外れ掛かってるんだ」

歩夢(あの部屋の、窓の鉄板が……?)

千歌「そう。だからさ、それを外せば学園の外に出られるんじゃないかな」

歩夢(外に……出られる……?)

千歌「この学園の秘密とか、モノっちーの正体とか。色々気にはなるだろうけど、そういうのは脱出してからでいいんだよ」

千歌「まずは安全な場所に逃げる。それでいいと思わない?」

歩夢(千歌ちゃんの話は、もっともだ)

歩夢(この学園を脱出さえしてしまえば、モノっちーも迂闊に手出しは出来ないだろう)

千歌「でもさ。全員があの部屋に行って、モノっちーに気付かれたらおしまいでしょ?」

千歌「だから、私がモノっちーの注意を引きつけておく」

千歌「その上で……これを使って欲しいんだ」

歩夢(そう言って、何かの箱を渡された)

歩夢(中を確認して見ると、ドライバーやレンチ、ハンマーなどなど。いわゆる工具セットだ)

千歌「流石に、4階から逃げるとなればロープは準備しておいた方がいいかもね」

千歌「そういうワケだからさ。頼んだよ」

歩夢「……待って。だったら、鞠莉さんを襲う必要はあったの?」

千歌「ちゃんと理由はあるよ。けど、話すのはここを無事に出られたら」

歩夢「……」

千歌「じゃあね。おやすみ、歩夢ちゃん」

歩夢「お、おやすみ……」

歩夢(渡された箱を手にしながら、考える)

歩夢(確かに、千歌ちゃんの話は筋が通っている。脱出してしまえば、全てを終わらせることが出来る)

歩夢(その筈なのに……この感覚は、何だろう?)

歩夢(何かが歯に詰まっているような違和感は……何なんだろう?)

歩夢(大切な何かを忘れているような……)

歩夢(……っ、何を考えているんだ、私)

歩夢(疑問を全て投げ出してでも、ここを出ることが最優先の筈)

歩夢(だったら、答えは決まっている)

歩夢(……そう言い聞かせて、私は布団に体を潜らせた)

~モノっちー劇場~

悪意とは関わるな……そういう考えが、世間に蔓延っているよネ。

けど、本当にそれでいいのかなって、ボクは思うんだ。

悪意を持った人は、どこからでも湧いて来る。

突然、自分が悪意にさらされる時が来るかも知れない。

そういった時のために少しは悪意を知っておくべきだと、ボクは思うんだ。

悪意を知っていれば、それに対する対処が思いつく。

悪意を知っているから、友人だと思っていた人が悪意を持っている可能性に気付くことが出来る。

要は、一種の予防接種みたいなものだネ!

……けど気を付けて欲しいのは、予防接種とはウイルスを身体に投与するもの。

付き合い方を間違えると、オマエもウイルスに乗っ取られるかも知れないよ……?

今回はここまで。
2スレ目突入です。もうしばらくお付き合い頂ければ、幸いです。

────学園生活21日目

キーンコーンカーンコーン

モノっちー『おはようございます、朝7時になりました』

モノっちー『さてさて、今日も1日頑張っていきましょう』

プツン

歩夢(昨日の千歌ちゃんの話が、脳裏にこびりついている)

歩夢(学校からの脱出……どうにかしてみんなに伝えたいけど、どうやって伝えよう?)

歩夢(モノっちーに気付かれないようにする必要があるけど……)

歩夢「……あれ?」

歩夢(ベッドから身を起こして食堂に向かおうとすると、ドアの下に折りたたんだ紙が挟まれていることに気が付いた)

歩夢(拾い上げ、その紙に書かれた文章に目を通す)


『決行は今日の夜9時半』

『その頃になったら、私はモノっちーの注意を引き付ける』

『あとは、歩夢ちゃん次第だよ ちゃんと全員で脱出してね チカ』


歩夢「……」

歩夢(どうやら、責任重大な役目を任されたらしい)

歩夢(今日1日を使って……上手く、みんなに声を掛けて行くしかなさそうだ)

────食堂

歩夢「璃奈ちゃん、ちょっといい?」

璃奈「どうしたの(・v・)?」

歩夢(朝食を食べ終えた私は、準備を整え始める。脱出のため、全員に話を通す必要があるからだ)

歩夢(まずは、たまたま近くに居た璃奈ちゃん)

鞠莉「何なに、二人とも内緒の話?」

歩夢「あはは……まあ、そういうところ、かな?」

鞠莉「じゃあ、私たちは一旦退散しておきましょうか」

しずく「え、あ、はい!?」

梨子「ちょっと、まだお皿洗ってないのに……」

鞠莉「いいからいいから♪」

歩夢(ウインクをして、鞠莉さんは残っていた人たちを食堂から引き上げさせた)

歩夢「……」

璃奈「……(・v・)」

歩夢(いざ2人になってみると、どことなく気まずい)

歩夢(普段はお喋りなのに「自由に喋ってください」と言われると途端に喋れなくなるような……そんな現象)

璃奈「前に言ってたよね。私、恥ずかしいから顔を隠してるって(・v・)」

歩夢(結局、璃奈ちゃんから話題を提供される体たらく。この調子で残りのみんなに話を通せるのかちょっと不安)

歩夢(でも今は、璃奈ちゃんの話を聞いてあげよう)

歩夢「うん、その璃奈ちゃんボード、お手製なんだよね」

璃奈「実はね。もしこの学園を出られたら、ボードを取りたいって思ってるの(・v・)」

歩夢「ボードを……?」

璃奈「私、子供の頃から感情を表に出すのが苦手で。仏頂面、ロボットみたいってよく言われてた(・v・)」

歩夢「だから……どうにかしたい、って思ったの?」

璃奈「うん。最初は、周りの人たちを真似していけば感情豊かになれるかなあって思ったの(・v・)」

璃奈「真似事をしていくうちに、いつの間にか顔も声もコピー出来るようになってた(・v・)」

歩夢「それが……璃奈ちゃんの、才能のキッカケだったんだ」

璃奈「そう。気が付いたら、変装師とかディスガイザーとか、そう呼ばれるようになった(・v・)」

璃奈「何となく響きが格好良いって思ってたし、変装のクオリティを高めて行くのはとっても楽しかったよ(・v・)」

璃奈「でも、どんなに人の笑顔や怒った顔を真似しても“天王寺璃奈”の顔は固いままだった(>_<。)」

璃奈「ずっと誰かに変装したままってワケにはいかない。だから、璃奈ちゃんボードに頼るしかなくなった(>_<。)」

歩夢「……」

歩夢(どういう言葉を、掛けてあげればいいのだろう)

歩夢(感情を学ぶためだった筈の変装が才能になり、本来の目的を見失ってしまった)

歩夢(そんな、残酷で皮肉めいた境遇を語る璃奈ちゃんに、どんな言葉を……)

璃奈「でもね。ここでみんなと過ごしていると、すっごく楽しかった(・v・)」

歩夢「えっ……?」

璃奈「モノっちーは、学生生活の記憶を奪ったって言ってた。私も、どのくらい記憶が飛んだのかは分からない(・v・)」

璃奈「でも、段々分かって来た。元の学生生活は、きっと私に沢山の表情をくれていたんだろうって(・v・)」

璃奈「居なくなっちゃったみんなも、元の学校ではきっと優しくて、私に笑顔をくれたんだろうって。証拠はないけど、信じられる(・v・)」

璃奈「だから……色んな顔をくれたみんなに、恥じないようにしたいんだ。だから私は、ボードを取りたい(・v・)」

璃奈「きっと……元の私も、そうしていただろうから(・v・)」

璃奈「さ、流石に誰かを殺して出ようとは思ってないよ(?□!)!?」

歩夢「ふふっ、分かってるよ」

歩夢(心配した私が馬鹿だったらしい。彼女は彼女なりに、境遇と向き合って生きている)

歩夢(或いは……向き合うキッカケをくれたのが、ここで過ごしたみんなだったのだろうか)

歩夢(愛ちゃんは、今の彼女の姿を見守ってくれているだろうか……。っと、いけないいけない)

歩夢「ねえ、璃奈ちゃん」

璃奈「?」

歩夢「実は、4階の血だらけの部屋なんだけど──」

歩夢(誰も犠牲にならずに、ここから脱出する。そのプランについて、しっかり根回ししておかないと……)

歩夢(感傷に浸るのは、全てを終えた後だ)

────夕方、鞠莉の部屋

鞠莉「いらっしゃい。遅かったわね、歩夢」

歩夢「あはは……」

歩夢(どうやら、私は鞠莉さんにちょっとした苦手意識があるみたい)

歩夢(核心を突いた推理や、PCから情報を取り出せるその頭脳には、何度も助けられた)

歩夢(けれども、どうにも核心を突きすぎる時があるような……何もかもを見透かされるような気分になる時が、日常的に多々ある)

鞠莉「それで? 計画の準備は整っているの?」

歩夢「どこで知ったんですか……」

歩夢(今だって、これから話そうとしていたことを逆に耳打ちで質問して来るし……)

鞠莉「あなたが花丸と二人で図書室に居た時にね。ちょっと盗み聞きさせてもらったわ」

歩夢「……まあ、いいです。鞠莉さんが最後だから」

歩夢(そうして私は、鞠莉さんに事のあらましを小声で説明し始める)

歩夢(既に鞠莉さん以外の全員に話を通してある、虹ヶ咲学園からの脱出計画)

歩夢(計画実行は9時半。その時間になれば、第2多目的室の窓を破って脱出するのだ)

歩夢(ロープはしずくちゃんが準備してくれている。劇団に所属して間もない頃、裏方作業として学んだらしい)

歩夢「──ということなんです」

鞠莉「……なるほどね」

歩夢(千歌ちゃんの名前を出した時、鞠莉さんは露骨に怪訝な表情を浮かべる。けれども、私の話を黙って聞いてくれた)

鞠莉「正直なところ。立案者が立案者だから、あんまり信用したくないのは事実」

鞠莉「でも……」

歩夢(そう言って、再び声のボリュームを小さくする)

鞠莉「確かに、あの部屋の窓……鉄板のネジが欠けていたし、緩んでいるように見えた」

鞠莉「あの部屋が血だまりになる過程で起きた副産物……かはまだ分からないけど」

鞠莉「嘘を言っているワケでもなさそうなのよね……」

歩夢「は、はぁ……」

歩夢(いつの間に、そんなことまで気付いていたのだろう。やっぱりこの人には敵わない)

鞠莉「いいわ、そのプランに乗ってあげる。ただし、安全の確保はしっかりとね?」

歩夢「は、はい!」

鞠莉「ああ、それと歩夢。あなた紅茶は好き?」

歩夢(鞠莉さんからの承諾を得たあと。部屋を出ようとする私に、彼女は問う)

歩夢「の、飲めないことはないですけど……」

歩夢(言いながら、既に鞠莉さんはポットとティーカップの準備をしている。いつの間に部屋に持ち込んでいたんだろう)

鞠莉「じゃあ……ちょっと、世間話に付き合ってもらおうかしら」

歩夢「……えっ」

鞠莉「ほら、折角の機会だしね。あなたに一方的に喋らせるわけにはいかないもの」

歩夢「い、一方的……でしたっけ?」

鞠莉「小原グループがどんなものか、知っておいて損はないと思うけど?」

歩夢(『逃げるなんて許さない』と、圧力を纏った笑顔)

歩夢(個室以外で話を持ち掛けるべきだったと後悔したが、もう手遅れのようだ)

────夜、食堂

歩夢「……」ボーッ

花丸「歩夢ちゃん……何かあったずら?」

ダイヤ「鞠莉さんの長話に付き合うことになったみたいです」

花丸「あぁー……」

歩夢(二人の会話が、何となく聞こえてくる)

歩夢(夕食を食べに来ない私と鞠莉さんを梨子ちゃんが呼びに来るまで、マシンガントークでハチの巣にされていたんだ)

歩夢(……小原グループとして、世界各地で活躍する鞠莉さん)

歩夢(その財力は、あくまで小原鞠莉個人の範疇でも、虹ヶ咲学園サイズの建物なら軽く建てられる代物だという)

歩夢(高校生でありながら既に幾つかのホテルの経営に携わっているらしく、それで得た資産らしい)

歩夢(記憶を奪われた約3年間にどれだけの資産を築いたかまでは分からないが……何にせよ、気の遠くなる話だ)

歩夢(その割には、あまり小原家という場所を快く思ってなさそうな発言が目立った)

歩夢(というよりも、家族と何らかの確執がある……そんな様子)

歩夢(本人は自由を望んでおり、ホテルの経営も自ら雇った部下に全て任せている)

歩夢(『私はただ、気の合う友達と楽しく過ごせればよかった』という鞠莉さんの言葉が、妙に心に刺さる)

歩夢(とはいえ……それでも、自分の家の事を大切に思っている)

歩夢(『卒業した者は将来の成功が約束されている学園』を卒業すれば、代々続いてきた小原家が、少なくとも自分の代で滅ぶことはない)

歩夢(結局彼女は、自分の事よりも家の事を取り、入学することになった)

歩夢(その選択が後悔するべきものだったのか。記憶を失った今では分からない)

歩夢(だが、コロシアイ学園生活の中でも気の合う人だらけだったのだから、記憶を失う前の自分は、きっと後悔していなかったのだろう……)

歩夢(というのが鞠莉さんの話を大雑把にまとめたものなのだが……)

歩夢(長い! その上テンポが速い! そしてテンションが上がると外国語が混じるから脳が追い付かない!)

歩夢(……でも。こんな話が出来るのも、学生生活の醍醐味だった)

歩夢(最初の事件が起きる前のかすみちゃんだって、自分のことを惜しみなく話してくれた)

歩夢(彼女が洒落にならない行動を取るようになったのだって、元を正せば原因はモノっちーの筈だ)

歩夢(勿論、彼女自身かなり悪戯好きな面があったが……きっと、それ自体は問題じゃないと信じたい)

歩夢(そんな風に人を狂わせてしまった学園から、もうすぐ脱出する)

歩夢(私と同じく、みんなどこか落ち着かないようで。夕食を食べ終えても、全員が食堂に残っていた)

歩夢(そして。食堂に掛けられた時計が、9時半に近づいて来る)

歩夢(千歌ちゃんの姿は一度も見ていないが、きっと上手くやってくれるだろうと信じる)

歩夢(必要な物をそれぞれ持ち……全員で、第2多目的室へと向かった)

────9時半前、第2多目的室

しずく「これで……終わるんですね」

璃奈「3週間くらい、ここに閉じ込められていたんだね……(>_<。)」

花丸「でも、これでようやく外に出られるずら」

ダイヤ「……安心するのは、外の様子を確認してからです」

鞠莉「4階ともなればかなりの高さでしょうし、今は夜だから、うっかりして落ちてしまう可能性も高い」

歩夢「……」ゴクリ

歩夢(工具箱から取り出したボックスドライバーで、窓を塞ぐ鉄板のネジを外して行く)

歩夢(その横では、しずくちゃんが壁のフック状になっている部分にロープを結びつける)

しずく「ロープ、結び終わりました」

歩夢「私も、鉄板はこれで外れる筈」

歩夢(「よいしょ」の掛け声のもと、そこそこの重さを持った鉄板が外れる)

歩夢(窓の外は……漆黒。夜だから仕方ないか)

花丸「真っ暗……」

璃奈「街の灯りすら見えないけど、ここって東京だったよね……(・v・)?」

梨子「でも、今は気にしている暇はなさそうよ」

鞠莉「歩夢、懐中電灯を貸してくれる? 私が最後に降りるから、それまで照らしてあげるわ」

ダイヤ「一応軍手は持って来てあります。これをつければ、手を怪我せずに済むかと」

歩夢(残っているのは6人。千歌ちゃんを入れれば、7人。たった3週間で、私たちは多くの仲間を失った)

鞠莉「みんな、ちょっと離れて。このトンカチで窓をぶち破るから」

しずく「そうしたら、ロープを降ろして……」

花丸「これで、日常に戻れるずら」

歩夢(日常……)

歩夢(この窓の向こうにあるのは、いつもの退屈で平和な日常で)

歩夢(私たちは……帰れるんだよね。その、日常に)

鞠莉「行くわよ。この学園から卒ぎょ──」

歩夢(掛け声と共に、鞠莉さんがハンマーを振り上げ……)


鞠莉「────は?」

歩夢(突然、その手が止まった)

歩夢(目を大きく見開いて。まるで、窓の外に『信じられない物』を見たかのように)

鞠莉「嘘……そんな、筈……」

ダイヤ「どうしたんです、鞠莉さん」

歩夢(その言葉を皮切りに、みんなが窓と、鞠莉さんに駆け寄る)

歩夢(空気を読んだのだろう。誰かが懐中電灯の電源を入れ、窓の外に──)

歩夢(……最初に映ったのは、大きな“魚”だった)

歩夢(ライトの照らす角度が変わる。下の方……恐らく1階に相当する部分には、コンクリートの地面のような何かが見える)

歩夢(よく見たら……海藻? 海藻が生えている?)

歩夢(今度は、小さな魚。群れを成して“泳いでいる”)

歩夢(明かりが、震え始める)

歩夢(私たちの身体を、寒気が走る)

歩夢(考えたくない。理解したくない)

歩夢(それでも、誰かが……震えた声で、こう言った)




「海の……底?」

千歌「ゲームクリアおめでとう。これでコロシアイは終わりだよ」

歩夢「ち、か、ちゃん……?」

歩夢(いつの間にか……多目的室の扉に、彼女は立っていた)

ダイヤ「あ、あなた……モノっちーを引き付けておくのでは……」

千歌「もうそういうのはいいよ、ダイヤさん。みんなも見たんでしょ、窓の外」

梨子「見た、っていうか……」

璃奈「どうなってるの……(>_<。)?」

千歌「みんな暗い顔してるけど、お楽しみはこれからだよ。ここから、ネタばらしの時間なんだからさ」

花丸「ネタばらし……?」

千歌「それと同時に……最後の動機発表、ってところかな」

歩夢「動機、発表……!?」

鞠莉「ちょっと待ちなさい! 動機、って……」

千歌「遮るなら、話してあげないよ?」

ダイヤ「鞠莉さん、今は……彼女の話を聞くべきです」

鞠莉「っ……」

千歌「じゃあ、始めるよ。20XX年……地球の温暖化は深刻なものになって、南極や北極の氷が大幅に溶けだした」

歩夢(いきなりスケールが大きすぎて、何のことを言っているのか分からない……が、みんな黙って彼女の話を聞く)

千歌「このままだと海面上昇で世界のほとんどが水没するし、もはやそれを避けることは不可能な領域に入ったんだ」

千歌「そこで政府は、虹ヶ咲学園との協力の末、ある計画を実行することにしたんだ」

千歌「それが……“希望隔離計画”」

歩夢「希望、隔離計画……?」

千歌「鞠莉ちゃんは心当たりあるんじゃない? あのパソコンの中に入ってたでしょ?」

歩夢(みんなが、一斉に鞠莉さんの方を向く)

鞠莉「……確かに【持ち出し厳禁】のフォルダの中に、その名前のファイルはあったわ」

鞠莉「でも、判ったのはその名前だけ。詳細までは解析出来なかったし、どうしてあなたが──」

千歌「希望隔離計画っていうのはね。海に沈んだ後の地球を、超高校級のみんなの力で再生させるためのもの」

千歌「地球が一度滅ぶまで、超高校級の生徒たちにはコールドスリープをしてもらう」

千歌「扉の開かない生物室があったでしょ? あそこで私たちは、ずっと眠ってたんだ」

千歌「うっすら冷気が漂っていたのも、そのためだね」

歩夢「……」

歩夢(まるでSFのような話を、急には信じられるわけがない。だが……)

花丸「じゃあ、ここは……海面上昇が起きた後の、虹ヶ咲学園、ってことずら……?」

千歌「そういうことだよ」

歩夢(ここが海の中である理由を説明するには、十分すぎる話だった)

千歌「だから、その窓を破ろうとしても本当は無駄なんだよ。水圧に耐えるために、学園側が分厚いガラスに変えたからさ」

千歌「ある意味、この学園自体が巨大な“シェルター”ってワケだね」

しずく「じゃあ、私たちは……どのくらい、コールドスリープをしていたと言うんですか……?」

千歌「ざっと80年ってところかな。多分、本来なら元号が1つか2つは変わってると思うよ」

しずく「はち、じゅ……!?」

千歌「倒れるのはまだ早いよ、ここからが『絶望』の本番なんだから」

梨子「これ以上、何かあるの……?」

千歌「不思議だと思わない? そんなシェルターの中で、どうしてコロシアイなんて物が発生したのか」

千歌「何より、どうしてこの部屋が血まみれなのか」

千歌「実はね……希望隔離計画を実行した大人たちは、とんでもない見落としをしていたんだ」

千歌「言うなれば、超高校級のみんなは“地球の希望”を賭けた大切な存在。でもその中に、とんでもない人が紛れ込んでいたんだよ」

千歌「その人はまず、何人かを勝手に起こして、この部屋で殺し合いをさせた。そうして、ここは惨劇の舞台になった」

歩夢「……」

千歌「でも、その人は気付いたんだよね」

千歌「ただ殺し合いをさせるだけじゃなくて、もっとエンターテイメントに富んだコロシアイゲームにすれば……もっと楽しいんじゃないか、って」

千歌「だからモノっちーを作って、みんなの記憶を奪って。このコロシアイ学園生活は、幕を開けることになったんだ」

千歌「というわけで白状するけど……それを起こしたのが、私なんだよね」

歩夢「……えっ?」

千歌?「だから、このコロシアイ学園生活の黒幕は私、高海千歌……いや」





穂乃果「《超高校級の絶望》高坂穂乃果なんだよ」

ダイヤ「超高校級の、絶望……高坂、穂乃果……!?」

歩夢「その名前って……!」

穂乃果「果南ちゃんはいいところまで行ってたよね。最後に、自分の部屋に手掛かりを残しておくなんてさ」

穂乃果「でも結局果南ちゃんは死んじゃったし、手掛かりの意味が分かる前に、私が種明かししちゃったんだけどね」

鞠莉「そんなことより、答えなさい! あなたが、このコロシアイを引き起こしたのね!?」

穂乃果「だからそう言ってるでしょ? 私が黒幕」

穂乃果「どうしてこんなことを、って顔をしてるね」

穂乃果「ただ単に、台無しにしたくなっただけだよ」

璃奈「台無し……(>_<。)?」

穂乃果「人類の希望が全滅。しかも、その原因は仲間内での殺し合い……こんなに最悪な結末はないでしょ?」

花丸「理解に、苦しむずら……」

穂乃果「まあ、それが《超高校級の絶望》だからね。深く考えても無駄だよ」

穂乃果「絶望的な思考っていうのは、希望を持っていた人たちには受け入れられないだろうからね」

梨子「何よ、それ……」

しずく「嘘、ですよね……嘘だと言ってください……」

穂乃果「悪いけど、嘘じゃないんだよね。みんなの帰るべき町も、みんなを待ってくれていた家族も」

穂乃果「劇団も財閥も図書館もコンサートホールも何もかも……全部、海の底に沈んだんだよ」

穂乃果「みんなで仲良く、眠っていた間にね」

歩夢「……証拠は」

歩夢「証拠は……あるの?」

歩夢(震えた声で、目の前の《絶望》に問いかける)

歩夢(《絶望》が、嘘であるように。最後の抵抗)

穂乃果「──中川菜々ちゃん」

歩夢「っ!?」

歩夢(……けれども。その抵抗は、あっさりと打ち砕かれた)

穂乃果「せつ菜ちゃんって、子供の頃から偽名……いや、彼女に言わせるなら芸名を名乗ってたんだよね」

穂乃果「本名は中川菜々。アイドル活動を夢見る彼女は、昔から芸名で過ごしていた」

穂乃果「歩夢ちゃんも、優木せつ菜として過ごした時間の方が長い……そうでしょ?」

歩夢「ど、どうして、それを……」

穂乃果「みんなも、在学中に知っていた筈なんだけど……記憶を失っちゃったら、覚えてる筈ないもんね」

穂乃果「歩夢ちゃんだけは、子供の頃から知っていたけど……どうして私が知っていたんだろうね?」

穂乃果「これで信じてもらえた?」

穂乃果「私が、みんなの記憶を奪った張本人……このコロシアイ学園生活の、黒幕だって」

歩夢「……」

鞠莉「……」

穂乃果「怖い顔してるけど……もう、遅いんだよ」

穂乃果「死んだ命も滅びた世界も、戻ることはないんだ」

鞠莉「もう、いい……分かったわ」

歩夢(鞠莉さんが、ハンマーを手に取る)

鞠莉「それでも私はあなたを……っ!」

歩夢「鞠莉さん、駄目です──!」

歩夢(何をするのかに気付き、止めようとするが……)



──パァン!

花丸「け……拳銃!?」

穂乃果「動かない方がいいよ。今度はちゃんと入ってるからね」

歩夢(「ほら」と彼女は天井を銃口で示す)

歩夢(天井には小さく、弾が貫いた穴が空いていた)

穂乃果「……」ダッ!

歩夢(そして。急に駆け出したかと思うと、拳銃に足が竦んだ私たちを掻い潜り……)

璃奈「……え(?□!)」

ダイヤ「り、璃奈さん!?」

歩夢(璃奈ちゃんを捕まえて、こめかみに拳銃を押し当てていた)

穂乃果「今度こそ動かないでよ。目の前で、大切な仲間を殺されたくなければね」

歩夢(……人質だ)

穂乃果「さてと。黒幕の私から、最後の動機だよ」

穂乃果「外の世界は滅んでいる。あなたたちはここから出る理由を失った」

穂乃果「もう、このコロシアイゲームは終わり。あとは好きにしていいよ」

穂乃果「でも……余計な真似をしたら、分かってるよね」

歩夢(ぐい、と銃口を璃奈ちゃんに押しつける)

穂乃果「私に逆らったら……最悪な結末が待ってるかもね」

穂乃果「“エマちゃんのように”」

しずく「……っ」

歩夢(その言葉の意味を……私たちは、痛い程知っている)

歩夢(そして、私たちはどうすることも出来ないまま。彼女と、連れ去られた璃奈ちゃんを見送ることになって)

歩夢(後に残ったのは……絶望的な真実だけだった)

梨子「……」

花丸「……」

しずく「……」

鞠莉「……」

ダイヤ「……」

歩夢(みんな、無言だった)

歩夢(当然だ。全ての真実は、明かされてしまったのだから)

歩夢(外の世界は、もはや存在しない。生き残っているのは、私たちだけ)

歩夢(それなのに。その記憶を奪われて、無意味なコロシアイをして)

歩夢(何もかも無意味……それが、このコロシアイゲームの結末)

梨子「こんなことに、なるなんて……」

ダイヤ「ルビィやサファイアたちは、何のために死んだというのですか……っ」

鞠莉「……」

花丸「もしかしたら……かすみちゃんは、武器庫をクリアしてこの事を知ってしまっていのかも……」

花丸「だから自暴自棄に……なんて、考えても無駄ずらね。もう、終わったことなんだし」

歩夢(そう。終わったことなんだ)

歩夢(これ以上続けることに、意味なんてないんだ)

歩夢(もう、意味なんて……)

歩夢(……)

歩夢(……)

歩夢(……)

────夜、歩夢の部屋

歩夢(気付けば、みんな部屋に戻っていた)

歩夢(そして気付けば、ベッドの上に寝転がっていた)

歩夢「……」

歩夢(既に10時を過ぎている筈だが、モノっちーの定時アナウンスもない)

歩夢(夜時間を知らせるチャイムだけは鳴っていた気がするが……もう、どうでもいい)

歩夢(ただ、絶望から逃げたくて)

歩夢(いとも容易く砕かれた、前へ進む意思なんかには見向きもせず……)

歩夢(眠りに落ちていた)

~モノっちー劇場~

そういえばオマエらは、このモノっちー劇場を喋っているのが誰かって気付いてる?

実は話者がモノっちーじゃなくて、喋り方が似ている別の誰か……とか、考えたりしない?

こう言うと、今ここで喋ってる誰かが茶色と黒の可愛いセイウチじゃないように見えて来るよネ。

ボクをボクたらしめる証拠って、何なんだろうネ?

ほら、段々とボクがモノっちーではない、胡散臭い何者かに見えて来たでしょう?

……まあ、やっぱり喋ってるボクはモノっちーなんだけどネ。

────学園生活22日目

キーンコーンカーンコーン

『……』

『……』

プツン

歩夢(……今朝も、モノっちーは姿を見せることはなかった)

歩夢(やっぱり……昨日で、すべて終わったんだ)

歩夢(だから、アナウンスをする意味はない。チャイムは精々、健康的な生活をといった配慮だろう)

歩夢(でも……もう、意味はない)

歩夢(コロシアイをする意味も、外に出る意味も、生きる意味も)

歩夢(無意味、無意味、無意味)

歩夢(きっとここからは……ただの、蛇足のお話)

歩夢(時間を無駄に消費するだけの、エピローグにすら満たない何か)

歩夢「……」

歩夢(他のみんなはどうしているんだろう、なんて一瞬考えたりもしたけれど)

歩夢(せつ菜ちゃんを喪った時とは、わけが違う)

歩夢(今度こそ気力を削がれた私は……)

キーンコーンカーンコーン

歩夢(夜になっても、ほとんどベッドと一体化していた)

~モノっちー劇場~

ホールインワンって知ってる?

ゴルフで、最初にボールを打った時にカップインした時のことを指すあれだよ。

アマチュアだと12000球に1回、プロでも4000球に1回と言われているんだ。

実力も運も求められる、まさしく素晴らしいプレーだネ。

それを賞賛して、ちょっとしたお祭り騒ぎになったりもするけど……

どういうわけか、ご祝儀を払ったり豪華な食事を振舞ったり、そういうのをするのはホールインワンを出した本人なんだ。

それによる急な出費に対応するため、ホールインワン保険という代物まで存在するんだって。

……出過ぎたことをすると痛い目に遭うという、典型的な例だよネ。

────学園生活23日目

キーンコーンカーンコーン

『……』

『……』

プツン

歩夢(……)

歩夢(璃奈ちゃんは……大丈夫なのかな)

歩夢(……)

歩夢(……ダメだ。頭が働かない)

歩夢(身体、も……)

歩夢(……)

歩夢(……)

────夜、歩夢の部屋

歩夢(今、何時だろう……)

歩夢(……チャイム……鳴ったんだっけ?)

歩夢(……)

ピンポーン

歩夢「……え?」

歩夢(突然のインターホンに、反射的に身体が飛び起きる。一体誰が……?)

歩夢「いてて……」

歩夢(体の節々が痛いのを我慢して、ドアの方へと向かった)

歩夢(そして、ゆっくりドアを開けると……)

花丸「……」

歩夢「花丸、ちゃん……?」

歩夢(言いながら、自分の声が少し掠れていることに気が付いた)

歩夢(昨日今日と誰とも会話をしてなかったから、仕方ないのだが……)

花丸「少し、来て欲しいところがあるずら」

歩夢(そう言って、耳を貸して欲しいとジェスチャーを取る)

花丸「穂乃果さんの話で、気になったことがあるんだ。ちょっと、それを確かめたくって……」

歩夢「……」

歩夢(その名前を出されて、思わず躊躇う。今更何を確かめるというのだ)

花丸「変な事を頼んでるのは分かってる。でも……これだけは確かめたいって、気になっちゃって」

歩夢「……分かった。どこに行くの?」

花丸「付いて来れば分かるずら」

歩夢(どうせ、答え合わせの裏付けでしかない。この虹ヶ咲学園は、絶望のどん底なんだ)

歩夢(だったら、これより下がることはないだろう。花丸ちゃんの誘いを断る理由もなかった)

歩夢(それに……たまには動いておかないと、多分、本当に動けなくなる)

歩夢(それだけは、何となく嫌だった)

────情報処理室前

歩夢「ここって確か……」

花丸「うん。情報処理室だよ」

歩夢「いやそうじゃなくって、この部屋って鍵が掛かってたよね」

花丸「……」

歩夢(花丸ちゃんから、返事がない)

歩夢「ねえ、花丸ちゃん……」

バチバチィッ

歩夢「なっ……!?」

歩夢(返事を求めようと振り返った私の身体を、突然電撃が走る)

歩夢(倒れる寸前、私は不可解な物を目にすることになった)

歩夢(そこに居たのは、花丸ちゃんだけじゃない)

歩夢(その手にスタンガンを構え、被服室にあったうちっちーの着ぐるみを来た誰かが一緒に立っている)

歩夢(あれは……だ、れ……)

バタン



花丸「……」

~モノっちー劇場~

実は、今日でモノっちー劇場は最終回なんだ。

辛いネ、哀しいネ。

だから最後にボクから、オマエらへ伝えたいことがあるんだ。

「死をエンターテイメントにしていいのは物語の中だけなんだ」ってことをネ。

死というものは本来、忌避すべきもの。

例えどんなに嫌われた人であっても、その死を笑い物にするのは倫理観が壊れているとボクは思うんだ。

というワケでここまで来たオマエらには、最後までこの

『歩夢「君の超高校級の心は輝いているかい?」』

というコロシアイエンターテイメントを楽しんで欲しいんだ。

それがボクからのお願いだよ。



……途中から主題が変わっちゃったネ?

────学園生活24日目

「──さん、歩夢さん!」

歩夢「……ん、あれ?」

ダイヤ「どうやら、あなたが最後のようですよ」

歩夢(状況が飲み込めない)

歩夢(昨日、花丸ちゃんに連れられて情報処理室に向かって、気絶させられて……)

歩夢(ひとまず、周りを見渡す。どうやらここは……第2ではない多目的室──第1多目的室と呼ぼう──だ)

歩夢(そしてここには……穂乃果さんと璃奈ちゃん、そして梨子ちゃん以外の全員が居る)

花丸「……」

歩夢(……花丸ちゃんの姿もだ)

ダイヤ「全員、ここに連れて来られたようです」

歩夢「えっ……」

しずく「あの着ぐるみは何だったのでしょう……」

歩夢「しずくちゃんも、着ぐるみを見たの!?」

しずく「え、ええ……」

鞠莉「というより……多分、全員が着ぐるみに襲われた」

鞠莉「気になることは多いけど、まずはここを出──」

歩夢(疑問だらけの中、一旦この場を収めようとした鞠莉さんの言葉を遮るように……)

歩夢(突然、それは始まった)

ゴォッ!

しずく「ひ、火が!?」

歩夢(真っ赤な炎が、廊下を踊り始める)

鞠莉「ッ!?」

花丸「消火器……嘘、置いてないずら!?」

しずく「このまま、焼け死ぬしかないんですか!?」

ダイヤ「皆さん、落ち着いてください! 口を押えて姿勢を低く!」

歩夢(急いで扉を閉める鞠莉さん。慌てふためくみんな)

歩夢(この部屋は、廊下に面した一箇所しか出入り口がない。火の手がこちらまで来たら一巻の終わりだ)

歩夢(……だが、およそ10秒後)

歩夢「水の、音?」

しずく「もしかして……スプリンクラーが作動したのでしょうか?」

花丸「た、助かったずら……」

ダイヤ「ですが油断はなりません。煙を吸わないよう、慎重に行動しましょう」

歩夢(やがて、スプリンクラーの音も聞こえなくなる)

鞠莉「どうやら、収まったみたいね……」

しずく「と、とにかく! 一旦食堂まで行きませんか? あそこなら煙も来ないでしょうし……」

歩夢(そうして、私たちは順番に第1多目的室を出て行く)

歩夢(しずくちゃん、花丸ちゃん、梨子ちゃん……次が、私)

歩夢「……?」

歩夢(不意に、第2多目的室の方が気になった)

ダイヤ「歩夢さん、どうかしました?」

歩夢(ドアは開いている。中に何かあるが……煙でよく見えない)

鞠莉「そっちに何かあるの?」

歩夢「……」

歩夢(先に行こうとした3人も、心配して戻って来る)

歩夢(何か……何か、嫌な予感がしてたまらないのだ)

歩夢(一歩、また一歩。煙を吸い込まないように、奥へと進んで行く)

歩夢(自然と呼吸を止めているのは……煙を吸わないためだけではないのかも知れない)

歩夢(そんな筈はないと信じて、また次の一歩を踏み出す)

歩夢(けれども……いつもそうだった)

歩夢(絶望は決して待ってくれない)

歩夢(そして……煙の中で、見た。見てしまった)


落ちている拳銃。

焼けているが、顔の絵の端っこが僅かに見える……スケッチブックと思しき物の残骸。

そして、着ぐるみを着ているものと、そうでないもの。

2つの……焼け焦げた、ヒト……。

今回はここまで。
既存の章の一部含めスクスタの設定と幾つか矛盾することになりましたが、これはこれということで。


     Chapter5

キボウハドコニ?  非日常編

歩夢(これは、何?)

歩夢(何が起きたの!?)

花丸「な、何ずら、これ……」

鞠莉「……」

しずく「酷い……」

歩夢(困惑、動揺……いや、混乱?)

歩夢(とても、冷静では居られなかった)

ダイヤ「2人分の焼死体……惨たらしいですわね……」

歩夢(惨たらしい。ダイヤさんの言葉は、的確だった)

歩夢(今までも、死体は何度も見て来た。見て来てしまった)

歩夢(けれども……いま目の前に転がっている2つは、そのどれよりも凄惨で)

歩夢(“絶望”……そう表現せざるを得なかった)

ダイヤ「ですが……こうなってしまっては、誰が死んだのかも……」

鞠莉「それを解き明かすカギは……これらでしょうね」

歩夢(そう言って、鞠莉さんは2つの物品を手に取る)

歩夢(拳銃と、スケッチブックらしき物の残骸)

歩夢(私たちは、それらの持ち主をよく知っている)

花丸「拳銃は、穂乃果さんが持っていて……」

しずく「それは、璃奈ちゃんボードじゃ……」

歩夢(そう。だとしたら、ここに転がっている2つの死体は……いや、待って欲しい)

歩夢「じゃあ────梨子ちゃんは?」

ダイヤ「えっ?」

歩夢「だって、梨子ちゃんも居ないんだよ? だったら、このどっちかが梨子ちゃんの可能性もあるんじゃ……」

歩夢(そう。行方不明者は3人、目の前の焼死体は2つ)

歩夢(単純に考えるなら、誰か1人が見当たらないことになるのだが……)

鞠莉「もしかしたら、そういったところも含めて学級裁判で──学級裁判?」

ダイヤ「どうかしたのですか?」

鞠莉「ねえ。“死体発見アナウンス”は?」

歩夢「?」

鞠莉「いつもならそろそろアナウンスがある筈でしょう? 死体が発見されました~って」

しずく「もしかして……モノっちーを操っていた黒幕が亡くなったから?」

花丸「そ、そんなことってあり得るずら?」

鞠莉「考えられない話ではないでしょう?」

歩夢(黒幕が死んだから、アナウンスが鳴らない。確かに、理にはかなっている)

歩夢(けど、黒幕が死んだということは……)

歩夢「じゃあ……コロシアイは、終わった……の?」

歩夢(だとしたら、この様相は何だ? 誰かが黒幕と刺し違えたりでもしたのだろうか?)

歩夢(いや、それ以前に。確かめないといけないことがある)

歩夢「ねえ、ちょっと気になる場所があるんだけど……」

────情報処理室

歩夢「開いた……」

歩夢(情報処理室。視聴覚室と役割が被るが、てっきりパソコンが多く設置している部屋だろうと思っていた)

歩夢(何故か開いた扉の向こうに広がっていたのは……奇妙な光景だった)

しずく「モニター……ですよね」

ダイヤ「しかも、映し出されているのは……」

歩夢(あったのはパソコンではなく、壁面に埋め込まれた幾つものモニター)

歩夢(それらは全て、私たちが過ごしているこの虹ヶ咲学園の様々な場所を映し出している)

歩夢(若干煤けているが、もちろん死体のある第2多目的室も)

歩夢(それが意味するのは……)

鞠莉「監視カメラの映像のようね」

花丸「じゃあ、この部屋って……」

歩夢(この学園において、監視カメラの映像を必要とするのは1人しか居ない)

鞠莉「間違いないわ。黒幕の部屋よ」

しずく「黒幕の、部屋……」

ダイヤ「奥にも扉があるようですが……」

ガチャガチャガチャ!

ダイヤ「こちらには入ることは出来ませんわね」

しずく「確か、地図にも奥の部屋は描いてありましたね」

鞠莉「ええ。おおかた黒幕のもう1つの部屋ってところかしら」

モノっちー「御名答、あの奥はボクのパーソナルスペースだよ」

歩夢「……えっ?」

モノっちー「えっ?」

ダイヤ「なっ……」

モノっちー「な?」

花丸「ずらぁああぁぁあぁあっ!?」

モノっちー「うけけけけけ……オマエら、久しぶりじゃねえの」

歩夢「も、モノっちー!?」

しずく「死んだ筈じゃなかったんですか!?」

モノっちー「ボクが死んだなんて、ご冗談を抜かしおるのう若造めが!」

花丸「だって、チャイムは鳴っても、アナウンスはしなくなって……」

モノっちー「それだよそれ。記憶喪失だったことをバラした時もそうだけど、オマエらやっぱりいい顔してくれるよ」

モノっちー「希望が踏みにじられる瞬間の顔……うん、やっぱり心地いいよネ」

ダイヤ「まさか、そのためだけに沈黙を貫いていたというのですか……!?」

歩夢(モノっちーが、生きていた……? じゃあ、それが意味するのって……)

鞠莉「待ちなさい! あそこに死体があって、あなたが動いているということは……」

モノっちー「察しがいいネ。今か今かと待ち詫びていたんだけど、ようやくこれを言えるよ」


ピンポンパンポーン

モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の第2多目的室にお集まりください!』

プツン

ピンポンパンポーン

モノっちー『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開きます』

モノっちー『オマエら、死体発見現場の第2多目的室にお集まりください!』

プツン

モノっちー「そう、コロシアイは終わらない。まだまだ続くんだよ!」

モノっちー「あっはははははははははは……!」

歩夢(連続で流れた、2つの死体発見アナウンス)

歩夢(黒幕は生きていて、コロシアイは続行される……)

歩夢(悪意を煮詰めたモノっちー……いや、その向こうに居る黒幕の高笑いに、思わず目が眩みそうになる)

歩夢(じゃあ、あの死体は……)

モノっちー「とりあえずモノっちーファイルは置いといてやるからさ。好きなだけ捜査しなよ!」

モノっちー「まあ特殊な事件だし、あんまりアテにはならないかも知れないけどネ」

モノっちー「じゃあ、頭を振り絞って頑張ってネ! うけけけけけ……」

歩夢(高笑いと共に……モノっちーは去っていった)

歩夢(意味も理屈も分からない事実と、数多の疑問)

歩夢(そして、絶望を残して……)

歩夢(しばらくの間、私たちはその場に立ち尽くしていた)

鞠莉「死んだのは……梨子と璃奈で、確定ね」

花丸「……」

しずく「じゃあ、殺したのは……」

ダイヤ「それはまだ分かりませんが……間違いなく、高坂さんが一枚噛んでいるでしょうね」

鞠莉「捜査を始めましょう。とにかく、今は手掛かりが欲しい」

歩夢(そう……始めるんだ)

歩夢(全てを解き明かして、希望を掴むために)

歩夢(でも、ここで言う“希望”って何なんだろう?)

歩夢(外の世界は滅んでいるのに。どのみち、私たちには破滅の未来しか残されていないのに)

歩夢(……)

歩夢(……不安でも、やるしかないんだ)

歩夢(答えを間違えれば、絶望まっしぐらなんだ)

歩夢(それだけは……モノっちーの思い通りにだけは、絶対にさせない!)

捜査開始!

歩夢(何はともあれモノっちーファイル……と、目を通そうとする私だったが)

歩夢(『特殊な事件だから、アテにはならないかも』というモノっちーの言葉の意味を、すぐに実感することになった)


『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』

『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』

『ただし、死体の心臓付近には矢が突き刺さっている』



『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』

『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』

『また、被害者は着ぐるみを着用していた』


《モノっちーファイル5》《モノっちーファイル5-2》のコトダマを入手しました。

歩夢「たった、これだけ……」

鞠莉「ファイルはいつも作っていたから、便宜上とりあえず作りましたって感じね」

しずく「これじゃあ、ほとんど何も分からないじゃないですか……!?」

ダイヤ「被害者の身元すら書かれていませんが……もはや、分かり切ったようなものでしょう」

鞠莉「とりあえず、あの死体を調べる必要がありそうだけど……」

花丸「うっ……」

歩夢(2番目の事件からずっと検死を任されていた花丸ちゃん。だが、今回ばかりは及び腰な様子だ)

歩夢(……無理もない。今回の死体は黒焦げで、今までのどれよりも凄惨で、直視するに堪えないものだから)

鞠莉「……まあいいわ。あまりそういった知識はないけど、死体は私が調べるわ」

鞠莉「あの様子じゃ、死亡推定時刻も割り出せそうにないし」

花丸「申し訳ないずら……」

ダイヤ「では、私はあの第2多目的室自体を調べて来ましょう」

花丸「じゃあ、オラは第1多目的室の方を……」

しずく「私は……少し気になるところがあるので。失礼します」

歩夢(こうして、みんな散り散りになった)

歩夢「……よし」

歩夢(私も、頑張らなきゃ……!)

歩夢(そういえば、この情報処理室には何か手掛かりはあるのだろうか)

歩夢(と、一通りこの部屋を物色してみたが……)

歩夢「……何もないや」

歩夢(この部屋にあるのは、大量のモニターと1つのパソコン)

歩夢(モニターの向こうでは、みんながせっせと捜査に励んでいる様子が見える)

歩夢(パソコンの方は……どうやら、別館の監視カメラの映像が見られるようだった)

歩夢(つまりこの部屋は、黒幕が私たちを監視するための部屋でしかないのだ)

歩夢(奥の部屋には入れないが……きっとこの奥で黒幕はモノっちーを操作しているのだろう)

歩夢「……ん?」

歩夢(そもそも。昨日、花丸ちゃんに連れられてここに来た時は、まだこの部屋には入れなかった筈だ)

歩夢(あのあと、着ぐるみを着た何者かに襲われて意識を失った私)

歩夢(あの時襲われたことが気になってここに来たら、何故か扉が開いていた)

歩夢(……どういうことなんだろう?)

歩夢「一応、覚えておいた方がいい……のかな?」

歩夢(それに、あの襲撃事件は……きっと、今回の事件で重要になって来る筈だ)

《開いていた情報処理室》《上原歩夢襲撃事件》のコトダマを入手しました。

────被服室・衣装倉庫

歩夢(情報処理室のモニターには、ここに来ているしずくちゃんの姿があった)

しずく「歩夢さんも、やっぱり着ぐるみが気になりますか?」

歩夢「う、うん。というか、しずくちゃんもあの着ぐるみに……?」

しずく「昨日、夜時間のチャイムが鳴るよりも前のことだったんですが……」

歩夢(……それからしずくちゃんは、昨晩起きた出来事を話してくれた)

歩夢(夜時間を告げるチャイムが鳴るより前、誰かが部屋のインターホンを押したこと)

歩夢(開けると、目の前には大きなうちっちーの着ぐるみ)

歩夢(悲鳴をあげるよりも早く、電撃のような感覚を食らって気を失った……らしい)

しずく「──ということだったんです」

歩夢「ありがとう、しずくちゃん。じゃあ、その着ぐるみについてなんだけど……」

歩夢(私の時と同じで、犯人はうちっちーの着ぐるみを用いてしずくちゃんを気絶させたんだろう)

歩夢(けれど……彼女の話の中に出て来た着ぐるみと、私を襲った着ぐるみ、その2つには決定的な違いがあった)

歩夢「私が襲われた時は、茶色だった気がしたんだけど……」

歩夢(襲われた着ぐるみについて、彼女は『灰色のうちっちー』と口にした)

歩夢(だが……私が見たうちっちーは『黒色要素を取っ払ったモノっちー』。つまり、茶色のモノっちーだった)

歩夢(照明のせいで見え方に差が出来た……だけなんだろうか?)

モノっちー「それはだネ、君たち忘れたのかい?」

しずく「わっ!?」

歩夢「忘れたって……何を?」

モノっちー「うちっちーには初代と2代目が居る。このフロアが解放された時、渡辺さんと高海さんとボクがそんな話をしていたでしょうよ」


曜『ちなみに、初代うちっちーの着ぐるみもあったよ!』

歩夢『初代うちっちー?』

千歌『んーとね……そもそもうちっちーって、沼津のマスコットキャラクターなんだ』

曜『最初は人っぽい造形だったんだけど、後から今の丸っこい着ぐるみにデザインが変更されたんだよ』

モノっちー『そうそう。パイセンにはお世話になってたよネ』

モノっちー「まあ今となっちゃ、渡辺さんは別人だとバラしちゃったし、高海さんも別の名前を出したけどネ」

しずく「そのことは今はいいんです。それより、初代うちっちーというのは……」

モノっちー「早い話が、灰色の方が初代で茶色の方が2代目。そう覚えといてくれた方がいいネ」

歩夢「でも……2つとも、この部屋からなくなってるんだね。他に着ぐるみはないし……」

モノっちー「それはボクに聞かれても困るよ。ボクは学級裁判を公正に運営する立場なんだから、オマエらの頭で考えてちょうだい」

モノっちー「ああ、でもそうだネ。公正に裁判を運営すると言ったからには、この情報は出しておこうか」

モノっちー「初代うちっちーは人型だって言ってたでしょ? でも、この学園に置いてある初代うちっちーの着ぐるみは、2代目うちっちーと同じサイズ・形だからネ」

しずく「じゃあ、違うのは色だけなんですね?」

モノっちー「ボクから与えられる情報はここまでだよ。後でしっかりと他の人たちにも情報共有しておくよーに!」

《桜坂しずく襲撃事件》《2つの着ぐるみ》のコトダマを入手しました。
《上原歩夢襲撃事件》のコトダマの情報を更新しました。

────第1多目的室

花丸「……昨日の夜?」

歩夢「うん。あの時、どうして情報処理室に行こうと思ったの?」

花丸「情報処理室? そんなところには行ってないずらよ?」

歩夢「えっ……?」

歩夢(正直なところ。昨日の出来事のせいもあって、私はずっと花丸ちゃんを疑っていた)

歩夢(実行犯ではなくとも、着ぐるみの人物の協力者ではないかとばかり思っていた)

歩夢(ところが、何度聞いても返って来るのは「知らない」「行ってない」といった答えばかり)

歩夢(それどころか……)

花丸「そもそも昨日は大変な目に遭ったし……」

歩夢(花丸ちゃん自身も、着ぐるみの人物に襲われたと話し始めたのだ)

歩夢(しずくちゃんの時と同じく、部屋に訪れた着ぐるみによる襲撃)

歩夢(時間は分からないが、夜時間のチャイムはまだ鳴っていなかったという)

歩夢「ちなみに……そのうちっちーの着ぐるみは、何色だったの?」

花丸「茶色だけど……それがどうかしたずら?」

歩夢「……」

歩夢(私の時と同じ、2代目の方……)

歩夢(花丸ちゃんが嘘をついているのかは、まだ分からない)

歩夢(けど。もし嘘じゃないとしたら、昨日私が見た花丸ちゃんは……)

歩夢(いや……“彼女”に限って、そんな事をする筈……?)

《国木田花丸襲撃事件》のコトダマを入手しました。

花丸「ところで歩夢ちゃん、ちょっと見てもらいたい物があるんだけど」

歩夢(花丸ちゃんが示したのは、第1多目的室唯一の出入り口である引き戸)

歩夢(みんながここで目を覚ました時は、部屋を出ようとした矢先に火事が起きて大変なことになった)

歩夢(結局、その火自体はスプリンクラーで消し止められたんだけど……)

花丸「これ……糸、だよね」

歩夢「本当だ……取っ手に絡まってる」

https://i.imgur.com/ZyJTZw6.jpg

歩夢「確かにドアノブ付近で絡まってるけど……でも、この糸はどこにも繋がってないよ?」

花丸「火事で燃えたのかも知れないずらね」

歩夢「うーん……」

歩夢(ごく僅かに垂れていた、ドアに絡まっていない先端の方を手に取ってみる)

歩夢「燃えちゃったなら、先っぽが焦げていてもおかしくないけど……別に焦げているわけじゃ……えっ!?」

花丸「どうしたずら?」

歩夢「糸が……溶けた……?」

歩夢(絡まっていた糸は、スプリンクラーのお陰でところどころ濡れている。現に、先端部分がそうだった)

歩夢(そこに触れると、まるで糸が溶けたように消えた……ということは)

花丸「これって、水に溶ける糸だったの?」

歩夢「……うん。間違いないよ」

歩夢(あの時の火事騒動……そして、溶ける糸……)

歩夢(これらが意味するものって……?)

《火事騒動》《溶ける糸》のコトダマを入手しました。

────第2多目的室

歩夢(第2多目的室では、鞠莉さんが死体を、ダイヤさんが部屋全体の捜査をしていた)

歩夢(火事が起きた直後は煙が充満していたこの部屋も、今では

歩夢「あの……2人とも、少し訊きたいことがあるんですけど」

歩夢(作業を中断させるようで悪いが……2人にも襲撃事件のことを聞いておかないといけない)

鞠莉「その話だったら──」

ダイヤ「その件でしたら──」

鞠莉・ダイヤ「「……」」

歩夢(タイミングほぼ同時。2人の言葉が綺麗に被った)

歩夢(ちょっとしたコントを挟んで……最初に口を開いたのは、ダイヤさんの方だった)

ダイヤ「私、梨子さんの姿を見たんですよ」

歩夢「えっ?」

ダイヤ「ですが、皆さんの言う『着ぐるみ』の姿を見ることはありませんでした」

ダイヤ「或いは……背後からの奇襲だったので、単に視界に映らなかっただけかも知れませんが」

歩夢(ダイヤさんの話をまとめるとこうだ)

歩夢(襲撃されたのは、少なくとも夜時間のチャイムより後)

歩夢(お手洗いからの帰り、偶然、学生寮から校舎の奥へ歩いて行く梨子ちゃんの姿を見かけた)

歩夢(気になって、後をつけて行った結果。校舎3階から4階への階段付近で背後からスタンガンらしき物の攻撃を受けたのだという)

歩夢(目が覚めた時には、第1多目的室でみんなと一緒だった。結局、梨子ちゃんが4階のどこへ向かったのかは分からないらしい)

《黒澤ダイヤ襲撃事件》のコトダマを入手しました。

ダイヤ「私が知っているのは、ここまでです。次は鞠莉さんの番ですよ」

鞠莉「ん~……その前に、この部屋に色々落ちてたんでしょ? そっちの話をお願いしてもいいかしら」

ダイヤ「……まあ、いいでしょう」ハァ

ダイヤ「死体発見直後は煙が充満していたので、その時点では気付かない物が多かったですが……」

ダイヤ「まずは、スケッチブックと拳銃。いずれも、死体の傍に落ちていた物です」

鞠莉「矢が刺さった方の死体の傍にスケッチブックが落ちていて、拳銃は着ぐるみの傍」

ダイヤ「ちなみに、弾は一発も入っておりませんでした」

歩夢「……」

歩夢(拳銃は穂乃果さんが持っていた物と同じ形で、スケッチブックの持ち主は言うまでもなく……)

《焼け焦げたスケッチブック》《拳銃》のコトダマを入手しました。

ダイヤ「そして……死体の傍ではなく、どちらかといえば扉の傍に落ちていたものです」

歩夢(そう言って、ダイヤさんが取り出したのは……)

歩夢「ライターと……弓?」

ダイヤ「発見した時点で火は既に消えていましたが、出火の原因はこのライターでしょうね」

ダイヤ「犯人が死体を燃やすために火を放ったのではないかと」

鞠莉「……」

歩夢(犯人が火を……? じゃあ、まだ行方の分からない“誰か”が火を放ったっていうの……?)

ダイヤ「こちらの弓は“園田”と名前が掘られている以外、特に何の変哲もないカーボン製の物です」

鞠莉「だったら犯人は、その弓を使ってこの死体を矢で射たのかしら?」

ダイヤ「恐らくは。いずれもドアの付近に落ちていました。

ダイヤ「正確な位置関係はこうです」

https://i.imgur.com/zjKMX2D.jpg

《落ちていたライター》《落ちていた弓》のコトダマを入手しました。

鞠莉「さてと、じゃあ次は私の番ね。とりあえず、私が調べた中で判ったことだけど……」

鞠莉「まず、着ぐるみの死体。こっちは、お腹の部分に何らかの傷があった」

鞠莉「何の傷なのかは……ごめんなさい、焼けてしまっていて、私じゃよく判らなかったわ」

歩夢「ま、鞠莉さんが謝ることないですよ」

鞠莉「……もう1つの死体。こっちは、見たところ矢以外の傷はなさそうね」

鞠莉「ただ、この矢について少し気になることがあってね」

歩夢「気になるところ?」

鞠莉「矢じりに穴が空いているのよ。その穴を覗いたら、シャフト……でいいのかしら?」

ダイヤ「日本では矢幹と呼んだりしますね」

鞠莉「そうそう、その部分にも穴が空いていて、向こうが覗ける状態……つまり“細い何かであれば通せる状態”だったのよ」

鞠莉「何となく、引っ掛かるのよね……」

《鞠莉の検死報告》のコトダマを入手しました。

鞠莉「それから、私が襲われた時の話だったわね」

歩夢「……はい」

鞠莉「……」

歩夢(私とダイヤさんに向かって、鞠莉さんはいつものように耳打ちの体勢を要求する)

歩夢(そして、声を落として……)

鞠莉「ハッキリ言うわ。私は花丸と璃奈を疑っている」

歩夢「っ……」

歩夢(予想はしていた。私が襲われた時がそうだったのだから、いつか槍玉に上がる時が来るだろうとは思っていた)

歩夢「鞠莉さんも……花丸ちゃんに?」

鞠莉「ええ、そうね。しかも──」

歩夢(鞠莉さんが話してくれた内容は、衝撃的すぎるものだった)

歩夢(花丸ちゃんが鞠莉さんの部屋に訪れた時、鞠莉さんは警戒心を露にしていた)

歩夢(無理もない。既に一度、穂乃果さんに襲撃を受けているのだから)

歩夢(だが……廊下の方で、気を失っているしずくちゃんを連れ出そうとする着ぐるみの姿を目撃したのだという)

歩夢(『何をしているのだ』と糾弾しようとして……背後から自身も電撃を受けた、というものだ)

ダイヤ「では……やはり」

歩夢「やっぱり着ぐるみの人物以外にも、誰かがこの事件に関わっている……」

鞠莉「それが花丸か、花丸に変装した璃奈かはハッキリしないけどね」

歩夢「……」

歩夢(璃奈ちゃんが変装している可能性……キッパリと言われてしまった)

歩夢(もし本当だとしたら……璃奈ちゃんはどうしてこんなことを……)

《小原鞠莉襲撃事件》のコトダマを入手しました。

ピンポンパンポーン

モノっちー『さてと、皆さんお待たせしました』

モノっちー『というか待っているのはボクの方だネ』

モノっちー『待ち遠しいよ。まるでライブを前日に控えた人のように気分が高揚しているよ』

モノっちー『ボクはもう待ちきれません! というワケでオマエらー!』

モノっちー『赤い門の前に集合でーす! 全員集まるようにー!』

プツン

歩夢「全員で……」

鞠莉「結局、3人目は見つかったのかしらね」

ダイヤ「姿が見えないのは、梨子さん、璃奈さん、高坂さん」

ダイヤ「それに対して……死体は、2つ」

歩夢「また……低温倉庫の時みたいになってるのかな」

鞠莉「流石に、あそこのスイッチは壊れちゃってるから同じ手は使えないでしょうけど……」

鞠莉「また別のどこかに隠したのか、或いは……いえ、行きましょうか」

────赤い門

しずく「──だから、開いてたんですよ! 生物室が!」

花丸「わ、分かったから落ち着くずら」

歩夢「どうしたの?」

しずく「そのままの意味です。開かずの生物室が、入れるようになっていたんです!」

ダイヤ「生物室が……?」

しずく「中はとっても寒かったんですけど……」

鞠莉「それで、中には何があったの?」

しずく「沢山のロッカーです。それも、横にランプの点いた」

歩夢(しずくちゃんの話によると、ロッカーの数はざっと見た感じで30くらい)

歩夢(触ってみたが、いずれもロックが掛けられているのか、中を見ることは出来なかったという)

歩夢(もう少し調べてみようとしたが……チャイムが鳴ったので諦めたということだ)

《開いていた生物室》のコトダマを入手しました。

鞠莉「しまったわね……開いていることに気付いていれば、そこも詳しく調べられた筈なのに」

ダイヤ「過ぎたことを悔やんでも仕方ありません。どのみち……話の続きは、この先ですることになるのですし」

歩夢(そして、全員エレベーターに乗り込む)

歩夢(行方不明の3人目を残して……エレベーターは、地下へと潜り始めた)

歩夢(会話は、一切ない)

歩夢(もうこれが最後であるように……そう願いながら、これで5度目)

歩夢(自然と、どのくらいでエレベーターが裁判場に着くのかも分かってしまった)

歩夢(10、9、8、7……心の中でカウントダウンをする)

歩夢(そして、そのカウントダウン通りに……エレベーターは、停止した)

────地下???階、裁判場

モノっちー「今更どうって言うこともないよネ」

モノっちー「あ、模様替えについては何か言ってくれてもいいよ? 廃墟風っていうのも、マニアにとってはたまらないものでしょ?」

歩夢(3人目の姿は……ここにはなかった)

歩夢(隣で、私の手助けをしてくれたせつ菜ちゃんの姿も……なかった)

モノっちー「あ、どうって言うことが1つあったよ」

モノっちー「もう1人の人物については、裏で待機してもらってるからネ」

歩夢「……えっ!?」

歩夢(3人目が……待機している!?)

モノっちー「ま、そんなワケだから……とっとと始めようじゃないか」

モノっちー「極上の学級裁判を!」

歩夢(最後に特大級の疑問符を打ち上げて……5度目の裁判が、始まろうとしていた)

歩夢(被害者は誰なのか? 犯人は誰なのか?)

歩夢(何もかもが分からない、今回の事件)

歩夢(けれども、答えを間違えれば……私たちは全滅する)

歩夢(だったら、戦うしかない)

歩夢(この凄惨な事件の裏にある真実を、掴み取るしかない)

歩夢(全てを明らかにするためにも……みんなで戦うんだ)

歩夢(絶望というドス黒い意思が漂う、この学級裁判を──!)

~学級裁判準備~
3人の行方不明者と、2つの焼死体。
着ぐるみによる襲撃事件は、何の目的で行われたのか?
残された手掛かりを繋ぎ合わせて、導き出せる答えとは──?

コトダマリスト
『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』
『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』
『ただし、死体の心臓付近には矢が突き刺さっている』

《モノっちーファイル5-2》
『死体発見現場となったのは校舎4階、第2多目的室』
『黒焦げになったため、被害者の身元及び外傷、死因等は不明』
『また、被害者は着ぐるみを着用していた』

《開いていた情報処理室》
昨日の夜の時点では鍵が掛かっていた部屋。
いつの間にか鍵が開いていて、中に入れるようになっていた。
中は監視カメラの映像を確認する部屋で、奥に黒幕の部屋と思しき場所がある。

《上原歩夢襲撃事件》
昨晩、花丸に連れられて情報処理室前まで行った際に起きた。
2代目うちっちーの着ぐるみを着た何者かが、スタンガンで歩夢を気絶させた事件。

《桜坂しずく襲撃事件》
昨晩、夜時間のチャイムが鳴るよりも前。
部屋に訪れた初代うちっちーの着ぐるみに襲われたという。

《2つの着ぐるみ》
被服室・衣装倉庫から消えていた、初代うちっちーと2代目うちっちーの着ぐるみ。
初代は灰色で、2代目は茶色のカラーリング。
モノっちーいわくサイズや形に違いはないらしい。

《国木田花丸襲撃事件》
昨晩、夜時間のチャイムが鳴るよりも前。
部屋に訪れた2代目うちっちーの着ぐるみに襲われたという。

《火事騒動》
第1多目的室を出ようとした時、廊下と第2多目的室で発生した火事。
現在はスプリンクラーで鎮火している。

《溶ける糸》
https://i.imgur.com/ZyJTZw6.jpg
第1多目的室の扉の取っ手に絡まっていた。
スプリンクラーの水で溶けてしまっている。

《黒澤ダイヤ襲撃事件》
昨晩、夜時間のチャイムが鳴った以降の出来事。
校舎へと向かう梨子の姿を偶然見かけ、後をつけて行った。
その途中、校舎3階から4階の階段付近で背後から襲われたという。

《焼け焦げたスケッチブック》
矢が刺さった方の死体の傍に落ちていた。
ほとんど燃えてしまっているが、顔のイラストらしき物の一部が見える。

《拳銃》
着ぐるみを着ていた方の死体の傍に落ちていた。
高坂穂乃果が持っていた物と同一の型で、残弾は0発。

《落ちていたライター》
何の変哲もない、一般的なライター。
第2多目的室を入ってすぐの所に落ちていた。

《落ちていた弓》
園田と名前が掘られた弓。
第2多目的室を入ってすぐの所に落ちていた。
落ちていた物の位置関係は下記参照。
https://i.imgur.com/zjKMX2D.jpg

《鞠莉の検死報告》
着ぐるみの死体は、腹部に何らかの傷があった。
もう片方の死体に刺さっていた矢は中央に細い穴が空いており、細い物なら通る状態だった。

《小原鞠莉襲撃事件》
花丸が部屋に訪れ、鞠莉はそれを警戒していた。
しかし、しずくが着ぐるみによって攫われようとしている現場を目撃。
それを止めようとして、背後から電撃を受けたという。

《開いていた生物室》
捜査中、入れるようになっていた生物室。
しずくによれば、中には30ほどの、横にランプのついたロッカーがあったという。
いずれもロックが掛かっているのか、開けることは敵わなかったらしい。

今回はここまで。


 学 級 裁 判 
  開   廷!

モノっちー「まずは学級裁判の簡単な説明を行いましょう」

モノっちー「学級裁判では“誰がクロか”を議論し、最終的に投票で全てを決定します」

モノっちー「正しいクロをオマエらの過半数が指摘出来れば、クロだけがオシオキ」

モノっちー「不正解だった場合は、クロは卒業、残ったシロは全員オシオキです!」

モノっちー「ちなみに、ちゃんと誰かに投票してネ。投票を放棄した人もオシオキだからネ?」

ダイヤ「……もはや、卒業というルールは意味を為さなくなってしまいましたね」

しずく「それでも、間違えてしまえば処刑されることには変わりありません」

歩夢(そう……間違えるわけにはいかない)

歩夢(私たち全員の命が懸かっているんだ)

鞠莉「議論を始める前にモノっちーに訊いておきたいんだけど、どうして行方不明者さんは裏で待機しているのかしら?」

しずく「そうですよね。この場に出てきてくれた方が、議論が進む筈です」

モノっちー「あー、早い話がエンタメ性だよ」

花丸「え、エンタメ性?」

モノっちー「その人の要望でネ。前回のように消えた人の行方を気にしてたら、話がしっちゃかめっちゃかになるだろうからってさ」

モノっちー「何より、こういう演出にした方が裁判が盛り上がるしネ!」

歩夢(姿を見せていないのは璃奈ちゃん、梨子ちゃん、穂乃果さん)

歩夢(そして裁判場には、前回と同じように……?マークの付いた遺影が、3つ)

歩夢(あくまでモノっちーは、被害者不明で押し通すつもりのようだ)

モノっちー「まあそういうワケだから、議論を始めちゃってよ」

鞠莉「釈然としないけど……まあいいわ。最後の1人が誰かも分かり切ってるし」

ダイヤ「それは確かなんですか?」

鞠莉「高坂穂乃果……彼女しか考えられないわ」

しずく「……やっぱり、そうなんですね」

花丸「……」

歩夢「確かに、コロシアイの黒幕が死んだってことは考えにくいけど……」

歩夢「でも……決めつけるのもまだ早い気がするんだ」

歩夢(この事件は、そんなに単純な話じゃないような気がする。それに、今の話には何か違和感がある)

歩夢(何なんだろう、この違和感……?)

【ノンストップ議論 開始!】
[|黒澤ダイヤ襲撃事件>
[|焼け焦げたスケッチブック>
[|拳銃>
[|小原鞠莉襲撃事件>

鞠莉「間違いないわ。待機しているのは高坂穂乃果よ」

しずく「穂乃果さんは【璃奈さんを連れ去って】いましたから……いつでも殺すことが出来た筈です」

花丸「スケッチブックも落ちてたし……璃奈ちゃんは《被害者の1人》ってことになるずらね」

ダイヤ「梨子さんの姿は昨晩見かけましたが……私はそのあと背後から襲撃されています」

ダイヤ「つまり、犯人は【梨子さん以外の誰か】ということになります」

しずく「梨子さんもこの事件の被害者となると……」

鞠莉「高坂穂乃果が死んだ【根拠がない】以上、確定よ」

花丸「じゃあ、穂乃果さんが2人を殺した犯人……?」

歩夢(……違和感の正体が、掴めたかも知れない)

歩夢(やっぱり、決めつけるには早すぎる!)

[|拳銃>→【根拠がない】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「待ってください鞠莉さん。穂乃果さんが被害者かも知れない根拠、ありましたよね?」

鞠莉「……」

歩夢「現場に落ちていた拳銃は、穂乃果さんの持っていた物」

歩夢「穂乃果さんが死んだ時に落とした可能性だってある筈です」

鞠莉「……」フッ

歩夢(……えっ?)

鞠莉「何を言い出すかと思えば……そんな物、使わなくなったから現場に放置しただけでしょう」

鞠莉「そもそも、コロシアイが続いている時点で黒幕の高坂穂乃果は生きている……これは事実なのよ?」

歩夢「その話についても……不可解な点があるんです」

ダイヤ「不可解な点?」

しずく「というか、不可解まみれですけど……」

歩夢「とにかく一度、全員で整理しておきたい話が──」

鞠莉「くすんだ推理は邪魔なのよ」

反論!

鞠莉「歩夢。あなたが何を言いたいかは分かってる」

鞠莉「それでも……この場だけは譲れない。この事件を起こしたのは、高坂穂乃果よ!」

【反論ショーダウン 開始!】
[|2つの着ぐるみ>
[|火事騒動>
[|落ちていたライター>
[|小原鞠莉襲撃事件>

鞠莉「コロシアイが続いているってことは……」

鞠莉「間違いなく黒幕は生きている……」

鞠莉「そして、黒幕を名乗った高坂穂乃果こそがこの事件を起こした」

鞠莉「それは揺るぎない事実よ……!」

──発展──
それだけじゃ、私には納得しきれません
    何か根拠はあるんですか……?

鞠莉「全員を襲って多目的室送り。そのあと【火事を仕組んだ】」

鞠莉「こんな大掛かりな犯行を【1人で行なえた】のは穂乃果しかいないわ」

鞠莉「だって、私たちはあの部屋で眠らされていたのよ?」

歩夢(鞠莉さんの話には明らかな間違いがあるけど……分かって言ってる?)

歩夢(意図は分からないけど……だったら違う切り口。鞠莉さんが知らない事実で攻めるしかない!)

[|2つの着ぐるみ>→【1人で行なえた】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「……鞠莉さん。あなたの意図は、まだ私には分かりません」

歩夢「でも。今回の犯行は、少なくとも1人で行なえるものじゃないんですよ」

鞠莉「それは私が襲われた時の話をしているのかしら? だったら、あれはただのジョークだったと言ってあげるわ」

歩夢(……やっぱりそうだ。鞠莉さんは“何らかの意図”を持って、高坂穂乃果犯人説を強く推している)

歩夢(けれど、それじゃあ駄目なんだ)

歩夢「着ぐるみを着た誰かが、私たちを襲った。そこまでは鞠莉さんも知っていますよね」

鞠莉「ええ。うちっちーの着ぐるみが、せっせと犯行に──」

歩夢「今回の事件には、2種類の着ぐるみが使われているんです」

鞠莉「……何ですって?」

歩夢「鞠莉さんは、しずくちゃんが着ぐるみに襲われている姿を目撃したと言ってましたね」

歩夢「その着ぐるみは、何色でした?」

鞠莉「だから、あれは」

ダイヤ「鞠莉さん、冗談を言っている場合ではありません」

鞠莉「……灰色よ」

しずく「はい。確かに、灰色でした」

歩夢「でも、私と花丸ちゃんを襲ったのは茶色の着ぐるみだったんです」

歩夢「そもそも。衣装倉庫に2種類の着ぐるみがあったことは、モノっちーが証言してくれている……」

歩夢「そうだよね、モノっちー」

モノっちー「へえ、その通りでごぜえますよ嬢ちゃん」

しずく「しかも、2つの着ぐるみは衣装倉庫から消えていたんです」

ダイヤ「1つは、死体となって姿を現したわけですが……」

歩夢「こうなると、一概に穂乃果さんだけが犯人とは言えなくなりますよね、鞠莉さん?」

鞠莉「……」

花丸「でも、もう片方の着ぐるみはどこに消えたずら……?」

鞠莉「火事で燃えた、なんて言わないでしょうね?」

歩夢「え、っと……」

歩夢(助けを求めるように、周囲のみんなに視線を飛ばす)

歩夢(けれども……どうやら、捜査中にもう1つの着ぐるみを見つけた人は居なさそうだ)

鞠莉「……時間の無駄ね。モノっちー、いい加減高坂穂乃果を連れて来なさい」

モノっちー「えぇ~、もう? 早すぎない?」

しずく「誰だったとしても、容疑者の1人が不明のままというのは歯痒いです」

しずく「当人に出て来てもらわないことには、議論も進め辛いですし」

ダイヤ「それに。容疑者が出てくれば、誰かさんの主張が本当かどうかもハッキリするでしょう」

モノっちー「……仕方ないネ。じゃあいいよ、登場してもらいましょっか」

モノっちー「容疑者様の、お成~り~!」

歩夢(モノっちーが合図を促すと、後ろのカーテンが開き)

歩夢(通路らしきスペースから、のっしのっしと歩いてきたのは……)

歩夢「う、うちっちー!?」

ダイヤ「なっ……!?」

歩夢(私たちの前に姿を現したのは……茶色の着ぐるみ)

歩夢(モノっちーの言葉を借りるなら“2代目うちっちー”の着ぐるみだ)

???「どう、驚いた?」

花丸「その声って……」

鞠莉「やっぱり、生きていたのはあなたなのね……高坂穂乃果!」

うちっちー穂乃果(以下、穂乃果)「やあ。久しぶりだね」

穂乃果「多分、みんな疑問だらけだよね。だからとりあえず、あの時みたいに順番に答えていこっか」

穂乃果「まず、私がどうして裏で待機していたのか。それはモノっちーに頼んだからなんだ。そうでしょ?」

モノっちー「ええまあ、裁判を盛り上げるためにと頼まれましてネ」

モノっちー「学級裁判が盛り上がるなら、エンターテイナーとして乗らない手はないでしょうよ」

ダイヤ「随分と贔屓するのですね」

穂乃果「そんなわけで、私は議論がいい感じに温まって来るまでずっと隠れていることにしたんだ」

穂乃果「次にみんなが気になっているのは、私の恰好だよね」

鞠莉「そうね。さっさと姿を見せたらどうなのかしら?」

穂乃果「そう怒らないでよ。あなたみたいに殺気の強い人が居るから、これを着てるんだよ」

鞠莉「……はぁ?」

穂乃果「私が外の世界の秘密を喋った時、鞠莉ちゃん、ハンマーで殴りかかって来ようとしたでしょ?」

穂乃果「まさか裁判中に殺しに来るなんて考えたくないけど……一応、この下にはヘルメットも被ってたりするんだよね」

穂乃果「というわけで、私がこの恰好なのはただの自己防衛だよ。納得してもらえた?」

しずく「……本当に、穂乃果さんなんですか?」

穂乃果「私は正真正銘、《超高校級の絶望》高坂穂乃果だよ?」

しずく「いえ。顔を出さない限りは、別の人物の可能性だって考えられます」

穂乃果「それって、声真似でもしてるってこと? そんなの出来る人なんて……いや、居たか」

穂乃果「そうだよね、歩夢ちゃん?」

【怪しい人物を指名しろ!】

→【天王寺璃奈】

歩夢「璃奈ちゃんのことだよね。あなたが言いたいのって」

穂乃果「そうだよ~。確かに私が璃奈ちゃんだったら、高坂穂乃果の声を真似することだって可能だよね」

穂乃果「けどその場合、現場にあった2つの死体って……穂乃果と梨子ちゃん。その2人になるんだよ」

花丸「璃奈ちゃんって……どこかに監禁されてたんだよね?」

ダイヤ「仮に、監禁されてる最中に何らかのきっかけで穂乃果さんを殺してしまったとしても……梨子さんを殺す理由がありませんわ」

しずく「そう……ですよね。やっぱり、あの着ぐるみが璃奈さんというのは少し無理がありますよね」

花丸「じゃあ、やっぱりあの中身は穂乃果さんで、この事件の犯人も……」

ダイヤ「こうなってしまえば、それが自然ですわね。鞠莉さんも先程からそう仰っていましたし」

鞠莉「……」

ダイヤ「……鞠莉さん?」

鞠莉「……ええ。そうね」

歩夢(……? 何だろう、今の鞠莉さんの間は)

歩夢(あれ程、穂乃果さんを疑っていた割に……何かが変だ)

穂乃果「じゃあみんな、私に投票するってことでいいのかな?」

穂乃果「無理もないよね。璃奈ちゃんを監禁した上に、この着ぐるみがみんなを気絶させてまわったりしたんだからさ」

花丸「この場合……どのボタンを押せばいいずら?」

モノっちー「ああ、彼女に投票する場合は、高海さんのボタンを押してくれればOKだよ」

歩夢「待って! 投票はまだ早いよ!」

しずく「何か、不都合がありましたか?」

歩夢「容疑者が現れて、すぐに投票を促す。本当に、それで終わりにしていいのかな?」

花丸「でも、穂乃果さんも反論して来ないし……」

歩夢「だって、穂乃果さんは裁判を盛り上げるためと言って、わざわざ隠れてたんだ」

歩夢「それなのにこの展開は……いくらなんでも、盛り上がりとは程遠いよね?」

モノっちー「そうなっちゃったら、ボクとの約束と食い違っちゃうよネ」

しずく「ですけど、穂乃果さんは自分から犯人だって認めているんですよ?」

歩夢「だとしても……何か、おかしいんだ」

歩夢「彼女には、何か企みがあるのかも知れない。このまま投票するのは、彼女の手のひらの上で踊らされている気がするんだ」

鞠莉「企みって……歩夢、あなたは“私たちの中に犯人がいる”と言いたいの?」

歩夢「そ、そこまで言ってるわけじゃ……でも──」

穂乃果「あはは、歩夢ちゃんは疑り深いね」

穂乃果「でもそうだよ。実は私、この事件の犯人じゃないんだ」

花丸「さっきと言ってることが真逆ずら」

しずく「犯人じゃないと言われても……その着ぐるみを使っている以上、怪しさ満点です!」

穂乃果「怪しいだけじゃ、私を犯人だとは言い切れないよね」

歩夢「……とにかく。穂乃果さんが来たせいで言いそびれちゃったけど、これを機にハッキリさせておくべきことがあるんだ」

ダイヤ「何を明らかにするのです?」

歩夢「みんなの身に降りかかった襲撃事件。それを、一度整理しておきたいんだよ」

歩夢「そうすることで、何か新しく見えて来ることもある筈だから」

鞠莉「……そうね」

ダイヤ「それでは、時系列から整理していきましょうか」

しずく「じ、時系列って言われても……」

穂乃果「誰から順番に襲われたのかってことでしょ~。そんなの分かるの?」

歩夢「分かるよ。と言っても、まだ部分的だけど……」

穂乃果「へぇ、そうなんだ」

歩夢「梨子ちゃんと、最初から行方が分からない璃奈ちゃんについては一旦保留することになるけど……」

歩夢「その2人を除けば、一番最後に襲われたのはダイヤさんになるんだ」

ダイヤ「私が?」

歩夢(ダイヤさんが一番最後になる理由。その指標になるのは……)

【時計】
【チャイム】
【気温】

正しい選択肢を選べ!

→【チャイム】

歩夢「今ここに居る私、しずくちゃん、ダイヤさん、鞠莉さん、花丸ちゃん」

歩夢「その中で、ダイヤさんの襲撃だけが、夜時間のチャイムより後に起きているからなんだ」

ダイヤ「確かに、チャイムは既に鳴った後でしたわね。梨子さんを追っている最中、背後から」

しずく「梨子さんを見たんですか!?」

ダイヤ「ええ。夜中に校舎へ向かう姿が見えたので」

花丸「となると、梨子ちゃんはダイヤさんの後に……?」

穂乃果「そうかもね~」

鞠莉「あなたは余計な口を挟まないで」

ダイヤ「とにかく、この調子で襲撃事件の順番を明らかにして行きましょう」

【ノンストップ議論 開始!】
[|上原歩夢襲撃事件>
[|桜坂しずく襲撃事件>
[|国木田花丸襲撃事件>
[|小原鞠莉襲撃事件>

花丸「残りの私たちがどういう順番で襲われたのか……」

穂乃果「それを明らかにしてみよーう!」

しずく「全員【夜時間のチャイムよりも前】に襲われたんですよね」

ダイヤ「残っているのは鞠莉さん、花丸さん、歩夢さん、しずくさんの4人ですが……」

鞠莉「この中に《時系列が分かる人たち》が居た筈よ」

しずく「そうなんですか?」

花丸「でも【時計なんて見てない】し……」

花丸「正確な時間は分からない筈だよね?」

歩夢(4人の中で、時系列がハッキリしているのは……)

[|小原鞠莉襲撃事件>→《時系列が分かる人たち》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「鞠莉さんが襲われた時、しずくちゃんが連れ去られるところを見たって言ってましたよね?」

しずく「私が?」

鞠莉「そうよ。私が襲われた時点で、既にしずくは気絶させられた後だった」

鞠莉「つまり、少なくともしずく→私は、そう時間が掛からないうちに起きた襲撃ね」

穂乃果「あれれ? さっき鞠莉ちゃん、それは冗談だって」

鞠莉「冗談を言ってる場合じゃなくなった。それだけよ」

ダイヤ「となると、残りは歩夢さんと花丸さんですが……」

歩夢「多分……私たち2人には、目安がないんだ」

花丸「……」

歩夢「その代わり……さっきの、鞠莉さんの話の続きにもなるんだけど」

歩夢「この襲撃事件に、穂乃果さん以外の人物が関わっている、明確な根拠があるんだ」

しずく「えぇっ!?」

歩夢「鞠莉さんなら……それを分かっている筈ですよ」

鞠莉「あなたも随分と食えないことをするのね。まあいいけど」

鞠莉「それで、どうなのかしら。花丸?」

花丸「……」

花丸「ずらっ!?」

鞠莉「とぼけないで。あなた、今回の襲撃事件に関わってるでしょ」

花丸「そ、その質問は歩夢ちゃんにもされたけど……マルは知らないずら!」

しずく「歩夢さん、何か知っているんですか?」

歩夢「……うん。私は昨日、夜時間のチャイムより前に、花丸ちゃんに呼び出されたんだ」

歩夢「どうしても気になることがあるから、って、情報処理室の前までね」

歩夢「そこで……襲われたんだ。穂乃果さんが着ている、その着ぐるみに」

花丸「だ、だったら、オラが直接手を出したわけじゃ──」

鞠莉「あら? 私を襲ったのは、あなたの筈だけど?」

花丸「……っ」

鞠莉「あの時、私の部屋に来たのはあなただった」

鞠莉「そして、襲われて気絶したしずくを連れ去ろうとするグレーのうちっちーを見掛けた」

鞠莉「それを止めに入ろうとしたら……“後ろから電撃を受けた”。あの時すぐ近くに居た花丸、あなたにしか不可能よ?」

花丸「そ、そんなこと言われても本当に知らないんだって!」

ダイヤ「知らないと言われても、現に2人がそう証言して居ますし……」

しずく「まさか、花丸さんがもう1人居たなんてことは──あっ!?」

しずく「もしかして……璃奈さんが?」

歩夢「……そうなんだよ。どうしても、この可能性に辿り着いてしまうんだ」

歩夢「“花丸ちゃんに変装した璃奈ちゃんが、この事件に関わっている”」

鞠莉「もし目の前の花丸が本物で、本当に何も知らないのだとしたら。それしかないわね」

ダイヤ「ですが……どうして、璃奈さんがこんなことを?」

鞠莉「脅されてやったか……或いは“高坂穂乃果の仲間だったから”でしょうね」

歩夢「えっ……!?」

鞠莉「果南のメモにあったでしょう。『コウサカホノカと、その仲間に気を付けて』って」

鞠莉「そう。最初から穂乃果は、連れ去るフリをして仲間である璃奈を回収した」

歩夢(璃奈ちゃんが、穂乃果さんの仲間……!?)

歩夢(だったら……だったら、食堂で話したことは、何だったの……?)

穂乃果「あはは、面白い話だね」

穂乃果「だとしたら……その仲間が死んじゃったことにならない?」

鞠莉「自分で言ったでしょう。絶望的な思考は、私たちには受け入れられ難いものだって」

穂乃果「あー、言ったねそういえば」

鞠莉「ただ面白いからか、用済みになったから捨てたのか……今となっては些細なこと」

鞠莉「とにかく──」

穂乃果「じゃあ受け入れられないついでに、1つ面白い話をしてあげるよ」

穂乃果「そこに居る花丸ちゃんは、花丸ちゃんじゃないよ」

鞠莉「……は?」

花丸「え……っ!?」

穂乃果「まさか議論がこんな方向に向かうなんて思ってなくてさ。だから、私としては不本意なんだけど……」

穂乃果「ごめんね、バラしちゃった☆」

ダイヤ「ちょっと待ってください! その話が本当なら、今までの前提が覆りますわよ!?」

歩夢「死んだのは梨子ちゃんと璃奈ちゃんじゃなくて、梨子ちゃんと花丸ちゃんってことになって……」

しずく「ここに居る花丸さんは……」

花丸「違うよ! オラは正真正銘、《超高校級の作家》国木田花丸ずら!」

しずく「変装なら、剥がせば分かるのでしょうか……?」

花丸「やめるずら! 痛いことしないで!」

歩夢「本当に……璃奈ちゃんなの?」

花丸「だから、違うってば!」

歩夢「……証拠はある?」

花丸「証拠、って……だったら、オラが璃奈ちゃんだっていう証拠を出すずら!」

花丸「あんな着ぐるみの言うことを、みんなは真に受けるの!?」

歩夢「……っ」

穂乃果「本人の記憶に聞いてみればいいんじゃないかな」

ダイヤ「……?」

穂乃果「例えば、花丸ちゃんは知ってるけど璃奈ちゃんが知らないことを訊いてみたり
……なんてね」

歩夢(今のは、ヒントのつもりなのだろうか)

歩夢(穂乃果さんが何をしたいのか、まだ分からない)

歩夢(もし、この花丸ちゃんが璃奈ちゃんの変装なら……)

歩夢(どうしてこんなことをしたのかも、皆目見当がつかない)

歩夢(それでも。もしそれが事実なら、暴かないといけない)

歩夢(花丸ちゃんが知っていて、璃奈ちゃんが知らないこと……)

歩夢(この質問をぶつけて──!)

【理論武装 開始!】

花丸「オラは正真正銘、本物の国木田花丸だって!」

花丸「それが真実なんだって、言ってるのに……」

花丸「歩夢ちゃんは、オラの言うことが信じられないの!?」

花丸「穂乃果さんの言うことを信じるの!?」

花丸「こんなの、校正の必要があるずら!」

花丸「おかしいよ、歩夢ちゃん……」

花丸「お願いだから、信じてよ……」

花丸「オラは……私は……」


花丸?「【私が天王寺璃奈だっていう証拠はないよ!】」

      △曲
○で歌った      □夕食会
      ×しずくが

→×□○△ [|しずくが夕食会で歌った曲>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「あなたが花丸ちゃんなら……夕食会の出し物で、しずくちゃんが歌った曲、分かるよね?」

花丸?「……!?」

しずく「そういえば……あの時璃奈さんは、曜さんの変装で保健室に居て……!」

花丸?「あ、えっと……ど忘れ、しちゃったかも……」

しずく「そんな筈ありません。『夜の女王のアリア』を歌い終えたあと、花丸さんは得意げに“曲の正式名称”を語っていました」

花丸『確か、夜の女王のアリアって、魔笛に出てくる2曲のことを示していて……』

花丸『1曲目は“ああ、恐れおののかなくてもよいのです、わが子よ!”」』

モノっちー『そして2曲目は“復讐の炎は地獄のように我が心に燃え”。まあ実際は、こっちの方が有名だから、“夜の女王のアリア”で十分通じるんだけどネ』

しずく『……ご存知でしたか』


歩夢「どうなの!? あなたが花丸ちゃんなら、正しい曲名も分かるよね!?」

花丸?「え、あ、その……うぅ……」

穂乃果「もういいよー璃奈ちゃん。お疲れ様」

歩夢(穂乃果さんはそう言うと、花丸ちゃんの姿をした彼女に向って何かを放り投げ……)

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(彼女はスケッチブックを手に……何日かぶりに、私たちの前に姿を現した)

ダイヤ「璃奈さん……!」

鞠莉「そんな、馬鹿な……!?」

穂乃果「鞠莉ちゃんの推測は面白かったけど……ちょっと考えすぎだったね~」

穂乃果「彼女が今回の計画に協力した理由、正解は“私が脅したから”。それだけだよ」

穂乃果「命が惜しければ……ってやつだね」

しずく「そんなことのために、花丸さんと梨子さんを……」

ダイヤ「その上、わざわざ璃奈さんを花丸さんとして行動させたということは……」

鞠莉「……投票結果を間違える可能性を、そこに用意した?」

鞠莉「思い返してみれば、私や歩夢の襲撃は怪しい人物がハッキリしすぎていた」

鞠莉「もしその話をキッカケにして、花丸に投票していたら……」

穂乃果「本物の花丸ちゃんは既に死んでいるからね。み~んな不正解」

歩夢「ちょっと待ってよ! それじゃあまるで、この事件の犯人が璃奈ちゃんだって……」

璃奈「私じゃ……ない(>_<。)」

歩夢「……え?」

璃奈「私は犯人じゃない! 火事が起きた時、みんなと一緒に居たんだよ(>_<。)」

しずく「そう言えば、あの火事の謎がまだでしたね……」

ダイヤ「出火の原因は第2多目的室に落ちていたライターです。恐らく、事前にガソリンか何かを撒いていたのでしょう」

ダイヤ「そうでなければ、あの火の回りようの説明がつきませんわ」

しずく「だとしたら、犯人は火事が起きた時にライターで火をつけたことになります!」

ダイヤ「つまり、第1多目的室に居た我々には火災を起こすことは不可能……」

穂乃果「だったら火事を起こせたのって……もしかして私だけ?」

穂乃果「……と見せかけて、やっぱり私以外にも可能なんだよね~♪」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(火事を起こすことが、穂乃果さん以外にも可能?)

歩夢(だとしたら……)

【ノンストップ議論 開始!】
[|火事騒動>
[|溶ける糸>
[|落ちていたライター>
[|落ちていた弓>

穂乃果「あの火事は、私以外にも起こせるんだよ」

ダイヤ「出火の直接的な原因は【ライターだった】筈です」

鞠莉「私たちは全員、第1多目的室に押し込められていた」

鞠莉「だから、ライターに直接触れることは出来ない……」

しずく「そうなると、触れる機会があるのは《穂乃果さん》か《被害者のどちらか》だけですし……」

しずく「私たちに【火をつけるのは不可能】ですよね?」

穂乃果「ところであのライターって、立てたまま置くことが可能なんだよね~」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(火事が起きた理由……可能性として考えられるのは……)

[|溶ける糸>→【火をつけるのは不可能】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「もしかしたら……同時に行われたのかも知れない」

ダイヤ「同時に、とは?」

歩夢「あの火事って、私たちが第1目的室を出ようとしたタイミングで起きたことだったよね」

しずく「そうですけど……それが何か?」

歩夢「多分その扉に、仕掛けが施されていたんだ。第2多目的室に置かれている、ライターと連動した仕掛けがね」

歩夢「実際、第1多目的室のドアノブには、糸が結ばれていたんだよ。スプリンクラーで溶ける、水溶性の糸が!」

ダイヤ「す、水溶性の糸……!?」

鞠莉「その仕掛けを作った人は、スプリンクラーで糸が消えることまで想定内だったってところかしらね」

穂乃果「歩夢ちゃんの話を聞いてると、糸が残っちゃったみたいだけどね」

歩夢「それに、あのライターがあったのは、第2多目的室の扉のすぐ傍」

https://i.imgur.com/zjKMX2D.jpg

歩夢「もし、この糸が……」

https://i.imgur.com/5mPD4UD.jpg

歩夢「こんな風にライターと繋がっていたら、どうかな」

しずく「なるほど……扉を開けた時に糸が引っ張られ、ライターが倒れることで火事になるわけですね!」

歩夢「どうかな、穂乃果さん。あなたが言いたいのって、こういうことなんでしょ?」

穂乃果「正解だよ。これなら、私が現場から離れた場所に居ても火事は起きるよね」

ダイヤ「そうやって、死体の身元を判らなくさせた上で……今回の裁判に臨んだわけですか」

しずく「でも、これでおおよその謎は解けました。やっぱり、犯人は穂乃果さん──」

穂乃果「それはどうかな?」

しずく「……えっ?」

穂乃果「いくら謎が解けたって言ってもさ。私が犯人だってことに繋がる直接の証拠はないよね?」

ダイヤ「あなた、先ほどから何度も自分が犯人であるような振る舞いをしているではありませんこと?」

穂乃果「うん、そうだね。確かに、火事を仕組んだのは私だけど……」

穂乃果「まさか……忘れちゃいないよね? 学級裁判のルール」

歩夢「忘れるって、どのルールのことを言ってるの?」

穂乃果「今度の事件ってさー、矢が刺さった死体があったよね?」

ダイヤ「捜査に携わっていないあなたが、どうしてそれを……」

鞠莉「その死体が、どうかしたのかしら」

穂乃果「矢で人を殺すのって、直接手で突き刺す方法と……もう1つあったよね」

鞠莉「弓で射ること……でしょう?」

穂乃果「うん。そもそも、弓矢って本来はそうやって使う物だからね」

しずく「穂乃果さんは、何が言いたいのでしょうか?」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢(穂乃果さんの“自分が犯人ではない”という主張と、一連の問いかけ)

歩夢(もしかして、これらが意味するものって……)

【コトダマ一覧より選択】

→【落ちていた弓】

歩夢「第2多目的室の扉の近くに落ちていた弓……」

歩夢「もしかして、あれも仕掛けられた物だったの?」

穂乃果「だいせいか~い! 扉を開けることで動く仕掛けは、ライターだけじゃなかったんだ」

穂乃果「自動的に発射される矢も、私が用意した罠なんだよ」

しずく「……罠!?」

鞠莉「扉を開けた人が弓を作動させ、その先に居る人物を射ることになるトラップ」

鞠莉「つまり、扉を開けた人物こそが、この事件のクロに仕立て上げられるもの……」

ダイヤ「いえ、それは不自然です! 弓が落ちていたのは事実ですが、あの位置ではまともに弦を張れるかどうか……」

鞠莉「火事の中で、偶然床に落ちただけだとしたら……?」

ダイヤ「っ……だとしても、やっぱり不可解ですわ!」

ダイヤ「仮に、弦を張れるよう仕掛けを施していたとしても……その程度の仕掛けでは、矢が狙った位置に届くかどうか……」

歩夢「それは……違うんです、ダイヤさん」

歩夢「一連の仕掛けには、必ず狙った位置に矢を飛ばせる工夫があったんです」

歩夢(そうだ。鞠莉さんと一緒に、確認している筈の手掛かり)

歩夢(穂乃果さんが仕組んだ、悪意の正体……)

【コトダマ一覧より選択】

→【鞠莉の検死報告】

歩夢「死体に刺さった矢には、細い穴が開いていた……」

歩夢「そこに、ライターの仕掛けにも使われた糸が組み合わさると……」

鞠莉「ガイド線の役割を果たして、矢は狙った場所へ飛んで行く」

鞠莉「これが……高坂穂乃果の仕掛けたトラップの全貌よ」

ダイヤ「そん、な……」

璃奈「……(>_<。)」

穂乃果「さてと。ここまで解いた頭のいいみんななら、もうクロが誰か分かってるんじゃないかな?」

歩夢(……その人物は、第1多目的室の扉を開けて、ライターと弓の仕掛けを作動させた)

歩夢(私が感じていた“あの人”への違和感の正体も、ようやく分かった気がする)

歩夢(きっと、事件の真相に気づいていたんだ。そう、その人は──)

【怪しい人物を指名しろ!】

→【小原鞠莉】

歩夢「鞠莉さん……なんですよね」

鞠莉「……」


鞠莉『気になることは多いけど、まずはここを出──』


歩夢「あの時、ああ言ってみんなを第1多目的室から出そうと、扉を開けた……」

鞠莉「……そうよ」

ダイヤ「っ……」

穂乃果「ああ、鞠莉ちゃんなんだ、犯人」

鞠莉「……」

鞠莉「……」ハァ

鞠莉「出来ることなら……高坂穂乃果、あなたを道連れにしてやりたかったわ」

しずく「道連れ……?」

歩夢「もしかして、裁判が始まってすぐ、穂乃果さんが犯人だって決めつけてたのも……」

鞠莉「そうよ。わざと投票を間違えさせて、あなたたち全員ごと、穂乃果を葬るつもりだった」

鞠莉「その後で、私もあなたたちの後を追うつもりだったわ」

ダイヤ「そんな……っ!?」

穂乃果「すっごい、そんなこと考えてたんだ」

鞠莉「でも……もう、それもオシマイよ。結局、全て暴かれちゃったわ」

歩夢「……まだ、終わりじゃないかも知れない」

鞠莉「……?」

歩夢「まだ、希望が残っているかも知れないんだ」

穂乃果「歩夢ちゃーん、事件はもう終わったんだよ」

歩夢「穂乃果さんじゃなくて、あなたに訊いてるの……璃奈ちゃん」

璃奈「……えっ(?□!)」

歩夢「璃奈ちゃんは、ここでこの事件を終わりにしていいの?」

璃奈「いや……だって、謎は全部解かれたんじゃ(?□!)」

歩夢「まだ、璃奈ちゃんだけが知っていることがあるかも知れない」

歩夢「それに、まだ全ての謎が解けきったわけじゃないんだ」

歩夢「例え、鞠莉さんが犯人だって結果が変わらなかったとしても……」

歩夢「少しでも希望がある限り、諦めるわけにいかないんだよ!」

璃奈「……(・v・)」


せつ菜『私は居なくなりますけど……私の想いは、あなたに託します』

せつ菜『だから、歩夢。あなたは決して、諦めないでください』


歩夢(せつ菜ちゃんに言われたことを行動に移す……今が、その時かも知れない)

歩夢(彼女も一度、かすみちゃんの仕組んだ罠で犯人にされかけたことがあった)

歩夢(あの時だって、諦めずに議論を進めた先に別の真相があったんだ)

歩夢「まだ……投票には、行かせないよ」

穂乃果「……」

穂乃果「……」フフッ

穂乃果「勝負だね、歩夢ちゃん。いいよ、思いっきり楽しもうよ」

穂乃果「この学級裁判を──!」


 学 級 裁 判 
   中  断

~モノっちー劇場 番外編~

せつ菜「そして、いつものようにモノっちー劇場番外編が始まりました」

せつ菜「ですが、色んな事情により、すぐに幕を下ろすのでした」

せつ菜「あ、そういえば皆さんご存知でしたか?」

せつ菜「このモノっちー劇場番外編も、今回で最終回なんだそうですよ?」

今回はここまで。


 学 級 裁 判
   再  開

穂乃果「それで……投票には行かせないって言ったけど」

穂乃果「次に何を話すかは、決まった?」

歩夢「……」

璃奈「……(>_<。)」

鞠莉「無駄よ、歩夢」

ダイヤ「鞠莉さん……」

鞠莉「璃奈と花丸の入れ替わりという保険を用意した上で、高坂穂乃果は弓矢と糸のトラップを仕組んだ」

鞠莉「間違いなく、私がこの事件のクロなのよ」

鞠莉「私が殺し……」

歩夢「その事なんだけど……」

鞠莉「……?」

歩夢「確かに穂乃果さんは、幾つもの罠を準備した」

歩夢「それを作動させてしまった鞠莉さんを、この事件のクロとして糾弾するのは簡単なこと」

歩夢「でも……今まで出てきた話だけでは、ハッキリしないことが2つあるんだよ」

しずく「ハッキリしないことが、2つ?」

歩夢(これは、あくまで可能性の話。徒労に終わるだけかも知れない)

歩夢(けれども……まだ、何かが残されている気がするんだ)

歩夢(璃奈ちゃんにも色々訊いておきたいけど、その前にハッキリさせておかないといけないこと)

歩夢(まず1つ目は……)

【閃きアナグラム 開始!】
い し ぼ く の が じ ひ ゃ う し こ(ダミー無)

→【ひがいしゃのしぼうじこく(被害者の死亡時刻)】

歩夢「そもそも……鞠莉さんが作動させたのって、本当に人を殺す罠だったのかな?」

璃奈「……(・v・)」

穂乃果「どういう意味かな、歩夢ちゃん。諦めないって気持ちが先行しすぎておかしくなっちゃった?」

鞠莉「ドアを開けた直後に火事は起きたのよ? トラップが仕掛けられていたのは確かだわ」

歩夢「……被害者を矢で殺すだけなら、何も、火事と同時じゃなくってもいい」

歩夢「私たちが多目的室を出るより前から“既に殺されていた可能性”だってあるよね」

しずく「部屋を出るより前、って……」

ダイヤ「まさか、あの時点で被害者は亡くなっていたと……!?」

歩夢「今回のモノっちーファイルは、ほとんど情報が記載されていなかったよね?」

歩夢「……“被害者の死んだ時刻”すら」

穂乃果「ふーん……それが歩夢ちゃんの言う、ハッキリしないことなんだ」

穂乃果「確か、2つあるって言ってたけど……」

穂乃果「もう1つは、何なのかな?」

歩夢「穂乃果さんの目的が、鞠莉さん……いや、誰かをクロにすることだったとしたら」

歩夢「どうしても説明がつかないこと」

歩夢「それは……」

【水溶性の糸】
【死体の数】
【着ぐるみ】

正しい選択肢を選べ!

→【死体の数】

歩夢「あの現場に、2つも死体があったこと……」

歩夢「それこそが、クロ=鞠莉さんで終わらせるわけに行かない一番の決め手だよ」

しずく「……? それのどこがおかしいんでしょうか?」

歩夢「誰かをクロにしたいだけなら、2人も殺す必要はない」

歩夢「火事が死因ならともかく、今回使われたのは矢を使ったトリックだからね」

ダイヤ「確かに……穂乃果さんにとっては、矢が刺さった死体が転がり出ればいいだけの話です」

ダイヤ「もう片方の死体は、傷こそあったようですが、矢はどこにも刺さっていませんでしたからね」

鞠莉「っ……じゃあ、歩夢が言いたいことはこうね?」

鞠莉「被害者が死んだタイミングと、トラップとは関係ない死体があった理由」

鞠莉「それらがハッキリしない限りは、私がクロだと断定は出来ない……」

しずく「ということは、鞠莉さんがクロじゃないとしたら……」

しずく「前もって被害者を矢で殺せる人なんて、1人しか居ません……よね?」

歩夢「うん。それが出来たのは、第2多目的室に居なかったただ1人……」

歩夢「穂乃果さん、あなただよ」

穂乃果「……」

穂乃果「お見事! って言えばいいのかな。確かに、私が真犯人って可能性も出てきたね」

ダイヤ「つまり、鞠莉さんが犯人だと力説し、彼女への投票を促したあなたの行動は……」

歩夢「私たちを間違った結末に誘導する、本当の罠」

歩夢「あなたの狙いは、投票を間違えさせて、私たちを全滅させることだった……」

穂乃果「うーん……少し、話が飛躍しちゃってない?」

歩夢(……えっ?)

穂乃果「確かに、私にも弓矢を使うチャンスがあった。あったけどさ……」

穂乃果「罠で死んだのかそれより前に殺されていたかの判断はつかない筈だよ?」

穂乃果「……絶対にね」

しずく「そんな筈ありません! きっとその謎も解ける筈です!」

しずく「だって、脅されていたとはいえ、璃奈さんが知って──」

穂乃果「ああ。ちなみに璃奈ちゃんに訊いても無駄だよ」

穂乃果「彼女には計画の途中で気絶して貰ったからさ」

穂乃果「真相を知っている人になっちゃう前に、国木田花丸として……ね」

璃奈「……(>_<。)」

歩夢「……」

歩夢(矢が放たれたのは火事より前か、火事と同時か)

歩夢(その判断がつくかどうかは……)

【判断はつく】
【判断はつかない】

正しい選択肢を選べ!

→【判断はつかない】

歩夢「……悔しいけど、穂乃果さんの言う通り」

歩夢「璃奈ちゃんも知らないのなら……確かめる有力な手掛かりは、どこにもない」

しずく「そんな……!?」

穂乃果「肝心の死体は焼けちゃって、マトモに確かめようがないもんね~」

穂乃果「医学に詳しい彼方ちゃんや、知識があった花丸ちゃん」

穂乃果「今まで検死して来た2人は、もう居ないんだもの」

ダイヤ「まさか……それが、あなたが花丸さんを殺した狙いですか!」

穂乃果「そうだよ。火事を起こしたのは、死んだ時間を分からせないため」

穂乃果「花丸ちゃんを殺したのは、それでも解かれる可能性を潰すため」

穂乃果「だから、ここから先は推理なんて出来ないんだ」

穂乃果「この先の真相は、誰にも分かりはしないんだよ」

穂乃果「……“当事者の私以外には”ね」

歩夢「も、もしかして……それが、穂乃果さんの用意した、本当の、罠だったの……!?」

穂乃果「声が震えちゃってるよ、歩夢ちゃん。さっきまでの意気込みはどこに行ったの?」

しずく「本当の罠、って……」

鞠莉「どうやら今回の事件のメイントリックは……被害者不明でも、人物入れ替わりでも、まして自動殺人トラップでもなかったようね」

穂乃果「あはは、今頃気づいた? そうなんだよ、この事件の本当のトリックは……」

穂乃果「“犯人不明”ってことなんだよ!」

歩夢「犯人、不明……」

歩夢(改めて、その言葉を噛み締める)

歩夢「誰にも、分からない犯行……。全てを知っているのは、穂乃果さんだけ……」

歩夢(呪詛のように、口から言葉がこぼれ出る)

歩夢(一縷の希望にすがって、それを手繰り寄せた私たちは。とんでもないものを叩きつけられたのだ)

歩夢(あまりにも巨大な“絶望”を……)

穂乃果「……」フフッ

穂乃果「推理出来る部分は、ここでおしまい。ここから先は、勘で犯人を当てるしかないんだよ」

歩夢「勘、で……?」

しずく「そんな、無茶苦茶すぎます!」

穂乃果「でも、それがルールなんだよ。学級裁判における、絶対的なルールなんだよ」

穂乃果「というわけで、クロは私か、それとも鞠莉ちゃんか……」

穂乃果「どちらか選ばなかった人も、オシオキの対象になるからね」

穂乃果「さあ。クロとシロの運命を分ける、ワックワクでドッキドキの投票ターーーイム!」


▶【高坂穂乃果】
▶【小原鞠莉】

投票するのはどっち?


   VOTE

高坂 小原 ???

モノっちー「ちょっと! ボクは投票タイムだなんて一言も言ってないよ!?」

歩夢(パニックだらけの脳内に突如響いたのは……モノっちーの大声だった)

穂乃果「え~、別にいいでしょ?」

モノっちー「よくない、よくないネえ」

穂乃果「でも、モノっちーは困る理由がないよね? みんなはともかく、あなたは犯人を知ってるんだし」

穂乃果「今までもそうだったでしょ」

モノっちー「……えっ?」

モノっちー「……」

モノっちー「そ、そう……だネ」

ダイヤ「……? 何ですか、今の反応は」

モノっちー「いや、は、犯人でしょ? 知って、るけど……」

鞠莉「……どうして、あなたが冷や汗を垂れ流すのかしら」

しずく「というか、ロボットが汗を垂らすってあるんですね」

璃奈「もしかして……“モノっちーも犯人が分からない”の(・v・)?」

モノっちー「い、いやいやいやいや、な、ななななななな何が分からないって?」

歩夢(なんだろう……この、モノっちーの反応)

歩夢(璃奈ちゃんの言うように“モノっちーすら犯人を把握していない”のだとしたら、この反応も頷けるけど……)

歩夢(そんなこと、あり得るのかな……?)

歩夢「いや……モノっちーって、今まで監視カメラで全ての犯行を把握していた、よね」

歩夢「前回の事件だって、事の一部始終を見せつけてきたわけだし」

モノっちー「そ、そそそその通りだよ!」

歩夢「それが、今回に限って、犯人を把握していないなんて──」

歩夢「──今回に限って?」

歩夢「……!」ハッ

歩夢(もしそうだとしたら、前提が大きく覆ることになるけど……)

歩夢「ねえ、みんな。ちょっと聞いて欲しいんだ」

鞠莉「何かしら?」

歩夢「穂乃果さんの真の狙いは……私たちに分からない犯行を起こすことじゃなかったのかも知れない」

歩夢「“モノっちーにも分からない犯行を起こすこと”だったのかも知れないんだよ!」

ダイヤ「モノっちーにも、分からない犯行?」

穂乃果「……」

しずく「一瞬、モノっちーの反応でそれを考えましたけど……歩夢さん、やっぱりそれは考えられませんよ」

歩夢「どうしてそう思うの?」

しずく「どうしてって……穂乃果さんは黒幕なんですよ? だったら、そんなことをする理由がないじゃないですか」

歩夢「だったら穂乃果さんは……“黒幕じゃなかった”のかも知れない」

しずく「えっ……!?」

歩夢「そもそも。黒幕だってことは、穂乃果さん自身がそう言い出しただけだった」

歩夢「それに関して、モノっちーは何も言ってないよね?」

璃奈「嘘だった、っていうの……(?□!)!?」

しずく「ですが……第2多目的室の窓から脱出しようとした時、穂乃果さんは外の世界の真実を話していたじゃないですか!」

鞠莉「せつ菜の本名の話だってそうね。歩夢、あなたの反応からして、中川菜々っていうのは……」

歩夢「それは……本当の話、だけど」

歩夢「でも、今なら分かるんだ。黒幕じゃなくても、それを知る機会があったってことを」

歩夢(そうだ。外の世界の秘密やせつ菜ちゃんの本名を知ることが出来たタイミングは……)

【黒澤ルビィの事件】
【近江彼方の事件】
【渡辺曜?と宮下愛の事件】
【松浦果南と中須かすみの事件】

正しい選択肢を選べ!

→【松浦果南と中須かすみの事件】

歩夢「前回の事件で、彼女は捜査のために武器庫のゲームをやったんだよね」

歩夢「私の才能……私たちのプロフィールを知っていたことが、そこで追及されていた……」


千歌?『うん、私は武器庫に入れるよ。あのロシアンルーレットをクリアしたからね』

しずく『あっさり認めるんですね』

千歌?『隠すつもりはなかったよ。ただ、聞かれると面倒だなーって』


歩夢「だったら、そこにせつ菜ちゃんの本名が載っていても、何もおかしくはないよね?」

歩夢「それだけじゃない。モノっちーは、こうも言っていた筈だよ」


モノっちー『クリア特典は……“この学園の秘密に関する重大なヒント”や“オマエらの学生生活に関する重要な手掛かり”だよ!』

歩夢「この学園の秘密に関する重大なヒント……これって“外の世界の秘密”と考えられるんじゃないかな」

ダイヤ「では、穂乃果さんは……武器庫で得た情報を元に、私たちに喋っただけで……」

鞠莉「実際は、コロシアイの黒幕とは何も関係がなかった……どうなの、モノっちー?」

モノっちー「いや、ボクに訊かれても困るんだけど……」

歩夢「答える義務がある筈だよ。今あなたは、1人の参加者によってコロシアイの根本そのものを揺るがされている」

歩夢「モノっちー自身にとっても、この展開は望んでないんじゃないかな?」

璃奈「どうなの。答えて(>_<。)!」

穂乃果「答えなくっていいよ。口出しするゲームマスターなんて、これを観る人は望んでないでしょ?」


モノっちー「……」ハァ

モノっちー「口出ししまくってるのは、オマエの方なんだけどネ」

歩夢「……!」

モノっちー「面白い展開になりそうだったし、ここまでずーっと放置してたけどネ」

モノっちー「オマエの頼みに便乗して、わざわざ朝と夜の定時放送も止めてやったりもしたけど」

モノっちー「やっぱり、記憶を取り戻してたんだネ」

ダイヤ「な、何の話をしているのですか……?」

穂乃果「……」

モノっちー「ああ、今のは大きめの独り言だよ。だから、今から話す方が本題」

モノっちー「“このコロシアイの運営に、その着ぐるみ女は何一つ関わっちゃいない”よ」

モノっちー「黒幕なんて、ただの嘘っぱちなんだよネ」

しずく「なっ……!?」

モノっちー「オマエらが騙されてただけの話だよ。そして、大体は今しがた議論された通りだネ」

モノっちー「ロシアンルーレットを“最高難易度でクリアした”彼女は、そこで得た情報をキッカケに計画を立てた」

歩夢(……最高難易度?)

モノっちー「自動殺人トラップなんて面白いことをしようとしていたから、ボクはほったらかしにしていたけど……」

モノっちー「まさか、ボクを罠にかけるための事件だったとはネ! ビックリ仰天だよ」

穂乃果「……そこまで言っちゃうなんて、卑怯だね」

モノっちー「ま、半分は私怨だよ。勝手にゲームを乗っ取ろうとしたオマエへのネ」

穂乃果「ふーん……」

鞠莉「この険悪なムード……間違いなさそうね」

歩夢「うん。穂乃果さんは、黒幕でも何でもなかったんだ」

ダイヤ「ですが……主催を乗っ取って、穂乃果さんは何がしたかったのでしょう?」

穂乃果「……」

ダイヤ「そもそも、穂乃果さんではないとしたら、この残酷な催しを仕組んだのは一体誰なんですか?」

モノっちー「……」

璃奈「……2人とも、肝心なところはだんまり(・v・)」

鞠莉「そういう璃奈は、何か知ってるのかしら?」

璃奈「わ、私は……途中で気絶させられちゃったから……(>_<。)」

歩夢「それでも、途中まで何があったかは知ってる筈なんだ。話して、欲しい」

穂乃果「私からもお願いしたいね。少し議論の方向がズレてるみたいだしさ」

穂乃果「黒幕が誰かって話じゃなくて、犯人が誰かって話をしようよ」

モノっちー「そればっかりは、オマエに同感だネ」

しずく「ですが……モノっちーにも犯人が分かっていないのなら、誰がどう判断を下すのでしょうか?」

穂乃果「それはみんなが気にすることじゃないよ。モノっちーに任せればいいだけ」

穂乃果「ただ、間違えるわけにはいかないよ? この狂ったゲームを仕組んだ張本人としてね」

モノっちー「……オマエ、最初からそれが狙いだったんだネ」

穂乃果「うん。海未ちゃんやことりちゃん、それにみんなの命を奪ったあなたへの仕返しだからね」

歩夢「仕返し……?」

穂乃果「ああ、細かいことは気にしないで。それより、璃奈ちゃんの話を聞こうか」

穂乃果「いいよ璃奈ちゃん、自分のしたことを話しちゃって」

璃奈「わ……分かった(>_<。)」

璃奈「……私がやったのは、歩夢ちゃんを情報処理室まで連れて行ったことと、しずくちゃんを攫うタイミングで鞠莉さんを部屋から誘い出して、気絶させたこと(>_<。)」

歩夢「昨晩花丸ちゃんとして動いていたのは、全部璃奈ちゃんだったんだね」

鞠莉「わざわざ変装までして、随分と手荒くやってくれたものね」

璃奈「ああでもしないと、鞠莉さんは絶対に警戒するからって……ごめん(>_<。)」

鞠莉「愛の時と違って、完全に脅迫されていたんでしょう? だったら、これ以上は責めないわ」

璃奈「……梨子ちゃんを気絶させたのも、私なんだ(>_<。)」

ダイヤ「り、梨子さんを……!?」

しずく「そういえば、ダイヤさんは梨子さんの後を追っていたんでしたね」

ダイヤ「ええ。そうなると、私が襲われた時、璃奈さんたちが居たのは……」

璃奈「4階だよ(・v・)」

ダイヤ「……そうなりますわね」

歩夢「だとしたら、ダイヤさんを襲うことが出来たのは……」

歩夢「2つの着ぐるみのどちらか、ってことになるんじゃないかな」

ダイヤ「或いは、着ぐるみから出ていたか。どちらにせよ、穂乃果さんと……おや?」

璃奈「ど、どうしたの(・v・)?」

ダイヤ「璃奈さんは、着ぐるみを着用することはなかったのです?」

璃奈「な、なかったけど……(・v・)」

鞠莉「……それだと変ね。穂乃果以外に“もう1人”着ぐるみの人物が居た筈なんだけど」

鞠莉「しかも、もう1つの着ぐるみは死体となって発見された……」

璃奈「ほ、本当だよ。私は、着ぐるみなんて着なかった(・v・)」

ダイヤ「だとしたら、もう1人は一体……」

歩夢「……」

歩夢(私たちは、梨子ちゃんを含めて襲撃事件に遭っていた)

歩夢(そして、襲撃する側だった穂乃果さんと璃奈ちゃんは、ここに居る)

歩夢(それに、事件のおおよそが見えた今……穂乃果さん以外が嘘や隠し事をしているとは思えない)

歩夢(だとしたら……もう1人の着ぐるみの中身として、考えられるのは……)

【怪しい人物を指名しろ!】

→【国木田花丸】

歩夢「花丸ちゃん……?」

しずく「えっ……?」

歩夢「花丸ちゃんが、襲撃事件に関わっていたとしたら……?」

ダイヤ「彼女は被害者なんですよ? それなのにどうして……」

鞠莉「ただの被害者じゃなかった、ってことでしょう」

ダイヤ「なっ……」

鞠莉「だから璃奈を花丸に変装させたのよね? この後で入れ替わりトリックをやる布石のために」

穂乃果「どうしてだっけ……。忘れちゃった☆」

歩夢「どうして花丸ちゃんが穂乃果さんと一緒に行動したのか、今となっては分からないけど……」

歩夢「でも……穂乃果さんがモノっちーと対立している今なら、何となく分かる気がするんだ」

モノっちー「“ボクに一泡吹かせるために、協力して事件を起こした”ってことでしょ?」

モノっちー「まったく意地が悪いよネ。天王寺さんを監禁した高坂さんの個室に、国木田さんはドアから紙を入れてたんだからさ」

歩夢「それって……!」

モノっちー「ああ、中身は知らないよ。ボクはただ、監視カメラで見た情報をオマエらに伝えただけです」

モノっちー「でも……国木田さんが関わっている証拠としては、十分なんじゃない?」

穂乃果「……」

鞠莉「……とにかく、これでハッキリしたわね」

璃奈「花丸ちゃんも……計画に絡んでいたんだ(>_<。)」

しずく「随分と大掛かりな計画ですけど……結局、穂乃果さんはどうやってモノっちーを罠にかけるつもりだったのでしょう」

ダイヤ「そうですわね。矢の刺さった死体がいつ殺されたのかは、やっぱりモノっちーに筒抜けの筈です」

ダイヤ「監視カメラで映像を見ている以上、モノっちーにも分からない犯行というのには無理があります」

ダイヤ「にも関わらず、モノっちーは犯人が分かっていないようだった……」

歩夢(……きっと、そこに今回の謎が詰まっている筈なんだ)

歩夢(だとしたら……突き止めないといけない)

【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル5>
[|モノっちーファイル5-2>
[|火事騒動>
[|拳銃>

モノっちー「ボクにも犯人が分からない事件……」

璃奈「どうやって、起こしたのかな(・v・)」

鞠莉「何か《校則の穴》を突いたのかしらね」

ダイヤ「火事を起こしたことには、何か意味があるのでしょうか」

ダイヤ「《被害者が分からない》とか……そんな筈はありませんわね」

しずく「監視カメラが《壊されていた》りしたのでしょうか?」

モノっちー「いや? 監視カメラは全部動くよ」

歩夢(モノっちーにも犯人が分からなかった理由……)

歩夢(もしかして、あの人が言っていたあの事なんじゃないかな……?)

[|モノっちーファイル5-2>→《被害者が分からない》

歩夢「それに賛成だよ!」

Break!

歩夢「……私たちは、一番大事なことを見落としていたのかも知れない」

ダイヤ「大事なこととは?」

歩夢「矢が刺さっていない、もう1人の被害者のことだよ」

穂乃果「……それの、どこが大事なのかな?」

歩夢「果南さんたちの事件でも、槍玉にあがったことだけど……」

歩夢「2つの死体が同時に出た場合、投票の対象になるのは“先に起きた事件の犯人”だった筈」

鞠莉「前回の裁判での口ぶりからして……モノっちーも、それを肯定していたわね」

モノっちー『実際、優木さんの介入がなかったら、この事件は更にややこしいことになってただろうネ』

モノっちー『内通者と反乱分子。どちらが正道でどちらが邪道なのか……それを問う議論で、泥沼に入ってたと思うよ』


モノっちー「うん、その通りだネ。当初は、松浦さんと中須さんの2択になっていたのは事実だよ」

モノっちー「多分、先に命を落とすのは中須さんだったんじゃないかなあ。だから、本来クロになってたのは──」

鞠莉「その話はしないくていいわ。続けて頂戴、歩夢」

歩夢「……今回の事件に当てはめた場合。モノっちー自身も、犯人が分かっていないってことは」

歩夢「“着ぐるみの中に居た被害者がいつ死んだのかが分かっていない”ってことになるんだ」

歩夢「いや。そもそも……“被害者の正体すら分かってない”んじゃないかな」

璃奈「えっ……(?□!)」

歩夢「そう考えると、モノっちーファイルの情報があまりにも足りてなかったことも頷けるんだ」

歩夢「花丸ちゃんのファイルは、変装した璃奈ちゃんが居るからわざと名前を伏せたのかも知れないけど……」

歩夢「もう片方のファイルにも何も書いていないってことは──」

しずく「それは狂言ではありませんか?」

反論!

しずく「……やっぱり、歩夢さんの話はおかしいです」

歩夢「ど、どこがおかしいの?」

しずく「結論を急ぎ過ぎています。少し、落ち着いてください!」

【反論ショーダウン 開始!】
[|2つの着ぐるみ>
[|火事騒動>
[|鞠莉の検死報告>
[|開いていた生物室>

しずく「確かに、そのような方法なら……」

しずく「モノっちーの目を誤魔化すことは簡単かも知れません」

しずく「でもその方法自体、何の証拠もない推論じゃありませんか?」

─発展─
いや……証拠はあるよ
   モノっちーファイルに何も書いてないこと
      モノっちーは死体の中身を知らなかったから
         ファイルに何も書くことが出来なかったんだ

しずく「確かに【着ぐるみを着たまま】なら、中身は分からないでしょうけど」

しずく「そもそも、その被害者が亡くなったのは【火事によるもの】です」

しずく「これじゃあ、鞠莉さんが扉を開けた時と【同じタイミング】ですよ?」

歩夢(そういえば、しずくちゃんは死体を調べていなかった)

歩夢(彼女の知らない事実で、その主張を切り崩せる筈!)

[|鞠莉の検死報告>→【火事によるもの】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「着ぐるみの被害者も、火事より前に殺されていた可能性はあるんだ」

しずく「火事より、前に?」

歩夢「ですよね、鞠莉さん」

鞠莉「そうね。矢のトラップと偽黒幕さんの演説のせいで、完全に失念していたけど……」

鞠莉「被害者の腹部には、何かの傷があった。死体が死体だから、詳細は確認しようがなかったけど……」

鞠莉「その傷が死因の可能性は、十分あるわね」

しずく「そ、そうだったんですか……って、それでも歩夢さんの話はおかしいですよ!」

しずく「その傷が致命傷だったとしても……やっぱり、モノっちーには犯人が筒抜けじゃないですか!」

穂乃果「そうだね。その傷をつけることが出来たのは、私か璃奈ちゃんの2人だけだよ」

鞠莉「逆から考えればいいのよ」

しずく「逆から……?」

鞠莉「モノっちーは、犯人を知らないことを認めている。つまり、矢の死体は裁判の投票先に関わって来ない」

璃奈「鞠莉さんか穂乃果さんか、その2択だと分かっているから……だよね(・v・)」

鞠莉「となれば、当てなければいけないクロは“着ぐるみの死体を殺した人物”」

鞠莉「私たちは気を失っていた以上、殺せたのは2人だけ……これじゃあやっぱり、モノっちーが犯人を知らないわけがないのよ」

鞠莉「傷が誰につけられたのか、それをモノっちーが知らない理由が成立するパターンはただ1つ」

鞠莉「“被害者の正体すら把握出来ていない”としか、考えられないのよ」

しずく「だ、だとしても!」

しずく「行方不明になっているのは梨子さんと花丸さんで、死体も2人分なんですよ!? それなのに、被害者の正体が分からないなんて……」

歩夢「だったら……そのどちらかは“死んでいない”のかも知れない」

しずく「……えっ?」

穂乃果「それは変じゃない? だったら、着ぐるみの死体は何だったの?」

穂乃果「まさか、作り物だなんて言わないよね?」

歩夢「その手掛かりは……きちんと、あったんだよ」

歩夢(そうだ。本人でも、それが意味するものに気づかないうちに見つけてくれていた、あの手掛かり……)

【コトダマ一覧より選択】

→【開いていた生物室】

歩夢「手掛かりを見つけてくれたのは……しずくちゃん、あなただよ」

しずく「私が……?」

歩夢「捜査の最中、しずくちゃんは生物室に足を運んだんだよね」

しずく「そ、そうですけど……中にあったのは、ロッカーらしき物ばかりでしたよ?」

歩夢「あの部屋は、とても寒かった筈だよ。廊下に冷たい空気が流れてくるくらいには」

しずく「確かに……中は、低温倉庫のような寒さでした」

穂乃果「別に、寒いことはおかしいなんてことないでしょ? みんながコールドスリープしていた部屋なんだからさ」

歩夢「それって……そのロッカー1つ1つには“人を入れられる容量がある”ってことだよね?」

穂乃果「……」

ダイヤ「まさか、そのロッカーって……!」

歩夢(そうだ。生物室の、本当の役割は……)

【閃きアナグラム 開始!】

び あ し ょ つ い う ん れ (ダミー有)

→【れいあんしつ(霊安室)】

歩夢「あの生物室は……霊安室の役割を持っていたんじゃないかな」

璃奈「霊安室って……病院で遺体を保存したりする、あれ……だよね(・v・)」

鞠莉「本当に霊安室なのかしら、モノっちー?」

モノっちー「うん、そうだネ」

鞠莉「ビンゴ♪ つまり、着ぐるみの死体の正体は、生物室から持ち出した“過去に死んだ誰か”の物だったってことよ」

ダイヤ「……だから、その死体を殺した犯人を当てなければいかないとなる、というワケですか」

歩夢「どうかな、穂乃果さん」

穂乃果「……」

穂乃果「……あっはははははははは!」

歩夢「……?」

鞠莉「何がおかしいのかしら」

穂乃果「生物室から死体を持ち出したぁ? そんなこと出来るわけないでしょ」

穂乃果「そもそも生物室には、鍵が掛かっていたんだよ? それなのにどうして、死体を持ち出せるっていうの?」

しずく「で、でも! 捜査の時には、現に鍵は掛かっていなかったんですよ!?」

歩夢「そうだよ。そのお陰で、死体の入れ替えに気づけ──」

モノっちー「ああ、だって……鍵を開けたのはボクだからネ」

歩夢「──っ!?」

歩夢「ど、どういうこと!?」

モノっちー「ぶっちゃけ言わせてもらうけどさ。着ぐるみ女が使ったトリックの全貌は、このボクには大体お見通しなんだ」

モノっちー「ところが、そいつはボクの目を盗んで……大掛かりな罠を仕組んだんだよ」

鞠莉「その罠のお陰で、あなたは犯人の特定が出来なくなった、と」

穂乃果「……」

モノっちー「でも学級裁判は開かなきゃいけないからネ。こうして、オマエらにも謎解きをさせているんだよ」

モノっちー「情報処理室の鍵も解除されていたでしょう? あれも含めて、全部ボクがやったことなんだ」

モノっちー「全ては、裁判に参加するオマエらへの公平な情報として。ついでに、身勝手な人へのやり返しとして……ネ」

穂乃果「公平な情報、ねえ。それを喋っちゃうのは本当に公平なの?」

モノっちー「うけけ……ボクを罠にかけて、オマエがいい気になってたのが悪いんだよ」

モノっちー「ちなみに、生物室と情報処理室のロックを解除したのは火事が起きた頃だよ」

しずく「それじゃあ……穂乃果さんは、生物室から死体を持ち出せないじゃないですか!?」

モノっちー「そう、黒幕でもなんでもないそいつには、生物室には入れなかった」

モノっちー「何なら……生物室が開いていたことも、たった今知った筈だよ」

穂乃果「……で、でも。これで、歩夢ちゃんたちの推理は振り出しに戻っちゃったね」

穂乃果「死体の入れ替えなんて、本当は起きてなかった。今までの推理は、全くの的外れなんだよ!」

穂乃果「モノっちーは犯人を分かっていない。みんなは事件の真相が分かっていない」

穂乃果「この様子なら、私の1人勝ちってことに──」

歩夢「それは……違うよ」

穂乃果「……ん?」

歩夢「やっぱり、死体の入れ替えがあったのは確かな筈なんだ」

ダイヤ「ですが、現に穂乃果さんは生物室に入れなかったんですよ?」

ダイヤ「生物室に入れなければ、死体を回収することなど……」

歩夢「1つだけ……例外があるんだ」

ダイヤ「例外……?」

歩夢「裁判が終わったあと、今までは全て死体が綺麗に片付いていた」

歩夢「きっと全部、生物室のロッカーに収められていたんだろうね」

歩夢「しずくちゃんは、ランプの数は30近くって言っていたから……もしかしたら、第2多目的室の壁や床に飛び散っていた血も……」

璃奈「確かに、あそこで死んじゃった人たちも、そのロッカーの中に入ってるのかも(・v・)」

歩夢「でも……1人だけ“ロッカーに入っていない可能性がある”死体があるんだ」

歩夢(その死体は──)

【怪しい人物を指名しろ!】

→【中須かすみ】

歩夢「モノっちーですら回収出来なかった、唯一の死体」

歩夢「かすみちゃんだよ」

しずく「あの死体が、かすみさん……!?」

鞠莉「前回の事件で、低温倉庫のスイッチはせつ菜が破壊したんだったわね」

ダイヤ「そのせいで、かすみさんの居た部屋は誰も入れなくなっていた筈ですが……」

璃奈「そこから死体を持ち去った……って、こと(?□!)?」

歩夢「うん。死体の入れ替えがあったんだとしたら……彼女しか、居ない」

歩夢「それにかすみちゃんなら……死体の傷が腹部にあったことも、頷けるよね」

璃奈「そっか……お腹を刺されていたから……(・v・)!」

ダイヤ「ですが……確か、かすみさんは背中も刺されていたのではありませんでしたか?」

鞠莉「……言い訳になるけれど、見逃した可能性は高いわね」

穂乃果「見逃したなんて……そんな都合のいい話があるの?」

鞠莉「死体はあんな状態だったし、そもそも私は、彼方や花丸ほど検死に精通してない。理由としては不十分かしら?」

穂乃果「別にいいよ、そんな細かい話は」

穂乃果「だって……大きな疑問点は、まだまだ残ってるんだからね……!」

歩夢(……分かっている。説明のつかない事柄は、まだ幾つか残っているんだ)

歩夢(でも……今度こそ、ようやく掴んだ光なんだ。みんなで見つけ出した、希望なんだ)

歩夢(絶対に、逃がしたりはしない──!)

【ノンストップ議論 開始!】
[|モノっちーファイル5-2>
[|2つの着ぐるみ>
[|拳銃>
[|鞠莉の検死報告>

穂乃果「みんなの推理によると……」

穂乃果「私は低温倉庫から【かすみちゃんの死体】を運び出して【着ぐるみに入れた】んだったよね?」

鞠莉「ええ。【火事で焼かれる】ことを想定してね」

穂乃果「でも。モノっちーの監視の隙をついて、上手く倉庫から死体を持ち出せたとしても……」

穂乃果「【モノっちーに見つからずに】第2多目的室まで運ぶ必要があるんだよ?」

穂乃果「どうやってそんなことをしたのかな?」

ダイヤ「《直接担ぐ》のは、いささか目立ちますし……」

しずく「何かに入れて持ち運んだのでしょうか……?」

穂乃果「いやいや、持ち運ぶにしても【目立っちゃう】よね?」

モノっちー「まあ、流石に気付くネ」

歩夢(どうやってバレずに死体を運び出したのか……まずはそれを解き明かすんだ!)

[|2つの着ぐるみ>→【目立っちゃう】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「……目立たずに運ぶ方法はあるよ。着ぐるみを使えばいいんだからね」

ダイヤ「着ぐるみに入れて持ち運んだ、ということでしょうか?」

璃奈「で、でも。もう1つの着ぐるみには、花丸ちゃんが入ってたんだよね(・v・)?」

歩夢「問題ないよ。“自分が入っている着ぐるみに死体を入れた”んだからね」

しずく「うっ……死体と一緒に行動していた、ってことですか!?」

鞠莉「確かにあの着ぐるみなら、もう1人くらいは詰め込むスペースがありそうね」

歩夢「そうやって、かすみちゃんの死体を低温倉庫から持ち出した後は──」

穂乃果「行くよ、全力で!」

反論!

穂乃果「そんな方法、本当に出来ると思ってるの?」

歩夢「出来なかった、筈はないよ」

穂乃果「いいや。無理なものは、無理なんだよ──!」

【反論ショーダウン 開始!】
[|モノっちーファイル5>
[|モノっちーファイル5-2>
[|開いていた情報処理室>
[|2つの着ぐるみ>

穂乃果「かすみちゃんの死体を低温倉庫から持ち出した?」

穂乃果「着ぐるみに入れて?」

穂乃果「出来ない。そんな方法は、絶対に出来ない」

穂乃果「歩夢ちゃん……それはただの妄想だよ」

─発展─
   妄想なんかじゃない
      そもそも、かすみちゃんの死体は……
         着ぐるみに入った状態で発見されたからね

穂乃果「私が運んだのか花丸ちゃんが運んだのか、それは置いとくとしても……」

穂乃果「そもそも、倉庫から運び出すのはかなり【大変な作業】になるよね」

穂乃果「【一瞬の隙】を突いたわけでもないなら……モノっちーも知ってるんじゃないかな?」

穂乃果「だって、歩夢ちゃんの推理通りなら【死体を着ぐるみに入れる】時間が必要なんでしょ?」

歩夢(今だから分かる。今回の犯行がやけに大掛かりだったのには、このためだったんだ……!)

[|開いていた情報処理室>→【モノっちーも知ってる】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「確かに……運び出すのには時間が掛かるだろうね」

穂乃果「うん。まさか、トリックを使って素早く行動した……なんて言わないよね?」

歩夢「そもそも……モノっちーは、事の全てを監視カメラで把握出来ていたのかな」

モノっちー「……」

しずく「ど、どういう意味なのですか?」

歩夢「モノっちーが犯人を知らない理由は、やっぱり“監視カメラを見ていなかった”ことにある筈」

鞠莉「普通に考えたら、見てないなんてことは起こり得ない。モノっちーの中身もヒトなら、ミスくらいは起こすでしょうけど」

璃奈「……でも、そんな都合のいい話があるの(・v・)?」

歩夢「それはきっと……情報処理室にあったパソコンのせいだよ」

ダイヤ「パソコンが……?」

歩夢「校舎や学生寮を撮影した監視カメラの映像は、全て壁に掛かったモニターに映っていた」

歩夢「きっと、今までもそうやって監視して来たんだろうね」

歩夢「でも……“別館を撮影した映像”は違う」

歩夢「それを見るには、パソコンを操作する必要があったんだ」

しずく「じゃあ、モノっちーが死体を運び出すところを知らなかったのは……」

歩夢「“壁のモニターに気を取られている隙に起きた出来事”だったから」

歩夢「そうでなければ、モノっちーがわざわざ“公平な推理の材料”として情報処理室の鍵を開ける必要もないからね」

歩夢「前回の裁判で、音のない監視カメラの映像を見せて来たりもしたけれど……」

鞠莉「さしずめ“映像オンリーだから、起こったことに気付きにくい”ってところかしら」

鞠莉「襲撃事件を幾つも起こしていたんだから、そっちに意識を取られてもおかしくないもの」

歩夢「穂乃果さんが襲撃事件を起こした理由は、私たちを1か所に集めるためだと思っていた」

歩夢「でも……本当は違ったんだよ」

ダイヤ「多発的に事件を起こすことで、モノっちーに決定的な瞬間を見せない為……ですか」

歩夢「間違ってない筈だよ、モノっちー」

モノっちー「……ノーコメント。流石にセンシティブすぎる話題だからネ」

穂乃果「コメントする必要はないよ。だって、みんな机上の空論で疑問を解消したつもりだろうけど……」

穂乃果「まだ、大事な疑問が残っているからね」

ダイヤ「まだ、何か?」

穂乃果「そもそも、低温倉庫のスイッチは壊されていたのに……どうやって、死体を運び出したのかな?」

穂乃果「モノっちーにも回収出来なかったなら、私や花丸ちゃんにも不可能だよね?」

歩夢「……」

しずく「歩夢さん。事件の時、スイッチを確認したから分かるんです」

しずく「あれは、専用の道具がないと直すのは不可能だと思いますし……」

歩夢「工具箱は……校舎から脱出しようとした時に、私が第2多目的室に置きっぱなしにして来た。あとで回収することは可能だった筈だよ」

ダイヤ「そういえば捜査の時、どこにも見当たりませんでしたわね」

しずく「で、ですけど……専門の知識がないと、穂乃果さんや花丸さんにも、修理は難しいんじゃ……」

穂乃果「そうだね。私はメカニックでもないし、発明家でもないよ」

穂乃果「花丸ちゃんは作家だけど……本から得た知識程度で、どうにかなるのかな?」

歩夢「どうにかなった可能性はあるよ」

穂乃果「……えっ?」

歩夢「穂乃果さんは、自分のことを《超高校級の絶望》だって言ってたけど……」

歩夢「本当に、そうなの?」

穂乃果「……」

璃奈「そっか。穂乃果さんの才能って、分かってないままだったね(・v・)」

鞠莉「もっと言えば、千歌っちとして接していた頃の才能も分かってないまま」

鞠莉「あの時は、あなたが黒幕だっていうフェイクと、絶望だなんて大げさな肩書に騙されたけど……」

鞠莉「本当の才能は、何だったのかしら?」

穂乃果「……この状況で、私が喋ると思う?」

歩夢「穂乃果さんが喋らなくっても……手掛かりは、既にあったんだよ」

歩夢(そう。この裁判中で、引っかかる発言をした人がいたんだ)

【小原鞠莉】
【天王寺璃奈】
【モノっちー】

正しい選択肢を選べ!

→【モノっちー】

歩夢「さっき、穂乃果さんが黒幕じゃないって話をした時……モノっちーが言っていたんだ」

歩夢「“武器庫のゲームを最高難易度でクリアした”って」


モノっちー『オマエらが騙されてただけの話だよ。そして、大体は今しがた議論された通りだネ』

モノっちー『ロシアンルーレットを“最高難易度でクリアした”彼女は、そこで得た情報をキッカケに計画を立てた』


歩夢「ロシアンルーレットは、銃に弾をこめる運試し」

歩夢「難易度を上げようとしたら……弾の数を増やすしかないよね」

ダイヤ「ですが、それでクリアしようとすれば、相当な運が……っ!」ハッ

ダイヤ「まさか、彼女の才能は……」

歩夢「……うん。考えられる可能性は、これしかないよ」

【超高校級の不運】
【超高校級の幸運】
【超高校級の美少女】
【超高校級の若女将】

正しい選択肢を選べ!

→【超高校級の幸運】

歩夢「自分の運に頼って、狙った結果を引き寄せる……」

歩夢「自分の運によって、壊されたスイッチが稼働する……」

歩夢「《超高校級の幸運》だったとしたら……どうかな」

璃奈「超高校級の、幸運……(?□!)」

穂乃果「で、でも……エマちゃんだって、幸運の才能だったんだよ?」

穂乃果「同じ才能の人が2人居るだなんて、あり得るのかな」

歩夢「《超高校級の幸運》は、毎年虹ヶ咲学園が抽選をして、一般の学生から募集を掛けている」

歩夢「そう……“毎年”ね」

鞠莉「ここで生活を過ごしていくうちに、私たちは“学年が違う”ことを知った……」

鞠莉「だから、高坂穂乃果が《超高校級の幸運》であったとしても何もおかしくはない……ということね」

穂乃果「……っ」

歩夢「エマちゃんの事件のお陰で、どこか勘違いをしていたのかも知れない」

歩夢「幸運と言っても、結局は普通の高校生……無意識にそう思っていたのかも知れない」

歩夢「でも、超高校級なんだ。こんなことが出来てもおかしくはないよね」

ダイヤ「そうなると、死体を運び出したのは穂乃果さんなのでしょうね」

ダイヤ「とはいえ、どこかで着ぐるみの中身を移し替える必要はありましたが……」

歩夢「多発的な襲撃事件を監視カメラ越しに見せつけることで、その過程をモノっちーに知られないようにしたんだ」

歩夢「そもそも、情報処理室に呼び出したことにも意味があったのかも知れない」

しずく「意味……ですか」

歩夢「鍵が掛かっている部屋には入れない。もし破ろうとしたら、モノっちーは校則違反を知らせなければいけない」

歩夢「そうやって……“黒幕を情報処理室の奥の部屋に釘付けにさせておく”狙いがあったんだ」

歩夢「情報処理室自体には、モノっちーを操作したりする機械なんかは、どこにもなかったからね」

歩夢「つまり。この事件のクロは……同時に見つかった死体の中でも、先に殺された方の犯人」

歩夢「かすみちゃんを殺したクロ……せつ菜ちゃんだってことになる」

歩夢「そして、既にクロはオシオキが完了しているか──」

穂乃果「まだ終わってないよ!」

歩夢「……えっ?」

穂乃果「歩夢ちゃんもみんなも……肝心なことを忘れているよ。とびっきりの、謎」

鞠莉「まだあるのかしら? あなたに反論の余地が」

穂乃果「着ぐるみの死体がかすみちゃんなら……梨子ちゃんはどこへ行ったの?」

しずく「それは……かすみさんと入れ替えで、低温倉庫の中に」

穂乃果「それじゃあ意味がないよ。監視カメラを見たら、中に居ることがバレちゃうからね」

鞠莉「とはいえ、学校のどこかに隠したとしか考えられないけど……」

ダイヤ「どうなのですか、モノっちー。あなたなら、梨子さんの居場所を知っている筈ですよ」

モノっちー「……」

歩夢「きっと……モノっちーにも犯人が分からない理由が、これなんだ」

璃奈「どういうこと(・v・)?」

歩夢「着ぐるみの死体がかすみちゃんか梨子ちゃんか。穂乃果さんのせいで、モノっちーにも確証が持てなくなった」

歩夢「だからこうして、私たちに解かせようとしているんだ。消えた3人目の行方を……」

穂乃果「だったら……どこに消えたかなんて、分かるのかな?」

歩夢「分かるよ」

穂乃果「っ!?」

歩夢「梨子ちゃんは、監視カメラが絶対に届かない“ある場所”に居るんだ」

穂乃果「……」

歩夢「この事件の、最後の真実……」

歩夢「明らかにしてみせるよ!」

【理論武装 開始!】

穂乃果「あの死体は梨子ちゃんだよ」

穂乃果「かすみちゃんなんかじゃない」

穂乃果「他の可能性なんて考えられないよ」

穂乃果「ふざけるのはそろそろ終わりにしようよ」

穂乃果「歩夢ちゃんは何も分かってない」

穂乃果「どうしてモノっちーに力を貸すの?」

穂乃果「モノっちーのせいで、みんな死んだのに……」

穂乃果「あなたに、私の痛みなんて分からない!」


穂乃果「【梨子ちゃんはどこへ消えたっていうの!?】」

      △:ぐるみ
□:中         ○:着
      ×:の

→○△×□ [|着ぐるみの中>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「梨子ちゃんの居場所は……あなたが着けている、その“着ぐるみの中”だよ!」

穂乃果「……」

しずく「あ……あの中に、梨子さんも居るんですか!?」

鞠莉「てっきり大浴場のどこかにでも眠らせていると思ったけど、違うのね」

鞠莉「あそこには監視カメラがないから、隠すにはちょうど良いでしょう」

歩夢「勿論、その可能性もあるけど……穂乃果さんの目的を考えると、そうとは考えにくい」

歩夢「彼女の目的は、このゲームそのものを破壊することだと思うから……」

モノっちー「ゲームの破壊、ネ……」

歩夢「“黒幕でさえ犯人を間違えた”“コロシアイゲームは成立していない”」

歩夢「それをこの場で証明するためには……梨子ちゃんが、穂乃果さんの“手の届く場所”に居る必要がある」

鞠莉「なるほど。だから文字通り手の届く場所……あの着ぐるみの中ってわけね」

歩夢「……うん」

穂乃果「……」

穂乃果「全然違うよ。妄想もいいところだね」

歩夢「妄想なんかじゃない。これまでの全てを振り返って……あなたにも認めさせる」

歩夢「これが事件の真実だよ!」

【クライマックス推理】
ACT.1
穂乃果さんと璃奈ちゃん、そして花丸ちゃん。
複数の人が作り上げた大掛かりなトリックを、紐解いて行くよ……。
まず穂乃果さんは、自分の計画のために璃奈ちゃんを脅迫した。
これから起こす事件のために……花丸ちゃんに変装させたんだ。
その裏で穂乃果さんは、本物の花丸ちゃんとも繋がっていた。
璃奈ちゃんに知らせなかったのは、自分以外に真相を知っている人を出さないためだろうね。

ACT.2
璃奈ちゃんが最初に誘い出したのは、私。
着ぐるみを着た本物の花丸ちゃんが合流して、私を気絶させる。
そこから2人は、しずくちゃんと鞠莉ちゃんを気絶させたりして、多発的に襲撃事件を起こしたんだ。
その裏では……穂乃果さんが、今回の事件の肝になることを実行していた。
襲撃事件の監視にモノっちーが気を取られているうちに……低温倉庫から、あるモノを運び出したんだ。
壊れたスイッチの問題も……彼女が持つ超高校級の幸運の才能なら、クリア出来たんだよ。

ACT.3
そうやって運び出されたのは……前回の事件から放置されていた、かすみちゃんの死体。
それを着ぐるみの中に入れて、穂乃果さんは別館を後にしたんだ。
梨子ちゃん、ダイヤさんを気絶させて……最後に、璃奈ちゃんを気絶させる。
何も知らない花丸ちゃんとして、このあと学級裁判の場に立ってもらうためにね。
その裏では、着ぐるみの中身の入れ替えが行われていたんだ。
梨子ちゃんは穂乃果さんの着ぐるみに、花丸ちゃんは着ぐるみから出て、そこにかすみちゃんの死体が。
ただ、襲撃事件を隠れ蓑にしたお陰で……モノっちーでさえ、その実態を把握することが出来なくなっていたんだ。

ACT.4
こうしてモノっちーを欺く準備を終えた穂乃果さんは、次に私たちを騙すための準備を始めた。
私たちに用意された偽の真相……罠に掛かった人物がクロになるトリックのためにね。
そのために穂乃果さんは、梨子ちゃん以外の気絶させたみんなを第1多目的室に放り込んだ。
そして廊下と、死体発見現場になる第2多目的室にガソリンを撒き、ライターを準備した。
結局、花丸ちゃんがここで死んだのか、本当に罠で死んだのか……今となっては分からない。
でも、議論の焦点をそこに向かわせること自体が、穂乃果さんの仕組んだ本当の罠だったんだ。

ACT.5
次に穂乃果さんが準備したのは、意図的に火事を起こす仕掛け。
水溶性の糸を第1多目的室の扉に括り付けて、それをライターと結んだ。
こうすることで、閉じ込められた私たちが扉を開けようとした瞬間、倒れたライターが火事を起こす。
糸が水溶性だったのは、火でも燃えなかった場合を考慮して、消火設備のスプリンクラー頼みにするためだろうね。
仕上げに用意したのは、弓。
置いたのか、セットしたのか……とにかく、扉を開けた人がクロになる可能性を生むようにしたんだ。

ACT.6
こうして全ての準備を終えた穂乃果さんは、着ぐるみに身を潜めて裁判に臨んだ。
気絶したままの梨子ちゃんを、一緒の着ぐるみに入れたまま。
最後まで私たちを……いや、何よりモノっちーを騙しきって、本当の黒幕を倒すために。
扉を開けた人物か穂乃果さん、どちらかがクロだと指名させたあとで、梨子ちゃんの姿を出すために。
この事件で指摘されるべきクロ……かすみちゃんを殺したせつ菜ちゃんは、既にこの世を去っていると糾弾するために。
これが、穂乃果さんたちが協力して作り上げた、犯人不明トリックの全貌だよ。

歩夢「一連のトリックは、あなたの才能があったからこそ成立した……」

歩夢「そろそろ、その着ぐるみを脱ぐ時だよ」

歩夢「《超高校級の幸運》高坂穂乃果さん……!」


COMPLETE!!!

歩夢「この推理が合っているかどうかは……着ぐるみを脱げば、分かる話だよ」

穂乃果「……その前に、今度こそ投票だよ」

鞠莉「まだ粘るつもりかしら」

穂乃果「当たり前だよ……まだ私は負けてない。モノっちーが負ければ、このコロシアイを台無しに出来るんだ」

歩夢「いいや……穂乃果さん」

歩夢(言いながら、着ぐるみの方へと歩き出す)

穂乃果「こ、来ないで!」

しずく「逃げないでください!」ガシッ

璃奈「どうしてこんなことをしたのか……ちゃんと答えて(>_<。)!」ガシッ

ダイヤ「もう、逃げ場はありません」

歩夢「あなたの……負けだよ」

穂乃果「違う、私は──」


「もうやめて!」

歩夢「────!」

歩夢(着ぐるみの中から……穂乃果さんのものとは違う、もう1つの声がした)

穂乃果「っ!? は、離して……」

歩夢(予想外の出来事が起きたらしく……穂乃果さんが困惑している)

歩夢(私は、中で何かが暴れている着ぐるみの頭を外し……)

穂乃果「……」

梨子「……」

歩夢(最後の行方不明者が……ようやく、その姿を現した)

モノっちー「ぐぬぬ……」

モノっちー「本当……やってくれたよネ」

モノっちー「いいよ。状況が状況だから……」

モノっちー「この学級裁判の中止を、ここに宣言するよ!」


    学 級 裁 判  
      閉  廷

穂乃果「……」

梨子「まずは……心配させてごめん、かな?」

梨子「それから……ただいま」

ダイヤ「……おかえりなさい」

穂乃果「……」

歩夢(穂乃果さんは……私たちの方に、睨むような視線を向けていた)

穂乃果「……結構、しっかり縛ったつもりだったんだけどなあ」

梨子「……ごめんなさい」

しずく「り、梨子さんが謝ることなんて……」

鞠莉「とにかく……話してもらうわよ」

穂乃果「……」

歩夢「お願いだよ、穂乃果さん。璃奈ちゃんと……花丸ちゃんのためにも」

穂乃果「……」ハァ

穂乃果「トリックの関係で、璃奈ちゃんだけは動いてもらう必要があったけど……」

穂乃果「元々、花丸ちゃんを巻き込むつもりはなかったんだ」

璃奈「……どういうこと(>_<。)?」

穂乃果「花丸ちゃんは……私が黒幕だっていう“嘘”に気付いていたんだよ。そして、手紙を入れて来た」

『────だったり、武器庫の件だったり。以上の理由から、穂乃果さんが黒幕だとは考えられない』

『きっと穂乃果さんは、璃奈ちゃんの力を借りて、コロシアイを壊そうとしているんですよね』

『だったら、私も協力します』

『どうしても信用出来ないなら、大浴場で待ってます 国木田花丸』


穂乃果『……』

璃奈『穂乃果、さん……(>_<。)?』

穂乃果『……何でもない、よ!』

バチバチィ!

璃奈『ぅ……』ドサッ

穂乃果『……』

穂乃果「気付かれてしまった以上は、巻き込むしかなかった」

穂乃果「でも予想外だったのは……“花丸ちゃんから、今回の事件のためのトリックを提案してきた”ことだよ」

歩夢「は、花丸ちゃんが!?」


花丸『……どうかな。きっとこれなら、モノっちーを騙せると思うけど』

穂乃果『……本気で、言ってるの?』

花丸『ずら?』

穂乃果『この計画だと……花丸ちゃんが、死ぬことになるんだよ?』

花丸『それでも……穂乃果さんが考えたトリックよりは、モノっちーを騙しやすい筈だよ』

花丸『ううん……幸運の才能に頼っても、穂乃果さんの計画は隙だらけで失敗するずら』

穂乃果『……っ』

穂乃果「……私が最初から考えていたのは、璃奈ちゃんの才能と、かすみちゃんの死体を利用すること」

穂乃果「でも……それとは別に、モノっちーには“本当に人が死んだ瞬間”を見せないといけない。花丸ちゃんはそう言ったんだ」

ダイヤ「花丸さんが、そんなことを……」

鞠莉「それでも……花丸を殺すことに乗ったのは、あなたの方でしょう」

穂乃果「私だって、殺したくはなかったよ!」

鞠莉「っ……」

穂乃果「もう……嫌だったんだ。これ以上、誰かが死ぬのは」

穂乃果「曜ちゃん……ううん。“花陽ちゃん”が死んで……全部、思い出しちゃったんだよ……」

しずく「ハナヨちゃん……?」

歩夢「曜ちゃんとして接していた子の、本当の名前なんだよね」

穂乃果「……うん」

────3度目の裁判の後、穂乃果の自室

千歌?『あの曜ちゃんの正体も』

千歌?『私の才能も』

千歌?(……私の、本当の名前も)

千歌?(海未ちゃんやことりちゃんたちが、死んじゃったことも……)

穂乃果『全部、思い出しちゃった』

穂乃果(……でも、どうしよう?)

穂乃果(ただコロシアイを終わらせようとしても、絶対に上手くいかない)

穂乃果(モノっちーを学級裁判で騙すことが出来れば……何とか、コロシアイを壊せないかな?)

穂乃果(でも……学級裁判をやるってことは、誰かが死ななきゃいけない……)

穂乃果(どうすれば……)

穂乃果「だから……せつ菜ちゃんが起こした事件の全貌を知った時、これしかないって思った」

穂乃果「かすみちゃんの死体を使えば、これ以上誰も死なずに、事件を起こせるから……」

モノっちー「でも、残念でした。結局、みんなの手で真相は暴かれちゃったワケだネ!」

穂乃果「……」

穂乃果「……ごめんね、みんな」

穂乃果「璃奈ちゃんも……ごめんね。どうしても、あなたの力が必要だったんだ」

穂乃果「梨子ちゃんも、巻き込んでごめんね。誰か1人は、着ぐるみの中に入ってないといけなかったんだ」

穂乃果「それに……私の本心は、絶対に知られるわけにいかなかったから」

穂乃果「怖い思いをさせちゃって……本当に、ごめんね」

梨子「……」

璃奈「穂乃果さん……(>_<。)」

しずく「ですが……どうして花丸さんは、自分を殺させるような真似をさせたのでしょう」

穂乃果「……その答えになるかは、分からないけど」

────昨晩、第2多目的室

穂乃果『……本当に、いいの?』

花丸『うん。前回の事件で、色々思うところがあったから……ね』

穂乃果『……深くは聞かないでおくよ』

花丸『ただ……1つ心残りがあるとすれば』

穂乃果『……?』

花丸『オラが今までに書いた小説には、歩夢ちゃんのような優しい探偵さんは出てこなかったから』

花丸『あんな人を主人公にした本を書けなかったことが……ちょっぴり、残念、かな』

穂乃果『……そっか』

花丸『バイバイ、穂乃果さん。みんなにもよろしく頼んだずら』

穂乃果『……っ』グッ

ヒュッ

歩夢「……」

鞠莉「彼女は……自ら殺されることを、望んだ……」

穂乃果「だから私は……勝たなくちゃいけなかったんだ」

ダイヤ「花丸さんの想いを無駄にしないために……ですか」

モノっちー「うけけけけ……さっきも言ったけど、結局は無駄な苦労になったネ」

モノっちー「この件をキッカケに、ボクはより警戒するようになる」

モノっちー「オマエは黒幕じゃないことをバラされて、同じ手は使えない」

モノっちー「何より国木田さんは、ただの無駄死にになっちゃったんだからネ!」

歩夢(モノっちーの不愉快な笑い声が、裁判場にこだまする)

歩夢(……これで、良かったんだろうか)

歩夢(希望を見つけ出すために謎を解いた結果……却って、希望を閉ざしてしまったのではないか……?)

モノっちー「まあ……寛大なボクは、オマエの取った行動は不問にしておいてやるよ」

モノっちー「だから、オシオキはしない。でも次からは、妙な真似が出来ないように校則を──」

穂乃果「……その必要はないよ」

モノっちー「……うん?」

穂乃果「本当に凄いね、歩夢ちゃん。花丸ちゃんが監修したトリックを、全部解いちゃうなんて」

歩夢「え、えっと……」

穂乃果「心配しなくていいよ。ここまでしても解かれる可能性は十分あるって、事件を起こす前からずっと思っていたから」

穂乃果「ううん。きっとみんななら全部解いちゃうだろうって、信じてたから」

歩夢「信じてたなら、どうして……」

穂乃果「……どうして、だろうね」

穂乃果「やっぱり……歩夢ちゃんと一緒に、何かをやりたかったんだと思う」

穂乃果「幼稚園の時みたいに、ね」

歩夢「そ、それって……!?」

穂乃果「もしかして、今まで忘れてたの? ちょっと酷いなあ」

穂乃果「お遊戯会の時……歩夢ちゃんの手を引っ張って行ったんだよ?」

歩夢(おぼろげな記憶の中にいる少女。私が夢を歩き出すキッカケになった少女)

歩夢(それが……穂乃果さんだったのか)

穂乃果「きっとあなたならやり遂げられる、輝ける。精一杯のときめきを放ってくれる、って……そう、思っていたから」

穂乃果「間違ってなかったよ。だって歩夢ちゃんは《超高校級の歌姫》になったんだもの」

穂乃果「だから……私は、これで満足したよ」

歩夢(そう言うと……オレンジ色の髪をした彼女は、おもむろにポケットから何かを取り出した)

歩夢(それが“何かのスイッチ”であるということに気付いた時には……)

カチッ

歩夢(小さな音が鳴り)

ドォン!

歩夢(どこかで……大きな音がした)

しずく「な、何事ですか!?」

梨子「今のって、爆発!?」

モノっちー「……まさか、オマエ!」

穂乃果「武器庫にあった爆弾は小さくて、鉄の扉は壊せない」

穂乃果「でも……“学園長室の扉の鍵”なら、壊せるよね」

モノっちー「────高坂穂乃果ァァァァァァァッ!」


ウーーーッ ウーーーッ ウーーーッ


璃奈「こ、今度は何(?□!)!?」

鞠莉「鍵の掛かった扉を壊したってことは……校則を破ったってこと」

鞠莉「つまりこれは……」

歩夢「校則違反を知らせるサイレン!?」

穂乃果「最後の手段なんだ。謎が全て解かれたり、モノっちーが駄々をこねたりした時のためのね」

歩夢「な、何をしてるの!? 校則を破ったら……」

穂乃果「大丈夫だよ、歩夢ちゃん」

穂乃果「これでモノっちーは、追いつめられる側になった」

穂乃果「あとは……あの絶望を倒すだけだよ」

モノっちー「クソッ……こうなったら……」

モノっちー「こ、校則違反者へのオシオキを、準備させて頂きました!」

穂乃果「それから、鞠莉ちゃん」

歩夢(今度は、爆弾のスイッチが入っていたのとは逆のポケットから……何かが放り投げられた)

鞠莉「これは……USBメモリ?」

穂乃果「私の部屋の、ベッドの下を調べて。外の世界についての“嘘”も、分かる筈だから」

鞠莉「外の……!? いえ、分かったわ」

穂乃果「きっとモノっちーは、最後の勝負を挑んで来る」

穂乃果「今までよりも大きな、最後の絶望を叩きつけてくる」

穂乃果「でも絶対に……負けないで」

穂乃果「あ、それから! 大事なことを忘れてた!」

穂乃果「エマちゃんの幸運も……信じてあげて」

歩夢「そ、それって、どういう……」

モノっちー「それでは、張り切って参りましょう……なんて言ってられるかよ!」

穂乃果「みんな……」

モノっちー「オシオキターーーーーーーイム!」


穂乃果「ファイトだよ!」


       EMERGENCY
コウサカさんがこうそくいはんをおかしました。
    おしおきをかいしします。

高坂穂乃果が連れて来られたのは……ベルトコンベア。

学校の机と椅子の上に座らされ、身動きが取れないようになっています。

ベルトコンベアの向こうには……ピストン運動を続ける、巨大な鉄の塊。

どうやらモノっちーは、このプレス機で彼女を潰すつもりのようです。


      〈(無名のオシオキ)〉
   《超高校級の幸運 高坂穂乃果処刑執行》

ドスン、ドスン。

鈍い音を立て、鉄の塊は上下します。

ゆっくりと、そちらへと流れるベルトコンベア。

穂乃果の目の前にあるのは教壇を模したセットと、教師の恰好をしたモノっちー。

黒板に書かれているのは、幾つもの暴言。

校則違反をした彼女へ向けられた、罵詈雑言です。

モノっちーは「分かっているのか!?」と言いたげに、鞭を教壇に叩きつけます。

穂乃果はその光景を、黙って見続けています。

しかし、その額には……やはり、玉のような汗が浮かんでいました。

ドスン、ドスン。

鉄の塊が上下するたびに、ベルトコンベアにも振動が伝わります。

ガチャガチャ……ガチン!

おや……? どうやら、彼女を椅子に縛り付けていた拘束が、外れたようです。

振動のせいで壊れたのでしょうか……流石は、超高校級の幸運です。

焦ったモノっちーが、穂乃果に飛び掛かろうとします。

力づくで抑え込むつもりのようですが……彼女は、するりと抜け出しました。

逃げようとすれば、今すぐにでも逃げられます。

ですが……穂乃果の取った選択肢は、違いました。

覚悟を決めたような顔で、プレス機の方へと駆け出したのです。

やがて、後に残されたのは……。

血に染まったベルトコンベアと鉄の塊、そして。

返り血を浴び、苛立ちを抑えきれない表情のモノっちーでした。

モノっちー「うぐ、ぐぬぬぬぬぬぬ……」

歩夢(穂乃果さん……いや、穂乃果ちゃんは、死んだ)

歩夢(最後までモノっちーに盾を突くような形で、消えていった)

歩夢(泣きたい。悲しい。私にとって、もう1人の幼馴染だった筈の人が、居なくなったんだ)

歩夢(いや……もしかしたら、私は既に泣いているのかも知れない)

歩夢(でなければ……口の中にしょっぱい味がしみこんで来ることなんてないだろうから)

歩夢(でも……立ち止まっちゃいけないんだ)

歩夢「行こう……穂乃果ちゃんが残してくれた、手掛かりを見つけに」

歩夢(私の言葉を皮切りに……みんな、エレベーターへと乗り込んで行く)

歩夢(そして、裁判場を去る間際。モノっちーは、私たちに向かって叫んだ)

モノっちー「次に行われるのは、最後の学級裁判だよ」

モノっちー「詳しくは、後で学園中にアナウンスしてやるよ」

モノっちー「絶対にオマエらを絶望させてやる」

モノっちー「オマエらへの仕返しを、終えてみせる」

モノっちー「バッドエンドまっしぐらにしてやるから、覚悟しておくんだネ……」

歩夢(仕返しという言葉が少し引っ掛かったが……そんなもの、モノっちーに言われる筋合いはない)

歩夢(むしろ、仕返しをするのは私たちだ)

歩夢(穂乃果ちゃんが繋いでくれた希望で、絶望を打ち破ってみせる)

歩夢(そして……私たちは、これから望むことになる)

歩夢(希望と絶望のぶつかり合い)

歩夢(全ての謎が解き明かされる)

歩夢(最後の“学級裁判”を──)

Chapter5 END

https://i.imgur.com/4J1GtrG.png

To be continued……


プレゼント“役目を終えたスイッチ”を獲得しました。

今回はここまで。

────幕間 ある夏の昼下がり

「ねえ花丸ちゃん、しず子知らない?」

「しずくちゃんなら居ないずらよ」

「あれ、そうなの?」

「確か、公演でしばらく沼津に行ってる筈だよ」

「じゃあ花丸ちゃんでいいや。遊びに行かない?」

「マルは一服したら、原稿を仕上げないといけないから……ごめんね」

「マキちゃんみたいなこと言わないでよ」

「ああ……薬の調合で忙しいって言ってたずらね。昨日見かけた時も髪がボサボサだったよ」

「なんか、危険な薬が出来ちゃったとか……毒とかじゃないよねアレ」

「ヘビから作る薬って言ってたから……可能性はあるずらね」

「うえぇ!? わ、私、ヘビはダメなんだけど」

「だったら、しばらくは研究室に近寄らない方がいいよ。きっと地獄絵図だし」

「むー……。りな子は鞠莉先輩たちとどっか行ったし、ルビィちゃんたちは実家に帰ってるし」

「それに、他のみんなはどこかに出掛けて寮に居ないし……」ブツブツ

「しずくちゃんの演劇でも見に行ったら?」

「今から行っても間に合わないでしょ。彼方先輩とか、何人かは見に行ったみたいだけど」

「とにかく、今日はかすみちゃんの遊び相手にはなれないずら」

「アイス奢るから……ダメ?」

「た……食べ物で釣ろうとしても、ダメずらよ」

「ぐぬぬ、今日は頑固だ」

「じゃあ部屋に戻るから、絶対に邪魔しないでね? またダイヤさんたちに目を付けられても、今度は庇いきれないから」

「ちぇー」

───
──


     Chapter6

This is the end ~■■宣言~ 
    非日常編

ピンポンパンポーン

モノっちー『あー、あー、本日は晴天なり本日は晴天なり。マイクチェック、ワンツー』

モノっちー『オマエら、ちゃんと聞こえてるよネ? 聞こえても聞こえなくても返事はしなくていいからネ』

歩夢(穂乃果ちゃんの事件を終えて、裁判場から戻って来た私たち)

歩夢(間髪入れずに……アナウンスが、校内中に響いた)

モノっちー『さて。ここまで行われて来た“コロシアイ学園生活”は、これより最終局面へと入ります』

モノっちー『え、最終局面が何かって?』

モノっちー『壮大なミステリの最終局面といえば、やっぱり“真の回答編”でしょ!』

モノっちー『というワケでオマエらにはこれから、最後の捜査をしてもらいます』

モノっちー『公平を期すために“全ての部屋のロックが解除されている”ので、思う存分調べちゃってください』

モノっちー『その後は……さっきも言ったように、最後の学級裁判を行います』

モノっちー『裁判の結果次第では、オマエらは晴れてこの学園から卒業となります』

モノっちー『ただし……結果次第では、全員オシオキとかになっちゃうかもネ』

モノっちー『じゃあ、また後で会おうか。うけけけけけ……』

プツン

歩夢「……」

梨子「この学園の謎を解いてみろ、ってわけね」

ダイヤ「この歪な学園から解放されるためには、どのみちやるしかありません」

しずく「で、でも!」

璃奈「どうしたの(・v・)?」

しずく「解放されたところで……この学園の外って、とっくに滅んでいるんですよね……」

鞠莉「校則違反のサイレンで聞こえなかったかも知れないけど、その件は、穂乃果がこんなことを言ったのよ」


鞠莉『これは……USBメモリ?』

穂乃果『私の部屋の、ベッドの下を調べて。外の世界についての“嘘”も、分かる筈だから』

鞠莉『外の……!? いえ、分かったわ』

しずく「う、嘘……?」

鞠莉「私たちがなるべく個室に引きこもってくれた方が、彼女の計画にとって都合が良かった」

鞠莉「それに黒幕を騙るなら、嘘は大きければ大きいほど良い……ってことでしょうね」

璃奈「だったら……窓の外の景色は、何だったんだろう(・v・)?」

梨子「確かにあれは、映像じゃなくて本物だと思うけど……」

歩夢(……そうだ。私たちは『外を泳ぐ魚たち』や『海藻らしきもの』なんかを、第2多目的室の窓の向こうに見た)

歩夢(だからこそ、穂乃果さんの話が現実味を帯びていたんだ)

歩夢(でも……)

歩夢「……それを含めて、解き明かせばいいんだよね」

鞠莉「そうよ」

歩夢「それに……今度の裁判は、私たちの中に潜んだ犯人を捕まえることじゃない」

歩夢「黒幕を、私たちをここに閉じ込めた犯人を、暴き出すんだ」

歩夢「だから……私たちが疑い合う必要は、どこにもないんだよ」

梨子「歩夢ちゃん……」

しずく「……そう、ですよね」

鞠莉「さて、そうと決まったら、捜査を始めましょう」

ダイヤ「ええ。調べなければならない場所は、かなり多いですから」

璃奈「みんなバラバラに捜査しないと、間に合わないかも(>_<。)」

鞠莉「バラバラになっても、協力し合えないわけじゃない。それを忘れちゃダメよ」

鞠莉「じゃあ私は、穂乃果の部屋に行って来るわ。彼女の置き土産を1つ1つ調べて行く必要があるもの」

ダイヤ「では、私は──」

梨子「えっと、じゃあ私は──」

歩夢(みんなそれぞれ、学園中に散って行く)

歩夢(最後に残った私も……)

歩夢「……よし」

歩夢(もう少しで、終わるんだ)

歩夢(この狂気に満ちた学園を脱出して、生き残ったみんなで帰るんだ)

歩夢(だから……始めよう)

歩夢(これが私たちの、最後の戦い──!)

【捜査開始!】

歩夢「まずは……あっ」

歩夢(今回はモノっちーファイルが手元にない。事件が起きたわけじゃないのだから、当然なのだが……)

歩夢(嫌なクセが身に付いたなあ、と実感する)

歩夢(そうなると、調べに行くべきは……)

────学園長室

璃奈「歩夢ちゃんも、ここを調べに来たの(・v・)?」

歩夢「うん。穂乃果ちゃんが、命懸けで壊した扉だから……」

璃奈「……(・v・)」

歩夢(閉ざされていた学園長室の扉は、鍵を壊されたことで自由に出入り出来るようになっていた)

歩夢(鍵の破壊には爆弾が使われたが、中の物が損傷している様子はなさそうだ)

歩夢(とはいえ……この部屋に入った時、私が最初に感じたことは)

歩夢「随分と、殺風景なんだね」

璃奈「それは……私も思った(・v・)」

歩夢(想像していた学園長室とは、随分と違った印象の部屋)

歩夢(学園長室といえば、大きな机と革製の大きなソファ、そしてカーペット)

歩夢(歴代校長の写真が壁に飾られ、奥には学園長が座る椅子と、荘厳な雰囲気を纏った机)

歩夢(細かい違いはあるけれど、てっきりそういう物だろうと思っていた)

歩夢(だが、この学園長室にあったのは……たった1つの、パイプデスク)

歩夢(そして1冊の冊子と、璃奈ちゃんが手にしている大きなファイルだけ)

璃奈「表紙だけ見たけど、パンフレットの方はただの学校案内みたいだよ(・v・)」

歩夢(璃奈ちゃんの言う通り……でかでかとそびえ立つ校舎の写真を表紙にした冊子のようだ)

歩夢(だが、学校案内に目を通して行くうちに……私はある“違和感”を覚えた)

歩夢「ねえ、璃奈ちゃん」

璃奈「?」

歩夢「“こんな部屋、この校舎にはなかった”よね?」

璃奈「……ど、どういうこと(・v・)?」

歩夢「ほら、これを見て」

歩夢(今の問い掛けを疑問に感じた璃奈ちゃんが、こっちに駆け寄って来る)

歩夢(私が開いているページ──設備紹介のコーナーとある──には、次のような記述があった)


『体育系の才能から、文科系の才能まで。幅広く取り揃えられた設備』


歩夢(その記述と共に掲載されている、プールや体育館、図書館にコンピュータールームらしき部屋、ついでに学生寮の写真)

歩夢(問題はそのどれもが……“この校舎にあった同一の設備と、造りがまるで違う”こと)

歩夢(『私たちが閉じ込められている虹ヶ咲学園』のものと比べると明らかに広く、そして数が多いのだ)

歩夢(勿論……“研究室”と書かれている、薬品棚や何らかの機械なんかが詰め込まれた部屋も、この学園にはない)

歩夢(理科室ではないかとも疑ってみたが、やはり部屋の形状からして違っている)

歩夢(私のように歌を歌う人なら何度もお世話になるであろう“レコーディングルーム”なんかも、このパンフレットには載っていた)

璃奈「こんな部屋、なかったよね(?□!)」

歩夢「……うん」

歩夢(学園長室の写真が載ったページもあったが……やはり、こことはまるで雰囲気が違う)

歩夢(パンフレットを持つ手が、少し震えていた)

歩夢(ここに書いてあることが、間違っているのだろうか?)

歩夢(それとも、このパンフレットは偽物なのだろうか?)

歩夢(……もし、そうでなかったとしたら)

歩夢(私たちが閉じ込められている“この虹ヶ咲学園”は一体……?)

《虹ヶ咲学園学園案内》のコトダマを入手しました。

歩夢(設備の件は気になるが……学園案内には、それ以上特筆すべきことはなかった)

歩夢「……ところで、璃奈ちゃんが持ってるファイルは何だったの?」

璃奈「虹ヶ咲学園の在学生名簿……みたいだよ(・v・)」

歩夢「在学生名簿……」

歩夢(鞠莉さんたち14期生、私たち15期生、璃奈ちゃんたち16期生。名簿に載っていたのは、計27人分だ)

歩夢(情報として掲載されているのは、本人の名前と才能、そして顔写真)

歩夢(せつ菜ちゃんや善子ちゃんたちの本名については、ここでは触れられていない。あくまで名簿としての目的のみを果たす物だ)

歩夢(当然……気になる情報が、幾つか浮かび上がって来る)

歩夢(まず目を引くのは、私たちの記憶にない8人の名前)

第14期生
《超高校級の占い師》東條希
《超高校級のバレリーナ》絢瀬絵里
《超高校級のアイドル》矢澤にこ

第15期生
《超高校級の弓道部》園田海未
《超高校級のデザイナー》南ことり

第16期生
《超高校級の陸上部》星空凛
《超高校級の農家》小泉花陽
《超高校級の医者》西木野真姫

歩夢(《超高校級の弓道部》園田海未さん……)

歩夢(前回の事件に用いられた弓は、彼女の私物だったりしたのだろうか……というのはさておき)

璃奈「小泉花陽……って、確か(・v・)」

歩夢「……うん」

歩夢(前回の事件で穂乃果ちゃんが言っていた“渡辺曜”の正体は、彼女のことで間違いないだろう)

歩夢(プロフィールの顔写真と“私たちと接していた曜ちゃん”の顔も、一致している)

歩夢(では、本物の渡辺曜のプロフィールはといえば……)


第15期生
《超高校級の船乗り》渡辺曜


歩夢(……顔つきこそよく似ているが、やはり、この学園で過ごして来た曜ちゃんではない)

歩夢(だったらどうして、小泉花陽は曜ちゃんとして接していたのだろうか。本物の曜ちゃんは、どこに行ったのだろうか……?)

《8人の生徒名簿》《渡辺曜の生徒名簿》のコトダマを入手しました。

歩夢(次に私の目に留まったのは、見知った名前の中にある、2つの名前)


第15期生
《超高校級の幸運》高坂穂乃果
《超高校級の若女将》高海千歌


璃奈「結局、私たちと一緒に居たのは……穂乃果さんで良かったんだよね(・v・)?」

歩夢「うん。目の色が合ってるのは、穂乃果ちゃんの顔写真だからね」

歩夢(先の事件でオシオキされたのは、オレンジの髪に、青い目をした女の子)

歩夢(やっぱり、赤い目をした“本物の高海千歌”は、最初から行方が分からないということになる)

歩夢(……湧き上がるのは、同じ疑問)

歩夢(本物の千歌ちゃんは、どこに居るのだろう)

歩夢(どうして穂乃果ちゃんは、千歌ちゃんとして接して居たのだろう)

歩夢(しかも、彼女は自分の正体を“思い出した”と言っていた筈だ)

歩夢(それが意味する物って……?)

《2人の15期生》のコトダマを入手しました。

歩夢(……残った16人の名簿には、不審な点はない)

歩夢(私の才能も《超高校級の歌姫》として記載されている)

歩夢「この部屋には、もう手掛かりになりそうなものはないかな」

璃奈「そうかも(・v・)」

歩夢「まだまだ調べないといけない場所はあるし……頑張ろっか、璃奈ちゃん」

璃奈「うん(・v・)」

歩夢(……そういえば、どうして私は才能に関する記憶までも失っていたのだろう)

歩夢(穂乃果ちゃんもそうだ。彼女は自分の正体どころか、高海千歌としての才能すらも把握していなかった)

歩夢(これって、何か理由があったのだろうか……?)

────情報処理室

モノっちー「……」

歩夢「……?」

歩夢(学園長室の捜査を終えて情報処理室を訪れた私を出迎えたのは、無言のモノっちー)

モノっちー「……」

歩夢(いや。無言というか……動いてない?)

モノっちー「……おや、歩夢さんですか」

歩夢「えっ?」

モノっちー?「私です、黒澤ダイヤです」

歩夢「え、えっ?」

モノっちー?「詳しいことは奥の部屋で話します」

歩夢「は、はぁ……」

────情報処理室、奥の部屋

ダイヤ「何も、そんなに怯えながら入って来なくても」

歩夢「あ、いや……黒幕の罠かと思っちゃいましたし」

ダイヤ「確かに……少々、おふざけが過ぎましたわね。お詫びします」

歩夢「い、いいんですよ別に。それよりも、この部屋は……」

歩夢(情報処理室自体も、大量のモニターが異様な雰囲気を造り出していた)

歩夢(けれども、この部屋はそれ以上に異質な空気を醸し出している)

歩夢(幾つもの機械やパネル、レバーにスイッチ、いかにもな椅子が真ん中に1つ)

歩夢(機械特有のブルーライトが、目にあまりよろしくない刺激を与えてくる)

歩夢(まるで、ロボットを操縦するコックピットみたいだけど……)

歩夢「もしかして、モノっちーを動かす部屋……?」

ダイヤ「そうなりますわね」

歩夢「じゃあ、さっきのはダイヤさんが?」

ダイヤ「ええ。試しに動かしてみたのですが、こういった機械は得意分野ではありませんね」

歩夢(ダイヤさん曰く、モノっちーの操作周りはこんな感じ)

・まず、モノっちーを出したい部屋や廊下等を、パネルから選ぶ

・レバーで動かし、マイクに向かって発した声がモノっちーの口から(機械音声に変換されて)出てくる

・モノっちー越しに周囲の音を拾うことが出来るが、視界はモノっちーの目に内蔵されたカメラだけ

・「絶対押すなよ!」というスイッチがあるが、何なのかは押してないので分からない

歩夢(これらを総合すると、1つ、分かることがある)

歩夢「私たちを監視する部屋と、モノっちーを動かす部屋が別ってことは……」

ダイヤ「モノっちーの操作をしている間は、私たちの監視が不完全な物になる」

ダイヤ「穂乃果さんたちが講じた一計は、あながち間違いではなかったのでしょうね」

歩夢(あの事件は、本当にモノっちーにも真相が分かっていなかったんだ……)

《モノっちー操作室》のコトダマを入手しました。

ダイヤ「そういえば歩夢さん。先ほど、妙な物を見つけたんですよ」

歩夢「妙な物?」

ダイヤ「この部屋の隅にあるゴミ箱の中に入っていたのですが……」

ダイヤ「危険すぎる代物なので、こちらに置いてあります」

歩夢(ダイヤさんが示した先……サイドテーブルの上に、それは置かれていた)

歩夢「これ……何ですか?」

歩夢(ざっくりと言うなら……それは、有体に恐らくゴム製であろう持ち手の付いた、金属の棒)

歩夢(スイッチらしき物が付いているけど……?)

ダイヤ「恐らく、それは──」

ジリリリリリリリッ!

ダイヤ「な、何の音ですの!?」

歩夢「何かが、部屋の外で鳴ってるみたいだけど……」

歩夢(慌てて、私とダイヤさんはモノっちー操作室を出る)

歩夢「め、目覚まし時計?」

ダイヤ「どうしてこんな所に……」

ガチャリ

歩夢「……えっ?」

歩夢(音の正体に気を取られているうちに、奥の扉から妙な音がした)

ガチャガチャガチャ!

ダイヤ「か、鍵が!?」

歩夢「嘘!?」

歩夢(慌てて私もドアノブに触れてみる。だが、やはり結果は同じ)

歩夢(モノっちー操作室への扉は、鍵が掛かってしまったのだ)

モノっちー「いやはやごめんネ、奥の部屋は封鎖させてもらったよ」

歩夢「モノっちー……」

ダイヤ「……オホン。全ての部屋の鍵を解除した、のではなかったのです?」

モノっちー「言ったネ、確かに言ったけど……閉鎖しないとも言ってないよネ!」

歩夢「ず、ずるいよそんなの!」

モノっちー「まあ、あの部屋を開けっぱなしにしておくと、ボクを動かせなくなっちゃうからネ」

モノっちー「どこかで締め出しておかないと、放送も出来ないでしょ」

ダイヤ「では、やはりあの部屋は……」

モノっちー「お察しの通り、ボクを動かすための部屋だよ」

歩夢「待ってよ。だったら、今も誰かがモノっちーを動かしてることになるけど……」

モノっちー「うん、それがどうしたの?」

歩夢「あの部屋には私とダイヤさん以外、誰も居なかったよね」

ダイヤ「確かに、人が隠れられるスペースもありませんでしたが……」

モノっちー「人は居なかった……? いやいや、そんなことはないよ」

モノっちー「うけけ……天井裏までは、普通は気が回らないよネ」

歩夢「て、天井裏!?」

ダイヤ「なるほど。天井裏を通じて、私たちをあの部屋から追い出すために、こんな真似を」

モノっちー「まあ、気付いたところで内鍵に阻まれちゃうんだけどさ」

モノっちー「というワケで、モノっちー操作室は閉鎖です。なので、得た情報は責任持ってみんなと共有しておくように!」

モノっちー「あそうそう。この情報処理室もすぐに閉鎖するから、とっとと出て行けオマエら!」

歩夢(こうして、半ばモノっちーに追い出されるような形で、私たちは情報処理室を後にした)

ガチャリ

歩夢「……本当に締まっちゃった」

ダイヤ「ですが……これで、危惧していた可能性もなくなりましたわね」

歩夢「可能性?」

ダイヤ「ええ。“生き残っている私たちの中に黒幕が潜んでいる可能性”を考えてもいたのですが……」

歩夢「ああ……黒幕はモノっちーを動かしたりしないといけないから、それは無理だということですね」

ダイヤ「そうなります。つまり、黒幕は私たち以外の誰かだと断言出来ますわね」

《黒幕について》のコトダマを入手しました。

歩夢「あ、そうだ。ダイヤさん、結局あの棒は何だったんですか?」

ダイヤ「その話の途中でしたわね。あれは恐らく、電流警棒だと思われます」

歩夢「で、電流警棒……?」

ダイヤ「ええ。本来の用途は暴徒撃退用なのですが、何故あの部屋にそんなものがあったのかが分からなかったもので」

歩夢「確かに、モノっちーがそんな物を使う理由は見当たらないけど……」

ダイヤ「ただ、何かに使われたのは事実かと。大して手入れはしていなかったようですが」

歩夢「えっ……?」

ダイヤ「金属の部分……電流が通る箇所に、水垢らしき汚れが付いていたんですよ」

ダイヤ「まあ、だから何だと言われれば、それまでなのですが……少し気になっただけです」

歩夢(……電流警棒に、水垢?)

歩夢(もしかして……いや。それが本当だとしたら……?)

《電流警棒》のコトダマを入手しました。

ダイヤ「ところで歩夢さん。電流警棒の件以上に、ずっと気になっていることがあるのですが……」

歩夢「?」

ダイヤ「結局“絶対押すなよ”のスイッチは何だったのでしょうか」

歩夢「えっ」

ダイヤ「いえ。単なる私の好奇心なのですが……押すなよと言われると、押してみたくなるような」

ダイヤ「けれども、ここで押すということは黒幕の掌の上で踊らされているような……そもそも私は、年長者なんですよ。それなのに……」ブツブツ

歩夢(……ダイヤさん。多分そのスイッチは、自爆ボタンだと思います)

歩夢(一番最初に体育館に集められた時に、爆発してたし……)

────生物室

歩夢「さ、寒い……」

歩夢(前回の事件から開いていた、生物室)

歩夢(霊安室としての役割を果たすこの部屋は、しずくちゃんが言っていたように、低温倉庫並みの寒さ)

歩夢(そして、彼女の話通り……壁に、ロッカーのような物が埋め込まれていた)

歩夢「ロッカーの鍵は……」

ガチャガチャガチャ!

歩夢「……流石に、開いてないよね」

歩夢(まあ、ロッカーは部屋じゃないと言われればそうなので、開いていなくても不思議ではない)

歩夢(仮に開いていたとしても、遺体が入っているロッカーを好んで見たいとは思わないが……)

歩夢「……」

歩夢(改めて、遺体安置用のロッカーをよく見てみる)

歩夢(埋め込まれたロッカーの数は、縦3列、横10列の計30台)

歩夢(しずくちゃんの話では、ロッカーの横にランプがついていたそうだが……)

歩夢(確かに、青いランプがロッカー毎に光っている。“何台かを除いて”だが)

歩夢「1、2、3……」

歩夢(多少まばらに点在しているそれを確認してみると、ランプが点いていないロッカーは全部で9台だということが分かった)

歩夢「……」

歩夢(これが意味するものって……?)

《生物室のロッカー》のコトダマを入手しました。

────校舎3階、廊下

梨子「あ、歩夢ちゃん! そっちはどう?」

歩夢(生物室での捜査を終えた私は、別館の方から歩いて来た梨子ちゃんと遭遇した)

歩夢「色々……あったよ」

梨子「私もよ。ちょっと、歩夢ちゃんに見て欲しい物があるんだけど」

歩夢「見て欲しい物?」

歩夢(梨子ちゃんが出して来たのは……1冊の、手帳だった)

歩夢(裏表紙には小さく、西木野真姫と名前が書いてある)

歩夢「あれ、この名前って……」

梨子「知ってるの?」

歩夢「学園長室のファイルで見たんだ。私たちの1つ後輩に《超高校級の医者》として名前が載っていたんだよ」

歩夢(ペラペラとページを捲っていく。内容は、西木野真姫という人物が日々の研究に励む手記……のようだ)

歩夢(聞いたこともない新薬を開発したり、何らかの細胞の培養とやらだったり……小難しい話ばかりだ)

歩夢「これが……どうかしたの?」

梨子「折り目が付いてるページがあるんだけど……わざわざこんなものが置いてあるなんて、気になるでしょ?」

歩夢(梨子ちゃんに促され、折り目が付いてるページ……手帳の後半にあったそれを目にする)


『何よ、今度のプロジェクト』

『研究中の再生医療技術が、どうしてクローンの研究に転用されてるのよ』

『人道的に大丈夫なのかしら、アレ』

梨子「再生医療って……事故なんかで失った身体の部位を復活させるアレ、よね。テレビで聞いたことがあるけど」

歩夢「確か、そんな感じだったと思う。でも、この書き方だと……」

歩夢(この研究は、騙されて行われた物のような書き方だ)

歩夢(でも……手帳には、まだ続きがあった)

歩夢(少し後の方に、再び折り目の付いたページが登場する)


『疲れた。評議委員会の人たちとお話して、なんとかプロジェクトを凍結させた』

『あんなもの倫理に問題大アリだし、私の立場も危うくなるもの』

『しばらく暇になるし、久しぶりに凛や花陽たちと遊びに行こうかしらね』


歩夢(これって、さっきのクローン研究のことなのかな?)

歩夢(だったら、このプロジェクトは凍結……行われなくなったことになるけど……)

《西木野真姫の手記》のコトダマを入手しました。

梨子「愛ちゃんの事件に使われた毒薬も、元はもしかしたらこの人が作ったのかなって……」

歩夢「そう……かもね。あの時の裁判で、モノっちーもそんなことを言ってたし」


花丸『もしかして……“本来存在しないような毒薬”ってことずら?』

モノっちー『まあ、そういうことだネ。“とある人が作った薬をボクが改良した”物なんだよ』

せつ菜『とある人って、誰なんですか?』

モノっちー『しーん……』ボウヨミー


歩夢(何が“改良”だ。人の研究を奪って、最悪な代物に作り変えただけじゃないか)

歩夢(……とはいえここで怒っても意味がない。まだ捜査出来ていない場所はあるんだ)

歩夢(梨子ちゃんと一旦分かれて、私は次の場所へと向かった)

────学生寮・穂乃果の部屋

鞠莉「いらっしゃい」

歩夢(前回の裁判の最後に、穂乃果ちゃんからお土産を受け取った鞠莉さん)

歩夢(ノートPCを横に置いて、ベッドの上に座っていた)

歩夢「そのパソコンって……」

鞠莉「ベッドの下にあったのよ。やっぱり穂乃果が持っていたわ」

鞠莉「それにしても、とんだプログラムよ。このUSBが絶対に必要だったとはね」

歩夢(PCの詳しい知識は持ち合わせていないが……どうやら、USBメモリ自体が解析の鍵になっていたようだ)

歩夢(2つで1つのプログラム。USBメモリが刺さっていない限りは、絶対に解析が不可能だったのだ)

鞠莉「さてと。色々分かったことがあるけど……まずは、これかしらね」

歩夢(鞠莉さんが見せて来たPCの画面に映し出されていたのは……【虹ヶ咲学園・極秘プロジェクト】)


『虹ヶ咲学園は、更なる才能の獲得・育成に努めるべく、新たなプロジェクトに着手した』


歩夢(この出だしは……図書室で鞠莉さんに見せてもらった時のものだ)

歩夢(過去に様々な超高校級の才能を研究し続けて来た虹ヶ咲学園のレポート。以前は途中までだった文章の、続きが読めるようになっていた)

『そして、それらの才能を継承して行くべく、今回の希望継承計画は幕を開けた』


歩夢「希望……継承計画?」

『希望継承計画とは、唯一無二である超高校級たちの才能を、2つの観点からクローン技術によって継承していくもの』

『1つは、才能に関する記憶をデータ化し、それを被験者の脳に移植する方法』

『知識を主とする超高校級の才能は、この方法で継承が可能となるだろう』

『もう1つは、記憶と共に、筋肉等身体の必要部位も移植する方法』

『本人の技術による才能は、このアプローチでの継承を予定している』

『当然ながら、必要部位だけをそう簡単に用意することは出来ない』

『だが、超高校級の医者が研究していた再生医療の技術を転用することで、その問題はクリア出来るだろう』


歩夢「……っ」

鞠莉「驚いたでしょう? 世界各国が禁止の動きに向いているクローン技術の研究を、虹ヶ咲は行っていたみたい」

歩夢(しかも、生徒の研究を使って……だ)

歩夢(途中の文章は、頭が痛くなるような小難しい文章ばかり)

歩夢(だが……手記にあった通り)

鞠莉「もっとも、その計画は頓挫したみたいだけどね」


『──7月頭。希望継承計画、凍結』

『14期生西木野真姫やその周囲からの反発の声が大きかったことを表向きの理由としているが、別の理由も存在する』

『今回のプロジェクトの本命である超高校級の幸運という才能を、どうしても再現出来る目処が立たなかったためだ』

『14期生エマ・ヴェルデの、運を他人に分け与える才能。15期生高坂穂乃果の、狙った結果を引き寄せる才能』

『16期の幸運を募集した際に抽選を行う機械が幾度も故障したことと言い、幸運については解明出来ていない部分が多い』

『多すぎるがゆえに、どこから手を付けて良いか分からないといった具合だ』

『本プロジェクトは凍結となったが、幾つかの技術は残しておく』

『再生医療の技術は、改めて本来の目的で活用してもらうことに』

『記憶をデータ化する技術、及び移植する技術。こちらも、何らかの形で再利用が出来ないかと検討中』

『虹ヶ咲学園・評議委員会』


歩夢「……」

歩夢(これが、希望継承計画の全貌だった)

歩夢(にわかに信じがたいSFチックな話だが……手帳に書かれていたこととも一致している)

鞠莉「虹ヶ咲の偉い人たち、結構デンジャラスな橋を渡ってたりしたみたいよ」

歩夢「でも……ここに書いてある“幾つかの技術”って」

鞠莉「ええ。私たちの記憶が奪われているのは、この技術を使って行われたことかも知れないわね」

《希望継承計画》《記憶喪失について》のコトダマを入手しました。

鞠莉「このフォルダはこんな物かしらね。次はこっち」

歩夢(PCに表示されたのは【持ち出し厳禁】と書かれたフォルダ。中にあるのは【ヒミツ】と【秘密】の2つのファイル)

歩夢(どっちから見る? と問われたので……上に表示されている【ヒミツ】の方から順番に見ることにした)


『研究発表』

『才能を活かした物となったら、大きな建物でも建ててしまう?』

『土地の問題:ウチの所有している島?』

『いっそ海底?(果南の研究発表の拠点としても役立つし)』

『学校の設備を丸ごと作ればいい ←後輩たちも自由に使えるように』

『この手の建築に強いメンバー:……』

歩夢「……」

歩夢(中身は、箇条書きのように書き連ねられたテキストファイル。誰かの研究発表の、構想メモの様だが……)

歩夢(……何、これ?)

鞠莉「中身についてはノーコメントでお願いするわ。まあ……強いて1つ言うとしたら」

鞠莉「……はっちゃけ過ぎじゃないかしら、これ考えた人」

歩夢(鞠莉さんの笑いがどこか自虐めいているのは……多分、気のせいじゃないと思う)

歩夢(ただ、この構想メモの通りなら。私たちが今いる場所についても説明が付く)

歩夢(きっと穂乃果ちゃんは、これも知っていたんだ。だから『世界崩壊』なんて、大それた嘘のシナリオも用意出来たんだ)

《海底学園》のコトダマを入手しました。

歩夢(フォルダにあった、もう1つのファイルにも目を通す)


『希望隔離計画』


歩夢「……えっ?」

歩夢(出だしの文字に、私は目を丸くした)


『彼女がクロである証拠を掴んだ』

『捕まえるのは簡単。でも事は穏便に済ませたい』

『希望継承計画の技術を使うしかない』

『希望を絶望から隔離するのが、最善手の筈』

歩夢(ファイル名もカタカナで、どこかふざけている様子だった【ヒミツ】と比べると……)

歩夢(【秘密】に書いてあるそれはとても短く、それでいて不穏さを感じさせる内容だった)

鞠莉「そっちのテキストもノーコメント。抽象的すぎて、何が言いたいのかを測り兼ねるわ」

歩夢「穂乃果ちゃんは……これも、知っていたのかな」

鞠莉「それもまだ分からない。ただ……黒幕がこれを、USBを使ってまでヒントとして残していたってことは」

鞠莉「この【希望隔離計画】は、重要な手掛かりになる筈よ」

歩夢「……っ」

歩夢(希望を、絶望から隔離する計画)

歩夢(でも、今の私たちが置かれている状況から見るに……)

歩夢(その計画は、失敗したのだろうか?)

《本当の希望隔離計画》のコトダマを入手しました。

歩夢(その後。生徒プロフィールについても改めて確認させてもらったが……)

歩夢(先に学園長室で名簿を見ていたこともあって、これといって気になる箇所はなかった)

歩夢(そして──)

ピンポンパンポーン

モノっちー『始まりと終わりの線など引けないと言いますが、ボクはあえて線を引きます』

モノっちー『捜査という時間は終わりを告げ、学級裁判という時間が始まるのです』

モノっちー『オマエらという希望が勝つのか、ボクという絶望が勝つのか』

モノっちー『全ての決着を、つけようじゃありませんか』

モノっちー『いつもの場所で待ってるからネ。うけけ、うけけけけけけけけけけけけけけけ……』

プツン


歩夢「……始まる」

鞠莉「行きましょう、歩夢」

────学生寮、廊下

しずく「わっ!?」

歩夢(穂乃果ちゃんの部屋を出ようとした矢先。扉が思わずしずくちゃんにぶつかりそうになった)

鞠莉「大丈夫かしら」

しずく「い、いえ。問題ないです」

歩夢「そういえば、しずくちゃんはどこを調べていたの?」

しずく「鍵が解除されていたということで各階の隠し部屋と……お恥ずかしながら、自分の部屋で心の整理を」

鞠莉「そういえばあったわね、あのブレーカーだけしかない小部屋」

しずく「はい。本当に、ブレーカーしかない部屋でした……収穫ゼロです」

しずく「それどころか……心の整理をつけていた筈なのに、何かモヤモヤが残っている気がして」

歩夢「だ、大丈夫だよしずくちゃん。そんなことだってあるから!」

鞠莉「ここで不安になっても仕方ないわ。どのみち、この後の裁判で全て明らかにするだけなんだし」

しずく「あ、いや。そういう話じゃなくって……“何か、なくなっている物がある”ような気がするんです」

鞠莉「……はい?」

しずく「この学園に私物はなかった筈なのに、部屋から何かが消えているような……妙な感覚がするんです」

歩夢「気のせい……って言い切るのは簡単だけど……」

歩夢(とはいえ、消えるほどの物があった覚えもない。やっぱり気のせいでは──)

鞠莉「……うっかりしてたわ」

歩夢「えっ……?」

鞠莉「……」

歩夢(鞠莉さんは、物凄い形相で何かを考えこんでいた)

しずく「あ、あの……何か、不味いことでも……」

鞠莉「……話は後。行くわよ、学級裁判に」

しずく「え、あ……はい……」

歩夢「……?」

歩夢(スタスタとエレベーターに向かう鞠莉さんの後を、2人で追う)

歩夢(何かに気付いた様子だけど、今の話で何か分かったのだろうか……?)

《しずくの違和感》のコトダマを入手しました。

────赤い門の前

歩夢「……」

歩夢(みんな、覚悟を決めたように無言)

歩夢(璃奈ちゃん、ダイヤさん、梨子ちゃん)

歩夢(鞠莉さん、しずくちゃん、そして私……6人全員が、集まっていた)

歩夢(最初は18人で始まったコロシアイ学園生活も、今はたった6人)

歩夢(減ってしまったことを実感しながら。今まで死んでいったみんなのことを思い返しながら)

歩夢(私たちは、エレベーターに乗り込み……)

歩夢(そして、向かうべき場所へ下り始めた)

歩夢(6人を乗せた鉄の塊は、いつものように地下へと潜っていく)

歩夢(深く、深く、深く深く深く深く……)

歩夢(ゆっくりと、私は目を閉じる)

歩夢(この裁判で、絶望を打ち砕くと信じて)

歩夢(希望が勝つということを証明して)

歩夢(残酷で醜悪なゲームを、終わらせてみせる)

歩夢(最後には、みんなで生きて帰る……そのことだけを考えて)

歩夢(やがて、鉄の塊が動きを止め……私は目を開けた)

────地下???階、裁判場

モノっちー「……うけけ、待ってたよ」

歩夢(最後ということを意識してか……裁判場は、やけに豪華な造りになっていた)

歩夢(例えるなら、それはコンサートホール)

歩夢(上からはシャンデリアが光を灯し、裁判場を取り囲む壁紙は数多の座席が描かれている)

歩夢(そして中央には、私たちの議席と、12の遺影)

歩夢(モノっちーはといえば……王冠まで被って、玉座で頬杖をついていた)

歩夢(我こそがこの学園の王である、と言わんばかりに)

ダイヤ「始める前に、1つだけ確認しておきたいのですが」

モノっちー「ん?」

ダイヤ「穂乃果さんたちの遺体は、既に生物室に?」

モノっちー「何を確認するかと思えば……そうだネ、あいつらは全員ロッカーに収めた後だよ」

モノっちー「途中で捜査に来ていた人もいたけど、その時には既に納品しております」

ダイヤ「……そうですか」

《モノっちーの証言》のコトダマを入手しました。

モノっちー「じゃあ、気を取り直して」

モノっちー「オマエらは“希望は絶望より強し”を証明する」

モノっちー「ボクは“絶望に勝るものナシ”と叩きつける」

モノっちー「勝つのは希望か、それとも絶望か」

モノっちー「待望の最終ステージ……ラスボス戦を」

モノっちー「始めようじゃないか」

~学級裁判準備~
全てを明らかにする、最後の学級裁判。
黒幕は誰なのか? この学園に隠された秘密とは? 最奥で待ち構えているモノとは?
多くの命が散って行った絶望のコロシアイ学園生活に、希望の終止符を打て!

コトダマリスト
《虹ヶ咲学園学園案内》
学園長室に置かれていた冊子。
ここに載っている設備は多岐に及んでいるが、
どれも歩夢たちが閉じ込められている虹ヶ咲学園の設備とは合致していなかった。

《8人の生徒名簿》
虹ヶ咲学園第14期生から16期生までの、歩夢たちが知らない8人の名簿。
載っているのは東條希、絢瀬絵里、矢澤にこ、
園田海未、南ことり、星空凛、小泉花陽、西木野真姫の8人。
穂乃果の話を合わせると、3番目の事件で被害者となった渡辺曜の正体は小泉花陽だったと考えられる。

《渡辺曜の生徒名簿》
超高校級の船乗り・渡辺曜の生徒名簿。
写真に写っていたのは、3番目の事件で被害者となった渡辺曜とは異なる人物だった。

《2人の15期生》
超高校級の幸運・高坂穂乃果と、超高校級の若女将・高海千歌。
高坂穂乃果は高海千歌として学園生活を過ごし、本物の高海千歌は行方が分かっていない。

《モノっちー操作室》
黒幕がモノっちーを動かすための、情報処理室の奥の部屋。
黒幕は歩夢たちの監視とモノっちーの操作を同時には行えなかったようだ。

《黒幕について》
黒幕はモノっちー操作室に潜んで居る。
そのため、歩夢たち生存者の中に黒幕が居る可能性はなさそうだ。

《電流警棒》
モノっちー操作室のゴミ箱に入っていた物。
電気が流れる金属部に、水垢のような汚れが付いていた。

《生物室のロッカー》
縦3×横10の計30台からなる、死体を入れるためのロッカー。
ロッカーにはそれぞれ個別に青いランプが点いているが、9台はランプが点灯していなかった。

《西木野真姫の手記》
武器庫の奥の部屋に残されていた手帳。
折り目の付いたページが2か所あり、以下の内容が記されている。
『何よ、今度のプロジェクト』
『研究中の再生医療技術が、どうしてクローンの研究に転用されてるのよ!』
『人道的に大丈夫なのかしら、アレ』

『疲れた。評議委員会の人たちとお話して、なんとかプロジェクトを凍結させた』
『あんなもの倫理に問題大アリだし、私の立場も危うくなるもの』
『しばらく暇になるし、久しぶりに凛や花陽たちと遊びに行こうかしらね』

《希望継承計画》
虹ヶ咲学園評議委員会が取り組んでいた新プロジェクト。
才能の継承をテーマに、才能に関する記憶や必要な肉体の移植などを行おうとしていた。
人道的等幾つかの理由から計画自体は頓挫したが、技術自体は残されている。

《記憶喪失について》
希望継承計画で残された、記憶を移植する技術の応用なのではないか。
黒幕が歩夢たちの学生生活の記憶を奪った方法に関する推測。

《海底学園》
ノートPCに入っていた、計画書の構想メモ。
ある人物が、研究発表のために海底に学校の設備を模した建物を造る計画書が記されていた。

《本当の希望隔離計画》
ノートPCに入っていた、以下の内容が記された謎のメモ。
『彼女がクロである証拠を掴んだ』
『捕まえるのは簡単。でも事は穏便に済ませたい』
『希望継承計画の技術を使うしかない』
『希望を絶望から隔離するのが、最善手の筈』

《しずくの違和感》
しずくは自分の個室から、何かがなくなっているような気がした。
個室には特に私物が置いてあるわけではないのだが……?

《モノっちーの証言》
歩夢が生物室を訪れた頃には、既に穂乃果たちの死体は生物室に収められていた。

今回はここまで。


 学 級 裁 判 
  開   廷!

モノっちー「今回は最後の学級裁判ということで、ルールがいつもと少し違います」

モノっちー「まずはそれを明示しておきましょう」

モノっちー「オマエらがやるべきことは、ボクの正体やこの学園の秘密、そして隠された謎を解き明かすこと」

モノっちー「そうやって真実を知った上で、この学園から出る【卒業】かここに残る【留年】かのどちらかに投票してもらいます」

モノっちー「全てを解き明かした上で全員が【卒業】を選べば……オマエらの勝ちー!」

モノっちー「解けない謎があったり、1人でも【留年】を選んだりしたら……ボクの勝ちー!」

モノっちー「敗者に待っているのは、ワックワクでドッキドキのオシオキでーーーす!」

鞠莉「わざわざ投票もやらせるのね。謎を解くだけでいいんじゃないかしら?」

梨子「そうよ。ここまで来て【留年】を選ぶ人なんて居ないわよ」

歩夢(梨子ちゃんの言葉に、全員が賛同する)

モノっちー「前回の裁判が消化不良だったし、ボクとしては最後くらい投票できっちり締めて欲しいんだよネ」

モノっちー「まあ形式的なモノだと思って、そのくらいはご容赦くださいな」

ダイヤ「……いいでしょう。それで、どの謎から解を示せばよろしいのでしょうか?」

モノっちー「色々あるけど、まずはこの学園そのものの秘密から答えてもらいましょうか」

しずく「この学園の……ですか?」

モノっちー「うけけ……それじゃあ、議論を始めようか」

【ノンストップ議論 開始!】
[|虹ヶ咲学園学園案内>
[|モノっちー操作室>
[|生物室のロッカー>
[|海底学園>

ダイヤ「学園自体の秘密……」

しずく「なんだか質問が漠然とし過ぎていませんか?」

モノっちー「高坂さんがオマエらにした話が嘘か本当か……争点はそこだよ」

璃奈「《外の世界が滅んでいる》って話のこと(・v・)?」

梨子「でも、あの話を嘘だとは言い切れないでしょ? この学校は【海の底に沈んでいた】んだし」

しずく「そうですよ。海面上昇でも起きなければ【虹ヶ咲学園が水没する】理由にはなりません」

しずく「お台場の海沿いの学園とはいえ【窓の外の景色】は普通ではなかったですし」

鞠莉「……」

歩夢(この学園の秘密……その手掛かりは、確かに残されていた筈だよね)

[|虹ヶ咲学園学園案内>→【虹ヶ咲学園が水没する】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「そもそも……私たちが閉じ込められているここは、本当に虹ヶ咲学園だったのかな?」

しずく「えっ……?」

歩夢「学園長室で、妙な冊子を見つけたんだよ」

ダイヤ「妙な冊子、とは?」

歩夢「虹ヶ咲学園の学園案内……それ自体は、本当にただの学園案内なんだけど」

歩夢「そこに載っている設備紹介の写真は“どれもこの建物とは違う設備だった”んだ」

璃奈「プールや体育館なんかの広さが全然違ったし、ここにはない部屋もいっぱいあったよ(・v・)」

歩夢「写真だと豪華な造りだった学園長室も、冊子が置いてあった部屋とはまるで違った」

歩夢「モノっちー。あのパンフレットに書いてあることは、嘘じゃないんだよね」

モノっちー「勿論ですとも。パンフレットは嘘偽りなく、虹ヶ咲学園が発行しているモノですよ」

歩夢「……だとしたら、考えられるのは1つしかないよ」

ダイヤ「ここが虹ヶ咲学園ではない“どこか別の建物だった”ということですか……」

梨子「じゃあ私たちは、知らない建物に監禁されているってことなの!?」

しずく「しかも……海の中の建造物である事実は変わりません。でなければ外の景色の説明がつきませんから」

璃奈「でもわざわざ学校の設備を作ったのはどうして? 普通、海の中に学校なんて建てないよね(・v・)?」

歩夢(海の中に学校が建てられた理由。それを示す手掛かりは……)

【コトダマ一覧より選択】

→【海底学園】

歩夢「この建物は、ある人が研究発表として建築した物……だと思うんだ」

歩夢「それを示す構想メモが、ノートPCの中に入ってたんだよ」

ダイヤ「け、研究発表で学校を……?」

モノっちー「そもそも虹ヶ咲学園は、超高校級の才能を磨くための学校だからネ」

モノっちー「記憶を失っているオマエらは覚えてないだろうけど、卒業前にはそれぞれの才能を活かした研究発表があるんだ」

しずく「ちょっと待ってください! それだと、この学校を建てた人って……」

歩夢「虹ヶ咲学園の生徒……しかも、私たちの中に居る可能性が高いんだ」

梨子「えぇっ!?」

歩夢(そうだ。それを示す手掛かりだって、構想メモの中にあった筈……)

【怪しい人物を指名しろ!】

→【小原鞠莉】

歩夢「鞠莉さん……ですよね。あのメモを書いたのって」

鞠莉「……」

歩夢「構想メモの中には、土地をどうするかを考えている部分がありました」

歩夢「“ウチの所有している島を使う”……在校生の中でこんなことが書けるのは《超高校級の令嬢》である鞠莉さんだけです」

璃奈「卒業生が建てた可能性はないの(・v・)?」

歩夢「メモによると、この海底学園には《超高校級のダイバー》である果南さんの研究発表の拠点にする目的もあったんだ」

歩夢「勿論、卒業生が果南さんを気にかけてって可能性もある。“後輩たちも自由に使えるように”って文章もあったしね。でも──」

鞠莉「主目的はクラスメイトのため、そう考えた方が自然……ってわけでしょう?」

鞠莉「そもそも、ここまで来てモノっちーがノーヒントで謎を吹っかけて来るとは思えない」

鞠莉「多分間違いないわ。この海底学園を建てたのは、私よ」

梨子「さ、流石は小原家令嬢……」

ダイヤ「鞠莉さん……随分と、大掛かりなことをしたのですね」

鞠莉「返す言葉もないわ……何をやってるのかしら、私」

歩夢「これが……この建物の真相だよ。どうかな、モノっちー」

モノっちー「誰かさんが恥をかいたところで、正解正解~」

モノっちー「オマエらの推理した通り、この建物は虹ヶ咲学園ではなく……」

モノっちー「小原さんが世間には内緒で、研究発表として建てた海底建築なのでした」

しずく「世間には……道理で、今に至るまで助けが来なかったわけです」

鞠莉「多分私のことだから、ママには内緒で建築班を動かしたんでしょうね」

鞠莉「しかも建物は海の底……そう簡単に辿り着ける場所じゃないわ」

ダイヤ「そして、モノっちーはそんな建物を乗っ取って、我が物顔でコロシアイを強要したと」

モノっちー「まあネ」

鞠莉「強要だけじゃないわ。モノっちーは私たちの仲間を殺している」

梨子「オシオキで、何人も……」

鞠莉「いいえ。確かにオシオキもあるけれど、今はその話じゃないわ」

璃奈「じゃあ第2多目的室のこと? ほら、穂乃果さんが言ってた……(・v・)」

鞠莉「その件も後で問う必要があるだろうけれど……それでもないわ」

ダイヤ「……何が言いたいのです?」

しずく「裁判が始まる前、鞠莉さん、凄く何かを考えている様子でしたけど……それと何か関係が?」

鞠莉「恐らく、ね。まだ確証は持てないけれど……」

歩夢「鞠莉さんが気にしていることって……“ある事件”についてなんじゃないかな」

璃奈「ある事件(・v・)?」

歩夢「実は……今回の捜査をしていくうちに、ある事件に関する新しい事実が分かったんだ」

歩夢「どうして鞠莉さんがその事件について気になっているのかは分からないけど……」

歩夢「その事実はもしかしたら、学級裁判の根幹を揺るがすものかも知れないんだ」

しずく「学級裁判の根幹を……?」

モノっちー「ふーん……教えてよ。新事実が分かったのは、どの事件なのかな?」

歩夢「答えてあげるよ。その事件は──」

【黒澤ルビィの事件】
【近江彼方の事件】
【渡辺曜?の事件】
【宮下愛の事件】
【松浦果南と中須かすみの事件】
【国木田花丸の事件】

正しい選択肢を選べ!

→【近江彼方の事件】

歩夢「2番目の、彼方さんが死んだ事件だよ」

しずく「……っ」

ダイヤ「あの事件……いや、不運な事故と言っても差し支えありませんわね」

梨子「エマさんは何も悪くなかったのに……」

モノっちー「そうそう。中須さんが余計なイタズラをしたせいで、勝手に事故が起きたんだよネ」

モノっちー「しかも犯人であるエマさんはそれに気付いて、投票結果を捻じ曲げようと──」

歩夢「捻じ曲げられたのは、投票結果だけじゃなかったのかも知れない」

モノっちー「……うん?」

歩夢「あの事件が、事故なんかじゃなかった可能性があるんだ」

歩夢「明確に殺意を持った人が行った、殺人だったのかも知れないんだよ」

璃奈「……えっ(?□!)!?」

モノっちー「だとしたらどうするのさ。事故じゃなかったとしたら、エマさんが意図的に感電させる仕掛けを作っていたとでも?」

モノっちー「大体、判決はもう出たんだよ? その事件に対して今更どうこう言うつもりなの?」

歩夢「その判決自体が間違っていたとしたら?」

鞠莉「あの事件のクロがエマじゃない……ってことね」

歩夢「もし本当に間違いだったなら、学級裁判の信頼は根本から揺らぐことになるよね」

ダイヤ「そうですわね。ほとんどの犯人が、潔く罪を認めていましたが……」

梨子「そ、それこそ、実は学級裁判が成り立ってない事件ばかりだったってことになるわ」

モノっちー「なるほど? つまりオマエは、ボクの間違いを指摘して、ゲームマスターの失墜を狙っているワケだネ?」

歩夢「うん。やましいことがないなら、この話を聞き入れてくれるよね」

モノっちー「うけけ……いいよ。受けてやろうじゃないか」

モノっちー「過去の事件に隠された真相があったなんて展開、とっても面白いからネ」

歩夢「……」

歩夢(モノっちーは、妙に展開というものにこだわっている)

歩夢(何か……考えがあるの?)

歩夢(いや、今はそんなことを考えている時じゃない)

歩夢(あの結末が間違いだったということを証明して、コロシアイの黒幕を追い詰めるんだ!)

【ノンストップ議論 開始!】
[|2人の15期生>
[|電流警棒>
[|生物室のロッカー>
[|しずくの違和感>

璃奈「彼方さんの死因は……感電死で合ってるよね(・v・)?」

鞠莉「一度は《毒殺》の線も上がったけれど、実際はそうじゃなかった」

梨子「事故が起きた時、現場に犯人は居なかったのよね」

モノっちー「停電に驚いてこぼしたスポーツドリンクと、不良品のケーブル」

モノっちー「そこに立っていた被害者は、犯人が【ブレーカーを上げた拍子に】感電」

モノっちー「超高校級の幸運が起こした、不運な事故なんだよネ!」

しずく「停電の仕掛けを作ったのは【かすみさん】で……現場に居たのは【果南さん】でしたよね」

モノっちー「エマさんが犯人じゃないなら、真犯人はその2人のどっちかだって言いたいのかな?」

ダイヤ「いえ、もしかしたら……」

歩夢(過去の裁判での結論を覆すかも知れない証拠が出て来たんだ。それを突き付けるしかない!)

[|電流警棒>→【ブレーカーを上げた拍子に】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「確かに、彼方さんは感電死だったのかも知れない」

歩夢「あの時のモノっちーファイルには、死因が書いてなかったからね」

モノっちー「まあ、あの事件の謎の大半は死因にあったからネ」

歩夢「でも……感電死を起こすだけなら、ブレーカーは必要ないんだよ。電流警棒を使えばいいんだからね」

梨子「電流警棒……そんなものがあったの?」

ダイヤ「情報処理室の奥の部屋で見つかった物です。ゴミ箱に捨ててありました」

鞠莉「それって……彼方の本当の死因が、その電流警棒だったってことかしら」

歩夢「うん。つまりあの事件の犯人は、停電を復旧させたエマちゃんじゃなくって……」

しずく「電流警棒を使った人って事ですか!?」

モノっちー「うけけ……それは飛躍しすぎじゃないかなあ」

璃奈「飛躍してるの(・v・)?」

モノっちー「そもそも、近江さんの死に電流警棒が関わっている証拠がないでしょ」

モノっちー「ここは学級裁判なんだからさ。論ずるなら証拠を出してもらわないと」

梨子「確か、彼方さんって火傷を何箇所かに負っていたのよね」

鞠莉「いえ。火傷じゃあ電流警棒が使われたという証拠にはならないわ」

鞠莉「仮にそうだとしても、彼方の死体を詳しく調べていた花丸はもう居ないんだから……」

モノっちー「うけけ……」

歩夢(いや。証拠は、電流警棒そのものに残されていた筈……)

【持ち手】
【スイッチ】
【電極】

正しい選択肢を選べ!

→【電極】

歩夢「ダイヤさん、言ってましたよね。電流が通る金属部に水垢が付いていたと」

ダイヤ「ええ。ゆえに、水か濡れた物に触れたのは確かだろうと思ったのです」

ダイヤ「事件当夜、彼方さんの身体も……そうでしたよね」

モノっちー「……」

鞠莉「事件当夜、彼方はプールあがりだったことを果南が証言してるわ」

鞠莉「彼方に直接当てたかスポーツドリンクをこぼした床に当てたのかは分からないけど……十分、彼方を殺せるでしょうね」

モノっちー「だったら、死体が水槽に沈んでいた松浦さんの事件で使われ──」

鞠莉「果南の死に関わったのは銃とナイフよ」

モノっちー「……」

璃奈「あの時のモノっちーファイルは死因や外傷も詳しく書いてた……電流警棒が出てくる場所はないよね(・v・)?」

梨子「オシオキにも、水や電気が使われた物はなかったわ」

歩夢「つまり……電流警棒が使われたのは、彼方さんの事件としか考えられないんだ」

歩夢「そして、その凶器が情報処理室の奥の部屋で見つかったってことは──」

モノっちー「それは違うんだよネ!」

反論!

モノっちー「さっきから何を言ってるんだよオマエらは」

モノっちー「そんな妄言が通るなんて……本当に思ってるの?」

【反論ショーダウン 開始!】
[|電流警棒>
[|生物室のロッカー>
[|記憶喪失について>
[|モノっちーの証言>

モノっちー「犯人が近江さん殺害に電流警棒を使った……」

モノっちー「その前提が根本的に間違ってるんだよネ」

モノっちー「隠し部屋のブレーカーを上げたエマさんには……」

モノっちー「電流警棒を持って現場に行くことが出来なかったんだからさ」

─発展─
でも、その前提を大きく覆す方法があるんだ
   モノっちー、あなたが犯人だった場合だよ!

モノっちー「ボクが犯人? いやいや、それ以外の可能性だってあるでしょ」

モノっちー「もう1人犯人になれる人が居るじゃないか」

モノっちー「そう。被害者が死んだ時、現場に居た松浦さんになら……」

モノっちー「【電流警棒を使える】よネ?」

歩夢(……反論になっていなかった主張は、果南さんに罪を押し付けるための前フリだったんだね)

歩夢(でも……その主張も通さないよ!)

[|電流警棒>→【電流警棒を使える】

歩夢「その言葉、斬らせてもらうよ!」

Break!

歩夢「さっきも言ったけど、あの電流警棒は“見つかった場所”も重要なんだ」

しずく「情報処理室の奥の部屋……でしたよね」

梨子「ちょっと待って!? そもそも情報処理室自体……」

鞠莉「穂乃果が事件を起こすまで、黒幕以外は入れない部屋だった」

鞠莉「それに、奥の部屋に至っては捜査中にようやく入れたんでしょう?」

ダイヤ「ええ。しかもモノっちーは、私と歩夢さんを騙し討ちにかけてあの部屋から追い出そうとしました」

ダイヤ「余程、あの手掛かりを見られたくなかったのでしょうね?」

モノっちー「……」

歩夢「つまり、彼方さんを殺した事件の真犯人は……」

【怪しい人物を指名しろ!】

→【モノっちー】

歩夢「このコロシアイを計画したモノっちー……そして、それを動かしている黒幕だよ!」

モノっちー「……」

璃奈「それじゃあ、エマさんは……(>_<。)」

しずく「無実の罪でオシオキされたってことじゃないですか!?」

歩夢「その通りだよ……彼女は、誰も殺してなんかいなかったんだ」

歩夢「それなのに彼女は処刑にかけられた。黒幕に罪を押し付けられて殺されたんだ」

歩夢「しかもモノっちーは、そんな嘘まみれの真実を正解だと言った」

歩夢「そのせいで私たちも、そしてエマさん自身も。最後まで彼女が犯人だと思い込んでいたんだ」

歩夢「ねえモノっちー。あなたはこのコロシアイを公正なゲームのように楽しんでいたけど……」

歩夢「これの、どこが公正なゲームなの!? 丸っきりデタラメだよね!?」

鞠莉「そうね。この推理が本当だとすれば、今までの裁判も怪しくなってくるわ」

鞠莉「本当は全部、違った判決だったんじゃないか……そう疑われても仕方ないわ」

梨子「そんなの、ゲームなんかじゃないわ。ただの殺し合いじゃない……!」

鞠莉「それどころか、全部モノっちーが殺していたりしてね。コロシアイゲームを根本から否定する問題よ」

歩夢「モノっちー……私は、あなたを絶対に許さない」

歩夢「人の命をもてあそんだことだって、許すことは出来ないけど」

歩夢「真実を捻じ曲げてコロシアイを強要したあなたを、絶対に許さない!」

モノっちー「……言わせておけば、ベラベラと」

モノっちー「ボクが犯人だって指摘するのは大いに結構」

モノっちー「ボクのゲームマスターとしての信用を落とすのも大いに結構」

モノっちー「でもオマエら……肝心なことを忘れてるよネ」

璃奈「肝心なこと(>_<。)?」

モノっちー「さあさあ、面白くなってきたよ。まだまだ議論を回そうじゃないか!」

【ノンストップ議論 開始!】
[|8人の生徒名簿>
[|黒幕について>
[|西木野真姫の手記>
[|記憶喪失について>

モノっちー「【ボクが犯人】だとしても、それだけじゃあボクを犯人扱いは出来ないよ」

しずく「ここまで証拠が挙がっているんですよ?」

モノっちー「分からないかなあ。ボクを犯人だと指摘するってことは……」

モノっちー「ボクの《正体を指摘》しないといけないんだよネ」

ダイヤ「あなたの、正体ですか……」

モノっちー「というか、オマエらが言う黒幕って【オマエらの中にいる】わけだしネ」

モノっちー「だって、生き残ってるのはオマエらだけなんだもの」

璃奈「私たちの中に、黒幕が……(>_<。)?」

しずく「だ、誰なんですか!?」

歩夢(……どこまで、モノっちーは卑怯な真似をするんだろう)

歩夢(もう、その程度の出まかせには騙されない……!)

[|黒幕について>→【オマエらの中にいる】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「モノっちー。私たちを混乱させようとしてるみたいだけど……」

歩夢「あなたは今、情報処理室の奥の部屋で誰かが動かしているんだよね?」

モノっちー「……ギクッ」

鞠莉「じゃあ、その部屋はモノっちーを操作するためのモノだったのね」

ダイヤ「ええ。監視カメラについては、先の事件でモニタールームとして用意されていましたが……」

ダイヤ「あの機械の目にはカメラが付いています。奥の部屋でも、黒幕はモノっちーを通じて私たちの姿を捉えられたのです」

璃奈「そのモノっちーが今も動いてるってことは……(・v・)」

歩夢「うん。黒幕は“今も情報処理室の奥の部屋に居る”んだ」

しずく「わ、私たちの中に居るというのは嘘だったんですね……」ホッ

歩夢「じゃあ、改めて彼方さんの事件を振り返って──」

モノっちー「その必要はないネ」

歩夢「……えっ?」

モノっちー「ああ、認めるよ。ボクが彼方さんを殺した真犯人だってネ」

しずく「……って……」

モノっちー「ん?」

しずく「謝って、ください……! あなたのせいでエマさんたちは……っ!」

歩夢「お、落ち着いて!」

歩夢(今まで見たこともない剣幕のしずくちゃん。でも、無理もない)

歩夢(すれ違って、ようやく仲直りが出来た友達を喪ったんだから……)

モノっちー「……」

鞠莉「さて。このコロシアイゲームは成り立っていないことが証明されたわけだし、ここから出して貰えるかしら」

鞠莉「ここが道楽で私が建てた学校なら、外の世界は滅んでなんかいないわけでしょう?」

歩夢(コールドスリープの話が嘘だとすれば、外にはまだ帰る場所がある可能性が残っている)

歩夢(黒幕を捕まえるのは警察に任せて、まずはここから生きて帰るのが先決……鞠莉さんの意見も、ごもっともだ)

モノっちー「……うけけ」

歩夢(でも……モノっちーは)

モノっちー「ボクが謝る理由は、どこにもないよ?」

歩夢(まだ、抗う気でいた)

しずく「何を……言っているんですか?」

モノっちー「ボクが近江彼方さんを殺した……そこまでは認めるけれど」

モノっちー「オマエら、あの事件を思い出してみなよ」

モノっちー「エマさんはあの裁判で、投票結果を捻じ曲げようとしたんだよ?」

モノっちー「幸運なことに隠し部屋の存在を知った彼女は、抜け道を使って裁判場に細工をしようとした……」

モノっちー「公正で崇高なコロシアイゲームを破壊しようとした、最低な人なんだ」

モノっちー「つまり。ボクを近江さん殺しの罪に問うたところで、エマさんのオシオキはゲームマスターにとって正当なものなんだよ!」

歩夢「なっ……!?」

ダイヤ「……呆れて物も言えませんわね」

モノっちー「うるさいうるさーい! 近江さんの方は悪かったよ、そりゃあその件の謝罪はするさ」

モノっちー「でも、エマさんのオシオキを誤った判決だと言われる筋合いはないネ!」

璃奈「でも……校則違反者って、穂乃果さんの時みたいにサイレンが鳴るんじゃ……(・v・)?」

モノっちー「あの時はボクもそこまで考えが回らなかったんだよ」

しずく「どこまで、あなたは私たちを……っ!」

鞠莉「落ち着きなさいしずく」

しずく「っ、でも!」

鞠莉「……歩夢。彼方の事件の流れ、覚えているかしら」

歩夢「えっ……?」

鞠莉「この悪あがきには、ハッキリと矛盾している点があるわ」

鞠莉「エマが取った行動の中に、そのヒントはある」

鞠莉「それにモノっちーは、彼方殺しまで認めた……これが黒幕を追いつめる最後の一押しよ」

歩夢「……」

歩夢(あの事件でエマさんが取った行動が、黒幕を追いつめる最後の一押し……?)


穂乃果『あ、それから! 大事なことを忘れてた!』

穂乃果『エマちゃんの幸運も……信じてあげて』

歩夢『そ、それって、どういう……』


歩夢(穂乃果ちゃんが言っていたのは……こういうことだったの?)

歩夢「……」

モノっちー「ボクは、エマさんのオシオキは正当だったと言い続けるよ」

歩夢「ううん……やっぱり、不当な判決だったんだよ」

モノっちー「ふーん? 盾突くつもり?」

モノっちー「じゃあ……やってみなよ」

歩夢(勿論……やってやる)

歩夢(モノっちーの悪あがきを、理論で突き崩すんだ!)

【理論武装 開始!】

モノっちー「ホントにいいのかな~」

モノっちー「うけけけ……」

モノっちー「証拠を出したまえ、証拠をー!」

モノっちー「見えない、聞こえない、知らなーーーい!」

モノっちー「何をはしゃいでるんだか……」

モノっちー「何だよ、何なんだよ!」

モノっちー「……」

モノっちー「やめておけばよかったのにネ」


モノっちー「【エマさんが裁判場に細工したのが悪いんだ! あれは正当なオシオキだよ!】」

      △:アナウンス
□:彼方の       ○:死体
      ×:発見

→□○×△ [|彼方の死体発見アナウンス>

歩夢「これで……終わりだよ!」

Break!!!

歩夢「モノっちー……それは嘘だよね」

歩夢「あなたは最初から、エマさんを犯人にするつもりだった筈だよ」

モノっちー「な、何を根拠に──」

歩夢「あの事件の死体発見アナウンス、みんなは覚えてる?」

璃奈「き、急に言われても……(>_<。)」

梨子「確かあの裁判で初めて、死体発見アナウンスについてのルールが出た……のよね?」

モノっちー『あー……そこに気付いちゃった? んもう、デリケートな話だから触れないようにしてたんだけど……』

モノっちー『死体発見アナウンスってのはネ、推理の材料に使っていいものじゃないのさ』

モノっちー『あくまで、校正に学級裁判を起こすために流すものであって……』

愛『そんなことはいいからさ。条件はなんなの、条件は』

モノっちー『“3人以上の人間が死体を発見すること”だよ。オッケー?』

愛『さーんきゅ!』


しずく「ほとんどの事件で3人以上の人が同時に死体を見つけているせいで、形だけのルールだと思っていましたが……」

鞠莉「ちなみにモノっちーは、その3人の中に“犯人が含まれるかどうか”の言及は一切していなかったわ」

ダイヤ「ええ。あの時は、それを論ずる意味があまりない状況でしたから」

エマ『確か、アナウンスが流れるまでに死体を発見したのって……』

璃奈『最初に果南ちゃん。次が……かすみちゃん(>_<。)?』

かすみ『確かに、死体を移動させた私は、ある意味第2発見者でしょうね』

曜?『次が、千歌ちゃんとせつ菜ちゃん……』

花丸『4人……』

かすみ『これじゃあ、手掛かりにはなりませんね~』プククク

歩夢『ね、ねえ! どっちが先に発見したのか……覚えてないの!?』

せつ菜『そ、そんなこと急に言われても……』

ダイヤ『“3人”に犯人を含む場合と含まない場合……どちらにしても、発見者が4人である以上、判断材料にはなりませんわ……』


璃奈「そういえば、そんな話だった……(・v・)!」

歩夢「ここで重要になるのは……事件の翌朝になるまで“3人が死体を発見したことになっていなかった”ことなんだ」

歩夢「そして……エマさん、言ってたよね」

果南『夜時間に、かすみと会ってた……?』

かすみ『あー、そういえばそんなこともありましたっけ』

エマ『何だか嫌な予感がして……校舎を見て回ったの。そうしたら……』

果林『彼方ちゃんの死体を見つけた、ってワケね』

エマ『すぐにみんなを呼ぼうって思った。けど、少し考えて……気付いちゃった』

エマ『元々悪いのはかすみちゃん。でも、最後に引き金を引いたのは私……』

歩夢『だから、電源コードを処分したんだね……』

エマ『……うん。燃え残っちゃったのは、慌ててたから、だと思う』

かすみ『だからって、裁判場に細工までしなくったっていいじゃないですか~。そこまでして死にたくないんですか?』

エマ『死にたくないに決まってるよ!』

歩夢「そう……“裁判場に細工を仕掛けるより前に、彼方さんの死体を発見している”んだよ」

歩夢「しかも、エマさんが発見した時点で、現場に居た果南さんと死体を運んだかすみちゃんの2人が見ていた」

歩夢「ねえ。どうしてモノっちーは、エマさんが死体を発見した時点でアナウンスを鳴らさなかったの!?」

モノっちー「んなっ……!?」

鞠莉「エマがあの事件のクロじゃないとしたら、彼女が死体を見つけた時点で3人目の発見者になる筈」

鞠莉「つまりモノっちー……あなたは最初から、エマに冤罪を被せるつもりだった」

鞠莉「“犯人が見ていたから、死体発見人数には含まれない”って、クロに仕立て上げたのよ」

モノっちー「…………」

ダイヤ「いよいよ逃げ場がなくなって、沈黙ですか」

歩夢「どうだっていいよ。改めて、最初からあの事件で起きたことをまとめて……」

歩夢「このコロシアイ学園生活の不当性を、証明するよ」

歩夢「エマさんや彼方さん、死んだみんなに誓って……明らかにしてみせる」


歩夢「これが事件の真実だよ!」

【クライマックス推理】
ACT.2-4
じゃあ、新しい証拠を元に、2番目の事件を振り返ってみよう。
事件当夜夜10時……被害者である彼方さんは、殺害現場である更衣室に居た。
同じく現場に居た果南さんが、一緒にランニングすることを提案して来たけど……その直後、停電が起きたんだ。
停電自体は、かすみちゃんがモノっちーにやり方を聞いて起こしたイタズラに過ぎなかった。
けど……その裏では、とてつもない悪意が動いていたんだ。

ACT.2-5
停電が起きた時のみんなの行動は、2番目の学級裁判で明かされた通りだよ。
図書室に居たエマさんも、停電を復旧させようと隠し部屋のブレーカーをあげるわけだけど……。
彼方さんがこぼしたスポーツドリンク、ランニングマシーンの電源ケーブル、そしてブレーカー。
それらの要素が合わさって、彼方さんは停電明けと同時に不幸な感電死を遂げた……ことになっていた。
でもそれは……真犯人によって歪められた真実だった。
彼方さんが死んだのは、本当は停電の最中だったんだよ。

ACT.2-6(New!)
真犯人は、情報処理室の奥の部屋……モノっちーを操作する部屋に居たんだ。
その人は自ら操作するモノっちーにある物を持たせて、現場へと向かわせたんだよ。
現場は停電が起きて真っ暗だったけど、内蔵カメラには暗視機能もついていたんだろうね。
そして、真犯人は暗闇に怯える果南さんを無視して……彼方さんへとモノっちーを動かした。
その手に、本当の凶器である電流警棒を持たせて……!

ACT.2-7
電流警棒で彼方さんを殺した後は、停電が明ける前に急いでモノっちーを撤収させる。
そして、モノっちーが現場から撤収した後……エマさんが、ブレーカーを上げた。
突然彼方さんが死んだことで、ビックリした果南さんは現場から逃げ出した。
その後、偶然更衣室を訪れたかすみちゃんが、この事件を連続殺人鬼・タカマガハラの仕業に見せかけるための細工を施した。
彼女は現場を見ただけで、彼方さんの死因が感電死である可能性には気づいていたようだけど……。
それが、ブレーカーのせいで起きた物だと勘違いしてしまったんだ……あの学級裁判の、私たちのようにね。

ACT.2-8
細工を終えた帰り道、かすみちゃんは偶然エマさんと鉢合わせした。
まさかその相手がブレーカーを上げた人だとは夢にも思わない彼女は、意味ありげなことを喋った。
そのせいで、エマさんは……かすみちゃんが死体を動かしたこと、そして彼方さんの死因が自分にあることに気付いてしまった。
焦った彼女は、彼女なりに生き延びる細工を施そうとする。
でも……エマさんが3人目になる筈の死体発見アナウンスが鳴らなかった時点で、真犯人が用意したシナリオは決まっていたんだ。

ACT.2-9
一方の真犯人は、モノっちーと凶器である電流警棒を回収。
凶器をゴミ箱に捨てて、証拠を隠滅したつもりだった。
電極の水垢を拭き取らなかったり、そもそも電流警棒を廃棄処分しなかったのは、真犯人の油断だったのかも知れない。
鍵の掛かった部屋に入れるのは、その人物だけだったからね。
でも、私たちはようやく辿り着いたんだ。
真犯人が用意した、エマさんが犯人であるという嘘のシナリオに隠された真実に……。

歩夢「あなたが真犯人……もう、言い逃れする余地は残ってないよ」

歩夢「このコロシアイゲームは、成立していなかったんだ」

歩夢「そうだよね、モノっちー……いや《コロシアイ学園生活を仕組んだ黒幕》さん!」

    COMPLETE!!!

歩夢「これが……私たちが辿り着いた真実だよ」

モノっちー「……」

ダイヤ「黙るのは勝手ですが、沈黙は肯定と見なして宜しいですわね?」

モノっちー「……」

梨子「と、とにかく……これで、コロシアイは終わったのよね?」

しずく「……言いたいことは山ほどあります。けどそれは、この狂った学園の外に出てからです」

璃奈「でも、海の底からどうやって外に出るの(・v・)?」

鞠莉「私たちをここに運び込んだ潜水艦か何かがある筈よ。さあモノっちー、その場所を吐きなさい」

鞠莉「こんな空間での暮らしは、もう終わりよ」

モノっちー「……」

モノっちー「……終わり?」

モノっちー「クライマックス気分で推理を披露して、それで本当に終わりだと思ってるの?」

モノっちー「だとしたら、とんだお笑いだネ……。うん、とことんお笑いだよ」

ガコン!

歩夢「えっ!?」

しずく「え、エレベーターが!?」

歩夢(突然、私たちを絶望の裁判場まで運んできたエレベーターが、からっぽのまま上へとのぼり始めた)

モノっちー「ああ、気にしないで。いいタイミングになったら、中の人が降りてくるだけだからさ」

璃奈「中の人、って……(・v・)?」

モノっちー「ボクの中の人……オマエらが待ち望んだ、黒幕サマ御本人だよ」

歩夢「……っ」

歩夢(黒幕が……裁判場に来る!?)

モノっちー「だから降りて来るまでの間、ボクはこのスピーカーを通してしか喋れないからネ。オマエらの話は無線イヤホンで聞くからネ」

モノっちー「只今をもってモノっちーはただの喋るヌイグルミになるからさ。そこんところ悪しからず」

鞠莉「今更、黒幕が降りて来て何になるの? 土下座でもするのかしら」

ダイヤ「このコロシアイはゲームとして成立していないと明らかになったのです……即刻中止、並びに私たちの解放を要求します」

モノっちー「いやいや……言ったでしょう?」

モノっちー「全ての謎を解き明かした上で全員が【卒業】を選ばないと、オマエらの勝ちにはならないって」

モノっちー「決着をつけるなら、ルールはきちんと守ってもらわないと」

しずく「先にルールを破ったのはあなたの方じゃないですか!」

モノっちー「うんうん、確かにボクはルール違反を犯したネ」

モノっちー「で?」

歩夢「『で?』って……それだけ!?」

モノっちー「まだオマエらは解いてない謎があるんだ。そして、まだ明かしていない謎もあるんだ」

モノっちー「ボクの正体は誰なのか、かつて第2多目的室で何があったのか」

モノっちー「そして……何故オマエらがコロシアイをする羽目になったのか、とかネ」

モノっちー「まだまだ議論は終わらないよ。むしろこの学級裁判は、ここからが本番なんだよ」

モノっちー「うけけ、うけけけけけ……!」

今回はここまで。
公式情報の少なかったChapter2時点と一部呼称に変更が掛かっていますが悪しからず。
そして、次回の更新をもって、スクスタロンパ……もとい
歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」は完結となります。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

モノっちー「じゃあまずは、ボクがそっちに姿を現すためにも……ボクが何者なのか解き明かして貰おうか」

梨子「そ、そんなの分かるわけないじゃない!」

モノっちー「ヒントは多少なりと提示したつもりなんだけどネ」

しずく「そ、そう言われても……」

鞠莉「……」

ダイヤ「困りましたわね……黒幕が犯した罪を問うことが出来ても、その黒幕の正体が掴めないとは」

モノっちー「おやぁ? 早くもギブアップ?」

璃奈「ううん……少し、気になってることがある(・v・)」

梨子「本当!?」

歩夢(璃奈ちゃんが気にしているのって、多分あのことだろうけど)

歩夢(そこに、黒幕の手掛かりはあるのかな……?)

【ノンストップ議論 開始!】
[|渡辺曜の生徒名簿>
[|2人の15期生>
[|生物室のロッカー>
[|モノっちーの証言>

鞠莉「璃奈、あなたは何が気になってるの?」

璃奈「本物の千歌さんと曜さんは、どこに行ったの(・v・)?」

ダイヤ「確かに……亡くなった2人は【本人ではなかった】でしたからね」

しずく「本当は、高海千歌さんは【高坂穂乃果】さんで……」

梨子「確か、曜ちゃんの正体は【ハナヨ】ちゃん……だったわよね?」

璃奈「【小泉花陽】さん、らしいよ(・v・)」

モノっちー「ちなみに、小泉さんの血液型は【B型】だよ」

鞠莉「だからAB型の曜と異形輸血が起きたのね」

ダイヤ「では、璃奈さんは【2人が黒幕】だと考えているのですか?」

璃奈「分からないけど……怪しいと思う(・v・)」

歩夢(本物の千歌ちゃんと曜ちゃん……彼女たちは、黒幕なのかな?)

[|生物室のロッカー>→【2人が黒幕】

歩夢「それは違うよ!」

Break!

歩夢「璃奈ちゃん、私にはその2人が黒幕だとは思えないんだ」

璃奈「どうして(・v・)?」

歩夢「さっきの捜査で、改めて生物室のロッカーを調べてみたんだけど……」

歩夢「今ある手掛かりと合わせて考えると、璃奈ちゃんの推理は間違っているかも知れないんだ」

璃奈「……(・v・)?」

歩夢(……落ち着いて考えよう)

歩夢(生物室のロッカーについて、気になったこと……)

歩夢(それを踏まえれば、推理の穴が見えて来る筈……!)

【ロジカルダイブ 開始!】
Q1.生物室のロッカーの数は……
a.10台
b.20台
c.30台

Q2.青いランプが点灯していないロッカーの数は……
a.9台
b.10台
c.11台

Q3.青いランプが点灯しているロッカーには……
a.死体が入っている
b.何も入っていない

Q4.ロッカーに入っている死体の数は……
a.20
b.21
c.22

【c.30台→a.9台→a.死体が入っている→b.21】

歩夢「繋がったよ!」

Complete!

歩夢「気になったのは……死体の数なんだよ」

梨子「死体の数?」

歩夢「全部で30台あったロッカーのうち、9台は横のランプが点いてなかった……」

歩夢「逆に言えば、21台はランプが点いていたんだ」

鞠莉「歩夢は、それが死体の数だって言いたいのね?」

しずく「逆の可能性はないのですか?」

歩夢「それもないと思うよ。今まで死んだみんなを思い返せば……ね」

歩夢「まず最初に、ルビィちゃんと善子ちゃん」

ダイヤ「……」

歩夢「次に、彼方さんとエマさん」

しずく「……っ」

歩夢「その次が、小泉花陽さん、愛ちゃん、そして果林さん」

梨子「……」

歩夢「果南さんと、せつ菜ちゃん」

鞠莉「その時点では、かすみの死体はまだ低温倉庫にあったわね」

歩夢「うん。最後に、花丸ちゃん、かすみちゃん、穂乃果ちゃん」

歩夢「死体の数は、既に12……9つには収まらないんだよ」

モノっちー「でもさあ。最後の事件の死体が生物室に収められてなければ、ちょうど9つだよネ?」

歩夢「それもないよ」

歩夢(その話を否定する手掛かりは……)

【コトダマ一覧より選択】

→【モノっちーの証言】

歩夢「捜査が始まった時点で、穂乃果ちゃんたちの死体は生物室に収めた……」

歩夢「それを証言してくれたのはあなたの筈だよ、モノっちー」

モノっちー「ああ……そういえばそうだったネ」

梨子「確かに……12人の死体がロッカーに入っていたのは分かったけど」

梨子「残りの9人は一体誰の……?」

鞠莉「それが、第2多目的室の血痕ね。穂乃果の友人が亡くなったっていう……」

歩夢「……うん。新たに見つかった生徒名簿には、私たちの記憶にない、私たちと同じ14期生から16期生までの名前があったんだ」

歩夢「東條希さん、絢瀬絵里さん、矢澤にこさん、園田海未さん、南ことりさん」

歩夢「星空凛さん、曜ちゃんの正体だった小泉花陽さん、西木野真姫さん……全部で8人」

ダイヤ「小泉さんは、曜さんとして亡くなったということですから……それを除いて7人ですか」

歩夢「そこに、行方の分からない本物の千歌ちゃんと曜ちゃんを足すと……」

璃奈「ちょうど9人になる……けど、それって(>_<。)」

鞠莉「本物の千歌も曜も、既に死んでいる……そうじゃないと、死体の数が合わないってわけね」

歩夢「……うん。だから、千歌ちゃんと曜ちゃんが黒幕だとは考えにくいんだ」

鞠莉「ヒントは多少なりと提示した……であれば、ノーヒントで知らない人の死体が収められている筈がないもの」

モノっちー「まったくもう、そういうのをメタ読みっていうんだよ?」

歩夢「そして、今の話を踏まえると……少なくとも黒幕は、虹ヶ咲学園14期生から16期生の生徒ではないってことが──」

モノっちー「見事に不正解! ばーか、引っ掛け問題に引っ掛かりやがった」

歩夢「ふ、不正解……!?」

しずく「じゃあ、本物の千歌さんと曜さんは死んでないってことですか?」

モノっちー「いいや? アイツらは確実に死んだよ」

梨子「じゃあ、その2人だけ生物室には……」

モノっちー「いやいや。生物室に収めてあるよ」

歩夢「今ここに居る私たちと生物室の死体を合わせると27人、私たち14から16期生の合計も27人……」

歩夢「黒幕が14から16期生の中に居るなら、数が合わないよ!?」

ダイヤ「黒幕は今、モノっちーを動かす部屋からこの裁判場へと向かっている……そう言ったのはあなたじゃありませんか」

モノっちー「うけけ……大事な前提を見落としてるよ、オマエら」

歩夢「大事な前提、って……」

バツン!

歩夢「っ!?」

璃奈「急に、明かりが……(?□!)」

梨子「て、停電!?」

モノっちー「一応ヒントはあげたつもりだったけど……仕方ないか」

歩夢「……!」

歩夢(悪寒……何か物凄く、嫌な予感)

ガコン

歩夢(今のは、エレベーターが止まる音……)

???「こんな発想、普通は辿り着けないもんね」

歩夢「ッ────!?」

歩夢(……裁判場に、再び明かりが点く)

璃奈「……(?□!)」

ダイヤ「……まさか」

梨子「嘘……」

鞠莉「そういう、ことね……」

しずく「いや、どういうことなんですか!?」

歩夢「なん、で……」

???「ふぅ……ようやくみんなの前に来れたね」

歩夢(そこに立っていたのは……)

歩夢?「私は上原歩夢……このコロシアイを仕組んだ、黒幕だよ」

歩夢(黒幕として、私たちの前に姿を現した少女は)

歩夢「わた、し……?」

歩夢(顔に傷があることと、赤い目をしていること)

歩夢(それ以外は……紛れもなく、私と瓜二つの姿をしていた)

歩夢?「どうして、って顔が揃ってるね」

梨子「当たり前よ! どうして歩夢ちゃんが2人居るの!?」

歩夢?「あ、その前に……歩夢ちゃん、あなたと見分けが付かないと大変だろうから」

アユム「こうしてあげる。これなら間違えることもないよね?」

しずく「な、何の話ですか……?」

アユム「気にしなくていいよ、こっちの話だから」

鞠莉「15期生である歩夢と同じ格好をした黒幕。確かに、死体の数をオーバーさせずに成立するけど……」

璃奈「でも……顔も声も、そっくり(?□!)」

アユム「ちなみに、この格好は璃奈ちゃんみたいに変装とかは一切使ってないし……」

アユム「上原歩夢という人物は一人っ子……双子なんて居ないことは、歩夢ちゃん自身がよく分かってるよね?」

アユム「これが何を意味しているかは、何人か心当たりがある筈だよ?」 

歩夢「……」

【閃きアナグラム 開始!】

げ く ろ に ー ん ん ん (ダミー無)

→【くろーんにんげん(クローン人間)】

歩夢「もしかして……クローン技術?」

璃奈「クローン(?□!)!?」

アユム「そうだよ。虹ヶ咲学園は超高校級の才能を研究する一環として“才能をどうやって継承していくか”を課題にしていたんだ」

鞠莉「希望継承計画のことね」

アユム「うん。どうやったら、素晴らしい才能を後世に残していけるかの研究……」

アユム「その過程で、クローン技術の研究も行われていたんだ」

梨子「でも……西木野真姫って人の手帳によると、その計画って実行には移されなかったんじゃなかった?」

歩夢「彼女の抗議もあって、プロジェクトは凍結した筈だけど……」

アユム「計画が頓挫したからって、そう簡単に凄い技術が処分されるわけじゃないよ」

アユム「クローン以外にも、このコロシアイゲームに応用された技術はあるんだからさ」

歩夢(クローン以外に、コロシアイに応用された技術って……)

【コトダマ一覧より選択】

→【記憶喪失について】

歩夢「それって、私たちの記憶が奪われていること……だよね」

アユム「正解だよ。流石私、そのくらいはすぐに分かってくれるね」

アユム「ちなみに、察しの良い人は気付いてるかも知れないけど……」

アユム「花陽ちゃんと穂乃果ちゃんに、曜ちゃん千歌ちゃんの記憶を植え付けたのも、この技術を使ったんだよ」

璃奈「コピー&ペーストした、みたいな要領で言わないで(`∧´)」

しずく「そうです! 記憶はデータなんかじゃありません!」

アユム「データだよ。というよりも……データ化するだけの技術を、虹ヶ咲は持っていた」

アユム「虹ヶ咲で過ごした期間の記憶だけを丸ごと抜き取れたのも、その技術のお陰だよ」

ダイヤ「では……あなたは、何なのです?」

アユム「ん?」

ダイヤ「曜さんと千歌さんについては、説明がつきました。ですが、あなたが何者なのかの説明が済んでいません」

ダイヤ「あなたの身体は歩夢を模したクローンのようですが……そこに、誰の記憶を植え付けたのです?」

梨子「そうよ! 歩夢ちゃんはこんな残酷なことをさせる人じゃないわ!」

アユム「じゃあ、頑張って考えてみてよ」

梨子「えっ?」

アユム「私が何者なのか。その手掛かりは、既に出しているんだからさ」

アユム「ここは学級裁判……しっかり考えてね」

歩夢「……」

歩夢(何だろう、この嫌な感じは。私にそっくりな人が、悪意むき出しで喋っているから?)

歩夢(それとも……このコロシアイには、まだ何か“とんでもない秘密”があるの──?)

【ノンストップ議論 開始!】
[|希望継承計画>
[|記憶喪失について>
[|本当の希望隔離計画>
[|しずくの違和感>

アユム「問題です。私は誰でしょうか?」

梨子「誰って言われても……【歩夢ちゃんにそっくりな人】としか言えないわよ」

鞠莉「外見の話じゃなくて、中身を答えさせたいんでしょうけど……」

アユム「一旦この姿のことは置いといて欲しいな。それについては後で説明するからさ」

ダイヤ「ですが……そうなると、今度こそ《手掛かりは残ってない》のでは?」

アユム「ちゃんとあるよ。ヒントは……みんながさっきまで解き明かそうと息巻いてたこと、かな」

しずく「それって、彼方さんの事件のことでしょうか?」

璃奈「でも、あの事件については【全て解かれた】んじゃ……(・v・)」

アユム「……♪」

歩夢(黒幕の正体……一体彼女は、何者なの?)

[|しずくの違和感>→【全て解かれた】

歩夢「そうじゃないのかも……!」

Break!

歩夢「1つだけ……解かれてない可能性が残ってる……」

璃奈「えっ(・v・)?」

歩夢「しずくちゃん、言ってたよね。自分の部屋から“何か”がなくなったかも知れないって」

しずく「え、ええ。確かにそうですけど……あれはやっぱり──」

鞠莉「それが気のせいじゃなかったのかも知れないわ」

しずく「どういう、ことですか……?」

鞠莉「あの事件で、渦中に居た人……誰だったかしら」

梨子「えっと……まずは、彼方さんとエマさんでしょ?」

璃奈「停電を起こしたかすみちゃんと、停電の時彼方さんの近くに居た果南さん……(・v・)」

ダイヤ「しずくさんも、そうでしたわね。通り魔というキーワードの中で、その話は上がっています」

しずく「……」

鞠莉「あの事件、ずっと引っ掛かってることがあったのよ。彼方の死体を移動させたのはかすみだったとして……」

鞠莉「どうして“通り魔の事件ファイルが現場に残されていた”のか」

ダイヤ「それのどこが不自然なのですか?」

梨子「そのファイルも、かすみちゃんが置いたものじゃないの? わざわざ通り魔の仕業に偽装したくらいなんだし」

歩夢「いや……かすみちゃんには、そのファイルは置けなかった筈なんだ」

歩夢(何故なら……)

【ファイルは鞠莉が持っていたから】
【ファイルは存在しなかったから】
【ファイルはしずくが持っていたから】

正しい選択肢を選べ!

→【ファイルはしずくが持っていたから】

歩夢「事件があった日、私と鞠莉さん、エマさん、果林さん、花丸ちゃんの5人で図書室に集まっていたんだけど……」

鞠莉「ちなみに、PCの中身についての話をしていたのよね。あの時は全然解析が進んでなかったけど」


果林『流石、超高校級の令嬢は言うことがちが──』

ガラッ

しずく『あっ……』

歩夢『しずくちゃん?』

歩夢(不意に開かれた、図書室の扉)

歩夢(そこに現れたしずくちゃんは、何かのファイルを持っていた)

しずく『あ、えっと……』

しずく『し、失礼しました!』ダッ

エマ『待って、しずくちゃん!』ダッ

歩夢「あの時しずくちゃんが持っていたのって、通り魔の事件ファイルだよね?」

しずく「あっ……!」

鞠莉「しかも、私たちが部屋に戻る時にはそんなもの見かけなかった……つまり、しずくが落としたわけでもない」

しずく「た、確かにそうです! あの時は部屋に持ち帰って来たのに……!」

鞠莉「しかも、あまりいい思いのしない代物。自分から触れようとはしないから、なくなったことに気付きにくい」

梨子「じゃあ、なくなったのは事件ファイルで……あれ? それでどうなるの?」

歩夢「多分、そのファイルを持ち出したのは黒幕……モノっちーを使ったんだろうね」

アユム「ぴんぽーん♪」

歩夢「……」

歩夢「だとしたら、あなたは──」

歩夢(そうだ。事件ファイルには、こんなことが書かれていた筈だ)


『被害者はいずれも、2種類以上の外傷を受けている』

『撲殺されてから首を絞められたり、絞殺されてからナイフを刺されたり、ロープを巻かれてから池に沈められたり』

『共通しているのは、どの事件にもロープによる絞殺が出てくること。そして、現場には『タカマガハラ』と何かしらの方法で文字が残されていること』

『それによって、その通り魔が『タカマガハラ』という名前で呼ばれていること……』


歩夢(そして、あの時の裁判で果南さんが可能性を出していたみたいに……)

歩夢(現場に置かれたファイルこそが、残された文字の代わりなのだとしたら……!)


【黒幕の正体は?】

→【タカマガハラ】

歩夢「殺人鬼、タカマガハラ……それが、あなたの正体なんだね」

アユム「うん。超高校級の殺人鬼、とでも呼んでよ」

歩夢「……」

しずく「では、あなたが……」

アユム「そうだよ。しずくちゃんに重症を負わせたのも、穂乃果ちゃんの友達に殺し合いをさせたのも」

アユム「彼方さんに火傷を負わせたのも妹の遥ちゃんを襲ったのもこのコロシアイを始めたのも……」

アユム「ぜーんぶ、私がやったんだ」

鞠莉「なるほど? 園田海未たちも、コロシアイを強要されたのね」

アユム「コロシアイじゃなくて殺し合い。あの部屋で動機と武器を与えて、殺し合わせたんだ」

アユム「穂乃果ちゃんと花陽ちゃんは、その生き残りなんだよ」

アユム「けど、元々やりすぎちゃってたみたいで……千歌ちゃんと曜ちゃんが嗅ぎつけちゃったんだよね」

アユム「だから殺した。ついでに……面白そうだったから、2人の記憶を穂乃果ちゃんたちに移し替えたんだ」

アユム「ほら、千歌ちゃんと穂乃果ちゃんって髪の色がそっくりだし、曜ちゃんと花陽ちゃんは何となく顔つきが似てるからね」

アユム「でも……穂乃果ちゃんの幸運は危険だったから、封じておかないといけなかったし」

アユム「まさか、花陽ちゃんはその事が原因で死ぬとは思わなかったけどね」

アユム「花陽ちゃんはあまり運動が得意じゃないけど、曜ちゃんは運動……特に泳ぐことが好きだからさ」

アユム「記憶と身体のズレ……それが、彼女の死んだ本当の理由だよ」

アユム「ちなみに、私はポリシーとして死体には必ず首絞めの跡をつけるんだけど、オシオキの首輪は──」

梨子「もうやめて! 気分が悪くなってくるわ!」

璃奈「……は、吐きそう(>_<。)」

アユム「えぇー……まだ話はいっぱいあるんだけどなあ」

鞠莉「それ以上、歩夢の姿でゴアな話はやめてもらえるかしら」

歩夢「……」

アユム「でも……この話って、実は関係してるんだ。私がコロシアイを始めた理由とね」

鞠莉「……は?」

アユム「さっきも言ったけど……やりすぎたせいで、気付かれた」

アユム「この言葉に、ピンと来る人が居る筈だよ」

歩夢(……彼女が言いたいことは、何となく分かる)

歩夢(それってつまり──)

【コトダマ一覧より選択】

→【本当の希望隔離計画】

歩夢「本当の……希望隔離計画、だよね」


『彼女がクロである証拠を掴んだ』
『捕まえるのは簡単。でも事は穏便に済ませたい』
『希望継承計画の技術を使うしかない』
『希望を絶望から隔離するのが、最善手の筈』


歩夢「PCの中に入ってたメモ……多分、記憶を失う前の鞠莉さんが残したもの」

鞠莉「……」

アユム「うん。私が世間を騒がせている殺人鬼だって気付いたから、みんな私をどうにかしようとした」

アユム「だから、どうにかなる前に手を打ったんだよ」

アユム「じゃあ手掛かりは揃ったことだし、答えてもらおうかな」

アユム「どうして私がこの姿なのか……ね」

歩夢「……」

【閃きアナグラム 開始!】
く ん じ う ゅ じ に か  (ダミー無)

→【にじゅうじんかく(二重人格)】

歩夢「もしかして…………」

アユム「ほら、答えてよ。歩夢ちゃん」

歩夢「……」

歩夢(言葉が、出てこない。答えは明白なのに、喉元で掛かったストップが外れない)

歩夢(それを答えるということは、認めてしまうということなのだ)

歩夢(上原歩夢という人間が……)

アユム「まあ、答えなくても私が勝手に答えるんだけどね」

アユム「歩夢ちゃん。私とあなたは、もともと一心同体……いや、二心同体だったんだ」

アユム「有り体に言うなら……二重人格だね」

ダイヤ「に、二重人格……!?」

アユム「上原歩夢という肉体に宿っていたのは、超高校級の歌姫としての人格だけじゃなかったんだ」

アユム「殺人鬼としての、私という人格も存在していたんだよ」

歩夢(明かされてしまった。黒幕の狙いは、これだったんだ)

歩夢(パンドラボックスの中の絶望は──解き放たれてしまったんだ)

歩夢「じゃ、じゃあ……希望隔離計画の目的って……」

アユム「殺人鬼の人格……私を引き剥がして、空っぽのクローンに移し替える」

アユム「後は何らかの形で処分して、歩夢ちゃんは晴れて真っ白な聖人になりました、ってところかな」

アユム「つまり……歩夢ちゃん、あなたを助ける計画だったんだよ」

歩夢「……」

アユム「酷い話だよ。私は裏の人格だったけど、生まれちゃった以上は“そういうもの”として生きていくしかなかったのに」

アユム「ちょっと私が殺人衝動を抑えられないシリアルキラーだったってだけで、寄ってたかって私を消そうとする」

アユム「私には、それが許せなかったんだ」

璃奈「だから……コロシアイを起こしたっていうの(>_<。)?」

アユム「殺される前に殺す、私はそういう人なんだよ」

アユム「でも、私を恨まないでね? 元はと言えば、私を生んだ歩夢ちゃ──」

梨子「そうじゃないでしょ!?」

アユム「……?」

梨子「いくら歩夢ちゃんから生まれた存在だからって、あなたの行動が正当化されるわけじゃないわ」

しずく「そ、そうですよ! 歩夢さんに責任を押し付けるつもりですか!」

ダイヤ「言葉巧みに歩夢さんを絶望させる魂胆なのでしょうが……そうはいきませんわ」

璃奈「とっても悪質(`∧´)」

歩夢「みんな……」

アユム「……あーあ。寒いなあ」

アユム「みんなが私を理解出来ないように、私もみんなを理解出来ない」

アユム「寒いよ、心が」

歩夢「あなたなんかに……言われたくない」

アユム「……ふふっ」

歩夢「な、何……?」

アユム「ところで──鞠莉さん。あなた、今のくだらないお友達ごっこに参加してなかったけど」

鞠莉「……っ」

アユム「気付いたんじゃない? 私が仕組んだ、最後の罠に……ね」

しずく「最後の、罠……?」

歩夢「そ、そうなんですか、鞠莉さん?」

鞠莉「……」

鞠莉「……ごめんなさい、歩夢。私の口からは、とても言えない」

鞠莉「こんな、こんなこと……っ!」

歩夢(鞠莉さんの顔が、青ざめている。こんなことは今まで……前回の事件ですら、なかった)

歩夢(鞠莉さんは一体、何に気付いてしまったというの?)

歩夢(パンドラの箱の底に、一体何が──)

アユム「うーん……鞠莉さんは話してくれないし、他のみんなは気付いてないようだし」

アユム「出血大サービスで教えてあげるよ」


アユム「ね。“クローンの”上原歩夢ちゃん」

歩夢「……」

歩夢「…………」

歩夢「…………え?」

アユム「理解が追い付かない? だったら、追い付くまで言ってあげるよ」

アユム「偽物の上原歩夢ちゃん」

歩夢「ちょ、ちょっと待ってよ! どういうこと!?」

しずく「おかしいですよ! 歩夢さんはクローンなんかじゃありません!」

ダイヤ「あなたの方がクローンではないのですか!?」

アユム「ところで……これは『タカマガハラ事件ファイル』の中に入れておいた、週刊誌の記事なんだけどさ」


『一連の犯行は、いずれも平日夜、または休日に行われている』

『平日昼間には決して事件が起きないことから、犯人は学生なのでは? との推測がなされている』

『タカマガハラに刃物で襲われた人物曰く、抵抗した際相手の顔に大きな傷を負わせたという』

『暗がりでよく分からなかったが、タカマガハラの目は真っ赤に染まっていた』

歩夢「……っ!?」

璃奈「顔に、傷……(?□!)」

アユム「この傷だよ」

梨子「赤い目……」

アユム「この目のことだよ」

アユム「知っての通り、通り魔殺人は、全部“上原歩夢の身体”で行われたこと」

アユム「希望隔離計画が実施されようとしたのは、通り魔殺人がみんなに気付かれてから」

アユム「流石に、言いたいことは分かるよね」

歩夢「……」

歩夢「じゃあ……私、は……」

【偽物】
【偽物】
【偽物】

正しい選択肢を選べ!

→【偽物】

歩夢「いやああああああああああぁぁぁぁぁっっっ!?」

梨子「歩夢ちゃん!?」

歩夢「ち、違う……私は、本物の……超高校級の、う、ううう歌姫の、上は──」

アユム「偽物だよ。クローンの身体に、人格を移されただけのね」

アユム「歌姫の才能って、身につけた歌唱法もあるけれど、かなりの部分を喉……身体的な面に依存しているんだ」

アユム「上原歩夢が《超高校級の歌姫》であるための超高校級の喉は、私が持ってるんだよ」

ダイヤ「まさか……歩夢さんの才能が分からなかったのも……!」

アユム「あ、気付いてくれた? 実はそうなんだよ」

アユム「歌姫の才能を覚えたままだと、いつか違和感に気付いてしまうかも知れない」

アユム「このお楽しみは、最後まで取っておきたかったんだ」

アユム「そこに居る上原歩夢はただのクローンだって突き付けてあげるのを、ずーーーーっと待っていたんだよ!」

歩夢「……」

アユム「ねえ。改めてこの裁判のルールを確認しようか」

アユム「最初に言ったよね。真実を知った上で【卒業】か【留年】かを選んでもらうって」

アユム「みんなは真実を全て知ったから【卒業】か【留年】を選ぶことが出来る」

アユム「みんなが【卒業】を選べば、みんなの勝ち。1人でも【留年】を選べば、私の勝ち」

アユム「敗者に待っているのは、オシオキ……これが、ルールだったね」

アユム「ここに、少しだけルールを追加します」

アユム「みんなが敗者になっても、この学園からは出してあげる」

アユム「“【留年】を選んだ人以外は”ね」

鞠莉「……まさか!?」

アユム「普通は、ここまで来て【留年】を選ぶ人は居ない……確かにそうだよね」

アユム「でも、そこで絶望している人はどうかな?」

歩夢「……」

アユム「つまり、この投票は言い換えれば……」

アユム「“2人の上原歩夢、どちらがオシオキされるに相応しいか”」

アユム「それを決めるためのものだよ」

しずく「あ、歩夢……さん?」

歩夢「……」

璃奈「【留年】なんて、しないよね……(>_<。)?」

歩夢「……」

アユム「ふふっ……絶望してる。可愛いね」

鞠莉「私たちの命まで懸かっていれば【卒業】を選ぶ可能性がある」

鞠莉「でも、今の追加ルールなら……確実に歩夢“だけ”を殺せる」

鞠莉「あなたの狙いは最初から、歩夢を絶望させることだったのね……!」

アユム「そんなの、今更じゃない?」

歩夢「……」

【繝弱Φ繧ケ繝医ャ繝苓ュー隲悶??髢句ァ】
[|蜈ィ莨醍ャヲ>
[|蜈ィ莨醍ャヲ>
[|蜈ィ莨醍ャヲ>

鞠莉「歩夢! しっかりしなさい!」

アユム「無駄だよ、無駄」

ダイヤ「歩夢さん、彼女の話に耳を傾けてはいけません!」

アユム「そんな話はもう遅いよ」

しずく「でも歩夢さんを死なせるわけには……」

アユム「そうすると、超高校級の歌姫の身体はなくなっちゃうけどね」

梨子「歌なんて、ここを出てから幾らでも練習すればいいわ!」

アユム「前科持ちなのに?」

璃奈「あなたが勝手に殺したんでしょ(`∧´)」

アユム「歩夢ちゃんは、そうは思ってないみたいだけどね」

アユム「ねえ、歩夢ちゃん。あなたは《希望》と《絶望》……どっちを選ぶの?」

歩夢(……)

歩夢(みんなの声が、遠くに感じる)

歩夢(……こうなったのは、私のせいなんだ)

歩夢(私があんな人格を生まなければ、こんなことにはならなかったんだ)

歩夢(みんなが死ぬことはなかったんだ)

歩夢(みんながコロシアイをする必要はなかったんだ)

歩夢(私が《超高校級》を失うこともなかったんだ)

歩夢(全部……私のせいで……)

歩夢(私には……こんなの、耐えられない)

歩夢(それでも、みんなには罪を償いたい)

歩夢(私がどっちに投票しても、どのみちみんなは助かるんだ)

歩夢(だったら、私は……)

歩夢(心が沈んでいく。視界が暗くなっていく)

歩夢(このままじっとしていれば、意識も失いそうだ)

歩夢(私の中を満たしていくのは『絶望』の2文字……)

歩夢「……」

鞠莉「目を覚まして、歩夢!」

歩夢「……」

アユム「いくら叫んでも無駄だってば。彼女はもう、絶望に落ちちゃったんだからさ」

アユム「というわけで……いい加減、投票に移るよ。あんまり待ってられないし」

鞠莉「まだよ……まだ、終わらせないわ」

アユム「えっ?」

鞠莉「私たちに最後のチャンスを頂戴。これで駄目だったら、今度こそ私たちの敗北でいいわ」

アユム「何をしても変わらないと思うけど……いいよ。悪あがきくらいはさせてあげる」

ダイヤ「ですが……一体何をするつもりで?」

鞠莉「ここは学級裁判。議論が……言葉が力を持つ場所」

鞠莉「だから、説得するのよ。歩夢を」

ダイヤ「そういうことでしたら」

璃奈「……やってみる(・v・)!」

しずく「そうですね。最後は勝って、大団円で終わりたいですから」

梨子「これが最後の議論、ってことね……!」

鞠莉「歩夢が絶望してるのなら……それを壊すだけの、ありったけの希望を撃ち込んであげるわ!」

歩夢「……」

アユム「……やれるものなら、やってみなよ」

【最終議論 開始!】
[|璃奈の希望>
[|しずくの希望>
[|ダイヤの希望>
[|梨子の希望>
[|鞠莉の希望>

アユム「何もかも無駄なんだよ」

歩夢「【私が死ねば全て解決する……】」

アユム「彼女は絶望しきっているんだ」

歩夢「【私がどうなっても、みんなは帰れるんだよね……】」

アユム「私は彼女から生まれたんだよ。そのくらいは分かるんだ」

歩夢「【私が居たせいで、みんな酷い目に……】」

アユム「どっちみち、みんなは無事で帰れるんだからさ。諦めてもいいんだよ?」

歩夢「【生きていても、私には希望なんてない……】」

アユム「偽物なんかを守って、何になるの?」

歩夢「【私にはもう、何も出来ないよ……】」

アユム「この絶望は、絶対にひっくり返らない……!」

[|璃奈の希望>→【私が死ねば全て解決する……】

璃奈「希望を捨てないで(>_<。)!」

Break!

璃奈「私は、愛さんの言葉で助けられた(・v・)」

璃奈「でも……歩夢さんが謎を解いてくれなければ、その言葉を目にすることもなかった(・v・)」

璃奈「私は強くない。まだまだ感情を顔に出すのは難しいし、人前は苦手(>_<。)」

璃奈「でも、どんなに辛いことがあっても、友達と一緒なら大丈夫(>v<)」

璃奈「歩夢さんは、大切な友達だから。私だけじゃない、みんなも居る(>v<)」

璃奈「私は、友達に生きていて欲しい。これ以上、誰かを失いたくない(>_<。)」

璃奈「だから……だから(>_<。)」

璃奈「この想い、届いて(>_<。)!」


天王寺璃奈 投票:【卒業】

[|しずくの希望>→【私がどうなっても、みんなは帰れるんだよね……】

しずく「希望を失わないでください!」

Break!

しずく「成し遂げんとした志を、ただ一回の敗北によって捨ててはいけない」

しずく「私が尊敬する、シェイクスピアの言葉です」

しずく「私も大怪我で、既に普通の演劇は出来ない身体になってしまいました」

しずく「それでも、オペラ歌劇という形で演劇にしがみついていきます」

しずく「今の自分がクローンかどうかなんて関係ありません」

しずく「心が本物であれば、結果は後からついて来ます」

しずく「転んでも迷っても、その先には必ず答えが待っているんです」

しずく「だから歩夢さん……どうか、乗り越えることを諦めないでください!」


桜坂しずく 投票:【卒業】

[|ダイヤの希望>→【私が居たせいで、みんな酷い目に……】

ダイヤ「どうか希望を……!」

Break!

ダイヤ「タカマガハラが歩夢さんから生まれた存在、それは事実なのでしょう」

ダイヤ「ですが、それが何だというのですか?」

ダイヤ「私が知る上原歩夢という人間は、あのような狂った殺人鬼ではありません」

ダイヤ「ルビィが亡くなり、真っ白な雪原に取り残されたような気分になっていた私を救ってくれた人」

ダイヤ「ルビィ死の真相を解き明かし、僅かでもサファイアと姉妹の時間を作ってくれた人……それがあなたです」

ダイヤ「死んで罪を償うなどといった行為、生徒会長として認めるわけに行きません」

ダイヤ「せつ菜さんや穂乃果さん……亡くなった皆さんも、それを良しとはしないでしょう」

ダイヤ「それでもあなたが、言葉ひとつで絶望しているというのなら……」

ダイヤ「私が……いえ。私たちが、あなたの希望になってあげます!」


黒澤ダイヤ 投票:【卒業】

[|梨子の希望>→【生きていても、私には希望なんてない……】

梨子「希望を失わないで!」

Break!

梨子「才能って……怖いよね。ある意味では、それに縛られることもあるから」

梨子「確かに、その身体じゃないと上手くいかないこともあるかも知れない」

梨子「でも、クローンと言っても超高校級のクローンなのよ?」

梨子「本物と遜色なかったとしても、何もおかしくはないでしょう?」

梨子「しかも、クローン技術には他の超高校級の才能が使われているそうじゃない」

梨子「だから……信じてあげよう、超高校級を。みんなのことを」

梨子「今は弱くても、信じれば強くなれるから」

梨子「歩夢ちゃんも恐れずに……ほら!」


桜内梨子 投票:【卒業】

[|鞠莉の希望>→【私にはもう、何も出来ないよ……】

鞠莉「希望を捨てちゃダメよ!」

Break!

鞠莉「歩夢。ここに居る人たちは、みんなあなたに救われているの」

鞠莉「私だって、一度は自爆するつもりだったのを止めてもらってた」

鞠莉「真実に向き合ってくれたから、希望への道筋が明らかになった」

鞠莉「あなたは誰かを希望に出来る。だったら今度は、私たちがあなたを希望にしてみせる」

鞠莉「持てる全てを懸けて、絶望から救ってあげる」

鞠莉「だからもう一度、夢を見ましょう?」

鞠莉「まぶしい光のような……希望に満ちた夢を、ね」

鞠莉「さあ、歩夢──!」


小原鞠莉 投票:【卒業】

歩夢「……」

アユム「寒い説得は、もう終わり?」

鞠莉「……」

アユム「じゃあ、これが本当に最後だよ」

アユム「みんなの希望が絶望を打ち砕くっていうなら……」

アユム「私はその希望を、叩き潰してあげる」

アユム「みーんなまとめて、絶望を刻んであげるよ」

アユム「“敗北”っていう、一生消えない絶望をね!」

歩夢「……」

【理論武装 開始!】

アユム「そこに希望なんてない」

アユム「希望なんて、あなたには無意味」

アユム「希望を信じても、待っているのは絶望ばっかり」

アユム「私が死ねば、あなたの希望はなくなるんだよ?」

アユム「残るのは絶望だけ」

アユム「あなたにそんな選択肢は選べない」

アユム「あなたは希望に苦しめられるんだ」

アユム「諦めて絶望に堕ちてしまえばいいんだよ」

アユム「……あれ?」

アユム「どうして抵抗するの? 何も出来やしないのに」


アユム「【出来っこない……偽物のあなたには、何も出来っこない……!】」

      △:は
□:よッ!       ○:違う
      ×:それ


→×△〇□

歩夢「それは違うよッ!」

Break!!!

歩夢「きっと……苦難はいっぱいあるだろうね」

歩夢「才能もないし、犯してない罪に苦しめられるんだろうね」

歩夢「でも……決めたよ。私は逃げない」

歩夢「例え私の身体が偽物だとしても、この心は本物なんだ」

歩夢「私は、コツコツ真面目にやっていくのが取り柄の、ちょっと歌うことが好きな人だった」

歩夢「だったら……一歩ずつ、歩いて行く。夢に立ち向かっていく」

歩夢「それに、私は1人じゃない。みんなが支えてくれるなら、私は何度だって立ち上がる」

歩夢「私は……みんなの希望として、生きていくよ!」

アユム「なっ……!?」

しずく「歩夢さん……!」

璃奈「よかった……(>v<)」

ダイヤ「説得に応じてくれて、感謝しますわ」

歩夢「みんな、ごめん。心配かけちゃったね」

梨子「一時はどうなることかと思ったわ……」

鞠莉「あら。説得が通じないなんてことはハナから考えてなかったけど?」

歩夢「あ、あはは……」

歩夢(そうだ。私には、大切な仲間がいる)

歩夢(みんなのお陰で、私は生きている)

歩夢(絶望に立ち向かう選択肢を、選べるんだ)


上原歩夢 投票:【卒業】

アユム「う、嘘……」

鞠莉「どうやらアテが外れたようね、タカマガハラ」

しずく「そうです! これで全員【卒業】を選びました!」

璃奈「私たちの、勝ち(・v・)」

梨子「正真正銘……これで、コロシアイは終わったのね」

ダイヤ「ええ。黒幕の敗北をもって……」

アユム「……」

アユム「あーあ……負けちゃった」


    学 級 裁 判  
      閉  廷

アユム「まさか、本当に説得に応じるなんてね……」

アユム「でも本当に良かったの? あなたはただの一般人……それも前科者になるんだよ?」

歩夢「……正直、今でも怖いよ。でも、みんなが居るから」

アユム「友情、か……。そんなものに私は負けちゃったんだ」

しずく「ところで……歩夢さんの身体を返してもらうわけにはいかないんでしょうか?」

アユム「それはお断りするよ。私の存在を消そうとしたみんなへの、せめてもの仕返しだからね」

歩夢「……」

アユム「じゃあこれは、そんな無鉄砲な人たちに送る最後のプレゼントだよ」

歩夢(そう言って……彼女は、私に向かって何かを放り投げた)

歩夢「これって……スイッチ?」

アユム「図書室の本棚を調べてみて。みんなをここに運び込んだ潜水艦の格納庫に繋がってるから」

鞠莉「……本当に潜水艦で運び込まれたのね、私たち」

アユム「さて。敗者は大人しく去るとするよ」

アユム「これ以上、みんなのお友達ごっこに付き合うつもりもないし……」

アユム「この身体ごと、死んであげる。止めても無駄だからね」

アユム「それじゃあ、張り切って参りましょう」

アユム「最後のオシオキターーーーイム!」


     CONGRATULATION!
タカマガハラさんのはいぼくがけっていしました。
      おしおきをかいしします。

敗北を喫した黒幕は、自らの足でどこかの空間へと歩いて来ました。

彼女の目の前にあるのは、階段。

その上に用意されたステージにあるのは……ギロチンのようです。


         〈死刑〉
《超高校級の殺人鬼 タカマガハラ処刑執行》

1段1段、タカマガハラは階段を上っていきます。

そんな彼女に向かって、石が投げられます。

石を投げている人形は……いずれも、過去に殺してきた人たちを模していました。

壇上では、モノっちーが判決文のようなものを手にしています。

モノっちーに促されるまま、タカマガハラは断頭台に頭をセットしました。

何か言葉が発せられることもなく、ただ彼女は笑ったまま。

判決を読み終えたモノッチーが合図をすると、刃を支えていた紐が切られ──

《超高校級の歌姫》が持っていた喉を道連れに、タカマガハラの刑が執行されました。

判決はもちろん『死刑』──。


    Chapter6 END

https://i.imgur.com/AZi4bpl.png

…………。

…………。

…………。

鞠莉「──みんな、準備はいいかしら」

璃奈「大丈夫(>v<)」

梨子「潜水艦に乗るなんて、一生ないでしょうね」

しずく「しかも、なんだか想像していた潜水艦と違います」

ダイヤ「おおかた観光用も兼ねてなのでしょうが……どれだけの資産があればここまで……」

鞠莉「まあまあ。その辺の話は、帰ってからにしましょう」

歩夢(図書室の本棚を動かして現れた隠し扉と通路)

歩夢(そこを抜けた先にあった潜水艦……に、私たちは乗り込んでいた)

歩夢(ちなみに、操縦席に座っているのは鞠莉さんだ)

璃奈「ところで……潜水艦って、免許は必要(・v・)?」

鞠莉「大丈夫よ。目的地を入力したらオートで動いてくれるみたいだし」

鞠莉「既に目的地は入力したから、あとは海の中の景色でも楽しみましょう」

梨子「楽しみましょう、って言われても……」

「「……」」

歩夢(静まり返る艦内。景色を楽しむという気分には……あまりなれない)

歩夢「本当に……色んなことがあったね」

しずく「……そうですね」

ダイヤ「課題は沢山ありますわ。歩夢さんに対して、法や世間がどういった目を向けてくるか……」

梨子「そうよね。日常に戻るってことは、周りの目にも晒されるわけだし……」

歩夢「でも……どうなっても、私はこの選択を間違ってるとは思わないよ。だって……」

璃奈「みんなが居るから、でしょ(・v・)?」

歩夢「……ふふっ♪」

鞠莉「ま、その辺の話は一旦後回しにして……そろそろ行きましょうか」

璃奈「……そうだね(・v・)」

ダイヤ「帰りましょう……地上へ」

歩夢(そして、私たちを乗せた潜水艦は動き始める)

歩夢(これからどうなるのかは、何も分からない)

歩夢(私が失った超高校級は、どうやって取り戻していけばいいのだろう)

歩夢(私に刻まれた罪は、どうやって償っていけばいいだろう)

歩夢(私たちが巻き込まれた事件は、どうやって扱われるのだろうか)

歩夢(きっと何もかも、虹の根本を探すくらい手探りで、不安定)

歩夢(でも……どうなるかは、きっと私たち次第)

歩夢(だったら……私は生きていく)

歩夢(みんなと共に、一歩ずつ前へ進んでいく)

歩夢(私の希望は。私の夢は……始まったばかり)


     EPILOGUE

私の超高校級の夢は、輝いてる。

     END

以上をもって、スクスタロンパ……もとい
歩夢「君の超高校級の心は輝いてるかい?」は完結となります。
およそ2年と9カ月の間、ありがとうございました。

……気が向いた頃に、3年弱の間に公式情報でブレの生じた呼称や誤字等を直した修正版をどこかに投稿するかも知れません。
その時はまたよろしくお願いします。

ラブライブ!シリーズ、ダンガンロンパシリーズ、一部画像作成に協力してくれた友人、
そして読んでくださった全ての読者に、精一杯の感謝を。


主な過去作:
梨子「5年目の悲劇」
梨子「5年目の悲劇」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495992464/)

果南「“G”線上のシンデレラ」
果南「“G”線上のシンデレラ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1504616067/)

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