恭子「漫ちゃんの仕事はパンケーキ屋を装った白糸台の潜入調査やで」(53)

――前略、末原先輩。 私です、上重漫です。

新緑の候、若葉の芽吹が目に眩しい今日この頃いかがお過ごしでしょうか。

…………って、

昨日も会うてたんやから知ってますけど。

来たるインターハイへ向け、麻雀部の皆は今日も厳しい練習に汗を流している頃かと思います。

その最中。他ならぬ末原先輩の命を受けて、私は今大阪を離れ――


漫「はいっ! 豚玉いっちょあがりー!」

淡「おー!」


――白糸台高校で、お好み焼きを作っています。

数日前 姫松高校

恭子「…………というわけで。夏のインハイも要注意チームの本命は白糸台や」

洋榎「まあ、せやろな」

由子「当然なのよー」

恭子「こちらとしても対策を立てるべく、いろいろと調査しとったわけやけど……」

漫「はい」

恭子「ここへきてひとつ、新たな噂が見つかったので。今日はその話」

絹恵「噂?」

恭子「白糸台の躍進を、陰で根底から支えているという都市伝説……」

洋榎「……ほう」

恭子「……それが、彼女」スッ

洋榎「!」

洋榎「こいつは……」

恭子「"白糸台の鳴くおもち"こと宇野沢栞……。二年連続全国優勝メンバーや」

由子「みんな知ってるのよー」

漫「……はい」

洋榎「"もち鳴き"の宇野沢やろ? 言うても去年三年やってんから、もう卒業生やんけ」

絹恵「うん、秋大会からはおらんかったですし……」

漫「もう心配しなくてもいいんじゃ……?」

恭子「……選手としては、そうなんやけど。実は麻雀以外の部分でも」

洋榎「ほう?」

恭子「最近の調査で、極秘に手に入れたもう一枚の写真……」パサッ

洋榎「これは……」

由子「宮永照が……満面の笑みでパンケーキ食べてるのよー」

絹恵「その後ろで宇野沢さんが笑ってますね」

漫「……おやつの時間ですか……?」

恭子「これこそが、白糸台の圧倒的麻雀力の源だという噂……」

漫「えっ?」

恭子「彼女の作るパンケーキ、絶品らしいで」

洋榎「マジでか」

恭子「この写真。撮られた日付は去年の12月や」

絹恵「……ということは……」

漫「?」

恭子「……うん。彼女が引退してからも……、ってことやろな」

洋榎「せやな」

由子「うんうん」

漫「……???……」

漫「えっと……、どういう事ですか……?」

由子「えっ」

絹恵「えっ」

漫「?」

洋榎「オイオイ頼むで漫ー」

漫「えっ」

恭子「……漫ちゃん……」

洋榎「白糸台の強さがそのパンケーキいうならや。お前がめっちゃ対抗意識燃やすとこやんけ」

恭子「…………うん。そんなんじゃ困るで漫ちゃん」

漫「……そう……言われても……」

恭子「…………いや、真面目な話。漫ちゃんの出番やで?」

漫「?」

恭子「今度の土日。漫ちゃんには東京に行ってきてほしい」

漫「えっ」

恭子「漫ちゃんの仕事はパンケーキ屋を装った白糸台の潜入調査やで」

漫「…………はい?」

恭子「白糸台でパンケーキ焼くのが日常風景なら。こっそりお好み焼き屋が紛れ込んでても怪しまれないんちゃうかな」

洋榎「せやな」

漫「…………いやいや」

恭子「……それに万一バレても。小麦粉焼きができる人やったらすんません間違えましたで済むと思う」

絹恵「うんうん」

漫「いやいやいや」

恭子「ここは漫ちゃんが適任や。交通費は出すから、よろしく頼むわ」

由子「がんばるのよー」

漫「いやいやいやいや」

恭子「そないしょっぱい反応せんと。本題は麻雀やからね?」

漫「…………はあ」

恭子「今年の白糸台。レギュラーチームと言われる"虎姫"やけど……、宮永照と弘世菫以外は全く新しいメンバーや」

漫「…………」

恭子「まず二年生が二人。春大会から出てはいたけども……。集められた資料は多くない」

漫「…………」

恭子「それに、この四月から入った一年生。そいつに関してはデータゼロや」

漫「一年生……」

恭子「うん。本命はそいつの情報を集めたい」

漫「…………」

恭子「……もちろん、できれば虎姫全員分な」

漫「それにしたって……なんで私が……」

洋榎「小麦粉焼きならお前のフィールドやろー? お好み焼き屋の血が騒がんのかい」

絹恵「私、上重さんのお好み焼き好きー」

由子「なのよー」

漫「そう言われても……私は別にそんな……」

洋榎「またそういうこと言うお前はー」

絹恵「そのセリフは謙遜やってー」

由子「もうみんなわかってるのよー」

漫「……うう……」

洋榎「大丈夫やって、バレへんバレへん」

漫「…………」

漫「そんなん言うなら、末原先輩だって料理できるやないですか!」

恭子「どーせ私が焼いたら末原焼きやもん……」(遠い目)

洋榎「あー漫が恭子いぢめたー」

絹恵「あー」

由子「あーなのよー」

漫「…………いやいやいや」

洋榎「ええか漫よ……。お前の目指しとるもんは何や?」

漫「……目指しとるもんて……。姫松の全国優勝ですけど……?」

洋榎「…………はーあ」

絹恵「えー」

洋榎「これやからな。ガッカリやで」

由子「なのよー」

漫「??」

洋榎「そんなもん、あったり前田のクラッカーヴォレイや。それより先に! お好み焼きの全国優勝やろが!!」

漫「!?」

洋榎「お好み焼きがパンケーキに負けとってええんか!? ちゃうやろ!?」

漫「え、あ、はい!」

洋榎「甘いスウィーツなんぞ外道もええとこやんけ! ソースと紅しょうがこそ正義やろ!!」

漫「まったくその通りです!」

洋榎「粉もん最強のプライド見せたれや!! 白糸台行ってガチコンかましたらんかい!!」

漫「はい! 頑張ります!!」

洋榎「よし!」

漫(…………そんな話やったっけ……?)

そんな口車に乗せられて、私はひとり東京へとやってきた。


しみじみと思う。


やっぱこれ、ただの罰ゲームやったんちゃうん? と。

――白糸台高校の校舎を見上げ、私は途方に暮れていた。


漫「そうは言うても……どうすりゃええねん……」


出発を前に渡されたこの衣装……。

どこから手に入れたのか、白糸台高校の夏服。

お好み焼きヘラを連ねたベルトを肩から斜めにかけ、

リュックの中にはカセットコンロと鉄板、手にはスーパーの袋にお好み焼きの食材。

……そして背中に背負った、身の丈ほどでかいお好みヘラ。

どこの久遠寺ウッちゃんやねん。

外見だけならあからさまに白糸台のお好み焼き屋、それはわかんねんけども……。

……正直、どう見てもやりすぎです。本当にありがとうございました。

大体、こんなでっかいヘラでほんまにお好み焼けるわけないやろ。

絶対ドンキとかで買ったパーティグッズや。


漫「まったく……。誰のアイディアやねん……」


やっぱり主将かな。いやこの悪ノリ加減は監督代行か。何かゆーこ先輩っぽい気もするな……。

漫「うーん……」ウロウロ

漫「……うーん……」ウロウロ

漫「…………入りにくいなあ…………」


淡「…………おや? あの人……」

淡(何してるんだろあの人……)

淡(うちの生徒みたいだけど……なんだろあの格好……)

漫「……どこなんかな……麻雀部……」ウロウロ

淡(……麻雀部……? うちに何か用なのかな……?)

漫「誰か……案内とかしてくれへんかな……」ウロウロ

淡(…………あっ! そうか!)ティキーン

淡(あの手にさげてるスーパーの袋……。透けて見えてるあれは……)

淡(……小麦粉の袋だ……!)

淡(てことは……あの人が……!)

―淡の回想―

淡「小麦粉…… 砂糖…… フライパン……」

誠子「どうしたんだ淡、部室の棚あさって」

淡「ねー、なんでうちの部には小麦粉やフライパンが揃ってるのー?」

誠子「よく焼いてたんだよ、去年までは。麻雀の合間に食べるおやつにね」

淡「小麦粉を焼くのー?」

誠子「うん、パンケーキだよ。市販のミックスじゃない本格的なやつさ」

淡「へー」

誠子「最近は作ってなかったなー。一番上手に焼ける先輩が卒業しちゃったからね」

淡「センパイ?」

誠子「知ってるだろ、宇野沢栞先輩。去年のレギュラーだよ」

淡「しらなーい」

誠子「……おいおい、二連覇メンバーだよ? それくらいうちの部員なら知ってろって」

淡「去年なんて私いないしー」

誠子「……写真あるだろ、そこに。右端に写ってる胸のおっきな人」

淡「興味ないもーん」

誠子「……こいつは……」

誠子「麻雀部の先輩なんだからさ。好感度下がるぞ、そういう態度」

淡「知らない人からの好感度下がっても別にー」

誠子「…………いや、私のさ。仮にも私の鳴き麻雀の師匠だよ?」

淡「そうなの?」

誠子「副露のセンスが半端ないって定評があったんだ。すごく勉強させてもらってたんだからな」

淡「へー」

誠子「まあその先輩もね」

淡「?」

誠子「最初は自分でもめちゃくちゃ弱いって言ってたらしいんだ」

淡「二連覇メンバーなのに?」

誠子「でもそこから、隠れてた実力を宮永先輩に見出されて団体戦のレギュラーになったんだよ」

淡「料理の実力を?」

誠子「……麻雀だよ。だからある意味、私らと一緒さ」

淡「ふーん」

―回想終―

淡(パンケーキを……一番上手に焼ける先輩……!)

淡(ということは……。おいしいものが食べられる!)キュピーン

淡(えーっとなんだっけ……。名前……)

淡(う…………。確か、うで始まるナントカ先輩だった……)

淡(よく覚えてないけど、まあいいや!)

タッタッタッ

淡「せんぱい!」

漫「?」

淡「ねーねー、せーんぱい!」

漫「…………私のこと?」

淡「そうだよ! 麻雀部のせんぱいでしょ!?」

漫(…………なんやこいつ……一年生か……?)

淡「ねえ、せんぱいって名前の最初に『う』がつく人!?」

漫「はあ? ……そうやけど」

淡(…………間違いない!)

淡「てことは! あなたが亦野先輩の話してた先輩だよね!」

漫「えっ?」

淡「亦野先輩に聞いたよ! 最初は麻雀めっちゃよわいって言ってたけど先輩に抜擢されてレギュラーになった、小麦粉焼くのが一番上手で、おもちのおっきな、うナントカ先輩!」

漫(…………なんやそら)

漫(確かに、私がレギュラーなれたんは末原先輩が推してくれたおかげ……)

漫(そん時、監督代行には「むっちゃよわい子」って言われてたのも……後から聞いた。不本意な評価やけど)

漫(……まあ、確かに私のことなんやろうけど……)

漫(「うナントカ」って何やねん。「うえしげ」や、「うえしげ」)

漫(それになんや、お、おもち……がおっきいとか……。別に放っとけや)

淡「?」ニコニコ

漫「…………ようわからんけどまあ、その通りやけど」

淡「やっぱりー!!」キラーンッ

淡「ねえねえ! 麻雀部に来たんでしょ!?」

漫「…………せやな」

淡「じゃあ案内してあげる!」

漫「……は?」

淡「こっちだよ! 来て!」グイッ

漫「あっ、ちょっ、おい」

淡「いいからいいから!」タッタッタッ

麻雀部部室

バタンッ

淡いい「とーちゃくー! パンケーキー!」

誠子「……どうしたんだ、大星」

淡「あ、亦野先輩! パンケーキだよ!」

誠子「…………日本語でOK」

淡「さっき話してたでしょ、パンケーキのせんぱい連れてきた!!」

誠子「えっ」

淡「亦野先輩の言ってた通りだよ! 最初は麻雀めっちゃよわいって言ってたけど先輩に抜擢されてレギュラーになった小麦粉焼くのが一番上手でおもちのおっきなうナントカ先輩!」

漫「…………」

誠子「えーっ……えっと……」

誠子(あれーっ、栞先輩……? こんな顔だったっけ……?)

誠子(部室にあった写真とも、私の記憶とも……。印象違うなぁ……)

誠子(イメチェン……したのかな……? でもそんなレベルじゃないって気もする……)

誠子(……でも、大星がこれだけ言ってるし……。ここで誰ですかなんて言ったら失礼だよね……)

誠子(さっきあれだけ説教したってのに……。それこそ大星からの好感度が下がる)

誠子(……どうしよう……)

誠子(……うーん…………でも、少なくとも)チラッ

漫「?」

誠子(……あの大きさは間違いないか。栞先輩のおもちだよね)キュピーン

漫「??」

誠子(それに、私たちを訪ねてきてくれるパンケーキの人なんて……。栞先輩以外にいるわけないし)

漫「???」

誠子(……うん、気にしないでおこう! 女性の見た目は数ヶ月でもすごく変わるって言うもんね!)

誠子「お久しぶりブリです! ようこそおいでくださいました!」

淡「うん!」

漫(……亦野誠子……お前もアホか……?)

誠子「大星が何かご迷惑おかけしませんでしたか? 失礼なことしてましたらすみません!」

淡「えぇー迷惑なんてかけないもん私ー」

漫「…………大星?」

誠子「あ、はい! 紹介しますね。こいつが新しい虎姫、一年の大星淡です!」

漫(……こいつが……。末原先輩の言うてた、謎の一年生……)

誠子「今日はどうしてこちらへ?」

淡「パンケーキ! つくってもらうの!!」

漫「…………いや、そのな」

誠子「……ですよね。わざわざ卒業後にまで、ありがとうございます!」

淡「うん!」

漫「…………」

誠子「それじゃ、さっそく準備しましょうか! 皆も久しぶりで喜ぶと思いますよ!」

漫(…………よくわからんまま、調理台の前へ連れてこられた)

淡「……そのスーパーの袋に入ってる……、これ!」ガサガサッ

漫「あっ、おい勝手に」

淡「パンケーキだよね! この小麦粉!」

誠子「ああ、材料まで買ってきていただいて。ありがとうございます」

漫「……いや、それはお好み焼き用の……」

尭深「……はい、他の道具も揃えたよ」

誠子「うん、ありがとう。それじゃあ先輩、どうぞ!」

漫「えっ」

誠子「?」

漫「この材料でパンケーキを……?」

漫(…………なんやこれ…………)

漫(麻雀部には入れたけど……。こっそり目立たず潜入調査のはずやのに……)

漫(逆に思いっきり注目されてて……。なんや期待までされとる……)

漫(いきなりパンケーキ作れやと……? しかも市販のミックスやなく小麦粉で……?)

漫(……これは……。マズいんちゃうかな……?)

漫(パンケーキの事なんて知らんって……! お好み焼きとは全然ちゃうやろ……!)

誠子「お願いします!」

漫「……い、いや……その……」

誠子「?」

淡「…………(期待の目)」ワクワク

漫「…………」

淡「…………(期待の目)」キラキラ

漫「…………」

淡「…………(期待の目)」ニコニコ

漫(…………ええい、もうどうとでもなれや! できらあっ!)

ジュゥゥゥ

淡「おぉー」

…………

……

ぺたんっ

漫「……はい、パンケーキ」

淡「できたー!」

尭深「……うん」

誠子「それじゃ、いただきます!」

漫「…………どうぞ」

誠子「…………」モグモグ

淡「…………」モグモグ

尭深「…………」モグモグ

漫「…………」

誠子「…………うーん」

淡「むぅー」

尭深「…………」

漫「?」

誠子「なんか……あまり……」

尭深「昔と比べても……」

淡「おいしくなーい」

漫「…………」

誠子「……ひ、久しぶりに作ったからですよね?」

淡「期待外れー」

尭深「…………お茶淹れますね、お口直しに」

淡「がっかりー」

漫「…………」ブチッ

漫(なんやねん……。なんやねんこいつら……)

漫(できらあ言うてホンマにできたら世話ないわ! 材料も作り方もよう知らんっちゅーのに!)

漫(というか私は! そんなもん作りに来たんとちゃうわ!!)

漫「お・ま・え・ら~~~」

淡「?」

漫「粉ものいうたら! 粉ものいうたら!!」

漫「お好み焼きやろーーー!!!」

――前略、末原先輩。 私です、上重漫です。

お好み焼きって、本当にすばらしいですよね。

大阪から遠く離れたここ東京の空の下、私は必ずやそのすばらしさをこいつらに――


漫「はい、豚玉みっつ!! あと何人!?」

淡「えーとー、虎姫はあと二人……」

漫「そういう話やない! 麻雀部全部で何人やって!」

誠子「全員分!?」

淡「おおー!」


…………

……

菫「…………何やってんだ今日は」

照「……いいにおい」

誠子「あ、先輩! お疲れサマーです!」

菫「……このソースの匂いはなんだ」

誠子「はい、見ての通りお好み焼きです! いいにおいですよね!」

菫「うちは麻雀部だったはずだが」

誠子「はい、間違いないですよ!」

菫「…………麻雀してないだろ」

照「…………」

誠子「見てください! 栞先輩が来てくださったんです!」

菫「栞先輩?」

誠子「はい! 懐かしいですよね、あの焼いてる姿!」

菫「…………いや、先輩っていうかお前あれ……」

淡「テルー! はいこれ、おいしいよ!」

照「…………ありがとう」

菫「……いやおい」

照「…………」

照(この人は……宇野沢さんとは違う人……)

照(……なぜかみんな気にしてないけど、鏡に映った様子が違うから間違いない)

照(…………でも…………)

照(おいしいものをつくってくれるひと)キュピーン

照(…………黙っていよう)モグモグ

照「菫も食べる? おいしいよ」モグモグ

菫「なに言ってんだよ、あの人全然違うっていうか姫松の――」

照「まあまあ」スッ

菫「むぐっ」

誠子(…………お好み焼きで口を塞いだ)

照「……おいしいよ?」

菫「…………」モグモグ

照「…………」

菫「…………」モグモグ

照「…………」

菫「…………うまいな」

月曜日 姫松高校

漫「ただいま戻りました!」

洋榎「おう、ごくろうさん」

由子「おつかれなのよー」

絹恵「おかえりなさーい」

恭子「……で、どやった?」

漫「はい! バッチリ持ち帰ってきましたよ、虎姫全員分のデータ!!」

由子「おー」

絹恵「凄ーい」

恭子「見直したわ、漫ちゃん」

恭子「ほな、聞かせてくれる?」

漫「はい。まず弘世さんはマヨいらない派ですね」

恭子「……は?」

漫「他はどっちでもええみたいですが、渋谷尭深はソースとマヨに合わせてお茶の方を変えよるんでよーわかりませんわ」

洋榎「…………マヨ?」

漫「ですから渋谷はマヨ別盛りで、自分で分量調節さしたったらええと思います。もうそこから先は好きにせえですよ」

恭子「……いや漫ちゃん」

漫「それから宮永さんはからいのにがてっぽいので、紅しょうが少な目にしてあげたったらええと思います!」

漫「具の方はそうですねー、大体豚玉とかでええんですけど、亦野誠子は魚介が好きとか言うてましたね」

由子「…………魚介?」

漫「はい、なんや釣りが趣味らしくって。今度自分が釣ってきた魚も焼いてくださいよーとか言われたんです」

絹恵「…………釣り?」

漫「でもね、いくらなんでも丸ごと川魚はないですわ。お好み焼きやったらイカとかエビですよねー」

恭子「…………」

漫「まあ、お好み焼きと別やったら焼いたってもええですけど! にしても鉄板焼きで川魚はどうやろ思いますけどね!」

恭子「…………」

恭子「…………ほな、謎の一年生は」

漫「もう全然ですね! 大したことあらへんですよ!」

恭子「お、おお……」

漫「まず食べる前にはいただきます! 他人の分まで勝手に食べない!」

漫「それにソースのかけ方がなってないですね! あんなにべたべたドバドバしたら素材の味が台無しやっちゅー話です」

漫「紅しょうがも青のりも勝手に山ほど乗せますし! 全員分足りなくなるやろとかお構いなしですからね!」

漫「挙句の果てには順番待たんと『おかわり! おかわり!』ですからもうね、マナーというか躾の問題ですよね」

恭子「…………」

漫「でもやっぱり東京ですね、ソースがもう全然ちゃいましたから!」

漫「こっちで売ってるようなやつ全然お店に無くて! それだけ先に買うてから行っとけばよかったですよ、ほんまに!」

漫「あいつらもまずソースに対する意識からあきませんでしたね。専用ソース無いなら無いで、自分でブレンドせんと!」

漫「そう言うたらもう『その発想は、無かったわ~』いう顔されましたからね、もう悲しいもんですわ」

漫「ほんで聞いたらとんかつソースとウスターの違いもよーわからんとか言い出しまして! そこからかい! 言うて」

四人「…………」

漫「でも安心してください! しっかり大阪の味を教えてきたりましたから!」ニコッ

恭子「…………あのな漫ちゃん、お好み焼きのことはようわかったけどもや」

漫「はい! がんばりました!!」キリッ

恭子「…………で、麻雀は?」

漫「えっ」

恭子「えっ」

洋榎「…………」

由子「…………」

絹恵「…………」

漫「……麻……雀……?」

洋榎「…………」

由子「…………」

絹恵「…………」

恭子「まさか……漫ちゃん……」

漫「…………」

恭子「……わざわざ部費使って東京行って……。……お好み焼いてきただけ……?」

漫「…………」

漫「…………」

恭子「…………」

漫「…………」

恭子「…………」

漫「…………てへっ☆」ニコッ


洋榎「アホかーーー!!!」


カン

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