果南「“G”線上のシンデレラ」 (33)
────とある土曜日の夜。
鞠莉「さて、そろそろ寝ましょうか」
ドンドンドン
「ま~り~……」
鞠莉「What!? ……って、果南じゃない。おどかさないでよ」
果南「──して」
鞠莉「?」
果南「鞠莉ん家のトイレ貸して!」
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ジャー
果南「良かった……乙女の尊厳は守られた……」
鞠莉「何があったの。Restroomなら果南の家にもある筈でしょ?」
果南「そうなんだけどね。でも、しばらくあのトイレは使いたくないというか……」
鞠莉「詰まったの?」
果南「それだったらどれだけ良かったか……いやそれはそれで良くないけど」
鞠莉「詰まったワケじゃないか……あ」ピーン
鞠莉「もしかして、ゴキブリでも出た?」
果南「うん、出た。しかも2匹」
鞠莉「Oh……(マジか)」
果南「父さんも母さんも、来週まで用事で家にいなくてさ……。もう無理、私あの家に帰れない……」
鞠莉「そんな、この世の終わりみたいな顔しなくたって」
果南「終わりだよ! この休み中に倉庫の片づけ引き受けちゃったの!」
鞠莉「あー……だったら、ゴキジェットでもなんでも使えばいいじゃない」
果南「その死体の処理は誰がするの?」
鞠莉「……確かに」
果南「確かにじゃなくて! 前にお風呂に出た時だって……」
果南『嘘、なんでいるの……』
G「」カサカサカサ
果南『うわわわわわ……』
プシュー プシュー プシュー
~数分後~
果南『スプレー空になっちゃった……ゲホッ』
果南『今日はサッと入ってサッとあがろう……』
チャプーン
果南(お父さん、今日帰りが遅いしきっと処理してくれる筈……)
果南『うぅ……口の中ヘンな味がする……』
果南「とまあ、こんな感じで」
鞠莉「果南、それ身体に悪いヤツよ」
果南「夜中にお父さんの叫び声が聞こえて来た」
鞠莉「Oh shit(父親もかよ……)」
果南「ねえ鞠莉、一生のお願い! 明日倉庫の片づけ手伝って!」
鞠莉「んー……仕方ないわね、ダイヤも呼びましょうか。あの子、そういうのには慣れてるし」
果南「慣れるものじゃないと思うけれど……」
────翌日、果南宅。
果南「ごめんね、ダイヤまで巻き込んじゃって。でも1人じゃないってだけで心の底から安心する」
ダイヤ「別に慣れているというワケではないのですが」
鞠莉「あら、以前黒澤家のゴキブリを一掃したって話を聞いたけど?」
ダイヤ「あれは……習性を逆手に取った方法を試しただけです」
果南「習性? どんな?」
ダイヤ「……」
果南「ダイヤ?」
ルビィ『何してるの、お姉ちゃん』
ダイヤ『新聞のコラムに載っていた方法を試しているのよ。えーと、メスのゴキブリをすり潰して、使わない紙の上に塗り広げる……』
ルビィ『ひぇぇぇぇ……』
ダイヤ『あとはフェロモン? とやらに誘われて家じゅうのゴキブリが集まって……そこを一網打尽にするだけ、と』
ダイヤ『流石にこのゴム手袋は捨てた方がいいわね……』
ダイヤ(あんな方法、とてもじゃないけれど果南さんには言えませんわ)
ダイヤ「それについてはまたいつか。ところで、ゆうべはお楽しみだったようで」
果南「いやそこまでは」
鞠莉「お楽しみだったわよ~。果南、ゴキブリに怯えてずっと私に抱きついてたんだから」
果南「鞠莉!」
鞠莉「出ないよね、鞠莉ん家は大丈夫なんだよね、って涙目で」
果南「納豆食べさせるよ?」
鞠莉「はいはい。じゃあとりあえず倉庫に行きましょうか」
ダイヤ「ですね」
ダイヤ(……あ、鞠莉さん)
鞠莉(抱きつく果南の映像でしょ? バッチリ撮れてるわ♪)
ダイヤ(では、料金はいつもの口座に)
鞠莉(まいどあり~)
果南「2人とも、なに話してるの?」
2人「「なんでも」ありませんわ」
────倉庫。
鞠莉「……埃っぽいし、グチャグチャ」
ダイヤ「相変わらず松浦家は整理がヘタですわね」
果南「ほっといてよ。とりあえず、備品の数を確認していかないと」
鞠莉「この辺の箱は全部いったん外に出せば良いのね?」
果南「うん」
ダイヤ「頼まれた殺虫剤、ここに置いておきます」
果南「ありがと」
鞠莉「これでよし。それにしても、ダイヤも結構意地が悪いわね~」
ダイヤ「何がです?」
鞠莉「バルサンでも焚いてから片づけをstartすればいいのに、ゴキジェットしか渡さないって」
ダイヤ「……」
鞠莉「ダイヤ?」
ダイヤ「……忘れてました」ヒヤアセー
鞠莉「Oh my god(お前さあ……)」
果南「よいしょ、っと」
果南(奥の方は2人と一緒にやればいいし……)
果南(手前側さっさと終わらせとこ……)
G「」カサカサ
果南「 」
イヤアアアアアアアアアアアア!!!
ドンガラガッシャーン
ダイヤ「果南さん!」
鞠莉「いよいよマズいことになったわね……」
ダイヤ「何か突っかかってドアが……!?」
果南(ええと、殺虫剤殺虫剤……)
果南「あった! って、封切っといてよ……!」
鞠莉『果南、大丈夫!?』
ダイヤ『今の悲鳴は一体……』
果南「ごめん、棚が倒れちゃったからちょっと待ってて!」
G「」カサカサカサ
果南「……」ゴクリ
果南(大丈夫、今は2人がいるんだか、ら──!)
プシュー
果南『いや待って待ってそれは無理!』
果南『ちょっと、何匹いるの!?』
果南『1匹見たら30匹もいるとかそんな迷信、私信じないから!』
果南『ひぃぃぃぃ……』
果南『待って壁はやめて壁はやめてホントにやめて上に行かないで』
果南『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』
ドサッ
ダイヤ「……中で一体何が」
鞠莉「多分、天井から落ちて来たパターンね」
ダイヤ「あー……昔ルビィもそんな目に遭いました。髪の毛に引っ付いてしまったんです」
ダイヤ「それ以来、そのことを思い出すからとルビィは髪を切って、赤く染めたのです……」
鞠莉「聞きたくなかったわ、そんな裏話……」
ダイヤ「とにかく、このドアを開けないと」
鞠莉「ええ」
「「せー、のっ!」」
ダイヤ(ドアを開けると、それはそれは無残な光景でした)
ダイヤ(荒れに荒れた室内。殺虫剤片手に気を失っている果南さん)
ダイヤ(彼女の足元に、未だピクピクと動き続けている瀕死のゴキブリ)
ダイヤ(とにかく、私たちは果南さんを担いで部屋の外へ出たのでした)
果南「……ん」
ダイヤ「気が付きましたか」
鞠莉「随分とうなされてたわよ」
果南「やっぱりゴキブリには勝てなかったよ……」ムクリ
果南「そうだ、いま何時……というか、なんで鞠莉の家?」
ダイヤ「とっくに夕方です。ああ、片づけなら終わらせておきましたよ」
鞠莉「ついでに全部屋でバルサン焚いておいたわ」
果南「じゃあ、もう、大丈夫なの……?」
ダイヤ「エアコンのフィルターや扇風機の羽根にミントオイルをスプレーしておきました。連中にはハーブの香りは猛毒ですから」
果南「ありがとう、2人とも……!」ガシッ
鞠莉「じゃあまた明日―!」
ダイヤ「朝練がありますわよー!」
果南「分かってるー!」タッタッタッ
『待って壁はやめて壁はやめてホントにやめて上に行かないで』
『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』
鞠莉「~♪」
ダイヤ「録音していたのですね」
鞠莉「だって、果南の貴重な悲鳴よ?」
ダイヤ「……」
鞠莉「追加料金よ♪」
ダイヤ「勿論分かっています。ですが……」
ダイヤ(死体の後始末、していなかったような……)
果南(はぁ……安心したらまたトイレ行きたくなっちゃった)
果南(でも、これからはゴキブリに怯える心配はないんだ!)
果南「ただいまー……まだ父さんたち帰って来てないか」
果南「トイレトイレ……」
グニュゥ
果南「……え?」
ゴキブリの死体! in the スリッパ!
果南「……」
その日、松浦家周辺に再び少女の悲鳴が響き渡ったという──。
終わりです。最近Gにしてやられたので初のギャグ物でした。
主な過去作
梨子「5年目の悲劇」
梨子「5年目の悲劇」 - SSまとめ速報
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