[モバマス]穂乃香「名前で呼んでほしいです」 (25)

綾瀬穂乃香ちゃんのSSです。
Pドルものですので苦手な方はご注意ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1527597961

―――――ある日のスタジオ

カメラマン「撮影おつかれさま」

穂乃香「おつかれさまでした」

カメラマン「姿勢いいねぇ、君。背筋もピンと伸びててさ」

穂乃香「ありがとうございます。以前はバレエをやっていたので」

カメラマン「なるほど!また機会があったら撮らせてくれよ」

穂乃香「ぜひ、お願いします!」

穂乃香「(姿勢を整えるのはバレリーナとして当然のことでしたが……褒められると、嬉しい気持ちになりますね)」

P「綾瀬、撮影おつかれ」

穂乃香「プロデューサーさん、おつかれさまです」

P「今日の撮影も好調だったみたいだね」

穂乃香「はい、先ほどもカメラマンさんにお褒めの言葉をいただきました」

P「そりゃよかった。仕上がりが楽しみだな……それじゃ、今日は帰ろうか」

穂乃香「はい」

穂乃香「(私のプロデューサーさんは、寡黙だけど、とても優しい人)

穂乃香「(そして、私をアイドルという世界へ導いてくれた、大切な人……)」

P「どうした、綾瀬。俺の顔をじっと見て」

穂乃香「いえ……何でもありません」

穂乃香「(大切な人……なのですが、プロデューサーさんは私のことをいつも、「綾瀬」と苗字で呼びます)」

穂乃香「(どこか他人行儀に感じてしまうのが、寂しくなる時もあります……)」

穂乃香「(たまには「穂乃香」って、名前で呼ばれてみたいな)」

P「……なんだか元気がないように見えるぞ」

穂乃香「いえ、大丈夫です!私は元気いっぱいですよ!」

P「そ、そうか」

穂乃香「(私のことを苗字で呼ぶプロデューサーですが、一度だけ名前で呼んでくれたことがありました)」

穂乃香「(あれは、私が初めてライブに出た日のこと……)」


―――――


穂乃香「(今日は初めてのライブ……だけど)」

穂乃香「(想像以上に会場が……大きい……!)」

穂乃香「(これだけ会場が大きいと、どれだけたくさんの人が見に来るのでしょう……)」

穂乃香「(……意識し始めたら体の震えが、止まらない……全身に力が入らない!)」

「綾瀬さん、スタンバイお願いしますー」

穂乃香「は、はい……!」

穂乃香「(どうしよう、このままじゃ……)」

穂乃香「(ステージの上に立つまで、あと数分もない)」

穂乃香「(今まで重ねてきたレッスンのことが、何も思い出せない)」

穂乃香「(アイドルとしての初舞台なのに、私は……!)」

P「おい、綾瀬。大丈夫か」

穂乃香「わっ! プロデューサーさん……」

P「体、震えてるぞ」

穂乃香「ごめんなさい……舞台なら、何度も経験しているはずなのに……体の震えが止まらなくて……このまま行って、失敗したら……私……」

P「……大丈夫だ」ギュッ

穂乃香「えっ?」

P「穂乃香なら、大丈夫だ。今までたくさんレッスンしてきたのを、俺は知ってるから。安心して、ステージへ行っておいで」

穂乃香「プロデューサーさん……!」

ワァァァァァァ

P「さあ、開演だ。バレリーナとしてではなく、アイドルとしての舞台……思いっきり、楽しんで来い」

穂乃香「はい……!」

―――――

穂乃香「(あの時、穂乃香と呼んでくれたことを私は今でも覚えてます)」

穂乃香「(そして、あの時から私はプロデューサーさんのことを……)」

P「綾瀬、何かいいことでもあったか」

穂乃香「えっ?」

P「……嬉しそうな顔をしているから」

穂乃香「すみません、初めてライブに出た日のことを思い出していました。顔に出てましたか」

P「ああ、満面の笑みだったぞ。いい表情をするようになったな」

穂乃香「あ、ありがとうございます……」カァァ

P「それにしても、初めてのライブか。もうずいぶんと昔のことのように思えるよ」

穂乃香「私は、昨日のことのように思い出せますよ。あの時、私を励ましてくれたプロデューサーさんのことも、はっきり思い出せますから」

P「そんなに鮮明に覚えているのか」

穂乃香「もしかして、プロデューサーさんは覚えていないのですか?」

P「ああ、はっきりとは覚えてないな。ライブの直前まで綾瀬が緊張しているのが伝わったから、緊張を解そうとしたのは覚えているが」

穂乃香「そう……ですか……」

P「そこまで落ち込まなくても……そんなにいいことしたのか、あの時の俺」

穂乃香「私にとってはいいことというより、特別なこと……ですね」

P「特別なこと……か。そこまで言われると気になるな。何をしたんだ?」

穂乃香「それは……内緒です!思い出してみてください」

P「そうか……考えてみるとするか」

―――――その日の夜


穂乃香「(まさか、プロデューサーさんが私のことを名前で呼んでくれたのを忘れていたなんて……)」

穂乃香「(プロデューサーさんにはああ言いましたが……自力で思い出すのは難しそう……)」

穂乃香「(思い出してもらって、もう一度名前で呼んでもらうにはどうすれば……)」

穂乃香「(そうだ!プロデューサーさんも親しい間柄の人なら名前で呼びやすいですよね)」

穂乃香「(それなら、私から親しくしていけば……!)」


―――――翌日


P「おはよう」

穂乃香「おはようございます、プロデューサーさん」

P「おはよう、綾瀬。今日も早いな」

穂乃香「はい、今日も準備運動をしておりました」

P「熱心でいいことだ。その調子で今日のレッスンも頑張ってくれ。ところで……」

穂乃香「はい?」

P「今日の綾瀬はやけに距離が近い気がするんだが」

穂乃香「そうでしょうか?」

P「ああ、今にも手と手がぶつかり合いそうな距離だな」

穂乃香「私は、これくらいの距離感もいいと思いますよ」

P「綾瀬がいいのなら、構わないけど」

穂乃香「(うーん、距離を詰めるくらいでは呼び方は変わりませんね)」

「いいえ、何もついていませんよ」

P「そうか。じゃあどうしてそんなに見つめるんだ?俺の顔なんか見ても面白みがないだろう」

穂乃香「そんなことはないですよ!とっても素敵な顔だと、私は思います」

P「おいおい。綾瀬が容姿を褒められるのはともかく、俺はそんなにかっこよくないぞ」

穂乃香「そんなに自分を低く見なくても……」

P「とにかく、今日の綾瀬は何だか様子が変だぞ。何か悩み事でもあるのなら、相談してくれ」

穂乃香「いえ、私は大丈夫ですので!では、そろそろレッスン場に向かいますね」

P「ああっ、ちょっと待てって……行ってしまった」

P「(今日の綾瀬は何かやたらと距離が近かったな。明らかに不自然だった)」

P「(綾瀬の身に何かがあったのか……?)」

P「(……ダメだ。心当たりがない。また後日、綾瀬に聞いてみよう)」

―――――数日後


P「(あれから数日が経ったが、相変わらず綾瀬は妙に距離を詰めてくる)」

P「(事務所で仕事をしていたら……)」

―――

穂乃香「プロデューサーさん、お疲れ様です」

P「綾瀬、お疲れ様」

穂乃香「……」テクテク

P「どうした、俺の後ろに回り込んで」

穂乃香「えいっ」トントン

P「うおっ……今度はなんだ」

穂乃香「肩たたき、ですっ。デスクワークが多い人は肩が凝ると聞いて」

P「確かに肩凝りはあるが……いきなりだな」

穂乃香「嫌ですか?」

P「嫌じゃない、むしろ嬉しい……けど」

穂乃香「それならよかった♪」

P「(何だか調子が狂うな……綾瀬が楽しいなら構わないが)」

―――

P「更にこの前は駅までの帰り道で……」

―――

P「たまにはこうやって二人で街並みを歩くのもいいな」

穂乃香「はい。プロデューサーさんと一緒に帰れて嬉しいです♪」

P「そりゃどうも」

穂乃香「こうして並んで歩いていると、まるでカップルみたいですよね」

P「俺なんかじゃ綾瀬と釣り合わないよ。せいぜい兄妹だろう」

穂乃香「それなら……えいっ」ギュッ

P「えっ」

穂乃香「手をつなげばカップルにしか見えませんよね!」

P「……仲の良い兄妹程度だろう」

穂乃香「そ、それなら!えいえいっ」ギュムッ

P「待て、さすがに腕に抱きつくのは……」

穂乃香「ふふっ、これで私たちもカップルですよ♪」

P「参ったな……」

―――

P「(あの日は駅に着くまで終始ご満悦の綾瀬に抱き着かれていたな)」

P「(85cmあるバストの感触が今も……って何を考えているんだ俺は)」

P「(とにかく、最近の綾瀬の行動にはやはり違和感しかない。いったい何があったって言うんだ……)」

P「はぁ……」

ちひろ「随分と深いため息ですね、プロデューサーさん」

P「ちひろさん……ちょっと悩み事があるのですが聞いてくれませんか」

ちひろ「はい、何でしょう」

P「実は……最近、綾瀬がやたらと親しげにしてくるんです」

ちひろ「あらあら、妬けちゃいますね」

P「そういう問題ではないのですよ……明らかにその様子が不自然なんです」

ちひろ「不自然、ですか」

P「はい、急に体に触れてくることも多くて……俺、何かしちゃったのかな……」

ちひろ「穂乃香ちゃんはきっと、プロデューサーさんに何か伝えたいことがあってそういった行動をしているのでは?」

P「伝えたいこと……」

ちひろ「ええ。その行動には何か理由があるんですよ」

P「……そういえば、綾瀬は数日前に「初ライブの日に、プロデューサーさんがしてくれたことを思い出してほしい」と言ってました。俺はあまり覚えていないんですが」

ちひろ「だったら、それを思い出さそうと、あえてボディタッチをしているのかもしれません」

P「なるほど。しかし、俺が綾瀬の身体をむやみに触るようなことは……」

ちひろ「例えば、緊張している穂乃香ちゃんの手を握ったり、とか……」

P「……あっ」

ちひろ「……心当たりがあるようですね」

P「ええ。さっそく綾瀬に連絡を取ってみます」

―――――その日の夜


穂乃香「プロデューサーさん、こんな時間に呼び出してどうされました?」

P「夜分遅くにすまない。一度、綾瀬との今後について話したくてな」

穂乃香「……今後、ですか」

P「最近の綾瀬は、俺に対してやたらと距離が近かっただろう。あれは、意図的だったんだよな」

穂乃香「……はい」

P「どうしてそんな行動に出たのか、考えてみたんだ」

P「綾瀬が初ライブの話をした翌日から、綾瀬との距離が近くなった」

穂乃香「ええ、確かにそうです」

P「つまり、俺に対して距離が近かったのは、初ライブでの話に絡んでいると判断した」

P「俺はあの時、ライブ直前で緊張している綾瀬に……」

穂乃香「……」ゴクリ

P「……手を、握ったんだったよな」

穂乃香「……えっ?」

P「いや、すっかり失念していた。綾瀬は俺にそれを思い出そうと、意図的にボディタッチをしていたんだよな」

穂乃香「あの……」ポカーン

P「俺が手を握ったから、緊張が解れたのだろう?それで、今後も緊張した時は俺に手を握ってほしいと……」

穂乃香「違いますっ!」

P「っ!」

穂乃香「全然、違いますよ……プロデューサーさんのバカ……」

P「……」

穂乃香「私はただ、あなたに名前を呼んでほしくて……」

P「……名前……?」

穂乃香「はい。初ライブの時、緊張で全身が震えていた私を、プロデューサーさんは名前で呼んでくれたんです」

穂乃香「いつも「綾瀬」と呼ばれていたのですけど、初めて名前で呼ばれて驚きました」

穂乃香「……私がバレエをしていた頃に、指導してくださった先生の方々は、みんな私のことを「綾瀬さん」とか「綾瀬」と呼んでおりました」

穂乃香「私を指導してくださる人に、名前で呼んでもらえたのは初めてだったんです」

穂乃香「私、それが嬉しくて……!」

穂乃香「もう一度、呼んでほしくて、親しくすれば、名前で呼んでくれるかと思って……」

P「……そういうことだったのか」

穂乃香「すみません、私ったら勢いに任せてひどいことを……」

P「いや、いいんだ。綾瀬の……穂乃香の気持ちを考えてなかった俺が悪かった」

穂乃香「プロデューサーさん……」

P「俺が穂乃香のことを苗字で呼んでいたのは、自分のためなんだ」

穂乃香「プロデューサーさんの……ため……?」

P「そうしていないと、自分の気持ちを抑えきれなくなってしまいそうでな。俺は、穂乃香のことが、アイドルとしても、女性としても、好きだから」

穂乃香「えっ……」

P「俺はあくまでプロデューサーだ。俺なんかが穂乃香のことをそんな目で見てはいけない」

P「穂乃香への気持ちを閉じ込めようと思って、あえて苗字で呼んでいた」

P「そうすれば、距離を置いて接することができると思ってな」

P「……初ライブの時は、そこまで気が回っていなかったから。つい、名前で呼んでしまった」

穂乃香「私は、あの時プロデューサーさんに名前で呼ばれるようになってから、プロデューサーさんのことを、指導者ではなく、もっと近い存在として感じるようになって……」

穂乃香「段々とプロデューサーさんに対する気持ちが強くなっていったんです」

穂乃香「でも、プロデューサーさんは私のこと、一人のアイドルとして見ていないと思ってたので、この気持ちは心に留めておかないといけないって思ってました」

P「はは……俺たち、似た者同士だったんだな」

穂乃香「ふふっ、そうみたいですね……ねぇプロデューサーさん」

P「何だい」

穂乃香「これからは、私のことを「穂乃香」って呼んでくれませんか」

P「あぁ。……改めてよろしく、穂乃香」

穂乃香「はいっ」

P「……いい笑顔だ」

穂乃香「ありがとうございます。……ちょっぴり照れちゃいますね」

P「呼び方一つでそんなに変わるものなのか」

穂乃香「はい。とっても嬉しいです!まるでプロデューサーさんが人生のパートナーみたいに思えてきて……」

P「プロポーズにはまだ早いだろう」

穂乃香「あっ!い、今のは言葉の綾と言いますか、その……」

P「……かわいいぞ、穂乃香」

穂乃香「かわっ!……不意打ちですよ」

―――――数日後


穂乃香「レッスン、終わりました」ガチャ

P「綾瀬か。おつかれさま」

穂乃香「……」キョロキョロ

P「どうした?」

穂乃香「事務所、今は二人だけみたいですよ」

P「……そうか。おつかれさま、穂乃香」

穂乃香「ふふっ、ありがとうございます♪でも、二人っきりの時だけしか「穂乃香」って呼んでくれないのは寂しいですよ?」

P「それだと仕事中も穂乃香のことで頭がいっぱいになって、仕事が手につかなくなる」

穂乃香「そ、そんなにですか……」

P「すまない、オンとオフの切り替えはしたいんだ」

穂乃香「そうですよね……すみません、わがまま言っちゃって」

P「いや、わがままならもっと言ってくれて構わないよ。できる限り穂乃香の要望は叶えてあげたい」

穂乃香「えっと、じゃあプロデューサーさんのお仕事が終わったら一緒にご飯でも……」

P「それなら、お安い御用だ」

穂乃香「本当ですか!やったっ♪」

P「すぐに仕事を片付ける。それまで待っててくれ」

穂乃香「はいっ♪……あの、プロデューサーさん。改めて言いたいことがあるのですが」

P「ん、どうした」

穂乃香「これからも、末永くよろしくお願いします!」

おしまい

以上となります。読んでくださった方、ありがとうございます。
そして、綾瀬穂乃香ちゃん!お誕生日おめでとう!

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