モバP「十時愛梨・新田美波・鷺沢文香セックス味比べ」 (36)

●まえがき
あらすじは以下のとおりです。

P×愛梨
愛梨×美波
P×美波
P×文香(予定)


●十時愛梨編


――セクシーさをアピールしすぎて、逆に男の人に引かれちゃうことはあるんでしょうか。

――だって、プロデューサーさんは私のこと、あまりそういう目で見てくれないじゃないですか。
  もう何年も付き合ってるのに――プロデューサーとアイドルとして、ですけど。



――愛梨はいつもユニットのリーダー格にしてるから、意識的に距離を取るようにしてる。
  他のメンバーより近いと、贔屓してると思われるかもしれん。



――えー、なんだか寂しいです。それはそれとして、私がリーダー、というのも不思議なんですよね。
  不満なわけじゃないですけど。私、特に何ができるわけでもないのに。もっと頼れる人もいるのに。

――確かに、ゼッケンズでもSwitchersでも、リーダーは勤め上げられましたけど、
  それはみんなが私を助けてくれたからです。私が、特別何かをしたわけではありません。



――愛梨は『頼れる』ってタイプじゃないが、『助けてあげたい』って思われるタイプだ。人徳だな。
  しかもアドリブが得意だからかトラブルにもうろたえない。だからリーダーが一番向いてる。



――そういうところを見てくれて、大事なコトを任せてくれてださるの、すごく嬉しいんです。

――けど、うろたえないってのは違いますよ。
  こんなに私を見てくれるプロデューサーさんが、あまりつれないと、私も内心では――今だって。
  今だって、私は。





プロデューサーは、担当アイドル・十時愛梨と体を重ねた経緯について、記憶が定かでなかった。

愛梨が成人祝いをねだってきたので、普段は接待でも使わないレベルのレストランをとって、
愛梨の生まれ年のリオハの赤を開けてもらって、いい感じに酔ったことまでは覚えていた。

そこから彼の記憶は曖昧になって、再び覚醒するのは、
バスローブ姿でもじもじと見上げてくる愛梨の潤んだ目つきからだった。

その記憶の飛び方からして、意識の空白の理由は、酒精のせいではなかった。
一回りも下の愛梨の、素朴な――アイドルに不似合いなぐらいの――誘惑に、
まんまと乗ってしまった照れ隠しだった。



「髪、下ろすと大人っぽいな」
「愛梨はもう大人です、お酒だって飲めますもんっ」

愛梨は子供っぽく口を尖らせたが、すぐにふにゃっと口元をやわらげる。

「暑いけど、脱いだらもっと熱くなっちゃいますねぇ」
「暑いのは嫌か」
「いいえ。プロデューサーさんといると、いっつもあっつくなっちゃいますから」

プロデューサーが肩に手を伸ばすと、愛梨は湯気の出そうな火照った吐息を漏らす。
うなじには、シャワーの名残と汗が絡みついている。

愛梨は目を閉じてくちびるをそろそろと差し出す。
営業で見せたこともあるキスの仕草。
ただ、今の愛梨は一人の男のためだけにその真似を行っている。

「可愛いな、愛梨」

プロデューサーの囁きに、愛梨はじれったそうにこくんと喉を鳴らす。
触れ合わせた唇は、ワインの渋みと唾液の淡い酸っぱさに縁取られていて、
肌から甘ったるく立ち上る風呂上がりの気配とは、少し趣を異とする。

「んん――した、いれても、いいです、よっ」

唇だけのキス――愛梨がその先をねだってくる。
上唇を丸めて歯を覆い、舌先でちろちろとヘビのように挑発を刺してくる。
プロデューサーは誘う舌先に応じる。熱い吐息どうしがぶつかってわだかまり、
それを超えて愛梨の口腔に入り込む。シャワーよりも少し温度の高い潤みに包まれる。

「ふぁぅうっ、う、んんんっ」

刺激に慣れない舌根を責められて、いきなり愛梨は首から上を震わせる。
その反応に、プロデューサーは彫刻の型取りでもするように、執拗にそこを舐る。
唾液が増えて、溢れて、ちゃっちゃっと水音が垂れ落ちる。
蒸散した匂いが舞い上がって鼻腔を甘く酔わせる。

「んんふぅぅうっ、んん、んくっ」

座高の差で愛梨は首筋を伸ばしていた――そこをプロデューサーの指が撫でると、
愛梨は筋を脈打たせ上下させる。指が肌に食い込む。
本物の動脈・拍動までプロデューサーの指に捉えられる。

(どきどきしてるの、丸わかりになっちゃってますっ)

羞恥と感慨が愛梨の脳裏に交差する。
アイドル活動の中で、この男にすべてを委ねる快楽を知ってしまった愛梨は、
セックスにおいてもそれを期待してしまっている。

だからこそプロデューサーも、あらんかぎりの手管で愛梨に挑む。

「はふっ、んぅっっ、んんうっんっ」

首筋を撫でていた手が、耳元とうなじに絡む。
いつもツーテールで引っ張られている生え際をなぞる。
さらに耳元を手のひらで覆われると、世界からこの男に攫われ隔離された錯覚に包まれる。

(あたまっ、撫でられるだけで、こんなになっちゃうんですかっ)

愛梨は自身の妄想に、さらに肌の下を熱くさせる。



プロデューサーが愛梨のバスローブを手で開けさせる。
鎖骨の指数本ぶん下から圧倒的な量感で膨らみ始める釣り鐘型は、
愛梨の荒くなった呼吸に応じてかすかに上下している。

(おっぱい、みて、くださいっ、私の――いつも、見てたでしょう)

頬から首を通って肺、横隔膜まで、プロデューサーの視線に炙られている心地の熱さが広がる。
グラビア水着で覆えない部分の肌を、プロデューサーに見せたのは初めてだった。

「綺麗だよ、愛梨」

プロデューサーが、釣り鐘を下支えする形の手で包み込む。

「あっ、あっ」

体温に溶け落ちそうな呻きが落ちる。
愛梨の肉房は、彼女の童顔にはおおよそ似つかわしくないぐらい愛撫の手にやすやすと馴染む。
搗(つ)きたての餅かと思うほど熱く、それでいて肌と脂肪の下の乳腺や胸筋が、
しっかりとした腰で重々しい膨らみを支えていて、その粘りも餅を想起させる。



「すごいな。俺、今死んでもいいわ」
「だ、だめですっ、ちゃんと最後まで――これからも、ずっと、お世話になるつもりなのに」

愛梨のそれは、人間の肉体でありながら、
職人が技工を注ぎ込んだ菓子のような儚げな繊細さを湛えている。

「プロデューサーさんがいたから、私、ここまで綺麗になれたんですよっ」

愛梨の体は愛梨自身やトレーナーの精魂を傾けたレッスンの賜物で、
その元をたどれば確かにプロデューサーの意思や視線があった――そう思うと、プロデューサー自身も沸き立つ。

「だから、もっと可愛がって、もっと綺麗にしてくださいっ」

プロデューサーの指で、曲線美の均衡が乱される。

「んぁっ、ふぁっ、ああっ」

稜線を踏み荒らされて、愛梨は声をはずませる。

(もっと、さわって、プロデューサーさんの、手――っ)

快楽に喉が衝き動かされると言うより――浮ついた脳裏の熱に任せて甘えている声音で、
彼女は露骨にプロデューサーを煽っている――煽る余裕がある。

「いつも苦しそうだもんなぁ。もう少し、衣装の胸元を緩めるか、逆に首まで覆うか」
「こ、これ以上緩めたら、さすがの私でも危ないって思っちゃいますよー」

プロデューサーの触り方は、逸品を品定めするかのような、探り探りの気配。
グラビア写真の色校を見るのと似た、魅了された熱心さと、値踏みする冷静さも垣間見える視線。

(いつもみたいに優しいけど、今はそれがじれったい気、しちゃう)

「もっと、触りたい感じに、してもいいんですよ。プロデューサーさんならっ」
「アイドルとするなんて、初めてだからなぁ。さすがの俺でも、ちょっと気後れしちゃって」
「むっ、アイドル以外とならある、って言い方ですね。それ」

愛梨はわざとらしく頬をふくらませる。
プロデューサーは悪戯心を起こしてその頬をつつく。

「あああんっ、なんですか、いきなりっ」
「胸を揉むのは許してくれるのに、こっちはお気に召さないのな」
「だって、プロデューサーさんが余裕に見えるんですもの。私は、こんなにどきどきしてるのに」

(伝わってますか。私の――胸の下の方なら、心臓が近いから、きっと)

「私は、男の人に触らせたこと、ないのに」
「でも男なら『もっと乱暴に触りたいだろう』ってことは、知ってるのか」
「女友達から、いろいろ聞きますし」

プロデューサーが目一杯指を広げると、愛梨の肉房の下半分がなんとか収まりそうになる。

「この体にするために、どれだけ汗かいてきたか、多少なりとも知ってるからか、
 こうして触ってると、柄にもなく感慨が湧くんだよな」
「ある意味、プロデューサーさんの作品とも言えますからね」

それを愛おしさと言うには、まだお互い照れ臭さが残っている。




「んっ、ふぁ、あぁっ、ああっ!」
「あぁ、これ、手が溶ける」

手で舐めるように、指で抱きしめるように、愛梨の胸を揉みしだく。
公称88のバストは、プロデューサーの手を埋めてなお余りあるボリュームで、
揉んでいるはずが、逆に腕ごと持っていかれそうな心地に、プロデューサーは詠嘆する。

「ねぇ、プロデューサーさん――先っぽも、触ってみませんか」
「自分でいじる時は、どんな感じにしてるんだ」
「こう、きゅ。って指先で――何を言わせるんですかっ」
「そのとおりに触ってみたくなって」

愛梨の双頂は、そこだけ絵の具を刷いた風の薄い褐色で、
乳輪の膨らみは稜線に溶け込んでいて目立たず、その中心に遠慮がちに突起が座っている。
目を凝らすと、いつかは乳汁を染み出させるであろう乳腺がふつふつとかすかに透けている。



そこにプロデューサーの手が乗せられ、愛梨はため息のトーンを揺らがせる。

(まだ、ぜんぜん力も籠もってないのに、ただ、指をくっつけられただけでっ)

「愛梨の『きゅ』だから、優しい感じなんだろうな」
「ぷ、プロデューサーの指と私の指じゃ、勝手が違います」
「それなら俺のやり方で、ゆるゆるやってしまおう」

絵の具の滲み――ぼやけた乳輪のふちを、プロデューサーの指先がゆったりとなぞると、
愛梨は不釣り合いなほど大げさに肩と背を震わせ、鎖骨を浮き沈みさせる。

(私、優しくされるのに弱いのかもしれないです。だから、プロデューサーさんに)

「するする、ってぐらいの力加減が、愛梨は効くみたいだな。反応がいいから、楽しい」

(私、胸の気持ちよくなる触り方まで、プロデューサーさんに、知られて)

プロデューサーの指が乳頭を取り巻く――力はほとんど入っていない。
それだけで愛梨の肉房から背筋までくすぐったい快美感が広がる。

「あっ――ふぁあああっ――!」

軽く力を込めて、まろび出てきた乳頭を転がす。
愛梨の声が高くなる。

「ち、ちくび、敏感、ですからっ」
「触らないほうがいいか」
「いや、触って、触って、くださいっ」

愛梨の体は肩をよじってプロデューサーの手の戒めから逃れようとし、
愛梨の声はさらなる刺激を求めて悶える。

「ふあぁっ、あっ、ああっ」
「愛梨は、胸でイッたことは――そもそも、イッたことは?」
「ああああっ、わ、わかんないです、けどっ」

かろうじてバスローブに覆われている愛梨の下半身は、露骨にもじもじと刺激をねだる。
胸はまだ、気持ちよさとくすぐったさの間を行き来している状態と、プロデューサーは見た。

「じれったいのか」
「せ、切ない、です――キモチいいけど、くすぐったくて、私っ」

(どうシたらどうなるのか、全部、調べられちゃってる――そういう、やり方っ)

「止めてくれなかったら、いつまでも続けてしまう気がする。愛梨の反応が、可愛いから」

プロデューサーの欲棒も、徐々に血が流れ込んで隆起しつつはあるが、
それ以上に極上の触り心地から手を離すのが惜しまれる。




「な、なんだか、このままだと、オカシくなっちゃう、きが、しますっ」
「オカシくなるのは、困るな。まだ、本番はこれからなのに」

プロデューサーの指が、愛梨の乳暈をかりかりと虐める。

「あっ――うぁっ、はああっ、だめ、それ、ぁああっ!」

撫でると引っ掻くの間の加減に襲われるたびに、愛梨の吐息が乱れ、
指が一周まわるごとに、次第に切れ切れになる。

「とめ、とめて、くださいっ、私、だめっ、あぁあっ!」

愛梨の背筋がびくんと反って、豊かな胸が一層強調される。

「あぁっ――んああっ! も、もう、だめ、ひぁあっ、ああ、ふぁああっ!」

指の食い込みが深くなる。プロデューサーはなおも愛撫を重ねる。
また指が一回りする。愛梨の嬌声が五線譜の上を突き抜ける。

「はぁー、ああっ! ぷ、プロデューサー、さんっ――!」



プロデューサーの手首を、愛梨の手が掴んだ。

「あっ、はあっ――はぁっ、はぁっ」
「なんだ、いつでも止められたんじゃないか」
「止めてほしかったような、そのままシてほしかったような――もう、私にもわかりません」

愛梨の頬と目交は、蕩けるのと引き攣るのが混じり、林檎と同じぐらい赤く染まっていた。






バスローブをたくし上げて、愛梨の秘所を明らかにしたプロデューサーは、思わず一言。

「上、だなぁ」
「何が、上なんですか」

問われて、プロデューサーは答えに窮する。

愛梨の秘所は、上付き――肛門から遠く、ヘソに近い――に見える。
プロデューサーが今までに見た中のどれよりも。それを言って良いものか、悪いものか。

「――具合、が」
「そんな言い方じゃ、わかりませんよ」

おそらく愛梨に自覚はない。
ただ、正常位・座位で入れやすく、膣道軸と陰茎軸が重なりやすい上付きは、名器の代名詞。

「とにかく、上なんだよ」

上付きに目が行っていたが、愛梨の秘所はほかの部分も挑発的だった。
胸より下は愛撫していないのに、薄く控えめな陰毛は露に濡れてしっとりと寝ている。

「入れりゃ、わかるさ」
「入れる――ついに、シちゃうんですね」

その下には、胸にも負けず劣らない、いっそ食欲さえそそりそうなほどの肉丘が、
足の付根の間に二つ据えられていて、その合間には爪一枚程度の肉襞のまろび出た線が通る。

局部の周りを取り巻く鼠径部や下腹は、愛梨のまだ荒いままの呼吸にあわせて、
胸と似たリズムでかすかに筋を見え隠れさせている。日々のレッスンで磨かれた下半身の証。

それは職業人としてのプロデューサーを微笑ませる一方で、
これからそこに挑む男には『来るものなら来てみろ』と言わんばかりに映る。
生まれつきの素質と、アイドルとしての練磨が累乗されて、入れなくても分かるほどの名器。

「ゆっくり入れるからな」
「プロデューサーさんも、ゆったりするのがスキなんですか」
「まぁ、うん」

愛梨に吸い込まれ夢うつつに落ちて、
寝ている彼女の腰を開かせ、プロデューサーは腰を下げていく。



「プロデューサー、さんっ――ふあぁああああっ、な、かっ」
「うおっ――んむっぅうっ」

プロデューサーは歯を食いしばり括約筋を力ませ、かろうじて射精を耐えた。
キツさはほどほど――だが、奥が浅く、すぐ『いいところ』に当たる。
当たると、入り口を中心に腟内がペニスを抱擁するように蠕動する。

「ははっ、これは、すごいな――童貞でもないのに、三こすり半で終わりそうだ」
「み、三こすり半ってなんですか」

それに答える余裕は、既にプロデューサーから失われつつある。
愛梨の上に覆いかぶさったまま、動きを止めて――かろうじてこらえている状況。

「ふふっ、プロデューサーさんは、こっちも――優しくしてくれるんですね。嬉しいですっ」

それを愛梨は気遣いととる。
甘え声が至近距離で入り込んできて、さらにプロデューサーを追い詰める。

「すぐ終わるのが、もったいないだけだ」
「男の人は、出すと終わっちゃうんでしたっけ」
「愛梨、奥は痛くないか」

プロデューサーのモノが根元まで入り切る前に、子宮頚部――らしき底に――届いているよう感じられる。

「奥――これ、ですか。されてると、なかが、ジンとしちゃってます。くせに、なっちゃうかも」

気遣いに対して、上の口から、自覚なしの殺しの一手。
プロデューサーは悶絶を重ね、愛梨は無邪気に微笑む。




「プロデューサーさん、つらそうです。イクの、我慢してるんですか」

ぎりぎりのところで持ちこたえるプロデューサーに、愛梨の甘い追撃が続く。

「だって、その、もったいないじゃないか」
「私は、こうしてただくっついてるだけも幸せです。プロデューサーさんが、近いから。
 だから、今なら、いつだっていいんですよ」

ほんの少しでも動かそうものなら、その蠢きを愛梨に拾われて、そのまま締め付けられ搾られる。
プロデューサーは天国と現世をまたいで立たされている。

「もっと、ぎゅってしてもいいですか」

言葉と同時に、愛梨が手と足をプロデューサーにまわしてくる。
膣内の具合が変わって、動けそうと一瞬思わされ、しかし動けない。
今動いたら、終わってしまう。

(近くて、プロデューサーさんも、私で興奮してます――)

どう動いても詰みだった。
それでいて『自分から動くまでは終わらせない』具合だった。

「ぎゅーってされると、熱くて――でも、もっと熱く、とろけちゃいましょう」

愛梨が囁く。
プロデューサーの耳にはすべてが「達してもいいよ」という言葉に聞こえる。
天使のような死神のような、末期へと誘う声が響く。逆にプロデューサーは、肉体以外の言葉を奪われる。

「ふあぁあっ、奥、撫でられちゃってますっ」

プロデューサーが体勢を立て直そうと腰をもぞつかせただけで、肉の奥底に当てられた愛梨は喘ぐ。
そうしてまた腟内が涅槃へとペニスを引き寄せる。ぎりぎりの三途でまた止まる。

「くぁっ――う、ぐううっ」

愛梨の中が浅いおかげで、プロデューサーはかろうじてとどまっていられた。
ほんの少しでも深く入っていたら、こうは持たなかっただろう。



「プロデューサーさんっ、いつでも、イっていいんですっ」

息を整えて、腰を掬う風にして奥をゆるやかに突く。
愛梨の声が跳ねて、またペニスが搾られる。愛梨の踵が、もっともっとと拍車をかけてくる。

「おく、そこ――ふふっ、届いちゃって、されちゃって、ホント、つながってるって感じ、しますっ」

プロデューサーは完全に守勢に回っていた。
愛梨をいかせるどころの話ではない。吐精しないようこらえるだけで集中力を使い果たす。

甘い響きと、奥を打てばすぐ返ってくる反応の良さに溺れる。
もがく。逃れられない。落ちていく。浮遊感に巻き込まれる。
快感の波打ち際に転がされ、もてあそばれるまま。



「ぎゅーって、抱きしめて――ほら、おっぱいも、プロデューサーさんのものだからっ」

愛梨の腕がゆるく引き寄せただけで、プロデューサーの背中が傾いて、
ついには上の肌も重なる。先刻愛撫した愛梨の肉房が、プロデューサーの体重でむにゅりとゆがむ。

「あ、奥、あたるところ、変わって――そ、そこも、いいですっ!」

プロデューサーは、自分より小さな体躯のはずの愛梨に飲み込まれていく。
出させられる、出す、出したい――プロデューサーの男根が、限界を超えた。

「あっ――ふふふっ――プロデューサー、さんっ」

崩折れていくプロデューサーを、愛梨は表情をほころばせて受け止めた。
大げさに言えば、衆生を救済する菩薩を連想させるアルカイックスマイルだった。




「参った」
「何が『参った』なんですか?」

プロデューサーは、愛梨に覆いかぶさったまま、やっと一言を絞り出した。

「参った。愛梨には、敵わない」
「ああっ、そんなすぐ離れなくても――もうちょっと、ぎゅっとシててくださいっ」

体重をかけたままというのが気がかりだったプロデューサーだが、
愛梨にそう言われると引くわけにもいかず、お茶を濁して愛梨の頭を撫でた。

「先に行ってしまって、申し訳ない」
「おっぱいではやられっぱなしでしたからね。これでおあいこですよ」

プロデューサーの手のひらを、愛梨の微笑みの吐息がくすぐった。

プロデューサーは快楽の余韻のみならず、驚きでもまだ腰が立たない。
正常位で入れた途端、絶頂寸前まで追い込まれ、体が少し傾いただけで快楽が溢れて臨界を迎えてしまった。

これが、アイドル・十時愛梨の器なのだろうか。
背筋に走った震えは、快楽の残滓か、戦慄か。
彼女を見出したプロデューサーでさえ、末恐ろしく思った。

「プロデューサーさんにこうしてもらえたら、どこまでも熱くなれちゃいそうです」
「そんな、男殺しのセリフまで」
「ええっ、私、プロデューサーさんを殺しちゃうんですか!? そんなのイヤですっ」
「イヤと言われても」

末恐ろしいと感じながら、プロデューサーは愛梨から腕を離せなかった。
むしろこの関係が明るみになって、背任罪で破産しても良いと思った。
射精直後の素面でさえそう思わされるほど、プロデューサーは愛梨に釘付けになっていた。



「あれっ――『参った』とか言った割には、また大きくなってませんか?」
「あっ」

愛梨は、糸を引きそうなほど甘い笑みでプロデューサーを見上げる。

「カマキリの雄って、こんな気分なのかもな」
「カマキリ? 私、虫さんはちょっと」

プロデューサーは完全に愛梨に絡め取られていた。
いくらか体力が残っていようと、彼の行きつく先は同じだった。

「ああ、いいや、なんでも、ない」
「ふふっ、じゃあ、まだ元気なようですから、続き、しましょうねっ」

彼は愛梨へ射精する結末から逃れられない。




「はぁっ、ああっ、ぷろでゅーさーさんっ、おく、こつんってされると、わたしっ」

プロデューサーは愛梨に挿入したまま腰と上半身を立て、愛梨の腰を浮かせながらストロークする。
肌と肌がぶつかりあう音は、はたはたと抑えめ――溢れ出る水音も、にちにちと控えめ。

「こつん、ぐらいがちょうどいいだろう。さっきみたいに一気に深いとこトーンと入れっぱなしじゃ、
 愛梨、くわわーってシメてきて、俺じゃもたないんだよ」

控えめじゃないのは愛梨の腰使いだった。
足をプロデューサーの間で開いて、腰を浮かされているせいか、
肉孔への抽送に、くびれたウエストがゆらゆらとくねる。

「だめっ、ヘンな声、出ちゃって、恥ずかしいですからっ」

最初は遠慮がちだったプロデューサーの抜き差しも、
精液を塗り込むように回数を重ねて、徐々に愛梨の声が乱れていくと、
それを手がかりに奥の弱点を探り当て、ゆったりとしたリズムで突く。

(わ、わたしのナカ、ぷろでゅーさーさんに、覚え、られちゃってる――)



一度達して余裕があるプロデューサーに対し、火照ったままの愛梨は、
リズムの一拍一拍のたびに、高みへフラフラと浮かされていく。

「でも奥がいいんだよな。迂闊に突くと、さっきの俺みたいに返り討ちにされてしまうが、
 まぁなるべく、いい感じに可愛がってやれれば――具合はどうだ?」
「そ、そんなの、言え――はぁあぅううっ!」

プロデューサーが朦朧を振り払うと、交代に、愛梨が快楽に意識を侵され始める。
再び主導権が逆転する。

「扱い方が分かると、愛梨の中は、本当に至れり尽くせりだな。
 気持ちよくしてくれるけど、締りがきゅっきゅって強すぎないから、いつ出してもいいって感じで」
「だめえっ、入れていいのは、プロデューサーさんだけ、ですっ――ひぁあっうぅう!」

浅く九つ、深く一つ。
奥底を穿たれたときに、愛梨は胸が波打って揺れるほど背を反らして悶える。
同時に膣壁がきりきりとプロデューサーのペニスを締める。

「あー、こりゃ、一回出してなかったら瞬殺だ。先に出しておくぐらいが、ちょうどいい」

(ナカ、そこっ――いいとこ、キちゃって――あああっ、あっあっ)

愛梨の口が大きく開いたまま、ひゅうひゅうと苦しげな呼吸音ばかりを響かせる。
子宮を押され引き出されして揺れる快楽に、下腹どころか横隔膜まで痙攣する。

(く、くるし――でも、くせに、なる、おかしく、されちゃうっ――)

「うわ、おっぱいがばるんばるんって揺れて、目でもエロい――っ」

愛梨の上下の媚態に、プロデューサーのペニスも再び吐精寸前まで滾りだす。

「出したら、一回も二回も一緒だよなぁ」

(また、どくどくって出されちゃう、プロデューサーさんが、私で、気持ちよくなっちゃう――っ)

「ま、まらっ、だし――だしちゃう、だして――んふあぁああっ!」

そのままプロデューサーは、今度はあっけなくペニスを震わせて達した。
震えが子宮をぐらつかせて、愛梨も声にならない断末魔の叫びを迸らせ、がっくりと腰を転がしながら絶え果てた。



(十時愛梨編おわり)


●新田美波編



――単刀直入に言います。愛梨ちゃんと、別れてください。
  シンデレラガールの愛梨ちゃんにスキャンダルが出たら、
  あなたどころか、このプロダクションが火達磨ですよ!



――ねぇ美波ちゃん。別れてもいいけど、条件がありますっ。
  それは、Pさんと私とえっちして、イカないままでいること!



――えっ、なんですか、それっ!?





『なんですか、それ』は、プロデューサーの感想でもあった。

愛梨との関係が、彼女の同僚アイドル・新田美波に知られて詰め寄られた。
詰め寄られた現場に、愛梨が割り込んできて謎の宣言を行った。

そしてプロデューサーの前で、愛梨が美波を部屋の壁に押し付け、
ワイシャツのボタンを外そうとして――否、もう外され、下着が見えてしまっている。
シャツの色に合わせた淡い水色が、プロデューサーの目に眩しい。



「愛梨ちゃん止めてっ、プロデューサーさんが、見てるからっ」
「見せつけたほうが興奮するかもしれませんよ? 『何事も経験』、ここでシちゃいましょうよ」

愛梨と美波は、美波のほうが体躯はわずかに大きい――が、美波が押されている。
胸と胸どうしがくっついて変形するほど詰め寄られている。

「お前ら、そういう関係――もしかして、それでバレたのか」
「えへへっ。美波ちゃん鋭いから、私の体がプロデューサーを覚えちゃったの、バレちゃって」
「あ、そこはっ――こらっ、愛梨ちゃんっ! ここじゃ、ダメっ」

美波は愛梨の肩を押しのけようとするが、その腕は弱々しい。

「なんでっ、愛梨ちゃんは、あの人の味方をするのっ」
「プロデューサーさんが辞めちゃうのはイヤです。美波ちゃんこそ、私を困らせたいんですか」

じれったくなったのか、愛梨は美波のスカートへ責めを転じる。
女同士ゆえか、プロデューサーが驚くほど無遠慮に裾を引っ張り上げ、
太ももをよじって抵抗する美波の秘所を、布の上からさらさらと撫でる。

プロデューサーは、普段の温厚さとは裏腹な愛梨の嗜虐じみた手付きと、
普段は溌剌と活動的な美波の弱々しい呻きの対比に、目を奪われる。

「私、美波ちゃんの弱点、知ってます」
「ひぅ――や、やぁっ」

指先と囁きだけで、美波が壁にくっつけた背中を波打たせる。

「ねぇ美波ちゃん。勝負、しましょう。ルールはカンタン。
 私とプロデューサーさんの前で、美波ちゃんがイかなかったら、美波ちゃんの勝ち。
 私とプロデューサーさんは、綺麗さっぱり別れる。その代わり」

愛梨の目が、壁際に押し付けられた美波の顔を覗き込む。

「美波ちゃんがイッちゃったら、私達のコトは、黙ってて。いいですよね。プロデューサーさん」
「俺は構わんが、俺が出るまでもなく、勝負がつきそうなのは気のせいか?」
「はぁ――っ、ふあぁ、あっ――愛梨、ちゃん――」

愛梨を見返す美波の目は、哀願と憤怒と欲情とが混じって、いたわしく潤んでいる。

「み――美波は、負けませんっ。勝って、愛梨ちゃんを取り戻しますっ」

それでも意地か何かが美波の口を引き結ばせ、挑戦を受けさせる。
勝負とあれば、美波は後に引けない性格であった。

「ふふっ、美波ちゃんのそういうところ、私、好きですよ」

対する愛梨は、早くも快哉の笑みを口元に浮かばせていた。




「ふふっ、立ったまま触るのは初めてですね。痴漢みたい――されたこと、ありますか」

愛梨は、美波の首元に頬ずりしながら囁く。
漏斗で耳に音を注ぎ込むかのごとく、口をすぼめて美波に迫る。

「されたこと、ない、わ」
「されると、どんな気持ちになるのかな」
「だから、されたことないって」
「いいなぁ。私も、友達と一緒に電車乗るようになるまでは――」

美波の正面の三角地帯に添えられた愛梨の手は、そのまますりすりと摩擦を加えようとして、
上から美波の手に手首を押さえられ、横から内腿で挟まれ、止められる。

「知らない男の人に、いきなり体を触られるのは、怖いものですよね」
「そりゃあ、そうだろうけど」

愛梨は止められるがまま止まり、しかし押し退ける動きには逆らって居座る。

「じゃあ、私の手は怖いですか? 怖いのなら、大声出して、押しのけちゃってください」
「そういう聞き方、ズルい――っ」
「だって勝負ですもの」
「んくぅ――ほ、ほんとに、触るの――?」
「何を今さら」

愛梨の手は居座ったまま、手のひらで美波を下着の上から面で刺激する。
声の他の音は、衣擦れと吐息がはらはらと散らばるのみ。



「いつも触る時は楽にしててもらうんですけど、今日はダメですね。
 楽にしたら、腰が落ちちゃう。落ちそうになったら、言ってくださいね。肩を貸しますから」
「ん、ぅううっ、や、やめて、手を、とめてっ、愛梨ちゃんっ」

愛梨は制止にもまったく手を止める様子がなく、言葉を交えながら押したり引いたりを繰り返す。

「私に触られるのは、いやですか」
「だって、プロデューサーさんが見てて」
「私は構いませんが。なんなら、こういう趣向はどうです?」

既に半開きになっていた美波の唇に、下から愛梨が自らのそれを重ねる。
美波が拒絶できたのは手だけで、それも肩を申し訳程度に押すばかり。

キスの摩擦は粘膜をかすかに鳴らす。押し殺した嬌声のごとく垂れ落ちる。
拒絶の手がびくんと跳ねて、だらりと垂れ下がって壁をぶった時、愛梨は責めを止める。

「ちゅっ――んちゅ――んくっ、ふふっ。べろの裏、敏感ですね。また、美波ちゃんのこと、教えてもらいました」
「やめ、て――続けられたら、私、おかしくなるから――」
「じゃあ、降参します?」
「そんな、ひどいっ」
「なら、耐えてみてください。もっとも、私も手は抜きません」

愛梨が不意打ちで三角地帯の手を急に動かす――美波は口をぱくぱくとさせて悶絶する。
ずるずるとした手のひらと衣擦れの間に、津液の気配を感じ取って、愛梨は微笑えむ。

「強情な美波ちゃんより、素直な美波ちゃんのほうが、私は好きですけどね」
「んくぅっ――手、うご、かしたら――はあぅうっ」

噛み殺せない快感の吐息が、美波の唇を劈(つんざ)いて吹きこぼれる。

「下着の上からこんなんじゃ――直接触ったら、どうなっちゃうかな?
 美波ちゃんの、私のより、おっきくて敏感だもんね」
「だめ、い、いわない、でっ」

愛梨の手の甲が牙を剥くかのごとく筋を浮かせたのが、
数歩ぶん離れたプロデューサーからも見て取れた。




「あっ、指、立てたら――んくぅうっ」

愛梨は、美波の抵抗を一つひとつ着実に解きほぐしていった。



「痛くは、ないですよね? それなら、くすぐったい?」

愛梨が指を立てて、美波の下着を擦り始める。
美波の上半身のゆらぎが、徐々に大きくなる。声が切れ切れに乱高下する。

「ちょっと濡れて来ましたね。でも、まだまだ。もっと濡らさないと、イケませんよね」

くしゅ、くしゅ、と触り始めより荒っぽい動き。美波の下着に露骨にシワがよる。
美波の腰が、かくん、と――微かに、しかし確かに――揺らいで、腰骨が壁にずりずりと追いやられる。

「あっ――か、はぁあっ――う、ううっ」
「辛そうですね。止めますか?」
「や、やめてっ」
「だめです。降参してくれるまで、止めません」
「うくっ――! ふあぁあああっ!」

美波の嬌声からは、プロデューサーが同室しているという憚りが少しずつ拭い去られる。
下着がぐしゃぐしゃに乱れるのに追従して、肉悦の色に塗り替えられていく。

「私、美波ちゃんをイカせるまで、絶対に止めませんからね。
 ほら、無理しないで、私の肩に手をついてください」

もはや美波の手は、愛梨を押さえているのか、愛梨に縋っているのか、曖昧になっていた。

「今に、腰砕けにさせますから」



愛梨はついに美波の下着の中に侵入し、秘所に襲いかかる。
誰かに見つかれば、まったく言い訳のしようがない組んず解れつを、
プロデューサーの前でアイドル二人が演じている。

「中からと、外からと、両方いじっちゃいますっ」

美波は首を震えながら横に振る。もうそれ以上の拒絶はできていない。

「はぁあーっ! あああっっ! おねがいっ、だめっ、愛梨ちゃん、だめえぇっ!!」

美波は羞恥心をかりかりと引っ剥がされる。嬌声が溢れて、はたはたと舞い落ちる。
下着がシミで色を変えていく。シミが徐々に大きくなる。愛梨の手の甲にべったりと張り付く。
愛梨の指の動きがエスカレートして、第一関節まで美波の中に押し入る。

「私も、もうダメです――止められない、美波ちゃんがイクとこ、見なきゃ、だめっ」

いつしか、責める側の愛梨の吐息にも熱がこもる。

「イッて、ねぇ、イッてください。イクとこ、見せてくださいっ、感じさせてくださいっ」
「ひああっ――ああっ! ああっ、こわれ、るっ、私っ、こわれちゃうっ」

くぐもった水音は、美波や愛梨どころかプロデューサーにも明らかで、
半開きにされた美波の太腿の筋が緊張したり弛緩したりする肌の上に、
愛液がいくつも筋を描いて流れていく。女神の面影も消え失せる。

「ああっ、ンあぁああっ、や、やらっ、イクの、やぁあアああっ」

女だけが知る陥穽を穿つ。外と入り口の浅いところから両面で責める。

「可愛い美波ちゃんの、イクとこ、愛梨に見せてください!」
「や――あ――あッ、い、クッ、いっちゃ、アっ――」

最後の一押しは、愛梨の叫びだった。
その響きに糸を切られ、美波の四肢はびくびくと突っ張る。
秘所から滂沱の雫を滴らせ、バランスを崩した挙げ句、愛梨の肩に倒れ込んだ。
絶頂は明らかだった。




「やけに手慣れてる様子だったが、愛梨は美波と、その――」
「――はい、シたコトありますよ。何度も」

愛梨は、まるで自分が愛撫されていたかのような赤い顔で、プロデューサーを見上げた。

「愛梨は、男殺しで女殺しでもあったんだなぁ」
「そんなぁ、照れちゃいますっ」

愛梨の肩に顔を埋めていた美波が、プロデューサーの声に反応して、気怠げに顔を上げる。

「恨みますよ、プロデューサーさん。私の、こんなところまで、見て」
「それがイヤなら、黙ってればよかったのに。美波がバラしても、なんのメリットもないじゃないか」
「損得じゃ、ありません、愛梨ちゃんは、私だけのっ」
「いいんですよ。美波ちゃんだったら、これからだって私に甘えても」
「だって、愛梨ちゃんが、プロデューサーさんに取られちゃって――」

それより先は、愛梨の腕で抱きしめられて遮られた。
愛梨の肩に回された美波の腕は、呼吸が重なるに従って落ち着いていった。



●新田美波編・2


――美波ちゃんが、プロジェクトのリーダー役に抜擢されて、消耗してた頃、私がそれを慰めてあげたことがあって。


――愛梨ちゃんが、あったかくて、優しくて、私、つい、そのっ。


――なるほど、つまり美波も愛梨に流されたということか。



――わ、私と愛梨ちゃんは処女を捧げあった仲なんです! 一緒にしないでください!



――二人とも処女っぽくないと思ってたが、まさかそんな破瓜のしかたしてたとは」



――プロデューサーさん。男の人と女の人は、カウント別ですよね?
  そうすれば、男の人の初めてはプロデューサーさんになりますし。
  カウント別なら、私が美波ちゃんとえっちしてもいいですよね?



――えっ、なんでそこで私を見るの。



――いいですよねっ、プロデューサーさんとえっちしても、いいですよねっ。



――やっ、いやです。私、プロデューサーにはイカされてません。まだ負けてませんっ。





美波の下着の内側は、ひたひたに濡れているのは愛梨と同じだったが、外見は対照的だった。

「うう、プロデューサーさんに見せるなんて、恥ずかしいっ」
「私に見せたのは恥ずかしくなかったんですか?」
「愛梨ちゃんでも恥ずかしかったんですけど、それとは別ですっ」

美波の秘所は、肛門に近い下付きで、陰唇は翅の濡れた蝶が張り付いたように開いていた。
そして、蝶なら触覚があるところに、愛梨にさんざん苛められたらしき陰核がぽってりと勃起したまま据わっている。
そのすぐ上には、濃い陰毛がべったりと蒸れている。

そのまま四つん這いになれ、とプロデューサーがいうと、美波は狼狽した。

「なんでわざわざ、そっちの体勢で」
「美波のは見る限り下付きだから、正面から入れにくそうで」
「し、下付きって――っ!」

美波にポカポカと――手加減はされているもの――はたかれて、プロデューサーは理不尽だと思った。



美波はおずおずと腰を上げて尻を差し出す。

「あーあ、赤くなっちゃってるじゃないか」
「ひあああっ!」

プロデューサーは入れるより先に、壁に寄りかかって擦過傷ができてしまった美波の腰に触れる。
それが美波に、愛梨の指戯の余韻を呼び起こさせる。

「愛梨の指で、相当感じさせられてたんだな。感度、良さそうだ」
「そ、それは、愛梨ちゃんだからで――あなたでもそうとは、限りませんっ」

白く弾けるような美波の肌に、赤みがこびりついている。
雪花石膏の女神像に、愛梨の手が鮮やかな色欲を塗りつけていた。

「ところで、本当に処女じゃないのか? 愛梨とセックスしただけで、入れたことはない――なんてことは」
「入れたことは、ありますけど――なんであなたに教えなきゃならないんですか」
「血が出ると興醒めするんだよ。ああ、今日は生理じゃないよな」
「もう! いいから早く入れて終わらせてくださいっ!」

プロデューサーの冗談とも本気とも取れる言葉に、美波は尻を向けたまま憤慨した。
それがどうにも滑稽で、プロデューサーは笑いを噛み殺しながら挿入した。



「あ――く、はぁっ、お、おおきい――ッ」
「うぐっ――み、美波、お前、お前キツイっ」

プロデューサーの笑みは、ただの一擦りで奪い去られた。

「うわぁ、プロデューサーさん、すごい顔してる」

美波の中は、外にも増して愛梨と対照的だった。
何本もの舌に重なってフェラチオされているような、ミミズ千匹と数の子天井が重なった、男を搾り取る凶器の膣壁。
さらに、ラクロスやレッスンで磨き上げられた体幹がぐりぐりと圧力をかけてくる。

一方、キツイ締め付けは美波をも追い込んでいた。
愛梨にとろとろに解された中は、男を受け入れるのに十分温まっていて、再び快楽に背筋を貫かれる。

「私も、美波ちゃんの中で指をぎゅっぎゅってしてもらうのは、気持ちいいと思ってますけど。
 ああ、私の体にソレがあったら、プロデューサーさんと同じくらい気持ちよくなれるのかなぁ」

プロデューサーと美波は、ただ交合の出合い頭に打ち震えていた。
意味を成す言葉を紡げるのは愛梨だけだった。




「はぁ、ああ、ううっ――ふはぁあっ――」

プロデューサーと美波は、吐息をこぼすのが精一杯。
愛梨の耳に入る呼吸音は、どちらの口から出たかも定かでない。

「ふ、ふっ――ずいぶん、辛そうですね、プロデューサーさんっ」

先に余裕を取り戻したのは美波だった。

「お前らが見せつけてくれたから、正直、余裕がない」
「ギブアップ、してもいいんですよ」

プロデューサーは美波の態度に張り合い、腰を突き出す。ペニスを進ませる。
突き当り目指して打ち込む。しかし届きそうで届かない。美波の奥が深い。

「はぁぅうっ――そ、そんなもの、ですか」
「くそっ、何から何まで愛梨とは勝手が違うなっ」
「愛梨ちゃんはあなたのモノじゃありませんっ」
「私のじゃ、プロデューサーのそこまでガツンガツン入りませんよね。羨ましい――かな?」

奥に打ち込めば打ち込むほどに、プロデューサーに手痛い反撃が飛んでくる。
絡みつくなどという生易しいものではない――縛り付ける、戒めるという形容が似合う締め付けに、
プロデューサーは悶絶する。腰まで力を吸い取られ、抽送を続けるのもままならない。

逆に、慣れないはずの美波が、男の搾り方を一突きごとに覚えていって、
襞が潤いと熱に任せてペニスを引きずり込む。プロデューサーをあっという間に追い込んでいく。

「くっ――もう、もたないっ、中に、出すぞっ」
「ほら、出しちゃってくださいっ、これで、終わりですっ!」

美波の尻にぱつん、と打ち付け、それを末期の声にプロデューサーは呆気なく果てた。

「――ふふっ。これで、私の勝ちですね」

乱れ髪をかき上げて、美波は今日はじめて満足げに笑った。



「もしかして、プロデューサーさんって、早漏さんなんでしょうか。
 私とシたときも、あまり長持ちはしてませんでしたよね」
「うぐっ――愛梨も美波も、具合が良すぎるんだよっ」

愛梨の何気ない一言が、プロデューサーの心に刺さる。

「プロデューサーさん――もういいでしょう、勝負は付きました。
 抜いてください――もう、勝手に中に出しちゃってるし!」

美波は口をとがらせる――が、プロデューサーは美波の中にペニスを埋めたまま。

「なんで黙ってるんですか。私、イッてませんよ。私の勝ちですよね――むぐぐっ」

美波の勝利宣言を止めたのは、先刻まで美波をさんざん鳴かせた愛梨の手。



「別に、美波ちゃんがイカせたからって勝ちではありませんよ。
 それに――私のプロデューサーさんは、一発で終わる男の人じゃありませんっ」



「そうだな。ここで終わっちゃ、男が廃る――もう一回、だ」

プロデューサーは美波の曲線美を撫でながら、交合の続行を宣言した。




「プロデューサーさん。さっきの私の責め、見てましたよね。
 美波ちゃんの弱点は、このおっきいクリトリスなんです。
 だから、抜き差ししながらココを可愛がってあげてください!」
「ちょ、ちょっと、アドバイスなんてズルいっ」
「ちなみに、プロデューサーさんは、入れてる最中におっぱいぶるんぶるんって見せてあげると、
 耐えきれないで出しちゃうんですよ。胸というより、激しい動きのせいかもしれませんけど」
「参考にならないっ!?」

プロデューサーは美波に、右向きに寝るよう促す。

「右向き――ですか? わかりましたから、もう、何でもいいです、早く終わらせてください」

美波は努めて冷めた声音を作っていたが、愛梨に陰核で絶頂まで押し上げられ、
さらにプロデューサーの抽送を打ち付けられていた興奮は、隠しきれていない。

「次は――右足を上げる? プロデューサーさんにあたっちゃう――え、肩に乗せて良いんですか。
 それなら、バランスとれるから、乗せちゃいますけど――」
「なるほど松葉崩しっ! これなら下付きでも動きやすいし、クリトリスも目で見ながらいじれますねっ」
「そうだよ。って、愛梨ー、どこでそんな言葉覚えてきたんだよ」
「えへへっ、内緒ですっ」



美波は右向きに寝たまま両足を開いて右足を上げ、その間にプロデューサーが割り込む。
すらりと上げられた美波の右足は、プロデューサーの上半身に絡みつき、
下に伸ばされた美波の左足は、プロデューサーの両膝に跨がれている。

「うっ――んくぅうっ! さっきと、角度、違うぅっ――!」
「美波は、どうやって入れてもキツイなぁ。でも、もうやられっぱなしじゃないぞ」

プロデューサーと美波の両足が交差したまま挿入されていて、勃起角と膣軸がかなりズレている。
まともに入れた最初とは、かなり具合が変わり――それでも美波の中は、ぎりぎりとプロデューサーに射精を迫る。

プロデューサーは呼吸を整えてから、美波に責めを宣言する。

「美波は、中に入れられながら、外から擦られたコト、あるか?」
「そ、そんなのっ、あなたには言えませんっ!」
「するぞ」
「効くんですよー。指でもデキますけど、ソレだと断然違います」
「いやっ、なかと、そとっ、どうじ、なんて――んひあぁああっ!!」

プロデューサーは、小さく屹立した美波の陰核を、新芽よりも優しげに摘む。
それは愛撫というより、ただ触れるという風な力加減であったが、
それが美波の神経を再び燃え立たせ、啜り泣かせる。

「ねぇ、どうです美波ちゃん、気持ちいいですか」
「ひゃぁっ! こ、こんなの、きもち、よくな――んんんんぅううっ!」
「無理にしゃべると、舌を噛むぞ」
「そうですね。じゃあ私の声を聞いてるだけでもいいですよ。気持ちいいですか」

下半身からはプロデューサーの二点攻めでぐりぐりと雌歓を差し込まれ、
脳裏には愛梨の甘いささやきを注ぎ足され、美波の性感は飽和へと押し上げられていく。

(やらぁっ、だめ、みなみ――いっちゃ、だめ、だめ、なのにっ――)

プロデューサーは、ペニスはまだ本調子ではなかったが、射精で頭を冷やしたぶん、手技が冴える。
美波の体温、粘膜の蠢き、下肢のびくつき、息遣いの変化――すべてで美波の加減を探る。





(こんな、むりやり、なのに――きもち、いい? そんなの――ふあぁあっ!)

先に愛梨が見せた愛撫をなぞるように、一歩一歩快楽の階段を登らせていく。

「ふふっ、美波ちゃんの感じてる顔、可愛いですっ」

(あいり、ちゃん――だめ、いまは、きかせないで、とろけ、ちゃうっ)

「中をコツコツされて、外をくりくりされて、たくさん愛されてて、うらやましいです」

(あっ、うあぁっ、あ――んはあっ)

「もうイッちゃってもいいんですよ――イッちゃえ。イッちゃえっ」

(だめ、もう、やらぁ、あたまも、おなかも、だめにっ)

「美波ちゃん、イッちゃえっ」

プロデューサーの右手親指が、美波の陰核を転がす。
大きくV字に広げられた美波の両足が、指先までピンと伸ばされる。

(し、しんじゃうっ、こんなの、つづけられたら、あっ、あっあっ)

肌と肉の隅々にまで、美波は快楽に侵されつつある。



「イッちゃえっ、イッちゃえっ」
「愛梨、それ」

「なんですか?」
「それやられると、俺までイッちゃいそうになるんだが」

「えへへっ――イッちゃえ、イッちゃえっ! プロデューサーさんも、もう一回イッちゃえ!」
「おーいっ!」

プロデューサーのペニスも、二度目の限界に近づきつつある。
美波の中をえぐりながら、自分も快楽の中に沈んでいく。涅槃への地獄車。

(イッちゃう、イッちゃう――あああ、はあっ、私、イッちゃう――っ!)

「や――ぁ――あっ、い、んあアああっ、アああ――っ!」

突然、美波が背中と足を弓なりに反らせると、プロデューサーの手を生暖かい奔流が襲った。
快意の失禁――それを認識した途端、つられてプロデューサーの忍耐も決壊する。

「い、イク、ぞ――みなみっ!」

プロデューサーは美波の足を抱きながら、深く深く二度目の吐精を遂げる。



「ふふっ、プロデューサーさんも、美波ちゃんも、とっても頑張りましたね。
 私、しっかり見てましたよ。嬉しいですっ」
「あ――あいり、ちゃんっ――」

愛梨は虚ろな目をした美波の頭を撫でて、乱れきった長髪を梳いてやっていた。

「それはそれとして――ねぇ、いいですよね。私、プロデューサーさんとも、美波ちゃんともシて。
 どっちかを選べ――なんて、ご無体はやめてくださいねっ」

美波は愛液と精液の混淆物を垂れ流しながら、譫言(うわごと)混じりに頷くことしかできなかった。



(新田美波編終わり)

文香は来週書きます


●鷺沢文香編


――映画でお世話になっている監督さんから、「女優として色気が足りない」と言われてしまいました。
  どうしたら、愛梨さんや美波さんのような色気を身につけられるのでしょうか。
  男女の機微を表すのは、デビューしたての頃からの課題ですので、どうしても気になって。



――という相談を受けたんですけど、ここはプロデューサーさんの出番ですよね?





「髪は女の命、とはいつ頃から言われてたんだろうなぁ」

プロデューサーは、文香の髪を撫でながらつぶやいた。
文香は、明るいベージュのオフショルダーに、藍色のロングスカートを着たまま。
これからセックスに臨むというには、いささか落ち着いた格好だった。

「既に『万葉集』には、毛髪を女性の象徴として扱う歌があったそうです。
 となると、奈良時代には既に」

文香は、プロデューサーの手に背を預けて、髪を梳かれ、ある種の懐かしさが湧き出す心地だった。

アイドルとなったとき、最初に変えられたのは前髪だった。
瞳を簾(すだれ)のごとく隠していた。
これでは視線を送れない、とのことで、瞳を出すよう分けられた。

「男性の方は、女性の髪がお好きなのですか」
「みんながみんな『好き』とは言わないが、文香の髪は相当好かれるぞ。
 純粋に綺麗な黒で、艶もあって、柔らかくて。烏の濡れ羽ってのは、まさに文香のことだ」
「それは、その、面映いですね」



文香と体を交わそうというとき、プロデューサーは服を脱がせる前に頭を撫でた。
文香は、すぐに服を脱ぐものと覚悟を決めて、身を固くしていたが、

「まずは、髪がいいな。俺が最初に文香に触れたのは、髪だから」

とプロデューサーがいうと、

「宣材写真のときを、思い出します」

と文香は顔を赤らめた。



「文香の髪は、いい匂いがする」
「それは、ラクトンC10/ラクトンC11でしょうね。
 女性独特の甘い匂い成分、と志希さんから教えていただきました」
「文香からこんなに近くで嗅がせてもらってると、もっと色んなものが含まれてる気がする。
 ただの『女性特有』で片付けるには、もったいない」
「若い女性に囲まれてらっしゃる貴方が言うと、説得力が違いますね」

文香が身に宿していた緊張は、プロデューサーの体温とやり取りの間で、少しずつ溶けていく。

「文香は、髪をアップにしたことはあるか?」
「学校の、体育の授業ぐらいでしょうか」
「普段は落ち着いた印象だが、アップにするだけでも活動的な見た目になりそうだ」

そう囁かれながら、うなじや後ろ髪の生え際を撫でられ、文香はこそばゆさに目を細める。
うたた寝したくなる安心感と、その先へ進みたい期待感が綯い交ぜになる。

「監督さんは文香に『色気が足りない』って言ったようだけど、絶対的に言えば文香に色気はある。
 それは俺が保証する。ただ、監督さんの本心は『もっと色気出せるだろう』ってことだろうな」
「色気――男性の目を引きつける仕草、媚態、でしょうか」
「そういうテクニックも、文香はトレーナーさんからだいぶ教えてもらってる。
 いま少し色気を出しきれない原因があるとすれば、それは――」
「――それは?」

プロデューサーは、勿体をつけて文香に告げる。

「男に対して臆病な心を捨てられるか。男を肥料(こやし)にして咲き誇る覚悟があるか」
「谷崎潤一郎の『刺青』ですか」

プロデューサーは、文香の肩甲骨と背骨をつつとなぞる。
文香は肩を小さく上下させる。

「もし俺に抱かれたとしたら、文香の背中には、魔性の女郎蜘蛛が宿るかもしれないぞ。
 文香は、それを望むか。そうなった自分を、見てみたいか」

文香は目を閉じる。
その瞼には、妲己(だっき)褒姒(ほうじ)の姿が思い描かれているのか。

「そうなれば、私は、あなたの一番のアイドルになれるでしょうか」
「なれる。なりたいのか?」
「はい。生意気かも、しれませんが」

プロデューサーの心に『なんとしても文香と遂情する』という使命感が湧いた。



プロデューサーが文香の肩に手を回すと、文香は唇を噛んだ。

「触られるのが、怖いか」
「怖いのは、正直に言えば、そうなのです――が、このまま手を引かれるのも、また怖いのです」
「手を引かれるのも、怖い?」

文香は、首を軽くよじらせてプロデューサーを見つめる。

「私とて、アイドルとして少なからぬ日を閲(けみ)しました。
 アイドル・鷺沢文香をもっとも知るあなたの手があれば、私は枷を外せるかもしれないのです」
「何かの譬え話か」

プロデューサーは、文香の魅力を戒める何かを思い起こそうとしたが、何も浮かばない。

「その――笑わないで、ください。それだけは、お願いいたします」
「笑う要素が想像もつかないんだが、約束しよう」



文香は、オフショルダーと下着を淡々と脱ぎ去り、素肌の稜線を明らかにする。

「あの、どう、ですか。私の、その、胸はっ」
「プロフィールのバスト、数値大きくしたほうがいいかもなぁ」

プロデューサーは、何が起きても動揺を表に出さないよう、文香が脱ぐ前から用意したセリフを口にした。

「そ、そういうことではなくて、そのっ」

それを知ってか知らずか、文香は顔をうつむける。

プロデューサーは、脳内でこっそり文香と愛梨のボリュームを比べていた。
数値上は、愛梨が88のF、文香が84のDであった。
が、ここで見る限り、文香も愛梨の向こうを張る肉房を備えている。

「触ってもいいか」
「え、か、構いません、覚悟は、できて、ます」

プロデューサーは文香の胸をしげしげと眺めた。

文香の肉房は丸々と整って、重力に逆らうお椀型をしている。
肌は白磁を思わせる滑らかさで、プロデューサーの目にも眩しい。
それを生身の肉体を示すのは、うっすら透ける静脈と、呼吸に合わせたかすかな上下ぐらいであった。

谷間は狭く急峻。頂に近づくと、ぽってりと出た色の濃い乳暈が、鏡餅のミカンのように坐っている。
その先端は横一文字の浅いスリットが入り、突端は半ば埋もれている。

「もしかして、陥没乳首か」

文香は、顔をうつむける角度をさらに深くした。

「もしかして、触ると痛いとか、そういう支障でも」
「軽く、して――軽く、触って、くださいっ」

プロデューサーは、そろそろと指先でそこに迫る。

「んっ、んんぅうっ」
「自分で触ったりすることは、あるか」
「な、なんでそんなことを」
「自分で触ってやったほうがいいぞ。コンプレックスなら、あまり触ってないかもしれないが」

プロデューサーの指が、文香の大ぶりの乳輪を包む。
それだけで、文香は胸がはちきれんばかりに息を荒げる。

「綺麗では、ありません、よね」
「男好きは、する」
「む、無理して褒めなくても」
「無理しちゃいないぞ。それに自分で言っておいてなんだが、褒め言葉かどうか微妙だ」

文香の頬が、ようやく半分ほど緩められた。



「んっ、ふぁっ、ああっ」

文香の乳先を中心に、丹念に指戯を施す。
指の腹で取り巻き、爪先だけで撫で、手のひらで圧迫する。

「ん、はぁ――はぁうっうぅうっ」
「埋もれてる部分は、やっぱり敏感なのか」
「その、やっぱり、とは」
「あまり刺激に慣れてなさそうだから」
「これに、慣れ、などというのが、あるのですか?」
「あるんじゃないか、と思う」

プロデューサーは、文香に声を噛み殺すことを禁じていた。

「痛いとか、くすぐったいとか、感じたことは素直に出してもらったほうが、俺としてはやりやすい」
「い、痛くはありませんが、くすぐったさと、あと、じわじわと、こみ上がるものが」

白磁のようだった文香の肌は、次第に赤みを含んでいく。
肌に溶けそうな汗が浮く。甘い匂いが強くなる。
澄んだ瞳が、快楽の兆しにとろりと煮詰められていくまで、プロデューサーは執拗に愛撫を繰り返す。

「はぁぅうっ、んんんっ」
「声を殺すな」
「し、しかし――恥ずかしい、ですっ」
「恥ずかしいと思うような声が、出てしまうのか。いいじゃないか。俺は、聞きたい」

手は、稜線の中腹から麓にも伸ばされる。
乳こねりによって、文香の肉房に熱が吹き込まれていく。
熱い血のうねりで、文香の肌の下からざわつきが離れない。

「そんなに触っていて、プロデューサーさんは、面白いのですか」
「面白い。というと、おもちゃにしてしまっているようで気が引けるが、いつまでも触っていたいぐらいだ」

乳先がとうとうしこりはじめる。
ぽってりと盛り上がった乳暈に埋もれていても、徐々に固くなっていくのがわかる。
心なしか乳暈も一回り膨らんで、さらなる愛撫をせがんでいる。

「ああぅ――プロデューサー、さんっ」

文香のほっそりとした双腕が、肉房を挟んで押し出す。
肩と背がびくんとそよぎ、重たげな実りがふるりと揺れる。




「吸っても、いいか」
「すっても――とは?」
「口で、咥えて、吸うってことだ」
「赤ちゃんみたい、ですね」

プロデューサーは、体勢を変えて文香の稜線に頬を寄せる。
文香は、なされるがままにした。心臓が、近い。

「んくっ――ふぁあうううっ、んんっ」

プロデューサーの舌が、文香の乳暈をじりつく味蕾で擦り上げた。
拍動が跳ねる。安息と高揚がモザイクで重なり合う、奇妙な心地よさに包まれる。
あっという間に、行為の深みに引き込まれる。

「ぷ、プロデューサーさん――つ、強い、ですっ」

乳先を舌と唇で引きずり出す。快楽の痺れが文香を波打たせ、反射的に静止させる。
その制止が、プロデューサーの理性をかすめて消え入った。
もはやプロデューサーは文香の肉房に埋もれていた。



(プロデューサーが、私の胸を――あんなに、没頭してっ)

成人男性が、女性の乳首に吸い付く光景は、滑稽でグロテスクであった。
文香もそう感じていてた。

しかし、自分が他でもないプロデューサーを自分が「そう」させたことについて、
文香は勝利に似た悦びを噛み締める。
プロデューサーが滑稽でグロテスクであるほど、その悦びは深く響く。

(私の胸が、そんなに、欲しいのですか)

ちゅうちゅうと吸い付く音が高くなる。
塗りたくられた唾液が蒸散して、淡い酸っぱさが漂う。
それにあてられて、文香の枷が氷解し、昇華されていく。

(むね、が、吸われて――あつく、なって――っ)

胸から波紋となって広がる痺れは、肌の下で干渉しあい、丸くなり、やがてねっとりとした甘さを帯びる。
文香は、その甘さの味を感じ、覚えて、やがて浸る余裕が出てくる。

(ん、んんっ――わ、私、胸が、いっぱいにっ)

文香の張り詰めた背筋が弾けて、大きく息を吐く。

「――こんなに気持ちよくなれるところなら、もっと可愛がってやったらどうだ」

それでプロデューサーも、文香の快楽を確信した。



文香をベッドに仰向けに横たえさせ、女陰を顕にさせる。
プロデューサーは「ほぅ」と軽く声を上げた。

「処理してるのか――それとも、もともとか」

文香のそこは、位置は美波に近い下付きで、スリットは愛梨に似てぴったりとしていた。
そして陰毛はどちらにも似ず、つるりとして一本も見えない。

「変、でしょうか。やはり」
「男から見たら、まったく気に病むモノじゃないと思うが」

文香は、陰毛が生えていないことも、思うところがあるようだった。

「あんなに美人でスタイルもいいのに、男の影がないと思ったら、
 もしかして乳首やらあそこやらに、コンプレックスがあったせいか?
 ということは、好みの男を見たら、その男に捧げるときのことも想像してたのか」
「それは――否定は、しません、けどっ」

プロデューサーの軽い口調に、文香は唇を尖らせる。

「でも、私は、あなたが初めて、です」

事ここに至って、色気の不足うんぬんは置き去りにされていた。

「なので、お手柔らかに」

流れのまま文香は、交合をねだった――言葉の意味に気づいて、文香は赤面に赤面を重ねた。

「あ、いや、して、ほしいというわけでは――いや、その、やはり、あなたなら、して、ほし――ううっ」
「落ち着け。緊張すると痛いのがもっと痛くなるぞ」
「そ、それは聞き及んでおります」
「耳年増か?」

プロデューサーが冗談を飛ばすと、文香は珍しく頬を膨らませる。

「私は、その。真剣に、申し上げているのですっ」
「真剣でなかったら困る」



プロデューサーは、念を押す代わりに枕を手にとった。

「これ、腰の下に敷いてくれ」
「汚れてしまいませんか?」
「枕がかり、だ。敷くと、正面から入れやすいんだよ」

プロデューサーは、文香が下付きであっても、さすがに後背位で処女を奪うのは控えた。
代わりに、文香の腰の位置を高くさせる。

美波が聞き及んだら、憤慨するであろう扱いの差であった。

「こ、これは、入れられるところが、私から見えてしまいますっ」
「見えないほうがいいか」
「い、いえ、おまかせ、します」

肉茎を添える。先端を埋める。

(今の私の格好も、さきほどのプロデューサーと、滑稽さでいい勝負でしょう、ね)

文香が呼吸を大きくする。

「止まらないで、ください。私、落ち着いています、から」

プロデューサーの手が、文香の額と前髪を撫でた。

「入れる、ぞ」

破瓜の瞬間、文香は一筋だけ涙をこぼした。




文香の中は、プロデューサーには未経験の狭さだった。
膣壁は、柑橘類の果肉のような細かさをかろうじて感じられる。

「い――あっ、ああっ、プロデューサー、さんっ」

文香の肌は、脂汗が浮いている。
痛みはズクズクと文香を刺し貫き、振り乱された髪が首や肩に張り付く。

(痛い、苦しい――でも、これで、私は――っ)

文香のもう一つの枷であった秘所は、プロデューサーの雄棒をしっかりと食い締めていた。

「私も――女に、されて、しまいましたね。
 ――ふふ、これでは、ボーヴォワールみたいな言い方、です」

文香は精一杯余裕を装った。
自分はプロデューサーの欲望をぶつけられるに足る存在だ、と示したがっていた。

「はぁう――っ! む、胸まで、いじ――あああっ」

プロデューサーは、挿れながら再び文香の胸に触れる。
痛みと快楽の二重奏が文香に刻まれる。



「文香――お前を色気がない、なんて言えない。男なら、絶対に抱きたくなる女だ」
「私は、プロデューサーさんでなければ――」
「――そういう言い方も、だ」

抽送で、文香の声と呼吸は切れ切れになる。
枕には点々と処女血のしみが散らばる。

「プロデューサーさん、出して、ください――私の、中にっ」

プロデューサーは、ためらいなく射精に突き進む。
清らかだったそこに、男の刺青を印すつもりで、抽送を打ち込む。

文香の中は、肉体的にも精神的にも、長居はできない状況だった。

「文香、出す、ぞっ」

(プロデューサーさんが、私の、中で――)



プロデューサーは欲望を解き放った。
その瞬間は、文香は感じ取れなかった――感覚が飽和していて、感じ取る余裕がなかった。
ただ、動きを止めて息をつくプロデューサーの姿を見上げて、文香は自分の処女喪失を噛み締めた。




●鷺沢文香編・2

――さすがに、痛みますね。お気遣い、ありがとうございます。
  ところで、プロデューサーさんは満足されましたか。まだ一回しか、射精されてませんのに。



――もしかして、それ、愛梨から聞いたか。



――はい。それと、プロデューサーさんを完全に満足させるにはどうしたら良いかも、教えていただきました。
  中は痛むのでお相手できませんが、こちらであれば――






新鉢割りの時と逆に、プロデューサーが寝て、文香がその上から覆いかぶさる。

「プロデューサーさんは、お胸がお好きなのですよね。
 お気に召されたようなので、次は、こちらを使わせていただきます」

深い谷間を、プロデューサーのペニスが包み込む。
精液も処女血も拭わないまま――肌に薄紅が散り広がる。

「それでは言葉に甘えさせてもらって――俺も枕を入れて、腰を上げようか。
 そのほうが、体重がかけやすいだろう」
「ふふっ。私と同じ、ですね」

膣内とは真逆の、すべらかで柔らかい感触が、亀頭から根元までを囚える。

「私も、この――ぱいずり、というんでしょうか。悪くない気分です。
 プロデューサーさんに、奉仕できている実感が、湧いてくるのです」

体重をかけたまま、両手で左右から稜線を押さえつけて乳圧をかける。



「男性は、目で感じると聞きました。私の姿で、興奮できますか?」
「イヤらしい、興奮する――さっきまでの俺でも、想像できないぐらい、ソソる」

処女を失った――その過程で、コンプレックスが失せた――今の文香は、
もう男の欲望を正面から受け止めることができた。

(本来、子供を成す器官と、子供を育むための器官を、私たちは――まったく、欲望のために――)

万一にも生殖につながらない、肉悦を分かち合うだけの戯れ。

「文香――表情に、色気、出てきたな。そうだ。お前は、男を弄ぶに足る女だ」

プロデューサーの鈴口から沁みる先走りと、文香の唇から垂らされた涎が、
交合の残照と入り混じって、くちくちと泡立つ。



「ちくび、擦り付けると――私も、切ない気分になります」

先刻はプロデューサーの指で法悦を植え付けられた乳暈を、
今度は文香自身がペニスにこすりつけて、随喜を導く。

「それにしても、こんな大きなモノが、私の中に入っていたとは。感慨深い、ですね」

肌と粘膜が擦り合わされ、甘い痒熱とともにテラテラとぬめる。

「こちらでも、あなたの形を覚えて――あなたも、私の柔らかさを、覚えてくださいね」

女教師が生徒を諭すにも似た声音で、文香は快楽を塗り込んでいく。

「こんなの覚えさせられたら、文香のグラビアを、まともな目で見れないかも知れない」
「そうでしょうか。プロデューサーさんは、こうされるの、想像したことがあったでしょう?」

男根が怒張を取り戻すとともに、文香のセリフが確信を深めていく。

「今のあなたは、私で気持ちよくなることだけ、考えていてください」

文香が先走りを舌でつつくと、ついにプロデューサーから呻きが漏れる。

「あなたも、声を我慢しないでください。気持ち、いいですか」
「文香の胸、気持ち、いいっ」

文香は女の象徴をもって、プロデューサーの男を組み敷いていた。
その味を、体に、心に焼き付けていった。

「ふ、みか――もう、でるっ――」
「また、私に出してくださいっ」



二発目にもかかわらず、プロデューサーは呆気なく果て、白濁を文香の顔と前髪にぶちまける。
文香は目を燦爛と輝かせつつ、精子を捕食するように手で拭い取った。

(おしまい)

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